今日のカルデア (大神 龍)
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日常
マスターふて寝してるってさ(遊んでないとは言っていない)


 Twitterで騒いでたけど、本当に始まっちゃったこの話。いつまで続くか見物だね!


 標高6000メートルの雪山の斜面にある入り口を通り、地下へ進み、様々な面倒くさい認証を得てから入る事が出来る、人理継続保障機関フィニス・カルデア。

 人類社会を見守る機関であり、有事の際はあらゆる手を尽くして人理を守り通す。

 

 そして、1年をかけて7つの人理崩壊特異点を定礎復元し、世界を滅ぼそうとした黒幕にトドメを刺した後、更に亜種特異点新宿を証明した英雄は、今もなお、戦っているのだった。

 

 

 * * *

 

 

「あれ、どうしたんですか? 信長さん」

 

 そう声をかけるのは守りの要、超鉄壁サーヴァント(オオガミ主観)マシュ・キリエライト。

 話しかけられたのは、つい最近復刻したぐだぐだ本能寺でやってきた魔人アーチャー、織田信長だった。

 

「あぁ、マシュか。それがの、マスターが部屋から出て来んのじゃ。今日は弓の種火の日じゃから、儂のレベルを上げるには最適じゃろ? じゃから行ってもらいたいのじゃが…」

 

 若干ムスッとした表情で信長は言うが、マシュはそれを聞いて苦笑する。

 

「昨日、最後のチャンスの為に! と言って、全力で石を探しに行って、しかも結局沖田さんをお迎えできなかったので、それで未だに倒れてるんじゃないでしょうか?」

「むぅ…それなら仕方ない…今日は寝かせてやるかの」

 

 残念そうにした信長と共にマシュが去ろうとした時だった。

 

「よっし! コンプリートしてやったぜ!!」

「「……………」」

 

 部屋の中から聞こえた声に反応して、二人とも動きを止める。

 直後、天の岩戸の如く開かなかった扉は、当然の如く開き、中からマスター――――オオガミが出てくる。

 

「あ、マシュ! やったよ! エイプリルフールアプリをコンプしたよ!」

「は、はぁ…えっと、先輩? 沖田さんが召喚されなかったことが響いてふて寝してたのでは…?」

「え? あぁ、うん。半日ほど寝て回復したから遊んでたよ」

「あ…そうでしたか…」

 

 喜ぶオオガミに苦笑いしか出来ないマシュ。その原因は後ろにいるわけで――――

 

「なんじゃ。ふて寝などしておらぬではないか」

 

 当然のごとく、信長には丸聞こえである。

 

「あ、ノッブ。見て見て。今日限定アプリ、FGOGO、英霊コンプリートしたよ!」

「ほぅ? つまり、あれか? マスターは、儂を放置して別ゲーをしてたと?」

「えっ、あっ、それは、ほら。戦士にも休息は必要不可欠だよ。うん。つまりはそういうことだよ」

「ふむふむ…。では、出てきたということは、休息は終了じゃな? 良し。では、今から種火狩りじゃ。行くぞマスター」

「えっ、えっ、えっ。ちょ、助けてマシューーー!」

 

 オオガミは反論すらさせてもらえず、そのまま連れ去られたのだった。

 

「先輩…さすがに弁護しきれないです。すいません」

 

 マシュはそう言って、その場を立ち去るのだった。




 という事で 、本当に沖田さんが出なかったのでこの話を。ちなみに今日が弓だったことは、ログインしてから知ったのでした。

 ちなみに、私の中で、ノッブはメタ発言に普通に応じてくれる設定です。


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種火の使用先(保管も使用先に入るんです?)

「さて…どうしたものか…」

「どうしたの? マスター」

 

 種火を前に悩んでいるオオガミを見つけたナーサリーが声を掛ける。

 

「ん?あ、ナーサリーか。いやね? 今日の種火を周回してきて、アサシンの種火が出たんだけど、静謐ちゃんは再臨素材が足りなくて止まってるし、かといって他のアサシンを育てると手が回らなくなりそうだから、どうしようかと思って」

「ふぅん? じゃあ、今からその再臨素材を集めにいけばいいのよ。そうすれば問題ないわ。どう?」

「あ~…それもそうか…でもなぁ…鎖があと15個なんだよなぁ…」

「大丈夫よ。私がいるじゃない!」

 

 ムフーッと胸を張るナーサリー。それを見て、オオガミは微笑みながら頭を撫でると、ナーサリーはされるがまま嬉しそうにする。

 

「ん~…しかし、それでもAP不足は変わらんか…」

「なら、アステリオスを育てなさい」

「えっ?」

 

 突如響く声。振り向くと、そこにはエウリュアレがいた。

 

「えぇ、えぇ。アステリオスを育てるべきよ。それが最良よ」

「えぇ…アステリオス? でもなぁ…アステリオスはバーサーカーだし…」

「いいじゃない。ヘラクレスだって、最終再臨したでしょう? なら、次はアステリオスを再臨させるべきよ」

「えぇ~…」

 

 エウリュアレに押され気味のオオガミ。しかし、そこに助けが来る。

 

「ダメよエウリュアレ。マスターが使いたいように使うのが一番よ」

「あら。貴女、女神である私に逆らうの?」

「女神だからって、マスターの考えを無視しちゃダメよ!」

「何言ってるのよ。いい? 私はサーヴァントだけど、あいつのマスターなのよ?」

「何を言ってるのよ! マスターにマスターはいないわ!」

「ぐぬぬ…聞き分けの無い子ね…!」

「女神に言われたくないわ…!」

「どういう意味よ!」

「女神はいっつも物語で悪いことしかしないじゃない!」

「言ってくれるわね、この絵本!」

「もう女神なんかに負けないんだから!」

 

 いつの間にか喧嘩の方向がずれてきた二人。

 オオガミは諦めて種火を持つと、静かに倉庫に放り込む。

 そして、

 

「ナーサリー。エウリュアレ。とりあえず、一時休戦して何か甘いもの食べない?」

「むぐっ! 私、パフェがいいわ!」

「ぬぐっ! 私はケーキがいいわ!」

「よしよし。じゃあ、行こうか」

 

 三人はそう言って、騒ぎながら食堂に向かうのだった。

 

「ところで、鎖集めにはいかないんですか?」

「せ、静謐ちゃん…!」

 

 途中で件の静謐のハサンに状況を知られ、付きまとわれたのは余談だろう。




 このあと結局鎖は集めなかった。

 家のエウリュアレとナーサリーは、唯一聖杯を使わない最終レベルに到達済みなので、この組み合わせなのでした。


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ノッブの秘密工房(いつの間に出来たんですか)

 今回はちょっと長めです。


 前回の(話とは全く関係の無い)あらすじ

 

 カルデアのマスターことオオガミは、今日の朝からノッブのスキルレベルを上げるために弓の修練場を周回していた。

 そして、ノッブのスキルを上げながらふと疑問に思ったのだ。

 

――――この骨…何に使ってんの?――――

 

 この真相を探るべく、彼は部屋で暇そうにしていたエリザベートと、先程まで一緒に修練場で戦っていたエルキドゥと共に、スキル強化素材を持っていったノッブを尾行するのだった――――

 

 

 * * *

 

 

「……マスター。この行動に何の意味があるんだい? というか、この人選も気になるんだけど」

 

 今になって、エルキドゥがようやくこの行動に突っ込む。

 エリザベートは、暇だからついてきただけなので、特に意味は気にしていない。

 

「ふっふっふ。まず、意味があるのか。という質問に関してだけど、あるよ。ちゃんとね」

「あら。全く考えてないと思ってたんだけど、考えてたのね。マスター」

「エリちゃん、酷くない? さすがに言い訳げふんげふん。さすがに理由くらいはあるよ」

「ねぇ、今言い訳って言わなかった?」

「気のせいじゃないかな?」

「うん。言い訳でも構わないけど、マスター。その意味はなんだい?」

 

 脱線しそうだった会話を修正しつつ、エルキドゥは話を進ませる。

 

「うむ。その理由はだね…ノッブが変なことを企んでないかを見守るためだよ!」

「なんで見守る必要があるのよ」

 

 エリザベートの、最も適切とも言える一言。

 しかし、エルキドゥはマスターがなぜこの言い訳にしたのかに気付いた。

 

「あぁ、確かに、聖杯を爆弾に変えようとするほどの人間だから、監視は必要だね」

「そういうこと。ってことで、尾行を続けるよ」

「「了解」」

 

 そう言って、三人はノッブの後を追いかけるのだった。

 

 まぁ、ノッブはその事を分かっていながら見逃していたのだが。

 

 

 * * *

 

 

「ねぇマスター? ここにこんな階段あったかしら?」

「いや…無かったと思うんだけど…」

 

 ノッブを追いかけてしばらくすると、いつの間にか全く人気の無い所まで来ていた。

 そして、ノッブは全く見覚えの無い真っ暗な階段を下りていったのだった。

 

「あったよ。ただ、遠いから見覚えがないだけで。まぁ、僕も降りたことはないけどね」

「あぁ、なるほど」

 

 エルキドゥの説明に納得し、また、まさかこんな施設の端まで来るとは思っていなかったので、帰れるかどうか不安になるオオガミとエリザベート。

 最悪エルキドゥに頼ろうと考え、突き進む。

 

「しかし、暗いねぇ」

「そう? このくらいなんてこと無いでしょ?」

「エリザベート。マスターは人間だから暗視は普通持ってないよ」

「あぁ、それもそうね」

「ぐぬぬ…懐中電灯でも持ってくればよかった…!」

 

 嘆いていても仕方がないので、とりあえず壁に手を付きながら歩き続けるが、不意に手を掴まれ、引っ張られる。

 

「うわっ!」

「遅いのよ! さっさとついてくる!」

「わ、分かったから! あと、速いってば!」

 

 何度か転びそうになりながら進むと、やがて明かりが見え始める。

 

「……ランプ?」

「カルデアにこんな場所あったのね。ずいぶん古くさい感じだけど」

「ん~…紐に油を染み込ませて、その紐に火を付けてるのか…古典的というか、この時代で使われてるのを初めて見たんだけど」

 

 それ以前に、いつの間にこんなのを設置したのかが気になったのだが、きっと最初に加入したときからやりかねないな。と思い、気にしないことにした。

 

「あ、マスター。着いたみたいよ」

「ん? あ、本当だ」

 

 いつの間にか古めかしい木の扉がそこにはあった。

 

「……マスター。もう、気付かれてると思うんだけど」

「むぅ…やっぱり気付かれてるか…なら堂々と乗り込むのみさ!」

「ちょ、マスター!?」

 

 オオガミは怯むことなく堂々と扉に手を掛け、開け放つ。

 

「御用だ御用だ! 魔人アーチャー! お前の悪事は知ってるぞ!」

「え!? いつの間に悪事を暴いたの!?」

「マスターの嘘に決まってるだろう」

 

 後ろが騒がしいが、そんなこと知らぬとばかりに部屋の中にいるノッブを見る。

 

「おぉ、やっと来たか。全く。結局全部一人でやってしまったではないか」

「……ナニコレ」

 

 ノッブの言葉よりも、その部屋の奥に置いてある物がオオガミの視線を奪う。

 

「何って…『がしゃ髑髏』じゃよ。ほら、儂の背後に佇んでたあれじゃ。1/1スケールでなんとか再現したいと思ってな。スキル強化素材と黄金髑髏はそういう訳だの」

「えっと、これを一人で作ってたの?」

「当たり前じゃろ。基本暇なのは少ないからの。それに、暇な奴はこういう地道な作業が好きな奴はいないし」

「うぐっ。まぁ、確かに少ないけども…」

「まぁ、別に退屈はしてないからいいんだけどね☆」

「それならいいんだけど…」

 

 しかし、顔は黄金、体は深紅。そんながしゃ髑髏と夜に出会ったら心臓が止まる気がする。

 

「それで、ノッブ。これは完成してるの?」

「そんなわけ無かろう。まだ残っておるわ。次は八連双晶を用意せい。最終的に、このがしゃ髑髏に乗って移動する予定じゃからの!」

「なにそれ俺も乗りたい!」

「うむ! 完成させた暁には、乗せてやろうではないか!」

「……まぁ、八連双晶は集められる気が全くしないけどね」

「何!? おいマスター! それはどういうことなのじゃ!儂の言うことが聞けんと!?」

「ゴーレム狩りはもう嫌なんだってば!あいつら全然落とさないし! 需要と供給のバランスが酷いんだっての!」

「そ、そんな…ゴールデンがしゃ髑髏を乗り回すのは、まだ先のことじゃと…!?」

「そういうことになるね…うん…」

「なんということじゃ…こんなの、ゲームがあるのに電池が無いからお預けされている子供みたいじゃないか…!」

「その例え、的確すぎない…?」

「それは儂が子供みたいだと言うことかぁぁぁーーーー!」

「ぐわああああぁぁぁぁぁぁぁ!!! 英霊に振り回されたら死んじゃうからぁぁぁ!」

 

 ぶんぶんと振り回されるオオガミを見ながら、エリザベートとエルキドゥは、

 

「マスター。私、そろそろ帰るわよ?」

「僕も戻らせてもらうよ。お邪魔みたいだしね」

「置いてくの!? 帰りはどうしろと!?」

「そのまま信長が一緒に来てくれるでしょ? ま、頑張ってね~」

 

 そう言って、二人は階段を上っていってしまった。

 

「あ、あの…ノッブ…? 俺もその…帰りたいんだけど…」

「ふむ。まぁ、儂ももうやることは残ってないからの。戻るとしようかの」

「あれ。渋られると思ったんだけど、そんなことなかった…?」

「当たり前じゃ。ここに来るのは素材を貰ったときのみじゃ。さて、では、だ・ヴぃんちとやらに作らせた茶室に行くとしようか。儂自ら茶を点ててやると言ったからの。さぁさ。行こうではないか!」

 

 さっきの攻撃はなんだったのか。と思うほどの笑顔をしているノッブにオオガミは押されながら、階段を上っていった。

 

 扉が閉まるときに、ちらりと見たがしゃ髑髏の顔は、また会うときを待ちわびているように見えた。




 八連双晶を越えた先にも、まだ爪と心臓が残っている現実…あぁ、恐ろしい…!


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わんこもふもふ大作戦(え。これ、続くんです?)

「さて…どう攻めれば良いものか…」

 

 真剣な表情でそんなことを呟くオオガミ。その視線の先にいるのは、我がカルデアの番犬こと、新宿のアヴェンジャー――――わんこである。

 もう真名が分かっているにもかかわらず、無意識にわんこと言ってしまう。

 狼だろ。とか言われてもお構い無しである。

 

 もちろん、一人で来たら殺される可能性もあるので、巌窟王も一緒である。

 

「マスター。まだ折れないか…?」

「当然。このくらいの傷で折れるなら、あの監獄塔で死んでる。違う?」

「フッ…そうだな。お前はあの監獄塔を生き延びた…ならば、この程度で折れるなど、あるわけがない」

 

 オオガミが言うように、二人は傷だらけである。

 その傷はわんこをもふろうと突撃したときに付いた傷で、もちろんもふる事は出来ずに、軽く吹き飛ばされた。

 巌窟王は、どちらかというと、マスターを助けるときにやられた程度なので、あってないようなものだ。

 

「しかし…どうやって次は攻めようか…」

「……いや、言いにくいことだが…マスター。新宿で戦ったときには、エウリュアレとマシュに助けて貰っていただろう? 同じようにしたらすぐにでも出来るのではないか?」

「………エウリュアレ呼んでくれば、1ターン分だけもふれる…?」

 

 電撃が走ったように硬直するオオガミ。

 巌窟王も、何とも言えない気まずい気まずい雰囲気に目を逸らす。

 

「……よし。巌窟王。出直そう。今度はエウリュアレを連れてこよう」

「ちょっと待て。まさか、まだ俺を参加させるのか?」

「そりゃ、逃げるとき巌窟王がいてくれるなら心強いし。それとも、何か予定があった?」

「いや、まだ時間はあるが…」

「なら出来るだけ手伝ってくれるとありがたいな。無理だったらいいけど」

「……クハハッ! 分かったぞマスター。お前の願いは叶えよう…待て。しかして希望せよ。とな!」

 

 二人は不敵に笑い、その場を立ち去るのだった。

 

 

 * * *

 

 

「で、結局あの犬を触りたいためだけに私のところに来たの?」

「そういうこと!」

 

 エウリュアレの部屋でオオガミはそう言った。

 

「ふぅん? 嫌よ」

「そんな…!」

 

 エウリュアレは楽しそうに笑い、オオガミは悲しみの表情を浮かべる。

 

「当たり前じゃない。私は戦いは苦手なの。それに、貴方の為に動くなんて、なんか嫌だわ」

「むぅ…まぁ、無理言ってやってもらうようなことでもないしね。仕方ない。諦めよう」

「あら。諦めが早いのね。まぁ、私は構わないけど」

「うん。まぁ、巌窟王にも予定はあるしね。別に、今日じゃなくても良いよ」

 

 彼はそう言って、部屋を出る。

 すると、部屋の外で壁に寄りかかって待機していた巌窟王がこちらを向く。

 

「良いのか?」

「良いよ。というか、もふもふさせてもらいたいときにしかほとんど会わないってのが問題だったわけだよ」

「ふむ。ということは、周回しにいくのか?」

「そういうこと。というか、それが正攻法だからね。なんでそれを思い付かなかったのか…」

「まぁ、確かにそうだ。では、俺も付き合うとしよう。行くときは声を掛けるといい」

「うん。ありがとう。巌窟王」

「ふん。気にするな」

 

 二人はそう言って行ってしまうのだった。

 

「……本当に行ったわね…全く。根性なしね。メドゥーサの所にでも行きましょうか」

 

 本当にあっさりと帰っていったオオガミに拍子抜けしながらも、すぐに切り替えて遊びにいくエウリュアレだった。




 家の新宿わんこは絆レベル0という、全く育ててない状況。もちろんサーヴァントレベルも1のままです。
 そりゃもふもふ出来ませんって。

 真名…明かしていいものなんでしょうか…


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ぐだぐだ明治維新
中旬とはなんだったのか(今日からですってよ)


「唐突に今日の午後から始まる事になった『ぐだぐだ明治維新』ですが…ねぇノッブ? 中旬って言ってなかった?」

 

 椅子に座り、机の上で手を組み、謎の威圧感を醸し出すオオガミ。

 その対面にいるのは、魔人アーチャーこと、織田信長。ノッブである。

 

「い、いや~…まさか繰り上げがあるとは思わなんだ。儂はもうゴールデンウィークだと考えてたんじゃがのう。不思議なこともあるもんじゃ」

「ふむふむ。弁解はそれだけかな?」

「いやいや、弁解なんて、そんなことしてないぞ? 儂はちゃんとこの日に備えておったではないか。マスターに種火を要求し、モグモグ食べ、スキルも強化されておる。万全の対策ではないか」

「未だに80までたどり着いてないけどね」

「そ、それはマスターが種火をクラス対応の種火しか渡さないからじゃろ!? 儂は悪くない! 儂は悪くないのじゃ!」

 

 机を強く叩き、抗議するノッブ。

 確かに、スキルもそこそこ上がっており、レベルも、上限までとはいかないが、一応70は越えている。

 しかし。しかしだ。

 

「何よりも俺が言いたいのは、なんでピックアップに沖田さんがいないんだ!」

「それ儂関係無くない!?」

「登場するんだろ!? どうせきっと登場するんだろ!? じゃあピックアップして良くない!? なんでいないんだよ!」

「それ儂じゃない! 運営じゃ!」

「よし。ノッブに判決を言い渡す! ぐだぐだ明治維新連続周回の刑に処す! エルキドゥ! エリザベート! 連行するんだ!」

 

 まるでその号令を待っていたかのように、机の下から突如現れるエルキドゥ。

 

「……あれ? エリザベートは?」

「あぁ、彼女は帰ったよ。飽きたって言ってね。全く、付き合わされる方の身にもなってほしいね」

「あ~…帰っちゃったか。いや、まぁ、エルキドゥがいれば大丈夫! 拘束力はエルキドゥに方が強いしね!」

「はいはい。分かったよ」

 

 エルキドゥはそう言うと、逃げようとしていたノッブを鎖で巻き、ついでに足払いも掛けて転ばせる。

 

「ぬぉ!? ちょ、まだ始まってないじゃろうが! 今連れていっても意味はないのじゃ! ま、待て! ってか、わざわざこの二人を用意するとか、さては最初からこのつもりだったな!」

「ふはは! 当たり前だ! だってノッブは今回もポイントアップキャラだしね!」

「ぬわぁぁ!」

「あ、エルキドゥ。とりあえずノッブの部屋に放り込んでおいて。あくまでも何かをやらかさないようにしてるだけだから」

「ほんと、こんなことやる必要あるのかな…」

 

 叫ぶノッブを無視しながら、エルキドゥはそんなことを呟いて部屋を出ていった。

 すると、入れ替わるようにマシュが入ってくる。

 

「あ、先輩。あの、信長さん、どうかしたんですか?」

「いや、前回の本能寺の如く、何かをやらかすと思ったから部屋に連行してる最中?」

「は、はぁ…なんで疑問系なのかが気になりますけど…先輩。次の編成、どうするんですか?」

「ん~…とりあえずノッブとマシュは入れるつもりだけど、後は敵に応じて、かな。行ける?」

「はい。任せてください。先輩」

「じゃあ、イベントまで休憩にしようか」

「分かりました。あ、それと、信長さんは始まるまではずっと部屋に入れておくんですか?」

「いや、たぶんどうやっても開始前に部屋を抜け出してると思うから、放置でいいと思うよ?」

「確かにそんな気がしますね。なら大丈夫…ですかね。じゃあ行きましょうか」

 

 二人はそう言って部屋を出るのだった。




 いやぁ…今日からとか、知らなかった…そんなFGO歴長くないから分からないんですけど、繰り上げってどのくらいのペースであるんですかね。


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これが勢力戦…!(行くぞ我らのノッブ軍!)

「ノッブ! こんなの聞いてないんだけど!?」

「また儂かぁ!?」

 

 再びのノッブ。今回も連れてこられたノッブは、しかし、ポイントアップ要員ではなく攻撃力アップキャラだったのだ。

 それが判明したところで、即座にノッブのいる休憩室に突撃するオオガミ。

 

「攻撃力アップって何さ!」

「儂も知らんわ! つうか、それだけだとしても容赦なく儂を酷使する気かお主は!」

「えっ。そりゃ当然。我がカルデアの最大アーチャー戦力はノッブだし。エウリュアレは男性特効だからここだと使えないからね。頑張って働いてよ!」

「これがサーヴァント特有の、無限労働という奴か…!」

「いやいや、流石に俺が休むときは皆休憩だよ。無限労働とか、むしろこっちを殺す気…?」

「いや、まぁ、その…なんじゃ。魔力供給も辛いんじゃな…」

 

 互いに謎のダメージを受けた二人は、少しの間無言になる。

 その沈黙を破ったのはノッブだった。

 

「というか、儂への用って、それだけかの?」

「え? あぁ、いや。勢力戦のノッブ軍強すぎじゃね? って思って」

「当然じゃ! 儂より沖田の新選組が強いとか、ありえないからな! ククク…このまま全戦全勝、完全勝利でこの戦いに幕を下ろしてやろうぞ!」

「すごい意気込みだねノッブ! だけど、新選組も侮れないと思うんだけど」

「なに、儂一人ならつらいかもしれんが、こちらにはマスターがおるからの。負けるわけがない」

 

 ドヤ顔でそう語るノッブを見て、ぼそりとオオガミが呟いた。

 

「その慢心が後々響かないといいけどね…」

「……いや、儂があの金ぴかみたいになると思っておるのか?」

「割と結構」

「酷くね!?」

 

 容赦なく突き刺さった言葉の刃。

 しかし、この程度で折れるノッブではないのだった。

 

「まぁ、とにかく第一戦目は儂の圧勝確定じゃ。見てるが良い。この第六天魔王こと、信長の力をな!」

「出来る限りの援護はするから頑張れ!」

「任せるが良い!」

 

 ハハハハハハ! と笑うノッブ。

 と、そこにメディアが入ってくる。

 

「あらマスター。今日の周回はこれで終わり?」

「いや、あと一回か二回行って終わりかな。付き合わせてごめんね」

「いえ、いいのよ。部屋に籠っているよりは断然良いですもの。まぁ、後方待機してるナーサリーの視線が少し怖いのですけどね」

「ナーサリーが? なんで?」

「さぁ…私には分からないけど、後で本人に聞いてみてくれると助かるわ」

「分かったよ。っと、じゃあ、行こうか」

「分かったわ」

「お? 出陣か? 任せておけぃ! わははは!」

 

 そう言って三人は勢力戦に出陣するのだった。




 ってことで、昨日から始まった勢力戦。攻撃力アップするだけとか想定外だったよノッブ!
 でもまぁ、そこまで強くなくてほっとしている自分がいました。はい。
 現状本当にアーチャー火力がエウリュアレとノッブしかいませんからねぇ…アーラシュ先輩は一回使い切りですからね…

 さて、明日の勢力戦は一体どうなるか楽しみです…!


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陽動すると言ったが…別に倒してしまっても構わんのだろう?(勝てるとは言わない)

「なぁ、なんで儂はこんなところに居るんじゃ?」

「そりゃ、現状特効付いてて戦力になるのがノッブだからじゃない?」

 

 鳥羽伏見の戦い。第二回勢力戦は、すでに逆転し新撰組が優勢になっている。おそらく夜になれば完全に逆転するのだろう。

 

「まぁ、儂が強いのは是非もないのじゃが、たまにあっさり殺られるのは面白くない。せめてマシュは入れない?」

「ほら、後方にはいるし」

「それじゃ意味がないのは分かるじゃろ!? 儂が殺されたあとに来ても儂は助からんから!」

 

 すでに1回、集中攻撃を食らって叩きのめされたあとだった。

 戦闘自体はドレイク船長が薙ぎ払ってくれたので勝てたが、ノッブは途中で超連撃を食らって倒れていた。それが不満なのだろう。

 まぁ、当然と言えば当然なのだが。

 

「でも、正直ノッブが運良く倒されない方が多いから良いじゃん。一応負け無しだし。周回するには大丈夫でしょ?」

「大問題じゃたわけ! 儂が殺られるとか、どう考えても一大事じゃろ!」

「ん~…まぁ、最悪ドレイク船長が残ってくれれば救いはあるけどね」

「儂の存在価値っ!」

 

 悲鳴のような声を上げるノッブ。

 

「まぁ、あれだよ。ノッブは頑張ってるよ。現状普通に強いしね」

「む。正面から褒められると、なんか照れるな…」

「というか、ノッブのバリエーション多くね?」

「そこは儂も知りたい。というか、肖像権の侵害じゃ。使用料を搾取せねば」

「はは。ノッブらしい」

「それはどういう意味じゃ」

「そのまんまだけどね。いやぁ…最初はちびノッブ。次はでかノッブときて、銀ノッブに金ノッブ。しかも今回から更に増えるとか、ノッブすごくね?」

「ノブ撰組とか、ノブ戦車とかなんだし。しかも今度は量産型メカノブにノブUFOとか、儂を作りすぎじゃ。つうか、ここまで来ると今度はどんな儂が出てくるのか気になるんだけど」

 

 半分自棄になりつつノッブがそう言うと、何かを閃いたような表情でオオガミは言う。

 

「ノブンクルスとかどう? ホムンクルス的な感じで」

「そりゃ無いじゃろ。語呂悪いし」

「だよねー。ん~…後何かあるかな…」

「……まぁ、明日に期待ってことじゃな」

「だね。じゃあ、そろそろ陽動作戦再開と行こうか。全力でメカノブを殲滅しよう」

「そうじゃな。あやつら、八連双晶を落とすからな! 儂のスキル強化の糧となるが良い!」

 

 ハッハッハッハッハ! と二人が笑いながら戦線に戻っていくと、

 

「マスター! 信長さん! どこ行ってたんですか? 沖田さん達はどんどん行ってますよ?」

「おぅ! 待たせたなマシュよ! ここからは儂とマスターで頑張るでな! 任せておけぃ!」

「そういうこと! じゃあ、行くよマシュ! 皆! 戦闘再開だ!」

 

 その声を聞いたメンバーは、それぞれ立ち上がり、自然とオオガミの後ろをついていくのだった。




 でもたぶん、あきれた表情でついてきてるのがほとんどだと思うの。



 そんな感じの第二回勢力戦。朝はノッブ軍が優勢だったのに午後には逆転してらっしゃる…凄いぞ沖田さん!たくあんが主菜とか驚いたけど!
 でもそんな沖田さんを酷使する土方さんは怖いので回そうか考え中。来たら我がカルデアが荒れる予感…!


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会話してる間にも、敵は薙ぎ払われてるんですよ(で、あの金の城の総額はおいくらです?)

「金ぴかだよねぇ…」

「そりゃどう見てもほとんど金じゃからのぅ…」

「売ったらいくらになるかな」

「まずあんなのを買い取るような奴おるか?」

「……溶かせば売れるんじゃない?」

「あれを溶かすとか、阿呆じゃろ」

 

 そもそも、城レベルの金は重量的にどうなんだろうか。

 そんなバカげたことを考えつつ、目の前の敵を屠る。

 

 金のちびノブに金のでかノブ、ノッブUFO、ノブ撰組、スフーヒンクスからのブラヴァツキー所長。

 ノッブの『三千世界(さんだんうち)』にドレイク船長の『黄金鹿と嵐の海(ゴールデン・ワイルドハント)』の全力斉射。容赦なく薙ぎ払いつつ、明日はどうするかを考えながら敵を光に変えていく。

 

「明日はセイバーなんだよねぇ…」

「種火もランダム排出だしのう」

「どうするかなぁ…」

「どうするかのぅ…」

 

 とりあえずあの金ぴかは破壊しよう。と考えつつ所長は再び屠られる。

 

「あんたたち、随分余裕があるねぇ…」

「そりゃ、最初はちょっと強いかなぁって思ったけど、壬生狼を三枚詰んだら最後がワンターンで何とかなったしね。余裕も出てくるよ」

「じゃな。これも儂が強いおかげじゃ」

「張り合いが無い戦いってのは、ここまで人を堕落させるのかねぇ…」

 

 ため息を吐くドレイク船長。

 しかし、当の本人達はどこ吹く風である。

 

「まぁ、たまにノッブが倒れるのは納得いかないけどね」

「それは儂の台詞じゃ。何時になったら儂はレベルマックスになるのか」

「イベントが終わったらかなぁ…?」

「曖昧な上に扱いが雑じゃな! 儂はこんなに頑張っておるのに!」

「それを言ったら、ほぼ初期からいるヘラクレスがレベルマックスになってない時点で分かりきってることじゃん? ていうか、何時になったらヘラクレスがレベルマックスになるのかな?」

「知らんわ! 儂だってレベルを上げて欲しいんじゃからな!?」

「ドレイク船長も未だにマックスじゃないってば」

「それはそれ。これはこれ、じゃ!」

「マスター? それは後で話させてもらうよ? 逃げたら承知しないからね? 信長。あんたもだよ?」

 

 完全に虎の尾を踏んだ二人。二人は果たして次の朝日を見ることは出来るのだろうか。

 

「そんな事よりも、なんで儂が未だに使われ続けておるのか、説明して貰おうじゃないか!」

「だから、ノッブが戦力的に一番良いんだってば。全体宝具で雑魚敵一掃。攻撃力もイベント特効で250%アップ。これ以上の人材はいないって!」

「別に他の奴も特効持ちがいるじゃろ!?」

「全体宝具で育ててるのって、ノッブしかいないし」

「ド正論! 儂しかおらんのじゃ!」

 

 メンバーに確かに全体宝具イベント特効持ちがいないことに気付き、謎のダメージを負うノッブ。

 

「分かった? じゃあ、戦いを再開するよ?」

「ぐぬぬ…分かった…これは儂がやるしかないの。任せておけぃ! 全部薙ぎ払ってくれるわぁ!」

「……いつも止めを刺してるのは大体アタシなんだけどねぇ」

「ドレイク船長。今度何か手伝うから、それで許してくれない?」

「いや、いいさ。こういうのも悪くない。一人くらいこうやって何も考えてないようなバカがいた方が面白いからね。さ、行くよマスター。冒険は始まったばかりさ」

 

 さらりとオオガミのセリフを奪いつつ、ドレイク船長は行ってしまう。

 それをオオガミは追いかけて進んでいくのだった。




 モンハンしてたらこんな時間に…! 狩りって怖いわー…時間泥棒だわー…。

 しかし、本当にあの城は黄金なのか…私、気になります!


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ポイント全然溜まらないんだけど(いつになったら休めるんですか?)

「ポイント、溜まるかなぁ…」

「何よりも先に儂らが過労死するわ」

「やっぱり?」

 

 いつもの様にオオガミとノッブはそう言いながら、少し苦労しつつ敵を倒す。

 

「しかし、全員の概念礼装を『日輪の城』にしたら、たまに死にかけるではないか」

「ん~…まぁ、もう少し頑張れば誰もやられずにクリア出来るようになるよ」

「それならいいんじゃが…結構痛いんじゃぞ? あれ」

「ごめんごめん。無い様に気を付けるからさ。正直、倒れられると攻略しにくくなるからね…というか、それで一回倒れたし…」

「アレは…嫌な事件じゃったな…」

「だね…」

 

 辛いなぁ…と思いつつ、とにかく目の前の金ノッブを叩く。

 

「つうか、マスターのレベルが上がって後衛にヘラクレス入れとったが、一回も使っておらんではないか」

「そもそも使ったら問題なんだってば」

「まぁ、力不足が目に見えて分かるって事じゃしな。使わないことには問題無し…か」

「そういうこと。とりあえず、戦闘は現状を維持しないとね」

「そうじゃな………で、問題はポイントってわけじゃな」

「うん。新撰組のポイントが稼ぎにくいからねぇ…」

「基本がバーサーカーで、アーチャーにライダー。アサシンがおらんから、無謀も良い所じゃな。どうするんじゃ?」

「最悪レベルを落として戦うしかないよね。それならまだ戦えるだろうし」

「それが一番じゃろ。無理は禁物。死んだらそこで終了じゃ」

「そうだね。じゃあ、頑張ろうか」

「うむ。存分に頼るが良い」

 

 胸を張りながらノッブはそう言い、宝具を放ちブラヴァツキー所長お付きのノッブを葬り去る、

 

「しかし…自分で自分を倒すとか、精神的にちょっと来るものがあるよね…」

「ノッブにも人間らしいところがあったのか…!」

「ここ最近ずっと言ってる気がするけど、酷くね!?」

「魔人アーチャーに言われても…ねぇ?」

「その『ねぇ?』という所にどんな意味が込められているのか気になるんだが、後で聞かせてもらってもよいか?」

「えッ…出来ればお断りさせていただきたいんだけど。昨日みたいなことにはなりたくないよ?」

「…嫌なことを思い出させるでないわ」

「そっちが先に仕掛けてきたんじゃん」

「お主が変なことを言わねばこんなことにはならんかったわ」

「……この話はもうやめよう」

「……そうじゃな。誰も幸せにならんし」

 

 うんうん。とうなずきながら、オオガミはスフーヒンクスにガンドを放つ。

 

「じゃ、ポイント稼ぎを再開せねば。明後日にはすでに新撰組ポイントを集めるだけにするんだからの!」

「そうだね。さっさと終わらせて茶々を迎えに行く準備をしないとね!」

 

 しかし、決戦はまだ続く。魔王の『三千世界(さんだんうち)』に、船長の『黄金鹿と嵐の夜(ゴールデン・ワイルドハント)』の轟音を轟かせながら。




 今日もまたこの時間です。
 ポイント溜まらないのはノッブのせいじゃなくてサボってるせいなんじゃないの? あんまりリンゴ減ってないよ?
 明日には50万稼ぐんだ…(夢物語の模様)


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茶々が来たと思ったら土方さんも来た(でもポイントは貯まらないんですけども?)

 マスターのマイルームにて、買ってきた団子や煎餅を食べながら、

 

「なんだったんだ…あの土方さん…」

「本当にのぅ…」

「……俺の話か?」

 

 ついさっき当たったばっかりの土方さんが言ってくる。

 

「全くだよ。グダグダ空間の土方さん怖すぎるでしょ…まさにバーサーカーだよ」

「どうしたものかのぅ…」

「茶々は?」

「茶々は頑張ってたし。これからも頑張ってもらうよ」

「任せて!」

 

 むふーっ! と胸を張る茶々。彼女も今日カルデアへとやってきたのだった。

 

「で、ポイントはどうなったんじゃ?」

「無理に決まってるでしょうが。時間が足りないってば。ずっと戦い続けるわけにはいかないんだからさ」

「そりゃそうじゃけど…あと少しじゃろ? もう少し頑張らない?」

「茶々もそう思う!」

「俺は別に気にしないけどな」

「土方さん興味なしなのね…はぁ、沖田さんが欲しかった…」

「…俺は嫌なのか?」

「そういうわけじゃないけどね。バーサーカーはヘラクレスが強すぎるんだよ」

「それ茶々も意味ないじゃん!」

「本当に必要なかったな」

 

 耐久力とか、オオガミ自身の戦闘スタイルがチキンだったりするというのが原因だったりするのだが。

 仕方ない。と言いながらも、関係の無いノッブ以外、不満そうな表情を隠せていない。

 

「とりあえず、明日はノッブポイント溜め終わるはずだから、どれだけの早さで新撰組ポイントを稼げるかが問題なわけです」

「茶々の宝具レベルを上げるぞー!」

「おー。頑張るのじゃよ~」

「伯母上の中の私の扱い酷いんだけど!」

「昨日までの儂みたいなことを言うな…」

 

 煎餅を口に加えたままノッブが喋ると、茶々は両手を握り込んで頭上に上げながら、

 

「朝のうちに私たちの種火を使ってレベルマックスになったからって、調子に乗って言いわけじゃないぞー!」

「そうだそうだー!」

「なんでお主まで一緒にやってるんじゃ。つか、お主の責任でもあるじゃろ」

 

 オオガミまで参戦していることに即座にノッブが突っ込む。

 

「なぁ、もう行って良いか? 来たばかりで勝手が分からないんだ。少しは色々見て回りたい」

「あ~…それもそうだね。うん。じゃあ皆で行こうか。ノッブ工房みたいに、全然覚えがないのがあったりするし」

「あれはちゃんとダ・ヴィンチに許可を取ったわ。無許可で何かをするわけなかろう」

「衝撃の事実! 許可取ってたの!?」

「むしろなんで知らないんじゃ!?」

 

 互いが互いに驚き、しかしいつものことだと開き直って団子を手に取る。

 

「で、何時行くのじゃ?」

「そうだね…とりあえず帰れなくなると困るから、頼りになる巌窟王を連れていこう」

「カルデアのマスターがカルデア内で迷子とか、ギャグとしか思えんよな」

「自分の城で迷うとか、良くあると思うんだけど?」

「普通覚えるだろうが」

「……反応は千差万別ってことだね。ちなみに僕は茶々の意見に同意だよ」

「しっかり覚えねば、攻められたときに苦労するじゃろが」

「そこはほら、ダ・ヴィンチちゃんの本領ですし」

 

 人に投げるなよ。と思うが、あくまでも特異点を攻略するのがマスターの役目であって、防衛はダ・ヴィンチちゃんが主にしているということを思い出す。

 

「ま、なんじゃ。これから頑張るのじゃよ。マスター」

「茶々も応援してるからね!」

「何かあったら俺を呼びな。敵は全て倒してやる」

「……うん、ありがとう。とりあえず、お菓子が無くなったから片付けて探索に行こうか」

 

 オオガミは立ち上がり、皿を持つ。

 それにつられるように全員立ち上がり、若干乱れた服装を整えると、オオガミがちょうど片付けを終えて戻ってきた。

 

「じゃ、行こうか」

「おー!」

 

 そう言って、四人とも部屋を出るのだった。




 安定の貯まらない事案。明日には貯め終わるんだ…

 しかし、種火はもう交換所に無いから二人の成長はまた後ですね。


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壬生狼さえあれば絶対勝てるよ!(ポイント効率は考えないものとする)

「やっぱ壬生狼最強じゃな」

「今の期間中だったら負ける気しないよね」

「じゃな。これはもう、儂の時代じゃろ」

「全体宝具で敵は壊滅。スカッとするね!」

 

 そう言いながら満面の笑みで周回する二人。なんせ、防御枠であるマシュですら通常時のメインアタッカー並の働きをしてくれるのだ。防御力まで鑑みると、完璧としか言いようがない。

 もちろん、オオガミの主観であるため、別のが良いのかもしれないが。

 

「いやぁ、ポイントがいっぱいだね!」

「そうじゃな! 貯まる気が全くしないけど!」

「そんな現実を突き付けないでよ。死んじゃうよ?」

「このイベント期間中、今なお働き続ける儂にそれを言うか?」

「……ノッブは強いから仕方ないね!」

「是非もないよネ!」

 

 変なテンションの二人。

 その理由は、数時間前に一度負けたのが原因だったりするのだが、ざっくりまとめるとただの八つ当たりである。

 

「貴方達、さすがにやりすぎじゃなくて?」

「何を言うか! メディナリ!」

「そうじゃぞ! まだ宴は始まったばかりじゃ! メディナリ!」

「分かったらさっさとまた行くよ、 メディナリ!」

「さぁ行くぞ! メディナリ!」

「分かったから私をメディナリって呼ばないで!」

 

 半分悲鳴の様に声を上げるメディア。顔は真っ赤に染まっている。

 

「残酷なことだ…」

「なに巌窟王みたいな事を言ってるのだ」

「なに良い事言った風な顔をしてるのよ」

「案外間違ってないと思うんだけどね」

 

 オオガミはオオガミで、変な事を言ったせいで何とも言えない表情になる。

 

「全く。私以外にも弄れるのは居るでしょう?」

「例えば誰?」

「それは…ほら、セタンタとか」

「あぁ、兄貴か。確かに一人だけ幼名だしね。でも、なんだかんだ言ってエミヤが一番ぶっ飛んでたよね」

「うちにはおらんけどな」

「ほんとにね! 来てくれても良かったのに」

「何を言うか! あやつが来たら儂の出番が少なくなるじゃろ!」

 

 はて。昨日も一昨日も働きたくないと叫んでいるわりには、今日は出番がなくなるのは嫌だという。

 

「ねぇノッブ? そろそろ働きたいのか働きたくないのかどっちかにしない?」

「適度な休憩は必要じゃが、出来れば戦っていたい。そんな心情じゃダメかの?」

「まぁ、そんな日もあるよね」

「そういうことじゃ」

 

 二人は納得し、メディアはもう反応するのも面倒になったようだった。

 

「で、また回るのかい?」

 

 そこに入ってきたのはドレイク船長。周回するのかを聞きに来たのだった。

 

「あぁ、いや。今日はこれで終わりにするよ。さすがにこの時間になっても戦い続けるわけにはいかないしね。帰って寝ようよ」

「そうじゃな。儂もやりたいことがあるしな!」

「貴方のやりたいことって聞くと、嫌な予感しかしないのだけど…」

「なぁに。もしそうなったらアタシとあんたで止めればいいだけの話じゃないか! マスターも協力してくれるはずさ!」

「だね。ノッブが何かをやらかすのなら、俺は全力で邪魔しようじゃないか。とりあえずガンド打っとこうか」

「案の定最後に矛先がこっちを向いたな!」

 

 騒がしくするも全員楽しそうにしており、特に問題もなく特異点から帰還してそれぞれの部屋へと戻ったのだった。




 まぁ、あれです。壬生狼を五枚積んだだけでバカみたいに火力出るのは面白いので、しばらくはこれでやろうかと。日輪の城はフレンドで補ってる状況です。


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ノッブポイント集め終わった!次は新撰組だね。分かるとも(で、茶々と土方さんは成長しないんです?)

「ようやくノッブポイントが貯まったよ…」

「ようやく終わったか。じゃあ、次は新撰組のポイントじゃな」

「おぅ。やっとこっちのポイントを集めるのか」

「茶々はもう店番しなくてもいいんだよね!」

 

 わーい! と両手を上げて喜ぶ茶々。

 今彼らがいるのオオガミのマイルーム。何処かの誰かのせいで金色に染められて目が痛い時もあるがが、基本的にちょっと落ち着かないだけなので見て見ぬふりをしている。

 

「それで、作戦は変わらずって事で良いのか?」

「当然。というか、もうそれ以外を信じられないのだよ…」

「壬生狼は最強なんじゃな…」

「本当にね。正直あれさえあれば何とかなるし」

「ポイント集めも後50万を切ったしのぅ。ラストスパートというところじゃの」

「任せたよ。ノッブ」

「おぅ。任しておくが良い」

 

 ノッブはそう言いながら、緑茶を飲む。

 

「すっかり俺らは空気になってるな」

「あんまり活躍もしてないしね! レベルも足りないし」

「レア度なんぞ当てにならんな」

「いや、単純に種火が足りないだけだから。二人とも弱いわけじゃないから」

 

 若干死んだような表情をしている二人をフォローするオオガミ。完全に原因は彼にあるので自業自得なのだが。

 

「種火は集まらないんでしょ? 無理しなくてもいいと思うなぁ」

「俺は早く強くなって敵を屠る。それだけだ」

「わぁお。やっぱバーサーカーだね」

「お前もだろうが」

「なっ! 茶々はそんな戦闘狂じゃないし! 楽しいのが一番だし!」

「ならなんでバーサーカーなんだよ」

「茶々が聞きたいよ!」

 

 クラスは諦めたと言っていたが、やはり不満はあった。当然と言えば当然なのだが。

 オオガミはそんなことを言い合う二人を見て、間に入れるわけもなく、ノッブに頼るしかないのが現状だ。

 

「ねぇノッブ。あれは止めた方が良いのかな。どうしたらいいと思う?」

「放っとけ放っとけ。少しすればさっぱり忘れてるじゃろ」

「えぇ…伯母としてそれで良いのかノッブ…」

「だって、巻き込まれて怪我したくないし」

「……まぁ、そんなもんだよね」

「そんなもんじゃよ」

 

 言いながら、二人は茶々と土方を見る。

 思いの外楽しそうなので、やはり放っておくのが一番なのだろう。

 

「それで、オオガミ。今日の周回はさっきので終わりってことでよいか?」

「あぁ、うん。そろそろ眠いし。というか、何時になったら出ていくの?」

「あ~…そうじゃの。貴様が寝たら出ていこうかの」

「それまで留まる気なんですかノッブよ」

「当然じゃ! 今日は貴様の寝顔を見せてもらうじゃないか!」

「えぇ~…需要皆無じゃないですか…」

「何を言うか。一部では高値で取引されておるのだぞ? ならば便乗しない手はないじゃろ」

「ちょっと待って!? 俺の知らないところで何が起こってるの!? ねぇノッブ! 教えて!?」

「えぇいうるさい! さっさと寝て一部の女性サーヴァントの癒しにならんかぁ!」

「理不尽っ!」

 

 容赦ない一撃。強制睡眠(気絶)により、マスター・オオガミは床に着くのだった。

 

「……伯母上。茶々、それはやりすぎだと思うの」

「お前の方がよっぽどバーサーカーらしいんじゃねぇのか?」

「う、うるさいわ! ほれ、さっさと出ていかんか!」

「はいはい。出ていきますよ~!」

「はぁ…仕方ねぇか」

 

 二人はそう言って出ていく。

 残ったノッブは、オオガミをベッドの上に寝かせ、そのまま出ていく。

 

「全く。世話の焼けるマスターじゃ。さて、今日の挑戦者は一体誰かの」

 

 ククッ。と笑い、来るべき戦いに備えるのだった。




 仕方ないんです。☆4種火はもうノッブに使っちゃったんです。悪くないです。

 ちなみに襲撃者は一日一人とは限らないそうで。ノッブ警備員は気が向いたらいる感じだそうです。


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茶々は宝具マックスになったのだよ!(その割には私の影薄くね?)

「ついに私の宝具レベルがマックスだよ!」

 

 わーい! わーい! と両手を上げて喜ぶ茶々。その手には扇が握られていた。

 扇は交換したものを別口で沖田さんから買い取ったらしく、その資金がどこから出てきたのかは誰も知らない。オオガミも同様だった。

 

「良かったのぅ茶々。所でマスター。儂のスキル強化は何時じゃ?」

「強欲すぎるなこの第六天魔王!」

「それが伯母上の魅力のひとつだし!」

「洗脳されてらっしゃる!」

「誰が誰を洗脳したのじゃ。ほれ、言ってみよ。ほれほれ」

 

 ほぼオオガミの言葉と同時にオオガミの正面に移動したノッブは、手に持った火縄銃でオオガミの頭をコツコツと叩きながら聞く。

 

「イヤー。ノッブハスゴイヨー。シュウカイモガンバッテルシー」

「なんじゃその棒読み感全開な台詞は。そんな世辞で儂は許さんぞ」

「頑張ってくれてるのは事実なんだけどねぇ…」

「そういう割には育てられて無いではないか」

「皆基本的にそうだよ!?」

 

 最古参のエリザベートが未だにレベルマックスではなく、スキルレベルも5~4という事から、察する事が出来る事だった。

 最高スキルレベルがアーラシュの弓矢作成で8止まりである。ノッブのスキルレベルがこの短期間で6~5まで上げられていること自体が不自然なのである。

 

「全く…一体いつになったら儂の最強無敵がしゃ髑髏は完成するのじゃ」

「とりあえずまずは石を集める所からじゃない…?」

「それのせいでスキルが一つだけ5だしの。骨もいつの間にか減っておるし!」

「アレは俺にとっても想定外だったけども。まさかあんなにアッサリ消えるとは…舐めてたよ…」

「儂もびっくりじゃ…まぁ、骨なら何とかなるじゃろ。それよりも石じゃ」

「アレは月曜日だからねぇ」

「今からはどうしようもないか…しかし、来週には出来るじゃろ」

「いや、再来週かな。限界までアイテム収集するから」

「なん…じゃと…!?」

 

 驚愕の表情に染まるノッブ。

 

「そりゃ、イベント中なんだからイベントするでしょ。まぁ、月曜日までに全部集まればやらないと思うけど」

「そ、それなら急いでやらねばではないか! 儂のパワーアップの為に全力を出さねば!」

「嫌だ! 今日はもう行かないから!」

「なぜじゃ! 今から行っても良いでは無いか!」

「眠いから仕方ないね! 寝させておくれよ!」

「ぐぬ…仕方ない…明日は全力で回るぞ! 良いな!?」

「えぇ…仕方ないなぁ…」

「なんでそうやる気が無さそうなんじゃ!」

「そりゃ、のんびりやるつもりだったからじゃないかな?」

「昨日と言ってることが違うではないか!!」

「いや、ドストレートにブーメランだよノッブ」

 

 自分もこの前働きたくないと言っていた翌日に出撃させろと言っていた。確実にその事を言っていた。

 

「うぐぐ…仕方ないの。なら今日は諦めるのじゃ…明日から頑張るぞ!」

「おー。じゃあ、お休み~」

 

 すかさずオオガミはベッドに飛び込む。どうやら本気で眠かったようだった。

 

「仕方ない…茶々。儂と一緒に出るぞ。部屋の前は結構面白いからの」

「え、部屋の前の方が面白いの? 何それ気になる。茶々も行くー」

 

 そうして、二人は部屋を出るのだった。




 いつもの様に今日一番言いたかったことが最初に少しだけやって残りを遊びまくるという安定の状況。
 メインは茶々の宝具威力がマックスになったってことですね。

 ノッブが出張りすぎ…?


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ノッブシリーズ集めたくね?(お人形さんが欲しいわ!)

「マスター。ちょっとお願いがあるのだけど…」

 

 服の裾を軽く引かれ、ナーサリーにそう言われたのが5時間前のことだった。

 

 

 * * *

 

 

「で、それで儂らが呼ばれるわけが全く分からんのだが」

「同意だわ。というか、その依頼は私が作ればなんとかなるじゃない」

「メディナリならそう言ってくれると思っておったぞ!」

「だからメディナリって呼ばないで!」

 

 ノッブの言葉に悲鳴を上げるメディア。

 

「茶々は楽しいなら良いよ!」

「アタシも構わないさ。部屋で燻っているより、外に出た方が良いからね」

 

 茶々とドレイクは楽しそうに笑う。

 

「それで、僕たちは何をすればいいんだい?」

「任せるがいい。俺はお前の願いを叶えよう」

 

 エルキドゥは依頼の内容を聞き、巌窟王は不敵に笑う。

 

「先輩。全員集まりましたよ」

「うん。じゃあ、話を始めるよ」

 

 マシュの言葉に答えるようにオオガミは話を始める。

 

「今回はノッブの収集が目的だよ。ちびノッブとか、ノブ撰組とかだね。目指すは全種制覇。期限はイベント終了までだよ! じゃ、作戦開始!」

「作戦内容は一切語ってないんじゃが!?」

 

 ノッブの適切な突っ込みにオオガミのセリフに思考が停止していた全員がハッと我に帰る。

 

「せ、先輩。流石にアバウト過ぎませんか…?」

「本当に滅茶苦茶ね……そもそもどうやって捕まえろって言うのよ」

「え? そりゃ、素手でこう…」

 

 普通にオオガミが人形を持ち上げるようなジェスチャーを取る。

 

「いやいやいや。待て。待つんじゃマスター。あれはそんな単純なものじゃないから。そんなことしたらすぐさま爆発するぞ」

「そうだね。あれはそんな捕り方じゃ捕まえられないはずだよ。とりあえず、僕が色々と試してくるよ」

 

 そう言ってエルキドゥが行こうとしたとき、

 

「茶々がいっちばーん!」

「これでいいのか?」

 

 茶々と巌窟王が、さも当然のようにちびノッブを捕まえてきた。

 持ち方は茶々が両手で抱き上げるように。巌窟王が、服の襟を掴んでいた。

 

「おぉ。ほら、捕まえられるじゃん!」

「なんじゃと…? そんなわけ…」

「どうやって捕まえたのかしら。私もいくつか試してみましょうか…」

 

 ノッブは驚愕の表情を浮かべ、メディアは真剣に考察する。

 

「それで、そいつらをたくさん集めれば良いんだね?」

「そうみたいだけど…いや、でも、どうやって捕まえたんだ…?」

 

 ドレイクは実物を見て意気込むのとは反対に、エルキドゥは疑問を浮かべる。

 

「よし。じゃあ、このノッブに似た感じのを探して捕まえてきブホァ!」

 

 巌窟王から受け取り、皆に見えるように高く掲げようとした途端爆発するちびノッブ。

 周囲が騒然とするが、当の本人は黙ったまま動かない。

 

「先輩! 大丈夫ですか!?」

「……うん…まぁ、大丈夫だよ…」

 

 上半身が若干爆発で汚れた汚れたオオガミは、心配するマシュに答える。

 

「うん。まぁ、今みたいに爆発するから、皆気をつけて捕まえるように。じゃ、かいさーん」

 

 それだけ言うと、ブハッ。と煙を吐き、倒れた。

 全員が心配する中、巌窟王がオオガミを抱えると、

 

「今回は俺の失態だ…マスターを部屋に届けたらすぐに戻る。すまない」

「よし、ならばそちらは任せたぞ。では、こっちはオオガミの依頼を完遂せねばな。ほれ、心配する前にさっさと行くぞ。マスターの為にも全力を注いで儂もどきを捕まえるのじゃ。散開!」

 

 ノッブの声により、全員は一斉に動き出した。

 マシュだけは一瞬躊躇ったが、しかし、最終的には巌窟王に託して行くのだった。




 ってことで始まったちょっとばかり続く予感のするノッブ収集編。
 構想は少し前からあったけど、色々あってやってなかった感じの今回。頑張って進めていきますよ!


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初めて聖杯を使った(私を選ぶとか、本気なの?)

「ねぇ、なにさらっと私に聖杯を捧げてるのよ」

「そりゃ、宝具レベルマックスのレベルマックスで、俺的にヘラクレスの次くらいにパーティーに入れておくと安心するからじゃない?」

 

 エウリュアレの疑問に当然のように答えるオオガミ。

 話している内容は、『なぜ(エウリュアレ)に聖杯を使ったか』ということらしい。

 場所は当然のようにオオガミのマイルームだった。

 

「エウリュアレとしては、なにがそんなに不満なの?」

「それは、貴方が私をまだ使うつもりだからじゃないかしら」

「じゃあ、聖杯を使わない方が良かったと」

「そういうわけじゃ……ないわ。ただ、私はそんなに強くないわよ。貴方も知ってるでしょう?」

「高難易度の土方さんの体力を恐ろしい速度で削っておいてそれを言う?」

「むぐっ…ま、まぁ、貴方がどうしてもっていうのなら、戦ってあげないこともないわ」

「ありがとうエウリュアレ。これからもよろしく」

「っ……えぇ、こちらこそよろしく。私のマスター」

 

 一瞬硬直するも、すぐに微笑んでそういうエウリュアレ。

 すると、

 

「なぁーにラブコメしとるんじゃお主らは」

「っ!?」

「あ、ノッブ。どうかした?」

 

 突然入ってくるノッブ。エウリュアレは若干顔を赤くしながら振り向くが、オオガミは特に気にした様子もなくノッブに声をかける。

 それが気に食わなかったのか、エウリュアレはオオガミを睨みながら無言のままオオガミの腹を殴る。

 

「ゲフッ……と、突然なにするの…?」

「うるさい。とりあえず、もう用は無いから私は出ていくわよ!」

 

 怒ったようにエウリュアレは声を上げて出ていく。

 

「うぐぐ…何したんだよ…僕…」

「今更じゃが、お主一人称変わりすぎじゃろ」

「そんなこと言われたって…癖だから仕方ないじゃん…」

「全く。それは治らんとしても、せめて今の儂への反応はダメじゃろ」

「うぅむ…やっぱりそこかぁ…難しいなぁ…」

「そういうもんじゃ。というか、そろそろ痛みも引いてきたじゃろ」

「いや…反省のためにももう少しこのままでいようかと」

「そんな反省誰も要らんわ。さっさと働かんか」

「グフッ。ノッブの追撃が心に痛い…」

 

 容赦のないノッブの追撃がオオガミの心を突き刺し、肉体的にも刀の鞘でつつかれる。

 

「はぁ……全く、だらしないのぅ。一周回ってこっちが恥ずかしいわ」

「む。そんな事言われたら仕方がない。真剣にやろうじゃないか」

「そうじゃの。後約20万ポイントじゃ。頑張るのだぞマスター」

「うん。ノッブも手伝ってね!」

 

 仕方無い。と言いながらも、若干嬉しそうなノッブ。

 その後、二人は周回を少しした後マスターの眠気が限界に達し寝たそうな。




 ってことで、本当にエウリュアレに聖杯を捧げました。
 これからもよろしくね! エウリュアレ!


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ノッブ狩りの準備は整ったかー!(あ、ついでに新撰組ポイントは集まったそうです)

「ポイント。終わったのぅ」

「終わったねぇ」

「後は沖田のところの商品を買い占めるだけじゃのぅ」

「結構残ってるけどねぇ」

 

 そもそも、ポイントを集めながら手に入れたものは微々たるものなので、そこまで集まりはしない。

 つまり、これからが本番という事なのだろう。

 

「いやぁ、これからが本番とは、さすがに時間が無いんじゃないかのぅ」

「確かにね。あ。そういえば、ノッブの回収状況は?」

「そろそろエルキドゥが捕獲法を発見するんじゃないか?」

「ふむ。じゃあもう少し待つかな」

 

 そう言った直後、

 

「主殿ぉぉぉぉ!!!!」

 

 勢いよく開くマイルームのドア。電動式自動ドアのはずだったのだが、金色に改造されたのが原因で手動扉に変更されていたようで、スパーンッ!と気味の良い音がした。

 現れたのは牛若丸。若干怒ったような表情で、目を輝かせて入ってきた。

 

「私が知らない間に皆が面白そうなものをやっているのですが!? やっているのですが!?」

「や~~! うしわっかストップ! 死んじゃう! その勢いは死んじゃうから!!」

 

 ガックンガックンと揺らされて、首が折れるのではないかという勢いのマスター。

 さすがにノッブも見兼ねたのか、牛若丸の手を掴み、強制的に止めさせる。

 

「ハッ! す、すいません主殿。ただ、一部のサーヴァントがとても面白そうなことをしていたため、気になったので…」

「う、うん…分かった。分かったよ牛若丸。とりあえず、その報告はこっちも待ってたから……」

「そ、そうなのですか?」

「そうだよ。だから、いい加減にその手を離したらどうかな」

 

 少し棘のある声。それはある意味オオガミの想定内で、しかし想定外の状況だった。

 

「あ、エルキドゥ殿! あなたも関わっていたのですか?」

「うん。それで、あの人形の捕らえ方を見つけたから報告しに来たのさ」

「うん。待ってたよエルキドゥ。まぁ、こんな状態になるとは思ってなかったけど」

「こっちとしても想定外だったよ。まさかマスターが牛若丸に襲われてるとは思わないよ」

「だ、だよね…」

「それで、結果はどうだったのじゃ?」

 

 ノッブの言葉を聞いたエルキドゥは、牛若丸から視線を変え、ノッブを見る。

 

「一応は体内にある八連双晶を破壊して魔力暴走させないようにすれば安全に捕まえる事が出来るかな。慣れるまでは難しいけど、慣れさえすれば簡単にできるようになるさ」

「八連双晶かぁ…もったいない気がするけど、ノッブ。出来そう?」

「そうじゃの。まぁ、出来なくはないだろうが、技術が求められるの…」

「えっと、主殿。その、あの人形の中の八連双晶とやらを砕けば良いのですか?」

「えっ? まぁ、うん。それで良いらしいよ?」

「では、私も手伝ってもよろしいですか!?」

「わ、分かった! 分かったから! 近いってば!」

 

 触れるんじゃないかという勢いで近づいてくる牛若丸。

 オオガミは急いで返事をして牛若丸から離れると、牛若丸はすぐに立ち上がり、エルキドゥの手を繋いで、

 

「エルキドゥ殿! 早速行きましょう! 時間が無いようですので、迅速にコツを掴まねば!」

「エルキドゥ! 頼んだよ!」

「分かったよ。他の人にも知らせておいた方が良いかな?」

「お願い。出来そうな人を重点的にね」

「うん。じゃあ、行ってくるね」

 

 それだけ言うと、牛若丸に連れ去られるようにエルキドゥは出ていった。

 

「いやぁ…ドタバタだったのぅ」

「見てないで助けてくれないかな…」

「儂が出るまでもなかったし」

「確かにそうだったかもしれないけどさぁ…」

「ま。助かったんだから良いじゃろ。さて、じゃあ儂も行ってくるか。マスターはどうするのじゃ?」

「今日はもう遅いしねぇ……寝るよ。明日に支障が出たら問題だし」

「そうか。じゃあ、おやすみじゃ」

「おやすみ。また明日もよろしくね」

「任せておくがよい」

 

 そう言って、ノッブは部屋を出ていった。

 その日の夜は、ノッブ(もどき)狩り令により、様々なノッブが捕まったという。

 後に、これを明治ノッブ狩りの戦いという。




 あ、ノッブ狩りの話は適当に作ったので、設定については突っ込んでも突っ込まなくても大丈夫です。
 こっちの方が良くね?っていうのはくださると嬉しいです。


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しっかりトドメは刺さなくちゃ(セタンタは何度でも蘇える)

「終わらねぇぇぇ!!」

「なんで時間を気にかけなかったのじゃあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 半分発狂しながらドレイク船長と共にメディナリだのセタンタだのを撃ち滅ぼしていくノッブとオオガミ。

 その勢いは本気も本気。全力全開で林檎を喰いながら突き進んでいく。

 今もまたセタンタが吹き飛んだところだった。

 

「どうしてじゃ! どうしてこんな目にあってるのじゃ!」

「回想するまでも無く、期限を全く考えてなかったこっちが原因だよ!」

「阿保なのじゃ! うちのマスターは阿保じゃな!」

「うるさい! 間に合うとか言ってたけど、今まだ小判しか終わってねぇし、砂金とか永楽銭とかどう考えても時間足りねぇっての!!」

「だからさっさと林檎を喰って周回するって言ったじゃろうが!」

「ポイント溜まったから安心してたんだよチクショウ!!」

 

 一度砂金を集めていたものの、集めるのが楽に見えた永楽銭を集めるように作戦を変更し、現在。未だフォウ君は健在。魔術髄液も変わらず、愚者の鎖は18個という現実だ。

 砂金に至っては精霊根とピース各種が一回も交換されておらず健在。何時になったら終わるのかと思いつつ、時間は刻一刻と過ぎていく。

 

「仕方ない…こうなったら、覚悟を決めるしかないか…」

「な、何をする気じゃマスター。お主の事じゃから、どうせ碌なことを考えてないじゃろ…!」

「ひでぇ言われようだこと!」

 

 全く信頼していないノッブの一言に若干傷つくオオガミ。ノッブなりの今までの意趣返しだが、そのダメージは想像以上に大きかった。

 

「いや、別にそんな落ち込むことでもないし。うん。大丈夫」

「自分で自分を慰めるより、とりあえずその覚悟とやらを言ってくれんかのぅ」

「うむ。その覚悟はだね」

 

 オオガミは一拍置き、

 

「今日は諦めてまた明日頑張るって事さ!」

「ぶっ飛ばすぞぅこの駄目マスター! 略して駄スター!!」

「なんか聞き覚えのあるフレーズ!!」

 

 しかし、どこで聞いたのかまでは思い出せないのがオオガミだった。いつもの事である。

 

「とりあえず、あと一回セタンタをシバキ倒したら今日はいったん止めよう。明日には終わらせるよ」

「ぐぬ…仕方ない。マスターが限界ならサーヴァントは戦えんしの…えぇい! 命拾いをしたなセタンタ!!」

 

 ノッブは叫ぶが、すでにセタンタは何度もトドメを刺されている。ちょっと思い出せないレベルで。

 そんな思いがあったのか否か、遠くでセタンタが張り切ってるように思える。

 

「…………今日一番の大仕事だね」

「瞬殺じゃ瞬殺。一片の慈悲もくれてやらんのじゃ」

 

 目を爛々と輝かせて、二人は最後の戦いへと赴くのであった。




 セタンタを壬生狼積んでひたすら叩きまくる話。
 しかし本当にアイテムが集まらない…概念礼装不足が否めない…!!


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そろそろメインヒロイン決める時間か…?(誰もそんなこと言ってないし、決める気もないから!)

「後砂金じゃあぁぁぁぁ!!」

「覚悟しろメディナリィィィィィ!!!」

「それ私が狙われてる感じなんだけど!?」

 

 ノッブとオオガミの叫びに、編成の中にいないメディアが悲鳴を上げる。

 確かに自分と全く同じような容姿の人間が全力で叩き潰されているのなら、悲鳴の一つも上げるだろう。

 

「メディナリを倒せば砂金が落ちる! これ、世界の常識!!」

「ゆえに! 儂らは一片の容赦も無くメディナリを屠る!!」

「「それが()らの義務というもの!!」」

「そんな義務いらないわよ!!」

 

 半分泣きが入るメディア。外側から見てるだけでもひどいようだった。

 

「全力じゃ全力! 一片の容赦も無く全力で倒すんじゃ!!」

「さらばメディナリ! 我らの前に立ったことを後悔するがいい!!」

「少しは容赦しなさいっていうか見てて死にたくなるから止めてっ!!」

 

 悪魔の様な顔でメディナリを吹き飛ばしていくノッブとオオガミを見て精神ダメージを受けて心を痛めるメディア。

 もう悪魔を止める方法は無いのか。時間がすべてを解決してくれるのか。ならばもう、泣き寝入りするしかない。

 その結論に至ったメディアは、逃げるようにその場を立ち去る。

 

「いやぁ……容赦ないねぇ。二人とも」

「本当です。先輩はもっと自重してほしいです」

「そう? あれがマスターの良い所じゃない」

「エウリュアレさんは先輩に甘すぎです。しっかりと言うところは言わないと、ダメになってしまいますよ」

「マシュはマスターの扱いを心得ているっぽいねぇ。二人でいくつもの特異点を越えてきただけはあるね」

「そ、そんなことないですよ!」

「そうなん? 茶々はマシュがいるからマスターは自由に暴れてると思うんだけど?」

 

 途中からマシュをいじり始めたドレイク、エウリュアレ、茶々の3人は、ドレイクを除き後衛待機組だ。

 基本仕事は回ってこないので、こうやって話していた。

 

「それで、さっきメディアが行ってしまったけど、よかったの?」

「そもそもメディアさんはパーティーに編成されてないので、休憩中のはずだったんですが…なんで居たのでしょうか…」

「根本的にパーティーに無関係だったのに居たの?」

「案外自由度が高いわよ。マスターとサーヴァントという関係はあっても、してはならないことなんて、そんなに無いもの」

「マスターがあんなだしねぇ。多少の事は目をつぶられるのさ」

「本当はそれじゃあダメなんですけどね…」

「でも、別にそういうところも嫌いじゃないんでしょう?」

「それは……そうですけど。でも、しっかりとしてもらいたいっていうのは本当ですよ」

「まぁ、マスターも分かっててやってる部分があるからねぇ……まぁ、お互い無理しすぎない程度にやるのが一番さ」

「ほら、二人が戻ってくるわよ。行ってきなさいな」

「行くって…どうしてですか?」

「変な所で鈍感ねぇ…いいから行ってくる!」

「うわわ! っとと。いきなり押さないでください!!」

 

 頬を膨らませ怒っているように見せるマシュ。

 しかし、

 

「マシュ? どうかしたの?」

「あ、先輩。いえ、別に何かあったというわけではないのですが…その……お疲れ様です」

「あはは。まだ終わってないけどね。でもまぁ、ありがとう。今日はもう諦めて、明日に全力を出すことにするよ」

「はい。頑張ってください。先輩!」

 

 その二人の横を通り過ぎたノッブは、にやにやと笑っている3人に声をかける。

 

「何を企んでおるんじゃお主らは。全く、儂の出番を奪い去りおって」

「知らないわよ。貴方の事情なんて」

「アタシらは別に何もしてないからね」

「茶々は本当にほとんど会話に参加できてなかったよ!」

「……まぁ、良いんじゃけどな」

 

 ノッブはそう言って、オオガミとマシュを見る。

 

 二人とも楽しそうに見えたのは、幻覚などではない事実なのだろう。




 メインヒロインはいない。今のところはね。
 ノッブがメインヒロインに見えなくもないのは、完全にイベントキャラだからと言って使いまくってるのが原因だと思った。マル。


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日常
何とかイベントを切り抜けたよ…(しかしてイベントはもう目の前に迫っている)


「終わったねぇ……」

「終わったのぅ……」

「砂金もギリギリ集まったし、大勝利だね」

「そうじゃの。それも儂が頑張らねば不可能じゃったし、もっと感謝するが良い」

 

 イベントも無事終わり、平和が戻ってきたカルデア。

 金色の茶室擬きのマイルームはすでに手を加えられ、いつもの白い部屋――――ではなく、月光差し込む趣のある部屋に改装されていた。

 地下なのにどうして月光が差し込むような感じがするのか気になるが、そもそもあの内装を瞬時に切り替える方法を知らないので、謎技術の一端なのだろう。と適当に解釈する。

 考えない方が良いこともあるのだ。

 

「しかし、新たな魔術礼装とやらは使えるのか?」

「さぁ? 実戦で使ってみるまで分からないけどね。まぁ、それでも戦闘礼装を使い続けるつもりだけど」

「新しいことに目を向けるのも重要じゃよ。マスター」

「それは英霊を召喚しろってことかな? ノッブ」

「誰もそんなこと言っとらんから。早とちりするでないわ」

 

 残っている最後の呼符を切ろうかと言わんがばかりの表情を浮かべるマスターに冷静に突っ込むノッブ。

 

「流石に本気で使いはしないよ。まだね」

「う、うむ……いや、別に良いのじゃが、無理はするでないぞ?」

「分かってるよ。とりあえず、種火周回だよね」

「そうじゃのぅ…儂に聖杯を使っておれば乗り気だったんじゃがの」

「残念。貢献率が違うよ」

「くっ…儂がもっと早くからおれば…!!」

「まぁ……趣味も幾分か入ってるんだけども」

「酷い現実じゃ!!」

 

 仕方ないのだ。エウリュアレは6章からずっとメインアタッカーだったのだから。

 特にキャメロットと新宿では大活躍だった。今なおわんこと対峙するにはエウリュアレを連れて行きたいと心の底から思うほどには。

 

「よし、とりあえず種火周回をするのが一番だね。今日は弓と杖だし、育てたい人はいるしね」

「儂は旨味が無いから辞退するからの」

「分かってるよ。というか、ノッブはセイバーの時に戦ってもらうから。今日はエリちゃんとドレイク船長がメインだからね。じゃ、行ってくるね」

「頑張るのじゃぞー」

 

 オオガミはそう言ってマイルームを出て行く。

 ノッブはそれを見送り、さて。と呟く。

 

「うむ。やはりあの金色な部屋よりこっちの方が断然良いの。あんな趣味の悪い部屋なんぞ、無くなって当然じゃ」

「茶々はそんな嫌いじゃないけどなぁ」

「いえ、さすがにアレは目が痛いので止めてほしいです」

 

 当然の様に部屋の中にいる茶々と静謐のハサン。

 

「いつからおったんじゃお主ら」

「茶々は今来たよ?」

「私は最初からずっといました」

「「えっ。セキュリティ、ザルじゃね? この部屋」」

 

 いまさら何を。と誰かが突っ込みそうだが、突っ込みは不在だった。

 

「それで、なんで来たんじゃ?」

「理由は無いよ!」

「マスターを観察してただけです」

「こ、怖いの…よし。儂はもう帰るから、後は二人で留守番頼むぞ」

「分かったよ!」

「任せてください」

 

 ノッブはそう言って、部屋を出て行った。

 その後二人が何をしていたのか。それを知るものは誰もいなかった。




 恐ろしい…事件だった…。砂金が800個必要だったのに、途中で勘違いして1000個集めるという無駄とも言い切れない作業をしてしまった…
 結果的に全部集まりましたけどね!よかったよかった!


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☆5キャラが出ないのは平常運転の証(そんな酷な事言わないでほしいです)

「あ~~~~~~」

 

 気の抜けるような声が部屋に響く。

 叫んでいるのはオオガミ。ベッドに倒れ、死んだ魚のような目で時々息継ぎをしながら声を出し続けていた。

 

「……いつまで叫ぶつもりなんじゃ。マスターは」

「まだ始まったばかりですし、諦めるのは早いと思いますよ。先輩、聖晶石を集めに行きましょう?」

「うぅ…慰めてくれるのはマシュだけだよ…」

「儂も慰めたはずなんじゃがな? おかしいな。これは魔神柱による精神攻撃か?」

 

 ノッブもそれなりに頑張ってはいたのだが、こういう時の対処法はマシュの方が良く知っていた。

 

「信長さんも茶化さないでください。そうすると、症状が延びるんですから」

「マスターのそれは病気なのかよ…」

「はい。病名は『☆5ピックアップ出ない症』です。大抵、来て欲しいサーヴァントを引けないと掛かる病気で、心がボキボキと折れていく病気です。一度掛かると、寝て忘れるか気分転換をしないと治りません」

「案外すぐ治る気がするんじゃが」

「そうでもないんですよ…長引く時は長引くんですよ…沖田さんピックアップの時がそれです」

「あぁ……それで沖田の時もこうなってたのか」

「はい……あの時は自力で回復してましたけどね」

「あれはさすがにビビったからのぅ……まさか遊んでるとは…」

 

 少し昔の事を思い出し、苦い顔をするノッブ。

 今の状況からして、少しひどい事を言っていたのかもしれないと思いつつ、あれはあれでよかったのだろう。と考え直す。

 

「それで、儂らはどうすれば良いんじゃ?」

「そうですね……普通に聖晶石を集めるのが一番……ですかね」

「結局クエストに行くしかないんじゃなぁ……」

「そうですね。それくらいしか思いつかないです」

「それ僕も行かないといけないという現実に気付こうよ」

 

 気怠そうな目で二人を見るオオガミ。

 その目を見て、二人は同時にほとんど同じ考えに至る。

 

「えぇっと…今日は止めておきましょうか」

「そうじゃの。さすがに今のマスターは頼りにならんわ」

「バッサリ切り捨てないでよ…まぁ、事実だけども」

「先輩。明日また挑戦しましょうよ。沖田さんの時と違って時間には余裕ありますし」

「う~ん…そうだね。明日から頑張ろー。おー」

「やる気なさすぎな声じゃな。まぁ、儂も手伝うから期待するが良い」

「頼りにしてるからね。もちろん、マシュも」

「はい、先輩!」

 

 嬉しそうにそういうマシュ。

 とりあえず、今日は解散の流れとなったので、マシュとノッブは部屋を出て行くのだった。




 10連爆死…まだ軽傷。今からやってないフリークエストをやればもう一回くらい10連できるはず…!


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ちびノッブだし、仕方ないね(爆発しないと言ったな。アレは嘘だ)

「マスターマスター。今大丈夫かしら?」

「ん? 別に大丈夫だけど、どうかしたの? ナーサリー」

 

 廊下で呼び止められるオオガミ。

 

「あのね? この前取ってもらったお人形さん、言う事を聞いてくれないの」

「いや……そりゃ、ノッブだし…」

「どういうこと?」

「ほら、ノッブはたまに言う事を聞かないし、それが反映されてるチビノブ達が言う事を聞かないのも納得って話だね」

「儂の話か?」

 

 ナーサリーに理由を説明していると、話の中心人物であるノッブ(本体)がやってきた。

 

「あっ! 話を聞かないノッブさん!」

「おいちょっと待つが良い。マスター。これ、絶対お主のせいじゃろ」

「すぐに矛先を僕に向けるのは理不尽だと思うよ!?」

「だって、この状況的にお主しかおらんじゃろ。それとも何か? すでに誰かが教えた後とでも言うのか?」

「……ふっ。中々頭が切れるじゃないか。ノッブ」

「マスター。そのくらい、誰でも分かると思うの」

 

 容赦のないナーサリーの突っ込み。オオガミは頬を引きつらせる。

 

「いやぁ……マスター。さすがに儂の事を馬鹿にし過ぎだと思うんじゃが」

「いやいや。全然馬鹿にしてないってば。全力で誤魔化したいだけだってば」

「それならもう少しまともな言い訳を考えるんじゃな。ほれ、行くぞ」

「えっ? えっ? 行くって、どこに?」

「どこって、ナーサリーの部屋じゃろ? 儂もどきが世話をかけているようじゃし」

 

 ノッブはそう言うと、オオガミの襟を掴むと、引きずっていく。

 ナーサリーはそれをじっと見ていたが、我に返ると同時に二人を追いかける。

 

 

 * * *

 

 

「で、ここの中にいるって事?」

「うん。一応この部屋から逃げないから」

「だそうじゃ。ガードは任せたぞ」

「なんで私まで…」

 

 移動中に見つかってしまったマシュは、そのまま連行されてナーサリーの部屋まで連れて来られていた。

 

「じゃ、開けるよ」

「うん。お願いね。マスター」

「行くぞ、マスター」

「はぁ…仕方ないです。防御はお任せください。マスター」

「うん。じゃ、レッツゴー」

 

 オオガミがそう言って扉を開ける。

 直後飛び出てきた金色のちびノッブがオオガミの顔に張り付く。

 

「えっ」

「「「あっ」」」

 

 ドンッ!! という爆発音と共にオオガミの顔が爆炎に包まれる。

 

「ま、マスター!!」

「大丈夫!?」

「開幕奇襲とか、やりおるな儂!!」

「馬鹿言ってないで追撃を防ぎますよ! ナーサリーさんはマスターを連れて退却してください!」

「わ、分かったわ!」

 

 早々にダウンしたマスターを引きずりながらナーサリーはその場を離れる。それを確認するまでの間ノッブとマシュはちびノッブたちを部屋に押し戻していた。

 

 

 * * *

 

 

「あ、あれれぇ…? 爆発しないんじゃなかったっけぇ…?」

「普通に爆発してましたよね」

「いやぁ…凄まじいのぅ。さすが儂もどき」

「うぅん…部屋を占領されちゃった…」

 

 退却した四人は、オオガミのマイルームで作戦会議を始める。

 と言っても、もう深夜に突入しているので、オオガミは眠気に飲み込まれかけていた。

 

「マスターもお疲れのようですし、今日は諦めましょう。ナーサリーさんはどの部屋に行きましょうか……」

「儂の部屋でも良いが…ナーサリーはどうしたいのじゃ?」

「私はマスターさんの部屋が良いわ」

「……あり、かの?」

「良いんじゃないでしょうか。ナーサリーさんなら何かするはずもないですし」

「じゃあ良いか。じゃ、解散。儂は自室に戻るからの。明日また挑むぞ」

「了解。じゃ、お休み~」

「おやすみなさい。先輩」

「おやすみじゃ、マスター」

「お休みなさい。マシュ、ノッブさん」

 

 そうして、四人は解散し、ナーサリーとオオガミは同じ布団で寝る事にした。全ては予備の布団が改装のせいで消滅していたのが原因だった。




 明日に続くよッ!

 ネタの募集…した方が良いのかな。とりあえずネタが切れるまではやっていくつもりですけど、こういうのをやってほしいっていうのがあった時ように活動報告に枠を作った方が良いですかね?
 登場予定キャラも一度全員書かないとですねぇ…


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これは……新手の呪い?(誰得な呪い何ですがそれは)

「では、第二回ノッブ制圧戦会議を始めるよ」

「正直、その題名だと儂を制圧するようにしか思えんのじゃが」

 

 真剣な表情で言うオオガミにノッブがすかさず突っ込む。

 

「いやいや。さすがにノッブ(本物)は倒さないけども」

「本物とか言われると、儂の偽物が跋扈してそうじゃの」

「してるから本物って言われてるんでしょうが」

「そうなんじゃけど…」

「まぁまぁ信長さん。とりあえず、会議を続けましょう」

「ぬぅ…仕方ない。マスター。進めるのじゃ」

「なんとまぁ偉そうなんだ。このノッブ」

「偉そうじゃないのがいるのか?」

 

 文句を言うノッブをなだめるマシュ。そして、若干追撃をする巌窟王。

 現在この会議は、オオガミ、ノッブ、マシュ、巌窟王、エルキドゥの五人だけだ。

 ナーサリーはメディアに連れて行ってもらった。今何をしているのかは分からない。

 

「まぁ、ノッブが偉そうなのはいつもの事としよう。うん。とりあえず、今日の目標はあれだよ。この前捕まえてきたちびノッブ達をもう一回捕まえて、ダ・ヴィンチちゃんの所に連れて行くことかな」

「ということは、捕らえてくるだけでいいのかな?」

「うん。ダ・ヴィンチちゃんが何とかしてくれるらしいし」

「そう。なら、すぐに終わるね」

「正直、(マスター)の必要性無い気がするけどね」

「いや、マスターがいるだけで士気力が変わるんだけどね」

「あ、それなら行かなくちゃか。よし、じゃあ行こうか」

「作戦とか、何も立てて無いんじゃが。これでいいのかカルデア」

 

 出て行く全員の後ろを歩きながら、ノッブはそう呟いた。

 今までもこれで勝ち進んできているので、何とも言えない現実があるのだが。

 

 

 * * *

 

 

「で、とりあえず俺は爆発を受けないように後ろに下がって置こうか…」

「毎度顔面に張り付かれて爆発されとるよな。マスター」

「本当にね……捕獲の時も、様子を見に行くたびに爆発するし…」

「災難としか言いようがないの。全く」

「なんでマスターにだけあんなに襲い掛かるんでしょうか」

「次は無い様に俺が見張っていよう」

「巌窟王さん…お願いします」

 

 マシュはそう言って巌窟王にオオガミを任せ、扉に向かう。

 

「では…参ります!」

 

 扉が開く。直後、やはり飛び出てくるノッブたち。

 無数のノッブをマシュとエルキドゥが押し返し、飛び上がってくるちびノッブをノッブ(本物)が撃ち落していく中、一体だけ、他のちびノッブとは明らかに違う動きでオオガミに迫る。

 

「ちょ、完全に俺を狙ってるじゃんか!」

「ふん。動かないで良い。俺に任せろ」

 

 オオガミが迫ってくるノッブを見て一歩下がると同時、巌窟王が間に割り込みちびノッブを掴むと、手に持っていた袋の中に放り込む。

 その袋は、ダ・ヴィンチちゃんから貰って来た捕獲用の袋で、あまり構造は分からないが、爆発しても平気らしい。

 

「ふぅ。これで一安心だね」

「そうだな。おそらくあの一体だけが――――」

 

 振り向き、オオガミを見ると同時に固まる巌窟王。

 オオガミの頭の上には、すでに居たのだ。奴が。

 

「ノッブ!」

「マスター!」

「えっ?」

 

 ボンッ! という音と共に、いつもの如くマスターは爆発に飲まれ、倒れるのだった。

 

「……呪いの類じゃろ。絶対」

 

 ノッブはそれをちらりと確認し、思わず呟くのだった。

 

 

 * * *

 

 

「うん。まぁ、そうなるんじゃないかって思ったよ。正面のは囮で、すでに背後にいるとか、誰も想像しないって」

「俺がいながら…すまない」

「僕もそっちまで手を回していれば…」

「もう爆発されるとかいう呪いに掛かってるじゃろ。絶対」

「そんな呪い嫌なんだけど。爆発される呪いとか、誰の攻撃だよ」

「知らんが、何か恨まれることでもしたんじゃろ」

「そんな……恨まれることなんて……してない、よ?」

「自信なさすぎじゃろ」

 

 何とかノッブたちを全員回収して、マイルームに戻ってきたところだった。

 案の定爆破されたオオガミは、数分気絶していたものの、すぐに目を覚まし、先ほどの会話につながる。

 

「それで、全部捕まえてダ・ヴィンチちゃんに届けたんだよね?」

「そうだよ。ノッブたちを入れた袋は、今はマシュが運んでくれてるよ」

「そう。なら良かった。後はダ・ヴィンチちゃんに任せようか」

「すまないマスター。俺が付いていながら…油断してしまった」

「まぁ、ミスは誰にもある事だし、気にする事は無いと思うよ」

「マスターはもっと自分の重要性を考えるべきじゃと思うがな」

「うっ。面目ない…」

 

 ノッブの言葉がぐさりと突き刺さる。

 

「ま、まぁ、結果は全員無事だったし、良いじゃん。今日は解散にしよう。俺も疲れたし、仕事も終わったからね。問題無しだよ」

「うむ。じゃあ、儂も出て行くかの」

「そうだね。僕も部屋に戻ろうかな」

「俺も、今日は戻ろう。また明日会おう。マスター」

「うん。おやすみ~」

 

 オオガミがそう言うと、三人はそれぞれ答えて部屋を出て行く。

 

「さて…このまま寝ようかな」

 

 オオガミはそう呟いて、寝るのだった。

 

 そして、報告のために部屋に寄ったマシュは、すでに寝ているオオガミを見て、明日報告することにしたのだった。




 ホント、誰から受けた呪いですか。主人公を爆破したいとか…大体みんな思うじゃないですか!


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種火と聖晶石と(どちらを取るべきか)

「うぅむ……」

「何を悩んでいるの?」

 

 廊下で悩んでいるオオガミに声をかけるエウリュアレ。

 マスターと会うなら、朝か夜ならばマイルーム。昼ならば廊下を歩けば見つかる。というのがサーヴァント内でささやかれている噂の一つらしいが、その真偽は定かではない。

 

「聖杯を使って早くエウリュアレのレベルを上げたいんだけど、種火が足りないんだよね」

「だから、なんで私のレベルを上げようとしてるのよ」

 

 すでに二つ目の聖杯も捧げられ、ついにセイントグラフが金色に輝いたエウリュアレ。

 だが、オオガミは当然のごとく育てることをやめないようだった。

 

「女神さま、強いし。メイン戦力だし。ランサーじゃなきゃ大体何とかしてくれるし」

「私はそんな強くないわよ…買い被り過ぎ」

「別にそれでもいいけどね。育てることに変わりはないし」

「意地でも育てる気なのね…」

「もちろん。女神さまにはこれからも頑張ってもらう予定だし」

 

 当然のように言うオオガミ。

 本来ならば攻撃力も殲滅力的にも弱いのであまり連れていないのだが、最近は異様なまでに連れて行こうとすることが多い。その理由は分からないが、何か考えているのだろう。とエウリュアレは推測する。

 ただ、一つだけ、何かを誤魔化しているというのはわかっていた。

 

「はぁ……それで、種火でしょう?」

「うん。今月分のダ・ヴィンチ工房も尽きてるし、次の弓まで待つしかないか…」

「ランダムは選択外なのね」

「下手すると死んじゃうような種火集めは地獄でしょ」

「本音は別のところにあるんでしょう?」

「えっ」

 

 突然の一言。エウリュアレは勝ち誇ったような表情で言う。

 

「知ってるのよ? 今日、聖晶石を集めていたじゃない」

「うぐっ」

「それに、また誰か召喚しようとしてるみたいじゃない」

「うぐぐっ!」

「まぁ、別に私は構わないけど、あなたが大丈夫なのかが気になるわ」

「そ、それは…大丈夫だよ。欲しいのはセイバーだしね…他の人にまで被害はいかないはずだし」

「ふぅん…まぁ、いいわ」

 

 エウリュアレはそういうと、ふふ。と笑うと、少し進んで振り返る。

 

「私を楽しませてね。マスター」

「……その笑顔は卑怯だよ。エウリュアレ」

「女神の威厳を保つためにも必要なのよ。ふふ。じゃあ行きましょ、私のマスター?」

「…うん、そうだね。じゃあ、石集めかな」

「えぇ、頑張るわ」

 

 エウリュアレに手を引かれ、オオガミは歩き出す。

 目的地は絶対魔獣戦線バビロニア。魔獣殲滅へと向かうのだった。




 聖晶石集めも、ついにバビロニアに到達…やばい、このままだと枯渇してしまう…!!
 これはイベントがダメかもわからんですよ…


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増えない聖晶石(むしろ減ってる…?)

 今更ながら、カルデアにも休憩室の様なモノは存在する。

 いつの間にか補充され、内容もたまに変わるドリンクサーバーに同じくいつの間にか補充されているお菓子。

 休憩室だという事を現すソファー。なぜかある台は、ここに立って何か催し物でもする時用なのだろうか。

 

 そして、そこに訪れるのは研究員やマスターはもちろん、サーヴァントもいる事が多い。

 今日もまた、人はいるのだ。

 

「それで、マスターはどうですか?」

「知っての通り、今も石集めに奔走中じゃよ」

「ネロさん、召喚する気満々ですもんね…」

「全く…大変じゃな。マスターは」

「もう石も採りにくくなってますしね」

「石集めも後半戦。10連引くだけ集められるか不安じゃの」

「ですね」

 

 マスターの必死ぶりに苦笑する二人。

 話してる会話の通り、現在マスターは全力でバビロニアで戦っていた。

 二人は休憩中で、マシュはAPが回復したらまた出撃である。

 

「難しい所じゃのう…決戦は水曜日なんじゃろ?」

「はい。次のピックアップが~って、叫んでましたから」

「大変じゃのぅ…明後日だし」

「どう考えても間に合いそうにないので、来週の水曜日を決戦とするって言ってましたけどね」

「そうやって先送りにするからダメなんじゃよ」

 

 遠い所で謎の精神ダメージを受けたマスターがいたというが、それがオオガミなのかどうかは誰も知らず、当然の如くこの場にいる人間は知らない。

 

「で、石はどれくらいあるんじゃ?」

「五個ですね。全然集まってません」

「全く…我慢せずに衝動的に使うからそうなるんじゃ。この前まで12個あったのに」

「あはは……その場の勢いじゃないですか? マスターはいつもそんな感じですし」

「それでいいのかカルデア…」

 

 やれやれ。と言ったような表情をするノッブ。そして、お菓子置き場から取ってきていた煎餅をバリバリと食べ始める。

 

「そういえば、儂の代わりに誰がアーチャー枠で入ってるんじゃ?」

「ほとんど敵はランサーしか出てこないんですが、エウリュアレさんが入ってますよ」

「ほぅ…? 儂ではなく、女神を連れて行っていると…」

「コスト的にもエウリュアレさんの方が低いですしね。入れやすいのでしょう」

「むぅ、世知辛い…これがコスト社会の闇か…!」

 

 その点、マシュはコスト0という事でコスト面最強なので、常に入っていたりする。

 

「あ、すいません信長さん。そろそろ時間なので、私は失礼させていただきますね」

「む。そうか、もう溜まったのか…気を付けるのじゃぞ。マシュ」

「はい。行ってきますね!」

 

 マシュはそう言って、休憩室を出ていった。




 初めてマスターが一切登場しない回。こんな回もありですよね。


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女神は今日も働く(私は働きたくないんだけど)

「なんで私まで組み込まれてるのかしらねぇ…」

「羨ましい悩みじゃ」

「ホント、よくそんな羨ましいこと言えるわね」

 

 休憩室にて同じ机を囲む、エウリュアレ、ノッブ、エリザベートの三人。

 

「羨ましいって言うけど…相手はランサーなのよ?」

「まぁ、それは確かに辛いな」

「何よランサーくらい。というか、私もランサーだし」

「あれよ。あなたにとってのセイバーみたいなものよ。分かるでしょう?」

「あ~……それは確かに、辛いわね」

「ま、それでも編成されること自体が羨ましいんじゃがな」

「戦闘には参加できないけどね」

 

 興味半分で取ってきた饅頭を食べつつ、エウリュアレは微妙な表情をする。

 

「そういえば、そんなにランサーが多いのか?」

「えぇ、あの特異点はランサー系の魔獣が多いから。私はほとんど役に立たないわ」

「アーチャーも少ないし、ランサーも役立たずねぇ」

「あぁ…それで珍しくデオンが出とるわけか」

「デオンねぇ…初めて会った時の印象が残ってるのよねぇ」

「最初…あぁ、そうか。エリちゃんはほとんど最初の頃を知っとるんじゃったな」

「一応私、古参よ? 冬木の途中からずっといるんだから。……今日のオレンジジュース、ちょっと酸味が強いような…?」

 

 ドリンクサーバーから取ってきていたオレンジジュースを飲みつつ、エリザベートはそう言う。

 

「どれだけオレンジジュース飲んどるんじゃ…」

「アンタだってお茶の違いが分かるじゃない。同じでしょ」

「同じ……なのかのぅ…」

「正直私は美味しいなら文句はあまり言わないから気にしないけどね。そんな神経質になるようなことでもないじゃない」

「まぁ、それもそうじゃな」

「そうね。っていうか、なんでこんな話になったのよ」

「エリちゃんがオレンジジュースの酸味が強いようなって言ったせいじゃな」

「私のせい!?」

「あながち間違ってないわね」

「じゃろ?」

 

 かりんとうをサクサクと食べつつ、ノッブはエリザベートを見る。

 エウリュアレは、ノッブの食べているかりんとうが気になるようで見ているのだが、ノッブが気付く様子は無い。

 

「それで、エウリュアレは時間、大丈夫?」

「え?」

「時間よ時間。そろそろ溜まるから行くんじゃないの?」

「もうそんな時間か。大変じゃのぅ。エウリュアレ」

「くぅ…! 女神なのに、なんで私はこんなに働いているのよ…!!」

「仕方ない。自分の性能を恨むんじゃな」

「頑張ってね。エウリュアレ」

「もっと話していたいのだけど…行ってくるわ。また後でね」

「おぅ。また後でな」

「行ってらっしゃ~い」

 

 エウリュアレは若干残念そうな表情をして、休憩室を出て行く。




 女神さま…本当に、普通にランサー相手にも後方待機してます。
 ノッブ…レギュラーというか、ノッブがいないとすでに話を展開する事が出来なくなってきたというか…むむむ。ノッブはすでにこの作品においていなくてはいけないキャラ…?


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今週いっぱいの三食団子(来月からは何が出るんです?)

「ふむ。これもおいしいわね…」

「何を食べているんだ?」

 

 竹串を片手にモグモグとしているエウリュアレの正面に、巌窟王が座る。

 

「三食団子っていう和菓子よ。今週までだから食べてみたのよ」

「和菓子…という事は、日本の物か。今は確か、春……だったか」

「らしいわ。信長とかがいれば教えてくれたと思うんだけどね」

「もう三食団子は遅いがな。桜も散って、そろそろ柏餅や(ちまき)だろう」

「ほぅ…? そんなものもあるのか」

「私も食べてみたいわね…」

 

 普通に巌窟王の隣に座る土方。

 二人は彼の言葉に反応する。

 

「俺は湯漬け沢庵だけあればいいがな」

「そう? それはもったいないわね。こんなにおいしいのに」

「だな。食べた方が良いだろう」

「いらん。湯漬け沢庵で十分だ。まぁ、沖田なら食べてそうだがな」

「残念。このおいしさを共有できないなんて…!」

「する気も無いだろう。先ほどから俺に取らせる気が全くないだろうが」

 

 エウリュアレはいつの間にか取ってきていた三食団子の山を、巌窟王に取られまいと、巌窟王が手を伸ばす度に避ける。

 

「私は女神よ? 何かを欲するなら、何か貢ぎなさいな」

「クッ……いや、別に、自分で取ってくればいいだけの事だ」

「そう? 面白くないわね。もうちょっと食い下がってくると思ったのに」

 

 面白くなさそうにエウリュアレは巌窟王を見送り、団子をモグモグと食べる。

 

「うぅん…まぁ、良いわ。食べ切れる気がしないから、後で誰かに押し付けましょ」

「押し付けんな。自分で取ったものは自分で喰え」

「むっ。別に、私は一人で食べるために取ったんじゃないわ。他にも誰かが食べるんじゃないかと思って、取って置いたのよ」

「ふん。どうだかな」

「何よ。やる気? またあの時みたいにメロメロにして射ち殺すわよ?」

「良いだろう。やってやろうじゃねぇか」

 

 だんだんと不穏な雰囲気が流れる休憩室。土方とエウリュアレのにらみ合いは、何時の間にか握られているそれぞれの武器が更に緊張感を増やす。

 しかし、それを破る一言。

 

「二人とも……ここで争うつもりかい?」

 

 冷たい言葉。無機質ともいえる警告。

 エルキドゥ。対神性で、ただでさえもアーチャーに強い彼は、その鎖を態々見せ、殺意のこもった威圧感を放つ。

 

「私は別に、争うつもりなんてないわよ」

「俺も別に、やり合うつもりはねぇ」

「そう…ならいいよ。皆に迷惑をかけないようにね」

 

 一触即発の空気は、エルキドゥの一言によって霧散する。

 

「……とりあえず、あいつにコレ、押し付けましょう」

「さすがに無謀だろうが」

「止めておけ。結果は見えている」

 

 エウリュアレの無謀な作戦は、土方と戻ってきた巌窟王により実行前に終わり、仕方なく三人で三食団子を食べるのだった。

 ちなみに、巌窟王は緑茶を取りに行っていただけである。




 ついにノッブもマスターもいない話ができるという。しかし、代わりにエウリュアレがお菓子を求める系のキャラに変わってしまった…犠牲は大きかった…


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ネロ降臨!!(なお、まだ育てられない模様)

 何となく、ぼんやりと、謎の違和感を感じていた。

 誰かが呼んでいるような、そんな違和感。

 

「それで、結果がこれだったわけか」

「いやぁ…これはあれだ。これから地獄になる予感だ」

「余がおるではないか。何を心配することがある」

 

 休憩室でのノッブとオオガミの会話に、彼女――――ウェディングドレスを着たネロが言う。

 おそらく、呼んでいたのは彼女なのだろう。そう思えるほど、違和感と召喚されたタイミングが一致していた。

 

「マスター。ここで運が尽きる。そんな感じかの?」

「なに!? マスター! 運が尽きるとは、何があったのだ!」

「君が来てくれるという最高の幸運が消費されたからね。これはもう凄まじい幸運消費量だよ」

「幸運は消耗品だったのか…」

「なに、幸運は消耗品だというのなら、また手に入れればいいだけの話であろう! 余に任せよ!」

「ネロ様はそこまで出来るのか…!!」

「いやいや、そこまで万能なわけなかろう…」

 

 胸を張り、無駄に自信満々なネロに目を輝かせるオオガミを見て、ノッブは突っ込みながらジト目で見る。

 

「さて。それで、余の部屋はどこだ? マスター」

「あぁ、そういえば何にも説明して無かったね。じゃあ、そこまで行こうか」

「うむ! お願いするぞ! マスター!」

 

 二人はそう言って、休憩室を出て行く。

 一人残されたノッブは、緑茶を少し飲んだ後、

 

「お主ら、何時まで隠れてるつもりなんじゃ…」

「アレが新しい敵なのね…」

「ネロが……ネロが来たわ…!!」

 

 どこから出てきたのか、何時の間にかエウリュアレとエリザベートが現れ、椅子に座っている。

 

「ついに来たわね…超絶ヒロイン風の装備を纏った最強セイバーが…!!」

「ネロよ、ネロ! しかも、アメリカで会った方のネロ! あんなフリフリの、真っ白なドレスを着てる方のネロよ! 勝ち目なくない!?」

「さっきから何の勝ち負けの話じゃ…別に、気のすることもないじゃろ。どうせまだ戦闘に出ないし」

「何言ってるのよ。オオガミよ? 一度育てると決めたら全力で最終再臨までは頑張るマスターよ? 来月の中旬には戦力になると見たわ」

「やりかねないわ…マスターなら、普通にやるわ! 素材が揃わなかったアタシはスルーされたけど!」

「それは……お疲れ様としか言い様がないの…」

「ま、まぁ…いつか報われるわよ…」

 

 途中から何故か自分にダメージが入り始めたエリザベートは頭を抱え、それをノッブとエウリュアレが慰める。

 

「とりあえず、茶々が最終再臨を迎えるまでは少し安心できるはずじゃ。先に茶々を育てるって言っておったし」

「あくまでもそれはオールの種火の話よ。セイバーの種火は使うわ。デオンよりも確実に優先されるはずだし」

「なんか…デオンをいじめてるように思えてきたんじゃが」

「デオンはほら、攻撃系じゃないし」

「どう考えても盾だから。良いのよ、そう言う扱いで」

「これが英雄格差社会って奴か…儂も注意せねば…」

 

 デオンへの攻撃も酷いが、さらりとデオンを全力で叩くエウリュアレとエリザベート。その二人に戦慄を覚えるノッブなのだった。




 ネロ様来たあぁぁぁぁぁ!! という叫びを基に作り、途中から不穏な気配を感じる私なのだった。
 これはコラボの時に出ない予感がやばいですね。


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ネロが再臨出来ない(林檎は縛られている)

「なんで…なんで上がらないんだ…!!」

「あの、その…SSRですし、仕方ないんじゃないでしょうか…」

 

 休憩室で頭を抱えて呻くオオガミを励まそうと頑張るマシュ。

 何があったのか。それは至極単純で、未だに一度も霊基再臨が出来ないネロへの嘆きだった。

 現在レベルは37。後13も足りず、林檎はイベント用にとケチっているためあまり伸びていなかった。

 

「ぐぬぬ…こうなれば、いっそのこと林檎を使うべきか…」

「先輩。さすがにそれはダメです」

「あ、はい。ごめんなさい」

 

 微笑んで却下されて謎の恐怖を感じたオオガミは、思わず反射的に謝った。

 

「はぁ…全く。ネロさんが来てくれたからよかったですけど、そもそも、なんで聖晶石を衝動的に回すんですか」

「仕方ないよ…衝動には誰も勝てないんだ」

「もうっ! 抑制はしてくださいよ!」

「仕方ないよ…マシュが聖晶片を『カッキーンッ。カッチーンッ』ってしちゃうようなものだよ…」

「い、いえ、その、アレは…」

 

 動揺するマシュに、オオガミは微笑んで、

 

「大丈夫。みんな分かってくれるから。大丈夫だよ。マシュ」

「~~~~っ!! 止めてくださいっ…! それ以上は…ダメですっ…! つい、出来心だったんです…!!」

「ふふふ。良いのだよ? マシュ君。これを広めてしまっても」

「そ、それは止めてくださいッ! 本当に、止めてください…!」

「ふふふ。ならば、私が聖晶石を使う事を黙認するのだよ…!!」

「あ、それは話が別です」

 

 寸前まで恥ずかしさに顔を赤く染めていたのに、一瞬で真顔になるマシュ。

 流石に世界を救った英雄も、頼れる相棒には勝てないようだった。

 

「とりあえず、イベントが始まるまでは石も林檎も預かっておきますからね。先輩は、私が見てない所で使っちゃいそうですし」

「酷い偏見だよね!」

「実際そうじゃないですか」

「はぅっ! 後輩に言われてはどうしようもない…!!」

「もう。分かってるなら直してください。そして、種火は自然回復したAPのみでやってくださいね」

「うぐぐ……仕方あるまい。諦めよう…」

「最初からそれでいいんです。さ、回収しますよ。先輩」

「は~い……」

 

 マシュはにっこりと笑いながら。オオガミは渋々と言った様子で、休憩室を出て行く。

 そして、それを見ていた影があった……。

 

「マシュ……もはや母親じゃろ」

「まさか石と林檎を自分が持って行こうとするとか、誰が考えるのよ」

「そなたら……いつもそんな会話をしているのか…?」

 

 案の定、ノッブとエウリュアレの二人と、新たにネロが加わっていた。

 

「いつもじゃないわい! というか、儂の居る時にマスターから来るんじゃ!」

「そうよ。私も、たまたま来た時にマスターがいるだけよ。狙ってきてるわけじゃないわ」

「そ、そうか…」

 

 冷静に考えると、自分も同じようなことをしているので、そこまで深くは突っ込めないネロだった。

 

「まぁ、今日はもう帰るんじゃがな」

「私はもう少しお茶を飲んでから部屋に戻るわ」

「余も部屋に戻るかの」

 

 そうして、3人は解散するのだった。




 という事で、やはり一日では再臨出来ないか…ネロ様…!!
 林檎と石はマシュに預かってもらえば確実に使いませんよね!(フラグ)


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またレベル上限上がるわね(だからと言って、煎餅は譲らんぞ)

「いつの間にか強くなっておるんじゃけど…」

「気付いたらレベル79よ……あと一つ上がれば、たぶんまた聖杯で上限が上がるわね…」

「そうはっきり言えるのはお主だけじゃろ」

「なぜ余ではなくそなたなのだ…うぅ…」

「知らないわよ。その文句はオオガミに言って」

「うむ。ちょっと抗議してくる」

 

 ネロはそう言って、休憩室から出て行く。

 残されたノッブとエウリュアレは、煎餅を食べながら見送る。

 

「さらっと儂から煎餅を奪うな。女神」

「何よ。一枚くらい良いじゃない。第六天魔王」

「む。珍しく攻撃的じゃな。何かいいことでもあったのか?」

「別に、何もないわ。ただ、今の私は機嫌がいいの。こんな日があってもいいでしょ?」

「ま、それについては儂は何も言わんよ。それより、あのアンデルセンとか言う作家……いつの間にかかなり強くなっとらんか?」

「既に貴女の姪を越えてるわね。恐ろしいくらいの成長速度よ?」

「なんで突然育て始めたのかのぅ…」

「さぁ? ただ、戦闘には一切参加してないから、イベントの為じゃない?」

「マスターがそんなことをするとは思わんのじゃが……まぁ、何か考えがあるんだろう。そっとしておくかの」

 

 ノッブは緑茶を飲み、一息つく。すると、エウリュアレが、

 

「そういえば、最後の最後に貴女の姪が種火周回に参加したわよ」

「ほぅ?」

「ちゃんと頑張っていたわ。あそこまで戦えるとは思ってなかったから、正直驚いたわよ」

「そうか……まぁ、当然じゃな! 儂の姪じゃし!!」

「えぇ、本当、貴女の姪は凄かったわ。まぁ、これから大変かもしれないと思うけど、頑張ってもらいましょう」

「……あぁ、そういえばバーサーカーじゃった……種火周回で活躍って事は、そういう事か…」

「フフッ。彼女も、サーヴァントの闇に一歩踏み出したという事よ」

「三食おやつ休憩付きの仕事場じゃが、イベント時はほとんど別物じゃからの……種火周回はイベント以外では無いじゃろうから、とりあえず明日で最後か」

「そうね。一応は終わるんじゃないかしら。イベント後が問題かもしれないけど」

 

 これからの事を考えつつ、ため息を吐く二人。

 そこで、ノッブは何かに気付く。

 

「そういえば、何時の間にか煎餅が全部消え取るんじゃが」

「あら、本当ね。誰が食べたのかしら」

「……そういう分かり切ったことを言うのはどうかと思うんじゃが」

「……それもそうね。食べたのは貴女でしょう?」

「お主じゃろうが。女神だとか言われていようが、儂は全く気にせんからな。全力で対立するぞ」

「へぇ? 私と戦おうっていうの? 全体宝具で強力攻撃のあなたが、単体宝具で超強力攻撃の私に? いいわよ。その勝負、受けましょう」

「筋力E、耐久Eのお主に負けるわけないじゃろ。あまり調子に乗るなよ駄女神。儂の火縄銃が火を噴くぞ」

「やれるものならやって見なさい。その前に心臓射ち抜いてあげるわ」

 

 二人はそう言うと席を立ち、ある意味仲良くトレーニングルームへと向かうために休憩室を出て行くのだった。




 また食べ物で争ってる…

 エウリュアレはもう完全にお菓子を求める系サーヴァントですね。これはいつかエウリュアレがお菓子を求めるだけの話を書かねば…(使命感


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茶々は凄かった(圧倒的茶々パワー!!)

「茶々の大勝利! ドンと任せて!」

「全体宝具バーサーカーの強さは異常ね」

「もっと早く気付いていれば楽だったのに……なんで気付かなかったんだ…」

「私も一緒に戦っていて、かなり力強い感じでした」

 

 マイルームは人があまり入れないように仕様変更されているので、休憩室で話す四人。

 話の中心は茶々で、胸を張っているのも、茶々のおかげで種火周回でかなり楽に進めるようになったのが主な理由だったりする。

 

「本当にバーサーカーは強い……」

「そうですね。茶々さんがいれば百人力です」

「茶々がいれば大丈夫! 種火集めは茶々の独壇場だよ!!」

「それは頼りがいがあるわね。頑張りなさい。貴女の叔母もそう言っていたわ」

 

 笑みを浮かべるエウリュアレは、言いながら、彼女の叔母――――ノッブとの昨日の戦いを思い出し、思わず正面で少し沈んでいるオオガミの足を蹴る。

 オオガミは驚くが、何とか平静を保ち受け流す。

 

「そう言えば、叔母上は? いつもはこの時間帯ならここにいるのに」

「さぁ? 部屋で寝てるんじゃない?」

「……エウリュアレ、もしや何か知ってる…?」

「なんで私が疑われるのよ。そんなことをすると思う?」

「めちゃくちゃ失礼だけど、すると思う」

「本当に失礼ね……まぁ、工房にでも籠ってるんじゃない?」

「むぅ。ノッブならその可能性もあるか……」

 

 実際は、昨日の戦いにワンキルされたエウリュアレが、腹いせにわんこを魅了しノッブを襲撃させ、何とかノッブは工房に逃げて今なお扉一枚を隔ててわんこと対峙していた。

 そんなことになってるとは知らない四人は、エウリュアレの説明に納得する。

 

「それで、明日はどうするの?」

「そうだねぇ…午前中は種火周回で安定かな」

「明日の19時からイベントですからね。まぁ、そんなに出来ないでしょうけど」

「本番は明後日からだし。まだ焦らなくて大丈夫だよ」

「19時から出来るといいわね」

「それはどういう意味かなっ!?」

「特に理由なんてないわよ……そんな声を上げないで少し落ち着きなさい」

 

 意味深なことを言ったエウリュアレに向かって声を上げるオオガミ。それに若干押されつつ、エウリュアレはオオガミを落ち着かせる。

 

「いやぁ…今みたいな意味深な事を言われたら…ねぇ?」

「そんな、分かってるでしょ? 的な視線を送られても…」

「そうですよ。少し落ち着きを持ってください、先輩。いくらイベントが楽しみだからと言っても、さすがに興奮しすぎですよ」

「うぐぐ……最近いつもこんな感じな気がする…」

「大体いつもこんなものじゃない」

「茶々はこんな感じのマスターしか見たことないよ?」

「たまにしっかりしてるんですけどね……」

「三方向からの攻撃…!! これはもうダメだ。今日はもう寝よう」

「お疲れ様です。無理はしないでくださいね、先輩」

「明日も頑張って。まぁ、種火は槍とアサシンだけど」

「茶々はなんでも大丈夫だよ!! お休み!」

 

 三人に見送られ、オオガミは休憩室を出て行った。

 

 その後、ノッブはエウリュアレによって救出されるのだった。

 もちろんノッブは怒っていたが、本気で怒っているわけではないというのは、本人たちだけが知っていた。




 結局最後はエウリュアレとノッブが持って行くのです。

 さりげなく親友レベルだよね。あの二人。周りはめちゃくちゃ被害被るけど。


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深海電脳楽土 SE.RA.PH
待ちに待ったイベント(まさか更新するのにこんな掛かるとは)


「ってことで、ついに始まったイベント! これはもう楽しまなくちゃだよね!」

「22時現在で外出してるため更新できないけどねっ!」

「ノッブ許すマジ!」

 

 事実、未だに更新できずにイベント内容が全く分かっていないオオガミ。

 ちなみに、安定の休憩室である。現在のマイルームは騒がないというのが暗黙の了解になっているので、自然と休憩室に集まるのだ。

 

「で、今日の目標は?」

「とりあえずイベントをやる!」

「更新時間に全て掛かってるの。まぁ、頑張るが良い」

 

 エウリュアレに問われ、全力で答えるもノッブの現実的一言で粉砕される。

 

「まぁ、更新さえ出来れば問題ないわね。まぁ、APがあるかは別だけど」

「あ、その点は問題ないです。先輩から没収――――預かった林檎がありますから」

「ナイスマシュ! これでAPは解決だね」

「ふはは。儂もエウリュアレも今回特攻はないからの。これは待機確定じゃの」

「まぁ、今回ここにいる三人とも、出番は無いと思うけどね」

 

 盛大な爆弾。あれだけ育てていたエウリュアレすらも使われないという宣言だった。

 これが後にフラグになるのだろう。たぶん、おそらく。

 

「とりあえず、編成を確認しよう」

「えっと、今回の特攻サーヴァントさん達ですね。どういう編成にするんですか?」

「うん。まず、ドレイク船長、エリちゃん、ネロ、ナーサリーの四人は確定で、」

「最後はアンデルセンとか言う小僧じゃろ?」

「育てていたのなんて、分かるのよ。ほら、さっさと編成しなさい。急がないとでしょ?」

「まぁ、更新してるから編成なんて出来ないんだけどね」

「……案外見られてるものだねぇ…」

「私だって、資源を見てるので分かりますよ…とりあえず、私は編成の中にいませんけど、頑張ってください。先輩」

「よし。任せて! 頑張ってイベントやって来るよ!」

「おぅ。儂らの分まで頑張れ~」

「面白い戦いを見せてね? マスター」

「応援してますよ。先輩」

 

 三人に言われ、オオガミは編成するために休憩室を出て行く。

 そして、残された三人は、

 

「まぁ、案の定じゃな。こうなる事は想定済みじゃ」

「運良く特攻サーヴァントが揃ってましたからね……信じて待ちましょうか」

「そうね。まぁ、楽しみに待ってましょう。きっと楽しそうに報告してくれるはずよ」

「そうじゃの。儂らはとりあえず、マスターの無事を祈るので精一杯じゃし」

「更新終わりましたし、すぐにまた来ますよ。楽しみに待っていましょうか」

 

 三人はそれぞれ楽しそうに笑いながら、マスターの帰りを待つのだった。




 想定外の所に時間を取られ悔しさを隠せないマスター、オオガミです。
 という事で、これからはイベントの話を頑張っていきますよ!!


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マスターが帰ってこないんじゃが(サーヴァントもたまにいなくなる)

「いつの間にか現れたり消えたりしてますよね。向こうで何があったんでしょうか…」

「私は全く分からないわ。というか、貴女も何度か向こうに行ってるでしょう?」

「そ、それはそうなんですけど…」

 

 歯切れの悪い返事をするマシュ。エウリュアレは少し気になる。

 

「何があったの?」

「いえ……初めて向こうに行った時は、先輩をセンパイ呼びする憎たらしいあの人との戦闘だったんですけど、まさか総戦闘ターン数が41ターンという驚異的数値に…」

「あ~…耐久したらそうなるわよね。特に体力が多い敵は」

「はい…本当に、辛かったです……ギリギリの時も多かったので尚更」

「いつものあのパーティーは基本攻撃力が無いから仕方ないじゃろ。ターンは異常に伸びるに決まってるじゃろ」

「あ、信長さん」

 

 いつからか後ろに立っていたノッブは、そう言った後片手に持っていたリンゴジュースをストローで飲み、マシュの隣に座る。

 その時に、もう片方の手に持っていた大福を机の上に置く。

 

「つか、途中からネロが帰って来とったんじゃが」

「それは…あれですよ。コストと性能で判断したらたぶんそうなったんですよ…」

「残酷な事じゃ…パッションリップによってすべて奪われたの…」

「コスト自体が足りないのも原因の一つでしょ。効率としては申し分ないんじゃない? まぁ、そのうちネロの代わりに誰かが戻ってくるわよ」

「そうですね。先輩の事ですし、ネロさんを意地でも入れますよね」

「流石マシュ。よくわかってるじゃない」

「代わりに戻ってくるのはナーサリーかのぅ…全体宝具は全体宝具でも、攻撃力が低いし」

「可能性は大きいわね。というか、それ以外ないんじゃない? ネロが戻って来たのがコストの問題なのだとしたらの話だけど」

 

 当然の様に大福を取っていくエウリュアレ。もぐもぐと食べるエウリュアレにノッブが頬を引きつらせるが、今回は取られることを前提に多めに取ってきていたので、ため息を吐くも、なんとか平静を保つ。

 もちろん、ノッブもそれを食べるのだが、やっぱりどうも釈然としない。

 

「しっかし…まさかパッションリップを当てるとは……ここ最近の運、どうなっとるんじゃ」

「いつその幸運が反転するのか、気になるわね」

「縁起でもないことを言わないでくださいよ、エウリュアレさん…」

「あら。私はいつもこんな感じじゃないかしら?」

「お主はホント良い性格しておるよ」

「フフフ。お褒めの言葉、ありがとう」

「褒めとらんわアホ」

 

 ノッブは冷たい視線でエウリュアレを見るが、当の本人は微笑むだけで、心の底を覗かせない。

 

「とりあえず、私はネロさんの様子を見てきますね。また後で」

「また後で会いましょう」

「おぅ。また後での」

 

 マシュはそう言って休憩室を出て行き、残ったノッブとエウリュアレは第六次お菓子争奪戦争は始めるのだった。

 とりあえず、その戦争は案の定エルキドゥによる両成敗で決着した。




 ということで、パッションリップが当たり、且つチップ交換の概念礼装を全部交換終わりました!
 あと、今回はカルデアサイドとマスターサイドで交互にやっていこうと思ってます。マスターサイドで出てくるサーヴァントは編成の中にいるキャラ限定って感じで。
 はたしていつまでネタが続くのか不安ですけどね。


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しかし、ネロの効果がこんなにも低いとは(余は許せん!)

「効率は現状これが最大かなぁ…」

「むぅ。余が一枚分しか効果が無いとか、納得いかんのだが…」

「私もそう思うわ。私、アイドルよ? なのに、この扱いはなんなのかしら!」

 

 初日のストーリーの時と違い、編成が可能になったオオガミは、サクラチップを集めるために頑張っていた。

 そして、組んだ編成で出た言葉が今の二つである。

 

「余がわざわざピックアップされたというのに、一枚とはどういうことだ」

「私は……あっ、メインピックアップじゃなくてサブピックアップだった…」

「うん。エリちゃんの問題は解決したね。というか、俺もネロがピックアップしたのに1枚とか、驚いたんだけど」

 

 バッサリと切られたエリザベートはその場に膝をついて項垂れるが、

 

「やはりそう思うか奏者よ! 余も納得がいかない! ☆5のくせに、☆4のパッションリップに負けるとか納得がいかない!」

「主人公だったとしても有利にならないという不思議仕様…これが通常ということか…」

「そんな…余は……ここでは活躍できないということか…!?」

「正直どうしてこうなった状態だね」

 

 項垂れるネロにオオガミは首を振る。こればっかりはどうしようもないのだ。

 

「あの…大丈夫ですか?」

「あぁ…うん。大丈夫だよ、パッションリップ。ネロもしばらくすれば回復するよ。うん」

「ほ、本当に大丈夫ですか…? そ、その、最悪治らなそうなんですけど…」

「治るよ。というか、治すから。それがマスターの役目だし」

「そうさね。部下の面倒までしっかり見るのが頭の役目。皆の事、よろしく頼むよ?」

 

 パッションリップと話していると、ドレイクが入ってくる。

 

「任しといて、ドレイク船長。というか、それを言うならドレイク船長も面倒を見る対象だからね?」

「おっと。それもそうだ。じゃ、アタシが何かやらかしたときが頼むよ?」

「あはは。ある程度はカバーするけど、限度はあるからね?」

 

 何をやるつもりなのか、既に戦々恐々としているオオガミだが、この場において似合わないほどに生き生きとしていた。

 

「それで、マスターさん。これからどうするんです?」

「そうだね…BBから種火を奪えなくなったからな……とりあえずサクラチップを集めて全アイテム交換だね。皆、頑張ってよ?」

「うむ。奏者の頼みなら仕方ないな!」

「えぇ、アイドルとして、無様な姿は晒せないわ!」

「任しときな。アタシが一切合切まとめて吹き飛ばしてあげるよ」

「頑張りますね。マスターさん」

 

 彼女らはそう言って、次の戦いに備えるのだった。




 まさかの一日空くとは…やってしまった…今日はもう一作書いて挽回せねば…!

 ということで、種火が全部なくなりました。はい。それだけです。
 ネロが……使えなかったです……レベル的な意味で。まだ育てきれてないのが問題点…!


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マスター爆死したってよ(呼符に全賭けするしかないんじゃない?)

「ねぇ。それ、何かしら」

 

 休憩室に来たばかりのエウリュアレは、ノッブが持っている食べ物を見て、ノッブの隣に座りつつ聞く。

 

「何って…お主、あれだけ菓子を狙っておったのに、知らんのか?」

「だって、そんなの昨日は無かったもの」

「ふむ。そうだったのか……あ、王手じゃ」

「むっ。なら…こうだな」

「ちょっとノッブ。早く教えなさいよ」

「どんだけ知りたいんじゃ……柏餅じゃよ…」

「あぁ…それが柏餅なのね」

 

 今更だが、ノッブは巌窟王と将棋をしていた。

 始めたばかりなので、初戦である。

 

「それ、貰ってもいいかしら」

「自分で持ってくればいいじゃろ」

「えぇ…私が行くの?」

「いつも自分で取って来るくせに、こういう時は嫌なのか」

「別に、もうここにあるからいいかなって」

「……はぁ、二つまでじゃぞ? それ以上は自分で取って来るんじゃな」

「ありがと。ふふ、この前までは断固としてくれなかったのに、どういう心変わりかしら」

「別に、そんな大層な理由は無いんじゃが……あれじゃよ。何となくと言う奴じゃ」

「あぁ、そう。まぁ、そういう時だってあるわよね。じゃ、いただきまーす」

「全く……自由な奴め。あ、王手じゃ」

「これは……どうするか…」

 

 柏餅を食べるエウリュアレを横目で見ながら、巌窟王を追い詰めていくノッブ。

 その時、休憩室にマシュが入ってくる。

 

「あ、皆さん。ちょっと話を聞いてもらっても良いですか? 半分愚痴みたいになってしまいそうですけど」

「良い良い。色々やってるように見えるが、それほどでもないからの」

「私も別に構わないわ。というか、私は今柏餅を食べるので忙しいの」

「俺も構わないが、こちらに集中して聞いていなかったらすまない」

「はい、別にそれで大丈夫です。本当に大したことではないので」

 

 巌窟王の隣に座りながら、マシュは一枚の紙を机の上に置く。

 

「昨日資源を確認しに行ったらこの紙が置いてあって、代わりに聖晶石が30個無くなっていたんですよ。30個溜まったんだ~。って喜んでいたのに、また振り出しです。何を考えているんでしょうか…」

「なんかお便りコーナーみたいじゃな…まぁ、それでも応えるのが儂じゃけども」

「楽しそうね。というか、何をどう応えるのよ」

「あれじゃよ。石が無くなったのなら、また稼げばよい。まぁ、もうフリークエスト無いけどねっ☆」

「どう考えても無理じゃない」

 

 30個はもう絶望的だろう。と、全員は思っている。

 ただし召喚をするのなら、別に聖晶石だけではない。

 

「いや、今回のイベントはいつの間にか呼符が増えてるからな。代用品はある」

「まぁ、たぶんマスターが頑張ってるんじゃろうけどね」

「全く。何時になったら帰ってくるのかしらね」

「まぁ、エウリュアレもマシュも向こうにたまに行っておるから、儂らよりマシじゃろ」

「船長とエリザベートは滅多に帰って来ないわよねぇ…」

「キャスターとアーチャーが多いのか、単純に使えるからなのか…まぁ、儂は使われないだろうけども」

「卑屈になるな信長。俺よりはマシだろう。俺など、新宿以来レイシフトしてないぞ」

「……それもそうじゃな。というか、自虐かよ」

「うふふ、頑張ってね。二人とも」

「流石にそれは煽っておるじゃろ」

「そんなことないわよ? というか、もう柏餅が無いわ」

「…………よし分かった。戦争じゃな。任せておけ。またワンキル決めてやろう」

「あら怖い。でも、今度こそ勝つわよ? 死霊魔術で連続ガッツ決めてあげるんだから」

「幸運の無駄遣いじゃな」

「言ってなさい」

 

 火花を散らす二人。

 少し離れた所でこちらに殺気を放ってきたエルキドゥから即座に目を逸らし、二人はトレーニングルームで第13次お菓子争奪戦争を始めるのだった。

 

 ちなみに、将棋はノッブが勝った。巌窟王はその後土方と戦うのだった。




 絶対無課金を貫くならば、呼符は希望の星。

 いつもお菓子で喧嘩してるなこの二人。もう絶対わざとやってるでしょ女神さま。


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そろそろ倒せなくなってきた(マジでキツいんだけど)

「強ッ! パッションリップ強!! なにあれ卑怯じゃない!?」

「その後完封しておいて、よくそんなことが言えるなマスター」

 

 パッションリップ戦後、叫ぶオオガミに突っ込むネロ。

 実質ほとんどの攻撃を受けてダメージ軽微で行ったので、初戦で思わず令呪を切ってしまったくらいの損傷で済んだ。

 ただし、令呪を切ったのが小さい損傷とは言わない。

 

「ぐあぁ…どうしろと言うんだこれは…令呪が無いとか、辛すぎる…!!」

「そもそも令呪に頼らないというのは無いのか」

「どうするの? というか、次の奴、どうやって倒すの?」

「気合と根性しかないでしょ!? 正直絶対やりたくないけど!」

「ヘラクレスでゴリ押しする気か!? いや、別に嫌だというわけではないのだが…なんというか、華やかさに欠ける」

「令呪が無い上に難易度が高いんだから文句言わない。ほら、行くよ」

「うへぇ…気が進まないわぁ…」

「余もやる気が起きない……明日にするのはどうだろうか」

「いやいや…何をダダこねてるのさ。行くって言ったら行くよ?」

「うぅ……仕方ない…行くしかないか…」

「たまに強引よねぇ…まぁ、嫌いじゃないのだけども」

 

 グチグチと文句を言いながらもしっかりとついて行く二人。

 

 その後の敵は、本当にヘラクレスがHPの半分を削り取るという力技で突破した。

 

 

 * * *

 

 

「と言うのが事の顛末な訳で」

「は、はぁ…あの、マスターさん? どうしてそれを私に言うんです? 後衛で見てましたよ?」

 

 パッションリップに話しかけるオオガミ。

 ここまでの話をしていたらしいが、彼女も参戦、後方待機していたので知っていた。

 

「いや、ほら。誰かに聞いてもらいたい事ってあるじゃない。今回はそういう奴だから、気にしなくていいよ」

「そうなんですか…」

「マスター…もっと余に構ってくれてもいいのだぞ?」

「頼るんじゃなくて構えと。それはちょっと想定外だったよネロ。よし。今から一緒に周回しようっていうお誘いだね? 乗ってあげるよ? その提案」

「ん…? もしや余、変な地雷を踏んだんじゃないか…?」

「明らかに踏んでるじゃない。何こっちにまで飛び火させてるのよこの皇帝」

 

 ぐでー。としていたネロの頬を突くエリザベート。明らかに今回の戦犯はネロだった。

 

「さて、どこを回ろうか…」

「周回は余が活躍出来ないから困る…」

「ランサーなら大活躍でしょうが」

「アタシ相手でも優勢だったじゃない。このっこのっ」

「うぅっ…えぇぃ! 止めよエリザベート! 流石に余も怒るぞ!?」

「やーいこうて~い! 斬れるものなら斬って見なさいよ! 逃げ切ってみせるわ!」

「言ったなエリザベート…! 余の本気をとくと見よ!」

 

 全く関係の無い所で戦い始める二人。

 それを見て、パッションリップが、

 

「マスターさん。止めなくていいんですか?」

「良いの良いの。大体うちのカルデアでは日常風景だよ。喧嘩してるのは戦国時代最大のうつけ者とギリシャ神話の女神だけど」

「ふえぇ……いつも喧嘩してるところなんですか……怖いです……」

「完全にじゃれ合ってるだけだけどね。本気で喧嘩するのは少ないから安心してよ」

「そ、そうなんですか……なら安心です」

 

 そして、ネロとエリザベートの戦い(あそび)が終わったころ、オオガミはフリークエストに向かうのだった。




 まさか装甲を上げるだけでいいとは思ってなかったんです。防御力アップによるゴリ押しこそ最強…!


