フォーサイト、魔導国の冒険者になる   作:空想病

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※注意※
ガガーランの過去は、書籍五巻のイビルアイとの会話などを参考にした想像です。二次創作です。


魔導国の酒場にて

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 ヘッケランたちフォーサイトの一行は、黄金の輝き亭ロビーで、外出の支度を整えた蒼の薔薇の五人と合流した。

 

「皆さん、お誘いいただきありがとうございます」

「いえいえ。こちらこそ」

 

 リーダー同士の丁寧なあいさつを終えると、二つの冒険者チームは夜の魔導国の探検に出かける。

 エ・ランテルの街並みは、王国時代の時よりも明るく賑わいすら感じられた。

 魔導王の推し進める都市開発事業により再整備された通りは、以前までなかったはずの魔法の街灯によって明るく照らされているのが印象的だ。見れば、裏路地にもそれなりの数の魔法の明かりが灯っており、人や亜人の往来も多い。

 蒼の薔薇の一行は、蝋燭式ではない街灯……〈永続光〉を放つ街灯の数を軽く数えて目を回しかけた。

 大通りだけで百以上のマジックアイテムが軒を連ね、その明かりの下で夜店を営む人間や亜人の快活な様子は、とてもアンデッドが支配する国家の中だとは思えない。しかも、これは大通りだけの一定の場所のみの光景ということではない。この都市に住むようになったヘッケランたちフォーサイトは、都市の隅々──裏路地や小路(こみち)に至るまで、端々に魔導王からもたらされた光が点灯していると知っている。

 

「──なんだって、そんな面倒なことを?」

 

 イビルアイが疑問するのも無理はない。

 普通、今の時代、こういったマジックアイテムは王族や貴族などの特権階級だけが用意できる品々であり、それでも、自分の屋敷の中に満載することがせいぜいだ。自分の領民や領地にあまねく供給しようとしても、そもそもそこまでの数を揃えること自体が不可能に近い。マジックアイテムを創れる工房は貴重であり、その上で、一日で数十個規模の量産体制などを確立されているわけでもないのだ。少なくとも、王国の王都で、ここまで見事にマジックアイテムで整備され尽くした夜の街を再現することは不可能なのだ。貴族派閥から「贅沢に過ぎる」などの野次や憤懣が飛ぶというよりも先に、土台である魔法技術面において、このような都市建設は完全に無理がある。

 そもそもにおいてマジックアイテムを製造できる魔法詠唱者の絶対数不足──それが故に魔法の貴重性や優秀性への不理解──連鎖的に、魔法詠唱者が厚遇されえない社会構造において、魔法詠唱者が生活していくには限られた業種「冒険者」などで生計を立てる以外に手がなく、彼らは冒険の途上で死亡するか、待遇改善を求め魔法省を有する帝国などの別天地に流れるかするため、魔法詠唱者が大成しない悪循環が存在しているのが最大のネックといえる。

 だが、ここは魔導国。

 魔を導く王──稀代の魔法詠唱者を王に戴く国家において、魔法の重要性など了解済みという事実。

 ヘッケランは、風の噂に聞く都市街灯の役割を口にした。

 

「なんでも、夜も十分に明るくしておくと、犯罪発生率が低減される──とか、なんとか?」

「ああ。なるほど。確かにこれだけ明るいと、都市の人々も安心して暮らせるわけですね」

「確かにな。それに、ランプに入れる蝋燭や油も、タダで手に入るモンじゃねぇし」

「でも、だからといって、それを実際に実現できるかというと」

「夜を昼に変えるとか……御伽噺のなかの出来事だと思ってた」

 

 ラキュースとガガーラン、ティアとティナが感心を込めて頷いた。

 以前までは家々の窓から漏れる明かりを頼るか、往来する住人の手持ちランプで照らされていたことを考えると、真昼なみとは言えないにしても、この光量ならば夜道を行くのはグッと安全かつ出かけやすくなっている。

 アンデッドの警邏兵・魔法の灯りを片手に握る死の騎士(デス・ナイト)は昼間と変わらず夜の都市を巡回しており、街灯の暗影から死相の凶貌が歩み現れる様は肝の冷えるところ。であるが、都市の住人はそれすらも慣れ切った様子で素通りしていくだけ。

