魔法少女リリカルなのはStrikerS 護るための力を持つ者   作:イツキ

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約半年ぶりの更新となりました。

更新は不定期となりますが完結まで頑張りますのでどうかよろしくお願いします。


第四十一話 崩壊の兆し

スカリエッティのアジト

 

 

「一気に仕掛けます……行けますか?」

 

「勿論。こい、無限の猟犬!」

 

 

シャッハの呼び掛けに応じたヴェロッサが、自らの足元に展開した魔法陣から魔力で構成された数体の猟犬を生み出す。産み出された猟犬はその足を地面に着けたと同時に走りだし、正面にいた二体の人型ガジェットへと飛びかかっていった。

 

猟犬の標的となったガジェットはとっさに迎撃行動を取ろうとするが、それによって発生する一瞬の隙を逃さなかったシャッハに猟犬が届く前に肉薄される。

 

 

「逆巻け、ヴィンデルシャフト!」

 

 

シャッハの声から一拍の内に数回風を切るような音が発せられたと思うと、その次の瞬間にはガジェット二体の胴体は切断されており、彼女が離脱すると同時に爆発した。 更に鈍い金属音が室内に響いたかと思うと、その奥にいたガジェットの一体が先に放たれていた猟犬達に押し倒されており、その猟犬の口には既に噛み千切られたケーブルを見ることができた。

 

 

「一気に行くよ、バルディシュ!」

 

『Sonic Move!』

 

 

そしてフェイトは魔法の発動と同時にガジェットの群れの中を瞬間的に駆け抜け、進路上全てのガジェットをハーケンフォームのバルディシュで切断していった。しかし……

 

 

『Check the reinforcements of gadgets further. I am developing around(更なるガジェットの増援を確認。周囲に展開中)』

 

「くっ……これだと切りがない……」

 

三人がガジェットを倒したらその倒した分だけ部屋の中には新たなガジェットが現れ、奥にいるスカリエッティを護るように防衛ラインを形成していく。今まで追いかけてきた犯罪者が目の前といえる場所にいるのに手を出せない……その事にフェイトはやきもきしスカリエッテイへと視線を向けると、それに対してスカリエッテイはニヤリと笑って見せた。

 

「あと少し、あと少しなのに……」

 

「管理局が誇る執務官でも感情には勝てないようだね……さて、まだまだ貯蓄は残っているが……ん?」

 

「っ?」

 

 

挑発とも取れる言葉を口にしている途中で、突然スカリエッテイが疑問の声を発した後に何かを確認するような仕草を見せる。その後、スカリエッテイは空間モニターを展開してその画面に写し出されたウーノとの通信を始めた。

 

 

「ウーノ。一体何事かな?」

 

「はい、ゆりかごに対して砲撃が行われました。外壁にそこまでダメージはありませんでしたが、ガジェット部隊の損失があります」

 

「なるほど……対応は君に任せる。何かしら進展があればまた連絡を」

「かしこまりました。指示通りに」

 

 

スカリエッテイからの指示を受けたウーノがモニター越しに頭を下げるとモニターが消え、再度スカリエッテイはフェイト達の方へと視線を向けた。傍から見ればそれは目の前にいる敵を脅威とも思ってない故の余裕や挑発行為に近いものと感じるものだった。

 

 

「スカリエッテイ……」

 

「ハラオウン執務官、焦る気持ちは分かりますがここは落ち着いてください。挑発に乗っては危ないですよ」

 

「シャッハのいう通りです……もっとも、今の反応とやり取りからもしかすると既にヤバイかもしれないですけどね……」

 

 

挑発を受けてバルディシュを握る手に更なる力を込めていたフェイトに気がついてシャッハは隣へと立ち、警告の言葉を口にする。また、後方にいた為に全体を見ることが出来ていたヴェロッサは何かに気がついたようでその表情を曇らせる。

 

 

「どういうことですか、アコーズ査察官」

 

「まだ確定ではないですが、おそらく僕達は一杯くわされたようです……シャッハ、それを確認するためにもこの子達を懐に飛び込ませるので道を開けてもらえるかな? あの技なら出来るよね?」