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ついに儂も出陣なのじゃな(後方待機してたじゃない)

「いやぁ…ついに儂も出る事になるとは思わなんだ」

「後方待機がほとんどだったじゃない」

「おいエウリュアレ。それは言わない約束じゃろ」

「そうだったかしら?」

 

 ふふふ。と笑うエウリュアレ。

 今日のお菓子はドーナツらしい。しっかりと自分の手が届くところに確保していた。

 

「ぐぬぬ…自分はメイン戦力として扱われておるからって、調子に乗るでないわ!」

「そんなに怒鳴らないほうがいいわよ? エルキドゥが見回りに来たらどうするの」

「お、お主……なんという脅しを……!」

「ふん。たまに自分もやるじゃない。お返しよ」

「面倒な……というか、その脅しは高確率で共倒れじゃろ」

「当然。それくらいの覚悟はあるわよ」

「残念なだけの女神じゃなかったのか…!!」

「祟るわよ?」

 

 笑顔で恐ろしいことを言い放つエウリュアレ。

 ノッブはその威圧感に一瞬気圧されるが、すぐに平静を取り繕う。

 

「流石に本気で言っておるわけないに決まっておるじゃろ。仮にもマスターがメイン戦力にしとるんじゃぞ? それなりに強いに決まっておる」

「うるさいわねぇ…現状あなたとの戦績が全戦全敗だからって、あまり馬鹿にしないでほしいわ」

「それは単純に相性じゃから仕方ないじゃろ」

「解せないわ……なんでこんなのに負けるのよ……」

「神性特攻を舐めるでないわ」

 

 緑茶を飲み、エウリュアレとは別に持ってきていた饅頭を食べる。

 いつものようにエウリュアレがそれを狙って手を伸ばしてくるが、即座に叩き落して回避。

 

「流石に欲張りすぎじゃろ。せめて自分のを食べてからにせい」

「むぅ…仕方ないわね。なら、ノッブもこっちから取っていいわ。だから、そっちのも寄越しなさいよ」

「なんでそう偉そうなんじゃ……まぁ、良いんだけど」

「やった! じゃ、貰うわね」

「うむ。儂も貰うぞ」

 

 珍しく喧嘩が始まらない二人。実はこっそり二人を見張っていたエルキドゥも、これ以上はいいかと別のところを見回りに行く。

 

「さて……これからどうするかのぅ……どのみち呼ばれるまでは暇じゃし」

「そうねぇ……あ。トランプしましょうよ。マシュと巌窟王、メディアを誘えば、それなりに遊べるんじゃないかしら」

「ふむ……そうじゃな、誘いに行くか。というか、トランプとか、儂そんなにやったことないんじゃけど」

「別にルールくらいは説明するわよ。それに、多くいればそれだけいろいろゲームを知ってるでしょ」

「それもそうか。じゃあ、エウリュアレは用意を頼むぞ。儂は呼んでくるからの」

「えぇ、任せなさい。お菓子もしっかり準備しておくわ」

 

 そういって、二人は一度別れる。

 その後、呼んだ人間以外に、茶々もついてきて、6人でしばらく遊んでいた。




 そろそろネタ切れが目に見えてわかるような……
 とりあえず、イベントのラスボスを倒すために頑張らねば…


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何をしようかの(しりとりは無しの方向で)

「することが無いぞ。エリザベート」

「そうね、私も無いわ。ネロ」

「……えっと、しりとりでもします?」

 

 マスターの休憩中。暇な時間をどう持たせるかを考える二人に、パッションリップは苦笑しながら提案する。

 

「ダメだぞリップ。しりとりは辛すぎる。なんせ、言語圏が違うと通じないからな。既にやったことがあるからな。そうなることを知っておる」

「は、はぁ……多国籍しりとりは危険なんですね…」

「うむ。アレは地獄だったぞ……」

「英語なら可能性があるとか思わないことね。それは既に検証済みよ。そもそも英霊が生まれたほとんどは世界共通語なんて無い時代よ? 通じるわけ無いじゃない」

「そう言われれば確かにそうですね……そもそも、女神はひとつの言語圏で伝えられるのがほとんどですし……」

 

 納得したパッションリップは、一人頷く。

 そして、

 

「そこで余は考えた。言語違いでしりとりが出来ないなら、別に言葉を使わない遊びで良いだろう。と!」

「根本的に否定してますよ!?」

「盛大に道を踏み違えてるわね」

「えぇい何を言うか! 余が頑張って考えたのだから、聞いてくれてもよかろう!」

「はいはい。そんな意地にならないの。アンタが頑張ってるのなんて皆知ってるわよ。一部のボスだとアンタの独壇場だったんだから」

「むぅ……それでもエリザベートの方が前衛に出てるのが納得いかぬ…」

 

 いつの間にか話が刷り変わっているのだが、誰も突っ込まない。

 というより、ネロが一番考え込んでしまっている。

 

「私はただの支援よ……アンタと違って攻撃力がある訳じゃないわ。まぁ、全体宝具だからかもしれないけどね」

「ふむ……つまり、余が使われないのは単体宝具で且つ支援が薄いから……というわけか」

「そうなんじゃない?」

「ふむ、ふむ……うむ。余ではどうしようもないな!」

「ネロさん! 涙が隠せてないです!」

 

 死んでる表情で声をあげるネロ。その目に溢れる涙は、その心を写し出していたのかもしれない。

 

「というか、遊びの話はどこにいったのよ」

「む。そう言えばそうだった。思わず余も忘れておったぞ」

「もうお話ししてるだけで良いじゃないですか…」

「そうはいかんぞ、リップよ。余は話しているだけでは退屈してしまうのだ」

「は、はぁ……私的にはそんな退屈してないように見えるんですけど……」

「ふっ。まだまだ甘いな。それではまだネロポイントはお預けだ」

「ネロポイント…?」

 

 突然現れる新単語。

 エリザベートとパッションリップは困惑する。

 

「なにその新システム。集めると何かあるの?」

「うむ。あるぞ? そやつに対する余の好感度が上がる」

「なんだ、要らないわ」

「なっ! ネロポイントを要らないと言うのか!?」

「いや、だってほら、アンタは一人だと死んじゃう系の皇帝でしょ? なら、ポイントが無くたって変わらないじゃない」

「エリザベートさんも人の事言えないような……」

「アタシは良いのよ。マスターに甘えるだけだからね」

「むっ! それは余の特権だぞ! エリザベートには許さぬ!」

「へぇ…? 良い度胸ね、ネロ……今度は歌で勝負をつけましょうよ。肉弾戦は流石に私が不利だから」

「良いぞ? 余の全力。見せてやるからな」

 

 いつの間にか遊びの話はどこかに消え、残されたのは歌バトルを今まさに開催せんとする開催せんとする二人。

 即座に身の危険を感じたパッションリップは、とりあえずマスターを守りに向かった。

 

 その後、オオガミに正座をさせられ、叱られる二人の姿があったとかなんとか。




 まぁ、たぶんしりとりをしても通じるとは思うんですけどね……こう、方言みたいなのは出るんじゃないかなぁっている想像からしりとりは却下されました。


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酷使される女神(唯一の弱点はランサー)

「どうして私がこんなに酷使されてるのよ…」

 

 机に突っ伏して呟くエウリュアレ。

 その正面にいるノッブは、水まんじゅうを食べながら、

 

「仕方ないじゃろ。神性特攻は無いにしても、宝具がアーツじゃし。マスターは基本アーツ宝具を回しまくって耐久するからの……」

「うぐぐ……それでどれだけ私が殴られてると思ってるのよ…」

「マシュはそれ以上に殴られておるじゃろ」

「それはそれ、これはこれ。よ」

「はぁ……というか、そんなに文句を言っておるのに、向こうに飛ばずにこっちにおるんじゃな」

「そりゃ、現状私の仕事は無いからね……大ボス系の敵が出てこない限り出番はないわ」

「本気で耐久するときの編成って事じゃな……儂はその耐久が成り立たなかった時の保険なんじゃけど」

「神性に強くても宝具が回しにくいなら仕方ないわね。諦めなさい」

「全く……ひどいもんじゃな」

 

 リンゴジュースを飲み、エウリュアレは席を立つ。

 

「どうしたんじゃいきなり。何かあったのか?」

「別に、お菓子を取りに行こうと思っただけよ。それとも、貴女が行く?」

「それは遠慮する。儂をパシらせようとか、何考えとるんじゃ」

「女神なんて、そんなものだと思うのだけど。とりあえず、行ってくるわね」

「おぅ。選んでくるが良い」

「何様よ……」

 

 ノッブの言葉に突っ込みつつ、エウリュアレはお菓子を取りに行く。

 ノッブはそれを見送りつつ、珍しくほとんど取られなかった水まんじゅうを食べる。

 

「まさか自分で取りに行くとはな……珍しい事もあるもんじゃ。というか、最近こんなことが多いような……エウリュアレも変わってきたという事か…?」

「お前もそれなりに変わったと思うがな」

「む、巌窟王か。儂も変わったじゃと? 最初からこんな感じじゃったろ」

「いいや。お前もあいつも、互いに菓子を譲らなかっただろう。だが、最近は互いに分け合っているからな。仲がいいと言うかなんというか」

「あ~……そう言われれば確かにそうかもしれんな…」

「まぁ、なんだ。それを自覚して認め合っていけばいいと思うぞ。俺はな」

「……お主、まさかそれを言うためだけにここに来たのか?」

「まさか。再戦しに来たに決まってるだろう。ほら、さっさと始めるぞ」

「そ、そうか……まぁいい。相手をしてやる。かかってくるがいい」

 

 ノッブはそう言うと水まんじゅうとコップを隣に置き、巌窟王と一緒に将棋の駒を並べ始める。

 と、そこにエウリュアレが帰って来た。

 

「貴方達、またやってるの?」

「うむ。挑まれたからには全力で応えねばな」

「そうしてくれないとこちらとしても立つ瀬がない。全力で戦い、勝つことに意義があるのだ」

「中々分かっておるではないか。巌窟王」

「フッ。そちらこそ」

「……ついて行けないわ……」

 

 笑い合う二人について行けず、ため息を吐くエウリュアレ。

 もちろん、夢中になってやっていたノッブは、隣でパクパクと水まんじゅうが食べられている事に気付くことは無かったのだった。




 ホント、ランサー以外には使いますからね…唯一相手がアサシンの時だけはナーサリーが出ますけど、それ以外は圧倒的エウリュアレ率。


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最強の敵。それはKP(全く進まないミッション)

「まだ終わらないのかい?」

「まだだねぇ……KPが全然集まらないからなぁ…」

「余もそろそろ退屈だぞ……」

「流石にライブも、やり過ぎると鬱陶しくなるだけだからそろそろやめたいんだけど」

「えぇ……仕方ないじゃん……ミッションが全然終わらないんだから…」

 

 ため息を吐くオオガミ。微妙な雰囲気になるも、事実どうしようもないのは変わらない。

 

「残念だけど、俺にはアレの性能を落とさないで倒せるような編成が出来るようなサーヴァントが少ないんだよ……マシュの宝具をいくら回せるかにかかってるけど、それでも魅了が天敵だからね……女性に効くのならっていう話だけど」

「一回も試してないですからねぇ……とりあえず、魅了を無効化したら一度やってみますか?」

「そのつもり。スタンで止め続ければ何とかなるって聞いたから、エルキドゥに来てもらえば何とかなるはず」

「楽観的だねぇ……本当に行けるのかい?」

「それで勝てなかったら、最終兵器エウリュアレに出てきてもらうだけだよ」

「勝率が下がってる気がするんだけど」

「大体の敵はこれで何とかしてきたんだけど……」

「実績があるなら何も言えないではないか」

 

 今思えば、ゲーティアもこれで倒せたのではないか。と思うオオガミ。どうしてあの時思いつかなかったのかを自分に問い詰めたいが、今はとにかくあの魔性菩薩を倒すことを考えねばならない。

 

「後少しで魅了は解除できるんだけど……獣の権能って一体……」

「余もさすがに知らん。エリザベートは知ってるか?」

「知ってるわけないでしょ。そんなの、戦って知ればいいわ」

「体感で学ぶという無茶ぶりよな。俺はそんなもの受けたくないぞ」

「アンデルセンはそもそもコストの都合で居るだけだろう? 編成されるわけなかろう」

「むっ。それは心外だ。俺だってやる時はやるぞ」

「へぇ? あのへっぽこ作家が、やるっていうの?」

「俺は耐久専門だ。貴様ら脳筋と一緒にするなよ?」

「余とはステージが違うな。もちろん、エリザベートとも違うから止めた方がいいぞ」

「そうですよエリザベートさん。こういう人とはまともに話したらひどい目に合うだけですよ」

 

 妙に説得力のあるパッションリップの言葉。

 過去に何かがあったのだろう。彼らにはそう推測することしかできなかった。

 

「とりあえず、KPだよKP。それさえ溜まれば決着を着けに行ける」

「そうですね……どこを周回するんですか?」

「スタンプ・シィーナー一択だね。イーター系を屠っていくよ」

「む。また余は後方待機か」

「まぁいいじゃない。たまに私たちも出なくちゃいけないんだから」

「それで俺まで引きずり出されるのは本当に勘弁願いたい。安定させてくれよマスター」

「う、うるさいやい! これでも頑張ってるんだけど、全体的にスロットが悪い!!」

「スキル封印とか、NP取得量減少とか、本当に困るからねぇ」

「本当にね。アレが来た瞬間、死ぬかと思ったもの」

「大変ですね……いえ、まぁ、私も受ける側なんですけど」

「魅了も怖いよ……特にパッションリップがかかったときね。アレはもう、死ぬかと思った」

「そ、それはその、すいません……頑張ってはいるんですけど……」

 

 どうやって周回をしやすくするか。そう考え、6人は話を続けるのだった。




 大体アサシンがいないのが悪い。だが、その代わりにアルターエゴが来てくれたんだと考える…!!
 パッションリップの宝具の攻撃力が少ないのも、周回がキツく感じる原因の一部なのかもしれませんね……


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置いて行かれた儂の図(いつもの事だろう)

「未だに帰ってこないんじゃが」

「ついに二人も行ってしまったからな」

「エルキドゥも行ってしまったからのぅ…」

 

 どこで聞いたのか、神性特攻攻撃が効くとか言うデマ情報により連れて行き、そんな事は無かったと意気消沈しているのだが、それを知っているのは現場にいるサーヴァントたちだけである。

 

「しっかし……なんで儂が置いて行かれるのか分からんのじゃが」

「良いじゃないか。これでお前も、しばらくの間は工房に籠れるんだろう?」

「別に籠ってるのが好きというわけじゃないんじゃが……むしろ暴れる方が好きなんじゃが」

「俺からはそうは見えんがな」

「ふん。研究は儂の趣味じゃが、好きなのはやはりここで遊んでる時じゃよ。それ以上は無いぞ」

「まぁ、別に籠らせたいわけではないから、これ以上の追及はしないさ。まぁ、頑張れ」

「うむ。というか、ここ最近は研究の内容なんぞないからな……ネタ切れじゃ」

「そうか……研究対象を探すのも一苦労なんだな…」

「うむ。マジで大変じゃ。武器に関しては、出来るだけの事はしてしまったからの。改良とか、もう思いつかんわ」

 

 はぁ、とため息を吐くノッブ。

 

「はぁ……茶々でも誘って何か遊ぶかのぅ…」

「何をするんだ?」

「そうじゃのぅ……あれじゃ。あの、赤と青と緑と黄色の四種の円にルーレットで出た場所に手や足を置いてく奴。何て名前じゃったか…」

「ツイスターゲームか?」

「そうそう。それじゃ。男女別でやったら面白そうじゃろ」

「そうか……? 俺はそうとは思わんがな」

「なんじゃと…? というか、お主に否定されたらどうしようもないじゃろうが」

「いや……俺もあまり遊びには興味が無いからな……提供など出来もしないのに言うべきでなかったな」

「そうじゃそうじゃ~。せめて別の提案を出来るようにしてから言うんじゃな」

「うぐっ……すまない。今回は俺の落ち度だ」

「ふはは。反省するが良いぞ」

 

 溶けそうなほどにぐだっとした表情でそんなことを言うノッブ。

 巌窟王は頬を引きつらせるが、これだけマスターが音沙汰無しだとこうもなるだろう。と強引に自分を納得させる。

 

「さて……とりあえず、何か食べるかの~……甘いものは最強の武器じゃよ……」

「本当に仲がいいな。貴様らは」

「あぁ、当然じゃろ? 儂はあやつと居る時が今は楽しいんじゃ。まぁ、今はいないんじゃが」

「そうだな……早く帰ってくると事を祈るしかあるまい」

「そうじゃな~……よし。とりあえず、茶々を呼んで作戦会議じゃ。スーパー遊び会議じゃ」

「なんだその会議は…」

「文字通りじゃ。待っているが良い巌窟王。行ってくるぞ!」




 大体いつもの事。ノッブはしばらくは戦闘で出ない予定。悲しみ…


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ついにマスターが帰ってきたんじゃけど!!(そんな幽霊みたいに言わないで!?)

「たっだいま~!」

「うおわぁ! マスターが帰って来たぁ!?」

「その対応は酷いんじゃないかな!?」

 

 オオガミが休憩室に入ると同時に悲鳴のような声を上げるノッブ。

 まるで幽霊が現れたかのような行動に、オオガミは反射的に声を上げる。

 

「いやぁ……まさかマスターが帰って来るとは思ってなかったからの。こんな反応になるのも仕方がないんじゃ」

「帰って来ないと思われてるとか、心外なんだけど!?」

「仕方ないじゃろ。あれだけ帰って来なかったんじゃから……」

「それはそうだけども……今回は流石に難易度が高すぎたんだよ……」

「知っておるよ。エウリュアレが愚痴っておったし」

「エウリュアレ何してるの!?」

「あら。聞かれたくないことだったのかしら?」

「うん! かなりね!」

 

 後ろから聞こえた声に咄嗟に反応するオオガミ。

 背後には当然の様にエウリュアレがいたわけだが、その更に後ろにマシュもいた。

 

「ほら、だから言ったじゃないですか。止めましょうって」

「あら、あなたもしていたでしょう? 爆死したのを黙ってたって」

「そ、それはそれですよ! 私はそんなに言ってないじゃないですか!」

「言ってることは認めてるじゃないの…」

「べ、別に愚痴られてることを想定して無かったわけじゃないけども、これは想定外なまでの攻撃だよ……」

「わ、私も一緒にされると困ります! 私はちゃんと、先輩が帰って来るってわかってましたから! ただ、気付いたら資源が減っていたことについて話してただけですから!」

「いや、まぁ……その資源を使ったのは俺なんだけども。まぁ、その……ごめん」

「い、いえっ! 別にマスターが謝る必要なんてありませんから!」

 

 笑みを浮かべつつ追及してくるエウリュアレに反論して地雷を踏んでいくマシュ。

 その地雷を踏んだことに気付き、必死で弁解するも、更に地雷を踏んでいき逆効果であった。

 

「それで、成果はあったんじゃろ? 何があったんじゃ?」

「えっと……それは……」

 

 言葉を詰まらせるオオガミ。よほど見せたくない物なのか、もったいぶっているのか。

 瞬時に後者だと自己解釈したノッブは、即座にオオガミの後ろを見ようとする。

 

「ダメダメ! ノッブはアレと出会うと絶対良くない反応が起こる!」

「…………ほぅ? つまり、儂に見られると困る物……いや、困る者がおるんじゃな? よし分かった!全力で見ようではないか!」

「それが困るって言ってるんだけど!?」

 

 しかし、もちろんそんなことを聞くノッブではない。

 容赦なくオオガミの横を通り抜けようとし――――

 

「あだっ!」

「きゃっ!」

 

 衝突する。

 

「いつつ……なんじゃお主は。儂に当たるとは生意気な!」

「うぅ~……あなたこそなんですか! 私に当たるとか、酷いじゃないですか!!」

 

 怒る二人。しかし、次の瞬間には何かに気付いたようだ。

 

「……お主、儂と同じ感じがするのぅ……」

「絶対に同じじゃないですけど、似た気配がします……あなた、何者ですか?」

「ふっ。聞いて驚くことなかれ。儂こそかの第六天魔王織田信長! 魔人アーチャーとでも呼ぶがいい!」

「ふぅん? ノブナガさんですか……では、次は私ですね! 私は月の聖杯、ムーンセルより送り込まれた最強無敵美少女AI、BBちゃんです! 人類は大嫌いですが、貴女となら何か更に面白い事が出来そうなので、よろしくお願いしますね!」

「うむ。多少気に食わない所はあるが、根本的な所は似ておる。後で儂の工房に入れてやろう!」

「工房ですか……気になりますね。行かせてもらおうじゃないですか」

「よし! 思い立ったが吉日! 今から行くぞ!」

「おー!!」

 

 嵐の様に二人は休憩室を出て行った。そのうち二人がカルデアを混乱の渦に巻き込むのではないかと危惧するが、その場にいる全員は誰一人として止める事は出来なかった。

 少なくとも、BBを止める事はかなわないのだった。




 ということで、あの魔性菩薩を屠り、私はカルデアに帰ってきました!!
 新たにBBちゃんも加わり、カルデアはさらに混沌とし始めますよ…!


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日常
メルトリリスに来てほしい…(それよりもこっちを助けてほしいんじゃが!)


「なぁ、マスターはどうしたんじゃ?」

 

 休憩室の端でぶっ倒れているオオガミを見てノッブが呟く。

 

「えぇっと……メルトリリスさんが召喚されないので、放心状態なんじゃないかと思います」

「マスター…メルトのこと、気に入ってましたし」

「全く。メルトが来ないからってなんですか。この最強デビル後輩系ヒロインBBちゃんがいれば何も問題ないでしょうに」

「BBさん。それ以上後輩を強調すると、殴りますよ?」

「えっ、何この子。怖いんですけど……こんな子でしたっけ」

「マスターが絡むとたまになるから注意しなさい。まぁ、もう遅いけど」

 

 それに答えたマシュとパッションリップに続いたBBが地雷を踏み、マシュの怒りを買う。

 BBは困惑して思わず周りに聞くが、全員は速攻で目を逸らし、唯一羊羹(ようかん)を食べていたエウリュアレだけが答える。

 

「えぇ~……BBちゃん、最初から詰みなんです?」

「後輩とか言った時点で割と詰んでたわね」

「そんな最初から!? いえ、そんな気はしてたんですけどね!?」

「なら自業自得じゃ。ふはは」

「何笑ってるんですかノッブ。というか、その笑い方はまるで私が殴られるのを望んでるみたいじゃない」

「何を言っておるんじゃ。別に、儂はお主が殴られることを望んでるわけじゃないが、儂にも止められることじゃないし、むしろ儂は巻き込まれたくないし」

「そこまでの話なんです!?」

 

 想像以上の事態だという事に気付き、BBはちょっと焦る。

 

「それで、これからどうするの? 種火でも周回するの?」

「いえいえ、まだSE.RA.PHのミッションが全部終わってませんし」

「まだ先輩を拘束する気なんです?」

「お、落ち着けマシュ。さすがにそれはマスターが普通に突っ込んでいくと思うんじゃが?」

「むっ、それは確かにそう思います……」

「じゃ、じゃろ? だから、その振り下ろそうとしておる盾をゆっくり下すんじゃ」

 

 いつの間にかBBに向けられて振り上げられているであろう盾を、ゆっくり下す。

 なぜノッブが必死で止めたのかと言うと、もちろん、ノッブもまとめて潰されるところからだったからだ。

 

「ふぅ……危ない危ない……BBが一人で潰されるならまだしも、儂まで潰されたら痛いからの…」

「後ろから注射器を叩き込みますよ?」

「それはそれで止めてほしいんじゃが」

 

 前門の巨盾、後門の注射器である。

 ノッブは両者に挟まれ、死ぬかもしれないと覚悟する。

 

「うふふ。どうしようもない状況ね。それを越えてこそ、私の友人ね」

「なにのんきなこと言っとるんじゃこの駄女神!」

 

 エウリュアレがドヤ顔でそんなことを言うが、悲しい事に本当に困っているノッブだった。

 

 その後、しばらくはノッブの背後には常にBBが着いてくるようになったという。




 ついにガチ切れマシュちゃん……BBちゃんの天敵ですね。これは完全に。
 しかし、本当にメルトリリスがほしい……ミッションも本当に終わらないし……


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BBの宝具の注射器の中のアイテムが欲しい(それ、本当に使ってるわけじゃないですから)

「ねぇ、ずっと思ってたんだけどさ、BBの宝具の注射器の中に入ってるのは素材だよね。全部奪いたくない?」

「先輩。その発想は無かったです」

 

 休憩室で、ふと気付いたオオガミにマシュが驚愕の表情を向ける。

 

「よし。今からBBを奇襲しに行こうか」

「そうですね。叩き潰しに行きましょう」

「ストップストップ! BBちゃん的にそれはダメですよ!!」

「えっ。素材の為なら全力じゃろ? よくある事じゃ。犠牲となるが良い」

「完全に見捨ててますね貴方! 犠牲にしますよ!?」

「ふん。全力で抗ってやろう。儂は生き伸びる事に関しては一級じゃよ」

「そんなもの、私の力で何とでもしてあげますとも」

「卑怯じゃ! 儂はそんな力に屈しはせんからな!」

「くっころです? くっころですかそれ?」

「何も狙っておらんわ! つか、完全に儂に付きまとう気じゃろ!」

「別にそんなつもりはないですから。むしろセンパイに付きまとう方が面白そうです」

「BBさん? 許しませんよ?」

「アッハイ。って、いやいや。超最強AIである私が、なんで押されてるんですか。ここは一発ガツンと言って抗わないと!」

 

 矛先があっちこっちに向くBB。

 

「というか、どうしてBBの宝具にはあんなに素材が使われてるのさ」

「いえいえ。別に、私は本当には使ってませんよ。詳細は伏せますけどね!」

「ふむ……じゃあ仕方ない、許すとしよう」

「先輩が許すのでしたら、私も武器を収めるとします」

「なんというか、正直このカルデアにいるのが辛くなってきたんですけど……」

「その程度で狼狽えるでないわ。これから先、メルトリリスが召喚されなかったら、マシュを止める手段が無くなるからな」

「信長さん! それだとまるで先輩がいない時の私は暴走してるみたいじゃないですか!」

「あながち間違っても無いと思うんじゃが……いや、マシュよ。何でもないぞ。儂は何も言っておらん。ほれ、BBは差し出すから許せ」

「ちょ、私を差し出すんです!? 何売り飛ばしてくれてるんですか!!」

 

 悲鳴を上げるBB。ノッブの表情が真剣そのものなのが尚更怖い。

 

「よし。とりあえず、残念なことに残ってるミッションがBBの成長だけだからねぇ……種火を集めに行こうか」

「分かりました。BBさんは後衛配置ですね」

「うん。茶々を呼んで、一緒に行くよ。ネロもね」

 

 それじゃ、行こうか。と言って、マスターは休憩室を出て行く。

 残された3人は顔を見合わせ、マシュとノッブが嫌がるBBを引きずりながら休憩室を出て行くのだった。




 あの中に入ってるアイテム、冷静に見ると本当にすごいんですけど。心臓とか爪とか入ってるんですけど…


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キアラァァァァァァァ!!!(メルトリリスが出ないのは私関係ないんですけど!?)

「パッションリップよ。マスターがどこに行ったか知っておるか?」

「キアラに八つ当たりだー! って言ってレイシフトしちゃいましたよ?」

「八つ当たりに菩薩を殴りにいくとか…そんなに楽な相手じゃないじゃろ」

 

 呆れたような表情で椅子に座るノッブ。

 その正面にいたパッションリップは、苦笑いになる。

 

「それで、エウリュアレもマシュもいないわけか」

「そういうことですね。ナーサリーちゃんも、遊びにいくんだー。って言って行っちゃいました」

「あやつ、それなりに強いから困っとるんじゃけど」

「何でです? 良い子じゃないですか」

「なんというか……馬が合わないんじゃよ」

「あ~……なんというか、信長さんって、ファンタジーな感じが苦手そうですもんね」

「そうなんじゃよ……まぁ、夢のある話は嫌いじゃないんじゃが、あやつはファンタジー色が強すぎるから、苦手なんじゃ」

「大変なんですね……友達にファンタジーそのものっぽい神様がいると思うんですけどね」

「アレは俗世にまみれすぎてもはや人間じゃろ」

 

 さらっと女神であるという部分を無かったことにされる、マリアナ海溝の深部で後方待機しているノッブの友人エウリュアレ。

 彼女が女神としての誇りを取り戻せるのかは、誰もまだ分からないのだった。

 

「というか、BBはどうした? 絶対なんか企んでおるじゃろ」

「さすがお母さん。信頼皆無ですね」

「心外です! ちゃんと私は頑張ってますから! 無駄に大量の種火を皿に乗せられて食べさせられてるこっちの身にもなってください!!」

「それは自業自得じゃろ」

「自業自得です」

 

 悲鳴を上げた直後に叩き潰されるBB。そこに慈悲は無かった。

 そして、ノッブの隣に当然の如く座るBB。今日も今日とて、この場にいないはずのマシュに地味に怯えていた。

 

「なんで皆私に冷たいんですか! もうちょっと優遇してくれてもいいと思うんですけど!?」

「メルトリリスが出たら考えるってマスターが言っておったぞ」

「そもそもスロットで苦しめてたお母さんが悪いですっ!」

「味方がいない! 無料配布鯖は優遇されるカルデアだって聞いてたんですけど!?」

「阿呆。お主はやり過ぎたんじゃ。儂と茶々と同じ位置に立てると思うなよ?」

「ふ、ふんっ! 別にいいですし! アヴェンジャーの時に使われることは目に見えてますからね!!」

「くっ! アーツ宝具という利点を突いてきたなBB……!!」

 

 悔しそうな声を上げるが、根本的に、アヴェンジャー以外で使われそうにないという事を念頭に置かなくてはいけないというのを全員忘れている。アヴェンジャーが出てくるのは、今の所少数なのだが。

 

「さて。では、明日の為にも、頑張って種火を食べる力を蓄えなくてはいけませんので、私はここで失礼させていただきますね。さらば!!」

 

 そう言うと、BBは休憩室を出て行った。

 

「……嵐の様に過ぎ去っていったな…」

「大体いつも通りですよ……きっと」

 

 二人はそう言って、BBが去って行った扉を見つめるのだった。




 ということで、現在はあのにっくき菩薩にお礼参りしております。


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リップの膝の上に乗りたいわ!(変な所を触らないでください!)

「リップ! お膝の上に乗せて!」

「えぇ!? わ、私の膝の上ですか……?」

 

 廊下で唐突にナーサリーにそう言われ、困惑するパッションリップ。

 

「うん! なんか、そこに座ってみたいの!」

「う~ん……そんなに座り心地良くないですよ?」

「良いの! 私が座りたいの!」

「えぇ……うぅ、分かりました。でも、特別ですよ?」

「分かったわ!」

 

 そう言うと、ナーサリーはパッションリップの手をよじ登っていき、パッションリップの膝の上に自力で乗る。

 

「わわっ。案外前が見難いんですけど……」

「わぁ! いつもより高いわ!」

「あ、あの……動きにくいんですけど……」

「むにむに……ふかふか……座り心地も最高だわ!」

「わひゃぁ! 変な所触らないでくださいぃ!」

 

 悲鳴を上げるパッションリップと、その反応が面白いのか、追撃していくナーサリー。

 すると、ちょうど通りかかったオオガミがそれを見て、

 

「こら、ナーサリー。リップに迷惑かけちゃダメでしょ。そういうのは廊下の真ん中じゃなくて、部屋の中でしなさい」

「はーい。ごめんなさい。次は気を付けるわ」

「あ、あの、マスターさん? それ、止める気は無いんですよね……?」

「えっ? いやいや、そんなこと無いよ? 廊下でやる事は阻止したから。部屋の中ならオッケーだから」

「それ、やっぱり止める気ないですよね?」

 

 パッションリップの上に乗っていたナーサリーを回収したオオガミが、ナーサリーを抱えながらパッションリップに答えるが、明らかにパッションリップへの攻撃を止めさせるつもりが無いのが分かる。

 

「私、こういうの担当なんですか?」

「仕方ないよ。ナーサリーに目をつけられちゃった時点でどうしようもないんだよ」

「ちょっとマスター! 私はそんなに誰振り構わずこんなことをしたりはしないわ! ただ、リップが座ってるアレが羨ましかったの!」

「これ……私の手なんですけど……」

「そうだよ。それに、そういう乗り物が欲しいなら、用意して上げるから言いなさい。メディアとノッブが何とかしてくれるはずだから」

「そうなの!? 私、ちょっと行ってくるわ!!」

 

 そう言うと、オオガミの腕の中から抜け出し、メディアとノッブがいるであろう休憩室に走っていくのだった。

 

「わぁ……すごい元気ですねぇ……」

「いつもあんな感じというか、子供の無限パワーというか……って、子供って言ったら俺も人のこと言えないか。というか、大丈夫? 何かされてない?」

「あ、大丈夫です。特にされたことは無いので。びっくりしただけです」

「そう? それならいいんだけど」

「ありがとうございます。ただ、問題があるとすれば、何をしたかったのか忘れたってくらいですね」

「大問題だと思うんだけど。とりあえず、休憩室でお菓子でも食べたら? 俺も行くし」

「そうですね。じゃあ、ご一緒させてもらいます」

 

 二人はそう言って、休憩室に向かうのだった。

 そして、そこでノッブにしがみついているナーサリーを見つけて再びオオガミが慌てるのは別の話。




 久しぶりだけどいつも通りのナーサリー。大体フリーダムに暴れる子供担当。
 もしかしたら今回の騒動がどこかでフラグになるかもしれない……


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私専用の乗り物を!!(儂の作ったのじゃダメなのか)

「マスターさん! 決戦よ!」

「はい?」

 

 突然廊下で声をかけられるオオガミ。呼び止めたのはナーサリー。

 

「どうしたの突然。というか、決戦って?」

「私の乗り物の話よ! かわいいのを作ってくれるって言ったじゃない!」

「えっ。これからSE.RA.PHに突撃するつもりだったんだけど」

「そんなのより、私の乗り物を手に入れましょうよ!」

「えぇ……ん~……まぁ、別にAPはそんなに溜まってないし良いか。それで、どっちから行くの?」

 

 ナーサリーの気迫に負け、周回に行くのを中断してナーサリーに付き合う。

 しかし、冷静に考えるとメンバーにナーサリーも組み込まれていたことを思い出す。どの道付き合うのが一番だと気付く。

 

「ん~……メディアから行きましょう! きっとすぐに協力してくれるわ!」

「その自信がどこから出てくるのか分からないけど、とりあえず行こうか」

「きっと部屋にいるわ! 基本この時間帯はいつもいるもの!」

「なんでそれを知っているのかを知りたい感じなんだけど? どれだけ入り浸ってるのさ」

 

 メディアがどういう風に動いているのかを知ってるかのようなナーサリーの発言に突っ込みながらも、ナーサリーに手を引かれて行く。

 

 

 * * *

 

 

「それでどうして私の所に来るのかしらねぇ……」

「メディアなら、大きなお人形さんも作れて、しかもちゃんと動くのも作れそうじゃない!」

「買い被り過ぎよ。そこまで万能じゃないわ」

「むぅ……そんなことないわよ! メディアは凄いもの!」

 

 メディアの部屋の前で話す二人。

 

「ナーサリー。とりあえず、いったんストップだよ。ちょっと待っててね」

「わわっ。マスターさん! まだ私が話しているのよ!?」

「ここから先は任せなさいって。俺が頑張るから」

「……分かった。マスターさん。お願い」

「うん。じゃ、休憩室で待ってて」

 

 ナーサリーは小さくうなずくと、スタスタと休憩室に向かっていく。

 それを見送ったメディアは、

 

「ふぅ。それで、結局なんなの?」

「大体はナーサリーの言ってた通りだよ。昨日パッションリップの上にナーサリーが乗ろうとしてたから、注意したんだけど、それからこうなった」

「完全に私は関係ないじゃない。というか、なんて説得したのよ」

「『メディアとノッブに頼めば何とかしてくれるはず』って言った」

「…………アレと共同作業をしろっていうの? まぁ、作れるとは思うけども、あっちはどうなのよ」

「たぶん了承してくれるんじゃないかなぁって思ってる。まぁ、理由は無いんだけども」

「いい加減ねぇ……まぁ、向こうが良いっていうなら考えるわ。それまでは保留ね。ささ、行ってきなさい」

 

 それだけ言うと、メディアは部屋の中に戻って行く。

 オオガミはとりあえず、ノッブがいるであろう休憩室に向かった。

 

 

 * * *

 

 

「あれ? ノッブは?」

「さぁ? 今日は見てないわね。昨日ナーサリーを振りほどいてからずっと見てないわ」

「……工房かな?」

「なんじゃない? 私は知らないけど」

 

 本日のお菓子はサラダ煎餅らしい。今日は甘いものの気分ではないようだった。

 

「ん~……エウリュアレが知らないとか、珍しい事もあるもんだね」

「私があいつのいる場所を常に知っているとか思わないで。それに、四六時中一緒なわけじゃないわよ」

「まぁ、レイシフトしてる間は一緒じゃない方が多いよね」

「でしょ? なら、私が知ってるとか思わない。ほら、行ってきなさい」

「分かった。っていうか、ナーサリーは?」

 

 とりあえず、ノッブの工房に向かおうとし、ナーサリーがいないことに気付く。

 

「ナーサリーなら、見てないわよ?」

「えぇ? おかしいなぁ……ナーサリーには先に休憩室にいるように言ったんだけどなぁ…」

「ん~……誰かに捕まってたり?」

「いやいや。そんなこと無いでしょ」

 

 そう言うと同時、休憩室の扉が開く。

 

「ふはははは!! 一日かけて作ってやったわ!!」

「なんだそれぇ!?」

「ちょっとノッブ!? そんなの作ってどうする気!? エルキドゥに見つかっても知らないわよ!?」

 

 突然の釜形の乗り物。人が一人か二人乗れそうなほどのもので、ノブはその隣にいる。

 

「ふん、ナーサリーが昨日叫んでおったからな。儂は振りほどいた後から頑張って作っておったのじゃ。んで、完成したから見せようと思ったらちょうどナーサリーが歩いておってな。真顔で逃げようとしたから捕まえて乗せてやった」

「もはや拉致じゃんか!」

「助けてマスター! ノッブに捕まったわ!!」

 

 胸を張って言い張るノッブにオオガミが突っ込みを入れると、ナーサリーが釜の中から飛び出して言ってくる。

 

「む。その言い方だと、まるで儂が悪者じゃな」

「明らかにそうだよ。ほら、すぐに開放して」

「げげっ! エルキドゥ!! いや、本人が嫌がるなら無理して乗せる必要は無いんじゃけどね?」

「っていうか、ノッブ。一人で頑張ってたの?」

「もちろんじゃ。こんなこと、誰かに協力してもらうとか恥ずかしすぎるじゃろ」

「そんなことないと思うけどね?」

 

 エルキドゥにナーサリーが救出されるのを横目に、ノッブと会話するオオガミ。

 

「ん~……それ、普通に動くの?」

「ん? 動くぞ? ノッブUFOを研究した成果じゃ。とくと見るが良い」

 

 ふふん。と得意げなノッブ。だが、目的はそこではなかった。

 

「それさ、たぶん見た目の問題でナーサリーが嫌がってるんでしょ? なら、メディアと一緒に作らない? 少なくとも、見た目は解消されると思うけど」

「ふむ……そうじゃな。向こうが良いのならそうさせてもらうとするかの。では、行ってくるのじゃ」

 

 そう言うと、ノッブは休憩室を出ていった。

 

「ナーサリー。乗り心地はどうだった?」

「悪くもないし、それほど良くもなかったわ。まぁまぁって感じ。それで、マスターさん。私の乗り物は何時出来るの?」

「それは……本人たちしか知らないかなぁ……」

 

 ナーサリーの質問に、そう返すのが精一杯なオオガミだった。




 ノッブは頑張った。とりあえず、それが今回の話だと思うのです。
 基本小さな子には優しいカルデアなのです。皆子供に甘いのですよ。まぁ、心身ともに小さいのがナーサリーしかいないんですけどねっ!


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お題箱を設置してみた(強引なフラグ感)

「そういえば、先輩。結局あの話はどうなったんですか?」

「あの話?」

「ナーサリーさんの乗り物の話です」

 

 オオガミが休憩室の片隅で寛いでいると、マシュがそんなことを聞いてくる。

 

「あ~……あれねぇ……ナーサリーも同じこと言ってたけど、そのすぐ後にノッブがナーサリーを連れて行っちゃったから知らないんだよねぇ……」

「ナーサリーさん、連れて行かれたんですか?」

「うん。ノッブが恐ろしい速度で連れて行ったよ。ナーサリーは硬直してたからそのまま連れてかれた」

「……そんなこともあるんですね……」

 

 マシュは、私もそうなることがいつかあるのかもしれない。と思いつつ、お茶を飲む。

 そこで、ふとオオガミの手元に目をやる。

 

「先輩。何を作ってるんです?」

「ん? あぁ、お題箱ってやつ。とりあえず作って置こうかと。イベントが無い時でも、カルデアの中でイベントが出来た方が良いしね」

「なるほど……それはいい案ですね。私も何か手伝う事があれば言ってください」

「うん、ありがと。とりあえず今の所は無いかな。次の戦いまで休憩してて」

「分かりました。BBさんもいませんし、ゆっくり休みます」

 

 さりげなくBBを警戒しているのだと思わされる一言。会合のBBチャンネルを未だに引きずっているらしい。

 

「さてと……こんなものかなぁ……」

「完成ですか?」

「一応ね。後はこれをどこに設置するか、だよね」

「そうですね……お菓子置き場かドリンクサーバーの近くが良いですね。みなさん、そこに必ず行きますし」

「ふむ。マシュが言うならそれで行こう。お題箱に入れるための紙とペンも必要だね」

「あ、それは私が取ってきますね」

「うん。お願い」

 

 マシュはそう言うと、休憩室を出て行き、紙とペンを取りに行ってくれた。

 オオガミはその間に、お題箱を設置しつつマシュの帰りを待つ。

 

「あら、何をしているの?」

 

 と、設置し終わったあたりで声をかけられる。

 振り返ると、そこにいたのはエウリュアレ。

 

「お題箱ってやつ。何かやりたいこととかがあったら、ここにその内容を書いた紙を入れるって感じ。定期的に見に来るつもりだから、その時に内容を確認して、それをやろうかなって感じ。まぁ、定期的とはいっても、そのくらいの感覚かっていうのは決めてないんだけどね」

「ふぅん? そんなのを作ったの。まぁ、不定期になるであろうことは分かったとして、別に貴方本人に言えばいいんじゃない?」

「ほら、それはあれだよ。俺がレイシフトしてていない時とかあるでしょ? その時用の対策だよ」

「なるほどね。まぁ、私は使う機会なんてないでしょうけど、頑張りなさいな」

「うん。頑張るよ。それと、出来れば広めてくれるとありがたいな。ノッブ辺りに言えば、勝手に広めてくれそうだしね」

「……えぇ、気が向いたら手伝ってあげるわ」

「ありがとう。じゃあ、よろしくね」

 

 エウリュアレはそれを聞くと、両手で大量の大福が乗った皿を抱えて行ってしまう。

 今度は誰に押し付けるのだろうか。と考えるも、矛先がこちらに向かないように、オオガミは目を逸らすのだった。

 

「先輩! ダ・ヴィンチちゃんから大量に貰ってきました!」

「おぉ、ありがとうマシュ。とりあえず、これを置いておけば大丈夫でしょ。お疲れ様。それじゃ、ゆっくり休もうか」

「はい!」

 

 二人はそう言って、元の席に戻るのだった。




 という事で、お題箱を設置。そして、これは活動報告にも設置される……!
 このキャラの絡みを見たいとか、こんなことをしてみて欲しいというのがありましたら、活動報告のお題箱の方で言ってくださいませ。
 詳しいことも、全部活動報告の方に丸投げです。


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ダ・ヴィンチちゃんから貰った(注文してるのもあるんですか?)

「ここが……これかな?」

「たぶんそうですね。というか、どうしていきなり始めたんです?」

 

 マイルームの片隅で、特にこれといった理由は無く始めた模型作り。

 始めてみると、なぜか熱中して途中でやめられなくなってしまい、現在に至る。

 マシュはオオガミを探してここに入って来たのだが、その時にオオガミのやっている物に目を引かれ、手伝い始めたのである。

 

「理由は無いけど、強いて言うならあれだよ。ナーサリーの乗り物の話題で、ノッブとメディアが工作してるからやりたくなったってくらいかな? まぁ、始める理由はんてそんなものだよ」

「そうなんですか……あ、こっちのはこれと組み合わせるんじゃないですか?」

「あ、ほんとだ。っと、それで、なんで俺を探してたんだっけ?」

「あぁ、そうですそうです。ダ・ヴィンチちゃんに言われて、先輩を呼びに来たんでした。なんでも、頼まれてたものが完成したとか」

「おぉ、もう出来たのか。さっすがダ・ヴィンチちゃん」

 

 そう言うと、オオガミは立ち上がり扉へと向かう。

 

「あれ、先輩、どちらへ?」

「そりゃ、ダ・ヴィンチちゃんの所だよ。頼んでたアレが出来たんでしょ? なら、取りに行ってくるよ」

「えっと、こちらは?」

「置いておいて。じゃ、行ってくるね」

 

 オオガミはそう言うと、部屋を出て行ってしまう。

 一人残されたマシュは、上半身だけ出来ている目の前の模型と睨みあう。

 すると、数分の間をおいて、誰かが入ってくる。

 

「む。マシュだけか?」

「あぁ、信長さんですか。どうしたんです?」

「マスターを探しとるんじゃが……どうやらここにもいないようじゃな。まさか休憩室に移動したのか…?」

「あ、いえ、ダ・ヴィンチちゃんの所に、頼んでいたものを取って来ると言って行ってしまいました」

「ふむ、なるほどな。なら、儂もここで待っているのが吉じゃろうな」

「そうですね。あ、椅子も机も無いですが、ご自由に座ってください」

「うむ。まぁ、儂としてはこういうのも悪くはない。つうか、なんで地下なのに月とか見えるんじゃ? そもそも、今は夜ではなかろうに」

 

 窓の外を見ながらノッブが聞く。それに対してマシュは苦笑いをしながら、

 

「カルデアの不思議の一つです。誰が何時、どうやって変更してるのかは機密情報らしいので。知った人は人知れず消されてるとかなんとか」

「なんじゃその恐ろしい話は。誰が広めとるんじゃ」

「私も聞いた話なので真相は知らないんですけどね」

「ふむ……というか、そこにあるのは、やっても良いのか?」

「えっ? あぁ、これですか。先輩がやっていたんですが……その、途中で取りに行ってしまったので、こんな感じです」

「ふむ……なら、儂がやっても問題ないか」

「なんでそうなるんですか」

 

 当然の如く手を伸ばすノッブの手を叩き落とし、マシュはそう言う。

 

「いや、ほら。マスターの物は儂の物。儂の物は儂の物、じゃろ?」

「ちょっと何言ってるのか分かりません。とにかく、ダメです」

「えぇ~? そんな非道な事が許されてたまるかぁ! 儂は断固抗議するぞ!」

「どっちが非道ですか。先輩がやり途中なんですから、先輩に許可をもらってからです」

「むぅ……仕方あるまい。諦めるとしよう」

「そうしてください。壊れてしまったら大問題です」

「うむ。そうじゃの。まぁ、儂が壊すとは限らんが」

「まるで他の誰かが壊すとでも言いそうな言葉回しですね……何か企んでます?」

「いや? そんなこと無いぞ?」

 

 不気味な笑いをするノッブに、警戒するマシュ。

 そこに現れたのは、

 

「伯母上! 私にも何か作って!!!」

 

 悪魔の如き、バーサーカーさん(茶々)だった。

 

「何か作ってって……儂に何を作れと?」

「ナーサリーが作ってもらってるようなの! なんかかっこいいし!!」

「いや、まだ完成し取らんのじゃけど」

「だから、茶々の分も作って!」

「中々恐ろしい事を言う……まぁ、材料が余ったら考えるがな」

「やったぁ! って、二人はそこで何してるの?」

 

 ついに気付かれた。マシュがそう思ったときには、すでに手遅れ。

 隠す間も無く、普通に掴まれる。

 

「ほえぇ……叔母上が好きそうなやつだね。マスターの?」

「は、はい。一応置いておくように言われたので、戻しておいてください」

「ふぅん? 分かった。お茶々、怒られたくないし」

 

 茶々はそう言うと、元の場所に戻す。

 

「それで、叔母上はなんでここにいるの?」

「マスターを待ってるんじゃよ。っと、そろそろ戻るかの」

 

 ノッブがそう言って扉を見ると、予言通りオオガミが荷物を持って入ってくる。

 

「おぉ、ノッブと茶々もいる。何か用があったの?」

「茶々は叔母上に用があった!」

「儂はお主にじゃな。まぁ、急ぎでないし、そっちからで良いぞ」

「そう? というか、別にパズルを貰ってきただけだし、そっちが優先でも良いよ」

「パズル? こっちの方はどうするんじゃ?」

「とりあえず、こっちが終わって暇があったらって感じかな。それともやりたい?」

「そうじゃのぅ……まぁ、くれるのならやるぞ」

「うん。じゃああげるよ。息抜きも必要だろうし」

 

 そう言うと、オオガミは模型が置いてある所とは違うところにジグソーパズルを置く。

 

「さて、始めるかな」

 

 その言葉を合図に、マシュはオオガミを。茶々はノッブを手伝いに移動して、作業を始めるのだった。




 お題箱にあったガ○プラ破壊をするつもりが、気付いたらちゃんと皆作ってた。破壊が出来なかったよ……!


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無人島に飛ばされたんですね。通常運行だわ(とりあえず、食糧調達だ)

「マスター。どうしてこうなったのか、憶えているか?」

「もちろん。レイシフトが案の定変な所に飛ばしてくれた」

「そうだね。そして、ここは無人島みたいだよ?」

「オケアノス並みに恐ろしいんだけど。誰が助けてくれるのさ」

「そのための食料を調達するための釣り道具を集めているんだろう? さっさとやるぞ」

 

 エルキドゥが見てきた結果、危険な生物はいない代わりに別の島も見えないという。

 とりあえず、食糧調達のために釣りをしようという事になっていた。

 メンバーは、オオガミ、巌窟王、エルキドゥ、土方の四人である。女性鯖がいないのは、オオガミが唐突に男性鯖だけで遊びに行こうと言い始めたのが原因だった。

 

「んで、枝は集めたが糸がねぇぞ」

「僕の髪を使えばいいよ。粘土だけど、耐久力は十分だよ」

「そうか。ならさっさと寄越せ。餌は巌窟王が採りに行ってるだろ」

「取ってきたは良いが、籠を忘れてたな……」

「あぁ、それなら作っておいたよ。これで餌入れはいいはず」

「流石はマスターだな」

 

 枝に糸をつけて釣竿にしている土方と、すでに餌を取ってきた巌窟王に籠を渡すオオガミ。

 エルキドゥはそれを見つつ、針を作っておく。

 

「さてと、これであらかた揃ったね。これで出来るかな?」

「まぁ、釣れるかは分からんがな」

「その時の運としか言いようがないだろう」

「最悪僕が海に飛び込んで取ってくればいいから、そんなに気張る必要な歯いけどね」

「うん。なら、気軽に行こうか」

 

 そう言うと、それぞれが釣竿を持って海へと向かう。

 

「…………冷静に考えると、ミミズとかで海の魚って釣れるものなのかな?」

「大丈夫だろ。獣なんざ、食えるもんは大抵食う。安心してろ」

「すごい自信だね。いやまぁ、知らないから納得するしかないんだけども」

 

 待ちながら、そんなことを話し合う。

 釣竿はほとんど反応しないというか、素人すぎてどれが引いているのかが分からない。

 

「えっと、誰か引いてるのなら教えてほしいんだけども」

「任せろ」

「僕にも任せて」

「ふん。助けなんざいらねぇだろう。気合で何とかしろ」

「ひっじー辛辣ぅ……いや、出来るだけ頑張るけども」

「なんだひっじーってのは。馬鹿にしてんのか?」

「あ、ストップストップ。土方さんの攻撃力なら普通に俺が死ぬ」

「止めろ土方。別に変なあだ名をつけられることなど、よくある事だろう」

「つけられたことなんざねぇぞ。鬼の副長とは言われたがな」

「それは異名だね。というか、こいつにあだ名をつけて呼ぶのは中々勇気がいると思うよ? それこそ、死ぬつもりくらいの勇気が」

 

 ちょっとふざけてあだ名で読んだら死にそうになるオオガミ。

 巌窟王とエルキドゥが何とか収め、エルキドゥはオオガミに思った事を伝える。

 

「しかし、カルデアからの助けはいつ来るんだ?」

「夕方までには来るでしょ。まぁ、日が落ちる前に急造の寝床を作らないといけないかもだけど」

「その時は僕が何とかするよ。土方と巌窟王は火守が出来そうだから任せるよ」

「あぁ、任せておけ」

「ふん。カルデアに来てもすることになるとは思わなかったがな」

 

 そう言って、四人はその後も釣りを続けるのだった。

 

 救助は太陽が沈みかけた時に来た。

 しかし、その時にはすでに大量の魚を手に入れ、食べている最中だったが。

 まぁ、こんな日も悪くない。と思う四人なのだった。




 釣りの表現は難しい……しゃべる事は無いですからね……

 と言う事で、釣りを楽しむ(?)と男性鯖の話、ですね。マスター入ってますけど。
 まぁ、男性鯖の話は今後もやっていきますけどね。女性鯖が主体でずっとやってましたし。


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BBはゲームをしたかっただけ(違います!作りたかったんです!)

「センパイ。このカルデアって、ゲーム機ありましたっけ?」

 

 マイルームで倒れていると、突然入ってきたBBにそう言われるオオガミ。

 

「ん~……あるんじゃない? まぁ、どこにあるか知らないけど。探そうか?」

「そうですねぇ……どこにあるか予想もつかないですし、お願いします」

「ん、了解。というか、どうして突然?」

 

 軽く身だしなみを整え、マイルームから出つつBBに聞く。

 

「さっきノッブに絡んだら、何やら乗り物を作っていて忙しいとか言われまして。それで、何となくゲームでも作ってやろうかと。そのためには機器が無いとダメですし、あの戦国時代の武将にはゲーム機なんか作れなさそうなので、最初からあるのを使って作ろうかと。最強AIっていうのを見せてやるつもりです」

「なるほど。つまりノッブが楽しそうに工作してるからBBも対抗心燃やして大作を作ってやるっていう事か。なるほどなるほど。じゃあ真面目に探すかな」

「ちょっと、私はそんなつもりないですから! まぁ、確かに大作を作るつもりというか、作りますけど、別にノッブに対抗心なんか全然燃やしてませんから! 敵としてすら見てないです!」

 

 頬を膨らませてBBはそう言うのだが、オオガミは真剣にどこにあるかを悩んで話をほとんど聞いていない。

 

「ん~……とりあえず、困ったらエルキドゥだね。大体何でも知ってる感じ」

「マスターなのにそれでいいんです?」

「なんだろ、同じことを前にも言われた気がするんだけど……」

「誰に言われたんですか」

「う~ん……心当たりが多すぎるんだよねぇ……」

 

 悩みながら進んでいると、ちょうどエルキドゥが向かってくる。

 

「あ、エルキドゥ。ちょっといい?」

「なんだい? マスター。探し物かい?」

「うん。今回はゲーム機なんだけど……知ってる?」

「う~ん……ソレかどうかは分からないけど、さっき茶々が休憩室に何かを見つけ出したと言って持って行っていたものがあったけど……見て見たらいいんじゃないか。僕もゲーム機とやらがどういうのかを知らないからはっきりとそうだとは言えないからね」

「ふむ。じゃあ、見に行ってみるよ。ありがと」

「うん。違うのだとしたらすまない。その時は僕も探すから」

 

 エルキドゥはそう言うと、行ってしまう。

 

「だそうです。行ってみるよ」

「見つけ出したとか、不安でしかないんですけど」

「古い奴だと作り難そうだよね……まぁ、頑張ってよ」

「最悪パソコンで出来るゲームになりそうですね……というか、明らかにそっちの方が楽なんじゃ…?」

「うぅむ、ノーコメントで。とりあえず、すぐそこだし、行ってから考えよう」

「そうですね。善は急げです」

 

 

 * * *

 

 

 そして、二人は休憩室に入って見てしまった。

 テレビに繋がれたケーブル。コンパクトな白と赤の二色を使った箱。その中央に立っているもう一つの小さな箱。それに繋がれている二つのコントローラーを。

 

 完全にファ〇コンだった。

 

「これのカセットは流石に無理です」

「うん。そりゃ無理でしょうよ。いろんな意味で」

「いえ、作れなくはないと思うんですが、こう、別の意味でダメですよコレ」

「よし。諦めてPCゲームにしなさい。作りやすい方が良いに決まってるでしょ」

 

 そう言って退出しようとした時、

 

「む。マスターとBBじゃないか。お主らもこっちに来るが良い。ついさっき茶々が見つけ出してきてな。やってみようという事になってやってみたら面白くてな」

「ノッブが異様にうまいのが気に食わないんだけど、どういう事かしら」

「伯母上凄いんだけど。何? 実はやったことあるの?」

 

 逃げるタイミングを失った。

 観念して二人は休憩室の中に戻り、話に混ざる。

 

「で、皆で何をしてるのさ」

「マ〇オじゃ」

「なんの誤魔化しも無くド直球だね。嫌いじゃないよ。そう言う何も恐れないスタイル」

「あぁ、そういう事か。まぁ気にすることも無かろう」

「どこがアウトかわからないんだからそう言うこと言わない」

「まぁそんな気にせんでもいいじゃろ」

「まぁいいけどさ……そういえばなんでノッブはここに?」

「休憩じゃ休憩」

「そう。順調?」

「当然じゃ。任せておけ。あと少しで終わりそうじゃからな。安心して待っておるが良い」

 

 そう言って、ノッブはテレビに視線を戻した。

 

 その後、数時間遊んだところで解散し、BBはゲーム作成に向かうのだった。




 最終的に遊んでいるだけである。


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ウサギ爆走事件(またノッブの仕業か!)

「とまぁ、散々時間かけたわけじゃが、出来たんじゃよ」

「ふむ。で、その本題である乗り物は?」

「うむ。ナーサリーがカルデア内を乗り回しておる。止めようとしたら恐ろしい速度で逃げられた」

「やってくれたなノッブめ!!」

 

 マイルームにドヤ顔でノッブが入って来たかと思えば、逃げられたという報告だった。

 一緒に入ってきたメディアが申し訳なさそうな顔をしていた辺りで嫌な予感はしていたのだが、まさかの事態にオオガミは頬を引きつらせる。

 

「それで、エルキドゥには?」

「伝えられるかこんなもん。努力の結晶が木っ端微塵間違いなしじゃぞ」

「だよね。うん、そんな気はしてた。それで、形状は?」

 

 エルキドゥに頼るのは止めた方が良いと判断したオオガミは、すぐさま対策を練るために情報を聞き出そうとする。

 

「あ~……あれじゃ。アリスに出てくる時計ウサギ。ナーサリーの要望でその形にしたんじゃが、まさか乗り込むと同時に走って逃げだすとは……もう、何というか、完全に服を着たウサギが爆走し取る感じじゃった。正直あそこまできれいに走れるとか思わなかったんじゃけど……」

「…………何それすごい見て見たいんだけど。え、普通にすごくない?」

「頑張ったわよ。えぇ、頑張りましたとも。でも、逃げられるとか思わないじゃない。全力疾走だったわよ。乗り回してるナーサリーの表情が輝いていたからそんなに悪く思っては無いんですけどね!」

「おいメディア。お主そんなんでいいのか?」

「あ~……うん。まぁ、新しいおもちゃを手に入れた子供状態なわけだ。ん~……どうするかなぁ…」

 

 考えつつ、とりあえずカルデア内を見て回ろうとして、マイルームから出ると、

 

「先輩! カルデア内に巨大ウサギがいるという通報が来てます!」

「だよね! 普通そうなるよね!」

「マスターの部屋に来てから騒ぎ始めたんじゃが。フラグってやつか?」

「エルキドゥにばれてないでしょうね……」

「げっ。それは流石に不味い……早く行くぞマスター!!」

「信長さんにメディアさん…!? ってことは、アレは例の乗り物なんですか?」

「らしいよ。とりあえず、今はそのウサギを探しに向かう。行くよマシュ!」

「は、はい!!」

 

 オオガミに続いて、三人とも走り出す。

 

 

 * * *

 

 

「くぅ……何なのよアレ……いきなり出てきたと思えば、服の端で顔を狙ってくるとか、中々やるじゃないの……」

「ぐぬぬ……余としては不満しかないのだが。というか、誰か乗っていたような気がするのだが……」

 

 廊下の両端に倒れているエリザベートとネロ。どちらも何かにぶつかったような事を呟いていることから、おそらくナーサリーと接触したとだと思われた。

 

「エリちゃん。ネロ。大丈夫?」

「マスター? もちろん、私は大丈夫よ。ただ、なんかとても気になるのを見た気がするんだけど……」

「余も問題ない。マスター、アレは何なのだ? あんなのがカルデアにいるとは聞いてないぞ? 動物はフォウとアヴェンジャーだけではなかったのか」

「ノッブとメディアが作った乗り物だよ。ナーサリーが乗ってて、暴走中なんだってさ」

「なんだそれは。気になるからついて行くからな!」

「私もついて行くわ。次は負けないんだから!」

「エリザベートとネロが仲間になった。と言ったところか? マスター」

「こら。茶化さない」

「そうですよ信長さん。メディアさんの言う通りです。遊んでる場合じゃないんですから」

「妙に辛辣なんじゃが。まぁ、儂の落ち度なんじゃけど」

 

 納得がいかなそうな表情をするノッブ。元凶なのだから仕方ないのだった。

 

「それで、余とエリザは何をすれば良いのだ?」

「そうだね……とりあえず、エルキドゥにばれないように見張っててくれない? 見つかると破壊されかねないから」

「ふむ。それは困るわね……任せなさい! ちゃんとやり通して見せるわ!」

「任せよ! 余に誓って、エルキドゥを足止めしてみせよう!」

「任せたよ!」

 

 そう言うと、エルキドゥを探して二人は行ってしまう。

 

「あの、土方さんもこの場合危険なのでは……?」

「…………それは考えてなかった」

 

 想定外の突っ込みに、硬直するオオガミ。しかし、すぐに気を取り直すと、

 

「い、いや、まぁ、何とかなるでしょ。土方さんはエドモンとチェスか将棋やってるよ…!」

「待て。しかして希望せよ。じゃな」

「ノッブがそれを言うと不安になるんだけど……」

「先輩。とりあえず、ここで止まってる場合じゃないです。急いで見つけないとどの道いろんな意味で危険ですよ…!!」

「それもそうだ。急がないとだ!」

 

 そう言うと、再び全員は走り出すのだった。

 

 これは、後にウサギ爆走事件として伝えられていく話。(予定)




 唐突な続き物。
 という事で、明日に持ち越すレベルの事件です。出来るだけ多くのサーヴァントを出すんだ…!!!


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ウサギ爆走事件終結…?(まだ、第一の事件が終わっただけなのじゃった)

「それで、結局どこに逃げたのさ」

「知らん。つか、なんで見つからないんじゃ」

「もうかなり見て回った気がするんだけど……」

「まさか、部屋の中にいるとか……」

 

 いくら探しても見つからないウサギ。一発で見てわかるほど大きいらしいのだが、ここまで一切見かけないと言うのが気になる。

 

「部屋の中に入れる大きさにはしておるが、いくらなんでもそこまで操作がうまいわけ無いじゃろ」

「そうよね。初めて乗ったんですもの」

「あの……乗ると同時に逃げ出したんですよね…?」

「「あっ」」

「こいつらまるで使えない! マシュ! ナーサリーの部屋に向かうよ!」

「は、はい!」

 

 乗ったばかりだと油断していたが、冷静に考えれば乗ると同時に逃げているのだ。どう考えても出来そうだ。

 

「というか、マスター。なんでナーサリーの部屋なんじゃ?」

「ナーサリーは小さな女の子だぞ? 新しいおもちゃを手に入れたら、自慢したくなる。身近なやつにね。そして、ナーサリーの部屋にはその身近なやつである、チビノブが大量にいる!」

「そうか! まず最初にチビノブに自慢しに行くと踏んだ訳じゃな!? だが、そんなに簡単に見つかるか?」

「ふっ。当然、見つかる気はしない!」

「すっごいドヤ顔でバカみたいなこと言っとるんじゃけど!」

 

 ノッブの言うように、ドヤ顔で言い切るオオガミ。

 だがもちろん、何も考えていないわけではない。

 

「ナーサリーが通ったのなら、目撃証言とかあると思うんだよ。なら、それを辿っていけば良いって訳だ」

「なるほど。でも、そんなに簡単に見つけられるでしょうか…」

「まぁ、最終手段はあるから良いんだけどね。っと、見えてきた」

 

 視界に入るナーサリーの部屋。そこには、確実に通ったであろう跡が残っていた。

 

「ノ、ノッブゥ……」

「ノッブゥゥ……」

「ノノノ、ノブゥ」

「おいなんじゃこれはまるで儂が轢かれたようなんじゃけど!」

 

 ぶっ倒れているチビノブ達を見て、悲鳴を上げるノッブ。

 

「さらばノッブ……良い奴だったよ」

「安らかに眠りなさい」

「信長さん、また会える日を」

「おいぃ! アッサリと儂を殺しに行くな!!」

「いや、ほら。今言えって言われたし」

「私は空気を読んだだけよ」

「私は先輩に便乗しました」

「つまり全体的に俺のおかげというわけだ」

「つまりマスターが全体的な原因じゃろ」

「ばれたか」

 

 ノリノリで言ってくるオオガミ達三人に突っ込むノッブ。なんだかんだ、楽しそうだった。

 

「それで、この惨状を見てどうするんじゃ?」

「いや、ほら。こっちから来て会わなかったんだから、明らかに向こうにいるでしょ」

「完全に何も考えてなかったじゃろ」

「そんなことないって」

「まぁ、別にいいんじゃけど……ちゃんと止められるんじゃろうな……」

「最終手段のエルキドゥと土方さん」

「破壊する気じゃ!!」

「とりあえず、探しに行こうか」

 

 そう言った時だった。

 

 ズシン、ズシンと響く振動。

 まるで、こちらに何かが向かってきているかのような振動がする。

 

「……これはダメな奴。逃げるぞ!!」

「えっ!? は、はい!!」

「結局逃げるのか!」

「私まで潰されるのは勘弁よ!!」

 

 全力で逃げ出す四人。だが、明らかに近づいてきている振動。

 振り向くと、そこには迫ってくる巨大なウサギが――――

 

「何アレ何アレ!! 絶対危ない奴じゃん! 壊そうよ!?」

「儂らがどれだけ苦労したと思っとるんじゃ!!」

「そうよ! 私の趣味の時間まで潰したのよ!?」

「確かにそれは可哀想だけども、それでもアレは普通に危険でしょ!!」

「それでもマスターならどうにかできるって思っとったんじゃけどね!?」

「せめて魔術礼装がカルデア戦闘服だったらガンド出来たんだけどね!?」

「なんでちゃんと着ておらんのだ!!」

「こんなことになるなんて思ってなかったからじゃないかな!?」

「くぅ……何ならできるんじゃ!?」

「応急手当と瞬間強化、緊急回避!」

「じゃあ緊急回避であれを避けて着替えてくるんじゃよ!!」

「無茶を言うね!? そもそも俺を対象にできないと思うんだけど!?」

「そこを突かれるとは思わなんだ……ならどうするんじゃ!」

「えっとえっとぉ……あっ! パッションリップ! パワーあったはず!」

「ふむ……じゃあ、儂が呼んでこよう。さらばじゃ」

 

 そう言うと、ノッブの姿が透明になる。

 

「あっ! チクショウ、逃げやがった!!」

「ノッブめ! 後でルールブレイカーを叩き込んであげるわ!!」

「賛成です! というか、先輩! 追いつかれそうなんですけど!!」

「なっ! くぅ……後ちょっとで休憩室だっていうのに……!!」

 

 悪態を吐きながら走っていると、ちょうど休憩室から人が出てくる。

 

「え、エドモン!」

「ん? マスター……いや、皆まで言うな。安心するがいい」

 

 直後、エドモンの姿が消え、後ろで激突音がする。

 

「さて、おそらく中にいるのはナーサリーか。なら、力を抑えた方が良いな……フッ!」

 

 ガンッ! と鈍い音を立ててウサギは転ぶ。

 しかし、傷がついていない所を見るに、中々に頑丈らしい。

 

「中々硬いな……だが、足止めという役目は果たしたな」

「もうっ! 痛いじゃないの!!」

 

 突如響く声。声の発生地点はウサギからで、声色はナーサリーだった。

 

「暴れている方が悪いだろう。そろそろ降りたらどうだ」

「むぅ……確かに、これに乗ってると皆に怖がられてしまうわ。じゃあ、降りる」

 

 その声と共にウサギは起き上がり、胸の部分が開く。

 その中から出てきたのはナーサリー。どうやらコックピットはそこらしかった。

 

「でも、このウサギさんはどうしましょう。ここに置いておくのは不味いんじゃないですか?」

「ん~……エルキドゥに頼む? 荷運びはエルキドゥが最適だと思うんだけど」

「索敵から荷運びまで任されるエルキドゥ……それだけ有能なのかしら?」

「土方さんやパッションリップさんでも大丈夫だと思うんですけどね。あ、エルキドゥさんは鎖で全体を固定できる利点がありましたね…」

「そう言う事。じゃあ、エルキドゥを呼んでこようか」

 

 こうして、ウサギ爆走事件は終わったのであった。

 

 その後、ウサギはナーサリーの部屋に置かれ、時たま乗っていたりする。




 本当はもう何人か出したかったんですが、ちょっと限界でした。時間的な意味で。


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またマスターは轟沈か(で、倉庫の種火はどうしましょうか)

「マスターがまた部屋に閉じこもりそうなんじゃけど」

「メルトリリスさん……来てくださいませんからね……」

「あの……そんなに深刻なんですか……?」

 

 苦い顔をしているマシュとノッブを前に、いまいち状況を理解できていないリップが聞く。

 共に座っているエウリュアレは、ほとんど興味が無さそうだったが、聞いてはいるようだ。

 

「あぁ、それはもう恐ろしいぞ。なんせ、種火にすら行こうとせんからな……」

「ほ、本当に動かなくなるんですね……」

「えぇ、異常なまでに動きません。まぁ、時間が経ったら出て来てくれるんですが、それまでは待ち続けるしかないですね……」

「大変ねぇ……私は待つのは嫌いじゃないから分からないけど」

「お主は楽そうでいいのぅ……まぁ、儂ももうレベル的に十分じゃし、スキルはQPと素材が足りないから待機するしかないしな」

「ん~……私も待つしかないんですね」

「儂が行っても微動だにしなかったからの……つか、倉庫の種火、どうするつもりなんじゃろ」

「誰かのレベルを上げるとは思うんですけど……誰なのかまでは流石に」

 

 倉庫に満杯に入っている種火。メルトリリスが当たった時のために、と言ってコツコツ溜めていたのだが、出そうにないので倉庫の肥やしになっていた。

 

「まぁ、明日もありますから、可能性はありますよ!」

「そうじゃなぁ……沖田の時も同じことを言ってたんじゃよなぁ……」

「見事に一日部屋から出てきませんでしたよね」

「あの時は奇跡的にエイプリルフールだったからのぅ……嘘アプリに救われたんじゃよ」

「明後日からミニイベントがあるじゃない。それで起きてくるかもしれないわよ?」

「あ、あはは……そんな簡単に出てくるんだったら皆そんなに悩まないんじゃ……」

 

 エウリュアレの言葉に対し、リップがそう言ってマシュとノッブの方を見ると、

 

「ん~……ありえなくもないんじゃよなぁ……」

「むしろ普通に起きてきそうですよね……」

「えぇ~……引きこもらないのは良いんですけど、そんな緩い感じでいいんですか……?」

「そのくらいの気概じゃなきゃソシャゲなんぞ出来るか!! 運が無かった! 縁が無かった! なら仕方なし! そんな心意気でなければ、生き残れんぞ……財布的に!!」

「最終的にそこに持って行くところがさすがだと思うわ」

「最後には金銭面の話になるんですね……」

「フッ。そう褒めずともよい。儂は思った事を言ったまでよ」

「一瞬も褒めてないわよ」

「バッサリ斬りおったな…!?」

 

 迫真の表情で言い切ったノッブに適当な返事をしつつ、今日のお菓子であるカステラを口に運ぶエウリュアレ。

 マシュとリップはそれを見ているが、入り込む余地は無さそうだった。

 

「それで、私たちに打てる手は無いんでしょう? どうするのよ」

「そりゃ、マスターが自力で復帰するのを待つしかないじゃろ」

「そうですね。しばらくは様子を見ているしかありませんから」

「何もできないっていうのは心苦しいですけど、本当にどうしようも出来ないみたいですし、私も見守りますね」

 

 そして、四人は今度は別の話題へと移るのだった。




 はい。今現在、メルトリリスは出ていません。絶望です。
 これはもう、死んでしまうかもしれない……


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マスターが引きこもってないんじゃけど(引きこもっても損しかないでしょうが)

「ついにイベントは終結した。で、現状は安定なわけだ」

「うむ。ガチャに期待したらいかんという事じゃな」

「そんな真理を突きつけるノッブはしばらく待機」

「酷くねっ!?」

 

 休憩室で、オオガミはノッブに突き付けられた言葉の刃に反撃しつつ、置いてあるザラメ煎餅を食べる。

 その瞬間にエウリュアレに睨まれたが、すぐに煎餅に視線が移動したので、ほっとする。

 

「先輩、今回は大丈夫だったんですね」

「まぁ、沖田ショックよりも重いダメージだったけど、何とか立て直したよ。一応リップも鈴鹿も来てくれてるし」

「未だに鈴鹿さんには会ってないんですけどね」

「種火が無いし、今の所ネロが頑張ってるからねぇ……まぁ、そろそろ会えると思うよ?」

「ここって、たまにそういう事あるわよね……っていうか、召喚されたのなんて、一昨日じゃない」

「エウリュアレ。それ以上は言っちゃいけない。闇に触れるよ」

「え、何よそれ。怖いんだけど」

「触れてはいけぬものもあるのだ。見分けは大事だぞ、エウリュアレよ」

 

 引きこもらなかったオオガミに微笑みかけるマシュに、触れてはならないことに触れそうになったエウリュアレを引き留めるネロ。

 

「んで、これから何をするつもりなんじゃ?」

「ん~……とりあえず、種火をチマチマ集めるかな。レベル上げ切ってない人が多いし」

「なんだかんだ、私もまだMAXになってませんからね」

「余は最終再臨すらしておらぬからな!!」

「リップの方が先に最終再臨するとは誰が想像するじゃろうか……」

 

 なんだかんだ言って、やはり未だに成長していないエドモンは、まだ第一再臨のまま止まっているのだった。

 再臨素材があるのに止まっているのは、他のキャラを成長させているのが原因のほとんどだった。

 

「まぁ、いつも通りって感じだよ。まぁ、ハンティングクエストが面白そうだからそっちに行くと思うけど。第3弾って言ってるけど、初参加だし」

「そうですね。新しいミッションは楽しみです」

「一体どんな敵なんじゃろうな。儂も気になっておる」

「余はたとえどのような敵だろうと、奏者となら絶対に切り抜けられると思っておるからな! 全然心配してないぞ!」

「敵が男性だったらきっと駆り出されるのよねぇ……セイバーでも同じ?」

「エウリュアレは相手がランサーじゃないなら基本フル出場だよ? マシュと一緒に」

「どれだけ私を使うつもりなのよ……」

 

 どうあがいても編成に組み込まれることが確定しているエウリュアレは、ザラメ煎餅を咥えながら机にぐでっと倒れる。

 

「おいマスター。どうしてそこで儂が出ないのかを問いたいんじゃが?」

「ノッブは……その、コスト面でね?」

「コストじゃどうしようもないんじゃけど!! 儂の力でどうにもならんのじゃけど!!」

 

 悲痛な声を上げるノッブ。一応セイバー相手には編成するつもりではあったが、もう少し編成に組み込むかと考える。

 

「とりあえず、何にしても明日からだよ。今日はもう寝るとしよう。お休み!」

「はい。おやすみなさい」

「うむ。しっかりと休むのじゃぞ」

「しっかり寝て、私を編成に組み込んでも得が無いと気付きなさい」

「では、余もついて行くかの」

「「「ちょっと待って」」」

 

 ネロの想定外な発言に、全員が突っ込む。

 

「いやいや、ネロよ。どうしてそこでお主もついて行くんじゃ?」

「む? 何を可笑しな事がある? 別に普通であろう?」

「ちょっと何言ってるのか分かりません。念のために私もついて行きます」

「マシュはなに便乗して一緒に行こうとしてるの。貴女も止めなさい」

「そうじゃぞ。それをするという事は、儂の攻撃対象になるという事じゃ。茶々を連れて戦争するぞ」

「フッ。余に宣戦布告とはな! 全力で反撃するぞ!!」

「フハハ! やってみるがいい!!」

 

 今にも戦い始めそうな二人。

 しかし、当然の如くオオガミが止めに入る。

 

「ストップストップ。とりあえず、ここでやるとエルキドゥが来るから、やめておこうよ。というか、土方さんがずっとこっち見てるから」

「むっ……エルキドゥは厄介じゃ……止めておくとしよう」

「むぅ。余も少し熱くなり過ぎていたようじゃな。すまなかった」

「うん。とりあえず、寝て良い?」

「うむ。しっかり休んで、明日に備えるが良い。奏者よ」

 

 こうして、何とかオオガミは解放されたのだった。

 

 その日の深夜に、トレーニングルームで何かがあったようだが、その真相を知る者はいないのだった。




 はい。メルトリリス、出ませんでした。
 で、でもでも! 年末に可能性があるので、そこに賭けます!! 全力で石貯めじゃぁ!!
 まぁ、どうせどっかで使うと思うんですけどね。


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ハンティング
ふはは!骨狩りじゃ!!(まぁ、秘石もなにも無いからスキルは強化できないんだけども)


「ふはははは!! 骨じゃ骨じゃ!! 儂のがしゃ髑髏の糧となるが良い!!」

「全く。なんで最初からセイバーとか言う、私が出ざるを得ない編成なのよ。許さないわよ?」

「遠慮なく吹き飛ばせばストレスも吹き飛ぶじゃろ!! わはははは!!!!」

 

 スケルトンや、スケルトンキングに矢を突き刺し銃弾で砕きと、破壊の限りを尽くしながら種火と骨を回収していく。

 地味に後方で待機しているネロが強くなっていっているのだが、それを気にしないほど楽しそうに骨を粉砕して大地の栄養にしていく。

 

「これ、何時までやるのかしら」

「そりゃ、あれじゃろ。儂がスキルレベル上がり終わるまでじゃろ」

「いや、ノッブのスキルが上がらないのは石が足りないからだし」

「んな!? どうしてそこで回収しておかなかったんじゃ!? 酷いんじゃけど!!」

「ほら、あれだよ。QP無かったから」

「言い訳じゃよね!? 別に後からでも大丈夫じゃったよね!?」

「何分かり切ってることを聞いてるのよ。種火優先に決まってるじゃない」

「ランサーとアサシンじゃろうがぁ!! ほっとんど必要ないじゃろ!!」

「パッションリップとか、BBに吸収されたんでしょ。よくある事よ」

「リップに吸収されたんだよ! 俺が食わせた!」

「開き直ったなマスター。いい度胸じゃ、儂の全力を見せてやる」

「む。まさかマスターに反逆するというのか…!?」

「ククク……そのまさかじゃ。見せてやる、儂の全力全霊を!!」

 

 ガシャンッ!! という音と共に無数の火縄銃が顕現する。

 

「え、ストップストップ。その量は捌き切れない」

「ふはは。骨と共に土にかえるが良い」

「ちょっとノッブ。そんなことやってる場合じゃないでしょうが」

 

 今まさに撃とうとしていたノッブは、エウリュアレの言葉を聞いて、振り向きながら展開していた火縄銃を後方に放つ。

 

「ふん。儂を舐めるでないわ。その程度の不意打ち、なんてことないのじゃ」

「ちゃんと戦ってくれるならそれでいいわよ。マスターで遊ぶよりも先にここをさっさと切り抜けましょうよ」

「そうじゃな、まずはこの骨どもじゃ。目に物見せてくれるわ」

 

 不敵に笑いながら、ノブは無数の弾丸を骸骨軍に叩き込む。

 

「して、何時までここで骨狩りじゃ?」

「もうそろそろやめるよ。明日に備えないとね」

「明日はランサー。私はそう信じているわ」

「それはフラグじゃぞ、エウリュアレ」

「っと、とりあえず、次のスケルトンがラストだ。気合入れて行くよ!」

「えぇ!」

「任せよ!!」

 

 三人は、そう言って本日最後のスケルトンの骨を狩り取りに行くのだった。




 本当に、無いんです。QPは回復したけど、素材が足りないから成長できないとか、よくある事ですよ。はい。
 スケルトンは狩り尽すのです。


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ケンタウロスのほとんどがアサシンとかどういうことなの!?(アーチャーだと思ってたわ!!)

「なんでッ!! アサシンが!! いるのよ!!!」

「私も、今日はアーチャーだって聞いたから、エルキドゥいないからウサギさんに乗る予定だったのに!! なんでこんなところに来ちゃったのかしら!!」

 

 襲い来るケンタウロスの群れを叩きながら文句を言うエリザベートとナーサリー。

 昨日はセイバーだけだったので、今日もアーチャーだけだと思ったのが運の尽きだった。

 迫り来るアサシンの軍勢。どうせ出て来ても最後なのだろうと油断していたのだが、まさかの想像の真逆。最後の一体以外全てアサシンなのだった。

 

「あぁもう!! ナーサリー!! マスター! 私、歌うわよ!?」

「援護するわ!! 頑張って! エリザベート!!」

「耳栓耳栓……待って。これで防げるのか?」

「あ、私が盾になりますから大丈夫ですよ。先輩」

「マシュ、ありがと」

 

 エリザベートが地面に槍を突き刺すと同時に地面から出現する館の様な巨大スピーカー群。

 

「サーヴァント界最大のヒットナンバーを聞かせてあげる!!」

 

 そして、突き刺した槍の上に立ったエリザベートは、

 

「飛ばしていくわ!! 優雅に無様に泣きなさい!! 鮮血魔嬢(バートリ・エルジェーベト)!!」

 

 響き渡る轟音。その場にいたケンタウロス達は、その轟音を受けて倒れたり頭を抱えたりしている。

 そして、そこに追加される一撃。

 

「繰り返すページのさざ波、押し返す草の栞……全ての童話は、お友達よ!!」

 

 群れなすお菓子の軍勢。それは、生き残っているケンタウロスの群れに容赦なく襲い掛かり、倒していく。

 

「ふふん。私の歌を聞けば、皆すぐにおとなしくなるわ。まぁ、盛り上がりに欠けるっていうのはあるんだけど」

「マスターさん……もう疲れたのだけど」

「ん~……素材が取れるのはおいしいからなぁ……しかも、ついでに種火も採れるし」

「アーチャーとアサシンの種火しか採れないじゃない。それに、隕蹄鉄とか、いつ使うのよ」

「使う時がいつか来るかもしれないでしょ。その時に足りなかったら後悔するし」

「むぅ……それもそうね。まぁ、私は思う存分歌えるから、あまり文句は無いわ。歌う前に退場しちゃう時がたまにあるのが許せないくらいで」

「それはその、ごめん。頑張ってはいるんだけど、アサシンのチャージ速度が速いから間に合わないんだよね」

「それくらい、分かっているわ。マスターだって頑張っているし。それで、どれだけ回るのかしら」

 

 消し去った敵が、徐々に蘇ってきたところで、エリザベートがオオガミに聞く。

 

「いつも通りの疑問だね。うん、まぁあと一回くらいが限界でしょ。そもそも、エリちゃんが言ったように、そんなに必要に迫られてるわけじゃないし、無理に回るほどじゃないよ」

「そう。じゃあ、最後の大暴れって事ね!!」

「本気で遊ぶわよ!!」

 

 最後とばかりにやる気を出す二人なのだった。




 本当に、想定外だったんですよ……なんだあのアサシン群……シャレにならんのです……
 エリザベートがさっくり殺される時が多かったんですけど。本当に、歌えなかったんですけど……


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気づいたらSE.RA.PH巡回メンバー(狙ってはいない)

「チィッ……中々強いじゃないか」

「みなさん、私をいじめるんですけど!」

「なんかすごい狙われてるよね! リップ! タゲ集中がついてるの!?」

「ついてないですぅ!! むしろ気配遮断がついてますからね!!?」

 

 異様に狙われるパッションリップ。船長も狙われてはいるが、パッションリップよりも軽傷である。

 

「あなたも、あなたも、あなたも! 私をどうしていじめるんですか!」

「もう、何かの呪いにしか見えないんだけど」

「私もそう見えるよ、マスター」

「もう! どうしてそんなに狙うんですか!! 私以外の人を狙ってもいいでしょう!?」

 

 しかし、当然のごとく返事は返ってこない。

 代わりとばかりに返ってくる風や爪や魔力弾がパッションリップに襲い掛かる。

 

「だから、やめてください!!」

 

 それを、巨大な両手で叩き潰すパッションリップ。

 ダメージカットはそういう強引なものなのかと突っ込みたいが、とにかくご立腹のようなので、触らぬ神に祟りなしの精神で見守る。

 さっき茶化していたりしたが、それはノーカンだ。

 

「さすがに、私も怒りますよ!!」

「やっちゃえリップ!」

「遠慮することなんかないからね!!」

「はい! 行きます!!」

 

 リップはそういうと、一気に距離を詰め、ワイバーンを叩き潰していく。

 デーモンは、ドレイクが撃つことで標的を変える。

 容赦なく叩き潰していくパッションリップとドレイク。

 時々放たれる宝具によって、回復と殲滅が同時に行われる。

 

「さて、そろそろ敵も減ってきたかな?」

「そうみたいだねぇ。リップがよくやってくれてるよ」

「うわーん! どうしてみんな私を狙うんですか~!」

「……本人は周りが見えてないみたいだけどね」

「そうみたいだねぇ……」

 

 泣きながらワイバーンを押し潰し、吹き飛ばしていくパッションリップは、自分が手当たり次第に殴っているようにしか見えなかった。

 

「リップ~! 帰ってきて~!」

「ふぇ!? あ、わぁ!! 真っ赤ですぅ……」

「いや、消滅してるから真っ赤ではないから。むしろ、クレーターの方が目立つから」

 

 倒されたワイバーンは全て消滅していっているので、実際はオオガミの言っているようにパッションリップが暴れた際のクレーターが目立っている状況だった。

 

「あ、あの……ごめんなさい!」

「いやいや、別に謝る事は無いよ。暴れてもいいような場所だろうし」

「まぁ、気にすることなんてないさ。暴れたくなる時なんて、誰にでもある事さ」

「そうそう。だから、気にしない気にしない。ほら、次で終わりなんだから、元気出して」

「ま、マスター……! ドレイクさん…!」

 

 落ち込んでいたパッションリップを励ました二人は、パッションリップが再び立ち上がるのを待って、最後の戦いに挑むのだった。




 本当、ワイバーンに集中攻撃されて一ターンで死にかけるとか、恐ろしいんですが……


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マンティコアパネェ(儂だけコロコロされるんじゃが)

「ライダーがおるんじゃけど! なんで儂を連れてきたし!!」

「私も場所違いよね!! こんなの、私たちの出る幕ないわよ!!」

「ところがどっこい。エウリュアレはアタッカーなんだなこれが」

「儂は完全に無関係なんじゃな!!?」

 

 マンティコアの攻撃を避けながらゴブリンを撃ち抜いていくノッブとエウリュアレ。

 

「ノッブはほら、前衛倒すためだから」

「つまりゴブリン狩りをしろって事じゃな!!」

「そう言う事。まぁ、マンティコアに宝具は撃ってもらうけどね」

「倒せなかったら私が出ますので、安心してください」

「もうお主が最初から出ればいいんじゃ!?」

 

 オオガミの近くで弱ったマンティコアにトドメを刺しながら言ってくる静謐に、思わず叫ぶノッブ。

 

「いえ、私、力はそんなにないですから。あくまでも残ってしまった際のトドメ役です」

「そうじゃった! あやつ、攻撃力としてはダメじゃ! 筋力Dじゃし!」

「私はEなんだけど!? なのにどこでも最前線よ!?」

「じゃよね! やっぱおかしくね!?」

「レベル差ですよ」

「そうじゃな! 10も差があったな! うむ。なら仕方ない!」

 

 推奨レベルが90という事もあって、いつもより優しめなノッブ。

 そもそも、彼女がここまで一回も宝具を撃てていないというのも、理由の一つかもしれなかった。

 

「つか、本当に強すぎるんじゃけど! なんじゃあのマンティコアの強さ! 死にそうなんじゃけど!」

「まぁ、実際何度か死んでるけども。とりあえず、全力で叩くべし。宝具展開」

「あい分かった!! 三千世界に屍を晒すがいい……!!」

「はぁ……面倒だけど、やってあげるわ。ちゃんと見てなさいよ?」

 

 無数の火縄銃を召喚するノッブと、髪を後ろに払うエウリュアレ。

 

「これが魔王の、『三千世界(三段射ち)』じゃああぁ!!」

「『女神の視線(アイ・オブ・ザ・エウリュアレ)』!!」

 

 周囲に放たれる、もはや銃弾とは呼べないレーザーの群れ。

 そして、その中を飛び、確実にマンティコアの額に突き刺さる女神(エウリュアレ)の矢。

 その攻撃で、大体の敵は倒れる。

 

「はぁ……めっちゃ辛いんじゃけど」

「本当にね。なんでこんな苦行を続けなくちゃいけないのよ」

「世界樹の種は使うからね……正直、産毛よりも種が欲しいんだよ……」

「この配置は、明らかに採らせる気が無いと思うんじゃが」

「マンティコアのHP高すぎでしょ……気軽に倒せる限度ってものがあるわ」

「周回って、こんなに難易度の高い物も含まれるんですね。あまり戦わないので知りませんでした」

「普通やらんわ! 今回が特別なんじゃよ!!」

「そうよ! こんなのを毎回周回させられるとか、明らかに地獄じゃない!!」

 

 ついに怒り始めたノッブとエウリュアレ。まさか二回も出番があるとは思っていなかったのだろう。ノッブの場合、やられまくったというのもあるのかもしれない。

 

「ラストじゃ! 次をラストとする! これ以上はマスターの頼みといえども、断るぞ!!」

「えぇ~。じゃあ、令呪を切るか……」

「それほどまでに!?」

「いや、冗談だけども。ちょうどAPも尽きるしね。今日はこれがラストだよ」

「よっし! 行くぞエウリュアレ! 静謐! これが終わったら、皆で遊ぶぞ!!」

「えぇ、任せなさい! 全力で叩き落としてあげるわ!!」

「私はあんまり戦ってないんですけどね。頑張って手伝いますよ」

 

 三人はそう言って、最後のマンティコアに向かっていくのだった。




 この後ノッブだけコロコロされた。

 マンティコアのHPが35万くらいとか、卑怯だと思いました。まる。


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スフィンクスへの報復戦(6章のアレはレベル上げてないから仕方ない!)

「で、またアタシ達の出番って事かい? マスター」

「うぅぅ……私は出来るだけ戦いたくないんですけど……」

「相手がチンピラとスフィンクスだからねぇ……戦いやすい二人が一番でしょ」

 

 チンピラを巨大な手で払い、更に銃弾を叩き込んでいく。

 オオガミはそれを見て、苦笑いをする。

 

「しっかし……スフィンクスねぇ……随分と懐かしい因縁の相手じゃないか」

「あ~……うん。最悪最低の因縁の敵だわ。6章では阿保みたいにお世話になったもんなぁ……」

「今回はそのお礼参りと言うところかねぇ。やってやろうじゃないか」

「あぁ、それも良いねぇ……じゃあ、そうしようか。全力でお礼参りだ。全力で蹂躙するよ」

「応ともさ!!」

 

 スフィンクスに向けられる銃口。それと同時に出現する無数の戦艦。

 

「さぁ、行くよ野郎ども!!」

「「「おおおおおおぉぉぉぉーーーー!!!」」」

 

 戦艦に搭乗していた無数の乗組員の叫び。

 その異様さに怯える相手に構わず、ドレイクは指揮を執る。

 

「全砲門! 対象はスフィンクス!! 撃ち方用意!!!」

 

 一斉に動く無数の砲門。一つ一つが強力な一撃にも関わらず、その砲門が一斉に自身の方を向くという恐怖。

 それゆえに、圧倒的恐怖になり得る。

 

「リップ!! 下がってな! 一斉掃射、行くよ!!」

「うえぇ!? わ、私まで巻き込まないでくださいね!?」

 

 必死でリップは射線上から脱出する。それと同時に、

 

「撃てええぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!!!」

 

 響く轟音。

 一斉に放たれた砲撃は、全ての魔物を一掃していく。

 

「い、一瞬遅れてたら私もあの魔物みたいに……」

「ちゃんとリップが退くまで待っていただろう?」

「そうですけど! そうじゃないんです!!」

「まぁ、アタシもすぐさま撃って悪かったよ。次は気を付けるからさ」

「……本当ですか?」

「嘘吐いてどうするのさ。海賊なんざ、信頼関係が一番だよ。仲間同士で疑うとか、一番したくないことだね」

「……なら、次はもうちょっと余裕をもってお願いします」

「あいよ。任せな」

 

 不敵に笑うドレイク。若干の不満があるものの、彼女の人の好さをこれまでの戦いで知っているパッションリップは、強く言う事が出来ないのであった。

 

「さて、じゃあ、どうするんだい? あとどれだけ回る?」

「そうだねぇ……後一、二回かな。実際、何度も回る必要なんかこれっぽっちも無いんだけどね」

「え、じゃあなんで回ってるんですか?」

「そりゃ、普通に種火行くよりも気持ち楽だから? それに、素材とか石も手に入るし」

「なるほど……全員キャスターですもんね、確かに倒しやすそうです。あの、すっごく疲れますからね?」

「うん。だから、あと一回で休憩! というか、今日は終わり! 行くよ!!」

「あ、ちょっ、マスター!」

「あはは!! それじゃあ、最後の仕上げと行くよ! ついて来な、リップ!」

 

 オオガミを先頭に、ドレイクとリップがその後ろを走るのだった。




 仕方ないじゃないですか……友人に急かされて、6章まで実質石と令呪でゴリ押しだったんですよ……レベルほとんど1でスフィンクスに勝てるわけないじゃないですか……


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ようやく余の出番!!(完全に私場違いよね)

「うむ!! ようやく余の出番だな!!」

「茶々も頑張るし!!」

「この場において、私が一番場違いなのは分かってるわよね? マスター?」

「うん、そうだね。なんでエウリュアレがいるのかって感じだよね」

 

 ネロと茶々が胸を張っている中、後衛にいるエウリュアレがオオガミの足をひたすら蹴りながら睨みつけてくる。

 

「むむっ。エウリュアレよ、奏者(マスター)にも考えがあるのだ。場違いだとか、思うでない」

「んな訳ないでしょ。こいつは何も考えてないわよ。そういうマスターだもの、どれだけ一緒にいると思ってるのよ」

「それを言われたらこっちはどうしようもないね」

「むっ、日数など関係ないぞ。ちゃんと考えている事くらい余にも分かる!」

「へぇ? このランサーだらけの場所にアーチャーである私を連れてきた意味があるって? 聞かせて頂戴。どんな内容か気になるわ」

 

 不機嫌そうな顔で言うネロに、エウリュアレが不敵な表情で聞き返す。

 

「なに、至極簡単な事だ。余が奏者(マスター)と居たいように、マスターもまた、エウリュアレと共に居たいという事だ」

「…………え、本当?」

「いやいやいやいや。的外れではないけども、メインは最後のバーサーカーへの攻撃力だから」

「……ほら、こう言ってるじゃない」

「ちょぉい!! 完全に今認めていたではないか!! っていうか、地味に余にもダメージが入ったのだが……誰か余を慰めて……」

 

 自分で何を言っているのか気付いたのか、突然わなわなと震え、へたり込むネロ。

 それを見て、となりにいた茶々が慰めに行く。

 

「はいはい。というか、なんで自分で胸を張って言ってダメージ喰らってるのさ」

「余にも……譲れない物はあるのだ……さらっと敵を増やしてしまった」

「敵が増えても構わない!! くらいの意気込みじゃないと負けると思うし。むしろどんと来い! じゃないと」

「ハッ…!! 確かにそうであった!! 何を弱気になっていたのだ! 女神が相手なら不足なし! 余の魅力の方が優れていると絶対に言わせてやるからな!!」

 

 茶々の手によって息を吹き返したネロは立ち上がると、原初の火をしっかりと持ち、ようやく敵に目を向ける。

 

「よし! では、そろそろあやつらを倒しに行くとしようではないか」

「もう何回も行ってるけどね」

「茶々としても、結構頻繁にやられるから不満だけどね!」

「えぇい良いではないか!! 天敵はあの猪だけであろう!?」

「バジリスクが天敵だから」

「茶々もバジリスクに滅茶苦茶叩かれるから辛い。なんで皆茶々を狙うし」

「そりゃ、バーサーカーとか全クラスの天敵だし」

「マスター。そう言う事言われると茶々も泣きたくなるんだけど」

「いやいや、誇って良いと思うんだけど……まぁ、茶々が嫌なら言わないけども」

 

 茶々の何とも言えないような視線を受けて、苦笑いを浮かべながらそう言うオオガミ。

 

「はぁ……まぁ、良いわ。さっさと済ませちゃいましょ」

「ん。茶々も言いたいことは言ったし、すぐに終わらして帰ろう!」

「うむ! 余の全力、見るが良い!!」

 

 三人は、そう言ってバジリスクと巨大魔猪に向かっていくのだった。




 本当に後衛に控えてるエウリュアレ。だって、猪に与えるダメージ大きいんですもん。
 バジリスクですら、彼女の前には無力……(死にかける時もある)


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鬼哭酔夢魔京羅生門
普通に、イベント礼装無しで勝てはしない(マジヤバいんですけど)


「無理!! 鬼なかしとか、無理!!」

「倒せるような敵じゃないですね。まだ装備が足りないです」

「イベント礼装皆無で戦おうとか、無謀極まりないよ」

「そうよ。せめて一人一枚は流離譚を取ってきなさいよ」

「待って。それは瓢箪かDP(ダメージポイント)でしか取れないから。DPに至っては一枚が限界だから。基本瓢箪だから」

 

 衝撃のHPを前に、200%アップの理由を改めて理解したオオガミ。

 マシュは苦い表情で言うが、その隣でやれやれ。と言ったような表情をするエルキドゥとエリザベート。

 

「はぁ……全く。なんで私はこんなところにいるのかしらねぇ……」

「儂も、全然活躍できないんじゃが……」

「明らかに攻撃力が足りてないのよ……」

「出たら即座に死ぬような戦いとか、地獄なんじゃが」

「出たら敵が宝具チャージ終えてるとか、どうしろっていうのよ」

 

 遠い目をしながら、エウリュアレとノッブは呟く。

 

「余なんか……余なんか、もうパーティーから出されたぞ……」

「貴方はコスト高い上に相手がアーチャーだからでしょ」

「うぅ……確かにそうだが……それでも、編成から抜かれたのは心に響くのだ……」

「分かる。その気持ち分かるぞ、ネロ。儂も放置されておったからな……明日にはまた出番が来るじゃろ」

「明日になったからって、余が使われるとは限らないではないか。というか、明日も同じ的だっと思うのだが……」

「……そういえば、確かにそうだ。い、いや、二日目あたりからアーチャーではなくなるはずじゃ。知らんけども!」

「な、慰めるか放っておくか、どっちかにしないか!! 余は、余は結構辛いのだからな!?」

 

 涙目のネロを慰めるノッブ。エウリュアレはもはや無表情で敵を射っていく。

 

「先輩。茨木さんもいなくなりましたから、とりあえず金時さんの言っていたご飯屋さんを探しましょう。みなさん、疲れていらっしゃるみたいですし」

「そ、そうだね……編成変更が原因かなぁ……」

「彼女たちはいつもあんな感じだよ。僕の見ている限りはね。それで、探しに行くのなら、あそこにいるのも連れて来るよ?」

「いや、行くには行くけど、さすがに自分で呼びに行くよ」

「そうね。マスターが行くのが一番よ」

「そうですね。では、私たちは先に安全を確認してきますね」

 

 そう言うと、マシュ達は行ってしまう。

 一人残されたオオガミは、そのままネロたちの元へと向かっていく。

 

「ネロ。今から京の町を見て回ろうと思うんだけどさ、一緒に行かない?」

「んっ……奏者(マスター)は、余を編成から外したではないか」

「それはほら、ネロがやられるのは問題だし」

「なぜだ! エウリュアレはほぼ毎回出ておるではないか!」

「ん~……エウリュアレはコストとしても戦力としても、相性としても悪くは無いからなぁ……まぁ、明日にはネロが戦力になれるような編成を頑張ってみるからさ、行こうよ」

「むぅ……絶対だぞ? 絶対だからな!?」

「どんと来い! 何とかやってみようじゃないか! 効率は二の次で!」

「うむ! 流石は余のマスター! 任せたぞ!! では行こうではないか!!」

 

 そう言うと、ネロはオオガミの手を引いてマシュ達が言った方向へと走っていく。

 

「……儂ら、忘れられてるよネ」

「それ以前に、明らかに辛い編成になるわよね、明日」

「そこに触れるのは不味いじゃろ……」

 

 残されたノッブとエウリュアレは、深くため息を吐いた後、皆の後を追うのだった。




 やばかった。礼装が足りなかったです。明日はとりあえず一回挑んでからネロを活用……出来るか…?


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余に任せよ!!(昨日の今日で最高戦力)

「余の天下だな!!」

「本当にそうよねぇ……」

「メイン戦力だしねぇ。アタシを抜いた時は驚いたけどね」

「当たり前だよ。ネロをメイン戦力にするために、貯めていたオール種火も、今月分のオール種火も消えたからね。ついでにフォウ君もいくらか」

「おかげで最終再臨出来て、余は嬉しい!!」

 

 上機嫌なネロに、疲れたような表情のエウリュアレ。苦笑いのドレイクがいて、オオガミはやり切った感を出していた。

 

「しっかし、昨日の今日でよくここまで育てられたねぇ…」

「いや、あと一回再臨すればよかっただけだから、種火さえあればすぐに再臨出来たんだよ」

「先輩……それで、私はいつになったらレベルマックスになるんですか?」

「…………マシュは、ほら。今のままでも十分に強いし……その……次くらいを目指して善処します……」

「どうしてマスターが押されてるのかしらねぇ……」

 

 マシュにじっと見られ、思わず目を逸らすオオガミ。

 それを見て、メディアが呆れたような声を出す。

 

「完全に気圧されてるんじゃけど。ウケるんじゃが」

「真顔で言っているから、そうは見えないんだけど」

「そりゃ、やっぱり編成から抜かれたしの……儂、次はいつ活躍できるんじゃ…?」

「僕も抜かれたんだから、同じさ。まぁ、茨城童子以外の敵を出来るだけ排除しようじゃないか。裏方でも、やれることはやっておくべきだろう?」

「そうじゃな……まさかメディアに場所を取られるとは思わなんだ……」

「コストの問題だから仕方ないさ。ほら、そこにエリザベートも倒れてるだろう?」

「…………もうこれ、儂ら帰っていいんじゃね?」

「……マスターの近くに魔物や狂人を寄せ付けないようにするのも僕らの役目だよ。ほら、エリザベートもノッブも、行くよ」

「嫌じゃあ~! 儂はしばらくここで休むんじゃあ~!」

「私は、また、放置……アイドルの座をネロに奪われたわ……い、いえ。まだ奪われたと決まったわけじゃないわ……私もまだ可能性はある…! それに賭けるのよ、エリザ!」

「お主、その自信はどこから出てくるのじゃ……」

「エリザは昔からこんな感じだよ」

 

 エルキドゥはため息を吐きながらも、エリザベートを担ぎ上げて連れて行く。エリザベートも、担がれ易い様に体を動かしてエルキドゥに担がれる。

 古参組である二人は、昔からこういう関係を続けてきたのかと思うほどに相手の扱いになれていた。

 

「それで、余は後どれくらいあのアーチャーと戦えばいいのだ? そろそろアーチャーの相手は嫌なのだが」

「当然の如く私並みに頑張りなさいよ」

「エウリュアレレベルとか、どれだけ疲れると思ってるのさ」

「分かっていて私を使うとか、いい度胸してるわね、マスター? 全力で悩殺してから蹴り飛ばすわよ?」

「回避不可だね!! 全力じゃん!!」

「そう言ってるでしょうが……」

「うむ。奏者(マスター)がエウリュアレと仲がいいのはよくわかった。うむ、それはそれでいいのだが、結局どれだけ回ればいいのだ?」

「いや、正直明日になれば流石に変わるだろうから、今日さえ乗り切れば何とかなると思うよ」

「ふむ、そうか……では、残っているBPも少ない事だし、これが最後という事だな!!」

「うん。じゃあ、行こうか!」

「うむ!」

「あいよ!」

「面倒ねぇ…」

「任せてください、先輩!」

「戦うのは私ではないから、行く必要は無いと思うのだけど……」

 

 そう言って、オオガミ達は本日最後の茨木童子を倒しに行くのだった。




 はい。一日で頑張った方だと思います。フォウ君、消えたし。
 まぁ、現実はネロは若干の攻撃と、フレンドへのバフ要員だったんですけどね。それでも30万以上の威力は出していたから、戦力ではありましたよ。


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鬼ごろしマジ辛い(余では威力が足りない…!!)

「ついに! ついに弓ではなくなった!! 余はもう一撃で倒れたりとかしなくなった!!」

「集中攻撃は除くけどね」

「普通に考えて、茨木童子さんの攻撃を受けたら無理ですから」

「アタシも普通に辛いからねぇ」

「クリティカルさえ入らなければ何とかなるでしょ?」

「そうよ。どうして私が戦う事になってるのかしら」

「そもそも、私もメディアもコストの為に置かれてるだけのはずなのよね……」

 

 ドヤ顔で胸を張るネロに、苦笑いで言うオオガミ。突っ込むマシュとドレイクは、受けた集中攻撃を思い出して嫌な顔をしていた。メディアとエウリュアレは、そもそも前線に出る事が予定外と言っている。

 

「イベント礼装もそろそろ揃ってきましたし、一回鬼ごろし級に挑んでみますか?」

「ん~……一回行ってみるかなぁ……そろそろ瓢箪も欲しいし……でもなぁ、リスクが高いんだよねぇ……」

「らしくないねぇ。アタシらのマスターなら、もっと胸を張って行くと言いな」

「ちょっと待ちなさい。そんなことを言ったら、こいつの事だから確実に行くとか言い出すわよ?」

「何か問題かい? 一度挑んで砕け散ってみるのも一興さ。せっかく無茶できる体になったんだ。やれるだけやってみようじゃないか」

「う、うぅ……えぇ、良いわよ。私も全力でやってあげるわよ……!」

「これは私も手伝わなくちゃいけない感じよね……」

「うむ!! これはもう決まったも同然だな! 行くぞ奏者(マスター)!!」

「よし! じゃあ行こうか!!」

 

 先に走っていくネロとオオガミを追いかけるマシュ達。

 鬼ごろし級に挑むのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ぬおわぁ……流石に予想以上に強かった…!」

「両腕は倒したから瓢箪は手に入ったけど、キャスターじゃなかったら正直キツイ……」

「全体高火力がドレイク船長しかいないのも問題ですね……」

「アタシの次に高い攻撃力を持つ全体宝具サーヴァントは、ナーサリーだからねぇ……アサシンとかが出てきたら流石に無理だよ」

「だよね……今日が最初で最後かなぁ……」

「結局、鬼なかしが安定してるのよ。帰りましょう、鬼なかしに」

「そうね。エウリュアレの意見に賛成よ。こんな痛い一撃をもらうのなんか、嫌だわ」

「エウリュアレさんとメディアさんだけですから。そんなに喰らってないのは」

「余とマシュは、毎度の様に倒されておるわ」

「アタシもたまに倒されるからねぇ……」

 

 結局、体力を半分ほど削ったあたりで全滅し、帰って来たのだった。

 倒れたまま話す彼らは、中々奇妙な集団だった。

 

「はぁ……とりあえず、今日はもうキャンプ張って寝よう。明日に備えるぞ~」

「そうですね。BPもほとんどありませんし、そうしましょう」

「町の目の前でキャンプをするなんて、誰も考えないでしょうね……」

「仕方ないわよ。下手に屋内に入った方が危険なんだから」

「まぁ、よくある事さ。アタシらも、キャンプを張ってマスターが寝たら休もうじゃないか」

「そうね。さっさと済ませちゃいましょ。ネロも、いつまでもそこに寝てないで」

「うぅ~……余では力不足か……いや、この戦いが終わるまでには何とか倒せるようにする…!!」

「はいはい。じゃあ、そのためにも、早く体を休ませなさい。英霊って言ったって、無尽蔵に戦えるわけじゃないのよ」

 

 そう言うと、全員はキャンプの準備を始めるのだった。




 フレンドの力を借りて半分ですからねぇ……強いんですけど……どうやったらあれが倒せるのか、不思議でならないです。やっぱスカサハとかジャックとかカーミラさんとかがいないとダメなんですかね……
 特攻欲しいよぅ……


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アサシンとか……辛いよ…(アタシが活躍できるような所じゃないよ思うけどね?)

「アサシンとか、苦手だよ……」

「しっかりするのだ! ドレイク! そなたが倒れたら、誰が余に宝具威力アップと攻撃力アップをかけるのだ!」

「完全にドレイク船長を攻撃力上昇要員として見ていますよね、ネロさん」

「そりゃ、アサシン相手にしたらそうなるよ」

「案外、貴方も無慈悲よね」

「失礼な。俺はちゃんとアタッカーとしても運用してるから」

「そういう問題じゃないと思うのだけれど」

 

 今にも消えそうなドレイクを必死でとどめようとするネロ。それを見て呟いたマシュにオオガミは反応し、エウリュアレに突っ込まれる。

 

「ノッブもメディアも、大変ねぇ」

「ナーサリー……ハブられたからってこっちに来たらお主も傍観者毒に侵食されるぞ」

「そうよ。こっちにいてもそんなに楽しい事は無いのだから、向こうに行って混ざってくればいいじゃない」

「無理よ。結局、攻撃力が足りなくて、ドレイクの代わりは勤められなかったもの」

 

 落ち込んでいるナーサリーを見て、どうしようかと考えるノッブとメディア。

 

「そうじゃったか。いや、それは礼装が足りなかったからだって叫んでおるように見えたんじゃが」

「事実叫んでいたわよ。だから、ナーサリーもそんなに卑屈になる事は無いでしょ。礼装さえ完成すれば戦力なんだから」

「最悪、コスト問題なら部屋に籠っておるアンデルセンを引っ張ってくれば良いだけじゃしな」

「そうなのだけど……っていうか、傍観者毒ってなぁに?」

「それは……あれじゃ。こうやって見ているのがだんだん好きになってくるという奴じゃ。最悪当事者じゃなくても良いんじゃないかとか思い始めたら末期じゃからな」

「ふぅん? 難しい事は分からないわ」

「その方が良いじゃろ。さて、じゃあ、儂は見回りに行くかの」

「あ、私も一緒に行くわ。ノッブと居た方が楽しそうだもの」

 

 立ち上がったノッブについて行くナーサリー。編成に組み込まれているメディアは追いかけるわけにもいかず、見送るのだった。

 

「はぁ……それで、アタシは礼装に余裕が出来るまで戦うのかい?」

「そうだね、そうなっちゃう。なんだかんだ言って、ドレイク船長が強い事に変わりはないし」

「そうかもしれないけど、まぁ、任せな。全力でやってあげようじゃないか」

「お願い。今日は次で終わりにするけど、明日からも頼むよ」

 

 先ほどの状態から少し回復したドレイクはそう言うと、差し出されたオオガミの手に掴まり立ち上がる。

 

「それじゃあ、最後のアサシン部隊だよ。全力で叩き潰そうか」

「うむ! 余に任せよ!」

「援護は任せてください、先輩」

「ナーサリーの為さ。やってやろうじゃないか」

「明日には楽になるのでしょうし、やってあげるわ。感謝しなさい」

「あまり気は乗らないけど、出来るだけの事はするわ」

「それじゃ、全員、出撃」

 

 そう言って、彼らは再度茨木童子に挑むのだった。




 悔しい事に、ナーサリーを運用できなかった…!! 悔しい…!!
 やはり限凸礼装が無いとキツイ感じ……明日には遮那王限凸を一枚作るんだ…!!


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ヘラクレスはやっぱり最終兵器(ここは余の活躍の場ではないな)

「グオォォォォォォォォォ!!!!!!」

「つ、強すぎるであろう!?」

「ふははは!! やはりヘラクレスが最強よぉ!!」

「ひぅ……わ、私なんかがいても役に立つんですか……?」

「マシュの次に優秀な盾でしょう?」

「ううぅ……殴られるのは嫌なんですけど……出きる限り頑張りますね」

 

 両手を上げて叫ぶヘラクレスに、涙目で嘆くネロとドヤ顔で言うオオガミ。パッションリップの不安げな呟きは、エウリュアレが返答することで解決する。

 

「先輩。ドレイク船長はどうするんですか?」

「しばらく休憩! まぁ、もしかしたら次は無いかもしれないけどね!」

「そうですか。じゃあ、しばらくはこのパーティーなんですね」

「うん! 待機してもらってた皆には悪いけど、一回カルデアに帰って休んでもらうよ。ここだと、そんなに疲れも取れないだろうし」

「了解です。では、伝えてきますね」

「あ、いや、自分で行くよ。こういうのは他人に任せない方が良いだろうし」

「それもそうですね。では、私はこちらを見ておきます。皆さんが暴れないように」

「うん。任せたよ、マシュ」

「はい! 行ってらっしゃいませ、先輩!」

 

 オオガミはマシュの言葉を聞いて、ぼんやりとしている待機組の方へと向かっていった。

 

「ぐぬぬ……ヘラクレスめぇ……余の活躍の場を奪いおって……!」

「まぁ待ちなさいネロ。今でこそそんなことが言えるけど、本気で耐久戦をするときは、貴方も主戦力になるのよ?」

「な……なに……!? 余が、耐久の要だと……? こう、派手なのではないのか?」

「派手な戦いなんて、うちのマスターはあまりしないわ。今回が特別なだけよ」

「そ、そんな……」

「絶望してる場合じゃないわよ、ネロ。本当の地獄は、まだ始まってすらいないわ。だって、貴方、まだ一回も耐久をしたことがないでしょう?」

 

 まるで、ネロを慰めようとしているように見えなくもない状況。しかし、マシュはそこはかとなく違和感を覚える。

 

「そう言われれば、確かにそうであった……余は、あの魔性菩薩の時も、入れられていただけではないか……!」

「そう、戦いは始まってすらいないわ。これからどのような敵が出てくるか。主に、今回の高難易度の敵によって、誰がメイン戦力になるのかが決まるのよ……!」

「つ、つまり……そこで運良く余が活躍できる敵になれば……!」

「えぇ、そこは貴方の独壇場(ステージ)よ……!」

「そうか……余は、そもそも戦う場所が違うのだな……!!」

「えぇ、えぇ……まだ、貴女が全力を出す場所ではないわ……!!」

「なるほど……目が覚めたぞエウリュアレ! 余は、まだ本気を出す場所ではないという事だな!!」

「えぇ、そうよ…!!」

 

 そこで、ようやくマシュは気付いた。彼女の目的に。

 つまり、

 

「(エウリュアレさん……道連れを増やすつもりです……!!)」

 

 明らかに、耐久地獄への道連れを増やす作戦だった。そうすれば、上手くすれば自身が出なくても済むという考えなのだろう。

 しかし、ネロが入れられないことはあっても、エウリュアレが入れられないことは無いのではないかと思う。こう、コスト的な意味で。

 

「お待たせ。って、なんかすごいネロがやる気だね? 何かあったの?」

「えっと、エウリュアレさんが――――」

奏者(マスター)よ! 余は気付いたぞ!! 余が本当に活躍するのはこのような場ではないと! よって、余は今回の活躍の場をヘラクレスに譲ってやることにした!」

「そ、そう? それならいいんだけど……本当に何があったの?」

「なに、エウリュアレが余に教えてくれたのだ。その活躍の場はこのような所ではないと」

「エウリュアレが…?」

 

 ネロの言葉に反応してエウリュアレに目を向けると、面白いものを見る様な目でネロを見ているエウリュアレに気付いた。

 その事から、大体の状況を把握する。

 

「よし。じゃあ、ネロは次の戦いのときに活躍してもらおう。茨木童子戦はヘラクレスに任せよう」

「うむ! 余は頑張るからな!」

「その意気だ! じゃあ、今日最後の茨木童子だ! レッツゴー!」

「おー!!」

 

 元気いっぱいのネロを連れ、オオガミ達は再び茨木童子に挑むのだった。




 感想で教えてもらった編成が恐ろしく強くて、たまに削り切れないけど完全に安定して戦える……攻撃力が違かった……
 教えてくださった方、本当にありがとうございます<(_ _)>


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おにぎりが余ってるんだけど(消費してないだけです。先輩)

「しっかし、未だに終わらないねぇ……やっぱり、おにぎり食べないとかなぁ……」

「むしろ、どうしてここまで食べてないのかが気になるんですが」

「ただのおにぎりが26セット。金色のおにぎりが8セットもあるわよ…?」

「どうする? 食べるのか?」

「あの金色のおにぎり……本当に食べられるんですか……?」

「マシュの握った金色カレー味だぞ! 食えないわけないだろ! というか、食べたから!」

「た、食べたんですか……?」

 

 おにぎりを前に声を上げるオオガミ。パッションリップが驚くが、それ以前に、どうやって金色にしたのかが気になった。

 ちなみに、一人一個で一セットである。

 

奏者(マスター)。余も食べたいのだが、良いか?」

「ん~……良いか。じゃあ、食べようか」

「じゃあ、余はこれだな! いただきます!!」

「じゃあ、私はこれをもらうわ。ここ最近お菓子が食べられてないから不満だけども」

「私はこれで。でも、私が握ってないのもあるんですが、誰が作ったんでしょう?」

「一気に不安になったんですけど、本当に大丈夫なんですか? このおにぎり。あと、すいません。誰か取ってください……私だと手が大きくて取れないです」

「グオォォォォォォォォォ!!!!」

「ヘラクレス、叫ばない。っと、じゃあ、これでいいかな。はい」

「ありがとうございます、マスター」

「どういたしまして。まぁ、自分で食べられないだろうから食べさせてあげるからちょっと待ってて」

 

 パッションリップの隣に立っておにぎりを口元に運びながら、自分の分のおにぎりを食べるオオガミ。

 それを見て、ヘラクレス以外の他のサーヴァントからの視線が若干鋭くなった気がした。

 

「マスター。私が代わってあげても良いわよ? パッションリップとはあんまり話さないから、こういう機会に話すのもいいかなって思ったのだけれど」

「エウリュアレはパッションリップみたいな性格の人を見ると、遊ぼうとするでしょ。さすがにそんなことをしようとする人に任せられないでしょ」

「…………中々ひどい言われようね。私、そこまでひどいかしら……」

「自覚が無いならなおさらダメだと思うんだけど?」

「貴方……私が何言われてもあまり反応しないからって何言っても良いと思わないでよ? 普通に傷つくんだからね?」

「それなりに真面目に応対してるつもりなんだけど……」

「それでこの対応……私が何したっていうのよ……」

「そりゃ、無理やりお菓子を食べさせてくるような人に言われましても……」

「そこか……!!」

 

 そこまで言われて思い至ったのか、悩まし気に頭を抱えるエウリュアレ。

 

「先輩。私も食べさせてもらっていいですか?」

「マシュも? 別にいいけど……どうしたのさ」

「この前は先輩に食べさせてあげたので、今度は食べさせてもらいたいなぁって思いまして」

「な、なるほど……えっと、次の時でいいかな…?」

「むぅ……仕方ないです。今回はパッションリップさんに譲ります……約束ですからね?」

「りょ、了解」

 

 約束してしまった……と後悔するが、マシュの嬉しそうな顔を見て、まぁ良いかと思うオオガミ。

 

「奏者よ。余にはいつ食べさせてくれるのだ?」

「ネロ……お前もか……」

「なぜだ! そこは、動揺するところであろう!? なぜ落胆の声なのだ!?」

「いや、あの流れだったらなんとなく予想が付くというか……惜しい。すでに乗り遅れてた」

「くぅっ……! 一手遅かったということか……!」

「そういうこと。まぁ、マシュの後でなら出来るよ」

「本当か……!? なら、その時に頼むぞ!」

「はいはい。じゃあ、次の戦いも頑張ってよ?」

「うむ! 任せるがよい!!」

 

 そう言うと、ネロは嬉しそうに食べるのだった。




 なんか、ハーレム系の雰囲気が若干漂ってたぞ……?これはダメですね。次回でギャグ回をして帳尻を合わせねば……ハーレム要素は無かったことにせねばならぬのです……(話は消さない)


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余は退屈なのだが(そりゃ前線に出ないしね)

「ふぅ……何度も同じ戦いをしてると、だんだんと疲れてくるね」

「そうですね。というか、結局おにぎりは食べないんですか?」

「ん~……時間かかるからねぇ……一回の戦闘でかかる時間が違うよ」

「というか、やっぱり私たちは出ないじゃない。私としては良いけど、ネロが暴れそうよ?」

「うむ! やっぱり暇死しそうだ!! 奏者(マスター)!! 何かないのか!?」

「そんなこと言われてもねぇ……ゲフッ!」

 

 どうしたものか。と地面に座りながら考えるオオガミ。

 そんなオオガミの後ろから抱き着くネロ。

 

「ちょ、ネロさん! 何してるんですか!!」

「むぅ……さすがの余も、暇すぎたせいで疲れておるのだ。これくらい良いであろう?」

「それは……良いんでしょうか?」

「それを尋ねられても……まぁ、俺は良いんだけども」

「まぁ、マスターが良いなら良いんじゃないの?」

「そうですねぇ……別に、私たちが何か言う事でもないですし」

「ふふふ……これで余を邪魔する者はいないという事だな」

「むむむ……先輩。無理に受け入れなくてもいいんですからね?」

「うん、まぁ、次に茨木童子に突撃するまでの短い間だし、良いかなって」

 

 にやりと笑うネロに若干不満そうなマシュ。オオガミは苦笑いで答えるが、何となく嫌な予感がしてきた。

 

「むむぅ……じゃあ、先輩。私も良いですか?」

「えっ? ど、どこに来るのさ…?」

「それは……じゃあ、ここで」

 

 そう言ってマシュが座ったのは、オオガミの膝の上。

 重いとは言わないが、身長が身長なだけに、目の前がほとんど見えない。

 

「これ、どういう状況……?」

「あら、良いじゃない。ある意味英雄らしいわよ。こういうところで発揮する様なモノじゃないけど」

「エウリュアレの言葉にすごい棘がある気がするんだけど……」

「むむむ……私もちょっとだけ混ざりたいです……」

「止めなさいリップ。今あそこに突撃したら、ただじゃ済まないわよ?」

「た、確かに……二人とも、目が怖いです……」

「でしょ? だから、アレは遠くから見てるのが一番よ」

「なるほど……」

「ちょっとエウリュアレ? パッションリップをそっちに持って行かれると、俺を助ける人がいないんじゃない?」

「あら、助けてほしいの? 救助って名目で絡んでほしいだけじゃなくて?」

「違うってば。これだと、次に何時出れるのか分からないから教えてほしいんだよ。この状態のマシュは大体ポンコツ化するって皆言ってるから」

「ひ、酷い言われようです! 私は全然そんなことないですから! 変な事言わないでください!! 誰ですかそんな噂を広めているのは!!」

「エルキドゥとエリザベートがそんなことをぼそっと言ったのが始まりで、広めたのはノッブよ。めちゃくちゃ楽しそうに広めてたわ」

「あぁ、そこから来てるのか……」

「分かりました。帰ったら信長さんは叩きまくります。容赦しませんよ」

 

 酷い言われように反応して怒るマシュ。とりあえず、怒りの矛先はノッブに向くことで一時保留という事になった。

 

「あぁ、そろそろ溜まるわね。行くのかしら?」

「あ~……うん、行こうか。ってことで、離れてもらえると助かるんだけど」

「むぅ……仕方ない。ここは諦めて離れようではないか。それなりに休めたしな」

「感覚的に短い時間でした……残念です。これが終わった後にもう一回お願いします。先輩」

「ぬわ!! マシュめ……そんなことが許されると思っておるのか……!! 余もお願いしたいのだが!!」

「えぇ~……仕方ない。今日だけだよ?」

「ありがとうございます! 先輩!!」

「分かった!! よし、これで次の戦闘も乗り切れるぞ!!」

 

 異様に元気になった二人は、天高く拳を突き上げると、それぞれの武器を構えて突撃していくのだった。

 

「…………いや、ネロは戦わないでしょ?」

「エウリュアレ。それは言わない方が良いんだよ」

「……まぁ、元気になったから良しとしましょうか」

 

 エウリュアレは一度大きくため息を吐き、オオガミと共に先に向かっていったマシュ達を追いかけるのだった。




 ううむ。ネタが切れるとこっち方面の話になってしまう……もう完全に同じことの繰り返しですからね……ヘラクレス無双ですよ。宝具・バスター・バスター・エクストラで150万を削る時がありますし。
 でも、何となく対応が家族っぽい所があるんですよね……完全にマシュやネロを恋愛対象として見てねぇぞコイツ。


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高難易度に意地になる事ってるよね(だからって、令呪3画と聖晶石1個も使わないでください)

「ぬおおぉ……余は、余はもう疲れた~!!」

「何よアレ……ほぼ私たち、即死じゃない……」

「全然、遊べなかったわ……何もできなかったもの」

「先輩……どうして変なやる気を出しちゃったんですか……」

「し、仕方ないじゃない!! 呼符が欲しかったんだもん!!」

「だからって、令呪3画と聖晶石一個、使います?」

「まぁ、コンティニューは二回までなら、許容範囲……でしょ?」

 

 カルデアに帰って来るなり、休憩室のソファーに飛び込むネロ。椅子に座り、机に伏せるエウリュアレ。

 不満そうな表情でちびノッブを抱きしめるナーサリーに、オオガミに呆れた目を向けるマシュ。

 

「というか、未だに瓢箪が終わってないんだよね……」

「イベントは明日までですよ? 先輩」

「そうなんだよ……なので、まだ茨木と戦う事は確定してるわけです。ちなみに、召喚出来てたら出撃は取り消しでした」

「貴方、本当に自分の心に忠実よね……」

「仕方ない。茨木と見せかけてベオウルフを変わり身にした茨木が悪い」

「完全に八つ当たりじゃないですか」

「ちゃんと得のある八つ当たりしかしないから問題ないね!!」

「八つ当たりという行為自体が問題なのでは……?」

 

 八つ当たりの原因は本当に起こったことなので、マシュは何とも言えない表情をするが、やはりそれ自体がどうかと思うのだった。

 

「う~ん……今の話から、明日はおにぎりを食べまくて突撃し続けるのよね?」

「そうなるね」

「そう……ヘラクレスもマシュも、大変そうね」

「一番不憫なのはパッションリップさんかと……」

 

 毎度出ると同時に茨木の宝具を受けて倒れるパッションリップを思い、マシュは呟く。

 そんな話をしていると、休憩室の扉が開き、ノッブが入ってくる。

 

「おぅ。マスター達も帰ってきておったのか」

「さっき帰って来たばっかりですけどね」

「そうじゃったか。まぁ、お帰りなのじゃ」

「ただいま。ノッブは何してるの?」

「儂か? 儂はあれじゃ。ナーサリーに作った物と同じようなものを作っておるよ。まぁ、まだ図案段階なんじゃが。素材も自力調達じゃし」

「そ、そうなのか……大変なんだね。まぁ、楽しそうだからいいけどね。頑張ってね」

「うむ。というか、マスターも何か作ってみたらどうじゃ? 中々楽しいぞ?」

「いや、手の空いた時はやってるけども、皆みたいにそんなに時間取れないんだよね」

「むぅ……なら仕方あるまい。諦めるとするか」

 

 ちょっと残念そうな顔でノッブは言い、そのままエウリュアレの隣に座る。もはや定位置だった。

 

「さて、と。明日は瓢箪を集めないといけないから、早めに寝るかな」

「む? まだ終わっておらんのか?」

「うん。というか、これからが本番?」

「なんじゃそれ……中々の苦行じゃな……」

「瓢箪自体は全然集まってないからね……明日一日使って終わるかどうか……」

「まぁ、その、なんじゃ。頑張るが良い。お休みじゃ」

「うん、お休み。また明日ね」

 

 その場にいる皆は、それぞれオオガミに挨拶し、オオガミはそれに返答した後、部屋を出て行くのだった。




 コンティニューは二回までは許容範囲だと思うのです。それ以上は流石に不味いと思うのです。まぁ、聖晶石使った時点でかなり不味いんですけどね。
 本当、何時になったら茨木ちゃんは出て来てくれるんです…? ストーリーガチャでも出るって知ったから、ちょっと心は軽くなったけど、それはそれ、これはこれ。なんですよ……


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集まらない瓢箪(概念礼装が足りないというのか…!!)

