※この作品はR-18です。

新そっくりなアイツ   作:もっち~!

66 / 78
二人の英雄

 

 

文化祭2日目…生徒の父兄達が押し寄せて来た。評判が評判を呼び、俺のいるクラスの模擬店は大忙しらしい。俺はその模擬店への出禁を喰らっていた。う~ん、何故?

 

「あぁ、いたいた。お~い、ケダモノ君♪」

 

嬉しそうな結衣の声。振り返ると、大人の女性を同伴していた。

 

「こいつだよ」

 

って、その女性に俺を紹介した結衣。

 

「うちの結衣がいつもお世話になっています」

 

って。うん?結衣の母親か?

 

「お母さん、違うって!私がお世話をしているのよ」

 

お世話?なったことは無い気がする。

 

「ふふふ、結衣、顔が赤いわよ」

 

「そんなことは…」

 

あぁ、耳まで朱いぞ。

 

「お~い!亜樹くぅ~ん」

 

って、今度は千紗希の声だ。振り返ると、千紗希も大人の女性を同伴している。

 

「母さん、彼よ」

 

「ふ~ん、千紗希にしては、いい男を手に入れたわね」

 

え?千紗希の手に墜ちていないんですが…

 

「そ、そ、そんなんじゃ無いわよ~」

 

「彼は紳士的なの?」

 

ケダモノですが、何か?

 

「うん、まだ手を出してくれないの」

 

「うちの娘は、魅力無いですか?」

 

千紗希の母親らしき女性に訊かれた。

 

「魅力はあります」

 

幽奈がストレスなく、憑依出来るのは魅力である。

 

「そう」

 

「あぁ~、先輩♪」

 

こんどはいろはの声だ。

 

「先輩、ちょっと良いですか?」

 

俺の腕を抱き締めて、どこかに連れて行く。

 

「お母さん、彼です」

 

って、いろはの母親らしき女性の前に…そんな感じで、知り合いの女性陣の母親達への面通しを受けた俺。母親達の顔が同じに見える。イカン、人間の顔の認識率が下がってきているのか。そもそも、人混みは苦手だ…部室に逃げ込むかな。モブ化をして、こっそり部室に逃げた俺。しかし、部室には先客がいた。

 

夏美、こゆず、真宵、真琴が、屋台から買ってきた粉物で、パーティーをしていたのだった。

 

「縁日の食べ物、おいしいです」

 

って真宵。縁日っぽいが、縁日では無い。

 

「りんご飴もいけますね」

 

って真琴。それは粉物では無いのだが…夏美とこゆずは、黙々と食べている。今日は幽奈は来ていないようだ。師匠に呼び出されたらしい。ここで、まったりとするか。

 

 

暇なので、うたた寝をしてしまったようだ。誰かに揺り動かされ、起こされた。起こした人物を見て、固まる俺…バニー姿の麻衣だった。

 

「どう?似合う?」

 

「何しているんだ?」

 

また、透明人間に戻ったのか?

 

「うちのクラス、バニーズカフェで、みんなバニー姿なのよ」

 

それは、狭霧もか?興味有る。

 

「狭霧も火憐も、まゆこもか?」

 

「はい、お客さんゲットですね」

 

って、腕に抱きつき、お持ち帰りをさえれた俺。さすが上級生、俺の心を掴むのがうまい。

 

バニーズカフェに入ると、狭霧、夏凜、まゆこがバニー姿できびきび働いていた。

 

「何?亜樹じゃないか…麻衣か、連れて来たのは?」

 

「客引きして来ました♪」

 

狭霧、まゆこが固まっている。夏凜はあまり動じていないようだ。

 

「指名していいの?」

 

麻衣に訊いた。

 

「う~ん、それはお店が違うと思うな。ここは喫茶店よ」

 

指名が出来ないようだった。取り敢えず、狭霧の姿を脳内保存だな。

 

「おい!亜樹…そんな真剣な眼差しで見るな…」

 

狼狽えている狭霧。おかまいなく。

 

「で、注文は何かな?」

 

「狭霧の女体盛り」

 

「無いですよ。では、珈琲でいいですね」

 

女体盛りが珈琲に化けた。ここの珈琲は、メジャメーカーのブレンドのようだ。非も無く可も無くって感じである。少し雑味が足り無い気がするなぁ。

 

