証拠*
為す術も無く剣姫アイズが、俺を睨んでいる。
「性懲りも無く、俺に虐められに来たのか?」
「ふざけるな!お前だけは許さない」
今日の俺はタコ魔神である。八本の腕でアイズを翻弄していく。何度も地面に叩き付けていく。アイズの心が折れるまで。
「くそっ!」
目に涙を浮かべ始めたアイズ。では。四本の腕で、彼女の四肢を拘束し、左右に引っ張る。
「痛い…」
残りの4本の腕で、彼女のお召し物を剥がし、全身に吸盤触手攻撃を仕掛けていく。その刺激に、顔を紅潮させて、恍惚な表情を浮かべていく剣姫アイズ。
「魔物に犯されるのが、好きなんだろ?」
耳元で囁く俺。
「な訳有るか…」
言葉とは裏腹に、刺激を愉しんでいる彼女の身体。クネクネと腰が踊っている。
「なぁ、ここから出ている液体はなんだ?」
股間の割れ目に腕を巻き付け、無数の吸盤で割れ目の中を攻撃していく。
「それは…」
◇
「亜樹さんって、こんな鬼畜な作品も書かれているのですか…」
幽奈の声で我に返った俺。いつの間にか、幽奈、狭霧が俺の書き上げたばかりのSSに目を通していた。
「お前、溜まりすぎか?あの純愛ラノベの作者と思えない」
って狭霧が、俺の作品集を俺の前に置いた。サインを入れろってことか?
「まぁ、溜まった欲望をSSで抜かないと、本業に影響が出るからな」
プロとしての作品では鬼畜性は出せない。純愛ラノベを書いている為だ。
「お前、女性をこんな視線で見ているのか?」
狭霧に訊かれた。
「見てはいないが、征服欲はあるよ。だけど…」
夏美に視線を落とす俺。すやすやと寝ている。
「問題を起こすと、こいつに迷惑が掛かる。だから、SSで発散しているんだ」
「う~ん、私でよければ、征服しても良いですよ」
って、幽奈。
「幽霊相手に陵辱って、犯罪になりませんから」
真っ赤な顔で、大胆なことを言う幽奈。だが、一理有る。
バキ!
不埒な考えをした俺に、狭霧の鉄拳制裁が入った。
「幽奈にはするな!」
「狭霧ならいいのか?」
「何?そういう意味では無い…」
真っ赤な顔で狼狽える狭霧。
「バカな考えを持つな…私は人間だぞ…」
「しないよ。夏美を一人には出来ない」
犯罪行為で、留置場はゴメンである。
◇
目が覚めると、幽奈が全裸で抱きついていた。狭霧は半裸で抱きついているし。何かしようって気が起きない。俺は異常なのか?こんな可愛い子に抱きつかれているのに。
「おはよう、お兄ちゃん」
って、夏美。
「おお、おはよう」
夏美が、二人を排除してくれ、俺と二人で朝風呂へ。二人と言っても、男女別の風呂場ではあるけど。朝から温泉っていいものだ。疲れが吹き飛ぶ感じだ。
そして、朝食へ…仲居さんの手料理、まさに宿屋の朝飯って感じの焼き魚定食である。
「亜樹!」
飯を食っていたら、狭霧に声を掛けられた。
「どうしたんだ?」
「どうしたじゃないだろ…なんで、起こしてくれないんだ。遅刻するだろ!」
あぁ、学校へ行く時間だな。
「あぁ、忘れていました。今日から、亜樹君と夏美ちゃんも学校ですよ」
って、仲居さん。
「俺達中学出ていませんけど…」
「大丈夫です。私の旧友が理事長をしている高校ですので、問題は無いですよ」
って、制服をプレゼントしてくれた。
「え?私も行っていいんですか?」
夏美が仲居さんに縋り付いている。
「えぇ、兄妹仲良く、学校生活をしてくださいね。私は、書き下ろしたばかりの作品が読めることが嬉しいです」
俺の作品のファンなので、出版前の原稿が読めることに、喜びを感じているらしい。
◇
学校…中学は俺が登校拒否していた。登校拒否して、小説を書いていたら、賞を貰いデビューしたのだ。俺の夢見る日常を書いた小説である。家族がいて、姉妹がいて、ごく普通に毎日を過ごすだけの話である。
夏美は始めての学生である。いや、俺が小学生の時、一緒に登校していたけど…
実の所、俺には記憶が無い。夏美がいつ妹になったか、記憶が曖昧である。両親の事も記憶が曖昧で、姉はいないって記憶だけが、はっきりとしている。両親の事故の内容を知らない。いつ事故に遭ったのかも、曖昧である。俺は何者なのだろうか?俺は俺を知らないのだった。
仲居さんの紹介で、湯煙高校に通うことになった俺達。夏美と並んで登校する。新鮮である。いつも背中に貼り付いていた記憶しか無いし。それが、いつからの記憶だったか、あいまいであるけど。
夏美と同じクラスらしい。で、転校生扱いらしい。担任の先生と、教室に入り、自己紹介をした。
「鳥井亜樹です。コイツは妹の鳥井夏美です。よろしく」
「よろしくお願いします。ブラコンの夏美です」
って、ブラコン宣言している夏美。みんな引いているんですが…まぁ、いいか。友達なんか、作る気は無いし。
俺と夏美は最後列で並んだ席になった。授業は、小卒なのだが、何故かついて行ける。何故だ?
