※この作品はR-18です。

新そっくりなアイツ   作:もっち~!

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汚れ無き者と汚れし者

---毛利蘭---

 

新一はタフだな。私は2,3日入院なのに、アイツは入院しないとは…

 

「よぉ!蘭…容体はどうだ?」

 

新一がお見舞いに来てくれた。

 

「まだ、少しボンヤリするの」

 

「そうか…」

 

新一が私の手を握ってくれる。心が穏やかになっていく。

 

「新一…私、幸せだよ。新一が寄り添ってくれて」

 

「そっか。今日の蘭の笑顔は眩しいなぁ」

 

そんなに良い笑顔かな?

 

コンコン

 

ドアをノックして佐藤刑事が入って来た。

 

「工藤君、ちょっといいかな?蘭ちゃん、ちょっと、彼を借りるね」

 

「えぇ、いいですよ。たまに、人の為に働いてもいいわよ」

 

「そうか…じゃ、蘭、またな!」

 

佐藤刑事と出ていく新一。たまには、探偵もして欲しい…私のささやかな希望。

 

 

 

---佐藤美和子---

 

車に彼を乗せ、病院へと向かう。苦痛で顔が歪んでいる。

 

「亜樹君、大丈夫?」

 

「後、10分遅かったら、まずかったよ」

 

まだ、傷口が塞がっていない。無理は禁物なのに…仕事として、工藤君の身代わりをしている亜樹君。工藤君が探偵をしている間、工藤君の身代わりになることにした亜樹君。

 

「鎮痛剤を入れるわよ」

 

志保さんが、亜樹君に鎮痛剤を打った。

 

「少し楽かな…うっ…」

 

「佐藤刑事、少し急いで…マズいなぁ。」

 

少しアクセルを踏み込んだ。

 

 

チームドクターの病院に、連れ込んだ。銃弾による怪我なんか、普通の病院に連れて行けない。

 

「2,3日、安静だな。傷口はくっついたら、退院だ」

 

志保さんが、工藤君へ連絡をした。

 

『亜樹君が入院するから、明日から当分、見舞いに行きなさいよ!』

 

って…

 

「大丈夫だよ…はぁ…はぁ…」

 

全然、大丈夫に見えない亜樹君。志保さんは、亜樹君に施した化粧を拭き取っていく。顔色が悪いので、メイクをしていたのだ。

 

「こんな顔色で…無理はダメよ。いいわね!」

 

「無理じゃない…大丈夫だよ」

 

麻酔薬で強制的に眠らされた亜樹君。

 

「で、容体は?」

 

「傷自体は塞がれば問題は無いじゃろ。問題は、心が疲弊しておる。いわゆるノイローゼじゃな。コイツ、弱音を吐かないから…全然大丈夫では無いのにな」

 

楽しいことが無いのかな?生きていることが辛いらしい。ただ、工藤君の身代わりをする事に、喜びを感じているようだ。工藤君の身代わりとして産まれたと思い始めているそうだ。そんな彼に、生きる希望…どう教えればいいんだ?

 

 

 

---鳥井亜樹---

 

教授の病院から脱走した。会いたい奴がいるから。死ぬ前に会いたいから…無性に会いたい。追っ手に注意しながら、目的地へ急ぐ。出勤前だ。まだ、アパートにいるはず。

 

出勤する為に部屋の外に出て来たソイツを羽交い締めにした。

 

「おい!デコに会わせてくれ…」

 

「くど…いや亜樹君か?なんで、こんなマネを…」

 

高木刑事が声を掛けてきた。

 

「見張られているんだ。僕の協力者と思われると、高木刑事が不利な立場になる…だから…」

 

小声で理由を説明した。小さく頷き、彼の車に乗り込んだ。

 

『ちょっと、いいか?学校?今日は休んでくれ。大切な話があるんだ』

 

デコを呼び出してくれた。僕を待ち合わせ場所に置いて、高木刑事は出勤をした。少し待っていると、デコがやって来た。

 

「亜樹君…どうして…」

 

「会いたかったから、お前の従兄弟に頼んで、呼んでもらった」

 

「どうして、私?」

 

「無性に会いたかった。それだけだ。傍にいるだけでいい。ダメか?」

 

理由は自分でも分からない。ただ、会いたかったのだ。今日で、終わりになってもかまわないくらい。

 

「ダメじゃないよ」

 

僕の隣にちょこんと座るデコ。そんなデコの肩に腕を回した。

 

