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第3章のオリバーくん。
黒衣の死神さん。
それは、魔法統括協会としての彼が血の滲むような研鑽と修練の結果であり、誰が悪く言うことも叶わない彼の勲章です。
死神を象徴する漆黒のローブを身に纏い、求められた依頼を颯爽と解決。武力を用いる時こそあれど、基本は『人を護るための魔法』に終始し、敵が明確な殺意を抱いた時、彼はその本領を発揮します。
そして、どうしようもなく残虐非道な連中に対しては──その悪事の代償として、その人の『あるもの』を刈り取るのです。
その『あるもの』を刈り取る様を、依然として私は見たことがありません。というより、見る前の段階で大抵の事は解決してしまいます。
幸か不幸か、私とオリバーの旅路に、『彼が死神であること』を強いられる危険な出来事は今のところ皆無でした。
「イレイナさんは本当に可愛いよなぁ……」
「……」
「立てば芍薬座れば牡丹。歩く姿は百合の花。
──全く、イレイナさんは最高だぜ」
そして。
今日も今日とて山吹の魔道士さんは趣向を変えて徒歩で旅をする私に甘い言葉を囁きます。
その言葉は私にとって心臓に悪いことこの上なく、その奇行が唐突に行われるものですから大変。
私の心臓は、下手したら既に人より数年分の鼓動を刻んでいるのかもしれません。どう責任を取ってくれるんだこの魔道士は。
「ふざけた事を抜かしてないで、早く行きますよ」
「じゃあ箒で行けば良かったくね?」
「うるさいです」
折角の2人旅だというのに、この魔道士さんには風情というものが理解できないそうです。
なんと可哀想な幼馴染なのでしょう。あなたがぐるりと景色を見渡せば、そこには青い空に、緑の自然。そして何より、灰色の髪をしたお人形さんのように美しい魔女がいるというのに。
それにも関わらず、景色には見惚れずにほうきを飛ばそうとする山吹の魔道士さんに私の怒りは収まるところを知りません。
業腹です。1度ぶっとばしてやろうか。
「あー待てって。悪かった、俺が悪かったから一緒に歩いていこうぜ」
「……」
「下じゃなくて隣に居たいって言ったばかりだろ。俺の隣を離れてくれるな」
怒りのままに動かした足が、その一言で止まります。
気付けば、私は彼の数歩先を歩いており。隣に山吹の魔道士さんが居ないことに気付くと、後ろを振り返ります。
すると、そこには。
「頼むよ、──レナ」
優しく微笑む、そんな幼馴染の姿が。
風情のある景色と共に、私の視界に映り込むのでした。
2024年10月24日(木) 15:41
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