「お、終わらぬ……!!」

「今日が最終日ですよ……どうするんですか?」

「どうするも何も、気合で乗り切るしかないでしょ……」

「完全に気合でどうにかなる領域を超えてるわよ」

「辛い……戦いです」

「グオォォォォォォォォォ!!!!」

 

 おにぎりを食べながらそんな会話をするオオガミ達。

 すでにヘラクレスを除き、へとへとの全員。瓢箪の集まりはあまり良くなく、周回もそれほど捗ってはいなかった。

 

「うぅむ……どうしたものか……」

「大丈夫! おにぎりはまだあるからね!!」

「先輩。死んでる目で言われたら大丈夫と言う感じがしないんですが」

「中々、ギリギリの戦いよね……」

「時間が迫ってますしね。大丈夫なんでしょうか……」

「ここ最近にしては珍しいギリギリよね……ここ最近は結構余裕をもって集め終わっていたのに」

「SE.RA.PHの事を言ってたりする?」

「えぇ、まぁ。最近のイベントだと、それよね」

「う~ん……あれは、単に開催期間が長かったから余裕持ってただけだからね。それ以外だと結構辛いよ?」

「そうかしら……? 今までの感じだと、ここまでアイテムが交換出来てなくて切羽詰まったのはあまり無かったと思うんだけど」

「そうだっけ? 結構ギリギリの奴、あったと思うんだけど。むしろアイテムを最後まで採り切れなかったのとかも」

「そう言われれば確かにそうね……でもまぁ、最近にしては珍しい事に変わりはないわ」

「余裕あったのはSE.RA.PHだけだと思うんだけど……まぁ、良いか」

 

 そう呟くと、オオガミは残りのおにぎりを口の中に放り込み、立ち上がる。

 

「さてと。まぁ、最後まで採り尽すのは無理だとしても、出来る限りの事はしようじゃないか。ガンガン行こうぜって感じで」

「はぁ……まぁ、貴方が諦めないことなんて、分かり切っていた事よ。手早く終わらせましょ」

「そうですね。諦めるなんて、私達らしくないです。全力で行きましょう」

「うむ。余もここで諦めるとか、許せんからな。ゆくぞ奏者(マスター)!! 余達の戦いはこれからだ!!」

「すごい打ち切りフラグが建ったんだけど。ちょっと待とうよ。そのセリフは禁句だと思う」

「大丈夫ですよ、先輩。何とかなりますって」

「マシュまで悪乗りしなくていいからね? むしろ、乗られるとクリアできない可能性が上がるんだけど?」

「まぁ、頑張りなさい。マスター」

「え、えぇ~……」

 

 フラグを建てまくるネロをマシュに頬を引きつらせるオオガミに天使に見える悪魔のような微笑みを向け、エウリュアレは先に行く。

 

「うぅむ。不安があるけど、とりあえず、また回ろうか」

「うむ!! 任せるが良い!!」

 

 ネロの威勢の良い返事と共に、彼らは再度茨木童子に挑むのだった。




 これを書いてる途中で、概念礼装目当てにガチャ引いたら唐突な茨木童子。一瞬書き直すかと考えて踏みとどまった自分を褒めてやりたい……
 酒呑童子? 来ないって思っているので期待してません(血涙


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日常
吾、あんま歓迎されてない?(そりゃあれだけ暴れてたらそういう雰囲気にもなると思う)


「吾が来てやったぞ」

 

 この言葉は、休憩室の空気を張り詰めさせる。

 妙な威圧感と共に入ってくる茨木童子。今回のイベントで大暴れした本人である。警戒しないわけがない。

 しかし、

 

「のぅエウリュアレ。それはなんじゃ?」

「チーズケーキよ。貴女も食べる?」

「そうじゃなぁ……ネロはどうする?」

「もちろん、余も貰うぞ」

「あ、あの……茨木童子さん、来てますよ?」

「んあ? いや、あやつの担当、儂じゃないし」

「そうよそうよ。ああいうのはノッブで間に合ってるわ」

「うむ。鬼はエルキドゥと土方で間に合っておる」

 

 マイペースなノッブとエウリュアレ、ネロの前では特に意味をなしていなかった。

 さしもの鬼も、このカルデアにおいて、エルキドゥと土方の前には霞んで見えるらしい。

 そして、そんな会話に頬を引きつらせる茨木童子。若干怒りよりも先に涙が出かけたのは秘密だ。

 

「吾を無視するとは、中々度胸があるな……」

 

 そう言って、茨木童子が手を上げた時だった。

 

「茨木童子。これ以上暴れるなら、縛り上げるよ?」

「なんだぁ? このガキは。休憩室で暴れるとはマナーがなってねぇな。叩き潰すぞ」

 

 背後から放たれた威圧感に、思わず硬直する茨木童子。

 当然、背後にいるのはエルキドゥと土方である。

 

「うむうむ。やってしまえ、エルキドゥ」

「散々余を倒しまくったからな。そろそろ報いを受けても良いだろ」

「正直、それを言っていいのはほとんど攻撃せずに前線に出た瞬間に宝具を受けて退場したリップだけだと思うのだけど」

「私はその、そこまで怒ってませんし……」

「優しいのね。まぁ、本当に優しいのかは置いておくけど」

 

 エウリュアレは、皿の上にあったチーズケーキを食べ終えると、新たなお菓子を探しに行ってしまう。

 どうすれば良いのか分からなくなってきた茨木童子は、とりあえず道を開け、エルキドゥと土方を通す。

 それを見たノッブはため息を吐くと、

 

「ほれ、こっちに来ると良い。そんなところにおっては、話も出来んだろう」

「……良いのか?」

「良いも何も、来いって言っとるんじゃが……」

 

 茨木童子は少し悩んだのち、ノッブの隣の席に座る。

 

「まぁ、なんじゃ。さっきのは流石に儂もビビるわ」

「なんじゃアレ……人の威圧感じゃないぞ……」

「片方は神の兵器。もう片方は鬼の副長じゃしの……」

「流石の鬼も、やはり気圧されるのだな……恐ろしい……」

「本当にやばいわよね、あの二人。ほら、これでも食べて落ち着きなさい」

「むぐっ!? …………んくっ。これはなんじゃ?」

「水まんじゅう。口の中に押し込みやすそうなのを取って来たわ」

「完全に食べさせる気満々ですね、エウリュアレさん」

「まぁ、今回のはワザとなんじゃろうけど、やっぱり持ってき過ぎじゃろ」

「うるさいわねぇ……最後はマスターが全部食べるんだから良いのよ」

「どこに良い要素があるんじゃ。却下に決まっておろう。儂らで喰うぞ」

「吾も食うぞ」

「余も貰おう。皆で食べるというのも、そう悪いものではないしな」

 

 いつもの如く山の様に取ってきたエウリュアレの水まんじゅうを食べながら、彼女らは笑う。

 茨木童子を静かにさせるためだけにわざわざ威圧したエルキドゥと土方も、この様子を見てほっとした表情をしていた。

 その後、しばらく彼女らは楽しく談笑しているのだった。




 安定のノッブとエウリュアレとゆかいな仲間たち。エルキドゥと土方さんのコンビも安定してきた感じですね。我がカルデアの風紀委員は彼らに決まりですよ。
 しかし、茨木のキャラはこれでいいのか……完全に出落ちなんですけど。不憫担当なんですかね?


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吾は洋菓子が食いたいのだ!!(私が茨木にお菓子を食べさせる邪魔をするのなら、ノッブでも容赦しないわ)

「のぅエウリュアレ!! これは何ぞ!?」

「シフォンケーキよ。食べてみる?」

「うむ! 吾は食べてみたい!」

「なら、これも乗せちゃいましょ。大丈夫。残ったらノッブやマスターに押し付ければいいのよ」

「なるほど……」

「何変なこと教え込んどるんじゃ、この駄女神」

 

 本日のお菓子を取っていると、背後から殴られるエウリュアレ。

 振り向きながら睨むと、そこにいたのはノッブ。当然の如く、若干怒っている。

 

「何よ。私は変な事言ってないつもりなんだけど」

「あからさまにおかしいじゃろ。何儂らの事を余り物を食べる奴ら扱いしとるんじゃ。お主はいい加減自分が周りに与えとる迷惑を考えろ」

「考えてるわよ。マスターや貴女が凄い苦笑いするじゃない」

「山じゃし!! あれ、山じゃし!! そりゃ苦笑いするじゃろ!!」

「みんなで食べるならあれくらい必要でしょ?」

「アレは多すぎじゃって……つか、たまにどうやって乗せとるのか疑問に思うのもあるんじゃが」

「それは、あれよ。気合」

「随分とまぁ適当なんじゃな……まぁ、良いんじゃが」

 

 反省の色が全く見えないエウリュアレに頬を引きつらせるノッブ。

 

「おいノッブ。吾は早くあれを食べたいのだ。退くが良い」

「む。茨木よ。次同じことを言ったらエルキドゥ送りの刑じゃぞ」

「何それ怖い。止めてくれ」

「気弱すぎるでしょ。というか、結局ノッブは何しに来たのよ」

「明らかに不穏な事をお主が茨木に吹き込んでおったからじゃろ。変なことを吹き込まずに普通に戻って来れんのか」

「やぁよ。明らかに茨木は私みたいな感じだもの。ちょっと気弱だけど、それはしばらくすれば慣れるわよ」

「茨木がここに慣れるのはいいんじゃが、お主と一緒にするのは絶対不味いじゃろ……」

 

 茨木の性格が酷い事になりそうだ。という意味を込めてノッブが言う。

 すると、

 

「甘味は何時になったら食べれるのだ……」

「……ノッブ。さっさと退いて。私はこれをさっさと茨木に食べさせるのよ」

「そうじゃな。儂も行くぞ」

 

 しゅん……とした表情をした茨木を見て、二人は机に向かい、茨木を座らせる。

 何となく、子供に甘い感じがする二人だった。

 

「それで、何を選んできたのだ?」

「今日は洋菓子中心よ。茨木のリクエストだからね」

「今更なのだが、本当に吾が食べても良いのか? 毒とか入ってたりしないだろうな?」

「しないわよ。というか、なんでそんな発想が出てくるのよ」

「あ~……茨木の逸話の一部にあったような……あれじゃ。確か酒呑童子と一緒に神便鬼毒酒を飲まされて一人だけ逃げきれた……んじゃったと思う」

「名前からして、毒みたいね。まぁ、そんなモノは無いから安心しなさいな。昨日だって大丈夫だったでしょ?」

「そ、そうか……? なら、食べるぞ。ほ、本当に食べるからな!」

「えぇ、どうぞ。早く食べないと口の中に入れるわよ?」

「それは昨日で懲りた。だから大丈夫だ。だからその右手に持ったものを置いてくれ……!!」

 

 ニコニコと笑いながらマカロンを口の中に突っ込もうとしているエウリュアレを全力で拒否し、そのまま先ほど取ってきたシフォンケーキを口の中にいれる。

 

「んんっ!! おいしいぞ! むぐむぐ。これはしばらく食べていたいな!」

「えぇ、えぇ。好きなだけ食べていいのよ」

「なんというか、本当に幸せそうに食べるのぅ……」

「見てて楽しいわね。さて、私も食べましょうか」

「やっぱり自分の分も取ってきておったんじゃな」

「当たり前じゃない。見てるだけだと、羨ましくなっちゃうでしょ」

「それもそうじゃな……どうせ残すんじゃろ。儂も貰うぞ」

「えぇ、構わないわよ」

 

 幸せそうな茨木を見つつ、二人は別に取ってきたお菓子を食べるのだった。




 あれ……? エウリュアレとノッブ……まるでふうhげふんげふん。何でもないです。
 完全に茨木が子供ですね。キャラ崩壊してる気がする。


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やっと、レベル上限に達したぞー!!(このカルデアも、着々と戦闘力が上がって来たな……)

「やっと……余のレベルが上限に達したな!」

「おー。ようやくか」

「私のレベルは何時止まるのかしら……」

「私はまだ上限に達してませんからね……71ですし」

「吾、まだ始まったばっかりだから分からんのだが」

「私達にしてみれば、皆さんの成長速度が羨ましいですよ……」

 

 とても嬉しそうな顔をしているネロに、ついにそこまで来たのかという表情を向けるノッブに、未だ止まることを知らない自分のレベル上限に頭を抱えるエウリュアレ。

 パッションリップは羨望の目を向け、茨木はよく分かっていないと物語る表情でバームクーヘンを食べている。

 マシュとしては、ちゃんと育てられている全員に羨ましそうな目を向ける。

 

「なんじゃ。マシュは最初からいたじゃろ? 何が羨ましいんじゃ?」

「えっとですねぇ……今でこそ、マスターは種火を使っていますが、アメリカ中盤までは全員レベル1だったんですよね……」

「…………あぁ、そう言えば、そんな時もあったわねぇ……あのときは私は戦力ですらなかったのだけど」

「エウリュアレさんはキャメロットからですもんね。ちょうど種火の重要性に気づいた頃だったと思います」

「そこら辺はエリザベートとエルキドゥの方が詳しいわよ。ヘラクレスもずっといたけど、話が出来ないから除外するわ」

「ナーサリーさんはロンドン後ですからあまりあまり体験してませんしね。デオンさんやドレイク船長も知ってますよ」

「……まぁ、なんじゃ。このカルデアの暗黒時代って奴じゃな。触れない方がいい奴じゃ」

「そうですね。聞かないのが一番です」

 

 思い出しつつ、その頃の辛さに遠くを眺める目になるマシュ。

 敵が強くなるのに、一向に強くなれない自分達。差は開く一方だったあの頃が懐かしいが、正直戻りたいとは思わないのだった。

 

「それで、今日は何をするのだ?」

「そうじゃな……ネロ。何かあるか?」

「そうだな……余はあれがいいな。ゲーム。この前の対戦のリベンジをしたい!」

「げーむ? なんだそれは?」

「まぁ、やってみれば分かるわよ。とりあえず果敢に挑むところから始めましょう」

「ノッブさん、異様に強いですからね……超必殺をカウンターしてきた上で超必殺を畳み掛けてくるとか、回避出来ませんよ…」

「儂、説明書読んだだけじゃし……やってれば慣れるじゃろ?」

「ぐぬぬ……しかし、余はあれから練習したのだ! 負けるわけにはいかぬ!」

「どうしてそんなにやる気なんじゃ……まぁ、受けて立つんじゃけどね!!」

 

 そう言うと、二人はテレビの前に向かい、セッティングを始める。

 

「吾もやってみようかな……」

「やっていいのよ? まぁ、勝てる保証はないけど」

「ふん。負けても泣いたりせんわ」

「そう? それならいいのだけれど。ほら、準備が終わったらしいわよ」

 

 完全に慣れ切った手つきで作業をする二人は、瞬く間に終わらせ、始める。

 内容は、時たまリアルファイトに発展すると言われる二人対戦ゲームだった。

 そこに乗り込んでいった茨木童子の運命やいかに。




 なお、数時間後に茨木はノッブを泣き落としにかかる模様。


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何時ぶりかのBBちゃんのターン!!(お主のターンはまだ来ないから)

『BB~~~チャンネル~~~!!!』

 

 突然響く声。いつの間にかテレビが占領されており、そこには不適の笑みを浮かべたBBが映っていた。

 それを見たノッブは、緑茶を飲み、

 

「おぅおぅ。中々無謀なことをしでかしたな、BB」

『ふっふっふ。そんな余裕の表情をしていていいんですかぁ? BBちゃん、本気出しちゃいますよぉ?』

「いやぁ……儂としては愉快じゃから問題無しなんじゃが、このカルデアにいる治安部隊舐めとらんか?」

『えっ。いや、あれです。さすがにあの二人もここまではこれないはずですし、大丈夫ですよ』

「神造兵器と誠の一文字を舐めてかかると痛い目見るぞ? 儂の経験談じゃ」

『いやいや……流石に無いです無いです。ここまで攻め込まれたらBBちゃん全力で困っちゃいますし』

 

 そんな時だった。おそらくテレビの中から、何かを破壊する音が響く。

 

『見つけました!! エルキドゥさん! 土方さん!! やっちゃってください!!』

『全く、ここには問題児しかいないね』

『おぅ。任せておけ』

『え、ちょっと待ってください! スタジオに無断で乗り込んで来ちゃダメですってば!! というか、どうやってここを見つけ出したんですか!!』

『極秘事項です!!』

「…………まぁ、ここにやってきた時点で、回避の出来ない運命よな」

 

 画面内で土方に取り押さえられ、エルキドゥの鎖によって拘束されたBBを見つつ、ノッブは呟いた。

 

「ふふふ。あの子、中々面白いわよね」

「明らかに無謀じゃけどな。もう少し防御を固めるべきじゃったな」

「それでもエルキドゥの探知能力は常軌を逸してるけどね」

「というか、なんでマシュさんも……?」

「後輩枠を奪おうとした罪から、たぶん何かする度に見つけ出されて叩かれる運命なんじゃよ」

「あぁ、なるほど。被るのは良くないですもんね」

「そうね。っていうか、何をするためにわざわざこんなことをしたのかしら」

「それもそうなんじゃけど……儂はそれ以上に背後が怖くて振り返りたくない」

「…………地獄のライブは近づいてきてるから覚悟を決めないとね……」

 

 そもそも、ノッブたちが珍しくテレビに向いていた理由のほとんどはそこにあった。

 背後であーでもないこーでもないと言い合っているのはネロとエリザベート。曰く、ライブをするのだそうだ。それのセッティング中とのことで、やる事も無いので何かしようとテレビをつけた瞬間の出来事なのだった。

 と、そんなことを話していると、どうやら一段落したようだった。BBは拘束を解かれ、厳重注意を受けて、さも何もなかったかのようにやり直すらしい。

 

『さて、ノッブさん。私は貴方達が何か面白そうな物を作っている間、ずっとゲームを作っていたのです!!』

「いや、あの時の乗り物作りに混ざりたかったのならそういえばいいじゃろ……手は足りなかったんじゃし」

「そうなの? 結構間に合ってたように見えたけど」

「まぁ、BBなら手伝ってもらった方が得が多いはずじゃからな」

「なるほどね」

『何ですかそれ! 私、結構やることなくて持て余してたんですが! って、違う違う。私はそんなことを言うためにこんなことしたんじゃありません。とにかく! 貴女には私と戦って貰います!! なんか最近、めっちゃ強いって言われてるっぽいですし!!』

「買い被り過ぎじゃろ。ってか、今更思ったんじゃが、なんで会話出来てるんじゃ?」

『それはあれです。アレがあれで、こうなって通じてる感じです』

「……もしや、うちのBBはポンコツなのか?」

「吾は今日始めて見たから知らんぞ」

「むしろ、ここに来たサーヴァントでポンコツじゃないのなんて、少ないんじゃない?」

『ひどくないですか!? 私、ポンコツじゃないですから!! 素敵可愛い後輩系デビルヒロインですから!!』

「そんなこと言って、開幕マシュとエルキドゥと土方に捕縛された子に言われても説得無いんだけど……」

「エウリュアレだって、お菓子食べてるだけじゃしな」

「そうだぞ。吾の方がマシじゃ」

「お主が一番ひどいわ」

「ひぅっ!?」

 

 未だにゲームの内容は明かされない。というか、もうなんとなくうやむやにしたい様に思えてきた。主にノッブたちが。

 

『むぅ……今からそっちに行きますから、待っててくださいね!?』

「お、ようやく来るか。なら、あやつらのライブの生け贄が増えそうじゃな」

「言い方が中々悪いわよねぇ……」

「吾は逃げるぞ。探すでない」

「逃がさないわよ?」

「い、いやじゃあああぁぁぁ!!!」

 

 ついに増える最恐コンビのライブの生け贄ににやりと笑うノッブ。逃げ出そうとした茨木はエウリュアレに捕まり、逃げる事は許されないのだった。

 その後、その休憩室には無数の屍が転がっていたらしい。




 ドストレートにうちのカルデアの真実を解明するエウリュアレ。我がカルデアにポンコツ以外がいると何時から錯覚していた……?(エルキドゥと土方は除く)


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これ、メイン戦力って儂らしかいないくね?(そこに気付くとは……じゃあ、ノッブは前線送りで)

「わははははは!! 儂の天下じゃああ!!!」

「茶々の天下だああああああああ!!!」

「吾、帰りたいのだが」

「そもそも、まだ仮編成だよ。まぁ、特攻サーヴァントだけ見るとこうなるんだけどね」

「主殿!! 本当に戦ってよいのですか!?」

「ふん……俺は出れねぇみたいだなぁ……」

「コスト的な問題だからねぇ……」

 

 概念礼装をまだ入れていないが、何となく、ダメな感じがするので、今回も土方さんは留守番となる。

 ちなみに、今回の編成は次回のイベントの為の編成で、礼装自体はイベントが始まってから考える感じだ。

 

「何時になったら戦えるんだかな……トレーニングルームは、そろそろ飽いてきた」

「まぁ、こっちとしても、早く土方さんを使いたいんだけどね……レベルの問題が一番デカいかな……」

「そこは仕方ねぇ。ここのルールに従うさ。精々、頑張ってくれや」

「うん。次までにはなんとかするよ」

「あぁ、任せた」

 

 そう言うと、土方は去っていく。

 

「なんじゃ……新撰組は出ないのか」

「茶々もビックリ。連れていくと思ってた」

「いや、だから、コスト上仕方ないし、戦力的な意味でも、茨木とレベルあんまり変わらないし、むしろ茨木を優先しちゃってるし」

「完全に贔屓じゃな」

「何々? 弱みでも握られてるの?」

「吾はそんなことせんわ。というか、もうお菓子を食べられればそれでいいのだが。だって、次のイベント、敵が鬼だし……」

「俺としては普通に土方さんよりも茨木を育てたいだけというか……レベルを90までするのに時間がかかり過ぎるというか……むしろ、茨木達後衛を戦わせる気は無いというか……」

 

 完全にノッブ達重労働発言。一体、どれだけ戦わせるつもりなのだろうか。

 

「なんじゃそれ! 完全に儂らをひたすら戦わすつもりじゃろ!!」

「茶々、まさかの種火だけじゃなくこっちでも過労死枠の可能性!!」

「主殿!! それ、私が暴れられないって事ですか!?」

「何も包まずに直接言ってくるね!? せめてそこは戦うって言わない!?」

「あまり変わらないと思います!! で、無理なのですか!?」

「可能性の話だから!! 最悪、突破されることもあるから!!」

「なら……それを静かに祈るしかないという事ですね……」

「本人を前に堂々と言いおるな、こやつ……」

「伯母上、やっちゃおうよ。今なら倒せるって」

「えっ。戦ってくれるのでありますか? なら、遠慮なく行きますよ?」

「三人とも、何アホなこと言ってるのさ。どうせこれから戦う事になるってのに……」

「何を言っておるか。準備運動は重要じゃろ?」

「そうですよ。でないと、後々後悔することになりますよ?」

「…………あぁ、その域になって準備運動なのね……うん。トレーニングルーム行くよ?」

「吾はエウリュアレの所に行って良いか?」

「えっと、うん。まぁ、まだ時間はあるからいいよ。行ってらっしゃい」

「うむ! 行ってくる!!」

 

 今にも暴れそうな三人を後ろに、マスターは茨木を見送るのだった。




 あれ……うしわっかって、もともとこんなバーサーカーだったよね…? ライダーだけど。
 そして、安定のポンコツ可愛い茨木ちゃん。土方さんより優先なのは当然ですねっ!


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天魔御伽草子鬼ヶ島
また私がメイン戦力…(いい加減、儂も戦力入りしたいんじゃが)


「私……また、ここにいるわね……」

「安定の、儂はオマケじゃな……」

「仕方ないよ。攻撃力はどうしようもないし」

「上昇率……あってないようなもんじゃろ」

 

 鬼ヶ島第一の門。そこが今回の舞台だった。

 投げやりになってるノッブ。それとは対照的に、死んだ魚の様な目で呟くエウリュアレ。

 ボスが男性特性を持っている。全ての原因はそこにあるのだった。

 

「残酷よね……どうあがいても呼び出されるんだから……」

「大体のイベント、フル出場だよね」

「儂とは正反対じゃの。つか、儂ってまともにイベントに参加して無くね?」

「性能の違いって、ハッキリ出るよね。というか、そもそも敵が単体で出てくる方が多いよね」

「うん、まぁ、そういうことなんじゃろうなって思ってたが、ハッキリ言わんでも良かったと思う。もうちょっと言い訳しても良かったんじゃないか?」

「嘘は出来るだけつかない感じで!」

「だからと言って、フォローしない理由にならんじゃろ……」

 

 若干泣きそうなノッブ。それもまぁ、仕方ない。ようやく活躍できると思えば、当然の如くあまり使えない子認定され、代わりに出てきたエウリュアレが全てを屠っていくという状況だった。

 だが、エウリュアレは再び前線に出てきた時点で、最初から苦い顔をしていた。

 

「私……いつになったらイベントで休めるのかしら?」

「休めないじゃろ」

「休めないね」

「ノッブどころかマスターが否定してきたわ。これはあれね。俗にいう、ブラックってやつね」

「そうじゃな。まぁ、一部の奴等だけじゃろうけど」

「ねぇ……それさ、俺が休みを入れないって思われてる……?」

「……それもそうね。マスターが休んでる時は休むものね。よし、じゃあ、後で膝を貸しなさい」

「え、何するの?」

「その時になったら言うわ。ほら、早く今日の分を終わらせてきましょうよ」

「えぇ……めっちゃ不安だけど……まぁ、エウリュアレだし、大丈夫だよね」

 

 一体何をされるのか不安に思うオオガミ。しかし、先に進んでいくエウリュアレを無視するわけにもいかず、追いかける。

 

「いやぁ……儂、やっぱ場面が限られるのぅ……まぁ、へこたれておっても仕方ないか。完全に使われないわけじゃないしの。一応雑魚を倒すときだけは儂と茶々のターンじゃし、今はそれに甘んじるとするか」

 

 ノッブはそう呟いて、先に進む二人を追いかける。

 ちなみに、バーサクライダー牛若丸は、クイックが半減しているためお留守番となっているのだった。




 えっと、はい。エウリュアレが安定の強さでした。強化無し宝具で10万超えるんですね……礼装をつけたらどうなる事か……


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アーツ耐性?関係ないわ。女神の視線で一撃よ!!(儂の出る幕が無いんじゃが)

「……難しいわね」

「アーツ宝具対策してるセイバーとは……中々やるのぅ」

「信長さん。結構シャレになってません。これ、結構辛いんですよ?」

「余とノッブが戦うような場面にならんから、仕方なかろう」

「グオオオォォォォォ!!!」

「うん、いつもの特攻なんざ知らねぇ。全力で殴り倒すぞ編成だね」

「「マスターが言うか!?」」

 

 さも他人事のように見ているオオガミ。もちろん、こんな編成にしたのはオオガミなわけで、そんなことを言われるのも当然だった。

 

「というか、想像以上に攻撃力が出るんだけど……豆って怖いわね」

「そうですね……子鬼や邪鬼がアーツで一撃ですもんね……流石に私はそこまで出せませんが」

「その威力、儂も出せるのならいいんじゃが」

「ん~……というか、もしかしたら今回はノッブを出しても良かったんじゃ……?」

「なん……じゃと……?」

「ちょっと。それならなんで私がずっといたのよ」

「そりゃ、エウリュアレが男性相手に最強なうえ、相手がセイバーだからじゃない? たぶん、それは変わらないと思う」

「あ、うん。これは儂は出れないな。全体でバスターじゃし、NP全然溜まらんし」

「ちょっと、ノッブ。何諦めてるのよ。貴女が諦めたら私のお菓子タイムはどこに行っちゃうのよ」

「おい待てエウリュアレ。まさかお主、そのためだけに儂を戦わせるつもりじゃったのか?」

「当然。私は自由であるべきよ。この状況自体が異常じゃない」

「うむ。いつもの光景だな。少なくとも余はそう思うぞ」

「儂も同じじゃ。つか、お主はもう敵が女性だろうが関係ないじゃろ。セイバーか男性なら全部エウリュアレじゃろ」

「そんな訳……無いじゃない?」

 

 冷静に思い返し、確かに敵がどんなだろうが、大抵編成に組み込まれていることがあるという事に思い至り、完全に否定できないエウリュアレ。

 オオガミも、何とも言えない表情になっている。最近はマシュ並みの参戦率である。

 

「あ、そうだよ。エウリュアレ。今回の回復アイテムはきびだんごだよ」

「よし、じゃあ頑張りましょう。もうどんどん行きましょう。回復アイテムを無くす勢いで行きましょう」

「すごい手のひら返しじゃ……これが女神という奴か……」

「ノッブが言う事ではないな。奏者(マスター)!! もちろん余の分もあるのだろうな!?」

「このきびだんご……誰が作ってくださったんでしょうかね……今回は私じゃないんですが……物語的にはおばあさんですよね。誰なんでしょうか……」

「そんなこと今は関係ないわ。回復アイテムってことは美味しいことが確定してるの。あの金ぴかリンゴとかも、見た目に反して中々の絶品なんだから。さぁ、行くわよ皆!!」

「「「おーー!!」」」

「完全にエウリュアレが仕切っておる……鬼退治が終わった後が不安じゃな……」

 

 きびだんごが切れたとき、果たして女神はどうなってしまうのか。その時は女神が暴れまわることを願い、ノッブは恐ろしい速度で敵に突撃していくエウリュアレ達を追うのだった。




 きびだんごで釣れる女神……それでいいのかエウリュアレ。まぁ、もはや安定なんですが。


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ついに百万超えの宝具攻撃を見る事になるとは……(やっぱりエウリュアレは最高の女神だよっ!)

「はぁ……自分でやったことだけど、中々酷いわね……」

「ついにうちのカルデアにも百万越えが出たか……まさか最初に叩き出すのがエウリュアレとは思わなんだ」

「この時を予期してエウリュアレさんを育ててたんですね! さすがです、先輩!」

「いやいやいや。さすがに考えてなかったって。想定外の状況だよ」

「むしろ、そこまで考えていたら余も驚きなのだが」

 

 想像以上の高火力に驚くエウリュアレとノッブ。そして、それをさも計算付くでやったのかと目を輝かせるマシュに突っ込むオオガミ。そして、その攻撃力で容赦なく青鬼を葬っていくオオガミに感心するネロ。

 

「しかし、今回は珍しくアイテム使っておるのぅ……」

「美味しいじゃない。きびだんご。それを食べられるんだから、問題は何もないわ」

「きびだんごも茶も抱えて言われたら、説得力ありすぎじゃ」

「一仕事の後のきびだんごと叔母上の茶は美味いな! マスター! 茶々は別にこれで構わないよ!」

「うむ。確かに、きびだんごとノッブの茶は最高の組み合わせだな!」

「わざわざカルデアまで取りに戻ったんじゃ。当然じゃろ。むしろこれでブーイングが来たら迷わず撃っとるわ」

「ほらほら、そんな怒らないの。これでも食べなさいな」

「むごぁ!?」

 

 突然口の中にきびだんごを突っ込まれたノッブは、しばらくのたうち回った後、茶を一気に飲み干し、復活する。

 

「エウリュアレ!! 今の、下手したら儂死んでたじゃろ!!」

「やぁねぇ。ノッブが死ぬわけないじゃない」

「儂どういう風に見られてるんじゃ!? 軽く人外判定されてない!? 儂、一応気道潰されたら流石に死にかけるからな!?」

「あら以外。そのくらいで死にそうにないのだけど」

「一体儂はお主に取ってどんな化け物なんじゃ!?」

 

 窒息しても死なないとは、これいかに。さすがの英霊も辛いのではないだろうか。世の偉人の中でも、そんな死に方をした者がいてもおかしくは無い。

 

「まぁまぁ、ノッブよ。ほれ、茶でも飲んで落ち着くが良いぞ」

「うむ、まぁ、儂が点てた茶じゃけどな? ありがたく貰うぞ」

「ふふふ。なんだかんだ言って、ノッブも楽しんでるわよね」

「現状遊んでるだけじゃけどね」

「そりゃ、私たち、やられないもの。まぁ、たまにマシュが倒れちゃうけど」

「その……すいません。防御力が足りない時があって」

「別に、貴女が謝る事は無いわ。どちらかと言うと、管理しきれてないマスターの原因でしょ?」

「うぐっ……頑張ってはいるんだけど、やっぱり間に合わない時はあるんだよ……」

「まぁ、イジメたいわけじゃないし、これ以上は何も言わないわ。頑張りなさいな」

「うん、まぁ、出来る事は全力でやるよ。さて、じゃあ、そろそろ行こうか。ノッブ、出番だ。アーツ豆狩りだよ」

「おっと。儂のターンか。ということは、茶々もじゃな」

「頑張るぞー!!」

 

 そう言うと、三人は立ち上がり塔へと向かうのだった。

 

「っていうか、敵にランサーが多いから、伯母上は辛いんじゃ?」

「攻撃力アップ礼装実装系のイベントだと、クラス相性はそんなに関係ないんだよ。大体ゴリ押せるからね。まぁ、ダメージがデカい事には変わらないんだけど」

「なるほど。じゃあ、大丈夫なのか」

「分かっててやっとったんじゃな。さすがマスター。後で本能寺の中にご案内してやるぞ」

 

 完全にマスターを焼き討ちする気満々のノッブだった。




 もう、エウリュアレをメイン火力に添えて、周りで攻撃力上げて敵の防御力下げてで勝てるんじゃ……おかげでアーツ豆が枯渇しそう……


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儂のターン来たーーー!!(いつまでも あると思うな 出番の日 byノッブ)

「わはははははははははは!!! 儂の天下じゃああああああああああ!!!」

「叔母上暴走しすぎ」

「ノッブ……楽しそうね」

「そうですね。久し振りの晴れ舞台ですし」

「バスター豆も残っているから、しばらくはノッブの舞台だな」

「4連続大ボスエウリュアレ大戦争にならなかったね。流石に女性相手じゃ分が悪いし」

 

 ノッブの暴走を見て冷静に突っ込む茶々と、楽しそうに見守るエウリュアレ。マシュはその暴れっぷりに納得し、しばらく続くであろうノッブ無双を予期して自分が暴れられないという気持ちを隠しもしないネロ。

 なお、皆の反応を見ながら一人頷いているオオガミは、敵の編成によってはエウリュアレを組み込むつもりだったということは秘密にしておくのだった。

 

「けど……あまり威力は無いみたいね」

「エウリュアレさんみたいに皆が出せるわけじゃないですから。むしろ、あれくらいが普通ですよ」

「そう……ノッブならもう少し出ると思ってたのだけど」

「余もエウリュアレと同じくらい出したいのだが……流石に自信が無いからな……まぁ、一度挑戦はしてみたいが」

「そうだね。一回色々と試してみようか。明日も生き残ってるだろうし、その時でいいかな?」

「うむ!! 余は一向に構わんぞ!!」

「ちゃ、茶々はやらなくていいよね?」

「強制参加ではないから大丈夫。やりたい一部と入れたい一部だけだから」

「ちょっと待ちなさい。それ、遠回しに私を入れるつもりよね?」

「チョットナンノコトカワカラナイナ」

「露骨すぎます。先輩」

「まぁ、余は最初から分かっていたがな。明らかに、奏者(マスター)はエウリュアレを編成から抜こうとせんし」

「確かにそうですよね。エウリュアレさん、何があっても絶対いますもんね」

「そうじゃよなぁ……儂もそれくらい居たいものじゃ」

「ノッブ……帰ってきて早々、何アホなこと言ってるのよ」

「皆の心の叫びじゃと思うけどな」

 

 散々暴れまわり、疲れたのか帰って来たノッブ。その時の言葉にエウリュアレは突っ込みつつ、きびだんごを投げつける。

 それを咄嗟に掴むと、一度見てから口の中にいれる。

 

「それで、しばらくは儂がメインでいいんじゃろ?」

「そうだね。一応この場においては最強だし」

「そうかのぅ……最終的にはヘラクレスが全部持って行きそうなんじゃが」

「じゃあ言い換えよう。現状においては、だね」

「そうじゃな。まぁ、しばらくしたらエウリュアレの強さですらも霞むほどの強い攻撃を使える時が来るんじゃろうし」

「そうだねぇ……そうすればエウリュアレが休める時も来るんだろうけどね」

「それは嘘じゃな」

「どうせスキルMAX強化MAXレベル100になるのなんか目に見えてるからな。見栄はいらぬぞ」

「私……やっぱり一番最初に全性能MAXにされるって思われてるのかしら」

「一番最初に聖杯を使われてますしね」

 

 何となく、このカルデア最強戦力になるのが確定しているという未来が約束されているという状況を予感していたエウリュアレは、遠い目をして、きびだんごを食べる。

 

「よし。じゃあ、ノッブがいけるようになったら行こうか。準備はしていてよ」

「まぁ、準備も何もないんじゃけどね。むしろ、マスターこそ豆の準備は大丈夫なのか?」

「もちろん。大丈夫だよ」

「うむ。なら良しじゃ」

 

 そう言って、ノッブは茶を飲むのだった。




 でも、ノッブの方が周囲の敵を倒すには良いんですよね……宝具一発で一掃してくれますからね、ノッブ。ヘラクレスとどっちがいいのか悩むレベルですね。


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出たな黒幕!!(カルデアで争わないで!)

「むぅ……もう少し威力を上げたいのぅ……」

「開幕トータルダメージ200万叩き出しておいて、よく言うわ」

「ノッブがあんなに出せるとは思ってなかったからねぇ……」

「おかげで余の出番がなくなってしまった……」

「エウリュアレさんからすれば、嬉しい事なんですよね。ただ、赤豆がほとんど残っていませんね……」

「なに、調達も儂の役目じゃし、問題なかろう」

「ノッブがそれでいいならいいんじゃない?」

 

 カルデアに帰還してきた鬼ヶ島攻略組。

 それぞれ思うところはあるようだが、一応は終わったことにほっとしている。ただ、DPもアイテムも全然交換していないので、ある意味これからが本番なのだが。

 

「いやぁ……それにしても、結構楽しかったわね」

「そうじゃなぁ……儂も久しぶりに暴れられたしの」

「余は全く何もできなかった……い、いや、まだ高難易度が残っておったはず……!!」

「チャレンジクエストだけどね。って、同じか」

「たぶんそうですね。まだわかりませんけど」

「ククク。次も儂のターンかもしれんな!」

「ぐぬぬ……余も負けておれんな……!!」

 

 そんなことを言っていると、休憩室の扉が見えてくる。

 

「…………おいマスター。何時からおったと思う?」

「…………さっきだって思いたいなぁ……」

 

 そこにいたのは、源頼光その人である、

 

「召喚されたの、三日前なんですけどね」

「マスター。お帰りなさいませ」

「わぷっ!?」

「せ、先輩!?」

 

 突然抱きしめられるオオガミ。そういえば、消える前にそんなこと言ったような……と思いつつ、とりあえずなされるままにしてみる。

 

「ちょっと。なに私のマスターにしてるのよ?」

「儂も怒る時はあるからな?」

「一瞬にして敵対する定めなのか……うむ! なら余も参戦しようかな!!」

 

 瞬間敵対化するエウリュアレ達。武装を展開しようとした辺りで、その後ろにいた人物たちに気付く。

 

「君たち、理由がめちゃくちゃだね……気持ちは分からなくはないけど」

「まぁ、暴れるんなら容赦しねぇがな」

「うげっ! エルキドゥ!!」

「ひ、土方もおるではないか……い、いや、こちらにはエウリュアレがおるからな!! 手を組めば何とかなる!!」

「魅了嵌め殺しね。任せなさい。全力でやってあげるわ。だから、エルキドゥは任せたわよ」

「任せるがよい!!」

 

 完全に抗うつもり満々な5人。

 しかし、その空気を粉砕する少女が一人。

 

「マスター!! 茶々もそれ受けたい!」

「ぐはっ! ちゃ、茶々……結構痛い……」

「あらあらまぁまぁ、大変。どうしましょうか……」

「むむむっ。茶々がやったんだし、茶々が運ぶ!! じゃあね!!」

「大丈夫ですか? 私も手伝った方が――――」

「大丈夫!! 茶々一人で出来るよ!!」

 

 そう言うと、全力でオオガミをダウンさせた茶々がマイルームにマスターを引きずって行くのだった。

 その展開を呆然と見守っていた全員は、何となく戦う気も失せ、とりあえず休憩室に行く事にするのだった。

 

 カルデアの平和を守った茶々は、その後回復したオオガミによって労われるのだった。




 ということで、イベント開始二日目あたりで引いた頼光さんが初登場。結構キャラがつかめてないんで、不安定なんですけどね。
 茨木も出したかったんですが、出たら大戦争確定だと気付いたので諦めました。久しぶりのポンコツ可愛い茨木を書きたかった……!!


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私は抱き枕じゃないわよ(それにしてもよく眠っておるよな)

「……中々面白い状況じゃのぅ、エウリュアレ」

「くぅっ……この私が、プリンに釣られるだなんて……!!」

「いつもの事じゃろ。というか、それからどうしてそうなったのか……」

 

 休憩室のソファー。そこには、エウリュアレが座っていた。だが、直接座っているわけではない。

 寝ているオオガミに抱きしめられるように座っていた。

 そして、オオガミの右側には茶々が。左側には茨木が寄り掛かるように寝ていた。

 

「マスターから貰ったプリンを食べてたらいつの間にかこうなってたのよ……訳が分からないわ」

「儂の方がわけわからんわ。なんじゃ、プリンで釣られてこんな面白い状態になっとるとか」

「マスターが寝てるから下手に動けないし……八方塞がりなんだけど」

「クククッ。このまま見ておるのもよいかもな」

「馬鹿言ってんじゃないわよ。こんな状態だと、お菓子もろくに食べられないわ」

「そうじゃな……まぁ、その代わりに一部の奴等から見れば仕方ないと思うが良い」

「ぐぬぬ……そうよ。ノッブが取ってくればいいんじゃない。ほら、行ってきなさいよ」

「何言っとるんじゃ。儂はここで見てるだけじゃぞ?」

「ノッブのくせに生意気ね。そんな貴方には後でワンコとヘラクレスと土方を送り込んであげましょう」

「おい馬鹿やめるんじゃ。それはシャレにならんぞ」

「私を見世物の様に扱った罰よ。神の逆鱗に触れた代償をその身に受けると良いわ」

「ぐぬぬ……仕方あるまい。何を取って来るかは儂の気分でいいんじゃな!?」

「えぇ、構わないわ。変なの持って来たら流石に考えるけど」

「ふん! 目に物見せてやるわ!!」

 

 明らかに不穏な言葉を吐いて去っていくノッブ。

 一人残されたエウリュアレは、どうしようかと考える。

 

「ん~……とはいっても、無理に抜け出す理由は無いのよねぇ……普段頑張ってくれてるしね」

「マスター! …………あら? 寝ているのかしら?」

「あら、ナーサリー。どうかしたの?」

 

 抜け出す理由は無いにしても、する事の無いエウリュアレが何をするか考えようとした時、ナーサリーがやってきた。

 

「マスターとお茶会をしようと思ったのだけど……皆で寝ているのかしら?」

「えぇ、なんか知らないけど、そんな感じよ」

「そう……私も混ざれるかしら?」

「うぅん……難しいんじゃないかしら。場所もないし」

「むむむ。いいえ、まだ膝が片方残っているわ! 突撃~!」

「わっ! ちょっと、無理やり入ってきたらマスターが起きるでしょ…!!」

「でも、私だけ仲間外れは嫌よ……っと」

 

 強引に割り込んでくるナーサリーに驚きつつも、オオガミを起こさないようにナーサリーが入り易い様に左膝に移動するエウリュアレ。そのおかげもあってか、何とかオオガミが起きないでナーサリーが右膝の上に乗る。

 

「全く……無茶するわね」

「マスターが起きなければいいのよ」

「はぁ……まぁ、起きなかったからいいけど。それで、なんで入って来たのよ」

「何事にも意味があるとは限らない。つまり、何となくよ!」

「良いわね……そういう考え。私もそれくらい気楽でいたいわ」

「人にはそれぞれ良さがあって、神様でも変わらないわ」

「……遠回しに悩めって言ってるみたいね。まぁいいけど」

 

 そう言っていると、ノッブが戻ってくる。

 

「大判焼きがあったから取ってきた。って、なんかナーサリーまで増えとるんじゃが」

「良いじゃない。どうせ、多めに取ってきてくれたんでしょ?」

「ノッブ! 私にも頂戴!!」

「はぁ……本当、エウリュアレと自分だけの分と思って取ってこんで良かった。正直そもそもの人数が増えるとは思っとらんかったけど」

「いいじゃない。ほら、早く食べましょ」

「取って~!」

「む。そこだと届かんか。ほれ、受け取るといい」

 

 大判焼きを乗せた皿を近づけてくれるノッブ。そして、二人が取ると、机の上に置きなおす。

 

「さてと……マスターが起きるまで、遊ぶかの。お主らも暇じゃろ?」

「えぇ、付き合うわよ」

「頑張るわよ!」

 

 そう言うと、三人は、周りが起きるまで遊び続けるのだった。




 むむっ? ポンコツ茨木を書くつもりが最後まで寝てたのだが……何者かに思考誘導された……?
 しかし、やりたいことがあり過ぎてポンコツ茨木の登場数が減りそう……チクショウ…!


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高難易度、楽しかったわ!(珍しく儂も活躍したしな!!)

「は~~~……楽しかった!」

「珍しく楽しんでおったな」

「だって、私の弓が気持ちいいほどに刺さるのよ? 令呪を全部使っちゃったとはいえ、私としては大満足よ」

「エウリュアレさん、張り切ってましたもんね」

「結局、200万たたき出しおったな……ぐぬぬ……余もそれくらい出したい……!!」

「いや、儂はトータルじゃし」

「そうよね。トータル300万だものね」

「ぐっ……ぬわーーーー!!!」

 

 悲鳴を上げ、机に突っ伏すネロ。

 それを見てにやりと笑うエウリュアレとノッブは、若干同じ雰囲気があった。

 マシュはそれを見て苦笑いをするが、間違ってはいないので何も言えない。

 

「それで、戦勝祝いのソレか」

「えぇ。やっぱり、ここはホールケーキに挑んでみるべきなのよ」

「なにセルフチャレンジしとるんじゃ。それが残ったら儂らが食うんじゃぞ?」

「えぇ、もちろんそうよ? 何、変なこと言ってるの。特にノッブは否応でも食べるのよ」

「儂にだけ厳しいんじゃが」

「エウリュアレさんは天邪鬼な所がありますからね……」

「あら、私は思った事をしているだけよ? 思うがままに、好き放題やるの。少なくとも、今日の私はね」

「うぐぐ……余も貰うぞ……」

「あら、ネロも食べる? 仕方ないわね」

 

 上機嫌と言うのは本当のようで、鼻歌を歌いながらケーキをカットするエウリュアレ。

 ただ、普段は全くやらないので、上手く切れないようだった。

 

「……あぁもぅ。寄越せ。儂が切る」

「あぁっ! 何するのよ、もぅ」

「見ててもどかしいわ。ったく……普段やらんことをやって若干後悔するくらいなら、最初から儂に言え」

「何よ。いつもは面倒だのなんだの言ってるくせに、こういう時だけはやっちゃって。私だってやってみたくなる時はあるのよ」

「それでせっかくのケーキが台無しになってしまったら本末転倒じゃろうが。っと、これでいいじゃろ?」

「くぅっ……普段やらせてるだけあってうまいのがむかつくわ……!!」

「普段やらされてたら、流石に覚えるわ」

「むしろ、なんで普段やらされているのかが分からないんですが」

「マシュよ。それは、ノッブとエウリュアレだからだ。大体この二人が絡んだらそういう事にしておけばいいと、奏者(マスター)が言っていた」

「「何言ってるのよ(んじゃ)、マスターは!!」」

 

 二人の全力の突っ込み。しかも、それが身に覚えのない事で怒っているだなんて、誰が想像するだろうか。

 

「そうならない方がおかしいぞ? 二人でいる時間がどれだけあると思っているのだ」

「そんなにいる覚えはないんだけど?」

「うむ。儂もそんなにいた気はせんぞ」

「ほぼ四六時中一緒なのに、こやつらは自覚が無いからのぅ……」

「ずっといますよね……どちらかがいない方が珍しいです」

「……そうじゃったか?」

「……まぁ、マシュが言うのなら、きっとそうなのよ」

 

 うんうん。とうなずく二人。

 

「よし、とりあえず食べちゃいましょ。せっかくノッブが切り分けてくれたんだし」

「うむ。もう癖になってるからな。どれだけ儂はこんなことやっとるんじゃ」

「ホールケーキなんか、滅多に食べないのにね」

 

 そう言うと、二人は食べ始める。

 それを見て、やっぱり一緒にいない所が想像できないと苦笑いをするマシュとネロなのだった。




 ちなみに、戦闘編成の場合は今までの話を見てると分かりますが、超高確率でノッブが置いて行かれてます。今回が珍しいんやで……
 いつかネロのダメージチャレンジもしてみたい……


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DP終わったわね(アイテム集めという、本番が始まるよ!)

「DP終わったね」

「そうね……いつもよりだいぶ楽に終わったわ」

「儂も戦えたしな」

「まぁ、アイテムが全然集まってないんですけどね」

「単体宝具たる余に出番はないと見た。アイテムはパッションだな」

「わ、私ですか? 他の方もいるのに……」

「珊瑚集めにおいて、現状うちの鯖で右に出るものなし。よって、リップがメイン戦力で」

「えっと……その、頑張ります」

 

 ついにDPが集め終わり、これ以上鬼を狩る必要がほとんどなくなったオオガミ達。

 次の目標はアイテム。珊瑚と反物とつづらをかき集める作業だった。

 

「林檎……食べないとかなぁ……」

「そうね。どうせ、いつもの様に最後の最後でAPが足りなくなるわ」

「そうじゃな。後悔するくらいなら食ってしまえ」

「やっぱりそうかぁ……まぁ、今日はしないけどね」

「うむ。安定のマスターじゃな」

「えぇ、安定ね」

「さりげなく馬鹿にされてる気がするよねぇ……」

「回復アイテムなんか、基本そんなもんじゃろ」

「もっと盛大に使用しなさいよ」

「無くなったらこう、心細いし」

「うむ。じゃよね。分かるぞ」

「まぁ、無理のない程度に頑張りなさい」

「出来る範囲で頑張るよ、うん」

 

 とりあえず、明日は林檎を食べるか。と考えるオオガミ。

 

「それにしても、最後のエウリュアレの張り切りよう、すごかったのぅ」

「4連続宝具発動だったしね」

「たまたまよ。あんな所でクリティカルが出るなんて思ってなかったし」

「そのおかげでほぼ完全に悩殺ENDだったよね」

「男性相手なら、負ける気はしないわね」

「頼もしい限りじゃな」

「この調子で頑張ってもらおうかな」

「えぇ、今回みたいなのだったら大歓迎よ」

「うん。今回みたいに男性が敵ならお願いね」

 

 笑みを浮かべるオオガミに、不敵な笑みで答えるエウリュアレ。

 本当に、エウリュアレは男性に対しての攻撃力が異常だという事を改めて実感した今回のイベント。次回以降も、おそらく男性が出てきた場合、エウリュアレは確実に編成に組み込まれるのだろう。

 

「そういえば、さっきの言い方だと、これから先はやらないみたいな言い方だけど、そんなことないんでしょ?」

「そりゃ、アイテムは落ちるしね。やらなきゃ損だよ」

「つまりは、やっぱりアイテムを手に入れ終わるまで、私に休みは無いって事ね」

「そうなるね。という事で、周回頑張ろうか」

「えぇ、そうね、そうよね。どんどん行くわよね。分かっていたわ。分かっていたから……最高攻撃力、たたき出しましょう? ダメージチャレンジよ」

「楽しそうだね、それ。300万越え狙いかな?」

「一撃粉砕。やってみたいじゃない?」

「…………挑戦、してみようか」

「えぇ、やっちゃいましょ。こうなったら全力で楽しみましょう」

 

 心底楽しそうに、エウリュアレは笑った。

 それに釣られ、オオガミも笑うのだった。

 

「…………編成、どうするつもりなんでしょうね」

「とりあえず、攻撃力上げられないから、儂は除外じゃな」

「難しいですね……ターン制限ありますし」

「まぁ、とりあえず明日じゃな」

 

 マシュとノッブは二人を見つつ、そんなことを言うのだった。




 ダメージチャレンジ……やってみたいですよね……エウリュアレなら孔明が一番ですよね。たぶん。
 アイテム、集めるためには林檎が必須の予感……!!


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最高ダメージ更新!!(そして突然訪れた惨劇と奇跡)

「ふふふ、ようやく300万を叩き出してあげたわ」

「その割には、疲れた表情をしておるな」

「黄金劇場のドラゴン少女ライブという最高コンビを浴びたくらいよ。うえっ、吐きそう……」

「女神のくせに吐くでないわ!! 担ぐぞ!!」

 

 涼しい顔で(女神的な意味で)死の瀬戸際にいたエウリュアレを急いで抱えると、ノッブは急いで休憩室を出て行く。

 入れ違いで、死んだ表情のオオガミが入ってきた。

 その様子を疑問に思ったマシュは、オオガミに声をかける。

 

「先輩? どうかしたんですか?」

「いやぁ……ハハハ……手違いでうっかり石を全滅させた……」

「ちょ、先輩! 何をしてるんですか!?」

「一回回りだしたら止められないんだから仕方ないじゃん……次の瞬間にはもう回り始めてるんだから……」

「……その、それで、結果はどうだったんですか……?」

 

 戦々恐々とした空気。さすがに石を全て消費したという大事件なのだ。気にならない方が凄いだろう。

 

「…………自称良妻が出てくれた」

「自称良妻……玉藻の前さんですか?」

「うん。ただ、運の悪い事に、頼光さんとばったりと会ってね……火花散らし始めたんで、怖くなって土方さんとエルキドゥに助けを求めに行ってた」

「あぁ……それで疲れてるんですね……」

「ふむ……ついにキャス狐も来たか……うむ! 余が迎えに行こうではないか!!」

 

 そう言うと、ネロは走って行ってしまう。

 二人がそれを見送ると、パッションリップが近づいてくる。

 

「あの、マスターさん。私も行きますか?」

「ん~……いや、あの三人の時点ですでに過剰戦力なんだよね……流石にリップまで入れたらひどい事になるからね……」

「そうですか……」

「うん。それに、リップはもうしばらく周回を手伝ってもらうからね。それまで休憩してて」

「はい。分かりました」

 

 リップはそう言うと、マシュの隣に腰を下ろす。

 

「マスター。吾は逃げるが、探すなよ」

「いやいや、流石に頼光さんもこっちに来るだけの余裕はないって。それに、最終的には俺の部屋に逃げればいいと思うよ?」

「一応対策するに越した事は無いし……何より顔を合わせたくない。だって、斬られたし……」

「逆に一人の方が危ないと思うけど……」

「…………よし。吾はここから動かんが、それでよいな」

 

 茨木はオオガミの左腕を掴むと、微動だにしなくなった。本当に苦手なのだろう。

 オオガミはそれを見て苦笑いをするが、直後、右腕に掛かった重量に驚く。

 振り向くと、そこにはナーサリーが居た。

 

「よく分からないけど、私もこうするわ!」

「うん、おかしいよね。どうしてそうなったのかな?」

「だって、皆楽しそうだったんだもの」

「そっかぁ……そう見えるかぁ……」

 

 なるほど。と納得していると、休憩室の扉が開き、ノッブとエウリュアレが帰ってくる。

 

「はぁ……危なかった……」

「全く。だから私の事なんか気にしなくていいって言ったのに」

「それはそれ、これはこれ、じゃ。つか、エウリュアレをあんなにするとは、やはり侮れんな、ネロエリ……」

「そうね……まぁ、途中から感覚が無かったんだけどね」

「大問題じゃよね!?」

 

 いつもの調子に戻っているエウリュアレ。それを見て、全員はほっとするのだった。

 

 しばらくした後、召喚室前の大戦争に決着をつけてきた5人が休憩室に入ってくるのだった。




 いやぁ……フレンドを回そうと思って石ガチャ10連を回すとか、どうかしてるよ……
 玉藻が出なかったら今日の更新は出来なかったと言い切れる自信がありますね(ドヤ


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後少し……後少し……!!(余はバフ要員か!!)

「ふふふ……ついに来たわよ、400万後半……!!」

「480万とか、本当に後少しなんじゃけど」

「すごいよねぇ……誰だ。エウリュアレが非力だとか言ったの」

「先輩。それ、エウリュアレさんが言ってます」

「完全に相性と性能でゴリ押ししてるだけなんだけどね」

「それでも十分じゃろ」

「いいえ? これで終わるわけないじゃない。目指すは500万よ!!」

「今回はいつもと違って妙にダメージにこだわるのぅ……」

 

 いつもの様に休憩室で話しているオオガミ達。

 もぐもぐとフィナンシェを食べながら、次こそはと意気込むエウリュアレ。ちなみに、オオガミの隣にいる茨木も同じようにもぐもぐと食べていた。

 

「簡単な事よ。今回は私が面白いくらいにダメージを出せるの。なら、今のうちに楽しむしかないじゃない」

「その発想が凄いんじゃよな……まぁ、普段耐久要員じゃし、仕方ないか」

「余は、たったの一度も活躍してないのだがっ……活躍してないのだがっ!!」

「うむ。儂も今回が久方ぶりの活躍じゃったからなぁ……まぁ、待機の方が長いからの。諦めるんじゃ」

「むむむむむっ……余は何時になったらメインとして戦えるのだ……!?」

「あれだけ黄金劇場を呼び出して、まだ足りないのかしら……いえ、私も人の事言えないのだけど」

「そうじゃな。どれだけ鬼に視線を突き刺せば気が済むんじゃ」

「それは、あれよ。鬼が一撃で沈むまで」

「600万を叩きだしたいとか、夢見過ぎじゃろ。次の復刻を待つんじゃな」

「復刻の復刻……再復刻、あるんでしょうか」

「まぁ、気長に待つとするぞ。余は寛大だからな! 次の戦いに備えるぞ、奏者(マスター)!!」

「切り替え早いね……」

 

 すぐに気持ちを切り替え、次の戦いに備えるネロ。エウリュアレの戦いの時に必ず一度宝具を放っていたりするのだが、そのおかげで溜飲が下がったのか、それとも何か他の事を考えているのか。

 オオガミはそれで少し悩んだが、別に気にすることでもないだろうと考えを止める。

 

「でも、しばらくリップと山道周回だよ?」

「む。では、余はしばらく待機か」

「私も待機ね。ノッブは行ってらっしゃい」

「うむ。茶々が高確率で儂に言いつけに来るからの。トドメはしっかりと刺して置かんとな」

「そうだね。茶々が言いつけに来るなら仕方なし」

「皆、なんだかんだ甘いのぅ……小さい者には甘くなるのが人の性かのぅ……」

「何言ってるの。そもそも、私の存在は偶像。アイドルよ? 人が望んだ形。その私が小さいのだから、つまりそう言う事でしょう?」

「碌な人間がいないネ!!」

「小さいは可愛い。可愛いは正義。つまりはそう言う事だよノッブ」

「マスターもおかしくなっとるんじゃが!」

「先輩! 帰ってきてください!!」

 

 何も間違った事は言っていない。と胸を張るオオガミとエウリュアレ。苦笑いをするしかないノッブとマシュの姿が、そこにはあったのだった。




 可愛いは正義。真理ですね。

 あともう少し……噂のオダチェンシステムを使えば行けるのではないかと思ってはいるんですが、まだ試してないんですよね……


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ダメージストップ……かしら(やはりキャス狐か! キャス狐が必要なのか!!)

「ぐぬぬ……止まったわね……」

「400万が限界みたいじゃな」

「キャス狐が育つまでの辛抱なのだろうが……余は何というか、許せぬ……」

「吾はむしろ、何時になったら奴から逃げずに済むようになるのか……」

「マスター? それで、私のレベルは何時上がるんですか?」

「あはは……貯蓄は使いたくないんだよねぇ……」

 

 ダメージ量の伸びが無く、ここが限界かと考えつつもどうやってダメージ更新をするかを考えるエウリュアレとノッブ。

 ネロはそれについて少し考えはあるようだが、納得のいくようなものではないという表情で、茨木はエウリュアレが持ってきていたミルクプリンをもぐもぐと食べながら難しそうな表情をしていた。

 玉藻は満面の笑みで、早く成長させろと言外に言っているが、それに対してオオガミは目を逸らしつつ、倉庫に眠る103個の星4オール種火が頭の中を駆け巡っていた。

 

「マスター? 手段があるなら早く言いなさい?」

「いや……でも、あの貯蓄は使いたくないんだよねぇ……」

「使うべきよ。全力で。えぇ、全力で」

「いや、儂に聖杯を渡して儂のレベルを上げればいいのぐぼはぁ!!」

「やらせませんよ? 私がもらうんです」

「なんでもう貰う事になってるのかな!?」

「いやですね。私はそんなこと少しも思っていませんよ? ただ、ちょ~っとばかり、強化素材が欲しいな~ってしか思ってませんよ?」

「全力だよね! 目が本気だもんね!!」

「良いから、用意しなさい!」

「しないから! これは何時かのためだから! 玉藻はのんびり育てる予定だから!」

 

 倉庫の種火を消費しようと画策しているエウリュアレ達に頬を引きつらせながらも、必死でやらせまいとするオオガミ。

 どうにかして阻止しなければ、どうにかして貯めた100個を超える種火を全て消費されてしまう。

 

「大丈夫ですよ、先輩。そもそも、あの部屋に誰も入れさせませんから。エルキドゥさんの巡回エリアの中心ですよ?」

「完全にオオガミを説得するしかなくなっちゃったのだけど」

「流石の儂も乗り込むのは無理じゃよ……死んでしまう……」

「神性キラー死すべし慈悲は無い」

「おぉぅ、辛辣ぅ……」

「エルキドゥさんは神性持ちにスタンを入れさせるだけなんですけどね……拘束専門ですから」

「あぁ……それで風紀委員……」

 

 土方が来たことで、取り押さえ役と拘束担当の二人が出来、最強になっている事をオオガミは知らないのだった。

 

「むぅ……仕方ないですね。では、諦めてしばらく待機するとします」

「ごめんね。出来るだけ早く種火は用意するから。具体的には、次のイベントの時に」

「その前に何かある様な気がするんじゃがな」

「ちょっと。次こそ私は待機だからね?」

「それは分からんから。まぁ、とりあえず、終わっとらん珊瑚集めじゃな」

「本当……何時になったら終わるのかな……」

「行かんと終わらんからな。ほれ、マスター。行くぞ」

「うぅ……頑張るよ……」

 

 オオガミはそう言うと、ノッブと共にメンバーを集めながら鬼ヶ島の山道へと向かうのだった。




 この貯蓄はメルトリリス復刻用なんだ……!! 当たったら、一日で90にするためなんだ……!!


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ダメージコンテスト終了!(珊瑚も集め終わったが、まだまだじゃな!!)

「ダメージチャレンジ……飽きたわね」

「今日が青鬼ラストじゃし、これ以上は無理じゃろ」

「あら。という事は、もうライブは終わり?」

「余の黄金劇場も、ひとまず終わりというところだな。だが、それなりに楽しかったぞ」

「珊瑚も終わったし、後は反物とつづらだけだね」

「ふむ……先に塔に行くんじゃろ? リップで大丈夫なのか?」

「う~ん……セイバーとアーチャーがいるから少し不安は残るけど、何とかなるでしょ」

「リップも大変じゃのう」

 

 相性云々完全無視でリップの運用を確定させたオオガミ。もちろん茶々とノッブも組み込まれていたりするのだが、そこについては触れないらしい。

 エウリュアレはこれ以上伸びないダメージ量に、挑戦することを諦めて倒れており、エリザベートとネロはライブ終了を寂しく思っていたが、またどこかでやるであろうと根拠も無く考えていた。

 

「それで、茨木は何を食べておるんじゃ?」

「ふふふ。これは『ぱふぇ』なるものぞ。マスターが用意したのだ」

 

 茨木の前に置かれている、高さ30cmほどのパフェ。正直茨木だけで食べられるのか不安になる様な大きさの物であった。

 

「ほぅ? マスター。それはつまり、儂の分もあるんじゃろうな?」

「えっ。食べるの?」

「うむ。なんというか、食べてみたいな。一人で喰える気はせんが。エウリュアレと喰うつもりじゃよ」

「そ、そう……なら、作るかな。材料は残ってたはずだし」

 

 オオガミはそう言うと、休憩室を出て行く。それをナーサリーが追ったところを見て、ノッブはマスターの苦労が増える様な予感がした。手を貸しはしないのだが。

 

「マシュもいるじゃろうし、問題ないじゃろ」

「楽しみね。オオガミ特製でしょう?」

「うむ。案の定聞いておったか。それで、茨木。うまいか?」

「吾は不味い物は食べんわ。まぁ、どうしてもと言うのであれば、少しくらいくれてやろう」

「うぅむ……いや、儂はマスターが作ってくれるのを待つぞ。エウリュアレはどうする――――って、聞くまでも無いようじゃな」

「どのくらいまでなら貰えるのかしら?」

「ここまでだな」

 

 ノッブは茨木の誘いを断るが、さも当然の如くその誘いに乗るエウリュアレ。茨木に許可された場所を食べ、とてもおいしそうに食べている。

 それを見たノッブは、呆れたようにため息を吐くが、そのすぐ後に微笑む。

 

「おいしいわね。でも、オオガミって、料理できたのかしら?」

「さぁ? 大方、誰かに教わったんじゃろ」

「そう……まぁ、良いわ。とにかく、これなら私たちの分にも期待が持てるというものよ。茨木。ありがと」

「礼も悪くは無いな。素直に受け取るぞ」

 

 笑顔でお礼を言うエウリュアレに気分を良くしたのか、茨木は再びもぐもぐと食べ始めるのだった。

 

 その後、オオガミの運んできたパフェと格闘している二人がいたとかなんとか。

 茨木のパフェは、ネロとエリザベートの二人も加わり、食べきったそうな。




 完全に今回はパフェに持って行かれた感じ。仕方ないんです。私が食べたかったんです。
 サイズは何となくで書いてたんですが、30cmって……パフェの中だと大きい方ですよね……?


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つづらと温泉旅行(とにかくつづら集めて逆鱗を!!)

「なんというか……終わりそうにないのぅ」

「大体いつも通りね」

「林檎……食わねば……」

「まぁ、欲しいものがあるかと言われると、悩むんじゃけどね」

「うん。ピースもモニュメントも今の所そんなに使わないしね。正直つづらの方が……って、あれ? じゃあつづらを集めに行けば良いんじゃ……?」

「うむ。そうじゃな。つづら集めに行くしか無かろう」

 

 気付いてしまった衝撃の事実。反物を集めるために駆けずり回った今日は何だったのか。

 塔だと蛮神の心臓が落ちるという天国だが、今は竜の逆鱗を集めた方が良いという己の心の声が聞こえた。

 

「ぐぬぬ……つづらを集めに温泉旅行をすれば最高だったじゃないか……!!」

「ふむ……それもありか」

「面白そうね。じゃあ、明日はそうしましょうか」

「吾も行くぞ!」

「う、うぅむ……皆が入っているうちは外で待機かなぁ……」

「そうじゃな。その間はヘラクレスとエルキドゥに守ってもらうのが一番じゃろ」

「そうするよ。じゃあ、準備だけはしておこうか」

 

 完全に温泉旅行気分になっていうオオガミ。危機感が無いというか、感覚が麻痺しているというか。とにかく、特異点だという事を忘れているようだった。

 

「さて……とりあえず、問題はつづらじゃな。逆鱗交換に800個じゃろ?」

「うん。礼装は一枚だけだけど、何とかなるでしょ」

「先行き不安じゃのう……」

 

 楽観しているというより、もはや諦めの領域に感じられるが、そこは突っ込まない方向で行くのだった。

 礼装に関しては今更どうしようもないので、出来るだけ頑張る方向で行こうと腹をくくるが、いったいどれだけかかるだろうか。と想像する。

 

「まぁ、とりあえずは温泉で疲れを癒そう。ずっと戦いっぱなしだったしね」

「うむ。素材も実際はそれほど焦っても無いし、のんびりでいいじゃろ」

「昔と変わったわねぇ……ほんの数か月で素材に余裕が出来てるように感じるなんてね」

「現実的に考えると、全然足りないんだけどね」

「そこはこれからに期待ね」

「まずは全員レベルマックスからコツコツと頑張りますよ」

「えぇ、頑張りなさいな。見ていてあげるわ」

「手伝うと言わぬところがエウリュアレらしいのぅ。まぁ、種火に関しては茶々がメインなんじゃろうけどね」

 

 ノッブはそう言うと、緑茶を飲む。

 珍しくエウリュアレがお菓子を持ってきていないのは、今日は何となく、そういう気分ではないのだろう。

 

「よし。それじゃ、明日の準備をしてくるね」

「うむ。儂らも準備しておくぞ」

 

 休憩室を出て行くオオガミを、ノッブ達は見送るのだった。




 蛮神の心臓落ちまくりはおいしいんですが、イベントアイテムは交換したいという精神に従い、とりあえず辛うじて手に入れたつづら増加礼装で頑張る作戦。温泉客を薙ぎ払いつつ入浴できるのか……!!
 あれ? 現実的に考えると、かなりの迷惑客……?


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温泉よ!!(あれ? いつもとそんなに変わらない気がするんじゃが)

「くああ……っと。しかし、久しぶりの温泉じゃのぅ」

「えぇ。カルデアには浴場はあるけど、これだけ景色の良いものではないもの」

 

 温泉に入り、背伸びをするノッブと、肩まで湯船に浸かって景色に見とれるエウリュアレ。

 その後ろから、

 

「茶々だーいぶ!!」

「余も行くぞー!!」

「私も行くわよ!!」

「お風呂場で走ったら転んじゃう――――って、大丈夫ですか!?」

 

 飛び込む茶々に続くネロとエリザベート。しかし、リップの注意はすでに遅く、エリザベートは盛大に転び後頭部を叩きつける。

 

「エリザーーー!!」

「ね、ネロ……私はもうダメみたい……ごめんなさい。でも、私たちの歌は永遠よ……」

「そんな……エリザ……嘘であろう? エリザ……エリザーーー!!」

「何茶番しとるんじゃ。それと茶々。飛び込むでないわ」

「伯母上ごめんなさーい」

 

 さも今にも消えそうな表情で倒れているエリザベート。ネロはエリザベートの上半身を持ち上げ、悲鳴を上げる。

 ノッブはそれを見て突っ込みつつ、茶々を(とが)める。

 

「しかし……リップは入れるのか?」

「何とかなるんじゃない?」

「ざばーっ! って溢れたり?」

「それを言われると痛いんですけど……き、きっと大丈夫ですよ!」

「うむ。いい加減寒いしな。ほら、エリザも入ろうではないか」

「痛いのは本当なんだけどね……あんなに盛大に転ぶなんて、思わなかったわ」

 

 さっさと入って行くネロとエリザベートに続き、少しためらいつつリップがゆっくりと入って行く。

 何とか大きく波立たずに入れたリップ。しかし、動くと波立ちそうなので、リップは動けなくなったのだった。

 

「…………吾、入れるか?」

「茨木くらいなら入れるじゃろ」

「うむ。早く来ると良い!」

「鬼ならもっと堂々と入って来なさいよ。ほら、早く」

「う、うむ……」

 

 ノッブ達に言われ、温泉に入る茨木。

 まぁ、もし溢れようともあまり気にする必要は無かったりするのだが。

 

「そういえば、吾がここに来る前に何やらマスターが卵を持ってエルキドゥを探していたのだが」

「ふむ? 卵を持って、エルキドゥを……?」

「温泉に卵……ハッ! もしかして、かの有名な温泉卵を作るつもりなのかしら!?」

「……そんなに簡単に作れるモノじゃったっけ?」

「エルキドゥがいるのだ。大丈夫だと思うぞ」

「エルキドゥって……料理出来た気がしないんだけど……」

「エルキドゥさん、料理全くできませんもんね。細かいのは苦手みたいですし」

「大体大雑把じゃしの。まぁ、出てからのお楽しみじゃな」

 

 ノッブは笑い、それぞれが苦笑いする。

 いつも暴走を止められる仕返しのつもりなのだろう。それをはっきり言えるのは恐らくノッブだけなのだろうと、ある種の尊敬のまなざしも含んでいた。

 

「ふぅ。まぁ、なんじゃ。たまにはこういうのんびりしてるのも良いな」

「えぇ。とはいっても、大体いつもこんな感じよね」

「まだイベントは終わってないからな。明日もまた頑張ろうではないか」

「うむ。全力で頑張るぞ!!」

「私も楽しんでいくわよ~!」

「私は皆に攻撃されるので辛いんですけど……」

「茶々は大体皆に集中攻撃されてすぐにやられちゃうけどね!!」

「あっ、その、えっと、すいません……!!」

 

 ドヤ顔で言い張る茶々に何も言えなくなるリップ。

 その後も、楽しそうに話し続け、エウリュアレが出た辺りで全員出始めたのだった。




 男性サイドの方も書きたい……そんな心境です。
 まぁ、明日も温泉周回するんですけどね!!


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温泉卵を作るぞ~!(それで、この山なんじゃな?)

「……温泉卵って、ここだって思う場所を見つけるのが大変だよね」

「唐突に作りだそうだなんて言うから驚いたじゃないか」

「まぁ、持ってきたのだからいいだろう?」

「巌窟王は甘いんじゃないか?」

「ふん。貴様には言われたくないな。なんだかんだ言って、手伝っているだろう?」

 

 卵を持って、キョロキョロしながらどこがいいだろうか。と考えるオオガミに連れ添って歩く巌窟王とエルキドゥ。

 とは言っても、作り方を知っているわけではないオオガミ達は、ゆで卵を作る要領で行けるかと考える。

 

「ん~……あそこでいいかな?」

「何で悩んでたのか分からないけど、良いんじゃないか? マスターが選んだところだしね」

「周囲の警戒はしておく。エルキドゥは必ずそばにいろ」

「もちろん。離れるわけないだろう?」

「一緒に持ってきてもらったこの籠で、頑張るぞ~!」

「一気に使わないようにな」

「それくらい分かってるって」

 

 オオガミはそう言うと、籠にまずは2つ卵を入れ、温泉の中に入れる。

 

「……あれ、温泉と沸かしたお湯って、どっちの方が熱いんだっけ……?」

「分からないけど、とりあえずいつもの様にやってみたらいいんじゃないかな?」

「うぅむ……調べつつやってみようか」

「どうやって調べるんだ?」

「……ダ・ヴィンチちゃ~ん」

 

 即座に天才を呼ぶオオガミ。冷静に考えると、ネットが繋がるとは全く思えないのだった。

 少しして、つながる通信。こんなことに使っていいのだろうか。と思わなくもないのだった。

 

「なんだい? オオガミ君。というか、イベントは今日までじゃなかったかな?」

「うん。まぁ、息抜きだよ。で、温泉卵ってどうやって作るのか知ってる?」

「え? 温泉卵? どうしたまたそんなものを――――あぁ、それでさっき巌窟王が卵と籠を探していたわけだ」

「うん。頼んで、行ってもらってたんだよ。それで、知ってる?」

「あぁ、もちろん。天才だからね。知っているとも」

「さっすがダ・ヴィンチちゃん! じゃあ教えて!」

 

 オオガミの言葉に、微笑みと共に答えるダ・ヴィンチちゃんだった。

 

 

 * * *

 

 

「……お主、どれだけ作っておったんじゃ?」

「かれこれ2時間くらい?」

「これ、食べていいのかしら」

「待てエウリュアレ。さらっと食おうとしとるでないわ」

 

 温泉から出てきた女性陣の、主にノッブが呆れた表情でオオガミを見る。

 そして、案の定マイペースなエウリュアレは、ようやく完成した温泉卵に目を輝かせていた。

 

「お主らもお主らじゃ。どうしてこうなるまで放っておいた」

「このような事も、たまにはいいだろう?」

「マスターが困っているなら、出来る限り手伝うべきだろう?」

「こいつらダメじゃ……エウリュアレ。もう食ってよいぞ。というか、食いきれるのか……?」

「……任せたわよ。茨木」

「吾か!?」

 

 若干山の様になっている温泉卵であろう卵の群れ。一体いくつ追加で持ってきたのかと思うほどだった。

 本来ストッパーであるはずのエルキドゥも、なぜかポンコツ化しているので、手の施しようが無かった。

 

「はぁ……とりあえず、カルデア待機組にも送ってやろうではないか」

「余達だけでは流石に消費しきれんしな」

「マスターもそれでよいな?」

「うん。というか、原因の一端であるダ・ヴィンチちゃんも巻き込まなくちゃ」

「理由が酷いわね」

 

 モグモグと食べながらそう言うエウリュアレ。ちなみに、試しまくった末、温泉卵は完全に固まっているものと、半熟のもの、温泉卵のイメージのようなものの三種類が完成し、エウリュアレは完全に固まっているのを食べていた。

 

「さてと、それじゃあ運ぶかの。袋とかあるか?」

「いや、僕の鎖で包めばいいよ」

「む? そうか? なら、エルキドゥに運んでもらうか」

「あぁ。さすがにそれくらいはするよ」

「うむ。では任せたぞ」

 

 いつもとは逆の状況に、本人たち以外は苦笑する。

 その後、荷物をまとめて、全員はカルデアに帰るのだった。




 という事で、温泉旅行編及び鬼ヶ島終了!
 えっ? つづら? 反物? ちょっと知らないですね。終わりませんよアレは。努力が足りなかったです。


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伝承地底世界アガルタ
新特異点開始!(縛りなんて、珍しい事をするのね?)


「という事で!! アガルタ攻略メンバーを決めるよ!!」

「どうせ儂はいないじゃろ?」

「どうせ私は入れられるわよ」

「ついに! 余の出番だな!!」

「私の出番もあるのよね!?」

「わ、私もですか……?」

 

 完全に自分の未来を見通しているアーチャー二人。事実、今回のアガルタでは女性サーヴァントがボーナスなので、エウリュアレが参戦することは確定だろう。

 

「まぁ、エウリュアレは良いとして、マシュは今回禁止だからね。縛りだよ」

「おっそろしいこと言うのぅ……マシュがいなければ辛いじゃろ」

「挑戦あるのみ。まずは限界を超えてみる所からだよ」

「まぁ、たまにはそう言うのも良いわね。どこまで通用するのか。楽しみだわ」

「ふむ……つまり、余が支えればいいのだろう?」

「で、私が後ろで歌っていればいいのよね?」

「まぁ、大体そんな感じ。ただ、エリちゃんは場合によるけどね。相性的な意味で」

「えぇっ!? エウリュアレもネロもほぼ出れるのに、私だけ相性の問題なの!?」

 

 半泣きで言うが、そこは育て方の違いである。仕方がないと諦めて、強く生きてほしい。

 

「とりあえず、バーサーカーは、今の所戦力になりうるのが茶々しかいないので、今回は無しで。代わりに、セイバー・アーチャー・ランサー以外なら大体何とかなるパッションを編成に入れておこう。余った枠は……ナーサリーかな?」

「えぇ!? 私ですか!?」

「どうしてそこが私じゃないの!?」

「それは、ほら。えっと、エリちゃんは鬼ヶ島で働いてくれたし。一回休憩って事で」

「エウリュアレは実質キャメロットからずっと出てた気がするんだけど!?」

「…………うん。まぁ、あれだ。セイバーが怖いから連れて行きたくない。エリちゃん、全体的に辛いものがあるしね」

「はうっ! 言い返せないわ……!!」

 

 バフとしては良いが、攻撃力が足りていないので中々運用がしにくく、使いにくいというのもあった。スキルレベルが上がってないのも一つの原因だったりする。

 

「もちろん、ノッブも場合によっては連れて行くよ?」

「む? 儂もか?」

「そりゃ、セイバー多めだったらもちろん連れて行くよ。エリちゃんも、アーチャー多めだったら連れて行くし」

「ふむ。という事は、儂もチャンスがあるわけじゃな」

「私も可能性はあるわね……!!」

 

 可能性に目を輝かせるが、あくまでも可能性は可能性である。実際に進んでみなければ分からない。

 

「よし……とりあえず、仮決めはこれでいいね。じゃあ、実際に行ってみようか」

「そうね、そうしましょう。まずは挑んで確認よ。何時だってそうしてきたもの」

「なんだかんだ言って、行き当たりばったりよね……よくもまぁ、ここまで来れたわよね」

「むぅ……余が来る前の話をされると困る……なんせ、分からんからな」

「儂も知らんが、まぁ、戦法からして相当無茶しとったんじゃろ」

「知りたいような、知りたくないような……ですね」

 

 何とも言えない表情の三人は、悟ったような表情をする二人を見て、これからの事が不安になるのだった。




 ボーナスが入るキャラと、ストーリーに従ってマシュ縛り。果たして勝てるのか否か……頑張るしかない……!!
 さりげなく、縛りは初なんですよね。


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天災と呼ぶしかないわね。アレ(アガルタのネタバレが多々あるよ!!)

 題名通り、アガルタのネタバレがありますので、アガルタ攻略した人か、ネタバレ気にしない!! と言う人のみどうぞ。


「何よアレ……まさに天災ね……」

「ふざけおって……あの威力、おかしいであろう!!」

「まともに戦える相手じゃないですよ……」

「すぐやられちゃったわ!」

 

 苦い顔をする全員。何とか勝ったものの、アレはいじめだろう。というレベルだった。

 

「全く……何とか勝ったから良いものの、強すぎるわよ」

「ハイパーガッツだったな。あれくらいのガッツ、余もやってみたいのだが!!」

「そうなったらバランスブレイカー確定ですね。絶対やめてくださいよ?」

「大丈夫よ!! 死霊魔術があるわ!!」

「ナーサリーさん。それ、本当に何度でもガッツ出来ますから」

「知ってるわ! だって、5回連続でガッツしたもの!!」

「う、うむ……死霊魔術は流石の余も遠慮したい……いや、確かにうまくいけば12回ガッツも夢じゃないのだが……」

「マシュが言ってたわ。『アレは封印指定概念礼装ですよ』って。最初期からずっと死霊魔術を装備してた彼女の言葉は重いわ……」

「……で、その封印指定概念礼装をナーサリーが付けとるわけじゃな」

「……まぁ、戦力的にはかなりの物だし、仕方ないわ」

 

 確率でガッツという、最強礼装。昔からお世話になっていたというのは伊達ではなく、今回もスイートクリスタルを当然の如く追い越すレベルで大活躍している。

 

「それにしても、リップは一回限りの緊急用の盾よね……」

「痛いのは、好きじゃないんですけどね……」

「マシュとは違って、味方全体じゃない代わりに、攻撃力があるのよね。ちゃんと攻撃力にもなるし、タイミングさえ良ければ単体宝具なら周囲への被害ゼロだしね」

「それ、代わりに私がやられちゃってるやつです!!」

 

 エウリュアレがまともに褒めていたと思ったら、最後の最後で本当にリップを盾として見ていたという衝撃の事実に、さすがのリップも突っ込んだ。

 

「うぅむ……どうしようか」

「今日は終わりよ。寝るわよ、マスター」

「余も賛成だな。あんな敵を倒した後だし、さすがの余も疲れたぞ……」

 

 オオガミに答えるエウリュアレとネロ。

 特にエウリュアレの視線が怖かった。

 

「ふむ。とはいっても……ここ、海底だよね……」

「まぁ、安全は保障するわよ。何とかなるわ」

「うむ! 明日の為にも、今は休んでもらうからな!!」

「ネロのそれは、命令形だよね! いや、まぁ、眠いから寝るけどさぁ……」

「うむ。無理せず、休まねば次の戦いが辛くなるからな!! レオニダスも言っていたからな!」

「スパルタ式……いや、休まなくちゃいけないのは知ってるんだけどね。レオニダスが言ってたって聞くと、何となく不安になる……」

「まぁ、あまり気にしないで寝なさい。それとも、私が寝かしつけてあげましょうか?」

「……えっと、具体的には?」

「私の視線で一発よ」

「物理的対処!!」

 

 射貫くつもりのようだった。

 エウリュアレの視線はシャレにならないのは、当然と言えるだろう。なんせ、つい最近ではダメージ量400万を叩きだしているのだ。そんなモノを受けたら確実に眠るというより、永眠だった。

 

 結局、何やかんやと騒いだ後、限界が来たのか、オオガミは寝るのだった。

 それを見守るエウリュアレは、桃源郷からこっそりと持ってきた桃を食べながらネロと共に周囲を警戒するのだった。




 くそぅ……強すぎたよ……12回ガッツとは、恐ろしい……!!
 まぁ、令呪は使わないで何とかなったので、ある程度余裕はありましたが。
 これから先が不安です……


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日常
アガルタめ……!!(あまりいつもと変わらない損害よね)


「終わったのぅ……」

「そうねぇ……」

「終わったわね……」

「辛い……戦いでしたね……」

「みなさん、お疲れ様です。モニターから見ていましたが、私もついて行けたらって思いましたよ……」

「マシュはたくさん働いたんだから、良いのよ。一時的な休憩時間だと思いなさい」

 

 意気消沈しているエウリュアレ達を見て、苦笑いをしながらそういうマシュ。

 そんなマシュにエウリュアレは声をかけるが、机に突っ伏しているのでいまいち格好がつかない。

 

「まぁ、儂はほとんどいなかったからな。実質無関係じゃし。ただ、エウリュアレは完全にフル動員じゃったのぅ。リップも何度か休憩があったのにな」

「うっさいわねぇ……正直、私だって大変だったのよ。あの天災の攻撃を受けたり、暴走してるアマゾネス潰したり。柱は安定の石一個だし、さりげなく令呪二画切ってるし」

「うむ。そこのテレビで見ておったから知ってるぞ」

「えっ。なんでつながってるんですか!?」

 

 ノッブが指さしたテレビを見て、思わず聞くマシュ。

 ノッブは、なぜそれを聞くのかとでも言いたげな表情をした後、その原因に気付いたのかにやりと笑いながら答える。

 

「BBが満面の笑みで細工しとったぞ」

「なるほど。BBさんが原因なわけですね……確かにこちらでも見れるというのは良いですが、勝手にそんなことをしたBBさんはとりあえずエルキドゥさんと土方さんに捕縛をお願いしてきますね」

「う、うむ……が、頑張れ……」

「はい。行ってきます」

 

 想定外の速度で休憩室を出て行くマシュ。無表情ながらも怒っているように見えたのは、気のせいだと思いたいエウリュアレだった。

 ただ、その反応が想像以上だったのが、頬を引きつらせているノッブもいた。

 

「いやまぁ、しかし。二日で終わるとは、マスターにしては頑張ったのぅ」

「いや、昔は一日で攻略した特異点もあったんだけどね……?」

「なんじゃそれは。中々過酷じゃのぅ……」

「今回もあんまり変わらないけどね。そこら辺の苦労はマシュの方が知ってるわよ。石砕け大会だったもの」

「あぁ……アメリカまでのどこかでやったって事か……」

「やったわよぉ? 私も味わったしね」

「お、お疲れ様じゃな……」

 

 机に突っ伏しながら答えるエリザベートは答える。

 流石のノッブも、それに関しては何も言えないようだった。

 

「さて……と。それじゃあ、いつもの様にお菓子を食べたいわ」

「なら、仕方ない。儂が持って来てやろう」

「えぇ、お願いするわ」

「エウリュアレをあまり甘やかすでないぞ~? 絶対後悔するからな~?」

「ちょっとネロ。どういう意味よ」

「それくらい、分かっておるよ。じゃあ、しばらく休んでおれ」

「だから、どういう意味よ!」

 

 ノッブとネロの反応にエウリュアレは突っ込むが、二人はにやにやと笑ったまま答えないのだった。




 アガルタ……終わりました……アサシンちゃん欲しいよぅ……来てくれないかなぁ……呼符6枚と石ガチャ3回でも来てくれなかったんだけど……うぅ……
 まぁ、恒常になるのなら、いつか来てくれるよね!!(諦め


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狩りの時間じゃ!(えぇ。分かったから、誰かフレンドリーファイア止めて)

「あ~……安定の暇じゃのう……」

「良くもまぁ、こんな状況で言えるわよね」

「まぁ、ノッブだからな。大体そんなものだろう?」

「面倒ですね~……こんなの、サクッと終わらせてくださいよ~」

「おぅおぅBB。すでに二乙しとるのに、随分と余裕じゃな」

「だって私悪くないですし~。あっ、終わった」

「あぁぁぁぁぁぁ!! 何よ! 卑怯じゃない!!」

 

 怒りのままにポテチを食べるエウリュアレ。

 諸々の力を行使し、輸入したゲーム機。その後、それで遊んでいたオオガミを見たノッブ達がダ・ヴィンチちゃんを脅――――懐柔し、何とか輸入したゲーム。

 ゲームの内容は某狩りゲーだったりする。

 

「全く……弓なのに前に出過ぎじゃろ」

「前線ボウガンに言われたくないんだけど」

「うむ。しかも、フレンドリーファイアまで仕掛けてくるとは、さては策士だな?」

「本当ですよ。私のガードを砕く気で背後から撃ってますよね、絶対」

「お主も竜撃砲で狙って来とるじゃろうが」

「あら。ばれてました?」

「なっ! やっぱりわざとか!! どうも狙われてる感じがしとるとは思ったのだ! 何度妨害されたことか……!!」

「…………で、どうして私だけが死ぬのかしらねぇ……」

「「「回避しないし」」」

「貴方達が妨害してくるからでしょ!?」

 

 容赦のない味方からの攻撃に、回避をことごとく妨害され敵の大技を叩き込まれるという流れだった。

 

「全く……小さな子供でも出来るようになっとるんじゃぞ。こういう時は、スタイルを変えてじゃな……」

「もぅ……なんで私だけ死ぬのよ……」

「防具も全然変わっとらんからなぁ……」

「というか、ノッブ。なんか手馴れてません?」

「そう言われると……確かに、余もそう思うぞ」

「ネロは分かるが、BB。お主に言われたくないわ」

「そうよそうよ。BBは嫌な場面でピンポイントで攻撃を当ててくるじゃない!!」

「嫌ですねぇ……私はただ、絶妙に回避が出来ないギリギリのタイミングで且つ私が絶対喰らわない立ち位置から攻撃を当ててるだけじゃないですか~」

「ほぅ……? 儂よりも練度の高いFFじゃなぁ……」

「えぇ。ノッブを狙い撃ってますから」

「ほほぅ……?」

「アハハハ……」

「……ネロ。私、あの二人とやっていく自信、無いわ」

「エウリュアレ……余も嫌なのだが……」

 

 エウリュアレの装備を整えながら、その二つ名に恥じぬ魔王の如き笑みを浮かべるノッブ。

 その視線の先にいるBBは、悪魔の様な笑みを浮かべてノッブを見ていた。

 そして、その二人に怯えるように、ネロとエウリュアレは抱き合って震えるのだった。

 

「さて……これでいいじゃろ。ほれ、再戦するぞ」

「え、えぇ……って、スタイル変えたらやり方分からないんだけど?」

「あ~……うむ。儂が教えるから問題ない」

「そう。それならいいのだけど……」

「それに、BBにやり返さなくてはならんからなぁ……!」

「……うん。私、完全に巻き込まれてるのね……」

「余は太刀だから、最前線だから巻き込まれるのが一番多いのだが……!」

 

 一番FFの被害に遭っているネロは、とりあえずこの後も被害に遭うのだと確信するのだった。




 BBの武器……ガンスでよかったんですかね……いや、まぁ、バランス的にそうしたかったのもあるんですが。
 それにしても、嫌がらせに関しては一級品の二人がいるパーティー……メンバーの半分が味方を攻撃してくるという惨状である。


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幸運EXって、なんだったかしら……(周囲に毒されたか?)

「あっ。死ぬ、死んじゃう。だ、誰か助けてもいいのよ…!?」

(アタシ)(アタシ)で死にそうなのよ!!」

「茶々の~~……必殺の一撃~~!!」

「フハハ!! やはり吾が一番だな!!」

「ちょ、だから、ダメだこれ、(アタシ)死んじゃうってばぁ!!」

「……バーサーカーはダメね……」

 

 昨日に引き続き、モンスターをバスターするゲームをプレイしているエウリュアレ。

 メンバーはエウリュアレに、エリザベート、茶々、茨木の四人。

 当然の如く暴れる茶々と茨木が前線で大剣を振り回して大暴れし、エリザベートは狩猟笛で演奏しているが、とにかく高周波を出すのが趣味かと思うほどにひたすら出していた。わざとなのか真面目なのかわからない辺り怖い。

 そんなメンバーを遠くから弓を射ちながら見ていたはずのエウリュアレは、逃げた先で大暴れしている茨木にぶつかり、叩き潰されているところをモンスターに引かれて死にかけているのだった。

 

「あぁもぅ!! どうしてこれしか出来ないのよぉ!!」

「わざとよね? わざとやってるのよね?」

「えっ!? え、ええっと……そ、そうよ? (アタシ)が無駄な事なんて、し、しないし? か、完璧に考えてるし?」

「でりゃあ~~!」

「キャーーーー!! ちょっと!! こっちに攻撃しかけるんじゃないわよ!!」

「ハハハハハ!!」

「ちょ、茨木!! ちゃんと敵を狙いなさいよ!!」

 

 敵を狙ってるのか、味方を狙っているのか分からない二人に翻弄されるエウリュアレとエリザベート。

 ちなみに、昨日散々FFしてきた二人は、テレビを占拠して格ゲーをしていたりする。一進一退の攻防に、だんだんと観客まで出始めているのは、ある種の凄さをにじみ出していた。

 

「あっ! ……はぁ、死んじゃったわ……」

「ところがどっこい。これでトドメなんだよっ!!」

「えっ。ちょ、えぇ!? ほ、本当に倒さないでよ!! ベースキャンプからそこまでどれだけ遠いと思って……!!」

「倒してしまったものは仕方なかろう」

「はぁっ……はぁっ……なんで、こんなに辛いのよ……」

「……昨日の方が簡単に思えたのは、やっぱりプレイヤースキルの違いよねぇ……」

 

 そう考えると、あの二人の性能はどれだけ桁違いだったのかがよく分かる。

 結局、最後まで剥ぎ取りが出来なかったエウリュアレは、半泣きで報酬をもらうのだった。

 

「はぁ……今日はもう終わりましょう。というか、なんでこう、味方を狙ってくるのが多いのかしら……」

(アタシ)は頑張っていたわよ!?」

「えぇ。とりあえず、無意識レベルで高周波を放つのをやめましょうよ。いくら宝具が爆砕破音だからって、ここに来てまで主張しなくていいわよ……」

「むぐぐ……次はちゃんとやってみせるわ!!」

「えぇ、期待してるわよ」

 

 最近、自分の幸運を信じられなくなってきたエウリュアレだったが、とりあえず、ノッブ達の観戦をするためにお菓子を取りに行くのだった。




 半分はFFしてくるという謎編成……どうしてその編成にしたんだと、私は突っ込みたい。書いておいて何言ってんだ。って感じですが。

 うぅむ……そろそろお題箱に手を出すとき……何からやろうかな……


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儂、これから大変そうなんじゃが(実質二人を守れと言う無茶ぶり)

「隠れ鬼?」

「うん。いつぞやのお題箱の中から出てきたお題の一つだよ。面白そうだからやってみようかと」

「ほぅ……? で、鬼は?」

「ヘシアン・ロボ」

「阿呆じゃろ……」

 

 即座に突っ込まれるオオガミ。

 当然と言えば当然で、明らかに性能の差が大きかった。

 

「つか、逃げる側はどうするんじゃ?」

「俺と、ノッブと、エウリュアレ」

「馬鹿か!? 儂はまだしも、なぜエウリュアレなんじゃ!?」

「ロボが止まらなくなった時の保険かな」

「あ~……そうじゃな……儂だけじゃと、勝てんしのぅ……」

「でしょ? 最悪、エウリュアレなら魅了で逃げられるしね」

「……自分のサーヴァントから逃げるとか、中々シュールじゃのぅ……」

「まぁ、召喚したサーヴァントに殺されたりしてるの……見たしねぇ……?」

「あ~……特異点仕様だと、確かにあったような……令呪とは一体……」

「えっ、宝具解放と霊気修復、霊基復元の三つじゃなく?」

「ん~……なんというか、本気で言ってるのかどうかが怪しいんじゃよなぁ……」

 

 ここではそう言う仕様なので、仕方ないか。とも思うノッブ。

 

「ん~……場所はどこなんじゃ?」

「ロンドン。魔霧だから、通常のサーチも効きにくいでしょ」

「それもそうなんじゃが……嗅覚はどうしたもんかのぅ……」

「あぁ……まぁ、そこはノッブの担当って事で」

「おぉぅ。儂任せか」

「だってそう言うの考えるの、好きそうだし?」

「……まぁ、そうじゃな。任せるが良い」

「ってことで、エウリュアレの所に行ってくるよ」

「む? ……お主、まさか儂の所へ先に来たのか……?」

「まぁ、うん。エウリュアレの説得が一番難しいからね……」

「どうして先にそっちに行かんかったのか……」

「そりゃ……お菓子作りの待ち時間だし」

「思いのほかにひどい理由じゃな!!」

 

 まさか、先に来た理由がそんな理由だと思わなかったノッブは、あまりのひどさにやってられんとばかりに部屋を出て行こうとしていた。

 しかし、

 

「あ、ノッブ。そのお菓子の話なんだけど、ノッブにも食べてもらうつもりだったんだけど……」

「……味見役としてか?」

「それもあるけど、普通に食べてもらうつもりだったんだけど……」

「……なら、貰うとするか」

「うん。じゃあ、取って来るよ」

「儂もついて行こうかの。作りたての方がうまそうじゃし」

「それもそうだね。じゃあ、エウリュアレを説得する前準備と行こうか」

「うむ!!」

 

 そう言うと、二人は楽しそうに休憩室を出て行く。

 

 その後、お菓子で釣られてしまったエウリュアレは、後で事の重大さに気付き倒れるのだった。




 案の定、一番大変な目に合うノッブ。正直、もう少し人数増やした方が良いような気がするんですが、おそらくこれ以上出すと手が回らなくなりそうな予感……


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無理じゃろこんなの!!(ルール、大雑把過ぎじゃない?)

「ハァッ……ハァッ……予想以上に、辛いんじゃけど……!!」

「全く……私なんて、連れてくるからよ……!!」

「ハァッ、ハァッ……ハ、ハハハ……いやぁ……まさか、ここまで辛いとは……」

 

 ロンドンの路地裏で、息を整えつつ身を潜める三人。

 昨日のゲームを実行した所、開始数分にしてヘシアン・ロボを振り切るには一回魅了をかけないといけないという事実に気付いた三人。

 そんなこんなで逃げ続け、現在開始から1時間経過していた。

 

「あんなのから、何時まで逃げればいいんじゃよ……!!」

「えっと……5時間くらいだったかな……」

「はふぅ……よし。私を置いていきなさい。私だけ諦めてエルキドゥに回収してもらうわ」

「却下じゃ。というか、エウリュアレがいなくなったら完全に勝ち目が無くなるんじゃが」

「むぅ……仕方ないわ。ノッブが懐に隠してる蜜柑(みかん)で手を打ちましょう」

「なんで知っとるんじゃ……」

 

 そう言いつつも、自然な流れでエウリュアレに渡すことに違和感を覚えない辺り、見慣れた光景だとオオガミは思うのだった。

 と、そんな感想を抱いた時、ノッブがピクリと反応する。

 

「うむ。ばれたな」

「えぇっ……せっかく食べようと思ったのに……」

「もう一回逃げ切るまで我慢だよ。で、どうやって逃げる?」

「屋内に逃げ込めればいいんじゃが……」

「難しいわよね。どの家なら入れるのか分からないし」

「そうなんじゃよなぁ……見に行ってる間に襲われたらどうしようも無いからな。とにかく、何とかして撒いてみるぞ」

「了解」

「私は……とりあえず魅了をかければいいのかしら?」

「いや、お主はマスターとおれ。道具で撃退できるかが問題じゃからな……」

「なら、最終手段って判断で良いかしら?」

「それでよい。だから、マスターと逃げておれ」

「良いわよ。マスター、行くわよ」

「うん。ノッブ、任せたよ」

「うむ。任された」

 

 そう言って、ノッブはオオガミ達と別れるのだった。

 

 

 * * *

 

 

『今更ながらルールの確認をしておくとしよう』

「む? どうして今更説明なのだ?」

「馬鹿ねぇ。そんなの、今から見る人だっているでしょう?」

「あぁ……なるほど。なら仕方ないな!」

『……説明してもいいかい?』

「うむ。構わんぞ!」

「どうしてこっちと会話が出来てるのかが気になるんだがな……」

『それは言えない秘密ってやつさ。とにかく、説明を始めるよ』

 

 テレビから聞こえるエルキドゥの声。映っているのは、霧の都ロンドン。

 つまりは、オオガミ達の隠れ鬼の観戦である。

 本人たちの近くに通信回線を開くと、互いに伝わってしまう可能性があるため、エルキドゥを対象に映像回線を開き、全体を見ているのだった。

 

『ルールは、簡単に言えば捕まらないこと。ただし、ただ逃げるだけでなく、事前に持ち込んだ道具や各自サーヴァントのスキルは使用可能なモノとする。そうしないと、流石に僕がいないのに逃げ切れるとは思ってないからね』

「ふむ。煽っておるのか?」

「どこぞの金ぴかバイクなら逃げきれるでしょ?」

「それはそれで道具は使っているがな?」

『単体で超速移動が出来るのはいないと思ってたんだが……僕が知らないだけで、もしかしているのか?』

「そんなのはどうでもいいわ。早く説明して? エルキドゥ」

「茶々も早く知りたいんだけど!」

『分かった分かった。確か、道具やスキルは使っていいって言ったね。それに加えて、倒し切らない程度の攻撃は可能だよ。ただし、追う側の近接攻撃に当たった場合は、触れられた判定とするよ。

 そして、最後に一番重要な問題なんだけど、メンバーの都合上、これは本来の隠れ鬼とは違うよ。鬼の交代無し、触れられたら退場。そして、6時間の間に全員が捕まった場合はヘシアン・ロボの勝利。時間が過ぎた時に一人でも残ってたらマスター側の勝利だよ』

 

「ふむ……む? それだと、エウリュアレが連続で魅了をかければ勝てるんじゃないか?」

「……あ、本当ね」

『……ん? そう言われてみれば確かに……この判定、どうするんだい?』

「こっちに聞かれても困るのだが……」

「ふん。エルキドゥの采配でいいだろう? 審判なのだから」

『それもそうか。なら、再使用に制限をかければいいかな? 確か戦闘でのリキャストが9ターンだから……うん。10分に一回でいいね。とりあえずマスターに伝えておくかな』

 

「良くもまぁ、一時間もそんなあやふやなルールで続けたもんだねぇ」

「センパイ、もしやわざとですかね?」

「そんな訳なかろう! 忘れていたに決まっておる!!」

「逆に酷く罵倒されているような……?」

『うん。まぁ、引き続き映像を映していく――――んだけど、外部通信は一旦終了だよ。また明日、だよ。生放送はこのまま継続だけどね』

「外部通信……?」

「BBさん、知ってたりします?」

「ちょっと、即座に私を疑うの、止めてくれません?」

「出来そうなのは、BBさんしかいませんし……」

「当然ですけど、私じゃないですからっ!」

 

 当然の如く疑われるBBだったが、今回に限っては本当に無実であった。

 

 戦いは明日へ続くのだった。




 これは……グダグダの予感……!! 明日で終わるかな……
 そして、ばれたと分かっていながらそれでものんびりと会話する、残念な集団……これ、実質ノッブが捕まったら負けなんじゃ……?


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長い……戦いじゃった……(ダイジェスト且つ打ち切り風なんだけどね!!)

 ゆっくりと、だが確実に、霧は深まる。

 映像にはほとんど霧しか映っていないのだが、そこはダ・ヴィンチちゃん。こうなることを予想してエルキドゥに事前に持たせておいたカメラの映像を映す。

 サーモグラフィっぽくなってしまってはいるが、見えるので良しとする。

 

『これで大丈夫かい?』

「うむ。見えておるぞ」

「正直見辛い事この上ないけどねっ!!」

「仕方ないですよ。今はこれが限界ですからね……ダ・ヴィンチちゃんが今頑張ってますけどね」

『まぁ、それは後で試してみるとしよう。とりあえず、今はこれで行くよ』

 

 その言葉と共に、映像は動き始めた。

 

 

 * * *

 

 

「ぐぬぅ……茨木を連れて来ても良かったのぅ……」

「仕切り直し……欲しかったね……」

「ほら! やっぱり私以外の方が良かったじゃない!!」

「そんな!! エウリュアレがいなかったら最悪開幕で詰んでたでしょ!!」

「ルール追加で死にそうじゃけどね……」

「まぁ、必死で逃げてると、気付いたら10分経ってるから実質ないようなもの……」

 

 半泣きで言うが、事実何も不自由を感じないレベルで襲われているので、特に問題は無かった。

 

「っ!? マスター、ヘシアン・ロボ以外の敵じゃ!」

「通常モンスター!?」

「ちょ……ここって、ホムンクルスとかじゃなかったっけ……?」

「ランサーじゃし!! こっちアーチャーしかおらんのだけど!?」

 

 当然だが、ここは修正されつつある特異点で、特異点の時の残滓は残っている。

 

「魔術礼装は全部持ってきたよ!!」

「全部使うつもりなんか!?」

「オーダーチェンジで私を後ろに下げていいわよ」

「二人でチェンジも何もないわ」

 

 裏に回れるはずもない。『交換できるメンバーはいません。』だ。

 

「とりあえず、ガンド撃って逃げるか、霊子譲渡でNP貯めて宝具撃って逃走じゃな」

「えぇ……とりあえず、吸血使って宝具一回突き刺して逃げるわよ!!」

「レベルはそんなに高くは無いが受けるダメージは痛いからね……一撃離脱で徐々に削っていくよ!!」

 

 そう言って、オオガミ達は現れた敵を倒していく。

 

 

 * * *

 

 

「あ~……特異点ですもんね。敵がいてもおかしくないですよね……」

『これは……僕が処理しても良いのか、それともこれはこれとして一つのイベントとして扱ってもいいのかな?』

「むぅ……そうだな。余は見守るのが一番だな。こっちが攻撃されたら反撃する、と言うので良いと思うぞ」

「どうにかすると思うし、そっちの方が面白そうよね」

『じゃあ、そうするよ。一応、ヘシアン・ロボも襲われるしね……』

「両者ともに辛いねぇ……」

「ふふふ……センパイ、もっと苦しんで下さいね」

「BBさん。後でお話がありますので、覚悟しておいてくださいね?」

「あっれ~? ここのマシュさん、危険じゃないですか~……?」

「諦めるのだな。あんな登場の仕方をしたからこんなぐれ方を……」

 

 即座に地獄の扉を開けたBBは、なんでこんなことになったのかと、過去の事を思い出すが、心当たりは全くないのだった。

 

『じゃあ、再開していくよ――――っと』

 

 襲い掛かってきたスペルブックを撃ち落し、エルキドゥは再び動き始める。

 

 

 * * *

 

 

「わはは! これは辛い!」

「いいからさっさと凪ぎ払いなさいな!」

「うむ! 三千世界に屍を晒すが良い……!!」

 

 放たれた、もはや弾丸とは言えない無数のレーザー。

 それによってヘルタースケルター達は撃ち砕かれていく。が、

 

「むっ! やばい、気付かれたぞ!!」

「うぇぇ……!! このタイミングで!?」

「面倒ね……私の美声で魅了して上げるわ……!!」

「無理を言うでないわ!! この状況で逃げられると思うてか!!」

「えぇ、貴女がいるし」

「最悪瞬間強化にガンド、全体強化、霊子向上に緊急回避で瞬間攻撃力で怯ませて瞬間回避で全力逃走だよ!!」

「ちょいまてい。今の奴、何度魔術礼装を変えた!?」

「3回かな!!」

「高速換装とか、無茶を……」

「それくらいしないと、死にそうだし!!」

「うむ。それくらいの心意気じゃな!!」

 

 そう言って、三人は再度突撃して突破口を作るのだった。

 

 

 * * *

 

 

『……かれこれ5時間。時間が過ぎるのは早いねぇ』

「むぅ……後少しで終わるのか……」

「早いものねぇ……」

「でも、ここからが本番だね!!」

『最後の最後で逆転、なんてね』

「あはは……それは、かなりつらいですね……」

「私は先輩を信じてますから」

「センパイが、勝てると確信した瞬間にやられるっていうのが理想ですね」

「BBさん。今、自分で自分の首を絞めてるって知ってます?」

「嫌ですねぇマシュさん! そんな首を絞めるような事言ってるわけないじゃないですかぁ!」

「あはは。覚悟してくださいね?」

「…………」

『うん。雲行きが怪しくなってきたね。誰だい? BBとマシュを隣に座らせたのは』

 

 珍しくエルキドゥが突っ込みを入れるが、全員が目を逸らすので諦めるのだった。

 

『そろそろ終盤だね。さぁ、見に行こうか』

「ラストスパートね! 頑張りなさい!」

「ここで負けるとか、さすがの余も頬が引きつるぞ」

 

 その言葉と共に、エルキドゥは付近の敵を倒していくのだった。

 

 

 * * *

 

 

「これ……逃げ切れるかのぅ……」

「もう、普通に倒せばいいじゃない」

「いや、あくまでも逃げるのが目的だし……」

 

 ヘシアン・ロボを前に、三人は戦慄する。

 逃げ切る事が問題なのではなく、周囲を囲んでいるモンスターが問題だったりする。

 

「よし。魔術礼装のリキャストが辛いけど、全力で逃げるよ!!」

「魅了で悩殺。ノッブで周囲の壁突破よね!!」

「任せよ!! って事で、NPチャージしたいんじゃが!」

「……霊子譲渡死んでるけどね」

「……これは終わったのぅ」

 

 完全に、壁に追い詰められているようなものだった。

 こういう時は、本当に仕切り直しのスキルが欲しいと思ったオオガミ達だった。

 

「……よし、最終局面じゃ!! 行こうじゃないか!!!」

「えぇ、止め刺してあげるわ!!」

「完全に耐久する気満々だよね!! まったく構わないけど!!」

 

 そう言って、三人は逃げ切るためにヘシアン・ロボに立ち向かうのだった。

 

 

 数分後、ロンドンから帰還した三人は、しばらく地に伏せて動けなかったという。




 うぅむ……難しい。鬼ごっこ系って、結構書きづらいんですね……何だかんだ、観戦側が本編と化してません?
 結果はあれです。逃げ切れたかどうかは、あなた次第。というやつですね。とりあえずBBはその後どうなったのか……誰も知らないのだった。


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七夕じゃよ(限定お菓子……限定スイーツ……ふふふ)

「七夕……ねぇ……」

「まぁ、お主にとってはあんまり興味ないじゃろ」

「そんなことないわよ?」

「ほぅ? 何かあるのか?」

「えぇ。限定和菓子が出るわ」

「……うむ。いつも通りじゃな」

 

 モグモグと七夕限定ゼリーを食べつつドヤ顔をするエウリュアレ。

 それを見て、苦笑いしつつ作業を進めるノッブ。

 

「というか、ノッブこそ何をしてるのよ」

「短冊作るんじゃよ。お主も手伝うか?」

「ふぅん……そうね。気が向いたら手伝ってあげるわ」

「お主は手伝ってくれること自体が珍しいからな。気が向いたら手伝ってくれ」

「えぇ……ところで、なんで短冊?」

「願い事を書くため……じゃったかな?」

「そう……大変ねぇ……織姫と彦星ってのも」

「……お主も、神じゃったよね……完全に他人事……」

「他人事だしね。私の所を考えなさいな。身内で大戦争が起こる様な世界よ? 大変なのよ?」

「あ~……ギリシア神話って、確かに殺伐としておったなぁ……」

 

 ギリシア神話を思い出しつつ、ノッブは短冊を切りながら頬を引きつらせるのだった。

 

「吾は、特に興味ないんだがな……」

「茶々は結構楽しみだよ!!」

「ふん……普段の星見と変わらぬだろうに」

「夢が無いねぇ、バラキーは」

「……(なれ)は食われたいのか?」

「わははーー! 死ぬわけないし~!! 頼光の力に全力で頼るもんね!!」

「なっ!! 卑怯な!!」

「わははは!! やってくるといいよ!!」

「ぐっ……このぅ……!!」

 

 茨木を煽りつつ、さっさか逃げる茶々。

 茶々にも考えがあったのだろうが、現状においては遊んでいる人間が増えただけだった。

 

「沢庵……沢庵……」

「お主、もう作れよ」

「当たり前だ。それがどれだけ完成するかは分からんがな」

「流石じゃなぁ……まぁ、自分で処理しきれるくらいにしておくんじゃぞ」

「任せとけ」

 

 土方は、当然の如く沢庵について書いていたが、すでに自分でも作っているらしかった。

 いつか、それが原因で何かがある様な気がしなくもないが、今気にしても仕方がない。と割り切る。

 

「それで、エウリュアレは手伝えるのか?」

「えぇ。食べ終わったしね」

「じゃあ、こっちを任せる」

「任せなさい」

 

 鋏を持って楽しそうにしているエウリュアレ。どことなく危ない感じがしたが、ノッブはスルーを決め込む。

 

「よし。じゃあ、今出来てる分は配って来るぞ」

「任せなさい。私の本領発揮よ」

「お主、それが本領で良いのか……?」

 

 ノッブが困惑するが、本人は楽しそうなので問題は無いだろう。

 

「マスター。笹、準備できたか?」

「あぁ、ノッブ。今さっき終わったよ」

「ふむ。なら、ちょうど良かったかの。短冊を切ったから持ってきたぞ」

「ありがとう。ん~……でも、最初は手伝ってくれたみんなでいいんじゃないかな? 俺は最後でいいよ」

「そう言うわけにもいかんじゃろ。こう、マスターの威厳的に。変に遠慮するのはむしろ逆効果じゃぞ?」

「えぇっ……仕方ない……何か考えてみるよ」

「うむ。書けたら言ってくれ。そうしたら儂が配って回るからの」

「了解。少し待ってて」

 

 オオガミの言葉を聞きつつ、ノッブはエウリュアレの元に戻って行くのだった。




 なんだかんだ言って、うちのエウリュアレはイベントを楽しみたいスタイルなんですよ……ハサミ持って、シャキン、シャキン、ってやって意味深な笑みを浮かべてたりしてたりしてなかったり……


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いつも通りじゃのぅ……(これくらいで良いのよ)

「種火周回の日々じゃのう……」

「貴女、全く出ないでしょうに」

「まぁ、茶々が一掃しておるよな」

「茶々のなんかよくわからない凄い力は伊達じゃないんだよ!」

「うむうむ。流石、儂の姪じゃな。よく分からん力も使いこなしておる」

「えっ。でたらめに振り回してるんじゃないの?」

「そ、そんなわけないしっ!」

 

 必死な表情で茶々は言うが、目を若干逸らしているので言い訳にしか聞こえない。だが、結局はちゃんと当てられるのなら問題は無いのだった。

 

「それにしても、茶々以上に周回しやすいのって、うちにいるのかしら?」

「むぅ……茶々はバーサーカーじゃから、あれだけの力を出せるわけで……後は誰じゃろ?」

「悩むわよねぇ……うちにも、NPをくれるサーヴァントが欲しいわねぇ……マシュ以外にも」

「そうじゃのぅ……目指すは3ターン周回かのぅ……」

「まぁ、全然急いでは無いから、今の状態でも十分なんだけどね」

「そうじゃな……あ、エウリュアレ。少し貰っても良いか?」

 

 ノッブは、エウリュアレの食べているプリンアラモードを見ながらそう言う。

 エウリュアレは少し考えた後、

 

「良いわよ。ほら、口を開けなさい」

「いや、自分で取れるんじゃが……」

「変に取られたくないわ。ほら、さっさと口を開けなさい」

「ご、強引じゃのう……仕方あるまい。あー……んぐぅ!?」

 

 口を開けた瞬間にスプーンを突っ込まれるノッブ。エウリュアレは一応ダメージが入らない様にしていたので、ノッブのオーバーリアクションだろう。そうに違いない。

 

「ん~……やっぱりエウリュアレの選んでくるものはうまいのぅ。というか、このサイズの物が置いてるのか?」

「いいえ? これはオオガミに作ってもらったのよ?」

「……うむ。いつも通りのマスター小間使い発言。お主、いつか背後から刺されるんじゃなかろうな?」

「そんなわけないじゃない。私は何も悪くないわ。ちゃんと等価交換だし」

「ほぅ? 対価を払っておると?」

「えぇ……疲れた時の抱き枕扱いよ……」

「あ~……うむ、それなら問題ないな」

「えぇ。もう、慣れたわよ」

「そ、そうか……お疲れ様じゃよ」

「まぁ、それだけでこれが手に入るんだから、問題ないわ……」

 

 別に、抱き枕にされるのが嫌だというわけではなく、その際に寄ってくる集団が恐ろしいだけなのだが、ノッブが気付いているかどうかは定かではない。

 

「まぁ、そんな感じで、このデザートは、私の苦労の結晶よ。燃やされそうになったり、切り刻まれそうになったり、毒殺されそうになったりしたけどね」

「特異点並みの危険じゃろそれ……カルデア、恐ろしいのぅ……」

「毎夜戦ってる貴女のセリフじゃないわね」

「まぁ、そうじゃな。と言っても、儂は、主にその三人からマスターを守るために戦っておるんじゃがな?」

「……えっと、その恩恵、受けられた覚えがないんだけど」

「残念じゃな……おそらく、儂の居ない時に限って抱き枕にされとるんじゃろ」

「そんな……」

 

 衝撃の事実。ノッブシールドが機能してない時に限って抱き枕にされているという事実。

 もしかしたら、ノッブシールドが働いていたならもっと楽になったのだろう。

 

「……次は出来れば私が捕まってる時にもお願いしたいわ……」

「善処はする」

 

 ちょっと落ち込んでいるエウリュアレに、ノッブは真剣な顔でうなずくのだった。




 ふと思い出したんですけど、最初の頃って、確かエウリュアレとノッブの仲って、悪かったような……最近は殺伐レベルが皆無ですね。ほのぼの最高です。


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ついに百話だよ!!(とか言っても、結局いつも通りののんびりとした感じじゃよね)

「平和じゃのぅ……」

「えぇ……平和ねぇ……」

「まぁ、茶々は今日も種火周回だったけどね!」

「うむ、うむ。さすが儂の姪じゃ。褒めて使わす」

「ふふん。まぁ、茶々は伯母上の自慢の姪だからね!!」

「あなたたち、いつもそんなこと言ってるわよね」

「そりゃ、飽きる事は無かろう?」

「褒められて、嬉しくないわけないし?」

「……あぁ、もう。本当に仲いいわね」

 

 やれやれ。と言った感じで、エウリュアレは小さなフルーツタルトを口の中に放り込む。

 

「それにしても、この短い間に結構人数増えたのぅ……」

「そうねぇ……茶々から始まって、土方、ネロ、リップ、BB、バラキー、頼光、玉藻って感じでね」

「うむ。自然に抜かされておるのもいるんじゃが?」

「……風魔、ダレイオス、鈴鹿、ベオウルフ、ライダー金時もいたわよ。でも、ここに来てないじゃない」

「それを言われると、まだ出て来ておらん奴らもいるからのぅ……」

「でしょ? つまり、突っ込んじゃいけないことってのもあるのよ」

「うむ……下手なことに触れるのは、やはりいけないことじゃな……触らぬ神に祟りなしじゃ」

「私たちの間では、触ろうと触らなかろうと祟られるけどね」

「……おっそろしい話じゃ全く。シャレにならんな」

 

 平凡に生きるなど、ギリシア神話では相当運が強くない限り、許されないのだとノッブは思うのだった。

 

「まぁ、よくある事よ。むしろ、フリーダムじゃない神の方が珍しいんじゃない?」

「お主が言うと、説得力が違うのぅ……」

「私は……これでもマシな方だと思うのだけどね……」

「ギリシア神話……恐ろしい所じゃ……きっと、バビロニアみたいなのが常なのじゃろうなぁ……」

「まぁ、あながち間違ってないんじゃないかしら……?」

 

 うんうん。とうなずくエウリュアレ。

 ノッブはその反応に若干の不安を覚えるが、ギリシア神話の真っただ中に呼ばれる事は無いだろうと思う事にしておく。

 すると、ネロとオオガミが休憩室に入ってくる。

 

「ふむふむ。じゃあ、野外ライブがしたいと」

「うむ。そして、そのための準備を頼みたいのだが……何とかなるか?」

「ダ・ヴィンチちゃんに聞かないとねぇ……」

「ネロ……またライブをするの?」

「む? エウリュアレか。当然であろう? 余の歌を望む者は多くいるのだ。そのためにはいろんなところでライブをするしかあるまい」

「えぇ、そうよ! 私たちのライブはまだまだこれからよ!」

 

 不穏なワードに思わず反応したエウリュアレに、胸を張って応えるネロ。そして、その声に呼応するかのように背後から現れるエリザベート。

 

「ふむ……BBも呼んでくるかのぅ……あやつならそう言う機材も作る手段とか知ってそうじゃし」

「えぇっ……アイツに頼るの……? (アタシ)、あんまり好きじゃないんだけど……」

「余も、昔何かあった気がするから、出来れば嫌なのだが……まぁ、BB以外出来ないなら仕方あるまい……」

「ん~……まぁ、メディアに聞いてみて、無理なようならBBに頼らざるを得んな……まぁ、頑張っては見るが、期待はせんでおけ」

「うむ。応援しているぞ」

「頑張りなさいよ!」

 

 休憩室を出て行くノッブに、ネロとエリザベートはエールを送る。

 それを見つつ、エウリュアレの対正面に座ったオオガミは苦笑いをしながら、

 

「……自然にやる流れになってるね……」

「開催地なんて、決めてないでしょ?」

「うん……野外ライブ……仕方ない。バビロニアにでも行こうか」

「ジグラット占拠ライブ?」

「そんなことしたら過労死王に殺されちゃう……」

「じゃあ、どこか見晴らしの良い平原ね」

「うん。それくらいが一番だね」

 

 決定してしまったのだから、今更撤回など出来るわけが無く、諦めてどこでライブをするかを考えるのだった。




 冷静に考えると、この話、ふて寝から始まってるんですよね……沖田さんの罪は重かった……
 まぁ、今ではメルトを望んで年末待ちなんですけどね。ワクワク、ワクワク。


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カルデアサマーメモリー~癒やしのホワイトビーチ~
夏イベント、復刻だってさ!!(儂らの水着はまだかあぁぁ!!!)


