レナの兄貴に転生しました【完結】   作:でってゆー

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修羅場

場所は園崎家の宴会場。

かなりの大人数が入ることができる広い宴会場だが、現在その部屋は席が埋まってなお収まらないほどの大勢の人たちがいた。

 

中にいる全員の前に豪華な食事と酒が用意されており、全員が酒で顔を赤くさせながら楽しそうに騒いでいる。

これまでの苦労を思えば当然だろう。

みんな嬉しいのだ。

今日で完全に雛見沢でのダム戦争が終わりを告げたのだから。

 

ダム戦争が終わって半年以上が経った今日。

園崎家当主である園崎お魎の名の下にダム反対運動のために結成された鬼ヶ淵死守同盟の解散が宣言された。

今現在、村の大勢の人が園崎家で行われているこのどんちゃん騒ぎに参加している。

 

酒飲みなおっさん達は当然として、お酒を余り飲んでいない女性や子供も楽しそうに近くの席の人達と話していた。

 

悟史と沙都子は公由さんの近くに座って周りの人達と楽しそうに話している。

礼奈も魅音も詩音も梨花ちゃんもそれぞれの席で目の前の食事に頬を緩めていた。

 

俺もさっきまでみんなと楽しく話していたのだが、今はとても楽しめそうにない。

なぜなら

 

「灯火、どうしたんだい?酒が止まってるじゃないかい」

 

突如現れて俺を自分席へと連れ去った魅音達の母である茜さんが笑いながら俺のコップに零れる寸前までお酒を注いでくれる。

ちなみにこれで7杯目なんですけど。

しかも茜さんが好きな度数が高めのやつだ。

 

「灯火、この前は親族会議ではカッコよかったよ。私も痺れちまった」

 

「ど、どうも。でもあの時は俺もキレてて自分でも何を言ってるのかよくわからなくて」

 

「ふふふ、あの時のあんたはまさに鬼だったよ。魅音でもあんなことは出来ない、あそこにいた連中みんな腰抜かしてたよ」

 

茜さんは妖艶に笑いながらこちらへと距離を詰めてくる。

すでに相当飲んでいたのか頬は赤い。

茜さんは至近距離まで近づいた後に俺の耳に息を吹きかけるように呟く。

 

「例の話は考えてくれたかい?」

 

「れ、例の話とは?」

 

至近距離で感じる茜さんの色気に必死に目を逸らしながらとぼける。

そんな俺に茜さんはクスクスと笑いながら再度口を開く。

 

「魅音との結婚の話だよ。魅音はいいよ、素直だし尽くすタイプさね。身体ももう少しで出来上がるだろう。その時はその身体をあんたの好きなように」

 

やめて!妹でそんなこと妄想させようとしないで!!

確かに最近魅音も詩音も原作並みに成長してきて胸とか大変けしからんことになってるけども!!

それでもあいつらに兄貴と言っている以上、邪な目で見て幻滅されたくないんだ!!

 

俺が茜さんの誘惑から必死に抗っていると、隣でずっと沈黙を守っていたあの人がついに口を開く。

 

「園崎さん!小学生に何を言ってるんですか!灯火ちゃんの教育に悪いから今すぐやめてください!!」

 

黙って成り行きを見守ってくれていた梨花ちゃんのお母さんがついに茜さんにくってかかる。

その言葉を聞いた茜さんは俺から離れて彼女と向き直る。

 

「灯火はもう立派な男だよ。いちいち細かいことを気にしてるんじゃないよ」

 

「気にします!だいたいなに当たり前のようにお酒を飲ませてるんですか!何回でも言いますけど灯火ちゃんはまだ小学生ですからね!?」

 

「はいはいわかってるよ。この村でお酒を飲んでも警察に捕まらないんだから気にしなくてもいいだろうに」

 

「灯火ちゃんの健康に悪いから言ってるんです!!」

 

梨花ちゃんのお母さんの言葉に茜さんは面倒くさそうに顔を歪める。

よく見れば梨花ちゃんのお母さんの頬も茜さんと同じように赤くなっている。

もしかして梨花ちゃんのお母さんも結構酔ってる?