「ここじゃダメだよ」

 

真っ赤な顔で俯くデコ。

 

「しない…そこまで体力は無い」

 

穏やかな日差しが心地良い。

 

「今、どうしているの?」

 

「小説を書いて、絵を描いているよ。生活費を稼がないとダメだから」

 

「一人で?」

 

「紅子が一緒だよ」

 

「そう…ねぇ、高校を卒業したら…一緒に…」

 

「一緒には住めない。デコにはデコらしく生きて欲しい」

 

デコらしくってなんだ?まぁ、いいか。

 

「私らしく?亜樹君から見て、どんな感じ?」

 

「そうだな…天真爛漫かな…カゴの鳥にはしたくない」

 

僕といたら、束縛というカゴに入れちゃいそうだ。

 

「亜樹君のカゴならいいよ」

 

「僕がダメなんだ。そんなデコは見たく無い」

 

なんか、ものすごく理不尽な理由を言っているような…

 

「そうなの?」

 

真っ直ぐと僕を見つめるデコ。

 

「どこか悪いの?」

 

顔色が優れないからな。

 

「頭と性格かな。後は問題は無い」

 

「ふ~ん」

 

笑顔を浮かべるデコ。そうだ、その顔だ。

 

「そこまでだよ、亜樹君」

 

見付かったようだ。

 

「病院へ戻るわよ」

 

美和子と冴子だ…逃げられない…

 

「病院って?」

 

デコが泣きそうな顔で僕を見つめている。

 

「亜樹君は、あなたに会う為に、病院を脱走したのよ。後、10日くらい入院しないといけないのに」

 

「なんで、そこまでして?」

 

「会いたかった…それだけだ。一つくらい想い出を作らないと、母さんに話せないから」

 

向こうで待っていて欲しい母さんに、想い出話の1つくらいは、持っていきたい。冴子と美和子に抱えられるようにして、デコの前から連れていかれた僕。

 

 

 

---毛利蘭---

 

う~ん、昨日までの新一と何かが違う。何がだろうか?

 

「明日、退院出来るみたいだよ」

 

「うん?そうか…」

 

私のことを上の空?昨日までの新一は、もっと喜んでくれたようだったけど。佐藤刑事とどんな事件に遭遇したんだ?

 

「また、探偵稼業にどっぷり?」

 

「え?そんなことは無い。蘭が大切だから」

 

今日の新一の言葉は妙に軽い。そうだ、私の目を見て話してくれない。私の手を優しく握ってくれない。スマホばかりを見ているし。今日の新一は、私を穏やかにするどころか、ささくれ立たせてくれている。

 

「ねぇ、昨日の話は覚えている?」

 

「うん?覚えているよ」

 

「子供は、やっぱり、二人?」

 

「え?!あぁ、そうだな」

 

そんな話、昨日していない。カマを掛けてみたのだ。そして、確信をした。昨日までの新一は、亜樹君だったんだ…新一の身代わりで、私の傍にいてくれた。今日、いないってことは、何か遭ったのか?

 

「ねぇ亜樹君は?」

 

「知らない。忘れろ!アイツのことは…」

 

「じゃ、昨日してくれたみたいにして!」

 

「へぇ?!」

 

驚いた顔をしている新一。亜樹君にアクシデントが有り、行動の擦り合わせが出来ていないようだ。

 

「何をしたっけ?」

 

「覚えていないの?」

 

「いや、覚えているよ。でも、ここじゃ、恥ずかしい…」

 

手を優しく握ってくれたことを、恥ずかしい行為と間違えている新一。コイツ、何を想像したんだ?

 

「昨日までの新一って、亜樹君なんでしょ?」

 

「そ、そ、そんなわけあるか…俺は俺だ。お前、俺とアイツの区別が出来ないのか?」

 

「出来なかった…悔しいよ!でも、今は確信している。昨日のアンタは、亜樹君でしょ?!」

 

 

翌日、退院をした。新一が迎えに来てくれた。コイツは本物だな。

 

「どこか、行きたい処はあるか?」

 

「亜樹君の所」

 

「だから、忘れろ!昔の男のことなんか」

 

確かに元カレだよ…だけど…

 

「あぁ、ちょっと悪い…トイレ…」

 

有り得ない。退院した私を置き去りにしてトイレって…暫くすると新一が戻って来た。

 

「悪い。腹の具合が悪くてな」

 

え!

