---鳥井亜樹---
俺が入院している間に、事件は始まっていた。それは、入院している俺には、知らされずに…担当看護師であるまゆこの判断で退院をした俺。
退院した翌日、学校へ行くと、まだ、文化祭の撤収作業をしていた。文化祭が終わったのって、もう1週間くらい前で無いか?なのに、まだ撤収作業って?
「これ、どういうことだ?」
翼に訊いた。
「今日が訪れないで、昨日が繰り返し訪れているのよ」
って…それは人外地区、そこに住む者には影響は無いそうだ。俺の様に人間の地区にいる聖域の住民も影響は無いらしい。だから、まゆこ判断で、俺は退院したのか。昨日がループしているのであれば、俺は永遠に退院が出来ないから。
毎日登校すると、文化祭の撤収作業日で、前日に確実にした作業が、登校すると、手つかずな状態に戻っているそうだ。
「今日から片付けかぁ~。面倒だな」
って、結衣。今日から?
「そういうことよ」
って、蘭。そういうことか。結衣にとっては、昨日はループしているなんて、思ってもいないのか。
「これって、原因はなんだろう?」
「何かが、影響しているんだろうね」
その何かが問題である。
「おい!亜樹!何か、やらかしたのか?」
雪姫先生は、俺が原因と決めつけているし。
「何もしてませんよ。昨日、退院したばかりだし」
同じ作業を繰り返しても、埒が明かないので、善後策を考える為に、部室へ退避する俺達、人外地区組。雪姫先生もついてきた。
「あれ?先輩、サボりですか?」
って、いろはがやって来た。
「サボっている訳では無い。ちょっと問題が発生してね」
って言うか、いろはの相棒の小町がいないってことは、いろはがサボっているのでは?
「問題って言うと?」
問題を話した?
「え?昨日がループしているんですか?」
頷く俺達。
「う~ん、実感が湧かないです」
って、いろは。
「透明人間より厄介だな。原因がわからないし」
先生が頭を抱えている。本来は、今日が給料日だったらしい。それが、支給されないそうだ。既に7日経過しているという。まぁ、昨日だからな、今日は…
「あぁ、人外地区は結界で護られているから、妙な術は通らないんだよ。後、影響があるのは、一般人だけだよ」
って、夏美の中の九重様。
「では、これは何らかの妙な術の結果?」
翼がネットを駆使して調べてくれている。蘭に訊いたら、昨日までは、皆で俺が何かをしでかしたって結論だったらしい。おいおい…
「うん?これかな?都市伝説の思春期症候群に、『ラプラスの小悪魔』って言うのがあって、回避したい出来事の解決策が見付かるまで、同じ日を繰り返すってあるけど…」
まさに、この状態ではないか…
「術者は小悪魔なのか?」
「そんな種族はいない。一般的に小悪魔になるのは人間だ」
って、先生。
「それって、探すのが大変で無いの?」
回避したい出来事持ちなんか、探し出す術は無いし。
「いや、1つだけ手はある。人外地区に住まない一般人で、前日とは違う行動を取ったやつが、小悪魔だ」
先生が言い切った。あぁ、そうか。術者は解決策を探しているんだ。前日とは違う行動を取っているよな。って、どう探すんだ?俺達以外に、全世界人口って、何人いるんだ??
◇
13日目の昨日を迎えた。
「おい!亜樹!どうにかしろ!」
って、雪姫先生。給料日が延々先延ばし状態らしい。人外地区では昨日はループしていない。それは、生活費は確実に減るってことである。
「先生、お金を貸そうか?」
「あぁ、助かる」
先生へ帯封のされた1万円札を渡した。
「こんなに、どうした?お前、強盗したのか?」
何故、先生は俺を犯罪者にしたがるんだ?
「貯金を下ろしたんですよ。あぁ、実験の為にね」
昨日が繰り返すってことは、お金を下ろしても1日経てば、預金残高は減らなかった。でも、人外地区へ持ち込んだ現金は、手元に残ったままであった。
「って、感じで、毎日100万円ずつ引き出して、手元に500万円ほどあるんですよ」
「お前…犯罪にならない犯罪者だな」
「えぇ、生前がそうでしたから」
って、俺の手元にある現金は、銀行ではどう処理されるんだ?札には通しナンバーがあるのだが…問題解決して今日が迎えられると、使途不明金扱いかな?
