異変*
---鳥井亜樹---
久しぶりの学校。いや、今年初めての登校とも言える。
「おい、亜樹!退院明けで元気が無さそうだな」
ホームルームの時間、先生とのヤリトリ…どこか懐かしい気がする。それは記憶が薄れているってことかな?
「入院していたらしいので、お節料理と雑煮を食べ損ないました…」
凹んでいる俺。いや、亘の方が凹んでいるか。アイツ、初めてのお節とお雑煮だったし。俺は生前、食べた事がある分、救われているかもしれない。
「まぁ、来年、喰えば良いだろ」
それは来年も生きろってことか…無理かもしれない。
「で、亜樹!お前、冬休みの宿題はどうした?」
「入院していたんですよ…」
「やっていないんだな?」
頷く俺。
「放課後…分かっているな」
呼び出しのようだ。はぁ~、登校初日から何をしろと…
◇
放課後、先生の部屋へ…
「おい、記憶は戻ったのか?」
「どうなんだろう。もし、忘れていても、分からない」
新年を超えると同時に記憶が飛んだらしい。原因は、誰も教えてくれない。懲役中に事故に遭ったのかもしれない。その部分の記憶がすっぽりと抜けていた。
「原因になった事故の部分が、すっぽりと抜けていて…」
「それは知らないで良いって、ことではないのか?」
まぁ、賢者様のことだ。そうなんだろう。人間には知って良い話は少ないから。
先生が俺を抱き締めて、俺の血を少し舐めた。
「味は少しマイルドになったなぁ」
吸血鬼である先生は、血液の味に敏感なようだ。
「そうなんですか?何か変わったのかな?」
「確かめてやる」
って、いきなり結界を張り、初エッチをしだした。先生の中は気持ちが良い。胸の谷間に顔を埋めて、睡魔と添い寝…
「うん?ここは?」
先生は、寝ている俺を楽しみ捲ったようだ。
「寝ていても、出来るのか…これは便利だな」
って、先生の玩具状態のようだ。
「また、明日も頼む」
って、部屋から解放された。はぁ、怠い…退院明けには、この様な行為は重労働か?
「今日は随分かかりましたね。長いお説教ですか?」
千紗希と結衣、雪乃が待っていてくれた。
「まぁ、そんな感じだよ。さて、帰るか」
不審な顔をする三人。俺は何かを忘れているのか?
「亜樹、部活でしょ?!」
結衣に言われた。あぁ、そんなものがあった気がする。
「待っていて良かった。記憶に不備があるって訊いていたから」
雪乃が心配そうに、俺を抱き締めてくれた。
「はい、じゃ、部室に行きますよ。場所は覚えていますか?」
千紗希に訊かれた。場所?部室の?う~ん…考え込み始めた俺の手を握り、千紗希が歩いていく。そして、部室に着いた。
「どうだった?」
翼の問い掛けに首を横に振る千紗希。
「そう…細かいことを忘れているのね。亜樹君、みんなでフォローするから、少しずつ、想い出して、覚えていこうね」
翼に元気付けられた気がしたので、頷いた。なんか、俺が俺じゃ無いみたいだ。何かを失ったのか?
俺の入院中に受けた事案のファイルを受け取った。それらに目を通していく。怪異絡みは少ないようだな。うん?少ない?って…どれが怪異絡みなんだ?
---雨野狭霧---
う~ん…亜樹が私をまるで見ない。まさか、私のことを忘れたのか?どうしてよ~!亜樹に忘れられた私は、みんなから見えないらしい。あの幽奈にすら…これって、麻衣に起きた現象では?
教室でも、始めからいなかったのか、私の席すら無い。クラス名簿すら私の名前は入っていなかった。これって、どうやって異常を知らせれば良いのだ?人生最大のピンチかもしれない。亜樹の周囲にいて、亜樹に触るが通り抜けてしまう。マズい…亜樹、気づいてくれよ~!
更に問題が…誰にも見えない私は、何も着ていない状態である。誰にも見えていないはずなんだけど、視線は感じる。舐めるのような視線である。舐められたような感覚もある。往来の真ん中で淫らな姿を晒している気がする。見えない舌で全身を舐められているような。乳房は張り、乳首は勃起し、クリまでも…亜樹以外の男性にされたくない、見られたく無いなのに…誰だ、誰の術だ!
