---妃英里---
あやか温泉へと旅立つ日がせまっていた。蘭が楽しそうである。私とあの人で、あの探偵小僧が近寄らないように、警戒をしていたが、冴子さんから探偵小僧達の身柄を押さえたと、連絡があった。何かの犯罪に巻き込まれたようだ。
『そちらは変わり無いかしら?』
「えぇ、特にないけど、娘と温泉旅行へ行く予定なのよ。家族3人でね」
『へぇ~、いいわねぇ。そうか、蘭ちゃんは動けるようになったのね』
彼女の相棒である美和子さんは、まだ立ち直れていない。大好きだった刑事の職を失うらしい。
「まぁ、進展があれば、お知らせします」
『こちらも、知らせるわ。墓荒しの件について、調べる予定だからね』
亜樹君の死んだ証拠…高校生探偵達は、それを奪い、そしてロストさせてしまった。生きていた証であった死んだ証拠を…涙が頬を伝え落ちていく。亜樹君は何の為に生まれ、生きて、死んだのだろうか。そこに亜樹君の幸せはあったのであろうか?
通話の切れたスマホを耳に当てながら、たたずんでいた。その姿を、蘭が心配そうに見つめている。
「お母さん、大丈夫?」
「えぇ、大丈夫よ。ちょっと、昔のことを思い出しちゃってね」
娘は亜樹君が死んだ事を、完全に忘れていた。彼女の心が、自己防衛の為に、記憶を消したのかもしれない。デコちゃんが見つけた安らぎを、亜樹君との再会と考えている蘭。あやか温泉へ行くのが怖い。デコちゃんは何を見つけたのだろうか?亜樹君の生きた証なのか?それとも…
---工藤新一---
警察病院のベッドの上…出入り口を警察官が見張っている。逃亡の恐れありと、思われているようだ。しかし、何の為に、あんなことをしたんだ?犯人像が浮かばない。あんなことをして、何のメリットがあるんだ?世良は服部と、俺は和葉と…何らかのメッセージがあるはずだ、そのこと事態にな。
『和葉は気持ちが良かったか?』
脳裏に響く声…何者だ?周囲を見るが誰もいない。
『まぁ、推理しまくってみな。お前に真実が見えるとは思えないけどな』
声は、耳からで無く、脳に直接聞こえている気がする。
『死ぬ者がいれば、生まれる者もいる。それが魂のリサイクルシステムだよ。深く考えるな、愚か者よ』
俺を愚か者だと…何者だ、コイツは…
---リアス・グレモリー---
全身の震えが止まらない。痙攣しているようだ。限界だ…四六時中、調教されているから。身体の休まる暇、精神の安息な時間がまるで無いから。
「もう…ダメです」
ダメと言いながら、更に激しい刺激を受け入れている私の身体。聖なる十字架で乳首を突かれて、濡れていく。ものスゴく痛いけど、身体は気持ち良いと判断しているようだ。
「悪魔なのに、十字架責めで濡れるのか…ここはどうだ?」
割れ目を十字架の先端でなぞり、敏感な部分へ押し当てて来た。
「いやぁぁぁぁぁ~!」
頭の中が真っ白になっていく。灰になりロストするのか。ここまでなのか…
◇
腰が痙攣していることに気づいた。まだ、生きている。目の前には大きなシリンダーを持っている彼がいる。シリンダーからは聖なるオーラが漏れ出ている。あれは聖水だな。ここまでか…シリンダーの先端を体内に入れ、徐々に中身を私の中へ注入していく。
「あっ…あぁぁぁぁぁ~!」
全身が熱くなっていく。体内被曝だ…マズい…。
「助けて…ごめんなさい…」
脳裏に浮かぶ言葉を口にしていく。思考力は既にない…2本目…3本目…一体、どの位の聖水を注入するんだ…
◇
「リアスさん…」
耳元でアーシアの声…ここは天国か?地獄か?
「リアスさん…もう大丈夫ですよ。脱悪魔の儀式は終わりましたから」
目の前には笑顔のアーシアがいた。脱悪魔の儀式?
「それは何の儀式?」
「悪魔因子を取り除いて、人間として生きる儀式ですよ」
人間として…生きる?それが、私に課せられた罰なのか?