「亜樹君、お願い!早く解決してよ~!」
まゆこは、本来、今日から2日間、バイトがオフらしいのだが、いつまで経っても休日が、来ないで、バイトづけのタダ働き状態らしい。現状、緊急性の問題があるのは、この二人か?
「って、言われてもなぁ」
◇
解決策が見付からないまま、14日目の昨日を迎えた…
まゆこはへたばっていた。前週から14日間、休み無しのタダ働きが継続中であるから。
「亜樹君…」
俺に身を預け、寝ている。何かしようと思えない程に、やつれているし。これは、マズいなぁ。
「あれ?先輩、サボりですか?」
いろはがやって来た。おおぉぉ~!昨日までとは違い、いろはは、友達を連れて来ていた。コイツか?いろはは予定行動だし。
「その子は?」
「あぁ、奉仕部に仕事の依頼だそうです。彼女は、私のクラスメイトの古賀朋絵です。ほら、古賀ちゃん、説明して。ここの先輩達は、役立つからさぁ」
いろはが、問題を話すように促した。
「あのですね。友達の彼氏から告白をされて、返事に困っているんです」
これが原因か?
「私としては、断りたいんですが、相手は強引で…」
「でね、先輩、古賀ちゃんの偽彼氏を演じてくれないかな?」
あ?俺が?
「なんで?」
「先輩なら、信用出来るからですよ」
「亜樹!受けろ!」
先生の目付きは鬼気迫っている。先生も彼女が原因だと踏んだようだ。
「亜樹君、お願いだよ~」
まゆこまでも懇願してきた。明日を迎えたいみんなからの後押しで、偽彼氏の件を引き受けた俺。
「ありがとう、先輩」
って、いろはが抱きついて来た。う~ん、押し倒したい。だが、耐える俺。人外地区の皆はヘロヘロで、そういうことが出来ない状態であったので、活きの良いいろはに食欲が…でも、ここは学校である。耐えよう。先生に何を言われるか、わからないし。
「で、どう振る舞えば良いんだ?」
「先輩は先輩でいいと思う。古賀ちゃんが先輩を彼氏と思う事が大事だよ」
「あの…お願いします」
◇
15日目の昨日を迎えた。俺は朋絵の家に向かった。一緒に登校する為だ。
「おはようございます、先輩」
「おぉ、おはよう、朋絵」
二人で並んで歩き、いろは達が通う中学へ歩いて行く。
「おい!貴様は誰だ?」
ゴリラのような男子と、連れが数名現れた。朋絵が俺の後に隠れた。朝っぱらから告白タイムなのか?
「朋絵の彼氏だけど…」
「朋絵は俺の物だ!失せろ!」
これは悩むよな。告白っていうより、彼女にするって宣言のようだし。って、朋絵の友達は良く付き合ってられるな。
気に入らないのか、俺に殴り掛かっていたゴリラ男子。しゃがんで水面蹴りで左膝をケリ抜いた。
「うごぉ!」
夏美仕込みのマーシャルアーツの技だ。いや、空手だったかな?
「お前、舐めやがって!」
数名の男子が襲い掛かってきた。亘にスイッチし、意識を狩り取り、俺にスイッチした。
「朋絵、遅刻するぞ!」
「先輩って、強いんですね」
安心したのか、俺の腕に抱きついてきた朋絵。
「まぁ、そこそこだけど」
◇
ゴリラ男子の仲間達が、俺達の学校に乱入して狼藉を働いている。ゴミの山に放火して、その周囲で踊ったり、タバコを吸ったり、酒を飲んでいるし。中には女性徒に抱きついたり、何かをしたり…いい迷惑である。
そこで、阿良々木警部補へ連絡した。すると、直ぐに生活安全課の皆さんが来て、クズ達を回収してくれたのだが…
「先輩!大変だよ~。朋絵ちゃんが連れて行かれたよ」
って、いろはが泣きながら、部室に走り込んできた。あれは陽動作戦で、ゴリラ男子がいる集団が中学校を襲ったそうだ。
「誰に、連れて行かれたんだ??」
「言い寄っていた男子だよ。後、本来の彼女のノリちゃんも、連れて行かれたんだよ~」
「拉致かよ~」
立派な犯罪では無いのか?