「海じゃああぁぁぁぁぁ!!!」

「水着だああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「開拓だああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「……貴方達、基本関係ないでしょ……オオガミだけじゃない……」

 

 両手を上げて喜びの声を上げるノッブと茶々とオオガミ。

 それを見て、苦笑いしつつ突っ込むエウリュアレの気持ちも分からなくはないのだった。

 

「マシュの水着も追加だああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「儂らの水着は無いのかああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「茶々も水着着たいいいぃぃぃぃぃぃぃ!!!」

「ちょっと、マシュが顔真っ赤にしてプルプル震えちゃってるじゃない」

「い、いえ……私は……そんな……」

「余も水着が欲しい……」

「花嫁衣装に言われてもねぇ……?」

「それはそれ、これはこれに決まっておろう。たまには花嫁衣装ではなく、普通の水着も着たいのだ……」

「そうねぇ……私も、もっと色んな衣装を着たいわ」

「……ごめん……ハロエリ、誰もいなくて、ほんとごめん……」

「別に、子犬のせいじゃないわよ。タイミングの問題だし」

 

 若干不満そうなネロに、遠い目をするエリザベート。

 

「それにしても……霊衣解放ねぇ……次は誰が追加されるのかしらね……」

「認めたくないが、きっとアルトリアオルタや、ジャンヌダルクオルタなのだろうな……」

「デオンとアストルフォとか?」

「やっぱり、ストーリーで衣装チェンジがあったサーヴァントからだと思うわよねぇ……」

「というか、それ以外は本当にイベントが来るまで待つしかないよね」

「そうねぇ……しかも、さっき挙げた中で、うちにいるのはデオンだけだし」

 

 このイベントが終わった後、一体誰が追加されるのかと考える全員。

 

「まぁ、新機能だし、そんな焦らんでも良いじゃろ。儂らの水着も、いつか追加される……」

「そうだよ。別に、今年じゃないといけないわけじゃないし。というか、別枠で勝手に着ちゃえばいいんだし」

「………」

「………」

「「それ(じゃ)よっ!!」

 

 とてつもない事に気付いてしまったノッブと茶々。

 その言葉に反応したのは、ネロとエリザベート。四人は視線を合わせ、一度頷くと立ち上がって休憩室を出て行こうとする。

 

「えっと……一応聞いておくね? ……どこに行くの?」

「メディアの所じゃ」

「そ、そう……メディア、どれだけ頼られてるの……」

「うむ。メディアの作る服は中々いいからな」

「だから、今のうちに行くのよ」

「きっと皆が一斉に向かうからね!!」

「な、なるほど……い、いってらっしゃい」

「うむ! 行ってくるぞ!!」

 

 四人はそう言って、行ってしまう。

 残されたオオガミは、一人残ったエウリュアレを見て、

 

「エウリュアレは行かないの?」

「あら……私の水着姿を見たいのかしら?」

「いや……まぁ、うん」

「そう……でも、嫌よ。面倒だもの」

「残念。まぁ、別にエウリュアレはこのままでもいいか」

「そうそう。無理して水着になる必要なんてないわよ。そうよね、マシュ?」

「えっと、その……水着が追加される私が何か言ったら、嫌味にしか聞こえなくなる気がするので、ノーコメントで」

「何よ、面白くないわね……まぁいいわ。とにかく、そういう事よ。ってことで、今日のお菓子を探しに行ってくるわ」

「うん、行ってらっしゃい」

 

 そう言って、エウリュアレは行ってしまうのだった。




 若干のメタと全力の水着回の予感。もちろん、やるとは言ってません。だって、水着の柄とか……まだ思いついてませんし……


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冷静に考えるんじゃ。開拓じゃよ、コレ(海……開拓……ライブステージ……?)

「まぁ、うん。儂、知っておったよ。冷静に考えたら、開拓じゃし、遊んどる暇ないんじゃよね」

「何を今更な事を言ってるのよ……」

「ノッブ。まずは開拓し、(みな)にとって心地の良い場所にしてから大いに遊ぶ。それが当然であろう?」

「ぬぐぐ……ネロに正論を言われてもうた……」

「なんというか、そのセリフには悪意を感じるのだが……気のせいだろうか……」

「うむ。気のせいじゃよ」

「ふむ。なら仕方がないな」

「騙されるんじゃないわよ……いえ、わざと言ってるんでしょうけど……」

 

 机に顔を伏せながらノッブが呟くが、ネロの突っ込みにより諦めたような表情で起き上がってくる。

 エウリュアレはそのやり取りに思わず突っ込みつつ、本日のお菓子であるサーターアンダーギーを食べる。

 ちなみに、イベントでもないのに食べているのは、単純に食べてみたかったからダ・ヴィンチちゃんにねだったらしい。

 

「それにしても、イベントまでの期間が短いわよね……新特異点が出来て二週間近くでイベントなんて、種火を集める暇もないわ」

「いつもの事だよね。というか、今回は結構時間あった方だと思うよ?」

「まぁ……当然の如く私に聖杯が一つ捧げられたからね……」

「おかしいんじゃよなぁ……」

「余には聖杯は一つも無いのに……」

「なによ……素でレベル上限が80とか90あるようなのに言われてもねぇ……」

「昔と言ってることが違っとるんじゃが……」

「そう言う事もあるわよ」

 

 うんうん。とうなずくエウリュアレ。すでにレベル94まで来ており、レベル100はもう目前だった。もちろん、目前とはいっても、必要な経験値量は膨大なので、当然の如くしばらくは上がるわけは無いのだった。

 

「私、ここ最近、一回も編成から抜けた覚えがないんだけど……」

「儂、鬼ヶ島以降組まれた覚えがないんじゃけど」

「余、たまに抜かれるのだが」

「私なんか、昨日修練場を回ってる時に入っただけよ?」

「エリちゃん、ちゃんとアガルタでも出てたでしょ……?」

「さらっと入って来たわよね……」

 

 さらっと会話に混ざってくるエリザベートに思わずエウリュアレは突っ込むが、当の本人はさも当然と言いたげな表情をしているので、特に問題は無いためそのまま流す。

 

「ねぇ……子犬? その無人島、ライブステージは作れるの……?」

「……」

「む? 確かに、開拓なら作ってもいいのか……?」

「……い、いやいやいや……さ、流石に選択肢にライブステージは無いと思うよ……?」

「つまり、あったならやるというわけか」

「青い空、白い雲、煌めく海! そして、そこでやるライブとは、どれほど良いものか!!」

「うっわぁ……バビロニア大惨劇――――じゃなかった。大規模ライブをやる予定だったのに……」

「諦めなさい。夏は戦争よ……」

「儂は行かんぞ。ライブが終わったら呼ぶと良い」

「令呪使ってでも連れて行くから安心して」

「マスター許さん縛り上げてやるぞ心せよ」

 

 満面の笑みで恐ろしい事を言い合うノッブとオオガミ。

 正直ノッブが犠牲になるか否かというだけの話で、令呪を使ってノッブを連れて行きながら縛り上げられて耳をふさぐことすらできないオオガミが一瞬で想像できたエウリュアレなのだった。




 やめろ……やめるんだ……真夏の未開拓島で最恐のライブイベントとか、逃げ場がない……!!
 さて、今回もノッブはお休みなのか否か……


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ついに! 水着イベントキターーー!!(今日は様子見だから遊ばないよ!?)

「ぬわははははははは!!! イベントじゃああぁぁぁぁぁ!!!」

「余の出番だああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「茶々も行くぞおおぉぉぉぉ!!」

「貴方達、本当に楽しそうねぇ……」

「今日は軽く行ってみるだけなのにね。本番は明日からだよ?」

 

 異様に気合の入っている三人を見ながら、エウリュアレとオオガミは苦笑いをする。

 ちなみに、もう一人叫ぶであろうエリちゃんは、別の用で休憩室にはいなかった。

 

「というか……ダウンロード……長いのぅ……」

「そう言う事もあるさ……」

「全く……何時になったら海に行けるのじゃ」

「オケアノス行って来ていいよ? 俺はマシュの水着を解放するために頑張ってくるから」

「あ、それだけは勘弁じゃ」

「まぁ、オケアノスでも十分海水浴は出来ると思うけどね」

「満面の笑みで一人で行かせようとするマスターが恐ろしかったんじゃけどね……?」

 

 顔に笑みを張り付けながら提案するオオガミに、プルプルと震えながら拒否をするノッブ。

 

「フフフ……とりあえず、手始めに私が行くのよね……で、私じゃなくても大丈夫みたいなら、色々試してみる……って感じかしら?」

「流石エウリュアレ! 良く分かってる! でも、流石にランサーなら後方待機だよ?」

「それでも編成に入れるのね……」

「そりゃもちろん。本気で最終手段だと思ってるからね。エウリュアレがいるのと居ないので結構変わる場面はあったと思うよ? つい最近だと、メガロスとか」

「それ、相性の問題じゃない。というか、流石に孤島にまでそんなのがいるとは思ってないんだけど……」

「分からんぞ? あれだけ女しかいない雰囲気全開だったくせに、結局最強レベルだったのは男のメガロスじゃし」

「石砕いたのは柱だけどね……あら? ねぇマスター。私たち、魔神柱に石を砕かなかったのって、終局特異点だけじゃないかしら……?」

「……エウリュアレ。その話はしないで。心が痛い……」

「ふはは。中々ひどいのぅ」

「でもまぁ……勝ってるのなら問題ないわよね。勝てば実質砕いてないも同然よね」

「そういう発想は不味い。それ、ずっとやり続ける羽目になるんじゃが」

「さ、流石にそんなことはしない……よ?」

「末期じゃった!」

 

 冷静に考えると、5章までは石を砕いて突き進んでいたので、手遅れも良い所である。

 

「さて……じゃあ、そろそろ行こうか」

「そうじゃな。という事で、儂も荷物を準備してくるぞ」

「私のも持ってきてくれるかしら?」

「うむ。任せよ」

「ネロも準備しておいてね?」

「うむ! というわけで、余も行ってくる!!」

 

 そう言うと、ノッブとネロは準備をしに休憩室を出て行くのだった。

 

 その後、もう何人かに声をかけて準備をしてもらった後、レイシフトをするのだった。




 想像以上に長いダウンロードと、とりあえずエウリュアレは編成に自動的に入れられるという現実。
 戦いは始まったばかり!!


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解放翌日に開拓完了(これから忙しくなるんじゃろうなぁ……)

「終わったのぅ……」

「終わったわねぇ……」

「まさか、一日で終わらせるとは……さすがマスター」

「当然よなぁ……なんせ、イベント交換一回もしてないもん」

「まぁ、これからアイテム回収の旅が始まるって事じゃよ……」

 

 当然の様に遠い目をするノッブ。しかし、真水でしか活躍できないのが現実だった。

 ちなみに、今は船を出さず、周回のために出航前の状態にしていた。

 

「いいじゃない……今回はネロの出番よ。石材を頑張って集めなさいな」

「うむ!! 余は頑張るぞ!!」

「儂はあんまり活躍できんし……茶々も頑張るのだぞ?」

「食料はまっかせっなさーい!!」

「私も頑張りますね!」

「うむ。マシュも儂らと同じ真水じゃからね。儂と立場、変わらんからね」

「そう言う事言わない。真水だって使うんだから」

「そうよ。種火回収に必要なんだから、マスターが要らないなんて言うわけないじゃない。むしろ、これだけは取れって言ってくるわよ」

「おぉぅ。さすがエウリュアレ。言いたいことが分かってる!」

「分かりたくないわよこんなこと……という訳で、ノッブ。頑張って」

「なるほど……そこで儂に振るのか」

 

 当然と言わんばかりの表情で、エウリュアレは元拠点である木の小屋へと戻っていく。

 

「……というか、なんでエウリュアレはあっちの小屋に行くんじゃ?」

「気に入ってるんじゃない? 広いところよりも狭いところが落ち着くっていうのはあるし」

「それは確かに……そうじゃな」

「でしょ? じゃあ、いいんじゃない?」

「まぁ……どこにいても変わらんしな……」

「うん。まぁ、後で様子は見に行くよ。スイカもついでに収穫してこよう……」

「うむ……儂は先に城へ戻っておるぞ」

「うん。でもまぁ……ちょっと作り直したいところもあるから、イベント交換終わってももうちょっと仕事してもらうことになるかもしれないから、よろしくね」

「おう。任せておくがよい。儂は基本手伝うからの」

「じゃ、また後で」

「また後で」

「余もちょっと用があるから、ノッブと一緒に行くぞ。後で会おう!」

「行ってらっしゃい。また後でね」

 

 そう言って、ノッブとネロは城へ向かっていく。

 

「さて……じゃあ、行こうか」

「はい。しっかりとお手伝いさせていただきます!」

「そんな気張らなくても大丈夫だからね?」

 

 オオガミは、苦笑いをしながらマシュにそういう。

 そして、ふと思い出したように、

 

「それにしても……今更だけど、よくこんなのをサクッと作れるよね……しかも、あくまでもみんなは戦士とか魔術師とか、そんな感じのパーティーなのに。建築とかできるのは少数のはずなんだけどね……」

「枯山水は大変でしたね……そもそも、正確に知ってる人なんて、ほとんどいないようなものでしたし……」

「……ねぇ、この規模の開拓をして、歴史に異常は出ないのかな……?」

「……どうなんでしょうか。通信が取れるようになったら聞いてみないとですね……」

 

 歴史を修正しに来て、歴史を乱す。それは、本末転倒もいいところだった。

 

「でも、まぁ……」

 

 しかし、オオガミは空を見上げ、

 

「楽しかったし、いいか」

「……そうですね」

「じゃ、スイカを収穫だ!」

「はい!」

 

 そういって、二人はスイカ畑の中に入っていくのだった。




 珍しく全力を注いだイベント……タイミング的にも全力を注げるタイミングだったんです……
 しかし、本当に一切イベント交換してませんから、終わるかどうか……まぁ、やれるだけやってみるしかないですよね……


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完全自家製スイカだよ!!(高難易度は安定のヘラクレスで爆砕)

「やっぱり……おいしいわね」

「スイカだけでなく、塩まで自家製。思い入れ補正で更においしくなる……」

「思い出補正は最強なんじゃよ」

 

 木の小屋で海を眺めながら、もぐもぐとスイカを食べる三人。

 今日はいつも以上にぼんやりとしていた。

 

「それにしても……今日は木材取って終わったのぅ……」

「高難易度も、思ったのと全然違かったけどね……」

「あんな耐久、許さないわ……何よ、全員超耐性とか……」

「最後の最後で、まさかバスターチェインで耐性が破れる事に気付くとは思わなんだ」

「もっと早くに気付けば……楽だったじゃない……」

「結局、最初から最後まで生き残ってたのはエウリュアレだけだし」

「本当に……もう、ヘラクレスがいなかったら死ぬかと思ったわよ」

「やはり、ヘラクレスは最強じゃったか……」

 

 全力で圧殺撲殺したヘラクレス。まぁ、そこにたどり着くまでの過程は全てエウリュアレが一掃していたので、結局はエウリュアレがメイン戦力だった。

 

「……スイカの種……取り辛いわね……」

「そのままかぶりつけばよいじゃろ」

「見た目を気にして、スイカを喰えるかぁ!!」

「マスターの言う通りじゃ! 勢いよく、大胆に、じゃ!!」

「…………あぁ、そういう事。だからこのメンバーなわけね……」

「うん。一番見られても問題無いメンバーでしょ? 他の皆は別の用でいないし、戻ってくる前に洗っちゃえば分からないでしょ。多少汚れても、ノッブか俺が何か言われる程度だし」

「さらっと儂の扱いが酷いんじゃが、気のせいじゃよね?」

「気のせい気のせい。ほら、さっさと食べちゃおうよ」

「……洗う時は手伝いなさいよ、ノッブ」

「う、うむ……流石にそこはマスターには任せられんからな……」

 

 ノッブが頷き了承したのを見て、エウリュアレは少しためらってから勢いよくかぶりつく。

 

「んっ! こっちの方がみずみずしくておいしいわね!」

「そりゃ、スイカを抉って種を出すよりもそっちの方が果汁も出ないから美味しいじゃろ」

「うんうん……最大の敵は、うっかり口の中に含んだ種を噛み砕いたり、うっかり飲み込んだりする事……飲み込んだらおへそから芽が生えてくるよとか、よく言ったと思うんだ」

「うむ。完全に今言う事ではないな。そして、腹から生えた植物と同化したのがアウラウネじゃ」

「植物人間は植物の種を飲み込んだ人間の末路だったのか……!!」

「何言ってるのよ。そんな訳……無いじゃない」

「微妙な間が気になるんじゃけど……」

「可能性の彼方で腹から生えた植物によって浸食されたのがアウラウネ……!! ちょっとシェイクスピアかアンデルセンに相談してみるかな……」

「話でも作るつもり?」

「予定は未定。頑張るよ」

「まぁ、暇つぶし程度にならなるじゃろ」

「頑張りなさいな」

「う、うん……まぁ、帰るまでは何かに書いておくよ」

 

 スイカを食べながら話し合う三人は、その後もしばらくのんびりとしていたのだった。




 いや、アウラウネの話……書きませんよ……? たぶん……
 スイカの種……箸で取るか、それともそのまま食べて、タネマシンガン叩き込むか……かみ砕いて飲み込むって、ありですかね……


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鉄材……大変ねぇ(魚……ほぐしてやってもいいんじゃぞ……?)

「今日ものんびりしとったのぅ……」

「それ、私たちだけなんだけどね」

「……まぁ、儂ら以外……おらんしな」

 

 正確には、真水・食糧組が全員休みなのだか、木の小屋にいるのはノッブとエウリュアレだけなのでいないようなものだった。

 

「……むむむ……取りにくいわ……」

「別に、無理をして箸を使う必要は無いんじゃよ?」

「馬鹿言わないでちょうだい。私だって、ちゃんとできるんだから……!!」

「……まぁ、エウリュアレがそれでいいならいいんじゃが……儂が取ってもいいんじゃぞ?」

「まだよ……まだ諦めないわ……!!」

「……かれこれ、二十分。大変じゃのう……」

 

 ノッブはすでにほとんど食べ終わっており、エウリュアレは魚をほぐすのに熱中して途中から食べる事を忘れていた。

 

「後少し……後少しなのよ……!!」

「そうじゃな。そこまで行ったら、儂が手伝うのは野暮というものじゃ」

「ふふん。これで……終わりよ!」

 

 ドヤ顔で魚をほぐし終わったエウリュアレは、少しの間達成感に満ち溢れた表情をした後、嬉しそうに魚を食べ――――

 

「……冷えてるわ……」

「まぁ、そうなるじゃろうと思っておった。新しいの、焼くか? そっちは儂が食べるぞ?」

「いいえ……流石にそこまではしないわよ。自分でやったんだもの。自分のくらい……ねぇ?」

「……そうじゃな。それが一番じゃ。というわけで、頑張るんじゃよ」

「えぇ、任せなさい。ちゃんと食べきってあげるわ」

「うむ。しっかり食べ切れたら、儂が後で何か作ってやるぞ」

「んっ。緑茶に合う和菓子が欲しいわ!」

「それは……ここで作れるかのぅ……探してみるか」

 

 嬉々として残った料理を食べるエウリュアレ。

 ノッブはそれを見つつ、何を作るかを考える。

 そんなことをしていたら、突然扉が開いてナーサリーが飛び込んでくる。

 

「ノッブ!! 私のスイカは無いの!?」

「いきなり飛び込んできて何言っとるんじゃ……まぁ、スイカは余っておるし、何個か冷やしているが……食べたいのか?」

「えぇ!! って……エウリュアレがご飯を食べていたわ。なら、食べ終わるまで待っていなくちゃよね」

ふぐはへほはふはは(すぐ食べ終わるから)まっへなはい(待ってなさい)!」

「おぅエウリュアレ。喋るか食べるか、どっちかにせい」

「はわわ……ノッブが珍しく怒っているわ……!!」

「んぐっ……そんなに怒らないでよ……仕方ないわ。黙って早く食べちゃいましょ」

「えぇ、待ってるわ!」

 

 ニコニコしながらエウリュアレが食べ終わるのを待つナーサリー。

 その後、エウリュアレが食べ終わったあたりでやってきて同じようにスイカが食べたいと言ってきた茨木は、ノッブと一緒にスイカを取りに行くのだった。




 鉄材が集まらない……これはもう、林檎を使ってアップルパイを作るしか……!!(錯乱


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ついにここまで来ちゃったわね…(レベル99の壁じゃよ……)

「種火……終わったのぅ……」

「えぇ。おかげで、レベルが99になったわよ」

「エウリュアレが最強だし!」

「これは……もはや信仰の域なんだけど……」

「神としては嬉しいんじゃないのか?」

「このレベルは流石に……そもそも、私を前線に出す信徒とか、嫌に決まってるでしょ?」

「はぅぁ! エウリュアレに嫌われてた……」

「……別に、嫌ってるわけではないのだけど……」

「マスターも、性格悪いのぅ……」

「……冗談で言ってるように見えないのよね……」

 

 当然の如く種火を大量に投下されるエウリュアレ。

 だが、それでもレベルマックスにならなかったのは、やはり壁が高い、という事だろう。

 

「それにしても……最近、ノッブの攻撃力が落ちてる気がしてきたわ」

「……儂の攻撃力、変わっとらんのじゃが。それは煽りとして受け取ってよいのか?」

「そうねぇ……じゃあ、あれよ。久しぶりにちょっと戦いましょうよ」

「ほぅ? ついに儂に挑戦してくるまでになったか……ふむふむ。儂も舐められたものじゃ……」

「ふふふ……今回こそ勝ってあげるわ」

「ふん。儂が負けるわけなかろう?」

「二人とも、死なない程度にね?」

 

 二人は不敵に笑いながら小屋を出て行った、

 だが、この島に運動場は無い。まさか、枯山水で戦闘をするわけじゃあるまいな……と思いつつも、今更見に行く勇気は無いオオガミ。

 そして、一人になったために何をしようかと悩んだ時だった。

 

「マスター!! バラキーと来たわよー!」

「なんだその呼称は! 茨木童子と呼ばぬか!」

「えぇ~? だって、バラキーはバラキーよ?」

「む、むぅ……? ば、バラキーとは一体……?」

「まぁ、深く考える必要は無いわ。それよりもマスター! スイカシャーベットっていうのを作ったって聞いたんだけど!!」

「どこからそんな情報仕入れてきたの……?」

 

 玉藻に頼んで密かに作ったにも関わらず、やはりどこからか情報が漏れてしまったのだろう。少なくとも、この二人は知っているようだった。

 

「ふむふむ。で、それを聞いて、どうするの?」

「当然、私のもくれるのよね!?」

「吾は否応でも貰うがな?」

「あはは……二人とも、落ち着いてよ。というか、二人だけに食べさせるわけにはいかないからね?」

「そんなっ……!!」

「なん……じゃと……!?」

 

 驚愕の表情をするナーサリーと茨木。

 

「まだ試作品だし、最初に食べるのは玉藻だからね? 一応、手伝ってくれたし」

「むぅ~! なら、私が手伝うわ! それなら文句ないでしょう!?」

「吾はただ喰らうのみよ……さて、『すいかしゃーべっと』とやらはどこじゃ……」

「こら。行かせはしないよ。食べたいのならナーサリーみたいに手伝いなさい」

「ぐぬぬ……そも、何を手伝えと言うのだ!」

「スイカを取ってきてくれないかな。バラキーなら速いから、その分だけ早く作れると思うんだけど」

「任せるが良い!」

 

 そう言うと、茨木は驚くほどの速度で走って行ってしまった。

 それを顔だけ出して見送ったオオガミは、すぐに顔を引っ込め、

 

「行動が早いなぁ……まぁ、あんな働きされたらこっちも応えるしかなくなるよね」

「えぇ。それでこそマスターよ」

「うん。じゃあ、準備をしようか」

「分かったわ! 任せなさい!」

 

 その後、茨木の取ってきたスイカを受け取ったあたりでボロボロになって帰って来たノッブとエウリュアレが、同じようにスイカを取りに走って行ったのは、ここだけの話である。




 ついにレベル99。しかし、ここまで来てもノッブの神殺しに勝てるのかどうか……宝具バスターバスターで一撃で倒されそうな予感……


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もう少しで水と食料が……!!(いい加減、儂らも遊んで良いよね?)

「うむ……そろそろ改築しても良いと思うんじゃけど」

「残念。ほとんど素材が回収できてないから、今週もアイテム集めなんだなぁこれが!」

「ふふふ……安心しなさい。私たちは後少しよ……」

「うむ。そうじゃな。後1200個ほどじゃな!!」

「食料集めと改築素材もあるから、まだ二人には頑張ってもらうけどね」

「……ノッブ。後は任せたわ」

「うむ。儂じゃ攻撃力もNP回収率も足りんしな。ここはエウリュアレの出番じゃろ」

「さらっと見捨てられたわ! ノッブの人でなし!!」

「神に言われる日が来るとは思わなんだ!!」

 

 半泣きの表情で訴えるエウリュアレに、驚きと笑いが混じったような表情で突っ込むノッブ。

 

「全く……食料優先だからマシュとエウリュアレの二人で原始林に行って、どうぶつ大戦争とか言ってるやつにとどめ刺してくる感じだよ?」

「…………最近、私の働きっぷりを見てノッブが羨ましがらなくなって、変わる気を失せてるんだけど」

「いやぁ……儂、もうカルデアで待つのが一番じゃろうなぁって思って来た」

「私の代わりはもういなくなったのね……」

「ごめん。最初からいない」

「……まぁ、そんなモノよね。ふふふ……任せなさい。もう、一周回って楽しくなってきたわ」

「うむ。順調にエウリュアレも変わって来たな」

「誰だ変えたのは」

「紛れもなくマスター。お主じゃ」

 

 誰が変えたんだと憤慨するオオガミに、すかさずお前だと突っ込むノッブ。

 エウリュアレもノッブに同意するようにオオガミを睨むが、本人にその自覚は無いので気付かない。

 

「それで、どうするんじゃ? というか、終わらせるつもりあるんじゃろうなぁ……」

「鬼ヶ島みたいなことにはしないよ……二部までには終わらせる勢いで……」

「私もギリギリでラッシュは嫌よ? そう言うのはネロに任せなさい」

「そうじゃな。ネロがそう言うのは得意そうじゃ」

「つまり……石材を最後にしろってこと?」

「うむ。とりあえず鉄材を集めなくては始まらんじゃろ」

「あ~……そうだね。鉄材が難関だよね……うん。終わったら鉄材を集めようか……」

「うむ。お主が鉄材を集めに行っておる間、こっちは遊ばせてもらうがな!」

「何それ!! 俺も一緒に遊びたいんだけど!! 絶対楽しそうなんだけど!!」

「ふはは!! 諦めるんじゃなぁ!!」

「ぬぐわああぁぁぁぁぁ!!!」

 

 突然の裏切り。オオガミが羨まし気な視線で訴えるのも無理はないだろう。

 

「ククク……早く終わらせれば、それだけ早く遊べるという事じゃよ……」

「そうね。私も早く遊びたいわ……」

「では、さっさと終わらせるかの。マスター」

「ぐぬぬ……仕方なし。全速力で終わらせる……!!」

 

 そう言うと、三人は小屋を出た。




 この話を書いている間に、真水と食料が集め終わったんですよ……後は木材と石材と鉄材。あれ? まだ6割残ってる様な……??
 これ、終わるんでしょうか……(震え

 そして、こいつら、たったの一回も城に入ってないのだが……


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スイカ割りじゃよ(こっちが鉄材集めてる間にそんなことを……)

「さて……これで決着じゃ……」

「ふふふ……それはどうかしら?」

「む……ならば……ここじゃぁ!!」

 

 バンッ!! と叩き付けられる木の棒。

 砂が爆散するほどの威力で叩きつけられ、その威力で隣にあったスイカが飛んでいく。

 

「むぅ……感触が無かった。外したのぅ……」

「うふふ。計画通り、外したわね。私の言葉を深読みするからよ」

「ぐぬぬ……というか、助言なら良いとしても、惑わせるのはどうなんじゃよ……」

「私がそれをしなくて、誰がこの役目をするのよ」

「そんな役目はいらぬという話じゃ」

「それは……出来ない相談ね」

「……おかしいんじゃよなぁ……」

 

 ノッブは目隠しを外しながらエウリュアレに呆れたような視線を送るが、当の本人は悪びれる様子も無く平然としていた。

 

「次はネロの番じゃな」

「うむ。今度こそ叩き割ってくれようぞ!!」

「終わるかしらねぇ……早く割らないと、温かくなっちゃうわ」

「じゃあ、別のスイカにして、こっちは先に食べるか」

「ぬわぁ! 余のスイカがぁ!」

 

 ネロの制止も空しく、ノッブはさっさとスイカを取り換える。やっぱりこういうものは冷たいほうがいいのだ。

 

「それじゃあ、ネロが叩き割るのを観戦じゃな。ナーサリーもやるか?」

「えぇ! 私もやりたいわ!!」

「うむ。じゃあ、茨木も――――」

「当然、参加する。鬼の力、見せてくれようぞ……」

「退屈しないわねぇ……で、エリザベートは?」

「ネロが出て私が出ないわけないでしょ? 当然、出場するわ」

「そうよね。というか、意外に増えたわねぇ……」

「うむ。儂ら二人で遊んでたら、まさかこんなに増えるとはのぅ……リップは食うだけでいいんか?」

「はい。私、棒が持てませんし」

「ん~……まぁ、それもそうじゃな。なら、割れたやつを頼むぞ」

「はい! 任せてください!」

 

 楽しそうに遊ぶ7人。最初はノッブとエウリュアレで遊んでいたが、ネロが来た辺りから、だんだんと人が増えてきていた。

 

「して、どのようなルールなのだ?」

「む? まぁ、そうじゃな。目隠しをして、10回回ったらスタートじゃな。で、記憶を頼りにしてもいいし、儂らの声を頼りにしても良いという感じじゃ」

「ふむ……まぁ、一度試してみるか」

「まぁ、出番が回ってくるまでに時間はあるじゃろうしな」

「そうか。なら、少し行ってくる」

「うむ。頑張るがよい」

 

 茨木はそういうと、離れていく。

 ノッブはそれを見送ってから視線をネロに戻すと、ちょうど的外れなところに棒を叩き付けたところだった。

 

「ぬぐぁ……ダメだったか……!」

「お疲れさま。次は私よ」

「む。そうか、なら、余が目隠しを着けてやろう……」

「ありがとう! お願いするわ!」

 

 ネロに目隠しをしてもらいながら、ナーサリーは木の棒を受け取る。

 

「ふむ……ナーサリーの番じゃな。というか、これ、マスターが帰ってくるまでに終わるか……?」

「無理ね。諦めましょ」

「はっきりというのぅ……まぁ、問題はないか」

 

 ノッブはそういうと、楽しそうにスイカ割りを見るのだった。




 スイカ割り……正直、楽しいけど後始末の面倒臭さは折り紙付き。英霊もきっと同様なわけで、この後後始末に追われるんじゃないだろうか(希望


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大改修じゃ!(今日で終わりそうにないけどね)

「大改修じゃのぅ」

「まぁ、結局今の所変わってるのは、ピザ釜が土釜戸になったくらいよね」

「わざわざ元に戻すその心意気……もはや執念の域じゃな……」

「和風改築よね。楽しそうで何よりだわ」

「まぁ、儂も見てて面白いしな」

「私も、作ってすぐ壊すだけじゃもったいないっていう理由で料理が運ばれてくるから満足よ」

「……残すでないぞ?」

「安心しなさい。最終的には皆で食べるから、私は毒見役よ」

「食いたいだけじゃろ……」

 

 お菓子ではなく、今回は普通に料理メインで構成されていた。

 明日は海に出るので、備蓄を溜めつつ、余るものは処理していくという過程で生まれた無数の料理。

 これが終わったら宴会でもするのだろうかという勢いだった。

 

「それにしても、誰が作っとるんじゃろ」

「玉藻とメディアとマシュね。たまにオオガミが手伝ってたりしてるわよ?」

「マスターに働かせるサーヴァント。冷静に考えると、すごい状況じゃよね……」

「失礼ね……ちゃんと、食べられないものは無いかって、毒見してるじゃない」

「毒見する女神ってのも、中々字面にするととんでもないものを感じるのぅ……」

「じゃあ何ならいいのよ……」

「いや、別に……面白い状況じゃよねぇって話だし」

「確かに、面白いわよね。で、貴女は食べないの?」

「そうじゃのぅ……お主だけが食うのは、安全性に欠けるしな。儂も食うぞ」

「一々そんなこと言わなくても良いわよ……」

 

 シチューを飲み、一息つくエウリュアレ。

 ノッブが一番最初に取ったのは、おにぎり。つい最近、金色に輝くものを食べたような気がするが、気のせいだろう。

 なんだかんだ言って、最初に作った時以外本来の使い方をされていなかったピザ釜も、今では元気に働いていた。

 

「それにしても、デザートピザなんてあったのね」

「クレープと似たようなもん……かのぅ?」

「おいしいのは変わらないけどね。メディア、器用よねぇ……」

「あのスキル、どこから来たんじゃろ……」

「触れたらいけない気がするから、私は関わらないことにするわ」

「そうじゃな。儂も知らない方が良い気がしてきた。うむ。トウモロコシもうまいな!」

「キャベツだっておいしいわよ。味付けは簡素だけど、十分ね」

「やはり新鮮なのは格別……産地直送、地産地消。やはり最強じゃな」

「おいしいものは皆の心を豊かにするわね。確かに、これは神に祈る気持ちも分かるわ。こんなにおいしいのが食べられなくなるなんて、死にたくなるもの」

「うむ、うむ。これで、明日も頑張る力が湧いてくるというものじゃ」

「えぇ、えぇ。つまみ食いもここまでにしておきましょうか」

 

 その一言に、ノッブは凍り付く。

 

「…………おい待てエウリュアレ。お主まさか、黙って食っておったのか?」

「そうよ? 共犯者なんだから、諦めなさい?」

「…………珍しく罠にはめられた……これ、儂も悪くなるんじゃが……」

「いやぁ……ノッブに見つかった時はどうなるかと思ったわ」

「こやつ……仕方なし。とりあえずメディアに伝えてくるかの」

「えっ! ちょ、裏切り早いわね!?」

「うむ。こういうのは早めに言っておくのが一番じゃ」

「しっかりしてるわね……自分が怒られるかもしれないっていうのに。うつけ者ってなんだったのかしら」

「満面の笑みを浮かべながら堂々と嘘を言ってくるお主に言われたくないのぅ……」

「あら、どこで気付いたの?」

「儂に見つかった時は、という辺りからじゃな。そもそも、お主は嘘を吐いておると言わぬからな……ほれ、儂らも出来る限りのことを手伝いに行くぞ」

「むぅ……仕方ないわね。私もちゃんと手伝うわよ」

 

 二人はそう言って、ちょうど厨房を手伝いに来たオオガミの元へ向かうのだった。




 まだ、牧場にたどり着いたばっかりなんですよ……明日までには終わるはず……午後に、入る前に終わらせるんじゃぁ……!!


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カルデアヒートオデッセイ~進化のシヴィライゼーション~
大・航・海!(しかし、始まったと思ったら終わっていた)


「よし。航海の準備は完了だね。ノッブ!! そっちは大丈夫かい!?」

「うむ! 言われたものはそろっておるぞ!」

「ならいいね! エウリュアレはあそこにいるから、幸運の女神も完備。準備は出来たよ、マスター!」

「じゃあ、皆!! 新天地目指して、ついでにカルデアとの回線回復祈ってレッツゴー!!!」

「「「おおーーー!!」」」

 

 船の上で、大きな声が響く。

 オケアノス以来の大航海の予感に、思わず笑みを浮かべるのも仕方のない事だろう。

 

 

 * * *

 

 

「しかし、儂らがすることなんて、特にないんじゃよねぇ……」

「私の方が何もすることが無いわよ……」

「時たま見える鳥を眺めるくらいじゃしねぇ……」

「まぁ、戻れるまでの辛抱だし、多少はね」

「そうじゃな……しかし、結局、改修してもあまり変わらなかったのぅ」

「そう? ピザ釜が土釜戸に変わって、水田が麦畑に変わって、鳥牧場が牛牧場になって、牧場道が石畳になって、木の水路が石の水路になって、枯山水が迷路の庭になって、城が武家屋敷に変わったじゃない」

「……半分変わっておるではないか!!」

「そうね。私も確認して初めて知ったわそんなに変わってたのね」

 

 すでに過ぎた事だが、結果として半分も改修したという事実に驚いていた。

 その事に思いを馳せていると、

 

「ノッブ~! エウリュアレ~! 島が見えてきたから降りてきて~!」

「…………短いような、長いような、そんな感じじゃのぅ……」

「寝て起きたら次の島って感じね。大航海って何だったのかしら」

「そうじゃな。とりあえず、行くかのぅ」

 

 二人はそう言って、オオガミの元へと向かうのだった。

 

 

 * * *

 

 

「喋るうりぼう……流石のブリテンも手を出すまいと思ったけど、めちゃくちゃ食べたそうにしてたよね……」

「ゲテモノ肉も! ごちそうじゃ!! とか言っておったし、あんまり関係ないんじゃろ。きっと」

「円卓は常識サイドの陣営もこんな感じだから、白い目で見られるんだよ……」

「酷い八つ当たりを見たわ……」

 

 円卓は危険。そんな印象を持っているノッブとオオガミに、思わずエウリュアレが突っ込む。

 

「さて。じゃあ、編成を変えないとね。前回と特効が変わってるしね」

「私とノッブはレアルタ合金? らしいわね。ムーンキャンサーと同じだから――――ムーンキャンサー?」

「……BBなんじゃけど」

「呼びました?」

 

 さらっと会話に割り込んでくるBB。思わずエウリュアレとノッブは距離を取ってしまったが、BBだと確認するとほっと一息吐く。

 

「なんですか、人が声をかけただけでいきなり距離を取るなんて。何か企んでいたんです?」

「そう言うわけじゃないんだけどね。編成を考えてただけだよ」

「あぁ、なるほど。私はレアルタ合金で、エウリュアレさん達と一緒って話ですか」

「そう言う事。それにしても、戦力としてはあんまり期待できないキャスターが特殊クラスと組まされるとは……」

「別に、アルターエゴ――――パッションがいますしね」

「そうだね。今回の問題は――――やっぱり、イシュカ合金かなぁ……」

「ライダーとアヴェンジャー……ですよね」

「ライダー戦力はドレイク。じゃが、アヴェンジャーはレベル70巌窟王と言うのが問題なんじゃよね」

「パワー不足にならなければいいけど……」

「まぁ、何とかなるわよ。いつもそうやって来たんだしね」

「……そうだね。じゃあ、とりあえず行ってみますか」

「「「おー!」」」

 

 四人は、仲間を増やしつつ冒険に出るのだった。




 今日は大まかに何が出るかの確認をするだけですしね。本腰入れてやるのは明日ですよ。
 よぅし……明日には終わらせるぞぉ~!


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うりぼうの科学力よ……(ゲームセンターに行きましょ?)

「一つだけ、言いたいことがあるわ……」

「うむ。言ってよいぞ」

「……ここ、もう現代都市よね」

「とうの昔に越えておるわ」

 

 高層ビルが(そび)え立ち、現代都市でも見る事が出来るであろうバーガーショップや映画館、遊園地などがあった。

 しかし、その中でも違和感を醸し出す、凱旋門と願望実現装置。

 

「願望実現装置って、どこまでの範囲を叶えてくれるのかしら」

「お主、何をしたいんじゃ?」

「そうねぇ……やっぱり、お菓子食べ放題かしら?」

「茨木も同じこと言いそうじゃな……」

 

 そんなことを言いながら二人が歩いていると、遠くからオオガミがフラフラと歩いてくる。

 

「おぅマスター。何かあったのか?」

「う~ん……ゲイ・ボルク職人の朝は早いというか、朝が無いっていうか……逸れに付き合うとこうなるっていうか……エウリュアレ~……寝ません?」

「私を抱き枕にしようとしないで。今日はちょっと遊びたいのよ」

「はぅぁ! エウリュアレが遊びに行くならついて行きたい……!!」

「貴方が倒れるのは困るから、今日は寝なさいよ。寝てないんでしょ?」

「そうだけども……」

「なら、諦めて寝なさい。明日も行くと思うし、その時にしなさいな」

「うむむ……仕方ない。寝てくるよ。おやすみ~」

「えぇ、おやすみなさい」

「お休みじゃ。マスター」

 

 やはりフラフラとしながら、オオガミは去っていく。

 それを見送った二人は、若干心配しつつもマシュ辺りが迎えに来るだろうと思い、目的地に向かう。

 

「ゲイ・ボルク職人のぅ……神槍複製とは、流石じゃよ」

「貴女も似たようなもの、作れる?」

「火縄銃が限界じゃよ。ドレイクの銃とかも気になるんじゃけどね」

「楽しそうね。っと、ここかしら?」

 

 たどり着いたゲームセンター。

 カルデアに戻るための飛行機は完成済みで、今は遊んだり、素材を集めたりする時間だった。

 

「うぅむ……うりぼうに出来て、儂に出来ぬ道理はないはずじゃ。これは儂も頑張ってみるかのぅ……」

「BBがすでにいるじゃない……」

「そうですよ! ノッブは流石にやり過ぎです! 私の活躍する場面が無いじゃないですか!!」

 

 当然の如く背後から現れるBB。この話題になった瞬間から何となく出てくる気がしてはいたが、本当に出てくるのは何とも言えない。

 

「それで、BBは何しに来たんじゃ?」

「えぇ、うりぼうさんたちのお手並み拝見と行こうかと。万が一どころか、億に一も無いでしょうけど、私みたいな技術を持ってたら困りますし」

「お主の技術を超えるとか、異常じゃろ」

「そうね。まぁ、私たちは普通に楽しむことにするわ」

 

 そう言うと、三人はゲームセンターに入って行くのだった。




 ということで、宣言通り一日クリア達成。いやぁ……22時付近でクリアしたから、ギリギリだった……
 しかし、ゲイ・ボルク職人め……どこぞの花嫁皇帝みたいなことをしおって……あの時はギリギリ感強かったから今回も不安だったのですよ……
 明日からはアイテム回収しないと……あと金種火20個くらいでエウリュアレレベル100……!!


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戦闘でこの三人は珍しいわよね(アヴェンジャーとか、完全に想定外じゃったしね)

「いやぁ……まさか、この面子で戦う時が来るとは思わなんだ」

「えぇ……私も想定外です。こんなことになるなんて……」

「そうね。貴方達の驚きも納得できるけど、それ以上に、また私はいけないって方が問題よ」

 

 ひたすらレアルタ合金を集めるという周回に集まったメイン戦力は、ノッブ・エウリュアレ・BBの三人。

 珍しく、今回はノッブが大活躍し、しかもBBがまともに活躍できるという状況。それはつまり、敵は神性か騎乗持ちで、しかもアヴェンジャーもいるという事だ。

 そして、エウリュアレはいつもの様に若干不満げだった。

 ちなみにオオガミは、現在スカサハの所でアイテムを交換してもらいに行っている。

 

「仕方ないじゃろ。お主、後少しでレベル100じゃし」

「こういう時ばかりは、自分のレベルが恨めしいわ……」

「諦めるんじゃ。つか、やっぱりアヴェンジャーは強いのぅ……」

「私のレベルが低いからそう思うだけですよ!! 私がちゃんとレベル高ければそんなことないですって!」

「まぁ、ここではレベルが上がること自体珍しいからな……特に特殊クラスは。しかもイベント中に至っては、基本誰も上がらんからな」

 

 ただし、配布鯖と本気で育てたいと思ったキャラに限っては完全に別だというのを忘れてはいけない。

 金時が忘れられていたりする気もするが、気のせいである。

 

「ねぇ、私のレベルが100になったら、次は誰が育てられるのかしら?」

「さぁのぅ……誰かが上げられるじゃろ」

「私が上げられるのは必然ですよね!!」

「いや、リップが先じゃない?」

「えぇ~……どうしてですか!? 私の方が良いじゃないですか!! こう、耐久的に!!」

「残念。すでに私たちがいるのよ」

「それに、リップの方が汎用性高いしのぅ」

「そんなッ……!!!」

 

 衝撃の事実とでも言いたげな表情のBBに、思わず二人は苦笑いをする。

 

「まぁ、そのうち上げられるわよ。アヴェンジャーに対しては確かに有利だからね」

「そうじゃな。もしボスレベルの敵が出てきた時に必要になったら上げられるじゃろ」

「それ、ほぼ確率ゼロじゃありません?」

「そんなわけないじゃない。確率はそれなりに高いわよ。これから先アヴェンジャー増えそうだし」

「ルーラーが出てきたら……ご愁傷さまという事で」

「うぅ……未だに私、アガルタの事根に持ってますからね…?」

「面倒な奴じゃ……というか、アレはルーラーだったのが悪いだけじゃろ。マスターはアヴェンジャーが来ると期待しておったら、ルーラーという現実に、思わず投げ出そうとしとったみたいじゃし」

「あの時の悲しそうな表情……思わず吹き出しそうだったわ……」

「なんですかそれ。見たかったんですけど」

「ダメよ。私専用なんだから」

「何言っとるんじゃ。そも、撮ってもいないのにどうやって見るんじゃよ……」

「あら、何言ってるの? 私がそこらへんのこと、見逃すわけがないじゃない」

「いや、むしろお主の方が何言ってるんじゃよ……」

 

 何やら不穏な気配がしてきたところで、オオガミが帰ってきた。

 

「マスターも帰って来たし、休憩も終了じゃな。よし、行くぞ」

「今度こそ、BBちゃんの凄さ、見せてあげますよ!」

「私も、それなりに頑張るわ。それじゃ、行きましょうか」

 

 三人はそう言って、オオガミを迎えに行くのだった。




 何から集めようが迷った時、とりあえずエウリュアレが活躍するルートを選ぶ。基本中の基本ですね(錯乱)
 その結果、まさかのジャンヌダルクオルタという災厄級の敵が出てくるとはだれが想像するだろうか……
 それにしても、本当に何時になったらエウリュアレのレベルが100になるのか……さっさとオイル集めないと……


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ついにエウリュアレがレベル100!!(だからと言って、私が何か変わるわけじゃないんだけどね)

「わははは!! 宴じゃぁ!!」

「貴女達、一切関係ないでしょうが」

「ふふふ……余達がそのような事、気にすると思ったか……?」

「……そうね。貴女達はそう言うものよね」

 

 やれやれ。と言ったような表情で、エウリュアレはバニラシェイクを飲む。

 ちなみに、この盛り上がりの原因は、エウリュアレのレベルが100になったからだった。本当にそれだけなので、特に大げさなモノでもないと思うエウリュアレだったが、料理が運ばれてくるので、比較的おとなしくしていた。

 

「そういえば、オオガミは?」

「向こうでマシュと一緒にこっちを見ておるぞ?」

「混ざっても良いと思うのだが……なぜか断るのだ」

「そう……まぁいいわ。後で行きましょ」

「そうじゃな。今はとりあえず、遊ぶか」

「そうね。今日はネオマリーランドにでも行きましょうか。前回の時も楽しかったし、今回も楽しみだわ」

「ククク……女神お墨付きの遊園地とは……出来れば保存しておきたいものじゃ」

「こういうのはたまに行くからいいのよ。戦闘も同じよ」

「……そこにつながるんじゃな……」

「ある意味、エウリュアレらしいが、レベルが100になっても変わらぬとは……」

 

 ノルマ達成とでも言えそうなほど、この発言をしているような気がするが気のせいだろう。

 

「まぁいいわ。それで、まずはどこから行きましょうか。コーヒーカップ? ウォータースライダー? ジェットコースターも良いわね。それとも、オケアノスの嵐の海みたいなバイキングとか?」

「余はウォータースライダーを希望する!!」

(アタシ)は……コーヒーカップが良いわ」

「……なんというか、ここ最近で一番楽しそうじゃのぅ……」

 

 目を輝かせながら思案するエウリュアレを見て、嬉しそうな表情を浮かべるノッブ。

 視線を動かしてオオガミに向けると、マシュ達となにやら話しているが、おそらくこちらと同じであろう。

 

「食事が終わって、少しゆっくりしたら行くかの。ほれ、まずは腹を膨らませる所からじゃ。でなければ、遊び尽せもしないじゃろ?」

「それもそうね。じゃあ、しっかり食べるわよ」

「余もしっかり食べねばな」

(アタシ)も食べるわよ!」

「うむうむ。しっかり食べるのじゃぞ」

 

 まるで保護者の様な役割になってきているノッブだが、本人は気付いていないので問題は無いだろう。

 オオガミ達も、遠くから見ていてそう思うが、これは教えない方が良いのだと思うのだった。

 

「さて、じゃあ、儂はマスターを誘いに行ってくるぞ」

「私も行くわ」

「ふむ……なら、食べ終わってからでも良いか」

 

 ノッブはそう言うと、エウリュアレ達と共に食べ始めるのだった。




 今回のイベントのエウリュアレ様はお菓子を食べるよりも、遊ぶ方に重点を置く感じなのです。つまり可愛いのです。よって、レベル100に至ったのだった。
 可愛いは正義!!(正体不明のハイテンション)


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吾等バーサーカーの出番は何時になるのか(イシュカ合金が終わらないんだよ)

「吾等は何時出るのだ?」

「しばらくは予定無しかなぁ」

 

 膝の上に乗せられている茨木は、オオガミを見上げつつ聞く。

 現在いるのは、和風高層ビルの上層部分。島をかなり見渡せるので、かなり好評だったりする。

 

「ぬぅ……これ以上待たされると、暇で暇でしょうがない吾は、暴れだすぞ?」

「それは困るなぁ……」

「そうであろう、そうであろう。(なれ)も吾の力を知っておるから、暴れたらどうなるかくらい、すぐにわかるであろう?」

「うん。すぐに焼野原だろうね。でもね? バラキー」

「む? なんだ?」

「そんなことしたら、三年はおやつ抜きだから」

「……うむ。吾は大人しくしておるぞ」

 

 即座に態度を変える茨木。やはり、おやつの魔力はすごいらしい。エウリュアレも同じ方法で静かになることがあるので、もしかしたらかなり優秀な武器かもしれない。

 

「主殿主殿主殿ぉー!!」

「ぬぉ!!」

「うぐぁ!」

 

 全力で飛びかかってきた牛若丸をかわす術はなく、背中に乗られたオオガミは、そのまま前に倒れこみ、それによって茨木が潰れる。

 

「ぬ……ぐ、あぁ!! 退かぬかぁ!!」

 

 茨木はそう言って、オオガミごと牛若丸を押し返す。

 牛若丸はすぐに反応してオオガミから距離をとったが、オオガミは間に挟まれており、受け流すことも許されずに両方の威力をそのまま受けて潰されそうになる。

 

「ごふぅ……これ以上のダメージは、俺の体の耐久値を超える……」

「む。加減を誤ったか……」

「主殿……主殿……!? 主殿ぉーーーー!!!!!」

「阿呆。生きておるわ。むしろその声で死ぬというに」

「いや、あれですよ。お約束というやつです。起きてください、主殿。合金集めに行きましょう」

「瀕死にしておきながら、当然の様に周回要求ですねわかりましたよ……バラキー、ちょっと行ってくるね」

「うむ。吾はエウリュアレと共に大人しく待っておるぞ」

 

 聞き分けの良い茨木を疑問に思うも、牛若丸に手を引かれて行くのだった。

 

「さて……吾はどうするかのぅ……あぁ、凱旋門の上に行ってみるのもありか。ふむ、そうしよう」

 

 言うが早いか、茨木は即座に立ち上がり、窓を開けて飛び出していく。

 それと入れ違いになるように入ってきたエウリュアレとネロは、誰もいないのに空いている窓を疑問に思い外を見て、元気に走っていく茨木を見つけて、窓が開いている理由に思い至る。

 

「追いかけるのも一興だが……エウリュアレはどうする?」

「私は後から追いかけるから、先に行ってて。お菓子を持っていきたいわ」

「いいが……どうやって追いかけるつもりなのだ?」

「それは――――ヘシアン・ロボにお願いするわ」

「……復讐の狼を目的地割り出しのためだけに使うとは、中々出来るようなものではないのだが……うむ。まぁ、それなら余も納得できるというものだ。先に行って待っておるぞ!!」

「えぇ、待っててね」

 

 そういうと、ネロも窓から飛び出していき、それを見送ったエウリュアレは窓を閉めてからお菓子をあさりに行くのだった。




 三年おやつ抜き。バラキーに3万のダメージ。バラキーは(精神的に)やられた。
 うぅむ、今回はノッブとエウリュアレを出さないつもりだったのに、最終的にエウリュアレが出てきたぞぅ……? 無意識って怖い……


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エードラム合金は楽な方だと思ったんだけどなぁ……?(やっぱりリップはシステム外スキルでヘイト集める性能があるのかな?)

「リップ……大丈夫?」

「はい……この程度なら、まだ大丈夫です」

「正直この集中狙いは見てるこっちがイラッとしてくるから、ここは諦めて種火を消費しよう……」

 

 ナーサリーに心配されているリップを見て、すっ。と種火を取り出すオオガミ。

 

「そうね。いい加減リップも成長させましょう。これだけ頑張ってるのに、未だにレベルが72とか、おかしいもの」

「そ、ソウダネ。別に、無理に低レベルである必要なんかないしね。よし、という事で、種火をたくさん食べるのです」

「い、良いんですか? これはもうしばらく取って置くって言ってませんでした?」

「いや、それが原因でここで躓くとか、嫌だし」

「なるほど……じゃあ、ありがたくいただきますね」

「うん。これからも頑張ってもらう事になるだろうからね……」

「あ、あはは……」

 

 苦笑いをするリップだが、期待されているのは確かなので、何とも言えない。少なくとも、エードラム合金で特効持ちの有効サーヴァントはアルターエゴのリップだけだった。

 

「とりあえず、一回休憩だね……」

「そうね。私も遊び疲れちゃったわ。リップ、行きましょ?」

「はい。えっと、向こうでいいんですか?」

「あそこに行きたいの。バーガーショップ」

「あそこですか。じゃあ、こっちの方が近いような……?」

「そう? じゃあ、そっちにするわ」

 

 ナーサリーはリップと一緒にバーガーショップへ向かい、オオガミはそれを見送ると、拠点に戻るべく歩き出すのだった。

 

 

 * * *

 

 

「う~ん……どうしましょう」

「これにしましょう!! 出所不明のメロンシェイク!!」

「ナーサリーさん、時々凄い冒険しますよね……私は普通にお茶でいいです」

「えぇ~? 面白くないわ。リップも冒険しましょうよ!」

「いえ、本当に私はこれでいいですから。というか、冷静に考えたら、支払い料金って、どこから出てるんですか?」

「え? マスターのポケットマネーよ?」

「当然の様に恐ろしい発言が聞こえた気がするんですけど!?」

「大丈夫よ。私たちが稼いできたQPであることに変わりはないわ」

「それ、同時に私たちの成長のための糧も消費してるって事じゃないですか……そんなこと聞いたら、余計に冒険する勇気はわいてきませんよ……」

「むぅ。面白くないわね……まぁいいわ。私は私で冒険するもの」

 

 そんなことを言い合いながら購入した品々。

 しかし、本当にどこからメロンなど調達してきたのだろうか。答えは返って来ないと分かりながらも、一度芽生えた疑問は中々消えないのだった。

 

「むむむ……メロン……どこから出てきたんでしょう……」

「そうはいっても、冷静に考えれば、たぶんスイカと同じじゃないかしら。あれだって、どこから出てきたのか分からないわ」

「それは、そうですけど……うぅむ……」

「深く考えたら負けよ。気楽に行きましょ」

「は、はぁ……それで、この後どうするんです?」

「駄菓子屋に行って、駄菓子屋のおばあちゃんごっこするわよ!!」

「気に入ったんですか? アレ」

「楽しいじゃない!! という事で、聞かれたせいで待ちきれなくなっちゃったから早く食べて行くわよ!!」

「自由奔放ですね……」

「物語は自由なものよ。何かに縛られたりしないの。じゃあ、いっただっきまーす!!」

「い、いただきます」

 

 二人はそう言うと、食べ始めるのだった。




 流石に、集中狙いされて2wave目でやられるのは精神的に辛い……
 2周年記念まで持たせるつもりだったオール種火は、リップ成長のためにここで使う……!!
 まぁ、交換してないのがまだ50個あるから、大丈夫だよね……(震え)


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私のターン! 私のターン!! そして、私のターンでオールナイトライブよ!!(余にも出番を寄越せぇぇぇ!!)

「アハハハハ!! 皆私の歌声に痺れて倒れて行くわ!! 最高の気分よ!!」

「あっ。倒れててもいいんだ……」

「本人が満足そうなんだ。それでいいだろう?」

「ぐぬぬ……余も混ざりたい……!!」

 

 槍の様に使っているマイクの上に立ち、高笑いするエリザベートと倒れている無数の魔物の残骸を見て、オオガミがぼそりと呟くが、エルキドゥはもう諦めの姿勢らしい。

 また、隣でとても混ざりたそうにしている皇帝がいるが、朝に別の場所で大暴れしていたので、現在は後方待機だった。

 

「それで、私のステージは、何時まで続くのかしら?」

「ん~……後二十回くらい?」

「そ、そんなに!?」

「もちろん。エリちゃんの歌は世界を救うからね! それくらい歌ってくれないとね!」

「えっ、と、その……ま、任せなさい!! 今までのは準備運動。本番はまだまだこれからよ!」

「……ちょろいというか、なんというか……」

「良いの良いの。そんなところがエリちゃんの魅力でもあるんだし」

 

 うんうん。と一人頷くオオガミをエルキドゥは苦笑いをしながら見る。

 と、隣にいたネロがオオガミの顔を覗き込むように聞いてくる。

 

「余は!? 余の出番は!?」

「えっと……ネロ様はもうしばらく後かな。その、色々な場所で頑張ってもらってますし……?」

「ぬわっ! それは面倒な奴にする態度ではないか!?」

「いやいや。たまたまタイミングが悪いだけなんだよ。だって、ここに出てくるの、一体を除いて全員弓だし」

「ぬ……ぐっ。という事は、余もこの先で出番がまたあるかもしれないと期待しても良いのだな……?」

「まぁ、きっとね」

 

 思わず目を逸らしてしまうオオガミだったが、それも仕方のない事だろう。目があまりにも本気だったのだから。

 

「そこまでだよ。ネロ、マスターが困ってるじゃないか」

「むぅ……だが、」

「だがも何もないよ。君の出番はまだあるんだ。この後の改修作業もそうだけど、もしかしたら8月になったら新しく来るかもしれないんだろう? その時にも必ず編成に組まれるだろうからね」

「ふむ……それもそうだな。うむ! 余はおとなしく待つとしよう」

「そうしてくれると助かるよ」

 

 エルキドゥの言葉を素直に聞くネロを見て、エルキドゥは説得(物理)以外も出来るのか……!! と驚いた表情でエルキドゥを見るオオガミ。

 もちろん、その視線がバレて、謎の威圧感満載の笑顔で見られたオオガミが冷や汗を流しながら苦笑いの表情で固まったのは言うまでもない。

 

「よぅし!! それじゃあ、もう一回行くわよぉー!!」

 

 そして、そんな空気に全く気付かないエリザベートは、元気に笑顔で今日も歌って踊って流星の如く敵を薙ぎ払っていくのだった。




 今回は無性にエリちゃんの話をしたくなったのでエリちゃんを。しかし、結局はネロとエルキドゥが持って行くという。
 さて、うちのカルデア。今現在何人ポンコツキャラがいるんだ……?


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やっぱりやるんですね。ライブ(誰だ武道館とか建てたバカ)

「夢の!! 武道館ライブ!!」

「余とエリザの夢のデュエットだぞ!!」

 

 まるで地獄の釜の蓋が開く様な宣言に、その場にいた全員が戦慄する。

 いつもならばオオガミの味方に回ってくれるエルキドゥすらも、今回ばかりは視線を逸らしていた。

 

「……マスター。僕はいなくてもいいかな?」

「ダメ。裏方担当だよ」

「ククク……マスターよ。俺は少しばかり用事があるのでな。失礼させてもらう」

「問答無用。逃がしはしないよ」

「私は……その……ナーサリーさんと行こうって言っていたお店があって……その、えっと……」

「大丈夫。ナーサリーも来るよ」

 

 明らかに逃がすつもりのないオオガミ。これは強行突破しかないのだろうか。という考えが生まれそうになるが、しかしこの狭い島の中で逃げ切れるのだろうかという結論に至り、如何にして被害を抑えるかという方向に考えを切り替える。

 

「……よし。これはあれだ。BBに頼ろう」

「そうだな。信長も連れて来て、手伝わせるか」

「えっと、探してきますね」

「あぁ。ついでにエウリュアレも見つけてくれると助かる。おそらくケーキで釣れるだろうから、それで誘って、ヘシアン・ロボを使って人員を集めるのが一番楽だろう」

「いや、それは巌窟王が行ってくれ。リップはこっちで力仕事だ。敏捷的に、そっちの方が効率がいいだろう。こっちは速度勝負なんだ。開催までに完全な準備が出来ないと、こっちに被害が及ぶからね。全速力だよ」

「あぅ……分かりました。えっと、お母さんはたぶん今日もゲームセンターに籠ってると思いますので、先にそこに行くのが一番だと思います」

「……分かった。請け負おう」

「任せたよ」

 

 そう言うと、巌窟王は全力で走っていく。

 それを最後まで見送らず、二人は準備に奔走する。

 

 

 * * *

 

 

 巌窟王の頑張りにより、何とかBBとノッブを捕獲した三人は、ついでとばかりに連れてきたメディアと一緒にライブの準備をしていた。

 

「全く……なんだ私まで」

「君が一番うまく衣装を作れるからだよ。それに、機材待ちよりも、衣装待ちの方が待ってくれそうじゃないか」

「……それもそうね。まぁ、任せなさい。キチンと仕上げておくから」

「あぁ。僕たちはこっちをやっておくから、任せたよ」

「えぇ。頑張りなさいな」

 

 そう言って、エルキドゥはBBとノッブに頼まれた素材を運ぶ。

 

「あぁもぅ!! どれだけかかるんですか!!」

「アホなこと言っとるんじゃないわ!! 今始めたばっかりじゃぞ!!」

「ぐぬぬ……というか、なんで私がこんなことやってるんですか!?」

「そりゃ、島内全域、地獄のライブにならない様に、だよ」

「マスター……お主、なんというもんを始めさせとるんじゃ……」

「いや、だからここで手伝ってるでしょ? 武道館を建てた瞬間に言い出したんだから……」

「逃げ場無し、じゃな」

「まさか島内全域で流すとか言う脅しをしてくるとか、私、困惑ですよ。センパイ、何考えてるんです?」

「あの二人の被害を全力で抑えるために、だよ」

「あ、あぁ……なるほど。確かに、あの二人は混ぜたらいけない核物質ですしね……」

「うん。そして、人がいないライブであの二人が満足するわけがないから、人が来ても大丈夫なようにする機材を作れると思われるBBに来てもらったわけだよ。これで作れないとか言われたら、令呪を切る覚悟もあったんだけどね」

「それ、誰に対してです……?」

「BBに対して」

「うっわぁ……理不尽です……」

 

 最悪一人は観客を確保する。という意思がはっきりと見て取れるのは、果たして、二人を悲しませたくないからなのか、自分だけが被害に遭いたくないからないのかは定かではないのだった。

 

「むぅ……正直もう少し凝りたいが、スピード勝負なら仕方あるまい。BB。一応できたぞ」

「早いですね。やるじゃないですか」

「おぅ。次の仕事を寄越すんじゃ。これ、メディアが衣装を作り上げるまでに終わらせる必要があるんじゃろ?」

「そうですね。はい、次はこれです。巌窟王さん達にももうひと頑張りしてきてもらいましょうか」

「ハハハ……すまない皆。頑張ってくれ」

 

 BBの一言と、死んだような表情から放たれたオオガミのエールに、エルキドゥ、巌窟王率いる材料回収組が頬を引きつらせるのだった。




 この後ライブは大盛況で幕を閉じ、裏方は全滅していた模様。

 武道館を建てるとか書いてあったら、思わず建てたうえでこんな話を書きたくなるのも仕方ないと思うんです!! 仕方ないと思うんです!!
 重要な事なので二回言いました。

 素材は全部回収終わったんですけど、未だ建物改修が終わらず。明日までには終わらせるんだ……!!


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イベント終了間近。素材も改修も終わったのぅ(時間が変に余ると、逆に不安になるわよね)

「残すは島を出るだけ……じゃな」

「案外あっさりしたものねぇ……」

「余も楽しめたからな。しかし、今回はSE.RA.PH並みに余裕だったな」

「えっと、待って? 今日、終了前日だよ? 完全にいつも通りだからね?」

「……いつも通りじゃなぁ……」

「安定の前日終了ねぇ……」

「全力で手の平を返していくスタイルね。人がせっかく丸く収めようとしているのを突っ込んだ罰ね」

 

 完全に自爆しているオオガミ。

 えっふぇる塔の頂上で、5人は満天の星空を眺めていた。地上では燦然と輝く人口の光。

 初めに来た時が完全な無人島で、文明の片鱗も無かったとは思えない光景だった。

 そんな光景を見ている5人は、特に何かがあるというわけでもなく、何となく、島の大半が見渡せるえっふぇる塔に上ろうとオオガミが提案したのだ。

 

「そういえば、マシュは誘わなかったの?」

「誘ったよ。けど、少しだけやる事があるって言われてね。手伝うつもりだったんだけど、断られたから、ここにいる事だけ伝えてきた」

「ふぅん……なるほどね。じゃあ、今もマシュは何かをしてるってわけね。ねぇノッブ? この前、双眼鏡とか言うの、作ってなかったかしら?」

「む? まぁ、作ったし、持ってもおるが……使いたいのか?」

「えぇ。ちょっとね」

「ふむ。まぁ、良いぞ」

 

 エウリュアレはそう言って、ノッブから双眼鏡をもらうと、地上を眺め始める。

 オオガミが何をしているんだろうと考えていると、ノッブがふと思い出したように言ってくる。

 

「そうじゃ。BBに言われて作ったカメラがあるんじゃが、撮ってみるか?」

 

 そう言ってノッブが取り出したのは、割と現代的なカメラ。

 

「なんでそんなものをBBが作ろうと言い出したのかが気になるところだけど、まぁ、記念に撮ってみようか」

「む!! 写真とな!? 余も写るぞ~!」

(アタシ)(アタシ)も!!」

「エウリュアレは――――何か探しておるようじゃし、端っこに写るようにでもしておくか」

「ふっふっふ~……と~ぅ!!」

「ごふぅ!?」

(アタシ)も行くわよ~!」

「うげふぅ!!?」

「ぬわぁ!!」

 

 背中に飛び乗ってくるネロと、続けて正面から飛びかかってきたエリザベートに挟撃され、想像以上の大打撃を受けるオオガミ。

 そんな三人を見て、呆れたような表情をしたノッブだったが、すぐに気を取り直すと、

 

「まぁ、仲の良い事は良い事じゃ。じゃ、撮るからの~!」

「にひひ。ピースだ!!」

「アイドルは笑顔じゃなくっちゃね!」

「あはは……これ、マシュには見られたくない光景の気がする……」

「諦めるんじゃな。はい、チーズ、なのじゃ」

 

 パシャリ。と響くシャッター音と共にピカリと一度だけ強い光が発生し、写真が撮られる。

 

「ククク……どれどれ。中々うまく取れたと思うんじゃが……出来はどうかのぅ……」

「しっかり撮れてるね。というか、さりげなくエウリュアレがこっちを見てピースしてる……」

「実は一緒に写りたかったんだけど、恥ずかしくってそんなこと言いだせなかった感出まくりじゃな」

「なら、余がエウリュアレの写真を撮って来ようではないか!!」

「そうね。(アタシ)も協力するわよ!!」

「ふむ。じゃあ、カメラの使い方を教えるから、こっちに来るんじゃ」

「うむ!!」

「分かったわ!」

 

 そう言うと、二人はオオガミから離れる。

 特にやる事も無いオオガミは、エウリュアレのところに歩み寄ると、

 

「さっきから、何を探してるの?」

「ん~……教えてあげないわ。それよりも、この上にエルキドゥと巌窟王がいたわよ」

「え? 二人が? ん~……うん。ちょっとどうにかして行ってみるね」

「えぇ。気を付けて――――え? 階段とか無いはずなんだけど?」

 

 そう言って振り向いた時には、すでに外枠の柱に手をかけて登ると言わんがばかりの姿勢のオオガミがいた。

 

「……ちょっと、エルキドゥ!? 聞こえてるんでしょう!?」

「――――なんだい? いきなり僕に声をかけてくるなんてって、マスター!? 何をしてるんだい!?」

「え? いや、エルキドゥ達の方に行こうかなって」

「そ、そんな無茶をしなくても、僕に声をかければいいじゃないか!!」

「いや、声を張り上げるよりも登っちゃった方が良いかなって。ほら、何とかなる感じがしたからね!!」

「流石に限度ってものが……!!」

「関係無いね!!」

 

 オオガミの一言に、頬を引きつらせるエルキドゥ。

 大体いつもこんな感じだろうと言われれば確かにそうなのだが、今回は流石に無茶が過ぎていると思うのは、おかしい事ではないだろう。

 

「はぁ……じゃあ、こっちで引き上げるよ?」

「むむぅ……何事も挑戦……まずは無理をするところから!」

「それで大怪我をされたらたまらないから、こういう時は素直に頼ってくれって、いつも言っているよね?」

「アッハイ。すいません」

「……どっちがマスターなのか、分からないわね……」

 

 登ることを諦め、素直にエルキドゥの鎖によって引き上げられていくオオガミ。それを見て、エウリュアレは思わず呟く。

 そして、その瞬間にパシャリと響くシャッター音。

 それに驚いて振り向くと、ようやく操作を覚えたネロとエリザベートが、満面の笑みを浮かべてエウリュアレにカメラを向けているのだった。

 

 その後、ケーキ屋を建設した際に作ったケーキを持ってきたマシュは、オオガミが上にいる事を知らされ、ケーキをノッブに預けてオオガミの様子を見に行ったのは、言うまでも無いだろう。




 最終的に、頂上にいるのも集められてケーキを食べたのも、言うまでも無いですよね。
 いつもお菓子を食べてるうちのエウリュアレだけど、そこまで量は食べられないですから、エウリュアレが全部食べたっていうのは選択できませんからね。大量に持ってこられても、エウリュアレだけじゃ処理しきれないのです。

 しかし、今回は結構余裕を持ってやっていたと思ってたんですが、冷静に考えると終了前日に終わったんですね……余裕って一体……


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さらば、我らの島(楽しい一時だったわね)

「なんだかんだ言って、無事に終わったのぅ」

「えぇ……本番はこれからよ」

 

 窓の外を眺めつつ、ノッブの呟きに返事をするエウリュアレ。

 

「そうだねぇ……ついに明かされた新情報。ノッブ、水着だね」

「……あれ、水着って呼んでいいんじゃろうか……」

「……今更よ」

「うんうん……なんというか、今思ったんだけどさぁ……」

「ふむ?」

「なによ」

「いや、浴衣は無いのかなぁって……」

「……夏祭りとか、そういえば無いのぅ。まぁ、そもそもどこでやるんだよって話じゃし」

「ノッブ。もう少し夢を見ようよ」

「夢を見るとの願うのは違うんじゃよ、マスター……」

「そ、そんなことを言われるとは……」

 

 まさかノッブが悟ったような目で肩に手を置き、首を振ってくるなんて思いもしなかったオオガミは、驚きに目を開く。

 

「それにしても、あれだけ頑張っても、結局消えちゃうのよねぇ……」

「大体いつもそんなもんじゃろ。それに、特殊な島じゃし、仕方あるまい。新たな冒険は続くし、過去を振り返っても手に入るものなど限られるからな。楽しく前を向いて歩くのが一番じゃ」

「……何言ってるのよ、よく意味がわからないわ」

「たまに変なこと言うよね」

「お主ら、容赦ないのぅ……」

 

 突然変なことを言い出す奴に変と言って何が悪い。とでも言いたそうな二人の表情に、思わず頬を引きつらせるノッブ。

 

「さて……そろそろ、茶々の種火周回の時間も近づいて来ているという事か」

「そうだねぇ……久しぶりの種火周回だよ」

「嬉しそうな顔をしてると思うでしょう? 言ってる本人が死んだ魚のような目をしてるのよ」

「ハハハハハハ」

 

 実際、全サーヴァントよりもマスターの方が働いているのは、これまでの戦いを見ればよく分かる。

 

「まぁ、その代わりに普通の人間じゃ味わえないような楽しい状況に居るんだからいいんじゃないかしら?」

「そんなこと言われても……その代わりに死ぬような目に何度あってると……」

「何事も代償が付き物よ」

「むぐぐ……仕方なし……エウリュアレの水着が見れたし、それで少し心を落ち着けよう」

「……ねぇノッブ。私、マスターに水着姿見せたっけ?」

「儂が写真で」

「……後でヘラクレスに襲わせましょ」

「何いつもより恐ろしいことを……」

「自業自得よ」

 

 いつの間にか自分の水着写真を見られていたと知り、いつもより若干殺意のこもった視線をノッブに送るエウリュアレ。

 ノッブもそれに気付くが今更取り返しはつかないのだった。

 

「はぁ……別に良いんだけど、私としては次のイベントまで見せないでおきたかったわ」

「ぬぐっ……すまぬ。マスターのしつこさに負けたんじゃ……」

「ちょっと待って。ノッブから先に勧めてきたんだよね?」

「ちょっと何言ってるかわからないんじゃな」

「醜い売り合いねぇ……」

 

 どっちが先に言ってきたかと言い合うオオガミとノッブを見て、エウリュアレは楽しそうに笑うのだった。




 ノッブの水着ですよ!! ノッブサマーですよ!! THE・ロックですよ!! ノブナガロックじゃああぁぁぁぁぁぁ!!!

 と、ノッブサマーに嬉しさを隠せていない私なのだった。
 ちなみに、『ヴィヴ・ラ・フランス!!』と叫んでガチャを回した結果、殴り聖女様が降臨しました。BBちゃんの運命や如何に!


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日常
風紀委員組、増えてきたよね(仲違いしてくれないかしら)


「最近……エルキドゥを筆頭に、一部のサーヴァントが風紀委員もどきになっている気がするんだけど、心当たり無い?」

「むしろ心当たりしかないんじゃけど」

「私たちはすでに目をつけられてやばいわよ」

「なんで私まで追われてるのか分からないんですけど。何も悪いことしてないと思うんですけど」

「BBは自業自得だから」

「私に対して当たりが強くないですか!?」

 

 BBの叫びは当然の如くスルーするとして、オオガミは若干深刻そうな顔で考えていた。

 そう、それは実際、ほぼ初期のころからあったと言っても過言ではない、エルキドゥを筆頭とした風紀取り締まり組だった。

 しかし、今になって突然何を言い出したのかと言うと、そのメンバーが着々と増えていっているからだった。

 

「とはいっても、いつもと何ら変わらんじゃろ?」

「まぁ、そうなんだけど……ただ、この状況は明らかに、エウリュアレとノッブを中心とした自由奔放フリーダム組が息苦しくなる可能性は高いよ」

「なんじゃ、自由奔放フリーダム組って……儂ら、そんな呼ばれ方しとったんか……」

「自由奔放フリーダム組……誰よそんな名前つけたの……」

「BBちゃんは無関係ですね。そんな呼ばれ方する様なBBちゃんじゃないですし」

「いや、BBも入ってるから」

「そんなっ!?」

 

 意外も意外。衝撃の事実だと言わんがばかりのその表情は、当然だろう。という視線で片付けられる。

 

「しかし、何があるというんじゃ? 別段、変な所も無いし、今までと変わらんじゃろ?」

「ところがどっこい。マルタと言う、鉄拳凄女の参戦だよ」

「…………最大の被害、私じゃない……」

「あっれ~…? これ、私も不味いんじゃ……」

 

 もちろん、最悪レベルである。実質、ルーラーにまともにダメージを与えられるのは、特殊クラス。アヴェンジャーであればなお良いが、基本的にエドモンは向こう側なので逃走の際に助力は得られないものと考えるのが妥当だろう。

 なので、オオガミ的にも、他の遊びまくってるサーヴァント的にも、辛いものはあるのだった。

 さりげなく特殊クラスとバーサーカーがほとんどを占めているのも原因の一つだろう。

 

「今更なんだけど、メンバーって、そもそも誰なのよ」

「エルキドゥ、土方、マルタ、頼光、エドモンの5人だね」

「……エルキドゥの違和感半端ないんじゃけど」

「でも、威圧感もかなりあると思うんだけど」

「はぁ……まぁ、私はいつもとやる事は何も変わらないんですけどね」

「そうじゃな……あ、いや、面白そうじゃし、見に行くというのもありかもしれんな」

「何を?」

「その風紀委員とやらを、じゃ」

 

 そう言って、ノッブはにやりと笑う。

 

 三人は顔を見合わせ、不敵に笑うと、ノッブの提案を採用してエルキドゥ達の集会現場を見るために動き出すのだった。




 風紀委員組、本当に増えてきたなぁって……本当は会議まで書きたかったなぁって……
 でも、あのメンバーで会議とか、無理そうな感じなんですけど。だってほら、人の話聞かなそうなのがいる気がするし……というか、後半二人は無理があると思うんですがそれは。

 自由奔放フリーダム組主格はマスター・ノッブ・エウリュアレ・BBの四人で大丈夫ですよね!! ナーサリーとか、バラキーとか、ネロとか、エリちゃんとかいるけど、大体この四人ですよね!!


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そも、風紀委員組って会議する必要ある?(儂らとあんまり変わらないような気がするんじゃが)

 風紀委員組とは言われているが、実際、それぞれがやりたいようにやっていて、たまたま同じところで同じように動いているのが彼らだったりしたのだが、それでもたまに集まってみたりもしている。

 つまりは、今日がその日だったりするわけだ。

 

「それで、今日はなんで集まったんだ?」

「人数も増えたからね……マスターに唆されたりとか、ノッブに唆されたりとか、エウリュアレに唆されたりしそうな人物を上げて行こうかと」

「その三人は最初から何かやるって確定してるのね……」

「そりゃあ、大抵何かある時にはそこにそのうちの誰かはいるからな」

「あ~……なるほど。確かにそれは、主犯格に見えなくもないわね」

「まぁ、あの三人は面倒ごとに首を突っ込むのが好きだからな。仕方ないだろう」

「ふん。で、それを確認して、何の得があるんだ?」

「ふむ。まぁ、即時対処できる程度かな?」

「……なら、別にしなくてもいいんじゃねぇか?」

「……それもそうだね。よし、見回りに行くかな」

「なんで集まったのか、分からないわね!?」

 

 特に理由も無く集まった。と言えなくもない状況に思わずマルタは突っ込むが、代案が思いついているわけでもないので、止められるわけは無いのだった。

 

 

 * * *

 

 

「……のぅ、マスター。儂、思ったんじゃけど」

「何? ノッブ」

「なんというか……儂らとあんま変わらなくね?」

「……まぁ、そういう事もあるよ」

 

 BBとノッブの開発によって生まれた遠隔操作式の移動カメラで様子を見ていた自由奔放フリーダム組は、あっさりと解散した様子を見て、思わずノッブが呟くのも無理はないと思うのだった。

 

「さて……そろそろ退却せねば、見つかるかもしれんな」

「そうだね。よし、早めに撤退しよう」

「……BB。私、見られてるように見えるんだけど」

「奇遇ですね。私もです」

「…………じゃあ、私は逃げるわね」

「私もちょっと用事があるので、これで」

 

 さっさとカメラを撤退させているオオガミとノッブは気付いていないようだが、一瞬、エルキドゥがこちらを見て、にやりと笑ったように見えた。

 なので、即座に二人を見捨て、逃げるエウリュアレとBB。当然、逃げることに集中している二人は、後ろにいた二人が消えたことに気付かないのだった。

 

「そこの道を右だね」

「うむ。で、ここを突き当たりまで進んで――――よし。これで回収っと」

 

 天井からそのまま落ちてきた移動カメラをキャッチし、作戦終了。とでも言いたげな表情で二人は顔を見合わせ、

 

「楽しそうだね。それで、何を撮っていたんだい?」

 

 視界の端に映りこんだ風紀委員筆頭に、二人はこの後に起こるであろう事を予感し、絶望するのだった。




 冷静に考えると、最初の頃と比べて、エルキドゥの方針が変わってたりするんですよね……初期の頃って、マスター中心だったんですが、最近マスターもシバキ倒す対象になってたり。
 いったい何があったんだエルキドゥ……


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廊下で大戦争してるんだけど(それより、料理人枠が召喚された方が重要よ)

 まず、結論から言おう。アキレウスは当カルデアへの侵入は不可能となった。

 ついでに言えば、主戦力の一人であるヘラクレスも、その命を狙われることになったのだった。

 

「――――ヘラクレスゥゥゥーーーーー!!!」

「■■■■■■■――――!!!!!!」

 

 咆哮と激突。拮抗する力は、しかし、ヘラクレスが競り勝つ。

 そも、なぜそうなったのかと。そう思って思い出そうとして、そもそも顔を見合わせた瞬間に始まったと気付く。

 

「……えっと、誰を連れてくればいいんだろう……」

「バーサーカー相手じゃし、別に誰でもいいじゃろ」

「じゃあ、ノッブ。止めて来て」

「阿呆。廊下の真ん中で戦ってる様な奴らの中に突っ込んだら、儂も騒ぎの中心人物と思われるじゃろ」

「ふむ……でも、ガンドかけると、今度はこっちが狙われるんだよね……」

「なら、エルキドゥでいいじゃろ」

「あ~……なるほど。そういえば、どっちも神性持ってたね……やっぱノッブでいいじゃん」

「だから、儂だと止めたのに犯人にされるって言っとるじゃろ」

「むぅ……仕方なし。じゃあ、呼んでくるかな」

「おぅ。儂はここで待っておるよ」

 

 誰かがうっかり突撃しない様に。という意味だと受け取り、オオガミはとりあえずエルキドゥを探しに行くのだった。

 

 

 * * *

 

 

「まだ出来ないのかしら?」

「待つのも重要だよ。何事もタイミングさ。おいしくなるタイミングを待つというのも重要だからね」

「ふぅん……仕方ないわね」

「正直、なんで私は召喚された瞬間からお菓子を作らされているのか……」

「仕方ないじゃない。今まで料理が出来るのは限られてたり、そもそもいなかったりもしたし」

「……まぁ、特異点での食事は任せたまえ。精いっぱい努力しようじゃないか」

 

 やれやれ、と言いたげな表情で首を振るエミヤに不満そうに頬を膨らませるエウリュアレ。

 ようやく料理人枠が召喚され、これから特異点での食事の負担もある程度は軽減されるのだろう。

 

「エルキドゥは居る!?」

「あら、どうしたの?」

「エルキドゥに用があるのか?」

「えっと、うん。ヘラクレスとペンテシレイアが暴れてて……」

「神性相手なら、頼光や信長でも十分なのではないか? 何より、その二人なら全体宝具だし、両者を同時に止めるなら有利なのでは?」

「えっ? あ……確かに。じゃあ、頼光さんは?」

「知らないわ」

「少なくとも、ここにはいないな。休憩室にでも行ってみたらどうだ?」

「なるほど……じゃあ、行ってくる!!」

 

 オオガミはそれだけ言うと、行ってしまう。

 嵐の様に過ぎ去ったマスターを見送り、二人は顔を見合わせ、

 

「で、何時になったらできるの?」

「もう少しだ」

 

 とりあえず、エウリュアレはお菓子を要求するのだった。




 なお、裏ではエルキドゥの宝具レベルが上がっていたりしているという。
 メルトリリスはどうして来てくれないんだ――――――――!!!!!!!

 くそぅ……くそぅ……爆死でしたよ……!!


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オール・ザ・ステイツメン!〜マンガで分かる合衆国開拓史〜
ヒャッハー!! リヨ化だぁ!!(まぁ、テンションがあんまり変わらないから、変わったのはメタ度だけだよね)


「ひゃっはー!! 今日はぐだぐだ粒子並みの大暴走&メタ解放だぁ!!」

「リヨ化とかこれは運営への攻撃を許可したようなもんじゃな!!」

「まず最初に、なんで未だにステンノが来ないのかを聞かせてもらいたいわね!!」

 

 いつもの様に、しかし今回はいつもより当社比にして二倍。ぐだぐだ粒子に匹敵する――――否、メタ度に関して言えばぐだぐだ粒子すら超える――――超絶不思議現象発生により、三人は大暴れしていた。

 

「そも、QPの消費量も素材のドロップ率も異常に少なくない!?」

「イベントでも交換アイテムに石を搭載してくれてもいいと思うんじゃけど!!」

「どうして、特異点別ピックアップにステンノはいないのかしら。出て来てたわよね? おかしいわ……おかしいわ……」

「というか、余のスキル育成忘れられてないかっ!?」

「それもこれもQPってやつのせいよッ!!」

 

 三人と言ったが、アレは嘘だ。暴れているのが三人のわけは無く、当然、それ以外もいるわけだ。

 大体QPの消費が多いにも関わらず、通常クエストではそれほど回収できず、更に言えば苦労して集めても、スキル一つに消費されて消えるのだ。一体どうしろと言うのか。とりあえずQP増加礼装もっと増えろと。そう思ってしまうのも無理はないだろう。

 

「くそぅ……ステンノもメルトリリスも来ないし……一体何に呪われてるっていうんだ……」

「酒呑も来ないしな!」

「そもそもアサシン枠がスカスカじゃない……」

「スカサハ師匠も未だレベルが低いしねっ!!」

「今なおサポートに編成されてる静謐に謝れぃ!」

「正直もうアルターエゴでいいんじゃないかと思ってる!!」

「酷いわマスター! ライダーとキャスターにまで被害が来てるわ!」

 

 そろそろ収集が着かなくなってきたな。と思うも、今更止める事は出来ない。

 ただ、ここにBBがいないのは救いだろう。彼女まで居たら、本当にどうしようもなかった。

 

「……いい加減、テンションも保てなくなってきたわ」

「うん。冷静に考えると、いつもと全く変わらないもんね。当社比二倍で暴れたとはいえ、いつもが基本ぐだぐだ粒子が漂ってるようなものだしね」

「儂ら、ぐだぐだイベント終わってもぐだぐだじゃしなぁ……」

「余は、そんなことないぞ?」

(アタシ)も無いわよ?」

「お主らは最初からそうじゃろうが」

「ぬお! さらっと罵倒された気がするぞ!!」

(アタシ)たちはずっとぐだぐだしてるって言いたいの!?」

「大体あってるじゃろ」

「ノッブ。ブーメラン刺さってる。皆大体最初からぐだぐだしてる」

「まぁ、マスターがその筆頭だしね」

「はぅっ! エウリュアレの精神攻撃が刺さるっ……!」

 

 胸を押さえて倒れるオオガミ。女神の精神攻撃は効果が抜群のようだった。

 

「エウリュアレ! マスターが精神攻撃に弱いのは知っておるだろうが!」

「えぇ、知ってるわ。メルトリリスが当たらなかった時、本気で何もしなくなる直前だったしね」

「それを知っててなお攻撃するエウリュアレを、素直に恐ろしいと感じるのだが……」

「エウリュアレは、時折吾ですら怖いと思う時がある……」

「うぅぅ……今日はもうふて寝しよう……アメリカのド田舎らしいけど……」

「ここで寝るのね……あぁ……また野宿なのね……」

 

 エウリュアレは少し悲しそうにつぶやき、仕方ないとばかりにオオガミの腕の中に潜り込む。

 

「……よし。さっさと薪を集めて火をつけてエウリュアレを引きずり出すぞ」

「うむ。着火は任せよ。余が即座に火をつけてやる」

「ククク……吾が一番に集めてやろう」

(アタシ)が先よ。任せなさい」

 

 そう言って、ネロを見張りに置き、ノッブ達は薪を集めに行くのだった。




 テンションMAXで書き始めて、途中で力尽きたのが悪かった……ハイテンションで書き切るべきだった……
 しかし、マンガでわかるバーサーカー……倍速入れて約二秒って、すごい周回向き……しかも、全体バスター上昇に全体回復とか、普通に使いどころある様な……


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日常
冷静に考えなくても、基本的に被害者ってこっちだよね(そういえば、グランドオーダー中の種火周回とかってどうするんだろう?)


「昨日は……闇に葬ろう」

「どうせ明日も同じことになると思うんじゃけどね」

「わ、私はもうやられないわよ! というか、もう関わらないわ! って事で、このイベントが終わるまで近づかないで!!」

「さも、俺が中心みたいな言い様だね!?」

 

 大体、向こうからやってくるわけで、こっちはある意味被害者である。そして、被害者ながらも得をしようと足掻いて、いつも素材や種火を一切合切奪っているだけである。

 なので、あくまでもオオガミが中心と言うわけではないのだ。

 

「それにしても……いつも思うんだけど、どうやって特異点で種火周回とか出来るのかしら。確かあれ、シミュレーションだったわよね?」

「いや、ほら。マシュの盾でポータル作って、そこでシミュレーションしてるんだよ。うん」

「でも、今回は作ってないわよね? というか、マシュは?」

「えっ……と、いや、その、ほら。ノッブがなんかしてくれたんだよきっと」

「そう……ノッブの信用度というか、理不尽の押し付けられようが分かるわね。どう考えても適任はBBでしょうに」

 

 やれやれ。と言いたそうな表情で首を振るエウリュアレ。

 近くで聞いているノッブに目を向けると、具体的に何をしてるのか分からないが、手元に目を向けて作業をしているような感じを醸し出し、さも自分は聞いていないというような態度だった。

 

「はぁ……まぁいいわ。ちょっと散歩してくるわね」

「うん。行ってらっしゃい」

「えぇ、行ってくるわ」

 

 そう言ってエウリュアレは森の中に消えていく。

 そして、それと入れ替わるように、茨木が薪を持ってきた。

 

「ふん……吾を働かせるとは、恐れを知らぬなぁ……」

「別に、働くても良いんだよ? ただ、お菓子やデザートが無くなるだけで」

「くっ……そんな恐ろしいことを考えているとは……鬼めっ!」

「お主が言うんかい」

 

 茨木の発言に、思わず素で突っ込んでしまったノッブは悪くないだろう。

 

「だがまぁ、吾もたまにはこのような雑用をやるのも……いや、やっぱり街を襲いたい……」

「じゃあカルデア襲撃して来れば? 手始めにエルキドゥから」

「自然に死刑宣告だな!? 流石の吾も、アレはまだ無理だ。せめてスキルを全てMAXに……」

「そ、そう……まぁ、いつか来る抗争の為にも、勝てる編成をしておかなくちゃだね……」

「む? 抗争? なにやら面白そうな事を考えているようだのぅ……」

「オオガミよ。変なこと考えておると、マシュにまた叱られるぞ?」

「ま、まぁ、その時はその時だよ。うん。な、なんとかなるって」

「ククク……その時は、吾も暴れられるのであろうな……?」

「当然。その時は頼りにするよ?」

「あぁ、期待するがいい。っと、薪はここに置いておくぞ」

「うん。じゃあ、休憩してくれてていいよ」

「うむ。そうさせてもらうぞ」

 

 そう言って、茨木は薪を置いてから木に寄りかかって休憩し始めるのだった。




 いずれ来る抗争……
 中立勢は完全に巻き込まれという不幸。

 あと、さらっとホームズが当たりました。出す場所に困った結果、今はカルデア待機中。


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マスター<お菓子(それはそれとして、QPが足りぬな)

「宝物庫め……QPを出し渋りおって……!!」

「いやぁ……少し前まで、自分とはまだ縁遠いと思っていた頃が懐かしいなぁ……」

「そんなに昔でもないでしょ……」

「吾としては、まだ足りぬ……奪い尽せぬというのは、悔しいものよな……」

 

 宝物庫に突撃をしてQPを奪っていくオオガミ達。

 ちなみに、実働部隊はドレイク船長とリップなので、ノッブ達は完全に関係なかった。

 唯一関係があるとしたら、後衛にいるエウリュアレくらいだろう。

 

「(しかし……あとちょっとなんだけどなぁ……)」

「……な、何よ?」

「いや、何でもないよ?」

 

 絆ポイントを見つつ、この少しが埋まらない感覚に何となくイライラしてるオオガミ。

 エウリュアレの絆MAXまで、残りは約5万。メインクエストのような、絆ポイントが多いクエストに出ているわけではないから、それも仕方のない事なのだろう。

 

「ねぇノッブ? 最近、マスターの視線が怖いのだけど」

「ふむ? お主、何やらかしたんじゃ」

「そうやってすぐさま私を疑うのはどうかと思うのだけど」

「まぁ、信頼の表れとでも思うんじゃな」

「真っ先に自分の事を疑ってくる信頼なんていらないわよ……」

「日頃の行いという事じゃ」

 

 頬を膨らませつつ文句を言うエウリュアレ。しかし、ノッブのマントの中に隠れながら言っているので、威厳は完全に欠片も無い。

 

「ククク……して、次の襲撃は何時だ? 吾は楽しみでたまらんぞ……」

「ん~……まぁ、流石に今日は終わりかなぁ……」

「む。つまらぬな……」

「流石に果実を食べるつもりないからねぇ……」

「ぬぅ……ならば、仕方ないか……明日も当然行くであろうな?」

「そりゃ……あ、いや、種火回収だね。QPはまた今度だ」

「ぬぉ、本気か……!?」

「まぁ、順番があるんだよ。QPはまだ最優先じゃないしね」

「ぐぬぬ……仕方なし……次を待つか……」

 

 少し悲しそうな顔で諦める茨木を見て、苦笑いになるオオガミ。今度、エミヤに何か作ってもらおうと思うのだった。

 

「という事は、またここで野営?」

「そうなるね」

「えぇ~……私だけでも帰りたいんだけど……」

「何言っとるんじゃ。儂らのマスターじゃぞ? 放って置いたらどこでぽっくり死ぬかわかったもんじゃないじゃろ?」

「こやつにはもっと強くなってもらわねば困るからな……このような所で死なれたらかなわぬ」

「いや、私関係ないじゃない」

「そうでもないぞ? なんせ、マスターが死ぬと、お主の好きなお菓子類が食べられなくなるからな」

「――――!!」

「……それは許せぬな」

「えぇ、許せないわ。これは是が非でも連れて帰らないと」

「うむ。その意気じゃ」

「……命を助けられる理由がお菓子とは……」

 

 自分の命の価値とは。とオオガミは考えつつも、とりあえず指示を出して薪を取りに行くのだった。




 お菓子のおかげで生き残れる不思議。うちのカルデアらしいといえば、うちのカルデアらしい……


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回避って、味方の場合は嬉しいけど、敵がしてくると殺意湧くよね(エルキドゥが回避を習得したんじゃが!?)

「なんでじゃーーー!!」

「なんであの神造兵器が回避なんて手にいれてるのよーーー!!」

「勝ち目が思いっきり薄くなったではないかーーー!!」

「……鈴鹿御前がこっち側に着いてくれればワンチャン……!!」

 

 強化クエストにより、気配探知に回避が付与された最強兵器、エルキドゥに悲鳴を上げる四名。

 心強い、しかし、敵としては最悪の強化に、絶望したような表情の四人の気持ちは、誰一人として回避を貫けないという事実によって理解出来るであろう。

 

「くっ……これでは尚更、敵対出来なくなったではないか……!!」

「いいえ……まだよ……! まだ、礼装という最終兵器があるわ!」

「つまり、無敵貫通礼装をつけるということか!」

「えぇ……それをネロに装備させれば、私たちに勝ち目が出来るわ……!」

「吾の羅生門大怨起で強化解除するのも一つだな」

「うむ。で、解除してからネロを叩き込む、というのが一番理想じゃな。なんせ、防御上昇等も一切合切破壊できるからな」

「じゃあ、本番の時はそれで行きましょう。私はとりあえず、男連中を視線で射殺していくわ」

「うっわー……女神の口から出ちゃ行けない言葉が出たよー……」

「マスター。うるさい」

「あっ、はい。すいません」

 

 話に入り込むことすら出来なくなってきたオオガミが、ぼそりと呟いた瞬間にうるさいと言われ、小さくなる。

 

「しかし、最難関はマルタよな……」

「バスター三積みの脳筋ルーラー……はたして如何に突破するか……」

「そこは、ほら。私が巌窟王を悩殺して攻撃させれば良いんでしょう?」

「ふむ……それもそうじゃな。ということは、如何にエウリュアレを巌窟王のもとへと出せるかが問題ということか」

「えぇ……難易度は高いわ……」

 

 一体、この話題はどこへ行くというのか。そして、本当に抗争を起こすのか。と思いつつ、オオガミは成り行きを見守る。

 ただ、一つ言えることは、この自由奔放フリーダム組の主格の一人はオオガミだ。ということだ。まぁ、最近は影が薄くなってきていたりするが、気のせいだと思いたい。

 

「しかし……バーサーカー組も、下手をすると厄介だぞ? なんせ、神秘殺しがいるからの……」

「えぇ……でも、そこはノッブの三千世界(さんだんうち)に賭けるわ。神性・騎乗の二つを取っているんだから、倒せなくもないはずよ」

「それもそうか……うむ。では、任されたぞ」

「吾とネロはエルキドゥを。エウリュアレは土方と巌窟王を悩殺し、マルタを。ノッブは頼光を、ということだな。ククク……楽しみだのぅ……」

 

 不気味に笑う三人。明らかに、悪いことを企んでいる顔だった。

 ただ、唯一の問題点があるとすれば、全員揃って、厨房勢相手にすると即座に敗北を認める。

 そして、その厨房の料理長を勤めているエミヤは、どちらかというと風紀委員組の人間である、ということだ。

 胃袋を掴まれたら逃げられない。つまりはそういうことだった。




 なんか、既にやらかすつもり全開なんですけど。
 そして、このマスターである。いい加減、威厳を取り戻そうぜ、オオガミ……
 まぁ、イベント終わるまではメンバーは変えない予定ですけどね。これは威厳回復しない予感……


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我がカルデアの、ビューティープリティー廃パワー女神様(だからって、ランサーに突撃させて良い訳じゃないわよ?)

「ど・う・し・て! 敵にランサーいるっていうのに私をメインに出したのか! 聞かせてもらうわよ?」

「い、いやですね!? それはその、あれですよ! エウリュアレなら倒せるなって確信してたから! 事実、倒せたじゃん!?」

「えぇ、そうでしょうね。そりゃ、レベル差が開いてるからね! 倒せるのは分かってたわよ!」

 

 正座させられ、怒られるオオガミ。

 怒っているのは、会話から分かる通りエウリュアレ。

 いつもなら冗談のように言うのに、今日に限っては本気だったため、ノッブ達は静観の姿勢だった。

 

「大体ねぇ、ランサーが敵にいようとも問答無用で私をメインに入れようとするのはどうなのよ。おかしいじゃない。クラス相性分かってる?」

「はい……ちゃんと、アーチャーはランサーに対して弱いということは知っておりますです。はい」

「そうよ、私はランサーに弱いの。それで……どうして私はランサーがいても、編成に入れられるのか。聞かせてもらえるかしら?」

 

 満面の笑み。それはエウリュアレが、どちらかと言えば悪意全開の時に浮かべる笑みだった。

 

「えっとですね。それは……その、エウリュアレ様は我がカルデアの幸運の看板女神様でございますれば、編成から抜くというのは手段としては存在しないのでありますですよ」

「なるほどなるほど。つまり、私は幸運の女神で、編成から抜くのは嫌だ。そういうことね?」

「えぇ、はい。そ、そういうことです」

「そう。それで、貴方はその幸運の女神を主戦力にしているわけね?」

「そ、それはその……ですね? 幸運の女神とは一口に言いましても、エウリュアレ様はどちらかというと相手のチャージを削って宝具を叩き込んでクリティカルとアーツ上昇で宝具を早めに回転させて、男性はとりあえず男性ならクラス関係なく悩殺していく系の可愛い女神様でしてね? その、主力系のビューティープリティー廃パワー女神様なので、主戦力にするのは信者としては当然と言いますか、エウリュアレを殺させてたまるかと言いますか、そのですね? まぁ、そういうことでございます」

「……えっと、結論は、私は美しくて可愛いうえに強いから前戦入りは当然って言いたいわけ?」

「えぇ、まぁ……そういうことでございます。女神様」

「そう……はぁ。なんて言うか、変に信頼されてるのねぇ……私……」

「そりゃ、うちのカルデアの幸運の看板女神ですし。超絶信頼してますし」

「……まぁ、悪い気はしないけど、それでもランサー相手は辛いわ。出来ればネロにしなさいよ」

「まぁ、善処します」

「それ、絶対やらないやつじゃないの……」

 

 苦笑いをしているオオガミの頬を指で突っつきながら、エウリュアレは頬を膨らませているのだった。




 初心者イベントだし、エウリュアレを使って良いか。という楽観的思考でエウリュアレを使って、エウリュアレがランサーに襲われることなく、彼女自身が宝具でランサーに攻撃させなかったにも関わらず、当然のごとく怒られるオオガミ。
 今日はつまり、そういうことだったわけで。

 正直アルテラもとい、コロンビアのスキルに目が点になってしまったのは仕方ないと思うんです。
 フレンドを孔明にしてなかったらメンバーの半分が死んでいた……


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オオガミのパフェとエミヤのパフェ。どちらの方がおいしいのかしら(エミヤに勝てるわけないし、これから教わろうとしてるんですが)

「エミヤ~~!!」

 

 食堂に入ってくるオオガミ。

 もう人はほとんどおらず、席にはエウリュアレと茨木がぽつんといるくらいだった。

 そして、厨房ではエミヤが何かを作っているようだった。

 

「なんだねマスター。もしかして、エウリュアレ達と同じようにデザートを求めてきたのか?」

「えっ。エウリュアレ、そんなことをしてたの……?」

「そうだが……同じもので良いなら、マスターも食べるか?」

「むっ。エミヤが大丈夫ならお願いしますです」

「了解した。少し待っていろ」

 

 エウリュアレ達が要求しているのなら、同じところで待っているのが良いだろう。という判断で、エウリュアレの前の席に座る。

 

「なによ。貴方もパフェを食べに来たの?」

「いや、まぁ、そんな所かな?」

「ふぅん? まぁ、私は貴方の作ったものと、彼が作ったもの。どちらがおいしいかを食べ比べたかっただけなんだけどね」

「む、むぅ……エミヤと比べられると、明らかに差が大きすぎる気がするんだけど……」

「まぁ、その時はその時よ」

「吾はうまいものなら構わぬ。マスターが作ろうが、あやつが作ろうが、な」

「私もそんなものよ。楽しみねぇ?」

「あっれぇ……? さらっと、エミヤと張り合えっていう雰囲気があるなぁ……?」

「うふふふふ……」

「ククククク……」

「あはは……というか、そんなものを軽くもう一つ作るかって聞いてくるエミヤさんパネェっす」

 

 意味深に笑う二人に、苦笑いになるオオガミ。

 そんなことを話していると、エミヤがこちらにやってきた。

 

「前にマスターがイチゴのパフェを作っていたらしいからな。こちらはチョコで作ってみた。口に合えばいいのだが」

「おぉ~! 流石料理英霊ね。見た目も中々だわ」

「おぉ……うまそうなパフェよなぁ……」

「料理英霊って……せめて料理長って呼ぼうよ」

「いや、マスター。根本的に、私は料理人として召喚された覚えはないのだが」

 

 チョコをメインに使用したパフェに目を奪われる三人。

 だが、その反応を見て、エミヤは呼ばれ方にどうも思うところがあるらしかったが、オオガミがきょとんとした表情で、

 

「え? いや、だって、ほら。エミヤは料理がうまいから」

「た、確かに、比較的にうまい方ではあると思うが、それはそれだろう?」

「だって、イベントでも料理長だったし……」

「そうよ。いい加減、諦めて認めなさい」

「だが、私も英霊の矜持と言うものがな……」

「それに、今日の用事は料理を教えてもらいに来たんだし」

「…………」

 

 当然の如く言ってくるオオガミに、さすがのエミヤも、思わず目頭を押さえるレベルだった。

 

「もう、何も言うまい。マスター。料理に関しては明日の仕込みもかねて教えるから、食べ終わったら厨房に来てくれ」

「了解!」

 

 そう言うと、エミヤは厨房に戻って行くのだった。




 たまにやる人と、本格的にやっている人。そりゃ、後者の方が勝つと思うんです。
 エミヤはもうしばらく戦闘はしない予定なんで、特異点での食事はまだエミヤ無しが続くわけです……


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明日から水着イベだヒャッハー!!(儂も霊基再臨で着替えありじゃあぁぁ!!)

「儂のターンじゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「ダサTなのにカッコいいぃぃぁぁぁぁ!!!」

「叔母上もバーサーカーだぁ!」

 

 テレビに映し出された水着鯖一覧を前に、腰に手を当て胸を張りながら大声で喜ぶノッブ。

 そして、その背後で目を輝かせながら喜ぶオオガミと茶々。

 

「ふははは!! 沖田がおらんのがちと気になるが、まぁそんなことはどうでもいいんじゃ!! レースじゃぞレース!! これはもう、儂がダントツ一位しかないじゃろ!!」

「えっ?」

「えっ」

「えぇ?」

「……え?」

 

 予想外とでも言いたげなオオガミの呟きに、思わず聞き返すノッブ。

 それを二度繰り返し、苦笑いで硬直するノッブ。

 

「いや、まさかお主、儂を応援しないわけじゃあるまいな?」

「いやいや、ほら。ノッブはロケットじゃん。あれで負けるとか、思ってないから。だからほら、頑張って! 俺はネロの所に行ってるから!」

「よし分かった。水着の儂が来たら、まず最初にマスターを殴り飛ばす。んで、おまけでネロも殴り飛ばしに行こう」

「そ、それはあれです? 『儂、来ないんだからねっ!』っていう奴です?」

「んなツンデレもどき、誰がするか。お主には拳で十分じゃろ」

「おぅノブナガさん? 流石の私も、ノブナガさんのパンチは死んでしまいまーす。マジで止めてくださーい」

「うむ。許さん」

「あっ。死んだなこれ」

「伯母上! 死ぬかどうかのギリギリじゃないと、エルキドゥに殺られるからね!」

 

 明らかな殺意の炎を瞳に宿し、拳をポキポキと鳴らしながらオオガミを見下ろすノッブ。

 オオガミはじりじりと後ろに下がって逃げようとするが、後ろから抱き着いてきた茶々の手によって阻まれる。

 

「あっはははは」

「ふふふふふふ」

「えっとぉ……よし。ここは素直に諦めよう」

「ふむ? 潔いんじゃな。して、儂がそれで止まるとでも?」

「いやいや、まさか。ノッブが止まるわけないよ。という事で、ヘルプミー! エルキドゥ!!」

「ぬわっ!?」

「ちょ、えぇぇ!?」

 

 エルキドゥの名を呼ぶオオガミ。

 当然、エルキドゥを呼ばれたらノッブ達は勝ち目がないわけで、ここは逃げるしかないという結論に至る。

 

「なんだい? マスター」

「茶々! 撤退じゃ!! 水着イベントまで隠れるぞ!!」

「了解!」

 

 エルキドゥが、さも当然の様に天井から現れると同時、全力で逃走するノッブと茶々。

 その逃走速度は目を見張るものがあったが、それはそれとして、エルキドゥは問答無用で扉に鎖を突き刺して文字通り封鎖する。

 

「さて……それじゃあ少し、お話をしようか」

「は、ハハハ……マスター。これは流石に予想外じゃったぞ……」

「ふふん。そりゃそうだよ。だって――――」

「マスターもだよ?」

「――――共倒れだもん」

「こいつ阿保じゃ!!」

「茶々も巻き込まれてるんですけどぉ!?」

 

 喧嘩両成敗。

 とは言うものの、今回の一件に関していえば、オオガミが全面的に悪いと言えなくも無いので、オオガミは別室行きとなるのだった。




 はたして、オオガミはノッブを応援するのか、それとも当初の予定通りネロを応援するのか……

 とりあえず、オオガミは別室で袋叩きにしておきますね。


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デッドヒート・サマーレース!~夢と希望のイシュタルカップ2017~
待ちに待った、イベントじゃああぁぁぁぁぁぁ!!!(レース、始まるわよ!!)


「ヒャッハー! イベントじゃああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「レースだあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「「全力で戦争じゃああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」

「叔母上達うるさい」

「エルキドゥが来るわよ?」

「もはやエルキドゥはホラーゲームで言うところの接触即死系の敵みたいよね」

「うむ。というか、余以外には天敵であろう」

 

 休憩室で騒ぐノッブとオオガミを見ながら、エルキドゥが来るのではないかと危惧するエウリュアレ達。

 今は全員イベントに参加するのを待っているのだが、更新が遅いため、未だに待機しているのだった。

 

「さて……して、如何に攻めるか、じゃな」

「そりゃ、正々堂々後ろからキラーの如く全てを蹴散らして全速前進?」

「蹴散らしてとか……そんなえげつない事、出来るわけなかろう……というか、撃ち落されるわ」

「残念。さすがにノッブの科学力でも無理か……」

「うむ。まぁ、任すが良い。安心して儂の応援をせい」

「あっ。まだその話を持ち出してくるんだね、ノッブ」

「そりゃ、マスターには応援されたいしな。その方がやる気が出るに決まっとるじゃろ?」

「うぅむ……そういうものかなぁ……?」

「そういうものじゃよ」

 

 ノッブが胸を張ってそう言うので、そんなものか。と納得するオオガミ。

 

「まぁ、出来るだけ応援するよ!」

「うむ。それ、やらないフラグなんじゃけどね?」

「ハッハッハ~。そんなことないってば~」

「まぁ、期待して待っておるぞ」

「まぁ、任しておいてよ」

 

 苦笑いのノッブに、胸を張って応えるオオガミ。

 

「っと、そろそろ更新終わったかな?」

「カルデアスのメンテナンスも大変じゃのぅ。全く、恐れ入る」

「BBも手伝って――――いや、確実に遊んでる気がする。もしや遅れた原因はBBなんじゃ……」

「いやいや。さすがのBBも、そんなことしたらエルキドゥと共に来るマルタに叩き潰されるわよ」

「あ、それもそうか。じゃあ、問題ないね」

「えぇ。というか、終わったのなら、もう行きましょ?」

「余の出番はあるのだろうな!?」

(アタシ)の出番は!?」

「予定はあるから安心して。どうせ全クラスあるはずだし……特効キャラ、誰も育ってないし……」

 

 オオガミは遠い目をするが、それを気にするのはいないのだった。

 

「と、とりあえず! レースだよレース!! 特異点突っ走りレース!! まずは初回!! 行ってみようか!!」

「儂の走りを見せてやるぞ!!」

「まぁ、私は観戦してるんだけどね」

「余も走るからな!! 楽しみだな!!」

(アタシ)は応援ソングを歌ってあげるわ!!」

「うぅん。このメンバー、不穏だなぁ!」

 

 休憩室を出るオオガミは、共に出てくるノッブ達の声を聞いてこの先が不安になるのだった。




 ようやく……アップデートが終わった……一時間くらいかかるとか、完全に想定外……コフッ

 という事で、イベントやってきます!!


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ネロが一日で最終再臨……(ネロが可愛いのがすべての根源)

「海上劇場からの前方殲滅型レーザー攻撃……そして、ステージを出てくる時のあの輝いた表情!! 可愛い!」

「ぐぬぬ……どうして私はいないのよ!! というか、なんで観客席なのよぉ!!」

「静かに見てなさいよ。ほら、バラキーだって静かよ?」

「綿あめ、うまいのぅ」

「……ね?」

「綿あめ食べてるだけじゃない……」

 

 映像を見て目を輝かせるオオガミと、オオガミを叩きながら文句を言うエリザベート。

 それに対して遠回しにうるさいとエウリュアレが言うが、エリザベートは微妙に納得がいかないようだった。

 

「それにしても、一日でネロが最終再臨するなんて思わなかったわ」

「ふっふっふ。それはもちろん、水着ネロ様が普通に強いと思ったからね」

「そう……で、どうしてQPがあんなに無くなってるのかしら」

「……ノーコメントで」

「ふぅん……じゃあ、次の質問。ネロの第二スキルがレベル5なんだけど、どうしてかしら」

「……ノーコメントで」

「へぇ……それじゃあ、今月の種火と期間限定の種火とイベントの種火が全部消えてるのは?」

「……それ以上は泣くよ?」

「ふふふ。まぁ、私にとっては何の問題も無いし、良いわ」

「何というか、絆礼装手に入ったのに態度が優しくなると思いきやむしろ悪くなってる様な……?」

「失礼ね。ちゃんと相応の態度で話してるわよ」

「えぇ……相応の態度なのにイジメてくるとは……一体どんな人間だと思われてるんだろ」

「私みたいな女神をここまで育ててる時点で、何となく説明不要な感じがするわ」

「うぅん……? どんな感じだろ……」

 

 エウリュアレが何を言いたいのかよく分からないオオガミは、首を傾げつつ考える。

 そんなオオガミを見て、エウリュアレはため息を吐く。

 

「ま、いいか。レースを見守ろうよ」

「えぇ、そうね」

「……そういえばオオガミよ。(なれ)はマシュと共にレースの運営側で何かするのではなかったか?」

「えっ?」

 

 突然の茨木の突っ込みに、思わず硬直するオオガミ。

 

「そう言えばそうよね。どうしてここにいるのかしら」

「まさか……サボリ?」

「え、えっとですねぇ……まぁ、その、あれだよ。ちょっとした休憩だよ。この後、すぐに戻るしね」

「なるほどねぇ……というか、それなら早く戻りなさいよ。そして、マシュをこっちに連れてきなさい。そっちの方が良いわ」

「ひ、酷い言われよう!! むむぅ……まぁ、マシュにだけ任せるわけにはいかないし、行ってくるよ。まぁ、エウリュアレには後で来てもらうかもしれないけど」

「え? ……あぁ、そういう事ね……分かったわ。その時は呼んで」

 

 思い至るところがあったのか、頭を抱えながらオオガミを行かせるエウリュアレ。

 ちなみに、おおよそ同様の理由でリップも連れて来られるのだろう。とエウリュアレは思うのだった。

 

「バラキー。それ、どこで売ってる?」

「む。向こうでエミヤが作っておるぞ」

「ありがとう。行ってくるわね」

 

 そう言うと、エウリュアレは気を紛らわすために、エミヤの店へと向かうのだった。




 今日のレベル上げで分かったのは、種火200個で行けるのは最終再臨とちょっとくらいだということです。
 チクショウ……もしメルトリリスが召喚できても、一日でレベルマックスは現在の貯蔵では不可能ということか……!!(激昂)

 とりあえず、今日はネロの「あれは誰だ! 美女か? ローマか? もちろん、余だよ?」に癒されてきます。強いし可愛いよネロ。


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いつも通りいつも以上にマスターが暴れてるんですが(というか、エウリュアレさんの絆レベルMAXだったような……?)

「先輩が暴れてます……」

「何があったのだ……」

 

 俯いてそう言うマシュに、思わず聞く茨木。

 一体何があったのか。そう思うのも無理はなかった。

 

「いえ、大体いつもと理由は変わらないのですが、今回は素材交換のアイテムの必要数が多いらしく、悲鳴を上げながらいつも通り暴れてます……」

「ふむ……なるほどのぅ。だからエウリュアレがおらんのか」

「はい。先ほどまでリップさんが行っていましたが、今は玉藻さんが行ってます」

「むぅ……吾は何時になったら戦えるのか……」

「えっ? あ、そうですね……そもそも、茨木さんが大活躍できる敵って、どのような敵なんでしょうね?」

「ふむ……どのような敵……か。むぅ、しばし考えてみる」

 

 そう言って、茨木は考え始める。

 マシュは茨木が考え始めたのを見て、レースの状況を見る。

 

「そういえば先輩……結局信長さんをあんまり応援してないですよね……素材考えたら、確かに信長さんを応援するよりも、他の方を応援するのが一番なんですけど」

「マシュ。そう言う事は言っちゃいけないのよ?」

「ナーサリーさん……何時からそこに?」

「マシュがオオガミの愚痴を言ってた辺りからかしら」

「最初からじゃないですか。どうして私は気付かなかったんでしょう……」

「それは、あれよ。わざわざ姿を本に変えて見つからないようにしたもの」

「なんでそこで隠れたんですか」

「理由なんてないわ。思ったままに行動してるだけよ。マスターだってそう言ってたわ」

「先輩は何言ってるんですかもぅ……」

 

 オオガミが自分の知らない所で一体どんな適当な事を言っているのかと思うマシュ。

 ちなみに、ナーサリーは、エミヤの屋台で買って来たであろうたこ焼きを食べていた。

 

「あぁもう、これ以上あんな火山で戦ってたら、焼けちゃうわ。女神の丸焼きとか、誰得よ」

「その時は吾が喰ろうてやろう」

「……想像しちゃったじゃない。次言ったら撃つわよ?」

「それは困る。クククッ、楽しみだのぅ」

「それはどういう意味でかしら? というか、貴女も行けば良いのに……」

「吾も行けるのなら行きたいわ! 行けないであろうが!!」

「あ、あぁ……そうだったわ。マスターがあれだものね……まぁ、コスト面の問題もあるんでしょうけど……」

「コストが足りぬのなら、どうしようもないではないか!!」

「そうね。悪かったわ……えぇ、きっと、次のメインは貴女の活躍できる場所が多くあるわよ。きっと。私の絆礼装をゲットしたって言ってたし。というか、渡したし」

「うむ……それで吾の出番が来ればよいが……」

 

 帰って来たエウリュアレは、茨木と話しつつ、買ってきた焼きそばを食べながら観戦していた。おそらく、APが尽きたのだろう。とマシュは想像する。

 

「って、エウリュアレさんが戻って来たって事は、先輩も疲れてるんじゃ……えっと、じゃあ、戻りますね」

「行ってらっしゃ~い」

「えぇ、頑張りなさい」

「うむ。ついでに吾の出番を取ってきてくれると嬉しいぞ」

「それは自力で獲得するべきだと思いますので、私は先輩の手助けをしてきますね」

「フフフ。だそうよ? バラキー」

「ぐぬぬ……仕方あるまい。吾自ら赴くしか無かろう……」

 

 スタッフルームに戻って行くマシュを見送りながら、茨木は何時言いに行くかを考えるのだった。




 女神の丸焼き……全身日焼けなんじゃないんですかね……溶岩に落ちる予定でもあるんですか? 女神さま……

 というか、私的に今回の素材交換がいつもより大変な気がするんですが! 大変な気がするんですが!!
 残りチタンプレートが約7800枚とか、意味分からないんですけど!! 他のやつとか、考える気すら起きませんでしたよ!! うわぁぁぁぁ!!!

 うん。また水着ネロに癒されてきます。スキルセリフでも可愛いよネロ。『夏の話題を独り占め、だな!』


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なんか、今日は荒れてるわね……(コースが平和な感じだからかしら?)

「メジェドが来たわね……」

「本人が聞いたら殴りかかって来そうな物言いだね」

「全く……センパイも、水着イベントだからって舞い上がり過ぎです。もっとこう、BBちゃんの為になるようなことに使ってくださいよ」

 

 りんご飴を食べながら呟くエウリュアレにエルキドゥが突っ込み、BBが減っていく資材を思いながら呟く。

 

「貴女の為になる事に石を使うって、どういう事よ。そもそも、別に必要ないでしょ?」

「レベル100のエウリュアレさんに言われたくないですね。そもそも、まだ私は80にすら達してませんからね? 74ですよ? 私」

「あぁ……そういえばそうね。ただ、ニトクリスが来ちゃったからまた成長できる日が遠くなったわね。お疲れ様」

「むむむ……本当に許せないですね……これはもう、直談判しかないですね。さすがに倉庫を襲うと私の命が危ういので」

「そう、よかった。僕が出る必要はないんだね?」

「あはは。そもそも、エルキドゥさんが出るような場所なんて無いでしょう? あ、今なら弓の修練場で周回してくるのが一番なんじゃないですかね?」

「……それは、僕に喧嘩を売っているって意味で良いのかな?」

「嫌ですねぇ。喧嘩なんて、同じレベルの人間の間でしか起こらないんですよ?」

「そうか……それもそうだね」

「えぇ。ですので、黙って座ってレースを見てるのがお似合いですよ♪」

「あぁ。君も、そこで静かにレベルが上がってく回りを見ながら自分を省みているのが良いと思うよ」

「うふふふ」

「はははは」

「……なんでこう、ギスギスしてるのかしら……」

 

 やれやれ。と言いたそうにエウリュアレは首を振るが、すでに二人はエウリュアレの事は眼中に無いようだった。

 その後も、ニコニコと笑いながら二人は睨みあっていたが、当然心の底から笑っている者はいないのだった。

 

「うぎぎ……伯母上が茶々の黄金を全部使いさえしなければもっと遊べたはずなのに……!!」

「そんなこと言っても、ちゃんと買ってるじゃない」

「それはそれ、これはこれ! そもそも、これは茶々が襲撃に備えてもう一段カバーを入れてたとっておきだし!!」

「よくもまぁ、バレなかったわね……」

「伯母上は表面上ので足りたみたいだし……ここまで荒らされてたら今からでも襲いに行く自信があるよ」

「その時は、吾も混ぜてもらおうか」

 

 かき氷を食べる茶々と、フランクフルトを数本持って一本ずつ食べている茨木がやってきて、エウリュアレの隣に座って愚痴り、それに対してエウリュアレは突っ込んでいく。

 

「てか、第一レースと第二レース、伯母上どっちも5位じゃん! やっぱり茶々の黄金を持ってった罰が当たったね!」

「そうよねぇ……まぁ、今は上位。それも2位だけどね」

「チィッ!」

「本気で舌打ちしてるわね……」

 

 心の底からそう言ってる茶々に思わずエウリュアレが反応するのも、無理はなかった。

 

 まだレースは続くのだった。




 冷静に考えると、あの大虚け、茶々と新選組の貯蓄を奪って霊基変えたんだよネ……

 今回は美しさによって速度が上昇していくとか、つまりエウリュアレの独壇場じゃないのかと思った私は悪くないはず。

 そういえば、今回本題の予定だったメジェド様(ニトクリス)が一番最初でさらっと言われただけになってる……


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第四レースの応援、エウリュアレが輝く(全員男性特性とか、エウリュアレの独壇場じゃないですかヤダー)

「あいつら、皆男性特性なのよね……」

「正直、エウリュアレの魅了が効くとは思わなかった……」

「あんな見た目でもオリオンって事ね。全く、あんなに増やすとか何を考えているのよ」

 

 ぐったりした様子のエウリュアレとオオガミ。

 男性特効が突き刺さるため、今までよりもなお強く編成に押し込まれるエウリュアレ。そして、ここまでエウリュアレの連続戦闘のおかげでジャンクパーツは終わり、チタンプレートとマグホイールも、解放されてないフォウ君を除いて、モニュメントとピースとブーストアイテムだけだ。

 

「はぁ……とりあえず、私は矢を射続ければいいのよね?」

「うん。まぁ、そろそろ終わるし、のんびり行こうよ」

「そうねぇ……後、20回くらいかしら?」

「えっ……40回以上じゃない……?」

「……そろそろ終わるって、何かしらね……」

「まぁ、感覚的なそれだよ。うん」

「……まぁ、貴方がそう言うんならそうなんでしょうけど。はぁ、大変だわ」

「終わったら何か買うから、許してくださいな。女神さま」

「ん。分かったわ。言質取ったから、買いなさいよね」

「わざわざ逃げられないようにしなくても……」

「たまにのらりくらりと躱していくくせに、何を言ってるのよ」

「そんなこと無いと思うんだけどね……」

「自覚が無いのね。まぁいいわ」

 

 レースを見守りながら、エウリュアレはぼんやりと何を買ってもらおうか考える。

 対して、オオガミはどの範囲までならマシュの怒りを買わないかを考えつつ、どうにかもう少し効率よく周回できないだろうかと考える。

 そんな時だった。

 

「マスターよ。吾の出番はまだか?」

「んっ? あぁ、バラキー。ん~……出番と言われても、まだバラキーの出るほどの敵はいないと言いますか、まだ若干の性能不足があると言いますか、私の采配が下手と言いますか……まだ時間かかるね」

「そうか……仕方あるまい。(なれ)が吾に値するほどの者になるまで、もうしばらく待つとしよう」

「まぁ、スキルが全部MAXになるまでの辛抱だし、もう少し我慢なさいな」

「ふん。毎度暴れとるエウリュアレには分からぬよ。吾等は基本、見ている事しか出来ぬからな」

「……まぁ、確かに私は毎度色々な所に行ってるから飽きないだけで、逆に貴方達からしたら羨ましい事この上ないわけね……まぁ、こっちはこっちで苦労があるわけだけれども」

 

 オオガミの頭に自分の頭を乗せながら出番が来ないことを悩む茨木にと、自分の状況を再確認するエウリュアレ。確かに、戦闘をする代わりに、直でオオガミと共に特異点を回っているのだ。カルデアに置いて行かれているのと比べれば明らかに楽しいのは確実だった。

 

「うん、決めたわ。マスター。終わったらかき氷買いなさい。良いわね」

「え? もう食べたんじゃないの?」

「いいえ? 私は食べてないわよ?」

「め、珍しい……まぁいいけど、今から行く?」

「いいえ、最初の約束通り、終わったらよ。ってことで、早く終わらせるために今から行くわよ!」

「えぇっ!? 今から!? ちょ、えぇぇぇ……!?」

「あ、それと、個数は指定して無かったわよね。バラキー達の分も買うわよ」

「おっと。それは流石にマシュのお怒りが――――いや、マシュの分も買えばいいんだよね。完璧な作戦だ。うん。この先が怖いな」

 

 エウリュアレに引きずられていくオオガミを茨木は見送りつつ、ぼそりと呟く。

 

「吾……一応、屋台の料理は一通り食い尽くしたのだが……」




 まさかの全員男という、エウリュアレが大活躍するレースに喚起した私は悪くない(迫真

 チタンプレートとマグホイールも、残るは5200ほど……☆4フォウ君入れても、5600ならば、軽いものよ!(吐血

 そして、最近早く出番を寄越せと要求し続けるバラキーちゃん。楽しそうなので良しとしましょう。


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フケイフケイ……フケイナルゾ……(本人の前にやって良いの……?)