「もう、リアスさんは悪魔ではなく、霊能力を持つ人間って扱いです」
「アーシアも?」
「はい♪」
笑顔で答えるアーシア。彼は、私をいたぶり、悪魔因子を炙り出して、除去してくれていたようだ。
「自由に生きることは出来ませんが、彼の許可があれば、外へも行けます」
彼は何がしたいんだ?困惑する私。
---雪姫---
10年前、あの戦場にいた。ヨルダは、私の愛した男の忘れ形見の身体に宿っていた。戦況は不利だった。憑依する瞬間を叩く作戦だったのだが、空間移動せずに、憑依しまくり、時間が経つにつれて、ヨルダは更に強く獰猛になっていた。
私の愛した男の張った結界内に閉じ込めていたが、その結界すら破壊出来る程の力を持ち始めていた。こいつを外に出してはいけない。
「キティ!お前は下がれ!」
戦友のフェイトが叫んだ。だけど、ここで倒さないと…この星の未来は無い。
「お前の能力を乗っ取られると厄介なんだよ」
再生能力と膨大な魔力かぁ…だけど、ヨルダは私に狙いを定めて襲って来た。
カキーン!
誰かが私の前に立ち塞がり、ヨルダの刃を防いでくれた。
「今だ、逃げて!」
子供…なんで、こんな幼い者が、この戦場にいるんだ?
「貴様!何者だ?!」
ヨルダが、幼子に叫んだ!ヨルダの目には恐怖の色が滲んでいた。それ程、彼は異常なオーラを纏ってた。これは、死ぬ覚悟の…
「僕は陰陽師、神代亘。お前を倒す為に、生きてきた」
彼は迷うこと無く、呪文を唱え始めた。
ヨルダの攻撃を結界で弾き、呪文を唱え続けていく。ヨルダは明らかに狼狽えている。絶対的な強者であるヨルダが、怯えている。彼は何者なんだ?
「あいつは神代家最終奥義『人札封印の術』の使い手だ。神代家の底力を思い知れ!」
神代家の当主が叫んだ。彼は…命を掛けてヨルダを止めるようだ。光輝く彼、その彼にヨルダの魂が吸い込まれて行く。
「唐巣神父!コイツを、亘を封印してください。直ぐに!」
「何を言っているんだ?封印だと?彼は英雄だぞ!」
「英雄は人間で無いとダメだ。こいつは、今人間を辞めたアイテムに過ぎない。早く、コイツの能力を封印してくれ!」
唐巣神父は渋々、亘の能力を封印していく。そして、ほとんど廃人になった亘が出来上がった。
その後、亘は神代家の大人達により、処分されたと聞いた…
そして、今、私の教え子になっている…私にとっての英雄…神代亘。
---鳥井亜樹---
朝…狭霧の身体が気持ちが良い…右腕を谷間に挟んで、右手の中指を体内に入れている。左腕は結衣の谷間らしきものに挟まれている。そして、俺のモノは、幽奈が憑依したリアスの体内に入っている。リアスから悪魔成分を取りだし、幽奈が憑依出来る様にした。どうしても傍に置いて欲しいというので、幽奈の憑依先になってもらったのだ。
「亘くぅ~ん…焼きそば…もう食べられないよ~」
焼きそばを食っている夢を見ている幽奈…最近、この組み合わせである。狭霧だけでもいいんだけど…リアスの中は気持ち良いのでいいか。
俺だけ、脱衣所に転移して、朝の温泉を満喫する。何度も言うが、ここは男湯である。だけど、小町、いろは、翼、ひたぎ、デコが既にいる。もう女性の全裸を見ても、俺のアレは反応しない。それ程、日常的な風景になってきている。
「今日はどうしましょう」
いろはに訊かれた。
「考えたんだけど、雪ノ下家について、調べられるか?」
「雪ノ下家?」
翼に訊かれた。
「あぁ…どの案件にも絡んでいるだろ?こいつが元凶だと思うんだよ」
「う~ん…普通の財閥だけど…」
「もし、雪ノ下家の先祖が、何かを拾っていたとする。それが、鍵だと考えれば…」
「白浪神社の源に繋がるってこと?何を拾ったのかな?」
「だから、転移門を作動させる鍵だよ」
「あぁ~そういう展開か…」
「そう考えると、転移門は、既に雪ノ下家の保護下に、移設されていると思う。それはどこかだな…」
「今、残っている不動産は、月宮神社跡に立つマンションの共用スペースと、自宅くらいだけど」
小町は仕事が早い。既に調べてくれていた。
「そうなると、共用スペースだな。地下へ行ける入口がどこかにあるんだろう」
自宅は差し押さえ対象に、なりやすいから外れだと思う。
「鍵はどこで拾ったんだ?」
って、ひたぎ。
「たぶん、白浪神社の御神体だったんだろう。だから、どこからも出て来ない」
「そうか…月宮神社は月の光が差し込む神社だったのかもね」
って、翼。
「月の光は闇を照らす光…聖なる光と思われていた時代があったから」
実際は逆である。魔に力を与える光であるのだ。人化した人外が、その光を受ければ、本来の姿をさらす。月宮神社は、この人外地区の鎮守の社だった可能性が大きい。
「だから、あそこに儀式のためのスペースを作る必要があった。だけど、目立つのはダメだから、上物にマンションを作ったんだろう」
---雪ノ下母---
今宵は満月である。台座には全裸の陽乃が横たわっている。ある日、当然陽乃が帰ってきた。ボロボロになって…目は死んでいるようで、もう使い物にならない感じであった。なので、今回、有効利用しようと思い立った。なかなか、供物が見付からずに、困っていたし。雪乃をと考えて居たが、雪乃のへのガードが固く、連れ去りが難しかったのだ。
財宝の扉を開ける条件は整った。鍵…白浪神社の御神体。供物…スタイル抜群の陽乃。糧…満月の光。月の光をマンションの屋上より取り入れ、増幅器で増幅していく。鍵を装置へ入れて解錠し、月の光を陽乃に浴びせていく。陽乃の身体がモザイク状に欠けていく。分子レベルでの分解が始まった。
これで私は最強の軍と膨大の富を手に入れられる。私の正義を貫く戦いに必要なものである。何が聖域の賢者だ。化けの皮を剥いでやる。そして、足の指でも舐めさせるか。
空間に揺らめきを感じた。異次元の扉が開くようだ。我が下僕達よ、いざ!
