行別ここすき者数
小説本体の文章上でダブルクリックするとボタンが表示され、1行につき10回まで「ここすき」投票ができます。
履歴はこちら。
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)例の仕返し大作戦から幾日が経った某日、今日は律に次ぐ第二の転校生が来るらしい。
(0)この幾日かの間にビッチ先生の師匠が来てビッチ先生の残留を賭けた模擬暗殺が行われたり、渚とカルマがハワイまで映画を観に行ったりしたらしい。
(0)あと、どういうわけかスマホの中に律がいた。 メインサブの両方にすっかり住み着いてて、ちゃっかり俺の稽古を分析したりしてるそうな。
(0)
(0)話を戻そう。 ま、そういうわけでクラスも転校生の話題で盛り上がってる。
(0)
(0)「律さんの時は少し甘く見て痛い目を見ましたからねぇ、今回は油断しませんよ」
(0)
(0)殺せんせーもどこかワクワクしてるような気がするし、皆考えてることは同じということだろう。
(0)
(0)「そうだ律、同じ転校生暗殺者として何か聞いてないの?」
(0)
(0)『はい、少しだけ。 初期命令では、私と"彼"の同時投入の予定でした。 私が遠距離射撃、彼が肉薄攻撃をし、連携して殺せんせーを追い詰める、と。 しかし、二つの理由でその命令はキャンセルされました』
(0)
(0)「・・・理由は?」
(0)
(0)『一つは、彼の調整に予定より時間がかかったから。 そしてもう一つは、私が彼よりも圧倒的に暗殺者として劣っていたからです』
(0)
(0)「・・・・・はぁ? 律のルーツはイージス艦の戦闘AIで、人間より速く戦況を分析し、人間より速い総合的判断であらゆる火器を使いこなすって、開発者さんがそう言ってた。 ねぇ律、今日来る転校生ってちゃんと人間? 戦闘用の人型ロボットとかだったりしない?」
(0)
(0)『聞いた話では、彼はれっきとした人間だと』
(0)
(0)「・・・マジか」
(0)
(0)つまりそいつは、人の身で兵器を越えるスペックを持つ存在ということか・・・・。
(0)つまり極限まで鍛えれば人間でも近代兵器を越えることができる────ワケねぇだろ常識的に考えて。
(0)というかじゃあ律は人間に越されてるってことじゃん、"人間より速く"って部分を強調してた律の開発者さん泣いてるよきっと多分。
(0)
(0)「つか、なんで蓮霧は律の開発者が言ったこと知ってんだよ、なんか接点とかあったのか?」
(0)
(0)「あいや通話繋いだスマホを机に入れて盗聴した」
(0)
(0)「「「何やってんだお前!?」」」
(0)
(1)『ちなみに私は気付いてました! マスターに見つからないよう回線を秘匿しておくの結構大変だったんですよ?』
(0)
(0)「え、そんなことしてくれてたんだ。 ごめん、ありがとう」
(0)
(0)満面の笑みを浮かべた律から衝撃のカミングアウトが出てきた。 いや、確かにそうだよな。 律を作れる程の人ならスマホの電波をサーチするくらい朝飯前だろうし。
(0)
(0)俺が心の中で律に感謝の念を唱え、周りからなんとも言えない視線を向けられていると、扉の方から何者かの気配を感じた。
(0)そうして扉に意識を向けること数秒、ガララと音を立てて扉が開き、白装束に身を包んだ人間が入ってきた。
(0)律から聞いた話で皆が少し警戒していると、白装束さんは手を前に出し、鳩を出した。
(0)
(0)「あぁ、驚かせてしまったね。 私は転校生じゃないよ。 私は保護者、まぁ白いし・・・シロとでも呼んでくれ」
(0)
(0)きっと多分おそらくメイビー皆の緊張を解こうという意図があってマジックをしたのだろう。 笑ってるしちょっとしたジョークのつもりだったのかもしれない。
(0)ただ、完全に逆効果というか、無言で突然マジックなんてやったから皆困惑しているし・・・。
(0)
(0)「いきなり白装束で来て手品やったらビビるよね・・・」