武器すら透過して持てない。要するに今の私は、無防備である。隠せる物も無く、叩く術も無い。襲われたら、されたいようにされそうである。いや。多分、既に襲われているのであろう。
---鳥井亜樹---
なんか、大切な誰かを忘れているような気がする。だけど、誰も指摘をしない。つまりは、気のせいってことのようだ。学校の帰り、蘭に連れられて瞳のお店に向かった。今日も満員のようだ。香が看板娘になったのか、ウェイトレスが板に付いてきた。
「あぁ、亜樹君、蘭ちゃん、いらっしゃい。今、満席なんだ。そうだ、私の部屋にいて」
瞳に言われて、愛ちゃんに瞳の部屋に案内して貰い、そこで珈琲を飲んだ。お店はもう少し広めがいいのかな?でも、接客する人数って限界があるしな。今度、泪さんと相談するか。
お店が混んでいるので、ジャマはいけないと思うので、珈琲を飲んで直ぐに、帰宅をした。
「なぁ、蘭、なんか、誰かを忘れている気がするんだよ」
帰り道で、感じた違和感を、蘭に訊いてみた。
「そうかな?みんないたよ。部室にねぇ」
そうなのか。それなら、俺の記憶がおかしいってことか。
---雨野狭霧---
夕食…お腹が減った。誰かのオカズを手づかみで食べちゃう。食べ物は掴めるようだ。
「あれ?オカズが…」
「あれあれ?食べたのを忘れたのかな?私のを上げますよ」
しまった。亜樹のだった。あゆが私の食べた分を補填してくれた。そうなると呑子さん辺りのおかずなら問題は無いな。上手くいけば、気づいてくれるし。って、全然、気づいて貰えない。どうしよう…
そして、食後の温泉タイム。男湯へ向かう。誰かに背後から、股間を弄くられている。あぁ…ダメっ…洗面台に手を付いた。背後から胸に手が伸びてきた。胸を弄られ、誰かに着かれている。鏡に映る私の乳房が上下に跳ねている。だけど、背後にいる人物は、鏡に映らない。吸血鬼系か?意識が徐々に薄れていく。亜樹…気づいて…お願いだから…
---結城夏凜---
朝、目覚めると、何も着ていなかった。あれ?亜樹が来たのか?探るが残留思念が無い。気のせいか…全裸で温泉まで行くと雪姫様に怒られてしまう。下着を着けないと…えっ…下着が掴めず、素通りしてしまう。何かの呪い系か?何の為に…雪姫様の元へ急ぐ。
「雪姫様、大変です」
だけど、私の声は雪姫様の耳に届いていない。そればかりか、雪姫様の目に私は映っていないようだ。そもそも、私の気配すら感じていないような素振りである。何が起きたのだ?
自分の部屋に戻り、武器を手にするが、掴めない。素通りしてしまう。これは一体…
◇
全裸での登校…誰も私が見えないようだ。亜樹にすら気配が感じ取れないようだし。これはマズいぞ。確か、麻衣に起きた透明人間事案に近いのか?どうにかして、亜樹もしくは幽奈か雪姫様に気づいて貰えないと、本当に存在が消えてしまうかもしれない。
ふと、誰かに舐めるような視線で、見られているような気がする。術者か?周囲を見回すが誰も見えない、感じ無い。だけど、誰かに舐められている感覚だけが、徐々に強くなっていく。淫魔か?淫獣か?武器が持てない今の私では、戦え無い。逃げないと危険だ。どこに逃げるか…そうだ、神社だ…
神社に向けて走る。だけど、見えない何かに掴まった。胸と股間を弄ばれている。その場に崩れる様にして倒れた私。
「はぁ…はぁ…はぁ…あぁぁぁあ~」
見ない何かが体内に入り、体内で蠢いている。体内で何かを噴霧し、悶悶さが増加していく。体内に媚薬を撒いているのか…淫獣系かぁ…亜樹ぃぃぃぃぃ~!
---鳥井亜樹---
誰かに呼ばれた気がした。誰にだ?思い出せない。亘に師匠を呼び出してもらう。
「どうしたんだ、亜樹」
師匠が割と早く来てくれた。事情を話す。
「なるほど…確かに、2名消えているな」
2名も消えているのか…俺の記憶から…
「いや、亜樹の記憶だけでは無い。みんなの記憶からだ。九重の記憶からも消えているようだ」
深刻な事態のようだ。
「よく、気づいたな、亜樹。雪姫は何をしているんだ。お仕置きとか、躾が足りないのか?」
「今回の敵は何者ですか?」
「う~ん…また、消えたら、知らせてくれ。たぶん、お前の記憶が不安定な影響も、それ絡みかもしれない」
それは亘すら、術に掛けているってことか。ヤバい相手だな。
師匠は転移して去って行った。
---神代亘---
亜樹が僕にスイッチした。蘭に行き先を伝えて、寿荘へ向かった。ここには資料が豊富にあるから。龍さんに事情を話し、二人で書物蔵へ入った。
「存在を喰う物の怪か…」
「暴食系かな?」
「何でも喰うってヤツか…どうだろうな。存在を喰っても、姿は見えるはずだ。存在が消えた者は、亜樹に接触するはずだしな」
ここ数日、亜樹に接触しようとした不審者はいなかった。そうなると、姿も消された可能性があるのか。いや、気配もか…
『亘、透明人間事案かも…』
亜樹からメッセージが届いた。透明人間事案?麻衣の陥ったアレか?アレって、みんなの深層心理下で存在その物が認識出来なくなったんだっけ?キーになる人物達に認識させれば、解決だが…問題は、誰が消えたのか、僕にも亜樹にもわからないことだ。
呪い系の書物に目を通していく。龍さんは魔物系の書物に目を通してくれている。
結衣の呪いは、完全に消えたはず。その上、結衣は呪いとは無縁な生活に戻っている。そうなると、誰かが、新たに呪いを掛けて、何かと契約したのか?
