とあるゲール将校の日記 (破戒僧)
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01 ゲールの少年将校

ども。破戒僧です。
某ネットテレビアプリで本原作の一気放送を見て、我慢できなくなって書きました。

話にもよりますが、穏やかに話が進む時もあれば、結構ガチでヒロインが酷い目に合う回もある見通しです。苦手な人ご注意ください。

また……初めての試みなんですが、日記形式(ほぼ)で書いてみました。どうぞ。


○月×日

 

月並みな言い方だが、今日から日記をつけてみることにした。

少しの時間でさっとやれるし、1日に起こったことを整理できるので、前線――特に自分のデスクを持っている士官クラス――にはよくある趣味だそうだ。

 

まあ、三日坊主は前世からだし、ここは忙しい時はすごく忙しい職場なので、ペースなんて安定しないだろうし、そもそもいつまで続くやらわからないけど。

 

……この仕事、手紙だと、色々と規則があってまともにかけることなんて少ないけれど……まあ、これは日記だし、いいだろう。

後から見返す時のために、今現在の僕の状況をきちんと記録しておくのも悪くない。

何か言われたら……まあ、たかが日記帳1冊。燃やしてしまえばそれまでだ。まあ、別に他人に見せることもないものだし……そもそも、読まれても大丈夫なように、わざわざ前世の言語で書いてるんだから、そんな心配も無用だろうけど。

 

まず最初に……僕には、前世の記憶がある。

いわゆる、転生ってやつだと思う。ネット小説は好きで、よく読んでた。

 

夢がある話だよね。志半ばで死んだ若者……だったり、おっさんだったり、病人だったりゲーマーだったりするわけだけど……それが異世界で、前世の記憶を維持したまま生まれ変わって、その際に獲得したチート能力で大暴れ……うん、実に痛快だ。

 

まあ……自分がそれと同じような状況下に置かれるなんてのはさすがに思いもしなかったけど。

 

まあ、もうすでに転生して17年。この身はもう17歳だ。

今更そこんとこを嘆いたり考えたりする気もない。

現実は現実として、だいぶ前に受け入れた。ここは異世界で、僕は転生したんだと。

 

そして転生したこの世界、この国は……前世の地球のヨーロッパのある国、ある時代に似ていた。

……っていうか、思いっきり西暦が採用されてた。1922年生まれだってさ、僕。

そして地図。まんま、前世の地球のそれと同じ世界地図である。

そしてここは……あー、地理苦手なんだよな。えっと……ドイツだよね多分?

 

異世界転生とかだと、よくあるパターンは、中世レベルの文明に剣と魔法の世界、って感じだと思うんだけど、ここは違うようだ。当然、魔法なんてものもないし。

ぶっちゃけ、異世界じゃなくてタイムスリップした地球かと思ったくらいだ。

 

まあ、国名が全然違うし、名前を知ってる世界史の偉人もほとんど出てこないから、『異世界なんだろうな』って、最終的には結論付けたけど。

 

で、この時代のドイツ――名前違うが――といえば軍国主義。

しかも、幸か不幸か僕が生まれた家は軍閥の名門らしい。

 

そのまま、お坊ちゃまとして大切に育てられた僕は、入学可能な年齢になると同時に士官学校に入学させられ、スパルタ教育に苦しみつつも、前世もちの特権と言ってもいい学習能力や未来知識を武器にして奮戦。どうにか好成績で士官学校を卒業し、そのまま軍に入った。

 

そして数年――今に至る。

コツコツ努力し、実績を積み重ね、この若さで大尉の地位をいただけるまでになった。

 

半年前、その知らせをよこした時には、家の連中も皆して喜んでくれたっけ。

 

父もほめてくれた。

古くからこの国を支えてきた名門であるこの家の跡継ぎにふさわしい大活躍だと。いや、前代未聞の出世スピードで、これならゆくゆくは将官、あるいは極官すら目指せる逸材だと。

 

……で、だ。

その父が死んだと、1か月前に連絡が入った。

 

しかし、今は戦争中である。悲しんでいる暇はなかった。

……その戦争が、わが祖国たる『ゲルマニア帝国』が、その野心から各国に吹っかけまくっているものだとしてもだ。

 

国軍に籍を置く1人の軍人として、僕は立ちはだかる敵を排除する義務がある。

 

正にあれだ、『戦わなければ生き残れない』。

戦争やってるんだから、敵を倒さなければ、倒れるのは自分たちなのである。

 

まず手始めに、常勝無敗を誇っていた帝国軍の戦歴に傷をつけた国に、

そんな力があるとは全く思われていなかった、とある小さな国に、

……父の命を奪った戦いの相手である……『エイルシュタット公国』に、

 

上層部からの指令により、僕は、参謀兼前線指揮官として赴任することになった。

 

……それは別に何の問題もないし、準備もしてあるんだけど……1つ、気になることがある。

かの戦線における、我が国の敗北。それについて報告してきた資料の中……目を通すうち、何度も目に飛び込んできた、ある単語。

 

 

 

……『魔女』……って何?

 

 

 

×月△日

 

日記を書き始めてから、今日で3か月が経過したわけだけども。

 

……随分前に僕、『剣と魔法』じゃないタイプの異世界だ、って言った気がする。

けどごめん、あれ訂正だわ。この世界……魔法、あったわ。

 

と言っても、最近出てきたというか、別に汎用性ある感じで世間一般に広まってるようなものじゃないというか……説明難しいな。

 

要するに、今までそんなもんは存在しないと思われていて、近代兵器最強、銃火器戦車戦闘機他どんどん作って撃ちまくれー的な、普通に地球と同じような戦争形態だったんだよ。

 

けど、そんな中突然、存在すらしないと思われていた『魔法』なるものが現れた。というか、それを使える人……『魔女』がいたんだ。

それも、今まさに戦争してる、『エイルシュタット公国』に。

 

数か月前に突如現れ、戦場で無双し始めたのである。

その活躍によって、帝国負け続け。公国含め、周辺『ざまあ』で大喜び。

 

その勢いに乗って、帝国つえー、もうだめだー、って感じだった皆さんも息を吹き返しだして……反乱増えるわ、抵抗強まるわ、戦線厳しくなるわで大変である。

何回か僕も、やばそうな戦場に助っ人指揮官としてで派遣されたし。

 

いやまあでも、そら混乱するわ……近代兵器で戦ってたら、いきなりファンタジーが現れたんだもんな。状況把握するだけでも大変だ。

 

で、その『魔女』……イゼッタっていう名前らしいんだけど……どうも、僕が当初考えてたような『魔法少女』って感じじゃないみたいだった。

いや、まだ若くて、少女と言っていい年齢で、かわいい……って部分はあってるんだけど。

 

ただ、僕にとって魔法少女って……世代のせいもあるだろうけど、不思議パワーで飛んだり、魔力で弾丸を作って打ち出したり、それを大口径にして砲撃っていうか『魔砲少女』したり、胡散臭いマスコット小動物がいたり……って感じなんだけど、

 

こっちの魔女さんは……対戦車ライフルに乗って空を飛んだり、擲弾やランスを浮かばせてぶつけて攻撃したり、盾にしたり、戦車を投げ飛ばしたり……といった感じらしい。

……使ってる武器が武器だからってのもあるだろうけど、やたら物騒だな。

 

それに、炎とか氷を出して攻撃、みたいなこともやってないみたいだし……ライフルに乗って飛ぶってのも含めて、むしろ『超能力』、テレキネシス系の力って感じが……。

 

まあいい。形はどうあれ、既存の物理法則では考えられない、まさしく『魔法』としか言いようがない現象が、その女の子によって起こされているのも事実。

起こっているからには、それを理解するために勉強しなきゃいけない。それが参謀の役目だ。

 

そういうわけでここんとこ、片っ端から情報・資料を集めて、この『魔女』さんを理解する勉強を続けていた。その力、性質、規模、弱点、etc……

 

その過程で、何か帝国がもともとその『魔女』について研究を進めてたとか、色々な事実を知ることになったり……そこから派生した新たな学問の探求に一部協力することになったりしたんだけど……まあ、そのへんはまた今度。

 

今はまず、『魔女』さんについての理解を深めることだ。できる限り。

彼女を……ひいては、彼女を擁する『エイルシュタット』に、勝つために。

 

 

 

×月●日

 

……死ぬかと思った。

 

今日、件の『魔女』に会った。一瞬だけだけど。

 

視察に行った先の物資集積地に、地元の義勇兵たちと一緒に現れて……持参した爆弾やら何やらを撃ちまくって荒らしに荒らして、物資を焼いて……焼け残った物資は、一緒に来た義勇兵たちが根こそぎ奪い去っていった。

 

で、その最中に……高台で指揮官をやってた僕のところに、またがってた対戦車ライフルから打ち出した大口径の弾丸が飛んできて……あれ絶対狙ってやったよな。まあ、指揮官をつぶして敵を丸ごと混乱させるのはよくある戦術だけど……自分がやられると怖いわ。

 

幸い弾は外れたけど、着弾の衝撃で砕けて飛び散った、周囲の機材その他の金属の破片に……左目をやられた。

 

外科手術が間に合って、金属片とか異物は摘出に成功した。

……一緒に、眼球も摘出する羽目になったけど。今は、義眼が入っている。

 

医者に、もっと早く来てくれれば違ったかもしれない、って怒られたけど、無理だろ。ぐっさり刺さってたんだし。それに……指揮がまだ終わってないのに、持ち場を離れられなかったし。

あそこで僕が逃げてたら、もっと多く死人が出てたはずだ。

 

ともあれ、失ったものは仕方がない。

あるもの、残ったものを生かしてこの先やっていくことにしようと思う。

 

……そのためにも、もっと勉強だな。

 

 

 

※月○日

 

必要なことは、一通り勉強できた。

 

ケガも治り――片目がないので、『治った』とは微妙に言いづらいんだけども――今まで通り前線で部隊の指揮を、後方に行けば参謀として作戦立案その他を行いつつ……今僕は、対エイルシュタットの決戦に向けた準備を進めている。

 

というのも……帝国の中枢で進められていた、魔女関係のプロジェクトがいよいよ動き出したのである。

 

驚いたことに、その内容は……エイルシュタットの伝説にある『白き魔女』のクローンを作って魔法を使わせ、戦わせるというものだった。

クローンあんのか、この時代に。すごいぜ帝国の研究機関。

 

しかもその過程で、全くの未知のエネルギーまで発見し、軍事利用のための研究を進めてたりする。僕もそれには一枚かんでいて……それゆえに、魔法やばいな、と思わざるを得ない状況だ。

詳しく書くと長く、ややこしくなるんで、詳細は省くけど。

 

けどひとまずは、そのクローン魔女……ゾフィーという名前らしいその子に、エイルシュタットの魔女・イゼッタを倒させるつもりのようだ。

本人とも協力するってことで話はついてるようだ。あくまで目的のために、って感じだけど。

 

しかも何か、『魔石』とかいうチートアイテムもついてきてるし……おまけに当の本人がやる気満々だ。よほどエイルシュタットに恨みがあるらしく……帝国軍に協力してるのも、そのエイルシュタットを苦しめて、痛めつけて滅ぼすためだとか。

 

……僕も帝国の国民だから、『白き魔女』の物語は知ってる。

公国には伝わっていないらしい、もう1つの結末についても……だ。もしアレが本当なら、そりゃまあ……恨むだろ。憎むだろ。

 

……ま、味方である分には頼もしい。

彼女の協力があれば……そして、『魔石』の力を使えば、魔女同士の戦いでもほぼ間違いなく勝てるだろう。

 

けど、僕は僕で準備は間違いなく進めよう。ほとんどが、あるいは全部が無駄になるとしても。

彼女……ゾフィーに、全部をゆだねて任せてしまうつもりはない。僕は僕で……1人の人間として、人間の力で進められる手を、あくまでも用意しておくべきだ。

 

魔女は別としても……その後の首都および主要都市侵攻、占領統治、武装勢力の解体に物資の応酬、情報の解析、要人の確保……やることはいくらでもあるんだ。

それらを僕は、ゾフィーに頼らず、あくまで軍の手によってやる。やらなければならない。

 

……他ならぬエイルシュタットは、魔女・イゼッタに依存しすぎてしまったゆえに、これから負けるのだから。

 

 

 

※月※日

 

作戦成功。

 

首都ランツブルック陥落。敵対空戦力を含む武装施設の無力化に成功。

こちらの損害は軽微。敵の物資および戦闘設備各種の大規模鹵獲に成功。捕虜も多数。

 

エイルシュタットの主要な官僚各位の捕獲に成功。ただし、大公フィーネ嬢ほか腹心数名には、秘密の通路か何かを使って逃げられた模様。捜索は困難。

 

戦闘終了後は、迅速に処理を進めることができたこともあり、特に大きな混乱もなく占領支配を開始。僕はそこの実質的な責任者に、兼務ではあるが就任することになった。

……勝利の報告を父の墓前に持って帰りたかったんだけども、しばらく無理そうだ。

 

そして、一番肝心なところ……ゼルン回廊における陽動を兼ねた戦闘において、魔女ゾフィーとこちらの、というか僕直属の魔法工作兵団の連携により、魔女イゼッタの撃破・捕縛に成功。

 

ゾフィーは『私一人でもできたわよ』って不満そうだけど。

 

そして、そのゾフィーによって、空中戦の最中から撃破直後に至るまで、さんざんに痛めつけられた魔女イゼッタは、見るも無残というか、痛々しい姿になって吊るされている。ゾフィーが浮かせて使ってる武器である大剣(みたいなもの)に、体を鎖で縛り上げられて。

 

手首から足元に至るまで鎖が巻き付き、食い込み、服もボロボロなので……必然的に露出も激しくなり、あちこち見えてしまっている。

まあ、ポロリしたりモザイクがかかるようなところは、幸い無事だけど。

 

そんな彼女を、広報担当の部局の連中が、高解像度のカメラを使ってパシャパシャ撮りまくっている。打ちのめされ、縛り上げられて、傷だらけになって気絶して吊るされている少女を。

 

痛々しくもあり……しかし、どこか同時に淫靡で、蟲惑的にも見えるその姿は……その場にいるほとんどの兵の目をくぎ付けにしていた。僕も含めて、だけど。

 

こんな小さな少女が、今まで帝国を苦しめてたのか、という感慨。

こいつのせいで、多くの戦友が殺された、という憎悪。

さあ、捕らえたこいつをどうしてやろうか、という情欲。

その他もろもろ……色んな感情が、無力な少女に向けられている。

 

そしてこの姿は……明日の新聞の1面で、国内外に報じられることになるだろう。

 

敗北し、囚われ、全てを失って……そしてこれから、さらに色々と失うことになる、哀れな魔女の姿が……大勢の人の目にさらされるだろう。さらされ続けるだろう。

帝国のプロパガンダ作戦のために。エイルシュタットの力が、権威が、最早地に落ちたことを示し、この戦争の勢いを再び帝国にもっていくために。

 

あとはこれに加えて……今、本国で開発が進められてる兵器、そして僕が研究している『アレ』と『アレ』が完成すれば……もはや、この欧州に、いや、地球上に、帝国の敵はいなくなる。

 

果たしてこの少女は……それまで生きていられるのやら。

 

ま、生きていられたとしても……無事じゃないだろうなあ。

彼女……可愛いし。

 

……っていうか、結構な量の血があちこちから流れているので、さっさと運んで治療した方がよさそうだ。かなり高いところから、全身に打撲もあるだろうし。

 

うん、あれだ。痛々しくも、服が破れてたりとか鎖で吊るされてたりとかしてて、何かリョナ的なエロさがあるなって感じてたりしたけど……やっぱそれ以上に痛々しいな。

 

うん、一通り撮ったら、引き上げさせて、さっさと運ぼう。

一応彼女は、基本生け捕りで話が進んでいるんだ。最終的に処刑される(かもしれない)としても、今死なれるのはまずい。

 

 

 

……それはそれとして、だ。

 

僕の予想だと、そろそろ彼女を奪還するために、忠誠心豊かなエイルシュタットの兵士たちが、決死の特攻を仕掛けてくると思うんだけど……さて(日記はここで途切れている)

 

 

 

☆☆☆

 

 

「失礼します。少佐殿、ご報告が」

 

「どうした? ここから南西の森林地帯の中に浸透中の伏兵でも見つかったかい? それとも、ランツブルック南西部の戦線が不自然に崩れたかな?」

 

「両方です。……さすがですね、報告もなしにわかるのですか」

 

「もしやるとしたら、突破して攻めて来れるのなんてそこらへんくらいだからね。というか、わざとそこに隙間ができるように、ちょっとわかりにくくした上で布陣させたんだけど」

 

「わざと、わかりにくく……ですか?」

 

「あまりに露骨だと罠だってわかっちゃうからね。敵方に多少なり頭の切れる奴がいれば、ここに気づく。気づかなければ、僕らが安全に護送できるだけの話だ。そして、南西部の戦線については……敗走を装った陽動だろう。こちらは陣形を動かさず、敵が動いた結果逆に手薄になったところから先に兵を送れ。多分そっちに大公殿下御一行様が逃げ出してる。あと、そこにいた戦闘機が、奪還のためにいくらかこっちに来るかもしれない。対空重機関銃と擲弾射出機を用意。哨戒機も飛ばして、こっちに被害が出る距離に近づかれる前に撃ち落とせ」

 

「了解しました、サンジェルマン少佐殿! 失礼いたします!」

 

 

 

世界に紛れ込んだ異物……ゲルマニア帝国軍少佐、ソロモン・フォン・サンジェルマン。

 

戦いに敗れ、捕らわれた英雄……エイルシュタット公国の白き魔女・イゼッタ。

 

交わることのないはずだった2人が出会う時、歴史は狂いだし、誰も知らない結末へ向けて流れていく……。

 

 

 

 




イゼッタちゃん、いい子ですよね……
姫様との友情、ふつくしい……そして健気で、一生懸命で……

ぜひ彼女には幸せになってほしい、って思いながら見てました。

……まあ、それはそれとして文章中ではいぢめるんですが。
いや、9話……あんなもん見せられたら、ねえ? その先を想像しちゃいますよ。

お楽しみいただけたら幸いです。今後ともよろしくです。


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02 墜ちた魔女の悲劇

 

※月¥日

 

捕虜というのは、一応は国際条約に基づいて手厚く扱われる……ということになってるんだけども、いかんせん戦争というのは、そういうモラルを突っぱねて存在している。

そしてそれは、彼女……魔女イゼッタも例外ではない。

 

敵国の重要(どころではない)人物を捕虜にしたわけだから、そりゃ尋問やら拷問やら始まろうってもんである。

 

色々な、有益な情報を持っている可能性も高い立場だ。軍関係・政治関係はもちろん……彼女自身がその力の強大さを証明している『魔女』関連についても。

まあ、魔女については、帝国は帝国で色々研究進めてるんだけども。

 

女だからと、子供だからと容赦はされまい。痛めつけるか、辱めるか……あるいは、僕なんかじゃ及びもつかないであろう方法で、口を割るまで責め苦が続くのだ。

 

哀れに思わないわけじゃないけど……これも戦争だ。

彼女だって、帝国の兵士やら士官やら、結構な数殺してるし、戦車や戦闘機を遠慮なくぶっ壊し、空母だって沈めた。……あ、あれは元々威力偵察のための囮なんだっけか。

 

そんな彼女は、立派な戦争の当事者だ。

情けをかけるなんてことはできないだろう……散っていった兵士たちに申し訳が立たない。

 

……ほかならぬ僕の父も、この子に殺されたんだ。

眼帯で覆っている僕の左目も、この子に永遠に光を奪われたんだ。

 

それは確かなんだけど……いざこうして、無防備に眠っている彼女を前にすると、憎しみとか恨みとか、そういう感情が出てこない。

……恨んでないわけじゃない。怒ってないわけじゃない。

 

……ただ、実感がわかないんだろうな。

 

目の前でこんな風に眠っているこのかわいい女の子が、帝国の戦線に大ダメージを与え続けた『魔女』であり……父と、僕の左目の仇だって、信じられてないんだ。

 

もうちょっと経って、彼女が敵だって僕が心の底から認識できたら、その時は……憎むようになるのかもしれない。

 

けど今は、普通にかわいくて、穏やかに眠っていて……まるで、普通の一般人みたいだ。

 

いや、そうなのかもしれない。彼女は案外……元々、『魔法が使えるだけの一般人』で、戦争とか政治とか、そういう物騒な領域には無縁の、1人の女の子だったのかも。

それが……何で戦争なんかに出てきたのかは……わかんないけど。

 

プロパガンダ映像を見る限り、何か姫様と特別に仲がいい、彼女と共にある魔女、ってのが宣伝文句みたいだけど……案外、ホントにあの姫様の伝手だったり?

 

……それらについても、聞き出せばわかることではあるけども……今日はさすがに無理だ。

というか、しばらく無理な気がする。

 

理由は簡単。負傷してボロボロだからだ。

 

捕獲作戦の時……ゾフィーがズタボロにしたからな……。

でっかい剣みたいな金属の塊ぶつけたり、至近距離で機雷爆発させたり、魔石でレイラインの魔力消失させて墜落させたり、鎖で縛って吊るして締め上げて、さらにその上打ち据えたり踏んづけたり蹴っ飛ばしたりひっぱたいたり……

 

その結果が、ベッドの上に寝ているこの姿だ。

 

身にまとっているのは、病人着1枚。それ以外は、下着すら身に着けていない。

そしてその体を……おびただしい量の包帯が覆っていて、点滴の管も何本もつながれていて、所々にギプスや、縫合の跡も見受けられる。

 

弱弱しい呼吸。顔色は蒼白。換えても換えても、包帯には血がにじむ。

かろうじて胸が上下に動いていることだけが、彼女の確かな生存を教えてくれる。

 

普通なら、捕虜として投獄しておく身分だけれども……この見た目からわかる通り、それ以上に医療的処置の必要性が認められたため、医務室のベッドの上に寝かせている。

 

ゾフィーの死体蹴りにも等しい暴行のおかげで、イゼッタは、全身打撲や骨折で、身動き一つできないレベルの負傷。しかも、傷や後遺症が残りかねないほどの傷も少なくない。

 

特に足が酷い。筋肉はもちろん、骨、間接、神経に至るまでボロボロだ。

どうやら、ライフルにまたがって飛んでいるところから落下させられた時、変な姿勢で落ちたのが原因の1つらしい。そこからさらに色々された結果……治療には極めて長い期間を要する上、完全には歩行能力は元には戻らない傷になってしまった。

 

最早彼女は、健常な1人の人間としての生活を取り戻すことはできないだろう……

治療しても、元の肉体に戻ることは到底無理だろう…………

 

 

………………普通なら。

 

 

それじゃ困る。彼女にはまだ、色々とやってもらうことがあるし、聞きたいこともある。

 

だから……治してあげよう。帝国の……いや、僕の作り出した、新技術で。

 

……それが、彼女にとってプラスになる、とは言えないんだけど。

 

 

 

※月…日

 

『魔女』の力を研究した結果として発展し、様々な不可能が可能になった。

僕もそれに一枚かんでいる……というか、思いっきり中核の一員として研究している。

 

ベルクマン少佐……あ、今は中佐だっけ。彼が確か、戦闘分野への技術利用を進めていたのに対して、僕のは医療とか資源とか、そのあたりへの利用に特化した分野の研究だった。

 

無理やり区分して名前を付けるとすれば……『錬金術』だろうか。

 

そうなると僕は、それを操る『錬金術師』……胡散臭いことこの上ないネーミングだけども、学術分野の1つとして、インチキでもなんでもない革新的な効果をはじき出すことには成功している。

 

その証明として……『錬金術』を応用して治療を行ったイゼッタの体は、見る見るうちに傷をいやし、力を取り戻してきている。

 

出血は止まり、傷はふさがり、骨はつながりひびが消え……表面上は、主だった傷のほとんどが癒えたきれいな肌を取り戻すまでになっている。

 

まだ中の方はボロボロだけど……それも数日中には治ってるだろう。

包帯もだいぶとれて、血のにじまない、ちゃんとした肌色の部分がほとんどを占めるようになった。大怪我人だったのが、怪我人、くらいにまではランクダウンしたかも。

 

この分なら、今日明日中に目も覚めるだろう。

 

寝息の感じも、昨日より安らかな感じで眠ることができているようで何よりだ。

 

……このせっかく治った体が……また数日後には傷だらけになるのかと思うと、ちょっとやるせないというか……複雑な気分になる。

目の前のこの少女が、僕ら帝国軍の宿敵だとわかっていてもだ。

 

……ゾフィーがうるさいんだよ。尋問するから、さっさと引き渡せって。

 

 

 

※月&日

 

今日、イゼッタが目を覚ました。

 

正確には、昨日からうすぼんやりと意識はあったらしい。しかし、頭に霧がかかったような感じになって……起き上がることはできなかったそうだ。

でもその状態で一眠りして、今日になって、ようやくはっきり目覚められたと。

 

当然ながら、現状がよくわかっていないみたいだったので……簡単にだが説明しておいた。

 

ゼルン回廊における戦闘で、彼女……イゼッタは撃墜、我々帝国軍の捕虜となっていること。

 

イゼッタは生死が危ぶまれるほどの大怪我だったので、一応こちらで治療したこと。

それは大体終わっていて、放っておいても回復するくらいには治し終えていること。

 

君の敗北からすでに数日経っており、すでに陥落したランツブルックを含め、今やエイルシュタット公国のほとんどが占領下にあること。

 

あとついでに、僕の自己紹介も遅ればせながら。ソロモン・フォン・サンジェルマン少佐。エイルシュタットの占領統治の、暫定的な責任者である、よろしく、と。

 

イゼッタはベッドの上で、冷や汗を流して顔を青くしながら話を聞いていた。話の1つ1つがあまりにも衝撃的で、かみ砕いて飲み込むのに苦労していたようだ。

それでも、どうにか自分の中で認識して、理解したところで……逆にこちらに尋ねてきた。

 

姫様――フィーネ大公はどうなったのか、と。

 

そして、自分はこれからどうなるのか、と。

 

どちらの問いにも、あまりいい答えは期待できないであろうことはわかっていたんだろう。動揺や恐怖を、必死で抑え込んで……でも、抑えきれなくて、わずかに体を震わせながらの質問だった。

 

そしてそれに僕が答えかねていることで、さらに不安感が増したらしいけど……僕が口を開く前に、最悪のインターセプトが入った。

 

無断で部屋に入ってきたゾフィーが、彼女を見て蒼白になるイゼッタを見てご満悦の表情を浮かべながら、あっさりとばらしてくれやがったのである。

 

姫様については、まだ見つかってないけど、時間の問題だ、と。

 

そして彼女……イゼッタについては、これから厳しい尋問にかけられることになる――というか、自分がそれを担当するから、覚悟して待っていろと。

撃墜して鎖でつるし上げた時よりも痛くて、苦しくて、惨い目にあわせてやる、と。

 

言いたいこと全部言ってゾフィーは去り、後には……この世の終わりのような顔をしたイゼッタと、僕だけが残された。

イゼッタは僕に、今のゾフィーの言葉を、一部でも撤回してほしそうな、すがるような目を向けて来たけど……僕には、黙って首を横に振るくらいのことしかできなかった。

 

彼女には……明日から、つらい日々が待っている。

 

 

 

※月Ω日

 

いよいよもって、彼女……イゼッタへの『尋問』が始まった。

 

僕の『錬金術』によって、ひとまず日常生活を送れる程度にまで体が回復したイゼッタは、病室から捕虜収容用の牢屋へ移され、そこで早速……ゾフィーによる責め苦が始まった。

 

というか、始まっていた。

朝起きたら、僕の了解なく勝手にゾフィーがそれらを進めていて……驚いて僕がその地下牢へ行ったら、すでに彼女が『尋問』を始めていたところだった。

 

病人着から、粗末な囚人服に着替えさせられたイゼッタは……彼女が捕らえられたあの日と同じように、両手を上に、手首を合わせるような形で鎖で締め上げられて……天井からつるされるようにして立たされていた。

 

そして、粗末なれども一応新品のはずの服は、すでにボロボロ、ズタズタになっていて……破れたその隙間から、血の滲んだミミズ腫れの痛々しい赤色が見える。

 

一応、顔にそういった跡はないみたいだけど……それ以外、腕、足、胴体その他には、まんべんなくそんな跡が。しかも、顔は顔で……平手で張られたんだろうか、微妙に赤くなってる。

 

そのイゼッタの体に、ゾフィーは手にした鞭を振るう。

パァン! と乾いた音とともに、革製のそれがイゼッタの色白の肌を無慈悲に打ち付ける。

 

その威力に、痛みに大きく震え、口からは悲鳴に近い苦悶の声。

耐えがたいほどの痛みなのだろう……目からは涙が零れ落ち、一拍遅れて、汗がどっと噴き出していた。それでも、滑って抜けることのないほどにきつく手首は縛られているようだった。

 

牢に入ってきた僕に気づいたイゼッタは、反射的にだろう、助けを求めるような視線を僕によこしてきて……しかしその直後、再び振るわれるゾフィーの鞭。

先程、太ももをとらえたそれは、今度はわき腹にあたり……イゼッタの息が詰まる。

 

二度、三度とそれを繰り返したところで……イゼッタの股間のあたりから、しょわわわ……と、水音が聞こえた。

 

涙を流し、失禁までしてがくがくと震えるイゼッタを見て、ゾフィーは楽しそうにしていた。

その笑みを見て、がくがくと震え、その身を縛る鎖をがちゃがちゃと鳴らすイゼッタ。

 

このまま発狂か精神崩壊するんじゃないかっていうレベルだったので、僕の方からゾフィーにそれとなく、やりすぎないように注意したものの――っていうか、『尋問』って言いつつ痛めつけるばっかりで何も質問とかしてないぞこいつ――しかしゾフィーは聞く耳持ってない感じ。

 

何、また僕が治せばいいだろうって? こないだの墜落の傷を治したみたいに? 時間もかけず、後遺症もなく治せるだろうって?

そりゃできるけど、それを必要とするレベルに痛めつける前提で話すな。

 

あくまでこの場での『尋問』の目的は、必要な情報を聞き出すための……え、皇帝陛下も黙認してくださってる? こいつ、臣従してるわけでもないのにこういう時だけ……

 

いや、まあ僕だって別にあのおっさんに忠誠誓ってるわけでもないけどさ。

言ってみれば、代々仕えてきた我が生家への義理立てと、将来楽できるだけの実績を積むために、エリートコースに乗る目的で従軍してるだけ、みたいなもんだし。

 

結局、しばらくやめる気なさそうだったので……せめてというか、僕も牢に残って、ゾフィーがやりすぎないように監視させてもらって……このままじゃ『尋問』じゃないので、質問はこっちで口頭でさせてもらった。

答えは返ってこなかったけど。意志の強い子だな。

 

……口を割らなければ、それを格好の理由にしたゾフィーが過熱するのはわかってたろうに。

 

結局、適当なところで、治療中なのを理由にドクターストップをかけ、その日の尋問は終わりにさせた。途中で止められてやや不機嫌そうだったけど、ある程度発散してすっきりしたような表情のゾフィーが出てったのを見送ってから……彼女の身柄をベッドに移し、治療に移る。

 

士官学校の特設クラスで講習受けて合格して、軍医師免許持ってるんでね、僕。

 

服を脱がせて裸にする。……若い女の子の裸体も、こうまでびっしり痛々しいミミズば腫れだらけになってちゃ、欲情ってもんも浮かんでこないな。

 

あらかじめ持ってきておいた軟膏薬を、全身の傷に塗り込むようにしていくと……見る見るうちに、傷が治っていく。

これには彼女も驚いていたけど……すぐに、拷問で体力を失ってた上、精神的にも限界だったんだろう。軟膏薬のおかげで、じんわりと熱を帯びて温まってきたであろう体が、その熱をちょうど心地よく感じたのか……とろんとした目になって、そのまま寝てしまった。

 

僕は気にせず、彼女の全身にきっちり薬を塗りこみ、さらに治療のための栄養分の補給のための注射を打ってやり、持ってきていた予備の囚人服を着せて、牢屋を後にした。

牢番の奴に、今日はもう誰も中に入れるな、と厳命して。

 

……これが明日からもずっと続くのかな……敵なのはわかるけど、気が滅入りそうだ。

 

 

 

※月$日

 

昨日とほぼ同じ。

 

朝起きる。

やはり何の断りもなく拷問が始まっている。

牢屋に急行。

 

今日もまた、ゾフィーはイゼッタを、完全にサンドバッグ代わりにしている。

 

もうすでに、昨日と同じようにイゼッタの体は傷だらけになってて……太ももの内側と床の水跡を見るに、また失禁もあったようだ。

そして、それと同じくらいはっきり、涙の後も……だから、痛々しいって。

 

それでも、同室にいる書記官――ゾフィーが来たら、どうせ無理だから止めなくてもいいから、記録はとっておけ、ってことで昨日のうちに配置しておいた――の、記録ノートがほぼ白紙であるところを見ると、どうやら今日もまだ何もしゃべっていないらしい。

 

というかそもそもゾフィーが、尋問だ拷問だと言いつつ、何も喋らす気がなかったりする。

 

だって、尋問に関係あるなしに関わらず、何か言うたびに『誰が喋っていいといったかしら!?』つって鞭をパァンと……じゃ、どうすりゃいいんだよって話になるよね。

 

しかし……話によれば、彼女ってまだ15歳なんだよね? それなのに、こんな目にあっても口を割らない忠誠心……かもしくは、友情か……。

 

どっちにせよ……見上げたもんだ。

もし僕が同じ目にあったとしたら……あそこまで黙ってる自信はないな。

 

僕はMではないので、普通に痛いのは嫌だし。さっさとしゃべっちゃいそうだ。

……いや、彼女も別にMじゃないだろうけど。痛そうにはしてるから。

 

今日は昨日のに加えて、ゾフィーが鎖で締め付ける拷問までやったもんだから……跡が残るどころか、締め付けや鎖が噛んで裂傷ができたり、骨がきしんだりして……

 

鞭の打撃によって出る、絹を裂くような悲鳴と違って、喉の奥から絞り出されるようなかすれた悲鳴。こっちはこっちで痛々しいのなんのって……

僕にリョナ趣味はあんまりない――皆無とは言わないが――ので、できれば目を反らしたい。

 

けどそうすると、なんかゾフィーが調子に乗りそうなので、耐える。鉄面皮死守。

 

……普通、父の仇+自分の左目の仇が目の前で痛い目にあってるんだから、喜んでもよさそうな場面なのかもしれないけど……そんな気にならないよ、やっぱり。

可愛い女の子……しかも性格が悪いわけでもなく、普通にいい娘が、いじめられてんだから。

 

それに……今だからいうけど、父は父で、結構裏で色々やってたっぽいしな……。

 

代々帝国に使える古参の家だし、軍部に影響力も強いから重用されてたといっても、その過程で敵を作らなかったわけじゃないようだし。その地位に調子に乗って、暗愚とは言わないまでも、バカやってた部分はかなりあるみたいだった。

 

それに、僕が従軍中に色々と仕上げた新兵器・新戦術理論なんかも、実家の手柄にして、本来なら僕に入るはずの儲けをピンハネ……というかほぼ横取りしてたりもしたし。

ナチュラルに、子の手柄はすなわち家の手柄、とか言ってたな。まあ、別にいいけど。

 

恵まれた環境で、何不自由なく育ててもらったことに、恩は感じている。だから、その分の義理立てとして僕は家に、ひいては帝国に仕えているのであって、別に『愛国心』とかはない。

 

現代日本で育った記憶のある僕にとって、どっちかっていうと祖国はあの日本だし、そもそも今日び『愛国心』て……ぶっちゃけ僕の中で、旧時代のカビの生えた考え方だと思ってたり。

 

何を信条として、何のために力を尽くすかなんて、人それぞれだろう。

それを、この国に生まれたからこの国のために生き、この国のために死ぬことこそ誉れ……なんて考え方は、少なくとも僕には、到底理解できるものではない。

 

別に、そう考える人を否定する気はないが、だからといってそれを他人に押し付けたり、そうしない人を糾弾するようなやり方は嫌いだ。愛国心がないってことは、愛国心を持たれないような国の状態があるっていう見方もできるだろうに、そこに目を向けないで何をバカな。

 

……そこ行くと、エイルシュタット公国は、よく考えると……すごいな、と思う。

 

統治者は国民みんなから好かれ、粘り強くタフな心根や、相互に助け合う絆の強さが国民性として根付いている。……一朝一夕でこうはいかない、長きにわたって続けられてきた、確かな善政が打ち立てた、まぎれもない大公家の功績だろう。

 

しかも、軍備も小さく武器も旧式のものが多い小国でありながら、正確無比な戦争機械たるゲルマニア帝国相手に、一時とはいえ進攻を耐えて見せていた。

 

それだけ士気が高かったってことだ。兵士たちの誰もが愛国心を持ち、後ろにいる家族を、仲間を、国民を守って戦い抜いてみせるっていう自負と決意に満ちていた。

 

……愛されてるんだな、あの姫様とやらは。

 

まだ戦争が始まるよりずっと前の国際式典で何度か見かけたことがあったけど、真面目さと誠実さに手足が生えてるような印象を受けたのを覚えてる。

中身も見た目通りだったようで……だからこそ、国民に慕われてたんだろうな。

 

……こうして、絶え間ない責め苦に遭いながらも、何も話すことなく耐えている少女もまた……そんな姫様もとい、大公殿下を慕うがゆえに、これだけ強いんだろうか。

 

……うらやましいな。

そういう感情……僕は、抱いたことないや。

 

とか思ってる間に、ゾフィーが調子に乗ってきた。これ以上は危険だ。

はい、ストップそこまで。やめやめ。それ以上は骨が死ぬから。

 

え、治せるだろうって? ばーか、強力な薬は反動とか副作用もそれなりにあるの。そんなに頻繁に使っていいものじゃないの。いくら『錬金術』使っても負担の軽減にも限度があるの。これ以上のペースでの使用は後遺症につながります。というわけではい終了!

 

―――嘘だけど。

 

ゾフィーを追い出し、昨日と同じように彼女の傷を治す。

 

あと、後から部屋の掃除をさせる人員を手配しておいた。

2日連続で失禁してる上、血しぶきとか飛び散ってるからね……衛生的に、うん。

 

イゼッタはだまって僕にされるがままで……しかし今日は、気を失わずに最後まで起きていた。

その結果、僕が薬品と『錬金術』の組み合わせで彼女の傷を全部きれいに治すところまで見てて……それで、何か聞きたそうにしてたんだけど……結局最後まで黙っていた。

 

いや、最後の最後、治療が終わったって伝えた時に、一言『ありがとう』って言われた。

 

ただし、僕も帝国軍人だからだろう。態度は、怯えたそれだったけど。

……ちょっと悲しい。いや、敵なんだから当然だけど。

 

 

 

※月@日

 

本当に……あのバカ女……捕虜を殺す気じゃなかろうか?

 

日に日に苛烈になる拷問。それに加えて、新アイテムまで持ち出しやがって……

どこから、誰に頼んで手配したんだ――

 

 

――電気ショックと催涙・嘔吐ガスなんて!

 

 

おかげで、尋問終わりの治療の時、体に焦げ跡はできてるわ、毛細血管が切れて粘膜から出血してるわ、さらには嘔吐はもちろん、多量に吸い込んだ影響でお腹下して、失禁どころかそれ以上のことまで……僕にはリョナもス○トロも守備範囲にはないって何度言ったら!

 

加虐趣味……っていうかエイルシュタットへの恨みはわかったから、衛生面考えろっての! 血飛沫、尿失禁、ガス充満、その他もろもろ……殺菌消毒終わるまで使えないよこの部屋!

 

イゼッタも虫の息だし、完治させるまでいつもの倍以上時間かかったわ! ガスの影響で上から下からいろんなもの垂れ流して、それらの処理も必要だったし!

 

その後も牢屋には置いとけなくて、また医務室に運んで経過観察することになったわ。無論僕がな。僕以外に錬金術使える奴いないから!

 

今回のことはさすがに見過ごせる範囲にない。何せ、あんな処刑や軍事作戦にも使われるような物騒なもんを黙って持ち出すのは、陛下の黙認云々以前だ。

 

持ち込み、および使用には管理担当者の決済……すなわち僕の許可がいるわけだが、当然僕はそんなものを許可した覚えはない。もしも書類の偽造でもやらかしているなら、それを根拠に更迭……は無理だろうけど、この基地からご退場願うくらいはしてやろう。

 

そう思って調べさせたんだが、違った。

厄介なことにあのドS魔女、僕を通さない正規の手段でアレらを手に入れてやがった。

 

というのも、本国から昨日付で赴任してきた査察官――ここ占領地での立場・権限では僕の方が上だけど、向こうは皇帝の息がかかってる上に階級では向こうが上――が持ってきた『差し入れ』らしいのだ。

 

僕を通すルートとは別ルートできちんと手続きを済ませ、許可を取り、あれらを持ち込んで……『よかったら役立ててくれ』ってゾフィーに……。

 

しかもそいつは確か、今日の『尋問』に立ち会っていた。

牢屋の隅で椅子に座ってニヤニヤと笑っていた、脂ぎった中年太りの男がそれだったはずだ。

 

イゼッタが責められ、苦しむ様を、笑いながら見ていたのを覚えている。

 

……あろうことか、その股間に……ズボンに、テントを張らせた状態で、だ。

 

……こいつ確か、陛下の……皇族の遠縁で、その権威をかさに着て色々と好き勝手やることでも有名だった気がする。しかも、陛下が面白がって放任してるもんだから、放っておくと欲望のままに、どんどんひどいことをやらかすって……

 

大方、査察その他の任務は名目で、帝国を予想外に手こずらせたこの国の、主力も主力だったイゼッタを見物に来たんだろうけど……ここにきて、また厄介な……。

 

……どうしよう、こいつがこのまま調子に乗るルートしか見えない。

 

その場合……イゼッタの身には、これ以上の地獄が降りかかることに……

 

 

 

※月*日

 

……早速か。

早速現実になったか、胸糞悪い予想が。

 

発端は、昨日。本国からゾフィーに命令が入った。

他の土地を進行する軍事作戦を再開するから戻れ、って。

 

ここ数日、ゾフィーは、午前中にイゼッタをいたぶり、午後になってからエイルシュタット領内の抗戦地域に赴いて、爆弾やら機雷やらを景気よく飛ばして爆発させて蹂躙、というのを繰り返している。物騒な日課だよホント。

 

ゾフィーはこの国、エイルシュタットに底知れぬ憎悪を燃やしているので、まだまだ足りない、って感じで……今回の帰ってこいコールにも難色を示してたんだけど、復活させてもらった義理か、あるいは帝国の協力下でまだやりたいことがあるのか、最終的には従う決断をした。

 

で、そのゾフィーがいなくなった途端……彼女に変わって捕虜の尋問を買って出やがったのがいる。

言うまでもなく、あの査察官共である。

 

朝一番……それこそ、イゼッタに何かする暇もないくらいに早いうちに、ゾフィーはこの基地を去った。しばらく帰ってこないだろう。少なくとも、数週間単位で。

 

それを見送った後、最近また増えた書類仕事に戻った僕だけど……その数時間後、血相を変えた部下から、また新しい面倒ごとが始まった報告を受けることになる。

 

牢屋に走っていってみれば、そこには……悲しきかな、予想通りの光景が。

 

 

裸に剝かれ、査察官と、その子飼いの兵士共によって……見るも無残に凌辱されているイゼッタが、そこにいた。

 

 

いつもの鎖ではなく、手錠によって拘束され……囚人服は、乱暴に破り捨てられている。

上も下も、隠すべき部分は、全く無防備にあらわになっている。形のいい、豊満な乳房も、毛の生えていない、ぴったりと閉じた1本筋の陰部も。

 

どちらもすでにさんざんに嬲られたようで、体中に白濁の粘液がべっとりとこびりついていた。

 

そして今も、床に仰向けに押し倒され、怒張した男性器をその股間に突き入れられて、苦痛と快楽がまじりあった悲鳴を上げている。それに興奮した兵士が、さらに腰を振るのを加速させ……おそらく、何度目かになるだろう射精を……遠慮も何もなしに、イゼッタの体内に放っていた。

 

脈打つように体を震わせながら、『あ、あぁ……』と、悲壮感に満ち満ちた声をこぼしつつ……女としての地獄を味わっているイゼッタは、ぼろぼろと涙をこぼし……満足した様子の兵士が肉棒を抜き取って手を放すと、そのまま力なく崩れ落ちた。

 

無理やり蟹股に開かれた足はそのままに……股間からは、ドロドロと精液が漏れ出ている。

 

部屋の隅にいる書記官は、生ごみを見るような目でその光景を見ながら、居心地悪そうにしている。記録することでもないからだろう、ノートは閉じられていた。

 

いくら何でも、と抗議しようとして……気づく。

この光景を見て……自分のアレが、どうなっているかということに。

 

……目の前のこの光景は、言うまでもなく、凄惨なものだ。

昨日までのゾフィーみたいに、痛みを主軸にした凄惨さはないとはいえ、かわいい女の子がズタボロに犯されて、床に転がされているこの光景は……正直、きつい。

本心として、僕はそう感じている。できれば、目を背けたい。

 

……だというのに、僕の股間は……雄としての本能に、実に正直に変形していた。

 

とっさに僕は踵を返し……うつろな様子で、おそらく僕が来たことにも気づいていないだろうイゼッタを一瞥し、

 

イスに座って一休みしつつ、部下にイゼッタを犯させてそれを見物している査察官――自分はもう済ませたらしい。下半身裸で、ペニスがテカテカと光っていた――から、『何だ、混ざらんのか?』なんてからかい気味に言われたりもしたけど、極力気にしないことにして『終わったら教えてください』とだけ言い残して、足早に歩き去った。

 

自室に帰ってから、副官に銘じて、査察官共の『尋問』が終わった後に、女性の衛生兵に彼女の世話と後始末をさせるよう言いつけておいた。

……ゾフィーのそれと違って、傷の治療なんかはいらなそうだから、大丈夫だろう。もし必要なら、僕が行くけど。

 

それと……アフター用の避妊薬の投与も。

『錬金術』で作った特性の奴だから、アレ使っとけばまず安全だろう。

 

そしてその後しばらく、あの凌辱の様子が頭から離れず……僕の下半身も元に戻らなかった。

 

このままじゃ、仕事が手につかない。

仕方ないので……軍付きの娼婦を手配して、部屋に呼んで抱いて発散した。

 

……自慢するわけじゃないが、僕は童貞じゃない。従軍してしばらく後には、上官に連れられて行った娼館で、大人の階段を上っている。

こういう施設は立派に必要なものとして認知されてるので、別に誰にも何も言われない。

 

……それでも……今日は、どうも……かつてないくらいに、熱くて……

追加料金まで払って、娼婦のおねーさんに『お盛んね』ってからかわれる羽目にまでなりつつ、何度もやって…………ようやく収まった。

 

 

 

 



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03 恥辱と被虐の日々

最初にちょっと三人称視点が入ります。前話の最後の日付の詳細ですね。

その後は今まで通り、日記調です。どうぞ。


 

 

「おらっ、さっさと口を開けろ!」

 

「へへっ、いいもん持ってんじゃねえか、魔女さんよぉ? 初めて見た時から、気になって仕方がなかったんだよなあ」

 

「んっ、ぐぅ……うぷ、うぇっ……」

 

薄暗い牢の中……凄惨な光景が繰り広げられていた。

 

手錠でその身を拘束され、自由を奪われた少女。

幼さの残る整った顔立ちに、赤い髪が特徴的な彼女……イゼッタは、この基地に居を構えるゲルマニア帝国軍……通称、ゲールと呼ばれるもの達にとり、仇敵とでも呼ぶべき存在だった。

 

ある日突然、エイルシュタットとの戦場に現れた彼女により、祖国は、軍は今まで、苦汁を嘗めさせられ続けてきたのだから。

 

しかし、今彼女を取り囲み……裸にして辱しめている彼らの脳内には、祖国の敵を誅せんと言うような高尚な志は微塵もない。

 

ただひたすらに……雄としての欲望をぶつけているばかりである。

 

服は剥ぎ取られ、手錠で拘束され……場所の不利を理由に抵抗もできない彼女は、ただ黙ってその身に恥辱を刻まれることしかできなかったのである。

 

ほんの数分前、下半身の衣服を脱ぎ捨てたゲール兵の男達に囲まれたイゼッタは……流民か旅人に近い身の上、育ち方をしたがゆえに、そっちの知識には疎かったものの……さすがにこれから、自分が、何をされようとしているのかは理解できた。

それに青ざめ、抵抗を試みるも……

 

『や、やめて下さいっ! は、放して……そんな、いやっ!』

 

『暴れんじゃねえよ、魔女め!』

 

『お前は負けて、捕まったんだよ。だったら何をされても文句なんて言えないだろうが!』

 

『俺たちの仲間を大勢殺したお前を、わざわざ使ってやるって言ってんだ、ありがたく思えよ。おい、そっち抑えろ』

 

『ささっ、査察官殿。まずは一番をどうぞ』

 

