※この作品はR-18です。

新そっくりなアイツ   作:もっち~!

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一難去って…

 

 

警察暴露物第3弾「尾行」は、予約殺到のようだ。鈴木さんはウハウハだと言う。担当作家がこれだけ短期間に連続刊行し、どれも売り切れ続出は初めてらしい。いや、鈴木さんのいる出版社で、初めてらしい。僕は作家としての地位が上がったそうだ。

 

押収された取材メモ、描いた絵、地下室にあった母さんのコレクションは、未だに戻る気配は無いそうだ。蘭の母さんが、がんばってくれているので、お任せしている。警察の交渉なんか、僕にできるはずも無いから。

 

最近変わったこと…僕は養子に出された。父さんとお兄さんの間で話し合いをして、今の父さんの伴侶では、僕がダメになると双方が結論付けたそうだ。戸籍上、身元引き受け、保護者という観点から、僕は佐田家に養子縁組された。あくまで、身元という観点で有り、人間関係は今まで通りで良いと言われた。

 

戸惑っているのは、僕と紅子だけ。紅子は僕の呼び方で悩んでいるようだ。僕は僕という物が、僕の知らない場所でどうにかされている気がしたから。

 

まぁ、時間が解決する問題だと、父さんに言われ、少し気が楽になったけどね。

 

 

ゴールデンウィークが終わり、初登校することになった。体力的な問題も有り、当面は登下校時、紅子と共に、車での送迎だという。

 

学校での名前は『佐田亜樹』になった。立場は、紅子の兄ってことになるらしい。

 

「兄さん、お昼…サンドウィッチを作ってきました」

 

紅子は悩んだ末、僕を『兄さん』と呼ぶことにした。実際のお兄さんは『お兄様』なので、区別がつくそうだ。

 

「ありがとう、紅子」

 

頭を撫でてあげると、頬を紅色に染めて、喜びをかみ殺して俯いていた。

 

授業はそこそこついて行けていると思う。体育に関しては、ハンストの影響で、見学になったけど…

 

双子と朱美は隣のクラスだった。休み時間になるとやって来る。男子生徒達のひがみの視線が痛い時もある。長期休学していて、出て来たら女性が群がっているんだから、面白くは無いだろう。でも、誰も僕に難癖をつけない。

 

一度、僕のことを面白くないと思う連中から、ヤキを入れられたことがあった。しかし、姉妹と朱美が来て、相手をボコってくれた。それ以来、誰も僕に難癖をつけなくなった。最凶のボディーガードだといえる姉妹…体験したこともあるが、特にキレた姉ちゃんは恐い。

 

部活動は姉妹、朱美、蘭は空手部、僕と紅子は帰宅部である。

 

そうそう、お兄さんが、僕が養子になった記念にと、新しい部屋を用意してくれた。そこには、僕と同じ高校へ通う姉妹、朱美の部屋と紅子の部屋がある、前回の2倍くらい広いスィートルームであった。みんなで仕事ができる仕事部屋、僕の執筆部屋、書庫、応接間などを擁している。

 

特別ルームサービスで、フロント階にある画材店にある商品を届けてくれる。僕達の仕事の効率は上がりそうで有る。

 

「君達のおかげで、色々と商売の幅が出来たから、気にしないでくれ」

 

って、お兄さん。プロ御用達な画材屋さんは繁盛しているようだった。

 

学校から帰ってくると、紅子に珈琲を淹れてもらって、仕事にとりかかる。と、言っても、取材メモなどが無いので、新作の構想練りだけど。鈴木さんに企画書を出さないといけないのだ。

 

最近、気になること…あの少年の狩る様な視線だな。蘭が好きなんだろうな。う~ん、そんな感じのストーリーもいいのかな?タイトルは…『不揃いなナイト』かな。年齢、見た目、視線…どれを取っても不揃いだ。単なる小学生では無い気がする。う~ん…

 

「うん?コナン君に興味が有るの?」

 

