「「「「・・・・」」」」
俺の言った言葉で全員が無言のままこちらをじっと見つめる。
ただでさえおっかない空気が今の言葉でちびりそうな程のやばい空気へと変貌した。
今より状況が悪くなることがない?
バカ野郎!余裕でさらに悪化したわ!!
(羽入さん!?どうするんですかこの空気!?)
「大丈夫なのです!僕に任せてください!」
震えながら羽入へと目線を向ければ羽入は自信満々に胸を張って応える。
(いや任せてくださいって!俺が好きな人って誰だよ!?適当に言ったら最悪人死にが出るぞ!!?)
今の彼女達からは周りの空間が歪んでるんじゃないかと錯覚するほどの強烈なプレッシャーが放たれている。
あれを見れば何が起きても不思議ではない。
「安心してくださいなのです!誰もその女の子に手出しをすることは出来ません!!」
(なんだって!?それは一体誰なんだ羽入!?)
まさかあれか?架空の女性を言うとかか?
確かにそれなら手出しは出来ないが、この狭い雛見沢で架空の人物をでっちあげるのは中々に難しいぞ。
「むー本当にわからないのですか?僕としては灯火自身の口から言ってほしいのですよ」
俺の口から?
羽入は俺の言葉を聞いて不満そうに頬を膨らませている。
いたか?俺が好きで今の状況を切り抜けられるような都合の良い女が。
「むー!むー!ほらよく考えてください!灯火は子供の頃からその女の子に熱烈なアプローチをしていたのですよ!」
俺が幼少期から熱烈なアプローチを?
羽入の言葉を聞いて幼少期からの記憶を順番に遡っていく。
「ほ、ほら!子供の頃の灯火は毎日その子にラ、ラブレターを渡していたのですよ!!それに一度灯火の口からその子のことを狙っているって言っているのです!!」
(っ!!?なるほどそういうことか!!)
羽入の言葉に該当する女の子が思い浮かぶ。
なるほど、確かに俺は幼少期から目の前の女の子に熱烈なアプローチをしていたな!
目の前の女の子!つまり羽入!!
確かに彼女なら俺が言っても彼女達は危害を加えることは出来ない。
それに架空の人物でもない!最悪の場合は羽入にみんなの前に一時的にでも姿を現してもらえばいいのだから!
「「「・・・・・お兄ちゃん?ねぇ?さっきから何黙ってるの?ねぇ、お兄ちゃんの好きな人って誰??」」」
っ!!?
瞳から光を消した礼奈と魅音と詩音がこちらへとゆっくり近づいてくる。
なんで綺麗に言葉が揃うんだよ!?本当に怖いからやめてくれ!!
ギリギリな状況だがここは羽入の名前を出して切り抜ける。
(すまねぇ羽入!お前の名前を使わせてもらうぜ!!)
「ノープログレムなのです!!えへへ!あうあうあう!!」
頬を赤らめながら頷く羽入に礼を言いながら彼女の名前を言うために口を開く。
しかし、俺が彼女の名前を言うよりも早く別の誰かが口を開いた。
「あう?な、なんだか急に口に痛みが、か、から!!?か、かあうあうああああうあうあう◇☆▽×〇§!!?」
「っ!!??」
突如として叫び始めた羽入を見て言いかけた言葉が止まる。
なんだ!?いきなり羽入がおかしくなりやがった!!?
口を両手で抑えながら狂ったかのように空中を跳ね回り始める羽入。
その姿は海面から地面に放り出されて暴れる魚を思い起こさせた。
今一瞬だけど羽入の口から辛いという言葉が聞こえた。
ってことはまさか!!?
慌てて羽入がおかしくなった元凶へと目を向ける。
目線の先には空中をのたうち回る羽入の姿を冷めた目で見つめる梨花ちゃんの姿だ。
視線を少し下げて梨花ちゃんの手へと向ける。
・・・・梨花ちゃんの手には案の定真っ赤な色をしたトウガラシが握られていた。
いやなんでだ!?
今日の宴会でトウガラシなんて絶対に出てなかったぞ!?
