一応以前に『うみねこの鳴く頃に』要素ありっと書いていますが、あまり関係ないので気にせず読んでくれると幸いです。
「今年もなんとか乗り越えたようね」
目の前のカケラから映し出される光景を見てひとり呟く。
「あなたの物語は見ていて楽しいわね。なんだか今年はより一層楽しくなりそうな気もするし」
カケラに映る暗い瞳を携えた少女たちを見て、少女は口元を歪める。
「さて・・・・そろそろ私もこの物語に参加させてもらおうかしら。私があなたの物語をもっと面白くしてあげるわ」
世界とは隔絶された闇の空間の中で少女は笑う。
そして次の瞬間には、その空間に少女の姿はどこにも見えなくなっていた。
「えへへ!見て見てお兄ちゃん!」
お父さんが作ってくれた新しい服をお兄ちゃんに見せる。
お兄ちゃんはそんな私を見て苦笑いを浮かべていた。
「はいはい可愛い可愛い」
「もうお兄ちゃん!ちゃんと答えてよ!」
「もうこの会話で何回目だよ。何度も見てたらさすがに見慣れるって」
確かにお兄ちゃんの言う通りで私はもう何回も家族に新しい服を見せびらかしている。
でもこの服とってもかぁいいんだもん!!
紫色のリボンのついた白いワンピースと同じ色で作られた帽子。
最高傑作だと言って私にこの服を渡してきたお父さんをお母さんは呆れた目で見ていたけど、実際に私が着るとお母さんも可愛いって言ってくれた。
お兄ちゃんだけは何とも言えないような表情をしていたけど。
「むぅ・・・・この服、礼奈には似合ってないのかな?かな?」
いまいち反応が悪いお兄ちゃんを見て、お兄ちゃんにはこの服はあまり気に入らなかったのではと不安になる。
私の言葉を聞いたお兄ちゃんは帽子の上から乱暴に私の頭を撫でる。
「これ以上ないってくらい似合ってるから安心しろ。ちょっと兄としては股の際どい部分が気になるけど」
「股の際どい部分?よくわからないけどよかった!」
お兄ちゃんの言葉を聞いて安心する。
やっぱり大好きな人に似合ってるって言ってもらえるのが一番嬉しい!!
「みぃちゃん達にも見せてくる!」
「ああ、気を付けてな。一応入江さんには気を付けろよ。礼奈はまだあの人の射程圏内に入ってる」
「あはは!うん気を付けるね!」
お兄ちゃんに玄関まで見送ってもらいながら外へと出る。
最初はみぃちゃんの家に行ってみようかな。
みぃちゃんもしぃちゃんも可愛い服が好きだから楽しい話がきっと出来ると思う。
いっそのことお父さんにみんなの分も作ってもらうのもいいかもしれない。
みんながこの服を着た姿を想像してあまりの可愛さに身を悶えさせる。
その時にはお兄ちゃんと悟史君にも着てもらいたいな。
そしてかぁいいみんなをお持ち帰りしなくちゃ!
あ、でも最初はお兄ちゃんと私だけにしようかな。
えへへ、お兄ちゃんとお揃いの服。
私は口元が緩むのを抑えることが出来ずについついだらしない笑みを浮かべてしまう。
お兄ちゃんはどっちかと言えばお母さんの作るカッコいい感じの服が好きみたいだけど、私は可愛い服に身を包んだお兄ちゃんを見てみたい。
「あ、礼奈なのです!」
私が妄想を頭の中で描きながら歩いていると、私の名前を呼ぶ声が耳に届いた。
振り返れば予想通り梨花ちゃんがこちらへとやってきているのが見えた。
梨花ちゃんは私が振り返ると嬉しそうに小走りでこちらへとやってくる。
「おはようなのですよ礼奈」
「おはよう梨花ちゃん。どこかに行く途中なのかな?かな?」
「ただのお散歩なのですよ。礼奈はどこかへ向かっている途中なのですか?」
「うん!お父さんにかぁいい服をもらったからみぃちゃん達に見せにいくの」
梨花ちゃんに見せるようにその場でクルリと回る。
それを見た梨花ちゃんのいつもの眩しい笑顔を浮かべながら口を開く。
「とっても似合ってますですよ!」
「えへへ、ありがとう!お兄ちゃんも気に入ってくれたんだよ!」
梨花ちゃんの笑顔につられて私も同じように笑みを浮かべながら口を開く。
しかし、私の言葉を聞いた梨花ちゃんは先ほどまで浮かべていた笑顔を曇らせる。
「・・・・
「え?」
梨花ちゃんの言葉を聞いて言葉を詰まらせる。
お兄ちゃんが気に入ったのが意外?どういうことだろう。
私がそれを質問する前に梨花ちゃんが口を開いて答えを口にする。
「みぃ、燈火は巫女服が大好きだったのですよ。いつも僕の巫女服を見て気持ちわr、良い笑顔を浮かべていましたのですよ」
