---鳥井亜樹---
ここはどこだ?俺は死んだはずだけど…夢だったのか?隣の布団には夏美が寝ていた。
「目覚めたのか?」
知らない男性がいた。歳は俺より若そうである。
「ここは?君は誰?」
「ここか?ここは聖域と呼ばれる、生者と死者が共存している世界だ。で、僕は聖域の賢者と呼ばれている。このエリアの責任者だよ」
聖域?聞いたことが無いけど。
「亜樹と、自殺した夏美は地獄行き決定だ」
それはそうだろうな。あんだけ殺して、罪をまったく償っていないし。
「だけど、亜樹には情状酌量の余地はある。地獄での罰を完全に無くすことは出来ないが、軽減することは出来る。1つだけ条件を飲んでくれたら、二人の地獄での罰は軽減してやる。どうする?」
俺はいいけど、夏美は助けたい。
「夏美は地獄行きは無しにしてくれ。それならば、条件を飲む」
「そうか。では、まず亜樹だけ1000年程地獄で懲役刑を受けてこい。ここでのロスタイムは5分程度だよ」
1000年が5分に縮まるのか?次の瞬間、俺は地獄にいた。そして、5分が1000年に増えるらしい。はぁ?1000年も懲役なのか??
地獄は朝と昼とかの概念が無いようで、24時間365日1000年間、休み無く働くようだ。食事も無いし、喰ったり飲んだりしないため、トイレ休憩もない。どんだけブラックな職場なんだ?
俺の仕事は賽の河原での石積みと、三途の川の清掃と、あの世の花畑の維持・管理だそうだ。身を粉にして働く。サボったり休んだりすると、俺の罪が脳裏で流れ、これが懲役だと言うことを思い出させてくれた。
◇
「どうだった?」
無心で働いたせいか、あっと言う間に、あの部屋に戻っていた。
「まぁ、どうにか」
「亜樹の働きぶりに、閻魔が感動していたぞ。で、閻魔の恩赦により800年で済んだようだ」
閻魔?閻魔大王か?会ったことが無いなぁ。
「次にここで5年ほど、働いて貰う。リアルタイムでのロスは1ヶ月程度かな」
ならいいかな。って
「俺達、生き返れるんですか?」
「まぁ、結果的にはな」
なんか嬉しい。まだ生きられるのか。蘭、美和子、瞳は元気かな?
「将来的には、亜樹の魂を弟子に貰う。それが条件だ。夏美の魂も何かあれば使用する」
魂を取られるのか?それって、どうなんだ?
「お前、魂状態なんだが…」
そうなんだ。
「魂を他人に差し出すと、お前は消える。どうだ?」
「構わないですよ。夏美が生き返るなら」
「では、そういうことで…1つの身体に1つの魂と2つの人格だ。人間的に言うと多重神格になる。亜樹も夏美もだ」
それは、不便かな?
「俺のもう1つの人格って?」
「この世を救う為に人間で無くなり、人間により殺された神代亘っていう陰陽師だ。年齢は生き返った日に16歳になる」
歳も近いし、何とかなるかな?
「夏美の方は、九尾の狐である九重という僕の妹が宿る。これはサポート要員だ」
サポーターがいるなら、どうにかなりそうだ。
「あと、記憶にロックを掛ける。だが鍵に出逢えば、徐々に解かれる」
俺は俺で無い状況で生き返るのか?それは、蘭。美和子、瞳とは生きられないってことか?あぁ、紅子も心配だ。
「偽の過去情報を設定しておく。いきなり15歳で転生では、おかしいから」
いきなり転生?
「神様転生?」
「僕は僕が神様であることを否定しているから、それは違う」
賢者様転生かぁ…どうなるんだ?なんか、ワクワクするんだけど…不安も多い。