幼女を愛でつつ敵をくっころしてエロい事をするだけの話 (ちびっこロリ将軍)
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その1 周瑜編

「幼女を愛でつつ敵をくっころし天下を統一するだけの話」の15話の続きです。監禁、依存、寝とり等の描写を含みますので苦手な方はブラウザバックを推奨します。





 

 

 戦に敗れ、敵軍の将である劉表を目の前にして、周瑜はある言葉が浮かんだ。

 

 慰み者

 

 戦場ではごくごく当たり前に起こる事で、周瑜はその現場を何度も目撃している。しかし、それが自分の身に降りかかるものだとは思っていなかった。そんな未来を想像する事すらも嫌なほど悲惨な将来であるからだ。

 

 賊に襲われた郷里の女は犯される。当たり前の事。そして日常においてもそんな時は当たり前のように来る。凶作で食料が無ければ、仕事が無くなれば、嫁ぎ遅れれば、夫を亡くせば……好きでもない男に抱かれるなんて事は日常に溢れている事だ。

 

 それでも周瑜にとっては遠い世界の事だった。

 

 彼女は大豪族の一族で荘園も経営している。城と見間違えるかのような私宅に、軍隊のような私兵が何十人も居て自分の身を護り、緊急時には農奴もそれに加わった。軍の指揮をしている時も傍らには武力に優れた友と精鋭が居て、自分を守っていた。

 

 だが、もう居ない。周瑜を守るものは何もない。

 

「あっ……」

 

 小さな悲鳴が漏れ、肩は震え、目には涙があふれ出しそうになる。

 

 周瑜はかつて聞いた事があった。捕虜となり、飽きられるまで嬲られ、その後、客を選ばず、高価なものも欲しがらなくなるという理由で両目を潰され、「盲妹」と呼ばれる娼婦にされた話。何人もの男に犯され、心が壊れてしまった女など、多くの非道な行為の犠牲になった女性の話を。

 

 自分がその一つに加わると想像をした瞬間、感情を抑えられなくなったのだ。

 

(私は何をやっているんだ。平静を装え、弱みなど見せても何もならない。相手を喜ばせるだけだ。だから止まれ。震えも涙も、何もかも)

 

 先の戦いで周瑜の心は折れていた。

 

 長年培った自信も誇りも全てを壊され、自慢であった智謀は目の前の男に簡単に破られ、勝てる気どころか、戦おうという気力すらも起きないほどに叩きのめされた。

 

 かつての周瑜の姿はない。劉表の目の前にいる女の姿は、親に怒られそうになっている子供を思わせるほど弱弱しい。

 

 劉表が少しずつ、近づいてくる。体を竦ませ、手を胸の前に置き、身を守ろうとすると、己の心臓がドクンドクンと大きな音をたてるのが分かる。咄嗟に逃げようとすると、片足が動かず、なぜ立てないのかという事も忘れて悪戦苦闘していた。

 

 周瑜は、劉表が目の前に立つ事を感じると、迫りくる恐怖に耐えきれなくなり、目を閉ざした。

 

 永遠にも感じられる時が過ぎたかと思うと、手に温かみがあるのを感じた。

 

「すまない。怖がらせてしまったか」

 

 目を開けた先には劉表がおり、自分の手を握っている。よく見ると、顔には申し訳なさが滲み出ており、困っているようにも感じられた。

 

「本当に、君を害す気はないんだ。もし、私の仲間が捕まり、捕虜の交換をしたいという申し出があるようなら、君を返すつもりだ。ただ、今は出すことはできない。必要なものがあるなら言ってくれればなるべく用意する」

 

 だから、泣かないでくれ。と懇願するような声を聞いて、周瑜はこの時、ようやく我にかえった。

 

「ほ、本当か……」

 

「ああ、本当だ」

 

「……拷問はしないのか?」

 

「するつもりはないよ」

 

「犯されないのか?」

 

「ああ、無理矢理女性を犯すなんて事はしない」

 

「嬲り者にされたりは?」

 

「もちろんしない。約束する」

 

 そんな問答をなんどか繰り返した。中には眼球を抉らないか? や、足の腱を切ったりしないのか? などの劉表が心中で引くような質問をしていた周瑜だったが、全て否定された事で安堵したのか、劉表の胸元で涙を流し、そのまま眠りについた。

 

 

 

▽▲▽▲

 

 

 

「過去最低最悪の醜態を晒した……」

 

 一人、部屋で目を覚ました周瑜は手で目を覆いながら呟いた。

 

 そう、部屋だ。

 

 扉は鉄製で、覗き穴と下に人が出られないような食事を渡す穴がある。しかし、それ以外は普通のものだった。寝台や椅子も机もあるような部屋だ。

 

(どうにか逃げられないか……)

 

 先ほどの醜態を思い出したが、それを直ぐに頭から離し、脱獄ができないか検討する。

 

 しかし、それはある問題がある事からムダだと悟った。

 

(この足では無理か……)

 

 周瑜は包帯を巻いた足を見る。矢が貫通した時、膝から下に力がまったく入らなくなった事を思い出す。そして、今もなお、変わらない。そして体にも幾つもの深い傷があった。

 

(あの状況からよく生きていたものだ)

 

 己の悪運に辟易としつつも、安堵のため息をつく。予測していた拷問の類は無い……とは言い切れなかったが、心の平静を保つことができた。

 

(雪蓮は逃げ切ったはずだ。その後、呉の軍はどうなった? 軍の再編をし、袁術からの増援と長沙からの挟み撃ちにすれば、まだ立て直せる。しかし、出来ているのか? 感情のままに動いていないだろうか?)