いつの間にか空手部が帰宅していた。蘭が僕の書いたメモをガン見していた。

 

「いや、気になることを書いて、そこから想像していくんだよ」

 

「そうね…あの子…年齢の割に冷静で、洞察力が有るわよ」

 

なるほど…パラッ…蘭がメモ帳を捲って見ている。

 

「うん?なになに…『警視庁捜査課目黒三馬班』…って、目暮警部がモデル?白馬騎士って白鳥刑事だよね、高井鷹って高木刑事…で、三輪聡子って佐藤刑事かな?」

 

「図星です…」

 

「クライムサスペンス?」

 

「ポリスコメディー…」

 

「ふ~ん…楽しみだよ♪」

 

え?有りなのかな?じゃ、これを企画書化するか♪

 

「ねぇ、今日、来られないかな?」

 

蘭に訊かれた。

 

「そうだな。小五郎父さんに再取材をしたいしなぁ。行こうかな」

 

 

小五郎父さんに、再取材を申し込んだ。快く受諾してくれた。なので、再度、メモを取っていく。その際、あの少年の視線を感じる。僕に敵意を持っているのかもしれない。大好きな蘭を僕が取り上げたからかな。

 

だけど…彼が眼鏡を外した顔に見覚えがあった。どこかで見たことが有る。どこでかな?

 

一人での帰宅、何の問題に遭遇せずに、家に無事帰宅し、お風呂に入りながら、ソレを考え込んでいた。どこだっけかな?身近で見た気がする…何気なく鏡を見て、思いだした。そうだ。僕の小さい頃の顔だ…まさか、工藤新一って…

 

次の日から、調査を開始した。蘭にバレないように、こっそりと行動をした。蘭に変な気苦労を掛けたくないから。夏美が、あの少年の指紋を採取してきた。僕は有希子に頼んで、工藤新一の指紋を採ってきてもらった。それを照合してみた…

 

まさか…なんで?どうして?こんなことって、有るのか…

 

 

「新ちゃんのことだよね?」

 

有希子と工藤邸で逢った。

 

「どういうこと?」

 

「指紋が欲しいって言われて…そういうことだと思ったわよ」

 

「何が起きたんだ?彼の身に…」

 

彼の身に起きたことを有希子に聞いた。そんなことがあるのか…事実は小説より奇であった。

 

「だから、逢いたくても逢えないのか…」

 

「亜樹君が気に病まないでいんだよ。あの子が、妙な事に首を突っ込んだから、いけないのよ」

 

でも…逢いたくても逢えない寂しさは、良く知っている。僕も、6年もの間、苦しんだし…

 

「僕が悪いのかな…同一時間軸に、同じ顔の別人は、いちゃいけないのかもしれない」

 

ふと、目にペーパーナイフが目に入った。太陽光で光輝き、存在感を示していた。僕の手はそれに伸びていく。

 

「そんな事無いって…亜樹君…ダメぇぇぇぇ~!」

 

有希子の叫び声…意識は深い沼に沈んでいった。いちゃいけないんだ…僕はこの世界に…

 

 

気が付くと、心配そうに有希子と美和子…蘭、紅子…姉妹と朱美が、僕の顔を見ていた。

 

「亜樹君…」

 

蘭が気づいて、僕の手を握った。

 

「僕は…どうして…」

 

皆、目が腫れている…僕はどうしたんだっけ?

 

「新一のことは、もう考え無いでいいのよ。ねぇ、亜樹君…」

 

蘭が優しく語り掛けて来た。そうだ…衝動的に、生きていちゃダメだと思って、有希子の目の前で、首にナイフの刃を走らせたんだっけ…

 

「新ちゃんは、好きで探偵をしているの。だから、亜樹君は亜樹君でいいのよ。亜樹君が死んでも、新ちゃんは探偵を辞めないから…」

 

だけど…有希子がどこかで連絡をした。ハンズフリーモードにしたスマホを、僕の隣に置いた。

 

「蘭と俺のことを思ってくれたのは、嬉しい。だけど…死ぬ事は無いだろ?俺は探偵を死んでも辞めない。死ぬ時も探偵でいたいんだ。だから…こんなことを頼むのは、アレだけど…俺の代わりに蘭を頼む」

 

って、工藤新一の肉声だろうか?