 

「あーもう!あんたは灯火の母親かい!?部外者のあんたがいちいち口出すんじゃないよ!」

 

梨花ちゃんのお母さんに休むことなく言葉を浴びせられた茜さんがついにキレる。

茜さんの言い分もわからなくはないけど、それはブーメランだよ茜さん。

 

茜さんの言葉を聞いた梨花ちゃんのお母さんは一瞬黙った後、得意げな笑みを浮かべ始める。

 

「部外者ではありません!私は立派な関係者です!!」

 

「ほぉ。じゃあ、あんたと灯火はどういう関係だっていうんだい?」

 

梨花ちゃんのお母さんの言葉を聞いて茜さんが興味深そうに尋ねる。

 

っ!!?やばい!!

 

梨花ちゃんのお母さんが言うとしていることを察する。

しかし俺が止めるよりも早く梨花ちゃんのお母さんが爆弾を投下した。

 

「私の娘の梨花と灯火ちゃんは結婚の約束をしてるの!!だから私は灯火ちゃんの義母!立派な関係者です!!」

 

自信満々に言われた梨花ちゃんのお母さんの言葉に俺は思わず頬を引きつらせる。

入江さん達の雛見沢症候群についての話に無理やり加わるためについた嘘。

あの時は致し方なかったとはいえ、まさかこんなことになるなんて誰が予想するだろうか!?

 

はいわかってるよ!茜さんから魅音との結婚の話が来た時点で気が付かない俺が間抜けだったですよね!

 

「・・・・へぇ、それは初耳さね。灯火、それは本当かい?」

 

「んん?まぁ?どうでしょうねぇ?はっはっは!」

 

顔から大量の汗を流しながらこちらへ目を向ける茜さんから顔を逸らす。

いや、もう雛見沢症候群の話には関われてるから嘘でしたと言ってもいいんだけど、今言ったら梨花ちゃんのお母さんから何を言われるかわからない。

 

ここは誤魔化して後から梨花ちゃんにやんわりと嘘だと伝えてもらおう。

嘘だと言った場合のことを想像して迷うことなく逃げの一手を打つ。

 

それにこれはこれでいいのかもしれない!

俺が梨花ちゃんと結婚の約束をしていることにすれば魅音の結婚の話はなくなる。

魅音との話がなくなって落ち着いてから梨花ちゃんのお母さんに誤解だったと伝えればいいのだ。

 

これだ!これしかない!今の状況を打破するにはこれしかない!!

俺が考えを終えると同時に黙ってこちらを見ていた茜さんが口を開く。

 

「まぁ灯火が梨花ちゃまとそんな約束をしていようとどうでもいいんだけどね。灯火が誰かのものだっていうんなら奪えばいいだけさね」

 

なんでもないようにそう口にする茜さんに梨花ちゃんのお母さんは絶句する。

 

「これは私の持論だけどね、好きな人はどんな手段でも手に入れるべきだ。奪ってなにが悪いってんだい?奪われるほうが悪いんだよ。奪われたんならその女に魅力がなかったってことだろう」

 

「そ、そんなことしていいわけがないでしょう!それに私の梨花は十分魅力的です!!」

 

「まぁそれは否定しないよ。でも男を誘惑するにはちょっと身体が物足りないんじゃないかい?それに比べてうちの魅音は私に似て良い体をしてるよ。梨花ちゃまも可哀想に、遺伝ってのは自分じゃあどうしようもないからねぇ」

 

茜さんは梨花ちゃんのお母さんの言葉に頷きながら必殺のカウンターをぶち込む。

そして梨花ちゃんのお母さんの胸を憐みの目で見つめた。

 

「・・・・」

 