『うむ、ご苦労……ふふっ、先ほどからこの通り、勃ちっぱなしでね? いい加減に我慢の限界だったところだよ』

 

『う、うそ……い、嫌、嫌ぁっ! やだぁっ! ち、近付けないで下さい、そんな、汚い……んあぁっ!!』

 

『何をいうか小娘め、私のこれを汚いだと? ふん、ならばその汚いものに、魔女殿のかわいらしいここで奉仕してもらおうか!』

 

『い、嫌……お願い、やめて……う、ぅあ……あ、あ……嫌ぁあああっ!!』

 

 

 

彼女……イゼッタの純潔は、名も知らないゲールの軍人によって、いとも容易く奪われ、散らされた。

股間の、結合部から流れ落ちるわずかな量の鮮血が、それを痛々しく物語る。

 

(そん。な……これが……こんなのが、私の……初めての……)

 

気がつけば、ポロポロとこぼれ落ちている涙。小刻みに震えている体。

しかし、喪失のショックにうちひしがれる暇もなく……その身には、容赦なく雄達の欲望がぶつけられていく。

 

「おっ、ほぉっ…素晴らしい、これほどの名器はなかなかないぞ。流石は初物……そして流石は魔女といったところか! 素晴らしいものをお持ちだな」

 

「嫌ぁあ……ぬ、抜いてぇ、抜いて下さい……っ! 気持ち、悪いっ……」

 

体のなかに、地の通った異物が入り込んで、自分の……自分自身ですら触れたことのない場所を、貪り、なぶっている。

 

それがもたらす、おぞましいまでの違和感と圧痛、不快感……そして、快感。

 

溢れ出る様々な感情。それらを処理しきれずにごちゃごちゃになった頭。

 

そんな頭に、ゲールの男からの無情な宣告が、耳から飛び込んで来た。

 

「ぬうっ、気持ち悪いだと? まだ言うかこの小娘……」

 

「構わん、言わせておけ……お、っ。おぉ……と、たまらん、もう、出てしまいそうだ……!」

 

「……! っ!? い、嫌! そ、それだけは……抜いてっ、外にっ!」

 

「馬鹿を言うな、むしろ、我らゲールの優秀な遺伝子を注いでもらえるのだぞ! ありがたく……おっほ、おぉおおおお!」

 

 

 ---ど く ん

 

 

「あ…………そ、んな……」

 

今度は、悲鳴も上がらなかった。

その代わりとでも言うように、目から光が失われ……一筋の涙がこぼれ落ちる。

 

体の中で、突き入れられている肉棒が脈打ち、その旅に、どくどくと粘質の熱い液体が注ぎ込まれているのが、イゼッタには感じ取れた。

彼女にしてみれば……女として最後に残った大切なもの、大切な場所をも穢され、奪われたも同然。

 

いつの日か、彼女の血を受け継ぐ我が子を宿すはずの部屋が……ゲールの子種に汚された。

 

絶望に染まった表情で、完全に脱力してしまった彼女は……次の瞬間、床に投げ出された。

その体を支えていた男が、用済みとばかりに肉棒を抜き取り、放り出したのだ。

 

力なく床に倒れ混むイゼッタ。

その耳に、兵士達の会話は聞こえてこない。

 

しかし、何を話していたのかは……その直後、思い知らされることになる。

 

彼らのトップの男が放り出したその体に……兵士達が群がり出したことで。

 

「…………」

 

それを前にしても、最早抵抗する力のないイゼッタ。

その体は……かわいらしい口も、豊かに膨らんだ乳房も、安産型で形のいいヒップも、今しがた吐き出された精液が逆流してこぼれ落ち始めている膣も、

全て、兵士達の玩具として、いいように使われていく。

 

「へへっ、これからあんたは死ぬまで俺たちゲールの奴隷なんだからな。せいぜい元気な子を産むこったぜ」

 

「おい、こいつの子供なら、魔女になるんじゃないか?」

 

「そりゃいいや。なら少なくとも、子供が産める内は大切に飼ってもらえるだろうよ」

 

(死ぬ……まで、奴隷……もう、逃げられない……。ごめんなさい、姫様……私もう、お役に……)

 

かろうじて頭に届いた兵士達の会話を反芻し、イゼッタは心でも涙を流した。

 

 

 

 

※月#日

 

ここ最近、イゼッタの尋問は、兵たちの慰安と同義になっている。

査察官に媚びを売って、覚えのめでたい感じの者達から……彼が主催の『尋問』の名を取った輪姦パーティに呼ばれる、という感じである。

 

今日もだ。朝から、四つん這いにされて後ろから膣をえぐられている。

数日前まで処女だった彼女に対し、あまりに惨い、えげつない仕打ち。

 

人体の一部でありながら、ビキビキに硬くなって怒張した肉棒。熱くて硬いその逸物が、異物が、彼女の膣内に叩き込まれてゴリゴリと中をえぐり、好き放題動いて快楽をむさぼり、好きな時に、無遠慮に注ぎ込んで抜き取られる。その繰り返し。

 

尊厳も何も考慮されず、ただただ性処理用の肉便器としていいように使われる。

 

イゼッタは、ある日は朝に、また別な日は夕方に、また別な日は夜になってから、時間は決まっておらず……ただ単に、査察官の気が向いた時に、ひたすら犯される毎日だ。

それも大体は、1人じゃなくて集団で輪姦す。子飼い、あるいは気に入った兵を数人連れてきて、これでもかってくらいにドロドロのボロボロになるまで犯して帰っていく。

 

その都度、あらかじめ手配しておいた世話役が彼女の後始末をして、必要なら僕が治療もして、なるべく回復させてやる、という感じの毎日だ。

 

毎度毎度破り捨てられるか、あるいはドロドロに汚されるので、もう何着囚人服がダメになったか……。

 

いっそ裸でいさせておく、っていう意見も出たけど、温度調節が的確にできるような環境下でもないので、僕の権限で却下した。消耗品費が余ってるから、そこから出して補充する。

服はきちんと着させておかないと、これも衛生上よくない。

 

特に査察官のおっさん……毎度毎度、親子ほども年の離れた少女を組み伏せて、お盛んかつねちっこい交合に興じている。

 

お世辞にも見た目がいいとは言えない査察官のおっさん、いやむしろ汚っさんは、なんというか本当に欲望に忠実であるというのがわかる。自分のしたいことを一切遠慮せずにイゼッタに強要し、目を覆いたくなるような責め苦を幾度となく突き付けて辱める。

 

唇を奪ったり、乳房に吸い付いたり、陰部や……菊穴を舐めるなんてのは序の口。

 

汗……というよりは脂ぎった体で、イゼッタに抱き着いたり、上から覆いかぶさってねとっと密着するような形でへこへこと腰を振り、その間ずっとイゼッタの首筋やらうなじやらを舐め回したり、首に吸い付いてキスマークを付けたり。

 

後ろの穴……アナルを犯すなんてのも平気でやる。まあ、そら舐めるくらいなんだから、やるわな。そのくらい、普通にやるわな。

 

口に……喉の奥まで突っ込んでのイラマチオ、豊満な胸で挟んでパイズリ、その他、素股に腋に髪の毛まで、何でもかんでも使う。

……どんだけ遊んでんだよ、この人は……。

 

犯されるつらさ、苦しさに加え、自分の体をいいように使われている不快感、屈辱。

それらが織り交ぜられて、言い表しようのない感情がイゼッタの中に渦巻いている。

 

毎日、そんな感じで存分にイゼッタの体を堪能し、汚しつくすと……連れてきた兵たちに『後は好きにしろ』と。

そして始まる輪姦。汚っさんはそれを、椅子に座って休みながら見ている、と。

 

あるいは、汚っさんがまだやってる最中から参加させたりすることもあるようだけど。

 

悲鳴や嬌声すらだんだん上がらなくなり……兵たちが満足するまで犯されて、犯されつくして……終わったら捨てられる。

それが、ここ数日の間、イゼッタが受け続けている責め苦の内容だ。

 

そして僕はそれを、ゾフィーの時と同じように……参加せずに見ている。終わるまで。

終わったら、さっき言った通りに処置に移る。

 

疲労困憊の上、精神的なショックから立ち直れていないイゼッタは、されるがまま。

この間までは、ゾフィーの責め苦の後に少しは口を利く感じもあったのだけど……それも鳴りを潜めている。

 

生まれて初めての、女としての地獄。それが毎日繰り返されるこの責め苦に、だんだんと精神を削られているのかもしれない。

 

……それと、犯されるようになってから2日目以降は、こっそり彼女に避妊薬の投与も始めた。僕の独断で、記録に残さずに。

『錬金術』で作った特製の品なので、調べられても成分は一切検出されない。

 

これで少なくとも、妊娠することはないだろう。

 

……そして、彼女に関する一連の行為の間……僕は、前もって飲んでおいた鎮静剤のおかげで、精神と下半身の鎮静を保っている。

数時間で効き目が切れるので、何日かに1回は娼婦を手配してるけど。

 

……多分、査察官殿なら……僕がもし希望すれば、面白そうに笑って、イゼッタを輪姦するメンバーに入れてもらえるだろう。というか、別にあの人の許可なんかなくても……僕の立場上、その気になれば彼女に手を出しても何も問題はない。

 

けど……どうしてかな。

なんていうか……自分から出すのは、何かこう……

 

いや、正確には、出したいんだけど……もっとこう……

 

 

 

※月?日

 

査察官の汚っさん……またいらんものを用意して……

 

鞭、低温ロウソク、三角木馬、荒縄……

 

どうみてもSMプレイのセットです本当に(略)

 

普通の輪姦に飽きたのか、それとももともと手配していて届き次第コレに興じるつもりだったのかわからないけど、汚っさん方は嬉々としてコレを持ち出した。

 

ぱっと見ただけでは、すぐにはそれらをどう使うのかがわからなかったらしいイゼッタだが、汚っさんが用意した道具の中に鞭が混じっていたことで、痛い系だと悟ったらしく、顔を青くしていた。

 

しかし、だからといって汚っさんらのおもちゃ遊びから逃れられるわけもなく。

 

荒縄で縛られて身動きを取れなくされ、

三角木馬に跨らされて、股間に木の角を食い込まされ、

熱く溶けた蝋を垂らされ、

鞭で打ち付けられて、肌が赤く腫れあがり、

 

苦痛に悲鳴を上げ、しかし合間合間で与えられる快感に嬌声を上げながら、今日もイゼッタは辱められていた。

 

……が、意外にも、体への負担とは逆に、精神への負担は小さいように見えた。

痛みが気付けになってるとか? そんな馬鹿な。

 

……いや、でも……よく考えたら、イゼッタってあのゾフィーの拷問にさらされてたんだもんな……そりゃ、多少なり苦痛に耐性もできる……のか?

時に骨まで逝きかねないアレに比べれば、あくまでプレイ前提のSMだし、まあ……うん。

 

木馬も角は丸くなってたし、蝋燭も鞭も、アレはプレイ用で、見た目はアレだし派手に音もなるけど、威力はそこまでじゃないものだったはずだし。

ゾフィーの鞭だと、もっとえげつないミミズ腫れできてたもんな……

 

そんなわけで、所々に差し込まれる普通のレイプによる快感はともかく……痛みについては比較的耐えられてたのか、イゼッタは今までに比べて余裕ある感じだった。

嫌な慣れ方だな、っていうのは自分でも思ってるのか、微妙な表情だったけど。

 

けどまあ、結果的にとはいえ余裕があるということで……その分の意識をイゼッタは、コトが済んだ後の面倒を見てくれる僕らに向けたようで。

 

しかし、体を拭いてくれたり、精液を膣内から掻き出してくれたりする女性兵士は、皆総じてイゼッタのことを、敵として憎々しい目で見るか、性処理奴隷として蔑んだ目で見るかのどっちかである。間違っても、心配なんぞしてくれるものはいない。

であれば、イゼッタとしても話しかけづらいのだろう。黙って処置を受けるままだ。

 

となると……声をかけられるのは、そういう『女性がやった方がいい処置』を済ませた後に、あるとすればではあるが、体の傷を治す担当の僕くらいであり、

 

イゼッタにしてみれば、不思議な力で自分の傷を……それこそ、何日もかけて治癒するようなものすら、瞬く間に治してしまう、魔女である彼女をしてすら驚く『何か』を使える、前々から興味深い対象であった僕に……勇気を出して話しかけてみるに足る状況だったようだ。

 

僕としても……それで彼女の気がまぎれるなら、まあいいかな、と思ったり。

色々と話してみたいこともあったし、世間話程度に雑談に応じた。

 

体を休めるのが優先なので、ベッドに寝かせた上で。

 

思ってたより捕虜収容房のベッドは、寝心地が良くて助かってるとか、

 

薬や『錬金術』で処置してくれる時に、場合によっては色々と触られるので――今回なんかは三角木馬で負担かかった股間とかも触ったしな――それがちょっと恥ずかしい、とか、

 

食欲がないのはわかるけど、きちんと食べないとだめだとか、もしどうしてもっていうなら、病人用の流動食とかにメニューを変更しようかとか。

 

当然ながら、僕がたびたび使う、治癒の力についても聞かれた。

あれも魔法なのかって。自分の一族には、あんな魔法は伝わってなくて……ただ触れた物に魔力を流して動かすことしかできないのに、傷をいやすなんて魔法があるのか、って。

 

残念ながら、それに対して答えられることは少ない。

 

言うまでもなく、『錬金術』のことについては……軍事機密扱いである。いずれ公表する予定である、ある程度のことについてくらいしか話せなかった。

 

『私にも使えるんですか?』って、なんか元気になってきた感じで、興味津々、好奇心たっぷりで質問されたけど……無理(きっぱり)。理由? 禁則事こ……もとい、軍事機密です。

 

それでも、ここ数日……というか、捕まえてからは1度もなかったくらいに、彼女は生き生きとしていたように見える。そんなに楽しかったのかな、ただの雑談が。

 

逆に、こっちからも質問してみた。帝国にとって、有益になりそうな情報を。

喋ってくれれば、僕の権限で多少なり待遇を改善できる、って言い添えて。

 

まあ、やはりというか、『それは……言えません』ってさ。ダメだった。

この子ホントに意志強いよな……。いや、単に僕が信用されてないからかもしれないけどね。話したからって変わらないかもしれないって……まあ、無理ないけど。

 

話が途切れたあたりで、僕は仕事に戻る、ってことでお暇させてもらった。

 

 

 

¥月>日

 

……ホントにあの汚っさんは……こないだのSMといい、ろくなことを考えない。

 

同じように犯してるのに飽きてきたんだろうか? またいらんこと考えて、僕に相談もなしに実行しやがって……!

 

何をしたかというと、だ。

あのボケ、イゼッタを外に連れ出しやがった。

 

もちろん、タダの散歩とかそんなもんじゃなく……一応、公務ってことで、戦闘があった跡地や、公国政府関係の場所の『実況見分』っていう名目で外に出したんだけど……もちろんというか、言葉通りに実行されるはずもなく。

 

外出当日、イゼッタは……ぼろ布のような服を着させられただけの姿で、屋根なしのオープンカーみたいな馬車に乗せられ、鎖で縛られた姿で連れ出された。

 

そしてその状態で、わざと大通りとかの人目に付きそうなところを、ゆっくりとしたスピードで進んでいくという……

 

こういうの、昔の日本で言う、ほら……『市中引き回しの刑』ってやつだ。まんまアレだ。

 

必然的に、市民の目が……絶望と悲壮感に満ちた視線が突き刺さる。

 

イゼッタの顔は、ここランツブルックのみならず、エイルシュタットの国民皆が知っていると言っていい。プロパガンダでめっちゃ宣伝されてたし。新聞にもよく載ってた。

 

エイルシュタットの、帝国に屈しない奮戦の、そして周辺諸国との協力・反撃の象徴として、広く知れ渡っていた。

 

そのイゼッタが、見るも無残な姿で、抵抗することもできずに、無力な1人の小娘として自分たちの前にその姿をさらしている、という図。

そりゃまあ……ショックだろう。うん。

 

もちろん、汚っさんはコレを狙ってやっている。

 

フィーネ大公殿下と双璧をなす、国の希望そのものであった彼女……現代の白き魔女・イゼッタの、無残な姿を衆目にさらすことで、今なお水面下で反抗し続ける者達の心を折るために。

 

実際、見ていた市民の何人かは、そうなったっぽいことが見て取れた。

 

わかりやすく絶望を顔に浮かべて膝を折る者、あまりの痛々しさにぼろぼろと涙を流して泣き崩れる者、がくがくと体を震わせ、これからどうなるかという恐怖におののく者……

 

……しかし、それと同じくらい……こちらをにらみつけてきたり、何かを決意したような表情になったり……中には、今にも飛びかかってきそうな形相の者もいた。隣の、比較的冷静そうな奴に止められてたけど。

 

……まあ、そうなるよねー……。

心折れる者もいるだろうけど、逆に火が付く奴もいるよね……あーあ、また何か面倒なことが起こりそうな予感。

 

てか、絶対起こるだろ。イゼッタ奪還の動きとか。レジスタンス連中が元気になりそうだ。

……また仕事が増える。

 

折角僕が、蜂起とか起こらないようにうまいこと占領政策回してたのに……

 

ちなみに汚っさんは、イゼッタに対して『お前らのせいで俺たちはこんな苦しい生活をする羽目になったんだ!』とか『あんたたちが戦争で負けたせいで!』とか、罵声が飛んでくるとかの反応も予想してた――ついでに言うならイゼッタも。怖がってた――そうなんだけど……そういうのは一切なかった。本当に、ただの一声もだ。

 

……もし同じことを、帝国が負けた時に帝都でやったら、こうはいかないだろうな。むしろ、汚っさんの予想通りになった可能性が高い。

 

どれだけ、国民からの人気や信頼、人望に差があるかってのがわかる。

改めてすごいな……エイルシュタット公国。

 

……できるなら、僕、そっちに生まれたかったかも、って、ちょっとだけ思った。

 

基地に戻った後、雑談の中でぽつりとそう漏らしたら、嬉しそうな顔をされた。

 

 

 

 



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03.5 イゼッタ視点

※月&日

 

目が覚めると、知らない天井だった。

 

服も変わっていて、腕には点滴……その時、一体何がどうなっているのかわからなかった。

 

訳も分からず、とりあえずベッドから出ようとしたところで、体中に……思わずうめき声が出てしまうような、鈍い痛みが走る。

同時に、何日も寝っぱなしだったかのような、体のだるさも。

 

それにますます混乱していると……部屋の扉を開けて、誰かが入ってきた。

その服装は、なんとゲールの軍人のそれで……しかし、とっさに魔法を使おうとして……できなかった。

 

「目が覚めたか……エイルシュタットの魔女イゼッタ、貴様は今、我らゲルマニア帝国軍の捕虜となっている。じきにこの基地の指揮官が来る……それまで大人しくしていろ。それと、ここはレイラインが通っていない、魔法は使えないから、無駄な抵抗はやめることだ」

 

そう言い放ったゲール軍人は、そのまま扉から出て行った。

 

残された私は……その瞬間、全部思い出した。

ゼルン回廊に出撃して……あの、本物の白い魔女だっていう人に出会って。

 

魔法が使えるはずの場所で、突然飛べなくなって……墜落して……そのまま意識が……

 

ということは、私はあの後……ゲール軍につかまったということだ。

そして捕虜に……でも、この部屋は牢屋っていう感じじゃない。むしろ、医務室みたいな……あ、そうか、大怪我してたから治すために……

 

……見ると、体中にけがをしていたはずなのに……それがほとんどなくなっている。

つまり、それだけ長く、私は眠っていた……?

 

そんな、じゃあ戦争は……どうなったの!? エイルシュタットは!? 姫様は!?

 

そう思って、顔から血の気が引いた……その時、また部屋の扉が開いた。

 

「……お、ホントに起きてる。気分はどう……って、いいはずないか。敵陣のど真ん中だもんね」

 

来ていたのは、同じゲールの軍人……軍、人?

軍服を着てるけど……私と、同じくらいの年頃に見える、男の子だった。

 

すらっとした体格で、金髪に、ちょっとかわいい……女の子みたいな……中性的、っていうんだっけ? そんな感じの顔。なぜか左目に眼帯をしている。

眼差しは……敵であるはずの私を前にして……優しい感じだった。さっきの軍人さんみたいに、憎々しげな視線は向けられなかった。

 

でも……軍服についている階級章は、それに見合わないくらいの立派さだった。

姫様のところで勉強した、ゲルマニア軍人のそれの知識に当てはめると……

 

(階級……少佐!? ゲルマニアの……将校クラス……!)

 

さっきの兵士が言ってたことを鑑みれば……まさか、この人がこの基地?の責任者なんだろうか? 何度見ても、私と同い年ぐらいに見えるのに……

……そのくらいに、優秀な人だ、ってこと……?

 

「あー、っと。さっきの兵士から聞いてるかもだけど、一応もう一回言っとくね。イゼッタさん、あなたは負けてつかまって捕虜になってます。ゾフィーにやられてケガがひどかったんで、一応治しました。これから色々と取り調べとかさせてもらうのでよろしく……あ、ごめん自己紹介まだだったわ。僕はこの基地の指揮官で……あと、ここランツブルックの暫定的な占領統治のかじ取りもやらせてもらってます、ソロモン・フォン・サンジェルマン少佐です。よろしく」

 

内心ひやひやな私のそんな思いなんて知らず……同じように軽い感じの口調と、敵に対して言ってる感じのしない表情で、彼はそう言った。

 

 

 

※月?日

 

戦争で捕虜になった私は……敵国につかまったんだから、ただじゃすまない。

それはもちろん、もしそうなれば……って考えたことはあるから、覚悟はしてたつもりだった。

 

尋問……いや、拷問されても、姫様に関することは絶対に話さない。耐えてみせる……安心してください、姫様…………そう、私は、生意気なことを考えていた。

 

 

………………甘かった。

拷問のつらさ……その意味……どれだけ追い詰められるのか。そんなことを私は、全くわかってなかった。

 

本物の『白き魔女』……ゾフィーからは、鞭やそのほかの色んな道具……それこそ、見たこともないような道具を使って……経験したこともない、信じられないくらいの苦しさを味わわされた。

 

歯を食いしばって耐える、なんてことがそもそもできない。身を切られるような痛みに、私は……泣き叫んで、涙を流して……お、おしっこまで漏らして……

瞬く間にひどい有様にされて……それでも、何とか姫様に関することは話さずにいられている。

 

……その分、苦しみが長く続くんだけど……

 

ゾフィーは、エイルシュタットに憎悪を燃やしている……だから、その国も、そこに暮らす人も、何もかも滅ぼさないと気が済まない、許せない……って、言ってた。

もちろん……その国に味方している、私も……彼女を裏切った王族の末裔である、姫様も。

 

絶対に、彼女を姫様に近づけるわけにはいかない……そのためなら……

痛みだろうと、辱めだろうと……

 

 

 

……そんな風に、またしても甘いことを考えていた私は……今度は、ゾフィー以外のゲルマニア兵の手で……女としての地獄を味わうことになった。

 

裸にされて……拘束されて、床に転がされた。

そしてそのまま……下半身裸になった、男の人たちに囲まれて……そのまま……

 

……初めてだったのに、って……悲しむ暇もなかった。

まるで私を、物でも扱うみたいに、乱暴に……何人も、何度も、いつまでも……

 

硬くなった、男の人のアレが……私の中に、無遠慮に突き入れられて……そのまま、体の内側をえぐられる。痛みと……認めたくないけど、快楽で、泣き叫んだ。

 

もちろん、そんなことでやめてもらえるはずもなく……私はほとんど毎日、ゲールの軍人たちの慰み者にされている。拷問して情報を話させることなんて、考えていないんじゃないか、っていうくらいに……毎日、執拗に。

 

……私だって……旅をしている間、幸福な結婚について、夢見なかったわけじゃない。姫様に仕えるようになってからも、いつかそういう風に……って、考えたりもした。

 

それなのに、こんな形で……初めてを奪われた上……何回も、中に……

辛いだけならまだしも……ひょっとして、これだけされたら……子供が、出きてたりしたら……

 

毎日、恥ずかしくて、つらくて、悔しくて、情けなくて……泣きたくなって……そのまま、結局こらえきれずに、泣いている。

こらえずに泣いた方が、少し楽になるって知った。どっちみち、恥ずかしいところをもっとさんざん見られてるんだし、今更気にしない。

 

……いつまで耐えられるか、正直わからないけど……

 

 

 

……そういえば、拷問以外にも、一応気になることがある。

辛いときは、わざとそっちのことを考えるようにして……気を紛らわしている。いや、本当に気になっていることでもあるんだけど……

 

拷問では、痛みか、辱めかに関わらず……ケガを負うことが結構多いんだけど……そのたびに、どれだけひどいケガをしても、たちまち直してしまう人がいるのだ。

 

……目覚めたその日に会った、あの人なんだけどね。少佐さん。

 

本当に『たちまち』だ。ものの数秒で、切り傷も腫れ物も。

 

あの人が、薬を塗って……あるいは、飲ませたり注射したりして、

 

その後、変な手袋をはめて、ケガしている部分に手をかざすと……そこから青い電気っていうか、火花や光みたいなのが出て、

 

けど、全然痛みとかなくて……むしろ、それが当たると、すごくあったかくて、気持ちよくなって……見る見るうちに、傷はふさがり、腫れは引き、痕も残さず治ってしまう。

 

こんな魔法――薬の効果とかには見えなかったし……あんな治療法があるなんて、聞いたこともないし、魔法だと思った――私は知らない。見たことも聞いたこともない。

 

驚いて聞いてみたら……軍事機密だっていうことで、詳しくは教えてもらえなかったけど……どうやら、ゲールの軍が、というかあの少佐さんが、魔女の力を応用して作り出したものなんだ、っていうことはわかった。『錬金術』っていうらしい。

 

それを使って、いつも私の傷を癒してくれる。

 

その時に、時々……他愛もないことを話したりする。

 

あの少佐さんもゲールの軍人であり、敵だっていうことはわかってる。

けど、その時間が……私にとっての癒しに、心が休まる時間になっている。

 

それに、なんていうか、あの人は……ゲールの軍人っぽくない気がする。

まるで、普通の友達と一緒になってしゃべってるみたいな安心感があるし、敵である私にも普通に接してくれる。

 

気のせいじゃなければ……少佐さんも、私との会話を楽しんでくれてる、みたいな気もする。

 

 

この間なんて、エイルシュタットのことや、姫様のことを褒めてくれたし……気のせいじゃなければ、うらやましい、とまで言ってくれた。

繰り返しになるけど……敵の、ゲールの軍人なのに、すごく自然に。

 

……どうしてこの人が敵なんだろう、と、最近よく思う。

 

なんとなくだけど……この人なら、私たちと仲良くなれそうな気がするのに。

 

もし、この人が味方になってくれたら……どれだけ心強いだろう。

いや、今からでも……話したら、ひょっとしたら……

 

……いや、さすがにそれは無理かな……? いや、でも……もしうまくいけば、今は苦しい戦いを続けているであろう姫様にも、喜んでもらえるかも……

 

特に、少佐さんの『錬金術』……あっという間にケガをいやしてしまう力は、軍の人たちにも喜ばれるだろうし……

……仲間に、なってくれないかな……?

 

 

 

¥月>日

 

……だめ、かもなぁ……

甘い、考えだったのかな……仲間に、なってほしいなんて。

 

優しい微笑みの裏で、ひょっとしたら……私のこと、憎んでるのかもしれない。

そんなこと考えたくないけど、でも……

 

 

 

まさか、あの少佐さんの……あの目の、あの眼帯……私が、やった傷だったなんて。

 

……しかも、あの人のお父さんが……私が出た戦いで、戦死してるなんて……

 

 

 

今日、食事を持ってきてくれた、兵士の人に聞かされた話だ。

憎々しげな視線と、吐き捨てるような言葉と共に。

 

……『よりによって少佐殿が、命令とはいえ貴様の世話をしなければならないとはな……!』って。

 

そのこと、少佐さんは知ってるのかな? 知ってるだろうな……

知ってて、私にあんな風に接してくれてるのかな……

傷を治して、心を気遣ってくれてるのかな……?

 

……どんな、気持ちだろう?

辛いのかな、悔しいのかな、憎いのかな。

 

……明日から、どんな顔して会えば……

 

 

 

 



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04 弱りゆく魔女、それを支える者

¥月=日

 

予想通り仕事が増えた。

全くもう、いらんことやるから連中の反抗心に火が付くんだ……そのくせ、査察官の汚っさん共は何も手伝う気配すらないと来た。

 

……今度何かあったら、取り巻きの兵士共だけでも僕の権限で最前線に送ってやろうか。あと、汚っさんは別な任務入れて追い出して……難しいけど、できないことないぞ、僕なら。

 

まあ言うまでもなくわかったと思うが、ランツブルックにくすぶっていたレジスタンスの一派による襲撃があった。イゼッタ奪還のための。

こないだのあの『市中引き回しの刑』でプッツン行ったらしい。

 

『帝国許すまじ』『魔女殿を取り戻せ』的な感じでいきり立ってる連中が……あらかじめ僕が仕掛けておいた『ガス抜き罠』に引っかかるまでに、そう長くはかからなかった。

 

何のことかって? そりゃ、あんなことやった時点でこうなることはわかりきってたから、連中に見える形で『イゼッタを取り戻せそうなチャンス』を用意しておいただけだよ。こないだと同じようにイゼッタが連れ出されるって、あらかじめ偽の情報をリークして、待ち伏せしてた。

 

くすぶった火が、くすぶったまま燃え広がって、酸素にあたったとたんに大火になるのは避けたい。だから、わかりやすい餌に食いついてもらった。

戦略知識がなく、統制も取れない民兵やゲリラなんて、こんな感じで容易く誘導できる。

 

……まあ、彼らは彼らで被害者でもあるわけなので、気の毒に思わなくもないけども……これが本当に『大火』になられたら、占領区域全体を巻き込んで騒乱が広がって、余計に死傷者が増えるから、早々に鎮圧させてもらったのだ。

 

どうにかうまくいった……と安心してたわけだけども、

ここでもやらかしてくれたがったよ、あのボケが。

 

午前中に彼等を捕縛して……汚っさんが動いたのがその日の午後だった。

こんな時だけ何で行動力あるんだよ、その分を少しでも仕事に回せ。

 

副官が血相変えて執務室に飛び込んできて、『さ、査察官殿が、中庭で……』って言うもんで、窓から下を見下ろしてみたら、そこには……

 

後ろ手に縛られて、身動きできなくされた状態で並ばせられてる、今朝捕れたてのレジスタンスの方々が、1人残らず連れ出されて中庭の地べたに座らされていた。

 

そしてその眼の前で……あの時と同じぼろ布の服をまとったイゼッタが、汚っさんたちに輪姦されていた。

繰り返すが、レジスタンスたちの、彼女を助けようと立ち上がった者達の、目の前で。

 

しかも、またどっからあんなもん持ち出してきたのか……新しいおもちゃまで使って。

あれだ、ギロチン拘束、ってわかる? その名の通り、ギロチンで頭を固定する部分みたいな感じの……板状の拘束具だ。首元にはめて、さらに同じ位置で両手首も固定する。

 

多分、グ○ったら出てくると思う。後ろに誰もいないことを確認したうえでどうぞ。

 

当然ながら、普通の手錠に比べてさらに身動きが制限される上に、変な姿勢を強要されるから動きづらく、そして手が実質使えないので転ぶと1人では起き上がれない。

おまけに首が固定されるので、下や後ろを見ることができない。

 

そして、その様子をはたから見ている者にとっては、痛々しさ倍増のエロ拘束具である。

 

それを装着して連れてこられたイゼッタが、あらかじめ中庭に用意されていた台座……イゼッタの首の拘束具をはめ込んで固定するためのそれに、ガチャッと拘束具を合体させられた。

お尻を後ろに突き出して、首と手首を固定されて……本物のギロチンに拘束されたみたいな姿勢になっている。

 

で、その状態で……抵抗できるはずもないイゼッタは、前から後ろから犯されていると。

 

衆人環視の中で辱められ、恥ずかしさと申し訳なさでどうにかなりそうになっているイゼッタ。

 

自分たちの希望が凌辱されている様を見せつけられているレジスタンスたち。

彼らの表情は様々で、絶望、失意、くやしさ、怒り……しかし、皆一様に、自分たちには何もできず、ただイゼッタが辱められている様を見ていることしかできない。

 

じらすような前戯の後、膣に、口に、時には菊門に、容赦なく汚っさんや兵士たちのペニスが突き立てられ、水音を派手に響かせながら出し入れされて……その様子が、無駄にレジスタンスの皆さんからよく見えるように位置・角度を調整されてる。

 

もちろん、射精は遠慮なく膣内や口内で行われ……そうした後の、そこからあふれた精液がこぼれ出る様まで、容赦なく見せつけられる。

 

最初は『心配しないでください、大丈夫ですから……!』って気丈にふるまっていたイゼッタも、何度も何度も犯されるうちに、悲鳴や嬌声をこらえきれなくなり、数十分後には、目の焦点があってない状態で、助けを求め、許しを懇願するまでに追い込まれ、

 

それを見ていたレジスタンスの皆さんは……皆、泣きながら『もうやめてくれ……!』って感じで……ホントもうやめようよこんな鬱展開……気が滅入るよ、まだ明るいうちから……。

 

結局その後、わざわざ汚っさんが補充のために連れてきた兵士たちまで混ざってしばらく続いた輪姦ショーは、日没間際くらいに終わって……レジスタンスたちは、お通夜みたいな雰囲気で牢屋に連行されていった。

 

イゼッタはこっちで回収して、いつも通り処置を施して休ませてあげた。

 

 

 

¥月#日

 

……武装蜂起の実行犯たちの処刑が執行された。

公開処刑方式で……しかも、わざわざイゼッタを連れ出して、その目の前で。

 

……胸糞悪い。どうしてあいつらはこうもアレなことを思いついて、それをすぐに実行するかね。

 

拷問開始当初、というか、イゼッタが捕まった時みたいな感じで、彼女は鎖で縛られて吊るされながら処刑場へ連れていかれ……真正面から、特等席でその光景を見ることになった。

 

そして汚っさんたちは、わざわざ周囲に聞こえるように、『この者達は、この魔女イゼッタを奪還する目的で云々』みたいな感じで、声高に罪状を読み上げる。

イゼッタの罪悪感――感じる必要もないだろうに――が急上昇。冷汗が……。

 

横一列に、棒に縛り付けられて並ばせられた実行犯たちは、口々にその主張を最後まで叫びながら……たった一度、鳴り響いた銃声を境に……永遠に黙った。

 

言うまでもなく、その光景を見せつけられたイゼッタ……発砲の瞬間こそ目をつむっていたものの、その後に血まみれになった彼らを見ちゃって……目から、ハイライトが消えた。

トラウマ確定だ……これで心が壊れたらどうするつもりだよ、あの馬鹿ども……!

 

……この日は、ドクターストップ×強権発動でイゼッタはもう休ませた。犯らせん。これ以上は本当に精神が死ぬ。

 

他、書くことはなし。

 

 

 

¥月~日

 

アレ以降、彼女は目に見えて意気消沈している。

口数は少なく……汚っさんらに犯されても反応がわずかだ。

 

……本当にやばい。コレはただ落ち込んでるんじゃない……心が死にかけてる。

 

幸い、といっていいこともないだろうけど……わずかに生き残ってる彼女の心が、助けを求めているのはわかる。

 

事後の治療中に……ひょっとしたら、汚っさんや、男女の兵士たちよりも、今までフランクに接していたからか……治療のために彼女のそばに来た僕に抱き着いて、震えながらうわごとのように『ごめんなさい』『許して』『助けて』って……

 

彼女の心は、限界を超えた精神状態の中で、必死で生き延びようとしている、のだと思う。

 

……早く、どうにかしないと……

 

 

 

¥月+日

 

今日、イゼッタとは関係ない……こともないけど、全く別分野の仕事で、比較的大きな動きがあった。

 

以前から僕が敷いていた、集積物資の移動情報の調査網――すなわち、敵の隠された秘密基地なんかを、直接探すんじゃなく、そこに運び込まれる物資の動きから割り出そうというトラップに、そこそこ大きな秘密基地らしき情報が引っかかったのだ。

 

秘匿性最重視の作戦のため、コレを知っているのは僕が信頼できる部署のみ……それこそ、あの汚っさんらにも知らせてなかった。

 

知られれば、いらんちょっかいを出してくるのは自明なので、僕の子飼いの部隊を動かして即時制圧するように指示を出し、今日摘発させた。

 

その結果……迅速はいいけど、それゆえに情報の秘匿が雑になり、それがもとで向こうさんには直前で気取られてしまったらしい。

 

アルプス山脈の中腹、殿軍らしい少数の部隊と森の中での交戦になり……そうして時間を稼がれている間に、大公殿下には逃げられてしまったようだ。

 

こうなるのも見越して、僕が作った薬品――催涙ガス弾や閃光手榴弾なんかも持たせて、超短期決戦で仕留める算段だったんだけど……敵の士気が予想以上で、頑強に抵抗された。

 

僕らの戦術が戦術――即時敵を無力化する形だったので、敵味方共に死傷者は少なかった。

……敵の死傷者を少なくするように作戦を立てたのは、今まさに壊れそうになっているイゼッタの心に配慮してである。アレ以上は本当にやばいので、内政共々気を使っている。

 

その気遣いのせいで攻撃が甘くなり、逃げられたかもと言われれば……否定できないが。

けど、仮に殲滅戦でやろうとしても……今度は、生け捕りにしなきゃいけない、大公殿下やその側近たちまで傷つけたり、殺す羽目になりかねなかったしなあ。

基地、狭い上に入り組んでたそうだから。

 

それに、向こうも手勢の半分以上をこの戦いで失うことになった上、集積していた物資のほとんどを手放して、夜逃げ同然でここを去ることになった以上、これまで以上に厳しい道のりになるはず。悪いことばかりじゃないといえよう。

 

……その分、隠密性が増すことも考えると……探すのが大変だけど。

 

そしてこの作戦で、公国軍の捕虜を大勢手に入れた。ほとんどは摘発箇所の最寄りの駐屯地に収容してあるけど……そこで捕縛した者の中に数名、イゼッタと近しい存在らしい者がいたらしいので、その何名かをここに極秘裏に送らせる予定でいる。

 

数日中には着くはずだ。

 

彼らとイゼッタを面会させるつもりでいる。うまくすれば、これでいくらかイゼッタの心を癒してくれれば……ゆとりが戻ってくれればと思う。

 

……まあ、いくら無事だとは言え、大公殿下がさらに追い詰められてる、って教えることにもなるので……正直、諸刃の剣だろうけど。

 

どの道、僕らからの働きかけじゃあ何も効果がないんだし……。

 

捕虜たちもイゼッタを壊したくはないだろうから、『心配するな』とかいくらかのフォローはしてくれると期待する。

特に、話した感じ、イゼッタと大公殿下、双方と親しそうな女性が1人いたそうだし。

 

確か、近衛の隊長の……ビアンカとか言ったかな?

 

 

 

¥月Φ日

 

幸いなことに、効果はてきめんだった。

 

顔見知りが、一応は無事な姿で目の前に現れたことに、イゼッタの目に一瞬で生気が戻り……しかし、彼女が拘束されてここにいるという現状に、まさか、と顔を青ざめさせていた。

 

けどその後、すぐにビアンカが説明して、姫様……オルトフィーネ大公殿下は無事だって伝えたので、一応は安心していたようだけど。

 

とりあえずそのまま……監視付ではあったけど、特に何も制限はせず、話したいだけ話させてやった。記録はしっかりとっていたので……機密とかは話さなかったようだけど。

 

ビアンカはイゼッタを傷つけないよう、情報を選んで伝えていたようだった。

 

大公殿下は、一応は逃げ延びた。けど、今はどこにいるかわからない。

襲撃で手勢の半分以上がこちらの手に落ちた、しかし意外と死者は少なかった。

 

あと、ずっとここに閉じ込められていたイゼッタは、世状も把握してないだろうという予想から……すでにエイルシュタットのほとんどが占領下におかれ、各地で散発的に抵抗活動を繰り返している状態だと。しかしそれも……風前の灯であると。

 

もし仮に、大公殿下が捕まってしまいでもすれば、この国は終わりだと。

結構辛辣な情報も……必要だと思ったのだろう、はっきりと伝えていた。

 

その後で『私のせいで』『ごめんなさい』『私が負けなければ』って自分を責めていたイゼッタへのフォローも忘れずに。いい人だな。

 

なお、面会終了後、彼女を連行してイゼッタの牢屋から連れ出す際……ビアンカから、憎しみで人が殺せたら、とでも言うような視線を向けられた。あまりの迫力にヒュッとなった。

 

アレの理由は……僕がゲールの軍人だとか、イゼッタをこんなところに幽閉しているとか、ランツブルックを占領支配している当事者だからとか……そのへんだけじゃないだろう。

 

何せ、汚っさんが毎日毎日イゼッタをここで輪姦してるから、その分の……性臭、とでも呼ぶべき匂いが、いくら消毒してもこの部屋にはこびりついてる。

その匂いから、イゼッタがここでどんな目にあってるか悟ったんだろうな。

 

……僕は何も手だししてないんだけど……とは言うまい。立場や階級を理由にして、何もせずに彼女が虐げられるのを傍観していただけなのは事実なんだし。

 

親の仇でも見るような、ナイフ一本でもその手にあったら斬りかかってきそうな、強烈な殺気を向けてきた。……さすがは大公殿下付きの近衛、ってとこか。その心配がないとわかっていても……実力的に僕なら組み伏せられるとわかっていても、怯んでしまった。

 

……そして、今更だけど……ホント愛されてるな、イゼッタ。

 

 

 

¥月XX日

 

おっさんがビアンカに目を付けた。

当然、犯した。

 

名目は……最近までオルトフィーネ大公と一緒にいた近衛の幹部で、イゼッタ以上に重要な、それも鮮度の高い情報を握っている可能性が高いため、優先して尋問する、というもの。

 

……理屈は通っている。

というか、僕も同じ意見だ。

 

……だからといって、あんたの場合は単に性欲のはけ口としての見方が9割以上なんだろ。

まあ、本当に情報を聞き出してくれるなら文句は言えないが……無理だろうな。ビアンカの口はイゼッタ以上に堅いだろうし。

 

ビアンカは、軍人としての立場や、敵につかまっているという現状を鑑みて、こうなることは覚悟していたようだったけど……やっぱり辛そうだった。

どうやら彼女も処女だったようで……それを、こんな形で散らされたショックは、彼女の目の端からこぼれる涙が如実に物語っていた。

 

それでも、弱音一つこぼすことなく最後まで耐えてみせた。

 

裸にされ、四つん這いにされて後ろから獣のように犯されても……隠語をぶつけられて辱められながら、何人もの兵士に前後と上の穴を犯され、体中に白濁をドロドロになるまでぶっかけられても、耐えていた。

 

さすがに声を完全に耐えることはできていなかったけど……まあ、仕方ないだろう。

 

膣内を、菊門を、口の中を……体の隅々、頭から足先まで汚されても、泣き言ひとつ言わずに済ませただけで、大したもんだと思う。

 

イゼッタ同様、ヤるだけヤって後は放置されてた。

犯された穴からはドロドロの精液があふれ出し、起き上がるために床に手をつくだけで、ねとっとした感触にさいなまれ、精液の水たまりと体との間に糸が引き、呼吸のたびに鼻をつく匂いが飛び込んでくる状況。

 

これまた同じように処置してあげて……ああ、もちろんこうなることを見越して、昨日のうちに避妊薬は投与してあるので。

 

さすがに強靭な精神で、この程度何でもない、と言わんばかりの様子だった。

 

けど……これもイゼッタ同様、さすがに初めて見る『錬金術』による治療を目の前にしたときは、驚いていた。

 

すぐにこれも、帝国が研究して開発した、新しい魔女の力か、と悟った上で、何か考え込んでいたけど……結局その日は、そのまま治療を終えてすぐに休んでいた。

……意味ありげな視線を、退出する僕に向けていた気がしたけど。

 

……それと、イゼッタの方は今日はお休みかな、と思っていたら……きっちり手を出した。

 

それも、無駄に趣向を凝らして……ビアンカと一緒に呼び寄せたエイルシュタットの男の兵士たちに、イゼッタを犯させるという……鬼畜の所業。

 

こないだのレジスタンス同様、くやしさと憎しみに満ち満ちた視線をこっちに向けてきて……しかし逆らえずに、泣きながらイゼッタを犯す兵士たち。

 

『気にしないで下さい、皆さんの命の方が大事です』って言ってそれを受け入れるイゼッタ。痛々しさ倍増。

 

膣内に、菊穴に、口に、乳房に、長らく処理なんかしてないであろう……それゆえに大量の、生物として自然な反応で吐き出された欲望の白濁。

イゼッタの体を、帝国兵の輪姦と何も変わらない監視で汚していく。

 

そんな痛々しいイゼッタを前にしても、兵士たちの体は正直で……何発出しても生々しく勃起を保たせている肉棒を、絶え間なく小さな体に突き立てて、欲望を発散していた。

 

終わるころには……さすがに精神が衰弱し、呆然自失のイゼッタ。

頭の先からつま先まで、いつもと同じくどろっどろの精液塗れだった。

 

なお、汚っさんが今回のプレイの仕上げとして、イゼッタの目の前で用済みになった兵士たちを銃殺しようとしてたのは、僕の権限で止めた。

だから、やっと精神安定してきたところなんだっての。やめろバカ。

 

 

 

&月△日

 

どうやら汚っさんたちは、普段は普通のセックスで責め、時々思い付きでイベント――この前の、味方の兵士に犯させるといったような感じのもの――を織り込んでくることにしたようだ。

 

最早完全に彼女らは――イゼッタに加え、ビアンカも――慰安婦扱いである。

 

ここんとこ、3、4日に一回くらいのペースでそれが続いている。

 

こないだは、ギロチン拘束具で基地の一室に固定し、精液便所扱いにして何人、何十人もの兵士たちに犯させていたし、

 

その前は、子飼いの……しかも女性の兵士たちに命じて、レズ乱交させてそれを部下と見物、存分に目で楽しんだ後に、自分たちも参加して乱交。

 

でもって今日は……SM再び。三角木馬やら荒縄やら、鞭やら蝋燭やらを使って、痛みと快楽でイゼッタとビアンカを喘がせていた。

 

そんな日々が続いても、2人とも大したもので……こちらが調べた情報以上に、大公が不利になるような情報は決してしゃべらない。

弱音を吐いても、悲鳴や嬌声を上げても、そこだけはぶれなかった。

 

これ以上もっと責め苦が過激になればわからないんだろうけど、そうなる前に僕が止めてるので。

何度も言うが、イゼッタが壊れないように。ビアンカとの再会で持ち直したとはいえ、いつまたああいう感じになるかわかんないので、やりすぎないように注意している。

 

その結果、情報を聞き出せないのかもしれなくても……それはそれで仕方ないし。

 

陛下から、生け捕り……生きてればそれでいいってわけじゃなく、きちんと使い物になるような状態でとらえておくように、って言われてるんだし。そこ遵守しないと。

 

……そういえば、いまだに陛下からのアクションがないな。

 

陛下は何のために彼女を生かしてるんだろう?

 

軍事的な利用価値? ……従順な(表向きは、だけど)ゾフィーがいるのに?

 

オルトフィーネ大公への揺さぶりのため? ならなぜさっさとやらずに放置しておく?

 

それとも……妾にでもする気か? いや、これは絶対にないな。

皇帝は、信頼できない者は絶対に近くに置かない。たとえ、自国にとって多大な功績をなした者でも、自分にとって不利益、あるいは脅威になりそうだと判断したら、容赦なく切り捨てる。

 

その野心と享楽主義的な考え方に似合わないほどに、臆病かつ警戒的な人なのだ。

 

これまで占領してきた国から、貢物として出された王族・貴族の娘も、暗殺やハニートラップを警戒して、自分に近しい忠臣に与えるにとどめた。

敵国の、しかも魔女なんて論外だろう。抱こうともしないはずだ。

 

……そういや、ベルクマン中佐も目をつけられた……って聞いたな、風のうわさで。

 

何でも、少佐から中佐に昇進させられると同時に、魔女関係の研究に関わる権限の一切を皇帝に取り上げられたとか……用済み、いや、やりすぎたか。

皇帝の不興を買って半年以上生きた例はない……とも聞く。危ないか。

 

もっとも、あの人がそう簡単に殺されるとも思えないんだけど……うまいことやって、他国に亡命するか、あるいは寝返って下剋上でもやらかすなりしてどうにか生き延びそうだ。

案外、エイルシュタットの方について、イゼッタを使ってゾフィー倒して……とか考えててもおかしくないな。

 

そうなると……皇帝はそれを見越して僕のところにイゼッタを置いてる?

 

皇帝の方針や性格を考えれば、イゼッタは元々、とらえて無力化した後はプロパガンダのために公開処刑にするくらいしか使い道がなさそうだ。そうしないってことは……大公一味のみならず、自分の保身を図る中佐が接触してくるかもしれないと考えて……餌にしてる?