「麻衣、蒸らし時間を、もう少し延ばすと、もう少し美味しくなるぞ」

 

って、アドバイスをした。

 

「そうなんだ。裏方に伝えてきます」

 

麻衣は文化祭を、楽しめているようだ。

 

「亜樹!私の姿は脳内保存するなよ」

 

って、夏凜。

 

「あぁ、全裸だけを保存してあるから問題は無い」

 

「はい?」

 

再生能力持ちの夏凜は、もうこれ以上体型の変化は起きないので、成長過程を楽しむ対象にはならない。

 

「まゆこもいいなぁ…」

 

 

帰宅して、今日の情景をスケッチブックに描いておく。

 

「おい!絵に残すなよ~」

 

って、狭霧。

 

「狭霧、かわいかったよ」

 

「そんなことを言うな…って、なんで、シースルーのバニー衣装なんだ?」

 

「芸が細かいでしょ?」

 

真っ赤な顔で固まる狭霧。まゆこも夏凜もシースルーで、麻衣だけバニー姿である。

 

「おい!別の催しをした印象がするだろ?」

 

狭霧の小言をスルーする。

 

「あれ?こんな顔の生徒、いないぞ」

 

って、狭霧。そんな訳は無い。いたから、記憶に残っているんだが…

 

「誰だ、この子?」

 

狭霧が頭をフル回転しているようだ。マジにいないのか?そうなると、透明人間がまだいるのか?麻衣にも確認したが、クラスメイトにはいないと言う。

 

夏凜、まゆこにも確認したが、やはりいないという返事だ。誰だ、この子は?バニー姿で、給仕をしていたのだが…

 

 

文化祭最終日…麻衣達のバニーズカフェにいる。透明人間を確定する為である。

 

「みんなに訊いたけど、わからなかったわ」

 

って、麻衣。

 

「麻衣以外にも透明人間がいるんだと思う」

 

「そうなんだ。ねぇ、助けてあげて」

 

「そのつもりだよ」

 

だけど、中々見付けられない。いなかったのか?記憶違いだったのか?はて?う~ん…

 

 

 

「おい!起きろよ」

 

って、狭霧。あぁ、寝てしまったようだ。頭脳労働向きでは無いからな。しかし、閃きが舞い降りて来た。

 

「そうか…なぁ、この子がサーブしている女性に、心当たりは無いか?」

 

「無いなぁ…ちょっと、訊いてくるよ」

 

狭霧が、女性の似顔絵を手にして、バックヤードへと駆け込んだ。しばらく待つと、翼がやって来た。静に確認してきたそうだ。

 

「わかったわよ。その女性は美坂香里。あの世代の女性よ」

 

あの世代…雪ノ下陽乃世代か…ここにも闇があったのか。

 

「住所はわかるか?」

 

「もちろん。あぁ、私は動けないから、部室に小町ちゃん、いろはちゃんを呼び出しているから、二人を連れて行ってね」

 

それは、一人だとやらかすって、心配されているのかな。俺は部室へ立ち寄り、美坂家を目指した。

 

 

美坂香里…水瀬名雪の親友だった少女。高校卒業後、大学に進学し、昨日は妹が通うはずだった高校の文化祭に訪れたそうだ。

 

「これは?」

 

香里にスケッチのコピーを見せた。

 

「確かに、バニーズカフェに行ったわ。でも、こんな子はいなかったけど…あれっ?」

 

透明人間と思しき少女を見つめる香里。

 

「まさか…有り得ない。だって、あの子は…今…」

 

彼女の妹は病院に入院しているそうだ。原因不明の病で、一進一退の症状を繰り返し、徐々に体力が削られて、ついには植物人間一歩手前だそうだ。俺達は、香里と共に、彼女の妹である栞の元へと向かった。

 

そこには、スケッチブックに描いた少女に似た少女が、ベッドに横たわっている。これって…

 

「なぁ、陽乃の降霊会に出席したことあるか?」

 

「どうして、それを?」

 

じゃ、その時に、異世界の何かが、少女に舞い降りたのだろうか。

 

「転院を勧める。月野木病院へ転院させてくれ」

 

「その病院なら助かるの?」

 

