---毛利蘭---
お母さんの事務所を訪ねた。お父さんと別居しているお母さん。夫婦別姓で有り、見た目離婚状態と言えなくもないけど、決して離婚はしないそうだ。
「どうしたの、蘭?」
お母さんは弁護士をしている。お父さんとは違い、結構忙しい人である。娘である私が会うにもアポイントが必要なくらいである。
「お母さんに会って欲しい人がいるんだ…」
うっ、耳が熱い。顔は真っ赤かな…ちょっと恥ずかしい。
「探偵小僧なら、お断りよ!」
新一は、お父さんにも、お母さんにもウケが悪い。
「違うよ…小説家なの…」
亜樹君のサイン本を、お母さんの前に置いた。
「栗井鳥栖?あの新進気鋭の推理作家?う~ん…どこで、知り合ったの?」
出来るなら話したく無い馴れ初め…でも、話さないとダメだよね。
「え!」
話をすると、絶句された。うん、そうなるよね…だから、話したく無いのに…
「顔が探偵小僧にソックリなの?う~ん…」
新一をよく知る者は、唸るよね。尻切れトンボで、事件が起きれば、どこかへ行ってしまう。会いたい時に会えない上、高校生なのに、学校へも行かずに、探偵稼業をボランティアでしている自由人だし。
「彼はどうなの?」
「どうって…会いたいときには会える。話したい時に話せる。探求心は旺盛だけど、約束は護ってくれるよ。だけど…家庭の事情が複雑で…ちょっと偏屈かな」
笑って誤魔化す私。
---鳥井亜樹---
週末、珍しく朱美と蘭が来ていないそうだ。何か遭ったのか?いや、何かがあるのか?考えても仕方ないので、執筆活動に精を出す。
翌日…僕は姉ちゃんと夏美に連れ出された。
「どこに行くんだ?」
何か謀っているのか?ニヤニヤしている姉妹。電車に乗り、米花町にやって来た。
「塗料の買い込み?」
たまに塗料の買い込みで米花町には来る。家の近くには専門店が無いからだ。
「今日は買い物では無いよ♪」
妙に楽しそうな姉ちゃん。嫌な予感がする。そして、『ポアロ』と書かれた喫茶店の前に来た。しかし、喫茶店には入らずに、店の横にある階段を昇っていく。昇った先には探偵事務所があった。
うん?
ドアをノックして入っていく姉ちゃん。夏美は僕の退路を塞いでいる。僕が逃亡をしないといけない事態って、何だ?
夏美に押されて、探偵事務所に入っていく僕。そこには…
「新一?」
「新一君?」
「えっ?!」
三人三様の声が掛けられた。細身の髭のおじさん、頭のキレそうなおばさん、大き目の眼鏡をかけた子供…あと、蘭…はて?
「お父さん、お母さん、コナン君。彼が鳥井亜樹君です♪」
物凄く嬉しそうに、僕を紹介する蘭。ここは?えっ…まさか…姉妹達はしてやったりの顔…
「おい、新一にそっくりじゃねぇか…」
たぶん、蘭の父親だと思う男性に言われた。
「そうでしょう?私も初め、新一だと思って、今までの溜まっていた分を込めて、ケリ込んだの…その渾身の私のケリを彼は、難なくガードして、制圧されちゃった。初めてだったのよ~。私よりも強い男性に出逢ったって♪」
嬉しそうに僕の腕に抱きつく蘭。ノーブラなのか、胸の柔らかさが腕に…
「あぁ、亜樹君、紹介するわね。父の毛利小五郎、母の妃 英理です。名字が違うのは、現在別居中だから…で、居候の江戸川コナン君。父は探偵で、母は弁護士なんです」
いきなり親を紹介された。何で?まだ中学生なんですが…
「で、こちらは亜樹君のお姉さんの春美、こっちは亜樹君の妹の夏美です。でね、亜樹君達は中学三年生なの~」
蘭が僕達の紹介までしてくれた。
「ちゅ~さん?おい、蘭!お前、何を考えているんだ?まだ、早い!」
蘭の父親が激高している。僕も早いと思う。
「はぁ~?お父さん達だって、大学時代からでしょ?交際期間を考えれば、早くないわよ~!」
蘭も負けていない。気が強いみたいだ。
「蘭、落ち着きなさい。早まったことはしないでよ」
蘭の母親は、冷静である。さすが弁護士。
「うん?早まったことって?なぁに、お母さん?」
顔を真っ赤にする蘭の母親。うん?
