---高木渉---
従兄弟のデコを連れ、美和子さんの元を訪ねた。彼女はまだ入院をしている。
「高木…何をしに来た?」
美和子さんの瞼も真っ赤に腫れていた。
「美和子さん…」
「デコちゃん…何をしに来たの?」
俺に対してとは違い、デコには優しい口調になった美和子さん。
「亜樹君の最期…美和子さんが一緒だったんですか?」
「あぁ…そのことか…いや、最期の時は、たぶん、夏美ちゃんだけじゃないかな…私が見たのは亜樹君と夏美ちゃんの…二人共幸せそうだったよ」
窓の無い部屋で遠くを見るような動作で、脳裏に浮かぶ光景を話しているようだ。
「幸せそうだったんですか…ねぇ、亜樹君は生きていますよね?!」
デコが美和子さんに縋り、質問をした。
「そうだね。生きていて欲しい…私は思うんだよ。亜樹君の手が血で汚れたって知った時に、刑事を辞めて、彼と一緒になれば良かったって。そうすれば、今も…」
デコを抱き寄せ、咽ぶように泣き始めた美和子さん…もう、亜樹君はいないってことか…
---鳥井亜樹---
金曜の夜、雪姫先生と組んず解れつ…そして、仕事前に朝風呂、そして飯だ。
最近、思うのだが、男湯である必要性はあるのだろうか?千紗希、雪乃が全裸で両隣にいるし、狭霧、夏凜すらも全裸で目の前にいる。う~ん…これって、混浴では?
「亜樹君のタイミングでいいからね」
って、千紗希。何のタイミングだ?
そして、飯…のはずが、朝食の準備がされていなかった。その上、玄関の方が騒がしい。玄関へと向かうと…
「ここを立ち退け!」
知らない黒服の男達が、仲居さんに詰め寄っている。
「なんの権利ですか?」
「雪ノ下グループに楯突くのか?ここは雪ノ下グループの保養所にすることに決定したんだ」
なんか、無茶なことを言っている。決定権は仲居さんにあるのだけど。
「あっ!」
雪乃の具合が悪そうだ。
「夏美、幽奈、雪乃を頼む」
「あい♪」
「わかりました」
「ここは立ち退きませんよ!」
「そうですか。では力尽くで!」
「しょうがないですね。『運勢操作・惹禍』」
仲居さんが能力を発動したようだ。黒服達のスマホが鳴りだし…なにやら、不運が舞い降りたようだ。
「わかりました。裁判所へ申し立てをいたします」
弁護士バッチをつけている男性が、そう説明している。
「申し立てても無駄ですよ。ここは、自治区ですから」
「そんな物は裁判所では認めません。では…」
仲居さんが、手にしている名刺を覗きこむと、『葉山』って弁護士のようだ。葉山?まさか、あの葉山か?俺と雪姫先生にケンカを売っている…その上、仲居さんまで…許せぬ!
「よぉ!亜樹、元気そうだな」
聖域の賢者様がいらした。このタイミングで…何かやらかした気がする。
「ちとせも元気そうだな」
「はい♪賢者様のお弟子さんが2名もいらっしゃいますので、ちとせは幸せです」
仲居さんを名前呼びする賢者様。
「今日は、どのような用件ですか?」
「亜樹にプレゼントだ」
淡い光を放つ火の玉を取りだし、俺の身体に近づけ、
『入魂!』
そう叫ぶと、その玉は俺の身体へ溶け込んだ。
「これで、僕の留守中も動けるぞ」
聖域の賢者様…その正体は、俺の魂の代わりをしてくれている荒ぶる神様である。
「今までも動けてましたよね?」
「まぁ、僕のコピー体を留守番にしていたからな。その分、エネルギー効率が悪かったと言うか」
あぁ、大抵寝ていますものね…
「で、この魂は?」
賢者様でも、魂は作れないはず。
「本物の鳥井亜樹の魂だ。地獄で年季奉公が終わって、お前の魂になることを了承してくれた。お前的には、多少生きたい気持ちが増える程度だ」
そう…僕は鳥井亜樹本人ではない。本名は別にあるのだが、その筋では有名で死んだ事になっているので、非常時以外は名乗れないのであった。
「で、記憶は戻ったのか?」
「お姉ちゃん…会いたいです。どこにいるのですか?」
「それは、お前が見つけろ。じゃないと、記憶は正しく甦らない。あぁ、ちなみに、彼女の方は、記憶が戻ったようだ。まぁ、約束が守れるといいな♪」
俺を見る賢者様の視線は、いつも暖かい。鬼だとか鬼畜だとか、言われる所以がわからない程に…
「で、ちとせよ。アイツらは、僕にまかせてくれ」
うっ!賢者様が悪人顔になってきている。鬼畜になるのか…
「うっ!何をやらかすのですか?」
仲居さんも、何かを危惧している。賢者様の行為は問題が多いから…やり過ぎるというか…
「愚かな生き物に、わからせないとな。あいつらの最大の武器である金は、僕には通用しないことを♪」
賢者様曰く、『人間は愚かで醜い生き物である。だから、無垢な人間は貴重なのだ』と。
◇
1週間後、事態は動いた。雪ノ下グループ傘下の企業全てが、倒産したそうだ。何をやらかしたんだ、賢者様は…
「おい!葉山。お前の家も大変なんじゃないか?お前の父親は、雪ノ下家の顧問弁護士だったよな」
って、雪姫先生。賢者様とグルかな。葉山は顔を伏せている。何も言い返せない。このクラスの元ドン。
「雪乃、お前は心配するな。亜樹がどうにかしてくれるぞ」
って…どうして、そうなる?