 

ごく自然に、肩を抱いてくれた。亜樹君だ…指摘すると逃げちゃうかな…ここは新一だと思っているように接するかな。

 

「で、どこに連れて行ってくれるの?」

 

「う~ん、アイツの所以外で、近場なら」

 

相変わらず、スタミナが無いんだろうな。

 

「あそこの喫茶店でケーキでも食うか」

 

喫茶店?テラス席に、私を置いて、ケーキと飲み物を買いに行った。暫くすると、二人分の飲み物と私の為のケーキをトレイに載せて戻って来た。

 

「紅茶とケーキだ」

 

珈琲カップを手にして飲み始めた。コイツは新一だ…入れ替わったのか。ずっと一緒にいられないほど、亜樹君は容体が悪いのかな?

 

「どうしたんだ?」

 

ケーキも紅茶も口にしないので、新一が声を掛けてきた。

 

「少し考え事よ」

 

「そうか…」

 

「ねぇ、亜樹君の容体はどうなの?」

 

「え!なんで…アイツの容体の話なんだ?」

 

「入れ替わっていたんでしょ?」

 

「何の話だ?入院中に夢でも見たのか?」

 

少し慌てている新一。ボロは出さないようだ。

 

 

あの日以来、新一は新一であった。亜樹君が入れ替わることは無い。やはり、何か遭ったんだろうか。

 

「蘭…どうしたの?悩みこんで」

 

あぁ、お母さんの家に来ていたんだ。忘れていた。退院して、しばらくはお母さんの元で生活することにしたのだった。

 

「亜樹君の事…」

 

「彼の事は忘れなさい」

 

「お母さんは、知っていたんだよね?新一と亜樹君が、入れ替わっていたことに?」

 

お母さんの動作が固まった。知っていたようだ。きっと、お父さんもだろう。

 

「どうして、そんなことを言うの?」

 

「ねぇ、亜樹君に会いたい。会わせて…お願い…」

 

再び固まるお母さん…どうしたの?顔を覗き込むと、涙していた。どうして?

 

「お願いだから、蘭…彼のことは忘れて。ねぇ、お願い」

 

お母さんが、私に身体を預けるようにして泣き崩れた。どうして?

 

「ねぇ、何があったの?教えて!ねぇ、お母さん!私、後悔をしたくないの。ねぇ!」

 

「そうね…あなたは、そういう子だったわね…でも、忘れなさい。住む世界が違うの。彼と蘭とでは」

 

それは、亜樹君の手が汚れているってこと…繰り返しているんだ。まだ…亜樹君と新一の周囲の者達を護る戦いを…

 

「それは…亜樹君が何かしたってこと?ねぇ、お母さん!」

 

「もう、私では彼を救えないの。だから、忘れなさい、蘭!」

 

弁護の余地が無い程に、手を汚しているのか…

 

「私も、彼と戦いたいの」

 

「ダメ…ダメに決まっているでしょ?」

 

お母さんの言葉、それは。彼は今も戦っているって、知っているってことだ。一人で手を汚し続けているんだ。脳裏に閃く物が舞い降りた。

 

「ねぇ、お母さん…もしかして、私を…私と新一を助けてくれたのって…」

 

「そう…彼よ…解毒剤を投与してくれたのも…」

 

そうだったんだ…

 

「ゴメンね…蘭…アナタの大切な人を護れないで…」

 

「ねぇ、亜樹君は今、どこに?」

 

「わからない」

 

「亜樹君の罪って?」

 

「無いわ…」

 

「無いの…なら、問題は…」

 

「罪が無いのが問題なのよ。あなた達を殺そうとした奴よ。ソレが消えたの。痕跡も無しにね。死体が無ければ事件にならない。彼は死体すら消し去ったの」

 

事件にならないから罪が問えない…

 

「それは、知能犯、凶悪犯に分類される。もし、何か1つでも証拠があれば、彼は…」

 

うん?