その視線をうけた梨花ちゃんのお母さんは無言で茜さんと自分の胸を見つめる。

視線を受けた茜さんは笑みを浮かべながら自身の着ている着物をわざと開けさせる。

乱れた着物から露出した肩。

そして服の隙間から覗かせる胸。

 

・・・・ほほう。

突然の茜さんの行動に俺も吸い込まれるように茜さんの胸に視線がいく。

確かに魅音達の母親だけあって立派なものをお持ちである。

 

同じように見ていた梨花ちゃんのお母さんは自身の胸へと視線を下す。

残念ながら、その胸はさすが梨花ちゃんのお母さんだと言わざるを得なかった。

 

「・・・・その喧嘩買ったわ!!」

 

そう言ってテーブルに置かれていた一升瓶を掴む。

そして茜さんと自身のコップ一杯にお酒を注いだ。

 

「ほぉ・・・・この私と飲み比べようってのかい?」

 

「これでも結構飲めるのよ私は。私が勝ったら灯火ちゃんのことは諦めなさい!!」

 

「いいよ、ただしそれはあんたもだよ。私が勝ったら灯火は園崎がもらうからね!!」

 

二人は俺を無視して勢いよくグラスのお酒を飲み干す。

そして休むことなく二杯目へと手を伸ばし始めた。

これはどうすればいいのだろうか?

 

いきなり始まった母親達の飲み比べを遠い目をしながら見つめる。

そんな俺の肩を誰かが叩く。

 

「お兄ちゃん大丈夫?酔ってない?」

 

「・・・・詩音か、ありがとう大丈夫だ」

 

心配そうに表情で水を渡してくれる詩音に礼を言いながら水を受け取る。

そして俺の横で母親達の飲み比べを眺め始めた。

 

「すごいことになってるね。何があったの?」

 

「・・・・ただ酔っ払ってるだけだよ」

 

俺の結婚の問題で揉めているとはとても言えない。

俺の言葉を聞いた詩音はそこまで興味がなかったのか適当な相槌を返す。

 

「・・・・ねぇ、もう少し静かなところ行こうよ。私けっこう酔っちゃったみたいで外の空気浴びたいの」

 

「わかった。俺も気分転換したいしちょうどよかった」

 

詩音の提案に従って席を立つ。

戻って来たらこの喧嘩が終わっていることを願うばかりだ。

 

「ふー外の空気が気持ち良いね!」

 

「そうだな。ずっと大人数の場にいたら息が詰まる」

 

宴会場を抜けてそのまま屋敷内の庭へと出る。

宴会場の熱気とは打って変わって外は冷たい空気と夜ならではの静寂がそこにはあった。

詩音は夜風に気持ちよさそうに目を細めた後に俺へと向き直る。

 

「実は私、さっきの話聞いちゃってたんだ」

 

「うげまじか!?あー詩音あれらは色々な勘違いとかあってだな」

 

詩音の言葉を聞いて慌てて弁明の言葉を考える。

慌てる俺を詩音はじっと見つめている。

 

「・・・・お兄ちゃんは梨花ちゃんやおねぇのことをどう思ってるの?」

 

「そりゃあ可愛い妹みたいに思ってるよ。梨花ちゃんには前にそれ言ったら怒られたけど」

 

今までずっとそういう風に思ってきたんだ、今更それ以外に思い直すことは難しい。

詩音は俺の答えを聞いて俺への距離を詰める。

 

「じゃあその妹と結婚したい?お兄ちゃんはおねぇとなら結婚してもいいって思ってるの?」

 

「え、うーん結婚云々は正直まだよくわからないな。少なくとも魅音だから結婚するとかしないっていう話じゃない。俺は俺が好きになった人と結婚したい」

 

「・・・・そうなんだ。ねぇお兄ちゃん」

 

俺の言葉を聞いた詩音は近かった俺と距離をさらに詰める。

すでに十分すぎるほど近かったというのに、もはや詩音は俺に寄りかかるくらいまでの距離にいる。

 

「私じゃダメかな?私じゃお兄ちゃんのお嫁さんになれないかな」

 

