『EPISODE 44. トロイメライ』に込めた爆豪勝己像


『僕のヒーローアカデミア・アナザー 空我』を愛読いただきいつもありがとうございます。

さて、表題は拙作においてW主人公の片割れと言っても過言ではない爆豪勝己にスポットを当てたお話となりましたが、いかがだったでしょうか?基としたのは言うまでもなくクウガのEPISODE 44『現実』です。爆豪とガリマの邂逅、デクvs死柄木などのオリジナル要素もありますが、概ねストーリーラインは変えていないのは視聴済みの方であればおわかりになるかと思います。

ただ唯一変えたのがラストシーン。クウガでは一条さんと実加は結局わだかまりを残したまま別れ、TV放送内ではそれきり再会することはありませんでした(小説版では警察官になった実加がそのことを謝罪する描写がありますが)。一方で拙作では、実加が最後、爆豪のところに戻ってきました。この違いは一体なんなのか。

拙作における爆豪勝己を表すキーワードは「孤独」と「自罰」です。着想を得たのはテレビドラマ「相棒」のSeason9 第15話『もがり笛』において、殺人を犯したことを悔いる末期癌の受刑者が、想像を絶するような苦痛を甘んじて受け続ける様子でした。復讐のために看護師として入り込んだ被害者の娘をして「罰を受けるようにして生きている」と言わしめたその姿が、デクが"望みどおり"夢を捨てた世界線でヒーローになった爆豪勝己をどのように描くかを決定づけました。

爆豪という人はすぐキレてなんでも発散しているように見えて、本当に深刻なことは内に抱え込んでしまうタイプなのは原作でも描かれているとおりだと思います。プライドの高さや尊大な振舞いは、危ういアイデンティティの裏返し。
それらを描くうえで気をつけたことは、あくまで卑屈だったり、自分をただ蔑ろにしているように見えないようにすること。爆豪は自尊心をなくしたわけではありません。むしろ上記2つのキーワードがそれをより強固にしているのです。自分は強いからこそ、楽になってはいけない。自分のしてきたこと、それこそ他人の夢まで背負って生きていくのだという思いが彼のレゾンデートルなのです。

……ラストシーンを変えたのは、そんな爆豪の生き方に報いてあげたかったからです。似たようなメンタルを持つ真堂や切島はじめヒーローである友人たちではなく、本来絶対に交わらない対極にいるであろう少女(しかも中3なのがミソです)だからこそ、真堂をして「きみの生き方は否定されるばかりではなかった」と言わしめたのですね。ちなみにこのラストシーンも『相棒』のとある回のオマージュだったりします。気になる方は探してみてください。上記の真堂の台詞は割と右京さんの台詞そのままなので、その回を視聴済みの方はすぐわかる……かもしれません。


そして最後に。犯人に対する罵倒の締めに言った「カワイソーにな」というひと言。これはデクに対しては絶対に言わなかっただろうなと考えている言葉です。あれだけ躍起になって叩き潰そうとしてきた時点で、実は爆豪はそれだけデクを買っていた……という見方もできるのではないかと。まあこの辺はEPISODE 25でも描いているので今更かもしれません。


長くなりましたが、まだまだ爆豪の戦いの日々は続きます。グロンギがいなくなったとしても、ヒーローである以上永遠に悪と戦い続ける運命にあります。それら全てを描くことはできませんが、この作品の終わりで爆豪がどんな結末を迎えるのか、ぜひ楽しみにお待ちいただければと思います。長々とありがとうございました。


P.S. もちろん全体を通しての主人公はデクです。キャストで一番手がデク、二番手がかっちゃんということで……。


日時:2019年02月22日(金) 23:39

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