(0)
(0)「うん、殺せんせーでもなきゃ誰だって・・・・・」
(0)
(0)「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」
(0)
(0)皆が沈黙し、一点を見つめている。 周りに倣って視線の先を見ると液状化使って天井の端っこに張り付いてる殺せんせーがいた。
(0)
(0)「何ビビってんだよ殺せんせー!!」
(0)
(0)「ちゃっかり奥の手の液状化まで使って!!」
(0)
(0)「い、いや・・・・。 律さんがおっかない話するもんですから・・・・」
(0)
(0)「人外が人間の噂に踊らされた挙げ句言い訳するなヨみっともない」
(0)
(0)「「「さすがにそれは辛辣が過ぎないか蓮霧・・・・?」」」
(0)
(0)「・・・・・・コホン。 はじめまして、シロさん。 それで肝心の転校生は?」
(0)
(0)「はじめまして、殺せんせー。 ちょっと性格とかが色々特殊な子でね、私が直で紹介させてもらおうかと」
(0)
(0)そう言うとシロさんは一度クラス全体を見渡し──一瞬、茅野と俺の方を見た辺りで動きが止まった。 というか、完全に目が合った。
(0)
(0)「・・・なにか?」
(0)
(0)「いや、みんないい子そうだなぁと。 これならあの子も馴染みやすそうだ。 おーい、イトナ! 入っておいで!」
(0)
(0)入っておいでと言ったものの、廊下にシロさん以外の気配は感じられない。
(0)いつもは三人程度までなら気配を察知できるにも関わらず、全くと言っていいほどに誰かがいるのを感じられない。
(0)
(0)(──・・・後ろから殺気がする・・・ッ!?)
(0)
(0)咄嗟に椅子を後ろに蹴って立ち上がって抜刀し、直感に任せて左後方へ鞘を放り、刀の峰で叩き落として僅か一瞬の擬似的な防壁を展開する。
(0)
(0)それと同時に、教室の壁が音を立てて弾け飛び、空いた穴から一人の少年が進んできた。
(0)
(0)「俺は、勝った。 この教室の壁よりも強いことが証明された。 それだけでいい・・・・・、それだけでいい・・・・・」
(0)
(0)「「「「「いやドアから入れよ!!!」」」」」
(0)
(0)「そっち? まず物理的に壁を破壊したことにツッコんで? というかあわや破片が当たる所だった俺への心配はないの!?」
(0)
(0)「「「「「いや、お前は狂人だしちゃんと防いでたからいいかなって・・・・・」」」」」
(0)
(0)「こンの薄情者どもが・・・・・!」
(0)
(0)今の場面で心配そうな表情してた奴少ししかいなかったぞチクショウ・・・・!
(0)
(0)「堀部 イトナだ。 名前で呼んであげてほしい。 あぁそれと、私も少々過保護なものでね、しばらくの間彼を見守らせてもらいますよ」
(0)
(0)「ねぇシロさん、教育がなってないと思いますよ? オレ、イッパンジン。 ガレキガアタルトケガシマス」
(0)
(0)「ははは、次からはちゃんとドアから入るよう言い聞かせておくよ」
(0)
(0)破片を防いで床に転がった鞘を蹴り上げてキャッチし、納刀しながら恨み節を唱えるも、笑って流されてしまう。
(0)飄々としていて掴み所がなく不気味なことこの上ない。
(0)
(0)「ねぇイトナ君、ちょっと気になったんだけどさ、今手ぶらで入ってきたよね? 外どしゃ降りの大雨なのに、なんでイトナ君は一滴たりとも濡れてないの?」
(0)
(0)「・・・・・・・・・・」
(0)
(0)イトナ君はカルマの問いには何も答えず、キョロキョロとあたりを見回すと徐に立ち上がりこっちに歩いて来た。
(0)
(0)「お前は、たぶんこのクラスで二番目に、手前の紫髪の次に強い。 でも安心しろ、俺より弱いから、俺はお前達を殺さない」
(0)
(0)「アハハ、実力を買ってくれるのはうれしいけど、俺はそんな大層なものじゃない。 ただ人より才能があっただけで、強者たりえる器じゃないヨ」