 

 そんな思考を巡らせていると扉の方から物音がした。視線を向けると覗き穴から目が覗いていた。

 

「……食事です。食器は次の食事の時に回収します」

 

 その声は幼さを感じさせた。覗き穴から見える顔も幼い事から少女と呼ばれるような年齢だろうと憶測をつける。それならば……と声をかける。

 

「ありがとう。すまない、ここは樊城か?」

 

(樊城か襄陽かわかれば、どんな策を取っているのか、状況が大体分かる)

 

 孫策の現状は知りたいが、まず聞きやすい、答えやすい質問からしようと考えた周瑜だったが、少女のまるで路傍の石を見つめるかのように無関心な視線に気が付く。

 

「……そんな事を気にしてどうするのですか?」

 

「自分がどうなっているのか知りたいのは当然だと思うが」

 

「もう、どっちに居るにしろ貴方には全然関係ないのにですか?」

 

「……っ」

 

 少女は心底不思議そうに答え、周瑜は言葉に詰まった。少女が自分の思惑に気が付いた上で発言している事に驚いたのもそうだが、お前が自軍の様子を探り、知ったところで関係ないのになぜ知りたがるのか? と言われ、その言葉に対して反論が出来なかったのだ。

 

 言葉につまる様子を見て、少女は黙って去った。くだらない事に時間を使わされたとばかりに吐いた溜息が周瑜の心を抉った。

 

 

▽▲▽▲

 

 

 それから三日が過ぎ、七日が過ぎ、十日が過ぎ、二十日、三十日と月日が過ぎた。

 

 退屈と無関心は人を殺す

 

 貴方が必要だ。と言われずに生きていく事ができる人間は居ない。なぜなら自尊心、承認欲求は食欲と同じくらい人が人として生きていくのに必要な事だからだ。食事が無ければ肉体が死に、承認欲求が満たされなければ心が死ぬ。

 

 これまで周瑜は周りから必要とされていた。孫策や黄蓋は自分が居なければ駄目だった。だからいつも頼りにされていた。それが周瑜を満たしていた。

 

 しかし、今、周瑜は誰からも必要とされていない。誰からも頼りにされていない。誰も周瑜に興味がない。存在そのものが認識されているのかが分からない。

 

 一日三食、食べて寝るだけの生活は周瑜にとって苦痛でしかなかった。

 

 食事が足りないわけではない。寝具の質が悪くて眠れないわけでもない。殴られたわけでも、罵倒を投げかけられたわけでもない。ただ、興味を持たれずに過ごしているというだけの現状が周瑜の心を蝕んだ。

 

 ただ、生きているだけ。それがとてつもなく苦痛だった。なぜ生きているのか分からなくなるくらいに。

 

 周瑜は毎日悪夢を見る。

 

 それは孫策が「ごめん」と言い残して自分を見捨てる瞬間。

 

 寝るたびにその事を思い出してしまう。それを、自分がそれを求めたはずなのに、そのことを思い出すだけで、動悸が激しくなり、息がまともに出来なくなるほどだった。

 

 人生で最も苦しかった瞬間をずっと考えなければいけない日々は周瑜を蝕んだ。

 

 苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。

 

 まるで海の中を藻掻くような苦しさの中、少しずつ、自分の心が死んでいくのを感じる。だが、それに手を差し伸べる者は居ない。なぜなら、手を離したのは自分の最愛の友なのだから。手を離せと言ったのは自分だから。

 

 海の底へただ落ちていく。助けを呼ぶ事も出来ず、手を差し伸べる者も居ない周瑜はただ、落ちていく自分を感じる事しか出来なかった。

 

 そんな風に日々を過ごしていた。

 

 精神的な死が迫ってきた時だった。劉表が訪ねてきたのは。

 

▽▲▽▲

 

 樊城から住民を逃がした後、樊城を棄て、襄陽の城への撤退を完了した劉表は周瑜の所を訪ねていた。

 

「久しぶり。なにか不自由はしていないか?」

 

 そんな言葉を発した劉表の姿は、周瑜から見てかつてのものよりも痩せ細って見えたが、前よりも表情が明るく見える。

 

 かつての周瑜ならば表情から、孫策が上手くいっていないであろうことを予測しただろうが、それすらも考えられなくなる。ただ思ったままの事を伝えた。

 

「……特に不自由はしていない」

 

 嘘は言っていない。差し入れられた本はまったくと言っていいほど頭に入らず、幾らあっても意味がなく。食事は与えられた分で十分過ぎる。どんなものを与えられても今の周瑜にとって意味はない。欲しいものは無い。故にものに不自由はしていない。

 

「そうか、病気などはしていないか?」

 

「……別になんともないな」

 

 肉体的には問題は無い。ただ、精神的に弱っている為、なにかをやろうという気が湧かないだけだ。現代であれば、精神の病気と診察されるだろうがこの時代にはない。

 

「……」

 

「……」

 

 両者に沈黙が流れ、劉表は沈黙に耐えきれなくなったのか、「じゃあ、また来る」と言い残して去ろうとした。

 

「ま、待ってくれ!」

 

 劉表が去ろうと背中を見せると、周瑜はまるで懇願するように必死で叫んだ。先ほどの無表情が嘘のように、感情を露わにした。それは周瑜本人が一番驚くほどに。

 