 一行はそのまま大通りを抜け、交叉路を渡り、ヘッケランたち行きつけの酒場に入る。

 店はこじんまりとした造りであったが、店内は狭いということはない。

 ヘッケランたちはカウンターで調理している店主のドワーフに声をかけ、そして人間の女給(ウェイトレス)に案内されるまま奥の席に。続く蒼の薔薇を眺める人の目もあったが、冒険者としての装束を脱いだ私服姿の女冒険者たちに声をかけてくるものはいない。

 

「予約でもしていたのか?」

「まぁ、そんなところです。ガガーランさん」

 

 大きな卓を二つ三つ並べた一席。

 二つの冒険者チームが酒宴を開く場に、琥珀色に輝く液体をなみなみと注がれたジョッキが運ばれようとする。

 しかし、

 

「あれ? ロバーさんは、お水ですか?」

「ああ、ロバーの奴、超が付くほどの下戸なんですよ」

「いやぁ、面目ない」

「いいってことよ。酒は飲んでも飲まれるなって言うしな!」

「そうそう」

「にしてもガラスのジョッキとは、また珍しい──魔導国では普通か?」

「ああ、私も酒は飲めないから。そのつもりで」

「あ。イビルアイさんもですか?」

「アルシェも未成年だからダメね。てことは、ジョッキは一、二、三……六人分ね。マスター、注文!」

 

 そうして運ばれてくる酒や食事を前に、席の上座に据えられたラキュースが乾杯の音頭を務める。

 

「ええ。このたびは、このようなお食事の場にお招きいただき、ありがとうございました。こちらの食事代につきましては」

「ああ。それならモモンさんから『よろしく』って言われていますから、お気になさらずに!」

 

 フォーサイトの面々から笑声(しょうせい)が響く。

 

「ええ、では長々としゃべるのもあれですので──乾杯!」

 

 乾杯の声と共に、透明なジョッキが甲高く打ち鳴らされる。

 三卓に所狭しと並んだ大量の料理。蒼の薔薇の誰もが驚嘆するほど芳醇な酒精。

 どれもこれもが美味い飯、美味い酒──アダマンタイト級冒険者にして王国貴族に連なるラキュースでも見たことも嗅いだことも味わったこともないような、素晴らしい酒宴を愉しんでいた。

 そのおかげか、両チームとも気兼ねない調子で交友を深めていく。

 

「しかし、よく夜間の外出許可がおりましたね」

 

 ロバーデイクはラキュースに訊ねた。

 

「アダマンタイト級冒険者とはいえ、一応は国賓規模の客人という対応でもおかしくはない相手だと思うのですが? 確か昼間、今回の皆さまの訪問は『内密に』との話だとうかがったのですが?」

「ああ──モモンさんや魔導王陛下が根回しを済ませてくれていたみたいで」

 

 漆黒の二人は任務でエ・ランテルを離れているが、彼らのほかにも招待主であるアインズ・ウール・ゴウンから、魔導国滞在中の蒼の薔薇に対し、さまざまな便宜を図ってくれている。

 

「ウチらが外で出歩いても、あまり『蒼の薔薇だ』っつって、有名人扱いされてねぇしな?」

「確かに」

「不思議」

「それは、私も微妙に気にはなっていたが」

 

 エ・ランテルは、もう魔導国の都市とは言え、王国時代の住人や冒険者は噂くらいには聞いたことがあるはず。魔導国建国の混乱期にそういった人材がすべて流出した可能性もなくはないが、ここまで静かだと何かしらの必然が考えられる。

 あるいは、魔導王その人の強力な魔法や人心掌握術というのもありえそうだが──実際は、『ああ、魔導王陛下が、また何かしておられるのだな』という住人たちの理解力が働いていた結果と言えた。蒼薔薇を知っている者は王陛下の目論見を察して沈黙し、蒼薔薇を知らない都市住民は、いつも通りの毎日を過ごすだけ。これまでだって、アンデッドの警邏部隊の本格投入や、ドワーフなどの多種族が都市に流入してきたときに比べれば、冒険者チーム蒼の薔薇の訪問など、そこまでの珍事だと見なされえなかったのだ。