「抱き合って愛し合う…そんなことよ!」
「なんだ、そういうことか。もうしたよ♪でね、プロポーズを受けようと思うの」
「「はぁ~い?」」
驚いた声を上げる蘭の両親。いや、まだプロポーズはしていないんだけど…たぶん…
「蘭…僕はまだプロポーズをしていない…はずだと思うんだけど…」
確認する為に、蘭へ訊いてみた。
「うん、まだだよ。だから、亜樹君がプロポーズしてくれたら、オーケーだからね♪いつでも亜樹君のタイミングでしてね」
へ?そういうものなの?プロポーズって…
「姉ちゃん、そういうものなの?」
姉ちゃんに確認してみる。
「いや、経験が無いから、わからないよ。まぁ、人生色々、人それぞれだよ」
わかったような、わからんような返答の姉ちゃん。
「もう…そういう関係なの…ねぇ、蘭…」
蘭の父は固まり、蘭の母は声を振り絞るように、蘭へ確認してきた。
「そうだよ。お母さん♪」
笑顔で返答する蘭。僕の腕を更に引き寄せ抱きしめてきた。
「彼の親御さんは何って?」
「あぁ、うちの両親は亜樹のことは、スルーだから問題ないです」
姉ちゃんが返答した。
「スルーって?」
蘭の母親が心配そうに訊いてきた。
「亜樹の父親は、たまに亜樹と会話しますけど、私達の母親は、会話しているのを見た事無いし…亜樹の実の母親はもういないし…」
「複雑な親子関係なの?」
「私達の母親は女優なので、あまり家にいない上、亜樹の存在を芝居の中の設定と思っていたりして…一種の職業病です。亜樹の父親は小説家なので、年中缶詰状態で…缶詰から出て来た時に亜樹と会話する程度だから…亜樹に関しては放任ですね」
まぁ、そんな感じだな。
「亜樹君の実の母親って?」
蘭の母親が訊いてきた。
「僕の産みの親は、安芸桜っていう絵師です」
「えっ…あの有名な?」
「有名かどうかは…物心着く前に亡くなりましたから」
蘭の母親は、僕のことをアレコレ聞き、僕を受けて入れてくれた。
「蘭がわがままな事したら、言ってね」
「しません!」
笑顔で会話する蘭と母親。しかし…
「俺は認めないぞ!新一そっくりなだけで、蘭、お前は騙されているんだ。目を醒ませ!」
騙す?何をだろうか?
「騙されていないよ。何を騙しているの?ねぇ、お父さん」
「いや…だから…」
ノープランなのか?探偵なのに?まぁ、ノープランな探偵ってテーマになりそうだけど。
「ねぇ、蘭姉ちゃん。新一兄ちゃんはどうするの?」
コナンという少年が、斬り込んできた。
「う~ん…連絡が来ないように、着信拒否の設定にしたけど、会いに来られたら…う~ん…わからないなぁ…ごめんね、亜樹君」
寂しそうな顔の蘭。
「いいよ。蘭の好きなようにすれば良い。僕は逃げないし、追いもしない。だから、蘭の出した結論に文句は言わない。蘭の人生だよ。蘭が決めていいから」
「亜樹君…ありがとう…今の言葉で充分だよ。新一とはもう会わないから」
僕の頬に口づけをしてきた。彼女の両親の目の前で…父親の目が睨み付けて来た。僕のガード達は臨戦態勢に入っている。
「姉ちゃん、夏美、蘭の父親だよ。手を出したらダメだよ」
「探偵だぞ。ピストルを隠し持っているかもしれない。亜樹が撃たれる前に倒そう!」
「そうだよ。マシンガンかもしれないし。叩けるうちに叩こうよ!」
「先手だったら、お前ら一生スルーだからな!」
涙目になっていく姉妹。後悔しないように反省しているようだ。
「お父さん。亜樹君の姉妹は、私のライバルなの。素手で勝て無いから、手を出しちゃダメだよ!」
「ライバルって?」
顔から血の気が失せているような蘭の父親。
「中学生の部のトップ争いをしているのよ、この姉妹で」
いや、正確には朱美を含めて、トップ3争いをしているんだけど。
「来年、高校生になったら、高校生の部で私のライバルになるはずよ」
それは我が家にトップ4が集結するってことか?ケンカの仲裁が出来るか不安だ。
「そんなにつえ~のか?」
「ケンカの仲裁に入って、入院しました」
僕はカミングアウト発言をした。それを聞き、青ざめる毛利家の人々。
「蘭を制圧する能力があるんだろ?」
「一人ずつなら制圧出来ますが、二人同時は無理…」
あの時の衝撃を思い出すと目眩が…バランスを崩し、蘭に身体を預けた。
「大丈夫?痛みを思い出したのね。二人同時はそうね、無理よね」
その後、蘭の両親と雑談をして蘭の家を後にした。あの居候少年だけは、最後まで僕に敵意を持っているみたいだったけど。
◇
「で、何で蘭も一緒にいるんだ?」
蘭とは家で別れた気がしたのだが。
「うん?今日は土曜だよ。亜樹君の家でお泊まり♪」
あぁ、そういうことか…
「お兄ちゃん…」
夏美が甘えた声で呼んだ。僕は腰を屈めて、夏美を指定席に迎入れた。
「おい、夏美!もうすぐ高校生なのに、亜樹に甘えすぎだぞ!」
姉ちゃんが夏美に文句を言う。姉ちゃんもオンブされたいようなのだが、胸が大きい為、オンブが上手く出来無い上、夏美のようなコアラ状態にもなれなかった。
「この為に、胸のサイズを調整しているんだよ、お姉ちゃん♪」
僕の頬に自分の頬を触れさせて言う夏美。骨伝導でも声が聞こえる為、少し目眩がする。胸のサイズって調整出来るのか…
「本当に仲が良いんですね。亜樹君と姉妹は」
蘭が羨ましそうに言う。
「まぁ、順調に一緒になれば、蘭丸も私達姉妹の一員だよ」
と夏美。
「そうだね」
感慨深そうに言う蘭。