「なにかあるのか?」

 

 劉表に聞かれるも、勝手に口が開き叫んだ事で、特に用事があったわけではない。周瑜は「やはり、なんでもない」と言って話を切る事を考えるが、それをするとなにかが壊れるような予感がして、言い出せない。

 

 話題に困った周瑜は、劉表の腕の包帯を指差した。

 

「ぁ……そ、その右腕だ。どうしたのだ? 防衛戦ならつかない傷だろう。それが気になったのだ」

 

「ああ、これか?」

 

 劉表は周瑜に聞かれた事を話す。

 

 兵士を統率する経験の乏しさを補う為、劉表は、司馬穰苴の司馬法を参考に行動をしていた。

 

 兵とともに行動し、兵士と同じ宿舎で寝起きし、兵士と同じ食事を取り、井戸や竈の管理に自ら見回り、怪我をした兵士や病気に罹った兵士を見舞って薬と励ましの言葉を与え、強兵のみではなく弱い兵士にも優しく接する。

 

 それによって城内の士気が上がったのは良かったのだが、暗殺されそうになったというものだ。

 

 周瑜は呆れた。

 

 隠密の達人である周泰が敵側に居る最中にそんなことをしていては、相手に対して、暗殺してください、とばかりに隙を晒しているも同然だ。

 

 周瑜からすれば、周泰はそんな事をしている人物に対して暗殺をしろと命じても、首を縦に振らないだろう事は分かる。それはあくまでも身内だからであり、劉表側からは分からない。

 

 周瑜は本来の世話焼き癖が出たのか。君主の身になにかあればどうなるのかなどについて、説教をするかのように次々と危険性について話をしていく。本来であれば、そういった隙は正すべきではないのにもかかわらず。

 

 かつて、孫策が常に最前線で戦っていた時を思い出しながら

 

「……とも、司馬穰苴は言っている。大将がむやみやたらに出て、その身を危険に晒して、もし死ぬような事があれば士気どころではない」

 

 その言葉には重みがあった。先の戦いで、ある程度の危機ならば孫策は踏みつぶすだけの武力を持つという過信によって敗北した経験故の重みが。

 

 その言葉に対して劉表は頭を下げた。

 

「その通りだな。大将自らの行いが利となる場合もあるが、その利と同じかそれ以上に害もある。このまま行けば、上手くいった事は次も上手くいくからと同じ事を繰り返して、いつか手痛い失敗をしただろう。ありがとう。忠告感謝する」

 

 頭を下げる劉表。その姿を見て、周瑜は自分が喜んでいると感じた。先ほどまで、何もかもが心に響かなかったのに、「ありがとう」という言葉を聞いた瞬間、心が温かくなっていった。

 

「しかし、防衛戦は士気こそが命と聞く。士気を上げるにはどうしたものか……」

 

 経験の少なさからか、兵士の掌握に苦労している劉表。これに対して忠告すべきではない。なぜなら劉表が強くなればなるほど、指示が的確であればあるほど、友が苦戦することになるし、友が負ければ自分は囚われの身のままだからだ。

 

 しかし、周瑜はそんな事を考えるほどの余裕がなかった。今、あるのは、先ほどの暖かさが欲しいという思いだけだった。

 

「いくつか例を挙げるとだな……」

 

 周瑜は、自然と劉表の相談事に対して助言をするようになっていった。

 

 

▽▲▽▲

 

 

 助言を行うようになってから、ひと月が経った。

 

 劉表が訪ねると周瑜は相談に乗るようになり、いつしか雑談を交えるようになった。かつての敵という関係が無かったように自然と。

 

「はやく、劉表は来ないだろうか?」

 

 いつしか周瑜は劉表が来る事を求める様になっていく。

 

 劉表は三日ほどの間隔で周瑜を訪ねてくる。その時が唯一、周瑜が苦痛から解放される日だった。外界から隔離された空間に居て、ただ退屈な時間を過ごす周瑜にとって、ただ、話す事が楽しかった。劉表の話を聞き、頼りにされていると自覚できると嬉しさが体中を駆け巡る。

 

 劉表が来る日になると、髪を櫛で梳かし、身なりを整え、そわそわと来る瞬間を待ちわびる。

 

 まるで恋人を待つ乙女のように。

 

「周瑜、開けるが良いか?」

 

 その声を聞くとともに周瑜はすぐさま了解の返事をした。この三日待ちわびたのだ。断る理由がない。

 

「ああ、構わない」

 

 返事とともに扉を開き、入ってくる劉表の姿を見て頬が緩むのを感じる。

 

「今日は、どうしたのだ? 政務についての相談事があるのか?」

 

 自分より遥か上の智謀を持つ人物に頼りにされている。それが周瑜にとって最も嬉しい事。雑談も楽しかったが、相談に答える事が最も楽しく、嬉しかった。

 

 周瑜は何でも相談してくれと話題をふる。

 

 もっと褒められたい。もっと頼りにされたい。もっと一緒に居たい。

 

 敵に塩を送るような行為すらも疑問に思えないほど、周瑜の思いは強くなっていく。

 

 早く相談事をしてくれと待っていた周瑜だったが、劉表の表情がいつもと違うと気が付く。そして、言い難そうにしながらも劉表は言葉を発した。

 

「孫策が樊城から撤退した」

 

 その言葉を聞いた周瑜は、夢から覚めたかのように現実へと引き戻された。

 

 

▽▲▽▲

 

