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(0) バーバラは考えていた。私はこれから先、何をしていけば良いのか。そんな漠然とした疑問を抱えながら日々を過ごしていると、父であるゴネリル卿が話しかけてきた。
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(0) 「バーバラ。最近何かに悩んでいるのではないか?」
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(0) 流石父、娘の持つ空気が変わったことを一瞬のうちに見抜いた。ここは素直に相談しようとバーバラは思った。
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(0) 「父上よく分かりましたね。はい、最近悩んでいることがあるのです。」
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(0) 「私はお前の家族であり父だからな。おそらくだが、お母さんやホルストも気付いていると思うぞ。」
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(0) 意外にもバーバラは驚いた。自分では悩んでるような素振りをしていると思っていなかったからだ。と同時に、家族に対する愛情がより一層深まったことは言うまでもない。
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(0) 「父上や母上はともかく、兄さんも気付いていたとは少々驚きました。それで父上、私にこのことを問い詰めるということは、私の悩みを聞いてくれるおつもりですね?」
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(0) 「そうだ。お前のことだ。何かが欲しいといった悩みなどの小さい悩みではないだろう。力になれるかどうかは分からんが、この父に話してみる気はないか?」
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(0) 「ありがとうございます父上。では、私の悩みを一つ聞いていただきます。私は、自分のことを天才だと確信しています。それは、父上や母上や兄上、私と同年齢の姉上も分かり始めていることだと思います。」
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(0) 「ああ。それは私もお母さんも分かっている。バーバラ、お前は天才だ。そんなお前が何を悩んでいるのかは何となくだが分かる。大方自分の将来について思案しているのではないか?」
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(0) 「流石父上です。ご明察通りです。私が悩んでいることとは私が大きくなった後何をすれば良いかということです。言い換えれば私の将来についてです。」
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(0) 「やはりそうか。バーバラ、お前は何でもできる。故にお前がしたいことをすれば良いと私は思う。お前なら、政治家でも戦術家でも好きな職につくことができると思っている。」
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(0) この時、ゴネリル卿はバーバラが将来どんな職につきたいのか悩んでいるものだと思い込んでいた。だが、二人の考えの間に齟齬が発生していた。
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(0) 「いいえ父上。私が悩んでいることは、私が将来何になりたいとかそういう単純なことではないのです。父上のおっしゃる通り、私であればなりたい職につくことができるでしょう。だからこそなのです。だからこそ私は、私にしか出来ないことがないか、具体的には私に何が出来るかということについて悩んでいるのです。」
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(0) これには、ゴネリル卿も素直に驚き、称賛すると同時に少しだけ我が子に恐怖を覚えてしまうのだった。我が娘バーバラは今何を見ているのか。そしてどこへ向かって行くのか。
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(0) 「なるほどね。バーバラは自分自身の存在する意義というものを見つけ出したいということだね?違うかい?」
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(0) 「父上の言う通りかもしれませんね。私は、何者にでもなれる天才だ。兵士になれば誰よりも強く、政治家になれば誰よりも賢く、戦術家や教師にしても、このままいけば、おそらく私は誰よりも上手くできるようになるでしょう。だけどそれは、私だからできることではないと思うのです。戦いや政治という分野でも私でなければならないという分野でもない。言い換えれば私でなくともいい。すなわち替えが効く職業と言えると思います。」
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(0) いったいこの子は何になろうとしているのだとゴネリル卿は考える。バーバラの言い分では、私にしか出来ないことをしたいと言っているように聞こえる。では、バーバラにしか出来ないこととはなんであろうか。何個か候補はあるが、この悩みはバーバラ自身が解決しないといけないものだ。
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(0) ゴネリル卿はそう結論づけてバーバラに返答した。
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(0) 「バーバラ。おそらくだが、私はお前の悩みに対する答えを幾つか答えることができる。だが、その答えはお前自身が見つけない限り、お前の抱える問題は一歩も進まない。それどころかお前の才能を逆に腐らせてしまうと私は考えている。故に、お前に答えを提示することはできない。すまないな。」
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(0) ゴネリル卿が、そういうとバーバラは落胆することもなく返答した。
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(0) 「そうですか、ありがとうございます父上。確かにこれは私自身が乗り越えるべき問題ですね。私の将来やなりたいものなどを、他人に決めてもらうなど、それがたとえ家族であったとしても決めてもらった道を行くなど、それはもう私の人生ではないですね。話を聞いていただきありがとうございます。」
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(0) バーバラはそう言い切り、父に笑顔を見せて読書をするためか書斎へと向かっていった。
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(0) 書斎について、ゴネリル卿やその夫人、兄であるホルストが利用することもあるが、バーバラが文字を読めるようになってからは、ほとんどバーバラの私室のような感じになっていた。経済学や帝王学、政治学や戦術書などの書物が所狭しと並ぶ部屋となった。そろそろ狭くなってきており模様替えが必要だろう。
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(0) そんな書斎兼自分の私室に向かうバーバラを見て、ゴネリル卿は笑いながら思った。あの子なら大丈夫。仮に危険で苦難の道をいくとしてもそれは間違った道ではないだろうと。仮に間違えたとしても、その時は家族である自分や妻、ホルストやヒルダが訂正するだろうと。
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(0) 他の人には出来ない私にしか出来ないこと。それが何であるのかバーバラはここ数日考えていた。
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(0) 思考を一定の方向に持っていかないように色々なことをした。時にはフォドラの歴史書を読み解き、またある時には、フォドラの喉元において起こるパルミラとの小競り合いを見たり、またある時には魔法の訓練など、色々なことを実践した。
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(0) その中でバーバラは一つの結論に辿り着いた。