「もしかすると、淫獣系かもしれないな」
淫獣系…淫魔は精神だけを喰らうが、淫獣系は身も精神も魂までも喰らう。そして、陵辱し続けるのだ。彼らの体内にある異世界で…
「問題はあやか市に、そのような魔獣が出たなら、誰かが気づくはずだ」
確かに…結界を張っている。異世界召喚も防げる結界を…
「儀式をした可能性があるな」
現状において、儀式が出来る場所は限られる。一瞬、結界が緩んだ場所である。それは…白浪神社…亜樹に異変が起きたのは、そのせいだ。普段は僕が内側から護っているけど、その時は亜樹は無防備だった。僕は年末年始の儀式に集中していて、亜樹を見守れていなかった。
「神社ですか?」
「いや、あそこじゃない。もう一つの方だ。学習塾塾跡だろうな」
神木の子孫が息づいている聖地か…確かに。龍さんと学習塾跡地へと向かった。地下室にある根元へと向かうと、儀式をした痕が残っていた。それらを除去し、浄化をしていく。手遅れではあるが、これ以上の被害を出さない為である。
「術者は人間だな」
龍さんの手には魔法陣の書かれた紙があった。何かの本から引きちぎった痕がある。
「これは…恋愛成就の呪いの魔法陣です。異界からライバル達を消す異形なる物を呼び出す術式のようですね」
文字は悪魔文字である。そうなると、術者も既に喰われたかもしれない。召喚したのが淫魔なら、話し合いは出来るが、淫獣であれば、話し合いは出来ず、目の前の術者は獲物として見えたはずだ。
「術者無き、召喚獣との戦いか?」
「厄介ですね。あと、今後の事を考えると、ここにも霊的な箱物が要ります」
「あぁ、そうだな。それは、俺達でどうにかする。亘は、召喚獣を見つけてくれ」
「やれるだけ、やってみます」
とは言うものの…どうするかな?
---湯ノ花幽奈---
蘭さんに憑依して添い寝をしている時に、それは起きた。いきなり、蘭さんから引きはがされ、無数の手で押さえ付けられた。何が起きたの?まさか、除霊師?
あぁぁぁぁぁ~!
無数の舌が私を舐め始めた。有り得ない。感じ捲る私の身体…全裸にされ、身を悶えている私。それも亜樹君が寝ている目の前でだ。
いやっ!
有り得ないお尻の穴を舐める舌。地縛霊である私には、そんな物は無いはずなのだけど。
身も心も蕩けていくような刺激で、濡れていく。これも有り得ない。内臓が無い筈の私野身体は分泌液を出す器官が無いはずである。それなのに…
あっ…あぅ…
見えない何かにより達してしまった私。達したことにより、得体の知れない者を拒む意欲が曖昧になっていく。身体も心も、この得体の知れない者から与えられる刺激を欲している。
亜樹く…ん
徐々に彼の姿が遠く成っていく。段々と彼についての記憶が消えていく。そして、得体の知れない者に身も心も捧げだした。
マズい…師匠に知らせないと…思考力が落ちている。この得体の知れない者をどう喜ばすかを考え始めている。もっと、身体を解放すればいいのか…
しっ、しょぅぅぅぅ~!
---鳥井亜樹---
翌朝…目覚めると、何かがまた消えた気がする。何だろうか。朝風呂へ行くか。うん?誰かがいない気がする。誰だろうか…また、記憶がおかしいのか?
そう言えば、最近、すのはら荘に出向いて、食事をしていないな。たまには、帰りに行ってみるかな。
学校へ行く準備をしていると、
「おはよう…亜樹君…今日、学校休みだよ」
って、翼が背中に抱きついて来た。あれ?
「土日はお休みなんだよ。忘れたの?」
「そうだっけ?あぁ、記憶がおかしいのかな?」
「疲れているんだよ。どこへ出掛けようよ」
「たまには、すのはら荘へ行こうかと」
「あぁ、随分と行っていないよね。でも、あそこは…一緒に行くのはちょっとかな」
あぁ、彩花の巨乳に恐れる翼。確かに、人間離れしているよね。あの胸は…でも、彩花なら多少の無茶でも大丈夫だし。