まさか梨花ちゃん!お前はいつもトウガラシを常備してるとでも言うのか!?
くそ!どうやら梨花ちゃんは前回の入江さん達との話し合いの時に羽入がやらかしたことを未だに根に持っていたようだ!
だからと言ってトウガラシを携帯してるのはどうかしてやがる!
「「「・・・・お兄ちゃん?」」」
「ヒィ!!?」
少し意識が梨花ちゃんと羽入に逸れている間に礼奈たちがもう目の鼻の先まで近づいて来ていた。
光を失った六つの目が俺を至近距離で見上げてくる。
くそ!梨花ちゃんのこれは警告だ!
俺が羽入の名前をこの場で口にすれば梨花ちゃんはもっとトウガラシを食べて羽入を地獄へと叩き落すことだろう。
なんでだ梨花ちゃん!?羽入の名前を使われるのがそんな嫌なのか!?
今すぐ彼女にそう問い詰めたいが今の状況では難しい。
どうする!?
無敵に思われた羽入が梨花ちゃんによって完封されてしまった以上、俺は早急に別の女の子の名前を上げなければならない。
それもこの場にいるみんなが納得し、諦めるしかないと思えるほどの女の子だ。
いねぇよ!そんな女子!
今この場にいる全員が下手な男よりよっぽど強いからな!?
しかも全員もれなく超が付くほどの美人。
今だって密かに学校の低学年男子諸君は沙都子を含めてこいつらの内の誰かに萌えている。
っ!?そうだ沙都子はどうだ!?
沙都子ならこの場にいる女子に負けず劣らずの美人さんだ。
みんなと仲の良い沙都子なら俺が惚れていると言っても何もされることはないかもしれない。
それに沙都子なら俺が仮に告白したとしても『気持ち悪いですわ!!』とか言いながら振るに違いない!
これだ!これしかない!!
今は沙都子の名前を言って誤魔化してみんなが俺への熱が冷めて別の好きな子が出たタイミングで俺も沙都子に振られて全部スッキリさせてしまえばいい!
沙都子!てめぇには悪いが利用させてもらうぜ!!
「俺の好きな人はだな!そう!!さ」
「・・・・そういえばこの前悟史君が沙都子ちゃんもお兄ちゃんのことを好きって教えてくれたんだよね。それなら沙都子ちゃんもこの場に呼んだほうがいいかな?かな?」
「悟史だ!!!」
礼奈の言葉を聞いて強引に名前を変える。
おいふざけんな悟史!!お前なに礼奈にとんでもないこと吹き込んでんだ!
これが終わったら覚えとけよ!
お前が礼奈に惚れてるって俺は気づいてるんだからな!!
どうせ礼奈のことで何か企んでるんだろうが、そう簡単に俺の妹と不純異性交遊が出来ると思うなよ!!
「「「・・・・さ、悟史君!?」」」
だが、今の状況に利用したことは本当にすまないと思ってる!
この話に協力するなら許してやらないこともない!
これは怪我の功名ってやつか!みんな予想外の名前が出て困惑して一時的に狂気が薄まっている気がする。
ここはこのまま混乱させて落ち着かせ、そこからゆっくりと誤解を解いていく!
「・・・・そうだ。みんなには恥ずかしいから黙ってたけど、実はずっと前から悟史のことが好きだったんだ」
うぐ!自分で言ってて気持ち悪くなってきた!
だがここはやり通すしかない!
「さ、悟史君って!えっと男の子だよ!お兄ちゃんも男の子で一緒なんだよ!?」
「恋愛において性別の壁なんて些細なものさ」
真っ赤な顔をした礼奈に悟ったような笑みを浮かべながら語る。
「ダメ!絶対ダメ!!お兄ちゃんが他の女ならともかく男と付き合いなんて絶対に認めないからね!」
「魅音、悪いが俺の意志は固い。たとえ茨の道だろうと俺と悟史は歩き続ける」
魅音への答えともにさらっと悟史も巻き込む。
悟史!!礼奈との交際を認めてほしかったら後で話を合わせやがれ!!