 孫策の撤退の知らせを聞いた周瑜は「一人にしてくれ」と言って劉表を遠ざけ、一人、寝台の上で涙を流していた。交渉も無く、ただ撤退していったという話を聞くと、先ほどまでの高揚が嘘のように醒めていった。

 

 なにも考える気になれず、なにもする気にもなれなかった周瑜は、死んだように眠った。

 

 夢の中で周瑜は久しぶりに自分に話しかける誰かの影を見た。その影の声はなぜか心に沁み込んでいく。否定しても否定しても無駄で、目覚めると最悪の気分になる夢。

 

『これでわかっただろう? 孫策はお前を棄てたんだ』

 

「違う! 私が自分で言ったからだ!」

 

 孫策が自分を棄てたという事を認めさせようとする影と否定する自分を延々と続けさせられる。最低最悪の夢だった。

 

『自分で言い出したとしても棄てた事には変わらないだろう? 孫策はお前よりも自分の栄達を選んだんだ』

 

「王は大局的な見地からものを考えなければならない。だから、一見、非情とも思える決断をすることもある。……だから仕方のない事だ」

 

『話題を変えるな。つまり、孫策はお前よりもそっちを優先したんだろう? 10年以上も付き合ってきて、散々尽くして来たお前を棄てたんだ』

 

「違う! あれはしょうがないことなんだ」

 

『いい加減素直になれ。孫策はお前よりも天下を取ったんだ。お前は天下と天秤にかけられてそれよりも軽かったんだ。いや、違うな。天秤にすらかけられてない』

 

「えっ?」

 

『だってそうだろう? でなければ、捕虜の交換だったり、死体の返却だったりするはずだ。その手間すらも惜しんだって事だろ? 袁術に頼ればそれくらいだったら出来るはずだ。違うか?』

 

「そ、それは……」

 

『袁術に頭を下げる事と天秤にかけても軽い程度の存在だったってことだよ。お前は』

 

「違う! 違う! 違う!」

 

『違わないさ。正確にはお前の価値が下がったから、天秤の傾きが変わっただけに過ぎない。周家の当主で名声高い軍師を欲していただけで、名声は地に落ちて共にあるだけで悪名になるような存在は要らないって判断されたってことだ。お前もそう思っているんじゃないか?』

 

「そんな事思ってなどいない!」

 

『嘘だな』

 

「……なぜ貴様に確信できる」

 

 睨み付ける周瑜に影はため息をつき、少しずつ影が露わになっていく。

 

「えっ?」

 

 そこには自分が居た。自分の姿があった。

 

『私はお前だ。今までの問答は自問自答に過ぎない。私が言っている事はお前が思っている事だ。お前は心の底では孫策が棄てたと思っている。ただ認める事が出来なかっただけだ』

 

「あっ……」

 

『認めろ。もうお前は必要とされていないと』

 

 目を覚ました周瑜は大粒の涙を流していた。

 

 

 

▽▲▽▲

 

 孫策の撤退の報告を聞いてから周瑜がまともに食事を取る事もしなくなったと聞いて、劉表は見舞いに訪れていた。

 

「大丈夫か? ……周瑜」

 

「……別になんともない。ただ食欲が無いだけだ」

 

 目の下には隈が出来ており、さらに散々泣いたせいか目は充血しきっていた。

 

「なんともない。という顔をしていないぞ」

 

「なんともないさ。なにも状況は変わっていない」

 

「無理をするな。自分で言うのもなんだが、君は自分の策が原因で孫策を窮地に追いやってしまった事をずっと悔やんでいた。そして昨日、撤退することになった事を聞き、後悔の気持ちが大きくなり過ぎて溢れてしまったのではないか?」

 

(ああ、劉表からは私はこう見えていたのか……)

 

 劉表の語る周瑜はまさに忠臣の鏡だった。孫策の為なら身をうって投げ出し、今なお、主君に敗北の策を献上した事のみを気に病むような忠臣。それを聞いて周瑜は自分がとても汚い人間に見えた。

 

(綺麗だな……)

 

 周瑜は話していてなんとなくわかった。

 

 劉表は政戦に揉まれてきて、散々、人の汚い部分に触れ、酷い目にあってきているのにもかかわらず、素朴な、純粋ともいえる考えのまま生きている。利害よりも感情で動いてしまう愚か者の考えだと見下していた考えだったが、今はそれが眩しかった。

 

(おそらく、この人が自分の立場に居たら、ずっと主君に敗北を齎した事を気に病むのだろうな)

 

 この人なら、もし同じことがあったら必死になって利害を無視し、感情のままに自分を助ける為に奔走してしまうだろう。と周瑜は思った。智謀うんぬんではなく、そういう人間だから。

 

 君主として相応しくないと否定していた考えだったが、自分がこうして捕虜の身になるとそちらの方が良いと感じてしまう。

 

 この人なら……

 

 と、周瑜の劉表への気持ちが大きく膨らんでいく。

 

 周瑜は精神的支柱であった孫策への信頼が折れてしまっていた。それに代わる柱を精神が求めている。その代わりに劉表の存在が入り込もうとしていた。

 

 本来なら、そこには仲間が入るのだろう。しかし、この場において周瑜が出会えるのは劉表だけだった。

 

 周瑜はまともな判断が出来なくなっていた。なにか事情があったのでは? と考えて期待し、裏切られるのが怖くて目を背けた。そしてその原因は自分にあると自分を追い詰めていく。結果として、自分は十年来の友からも棄てられるほどの塵のような人間だと思うようになった。