 

「まぁ、それにしても、本当に美味い飯と酒だな! ヘッケランの旦那よぉ!」

「い、いえいえ、そんな」

 

 隣席のイビルアイに提供される分まで胃袋に詰め込んでいく大食漢ぶりに、ヘッケランは濁った笑顔で頷いた。

 

「アルシェちゃんもよぉ! ウチのイビルアイを誘ってくれてあんがとなぁ!」

「は、はい。え、えと?」

 

 すっかり酒場の料理と酒精に酔いしれているガガーラン。

 かなり出来上がりつつある女戦士は、気分の高揚を抑えきれないようだ。

 そんな巨体の脇に押し込まれグリグリとイジられるイビルアイは、もういろいろとアレである。

 

「うっしゃ。ヘッケランとロバー、この宴会の後、ウチの宿で一緒に寝るか!」

「えーと、いや」

「それは、その」

「遠慮すんなよぉ! それともあれか? 童貞か? もう心に決めた女がいるのか?」

 

 二人は男として苦い笑いを浮かべる。

 しかし、瞳の色だけは誤魔化せない。

 その様子だけで、百戦錬磨のガガーランは察しがついた。

 

「はは~ん。これはイるな。確実にイるタイプの()だわ」

 

 ガガーランは早速アタリを付け始める。

 

「ふむふむ……なるほど、ヘッケランはイミーナちゃんにゾッコンってわけだ?」

「ちょ!」

「なんで!」

「はいビンゴ! 昼間の二人の戦闘ぶりから『だろうな』って思ってたんだなぁ!」

 

 あとは今しがた、二人の間で生じた、かすかな視線の遣り取り。

 生死を賭けた戦場で命を遣り取りする戦士の心眼は、このようなところでも遺憾なく威力を発揮するらしい。薬指に指輪はしていなくても、あれほど熱い視線を交わし合う男女ならば、ガガーランの眼には一目瞭然の事実だったようだ。

 

「ロバーの方は……うん。これもイるな。だが、ここにはいそうにねぇな……確か、出身は帝国だっけ? 帝都に残した女がいる感じか?」

「な、ご、ご冗談を」

 

 必死に女戦士の慧眼から目をそらしつつ、赤面を隠しきれていないロバー。

 

「んじゃあ、アルシェちゃんは、ど・う・か・な?」

「うぇ?!」

「はは~ん、ほほ~ん、ふふ~ん?」

「ひ……ひぇ」

「オイばか、やめろ。怖がってるだろうが!」

 

 イビルアイに本気で叱咤され、ガガーランはアルシェに近づけていた巨体を、大人しく席に落とす。

 

「すいません、ウチのが御迷惑を」

 

 謝辞をつむぐチームの代表・ラキュースであるが、フォーサイトは全員、特段気にはしていなかった。

 気に障るということはない。絡み酒というのは色々と意外であったが、何より、ここまで楽しそうに騒ぐガガーランの様子こそが気にかかった。

 

「はぁあー。こんなに楽しい酒は久しぶりだわぁ……駆け出しのころを、あの宴を思い出すぜぇ」

 

 駆け出しという単語に、ヘッケランは食いついた。

 

「ガガーランさんにも、そういう時期があったんですね?」

「あたぼうよぉ……これでも俺は人間だぜぇ。赤い血の通ったぁ」

 

 もはやジョッキではなく、瓶ごと酒をぐびぐびと呷るガガーラン。

 

「カッパーのあの頃は、そりゃあ苦労したが、今じゃあアダマンタイトだからなぁ……いろいろあったなぁ」

「いろいろ、と言うと?」

「そうだなぁ……蒼の薔薇と、ここにいない婆さんと一緒にイビルアイをブチのめしたり。ラキュースが冒険者になるのを手伝ったり。まぁ、いろいろだわなぁ」

 

 人に歴史あり。

 ガガーランという最高位冒険者の女戦士にも、……否、だからこその“下積み”時代というのは、あって当然の事実。ヘッケランたちのような冒険者たちにとって、“謎”に包まれたアダマンタイト級冒険者の生涯というのは、本気で気になる重要情報であった。