 

「僕でいいのか?」

 

絞り出すような声で訊いた。

 

「蘭が選んだんだ。間違いは無い。アイツは人を見る目だけは有る。じゃ。仕事に戻る。あばよ!ツーツーツー」

 

通話は切れた。

 

「亜樹君、もうバカなマネはしないでね。ずっと傍にいてくれるって、言ったよね?!」

 

言った…

 

「でも、とか言わないでね。約束だから。だから、プロポーズを受けたんだよ」

 

いや、プロポーズはまだしていない。その事実を知っている、蘭以外の皆が苦笑いしている。

 

--------

 

傷は浅くて、半月くらい外科に入院して、転科して再入院となった。衝動的に何かしでかすのではと、危惧されたから。精密検査、問診の結果、警察の不当な扱いにより、身体的にも精神的にも疲弊していると診断された。僕は知らず知らずのうちに病んでいたようだ。

 

そして、半年後…退院できた。もう自殺の危険性は無いと診断されたのだ。病院の出口には、蘭と美和子がいた。蘭に支えられて、美和子の車に乗り込んだ。

 

「どこか、行きたいところは有る?」

 

蘭に訊かれた。

 

「安らげるところ…」

 

車が発進した。着いた場所は、紅子の住むホテルだった。蘭に身体を支えられて、ホテルのロビーに入っていく。そこには紅子、春美、夏美、朱美が待っていた。

 

「「お帰り♪」」

 

と、僕を出迎えてくれた。そして、もう一人…僕と同じ顔の人物が、僕に近寄り、

 

「蘭を頼むぞ!」

 

と、僕の肩を軽く叩いて、蘭のことをちらっと見て、ホテルを出て行った。

 

「蘭、行け!想いをぶつけて来いよ!」

 

僕の言葉を受け、蘭が彼の後を追っていく。僕はふらつきながら紅子に近寄り、彼女に身体を支えてもらった。

 

「いいの?」

 

心配そうな紅子。

 

「想いをぶつける事は必要で、大切なことだ」

 

-------

 

部屋に入ると、押収されていた物が戻って来ていた。総てでは無く、所々無くなってはいるけど…

 

「手分けをして、精査したそうで、ノートを破って配ったらしいよ。で、無くなったり、汚れたりしてって」

 

夏美から説明があった。PCはHDDが壊れていた。何度もアクセスしたようで、分解をしてみると、ヘッドが折れていた。オーバートラックを疑って、検査をしたのだろう。板自体には傷が無いので、新品のヘッドに交換をして、組み上げていく。

 

そして、起動…画像はごっそり消えていた。文書ファイルは残っていたので、復元ソフトで復元していく。おぉ、画像ファイルは復元されたようだ。ゼロフォーマットをされなかったことが、不幸中の幸いである。

 

保存データファイルを調べる。事件の考察をしたページが無くなっている。事件記事のスクラップも書き込みをした物が無い。

 

僕の検査での見付かった不具合結果を、紅子が書き残していく。完全返却をしてもらう為だ。原稿の束に目を通す。黒く塗りつぶされている箇所が有る。都合が悪いのだろうな。プリントアウト前の原稿ファイルを見ると、黒く塗りつぶした部分は、削除されていた。

 

出版物に対する検閲か…問題だな。鈴木さんへ連絡をした。鈴木さんは、それならば、黒塗り原稿をそのまま本にすると言う。検閲された証拠として、世の中に出すと言う。なので、『ノー天気探偵 検閲版』ってタイトルになった。巻末に紛失した物のデータも載せるらしい。なんか、問題作作家って位置付けになりそうだ。

 

次にイラスト関係をチェックする。これはPCに保存していないので、原画としての紙の有無のチェックとなる。数点無くなっている。

 

「亜樹君…」

 

蘭が戻って来た。目が腫れている。どうしたんだ?

