作品執筆のお話、その2-2。

 以下では執筆をしながら悩んだ事などを時系列で振り返っています。こんな事を考えながら書いていたんだなと、そんな風に受け取って頂ければ幸いですし、何らかの参考になるのであればとても嬉しいです。一応ネタバレがありますのでご了承下さい。

 なお拙作は原作3巻に入る直前の時点で全47話、計31万6千字、平均6,500字、UA6万8千、お気に入り246、感想55、評価投票者17人でした。


■連載再開前に行った事

 自作を一気読みして気になった部分を手直しして、それから執筆に関する体験談を書いて活動報告に載せました。その後、作品全体を見据えた丁寧な再読を行って、可能な限りの修正を行いました。正直、これ以上の修正は全てを書き直す事でしかできない気がします。

 残念ながら効果は疑問で、1話で見限られたり冒頭5話までに去って行かれる方の割合は今も高い数字のままです。せっかく興味を持って読んで頂いたというのに、失望させてしまうのは申し訳ない事ですが、「もう少しだけ読み進めてみて下さい」としか言えないのが辛いですね。


■幕間の話について

 主目標は妹との再会でしたが、先を見据えて幾つかの実験というか練習を行っています。会話で話を進める事。文章表現で読ませる工夫をする事。伏線を潜ませつつ世界設定の話も盛り込む事。前後2編で話をまとめる事。等々ですね。

 24話は本筋から外れたおまけのようなお話ですが、頭の良い人が思い付きそうな冗談を題材にしました。笑ってしまうのではなく「ああ、うん」と反応に困るような冗談を最後に言わせる構成にして、話の流れは主に会話で進めるように心掛けました。

 25話は原作からの変更点と作中の年表をまとめたものですが、UAの数字も悪くなく、独立させて良かったなと思います。次回は3巻の終わりにまとめる予定です。


■原作2巻について

 原作は大きく前後半で分割できますが、いずれもネタがばれているので、どう見せ場を作るか苦労しました。原作とは違った解決法を提示できれば理想ですが、プロ並みの発想を求められるのはハードルが高いですし、原作も割と勢いで解決している感じですし。結局、対応策はしっかりしたものに、解決自体は話の流れを重視して進める事にしました。

 前後半とも、特に淡々と話を進めていく序盤は「地味で面白くないと思われないか」と危惧しながらの更新でした。しかし話の流れを作っておく必要があるのと、主要キャラ3人の描写を積み重ねておかないと最後の展開の際に説得力が違って来るので、何とか読み続けて頂ければと願いながら書いていました。同様に、最後の展開に繋げる為には主人公を活躍させ過ぎない必要があるのですが、読者様の反応を気にしつつ、それを逆に活かしてある種のリアリティが出せないかなと模索したりもしました。


 ほとんどの作品でやられ役であろう2人の事を掘り下げた29話の辺りで、評価の色が赤から橙になって、UAが一気に減りました。ただ、最新話のUAにはさほど変化がなかったので、それが気持ちとしては助かりました。

 この29話は、ネタがばれている状況ゆえに倒叙型(古畑やコロンボ風)の構成にして、それと作者としては件の2人はそれほど嫌いではない(というか嫌いな原作キャラが居ない)ので、主要人物にはできなくとも一応はちゃんとした扱いをしてあげたくて、彼らの為に1話を費やす事にしました。

 問題は、反応を怖れて前書きで変なフォローを入れた事でしょうか。4話や5話で後書きに変な事を書いて急展開のフォローをしようとした時ほど失敗したわけではないですが、何かを誤魔化す為に受けるような事を書こうとするのは、自分には向いていないんですよね。そもそも面白い事を言おう/書こうとして失敗した過去が多すぎて泣けて来ますが、それはさておき。

 同様に、原作のような「よく読めば酷い事を言っているけど気付きにくい」描写も、私が書くと文字通り貶しているだけの書き方になりがちなので、難しいものです。大人しく展開で勝負というか、次の30話で意外なキャラを出してフォローする事は決まっていたので、それまで泰然としていれば良かったなと思います。結局、反応を気にし過ぎて腰が据わらない文章を書くのが一番ダメだよなと、そんな事を思いました。