「先生!どういう意味ですか?」
と、質問した俺。頭を抱える先生。なんでよ~。
「雪乃のフルネームを言ってみろ!」
雪乃のフルネーム?はて?脳裏には全裸しか浮かばない。これはマズいなぁ。
「まったく、お前と来たら…雪ノ下雪乃だ。こう聞いて何か浮かばないか?」
雪ノ下雪乃?そんな名前だった気がする。が…だから、どうした?
「ここまでヒントを出して、わからないのか?まったく…」
先生がブツブツ言っている。う~ん…
「雪乃の父親の会社が倒産したんだよ!」
あっ!そういうことか…
「で、お前が雪乃の代わりに、家賃を出してやっているんだろ?だから、お前がいれば、雪乃が生きていけるってことだ。お前は、ヤルことしか考えていないの?」
ビンゴだな…
「でも、雪乃には手を出してませんよ!」
「には?」
悪人顔である。何か期待通りの地雷を踏みましたか?
「はぁ~」
頭を抱えている雪姫先生…あぁ、頭痛の種の地雷か…
◇
そして部活…やたらに雪乃を心配している結衣。
「大丈夫よ。先生が言っていたでしょ?亜樹君が護ってくれるもの」
「だって、こいつ、ケダモノだよ!」
ケダモノの件は、ビンゴだ。だけど、目の前で言われると凹むなぁ。
「見境無く手は出さないわ。まだ、私も千紗希も手を出されていないし。自然な流れを大切にしているのよ」
苦笑いしている狭霧と夏凜。菜々は俺に纏わり付いて、暑苦しい。幽奈無しの菜々には興味が無いんだけどな。
コンコン!
扉がノックされ、違う制服の女子2名が入って来た。他校の生徒にも奉仕なのか?
「中等部の一色 いろはです」
「同じく、中等部の比企谷 小町です」
中等部?
「今日はどう言った御用件ですか?」
雪乃が応対した。
「自由研究で、このエリアの地図を調べているんですが、ここのエリアが空白なんですよ」
って、いろはの指しているエリア…そこは、マズいだろう…
「で、調査に協力してもらえませんか?」
「断る!」
俺が声を上げた。夏美以外が俺を見つめている。
「どうしてですか?」
小町が詰め寄ってきた。
「そこは、危険だからだ」
「危険?そこに何があるか知っているのですか?」
「あぁ、知っているよ。だから、断る。危険すぎる」
そこは聖域への入口である。こんな若い女性が入った日には、賢者様の玩具にされると思う。
「どう危険なんですか?」
「ケダモノの巣だ!」
「ケダモノ?亜樹君よりも?」
「あぁ、俺よりもだ」
俺の師匠だぞ…俺が勝てる訳無いだろうに。
「男なのにビビリなんですね」
「あぁ、そうだ」
賢者様の怖さを知れば、誰でもビビると思うぞ。屍姦マニアだし…
「こんな男は放って置いて、先輩達、お願いします」
って、頼み込む小町といろは。
「亜樹がヤバいって言っているんだ。相当ヤバいと思うぞ」
と、狭霧。
「この中で、一番の戦力の亜樹がダメな相手なんだろ?止めた方がいいな」
と、夏凜。
「わかったわ。まかせて♪」
って、結衣が受諾しているし…おいおい。
「じゃ、今週の土曜に、調査へ行きましょう」
って、日取りも決めているぞ…どうするんだ。専門家の意見を聞け!