 

「蘭、どうしたんだ?」

 

「添い寝して…」

 

えっ?工藤君に逢ってどうなったんだ?僕を力尽くでベッドのある部屋まで連れて行く。蘭のプレッシャーにより、姉妹も朱美も動けない。そんな鬼気迫る蘭の迫力…

 

ベッドに倒され、隣に蘭が横になった。

 

「どうしたんだよ?」

 

「亜樹君…」

 

僕の頬を両手でホールドして、僕と口を重ねてきた。退院したばかりの僕にとって、蘭のプレイスタイルは、ワイルドすぎる。僕の首にある傷跡を舐めながら、僕を全裸にして、自分も全裸になる蘭。彼女の醸し出すプレッシャーにより、言葉すら掛けられなくなる。何が起きたんだ?

 

「新一に訊いた…私の元を去った理由をねぇ…私の命を守る為だって…なんで、そんなヤバい事件に首をつっこんだのよ~!」

 

小さくなった原因の事件のことを話したのか。

 

「一緒にいたら、私もお父さんもお母さんも危ないって…だから、近寄れないって…アイツは、高校生なんだよ…ねぇ、亜樹君!」

 

頷く僕。ポロポロと涙を溢す蘭…僕は、なんて声を掛けて良いかわからず、蘭の髪に手ぐしを入れることしか出来無い。

 

「お願い…亜樹君は、そんな危険なことをしないで…いつまでも傍にいられるようにして…ねぇ、約束できる?」

 

僕は…無我夢中で、蘭の谷間に顔を埋めた。僕の行動に驚く蘭。久しぶりの蘭の胸の感触を両手の手の平で感じとる。

 

「うっ…亜樹君、ズルいよ…言葉を掛けて欲しいのに…でも、嬉しい…それが、返事だよね?」

 

蘭が僕の後頭部を腕で優しく抱き締め、谷間から顔が出られないようにしてきた。なので、谷間の底を舐めて、蘭の味を再確認した。

 

「おいしい?私の味って…」

 

さっきまでの恐い位のプレッシャーは消えていた。優しい、いつもの声で、訊いた来た蘭。

 

「もう、自殺はしないでね…お願い…亜樹君までいなくなったら…」

 

退院明けで精力ゼロな僕は、蘭と交われなかった。蘭も無理強いはして来なかったので、添い寝をして朝を迎えた。

 

 

 

---デコ---

 

高校入試…がんばって、鳥井君と同じ高校へ入学した。だけど…復学した鳥井君は鳥井君でなくなっていた。紅子さんの家に養子として迎え入れられたそうだ。それって、婿養子かな?蘭さんとは破局かな?色々、訊きたいことがあるのに…

 

そして、再度入院したそうだ。彼に何が起きたのだろうか?

 

テレビのワイドショウで流れる、えん罪事件…少年A…映し出される鳥井君の家…まさか、えん罪の被害にあったの?

 

従兄弟の刑事に連絡を取った。

 

「ねぇ、どういうことですか?」

 

「どういうことって?」

 

「なんで、鳥井君を虐めたの?」

 

「え?!アイツの知り合いなのか?」

 

「うん…」

 

アイツ呼ばわり…えん罪じゃないのか?

 

「なんで、入院したの?」

 

「入院?知らないよ。どこの病院だ?」

 

「何の容疑?」

 

「アイツは叩けば埃は出るんだ」

 

「そうか…お兄ちゃんの従兄弟ってバレて…私を避けているのかな…」

 

「おい…何で泣いているんだ…」

 

スマホを手にして号泣してしまった。

 

「まさか、お前…いいか?警察の関係者は、犯罪者と付き合えないんだぞ。心に刻んでおけ!」

 

そういうと、通話が切れた。そんな…

 

 

 

 

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