 前半のその後については、原作と違ってチェンメを送れば運営に一発でバレるという仕様ゆえに噂を流す事になりましたが、教室での女王無双から依頼の解決と将来の火種を取り去る展開に繋げられて、それを書き切れてほっとしました。そして、ここで気を抜き過ぎた為に、自ら余計な悩みを引き寄せる事になりました。


 この時期に総文字数が20万字に到達したので、ふと思い立って同原作で20万字以上の作品を検索してみました。39話の後書きで紹介した通り、33作中お気に入りが200未満は本作含め4作のみ。うち1作は短期間で一気に更新した作品で、他2作は1〜2年前の作品でした。拙作の次にお気に入りが少ない作品も見てみましたが、最新話のUAは本作の2倍半でした。

 UAやお気に入りが伸びない悩みを抱えて、それでも一定数の方々に読まれているのだし有り難い事だと、ここまで鴎外の「高瀬舟」のような心境で書き続けていました。それが数字的には最下層なのだと突き付けられるとやはり辛いものがありましたし、大多数には相手にされていないと受け入れるのは哀しい事でした。

 いつかは自分の作品にもフィーバーというかモテ期というか、そんな時期が来るかもと楽観的に考えていたのですが、ランキングに載ったりお気に入りが爆発的に増えるのは本作には縁の無いことだと覚悟して、開き直ったのが37話でした。その直前の36話が書きながら一番辛かった時期で、書くと決めていた内容を何とか書き上げて、どっと疲れたのを覚えています。

 その36話を書いていた時は、前述した1話での見限られ率の事もあって「自分の文章そのものに問題があるのでは」とか、更には「自分が面白いと思っている事は、実は面白くないのかも」とまで疑い始める瞬間があって、精神的に厳しい時期でした。でも、高評価の他作品を読むと面白いと思えますし、同時に自作を読んでも、多少の瑕疵はあっても自分では面白いと思うんですよね。同原作だとあまり無いタイプだと思いますし、こんな作品もあって良いじゃないかと思ったりして。

 幸いな事に、学生時代に「自分は勉強に向いていないのかも」と思った時とか、社会人になって「今の仕事に向いていないのかも」と思った時の経験があったので、この時期を乗り越えられたと思っています。要は「辛い時こそ出来る限りの事をやってみる」という単純な話なのですが、過去の経験のお陰で36話を何とか更新できました。

 37話からしばらくの間は、作中にネタを仕込むとか将来を見据えて何かの練習をするといった余計な事を考えず、とにかく書きたいように書く事を心掛けました。その結果、更新ごとに平均5upと本作にしては順調にお気に入りが伸びたり、評価の色も赤に復帰できたり、良い事が重なったのは本当に不思議な事でした。

 現在の拙作は総文字数が30万字を超えて、同原作では14作しかない域に達していますが、お気に入りの数は圧倒的に最下位です。一番近い作品でも倍以上なので切ないですし、せっかく本作をお気に入りに入れて頂いたり評価を頂いたりして応援して下さる方々の期待に応えられていない気がして情けなくなりますが、少しでも良い内容にできる事だけを考えて開き直って更新を続けようと思っています。


 ところで本作とは直接関係のない事ですが、この時期(9〜10月)は同原作の幾つかの有名作で感想が荒れ気味で、それらの作品の内容が原因と言えばその通りだとは思いますが、更新が途絶えたり最悪作品が消えてしまったら嫌だなと案じていた時期でした。その他の既存作品も更新が滞りがちという印象で、新規作品もあまり増えず寂しく思っていた時期です。

 上記のように人の心配をしていられる状況ではなくなって、その間にゲームが出た影響か、最近は少し前と比べると活況を呈している気もしますが、読んで楽しい作品がもっと増えたら良いのになと思う今日この頃です。


 さて、そんなこんなで後半も終わりが近付いて来ました。44話の後書きでは解り辛かったと思いますが、最後の決戦はボス弱体化→弟による一撃の後は勝手に話が進むイベント戦闘をイメージして書きました。FF7のセフィロス戦で気付いたらゲージが溜まっていて超究武神覇斬が出るという、あんな感じの戦闘です。あれ、当時は全く意味が解りませんでした。