(0)
(0)「俺が殺したいと思うのは、俺より強いかもしれない奴だけ・・・・。 この教室では殺せんせー、あんただけだ」
(0)
(0)「おーい? 無視されると蓮霧君とっても繊細な子だから悲しいんだけどー?」
(0)
(0)イトナ君は完ッ全に俺を無視して殺せんせーの方に向かっていく。 なんかここにやって来る奴って愛想悪い奴多くないか? 俺も含めてさ。
(0)
(0)「強い弱いとは喧嘩のことですか? 力比べでは先生と同じ土俵には立てませんよ、イトナ君」
(0)
(0)「立てるさ。 だって俺達、血を分けた兄弟なんだから」
(0)
(0)・・・・ゑ? 兄弟って・・・・・、そう思った瞬間、殺せんせーとイトナ君が兄弟として過ごした日々が脳内に・・・・・
(0)っておい待て、なんだ今のゴミみたいな存在しない記憶は。
(0)
(0)「「「「「き、兄弟ィ!!?」」」」」
(0)
(0)「負けた方が死亡な、兄さん。 勝負は放課後、この教室で」
(0)
(0)そう言って踵を返し、自分でぶち開けた壁から外へ去って行った。
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)放課後になった。
(0)あの発言からクラスは唐突な兄弟疑惑にあーでもないこーどもないと議論を交わしたものの、結局結論らしい結論は出ていない。
(0)
(0)殺せんせーを詰めても本当なのか嘘なのかイマイチ判断に困る話をされ、こっちが議論をする横では二人の共通点が次々に出てくる。
(0)例えば甘党、例えば巨乳好き、他にもまぁ、色々と。
(0)
(0)当然こういう面白そうな話には興味本位で乗っかるタイプの俺も自分なりに考えてみる。
(0)
(0)・・・・ひとえに兄弟と言っても、必ずしも血の繋がりがあるとは限らない。 赤の他人だった者がある日を境に義兄弟になるなんてこともままあるだろう。
(0)・・・・・イトナ君は殺せんせーを"兄"と言った。 今日会ったばかりのイトナ君を考察するには情報が足りていない。
(0)なら逆に殺せんせーの側から考えてみよう。
(0)
(0)誰も口にしたことはないが、ヒトの言葉を介し地球を滅ぼす力を持つマッハ20のタコが自然発生するだなんて天変地異は起こり得ない──という前提で考えると殺せんせーは人工的に作られた存在だろう。
(0)この程度のことなら簡単に辿り着く。 重要なのはここから先だ。
(0)
(0)・・・・・・なら今度は人工的に、という点を考えよう。
(0)律にとっての親は開発者である、というのは最早言うまでもなく、つまりヒトならざる者にとっての親とは開発者のことを指す。
(0)そしてその親が新たに二号機を造ったのならそれは弟と定義される。
(0)
(0)・・・・答え出たじゃん。 あとはその人工物が"何か"というところだけれど・・・・。
(0)・・・・・・"触手"か?
(0)
(0)考察も程々に、目の前には机で囲まれた四角形のリングのようなフィールドが広がっている。
(0)
(0)「ただの暗殺は飽きてるでしょう? ここは一つ、ルールを決めないかい? このリングの外に足がついたら死刑。 どうかな?」
(0)
(0)「・・・・いいでしょう。 ただしイトナ君、観客に危害を加えた場合も負けですよ」
(0)
(0)「・・・・いいだろう」
(0)
(0)互いにルールを承諾し、試合の準備は整ったようだ。
(0)
(0)「なぁ、あんなルール守る奴いるのか?」
(0)
(0)「いや、破れば先生としての信用が落ちる。 殺せんせーには意外と有効なんだ、あの手の縛り」
(0)
(0)横で杉野とカルマの会話が耳に入る。
(0)実際その通りで、理科の実験の後にお菓子を回収したり、教室でグラビアを開いたり、生徒に土下座までして報復に参加するよう頼んだりと、まるで教師らしくないにも関わらず生徒の信頼を裏切るような行いは絶対にしない。
(0)・・・・・アイツ等、一体何をどこまで知っている?