「お兄ちゃん、深く考えちゃダメだよ」
って、夏美。まぁ、そうなんだが…。夏美は相手の心が読める能力がある。なので、隠し事は出来ない。
休み時間、一人の男子が近寄って来た。
「俺は兵藤聡だ。わからないことがあったら、何でも訊いてくれ」
って…
「あぁ、そうする」
特に知りたいことは無い。
「ねぇ、あの子、誰?」
夏美が訊いた。夏美の指差した先には、ヘアピンをつけたカーディナルレッドのミディアムヘアーの少女がいた。夏美より胸が大きいようだ。
「おぉ、お目が高いですねぇ、我が校のアイドル的存在の宮崎 千紗希さんですよ」
「ふ~ん…」
夏美が何かに気が付いたようだ。霊に取り憑かれているのか?夏美はそういうのに敏感であるから。
◇
帰り道、その千紗希が待ち伏せをしていた。
「ねぇ、私に何か言いたいことでもあるの?」
夏美に訊いた。休み時間の会話が聞こえたようだ。
「監視されているよ。低級霊にね」
って、夏美。
「見えるの?」
頷く夏美。何故か、俺にも見えるんだが…
「ねぇ、祓えるの?」
必死に懇願する千紗希。
「お兄ちゃんの許可があれば」
千紗希が俺を見つめた。しょうが無いか。
「夏美、祓ってやれ」
「うん♪」
夏美は嬉しそうに手刀で何かを断ち切った。俺の頼みを叶えることが嬉しい、変な妹である。
「でも、元を立たないとダメだよ」
「元?う~ん…ちょっと、一緒に来て」
って、俺達は千紗希の部屋に連れ込まれた。千紗希の部屋には大量の人形があった。人形自体に霊は宿っていないのか、夏美は何も言わない。そうなると呪詛の札系か?人形を一つ一つ手にしていくと、気になる一体があった。
「千紗希、コイツに呪詛の札が仕込まれているようだぞ」
「呪詛の札?」
夏美には解除出来ないようだ。何も言わないし。どうするかな。って、考えていると空気が揺らめいた。札が発動したようだ。
部屋にある人形が一斉に、千紗希の服が斬り刻み始めた。俺よりもド変態がいるのか?現実世界で、これはダメだろう。俺でもやろうと思っていないのに。徐々に全裸になっていく千紗希。脳内保存でもしておくか?って、術者を特定しないとな。
「夏美、式神を」
「お兄ちゃんの方が向いているよ」
そうなのか?髪の毛を2、3本抜いて、霊力のラインを追わせる。髪の毛は人型になり、ラインを追っていく。いつ、こんな能力を得たんだ?
「じゃ、俺達も行こうか。夏美、ラインを斬っておいて」
「はぁ~い」
手刀で何かを斬ると、千紗希は全裸で、床に倒れ込んだ。俺は、人形に埋め込まれた札を灰にした。俺には浄化能力があるのだと夏美が言う。なので、あぁ言う札類は念じるだけで灰に出来るらしい。俺は人間なんだよな?少し疑問を持つ時はあるけど。
◇
式神もどきからの連絡で、公園に向かうとフードを被った怪しい奴がいた。
「逃げられないよ!」
夏美が強力な結界で、俺達3人を囲った。逃げようとする怪しい奴は逃げられないで、パニクっている。
「うん?お兄ちゃん、コイツ狸だよ。狸鍋にしようよ♪」
って、狐って狸の親戚では無いのか?共食いには成らないのか?少し不安である。
「違うよ。だから、共食いにはならないよ」
なるほど。狸鍋か…幽奈は喜ぶかな?