「・・・・いきなりどうした」

 

当然の詩音の言葉に困惑する。

詩音はそんな俺にお構いなしに言葉を続ける。

 

「私はお兄ちゃんのことが好きだよ。お兄ちゃんとしてではなく一人の男の子として竜宮灯火が好き。だから私はお兄ちゃんと結婚したい。あなたと幸せになりたいの」

 

「・・・・」

 

「お兄ちゃんは私のことをおねぇと同じように妹としか見ていないのかもしれない。でも教えてくれたらお兄ちゃんの好みの女の子にちゃんとなるから。お兄ちゃんが望むことはなんでもする。ううん、したいの!」

 

詩音は黙り込む俺へ抱き着くように身体を重ねる。

詩音はハイライトを消した瞳でじっと俺を見つけ続ける。

 

「ねぇお兄ちゃん。今から私の部屋行こ?今日は二人でもっと仲良くなりたいの」

 

詩音は俺に抱き着きながら耳に息を吹きかけるようにそう呟く。

男を誘惑するかのような、いや実際にしてるんだろうな。

なんていうかやっぱり詩音は茜さんと似てると改めて思う、

俺は離れようと詩音の肩に手を置いた時、背中から急激な寒気を感じた。

 

「・・・・なにやってんのよ詩音」

 

少女が発したとは思えないほどの冷たく、しかし確実に怒気を含んだ声。

同じ声の詩音がここにいる以上、この声は魅音が出したものだ。

 

「・・・・なに?いいところなんだから邪魔しないでよ」

 

「うるさい!!お兄ちゃんから離れろ!!」

 

後ろから魅音の声が聞こえたと思えば強引に俺と詩音が離される。

見れば魅音が真っ赤な顔で俺と詩音との間に割り込んできていた。

 

「いつの間にか姿が見えないと思って探してみれば、お兄ちゃんに何する気だったのさ!」

 

「別に?ちょっとスキンシップしてただけ。だいたい私がお兄ちゃんに何をしてたとしてもおねぇには関係ない」

 

「あるもん!!お兄ちゃんは私と結婚するんだから勝手に詩音が変なことしないで!!」

 

詩音を突き飛ばすように離した魅音が先ほどの詩音のように俺へと抱き着く。

それを見た詩音は目を細めて歯を食いしばるのが見えた。

 

「お前ら一旦落ち着け!!俺達は気分転換に外の空気を吸ってただけだ。それに魅音、悪いが俺は今のところお前と結婚するつもりはない」

 

「・・・・え?」

 

俺がそういうと魅音は大きく目を見開いたまま固まる。

それを見た俺は自分の失言に気付く。

 

しまった、言い方が悪かった。誰とも結婚するつもりがないと言うべきだった。

 

「すまん、今のは言い間違「なんで!?なんでなんで!!?お兄ちゃんは私との結婚が嫌なの!?」

 

俺が訂正するよりも早く魅音が口を開く。

目からは大粒の涙が零れ、必死な様子で俺へ縋りつく。

それを見て強烈な罪悪感が胸を襲う。

 

「私じゃダメなの!?じゃあ詩音ならいいの!!?なんで!?私が女の子っぽくないから!?」

 

「お、落ち着け魅音!悪かった!さっきの言い間違えただけだ!だから一旦落ち着け!」

 

「・・・・そうなの?」

 

必死に俺が言葉を伝えると魅音はなんとか落ち着きを取り戻す。

それを見た俺が胸を撫で下ろしながら言葉を訂正するために口を開く。

 

「そうなのですよ。灯火の言い方が悪いのです。みぃと結婚するつもりがないではなく、誰とも結婚するつもりがないが正しいのですよ」

 

「おわっ!!?梨花ちゃんいつの間にいたんだ!!」

 

俺の言葉を取るようにいつの間に近くにいた梨花ちゃんの笑顔で説明する。

まぁ、言いたいことが合ってるから別にいいのだが。

 