(0)
(0)「では、合図で開始しようか」
(0)
(0)そう言ってシロさんは手を上に挙げた。 さながらデュエル開始の宣言をする磯野さんのようだ。
(0)シチュエーション的にも合っている。
(0)・・・・・・コホン、さて、答え合わせの時間だ。
(0)
(0)「暗殺・・・・・・・・・・開始!」
(0)
(0)刹那、殺せんせーの触手の一本が斬り落とされ宙を舞った。
(0)しかし、皆が注視するのはそこではない。
(0)・・・・ただ一点。 イトナの髪から生えている、白い 触手を──。
(0)
(0)思ったとおり、か。
(0)
(0)「《small》・・・・・・こだ。《/small》 《font:86》何処で手に入れた! その触手をッ!!《/font》」
(0)
(0)「君に答える義理はないよ、殺せんせー。 しかしこれで納得しただろう? 生まれも育ちも違う。 だが、この子は君の弟だ。 しかし、怖い顔をするねぇ、何か嫌なことでも思い出したかい?」
(0)
(0)俺が一度も見たことがない"黒い顔"。 そして始めて肌で感じる殺せんせーの殺意。 そしてそんな殺せんせーの怒りに当てられてなお飄々としているシロ。
(0)
(0)「どうやらあなたにも色々と聞かなければならないようです」
(0)
(0)「聞けないよ、死ぬからね」
(0)
(0)そう言うとシロは袖を殺せんせーに向け、光を放った。
(0)
(0)「この光線を浴びるとキミの細胞はダイラタント挙動を起こし一瞬硬直する。 知っているんだよ、キミの弱点は全部ね」
(0)
(0)次の瞬間にはイトナの触手が床に叩きつけられる。
(0)硬直状態では回避もままならない、これは勝負あったか?
(0)
(0)「・・・・上だ」
(0)
(0)寺坂の呟きに反応して天井を向くと、息を切らして天井に張り付く殺せんせーがいた。
(0)
(0)「脱皮か、そういえばそんな手もあったね」
(0)
(0)・・・・・脱皮。 前に渚から聞いたことがある。 月に一度しか使えない殺せんせーの奥の手であり、脱ぎ捨てられた直後の脱け殻は手榴弾の爆風程度なら防げる、らしい。
(0)
(0)「でもね殺せんせー、その脱皮にも弱点があるのを知っているよ。 脱皮は見た目よりもエネルギーを消費する。 よって直後は自慢のスピードも低下するんだ。 常人ならいざ知らず、触手同士の戦闘じゃあ影響はデカいよ」
(0)
(0)その通りだな。 実力や性能が拮抗している戦いにおいては0.1秒ですら大きな差になりうる。
(0)俺も本校舎時代はよく刃ちゃんに紙一重の差で勝ったり敗けたりしてたっけ。
(0)
(0)「加えて、最初のイトナの奇襲で腕を失い再生したね。 それも結構体力を使うんだ。 私の計算ではこの時点でほぼ互角、そして触手の扱いは精神状態に大きく左右される。 予想外の触手によるダメージでの動揺、気持ちを立て直すヒマもない狭いリング・・・・」
(0)
(0)・・・これも渚から聞いた話だが、殺せんせーはテンパるのが早いらしい。
(0)四月にハンディキャップ暗殺大会を開催して調子に乗り、枝から落ちて大慌てしたことがあったそうな。
(0)あと、中間テスト前に理事長がここに来た時、知恵の輪でテンパって絡まってたとかなんとか。
(0)
(0)「さらには、保護者による献身的なサポート──」
(0)
(0)再びシロが例の光線を放つために袖を挙げたタイミングで手元のボールペンを光源へ向けて投擲する。
(0)
(0)「──・・・何の真似かな? み・・・蓮霧君?」
(0)
(0)「んー? 眩しくて鬱陶しいから壊した。 勝つために手段を選ばないのは結構だけど、少しは周りの迷惑も考えたら?」
(0)