 

「でも、佐藤刑事と亜樹君は連れ立っていたけど…」

 

「警察が黙認しているの。彼が手を掛けた相手は、警察で裁けない相手だから」

 

黙認…それは、証拠を持たれているってことだ。

 

「彼は公安にマークされているの。公安の意に沿わない犯罪をすれば、即立件されるわ。私も含めて、そんな彼を弁護する弁護士はいない。だから、蘭…お願いだから、彼に関わらないで」

 

私の行く末を心配してくれているお母さん。だけど…そこまでして、私達は亜樹君に護られているのも事実なんだよね。

 

 

 

---鳥井亜樹---

 

脱走不可能な個室に入院中である。う~ん…暇だ…いや、仕事の出来る環境は出来ている。なので、忙しい。胸の怪我なので、女体遊びも禁止されている。う~ん、暇だ…

 

「どう?調子は?」

 

志保が入って来た。

 

「スキンシップしたい…」

 

「後、1週間は禁止よ。顔色も良くなっては来ているわね。そうそう、あの組織が和解を申し込んできたそうよ。実行部隊の殆どがやられて、活動に支障が出たとかでね」

 

それは、それで良かった。もう新一君と蘭は狙われないのだな。

 

「で、亜樹君の処遇が問題になっているそうよ」

 

「まぁ、猟奇的な殺人犯だからねぇ」

 

「死体は1つも無いから事件にならないし、でも、やったことは残忍だから…」

 

「13階段送りかな?」

 

「もう!そういうことを、嬉しそうに語らないでね。その死にたがりクセ、治しなさいね」

 

「電気椅子?」

 

「大丈夫、この国は床が抜けるタイプだから、望む死に方は出来ないわよ」

 

そうなのか…ちょっと残念だ。

 

「後、あの女が真相に辿り着いたみたいよ」

 

「口封じ?」

 

「公安はそこまでしないでしょ。それに、彼女に何かすれば、あなたがキバを剥くのがわかっているし、大丈夫よ」

 

それなら、それでいいか。

 

 

 

---毛利蘭---

 

新一がビデオを手渡して来た。私の知りたいことが、そこにあると言う。家に帰り、ビデオを再生してみると、窓の無い真っ白な部屋に亜樹君がいた。ベッドと机がある部屋。そこに亜樹君がウロウロしていた。血色は良さそうであるが、何かをブツブツ呟いている。疲れるとベッドで寝て、起きて机に向かい作品作りをしている。

 

これが、亜樹君の現状のようだ。どこかに入院しているように見える、心の病か?

 

「新一…亜樹君に会いたい…」

 

「それは無理だ。面会を申し込んだら、そのビデオが送られて来た。面会すら出来ない状況だってことだ」

 

「亜樹君は壊れたの?」

 

「どうだろうな。元々壊れているから、わからないらしい」

 

幼少期に辛い目に遭い、少年期にも辛い目に遭った。彼の人生は、何だったんだ?

 

「亜樹君と暮らしたい」

 

「無理だな。心が直らないと、退院は難しいそうだ」

 

「だから、あの場所で…」

 

新一が私の目を真っ直ぐに見ている。

 

「マジでか?」

 

「うん。決めたの」

 

「わかった。交渉はしてみるが、期待はするなよ」

 

 

それから数日後、目隠しをされて、車に載せられた。場所は明かせないらしい。そして、彼の病室に入った。

 

「亜樹君…」

 

「なんで来たんだ?おい!蘭のお帰りだ!連れていってくれ」

 

私を追い返そうとする亜樹君。彼の傍に行き、抱きついた。彼の身体は小さくなった気がする。栄養が足り無いのか?運動不足か?

 

「ねぇ、傍に置いて下さい。まだ、プロポーズされていないんです」

 

涙が零れていく。こんな身体になってまで、護ってくれたんだ。

 

「言っただろ?僕はもう蘭を抱け無い。汚れきっているんだ」

 

「ならば、私を汚して下さい」

 

唖然とする亜樹君。

 

「お前、おかしいだろ?」

 

「うん♪」

 

亜樹君の唇に自分の唇を重ねた。彼の唇は乾ききっていて、ささくれだっている。彼の心もかな?潤して上げたい。少しずつ…

 

それから1週間、毎日2時間ずつ面会をした。亜樹君から私に触れることはしない。でも、私のすることを拒否しない彼。少しずつ、彼に変化が現れていく。

 

彼の描く絵がおどろおどろしい物から、女体に変わっていった。それは徐々に女性の裸体へとなっていく。記憶に残る、女体のイメージを見ているようだった。

 

「モデルになろうか?」

 

「いらない。蘭の身体が汚れるから」

 

未だに私に手を掛けない亜樹君。裸も見ようとしない。彼の強い意志…私への拒絶を感じる。でも、私も強い意志で彼に接していく。彼と昔の様になりたいという強い意志だ。

 

 

1ヶ月後…漸く退院までこぎ着けた。

 

 

 

 

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