 

となると、僕に近々命令が来るか? 中佐が接触してきたら殺せ、って。

 

もしくは……あんまり考えたくないけど……

 

……僕も、目をつけられた、あるいは、つけられつつある……か?

 

いざとなったら、中佐やイゼッタごと殺すために。

占領統治の名目で、ここランツブルックにとどまらされてるのも、そう考えるときな臭い……。

 

……頑張らなきゃ前線で使い捨てにされ、かんばっても警戒されて謀殺される。

改めて思うけど、何て国だ、我が祖国は。

 

保身以上に、道義的にコレ……マジであの髭、どうにかした方がいいんじゃないかって思えてきた……貢献しておいてなんだが、このまま帝国にヨーロッパの覇権を握らせたら、不味くないか? あれ、絶対満足しないぞ?

 

魔女の力の結晶……エクセニウムとかなんとか名付けてたアレを使って、新兵器の開発を着々と進めてるって話だし……新型爆弾が完成間近だとか。

 

もしそうなら、連邦や合衆国との戦争すら見据えてる可能性も……連邦との不可侵条約なんて、笑って破るだろうし。

 

……このまま、帝国を肥え太らせていいものやら。

案外、この戦争に負けた方が、世界全体のためになる気がしてきた。そうなると、僕の未来もなくなるけど……

 

なんか、各国との戦線も最近活発になってきてて、僕も近々、指揮官としてこの国の近くの戦線に出張しなきゃいけないかもだし。

そんな時に妙な動きでもすれば、間違いなく粛清対象になるよなあ……。

 

……育ててもらった恩くらいは、もうそろそろ返した気がするんだけど……

 

……あー、どうしようか、ホント。

 

 

 

$月#日

 

今、出先である。

こないだ書いた通り、他の戦線に指揮官として派遣命令が出て……そこでの抵抗活動を鎮圧し、戦線を前に押し戻したところだ。

 

抵抗は激しいけど、ゾフィーが今ロンデニウム攻めの最中なので、僕が来た。

さっさと終わらせて戻るつもりだったんだけど……その間に……聞きたくなかった凶報が飛び込んできた。

 

あのバカ共……僕が留守だからって、調子に乗ったな!

 

 

 



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05 救済と取引

 

$月●日

 

あのバカ共! 僕がいない間に調子に乗ったことをやってくれた!

指揮官任務で半月ばかりランツブルックを留守にして、同盟軍を押し戻して帰ってきてみれば……人が見ていない間に捕虜をボロボロにして!

 

帰ってから、イゼッタとビアンカの死に体といっていい様子を見て、絶叫しそうになったぞ!

 

その後、残しておいた次席指揮官から聞かされた報告内容に、もっとびっくりした!

本当に何をやってんだ、こいつらは!

 

いくら、出発前に『やりすぎないでくださいよ』ときつく言っといたとはいえ、それで安心できる連中じゃないってのは知っていた。

だから、可能な限りさっさと帰ってくるために全力で軍務済ませたってのに……予想以上にあの汚っさんたちは阿呆だった。

 

ここぞとばかりに欲望丸出しの、背徳的・変態的な……僕がいたら強権発動してでも絶対に許可しなかったであろう類の遊びを次々と!

 

体調を考えないペースでの強姦はもちろん……囚人なんかを使って人数を水増しして休みなく犯し続けたり、そのせいで睡眠時間が不足&不規則化なんてお構いなし。

 

変なものを食べさせたり飲ませたり……こいつら、使用した消耗品の報告欄に、キャットフードって書いてあるぞ!?

 

それ以外にも、アルコール度数のきつい酒や……医療用の下剤に……精神興奮物質? 何やってんだホントに! コレ扱うのに免許が必要な……ガ○ギマリセックスでもやりたかったのか!?

 

挙句の果てに……発情させた軍用犬と交尾させただと!? どこまで変態だよお前ら!?

 

衛生面その他を配慮しないままに、好き放題責めるだけ責めやがって! 一時はどうにか力を取り戻した捕虜が、完全に半死半生じゃないか!

 

そしてとどめに……僕が留守の間に、予定を前倒しにしてゾフィーが帰ってきたって……。

 

その後再開された、イゼッタへの苛烈を通り越したレベルの責め苦……容赦なく鞭で打ち据えられ、刻まれていく生傷。響く悲鳴、こぼれ落ちる涙。

 

隣で見させられていたビアンカがどれだけ懇願しても、ゾフィーはそれをやめず……ほぼ毎日それが続いたおかげで、こうなってしまったと。

医療班が手を尽くしたけど、それでもこの状態が精いっぱいだったそうだ。

 

即ドクターストップかけて、イゼッタ、ビアンカともに医療班へ引き渡し。

こんなこともあろうかと、出張先から僕の息がかかった、完全に僕に従う医療班を連れてきておいてよかった……病室にぶち込んで、それ以降夜通しで治療に当たった。

 

無茶苦茶なプレイばかりさせられた2人とも、心も体もボロボロだ。

 

特にイゼッタがひどい。

ゾフィーの暴行ももちろんだが、汚っさんたちも、反抗的な態度のビアンカの心をへし折る目的で、彼女の目の前で色々無茶苦茶やったらしい。先の軍用犬も、その一環だったようだ。

 

膣、肛門ともに粘膜は損傷して血がにじみ、体中が鞭やら何やらで傷だらけ。骨にひびが入ってる可能性もあり。変なもの食べさせられたせいで消化器系にもダメージあり。

 

イゼッタほどじゃないけど、ビアンカも十分重症なので、一緒に治療する。

 

まず今夜は、ほっといたらヤバそうな傷から治していかないと……『錬金術』だって万能じゃないんだ、油断はできない。

点滴に包帯にギプスに……足りるかな。

 

……準備できたみたいだ、早速はじめなきゃ。

 

 

 

$月@日

 

昨日からではあるが、彼女たちの治療は続いている。

今は僕は、ひと段落ついて……とりあえず問題ないだろう、ってとこまで来たので、こうして日記に残している感じだ。

 

あの後、まずは点滴による栄養注入を行いつつ、『錬金術』で最低限の治療をした後で……色々と細かいところの治療を進めていった。

 

まず、荒療治になるが、お腹の中の異物を全部吐き出させるため、ゾフィーがこの間使っていたガスを使った。吐くもの全部吐かせて、下からも……恥ずかしいだろうけど、全部出させて、お腹の中を空にする。その上で、体を洗ってやってきれいにして。

 

できたばかりの新薬も使って各部の治療。骨も、粘膜も、神経も全部治す。

 

消化器系も直すけど、弱ってる状態でいきなり食べさせられない。というか、食べるだけの元気がないだろうから、ゼリーにして食べさせる。

けどそれもすぐには無理だろうから、当分は点滴になるかな。

 

当分は絶対安静。ベッドの上から動かさせない。

 

尋問? 却下に決まってるだろバカ。

査察官? 叩き返せ、僕が責任を持つ。

 

……どの道、あの汚っさんとその取り巻きの連中は、もう容赦しないことに決めた。

すでに手回しは進めてある。

 

ゾフィーは僕と入れ違いでまた別な戦場に行ったそうだ。もう戻ってくるな。

 

いつ容体が急変するかわからない+錬金術依然として僕しか使えない+いつ強引にあの汚っさんが乗り込んでくるかもわかんないので、僕は今日ずっとここ……病室にいる。

書類とか持ち込んで、ここで仕事してる。

 

戻ってくる列車の中で可能な限りやっといてよかった。ここでも十分やれる。

 

 

 

$月*日

 

中央に手を回した成果がようやく出た。

 

前々から汚職疑惑があった別な査察官……すなわちいなくなってもいい屑を事故に見せかけて始末して、その後任に汚っさんを設定。ここから追い出すことに成功した。

取り巻きの兵士たちも、汚っさんに同行させるか、あるいは前線、あるいは僻地に飛ばした。

 

これで、ゾフィーが帰ってこない限りは、彼女たちは安全と言っていいだろう……少々強権を発動しすぎたから、陛下に目をつけられないかだけ心配だけど。

 

ともあれ、これで僕も少しゆとりを持った生活を送れそうだ……部屋を元に戻して……あと、眠い。さすがに3徹→1時間仮眠→また3徹は、錬金術で作った薬品でごまかしててもきついもんがある。

 

2人の容体もようやく安定したし……ビアンカの方は、意識も戻ったそうだ。

 

体力回復のためだろう、2人とも治療を始めて、容体が比較的安定してからは……一度も起きずに死んだように眠ってた。

それが起きたってことは……よかった、どうにかなったみたいだ。

 

……寝よう。

副官、後よろしく。

 

 

 

$月+日

 

久々にたっぷり11時間も寝て、起きてご飯食べた後に、彼女たちの様子を見に行った。

……僕、軍医じゃないんだけどな……今更ながら。まあ、軍医よりもいろいろできるから、仕方ないっちゃ仕方ないのか。データも取れるし。

 

医務室に入ると、ビアンカが医務官たちの検査を受けていたところだった。

全裸で。

 

別にいじめてるわけじゃなくて……調べる箇所が体中あちこちに多すぎるからなんだけどね。医務官も全員女性だし、そこまで恥ずかしくもないだろう。

 

が、僕は男性なので、出直した方がいいかな……とか思っていたんだけども。

ほかならぬビアンカに、呼び止められた。話したいことがあると。

 

いぶかしむ医務官に対して『いいよ』と目で合図して……とりあえずシーツで体を隠してもらい、ベッドの近くまで行って椅子に座り、話を聞くことに。

 

……やはりというか、ここんとこの責め苦はかなりきつかったんだろう。肉体的にも、精神的にも。僕を見る目に、尋常じゃない警戒とおびえが見える。

 

それでも、体の震えをどうにか抑え込みつつ、ビアンカは話した。

 

曰く、助けて……治療してくれたことには、礼を言う、と。

おかげで体もすっかり回復したし、イゼッタの方も落ち着いたようでよかった、と。

 

それはこちらとしてもよかった、と伝えると……しばしビアンカ、黙る。

そしてその数秒後……意を決したような表情になったかと思うと、突然ベッドから降りた。シーツを放り出し、全裸のままのその体があらわになるのも構わずに。

 

驚く僕らが何か言う前に、そのままビアンカは床にひざまずいて……腰を折り、手を揃え、頭を床にぴったりとつけた。

突然の、まさかの全裸土下座である。

 

何事!? とあっけにとられる僕らの眼前で、ビアンカは……絞り出すように話し始めた。

 

もう、これ以上は許してくれ、と。

自分ではなく、イゼッタに責め苦を与えるのを、だ。

 

どうやら、汚っさんや、ゾフィーの所業を見せつけられ続けたのが、相当こたえたらしい。

 

ビアンカは、以前から……おそらく、同じように姫様=オルトフィーネ大公を敬愛するものとして、イゼッタのことを慈しみ、大切に思っていたらしい。

 

もちろん、自分も軍人であるし、敗北しとらえられればこういう扱いを受けることになるのも覚悟はしていた。しかし、彼女はもともと、姫様の友達で、魔法が使えるだけの一般人であり――やっぱりそうだったか――このような仕打ちを見ているのはつらい、という。

 

自分は、この国……エイルシュタットと大公家のために全てをささげた軍人である。

だから、敗北の結果としてどのような扱いを受けようとも、文句は言わない。

 

でも、イゼッタは……と。

 

女としての地獄を味わわされ、人間以下の屈辱的な扱いをされ、死んでしまうのではないかと思うほどに痛めつけられる。

このままでは、イゼッタが壊れてしまう。肉体的にも、精神的にも。

 

本当なら、こんな戦争に関わらなくてよかったはずのイゼッタ。

自分で望んだことだとはいえ、その結果として帝国に大きな損害を出したの事実だとはいえ、

 

『見ていられないんだ、もう……こんなになるまで、自分の全てを犠牲にして戦って……その果てに、こんな……』

 

演技も何もない、ビアンカ自身の、心からの叫びだったように思う。

 

甘い物言いだとわかっている。都合のいいことだとわかっている。

そもそも、囚われの身である自分に、何か言う権利すらないのもわかっている。

 

それでも、と。

 

『私はどうなってもいい。嬲ってくれていい、罵ってくれていい、痛めつけてくれていい、殺されたってかまわない……でも、どうかイゼッタは許してくれ……! 無罪放免などと都合のいいことは言わない、言えない。だが、どうか……貴殿の力で、どうか……あの子にこれ以上、つらい思いをさせるのだけは……!』

 

『痛々しいから土下座とかやめて』って言うのも忘れて、それを黙って聞いていた。

恐らく、涙を流してると気づいてないまま、必死に懇願するビアンカの弁を。

 

……正直、返事に困る。

ゲルマニアの軍人として、この願いに、首を縦に振るのは難しい。

 

けど……できないわけでもない。今の僕の権限なら。

自分の意向を通すんだから、色々リスクが伴うし、皇帝陛下の意向に左右される部分もある。さらに言えば、それは一時的なもので……一度守った後にイゼッタがどうなるかも保証できない。

 

そしてその先には……もっと大きな決断を迫られること請け合いなのだ。

 

……けど困ったことに、心情的にそっちに傾いてしまいつつある自分がいる。

そうする理由を、根拠を探してしまっている自分がいる。

 

ごちゃごちゃになった頭の中を整理しようと奮闘していると……ふと、ゆっくりと頭を上げたビアンカ、僕の方を見て……何かに気づいたように、わずかに目を大きくした。

 

その先を追って……僕も初めてそれに気づく。

自分の股間に張っている、ごまかしようのない大きさのテントに。

 

……! しまった、今日まだ、鎮静剤飲んでない……!

というか、ここんとこ出張行ったり治療したりで、そういう場面を前にすることがなかったから、必然的に飲む必要なくて……完全に忘れてた!

 

このシリアスな空気の中で何してんだ僕は、って慌てていると……それを見て顔を赤くしていたビアンカは、さっきも見た、何か決意したような顔になって……

 

 

 

$月&日

 

朝、自室で目を覚ます。

横には……全裸の上、体のあちこちにべとべとした液体をこびりつかせたビアンカが寝ている。

 

……うん、説明の必要もなければ、弁解のしようもないんだけど……ね。

昨日、寝た。彼女を……部屋に呼んで。

 

彼女は、イゼッタを助けるために、自分が犠牲になるんだと言って。帝国に対して屈したわけでもなければ、僕に対して心を許すわけでもない、と断って。

 

僕は……彼女に手を出す代わりに、イゼッタに対して便宜を図るんだと。差し出された貢物を受け取るんだから、こっちも何かしてやらなきゃ不義理になるんだと、言い聞かせて。

 

……さすがに、その時のことを詳細に描写するのは勘弁願いたい。

ただ何というか、お互い背徳的な部分があって、それがスパイスになったのか……僕は、今までどんな娼婦を抱いた時よりも気持ちよかったし、ビアンカは、僕が知る限り、汚っさん達にどんな辱められ方をしたときにも見ることのなかったレベルで乱れていた。

 

病み上がりに対して何をしてるんだと自分をぶん殴りたくなるが……昨日の夜10時ごろから始まった、取引のためのセックスは……日付が変わってもなお勢い収まらず、結局その欲望のまま、明け方近くになるまで続けてしまった。

 

……こんなに盛り上がったのも、射精したのも……初めてだ。間違いなく。

 

僕もビアンカも、お互いに息も絶え絶えになって、出るものも出なくなるまで腰を振って……気絶するように眠ってしまった。

 

多分、あの時ビアンカが僕を殺そうとしてたら……抗いようもなかっただろうな。

 

そのビアンカは……ベッドの上で、安らかに寝息を立てている。

 

……彼女はしばらく寝かせておくことにして。ああ、起きたら色々世話をするように、メイド達に言っておかなきゃ。

 

持って来させた水と、清潔な布で体を軽くふいて……着替えにそでを通す。

下着を着て、シャツに、軍服……アクセサリー……それに、眼帯、と。

 

衣擦れや水音程度とはいえ、横でしばらく生活音を立ててたのに……ビアンカは起きる気配はなかった。よっぽど無理をさせてしまったらしい。

 

……彼女から、対価は受け取った。

なら、今度は僕が義理を通さなきゃな。

 

イゼッタの待遇、どうにかするようにさっさと動かないと。まずは……

 

 

 

 



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06 近衛隊長の献身

また今回も、最初に三人称が入ってます。
その後主人公視点……というか日記です。


「おぉお……た、たまらん……! これが、エイルシュタットの近衛隊長の肉壺か! よく締まって絡みつく……まるで、我らゲールの男の逸物を加えこむためにあつらえたような名器だ!」

 

「然様ですか、査察官殿……いや、お気に召したなら何よりですな」

 

「うらやましいですねえ……我々も早く味わってみたい」

 

「っ、く……ぅ……っっ」

 

服を奪われ、四つん這いにされ、後ろからつきこまれるは敵兵の肉棒……怒張したそれが、それまで男を知らなかった膣に容赦なく突き入れられ……結合部の隙間からとろとろと漏れ出る愛液と先走り汁、それに破瓜の血の混じった液体が、床に水たまりを作る。

 

体の中をさんざんにつきまわされ……耳からは聞くに堪えない野郎の喘ぎ声。

犯されている女捕虜……ビアンカは、目から涙をこぼしつつも、歯を食いしばって、その苦痛と快楽に耐えていた。

 

(覚悟していたことだ、心を殺せ、この程度で己を乱すな……! この程度、いままでイゼッタが受けたであろう責め苦に比べれば……っ!)

 

声に出さずに自分に言い聞かせる。

軍人然とした態度を普段から見せる彼女は、見掛け倒しでなく、その意思の力も地位相応、あるいはそれ以上のものがある。

 

絶望的な状況下で、名も知らぬ敵兵たちに、自分の体をいいように弄ばれているこの現状でも……軍人として、物事を冷静に考えるだけの余裕を保っていた。

 

……それでも、完全に私情を殺せていたわけではないのは……その目の端からとめどなく流れる涙が、時折うめき声に混じる嗚咽が証明していた。

 

彼女とて……軍人とはいえ、女なのだ。

 

その身の全てをオルトフィーネ大公にささげると誓った。それに偽りはない。

しかし……それでも、女としての幸せそのものを考えなかったわけではない。

 

今でこそ、ヨーロッパ全体がゲールという国の脅威にさらされ、戦火に包まれているが……いずれそれが収まり、祖国に平和が戻ってきた暁には……と。

 

近衛として大公殿下を守りつつも、今特に優秀な人材として目をかけている部下たちを含め、後進を……大公を守るにふさわしい人材を、ゆくゆくは自分の後を継ぐ者を育て上げる。

 

いつの日か、部下たちがその力を確かなものとし、自分が安心して姫様を預けるに足るほどにまで成長した暁には……引退し、若い力に未来を任せることになるのだろう。

 

できるならその時には……今はこれといっておらず、これから先見つかればではあるが……誰か良き人と愛を通わす仲になり、幸せな結婚をして……純潔をささげ、愛を育み、子供を作り、女としての幸せを手にする……そんな人生を歩んでみたいと、ひそかに思っていた。

 

 

(……それが……こんな……あぁっ!!)

 

 

瞬間、

膣内の、さらに奥に……叩きつけられた肉棒の切っ先から、熱い何かがほとばしった感触。その衝撃に……強引に意識が現実に引っ張り戻される。

 

「おぉ、ほぅ……すばらしい、すばらしいぞ……一滴残らず、私の子種が搾り取られてしまいそうだ……ふふっ、近衛隊長殿の肉壺は、力強いのですな……っつ!」

 

「あ……あ……嫌ぁ……っ!」

 

まだ見ぬ良人にささげるはずだった純潔は、誰も立ち入らせたことのなかった女人の花園は、下品な笑みを浮かべる敵兵によって無残に踏み荒らされ……そして今、吐き出された白濁によって、将来、愛の結晶を宿すはずだった、胎という名の揺り籠すら汚されてしまった。

 

どうしようもなく……自分が傷物になったのだと、ビアンカは痛感させられる。

 

本人の意思によらず、とめどなく流れる滂沱の涙が、その絶望を物語っていた。

 

汚されてしまった。

女としての私は……私の、女としての価値は……なくなってしまった。

ゲールによって体の奥まで汚された私を……果たして誰が欲しがるだろう?

 

いや、それ以前に……こんな汚れてしまった、種がついている可能性すらある自分が、仮にこれより先に助かったとして……姫様の目の前に姿を見せることが許されるのだろうか?

 

「……ぅ……ぅ……!」

 

嗚咽を漏らす彼女に構わず、ぬぽっ、と膣から肉棒を抜き取った査察官の男は、兵士たちに『後は好きにしろ』といつも通り言い放つが……それも耳に届いてはいなかった。

 

(姫様……申し訳ありません。どうか、どうか今しばしの間だけ……女に戻ることをお許しください……! 気持ちの整理が、全て済んだら……私はまた、あなたの知るビアンカに戻って……最後の瞬間まで、あなたに、そして祖国エイルシュタットに尽くします……だから、今だけ……)

 

「……ぅ、ぅっ……うぇっ……!」

 

殺到する兵士たちの、興奮した、下卑た声に……彼女の嗚咽はかき消され……そして……

 

 

 

(……また、この夢か)

 

ある朝、目を覚ました瞬間……ビアンカはそう悟る。

もうこのところは珍しくもないが、また……純潔を散らされたあの日を悪夢に見たと。

 

存外、大きな心の傷になっているらしい。女としての未来を奪われた痛みは、今なお、寝ている間すらも彼女を休ませてくれないのだ。

 

が……次の瞬間、ふと彼女は違和感に気づいた。

夢はともかく……今、起きているこの現実が、いつもと違う。

 

いつも寝起きしている虜囚房の粗末なベッドではない。

目に映る景色もまるで違う。殺風景な房ではなく……家具や調度品が整っている、まるで高級な宿屋のような部屋……それこそ、彼女本来の身分でも住むことができないような。特に、戦争中という今のこの情勢下では。

 

おまけに、自分が体を寝かせて……その体が沈み込んでいるこのベッド。肌触りといい、沈み込む感触といい……明らかに高級品だ。

 

なぜ自分がこんなところに……しかもよく見れば裸で寝ているのかと、一瞬考えたビアンカだったが……即座に思い出す。

昨日の夜、何があったのか……否……自分が何をしたのかを。

 

 

『もうお預けらめぇえっ! らめ、なの、ほしぃのおっ! もっと来てぇ、激しく、してぇ! おかひくなっひゃうぅ! 乱暴にして、もっと気持ひぃいのくださいぃぃいいっ!!』

 

『ああぁぁああっ! お、奥っ、奥にあたる……私のここっ、熱いので突かれて喜んでるっ! 熱くてっ、硬くてっ……っああだめええ! そこ、ひきゅっ……赤ちゃんの部屋なのぉ!』

 

『出てるぅっ、赤ちゃんの部屋にっ、熱くて濃ゆいのでてるぅう! 孕む、孕んじゃうぅ! わ、わらひっ、えいるひゅたっとの軍人なのにぃっ、げーりゅの子供できひゃうぅっ!』

 

 

「……っ……あ、ああああああああっ!」

 

……絶望ではなく、羞恥心の悲鳴が口からこぼれ出た。それも……自分に対しての。

 

かあっ、と熱くなる顔。ゆで上がるように。

思い出されるのは……無理やり犯されていた時とは180度違う、自分の態度。

 

昨夜ビアンカは、『取引』のために自分の身を差し出した。

敵兵にくれてやるという意味では、今までと変わりない……と、思っていた。

 

……しかし、だ。

 

実際に抱かれてみれば……その手つきは、扱いは……強姦などとは程遠いもので、

こちらの体を、少しでも乱暴に扱えば破れる薄絹を扱うかのように、丁寧にやさしく……

 

予想と違いすぎるその扱いに、戸惑いを覚えたところまでは覚えていて……次第に、その手つきが、空気が、心地よく思えてきて……取引の行為だという冷めた考えが薄れて消えて……

 

気が付けば、自分の中の『女』が、もたらされる性の快感と多幸感に浸りきりに……

 

(あ、あんな風に乱れて……あんな、恥ずかしいことをっ! 無防備にッ! あまつさえ、こ、こど、子供とか、孕むとかっ! は、はしたない……なんて姿を彼に見られて、いや別に敵なんだし見られたところでこれ以上ああでもあんなっ! あ、あれではまるで……言の葉だけで敵呼ばわりしているだけの、良人同士の……どうしてあんなになってたんだ昨日の私は―――っ!!?)

 

恐る恐る記憶を引っ張り起こせば……責められてよがるばかりか、自ら腰を振ったり、抱き着いてより大きな快感や、口づけを請うたことまで思い出される。

 

中でも最もとんでもない記憶は……胡坐でベッドに座る彼に、これまた挿入されながら、その膝の上で、足を彼の体に回してがっちりと……そのまま、子種を受け止めた。

ちなみにコレ、のちの世にて『だいしゅきホールド』と呼ばれる。

 

いつもと違いすぎる、やさしさに満ちたそれに酔ってしまった、あるいは比較しての丁寧さに心が緩んでしまった部分もあるのだろう。

 

(だ、だがそれを差し引いても……昨日の私はっ、まるで、ほ、本当の……あ――――!)

 

思い出すだけで頭がゆで上がりそうになる記憶と戦いながら……ビアンカは、全裸のまま、1人ベッドの上でゴロゴロと転がって悶え続けていた。

 

 

 

 

 

$月$日

 

ビアンカを抱いた翌日から僕は、すぐさま伝手を使って色々と細工を進めたわけだけど……早くもその成果が出た。彼女の希望を叶える形で。

 

結論から言うと、彼女たちの待遇を一定以上のレベルにするように、軍上層部、および皇帝陛下からの実質的なご裁可を得ることができた。これで、今までみたいな幽閉生活よりもだいぶいい暮らしをさせてあげられるし、あの査察官共みたいな連中から手を出されないように守ってやることも可能になった。

 

手段は簡単。彼女たちの利用価値と、そのための『品質』の保持、加えて、現時点において彼女たちから我が軍が受けることができた利益の報告。

それらを総合しての、今後の占領政策その他を見据えた、彼女たちを『飼い殺し』にするためのプランについて、多方面に甘い汁の気配をさせながらばらまいたのである。

 

まず、イゼッタの利用価値はもはや言うまでもないだろう。小国であるエイルシュタット公国を今に至るまでゲルマニアから守ってきた、その軍事力、戦闘力。

 

いくらゲールにはゾフィーや、そのクローンがあると言っても、アレにはアレの弱点があるし……そもそも性格的に扱いづらい。現状、いつ暴れるかわからんから常にガクブルってるし。

 

クローンに至っては……ちょっと前までのゾフィーみたいに、使えるようになるかどうかもわからない。毎度イゼッタの血飲ませてうまくいくとも限らない。

 

それに、彼女の原動力は復讐心だ。エイルシュタット公国を滅ぼして本懐を果たしたら、もう戦わない、なんて言い出すかもしれないし……ファンタジーな物言いになるけど、成仏?しちゃうかもしれないしね……未練なくなって。

 

対するイゼッタは……姫様=フィーネ大公命ではあるものの、そこをうまく利用すれば、こちらの戦力として動かせないこともない。極端な話、彼女の命を盾にして脅迫するとか。

……そんなんじゃ、恨みつらみが募っていつか破たんするだろうから、実際は適当な落としどころを見つけることになるだろうけどね。

 

まっすぐで純粋、誠実だからこそ……『使いこなす』という選択肢が取れ得る。

 

加えて、彼女たちをある程度とはいえ、無事なまま捕らえておけば、今後大公殿下やその部下たちを捕らえ、エイルシュタット公国を完全に支配下に置くことを考えた場合、利点足りうる。

 

民に人気のある統治者・関係者を皆殺しにして、怨嗟憎悪の中で統治を進めるより、それらを手駒にしてうまく使いつつ、懐柔する感じで進めていく方が楽だ。反発も抑えやすいし。

パルチザンの危険はあるけど、その辺は内政の進め方次第だろう。

 

イゼッタやビアンカには大公殿下を利用して言うことを聞かせ、逆に大公殿下たちにはイゼッタたちを利用して同様に。友情と臣従が同居してる彼女らは、そういう使い方ができる。

 

さらに、それらを後押しするために『情報』の操作も使った。

 

彼女たちへの『尋問』の結果としてわかった事実は何一つない。2人とも口が堅くて……こっちで調べられた以上のことは、その口から聞き出すことはできなかった。

 

けど、彼女たちだけが情報源じゃない。諜報部隊を使って、独自に色々調べてもいるのだ。

 

そのルートで手に入れた情報のうち、よさそうなのをいくつか見繕って、『尋問の成果』として報告し、さらにそれによってある程度の手柄を立てる。

 

具体的には、諜報部隊に見つけさせた、エイルシュタットの小規模物資集積地の情報を、イゼッタ達への尋問によって聞き出したことにする。さらに、そこを摘発して成果を上げる。これにより、『尋問の結果わかった情報が役に立った』という事実を作り出す。

これが、彼女たちからの……消極的とはいえ、帝国への貢献になる。

 

これらを利用して、彼女たちを籠の鳥として『飼う』方針の有益さを軍全体にそれとなく喧伝、認めさせることに成功した。それにより、彼女たちはすでに『丁重に扱う』存在になった。

決して、拷問・尋問と称して兵士たち性処理に使える立場ではなくなったわけだ。

 

使えるとすれば、彼女たちの身柄の管理責任者である僕がせいぜいだ。

 

とりあえず、そんな風なことを……まだ一応、イゼッタ共々病室泊まりであるビアンカに知らせておく。それを聞いて……まあ、プロセスがプロセスなので色々複雑だったようだけど、これ以上イゼッタが酷い目にあうことはないとわかり、ほっとしているようだった。

 

ただし、と……彼女には、この策を弄したことによる『副作用』についても話しておく。

 

一応、彼女たちを丁重に扱うことができるようにはしたけども……この先ずっとこのままいけるわけではない。扱いを決めた上で……いずれは、『その範囲内で』最大の利益を上げられるように、彼女たちの身柄をうまく使う必要が出てくるのだ。

それも、彼女たちばかりでなく……これから捕えることになるであろう、大公殿下たちも。

 

例えば……帝国のためになる相手と政略結婚させるとか、ね。

 

それを話した際は、まあ……何も思うところがないわけではなさそうだった。

しかし、本来ならもっとひどい目にあったり、容赦なく処断されても文句は言えない立場だというのもわかっているのか、反論はなかった。

 

とりあえず……それについて、いつ何が決まるかはわからないけど、覚悟くらいはしておいてくれ、と言って、部屋を後にしようとしたところで……

 

後ろから、服の裾をつまむようにして……ビアンカが僕を止めた。

 

え……何? なんか、顔赤いけど……

 

……『今日はしないのか』って?

 

…………いいの?

その代り『今後もイゼッタと、できれば姫様についても、格段の配慮を』?

 

……なるほど、またさらに取引を行おう……いや、いっそ続けようとするか。いいだろう……その誘い、乗らせてもらう(棒)

 

 

 

$月△日

 

他人が手が出せないように大義名分作って保護しといて、自分は何してんだって話……

 

いや、その……本来そういうキャラじゃないのに懸命に色仕掛けをしようとする、本当なら『くっ、殺せ』とか言いたそうな人を組み伏せるのって思いのほか興奮して……ね?

 

っていうか、実際捕まった当初とか言ってたし。彼女。

生で初めて見たわー、感動したわー。

 

そんなわけで、ここ数日は毎日ビアンカを抱いてます。我ながら……はまった。

 

ビアンカは、最初こそ『好きにするがいい』みたいな感じで、嫌々だけど体を開いてます、みたいな感じで来る。ベッドの上で、服を全部脱いで、一糸まとわぬ全裸になって……蠱惑的なポーズとか、無防備な姿とかさらして自分を差し出す。

 

そこで、何ていうんだろ……がっつきつつもがっつかず、とでも言うかな。

お言葉に甘えて、喜んでいただくんだけど……言葉とは裏腹に、反発して角が立ってる部分をきちっとなぜてほぐしつつ、ぺろっといただくというか……。

 

ビアンカの裸を見て、フル勃起状態の肉棒を、何の遠慮もなく性欲のままにそのオマンコにつきこんで、暴力的に腰を振って快感をむさぼりたい衝動を……あえて必死に抑える。

 

勢いのままにヤるんじゃなく、スローセックスみたいな感じでじんわりと、徐々に、時間をかけて丁寧に、お互いにじわじわ快感を感じてため込むように抱く。

壊さないように、大切に扱っているんだと、行為をもってビアンカに言い聞かすように。

 

それまで散々、肉便器扱いで乱暴にされてきた……しかしそれに耐えてきたビアンカだが、どうもこういうのにはさすがに慣れてないようで、しばらくそうして責めていると、物足りなそうに、ものほしそうに身をよじってくる。顔も、凛々しくもなんかこう……とろっとろな感じに。

 

しまいには、もう雌の本能まみれになってどうしようもなくなって、息も絶え絶えに淫語連発で必死におねだりするようになってくる。演技とか入ってない、素で。

 

最初の時に……今までひどく乱暴にされるばかりだったから、優しくするべきかな……って思ってやった結果そうなってから、コレが見たくてついつい同じようにしてしまう。

 

 

『さあ、好きなようにしてくれ……約束さえ守ってくれるなら、どうしてくれようと構わない』

 

 

『え、遠慮などいらん……もっと、好きなように、乱暴に……! そ、そうだ、あの者達のように、私の体のことなど考えずにしてくれてよいのだぞ……!』

 

になって、

 

『じ、焦らすなぁ……こ、こんなの、知らない……は、早く終わらせて、でないと、わ、私ぃ……我慢、できなっ、ら、らめになっひゃうぅ……』

 

を経て、

 

『もうお預けらめぇえっ! らめ、なの、ほしぃのおっ! もっと来てぇ、激しく、してぇ! おかひくなっひゃうぅ! 乱暴にして、もっと気持ひぃいのくださいぃぃいいっ!!』

 

これで完成。

 

 

こうなってからは、おねだり通りにハイペースに変更して……で、数時間。

頭も体もグズグズにとろけ切ったところを、お互いの体力が尽きるまで犯しつくす。

 

僕もビアンカも、軍人としてそれなり以上に鍛えてるので、体力あるから……結構長く続く。

 

そして、体力はあっても、快楽で思考能力がまともに残ってないところに、『全部中に出す』『敵国(ゲール)の子種で孕め』とか言ってあげると、

 

『はひぃぃいっ! 孕む、孕んじゃうぅ! わ、わらひっ、えいるひゅたっとの軍人なのにぃっ、げーりゅの子供できひゃうぅっ! 姫しゃま、ごめんなさいぃいっ! わたひっ、近衛にゃのに、敵の子ろも産んじゃいましゅううう!!』

 

毎度これが見たくて、徹底的にやっちゃうんだよね……女騎士が堕ちるの、大好きです。

 

……まあ、避妊薬の投与は続いてるから、孕みゃしないんだけど。

 

終わり際には、僕もさすがに限界で寝ぼけ眼ではあるが……うまくすれば焦点の定まってないアヘ顔まで見れちゃったりする。

 

汚っさんたちが犯ってた時はこんなことなかったのに……焦らすの弱点なのかな。

 

それとも、性欲とか尋問でなく、愛情でお互いを労ってやるような感じのセックスが好み、とか?

 

いやコレ、やってることは僕も思いっきり捕虜凌辱なんだけど……今までが今までだったから、かな。

 

そして、それが終われば気絶するように眠って……朝を迎える、と。

 

まあとりあえず、今日もビアンカはくてっとして隣で脱力&就寝中。起きない。

欲望そのまま、全部膣内に放ったので……心なしかちょっとお腹が膨れているようにも見える。膣口からは、収まりきらない精液が……寝返りとか、身じろぎのたびに、ごぽりと。

 

あんだけやっといて、後のことはメイド達に任せて、僕は出勤……というのはさすがに気が引けるので、一応急ぎの要件がない限りは、彼女が起きるのを待って出かけるようにしている。

……起きた瞬間の赤面→どうにか体裁を取り繕おうとして失敗、が見たいのもある。

 

今日は出勤時間のだいぶ前に起きてくれたので、朝ご飯をルームサービス的に持って来させた後で解散した。

さて、今日も仕事だ……って、暇だからって何を仕事前に日記書いてんだろうね僕は。

 

 

 

$月)(日

 

今日朝、イゼッタが目を覚ました。

 

酷い責め苦の果てに、僕の治療の最中に意識を失ってから、もう何日も経っていることに驚いてたけど……僕とビアンカの2人がかりできちんと説明したら、どうにか理解・納得したようだった。

 

当然、査察官の汚っさん共を追っ払ったことや、これからは多少待遇が改善されること、今までみたいな尋問は行われないこともきちんと話した。

……ビアンカの献身(意味深)については当然言わなかったけど。

 

それを聞いて……イゼッタは、普通に僕にお礼を言ってきた。

ありがとうございます、って。純粋さ極まる笑顔で。

 

……心が痛いです、はい。きっちり対価受け取ってるんだよね……隣の人から。

ついでに言うなら、今まさにビアンカの子宮の中にまだ、かき出す前の精液がいくらか……

 

一応その日は、簡単な検査だけして……問題なしと判断。

服を脱がせてやったわけだけど、今まで治療とかでさんざん似たような状況で裸見てるので、イゼッタはそんなに恥ずかしがることもなく(全くとは言ってない)、すぐに終わった。

 

あとは静かに療養。ビアンカと雑談したりして過ごすようだ。

病室から移るのは、明日以降だな。

 

なお、今日くらいは2人でゆっくりさせてもばちは当たらないと思うので、ビアンカに連日お願いしている『夜のお勤め』は休みにした。

 

嬉しさ半分、落胆半分、って顔をされた。なぜ?

 

 

 

$月・日

 

2人の身柄を、貴人用の牢獄……出歩けない以外はほとんど何不自由なく過ごせそうな豪華な座敷牢に移し、扱いもきちんと貴人の捕虜のそれにした。しかも、2人それぞれ個室である。

 

今後、彼女たちは尋問なんてものとは無縁の生活を送れる上に、ルームサービス的なものまで活用して(限度はあるが)快適に過ごせるだろう。

 

本とかも読めるし、毎日じゃないけど風呂にも入れるようにした。食事も今までに比べてかなりまとも、というか上質なものだ。兵士たちよりいいものが3食きっちり食べられる。

 

無論、この待遇の変化をよく思わない、というか、突然のことに戸惑っている者は多かった。

 

彼女たちをよく思わない兵士や士官たちからは、もっと厳しい対応を、って進言が上がってきたりもする。戦犯なのだから、今までのように、辱めすら伴った扱いを、と。

何割かは『おこぼれ』を期待してだろうけど、もうその可能性はない、と言い切っておく。

 

れっきとした、陛下やその周辺からの勧告に基づく処置の変化である、と。

 

さらに、別にこれで終わりではなく……この扱いの変化は、次に彼女たちを使って何か外交等政策を行うにあたっての『準備』の一環である。

そう言い聞かせると、しぶしぶではあるが収まる。

 

いくら魔女憎しと言えど、皇帝陛下の命令に異を唱えるなんて命知らずなことはできないし……待っていれば、また別な、それも相応の沙汰が下るっていう話だしね。

それが何になるのかは、僕にもはっきりとはわからないけど。

 

また、幾人かの古参兵や士官は、懐柔する作戦だと勝手に解釈して納得してくれてるようだ。

 

刑事ドラマとかでよくある手だな。厳しく取り調べる役割の刑事と、優しく対応する役割の刑事がいて……その2人が交互に犯人に対応することで心に隙間を作り、自供を促す。

 

今回の場合、苛烈極まりない『尋問』を査察官やゾフィーが長期間行っていた後に、僕が優しく相手をすることで篭絡を図っている、と見たわけか(勝手に)。うむ、好都合。

 

まあ実際、イゼッタもビアンカも、自分に対してだいぶ態度が軟化してる様子が目撃されてるし……ビアンカに至っては、僕の部屋に連れ込んでいるのを目撃されてる上、ホントにやることやってるからな。

情報リークの話もあるし、篭絡したと思われても、不思議じゃない。

 

加えてイゼッタは……前も多少そうだったけど、僕に対して砕けた感じで、結構積極的に話してくるようになった。口調はきちんと?敬語だし、限度を超えてなれなれしい感じになることもないけど……かなりフランクといっていい。

 

傷を負うたびに治療してあげていたことや、敵だからと邪険に扱わずに僕の方も普通に接していたこと、今回の待遇改善でかなり心を開いてくれてるようだ。

 

ただ、気楽なばかりでなく……可能ならって感じで、僕から聞けることは聞こうとしてくるけど。

主に、外の状況……敬愛する姫様こと、オルトフィーネ大公がどういう状況かとか。この戦争は今どんな感じになってるのかとか。

 

差し障りない範囲で教えてあげてる。

 

大公殿下のことは……取り逃がして以降は、自分も知らない。

けど、確実に公国もろとも追い詰められつつあることは確かだ……って伝えたら、さすがにちょっとこたえたのか、表情つらそうにしてたけど。

 

それと……どうも彼女、若干ではあるが、ビアンカの様子に違和感を感じているような仕草を見せているらしい。

 

詳しくどう、とわかってる様子はなさそうだけど……ビアンカが実際、彼女を守るために自分の体を交渉材料にして僕に取り入っているわけなので……それを、なんとなく察しているのかも?

 

……って、今も僕の隣で寝ているビアンカにさっき聞いた。

 

 

 

 



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06.5 ビアンカ視点

午前0時に続きまして、本日二度目の更新です。


¥月Φ日

 

この身は、全て姫様……オルトフィーネ大公殿下にささげた。心も体も、命までも。

近衛として彼女に仕え始めたその日に、全てをささげた。

 

だからこそ、彼女を守って敵につかまったこの現状も……不本意な部分こそあれ、何も後悔はない。彼女が逃げ延びてくれたのであれば……このまま殺されても、本望だった。

 

しかし、私が送ってこられた先には……私をさいなむ、もう1つの地獄があった。

 

イゼッタ……エイルシュタットの白き魔女。

私と同じく、姫様に全てをささげる覚悟を持って戦った……私が認める戦友だ。

 

その彼女が……ゾフィーなる魔女がゲールに現れ、ランツブルックが陥落させられたあの日以来、行方不明になっていた彼女が……そこにいた。

 

あの日からずっと……帝国軍によって与えられる責め苦に、辱めに……たった一人耐えていた。

 

話してみた感じ、疲弊はしているようだが、致命的な心の傷を抱えているという感じではないように思えた…………今は、だが。

 

しかし、あの顔を、目を見て、つらそうに沈んだ声を耳にすれば……彼女がいかにつらい責め苦を受けているのか、感じ取ることはできる。

 

……部屋にこもっている独特のにおいや、よく見ないとわからない血の跡に気づけば……なおさらだ。

 

汚らわしい……。こんな健気な少女に、下卑た責め苦を与えているゲール達を、今すぐにでも殺してしまいたい……そんな衝動が湧き上がってくる。不可能だと、わかりつつも。

それどころか……明日には、私もそうなっていてもおかしくないのだ。

 

……私たちの戦いは、むしろこれからだ。

私も頑張って耐えよう……だからすまん、イゼッタ……お前も耐えてくれ。

身勝手な物言いなのはわかっているが……私たちが共に慕う、姫様のために。

 

 

 

&月△日

 

……予想も覚悟もしていたが、やはり……つらい。

 

処女などくれてやった。その上で、いかなる辱めをどれだけ受けても耐えてみせた。

隣で同じように辱められるイゼッタと共に、屈せず、口を割らず。

 

朝起きてから夜寝るまで、一切の自由行動を許されず……好きな時間にやってくるゲール共が、私たちの体をもてあそぶ。

 

薄汚れた、吐きそうな匂いの肉棒でもって、私たちの……女の秘所をむさぼり、痛めつけ……遠慮も何もなしに、欲望を吐き出していく。

 

汚らわしいゲールの子種に……姫様にささげたこの体を、内側から汚される。

ゴリゴリと膣内をえぐられ、種を注がれる……妊娠、してしまったかもしれない。

 

全て終われば放り出され、私の体は異臭を放つ白濁液にまみれている。

呼吸するたびに、嗅ぎたくもない匂いが鼻の奥に流れ込んでくる。

 

悔しい。苦しい。……許されるなら、死んでしまいたい。

しかし、それもできない……自殺すれば、そこで終わる。これ以上、姫様の役に立つことができない……いつか必ず立ち上がるであろう、姫様のそのお側にはせ参じ、共に戦うことが。

 

もしかしたら……そんな機会は永遠に訪れないのかもしれないが……それでも、最後まで。

 

時に……陰鬱な気分を紛らわすために、イゼッタと無理に話題を探して行った世間話で……彼女の口から、この基地にもまともなゲール兵がいると聞かされた。

 

どうやら、初日に見かけた、金髪に眼帯の男がそうらしい。

 

私はその男を知っている。

と言っても、見たことがあるとか、知り合いだとかではなく……情報としてだ。

 

帝国軍少佐……ソロモン・フォン・サンジェルマン。私の記憶に間違いがなければ……帝国軍における要注意人物の1人だ。ミュラー首席補佐官も、注意を向けていた1人だったはず。

帝国の参謀将校であり、まだ若いながら多数の戦場で劣勢をひっくり返している名将。

 

その戦歴はまさに百戦錬磨。

帝国の未来を担う若き俊英、とまで言われており……その期待を裏付けるかのように、エイルシュタットの占領統治府の、暫定指揮権を与えられていると聞く。

 

そして、彼の父親……帝国軍大佐、メフィスト・フォン・サンジェルマンは……イゼッタが参戦した戦いで戦死している。

すなわち、イゼッタは彼にとって……父の仇。

 

さらに、情報が確かなら……同時に、自分の左目の仇でもある。

 

そんな間柄なのだから、余計にイゼッタが、彼を誉めるようなことを、ことあるごとにつぶやく理由が理解できなかった。

 

……確かに、あの男が使う『錬金術』の力は驚異的だ。

まさか、数日……あるいは数週間をかけて治すような傷が、わずか数分、短いもので数秒で、跡形もなく癒えるとは……。しかも、副作用らしい副作用もなく。

 

しかし、やはり心情的にはわからなかったのだが……どうやら彼が、一般的なゲールの軍人とは違いそうだというのは確からしい。

感覚ではあるが、何度か話してみるうちに……そう、思えてきた。イゼッタは、もっとこの感覚を鋭敏に、あるいは正確に感じ取っているのか……?

 

 

 

$月#日

 

……何かに気づけそうになって……気を抜いたかもしれない。

いや、気を抜こうが抜くまいが……やられることは変わらないか。

 

このところ、ゲール共によってもたらされる責め苦が……ひどい。

 

今まではやらなかった、身の毛もよだつような内容のものがあったり……それについて、後から適切な衛生的処置がなされなかったり……

 

加えて、出先から帰ってきたらしいゾフィーによる、イゼッタが死んでしまいそうになるほどの責め苦を何度も……

目の前で繰り広げられるそれに耐えきれず、思わず声を上げて止めてしまったのだが……結果、ゾフィーを喜ばせるだけに終わった。

 

しかもいつからか……拷問の後、私たちの体に刻まれた傷を……そして、他愛ない雑談の中で心の傷すらも癒してくれていた、あの男が……現れなくなった。

 

兵士たちの話によれば……我らが見限られたのでもなければ、作戦でこうしているわけでもないのだが……単に用事、というか、別件での軍務らしい。

 

その間、『普通の』医療措置しか施されずにいた我々は……特に、ゾフィーの責め苦を連日受け続けているイゼッタは、すでに虫の息になりつつある。

 

このままでは……死んで、しまう。

 

 

 

$月+日

 

……どうにか助かった。

出先から帰ってきたサンジェルマン少佐が、我らを助けてくれたとのことだ。

 

ただ傷を癒すのみならず、我々をもてあそんでいた者達をあちこちに飛ばし、我々に近づけないようにしたようだ。……こればかりは、素直に感謝せねばなるまい。

 

そして、今回の一件で確信した。

彼は、イゼッタの言う通り……優しい。

 

もっと正確に言えば……甘いのだ。

 

彼は私たちを、単なる敵国の兵士ではなく、非力な女として見て、無意識に温情をかけている。

そしてそれに、彼もはっきりとは気づいていない。

 

……利用できる。

 

そうしなければ……できなければ……この先、まずい。

今までのように責められることはもうないのかもしれないが、どの道戦犯、ろくなことにはならないだろう……。

 

だが、この男なら……。

傷ついたイゼッタを……彼女を助けることができる。

 

なんなら今すぐにでも、できないことはないはずなのだ……そしてそれを、恐らくはサンジェルマン自身も望んでいる。

 

しかし、本人がそれに気づいていない上、踏ん切りがつかなくてここに介入することができずにいると見た。

 

つまり……必要なのは、きっかけだ。

奴の背中を後押ししてやれればいいのだ。奴の力を行使してイゼッタを助けるための、確たる理由を……より正確に言えば、『言い訳』ないし『口実』を……こちらで用意してやればいいのだ。

 

敵兵であり、本来は憎み、痛めつけなければならない立場の私達を、逆に『助ける』。奴がそれに踏み切るための……他でもない、自分を納得させる大義名分。

 

それさえあれば……

 

……そう気づいた私は、覚悟を決めた。

 

頭を下げた。無様にも裸で、床に額をこすりつけた。

 

恥も外聞も意地も捨てて、許しを請うた。イゼッタを助けてくれと懇願した。

 

そして対価に……私を差し出した。

 

それを……色々と葛藤しつつも、最終的に無理やりに近い形で押し切り、受け取らせた。

すなわち……私は自分から、奴のベッドの上で股を開いて……体を差し出したのだ。

 

奴はそれを受け取った。すなわち、私を抱いた。

そして、私の読み通り……その『対価』を受け取ったことを理由にして、私の願いを聞いてくれた。それどころか……イゼッタのみならず、私の身の安全の保障まで。

 

……万事、うまくいった。これで少なくとも、今以上に状況が悪くなることは……彼の上から何か言われたりしない限りは、ないだろう。

 

後悔はない。今はこれが、最善の方策。

私の体で、イゼッタの心身の安全が保障されるなら……安いものだ。

 

……いや、待て。

1つ……あった。不安な要素が。

 

……そ、その……今まで、激しくつらい責め苦しか味わってこなかったからなのかもしれないが……彼の手つきというか、手管というか……こちらをいたわるような抱き方がその……こ、心地よくて困る。

 

愛すら感じるその手法は、私の体を内側からじんわりと温めてくれるようで……安心する。

そのあまり……ついつい、心を許して甘えたくなって……加えて、ふ、普通に快感が、しかも怒涛のように押し寄せるものだから……

 

……いつも、最初こそドライな感じで応対しているのに……最後には……

 

あ、あんな風に乱れて! いやらしい娼婦のように!