(0)「・・・・・狂人か。 まぁいい、外野のイレギュラーはイトナにさほどの影響を及ぼさない。 現に今脚の触手が切断された、再生すればより一層体力が落ちて殺りやすくなる」
(0)
(0)「・・・安心した。 兄さん、俺はおまえより強い」
(0)
(0)勝利を確信したように、あるいは事実を淡々と述べるようにイトナが宣言をする。
(0)・・・・・確かに、あと一歩で殺せんせーを殺すことができる。 誰もがそう信じて疑ってないのが現状だ。
(0)周りを見れば皆悔しそうに俯き、下唇を噛んでいる。
(0)
(0)──ッフフ、"あの担任 "がこんなところで終わるとでも思っているのかい?──
(0)
(0)(・・・・いいや、そんなことはない。 そもそも、シロの計算はあくまでもスペックとデータだけを参照した空論でしかない。 経験や搦め手などのイレギュラー、付加情報を一切考慮していない)
(0)
(0)それと、イトナを見ていて一つわかったことがある。 アイツはあくまでもシロの言うことに従うだけのお人形だ。 攻撃も触手を振り回すだけで思慮の欠片もない。
(0)ただ力任せに攻撃するだけでは犬畜生と然程変わらない。
(0)
(0)あぁそうだ、後で律に謝っておこう。 やっぱり律は人間より圧倒的に優れた演算力を持っている。
(0)性能が全てではないってよぉく実感した。 律は、あんな獣とは比べものにならない。
(0)
(0)「脚の再生が終わったね。 さ、次のラッシュに耐えられるかな?」
(0)
(0)「・・・・・・ここまで追い込まれたのは初めてです。 一見愚直な試合形式ですが、実に周到に計算されている。 あなたたちに聞きたいことは多いですが、まずは試合に勝たねば喋りそうにないですね」
(0)
(0)「まだ勝つつもりかい? 負けタコの遠吠えだね」
(0)
(0)「シロさん、この作戦を考えたのはあなたでしょうが、計算に入れ忘れていることがありますよ」
(0)
(0)「ふむ、確かにあの気狂いの邪魔が入るのは予想外だった。 だがそれがどうした? 多少のイレギュラーなど些事に過ぎない。 事実、こうしてキミは追い詰められているわけだしね」
(0)
(0)・・・ねぇ、なんで今日が初対面のはずの人にまで気狂いとか言われなきゃいけないのさ。
(0)一応俺、素は狂人じゃないからね? 今からでもなろうと思えばいくらでも良い子になれるよ?
(0)・・・・・・ただ、今更引き返せないし、引き返す気がないだけであって。
(0)
(0)(・・・・・ん? そうだ、今日が初対面のはず。 ・・・なんだ? この違和感は。 さっきのシロの発言にあった違和感は一体なんだ・・・・・?)
(0)
(0)「さぁ、お別れの時間だ。 殺れ、イトナ」
(0)
(0)その一言と同時にイトナの触手が振り下ろされる。 しかし、それが殺せんせーに当たることはなかった。
(0)
(0)「おやおや、落とし物を踏んづけてしまったようですねぇ」
(0)
(0)何が起こったのか、それは砕けた床に転がる対先生用ナイフとドロドロに溶けたイトナの触手を見れば一目瞭然だ。
(0)
(0)「同じ触手なら、対先生ナイフが効くのも同じ、触手を失うと動揺するのも同じです。 でもね、先生の方がちょっとだけ老獪です」
(0)
(0)そう言うと、殺せんせーは脱皮した自身の脱け殻をイトナに被せて外に放り投げた。
(0)
(0)(経験の差・・・・、データで測ることのできないものの代表格。 それが如実に出た戦いだったね)
(0)
(0)「先生の脱け殻で包んだのでダメージはないはずです。 しかしキミの足はリングの外に着いている。 先生の勝ちですねぇ。 ルールに照らせばキミは死刑、二度と先生を殺れませんねぇ」
(0)
(0)ニヤニヤとイトナの方を見てここぞとばかりに煽る殺せんせー。果たしてこれが教師の姿か・・・・?