「ええ!?お兄ちゃん巫女服が好きだったの!?そ、そんなの礼奈は知らないよ!」
まさかのお兄ちゃんの好みを知ってしまい驚きの声を上げてしまう。
だから一番最初にお兄ちゃんに見せた時に反応が悪かったのかな。
どうしよう・・・・お父さんに頼んだら巫女服も作ってくれないかな。
「そっかぁ・・・・じゃあこの服はお兄ちゃんの好みじゃないのかな」
「・・・・世の中には知らないほうが幸せなことがいっぱいあるのですよ。にぱーー☆」
私が梨花ちゃんが教えてくれた真実にしょんぼりしている横で満面の笑みを浮かべる梨花ちゃん。
それがなんだか可笑して思わず笑ってしまう。
「あはは!知らなくていいことを教えたのは梨花ちゃんだよ。それに礼奈はお兄ちゃんのことならどんなことでも知りたいかな!かな!」
「・・・・礼奈はお兄ちゃんのことが大好きなのですね」
「え?うんもちろんだよ!世界で一番大好きなんだから!!」
突然の梨花ちゃんの言葉に少し驚きながらも自信を持って答える。
世界で一番誰が好きだと聞かれれば、私はお兄ちゃんと即答できる。
えへへ、早くお兄ちゃんのお嫁さんになりたいな。
お父さんから雛見沢から引っ越すという話が出た夜。
悲しくてなく私をお兄ちゃんが優しく慰めてくれた。
その時にお兄ちゃんは私とずっと一緒にいてくれると言ってくれた。
礼奈をお嫁さんにしてくれるって。
その言葉がすごく嬉しくて。れ、礼奈はお兄ちゃんにキ、キスしちゃ、はう!!
当時のことを思い出して頬が熱くなるのを感じる。
梨花ちゃんはそんな私を見つめながらゆっくりと口を開く。
「・・・・本来のあなたは一人っ子で兄なんていないことを知ったらあなたはどうするのかしらね」
「え?ごめん梨花ちゃん。小さくて聞こえなかったよ」
「・・・・ふふ」
私はもう一度梨花ちゃんの話を聞くために近づく。
そこで私は見た。
梨花ちゃんが私が今まで見たことのないような歪な笑みを浮かべているのを。
「・・・・梨花ちゃん?」
その笑顔を見てしまった私は冷や汗を流しながら後ずさろうとする。
しかし、私が後ずさる前に梨花ちゃんが私に近寄って私の顔に向かって手をかざす。
「世の中には知らないほうが幸せなことがいっぱいある。それは本当。でも私はイジワルだから、あなたに知らなくていいことをいっぱい教えてあげる」
そう言って梨花ちゃんは三日月のように裂けた口元に笑みを描く。
その後、目の前に強烈な光が放たれ、私の世界は真っ白に染まった。
あれ?ここはどこだろう?
突然視界を覆った光が晴れると、私の目の前に全く違う場所の景色が広がっていた。
え、ええ?どういうことなのかな?かな?
なんだかいつもよりも少し視線が高くなってる?
目の前の景色には見覚えがあるから、ここが雛見沢だとはわかるけど。
突然瞬間移動してしまったかのように変わった景色に頭が混乱する。
り、梨花ちゃん!これはどういうことなのかな!?かな!?
混乱したまま事情を知っていそうな梨花ちゃんへ問いかけようとするが、その言葉が口から出ない。
そもそも話すどころか身体がまったく言うことを聞いてくれない。
心の中で思うことが出来るだけで手も足も目線すらも自由に動かすことが出来なくなっていた。
な、なんなのこれ・・・・怖い!怖い!!助けてお兄ちゃん!!!
理解不能な状況に私の頭が理解を超えて泣き叫ぶ。
しかし心の中でいくら泣き叫ぼうと私の身体は反応を示すことはなかった。
そんな混乱を極める最中、現実?世界から男の声が聞こえてくる。
「おーいレナ!悪い遅れちまった!!」
聞き覚えのないその声に私の身体が勝手に動き出す。
な、なんで!?私の身体が勝手に!!?
必死に止めようとするけど身体は言うことを聞かずに声のほうへと振り返った。
「圭一君!おはよう!!慌てて来たのかな?かな?」
私の口から知らない人の声が漏れる。
え・・・・?
いつも聞いている自分の声が聞こえるものと思っていた私は思考が真っ白になる。
声は私の声と似てはいるけど、私がいつも話している声ではないことがわかる。
驚愕で固まる私を置き去りにして私の身体は再び勝手に動き始める。
そして目の映る男の人と話始めた。
場所は私の知ってる雛見沢。
でも私はこの男の人を見たことがない。
私達よりも年上の男の人が雛見沢にいたら忘れたりしないと思う。
それに・・・・この身体は本当に私のなのだろうか?