い、いや……娼婦でもあんな言い方はしないぞ、演技ならともかく……ほ、本心から! あ、あれではまるで……身も心もゆだねてしまうかのように……。

 

い、いや逆に考えろ。

あんな風な……あ、あえて言うなら、愛に満ちたようなセックスを施してくれるのだ。相当彼は私の肉体に入れ込んでいるに違いない。

ならばその分、私も彼を操りやすくなる……そうだ、何も問題ない。これはいいことなんだ。

 

言い訳でも何でもなく、彼をより確実に抑えることができれば、エイルシュタットの有利性が増すのだから……

 

……だから、昨日一昨日と抱かれていない私が、改めて女の味を彼に味わわせるため、こうしてその……誘うように声をかけるのも、至極自然なことなのだ。

 

な、なあ、今日、その……そ、そうかわかった。後で行く。

 

うん、これは仕方ないんだ……決して、私が快楽に溺れつつあるなんてことは……

彼とのセックスが忘れられないとか……そんなことは決して…………

 

 

 

………………♪

 

 

 

 



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07 魔女の意地と揺れる心

@月○日

 

……なんだ。その……前にもこんなことなかったか。

具体的には、2週間くらい前に。場所は病室で……ビアンカから、全裸で。

 

ただし、今回僕の目の前で、差し出すように垂れている頭は、鮮やかな赤髪なんだけど。

 

ことの発端は、昼間だったと思う。

 

もう大丈夫だとは思うんだけど、一応まだ続けていた健康診断の時……ふと、イゼッタとビアンカが、医務室の机の上に置きっぱなしになっていた、昨日の新聞を見つけた。

 

本は読めるけど、基本外部と情報のやりとりを、一方通行でも遮断している捕虜たちに対しては、新聞は支給されない。なので、2人は興味を示し……僕に許可取って読み始めた。

そして……見る見るうちに顔色を青くした。

 

……まあ、書かれてる内容がね。

彼女たちの視点からすれば、かなり絶望的な流れができていることを示してたからね。

 

ゾフィー無双によるロンデニウム陥落。ブリタニア降伏寸前。

 

連合軍、多数の戦線で乾坤一擲の攻勢に出るも、帝国軍の戦線を食い破れず。逆に各個撃破される軍も出てくる始末。

加えて、帝国軍は新たな兵器をいくつも、次々に戦線に投入。破竹の勢いで進撃を続けている。

 

すでに連合軍を構成する国家群の4割は制圧・占領された。もしくは自分から降伏した。

他国の機密情報を手土産に……すなわち売り渡す形で恩赦を願い出た国もある。

 

今や連合軍は加速度的にその力を失ってきている。崩壊も時間の問題。

 

ここにきて帝国を止められるとすれば、不可侵条約を結んでいる連邦か、大西洋の向こうの合衆国のみ。そのどちらも、今の帝国を危険視してはいるものの、すぐに動く兆しはない。

動くとしても、おそらく連合軍の壊滅には間に合わないだろうという見通し。

 

……というか、おそらく動き出したところで無理だと思うけど。多少寿命が延びるだけだ。

 

とどめに、連合軍……というか、現在帝国を困らせている国の首脳陣の首に、西部劇張りに賞金がかけられている。もちろん……オルトフィーネ大公殿下にも。

 

占領地拡大と外交政策により亡命もできなくなりつつある状況下、これら戦犯たちが捕まるのも時間の問題か…………という感じで、記事は締めくくられていた。

 

それっきり、2人とも沈んだ感じになっちゃったので、部屋に返したんだけど……その夜、見張りの兵士に連れられて、僕の部屋を訪ねてくる者がいた。

 

てっきりビアンカかと思ったんだけど……それにしちゃちょっと時間が早い。

通してみたら……イゼッタだった。

 

そして、冒頭のシーンに至る。

 

大雑把には、ビアンカの時と同じ。『何でもするから、お願い事を聞いてほしい』って奴。

今回イゼッタが望んだのは……このままでは遠からず捕まるであろう、大公殿下について。

 

エイルシュタット公国は、この大戦において、物質的・面子的に最も帝国にダメージを与えた国だ。その実行犯はイゼッタであるとはいえ、大公殿下はその元締めであり国の象徴。反発感情は大きく……戦犯として処刑されることもありうる(って、ビアンカに聞いたらしい)。

 

それだけならまだ……よくは決してないけど、あえて、『まだ、いい』。

悪ければ……イゼッタらと同じように、地獄のような責め苦を味わった末に死を迎える、なんてことになるかもしれない。大公殿下のみならず、その周辺の者達もだ。

 

それを危ぶんだイゼッタが、こうしてわざわざ夜になってから僕の部屋を訪ねてきて……まあ、予想通りではあるけど、『どうにかお力添えを』ってことらしい。

これまたビアンカと同じく……自分の体を、否、『全て』を対価に捧げる覚悟で。

 

全裸でこそないものの、この短期間に二度も美少女に土下座かまされて怯んでいる僕に向けて……イゼッタは、必死さを感じ取れる声音で、

 

『私にできることなら、何でもします。体も……魔法も……全部、全部差し出します。だからお願い……姫様を、助けてください。このままじゃ、姫様は……どうなるか……!』

 

『今まで私は、帝国との戦いで……たくさん戦車や戦闘機を壊して……たくさんの人の命を奪ってきました。だから、この前まで受けていた、ああいう仕打ちも仕方ない、って思ってました。帝国の人達にとって、私は憎い相手だから……もちろん、あなたにとっても』

 

『部下の人から聞きました……あなたのお父様と、あなたのその目……私のせいで失ったって』

 

『そんな私が、こんな風にあなたに頼みごとをするなんて、ひどいと思います。恥知らずだって、厚かましいって……わかってます。でも、私にはもう、これしかできないんです……私、頭悪いから、これしか思いつかなくて……! 捕虜だから、私もう、差し出せるものなんて、他に何もないし、戦い以外は任せきりだったから、情報も知らないし、持ってないけど……せめて……』

 

顔を上げて、服を脱いで……裸体を隠そうともせず、僕の目の前まで歩いてきて……また跪く。

 

『全部、あげます。何でもします。だから……姫様を……フィーネを……少しでも……!』

 

うるんだ目で、そう訴えてくるイゼッタ。

 

その、女性らしい魅力的な体に……時間的には、いつもそろそろビアンカをベッドに連れ込んで色々始めるあたりで、徐々にそういう欲求が持ち上がってたこともあり……反射的に、というか本能的に……恥ずかしさで顔を赤く染める彼女の裸体に、手が伸びそうになって……

 

扉をばたん、と開けて『まてイゼッタ! それは私の役目だ!』と叫びながらビアンカが乱入してきたところで、僕もイゼッタもひっくり返りそうなほど驚いた。

 

 

 

@月&日

 

今日は一段と、太陽が黄色い……いや、やっぱいつもと変わらない気がする。

いつもとの違いはむしろ、もっと近くにわかりやすいのがある。

 

左隣を見れば、いつもと同じように、裸で色々塗れてべとべとのビアンカが寝ている。

 

……で、右隣にはもう1人……同じように裸でべとべとのイゼッタが寝ている。

 

2人とも……ほとんど夜通し僕の相手をして、くたくたのはずだから……しばらく起きないだろうな。

 

昨日あの後……ビアンカが乱入してきて、イゼッタに『それは私の役目だ!』って言い放ってから……なんだかんだあってこうなった。

え、具体的に?

 

『止めないでくださいビアンカさん! 私、姫様の……フィーネのためなら、このくらい!』

 

『もういいんだイゼッタ……もうお前は戦わなくていい。十分に姫様のために尽くしてくれた……だから後は私の役目だ! もう何も背負わなくていいんだ……!』

 

『そんなことありません! 私、まだ姫様のために、私にできることがあるなら、全部やりたい!  結局私……偉そうなことを言っておいて、それなのに、最後まで姫様のために戦い続けられなかった……だから、せめて姫様を守るために、私の全部を使いたいんです!』

 

『それこそ、そんなことはない! お前はもう十分苦しんだ! これ以上自分を犠牲にする必要などない! お前に姫様が、我々が、エイルシュタットがどれだけ助けられたか……もう、これ以上は見ていられないんだ……! 頼む、もう……休んでくれ……!』

 

『……ありがとう、ビアンカさん。でも私……最後の最後まで、姫様のために戦いたいんです。それが……私が命全部使ってでもやりたい、たった一つのことだから……』

 

『……お前はっ、どうして……そこまで……』

 

と、この辺でビアンカが泣き出したかと思ったら……突如、不意打ち気味に僕に突撃してきて、そのままベッドに押し倒された。

 

そして、まるで『イゼッタには手は出させない、自分が全部やる!』とでも言いたげな感じで、僕の服を脱がせにかかってきて……そのまま、開始。

 

急ぐあまり、前戯もそぞろに僕のペニス(勃起済)を受け入れたビアンカは、そのまま……結果的に、自分で動いて僕に奉仕する感じでセックスを進めて、

 

いきなり始まった交尾を前にして、イゼッタは顔を赤くしてあっけにとられてた。

生々しい行為を目にして……というよりは、普段凛々しいビアンカが自分から男にそういう行為を……っていうこのシーンが、ギャップ的な意味で目が離せなかったらしい。

 

汚っさんらの輪姦の時は、基本向こうが強引に、って感じだったし。

 

しかも……ここんとこ毎日抱いてたせいで、いい具合にビアンカの体、僕好みに開発が進んじゃってる感じだから……徐々に声に艶が入ってきて、またそこが普段とのギャップ。

『え? え? び、ビアンカさんが、あんな……う、うわー……』って、独り言が丸聞こえ。

 

しかし、ビアンカが程よくとろんとしてきたところで……ようやく我に返ったイゼッタは、自分も加わろうとして、しかしビアンカに止められた……と思ったら、何を考えたか、僕じゃなくてビアンカに突貫して責めにかかった。

これにはビアンカも驚いたが、すでに脱力に近い状態だったので、抵抗もろくにできず。

 

後になってみると、あれって彼女のなりに考えて……ひょっとしたら、ビアンカが限界になったら自分も加われる、とか、テンパった頭で考えた結果なのかも。

 

え、僕? ……眼福だったので放置してました。

いや、だって……裸の女の子が2人、目の前で、しかも片方は僕のを咥えこんだ状態でくんずほぐれつ……ね、眼福でしょ?

 

そのままなんやかんやで……気が付けば、立場が逆転。

 

思わぬ強襲で、早々にダウンしてしまったビアンカを押しのけ……騎上位で僕のを咥えこんだイゼッタを、いつもビアンカにやるようにスローセックスで責めてあげて。

 

その様子を、ビアンカが何とも言えない……色々混じった表情でガン見してるという。

 

最初こそ『私が相手をするからイゼッタには手を出さないでくれ!』って言ってたものの……いつもの自分と同様、徐々に快楽でいっぱいいっぱいになってきたイゼッタの乱れ方を見て、しかしそれがほぼイコールでいつもの自分の姿だと気づいてショートして、

 

そうこうしている間に、雌の本能か、はたまた条件反射か、色々うずきだしてきたようで。

 

そしてさらに……今まさにヤっているイゼッタの方も、意外にまんざらでもないというか、行為に抵抗がない感じで、割と積極的に奉仕してきて。

 

……気が付けば、3Pになっていた。

 

交互に僕のを膣で受け入れる、ビアンカとイゼッタ。一方が僕とまぐわっている間、もう一方は僕に、あるいはもう一方に援護射撃的に奉仕して責めたてて……って感じで。

 

幾度となく彼女たちの膣内で射精し、あるいは体にぶっかけてマーキングするかのように。

 

最終的には、同じようにとろっとろになったイゼッタとビアンカに、膣内の一番奥で思いっきり一滴残らず注ぎ込む、言葉責めも忘れないでの種付けプレイ(付かないけど)。

『孕め』の殺し文句で、雌の本能を刺激されて、快感をこらえきれず、多幸感を隠そうともせず喘ぎ散らす2人に、思いっきり欲望をぶつけ続けたあたりで……記憶が途切れている。

 

それから数時間。寝て、体力を回復して起きてみれば……この有様。

 

……まあ、いい。しかしまた、やることが増えたな。

 

この2人の保護に加えて……まだ捕まってない、しかしもう捕まるのは時間の問題であろう、オルトフィーネ大公殿下の身の安全の保障まで、どうにかして考えないといけなくなった。

 

……面倒ではあるが、これも前と同じく、すでに対価をもらった事柄だ。

 

あれだけ濃密に交わり、相手をしてもらい……好きなように彼女の体を堪能した上に、何度も何度も膣内に注ぎ込んで、ビアンカ同様あふれるくらいにいっぱいにしておいて、約束を反故にするという選択肢は……僕にはありえない。

誰かが、交渉や約束事は、立場が対等でなければ意味がないって言ったらしいけど、知らん。

 

さて、そうなると……今度は『姫様』の利用価値を喧伝なり何なりする必要が出てくるか。

立場が立場だし、今回はそれほど難易度高くはなさそうだ。すぐできるな。

というか、イゼッタ達の喧伝の時にある程度一緒にやってたから、土台はできてるな。

 

……問題は……どう利用するか、その後の安全をどう確保するか……か。

 

こないだの裏工作でそこそこ目立っちゃった上に……最近、魔女関連の技術革新、それによる各担当将校への陛下の警戒が増している現状を考えると……中々リスキーで難しい問題だな。

さて、どうしたもんか。

 

 

 

………………いっそ……いや、何でもない。

 

 

 

@月^日

 

表向き、何事もなく、今まで通り過ごしている。

形だけの聴取、そこでの雑談……時々、きまぐれで座敷牢に出向いて雑談。

 

夜になれば……その日の調子とか体調を見て、あるいは気分で、どちらかの部屋へ。

あるいは両方を自分の部屋に呼ぶ。

 

ビアンカとの……口調の端々に反発するような感情をにじませつつも、最終的には快感に屈してしまう、女騎士を征服するような一晩を楽しむもよし。

 

イゼッタとの……好感度も悪くなく、従順で、尽くすように奉仕してくれるプレイに、思う存分甘えて、欲望のはけ口になってもらうもよし。

 

特にイゼッタは、慣れない手つきでも……なんていうか、ホントに真剣に相手を、というか奉仕をしてくれている感じなので、単に気持ちいいだけでなく、その……征服感があっていい感じ。心の奥底にある、支配欲が満たされる……とでも言えばいいか。

 

なまじ、汚っさんらの拷問で色んな目に合わされている分、男性器の扱いや気持ちよくなり方にある程度知識があるため、それを活用してる感じ。

 

まあそれも、自分で積極的に奉仕していくだけの余裕があるうちの話で……こっちが攻めに回ると、されるがままによがる感じで……まあ、こっちはこっちで気分いいんだけど。

 

たぷん、と弾む豊かな胸に、形がよくて安産型のお尻、そして、やわらかいのに締まりがよくて、ぎゅうぅぅ……と心地よく肉棒に絡みつく、名器と言っていい肉壺。

どれをとっても、最高に楽しみ甲斐のある女体を好きにできる。これらを使って奉仕してくれる。

 

初めて抱いたときは……正直、汚っさんらが夢中になるのもわかる気がしたもんだ。

 

彼女自身の内面の清純さ、まっすぐさも相まっていいスパイスになり……ため込んでる性欲全部ぶつけるつもりで、何度も何度も犯してしまって……抜かずの何発だって感じで、ひたすら彼女の膣内に子種汁を注ぎ込み続けた。

避妊薬の投与を行ってなければ、ほぼ間違いなく妊娠させてたであろう量を。

 

実のところ、このまま自分のものにしたい、という欲求さえ、最近は感じる。

愛人にして、囲ってしまって、毎晩、いつでも心行くまで愛して……ゆくゆくは、孕ませて。

永遠に、骨の髄まで僕のものにしてしまいたい。

 

……なんかもう、ビアンカとあわせて……僕の方が本当に2人に篭絡されてしまったような気がしなくもない。

 

何度か僕の部屋に2人そろって呼ばれてるため、ちょっとした噂としてささやかれている程度のものではあるんだけども……嘘から出た真、になりつつある、かも。

 

というか、僕の気のせいじゃなければ……2人とも、それも視野に入れている節がある。

 

もろに篭絡して手駒に、って感じでは別にないんだけど……情を湧かせて、自分たちに感情移入させて、意見を通りやすくして……おねだりを聞いてもらえるような間柄になってもらうような。

 

その延長上で……大公殿下の身の安全とか、そのあたりに役立てば、って感じだ。

 

実のところ……そっちについては、手を出した責任で最大限の便宜を図るつもりなので、そこまで必死にならなくてもいいんだけどね?

まあ、力を入れてくれる分にはこっちも気持ちいいので、助かるけども。

 

 

 

@月%日

 

とうとう、というべきか。

中央……というよりも、陛下からアクションがあった。

 

といっても、それほど悪い知らせが来たわけでもなく、むしろ、こちらとしては大歓迎な内容だったりする……文面通りに読み取れば、だけど。

 

通信使によってもたらされた指令は、『ランツブルックにおける占領統治府における暫定責任者の任を解く。中央から派遣される後任者に速やかに引継ぎを行い、本国に帰還せよ。なお、戦略的見地における重要虜囚については同行させ、引き続き少佐の管理下に置くこと』とのことだ。

 

一見すれば更迭ともとられかねない内容だが……そもそも僕は、ランツブルックの『暫定』の責任者だった。元々本職が来るまでの間に合わせでここにいた軍人に過ぎないのである。なので、特に問題はない。

 

……問題は、それと一緒に入ってきたもう1つの指令だ。

 

『今後、エイルシュタット公国占領統治府および前線司令部は、ランツブルックからゼルンへ遷移するものとする。引継ぎの条項に盛り込みの上、速やかに準備されたし』

 

エイルシュタットの首都であるランツブルックではなく、わざわざ副都心のゼルンに……何で?

交通の要所であるとはいえ、利便性についてはランツブルックに圧倒的に劣るのに……。

 

……そして、さらにもう1つ。

これは、指令としてきたわけじゃなく、僕が部下に調査させた結果として別口で入ってきた情報なんだけど……

 

……どうやら、『エクセニウム』を使って研究されていた、例の新型爆弾が完成したらしい。

実験風景を記録したフィルムを入手したので、見てみたんだけど……何だコレ。

 

……見事な、キノコ雲。

しかも、形からしてアレな弾頭を、『ミサイル』という名の新兵器に搭載し、それをゾフィーの……魔女の力で発射して目的地に着弾させるって?

一撃で戦略爆撃以上の威力をたたき出すって?

 

……どう見ても核です本当にありがとうございました。

 

ベルクマンの研究を、軍事利用目的に徹底的に発展させた結果がコレか……。

僕の前世の原爆とかとは違って、燃料が魔力だから、放射能とかはまき散らさないようだけど……ほとんど何の慰めにもならんぞコレ。威力がそもそも凶悪すぎる。

 

前世とはいえ、類似品を2発も落とされてる国の出身者としては……コレはさすがに、祖国最強!ともろ手を挙げて喜ぶ気にはなれない……。

コレ、本気で帝国このまま突っ走らせたらまずいんじゃ……。

 

そしてだ。そもそも、このタイミングでランツブルックから帝国軍の施設を遷移……つまりは、撤退させる理由を考えると……最悪の予想が組み上がる。

 

…………ランツブルックを……ここを的にして、火力実験やる気か……あのヒゲ。

 

 

……これはいよいよ……覚悟決めなきゃいけないかもわからんね。

 

 

 

 



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08 未来の分岐点

 

@月%日

 

ベルクマン中佐が行方不明になった、と連絡があった。

親衛隊についていった何かの作戦行動の途中で、消息が途絶えたらしい。

 

まあ、そんなに驚くことじゃない。ある意味当然というか……予想通りだ。

 

ヤバそうだ、って話は前から聞いてたし。時間の問題だろうと思っていた。

あの人なら、いくら皇帝に目をつけられたからといっても、そう簡単に殺されやしないだろうと。

 

転んでもただじゃ起きない男だ。自らの目的達成のために、手段を選ばない。

 

しかしこうなると、次の彼の行動は……亡命か、あるいは……「勝ち馬に乗る」かだ。

 

しかし、追われる身となっているであろう以上、その「勝ち馬」はゲールではあり得ない。他に用意する必要がある。

となると、その最有力候補は……

 

……まずいな。下手をすると、こっちにまで火の粉、もとい、とばっちりが来る。

 

が、上手く利用出来れば……

 

…… これはちょっくら、時間をかけて慎重に考えなきゃいけないかな。

作戦参謀の腕の見せ所だ。

 

……こっちもまあ……祖国のためにじゃ、ないけどね。

 

 

 

@月*日

 

汽車の上なう。

 

第二次大戦ちっくな世界観ゆえか、この世界ではいまだに蒸気機関車が活躍している。

馬力もあり、壊れにくいので、大量の物資や兵員の輸送には重宝されている。

 

当然、軍は戦争中には頻繁にお世話になる。

 

今日も僕は、ランツブルックの駐屯地を撤収し、そこからの物資と人員の移動のためにこうしてお世話になっている。

自分や、イゼッタ、ビアンカも含めてだ。

 

彼女達には、今後の予定も話してある。

 

これからエイルシュタットを出て、ゲール本国の僕の家に向かう。そしてそこで、これから君たちがどうなるか決まる…と。

正確には、どうするか決めた陛下の勅令を聞く。

 

なおその際、ランツブルックと違ってレイラインの通っている…すなわち、魔法か使える地域を通るわけだけど、問題はない。

 

イゼッタの首には、僕が錬金術の応用で作り出した、魔法を封印する効果のある首輪がはめられている。

これがある限り、イゼッタはどれだけ太いレイラインが通っていても魔法を使えない。

 

事前にそれを説明した時、2人共、少しがっかりした様子だった。

直後にそれに気づいて、ばつが悪そうにしてた。

 

まあ、そりゃ、隙があれば逃げようと考えるのは当然だしね。別に責めたりはしないよ。

 

けどそれ以上に……特にビアンカが、ゲールの魔法関連の技術が、大きく進んでいることに戦慄していた。

 

すでに、レイラインの有無によらずに魔法を無効化することまで可能になっている。

であれば、他の応用ないし補助技術……それこそ、魔女に力の強化や、最悪は汎用化すら可能になっているのではないかと。

 

つい最近、魔女という手札を得て、最初から強力過ぎるそれに頼りきりだったエイルシュタットからすれば、想像すらしづらいのも無理はない。ずっと旅ばかりの人生の中で、「魔女の力とはこういうもの」と教えられ、その通りの考えしか持っていなかったイゼッタも同様だ。

 

ただでさえ強力なこの力を、より強く、より使いやすく改良した技術が、敵にある(かもしれない)。

その意味がわからないほど、2人も鈍くはなかった。

 

まあもちろん、どこまで進んでいるかなんてのは軍事機密だから答えなかったけど……暗に「楽観視はしない方がいい」とだけ言っておいた。

ちょっと意地悪な言い方なのはわかってるけど……事実だし。

 

それを聞いて2人は、思案するような顔になり……しばらくすると、どちらももとの調子に戻ったようだった。

 

そこに至るまで、彼女達が脳内でどんな考えを張り巡らしたのかは……わからなかったし、特に聞きもしなかった。

 

……もうじき、考える必要も無くなるんだけどね。

上手く行けば、だけど。

 

 

 

@月?日

 

鉄道ダイヤの関係で、エイルシュタットから出るまでに一泊して間を置くことになった。

 

物資・兵員の輸送の都合によるものとのことで、路線を使えないそうで。

 

まあ、もともとエイルシュタットへ侵攻した当初の目的が、同盟国である連邦とのそれらの流通を円滑にする為の経路の確保だったわけなので、何も別におかしくはない。

 

陛下の命令に基づいた異動とはいえ、突然なのはこっちだったわけだし。

 

……問題は、その一泊する間に、派遣先から戻ってきた査察官という名の汚っさんが合流することになったことと、

 

付近で散発的に起こった戦線の整理のため、僕の旅程が一部ずれることになったことだ。

 

これに際し、汚っさんからわざとらしくも「陛下のご意志による人事を少しでも円滑に実施するため、捕虜の護送を自分が引き受けたい」との連絡が入った。

 

つまり、イゼッタとビアンカは自分が預かって責任もって本国まで運ぶから、お前は残って仕事してから来い、ということだ。

 

その間にナニをする気なのか、魂胆が見え見えであるが。

 

さぞ面白くなかったことだろう。他人の後始末のための人事異動で、それまでお気に入りだった女体という名の玩具×2と引き離されるのは。

行った先でもどうせ娼婦なり捕虜なり抱いてたんだろうけど。

 

僕と彼女らを引き離して、その間に何をする気なのか……まあ、考えるまでもない。

 

久しぶりに、その欲望を彼女らの若い体にぶつけるつもりでいるはずだ。ご丁寧に、部下……というか、取り巻き達も伴ってるし。

 

保護以降も、僕が彼女らと懇ろだってのも、噂レベルなら話に聞いてるだろうし、叱責されたらそれを理由にごまかすつもりなんだろうな。

 

……まあ、その辺を含めて……こっちの想定内なわけだが。

 

さて……明日が楽しみだ。

こちらはこちらで、準備を万全にしておかないと。

 

☆☆☆

 

 

ある場所、ある時間。

アルプス山脈の山麓にある、とある寂れた軍用施設にて。

 

「それは……確かなのか?」

 

「はい。信頼できる筋からの情報です。ただ、どうしても伝達の関係上、差し迫った直前のものになってしまいましたが……」

 

「それについては構わん。むしろ、こんな状況下で、我々が最も望む情報が手に入ったのだ。これ以上は何も望むまい」

 

住み心地はいいとは言えないが、地図にも乗っていないがゆえに、潜伏先として優秀と言えるそこに……オルトフィーネ大公以下、逃亡生活を続ける、エイルシュタット公国の重鎮達はいた。

 

帝国の占領統治府によって指名手配され、今や追われる身である彼女らは、ジーク首席補佐官が持ち帰ったある情報に、目の色を変えていた。

 

『拘留中の重要人物が、近日中にランツブルックからゲルマニア本国へ護送される』

 

この情報を聞いて、そこにいる全員が、イゼッタとビアンカのことだとわかった。

 

片や、先のゼルン回廊の戦いで囚われの身となり、奪還も失敗、未だに帝国の手の中にある……フィーネの親友。

 

片や、公国に、フィーネに忠誠を誓い、いついかなる時も彼女らを守ってきた……先の撤退戦で、自分たちを逃がすために殿を務めて捕まった、皆からの信頼厚い近衛の隊長。

 

その2人を奪還するチャンスが巡ってきた事実に……食欲も衰え、以前に比べてすっかりやつれてしまったフィーネの瞳に、光が戻っていた。

 

もうひと月以上もその顔を見ていない親友と、いつでも自分を守ってくれていた懐刀。ともすれば、もう二度と会えないのではないかと何度も思って枕を濡らした、彼女達と。

 

しかし、同時に不安もある。

 

単純に……その隙を突いたとしても、圧倒的に数で勝るであろうゲールからの奪還が可能なのか、ということもある。

 

が、それ以上に……これからどうするか、という点にも不安があるのだ。

 

「国境の管理は厳重、周辺国家への圧力もあり、亡命申請も移動も困難である以上、勝機をこじ開けるにはここを狙う他にない……それも事実だ」

 

直近に襲ってきたゲールの部隊。そこから国を裏切る形で彼女達の一団に入ってきた、アルノルト・ベルクマン中佐。

 

彼によってもたらされた、ゲルマニア帝国が完成させた新型爆弾の存在。一撃で大都市を吹き飛ばす威力だというそれの矛先が、祖国・エイルシュタットはランツブルックに向けられているという、最悪の状況。これを打開しなければならないのだ。

 

追われる身となったがゆえに、自己の保身のために彼女達についた彼の言葉は、あまりにも当然であり……同時に厳しいものだった。

 

最早、フィーネがその身を差し出してさえ止まることのないであろう凶行。これを止めるには、およそ常識の限界を突破した戦術が、そしてそれを成すだけの力が必要になる。

 

その最も確実な方法として、発射と誘導を担うゾフィーを戦闘によって抑え込むというものがあるが……それを成せるとすれば、同じ力を持っているイゼッタだけだった。

 

それが、彼女に更なる負担を強いる結果となることがわかっていても……それすら勝算は低いとわかっていても……ここで止めなければ、祖国は滅び、そこに暮らす人々が死に、ゲールは本当に世界に災厄をもたらす存在となってしまう。

 

何もできない自らを責めつつも、フィーネはイゼッタ奪還のため、そしてミサイル発射阻止のための戦略を練り上げる会議に臨む。

 

しかしその場において、ベルクマン中佐からもたらされたのは……吉報であり、さらなる凶報でもあった。

 

「クローンである彼女には活動限界がある。全力戦闘はせいぜい2時間程度が限界……魔法の運用次第ではそれ以下だ」

 

「つまり……それをしのぎきれば、ミサイルが発射されることはない、と?」

 

「ああ……その、はずだ」

 

「? どういうことだ? 歯切れが悪いな……何かあるならはっきりと話せ」

 

不適な笑みを絶やさない印象があったベルクマンが、ふいに浮かべたその表情、そして言いよどんだその態度に、不安感を滲ませる一同。

 

しかし、彼が続けたのは……その不安を打ち消してくれるものではなかった。

 

「……彼女のその活動限界時間の問題は、僕がまだ帝国軍にいた数日前時点での最新のものだ。が……厄介なことに、帝国には、その問題を解決してしまいうる技術を持った人物が1人いる」

 

「何……どういうことだ?」

 

「ゲールは何も、戦闘分野だけに限って魔法というものを研究してきたわけではない……軍での戦闘行為における利用の研究・開発を進めていたのが僕なわけだが……もう1人、医療・薬学の分野において研究を進め、一定以上の成果を出した人物がいる」

 

「……占領統治府暫定統括……サンジェルマン少佐、だな?」

 

と、ジークハルト・ミュラー首席補佐官が、冷汗を垂らしながらつぶやいた。

全員の視線が集中する中、彼は構わず続ける。

 

「今回の異動で本国に戻るとされる張本人。彼の活動内容自体が機密扱いゆえ、ろくな情報が手に入らなかったが……眉唾物のそれで、再起不能の大怪我をも一瞬で治してしまうと聞いた」

 

「その情報を手に入れた部下は優秀だな……大事にしたまえ。まあ、さすがに一瞬などということはないが……事実だ。現に、彼はイゼッタ君の傷を、全て跡形もなく消してしまっている」

 

「イゼッタの……どういうことだ!?」

 

「ゼルン回廊でのゾフィーとの戦いにおいて、イゼッタ君は高所からの落下をはじめとして、様々な深刻な負傷を抱え……特に、足はそのほぼ全ての運動機能を喪失するレベルだった。日常生活を送れるようになるにも超長期の治療とリハビリが必要と見られ、一生後遺症が残るのではないか、とも言われていたが……それを彼、サンジェルマン少佐は、僅か数日で完治させている」

 

「……なんだと……!」

 

「まさしくおとぎ話の魔法使いのように、彼は超常の治癒能力を、魔法技術によって発現するに至った。彼はその力を、学問体系化して『錬金術』と、自らを『錬金術師』と呼称しているよ。名前はジョークのようだが……その実力は本物だ」

 

「……医学・薬学における魔法の力の応用……それの進捗具合次第では、クローンであるがゆえに生体機能が虚弱なゾフィーの弱点を、後天的な処置によって克服しうるわけか……」

 

「そうでなくても……現時点における技術水準でも、極端な話、ゾフィーが疲弊するたびに治療してしまえばいい話なんだ。仮にイゼッタが時間稼ぎでしのぎ切ったとしても、数分後から十数分後には、疲弊した状態で完全回復したゾフィーとまた戦わなければならなくなる。そうなれば、結果は火を見るよりも明らかだ」

 

「そんな……!」

 

あまりにもこちらに不利な状況に、ジークハルトを含めてその場にいる全員が絶句する。

ゾフィーだけでも目的達成が至難だというのに、これでは……サンジェルマンが敵にいる限り、勝ち目があまりにも薄い。

 

「……つまり、こちらが勝利するには……イゼッタの奪還はもちろん、どうにかしてサンジェルマン少佐の無力化を図らなければならない、と」

 

「理想は捕縛。彼の技術は今後の役に立つ……それができなくば、暗殺かな」

 

「言うほど簡単ではないだろうがな……何にせよ、それしか手がないのなら……」

 

「……やるしか、ないということか」

 

生唾を飲み込み、憔悴した顔色を隠そうともせず、冷汗を流しながら……フィーネは祖国のため、友のため、決意を固める。

 

その様子を見て、その場にいた者達もまた……死地へ飛び込む決意をした。

 

それを見届けたうえで、ジークハルトは地図を指し示しながら、会議を前に進める。

 

「作戦目標は、イゼッタ君の奪還と、サンジェルマン少佐の確保または抹殺だ。一応、策はある。まずは、今回の地理的有利を最大に生かす形で……」

 

 

☆☆☆

 

 

@月///日

 

…………成功した。

 

あーあ、成功しちゃった。

あーあ、うまく行っちゃった。

あー、もう引き返せない。

 

……ま、別に後悔もないけど。あ、でも不安はあるな。

 

まあでも……これ以外にない、ってのは僕が自分でさんざん考えて結論出したことだから……こうなりゃ、全力で行けるところまで行くしかないわな。

 

この先の未来……ゲルマニアが、エイルシュタットが、そして世界がどうなるか。

 

神のみぞ知る、とでも言うのかね。

 

 

 



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08.5 3人の夜宴

@月^日(夜) ビアンカ視点

 

裸でベッドの上に仰向けになり、隠すことなくすべてをさらけ出している……イゼッタ。

その上に、サンジェルマンは同じように裸になって覆いかぶさり、イゼッタの秘所に、いきりたった逸物を沈めていく。

 

やわらかな、しかしぴったり閉じたその割れ目をこじ開けて、その先の肉の壁を押しのけて進み……やがて、そのペニスが根元まですっぽりと入る。

 

表情からは……挿入されているイゼッタはもちろん、組み伏せている側のサンジェルマンもまた、恥ずかしさでか、顔を赤く染め……頬を汗が伝い、快楽でいっぱいいっぱいになっていることが見て取れる。

 

その状態で、ほどなくして余裕が出てくると……今度は、ゆっくりとしたペースで、徐々にテンポよくなるように、サンジェルマンが腰を振る。

ぱん、ぱん、と……素肌同士が打ち付けられる、単調だがどこか淫靡な音が部屋に響く。

 

そこに至っても……快感をこらえて、固く目をつぶったり、息を乱して酸欠のように呼吸を荒くする様子は……何というか、初々しいものを感じる。

 

まるで……童貞と生娘のまぐわいのようだ。

この様子だけを見て、軍人と捕虜――支配する側とされる側の間柄だとわかる者はいないのではないかと思う。

 

無理やり組み伏せて慰み者にすることなら普通にあろうが……目の前で繰り広げられている、ぎこちなくもどこか一生懸命なこの交わりは、恋人同士にすら見える。

 

もちろん、本人達にそんなつもりはなく……お互いの欲求を満たし、あるいは要求を通すための行為であることに間違いはないのだが……やはり、そうは見えない。

 

イゼッタの上にのしかかり、その裸体を慈しむように抱きしめるサンジェルマン。

それを抱きしめ返し、首元に顔をうずめるイゼッタ。

胸板に圧迫されて、たぷん、と変形するイゼッタの乳房。

下から突き上げ、突き上げられて震え、動く2人の体。わずかに音を立ててきしむベッド。

 

若者同士の交わりによくある、お互いをいたわり、想うことに必死な感じが伝わってくる。

 

……案外、本当にそうなのかもしれない。

 

サンジェルマンは、こういった行為に真剣な部分があって……捕虜相手でも本気で愛した相手にするかのように……こう、全身全霊?な部分があるし、イゼッタは今まで、口にするのもはばかられるほどにひどい目にあっていた分、こういったノーマルなセックスはより心地よく感じるのだろう……私もそうだったからわかる。

 

とはいえ、これはあくまで取引のセックスなのは間違いなく……であるならば、姫様の親友でもあるイゼッタにそのようなことをさせるのは忍びない。

代われるものなら、代わりたい。

 

……しかし、それもできない。

さっきまで、あのイゼッタの立ち位置に私がいて……すでに、この身はサンジェルマンの情欲を限界まで受け止め、とろけ切ってしまっている。

 

足腰には力が入らないし、脱力のあまり手も動かない。息はまだ全然整っていないし、何より……精液と一緒に注ぎ込まれたような多幸感のせいで、若干意識がもうろうとしている始末。

とても……少なくとも今すぐには、彼の若い情欲を受け止める余裕はない。もしやったら……確実に気絶する。

 

……これでも、軍人として、近衛としてそれなり以上に鍛えていたつもりだったのだが……やはり、男と女ということなのだろうか?

 

そんなことを考えている間に……向こうはいつの間にか一区切りついたようで。

絶頂の快楽に体を反らせ、部屋に響くイゼッタの嬌声の中……サンジェルマンとの結合部から、注がれてあふれ出た子種が垂れてきて、ベッドにシミを作っていた。

 

しかしそれでも……イゼッタ、サンジェルマンともに互いを放さず、たくましいことに、抜かずの2回目に突入……今度は、上下を入れ替え、イゼッタを上にして下から突き上げるようだ。

 

 

 

正常位に騎上位、バックに対面座位……何度も形を変えて続いた、イゼッタとサンジェルマンのセックスは……何度お互いが絶頂に至ったかわからないくらいに続いた。

イゼッタの体力が底をつき……崩れ落ちるように気を失うまで続いた。

 

それでもなお余裕があるらしい彼の相手は……ここからは、当然ながら私が勤める。

 

といっても、まだ体力が回復しきっておらず、自由には動けない私であるので……ほとんど、されるがままに犯される形になる。

 

どうやら今日は後ろからの気分だったようで……気絶しているイゼッタの隣で、四つん這いにされて後ろから尻をわしづかみにされ、高揚しているらしい気分のままに、やや乱暴に突き入れられて……始まった。

 

……恥ずかしく、情けないことに……この男とまぐわうようになってからというもの、この身はすっかり快楽の虜になっている。それが……ごまかしようもなく、自分でわかる。わかってしまう。

 

いくら、エイルシュタットの近衛として凛々しくあろうと、いかな辱めにも屈せずいようとしても……先の、あの痴れ者共に輪姦されていたころは、それで通じていたにも関わらず、

サンジェルマンのペニスがもたらす快楽の味を覚えてしまった体は、その刺激に容易に狂う。

 

いくら最初は虚勢を張っていても……気が付けば、姫様には死んでも聞かせられないような、淫乱極まりない言葉が次々と口をついて出て……敵国の軍人に媚びを売る。

 

……この間、そうなっている状態の私の様子を、鏡で見せられたことがある。

つながっている状態で持ち上げられ、部屋の姿見のところに連れていかれて。

 

空気を求めてか、だらしなく開いた口。こぼれ出ている舌。口の端からは……よだれが。

見苦しさすら感じる、焦点のあっていない目。快感のあまり、涙まで流している。

糸の切れた人形のように、だらんと弛緩した体。秘部は肉槍で貫かれ、ものほしそうにひくひくと震え……結合部からは精液と愛液の混合物が垂れ流しになっていた。

 

そのまま、下からずんずんと突き上げられて、乱れさせられて……思い出すのも恥ずかしいくらいに、淫らな言葉を口にしながら……最後には、子種を注がれながら、そ、粗相を……。

 

もはや、プライドも何もない。この男の前で……恥ずかしい姿は、それこそ親兄弟以上に見せた。

 

……この先、これを恥と思うことすらできなくなるのか……と、うっすら感じている。

もし、そうなってしまったなら……私は……姫様にお仕えすることなど、できなくなるだろう。ただの、雌になってしまう。『コレ』がなければ……生きられなく、なってしまう。

 

……意外とそれは近いのかもしれない。

今、意識して頭の中に必死に届かせないようにしている……早くも肉欲に溺れ、私の口から飛び出しまくっている、この聞くに堪えない言葉の数々を考えれば。

 

 

☆☆☆

 

 

同日 イゼッタ視点

 

「ひはああぁあああっ! い、いぃいっ! おちっ、おひんひんいいのぉっ! わたっ、わらひのっ、オマンコっ、喜んでるっ! きゅんって、きゅんってなっちゃう! ああぁぁああっ、もっと、もっと来てぇぇ、わだしの膣内んあああぁああそれだめぇぇええ!!」

 

普段は、男装の麗人としても通用しそうなくらいに、凛とした、軍人然とした人物であるビアンカさん。

そんな彼女が、今、私の目の前で……見たこともない姿をさらしている。

 

さっきと同じように、普段は絶対に言わない、言っているところを想像もできないようないやらしいことを……サンジェルマンさんに、後ろから貫かれながら、次々と。

 

ぐちゅぐちゅ、じゅぽじゅぽ……と、そんな喘ぎ声の中でもはっきり聞こえるほどに、ビアンカさんの恥部はびしょびしょになっていて……そこを出入りするペニスがもたらす快感を、全身全霊で貪っているように見えた。

 

……ひょっとしたら……何も知らずに、この状態の彼女だけを見たら……普段の彼女を知っている人なら、ビアンカさんだとわからないかもしれなかった。

 

最初は四つん這いだったんだけど、すでに腕に力が入らないみたいで、とっくに崩れ落ちている。今は、膝だけ立ててお尻を突き出すような姿勢になっている。

 

それを、遠慮なく乱れ突いているサンジェルマンさん。

脱力しているのに、快感のあまり暴れまわってのたうち回りそうになるビアンカさんを、お尻だけでなく全身を、自分の全身でのしかかるように押さえつけて腰を振っている。

 

ピストンは、私の時より、多分ずっと強くて……ぱん! ぱん! って……サンジェルマンさんの腰が、ビアンカさんのお尻を赤くするくらい、かいている汗がはじけ飛ぶくらい、勢いよく叩きつけられ続ける。

まるで、獣の交尾みたい……見てて、すごく……いやらしい。

 

だというのに……それを見てて、じゅんっ、と、お腹の奥が熱くなる。

 

乱れに乱れてしまっている彼女を見て、憐れむでも、恐怖するでもなく……そんなに気持ちいいのかな、と思ってしまう。

 

……程度や感じは違っても、私は私で……きちんといやらしくなっちゃってるんだな……。

 

「あっ、は!? あが……んほぉおおぉっ!? きた、きたぁぁぇあぁっ! せーえき、きたぁっ、奥に……赤ちゃんの部屋に、どぴゅどぴゅって来てるぅぅううっ! 孕ん、じゃう、できひゃうぅぅ! 私、ゲールの赤ちゃん汁で妊娠しちゃうのぉぉおお!」

 

もう何度目かになる膣内射精で――射精してる間もサンジェルマンさん、腰止めないんだもんなぁ……――いわゆる『あへがお』っていう奴になってしまいながらも、快楽をむさぼるビアンカさん。自分でも腰、動かしてる。サンジェルマンさんの動きに合わせて、気持ちよくなるように。

 

収まりきらない精液があふれ出し、ベッドにしみこむよりハイペースで流れてくるそれが水たまりになって……それに滑って、ビアンカさんが崩れ落ちる。

蟹股で……すごく、嫌らしくて、はしたない格好で……まるで、カエルみたい。

 

転んだ拍子にペニスが抜け落ち、だらしなく広がってしまった膣口から、注がれた精液がさらにどろどろと漏れ出てきて……そんな中でも『あ、あはっ……しゅごかったぁ……』って、恍惚の笑みを浮かべているビアンカさんは……どうしようもなく淫らだった。

 

しかし、見る限りさすがに第2ラウンドも限界そうで……

……そうなれば、今度は……私の番なわけで。

 

ふぅ、と胡坐をかいて一息ついている――しかし、おちんちんは勃起したままの――サンジェルマンさんのところに這っていって、そこにまたがって……

 

……ここからは、わたしの第2ラウンド。

 

私だって……こんな体になっちゃって……今みたいなすごいセックス見せられて、興奮してるんですから……ちゃんと可愛がってくださいね。

今度は、さっきより激しくしていいですから。

 

 

 

結局、さらに1ラウンドずつやって……ようやく終わり。

さすがにもう出ないところまでやって……最後の一発まで私とビアンカさんの膣内に注ぎ込んだサンジェルマンさんは、力尽きる感じでベッドに倒れこみ、そのまま寝入ってしまった。

 

そこから、私とビアンカさんが、最低限動けるだけの体力と、冷えた頭の冷静な思考を取り戻すまで、数十分。ただただ横になって、休んでいた。

 

そんな私たちの目の前で、無防備に眠るサンジェルマンさんは……まるで、子供みたいな寝顔。

 

彼を今、害そうとするなら……魔法も、凶器もいらないだろう。首を絞めるだけで済む。

 

仮にも敵同士の私たちの前で、こんな風に決定的な隙をさらしている彼は……私たちを信頼してくれてるのか……はたまた、そんなことはできないと計算ずくなのか。

 

そんなことを考えつつ……私は、恋人同士みたいに、その胸板に体を預けて寝ている。

……敵同士なのはわかってる。でも、なんていうか……落ち着くんだよね。

 

「……すまなかったな、イゼッタ……また、見苦しいものを見せて」

 

と、ようやく正気に戻ったらしいビアンカさんが、やや顔を赤くしながら。

あ……記憶はあるみたい。逆に大変そうだけど。

 

ビアンカさんは、近くにあったタオルを水で濡らし、それで軽く体をぬぐうと……裸のままなのを気にもせずに、ベッドから降りて……寝室の中を物色しだした。

 

最初は私も、この泥棒みたいなのを見てびっくりして止めたんだけど……ビアンカさんが言うには、『了解はもらっている』とのこと。

 

この寝室から出なければ、何をしてもいいらしい。棚の資料や新聞なんかを勝手に出して見てもいいし、小型冷蔵庫を開けて、中にある飲み物やおつまみを勝手にもらって、食べたり飲んだりしてもいい。そう、サンジェルマンさんも了承済みだって。

むしろ、私たちに対しての報酬・対価の1つだから、存分に見ていいって。

 

本当に見せられないものは、そもそもここに持ってきていないそうだ。

 

一通りめぼしい資料をチェックした後は、持ち出しはさすがにできないので、内容は頭で覚えて……あとは朝まで、体力回復のために寝る。私も、一緒に。

さっきと同じ……彼の胸板に体を預けて。

 

このところ、新聞で聞かされるニュースは……どれも、エイルシュタットや連合国の立場からすれば、凶報というしかないものばかり。

 

多分、このままいけば……連合国は、帝国に敗北する。

姫様もつかまって、エイルシュタットは完全に征服されるだろう……って、くやしそうにしながらも、ビアンカさんは言ってた。見たくない、けど見なければいけない現実を前にして。

 

……そうなった時のために、私たちはこうして……サンジェルマンさんに取り入ってる形だ。

 

最初こそ、もう何も考えずに、姫様を助けたい一心で願い出た体の関係だったけど……ビアンカさんと話して、この立場を最大限利用した方がいい、っていう話になって、

 

あまり考えたくないけど……姫様が帝国の手に落ちてしまった時のために、彼……サンジェルマンさんを味方にするために……

味方とは言わなくても、譲歩や配慮を引き出せるように、こうして私たちは、彼に抱かれ続けている。

 

手ごたえはある。サンジェルマンさんは、きちんと約束を守って、私たちの待遇もよくしてくれたし……それ以外にも色々と便宜を図ってくれたりしてる。

ランツブルックの占領統治も、圧政を敷いたりせず、穏やかにやってくれてる。

 