「・・・・どうやったら男になれるんだろう。急いで調べないと」
「詩音早まるな。俺は妹が弟になるなんて絶対に嫌だ」
虚ろな目でそう呟いた詩音を慌てて止める。
これはいい展開だ!
普段ならこんな嘘簡単にダウトされてしまうだろうが、今の彼女達はとても冷静な状態ではない。
だから深く考えずに俺の話を信じてしまう。
いける!あとはこの場を解散した後に悟史を拉致って話を合わせさせれば完璧だ!!
「みぃ、灯火が悟史のことを好きだったなんてびっくりなのですよ」
俺が心の中で勝利を確信したところで梨花ちゃんが笑顔を浮かべながら話しかけてくる。
「ああ、梨花ちゃんにも黙っててごめんな。恥ずかしくて言えなかったんだ」
「気にしなくていいのですよ。誰だって言いたくないことはあるのです」
「そう言ってくれると助かるよ」
なんだ?すごい違和感を感じるぞ?
梨花ちゃんと笑顔で話しながら内心で眉を顰める。
今の梨花ちゃんなら俺への妨害に動くと思ったんだが何もしてこないのか?
「みぃ、じゃあ灯火は女の子じゃなくて男の子が好きということなのですね」
「うっ!?まぁそういうことになるな」
言いたくないからぼかして言ってたのにはっきりと言ってくるな。
だが悟史を好きと言ってしまった以上、ここは腹を括るしかない。
仮にじゃあ今まで女ん子に興味があったのはなんだったの!?と言われてもその後に悟史に惚れて女に興味がなくなったと言えばいい。
好きな人の存在がその人の好みを変える。よくある話だ。
「なるほどなのです!よくわかったのですよ!!」
「そうか!よくわかってくれたか!」
「はいなのです!ところでさっき茜と話してる時に着物を脱いだ茜の身体を見て鼻を伸ばしていましたが、あれはなんだったのですか?」
「「「・・・・はぁ?」」」
ぶっこまれたー!!?
まじかよ!!?あの現場を梨花ちゃんに見られてたのか!?
え!?じゃあ梨花ちゃんが怒ってる理由って胸の話でバカにされてたからなの!?
さ、最悪だ!最悪のタイミングを梨花ちゃんに見られてしまっていた!
「ちょっとお兄ちゃんどういうこと!?お母さんをエッチな目で見てたってホントなの!?」
「さっき悟史君に惚れてるから女の子に興味ないって言ってたよね!!」
梨花ちゃんの話を聞いた魅音と詩音が当然俺へと迫ってくる。
まぁ自分の母親をエロい目で見てたとか普通に幻滅だよね。
でも一人の男として言うが!目の前であんな美人が着物を乱して肌を見せたらそれは見ちゃうでしょ!あんなの見ない人はいないって!!
「じゅ、十分前に悟史惚れたんだ。だから茜さんの時はまだ女に興味があってだな」
「「「嘘だ!!!」」」
「はい嘘です!すいませんでした!!」
三人同時に叫ばれて高速で頭を下げる。
もうこれ終わっただろ。この後は妹たちに嘘つき変態クソ野郎って罵られながらボコられて地面に倒れて夜を明かす流れだろ。
「・・・・お兄ちゃん、誤魔化さずに正直に答えて。私はもうお兄ちゃんの好きな人に見当がついてるんだから」
「私も!」
「礼奈も!!」
「っ!!?なんだって!?」
俺がみんなならボコられることを想像して歯を食いしばっている間に予想外の発言が詩音達から放たれる。
俺が好きな人に見当がついてる?いや誰だよ!?今のところ俺に好きな人なんていないぞ!
「お兄ちゃんの好きな人!それは」
「「「鷹野さん!!」」」
「いやないから」
三人が口を揃えて言った名前を即座に否定する。
よりにもよってなんで鷹野さんなんだよ!
全ての元凶と言っても過言では女性だぞあの人は!?