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(0) 他人に出来ず自分にしか出来ないこと。それは、自分の境遇やルーツ、置かれている立場を客観的に見て分かることがヒントになるのではないかということだ。
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(0) そこまで結論を出してバーバラはまず、自分を形成する外的要因について考えてみた。
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(0) 我々が住むのはフォドラと呼ばれる大地。神が創ったとされ、今なお女神信仰が盛んな宗教地帯と言える。
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(0) 宗教とは歴史上、重要な転換点において必ずと言っていいほど存在するものである。それが良い意味で歴史を変えるか悪い意味で変えるかは別として。
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(0) 現在、このフォドラで信仰されているのはセイロス教である。信者も大多数存在し、教団はフォドラの重要地であるガルグ=マク大修道院を支配している。
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(0) セイロス教に歯向かうことは、すなわちフォドラでの異端児認定、そして敵とみなされるだろう。教団の兵力も各国のうち1:1であれば戦える戦力を持っている。
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(0) セイロス教の勢力を除くと、やはり三大国の勢力がフォドラに大きな影響を与えている。アドラステア王国、ファーガス神聖王国、そしてバーバラの生まれ故郷であり、現住しているレスター諸侯同盟。
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(0) フォドラは、この4つの勢力が存在している。だが、このことはこの四つの勢力が互いに違う主義主張を持ち、一種の敵対関係にあると言っても良い。セイロス教はすこし枠組みから外れているが、アドラステア帝国、ファーガス神聖王国、レスター諸侯同盟の三つは間違いなくそうだ。
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(0) 次にバーバラの境遇である。レスター諸侯同盟の五大諸侯がうちの一家、ゴネリル家に生まれた。三人兄妹のうちの末っ子。紋章を持っていないが、どの分野においても同世代の子供たちの追随を許さないほどの才能を持っている。すなわち天才である。
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(0) 好きなことやものは、家族と読書。苦手なことやものは、特になし。嫌いなことやものは、人を見かけでしか判断しない人や、自分の時間を無理やり邪魔する人。
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(0) こんなところであろう。自分の境遇で特徴的なことは、貴族であること、紋章がないこと、人にはない才能を持っていることだとバーバラは考える。
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(0) あとは、紋章がないと評価してもらえないこのフォドラで、貴族として生まれてしまった私を育ててくれた家族も、良い影響を与えてくれている外的要因の一つだと言えるだろう。もし、自分が他の貴族の家に生まれてしまっていたら、修道院なり政治の道具なりにされるところだっただろう。
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(0) そうなれば、素晴らしい家族を持ったことも私の特徴と言えるかもしれないとバーバラは考えた。
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(0) これらのことから自分にしかできないことはあまり考えつかない。実際、やりたいこともまだないため将来のことについて漠然とした考えしかバーバラは持っていない。
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(0) 今の自分に出来ることといえば、将来つきたい職や、やりたいことが決まった時のために力をつけることだろう。
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(0) ゴネリル公爵家は、アドラステア帝国やファーガス神聖王国から見ても重要地の一つであるフォドラの喉元の守護を任されている。隣国のパルミラなど、フォドラ外からの襲撃者を撃退するためである。
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(0) そのおかげでバーバラには、パルミラとゴネリル家を筆頭とするフォドラの軍の戦いを目にする機会は何度もあった。
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(0) フォドラ軍はどうか分からないが、聞くところによるとパルミラ軍は単純に戦いを楽しみたい、武功を立てたいという目的を持つものが大半であった。
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(0) パルミラの書物を読む機会が多少あったため、いくつか読んでみたが、フォドラを蔑むような内容の書物がいくつかあった。
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(0) だが、フォドラの民を蔑むようなことを言っているような彼らだが、本気で侵略しようとは思っていないようである。
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(0) 確かにパルミラから見れば、自分たちの住む大地に引きこもり、他の大地との交流をしようともしない私たちは、弱虫で臆病な存在であると思われてもしょうがないだろう。
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(0) だが、フォドラとの戦闘を行うパルミラの勇猛な兵士から見たら、我々フォドラの民が弱虫などという考えはないだろう。何度も戦っている手前、戦闘の中で友情のようなものも芽生えている節がある。
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(0) そこに、パルミラの民とフォドラの民の違いなどないだろう。どちらが善で悪なのかという判別もそこにはない。同じ人として構築された関係だ。
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(0) 人だからこそ分かり合えることもあり、人だからこそ分かり合えないこともある。
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(0) フォドラにおいては、セイロス教など各国で共通しているものがあるため、パルミラとの違いほどのものはないだろう。
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(0) 故にバーバラは思った。人を知りたい。そしてレスター諸侯同盟を抜け世界を見てみたいと。
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(0) 違いがあるからこそ人と人は対立し分かり合うまでに時間がかかるとバーバラは考えた。すなわち、価値観の違いこそ戦いの火種を生むのだと。
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(0) このフォドラは、相反する価値観を持っている者たちがいる大地だ。それはアドラステア帝国、ファーガス神聖王国、レスター諸侯同盟と三つの国があることからもわかる。
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(0) バーバラは考えた。セイロス教という柱があるにもかかわらず、何故三代国家は覇権を争っているのかと。
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(0) 今はそれを考えることこそ私が出来ることと考え、バーバラは来るべき日に備えて、力を付けるべく努力していった。
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