「ここじゃ、もう無理だろ?藁に縋れよ」

 

頷く香里。

 

 

月野木病院で受け入れの準備を進めていく。

 

「あのスケッチの少女は透明人間ではなかったの?」

 

心配そうに麻衣が訊いてきた。

 

「違うよ。美坂栞の学校へ行きたいという想いが、具現化したものだ。そうだな、生き霊と言えば良いかな」

 

異世界の何かに入り込まれ、そういう能力が開発された可能性はある。

 

「厄介な敵ってことだが」

 

龍さんが来てくれた。

 

「異世界の魔物です。僕だけでは難しい」

 

「異世界か…俺でも難しいな」

 

イザとなれば、師匠頼みだな。

 

「彼女も、転移門を使った降霊会の被害者ってこと?」

 

まゆこに訊かれた。

 

「そういうことです。舞は陵辱されましたが、栞はそういう年齢に達していなかったから、降臨されてしまったのでしょう」

 

憑依ではなく、体内に潜んでいるようだ。そんな波動を感じた。放っておけば、いずれ肉体を食い破り、出て来そうだ。

 

「到着しました」

 

医局の看護師から連絡が来た。直ぐさま、除霊専用の部屋へ、栞の載ったストレッチャーを運び込んだ。部屋には栞の他、僕、まゆこ、龍さん、アーシア、リアス、朱乃がいる。

 

「出しますよ」

 

まゆこと龍さんが頷いた。僕は『強奪』を発動した。すると、栞の身体から異形なる物が現れた。

 

「アーシア、栞を頼む!」

 

「はい!」

 

栞に回復術を掛けていくアーシア。異形なる物を龍さん、まゆこ、朱乃、僕の結界で封じ込めていく。リアスが滅びの力を発動し、異形なる物と対峙するが、劣勢であった。どうする?そうか、あれを使えば…僕はある術を唱え始めた。

 

「おい!その術は…」

 

龍さんの声…言いたいことはわかるが、たぶんコレしかない。僕は呪文に集中した。

 

『亘、お前は呪文に集中しろ』

 

亜樹の声だ。コイツ…何をする気だ?亜樹は、バトンソードを取りだし、僕の聖属性オーラを使い、刃を生成して、異形なる物に襲い掛かった。

 

『俺はシリアルキラーだよ。殺しは慣れている。お前は呪文に集中しろ!』

 

おい…早く術を発動しないと、亜樹がヤバい…亜樹からは『死ぬ覚悟』が湧き出ている。どんな手を使ってでも、この場にいるみんなを護る気だ。例え、刺し違いをしてでも…そして交戦の末、予想通りに、亜樹が異形なる物と刺し違えた。

 

『捕まえた。絶対に逃がさないから、確実に発動しろよ。なぁに、俺が死んだら、魂をくれてやる。だから心配するなよ』

 

って…コイツ、バカだろう?お前が死んだら、お前という存在はロストするんだぞ!僕の心配なんかしている場合では、無いだろうに。初めて感情が爆発していく。いや暴走していく。僕自身の力の無さに、怒りが沸き起こる。亜樹は僕に渡す魂を汚さないように、亜樹自身の心で相手を捕まえていた。

 

そして、術を発動した。異形なる物は、僕の身体に吸い込まれて行く。人札を舐めるなよ!そうだ、亜樹はどうした?

 

『まだ、いるよ…疲れた…』

 

亜樹の声に安心し、気の緩んだ僕はその場に倒れた。僕もエネルギー切れだ。

 

 

気が付くとベッドに横たわっていた。俺は俺のままである。ロストしなかったようだ。

 

『無茶するなよ、相棒♪』

 

って、亘。そうだな。また、死にたがり病が再発したか?