 

 そして、そんな自分を唯一、救ってくれるのが目の前の劉表だけと思い込むようになっていく。

 

(こんな塵のような私に、気を使ってくれるこの男に私は何ができるのだろう? 自慢だった智謀は目の前の男にとって児戯のようなものだし、実戦経験の差で助言こそ出来たが、それもこのひと月で経験不足ゆえの思い込みは無くなっていった。私になにができるのだろう? 私は……ああ、一つだけあったな。私に差し出せるものが)

 

 周瑜は思い立つと、必死に励まそうと言葉をかけていた劉表の手を己の胸に押し当てた。

 

「周瑜? なにを……」

 

 驚く劉表に周瑜は顔を赤く染めながら、しかし、淡々と告げる。

 

「抱いてくれ」

 

「えっ?」

 

「私を抱いて欲しい。もう耐えられないんだ。もう一人は嫌だ。もう期待して裏切られるのは嫌だ! 都合の良い女でいい! だから貴方の傍に置いてくれ。何も望まないから棄てないでくれ!」

 

 必死だった。全てを差し出してでも一人でいたくない。棄てられたくないと叫ぶ。犯される事に涙していた頃が嘘のように周瑜は必死になって劉表に懇願する。

 

「周瑜、今の君は冷静じゃない。だから……」

 

「そんな事は分っている! だけど、もう私には貴方に差し出せるものがないんだ。周家という家柄も、軍師としての名声もない。自慢だった智謀も貴方と比べれば児戯のようなものだろう。それとも婚期を逃した女など抱けないというのか? 私はそれすらも価値がないのか?」

 

 ぽろぽろと涙を流す周瑜は小さな声で、呟くように言葉を紡ぐ。

 

「頼む。もう無理なんだ。貴方とのつながりが欲しい」

 

 自分の胸元で涙を流す周瑜はとても小さく見えた。劉表は泣き終わるまで待ち、目を真っ赤に染めた周瑜に唇を触れ合わせるだけの口づけをして、寝台に押し倒した。

 

 

▽▲▽▲

 

 劉表は周瑜に覆い被さり、唇で首筋に触れる。絹のようにきめ細かな、そして吸い付くように柔らかい肌を舌で味わい、臭いを嗅ぐ事を隠しもせずに香りを楽んでいた。

 

 その様子に周瑜は羞恥の表情を見せる。

 

「あっ、りゅ、劉表、私は昨日、体を清めていない。だから臭うと……あっ!」

 

 首元で舌を這うように動かすと、周瑜は小さく喘ぎ声をあげる。

 

「大丈夫、臭わない。良い匂いだ」

 

「いや、私が大丈夫では……ん!」

 

 周瑜が抗議の声をあげようとした瞬間、先ほどまで自らの首元を這っていた舌が周瑜の口の中を蹂躙する。

 

「んっーーーーーっ」

 

 劉表は舌を周瑜の口内に差し入れ、周瑜の舌に自らの舌で触れ、ゆっくりと絡ませていく。マーキングをするかのように、しつこく何度も絡ませていく。

 

「ちゅぷっ……ちゅるっ……ぢゅっ……」

 

 口内の液体が掬い上げられ、二人の唾液が混ざりあう音だけが部屋の中に響く。

 

「ちゅぷっ……ちゅるっ……」

 

 周瑜の喉が小さく動き、混ざった液体が周瑜の体の中に消えた。

 

「はぁ……はぁ……ふぅ、はぁ……ん!」

 

 乱れた息を整えようと息を吸うと劉表は再度、口づけを再開し、周瑜の舌を縦横無尽に舐め、絡ませる。呼吸の為に、口を離すと唾液が糸を伸ばし、切れたと思うと再開される。

 

 適度に空気を吸わせ、それ以外の時間、劉表が口の中を犯していくと自然と抵抗が消えていく。劉表の思いのままに動かされ、呼吸すらも完全に委ねるような屈服状態に周瑜は自然と快楽を覚えていった。

 

「はぁー……はぁー……はぁー……」

 

 どれくらいの間、口づけを繰り返したのかもわからなくなるほど、絡ませ合う。周瑜は、口づけしかしていないのにもかかわらず、長い呼吸を繰り返していた。

 

「脱がせるよ」

 

 劉表は、口づけの余韻が残り、まどろみの中にいる周瑜の服を優しく脱がせる。なにをされているのか頭がついていかない周瑜の反応は鈍い。次々と周瑜の肌を隠していたものが剥ぎ取られていく。

 

 服を脱がし、そして下着に手をかける。すると豊かに熟れた二つの果実が表れた。染み一つ無い瑞々しい褐色の肌に、淡い桜色の乳首がちょこんと置かれ、乳輪も乳首と同じく随分と小さく、経験の少なさを感じさせた。

 

 十四歳で嫁に行く時代である。二十を超えた妙齢の女性、しかも名門の血統となれば婚約者も居り、結婚もしているだろう。少なくない性行為をしていただろうと予測していた劉表は少し驚くも、それ以上に美しい胸に夢中になっていた。

 

「はうっ!?」

 

 吸い込まれる様に胸に触れ、感触を楽しむ。乳輪をなぞるように動かしていくと、周瑜の体がビクンと跳ねる。指の平で乳首を擦ると口から喘ぎ声が漏れる。

 

 ようやくこの時、衣服を脱がされ生まれたままの姿を晒しており、さらに乳房を弄られていると気が付いた周瑜は、羞恥により、顔を真っ赤に染めた。

 