 

「酒の席っていやぁ……ああ、あのときは楽しかったなぁ。俺が駆け出しの時に助けてもらった村があってよぉ」

 

 ぽつぽつと語りだした。

 ガガーランが銅級(カッパー)の冒険者だった頃。

 今ほどの力など持ち合わせておらず、可憐で純情な乙女だった頃。

 まだ、ラキュースたちと出会う前……蒼の薔薇というチームを結成するよりも前の頃。

 

「亜人の村?」

「ああ──そこで、俺はダチと出会った……へへ、頭がおかしいと思われるかもだが、本当にアイツとは、いい友達だったんだ」

 

 人間と亜人の間に友情が結ばれるなど、そんなものは十三英雄の御伽噺にしか聞いたことがない。

 

「ガガーラン、その話は」

「いいじゃねぇか、俺の話だからな」

 

 何故か止めようとするラキュースを、止められた側は笑って流した。

 ──その亜人の友達に助けられ、ガガーランは九死に一生を得た。

 当時の仲間とはぐれ、森の中で孤立し、モンスターに喰われるかどうかの瀬戸際に立っていたところを、後に友情を結ぶ亜人たちに助けられた。助けられたガガーランは、村長の娘であるその亜人に案内され、無事に帰路へとたどり着いた。

 それからというもの、よくその村を訪ねるようになった。

 身体を鍛え、階級を上げ、亜人の友と鎬を削るうちに、王国でも最強の女戦士にまで成長を遂げた。

 アダマンタイト級冒険者──蒼の薔薇──ラキュースやリグリットと、チームを組んでからも、その村との交流は続けた。ガガーランは蒼の薔薇の仲間を紹介したこともあった。

 だが、話を聞く内に、ティアとティナが何かを察した。

 

「その村は確か、法国の特殊部隊っぽい奴らに──」

「ウチのリーダーが、相手の隊長をぶった斬って退かせた件か」

 

 途端、酒瓶がガガーランの握力で木っ端微塵に砕けた。中身を干されていた瓶の破片だけが床に落ちる。

 フォーサイトは、アダマンタイト級冒険者の戦士──ガガーランから溢れる憤怒の気迫に圧倒されながら、その声音の優しさを確かに聴いた。

 彼女の変容ぶりに恐怖したというよりも、この快活な女が昂奮する何かがあることを、肌身に感じた。

 

「……そ。あれはマジでトサカに来た。

 何が『人類を護るため』だ。そんな御大層な名分のために、女子供のいる亜人の村を焼き払うなんて、ただのゲス以下だ。……俺を助けてくれた友達(ダチ)も、その子供(ガキ)たちも、あいつらが村ごと、皆殺しにしやがったんだからな」

 

 皆殺し。

 その不穏な単語をひとまず置いて、ヘッケランは確認しておく。

 

「……でも、亜人って、ゴブリンやオーガとか、ですよね?」

「ああ、そうさ。

 でもゴブリンやオーガの全部が全部、話もろくにできねぇモンスターってわけじゃねぇ。それは、いま魔導国にいる亜人たちを見てもわかんだろ? あいつら法国の奴らがブッ殺したのは、人間に危害を加えるような連中じゃなかった。まかり間違っても皆殺しにされていい境遇じゃなかった。森の中でひっそりと暮らして、人間と距離を置いて、村の中で慎ましく生きていくタイプの……なのに、あの部隊の奴らは……!」

 

 ふと、ガガーランの動きが止まる。

 ついで、腕を組んだ戦士の巨体から漏れるのは、────盛大なイビキ。

 

「ね、寝落ち?」

 

 天を仰ぐガガーラン。心底気持ちよさそうな寝顔。

 その両瞼は落ちきっていた。空いた口の端からは、よだれの気配。

 呼んでも揺すっても反応はない。ゴガガーという岩を削るような音色ばかりが返ってくる。

 あれほどの剣幕はなんだったのだという思いで、ヘッケランたちは椅子に座りながら思わず前のめりになって倒れかける。

 