(0)
(0)「生き返りたければここで皆と学びなさい。 勝敗を分けたのは経験の差です、キミより少しだけ長く生き、キミより少しだけ知識が多い。 この教室で先生の経験を盗まなければ、君は私に勝てませんよ?」
(0)
(0)「・・・・・勝てない? 俺が・・・・・・弱い・・・?」
(0)
(0)・・・・おっと、何やら危険な殺意が・・・・・。 俺の危険信号がそこを退け、早く離れろと警報を鳴らしている。
(0)
(0)「俺は、強い・・・! この触手で誰よりも強くなった・・・!」
(0)
(0)イトナは怒りに顔を歪め、触手を黒くして飛び込んで来る。
(0)
(0)(・・・・遅いな)
(0)
(0)もちろん、"さっきと比べて"の話だ。 常人が対応できる程遅いわけではない。
(0)・・・・今から離れても距離的に間に合わない。 まぁでも、殺せんせーなら防いでくれるだろうし、なんなら保護者たるシロが止め──る素振りはない。
(0)よくよく考えたら殺せんせーもかつてないほどの満身創痍、対応できるとは限らないか。
(0)
(0)さてどうする? 幸運にも、イトナと殺せんせーの直線上で一番前にいるのは俺だ。
(0)シロは相変わらず動く気がなさそうだし期待するだけ無駄だろう。
(0)だが仮に俺が動いたとして、一瞬でもタイミングがズレれば"死"だ。
(0)
(0)──だからどうした?──
(0)
(0)(・・・・そうだ、死を恐れる必要はない。 俺に引き返す気がない以上、いつの日か必ず報いを受ける。 ここで死ぬなら、今日がその日だったってだけだ)
(0)
(0)その場で構え、迎撃準備に入る。
(0)
(0)「邪魔だァ!!」
(0)
(0)「チッ、死者は黄泉で大人しくしてろッ!!」
(0)
(0)間合いに入るタイミングを見極め抜刀し、迫り来る触手を切り落とす。
(0)
(0)(っ痛 ぅ・・・!)
(0)
(0)触手を防ぐことは出来たものの、触手が起こした風圧で腕が弾かれ、衝撃で刀は砕け右手は滅茶苦茶痛い。
(0)そりゃそうだ、場合によっては音速にまで到達しうる触手をプラスチックとヒトの手で受けたんだから。
(0)
(0)「ぐッ・・・・、少しは自分で考えることを学んだらどうだ? 命令に従うお人形のままじゃ、目の前にいる邪魔者一人すら殺せないって今身をもってわかっただろう・・・!?」
(0)
(0)「貴様ァッ・・・・ッぐ!?」
(0)
(0)左から何か針のようなものが射出されたのが視界に映り、次の瞬間にはイトナが糸が切れたように倒れていた。
(0)
(0)「いやはや、君は今朝、自分を一般人と称していたが・・・・。 こんな芸当ができるんだ、一般人と名乗るのはやめた方がいいんじゃないかい?」
(0)
(0)「・・・シロ。 一つ答えろ、何故俺の名を知っている? 今日のお前を見る限り、"今日ここで殺すから"と生徒の名を覚えるような奴じゃないということは想像がつく。 フルネームや苗字なら納得できなくもないが、名前だけ覚えているのも、"何か"を言いかけていたのも含めて、何から何までもが怪しすぎる。 ・・・・・お前は何者だ? 一体何を知っている?」
(0)
(0)「ックク、さぁね? 殺せんせーにも言ったけど、私が君たちの質問に答えてあげる義理はないよ」
(0)
(0)「・・・・チッ」
(0)
(0)あまりにも予想通りの答えが返ってきたせいで反射的に舌打ちをする。
(0)
(0)「さて、殺せんせー。 どうやらこの子はまだ登校できる精神状態じゃなかったようだ。 転校初日で何ですが、しばらく休学させてもらいます」
(0)
(0)「待ちなさい! 担任としてその生徒は放っておけません、一度E組 に入ったからには卒業するまで面倒を見ます。 それにシロさん、あなたにも聞きたいことが山ほどある」
(0)
(0)「嫌だね、帰るよ。 それとも力ずくで止めてみるかい?」
(0)
(0)そう言われてシロの肩に触れた殺せんせー、しかし触れた場所から触手が溶けた。
(0)
(0)「対先生繊維。 君は私に触手一本触れられない。 心配しなくともまたすぐに復学させるよ、殺せんせー。 3月まで時間はないからね」
(0)
(0)そう言い残し、シロは今朝イトナが開けた穴から立ち去って行った。
(0)
(0)(・・・・・ん? そういえば、何か忘れているような・・・・あっ)
(0)
(0)「ちょ、おい待てシロ! ボールペン返せやゴルアアアァ!」
(0)
(0)投げたボールペンがシロの圧力光線に刺さったままだったことを思い出し、シロの後を追って俺も再び雨が降り始めた外へ向かって駆け出すのであった。
(0)
(0)「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」
(0)
(0)「・・・・なんつか、さっきちょっとカッコよかったのに締まんねぇなアイツは・・・」
(0)
(0)「「「「「同意」」」」
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)あれから三十分くらい探したものの、結局シロは見つからなかった。 アイツ移動すんの早くね・・・?