◇
そして、ゆらぎ荘の男湯…俺、夏凜、狭霧、九郎丸、雪乃がいる。九郎丸以外、全員全裸である。
「何があるんだ?」
夏凜が訊いてきた。
「聖域への入口だ」
「「何!」」
狭霧と九郎丸が驚いている。まぁ、専門家だものな。
「いたずらに近寄れば、命の保証はない。たぶん、生きて帰れるのは俺だけだよ」
「どうして?」
雪乃に訊かれた。
「俺は、聖域産まれだから…通行手形を持っている」
「それは、つまり…最悪、亜樹君とも戦うことを想定しないとダメってこと?」
九郎丸に訊かれた。頷く俺。
「徴兵制度は無いけど…ルールは守らないと…」
俺自身が危ない。いや、亜樹の魂が危険だ。仮釈放中だし。亜樹には感謝している。亜樹のスキル、知識のお陰で、俺は普通の生活が送れているからだ。本来の僕は、修行、鍛錬に明け暮れ、死ぬまで、普通の生活をしたことが無かった。他の人間とのコミュニケーションも、あまりして来なかった。今、こうして、ガールフレンド、セフレがいるのは、亜樹のスキルの賜り物である。
「結衣が受諾して、平塚先生も来るらしいし。もう、後戻りは出来ないわ」
って、雪乃。まったく、あのやっはろーは何をしているんだ?だから、人間は愚かって言われるんだよ。
「悪いけど、痛い目に遭ってくれ。もうそれしか無い。命だけは助けてもらうように、懇願はしてみる」
「亜樹でもダメなのか?」
「僕は弟子だよ。師匠超えは出来ない」
「僕?」
しまった。一人称を間違えた…凹む俺。魂の影響か?
「あぁ、僕は神代亘だ」
「何!」
「鳥井亜樹は日常生活する上の名前だよ」
魂が馴染んでくれば、日常生活は亜樹にチェンジするつもりである。亜樹には生きて欲しいから。もっと生きて欲しいからだ。僕にとって亜樹は英雄である。愛する者達を護るために、手を汚し続けて…無念だったろうな。僕よりも…
「記憶は戻っているの?」
幽奈に訊かれた。え?なんで幽奈がそれを?
「たまにね。僕は遠い昔に約束をした、お姉さんを探しているだけ…他に何も望まない」
「亘君…」
幽奈が悲しそうな顔で、僕の顔を見つめていた。どうしたんだ?
「でも、亜樹は、生きる愉しさを満喫する為だけに生きてる。だから、ここで終われないんだ。そんな僕が、賢者様相手に戦える訳ないだろう?」
「ねぇ、そのお姉さんの名前を覚えている?」
幽奈が訊いてきた。どうして、そうなる?
「天狐幻流斎だよ。師匠である賢者様が神滅妖幻斎を名乗っていて、賢者様の妹が九尾の狐だからね」
幽奈が泣き笑い顔で、何度も頷いている。どうしたんだ?今日の幽奈はおかしいぞ。
◇
そして、当日の朝…聖域への入口は異様な雰囲気であった。なぜか、ゆらぎ荘に来た黒服軍団に、土建屋集団がいた。
「いろは、これはどういうことだ?」
「知らない…こんな人達に話しをしていないよ」
誰の知り合いだ?
「いい?地図に無いってことは、測量をした者の土地になるのよ。この一体を雪ノ下の再建に使うわよ」
「おぉ!」
雪ノ下家の関係者のようだ。
「あの女は誰だ?」
「雪ノ下陽乃だ。雪乃の姉に当たる。性格は最悪だぞ」
って、静。
「やぁ、ビビリの鳥井君」
葉山だ。どうしてここに?