 そんな周瑜に劉表は指の動きを大胆にし、掴み、摘み、撫で回す。普段、冷静な女性が顔を真っ赤にして羞恥の表情をみせるのを感じて、感情が高ぶる。

 

「あっ! ……うっ! …あぁ!」

 

 少しずつ強まっていく快楽に耐えようとするも止められない。はぁ、はぁと息は乱れ、性器は愛液でびちょびちょに濡れている。

 

 劉表は膣口から溢れている愛液を指で掬い、そのまま膣内にゆっくりと挿入した。

 

「はぁ……はぁ……ふぅ……ん!」

 

 周瑜の表情は既に快楽に融け、膣口に入ってくる指を逃すまいとするようにきゅうきゅうと締め上げる。

 

 指を動かす度に周瑜の頬は上気していき、身体の芯が男を求めて疼く。喘ぎ声を漏さないように快楽を我慢していた周瑜だったが、そんな意識も虚しく、時間が経つにつれていやらしい喘ぎ声が大きくなっていく。

 

 どこが弱いのか調べる為、縦横無尽に動き回る指に翻弄され、弱い部分を何度も擦られると、一層大きな喘ぎ声が部屋中に響きわたった。

 

「もうそろそろ、大丈夫か?」

 

 劉表がそんな言葉を吐くと共に指が離れる。周瑜は劉表の指先を名残り惜しそうにただ見つめていた。

 

「そろそろ挿入れるよ」

 

「ぁ……」

 

 頭は惚け、度重なり与えられた快楽の虜となっていた周瑜だったが、その瞬間だけ現実に戻り、これ以上進めば後戻りが出来なくなる、と頭の中で警鐘が鳴る。

 

 しかし、周瑜は目の前の快楽、相手に全てを委ねることを知ってしまった。もう何も考えなくていい。ただ目の前の男に尽くしていればいい。そんな甘い欲求に耐えられない。

 

「ああ、挿入れてくれ……」

 

 売女のような言葉を吐いているのが自分だと思うと、全身が燃え盛ったような羞恥心を感じる、しかし、両足を広げ、男を迎え入れる準備をする姿はまさしく売女のようだった。

 

 返事を聞くと劉表はゆっくりと亀頭を膣口に宛がい、腰に力を込める。

 

 ぐちゅりという生々しい音が周瑜の頭の中に響くと同時に快楽の波が押し寄せてくる。

 

「あぁぁぁっ……!」

 

 快楽の波に攫われている周瑜に向かって劉表はさらに腰を大きく動かし、奥へ向かって突いた。

 

「―――――――――――――――ッ!?」

 

 ぶつりと処女膜を破り、そのまま子宮を押し上げる。すると周瑜の全身は痙攣を起こし、膣内を締め上げ……絶頂した。

 

 喪失感と昇り来る快楽の波に翻弄され、明滅する視界。周瑜は意識すらも混濁する中で小さく呟く。

 

「ごめん」

 

 誰に対して謝ったのかも分からない。ただ分かるのは、今日、この日、孫呉の軍師としての周瑜が死んだという事だけだった。

 



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その1 周瑜編 続

 累計で自分の作品が載っているのを見てとても驚いたと同時に1話しか書いていないのに載ってしまって大丈夫なのか心配になってきた件。ですがたくさんのお気に入りと評価の方は嬉しいです。ありがとうございます。

 時系列的には19話の少し前になります。


 

 扉を開く音がした。

 

 蝋燭の明かりが山積みになった竹簡を照らしており、山積みになった竹簡の後ろから音を聞いて女性が顔を覗かせる。暗がりの中、扉の向こうに立つ男の顔を確認すると女性は親が帰ってきた子供のように顔を綻ばせる。

 

 男は女の足が不自由である事から自ら足を運び、女を抱きしめた。

 

「……んっ」

 

 女は男の胸元に甘えるように自分の顔を擦り付け、男は女の髪を撫でる。さらさらした黒髪はシルクを思わせるように艶やかで、臭いを嗅ぐと甘い香りが漂ってくる。抱きしめた際に押し付けられた大きな胸が、形を変え、男を誘惑する。

 

 新しく火を灯したばかりの蝋燭の一部が溶けて受け皿に落ちる頃になると、互いに自分の体を押し当てる行為を自然と止め、女は男の首に腕を絡め、男は誘われるように女の唇を奪う。

 

「ちゅぷっ……ちゅるっ……」

 

 口内の液体が互いに掬い上げられ、二人の唾液が混ざりあう音だけが部屋の中に響きわたる。

 

「ちゅぷっ……ちゅるっ……ちゅぷっ」

 

 二人は息継ぎすらも惜しむように口付けを繰り返す。

 

「はぁ、はぁ……」

 

 何度も、舌と舌を絡ませ合った口を離すと唾液が糸を伸ばし……切れた。息が整うと男は女をもう一度優しく抱きしめると、女は胸元で言葉を紡ぐ。

 

「おかえり」

 

「ただいま」

 

 女の名を周瑜といい、男は劉表といった。捕虜と捕えた敵将という関係でありながら、まるで恋人の元に通うかのように劉表は周瑜の下に通い詰めていた。

 

▽▲▽▲

 

「袁術と交流の深かった奴はここに書いている奴等、そしてこちらは逆に不遇で不満を持っていた奴等だな。かつて推挙を受けた関係で縁の深い者や関係の深い者なども分かる限り書いてある」