「ふっふっふ……フケイフケイ。フケイナルゾ~」

「射殺すわよ? マスター」

 

 ニトクリスの着ているメジェド布を被りながらフフフと笑うオオガミに弓矢を向けながらはっきりと言い切るエウリュアレ。

 

「……ごめんなさい、女神さま。自分だけ遊ぶのが悪かったんだよ。ってことで、エウリュアレの分」

「……え、着ないわよ?」

「まぁまぁ、そう言わずに。スカサハ師匠のルーン加工も合わさって、これを着てる方が涼しいという謎仕様なんだから」

「あぁ、そう言う……良いわね。涼しいならそれに越した事は無いわ」

「じゃ、エウリュアレもこれを被って」

「……被らないとダメなの?」

「被っても前が見えるから問題ないよ」

「そういう意味じゃないのだけど……まぁいいわ。被るわよ」

「ふっふっふ……仲間が増えたのです……次は誰を狙うか……」

「私は手伝わないわよ」

「えぇ~……そんなぁ~……」

 

 増えたメジェド様擬き。今、空前のメジェド様ブームを巻き起こそうとしているオオガミだったが、第一の仲間がエウリュアレなので、おそらく次の戦いも一人なのだろう。

 当然、それでもオオガミは挑むのだったが。

 

「マスターさんマスターさん。何をしているのかしら?」

「むむっ。その声はナーサリーだね? ナーサリーもメジェド様コスする? 涼しくなる優れものだよ」

「着るのに涼しくなるの……? 不思議ね。面白そうだから私も着るわ!!」

「じゃぁ、はい。ナーサリーの分」

「ふふふっ。茨木の所に行って見せびらかしましょ。きっと羨ましがるわ」

「いや、別に、バラキーが欲しいっていうのならあげるけども」

「そう? じゃあ、一緒に行きましょ」

「うん。っていうか、どこにいるのか知ってるの?」

「えぇ。今はきっとエミヤの所でご飯を買ってるわ!」

「あぁ……そういえば、我が家のバラキーちゃんはそう言う子だった……」

 

 我が家の可愛いポンコツちゃんは、腹ペコ系なので、とりあえず屋台を見てみるのが一番早いというのに、ナーサリーに指摘されて気付くのだった。

 そして、すたすたと走っていくメジェド様擬き×2を見送るエウリュアレだった。

 

「あの二人は楽しそうねぇ……」

「……ナニコレ」

(アタシ)も気になるんだけど……」

「……面倒なのがこっちに来たのだけど、どっちか帰って来ないかしら……」

 

 見送ったばかりだったエウリュアレは、見ている方向の真逆から聞こえる茶々とエリザベートの声に、これから起こるであろう面倒ごとを思い浮かべて行ってしまった二人が戻ってくることを切に願うのだった。




 なんか、こう、Twitterで見ちゃったから、思わず、やってしまったんです……反省しないけど後悔はしている……
 あと、スカサハルーンは今更ながら使い勝手が良く万能だと思いました。まる。


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高難易度マジヤバくね(結局いつも通りの勝ち方だったよ)

「ぐっはー!! 勝てるかあんなもん!!」

「まぁ、結局、いつもの高難易度攻略と同じよね。令呪3画と石一個。安定と言うか、成長していないというか」

「むぅ……今回はいけると思ったんだけどねぇ……」

 

 今回の高難易度5種を全て倒し、今回の戦いを振り返る。

 

「正直、A谷で令呪切ったのが悪いのよ。あそこで意地にならずに編成を変えればよかったじゃない」

「やっぱりそこか……確かに、あそこで意地にならないでエウリュアレを出せば勝ててたしね……」

「マシュと玉藻を出したのは分かるけど、どうして敵がオリオンとアルテミスだってわかってるのに私を出さなかったのよ」

「いやぁ……何となく意地になっちゃったからねぇ……」

「それに、どうして茨木を使おうと意地になったの。ヘラクレスを使いなさいよ」

「そこはほら、譲れない所があったんだよ」

「何今更そんなこと言ってるのよ。貴方、どれだけヘラクレスを使ってるかわかってるの? 私の次に絆レベルがMAXになりそうじゃない。だったら、もう少し使っていいじゃないの」

「いやいや。高難易度は茨木使うって決めてたから」

「……面倒ね、こいつ」

「酷い! ついにエウリュアレにこいつ呼びされたんだけど!!」

「くはは! いやなに、吾は楽しかったぞマスター」

「えぇ……暴れたりなくなかった?」

「む。それを言われると困るのだが……確かに暴れ足りぬが、それはそれ。吾は楽しめたからな。それなりにストレスは発散できたさ」

「そう? それならいいんだけども……」

 

 エウリュアレに怒られて傷心状態のオオガミ。だが、その肩を叩いて大笑いする茨木を見て、ある程度癒される。

 

「まぁ、バラキーが楽しめたのはよかったわ。けど、どうするの? 資材結局減ってるけど」

「そ、それは……聖晶片はあるし、何とかなるかなぁって」

「そう。ならいいのだけれど。私、流石にマシュに怒られるのは嫌よ?」

「その時怒られるのは俺だけじゃないかな……?」

「私も怒られたんだけど?」

「それはその、エウリュアレ様は基本一緒にいますですし、そりゃ一緒に怒られてるように思えるのも無理はないんじゃないかと」

「なるほどね……つまり、私は全力で貴方から逃げればいいって事ね?」

「えっ……それをされると、本当に俺だけが怒られると言いますか、一緒に生け贄になってくれる人が欲しいと言いますか……」

「最低じゃないの。本気で射殺すわよ?」

「くはは! だが、流石に吾も風紀委員組を相手にするにはまだ荷が重すぎるというか、今回一番強かったのはエルキドゥだったというか……流石にあのHPと耐久性能は吾も予想外だったというか……橋の高難易度とか、ほぼあやつの支援だったからな……吾はマルタしか倒してない……」

「そ、それは……ごめんなさい……」

「まぁ、分かればよい」

 

 とりあえず、道連れはいなくなるようだった。

 オオガミはとりあえず、マシュの怒りを必要以上に買わないように努力するのだった。




 アルテミスで一回蘇生したのは明らかにミスという……
 まぁ、勝てたから良いんじゃないかな!

 エルキドゥとイバラギンの耐久と攻撃力に驚きを隠せなかった今日の高難易度でした。まる。


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そう言えば、皆監獄に行くのよね……(一体何したんだろうか)

「ねぇ、よく考えたら監獄なのよね……」

「それね。監獄とか、何やらかしたんだろ」

「監獄のぅ……(われ)には関わりの無い物よな。奪えるものも少なかろう」

「そりゃ、奪う側のバラキーには関係ないだろうけども……」

「簡易的な檻なら作れるけど、放り込んであげようか?」

「……それは嫌じゃ。吾は自由が好きだからな。縛られるにしても、頭領としてが良い」

「そうだぞぅ。エウリュアレもバラキーも、渡さないよ」

「何言ってるのよ……」

「渡さぬと言われても、吾は(なれ)の者ではないからな……」

「えぇ……二人とも非情……」

「本気でやるつもりは無かったんだけどね。というか、どうして次のボーナスに僕がいるのか。謎で仕方ないよ」

 

 第二部の概要を読みつつ、ふざけながら話す四人。

 

「それで、結局ピースとモニュメントはどうするの?」

「ん~……あんまり必要性は無いからいいかな。二部の素材が集め終わって余裕があったらって感じで」

「そう。まぁ、貴方が良いならいいのよ。私の苦労も減るしね。ウフフフフフ。次はエルキドゥの番よ」

「あぁ……そうだね。次からは僕が入るからボーナスだけで編成できるわけだ。つまりは、イベント中は僕はずっと出てるのかな?」

「あ~……どうだろ……礼装に寄るんじゃないかなぁ……」

「……レア度差は非情よ……私だけ辛い目に合うわ……」

「のぅ。吾は入れてもらえんのか? 暴れたいのだが」

「ん~……バラキーはもう少しスキルのレベルを上げないと……せめて変化だけはMAXにしたいかな」

「むぅ……休憩時間が長すぎる……」

「まぁまぁ。QPと秘石が5個あれば、何とか出来るから。なんで、イベント明けて水曜日になるまで待って?」

「ボスがバーサーカーの所なら出るのではないか……?」

「それは、ほら……まずそこにたどり着くのが困難と言いますか……」

 

 とりあえず、ピースとモニュメントの回収はいったん諦めて、第二部のアイテムをメインで集めて行こうと考える。

 

「いやぁ……とりあえず、気が楽になったわ。これでしばらく屋台の料理が食べられるわ」

「じゃあ、吾も一緒にいるか。こやつと居ると、結構色々な旨いものが食えるからの」

「そう。じゃあ一緒に行きましょ。ナーサリーも誘いましょうかね」

「茶々も行くよ!!」

「「うわぁ!?」」

「……二人の声に驚いたわ。そんな声を突然上げるでないわ」

 

 突然現れた茶々に驚くオオガミとエウリュアレ。

 

「とりあえず、行きましょうか」

「うむ」

「いっぱい買っちゃうもんね!」

 

 そう言うと、三人は行ってしまう。

 残されたオオガミとエルキドゥは、それを見送り、とりあえず編成を考えるのだった。




 しかし、始まらない。もう16日も終わってしまいそうなのだが……一体いつ始まるんだろうか……

 そして、久しぶりのエウリュアレのお菓子食べまくり回が始まるかもしれない!


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デスジェイル・サマーエスケイプ~罪と絶望のメイヴ大監獄2017~
石の貯蔵……無くなったよ……(メイドさんが来て欲しかったんです!)


「先輩。石の貯蔵庫が空っぽなんですが、知ってますか?」

「えぇ、もちろん。全部溶かしたもの」

「……何してるんですか。もう召喚出来ないじゃないですか」

「まぁ……今回のイベントは縁が無かったって事で」

「あれだけ配られたのに、どうして使っちゃうんですか……」

「仕方ないでしょ。あったら使いたくなっちゃうもの」

 

 オオガミのその言葉にマシュは満面の笑みを浮かべるが、明らかにその笑みは笑っていなかった。

 

「先輩。しばらく貯蔵庫に入らないでくださいね」

「あっ。はい……すいません……もうしばらく大人しくしときます……」

「はい。そうしてください」

 

 マシュに言われたら流石に逆らえないオオガミ。正座をしてそう言う。

 

「それで、最近私は留守番なんですけど、皆さん大丈夫そうですか?」

「ん? そりゃもちろん。皆自由に暴れてるよ」

「暴れて……あの、本当に大丈夫なんですか?」

「うん。周りに被害は出てないから大丈夫だよ。まぁ、マシュには高難易度の時に頑張ってもらうけどね」

「で、ですよね。はい、頑張ります」

 

 高難易度マシュ無しは我がカルデアにおいて現状不可能なので、これからも難易度の高い所ではマシュが出撃する予定だったりする。

 

「ねぇ……ふと思ったんだけどさ……」

「どうしたんですか?」

「脱獄で、穴を掘ってるわけでしょ? で、見た感じずっと穴の中にいるように見えるんだけど、どうやって看守の目を誤魔化してるんだろう……」

「…………えっと……イシュタルさんが何とかしてくれてるんじゃないでしょうか?」

「なるほど……」

 

 苦し紛れの言い訳だが、どうやら納得してくれたようなので良しとする。

 

「そういえばイシュタルで思ったんだけど、あんなかわいい人形にイシュタルがなれるなら、つまりエウリュアレもあんなことが出来るんじゃないだろうか……!!」

「あの、そんなこと頼んだら射られるんじゃ……」

「矢が刺さったくらいで変化してくれるなら一向に構わないね!」

「なんでそんな目が本気なんですか…!」

「やりたいことは全力で、だよ!」

「エウリュアレさんを人形サイズに小さくするのがやりたいこととか、正直どうかと思うんですけど!」

「どうして言葉を悪くするのかな! 人形を愛でるだけでどうしてそんな罵倒されねばならぬのか!」

「仲間を人形に変えて愛でようとしてるからじゃないですか!?」

「そんなバカな!!」

 

 明らかに、エウリュアレにそんなことを願ったら死ぬまで射続けられるだろうが、オオガミはとりあえず挑戦だけはするつもりだったりする。

 

「さて……じゃあ、脱出の手伝いに戻ろうか。二部は案外楽にアイテムが集まりそうだし」

「はい。精一杯サポートしますよ。先輩」




 ふっふっふ。ちゃんと爆死しましたよ。えぇもちろん。きれいに爆死です。
 なんで、復刻を待とうかと思いました。これは、ダメだ。ダメージがでかすぎたんだ……

 とりあえず、ネロ様に癒されてきます。スキルのセリフの時に言う子供っぽい発言好きよ。皇帝がそれで良いんですかと一瞬思ったけど。


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再びの神性キラーランサー(真の英雄は目で殺すと言ってるけども、物理でやるのはどうかと思う)

「……ねぇ、どうしてあんな、私の天敵としか言いようのないのがいるのかしら」

「神性キラーでランサーで宝具封印持ち。これは辛いね」

「……あなたも同じようなモノでしょうが」

「宝具強化でバスター耐性ダウン付与とか、吾としても苦手なのだが……」

 

 そう話している彼女達の話題は、さらっと召喚されたカルナについてだった。

 ちなみに、オオガミはマシュに捕まりどこかへ連れて行かれた。おそらく、交換した後隠していた呼符を使用して召喚したというのがばれたのが原因だろう。

 

「まぁ、味方の間は心強いわよ。全体宝具だから周回も楽になるだろうしね」

「レベルが上がるまでは、しばらく僕の出番は続くだろうけどね」

(アタシ)の出番は永遠よね!!」

「そ、そうね。全体宝具ランサーがこれ以上増えなければ、大丈夫なんじゃないかしら……」

「そう言うフラグはどうかと思うんだけど!?」

「なんだかんだ言って、ランサー多いじゃない……どうせまだ増えるわよ……」

「アルトリアランサーとかが出ない限り大丈夫じゃないかな!!」

 

 自分の出番が無くなるんじゃないかと危惧するエリザベートに、突然現れてそういうオオガミ。

 

「ちょっと、どこから出てきたのよ。マシュは?」

「ちゃんとマシュに謝ってから普通にここまで歩いてきたんだけど?」

「……謎の気配遮断ね……」

「牛若丸直伝だしねっ! 中々苦労したのですよこれが。まぁ、これは悪戯程度にしか使えないものだけどね」

「それで、なんで(アタシ)の背後にいきなり立って驚かすのよ……」

「理由なんてないねっ! やりたかったからとしか言いようがないねっ!」

「ぐぬぬ……子イヌのくせにぃぃ!!」

「はぁ……なんでたまにあんなふざけるのかなぁ……」

「オオガミはそんなものじゃない。諦めましょ」

「わははは!! 面白い事を考えおるな! っていうか、吾もあれ欲しいのだが!」

 

 オオガミの頬を引っ張りながら怒るエリザベート。

 エウリュアレとエルキドゥはそれを見て呆れるが、茨木はそれを見て笑っていた。

 

「ふぅ……まぁ、カルナが来てくれたのはそれはそれでよかったわ。ただ、エルキドゥ側に行かれたら、私たちに勝ち目が無くなるのだけれど……」

「なんだい? 暴れるなら、今すぐにでも鎮圧するけど?」

「流石に、今この場で始めるとか無謀でしかないから止めておくわ」

「それならいいさ。ただ、本当にしたら本気で相手にするからね?」

「まぁ、覚悟しておくわよ」

 

 一体、何が起こるというのか。そもそも、何をやらかすつもりなのか。

 やらかす担当はエウリュアレではないので、エウリュアレも何をするのか気になっていたりするのだが、エルキドゥはエウリュアレも何か企んでいるものだと思っていたりする。

 

「オオガミ。いい加減にしないと、今度は別の意味でマシュが来るんじゃないかしら?」

「むぁ? ハッ! それもそうか! すまないエリちゃん! スタッフルームに戻るね!!」

「あっ! ちょ、待ちなさーい!!」

 

 走り去っていくオオガミを、全力で追いかけて行くエリザベート。

 それを見て、エウリュアレは苦笑いをするのだった。




 すり抜けカルナという恐怖。そこはせめて頼光さんでお願いしますよぉ……!!


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獄中でもいつも通りのバビロニア勢さんパネェ(これ、エルキドゥさん凄すぎじゃないですか?)

「ねぇ……エルキドゥに勝てる?」

「ハッハッハ。特殊独房に閉じ込められてるにも関わらず、監獄内全域を把握してたエルキドゥさんに勝てるかって? 無理だね!」

「威張る所じゃないでしょうがっ!」

 

 エウリュアレの疑問にドヤ顔で無理だと答えるオオガミに、思わず腹に殴りかかるエウリュアレ。

 オオガミはそれに直撃し、しかも鳩尾にしっかりと入るというクリティカルダメージによって崩れ落ちる。

 なお、それを見て茨木が大笑いしている模様。

 

「全く……まぁ、私も勝てるとは思わないんだけど、これだとノッブとBBが新しい武器を作っても意味ないんじゃないかしら」

「ん~……神代の兵器は性能が段違いって事だよね……うぅ、まだ痛い……」

「大地の恩恵とはまた、本当に面白い奴だのぅ……で、件の兵器は何処じゃ?」

「エルキドゥは独房に置いてきたよ! 神の本を読みたいって!!」

「だからって普通置いてくるかしら……」

「神の本……面白いのかしら?」

 

 ハッキリと置いてきたと言うオオガミにエウリュアレは頭を抱え、それとは別に、突然隣に現れて神の本を気にするナーサリー。

 

「ねぇ、最近、突然現れるのがブームになってるのかしら……」

「吾には分からぬが……エウリュアレもやってみたら良いのではないか?」

「そうね……今度試してみるわ」

「うむ。吾もしてみるか……」

「……あれ? 貴女はやってなかったかしら?」

「む? そうだったかのぅ?」

 

 もしやっていたとしても、きっとそんなに印象に残る様な出方をしてないのだろう。と二人は思うのだった。

 

「ふぅ。それにしても、ゴルゴーンにエルキドゥが厳重封印されてるなんてねぇ。明らかにバビロニア勢が多い気がするわ。っていうか、よくイシュタルの分体について言及しなかったわね……彼なら気付いててもおかしくないでしょうに」

「あはは……見逃してくれたんじゃないかな?」

「分体だと感じにくいのかもしれないわね。まぁ、喧嘩にならなくてよかったわ。もうしばらくは楽しく見守っていられそうね」

「脱獄レースも後半戦。ワクワクするね!」

「うむ。吾も楽しみだ。というか、吾もやりたいのだが」

「ん~……バラキーは後で遊ぶ場所があるから待ってて」

「むぅ……仕方ない。もう少し待とうではないか」

「石が足りないけど、まぁ何とかなるよ」

「……不安になる様な事を言うでないわ。もっと自信を持って言うが良い」

「えぇ……絶対の自信を持って言うのは、全スキルがMAXになってからじゃないかな」

「ぐぬぬ……どうしてそう弱気なのだ!! えぇい、その性根、吾が叩きなおしてやるわ!!」

「うわぁ!? バラキーが怒ったぁ!?」

 

 炎を纏い、オオガミを追いかける茨木をみて、エウリュアレは頭を抱え、ナーサリーはそんなものが見えてないかのようにマシュを探しに行ってしまった。おそらく、神の本を見て見たいので、頼れるマシュを探しに行ったのだろう。

 

「はぁ……どうしてこう、騒がしいのかしらね。楽しそうだからいいのだけれど」




 エルキドゥさん、強すぎじゃないです? 感知能力強すぎるんですが……こんなの、勝ち目無いよぅ……

 それと、最近バラキーに若干の威厳が見え隠れしてきたような……気のせい……?


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エウリュアレ、レベルマスキルマ絆マ達成!!(え? プレゼント? か、考えてないです……)

「うわっほぉい!! やったぜ女神さま!! ついに念願のオールMAXだぁ!!」

「はいはい、よかったわね。まぁ、私の事なんだけどね……」

「羨ましい限りだ。吾は未だに変わらんと言うのに……」

「バーサーカーはリスク高すぎるってのもあるんだけどね……まぁ、次はバラキーメインだよ」

「うむ。それなら許すぞ。期待しておるからな、マスターよ」

 

 楽しそうに微笑む茨木に、思わず引きつった笑みを浮かべてしまうオオガミ。だが、一応本当に次は茨木を育成するつもりなので、嘘はついていない。

 

「そうだ。何かくれたりしないの? ここまで成長したのに」

「えぇ……いや、まぁ、別に構わないんだけどね? 何を上げようか……結構理由なくエウリュアレに渡してる気がするんだけど。何か欲しいのある?」

「ん~……そうねぇ……私としては(ステンノ)が来てくれるだけでも嬉しいのだけど、貴方に言っても無理な話よね」

「うぅっ……ひどいこと言われた気がする……」

「まぁ、それはもう諦めるとしても、私が欲しいもの……うぅん……特には思いつかないわ」

「そう? じゃあ、思いついた時に渡すってのはどうでしょうか。女神さま」

「なんでちょっと言葉遣いが変なのかしら。別に私はそれでも構わないけど……忘れそうよね、貴方」

「うぅむ、安定の信用の無さだぞぅ。どこぞの王の話をしまくる花の魔術師並みの信用度だね!!」

「先輩。それはつまり、信用度がド底辺って事になりますよ?」

「マシュ!? 突然現れて全力で精神攻撃してくるってどうかと思うよ!?」

「良いわよマシュ。どんどん言っちゃいなさい。もっとバッサリ行きましょう。こう、精神にざっくり突き刺さる感じのを」

「信じてた女神さまがやっぱり信用を裏切らず僕を裏切ってきた!!」

「裏切るのを信じられる神とは、それはどうなんじゃろうなぁ……」

 

 大体、日頃の行いのせいである。実際、日頃の行いが十割なのだが。

 しかし、何を送るかオオガミは考えるが、特にいい案が思い浮かぶわけでもない。

 

「ん~……アクセサリーとかの方が良いのかな。難しいなぁ……」

「案外、お菓子とかの方が良かったりするかもしれぬぞ?」

「うぅむ……可能性が無いとは言い切れないからなぁ……しかし、お菓子も種類があるわけですよ。悩ましい所だよ。どうしようかなぁ……」

「あの、先輩。エウリュアレさんへのプレゼントを考えるのも良いとは思うんですけど、それよりも、皆さんの脱獄の手伝いをした方が良いんじゃないでしょうか……」

「むぅ……そうだね。脱獄の手伝いをしながらついでにアイデアをもらおう」

「脱獄中にプレゼントのアイデアを求められるとか、普通考えないわよね……ご愁傷さま」

「一応、原因の一つは(なれ)だぞ?」

「まぁ、そうなんだけどね? それはそれよ」

 

 皆は必死で脱獄しているにも関わらず、そんなことを気に留めず普通に聞こうとするオオガミに、エウリュアレはため息を吐くのだった。




 やったぜ!! 次はバラキーだなっ!!

 しかし、エウリュアレへのプレゼントが全く思いつかないという。何をあげましょうか……正直プレゼント募集枠でも作ろうかと半ば本気で考えていたり。ただ、別にそこまで大きくする必要もない気がする……
 はてさて、何を贈ろうか……


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高難易度は安定ね(たぶん、ずっと、こんな感じ)

「フフフ、久しぶりの大暴れね。いやぁ、楽しかったわ」

「私もいっぱい注射器が刺せましたよ。こう、ドスッと!」

「ぐぬぬ……吾は暴れ足りぬ……というか、やはり吾の出番無いではないかぁ!!」

「ぎゃあぁぁぁ!! ごめんなさいぃぃぃ!!!」

 

 すっきりとした表情のエウリュアレとBB。しかし、それとは打って変わって、茨木は怒りを露わにしながらオオガミに襲い掛かっていた。

 

「っていうか、そもそもバラキーが出るって事は完全にピンチって事だからね!?」

「吾には関係ない! 吾が出ないという時点でそれは万死に値する!!」

「だぁからぁ!! そのためにはバラキーのスキルレベルを全部MAXにしないとだってば!!」

「ならば早うせい!!」

「んな理不尽な!? 待ってやるよ宣言はどこに!?」

「そんなもの、忘れた!!」

「フォウ!! やっぱりね!!」

 

 そろそろ腕でも飛んで来そうな勢い。しかし、それでも構わない様に魔術礼装はしっかりと戦闘服。完全にガンドを叩き込むつもり全開だった。

 

「なんだかんだ言って、結局今回はエルキドゥが結構頑張っていたわよね」

「そうですねぇ。高難易度御用達の私を差し置いて、中々の活躍でした」

「……玉藻。うちではあまり常識にとらわれないの。ランサー相手にアーチャーを使うのがうちのマスターよ」

「ひ、酷過ぎじゃありません? そんなでしたっけ?」

「えぇ。事実、私はランサーに突撃させられたしね」

「はぁ……大変でしたね。まぁ、私もライダー相手にだろうと出撃するんですけどね。たまに一撃でやられたりするんですけども」

「貴女も大変そうね。お互い、頑張りましょ」

「えぇ。と言っても、私は基本高難易度系でしか出番はないんですが」

「……切り札扱いね。私はほぼ常時入れられてる切り札――――半分バーサーカーと同じような便利さで使われてる気がするのだけど」

「さ、流石にそんなことは無いんじゃないですかね?」

「どうかしらね?」

 

 やれやれ。と言いたそうなエウリュアレの態度に、苦笑いで返す玉藻。

 

「流石に、バーサーカーレベルの性能だとは思ってないけどね?」

「……血を流しながら来るのはどうかと思うわよ。とりあえず、マシュに治療してもらってきなさいな……」

「あっ。センパイ! 私がやりますよ!!」

「ゲッ、BB……!! BBの治療とか、めっちゃ不安なんだけど、大丈夫?」

「失敬な!! ちゃんと広告見てました!? 私名義のクリニックがあったじゃないですか!! だから、大丈夫ですよ!!」

「藪医者感パネェ!! 一体何をする気だBB!!」

「嫌ですねえ。ちょっと注射を――――」

「圧倒的藪医者!! とりあえず注射とか、酷過ぎじゃありませんかね!?」

「いやいや。ほら、そこはBBちゃん特製配合の究極回復剤ですよ。任せてくださいって」

「全然信用ならないんだけど!? ちょっ、誰か助けて!?」

「ふっふっふ。私の筋力でも、センパイを抑えるくらいどうってことないんですよ」

「ぐっ、くそおぉぉぉ!!!」

「BBさん? そこまでですよ?」

「げぇっ、マシュさんじゃないですか……流石に敵に回したくないですね……ここはセンパイの盗撮写真を振りまいて逃走に限ります!!」

「うんっ! それでどうして僕は連れ去られてるのかな!? それと、何時の間に盗撮したんだこの野郎!!」

「私は野郎じゃないですぅ!! 訂正してください!!」

「チクショウ、なんて呼べってんだぁ!!」

「あぁっ!! 待ってください!!」

「……良くもまぁ、こんな写真を撮るわねぇ……」

「まぁ、これは私がいただいておきますね」

「……吾もいらぬな。好きにするとよい」

「なんでそう、上から目線なのかわかりませんが、まぁ興味が無いというのならありがたくいただいておきますね」

 

 逃げたBBと捕まったオオガミを追いかけて行くマシュ。

 残された三人のうち、玉藻は写真を拾い、エウリュアレと茨木は屋台へと向かうのだった。




 エルキドゥの神性スタン強かった……でも、グガランナはもう二度と御免です。味方で来い。


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日常
結局、ノッブの水着は無い模様(ネロめ!! 許さん!!)


「ぐぬぬ……儂の水着が無いんじゃが!?」

「ふははは!! 余の勝ちだな!! ノッブと違って、余は水着だからな!!」

「ぬうぅぅうぁぁぁあ!!!」

「うおぉ!? やるか!? やるのかノッブ!! ならば余は手加減せぬぞぉ!?」

 

 高笑いしていたネロに跳びかかるノッブ。それを華麗に避けつつ戦闘体勢に移行するネロ。これまではセイバーの為、ノッブと相性が悪かったが、今回はキャスター。クラス相性による不利は無い。

 共に全体宝具の為、おそらく戦闘は五分五分。両者ともに負ける可能性は大いにあった。

 とはいえ、暴れる事を許容するほど、カルデアは甘くない。

 

「いい加減、君たちも学習したらどうだい?」

「……エルキドゥ……」

「なんだか、久しぶりじゃな……こんなやり取り……」

「……それで、まだやるかい?」

「……撤退!!」

「トレーニングルームまで一直線じゃ!!」

 

 即座に逃げ出す二人。そして、その後ろをエルキドゥは追いかけて行くのだった。

 そんな三人を見送ったエウリュアレは、目の前の女神に視線を移す。

 

「アイツ、いつもあんな感じなの?」

「えぇ。大抵見張ってるわ」

「そう……だから今朝も地味な嫌がらせを受けたのね……」

「……何されたのよ」

「突然扉が不調になったり、ベッドが地味な坂になってたり、微妙な段差があったり。というか、途中で面倒になったのか、直接的に鎖を叩き付けに来たわよ」

「何それ怖いんだけど。特に最後のとか、良く逃げられたわね……」

「えぇ。偶然パッションリップがいてくれたから助かったわ。ありがとね」

「いえいえ。それほどでもないですよ」

 

 イシュタルの隣に座っているリップ。共に休憩室に入って来たのはそう言うわけか。と思いながら、バタークッキーを口の中に放り込む。

 

「そういえば、昨日連れ去られたオオガミは、あの後どうなったの?」

「え? 何かあったの?」

「バラキーの攻撃がうまい具合に刺さって、大怪我っぽい軽傷でBBに連行されたわ」

「えぇっ!? 母さんに連れて行かれたんですか!? それ、最悪死んでるんじゃ……」

「この信頼の無さ。何となく、イシュタルと似てる気がするわね……」

「ちょ、ちょっとぉ!! それだと、私がまるで信頼が無いみたいじゃない!!」

「えぇ。ついでに信用も無いわ」

「バッサリね!?」

「イシュタルさん……何をしたんですか?」

「あぁ、リップはバビロニアのやらかしも、今回の事件も知らないのよね。じゃあ、説明して上げましょうか」

「ちょっとちょっと!! どうせあることない事吹き込んで、私を悪者にしようとしてるんでしょう!? そうはいかないわ。これ以上私としては悪評が建ちまくるのは問題なんだから!! こう、神格とかプライド的な意味で!!」

「えぇ~? 面白くないわね……」

「面白いで悪評を広められてたまりますか!!」

 

 エウリュアレに対してイシュタルが怒るが、その反応すら楽しんでいるように見えたリップは、苦笑いを浮かべるのだった。




 今更ながら、良くもまぁ同じ部屋にいて、あの二人を攻撃するついでに襲われなかったものだと思った私ですよ。

 しかし、まぁ、今回こそはアルトリアが来てくれるかと思ったんですが、悲しい事に今回もアルトリアは来てくれないようです。オカンが来てくれたから来てくれると思ったんですけどね……残念です。


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これは……戦争の予感……(リアルアタックは禁止の方向で行こう)

「これが! 余の! 全力である!!」

「甘い、甘いわネロ!! 私に勝てると、思わないことね!!」

「ふっ。その程度、読めている!!」

「なっ――――そこでカウンター!?」

「ふはははは!! 中々完璧なタイミングであったが、余の方が一枚上手のようだったな!!」

「超必殺をカウンターで受けて飛ばすとか、何よそれぇ!!」

 

 吹き飛ばされ、無念の逆転K.O負けを喫したイシュタル。

 もちろん、実際に飛んでいるわけではなく、あくまでもゲームの中のキャラクターだ。

 そして、勝ち誇るのはネロ。イシュタルの繰り出した、ほぼ隙の無い超必殺までのコンボに、刹那のタイミングでカウンターコマンドを打ち込み投げ飛ばす事によって、何とか勝利した。

 

「ふっふっふ。これでなんとか、余の面目は保たれたな」

「くぅぅっ……!! 悔しいわ……!!」

「キャスターになってから調子がいいし、これはノッブへの下剋上……果たせるのではなかろうか……?」

「むっ……良いであろう。その挑戦、受けようではないか」

 

 そう言って、ノッブはイシュタルと交代し、二人はキャラクターを選択し始める。

 

「……何かしら、不穏な気配がしてきたわ。まぁ、面白そうだからもう少し見ているのだけれど」

「もう少し前が良い……ここだと見辛いのだが……」

「そうねぇ……あ。ヘラクレスがいるじゃない。お願いできないかしら」

「……ヘラクレスって、そんな風に使っていいんだっけ……? というか、無理しなくてもBBの部屋から中継用にテレビ奪ってくるよ……?」

 

 すでに行ってしまったエウリュアレを見送りつつ、オオガミが呟く。

 そして、その言葉を聞きつけたのか、背後から声をかけられる。

 

「ちょっとセンパイ。今凄いセリフが聞こえたんですが。私の部屋のテレビを奪ってくるってなんですか。というか、設定を誰がするんですか」

「え? そりゃ、BBと俺だけど……」

「さりげなく巻き込まれてるんですけど!? いえ、確かに私も欲しいとは思ってましたけど、どうやって持って行くんです?」

「そりゃ、エルキドゥに頼んで」

「エルキドゥさん酷使しすぎなんじゃ……そのうち反逆してきません? いやですよ? センパイのせいで私まで殺されるとか」

「いや……流石にそこまで無茶な事はさせてないし、見回りとかは半分趣味でやってるのかと……というか、最近は俺の命も危うくなってきてるよ?」

「……なんですか、その本末転倒な状況。面白いので許します。って事で、中継テレビはノッブの部屋から取って来ましょう。大丈夫です。ほぼ同じようなモノなので、設定はそっちでもできます。ノッブが大改造してない限り」

「一気に不安になったよ! まぁ、取って来るけども!」

「はい。頑張って行ってらっしゃ~い!」

「いや、待って。そこまで俺は機械に詳しいわけでもないから、出来れば一緒についてきてほしいんだけど」

「えぇ……エルキドゥさんもいるじゃないですか……嫌ですよ。襲われたらたまりませんし」

「そこはほら、まだ令呪あるから何とかなるって」

「そうですか? なら、行きましょう」

 

 何とかBBを説得し、共に部屋を出て行く二人。

 

「やはり、今の余に敵は無し!!」

「それはどうかのぅ?」

「えぇい意味深な事を! これで、どうだぁ!」

「残念。これで(しま)いじゃ」

「なぁっ!?」

「ま、リーチの差じゃな。是非も無いよネ!」

 

 二本先取。若干危ういところはあったものの、まだノッブの方が強いようだった。

 

「ぐぬぬ……もう一戦!! リベンジ!!」

「えぇ~? 儂、今ので凄い精神削ったんじゃけど……」

「む、むぅ……それなら仕方あるまい。全力のノッブでなければ意味がないからな。なら、ノッブが休憩している間、余は練習しているぞ!」

「うむ。頑張れネロよ!」

 

 そう言って、ノッブは席を立ち、自然な様子で茨木が座る。

 

「ふむ……吾でも……出来るな。うむ。こんとろーらーとやらも壊れぬし、問題なかろう。相手を頼んでもよいか?」

「余か? うむ、任せよ。だが、容赦せぬぞ!!」

「あぁ、それでよい」

 

 そう言って、二人はキャラクターを選択し始めた。

 そして、その隣では、ようやくテレビを持ってきたオオガミ達が、ノッブを引き込み中継するための作業をしていたのだった。




 超必殺をカウンター! とか、やられると心折られる奴。

 しかし、現状ノッブは我がカルデア内最強の格ゲーマー(エルキドゥは参加していない模様)。果たして彼女を破る者はいるのか……!!(フラグ感


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メジェド様の化身……?(布を剥がして確認しよう)

「ふむ……いい加減、その布、剥がしたいんじゃけど」

「ヤメルノデス……ヤメルノデス……」

「えいっ、えいっ」

「ヤ、ヤメ……ヤメルノデス……!!」

「メジェド様の化身とか言ってるけど、無視で行こう」

「フケイ…!! フケイナルゾ……!! フケイ、ダメ、ゼッタイ……!!」

 

 容赦のない三方向からの攻撃。メジェド様の化身(仮称)は、めくられそうになる布を必死で抑えるが、かなり筋力値的に不利なのか、徐々に持ちあがってきている感じがする。

 

「クックック……堪忍するが良い……」

「ウフフフフフ。諦めてやられなさい……」

「……まぁ、霊基再臨すればいいだけなんだけどね」

「ソウデス……!! ハヤク、霊基再臨ヲ……!!」

「問題は、種火無いくらいだよね」

「ダメじゃないですか!!」

「普通に喋るではないか!!」

「最初からそうしなさいよ!!」

「ハッ! い、イエ。ワタシハメジェドサマノケシン。コレデ、タダシイノデス」

「何言ってるのこの子。なんかもう、全体的にずれてるわよ」

 

 もう面倒になったのか、布を剥がすのは止めたらしい。

 

「……あ。そういえば、まだ期間限定の種火があそこにあるじゃない。ダ・ヴィンチちゃん工房に」

「あ~……そういえばあったねぇ。じゃあ、取って来るよ」

「エッ」

「儂も運ぶのを手伝うぞ」

「お願いするよ」

「エッ」

「って事で、待ってなさいね」

「エッ」

 

 自然と、逃げられない構図。というか、明らかに逃がすつもりは無いようだった。意地でもその布の下を見る気満々である。

 

「貴女も、面倒なのに絡まれたわねぇ」

「……アナタモソノメンドウナヤツカト」

「……シバくわよ?」

「ソレハ、オコトワリデス」

「その面倒な布、取り払いましょうか」

「……タタキツブシテクレマショウ」

「二人とも、暴れるのはいいけど、エルキドゥがすぐ来るわよ?」

「ゲッ、あいつが来るのは流石に困るわ。あの神性キラー、鬱陶しい事この上ないもの」

「ワタシモ、イヤデス」

「じゃ、おとなしくしてなさい。何時も問題起こしてるからこそ、アレがどのタイミングで来るのか分かってるしね」

「私を狙うよりも、貴方達を狙うべきじゃないかしら……」

「貴女が来るまで散々狙われてたというか、監視されてたわよ」

「既にされてたのね……」

 

 一体、どこから見ているのか分からないが、とりあえず暴れようとすると大抵その場に現れたりする。ただ、たまに来ない時があったりするので、そのタイミングは暴れるだけ暴れ、あの地にバレて叩きのめされるまでがワンセットだ。

 

「たっだいま~!」

「この種火で、その布、剥がしてくれようぞ!」

「じゃあ、第二回戦ね。ちなみに、これはあくまでも強化しようとしてるだけだからエルキドゥは来ないわ。観念しなさい」

「ふ、フケイ、ダメ、ゼッタイ……!! ソノ、ブキミナテノウゴキヲ、ヤメルノデス!!」

「お断りっ!!」

「取り押さえるのじゃ!!」

「にげられるとは思わないことね!!」

 

 ノッブとエウリュアレに取り押さえられ、メジェド様の化身は逃げられなくなる。

 

「とりあえず、第一再臨からだよ!」

「ソ、ソンナ……目が怖いのですけどぉ!!」

 

 その後、なんだかんだで第二再臨までさせられたのだとか。




 期間限定種火を交換してないのと、メジェド様の化身を成長させたい欲が見事に噛み合わさり、今回の事件が起こるのだった……
 しかし、この三人は明らかに問題児……まぁ、今更なんですけどね。暴走が留まるところを知らないようで……


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劇場女と冷血メイド(それよりも、なんか頼光増えてないか!?)

(なれ)、どうして頼光を増やした!!」

「狙ってないからね!? 偶然だからね!?」

「マスター!! なぜ冷血メイドがおるのだ!? 余はあやつの事が苦手なのだが……!!」

「あ、いや、そっちは狙い通りなんだけど……というか、ネロは同じチームだったじゃん……」

「それはソレ。あくまでも利害が一致していたからチームを組んだまでの事。レースが終わってしまえば別である」

「む、むぅ……む、難しいんだね……」

 

 諸々の事情で手に入った石を、マシュに隠れて全て投下した結果、来てくれた二人の新英霊。

 会話から分かる通り、来てくれたのは頼光とアルトリアオルタだった。

 

「ここにいたのかご主人様。サボっている場合ではないぞ。早くコノートコインを稼がねば」

「おっと、見つかってしまった……」

「ふむ。余の前でマスターを奪おうとは、中々舐めた真似をしてくれるな、冷血メイドよ」

「む? 誰かと思えば、劇場女ではないか。何か用でもあるのか?」

「あるに決まってるであろう!! というか、そもそもなぜお主がいるのだ!!」

「? 召喚されたからだろう? というか、貴様は何をしているのだ。マスターがここにいては、今回のアイテムを全て取り切れないでだろう」

「む。それは困る……困るが……うむ、そうだな。とりあえずはアイテムを全部取ってからだな。行くぞマスター」

「あれっ、裏切られた感あるんだけどなんだろコレ。ネロなら何かと抵抗してくれると思ったらまさかアッサリ寝返るとは思わなかったんだけど」

「ちょ、ちょっと待て。吾を置いて行くな。さすがにここで置いて行かれると頼光に見つかった時困るのだが!!」

「なに、それならばついて来ればいいだろう」

「ハッ! なら、そうさせてもらおう。見つからなければいいのだ……」

「まぁ、うん……むしろエウリュアレの所にいた方が良いと思うけどね……?」

「……まさか、編成に入れているのか……!?」

「そのまさかなんだよね……」

「は、嵌めおったな……吾を嵌めおったな汝ら!! も、もうよい……吾はエウリュアレの所に行くからな!!」

 

 茨木はそう言うと、走ってエウリュアレを探しに行ってしまう。たぶん、今の時間なら食堂でエミヤにデザートを要求しに行っているはずなので、おそらくそこに向かったのだろう。

 

「さて、行くぞマスター。この冷血メイドに言われていくのは些か不満ではあるが、すぐに終わらせようではないか」

「ふん。私がいるのだ。安心して突き進むぞ、ご主人様」

「あっはっはぁ……これ、大丈夫かなぁ……」

 

 不安になるも、二人に引きずられていくオオガミ。はたして彼は無事に帰って来れるのだろうか……




 やったー! 出たー!! でも種火昨日全部使ったわ!! 残ってるのはメルト用だわ!!
 と心の底から叫びそうになった私です。
 種火ないよ。成長させられないどうしよう……


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特訓……だと……?(どうしてこんなことに)

「ご主人様。今から走り込みだ。行くぞ」

「おぉっと! 恐ろしい宣言だ!! 助けて怠惰と暴虐の魔王ノッブ!」

「おぅマスター。お主の儂のイメージがよく分かった。諦めて儂と共に海岸じゃ。砂場の走り難さを教えてやろう」

「まさかの裏切られ!! 俺死んじゃう!!」

 

 冷血メイド迫真の強制特訓。助けを求めたノッブは、盛大に地雷を踏み抜き敵に回るという惨状。

 

「して、どこに行くか。ここはオケアノスで軽く行くとするか」

「そうだな。ついでにワイバーンでも連れてくるか」

「危なくなったら儂らが撃ち落せばいいからな」

「やばい……目が本気だ……」

「……最近暴れたがってる茨木でも連れて行くか……」

「安心しろ。当然、終わったらエミヤのデザートがついてくる。さぁ、早く行くぞ」

「……あれ、エウリュアレと同じ扱いされてる?」

「殺すわよ。というか、どこ行くのよ」

 

 何時からそこにいたのか、マスターを睨みつけつつノッブにどこへ行くかを問うエウリュアレがいた。

 

「オケアノスじゃ。マスターが儂の事を舐め腐っとるようじゃし、ちょっとしごいてやろうかと」

「マスターは少し弱い気がするからな。鍛えないと万が一の時があるからな」

「そう……私も行こうかしら。手に入れた水着、着てみたいし……」

「良し行こうそれ行こうこれはもう行くしかないよ。レッツゴーオケアノス!!」

「なんじゃコイツ。思いっきり手のひらひっくり返しとるんじゃけど」

「はっきり言って引くわ。一体私の水着に何を期待してるのよ……」

「まぁ、やる気が出たなら問題ない。そら行くぞ」

 

 メイドオルタに嬉々としてついて行くオオガミ。

 その後ろで、苦笑いをしているノッブと水着をどこにしまったかを思い出そうとしているエウリュアレ。

 

「それで、どこの島に行こうか」

「ワイバーンが必須じゃし、翼竜の島でいいじゃろ」

「えっ、ワイバーン……? ライダーじゃない。アサシンいないわよ?」

「……スカサハ……?」

「……これはもう絶望的な予感。スカサハ師匠まで来るとか、エウリュアレの水着を見てる暇ないんじゃ……カメラ撮ってこよ」

「……早めに準備せい」

 

 意地でもエウリュアレの水着を見たいのか、最悪の可能性も考慮して部屋からカメラを取って来ようとするオオガミ。それを止めることなく、早くしろと急かすノッブ。一応、メイドオルタも止めはしなかった。

 

「なんか、面倒になって来たわ……というか、若干身の危険を感じてきたんだけど。まぁ、水着は取って来るけどね。私も準備してくるわ」

「……儂だけ水着無いんじゃけど。がっつり長袖のコートという、完全冬装備なんじゃけど。熱さで殺されるんじゃけど」

「アイスを食えばいいだろう」

「ハッ! それは確かに! って、アイス持ってったら溶けるじゃろ……」

 

 はぁ、とため息を吐き、とりあえず何かひんやりしそうなものを探しに行くのだった。




 メイドオルタがなんだかんだ特訓させようとして来るからいっそのことやってしまえと。
 ワイバーンに追いかけまわされるとか、完全に地獄の様な……


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なんでそんなにワイバーン連れてくるかな(なんでそれで私も追われてるのかしら)

「あ~……遭難したんじゃ~……」

「もうね、馬鹿かと。アホかと。どうして海賊組を一人も連れて来なかったのかと」

「そもそも、カルデアと通信が出来ない状況って何なのよ。意味分からないんだけど」

「いやぁ……おそらく、BBが大暴れしているのかと。珍しく前線行けたから、舞い上がっちゃったんだと思うよ……?」

「な、なんて迷惑な……吾は巻き込まれただけなのに、しばらくワイバーンしか食べられないとか、嫌だぞ!?」

「「自分からついてきたくせに何を」」

「鬼! 悪魔! 頼光!! 吾はもう知らんからな!!」

 

 そう吐き捨てて去っていく茨木。この孤島で別れるとは、中々の勇者である。

 そもそも、ここへ来た当初の目的である特訓は、この島にレイシフトしてきた時にしばらくやり、ふとカルデアと通信が取れないという事に気付いてから中止した。

 

「というか、主犯のメイドはどこに行ったのよ」

「スカサハ師匠と見回ってくるって言って――――行って、い……に、逃げろおおぉぉぉぉ!!」

「えっ!? いきなりどうし――――な、何よアレ!! あんな大群をどうしろっていうのよおぉぉ!!」

「よし。儂はこんな時のために用意しておった穴にでも逃げ込むか」

 

 全力で走り出すオオガミとエウリュアレ。ノッブはいつの間に掘っていたのか、穴の中に逃げ込む。

 走りながら振り向いてみると、バイクに乗って逃げているメイド王と、走って逃げつつ一体ずつ撃墜していくスカサハ。そして、その脇に抱えられているのは目を回している茨木は、おそらくあの群れに遭遇した時に運悪く袋叩きにされたのだろうと想像できる。

 

「なんで私が追われなくちゃいけないのよ!! こういうのは私の役目じゃないでしょ!!」

「女神さまだし、追われるのは仕方ないんじゃないかな!! オケアノスでひたすら追いかけられてたでしょ! 黒ひげに!!」

「ぶっ飛ばすわよ!? いえ、魅了してワイバーンの真っただ中に突撃させるわよ!?」

「ごめんなさい!!」

 

 目が本気だったので、全力で謝りつつどうやってこの場を突破するかを考える。

 と、その隣に何時の間に追いついたのか、メイド王が隣を並走し、

 

「マスター、もっとしっかり走れ。このままだとワイバーンに食われるぞ」

「助けてくれるわけではないのね!?」

「私は助けてくれてもいいんじゃない!? 完全に巻き込まれただけよ!?」

「ふむ……そうだな。貴様だけは助けてやろう。ただ、そうすると私の後ろに乗って永遠矢を撃ち続ける事になるが、良いか?」

「なんでこう、このカルデアは女神に優しくないのかしらね!?」

「神様キラーがうちのカルデアの風紀委員長だからじゃないかな!!」

「全く、面倒ね!! 走るよりもいいからそっちに行くけどね!!」

「あ、ずるい!! というか、ノッブはどうしたのさ!!」

「あいつなら、今頃ワイバーンに集られて悲鳴を上げながら銃を連射してるはずだ」

「よぅし!! そのまま食われてしまえ!!」

「ほう? 他人の事を考える余裕があるか。なら、もう少し近づけても問題なさそうだな?」

「師匠!? それは困るんですが!?」

「いやなに、さすがの私でも、片手をふさがれてしまうとあの群衆相手は少し辛いわけだ。という事で、預けに来たのだが……余裕があるみたいだからな、頼んだぞマスター」

「え、えぇぇ!? ちょ、本当に任せて行く!? あ、師匠って、もういないし!?」

 

 ようやくバイクの後部に乗れたエウリュアレと、スカサハから茨木を強制的に預からされたオオガミ。

 後方に迫っているワイバーンの羽音に冷や汗を流すも、正直後ろを振り返る暇もないオオガミは、茨木を抱えての全力疾走。

 エウリュアレも必死で応戦するが、ほとんど意味があるのか分からない。

 すると、

 

「あ、繋がりました!! 先輩、聞こえますか!?」

「き、聞こえるよマシュ!! 出来ればすぐにでも戻りたいんだけど!!」

「な、何かあった――――ワイバーンがたくさん!? どうしてそんなことに!?」

「知らないよ!! スカサハ師匠とメイド王がなんか連れてきたんだから!!」

「えぇ!?」

「なに、マスターを鍛えるためには必要だろう? これくらいすれば全力で走ってくれるだろうさ」

「そりゃ死にたくないから全力で走るけどさ!!」

「で、出来るだけ早くレイシフトを――――あれ、信長さんは?」

「……あっ!! 穴に入って放置したままだ!! か、回収してこないと!!」

「あのバカ、一人だけ隠れてやり過ごそうとするから!! なんて面倒なことをしてくれるのかしら!!」

 

 そう思っていると、見覚えのある様な道――――というか、見覚えのある砂浜に出た。そして、視界の端に写るワイバーンの群れ。

 

「良し! ラストスパート! 取り合えず後方は師匠が守ってくれると信じて、あのワイバーン達を一掃すれば帰れる!! 行くぞおらぁ!!」

「任せろ。一掃する」

「仕方ないわね……ノッブめ、後で後悔させてあげるわ」

 

 そう言い、三人はワイバーンの群れに襲い掛かるのだった。

 

 その後、一時間も立たないうちにレイシフトして逃げ切れたのだった。




 悲鳴を上げながら島の外周を一周するマスター。なんだこの体力。さすが世界を救ったマスターは一味違う……(違う、そうじゃない)
 そして、バラキーは安定のポンコツ。いや、流石にここまでひどくはないと思うんですけど……これは囲まれたのが敗因ですね。


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デザートを食べたかった(エミヤが作り終わるまで俺の要れたコーヒーでも飲んでいるがいい)

「エミヤ~!! メイド王による地獄の訓練を切り抜けた褒美をくださいな!!」

「少しの間見ないと思ったら……一体何をしてきたんだ」

「ワイバーンの群れに襲われて死ぬ気で逃走してたりしてたかな!」

「……首謀者を聞いてもいいかい?」

「ノーコメントで。エルキドゥに教えると容赦なく叩き潰しに行きそうだし」

「そうか……まぁ、それは僕が自力で見つけ出すとしようか」

「おぉぅ……そろそろエルキドゥのストッパーが欲しいな。王様来てくれないかな……」

 

 オオガミが食堂に来た時、エミヤに聞かれたことに答えると、そこにいたエルキドゥが満面の笑みで首謀者を聞いてくるので、苦笑いで答えるのだった。

 ちなみに、食堂にいたのは、厨房にエミヤ。席にエルキドゥと巌窟王がいた。

 

「それで、どうして褒美で私のところなんだ?」

「え? メイド王が終わったらエミヤのデザートが来るって言ってたから?」

「……私はそれを聞いていないのだが……」

「えぇ……何してるんですかメイド王……」

「まぁ、別に作る事くらいなんてことないが、何か要望はあるか?」

「ん~……シェフのお任せで!」

「ふむ……分かった。少し時間がかかるが、マスターが満足できるものを用意しよう」

「了解!」

「では、エミヤが料理を作っている間、コーヒーでも飲んで待っているがいい」

「おっ、巌窟王特製コーヒーですか! 楽しみだな!!」

「コーヒーを出すのなら、甘さをもう少し増やしてもいいか……」

「……砂糖多めに入れるんだけど……ダメかな……」

「そうか。それなら、このままでいいな」

 

 巌窟王が入れてくれるコーヒー。バレンタインの時のコーヒーはおいしく飲めたので、期待しているオオガミ。

 コーヒーには砂糖を多めに入れるらしいため、エミヤはデザートの甘さを考えつつ作成していく。

 

「それにしても、マスターがエウリュアレやノッブのどちらかと居ないというのは珍しいな」

「それを言われると困るんだけど……あの二人は今はネロとメイド王と共に狩りに出ていたような……」

「レイシフトでもしたのか?」

「いや、ゲームの話だよ。混ぜてもらおうかと思ったけど、流石に四人そろってたらどうしようもないからね。こっちに来た」

「……待て。それはつまり、あぶれなければここに来なかったというわけか?」

「まぁ、そんな感じ」

「……バッサリ言うな、マスター」

「ん~……そうだね。まぁ、男性サーヴァントとも親睦を深めたいし。別段女性サーヴァントとだけしかいないっていうわけじゃないし」

「まぁ、親睦を深めるのは良いね。ただ……僕には性別は無いけどね」

「……それは考えてなかった……」

 

 完全に想定外と言わんがばかりの表情。エルキドゥはその反応に苦笑いを返した。

 

「さて、ようやく出来上がった。ついでだ。四皿分作ったから食べようか」

「やったー!」

「良いのか?」

「あぁ、食べてくれ。数を作るのは問題ないからな」

 

 そう言って、エミヤはさっそく、作ったパウンドケーキを配るのだった。




 男性サーヴァントがほとんど出てこないので、いい加減出そうかと。マンネリ解消を……

 今回はやらかしました……時間ギリギリ過ぎて後から修正を加えてる感じで……時間かかり過ぎました。すいません……


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沢庵こんな作って、どうするのさ(というか、どうしてこんなに樽を運び込ませたのさ)

「主殿主殿ぉ!!」

「ぐはあっ! 飛び乗って来るとは、お主牛若か!!」

「えぇ、私です! 牛若丸です!!」

「と、突然飛び乗ってきて、何かあったの?」

「ハッ! そうでした。土方殿が先ほど大量に沢庵を持ってきて、休憩室が大混乱になっています!」

「何をしてるのかな土方さん!?」

 

 牛若丸の言葉に、とりあえず尋常じゃない気配を感じとるオオガミ。当然、その休憩室に向かうのだった。

 

「というか、どうして飛び乗って来たのさ。普通に伝えれば良いと思うんだけど」

「信長殿がそうしろと」

「ノッブめ、後でとりあえず一撃入れておこう」

 

 さらっとノッブに処刑を下す事を決めるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「沢庵が大量に持ってこられたって――――うわぉ」

 

 休憩室の扉を開けると、眼前に広がる無数の樽。

 

「あぁ、マスターか。少し作り過ぎちまってな……俺だけじゃ処理出来んからこっちに持ってきた」

「どうしてエミヤのいる厨房ではなくこっちに持ってきたんじゃお主……」

「あぁ? どうしてだ? 沢庵は朝昼夜八つ時。いつでも食うだろう?」

「何言ってるんじゃお主は。お主ならいざ知らず、周りはそうでないと知れ」

「なんだと……?」

「沢庵というすでに完成された一品……エミヤなら何とかしてくれる……?」

「この溢れ出るエミヤの万能感」

「飽きないかどうかが問題だけどね」

 

 ともかく、この大量の樽を運び出すのが最大の問題である。一体いくつあるのか分からない樽の量。どうやって運んだのか、疑問でしかなかった。

 

「そもそも、誰がこんな量を運んできたのさ」

「全部土方一人じゃ」

「どうして誰も止めなかったのさ……」

「いやぁ……一体どれだけ運び込まれるのか気になったからな。面白そうだから見ておった。儂、最近部屋に帰ってないし」

「ボイラー室の隣の部屋を不法占拠とか、びっくりだよ。というか、ボイラー室横で沢庵って作れるの……?」

「……あぁ、儂の工房の片隅にあった見覚えのない樽って、そういう事か……」

「なんで放置してたんだろ、この戦国武将……」

 

 どうしてこんなになるまで放っておいたのか。それはやはり、ノッブも原因の一端のようだった。

 

「それじゃあ、ノッブも手伝うって事で、この部屋の樽を厨房に運ぶよ」

「えぇ~? 儂も手伝うの~?」

「原因の一端なんだから、手伝おうよ」

「儂、勝手に部屋を使われただけなんじゃけど……」

「むしろ勝手に使われているのになぜ放置したのか。そこで止めておけば何とかなっただろうに……」

「それに関しては儂も自分の行動に疑問を持つがな!」

「とりあえずマスター。これを厨房まで運べばいいんだな?」

「あぁ、うん。お願い」

「主殿。私も手伝いますよ」

「……さらっと沢庵食べてますね、この武将」

「もう儂要らなくね?」

「いいから働けぃ。手伝わないなら、後で痛い目を見てもらうだけだけどね……」

「不穏極まりないんじゃが。じゃが。仕方あるまい、手伝うしかないな」

 

 そう言うと、四人は樽を運び始めるのだった。




 ジャパニーズサーヴァント イズ クレイジー……なんだその沢庵の量は……!!

 というか、沢庵をそんな作って、何を考えてるんですか土方さん。というか、本当に沢庵ひたすら食ってるんですか土方さん。どれだけ沢庵愛してるんだ土方さん。(偏見)


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全員が歌を三曲歌わないと出られない部屋……?(メンツが殺す気満々なんですがそれは)

「チクショウ!! はめられた!!」

 

 オオガミが叫び、目の前の壁に貼られていた紙に絶望し、項垂れる。

 

「ほうほう……つまり、余達が歌えという事か」

(アタシ)たちの特別ライブって事かしら……良いわね、良いわねそう言うの!! 楽しそうだわ!!」

 

 書かれている内容は、『全員が歌を三曲歌わないと出られない部屋』。

 そして、ここにいるのはオオガミとネロ、エリザベートの三人だった。

 

「マイクはコレ……ふむ、これがカラオケ機か。うむ、うむ。なるほど分かった!! これで余は歌う準備が終わったぞ!」

「あぁっ!! (アタシ)が先に入れるんだからねっ!! というか、皇帝特権行使してるんじゃないわよ!!」

「ふっふっふ。持てる者はすべて行使して、マスターに余の歌を聞かせるのだ。そして、その後に、マスターの歌声も聞かせてもらうとするぞ!!」

「ちょ、ちょっと待って!! 二人の後に歌うのは、その、技量的に泣きたくなるから、先に歌わせて!!」

「む? 余は気にせぬが……まぁ、マスターがそうしたいというのであれば、譲ろうではないか」

「あ、ありがとう。三曲……三曲だよね。うん。よし、じゃあ、この三曲で」

 

 そう言って、オオガミは曲を選択し始める。

 

 

 * * *

 

 

「センパイ……先に歌って、残りを全部聞いて終わらせるつもりですね」

「いやぁ……流石にそうなるじゃろ……というか、どうやってあの三人を運び込んだんじゃ……」

「秘密です。聞いちゃいけないことはあるんですよ?」

「……毒でも盛ったのか……この自称後輩……」

「……ノッブも同じ目に遭います?」

「よぅし!! 楽しく三人を見守るとしようかの!!」

 

 全力で話を逸らしていくノッブ。ただ、BBはそれに対して満面の笑みを向けるだけだった。

 ちなみに、この二人がいるのはノッブの工房の最奥部にある秘密の部屋である。機材はBBと共に作成し、マスター達が閉じ込められている部屋は、普通に扉をロックしているだけなので、実は破壊すれば何の問題も無い。彼らは考えもしてないが。

 

「というか、音声を拾っておったら、儂らも死ぬんじゃね?」

「何言ってるんですか。ちゃんと音声はオンオフ可能にしてるに決まってるじゃないですか。悪戯して様子を見てたら歌で死んだとかシャレにならないですし、響いたら上に聞こえるじゃないですか。聞かれたら今頃マスターを探してるはずのマシュを筆頭に、エルキドゥさん達が襲い掛かってきますよ」

「……儂、死ぬんか……」

「それ、私まで巻き込まれるじゃないですか。というか、この工房……誰か来たりしませんよね……?」

「……そういえば昨日、土方が儂の工房に沢庵の樽を置いているという新情報を仕入れたんじゃが……」

「……見つかったらノッブのせいという事で」

「完全に儂悪くないよね」

 

 そんなことを話しつつ、二人は三人を見守るのだった。




 自分が歌い終わった後、生死をかけたライブが始まる……!! はたしてオオガミは生き残れるのか……!!

 そして、二人の運命や如何に。


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ノッブ、引きこもってるの?(それ以前に、ライブの傷はどうしたのよ)

「よし……まだ頭がくらくらするけど、なんとか復活だよ」

「なんでそんなに回復が早いのか気になるんだけど。もう二、三日眠ってなさいよ」

「どうしてそうもエウリュアレは僕に精神攻撃してくるのかな!?」

「まぁ、そういう時もあるわよ」

 

 エウリュアレの返事に、そういう時しかないじゃないか。と内心突っ込むオオガミ。

 当然の様にエウリュアレの前に座り、ふと思い出したようにエウリュアレに聞く。

 

「珍しく一人なんだね?」

「……何よ、いきなり。どうしてそんなことを聞くのよ」

「いや、特に理由は無いんだけどね? 珍しいなって思って」

「……ノッブが工房に引きこもっちゃったから……」

「……そういえば、BBも見えないような……」

「……気のせいよね」

「……そうだよ。気のせい気のせい。あの二人なら昨日の事件を引き起こしそうな気がしなくもないけど、気のせいだよ」

「まぁ、後で工房に行ってみましょうか」

「バラキーもついでに連れて行こうか」

「そうね。シュークリーム辺りで懐柔しておきましょうか」

 

 シュークリームで懐柔される茨木。出来ないと言い切れないあたり、彼女の人の良さというか、鬼の良さがあるというか。

 

「それにしても、なんだかあなたとこの部屋で話すのも久しぶりな感じがするわね」

「そうだねぇ……ここ最近、レース見守ったり脱獄見守ったりしてたからね。遊んでる時も大体この部屋じゃなかったし」

「そもそも、二人ってのが珍しいのよ」

「……そういえば、そもそもエウリュアレ以外に一対一で話したことあるのって少ないような……」

「それ、どうなのかしら……」

「まぁ、そもそもこんなに英霊がいるのに、一対一で話すこと自体が珍しいといいますか……どうしてエウリュアレだけなんだろうね?」

「こっちが聞きたいんだけど。なんでそんなことになってるのよ」

「さぁ……ちょっと分かりかねるね」

「……大体答えを期待しないで聞いてるけど、あなた、高確率で答えを濁してる気がするんだけど、気のせいかしら」

「気のせいでしょ。うん」

「そう……とりあえず、少しお菓子を食べましょ。そのあとにノッブの工房に行きましょうか」

「おぉ……それで、何を食べるの?」

 

 二人は席を立ち、お菓子エリアを見に行く。

 

「シュークリームでバラキーを懐柔するのなら、ついでに食べちゃえばいいよね」

「そうね。じゃあ、持って行きましょうか」

「……吾、シュークリームで懐柔されるのか……というか、汝らは吾に何をさせる気だ……」

 

 その声に振り向くと、そこには件の茨木がいた。

 

「ちょうどよかった。いやね? ノッブの工房に行ってみようと思って。おそらくあそこにノッブとBBが籠城してるはずだし、エルキドゥ達が乗り込む前に行こうかなって」

「ふむ……ノッブの工房か。よし、面白そうだ。参加するとしよう」

 

 懐柔する必要もなく茨木はノッブの工房へと行く事を決め、彼らはシュークリームを食べながらノッブの工房へと向かうのだった。




 はたしてノッブの工房には何が眠っているのか……そして、無事生還できるのか……
 続くとは言ってない。


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襲撃? 買い物?(どちらかと言うと遊びに行く感じかもしれない)

「……どこかを襲撃しに行きたいな……」

「唐突に何言っとるんじゃ」

「吾は構わんぞ。で、どこを襲う?」

 

 ノッブの工房の奥地にいたノッブとBBを引きずり出してから一日。

 何もなかったかのようにいるノッブはオオガミの突然の発言に突っ込むものの、別段満更でもなさそうな表情をしている。

 一緒に座っていた茨木はノリノリだった。

 

「ん~……どこに行こうかなぁ……」

「キャメロットとか?」

「ん~……別段、キャメロットは欲しいの無いからな……あ、新宿にでも行こうか。他にも暴れたさそうなのを連れて行こう」

「誰じゃよ、暴れたがってるの」

「ん~……アキレウス絶対殺すウーマンとか?」

「ヘラクレスにずっと殴りかかっていた気がするんだが」

「……誰か、止めないの……?」

「あれを止められるのはエルキドゥくらいじゃろ……どう見ても怪獣大戦争じゃぞ」

 

 ふと考え、想像に難くない怪獣大戦争に頬を引きつらせるオオガミ。

 

「よし。何も聞かなかったことにして、とりあえず洋服とかを漁りに行こう」

「おぅ、完全に趣旨と離れたなマスター。一体襲撃とはなんじゃった」

「クククッ、敵は吾が全て滅ぼしてやろう……」

「完璧だね。ついでにバラキーの服もなんか買おう。和服でもいいけど、洋服バラキーも見て見たい」

「わ、儂は……?」

「ノッブは実質洋服じゃん。どう見ても軍服じゃん。というか、むしろ和服になろうよ」

「ふははは!! 日本人サーヴァントだからと言って和服だとは限らんのだよマスター!! ふははは!!」

「良しぶっ飛ばすぞノッブ。んで、ぶっ飛ばした後に和服を着せてやる」

「マスターが怖いんじゃけど」

「まぁまぁ。とりあえずメディアさんに和服を作ってもらうところからで」

「メディアを運用しすぎじゃろ。というか、ついに新宿にすら行くつもりがなくなっとるじゃないか」

 

 ノッブに言われ、硬直するオオガミ。そして、数秒考えた後、

 

「……ハッ!! つまり、新宿に和服を探しに出ろって事だね!! よっしゃぁ! ノッブ、バラキー、行くよ!!」

「……まぁ、せっかく新宿に行くのならいろいろ見て見たいし、ネロやエリザベートでも誘っていくかの」

「吾はエウリュアレとナーサリーも誘ってみるとするか」

「俺は……うん、無難にマシュだね。なんか、連鎖的に増えそうな予感がするし」

「では、後でまた会おう」

「すぐに行くから待っておれ」

「うん、また後でね」

 

 三人はそう言って解散すると、新宿で買い物をするために財布を取りに行きつつ、何人か誘いに行くのだった。




 出てくる人も固定化されつつある今日この頃。そろそろ新しいキャラを絡ませねば……

 というか、ノッブ以外に和服じゃない日本鯖って誰かいましたっけ……


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そう言えば、資材がどんどん減って……(最近、どっかの誰かが召喚室によく行ってるわよね)

「ねぇオオガミ。貴方、ここ最近召喚室によく行ってる気がするんだけど」

「うっ」

「……先輩? 召喚室には入らないでくださいって言いませんでしたっけ?」

「あぁっ、マシュの視線が冷たい……!」

 

 マシュに睨まれ、カタカタと震えているオオガミ。

 そんな状況を生み出したエウリュアレは、紅茶を飲みながら黒い笑顔を浮かべていた。

 

「はぁ……今回はどうして使ったんです?」

「いやぁ……そのぉ……ピックアップがね? 色々とですね……? その、礼装が欲しいなぁって、思いましてね?」

「そうですか……まぁ、戦力増強は良いと思うのですが、いつか来ると言ってたメルトリリスさんの為の石はあるんですか?」

「うっ……! い、いや、大丈夫だよ! 聖晶片は貯めてるし!!」

「水着イベントの時に10個使っていたような気がするんですが」

「ぐふっ……いや、これから貯めるから問題ない……!!」

「万が一のためにって残していたアガルタのフリークエストも終わらせちゃいますし……本当に大丈夫なんですか?」

「……まぁ、大丈夫だよ。うん。ログインボーナスとかあるしね。年末までには集まるでしょ!!」

 

 オオガミの言い分を聞いていたエウリュアレは、少し真剣そうな表情で、

 

「……マシュ。これは手遅れよ。たぶん、こうやって言い訳して、おそらく年末には石ゼロよ」

「恐ろしいこと言わないで!?」

「ありそうだから困るんですが……先輩、自重してください」

「……はい。ごめんなさい。これからは節約するように頑張ります」

「だそうよ?」

「そうしてくださいよ? でないと、本当に資材が枯渇して困るんですから」

「はい……まぁ、その頃には新エリア開拓されて暴れてると思うんだけどね」

「……それはそれです」

 

 今後起こるであろうことを考えながらオオガミが言うと、マシュは一瞬硬直した後、そう言った。

 

「それにしても、次の特異点が出てくるまでの感覚が短いわよねぇ……」

「そこは突っ込んじゃいけないと思うんだけど」

「聖杯って、こんなに出てくるものなんですね……」

「いや、絶対普通じゃないから……異常事態だから……いろんな人が言ってたと思うから……」

「というか、もはや魔神柱とか関係なしで聖杯あるわよね? 原因は一体何なのよ」

「……色々あるから分かんないな……でもやっぱ、最終的には魔神柱でしょ」

「その、とりあえず魔神柱に押し付けておけばいいかっていう感じ、嫌いじゃないわよ」

 

 エウリュアレはそう言うと、無言でオオガミにティーカップを差し出してくる。

 差し出されたオオガミは数秒悩んだ後、ふと机の上にあるティーポットに気付き、紅茶を注いで返すのだった。




 イリヤ出ないよイリヤ……ちくせう……ログインボーナスじゃそんな溜まりませんし……コフッ!


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とりあえず、勝利報酬は相手の着せ替え及び撮影権でいいよね(なんでこんなことになったんじゃっけ……)

「さて……ノッブさん。貴方、また何かやらかしてたりしませんか?」

「……何をいきなり言ってくるんじゃ、マスター」

 

 オオガミの突然の発言に、ノッブは思わずジト目で見てしまう。

 

「いやですね? この前の部屋……あったじゃないですか。あれを量産してる可能性を考えてですね……?」

「……本音は?」

「別にわざわざ俺を巻き込む必要は無かったと思うの」

「マスターがおらんと成立せんだろあれは」

 

 ハッキリと断言するノッブ。流石のオオガミも、それには硬直。

 

「えっと、なんでいないと成立しないのさ」

「ほら、何かあった時、止められそうなのがマスターしかおらんし」

「それ、単純に俺をそっち側に入れればよかっただけなんじゃないですかね」

「嫌じゃよ。令呪でも使おうものなら確実に犯人が特定されて、儂らが見つかるまでが秒読みになるからな」

「なんと。そこまで計算して……ひどすぎじゃない? それつまり、犯人捜しで即バレするからハブったわけか」

「当然じゃろ。隠密出来ん暗殺者を連れて暗殺に行こうとする奴がいたらそれは本物の阿呆じゃ。虚けというか、道化と言うか……つまりはそういう事じゃ」

「さっすがノッブ。ぶっ飛ばす」

「おう、新宿では服選びで世話になったが、敵対するのなら容赦はせんぞ」

「ふはは。絶対ノッブには似合わなそうな服を着せて写真撮ってカルデア中にばらまいてやるもんね」

「ほぅ……いいじゃろう、その案に乗った。じゃが、儂も同じような攻撃をすると知るんじゃな。儂に似合わぬ服装をさせるのなら、マスターは女装じゃ。そりゃもう、様々な服を着せて写真を撮ってカルデア中にばらまいてやるから覚悟しておくがいい」

 

 いつの間にか、如何に相手を着飾り写真を撮ってカルデア中にばらまいてやるかと言う戦いに変化していた。

 しかし、肝心の勝負内容はまだ決まっていなかった。

 

「さぁ、勝負内容を決めようじゃないか」

「将棋でどうじゃ?」

「……武将に挑むほど愚かじゃないんで、別の事にしよう」

「じゃあ、腕相撲」

「サーヴァントに勝てるわけないんだよねぇ……」

「むぅ……対等とは難しいものよなぁ……」

「そうだねぇ……」

「じゃあマスター。伯母上とあれをやればいいんだよ」

 

 突然現れる茶々。

 そして、放たれた言葉に二人は首をかしげる。

 

「あれ?」

「あれって……どれ?」

「ネロとエリザのカラオケ耐久合戦!」

「「さては殺す気だな!?」」

 

 天使の様な満面の笑みで悪魔の如き残酷な一言を告げてくる茶々。

 思わず二人で叫んだのも、仕方のない事だろう。

 

「でも、とりあえず対等だと思うよ? どっちも大ダメージ間違いなしだし」

「サーヴァントが死ぬような攻撃を受けて、どっちが長く耐久出来るかとか、中々地獄だと思うんですがそれは」

「いや、しかし……単純に耐えるだけなら、何とか……」

「それに、エリザのはランサー宝具だから伯母上にはクリティカルだよ!!」

「儂をピンポイント攻撃じゃな!!」

「流石ノッブの姪!! 言う事が一味違うぜ!!」

「おいマスター。お主の中の儂のイメージはどうなっておるのか聞きたいんじゃが。じゃが!」

 

 前も言ったようなセリフを言うノッブだが、当然スルー。

 

「よし、とりあえずそれで行こう!!」

「な、何を言っとるんじゃマスター!! 死ぬぞ!! マジでこれは死ぬぞ!! 全身の穴と言う穴から血を噴出して死ぬぞマスター!!」

「部屋はノッブとBBが悪戯に使ったあの部屋にしておこう!! エルキドゥに言って扉は強固に封印して、ネロとエリザを集めてカラオケだよ!! 俺は生身の人間だからハンデで耳栓付けていいよね!!」

「音響爆弾に耳栓が効くかぁ!!」

 

 しかし、ノッブの絶叫空しく、オオガミは三人を集めに走り行くのだった。




 宝具を生身で受けたら即死すると思うんですがそれは。
 まぁ、オオガミ君はすでにネロとエリザのカラオケ大会を生き残ってますし、何とかなるでしょう。頑張れオオガミ。それ行けオオガミ。とりあえずどっちが勝ってもカルデアはにぎわうはず。

 ……どっちが勝った方が喜ぶ人は多いのだろうか……


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第二回着せ替え戦争(これ、あと何回続ける気?)

「ねぇマスター? 今、どんな気持ちかしら。女装させられて、その写真をカルデア中にばらまかれた気持ちって、どんな感じなのかしら」

「ノッブさん、似合いますねぇ~!! これはもう、もっと写真を撮って拡散しないとですよねぇ~!!」

「「ゆ、許さんぞ……」」

 

 オオガミを煽るエウリュアレと、ノッブを煽るBB。そして、互いに相手を睨みながら怨嗟の声を漏らすのだった。

 

「両者同時ノックアウト~! ちなみに、茶々は見てて大笑いしてたからね!! 伯母上への恨みも晴らせて一石二鳥!!」

「そ、そうじゃ……元はと言えば、茶々があんなことを言い出したのが原因ではないか……」

「なんであんなことをしようとしたのか……昨日のテンションが分からないよ……」

「おかげでデスライブ……まだ若干視界が揺れとるんじゃが……」

「奇遇だね……ちょうど俺も同じような気持ちだよ……」

「ふっ……さすが儂のマスター。この程度では倒れぬか……それはそれとして、辱めは報復するからな……」

「ふん……まだ着せてない服は無数にあるんだよ……次はナーサリーみたいな服を着せてやる……」

「や、やめろぉ!! 明らかに似合わぬだろうがぁ!!」

「ミスマッチだね、分かるが実行するのがこの俺だよ!! びっくりするほど似合わなそう!!」

 

 似合わないのはそれとして、絶対着せてやるという気概。それをもっと別の方向に回せよ。と突っ込みたいノッブだが、自分も人の事を言えないので恨みがましい視線を向けるだけである。

 と、そこでノッブも何かを思いついたようで、

 

「じゃ、じゃが、儂も対抗策はあるからな。これ以上やられるのは性に合わぬ。反撃じゃ!!」

「おぉ、第二回戦かな!? して、今回の内容はどうするか!」

 

 対等且つ出来れば命の危険が無い物。そう考える二人。

 そして、その二人の視線の先にいるのはエウリュアレだった。BBなら何かとんでもない事を言うと予感したのだろう。

 

「私? そうねぇ……あぁ、一週間分の食料と水は用意して上げるから、アステリオスの迷宮を踏破で」

「死ぬ!! 全力で死ぬ!! 魔物いるじゃん!!」

「じゃあ他にある?」

「……魔物を如何に倒すかってのが問題なんだけどね……」

「うむ。ならばハンデをやろう。共に二人で行こうじゃないか」

「ふむ……味方の縛りは?」

「特に無しじゃな。まぁ、儂はバラキーを連れて行くか」

「よし分かった!! 巌窟王連れてくるね!!」

 

 そう言って走り去るオオガミ。

 全力で走っていくオオガミにその場にいる三人は唖然とするが、冷静に考えると脱出に限って言えば最強性能の人物を連れて来ようとするオオガミに、ノッブは戦慄するのだった。




 とりあえず、一週間くらい二人は帰ってきませんね。さらばオオガミ、ノッブ。


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本当に行っちゃったのだけど(明日からイベントよ……?)

「祭りが始まるって言ってるんだけど……」

「そうね、あの二人は今ごろ迷宮の中よ」

「馬鹿なの!? 茶々、怒るよ!? 何時になったら帰ってくるの!!」

「さぁ……意地でも帰ってくるんじゃない?」

 

 憤慨する茶々に話半分で答えるエウリュアレ。

 

「というか、バラキーも連れて行かれちゃったから暇ね……」

「……ハッ!! 今のうちなら伯母上の金庫襲ってもバレないんじゃね……?」

「……まぁ、頑張りなさいな」

 

 走り去っていく茶々を応援しつつ、そもそもレースに全財産使い果たして空っぽなんじゃないだろうか。と考えるエウリュアレ。

 そして、ビスケットを一枚取り、口に運んだところで牛若丸が飛び込んでくる。

 

「エウリュアレ殿エウリュアレ殿!! 一体主殿はどこへ行かれたのですか!!」

「今頃巌窟王とペアを組んでノッブ・バラキーペアと競争してるわよ」

「そうですか……か、観戦とか出来ませぬか?」

「BBが作ってるはずよ。行ってらっしゃい」

「BB殿ですか……ありがとうございます! 行ってまいります!!」

 

 走り去っていく牛若丸を見送るが、後にBBが涙目で襲い掛かってくることを想像するエウリュアレだった。

 

「余が来たぞ!!」

(アタシ)が来たわ!!」

 

 ドヤ顔で入ってくるネロとエリザベートに、面倒なのがやってきたと思うエウリュアレだった。

 

「む? マスターがおらぬではないか」

「どこ行ったのよ。というか、ノッブもいないじゃない」

「あの二人なら迷宮の中を彷徨ってるわよ。何時まで彷徨ってるかはわからないわ」

 

 エウリュアレの言葉に目を見開くネロとエリザベート。

 

「な、なんだそれは! 余による余の為の余のネロ祭を開催するというのに、肝心のマスターがおらぬとはどういうことだ!!」

「どうしてこういう時に限っていないのよ!! 訳が分からないわ!!」

「そんなこと言われてもねぇ……昨日嬉々として突撃していったし……」

「あの二人は一体何をしたのだ!!」

「二人で喧嘩をして、昨日ばらまかれた写真の原因になるような事を――――って、冷静に考えたらその喧嘩に貴女達巻き込まれてたわよね……」

「む? 余達が巻き込まれて……?」

「全く記憶にないんだけど……何かあったっけ……」

「……あぁ、本人は自覚して無いものね……」

 

 エウリュアレは若干苦笑いでそう言うと、紅茶を飲み、もう一枚ビスケットを取り口の中に放り込む。

 ネロとエリザベートはその間も考えていたが、やはり心当たりは無いようだった。

 

「まぁ、今日は寝なさい。明日の午後から本番でしょ? BBとアステリオスに言って、探しに行ってみるわ」

「む。なぜBBなのかを問いたいところだが、まぁ良い。任せようではないか。余は準備があるからな」

(アタシ)も一緒に行くから無理ね。頑張ってちょうだい」

 

 そう言うと、ネロとエリザベートは出て行く。

 一体何をしに来たのだろう。と思わなくもないが、約束をしてしまったので、とりあえず探しに出てみようと、残っているビスケットを食べて部屋を出るのだった。




 はたして、明日までにあの四人は帰ってこれるのか……頑張れエウリュアレ。見事全員を探して脱出するんだ!


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ネロ祭再び~2017 Autumn~
ネロ祭開幕……!!(まずは軽く十二の試練を!)


「ま、祭り!! 祭りだよ!!」

「ぐほぁ……あの迷宮を全力ダッシュで脱出した上にこんな体育会系全開のイベントに突撃とか、何考えとるんじゃ……」

「脱出するのなら、やっぱり巌窟王ね」

「ふん。だからと言って、いつでも頼れるわけではないがな」

「そうね。次は普通に霊基保管庫から地図を取って来るわ」

 

 そう言って話している四人がいるのは、コロッセオ観客席。

 ネロ祭開幕と聞き、必死で帰って来た四人は、その勢いのままコロッセオへと転がり込んだのだった。

 

「よし……とりあえずいつもの最高難易度からだね!! 行くよエウリュアレ!!」

「……私、ルーラー相手でも普通に使われるのね……」

 

 オオガミに抱えられて連れ去られるエウリュアレを呆然と見送るノッブと巌窟王。

 

「儂ら、普通に置いていかれたな……」

「大体いつもの事だろう。俺は少し寄る所があるが、お前はどうする」

「儂はとりあえずBBの所にでも行くか。ちと思いついたことがあるからな」

「悪戯もほどほどにしておくんだな」

「それは何とも言えんな」

 

 そう言って、二人は分かれるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「……それで、調子に乗って十二の試練を越えてきたわけね。えぇ、えぇ。当然私も知ってるわ。当然よね、最前線だもの」

「アーツダウンは考えなかったなぁって。しかも、減少率おかしすぎでしょ。どうしてマシュのアーツダメージがクリティカルですら6なんだよって突っ込みたかった。バフ無しの女神さま宝具ですら500ちょっととか、理解できなかったよ」

「まぁ、それでも誰も死なせなかったのは成長したんじゃないかしら」

「そう……? 運と相性がいいと大体このくらいじゃない?」

「……そう過小評価しても良いことないわよ」

「まぁ、うん……そうだね。とりあえず、今日はこれで終わろう。ヘラクレス、強かったよ……ありがとう、エウリュアレ」

「後でマシュにもお礼しときなさいよ。私は攻撃担当だったけど、マシュがいなかったらどうしようもなかったんだから」

「うん。エウリュアレも休んでね。明日も頑張ってもらう予定だから」

「……そうね。えぇ、休むわ。明日の周回とやって来るであろう超高難易度に備えてね……」

 

 エウリュアレはオオガミが買ってきたメロンパンを口に運びつつ、今日の成果を振り返る。

 

「ん~……まぁまぁって所かな……」

「今日は一日目よ。しかも通常周回を二回、超高難易度を一回でしょ。まだまだこれからよ」

「それもそうか。じゃあ、明日に備えて今日は寝よう。明日から頑張るぞぉ~!!」

「えぇ、頑張りましょ」

 

 そう言って、オオガミとエウリュアレはカルデアへと戻って行くのだった。




 十二の試練……びっくりしましたよ……初見突撃一発クリアとか、どう考えても奇跡……

 そして、安定のエウリュアレ常在編成。さすがに絆ポイントがほとんど流れていくのが心に突き刺さり……グフッ……


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地獄の超高難易度三連戦(中々の強敵だった……)

「……もう休んでていいわよね。ジークフリート……防御が硬すぎるのよ」

「うん……というか、超高難易度三連戦はさすがに疲れた……」

「ネロは……なんであんなに元気なのよ。スカサハの所に行ってたじゃない……というか、どうしてあの編成に私も入ってたのよ」

「そりゃ、魅了で足止めをしてもらおうと……」

「……まぁ、全くと言っていいほど戦わなくて済んだからいいけど……」

 

 スカサハによる影の国流仇討ちによる即死を乗り越え、ハサン達の道連れ地獄の手を叩き落とし、ジークフリートによる超防御力を悩殺し続ける事によってひたすらに殴り続けてぶち破ったオオガミ達。

 

「流石に、疲れたよ。というか、時間かかったね……特に最後」

「一回もやり直してないのにね」

「唯一100ターン超えたしね……」

 

 思い出しつつ、明日もあるであろう敵に戦慄しながらも、今日はもう休もうと帰っていく。

 しかし、そこに待ったをかける少女が一人。

 

「マスターさんマスターさん!! 私たちと遊びましょ!!」

「吾もいるからな!!」

「……ねぇバラキー。バラキーは知ってるよね。今日は超高難易度にひたすら突撃してたの」

「む? そうだが……それがどうかしたか?」

「……体力お化けだぁ~……」

 

 鬼を相手に体力お化けなど、今更だった。

 疲れてたオオガミは出来るだけ寝たかったのだが、彼女たちにとってはそんなことは関係ない。

 

「くふふ……今日は寝かさぬぞ……!!」

「一体何をするのさ……」

「うふふ。それは行ってみてのお楽しみよ」

「えぇ……」

「ほら、行きましょ!!」

(なれ)よ、諦めるがいい」

「うえぇぇぇ……助けてエウリュアレ~!!」

「いやよ。諦めて行ってきなさい」

「そ、そんなぁ……」

 

 一体何をするというのか。不穏な気配を漂わせる二人から逃げようとするが、サーヴァントに勝てるわけも無く引きずられていく。

 最後の望みであったエウリュアレには完全に見放され、手を振られるのだった。

 

「さて、私は休もうかしら。というか、ノッブ達はどこに行ったのかしら?」

「お主らのを全部見ておったわ。流石に儂はあそこに混ざれる気がせんからな……」

「あら、居たのね……って、何よそれ。私にも寄越しなさいよ」

 

 背後から現れたノッブは、たこ焼きをもぐもぐと食べながら話しかけてきたので、エウリュアレはそれを奪おうとする。

 当然避けられ、代わりにノッブは、店を指さしながら、

 

「向こうで売っておるから、自力で買って来い。マスターと一緒におるからQPは余ってるじゃろ」

「そうだけども……まぁいいわ。行ってくる」

 

 珍しく素直なエウリュアレはそのままたこ焼き屋へと向かっていくのだった。




 三回やり直したスカサハ師匠とハサン。一発クリアの代わりに馬鹿みたいに時間がかかってしまったジークフリート……次は一体どんな敵が出てくるのか……不安しかない……


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ウルクの王とその親友が大戦争した件について(令呪は使い切ったよ……)

「これがゴリ押しというものだよエウリュアレ君」

「なに? あの探偵のマネかしら。本人に知られたら笑われるでしょうね」

「……ともかく、あのギルガメッシュは酷過ぎると思うの」

「そうね。結局エルキドゥに全力で魔力を回して叩き続けていたからね」

「親友戦争だね」

「あんなのがメソポタミアの日常なのかしら……」

「それは流石に無いんじゃないかな」

 

 今回ギルガメッシュ戦で一番頑張ったエルキドゥとメイヴ戦で活躍したバラキーは、流石に疲れたのか、カルデアに戻っていた。

 

「メイヴも強いなぁって思ったけど、まさか令呪を使うしかないとか思ったのはギルガメッシュさんだけだったね……」

「桁外れだったものね……」

「毎ターン攻撃力上昇する上に、その上昇率も恐ろしいものと来た……強すぎだったよ……」

「うちには(ステンノ)もいないしね。悩殺も出来ないわ」

「本当にね。二人がいればうまくすれば令呪も使わないで済んだはずなのにね」

 

 悩殺完封コンボを試してみたかったオオガミだが、メンバーが足りないのは流石にどうしようもなかった。

 不満はあるものの、何とか勝てたので最悪の状況ではなかった。

 

「通常攻撃でエルキドゥを倒すギルガメッシュって、相当攻撃力上がってないと出来ないわよね……」

「本当に、異常だったね……メイヴは、なんかバラキーの時を思い出したよ」

「そうね。あの取り巻きを倒さなくちゃいけない感じは確かにそうだったわね……」

 

 話を変えてメイヴの時を思い出す二人。

 

「あの時もびっくりしたよ……めちゃくちゃ攻撃力上がっていくし……というか、今日のは攻撃力を上昇させるのが多くない……?」

「そうね……確かに今日は攻撃力を上げて殴ってくる感じだったわね。メイヴはどちらかと言うと取り巻きをチャージして一撃で決めてくる感じだった気がしなくもないけど」

「まぁ、それもあったよね。一人になったら殴って来るけど、それくらいだし」

「その前に倒れるから、その脅威を十分に味わってなかっただけかもしれないけどね」

「そ、そんなことを言われましてもね……? 流石に味わいたくないですよ……」

「知ってるわよ。というか、私も味わいたくないわよ」

 

 頬を膨らませながら文句を言うエウリュアレ。オオガミは何とも言えない表情になるが、冷静に考えると直に味わうのは彼女たちなので、出来るだけ注意はしようと思うのだった。

 

「さて……二人の様子を見に行こうかな。もしかしたら明日も頑張ってもらうかもだし」

「そうね。エルキドゥはともかく、バラキーは明日も世話になるでしょうしね」

「そうだね。何か買っていこうか」

「それじゃあ、向こうに行きましょ。ついでに私の分も買ってちょうだい」

「えぇ……自分のお小遣いあるでしょ?」

「何よぅ。女神に支払わせようってわけ?」

「……はいはい。仕方ないね。女神さまの言う事だし」

「そうよ。最初からそう言っておけばいいの。さぁ、行きましょ」

 

 エウリュアレに手を引かれながら、オオガミは歩いて行くのだった。




 今回の令呪の使い道は、一画は特に大きな理由もなく消費。残り二画で宝具連射して勝ちました。
 誰だ令呪無駄打ちしたバカは!! なんてことをしてくれたんだ!! というか、そうすれば一画だけ残ったはずなのに……

 明日から、大丈夫かなぁ……


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ネロ祭の本領……!!(よくやったバラキー!! いけ、玉藻!!)

「いよっしゃああぁぁぁぁぁぁ!! クリアアアァァァァ!!」

 

 

 * * *

 

 

 そう叫んだのが数十分前の事。現在は控室のようなところでぐったりと倒れているオオガミ。

 冷静に考えると、この戦いは去年。つまりは、今年の戦いがまだ待っているという事だ。しかも、去年の戦いよりもおそらく強い。それを考えると、一体どうしたものかと考える。

 

「令呪は全部使い切って、回復待ち……超高難易度はコンティニュー不可だから石に頼る事も出来ないし……まぁ、頑張るしかないか」

「基本、対処的行動だものね。私はもう疲れたわよ」

「そんなこと言われても、エウリュアレがいないと編成がきついんだよ……コスト的に」

「……そうね。まぁ、そうなるわよね。頑張るわよ」

「吾も頑張るぞ。任せるがいい」

「ちょっと。こういう高難易度系は(わたくし)の分野ですからね? 勘違いしないでくださいまし」

「それはそれで違うような気がするけども……」

 

 控室で倒れているオオガミの周りに居るのはエウリュアレと茨木、玉藻の三人。今回の主役だったので疲れているはずなのだが、なぜか遊びに来ていた。

 おそらくエウリュアレと茨木は集りに来たのだろうと想像できるが、玉藻は恐らく本当にただ遊びに来たのだろう。

 

「ねぇオオガミ。また屋台に行きましょうよ」

「えぇ……また?」

「えぇ。良いでしょう? まだ色々と見て見たいのよ」

「吾もついて行って良いか?」

(わたくし)もよろしいですよね?」

「……仕方ない、か。じゃあ、皆でちょっと行ってみようかな」

 

 体を起こしつつオオガミがそう言うと、嬉しそうに微笑むエウリュアレ。

 茨木と玉藻も楽しみそうな表情をしているので、こういう時位はいいかと思うオオガミ。

 

「それにしても、何とか勝てたよねぇ……」

「ギリギリもギリギリ。難敵でしたよ」

「吾が先に三人倒したおかげだな。感謝すると良い」

「うん、感謝してるよ。ありがとう二人とも。これからも頑張ってもらうよ」

 

 オオガミの感謝の言葉に気を良くし、続いた言葉に硬直した二人。

 当然、まだ半分なのだ。頑張ってもらわないと困る。

 

「そ、そうであった……まだ半分……半分なのだ……」

「こ、今回の高難易度、多すぎじゃないですか……なんだって、こんな過労死させるような真似を……」

「……この二人と比べて、耐久性も攻撃力も無い私がこの中に加わってるのって、かなりおかしいと思うのよね……」

 

 エウリュアレは呟くも、聞いている人は誰もいない。

 

 その後、散歩をしていたエルキドゥも加えて屋台へと向かうのだった。




 ネロ祭……去年のでこれなら、今年は一体どうなるっているんだ……

 攻略に一番時間がかかったフィナーレ。はたして今年の戦いに勝てるのだろうか……


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圧制者キラーは死んだ(さすが女神さま!!)

「あ~……久しぶりに楽しい戦いだったわ」

「うん、楽しそうに戦ってたよねぇ……」

 

 圧制者キラーを射殺す女神。彼女の前には男は皆ひれ伏すのだろうか。

 オオガミはそんなことを思うが、当然そんなわけは無く、ランサー相手には中々渋いのだ。ルーラーも同様に。

 

「いやぁ……昨日まで必死で考えてたから、今日のは凄い楽だったよ」

「そうね。私も一瞬瀕死になっただけで、その後は一方的に叩いて、気付いたら体力全回復してたわ」

「びっくりだよねぇ……」

「うむうむ。それで、儂は何時になったら活躍できるんじゃ?」

「水着になったらじゃないかな」

「無理じゃろ!! 来年まで無理じゃろ!!」

 

 さらっと会話に紛れ込んできたノッブだったが、オオガミの無慈悲な一言に思わず涙目で叫ぶ。

 

「どういう事じゃマスター! 儂は使えぬという事か!!」

「NP獲得量と使える場所が限られてるから……」

「く、くそぉ……許せん……どうして儂はこんな扱いなんじゃ……!!」

「大変ね、ノッブ。まぁ頑張りなさい」

「くぅ……エウリュアレの余裕の表情が尚更むかつくのじゃが……!! むかつくのじゃが……!!」

「うふふふふふふ」

 

 不敵な笑みを浮かべるエウリュアレを睨みつけながら涙目でプルプルと震えるノッブ。

 オオガミはそれを見て苦笑いをするが、どうしていつもと対応が違うのだろうと思うのだった。

 

「クックック……残念だったなノッブよ。今回は吾の出番だ」

「バラキー……!!」

「クハハ!! 悔しかったら吾と同じくらい強くなるのだな!!」

「ぬうぅ……!! 来たばかりの頃にあれだけ色々と教えたにもかかわらず、この裏切り……許せん!!」

「ふん。ほとんどエウリュアレが教えてくれていたわ。汝は実質何もしておらぬだろうが」

「なん……じゃと……?」

「……自分がかなりの時間工房に引きこもっているのを知らないのかしら……」

 

 やれやれ、と言いたそうなエウリュアレと茨木。実際、ノッブは工房に籠っている時間の方が長いため、茨木にあれこれ教えたのはエウリュアレだった。

 もちろん、工房から出ているときは教えていたりしたのだが。

 

「まぁまぁ。別に、ノッブは使えないわけじゃないんだし。たんに、タイミングが無いだけなんだからさ」

「それが一番問題なんじゃけどね!!」

「えぇ、私の代わりになれないって事は、かなり問題なのよ」

「吾は別に関係ないのだがな」

「……あれ、そういえばバラキーはなんでここに……?」

「あぁ、そうであった。マスターを呼びに来たのだ。ほれ、行くぞ」

「え、ちょ、えぇ~!?」

 

 突然拉致されるオオガミ。流石の二人もついて行けず、一瞬呆然とした後、急いで追いかけるのだった。




 いやぁ……初見一発クリアはやっぱり嬉しいですね。強くなったって感じが凄いですもん。やったぜ。

 しかし……ノッブももう少し使えるようにしたいんですけどねぇ……


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鈴鹿御前強かった……(じゃあ、このままスキルマまで行こうじゃん!!)

「今更だけど、鈴鹿って結構強いよね」

「何々? マスター、今更気づいたんじゃん?」

「まぁ、最後に一緒に戦ったのがかなり前だしねぇ……まぁ、もうちょっとスキル上げをしようかなとは思ったよ」

「良いじゃん良いじゃん。じゃ、その調子でスキルマ行っちゃおーか!」

「流石にスキルマは無理かな……!!」

「え~? 優遇と不遇の差が激しすぎるじゃんよ。どういう事?」

「そんなこと言われましてもね……素材が足りないと言いますか……」

 

 そうは言いつつも、セイバーはほとんど育ててないので、石と素材はそれなりにある。ただ、QPが足りないのが問題だったりする。

 QPの消費はここ最近異常なまでに多いので、どうしようもないのだった。

 

「まぁ、出来るだけはやるよ。任せといて」

「なるほどね。じゃあ、私も精一杯やるし。マスターだけに任せるわけにはいかないじゃん?」

「おぉ……中々レアな……よし、頑張ろ。秘石足りないけど」

「ちょ、それが一番重要じゃん!」

 

 一番取り難くて絶対使用する秘石。もう少し落ちてくれてもいいだろう。と思わなくもないが、ここは我慢だ。

 

「時間はかかるけど、出来るだけ早めに終わらせるよ。決勝で何とかなるはず……」

「あ~……決勝はセイバーって言ってたし、落ちるかもね?」

「セイバーだから、アーチャーで何とかなるかなぁ……」

「ふぅん? まぁ、色々考えてるならいいじゃん。私は次の戦いに備えておくし!」

「うん。じゃあ、とりあえずあと何回か行こうか」

「オッケー! 私の力、何度でも見せてあげるし!!」

 

 オオガミは鈴鹿にそう言うと、闘技場に向かって降りて行く。

 そして、オオガミに跳びかかる影が一つ。

 

「とぅ!」

「ごふぅ!?」

「マスター!?」

 

 飛び乗って来たのは茨木。自然に肩車の様な形になり、不敵に笑う彼女は、

 

「汝は油断しきっておるのぅ……ククク、もう少し気を付けた方が良いぞ……? 仮にも、吾は鬼。人を襲うのは性だからのぅ……」

「おぉぅバラキー。ここでそれを言うんです?」

「む? それはどういう……!?」

 

 咄嗟にオオガミの肩から飛び降り、陰に隠れる茨木。その視線の先にいるのは鈴鹿だった。

 

「へぇ……アンタ鬼なんだ? それで……マスターに傷つけようって感じ?」

「い、いや、それはあれだ。冗談のようなものだ。というか、汝は何者だ……? 頼光の様な嫌な感じがするのだが……」

「私は鈴鹿御前。鬼狩りにはちょっと縁があってね。マスターを傷つけるなら……容赦はしないからね?」

「……マスター。こやつやばい感じが凄いのだが!!」

「ハイハイ。二人ともそこまでにしようよ。とりあえず、今日最後の一回、行くよ」

 

 オオガミはそう言うと、しっかりとひっついている茨木を運びながら闘技場へと向かうのだった。




 天気雨で聖女の行進最終waveほとんど倒したり、たまに全滅させたりとか、中々優秀だった……どうして使わなかったんだ私……

 ちなみに、編成はバラキー、鈴鹿、サポート鈴鹿でやっているという。

 あ、超高難易度の鈴鹿は超耐久パで無駄に時間かけて倒しました。


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アーラシュさんの、流星五条!!(ステラ5発はさすがにどうかと思います!!)

「よぉマスター。俺を使うなんて、初めてじゃないか?」

「あ、あぁ……うん、よろしくね」

「なんだぁ? 浮かねぇ顔しやがって。何かあるのか?」

 

 一体どう説明したものかと考えるオオガミ。

 それもそのはず。今からクー・フーリンを連れて行くのは、流星一条と名乗りつつその実五条ほど叩き付けてくる英霊なのだ。

 つまりは、何度も死ぬような一撃を受けてもひたすら気合で耐え続けるという、地獄の様な戦いに出てもらおうとしているわけで。

 

「ん~……どう説明すればいいのか……ひたすら流星を受け続ける戦いだけどいいの?」

「あ? 別に、構わねぇよ。今回はそういう役割ってこった。なら、精々期待通りにするだけさ」

「おぉ……なんか、めちゃくちゃかっこいいんだけど……というか、冷静に考えると、四肢爆散する様な宝具を4回も気合で耐える彼は何者なのだろうか……」

「へぇ……四肢爆散する様な宝具か……中々面白い宝具を使うじゃねぇの」

「まぁ、結局の所、相手が宝具で自爆してくれるのをひたすら待つだけなんだけどね」

「なぁに、耐えるくらいなんてことはないね。任せとけ」

「……期待してるよ!!」

 

 もはやつなげる言葉は思いつかず、これが一番なんじゃないかと思ったオオガミ。

 クー・フーリンも笑っているので、おそらくこれで正解なのだろう。

 

「さて、じゃあ次はエリちゃんかな」

「じゃあ、俺は先に待ってるとするぜ」

「うん。また後で」

 

 彼はそう言って待機エリアへと行ってしまう。

 オオガミはそれを見送った後、人数を集めに歩き回るのだった。

 

 

 * * *

 

 

「……絶望的な戦いだった……」

「なんですかあの流星。威力高すぎですよ……」

「むかつくわ!! (アタシ)の歌声をものともしない感じが特に!!」

「余も悔しい!! なぜあれほど体力があるのか!! 理不尽としか言えないのだが!!」

 

 それぞれがそれぞれ不満を漏らしているが、結果としては何とか耐えきり、自爆してくれたので問題は無かった。

 ただし、当然の如くやられるだけと言うのは不満が出るものだ。

 

「はぁ。何とかなったけど、正直何度もやりたいような戦いじゃないね」

「先週までのハイパワーと比べたらまだマシなような気がしなくもないですが、そこはそれ。今回も辛い戦いになりそうですねぇ……」

「だねぇ……まぁ、楽しみでもあるんだけどね」

 

 次は一体どんなクエストが来るのかを楽しみにしつつ、なんだかんだ言って本体であるアイテム収集がほとんど終わっていないという事実に頭を悩ませるオオガミ。

 

「まぁ、なんだかんだ言っても、勝てたからオッケーって事で。お疲れ様!!」

「ぐぬぬ……次こそは何とか!!」

「余も、負けはせぬぞぉ!!」

「えぇ。とはいっても、私は明日も出るんでしょうけどね」

 

 オオガミの声に、悟ったような表情で答える玉藻。

 相手にもよるが、ほとんどあっているのだから仕方なかった。




 いやぁ……思わずクニキに出張してもらうことになって、その耐久性に驚きを隠せなかった私です。これはスキルを強化するのもいいかもしれない……

 最終的にはフレンド星4セイバーネロがガッツ耐久という脳筋のごとき戦いをするという……


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ロリメドゥーサですよエウリュアレ様!!(とりあえず、屋台連れまわしで行きましょう!!)

「令呪一画は使った内に入りません!! いいね!!」

「そうね。それはよかったわ。じゃあ、私はこれで」

「ちょっと待ってエウリュアレ。俺も行くからね」

 

 無言の間。二人は睨みあうが、それも数秒の事。やってきたサーヴァントに気付くと、差も何もなかったかのように取り繕う。

 

「……二人とも、何をしているのですか?」

「何でもないわよ、メドゥーサ。それより、私と一緒に向こうの屋台を見て回らないかしら」

「ちょっと。自然に俺も置いて行こうとするのはどうかと思うよ」

「何よ。ついてくる気?」

「当然。そして、代金は全部持とうじゃないか!」

「へぇ? 言ったわね。女神を前に宣言したわねこのマスター! えぇ良いわよ。ほら、ついてくれば良いわ。たっぷり代金押し付けてあげるんだから!」

「どんと来いやぁ!」

 

 一体どうしてこうなったのか。と言われれば、二人に声をかけた彼女が原因であろう。

 メドゥーサ。しかもランサーである。オオガミが暴走しているのはいつもの事としても、エウリュアレまで暴走しているのはレアだった。

 

「あの、別に無理に私と行かなくても……」

「何よ、私とは行きたくないって言うの?」

「い、いえ……そう言うわけでは……」

「じゃあ行くわよ。お題は全部オオガミ持ちだしね」

「当然! やってやろうじゃん! QPはあるし、まさか全部吹き飛ぶなんてことはないだろうしね!!」

「えぇ、えぇ。そうやって慢心してなさい。すぐに涙目に変えてあげるんだから!!」

「……これ、私がいなくてもいいんじゃ……」

「アナ――――メドゥーサがいなくちゃダメだから! 今回の件の中心なんだからね!!」

「えぇ……なんでそんなことに……」

 

 自分の与り知らぬ所で何かがあったようだと理解した彼女だったが、マスターはともかくエウリュアレからの誘いである。断る理由も無いのでついて行くのは全く持って問題なかった。

 

「ところでマスター。吾の分もあるのであろうな?」

「君は最近、ずっと近くにいないかな!?」

 

 ここ最近の這い寄る鬼、茨木。

 さも当然とでも言いたげにオオガミの背中に張り付いて、自分の分も寄越せと要求してくる。

 ちなみに、断るとじわじわと首を絞めてくるという嫌がらせをしてきたりする。なお、現在は全力で地面を踏みしめてオオガミが進めないようにしていた。

 

「汝が吾を編成に組み込んでおるのだろうが」

「組み込んでない時もいるのによく言うよ。実は暇なんでしょ」

「……別に、そんな事は無い」

「図星じゃん!!」

「マスター! ぐずぐずしてるなら置いて行くからね!!」

「えぇっ!! それは困る……!!」

「それで、返答は如何に? 返答によっては、吾の行動が変わるがな」

「くぅっ……分かったよチクショウ!! フードコロシアムとかしてたバラキーがいるとQP残高が不安になるけど何とかなるはず!!」

「良かろう。では、エウリュアレの所までは送ってやろう」

 

 そう言うと、茨木はオオガミを持ち上げて走るのだった。




 すり抜けロリメドゥーサですよ!! やったー!!

 あ、アルジュナさんとカルナさんはアルジュナさんをエルキドゥ連射宝具2ターンでキルして、残ったカルナさんはネロちゃまがやってくださいました。令呪一画なら明日には回復するしね!!


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万能の天災(精神ダメージがあまりにもデカすぎる……)

「無理」

「嫌です」

「あんなもの、普通に勝てるわけないでしょう!!」

「……もう、今回は諦めって事で」

 

 表情が死んでいるオオガミとBB。そして、怒りに毛を逆立て声を荒げる玉藻に、見ていただけにも関わらず精神にダメージを負ったエウリュアレ。

 やはり万能の天才は凶悪だった。というよりも、どちらかと言えばその取り巻きが凶悪過ぎた。

 完全にジャンヌを呼んで来いと言わんがばかりの敵の性能に加え、強化解除も忘れずにな。と言いたげな無敵貫通。しかも、ダ・ヴィンチちゃんの宝具自体に防御無視まで入っているため、いくら防御バフを増やしたとしても意味が全くない。

 

「あまりにも強すぎるよ……もう、このクエストは諦めで。ジャンヌかマーリンがうっかり来てくれない限り放置で。というか、無理にやらなくてもいいんじゃないかな……」

「あ、本気でスイッチ入ってるわ。これ、もうダメね。はい、解散かいさーん」

「なんでエウリュアレさんが仕切ってるのか分かりませんが、私は賛成です。という事で、遊びに行ってきますね!!」

(わたくし)は先に先にカルデアに戻っていますね。流石に今日は疲れたので……勝てませんでしたし」

「うまく采配できなかったのが敗因かなぁ……」

「あんな暴力、普通に無理よ。少なくとも、今のままじゃね」

「ん~……来年には攻略できるようになってるといいなぁ……」

「そうね。私もそうなる事を祈ってるわ」

 

 BBと玉藻はそれぞれ行ってしまい、残った二人は何をしようか考えるのだった。

 

「あ、マスターじゃん。今日はもう周回行かないの?」

「鈴鹿……? あ~……いや、行くよ。というか、今日はもうそれだけやって終わるから! もう高難易度とか行かないから!!」

「マスターどうしたじゃん? ちょっとテンションおかしいみたいだけど?」

 

 涙を浮かべながら叫ぶオオガミを見て、鈴鹿は困惑したような表情で聞く。

 

「自称万能の天才に叩きのめされたところよ」

「へぇ……万能の天才って、ダ・ヴィンチの事? ずっとそんなこと言ってるし」

「そうそう。中々凶悪で、かなり精神削られたみたいよ」

「ふぅん? 強いのかな?」

「編成が中々すごくてね。正直私は見てるだけだったけど、相当ひどかったわよ」

「そんなにかぁ。まぁ。無理に急いでやる必要は無いんだし、大丈夫だよマスター! 今日はゆっくり休んで、明日また挑めばいいじゃん?」

「……そう、だね。うん、今日は行けるだけ周回行ってもう休もう。そうしよう。じゃあ、とりあえず急いで終わらせるために、レッツゴー!!」

 

 やる気が回復したのか、オオガミは元気よく走っていく。

 それを見ていた二人は、

 

「まぁ、マスターが元気になってくれてよかったじゃん?」

「そうね。まぁ、休むための全力なんでしょうけど」

 

 そう言って、一拍。冷静になった鈴鹿は、自分が編成の中にいたことを思い出して走り出すのだった。




 マジであんなのどうしようもないんですけど。一体どうやって倒せっていうんですか。
 いや、何とかネロ祭が終わるまでに倒したいとは思うんですけどね。精進せねば……


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最後の晩餐をくれてやった!(あれ、鐘の音が聞こえません?)

「万能の天才とかなんとか言っても、究極的に面倒な人間ってことなんだよ!」

「そうですそうです!! あんなのはもう嫌ですからね!!」

「全く、どうして私は最後の最後で倒れたんですかね?」

「大体原因は俺ですね。はい。後少しで勝てるってところで油断しちゃったから……」

「大丈夫ですよ先輩。次は無い様に気を付ければいいんですし」

 

 なんだかんだ悲鳴を上げつつも、必死で倒したダ・ヴィンチ。

 最後の晩餐になるまいと必死で足掻き、最終的にはドデカい注射器を突き刺して、その中身を寄越せと叫びたくなるような物体を体内に流し込んで爆発四散させた彼らは、明らかな精神的疲労によって疲れたようだった。

 

「ふぅ……それにしても、結局メダルほとんど集まってないね」

「銅はそろそろ終わりそうですけどね」

「ですね。というか、この時点でこんな難易度だからこの先がかなり不安なんですが」

「玉藻、それは言っちゃいけないよ……」

「ですが……まぁ、何とかなりますか」

「うんうん。というか、何とかするよ」

 

 一体この先に何が待っているのかと思いつつ、はたしてどうしようかと考えるが、当然案など思いつくわけも無く。

 

「あぁ、そういえば、翁さんが追加されてましたよ」

「……よし、諦めよう」

「……センパイ、早すぎです。せめて一回くらい行って足掻いて無様に全滅してから言ってください」

「そんな理不尽な!!」

「BBさん、舐めないでください。先輩はここまで諦めるとか言っておきながら本当に諦めた事なんてあまりないですから」

「あの……そのあまりの部分に入る可能性は考えないんですかね?」

「玉藻まで攻撃してくるとは……いや、まぁ、行ってみるけども、勝てるかわからないんだよね……通常攻撃にも即死持ってるし……大丈夫かな……」

 

 どうしようかと悩んでいると、オオガミは背後から、

 

「なら、短期決戦で、吾を連れて行けばよかろう?」

 

 と、声をかけられる。

 振り向くと、そこには当然の如く茨木がおり、不敵に笑っていた。

 

「……バラキー。そうは言っても、勝てるかどうか……」

「その時はその時であろう? まずは勝てるかどうか。汝の得意な耐久でもすると言い。だが、それで勝てぬのなら吾が瞬きの間で滅ぼしてくれようぞ」

「……ふむ。じゃあ、とりあえず偵察からだね。速攻決着付けるか、耐久するかっていうところだ。まずは玉藻とマシュを加えて、レッツゴー!!」

 

 そう言うと、耐久の為のメンバーを考えつつ、オオガミは歩き出すのだった。

 マシュと玉藻の高難易度連れまわしは続く。




 実は昨日の23時半時点で倒したんですよ、ダ・ヴィンチちゃん。
 玉藻・BB・ジャンヌの装甲が想像以上に硬かったんですけど、最後のライダー群で玉藻が落ちて後ろから出てきたマシュで残りをゴリ押しして終わりました。

 じいじとか、勝てる気がしないんですけど……


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翁の恐怖(通常攻撃で普通に死ぬんですがそれは)

「爺は酷いと思う」

「即死だけじゃなくて普通に通常攻撃も痛いんですもん、あの方」

「クリティカルで私が一撃なんですけど!? どういう事なんです!? 訳が分からないんですが!!」

「……ねぇ、私いる必要無くない?」

「エウリュアレはマスコット――――お守りという事で」

「私は一体何なのよ」

 

 その言葉に、その場の全員が「女神だよ」と突っ込みたい衝動を抑え、なんとかスルーする。

 

「それで、結局どうするのよ」

「う~ん……正直、即死ゲーを何度もやる気力はないから諦めかな。今回は流石に無理だよ」

「あらぁ? センパイ、諦めが早すぎません? もっと粘ってくださいよ。このBBちゃんの試練を越えておいて、あの皇帝に負けるとか許しませんからね?」

「んな無茶な……いや、出来るだけ抗っては見るけど、正直高難易度に時間を取られてるとメダルが足りないわけです。なんで、先に周回行ってくるね!」

「あっ! ちょっと、センパイ! 逃げないでください!」

 

 BBが引き留めようとするもすでに遅く、オオガミは走り去った後だった。

 置いていかれた彼女らは呆然とするが、ふと思い出したようにマシュが口を開く。

 

「そういえば、さっき見たらQPも素材もゴッソリ無くなっていたんですが、誰か知っていますか?」

「BBちゃんは知りませんよ? あの注射器の中身は実費ですし」

(わたくし)もです。というか、どうせなら私を強化してくだされば良いのに」

「あぁ……そういえば、さっきメドゥーサが最終再臨した上にスキルレベルも大きく上がっていたわね」

 

 エウリュアレのその一言に、その場の全員が硬直し、エウリュアレを見る。

 

「え、エウリュアレさん。その話、本当ですか?」

「嘘言ってどうするのよ。あ、メドゥーサと言っても、ランサーの方よ?」

「ほー。へー。ふぅーん。センパイ、そんなことしてたんですねぇ……まぁ、理由は大体察しが付くんですけど」

「前々から、悩殺パーティーを組みたいって言ってましたもんねぇ。そこに魅了持ちが来たら確かにそうなるかもしれませんけど、どうなんですかね?」

「……貴女達、そもそも槍系統は全く関係ないじゃない」

「「それはそれ! これはこれです!!」」

 

 息のピッタリ合ったBBと玉藻の一言に気圧され、エウリュアレは静かになる。

 二人はその勢いのまま顔を見合わせると、

 

「これはもう直談判しかないです!」

「当然です! という事で、私たちはこれで!」

「あ、私もついていきますよ!」

 

 走り去るBBと玉藻を追いかけるマシュ。

 エウリュアレはそれについていかず、一呼吸置いた後、

 

「さて、メドゥーサのところにでも行きましょうか」

 

 そう言って、歩き出すのだった。




 BBが即死耐性高いって聞いたので運用したんですけど、通常で死ぬのはどうすれば良いんですかねこれ。無理なんですが。

 という事で、今回は最悪来年に持ち越し事案ですね。精進せねば。


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星四鯖配布ですか……(実質二択な件について)

「はたして、どうしたものか……」

「どうしたのよマスター。高難易度を全力で無かったことにしてるのに、更に何を企んでいるわけ?」

「1000万ダウンロード記念の星四選択一体配布でね? ステンノにしようか、不夜アサにしようかを考えていたんだよ」

(ステンノ)にするべきよ」

 

 即答したエウリュアレ。言うと思っていたオオガミは、それに対して苦笑いで答える。

 

「まぁ、女神さまのお願いだし、ステンノかな……」

「そうよそうよ。私のお願いなんだから聞きなさいよ」

「どうしてこの女神はいつも偉そうなのか……」

「女神だもの。仕方ないわ」

「……まぁ、女神さまだしね。仕方ないか」

「えぇ、仕方ないのよ。という事で、それでいいわね」

「はいはい。それで、いかがいたします? 女神さま」

「そうね……とりあえず、(ステンノ)が来ても良い様にしておかないとね」

 

 エウリュアレはそう言うと、楽しそうに歩き出す。

 オオガミはそれについて行くが、その頃にはネロ祭が終わっているだろう。と思っていたりする。

 

「それで、何をするの?」

「そうねぇ……とりあえず、手に入れたら一日でレベルマスキルマできるようにするのよ」

「馬鹿言わないでください女神さま。周囲からの視線が突き刺さりまくって死にます」

「あら、そんなこと言っても、私の事をレベルマスキルマどころか、絆礼装まで渡されて置いて、今更何を言うのかしら?」

「それはそれ、これはこれだと思うんですけど。というか、スキルマは結構後の事じゃん」

「いいのよ。素材に余裕があるなら大いに使いなさい。というか、アサシンなんかほとんど使わないんだからこういう時にパーッと使っちゃいなさいよ」

「えぇ……メルトリリス用の素材が……」

「口答えしない。良いわね」

「そんなぁ……あ。じゃあ、QPはエウリュアレの実費って事で」

 

 名案とばかりにオオガミは思った事を口にするが、エウリュアレはそれを聞いて、キョトンとしたような表情で、

 

「ねぇマスター? 本当に私がそうしていいのかしら?」

「……あぁ、うん。ごめんなさい。流石にQPくらいはこっちの負担じゃないと心が折れそうだ」

「そうよね。よかったわ」

 

 か弱い女神さまにQPを出させるなど、あってはならないことである。それくらい実費で出さねばなるまい。

 その時のオオガミはそう思ったそうな。

 

「というか、そう考えるとやることはQP集めだけかしら?」

「そうだね。QPが無いだけだし」

「そう……じゃあ、QPを集めに行きましょうか」

「……え?」

「という事で、レッツゴー!」

 

 返答を許さず連れて行くエウリュアレ。オオガミはこの後、頑張る事を強いられているのだった……




 星四鯖配布とか、悩みますよねぇ……期間限定がいたら更に考える……

 というか、ダウンロード記念って、本当にこれだけ……? 1000万だよ? 区切り、めっちゃいいよ?
 期待しながら待つしかないですねこれは!!


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なんだかんだ言って、エウリュアレがお気に入りなのかな?(冷静に考えると、私は編成に入ってないものね?)

「メダルも無事終わりそうだね。うん。これで安心してバラ集めが出来るよ」

「そして、油断したところをサクッと寝首かかれて一撃ね」

「ちょっと待って。何? 何が起こるの? 一体どんな事件が起こるの? アイテム交換でそんな事が起こっても困るよ?」

「冗談よ冗談。笑って流しなさいな」

「冗談に聞こえないんだけど……」

 

 バラをどっかに持って行く気じゃないのか、この神様は。と思うくらいには本気で警戒したりしたのだが、本気で警戒されたことに気付いた瞬間の引きつった表情から、本当に冗談のようだった。

 

「……それで、この後はどうするの?」

「バラを集める予定だよ。というか、もう高難易度はやりたくないかな」

「そうねぇ……私も高難易度はもうごめんよ。耐性皆無の男性バーサーカーならまだしも、耐性持ちは本当に勘弁よ」

「耐久は本当に時間かかるからねぇ……やってられないよ流石に」

「えぇ。だから、やるのは最低限にしておきなさい」

「高難易度とか、そうそうやるものじゃないから」

 

 ため息を吐きつつ、何をしようかと考えるオオガミ。ここ最近エウリュアレは編成に組まれてないせいで、暇だと思われるので、彼女も遊べるようにしたいなと思う。

 

「ん~……どうしようか。というか、冷静に考えると、ネロ祭始まってからずっとエウリュアレと居る様な……?」

「奇遇ね。私も、貴方が周回していない時はずっと一緒にいる気がするわ」

「……何だかんだ、一番絡みやすいんだよね、エウリュアレは」

「女神に対して随分と気軽よね、貴方。後で憶えて置きなさい」

「可愛い可愛い最強系美人女神様であるエウリュアレはそんな恐ろしい事はしないって信じてるから」

「そんな当然のことを言っても、許さないからね」

「……何かして来たらエルキドゥに報告するから」

「それは流石に酷いと思うわ。ちゃんと悪戯も手加減するに決まってるでしょ」

「はたして、ステンノが来ても同じことを言ってくれるかどうか……」

「それは……まぁ……その時よ」

 

 エウリュアレの言葉に、何となく嫌な予感を覚えつつも、そんなに危険はないだろう。と思うのだった。

 

「はぁ……それにしても、まだ12箱分かぁ……道のりは長いねぇ……」

「100箱分やるんでしょう? 時間、大丈夫?」

「何とかなるでしょ。メダルも終わるし、のんびりやりますよ」

「のんびりやったら終わらないんじゃないかしら……?」

「じゃあ、マイペースに?」

「それこそのんびりじゃないの」

「そうだねぇ……まぁ、何とは100箱分稼げる程度の気力で頑張りますよ。女神さま」

「貴方に『女神さま』って呼ばれると、何となく馬鹿にされてる感じなのよねぇ……どうしてかしら?」

「さぁ? そんなの聞かれても分からんですよ」

「そうよね。まぁいいわ。私はメドゥーサの所に遊びに行ってくるから」

「……エウリュアレ様? あんまりいじめないでくださいよ?」

「ちょっと、私がそんなことをすると思って? ここに来る前の私ならいざ知らず、今の私よ? 大丈夫に決まってるじゃない。貴方は安心してバラを集めてきなさい」

「……不安だなぁ……」

 

 オオガミはエウリュアレを見送りつつ、そう呟くのだった。




 本当に、絡ませやすいと言いますか、新キャラを出すにしても大抵エウリュアレをクッションに入れると言いますか、今回のネロ祭りに限って言えばエウリュアレがほぼメインじゃねぇかとか、突っ込みたいんですがそれは。ノッブどこ行ったノッブ。

 いい加減にしないと、これはそろそろ不味いんじゃ……メルトが来てくれてもメルトをメインに出来る自信が無いんですがそれは……!!


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想像斜め上で全く集まらない(花びらをおおぉぉぉぉ!!! 集めるうううぅぅぅぅぅ!!!)