空気の揺らめきから何かが出て来た。うん?青年のようだ。
「うん?ここは…」
「我が下僕よ!よく、参ったな!」
「おばさんは誰?」
「お前達を統べる者だ」
「はぁ?何を言っているんだか…う~ん、なるほど、転移門か…」
異界をつなぐ装置を興味深そうに見ている青年。
「貴様は何奴だ?早く、財宝を持って参れ!」
「財宝?なんの話だ?僕達にとっては、お前らの魂が財宝なんだけど…」
魂が財宝?
「あぁ、人間と僕達では価値感が違うからね。そうか、独占欲、征服欲が強いのか…」
「お前は何者!」
何を呼び出してしまったんだ?目の前の青年に恐怖を感じる。コイツは何だ?
「おいおい、呼び出す者を知らずに呼び出したのか?呼び出し賃は高いよ。娘の魂だけでは済まない」
ならば、アイツらの魂を献上してやるか。
「ならば、聖域の賢者を名乗る者と、鳥井亜樹の魂を差し出そう」
「はぁ?何を言っているんだ?この星を無くしたいのか?」
星を無くす?
「兄さんの魂なんか手に掛けられない。まして、その弟子の魂なんか…」
兄さん?
「聖域の賢者は、僕の兄さんだよ。僕の名前は、パンドラとでもしておくかな」
パンドラ…まさか、これって、パンドラの筺か…
「はい、正解です。では、おばさんを闇の世界へご招待します」
足元が沈んでいく。どうして、私が?
「転移門を回収しておくかな。この世界にはいらない物だし」
目の前が真っ暗になっていく。
「闇の世界だから、光は一切ないよ。君達、罪人の魂が街灯の役目をする程度だよ」
あちらの世界では、魂が貴重品のようだ。
---鳥井亜樹----
師匠から連絡があった。転移門を無事に回収したというものだ。いつもの朝の男湯で、いろは、小町、翼、ひたぎ、デコにお知らせをした。
「そうか…賢者様が回収してくれたのか」
って、訳知り顔の翼。何を知ったんだ?
