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(0) 翌朝、シュタルクはエイナとの約束通り、意を決してダンジョン第一階層へと足を踏み入れた。
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(0)「よし、まずはエイナさんに言われた通りに……魔物の動きをよく見て、攻撃しよう」
(0) そこへ、一匹のゴブリンが不気味な声を上げながら姿を現す。
(0) シュタルクは巨大な斧を構え、ゴブリンの突撃を待った。……が。
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(2)(……遅い。……え、何これ、止まって見えるぞ?)
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(2) あまりの緩慢さに、シュタルクの心に焦燥とは別の感情が湧き上がる。アイゼンの修行で、風を切るように飛来する岩を捌いてきた彼にとって、ゴブリンの動きは欠伸が出るほど退屈だった。
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(1)「……ああっ、もう! じれったいな!」
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(2) 斧を振るタイミングさえ狂わされたシュタルクは、思わず構えを解き、目の前でモタモタしているゴブリンの顔面に、無造作に拳を叩き込んだ。
(0) ――グシャッ!!
(2) 喉元を狙うどころか、ゴブリンの頭部は一撃で消し飛び、残った胴体も魔石ごと粉砕され、黒い塵となって霧散した。
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(1)「……あ。やってしまった……。弱すぎるよこれ…」
(1) その後、シュタルクは何とも言えない、虚無感の混ざった複雑な表情で地上に戻り、ギルドのエイナへ報告に向かった。
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(0)「お帰りなさい、シュタルクさん! 問題なく帰還出来たんですね!」
(1)「あ、はい……一応、倒せました。……なんというか、その、手応えが全然なくて……」
(1)「いいのよ、最初は誰だってそう感じるわ。恐怖で感覚が麻痺することもあるもの。でも、ちゃんと生きて帰ってきた。それが一番の成果よ!」
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(0) エイナは満面の笑みで彼を褒めた後、今後の注意点を一時間ほど語り聞かせた。
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(0)「今日はもう帰りなさい。無理は禁物ですよ?」
(0)「はい、ありがとうございます……」
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(0) シュタルクはそう言ってギルドを後にしたが、内心のモヤモヤは晴れなかった。
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(3)(……拳で殴り殺したなんて、口が裂けても言えない。でも、あんなに弱い相手じゃ、エイナさんに教わった『冒険者の駆け引き』なんて試しようがないぞ。……よし、ちょっとだけ、もう少し下に行ってみようかな)
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(0) エイナさんにもヘスティア様にも内緒で、シュタルクは再びダンジョンへ。
(1) エイナの講習で、13階層までは魔物の知識を叩き込まれている。
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(2)「第2層、弱い。……第5層、これも弱いし軽い。……第10層……」
(2) 一層ごとに魔物を「お試し」で小突きつつ数が多い時だけ斧でなぎ払いながら下りていくが、どれも一撃で消えていく。気づけば、彼は当初の目的を忘れ、一気に13階層まで到達していた。
(1) そこで、シュタルクの前にこれまでとは違う威圧感を放つ魔物が現れた。
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(1) ――小竜(インファントドラゴン)。
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(1)(……こいつは、小型だがドラゴンか。こいつなら流石に強いだろ!)
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(3) シュタルクの戦士としての本能が臨戦態勢に入る。純粋なシュタルクは小竜(インファントドラゴン)を「小さいけどドラゴンなんだから強敵」だと誤認した。
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(2)「くるぞ……!緊張するが逃げちゃダメだ。ここは、師匠に教わった全力で……!」
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(0) シュタルクは腰を深く落とし、斧を上段に構える。緊張で震える足を踏み締め、魂を込めて叫んだ。
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(2)「『閃天撃(せんてんげき)』ッ!!!」
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(1) 一閃。
(1) 13階層に天から隕石が落ちたかのような轟音と閃光が炸裂した。
(2) 小竜は頭から半分に割れ魔石ごと塵に消え、衝撃波はダンジョン壁を破壊。そのエネルギーはダンジョンの構造を伝わり、地上にそびえ立つ巨大塔『バベル』を根元から激しく揺さぶった。
(1) ドォォォォォンッ!!グラグラグラグラッ
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(1)「……な、なんだ!? 地震か!?」
(1)「バベルが揺れてるぞ! 何が起こった!?」
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(0) 地上では冒険者や神々がパニックに陥り、叫び声が飛び交う。
(0) 一方、13階層。
(1) シュタルクの目の前には、小竜どころか、ダンジョンの壁を粉砕し、巨大な凹みを作ってしまった凄惨な光景が広がっていた。
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(1)「……やりすぎた。これ、知られたら絶対に怒られるやつだ……」
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(1) シュタルクは、自分の実力への驚きよりも、誰かに知られたり、エイナさんにバレた時の恐怖で、小竜と対峙した時よりも激しく震えていた。