「……正直、想定外なんですが」

「花びら、集まらないわね」

「こんなもんをちんたら集めてるより、普通に周回した方が良いんじゃないのかい?」

「いやいや船長。一攫千金は目指すべきですよ。というかこっちの方が圧倒的に効率良かったりするわけですよ」

「ふむ……確かに、こっちの方が良いかもねぇ。というか、すでに20箱分は集まってるじゃないか」

 

 ドレイク船長の疑問に、オオガミは胸を張って応える。

 

「それで足りるなら苦労しないよ!!」

 

 目標100箱。現在25箱分。開封済み11箱である。

 圧倒的に間に合わないのだが、それでも諦めないで全力で果実を喰らい周回していくオオガミ。それに付き合わされているドレイクとエウリュアレも大変なモノだが、もはや慣れたものなので問題はない。

 しかし、今までとはけた違いのレベルで周回しているので、若干心配している点もあるのだろう。

 

「うぅむ……礼装もポロポロ落ち始めたから楽になると思ったけど、見込みが甘かったか……これ、終わらない気がする……」

「ちょっと、諦めたような事を言わないでよ。さっきまであれだけ諦めないような事を言っておきながらその発言はどうかと思うわ」

「いや、頑張るけどね? 最後まで全力疾走するけどね?」

「頼むよマスター。諦めるなんて性に合わないじゃないか」

「当然、諦めないわよね。私のマスターですもの」

「……諦めないって言ってるつもりなんだけどねぇ……?」

 

 どうやら信じられていないというか、からかわれているような感じがするオオガミだったが、大体いつもの事なので別に気にするような事は無い。

 しかし、本当に花びらが集め終わらないのは、流石にどうしようもない。

 

「うぅむ……やっぱり、メダルとか無視してバラだけを集めるべきだったかな……」

「そうねぇ……まぁ、私もそう思うわよ? 高難易度とか、完全に疲れただけだったし」

「明らかに攻略させる気が無いのとかあったしねぇ。むしろ、ああいうのをクリアできる連中が凄いよ。アタシらには無理なもんも多いさね。その中で3つ以外は何とかクリアしたんだ。大いに祝おうじゃないか」

「むむぅ……凄い複雑な気分……結局勝ててないんだよなぁ……」

「だから、来年またやればいいのよ。それに、来年ならあの英雄王にも報復が出来るわ……」

「……悩殺する気ですか女神さま」

「圧倒的な攻撃力で私の事を一撃で屠ってくれたこと、忘れないからね……うふふふふふふ……」

 

 エウリュアレの目が怪しくなってきた辺りで嫌な予感がし始めたオオガミは、とりあえず再出撃の為の果実をかじるのだった。




 しかし、久しぶりにドレイク船長をこの作品で見た気がする……うぅむ、完全にエウリュアレとノッブの影に隠れておるぞぅ……エリちゃんとかネロも最近出てきてないし……最近目立ってきてるのはバラキー……?

 それは置いておいて、えぇ、はい。本当に集まらないんですが。なんだこれは……花びらってここまで難関だったのか……想像以上ですよこれは……!!

 50箱で限界そうな予感……やれるだけはやりますけどね。


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日常
ステンノ加入は日曜日よ(ボックスは35箱で限界だったし、ガチャは――――!?)


「無理だったね」

「そうね。流石に50も開けられないんじゃない?」

「残念。来年は絶対100箱集めてやるから覚悟しておけ、ネロ祭!」

 

 宣言しつつ、結局花弁は21000ちょいしか集まらなかったりした。大体35箱くらいなのだが、まぁ何人かを育て上げるのには十分な量だろう。

 

「チケット貰ったけど、結局使えるのは日曜日なんだよね」

「遠いわね。待ち遠しいわ」

「そうだよねぇ……っていうか、今更だけど、なんで一緒にいるわけ?」

「……特に理由は無いわ」

 

 聞かれた瞬間、エウリュアレは一瞬だけオオガミの手元のチケットを見たような気がしたが、気のせいだろうと思う。まさかチケットを狙っていたり、するわけないのだ。決して。

 

「ところで、どこに向かってるの?」

「召喚室」

「……ねぇ、マシュに石を使うなって釘を刺されたばかりじゃなかったかしら?」

「ちょっと何言ってるかわからないな。それはそれ、これはこれだよ」

「どこに差があるのかが全く分からないわ。どの道怒られるじゃない」

「……その時はその時という事で」

「完全に怒られるの前提じゃない」

「そ、そんなことないよ」

「全くどうかしらね?」

 

 そんなことを言い合いながらやってきた召喚室。

 1000万ダウンロード記念とかなんとかで、なにやらピックアップしているらしく、あの『徒歩で来た』で有名なマーリンが来るとかなんとか。

 

「マーリンね……出てくる気がしないんだけど」

「そもそも出ると思ってやってないから。というか、別段欲しいキャラもいないんだけどね」

「そうよね。ステンノが来るんだもの。余裕を持ってないと」

「うんうん。という事で回すね」

「全く関連性が見えないのだけれど」

 

 エウリュアレの反応すら許さず即座に石を投げ込むオオガミ。頬を引きつらせてエウリュアレはそれを見守るが、虹や金に光るどころか、動作が重くなることも無く普通に回り始める。

 

「やっぱりはずれかぁ」

「爆死とかばれたら後で本当に叱られそうね……まぁ、ステンノの為の素材になるなら万々歳だわ」

「のんきだねぇ……はぁ、怒られそうだなぁ……」

 

 そう言っていると、輪は三本になり、収束。サーヴァントが来る。

 

「さて、誰かな――――!?」

「……マスター。貴方、殺すわよ?」

 

 金枠。キャスター。

 しかも、ピックアップ的に想像できるのは一人しかおらず―――――

 

「こんにちは、カルデアのマスター君。私はマーリン。人呼んで花の魔術師――――」

「……おぉぅ」

「……とりあえず、視線を突き刺せばいいのかしら」

「――――気軽にマーリンさんとでも……って、どうして彼女は怒っているんだろうね? 僕、何かしたかな?」

「とりあえず射殺すからそこに立っていなさい」

 

 即座に弓を取り出したエウリュアレを見て全力で止めに走るオオガミ。マーリンはついて行けず混乱しているが、じきに慣れるのだろう。

 

「えっと……歓迎されてないのかな?」

「いやいやいや。そう言う事ではなく、ただ単に彼女の虫の居所が悪いと言いますか、人間の私としてはサーヴァントの事を抑えてられないので颯爽とこの場から逃げて誰かに休憩室を聞いて先に行ってもらいたいと言いますか!!」

「そ、そうかい? じゃあ、先に行かせてもらうよ」

「出来るだけ早く落ち着かせていくから待っててね!!」

「あっ、ちょ、殺りそこねたわ!!」

 

 逃げ去るマーリンを見て、若干本気で怒るエウリュアレを抑えるオオガミ。

 数十分の格闘の末、なんとか彼女を落ち着かせると、マーリンの後を追って休憩室へと行くのだった。




 ボックスは時間切れでゲームオーバー。しかし、マーリンが来たので良しとします。
 レベルマックスはしたんですが、スキルは玉藻の成長が終わってないのでやらせません。諦めるが良い(ドヤッ

 チケットを使えるのが日曜日だと知らず探しまくったのは秘密です。


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そう言えば、ノッブの姿を最近見ないんだけど(遊んでたんですね、ノッブ)

「ということで、儂は水着を手に入れられなかったから適当に暴れておったわけじゃよ」

「そして、私はそれについて行っていたわけだ」

「で、私はそれを遠くから観察していたわけです」

「なるほどなるほど。つまり、俺らが周回している間、シュミレーターを使って遊んでいたわけか」

 

 しばらく会っていなかったので探したら、ノッブの工房でQPに埋まって遊んでいたので、何をしているのかと聞いた結果がこれである。

 言い分は以下の様に。

 

「……QPがおいしくてな。うまうまじゃった」

「あぁ。アレは私も楽しかったぞ」

「いくらか盗りましたが、誤差の範囲内なのでオッケーだと思います!」

「よし、BBの育成はしばらく無しで」

「なんでっ!?」

 

 とりあえず手伝いもせずに遊んでいたらしいBBは育成を遅らせるという手段を持って制裁を下し、残った二人はどうしようかと考える。

 

「というか、そもそも儂らが自力で何とかしたんじゃし、別に構わんのではないか?」

「……それもそうか。うん。じゃあ話はこれで。解散!」

「……ご主人様は大体いつもサーヴァントに対して甘い感じだな」

「おぅ。どストレートに突っ込んじゃいけない所を突っ込むなこのメイドは。そんなことを言うと面倒なことになるじゃろうが」

「いや、別に甘いというわけじゃなくて、怒る必要が無いから何も言わないだけなんだけどね? 不満と言われても困るけどね」

 

 性格はどうしようもない。と苦笑いで答えるオオガミ。

 ノッブはほっと息を吐くが、メイドは何かを考えているようだった。

 

「というか、どうしてこんなことになったんだっけ?」

「そりゃ、マスター。お主が突然儂の工房に入ってくるからじゃろ」

「ふむ……というか、QPに埋まってたけど、刺さらないの?」

「む? それはそれ、これはこれじゃろ? こう、ビジュアル重視的なそれじゃ」

「ビジュアルも悲惨なような……美人だから良いのか……?」

「儂は何をしても似合うからね! 是非も無いね!!」

 

 ノッブは胸を張ってそう言う。ただ、オオガミの疑問を否定しなかったという事は、実際刺さっているらしい。

 やめればいいだろうに。と思わなくもないが、本人たちが楽しそうなので禁止はしないのだった。

 

「さてと。じゃあ、船長とリップとバラキー探して、周回行って来ようかな」

「おぅ。儂らはいい加減休憩室に行くからな。また後でな!」

「うん。また後で」

 

 オオガミはそう言うと工房を出て、三人を探しに行く。

 残ったノッブ達は、QPを片付けてから休憩室へと向かうのだった。




 イベントとか見る感じ、皆QPとか自前で稼いでるイメージ……ところで、骨とか種が足りないんですが、どこを襲撃すればいいんでしょコレ。とりあえず宝物庫荒らしてきますね。


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年末のあの番組みたいなことってやってみたいよね(でも、無策なんでしょう?)

「さて……世間は今、マーリンピックアップで騒いでいますが、正直QPが無いので育成もなにもありません。という事で、年末に大イベントしたいんですが協力してくれるよね!?」

「話の関連性が全く見えんが、乗った!」

「とりあえず参加しますよ! 絶対面白そうですし!」

「もしかして、私は小道具担当かしら。まぁ、別に良いんですけどね」

 

 オオガミの何か企んでいるような言葉に、しかし楽しそうに笑うノッブとBB。メディアは小道具担当になるのを察し、早々に諦めていた。

 

「で、肝心の企画内容はなんじゃ? 年末という事は、何か考えておるんじゃろう?」

「もしかして、あれです? 年末恒例と言われていた、あの伝説の番組ですか!?」

「……儂、覚えがあるんじゃが。とりあえずハリセンでも用意しておくべきか」

「とにかく笑えるネタを用意すればいいんですよね! 任せてください!!」

「やだ……この二人、察しが良すぎるんだけど……」

 

 もはや何も言わずともやりそうな勢いの二人に、若干気圧されるオオガミ。

 彼女たちは一体どこへ向かうのか。そのうち漫才をやっていそうなので、この二人を見守っている方が面白いのではないだろうか。と一瞬思ってしまうのも、無理はないだろう。

 

「さて、詳細内容に移ろうではないかマスター。舞台はシミュレーターを使うのか?」

「そうだね……カルデアをそのまま使うわけにはいかないし、改造した後に直すのは中々骨が折れるみたいだしね」

「……おぅマスター。今一瞬儂らを見て苦笑いになったのはなんでじゃ? 確かに儂らは改造したあと直すのに苦労しておったけども!」

「完全に理由分かってるのに聞くのは一体どういうことなの!?」

「それはそれ、これはこれじゃ。儂らが別に何でも無さそうに言ってたらシミュレーター使わないつもりじゃったろ!!」

「なぜばれた……!! ノッブ……さては心を読んだな……!?」

「見ればわかるわ!! お主分かりやすいからな!!」

「そんなバカな……!!」

「センパイ、今更です」

「そんなわかりやすいか……!!」

 

 衝撃の事実と言わんがばかりの表情で驚くオオガミ。

 そう言うところだよ。と突っ込みたいノッブとBBだったが、あえてここは黙って置く。

 

「それで、ほとんど何も決まっていないみたいだけど、どうするの?」

「あぁ、そうそう。内容ね。実はそんなに考えてない!!」

「よしマスター。首を出せ。すっ飛ばしてやる」

「無策で突然イベントとか、無謀です。ぶっ飛ばしますよ?」

「二人が怖いよ!?」

「まぁ、冗談じゃが……それでどうするつもりだったんじゃよ……」

「えっと……お題箱を活用しようかと」

「それ、儂らを呼ぶ必要あったか……?」

「あるよ。三人は裏方部隊だし。仕掛けられる側は5人だけど、そのメンバーも決まってないから、先に必要な仕掛ける側だけは決めておこうかと。三人なら誰が相手でもやってくれそう」

「む……信頼されているなら応えるしかないな! 儂に任せよ!!」

「ノッブだけじゃなくて、BBちゃんにもお任せを!!」

「私、必要あるかしら……まぁ、頼まれたことはするわ」

「お願いね!! という事で、お題箱に書き足してくるね!!」

 

 そう言うと、オオガミは部屋を出て行くのだった。




 突発的に思いついちゃったんだから仕方ないです。
 あ、本当に募集はしますよ。こういうのをこの鯖がやってほしい的なのがあったら活動報告のお題箱にお願いします。新規に作るわけじゃないので、既存のお題箱を流用で。

 舞台も考えねば……安直にカルデアでいいのかな……?


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明日から交換開始……!!(QPが無いんだけどね)

「ついに明日よ、マスター。準備は良いわね? 具体的にはQPは万全よね? 種火は十分でしょう?」

「……えっと……」

「……ちょっと待ちなさい。その沈黙は何かしら。何? 何が足りないの? この数日の間に何をしたの? ふざけてるの?」

「いえ、あの、女神さま……あのですね? QPが大きく足りなくてですね……理由は主に貴女の妹様もちょっと絡んでいると言いますか、実際は玉藻とマーリンに放り込んだのが主な原因だったりと言いますか……」

 

 エウリュアレの殺意のこもった冷たい視線に気圧され、視線を逸らすオオガミ。

 

「ねぇ、すぐにレベルマスキルマするって言ってたわよね?」

「あれ……出来るならって言わなかったっけ……?」

「知らないわ。言おうと言わなかろうと、やるのよ」

「ちょっと本気で何言ってるかわからないです女神さま」

「私の視線から逃れられると思わないでよ? もう、ただ守られるだけの少女じゃなくなってしまった私は、知っての通り男性に対してはかなり凶悪よ?」

「マスター相手に宝具を放つ気ですよこの女神!! 怖い!!」

 

 男性に対し、魅了からの視線で確殺していく我らの女神さま。その脅威が明らかにオオガミに向いたのだが、彼自身は別段困ったように笑うだけで、本気で警戒してはいなかった。

 もちろん、最後には微笑んで許してくれるだろうという思いがあったからだろうが。

 

「全く……貴方は何時もそう。大体何かを忘れてるのよ。想定外が絡むと、すぐにそっちに流されるんだから。今回だって、主な原因はマーリンじゃない。彼を育てる前に、玉藻を育てておこうと思ったんでしょう?」

「そ、そうだけども……なんというか、見透かされてる感じが凄い……」

「当然。どれだけ一緒にいると思ってるのよ」

「そりゃ、絆レベルがMAXになるまで一緒にいたけどさぁ……」

「でしょ? どうしてそれでバレないと思うのかしら」

「……まぁ、そうだよねぇ……とりあえず、時間はかかるけどスキルマはするし、レベルマは明日中にするよ」

「……わかったわ、妥協してあげましょう。でも、全力でやりなさいよ? ボックスがまだ残ってるのは知ってるからね?」

「……ま、任せといて!」

「不安しかないわ……」

 

 実際に明日になって種火を使ってからQPは考えるしかない。宝物庫は荒らすとしても、しっかり溜まるかが分からないのだが、最終的にはスキルは上げるのでいいだろう。

 

「とりあえず、次のイベントか特異点発生までには何とかするよ」

「えぇ、頑張りなさい。今月中よ!」

「んな無茶な!? って、チケット盗られてる!?」

 

 拒否権は無く、エウリュアレはいつの間にか奪い取ったチケットを持って部屋を出て行ってしまう。

 数秒か固まった後、その後ろをオオガミは本気で追いかけるのだった。




 うちの女神さまは対男性最強……ロリメドゥーサも来て、後はステンノが来れば悩殺パーティーの完成だぁ!!

 さて、宝物庫荒らさなきゃ……


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ステンノ様のスキルが上がらないのぉぉ!!(いいから蛇の宝玉を集めに行くわよ!!)

「うわああぁぁぁぁぁ!! 下姉さまお許しください!! 上姉さまのスキルレベルが6,6,7で終わっちゃいましたぁぁぁぁ!!!」

「馬鹿言うんじゃないわよ!! 蛇の宝玉が足りないだけなら周回するわよ!!」

「うひゃあああぁぁぁ!! 女神さまがやる気だぁぁぁぁ!!!」

(エウリュアレ)は変わったわね。明るくなったみたい」

「お姉さまが来てからあんな感じですよ」

「そう……私も混ざって来ましょうか」

「……行ってらっしゃいませ」

「何言ってるの。貴女も行くのよ、メドゥーサ」

「えっ……?」

 

 本気で叫びつつ周回しに行くオオガミとエウリュアレ。ちなみに、エウリュアレは編成に入らずについて行っているだけである。

 そして、新たにやってきたステンノと、最近連れまわされ始めた槍メドゥーサは周回編成に入っており、後方で待機しているだけだ。

 エウリュアレと共にアガルタに突撃していくオオガミと、楽しそうについて行くステンノと引きずられるメドゥーサ。そんな4人を見ている人物たちがいるのだった。

 

「……何となく、儂は最近忘れられてる様な気がしてきた」

「余も同じ気分なのだが」

「吾はちょっと襲撃してくる」

「あっ!! (アタシ)も行きたい!!」

「エリザが行くなら儂らも行くか?」

「あまりマスターに負担をかけるのは良くないだろう。エリザも捕まえて引き留めるぞ」

「むぅ……相性不利なんじゃけどなぁ……」

 

 最近静かにしていたノッブ達は、珍しく休憩室で話していたのだった。

 当然、オオガミについて行こうとした茨木とエリザは全力で阻止され、引きずり戻されるのだった。

 

「ぐぬぬ……吾が捕まるとは……」

「まぁ、流石に銃弾の雨に晒されながらネロを避けるのは至極困難じゃろ」

「仕切り直しを使われたら少し厄介ではあったが、皇帝特権でゴリ押しすれば何とかなるか」

「というか、ネロもファンネルを使えばもっと楽になるかもしれんがな」

「アレはあくまでも夏仕様だ。一年中水着は流石に寒いであろう?」

「水着しか持ってない奴らにそれを言うのは酷というものじゃろ……」

 

 これからの季節、どんどん寒くなっていくので水着鯖にはなんとか温かくしてほしいものだ。

 と、そんなタイミングで休憩室に入ってくる人物が一人。

 

「やぁ、花のお兄さん事マーリンさんだ。皆元気かい?」

「……色濃いのが来たのぅ……」

「う、むぅ? どこかで見たような……うぅむ……なんというか、何となく殴ってみたいような気がしないでもない」

「おいマーリンとやら。とりあえず一発殴らせろ」

「怖い怖い。何ここ物騒なんだけど。どうして入って数秒で変な目で見られたと思ったら殴られることになってるのかなっ!?」

「当然、お主の人柄が原因じゃろ」

 

 ほぼ瞬間的に敵意をむき出しにするような態度を取られたマーリンは頬を引きつらせていた。

 なお、この二人はマーリンによる英雄作成による殲滅行為をまともに受けてしまった組と言うのがおおよその原因であろう。

 

「うぅむ……何かしたかなぁ……」

「まぁ、たまにそうやって荒ぶる時があるからな。諦めるが良い」

「なんてことだ。酷いね。僕は何も悪くないじゃないか」

「仕方あるまい。とりあえず、そこに座って諦めて殴られて置け」

「酷いね!? いや、中々理不尽だ」

 

 ノッブの言葉に困惑するマーリン。

 しかし、彼は逃げられる訳も無く、おとなしく座るのだった。




 忘れ去られかけていたノッブ達を再登場させてステンノ様のシーンをちょっと保留したんですが、このままいくとステンノとエウリュアレがほとんど同じようなキャラになる様な……?

 そして、エリちゃんの存在が薄れて行ったのは偶然ですね。仕方ないです。

 あ、ステンノは悲しい事に素材不足でスキルレベルが上がりませんでした(死に顔


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回れ回れ……イベントの気配!!(女神さま!! どうか、どうか強化猶予時間の延長を!!)

「撃ち落せぇぇぇ!!!」

「狙い打つ!!!」

 

 放たれる大砲とスナイパーライフル。

 圧倒的威力でラミア達を吹き飛ばし、宝玉を落とせと暴れるオオガミ率いるライダー軍。後衛待機しているゴルゴーン三姉妹(メドゥーサはランサーとする)は、ぼんやりとその様子を眺めている。

 当然の如く、そんなに多く集まるわけも無く、先ほどようやく第三スキルが上がったばかりだった。

 

「林檎食べちゃいなさいよ。ほら、早く」

「何言ってるんですか女神さま……イベント待ちに決まってるじゃないですか……」

「貴方の方が何言ってるのよ。(ステンノ)の為に頑張りなさい」

「えぇ……あと二日ですよ女神さま。どうかお許しくださいな」

 

 頬を膨らませつつ、文句を言うエウリュアレと、呆れた顔で答えるオオガミ。

 そんなやり取りに呆れた表情をするドレイクとメイドオルタ。楽しそうに見ているのはステンノとメドゥーサだった。

 

「それで、あと22個よ? 大丈夫なのかしら?」

「当然。きっと終わるよ」

「それ終わらない奴じゃない……」

「なにおぅ!? それが事実だったら、エウリュアレのスキルレベルとか、聖杯使ってレベル100とかしなかったよ!?」

「それはそれ、これはこれよ。実際、放置されてるのが何人かいるじゃない」

「それこそ、それはそれ、これはこれ、だよ。これは趣味だから。実戦を一切考えてない趣味パだから。だから、全力だから」

「何それ……いえ、まぁ、私たちはあんまり汎用性高くないけども……」

「だからこそだよ。男性絶対殺す女神様パーティーで、男性に対して絶対的攻撃力を持って完封勝利をするためだけのパーティーだよ!!」

「……そう、それはちょっと面白そうね。ていうか、そんな戦いの為だけに育ててたの?」

「……いや、別にそう言う理由だけではないんだけども」

 

 オオガミの何かを隠しているような言葉に、エウリュアレは首をかしげるも、何となく悪い気分ではないのでいいかと思うのだった。

 

「それで、予定としては次のイベントが終わるまでにスキルマなのかしら?」

「まぁねぇ……ついでにQPも増やせれば、ロドゥーサさんもスキルレベルを全部10に出来るんだけどねぇ……」

「えぇ、えぇ。(ステンノ)優先よ。当然じゃない」

「だよねぇ……まぁ、任せておいて。何とかしてみるよ」

「……えぇ、頑張りなさい。マスター」

 

 エウリュアレはそう言うと、ステンノたちの元へと歩いて行く。

 オオガミは息を吐き、前を向く。残るはエウリュアレの言う通り22個。それが終わればQPを回収し上げるのみである。

 

「よし、じゃあ二人とも、頼んだよ」

「無論だマスター。任せるといい」

「あぁ、任せな。一切合切奪い尽してあげるよ」

 

 三人はそう言うと、再びラミアへと向かっていくのだった。




 あ、集まらない……全然集まらない……イベントを……待つのです……

 あ。明日から諸事情で金曜日まで更新できるか怪しくなるので、最悪の場合投稿されません。出来れば途切れさせたくないんですけどね……限界まで頑張りますよ……


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蛇の宝玉をお恵みください!(アイドルにも無理なものはあるから!)

「エリちゃ~~ん!!」

「どわぁ!? な、何するのよ子犬!」

 

 突然背後から飛びつかれ、体勢を崩すエリザベート。

 

「素材を! 蛇の宝玉をください!」

「えぇ!? 蛇の宝玉って言われても……それ、ラミアの素材じゃない。どうして(アタシ)?」

「……ほら、イベントの主役だし」

「主役……良い響きね。でも、流石にラミアは無理よ。援護はしてあげるわ」

「え、エリちゃんが釣られない……!? おかしい……さては貴様、エリちゃんじゃないな!?」

「子犬の中の(アタシ)のイメージ! どうなのよそれ!!」

 

 主役と言われて目を輝かせて突撃するエリちゃんはもうおらず、自分と相手の相性を考えて辞退するという驚愕の事実。

 オオガミはその事実に、じりじりと後退りをし、走り去る。

 

「ちょっ! 待ちなさいよ!」

「嫌ですぅ!! 主役の座を諦めたようなアイドルとか知らない~!」

「ちょ、酷いわね! 主役を諦めたとか誰が言ったのよ!! 待ち、待てって言ってるでしょ!?」

「待てと言われて待つのは訓練された犬か令呪を使われたサーヴァントくらいだよ!!」

 

 颯爽と逃げ去るオオガミを追いかけるエリザベート。

 しかし、当然サーヴァントから普通に逃げられるはずもなく、距離はどんどん縮まっていく。

 

「もう、少しでぇ……!」

「ちょ、どうして本気で追いかけてくるかな!? そもそも俺は何も悪いことしてないよ!!」

「主役を諦めたアイドルとか言ったからよ! 後悔させてあげるわ!!」

「こ、怖い怖い怖い! アイドルの顔じゃないから絶対! ホラーに出演出来るよ!!」

「どうして歌って踊るアイドルにホラーなの!?」

「似合いそうだし!」

「そんな理由で!?」

 

 そうエリザベートが叫び、直後強く大地を踏みしめオオガミに飛びかかり、捕獲する。

 その後オオガミの上に乗り掛かり、ドヤ顔でオオガミを見下ろす。

 

「ふふふ……あははは!! どうしてくれようかしら! 全く、突然飛びかかってきたと思ったら(アタシ)だけなんか酷いこと言われたし! とりあえずイタズラさせてもらおうかしら!」

「いやぁぁ!! やめてぇ! エリちゃんに殺されるぅ!」

「殺しはしないわよ! 人聞きの悪いことを言わないで!?」

「じゃあ何をする気さ!!」

「えっ……? それは……その……そういえば、何をしようかしら」

「何も考えてないなこのダメアイドル!」

「ダメアイドルって何よ! あ、そうだ! イタズラすると評価が下がるかもしれないし、ここはもてなしてあげるわ。(アタシ)の手料理と特別ライブでね!」

「えっ……」

 

 瞬時に生命の危険を感じたオオガミ。しかし、しっかりと押さえ付けられているらしく、逃げられない。

 

「ステージはそうね、シミュレータでどうにかするとして、料理はキッチンを借りて頑張るわよぉ! ってことで、待ってなさい、子犬!」

「えっ! やだ!」

「じゃあ、無理矢理連れていくわ。観念しなさい!」

「や、やめろぉぉ!!」

 

 オオガミの叫びは虚しく、エリザベートに引きずられていくのだった。




 うちのエリちゃんが大人しくなった……これはどっかで爆発する……? 大人になった可能性も……無いですねこれは。

 投稿できなくなるかもと言っておきながらむしろ投稿が一日早くなるという謎。ビックリですよこれ。
 しかし明日も続くかわからないという。
 ストックは作成スタイル的に無理そうなので、当日どうなるかって感じですね。

 明日も投稿できると信じて!


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ハロウィン・カムバック! 超極☆大かぼちゃ村 ~そして冒険へ……~
勇者エリちゃんの冒険(とりあえず銀のズタ袋優先かな?)


「ふはは! 拾ったドラゴン娘(勇者)が可愛いから育てるぞい!」

「やったわ! メンバーも豊富だし、(アタシ)の活躍の場はあるし! 完璧ね!」

「種火は無いけどね!」

「えぇ!?」

 

 当然のごとく、種火は余っているわけがなかった。

 悲しいが、ここは諦めてもらうしかないのだ。

 

「ど、どうして無いの!?」

「それはその、ステンノ様とか、メドゥーサ様とか、ついでとばかりにホームズに注ぎ込んでレベルマしたといいますか……」

「バカ!! どうして(アタシ)の分を取っておいてくれなかったのよぉ!!」

「それは、その……どのタイミングで来るかは分からなかったし、何よりキャンペーン期間が過ぎちゃうからね!」

「ひ、酷い!! そこは(アタシ)の登場を今か今かと待つものでしょう!?」

「ほら、エリちゃんはそこにいるだけでも輝いてるし。種火無くても大丈夫だよ!」

「説得力が無いわ!!」

 

 実際に無理矢理編成に組み込んでいるのだが、どうも納得がいかないらしい。

 

「あれだよ。種火はエリちゃんがくれれば良いんだよ」

「はっ! それもそうね!! じゃあ、頑張って銅のズタ袋を集めてちょうだい。流石の(アタシ)も、冒険者組合に逆らうことはできないの……」

「まさか、このエリちゃんが恐れる場所があるだなんて……冒険者組合恐るべし……」

 

 本気で期待していたわけではなかったが、エリザベートの苦い表情を見て、思わずそんなことを呟いてしまうオオガミ。

 

「うぅむ……でもまぁ、ランエリにはお世話になったから勇者エリちゃんも育成したいんだよねぇ……」

「じゃあじゃあ、種火はくれるのね!?」

「そりゃもちろん。とはいっても、時間はかかるんだけどね」

「そ、そんなぁ……! どうにか早く出来ないの!?」

「出来ないね。最悪エリちゃんが活躍出来るのは月越えた後かと」

「10月ってこと!? そ、そんなにかかるの!?」

「昔と比べたら十分早いんだけどねぇ……まぁ、時間はかかるものだよ。セイバーも充実してるしね」

「そこはほら! セイバーの中でも輝ける(アタシ)を育てても損はないはずよ!」

「ん~……まぁ、頑張ってみるよ。ステンノのスキルマを目指す間で何とかするよ」

「それでもステンノが先なのね……良いわ。(アタシ)は勇者。勇者エリザベート・バートリーよ。勝機を見出だす為の時間は惜しまないわ!」

「……活躍する場を逃す可能性があるけど、なんとかなるはず……」

 

 ドヤ顔で尻尾を揺らしているエリザベートを見て、本当に大丈夫が不安になるが、なんとかなるだろうと思うオオガミだった。

 

 エリちゃんの冒険はこれからだっ!




 ようやくイベントが始まり、蛇の宝玉を集めつつ種火も求めなくてはいけないという戦い。

 あの魔◯村っぽいマップは個人的にとても好きですよ。はい。

 さてさて。明日から周回の日々だっ!


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勇者と極寒周回(銅のズタ袋の効率は、現状ここが最高だと思うんですけど)

「雪原だよ! 寒いねエリちゃん!」

「分かっててやってるわよね! (アタシ)が一番薄着なのよ!?」

「エリザよ。流石の余も、この極寒で水着はどうかと思うのだが……」

「いやいや。これはあれっしょ。ビキニアーマーってやつ? っていうか、その装備は勇者よりも女戦士って感じじゃん?」

 

 何故か極寒と言いながらも楽しそうなオオガミに、何度も周回していることで体力を削られ続けているエリザベートが怒る。

 ネロはそんなエリザベートの服装を見て何とも言えないような表情をしながら指摘し、鈴鹿は笑いながらそんなことを言う。

 

「違うわよ鈴鹿。これは女戦士じゃなくって勇者よ。(アタシ)はまだ進化を残しているわ! それに、(アタシ)が勇者って思ってるんだから、勇者なの。いい?」

「まぁ、エリザがそう思ってるならそれで良いんだけど。女戦士装備の勇者いたっておかしくないしね」

「う、む……いやしかし、やはり薄着過ぎるような……奏者(マスター)よ。何か上から着れるものか、羽織れるものはないのか?」

「う~ん、そうだなぁ……とりあえず、休憩のために洞窟まで戻る感じで」

「ちょっと、それは解決になってないわよ」

「くそぅ……やはりこの程度じゃこのエリちゃんは騙せないか……」

 

 どのエリザベートでも騙せるわけではない。このエリザベートは、騙されていることに気付けるようだった。

 

「とはいっても、悲しいことに今あるのは魔術礼装くらいなんだよね……着てみる?」

「うぅ……今よりマシになるなら、それでも良いわ……頂戴?」

「はいはい。全く、そんな薄着になるからだよ。ランエリならもっと暖かかったでしょうに」

「そ、それはそれ、これはこれなのよ……! 勇者として名が売れれば、ライブに来てくれる人も増えるって、算段よ」

「む。やはり余のライバル……面白いことを思い付くではないか。ならば、余も対抗して何かを成さねばならぬな」

「何言ってるんですかネロ様。この前大運動会したばかりでしょう?」

「それはそれ、これはこれ。というものだ奏者(マスター)よ。名が売れれば観客は来てくれるからな。自然と注目も集まるものだ。客が客を増やし、雪だるま式で会場が観客で埋まることも夢ではないな!!」

「えぇそうよ! そして、その時こそ! (アタシ)と貴方。どちらが観客を魅了できたかを競うのよ!」

 

 ガシッ! とお互いの手を取り合うネロとエリザベート。

 それを見ていたオオガミは苦笑いをし、鈴鹿は戦慄の表情で、

 

「ねぇ、私の記憶だと、あの二人の歌って、かなりヤバかった気がするんだけど……」

「ハハハ……いや、これは中々不味いかもしれない……? あれ、いつものことかな……?」

 

 冷静に考えると、これまでも何度かライブが開催されているような気がするので、今更と言えなくもなく、実際にやったときはその場に居合わせた全員が倒れ伏すだけだったので問題はないかもしれない。

 幸い死者はいないのだ。せめて物が壊れても良いようにシミュレーションエリアでライブをやって貰うのが一番だろう。

 

 なので、オオガミは止めるように説得しようとは思わないのだった。




 しかし、未だに種火は交換されていないのである。

 とりあえず礼装を揃えないといけないと思い、周回している私ですよ。くそぅ……ドロップ礼装が足りないぜ……!!


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デーモンキラー呼んで周回だね(心臓ごと斬りつぶさないで……)

「とりあえず城前でラミアを叩き潰さなければ……」

「え? 何々? ちょっと、子犬の目が怖いんだけど」

「主殿主殿!! 私も戦って大丈夫なんですか!?」

「頼むよ、デーモンスレイヤー牛若丸」

「お任せください!! しっかりと首を狩って参ります!!」

 

 嬉々として飛び出していく牛若丸を見て、流石のエリザベートも口をポカンと開けて見ていた。

 

「ねぇ、アレっていつもあんな感じだっけ?」

「楽しそうだよねぇ……本当に」

「首狩りに行くのに楽しそうなのってどうなのかしら!!」

拷問姫(アイドル)に言われるのはどうかと思うな!!」

「なによぉ!! (アタシ)とアレは明らかに違うじゃない!!」

「まぁ、悪意が全くない点を見るに、あっちの方が恐ろしいというかなんというか……」

 

 無邪気に首を狩り続ける牛若丸。デーモンを牛若丸に一撃で倒してもらい、次の戦いをドレイク船長とメイドオルタで殲滅していくオオガミ。

 牛若丸が楽しそうに殲滅していくので、別にいいかと思うのだった。

 

「で、時々心臓を持ってくるけど、アレはどうするの?」

「倉庫で保管だよ、当然。とりあえず、そろそろAPも無くなるから休憩で。三姉妹の元へ遊びに行くぞぅ!」

「行かせないわよ。ちゃんと周回しましょうよ」

「……ま、まだ時期じゃない……!! 時期じゃないんだ……!!」

「そんなぁ……まーわーりーまーしょーうーよー!!」

 

 オオガミの服を引っ張り、周回させようとしているエリザベート。

 当然、その間にも牛若丸がデーモンの首を狩り、心臓をえぐり取りに行く。まぁ、ここまで全て一緒にぶった切っているので、そもそも倉庫に入らなかったりしている。

 

「それにほら、宝玉も必要なんでしょ!?」

「必要だけども、そこまで急ぎでもないし……」

「エウリュアレがまた何か言ってくるわよ!!」

「そ、それを言われると困るんだけど……」

「じゃ、じゃあいけるわよね!!」

「行かないですってば。明日から本気出すよ」

「本気出さない奴!! それ、本気出さない奴!!」

 

 オオガミの言葉にエリザベートが本気で突っ込むが、実際、報酬が銀リンゴで推奨レベルが60という事は、この上があるのは間違いないのだった。

 

「ほら、そんなことやってないで、一回休憩して、明日からやろうよ」

「うぅ……そんなこと言われてもぉ……私が成長できないじゃない!!」

「いや、頑張るから。種火は回すから」

「再臨素材、取ってないじゃない」

「それを言われると……」

 

 流石にそれを言われるとどうしようもないのだが、今からどうする事も出来ないので、やはり明日に回すのだった。

 

「という事で、一時解散! お疲れ様!」

「あっ! ちょっと!! 酷いわよ!!」




 考えて見たら、確かに報酬と推奨レベル的に増えるのが想像できるはずなのに、どうしてリンゴを食べてしまったんだ私は……


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よくよく見ると、素材だけじゃなくてQPもないんだけど(意識してないけど、レベル上げで消費するQPもバカにならないよね)

「あぁ……ついに気付いてしまった……そろそろ訪れる、地獄の時間……!!」

「宝玉が後少しで溜まるのに、QP枯渇しそうなのよね。分かるわその気持ち……諦めて周回しましょうよ」

 

 QP枯渇によるスキル上げ停止。素材不足並みの大打撃である。

 そんなオオガミを見て慰めに行くエリザベートは、しかし次の一言で一瞬硬直する。

 

「うわぁぁぁ!! エリちゃんに慰められたぁぁ!!」

「……ちょっと!! それはどういう意味よ!! 人がせっかく優しくしたっていうのに!!」

「だって……エリちゃんがそっちサイドに行っちゃったら、誰が弄られ役――――残念担当(カルデアのドラゴン系アイドル)をやるっていうんだよ!!」

(アタシ)をなんだと思ってるの!? というか、子犬の中のアイドルって一体どんななの!?」

「えっ……ネロとエリちゃん……?」

「さっきの言葉の後だと悪意しか見えないんだけど!?」

 

 一体どういう意味で言っているのか。皆目見当がつかない一言である。

 ちなみに、エリザベートがドラゴン系アイドルならば、ネロは皇帝系アイドルだろう。というのはオオガミの談。この二人に付け足すものがあるとすれば、『デスボイス(比喩ではない)』だと、彼は後に語るのだった。

 

「悪意なんてないよ。真剣かつ全力だよ。エリちゃんはキュートでドラゴンな勇者系デスボイスアイドルでしょ?」

「ちょっと待って。デスボイスって何? デスボイスって何!?」

「えっ、何それ。言った記憶はないよ?」

「自然に! 無意識に!? 出ていたっていうの!?」

 

 なぜか驚きと悲しみの同時攻撃をくらったような表情をするエリザベート。

 しかし、ここで重要な事を思い出したオオガミは、はたしてどうしようかと考える。

 当然、急にそんな態度になったオオガミを見て、エリザベートは困惑する。

 

「ど、どうしたの? もしかして、やっぱりデスボイスって言ったのを認めて謝るの?」

「その話は置いておいて、今から何とかしないと、定期で回ってくるエウリュアレに怒られる……!!」

「ねぇ、子犬? やっぱり(アタシ)、存在薄くない? 明らかに途中から関わりたくないってオーラ出してるわよね?」

「おっとエリちゃん、それ以上はいけない。というか、本気でそう思ってるならわざわざライブ準備したりしないし、再臨素材も取らないし、種火を渡して育てようとか思わないから。ただ、それはそれとして、聖杯使ってレベル100且つスキルマ絆マしてしまった彼女に逆らえるわけないんだよ。というか、絆マしてもあんまり態度変わらないってどういうことなのさ。容赦なく殴られるようになったというか、小突かれるというか!」

「それは、まぁ……仕方ないんじゃないかしら。エウリュアレにも色々あるんだろうし。とりあえず、QP集めましょうよ。子犬に死なれたら、(アタシ)だって困るし」

「うぅ……中々にスリル満点で、うっかりしたら殺されそうな感じだよ……とりあえず周回しよう、周回。根本的に素材も溜まってないしね」

「そうね。じゃあ、レッツゴー!!」

 

 エリザベートの掛け声と共に、再び彼らは周回を始めるのだった。




 アイドルは残念担当という偏見。なお、うちのカルデア限定の模様。

 ゴルゴーン三姉妹は偶像であって、アイドルとは違うので! キュートでデンジャラスなビューティフルボイス悩殺系女神なだけですから!!


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マスターの誕生日なの?そう、祝わなくてはね(時間稼ぎはイシュタルと世界旅行って事で)

「マスター。今日は貴方の誕生日なのでしょう? おめでとう。これからもよろしくね?」

「ありがとう――――って……突然どうしたのエウリュアレ……何か変なモノでも食べた?」

「拾い食いなんてしないわよ。私はノッブじゃないのよ?」

「おい待て。儂ならするとか言う変な噂をでっち上げるのは止めてもらおうか! あ、おめでとうじゃ。マスター」

「えっ……ノッブならするんじゃないのかしら?」

「完全にそうだと思っていたと言わんがばかりの表情はどうかと思うんじゃが!!」

 

 本日誕生日のオオガミ。ただ、本人は気付いていないようで、突然優しくなったようなエウリュアレに心配の声をかけ、それに対して思わずエウリュアレが軽く蹴ったのは当然の反応だろう。

 その時になぜか巻き込まれたノッブは、その発言に対して突っ込みを入れる。

 

「誕生日、おめでとうございます、マスター。先ほどイシュタルさんが探していたようですが、もう会いました?」

「イシュタルが? な、何だろう……不安しかないんだけど……」

「なんでも、世界旅行が何とか。『急がなくちゃ日を跨いじゃう』と言ってました。急いだ方が良いのでは?」

「世界旅行……? ま、マジですか……二人で? えっ、行くの……?」

 

 ステンノに言われ、全力で探しているイシュタルが思い浮かび、とりあえず見つかったら連れて行かれるな。と確信したため、最後にしようと決める。

 

「まぁ、行くときはエウリュアレも連れて行くとして、どうしようか……食堂に行ってみようか……」

「今はちょっとやめた方が良いんじゃないかしら。今すぐイシュタルの所に行って、世界旅行してくるべきよ」

「そう? じゃあ、エウリュアレも一緒に探しに行くよ」

「えっ、私も? 本気で言っているのかしら? いやよ、私は。というか、スクーターでしょ? 三人乗りで飛べるの?」

「それは――――ほら、イシュタルなら何とかしてくれるよ」

 

 完全に他人任せだが、本当にやらせそうで怖いのがオオガミと言う人物である。

 今のうちに隠れておくのが得策だと思いつつも、とりあえずイシュタルに会わせようとし――――

 

「いたーーーー!!! ちょっと、今までどこにいたのよ! ずっと探してたっていうのに……!! そんなことはいいわ。今すぐヘルメット被って、行くわよ世界旅行! 夕食までには戻るんだから急いで!!」

「ぐえっ! ちょ、どうしてそんな急に!? って、メドゥーサどうしてそんな――――うわぁ!?」

「誕生日おめでとうございますマスター。それと、世界旅行、行ってらっしゃいませ」

 

 突然開かれた扉。その先にいたのはイシュタルと、なぜか抱えられていたロリメドゥーサ。そんなメドゥーサを心配しようとした直後連れ去られるオオガミ。

 メドゥーサはそんな状況に驚きもせず、普通の様に挨拶をし、自然に手を振って世界旅行に送り出すメドゥーサ。ノッブの陰に隠れていたエウリュアレは連れ去られる事は無かった。

 

「いやぁ……中々豪快じゃのぅ、っと。とりあえず、イシュタルが時間を稼いでくれとる間に、儂らは準備をするかの」

「えぇ、そうね。あのくらいの勢いが無かったら、私もきっと今頃一緒に旅行していたのよね……」

「そうしたら、(エウリュアレ)の分も、頑張ったわ」

「止めてよ(ステンノ)。私だって準備をしたいわ。楽しみだもの、誰かの誕生を祝うなんて」

「姉さま。私も頑張りますね」

「期待してるわ。メドゥーサ」

「よろしくね。メドゥーサ」

 

 そう言って、四人は食堂へと向かうのだった。




 誕生日ボイス追加にふと気づいたのが午後の事。冷静に考えたら誕生日だった件。
 帰って来た後の話は各自の脳内で!

 あ、縛りクエストは何とか溶岩地帯まで終わりましたよ。今回思ったのは、ホームズパネェって事ですね。強いぜ全く。


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やっぱりゴルゴーン三姉妹は最強だな!!(高難易度相手でも通用したよ!!)

「やっぱりゴルゴーン三姉妹は信頼できるね!!」

「ゴリ押しだったくせに、何を言っているのかしら。結局令呪も切ってるし」

 

 休憩室でそんなことを叫んだオオガミに、即座に突っ込みを入れるエウリュアレ。

 いつも通り高難易度を終わらせ、帰って来たところである。

 

「それはそれ! 勝ったからチャラって事で!! 三日以内に令呪を使う予定ないしね!!」

「そうですね。とはいっても、その三姉妹。私がいなかったのはなぜでしょう?」

「あっ……ステンノ様……そのですね……色々ありまして、その……すいません」

「うふふ。別に、怒ってはいませんよ。それに、メドゥーサが活躍したみたいですし」

「はい……メドゥーサが一人でエリちゃんのHPを二ゲージ削ってくれたんで、引き返せるわけねぇだろという心情でした……」

 

 公式で禁止技とされた秘技を繰り出しつつ、一人で頑張ったメドゥーサの為に令呪を切り、残った体力を削り切ったのは、仕方のない事だと思いたい。

 

「ところで、そのメドゥーサは?」

「部屋にいるみたいよ。というか、それくらい把握しておきなさいよ」

「そんなこと言われましても……というか、逆になんで知ってるのさ……」

「そりゃ、見ていたもの」

「あぁ……なるほど……うん。とりあえずここに呼ぶっていうのはありでしょうか」

「いえ、ここは貴方のマイルームに行きましょう。おそらくそこなら私たちがいるなんて思われないでしょうし」

「なるほど……? じゃあ、俺が呼びに行って、エウリュアレ達が準備をしてるって感じで良い?」

「えぇ、構わないわ。(ステンノ)も大丈夫かしら?」

「えぇ、構わないわ。(エウリュアレ)。楽しみね」

「じゃあ、また後で」

「えぇ。ちゃんと連れて来てね。マスター」

「規定していますわ。マスターさん」

 

 オオガミはそのまま部屋から出て行き、エウリュアレとステンノは微笑んで持って行くものを選別しに行く。

 

 

 * * *

 

 

「それで、貴方は何を企んでいるんですか?」

「別に何も企んでないけど……普通にお祝いと言いますか。実際、メドゥーサが今回ほとんど倒してくれたようなものだし」

「姉様が即座に退場してしまったのは、マスターのせいかと」

「仕方ないじゃん!? ランサー相手にアーチャーが善戦出来ただけでも中々いいかと思うんだけど!?」

 

 実際、エウリュアレが即退場したのは編成が原因だ。やり直すことも考えていたのだが、想像以上にメドゥーサが耐え、残り一ゲージにまでしてくれたので、流石にここで令呪を使うわけにはいかない。と思ったのが、やり直さなかった原因だ。

 

「まぁ、そんなことは置いておいて、マイルームに入ろうよ」

「むぅ……何かを隠しているような気がしますが、その時はその時です。入ります」

 

 そう言うと、メドゥーサは部屋に入る。

 

「お疲れメドゥーサ。お茶にしましょ」

「お疲れ様、メドゥーサ。楽しかったかしら?」

「姉様達……もしかして、マスターがここに私を呼んだのって、このため……?」

「うん。というか、普通にお祝いと言うのは変わらないんだけどね……?」

「えぇ。お菓子も用意したわ」

「えぇ。紅茶も用意したわ」

「って事で、お茶会って感じで。大丈夫?」

「……はい、分かりました。姉様といるのはちょっと緊張しますけどね」

 

 そういって、四人はお茶会をするのだった。




 令呪三画はやっぱり必要経費ですよね。仕方ないです。
 しかし、頑張れば何とかなったような……まぁ、意地になったのがいけなかったんですよ。はい。


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日常
尻尾枕をしたかっただけなんです。お許しください(ちょ、エリちゃんどこへ!)


「う~む、これがドラゴン尻尾……つるつるしてると言うか、なんというか」

「でも、触り心地は良いでしょう?」

「うん。何となく手入れされてる感じ」

「当然。アイドルは身だしなみに気をつけなくちゃだもの。尻尾くらい気を付けるわ」

「さっすがエリちゃん。完璧だね」

「そうでしょそうでしょ。ふふっ、ちゃんと(アタシ)の活躍を見ていなさいよ? 子犬」

「……まぁ、しばらく編成に入れる予定はないんだけどね」

「えぇ!?」

 

 揺れる尻尾。頭を乗っけていたオオガミは、尻尾から滑り落ちてソファーに落ちる。

 一応、出てくる敵がランサーとライダーなので、ランサーエリザベートが編成に入れられる事は無いはずである。

 なお、ブレエリは入れる可能性がある模様。

 

「ど、どうして(アタシ)は入らないのよ!!」

「うぅ……そりゃ、敵がランサーだし……」

「有効じゃなくても入れるべきでしょう!? アイドルなんだから!!」

「いやいや。エリちゃんはカルデアで皆を待つ、癒し系アイドルだからこれでいいんだよ。うん。エリちゃんかわいーやったー」

「ざ、雑なんだけど!?」

 

 ブンブンと、彼女の怒りが現れているかのように揺れる尻尾。

 枕に逃げられたオオガミは、仕方がないと思いなおして起き上がる。

 

「別に、エリちゃんは戦闘しなくても最強なんだからいいと思うんだよ」

「それはそれ。(アタシ)だって暴れたいのよ?」

「そんなこと言われても……うぅむ。じゃあ、もう少ししたら編成に入れるとするよ。エリちゃんを編成に入れて損があるわけじゃないしね」

「本当!? 約束よ!?」

「言ったからね。そっちこそ忘れないでよ?」

「分かったわ!! じゃあ、今から準備してくるわね!!」

「えっ、そんな……ぐ、ぐぬぬ、行かれてしまった……もう少しあのドラゴン尻尾を触っていたかったんだけどなぁ……」

 

 颯爽と走り去っていくエリザベートを呼び止める暇など無く、一人置いていかれたオオガミ。

 少し考えた後、普通に部屋で寝ればいいと言う事実に気付き、立ち上がる。

 すると、

 

「お。マスターじゃん。眠そうな顔して、今から寝る所?」

「鈴鹿? う~ん、まぁ、そんな所。エリちゃんと言う枕に逃げられたんで、今から部屋に行って寝ようかと」

「ふぅん? 夜更かしはほどほどにねマスター。明日に支障が出るし。それとも、私が添い寝してあげようか?」

 

 鈴鹿御前の挑発的な笑みに、オオガミは若干寝ている頭で少し考え、

 

「ん~……今日は尻尾の日なのですよ。尻尾をお貸しくださいな……」

「尻尾の日? よく分からないけど、私の尻尾で良ければ貸すよ?」

「おぉっ、マジですか。ではこのソファーへ……今日はここで寝るんで」

「いや、それはダメじゃん? こんなところで寝たら風邪ひくし、マシュに怒られるし。ちゃんとマイルームで寝るし」

「……うぅむ、正論を言われては仕方ない……というか、貸してくれる側に言われたら従うしかないじゃない」

「じゃあ、ささっと行こうじゃん? ……あの女狐に見つかったら何言われるかわかったもんじゃないし」

 

 最後の方が聞こえなかったが、機嫌がよさそうなので気にしないことにしたオオガミ。

 オオガミはフラフラとしながらも鈴鹿について行くように、マイルームへと向かうのだった。




 自分の眠いという気持ちを前面に押し出した今回の話。尻尾枕とか……尻尾枕とか……!!

 しかし、エリちゃんはあと一つ上がれば絆マなんですよね……とりあえず裏面に入れておくしか……

 あ、ピラミッド周回が個人的においしいです!! 個人的には単体回収よりもなんとなく効率がいい感じ。まぁ、礼装が少ないからそう思うだけなんでしょうけど。


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久しぶりの休憩ね(楽しいお茶会……かしら?)

「ここでデザートを食べるのも、久しぶりな気がするわ」

「そうだね……うん、なんというか、平和だね」

「……あの、ズタ袋の回収はどうするんですか?」

「そうですね。まだ全然足りませんから」

「まぁ、もう少し後でいいんじゃないかな」

 

 オオガミはそう言うと、スイートポテトを一口食べる。

 最後に休憩室でのんびりと食べたのは何時の事だったか。もう覚えていないのだが、それだけイベントが立て続けにあったということだろう。

 そして、いつもと違う事があるとすれば、エウリュアレとオオガミだけでなく、ここにはステンノとメドゥーサもいるという事だろう。

 

「それにしても、QPが枯渇したのは想像以上だったわ。スキルレベルが上がらないじゃない」

「本当にね。後ちょっとなのに……」

「……ちょっと集めてきなさいよ」

「えぇ……スキルマするにはちょっと……イベントやりたいです」

「むぅ……じゃあ、ちゃんと素材を取って来なさいよ。頑張りなさい」

「頑張るよ。というか、普通に全素材集めてからQP集めに行くよ。流石に何日かの猶予はあるはず……」

 

 オオガミはそう呟いて、紅茶を飲む。

 エウリュアレはスイートポテトを口に含み、もぐもぐしながらじぃっとオオガミを見ていた。

 

「ん? どうかしたの?」

「ん~ん。別に? なんか、今思うと、貴方の周りって、女神が多いと思っただけよ。どちらかと言うと神性持ちかしら? (ステンノ)の第三スキルの神性限定の攻撃力アップが結構入ってるから」

「そうでもないと思うんだけどね。というか、どちらかと言うと、連れて行っているのが偶然大体神性がついているだけどいいますか……」

「そうなんです? 狙って入れているのではなく?」

「狙ってるつもりはないんだけどねぇ……」

「そうですか……まぁ、私たちは全員神性を持っていますし、付与されるのは当然ですけどね」

「まあね。というか、どうしてこうも神性が多いのかな……」

「普通に使いやすいのが多いもの。仕方ないわ」

「そうですね。私たちもマスターに良く駆り出されますし」

「あの……それはマスターの趣味が入っていると思うのですが……」

「メドゥーサ、それ以上は言っちゃいけない。というか、冷静に考えるとこの状況は結構とんでもないものだと思う」

「……それを言われると納得せざるを得ないのですが、そもそもこんな状況になっているのが不思議と言いますか……」

 

 ゴルゴーン三姉妹に囲まれ、のんびりとお茶をするオオガミ。

 自然にいるが、男性にとってこの三人の中に入ってくるのは中々の精神力である。全員美声の魅了持ちだ。

 

「まぁ、すでに魅了に掛かってるようなもんだし、問題ないんじゃないかな」

「なんですかそれ……」

「そりゃ、大体私と居るんだもの。そうなるわよね」

「随分と仲がいいみたいね。(エウリュアレ)

「えぇ、楽しいわよ(ステンノ)

 

 二人は笑い合い、苦笑いでそれを見ているメドゥーサ。オオガミは自然な様子で紅茶を飲んでいた。

 

 しばらく四人は談笑し、オオガミが眠くなった辺りで解散するのだった。




 久しぶりのデザート回。久しぶりすぎて、最後にやったのがいつだったか全く覚えてない上に、何を出したかうろ覚えという。
 しかし、ノッブたちが出てこないという事件。


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儂の影、何時の間にか薄くなっとるよね(大体そんなものですよ)

「儂、影薄いんじゃが」

「突然何を言っているんですかノッブさん」

「そうよ! というか、私はそれよりも、マスターがお茶会に誘ってくれなかったのに怒っているのだわ!」

「ほれ、そんなお主にはこのバタークッキーをやろう」

「わーい!」

 

 ナーサリーはノッブがつまんで差し出したクッキーを、ノッブの指ごと食べる。

 ノッブは数瞬硬直した後、何とか引き剥がすと、話に戻る。

 

「いやな? 儂も最近工房に籠っておったのも原因の一つだと思うんじゃけど、それはそれとして、やはり忘れ去られとると思うんじゃよ」

「それを私に相談されましても……私もアガルタが解放された辺りから、高難易度でしか出番はないですし。通信もいいんですが、やっぱり先輩と一緒に戦いたいです」

「あ~……そう言う意味じゃないんじゃが……まぁ、儂も戦いたいのは変わらぬが、それ以前に最近マスターと話してないってわけじゃよ」

「あぁ、そういうことですか。そういえば私もあんまり話してないような……エウリュアレさんたちと居るのはよく見るんですけどね」

「うぅむ。大体ランサーメドゥーサが出てきた辺りからじゃよな。その後ステンノが来て、その後マスターは三人のスキル上げに必死じゃし。というか、おかげでQPが枯渇しておるんじゃけど。これ、儂がキレても許されるよネ!!」

「それはやっちゃってください。というか、先輩はいい加減節制というものを覚えないと後で後悔すると思うんです」

「あやつ、メルトリリス、メルトリリスと言っておきながら、石を集める気配が微塵も無いんじゃが……」

 

 溜まるどころか、手に入れたと同時に消えて行く石。3個以上にならないという状況に、マシュも流石に頭を抱えているようだった。

 とはいっても、聖晶片は基本溜まっていくので、地味に増えてはいるのだった。

 

「それで、ナーサリー。クッキーはおいしいか? 儂の指まで食う勢いなんじゃが」

「むぐむぐ。えぇ、おいしいわ。とってもね」

「そうかそうか。それはよかった。ところで、徐々に儂の指をかむ力が強くなっていくのはどういう事なんじゃ?」

「むぐむぐ。知らないわ。気のせいじゃない? むぐむぐ」

「絶対わざとじゃろ……いや、別に噛み切られさえしなきゃいいんじゃが」

 

 先ほどからずっとナーサリーの口の中に入れていたクッキーは皿の上から無くなり、何を思ったのか、そのままノッブの指を食べ始めていたので、流石に何をしたいのか聞くノッブ。

 ナーサリーは答えはしなかったが、満面の笑みを浮かべていたので、とりあえずノッブは多少の負傷は覚悟したのだった。




 石が増えないのは問題しかないんですが。いや、まぁ、全部ハロウィンガチャにつぎ込んでるのが問題なんですけど……


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俺は基本、ここで呼びかけ待ちだ(僕も同じようなものだけどね)

「最近は、貴様の出番も無いようだな。エルキドゥ」

「僕が出る場面が無いのは喜ばしい事だよ。いや、兵器としては、どうなのかな。悩ましい所だよ」

 

 コーヒーを一口飲み、エルキドゥは目をつむる。

 何かを感じているのか、それとも聞いているのか。巌窟王は考えつつ、同じようにコーヒーを飲む。

 

「君たちは非番の時は、日がな一日そうやっているが、何かやる事は無いのか?」

「大体ここでマスターの呼びかけを待っているね。それ以外にやる事は……そうだね、鎖を巡らせて不審な事をしているのがいないか見回るくらいだね」

「俺もそんなところだ。そもそも、やる事なぞほとんどないがな」

「なら、手伝ってくれないか。私一人で出来る事にも限界がある」

「他の厨房組に要請したらいいんじゃないのかい?」

「あいにく、全員出払っていてね。頼めそうなのも君たちくらいなものだからな。休憩室の茶菓子もそろそろ切れる頃だろうから、補充をする必要がある。さて。皿洗いと菓子の補充。どっちがいい?」

「ふむ……なら、俺が皿洗いをしよう。エルキドゥに繊細な作業は苦手そうだからな」

「まぁ、あながち間違ってはいないか。仕方ない、僕が行ってくるよ。ついでに変な事をしていないか見て来よう」

 

 エミヤが差し出してきたお菓子の袋をエルキドゥは受け取り、食堂を出て行く。

 巌窟王はエミヤと共に厨房へと向かい、言われた通りに皿を洗い始める。

 

「それにしても、まさか俺がこんなことをすることになるとは思わなかったな」

「私も君がやってくれるとは思わなかったよ。てっきりエルキドゥが残るかと思っていたからね」

「そうでもないさ。俺にはあの部屋にいるのはあまり得意ではないからな。あまり人のいない空間が一番だ」

「そうか。だが、それはそれとして、仕事はしてもらうぞ巌窟王。コーヒーもその方が美味いだろうさ」

「ふん。投げ出しはしないさ。ここを使わせてもらっているからな」

「なに、やってくれるのなら問題はない。それで、これが終わったら何をする?」

 

 巌窟王はそう言うと、最後の一枚を仕上げる。

 エミヤはそれを見ると、少し考え、

 

「いや、これで終わりだな。今は子供たちがやってこないからな。菓子を作る必要も無い。おそらく信長やオオガミ辺りが抑えているのだろう」

「そうか。では、エルキドゥが帰ってくるまでにコーヒーを淹れなおしておくか」

 

 巌窟王は自然にコーヒーを入れ始める。おそらく、エルキドゥが仕事を終わらせるタイミングを分かっているのだろう。

 最近よく淹れているので、手慣れたものである。エミヤもそれを見て、ふと思いついたように調理を始める。

 

「……どうかしたのか?」

「いや、手伝ってもらったからな。茶菓子でも作ろうかと思ってな」

「それはありがたい。では、お前の分も淹れておこうか」

 

 そう言うと、二人は手を動かし始めるのだった。




 珍しい三人。巌窟王とエルキドゥが一緒なのはいつもの事のように思えるんですけどね。エミヤが混ざるのは……あれ、昔も書いたような……

 次は誰にしようかな……


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まぁ、たまにはこんな日もあるわよね(僕としては、無い方が助かるけどね)

「……珍しい組み合わせよね、コレ。どうしてこうなったのかしら」

「まぁ、確かに珍しいよ。風紀委員とか言われている僕が問題児の一人である君の正面にいるんだからね」

「全くよ。というか、マシュは結局どっち側なのよ」

「えっ、私ですか? というか、何がですか……?」

 

 休憩室で若干険悪な雰囲気を出しているエリザベートとエルキドゥ。

 なぜか間に挟まれているマシュは、一体何を聞かれているのかと考え、おそらく派閥の話だろうと気付く。

 マシュが気付いたことに気付かないエリザベートは、マシュの疑問に答える。

 

「エルキドゥ達みたいな風紀委員組か、(アタシ)たち自由組か。どうなの!?」

「いや、私はその……中立区域ですかね……一応カルデア三大派閥の一つですよ……?」

「中立!? そんな面白くない所にいるの!? (アタシ)たちの方へ来なさいよ!!」

「何言ってるんだ君は。そんなわけないだろう? マシュが行くとしたら僕たちと同じ風紀委員組だよ」

「いえ、あの、どっちにも入らないと……」

 

 マシュの意見はどこへやら。中立など許さなそうな二人の勢いに気圧されるマシュは、はたしてどうやってこの場をやり過ごすかを考えるが、当然思いつくわけも無く。

 しかし、そこに現れる救世主が一人。

 

「やって来たぞ、私だっ!」

「先輩! ……って、何してるんですか……?」

「な、何そのポーズ! ちょ、(アタシ)もやりたい!!」

「……そういえば、何時からか問題児筆頭はマスターになっていたね。それで、マシュの扱いはどうなっているのかな?」

 

 中二病全開ポーズを取りながら登場したオオガミに、ジト目で反応するマシュと、目を輝かせて同じポーズをとるエリザベート。そして、その一切を無視してオオガミにマシュの立ち位置を聞くエルキドゥ。

 オオガミはとりあえずエルキドゥの疑問から答えて行くとする。

 

「マシュはほら、どっちにもなるから中立だよ。平和枠だし」

「平和枠は中立なの!?」

「まぁ、風紀委員組と問題児組は基本戦争状態だからね。平和枠が中立になるのも納得だよ」

「良かった……これで私がどっちかに分けられていたら、戦争に駆り出されそうですし……」

 

 なお、戦争をするときはオオガミが問題児筆頭。エルキドゥが風紀委員筆頭として戦争を始める。

 自分のマスターが敵軍にいるのだが、良いのかと突っ込みたい人はいるのだろう。もちろん、分かっていてやるのだが。

 

「それで、どうしてそんな話に?」

「この三人が揃った瞬間から、完全に起爆寸前でしたよ……というか、主にエリザベートさんが……」

「何よ。大体いつもこんな感じじゃない。そもそも、こいつは自分からは滅多に仕掛けてこないし」

「当然だろう? 規律を守るのに、自ら乱してどうするんだ」

「……起爆寸前だよねどう見ても」

 

 だが実際、二人は本気で争うことはないのだろう。と、どこか楽観して考えているオオガミがいたのだった。




 絶対仲良くないというか、分かりあっていない感じ全開の初期メンバー二人。
 本当はヘラクレスもいるんですが、流石に書けないです……


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人数差と戦力差があってない気がします先生(そもそも荒くれ者が徒党を組もうが、勇者の前には雑魚同然なのと同じ原理じゃろ)

「さて、いい加減に自由組と風紀委員組、中立組の区切りをつけようか」

「……突然どうしたんじゃ。マスター」

「あれでしょ? 昨日、エルキドゥと(アタシ)がマシュの立ち位置を聞いてたからでしょ?」

「まぁ、そんな所。ってことで、これが霊基一覧だよ」

 

 自然と霊基一覧をコピーした紙を広げたオオガミ。

 ノッブ達はそれを見つつ、パッと見で分かるのを指差しつつ言っていく。

 

「まず、儂こと信長。んで、エウリュアレもこっち側じゃろ? それと、ネロじゃ」

(アタシ)とイバラキもこっちよね」

「あら。私がこっちなんだから、(ステンノ)と二人のメドゥーサもこっち側よ?」

「ステンノはともかく、メドゥーサは強制なんだね……なむなむ」

「とまぁ、これにお主――――マスターを含んだ9人が自由組代表じゃろ」

 

 ノッブの言葉で、今出た8人の霊基と、ついでにマスターの名前を黒で丸を付ける。

 次は風紀委員組。ノッブは少し考えた後、

 

「まず、代表としてエルキドゥ。で、次に巌窟王じゃな。あの二人は良く一緒におるし」

「マルタもあっち側よね。エミヤは?」

「あんまり動いてるようには見えないけど、変なことしてると地味な嫌がらせ受けるからあっち側だね。あ、土方さんもいるよ」

「頼光もいるわね。このくらいかしら?」

「……考えると、案外少ないね。6人?」

「……エルキドゥが三人分くらいあるわよ」

「うわぁ……こわぁ……」

 

 そんなことを言い合いながら、今言っていた6人を白で丸を付ける。

 

「さて、じゃあ最後は中立だね。まず代表としてマシュだよ」

「……ねぇ、そもそも中立って、どちらにも属さないんだから、どっちにも書かれなかったサーヴァント全員なんじゃないのかしら?」

「……あれ。じゃあ、考える必要は無い……?」

「そう……じゃな」

「それもそうね。というか、どうしてそれに気付けなかったのかしら……?」

 

 考えるも、当然答えは出ない。

 仕方ないので、残りの思いつく人物を挙げる。

 

「あ、自由組にBBじゃ。あれも儂と同じじゃった」

「これ、人数的に有利なのって私たちの方よね?」

「……エルキドゥが人数差とは一体っていう性能だからじゃないかな?」

「なるほどね。あ、メイドオルタは風紀委員組ね。あのメイドはちょっと怖いわ」

「やっぱりこう見ると、戦力差偏ってるわねぇ……あ、ナーサリーとバニヤンはこっちよ。あの二人は中立じゃないし」

「まぁ、自由だよね。子供特有の。じゃあ、茶々もこっち?」

「うむ。っと、まぁ、こんな感じかの?」

「かな。よしよし。じゃあ、これで対策を練れるわけだ……って、この場合中立の扱いってどうすれば良いの? 敵? 味方?」

「そりゃ敵じゃろ。最悪の事を想定しながら戦うんじゃよマスター」

「そうね。っていうか、結局自由組が12人の、風紀委員組が7人っていう差が出来てるわよ……」

 

 丸を付けたのを見つつ、エウリュアレがそう呟く。

 オオガミはそれを聞いて安心するどころか、むしろ頬を引きつらせながら、

 

「これでまだ勝てるかどうかが怪しいとか、向こうの威圧感半端ないよねこれ……」

「……まぁ、何とかなるわよ。子犬がいるしね!」

「あ、霊基変動とか考えると、こっちは14人ね」

「ネロ様とエリちゃんの変動だね。ただ、それでもいけるかな……」

「まぁ、そのための対策会議じゃよマスター。何とかなるじゃろ」

 

 不安そうなオオガミに、ノッブは笑いながら答えるのだった。




 やろうと思った事はすぐにやらないと忘れるという事実に気付いたので書きましたよ。という事で、早見表は↓

『自由組』
オオガミ
エウリュアレ
ノッブ
ネロ(ブライド&術)
エリザベート(槍&剣)
バラキー
ステンノ
メドゥーサ(ランサー&ライダー)
BB
ナーサリー
バニヤン

『風紀委員組』
エルキドゥ
巌窟王
マルタ
土方
頼光
エミヤ
メイドオルタ

『中立』
マシュ
ホームズ
パッションリップ
ドレイク
鈴鹿御前
マーリン
玉藻
ニトクリス
ヘラクレス
エルバサ
デオン
etc.

 徐々に追加していっていたので、あれ、おかしくね? とか、このサーヴァントはこっちじゃね? というのがありましたら突っ込んで下さい。


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マーリン……何をしているんですか?(たぶん、アレは自由人側でいいはず)

「……こんなところで何をしているんですかあなたは」

「ん? あぁ、その姿はアナだね。一体僕に何の用だい?」

「マスターの部屋の前で何をしているのかを聞いているんです」

 

 部屋の前に立ってニコニコと笑っているマーリン。そこにたまたまやってきたランサーメドゥーサは、思わず突っ込む。

 

「ここにいるのはあれだ。この部屋が一番覗いていて楽しいからね」

「除きですか。馬鹿なんですか。死にたいんですか。姉様達がいるので覗いたら殺しますね」

「物騒だね君は! というか、なんでマスターの部屋に君のお姉さんたちがいるのかな」

「なぜかは分からないんですけど、姉様達はマスターの部屋でくつろいでいるのが多いので。今日も同じですよ。それに、覗くのなら休憩室が一番だと思います」

「そうかい? じゃあ、行ってみるかな。実際、僕はここに来てからずっと部屋にいたからね。あまり探索をしていないんだよ」

「そうですか。休憩室はこの廊下をまっすぐ行って変な音とかが聞こえ始めたら休憩室と書いてあるプレートのかかっている部屋があるはずなので、そこです」

「変な音? なんだい? 何が聞こえるんだい? 君に言われると不安しかないんだけれど」

「行けば分かります。おそらく何かが起こってるはずですから」

「なるほど……? まぁ、行ってみるよ。じゃあね」

「えぇ。頑張って生き残ってください」

 

 去っていくマーリンを見送り、アレは自由組だな。と思いつつ、メドゥーサは自然な様子でオオガミの部屋へと入って行く。

 

「あら、メドゥーサ。遅かったじゃない」

「どうかしたのかしら?」

「……もしや、部屋の前に誰かいたの……?」

「遅くなってしまってすいません。それと、部屋の前にマーリンがいたので、休憩室に葬っておきました」

「あれ、休憩室は死地だった?」

 

 入ってきたメドゥーサに、オオガミとエウリュアレ、ステンノの三人が迎える。

 メドゥーサの発言に、安全圏である休憩室の存在がセーフゾーンじゃないのではと困惑するオオガミ。

 

「それと、マーリンは恐らく自由組側かと」

「えっ、こっち側? いや、そんな気がしてたんだけど……だそうですよ、エウリュアレ様」

「……まぁ、良いんじゃないかしら。こちら側が充実するしね」

「そうかしら? あまりあの人は好きじゃないのですけど……」

「類友かな? 同類だから戦争なのかな? これは内戦勃発なんです?」

「馬鹿言わないで。別に同類がいても、気にしないわよ」

「……もうほとんど姉様達は観察者側じゃなくなっているのですが、言わない方が良いですよね」

「メドゥーサ。小さく言ってもバレているからね? 後で覚悟しなさい」

「……すいませんでした」

 

 メドゥーサは、エウリュアレに即座に謝るのだった。しかし、それで止めてくれるのはこの場においてオオガミくらいだろう。

 

「しかし、マーリンがついに部屋を……これは荒れるな……」

「そうは言っていても、楽しそうね」

「まぁ、引きこもっていたのが出てきただけで十分かと。ワクワクだね」

「これ以上危ない人を増やしても困るだけだと思うんですが……」

「良いじゃないのメドゥーサ。面白い事がもっと起こる様な気がするわ」

 

 不安げな表情をするメドゥーサと、マーリンが出てきたことで楽しそうなオオガミ。そんなオオガミを見ていて楽しそうなエウリュアレと、全体的に楽しそうだと笑うステンノ。

 その後、四人は普通にお茶会をするのだった。




 ゴルゴーン三姉妹は封印……封い……封……ちょっと知らないですね。運用していきましょう。本当はリップの話をしたかったんですけどね!


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このカルデア、危なくないかい?(最近の日常風景ですよ?)

 エルバサの真名バレ注意!!


「えっと……マーリンさん、何をしているんですか?」

「君は――――パッションリップだったね。何をしているのかという質問だけど、僕はただ面白い事が起きないかと思って見ているだけさ」

「な、なるほど……? あの、楽しむのはいいんですが……死なない様にしてくださいよ?」

「……アナも言っていたけど、もしかして、カルデアって危険地帯なのかい?」

「私が来た時はそんな危険じゃなかったんですけどね……」

 

 優雅に紅茶を飲んでいたマーリンは、近づいてきたパッションリップに言われた言葉に、思わず言い返したのは仕方のない事だろう。

 そんなやり取りをしてから数分。今まで大事件には至っていなかったため放置されていた二人が休憩室を荒らす。

 

「ヘラクレスゥゥゥゥゥゥ!!!!」

「――――――――――!!!」

 

 吹き飛ぶ扉。転がり込んでくるエルバサことペンテシレイア。幸い休憩室にいたのはサーヴァントのみで、咄嗟に回避したのは流石サーヴァントと言うところだろう。

 そして、そのペンテシレイアに追撃するのはヘラクレス。

 マーリンは何が何だか分からないと思いつつも、優雅っぽいポーズをやめるつもりはないらしい。

 

「まだ死なないか! なら……!!」

「おっと。宝具展開かな? うんうん、確かにこれは物騒だ。で、入り口がそこだから逃げられないんだけど、どうすれば良いんだい?」

「えっと……エルキドゥさんが来るまで死なないようにするくらいです」

「雑だね! というよりも、いつもそんな感じなのかい?」

「まぁ、こんな感じです。はぁ……あの二人、というよりも、ペンテシレイアさんだけでも抑えられればいいんですけどね」

 

 パッションリップはそういうと、じりじりとマーリンを前に押し出していく。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれたまえ!! 僕を前に押したってどうにもならないことはあるんだよ!? なんであんな危なそうなのを僕に任せようとするかな!?」

「何言ってるんですか。マーリンさんの幻術でどうにかするんですよ」

「おっと! 僕に頼るつもりだったんだね!! もしかして僕の所に来たのはそれが原因かな!?」

「…………」

「図星だね!? でもまぁ、うっかりしたら本当に死んじゃいそうだからね!!」

 

 カルデア内は安全だと思っていたのだが、案外そうとも言えないらしい。という事に気付いたマーリンは、すぐにスキルを使おうとし――――

 地面と天井から現れた鎖が、ヘラクレスとペンテシレイアを拘束する。

 

「全く……どうしてこうも面倒ごとが起こすのか。君たちは部屋に戻ってて。というか、ペンテシレイアは後で修理を手伝って貰うからね」

 

 そういうと、エルキドゥは二人を引きずっていく。

 マーリンはそれを呆然と見て、

 

「あぁ、だから君たちはたいして慌てないわけだ」

「普通に慣れますよ。日常風景ですし」

「……これが日常風景っていうのも嫌な話なんだけどね……」

 

 マーリンはそう言うと、ため息を吐いて、紅茶に手を伸ばし――――中身が零れていたので、泣きながら淹れなおすのだった。




 剣豪始まるし、アガルタキャラの真名バレしても大丈夫だよね! という思考で。

 パッションリップの被虐体質はイジメたくなるというか、攻撃させたくなるものだと聞いたので、今回はこんな感じのキャラですよ。書きにくくなりましたけどね。


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イベントの楔から解き放たれたマスターは宝物庫を荒らしに(私は暇だから久しぶりに休憩室でお菓子を)

「うぅむ……この『うえはーす』とやら……味は別としても、パサパサして微妙なのだが……」

「それだけで食べるからよ……私のアイスクリームをつけて食べなさいな」

「うむ……むぐっ……おぉ! これはうまい!! 少し付け足すだけでここまで変わるとはな! そうだ。この前のイベントの時の、『ちょこれーと』とやらも持って来よう!!」

 

 走っていく茨木を見送るエウリュアレ。そんなエウリュアレを見て苦笑いになるノッブ。

 現在休憩室の扉をエルキドゥとペンテシレイアが修理している。

 

「なんというか、こんな感じのやり取りが久しぶりな気がするのぅ」

「……そりゃ、私は最近ずっとオオガミの部屋に入り浸っていたしね。私もここに来るのは久しぶりよ」

「あ~……なるほどのぅ。それで、なんで今日に限ってここに来たんじゃ?」

「……イベント終わって、全員宝物庫を襲撃しに行ったから……」

「……ついに、置いて行かれるようになったんじゃなぁって……」

 

 しみじみと言うノッブに、頬を膨らませて不機嫌そうな雰囲気を露わにするエウリュアレ。

 しかし、ノッブが置いていかれていたのは大体いつもの事だったので、あまり強く文句が言えないエウリュアレ。

 

「全く……バラキーがいるから退屈しないで済んでるけど、最初の時みたいに二人だったら場が荒れてたわよ」

「一体何する気だったんじゃお主……」

「何をするかは考えてないけど、何かをするか考える所だったわ」

「なるほどのぅ。まぁ、何にしても、バラキーに救われたわけじゃな、マスターは」

「えぇ。見ていて面白いわ。本当に」

 

 ふふっ。と笑うエウリュアレ。ノッブもそれに釣られて笑うが、戻ってきた茨木にネロがついて来たのを見て、何があったのかと思う。

 

「どうしたんじゃネロ。エリザとライブ練習じゃなかったのか?」

「そうだったが、休憩は必須だからな。今は休憩という事だ。それで、三人は何をしていた?」

「儂らは菓子を食っておっただけじゃ。お主もどうじゃ?」

「ふむ……そうだな。余も混ざる! エリザはどこかに行ってしまったし、こちらにいるのも良さそうだ!!」

 

 そう言うと、茨木の対面、ノッブの隣に座るネロ。

 さりげなく会話の外に追いやられていたエウリュアレと茨木は、茨木の取ってきたものをウエハースに着けて食べていた。

 

「しかし……余がエウリュアレを見る時は、大体何かを食べているような気がするのだが……気のせいか?」

「気のせいではないと思うんじゃけどねぇ……事実、この部屋にいる時は何か食べとるし」

「別にいいじゃない。悪い事ではないでしょう?」

「まぁ、そう言われると、確かにそうなんじゃけどね。ただ、よく食べるという話と言うだけで」

「女神は太らないからいいのよ。成長しないとも言えるけど……分からないと思うから、別に構わないけどね」

「……余計な事は言わんでいいわ。お主もバラキーの様に大人しく食っておれ」

「じゃあ、そうさせてもらうわ」

 

 そう言って、エウリュアレは茨木と一緒にまた食べ始めるのだった。




 久しぶりに書いたようなこのメンバー。お菓子テロが復活してきたかな……?


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勝負は始まる前の準備が肝心だ(エルキドゥをどうやって封殺するかだよね)

「つまりはそういう事だよ。オオガミ君」

「……唐突に何を言い出すんですか、この探偵は……」

「いやなに、これからこのカルデアで戦争が起こる気がしてね。一応言っておこうかと思ってね」

 

 カルデア廊下にて。オオガミはホームズにそう言われた。

 発端になるのは何かというのは言わず、ただ起こるというのだけが告げられる。

 なんとなく予想がついていた事ではあるが、この探偵にはっきりと言われると、不安になる部分が大いにある。

 

「それにしても、突然の警告だね……何かあったの?」

「面白そうだからね。静観しているのも良いが、少し関わってみたかっただけさ」

「なるほど……? つまり、ホームズも参戦って事なの……?」

「いや、傍観していることに変わりはないよ。あくまでもアドバイザーと考えてくれればいい。直接的な抗争に参戦する事は無いよ」

「そう。ふぅ、よかった。これ以上異常な戦力が向こうに増えたら打つ手無しだからね……しかも、ホームズとエルキドゥを組ませたらカルデア内の全てを把握された挙句にやろうとしてることが全部ばれそうだし……」

「ふむ。それはそれで面白そうだ」

「……本気でやられたら敵わないんですがそれは……」

 

 しかも、風紀委員組のメンバーがメンバーなだけに、完全にどうしようもないという感じだ。ホームズ自体も強いので、こちらは両手を上げてバカヤローと叫んで爆散するのが精一杯だろう。

 なので、どうにかこちら側か中立にいて欲しいものだ。

 

「それで、マスターはどうするつもりだい? 私は一応中立を保つつもりではあるが」

「……何をするかは大体想像がついてるんじゃないの?」

「それはそれだよ。推理は推理であって、絶対ではない。話を聞いておく分には損はないと思ってね」

「ふぅん? とはいっても、これからノッブ達と対抗物を作りに行くだけだけどね?」

「なるほどね。神の兵器に対抗する道具……まぁ、楽しみにしているよ」

「……完成するか怪しいけどね」

 

 エールを送り、悠々と去っていくホームズを見送りつつ、オオガミは呟くのだった。

 しかし、ホームズにああ言ったものの、対抗できる物を作るのはそう簡単なものではなく、どうしようもないのが現状だったりする。

 ちなみに、この戦争は実際に起こすときは模擬試合という名目でシミュレータを使ってやる予定だったりする。

 

「エルキドゥに勝つにはどうすれば良いかなぁ……あの鎖を封じる方法が無いのがなぁ……ギル様がいれば話は別なんだろうけど」

 

 そんな事を呟きながらノッブの工房へと入って行くと、ノッブ達はすでに何かを始めているようだった。

 

「む。おぅマスター! 先に始めておるぞ!」

「何してるの?」

 

 ノッブが楽しそうに言ってくるので、一体何を思いついたのか聞くオオガミ。

 それに答えたのはノッブではなくエウリュアレ。

 

「ほら、以前BBにスロット攻撃されたじゃない。あれが使えるんじゃないかと思ったのよ」

「あ~……あれかぁ……」

「シミュレータを使うんですし、それなら細工できるんじゃないかと思ったわけです。BBちゃんにお任せを!」

「で、儂らはそれを見つつアイデアを出しとるわけじゃな」

「なるほどなるほど。それはちょっと面白そうだね。よぅし! 俺も考えるぞぅ!」

 

 オオガミはそう言うと、作業を手伝うのだった。




 エルキドゥを止めるために悪夢のBBスロットを復活させる……!! というか、エルキドゥ以外にも危険な人物がいっぱいいる気がするんですけどね……


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吾、どこに連れて行かれるのだ?(私も知りたいんですが)

「行くわよ! バラキー! メドゥーサ!」

「吾、どこに行くんだ……?」

「宝物庫周回がそろそろ始まるので出来れば早く終わらせてください」

 

 ナーサリーに引きずられていく茨木とメドゥーサ。いい加減クラスが違うキャラの名前を安定させたいところだが、しばらくは固定されないままだろう。

 

「で、本当にどこに連れて行かれるんですか?」

「分からないわ!!」

「……吾、休憩室に行きたいのだが。今日の『すいーつ』をまだ食べてないのだが」

「今日はアップルパイよ! でも行かせないわ!!」

「こやつ、鬼じゃ!!」

「鬼が鬼と突っ込むのはどうかと思います」

 

 抵抗しているようで、実際はなされるままにしている二人。

 どこに向かうのかは分からないが、とにかくナーサリーが楽しそうなのでそのまま連れて行かれる。

 

「しかし、行先未定というのは困りものです。とりあえず、ノッブ工房に行きましょう。あそこなら何かあるはずです」

「ノッブの工房……良いわね! 行ってみましょう!!」

「……なぁ。汝はなぜ吾の着物を下に引いておるのだ。吾の着物が汚れるだろうが」

「このままだと私の服が汚れてしまいますし」

「吾のならいいと!? 酷いのだが!?」

 

 ナーサリーの目的地を定め、さりげなく茨木の着物の一部を自分の下に敷いて汚れを抑えようとするメドゥーサ。

 当然茨木が怒るが、平然とやり過ごす。若干メドゥーサが楽しそうに見えたのは気のせいだろうと思いたい茨木だった。

 

「ところで、ノッブの工房って、どっちかしら?」

「えっと、確か向こうです」

「うむ。あそこはたまにBBもいるからな。二人して何をしているのか気になるが、それはそれ。菓子をくれるから吾は見なかったことにするわけだ」

「お菓子を? じゃあ、行かなくちゃよね! お茶会に誘いましょ!」

「……私には宝物庫周回についていく必要があるんですが……上姉様もいますし」

「知らぬ。吾を巻き込んだのだから、逃げられると思うなよ?」

「マスターの命令があまり聞かないとは……中々凄いところですよ。ここは。バビロニアもそんな感じだったような気がしますけど」

 

 ぼんやりと覚えているようで、覚えていない過去。

 マーリンを八つ裂きにしたい理由もそこにある様な気がするのだが、気のせいだろう。と思いなおす。

 

「あ、そこを右だ。その階段を下りて行った先に――――ちょ、階段を下りる時も引きずるとか、怪我をしたらどうする!?」

「このくらい、何とかなりますよ。危ないですけど」

「あはははは!!」

 

 茨木の叫びを聞き入れない二人。そのまま工房までたどり着き、

 

「ノッブ!! お茶会をしましょ!!」

 

 ナーサリーは楽しそうに、そう言うのだった。




 最近というか、最初からというか。マスターの優先順位が低いんですがそれは……
 まぁ、カルデア内で抗争が起こるくらいだし、仕方ないよね!


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パールさんパールさん。まだ地獄は見てないですね?(このカルデア、危険人物が多いですからね?)

「パールさんパールさん。このカルデアは危険極まりないんですが、大丈夫です?」

「大丈夫ですよ、マスターさん。というか、そんな危険な事が起こるんですか? ここ」

 

 廊下で話すオオガミとパールヴァティー。彼女は昨日からいたのだが、ノッブと共に工房に籠っていたせいで話していないという事件である。

 昨日一日放置してしまっていたが、このカルデア屈指の問題児たちと会っていないので、平和だったようだ。

 

「危険というか、人死にが出るというか……とりあえず会ったら暴れる二人は拘束してるけど、代わりに空気が張り詰めるメンバーが解き放たれているというか……ノッブ達が何かをやらかしていなければいいんだけど……」

「会った瞬間に暴れ出すってなんですかそれは……何があるんですか?」

「相性とか、色々あって……その……はい。まぁ、そのうち分かると思います」

 

 不穏な事を言うオオガミに、一体何が来るのかと頬を引きつらせるパールヴァティー。

 そして、その不穏な言葉(フラグ)は即時回収される。

 

「マスターーーー!!!」

「新特異点ですよ新特異点!!」

「えっ、ちょ、まっ! 拉致ですか!? 拉致なんですかぁぁぁぁぁ!?」

 

 突然背後から突撃してきたノッブとBBに抗う暇も無く、無慈悲にも連れ去られるオオガミ。

 その一部始終を見ていたパールヴァティーは、しかし。何があったのか分からないとでも言いたげな表情で、それを見送る。

 

 

 * * *

 

 

「……で、何も考えないで連れ去ったと」

「当然です!」

「儂らがためらうと思うなよ? マスター」

「ドヤ顔で言う事じゃないから。というか、こっちが何しているのかくらい見てくれると助かるんだけど?」

「それは知らん」

「私たちの管轄外です」

「……この二人は……」

 

 現状、自由組最強の問題児二人。この二人を制御できれば、後は何とかなる可能性が大いにあると思われるが、制御できるのは難易度が高過ぎるというものだ。少なくとも、オオガミには不可能に近い。

 一応、何とかしてレイシフトする前に二人を止められただけでも上出来か。

 

「それで、マスター。今回はどうするんじゃ? 儂の出番はあるんじゃろうな!!」

「私の出番もあるんですよね!?」

「いや……今回は、ノッブはあっても、BBちゃんは無いかなぁ……」

「な、なんですって!?」

「わはははは!! 儂の勝ちじゃ!! これはいける! 儂の時代じゃあぁぁぁ!!」

 

 ショックを受けるBBとは反対に、勝ち誇ったように笑うノッブ。

 しかし、ノッブは忘れている。あくまでも可能性の話で、最悪行かない可能性もあるという事を。

 

 そして、数分後に、新特異点攻略は開始されるのだった。




 今日は主役だったはずのパールヴァティーさん。悲しいかな、私の文章力のせいで影が薄く……

 あ、HFは明日見に行きますよぅ! ワクワクします!!


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屍山血河舞台下総国
今日のカルデアは静かねぇ……(あの、マスターが昏睡状態……)


「センパイ、寝てるんですよね。あれで」

「そうね。マスターは寝ているわ」

「エウリュアレもノッブもおらんから、吾は暇だ」

 

 のんびりとした雰囲気を出す三人。曰く、お茶会だそうで、クッキーや小さいタルトを食べつつ紅茶を飲んでいる感じだった。

 流石にマスターが倒れているときは暴れようとは思わないのか、大人しくしている。ノッブとエウリュアレがいないのも原因の一つかもしれないが、大人しいのは一応カルデアにとって良い事ではある。

 

「正直、自由組代表三人に加え、風紀委員組代表もいなくなりましたもんねぇ……」

「そーよそーよ。遊んでくれる人がもうバラキーしかいないのだわ!」

「吾もエウリュアレがおらぬからなぁ……って、汝と遊んでおったか……?」

「あら? 違かったの?」

「私から見ても、遊んでいるように見えたんですが」

「……吾、やっぱり鬼っぽくない気がしてきたのだが……」

「何を言っているの? 人間と仲良くなろうとする鬼だっているのよ? 泣いた赤鬼って、知ってるでしょ?」

「あれは吾の知っている鬼ではないわ!! あんな軟弱な鬼、母上に言われたのとまったく違う!! もっと鬼は傲慢で不遜で、強くなくてはならぬのだ!! 人間と友好関係を結ぶのではなく、蹂躙する心意気でいないのはおかしいではないか!!」

「うっわぁ……イバラキさんが言うと、冗談にしか聞こえないですね……」

「そもそも、それならノッブと話さないと思うの。もっとこう、ツンツンしてるべきだわ」

「う、む……それはそうなのだが……」

 

 いつの間にか鬼の在り方への話へ変わり、茨木はその在り方を疑念に満ちた目で且つ自分でもぼんやりと分かってはいたことを指摘されて口ごもる。

 

「まぁ、バラキーはそういうものよね。ちょっと残念な感じがないと、バラキーじゃないわ」

「……吾、馬鹿にされていないか?」

「そんなことないわ。バラキーはバラキーだもの。ねぇ? BB」

「あ~……そうですねぇ~……まぁ、ポンコツな感じが茨木さんだというのは納得です。まぁ、泣いた赤鬼よりも凶暴ではありますけどね」

「ぬぐぐ……やはり吾、そんなに鬼っぽくないか……?」

「えぇ」

「とっても」

「うわああぁぁぁ!! なぜだあぁぁぁぁ!!」

 

 鬼としてのプライドを直接攻撃されて倒れ伏す茨木。

 しかし、日頃の行いがそうなのだから仕方ないだろう。

 

「まぁいいじゃない。バラキーはバラキーよ。普通の鬼とは違う、もっとスゴい恐れ方をされているもの」

「普通とは違う……もっとスゴい恐れ方……?」

「えぇ。ちょっと言えないけどね。何時かわかる時が来るわよ」

「むぅ……? どういう意味だ? 吾はすでに恐れられていると?」

「えぇ、そうよ。だから安心して、お茶会を続けましょ」

「……そうか、恐れられていたか……なら良し! 続けるぞ!」

 

 満面の笑みで復活してくる茨木。

 その一部始終を聞いていたBBは、『その恐れられてるって、可愛がられてるの間違いじゃないですか……?』と思ったのは、秘密である。




 正直、肝が据わってるのか危機感を持っていないのか、それとも何か考えがあるのか分からないこの三人。とりあえずバラキーはポンコツ可愛い。異論は認める。


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縛りって、やり始めるとやめられない止められないだよね!(それで勝てなかったら元も子もないと思うのだけど)

「ふはははは!! 何じゃこれ、何じゃこれ!! 勝てる気がまるでしないんじゃが!!」

「涼しい顔してよく言うわ。私の方が大変じゃない」

「喋ってないでどうやって切り抜けるかを考えてほしいけどね。全く……マスターも、変な意地を張らないでほしいものだよ」

「ここで意地を張らずに何時張るか。これだけは貫くよ、エルキドゥ」

 

 三騎士縛り、コンティニュー封印、サポートはNPCオンリー、攻略法は自力で解明。

 悲鳴を上げながら、しかし不敵な笑みを浮かべて斬り払ったは五騎。昨日今日で使った令呪は三画。ギリギリで生き残っているような状況で、だが縛りの変更をしようとは一切思わないオオガミ。

 そんなマスターに呆れつつ、しかし楽しんでいるのは皆同じであろう。

 

「それで、マスター。次はいかがいたしますか?」

「当然、メドゥーサは殿(しんがり)でいてもらうとして、雑魚を相当するならネロと鈴鹿が前線だね。殲滅してよ?」

「当然である!!」

「オッケー! 私たちにお任せじゃん?」

「で、コスト合わせにアーラシュさんと、後は……エリちゃんかな」

「おう! 任せな!!」

「アタシの出番ね! って、後衛なの!? なんで!?」

 

 自分が後衛だという事に納得がいっていない様子のエリザベートだが、全スルー。話を続ける。

 

「英霊剣豪相手なら、ネロとエウリュアレが前線。後衛はデオンとエルキドゥとメドゥーサだね」

「うむ。ここでも余だな」

「ここで私なのよね……ランサーで使わなかったことは評価して上げるわ。出来るだけ相手との相性は考えなさいよ」

「了解したよマスター。見事皆を守ってみせよう」

「僕は攻撃力として、かな。あまり神性スタンは刺さってないみたいだし」

「私は……拘束の為ですね。スタン要員ですか」

「うんうん。エルキドゥは確かに攻撃力だけど、俺的に一番重視してるのはメドゥーサなんだけどねぇ……一応、今回の特異点で一番おかしいくらいの性能叩きだしてるんだけど……ここまで全部出てるし。というか、出してるし」

「まぁ、今回はメドゥーサが頑張っている事は、僕も重々承知してるよ。ただ、セイバーが出てきたら流石に休ませるべきだと僕は思うよ」

「その時は流石に私の出番だと思うけどね。メドゥーサを出すなんて、そんな……いや、オオガミだから、どうかしら……」

 

 嫌な予感がしているが、気のせいだろうと思いたいエウリュアレ。もちろん、今までの経験から、そうなるであろう事は明らかなのだが。

 

「まぁ、それでも何とかしてくれるわよね。なんせ、私たちのマスターだし」

「出来るだけ倒れる数は少なく済ませたいんだけどねぇ……技量が足りてないや」

「今回に限って言えば、ふざけているようにも見えるけどね」

「そんなこと言ったって、エルキドゥ。これでこそ私たちのマスターじゃん? アガルタの時にそれは分かったしね」

「……アガルタ……懐かしいわねぇ……」

 

 遠くを見つめ、そうポツリと呟くエウリュアレ。

 そして、オオガミはふと立ち上がり、

 

「さて……まぁ、雑談はそれくらいにして、とりあえずまた暴れてこようか!!」

 

 そういって、進み始めるのだった。




 ふはは!! なんじゃこれ、何じゃこれ!! 普通に敵が強すぎるんですけど!! 剣豪強すぎじゃないですかね!!

 という事で、本当に縛って戦闘中。おかげでまだ戦いが終わりませんね!! 何回挑みなおした事か!
 最初はマシュ縛りと、絆ポイント増加キャラ縛りだけの予定が、何時の間にか増えて増えて……フフフ。楽しくなってきましたよ!(錯乱


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日常
今回は、辛い戦いだったよ……(それでも勝てたのだから、成長してると思うべきよね)


「おはようだよ皆!!」

「何がおはようじゃぬりゃー!!」

「ぐふぅーー!?」

 

 休憩室に入ると同時にノッブにボディブローを叩き込まれるオオガミ。

 昏睡していたマスターに対して辛辣だとしか思えないが、大体いつもの事なので、若干心配しつつも見なかったことにする全員。

 

「おいマスター。どういう事じゃ。儂が出た回数、少ないじゃろうが」

「はふっ……げふっ……容赦のないボディブローからのその言葉は酷過ぎないですかねノッブさん……」

「ちょっとノッブ。オオガミをこっちまで連れてきて。蹴るから」

「マスターなのに……マスターなのに……!!」

「マスター。吾はチョコ菓子が食べたいぞ」

「エミヤに言ってくるのは……あぁ、いや、今ここにいると殺される気がするから厨房に逃げよう……」

「まぁ、逃がすわけないんじゃけどね」

 

 部屋から逃げ出そうと下がっていくオオガミを捕まえ、椅子に座らせるノッブ。

 そして、座らせるの同時にエウリュアレに蹴られるのは何故か。一体何をしたというのだろうか。

 

「それで、メドゥーサがボロボロだったことに関して、何か言う事は?」

「あぁ、いえ、その……メドゥーサ様は頑張ってくれました。エルキドゥも同様に、今回最高峰の殿(しんがり)でしたよ。正直あの二人がいなかったらこの縛りを完遂できなかったと思いました」

「そもそも、何で縛ったのよ」

「いやぁ……絆ポイントを取ろうって思ったら、何時の間にかこんなことになっていまして……マシュ縛りだけの予定が、楽しくなってきちゃったんで、いっそ徹頭徹尾縛り切ってやるかと思いまして。今ならいけるだろ。とか慢心いたしまして」

「撃ち殺したいわこのマスター」

「物騒!! 超物騒!! いや、なんだかんだ言って、実際に攻略できたから良いじゃないですか!! 石も使わなかったし、令呪が5画くらい吹っ飛んでこれはもう圧勝と言っても過言ではないのでは!?」

 

 必死で弁解するオオガミ。実際、コンティニュー無しで、6番目で令呪を使いきってからひたすら挑んで倒しきったのだ。その分、リンゴが犠牲にはなったが。

 

「あ。そうよ、最後のはどうなったの? 勝てたの?」

「えっ? 最後……あぁ……えっと、その、相手が宝具を撃つ前に全力で叩き斬っちゃいました……宝具とか、見てみたかったんだけど……」

「……バカじゃな」

「……バカよね」

「吾のマスターとして、恥ずかしいのだが……」

「酷いっ! 皆がいじめてくるっ!」

 

 半泣きで言うが、当然自業自得である。

 

「まぁいいわ。なんにせよ、今はこれだけで良いわね。おはよう、マスター」

「……うん。おはよう、エウリュアレ。だからとりあえず、蹴るのを止めてくれないかな?」

 

 爽やかな笑みを浮かべ、しかし机の下でオオガミの足に向かって蹴りを止めることはない女神に、震えた声で答えるオオガミ。

 マスターが昏睡から目覚めても、カルデアはいつも通りらしい。




 大体半々くらいでエルキドゥとメドゥーサがトドメを刺して、しかしラストはエウリュアレが持っていくという。やはり最後はうちの女神さまだよ!! やったねエウリュアレ様!! 信じてたよ!!

 あ、本当に縛りはやり切りましたよ。令呪枯渇して、感想でいただいた「ラスボスは宝具は等倍で見てください。めっちゃかっこいいですよ」というのを、宝具を撃たせる前にどうあがいても倒しちゃうんだけどこれは。という状況で思い出してフリーズしたりしましたが、まぁ、何とかなりました。

 うん。結局、一番強かったのはパライソでした。彼女だけが通常会合で令呪を使わせてきましたし。あれが一番意味が分からなかった……


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三姉妹スキルマ終わったー!(それで、儂はいつ成長するんじゃ?)

「ふぅ……何とか三姉妹全員スキルマ出来たね」

「うむ。なんで儂の成長が未だ行われないのかを問い詰めたいんじゃが」

「ノッブはもうしばらく出番無いからじゃないかな」

「この職場、非情すぎるんじゃが」

 

 一息吐くオオガミに、自分の番はおよそ来ないとやんわり言われ、若干泣きそうになっているノッブ。

 ゴルゴーン三姉妹のスキルマが終わり、聖杯は10個あるのだから4つほど使って二人をレベル90にしようかと考えているものの、聖杯を渡すだけのQPも無いという。

 

「とりあえず、聖杯一回分はあるから、あれだね。種火集めないと」

「種火周回とか、懐かしいんじゃけど」

「うん。久しぶりな感じがするよねぇ」

「まぁ、茶々の出番が出てくるだけなんじゃけど」

「ノッブの出番は最後の方だけだったしね」

「うむ。まさか久しぶりの出番があんなに少ないとは思わなんだ。まさかデオンに負けるとは……」

「盾がね……いなかったから……」

「まぁ、儂もデオンがいなかったら死んでおった場面がかなりあるしの。そこは流石に感謝しておるよ」

「だね。あ、そういえば、そろそろ新イベントがやってくる可能性があるらしいのですが」

「儂はどうせ出んじゃろうが」

「お許しください、ノッブ様」

 

 ふてくされたように頬杖を吐き、そっぽを向いてしまったノッブに、謝るオオガミ。

 しかし、納得いっていないようだった。

 

「いい加減、儂の方を育ててくれてもいいと思うんじゃけど」

「ん~……そう言われても、流石に資源も有り余ってるわけじゃないし……しばらくしたらたぶん素材も集まるから、待っててよ」

「むぅ……まぁ、儂のスキルか宝具強化を待つしかないじゃろうな。まぁよい、待つのはもう慣れたからな。居残り組と一緒に待っておるわ。BBもおるじゃろうし。儂以上に出番無いじゃろうし」

 

 さりげなく、BBも巻き込んでいるが、現状彼女が暇なのは事実なので、オオガミは何も言わない。

 

「というか、エウリュアレ達がいないとは、おかしな話じゃな。あやつら三人のスキルマをしたというのに、その当人たちがいないとは」

「三人はお茶会してるよ。で、スキル上げに疲れた俺は一人こっちで休んでいるというわけですよ」

「混ざるわけじゃないんじゃな……まぁ、良いんじゃけど。その分、儂はお主に文句が言えるからな」

「あはは……愚痴じゃないのはないんですかね……」

「ふむ……そうじゃなぁ……あぁ、この前の対風紀委員組用決戦兵器であるスロットが半分くらい完成しとるぞ」

「なんとまぁ。早すぎるでしょ……」

「まぁ、肝心の中身はすっからかんなんじゃけどね」

「一番重要だと思うんだけどねっ!」

 

 そう言うと、オオガミは立ち上がる。

 

「む。もう行くのか? マスター」

「いや、お菓子でも取って来ようかと。今更だけどね」

「そうか。儂の分もお願いするぞ」

「りょーかい」

 

 そう言うと、オオガミはお菓子を取りに行くのだった。




 という事で、ゴルゴーン三姉妹のスキルマ完了ですよ。
 しかし、聖杯を使うにはQPも種火も足りないんですよね……

 ちなみに、5個はメルトリリス復刻して、且つ手に入れられた時用なので、使う予定はないです。


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えっ、マスター、また聖杯使ったじゃと?(儂の番、どんどん遠くなってる気がするんじゃが)

「ついに聖杯まで送りおったわこのアホ!」

「マスターに対してドストレートだなノッブは!!」

 

 はっきりと断言し、オオガミの事を指差しながら怒りの表情で見るノッブ。

 ノッブの言うように、本日、記念すべき10個目の聖杯がランサーメドゥーサに捧げられた。

 

「うふふ。諦めなさいノッブ。貴女より私たちの妹の方が優秀だったという事よ」

「ぶっ飛ばすぞお主!! いや、きっとどこかには儂をレベル100スキルマにしてくれとるマスターがおるはずじゃ……!!」

 

 遠い目をして、エウリュアレに言われた言葉のダメージを誤魔化すノッブ。

 流石に見ていて苦しかったのか、オオガミは苦い表情をしつつ、

 

「う、うん……その……ごめん、資源不足で……流石に、他に育てる人が多過ぎまして……」

「まぁ、言っても始まらんのは知っとるんじゃけど。全く……今回の功績者があやつだというのは分かるんじゃが、もちっと儂の事を見てくれても罰は当たらんと思うんじゃが」

「ん~……ノッブはもうすでに完成してる気もするんだよねぇ……」

「……それ、つまり儂はもう育てようがないと言っとるわけか?」

「NPチャージ問題はマーリンが来てくれたのと、後結局ノッブは今のままでも肝心な時にやってくれるからね。もういいんじゃないかって思ってるよ」

「適当言いおって……全くそんなこと思っておらんじゃろうが」

「剣豪で最後の方ほぼ盾の如く耐久していたサーヴァントの言う事じゃないと思う」

 

 最終的に、敵の宝具が来るまでひたすら耐え忍び、エウリュアレへ宝具を撃たせなかったのだ。

 おそらくノッブが庇ったというより、相手がノッブを叩き斬りに来ていただけの様な気がするがなんにせよ、耐久してくれていたのは事実である。

 

「儂、勝手に狙われて、無残に斬られただけの気分なんじゃけどなぁ……めっちゃ痛かったし」

「うぅむ……そう言われると何も言えなくなってしまうんだけど、でもまぁ、助かったのは事実なわけですよ」

「むぅ……まぁ、マスターがそう言うならそうなんじゃろう。うむ。悪い気はせんな。うむうむ。仕方あるまい、儂のスキルマが来る時まで、気長に待つとしようかの!」

「……昨日も同じような事を言ってたような気がするんだけど、骨が無いから聞かなかったことにしよ……」

 

 これで下手な事を言って怒りを買い、スキルマさせろと言われるのは流石に困るので、黙っていることにした。彼女は心変わりが激しいのだ。主な原因はオオガミなのだが。

 

「それで、エウリュアレはなんでここに?」

「あぁ、そうよ。貴方を呼びに来たの。たぶん、私が来た方が貴方も簡単に折れてくれるでしょうし」

「……なんか、こう、心の中を見られてる感じがヤバいと言いますか……まぁ、はい。行きますよ、女神さま」

「ん。じゃあ、早く来てね」

 

 それだけ言うと、エウリュアレは出て行く。

 おそらく、彼女たちがいるのはオオガミの部屋だろう。すでにオオガミの部屋は、彼女たちに占領されているのだった。

 

「……まぁ、マスター。頑張って生きるんじゃ」

「なんというか、ノッブにそれを言われると、この先が不安しかなくなるんだよなぁ……」

 

 そんなことを言い、ノッブに別れを告げて、オオガミはエウリュアレの後を追うのだった。




 最近、ずっとノッブといる気がするよこのマスター。そろそろ茶々が出てきてもいいと思うの。

 という事で、ランサーメドゥーサに聖杯捧げてきましたよ!! とりあえず、90を目指すんじゃ!


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パライソ来たーーーー!!!(あいさつ回りに行ってくるでござるよ)

「アサシン・パライソ。真名解放されておりますが、なぜかお館様に名乗るのを禁止されているでござる」

「おぉ!! 忍者!! 忍者じゃ! まさかの忍者じゃよエウリュアレ!!」

「貴方の時代のじゃない……というか、お館様って何よ」

「姉様。おそらくマスターの事かと」

「なるほどね……お館様ねぇ……」

「……一応、儂のお館様の部類なんじゃが」

「昔の話よね」

 

 途中からパライソを忘れているように思えるが、一応彼女たちの視界の先にはいる。

 むしろ、目の前でこんなやり取りをされているので、忍者本人としては色々と言いたいことはあるだろう。

 

「それにしても、アサシン枠も徐々に増えつつあるわね……」

「そうじゃのぅ……スカサハから始まって、ニトクリス、そして今回のパライソじゃな。およそ二か月と行った所か」

「なんと。私以外にもアサシンがおられるのですか。それならば、挨拶せねばなりませんな」

「う、む……あやつらは暗殺者とは言えんのだが……うむ、まぁ、そうじゃな。たぶん、スカサハはシミュレーションルームで、ニトクリスは部屋におるじゃろ。後、あの二人は何の呪いか、この寒い中でも水着でしか入れぬから、あまり突っ込まんで――――」

「――――ノッブ。あんまり変わらない服装だから、あれ」

「……アレと言うでないわ、エウリュアレ。まぁ、何じゃ。お主よりは布面積は多いじゃろうが、あまり気にせんでおけ」

「は、はぁ……? よく分かりませぬが、行ってまいります」

「うむ。頑張るんじゃぞ、パライソよ」

「あの二人だしね。頑張ってね」

 

 二人にそう言われ、不思議に思いつつもパライソは部屋を出て行く。

 

「……忍者って、こう、天井裏にシュパッて行くものじゃないの?」

「いや、絶対そうだとは言えんがな? まぁ、千差万別という事じゃよ。あと、カルデアの天井って、開かんしな」

「……やったの?」

「もちろんじゃ。ダメじゃったけどね。そりゃもう、びっしりとエルキドゥの鎖があったわ」

「なにそのホラー。そんなことになってるの?」

「もはや、天井の構成材質がエルキドゥの鎖なんじゃないかと見間違えるレベルじゃったわ」

「姉様。それってつまり、監視されてるって事ですよね?」

「メドゥーサ。気付いてはいけないこともあるのよ……」

 

 メドゥーサの言葉に、しみじみと答えるエウリュアレ。なお、ノッブは天井で見たことを思い出したのか、どこか遠い目をするのだった。

 

「まぁ、あの子が無事に帰って来れるように祈りましょうか」

「うむ……まぁ、そうするかの」




 金アサ来たんじゃーー!! 単体アーツ宝具という、我が耐久パにとっては主力になる予感しかしない……!! 急いで育てないとですよこれは……!!


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種火足りてないわ……どうしよ……(それ、私の足を止めてまで言う事?)

「さて。聖杯は捧げたものの、種火が足りなくて現在放置気味です。どうしましょう、エウリュアレ様」

「さっさと集めてきなさいよ。それと、わらび餅を取りに行きたいから行っても良いかしら」

 

 会話の最中にスイーツを取りに行って良いか聞いてくれるエウリュアレに、前とはちょっと変わったかな。としみじみ思いつつも、後で自分が行くと言って、阻止するオオガミ。

 エウリュアレはそれを聞いて、渋々と椅子に座り直すと、

 

「それで、私になんて言われたいの? それとも、宝具でも撃てば良いかしら?」

「女神様。殺意が押さえられてないんですがそれは」

「押さえる気、無いもの」

 

 当然でしょ? と言って、微笑むエウリュアレ。

 オオガミは、そうなるだろうと思っていたのか、動揺は見られない。諦めのような気持ちはあるのだろうが。

 

「で、どうするの?」

「いや、流石に罵倒されたい訳じゃないんだけど、とりあえず誰かに言いたかっただけ」

「ふぅん? それで私の足を止めたのね。良い度胸じゃない。その喧嘩、買うわよ?」

「あっれぇ? この女神様、いつの間にかスーパー暴力的になってるんですけどぉ……?」

「誰が原因だと思ってるのよ。だ~れ~が~!」

「……ノッブか!」

「貴方に決まってるでしょう!」

 

 スパーンッ! と響く軽快且つ大きい音。ひっぱたかれたオオガミは困惑しつつエウリュアレを見ると、その手にはハリセンが握られていた。

 一体どこから出てきたのか。その答えは、すぐ隣にいるノッブの、してやったり。と言いたげな表情が物語っていた。

 

「ちょ、ノッブ! いつからそこにっていうか、どうしてエウリュアレにハリセンを渡したのっていうか! なんて恐ろしいことをしてくれるんだ!!」

「儂はほら、面白い方の味方じゃし」

「……これ、振りやすいわね……」

「ほら!! 恍惚とした表情でハリセンを眺め始めたじゃん!!」

「うむ、素振りまで始めおった……であれば、マスターが練習台じゃな!! 似合っておると思うぞ!! じゃ、儂はこれで!!」

「あ、ノッブ!! 後で絶対後悔させてやるからなぁぁぁ!!!」

 

 走り去るノッブに、オオガミの声は届いたのか否か。とにかく、彼女は全力で逃げ去った。

 置いていかれた上に逃げ遅れたオオガミは、何時の間にかこちらに向き直っているエウリュアレを見て、頬を引きつらせる。

 

「それで、マスター。あの子の種火をどうするか、だったわね」

「あっ……いえ、その……はい、そうです」

「じゃあ、答えるわね?」

 

 そういうと、エウリュアレは高く高く腕を振り上げ、

 

「早く行ってきなさい!!」

「ごめんなさいっ!!」

 

 全力でオオガミの後頭部にハリセンを叩き付け、その勢いにオオガミは机に顔面を強くぶつけるのだった。




 衛生兵! 負傷者一名!! 直ちに医務室へと連行していくんだ!!

 いやぁ……気付いたらまたエウリュアレと一緒にいるぞこのマスター。何時になったらエウリュアレ離れできるんだこのマスター。
 しかし、ハリセン……昔もどっかで使った気がするんですよねぇ……気のせい?

 ちなみに、最後のはギャグにするかイチャイチャにするかで数分悩んだ結果、イチャイチャなんぞこの作品に合わねぇだろという事で、イチャイチャにはご退場いただきました。


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下姉様とマスターって、かなりの確率で一緒にいますよね(中々不思議なこともあるものです)

「マスター。下姉様は今日はどうしたんですか?」

「ん? あぁ、エウリュアレは今ノッブの所だよ。遊びに行ってるからね」

「そうですか……いえ、何かあったというわけでは無いんですけどね。マスターがいるのに見えなかったので」

「そんなに一緒にいるイメージある?」

「えぇ、かなり」

「マジですか……?」

 

 休憩室で休んでいたところでメドゥーサに言われ、首をかしげるオオガミ。

 無自覚だったのだろう。メドゥーサに言われて、そんなに一緒にいるのかと考える。

 そうして思い出してみると、ここ最近ずっといる様な気がする。というより、ここ最近はずっとオオガミの部屋でお茶会を開かれ続けているような気もする。

 後、何時の間にか部屋に侵入されているのは今も謎である。清姫と静謐、頼光の侵入は無いのに、これは一体どういうことなのかと考えるが、冷静に考えると、監視役がノッブなので、エウリュアレがスルーされるのも当然なのだろう。

 

「いや待て。絶対関係ないでしょ。どうしてスルーしてんねんノッブ。そこは止めようよ流石に。まさか、共犯……?」

「マスターの部屋に侵入するメリットが分からないのですが……?」

「うん。それは俺も思うよ。一体侵入して何してるんだろ……」

「不思議ですね。まぁいいです。じゃあ、私はこれで」

「あぁ、うん。じゃあね~」

 

 メドゥーサが部屋を出ていくと、ふと、休憩室の奥の方が賑わっていることに気付く。

 何事かと思い目を凝らしてみると、そこにはマーリンが。

 近づくのもどうかと思ったオオガミは、聞き耳を立ててみる。

 

「――――そうして、二人は末永く幸せに暮らした。めでたしめでたし。さぁ、これで今日の話は終わりだよ。解散解散」

「マーリン。今日もお話ありがとう!」

「吾はあまり興味ないのだがな……鬼がいっぱい出てくるような話はないのか」

 

 マーリンの話を楽しそうに聞いていたナーサリーと、どこか不満そうな茨木。

 オオガミはそれを遠巻きに見つつ、ミニパンプキンシュークリームを食べる。なお、美味しかったので、エウリュアレに渡しに行くついでにノッブにも差し入れようと思うのだった。

 

「そう言われてもね……あぁ、桃太郎の話でもするかい?」

「それだと鬼は殺されてしまうであろうが!!」

「序盤だけ見ればかなり頑張ってるように思えるけどね?」

「何よりも気に食わぬのは、犬、サル、雉にやられるのが分からぬ!! 桃太郎はあれか!! 動物会話を持ってる上に指揮能力も高いのか! どうやってあの三匹で鬼の群れを翻弄するというのか!! というより、鬼も鬼だ! どうして人間一人と畜生3匹に負けるのか、てんでわからぬ!!」

「指揮系統が壊滅的だったというか、そもそも宴をして酔いつぶれてるところへの奇襲だったような……?」

「吾等と同じような理由だった!! すまぬ。だがやはり酔っぱらっていたからと言って、そこまで やられるものか!? 桃太郎とやらが頼光並みに強いのなら分かるがな!」

「動物三匹仲間にして鬼の拠点に乗り込めるほどよ? 弱いわけないじゃない。それに、もしかしたら連れていた動物も、ただの動物じゃないのかもしれないわ」

「恐ろしいのだが! そんなもの、恐ろしいのだが!!」

 

 桃太郎は鬼の視点からでも、中々恐ろしい事らしい。それはもう、恐怖の代名詞である鬼が、犬と猿と雉にやられるのだ。訳が分からないと思うのも無理はないだろう。

 そんな話を聞きながら、オオガミはミニパンプキンシュークリームを箱に入れて持って行くのだった。




 このマスター、行動基準がエウリュアレな件。もうエウリュアレに洗脳されてません?

 しかし、桃太郎は、今にして思えば中々強い……あのバカみたいに強い鬼を三匹の動物と一緒に倒したんですし……人じゃないでしょあれは……


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予告された、ハロウィンの惨劇……(ちょっと! まだ惨劇とは決まってないでしょう!?)

「ついに来た……ハロウィン2017!!」

「「(アタシ)達のステージね!!」」

「……私、行かなくていいわよね?」

「いや、エウリュアレは最終兵器だから。大体何とかしてくれるって意味で」

「そんな期待されても……」

 

 一応、彼女としては非力な女神で通っている予定なのだが、現実はこのカルデアにとって、男性に対して無双出来る最強の存在だったりする。おそらく、知らない方が珍しい部類だろう。

 なお、この場にはランサーエリザとブレイブエリザ、エウリュアレに玉藻の前というメンバーで、オオガミはその中で話をしていて、若干不安になってきている。

 

「それで、(アタシ)のステージは何時からなの?」

「ん~……明後日?」

「そうなの……残念ね。出来る事なら、今すぐにでも暴れたいのに……」

「まぁ、仕方ないわよ。のんびり待ちましょ」

「というか、一つ聞きたいのですが、なぜ(わたくし)?」

「知らないわよ。なんか勝手に対象になってたんじゃない」

「はて……(わたくし)、何かしましたっけ?」

「存在自体がって可能性も」

(わたくし)って一体どんな印象持たれているんです!?」

 

 玉藻が声を上げるが、全力で目を逸らすオオガミ。

 しかし、ふとボーナスサーヴァントだけの編成を考えてみると、玉藻がいる時点で基本負けないのではないだろうか。と思ってしまう。

 

「うぅむ、玉藻はやっぱりぶっ壊れてる感あるよね」

「突然何を言い出すんですか、このマスター」

「今更だとは思うけどね、私も一緒に組んでいて、かなり心強かったし」

「あの宝具回転率は流石よね! あぁ、あの恩恵が受けられるかと思うと、楽しみだわ!! 無限ライブよね!!」

「いいわねソレ!! 二人で盛大に歌いましょう!!」

「……あの、もしかしなくても、そのライブを間近で聞くことになるのって、(わたくし)ですよね?」

「…………えっと、その、マスターも巻き込まれるんで、それで……」

「獣耳は地獄耳なんです!! あんな音響兵器、聞いたら死んじゃいますから!!」

「じゃあ、耳栓探してくるので、それでなんとか」

「……まぁ、それなら何とか……」

「当人たちが勝手に騒いでいるとはいえ、よく目の前で言えるわね……」

 

 どれだけ暴れられるか、ライブか出来るだろうかと楽しそうに騒いでいる二人を前にしているにもかかわらず、彼女たちのライブ被害について平然と話せるこの二人の精神である。聞かれていたら大惨事と言うしかない状況になるのは明らかなのだが。

 

「さて、それじゃあ、今日は解散して、明後日に備えて種火周回して来ようかな」

「そう。頑張って来なさい」

(わたくし)も待っていますね。頑張ってきてくださいね? マスター」

 

 わいわい騒ぐエリザ達をちらりと見た後、オオガミは休憩室を出て行くのだった。




 ボーナスキャラだけでの編成してみたら、どう見ても玉藻の存在が強すぎて、負ける気がしないんですが。エルバサときよひーもいましたが、おそらく出番はないのかもしれないです……
 やっぱり、ぶっ壊れキャスターが一人入ってるだけで安心感が違いますわ……


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イベント前のソワソワした気持ちって、やることが無くなると加速するよね(大体いつもの事でしょう)

「やることが無いっていうのは、平和と言うか、暇というか……」

「そんなこと言ってると、絶対に何か来るわよね……」

 

 休憩室でいつも以上にだらけているオオガミ。そんな彼が突然不穏な事を言ったので、即座に突っ込むエウリュアレ。

 本日はスフレパンケーキ。ふんわりという領域を超えて、口に入れると溶けていき、甘さだけを残していくようなパンケーキは、エミヤの自信作だそうだ。コーヒーや紅茶、ホットミルクを飲み物として選ぶのが良いだろう。

 

「……ねぇマスター。私、今更思ったのだけど、あの厨房のエミヤっての、どうしてこんなにも料理が上手いのかしら?」

「さぁ……? エミヤに直接聞いてみる?」

「いやよ。面倒臭い」

「本人曰く、『昔からやっていた』そうだぞ。というか、なぜ紅茶やこーひーを飲めるのか……牛乳で良いではないか」

「それはあれだよ。好みって奴ですよ。というか、バラキー……何時からそこに?」

「何時からも何も、吾は一緒にいたではないか。ぱんけーきも共に貰っていたというのに……」

「……そうだっけ?」

「吾、そんなに影が薄いか……?」

「いえ、私たちが話し込んでいたからじゃない? この人、集中してる時は周りが見えにくいみたいだし」

「うむぅ……そんなものなのか……上に立つものならば、周囲にも気を配らねばならぬぞ。(なれ)は仮にも吾のマスターなのだ。しっかりと責任は果たして貰わねば困る」

 

 エウリュアレのフォローに、不満そうなものの、上に立つものの責務のようなものを教えてくれる茨木。

 オオガミはなんとなく腑に落ちないものの、影が薄かったからと言って暴れ出されるよりはマシだと思い、甘んじて受け入れる。

 

「というか、なんでバラキーはそんなこと知ってるのよ」

「うむ。この前、ナーサリーが聞いておってな。その時聞いたことを言ったまでだ」

「そうなの。不思議なこともあるものね」

「たまたま特に意味もなく聞きたかったことが聞けるという幸運。とりあえず、今の会話から、おそらくそろそろ来るであろう人物が分かったよ」

「……頑張ってね、マスター」

「エウリュアレがわざわざマスター呼びする時点で嫌な予感しかしないね」

 

 ははは。とオオガミが乾いたような笑いをし、やはりというべきか、扉は開く。

 

「マスターさんマスターさん! 遊びましょ!! 私、アガルタに行ってみたいわ!!お話に出てくるような場所がいっぱいなんでしょう!?」

 

 元気一杯のナーサリー・ライム。予感は的中。想像通り、やって来たのは彼女であり、しかし要求される内容が想像とかけ離れていたため、困惑する。

 

「あの、お茶会とかではなく、冒険なんですか? お姫様」

「えぇ、えぇ! バラキーとバニヤンも連れていきましょう! 絶対楽しいわ!!」

「む。何時の間にやら吾も行くことに……?」

「じゃあ、私はバニヤンを呼びに行ってくるから、マスターさんはバラキーと一緒に来てね!!」

「……これ、断れないです?」

「えっ……マスターさん、来てくれないの……?」

 

 若干嫌そうな顔をするオオガミに、悲しそうな表情で、目を潤ませて問い掛けるナーサリー。

 これをされてもなお断れるなら、それはおそらくまっすぐな心で、誘惑に惑わされないヤバイ系の人間か、ただのド外道くらいだろう。と思うオオガミ。

 当然、答えは一つである。

 

「もちろん行きますとも。待っててね、ナーサリー」

「今、さらっと吾は売られた気がするのだが?」

「やったわ! ありがとうマスターさん!! じゃあ、待ってるわね!!」

 

 走り去っていくナーサリー。それを見送ったオオガミは、

 

「という事で、急遽アガルタ行きが決定されたよバラキー。急いで準備するんだ」

「吾、強制なのか……普通に断る」

「じゃあ、頼光さん呼んでくるね」

「ちょ、それは無い! それは無いぞマスター!! あやつが怖い事は知っておるであろう!? そんな、人を軽く超えている様なのを吾にぶつけようとするでないわ!!」

「バラキーの方が人じゃないでしょう。と突っ込みたいのはやまやまだけど、それはそれ。今は支度が先だよ!! 頼光さんを呼ばれたくないなら速く準備をするんだ!!」

「こやつ……後で憶えているが良い!!」

 

 そう言うと、バラキーは部屋を飛び出していき、数瞬遅れて、オオガミも走りだすのだった。

 一人残されたエウリュアレは一言、

 

「まぁ、まだ平和な方だったわね」

 

 そう言って、入れ違いに入って来たノッブとBBを見るのだった。




 バラキーを脅すときは菓子よりも頼光さんが手軽なんじゃないかと思った今日この頃。おそらくこの脅しを使うたびに友好度が下がっていく……


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ハロウィン・ストライク!魔のビルドクライマー/姫路城大決戦
エリちゃんめ、ついに生身を捨てたか(それ以上に、あの建物に突っ込む方が先なのでは?)