 

 周瑜は目の前に広げた、家系図なども混ざり山積みになった竹簡を見ながら答えた。

 

「こ、こんなにか……」

 

「本来であれば、もっと詳しく書きたいのだが、拙速を重視した。詳しい資料も間に合わなければ意味がない。調略は時こそが重要。満ち足りている者に仕掛けても意味は無く、不安で落ち着きの無い時こそ仕掛け時だ」

 

「わかった。明日には文を用意し、調略に動こう。大義と利、そして自尊心を満たす言葉をたっぷり与えて」

 

 劉表がそう答えると周瑜は満足そうに頷いた。

 

 劉表は周瑜に袁術軍で寝返りそうな人物を挙げさせていた。袁術軍が豫州から兵を戻したことから、兗州への侵攻を予測し、その際に空になるであろう南陽を攻める為に。

 

 内部からの裏切りと侵攻を連動させる事は戦の常道である。周瑜はかつて袁術からの独立を画策していた。その時の為に、不満を持っている豪族達との交流も図っていた。その時の情報を劉表に渡していた。

 

 かつて孫策の為に用意してきた事。その全てを目の前の男に差し出す事に躊躇は無かった。

 

「ありがとう、周瑜。君のおかげで流れる血は少なくなるだろう」

 

 目の前で握られた手のひらの温かみと、使うかもしれないと準備してきただけの情報など比べ物にならないのだから。

 

 幾つか言葉を交わすにつれて先ほどとは打って変わり、劉表は真剣な眼差しで周瑜と共に軍略について話し合っていた。

 

「公孫賛は冀州を縦断する形で平原郡まで到達し、占拠。そこを劉備に任せた形になるだろう」

 

 周瑜は地図を指差して今後の華北の動きを予測する。

 

「袁紹の動きはどうだ?」

 

「黒山賊には冀州西部から并州東部の山岳地帯を根城にする黒山賊最大勢力の張燕が居る。奴は元々、漢王朝でも手に負えないと判断され、その地域の支配を許されるほどの傑物だ。屠各(匈奴系異民族)や烏桓との連合を組めば、袁紹といえど容易く動けない」

 

「私なら魏郡を奇襲して袁紹陣営を揺るがさせるが……」

 

「張燕もその手を取るだろう。あとはその動きに公孫賛が連動できるのか……難しいだろうな」

 

「公孫賛は烏桓との関係が深い。そちらを経由して同盟を組む可能性はないか?」

 

「難しいな。公孫賛は無能ではないが大陸全土を見渡せるだけの視野が無い。一将として使うなら良いが、群雄として生きるなら智謀の士を抱えるしかないのだがそれが居ない」

 

「なら袁術軍にとって都合の良い同盟相手候補といった所か……」

 

「公孫賛と黒山賊に袁紹を抑えてもらい、その内に曹操軍を叩くのが袁術軍の戦略だった。曹操の化け物っぷりが予定外だったな。曹操は元々、漢最大の軍閥を率いていた大宦官曹騰の孫娘。先代の皇帝から次世代の鎮西将軍となる事を期待され、生まれながらに将になる事を求められた天才。聞いてはいたがここまでとはな」

 

 周瑜は予想外というほどではないが、低いと思っていた曹操の躍進に驚きを隠せないでいた。

 

「なるほど、動きは未だどちらにも傾く情勢。急な変化が起きた時に対応できるようにしていかなければならないな」

 

 言葉を発し、ため息とともに劉表は天井を見上げた。

 

 孫策を破ったものの、まだまだ劉表は大勢力の袁紹はもちろん公孫賛などの勢力と比べても小さい。1年も経たない内に南郡を得たのだから相当な速さなのだが、やはり、黄巾の乱の頃から準備を進めていた者と比べると差は大きく開いていた。

 

 将も居なければ兵も居ない。道のりは苦難の連続な事が分かる。恐怖にぶるっと体が震えるのを感じる。

 

「武者震いか?」

 

 周瑜は劉表に問いかけた。

 

「二大勢力と言われる袁術。破っても次の相手は曹操。そして背後には袁紹の影がある。劉焉の動きもわからん。確かに強敵ばかりで、気持ちが昂るのも分かるが、今日は……」

 

 周瑜は劉表の指を自分の密壺へとゆっくりと移動させる。

 

「私にそれをぶつけてくれ」

 

 指先には湿り気が感じられ、鼻は熟れた女の臭いが漂う。顔は真っ赤に染まっていることが暗がりの中でも分かるほどだ。そして、もじもじとしている姿は初々しさすらも感じさせる。

 

「あっ!」

 

 劉表は周瑜を抱きかかえ、寝台へ周瑜を誘った。

 

▽▲▽▲

 

 横になり、周瑜は上へ向いて腕と脚を伸ばす。劉表はその上に覆いかぶさり股の間に跪くと、陰茎をびしょびしょに濡れた陰部の入り口に当て、縦に撫でるように動かす。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 陰茎が入って来そうで入ってこない。焦れる心を感じながらも、それ以上にこれから来る快楽への喜びが勝る。いつ来るのか? いつ入って来てくれるのか? そんな事を何回も考える度に気持ちが高ぶり、陰部から淫液が溢れてくる。

 

「……んっ!」

 

 撫でるように動いていた陰茎が深く割り込むのを感じたと同時に劉表は周瑜に口を付け、舌と舌を絡め合う。蕩けるような周瑜の顔と、陰部の溝が見えた。

 