 最終的に争いを収拾した主人公の発言は、ロマサガ2をご存じない方にどこまで通じているか不安ですが、SaGaシリーズの話はそれまでにも時々出していましたし、前話でも秘宝伝説のネタを出したりと、細かいところで苦心はしています。拙作の主人公は特殊技能などを何も持っていないので、台詞の流れで「あの名言を言うしかない」という状況で口にしたら何故か話が上手く進んだという、そんな展開にしてみました。前話では要らぬ発言で失敗するシーンを入れるなど、色々と調整をしたつもりですが、深く考えずに勢いで解決したと受け取って貰えると一番嬉しいかもしれませんね。

 最終話は幾つか強引な部分がありますが、概ね書きたい事は書けたかなという感じです。この前後数話は1万字クラスが続いて、更にPCの不調などが重なって更新が遅れがちでしたが、何とか思っていた通りに書き切れて良かったです。


■おまけと幕間について

 おまけの話は書きながら楽しむという感じで、肩の力を抜いて気楽に書きました。24話に続いて何となく駄洒落を入れてみましたが、気付いた方がどれほど居られたのかは気になるところです。


 幕間の話はこの章で一番重要かつ一番書きたかった話なので、事前に色々と準備をしました。主要キャラ3人の描写を積み重ねて来た事もですし、4話の教訓を活かして細部に拘った事も大きかったと思います。この世界への導入やシステムの基本的な作りなどを他作品からそのまま持って来てその後に苦労したことの反省や、作品とは直接関係の無い話をいかに展開の中に組み込んで、かつ説得力のある描写に出来るか等々ですね。

 前者は、この回のほぼすべての展開を独自に設計する事で対策しました。ひとつのお話として、構成や展開などを綺麗に収められるように頑張ったつもりですので、できれば多くの方に読んで頂いて感想を伺ってみたいものです。

 後者は、参考文献を挙げたように知識をきちんと自分の中で消化して、物語の主筋とは違う部分で読者様から質問を受けても何とか答えられる程度の理解度を目指しました。それは作品を書くという事からは外れた行いかもしれませんが、細部に宿る物というのは確かにあって、それが意外に作品の印象にも影響するのではないかと考えたのです。

 書き終えてみて、知識や理解度に対する自分の中での自信というか、それが他の描写にも影響して、作品全体のイメージを左右する事にもなるのかなと思いました。絶対に勝てないボス戦で、しかし主人公サイドを必要以上には貶めず逆に一部キャラを上げる形で進行させてみましたが、相手の台詞を地に足を付けて書けたのが大きかったと思います。


 最後の場面では、曲の歌詞を出してそれに対して主人公が思った事を描写するという形式になっています。著作権などの問題が無ければ元ネタの歌詞をそのまま書き並べたかったのですが、仕方ないですね。哀しい展開なので原作アニメの曲は使いたくないと思いながら、プロットを考えていた時に思い付いたのがこの曲でした。それからはこの曲が頭から離れず、書きたい状況がこの曲の歌詞とぴったり合っていると思えてならず、結局そのまま採用しました。

 そんなわけで、「(俺の)記憶の中でずっと(あの)2人は生きて行ける」だけの寂しい未来ではなく、やっはろーAgainという結末を目指す原作3巻も、宜しくお願いします。


日時:2016年11月22日(火) 00:32

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clp

町歩き様、お久しぶりです!