「カオス!! もうカオスだよアレ!!」

「チェイテ・ピラミッド・姫路……まさかあのドラゴン、東洋までぶっこんで来るとは思いませんでしたよ……どう見ても盛り過ぎてやがりますよねコレ」

「玉藻。殺気が隠せて無いよ。いや、思うんだけども。ついにメカになるっていう、もう人間どころか生物をやめるという暴挙に出たよねぇ……」

 

 ついに人間をやめ、ドラゴンではなくメカドラゴンになってしまったエリちゃん。エリちゃんが変化したんじゃないでしょうが。嘘を言うのは止めなさい。という突っ込みはスルーという事で。

 そんな事を、チェイテ城に侵入した後に呟きながら進んでいくオオガミ達。

 

「それにしても……姫路城……姫路城ですかぁ……刑部(おさかべ)ちゃんがいますからねぇ……」

「えっと、何かあったの?」

「色々とありまして……まぁ、そのうち分かると思いますよ。彼女、引きこもりですから人と触れ合う機会少ないでしょうから、簡単に喋ってくれるんじゃないですかね?」

「バッサリ言うねぇ……それだけ恨みを持ってると取るべきか、なんというか」

「まぁ、うちのカルデアはアクティブすぎますから、来ない気がしますけどね。私としてはそちらの方がいいので、来なくてもいいんですが」

「えぇ~……あの折り紙攻撃はロマンがあるんだけどなぁ……玉藻も出来たりしない?」

「あそこまでの精度は面倒なので嫌です。あんな複雑なのを使うより、直接蹴り飛ばした方が早いじゃないですか」

「何という脳筋思考……マーリンかな?」

「あんな胡散臭い夢魔と一緒にしないでください。(わたくし)、あんなに話したりしませんよ」

「めっちゃ意味も無い詠唱してるだけの事はある……アレって絶対無詠唱でもいいよね」

「マスター? それこそロマンというものじゃありません?」

「うん、まぁ、分かるんだけど」

 

 チェイテ城の階段が全部潰されている事を確認し、仕方なく逆さピラミッドを登る事を決意。明らかに人間を通すつもりが無いのだが、はたして騎士たちはどうやって降りるというのか……

 

「……これ、登るの?」

「別に、クリアできるミッションをいくつか終わらせてからでいいんじゃないんですか?」

「……うん、そうだね。ミッションを出来るだけ終わらしてから登ろう……APも少ないし……」

「えぇ、そうした方が良いですよ。明日もありますし」

 

 窓まで来て、引き返すオオガミ達。とりあえず、まだ残っているであろうパンプキンナイト達を倒しに行く。

 

「今更ですが、私がいる必要、あります? 攻撃力ブーストですし、必要ありませんよね?」

「それはそれ。一応、最悪の可能性も考えて、備えておくべきだよ」

「そんな推奨レベルの高い所に行くとは思わないんですけどねぇ……」

 

 玉藻はそう言いながら、目の前に出てきた騎士達を見て仕方なく戦闘態勢に入るのだった。




 エリちゃんの祭りなのにエリちゃんを一切出さない今日の話である。

 未だチェイテ城で足止めを喰らっている私……果たして明日にはどこまで進めるんでしょうか……
 正直攻撃力ブーストだから玉藻いらないな!!(ぉぃ


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エリちゃんの成長した方が来たんですが(じゃあ、即、ぶっ殺で)

「さて、エリちゃん。貴女の成長しちゃった方が来ましたが、いかがしましょう」

「ぶっ殺すわ」

「勇者としてぶっ殺すわ」

「うん。結論が一緒だね。後者に至っては否定しきれないのが問題だね」

 

 勇者とは何なのか。正義の者でいいのだろうか。というか、アッサリと自分の未来の姿をぶっ殺す宣言するんですねエリちゃん。と突っ込みたいところはあるが、実際に召喚されてしまったのだから仕方ない。礼装を押しのけて来たのが彼女なのだ。

 

「それにしても、なんだって金回転までさせてあんなのを呼んだのよ」

「まさか子イヌ……嫌がらせかしら?」

「どうしてそうなるのかな!? 流石に酷いと思うんだけど!?」

「……まぁ、いいわ。(アタシ)に近づけなければ良いし」

「ただし、廊下でばったり会ったら覚悟しておいた方が良いわ。(アタシ)は本気で戦うからね?」

「廊下を壊さない程度にお願いしますよ……」

 

 後でエルキドゥにこの二人がカーミラと接触しない様に見張っていてもらおうと考え、ため息を吐く。

 ブレエリもランエリも、結局同じエリザベートなのだ。カーミラとは仲が悪いらしい。

 

「それにしても、今日はびっくりしまくりだったよ。メカエリちゃんは増えるし、刑部姫の部屋は黒髭みたいというか、正直欲しいものがいくつかあったりとか、というかあの部屋の写真一枚でいいから欲しかったというか、なんだあのグッズは。凄すぎるだろ。武蔵ちゃんクッションとかいつの間に作られてたんですかっていうかどこで注文すればいいんですかとか! いろいろ聞きたかったなぁチクショウ!!」

「そんなにあの部屋が良かった? あの時も言ったけど、あんな部屋、狭くない?」

「いやいやいや、確かに誰かを呼ぶには狭いというか、呼べるわけないだろとか思うけど、一人で引きこもるなら最適としか言いようがないよ!! っていうか、第一部をやってないから知らないけど、ここの時代設定どうなってるの? ネット繋がってるってどういうことなの?」

 

 だんだんとおかしな方向へ話が変わっていく様子を見て、ブレエリとランエリは首をかしげる。

 

「な、なんか今日の子イヌ、変なんだけど?」

(アタシ)もそう思ってきたわ……こういう時、どうするの?」

「えっとえっと……そうよ! エウリュアレに助けを求めましょう!!」

「そ、そうね!! ところで、エウリュアレはどこにいるの?」

「……そう言えば今回、エウリュアレの姿を見てないわ……!!」

「ダメじゃない……!!」

 

 神頼みは、どうしようも無い時であればあるほど効果が表れにくいという性質は悲しい事にあるようで、エリザベート達はどうしようもない現実に打ちひしがれる。

 

「まぁいいわ。(アタシ)はエリザ……この程度で挫けたりしないわ!!」

「そ、そうね! よくある事だものね!! 大丈夫よ、(アタシ)達ならいけるわ!!」

「……なんか、すっごい失礼な事言われてる気がする……」

 

 希望の闘志を燃やすエリザベート達の後ろで、なぜか変な目で見られていたような気がするオオガミ。

 当然、変な雰囲気になってしまったので、三人は数分後には周回へと向かうのだった。




 エリちゃんとカーミラ様、仲悪すぎるんですよぅ……あと、刑部姫の部屋の武蔵ちゃんクッション欲しいんですけどぉ……

 というか、本当に朝何となく回したらカーミラ様出てくるとは思わなくて困惑です。金回転での金アサシンからのカーミラ様ですからね。まさか刑部姫かと思ったがそんな事は無かったという話で。


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ミッションとか、効率悪いところしかないから辛いんですけど(きっと明日までの辛抱よ……!!)

「ミッションとか、時間かかるよね……早くクエストが解放されないものか……」

(アタシ)、飽きたんだけど。子イヌ。何か出来ない?」

「うぅむ……そういうのはエリちゃんの役目だと思うんだけど……エリちゃんが歌うってのは?」

「ゲリラライブってことね!! でも、残念ながら今はそんな気分じゃないの」

「えぇ~……むぅ、どうしたものか」

 

 カルデアに帰れもしないので、エリザとしては暇なのだろう。敵を倒し続けるのにも疲れてきたところだ。

 姫路城の廊下で座り込んで外を眺めつつそんなことを話し合う二人。ちなみに、ブレエリではなくランエリの方である。

 

「ミッションってさ、どうしてこうも面倒なのがいっぱいなんだろうね?」

「効率悪い所しかないから、なおさら面倒よね」

「礼装も足りないし、効率の良い狩場も無いしで中々大変な戦いだよ全く」

「まぁ、明日には増えるかもだし、希望を持って待ちましょ」

「だねぇ……まぁ、グミの礼装は交換し終わったから、おそらくこれ以上はミッションで交換だよね」

「だと思うわよ? それより、ねぇ。何か思いついた?」

「いや、何にも。あ、エリちゃんエリちゃん。膝枕してよ」

「膝枕? どうして?」

「いや、ふとしてもらいたくなって」

「ふぅん? まぁ、別にいいわよ。ただ、ここだと寝辛いんじゃないの?」

「特異点修正の時は野宿するからいい加減慣れて来てるよ。じゃ、失礼します……」

 

 そう言うと、オオガミはエリザの膝の上に頭を下ろし、力を抜く。

 エリザは自分の膝の上に乗っている頭を見て、何を思ったのか、髪を手で()き始める。

 

「ん~? 何してるの?」

「子イヌの髪、ボサボサだから。アイドルである(アタシ)()かしてあげようと思ってね!」

「……本音は?」

「暇なの。言ってるじゃない」

「まぁ、分かるけども……自分の髪ではやらないの?」

「人の髪だから楽しいの。自分の髪だと、遊んだ後に戻すのが面倒じゃない」

「つまり遊んだ後に放置するって言いきったよこのアイドル……!!」

 

 ふふん。と得意げに鼻を鳴らし、エリザはオオガミの髪を弄る。

 本当に楽しそうで、ペチペチと床を叩くドラゴンの尻尾の振動が聞こえるほどだ。

 

「……楽しい?」

「うん。楽しいわよ」

「……そう。ならいいんだ。なんだかんだ、エリちゃんはほぼ初期からいるのに構って上げれてない感じがして」

「むぅ。そこは本当にそうよね。全く、一緒に騒いでくれてもいいじゃない。エウリュアレだけじゃなくて、(アタシ)も見てくれたっていいんだから!」

「ごめんごめん。本当、自分でもどうかと思うくらいにエウリュアレと居たからねぇ……まぁ、思い直したからってすぐに治るとは思わないけど」

「別にいいわよ、エウリュアレに構いっぱなしでも。たまにライブを手伝ってくれればね」

「ん? それでいいの?」

「なによ。嫌なの?」

「いや、全然。そんなので良いなら、何時でもいいよ」

「本当!? じゃあ、手伝ってくれたら、子イヌは特等席で聞かせてあげるわね!!」

「えっ、あ、うん……あり、がとう……?」

 

 エリザが目を輝かせてそう言い、寝転がりながらも聞いていたオオガミは、『今、自分はとんでもない事を行ってしまったのではなかろうか』と思うも、すでに後の祭りであることを察して、頬を引きつらせる。

 

「じゃあ、マスター。楽しみに待ってるからね?」

「……任せておいてよ」

 

 十二分に期待を含んだ満面の笑みで言われてしまっては、引き下がれるわけがない。

 オオガミは、自分の鼓膜を犠牲にすることを決心し、とりあえず帰ったらエリザの歌う舞台を考える事にするのだった。




 珍しくヒロイン風味のエリちゃん。忘れられそうですが、一応我がカルデア、マシュを除いて最古の星4以上です。
 絆レベルがエウリュアレとヘラクレスに抜かれてるのは、戦闘に引き連れまわした数が問題ですが、まぁ、それでも絆レベルは3番目にマックスになるんじゃないかなぁ。と思っております。

 しっかしまぁ、エリちゃんがこんなに大人しいわけないだろ!! とか思っちゃったり。なんか、エウリュアレ並みに甘い話を書いた気がする……


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やはりピラミッドか……して、襲撃は何時じゃ?(もう内部ですよ。ノッブさん)

「して、ピラミッドか……いつ行くんじゃ?」

「この前の復刻ハロウィンのバラキーみたいな事言ってるんじゃないよノッブ」

「なんでノッブだけ連れて来たのよ。というか、ランサーの(アタシ)は?」

「休憩入ってます。昨日働いてもらったんで」

 

 すでにピラミッド内にもかかわらずそんな会話をする三人。ランエリには昨日膝枕をしばらくしてもらっていたので、気分的に顔を合わせ辛いので一回お帰り頂いた。暇そうにしていたので、別に大丈夫だろう。

 

「しかし、なぜ儂なんじゃ? 連れて行けと叫んではおったが、別段NP効率も良くないし、全体でも火力は少ないじゃろ?」

「いやぁ、それがさぁ。敵が神性持ちの騎乗持ちだよ? NPさえ何とかすれば明らかにノッブの運用が一番なんだよ」

「マジか。儂驚き何じゃが……まぁ、マスターがそれでいいのならそれでいいんじゃが。うまく扱うとよい。マスター」

「当然。扱いにくい第六天魔王様だけど、何とかしてみせるとも」

「そう言うところが本当に儂のマスターっぽいんじゃよなぁ……よくもまぁ頑張るもんじゃ」

「ちょっとめちゃくちゃ馬鹿にされてる感じ。一体俺が何をしたというのか」

 

 この、めちゃくちゃかっこいい事を言ってる雰囲気なのに、どこか残念な感じが全開なのが、オオガミである。

 しかし、現在一向に攻略が進まないのは、いつもの事だと済ませて良いものか。

 

「ミッション、47までしか進んでおらぬではないか。このペースで終わるのか?」

「そうよ、子イヌ。アイテム交換もほとんど終わってないし、実は結構不味いんじゃないの?」

「うぐっ、それは、そうだけども……な、何とかなるよ!! 時間はまだあるしね!!」

「まぁ、確かに来週まであるが……しかしマスター。いつもの事じゃが、終わると思っておるのか?」

「……り、林檎を使えばあるいは!!」

「頑張るのよ子イヌ!! 応援しているわ!!」

「いや、エリちゃんは応援するだけじゃなくて戦うんだからね!?」

「えっ? それは当然じゃない。勇者は戦ってこそ勇者よ。サブメンバーで引きこもってるのなんて、柄じゃないわ!!」

「なんじゃ。今日のエリザは意外と好戦的じゃのぅ」

「そう? いつもと同じように思うけどね?」

「うぅむ、そう言われるとそんなような感じもするが……どうなんじゃろ?」

「別にどっちだっていいじゃない。(アタシ)(アタシ)よ。今日は暴れたい気分なの!」

「勇者の口から暴れたいという言葉が出てくるという驚き……」

「まぁ、エリザじゃし」

 

 グッと気合を入れるエリザを見て、こちらも頑張らないとな。と思う二人。

 アイテムはそろっていないので、三人はピラミッド内を散策するのだった。




 いやぁ……終わる気がしませんね!! ミッションが終わらない!! りんごを食べないとダメじゃないですかコレ!!

 いや、来週がまだ残ってますし、何とかなりますよね!! 頑張るぞい!


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ランエリとライブと聖杯と(おっきー来たけど、成長させられないってどういう事よ)

「引きこもりが参戦なんですが」

「おっきー参戦なのね」

「……まぁ、本人の引きこもりのせいと言うよりも、こっちの種火事情で、彼女が戦闘に参戦できるのはかなり後なんだけどね」

「ダメじゃない!!」

 

 石も呼符も吹き飛び、全力回転で回しまくった本日。

 狙っていたふーやーちゃんを華麗にスルーし、驚きの金鯖二回で、デオンと刑部姫を引くという喜んでいいのか分からない現象。少なくとも、刑部姫の登場は喜んだ。デオンは一体どこで使えるかと考える宝具がレベル3になったので、いつかまた壁役をやってもらう事になるのだろう。

 ちなみに、今日一緒にいるのはランエリの方である。

 

「しかし、これでステンノに聖杯を回すのがまた遅れそうだ……」

「……(アタシ)に捧げなさいよ」

「それはそれ。これはこれだよエリちゃん。聖杯は一応個数があるからね。余ったらエリちゃんにも渡すよ」

「後なのね……まぁ、良いけど。まだあのゴルゴーン三姉妹の所にしか聖杯はいってないし」

「予定ではバラキーにも渡すけどね」

「……まぁ、イバラキは仕方ないわね。復刻の時も凄かったし」

「それに、聖杯を渡されるとライブをそう簡単に開く事が出来なくなるんだよ」

「えっ、なんで?」

「それはね? あまりの人気っぷりに、ファンが殺到してステージが壊れちゃうからだよ」

「どういうことなの!? 聖杯をもらうとそんなことになるわけ!?」

 

 一体何が起こるのか、と困惑するエリザ。それもそのはず。何せ、レベルが上がれば上がるほどその凶悪さが目に見えて分かるほどのライブである。全員が全力で阻止しにかかるのは当然。ステージが崩壊してスピーカーを破壊しに行くのは自然の摂理であろう。

 それ以上に、オオガミが運用しなくなるというのが主な原因かもしれないが。

 

「とにかく、聖杯を使うには大きな代償が必要なわけだよ」

「そんな……!! 自由にライブが出来なくなるなんて、困るわ!!」

「でしょう? じゃあ、ここは聖杯を諦めて、ゲリラライブを繰り返すのが一番だと思いませんか」

「そ、そうね! そうしましょう!! じゃあ子イヌ!! 今からいっぱい歌って歌って、歌いまくるわよ!!」

「おー!」

 

 何とかライブを盾にして聖杯から目を逸らさせることに成功したオオガミは、ほっと息を吐き、歩き出すエリザについて行く。

 

「それで、子イヌ。何時くらいに終わらせるつもりなの?」

「ん? あぁ、明日くらいには本気出してストーリーを終わらせるよ」

「そう。じゃあ、安心して暴れられるわね。任せたわよ、子イヌ!」

 

 そういうと、エリザは勢いよく走り出すのだった。




 仕方ないんや。当てられても、種火を回せないなら仕方ないんや……パライソがいるからね! 仕方ないね!!
 ステンノ様、すいません……もうしばらく聖杯は回らないです。後、バラキーにも回らないです……バーサーカーは育ってないのが多すぎるんや……

 あと、聖杯捧げた後は絆レベルマックスになるまで連れまわした後に編成から抜かれるので、自然と出番が無くなるので、運用しなくなるというわけです。強すぎるのを使うのはなんか悪い感じがするからね。仕方ないです。


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おっきーさん。強すぎです(引きこもりパワー舐めないで)

「……ねぇおっきー」

「なぁに? マーちゃん」

「その嵌めコンボ、酷いと思う」

「単純にマーちゃんが下手なだけだと思う」

 

 バッサリと切り捨てる刑部姫。オオガミはぐぅの音も出なかった。

 

「実際、昨日ノッブとやった時は切り返されたしー。というか、なんであんなにうまいの、あの戦国武将」

「そりゃ、日がな一日ずっとBBと遊んでいますし……」

「なんでそんなことを……(わたし)じゃないんだし」

「まぁ、基本暇だしね。似たようなもんだよ」

「なんで引きこもりで鍛えたゲームテクが、最近になって遊び始めた素人といい勝負になるのかなぁ!」

「まぁ、その、たぶん、あれだよ。センスが異様に良かったんだよ」

「納得いかない!!」

 

 そう言われても、実際に短期間で異様に強くなるのだから、何とも言えない。あの強さは何故か。とにかく、成長速度が凄まじいのだ。

 

「てか、なんでマーちゃんはここにいるわけ?」

「ん? そりゃ、理由なんてないですとも。強いて言うなら、ここが一番安全そうなので」

 

 コントローラーを右手に持ったまま武蔵ちゃんクッションに倒れこむオオガミ。

 刑部姫もそれにつられて倒れるが、別段何かするわけではない。

 

「というか、ここに来た時、大体マーちゃんは一部のサーヴァント以外放置してるって聞いたんだけど?」

「まぁ、その、全員の所に回ってるわけじゃないからね……あまり関わってない人もいるわけです。つまりはまぁ、そういう事です」

「あ、あぁ……うん、まぁ、時間が足りなくなるよね。仕方ない仕方ない。ネトゲーで会話してるとあっという間に時間が過ぎてっちゃう感じだよね」

「まぁ、こっちはリアルバージョンだけども」

「リアルはちょっとなぁ……」

「そんな引きこもり過ぎて今更出て行かれなくなった人みたいなことを……」

「堂々と私の事だよねそれ! 分かってて言ってるよねマーちゃん!!」

「さぁ……何のことかは分からないです。とりあえず、冬の祭典までに間に合わせてください先生」

「突然そこに降って来るんだねマーちゃんは。助手に任命するよ?」

「えぇ~……手伝えることないんですけど、先生」

「まぁ、参考資料になってくださいという事で」

「一体何をさせるつもりなんですか先生」

「そこはノーコメントだよマーちゃん」

「不安しかないんですが」

 

 刑部姫の不安しか感じない不穏な微笑み。オオガミは苦笑いになるが、ここまでいろいろあっても何とかなって来たので、今回も何とかなるんじゃないかと考える。

 しかし、その数日後にエリちゃんライブレベルの大ダメージを受けるとは、夢にも思わないのだった。




 おっきーのあの便利さよ……あの引きこもり感。いや、引きこもりの部屋にこんな簡単に入れると思うんじゃない。と思わなくもないですけど。
 そして、やはりここでも出てくるかノッブ。ノッブのゲームレベル高すぎるんじゃが。


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トリックオアトリート!!(隣の仲間は交代制)

「トリック・オア・トリート!!」

「菓子を寄越すか人前に二度と出られなくなるような悪戯か、選べマスター!!」

「前者の訳がその言葉なら、本気で泣くからね。バラキー」

 

 一体何をされるのか。ただ、その笑みの裏にあるのはとてつもなく恐ろしい事だけは分かる。

 ちなみに、ナーサリーは魔女服。バラキーはいつもの服装だった。まぁ、バラキーは確かに鬼なので、仮装も何もないのであろうが、せめて何か工夫して欲しかったと思わなくもない。

 

「とりあえず、ナーサリーにはこの袋を。バラキーはもう少し仮装をしようよ。確かに素が鬼だけども、それは仮装じゃないでしょうが」

「なぜ吾にそんな厳しいのか……うぅむ、皆目見当もつかなんだ。それほど問題か……?」

「せめて血糊を……うん。メディアさんの所に連れて行こう」

「あっ、ちょ、吾の菓子が遠のく!! い、嫌じゃああぁぁぁ!!」

 

 悲鳴を上げながらも連れ去られる茨木。ナーサリーは手を合わせ、連れ去られるバラキーの冥福を祈るのだった。

 

「勝手に死んだことにするなぁぁぁ!!」

 

 賢いナーサリーは、バラキーの悲鳴を聞こえなかったことにした。

 

 

 * * *

 

 

「トリックオアトリート!!」

「菓子をくれねば、我が必殺の剣を食らわしてやろう!!」

「あら、ナーサリーさん。それに皇帝もセットですか……というか、貴女はどちらかと言うとこっち側でしょう。何をしてるんですか」

 

 改めて突撃した部屋は玉藻の部屋。隣の皇帝は、ミイラの仮装なのか、全身に包帯をひたすらに巻いた様な服装だった。

 

「まぁいいです。では、ナーサリーさんにはこれを。皇帝は速やかにおかえりください」

「なぜ余の分は無いのか!! 用意しておくべきであろう、当然!! おかしいではないか!!」

「そもそも、貴女が来ることは想定してないんですぅ。子供の祭りに子供として参加するとかおかしいんじゃないですかぁ?」

「何をぅ!? もう余は怒ったぞ!! 今日という今日は許さん!! 決闘だ!!」

「ハァ!? 何をとち狂った事を言い始めるんですかこの皇帝!! い、嫌ですからね!?」

「先手必勝!! うりゃあああぁぁぁ!!」

 

 ネロが部屋の中に入ったと同時に扉を閉めるナーサリー。戦利品は手に入れたので満足だった。

 爆発音とか気にしない。ナーサリーは賢かった。

 

 

 * * *

 

 

「トリックオアトリート!!」

「や、やめろぉ!! そもそもなんで当然の様にここに来てんだオタク!! しかもなんかふえt」

 

 扉を開けて即閉めた。緑の人と竜少女の戦争は、音を聞いてるだけで死んでしまうので、聞かなかったことにするのだった。

 ナーサリーは賢いのだった。

 

 

 * * *

 

 

「トリックオアトリート!!」

「おぅ、ナーサリーか。一人なのか?」

 

 最後に訪れたのはノッブの工房。エウリュアレが部屋にも休憩室にもいなかったので、ここにいると思って来たところ、見事にいた。

 ちなみに、エウリュアレを探していたのは、彼女が一番お菓子を持っていて、且つ多く分けてくれそうだからである。

 

「えぇ。最初はいたんだけど、一人になっちゃったわ」

「一体何があったのよ……とりあえず、中に入って来なさい。お菓子をあげましょう」

「わーい!」

 

 そう言うと、ナーサリーは大喜びで部屋の中に入ってくのだった。




 本当はエミヤ母さんとかも出したかったんですけど、犠牲にする人が思い浮かばなかったので諦めで。


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吾はもう、あやつらとはゲームはしない……!!(むしろ挑んだこと自体が称賛されるべきことだと思う)

「うがー!! 勝てぬ! というか、なんだこれは!! なぜノッブや刑部のように動けぬのだ!!」

「いや、儂と同じようにとか言われても困るんじゃが」

「注ぎ込んだ時間が違うのだよバラキー。(わたし)に勝ちたいのならもっと努力しなさい」

 

 コントローラを置いてソファーにもたれ掛かる茨木。

 本日は休憩室でゲームをしていた。ちなみに、刑部姫はノッブが引きずってきたので、オオガミは一切関わってない。

 

「というか、(わたし)としてはどうしてノッブがついてこれるのかが分からないんだけど……」

「そりゃ、儂は研究するからな。まぁ、三回見たら回避してやるとも」

「なにこの戦国武将。怖いんですけど……」

「なんか、前にも誰かに言われた気がするんじゃが。そんなにか?」

「根本的に、火縄銃を自作できるだけの技術力は持ってるわよ。ソイツ」

「……のぅエウリュアレ。それ、儂と同じ名前の違う奴じゃろ」

「……あれ、ノッブの火縄銃って、魔力顕現だったかしら……」

「そこはほら、触れてはいけない所じゃよ」

 

 深皿いっぱいに入っているアーモンドチョコをもぐもぐと食べながら近づいてきたエウリュアレに、何とも言えない微妙な表情を返すノッブ。

 刑部姫も何かに気付いたようだが、そこは引きこもり。見守ることに徹する。

 

「というか、昨日の今日で凄い切り替えよね……で、今の戦績は?」

「2:3で儂が負けてる」

「むしろ二本取られてるのが不満……」

「ノッブが負けてるなんて珍しいわね。まぁ、流石のノッブも、引きこもりには敵わないのね」

「明らかに罵倒されたよね(わたし)!! 自分で言う分には良いけど、やっぱり他人に言われるのってなんか嫌よね……!!」

 

 致命的な一撃でも受けたかのように倒れこむ刑部姫。しかし、確かに全力で極めた引きこもりに対してほぼ互角の戦いをしているノッブも中々の物である。

 摩訶不思議と言ってもおかしくないレベルである。

 

「ぬぅ……エウリュアレぇ! こやつらとやっても楽しくない!!」

「はいはい。じゃあこれをあげるから大人しくしてなさい」

「むぐっ。むぐむぐ……うまい! 緑の人のちょこ菓子を更にうまくした感じだな! もっとくれてもよいのだぞ!!」

「ハロウィンは昨日終わったんだけどね……まぁ良いわ。口を開けなさいな」

 

 エウリュアレがそう言うと、大人しく口を開けて待つ茨木。その口の中にポンポンとアーモンドチョコを放り込んでいくエウリュアレは、ノッブ達から見ても楽しそうだった。

 

「それで、エウリュアレは気になったから見に来た感じか?」

「まぁ、そんなところよ。なんかバラキーが一方的にやられてるみたいだったし」

「心外じゃ。儂らだって本気でやっとった訳じゃない。ちゃんと右手だけじゃったぞ」

「じゃあ次は左手にしましょう。それで勝てたら指三本で」

「儂に何を求めとるんじゃ、この女神」

「いやいや。ノッブなら足でも行けるって」

「こっちの姫は姫で何言っとるんじゃ。儂、そこまで器用じゃないんじゃけど……」

 

 要望が高く積み上がっていく現状に、どうしたものかと考えるノッブ。しかし、やらないとは言わないのがノッブクオリティ。

 

「じゃあ、片手で出来るようにせんとなぁ……というか、片手で扱うには、ちと大きくて敵わん。改良の余地有りじゃな」

「コントローラから自作するのね~……ちょっと(わたし)には無理かな」

「まぁ任せるが良い。しっかり片手運転出来るようにしてやるとも!」

 

 努力の方向性が間違っている。

 全員はそう思いつつも突っ込まない。何故ならノッブだし別に良いだろう。というのが大部分を占めているからだ。頑張れノッブ。彼女の明日はどっちだ!




 なぜかノッブだけ縛りプレイをさせられる事件。刑部姫に制限はないんですかという突っ込み。

 まぁ、刑部姫は言ったらすぐにやってくれそうな感じがしますけどね。引きこもりはたぶん伊達じゃない。


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高難易度……辛かったわね……(うっかりミスしまくってすいません……)

「大体黒幕。正直うちのノッブとBB並の黒幕レベル」

「そりゃ、『とりあえず犯人』にしておけるしね。まぁ、うちにはいないから良いんじゃない?」

 

 姫路城城内で、月を眺めつつそんな話をするオオガミとエウリュアレ、

 今回も、無事真犯人で、且つ制裁を受けた謎の老紳士。

 なお、彼は今回、マーリンとマシュ、エウリュアレの三人を倒したことから、オオガミは次出てきたら絶対容赦はしないと心に決めた。

 具体的には、悩殺キルを目指す予定。

 

「で、今回の反省は?」

「慢心してマーリンをさっくり殺されたことと、うっかりマシュを殺させてしまったところと、普通に攻撃力というか、宝具回転速度が足りなくてエウリュアレを犠牲にしてしまったところとか?」

「そうね、正直でいいわ。じゃあそこにいなさい、私の宝具で撃ち殺してあげる」

「あの、ここで殺されたら反省を生かす場面がないんですが?」

「安心して。次の貴方はしっかりやってくれるわ」

「えっ!? どういうこと!? あと、死にたくないから逃げるよ!!」

「逃げられるものなら……ねっ!!」

「うわっ!! 本当に撃ってきたんだけど!?」

 

 悲鳴を上げながら逃げるオオガミ。

 姫路城城内での逃走は、当然敵が出現する。が、出て来た瞬間にエウリュアレの矢を受けて倒れて行く。

 

「今日はいつもより怒ってます!?」

「いいえ、むしろいつもより楽しいわ!! だからさっさと諦めて当たりなさい!!」

「当たったら死んじゃうような威力で撃たれてるのに当たるわけにいかないよ!?」

 

 気付いたら眼前の壁に矢が刺さってる上に、横から飛び出してきた敵のこめかみにジャストヒットしているのだ。確かに絶好調。しかし、それはそれとして、怖い事に変わりはない。

 

「全く、私は別に貴方に当てる気は無いって」

「耳元で風切り音がしてるのにそんなこと言われても信じられないよね!?」

「むぅ……じゃあ、面倒だからこれでいいわね」

「え――――」

 

 振り返ろうとした瞬間、勢いよく袖が引かれて、壁に縫い付けられる。

 

「……あぁ、これは、どうしようもない奴ですね。さよなら、今回の私」

「今回も次回もないわよ。というか、次回の貴方とか意味分からないわよ……」

「いや、こっちも分からないけども。どういう事なの……」

「……私も誰かに毒されていたかしら……」

「既にスイーツとノッブに毒されてる様な気がふっ!!」

 

 最後まで言わせず、腹部に一撃拳を叩き込むエウリュアレ。守られるべき女神としての側面は何処へ行ってしまったのか。

 

「……あ、しまったわ。マスターが気絶しちゃった……どうしましょ」

 

 思わず威力を出し過ぎたエウリュアレは、どうしたものかとしばらくおろおろした後、諦めて起きるのを待つのだった。




 親の仇の如く狙われたマーリンと、フレジャンヌの宝具の使うタイミングをミスったために発生したマシュの轟沈と、まさかの通常攻撃で没したエウリュアレ様の三コンボで、とりあえずメドゥーサがトドメを刺してくれました。やったね。


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ライダーが多いよね、今回(私じゃ力不足なんじゃ……)

「しかしまぁ、敵がライダーだと周回がきついなぁ……」

「あの、私、役に立ってますか?」

「リップは今一度自分の性能を見直した方が良いと思います。要するに、役立ってないわけないでしょうが」

「うんうん。それよりマスター君? 明らかに僕は邪魔だよね? ライダー相手にこんな貧弱なキャスターを連れて行くなんて苦行、なんでしてるんだい?」

「NP&攻撃力補強だからね。死ぬか死なないかのギリギリを通ってください花の魔術師さん」

「辛辣だね! いや全く困ったものだ!!」

 

 はっはっは。と涙目で笑うマーリン。こんな対応をされるので、実際そこまで深刻に思ってないとオオガミに思われていることに気付かない花の魔術師。当然、相手がライダーだろうが出撃である。

 

「でも、マスター。マーリンさんは置いておいたとしても、普通にアサシンを連れてきた方が良いんじゃないですか?」

「……リップ。良い事を教えてあげよう」

「え? あ、なんですか?」

「……うちには、全体バスター宝具アサシンはいないんだ」

「……あの、それってつまり……」

「うん。交代不可能ってこと」

「……なるほど。だから私なんですね……」

 

 根本的に育っていないのは、もはやどうしようもないと言ってもいいだろう。

 

「しかし、本当にライダー相手は辛いんだけど……なんで僕は未だにここで戦ってるのかな?」

「そんなこと言われてもね……結局マーリンは周回でも高難易度でも使える助っ人キャラなのだよ」

「うぅむ。まさかグランドキャスターになったのをこんなところで後悔する時が来るなんで思わなかったよ」

「俺もまさかこんな落ち込むとは思わなかったよ」

「もっと頑張ってバフかけてくださいよ。『この辺り、弄った方が良いんじゃないかな?』なんて気取ったこと言いながら」

「傷心中の相手に対して酷い言い草だよね君は!! この前もあのバーサーカー二人の盾に私をしたしね!」

「ひゃう! マスター! この人、怖いです!」

「君からも何か言ってくれないかな?」

「う~ん……とりあえず、マーリンは周回をするって事で」

「おっと、これは酷いな!! どれくらい酷いかって、思わず僕が突っ込み役になるくらい酷いな!!」

「ふふふ。残念でしたねマーリンさん。マスターは私の味方なので」

「いや、リップも一緒に回るんだからね?」

「あれっ!?」

 

 さも自然に自分は関係ないかのようにリップは言っているが、最初から誰も交換しないとオオガミは言っていた。なので、当然リップも周回要員なわけで。

 

「で、でも、私じゃやっぱり攻撃力無いですし……」

「いや、そのためのマーリンだし……」

「……でもでも、私、狙われやすいですし……」

「そのための幻術だし」

「…………ほら、でも、もっと強い人はいますし……」

「この先も考えると、ライダーだけじゃなくてアサシンとかも出てくるから、やっぱりリップの方が良いんだよ」

「え、えぇ~……」

「……ねぇ、本当に僕は必要なのかい?」

「さっきも言ったけど、リップの護衛だから」

「あぁ、なるほど……じゃあ、仕方ないわけだね」

 

 観念したのか、二人とも静かになる。

 オオガミはため息を吐き、

 

「よし。じゃあ後少しでグミも終わるし、頑張るぞ!」

「お~!」

「はいはい。まぁ、任せてくれたまえ」

 

 三人はそう言って、ピラミッドに突撃するのだった。




 正直リップというアタッカー兼ディフェンダーという子の強さよ。なんだかんだ言って、今回の周回の一番の功績者と言うかなんというか。
 ライダー本当に嫌いです。全体アサシンは水着ニトクリスと水着スカサハ師匠しかいませんし、どっちもバスターじゃないし……リップがいなかったらほぼ詰んでいるという。


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吾、マカロン無くしたからなぁ……(……グミ、食べる?)

「むぐぅ……吾のマカロンは無くなってしまったからな……グミとやらはいただくぞ……」

「食べてるだけじゃなくて戦ってよ? まぁ、グミはもう交換しなくていいからいいけども」

「うむ、菓子の為だ。吾も尽力するとしよう」

「うん、お願いね」

 

 茨木はもぐもぐとグミを食べながらそんな反応を返す。

 場所は姫路城の屋根の上で、大きく輝く満月とメカエリちゃんを見ながらそんな話をする。

 

「それで、吾は何をすればいい?」

「いや、特に何かする事は無いんだけどね」

「……吾の必要性……」

「……有事の際の最終兵器?」

「まぁ、頭領だからやることが無くても仕方ないか。出来れば吾も暴れたいのだがな」

 

 じぃっとオオガミの事を見つめる茨木。しかし、そんな視線を送られてもオオガミには何もできないわけで――――

 

「……ラムネも食べる?」

「うむ、貰う」

 

 思わず新たなお菓子を差し出してしまった。

 正直まだ交換は終わっていないが、あくまでもピースが交換されていないだけだった。

 なので、ある程度は許される範囲――――だろう。

 

「しかし、吾が人間とのんびりと話す日が来るとはな……」

「今更な事言うね。今まであんなに遊んだりお菓子を一緒に食べたりしたのに」

「べ、別に今更だって良いであろう!! ふと思っただけだからな!!」

「まぁ、バラキーがそれでいいならいいんだけどね」

「うむ! というか、マスターもマスターだ。吾のマスターだというのに、どうもこう、強そうではない。もう少し筋肉をつけぬか」

「えぇっ、そんないきなり……」

「というか、どうしてそんな弱そうな躰でエウリュアレ達の攻撃を受けて無事なのか……」

「礼装で誤魔化してるだけなんだけど……まぁ、その後医務室に直行することになるんだけどね」

「なぜ毎度そんなことを……やはり少しは筋肉を付けた方が良い。でないと後で苦労する様な気がするのだが……」

「まぁ、その時はその時で。というか、そんなに言うなら訓練について来てくれてもいいんだよ?」

「……まぁ、考えて置くとしよう」

 

 オオガミの言葉に、保留で返す茨木。なお、言ってはみたものの、ついて来てもらって、なにか手伝ってもらえるような事があるかと言われれば、悩むところである。

 

「じゃ、そろそろおやつタイムは終了ですかね」

「むぅ、仕方あるまい。しかし、たいして何もせずに食う菓子は微妙だな。やはり暴れたいところよな……」

「まぁ、そうだね。そのうち暴れられるところが来ると思うんだけど、それまでは何も無しかなぁ……」

「ぐぬぅ。悔しいものだ」

 

 残念そうな声を出し、オオガミについて行く茨木。再び周回へと向かうのだった。




 バラキーはまだ出番無いのよ……というか、そんなヤバいのはまだ出てないのよ……

 しかし、ピースが終われば後はクッキーですから、後少しと言った所ですね。これは早めに終われそうだ!!(残り三日


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エルキドゥさんの働き本当にすごいよね……(それはそれとして、マーリンは毎度碌な目に遭ってないよね)

「ふっ――――!!」

 

 短い呼気と共に、無数の鎖が量産型メカエリチャンを貫き破壊する。

 スタッと華麗に着地したエルキドゥは、視界の邪魔になっている髪を後ろに流し、オオガミのもとへと戻る。

 

「これで良いかい? マスター」

「十分すぎる成果だよ。等倍だし、凌駕しろって言ってる訳じゃないしね。出来るのならそれが一番だけども」

「まぁ、マスターがそれで良いなら良いさ。僕はただ、従うのみだよ」

「おぉ、なんか、昔を思い出す従順さ……まさか、変なものでも食べた?」

「…………マスター? 僕はあの暴走駄女神じゃないんだ。拾い食いなんてしないよ」

「えっ、あ、うん。分かった」

 

 こんなことを聞いたら、どこかの女神は『私だって拾い食いなんてしないわよ!』と言い返しそうだが、ここで下手なことを言うと、とんでもない目に合いそうなので黙っておくオオガミ。

 

「それにしても、倒しづらいね、あの機械。硬いよ全く」

「まぁ、クラス相性って壁もあるしね。そのためのリップなわけだけど」

「彼女には何とか踏ん張ってもらいたいけど、集中狙いされたらどうしようもないね」

「あうぅ、なんか狙われちゃってすいません……!!」

「あはは、エルキドゥ君はそんなおっかない顔をして、怖いなぁ全く」

「……マーリン。槍で貫いてあげてもいいんだよ?」

「君のそれは鎖だろう? 強制的な束縛は好きじゃないんだ。ごめんね!」

 

 そういって、颯爽と去っていくマーリン。

 オオガミとリップはそれを見送り、エルキドゥはため息を吐き、マーリンの足元から鎖を展開し捕縛して引きずり戻すのだった。

 

「あっはは……いやぁ、こうもアッサリ捕まると、恐れ入るよ。さすがあのギルガメッシュの親友だ」

「なるほど。君はギルの事を知ってるんだね? あぁ、そう言えば、メソポタミアの時にも君はいたね。よし、後でその時のギルについて聞かせてもらおうかな」

「おっと、まさかのパターンだね。全く、ギルガメッシュ王にも困ったものだよ。君が召喚されないせいで僕が面倒ごとに巻き込まれそうじゃないか」

「エルキドゥ、お手柔らかにね」

「うん。助けるつもりが一切ないのは伝わって来たぞぅ!! そろそろここは僕を精神的に潰すつもりじゃないかと思えてきた!!」

「えっと、エウリュアレカウンセリング、受ける?」

「洗脳だよねそれは!!」

 

 およそオオガミの提案は正気だとは思えなかったマーリン。仕方のない事だろう。事実、オオガミはほとんどエウリュアレに洗脳されているようなものである。

 

「あの、マーリンさん」

「あっ、な、なんだい?」

「頑張ってくださいね」

「うん、そう言うかなって思ってたよ!」

 

 最後の望みも、アッサリと断たれるのだった。




 大体マーリンが酷い目に遭ってる時はリップがいるんですが、一体なぜなのか……

 いい加減、マーリンには平和に暮らしてもらいたいものです。具体的にはお話のお兄さんになっていてください。


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クッキーの必要量おかしいんですけど!!(バラキー落ち着いて!! 落ち着いてバラキー!!)

「うむぅ……残り……いくつだ……?」

 

 クッキーの必要量を考えながら、オオガミは周回を続ける。

 エルキドゥはそれを聞くと、

 

「800×4、1200×1、900×1だろう? 5300だね」

「うお、流石エルキドゥ……暗算速いね」

「これくらいは出来ないとね。でも、マスター。必要個数を考えても仕方ないと思うのだけど?」

「いやいや。残るは一日半。どれだけ取ればいいのかを考えるのも必要だよ。とりあえず一日3000くらいかな!!」

「……それだけ集められると思ってるのかな……」

「そう思わずにやってられるかい、こんなもん」

 

 地面にクッキーを一つ叩き付け、怒りを露わにするオオガミ。直後、叩き付けた事に後悔しているオオガミを見て、エルキドゥは何とも言えない気持ちになる。

 

「あの、マスターはどうしてこう、いつも暴れてるんです?」

「ぶつけ所の無い怒りを何処かにぶつけようとしてるからだと思うよ。僕は」

「マーリンさんは黙っていてください」

「……君のそれはスキルの影響だって学んだよ。うん。これほど殴ろうか悩む案件は久し振りだ!」

「実際に争ったら君の方が負けるだろう? 止めておいた方がいいんじゃないかな」

 

 八方塞がりなマーリンなのだった。

 しかし、マーリンが言ってることも、あながち間違ってはいないのが現実である。

 

「それで、どうやったら止められるんでしょう。あれは」

「う~ん……放っておいた方がいいと僕は判断したね」

「……じゃあ、見守ることにしようか」

 

 三人はそう言うと、とりあえず襲い掛かってくる量産型メカエリチャンの群れを撃退することにした。

 

 ところ変わって、オオガミがのたうち回っているところに襲いかかる影が一つ。

 

「うがぁ!! 吾の菓子はまだかぁ!!」

「うぎゃぁ!! 何をするんだバラキー!!」

 

 襲撃されたオオガミは、襲撃してきた茨木と共にゴロゴロと転がっていく。

 茨木は大変ご立腹のようで、頬を膨らませて涙目で言ってくる。

 

「吾のマカロンは無くなるし、グミは尽きるし、ラムネは飽きたし……そのクッキーも寄越せぇ!!」

「ぎゃぅわぁぁぁ!! この鬼怖いよぉ!!」

「うがああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 ガチンッ!! ガチンッ!! と音が鳴るほどの勢いでクッキーに向かって噛み付いてくる。

 至近距離でそれを受けているオオガミは、半泣きになりながら必死で回避を続ける。

 

「ば、バラキーストップ!! 落ち着いて!! それ以上は色々と危ないから!! こう、今の状態を第三者が見た時の感じとか!!」

「知った事か!! 汝はマスターとして、吾に菓子を渡す義務があるだろう!!」

「そんな義務があったとは!!」

 

 ふがー!! と、およそ人でも鬼でも出さないであろう声を出す茨木。例えてみるのだとしたら、怒り状態の猫とでもいえばいいだろうか。

 

「ちょ、一回降りてくれないかな!?」

「無理だ!! 吾はそのクッキーをもらうまで、退かぬ!!」

「えぇ~……く、くそぅ、駄々捏ねる子供みたいなんだけど、パワーが桁違いだからシャレになってないぞ……!!」

「はいはい。流石に目に余るよ、茨木」

「ぬお!? お、降ろせー!!」

 

 ジタバタと茨木が暴れるが、エルキドゥの鎖の前では効かない様子。

 オオガミは茨木が退いたことで起き上がれるようになり、ゆっくりと立ち上がる。

 

「それで、お菓子だっけ……うん。帰ったら何とか……それでいいですかね?」

「むぐぅ……仕方あるまい。それを大人しく待つとしよう……」

 

 茨木は鎖に締め上げられて磔のようにされていても、平然としていた。

 オオガミはその姿に若干の尊敬の念を込めながらも、

 

「じゃ、バラキーはそこに放置で」

「そんな!?」

 

 畏敬の念を込めて、置いて行くのだった。




 尊敬で畏敬って一体……
 しかし、鬼のパワーで乗りかかられたら子供みたいな体格でも怖いですって……


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延長入ったけど、果実使って終らせるか否か(バラキー! 暴れないでバラキー!)

「マスター。延長入ったけど、果実は使うのかい?」

「う~ん……考え中」

 

 すぐに終わらせるか、果実消費無しで終わらせるかを考えているオオガミ。

 諸々の結果、この特異点はもう少し長引くことになったが、はたして今のペースで終わるのかと考えると、不安な気持ちもあるのだった。

 

「うむむ……今日は様子見かなぁ……」

「つまり?」

「まぁ、果実は使用しない方向で」

「分かった。じゃあ、今日はそれほど忙しくならずに済みそうだね」

「うん。のんびり行こう」

 

 オオガミはそう言うと、先程からずっと背中に張り付いている茨木に声をかける。

 

「どうして今日に限ってこんな引っ付いてるのさ」

「それは、菓子がもう無いからであろうが……!!」

 

 どうやら現在涙目でオオガミの首を絞めにかかっている鬼にとって、菓子の貯蔵は死活問題のようだった。

 

「……あのね、バラキー。ここで俺が死んだら、帰れなくなるよ?」

「むっ! それは困る……まだ吾が食っておらぬ菓子があるからな。このまま座に帰るわけにはいかぬ」

「うんうん。じゃあ、いい加減、本気で息が出来なくなりそうだから力を緩めてくれると嬉しいんだけど……」

「あぁ、すまぬ。意識していなかった。それで、一つ疑問なのだが、何故吾は帰れないのか」

「……前にも話した気がするんだけどなぁ……!!」

 

 暗に、早く帰りたいということなのだろうか。

 しかし、今さっき果実は使わない宣言をしたばかりである。流石に変更は出来ない。

 

「あ、明日中に集まれば帰れるから、それでどうですかね。バラキーさん」

「むぅ……明日さえ、明日さえ乗りきれば、吾は帰れるのだな?」

「そ、そうそう。なんとかなるはずだから、今日のところは落ち着いていこう。ほら、少しならクッキーを食べても良いから」

「なに!? それは真か!!」

「えっ、あ、うん。ただ、食べ過ぎると明日帰れなくなるから自重してよ……?」

「任せるが良い!! 吾は大江の山の総大将。自制くらい出来て当然よ!」

 

 そう言うと、茨木はクッキーを保管しているところへと走って行く。

 まぁ、確かに彼女は暴れていないので、ストレスも溜まるだろうから、それを食べることで発散してくれるのは問題ない。

 しかし、エウリュアレ達と違って、彼女に体型維持のスキルは無かったと思うのだが、変化でどうにかなるようなものだっただろうか。と思わなくもない。

 

「まぁ、バラキーが食べたいって言ってたんだし、仕方無いよね。それでちょっと太っても、八つ当たりと運動に付き合えば良いか」

 

 オオガミは一人納得し、再び周回へと向かうのだった。




 本日は早めの投稿。夜中に書く余裕がなさそうなので繰り上げですね。出来れば早めに投稿したい私の精神。

 しかし、そろそろバラキーがふっくらしてきそう……それはそれで可愛いような気がしなくもないんですけどね。


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まぁ、今日中に終わらないよね(バラキー? あの、その右手は何を企んでいるんです?)

「うん、まぁ、終わらないのはわかってたよ」

「うむ。それで吾がどうするのかも分かっていただろう?」

「……エミヤに何か作って貰えるようにするのでどうでしょうか」

「許す」

 

 そう言うと、茨木は構えていた右手を降ろす。

 エミヤの料理は、彼の預かり知らぬところでオオガミを救っているようだった。

 正座をさせられていたオオガミは、痺れた足を伸ばし、回復を待つ。

 そこへメカエリチャン狩りが一段落したエルキドゥ達が戻ってくる。

 

「……僕たちが集めている間に、一体何があったんだい?」

「いえ、私にはちょっと分からないです……」

「まぁ、彼女が暴れなくなったということだけ分かれば良いんじゃないかな?」

「ふむ、それもそうだね。じゃあ、そういうことにしておこうか」

 

 エルキドゥはそう言うと、ふと遠くを見る。

 瞬間、オオガミの近くに落ちてくる一つの影。

 オオガミが振り向くと、そこにはステンノがいた。

 

「ふぅ。こんな不安定なの、よく形を保っているわ。それに、中々面白いわね」

「ステンノ……しばらく姿を見ないと思ったら、何処にいたの?」

「ちょっと建物を見回っていました。かなり楽しかったわ」

「そ、そう……そんなに楽しめた……?」

「えぇ。最上階の姫路城から見える満月に、メカエリチャン。全てが逆さまのピラミッドに、その超重量を何故か支えているチェイテ城。そして、この広大な地下施設。えぇ、えぇ。楽しいです」

「なるほど……いや、楽しめたのなら良いんだけど、そもそも、このチェイテピラミッド姫路城って、敵がいたと思うんだけど……」

「皆さん、快く退いてくれましたよ?」

「……もしや、エリちゃんに味方をすると襲いかかるパターンのやつなんですか……?」

「そこまでは流石にわかりませんけど。とにかく、誰も襲い掛かっては来ませんでしたよ」

 

 さすが女神様というべきか、全員が道を明け渡したらしい。羨ましいことこの上ない。

 オオガミはそんなことを思いながら、痺れがようやく取れた足で立ち上がる。

 

「うぅむ、吾もあのように一度見て回ってみるのもありか……?」

「暴れられるだろうけど、やられない程度でね?」

「当然。蹂躙するのは良くても、されるのは好かんからな」

「まぁ、泣いて帰ってこなければ良いかな。無理しないでよ?」

「むぅ! 童のように扱うでないわ! 吾は大江の山の総大将。己の限界くらい測れるわ!!」

 

 ドヤ顔で胸を張って宣言する茨木。

 しかし、たまに泣きながらやって来る時があるので、不安しかないオオガミ。

 

「良いじゃないかマスター。僕が周回の合間に見に行けば良いんだろう?」

「う~ん……いいの?」

「あぁ。任せてくれ」

「じゃあ、お願いするよ」

 

 まるで、子供が不審者に捕まらないかを心配する保護者のような雰囲気が漂う二人に、茨木は頬を膨らませて不満そうな表情になる。

 

「吾はもう行くからな!」

「あぁ、うん。気を付けて行ってくるんだよ!」

「だから、吾は問題ないと言ってるだろう!?」

 

 文句を良いながら、茨木はエレベーターに乗って上へと上がっていくのだった。




 ずっとステンノを一番後ろに置いておいたのに一切作品に絡まないという不思議。エウリュアレと扱いやすさが違うんですよね……

 そして、子供のような扱いを受けるお子様可愛いバラキーですね。明日までに終わると良いなぁ、クッキー……


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後少しで終わるんだけど……(まぁ、少し位はバラキーのストレス発散を手伝っても、ね?)

「吾、飽きた」

「うぅむ、後少し。後少し耐えて、バラキー」

 

 オオガミに肩車をさせながら、オオガミの頭の上に顎を乗せ、だら~ん。と脱力しているバラキー。

 残り一種類のモニュメントを取れば、今回のイベントも終わりである。なので、後数回回れば、帰れるのである。

 

「吾、もう帰りたいのだが……」

「帰ったって、別に何かするわけでもないでしょうに」

「吾だってやることくらいある。バカにするでないわ」

「……えっ、何してるの?」

「この前、コテンパンにやられてしまったからな……練習してまた再戦だ」

「……マジですか。まさかバラキーがそこまでするとは思ってなかったよ」

「吾は負けたままは好かぬ。あ、いや、頼光は負けるとかそういう次元じゃなく、あれは勝てないそれだから無理だからな」

「おぉぅ。言おうと思ってたことを先手打って潰してきたねバラキー」

 

 即座に次の言葉を予測したバラキーは、オオガミに何も言わせずに言葉を返す。

 オオガミはその反応に苦笑いになるものの、バラキーの気持ちは分からなくもないので、それ以上は何も言わない。

 

「それで、何しようか」

「うぅむ……ちとエルキドゥ達と離れて、ここら辺で暴れてみたいのだが」

「そっか……って、暴れてきたんじゃないの?」

「いや、正直一人では楽しくなくてな……誰かが近くにいれば変わるかと思って」

「なるほど。正直全くわからないけど、とりあえず一人がつまらなかったんだろうなってことだけは分かった」

「まぁ、汝はそれだけ分かれば十分よ。とにかく、どこか暴れられるところはないか……」

 

 意外と寂しがり屋なのかもしれないと思うオオガミ。

 しかし、言ったら髪の毛を引っこ抜かれる未来を幻視したため、黙ることにして、バラキーが暴れられそうな場所を探す。

 

「あ。あそこにメカエリチャンが一人だけポツンといるね」

「……いや、後ろにまだ何体かいるな……どうするか」

「一体だけ釣って、一体ずつ倒していくのが正攻法な気がするんだけど……バラキーは納得しなさそうだよね」

「ふむ。まぁ、それもありか……して、どうやって?」

「……聞かれると困るんだけどね。正直、エルキドゥ達を呼んで、戦ってもらってる最中に何体か捕まえて倒していくのが良いと思う」

「むぅ……仕切り直しは使えぬか?」

「あぁ……そうだね。仕切り直しなら一体だけ倒して逃げるってのもありか。でも、俺がいても大丈夫?」

「ふん。汝一人くらい、守りきれるに決まっておろうが」

「なるほど。じゃあ、行ってみる?」

「くふふ。任せるが良い!!」

 

 そう言うと、バラキーは楽しそうに突撃していくのだった。




 書いてて、バラキーは寂しがり屋か……? と思いつつ、書いていた私……
 しかし、最近ずっとバラキーだな……


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日常
茶々許すまじ!! 吾は怒ったぞ!!(ねぇバラキー。どうして茶々がバラキー対策してないと思ったの?)


「貴様かぁ!! 茶々ぁ!!」

「うわぁぁ!? な、なに!?」

 

 襲撃を受けてなんとか回避するも、一体何の事か分からない茶々。

 しかし、襲撃者の顔を見て気付く。

 

「げっ、バラキー!」

「ようやく気付いたか……!! 菓子の恨み、とくと味わえ!!」

「うひゃぁ!!」

 

 全力で逃げ出す茶々。バラキーはその後を追いかけ、隙を見ては攻撃をしていく。

 だが、茶々の動きはまるで予め予測していたように的確で、且つどこかへ向かって一直線に進んでいく。

 その事に気付いたバラキーは、しかし。それでも関係無いと追い掛ける。

 

「逃げるばかりか!!」

「へっへ~ん!! 茶々はちゃんと考えてるからね! ってことで、飛び込みぃ!!」

 

 そう言うと、茶々は突然扉の中へと入っていき、そこの部屋主の背後に隠れる。

 バラキーは、どうにかして部屋主を退かせないかと思い部屋主の顔を見ると、

 

「あら。あらあらあら。虫がどうして私の部屋に……? まさか、何かを仕掛けにでも来たのでしょうか?」

「…………ら、頼光……!!」

「ふふふ。まぁなんにせよ、ここで斬り伏せてしまえば良いことですね。では……覚悟してください?」

「……仕切り直し!!」

「逃がしません!!」

 

 鬼が追いかけられる鬼ごっこの始まりだった。

 

 

 * * *

 

 

「とまぁ、マスターが帰ってきた辺りでそんなことがあった訳じゃよ」

「なるほど。それでバラキーはノッブから離れないわけだ」

「うむ。まぁ、流石の儂も、ランサーで来られたら勝ち目はないんじゃがな」

「あの、先輩。なんで茨木さんはあんなに怒っているんです?」

 

 休憩室にて、ノッブの影で震えているバラキーと、呆れたような顔のノッブ。

 マシュはそもそもの経緯が気になるようだった。

 それに対して、オオガミが答えようとしたとき、エウリュアレが言葉を遮る。

 

「茶々がバラキーのマカロンを盗んでいったのよ。それで、バラキーはひたすら探しまくったあげく、茶々が盗んだことに気付いて怒りのままに報復。予想していた茶々が頼光の所に逃げ込んで、今に至るって感じよ」

「……なんで遮られたんですか、俺は」

「良いじゃない、これくらい」

「まぁ、良いけどさぁ……とりあえず、そんな感じだよ」

「なるほど。それで頼光さんは茨木さんの事を探していたんですね」

「そう言うこと。まぁ、しばらくじっとしていれば大丈夫だと思うけどね」

 

 エウリュアレの説明に納得したのか、コクコクと頷くマシュ。

 

「儂の工房までは流石に来ないじゃろ。つか、来たら困るんじゃけど」

「流石に頼光さんも、そこまで行くとは思いませんけどね」

「吾としては、安全なら何処でも良いのだが……」

「……あ、刑部姫の所は、逃げ込めるし遊べるしで完璧だと思うんだけど」

「エウリュアレ……中々酷なことを……」

「ふむ。そうじゃなぁ、対戦する約束もしておったし、バラキーが着いていっても問題ないか……?」

「まぁ、行ってみる他ないわね」

「そうじゃよねぇ……仕方あるまい。行ってくる」

 

 ノッブはため息を吐きながらも立ち上がり、扉へ向かい、その後ろをバラキーがついていく。

 と、そこでマシュが声をかける。

 

「あの、誰か護衛としてついていった方がいいのでは?」

「まぁ、最悪儂が殺られても、誰かが届けてくれるじゃろ。つか、なんでカルデア内なのに命の危機に瀕してるんじゃ、儂」

「根源は貴女の姪よ。覚えておきなさい」

「……後で茶々にはキツく言っておかねばな……」

 

 ノッブは気持ちを新たに、バラキーと共に休憩室出ていった。

 

「……生きて帰ってくると信じて」

「途中でバッタリ会うと見たわ」

「エウリュアレさんが不吉なことを……」

 

 二人が去った後、三人はそんなことを呟くのだった。




 いやぁ、ハロウィンの時の茶々の名前を見たときからずっとやりたかった話……

 とりあえず、バラキー対策で頼光さんは当然ですよね(遠い目


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姫の部屋、いつの間にか人が集まってきたりするんだけど(まぁ、お主のところは隠れるには最適じゃし)

(わたし)、引きこもってるはずなんだけど、引きこもりの部屋に堂々侵入してくるのってどうかと思う」

「まぁ、そんな日もあるじゃろ」

「吾は頼光が吾を探すのをやめないうちは、こきで練習するしかないからな」

 

 引きこもっている刑部姫の部屋に強引に入っていったノッブ達は、昨日からずっとゲームをやり続けていた。

 ちなみに侵入方法としては、

 

『アマゾネスドットコムだ』

 

 と、某探偵漫画に出ていた蝶ネクタイ変声器を見て参考を得てノッブとBBが作った帽子型変声器で、エルバサの声に変声して扉に向かって言うと、

 

『はいは~い』

 

 と気軽に帰ってきた声。

 そして、何も知らない刑部姫によって扉が開かれると同時に、ノッブが片足を部屋の中に突っ込み扉を閉められないようにして、茨木が飛び込み侵入。

 困惑する刑部姫に、ノッブはこう言った。

 

『遊びに来たぞ』

『遊びに来たって感じじゃないよね!?』

 

 すかさず突っ込んだ刑部姫は、もはや諦めの顔だった。

 

「しかし、同じものばかりだと流石に疲れてくるな……何か他にはないのか?」

「色々あるけど……どういうのが良いとかある?」

「そうじゃなぁ……」

「吾はこう、血が大量に出るのが良いな! ついでに無双ゲーとかいう、大量に人を殺せるのが良い!!」

「う~ん……あ。じゃあ……これとかどうかな?」

 

 そう言って取り出すのは、やたら黒いパッケージ。

 

「なんじゃそれは」

「これはねぇ……ブ○ッドボーンっていう(装備とレベルが圧倒的に上なら)無双ゲーだよ。バラキーちゃんの要望通り、血も大量に出るしね」

「なんだと!? なら、吾はそれをやる!!」

「……あ~、これ、展開が読めたんじゃが……」

「ふふふ。本当はノッブにもやって欲しいけど、まぁ今回は諦めましょうか」

 

 不穏な笑みを浮かべる刑部姫が考えていることを察したノッブは、茨木の未来に黙祷した。

 当の本人はそんなことに一切気付かず、無邪気に楽しみにしているのだが。

 

「中々酷なことをするのぅ、おっきーよ」

「あぁ、ノッブにはこっちがあるからね。まぁ、バラキーが終わったらだけど」

「……え、儂もやるの?」

「当然、(わたし)なりの報復よ。(わたし)の平穏を奪ったんだし」

「……それで、儂に何をやらせようと……?」

「ダー○ソウル3」

「儂それ知ってる。死にゲーじゃんワロタ」

「まだ機体はあるし、小型テレビもあるから今すぐにでもやれはするよ」

「なんでお主の部屋はそんなにあるんじゃよ……」

「それはノッブ達のせいだったりするんだけどねぇ……」

 

 一人で十分だった部屋は、徐々にノッブに侵食されて来ていたりするのだが、当の本人はそれに気づいていないようなので、文句を言ってもおそらく無駄なのだろう。

 

「とりあえず、二人ともやろうか!!」

「うむ!!」

「えぇ~……儂、やりたくない~……」

 

 ノッブの拒否は無視され、三人は楽しく、新たな戦いの旅に出るのだった。




 出てきたゲームのうち、前者は2週くらい終わって、後者は現在攻略中だったりします。

 しかし、刑部姫のおかげでゲームネタが使えるようになった嬉しさ……そして、ノッブの入り方よ。どうにかできなかったんですか……


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子イヌ! クリスマスライブがしたいわ!!(道連れをかき集めねば……!!)

「子イヌ子イヌ子イヌぅぅ!!!」

「うぉぁ!? なんですかエリちゃん!」

 

 突然背後から抱き着かれ、よろめくも耐えるオオガミ。

 しかし、襲撃者であるエリザベートは大して気にした様子もなく、話を続ける。

 

(アタシ)、クリスマスにライブがやりたいんだけど!!」

「……本気ですかい」

 

 オオガミは困惑するがエリザベートは当然と言いたそうな、それでいて会場設営はやってくれと言いたそうな目でオオガミを見る。

 

「……開催予定地は?」

「決めてないわ!」

「……チケット販売は?」

「するけど、飛び入りもできるようにしたいわ!」

「……配る枚数は?」

「カルデアのサーヴァントと全員――――は、無理ね。うぅん……出来れば仲間外れはしたくないんだけど……どうしようかしら……」

 

 悶々と考え始めたエリザベート。オオガミはとりあえず今出された条件でどこを使おうか考える。

 

「うぅん、出来れば嫌だけど、ここは抽選ね。会場に行けないとそもそも意味がないもの」

「えっと、シミュレーションでも良い?」

「えっ、う~ん……子イヌがそうしたいなら良いわ。でも、代わりに豪華にしてちょうだいね!」

「了解。何とかしてみせるよ。それと、歌うのは誰?」

「歌うの? 当然(アタシ)は入れるとして、勇者な(アタシ)と、メカエリチャン。後、あの皇帝も歌わせて上げるわ! あぁ、今からでも楽しみ!!」

 

 こっちは今から犠牲者を集う為の冒険が始まるけどね! とは言えないオオガミ。とりあえず、道連れは多く、だ。

 

「あ、海と山、森だと、どれが良い?」

「クリスマスなら、森が良いわよね!! というか、クリスマスで山はともかく、海はないと思うんだけど。真冬よ?」

「裏側は夏だと思うんだ。一概に海はないとは言えないんだよ……まぁ、俺も海はないと思ってたけども」

「当然。真冬じゃなかったとしても、装飾が壊れちゃう可能性があるから尚更ダメよ。潮風は髪にも悪いしね」

「なるほど。じゃあ森だね。この感じだと、夜にやるのが一番かな?」

「いいえ。昼決行よ! だって、夜にはしっかり寝ないとサンタが来ないじゃない!!」

「……あぁ、なるほど。じゃあダメだね。昼から夜にかけて、が一番かな」

「そうね。それならライブから帰ってすぐに寝れば良いからね! それ、採用よ!」

 

 満面の笑顔で許可するエリザベート。オオガミはこくりと頷くと、

 

「じゃあ、それで。衣装とかは?」

「それは(アタシ)がどうにかするわ! 任せなさい!!」

「了解。じゃあ、行ってくるね」

 

 オオガミはそう言うと、エリザベートと別れて廊下を歩いていくのだった。




 ハロイベ以降、エリちゃんがより一層好きになっていたりする私です。誰かのためにならきれいな声で歌えるとか、パネェなエリちゃん……


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ジャンタ復刻来た――――!!!(このイベントが無かったら、私は今、ここにいなかったかもしれない)

「来た! 来た!! ようやくこのイベントが来た!!」

「テンション高いのぅ……どうしたんじゃ、マスターは」

「さぁ……復刻を見てああなったけど……何かあったかしら」

 

 休憩室で暴れるオオガミを見て、ノッブとエウリュアレは首をかしげて見ていると、それに対してエリザベートが答える。

 

「子イヌが本気で人理修復に乗り出したの、このイベントが原因よ?」

「「……えっ?」」

(アタシ)のハロウィン前くらいに人理修復を始めて、(アタシ)のイベントが始まる前に一回消えちゃったわ」

「……それ、本当?」

「えぇ。というより、最初はやる気なんて微塵も無かったわよ?」

 

 驚愕の事実。エウリュアレ達は今のオオガミとの違いに困惑するが、色々あったのだろう。と思いなおす。

 

「それにしても、どうして突然復活したのかしら……?」

「それが明後日復刻するイベントなんだけど。帰って来た瞬間に入れ違うように終わるという完璧具合よ!」

「あ、アホなんか? 儂らのマスター……」

 

 何をしているんだ。と呆れるのも無理はないだろう。実際、彼も帰って来た瞬間に終わっていて、秒速で部屋に引きこもったのだから。

 その時の事を思い出してか、エリザベートは遠い目をする。

 

「思えば、そのすぐあとくらいよね……急にやる気を出し始めて、ヘラクレスとエルキドゥが来て、怒涛の勢いで定礎復元し続けてあっという間に6章まで行って、えぇ、あそこで完全に止まったのよねぇ……名前は確か、煙酔のハサン。いや、その前のスフィンクスでも止まったんだけど」

「あぁ、そういえば、そこら辺から私もいたわね。参戦したのはそこを抜けた先のガウェインだったけど」

 

 昔語りを始めるエリザベートと、途中で混ざるエウリュアレ。

 ちなみに、一日一章で5章まで進み、5章自体は一週間近くかかっていたりするのだが。

 

「というか、前にも同じ話をした気がするんだけど」

「まぁ、正直儂もそれは思った」

「そうよね。オオガミが6章のスフィンクスまで種火を知らなかったのも言ったしね」

「……やはり、儂らのマスター……アホなんじゃろうか……」

 

 神妙な顔で悩むノッブ。悲しいことに、実際アホなのだった。

 もちろん、それを知っているエウリュアレとエリザベートは、苦笑いで答える。

 

「そもそも、ノッブが来たときは人理修復は終わってたものね。知らないのも無理はないわよね」

「思えば、資源も豊富になったわよねぇ……」

「えぇ。レベル上げも死にそうになって、素材が足りなくてぶっ倒れて。それでも何とか人理修復して。っていうか、人理修復した時なんか、最終再臨しているのは何人いたかしら。たぶん片手で数えられるわよね?」

「……大変じゃったんじゃろうなぁ……」

 

 そう考えると、今のカルデアはある意味平和なのかもしれない。

 喜びで暴れているオオガミを見つつそう思った三人は、

 

「まぁ、せっかくですもの。手伝ってあげましょうか」

「そうじゃのう。頑張るとするか!」

「復刻でも、ライブが出来るはずよね!!」

 

 そう思い、オオガミに話に行くのだった。




 いや、案外本当なんですよ。ニコニコ静画でジャンタを見て、気になって気になってピークになっていざ久しぶりのログインをしたらイベント終了。泣くかと思いました。


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ついに明日……!!(とりあえず、メンバーを仮決めしておこう)

「マスターさんマスターさん。クリスマスなの?」

「そうですよ。クリスマスまで後一ヶ月以上ありますよ。主殿」

「イベント復刻だからね? ボケだよね? 冗談で言ってるんだよね?」

 

 真面目に言っていそうで不安になるオオガミ。

 彼女たちがキョトンとした表情で見てくるのも原因の一つだろう。

 

「クリスマス復刻だなんて、知ってるわ。当然じゃない」

「ほ、本当に? うしわっかも大丈夫?」

「えっ、あ、はい。大丈夫です!」

「うん。不安だなぁ……一緒に行って無事に帰ってこれるかなぁ、これ……」

 

 不安そうなオオガミ。しかし、そんなオオガミ手を伸ばす天使が一人。

 

「先輩。今回は私も行きますから、安心してください」

「マシュ……!!」

 

 我らが希望の星、マシュ。

 彼女がいればおそらくオオガミは負けないだろう。

 きっと。たぶん。おそらく……いやしかし、あのオオガミである。不安な気がしてならないのは一体何人いるのだろうか……

 

「マシュ、一緒に行っても大丈夫なの?」

「大丈夫です。戦えなくても、援護は出来ますから」

「う、うぅむ……マシュにはあんまり危険な目にあってもらいたくないんだけど、どうしたものか……」

「ねぇマスターさん。まだいるわよね?」

「……あぁ、そう言えば、まだいたね……」

 

 ナーサリーに言われて思い出す。そう、食堂にいるあの人なら、とりあえず全員任せてもいいんじゃないかと……

 

 

 * * *

 

 

「それで、私の全員を守れと? 流石に無理があるだろう」

「いやいやいや。そこはほら、エミヤ先生ですし」

「その信頼はどこから来るのかね……いや、別に行かないというわけではない。ただ、守り切れる自信が無いというだけだ」

「まぁ、ある程度は何とかなるんで。最悪皆に頑張ってもらえれば何とかなると思ってるしね」

「なに、私も久方ぶりの前線だ。少々鈍っていると思うが、なに。すぐに勘を取り戻せるはずだ」

「さっすがエミヤ先生!!」

 

 ため息を吐きながら、エミヤは了承する。ただ、守り切れるかは自信が無いとのことで、最悪の場合は自分が何とかすることを決める。

 

「よし。じゃあ、メンバーも一応仮決定だね。しかし、倒し切れるかどうか……」

 

 戦力的に不安があるものの、オオガミとしては実際戦ってみないと何とも言えない。

 

「明日に備えて、QPを溜めに行って来よう……よし。ドレイク船長とリップを連れて、宝物庫荒らしじゃー!!」

 

 オオガミはそう言うと、食堂を飛び出していった。

 

「全く、騒がしいマスターだ」

 

 そんな後ろ姿を見て、エミヤはそう呟くのだった。




 ランサーの種火が足りないという。ジャンタをどれだけの速度で鍛え上げる事が出来るかが問題……!!


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マスターもマシュもエミヤもいないし、実際遊び放題じゃね?(姫、圧倒的レベル差のせいで引きこもれないんだけど)

「マシュも行っちゃったわね」

「そうじゃのぅ……あ、おっきー。そっちのお菓子取って」

「レベル差を前に、(わたし)は大人しく屈するしかないのね……はい。お煎餅」

「レベル100とレベル80相手にレベル1が叶うはずもないと。まぁ、RPGでレベル1とか、無謀スタイルというか、普通不可能じゃよね!」

 

 なお、敵を倒すだけでレベルが上がる場合、チュートリアルか最初のボスでどうあがいてもレベルは上がってしまう模様。

 ノッブは刑部姫に取ってもらった煎餅をバリバリと食べながら、ゲームを操作する。

 なお、やっているのは茨木と共に刑部姫の部屋に引きこもっているときに渡されたゲームの模様。

 

「しっかしまぁ、見ているだけで楽しいんか?」

「楽しいわよ? 具体的には、ノッブが死ぬ瞬間とか」

「うんうん。こういうゲームは、やってる人が初見殺しとか、ミスってバッサリ殺られたりとか、突き落とされるとか、そういう感じで悲鳴を上げてるところを見るのが楽しいんだよ」

「こやつら、性格どうかしとるんじゃが……儂も人の事言えんけど」

 

 自分がエウリュアレ達の立場なら、爆笑しながら見守っていたに違いない。

 実際、茨木がやっていたのを見ていた時には、爆笑しながら見ていた。

 

「うぅむ、正直ローリングの性能高すぎじゃろ……絶対当たっとるよね」

「そこは考えちゃダメだと思う」

「まぁ、それがなかったらどう考えても今の三倍くらいは死んどるし、良いんじゃけどね?」

「あ、ノッブ。あそこにアイテムが見えたわ」

「むっ? ど、どこ……あ、あそこか」

「そうね……って、どうやって行くの?」

「……もしかして、壁になんかあるとかか? 聖剣伝説みたいに」

「聖剣伝説って……」

 

 刑部姫が苦笑いになるも、ノッブは真剣にいろんな場所の壁を斬り続ける。

 すると、突然消える壁。

 

「おぉ、マジであったんじゃが」

「へぇ……こんな仕掛けがあるのね」

「よく自力で……というか、どうして聖剣伝説なのか。他になかったの?」

「パッと思い付いたのがそれだったからな」

「でも、あれって専用の道具が必要だったわよね」

「うむ。じゃから音が変わるだけだと思ってたんじゃが、まさか壁が消えるとは思わなんだ」

 

 ノッブはアイテムを回収し、少し満足げ。

 しかし、次の瞬間、上から降ってきた物体に押し潰され、即死した。

 

「……なんじゃそれぇ……」

「あっはははは!! まさか完璧に引っ掛かるとか思ってなかったから、お腹痛い……!!」

「まぁ、良く見ると最初からいたわよね、あれ。落ちてくるとは思わなかったけど」

「うっわぁ……儂、心が折れそうなんじゃけどぉ……圧殺とか無いんじゃけどぉ……」

「ふっくくく……! 見事に引っ掛かったわ……! これはもう、笑うしかないわ……!!」

「ぐぬぅ……もう次は殺されぬわ。どうせ転がって終わりじゃろ?」

 

 ノッブはそう言ってもう一度同じところへ行く。

 そして、

 

「ふはははは! 儂を誰だと思っておるのか! 第六天魔王なるぞ!! ふはは!! これくらい造作もないこ――――どわぁぁぁ!? も、戻ってくるとか聞いてないんじゃけどぉぉ!?」

 

 転がり落ちていったものが階段を全力で上ってきて、悲鳴を上げながらローリング回避するも、目測を誤ったか。奈落の底へと落ちていくノッブ。

 

「……悲しい事件だったわね」

「ぷっ……くくく……あははははは!! あれだけカッコつけて落下落ちとか、ノッブ最高!! あはははは!!」

「ぬ、ぐ、あ、うがーー!! なんじゃそれは!! 無しじゃろそんなん!! 反則にも程があるじゃろ!?」

 

 半泣きになりながら叫ぶノッブ。しかし、いくら叫んでも、失われたものは帰ってこない。帰ってくるのは、慢心して奈落の底へ落ちた証拠である、『YOU DEAD』の文字だけ。

 

「はぁ……今日はもう止める。また明日じゃよ」

「えぇ~? もう止めるの?」

「うむ。で、今からおっきーを格ゲーでボコる」

「ほぅ……? (わたし)を? 良いよ。受けて立つ。舐められたままとか、嫌だし」

「勝負は単純。どちらかが心折れるまでじゃ!!」

「上等!! 泣かされる覚悟はあるんでしょうね? ノッブ!!」

 

 突然の展開についていけないエウリュアレは、とりあえず面白そうな格ゲーを選んで、ディスクを勝手に入れるのだった。




 なお、数時間後に一時帰宅するであろうエミヤに仲良く拳骨をくらい、両者半泣きで強制終了になる模様。

 ちなみに私は、聖剣伝説は一作目しかやってないです。


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二代目はオルタちゃん
行きますよ、トナカイさん!(これだけ高いと、普通に怖いよね……)


「ソリの上って、案外怖いのね……」

 

 空高く。雲は眼下に、天には無数の星々と大きな月。

 月光を照らし返す雲は、しかし乗れるわけもなく、ただ漂うのみで、更に言えば、ここがとてつもなく高いということを確かに伝えてくる。

 下に目をやり、その高さに震えたオオガミに対して、小さなサンタ――――ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィは口を開く。

 

「何言ってるんですかトナカイさん。高いところくらい問題ないですよね?」

「いや、別に支障はないけども……寒くないの?」

「えぇ。私はサンタですからね。このくらいへっちゃらです!」

「うぅむ、その薄着で寒くないとは。流石サンタ」

「ふふん。当然です。サンタですから」

 

 惚れ惚れするほどのドヤ顔に、もはや驚くこともなく平然と受け入れるオオガミ。

 しかし、サンタジャンヌは嬉しそうに言葉を返す。

 

「それで、その袋の中は何が入ってるの?」

「それは秘密です。ただ、皆さんへのプレゼントとだけ。あ、見ようとしないでくださいよ? したらこの槍で、こう、グサーっと行きますからね」

「何それ怖い……マスターとはいえ、一般人の俺からしたら即死なんですが……」

「死んでしまったらその時はその時です。というか、トナカイさんはそうそう死なないというか、殺しても死なないとエウリュアレさん言ってたのですが」

「エウエウ何言ってるの!? 普通に死ぬからね!?」

 

 信頼していた女神は、アッサリと自分の事を人外扱いしていたという事実に、オオガミは悲鳴のような声をあげる。

 その反応にサンタジャンヌは頷くと、

 

「ですよね。やっぱり普通に死にますよね。じゃあ、なんで死なないって言われてるんでしょう?」

「あ~……あれかな……エウリュアレの弓矢を避けきったからかな……」

「えぇ……そもそも、なんで自分のサーヴァントに襲われてるんですか」

「それは……えぇっと……あの時は何をしたんだっけな……っていうか、ちょくちょく射たれてるからどれが原因か思い出せないな」

「そんなに!? トナカイさん、さては悪いトナカイさんですね!?」

「酷い言われようだなぁ全く! 普通に悲しいよ!!」

 

 一体何をしたというのか。というより、なんかもう既に避けられ始めている現状に泣きたいオオガミ。二人しかないので、このままだと精神が危ない。

 いや、彼女が槍をしっかり握りしめたところを見るに、物理的にも危ないかもしれない。

 

「あの、サンタさん? 別に別に悪いことはしてないんだよ。ただ、いつもいつも振り回されてるから、ほんのちょっとした仕返しのつもりでエウリュアレのフレンチトーストを一切れ食べただけなんですよ。そしたら、凄い形相で矢を打ちまくってきまして、半泣きになりながら全力で逃げたわけです。当然、その時の原因は向こうにあるわけで――――」

「なんて陰湿なやり返し……!! トナカイさんに罰を! てりゃぁー!」

「理不尽!!」

 

 狭いソリの中で真っ直ぐと突き刺してくる槍を受け流し、横凪ぎを伏せて回避する。

 

「あ、危ない危ない危ない!! 殺す気ですかサンタさん!!」

「むしろなんで最初の一撃を受け流せたんですか!? さてはマスターさんは人間じゃないですね!?」

「これほど理不尽なのを見たことはないってくらい酷いセリフだ!!」

「ぐぬぬ……倒せないのなら仕方ないです。とにかく、プレゼントをしっかり届けきらなくちゃですね。やりますよ。トナカイさん」

「今しがた殺されかけたところなんだけどなぁ……!!」

 

 オオガミは、この死と隣り合わせの状況から抜け出せるのか。

 とりあえず、今回は集めた靴下で手に入れたボックスをサンタジャンヌに開けさせて、なんとか気を逸らすことに成功したのだった。




 なんというか、結構な確率で殺されかけているオオガミ君。ごく自然な日常風景ですね。(白目

 しかし、ボックスガチャの時のジャンタのセリフに萌え殺されそう……コフッ


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温まるお弁当って、最強だと思う(と、トナカイさん……これ、爆発したりしないですよね!?)

「トナカイさんトナカイさん。お腹が空きました」

「まぁ、そりゃ空をこんなに飛んでたらお腹も空くよね。えっと、ここら辺にお弁当が……」

 

 メディアお手製バッグの中からエミヤ作のお弁当を取り出すオオガミ。

 サンタジャンヌは目を輝かせ、オオガミはそんな彼女にお弁当手渡す。

 

「曰く、ここを引っ張ると温まるらしいんだけど……」

「ここですか? ば、爆発とかしないですよね?」

「しないと思うけど……不安ならやるよ?」

「い、いえ。これくらい出来ないとサンタとしてやっていけませんからね。やります!」

「お弁当一つでこの気合い……しかも、ちゃんと自分でやってくれるという……他のは皆あの手この手で任せようとするのに……!!」

 

 それ以前に、どうして言われたままにやっているのかという疑問が残るが、今は気にしないことにするのが一番だろう。

 そして、そんなことを呟いているオオガミとは違い、サンタジャンヌは真剣な表情で紐を手にして弁当箱の蓋をしっかりと押さえている。

 

「い、行きますよ? トナカイさん」

「頑張って~!」

「いち、にの、さん。で行きますからね?」

「うん。分かった。いつでもどうぞ?」

「……いち……にの……さんっ!」

 

 引くと同時に、中からシューシューと音がする。

 その効果をサンタジャンヌは感じたのか、目を輝かせながらオオガミを見る。

 

「トナカイさんトナカイさん! 温まってきました!! ホカホカな感じがします!! じんわりと温かくなってます!!」

「な、なんと……一体どうやってこんなのを作ったんだ……」

「今度聞いてみないとですね!! 作ったのは、エミヤさんと……」

「エジソンだね。しかし、いつの間に……」

「とりあえず、エミヤさんに聞くのが一番ですね! もしかしたらサンタの仕事で使える日が来るかもしれませんし!!」

「そうだね。カイロとかも欲しいしね」

「いえ、これはカイロとは違う作り方だと思うんですけど……」

「おぉっと。小さなサンタさんに言われると心に響くものがあるぞぅ? 具体的には、そんなことも知らないんですか? って言われてる感じだね」

「流石にそこまでは言わないですし、トナカイさんはきっとわざと言ってるんだと思いましたし。それで、カイロは無いんですか?」

「あぁ、やっぱ寒いよね。カイロカイロ~っと。ん~……これだっ!」

 

 バッグの中から取り出したのは見事カイロ。しかも、貼るカイロだ。服の裏側に貼り付けておけば、このソリの上でも安心の温かさだろう。

 

「とりあえず、それなりにあるみたいだし、サンタさん。使います?」

「えっ、あ、その……ど、どうしてもというなら使いますよっ」

「じゃあ、どうしてもってことで。どこに貼ろうか。というか、貼るところある……?」

「だ、大丈夫です! 自分で貼りますから!!」

 

 そう言うと、サンタジャンヌはオオガミからカイロを受け取り、ゴソゴソ動く。

 オオガミはそのまま見てるわけにもいかないので、自分の分のカイロをペシペシ服の裏側に貼り付けていく。

 

「って、このままだとお弁当が冷めちゃうんじゃ……?」

「あわわ! そ、それは困ります!」

 

 慌てた様子でサンタジャンヌは服装を正し、お弁当に向き直る。

 

「カイロ貼り終わりましたし、そろそろ食べますね。トナカイさん自由に食べてくださいよ? では、いただきます!」

 

 サンタジャンヌはそう言うと、満面の笑みでお弁当食べ始める。

 オオガミはその様子を眺めつつ、自分の分のお弁当を探すのだった。




 こうね、幸せそうな表情で食べてる人を見てるのって、見てるこっちも幸せになる感じするんですよ。
 って言葉がなんとなく脳内に流れた私です。
 ジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィ可愛いよ本当。

 あ、実は私、温まる弁当も貼るカイロも使ったことないので、使い方とか色々と間違ってるかもしれないので、こうじゃないの? というのがありましたらご一報ください。
 ついでに、エジソンは持ってないので、出てくるまでは登場予定はないのでご注意下さい。

 ……あの、ところで……このソリ、どうやって動いてるんです?


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ナーサリー、ソリの上で暴れないでね?(じゃあ、海に着くまでイスになってね。マスター)

「わぁ!! 高いわ! マスター!!」

「ふふん。このソリは特別製なので。ね、トナカイさん」

「謎動力ということに目を瞑りさえすれば、凄いんだけどねぇ……」

 

 不可思議謎動力のソリ。しかし、彼女たちが楽しそうなので良しとする。

 今回はナーサリーも同乗しているので、いつもより会話も多い。

 

「それにしても、海かぁ……色々あると思うんだけど、どこに行くの?」

「うぐっ……その、そこまでは決めてないと言いますか……」

「行き先未定ってことね?」

「はうっ…不出来なサンタですみません……」

「別に良いわ! きっと悩んで出してくれた場所はキレイだもの!!」

「おぉ、流石ナーサリー。小さい組のリーダーなだけあるね」

「えっへん。これでもカルデアではお姉さんなんだから!」

「そうなんですか?」

「来てくれた日付の話だけどね。召喚された順と考えればお姉さんで合ってはいるよ」

「なるほど……私の名前にひたすらスパムを付けたこの人が……」

「何か含みがある気がするのだけど、気のせいかしら?」

「含みなんかないです。ただ、名前にスパムって付けるのはどうかなぁって思っただけです」

「やっぱりあったじゃない!! もぅ。怒るわよ!?」

「はいはい。ソリの上で暴れないでね」

 

 両手を振り回して抗議するナーサリーを膝の上に乗せて落ち着かせるオオガミ。

 しかし、次の瞬間。ナーサリーはサンタジャンヌに向けて謎のドヤ顔をかます。

 サンタジャンヌは頬を膨らませる!

 

「トナカイさん! ズルいです! 後で私にもして欲しいです!」

「突然何を言い出すんですかサンタさん。何故にそんな怒ってるんですか」

「そうよ。マスターの膝の上は私のもの。サンタさんにはあげないわ!」

「むむむっ!!」

「睨んだってダメなんだからね!」

「……ぐすん」

「……う、海に行くまではダメなんだからね!」

「あっ。妥協した」

「マスターはうるさいわ!」

「ごふぅっ!」

 

 ナーサリーが座った状態で繰り出した肘鉄は、見事なまでにオオガミの脇腹を穿ち、致命的ダメージをオオガミに与える。

 なお、二人は気づいていない模様。

 

「海に着いたら貸してくれるんですね?」

「え、えぇ。良いわ! 私が満足できたらね!!」

「よぅし、頑張りますよぅ!! 絶対満足させてみますからね!!」

「……あの、俺の意思は……?」

「マスターはイスだから喋っちゃダメよ」

「トナカイさんはそのままでいてください」

「……言動すら許されないのか」

 

 だんだんと、否。前々から、既にオオガミの扱いは酷くなる一方のようだった。

 言動が許されないオオガミは、静かに二人の会話を聞くことに徹するのだった。




 最終的にオオガミ君を酷い目に合わせたいのか。自問自答している私です。

 うん。ジャンタがプロフィールと離れていってるなぁ!!


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海まで暴風雪の中歩きですか。マジですか(あの、寒いうえに暗くて何も見えないんですけど)

「凍りそうなほど寒い大地を踏みしめて。いざ行かん、海!」

「さ、寒いわね。マスター……」

「トナカイさん……私も寒いんですが。寒いんですが!」

 

 迫る二人に苦笑いを返すしかないオオガミ。歩きにくいとは決して言えない状況に、とりあえずされるがままでいるしかない。

 しかし、暴風雪の中で歩き続けるのは流石に体力的につらいものがある。

 

「サンタさん。どこかで休憩しませんかね」

「もぅ! トナカイさんがそんなでどうするんですか!! もっとしっかりしてください!!」

「なんと……休ませてくれないとは……この暴風雪の中、死ぬんじゃ……」

「大丈夫!! 死んだら私たちが弔ってあげるわ!!」

「安心して眠ってください!!」

「うん。死ぬ前提になってるね……死なないようにせねば……」

 

 当然冗談なのだろうが、彼女たちの場合本当にやりかねないので、困ったものだった。

 

「それで、マスターは疲れたの?」

「ん~……まぁ、寒いしね。どっかで休憩するのが一番かなぁって。暗くなっていってるしね。二人はともかく、僕は見えないからね……」

「トナカイさんなのに夜目が効かないとは……」

「トナカイさんもできないことはあるわ! サンタさん!」

「う、うぅ……それを言われると、確かにトナカイさんは人間ですし……」

「そうよ。だから、これだけ暗いと見えなくても仕方ないわ」

「そうですね……じゃあ、どこかで休めるところでも探しましょうか」

「えぇ!」

 

 二人はオオガミの手を引いて歩き出す。

 オオガミは二人の言っているようにほとんど周りが見えていないので、今なら目の前に木が迫ってきていたらぶつかれるだけの自信があった。

 

「ねぇ、木とか気を付けてよ? ぶつかったら痛いんだからね?」

「わかってるわ! ちゃんと避けるから安心して!!」

「木々の間を走り抜けるくらい、サンタ的に当然です!!」

 

 二人がそういった直後だった。

 ドゴッ! と音がして、何かに後ろへ引っ張られるようにその場に座り込むナーサリーとサンタジャンヌ。

 振り向くと、木に叩きつけられているオオガミの姿があった。

 

「トナカイさん!?」

「あ~……やっちゃったわ。左右から引っ張っているんだもの。同じ方向に避けなくちゃいけなかったわ」

「……いひゃい」

 

 地面に倒れ、雪に埋もれながら悶絶するオオガミ。ナーサリーはそれを見て反省し、サンタジャンヌは大慌てでオオガミに近づく。

 

「あ、あの、トナカイさん! 大丈夫ですか!?」

「うぅ……地味に鈍痛は続いているけど、問題ないよ。とりあえず、見えないのは変わらないから引っ張っていってくれると助かるな」

「わ、わかりました!! 任せてください、トナカイさん!!」

「むぅ。私も忘れないでね!!」

 

 二人はそういうと、オオガミの腕を掴み、再び歩き出すのだった。




 ジャックちゃん出したいのに……!! 持ってないから……!! うわあああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!


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最近、マシュと絡んでない気がするんじゃよね(だからって言って、突然来ないでください!!)

「マシュ~。儂、暇になったんじゃけど~」

 

 マシュにもたれかかり、マシュの手元を覗き込むノッブ。

 マシュはそれに驚き、振り向くと、

 

「な、なんで管制室に来るんですか!! というか、刑部姫さん達とゲームしてたんじゃないんですか!」

「えぇ~? 一週目終わったし、二週目は流石にのぅ……いや、まぁ、やるんじゃけども」

「そんな短期間で終わるんですかアレ……!! 明らかにもっと時間がかかると思ったんですけど……!!」

「ふふん。あの程度、儂にかかれば余裕じゃ」

「嘘よね。だって、ノッブ、ぶっ通しでやり続けてたじゃない」

「うぐっ」

「え、エウリュアレさん! ちょっと、信長さんを連れて行ってくれませんか?」

「ふふ……残念だったわね、マシュ。私が貧弱だというのを忘れてないかしら」

「レベル差があるじゃないですか! どうしてそれで引き剥がせないんです!?」

「貧弱な女神が、天下取りかけた戦国武将に勝てるわけないじゃない」

「ドヤ顔で言われても……!!」

 

 一体どこからその自信が出てくるのか。自信満々にノッブに勝てない宣言をするエウリュアレに、せめて努力はしてみてほしいと思うマシュだった。

 

「それで、マスターはどれくらいで帰って来そうなんじゃ?」

「明日くらいには帰ってくると思うんですけどね。ただ、もしかしたら靴下集めでイベントが終わるまで籠るかもしれないですね……先輩ですし」

「まぁ、マスターじゃしなぁ……まぁ、待っておればそのうち帰って来るか」

「そうですね。って、だから、なんでここに来たんですか」

「いや、本当はおっきーから逃げて来たんじゃよねぇ……なんせ、やらせようするんじゃもん。二週目」

「やってくればいいじゃないですか……コレクター精神は何処に行ったんですか」

「儂、別にそんなコレクター精神は無いし……」

「なんで今回に限ってコレクター精神は無いんですか……!!」

 

 どうすればこの戦国武将を引き剥がして追い出せるかを全力で考えるマシュ。

 しかし、そんなマシュに、救いの手が差し伸べられた。

 

「ノッブ~? どこ行ったの~?」

「うっげぇ! おっきーが来たんじゃけど、来たんじゃけど!!」

「ほら、ノッブ。さっさと行くわよ」

「い、嫌なんじゃけど!! 隠れる所を探さねば……!!」

「別に遊んでるだけなんだからいいじゃない……ほら、行きましょ」

「い、嫌じゃ~~!! だって、あのゲーム、めっちゃ死ぬんじゃもん!! 絶対嫌なんじゃけどぉ!!」

「諦めて。というか、バラキーはどうしたのよ」

「バラキーはなんか教会で聖女っぽい獣と戦って、回復されて叫びながらゴリ押しで潰してたんじゃよ」

「案外進んでる……のかしら?」

「さぁ? おっきーなら進捗状況は分かると思うんじゃけどね?」

「じゃあ、確かめに行くわよ、ノッブ」

 

 突然聞こえる刑部姫の声。ふと気づくと、ノッブの後ろに集まっていた折り紙の蝙蝠の群れに、蒼い顔で頬を引きつらせるノッブ。

 

「わ、儂はもう戦わんからな!?」

「バラキーの様子見に行くだけだからいいじゃん? レッツゴー!」

「最近、お主が引きこもってるのを見ない気がするんじゃが……!!」

「一体誰のせいだったっけ? ほら、ノッブはまだ二週目があるんだから頑張ってやるしかないんだよ!」

「ぐぬぬ……まぁ、バラキーがどこまで進んだかは興味があるからの……行くか」

「……本当に何しに来たんですか……他の所に行ってくださいよ……」

「ごめんなさいね、マシュ。ノッブが、最近マシュに絡んでないって言って突撃していったのを止められなかったわ」

「次からは無い様にしてくださると助かります。エルキドゥさんに頼っても良いですから」

「私が苦手なんだけどね……じゃ、私も行ってくるわ」

 

 エウリュアレはそう言うと、刑部姫に連れ去られたノッブを追って、部屋を出て行くのだった。




 ジャックがいなくて悲しくなったので、待機組の話を。


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カルデアにサンタとトナカイが帰って来たよ!(先輩! クリスマスまで後一ヶ月あるんですけど!!)

「ただいまマシュ! メリクリ!」

「先輩! おかえりなさい! あと、クリスマスは一ヶ月近く後です!」

 

 何故かサンタジャンヌを肩車して帰って来たオオガミに、満面の笑みで挨拶と突っ込みをいれる。

 

「それで、どうしてジャンヌ・ダルク・オルタ・サンタ・リリィさんが先輩の肩の上に?」

「そ、それは――――」

「それは、俺がトナカイさんだからだよ!」

「どういう訳じゃゴラー!」

 

 横から吹っ飛んでくるノッブの飛び蹴り。

 見事なまでに蹴り飛ばされたオオガミは、しかし、サンタジャンヌが一緒に吹き飛ばないように緊急回避でサンタジャンヌを空中に残して吹き飛ぶ。

 ノッブはそれを見抜き、器用なことをするもんだ。と思いながらサンタジャンヌをキャッチする。

 根本的に蹴りを避けるという発想はないのか。とノッブは思うが、それはそれ。蹴り飛ばした感触を思い出しながら、

 

「うむ。吹っ飛び良し。紛れもなく儂らのマスターじゃな!」

「はわわ……やはりカルデアは危険地帯……! どうしてマスターなのに容赦なく蹴り飛ばされてるんですか……!?」

「いやいや。儂、手加減したんじゃけど? いつもと同じくらいなんじゃけど」

「いつもあの威力!? なんでトナカイさんは死んでないんですか!!」

「ついに何故生きているかを問われるとは……流石儂の見込んだマスターじゃな!!」

「そんな意味で見込まれてもなぁ……!!」

 

 ボロボロになって戻ってくるオオガミ。

 なんだかんだ、サーヴァントに蹴られて無事なところを見るに、さてはほとんど人間をやめているな。と思わなくもないサンタジャンヌ達。

 

「と、トナカイさん……どうして無事なんですか? 普通、致命傷だと思うんですけど……」

「エルキドゥに助けられたのと、応急手当で誤魔化してる」

「い、医療班! トナカイさんが怪我してるっぽいんですけど!?」

「また先輩はカルデア内で怪我を負って……見てるこっちが不安になるんですから、止めてくださいと言ってるじゃないですか!」

「今回もノッブが原因だと思うんですけど!!」

「まぁ、確かに私もそう思うので、信長さんは後でお仕置きですからね。逃がしませんよ?」

「……儂、急用を思い出した。帰らせてもらうぞ!!」

 

 颯爽と走り去るノッブ。しかし、誰も追いかけようとしないことを、サンタジャンヌは疑問に思う。

 

「あの、あのままだと逃げられてしまうんじゃ……」

「ノッブの逃げるところとか、大体決まってるし」

「やろうと思えばすぐにでも見つけられるので大丈夫ですよ」

「え、えぇ~……それって、もしかしなくても、常時観察されている状況なんですか?」

「いえ。あくまでもやろうと思えば、です。常時展開は、こう、経費が……」

「あ、それ以上は大丈夫です。なんとなく、私も理解しました」

 

 マシュの言葉を遮り、納得するサンタジャンヌ。

 そんなサンタジャンヌにオオガミは近付き、

 

「じゃあ、次の周回まで時間はあるし、遊ぼうか」

「……はい!」

 

 そう言って、二人は部屋を出ていく。

 と、寸前でオオガミは止まり、

 

「マシュもやることが終わったら一緒に遊ぼうよ。今回も頑張ってくれたしね」

「……はい! すぐに終わらせて行きます!!」

 

 マシュは元気良く返事をし、残っている仕事を片付け始めるのだった。




 オオガミがカルデアで話しているのが珍しいと思ってしまった私は一体……結構最近に出した気がするんだけど……うぅむ…。

 しかし、着々と幼女組が増えていく……ジャックが来れば完璧なのに……!!


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このケーキ……美味しそうだよね……(共犯者増やしてマシュの怒りを分散させよう)

 エウリュアレが休憩室入ると、じっとこちらを見つめるオオガミがいた。

 何かと思い近付くと、差し出されるフォーク。その上にはケーキが乗っている。

 エウリュアレは突然のことに首をかしげるも、特に疑うこともなくそれを食べる。

 

「ねぇマスター? ケーキとか、靴下とかの回収はどうしたの?」

「うぅむ、どうもうちの女神様は休憩すら阻止しようとしているようだね」

「いえ、よく回収作業が終わってないのにケーキを食べれるわね。と思っただけよ。マシュに見つかったらどうなるかしらね?」

 

 気を取り直したようにのんびりとフルーツケーキを食べているオオガミを見て、エウリュアレは不敵に微笑む。まるで、貴方の命は私が握っていると言わんがばかりの表情だ。

 しかし、オオガミは大して動揺した様子もなく、

 

「……じゃあ、エウリュアレも同罪ということで」

「なんでよ」

「だってほら、エウリュアレが部屋に入ってきたとき、食べさせたケーキはこれと同じものだし」

「……女神を騙すなんて良い度胸じゃないの」

 

 怒っていると一目で分かるエウリュアレの笑顔。

 オオガミも笑顔で返すが、引きつっているのは誰の目にも明らかだった。

 

「それで? 同じ方法で他にも共犯者、作ったんでしょうね?」

「いや? 正直、エウリュアレだけだよ? そもそも警戒しない方が珍しいし。ノッブとか、差し出した瞬間に逃げたもん」

「……嫌われてる?」

「そうは思いたくないなぁ……野生の勘だと思いたい……」

「やっぱり嫌われてるじゃない」

「ぐふっ……そんなはっきり言わないで……! エウリュアレには信用されてるから……!!」

「その信用がたった今消し飛んだのだけど……気付いているかしら?」

「エウリュアレがそんな無慈悲なことをするわけないって信じてるから。なんだかんだ言って、最終的に許してくれるって思ってるから」

「えぇ。じゃあ、今から言うお願いを聞いてくれたら良いわよ?」

「……どんとこい無理難題」

 

 震える声で、エウリュアレの言葉を待つオオガミ。

 そんな彼に、エウリュアレは微笑んで、

 

「マシュに私の事を伝えずに自白してきて」

「無理ですごめんなさい」

 

 即答だった。

 その反応を分かっていたのか、エウリュアレは笑いながら、

 

「ふふっ。まぁ、冗談よ。別にやらせたいようなこともないしね。ただ、あるとすれば……えぇ。一口なんて言わずに、もっと寄越しなさいよ」

「がっつり共犯者宣言ですね。女神がそれで良いんですか……」

「良いのよ。だって、集めるのは貴方じゃない」

「うぅむ、的確な突っ込みだ!! とは言っても、戦うのは皆なんだけどね。後で周回メンバーにも配らなくちゃ」

「えぇ、頑張りなさいな。後二日……楽しみにしてるわ」

「ふふん。サクッと終わらせてくるもんね。任せといてよ!」

「期待してるわよ。マスター」

 

 オオガミに差し出されたフルーツケーキを受け取り、エウリュアレは楽しそうに微笑むのだった。




 そして彼は後悔するのだ。この時食べなければ、足りていたはずだと……

 どうも。手に入れた石30個を瞬間的にクリスマスガチャに投げ入れた私です。孔明礼装二枚同時引きしたんで、血を吐く程度で済みそうです。

 じぃじ? 来てくれないのは分かってるんですよ……なにせ、ここ最近アサシンパラダイスでしたし。尚更ダメな予感……


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ケーキも靴下も終ってない……(先輩、今日中には終わるんじゃなかったんですか?)

「先輩。ケーキと靴下はどれだけ集まったんですか?」

「ん? あぁ、後プレゼントボックスを二箱開けて、チーズケーキとショートケーキは二種類――――800個ほどで終わるよ」

「……フルーツケーキとブッシュ・ド・ノエルは?」

「……さぁ?」

 

 バラキーの口元にクッキーを近付け、反応したと同時に腕を引っ込める遊びをしているオオガミに聞き、そんなふざけた反応が返って来た。

 当然、マシュは笑みを浮かべながら首をかしげ、

 

「先輩? 今日中には終わる予定だったと思うんですが?」

「かわいい後輩ちゃんよ。残念だが……予定は変更されたよ」

「……先輩? 私、そろそろエルキドゥさんを呼んで来ますよ?」

「かわいい後輩ちゃんが悪いことを考えるようになってる……!! 誰ですか! うちのかわいい後輩ちゃんをこんなにしたのは!!」

「いい加減、自分のやったことが返ってきたって気付かないのかしら。このマスター」

「因果応報じゃよね!!」

 

 がぶり。とバラキーに腕ごと食べられ、動けなくなるオオガミ。

 自分でやった悪戯で動けなくなっているので、誰も責められないオオガミは、如何にしてマシュの怒りを納めようか考える。

 そして、出した結論は、

 

「あの、えっと……素直に行ってきます!」

 

 下手に言い訳せずに、早く行った方が良いという結論に至る。

 最近はノッブ達のお陰か、マシュはどんどん立派な良い子に育ってきている。風紀委員側として。

 なので、下手に逆らうと、天の鎖が飛んできたりするわけだ。彼女達のボスは恐ろしかった。

 まぁ、マシュの説教も、かなり心に響くのだが。

 

「信長さんも、あまり先輩の事は言えない気がするんですが……因果応報なら、たぶん貴女の方がそのうち大きいのが来ますよ?」

「……儂、死ぬんかのぅ……」

「殺しても死なないくせに、よく言うわよ」

 

 いや。流石の儂も、死ぬときはアッサリじゃから。と、妙なところに突っ込むノッブ。

 エウリュアレもそこじゃない。と言いたげな表情だが、本人は何故かドヤ顔なので、言うことはない。

 

「……吾のクッキー……持っていかれたのだが」

 

 ふと声が聞こえ、視線を下げると、そこにはショボくれているバラキーがいた。おそらく、オオガミが逃走時に持って逃げたのだろう。

 エウリュアレはそれを見て、

 

「じゃあ、私のティラミス、食べる?」

「むぅ? ……食べる」

 

 エウリュアレに差し出されたスプーンの上のティラミスをまじまじと見つめ、恐る恐ると言った感じで口にする。

 

「う、む……少しばかり苦いが、しかしそれ故にその後の甘味がしっかりと届き、しつこくないようになっている……」

「……つまり?」

「うまい!」

「どうしてそこで語彙力を落とさせるのよ」

「端的に伝えた方が良いと思うてな。こう、長いのは聞いてて途中から頭に入ってこなくなるからな」

「そんなものかしら?」

 

 ノッブの言葉にそんなものだろうかと思うも、バラキーが満足そうなので、まぁいいか。となるエウリュアレ。

 

「じゃあ、これでさっきオオガミやってたの、やりましょう?」

「なっ……そんな……!!」

「うふふ……私はサーヴァントだし、オオガミよりも難しいわよ……?」

 

 不敵に微笑むエウリュアレに、カタカタと震えるバラキー。

 マシュとノッブは、そんな二人を横目に、

 

「エウリュアレさん、たまにたまに先輩の事を名前呼びするんですが、何故なんでしょうか?」

「うぅむ……儂もたまに聞くんじゃが、気分の問題なのかのぅ……法則性は……見つけるのにもう少し時間がかかりそうじゃよ」

「そうですか……私の方でも少し調べてみますね」

「うむ。とは言っても、見つけ出しても別に何かある訳じゃないと思うんじゃけどね」

 

 そう言って、楽しそうに遊ぶエウリュアレを見るのだった。




 エウリュアレがオオガミを名前呼びする条件……あるんですかね……?
 本当にあったら、無意識でやってることになるんですが……


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日常
イベント終わったし、ゲームしようか(マスターマスター! 何しているの?)


「マスター? 何をしているのかしら?」

「トナカイさん。」

 

 オオガミの脇の下から侵入してくる二人。

 最近にしては珍しく二人でゲームをして遊んでいたのだが、二人の少女による突撃で状況が一変する。

 

「あっ、ノッブ! 一旦退却するよ!」

「なんと! 儂一人でこれの相手をさせるとは……任せい! マスターが戻ってくるまで何とか持ちこたえてやる!!」

「……なんか忙しそうね?」

「そうですね。というか、私もやってみたいです」

 

 ぐるぐると目まぐるしく変わる状況に、ナーサリーは大変そうな印象を受け、サンタジャンヌは楽しそうに見えたようだった。

 なお、会話から分かるように、協力で遊んでいる。ボス戦の後半に入り、相手の行動パターンが変わった瞬間にリアルアタックされていたりする。

 

「えっと、二人とも。操作しづらいから、退いてもらっても良い? 両サイドにいるのは良いんだけど、下にいると困るんだけど……」

「あら。邪魔はいけないわね。ちゃんと座って見ないと、お行儀が悪いわ」

「そ、そうですね。まぁ、私は分かってましたけどっ!」

「そうね。サンタさんだものね」

「えぇ、サンタですからね!」

 

 えへん! と威張るサンタジャンヌ。しかし、微笑むナーサリーの方が大人に見えるのは何故だろうか。

 とにかく、オオガミは二人が退いたことにより、ボスに不意打ちを叩き込み、参戦する。

 

「二人はこれを倒し終わったらにしようか」

「そうじゃのぅ。ただ、本体はこれ以上無いから、儂のを貸し出すしかないな」

「じゃあ、私はノッブをもらうわね!」

「えっえっ、じゃあ、私はトナカイさんで!」

「うぅむ、ある意味ジャックがいたら出来なかったんだろうけど、とりあえず、ちょっと待って。倒し終わるまでね」

 

 すぐにでも座れるように立ち上がる二人を制止するオオガミ。

 その言葉にナーサリーは笑顔で返し、サンタジャンヌはコクコクと頷く。

 

「よしよしよし。ノッブ! ラスト!」

「任せよ! これで終いじゃぁ!!」

 

 ノッブの一撃が刺さり、ボスは倒れる。

 二人は脱力して倒れるが、この瞬間を待っていたのは二人だけではない。当然、ナーサリーとサンタジャンヌもいた。

 なので、二人は自然な動きでそれぞれの足の間に座る。

 

「ノッブ。私にも出来るのかしら?」

「トナカイさん。助けてくださいね?」

「……まぁ、安全なエリアに行くのが一番じゃな」

「そうだね。っていうか、安全なところってある?」

「……あぁ、ダメじゃ。儂、もうここで呼べないし」

「周回数的に、こっちの方が危ないし、進む?」

「まぁ、それしかないんじゃよねぇ……なんとかなるじゃろ」

「だね。ってことで、最初からハードだよ。二人とも」

「大丈夫よ。いくらでも来なさい!」

「が、頑張りますよ!」

 

 胸を張るナーサリーに、若干震えながらもやる気を示すサンタジャンヌ。ある意味対照的な二人に笑みをこぼすオオガミとノッブ。

 そうして、四人は冒険の旅へと出るのだった。




 ジャックが来ないからこんなことを……末期かもしれない……


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パーティーゲームでスゴロクしようぜ!!(わ、儂、ピンチなんじゃけど……)

「後少し……後少し……!!」

「う~む。儂、さりげなく最下位なんじゃが」

「サンタ強い……」

「うぅぅ! 容赦無さすぎるのだわ!!」

 

 本日はパーティーゲーム。その中のスゴロクをやっているのだが、現在一位はサンタジャンヌ。最下位はノッブで、中間で接戦を繰り広げているのがオオガミとナーサリー。なお、同率の模様。

 

「まぁ、儂の最下位もここまでじゃ。この一振りで、最下位脱出じゃな!」

「な、なにぃ!!」

「そんな、サイコロ三つ!?」

「そんな……これじゃあ、私が最下位になっちゃうわ!!」

 

 悪役顔でアイテムを使いサイコロを三つにするノッブ。

 この状況に三人が絶望の表情を浮かべる。

 

「ふはは!! 儂が最下位とか、あり得ないよね! こういうのはマスターの役目じゃし!!」

「ひっどい理論だよ全く!! そういうノッブは全部2とかいう微妙な結果で終わるといいよ!」

「わ、儂がそんなことになるわけ無いじゃろ!?」

「フラグね?」

「フラグなんですか?」

「や、やめろぉ! それで本当になったらどうする気じゃあ!!」

 

 まさかとは思いつつも嫌な予感が止まらないノッブ。

 三人とも、そんなノッブの心境を分かっているかのように攻撃してくる。

 

「ふふふ。ノッブは出せるのかしら?」

「ノッブさんはきっとやると信じてます!」

「ノッブだしね!!」

「最後二人! どういう意味じゃあ!!」

「まぁまぁまぁ。怒らないでレッツゴー!」

「後でマスターは仕置きじゃ。が覚悟しておれ」

「僕だけなんだね。当然だと思うけども!」

 

 オオガミの仕置きが確定し、ようやくノッブが振っていく。

 

「はーずーれ! はーずーれ!」

「い~ち! い~ち!」

「ぜ~ろ! ぜ~ろ!」

「サイコロにゼロは無いわ! というか、いい加減に振らせて欲しいんじゃが!!」

「振ってどうぞ?」

「私たちは止めないわ」

「恐れずに! やってみましょう!!」

「えぇい集中を掻き乱しおってからに……!!」

 

 そう言いつつ、ノッブはボタンを押し――――

 

「――――…………1、1、1……じゃと……?」

 

 もはや一周回って凄い数値。

 ノッブはフリーズし、後ろの三人も少し沈黙した後、

 

「や、やったわ! これでノッブは脅威じゃないわね!!」

「後は私がこのままゴールに!」

「ノッブ、お疲れ様!!」

「あ、あ、あぁぁぁぁぁあああああああ!!! フラグ回収力えげつなさすぎじゃろぉぉぉ!!! ぐだぐだ粒子とか、そんなのが原因か!?」

 

 悲鳴を上げるも、すでに時遅し。結果は出た後で、覆しようがない。

 その後サンタジャンヌを筆頭に軽快に進んでいき、三位との差は6マスを優に超える。

 

「あ~……儂、終わったわぁ……こっからの逆転とか、包囲されてる状態で燃え盛る本能寺からの脱出レベルじゃよ……」

「なぜそんなピンポイントで本能寺燃えてるんですか」

「儂のピンチを伝えるには最適じゃし」

「そのためだけに燃やされる本能寺……」

 

 なお、その戦いは当然の如くノッブは最下位で終わった。

 しかし、ノッブがそれで終わるとは、誰一人思ってはいない。彼女の復讐は、今始まったのだった。




 現実でやったらりある大乱闘必至の煽り……当然、後で大神君が酷い目に遭います。(確信


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先輩、ずっと遊んでますよね(皆でできるようなゲームでも作る?)

「最近先輩ずっと遊んでますけど、珍しいですよね」

「……まぁ、マシュは知らない方が良い事が原因だったりするわよ」

「……?」

 

 今日も今日とて遊んでいる四人を見て呟いたマシュに、紅茶を飲みながら遠い目をして答えるエウリュアレ。

 実際のところ、オオガミが遊んでいる原因はつい先日のイベントが原因だったりする。

 彼女は知っている。結局ケーキが足りず、モニュメントが交換できなかったのだった。

 

「そう言えば、マシュは混ざらないの?」

「私は……そうですね。私もそのうち混ざろうかと。六人用のゲームとかありましたっけ?」

「さぁ……? でも、六人用の電子ゲームって、珍しいと思うのよね」

「そうですね……ボードゲームとかの方が良いでしょうか……」

「そうね。人生ゲームとかどうかしら?」

「う~ん……どこかにありましたっけ、人生ゲーム」

「まぁ、無かったら作ればいいわ。楽しみね?」

「作る、ですか……そっちの方が楽しそうですね」

「自分たちでマスを作るんだものね。面白そうだわ」

「はい。マスだけ作ればダ・ヴィンチちゃんが作ってくれると思いますし、楽しみですね!」

 

 目を輝かせてそういうマシュ。エウリュアレは楽しそうに笑い、扉の方を見ると、ちょうどメドゥーサがいたので、

 

「メドゥーサ。紙とペン、持ってたりしないかしら?」

「突然ですね姉さま……」

「いいじゃない。それで、持ってるの? 持ってないの?」

「持っていませんが……取って来ますか?」

「えぇ、お願い。両方とも出来るだけ多くね?」

「はい。じゃあ、行ってきますね」

 

 メドゥーサはそう言うと、部屋を出て行く。休憩しに来たはずなのに、なぜかお使いをさせられるメドゥーサに自然とお辞儀をするマシュ。

 そんなことをしていると、少し離れた所にいる四人は盛り上がっていた。どうやら今日はノッブが一位を独占しているらしく、三人が叫んでいた。

 

「盛り上がってるわねぇ……今度、私もやってみようかしら」

「こちらはこちらで楽しそうですけどね。完成するまでは混ざってみてもいいと思います。完成したらこちらで遊びましょう」

「そうね。メドゥーサが帰ってきて、皆でマスを書いた後に遊びましょうか。あぁ、どんなのがいいかしら」

 

 楽しそうに笑うエウリュアレ。マシュもそれにつられて笑顔になり、マスの内容を考える。

 そこに、メドゥーサが帰って来た。

 

「取って来ましたけど……何に使うんですか?」

「人生ゲームのマスを作るの。貴女もやるのよ?」

「私もですか? 分かりましたけど……どういうのが良いんでしょう?」

「テーマとか、考えてませんでしたね……どうしましょうか」

「何でもいいんじゃないかしら。色々思いつくだけ作って、最後にちゃんと仕上げればいいのよ。どう?」

「そうですね。思いつく端から書きましょうか」

 

 そう言うと、メドゥーサを巻き込んだ三人で、マス作りが始まる。




 うちの作品で出てくるメドゥーサは基本ランサーですよっ!
 ボンッキュッボンッ! のほうじゃないですからね!!

 しかし、自作人生ゲームは途中で方向性のわからない謎のマスとかできそうですよね……


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こたつの魔力よ……(ノッブも自作すれば良いじゃないですか)

「こたつの魔力って、凄いよね」

「うむ。儂、このまま寝ていたいんじゃが」

「ちょっと。せっかく作ったのに、どうしてセンパイが入ってくるんですか。ノッブも早く出ていってください。というか、貴方なら作れるでしょうが」

「それはそれ、これはこれ。じゃよ。あるなら使うじゃろ、普通」

 

 いつの間にかノッブとBBの共有工房となっている工房に、いつの間にか追加されていたこたつに入ってくつろぐノッブとオオガミ。

 しかし、そのこたつを作ったのだろうBBのお叱りの声が響く。

 

「というか、儂が作ったらあれじゃ。こう、変形したり武器が出てきたり自立歩行出来たりするぞ」

「なにそのこたつ欲しいんだけど」

「手伝いますから作りましょうそれ。移動が楽になりそうな予感です」

「エルキドゥに見つかってマシュに回収されるオチが見えたんじゃけど」

 

 冗談で言ったら全力で乗っかってきた二人に呆れつつ、実際に作ったらどうなるかを考えた結果、即回収されると気付いた。

 これはきっと、作るなという啓示だろう。

 ただ、この二人に聞き入れられるかは別だ。

 

「さてさて。設計図からだねBB」

「ですね。ってことで、ここに紙とペンがありまして、更に言えば発案者がそこに寝転がっています」

「……儂、休憩室に戻ろうかの」

「逃がしませんよ?」

「逃がさないからね?」

「うぅむ、四面楚歌」

 

 脚を掴まれ、動けない状況。ノッブは諦め、設計図を描き始める。

 

「あれ、案外スラスラ描けてる?」

「内心、普通に作るつもりだったんじゃないですか? 全く、素直じゃないですね」

「BB。後で覚悟しておれよ?」

「あれ、私だけ?」

「マスターには後々実験台になってもらおうかと」

「おっと。一番ハイリスクな所に置かれたぞぅ?」

 

 場合によってはBBの数倍危ない気がするのだが、そもそもこたつの作成で実験台とは、一体何をやらせるつもりなのだろうか。

 

「まぁ、マスターの耐久力なら大丈夫じゃろ。ちと燃えるかもしれんが、ナーサリーでも置いておけば問題ないと思うし」

「燃えるの!? 全身大火傷なのでは!?」

「治療はBBがいるし、何の問題もないの。完璧じゃ」

「ヤブ医者なんですが!!」

「ひ、酷い!! ヤブ医者だなんて!!」

「うむ。実際、BBの回復は凄まじいから、一度受けてみれば良いと思うんじゃよね。ってことで、マスターを燃やしてみよう」

「発想が悪そのものっ!」

「だが中庸なんじゃよねこれが!」

「というか、なんで確認のために燃やされないといけないのか……」

「状態異常回復がマスターに効くのかと思って。火傷じゃし、大丈夫じゃろ」

「既に罰ゲームだよねっ!!」

「そんな事はどうでもういいですから、早くこたつ設計図ください。作れないじゃないですか」

「お主が考えても良いんじゃぞ……?」

「それは……気が向いたらですね」

 

 その後、結局素材を取りに行かないといけないことに気づき、バニヤンを連れて素材狩りに行くのだった。




 久し振りのBBちゃん……バニヤンは名前だけ……
 くそぅ……幼女組の中心がナーサリーとジャックなのに、片方がいないだけでこんなにも辛いとは……!!


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最近、戦ってないんですけど(そもそも最近出撃してる人が固定されてるじゃない)

「はぅ……私、最近出撃してない気がします」

「今ここにいるうちの何人が最近出たと思ってるのよ。そこに座りなさいな」

「あの……もぅ座ってるんですけど……」

「……姉様。自分の手に座るのも座る……なんですか?」

「……まぁ、リップは特殊な例よ」

 

 エウリュアレは椅子に座るようにと促したが、自分の手に既に座っていたリップ。

 メドゥーサは疑問に思うも、体型的にその方が楽なのだろう。と思い、椅子に座らせるのは諦める。

 ちなみに、現在彼女たちがいるのは食堂。オオガミとノッブは、BBと一緒に工房に引きこもり、ナーサリーとサンタジャンヌがメディアの部屋を襲撃しにいった。

 襲撃しにいった二人は、服を作って貰うのだ。と叫んでいた模様。

 

「それで、何人が最近出てるか。分かる?」

「えぇっと……種火周回組の、茶々さんと、アーラシュさんと、マーリンさん……後、絆上げの名目でメドゥーサさんとステンノさんですよね」

「えぇ。つまり、私も最近出てないわ」

「剣豪の時は大活躍だったと聞いたんですが……」

「それを言ったら貴女もハロウィンの時に活躍してたじゃない」

「そう言われると、確かに……あれっ。じゃあ、ここ最近本当に何も出来てない人っていますか……?」

「そう、ね……巌窟王とか、最近戦ってないわよね」

 

 遠くで優雅にコーヒーを飲んでいる巌窟王を見つつ、エウリュアレが言う。

 リップも釣られて見て、そう言えばそもそもオオガミと一緒にいるところをあまり見ない気がするリップ。

 実際は、食事以外の時にたまに遊びに来るオオガミにコーヒーを出していたり話し相手になっていたりするのだが、知っている人物は極少数である。

 

「なんか今更だけど、どこまでの範囲で考えて出てないなのかを決めないとダメよね」

「そうですね……剣豪以前の人ですかね?」

「まぁ、それくらい前ならかなり使ってないわよね……ヘラクレスもいるわね」

「最終兵器だのなんだの言ってましたけど、最近はエウリュアレさんとか、エルキドゥさんの方が活躍しますよね……バーサーカーで考えると、バラキーさんとか」

「そうよねぇ……」

 

 ヘラクレスは時々エルバサに見つかり襲撃されていたりするが、最近は部屋にいたり休憩室で子どもたちと遊んでいたりする。

 

「……あの、姉様。私、向こうに行っても良いでしょうか」

「どうしたのよ突然……」

「話についていけてないので、邪魔にならないように離れていた方がいいのではないかと思ったので……」

「そうかしら? 私は気にしないのだけれど」

「私も気にしませんが……たぶん、混ざれないのが嫌なんですよね。私は行っても良いと思いますよ?」

「あぁ……まぁ、話に入れないのは問題よね。良いわ、いってらっしゃい」

「ありがとうございます。しばらくしたら戻ってきますね」

「えぇ。ここからいなくなってたら休憩室にいるからね」

「分かりました」

 

 そう言うとメドゥーサは厨房の方まで歩いていく。

 今、厨房にいるのはエミヤだけのはずだが、なにか用事があるのだろうかと考えるエウリュアレ。

 考えても結論は出ないと言うことに気付き、すぐに話に戻る。

 

「さて。じゃあ、もう少し話していきましょうか」

「そうですね。もっと話しましょう」

 

 二人はそう言って、楽しそうに笑うのだった。




 途中から何を話したかったのかが分からなくなってるような……とりあえず、リップを出したかった。

 本当に最近、リップを使ってない……


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禁忌降臨庭園セイレム
新特異点だよ!! キャスター集合!!(また縛るのか! マスター!!)


「新特異点じゃな!」

「そろそろBBちゃんの出番ですかね!!」

(アタシ)の出番よ、きっと!!」

 

 楽しみにしているような三人。しかし、その姿を見ていたエウリュアレが悲しそうに首を振る。

 その理由はすぐに分かる。今回のボーナスを考えれば、既に気付いた人もいるだろう。

 その答え合わせのように、オオガミは、

 

「三人とも、連れていく予定はないよ?」

「……なんじゃと?」

「そんな……」

「そんなバカなことって……ある!?」

 

 三人の反応に、オオガミは頷いて返す。

 愕然とする三人。

 

「なぜじゃ……儂らはまた出れぬのか!!」

「どうして、どうしてよ!! なんで(アタシ)はまた留守番なの!?」

「私、ここ最近全くと言って良いほど活躍してないんですけど!!」

「ちょっと待って。BBは確かに連れていってないけど、ノッブとエリちゃんは普通に連れていったよね? 無かったことにしないでよ?」

「……はて。何のことじゃろ」

(アタシ)の記憶にそんなのは無いわね」

「都合の良いことばかり言って……まぁ、どのみち行くのはキャスターだけなんだけども」

 

 そこで三人は気付く。

 今回の絆ポイント上昇はキャスターだけだということに。

 

「キャスター……キャスターじゃと……? このカルデアで育っとるキャスターは、玉藻、マーリン、ナーサリー、アンデルセン……そして……!!」

「そう、余だよ!!」

 

 休憩室の扉を勢いよく開けて入ってくるのは、皆さんご存じだろう術ネロ。

 今日も皇帝は元気一杯のようだった。

 

「やはり貴様かネロ!!」

「ず、ズルいわよ!! どうしてネロだけ!!」

「ハハハ……本音はエリちゃんも入れば完璧だったんだけど、悲しいことに2015年復刻はなかったからね。是非もなし」

「儂のセリフ盗られたんじゃけど……」

 

 セリフが盗られたことに驚くノッブ。

 しかし、復刻が来ていたらエリザベートも向こう側だったと考えると、少しほっとする。

 

「まぁ、儂らはキャスターじゃないから是非もないんじゃが、キャスター縛りはちとキツイと思うんじゃが。ライダーとかどうにもならんじゃろ」

「気付いたねノッブ……そう。ライダー相手にはかなりキツイんだよ!!」

「自然とそうなるよね!! 儂知ってた!! 儂らのマスターはアホじゃったよ!!」

 

 と、そこでノッブは気付く。若干ネロが震えていることに。

 

「……のぅネロ。お主、さては寒いじゃろ」

「流石ノッブ……よくぞ気付いた! 実は痩せ我慢していたが、かなり寒い!! 部屋の中はまだしも、廊下は寒すぎるからな!!」

「うむ、このクソ寒い中ビキニでお疲れ様じゃ。まぁ、なんじゃ。頑張るんじゃよ?」

「う、うむ。なぜ突然優しくなったかは知らぬが、余に任せよ。マスターは守りきって見せるぞ!」

 

 胸を張ってそう宣言するネロ。

 ノッブはその様子に頷き、後ろのBBとエリザベートを引き連れて離れていく。

 

「ちょ、ノッブ!! 私は納得していないんですが!?」

「そうよそうよ!! (アタシ)なんかほとんど喋ってないんだけど!?」

「まぁまぁ。流石のマスターも、本気でキャスター縛りをやりきるとは限らんじゃろ。どうせどこかで折れるじゃろうし、その時こそ儂らの出番じゃよ」

「な、なるほど……あえて一旦引いて、私たちの重要性を知らしめると言うことですね?」

「ふむふむ……分かったわ。ここは一旦撤退よ!」

 

 なにやら三人は納得したようだった。

 オオガミはそれを聞き取れていたわけではないが、ノッブがなにかを考えているのだろうと思い、寒がってるネロに、休憩室の新設備、ブランケットを渡し、対面に座らせるのだった。




 このマスターアホだ!! 自分の事ながら、アホだこいつは!!