私たちのわがままなら、多少のことなら笑って聞いてくれそうだし……多少の枠内でなくても、自分やゲールにも利益のある事なら、交渉に応じてくれる感じだ。

 

……誤算としては、彼を篭絡するよりも下手したら速いペースで、私やビアンカさんの方が、彼との夜の生活の虜になりつつあったり……なんてところもあるんだけど。

 

姫様……私たち、もし、あなたに何かあっても、少しでもあなたを助けられるように頑張りますから……

安心して、なんて言えないけど……どうか、どうかご無事でいてください。

 

 

 

 

そんな風に考えていた、私たちの……そして、姫様の状況が大きく変わるのは……もう少し先の話だった。

 

 

そして、その原因は……この後、訪れた。

 

 

 

 

「ん、あ……あれ、まだ暗いな……」

 

「あ、ごめんなさい……起こしちゃいましたか?」

 

「ん? ああ、いや、別にいいよ……そこそこ休めたっぽいし。体、平気? あんだけやっといて僕が聞くのも不自然かもだけど……」

 

「だ、大丈夫です! ちょっとやっぱり、腰とか痛いし、だるいけど……朝には治ると思います」

 

「ならいいんだけど……あー、何か目が冴えちゃったかも」

 

「あ、私も……よかったら、ちょっとお話とかしませんか? まだ、寝る時間あるし……話してる間に眠くなるかもですし」

 

「ああ、そうだね。いいよ? さて……何話すか」

 

「……あ、それなら私、その……前からちょっと気になってたことあるんですけど、聞いてみてもいいですか?」

 

「? いいよ、何?」

 

「その……

 

 

 

……前に、サンジェルマンさん……『ゲルマニアじゃなく、エイルシュタットに生まれたかった』、って言ってました……よね?」

 

 

 

 

 

 



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09 信頼が導く反逆

@月{日

 

昨日はまあ……色々ありすぎて疲れて、日記もろくに書かずに寝ちゃったので、今日まとめようと思う。

 

 

 

まず、汚っさんらの謀略で、僕がエイルシュタットの戦後処理をやってる間に、イゼッタとビアンカだけが汚っさんらに連れられて国を出ることになった。

 

汚っさんがそれを利用して、僕の居ぬ間に、久々の2人の体を堪能する予定だった。邪魔が入らないよう、直前で人員配置の一部変更何かも行って……列車の中でから始められるように。

プランとしては、夕方発の列車なので、夕飯の後に2人を手籠めにする気だった様子。

 

しかし、その歯車はすでに狂い始めていた。

人員配置の変更……僕に無断でやったそれの際に、イゼッタとビアンカの奪還をもくろむ、オルトフィーネ大公殿下の手の者が紛れ込んでいたのである。

 

そのスパイ……ビアンカの部下の近衛たちだったらしいけど、兵員がごまんといる駅や都市周辺にいるうちは大人しくしていたが……国境付近、大きな川を渡る鉄橋のところで牙をむいた。

 

ちょうど夕食を終えて、彼女たちのところへ行こうとしていた汚っさんと取り巻き共を無力化し、列車の各部を爆破して連結を破壊、ちょうど、イゼッタ達の乗っている車両が、鉄橋のど真ん中で立ち往生するようにした。

 

資材をメインで積んでいたために兵員が少なく、しかも仮にも指揮官である汚っさんが早々に無力化されていたこともあり、対応できないまま事態が進む。

 

炎上する列車から脱出した彼女たちは、鉄橋から飛び降り……時間ぴったりに橋の下を通過した、お仲間が用意したボートに飛び乗って、見事に脱出。

帝国の魔の手から、自分たちの仲間を奪還することに成功した……

 

 

……と、思われていた。

 

 

さて、そのほぼ同時刻、別動隊によって……警備が手薄になったところを、僕ことソロモン・フォン・サンジェルマン少佐の捕獲あるいは暗殺のための作戦が行われていた。

 

が、予定の場所に僕は現れず……それに困惑していた、そのエイルシュタットの別動隊の皆さんは……潜んでいた伏兵たちに襲撃され、瞬く間に全滅してしまいましたとさ。

あ、殺してないよ? 一応。催涙ガスとか、特殊部隊のやり口で無力化しただけ。

 

 

ここまで言えば普通に分かったと思うけど、この襲撃作戦、僕は予想していた。

というか、そう動くように僕が誘導したんだけど。情報から何から、全部わざと流して。

 

で、見事に引っかかってくれた、エイルシュタットの皆さんを狩ったわけ。

 

そして、町郊外にいると思われていた僕が実際にはどこにいたかと言えば……無論、前線だ。

前線は前線でも、『彼女たち』を捕獲し返すための前線だ。

 

ボートでの脱出は、事前の準備なしには陸上から追いかける手段が皆無に等しい、有効な一手だと言える。しかしそれはあくまでも、事前の準備がない場合だ。

 

加えて、確かにあの川は大きいけど……川である以上、進行方向は限られる。上流か下流。あるいはさっさと接岸して逃げるかだ。接岸するにしたって、あまり鉄橋が近いと追いつかれるし、銃弾が届くかもしれないから、ある程度は移動するだろう。

そしてこの川、すぐ上流に河底段差があるので、遠くまで逃げることができない。

 

つまり、下流に下るしかないのだ。

 

そして下流には……潜水装備で、徹甲弾を装填した水中銃を構えた僕の部下の兵士たちがスタンバイしていた。さらには、川岸に狙撃班も。

 

で、数分後。

所定の位置に差し掛かったところで……船のエンジンを破壊されて川の真ん中で立ち往生した大公殿下たちは、スポットライトで照らされ、狙撃兵たちに銃口を突き付けられ、さらに帝国軍所有の河川航行用モーターボートで周囲を完全包囲され、あえなくお縄で全滅……というわけだ。

 

最初から最後まで計画通りである(ニヤリ)。

 

武装船舶の上から、僕が直接行った降伏勧告に、オルトフィーネ大公殿下が直接応じてくれたので……そこでゲームセット、チェックメイトと相成った。

 

……ていうか、大公殿下が最前線のこの船に乗ってたことが驚きだったな。

 

さて、ともあれこれで、エイルシュタットの抵抗勢力中枢の皆さん全員を捕虜にできただろう。

 

内訳としては……まず、ボートに乗っていたオルトフィーネ大公殿下。

何でこんなところにこんな人が……と思って後で聞いたら、どうしても彼女たちを自分が助けに行きたかったのと、もし作戦が失敗した時に、自分がその場で降伏宣言をすることで、引き換えに部下たちの助命を嘆願するためだったとか。

 

その護衛兼前線指揮をしていた、ジークハルト・ミュラー首席補佐官。

なぜか魔石の片割れを持ってたんで、没収しておいた。

 

軍所属のハンス・オーベルマイヤー少佐……ああ、彼、イゼッタが落とされた時にも救出しようとしてた人だな。失敗だったけど。

 

軍医だっていうハルトマイヤー氏。2人が負傷している可能性を考慮してたらしい。

 

スパイとして乗り込んできていた近衛の子たちや、ボートに乗っていた兵士たち。

ルイーゼ、アデーレ、クリスタ……あー、以下省略。

 

それに……やっぱりいたよ。ベルクマン中佐。

色々この作戦のために暗躍したんだろうな……プラン内でも予想外の事態がいくつか起こったと思ったら、彼の伝手による手引きだったわけだ。余計な苦労をさせてくれた。

 

そして……ものの数分で奪還し返す形となった、イゼッタとビアンカ、だな。

 

さらに、僕の暗殺に出向いていた近衛と兵士の皆さん。こちらもきれいに捕獲。

 

そして、最近ひそかに確保した――と思っていたが実際はこっちで把握していた――アジトで待機していた、シュナイダー将軍にヴァルマー首相。その他首脳の方々数名。

あと、メイドのロッテって娘と、広報担当のエルヴィラ・フリードマン女史。

 

いやー、護衛の兵力も3分割されてて、殿軍やって逃げるだけの余力もない中での制圧戦だったから、楽だった(って報告を受けた)。

アルプス山中での時みたいに、逃げられちゃかなわんからね。

 

で、それぞれ近くに待機させていた護送車両に乗せて、最寄りの鉄道駅を有する町で合流。全員集合の後、列車に乗せて一路、本国へ向かいましょう……というわけだ。

 

……こんなとこか。

以上、エイルシュタットの頭を抑えるに成功するまでの経過報告でした。

 

なお、今回僕に黙ってバカなことをやった査察官は、見通しが甘いにもほどがあったとして、今回の襲撃事件その他の責任をすべて背負った上で……列車爆破に巻き込まれてご臨終いただいている。

ようやっとあの害虫駆除できた。やれやれ。

 

 

………………さて、

 

『準備』は整った。

ここからが、本番……正念場、だな。

 

 

 

@月}日

 

僕らは今、一路、途中乗車した特別秘匿列車にて、本国ゲルマニアは首都、ノイエベルリンへ向かっている。

 

車内には、今回とらえたオルトフィーネ大公殿下以下、部下の方々全員を乗せている。武装解除した上で、一応、役割ごとに分けて。

高級官僚とか軍人、従者とか協力者枠の人、そして中枢も中枢のフィーネ大公、って具合に。

 

彼女たちはこれから、ノイエベルリンへ到着次第連行され、戦争犯罪人として裁判の末に処罰を受けることになるだろう。

 

軍関係者の多くは極刑、あるいは収容所行きだ。

諜報部の関係者とかはまず間違いなく消されるだろうな。

協力者とかは禁固刑とかで済むかもだけど……。

 

……大公殿下はどうなるだろうな。普通なら極刑だろうけど、懐柔策とかに走る可能性もあるかも。部下の態度次第では、政略結婚で内部に取り込むとかもありうるかもね。

 

 

 

…………なんてね。普通ならね。

 

しかし今回、そうはならない。

 

 

 

というか、なりようがないのだ……何せ彼女たちは、ノイエベルリンに連行されるのではなく……その途中にある僕の領地にて途中下車し、そこでしばらくかくまわれて生活をする予定だからだ。アルプスの秘密基地にいた頃みたいに。

 

前述の『彼女たちはこれから(略)』から『……なんてね』の直前までが嘘。

本当は彼女たちは……これから、帝国を倒すための乾坤一擲の作戦のための準備に入ります。

 

そして僕は、彼女たちを助けるために……帝国を裏切ることにした。

 

 

理由は3つ。

 

1つ目は……今まで日記ではさんざん書き綴ったけども、このまま帝国を放っておくわけにはいかないだろう、と思ったから。

このままだと、この国は世界中に戦乱をばらまき続けるだろうから。

 

そしたら……いくら核ばりに強力な兵器があるからって、こっちが被る被害もバカにできないもんになるだろうし……相手国からの恨みつらみも募る。

国力は無駄に消費していく。その分を当てなきゃいけない国家事業も山ほどあるだろうに。

 

その辺ほとんど一切無視して、あの皇帝は世界征服なんて、大魔王ちっくな野望に向けて前進しようとしてるわけだから。

 

……実際にそんなことしてみろ、地獄だぞマジで。

 

ちょっと考えればわかることなんだけど……国ってのは、大きくなればなるほど、加速度的に管理が大変になるのだ。

治安が悪化しないように警察機構を配備したり、軍が出動できるように屯所とか基地を整備したり、あとはインフラその他もろもろ……

 

あんまり大きくしすぎて管理しきれなくなると、国内でよからぬことを考える輩が出たり、併合した旧敵国の領地でパルチザンが湧いて出たり……面倒ごとが多い。

だから、世界征服なんてのは……ぶっちゃけて言えば、現実的じゃないのだ。だって、破たんが目に見えてるんだから。

 

それを皇帝は……魔女の力と近代科学の力の合わせ技でどうにかしようとしてるわけだけど……絶対うまくいかないだろう。恐怖統治でどうにかしようにも限度あるし。

 

仮にだ。このままほっといても、世界征服なんて失敗に終わるだろうし……万が一世界統一に成功したとしても、その後の色々でゆっくりと崩壊に向かっていくだろう。

 

最初こそ魔女の力で抑え込もうとも、その魔女がゾフィー1人しかいない現状、限界はある。技術が進歩すれば、いずれそれに対応されるだろう……

 

……というか、対応しうるだけの技術をすでに僕が開発してるんだけどね、色々。

 

とにかく、だ。結論。

このまま帝国ほっといて世界征服計画進めさせると……長期的に考えて、単純に世界大戦やるよりも何十倍もひどいことになる。世界各地で、帝国に反発する正規兵・非正規兵入り乱れた戦いがあちこちで起こり、戦争に関係あるなしに関わらず大勢の人が死に、国が消えて難民が世界中にあふれ、治安の悪化が……考えるだけで頭痛くなってきた。

 

それをまた大量破壊兵器その他で抑え込もうと考えなしに撃ってみろ、世界人口の桁が一つ減りかねないぞ。いや、マジで。

 

 

さて、そうならないためにはどうすればいいか。

 

帝国が負けるのが一番手っ取り早いけど……これはこれで難しい。

 

まず、軍が普通に強い。

帝国は、精強な軍隊と多数の俊英の参謀将校を有し、有事に備えて施設や法の整備等も万全の、正確無比な戦争機械だ。その辺の国と、普通に戦争しても普通に勝てる。

 

加えて、ゾフィーが強い。

もうコレは言うまでもないんだけど、魔石パワー+帝国製の近代兵器を操って暴れまわるワンマンアーミー。まともに止められる軍が……無い。ブリタニアそろそろ滅びそうだし。

 

極めつけに、エクセニウム兵器がやばい。核爆弾だよあれマジで。それたくさん作ってるもの。あんなもんバカスカ撃ったら、ヨーロッパ中が焦土だらけになるわ。

 

アレは……存在するだけならともかく、使っちゃダメな兵器だ。

 

 

 

さて……長々と帝国放置しとくの無理な理由を語ったわけだが。

 

次、理由の2つ目。

僕の『錬金術』の研究成果が……ベルクマン中佐のゾフィー関連に引き続き、皇帝にとられそうになっとる。

 

まだベルクマン中佐の時みたいに、表立って『これから直接管理するから』みたいな指示こそないものの……僕への急務として、後進の育成を進めるように指示が下った。

 

それだけなら、広くこの技術を広めることを目的にしてるとも取れるけど……同時に、この技術に関しての使用その他権限、方向性なんかについて、僕から皇帝に権限を移して集中させるための法整備を模索する動きがあるようで。

 

法治国家とはいえ、中央集権で基本的に何でも思いのままにできるだろう皇帝が、そうまで周到に準備を進めて……おそらくは、これから世界を相手に戦争をするにあたって、この技術がどれだけ大きな力となるかを理解しているからだろう。

 

前々から、細かいところで予兆みたいなのはあったんだけどもね……

気が付いた時には、乗っ取りの準備は全部が全部整っていて……そのすべてが終わった暁には、僕は……よくて飼い殺しか島流し、悪くて『不慮の事故死』……かな?

 

何もかもが不吉すぎて、その時一緒に『中佐に昇進する』って言ってもらえたことが全くうれしくなかったしな……。ベルクマン中佐もこんな気持ちだったのかね?

 

 

で、3つ目。前2つの理由で、帝国の持つ軍事力は強大で、全世界から危険視されている。国内のみならず、国外にもその最強説を信じて、傘下に帰順するべきという意見が出るほどに(無論だが、こいつらは帝国が劣勢になればあっさり手の平を返すので、仲間が増えたよわーい、なんて喜ぶのは無理)。

 

しかしだからこそ、悪役に仕立て上げてぶっ壊すのに丁度いい……という見方もできる。

 

世界を恐怖のどん底に陥れかねない大魔王を倒すのを大義名分に裏切る……完ぺきではないにせよ、かなり物語性があって、民衆受けもしそうな題目だ。

事前に帝国に、国際社会から非難を受けまくるような非道な行いをさせておけば一番いいか。

 

そういうわけで……今は、絶好のチャンスなのだ。帝国を生贄にささげ、この戦争を『悪者退治』という、わかりやすく、あとくされのない形で収束させるための。

 

……アトランタ合衆国が似たようなこと考えてるっぽいけど、あの国に任せると、ヤバそうなのを全部……それこそ、エイルシュタットも含めて滅ぼしそうだしね。

 

僕も、イゼッタも多分死ぬ。殺される。合衆国へ牙をむきかねない者を残さないために。

それも……戦争が終わった後にだ。闇から闇へ葬られる。

 

それは勘弁。だから、自分から動いて主導権を握る必要があるわけだ。

 

以上、これら3つが理由…………

 

 

 

…………あ、でも、

 

……本当はあと1つ、4番目の理由あるんだけど……いや、コレは理由といっていいものかどうか。

前3つの理由から、コレ帝国裏切った方がいいかもなー、って考えてた僕が、逃げ道として無理やり用意した、理由とも言えない理由……ただのきっかけだからだ。

 

……イゼッタを利用して。

 

まだ、ノイエベルリンから撤収指令が届いていなかったころ。

ビアンカとイゼッタを抱いたある夜……なんか、夜中に目がさめちゃって、眠くなるまでにイゼッタと交わしたピロートークの中で、ふと、こんな話題になったのだ。

 

前に僕がちらっとこぼした『ゲルマニアでなくエイルシュタットに生まれたかった』というセリフをイゼッタが覚えていて、それについての話に。

 

まあいいかと思って話したのは……僕が特に帝国に忠誠心とか感じていないということと、単に育ててくれた家への恩と義理から戦ってるってこと。けど、近頃の国際情勢を見るに、それでいいのか悩んでること。

簡単に言えば、さっき言った『コレ帝国このまま放っといたらやばくね?』ってことだ。

 

うちに仕えてくれている使用人たちや、毎度秘密の作戦で動かす直属の部下たちも、僕あるいはサンジェルマン家そのものに恩義・忠義を感じて使えていくれている者がほとんどだから、もし僕がエイルシュタットに裏切っても普通についてきてくれるだろうな、とか。

むしろ、現時点でも帝国に不信感持ってる奴もいるからな、とか。

 

今思うと、結構やばいこと言ってたな……毎晩抱いて、心の距離が近くなって(僕が一方的にそう感じてるだけかもだが)、しかも事後で疲れて眠くて頭回らなくて、油断したか?

 

しかし、それを聞いて……イゼッタが一瞬、すごく驚きつつも嬉しそうな顔になって……しかし、慌てたようにすぐひっこめた。物理的に、顔を、布団の中に。

 

けどその直後……すぐに顔を出したイゼッタが、我慢できないような様子で聞いてきた。

 

『例えば、ですけど……もしあなたに、エイルシュタットの……姫様の味方になってもらえるように、私が頼めるとすれば……どうすれば、頼みを聞いてくれますか?』

 

交渉事としてはありえないくらい、まっすぐな質問だった。

けどまあ、彼女らしい。面と向かって、敵に『味方になってくれ』とは。

 

予想外に、目の前にいる敵が寝返ってくれる可能性がでてきたせいで、こらえきれなくなって聞いてしまったそうだ。

 

面白かったので……そこで僕は、彼女に、自分への発破もかねて、こう申し出た。

 

『なら、賭けでもしようか』と。

 

もし、これから先……姫様こと、オルトフィーネ大公殿下が、帝国につかまる、あるいは自分から降伏してくる、あるいは何のアクションも起こさないようなら……僕の勝ち。

 

イゼッタやビアンカは僕がもらう。僕に忠誠を誓ってもらって、僕はこのままゲールに所属して……イゼッタには、ゲールの魔女になってもらう。そのために力を振るってもらう。その場合も、可能な限り大公殿下は僕がかばうことは約束しよう。

 

けどもし、大公殿下があくまで戦うことを望んだら……亡命政府を打ち立てて徹底抗戦を叫んだり、イゼッタを取り返しに殴り込みをかけてくれば、イゼッタの勝ち。

 

僕はゲルマニアを裏切って、君たちの味方になる。人脈や個人としての能力はもちろん、『錬金術』やその理論なんかも使って全力で協力する。帝国を打倒して、戦争を終わらせて、欧州に平和を取り戻し……『皆が選べる明日』を作るために手を貸そう、と。

 

つまるところ……これは、イゼッタが『フィーネが自分との約束を守るかどうかを信じられるか』という点を核にした賭けなのだ。

 

フィーネが、イゼッタが戦う限り……イゼッタの希望になってくれるという約束を、違えることがないか。決してあきらめず、夢のために突き進んでくれるか。途中で、弱気になって心が折れて、あきらめて楽な方に流れてしまわないかどうか。

 

そう問いかけた時、イゼッタは驚いた顔のまましばらく固まって……しかし数秒後には、これ間にないくらいに力強く、自信に満ちた笑みを浮かべて、うなずいた。

 

賭けは成立。

 

結果は……ご存じの通りだ。

 

……とまあ、これらの理由を根拠に、僕はゲルマニアからエイルシュタット……というか、連合軍に味方する形で暗躍し、ゆくゆくは大っぴらに動くことを約束した。

 

電車の中で、イゼッタを伴って、大公殿下やビアンカ、それにミュラー補佐官やベルクマン中佐にこのことを話した時は……まー、驚いてたな。

 

その後、喜ぶ者、疑う者、困惑しっぱなしの者……それぞれだったけど。

 

ま、いきなり信用されると思ってたわけでもないし……別にいいけどね。

何なら、全部が終わった後で『ああ、ホントだったんだ』とか納得してくれてもいい。僕は僕の思惑の下に、勝手にやるから。

 

 

 

つーわけで反逆だ、覚悟しろ疑心暗鬼皇帝。

 

僕は……ゲルマニアを、ぶっ壊す。

 

 

 

……ちなみに、イゼッタに賭けの話をしたその時に……イゼッタが承諾した直後、抱き着いてきてキスされた。びっくりした。いきなり何で!? って。

 

そしたら、どうやら、彼女が前に雑談の中でちらっと話した程度の――たしか、まだゾフィーが彼女に拷問して、それを治療してやってた頃だから……めっちゃ初期の話だ――けど、自分にとっては何より大切な姫様との約束を、覚えていてくれたことが嬉しかった、って。

そして、それに続けて……

 

『今のでわかりました。あなたは……やっぱり、優しい人です』

 

『私、こんな形でだけど……あなたに出会えてよかった。ひどい目にあったり、あわされたり、滅茶苦茶な関係だけど……本当によかったです』

 

『あなたが姫様に……フィーネに手を貸してくれるなら、きっと……きっと優しい世界になる』

 

『え、もう勝った気に? わかりますよ……だって私、フィーネを信じてるから。それに……あなたのことも信じられるから。絶対に約束を守ってくれるって』

 

『きっと、皆で……私も、フィーネも、あなたも……笑って未来を生きられるって、わかるから』

 

……なんか、逆にプレッシャー感じるくらいに信頼されてしまった。

かわいかったけど。やっぱり、女の子は笑顔が一番だよ。

 

 

 

 




次回、最終話(多分)


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10 丸く収めた(力技)

!月~日

 

とりあえず、エイルシュタットの皆さんは……僕の管理下にある別荘みたいな場所で潜伏してもらいつつ、準備を進めてもらうことにした。

 

これからやるのは……帝国の打倒。

そのためにやるべきことは多いけど、大きく分ければ3つ、上げることができる。

 

1つ目。魔女ゾフィーの打倒。

今や、全世界にとって脅威として認識されている彼女の排除なしには、ゲルマニアを打倒したことにはならないし……逆にこれを達成してしまえば、一番わかりやすい手柄になる。

 

2つ目。ゲルマニア帝国の、連合国軍に対する全面降伏。

これはただ負けを認めさせるだけじゃなく、ちょいと細かい条件があったりする。色々、多方面に手回ししておぜん立てをする必要がある。

これについては僕と……ベルクマン中佐にも働いてもらうとしよう。汚い部類の仕事になる。

 

3つ目。エイルシュタット、及び『新生ゲルマニア(仮)』の、国際社会における立場の確立。

これが一番面倒だ……というか、帝国関係ないのに必要な外交戦略だ。

主に、火種全部消そうとするであろう合衆国を黙らせるために。

 

これら全部を達成することで……初めて僕たちの望む勝利が手に入る。

犠牲は敵だけにとどめ、余計な手出し口出しが入らないように。エイルシュタットにとっても、僕みたいな一部のゲールにとっても、ヨーロッパの各国にとっても、都合のいい形に。

 

そのためには、言うまでもないけど、事前の周到な準備と、各自の連携・協力が重要になる。

 

ここにあたって僕が不安だったのは……協力することを約束したとはいえ、仮にもゲールの軍人である僕やベルクマン中佐を、最低限とはいえ、彼女たちが信じてくれるか、だったんだけど……それについては、イゼッタとビアンカが説得してくれた。

 

彼は確かにゲールだが、信頼できる男だ、と。

 

彼女たち2人が協力して言うことには――その説得自体も人を選んで行っていたけど――帝国軍にとらわれた自分たちは、日々辛く厳しい責め苦を受けていた。

しかし、それに加わらず、逆に自分たちをかばってくれたり、治療を行ってくれたのだと。

命に係わるケガを治してもらったこともある。彼がいなければ、イゼッタもビアンカも、生きていられなかっただろうと。

 

……大体本当だけど……一部、正確でない部分がある。

いや、言ってないだけなんだけど……僕は確かに、汚っさんたちのバカな行為に参加してはないけど、その後に別個に彼女たちにきちんと手を出してるんだけど……

 

しかし、うまいことビアンカが話を持って行って、そこには触れず、なおかつ嘘もつかずに……さらに、『確かに彼は、上層部による拷問の間は私たちを助けることはなく、見て見ぬふりをしていましたが』と、あえて負の側面を語ることで、評価に『底』を作り、それ以上下がらず、その後のフォローで押し上げるように弁舌を振るっていた。

 

結果……少なくとも作戦行動をとる上では信頼できる、との結論に落ち着いた。

 

まあ、それで問題はない。大公殿下も……イゼッタの恩人であることは確かだからって、過去の遺恨はお互い考えずに手を組む、ということを了承してくれたし、説得に難儀しそうだったジークハルト補佐官の方は、ベルクマン中佐が受け持ってくれた。

……似てるような似てないような2人だけど、だからこそうまくやれたらしい。

 

まあ、今はこれで問題ない。

というか、別にこれ以上親しくならなくても……繰り返すが、最低限、協力して作戦行動をとれる程度の信頼があれば、それでいい。

 

むしろ、無理して仲良くなろうとしない方がいいだろう。

 

どこかの第六天魔王も、『呉越同舟とかよく言うがな、危機が迫れば軋轢や不和がなくなるとか、んな事ァ絶対に無ぇ!!(中略)そして取り返しのつかないことになるのだ!!』って言ってるし。

変に無理して相手を理解しようとして考え方をきしませるよりは、あくまでビジネスパートナー、くらいに考えていた方がいいだろう。ジーク補佐官とか、ベルクマン中佐あたりは、呼吸をするように……とは言わないまでも、そういった割り切りは得意なようだし。

 

そう思ってたんだけど……ビアンカとイゼッタが間に立ったからか、大公殿下やメイドのロッテちゃんは、多少なりこっちを気にかけてくれてるような気配があるかも。

……まあ、それならそれで、悪い気分じゃない。

 

少なくとも、彼女たちの信頼や期待を裏切る気はないし……仲良くできるならしとこうか。その方が……こころなしか、イゼッタも嬉しそうというか、気が楽そうだし。

 

……とりあえず、準備進めるか。

時間的余裕はあまりない。あのおっさんが火力演習をやらかす予定の、ヴェストリアでの会談の日までに……全部済ませないと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

E月F日

 

……日記をつけるのも久しぶりだな。

随分、間が空いてしまった。

 

まあ、色々忙しかったからな……。あれから、今まで。

 

もう現実の世界では、皆が知ってることであり……改めてこうして書く必要があるかは微妙なところではあるけども……一応、あれから起こったことをまとめておこうか。せっかくだし、最後まできちんと『日記』にしておこう。

 

 

 

結論から言えば、周到な準備の甲斐あって、全てうまくいって、丸く収まった。

 

 

まず、イゼッタVSゾフィーの方は、2つの新兵器を見事に使いこなしたイゼッタの大勝利。

 

一つは、僕が錬金術で作った人造魔石……その名も『賢者の石』。

オリジナルの魔石より出力では劣るものの、こちらには副作用がない。命も削られないし、激痛も起こらない。

 

そしてもう一つは、超がつくくらいに高性能の対戦車ライフルと……それと連動させて、出力不足を補うために用意した仕掛けだ。

これが上手いこと機能して、見事ゾフィーに勝つことに成功した。

 

その仕組みは……簡単に言うと『よし、月が見えた!』……これに尽きる。月だけに。

 

……まあ、早い話が、足りないなら外部からエネルギーを送ってやりゃいいだろってことだ。

某二連衛星砲にエネルギーを供給するマイクロウェーブみたいにして、あらかじめ抽出したエネルギーを超圧縮してイゼッタに送り届ける。このエネルギー加工にも『錬金術』を使った。

 

照射する施設は、さすがに月に作るわけにはいかないので……戦闘機に機材を搭載して僕が乗り込み、状況に応じて超高高度から行った。

 

その際、操縦桿を握ってくれたのは……ブリタニア軍のエースパイロットである、グローマン中佐である。イゼッタと、空母ドラッヘンフェルスの一件で知り合いっぽかったので、手伝ってもらった。

個人的に、声がシブくていいひとだな、と思った。

 

この人のおかげで、ゾフィーがこっちに攻撃を向けてきても、撃墜されることなくイゼッタに魔力供給を続けることができた。

 

イゼッタが外部からのエネルギー供給で自分に対して優位に立ちまわってると知ったゾフィーは、供給元をつぶすべくこっちを攻撃してきたものの……さすがのゾフィーも、エースパイロットの操る最新鋭の戦闘機に、イゼッタの猛攻をかわしながら攻撃を当てることはできなかったのだ。

 

加えて、この圧縮エネルギーを受け取るには、専用の設備が……具体的には、イゼッタの対戦車ライフルに組み込まれている受容システムが必要。これがないと……圧縮を解凍できない。

 

正しい手順での解凍ができないとどうなるかは……僕らを排除できないと見るや、自分がイゼッタと僕らとの間に割り込み、供給されるエネルギーを横取りして使ってしまおうとして……圧縮されたエネルギーが暴発してゾフィーが自爆したことから読み取れる。

 

あまりに一度に大量のエネルギーが流れ込んだために、ゾフィーは魔石の副作用の激痛なんかも加わって完全に隙だらけに。

 

そこに、改めて僕らからのエネルギーを受け取ったイゼッタが、対戦車ライフルという名のサテライトキャノンから放った、メガ粒子砲ばりのビームに、ゾフィーはなすすべなく飲み込まれていった。

 

 

 

次に、ヴェストリアで行われた秘密会談……という名の恫喝外交については、大公殿下が殴り込みをかけて、ゾフィーを倒したことと、イゼッタによって『エクセニウム』による兵器全て……もちろん、ランツブルックに向けて飛んでいるミサイルも含めて、ある方法でたった今をもって無力化したことを告げて、議場の流れを一気に変えることに成功した。

 

魔女のみならず、あてにしていた秘密兵器が全部だめになったことで、ゲルマニアは一気に窮地に立たされたわけだ。

 

その上さらに追い打ちがかかる。僕の方で調べて大公殿下に渡しておいた、この戦争に関わるゲルマニアの悪逆非道な、国際法どころか国内の法にてらしても違法である行為の数々をその場で告発。ゲルマニアはさらに立場を悪くした。

 

そしてそれらに団結して対処する、という目的で、参加していたヨーロッパの各国は結束を新たにし、ゲルマニアに対して改めて徹底抗戦する旨を確認したのである。

……その件を介して関わることのできない合衆国を、ごく自然に蚊帳の外にして。

 

なお、ゲルマニアがすでに生成し、兵器に加工あるいは保存していたエクセニウムについては……あれは物質化したとはいえ、元は魔力であるため、タンクの中に入ってるとかミサイルに搭載されてるとか、そういう状況関係なく、外部から干渉して蒸発させることが可能だ。

 

例えば、魔石でレイラインの魔力を吸い上げるように、エクセニウムを魔力に還元して吸い上げることで、結果的に蒸発させて奪うとかもできる。負担でかいからやらせないけど。

 

なので、ここでもマイクロウェーブ風魔力照射装置を応用し……波長を変えて圧縮した魔力をイゼッタが超広範囲に拡散させ、帝国全土のエクセニウムを連鎖的に蒸発させることに成功した。蒸発したエクセニウムは魔力に戻り、また再び空気中に散って、レイラインに戻るだろう。

 

 

 

そして最後に、魔女を危険視して排除を図るであろう合衆国への対処だけど……これについては、僕が保護する形で、手を出させないように守ることに成功している。

 

ただしもちろんそれは、ゲルマニアの軍人とか名家として保護したわけじゃなく……『二つに分かれたゲルマニアの、正義側の代表』として保護したのである。

 

武器をなくし、魔女を失い、国際社会共通の悪者一直線だったゲルマニアだが、その状況を利用し、僕とベルクマンは情報戦略でこの国を二つに割ることに成功した。

雑な言い方だが……『良いゲルマニア』と『悪いゲルマニア』に。

 

要は、今まで非道な行為を数々行ってきたゲルマニアは、悪者の皇帝や高級官僚たちによってかじ取りをされてきた結果であって、それを知って正義に立ち上がった者達が、祖国を正しい国に戻すべく立ち上がった。ならば国際社会はこれを支援し、悪の国として滅びそうになっているゲルマニアを生まれ変わらせて、そこに住む無辜の民を、国そのものを救おうじゃないか!

 

……ってな感じの建前を、連合国で示し合わせて作り出したわけである。

 

もちろん、こんなものは民衆向けのストーリーに過ぎず、各国首脳がこんな茶番に付き合ってまでゲルマニアの再生に手を貸してくれたのは、ゲールほどの大国が滅んで分割統治されるようなことになれば、その規模から色々と問題が出てくるとわかっていたから。

 

形だけでも国が残っていれば、簡単になんとかできる問題はかなり多く、面倒を事前に回避できるわけだ。

 

そしてもう1つ……僕が、各国首脳に提示した……『魔法』というものの、産業分野での有効活用の可能性について、ある程度国として機能を残しておいた方が、そこで継続的に研究を進めるのに好都合だったからだ。

 

資源、エネルギー、薬学、医療……様々な分野にこの力の応用が利くであろうことを知った各国首脳は、さらにこちらが戦争にかかる賠償の一環として、当事者となった国々にこの技術を公開すると宣言したことで、ならば保護しようってことになった。

 

こうした理由から、悪の敗戦国としてのゲルマニアは、皇帝や高級官僚たちをスケープゴートにする形で滅び、『新生ゲルマニア』が発足、そのかじ取り役の1人に、僕が就任することができた。

 

で、この国における研究の重要なパートナーとして、エイルシュタットを、そしてイゼッタを名指しで指定して保護することとし、その『新生ゲルマニア』を、ヨーロッパの連合国が、『我々の仲間である』と認めて保護し、さらにこちらが提供した技術で武装すれば……合衆国も手出しはできなくなる、というわけだ。

 

強引な上に物騒だって?

確かにそれは認めるけど、互いにバカやらないよう、できないように監視するような形で平和を保つのは、前世の地球でもあったし……かの有名な『天下三分の計』だってそんな感じだ。

 

ともあれ、こうしてすべての問題を解決しつつ、戦争を終わらせることに成功した僕らは……国際社会において、魔法技術研究の最先端国家という立場を確立し、その中枢人物として末永く幸せに暮らす人生を手に入れましたとさ…………おしまい。

 

☆☆☆

 

「さて、こんなとこかね」

 

ことり、とペンを置いて、その場でのびをする。

 

デスクの整理をしてたら、奥の方に紛れ込んでた日記を見つけて……久方ぶりに書いてみた。

 

せっかくなので最初の方から読み返してみると、まー色んなことがあったもんだとわかる。

 

自分の文章力のなさゆえに、その時その時の場面の緊迫感その他が伝わりにくい駄文だったけども……まあ、本として誰かに見せるために書いてるわけじゃなかったわけだし、仕方ないだろう。

 

しかしこうして思い返すと、ホントに色んなことがあったもんだ。この数年ばかりで。

 

といっても、戦争中の出来事だけあって、あまり愉快とは言えない事柄も多かったし……中には、自分自身の醜さや不甲斐なさが見てとれる、あんまし眺めていて気分の良くない記録もあった。

 

それがわかってたから、これを見つけたとき、読まずに捨てようかとすら思った。

 

幸いにして、今、僕の人生は……所属している国等全て含めて、順風満帆と言っていい充実したものとなっている。

わざわざ嫌なことを思い出してもな、と。どうしても一瞬思ってしまった。

 

しかし、ここに記してある事柄もまた、僕が歩んできた人生に他ならないのも事実だ。

 

それはもちろん、彼女達との出会いや……ここに至るまでのあれこれも含めて。

 

彼女達とは、出会いは最悪だったし、それ以降もしばらくは、友好的とは程遠い関係だったというか……ぶっちゃけ、今のような形になるとは、あの時は想像も出来ていなかった。

 

戦争していて敵同士……しかも、そのうち一人は身内の仇なんて間柄だったわけだし。

 

……まあ、それが逆に、遺恨を乗り越えて平和な世界を作るために尽力しているっていう、プロパガンダ向けの感動エピソードになってた部分もあるし……ホント、この世は何がどう転ぶかわからんね。

 

なんて、感傷的な気分に浸っていると、机の上の電話機がやかましく鳴った。

取ってみると、出たのは……今まさに、ここに至るまでのアレコレを思い返していた、あの子だった。

 

『あ、サンジェルマンさん! イゼッタです!』

 

「おう、どうしたの? 会議、午後からだったと思うけど……」

 

一時期は戦場で、傭兵か非正規兵みたいな扱いというか認識を受けていた彼女も……魔法・魔力がひとつの資源となり、それを扱う技術がひとつのきちんとした学問となった今では、れっきとした公人である。

 

僕が中心となり、あれから発足した『EU』の後見を受ける形で発足し発展した、魔法関連技術の研究機関の顧問として、彼女自身が社会的な地位を持ってるし……もちろん、エイルシュタット公国やフィーネ大公との付き合いも、元通り続いている。

 

というか、エイルシュタット公国そのものが、魔法関連の牽引国になってるし。

大公殿下も、それ関連で戦後は一時期大忙しだったらしい。

 

そして僕は、『錬金術師』として……その分野の第一人者として活動しているので、必然的にイゼッタ達とは関わる機会も多い……ってわけだ。

 

…………もっとも、

それによらない関係も……続いてるんだけど。戦争中から。

 

「じゃあ、その時間、会議室開けておくから。資料はこっちで用意するから、参加者への声かけだけ頼むよ。急な話だから、出席率には期待できないかもだけど」

 

『ありがとうございます! そ、それで、その……』

 

「うん?」

 

『……その後、お時間って、ありますか? その、出来れば……朝まで、とか』

 

「……いいよ、待ってる。足はどうする?」

 

『ビアンカさんに送ってもらいます。なので……ふ、2人一緒に……に、なっちゃうんですけど……』

 

「いいよ、もちろん。……明日もしかしたら、疲れて仕事にならないかもしれないけど。あ、僕じゃなくて、君らがね?」

 

『大丈夫です! 明日一日は、私もビアンカさんも休みとってありますから!』

 

「そりゃ周到なことで……なら、泊まっていけばいいよ。……こちらも遠慮なく、2人そろってメチャクチャにするから」

 

『……はい♪』

 

 

―――ガチャッ。

 

 

 

 




これにて閉幕です。
……書きたいようにだけ書きまくってたらこんな感じに……勢いだけで突っ走ったので、ストーリーとかあってないようなものと化した気が……

プロットもなしに衝動的に書き始めたのでそれも当然か……。

かなり好き放題書いたので、『こんなのイゼッタじゃない!』とか思われる方もいるでしょう(確信)その時はすいません。所詮は素人が書いた駄文だと思ってお忘れください。
そしてもし、面白いと思ってくださる方がいたら……ありがとうございます。
以上、失礼させていただきます。破戒僧でした。


P.S.

ひょっとしたら番外編やIFルート、あるいはもっと他の形でまだいくつか書くかもです。その時はまたどうぞよろしくお願いします。



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11-1 後日談 ビアンカ(前編)

はい、というわけで完結早々後日談です!

今回は、女騎士……もとい女軍人のこの人。
なんか、書いてたら予想以上に長くなったんで、いったん切ります。次回は明日以降書けたら!

じゃ、どうぞ。


B月K日

 

帝政ゲルマニアの解体後、戦後ということで……しばらくの間、混乱の時期というものはどうしてもあった。

まあ、これは仕方ない部分もある。人心も荒んでるし、社会も結構乱れて立て直しにはしばらくかかり……その間、しばらくは生活とか苦しい時期ってのはあるもんだ。

 

日本だって、戦後しばらくは復興が軌道に乗るまで大変な時期あったし。

 

しかしそれも、僕やベルクマン中佐の活躍――もとい、暗躍により、極めてスムーズに帝国崩壊→復興開始・各国連携への流れを持って来れたので、かなり早いペースで復興は進んでいる。

 

軍事・産業・経済・政治……それにおいても、『戦後はこの方針で進めよう』っていうおぜん立てというかレールみたいなのをあらかじめ作ってあったのだ。そのための準備もしてあった。

 

なので、それをなぞる感じでスムーズに進めることができているわけ。ほとんど社会が乱れる暇もないくらいに。皆、あまりに早く進む戦後復興についていくのに必死。うれしい悲鳴である。

 

しかしそれでも、ろくでもないことを考える連中は湧いて出るわけで……そういった連中の取り締まりに、戦後まず初めに機能を回復させた警察機構の皆さんには頑張ってもらっている。

今ではすっかり、僕らがいちいち細かくかじ取りとかしなくても、きちんと国内の治安を維持できるようになった。

 

それを見計らって、数か月前に僕は……エイルシュタットに引っ越している。

 

理由は、エイルシュタットには、今の時代の最先端と言ってもいい『魔法工学』および『錬金学』の、さらに最先端の研究機関が設置されており……僕はそこの所長に任命されているのだ。

加えて言うなら、イゼッタもここの研究員兼テスターとして在籍している。

 

そこは、EU本部を除くあらゆる権力から干渉を受けない絶対中立の研究機関であり、生み出された成果は、ヨーロッパの全ての国家の公共の福祉のために公開され、利用される。

 

ただし、出資国の集合体であるEUの国々がどうしてもひいきされるというか、優先される感じになるんだけど……まあ、そこは仕方ないだろう。

 

なので、そこの防備は一国の王宮もかくやって程に徹底したものになっている。

 

スパイや泥棒はもちろん、権力による裏側干渉も完全にシャットアウト。蛇の道は蛇ってことで、ミュラー補佐官とベルクマン中佐……ゲルマニアとエイルシュタットの裏側担当が総力を挙げて組み上げたセキュリティに守られ、アリ一匹通さない鉄壁の守りを誇っている。

 

そして、その実働部隊として働く『警備隊』には、中立性を重んじ、各国から優秀どころが選ばれて構成されたわけなんだけど……もちろん、エイルシュタットからも人材が用意された。

 

その1人が、ビアンカである。

後任にフィーネの近衛隊長の座を託し、若くして退役した彼女は……今度は第2の人生?として、全世界から注目される研究機関のガードを担当しているわけだ。

 

女性であることを感じさせない、凛々しく、規律正しく、きびきび働いて男勝りの活躍を見せる彼女は、警備隊の中でも憧れの存在になりつつある……と聞いている。

武力というか、実際に現場で動くよりは、指揮官としての活躍が多いそうだけど。

 

 

 

……そんな話を聞くたびに、心の中で得意げになっている僕は……小市民なのかもしれない。

 

皆が知らないビアンカを知ってるってことに……優越感を感じて。

 

 

☆☆☆

 

 

ここで、僕の現況を少し詳しく。

 

研究所の職員……特に僕やイゼッタクラスの者になると、存在自体が何物にも代えがたい価値を持つ。自画自賛だけど、魔法や錬金術の最先端を突っ走る立場ってのはそういうことだ。

 

そんな僕らは、ひとたび研究所の外に出れば、よからぬ組織その他に狙われること請け合いであり、当然その際の警備には最大限の注意が払われる。大統領でも来てるのかってくらいに。

『気軽に出かけられなくなった』ってイゼッタがしょげてた。

 

今日もまた僕は、外部での会議のために、対戦車ライフルの弾丸も通さない頑強さを誇る特別製リムジンで送迎されている。今、無事に会議を終えて帰る最中の車の中だ。

 

で、その最中……我慢できなかったので、護衛としてついてきてくれているビアンカにいたずらしている。

 

「ふっ、ん……くぅ……や、やめっ……い、今、仕事中だぞ……っ!」

 

それなりに広いリムジンの中、わざわざ隣に座っているビアンカを、後ろから抱き寄せる感じで……軍服の上からでもわかる形のいい胸と、ズボン装備で視覚的な防御力はあるものの、触ってしまうと感触のわかる股間に手を伸ばして……わきわきと。

 

恥ずかしそうに顔を赤くして体をよじらせつつも……強くは抵抗して来ないビアンカ。

早くも理性と情欲のせめぎあいが始まってるっぽいことが、彼女の表情と息遣いからわかる。……現状、理性が有利かな? まあ、さすがに仕事中だしね。

 

……けど……今日、蒸し暑い気温の中でずっとこの服着て僕の警護してくれてたせいで、うなじのあたりから漂ってくる香りが結構なことになってて……正直、煩悩に応える。

 

「かっ、嗅ぐなぁ、この変た……んひぃっ!? そ、そこ、やっ……あ、擦れ、っ……」

 

理性が警鐘を鳴らしたか、ビアンカは、僕からちょっと強引に離れようとする。

 

しかし、そこで後ろからぎゅっと抱きしめて、抱え込むように。

硬めの生地の軍服の向こうに、確かな女体の柔らかさ、抱き心地を……そして、徐々に火照ってきて熱くなってきている、ビアンカの体温を感じる。

 

同時に、彼女のうなじ・肩口に頭ないし顔を押し付ける形になったので、汗の匂いと、彼女自身の匂いが混じった香ばしい香りが……あー、女の子ってどうしてこういい匂いなんだろ。

 

「ひあぁっ!? や、やめっ……ほんと、ダメだ、からっ……!」

 

思わずぺろっと舐めちゃった僕は悪くない。

 

そしてだ……こんな状態でいれば、そりゃまあ……反応する場所もあろうもので。

 

ぎゅっと抱きよせているビアンカの腰あたりに、僕の股間の硬くなった部分が押し付けられて……それに気づいたビアンカの目が、ひどく蠱惑的な、うるんだそれになる。

 

現在、情欲が彼女の理性を急激に押し流しつつあると見た。

 

無理もないかも。肉体の方に火が付きそうになっているところに、大好物の気配を感じた彼女は……気づいてるのかな? 自分が……僕の片足、腿の上にまたがって、股間こすりつけて角オナみたいにしてることに。仕事中じゃなかったのー?