(0)
(0)「うぅ・・・・・、俺のボールペン」
(0)
(0)(((((なんでボールペン一本でここまで落ち込んでるんだコイツは)))))
(0)
(0)そういえば教室に戻ってから、皆がなにやら神妙な顔をしていたので渚に何があったのか聞いたのだが、俺がシロを追っている間に皆が殺せんせーを問い詰めたものの、またはぐらかされてしまったそうだ。
(0)
(0)・・・・・だが、皆の顔付きには変化が見られた。 どうやらあの厄介者もここに一つ、いい影響を及ぼしたようだ。
(0)
(0)皆が烏間先生に今以上の技術を求めて追加の訓練を志願するのを横目に見ながら、そんなことを思うのだった。
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)◁ その日の夕暮れ ▷
(0)
(0)(・・・・・誰か尾けてきてる)
(0)
(0)現在、山奥で今日の稽古を終わらせて帰宅する途中、背後から何者かが尾行してきている気配を感じ取った。
(0)
(0)何者かは知らないが、こんなロクデナシを狙うとは随分な物好きだな。 とか思いつつ、左手で抜刀できるよう右手に鞘を構えておく。
(0)
(0)微かに"ピシュッ"と音が聴こえ、後ろから首元目掛けて針のようなものが飛んできたので弾き落とす。
(0)すると尾行者は驚いたようで、少し動揺した気配がした。
(0)
(0)(この程度なら問題なく帰れ──ッ!?)
(0)
(0)"この程度なら問題なく帰れる"と思った瞬間、別の方向から飛来した針が刺さり意識が沈んでゆく。
(0)
(0)(・・・・クソッ、もう一人、いたのか・・・・・)
(0)
(0)先入観で一人と決めつけ油断した自身の浅はかさを恨めしく思いながら、そこで意識が暗転した。
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)
(0)「・・・・・・ふぅ、全く無駄に優れた感知能力だな。 念のため助手を雇っておいて正解だった」
(0)
(0)昏睡した少年に白装束の男・・・、シロが近づいていく。
(0)
(0)「それにしても驚いた。 まさか姿を眩ました双子の片割れがこんなところにいたとは・・・・・」
(0)
(0)そう言うとシロは二本の注射器を取り出し、蓮霧の腰辺りに突き刺した。
(0)
(0)「クックック、残念だったなぁ蓮那。 お前の血を継ぐ者は皆等しく私のモルモットだ。 弟の方は触手を用いた肉体強化の実験体に使ってた時、奴と同時に逃げられたが、この子には新型の被験体に──。 あぁ、そういえば新型の名称を決めていなかった。 過去に行った試作品の効果を鑑みて・・・・・"侵食型"とでもしておこう」
(0)
(0)シロはなにやらぶつぶつと呟くと、注射器を懐に仕舞って立ち上がった。
(0)
(0)「一月も経てば効果が現れるだろう。 睡眠薬の効果は十五分もすれば解けるから放っておいても騒ぎにはならない。 それと、ボールペンは返しておくよ。 じゃあね、蓮霧君。 あぁいや、確か彼女が付けた"偽名"の読みは"蓮霧 "だったかな?」
(0)
(0)そう言い残し、袖から引き抜いたボールペンを地面に放り投げ、その場を去って行った。