メールについてはお気遣いなく。
自分は返さないと気持ち悪く思うタイプなので大抵すぐに返事を出しますが、それが相手へのプレッシャーになってしまうと申し訳ないですし。。


今のお気に入りが300弱なのですが、町歩き様が仰る通り、300人が自分が書いたものを読もうと思ってくれている状況ってかなり凄い事なんですよね。

なので30話を超えてものんびり更新していたのですが、書いた文字数とお気に入りの数字を対比してしまい、他作品と比べて圧倒的に不人気なのかと思っちゃったんですね。

冷静に考えると、気軽に流し読むのではなくじっくり読んで貰う作風ですし、欠点を気にして小さくまとまるより長所を出す(=欠点が目立つ)書き方なので、他作品より数字が伸びないのは当然なのですが。。

正直に言って恥ずかしい過去そのものですが、自分がこんな些細な事を切っ掛けに一気に自信を失った時期があったのは事実なので、ちゃんと残しておこうと思って書きました。

渡先生が仰る通り、私も好きな作品がエタったり削除されたりで哀しい気持ちになった事が何度もありますし、1人でも読者様が居てくれるとそれだけで気持ちが全然違いますよね。

どこまで続けられるかは自分でも判りませんが、少なくとも書き始めた限りは、章の区切りまでは絶対に書き切ろうと思っています。

今はリアルが修羅場の時期に突入して、書くほうは1ヶ月休載、読むほうも22日以降の更新は全て放置した状態ですが、「俺、年度末進行が落ち着いたら一気読みするんだ」的なことを呟きながら過ごしています。


新海作品の扱いは最新話で一変しましたね。

町歩き様の作品の中で八幡が驚いていましたが、「それな」と戸部並の語彙の無さで同意しながら拝読してました。


ではでは、また!


日時:2017年01月28日(土) 01:34

町歩き

■CASE4 な、なんか……全っ然売れてないんだ、けど……

しょうがないね。

ラノベは初動でだいたいその後の数字が読めてしまうので売り上げについては諦めましょう。

でも、作品作りには絶対妥協しないこと、最後まで諦めないこと。

むしろ数字を気にしなくてよくなったんだからいくらでも自分の好きなものを書けると考えるんだ。

でも、直近の本の結果が次回作の部数や入荷数にリアルに反映されるので、数字を落とさない努力はしていきましょう。や、これマジで反映されるんだよ…

それに、これが一番大事なんですが、

どんなに売れてなくても、買って読んで下さる読者さんがいます。

売れないと心が折れそうになるし、悩み続けるし、もういっそやめてしまおうかと思う時もあります。髪の毛とか超抜けます。どうせ売れねぇんだろ!知ってんだよ!とやさぐれることもあります。

それでも、読者さんは絶対にいてくださる。続きを楽しみに待っていてくれる人がいます。ソースは俺。

だから、最後まで書ききってほしい。

金を稼ぐためだけに作家になったというなら別ですが、物を書きたいと、好きな物書いて生きていこうと、そう誓ったなら例え多くの人に読まれずとも書ききってください。

自分が、数字が、担当編集が、出版社が信じられなくても、それでも読者の存在だけは信じられるから。

こんな売れてない、まったく人気のない作品でも読んでくれてる人がいる。その事実に触れた時、割と本気で泣きます。最高に嬉しいです、ちょっと寂しいけど。

この気分を実感するためにも売れないくらいがちょうどいいぜ!


日時:2017年01月27日(金) 15:11

町歩き

clpさん、お久しぶりです。
メールの方、変な感じで途切れて申し訳なく。
仕事の合間に送ってたので、変に時間が空いてしまい、そのままでした。

と、活動報告の方拝見して思った事をつらつらと。
あんまり気にしない方がいいと思いますよ。その、お気に入り数とかUA数とか。
まあ多いにこしたことはないですし、人気があるほうが良いのは当然ではありますが。
拙作のお気に入りは多い方なのですが、UA自体はそんなにですし。
実際、現実というか実生活で、自分の話に耳を傾けてくれる人、50人もいるかなー?と思えば
100人以上が投稿するたびに目を通してくれるって、凄いことだなと私個人は思っています。
後まあ、新海作品の良さを皆に広めたい!というのがあって(君の名はの人気をみると必要なかったですが)
それで何人かの方から「秒速読んでみた(観てみた)」とメールなり感想なりいただけたので
割と満足だったりします。

それで渡先生も似たような事をプログに書いていたので、コピって貼っておきます。
暇なときにでも読んでみてください。

文字数でエラーでたのでちょいわけますね。


日時:2017年01月27日(金) 15:11



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