いつもよりも高い目線。
いつもと違う声。
勝手に動き出す身体。
そしてこの男の子がさっきから言っている名前。
今も彼は私?に笑いかけながらその名前を口にする。
「レナ」
レナ、そう呼びながら彼は私に話しける。
礼奈とレナ。
似てるけど違う、私は竜宮礼奈なんだから。
ということはやっぱり私とは違う人?
もしかしてこれは夢で、私は別の誰かになってるってことなのかな?
そう考えれば今の状況にも納得がいく。
でも、私はさっきまでみぃちゃん達に会いに行く途中で、そこで梨花ちゃんと会って。もしかしてそれも夢だったのかな?
考えれば考えるほど混乱してしまいそうになる私を置き去りに私?と彼は見慣れた村の道をどんどん歩いていく。
そしてしばらく進んだ先で別の女の子がやってきた。
「おはよーお二人さん!おやおや圭ちゃんは何年ぶりだっけ?」
「2日ぶりだよ!親戚の葬式に行ってただけなんだからな!」
新たなやってきた女の子は仲良さそう話しながら私たちのところまでやってくる。
わぁ!この女の子、みぃちゃんにそっくりだよ!!
近づいてきた女の子を見た瞬間、私はすぐに親友のみぃちゃんの姿が目の前の女の子と重なる。
みぃちゃんが大きくなったらきっとこんな感じになるんだろうな。
そう私が考えていると、圭一君と私?に呼ばれていた男の子がみぃちゃんそっくりの女の子の名前を口にする。
「魅音!いつも俺をからかいやがって、少しレナを見習ってお淑やかになりやがれ!!」
「あはは!私がお淑やかになれるはずがないじゃん!」
彼女は彼の言葉に笑いながらそう答える。
その後も三人は楽しそうに笑顔を浮かべながら道を歩き続ける。
え?魅音?
彼は確かに彼女ことをそう言った。
そして私?の口からも私が呼んでいるのと同じように彼女のことをみぃちゃんと呼んでいる。
え、ええ!?やっぱりこの女の子はみぃちゃんなの!?
うわぁ、みぃちゃんすごく可愛くなってるよ!!
目の前の女の子がみぃちゃんだと気付いた私は興奮しながら改めて女の子を見つめる。
もしかしてこの夢はみんなが大きくなった将来の出来事を私が想像してるのかな?かな?
身体は自由に動かせないけど、そう考えればワクワクしてくる。
でも、もしそうなら目の前の男の子と自分自身は一体誰なんだろう?
夢だからしょうがないけど、自分の夢ながら意味がわからないよ。
私は彼らの話を聞きながらそんなことを考えていると、視界に私達が通っている学校が現れる。
彼女達は手慣れた様子で学校の中へと入って廊下を進んでいく。
そして扉を開ける手前にみんなの手がピタリと止まる。
視界に映るドアノブには画鋲がテープで貼られているのが見えた。
あはは、これは沙都子ちゃんのトラップかな。
夢の中でもいつも通りの沙都子ちゃんに心の中で苦笑いを浮かべる。
私の横の男の子もトラップに気付いたみたいで笑いながら扉を開けて進む。
そして見事に沙都子ちゃんの仕掛けたトラップに引っかかってしまった。
うわぁ、墨汁はちょっと嫌だなぁ。
お気に入りの服を着ている時にくらってしまったら泣いちゃうかもしれない。
沙都子ちゃんの仕掛けたトラップを見て内心で冷や汗を流す。
視界に映る教室には見覚えのある少年少女がいて、その中には梨花ちゃんと沙都子ちゃんの姿があった。
梨花ちゃんも沙都子ちゃんも少しだけ大きくなってる!
興奮のままに2人へ抱き着きに行こうとするけれど身体は動いてはくれない。
むぅ、この夢はすごく不便なんだよ!!
目の前で繰り広げられるかぁいい光景に飛びつきたいのに身体が動かない。
こんなの生殺しだよ!
私が悔しさのあまり心の中で叫んでいると、私の願いが通じたのか身体が動き出して梨花ちゃんと沙都子ちゃんに飛びつく。
そして二人を抱えてお持ち帰りしようと教室内を暴れまわり始めた。
このレナって女の子、私とすごく話が合いそうなんだよ!
もし私が自由に動くことが出来たらとる行動を全く同じ動きをしている。
一体このレナと呼ばれている女の子はどんな姿をしてるのかな?かな?
今の私はこの子の中に意識だけが入っているみたいな状態なのかもしれない。
私は実際に自分で見ているように周りの景色を見ているけど、見るだけで動かすことは出来ない。
そして鞄を持っている重みや音や匂い、外の暑さも伝わってくる。
うーん例えば、私が幽霊でこの子に取り憑いているみたいな感じなのかな?
以前にお兄ちゃんと一緒に見たホラー番組で似たようなことがあったのを思い出す。
そう考えたら今の状況って夢なんだけど結構怖いかも・・・・。
・・・・あれ?夢って匂いとか重さって感じるんだっけ?