「あぁぁ……あっ! あっ!」

 

 乳房と腹部の間を、小さな子供の頭を撫でるように優しく触れ落ち着かせると、陰核を愛撫した。

 

 愛撫するたびに喘ぎ声が漏れる。

 

 先ほどまで凛々しい姿で軍略を語っていた周瑜が、自ら裸体を晒し、性行為を求め、指先を少し動かすだけで良い様に動く。劉表はその姿に欲情を感じずにはいられなかった。

 

「んんっ! あっ! あぅ!」

 

 周瑜は何度も繰りかえされる愛撫に意識が少しずつ朦朧になっていく。

 

「あぁぁぁ……」

 

 陰核を最後に少しだけ強く擦ると何かが抜け落ちたかのような声とともに淫液が陰道深くの丹穴からとろとろと溢れ出てくる。

 

 劉表は己の陰茎を宛がうと、膣肉を割きながら陰茎を突き上げた。

 

「ああっ! あぁぁぁ」

 

 突き上げた陰茎が深く入り込み、子宮口を突くと、朦朧としていた意識が一気に覚醒し、いきなり襲ってきた暴力的なまでの快楽に声をあげる。

 

「あっ! あっ! あっ!!」

 

 子宮口に何度も繰り返される抽挿。その音は部屋に鳴り響き、喘ぎ声と共に劣情を呼び起こす。

 

 突く度に胸はぐにゃりと形を変え、淫液は陰茎が貫いているにもかかわらず、だらだらと流れている。陰茎をぎゅうぎゅうと締め付けて離さない。いつの間にか絡みついた足は逃がさないとばかりに力がこもっている。

 

 わずかながらも、周瑜は腰に力を込めて膣内を蠢かせていて、相手にも気持ちよくなってほしいという気遣いのようなものが感じられると、ふと、罪悪感が湧き出てくる。

 

「俺って最悪だな……」

 

 劉表は周瑜に身体を打ち付けながらもつぶやく。

 

 劉表は始めは美人の計の類だと思った。当然だ。なぜ足を奪い、軍師としての声望を奪い、自らの主君を苦しめた相手に抱かれたいと思うのか? ただ錯乱しているだけだ。そう思って、一回だけ抱いた。だがなぜか、次も求めてきた。

 

 一回抱いて、二回抱いて四回、五回と抱いて……そして手遅れになってから気が付いた。目の前の周瑜の脆さに。

 

 人生初めての挫折。それが十年来の友との夢を完全にへし折ったとなれば崩れるのも当然と言えた。そして、最後が友から見捨てられたならなおさら。

 

 周瑜には何も残っていなかった。十年来の夢と今まで信じていたアイデンティティーの消失。そんな状態になれば支えてくれたであろう友の不在。なにも無くなった周瑜が目の前の劉表に縋るのも当然と言えた。

 

 周瑜が嬉々としてあらゆる機密を出して、それのご褒美として性行をねだるようになるまで時間はかからなかった。

 

 機密情報をここまで漏らしたのだ。周瑜はもう戻れない。戻ったとしても碌な事にはならないだろう。

 

 将来を嘱望された年下の女性の未来を滅茶苦茶にしてなお、その身体を弄んでいる。自分の命の為に。

 

 考えてしまうと、もう無理だった。劉表は力強く差し込み、子宮口に亀頭を食い込ませ、精液を吐き出した。

 

「―――――――――――――――ッ!?」

 

 その瞬間、周瑜の膣内から愛液が溢れ出し、陰茎を痛いくらいに締め付けてきた。絶頂した事が見るまでも無く分かった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 視界が明滅を繰り返していて頭が真っ白になっている周瑜から陰茎を引き抜こうと、劉表は身体をずらそうとする。

 

 このまま寝ていてもらいたい。そして、この関係を終わらせたい。

 

 少しずつ抜いていくと、周瑜の口が開いた。

 

「は……はぁ……ひぅ……す……好きぃ……」

 

 息も絶え絶えの状態で、周瑜は必死に二文字の言葉を紡いだ。その言葉に驚き動きを止めた劉表の腰に足を絡ませて逃がさないようにしているが、片足の為、簡単に抜け出せる。

 

 抜け出そうとすると周瑜は泣きそうになる。

 

「嫌だ。もう一人は嫌だ。何でもする。何でもやるから……私を棄てないでくれ。もう棄てられるのは嫌だ」

 

 嫌だ。嫌だ。と駄々をこねる子供を思わせるような我儘の言い方にドキっとした。そして、その言葉を聞くと同時に、これで終わりなんて都合の良い事などもう出来ないと感じさせる。

 

 前にその話を持ちかけた時の取り乱した様子と変わらないどころか酷くなっているようにも感じられた。

 

 目の前の女性はもう立ち直れないくらい堕ちてしまっている。ここで終わりと言えば、どうなってしまうのかも分らない。

 

 そう感じた劉表は、いつも通りの言葉を告げながら周瑜の頭を撫でた。

 

「大丈夫。私は君を見捨てたりはしない。もう君を役立たずなどと言わせないから。私の下に居る限り、私は君の事を守り続けるよ」

 

 その言葉を聞くと周瑜は安心した表情を見せ、眠気に負けたのか、すーすーと寝息を立てていた。

 

 劉表は周瑜の髪を撫でながら、また次も訪れて身体を重ねてしまうのだろうと思い、ため息をついた。

 

 

 

 

 

 



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