 

「亜樹君…気が付いたの?ねぇ、大丈夫?」

 

まゆこの瞳から大粒の涙が零れている。

 

「大丈夫だよ。亘がエネルギー切れだ」

 

刺された部分は再生している。再生能力持ちの身体って、便利だなぁ。

 

「無茶をするな!」

 

って、龍さん。こんなロクでもない俺を心配してくれている。

 

「他に手立ても無いし…結果オーライでしょ?」

 

「ありがとう…妹の為に…」

 

美坂香里が、俺に頭を下げた。

 

「いいって。救える者を救うのは懲役の内だし。まゆこ、俺はどのくらい入院すればいいんだ?」

 

「2,3日は入院してね。心配だから…」

 

魔力切れによる、マインドロストという現象だと思う。『人札封印の術』は切り札で、魔力を思いっきり使うらしい。あぁ、身体がだるい。高カロリー消費な運動をした感じだ。マインドロストの為か、亘が爆睡していた。

 

 

 

---鈴木まゆこ---

 

最強の陰陽師の術を、目の当たりにした。あれが人間を辞めた原因の術なのか。異世界の魔物すらを封印した彼。既に人札である彼は、もう魂をロストしない為、亜樹君も無事だった。

 

龍さんは呪文の途中で気づいたそうだ。あの時の龍さんの彼を見つめる目は、悲しみに満ちていた。それが何故かは、魔物が封印される時点でわかった。

 

英雄のはずが、人間でなくなった為、英雄の絞り滓といわれた神代亘。だけど、英雄としての力は衰えていなかった。

 

「亜樹は大丈夫なんだよな?」

 

狭霧は亜樹君の心配をしている。

 

「大丈夫。聖域の賢者様が、再生能力持ちにしたようで、傷が自動で修復されているわよ」

 

「そうか…良かった」

 

亜樹君が倒れた後、魔具の能力で、狭霧と夏凜が召喚された。それは亜樹君の状態が最悪である証拠であった。見た目は問題は無くても、亜樹君は一般人である。亘君と耐久度が違うのだ。究極の呪文を唱えた亘君、亘君へのダメージを総て肩代わりした亜樹君。このコンビ、最強だと思う。二人共、どんな敵にも、心が折れないのだろう。死すら恐れない、護りたい心の持ち主に違いない。

 

「無茶しやがる…」

 

そう言いながら、涙している夏凜。夏凜も狭霧も、亘君の本気による亜樹君への影響を心配している。それは私もだけど…

 

「大丈夫そうだな。脈拍も安定しているし、魂も定着している」

 

龍さんが、霊的に診察をしてくれた。だけど…この時、たぶん…亜樹君の異変は始まっていたかもしれない。龍さんが診察したのは亘君であって、亜樹君では無かったのだ。人格は亜樹君だったけど、身体も魂も亘君の物になりつつあり、残念だけど、この時、誰もそのことに気を止めなかった。結果的ではあるが、この時、亜樹君の心、精神は病み始めていた。そう、身体は再生するが、亜樹君の心は再生されていなかったのだ。闇に染まりつつある心は、汚れ始めていた。

 

「しかし、雪ノ下陽乃の闇は深いな」

 

と、雪姫先生。夏凜の召喚に気づき、ここへやって来た。

 

「深すぎる…転移門を降霊術に使うなんて…」

 

龍さんが珍しく怒りを纏っていた。

 

「これで終わりだといいが…」

 

終わりだと言う保証は無い。まだ、闇に飲まれている人が、いるかもしれない。

 

 

 

---鳥井亜樹---

 

退院をした。みんなを代表して、麻衣と翼が迎えに来てくれた。

 

「大丈夫?」

 

麻衣に声を掛けられた。

 

「麻衣と翼のバニー姿みたいなぁ」

 

「妄想出来るなら、大丈夫ね」

 

って、翼。だと思います。

 

「腹減った…」

 

入院中、食事は栄養点滴だけだった。胃袋は空っぽである。

 

「当分、お粥食よ。胃袋が寝ているから」

 

そうだ。退院直後って、そんな感じだった。

 

「何が食べたい?」

 

麻衣を女体盛りで…なんて、言える雰囲気では無い。二人共、真剣に心配してくれているから。

 

「ふわふわの卵焼きかな。後、サバランとモンブラン」

 

「ケーキは消化が悪いからダメだよ」

 

って、翼。そうですね。砂糖が消化悪いんだっけ?ねぇ、亜樹。どうだっけ?もっと、亜樹から学ばないと…食い物関係は詳しいしね。

 

ゆらぎ荘に着くと、みんなが玄関前で待っていてくれた。

 

「おかえりなさい♪」

 

代表して、幽奈が僕に抱きついてきた。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。