 

「勿論です。あの子にこの魔法の基礎を教えたのは私なんですからね」

 

 

ヴェロッサの問いかけに答えたシャッハがヴィンデルシャフトを構え直すと、カートリッジシステムが稼働して薬莢を排出する。その直後、前面に展開しているガジェット達に対してフェイトにとってはどこかで見覚えのある、円錐の形をした魔力スフィアがまるで集団を取り囲むように多数形成された。

 

 

「貫きます……烈貫疾風っ!」

 

 

詠唱と同時にシャッハが構えていた両手を振り抜くと、それに合わせて展開されていた魔力の杭がガジェット達を次々に撃ち貫いてその機能を停止させる。

 

 

「道は見えた……行け!」

 

 

 更にそれによって生まれた隊列の隙間を、数頭の猟犬が最奥にいるスカリエッティのいるところまで一気に駆け抜けていく。そしてその猟犬達はガジェットの集団を潜り抜けた後にスカリエッティに対して鋭い牙や爪で襲い掛かり……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その全ての攻撃がスカリエッティの身体をすり抜けて空を切った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なっ!? 身体をすり抜けた!?」

 

「やはり……僕達は一杯くわされたようだ。あそこにいるスカリエッティは幻覚か映像。おそらく本物は……」

 

「……あのゆりかごに乗り込んでいる!?」

 

「ご名答。予定ではもう少し後に知られてしまうつもりだったのだが……やはり強い揺れだったとはいえ身体を揺らしてしまったのがいけなかったね」

 

 

映像のスカリエッティがわざとらしくリアクションをしてみせながら淡々と言葉を発していく。その身体はもう欺く必要が無くなった為か時折ノイズを見ることが出来るようになり、またその声は冷静になってよくよく聞いていると通信機越しであることが感じられるものだった。

 

 

「ここまで来ても一人もナンバーズが妨害に現れない訳だ。基地だったとはいえ、護るべき対象がいないのならばここにいる必要が無いからね」

 

「奇襲を仕掛ける為に隠れていると考えていたんですが……見通しが甘かったみたいですね」

 

「そう考えてしまうのも無理は無いさ。実際最初の計画では私はそのアジトに残り、一部の娘(ナンバーズ)達と君達を出迎える予定だったからね。だが彼からとある提案が出されてね、そっちの方が私には魅力的だったからこのような状況になったと言う訳さ……さてと、ネタが割れてしまった以上、ここでのお遊びは終わりだな」

 

「お遊びだなんて、貴方は……っ!?」

 

 

 スカリエッティの発言にフェイトが反射的に足を一歩を踏み出しながら反応した瞬間、突然その部屋全体を照らしていた灯りが赤いものへと変わったかと思うとフェイト、シャッハ、ヴェロッサの三人は揃ってその場へとしゃがみ込む。それと同時にヴェロッサが生み出していた猟犬の姿は消滅してしまい、またしゃがみ込む三人の表情は揃って何かを耐えているかのように見える。

 

 

「きゅ、急に体が重く……」

 

「これは……AMFの濃度が濃くなっているだけじゃない?」

 

「この感覚は……人工重力?」

 

「ご名答。いくら君達がAMF内でも戦闘が行えるように訓練を受けていたとしても、この濃度と併せてこの高重力下では辛いだろうね」

 

 

自分達がおかれている状況に少なからず動揺を見せてしまっている三人の姿にスカリエッティは笑みを見せる。そして映像越しに何かしら操作する仕草が見えたかと思うと、その直後三人を強い揺れが断続的に襲い始めた。

 

 

「この揺れは……まさかっ!?」

 

「お遊びが終わったら遊びに使っていたものは片付ける……君達はここで退場してもらうよ。あと心配は必要ない。君達の友人達もすぐに後を追うことになるだろうからね」

 

「なっ!?」

 

 

スカリエッティの映像が消えると同時に、より一層強い衝撃が地面を揺らす。その揺れはすぐに建築物の強度の限界を超え、物が砕ける音を周囲に響かせながら崩れ落ちた。


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