「礼奈は知ってるんだよ!お兄ちゃんが鷹野さんに会うたびにエッチな目で見てることを!」
「そうそう!前の綿流しの日に酔った鷹野さんを見て鼻を伸ばしてたのをばっちり見てるんだからね!」
「お母さんといい鷹野さんといい、お兄ちゃんの好みって年上でグラマーな人だよね!だから私のことを妹としか見てくれないんでしょ!!」
「いや確かに鷹野さんのことを邪な目で見てたことは何回もあるけど、それとこれとは話が別だ!!」
俺の言葉の後に証拠だと言わんばかりに俺が今まで鷹野さんを邪な目で見てた現場を言われていく。
やめて!こっそり見てたつもりが妹たちに完全にバレてたとか死にたくなるからやめて!!
ていうかこの調子じゃあ鷹野さん本人にも余裕でバレてんじゃん!
前回シリアスな感じで別れたのに台無しじゃねぇか!!
「むー!鷹野さんじゃないならお兄ちゃんの好きな人は一体誰なのかな!かな!?」
「「「・・・・」」」
礼奈が言った言葉に魅音も詩音も梨花ちゃんも静かになる。
四人から視線を受けた俺は頭をかきながら自身の本音を話すことを決めた。
「正直言うと好きな人はいない。そしてお前ら全員のことは妹ととしか見れてない。だから結婚云々の話をされても返事なんて出来ない。これから先お前らの内の誰かを好きになるかもしれないし、ならないかもしれない」
「「「「・・・・」」」」
俺の話を全員が黙って聞いてくれる。
それを見た俺は続けて口を開く。
「みんなももう一度よく考えてくれ。その気持ちは本当なのか。兄を思う気持ちと勘違いしていないか。これから先いろんな男と出会って考えてみてくれ。まだ俺達は子供だ。結婚とかの話は一旦全部後回しにしても遅くはないさ」
雛見沢は狭い。
だからこそ好きになる人は限られている。
だが興宮を含めた外の世界にはいろんな人がいる。
悟史もこれからどんどん格好よくなるだろうし。
近い将来、この村に圭一だってやってくる。
恋愛なんてその頃から初めても遅くない。
「灯火?それにみんなもそんなところで何やってるのさ」
「ああ!私達を除け者にしてお話をしてましたわね!皆さんだけズルいですわ!私達も仲間に入れて下さいまし!」
俺が話し終えたところでタイミングよく悟史と沙都子が現れる。
きっといつまでも戻らない俺達を心配して探してに来てくれたんだろう。
「悪い悟史に沙都子。今戻るから」
探しに来てくれた2人に謝りながら庭を出て2人のところへと移動する。
庭から出る際に羽入を探してみれば、庭の周りをゾンビのような呻き声を上げながら歩いていた。
残念ながら羽入には自力で回復してもらうとしよう。
「魅音達のお母さんと梨花ちゃんのお母さんが酔って倒れて大変なんだ。灯火も介抱を手伝ってね」
「あの人ら倒れるまで飲んだのか。わかった手伝うよ」
ぶっ倒れた2人を想像して頬を引きつらせる。
俺と悟史が宴会場に戻る中、沙都子が未だに庭にいるみんなへと声をかける。
「あら?皆さんはまだ戻られないんですの?」
「私らはもう少し夜風に当たってからいくよ。沙都子は先に戻ってて」
「はぁ、わかりましたわ。なるべく早く戻ってきてくださいまし」
魅音の言葉に沙都子は頷いて俺達へと追いつく。
魅音達に目を向ければ全員俯いたまま黙ってしまっている。
・・・・これ以上俺に言えることはないか。
最後の言葉は間違いなく今の俺の本音。
後はみんなそれぞれで落ち着いて気持ちの整理をしてほしい。
「とりあえず悟史。お前あとでお仕置きだから」
「ええ!?なんで!?」
「・・・・お兄ちゃん達は行ったみたいだね。じゃあさっきまでの話を続けようか」
「「「・・・・」」」
おねぇの言葉にお兄ちゃん達がいなくなるまで顔を伏せていたみんなが一斉に顔を上げる。
見れば全員の目には未だに強固な意志が感じ取れる。
つまり全員まだお兄ちゃんのことを諦めていない。
「さっきお兄ちゃんがもう一度自分の気持ちを考えろって言ったけど。ちゃんと考えた?」
おねぇがそれぞれの目を見ながら確認をとっていく。
おねぇの言葉を聞いた全員がゆっくりと頷く。
それを見たおねぇは一度目を閉じてからゆっくりと口を開いた。
「じゃあ聞くよ。お兄ちゃんのお嫁さんになるのを諦めるつもりは?」
「「「ない」」」
「だよね。まぁわかってたけど」
おねぇの質問に全員が即答する。
当たり前だ。たとえお兄ちゃんが私のことを妹としか見ていなくても諦めるつもりなんてない。
兄を思う気持ちと勘違いしていないか?