「待って!ボクは…悪い狸では無いです」
って、小学生くらいの少女姿になった狸。
「信楽 こゆずって、言います。一人前の変化タヌキになるため、山から人里に修行に来たのですけど、千紗希ちゃんのような身体になりたくて…日々観察、研鑽をしていました」
って…コイツから悪意は感じられない。エロさも感じ無い。真面目に、千紗希の身体の研究をしていたようだ。
「だけど、放置は出来ない。もう悪さが出来ないようにする。いいな?」
って、ゆらぎ荘へ連行した。仲居さんに事情を話すと、仲居さんが飼うという。一人前のお女中狸に仕上げたいらしい。まぁ、懲役刑って感じだ。
◇
翌日、帰り道で再び、千紗希の待ち伏せを食らった。
「まだ、何かあるのか?」
「ねぇ、見たよね?」
「細部までは見ていないぞ」
俺の言葉で真っ赤な顔になる千紗希。
「見たんだよね?」
「だから、割れ目の中は見ていないって」
手で触れないでも見える、体表面だけしか見えていなかったし。
「見たんだね…ねぇ、責任を取ってよ。異性に見せた事無いのに…見たんだから」
「責任って?」
「女性の裸を見た責任よ!」
うん?妙なことを言う千紗希。
「うん?毎朝見ているが…千紗希くらいだぞ。そんな事を言うのは」
幽奈は毎朝全裸だし、狭霧は何故か半裸だし。
「毎朝…見ているの…誰のを?」
唖然としている千紗希。
「同居している地縛霊と、同じアパートの住民だけど…」
「地縛霊と同居?はぁ?」
「説明は難しい。今夜泊まれよ。明日の朝、わかるから」
って、夏美と俺で千紗希を持ち帰った。千紗希の家には、夏美の部屋でお泊まりと伝えさせて…
◇
「これって…どんな状況?」
翌朝…夏美と共に寝ていた千紗希が、目を覚ましたようだ。今朝も全裸1名半裸1名が俺に抱きついて寝ている。
「よぉ、おはよう。千紗希、この地縛霊は見えるか?」
左側にいる幽奈の頭を撫でる俺。
「見えないです」
まぁ、普通は見えないよな。添い寝をしている二人を起こさないように、布団から抜け出し、千紗希の頭の上に手を翳した。これで、一時的に見えない物が見えるはずだ。
「えっ!」
真っ赤な顔に染まっていく千紗希。全裸の幽奈を確認が出来たようだ。
「毎朝、こんな感じだよ。で、不埒なマネをすると夏美が恐いしな」
夏美をオンブして、あやしておく。コイツ、キレると危険が一杯だし。
「お兄ちゃん、幽奈ちゃんと千紗希ちゃんなら、問題は無いよ」
って、夏美がお墨付きをくれた。それは狭霧はダメってことだな。
「問題無いって…夏美ちゃんの許しが…」
更に真っ赤になっていく千紗希。
「おい!幽奈、朝だぞ」
幽奈を起こす。
「あぁ、おはようございます…って、全裸ですね、今朝も…すみません」
恥ずかしそうに顔を赤らめて、俯く幽奈。かわいい…だけど、地縛霊で有るのが難点である。幽奈から触る分には感じるが、俺から触ると透過してしまう理不尽さ。
「いいよ。慣れたし、夏美も幽奈ならいいって」
「そうなんだ、夏美ちゃん、ありがとう」
背中にいる夏美が、何となく照れている感じだ。
「じゃ、千紗希、朝風呂へ行こう。あぁ、男女別だから、問題は無い」
女湯に行く千紗希と幽奈に夏美を任せ、俺は男湯へと消えた。
---工藤新一---
ワトソン役に、高木刑事の従兄弟である、愛称デコがなってくれ、亜樹の最期を調査し始めた。
「従兄弟から情報は取れなかったよ」
「そうなのか…なぁ、あの家に入れるか?」
「入れるけど…亜樹君のお姉さんが住んでいるから」
「そうか…アイツの最後の作品を、スマホで撮影してきてくれないか?」
もし、誰かに会っていれば、スケッチを描いている可能性が高い。
「うん、わかった。それが、手がかりなんですね」
嬉しそうに、デコが去って行った。
翌日、デコに呼び出された。
「この女性のデッサンが最後の作品だそうです」
黒髪で中々のスタイルである。女優か?
「この人に殺されたの?」
デコの顔が強張っていく。
「可能性は否定しない。だけど、彼女だと特定は出来ない。俺の方も物証を手に入れて来た」
ビニール袋に入っている銃弾を2発見せた。亜樹の墓から拝借してきた。なんで、こんな重大な証拠を、あんな場所に入れたんだ?
「それって、亜樹君達を殺した銃弾?」
「そうだよ。これに付いているライフルマークから、持ち主を探って見る。たぶん、持ち主は女性だ」
女性が隠し持つことが多い、小型の拳銃の弾である。
「ねぇ、分かったら、犯人を教えてください」
「あぁ、デコは俺のワトソンだからな」
◇
阿笠博士の家のパソコンから、警察のデーターベースに接続し、ライフルマークから持ち主を検索してみた。ダメ元であったが、ヒットした。怪盗キャッツアイが過去に放った銃弾と一致した。
そうなると、亜樹の家に、安芸桜関連のお宝を盗みに入って、亜樹と出くわせたのか?いや、亜樹に限ってそれは無いか。逆に制圧する気がする。じゃ、どんなシチュエーションが考えられるんだ?
待てよ…キャッツアイって、ドイツの画家であるミケール・ハインツの作品のみを狙う盗賊だよな。なんで、安芸桜の作品に手を出そうとしたんだ?誰かに、強請られて、盗みに入ったのか?何か、証拠を掴まれたのか?そんなことが出来る人物は、警察関係者か…何かの証拠を手に入れて、証拠物件から排除した上で、脅迫材料にした可能性がある。
これって、思ったより、闇が深そうだぞ。デコを危険に晒す訳にいかねぇな。どうするか…