「そういうわけだ、言い方が悪かった。本当にごめんな」

 

「う、ううん!私も勘違いしちゃってごめん!」

 

梨花ちゃんの言葉を聞いた魅音が涙を拭きながら俺を頭を下げる。

それをニコニコと見ていた梨花ちゃんは再び口を開く。

 

「だって灯火は僕のお婿さんなのですよ!だから誰とも結婚出来ないのですよ・・・・・僕以外とは。にぱーー☆」

 

「梨花ちゃん!!?」

 

満面の笑みで放たれた爆弾発言に思わず叫ぶ。

そしてそのまま何も言えず固まる俺へ梨花ちゃんは笑顔で追撃を加える。

 

「すでに僕の両親と話はついてるのですよ。僕と灯火はずっと前からそういう関係なのです!ですよね?灯火?」

 

「まてまてまて!もしかして梨花ちゃん酔ってるのか!?一旦水を飲んで落ち着くんだ!」

 

「僕は酔っていないのですよ?今日はお酒を一滴も飲んでないのです」

 

俺の言葉を梨花ちゃんはすぐに否定する。

ここは梨花ちゃんにさっきのは冗談だって言ってもらわないとやばいんだよ!

魅音も詩音もどう考えても今やばい精神状態なのは明らか。

そんな状況であんなことを言うなんて、火に油を注ぐようなものだ。

 

「いやいやいや!酔ってるって!だって酒臭いもん!明らかに飲んでる証拠だ!」

 

「酒臭いのは灯火なのです」

 

そんなことはわかってんだよ!

どうした梨花ちゃん!?今まで多くの運命を乗り越えてきた仲だろ俺達は!

だったら俺が今どういう状況なのかわかってくれてもいいだろうに!

 

ていうかよく見たら梨花ちゃんは笑っているけど目は全く笑っていない。

さっきまでの詩音と同じように目の中の光がどこを探しても見当たらない状況だ。

 

「・・・・お兄ちゃん?さっきの梨花ちゃんの話ってどういうこと?」

 

梨花ちゃんの話を聞いた魅音がゆっくりとこちらを覗き込んでくる。

さっきまでのように泣いてはいない。

しかしその代わりに他の二人のように目から光が消え失せている。

 

くそ!理由はわからないが梨花ちゃんは俺を陥れようとしているようだ!

 

ていうかなんでこうなる!?

梨花ちゃんのお婿発言は元を辿れば羽入がやらかしたのが原因だし、魅音の件は茜さんが言ってるだけで俺はまだ了承していない!

 

半分は自業自得だとしてもなんでこんな修羅場になるんだよ!?

 

俺が半分やけになって口を開こうとした時、救いの声が俺の耳に届く。

 

「みんな落ち着いて!多分みんな誤解してるんじゃないかな!かな!」

 

俺へと詰め寄る三人の間に救世主が現れる。

 

「礼奈!どうしてここに!?いやだが助かったぞ!」

 

「えへへ!実は酔っちゃって気分が悪かったからずっと外にいたの!酔ってて話には入れなかったけど内容はバッチリだよ!」

 

「俺的に全然バッチリじゃないけどとりあえずよし!!魅音詩音梨花ちゃん!一旦話し合おう!落ち着いて状況を整理するんだ!」

 

妹に自分の結婚話?を聞かれたのはショックだが、今はそんなことを言ってられない!

礼奈の登場で変わったこの空気!ここで一気にたたみかけるしかない!