もちろんそういう意味でも大好きだ。
でもそれ以上に1人の男としてお兄ちゃんのことが大好きなんだ!!
「なら今日からこの場にいる全員が恋のライバルってことだね」
全員の回答を聞いた後におねぇは面白そうに笑みを浮かべる。
「・・・・沙都子ちゃんはどうするのかな?かな?」
「知ったことじゃないよ。恋愛は争奪戦。出遅れた沙都子が悪いんだから」
礼奈の言葉に私は即答する。
これ以上ライバルを増やしてたまるものか。
「私はどんな手段を使ってでもお兄ちゃんを手に入れる!あんた達を蹴落としででも!」
「「「・・・・」」」
私の宣言に全員を黙り込む。
それぐらいの覚悟もないのにお兄ちゃんを横取りしようなんて絶対に許さない。
目を見ればわかる。
こいつらは一見絶対にお兄ちゃんを譲らないという目をしているけど。
心の底では私達の関係が壊れるのを恐れて一歩踏み込めないでいる。
私はそんなことで躊躇わない。
お兄ちゃんを手に入れるためなら友情なんて躊躇いなく捨てられる。
愛情と友情でどちらが大切かなんて言うまでもない。
今だけ見れば有利なのはおねぇと梨花ちゃんだろう。
何しろ親公認の状況なんだから。
実質2人の後ろには園崎家と古手家がいるのと同じだ。
礼奈も礼奈で油断できない。
礼奈とお兄ちゃんは血のつながった兄妹。
普通は結婚なんてありえない。
でも礼奈ならそれを理由にお兄ちゃんとの恋愛を躊躇うなんてことはないだろう。
ならば日常的にお兄ちゃんと一緒にいられる礼奈こそが一番厄介な存在だと思える。
そして一番不利な立場なのは私だ。
園崎家としての立場もない。
女としての魅力には自信はあるけれどそれは他の奴らも同じだ。
そして何より私は中学に進学する時に興宮のお嬢様学校に行かされることになる。
寮住まいの学校に幽閉されてしまえば、もう気軽にお兄ちゃんと会うことは出来ない。
上等だ!運命が牙をむくというのなら私はそれらを全て乗り越えてお兄ちゃんと結ばれてみせる!
勝つのは私だ!
私とみんなとじゃあお兄ちゃんへの思いの強さが違うんだ!!
「じゃあそういうことで。私はお兄ちゃんのところに行くから」
「あ!詩音ズルい!私も行く!!」
「礼奈も!」
話が終わり、ここにいる意味もなくなったので全員でお兄ちゃんのところへと戻る。
庭を出る瞬間、屋敷への廊下へと踏み入れるために立ち止まった時。
ひた・・・・ひた。
っ!?まただ!また足音が聞こえた!?
全員とは明らかに違う足音!
慌てて振り向くがそこにはいきなり振り向いた私を変な目で見つめる梨花ちゃんがいるだけ。
「・・・・食べすぎたかしら?」
「はう?もしかして食べ過ぎてお腹痛いの?大丈夫?」
梨花ちゃんの言葉を聞いて礼奈が心配そうに話しかけている。
私は二人の会話をそっちのけで慌てて廊下へと戻る。
不気味な足音はその後も続いた。
この後ゾンビのように歩いている羽入の足音を聞いて詩音はビビりまくります。
次回は宴会後の梨花の視点から始めると思います。