 

そして、ズボンでそんなことした日にゃ、さぞかし中身が大変なことになるだろうに。

 

――見たかったので、剥ぎ取る。

 

案の定……彼女のズボンを脱がせた途端、車内にむわっと広がる、濃厚な雌の香り。

その下のパンツもずり下ろしてやると……あーあ、ばっちりぐっしょり。糸まで引いてこんな……ドロワーズだから余計に蒸れて、汗のにおいも混ざってすごいことになってる。

 

男を狂わせる匂いが、鼻から入って、ガンガン僕の頭を内側から殴ってくる。

その誘惑に打ち勝てなかった僕は……恥ずかしさで硬直気味になって、そのせいでほとんど無抵抗なビアンカを、椅子の上にひっくり返して……いわゆる『まんぐり返し』の状態に。

 

そのまま、現在進行形で愛液があふれ出ているそこにむしゃぶりついて……ぺろぺろと。

 

「はぁああっ!? や、やめ……だめ、そこ……今、汗でっ、むわってなって……汚いからぁっ、お願……やめ、やめて……ああぁぁああっ!!」

 

そんな風に言いつつ、ろくに抵抗らしい抵抗もない。

恥ずかしいのはホントなんだろうけど……体は正直だってことだ。

 

頭がそれに正直になるのにしばらくかかるのが、彼女の長所でもあり短所でもあり……可愛いところでもあり、エロさの秘訣でもあり。

 

とりあえず、少なくとも体が喜んでくれてるのは確かなので、このまま続ける。

……よっぽど興奮してるんだな、すすって飲める勢いで愛液があふれ出てくる。

 

……途中から思い付きで、遊び始める。

 

この車はリムジンなので、飲み物とか色々充実している。

冷蔵庫を開ければ、世界各地の色んな飲み物やお茶請けがずらり。主に、僕の好物をセレクトしてたっぷりと用意されている。

 

その中から、僕は飲み物ではなく、コーヒーとかに入れたり、酒と組み合わせてカクテルを作ったりする際に使う、甘いシロップを取り出して……かける。

ビアンカの、ひくひく動いてるそこに。たっぷりかける。ていうか、塗る。

 

で、いただく。

 

……わかめ酒もしようかと思ったけど、さすがに車の中ではね、揺れるしね。ビアンカ自身も揺れるからね、気持ちよがって。足閉じてらんないだろうし、こぼれるわ確実に。

 

まあ、シロップをだら~っとかけたビアンカの下半身だけでも十分に美味しそうだし、実際に美味しかった。満足。

本人が恥ずかしさのあまり、トマトみたいに顔真っ赤にして、言葉も出ない感じだったのがかわいくて、さらに満足。

 

……イゼッタにも時々同じことやるんだけど、彼女の場合、どっちかっていうと僕に尽くしてくれる感じなので、プレイそのものにノリノリになる。わかめ酒とかも含めて、『どう、美味しい?』って……僕を存分に甘やかしてくれる感じで。

 

それはそれでいいんだけど……やっぱ、恥ずかしくてどうしようもない感じを楽しみつつ、いじめてさらに楽しもうと思ったら……ビアンカだな。

 

なんてことを考えながら、オマンコやその周りはもちろん、足の付け根や太もものあたり、陰毛やお尻の方まで全部味わって……蜜と愛液と汗でべとべとのネチョネチョだったのを、代わりに僕の唾液で同じ感じになるまで味わい尽くして、

 

その間に、我慢できなくて何度か軽くイってしまったビアンカの潮吹きも飲み干したら……まあ当然ながら、僕の下半身の方はもっと手が付けられないことに。

 

散々舌で嬲られ、辱められつつも、ビアンカもそれに気づいていたから……ふぅ、と一息ついて、僕が自分のズボンに手をかけて……中からそれを取り出した時には、羞恥の中にも確かな期待を込めて、こっちに視線を向けてきた。

 

形だけ、自分の体をかき抱いて守るようにしつつも……視線は僕の股間にくぎ付け。

 

目は口ほどにものを言う、ってのはよく言ったもんだ。

彼女の場合、こうなると全身でなんかこう……いぢめてオーラ出しまくるから、より分かりやすいんだけど。それこそ、イゼッタ以上に。

 

……さて、

 

このまま彼女の準備万端のオマンコに、僕の準備万端のコレを入れてしまうのはたやすい。いつもはそうしてるし……その場合も、ビアンカは実にいい感じで色に狂ってくれる。

 

けど今日は……ここはあえて、もうひと手間加えるというか……熟成してみよう。

 

物欲しそうにしているビアンカをあえて放置し、彼女からはぎ取ったパンツを手に取る。

 

「えっ?」って感じの表情になる彼女に構わず……それを、勃起した僕のペニスにかぶせる。

そして、自分でこすって、しごく。彼女の香りに包まれながら……あえて自家発電。

 

「え、えぇ、え!? あ、あの……そ、それ、そんなっ! わ、私、もう……これ、準備……な、何で……!? わ、私のパンツ、そんな……えぇ、何でっ……!?」

 

目の前にある女体を放置して、よりにもよって自分が脱いだパンツで自慰を始めた僕に対し、ビアンカは、絶望と困惑と焦燥が入り混じったというか……何とも形容しがたい感じの表情になって、震えながらこっちを見つめている。

 

一応、口先だけの……もう研究所つくとか、時間ないとか、理由を述べておくも……イヤイヤ、と首を横に振って、泣きそうになる。

 

「やっ、だめ……そんな、嘘……ひどい、よぉ……やめて……! や、やるなら、わ、わたっ……こ、ここにぃ……お願い……」

 

……やばい、かわいい。美味しそう。もうこのまま犯りたい。

けど、我慢……我慢……。

 

そのまま、後でおいしくいただくビアンカの肉体を想像しながら全力で右手を動かし……どぴゅっ、と存分に精液を吐き出す。ビアンカのパンツに、べっとりとしみこませる。

 

……よし、じゃあ、はいこれ。

 

「……えっ……こ、コレを、もしかして……は、履け、というのか……? そ、そんな……」

 

ただでさえ愛液でドロドロだったパンツに、僕の精液までしみこんでもっとドロドロになったそれを受け取りながら……おそるおそる、といった感じで聞いてくるビアンカ。

 

そしてそれを……『ほら、もう着くよ? 降りなきゃいけないよ? ノーパンでズボンなんか履いたら、そのびしょびしょのオマンコで確実にばれるよ?』と僕にせかされ……『お前のせいだろうがぁ……』と、恨みがましくしつつも、真っ赤になって言ってくるビアンカ。

 

仕方なく……しかし、明らかにそれにも興奮しながら、パンツをはく。

大量の水分を吸って、裏地にべっとりと混合液のついたそれを、腰まで上げると……その瞬間、たしかに『びちゃ』という、着衣の際にあるまじき、粘着質な水音が。

 

さぞかし大変なことになっているだろうな……あの中は。

あれで動いたりしたら、もっと大変なことになるだろうな。

 

気のせいか……履いただけで軽くイきそうになってないか。

 

そしてそのままズボンもはいて、どうにか残りわずかな時間で……目的地に着く前に、呼吸を整えて顔色を元に戻そうとしている。

 

「こんなぁ……ひどいぃ……っ! こんな、ことして……楽しいのか、この、変態……!」

 

生殺しにもほどがある状態で強制終了させられ、しかも、目の前にある自分の体を無視して下着オナニーで処理され、挙句それに使った下着を履かされ……羞恥心やら屈辱やら何やらで、頭の中がしっちゃかめっちゃかになっているらしいビアンカ。

さっきから、何とも言えない感情がごっちゃになってこもった視線を向けてきている。

 

ちょっとでも動くと、パンツの中の液体が動いて恥部を蹂躙されるので、もじもじと縮こまって極力動かないようにしているっぽい。顔、赤い。目の端に涙。時折、『ひぅ』『んぁ』とかの声。

 

……あまりにかわいかったので、唇を奪う。

 

「んむぅ!? ん、ぅ……ふぎゅ……ぷはっ! な、何考えて……ばかぁ……こんな、こんなことされたらァ……せっかく、せっかく呼吸、整えたのにんんぅぅううッ!?」

 

再び奪う。今度は舌まで入れる。

舐める。彼女の舌を、歯の表裏を、上あごも下あごも……舐めて、しゃぶって、すすって……ん?

 

抱きしめてる彼女の体が、びくびくって……軽くイったか今ので。

しかも何か、下腹部のあたりから、潮吹きか何かにしては大きな水音が……しょわわわわ、って……え、漏らした?

 

あー……いくら吸水性のいい素材で作った下着とはいえ、さすがに失禁は隠し切れないか……ズボンがびしょびしょになった。何が起こったか、一目でばれるな。

 

……あ、やべ、着いた。

 

結局ビアンカ、服装以外は整わないまま、研究所に帰り着いてしまった。

 

すばやく『錬金術』で、彼女のズボンだけ乾燥させてシミとかを消して――しかし中のパンツはそのまま――見た目は問題なくしたところで……リムジンの扉が開く。

 

あーあー、出迎えご苦労。いいよ、楽にして。

 

「はぁ……はぁ…………へぁ……た、ただいみゃ、戻った……」

 

……え、ビアンカどうしたのかって? ああ、ちょっとね。

 

走ってる途中、一時うまくクーラーが動かなくてさ、車内がちょっとばかし暑くなって……で、こうなっちゃたんだよ。軍服だと暑いから上脱いでいいって言ったのに、ほら、彼女真面目じゃん? で、これだよ……ちょっとしたら元に戻ると思うから、うん。

 

僕のザ・言い訳に応じるように、どうにか調子を取り戻してきたらしいビアンカが根性で体を動かし、僕と一緒に車を降りる。

 

さて、まあ言うまでもなく……僕もビアンカもこれから通常業務に戻るので、『続き』はお預けである……今はね。

 

じゃ、ビアンカ……夜、寝室で待ってるからね。

 

ああ、着替えちゃだめだよ?

錬金術で、匂いは外に漏れないようにしておいたから……このまま、上は汗でべとべと、下は色々な液体でねっちょねちょのぐっちょぐちょのまま、夜まで過ごしなさい。

 

で、夜になったら……この軍服のままで部屋においで。

合鍵は持ってるね? 僕より先に来たら、それ使って開けて、寝室で待ってなさい。

 

そしたら……望み通り、滅茶苦茶にしてやるから。

 

 

 

 




つづく!



……気が付いたらすごい変態プレイが出来上がってた。何このマニアックなの……

ビアンカさん、いじめるの楽しすぎて困る。


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11-2 後日談 ビアンカ(後編)

 

 

引き続き、B月K日

 

 

研究者という立場上、名前だけでぐーたらして過ごせるようなものではない。

きちんと、いまだかつてない未知なる学問である『魔法工学』と『錬金学』について、研究し成果を出し、それを国際社会に発表することによって、僕は僕の存在意義を果たすことになる。

 

とはいえ、僕自身望んでこの仕事をやってるし、ぶっちゃけ色々楽しんでることもあり……これらの義務を苦に思ったことはない。

 

文字通りの『錬金術』……すなわち、原子配列の組み替えによる、金をはじめとしたレアメタルの生産に成功したときなんかは、ホントに楽しかったなあ。資源枯渇による文明衰退の可能性が一気に遠のいたってことで、有史以来の大発見だって世界中でニュースになってさ。

 

極端な話、捨てるしかないゴミから、未来を暮らしていくのに必要な資源が作れるも同然なわけだから……そりゃ、世界中注目するよね。

 

……ちなみに今、もう少しで一般的な『錬金術』から、応用に応用を重ねて……『鋼』系の錬金術理論の確立にまで手が届きそうだったりする。wktk。

 

とまあ、いくら僕が楽しんでやっている学問でも、世間様から見ればすさまじく難しい学問であることに変わりはない。

 

なので、僕やイゼッタという研究者や、その施設を守る立場にあるビアンカ達に至るまで、人類の未来を切り開く先駆者たちと、それを支える者達として、尊敬の的として見られている。

 

……しかし、そんな尊敬を集める先駆者や支持者達も……所詮は人間である。

飯も食えばトイレにも行く。疲れたら寝るし……盛りもする。

 

現にほら、普段は男勝りの凛々しい立ち姿で知られるビアンカだって……今こうして、僕の帰りを待ちきれなくて、部屋のテーブルの角に股間をこすりつけて角オナに励んで……

 

「ひ、は……ぁ、や、っと、きたぁ……遅いぞぉ……っ! どえ、だけ、待たせ……んくっ!」

 

そう、すでに息も絶え絶えになりながら言ってくるビアンカは……普段の凛とした雰囲気がほぼ完全に焼失し、とろけきった雌の顔で、だらしなく口を開けて喘いでいる。

 

というか、今軽くイってしまったらしく、そのまま脱力して崩れ落ちそうになるところを抱きとめて……あ、ダメだ、コレホントに限界っぽい。服越しに触っただけでビクッ!てなる。

 

……うん、半日待った甲斐があった。とっても美味しそうに仕上がってる。

 

元々、今日は……ホントの意味で彼女を平らげてしまおうと思ってたところだ、実に結構。

 

彼女を抱き上げて寝室に運び……ベッドの上に下ろす。

その間から、すでに変形してズボンにテントを張っている僕。それに気づいて、そこに視線がくぎ付けになっているビアンカ。

 

ベッドに下ろしてからも、凝視しっぱなしのビアンカの前で……僕自身結構もう限界なので、ズボンとパンツを一気に下ろす。飛び出る肉棒。その先端からは……すでに先走りがトロトロと。

 

それを目にしたビアンカの表情が、もう何か……ご飯をお預けされてる子犬みたいな。

 

直後……いいよ、って許可出したら……あっという間に飛びついてきて、一気に僕のを、喉の奥まですっぽりと咥え込む。『じゃあ、口でしてもら……』って、言い切る前に来たよ。

 

口の中で、一心不乱に舐め回しながら……同時に、胸いっぱいに息を吸い込んで匂いとか堪能しているのがわかる。

だって、竿に風感じるくらいに勢いよく息を吸って吐いて……すー、はー、すー、はー、って。

 

「はっ、ぐ、む……んー、すー……はぁー……っぷ、じゅる……ちゅぱっ! あぁっ、もう、らめ……頭、しびれて……あは、ん……らめになるぅ……。おちんぽのことしか、考えられなくなるぅ……もう、今日ずっと、我慢してたからぁ……」

 

本当にそれしか目に入ってないような乱れっぷり。

 

舌はもちろん、歯や頬の裏、たっぷり出てきて口の端からだらだらと垂れてくる唾液さえ存分に使って、僕のを味わいつつも熱烈に奉仕してくれるビアンカ。

 

あまりにも可愛くて、そして気持ちよくて……ずっと我慢してたことも手伝って、あっさり達してしまう。

ビアンカの頭を押さえつけ……あえて、喉の奥に思いっきり突っ込んでじゃなくて、ちょっと引いた位置に持ってきて……口の中に全部出るように、精を放った。

 

「ん゛っ、ぷ……ぅぐ……むぅふ……っ……!!」

 

直前に『こぼすの禁止ね』と言いつけた上で、たっぷりと吐き出す。

 

どばどばと口腔内にたまっていく、熱くてねっとりとした白濁液を……ビアンカは必死で飲み下し、あふれないように……ああでも、やっぱり口の端からちょっとずつ吹き出しちゃってるな。さすがにペース的に間に合わないか。

 

それでも、最後の一発まで全部口で受け止めたビアンカは、『ちゅぽっ』という小気味いい音と共に僕のペニスから口を話すと……まだ中に残っている分を吐き出してしまわないよう、口を手で押さえて……そのまま、上を向いて……ごくんっ、と喉を鳴らして飲み下した。

 

そして、ぷはぁ、とこれまた音を立てて息をついたと思うと……

 

「はぁぁ、ふぁ、ふああぁぁ……!」

 

なんか、感極まった感じで、恍惚の笑みで……自分で自分の体を抱きしめながら、ぞくぞくとその身を震わせる。

な、何かビジュアル危ないな……やばい薬でも決まっちゃってるみたいだ。

 

まあ、さんざん肉体を開発された上に、さんざんお預け食らった今の彼女にとっては……精液は薬みたいなもんなのかもしれないけども。

 

……それにしたってなあ……むしろ、薬はこれから使うところなのに。

 

トリップ中のビアンカはいったん置いといて……一発出して少し冷静に慣れた僕は、戸棚から小瓶をひとつ取り出し、栓を開けて、匂いを嗅いで確認。うん、これだ、間違いない。

今日のために用意しておいた……とっておきの、特製の薬。

 

それを、全部口に含んで……ビアンカの顔をつかんで唇を奪い、口移しで流し込む。

 

「ん゛、む!?」

 

ごくり、とそれをビアンカが飲み干したのを確認し……素早く、ビアンカのお腹に手を当てて『錬金術』を発動……その薬の効能を即座に発揮させる。

 

すると……

 

「な、何を飲ませ……へ? え、あ、え……ふぇええぇ!? はぎっ、あぎゃ……あぁぁああっぁっぁあああああ!? い゛う゛え゛あ゛ぁぁぁああぁあぁっ!?」

 

びくん、びくん! と大きく体を震わせるビアンカ。明らかにやばい反応。

 

同時に聞こえる、しょわわわわ……という水音。また漏らしたな。まあ、無理ないけど。

 

しかし、別に違法なやばい薬を飲ませたわけじゃないので大丈夫……刺激は強いけど、きちんと安全な薬だから。

 

「な、なにゃ……何、これぇ……び、媚薬、か……?」

 

残念、違うんだなこれが。

いや、そういう作用も確かにあるにはあるんだけど……本来の効果はね。

 

ネタ晴らしはちゃんとしてやるけど、その前に……服を全部脱ぎなさい。

 

その命令に、ためらいなく従うビアンカ。むしろ、待ってましたと言わんばかり。

まあ……蒸し暑い昼からずっと着っぱなしで蒸れてること間違いなしな上、下はリムジンの中でのアレでひどいことになってるわけだからね……。

 

ボタンをはずす時間もおしいとばかりに、かなり乱暴に上の服を脱ぎ捨てる。途端、むわあっと広がる彼女の汗のにおい……しっとりと湿った肌の表面が、何とも艶めかしい感じ。

その勢いのまま下着も外すと、彼女の形のいい胸があらわになり……その谷間は、一層蒸れて、もう……美味しそうな感じに。

 

そしてビアンカは、ズボンに手をかけると……一瞬だけためらったのちに、パンツごと一気にずり下して…………うわぁ、これは予想以上。

 

脱いだパンツと股間の間に、糸をひくなんてレベルを通り越して、水あめみたいにぬちゃあっと……

 

パンツの中で、人肌で半日暖められ続けた、精液と愛液と汗とおしっこ(しかも失禁2回分)の混ざったものが、すごい匂いになって一気に広がって、僕のところまで届き……

 

気づけば、僕は彼女を押し倒していた。はぎ取って投げ捨てたパンツとズボンが、斜め後ろの方の床に落ちて『びちゃっ』と水音を立てた。

 

これは……予想以上に強烈だ。一回出して冷静になった頭が、即座に沸騰しそうになった。

これも一種のフェロモン……って奴なんだろうか? 腹の底から、脳の奥から衝動が湧き上がってくる……目の前にいるこの雌を犯したいと。滅茶苦茶にしてやりたい、今すぐに!

 

肉棒も、さっきまで以上にビキビキに硬くなって……痛いくらいだ。

蒸れてグズグズになった蜜壺……ここに入れたら、どれだけ気持ちいいだろう。

 

けど……だめだ。まだ、最後の仕上げが残ってる。

半日かけて仕込んだ――薬とかその他用意する手間・時間も含めれば、それこそひと月以上だが――この極上の雌肉を平らげる舞台を整えるのに必要な、最後の一手。

 

『はやく、はやく』って視線で訴えてくるビアンカの、ドロドロになっている割れ目に、つんつん、と肉棒の先端を触れさせつつ……

 

さて……ビアンカ、犯る前に……ひとつ、いいことを教えてあげないと。

 

「な、何だ、こんな時に……わ、私もう、我慢が……はぁン……もう……欲しくて、おかしく……なりそう、なんだぁ……!」

 

まあまあ、そう言わず。

 

ビアンカはさ……戦争が終わって、それでも僕とこういう体の関係が続いてるわけだけど……婦人科で避妊薬出してもらって服用してるよね? 仕事に響かないように、妊娠しないように。

 

「……ああ、そうだが……」

 

その、避妊薬なんだけどね……今、無効化されてます。

 

「……は?」

 

さっき口移しで飲ませた薬あるじゃん? アレ、媚薬効果はただの副次的なもんでさ……本命の効能は、女性の体を妊娠するのに最適な環境にする、ってものなんだよね。

 

避妊薬の効果なんか一発でかき消しちゃう上……逆に排卵を誘発。まあ、これには周期的なものも絡んでくるけど……その辺計算して、今日使うのがビアンカの体的には一番効果が期待できる日取りなので問題なし。婦人科からその辺のカルテは裏から入手済みなのだよ。

 

加えて、特殊な薬効で膣内の酸性成分を中和し、抗菌作用は残しつつも、注がれた精子が生き残りやすい環境を作る。この環境下では、精子の寿命は数倍に伸びる上……内部で水分が抜けて粘性が高まり、たっぷりそそいでもほとんど垂れてこないくらいになる。

 

おまけに……僕は元々体の各種機能を薬品と錬金術で強化していて……当然、雄としての機能もそれに当てはまる。

 

自分で言うのもアレだが……絶倫はもともとだったところを、さらに強化してある。

そこにさらに、さっき事前に僕、栄養剤でエネルギー補給して『錬金術』で即座に変換させてきたので……スタミナも、君の中に注ぎ込むための残弾も、たっぷり残ってるわけで。

 

……さて、ここまで言えばわかるかな?

これから僕が、『何をするつもりで』ビアンカを犯すのか……。

 

「そ、それって……そんな、本当にそんなことされたら、私は……」

 

一拍置いて、

 

「……妊娠、してしまうじゃ、ない、かぁ……!」

 

そのつもりで今日、こうして呼んだわけだからね。

 

選ばせてあげるよ……君に。

今なら、後戻りもできる……おねだり次第では、そうならないようにしてもいい。

 

けど……もし、君がここから、これ以上の快楽を求めるなら。

今、ぴとっと君のアソコにくっついてる僕のコレを、もし受け入れるなら……そっから先はもう、後戻りできないし、僕も後戻りなんてする気は一切ない。

 

ここから先に進むなら……子種が着くのは不可避だと思え。

これからやるのは、交尾だ。子孫繁栄、種族保全の営みだ。

 

犯す。徹底的に、君を犯す。そして……全部、全部君の膣内に、子宮に注ぎ込む。

一発残らず、中に出す。孕ませるつもりで。……いや、孕ませる。

 

今日、僕を受け入れるなら……もうこの先、僕は一生君を放さない。逃がさない。

母親になれ、僕の子を産め。一生、僕だけのものになれ。

 

そうしたら……僕も、君を一生大切にする。

 

―――さぁ、どうする?

 

「……はぁっ、そんなぁ……卑怯だっ……お前は、ホントにぃ……ひどい、男、だぁ……」

 

そーだね、ひどいね。

酷い男につかまっちゃったもんだねー、君は。

 

「でも……」

 

でも?

 

「……私は、そんなお前が、好きになった、から……惚れた弱みとは、怖いものだな……なんだかんだ言って、私はすでにお前を受け入れる気でいる……。それに、もう……この、みだらに作り変えられてしまった体を、ゆだねられる相手なんて……お前以外、居るわけがない。だから……」

 

…………

 

 

 

「だから……私の全部を、喜んで差し出そう……。さあ……抱いてくれ。犯してくれ、嬲ってくれ、弄んでくれ……快楽で狂うまで、好きにして……そして……種をつけてくれ、孕ませてくれ、私に……お前の子供をっ、産ませて……一生、お前だけのビアンカにしてくんあああぁぁああっ!? なっ、あ、が、ばっ! さ、最後までいわしぇろ、ばかぁぁああ!」

 

 

 

ごめん、待てなかったよ。

言ってる途中で、思いっきり膣に肉棒を突き入れて……最初から全力で始めた。

 

予想通り……すごく具合がいい。

色々混ざってドロドロの潤滑油たっぷりの肉壺は、やわらかくて、でもすごくよく締まって……きゅうきゅう、絞るように……! やばいって、こんなん……持たないって!

 

ピストンの動きとは別に、快感でがくがくと震える。

一擦りするたびに、血が集まって肉棒が熱く、硬くなる。痛いほどに怒張する。

 

ばちゅん、ばちゅん、と、素肌同士が激しくぶつかり合う。その勢いに、汗が、愛液が、弾けて飛び散って、それらの匂いがまた僕を刺激する。

 

気づけば僕は、ビアンカの体にのしかかって、力いっぱい抱きしめながら腰を振っている。

軍服で蒸れた、ビアンカの匂い……つんとくる汗のにおいや、彼女自身の甘い匂い……股から漂ってくる、香ばしくていやらしい、雌の匂い……全てが僕を狂わせる。

 

鼻から入ったそれが、神経をしびれさせ、脳内で大暴れし、煩悩を爆発させ……神経を通って体中をぞくぞくと興奮させ、ペニスに達した快楽は、ペニス自身が直接受ける快楽とも混ざって……もう、どうしようもないくらいに僕の股間をバカにする。

 

あ。

 

ダメだ、出る。

出す。

出た。

 

どくどくと、膣内に注ぎ込まれる精液。子宮口を通って流れ込んでいくものもあれば、あふれて外に出てくるものもある。

そして、それ他に構わず……出している間も僕のピストン運動は続き、快楽をひっきりなしにむさぼり、彼女の方にも叩き込み続ける。

 

本当に……獣だな。覚えたてのサル……いや、そんな可愛いもんじゃない。

徹頭徹尾、女を犯すことしか、孕ませることしか頭にないケダモノ……それが今の僕だ。

 

けど、それでいい。

今日の僕は……このベッドの上で、この雌に僕の子を仕込むことだけが……

ビアンカを、永遠に僕のものにすることが……僕の望みだ。全てだ。

 

また、出る。子宮口の奥へ奥へ、流し込む。

 

「あ゛――っ、ひっ、あああぁああ! しゅごっ、ひああああ! お、おぐっ、奥ぅっ! 熱い……はぁん、熱……せーえき、来てりゅ……赤ちゃんの部屋、もうたぷたぷなのにぃ……満たされる、熱いので、びりびりって、びくびくって……あぁあ……コレ、孕む……絶対孕んじゃうぅ……」

 

耳に届くは……ビアンカの脳が完全にとろけきって堕ちてる状態にある証拠とも言うべき、淫語全開の、男の本能をさらに刺激する言葉の数々。

 

このころには……普段は小難しい理論を相手に格闘できるレベルの僕の脳も、ただひたすらに目の前の雌を犯すことしか考えられなくなって……気が付けば、本能のままに交尾が進む。

 

ビアンカをうつぶせにして、形のいい安産型の尻をわしづかみにして腰を打ち付け、思いっきり突き込んで一番奥で精液を吐き出し、

 

そのまま今度は自分も体ごと倒れこんで、体でビアンカを抑え込んでへこへこと腰を振って……びったりと密着して、互いの体温を、しっとりと肌を湿らす汗を感じながら精を放ち、

 

向かい合って抱き上げるようにして下から容赦なく突き上げては、重力に盛大に逆らって噴水のように膣内に白濁を噴き出し、

 

「あ゛っ、ひあああぁあっ! もう、らめぅえぃぃああぁぁああっ! ひゅぅんっ、んあぁ、あは、あぁあ! いい、いいのぉっ! もう、わらひっ、これがなきゃらめぇっ、生きていけないぃっ! おちんぽなきゃ、ぁ、あなたがいなきゃダメなのぉ! 好っ、きっ……しゅき、大しゅきぃっ! ずっと、ずっと一緒にぃ……子供、産むから……そばに、おいて……あぁ――――――っ!!!!」

 

心の底から嬉しそうで、気持ちよさそうな顔で……そんなうれしいことを言ってくれるビアンカを下に組み敷いて……僕は、劣情の赴くままに、獣の本能のままに腰を動かし続けて……

 

 

 

……気が付いた時には、絶対に逃がすまいとでも言うように、体全体で、向かい合う形でビアンカにのしかかり、その裸体を抱きしめ……ビアンカもまた、両手両足を僕の体に回してしがみつくようにしながら……穏やかに寝息を立てていた。

 

下半身はというと……あらら、まだつながったままだ。

そして、ビアンカの下腹部はぽっこりと膨れていて……僕が一体、昨晩どれだけの量をここに注ぎ込んだのかがわかる。

 

……動けないので、仕方ないからこのまましばらく休んでいることにして……

丁度いいというか、首だけ動かせば届く位置にあったので、今日何度目かの接吻。ビアンカのやわらかい唇を堪能させてもらった。

 

「ん、ん―――えへっ、えへへ……んぅ、しゅきぃ……っ!」

 

……どんな夢を見てるんだか……幸せそうな寝言と共に、ぎゅっとさらに強く僕の体を抱きしめてしがみつくビアンカ。抱き枕にされるのも……うん、なんとも心地いい。

 

……さて、いっそこのまま、もうひと眠りしちゃおうかな?

今なら、なんだか……僕も、いい夢を見られそうだ。

 

起きたら……色々やらなくちゃいけないことがあるな。

今日の休暇届は、あらかじめ出しといたからいいとして……。

 

ビアンカの産休……いや、寿退職に向けての手続きその他、根回しだな。

彼女には今後、仕事でじゃなくて、人生の全部全部で一緒に生きていくわけだし。

 

それに伴って、色々と外交分野でも進めることも……忙しいな、頑張ろう。

 

僕に人生をささげると言ってくれた、彼女を……絶対に幸せにしなくちゃいけないからね。

 

 

 

 



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12-1 後日談 イゼッタ(前編)

はい、続きましてイゼッタのターン!

ちょっと今回、しんみりだったりシリアス?だったり、説教っぽかったり自己啓発みたいだったりする気が……やばい、純愛表現難しくて変になったかも。

人によっては合わないかもですが……どうぞです。


E月T日

 

こないだ言った通り、僕は今、エイルシュタットの研究所に居を構えている。

基本、そこから離れることは……公務でもない限りはない。というか、許されない。

 

しかし、今日、というか今、僕は……旧ゲルマニア国内、現EU直管の国際特別中立領域にある……僕の実家というか、生まれた家に来ている。

 

毎年この日だけは……特別に用事ができない限りは、まあ当然護衛付ではあるけど……遠出してここに来ることが許されている。

 

今日……父の命日なもので。

 

ここには、今もなお『ゲールの軍閥の名門』という立ち位置だったころのサンジェルマン家の屋敷が残されていて、人も住んでいる。僕の母と……使用人たちが。

 

父が結構な階級の軍人だったことで、相応の額の恩給や年金が出るし、僕も今では立場に見合った高給取りなので、仕送りもしてる。なので、ここにいる人らが生活に困ることもない。

よっぽどの贅沢や浪費でもしなければ、普通に暮らしていける。

 

で、この屋敷の敷地内に……父のというか、サンジェルマン家の先祖代々の墓があるわけで。

そこに、僕はこうして墓参りに来ているわけで……連れと一緒に。

 

そして、まあ……その連れってのが……僕の隣で真剣に祈っている、イゼッタなんだけどね。

 

……うん、そう。ここに眠っている父を葬り去った……張本人である。

 

 

 

ついて来たい、と言い出したのは、イゼッタの方からだった。

 

どこから聞きつけたのかはわからないが――案外ビアンカあたりが口を滑らせたのかもしれない――僕が、墓参りでこの実家に帰省することを知ったらしく、その直前になって『連れてって!』と、僕の執務室に飛び込んできて直談判してきた。

ご丁寧に、自分に割り当てられた分の仕事、全部終わらせた上で。

 

こう言ったらなんだけど……最初、正気を疑った。

いや、だって……彼女だって、僕の父がどうして死んだのかくらいは知ってるはずだもの。

それで一時期落ち込んでたもの……自分が出た戦場で死んだって。

 

しかも、その死因ってのがまた……大槍にどてっ腹を貫かれて、ってもんだからね。

間違いなく、イゼッタがファ○ネルばりに暴れまわらせてたあの馬上槍が直撃した結果だからね……敵司令部の壊滅のために、一気に何十本も突撃させたうちの一つだったって。

 

……父の遺体を前にして、漫画みたいにきれいに腹部の肉や骨が消失して、ものの見事に空洞になっていたのを見た時の衝撃は……今もよく覚えてる。

まるで、体の中から爆弾で吹っ飛ばされでもしたかのような……しかし、焦げ跡なんかはなく、妙にきれいな円形になって貫かれていた。

 

いったいこれは、誰にどんな殺され方したんだよ、って、愕然としたもんだ。

 

せがまれて、そのことを一度イゼッタに話したこともある。途中から泣きそうになってた。

 

そんなイゼッタが……まぎれもなく、歓迎されない立場であろうことを理解した上で……ここについて来たいと言ってきた。どうしても、墓参りをして……父に、そして母に挨拶したいと。

 

『だって……これから結婚するのに、こっちの都合で挨拶もなしなんて、失礼じゃないですか……それに、これは、確かに私がやったことの結果なんです。だから……逃げたくない』

 

『恨まれてるだろうなって、わかってます。それでも……私、行きたいです』

 

で、墓参りってことで、喪服――持ってないそうなので新調させた――着用の上、案内して連れてきて……今、こうして手を合わせているところだ。

 

 

 

……ごめん、父さん。長いこと留守にして……今、色々忙しくてさ。

ろくにこうして実家に帰省するようなこともできない身の上になっちゃったもんでさ。……最後にこうして墓参りに来たの……まだ、戦争が終わってないころだったよね。

 

その後、僕、祖国裏切ってこうして戦争終わらせたわけだけど……その時、もしかしたら草葉の陰で、父さん怒ってるかな、とか言ったっけね。

 

……今回の報告は、もっとあんたを怒らせるかも。

何せ……あんたの仇と、今度結婚することになったからね、僕。

 

ほら、今僕の隣にいる……あ、ごめん、

本人、直接……あんたに話したいって。

 

 

「……えっと……は、はじめまして。その……こういう時、何から言い始めたらいいのかわかんなくて……その、すいません。口下手で。

……そう言うの関係なく、聞いてて不快かもしれないですけど……それでも、どうしてもお話ししたくて来ました。

 

……イゼッタといいます。

エイルシュタットで、その……魔女、というか……姫様……あー、オルトフィーネ大公殿下の下で、戦ってました…………あなたを、殺してしまった……者です。

 

その、今度……息子さんと、結婚することになりました。

多分、もう……お腹に、赤ちゃんもいて……えっと、いきなりですよね。すいません。

 

……自分でも、無茶苦茶だって思います。

 

あなたの祖国と、戦争して……たくさん、戦場で戦って、いっぱい壊して……命も奪って……それなのに、こんな風にのうのうと生きてるばかりか……敵国の軍人だった彼と、結婚するだなんて……しかも、それを、自分が殺したあなたの墓前で、報告とか……。

 

……それでも……ごめんなさい。私、彼のことが好きなんです。

 

出会いは、なんていうか……お世辞にもロマンチックとか、まともな関係が成り立つような感じじゃなかったですけど……それから色々ある中で、私、彼にいっぱい助けてもらいました。

 

彼にとって、私は敵で……あなたと、自分の左目の仇で……。私にとっては、姫様の祖国を占領した上、自分を閉じ込めて、国の占領もしている敵で……。

それでも、私たち……一緒になります。なろうと、思ってます。

 

……命を奪ってしまったこと、許してなんて言えません。

もし……そうですね、私が死んで……天国に行くか、地獄に行くかわかんないけど……もし、その時会えたら、何と言っていただいてもいいです。

 

けど……

 

……今だけは、私……これから幸せになります。ならせて、いただきます。

あなたの息子さんと結婚して、あなたの孫も産んで……家族や、友達に囲まれて……。

 

……最後の最後まで、幸せな人生を全うして……それだけでなく、たくさんの人を幸せにして……これから先、ずっと生きていくつもりです。

 

……私は、イゼッタ。

姫様の……エイルシュタットの魔女です。

 

でも、エイルシュタットだけじゃなく……世界全部を、幸せにします。

姫様と……彼と、協力して……『皆が選べる明日』を、作ります。

 

それが……この戦争で散っていった人たちのために、そして、これからこの世界を生きていく人たちのために……私がこの手で、この力で、できることだから」

 

 

☆☆☆

 

 

意外にも、屋敷の使用人たちや……僕の母は、イゼッタを前にしても、邪険に扱ったり、恨み言をぶつけるようなことはなかった。視線でにらむことさえしなかった。

 

武家の名門だってことが逆に幸いしたらしい。『勝敗は兵家の常』っていう言葉通り……もたらされた戦の結果を受け入れて割り切ることについては、皆、僕なんかより心得があるようだ。

 

もちろん、全く何も思うところがないわけじゃないようだけど……それでも、互いに全力を出した戦いの結果としてそうなったのなら、そして、それを礎にすでに国が、世界が動き始めているのなら、自分たちからは何も言う気はないとさ。

 

そう聞いて、ぽかんとするイゼッタと僕に対し……締めくくるように、母からこんな言葉が。

 

『あえて、私があなたたちに望むことを述べるなら……あなたたちが、此度の戦で犠牲にした者達の命が、決して無駄ではなかったと……新しい時代を作る、確かな役に立ったのだと言えるような、素晴らしい時代を作りなさい。それが……勝者の務めです』

 

そして、イゼッタに向き直り、

 

『夫に……挨拶してきたそうですね。私は、確かに、あなたに夫を……生涯の伴侶を奪われました。それについて、思うところがないわけではありません……しかし、残された息子が、あなたという強い女性を受け入れ、愛し……手を取り合って未来を共に紡ごうとしているのなら……そして、あなた自身が罪から逃げず、受け止め……それでも未来を強く生きようというのなら、私からは何も言いません。我が義娘として恥ずかしくないよう……この判断が間違っていなかったと、夫の死は決して無駄ではなかったと、後で私が安心できるよう……立派に生きてみせなさい』

 

我が母の懐の深さ、器の大きさに……改めて驚かされ、イゼッタに至っては……説教とセットとはいえ、罪を赦されたばかりか、義娘として受け入れまでしてもらったことに、感激して涙をぽろぽろと流していた。ついさっきのことである。

 

そして今、僕とイゼッタは……僕の寝室、ベッドの上にいる。

少し早くはあるけども……夫婦としての営みのため、どちらも生まれたままの姿で。

 

ちなみにこのベッド、キングサイズもかくやっていう大きさの、作りもしっかりした超高級品なわけだけど……僕が物心ついた時から、ずっと使っているものである。

シーツとか、そういう交換する必要があるもの以外……土台とかはずっと同じだ。

 

母からは、子供のころから……ずっと使えと、それこそ、妻を迎えて初夜に臨む時にもここで、これを使えと、その後も夫婦2人でこれで一緒に寝ろ、とまで言われてきた。

 

理由は……今まで自分1人で使っていて、その広さをよく覚えているところに、誰かを迎えて一緒に使うことで……自分以外の誰かが、それまで自分一人だけの領域だったところに、これから加わるんだと、しっかり体感してわかるように、だとさ。

 

……なるほど、効果的と言わざるを得ない。

 

ずっと使ってきたものだから、この大きさは頭でも体でも覚えている。

その広さは、今まで自分1人だけのものだったところ……今はそこに、自分以外に、これから一緒に生きていく大切な人がいるんだと、考えるまでもなく感じる。

 

目の前で、生娘みたいに顔を赤くし、気恥ずかしそうにして……しかし覚悟を決めて、裸体を隠そうともせずさらしているイゼッタ。

 

これから僕のものになるその体を、心を、イゼッタという存在すべてを目の前に差し出されている感覚。もう何十回、いや何百回と抱いているはずなのに……不思議なもので、改めてこうして彼女の裸体を前にすると、初めてこの身に抱くかのようにドキドキする。

 

……ある種の、魔性の女、傾国の美女、って奴なのか……それとも、ただ単に僕が、篭絡されるレベルでベタ惚れしてるだけか……

 

……まあ、いいや。やることは変わらない。

 

いつの間にか、自主的に避妊薬飲むのをやめていて……ひょっとしたらすでに、その胎に僕の種がついているかもしれない彼女……数か月後には妻になっている彼女を、改めて僕のものにする。

 

そのために、僕は、乱れそうになる呼吸を整えつつ……伸ばせば手を触れられるところにまで行って、彼女の肩に手をやり、ぐいっと抱き寄せて……抱きしめて……

 

最初にまず、唇から奪って……そのまま、ゆっくりと押し倒した。

肌を合わせて、じゃれつくように……しかし、ゆっくりと手を、お互いの恥ずかしい部分に伸ばして、さすったり握ったりしながら、徐々に、徐々に体が火照っていく感覚を楽しんでいる。

 

じんわりと、体の中からあったかくなっていく。同時に、相手もそうなっているのを感じる。

しっとりと、汗で湿っていく肌が……互いに吸い付くように感じて、これもまた心地いい。

 

時折、どちらが、あるいはどちらからともなく、首元や頬、唇に吸い付いたりして……

手と手を、足と足を、指と指と絡めたりして……密着した体と体がこすれて、むにゅ、とか、たぷ、とかいう感覚が伝わってきて……それがすでに気持ちいい。

 

性的な快感とも、似てるけど違う。もっとこう……本能的?な部分で……愛しい人とふれあっているっていうこと自体が、喜びになる……そんな感じ。

 

……僕、ロマンチストでもなんでもないはずなんだけど……これ以外に表現、見つからないんだよね。だから仕方ない。

 

「何だか、もう何回もこうしてるはずなのに、慣れないです……やっぱり、恥ずかしい」

 

僕の下で、顔を赤らめながら、そうつぶやくイゼッタ。

その両腕は、僕の背中……肩甲骨のあたりに伸ばされ、回されていて……さするように動いて、触れたところに、彼女の吸い付くような柔肌の感触がある。

 

ぎゅっと力を入れて抱きしめられれば……僕の胸板が、イゼッタの乳房に押し付けられて……柔らかさの中に、きれいなピンク色の先端の硬い感触が。さらにその状態で、足を絡めてぎゅっと……体全体でくっついてくる。なるべく触れる面積を多くするかのように。

 

直接感じる、彼女の体温が、肌のしっとり柔らかい感触が……ビアンカとはまた違った角度で、僕の心から余裕というものをガリガリと削り取っていく。

いやむしろ……溶かしていく、といった感じかもしれない。

 

彼女に触れるたび、触れられるたびに……なんていうか、初めて肌を重ねた時から変わらずそうなんだけど……どんどん、引き込まれるというか、彼女という存在に溺れていくというか……そういう、なんとも言えない感触がある。

 

そしてそれをさらに助長するのが……性格に裏表のない彼女の口から紡がれる、耳に優しくとろけるような……素直な言葉だったりする。

 

ぎゅっと、体全体で僕にくっついて抱き着きながら、僕の肩に顎を乗せる感じにして、

 

「……本当に、何度やっても……恥ずかしい。けど……とっても素敵で、幸せな気分……」

 

……いつも思うんだけど……イゼッタって、こういうの好きだよね。

健全な意味でのスキンシップというか、ふれあいというか……いや、ベッドの上で全裸同士で抱き合ってる時点で『健全』も何もないかもだけど……

 

何ていうか、性的なところが絡まない、純粋に『愛』からなる交流というか……そういうのを、イゼッタはすごく好いてるように見える。

 

「今まで、私……誰かに愛されることが、こんなに心地いいなんて……知らなかった。ずっと、ひと所にとどまらず、旅して生きてきて……お母さんも早くに亡くなって、おばあちゃんと2人で……もちろん、おばあちゃんも私のことを大事にしてくれたけど……」

 

語りだしたイゼッタは……そこで、一度切って、

 

「こんな風な気持ち、今まで……あなたに出会うまで、知らなかった。あの時、あなたに出会わなければ……多分、一生、知らないままだったと思います」

 

一旦、僕の背中に回していた腕をほどいて、顔を真正面から見据えるように。

絵にかいたような、幸せそうな微笑みを浮かべ……行為の最中であるがゆえに、しっとりと汗の滲んだ顔で……イゼッタは、僕と目を合わせて、また無防備ににっこり笑う。

 

「……私、正直……姫様の……フィーネのために、エイルシュタットのために戦うことに、何の迷いもなかったんです。あの日……フィーネに助けられたあの時から、彼女のために何でもしよう、それこそ……私の命で、フィーネの望みがかなうなら、命だってさし出せるって。でも……」

 

そこで、ちょっとだけ笑みが陰る。

 

「……今、同じことを聞かれたら……正直、そうは答えられない。もちろん、今でもフィーネは大事です。彼女のために、力を尽くしたい、って、今でも思ってます……でも…………なんていうんだろう、私も……ちょっと、欲張りになっちゃったんです」

 

欲張り、って?

 

「私が戦って、敵を倒して……それで、姫様やエイルシュタットの人たちが幸せになってくれるのを見てきました。だから、私の力で人を幸せにするとしたら……こういうことなんだ、って思ってた……そのほかに、違った形があるなんて、思わなかったんです」

 

「あなたに出会って……あなたとこうして、愛し合う関係になって……私が私でいることで、誰かが幸せになるなんてことがあるんだって……初めて知ったんです。バカですよね、私……他でもない私が、姫様が笑っていることで幸せになってたのに……それでも、まさか私のために幸せになってくれる人がいるなんてこと、思いもしなかった……あなたに、そう言ってもらえるまでは」

 

「それを知って、私……すごく、うれしくて……私自身も、それまでより何倍も幸せな感じになって……それで、思ったんです。こんな素敵なこと……何で私は、今まで知らなかったんだろう、って。なんて、もったいない人生を歩んできたんだろう、って」

 

「もっと、知りたい。こんな風に、誰かと一緒に幸せになるってことを……いや、きっと私が知らないだけで、もっと他にも幸せの形があるんだって思って……それを、知りたいと思ったんです。そして、幸せになりたい。今よりも、もっともっと……色んな幸せが欲しい」

 

「どんな形のそれがあるのか……全然、見当もつかないですけど……。できるなら、私、皆と一緒に幸せになりたいんです。私が皆を幸せにしてあげるんじゃ……足りない。皆に私が幸せにしてもらうのも……違う。……皆で、一緒にです」

 

「あなたともそうだし……姫様や、ビアンカさん、ロッテちゃん、エルヴィラさん、ジークさん、ベルクマンさん、それに……ゾフィーさん。私、皆と一緒に幸せになりたい」

 

「戦争で、敵とはいえ、人をいっぱい殺してしまった私は……きっと、幸せに何かなれないんだ、って……あの牢屋の中でひどい目にあってた時は、そう思ってました。それでいいんだと、仕方がないんだ、とも思ってました」

 

「でも……あなたに愛してもらって……こんな、こんな幸せなことを知っちゃったら……私、もう戻れない。あの頃に戻りたくない……それどころか、もっと欲しいって、もっと、もっと……そう、思っちゃうんです。寝ても、覚めても……」

 

「求めて、求められて……愛して、愛されて……与えて、与えられて……捧げて、ささげられて。人とつながって、笑いあって……そんな、1日1日の、一時の、ほんの一瞬のふれあいから生まれる幸せを……私、もう失いたくない……もっと、もっと……ずっと、ずっと……! 今日よりも明日、明日よりも明後日……幸せに、なりたい! だから……」

 

 

 

「……私と一緒に……幸せになってください。これからも、ずっと……そばにいて……」

 

 

 

……ああ、だめだ。

本当に、この娘ってば……僕にはもったいないくらいにいい娘だ。

 

けど、だからこそ……あらためて思う。もう、絶対この子を放すもんか、と。

 

もともと、約束してたことだ。フィーネの作る、皆が明日を選べる世界。

そこで、明日を選べる皆が幸せになるなら……その立役者である、イゼッタが幸せにならなくてどうする。イゼッタを、幸せにしてあげられなくてどうする。

 

「あなたの、左目を奪って……お義父様を奪って……お義母様を悲しませて……最初から最後まで、迷惑をかけっぱなしで、お世話になりっぱなしな私を……こんな、どうしようもない私を……私と……どうか、幸せになってください。フィーネが、いえ、フィーネと一緒に作る、皆が明日を選べる、素晴らしい世界を……どうか、こんな私と一緒に……生きて、ください」

 

とろんとした目で……しかし、どこか不安を声音に滲ませたイゼッタの、そんな言葉を、僕は黙って聞いていて…………気が付けば、抱きしめていた。

 

……言われなくたって、放すもんか。

意地でも、幸せになってやる。幸せにしてやる……君も、君の周りの皆も。

 

……もちろん……君のお腹の中にいるかもしれない、あるいはこれから宿る……小さな命も。

 

……けれども、今は……ひとまず、僕らがいるのは、ベッドの上だ。

この期に及んで、どうしても……優しくて人がいいからこそ、消えることなくイゼッタの中にある、罪の意識とか、そういう後ろ暗い感情……

 

今日、今くらいは……忘れてもいいだろうさ。

忘れさせてあげる。そして……代わりに、君の好きな『幸せ』で満たしてあげる。

 

まずは今日、ここで……男と女の、夫と妻の幸せから……ね。

 

抱きしめていた体を放し、再びイゼッタを、ふかふかのベッドに押し倒して、その上から覆いかぶさる形になって……うっとりした表情になったイゼッタと、もう1度唇を重ねた。

 

 

 

 




つづく。

エロシーンメインは次回で。


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12-2 後日談 イゼッタ(後編)

 

引き続き、E月T日

 

いつものことではあるけれども……イゼッタとのキスは、ただのキスで済んだためしがない。

ただ、唇を触れ合わせただけでも、脳の奥や体の芯がびりびりしびれる感じを、毎度味わっている……これが、ベッドの中でとなると、他にもいろいろとしびれる部分があったり。

 

そこから、舌を入れたり唾液を吸いあったりするうちに……どんどん互いに体が出来上がっていく。恥ずかしさで抑え込まれ、理性で隠された本能が引っ張り出される感じ。

 

……やっぱ彼女、傾国の美女、だと思う。

抱くこと数百回。いまだに彼女の前で平静を保つすべがない僕は……ないとは思うけど、イゼッタにそそのかされたら、かなり強引なところまで言いなりになってしまいそうだ。

 

さっき彼女は、『幸せになりたい』『今の幸せな時間を、手放したくない』って言ってたけども……僕の方こそ、彼女とともにある、というこの時間を手放すのなんて、無理だ。

 

それどころか……すでに手に入れているにも関わらず、彼女のことを『欲しい』『もっと欲しい』という欲望が出てくる始末……。

 

イゼッタのせいにするみたいな言い方になるが……ホントに彼女は、男を狂わせる。

 

真面目さが、誠実さが、健気さが、儚さが……時折見える心の強さや、逆の弱弱しさに至るまで……僕の心をとらえて離さない。

 

「……ぷ、はぁ……」

 

離れる唇と唇。お互いの口の中から抜き取られる舌、その間に糸を引いて、名残惜しそうに僕らは顔を放す。

 

彼女の大きな目の、うるんだ瞳に見つめられ……少し荒くなっている息遣いが耳に届く。

今、離したばかりの唇を、また合わせたい衝動に駆られるも……そういえばもう4度目だな、と思い出して、踏みとどまる。……たしかに甘美なひと時だけども、いつまでもコレだけというわけにもいかない。彼女なら……受け入れてくれるかもだけど。

 

けど、僕は今……彼女を抱くためにここにいるんであるからして……と、思っていたら、今度は彼女の方から、僕の体を下に抱き寄せてきた。

そのまま、ぎゅっ、と抱き着いてきたイゼッタは……

 

「……はむ、んゅ……」

 

ぱくっ、と……僕の耳を、そのやわらかい唇でついばむようにくわえ……そのままもにゅもにゅと。口の中で愛でて、唾液まみれにしたと思ったら……おもむろに口を放した。

 

そして今度は、僕の首筋に吸い付いて……ちゅぅぅうう……と。

 

「……ぷは」

 

はっきりと引っ張られる感じがするくらいに吸って……放す。

たぶん、少ししたら……僕の首元には、見事なキスマークができていることだろう。

 

その感覚にすら、じんわりと温かみを感じている僕に構わず……イゼッタは、次いで肩口、胸元と……いくつも追加のキスマークを付けていく。

 

「……ぷふぅ……ふふっ、なんだか……名前書いてるみたい。私のだー、って、皆にわかるように……ちょっと楽しいかもです」

 

そう、今度は無邪気な笑みを見せたかと思うと……今度は頬に、同じようにされた。

 

それにドキッとさせられた僕は、負けじとイゼッタの首元に吸い付いてマークをつけてあげた後……今日、やろうかどうか迷っていた……ちょっと稚拙だけど、魅力的な『いたずら』を、実行に移すことを決めた。

 

『ひゃ……ん♪』と、首元の感触にびくびくしているイゼッタを押さえつけたまま……僕は、口を首元から下の方に……彼女の豊かな双丘にもっていって、そのまま吸い付いた。

付け根に、中腹に、先端に……時に加えて、こりっ、と軽く歯を立てたりして。

 

「あ、ん……っ! もぉ……おっぱい、好きなんだからぁ……」

 

困った子を甘やかすように、イゼッタは僕の頭を優しく抱きしめて、自分の胸に溺れさすように押し付けて……その温かくて柔らかい感触に、脳がとろけそうな心地よさを僕は感じていた。

 

そのまましばらく、夢見心地でイゼッタの母性に包まれていた僕は……位置取りの関係から、僕のお腹のあたりにあたっている、彼女の恥部が……しっとりを通り越して、水気を感じるくらいになりつつあるのに気づいた。

 

見れば、自分でもわかるのか、顔が赤く……恥ずかしいのか、目を反らしている。

それでも、時々、一瞬だけこっちに向けられて……それが見ているものは、僕の顔だったり……自分が今しがたつけたキスマークだったり、すでに大きくなっているペニスだったりした。

 

……3番目が、彼女の今の望みというか、期待を如実に露骨に物語っている。

内股でもじもじした態度にまでなってるあたり……実に雄弁である。

 

赤く染まり、上気した彼女の顔を見ながら……僕は、『期待に応えてあげる』とでも言うように、彼女の両足をつかんで横に開き……その間にある、とろとろに濡れている縦筋がよく見えるような形にした。

 

いざ目を向けられると、それはそれで恥ずかしいのか、『ぁっ……』と声を漏らすイゼッタだけど……ここでちょっと、さっき言ったいたずらを。

ベッドに備え付けている小さな戸棚に手を伸ばし、中から用意しておいた薬を取り出して……イゼッタの膣内にぴとっと塗る。

 

『?』って感じの顔になっているイゼッタに構わず、錬金術を発動。一瞬で終わった。

 

膣内で、施術する時におなじみのあったかい感じと……その後に何かが変わったような違和感を覚えたらしいイゼッタだが、その直後、僕が肉棒の切っ先をその入り口につぷっ……と沈ませたあたりで、また、期待に目をとろんとさせた。

 

……が、その表情は……僕がもう少しそれを膣内に侵入させたあたりで……困惑に変わる。

 

僕の肉棒が……膣内の『何か』に引っかかって、止まった。

 

「……えっ? こ、これ……な、何で……?」

 

それは……イゼッタからしてみれば、とっくの昔に失ったはずのもの。

女として、とても大切な……しかし、無残にも散らされ、一生戻ってこない……そう、思っていたものだった。

 

そういうこと……僕がさっき、錬金術でやったのは、コレ……処女膜の再生である。

 

さかのぼること、もう実に1年以上も前。尋問と称したレイプによって、無残に散らされてしまったイゼッタの処女。もちろん、そんなこと気にせず、僕はイゼッタを今まで愛してきたわけだけど……この間、ふと思ったというか、欲が出てしまったのだ。

 

イゼッタの全部が欲しい……それこそ、失ってしまったはずの『コレ』も含めて。

そう思って……所詮は再生させた、疑似的なものではあるものの……僕はこうして、今日、彼女の『初めて』を奪おうと決めていたのである。

 

それを知ったイゼッタは……最初は困惑していたようだけど、次第にその顔を泣き笑いに変えて……同時に、切っ先がちょっとだけ入っている膣内が、ぎゅっと引き締まって、熱くなって。トロトロに濡れ始めた。

 

それだけでも気持ちいいし……ともすれば、男側の自己満足ともとられそうなこの茶番、こんな風に喜んでくれるイゼッタがもうどうしようもなく愛おしくて……このまま一気に、と思ったところで……ふいにイゼッタから、『それなら』と声がかかった。

 

「……今まで、その……どこか、まだあなたに対して、罪の意識があって……でも、いつか……と思ってたことがあったんです。あなたが、私の全部を欲しがってくれるなら……求めてくれるなら……私も、あなたの全部を欲しがってもいいですか?」

 

欲しがる……っていうと?