「結衣さんから聞いて、鳥井君がビビっているので、代わりに付いて来てってね」
あぁ~、やっはろーが呼んだのか。あのKY女め…
「じゃ、お嬢様方、行きましょう」
葉山と雪乃の姉を先頭に、黒服、土建屋、ブルトーザー、トラックが続き、小町といろはが続いていく。
「どうする、亜樹?」
狭霧に訊かれた。
「ここで、待とう。静は行くな!死ぬぞ」
「そんなに危険なのか?」
「あぁ、俺がビビる程にな。重機と共に入って、生きて出られると思っているのか?一応、鎮守の杜なんだけど」
---比企谷 小町---
5分程進むと、それは起きた。男性だけが苦しみだした。重機が消えていく。これは、何?何が起きているの?
「何?これは…」
葉山先輩が藻掻いている。
「いやぁぁぁぁぁ~!」
雪ノ下先輩が叫び声を上げた。何かに襲われているようだ。押し倒されて、服を引き裂かれ、無理ヤリ…いろはも私も足が竦んで動けない。
「助けてくれぇ~!」
葉山先輩が私達に手を伸ばすが、奥へと引き摺り込まれていく。
「いろは、小町、無事だな」
鳥井先輩だ。私達を担ぎ上げた。
「この二人は返して貰いますよ。無事ってことは、そういうことですよね」
何も起きない。ただ、雪ノ下先輩達のいた辺りは、黒いモヤで覆われていた。
「帰るぞ。生きている間に…」
来た道を戻っていく鳥井先輩。
◇
いつ意識が飛んだのだろうか?知らない場所で意識が戻った。
「ここは…」
「あぁ、意識が戻ったのか。ここはゆらぎ荘だ。私と亜樹が下宿している所だ」
雨野先輩が答えてくれた。鳥井先輩は、有り得ない体勢で寝ていた。まるで見えない誰かに膝枕をされている様だ。
「亜樹は当分起きない。お前達を護る為に、力を使い切ったようだ」
私達を護る為?力を?
いろははまだダウンしている。あれ?由比ヶ浜先輩は?
「由比ヶ浜先輩は?」
「お前といろはだけしか救い出せなかった。諦めろ。だから、亜樹が止めろって言ったのに…」
鳥井先輩は、霊能者のような者だそうで、あぁいう場所での対処を知っていたそうだ。
「あの場所は?」
「鎮守の杜だそうだ。地図に無いからと言って、所有者がいない訳では無い。あの場所は神社の土地だ」
「神社?」
「あの先に神社があるそうだ。お前達、あやか市について、勉強をしろ。それが最優先だぞ」
あやか市について?住んでいる区域についてかぁ。
---由比ヶ浜結衣---
得体の知れない者から、幾重にも触手が伸び、全身を揉まれている。
「どうしたよ。さっきまでの元気は?」
股間に口をあてがい、私の体液を飲む男。口、乳首からも体液を吸い、脇の下、谷間を舐めていく。その度に股間から体液が湧き出ていく。
「ミイラになるまで吸ってやるよ」
「やめてぇぇぇぇぇ~!」
雪ノ下先輩は、異形なる者達に陵辱行為をされている。
「人間とのハーフか。どんな子供が生まれるかな?」
「誰の子供が出るか、賭けない?」
「もうやめてください」
「「やだ!」」
「ここはどこですか?」
私を啜っている男に訊いた。
「訊いてどうする?ミイラになるまで、返さないよ」
教えてくれないようだ。
「しかし、まだまだ出てくるなぁ。溜まりすぎだな」
助けて…
「助けは来ない。お前は亜樹の忠告を無視しただろ?そして、被害を拡大させた極悪人だ」
亜樹君を知っているのか…どうして?ケダモノ繋がりか?
「その通り。ケダモノ繋がりだ。改心すれば返してやらんことも無い」
「します!」
即答の私。え?!有り得ない…下腹部から体内に舌が入って来た。子宮口をダイレクトで舐めているようだ。位置的に…
「ダメ…」
舌が子宮に潜入していく。
「そこはダメ…お願い…」
「イヤな事をしないと、罰にならんだろ?」
そうだけど…あっ!一番の奥底に舌が到達したイメージが浮かんだ。終わった…彼の唾液が、卵管に浸透していく。侵されていく卵巣…
「お前への罰は、亜樹専用の肉便器だ。亜樹以外とは交われない。亜樹と1000回ほど交わらないと、子供の産める身体には戻らない。その代わり、生かして返してやる。生き地獄を味わえ!」
次の瞬間、眩しい光に覆われて、光が霧散すると、知らない場所にいた。
「結衣!」
遠くで雪乃の声が聞こえた。