ジルクニフ日記   作:松露饅頭

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 本来、ここに置くべきか迷いましたが、竜王国を心配する声もあり、竜王国ハッピー(?)モードをなんとか拵えてみました。以前書いていた物の改変・改訂版で、脚本形式と言うのか、台本形式というのか、少々読み辛いかも知れませんがご了承下さい。

 しかし、オリジナルのオーバーロード本編内での竜王国に関する動向が不明ですから、オリジナルでの竜王国の処遇が判明するまでは、ジルクニフ日記本編内に於いては、これからも援軍派遣会議は延期され続けることになるでしょう。

 ここに出てくるジル君はジルクニフ日記のジル君ですが、彼の今回の判断がジルクニフ日記内のジル君に反映されるか否かは、今後のオリジナルの動向次第であり、今回の話は「ジルクニフ日記内で未だ確定していない未来の枝葉の1本」の話である、ということで納得して頂けると幸いです。


番外編 竜王国ハッピー(?)モード

 ビーストマンの侵攻に後が無い竜王国。

 ドラウディロン・オーリウクルス女王は、一向に援軍を送ってくれない法国に見切りをつけ、最近リ・エスティーゼ王国に圧勝したというバハルス帝国に援軍を要請する。

 

 ジル君「(竜王国か・・・そろそろ放置もマズいか? ・・・まてよ? これは魔導国の恐ろしさを実感させるチャンスではないだろうか)」

 雷光「竜王国への援軍の話、やっと決まったんですか。で、結局どうされるんです?」

 ジル君「魔導国に丸投げする」

 激風「え?」

 ジル君「やつらの恐ろしさを知らせて包囲網形成の切っ掛けにするのだ」

 三騎士「(ヤベぇ・・・やな予感しかしねェ・・・)」

 

 

 竜王国の使者は走る。

 破滅の危機にある祖国を救うため。

 ナザリックに到着すると玉座のアインズと左右の守護者達に、戦力の窮乏と竜王国の命運に一刻の猶予も無いことを訴え、まさに平身低頭で援軍の派遣を哀願する。

 

 アインズ「(竜王国に援軍かあ・・・こっちはまだいろいろ忙しいってのに・・・)」

 建国間も無い魔導国である。課題は山積みだ。

 アインズ「(そんな遠いとこ助けても、なーんもメリット無いもんな、よし、断ろう!)」

 そう判断しその件は記憶の片隅に追いやろうとしたその刹那、何気なく目をやったシャルティアの姿に、アインズはかつての仲間の姿を幻視する。

 アインズ「ペ…ペロロンチーノさん…っ!!」

 かつての仲間であり友であった漢の熱い言葉が脳裏をよぎる

 

(ペロロン「困っている可愛い少女を救うのは当たり前っ!!」)

 

 アインズ「(そうですね、貴方ならそう言うでしょうね・・・ロリコンだし)」

 そう呟いたアインズは竜王国を救うべく思案を始める。

 

 アインズ「そうだな、誰を送ろう?」

 アルベド「アインズ様、下等生物同士の潰し合い、ここは無視してもよろしいのでは?」

 アインズ「違うぞアルベド。遠い土地から我々に助けを求めて来ているのだ。これを助ければ、我がアインズ・ウール・ゴウンの名声は一気に高まるだろう」

 

 そこで少し思案する。

 アインズ「(でもなあ、俺はエ・ランテルから遠くへは動けないし、デミウルゴスも忙しい、アウラも偽のナザリック建設中で長期出張は無理。コキュートスは外見がなあ・・・シャルティア・・・は論外)」

 消去法でいけば残るは1人しかいない。

 

 アインズ「マーレに頼むとしよう」

 

 

 かくして竜王国に派遣されるマーレ(と補佐&護衛役のユリ&シズ)。

 

 宰相「魔導国よりの援軍が到着されましたが・・・」

 一足先に帰った使者の報告に、リ・エスティーゼ王国軍を打ち破ったのが、バハルス帝国軍ではなく、その同盟国であるアインズ・ウール・ゴウン魔導国という聞いたことも無い国であると知り、そのアインズ・ウール・ゴウン魔導国が援軍の要請に応じてくれたと言うので、いったいどんな精強な軍団がやって来るのかと、一日千秋の思いで待った朗報に欣喜雀躍する竜女王。

 

 竜女王「そうか! ついに来たか!! すぐに対面するぞ! 歓迎の準備を!」

 宰相「・・・会うんですか?」

 何やら様子がおかしい。

 竜女王「会うんですかって会うに決まってるだろ。これでビーストマン一家の食卓に上がらずに済むかも知れないんだぞ」

 宰相「そうですか? ・・・止めた方がいいと思うんですけど、マゾなんですね」

 竜女王「?(ナニ言ってんだコイツ)馬鹿言ってないで、さっさと支度しろ!」

 

 ウキウキの状態で颯爽と謁見の間に入るも、控えるナザリック三人衆(マーレ&ユリ&シズ)を一目見るや、凍りつく竜女王。

 竜女王「(・・・え? 誰これ。援軍はどこ?)」

 半ばパニック状態で玉座に着く竜女王に、マーレがオドオドと着任の挨拶を始める。

 マーレ「あ・・・えっと、アインズ様に言われて助けに来ました。アインズ様に褒めてもらえるよう、が、がんばります!」

 竜女王「(頑張るって何を? 何? これが援軍なの?)え・・・あ、あぁ、その、なんだ、よ、よろしく頼む・・・」

 やっとのことで絞りだした声の、最後の方はもう呟きに近い。優しく微笑む表情を作ったつもりだが、どう見ても般若(BGM:イヨォーッ、ポンポンポンポンポン・・・)だ。

 