「じゃ、あとは風の問題だけ?」
小町に訊かれた。
「それなんだけど、わかったよ。川から風が川上に遡上しているだろ?その風をなだらかな傾斜で物見の丘に運んでいたんだ。あの絵図で、草原の草の倒れ具合を見て、風の方向を考え直したんだけど、階段方向じゃなく、現在の絶壁地方向だったんだ。やはり、大規模に抉られたんだと思う。あの滝壺の底を掘る為にね」
現在下水パイプの通っている辺りは、なだらかな傾斜地だったようだ。土もそれなりにある。それが絶壁になったせいで、風は昇ってこられなくなったようだ。
「現状を踏まえて、空気の流れを変えるしか無いな」
「どうするんですか?」
小町に訊かれた。
「絶壁をコケと蔦系の緑で覆い、岩盤剥き出し部には、土を被せ、竹を群生させる。竹には浄化能力があるからね」
山の手入れは欠かせないってことだ。奉仕部では無く、山の手入れ部になりそうだ。
「後、滝を増設だ。滝はマイナスイオンを発生して、空気を浄化するしな」
大規模に自然は弄りたくないので、川から水を汲み上げて、人工の滝もありかもしれない。
◇
夏休みなのに、登校日がある不思議…休みボケの僕を、狭霧、翼がサポートして、学校までつれて行ってくれた。
「亜樹!起きているか!」
いや、寝ている…半分…雪姫先生の声が遠くに聞こえる。
「転校生がいる。冬空コガラシと、暮森リアスだ」
「暮森リアスです。よろしくお願いします」
俺に微笑むリアス。夢うつつな俺の反応に苦笑いしている。かわいい…
「俺は冬空コガラシだ。霊能者であるから、不可解な現象があれば、声を掛けて欲しい」
「どの程度の霊能者ですか?」
僕が挙手をして質問をした。亜樹は睡魔に飲みこまれ、使い者にならない状況である。
「どの程度?霊や妖怪程度であれば、一撃で倒せる」
自信満々に拳を握っているコガラシ。
「ふ~ん…一撃ねぇ…お前に問う!ここには何名の人外がいると思う?」
「え?!」
正解は4名である。幽奈、夏美、雪姫先生、九郎丸だ。
「一人だ」
「わかった」
「おい!亜樹!寝るな!」
先生の声が遠くで聞こえる。ホームルームの時間だけ、3日も通うらしい。宿題のチェックだって…しまった。やっていなかった。
『どんまい♪』
幽奈が頬を重ねて元気付けてはくれるが、宿題をしないと…
「おい!さっきの質問の意図はなんだ?」
「お前の能力を測っただけだ」
「お前…何者だ?」
「俺は人間だけど…」
「嘘を吐くな!お前は人間では無い!」
「妙な事を言うな、君は…」
ガツン!
コガラシにいきなり殴られた。その場に倒れる俺。何をしやがるんだ…亘の意識が消えていく。ふざけるなよな!
「おい!いきなり殴るって、どういうことよ!」
翼が俺の前に立ち塞がった。
「何?これで、死なないのか…まさか…お前…人札か?」
人札…記憶の封印が解除されていく…そうだ。僕は人札だ…人間では無い…ここに、いちゃダメだ。
『逃げないで!亘!』
幽奈が僕を引き留めた。亜樹が必死に僕を護ろうとしている。ロスト覚悟のようだ。ダメだよ、亜樹…
「おい!人間よ!言って良いことと、悪いことの区別が出来ないようだな」
夏美…いいや、九重様の声…
---冬空コガラシ---
「何?九尾の狐だと…」
「逃がさないよ…亘君への非礼を詫びてもらおうか?」
コイツは八咫だ。最上級の物の怪だと…まずい…勝ち目が無い…
「亘君を殴るなんて許せない」
天狐のオーラを感じる…伝説級の霊能者じゃないか…ここは、なんだ…
「おい!稲葉…どういうことだ?」
同じ下宿に住む奴に訊いた。
「この街のローカルルールを、龍さんに訊いていないんですか?いきなり殴るのはどうかと思いますよ」
「どうした!」
先生…何…バンパイアだ…なんだ、この学校は…
「夕士君、コガラシ君、どうしたの…なんで…亜樹君、どうしたのよ?」
まゆこさんが、アイツに駆け寄った。
「そこのバカが、いきなり殴ったんだよ」
九尾の狐がまゆこさんに、説明した。
「大丈夫?ねぇ、亜樹君」
まゆこさんが、アイツを抱き締めた。だが、アイツの反応は無い。仕留めたか…
「怪我は特に無いけど…そう…封印が解けたのね…コガラシ君の能力で…」
封印…確か、人札は封印で能力を使えなくしてあったはず。マズい…能力の再始動中なのか。
「あぁ、動かないでいいから、後は私達に任せてね」
まゆこさんが俺を睨み付けてきた。
「いや…ソイツが人札って知らなかったんだ…」
「えぇ、彼自身も知らなかったの。なんで、教えたの?なんで、亜樹君をそっとしておいてあげないの!」
え?知らないで、生きているのか?それは危険だろ?
「ソイツは破棄対象でしょ?人札は人類の敵だし」
そう習ってきた。この世のラスボスであると…
「コガラシ君…破棄とか、そういう言葉は使わないで!」
涙目で俺を睨むまゆこさん…どうして、庇うんだ?
「ダメ!亜樹君。逃げちゃダメだって」
転校生のリアスってやつに憑依している天狐。そうなると天狐は死んでいるのか…勝てるか?
「人間はどこまで愚かで醜いんだ?」
知らない奴が現れた。先輩か?いや、コイツも、人間では無い。
「亘…帰ろう。ここは、お前の住む場所では無い。このままでは、亜樹がやばい」
「はい。亜樹を助けてください」
「テンコ、お前もだ」
「はい。亜樹君をロストさせないでください」
「本当に、愚かだな。お前ら人間は…救いようが無い」
四人が空気の揺らめきと共に消えた。