 

「まず梨花ちゃんの話は事実なようで事実じゃない!ゆっくり説明するから落ち着いて聞けよ」

 

「はう?何言ってるのお兄ちゃん?」

 

「え?なにってみんなの誤解を解くために説明をしようとしてるんだが?」

 

「それは後だよ。一番最初に大事なことを言わないとダメじゃないかな?かな?」

 

「・・・・一番大事なこと?」

 

なんとなく嫌な予感を覚えながら礼奈に聞き返す。

俺の言葉を礼奈は満面の笑みで言い放った。

 

「みんなには悪いけどお兄ちゃんは礼奈と結婚するんだよ。小さい時にお兄ちゃんが言ってくれたもんね。礼奈をお嫁さんにしてずっと一緒にいてくれるって」

 

「「「・・・・」」」

 

礼奈の発言に三人が示し合わせたかのように無言で目を細める。

 

「そうだよね?お兄ちゃん?」

 

「ええ!?いやまぁ確かに言ったが。でもあれは子供時代のお約束的なあれでだな」

 

「・・・・お兄ちゃん?」

 

「ひぃ!!?」

 

誰だ!礼奈を救世主って言ったやつは!?

修羅場が酷くなっただけじゃねぇか!!

 

しかも礼奈に至っては確かに自分で言ったけども!それでもここでそれを持ち出すの違うんじゃないかな!?かな!?

 

「お兄ちゃんは礼奈に言ったよね?約束を破るの?私との約束を破ってみぃちゃんや梨花ちゃんと結婚するの?」

 

「うっ・・・・・いや、そういうわけでは」

 

おかしい!俺の想像では礼奈は魅音みたいに泣くとばかり思ってたのに!

だから礼奈にはこの話は聞かれたくないなと思ってたのに!

 

実際はどうだ!泣いてない!その代わりまたまた目から光が消えちゃったよ!

漏れなく全員の目からハイライトが消えている。最近流行ってるのかな?

 

 

ど、どうすればいいんだ!?

何て言えばこの状況を切り抜けられる!!

 

俺は全員と結婚するつもりないと言って今のこいつらは納得するのか!?

全然納得する気がしないんだが!?

 

いや、この場をそれで切り抜けたとしても俺がいなくなった後に何かやらかしそうで非常に怖い。

 

梨花ちゃんはよくわからんが礼奈と魅音と詩音はブラコンが悪化して今みたいな状況になってるに違いない!好かれるのは兄としては嬉しいが修羅場に発展させろとは言ってない!

 

兄と彼氏は別物だってことをちゃんと説明すれば何とかなるか?

いやでも詩音は一人の男として好きって言ってたしこれじゃあ納得しないか。

 

くそ!考えれば考えるほどドツボにはまりそうだ!

 

「灯火!?大丈夫なのですか!しっかりするのですよ!」

 

っ!?羽入か!!?

俺が内心で頭を抱えていると俺すぐ横に羽入の姿が現れる。

羽入は内緒話をするように俺の耳に小声で話しかけてくる。

 

「状況は把握しています!僕に良い案があるのですよ!」

 

(本当か!?この状況を切り抜けられる案があるのか羽入!?)

 

みんなバレないように小声で羽入とやりとりをする。

俺の言葉に羽入は自信満々に胸を張った。

 

「任せてくださいなのです!今から僕の言うことを口に出して復唱してください」

 

(わかった!お前を信じるぞ羽入!)

 

羽入の言葉を信じてみんなへと向き直る。

どうせ今より状況が悪くなったりはしないんだ!だったら羽入の案に従うのは全然ありだ!

 

(みんなの気持ちはわかった。こんな可愛い女の子達に好かれて俺も嬉しいよ)

「みんなの気持ちはわかった。こんな可愛い女の子達に好かれて俺も嬉しいよ」

 

(でもごめんな)

「でもごめんな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(俺にはもうお前ら以外に好きな人がいるんだ。だからお前らとは結婚出来ない。あきらめてくれ)

「俺にはもうお前ら以外に好きな人がいるんだ。だからお前らとは結婚出来ない。あきらめてくれ。ぶは!!?」

 

 

 




羽入
「またまた言ってやったのですよ!」(`・∀・´)エッヘン!!

礼魅詩梨「・・・・」


灯火 (´゚д゚`)

ちなみにまだ詩音以外はヤンデレを発症してないです。
ただ目のハイライトが消えただけです。

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