 竜女王「(嘘だろ? 誰か嘘だと・・・宰相、なんだその目は、こっち見んな! 幼女とメイドが援軍? あれ? ・・・男? なんでスカート? 男の娘なの? ・・・あぁ、終わった・・・)」

 目の前に『終わった・・・』という言葉が特大極太のホラーフォントで浮かび、教会の鐘のように反響を響かせながら頭の中を駆け巡る。

 

 がっくりと項垂れて謁見の間を後にする竜女王に、宰相の声が後ろから追撃を掛ける。

 宰相「警告はしてました(ボソッ)」

 竜女王「・・・(あんなの警告になるか! 援軍と聞いてこんなの予想できるわけないだろ!)」

 宰相「詰みましたね」

 竜女王「黙れ」

 宰相「食卓に上られる準備でもしますか?」

 竜女王「黙れ・・・」

 

 

 場外で紆余曲折あるも、戦闘はプレアデスでも真面目系の2人にサポートされたナザリック強さ序列2位に何の問題もあるはずがなく、瞬く間にビーストマン降伏。ていうか壊滅。

 見た目で侮った竜王国のアダマンタイト級冒険者チーム「クリスタルティア」のメンバーがユリにボコられたり、ビーストマン側の精鋭部隊「獣人衆」がシズの狙撃に手も足も出ず完封負けして壊滅したり、最終決戦で竜王国軍がビーストマン国家の首都に攻め込んだら、先乗りしたマーレの地形改変魔法によって首都そのものが影も形も無い更地になってた、などのシーンは割愛する。

 マーレを心配したアインズが、いつもの漆黒フルプレートでは目立つからと、純白のフルプレートに身を包み「初め○の○使い」のカメラスタッフよろしく行く先々での怪しい行動を目撃されて「謎の白い男」としてスパイ扱いされたのも別の話だ。

 

 そこが読みたいって?

 そんなもん俺が一番読みたいわ(中の人の心の叫び)

 

 

 かくして竜王国に平和(?)が訪れる。

 竜女王「魔導国すげえ!」

 ビーストマンを撃退どころか、完膚無きまでの殲滅である。

 侵攻を止めることが出来れば程度に思っていたら、占領された3都市を奪還したのみならず、ビーストマン国家自体を滅ぼしてしまった。

 積年の懸案事項が一気に解消してしまったのである。幼子とメイドの3人で。

 

 宰相「援軍の方々には盛大なおもてなしをしましょう」

 諸問題は残っているが、滅亡の危機を逃れた悦びは大きい。

 竜女王「それにしても、なんであんな強い連中が今まで無名だったんだ? メイドまでアダマンタイト級とか反則だろアレ。ていうかアダマンタイト超えてるだろ」

 宰相「どうなんでしょう? うちは田舎ですからねえ」

 竜女王「とにかく、これで魔導国との友好を保てれば、竜王国は安泰だ!」

 宰相「そんな簡単な話じゃないとは思いますが、友好の為に婚姻というのも良いかも知れませんよ? その形態ならマーレ殿ともお似合いでしょう」

 竜女王「形態言うな・・・この格好は仕方なくやってるだけだ。だいたい私の歳を考えろ。まあ、確かにマーレ殿は可愛い・・・が・・・カワイイ・・・でも歳が・・・」

 最後の方はゴニョゴニョと口篭った風だったが、ニヤニヤ顔の宰相に気付くと、誤魔化すように声を大きくする。

 竜女王「形態といえばホラ、あのロリコンはどうした? 最近見ないが」

 宰相「寂しいので?」

 竜女王「んなわけあるか」

 宰相「セレブライト殿でしたら最近はマーレ殿にベッタリだとか」

 

 両者を包む、しばしの沈黙と微妙な空気・・・。

 

 竜女王「ゴホン! ンンッ・・・あ゛・・・あー、あれか? あいつもしかして、マーレ殿が男だと知ら・・・ない?」

 宰相「さあ? 別に男だと宣伝してるわけではありませんし、あの格好ですからどうでしょう? 何かに目覚められた可能性もありますが」

 竜女王「あああああ、嫌だいやだ知りたくない知りたくなかった」

 宰相「聞いたのは貴女ですよ」

 

 竜女王「・・・考えたくない」

 

 

 かくして竜王国は順調に魔導国との友諠を結ぶ方向に向かい、ジル君の胃はキリキリと痛むのであった。果たしていつの日か、ジル君のメンタルリセットが適う日は来るのだろうか! 乞うご期待!!

 

 三騎士「(ヤな予感はしてたんだよなあ・・・)」

 

 




 というのが9巻刊行済み時点での11巻の内容の妄想。
 10巻の発売日決定記念ということで、急遽頑張って書いてみました。

 上にも書いたように、 今回の話はあくまでも9巻までに判明している情報を基にした「ジルクニフ日記内で未だ確定していない未来の枝葉の1本」ですので、オリジナルが10巻、11巻と進み、情報が増えるにつれてオリジナルと乖離していくことは間違いありません。ジルクニフ日記内での扱いもどう変わるか、今の時点では全く見当がつきません。
 今はまだ、私個人も皆さんと一緒に、オリジナルの続刊を待つ人間の一人です。


2016/04/16 一部文章の修正及び加筆を行いました。
2016/05/02 文章の修正を行いました。

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