酷い言い方だけど……男の場合は、その……女の子と違って、何か明確なものがあるわけじゃないから、仮に『童貞が欲しい』とか言われたら、うれしいけど困るというか……

 

「ううん、そうじゃなくて……」

 

そう言ってイゼッタは、僕の首に腕を回して抱き寄せ……その拍子に、処女膜に切っ先が押し付けられて軋み、もうちょっとで破れそうになる。

イゼッタは構わず、もう少し前に出るだけでキスできそうなくらいに、顔を近づけて……

 

 

 

「来て……私の全部、もらって…………『ソロ』」

 

 

 

そこから先は……毎度のことながら、滅茶苦茶やった。

 

『ぶつっ』という、薄いけど確かにある膜が引きちぎれる音を聞きながら……快感と同時に、破瓜の痛みに耐えるイゼッタの一番奥に肉棒を押し込んで……その瞬間達してしまった。三擦り半どころじゃなく、つながっただけで。初めてだこんなの。

 

ただ、それを疑問に感じないくらいに、頭は沸騰気味だし、体は本能で動いてるし、陰嚢の中身の精子たちは彼女の中に出たがるしで……

 

イゼッタも……二度目だからだろうか、徐々に痛みも薄れ、精液を飲み込む膣内をひくひくさせながら……もっと欲しい、とでも言うように腰を小さく動かし始め、

 

それに応えるように……そこからは、僕も獣に……いや、違うな。覚えたての童貞みたいな感じに、征服欲と多幸感で頭がいっぱいになった状態で、滅茶苦茶やった。

耳元で……『ソロ、ソロぉっ!』と……何度も僕を呼ぶ、イゼッタの声を聴きながら。

 

僕を『ソロ』と呼ぶのは……家族だけ。今となっては、母さんだけだ。

 

もうちょっと昔は、古参の使用人あたりも『ソロ坊ちゃま』って呼んでたりしたんだけど……今では『ソロモン様』ないし『旦那様』だ。

 

軍や研究所での部下や上司は、一様に苗字か階級呼びだし……士官学校では飛び級しすぎてほとんど同年代の友達がいなかったので、せいぜいいても名前呼び。

 

だから、結果的にだけど……僕にとって、『ソロ』と呼ばれるのは……そして、僕がそれを許すのは……僕が家族と認めた人だけ、みたいな認識を、僕もイゼッタも持っていた。

 

イゼッタは今まで、僕のことを『サンジェルマンさん』と呼んでいた。

それが……望んで、名前呼びをすっとばして『ソロ』と呼んでくれた。

 

なんていうか……たったそれだけのことなのに、すごくうれしくて。

まるで、本気で彼女が僕の家族になろうとして……いや、なってくれたみたいに感じた。

 

さっきまでの会話から見れば……彼女からすれば、罪の意識から、僕や僕の家族、僕の家とこれ以上近づく、親しくなることがためらわれるような感じだったろうにも関わらず……自分からそれを振り切って、僕の家族になってくれた。

 

すごく、幸せな気持ちの中で……僕らは、底なしに求め合った。

 

奥まで挿しこんで、抱き合って、腰を振って……ただひたすらにそれだけ。

本当に初めて同士のセックスみたいに、テクニックとか、言葉責めとか、そういうの全然考えず……余裕もなく、思う存分にお互いの体をむさぼっていた。

 

僕のをやわらかく包んでくれる、イゼッタの肉壁の熱くて柔らかい感触に酔いながら、こつん、こつん……と、何度も何度も彼女の子宮口を突き上げて。そのたびに、イゼッタの膣がきゅうきゅう締め付けてきて……体が僕の腕の中で、びくっと震えて、かわいい声が上がって。

頭も体も、そのたびにどんどん熱くなって、余裕なくなって。

 

ひたすら腰を振って、イゼッタの体を味わって、

達すれば吐き出して、それでも腰は止めないで、

 

もうすでに、最初の方に射精した分の精液は、収まりきらなくて続々と子宮からあふれ出し、逆流して、ぼとぼととベッドに零れ落ちている。

 

それでも、止まらない。どんどん吐き出して、どんどんあふれさせる。

結合部はもちろん、それが伝って流れ落ちているイゼッタの太ももやお尻は、もうべとべと。その下のシーツも、大きなシミができている。

 

イゼッタの方も、もうほとんど本能と衝動だけで……何度も受け止めている僕の肉棒を、今日初めて性に目覚めたみたいに貪欲に……加えこんで離さず、そのまま滅茶苦茶に乱れた。

 

腕を、足を回して離れられないようにしがみついて……ただの一度も放さなかった。突くたび、射精するたびにどんどん強くしがみついて……。

 

している間中、何度も『ソロ……ソロ!』『あぁっ、もっとぉ! もっと来てぇ! ソロぉ!』って……名前を呼んで。よがって……喘いで……。

 

何回か、背中や肩口にチクっとした痛みが走ったこともある。

多分だけど……快楽を抑えきれなくて、がむしゃらに動いて……ひっかかれたり、噛みつかれた、ってところじゃないだろうか。

 

……後で気にしそうだから、治しといたほうがいいかもだけど……個人的に、何というか……せっかくだしそのまま残しておきたい気もするから困る。

 

 

 

そう珍しくもないことだけど……限界まで盛って、ヤって……気が付いたら朝だった。

 

ほとんど同時に目を覚ました僕らは、しばらくしてから周囲を見渡して……苦笑した。

なんかもう……ベッドの上が、ホントに獣の交尾のあとみたいな惨状だったもんだから。

 

シーツも、布団もしわくちゃの上に、僕ら2人が出したいろんなものでぐちゃぐちゃだ。

これ、メイドに洗わせるの、ちょっとためらうな……なんかもう、汚れてるとか濡れてるってレベルじゃないし。浸ってるってレベルだもん、いろんな液体で。

 

ほとんど僕の精液と、イゼッタの愛液……あと、2人の汗と……途中で失禁したイゼッタのおしっこと、それから……小さな赤いシミになってる、破瓜の血。よだれとか涙もかな。

 

あとで錬金術で汚れ分解しとくか、とか思いつつ……2人とも同時にあることに気づいて……そのまま、また苦笑。今度は、顔を赤くして。

 

そして、これだけ出して、この期に及んで、たくましくもイゼッタの中で朝勃ちしてしまった僕の肉棒を……同時に、じゅんっと濡れだしたイゼッタの肉壺を満足させるために、そのぐちゃぐちゃの布団の上で、けっこうな性臭に包まれながら……何回も。

 

その後、一緒に風呂に入って……そこでもヤってしまった。何回も。

なんかもう、お互いに、お互いの裸を見るだけで我慢できなくなるんだもんな……発情期の獣でももうちょっと慎みあるんじゃないのか。大丈夫か、僕ら。

 

ともあれ、どうにかこうにか汚れを全部落として、ようやく遅めの朝食をとれるようになったところで……食堂に向かうまでの廊下、僕らは、腕を組んで歩いてたんだけども。

 

「……えっと……不束者ですか……だったっけ?」

 

上目づかいで、ちょっと照れくさそうにしつつ……歩きながら、そう声をかけてくる。

 

「それだけじゃなくて……色々まだまだで、頭も残念で、仕事は忙しくて……その上、心も体もえっちでどうしようもない妻だけど…………これから、よろしくね。ソロ」

 

敬語もやめて、親し気にそう言ってくるイゼッタの晴れやかな笑顔は……これから彼女と生きていく、何十年もの時間が、きっと幸福に満ちたものになるだろうな……と、予感させるものだった。

 

 

 



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13-1 後日談 フィーネ(前編)

後日談第3弾。今回は……感想欄で希望も多かったフィーネです。

なんか、前の2人とはまた毛色の違う感じになった気がしますが……どうぞ。


F月N日

 

……どうしてこうなった。

 

目が覚めて、初めに思ったことがそれだった。

 

目が覚めると……裸で、ベッドに寝ていた。

まあ、それ自体は珍しくもない。イゼッタやビアンカ、もしくはその両方と朝ちゅんで目を覚ますなんてのは……よくあることだ。

 

数か月前になるが、僕は、2人と結婚した。公式発表はもちろん、式も、届け出も、引っ越しも済んでる。正妻がイゼッタで、ビアンカが側室って感じ。

 

となれば、ベッドの上で毎晩愛を育んだとしても、何もおかしくない。問題はない。朝ちゅんしてしまったところで、何の問題もない。むしろ、その後朝からヤることすらある。

 

……問題は、というか……いつもと違うのは、今はまだ暗く、朝ではないこと。

そしてもう1つ……僕の隣にいるのが……イゼッタでもビアンカでもないということだ。

 

さらさらの金髪に、整っていてかわいらしい顔、紫色の瞳、絹のように滑らかな肌……そして、ぺったんk……もとい、スレンダーで凹凸のない体。

 

「……ほ、本当に、すまない……こ、このような不義、どう詫びればいいのか……!」

 

この国……エイルシュタット公国の国家元首。

オルトフィーネ大公殿下が、同じく裸で、僕の横で小さくなっている。

 

そして、そんな僕らを……徐々にお腹が大きくなり始めている状態の、イゼッタとビアンカが、困ったような表情で見ていて……その後ろで、ロッテちゃんがあわあわしつつ立っている。

 

 

 

さっき、僕が結婚した話をしたけど……実は同時に、大公殿下も結婚している。

国内の有力者から、婿を取って。

 

エイルシュタットという国の……ひいては、その頂点であるフィーネ大公の価値は、ここ数か月から数年でうなぎ上りどころじゃないことになっている。戦争が終わって、世界情勢がある程度落ち着いてからは……ひっきりなしに政略結婚の申し出が来ていた。

 

それをかわすために、さっさと手を打ったわけだ。

魔法関連学問の発展によって身についた発言力のおかげで、文句が出ることもなかった。いやまあ、悔しそうな声はあちこちから上がってきたけど。

 

なお、大公殿下が結婚した相手は、野心もなく、実家も含めて身の上も清廉潔白な……よく言えば安心できる、悪く言えば都合のいい相手だったりする。名前は……何だっけ、忘れた。

 

結婚の後は、無事に初夜も迎え……国政運営を隣で支えてくれているそうだ。

 

……ただし、その婚姻……1つ問題があった。

 

それは、相手の男に……将来を約束した相手がいたことだ。

それも……親が決めた相手とかじゃなく、恋愛中の。

 

しかし、フィーネ大公の夫に選ばれたとなれば、それに逆らうわけにもいかない……が、一国の王族であれば、妾・愛人を持つくらいは普通にする。僕も、その扱いでビアンカ娶ったし。

 

その恋人さんが、フィーネの旦那さんの『愛人』に収まったそうなのだ。ゆくゆくは、第2婦人みたいな感じで娶ることになる、と。

 

旦那さん、公務とかでは一生懸命にフィーネに、ひいては国に尽くしてくれているそうだし、その忠義に一点の曇りもないそうだけど……その愛だけは、前からの仲のその人に注がれている。

 

フィーネも、元々政略結婚だし、さすがにそこまで束縛する気はないと言って、囲っているその人と仲睦まじく――ただし、あくまで公には自分の夫という立場を考えろ、と言い含めて――2人で愛し合うことを認めている。

 

なんなら、彼女との間に生まれた子に……王権はさすがに渡せないが、実家の方の家督なら継がせても構わない、とまで言ってあげたらしい。

 

しかし、その結果何が起こったかと言えば……当然のごとく、夫婦間のセックスレスだった。

 

本当に愛し合っているのが、旦那さんとその愛人さんなので、夜はほとんど毎晩そっちにかかり切りで……フィーネとは、結婚後に数日、数回だけ。

 

その数回で種が付くこともなく、しかし『そっちを愛してもいい』と言った手前、自分を抱くように言うのも気が引けるし……そもそもその人、けっこう堅物というか真面目らしく、

 

『夫婦として大公殿下を政治的に支えることには何の異論もございません。しかし、真に愛することができないにもかかわらず、あなたの体に手を出すなど……失礼は重々承知でありますが、不義理であると愚考いたします。何卒姫様も、御身をゆだねるに足る方をお見つけくださいますよう』

 

てな感じで、フィーネに手を出しづらいそうで……まあ、本心から彼女を大事に思ってるのはわかるんだけども、結果的に夜の生活がもう何ヶ月もない状態だそうだ。

 

……そして最近、イゼッタとビアンカが……毎晩抱いてた当然の結果として、妊娠した。

 

結果、母体に負担がかかるような激しい運動が禁止に。

もちろん、性の営みもだ。

 

イゼッタは、ちょっと残念そうにしつつも、子供ができた喜びの方が勝っていたらしく、普通に受け入れていたけども……ビアンカが軽く絶望してたっけな。子供はうれしいけど、夜の生活が何ヶ月も禁止とか……絶対耐えられない何とかして、って泣きつかれた。

 

かといって、こればっかりは薬品とかでどうにかするわけにもいかない。下手なことして、お腹の子に何かあったら目もあてらんないし。

 

どうにか、イゼッタ共々、愛撫とかフェラからの飲精で性欲をこまめに処理することで我慢してもらい……まあ、そのおかげで僕の方も、禁欲生活にも耐えれてるんだけど。

 

なんか、2人を娶ってからというもの……というか、それ以前だな。2人を抱いてから、娼婦とか手配する気にならなくなってるんだよね、全然。なので、妊娠中も2人に処理してもらえるのはありがたい。手とか、口で。

 

……ボテ腹妊婦ゆえの魅力ってものも感じることだし。母乳も出るようになったし。

 

 

 

さて、ここで話を戻す。

 

昨日のことだ。イゼッタ、ビアンカ、そしてフィーネと、それぞれ理由は違えどセックスレスになってる3人が集まって……愚痴を言い合ったりお酒飲んだりする(ただしフィーネのみ)……女子会みたいなのが開催された。

 

そこで色々話して楽しんで、多少なり皆ストレス解消になったらしいんだけど……問題はその後。

 

時間的に遅くなったので……というか、元々そのつもりで準備してたらしく、用意した部屋にフィーネは泊まっていくことになった。そして、風呂に入ってから寝よう、ということになったのだが……寝る前にトイレに行ったフィーネは、酔っぱらっていたこともあって、道を間違えた。

 

で、どこにたどり着いたかというと……僕の部屋である。

 

そしてそこでは……タイミング悪く、ビアンカが僕のを咥えて奉仕してるところだった。

なんか……ストレス発散にはなったものの、その最中の猥談で我慢できなくなったって。

 

突然視界に飛び込んできた淫靡な光景。

しかもだ、ビアンカってほら……いつもの凛々しい姿からは想像もつかないくらいに、ベッドの上だと乱れるからさ。本番こそしないとはいえ、淫語を次々発しながら、男のアレを美味しそうにしゃぶるその姿は、フィーネには余程衝撃的だったようで。

 

しかも、まだフィーネは酒が抜けきっておらず、その影響で頭がめっちゃ混乱状態に。

そしてこの後、その回ってない頭で問題行動に出る。

 

そのまま最後まで僕とビアンカの淫行を見届けた後……僕が寝静まったのを見計らって部屋に不法侵入。ベッドで眠る僕の元に忍び寄り……布団をはいで、ズボンを下ろして、その刺激でちょっと大きくなった僕のアレを、さっきのビアンカの様子を思い出しながらその口で……

 

……この時僕は、少ない時間で効果的に疲れを取れるよう、栄養剤兼睡眠導入剤を飲んでたことで……それに気づけず、随分と起きるのが遅れてしまったのもまずかった。

 

で……股間に妙な違和感――というか、強烈な快感を覚えて目を覚ますと……そこにはなんと、勃起状態の僕の肉棒を、奥までその膣でくわえこんでいる大公殿下が。

 

ここ2か月ほど全くご無沙汰だった快感が……しかも、ビアンカともイゼッタとも違う感触が、急激に僕の意識を覚醒させ……しかし、そのせいで同時に快感もどっと押し寄せた結果……僕の目の前で、姫様の膣内にどばっと精液が注ぎ込まれた。

 

赤い顔で……心底気持ちよさそうに、びくっ、びくっ、と体を震わせながらその奔流を受け止めた姫様は……そのまま僕の胸板の上に倒れこんできて、すぅすぅと寝息を立て始めてしまった。

 

その直後……あまりの事態に呆然としていた僕だったが、再び薬が効果を発揮し始めて眠くなってきたことで……『きっと夢だな』と1人納得してそのまま寝た。

 

で、今さっき……フィーネが部屋にいないことに気づいたロッテちゃんが、『行方不明事件発生!?』と考えて、どうしていいかわからなくなり、僕に判断を仰ぐためにここにきて……まさかの不倫セックス事後でくてっと寝ている僕ら2人を発見。

もっとどうしていいかわからなくなり、イゼッタとビアンカを起こして連れてきた。

 

 

 

「じゃ、じゃあ姫様、つまり、あの後……酔っぱらっちゃって部屋を間違えてここにきて……ビアンカさんが、ソロにお口で奉仕してるところを見て……」

 

「自分でも抑えが効かなくなり、寝ている彼の陰茎に色々といたずらして、口で射精させて一発飲み干した挙句、そのまま挿入して膣内射精を……と……?」

 

「ほ、本当に……すまん……わ、私はっ、た、立場ある身で、しかも夫がいながら……そなた達という妻がいる彼を相手に、大変なことを……あ、あまつさえ、この身に精を……!」

 

酔いがさめ、次第に自分のしたことを認識し始めたフィーネが……がくがくと身を震わせ、顔色を蒼白にしながら、必死で僕らに謝っていた。

さっきなんか、危うく全裸土下座に移行する勢いで……相当パニクってるな。

 

けど、こっちだってぐーすかのんきに寝てて気づけなかったし、勝手に夢だって納得してたし……いや、色々と大問題なのはわかるけど、そこまで姫様を責める気はない。少なくとも、僕個人は。

 

さらに言えば、イゼッタもビアンカも別に怒ってはいない。

そりゃ、全く気にしてないわけじゃないし、思うところは多少あるようだけど……酔っぱらっての行動だし、別に危害を加えられたわけでもないし……2人とも、フィーネ大好きなので。

 

セックスレスだっていう事情も、すでに女子会で聞いていたし……しかもその席で何と、『だったらうちのソロ、お貸ししましょうか?』なんて、冗談であれ言ってたらしい。イゼッタが。

まあ、そりゃ……ホントにそんなことになるなんて思ってなかっただろうけどさ。

 

とりあえず、その場は解散して……各部屋に戻って寝ることに。

 

僕は当然この部屋でこのまま寝たんだけど……ベッドにフィーネの残り香が感じられて、ちょっと落ち着かない夜になった。薬で無理やり寝た。

 

 

 

で、翌日。

朝食の時からして、僕たちの顔をまともに見れないばかりか、ビアンカと僕の顔を見るとかぁっと顔を赤くするなど、挙動不審極まりないフィーネ。

 

このままにしとけないので、とりあえず当事者4人……と、目撃者であるロッテちゃんも一応一緒に、きちんと話すことになった。

 

その結果決まったのは……えっと、いいのかコレ?

 

まず、今回の不倫セックス――しかも同意なしの睡姦――については……姫様には何も責任とかは問わない。これは、僕も含めた全員で満場一致。

 

けど、もう1つの決定事項……今後も、僕とフィーネの、率直に言って『不倫』の関係を、イゼッタ、ビアンカ公認のものとして容認する、とは……。

 

いや、その……僕としても、何かしら責任とれっていうなら、できる限りでさせてもらうつもりだったけど……いや、そもそもコレ責任どうこうの話でもない……か?

 

聞けば、もともとイゼッタもビアンカも……自分はもちろん、僕の相手をする人がいなくて、僕に我慢を強いていた現状をどうかと思っていたようで……その点、2人とも、フィーネなら相手としては信頼できるし文句ない、と。

……いいのかそれで、相手、いくら信頼できるっつても……一国の国家元首だぞ。

 

そして、フィーネの方も……え、何、旦那さんより大きかったって……ああ、さいですか。

で、気持ちよかったと。けど、旦那さんは愛人にお熱だから、期待できないし……かといって自分が愛人を作るのも無理。そもそも信頼できる男の相手といえば、僕くらい……?

 

……そもそも、あんな気持ちいいもんだって知ったらもう戻れないし、イゼッタとビアンカがこんな風にメロメロになるなんて、僕が起きたまま相手をしてくれたらどうなるのか興味ある?

避妊さえきちんとすれば何も問題ないからって?

 

……なんか、国家中枢の重要人物間の会話とは思えないくらいにただれた感じだな……。

 

ま、まあ……それでいいなら、その……僕に異はないけども。おとがめなしってことで。

 

……え、何、フィーネ? 耳かせって?

 

 

 

……今夜、早速また?

 

 

 

 



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13-2 後日談 フィーネ(後編)※フィーネ視点

 

F月M日 フィーネ視点

 

随分と、この生活にも慣れたものだ、と思っていた。

戦争が終わり、わが祖国エイルシュタットに平和が戻り、戦後復興に力を注いで……この世界に現れた新たなる可能性たる『魔法』の先進研究国家として、祖国は国際社会でその地位を確かなものとした。

 

今なお、欧州の、いや人類の輝かしい未来を形作るための、いくつもの研究成果が発見され続け、報告されてくる。まさに日進月歩……すさまじい勢いでだ。

 

『魔法工学』と『錬金学』の時代をけん引する国家……その頂点に立つものとして、私に求められるものは多く、そして大きい。

 

それでも……戦時中に比べれば、うれしい悲鳴と忙しさだ。仕事の向こうに待っているのが希望であるとはっきりわかるなら、そしてこれらの成果をもたらしてくれているのが、私の盟友たちであるのだから……これを苦に思ったことはない。

 

……ない、のだが。

 

その……何というか、彼らは充実しているな……と、ちょっとうらやましくなることは、ある。

……リア充、というんだったか、ああいうの?

 

我が友、イゼッタは……戦後、魔法関連学問の権威――というか、魔法を使える一番の当事者――として社会的な立場を手に入れた。そして、戦後も社会貢献という意味で数々の功績を打ち立て……とうとうこの間、戦時中から想い合っていた、帝国の『錬金術師』、ソロモン・フォン・サンジェルマンと結ばれ、夫婦となり……今は、身重となって静養している。

 

加えて、その御仁には……私の近衛隊長だった、ビアンカもまた、側室として嫁いでいる。同様に、少なからず彼の事を想っていたそうで……彼からプロポーズされ、イゼッタからも認められ、退役して妻の1人になった。そして、彼女もまた……その身に新たな命を抱えている。

 

最早、形骸化して久しい、当時の貴族階級や高級官僚クラスのみに認められる重婚制度だが、今回大っぴらに復活させた。

 

エイルシュタットに限らず、今、戦争で人口が減っていることもあり……欧州全体で、復員した軍人やら関係者が続々と身を固めているし……来年以降、新たな命が生まれる気配がそこかしこにある。いわゆる、ベビーブームというやつだ。

 

それに加えて……政治的な思惑もある。

 

サンジェルマンは、ゲールにおける最大の重要人物と言っていい1人だ。現在その影響力は果てしなく大きく……下手を打てば、彼を中心に、ゲール国内に派閥、軍閥が出来上がってしまうのではないかと、国際社会が危惧するほどに。

 

そんな彼だが、今ではエイルシュタットに家庭を持ち、妻は2人。いずれもエイルシュタットの民であり……子供までできている。名実ともに、完全にエイルシュタットに生きる場所を移した……もっと露骨に言えば、取り込まれた形だ。

 

ゲールは、サンジェルマンという、その国における強力な牙を手放し、権威は強いとはいえ小国であり力はないエイルシュタットに送ることで、かつてのような野心はなく、その火種足りうる人物を持つこともしない……と、喧伝した形だ。

 

……実際のところ……結果的にそうなった部分もあるのだが。

そもそも、彼とイゼッタ達との間には、確かな恋慕の情があり……それに沿って結ばれた結果だ、というのは、彼らと親しい一部の者のみが知る真実である。

 

……まあ、それはいい。

 

そういうわけで……だ。今ではサンジェルマンは、イゼッタとビアンカの夫という立場なわけだが……その彼に、ひいては妻であり、私の友である2人に対して……先日私は、とんでもないことをしてしまった。

 

い、言い訳になるが……私はあの当時、酒で酔っていた。そのせいで、道を間違えて違う部屋に行き……ついでに、人としての道をも間違えてしまった。

 

扉の向こうに見えた……サンジェルマンと、ビアンカの、あ、あのような濃密な……。

そのせいで変な気分になって……我慢できなくなって。

 

わ、私とて、若く健康な1人の女であって……そ、その、そういう欲求も、人並みにはある。

しかし、つい先日、夫となった者との間に、そういった行為は久しくない。彼は、こちらの都合で、一時的にとはいえ引き離してしまった想い人との間に、愛を育んでいる。

 

それを私は責める気にはなれず……そもそも、私も、自分を好いているわけでもない相手に、軽々しく体を許したいわけではないし……まあ、そんな感じで、最近はもっぱら『1人遊び』だけで、その……色々と溜まっていた。

 

……その結果が……あろうことか、サンジェルマンを……イゼッタとビアンカの夫を、寝込みを襲って、あ、アレを私のあそこにあんな……

い、今考えても、何てことをしてしまったのだ、私は……一歩間違えれば、大問題だった……。

 

幸いにして、そのことを知る者達は口をつぐんでくれたし、これがきっかけでイゼッタ達との間に確執ができるようなこともなかったが……問題はそこで終わらなかった。

 

自らの夫と経験を済ませている私ではあるが……その……サンジェルマンのアレは、先に娶った彼の同じものと比べて、あ、あまりにも……違った。大きさも、快感も……

 

部屋に戻ってからも、結局一睡もできず……調子のいいことに、許されたとわかったとたん、私の頭は、サンジェルマンのアレのことばかり考え始めて……

 

……気づけば、翌日の話し合いで、イゼッタとビアンカから……彼を、彼女たち公認の元、時々貸してもらう約束を取り付けて……しかもその夜、早速彼を部屋に呼びつけてしまっていた。

 

わ、私はこんなにも、みだらな女だったのだろうか……若い燕を前に垂涎になり、許されたと見るや飛びついてしまうほどに……

 

い、いや、きっとコレは……一時的なものだ。

 

中途半端に色を知ってしまったところで、もっと、もっと、とがっつきたくなってしまっているだけで……しかしほら、放っておいても体に良くないし仕事にも差し障るだろうし、そもそも私の夫とて私公認で不倫してるわけだからちょっとくらい私も遊んだってごにょごにょ……。

 

じ、実際、私の『夫』になっている彼も、私は私でいい人を見つけるよう言っていたし……ならば、うん、誰も損をしていないし、困っても悲しんでもいないのだ。何も問題はない。

 

そんな風に、必死で自分を納得させていたところに……とうとう、ドアがノックされる音が聞こえてきた。き、来た……来てしまった、とうとう……。

 

お、落ち着け、あまりに取り乱しているとそっちの方が恥ずかしいし、相手も困るだろう。

 

……本気に、なるわけじゃない。これは、そう……単なる遊び。ちょっと過激なだけのスキンシップなのだ。再会を祝してのハグや、頬にするキスと同じような……うん。

 

だから、気軽に……って言ったらイゼッタ達に失礼だけど、あくまで、一時的なアレだから。1回がっつり、しっかりやれば、落ち着くだろうから……うん。だから、今日だけ……。

 

て、手早く済まそう。さっさと招き入れて……服を脱いで……(ごにょごにょ)して……後始末やシャワー、別れて彼を部屋に返すところまで……うん、1時間もあれば十分だろうし。

あー、は、入ってくれ。

 

 

 

 

 

…………私が、甘かった。

 

1時間もあれば終わるとか、さっさと手早く済ませるとか、遊びだから本気にならないでとか、あくまで冷静にとか……何をできもしないことを言っていたんだろうな。

 

……生娘と変わらん。

いや、経験済みであることを考えれば、それ以下だ。なんて無知だったのだ、私は。

 

夫との初夜や、その後何度か閨を共にした時は……互いに適度に性器を触って撫でて、準備を整えたうえで……足りなければ、ローションを塗って潤滑油代わりに十分濡らした上で、挿入し、腰を振って……絶頂に至ったら精を放って終了、というものだったはず。

 

セックスとはそういうものだと思っていたし、王族にとって求められるのは、それによって子供ができること。それさえ成せば何も問題はないのだから……私の性知識も、そこまでだった。

 

……サンジェルマンとの夜は、最初から違った。

 

一応、人妻ということで、口づけはなしにして……私の体を優しく愛撫するところから始めてくれたのだが……て、手つきが、すでに……。

優しくも、いやらしく……的確に私の気持ちいいところを探り当てて……

 

秘所だけでなく、お尻や、胸も……さらには、性感帯であるはずのない、わき腹や腋、首筋や足なんかも……ふ、触れられるだけでびりびりと……。錬金術は使っていないと言っていた。ということは、単に私の体が、彼の技術で感じさせられているということで……。

 

この時点で、もう余裕や冷静さなどというものは、私の頭からきれいに消し飛んでしまっていた……だけでなく、な、何度か、軽く達していた。ま、まだ挿れられてもいないのに……

 

気づけば、真夏の夜のように火照った私の体は、快感で全身へろへろに弛緩させられてしまっていて……力が入らない状態で、ベッドの上に優しく横たえられて。

 

朦朧とした意識の中で、彼から何か問いかけられて……生返事を返した、その数秒後……一気に意識を引き戻された。

 

股間から、強烈な快感と圧迫感。脳天まで電撃のごとく突き抜けたそれに、一瞬で私の頭は覚醒し……その原因を目の当たりにした。

 

私の、先程までぴったり閉じていた膣口をこじ開けて……彼のペニスが突き刺さっていた。

 

トロトロに濡れた私の肉壺に、ゆっくりと、だが確実にめりこんでいくそれは……初夜をはるかに超える衝撃を私の体に刻み込んでいく。肉壁をかき分け、押しのけ……奥へ奥へと進む。

き、気のせいでなければ、あの夜、寝ている彼を勝手に襲った時より、大きくて……!

 

そして、私の夫のそれではついぞ届かなかった領域までそれは踏み込んで……こつん、と、子宮口をノックされたところで、私はまた達して……

 

……そこから先は、乱れる一方だった。

 

どうやら、私の肉壺は……彼から見てもかなりの名器、と言えるものだったそうで。彼の方も、予想より余裕がなく……私が大丈夫そうだったので、少し激しくなってしまったそうだ。

 

自分でも華奢だと思う、私の腰をつかみ……勢いよく、ぱんぱんと快音を鳴らして腰を打ち付け……肉棒を私の中で暴れまわらせる。

 

も、もったいないことに、私はその間、乱れまくっていて意識が半分くらいしかなかったのだが……彼が動くたび、私を突くたびに、雷に打たれたような快感が何度も襲ってきて……。

何か、色々と叫んだ気がする。快感のあまり……おそらくは、意味など伴っていないであろうことを、次々と。大声で。

 

しまいには……なんかもう、サンジェルマンの方もだんだんと遠慮がなくなってきて……勢いよく、獣のように……幾度となく私の中を乱れ突いて……。

 

多分だが、途中からは私はされるがままだった。

快感のあまり暴れていたかもしれない。そんな気がする……が、それを抑え込んで、サンジェルマンは腰を振っていた、と思う。

はたから見れば……私が組み伏せられて犯されているように見えたかもしれない。

 

股間を中心に、洪水のようにあふれ出た快感が、私の体の中全体を駆け巡って……しかし、やがて行き場がなくなって飽和状態に。何度も、何度も達してしまった。

 

しまいには、イきっぱなしになってしまった私の膣内に……熱い感触が……。しかも、どくどくと注ぎ込まれて……子宮の奥まで、お、重さを感じるくらいの量を……。

 

入りきらなくて、ちょっと逆流してきたし……ど、どれだけ出したんだ!?

私の知識では、成人男性の1回の射精量は、せいぜいスプーン1杯分かそこらで、しかもそう何度も連続で射精できるような体の仕組みにはなっていないはずなのに……

 

たった1回で、身も心も中身も限界まで満たされた私は、そのまま気絶するように眠ってしまった………………のだが、

 

その夜は……それでは終わらなかった。

 

 

 

何やら、くぐもった声が横から聞こえて、目を覚ました――が、いかんせん体が倦怠感でいっぱいで、目と首くらいしか動かない。

その状態で、私がどうにか横を見ると……

 

裸で横向きに寝ているイゼッタを、後ろから抱きかかえるようにしつつ、腰を振っているサンジェルマン……という図がそこにあった。

 

え、ちょ……な、何して!? こ、ここ、私の部屋で、私のベッド……ふ、普通、女を抱いた後に他の女呼んで抱くか!? い、いやあの、一回で気絶してしまった私だから、えらそうなことは言えないんだが、その……ちょっとほら、でも……。

 

というかイゼッタ、お前身重だろう!? いくらなんでもその状態で性行為など……あ、あれ、よく見たら入ってない……太ももで挟んでこすってる? ああ、入れないでやってるのか……。

 

そ、それにしたって……というか、すごくその……淫靡な……。

 

『ソロぉ…っ!』『イゼッタっ……!』って、互いに名前を呼び合いながら……胸や、お腹といった場所を愛撫しつつ、やわらかそうなイゼッタの太ももに包まれて、サンジェルマンの肉棒が……あっ、射精した……え、ちょ……に、二回目でまだこんなに出るのか……!? こ、こっちまで飛んできたぁ……

 

うわぁ……気持ちよさそう。イゼッタも、挿入こそされていないものの、快感だったんだろうな……すごく、満ち足りた顔をしている。

 

……いいなぁ……幸せそう……。

実質的に恋愛結婚だからな……ホントに満足そうな顔してるなぁ……。

 

何と言うか……最後に、見せつけられてしまって……セックスで満たされた心に、ちょっとだけ不満が残ってしまった夜だった……………………

 

 

 

 

 

 

 

 

…………しかしまだ夜は終わらず。

 

今度はビアンカか! だからここは私の部屋だと何度も!

 

……って、あ、思わずツッコんでしまって、起きてるの気づかれた。

 

え、イゼッタもビアンカも自分から来た? 多分、私では1回か2回で限界で気絶してしまうだろうから? ……くぅ、実際その通りだったから何も言えん……

 

しかも……ちょ、ビアンカ……お、お前、ちょっと乱れすぎじゃないか?

昨日も、お前が嬉々として自分で胸をいじりながら、サンジェルマンのペニスをしゃぶってるところを見てて思ったんだが……お前、そんないやらしかったか? 私、かなり小さい時からお前に守られて一緒にいたんだが……あんな顔、初めて見たぞ!?

 

胸で挟んで、口でも……手も使って……しかも、イゼッタと同じように、太ももでも……さらには……わ、腋!? 髪!? ……あ、足!? それ、サンジェルマンは痛くないのか!? 手とかよりも明らかに乱暴というか、荒々しいように見えるんだが……。

 

最後には、ちょ、わあああぁあ!? そ、そこ、お、おひ、お尻っ!? お尻の穴……そ、そんなところまで……きれいにしてきたから大丈夫? い、いやそういう問題じゃ……お腹には負担が行かないようにしてる? だからそうでもなくて!

 

挙句の果てに……そ、そのように淫らなことを、大声で……しかも、な、何個か意味が分からない単語まで混じってたんだが。呂律回ってないし……ちょっと本気で、おかしくなってしまったのではと心配したぞ。

 

あ、ああ……出した、出してる。お尻の中に……。

抜き取ったら……あ、あふれてこぼれてる……。お尻の穴、広がってる……だらしなく……どろどろ漏れ出てきてるぅ……。

 

……………………。

 

……なあ、その……サンジェルマン?

その……彼女たちを悪く言うつもりはないが、その……女性器にも、入れたいだろう? その……元々それを入れる場所として、精を放つ場所として正しいのは、そこなわけだし……

 

見た感じ……全然、出し足りないんだろう? すごく、まだ、その……大きくて硬いし。

けど、ほら……彼女たちは今、女性器でお前のを受け入れるわけにはいかないわけだし……

 

……だから、な? 私でよければ……その……ある程度回復したし……な?

 

何なら、私が気絶したあととか、動けないくらいになった後……人形みたいに扱ってくれて、いくらでも使ってくれて、注いでくれて構わないから……いや、無理してるんじゃなくてその……ほ、本気で気持ちよさそうだったから……純粋に興味がある……。

 

さ、さすがにその、ビアンカのお尻に入ってたわけだから、ちょっと洗うか拭くかしてほしいけど……え、拭いた上で、錬金術で殺菌できる? そ、そうか、なら問題ないな。

 

……うん、頼む。

その……もっと、私にも……くだ、さい。

 

 

 

……結局、次の日動けなくなるくらいにがっつりやって、がっつり注いでもらった。

 

けど……だめだ。根本的な問題の解決にならなかった……。

一回やればとか、無理だ。余計はまった……これ、今後やめられる気がしない……。

 

本来の夫とやった感触がどうだったかとか、初夜の思い出とか……すでに忘却の彼方だ。完全に膣が、いや……体全部が、彼に染められてしまった……。

 

胸も、背中も、お腹も、彼のをぶっかけられてべとべとに……く、口にも入れられた。

一生懸命、奥まで咥えたら、どうにか射精してくれて……苦かったけど……ちょっと、美味しかった……かも。

 

人妻ということで、彼の方から遠慮してくれていたキスも、自分から求めてしまった。しかも、何度も。

舌まで入れて……だ、唾液が、くちゅくちゅ……

 

しかもその後は、膣だけでなく……ビアンカと同じように、お、お尻まで……!

膣以上の圧迫感の上、深いところまでえぐるように……内臓を犯されるような感覚……しかも、射精の量が多いから……すごく奥の方まで熱い感触が……!

 

さらにその下準備の時……腸内を洗うのは、『錬金術』でやってもらったから、な、中身を見られることはなかったけど……! お尻の中に、薬、ゲル状のやつ、ちゅーって入れられて……指、ぐりっ、て入れられて……塗りこまれて……。

途中で身をよじって力んだら、『びっ』て濁った音が……は、恥ずかしかった……!

 

さ、最終的には……私の望み通り、私が動けなくなっても、ラブドールのように抱きかかえて、腰を振って……前に後ろに、何発も何発も注ぎ込まれた。本当に人形として扱われてるみたいで……やや屈辱的というか、悔しく思う反面……ちょっと興奮もした。

 

脱力して、嬌声すら口から出ず、『あ゛ぁー……』って、うめき声みたいな音?が口から出てくるだけの私を、パンパンと腰を打ち付けて犯す図は、ちょっと犯罪的だったと、後で聞いた。

 

腰が痛くてまともに動けないので……唯一このことを知っているロッテに手伝ってもらって、風呂に入って、体を流して……膣内と、お尻の中の精液もあらかたかき出した。

……ちょっとロッテに引かれた。うぅ……は、恥ずかしい……!

 

その後、サンジェルマンに腰と体調を治してもらった。

錬金術、様々だな……これがなかったら、今日の予定全部キャンセルしなきゃならなかった。

 

……この後、イゼッタとビアンカに、改めて今後も、彼を貸してもらえるよう話さないと……

 

今はどのみち、イゼッタとビアンカは身重で彼の相手ができない。

なら、その間私が彼を慰めるというか、相手をするのは……うん、それがいい、そうしよう。

避妊さえきちんとすれば問題はない。彼の薬学知識や『錬金術』なら、簡単・確実だろう。

 

……いや……というか……

 

 

 

もういっそのこと……時期を見計らってではあるが……世継ぎも、彼に頼めないだろうか?

 

 

 

こう言ってはなんだが、夫は私との間に子供を作ることに消極的だし……ならばいっそ、彼に孕ませてもらえば……さ、幸いと言っていいのか、どっちも金髪碧眼だし……私の記憶が確かなら、血液型も同じだ。ばれない、と思う。何なら、夫は言えば許してくれそうだし。

 

だったら………………ゴクリ。

 

……夜物語の中だけだと思っていたが……女が子宮で男に惚れるというのは、本当にあるのだな。

今となっては……処女を彼に捧げられなかったことが、口惜しくさえ思えてくる。

 

……女子会の時にイゼッタが言ってたみたいに、再生して改めて破ってもらうのも手か。

 

まあ、こさえるにしても……もう少し国内外の情勢が整ってからの方が、時期としては好ましいから……やるなら来年以降だろう。戦後すぐの頃よりは公務も減ってきたとはいえ、もうしばらく、私が動けなくなるわけにはいかないし。

 

そして……その時が来たら、その……お、思う存分種付けを……。

か、彼の子種で……私が、このお腹が……は、孕む……わけだ……。そして、子を宿し、胎の中で大事に育てて……産む…………。

 

今、イゼッタやビアンカにしているように、大事にされて、労わられ、甘やかしてもらって……

ちょっとずつ大きくなっていくお腹……彼との愛の結晶を、体の中に感じて……

 

生まれてくるのは……彼と、私の子……将来、次期大公として、この国の未来を担う……

 

イゼッタや、ビアンカと一緒に子育てを……お、お互いの子供を、一緒に遊ばせたりなんかしちゃったりして!

その様子を、彼と一緒に4人で眺めつつ……次は男の子がいいかな、女の子もいいな、なーんて!

 

ああ、なんて甘美な未来……。

 

注意点があるとすれば、絶対に対外的にばれないように、だな……。顔がどっちに似てしまうかもそうだが……この間、サンジェルマンが言っていた『でぃーえぬえー』鑑定とやらも気になる。

まあ、錬金術がそれすらごまかせるレベルになる見通しだと言っていたから……大丈夫か。

 

後は……変な心配ではあるが、イゼッタとビアンカの子と、恋仲にならないようにしないと……。

対外的には違っても、実際は血のつながった、腹違いの兄弟姉妹だからな……結婚させるわけにはいかん……。

あ、でも、血が濃くなって悪い影響が出ないように、これも錬金術でどうにかなったりしないものだろうか? 万が一そうなった場合、子供たちの意思を尊重したい。

 

……まあいい、所詮はとらぬ狸の皮算用だ。

 

とりあえず、イゼッタとビアンカに相談だな。

 

将来、彼に種をもらって世継ぎを作るところまで、許可を取らないと…………あ、それと、できればもう1つ、許可ほしいな。

こっちは、彼の許可も要りそうだが。

 

 

 

……私も……『ソロ』って呼びたい。

 

 

 

 




とまあ、姫様パートでした。

……若干、ポンコツ化した?