---古賀朋絵---
あの男に強引に、車に載せられて、ノリちゃんと共に連れ出されてしまった。そして、どこかの廃ビルに連れて行かれると、ノリちゃんに複数の男子が襲いかかった。
「おい、ノリ子!俺は朋絵と付き合う。お前はもういらないよ。ソイツらから、新しい彼氏を見つけろよ」
えっ!何かの薬を嗅がされた。頭がぼぉ~として、意識が朦朧としていく。
◇
意識が戻ると、病院のベッドにいた。
「朋絵、大丈夫か?」
先輩がベッドサイドにいてくれた。
「先輩…私はどうなったんですか?」
「薬の解毒剤は打ってある。2,3日は頭痛が残るかもしれないが」
「アイツらは?」
「警察が引き取ってくれたよ。拉致、監禁、暴行などなどだ。まぁ、当分出て来られないと思うよ」
そうだ…
「ノリちゃんは?」
「あぁ、当分入院だ。薬物中毒と診断された。警察の聴取で、朋絵と同じように拉致されて、薬漬けにされて、あのヤローと付き合うっていうか、薬をエサに飼われていたようだ」
そんな…
---鳥井亜樹----
アイツらは、警察に引き渡さずに、聖域の参道に転移させてある。餓鬼達が処分してくれるだろう。人間の姿をしたケダモノ達を…
そして、翌日…待望の今日がやって来た。ラジオ放送で、今日が訪れたことを確認して、晴れやかな気分で男湯に行くと、全裸の小町、いろは、朋絵の中学生トリオに、駿河という変態中学生がオマケでいた。これは昨日までになかったことである。
「どうして、朋絵がいるんだ?」
「先輩にお礼がしたいって」
いろはが俺に抱きつき、朋絵の元にエスコートした。時差ボケに近い俺は、まったく性欲が湧かない。全裸の中学生達に囲まれているの、全然ダメだぁぁぁ~!
「お礼なんかいらないが、ここは男湯なんだが…」
疲れを取るために来たのに…
「先輩!ここは混浴だよ~」
って、駿河が妙なポージングをしながら、のたまっている。
「あ、ありがとうございました」
俺の頬に口付けをした朋絵。
「いや、役立って嬉しいよ」
柔らかくて気持ちの良い唇。だけど、俺のアレは反応すらしない。終わったのか…
学校に行くと、焦げ臭い。ゴミの山で、キャンプファイヤーしたバカ達がいたからだ。
「待ちに待った、今日が来た」
雪姫先生の給料が支給されたらしい。とても嬉しそうだな。まゆこも今日から2日ほど、バイトが休みになるそうだ。やはり、昨日が繰り返すのは良く無いなぁ。
◇
片付けを終えて、皆で部室でまったりしている。
「で、お前の貯金ってどの位あるんだ?」
先生に訊かれた。
「1億以上はあるよ」
蘭の母親が、生前の俺の財産を管理していて、コレまでの印税をいれた通帳と判子を、俺に引き渡してくれたのだった。
「金庫破りでのしたのか?」
相変わらず、先生は俺を犯罪者にしたいらしい。
「違うって、印税だよ。生前の分のね」
「印税って?」
麻衣に訊かれた。
「元々小説家だったんだよ」
「ペンネームは?」
「栗井鳥栖と三田バードだけど…」
「えっ!超有名な小説家じゃない。問題作を連発した」
って、翼。
「後、ペンネームを数個持っているんだよ。逃亡しながら、作家活動していたしね」
って、前世を知る蘭。
「先輩って、お金持ち?」
いろはの目が輝いている。
「どうだろうな?あんまり、お金は使わないから、それなりに溜まるけど」
使うっていっても、画材関係だけだし。後、ロケハンの交通費くらいか。蘭母さんによると、それらは必要経費になるそうだし。
「先輩と結婚すれば、お金持ちになれるんですねぇ~」
って、いろはが抱きついて来た。
「話はそう簡単でないのよ」
蘭がいろはを引きはがした。
「亜樹君には戸籍が無いのよ」
戸籍が無いと結婚は無理だと思う。
「でも、前世では死亡が確認できていないんだよね?」
翼が異を唱えた。
「それは、鳥井亜樹でなくて、佐田亜樹だから。亜樹君は、養子縁組しているんだよ」
そうだ。生前は佐田家の養子で、紅子の兄だった。
「だから、鳥井亜樹として、戸籍は無いのよ」
みんなの目が、獲物狙うハイエナに見えるのは気のせいか?