「いい酒だからと言ってトバしすぎだ、この筋肉バカが」

 

 肩をすくめるイビルアイ。

 

「まぁ。私が『“蒼の薔薇”に入る前』の話というのは、それなりに興味はあるがな」

「え。イビルアイさんは知らないんですか?」

「ああ。私がチームに加入したのは、あるババアとの約束のせいだからな……この話、焼き討ちにあった村の事件は、ガガーランにとってタブーらしい。素面(しらふ)じゃあ絶対に口を割らない。酒で上機嫌になったときに、こうして腹を割るくらいだ」

 

 仮面をつけた魔法詠唱者は、背丈通りの子供っぽい感じで拗ねた声をこぼす。

 話の腰を盛大に折られた一行は、すべてを知っているだろう蒼の薔薇のリーダーを見つめる。

 ラキュースは語った。

 

「実際。あの亜人の村はよくできていたわ。村長(むらおさ)は『昔、人間に借りがある』と言って、森で迷った人間の子や駆け出し冒険者を救出し、人の村に送り返すほどの仁者だった。村長の娘も、その教えをよく守った、とても強い(ヒト)だったらしくて……ガガーランも、その村に助けられた側の一人だった……だけど」

 

 それこそが災いしたのかもしれない。

 救出されたことのある者の中からもたらされた情報──「大規模な亜人の村が、森のどこかにある」という噂が流れ、それが巡り巡って、法国の特殊部隊の耳に入ってしまった可能性。

 無論、法国の連中が何か魔法なりタレントなりで探知し発見した可能性もあるにはあるが、今となっては、もう誰にもわからない。

 当時を思い起こし、ラキュースは苦い表情で告げる。

 

「私たちが村を訪ねにいって、連中の襲撃に気付いて、村についた時には、もう──」

 

 壊滅していた。

 かろうじて息があった者達も傷つき果て、ラキュースの治癒魔法でも回復しきれないと、一目でわかる規模の“虐殺”であった。

 ガガーランの友達(ダチ)──村長の娘夫婦と十人の子供たちは家を焼かれ、死体は丁寧に“並んでいた”。

 村の亜人の生き残りを、助命嘆願の声をあげる者達を、丁寧に執拗に「狩って」いた部隊の奴ら。

 瞬間、激昂したガガーランをはじめ、当時の蒼の薔薇全員で、襲撃者たち……法国の特殊部隊員らを打破した。

 現れた隊長格と思しき男との戦闘は一進一退を窮めたが、最後は魔剣キリネイラムの一刀に、軍配が上がった。

 

「それで、その村は?」

「生き残りはいません──私が蘇生の力を身に着ける直前の頃だったので。……本当に口惜しい」

「……大変だったんですね」

 

 なんと言えばいいのかわからない空気で、ヘッケランは必死に言葉を探したが、無駄だった。

 

「気にするな、若造。誰にでも、そういう重い過去の一つや二つあるものだ」

 

 イビルアイの年長者じみた声に背を叩かれた気分だ。

 

「ガガーランがオチた以上、そろそろ宴会もお開きにした方がいいか──ラキュース、あの話は?」

 

 しなくていいのかという問いかけに、ラキュースは気持ちを切り替えるように頬を軽く叩いた。

 

「フォーサイトの皆さん、魔導国のオリハルコン級冒険者である皆さんに、ひとつだけお話ししておきたいことがあるのです」

「話しておきたいこと?」

 

 ヘッケランたちは居住まいをただした。酒の入ったヘッケランとイミーナは熱っぽい思考を一挙に冷やし、そうでないロバーとアルシェは二人以上に、アダマンタイト級冒険者の言葉を真剣に傾聴した。

 

「最近、王国や帝国などの近隣諸国で蠢動している、“ズーラーノーン”についてです」

 

 

 

 

 

 




個人的に、ガガーランは男とヤッている感じながら、本当は未経験・処女だったりする可能性もあると思っています。今回の話で登場したガガーランの過去に係わる恋愛話にも発展するのですが、話が長くなるので丸々カットいたしました。
いつか書きたいものですね、ガガーランの純情失恋物語(需要があれば)

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