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14-1 後日談 ロッテ(前編)

今回はロッテ編です……が、ちょっとあっさりな感じになっちゃったかも……


R月T日

 

「はぁ……また今日もですか……」

 

えー、皆様どうも。

私、ここ、欧州魔法関連学問研究所・ランツブルック本部にて、ハウスメイドをしております、ロッテと言います。

元が付きますが、姫様……今の大公・オルトフィーネ殿下にお仕えしていたこともあります。

 

そのフィーネ様の盟友であらせられます、白き魔女ことイゼッタ様のお世話係を申し付けられ……その縁で、この研究所に赴任しています。

 

……突然ですが、そんな私の最近の悩みを聞いてください。

 

私の主は、イゼッタ様なのですが……最近、ご結婚なされました。

相手は、かつてゲールで辣腕をふるいつつも、先の大戦において義をもって帝国に反旗を翻し、国際社会の平和を勝ち取った、世界的に有名な存在となった英雄にして研究者……最近は『蒼の錬金術師』という通り名で知られるようになった、ソロモン・フォン・サンジェルマン様です。

錬金術を使う時に、青い火花がバチバチ散ることから、その名前が付いたそうで。

 

『隻眼の英雄』という通り名もあるようですが……その片目を奪ってしまったのがイゼッタ様なので、その名で呼ばれるとイゼッタ様がちょっと落ち込まれるそうで、嫌いだそうです。

 

戦時中から相思相愛だったお2人。それぞれ公国と帝国の出身ということで、色々と障害や面倒ごともあったみたいなのですが……それらを乗り越え、見事に結ばれたお2人には……私も当初、心より祝福を送らせていただいたのは、まだ記憶に新しくあります。

 

そしてこれから先、『白き魔女』と『蒼の錬金術師』という、世界の先駆けたるお2人に仕えられるという素晴らしい未来に、私は改めて胸をときめかせたものでした…………

 

…………その時は、ですけど。

 

……いや、その……お2人とも、すごくいい人なのはわかるんですよ。

使用人に対して当たり散らすようなこともしないし、すごくよくしてくれます。戦時中からの付き合いのイゼッタ様はもちろん……ソロモン様もです。

 

民からの人気もあって、研究成果も日進月歩、まさにお2人の人生は順風満帆と言っていいでしょうし、何より夫婦仲睦まじい。そのことは、お仕えする身としてもうれしい限りです。

 

ただその……ちょっと、睦まじすぎるんじゃないかな~……って、思うんですよね最近。

特に……毎朝、ベッドメイクのために寝室を訪れる時に。

 

……夫婦の営み、だというのはわかります。

特に、ソロモン様は、イゼッタ様以外にも、側室として、元・近衛隊長のビアンカ様を抱えておられますし……最近はその、大きな声では言えないのですが……大公殿下こと、フィーネ様とも、秘密ながら懇ろの仲となっております。

 

……その気になれば、その3人を同時に相手にできるくらいの絶倫だというのだから……その、英雄色をなんとやら、っていうのは……ホントなんですね。

 

なので、ほぼ毎日……どこかしらの部屋のベッドが、こうなってます。

 

男女の色んな体液で汚れ……時には、『濡れてる』よりも『浸ってる』という感じの表現をせざるを得ないほどの、壮絶な状態……何やったらこんなんなるんですか、って毎回思います。

 

……2か月ほど前になりますが、イゼッタ様、ビアンカ様ともに、ご懐妊が明らかになりまして……お体をいたわる必要がある分、前よりはましになったんですが……ええ、それでも、できる範囲でやろうとするので……。

 

そして、お2人に輪をかけてアレなのが、フィーネ様との蜜月の折に使われたベッドで……妊娠しておらず、遠慮もいらないがゆえに……もう、毎回、もう。

 

……もうはっきり言ってしまいますと……翌朝のベッドメイクが大変なんです。すっごく。

今まさに、それを痛感してるんですけども。

 

……これは、痕跡から察するに……1回や2回じゃないですよね……。

……シーツ、重い……。色々吸ってるから……それに匂いも、すごい……あ、マットレスも汚れてる。換えなきゃ。……わっ、変なとこ触っちゃった、手が、びちゃって……

 

あーもう、私も、メイドである前に女の子なんですけど……こ、こういうのを処理させられるのはですね、あのー、えーと……か、感情的にアレなものがあると言いますか……。

 

……ぶっちゃけ、ここまで毎日こういったものを処理させられてれば、もう慣れたもので、嫌悪感とかはほとんど感じません。

しかし代わりに……なんかこう……興味、かな? 否応なしに、ちょっと本能的に、じゅんっ、とくるものがあると……

 

……優れた雄の気配や痕跡に、雌の本能が反応している、とでも言えばいいんでしょうか?

 

し、正直、その……興味が出てきてしまうん、です。

ソロモン様……一体どんな風に、皆様と愛し合ってるのかな……どんな肉体をお持ちなんだろう……って。

 

一旦気になると、仕事も手につかない……なんてことはさすがにありませんが、いつもいつもそんなことを考えてしまいます。

特に、イゼッタ様やビアンカ様、フィーネ様が幸せそうにしてる朝とかは。

 

その、悶々とした気持ちを抱えながらメイドをやっていた私は……ある時、偶然ながらも、見てしまったのです……。

 

まだイゼッタ様たちが妊娠してないくらいの時期……ある夜のことでした。

別なお部屋の整理整頓を済ませて、急ぎ足でお屋敷の廊下を歩いていた私は……イゼッタ様のお部屋の前で、艶の入った声が聞こえてくるのを聞いてしまって……

いけないことだとは思いつつ……扉を少しだけ開けて、中を見て……。

 

そして、私の目に飛び込んできたのは……ベッドの上で、下から何度も突き上げられるようにして責めたてられながら、快感に身をよじっているイゼッタ様。

その下になって、腰の動きだけで、イゼッタ様をがくがくゆすっているソロモン様。

 

すごく、激しくて……それでいて、お互いを想い合っているのがわかるセックス……目が、離せませんでした。

 

達してしまったようで、びくびくと震えて倒れ込んだイゼッタ様を、ソロモン様は胸板で受け止め……そのまま、抱きしめてまた腰を振り始め……しばらくすると、上下逆転してソロモン様が上に。イゼッタ様は、下からその腕をソロモン様のお体に回して抱きついていました。

 

……あっ、あ……しゃ、射精してる……。

すごい勢い……脈打ってるのが、ここからでも見える……ああっ、あふれてきた! つながってるところの隙間から、びゅびゅっ、って、飛び散る感じで……あふれた分の精液が……。

 

しかし、ソロモン様もイゼッタ様も全然止まらず……2回戦、3回戦と続いて……射精のたびにどばどばとあふれた精液が……あんだけやれば、そりゃ、あのくらいになりますよねー……。

 

精液愛液汗涙、いろんなものを出しながら、ごろごろ転がって、色々体位を変えて……これならむしろ、ああなって当然。あるいは必然ですね。

 

うぅ……見てるこっちが恥ずかしいくらいにいちゃらぶちゅっちゅ……お、思い出すだけで顔が赤くなります……。しかもそれがほぼ一晩続くんだから……

 

……しかし、それだけではなかったというか……

むしろ、イゼッタ様とのアレは、まだ大人しい方だったというか……

 

……別な日。私は、今度はビアンカ様の部屋の前で同じ声を聴きました。

……そして、誘惑に負けました。

 

そしたら、その中では……思わず『何してんですか!?』って声を出しそうになりました。

 

四つん這いになったビアンカ様に、後ろから覆いかぶさるようにしたソロモン様が……ま、まるで獣の交尾か何かのように、腰を振りまくって……パンパンと、乱暴に……。

 

出し入れのたびにかき出される愛液、はじけ飛ぶ汗と愛液と先走り汁の混じった飛沫、響く快音……しかし、何よりも驚いたのは……その間中、聞こえてくるビアンカ様の声!

 

『あぁああ、はぁあぅ! ひぃん! やっ、あ……も、もうらめだ……入れてくれ……わらひ、らめ……ん゛ん―――!! じ、焦らすなぁ……おち、ん……おちんひん、ほしぃっ! 早く……くれ……らさいっ! 私の、オマンコに……はやく、おちんぽ入れてぇえっ!』

 

『はぁああぅっ! い、いぃ、おちんぽいいぃっ! わた、わらひの、おにゃかの中、滅茶苦茶にされてるのぉっ! ズコバコって突かれて、お腹、びくびくってぇ! あぁああ、降りてくる、赤ちゃんの部屋ぁ……子宮、降りてきちゃうぅ! 妊娠しちゃうのぉお!』

 

『はひぃぃ……あうっ、おうっ、おぐぅ……ん……んほぉぉっ!! お、お尻の穴ぁ……バカになりゅぅ……広がってぇ、奥までぐりぐりって、ごりごりって……あおぉお! あぁあ! 出てるっ……あ、熱い……あぁ……い、いぃっ、美味しいのぉ……お尻の穴でずぽずぽされて、腸内でせーえき飲むのおいひいぃ……もっと、もっと飲みゅうぅ……お代わりぃ……』

 

『あう゛ぅ……あっ、あひっ……すご、しゅごかったァ……。あ、あっ……だめ、出る、出ちゃう……注いでもらったの、漏れる……ひあぁあ! さ、さわるにゃ……あぎぃ!? だ、だめ、それだめ……お、オマンコからも、お尻からも……せっかく注いでもらったのにぃ……だ、め、我慢でき……と、トイレ……それだけは……お、おしっこ、いかせ……ゃぁぁあぁあぁ――……』

 

あ……あれって本当にビアンカ様ですか!?

すごい勢いで展開される変態的なプレイの数々……飛び散る汗、愛液、精液! し、しまいには……失禁……おしっこ、あんな豪快に、ベッドの上で……放物線……。

さ、さらには、最近は母乳まで出るようになってましたし……。

 

……時折、精液や愛液とはまた違う異臭が混じってるのは……ひょっとしたらビアンカ様のせいだったのでしょうか? あまりにも気持ちよさそうに漏らしまくってましたし……

 

……そんなビアンカ様以上に衝撃的なセックスを繰り広げていたのが……ついこの間覗いた、フィーネ様だったりします……。

 

あぁ、フィーネ様、かつてお背中をお流ししたり、髪を洗って差し上げたこともある、フィーネ様……裸のお姿を拝見するのは久しぶりですが……いつ見てもすべすべなお肌……。

 

……凹凸の程度が、数年前から一向に変化していないように見えますが……まあいいとして。

 

イゼッタ様ほどではないとはいえ、お互いに憎からず思っているご様子……セフレ関係は順調らしいですね。それは何よりで……

 

あれ、動きが…………え、何ですか、あの姿勢!? つ、つながってるフィーネ様を、持ち上げて……え、駅弁、とか言いましたっけ?

 

あああ、そんな姿勢であんなに激しく……下からずんずんと!

ひ、姫様がくがくって震えてますよぉ!? 大丈夫ですか……って、あ、射精した……結合部から、トロトロ垂れてきてるぅ……

 

こ、今度は立ちバック……あんなに激しく……。お、犯されているかのよう……

あ、でも普通に対面で、正常位とかでもやるんだ……あっ、でもすぐ変えた……今度は騎上位だ……あぁ、また出した!

 

……んん!? あ、あれ……ちょっと、姫様気絶してません?

その状態の姫様を……下から抱え上げて、腰を振ってズコバコと……ちょ、ちょっと何して……意識のない、あるいはあっても動けない姫様の体にそんな! ら、ラブドールみたいに……。

 

いくら何でもそんな……あぁっ、言ってるそばから膣内に!

どくん、どくん、って出して……漏れ出てきてる、マジですか……!?

 

ま、まるで姫様を自慰の道具のように……み、見た目やばいどころじゃないですぅ……

 

ぐったりして動かない小柄な少女……肉棒に貫かれている恥部……どろどろと流れてくる精液……アヘ顔で焦点のあっていない顔……それでも動く腰。ひぃぃいい、は、犯罪臭しかしません!

 

 

 

……とまあ、色々違いはありますけど……こんな風に乱れてヤってるんであれば、そりゃあのくらいは汚れるわ……と、私は納得してしまったのでした。

 

そしてその夜から……それぞれの部屋で見た、お三方の痴態は……私の頭の中で永久保存。

……こっそり、一人遊びの時に使わせていただいてます……

 

メイドだって……その……むらむらもするんです。

おちんちんに興味津々だったりしますし、女としての幸せだってほしいんです。

 

……言ってても仕方ないですね……はぁ、仕事に戻ろう……。

 

 

 

……この時の私は、まだ知りませんでした。

 

私が、陰から覗いていたその構図の中に……近く、ほかならぬ私自身が加わることになるということを……。

 

 

 

 

 




メインのエロは次回。つづく!


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14-2 後日談 ロッテ(後編)

 

R月U日

 

この日、僕は……フィーネとの不倫セックスに、イゼッタとビアンカがフォロー要員として参加しての4Pを楽しんでいた。

 

ただでさえ快楽で乱れているフィーネに対して、イゼッタとビアンカが胸とか腋とか、オマンコにお尻に、なでたりつまんだり舐めたりしまくるもんだから……フィーネってば、ビアンカに負けず劣らずのトロ顔をさらして乱れ狂っていた。

淫語については、ビアンカに比べて知識そのものがないからか、そんなでもなかったけど。

 

そのまま、フィーネがへばった後に2人の相手もちょっとだけ……お腹の子に負担にならない程度にやって、就寝。

もちろん、部屋に戻って……っていうのが、最近のサイクルだった。

 

……が、この日はいつもと違う展開が待っていた。

 

事後の余韻に浸っていたところ、フィーネが飲み物を取りに行く、といって席を立ったかと思うと……数分後、飲み物以外のものを手にして帰ってきた。

真っ赤な顔であわあわしている……メイドのロッテちゃんを。

 

……え、何事? 何でこの現場に彼女が……ってか、何連れてきてんのフィーネ?

 

……何? 部屋の前にいたのを連行してきた?

え、覗いてた? この部屋を?

 

恐らくは、僕とフィーネがヤってた時から、覗きながら……オナってた? 部屋の前に、水たまりができてたって? ヤりすぎて腰抜けて動けなくなってたところを捕まえた?

 

……何じゃそりゃ。

 

そしてそこから始まる……フィーネ、ビアンカ、イゼッタによる、ロッテちゃんへの詰問の嵐。

 

簡潔にまとめると、

 

ロッテ 『お許しください! 偶然通りがかったら声が漏れてて……出来心だったんです!』

フィーネ『ならん』

ビアンカ『だめだ』

イゼッタ『えっと……ダメ』

 

おおむねこんな感じ。

刑罰執行待ったなし。

 

それを聞いて、ロッテちゃん……当然ながら、震えあがる。

 

まあ、それも仕方ない。これ、主人からの信用が第一のハウスメイドにとっては、誇張なしに死活問題だからね……。

普通に考えて、プライベートを覗くような、信用ならないメイドをそばに置いておけるような人はいない。こんな不祥事、明らかになったらその時点でクビ&追放確定である。

 

それを知って、追い出される……と、顔面蒼白+涙目になるロッテちゃんだったが……しかし、この3人、そこまでするつもりはないのであった。

 

曰く、彼女が信頼できることは知ってる。

 

曰く、多分、本当に出来心で、我慢できなかったのだろう。女が色に狂う気持ちは、ここにいる3人全員が知ってるので、実害も出てない以上、あんまり強く出られないし、出る気もない。

 

曰く、けど、それでも罰は必要だよね。

 

……で、どうなったかっていうと……今、目の前のこの光景である。

 

「あっ、ふ、ン……はぁっ、はぁっ……ぅう……はずかしい、です……」

 

僕ら4人の目の前で、自慰を披露させられているロッテちゃん。

片方の手でスカートをめくりあげ、もう片方でその股間をくちゅくちゅと……顔は当然、真っ赤。目の端には涙が浮かび、息は乱れ……非常にエロ可愛い。

 

エロい罪を犯したわけなので、エロい罰を与えるという、単純なような真理なような……けどやっぱりおバカな感じのペナルティ。僕ら4人の前で、ロッテちゃんは1人プレイの真っ最中。

 

しかも、その真ん前で……フィーネと僕がヤっている。

見せつけるように、わざと、ゆっくりと。

 

『そんなに見たいのなら見せてやる。遠慮なく自分を慰めるとよい』

 

そんなフィーネの一言の後に、すぽぽーん、と何のためらいもなく服を脱いで全裸になったフィーネを、僕が背後から貫き……それがよく見えるように、彼女の体を持ち上げて、ロッテちゃんに見せつけながら……背面座位でじゅぽじゅぽと、下から突いている。

 

最初こそ、『そ、そんな、は、はしたないです……お、おやめください……!』とか言ってた彼女だけど、すっかり見入っている。ガン見だよガン見。一瞬たりとも目を離さないよ。

 

フィーネはフィーネで、見られながらやるのが興奮するのか……いつもよりきゅんきゅん膣が締まるし……いつもはやらない、まるで実況してるみたいにやらしーことを口に……

 

『あぁっ、そ、ソロの……おちんちんがっ、奥に……奥に届いているぅっ!』

 

『すごい、熱くて……硬くて……子袋が灼けてしまいそうだ……』

 

『もう、だめだぁ……私のっ、わらひの中の雌が喜んでいりゅう……っ! ああっ、あ――!』

 

普段は、公式の場で凛とした態度を崩さない彼女が、男の股間にまたがって座り、下から肉棒にぐぽぐぽと貫かれながら、口からは淫語を次々と放ちながら……見せつける。

場末の娼婦でもやらないような、ともすれば下品・低俗とすら言えそうなその姿。

 

そんなショーを前にして……ひたすらに、一心不乱に股間をいじるロッテちゃん。僕の目が間違ってなければ……何回かイってるよね? それでも続けて……よっぽど溜まってたのかな? それとも、そのくらい今の僕とフィーネのセックスがエロかったか……。

 

……しかも、その後……フィーネに対抗心燃やしたイゼッタとビアンカが、それぞれ飛び入りで、同じようにショータイム始めちゃったからなあ。

 

どっちもお腹に子供がいる状態での、マタニティセックス……イゼッタは、愛撫とかキスがメインの、いつも通りの愛情たっぷりセックス。一応安定してきたってことで、膣に先っちょだけ入れて……出す時は外で。みたいな感じ。

もう5か月だからね……安定期入ったらしいからね。

 

一応、錬金術で子供に影響でないようにカバーとか保護もしてるし、主治医の言ってることは守った上でやってるので大丈夫だ。

 

それでも、細心の注意を払って、優しーく彼女の体を扱う僕に、イゼッタは『愛して……この子と一緒に愛してぇ』『ああっ、来ちゃう……イくっ……ソロの腕の中でイっちゃうぅ……!』とまあ、抱いてるこっちが幸せになるような乱れ方をしてくれて。

 

そしてさらにその後、休憩に入ったイゼッタに代わり、ビアンカも参戦。

こっちは何というか……普段いない観客がいるからって、これ幸いとすごいことしまくって。

 

口でやるし、飲むし、先っちょだけだけど前に入れるし、お尻でもやるし……さらには、大きくなってきたお腹に、デコレーションよろしく精液をかけて、しかも塗りたくって……『ほぉら、パパもお前を祝福してくれてるぞ~』って……ボテ腹白濁まみれにして何してんのあんた。

 

『子供に栄養をあげないと』って……フェラチオからの『ごっくん』はもちろん、ペニスに吸い付いて、尿道に残った精液まで『じゅる、ずず、じゅるる……』って一滴残らず吸い出して、それが出なくなったら『もっとぉ』って、僕の睾丸を手でつかんでもみしだいたり……

 

さらには、わざと僕に、射精させる時、自分の手で作った器に出させて……そこから、わざと『ずじゅるるるる……』と、大きな音を立てすすって飲んだり、手に残った精液をなめとったり。

 

イゼッタの時にはひたすら顔が赤くなっていたロッテちゃんだが、ビアンカの方も刺激がまー強かったみたいで、限界までいじり倒した挙句、動けなくなって倒れ込み、そのまま気絶した。

 

そして僕は、そのまま、無防備に意識を手放しているロッテちゃんをベッドに運び、十分に濡れているその秘裂に肉棒を…………なんてことはさすがにしない。

 

ちゃんと彼女は、軽く体を拭いて着替えさせて、その日は客間に寝かせてあげました。

 

さすがにね、寝込みを襲ってレイプするなんてことまでしないから。いくら罰でも。

ロッテちゃんだって女の子なんだし、自分の体なり純潔は大事だろう。これに懲りて、ちょっとは落ち着いてくれるとありがたい……

 

 

そしてその翌日の朝、

僕の部屋で……僕のベッドに寝転んで、事後の匂い(昨日もヤった)に包まれながら、はぁはぁと息を荒げて自慰しまくっているロッテちゃんを発見した。悪化してんじゃん……

どうも、折角やめてあげた前日のアレが、かえってとどめだったらしい。

 

 

で、結局その日、そのまま……レイプを我慢して守ってあげた彼女の純潔を、僕が美味しくいただくことになったのだった。

なんか彼女、たくましくも最初から期待していたようで……。

 

『ろ、ロッテは悪い子です……ダメなメイドに、どうか罰を与えてください、ソロモン様ぁ……』

 

発情しきっているのがわかる顔色に、うるんだ目でそう言われ……さらに、スカートをめくってトロトロになったオマンコをさらされて……我慢できず、ベッドに引っ張り込んだ。

 

初物だった。1人プレイも、ディルドとか使ってやることはなく……あくまで手でやってて、その身にペニスを迎え入れたのは僕が初めてだったそうだ。

ぶきっちょながらもきゅうきゅうと締め付ける快感が心地よくて……何度も抱いた。

 

フィーネよりも小柄な彼女は、体も軽くて……持ち上げたり組み敷いて、犯る形を好きなように選べた。

 

最初の一回は……お仕置きとしてではあったものの、やっぱり雰囲気大事にしたかったので、正常位で正面から向かい合って抱きしめながら。膜を破って奥まで突き入れた後は……痛みが治まるのを待ってから、膣全体、子宮口までめちゃくちゃに犯してやった。

射精する時は、思いっきり奥で……子宮の中に注ぎ込んだ。

 

その後、もっともっと滅茶苦茶にして、続ける。

 

途中までは着衣で、スカートをまくり上げて、ノーパンでさらされている恥部に欲望をぶつけ、服もろともドロドロにし……途中からは、服全部はぎとって犯した。

上から下まで犯した。しゃぶらせて、飲ませて、突っ込んで、吐き出して……

 

ロッテちゃんに動くだけの体力がなくなっても続けた。いつだったかのフィーネみたいに、人形よろしく扱って犯し続け、腰を振り……その身に、徹底的に快感を、僕という存在を刻み込み、注ぎ込み、しみこませていく。僕も、彼女という存在を、肌で感じて忘れないように。

 

射精する時は……もっぱら膣内。でもお尻にもけっこう出したし、顔や体にもかけた。

最終的には、そのお腹がぽっこり膨らむくらいのところまで注ぎ込んで……さんざん突かれて腰砕けになった彼女は、もう今日ずっと使い物にならないだろうことが容易に想像できた。

 

焦点のあってない目で、オマンコとお尻から精液を垂れ流しにして、体中どろっどろで、呼吸音は『ひゅー、ひゅー』だもんなあ。

 

他のメイドに連絡して、彼女のシフトを調整してもらう。……この時点で、ロッテちゃんが僕のお手つきになったことは知れたかな。

 

なので、今日はもう、僕の部屋のベッドで寝かせてやることにした。

僕もつかれてたので……一緒に。

 

……にしても、見事に当たったな……イゼッタの予想。

 

『ロッテちゃんもソロのこと好きだと思うから……多分、近いうち、ソロのを欲しがると思う。その時は、2人にも了解はとってあるから、安心して応えてあげてね?』

 

だってさ。ホント……女の子の勘はすごい。

 

 

 

R月V日

 

ロッテちゃんが正式に僕の愛人……メイドとしてのお手つきとして、そういう関係認定され……以後、フィーネと同様、イゼッタ達が妊娠中の性欲発散係として働くこととなって……数日。

 

なんというか、彼女は実によく働いてくれている。

公務とか多くてここにそれほど来れないフィーネに代わって、って感じ。

 

メイドとしての仕事はもちろんのこと……性処理も。

 

『あぁっ、そ、ソロモン様ぁ……ま、まだ仕事中で……んくぅっ、だ、だめ、ですぅ……。あっ、スカート……そんな……はぁっ、そこ、いきなり……は、入ってくるぅ……んっ、せ、折角掃除したのに、また濡れちゃうぅ……あっ、はっ……もう、ソロモン様のえっち……』

 

『んしょ、んしょ……どうですか? 気持ちいいですか、ソロモン様……た、タオル使わずに洗うのって、その……大変だけど、ドキドキしますね…………じゃあ、次は……どうぞ、ソロモン様のそれ……私の中で、洗わせてくださいませ……♪』

 

(ん、っ、んぷ……んちゅ、じゅる……ぐぷっ……は、だ、だめ……音、立てちゃ……ばれちゃう……見つかって、見られちゃうのに……あぅ、はぷっ……あむ……止められないです……)

 

夜、やるのはもちろん……時には、まだ明るいうちから相手してもらうことも多々ある。

家事やってる最中に、突然後ろから抱きしめてスカートをめくっておっぱじめたり、お風呂に同行させて背中流させたりしてそのまま突入したり、エロ漫画みたいにこう……机について部下と仕事の話をしながら、机の下でしゃぶらせてます、っていうのもやった。

 

色々無茶やってるな僕、っていうのは感じるんだけど……一旦そういう関係になって、しかもイゼッタ達もすんなり受け入れてくれてるのがよかったのか、ロッテちゃんもノリノリだからさ。『どんどん使ってくださいませ!』って……すごく献身的(って言っていいのやら)。

 

夜はもっとすごいし。欲望をそのままにぶつけるのはもちろん……ビアンカやイゼッタが一緒に加わった時には、ロッテちゃんからこんな申し出まで出てきてるし。

 

『どうぞ、私の体は……イゼッタ様やビアンカ様の代わりとしてお使いください。お2人には及びもつかない未熟な体ですが、奥までガンガン挿入することかなわない代わりの穴としてでも』

 

つまり……オナホール代わりとして使えと、

ベッドの上で、イゼッタとかビアンカといちゃいちゃして……普段なら彼女たちに挿れるところ、妊娠中でてきないから、代わりに下半身は私の穴を使って気持ちよくなってくださいと。

 

誘惑に負けて、実際にやってみた。イゼッタとキスしながら、上半身で乳繰り合いながら……下半身は、ロッテちゃんに突っ込んで激しく動いて欲望を吐き出す感じ……

 

手ではイゼッタを愛で、口ではイゼッタの名前を呼びながら、犯しているのはロッテちゃんの膣……しかし僕もロッテちゃんも、もちろんイゼッタもそのことには触れないまま……

 

な、なんて背徳的というか……悪いことしてる感じ……。

 

ちなみにその後、きちんとロッテちゃんに対しても、ベッドの上で愛でました。イゼッタと一緒に。彼女だって、メイドで愛人とはいえ、れっきとした身内にカウントされる1人だ。プレイとしてそういう扱いにすることはあれど、ぞんざいなまま放り出すつもりはない。

 

きちんとロッテちゃんを、ロッテちゃんだけを見て、ロッテちゃんの全身を犯しました。

 

そんな感じで、ロッテちゃんとはちょっと変化した関係ながら、楽しくやらしく暮らしてます。

 

 

 

 

 

……ちなみに、ロッテちゃんからは、毎日やこれからの性生活について、2つほど注文を受け取っている。

 

1つ目。避妊はしっかりすること。

最初の一回、僕特製のアフターの避妊薬で妊娠を回避してからは、医者の避妊薬を服用して、種が付かないようにしている。それについて、僕に許可をもらってきたわけ。

 

まあ、これについては文句ない。妊娠したら、仕事にも影響出るし……自分の立ち位置等について、いよいよ本格的に考えなきゃいけなくなるし。

 

主のお手つきになって、子を孕んだメイドが、そのままメイドでい続けるのは難しいだろう……正式に愛人、あるいは側室として囲われ、社会的にも通用する立場を手にするか……手切れ金を支払われて退職するか。あ、僕の場合後者はありえないので。

 

それに加え、ロッテちゃんは『自分はあくまでお仕えする身』という自負があり、それを果たせなくなるならば、たとえ自分の幸福であっても二の次、だそうだ。

 

少なくとも、イゼッタやビアンカの『代わり』が果たせなくなるようなのは……2人がそれこそ、もうこれ以上子供はいいかな、って考えて、避妊しつつのセックスをして『代わり』が確実にお役御免になるような時までは。

 

とはいえ、もしその時が来れば……できるなら、間に合うなら、自分も子供欲しいって。

 

……尽くしてくれてるなあ、ホント。

これは、イゼッタ達とも相談して……ぜひとも彼女にも……うん。遠くないうちに。

 

そしてもう1つ。彼女自ら僕に頼み込んで来たことで……薬品と『錬金術』で、ある人体改造を施している。いや、副作用とかも全然ないし、改造ってほどでもないんだけど……

 

さっくり言ってしまえば……母乳が出るようにした。

 

僕とのプレイのため……っていう面もなくはないけど、それ以上にロッテちゃん、『乳母』っていうのもやってみたいそうで。

要は、数か月後に生まれるイゼッタやビアンカの赤ちゃんに……おっぱいあげたいと。

 

『だって、かわいい赤ちゃんの世話をする機会にも恵まれますし……私のお乳で、イゼッタ様やビアンカ様の、それに今後生まれるフィーネ様のお子が育つんですよ! これ以上ない誉です!』

 

だってさ……なんか、変なとこで忠誠心と母性が同居してるな。

まあ、本人が幸せそうならいいんだけど。

 

……ちなみに、ロッテちゃんの胸は最近著しく成長してきていて……もうちょっとで、フィーネとその立場を逆転させられそうな感じになっている。

 

イゼッタ≧ビアンカ>>>フィーネ≧ロッテちゃん、って感じ。今は。

 

……いや、まあ、だからってどうこうないんだけどさ。

僕はおっぱいの大きさにこだわりはないっていうか……皆好きだよ?

 

だからフィーネ、そんな落ち込まないで……。

 

これからだよ、これから。君も今成長期なんだから、まだまだ……え、それ3年前にも王宮の主治医に言われた?

 

……うん、何て? 圧倒的な物量がどうしたって? ゲールの軍は解体されたよ?

 

何、妊娠すれば大きくなるか? そりゃなるだろうけど、待て、落ち着け、作るにしても来年以降だって自分で言ってたろ。そんなことのために家族計画……どころか国家運営の方針変えようとするな。僕はフィーネの手のひらに収まる感じのおっぱいも好きだから。ほら、ベッド行く?

 

 

 

 




フィーネが……オチ担当になった?
6話のドレスのところのネタで、まさかのフィーネの立ち位置に愕然としたのは自分だけではないはず……

……エルヴィラさんどうしようかな。後日談……需要あるか?


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15 後日談 ゾフィー

今回は前後編はなしです。


 

 

 

Z月F日

 

ここのところは、何事もなく日々過ごせている。

 

イゼッタやビアンカのお腹も大きくなり、ちょっと歩くのも大変になってきて……しかし、経過はすこぶる順調。予定日も近くなってきて、あとは健康な子供を産むだけ、というところまで来ている。

 

フィーネも、大公という政治の頂点に立つ者として、その手腕をめきめきと研ぎ澄ましてきており……同盟各国の首脳からも一目置かれるくらいになりつつある。その合間で、僕やイゼッタ達の前で見せてくれる、1人の少女としての顔が魅力的だ。

 

そんな3人に加え、僕も含めて全員を、日常生活の面でロッテは支えてくれている。

あ、こないだから呼び捨てにしてます。

 

……もちろん、夜の生活も順調そのもの。

イゼッタとビアンカとは、あまり深く挿れすぎず、乱暴になりすぎないように注意してのマタニティセックスを楽しんでるし……フィーネとロッテとは、避妊した上で欲望のままにがっつりと。政務の後に車の中でとか、家事してるところを後ろから襲ったりとか、まあ好き勝手にやってる。

 

そんな日常に……このところ、1人、加わった者がいる。

 

その人は……白い髪に、赤い目が特徴的な……イゼッタと同じか少し年上、って感じの少女。

……僕らにとって、いや、世界のほとんどの人にとって……新聞やテレビで、あまりにも見覚えがありすぎる……忘れようと思っても忘れられない人だった。

 

帝国の尖兵として数々の国や大都市を滅ぼした、本物の『白き魔女』……ゾフィーである。

 

しかし、彼女に対して、戦争犯罪者として裁判が執行されたり、身柄を拘束されたり……ということは起こらない。

なぜなら、彼女は……『ゾフィーであってゾフィーではない』からだ。

 

彼女は……ゾフィーとして、帝国の研究プラントの中で、試験管の中に作られていた……何人目かもわからない、クローンの1人。同じようにして、数十人ほども作られていたゾフィー達の……たった1人の生き残りなのである。他は全員、帝国が研究所を破棄する際に『処分』された。非常時に全ての証拠を消すために仕掛けられていた、自爆装置によって。

 

ただ1人生き残った彼女にはしかし、いくら彼女が『ゾフィー』であっても、今まさに生まれたばかりの彼女に対して、すでに死んだ別なゾフィーや、帝国そのものの責任なんて問えるはずもなく……かと言ってそのまま放免にもできないため、身柄をこの研究所で預かっているのだ。

 

今のところ、特に何も問題行動を起こすこともなく……穏やかに暮らしている。別人だけあって、性格も違うようだ。この分なら、きちんと療養して落ち着けば……そして、適正な手続きを経てきちんとした戸籍とか手にすれば、社会復帰も近いかもしれない……というのが、国際社会の見方だ。彼女もまた、ある種の戦争の被害者。立ち直りを見守っていてあげようと。

 

 

 

……というのが一般の認識であって……そうでない真実を、僕らは知っている。

このゾフィーが……『本物』であると。

 

正確に、はっきり言えば……ゲールの尖兵として爆弾落としまくって、魔石を使ってイゼッタと戦って、捕らわれの身だった頃のイゼッタをさんざんに痛めつけた、あのゾフィー本人であると。

 

 

 

あの最終決戦の後、ボロボロになりつつも生き残っていた彼女を、僕らはひそかに回収していた。魔女の身柄を、そして魔石を、他者に渡さないために。

魔石はすぐに、ミュラー補佐官から没収したものとあわせて破壊した。そして、本人は治療して、安静にさせていた。

 

『錬金術』で治療もすぐに終えて、数日後には目覚めたんだけども……当然ながら、イゼッタやフィーネ、果てはエイルシュタットそのものに対しての憎しみはそのままだったため……覚醒後も、しばらくは、一時期イゼッタにつけさせていたあの『魔法封印の首輪』をつけさせて投獄していた。

 

まあ……ここランツブルックはレイラインが通ってないので、魔石を持っていない彼女にはどっちみち魔法を使うすべはないんだけども。

 

そして、今に至るまで……イゼッタとフィーネは、粘り強く説得や、時には謝罪――自分の先祖の裏切りを知ったフィーネが特に――を続けて、それが実を結び……少しずつ、態度が軟化してきていた、といったところだ。

 

……正直な話、彼女の怒りや憎しみもわかる。

心底から愛していた人に、自分よりも国を優先して裏切られ……その結果として、火あぶりにされ、殺された。どこまでも一途に、その人……当時の王に尽くしたにも関わらず。

 

だからこそ……彼女自身の、戦争に参加したという確かな罪を知りつつも、イゼッタにしてみれば、あそこまでひどい目にあわされた相手だと知りつつも……彼女をただただ否定するということはせず、フィーネとイゼッタは根気強く彼女と対話を続けた。

 

……そんなある日……2人との対話の中で、憎しみや悲しみが徐々に癒されていったゾフィーは……とうとう、その身の内に抑え込んでいた感情を爆発させて、大声で泣き出した。

 

『愛してたのに』

『あんなに尽くしたのに。彼のために戦ったのに』

『どうして捨てたの』

『どうして私を選んでくれなかったの』

『私は、何のために戦ったの。私は、あなたの何だったの』

 

弱音、ともとれる。愛していた、しかし最後の最後に、底なしの憎しみを抱いてしまった想い人への怨嗟と悲嘆の数々が、座敷牢の中にいつまでも響いていて……それを、フィーネとイゼッタは黙って聞いていたそうだ。

 

 

 

その翌日くらいから、徐々にゾフィーは態度を軟化させ、精神的にも落ち着いていったそうだ。

 

繰り返し、自分の先祖の……国のためとはいえ、裏切り以外の何物でもない行為をわびたフィーネに対しては、『もういいわ』と、許す意図の言葉を投げかけたりも。

 

『……私はこれからも、彼を……エイルシュタットを、完全に許すことはできないと思う。でも……あなたが、彼や、あの王妃と違うというのはわかっているし……むやみやたらに目の敵にするのはやめるわ。死人は死人らしくしないと……今の世に干渉するものじゃない』

 

以降、ゾフィーは……最初に国際社会への説明としてでっちあげた『立場』にある演技をしつつ、幸運にも拾った命、穏やかに日々を過ごしているわけだ。

 

 

 

……で、そんなある日のことだった。

ゾフィーから、唐突に、ある申し出があったのは。

 

曰く……『罰を受けたい』と。

自分がやったことの……罪の精算をきちんとしたい、と。

 

……正直、困った。

いや、あの……君のこと、何の罪もないまっさらのクローンゾフィーだって喧伝してるから、今更罪とか言われても、対外的にこっちが困るんだけど……。

 

帝国の尖兵として戦ったゾフィーは、死んだことになってるし……その分がイゼッタの武勇伝の一つになっちゃってるし……

 

そう伝えたら、『だったらあなたたちの裁量でできる分でいいから』と食い下がる。

小間使いになれでもいいし、一生を牢屋の中で過ごせでもいい。自分に、自分が納得できるだけの罰を与えてくれ。何なら、この命を散らしてもいい、と。

 

さてどうするか、という話になって…………僕らの仲間内で話した結果は……

……なんていうか、当然のごとくこういう結論に行き着くあたり、皆……本格的に頭の中まで爛れてきてるよね。

 

……そういうわけで、今、僕の目の前には……一糸まとわぬ裸にされて、拘束具で両腕を天井からつるされる形で拘束され……そう、ちょうど、イゼッタがゲールにつかまってた頃と同じ感じの姿勢にされているゾフィーが、顔を赤くしてこっちを睨んできている。

けど、抵抗したりする気配は……ない。恥ずかしいけど、罰は罰として受け入れるようだ。

 

……イゼッタが味わったのと同じ、あるいはそれに近い辱めを受ける、という罰を。

 

ただし、兵士を用意して輪姦させるとかはさすがになしで……竿役は僕1人なんだけども。

 

「構わないわ……それで少しでもあなたたちの気が晴れるなら……煮るなり焼くなり、好きにしてちょうだい。何なら……道具でも薬でも、何でも使ってくれていいから」

 

ちょっと顔が赤いまま、そう言ってくるゾフィー。

まあ、そんなつもりはないけど……普通に、優しくやらせてもらうよ。

え、罰じゃないのかって? まあ……それはほら、建前建前。

 

……それに、イゼッタ達4人の口からも……厳しく、激しく、痛めつけるように……なんて意見は全く出なかったからね。

むしろ……

 

『ゾフィーさん、今まで1人で苦しんで、悲しんで……せっかくだから、これを機に、色々世の中には楽しいこと、素晴らしいものがあるんだって、知ってもらいたいです』

 

『公人としての私は、ご先祖様のことを悪く言うことはできん……しかし、それまで自らに、国に尽くしてくれた者に対しての不義であったことは確かだ……彼女から奪ってしまった人生の潤いというものを、少しでも返してやれれば、と思う』

 

『私は今まで……耳聞こえのいい『白き魔女』の伝説だけを耳にしていた。それが今は恥ずかしい……歴史からも忘れられた彼女に対して、どんな形であれ、少しでも慰みになるなら……』

 

『これからもずっとここで暮らすなら、今のうちに仲良くなっておいた方がいいと思います。緊張しっぱなしなんて、疲れちゃいますから……皆さまと一緒なら、余計にですね』

 

それを聞かされて、またゾフィーの頬に一筋の涙が伝って煌いているのが見えたっけ。

 

 

 

で、緊張もほぐれたところでいざコトに及んでみれば……何ともまあ、予想外というか、何というか。

いや、だって……

 

「はああぁぁあっ! んぁ……ひぎぃぃいっ!? な、何コレぇぇえ!? んあっ、ぎ、ぃう……しゅごっ……し、知らない、こんなの……知らないぃ! 気持ひぃっ、んぎゅあぁひあぁ!?」

 

ゾフィー……乱れる乱れる。

僕のを後ろから突き込まれている間中、喉が心配になるくらいに、もう、大声で、絶え間なく。

 

愛液はもちろん、汗も涙もだらだら流して……体は突くたびにイってるかのようにびくんびくん震える。目の焦点はとっくに合ってないし……鎖で縛ってなかったら、どんな暴れ方してたか。

まあ、暴れるって言っても抵抗とかじゃなくて、100%快楽でだろうけど。

 

……まさか、彼女が生娘だったとは。

 

それも、クローンの体だからってわけじゃなく……前世(って言っていいのかね)から合わせて、ずっと。彼女が初代『白き魔女』だった頃から合わせての、未経験である。

 

どうやら、当時すでに王子様――前から思ってたんだけど、大公国なんだから『王子』って言い方どうなんだ?――にはお后様がいたため、しかも自分は『魔女』という、強くて頼りになるけど怪しいことこの上ない身の上であるため、愛していながら手が届かず、求めることさえできず……結局、そのまま永遠の別れとなった。

 

それでも、愛した人への想いのために、生涯をかけてこの国を守り抜き、これからも命ある限り守っていくつもりだった……その矢先に、あの悲劇が起こったわけだ。

 

……今更だけどさ、彼女……すごくいい人だったんじゃないの? 最後の最後に闇堕ちするまでは、愛情たっぷりの上に、徹底的なまでに滅私奉公を貫いて……絶対、今のこの国があるの、彼女のおかげじゃん。いくら宗教が怖かったからって、裏切った恩知らずはこっちじゃん。

 

もっと他にやりようなかったのかな……死を偽装して隠居させるとかさ。

フィーネやビアンカも、それ聞いた当初はすごく申し訳なさそうにしてたもんな。

 

イゼッタは、最終決戦の時に『だってその人、王様だったんでしょう!? なら……誰か1人のために意見を変えるようなことをしちゃいけないんです!』っていう感じのこと言ってたな。

それは正しいと思うけど……その結果、悲劇なんていくらでも起こってしまう。だから僕は、そのことに心から賛同はできない。

 

……多分だけど、国や世界のためにイゼッタを見殺しにしなくちゃならない、っていう状況に陥ったら……今はどうかわからんけど、以前のフィーネなら、苦悩しつつもそう決断しただろう。

当時の『王子様』も、国を守るためにそう決断したんだろう。

 

……けど多分、僕無理だな。

イゼッタ……だけじゃない。ビアンカやフィーネ、ロッテを守るために、全世界すら敵に回す気がする。錬金術をフルパワーで軍事利用して……それこそ、元の世界より質の悪い兵器すら作ってでも。

 

……怖いのは、そうなることを恐れて、イゼッタとかが自ら去っていってしまうことだけども。

 

……ひょっとしたら、もし事前に話をしていたら……数百年前のゾフィーも、最後の最後、自ら身を引いていたのかもしれない。王子の望みをかなえるために。国を守るために。

そのくらい……王子様のことを愛していたんだろうから。

 

 

 

……まあ、そのゾフィーは今、僕の腕の中でひーひー言ってるんだけども(台無し)。

 

回想するうちにシリアスなこと思い出してきたけど……今僕の目の前にいるゾフィーは、そんなのどこに忘れて来たんだってくらいに快楽に狂っている。

 

フィーネと同じくらいに華奢なその体は、容易に抱え上げることができて……その肉壺の奥まで肉棒を突き入れ、突きまわして快楽をむさぼることができ……そして、僕が感じる以上の快楽が、彼女の体のなかで暴れまわっている。

 

……結局、最初の一回なんだからってこともあって、鎖途中からほどいてベッドに連れ込んで普通にやることにしたんだけど……そこでも、全身で快感を表現しているゾフィーは、もうこうしてみると、どこにでもいる――かどうかはわからんけど――ちょっと敏感な体質の女の子そのものだ。

 

さらに彼女、普段から魔石を使ってたから……痛みに強かった。

魔石は、命を蝕む激痛と引き換えに魔女に力を与える。それに慣れていた彼女は、破瓜の痛みくらいじゃ怯むことはなく……余計に快感に意識が行ったらしかった。

 

今ではすっかり、快楽と人肌の温かみをひたすらに求めている様子である。

 

抱き寄せれば抱きしめ返してくるし、顔を寄せれば僕より先に唇を重ねてくるし、そのまま舌まで入れてくる。以前イゼッタにやられたのと同じように、快感が強烈すぎるあまり、こらえようとして背中に爪立てたり、肩口にかみついたり、なんてのもやられた。

 

クローンゆえの体の弱さなんて感じ取れない。本能に任せてか、力いっぱい抱きしめてくるし……膣内の具合も、きゅうきゅう締め付けてきて……どこまでもやらしく、そしてたくましい。

 

まるで覚えたて……いや、彼女正確にはろくに『覚えてすらいない』わけだから……これ、純粋に女としての本能か?

 

演技ゼロ。明らかにそんなことやってる余裕なさそう。

体中がくがくと快感に振るわせて、何度も何度もイって……こっちが心配になるくらいだ。

 

途中からなんか……自分でも『知らない、こんなの知らないぃぃい!』って……まあ、不安だったんだろう。正常位でつながってた時に抱きしめてきて、そのまま離さない。

子ぶりながらも形のいい胸が、ずっと僕の胸板にあたっている。

 

『ん、あぁぁあ……こんなの、初めてぇ……戦って、殺して、ばっかりだったから……こんなこと知らなかった、教えてもらったことなかったァ……』

 

『はぅぅうっ! お、お腹の中っ……こつん、こつん、って……すごいぃ、自分でも、触ったことないところに……しゅご、く、気持ちイイ……っ! じんじんする……子宮が、しびれて……』

 

『ああぁあ゛っ……くる、何かくる、こみあげてくるぅ……熱い、熱いのぉ……私、こんな……お腹が、熱い……し、がって……お腹が、赤ちゃん汁、欲しがってる……っ!』

 

『んゃあぁああ! こんな、らめぇ……もう、ダメになる……戻れなくなっちゃう……! こんなの、知っひゃったらあ……もう、あなたのこと、忘れられないのぉ……!』

 

『ごめん、なさい、―――。でも、気持ち、いいの……! あなたのこと、忘れてしまう……』

 

……ごめん、ちょっと真面目に可愛いんだけどこの娘。

 

『気持ちよすぎて怖い、けどやめないで』って感じですがるように抱きしめてきて……でも僕に全部ゆだねる、みたいな……やばい、以前とのギャップがやばい。

 

そして最後の、よく聞こえなかったけど……ひょっとして、当時の『王子様』の名前?

……なんか、寝取ってしまったらしい。ごめんよ元主さん、でも、大切にするから。

 

しかし、さすがに未経験……フィーネの時もそうだったけど、こっちが限界に達して膣内に注ぎ込むと……そのあまりの衝撃でとうとう脳がショートしたらしい。

 

子宮があふれて、逆流してきた精液と愛液の混合液が、肉棒と肉壁の間から漏れ出ていく感触を味わっている間……二度、三度と大きく彼女が体を震わせた後……糸が切れたように力なく倒れ込んだ。

 

そのまますやすやと眠ってしまったわけだけど……その寝顔は、とても安らかそうだった。

 

 

 

で、後日……ゾフィーは、専門医から『精神的にも療養して問題なしになった』と診断をもらい、

 

さらに、僕の『錬金術』で、魔石で削れた寿命を修復。クローン体のもともとの虚弱さも克服して、普通に人間と変わりない体を手に入れた。

 

そして……僕やイゼッタと同じように、このエイルシュタットの研究所に、研究員として所属することになった。彼女もまた、ゲールによって生み出された被害者として(←大嘘)。

 

まあ、当然色々と悶着あったけども……魔法に関しては、この場にいる誰よりもベテランな彼女の参戦で、研究の進むスピードははるかに速くなり、その分の恩恵を受けられることを知ったEU各国からの後押しもあって、ほぼ全て丸く収まった。

 

……ただ、その全てじゃない部分については……

 

まあ、その……あの1回で、彼女、すっかりセックスの虜になってしまったというかね?

ロッテやフィーネ同様、僕の愛人の座に収まったわけで……ロッテと交互に、時には一緒に、ベッドの上でも世話をしてくれるようになって……

 

いや、それについては、イゼッタ達も認めてるから問題はないんだけどさ……むしろ、色事では何にも染まってない分、これから開発していく楽しみがあるというか。

 

その上で、表向きの生活でも、研究熱心な上、仕事、私生活ともに甲斐甲斐しく僕に世話を焼く感じになって……新人だから一生懸命だ、ってレベルを通り越して……

 

いや、そぶりはぱっと見、今までと何ら変わんないんだけど……細やかな心配りができるようになってるというか……こう、過度につんけんした感じもほとんど鳴りを潜めて、すっかり丸くなっちゃって……クールな部分がちょっと残ってるだけに。むしろ個性としてちょうどいい感じ?

 

……何ていうかな、夫に尽くす新妻、みたいな感じになった。

『ホントにもう、しょうがない人ね』とか言ってるし。

 

……ひょっとしたら、昔の『王子様』から寝取ったことに起因するのかも。

ずっと心に残ってたしこりが取れて、新たに一緒に生きていく人ができて……今度はこの人と一緒に生きて行こう、みたいに思い始めた、とか。

 

……やけに具体的だな、って?

……自分もそうだったからわかる、ってイゼッタが言ってたんだよ。

王子様とか、昔の恋とかはわかんないけど……『この人と一緒に生きていこう』って思える人ができた嬉しさとかは、身をもって知ってる、ってさ。

 

……ホントに何というか……僕の周りには、僕にはもったいないくらいにいい娘が集まるな……男として、身の引き締まる思いだよ。

 

 

 

 



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