 ってことでキャスター縛りです。本当はシェイクスピアも頑張れば入れられたんですが、種火を集められなかったよ。


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なんというか、見覚えがあるような……(ゲームか何かでは?)

「うぅむ、グール……グールかぁ……」

「どうしたんです? マスター。そんな考え込んじゃって」

 

 何かを考えているオオガミに声をかける玉藻。

 マーリンやネロもいるが、現在は周囲を警戒している。

 

「いや……ゾンビじゃなくてグールってなってることを考えると、そこには意味があるような……」

「もしかして、黒幕とか考えてます?」

「まぁ、気になる程度だけどね。いやぁ……なんとなく、この前ノッブ達と遊んだTRPGに似てるんだよね……」

「はぁ。TRPGでございますか……というか、なぜ私を呼んでくれないんですか。いつもノッブやエウリュアレさんとばかり遊んでいますし」

「まぁ、いつも暇な人しか誘ってないからね~。忙しそうな人の邪魔はしちゃ悪いしね」

「んもぅ。別に私はそんなに忙しくないですから、いつでも誘ってくださいな。たまにくらい、皆さんと遊んでも良いでしょうし」

「それは良いことを聞いたわね、マスター!」

 

 どこからともなくオオガミの正面に出現したナーサリー。

 二人は突然のことに驚くが、オオガミはすぐに我に返ると、

 

「えっと、どうして良いことを聞いたになるの?」

「だって、遊ぶ人が増えるんでしょう!? 喜ぶべきじゃない! 遊んでくれる人は、多ければ多いほど良いわ! でも、多くするだけじゃなくて、相手もしっかり選ばないとよね」

「まぁね。でも、玉藻なら大丈夫なんじゃないかな?」

「そうね。玉藻はなんだかんだ言って優しいもの。きっと遊んでくれるわ!」

 

 気付くと、期待の眼差しを向けられている玉藻。

 彼女はふと、この期待に応えられるかを考え、すぐに結論を出す。

 

「えぇ、構いませんとも。少々自信の無い遊びもございますけど、昔遊び何て言うのもよろしいんじゃございません?」

「わぁ! 日本の昔遊びね!? 楽しみだわ楽しみだわ! 帰ったらサンタさんにも教えてあげないと!!」

「昔遊びかぁ~……おはじきとか、盛り上がりそうだよねぇ~……」

「おはじきですか。まぁ、確かにあのメンツなら盛り上がりそうな気がしますね。最近のおはじきはガラス玉やプラスチックらしいですし、帰ったら買うか作るかですねぇ」

「きっとノッブが何とかしてくれるよねっ!」

「マスターのそのとりあえずノッブに任せておけば良いっていうの、凄いと思うわ!!」

「凄いと言いますか、雑と言いますか……ただ、彼女が拒否するのも想像つかないというのがまた……」

「『それ面白そうじゃな! 儂、作るぞ!』って言いそうだもの。楽しそうだわ!」

「うぅむ、本当に良いそうですねぇ……」

 

 難しい顔で、しかし楽しそうな雰囲気を出す玉藻。

 オオガミはそれを見て微笑むと、

 

「まぁ、どのみち無事帰ったらの話だよ。今はグールを倒しに行かないとね」

「あら、もう良いんです?」

「十分休んだしね。じゃあ行こうか」

「遊ぶわよぉ!」

 

 三人はそういって、警戒しているようでサボっているマーリンと、鼻息荒く張り切っているネロを迎えに行くのだった。




 うぅむ、一部一般人が見覚えのある顔をしているのが気になるんですよね……うぅむ、なんという不穏……

 そして、ここまでメンバーどころか礼装も変更してないという。やっぱりマーリン・玉藻はチートだな……(止める気はない


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サクッと終わらせて、サクッと帰るのが目標なんだけどなぁ(まぁ、皆で一緒に帰れれば良いよね)

「エルダーグールだっけ……あれ、どっかで見たことあるんだよね……違う名前で」

「またですか? マスター」

 

 庭で空を見上げながらふと呟いた言葉に、玉藻が怪訝な目で見てくる。

 今の時間帯は皆眠いのだろうと思うのだが、狐が夜行性だからだろうか。たいして辛そうでもない玉藻。

 ナーサリーは既に就寝済みで、マーリンはどこにいるのか分からない。ネロは屋根の上で見張ってるのだろう。

 

「まぁ、大したことじゃないけどね。ただ、なんとなくこの違和感が拭えなくて。まぁ、きっとグールなんだろうけど」

「そうですねぇ。私も気になりますけど、それはそれ。今は目前のことに集中しませんと。マスターがカルデアに帰れなくなったら困るのは、マスターだけじゃないんですよ?」

「分かってるよ。ナーサリーと昔遊びをするって言ったしね。意地でも帰るよ」

「えぇ、そうしてくださいね。私も、まだ遊んでないんですから」

「当然。昔遊びは玉藻から提案したんだからね。逃がさないよ?」

「まぁ。それは怖いですねぇ。では、私も生きて帰らないといけないですね」

 

 ふふふ。と笑う玉藻。オオガミも釣られて笑うと、

 

「やぁ。面白そうな話をしているね?」

「うわっ、マーリン」

「貴方こそ何をしているんですか……大人しくアヴァロンに引きこもってても良いんですよ?」

「中々手厳しいなぁ。これでも貢献してると思うんだけどね?」

「じゃあ、その胡散臭い雰囲気をどうにかしてくださいませ」

「おぉっと。それはどうしようもないと思うんだけどね?」

「なんで突然不穏な雰囲気になってるのさ。はい、終了終了」

 

 そのうち噛みつきかかりそうな玉藻と、爽やか笑顔で受け流すマーリンの間に割って入るオオガミ。

 

「全く。どうしてそうなるのさ」

「なんとなく、こう、みこーん! と警戒レベルが上がったので。なんというか、ポジション的な意味で」

「もう既に何度か同じポジションに立ってる気がするけどね? 高難易度の時は大体一緒じゃないか」

「そう、それです。どうしてこんなのと一緒なんですか。私一人でも問題ないでしょう?」

「いやいや。マーリンは強化とスター生産。玉藻は回復と宝具回転率だから。分野がちょっと違うのよ」

「奇しくも相性は良いってことさ。諦めて受け入れた方がいいと思うんだけどね?」

「うぐぐ……確かにバスターアタッカーに対応できますし、良いことの方が多いですけど……それはそれですよ。この人、ずっと王の話ばかりじゃないですか!! どれだけ語りたいんですか!!」

「宝具がこれなのだから仕方ないだろう!?」

「まぁ、高難易度やる度に聞いてると、飽きてくるよね。もう少しアドリブがあってもいいと思う」

「マスターもかい!? アドリブと言ったって、君だって同じようなものだろう。高難易度に関わらず、今回だってずっとしなくてもいいであろう詠唱をしているだろう?」

「あれは気分の問題なんですぅ! ルーティーン的なものですぅ!!」

「うぅん、どっちもどっち……よし。もう寝ようよ二人とも。夜遅くまで起きてるものじゃないよ」

 

 眠くなって対応が面倒になったのか、寝ようと提案するオオガミ。

 言い合っていた二人はそれで静かになると、互いに目を合わせ、

 

「仕方ないですね。今日はこれくらいにして、寝ましょうマスター」

「僕はネロと代わってくるよ。じゃあ、おやすみ。マスター」

 

 マーリンはそのまま花に紛れて消え、玉藻はオオガミの手を引いて寝室へと向かう。

 オオガミはふと思った。

 

「(結局、マーリンは何をしに来たんだろう?)」

 

 真実は、誰も知らない。




 ふと、セイレムの最中にこんな会話をしているのかと考えると、二人が死ぬんじゃないかと不安になった……
 いや、この二人はそうそう死なないはず……(フラグ?


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カルデア、今日も平和じゃのぅ(マスター達は頑張ってるみたいだけどね?)

「あ~……どうするかのぅ……」

「ノッブさんノッブさん。今日は何をして遊ぶんですか?」

「なんか、なつかれてるわねぇ……ノッブ」

「叔母上、面倒見良いよね」

 

 サンタジャンヌを背中に張り付け、何をしようか考えているノッブ。

 それを離れて見ているのは、エウリュアレと茶々。

 

「そうじゃなぁ……うむ。やはりおっきーの部屋を襲撃するのが一番か」

「ノッブさん、そう言うところありますよね。ダメだと思います」

「なんでじゃ。儂、別に悪くないじゃろ」

「そもそも人の部屋に襲撃を仕掛けるのがどうかと思うんですけど。こう、常識的な意味で」

「常識に囚われてたまるか! 儂は止まらぬ!!」

「だからダメですってば!!」

 

 問答無用で突き進もうとするノッブを必死で食い止めるサンタジャンヌ。

 エウリュアレと茶々はそれを見ながら、

 

「すごいわ……よくノッブを止めようと思うわね」

「あれくらいで伯母上が止まるとは思えないんだけど……頑張れ~! もっとやれ~!」

「あれ、茶々がさりげなく儂の敵になっとるんじゃけど!?」

「元から伯母上の味方じゃなかったと思うんだけど。茶々、マスターの味方だし」

「うむ、姪に裏切られたけど、それくらいでめげないのが儂じゃ。戦国時代的に、部屋に襲撃しに行くのは奇襲としては完璧じゃな!! 本能寺っぽい!!」

「え、じゃあ伯母上の就寝中に部屋を焼けばいいの? 茶々の得意分野じゃん!!」

「正直もう焼死はいらぬわ!! 普通に斬った斬られた撃った撃たれたが良いんじゃけど!!」

「えぇ~? 茶々、熱いのも痛いのも嫌なんだけど~」

「そう言う事じゃないじゃろ……いや、儂も痛いのとかはあんま好きじゃないんじゃけど。ってか、なんで儂、燃やされそうになっとるんじゃよ……」

 

 ふと我に返り、なんでこんな話になってるのかと思いなおすノッブ。

 急に抵抗がなくなり尻餅をつくサンタジャンヌは、考え込むノッブの前に行くと、

 

「とにかく、刑部姫さんの所に襲撃しに行くのはダメです。却下です。他の事を探しましょう」

「そんなこと言われても……うぅむ、エウリュアレは何か思いつかぬか?」

「突然私に振らないでよ……思いつくわけないでしょ」

「そうじゃよねぇ……」

「……まぁ、遊ばないでここでお茶しながら話してるのはそれはそれでアリなんじゃない?」

「うぅむ……サンタ的にはアリなのかのぅ……」

「う~ん……大丈夫だと思います!!」

「適当じゃのぅ……まぁ、良いんだけども。それで、今日の菓子はなんじゃ?」

「パンプティング。どうかしら?」

「ふむ……うむ。儂は参加するぞ」

「私も参加しますよ! 楽しみです!!」

 

 むふー。と鼻を鳴らし、エウリュアレの隣の席を取るサンタジャンヌと、茶々の隣に座るノッブ。

 

「じゃあ、何から話そうかしら――――」




 今日もカルデアは平和です。そして、久しぶりの茶々の登場である。
 しかし、そろそろ遊びのネタも尽きてくるという……早く帰って来るんだマスター……!!


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日常
儂、保育士になった憶え無いんじゃけど(セイレム攻略中、ずっと面倒見てたしねぇ?)


「帰って来て早速なんだけどノッブ。おはじきしようぜ! アイテムを作るところからだけどね!」

「何言っとるんじゃこのマスター。ぶっ飛ばしたろか」

「フォゥ!! 殺伐としてるんだけどなんでこんな不機嫌なんだい!?」

 

 半目でお怒りなノッブ。その後ろにはなぜかサンタジャンヌとナーサリーがくっついていた。

 この状況に首をかしげるオオガミに、エウリュアレが疑問に答える。

 

「ノッブが想像以上に面倒見が良くて、子供たちになつかれたせいで機械いじりをあまりしてないから不機嫌みたいよ?」

「何その職人の末期症状的なの。まぁ、分からなくはないけども……」

「つか、なんでおはじきなんじゃ……」

「いや、セイレム行ってる時に、玉藻とナーサリーの二人と話しててやろうって話になってね。ノッブならアイテム一式作るのを手伝ってくれるんじゃないかと思って」

「儂の技術力の過信はどうかと思うんじゃけど……まぁ、それでも何とかしちゃうのが儂なんじゃよね。で、おはじきじゃったか。柄とかは、まぁ、凝ってみるか」

 

 不機嫌が嘘だったかのようにやる気を出すノッブ。おそらく、ようやくモノ作りが出来るからなのだろう。きっと。

 

「おはじき……おはじきですか……」

「指でこう、パチン! って弾くの! 面白そうだわ!」

「実際はそんな単純じゃないんじゃけどね。まぁ、それは作り終わってからとするか。見てるだけでも面白いじゃろうし。ただ、ガラスかぁ……まぁ、何とかするかのぅ」

「何気にノッブって器用よね」

「えぇ。ただ、料理は壊滅的っぽそうですよね」

「酷い言い草なんじゃけど。まぁ、儂はあんま作らんけども」

「まぁ、ノッブの調理スキルはあんまり発揮されるところはないと思うけどね」

「まぁ、基本はエミヤの仕事じゃよね。とりあえず、儂は今から作って来るかのぅ。お主らはどうする?」

 

 料理の話を切り上げ、作業に向かおうとするノッブは、後ろの二人に声をかける。

 

「私? 私はもちろんノッブについて行くわよ? サンタさんはどうするの?」

「私は……はい。私もついて行きます! 気になりますしね!!」

「そうか。ならついて来ても良いぞ。今回も工房は騒がしくなりそうじゃ」

 

 ノッブはそう言うと、子どもたちと部屋を出て行く。

 

「なんか、本当になつかれてるね、ノッブ」

「えぇ。本人は若干疲れて来てるみたいだけどね。貴方がいない間ずっとサンタジャンヌが張り付いてたしね」

「そんなにかぁ……悪いことしたかな?」

「まぁ、本人もちょっと楽しそうだったし良いんじゃないの?」

「うぅん……まぁ、後でノッブと遊んでストレス発散を手伝おうかな」

「それが一番よね」

 

 オオガミとエウリュアレはそう言うと、去って行ったノッブの事を思うのだった。




 ノッブが保育士になっている不思議。私のこのノッブが面倒見良いという偏見は何処から来たのだろう……?(書いてるのに分かってないノッブの状況


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ねぇ子イヌ? ずっと遊んでばっかりはダメよ?(一応、仕事してるんだけどね?)

「ねぇ、子イヌ? そろそろ遊んでばかりもどうかと思うわよ?」

 

 掛けられた言葉に、オオガミが凍り付く。

 そして、我に返ると同時、発言者であるエリザベートに詰め寄る。

 

「……エリちゃん? なんか悪いものでも食べた?」

「失礼ね。これでも(アタシ)は領主経験あるし、まっとうなことだってちょっと位するわよ。というか、マネージャーがバカとか、困るじゃない」

「なんという正論……正論……正論……? うん。まぁ、納得したし良いか。で、なんで突然?」

「なんでって……最近(アタシ)から見ると、遊んでるようにしか見えないんだもの。ちょっとくらいは勉強しなさいよ」

「おっと。心に刺さるけど、残念だが勉強はしてるんだ。ここに来たときよりも頭が良くなってる自信はある」

「レイシフトも出来ないんだし、これからはカルデア内にいるのが多くなるんだから、しっかりしてもらわないとね」

「うぅむ、エリちゃんにそれを言われるのはなんとなく微妙……」

「なによぅ。悪い?」

「いや全く」

 

 首を振って、エリちゃんは悪くないと示す。

 と、考えて、オオガミはふと思い出したことを聞く。

 

「っと、そうだ。エリちゃん。今から休憩室でおはじきするけど、来る?」

「行くわ」

 

 即答だった。

 若干驚くが、意識を逸らせたので良いか。と思い直すオオガミ。

 

「それで、おはじきってどんな遊びなの? 知識はあっても、遊び方がまちまちじゃない」

「それだよね。まぁ、ノッブが決めてるみたいだし、行ってみてのお楽しみ?」

「そうなの? ノッブが考えてるのね……なんとなく不安なんだけど、どうしてかしら……」

「まぁ、分からなくもないね。だけど、小さい子組もいるからそこまで理不尽なルールではないと思うよ?」

「小さい子組……? あぁ、ナーサリーとかサンタジャンヌとかね? なるほどなるほど……良いわ! 楽しそうじゃない!」

「小さい子いじめは禁止だよ?」

「ノッブなら公平にしてくれると思うわ。きっとね」

「一体どんな縛りを入れて公平にするのか……というか、縛らなくても公平の予感……むしろ不利なんじゃ……?」

 

 子供ながらの直感に対して勝てるかどうかというところだ。力の入れ加減なんてものは、理屈で分かっていても実際にはかなり難しいものなのだ。

 

「っと、そろそろ休憩室だね。いやぁ、おはじきの柄から気になるねぇ」

「え、もしかしてノッブが一から作ってたりする?」

「うん。まぁ、本人もやる気だったし、良いんじゃないかなって」

「ふぅん? なんか、楽しみね。どんな柄なのかしら」

 

 楽しそうに笑うエリザベート。オオガミはその顔に釣られて笑うのだった。




 オオガミ君の仕事ってなんだっけ……?(錯乱

 うん。遊ぶのも仕事なんじゃないかな……?


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そういえば、年末に何かするって言ったんだった(儂もそれに振り回されるのを忘れたりしとらんよね?)

「それで、マスター達は何をしてるの?」

 

 ノッブの工房の隅で作業しているオオガミの手元を覗き込むナーサリーとサンタジャンヌ。

 ノッブが部屋の反対で危険な仕事をしているので、二人はオオガミの近くにいるのだった。

 

「ん~……まぁ、年末にやろうと思ってる遊びの用意かな。やるからには全力で仕込んでおかないとね」

「私たちにも出来る事はある?」

「そうだねぇ……あぁ、あるある。手紙書いてくれる?」

「手紙?」

「そうそう。この人に、感謝の言葉を書いた後に――――」

 

 オオガミはナーサリー達にやることを指示して、それに対してナーサリーは楽しそうに笑いながら、

 

「――――面白そうね!!」

「でしょう?」

「えぇぇ……最後の一文、それでいいんですか……?」

「当然。今回の遊びはそう言う趣旨だからね。まぁ、本人たちはシャレにならないと思うけど」

「あれね。残虐性十分ってやつね!!」

「うん。どこから突っ込めばいいのか分からないね。問題はあんまり間違ってない所だ」

「そこは間違っていてほしかったです!!」

 

 内容を聞いていて、悲惨な現実が襲い掛かるであろう人物に内心で無事を祈りながらも、必死で間違いであってほしいと思ったサンタジャンヌ。

 

「それで、これを私が書けばいいのね?」

「うんうん。ビデオと手紙、どっちにしようか考えたけど、あのメンバーならたぶん手紙の方が良いんじゃないなぁって」

「ふぅん? 全員は分からないけど、楽しそうね! 張り切って書くわよ!!」

「あの、私もこれを……?」

「いや、そっちはナーサリーに任せて、ジャンヌはこっち」

「……なんですかそれ」

 

 オオガミが取り出したのは、大きなハリセン。

 何となく、普通のよりも頑丈そうなことに気付き、一体何に使うのかと考えるサンタジャンヌ。

 

「これはねぇ……ちょっと人には言えない製法で作られた特製ハリセンだよ!」

「阿保言うでないわ。なんの変哲もない普通に頑丈な紙じゃろうが」

「まぁ、そうなんだけど。そう言う夢の無い事を言うのはどうかと思うよ?」

「儂もそろそろ疲れて来たんじゃよ……儂もそっちやって良いか?」

「いや、終わったならいいんだけど……ってか、年末に間に合えばいいか」

「うむ。間に合うし間に合わせるから儂はそっち行くぞ」

「ハリセン……使い捨てなんですかね……?」

「使い捨てじゃったらこんなもんですまぬわ。魔術強化で誤魔化して、使うたびに修復しつつで有効活用するんじゃよ」

 

 オオガミが取り出してきた紙を折りつつ、ノッブ達はそんなことを話す。

 

「あぁ、それと、当たると曲がる柔らかい棒も用意してて、そっちが本体。ハリセンは壊れた時の予備だよ」

「なるほど……じゃあ、ちゃんとした道具はあるんですね……」

「うむ。まぁ、流石に壊れはしないと思っとるんじゃが……道具の扱いが雑な奴の手に渡るとぶっ壊れそうな感じがするからのぅ……」

「一周回った信頼ですね……」

 

 絶対に欲しくはないですけど。と付け足すサンタジャンヌ。

 そうじゃよね~。と呟くも、お前が筆頭だよ。と突っ込まれそうなノッブは、平然とハリセンを作り続け、オオガミは何とも言えない表情をしているのだった。




 一体誰が犠牲になるのか。それは神のみぞ知る……年末の奴、まだ書いてないなぁ……(震え


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引け!! 引くんだアビーを!!(マスター。本当に引くの?)

「マスター!! 落ち着くんじゃ!! 流石にそれはいかん!! マシュにバレたら不味いじゃろ!!」

「そ、そうです!! エウリュアレさんも見てないで手伝ってください!!」

「私は別に、後で後悔するマスターも見たいからそのままにしておくわよ? 前は止めてたけど、冷静に考えたらやる必要ないし」

 

 ノッブとサンタジャンヌに引き止められつつも、しかし全力で抵抗して召喚室へと向かおうとするオオガミ。

 それをエウリュアレは遠くからその様子を見てニヤニヤと笑っていた。

 

「それで、原因はミドラーシュのキャスター? それとも、アビゲイルかしら……?」

「当然アビゲイル!! 石の備蓄はまだあるし、少しくらいなら問題なし!!」

「阿呆!! もう30個以上使ったじゃろうが!! しかも、呼符も10枚使っとるし!!」

「それを言われたら心に刺さるんだけど!! お止めを!!」

「ならまずマスターが止まれ!!」

「あの、今更気付いたんですけど、なんでサーヴァント二人がかりで止められないんですか? トナカイさん、やっぱり人間じゃないですよね?」

 

 被害を度外視し、全力で回そうとするオオガミ。

 メルトリリス用にとってある備蓄石もいくつか放り投げ、ダウンロード記念の呼符10枚を破り捨てたにも関わらず、未だ止まろうとしないオオガミを抑えていたサンタジャンヌは、およそ気付いてはいけない真実に近付いているのかもしれない。

 

「アビゲイルねぇ……彼女、正気を削るって噂だけど、どうだったの?」

「まぁ、SANチェックものだったよね。それはそれとして来て欲しいんだけどね!!」

「本気ねぇ……でも、メルトリリス用の石じゃなかったの?」

「うぐっ……それはそうなんだけども……!!」

「私は止める気はないけど、良いの? 今を逃したら、次何時来るか分からないんでしょう? まぁ、年末に来るとも限らないけど」

「うぐぐ……い、いや。メルトは来てくれるはずだから……!!」

「希望は持つべきよ。でも、盲信はどうかと思うわ。私に溺れるのは許すけどね」

「凄いですよノッブさん。エウリュアレさん、盲信はダメって言った直後に自分になら盲信してもいいとか言ってますよ」

「大体いつもあんな感じじゃよ。放っておけ」

「そこ。聞こえてるわよ」

 

 変なことをコソコソと話す二人に注意しつつ、エウリュアレはオオガミに目を向ける。

 

「それで、マスター? 今から引く? それとも、少し待って、様子を見てから引く?」

 

 微笑み、問い掛ける女神。

 オオガミは少し悩んだ後、

 

「……様子見だね」

「えぇ、えぇ。そうすると思ったわ」

 

 エウリュアレは一人頷き、オオガミの判断に納得する。

 ノッブとサンタジャンヌの抑え込みですら止まらなかったオオガミを、口先だけで止めるエウリュアレ。

 それを見て二人は、

 

「儂、なんとなく、マスターの事はエウリュアレに投げれば良いんじゃないかと思ったんじゃが」

「奇遇ですね。私も、エウリュアレさんはトナカイさんのお世話係が一番なんじゃないかと思いました」

 

 とりあえず、オオガミに蹴りを入れておこう。

 そういう結論に至った。




 エウリュアレの存在が際立つ……!!
 まぁ、セイレムの番外編で煮え湯を飲まされたんで、あのときは吹き飛ばそうかと思いましたが。哪吒さんが全部片付けてくれましたよ。流石哪吒さん。

 それにしても、流石星5……アビー……出てくれない……コフッ


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召喚の触媒なんて、実際初めてだよね(そもそもやったことないじゃないの……)

「降臨させちゃるもんね!!」

「……儂、もう知らんからな?」

「なんか、楽しそうよね。ここまで来ると」

 

 召喚室でそんな話をするいつもの三人。

 今回は珍しく触媒を用意するようだった。なお、効果があるかどうかは置いておくものとする。

 なお、ノッブは知らぬ存ぜぬで逃げようとしているが、悲しい事に運ぶのを手伝った時点で同罪である。

 

「……で、何を中心に集めたんじゃ?」

「クトゥルフ神話関連の装備を一式。まぁ、マンガ関連なんだけどね」

「うむ、儂もコレ読んだことあるのぅ。マスターの部屋に遊びに行った時とか、たまに読んどったし」

「登場人物はクトゥルフ神話系統なのに、やってることはクトゥルフがあんまり関係ないけどね」

「せ、設定は若干クトゥルフしてるから……」

「まぁ、予防線でCOCルールブックも置いておるし、問題ないじゃろ」

「……効くとは思わないけどね」

「エウリュアレが裏切ってきた!!」

「そもそも味方になった覚えもないのだけど」

 

 やれやれ。といいたそうに首を振るエウリュアレ。

 オオガミは裏切られた気分なのだが、エウリュアレ本人はまるで気にしていない様子。

 

「うむ。それで、本当に引くんか? ここで止めても良いと思うんじゃよ?」

「いや……ここでやめたらどうして用意したんだよ状態なんだけど……」

「良いじゃろそれでも」

「そんなこと言われても……意地でもやるよ? 回しちゃうよ? 今日を逃したら死ぬよ?」

「なんでそこまでガチなんじゃよ……」

「正気度を持ってかれたからじゃないかな!!」

「ダメじゃコイツ!! エウリュアレに治療してもらえ!!」

「えっ、魅了しろって事? 残念だけどノッブ。マスターに私の魅了は効かないわよ……?」

「なんじゃそれ……魅了耐性高いのかマスター……」

「いいえ? 違うわよ?」

「えぇ……なんでなんじゃよ……あっ」

「まぁ、ノッブなら気付くわよね……」

「そう、すでに魅了済みだからだよ!!」

「……もう、このマスター嫌なんじゃけど」

 

 考えることを止め、遠い目をするノッブ。

 なお、オオガミはあまりのドヤ顔故に殴り飛ばされたものとする。

 

「全く……ノッブは最初から分かってたくせに」

「んなわけあるかい。儂はもう疲れたわ……なんか、ここ最近マスターの暴走を止めっぱなしのような気もするしな。そろそろ儂が事件を起こす番じゃよ」

「なんて恐ろしいこと考えてるんだこの武将……怖いんだけど……」

「私は知らないわよ。マスターが何とかしなさい」

「なんて適当な……!! というか、エウリュアレ飽き始めてない?」

「えぇ。だって、ノッブを放っておいて、さっさと召喚しちゃえば良いのよ。なのに、ノッブと話して誤魔化してるのがいるんですもの。面白くないわ」

「うぐ……図星だからなにも言えない……」

 

 観念したようにオオガミは最後の呼符を取り出し、触媒を置いた陣の中心へと向かう。

 

「まぁ、頑張りなさい。応援はしてるわよ」

「儂はマスターなら面白いもんを見してくれると思っとるからな。期待しとるぞ」

 

 二人の声援を受け、オオガミ唾を飲み込むと、意を決したように呼符を地面に置くのだった。




 引いた結果は……明日の続く!!


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石はただ溶け行くのみ……(溶かすでない溶かすでない!!)

「マスター……やっぱり儂、今回は諦めた方が良いと思うんじゃよ」

「ノッブ。それ以上言わないで。吐血して死にますよノッブ」

「マスターの口調が壊れてるんじゃけど。本気で落ち込んでるんじゃが……」

 

 だが、昔は部屋に引きこもっていたのが今は平然と歩いているあたり、立ち直り力が上がってるらしい。

 しかし、落ち込んでいることに変わりはない。

 

「うぐぅ……中々辛い……」

「うむ。そう思っとるなら、いい加減その握りしめて隠してる石を儂に渡していいんじゃよ。倉庫に叩き込んできてやる」

「……流石にそれは無しかと思う」

「絶対使うじゃろ」

「……渡したりはせんぞノッブ」

「おぅマスター。なにふざけたこと言っとるんじゃ。殴るぞ」

「最近ノッブが妙に辛辣な件について!!」

「そりゃ、マスターが強情じゃし、こんなマスター、ジャンタに見せられんじゃろ」

「……すいませんでした」

「うむ。素直でよろしい」

 

 流石にサンタジャンヌを引き合いに出されると弱いオオガミだった。

 観念してノッブに石を渡すと、オオガミは遠い目をして、

 

「メルト復刻、いつだろうなぁ……」

「……いつも通りのマスターに戻ったか……?」

「うん。これはもう、諦めて寝るしかないね」

「うむ。ふて寝じゃなこれは。まぁ安心するがいい。ちゃんと引きこもれないように部屋に細工はしておいたからな。安心せい」

「なんて迷惑極まりない細工を……!!」

 

 最近夜中に侵入してくる人が多いような気がしたのだが、まさかノッブのその細工がかかわってるんじゃないかと気づくオオガミ。

 

「ねぇノッブ。その細工知ってるの、誰?」

「ん~……そうじゃのぅ。まず作成者である儂とBB。エウリュアレ……くらいかのぅ……」

「……それにしては、サーヴァントの気配の数が合わないんだけど……夜中とかすごいんだけど……」

「……うむ。じゃあ今夜はマスターの部屋で儂らが見張っておればいいんじゃな。安心せい。全力で遊びたお……見張っておるからな!!」

「チクショウ安眠妨害宣言だこれ!!」

 

 明らかに寝させはしないという宣言を受け、この武将はどうやって封印すればいいのかを割と真面目に考えるが、どうあがいても復活してきそうなのでどうしようもないということに気づき、諦めて耳栓を探しに行こうかと考える。

 

「うぅむ、しかし、如何に遊ぶか……」

「隠しもしねぇなこの武将。人間に取っての睡眠がどれほど重要かわかってる人の言葉じゃないと思うんです」

「まぁ、ほどほどにするからな。ちゃんと寝るんじゃよ?」

「寝させるつもりのない人の言葉とは思えないぜチクショウ」

 

 心配しているようで、さりげなくゲーム機を取り出すノッブ。実質的遊ぶ宣言。

 気になるのも心の毒だと思うのだが、ノッブはわざとやっているとしか思えないので、いつか痛い目に合えばいいと思うオオガミなのだった。




 えっ、昨日の結果……ですか……? トータぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!

 はい。今日はあきらめて寝ようと思います(吐血


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周回も楽じゃないんですよ……(うん。いつも爆散する人とかね……)

「宝物庫を荒らして、今のうちにメルト用のQPを溜めるという事だよ!!」

「ドヤ顔で宣言することじゃないと思うんですけど」

 

 誰でも見れば分かるほどのドヤ顔でそんな宣言をするオオガミに、珍しく突っ込むリップ。

 

「むぅ。リップが珍しく辛辣なんだけど……どういうことなの……」

「だって、メルトが来たら、私の出番が減っちゃうじゃないですか」

「いや、それは無いけど……だって、リップは全体攻撃回復盾だから、メルトの単体単独確殺連撃とは別じゃん?」

「それ、褒めてるんですか?」

「当然。結局集団戦の時はリップに頼ることになるだろうし。周回の時はリップだし」

「なんか、誤魔化されてる気がするんですけど……」

「誤魔化してないし……事実だし……」

 

 疑われているオオガミ。日頃の行いか、今日のリップの気分の問題なのか。

 

「そもそも、なんでリップは不機嫌なのさ」

「最近周回ばっかりしてるじゃないですか。私にも休みを下さいっ!」

「流石にそれは考えてなかった……確かに最近周回は多いけども……ただ、それを一番言いたいのはアーラシュ先輩なのでは……」

「……それはマスターが悪いと思うんですけど……」

 

 必要な犠牲なのだ。なんて割り切っても、いつも療養中なアーラシュに頭が上がらないオオガミ。リップも、いつも目の前で爆散していくアーラシュを見て、いつも爆散するアーラシュに目とするのだった。

 ちなみに、同じくいつも見ている茶々は、『たまによくあるよね!!』と言って、特に気にしては無さそうだった。

 

「あの、本当にメルトの為だけなんですか? 私に返ってきたりしません……?」

「場合によってはするけど……嫌なの?」

「いえ、そう言うわけでは。むしろ返ってきてほしいんですけど。スキルレベル上げてもっと活躍したいです」

「ふむふむ……じゃあ、頑張らなきゃだね」

 

 うんうん。とうなずくオオガミ。そんなオオガミに、リップは満足そうだった。

 しかし、そこにやってくる影が一つ。

 

「まままままま、マスター!!! ピックアップがまた荒れるんじゃけどぉ!!」

「突然現れた上にそんな焦ってどうしたんですか? ノッブさん」

「ノッブが慌てるとかっていうか待って待って何その形相まさか何か企んでる?」

「うむ!! 石浪費阻止期間じゃ。石を消費させんように儂は今から石を奪ってくる」

「えっ、どういうことなの……何がピックアップされるっていうの……」

「聞いたらマスターは絶対引きたいっていうからな。言わんぞ?」

「またまたぁ……で? 本当に誰がピックアップされるの?」

「エレシュキガルじゃ」

 

 その言葉を聞いた瞬間、オオガミは即決した。

 

「すまんメルト。君の為の備蓄は、今この時を持って消滅したよ」

「マスター!?」

「ほらぁ!! 絶対こうなるって思ったんじゃよぉ!!!」

 

 突っ走ろうとするオオガミを、ノッブは必死で止めるのだった。




 アーラシュさんには本当に頭が下がります……いつもありがとう……この作品には名前以外ほとんど出てこないけど……

 そして、エレシュキガルピックアップ!! こりゃ溶かさざるを得ない!! すまんメルト!! 備蓄は今この時を持って、吹き飛ばすと決めた!! 余ることを祈るよ!!!


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なんだかんだ言って、エウリュアレは構ってくれるよね(私が甘くなってるのかしら?)

「なんというか、疲れた」

「まぁ、ここ最近暴れすぎてたものね。主にガチャ関連で」

「うぅ……エウリュアレ……慰めてぇ……」

「嫌よ。そもそも、自業自得じゃない。運が悪かったのもあるんでしょうけど」

「ごふぅ……エウリュアレが優しくない……!!」

 

 机に突っ伏し、動かなくなるオオガミ。

 対面に座っていたエウリュアレは、そんなオオガミを見てため息を吐く。

 

「はぁ……何時から私ってこんな甘くなったのかしら。全く、貴方にも困ったものだわ。それで? 頭でも撫でてあげればいいのかしら」

「むむむ……十分ありがたいです……」

 

 やれやれ。と言いたげな苦笑いを浮かべつつ、エウリュアレはオオガミの頭を優しくなでる。

 

「ふふふ。なんというか、久しぶりにこんなことした気がするわ」

「ん~……エリちゃんよりも優しい感じ。エリちゃんの場合は髪を弄り始めるからなぁ……」

「……この状況で良くエリザの名前を出せるわね。普通なら殺されていても文句が言えないと思うのだけど」

「……い、いや、エウエウはそんな事しないって信じてるから……」

「そう……まぁ、良いわ。許してあげる。次は髪を抜いてやるから」

「毛髪の危機……!!」

 

 気付いたら毛が一本も無くなっているなど、精神的に来るものがある。具体的には、同情の目と爆笑されるのが恐ろしい。

 

「それで、まだ誰か引くつもりなんでしょう? アビゲイルを諦めた直後だったものね」

「うん……エレシュキガル」

「……イシュタルが動き出しそうね。というか、配布じゃなくてガチャっていうのが大変ね……」

 

 無言の肯定をするオオガミ。エウリュアレは少し先の事を思い、絶対暴れ出しそうだな。と考えて、ここで眠らせておくのも一つの手段よね。と、物騒な事を考える。

 なお、この発想に至った原因はおおよそノッブの存在が大きいだろう。この戦闘的な発想は明らかにノッブの思想に引きずられている。

 

「……なんだか、眠くなってきたわ。ちょっとソファーで横になって来るわね」

「ん~……そうだね。じゃあ、俺が逆に頭を撫でようじゃないか」

「……まぁ、良いわ。マスターの膝枕は別に嫌いじゃないし」

「了解。なんだかんだ言って、エウリュアレに嫌われてないみたいだし、よかったよかった」

「そうね。嫌ってはいないけど、構われ過ぎるのも嫌よ? ほどほどが良いわ」

「うぅむ、加減が分からん……」

 

 どれくらいなら構い過ぎじゃないのだろうか。などと考えつつ、オオガミ達はソファーに移動するのだった。




 正直オオガミとエウリュアレがいるだけで一話作れるのは未だにこの作品の謎……いや、ノッブでも作れるんですけど。
 やっぱりエウリュアレはこの作品のヒロイン感あふれてますよね!(ヒロインとは言ってない

 うん。まぁ、ここ最近では珍しい方の、何したいんだが全く分からない系の話ですね。はい。


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最近暴れても歌ってもいないわ(連れて行く場所も無いし、仕方ないよね)

「子イヌ~!! (アタシ)、暇なんだけど!!」

「げぶはぁ!!」

 

 バックアタックをくらい倒れるオオガミに乗りかかるエリザベート。

 しかし、オオガミは倒れ伏したまま動かず、エリザベートは首をかしげる。

 

「子イヌ? どうしたのよ。返事しなさい?」

「うぐぐ……普通に致命傷……あの、なぜこっちに来たんですかい……他にもいたと思うんだけど……」

「何よ。子イヌは(アタシ)が来てくれて嬉しくないっていうの?」

「別に嫌と言うわけではないけども……こう、もうちょっと優しさを持ってほしいですエリちゃん」

「何よぅ、十分優しくしてるじゃない。だからほら。アイドルとかやってるんじゃない。優しさが無かったらアイドルはやってないわよ!」

「うぅん、エリちゃんには一度痛い目というか、優しい感じの攻撃を受けるがいい」

「い、一体何をする気なのよ……」

 

 オオガミはエリザベートに乗られていながらも、体を引きずってマイルームまでたどり着く。

 

「……ここまで来て、何がしたいのよ。あと、服が汚れてるわよ?」

「誰のせいだと思ってるんですか!! 今更だけど退いてくれるとありがたいな!!」

「まぁ、マスターをいじめたいわけじゃないし、良いわよ。それで、何をするの? 出来れば着替えてよね」

「うぅむ、理不尽。そもそも誰のせいだと思ってるのさ」

「ふふん。(アタシ)じゃないことだけは確かね!」

「その自信は一体どこから出てくるのか。不思議でしょうがないよ!」

 

 だが、そんな態度のエリザベート以外はエリザベートではないのかもしれない。と思ってる辺り、悪く思っていないのは確かだろう。

 

「まぁ、服は着替えるけども、まさかそこにいる気ですか?」

「あっ。そ、それもそうね。部屋の外にいるから、着替え終わったら呼びなさい。良いわね子イヌ!」

「りょーかい。ちゃんと待っててよ?」

「当然じゃない。言われたことくらい、ちゃんと守れるわよ」

「うんうん。信じてるよ」

 

 エリザベートは慌てたように出て行き、オオガミをそれを見た後、着替え始める。

 と、着替えている途中で、扉の向こうからエリザベートの声が聞こえる。

 

「……ねぇ子イヌ。(アタシ)、最近歌ったり出来てない気がするの」

「ん~……まぁ、そうだよね。最近はエリちゃんを連れて行く事が少ないしね。剣豪の時も、ほとんど連れて行けなかったし」

「そうよねぇ……なんていうか、(アタシ)ね。そろそろ静かにしようかなって思うの」

「えっ。何それ。消えるの?」

「ちょっと、どうしてそうなるのよ。(アタシ)は消えたり帰ったりしないわよ。ほら、たまにいろいろ言われるじゃない。だから、少し静かにしてようかなって。マスターもその方が良いんじゃない?」

「何を言うのさ。むしろ騒いでないエリちゃんはエリちゃんじゃないと思うけどね? だから、気にしなくてもいいと思うよ。っていうか、静かに出来ないでしょうが」

「むぅ。そんなことないわよ。(アタシ)だって、やろうと思えばできるわ」

「うんうん。そうだね。ただ、出来れば止めてね。っと、着替え終わったから入ってきていいよ」

 

 オオガミの言葉を聞き、入ってくるエリザベート。オオガミはベッドに腰を掛けており、その隣を手で叩いて座る様に促す。

 

「それで、結局何をしたいの?」

「この前やってもらった事だよ。ほれほれ。ここに頭を乗せるが良い」

「なんでノッブみたいな言い方になってるのよ……別に構わないけど」

 

 隣に座ったエリザベートに、今度は膝の上に頭を乗せるように促すオオガミ。

 エリザベートは困惑しながらも言われた通りに頭を置くと、オオガミは頭を撫で始める。

 

「……こんなことしていいの?」

「エリちゃんが嫌がってないならいいかなって」

「別に(アタシ)は構わないけど……その、エウリュアレに見つかったら子犬は殺されるんじゃないかしら……」

「……いやいや。流石のエウリュアレも、殺しはしないよ。ちょっと全力で蹴りながら、自分にも同じことをしろって遠回しに言ってくるだけだよ」

「……ねぇ、サーヴァントの攻撃って、普通の人間には蹴りでも致命傷だったと思うんだけど。手加減してくれてると思うわよ? 少なくとも全力じゃないと思うんだけど……」

「うぅむ、普通に矢を射られたんだけど……まぁ、躱したから問題無しだね。とにかく、エウリュアレに狙われても何とかなると思うよ」

「何かしら……子イヌが攻撃を受けても逃げ切るっていうのを聞いて、代わりに(アタシ)が撃たれそうなんですけど……」

 

 エリザベートは不安になるも、オオガミはただ苦笑いをして返すだけだった。

 その後しばらくオオガミはエリザベートの頭を撫で、気付いたら二人とも寝ているのだった。




 気付いたらだらだらとこんなに長く書いていたんですけど……
 エリちゃんはエリちゃんで、エウリュアレ並みに書きやすい不思議……ノッブはどうしてもヒロインっぽく書けない……どうしても男友達と言うか、そう言う雰囲気になるんですよね……


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ババ抜きって、ポーカーフェイスもだけど、普通に運も必要だよね(むしろそっちが本命だと思うんじゃよね)

「さて……儂の番じゃな……」

「ふふふ……さぁ、引くといいよノッブ」

 

 ラストワン。ノッブはこれさえ当てれば勝ち。しかし、オオガミもただでは負けるつもりはない。

 なお、エウリュアレ、メドゥーサ、オオガミ、ノッブの四人で始めて、エウリュアレとメドゥーサが平然と勝利したところから、徐々にノッブとオオガミの雰囲気は剣呑になって行った。そして、現在に至る。

 

「ふむ……確率は二分の一……と思うじゃろ? 残念じゃったなマスター。儂はすでにカードの癖を覚えとったんじゃよねこれが!!」

「なんて迷惑極まりない事を覚えているのか!! チートだよね!!」

「ふはは!! 残念じゃったな!! ってことで、儂の勝ちじゃぁ!!」

 

 勢いよくオオガミの手の中のカードを引く。

 だが、次の瞬間、ノッブの表情は絶望に染まる。

 

「な……なんじゃと……? 儂の読みは完璧じゃったはず……」

「ふふふ……ノッブは一つ大きな読み違いをしてる……そう、こっちだって考えるのさ!! 細工の一つくらい、何とかするのさ!!」

「まさか細工までするとは思わなかったけどね!? というか、どうして儂の時だけなんじゃよ!?」

「えっ……それはほら、ノッブはそのへんさっぱりしてるし。エウリュアレは妙に根に持つし」

 

 当然とでも言いたげに、最後の一枚を引くオオガミ。見事、三位はオオガミだった。

 

「ふむ。とりあえず、マスターが儂を過小評価しとる事は分かった。覚えとれ? 絶対いつかやり返すからな」

「うぅむ、戦国武将に恨まれるのは少し命の危機を感じるのですがそれは」

 

 にやりと笑いながらノッブに言われ、一体何をされるのかと不安になるオオガミ。

 

「姉様。他には何かするんですか?」

「そうねぇ……ねぇマスター? 次は何をしましょうか」

「おっと、現在命の危機に瀕しているマスターにそれを聞くのか女神さま。良いでしょう良いでしょう。じゃああれだ。七並べしようか。終わったら別のことして遊ぼうか」

「ふむ……まぁ、ルールを決めてからじゃな。ローカルルール案外あるしな」

「そうね。あ、今回は私が切りたいわ。やらせてちょうだい」

「姉様。意外と鋭いので気を付けてくださいね」

「えぇ、分かってるわ。というより、トランプで指を切るほど器用じゃないわよ……」

「まぁ、エウリュアレはこれくらいで怪我しないよ。というか、普通怪我しないよ。漫画とかでトランプで物切る人いるけど、あれは普通に才能だと思うよ……怪我するのとか、更にレアものかと……」

「ま、普通に手を切るかと思うようなのもあるんじゃけどね!」

 

 エウリュアレはシャッフルしながら不満そうな顔をする。

 その表情を見て、メドゥーサがオオガミ達を睨みつけ、二人は苦笑いになって黙るのだった。




 なんとなくトランプしたかった気分。
 とりあえず、エレシュキガルピックアップまでに石を集めねば……


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明後日か……諸君! 準備だ!!(別に準備しても変わらないだろうに)

「よっしゃぁ!! 明後日からはクリスマスイベント週間!! 全力全霊を持って攻略だ!! いいね皆!!」

「私の後継者がついに……!!」

「僕はなんだっていいけどね。でも、エレシュキガルも関わっているんだろう? 彼女自身は気にならないんだけど、イシュタルが顔を出す可能性があるからね……」

「エルキドゥさんは自重してくださいね。私が止められるのにも限界がありますから」

「先輩。私も行けるみたいですけど……あの、なんで一番後ろ何でしょう……?」

「うん。僕は安定の前線真後ろなんだね。分かるとも。正直出るときが来なければ良いな! そろそろ過労で訴えるよ?」

 

 今回のクリスマスイベント特効メンバーが、それぞれ思い思いに話す。しかし、マーリンに対してメドゥーサはすかさず、

 

「マーリンの案は却下です。マスター。まずはマーリンから仕留めましょう」

「回復いなくなるからダメだよ。それはクリスマス終わった後にしよう。大晦日とか」

「仕方無いですね」

「辛辣だなぁ全く!!」

 

 逃げ場はなかった。マーリンは静かに泣きながら、この後きっと極寒の中英雄を作ったり幻作ったりするんだろうな。と思うのだった。

 

「先輩。程々にしてくださいね?」

「程々も何も、最悪戦う事が無いんだよね……マーリン。メインはエルキドゥとメドゥーサだし……」

「まぁ、僕だよね。メドゥーサもよろしく」

「えぇ。まぁ、私はきっとサポートに回るんだと思うんですけど。頑張ってくださいね」

「僕がいる理由は一体何なんだろうなぁ……」

「マーリンさんは備えじゃないですか? あれです。もしかしたらの保険ってやつですよ」

「まぁ、結局本気で倒したいときはマーリンさんを使うと思うんですけどね。頑張ってくださいね」

 

 なんだかんだ言いつつも、前半戦はマーリンの出番は皆無だと思われるのだった。

 

「ふぅ。どの道今日はやることないし、今日は解散としようか」

「突然集めて突然解散とは……やはり君の行動は読めないね。こんな私をこき使うし」

「んん? マーリンはもう一か月重労働が良いって? いいよいいよ。宝物庫に閉じ込めてやる」

「おぉっと。それは遠慮させてもらうよ。という事で、じゃあね!」

 

 即座に逃げ出していくマーリン。誰も止める事は無かったが、中々の逃げ足で、全員ある意味感心する。

 

「マーリン……流石の逃げ足だね」

「エウリュアレとノッブから逃げる時のマスターも同じようなモノだけどね」

「更に言えば、瞬間強化を入れてる分先輩の方が早い可能性あります」

「おっと待ちたまえ後輩ちゃん。サーヴァントに勝てる脚力とか、案外人外じみてると思うんですがっ!!」

「普通に人外じみてると思いますよ。まぁ、私が言う事ではないんでしょうけど」

「僕も今までの旅路を考えたら普通にマスターは人間止めてると思うよ」

「まさかエルキドゥにそんな事言われたらどうしようもないくらいに終わってるね。これはもう完全に人間止めてるって事じゃないか」

 

 今になってようやく実感するオオガミ。しかし、結局このあとやる事は何も変わらないわけだった。

 

「よし。逃げたマーリンは置いておいて、食堂にレッツゴー!!」

「お菓子でも貰いに行くんですか先輩。エミヤさんに怒られますよ?」

「姉様の為なら貰いに行きましょうか。喜んでくれますかね……」

「僕は基本食堂にいるからいつも通りなんだけどね」

「あの、トナカイさん。そろそろ寝たいんですけど……」

「あ、別に無理して行こうってわけじゃないし、寝たいなら寝た方が良いと思うよ」

「じゃあ、寝させてもらいますね。おやすみなさい。トナカイさん」

「お休み、ジャンヌ」

 

 サンタジャンヌはそう言うと、自室へと帰って行く。

 オオガミはそれを見届けた後、改めて食堂に突撃するのだった。




 クリスマス楽しみ……!! 何よりも、エレシュキガルが……!! 二日あればなんとかなるはず……!!!


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明日はどれだけ宝物庫を荒らすか……(考えてもどうせすぐにAP使い切るまで回るじゃない)

「まずはそう、明日だよ」

 

 珍しく考えているオオガミ。

 隣で見ているエウリュアレは、散々指摘しても考える素振りを続けるマスターに呆れており、ラング・ド・シャを食べながら見守っていた。

 

「で、今日はどんな無駄なことを悩んでるのかしら」

「そりゃもちろん、明日の行動予定だよ。午前のAPを無駄にせず、しかし午後のイベントに万全の状態で挑むにはっていう時間配分だよ」

「ふぅん? 良いじゃない。金の果実を食べれば。どうせ手に入るでしょう?」

「まぁ、それを言われると確かにそうではあるんだけども。QPも足りてないから宝物庫荒らさなくちゃだし」

「言葉だけで考えると、とんでもないこと言ってるわよね。普通に犯罪だもの。字面って大事ね」

「うん。まぁ、強盗っぽかったけど、やってることもあながち間違ってないのが問題なんだけど。それはいいよ放っておいても。そもそも、あの宝物庫って、ウルクのだったりしない? さりげなくバビロニアに飛ばされてるんじゃないの?」

「そんなこと私に言われてもね。王様に見つかったら御愁傷様ね」

「流石に会わないと思うけどね……会ったらエルキドゥに頼むとするよ」

「エルキドゥも大変ね。マスターが親友の宝物庫襲って返り討ちにさせられて護衛させられるんですもの」

「まぁ、全力で謝れば何とか許してくれるはず……ダメならバラキーで吹き飛ばそう」

「ゴリ押しじゃない……」

 

 きっと、最終的にはゴリ押しが一番だろう。と考えているであろうオオガミにエウリュアレはため息を吐いて、振り回されるバーサーカー達は大変なんだろうな。と思うエウリュアレ。

 すでに彼女は、引きずりまわされた過去など、忘れ去っていたのだった。

 

「それで、決まったの?」

「ん? あぁ、行動予定? もちろん。考えるまでも無くその場の乗りと勢いで生きればいいんだよね! どうせ開幕は効率悪いし!」

「まぁ、そうなるわよね……というか、最初から分かってたわよね。なんでわざわざそんなこと考えてるのよ。馬鹿じゃないの?」

「ちょ、エウリュアレ……最近どんどん攻撃的になってませんかね? 泣くよ?」

「あら、泣き顔を見せてくれるの? それは楽しみね。で、何時泣いてくれるのかしら」

「……そう言われると泣けなくなるよね……」

 

 冗談で言ったのをやれと言われると、打つ手が無くなるのはよくある事だったりする。

 エウリュアレはそんなオオガミを見て、ふふ。と笑い、

 

「本気でやるなんて思ってないわよ。まぁ、目薬はあるけどね。やる?」

「ん~……そこまで用意済みだと、むしろウケない気がするから止めとくよ。また別の時にしよう」

「そう。じゃあ、そう言う事にしましょうか」

 

 エウリュアレはそう言うと、オオガミに寄りかかり、

 

「明日、頑張ってね。待ってるわよ」

「……やれるだけはやってみるよ」

 

 オオガミはそう言って、明日を楽しみにするのだった。




 あれ……エウリュアレがまたヒロインしてる……だ、誰かこの二人を止められないのか……!!


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冥界のメリークリスマス
冥界金髪ロングツインテ天使系ポンコツ女神にチェンジできませんか!!(たわけ! 新たに石を稼いでくるがいい!!)


「だあああぁぁぁぁぁぁぁ!!!! どうしてそこで王様なんだぁぁぁぁぁ!!!!」

「無礼者め。(オレ)では不満だとでもいうつもりか」

「違うけど合ってる!! 金髪は金髪でも、ロングツインテ美少女冥界系スーパーポンコツ天使女神が良かったぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「それほどまでにあの女神が良かったのか。まぁ、だからと言って、(オレ)にどうにかできるものではないのだがな」

 

 机に頭を叩き付けながら叫ぶオオガミに呆れるギルガメッシュ。

 曰く、ギルガメッシュを引くために回した10連で石が尽きたので、これから全力で石を集めに行くそうだ。

 そのための準備時間らしいが、明らかに無駄だろう。と思うギルガメッシュ。なにせ、彼を除いて基本は準備が終わっているわけだ。

 

「ふん。そこで騒いでいてもどうにもならんだろうて。むしろ、今は一刻でも早く資源を集めるべきだと思うのだが、違うか?」

「うぐ……否定できないですけど……」

「なら、急ぐがいい。何時までもチャンスがそこにあると思うなよ?」

「……行ってきます!」

 

 走り去っていくオオガミ。それを入れ違いで、今度はエルキドゥが入ってくる。

 

「ギルじゃないか。本当に召喚されていたんだね」

「エルキドゥか……お前も呼ばれていたとは驚きだ」

「僕もだよ。まさかここに来てギルが来るなんてね。一年もかかるなんて」

「お前が呼ばれたから(オレ)が呼ばれた可能性もあるがな。だがまぁ、悪くはない。お前と共闘するなぞ、何年ぶりだろうな」

「そうだね。バビロニアの時は、共に戦わなかったからね。これからどこかで共に戦えると思うよ」

「そうだな……その時は、魔術だけと縛ってはいるが、(オレ)が本気で戦えるような相手だと好ましいな」

「ギルが本気を出すような相手なんてほとんどいないだろうに。まぁ、確かにそうだったら楽しいだろうね」

 

 エルキドゥはギルガメッシュの対面に座り、机に両肘をついて、ギルガメッシュの顔を眺める。

 

「……何をしている」

「ギルの顔を眺めてるだけだけど?」

「楽しいのか?」

「割と気に入ってるけどね。エウリュアレがマスターにしてるのを見て、いつかギルにやってみたかったんだよ」

「そうか……互いに知らない間に色々と見てきたようだな。して、ここがどのような所なのか……聞かせてもらおうか」

「そうだね。まぁ、割と楽しい所だよ。二勢力に分かれていたりするけどね」

「ほぅ? 内部分裂とはまた……カルデアとやらも、色々あるという事か」

「いや、主にマスターが遊んでるだけなんだけどね。そのうちギルも分かるよ」

「ふむ……あの小僧、中々面白そうなことをしてると見た。良い、後で調べてみようじゃないか」

「ふふふ。ギルがどっちに着くか……楽しみだね」

 

 二人はそう言って、楽しそうに笑うのだった。




 えぇ、はい。10連でギルガメッシュでした。前回王様の話してたから……?
 でもでも、王様は宝物庫開放して私がエレシュキガルを引くのを手伝ってくれるって信じてますから(発狂


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儂、熱で死にそうなんじゃけど(そも、貴様の所のが問題じゃろうが!! 金ぴか!!)

「うあ~……熱病とかぁ……辛いんじゃけどぉ~……」

「茶々、絶対何も悪いことしてない。絶対プレゼント貰えるはずだった。絶対伯母上のせい」

「ちゃ、茶々め……言いたい放題言いおって……儂、ちょいと食堂まで行ってくる……」

「……なんで?」

「アイスでも、ちと奪って来ようかと」

「茶々の分もお願い」

「ずうずうしい奴め……」

 

 朦朧としながらも、仕方ないな。と思い部屋を出る。

 外の熱気を感じ、こんなことなら珍しく部屋に戻らないで工房に籠っているべきだったと思うノッブ。

 そんなことを思いながら廊下を歩いていると、

 

「……ん、んん~? 誰か、倒れとらんか? 儂、熱でおかしくなったか? いや、夏のボイラー室を乗り切った儂に、これくらい問題ないんじゃもんね……」

 

 自分に言い聞かせるようにノッブは進んでいくと、半裸の金ぴかが倒れていた。

 

「……え、エルキドゥは……マスターに連れて行かれて……あれ、あやつがいないと、カルデア内を把握してるのって実質いないから……儂しかいなくね? え、これは何処に連れてきゃいいんじゃろ……」

 

 気を抜くと、地面に倒れてる金ぴかみたいになりそうな身体だが、靄のかかった頭でノッブが出した答えは、

 

「うむ。儂の工房だとエルキドゥにばれる可能性があるし、金ぴかは食堂に引っ張っていくか。確か風紀委員組は食堂じゃったしな。きっと帰って来たエルキドゥがなんとかするじゃろ。儂はアイスが食えるし、こやつは救われるしで、一石二鳥じゃな」

 

 風紀委員組に見つかるという可能性を考えない辺り、かなりノッブも熱でやられているらしい。

 

「あ~……頭痛いしだるいしで力が出ん……引っ張っていくの、辛いんじゃけど……」

「ぐ……ぅ……貴様……信長と言ったか……(オレ)の事はそのままでよい。この状況は、(オレ)の沽券にかかわるからな。手を離せ」

「阿呆。儂よりも辛そうな顔しとる奴を置いて行けると思うか」

「ふん。奴を送り出すのに些か魔力を使い過ぎたが、貴様如きに助けられるほど落ちぶれてなどいない。さっさと手を離せ。自力で歩く」

「ふん……強がりおって。儂、そんな事言う奴の言葉とか、信じないもんね」

「貴様……よほど(オレ)の怒りを買いたいと見える。覚悟しておけ雑種。後でまとめて返してやるぞ」

「ふはは。やってみるがいい。儂は容赦なく反撃してやるからな。神性持ちとか、儂の敵じゃないもんね」

「貴様如き、我が宝具を使うまでも無いわ。魔術だけで倒してやろう」

「わはは。んな震えてる手と足で出来るなんて思っとらんもんね。復活しても同じじゃろうて」

「貴様との差なぞ、すぐに埋めてくれるわ。レベル如き、大した差でもないだろうよ」

「楽しみじゃ。ふははは」

 

 ノッブはそう言って笑い、食堂まで結局引きずっていったノッブ。その後すぐさま地面にギルガメッシュを置いて行き、冷蔵庫に向かっていくのだった。

 当然、ギルガメッシュは残った魔力で冷蔵庫を封じるという悪意に満ちた最後の抵抗をするのだった。




 まぁ、ギル様、レベル1なんですけどね。この種火はエレシュキガルとメルトリリス用だぞ王様。あげないからね。


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ねぇメドゥーサ? どうしてあなたがここにいるのかしら(イベントボーナス鯖なのにここに残ってるなんて珍しいわね)

「……メドゥーサ。どうして私がこんな苦労してるのに、あのマスターは来ないのかしら」

「姉様。たぶんマスターはこの熱の元凶を倒しに行ったんだと思います」

「あらあら。(エウリュアレ)ったら、どうしてそんなことを考えるのかしらね?」

 

 自室で、三人揃って大人しくしている姉妹。正確にはメドゥーサは違う部屋なのだが、倒れたのがこの部屋だったので、部屋から出る事も出来ず倒れているのだった。

 

「別に、理由なんてないわよ。ただ、マスターがカルデアにいない気がして、不思議なだけよ」

「本当にそれだけかしら。えぇ。別に、問題はないわよ。それで、(エウリュアレ)はマスターはどうしてると思う?」

「……(ステンノ)。そういうの、良くないと思うわ。でも、今頃寒さで震えてるんじゃないかしら。復刻の時がそうだったもの」

「ふぅん。メドゥーサはどうかしら?」

「私ですか? そうですね……私は、たぶん魔物に追われてると思いますよ。霊か怪物かまでは分かりませんが」

「あ~……そうねぇ……私たちのマスター……そういうところあるものね……あれ。今思い出したのだけれど、今回のイベント、メドゥーサにもボーナスがあった気がするのだけど」

「そういえば、確かにあったわね。で、当の本人はどうしてここで寝てるのかしらね?」

 

 二人の視線が、自然とメドゥーサに向く。

 メドゥーサは視線を泳がせる。

 

「マスターはなんだって言ってたっけ? この愚妹は。ねぇ(ステンノ)?」

「追われてると思いますと言ったわよ。(エウリュアレ)

「そう……そういえば、メドゥーサの顔、いつもと変わらない気がするのだけど。どう思うかしら。(ステンノ)

「えぇ。これは嘘を吐いていた顔ね。(エウリュアレ)

「そうね。じゃあ、メドゥーサには、マスターの所に行ってもらおうかしら。戻ってきたら、どうだったか教えてね。それでからかってあげるんだから」

「……だ、そうよ。メドゥーサ」

「そう……ですか。分かりました。行ってきますね」

 

 メドゥーサは、先ほどまでの様子とは打って変わり、あまり乗り気ではない様子で部屋を出て行く。

 それを見送ったステンノは、同じく見送ったエウリュアレを見て、静かに首を振る。

 

「ねぇ(エウリュアレ)。本当にメドゥーサを送り出したのはマスターをからかいたかったからだけなのかしら」

「……(ステンノ)。別に、私はマスターとメドゥーサが仲良くなればいいと思ってるだけじゃないわ。だって、あの子は強いじゃない。きっとマスターそすぐ連れて帰ってきてくれるわ」

「そう。まぁ、確かにあの子ならマスターを連れて帰ってきそうね。楽しみね」

「えぇ。どんな面白い事をしてるのかしら。私のマスターは」

 

 二人はそう言うと、流石に体力が尽きたのか、そのまま眠るのだった。




 書きながら、ふと思い出したのです。そう、メドゥーサは今回のボーナスキャラだからカルデアに残ってなくね? と。まぁ、手遅れでしたけど。


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ふぅはは!! 熱だろうと暑さだろうと、余には効かぬわぁ!!(絶対嘘よね!! フラフラしてるじゃない!!)

「シュメル熱……中々の強敵であるな!!」

「うるさいぞネロ。静かに出来んのか。頭に響く」

「病気になってるのに元気よね。まぁ、(アタシ)も人の事言えないって自覚はあるんだけどね」

 

 休憩室にて、シュメル熱と暑さによるダブルアタックを受けながらも、マスク一つつけて今日も元気な三人組。

 なお、メイドオルタは飲み物を取りに来ただけで、実際は巻き込まれているだけだったりする。

 

「そもそも、貴様らは何をしているのだ。熱があるなら大人しく寝ているべきだろうが」

「ふっふっふ。余がこの程度の熱で止まるものか!! むしろ、今ならこの水着装備が生きると考えれば、完璧!! 今こそ余の本領であグハァ!!」

「ネロ!? 大丈夫!? 死んじゃダメよ!!」

「ふ……エリザよ。余はもうダメなようだ……後は任せた……余と、余とエリザの歌を、伝えて行ってくれ……ガクッ」

「ネロォォォォォォォ!!!」

「……氷嚢、いるか?」

 

 怒涛の展開について行くのを諦めたメイドオルタは、とりあえず熱を抑えられそうなアイテムを取り出してくる。なお、自分に使う予定だったのだが、まだ残っているのでいいかと思い、差し出す。

 エリザベートはその氷嚢を受け取り、ネロの頭に乗せる。

 

「まぁ、後は部屋に連れて行って寝かせておけばある程度はマシだろう。熱があるのに暴れるとは、バカなのか?」

「なぁっ!! 余はバカではないわ!! 別にふざけてるわけではないが、しっかり考えておるわ! とりあえずスキルを使っておけば良いのだろう?」

「どのスキルを使う気だどのスキルを。キャスターの時は回復スキルは無いだろう?」

「なに、今から花嫁衣装に着替えれば何も問題ないな。第三スキルですぐに回復だな」

「それでこれが治るなら苦労しないだろう。大人しく寝ていろ。後四日くらいで収まるだろうしな。マスターが解決しに行っているのだから、問題ないだろう」

「ふっ……余はその程度の時間、何とか持つに決まっておろう。最悪ガッツスキルの連用で何とかなるわ」

「強引ねこの皇帝」

「いっそ清々しいな。見届けてやりたいが、私も意外と辛くてな。このビデオカメラを渡すから、エリザベートよ。貴様が撮ってやれ」

「ぬぐぐ……余の苦しむ姿を見て楽しむとは中々酷いな貴様」

 

 エリザベートは受け取ったビデオカメラを軽く使ってみたりして、映りを確かめている。

 ネロは何とか動こうと、ガッツスキルを使って無理矢理起き上がると、力を振り絞って置いてあった水を一気に飲む。

 メイドオルタはまさか自分が飲むために置いておいた水を飲まれるとは思っておらず、止める間もなく飲まれてしまったので、回復したら痛い目を見せてやると決意するのだった。

 

「うむ。ある程度回復したからな。余は着替えてくる!! 水着だと回復できなくて辛いからな!!」

「何言ってるのかしらこの皇帝」

「まぁいい。私もそろそろ部屋に戻るつもりだったからな。回復した時に見るビデオが今から楽しみだ」

 

 そう言うと、三人は休憩室を出て分かれるのだった。




 決めました。今回のイベントはマスター方面を一切書かないで寝込んでるのを書こう……何となく、そっちの方が楽しい気がしてきた。


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そういえば、おっきーは大丈夫じゃろうか……(また廊下に倒れてるのがいるんじゃけど)

「ふ、ふはは……儂はだんだんと慣れて来たぞ、この感覚……!!」

「伯母上。それ、倒れるフラグ。すでにボロボロな人の発想だよ」

「茶々め、言ってくれおるな……じゃが、逆に治ってきてるやつの発想でもあるんじゃなこれが!」

「しっかりフラグを強固にしていく伯母上マジ凄い。最強の虚け者は伊達じゃないって事だね。茶々も伯母上を見習ってしっかり寝て治すことにするよ」

 

 そう言うと、布団に入って寝る茶々。

 ノッブは不満そうな表情をするものの、今日は一番生きてるかどうか怪しい刑部姫の所に行く予定だったのだ。

 

「んじゃ、儂は行ってくるからな。留守番しとるんじゃよ」

「ん~。他の人に迷惑かけない様にしてよ、伯母上」

「儂をなんじゃと思っとるんじゃコイツ」

 

 そんなことを言いながら、ノッブは部屋を後にする。

 

「……また落ちてたりしないじゃろうね……あの金ぴかみたいに」

 

 廊下に出て、この前の出来事を思い出しながら次はないだろうなと思うノッブ。

 だが、今回も見つけてしまった。しかも、刑部姫の部屋の正面で。

 

「あ~……まさかバラキーが倒れてるとは思わなかったんじゃけどぉ……」

 

 文字の様な形をしている炎と、うつぶせで倒れている茨木。ちなみに、『しゅめる』と書かれていた。

 生きているのだろうが、ダイイングメッセージのような文字を炎で書くのは、後で掃除が面倒になるかもしれないから止めてほしいと思うノッブ。魔力を食うのもあるが、火事になったらどうするつもりだったのだろうか。

 

「……そう言えば、バラキーがどこの部屋にいるのか知らんな……仕方あるまい。おっきーの部屋に突撃して置いて行こう」

「部屋主の前で何恐ろしい事言ってるのノッブ」

 

 部屋の扉が開いて、顔だけ出してくる刑部姫。

 ノッブは平然としている刑部姫を疑問に思いつつも、足元で死にかけてる茨木を指差すノッブ。つられて視線を落とし、茨木を発見すると同時に部屋の中に引っ込む刑部姫。

 

「ちょ、ちょっと。なんでバラキーが倒れてるのよ。何したの?」

「儂が来た時にはこうなってたんじゃって。というか、なんでバラキーがおっきーの部屋の前で倒れてるのか知りたいんじゃけど」

「そりゃ、一緒に部屋に籠ってたけど、まさか飲み物を取りに行くって言って、中々帰って来ないなぁって思ったら部屋の前で倒れてるとか思わないじゃん!」

「あ~……それは儂もびっくりじゃ。まさかバラキーもシュメル熱にかかってるとはのぅ……つか、儂としてはおっきーもかかってる予定じゃったんだけど」

「何言ってるのよ。病気なんかにかかったら周回やアイテム集めが遅れるじゃん。当然健康に気遣うし。最近熱くなってきたから冷房付けてた(わたし)の勝ちね!」

「何の勝敗なんじゃよ……まぁいい。バラキーはおっきーの部屋に寝かせても良いか?」

「まぁ、別にいいけど……(わたし)が気を付ければいいだけだしね」

「さすがおっきー。じゃ、儂も遠慮なく」

 

 廊下と比べて明らかに涼しい部屋の中に入ると同時、刑部姫に止められる。

 

「待てい。せめてマスクはしなさいバカ。移されたら困るから。今ここで倒れるのはイベント的にアウトだから。クリスマスとか、イベント盛りだくさんなんだから倒れられるわけないから」

「……お主、そのやる気を他の場所で出したらどうじゃ……?」

「方向性が違うから無理。ノッブなら分かると思うんだけど」

「ん~……まぁ、そうじゃな。やりたいようにするのが一番じゃな。是非も無し。おっきーの生存確認も出来たし、しばらく儂もここに引きこもらせてもらうとするか」

「いいけど、ちゃんと暑さが収まったら帰ってよ」

「いや、それより早く出て行くつもりじゃけどね。まぁ、遊ぶとするかの」

 

 そう言うと、慣れたような手つきでノッブはゲームをセットしていくのだった。




 茶々のノッブに対する扱いよ……

 しかし、我がカルデアのイベントボーナス外唯一の生存者はおっきーという。誰がこんなことを想像しただろうか……


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ふはは!! 帰ってきたぞカルデア!!(遅い!! 遅すぎるわ!!)

「帰ってきたぞー!!」

「「遅い!!」」

 

 休憩室の扉が開くと同時に放たれる二人の蹴りは、見事にオオガミの腹部に叩き込まれ吹き飛ばす。

 隣にいたエルキドゥが咄嗟に鎖を網状に出して受け止め、衝撃を緩和する。

 

「ノッブ。また、暴れてるのかい?」

「姉様。流石に帰ってきたばかりのマスターにそれは辛いと思うのですが……私ならともかく、マスターは人間ですので、今の姉様の蹴りなら殺せる可能性が高いです」

 

 同じく隣にいたメドゥーサも合わさり、それなりに本気で止めに入る。

 だが、今日の二人はいつもより強気だ。

 

「なんじゃいなんじゃい。儂らはひたすら寝こんどったんじゃ!! しかも、治ると同時に一気に気温が下がるとは、儂、普通に死ぬかと思ったわ! 夏からの冬! 気温差激しくて病気が悪化するじゃろ!!」

「メドゥーサ。私を止めるなんていい度胸じゃない。この前は結局遊んでうやむやにしたけど、今日は本気で戦ってもいいのよ レベルの差を見せてあげるんだから」

 

 ノッブはらしいことを言っているが、エウリュアレに関しては言い訳をするのも忘れ、メドゥーサに矛先が向いていた。

 メドゥーサからすれば、相性で有利なうえにレベルの差も10しかないため、実質ハンデを負ってるのはやはりエウリュアレだと言いたいが、言い出せない状況である。

 

「そう……ノッブの言い分は分かった。でもそれは向ける矛先が違うだろう……?」

「姉様……私は止めましたからね?」

「ふはは!! やるか? やるんか? エルキドゥ!」

「格の違いを見せてあげるわ、メドゥーサ!」

 

 病み上がりハイテンションだと一発で分かる二人。

 もはやオオガミの事は忘れ去られていた。

 

「うぅむ、最近思ったんだけど、マスターの存在感が一番無いんじゃないかな」

「あはは。でも、楽しそうじゃないか」

「マーリンには言われたくないね」

「本当に僕に辛辣だね君は」

 

 毎度、自分が何をしたのかと首をかしげるマーリン。確かにここまでほとんど役に立っていないが、ここからである。周回が始まってからがマーリンの本領発揮と言うところだ。

 

「つまりはあれですね。これからはサンタタイムということですね!!」

「うんうん、君はある意味一番素直だよ。清涼剤みたいなものだね。ナーサリーや茨木みたいにさりげなく攻撃を仕掛けてこない辺りが」

「? だって、マーリンさんを倒しても美味しくないじゃないですか。サンタパワーは、プレゼント欲する人と、美味しい素材を落とす魔物にしかぶつけませんよ?」

「うん。知りたくない真実だったっ!」

 

 純粋に言っているところが、また恐ろしい。

 マーリンは静かに泣くのだった。




 ここのマーリンいつも泣いてるな……誰か救済してあげてもいいのでは……


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そういえばクリスマスって、ドラゴン娘と約束してた気がする(マスター許さん)

「うん。冷静に考えると、とんでもないことを色々しでかしてるぞ。俺」

「マスターじゃし、是非もないよね。で、何したんじゃ?」

「返答次第ではこの道具の試運転に付き合ってもらいますよ。センパイ」

「道具の試運転くらいなら別にいいけど……いやまぁ、エリちゃんとネロのクリスマス特別ライブがあったなぁって思い出して」

 

 工房にて、即座に首を絞められ関節を極められるオオガミ。

 少し前にも少し前にも同じようなことをしたにも関わらず、惨劇を繰り返したオオガミへの制裁である。

 

「うぎぎ……死ぬ。死ぬ死ぬ……死……ゴフッ」

「ぬわっ! 流石に力を入れすぎたか……もうちょい苦しませたかったんじゃが」

「ノッブ。もっと手加減してあげてください。こんなのでも、一応マスターなんですから。大量殺戮兵装のやる気をぐ~んと上げてても、大事なセンパイ……ちょっともう少しイタズラしておきましょう」

「言いながら手のひら返しとは恐ろしいなBB。まぁ、儂も便乗するんじゃけどね」

 

 気絶したオオガミの顔に落書きをしていくBB。同じようにノッブも、オオガミの手足にびっしりとお経を書いていく。

 

「……ノッブ。もしかして、服を脱がせてまで書かないですよね?」

「えっ、そのつもりだったんじゃけど……止めた方がいい?」

「当然です! マシュさんやエルキドゥに見つかったら痛い目に合うのは確実。更には面倒なのがおまけ感覚でたくさん付いてきますよ! しかも割りと殺意込めて!」

「うっはなんじゃそれ面白そう。そんなこと言われたらやってみたくなるのが儂じゃよね」

「ちょ、冗談とかですまないと思うんですが! 知りませんよ。ノッブがそれで死んでも知らないですからね。工房とか壊されかねませんよ……!?」

「……あぁ、それは不味いな。上半身で止めておこう。足はセーフじゃろ」

「……だ、大丈夫ですかねぇ……?」

 

 不安しかないが、なぜかノッブはとても乗り気である。

 いつもなら便乗するBBだが、流石にそろそろ洒落にならないのが増えてきたこのカルデアで、SE.RA.PHのように暴れられない現状、あの集団は洒落にならないのをわかっているBB。

 ノッブも分かっているが、なんだかんだ最終的にマスターが止めるので気にしていなかったりする。

 何せ、基本回りが勝手に騒ぎ、被害者本人であるオオガミは楽しんでいたりするのだから、周囲の自己解釈で殺されるのは中々に酷い話だ。なので、被害者にしてある意味共犯者のマスターが止めに入る。

 なので、大体それで決着が着く。もちろん、トレーニングルームを使っての大戦争も起こるが、基本はカルデア内での戦闘は行われない。平和である。

 

「よし。じゃあBB。儂はしばらくこれで遊んどるから、頑張るんじゃよ」

「えぇっ。いえ、まぁ、頑張りますけど……うぅむ、私も混ざりたいような、でも混ざったら殺されそうな」

「まぁ、アレを作ってる方が危険は低そうじゃよね。で、こっちはマスターイタズラが出来て楽しい、と。どうする?」

「うぐぐ……」

 

 悩むBB。正直オオガミからしたら悩まれたくない悩みだが悩むBB。止めて欲しいと思うであろうオオガミは寝ている。よって止めるものはBBの理性ただ一つ!

 BBが出した結論は――――

 

「……そもそもノッブの書いてるのがわからないということに気付いたんですがそれは」

「うむ。んじゃ、顔に適当な落書きをしてるのが一番じゃろ」

 

 オオガミの顔に書かれる落書きが増えることで決着するのだった。

 数時間後、起きたオオガミが書かれたものを見て硬直するのは、また別の話。




 ち、違うんや……途中まではクリスマスライブライブについて書こうとしてたんです。そしたら、気付いたらオオガミ君を気絶させて耳なし芳一にしようとしてたんです……何を言ってるのかわからないと思うんですが、安心してください。言ってるこっちも分かりません。
 キャラが勝手に動いたって奴です。


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最近、私戦えてないわ(私はそもそもまともな戦闘をしたことはほとんどないのだけれど)

「ねぇ、(ステンノ)。最近私、ずっと休んでる気がするわ」

「そうね。でもね(エウリュアレ)。私はまともに戦ってすらいないのだけれど」

「……そうだったわ。私とは違うんだったわね……」

「えぇ。攻撃系宝具じゃないから仕方ないのだけれど。私も活躍をしてみたいわ」

 

 休憩室で溶けそうなほどにぐったりと机に倒れているエウリュアレに、ステンノは頬を突きながら自分とエウリュアレの差に対してちょっとした不満を漏らすステンノ。

 共にスキルマだが、この差は埋めようがないくらいにあった。

 

「はぁ……何だかんだ、今はメドゥーサが一番活躍してるのよね……」

「まぁ、あの子は前から力あったもの。今は小さくなったから、可愛さも持って、まさに無敵よね。どうしたものかしら……」

「別に、気にしなくてもいいと思うけれど。私はともかく、(エウリュアレ)は強いもの。私は魅了と吸血くらいしか取り柄が無いもの」

「……そうでもないわよ。私と一緒で、男性特効じゃない。違いは男性以外にも有効かどうかって事でだけで。二人一緒なら怖い事は無いわ」

「そうね。一緒に戦えるのが今から楽しみね」

 

 笑い合う二人。単体男性相手には無敵の二人なのだから、男性単体ならば永遠に夢を見せたまま葬り去る事も出来たりするのだが、今回、そのチャンスがあったにもかかわらず全力でスルーしたマスターがいたりする。

 そんなことを言っていると、休憩室に入ってくる人物が。

 

「とぅ!! 余、復活である!!」

「ネロ……? もしかして、今の今まで寝てたの? もしかして、治らなかったとか?」

「うむ。流石の余も、まさか今日の今日まで寝込むことになるとは思わなんだ。やはり熱が高い時に休憩室で暴れまくったのは失策であったか……」

「当然よ。というか、メイドにも言われてたじゃない。というか、本当に撮ったんだけど、このビデオはメイドに返した方が良いのかしら?」

「借りたのなら返した方が良いとは思うわよ。というか、頼まれたのでしょう?」

「そうね。じゃあ、返してくるわ。じゃあ、行ってくるわね!!」

「ぬわ!! そのビデオを消させるのを忘れていた!! 奴に見つかったら笑われること必至……!! せめてかっこよく加工させるのだエリザよ!!」

 

 嵐の様にやってきて、そのまま去って行ったネロとエリザ。正直そのビデオの中身が気になったが、今更あの全力運動系の二人を呼び止める事は出来ない二人は、一体どんな内容だったのかと思いを馳せることしか出来ないのであった。

 後に、メイドに見せてもらえばいいと言う事に気付き、突撃したのは言うまでも無いだろう。




 ステンノ様、周回の時に裏に入れてるだけで、戦闘に全く参加させてないんですよね……絆上げの為ってのが主ですし。
 宝具が攻撃系なら変わるんでしょうけど……そもそも本来なら戦闘力皆無な人達ですからね、あの二人。


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マスター。早く周回するよ(100箱とか、届きそうにないような……)

「いや、自業自得なのはわかってるわけですよ。だからほら、全力で周回しているわけですし」

「そうだね。分かっているとも。だから急いで果実を食べてくれ。マスター」

「あぁ、うん。もう正直お腹いっぱいだけども、回るから食べるよ。じゃなくて、言いたいことはそうじゃない。どうしてこんなにも礼装が落ちないのかって事だよ」

「マスター。普通に考えてこれだけ回って出ないのはレアです。誇りましょう」

「うん。明らかに馬鹿にしてるよねメドゥーサ。温厚な僕でも怒る時は怒るんだよ?」

「トナカイさんトナカイさん!! 言ってる間に行った方が明らかに効率がいいと思います!!」

「……地味にジャンタが一番辛辣なんだけども」

 

 冥界で暴れる集団。金色の果実を必死で食べつつオオガミは周回を繰り返し、今日の昼頃にようやくリース以外での交換素材を交換しきり、現在は全力で砂をかき集めているというわけだ。

 オオガミはすでに果実を食べ飽きているが、素材回収的には必須なわけで、座り込みながらももぐもぐと食べているというわけだ。

 

「ふ、ふふふ……まぁ、この無茶な感じが楽しいよね。ワクワクだぜふはは」

「ダメですね。テンションがおかしくなってます」

「まぁ、いつもの事さ。終わった頃には治ってるはずさ」

「そうなんですか? じゃあ、放置で行きますか」

「まぁ、魔力を回してもらわなければ勝てないのは変わらないので、守るのは必須ですけどね」

「よし……じゃあ、第二ラウンドの開始だよ……!!」

 

 オオガミはそう言って立ち上がると、三人に声をかけ、戦いへと赴く。

 

「しっかし、セイバーの所もアーチャーの所も、砂の数が同じなら普通にアーチャーの所に行くよね」

「まぁ、蛇に殺されかけるのは毎度のことだけどね」

「言わないでよエルキドゥ……どうすりゃ安定して倒せるのさあんなの……」

「そうだね……宝具は流石に使えないから、けっきょく運任せというか、ガンドを撃ってもらうのが理想だね。どうだろう、マスター」

「ふむ……やっぱり戦闘服か……」

「そうですね。まぁ、エルキドゥよりも、私とジャンタが死ぬのですけど」

「うぅぅ……噛み付かれたり、お腹の下に引かれたり……重いし痛いんですけど……!!」

「あう……あと二日なんで、なんとかよろしくっ!」

「まぁ、頑張るけどね。任せてよマスター」

「最後まで頑張りますので、どちらかと言うと、マスターが頑張ってください」

「トナカイさん。私、頑張りますね!!」

「うぅ……これ、一番足引っ張ってるの、自分なんじゃ……」

 

 何となく、自分の心持ちが一番低いのではないかと思い、何とか頑張ろうと思うオオガミなのだった。




 今回のミスは、初日からやる気が無かったことですかね……とりあえず今、10箱開けて、3300までは集めたんですけど……100箱終わる気がしない……


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全く終わる気がしないですよね(まぁ、マスターが昼間に別の事をしていたのも原因の一つじゃないかな)

「ふははは!!! プレゼントに沈めぇ!!」

「私の宝具をなんだと思ってるんですかトナカイさん!!」

 

 ジャンタが宝具を撃ってる最中にそんなことを言うオオガミに、全力で突っ込むジャンタ。

 そんなジャンタに、オオガミはドヤ顔で、

 

「続くのは神槍!! エルキドゥだからプレゼントごと叩き潰すね!!」

「ど、どうしてプレゼントをそんな無下に!! いえ、確かにあの中に入ってるの、ほとんど全部凶器ですけど!!」

「物騒だなプレゼント!! でもまぁ、エルキドゥなら何とかしてくれる!!」

「信頼のしすぎもどうかと思うけどね。まぁ任せてくれ」

「私もですよね。あの人、地味に頑丈ですし」

 

 宝具展開。鎖と共に突っ込むエルキドゥ。そして、それでも倒れないボスに対し、続くはメドゥーサの大連撃。

 目から出る特大ビームに飲まれたボスは、そのまま消え去る。

 

「はぁ……全く。全然終わる気がしないね。昼間は遊んでいたみたいだからね」

「全くです。やる気があるようでないんですから……」

「トナカイさんは、やるって言いながらやらないパターンですよね。もう少しやる気を見せてもいいんじゃないかと」

「やる気があるのと、やりたいのは別だからね! 明日は時間があるから期限まで回すけどね!! 否応でも行くからね!」

「あぁ、そうだね。期待しないで待っていることにするよ。マスター」

「今は6000と少しくらいですから、頑張っても9000が限界なのでは?」

「やるやる詐欺はいけないと思います。という事で、来年は100箱越えていく感じで行きましょう」

「だから地味にジャンタの言葉が一番辛辣なのは何でなの!?」

 

 無邪気ゆえの無慈悲な刃なのだった。当然、オオガミに抗う術はない。自分も納得していたりするからだ。

 来年のネロ祭。あるとすればオオガミはきっと魔力枯渇と隣り合わせで戦うのだろう。きっと、たぶん、おそらく。

 

「まぁ、それはそれとして、今年は今年で頑張るんだからね!! 行くぞ皆!!」

「マスターのやる気と魔力が続く間は頑張ろうとも。任せてくれマスター」

「ジャンタはあんな人にならない様に気を付けてくださいね」

「反面教師として見れば良いんですね。分かりました!!」

「ちょ、何言ってるのさメドゥーサ!! まるでダメ人間みたいに言わないで!?」

「大体あってると思うのですが」

「そうだけども!!」

「自分でも分かっているのなら、治す努力をしてみたらどうなんだい?」

「頑張ってるけども……!! 頑張ってるけども……!!」

 

 今日も辛辣な彼らに、半泣きなオオガミ。

 そんな事を言いながら、四人は再度クエストに突撃する。




 うぅむ、一日3000。終わる気しないですねこれ。
 まぁ、期限いっぱいまで頑張りますけどね。


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もう、12000くらい集まったらいいんじゃないかな?(クリスマスパーティ、始められないのだけれど)

「クリスマスとか言っても、今日は働き詰めだよね」

「12000超えたら終わればいいんじゃないですかね?」

「まぁ、無理をする必要は無いからね。後10回ほどで終わるだろうし、それを区切りに終わろうか」

「私、もっとプレゼントを配っていたいんですが。クリスマスパワー見せてやります!!」

「クリスマスパワーはカルデアで発揮してくれていいんだよ?」

「カルデアだと今年のサンタがいるじゃないですか!! サンタ役が被るじゃないですか!!」

 

 なにやらプライドがある様だ。今年のサンタパワーはここで使い果たすという気概を感じるジャンタ。

 朝から回っているものの、どうもいまいち集まっている気がしないのは、回転数が足りないからか、それとも一周毎の獲得量が足りないのか。

 

「さて。じゃあ、帰るためにもうひと頑張りと言う事で!!」

「あぁ。ギルも退屈して待ってるだろうし、早めに終わらそうか」

「姉様たちもそろそろ帰らないと怒りそうですし、出来るだけ急いでいきましょう」

「えぇ~……私のクリスマス、もうそろそろ終わっちゃう……」

「時間的にそろそろ日付変わるから、そもそもクリスマスも終盤どころか終わりだよ。というか、プレゼントを配るのは基本今日の朝だから、実質クリスマスは終わってるよ」

「えぇ!? そんな……この有り余ったクリスマスパワーをどこにぶつければ!!」

「そもそもクリスマスパワーってなんだよって突っ込みたいけど、とりあえず敵にぶつけた後にカルデアに帰ってナーサリー達と一緒に遊べばいいんじゃないかな?」

「な、なるほど……じゃあ、遊ぶためにも頑張らないとですね!!」

 

 それぞれがそれぞれの目的でやる気を出し、再度突撃するのだった。

 

 

 * * *

 

 

「……マスター、帰って来ないわね」

「そうじゃよね。エミヤも料理を作っておったけど、帰って来ないから始められんしなぁ……儂らのマスター、流石に日付が変わるよりも前に帰って来るじゃろうけど、日を跨いだらクリスマス終了なんじゃけど」

「帰って来るとは思いますけどね。きっと」

「まぁ、うちのマスターらしいったららしいわよね。多少のオーバーくらい、問題ないわよね」

「そりゃ、あんまりイベントとか気にしないで騒ぎたいメンバーが多いじゃろうしね?」

 

 現在食堂には暇そうなエウリュアレやノッブ、リップだけでなく、茨木やナーサリー。しかも、引きこもっているはずの刑部姫もいた。

 風紀組もいるのだが、茨木と頼光が互いに気付いてしまった瞬間に戦争が起こりかねないので、若干離れていた所にいたりする。

 

「よし。じゃあ、マスターが来るまでの間に料理でもつまみ食いしに行きましょうか」

「む。それは良いな。ふふふ……儂の隠密力、とくと見るが良い!」

「あの、見つかったら袋叩きにされるんじゃ……あ、もしかして私も行くんですか? え、嫌なんですけど……」

「ま、強制じゃよね!!」

「あの、強制と言っても、持ち上げられないと思うんですけど……」

「……そう言う自虐ネタはどうかと思うわよ?」

「ひ、酷い言われようっ!! 心配してたんですけど、私知りませんからね!?」

「ふはは。リップに心配されるまでも無いわ! 儂が先陣を切って行ってくるからな。任せるが良い!!」

「えぇ、頑張ってねノッブ」

 

 ノッブはそう言って、カウンターの上に出されている料理に向かっていき――――

 

「あ。アレはご愁傷さまね」

 

 上空から降ってきた無数の剣に突き刺され、地面に倒れ伏すのだった。

 

「さよならノッブ。貴女の事は忘れないわ……」

「悲しい犠牲でした……マスターが帰って来るのを待ちましょうか」

「そうね。あぁ、早く帰って来ないかしら」




 朝からやっても全然間に合わないという……次回のボックスガチャに期待ですね!(吐血


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サーヴァント退去
あれ? サーヴァント全退去ってことは、年末イベントご破算?(準備も完全に終わってはいませんでしたし、たぶん無理かと)


 第二部序章弱ネタバレ注意


 クリスマスパーティーも終わり、片付けや掃除を終わらせた後に座へ帰っていく英霊達。

 エウリュアレが帰るのを渋ったりジャンタ達が暴れたりしたものの、最終的にはホームズとダ・ヴィンチちゃん以外が全員帰ってしまった。

 だが、座に帰る前に、ノッブはマスターに一本の鍵を差し出して、工房へ向かえと言った。

 オオガミは、一体何が出てくるのかと、楽しみ半分不安半分でノッブの工房へと向かっているのだった。

 

「……でも、ノッブが渡したいようなものって何さ」

「さぁ……ノッブさんは、何気に掴みにくい人でしたからね。何を考えてるのかまでは流石に。爆弾とかだったら困りますよね……」

「うん。俺はともかく、新所長とかは一発で消し飛ぶよね」

「はい。先輩も粉微塵になりますので、お間違い無きよう。普通に致命傷ですからね?」

「いやいや……魔神王とかビーストとかと生身でやりあえるようなマスターに勝てる爆弾なんて、そうそう無いよ」

「先輩。その冗談はどうかと思いますよまぁ、宝具を受けたり避けたりしてるので、否定しきれないのが問題ですが」

 

 自他共に認める頑丈さ。多少の攻撃で沈まないマスターなだけはあるのだ。最近の一番大きい怪我は腸を素手でかき回されたことです。とドヤ顔で言い張っちゃうくらいには頑丈だ。

 

「というか、一番困ってるのはさ……年末というか、大晦日にやろうと思っていたイベントが丸々潰れたことだよ」

「あぁ……サーヴァントの皆さん、帰ってしまいましたからね。ところで、何をする予定だったんですか?」

「うむ。マシュには明日伝えようと思ってたけど、計画が破綻しちゃったから、工房に着くまで語ろうか」

「一体どんなことだったんでしょう……楽しみです」

 

 ワクワクを全面に出して隠そうともしないマシュに、オオガミは楽しそうに語り始める。

 

 

 * * *

 

 

「――――てな感じで、最後は花火で締め括ってみようかと」

「なるほど……でも先輩。一つ突っ込みたいのですが、どうして私がかなり出てくる上に台詞が多くあって、伝える予定が明日だったんですか? 覚えられないと思うのですが」

「セイレムの時の活躍を見て、普通に覚えられると思うんですが。配役全員の立ち回りと台詞を全部覚えていた時点で大丈夫でしょうが」

「あの時は着いていくことに必死だったと言いますかなんと言いますか……」

「うぅむ、複雑なのか……っと、着いたね」

「あ、ここなんですか?」

 

 どう見てもただの壁だが、一定の順番で、ただの段差としか思えないようなボタンを押すと、開く仕組みの仕掛け扉。

 初期の頃にオオガミがエルキドゥと一緒に突撃したせいで場所バレしているので、その後に改装を繰り返して今の形になったわけだ。

 ちなみに、設計上ではヘラクレスの宝具ならギリギリ壊れないほどなので、かなり頑丈――――というか、実質シェルターに変わっている。

 

「うん。本気でカモフラージュされてるけど、何度か一緒に通ったから覚えてるよ。ここを降りればすぐ――――って、そう言えば、マシュに教えるなって言われたような……」

「ちょっと待ってください。じゃあもしかして今の今まで私がこの場所が分からなかったのは、皆さんが巧妙に隠し続けていたからなんですか?」

「まぁ、若干それもある。後、普通に聞かれなかったし。教えるのも難易度高いし。ボタンは一個でも押し間違えるとやり直しなのに、カモフラージュボタンが正解の真横にあって押し間違えが多発するし」

「えぇ……それ、本当に開けられるんですか?」

「慣れるのに1ヶ月はかかったよ。ノッブは平然とやってたけど」

 

 自分でも出入りが面倒そうだよね。とオオガミは言うが、悲しいことにこの壁は霊体化すれば普通に抜けられるため、実際に苦労するのはサーヴァント以外だったりする。

 サーヴァント対策はもちろんあるが、その作動と解除法を知っているのはノッブとBBだけである。効果としては入れなくなるだけなのだが。

 

「さて、そんな事は置いておくとして、開いた状態がこちらになります」

「簡単に開きましたね……全然苦労しているように見えないのが不思議です」

「何度もやって、慣れればこうなるよ」

「そういうものでしょうか……」

 

 そんな事を言いながら階段を降り、たどり着くノッブ工房。

 作業のやり途中だったのか、それとも片付けを面倒臭がったのか、工房内は物が散乱していたが、いつもと比べたら綺麗な方だった。

 

「さて……鍵を使う場所かぁ……まぁ、一番奥にしまってた箱のなんだろうなぁ……」

「あの、何で隠し場所を知っているんですか? ノッブさんが隠してたんじゃ……」

「そうでもないけどね。目の前でやってたし」

「そうなんですか……」

 

 マシュにジト目で見つめられても、欠片も動揺しないオオガミは、正確に隠し箱の在処を暴き、取り出す。

 

「さてさて……一体どんなお宝が入っているか。楽しみだね」

「トラップには気を付けてくださいよ?」

「大丈夫大丈夫。大抵のトラップならなんとか出来るし。んじゃ、開けるかな」

 

 オオガミはそう言うと、箱の鍵を開け、蓋を開く。そこには――――

 

 

 『ハズレ』と共に、ノッブがバカにしてるような絵が書かれていた。

 

 

 一瞬箱を投げそうになるが、そこはオオガミ。煽られてすぐに激情するような性格ではない。

 例え紙を粉々になるまで切り裂いていても、決して怒っていたりはしないのだ。

 

「うん。まぁ、ノッブだからこれくらいの可能性は考えておくべきだった。まぁ、二重底なんだよね。きっと」

 

 オオガミはそう言うと、側面と底の間に爪を入れ、引き上げる。

 そこには――――

 

 

 それほど多くないQPと、一通の手紙が入っていた。

 

 

「……手紙、ね。まぁ、後で開けようか。とりあえずQPだけはもらっていこう」

「せっかくですし、ここで読んでいけば良いのでは?」

「いや、もう少し後でね。今読むと、片付けに手がつかなくなりそうだし」

「そうですか。じゃあ、ここはこのまま残せると思いますし、このままで。では、片付けに戻りましょう」

「うん。行こうか」

 

 二人はそう言うと、部屋を出るのだった。




 珍しくしんみりした感じの今回。というか、皆が帰ってくるまではこの雰囲気が続くんじゃないかと。

 えっ、今日公開されたのだと独房内だろう? 何を言ってるんですか。それは27日って書いてありましたよ。


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たまにマイルームに全く見覚えの無い物があるんだよね(このスマホもその一例というわけで)

「さて……マシュ。かわいい後輩ちゃんよ。俺は一つ、困っていることがある」

「どうしたんですか先輩。突然そんな誉め言葉を言って。私は今すごく気分がよくなったのである程度なら答えますよ」

「うん。じゃあ、このスマホに見覚えある?」

 

 独房となっている謹慎室で、マシュと向かい合っているオオガミが、持っていたスマホを見せる。

 マシュは首をかしげ、思い出そうとするが、全く思い出せない。というより、初めて見たというのが正しいだろうか。

 

「いえ、ありません。先輩のでは無いんですか?」

「俺のは別にあるんだけども、これはマイルームの棚の中にしまわれてたんだよ。しまった記憶は無いし、何よりも見覚えがないから悩んでたんだけど、これ、どうしようか」

「職員の誰かの物……って事は無いですもんね。先輩の部屋に行く理由がありませんし」

「うん。だから、サーヴァントの誰かのかなって思ってるんだけど、そんな現代的な人はいなかったような……勝手に見るのもどうかと思うし」

「先輩の部屋に仕舞ってあったのなら、むしろ意図的に置いていったのではないでしょうか。私は見ても良いと思うんですけど……」

「まぁ、それもそうか。それじゃあ、見てみるか……」

 

 二人は恐々としながらも好奇心のままに、スマホの電源を点ける。

 どうやらスリープモードになっていただけのようで、電源ボタンを軽く押すだけで点く。

 ロック画面は真っ黒で、時間だけが表記されているという、初期状態のままで、暗号などによるロックも掛かってない。

 不用心だな。と思いつつ解除すると同時に、画面がいきなり横向きに代わり、ピンク色に染め上げられる。

 

「おぉぅ。いきなりビックリした……なにこれ」

「あれ……この演出、どこかで見たような……こう、これを止めるためにどこかに乗り込んだような思い出が……」

「……あぁ、つまり、これは――――」

『BB~~ッ!! チャンネル~~!!』

 

 ――――つまりは、そういうことなのか。

 冷静に考えれば、うちのカルデアにはエンジニアがいたではないか。しかも、かなり優秀な方の。

 あの二人ならやりかねないな。と思い、冷静に電源を切る。

 

『ちょ、なにするんですかセンパイ! せっかくBBちゃん自ら落ち込んでいるはずのセンパイを心配して、こんなアホみたいに電池を喰うアプリを作ったって言うのに。なんですか。お前は望んでないってことなんですか? ハッ! もしかして、BBちゃんが残っている嬉しさとBBちゃんの丹精込めて作ったアプリに感動しちゃって言葉も出ないんですか? 嫌ですねぇもう。あれだけ一緒にいたのにそんな反応されると困っちゃうじゃないですか~。戻ったらたっぷりと可愛がってあげますからね。セ・ン・パ・イ(はぁと)』

「センパイ。このスマホを今すぐ叩き割りましょう」

「うぅむ、賛同したいけどちょっと待とうよマシュ。執行猶予付きだよ」

「無期懲役でカルデアの奥底に封印するか即刻死刑で粉砕で良いかと」

「BBに対して本当に殺意溢れてるね我が後輩ちゃんは!」

 

 消した瞬間に問答無用で点けられた電源と、怒濤の長台詞により、瞬間的にマシュは殺意を向けるのだった。

 オオガミはそんなマシュをなんとかなだめ、スマホを静かにベッドの下にしまうのだった。




 ツイッターで見て、思わず書いてしまった……これ、怒られたりしないですかね……めっちゃ不安なんですけど……


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冷静に考えると、一部の人は帰っても記憶持ってそうだよね(マーリンお兄さんに関しては今も見てる……?)

「マシュ。再び気づいたことがあるんだよ」

「今度はなんですか? それと、昨日隠したBBさんのスマホをください。叩き割りますので」

「その殺意はおいておこうマシュ。それ以上はキャラが壊れる。というか、すでに目がヤバイ。落ち着こうマシュ。まだ止まれる」

 

 ベッドの下のスマホを更に奥の方に追いやりつつ、マシュを落ち着かせて話をと戻そうとするオオガミ。

 マシュは渋々といった様子でオオガミの話を聞く体勢になる。

 

「それで、何に気付いたんですか?」

「そう、それだよ。冷静に考えると、マーリンお兄さん、今も俺たちの事を見てる可能性があると言うことに気付いたわけだよ」

「あぁ……そう言えば、あの方は徒歩で来れますからね。それがどうかしたんですか?」

「つまりだよ。今の状況を見て、笑っている可能性があると言うことだよ」

「『酷い言いがかりだな』。と言われそうな言い分ですね。帰ってきたら部屋の中が花だらけになってても知りませんよ?」

「あぁっ! マシュに見捨てられるぅ!!」

 

 割りと真面目に焦っているオオガミ。マシュはそれほど怒ってはいないのだが、本当に花だらけになっていたら困るな。とは思っていた。

 

「というか、ホームズさんはどこに隠れているんでしょう……いざとなったら、と言ってましたけど、どこかで見てるんでしょうか……?」

「たぶんね。というか、あの探偵はいつも何やってるんだろう……大体要らないところで出て来て場を荒らすか、重要なところに出て来て良いところをかっさらっていくってイメージが強いんだけど」

「そういう言い方は良くないかと。バレたらバリツですよ。先輩」

「なんというか、たくましくなったね。マシュ」

「先輩には及びませんよ」

「まぁ、伊達に人外って呼ばれている訳じゃないってことだよ」

「先輩……せめて人でいてください」

 

 本気のトーンでマシュは言う。

 とは言っても、実際普通の人だったらさっくり死んでる戦いがいくつもあったので、かなり複雑な気持ちなわけだが。

 と、そこでオオガミは唐突に思い出す。

 

「あ。ヤバイ。とんでもないことを思い出してしまった」

「ど、どうしたんですか先輩」

「いや……ぐだぐだイベントの時のちびノッブ達、処理した覚えがない」

「…………」

「…………えっと」

「どうしてそれを今思い出すんですか!! 一昨日の時点で思い出さないとダメじゃないですか!!」

「いやだってほら! 一応管轄はナーサリーだったし!! しかも、結構昔だし!! 覚えてなくても仕方ないと思います!!」

「それでもあのちっちゃいのは、昔の先輩なら一撃で気絶させられるくらいの威力はあるんですからね!?」

「ちょ、昔の!? 今なら耐えられるって言うことなの!?」

「あぁぁもう、どうしましょう……これ、バレたら不味いですよ……!!」

「ハッ! このためのホームズさん……!! なるほど……このためのバリツ!!」

 

 完全に錯乱している二人。

 とりあえず、トイレに行くと言って、ホームズを呼びに行くのだった。




 そう言えばこのカルデア、ちびノッブ生存してるんですよね。
 あと危ない物って何かあったかな……

 というか、それでわざわざ走り回るホームズさんかわいそう……


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聖杯をたたきつければみんな帰ってくれるかな(むしろ事件性が上がります。先輩)

「さて問題です。ここに聖杯があるわけですが、この行き場のない聖杯を使いたい場合、どうすれば良いでしょう」

「危険物という自覚を持ってほしいんですけど!! というか、どこから持ってきたんですかそれ!! 厳重に保管していたと思うのですが!!」

 

 マシュが割と真面目にオオガミから聖杯を奪おうと手を伸ばすが、自然と避けて行くオオガミ。

 普段からサーヴァントから強襲されていただけあって、回避スキルが異様に高いオオガミに、だんだんと攻撃を入れたくなってくるマシュ。

 はたしてどうやって攻撃を入れるか考えるマシュ。とりあえず顔の近くまで肘が近づいたので、顔面に叩き付ける事にした。

 

「ごぼぅあ!!」

「あっ! すいませ……やっぱ謝りません!」

「酷いッ!」

 

 聖杯を奪われ、肘鉄を顔面に入れられたオオガミはうずくまり、ピクピクと痙攣する。

 マシュは聖杯を奪ったものの、聖杯をどうやって戻してくるかを考える。当然、査問官達に見つかったら没収されることは確定しているので、隠し通しながら、更に保管室まで見付からないように行かなければいけないわけだ。

 

「ふふふ……マシュ。お困りのようだね……」

「先輩……!! 死んだはずでは……!?」

「うん。致命傷だけども死んではないよ。後、自然と亡き者にしようとして来るのはノッブ達で間に合ってるから。マシュまでそっち側に行かれると収集がつかなくなる……」

「別に亡き者にしようとしてませんよ。というか、先輩はどうあがいても死にそうにないような気がするんですけど……」

「おっと。不死属性をつけるんですか後輩ちゃん。それつけられると殺される感半端ないんで止めてくださいません? 具体的にはノッブとかに」

「どうして先輩はいつも信長さんに命を狙われてるんですか……」

「さぁ……? まぁ、実験台には良く使われてたけども」

「もしかして、改造とかされてますか……? 後、ふと思ったんですけど、リップさんの被虐体質の影響を受けてませんか? 具体的にはうつってません?」

「改造はされてないし、被虐体質がうつっても無い……はずだよ。うん。というか、スキルってうつるものなの……?」

「うつらないと思うんですけどね……でも、先輩は一応特殊な事例ではありますし……」

「えぇ~……というか、被虐体質を手に入れてもなぁ……あんまり嬉しくないというか、なんというか……」

 

 かなり微妙な気分になるオオガミ。

 被虐体質を手に入れてどうすれば良いのかと悩むが、別にいつもと変わらないという事に気付いた。

 マシュはその気持ちの変化に何となく気付き、『この先輩、そろそろ末期かもしれない』と思うのだった。

 

 なお、オオガミが殴って治らないのは、過去に実践済みの模様。




 実際、この聖杯の扱いってどうなってるんでしょうね。まぁ、残ってる人と一戸もない人で別れてるとは思うんですけど……


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何時になったら解放されるんだろうね(今年中には解放されると嬉しいですよね)

「さて。明日が今年最後な訳ですが、後輩ちゃん。実は今まで人理修復で見れなかった笑ってはいけないシリーズを今年こそは見たいわけですよ。なのに、こんな部屋なのですが、どうすれば良いと思いますか」

「あの、録画しておけば良いのでは……?」

 

 真剣な表情で言うオオガミに、マシュは困惑したまま思ったことを言う。

 しかし、すでにそれを実行したオオガミは、真剣且つ哀しみに溢れた表情で、

 

「ここ、テレビ局入ってない……」

「……ここ、一応僻地で極秘エリアですもんね……」

 

 テレビがあったりするが、実際電波が入らないので、BBが弄ったり、ノッブがゲームしたりするくらいだ。

 刑部姫は自室にデスクトップを持っていたが、あれは刑部姫の私物である。召喚したら付いてきた事から、間違いはない。更に言えば、刑部姫が帰るときに一緒に消えたのも、理由としては十分だろう。もう無いし。

 

「うん、まぁ、なんだ。給料も入ったし、Blu-ray買えば済む話なんだけどさ……こう、共有できない寂しさはあるよね……」

「先輩……」

「それに、ネットを覗くとネタバレが豊富にあるところとか」

「それはネットを見るがまず間違ってるかと。そういう場合は自分が実際に見るまではネットを覗かないのが一番ですよ」

「うぅむ……仕方あるまい。マーリンお兄さんが帰ってきたら語ってもらうとしよう。だって、見てるだろうからね!」

「活用法がどこかずれてますよ先輩!! 後、それだとネットを見るのとなんら変わりません!!」

 

 使えるならば、グランドキャスターですら使って番組の内容を知ろうとするオオガミ。

 突っ込みどころが多すぎる活用法と、本末転倒というダブルアタックで、マシュはもう疲れてきた。

 こんな、ボケまくる先輩と四日も同じ部屋で過ごしているのだ。突っ込み疲れても仕方がない。

 問題があるとすれば、『突っ込まない』という選択肢が欠けているところか。

 

「まぁ、その問題はどのみち帰ったら解決するから大丈夫だとして、疑問なのは、明日解放されるのかって事だね。Aチームのマスター達も心配だけども、何よりもこの独房状態の謹慎室で大切な年終わりを迎えたくはない」

「そうですね……確かに、このままだと出してくれる気がしませんからね……せめて食堂で年を明かしたいものです」

「うんうん。まぁ、やる気を出せば外に行けなくはないんだろうけどね」

「ややこしいことになりそうですから、止めてくださいよ。先輩」

「流石に皆の命を危険にさらしてまで外に行こうとは思わないけどさ。というか、出たとしても戻ってくるしかないし。なにせ、ここにどうやって来たかを知らないからね!」

「あ~……そうですねぇ。ドヤ顔で言うことではないですけど、確かに分からないですよね……」

 

 オオガミの意見に、頷いて肯定するマシュ。

 

「さて……では、マシュ。明日解放されることを祈って、今日はぐっすり寝ようか」

「はい。寒くならないように、ちゃんと毛布を掛けて寝てくださいね。先輩」

 

 そう言って、二人はそれぞれのベッドで横になる。




 すっごい今更なこと言いますね。この四日間。この部屋に……

 ダ・ヴィンチちゃんと職員がいますからね!


 うん、まぁ、悲鳴案件をいくつかやってたような気がしなくもないんですけどね。これ、もしかしなくても、やらかしまくってるね。オオガミ君。


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年明けで良いかと思ったけど、機材完全紛失じゃね?(それよりも、タイトル詐欺の可能性が出てきたことを考えた方がいいだろうに)

 二部・序のネタバレあり。無理だと言う方はブラウザバック推奨です。







「どうしてこう、とんでもない目に会うものかな。というか、召喚してもここって狭いから辛いよね……」

「後輩が倒れているというのに、ずいぶんと余裕だね君は」

 

 ホームズの言葉に、苦い顔で返すオオガミ。

 余裕があるというのは、場合によっては困りもので、この状況下ではじわじわと不安を煽ってきているようなものだ。

 

「正直、マシュには戦ってもらうつもりは無かったんだけどさ……マシュが疲弊したのは俺のせいだよ全く。誰か呼べれば良かったんだけど……」

「それはどうしようもない。召喚はこれからになるだろうね。だが、それさえ済ませてしまえばマシュ君に楽をさせられるというのは確かだろう」

「うん……それまで、マシュが戦わなくても良いならそれが一番……」

「あぁ、任せてくれたまえ。マシュ君のいない間、前線に出ようとも。まぁ、全てと言うわけには行かないだろうけどね」

「だよね……はぁ。ダ・ヴィンチちゃんも戦えないくらい小さくなっちゃったし、マシュは今までの半分以下まで弱体。頼れるのはホームズだけだっていうのに、当の本人は参戦出来ない可能性もあるし……あれ、詰んでる……?」

 

 気付いてはいけないことに気付いたオオガミ。

 ただ、詰んだと言いながらそこまで絶望していないところを見るに、本気でそうは思っていないのだろう。

 続いた言葉からも、それを知ることはできた。

 

「……ねぇ、カルデアを氷付けにされた上で乗っ取られたってことは、年末企画用のアイテム丸ごと奪われてない?」

「そうだね、流石にそこまでは回収していない。だが、あれは一応使えないようにしてから来たから技術が奪われたりはしないだろう」

「あ~……なるほど~……完膚なきまでに止めを刺したわけですねぇ……さっすがホームズ先生……」

「ははは。そんなに褒めないでくれよ。照れるじゃないか」

「皮肉だと分かっていてその言葉を吐けるホームズ先生にはびっくりだぁ! シバキ倒してぇ!!」

 

 割りと殺意高めに言うが、全く気にしないホームズ。平然としている辺り、やはり肝が座っているというか、度胸があるというか。

 もしかしたら変人なのかもしれないが。

 

「まぁ、もういいや。年末はもう終盤。というか、もう年明けるし」

「いや全く、君の年末は基本怒濤の展開が多いね!」

「連続なだけだけとね!? もう年末は平和に過ごせないのは分かったよ! 来年は早めにやって撮影した後に、年末に皆で見ることにしよう!」

「季節感は重視して、冬にやるのが一番だけどね! 来年は楽しみにしているよ!」

 

 一周回ってテンションが高くなった二人。

 この二人を止められる者は、きっといないだろう。




 えっと……カルデア出ちゃったんですけど……これ、どう見ても二部やっている間はカルデアに帰れないですよねぇ……改名するべき……?


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日常
先輩。くれぐれも警察沙汰になら無いようにしてくださいね?(マシュの信頼がとても低いんですが)


 公式が平然とカルデアで正月を始めたのでそれに倣ってこちらもコンテナ型装甲車からよく分からない謎空間に逃げ込みで。
 まぁ要するに、カルデアという解釈で良いかと。


「「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします」」

 

 新年らしく、新年の挨拶をする二人。

 現実のような夢から覚め、黄金の蜂蜜酒やタコという嫌な予感しかないワードを手に入れて帰ってきたその日。

 とりあえずノッブはシバキ倒そうと思いつつ、マシュと共に本日のメインイベントである新入りさんへの挨拶だ。

 

「アビー! 調子はどう?」

「あ、マスター! 私は元気よ? 皆も優しいし」

「まぁ、これでも面倒見のいい人は多いですからね。ノッブさんとか、小さい子達に人気です」

「うん。ノッブは人気あるよね。異様に」

「そうなの? じゃあ、後で会ってみたいわ。それで、マスターはどんな用事で来たのかしら?」

 

 今回の主役で、可愛く小首を傾げるアビゲイルに、思わず抱き締めたかったり抱き上げたかったり高い高いをしてみたくなったりしたのだが、直後に斜め後ろから走った殺意に、背筋を凍らせて言葉を必死で選ぶオオガミ。

 

「えっ……とぉ……そ、そうそう。ちょっと挨拶に来たんだよ。手も空いて、暇だったしね」

「そうなの? なら、私と遊んでくれますか? マスター」

「もちろん。しばらくはホームズが頑張るし」

「先輩。遊びすぎて動けなくなるとかはやめてくださいよ…?」

「流石に体力管理くらいは出来るから……」

「私も、マスターが倒れるような遊びはしないわ。もしかしたら他に遊んでくれる子がいるかもしれないし」

「それなら良いんですけど……新年だからっていって、ホームズさんに任せっぱなしもどうかと思うので、私も手伝えるところがないか聞いてきますね」

「そもそも、やることがないから今こうやっているはずなんだけど……マシュ……? マシュ~?」

 

 颯爽といなくなるマシュを、オオガミは止められずにそのまま見送る。

 アビゲイルは少し考えると、

 

「やっぱり、マスターはマシュさんのところに行って頂戴。私はここを探索してるわ」

「う、うぅむ……挨拶して早々別れるのもどうかと思うけど、まぁ、アビーがそう言うならマシュのところに行くよ。じゃあ、また後でね」

 

 オオガミはそう言うと、マシュを追っていく。

 アビーは手を振りつつ見送ると、一度深呼吸してから、

 

「そこに隠れているのは、誰?」

 

 本棚に向かって声をかけるアビゲイル。

 誰もいないはずの空間で、しかし、

 

「あら。あらあら。見つかっちゃったわ」

 

 確かに応えるものはいた。

 一冊の本が本棚から出てくると、本棚から少し離れて光り出す。

 光が収まると、そこにいたのは一人の少女。

 

「えっと、私は誰かって質問よね。私は……うん。ナーサリーよ。ナーサリー・ライム。お友達になりましょう?」

「私はアビゲイル。アビゲイル・ウィリアムズ。アビーって呼んで頂戴!」

「えぇ。よろしくね、アビー。私の事はナーサリーって呼んでね!」

 

 二人は自己紹介を終えると、楽しそうに笑うのだった。




 アビー! アビーですよ! 福袋からアビー!!

 違うんですよガッデム!! 嬉しいんですけど、それはそれですよ! メルトリリスは何処に行ってしまったんだぐあーーーーーー!!!

 はい。6日を決戦日にした私です。
 私の戦いはこれからだ!!


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どうせ作り終わらなかったものだし、暴露しても良いよね(どうして資料をしっかり持ってきてるんですか)

「さて。では、持ってこれなかった、完成予定だったノッブの発明品を紹介します」

「どうしてそんなことを……」

 

 設計資料を持ち、満面の笑みで今にでも語りたそうにしているオオガミに、マシュが何とも言えない表情で聞く。

 

「私が頼んだのよ。もう一度召喚できたら、作ってもらいたいもの」

「なるほど……これは信長さんが大変な目に合うだけなのでは……」

 

 悟ってしまったマシュ。しかし、隣で楽しみにしているアビゲイルはそんなことは気にしない。

 

「では、まず一つ目。移動型こたつ!」

「移動型こたつ! 何かしらそれは!! どんなものなの?」

「アビゲイルさんが来た時にはカルデアごと持って行かれましたもんね……というか、なんでそんなものを作ってたんですか……」

「年末のイベント兼実用の為に作ってもらってたんだけど、片手間だから時間がかかった上に年末に起こされた事件のせいで粉々ですよ。で、こたつだね」

 

 オオガミはそう言うと、資料を見せる。

 それには、こたつの形と、走行方法まで書いてあった。

 

「まぁ! こたつと言うのは、机に布団が合わさってるものなのね! 暖かそうだわ!」

「なんですかこの、変形するっていうのは。どうしてあの人は変形させたがるんですか……」

「さぁ……? なんか、高確率で変形するよね……いや、たぶん印象が濃いのが変形するだけだね。うん」

「BBさんは変形させませんよね……なんでしょう……何かあるんでしょうか……」

「ん~……原因は何処だろう……ロボット物アニメを見せすぎたせいかな……」

「おおよそそこかと。というか、犯人分かり切ってるじゃないですか」

 

 犯人特定。やはりオオガミだった。

 

「ねぇマスター! 他にはないのかしら?」

「そうだね……じゃあ、第二弾! ワクワクスロットル!!」

「それ、CCCの時に一番地味に苦労した奴じゃないですか!!!」

「何かしら? これは一体どういうものなのかしら?」

 

 どこかで見たことのあるスロットマシン。

 絵柄はタライだったり落とし穴だったりしているが、この悪意に満ちているスロットマシンは、やはり見覚えがあり、地味な嫌がらせや、逆に嬉しいことをしてくれたりしたマシン。

 

「このスロットはね。揃った絵柄の事象が、狙った人物に自動発動するというスロットだったんだよ。ちなみに、年末のイベント内イベント用アイテムということだよ」

「これ、言っちゃって大丈夫なんですか……? 次の年末に使えます……?」

「まぁ、無理だろうけども」

「……信長さんとBBさんが必死で頑張ってたのを無に返すとは……先輩、酷いです」

「まぁ、作りかけの物も丸ごと消し飛んだし、許されるはず」

 

 許されそうにないが、実際に罰を受けるのはオオガミなので、あえてマシュは何も言わないのだった。

 

「マスター! もっと教えてちょうだい!!」

「うむ! 知ってる限りは教えるとも! じゃあ次は――――」

 

 そう言って、オオガミは次々と教えていくのだった。

 なお、一応自分が提案したものしか暴露していないので、おそらく最低限の罰で済むはずだと、オオガミはたかをくくっているのだった。




 今年末に持ち越せばまだ使えそうなアイテムですけど、正直スロットマシンは持て余しますって。無理ですよこれ。

 ただ、移動型こたつはちょっと欲しい。扉に突っかかって動けなくなりそうですけど。


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QPが足りない……(マスター。種火は大丈夫なの?)

「うぅむ、QPが足りない」

「えぇっ!! どうするの、マスター!」

 

 情報通りなら足りているはずの種火と素材。

 だが、必要QPは現在持っている量をを遥かに上回りそうな雰囲気。

 ちなみに、アビゲイルが宝物庫案を出さないのは、単純に教えておらず、連れていってもいないからである。

 その理由をオオガミに問うと、『うちの可愛いアビーを不良になんてさせません!』とのこと。再臨という最大の敵をどうするつもりなのだろうか。あと、あからさまに不健全な自由組(ノッブ)

 オオガミが頭なので、悪い子一直線ではなかろうか。

 

「レベル90スキルマまでなら行けるはずなんだよ……ただ、その先の聖杯が問題なんだよ。聖杯だけでかなりのQPを持っていかれるからなぁ……!!」

「大変ね……でも、メルトリリスさんの為に頑張るんでしょう?」

「うん……まぁ、後少しだと思うしね! なんとかなるはず!」

 

 出来るだけポジティブに考えるオオガミ。

 とはいえ、そこまで大幅に足りないわけではないので、おそらくメルトリリスピックアップ当日までには間に合うだろう。間に合わなかったとしても、全力で回れば良いだけだ。気を張る必要もないだろう。

 

「マスターが大丈夫だと思えばきっと大丈夫ね。肩の力を抜いていきましょ」

「うむ……まぁ、全ては明々後日(しあさって)のガチャ結果にかかっているわけだけども。これはきっとアビーがいれば解決するはず! アビーの力を信じてるからね!」

「白銀の鍵は使えないけど、祈ってるわ。マスター」

 

 そう言って微笑みかけてくるアビゲイルに、オオガミは心の中でガッツポーズを取る。ちっちゃい暴力集団(ナーサリーを筆頭)と違い、平和空間だった。

 彼女達が再召喚されるまで、オオガミの平穏は続くのだろう。アビゲイルが再臨しなければ。

 

「それにしても……種火も結構ギリギリな感じだよね……一応オール種火を650以上は集まってるはずだけど、これで足りるかどうか」

「それなら、種火を取りに行きましょう。マスター」

「ん~……そうだね。今はいつもの二倍回れるし、QPは後で悩むとして、今は種火を回収しようか」

「えぇ、頑張るわ!!」

 

 おー! と手を振り上げ、やる気を出すアビゲイル。

 オオガミはそんなアビゲイルを微笑ましく思うが、昨日になってようやく彼女が凄い力持ちであることを知り、茨木レベルの力にを考え、怒らせることは最小限にしておこうと思っていたりする。

 もちろん、そもそも怒らせるつもりなどないのだが。

 

「じゃ、レッツゴー!」

 

 そう言って、オオガミとアビゲイルは種火を回収しに行くのだった。




 すっかり忘れていた筋力ネタ。というか、耐久と幸運以外はバラキー以上じゃないかこの幼女。普通にパラメータ高い……でも、再臨させると不良になっちゃうからなぁ……これ以上ちっちゃい暴力集団を増やすわけには……しかも、今回は精神攻撃のプロですよ……


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うん、まぁ、スキルマの難関だよね(黄色のクッキーはいつも無い)

「とりあえず、冷静になりました」

「突然どうしたの? マスター」

「今度はどんなとんでもない事を考えたんですか」

 

 突然冷静になった宣言をするオオガミに、一体どうしたのかを問うアビゲイルと、今度はどんな悲劇を思い付いたかを聞くマシュ。

 もういい加減マシュのオオガミに対する信頼は分かりきっているので、あえて突っ込まない。

 

「今回は至極全うなことです。うん。QP以前の問題だよ」

「それはどういうものかしら?」

「……あぁ、なるほど。それで珍しく青い顔をしているんですね」

 

 マシュは気付いた。いつも資源を見ている彼女だから気付けたと言っても良いだろう。

 つまりは、

 

「うん。槍の秘石が足りない」

「どうして確認しなかったんですか」

「槍の修練場は終わっちゃったわ。どうやって集めるの?」

「そりゃ、フリークエストを回るしかないかと」

 

 獲得率が根本的に低いのにもかかわらず、更に獲得率の引くいフリークエストを周回するという、どう考えてもバカな行為だ。

 この前のボックスガチャで必要量手に入れられなかったことが一番の問題だろう。

 

「場所は何処なんですか?」

「アガルタ。割と真面目に難易度高いですわ」

「あ~……そうですよね……最近のに近ければ近いほど、フリークエストの難易度、高いですし」

「私はお手伝い出来ないのかしら?」

「アビーはまだ無理かなぁ……というか、単体宝具だから無理かなぁ……」

「そう……全体じゃないのが悔やまれるわ」

 

 全体宝具云々以前に、レベルが足りてない上に最後が異様に体力があるので、あまり関係なかったりする。

 

「うん。要するに、地獄の周回が始まるわけですよマシュ先生」

「これは先輩がすっかり忘れてたのが問題ではないかと。槍の秘石はもっと早く気付ければ用意できたと思うのですが」

「分かるけども! そうはっきりと言わなくても良くないですかねマシュ先生!!」

「マシュさん、ハッキリ言うわよね。応援してるわ、マスター」

「うん、まぁ、悪いのはこっちだからいいんだけども。というか、これはたぶん誰かに捧げたんだったかと。自業自得かな……」

 

 一応自分のやったことを鑑みて、後悔も反省もしているものの、とりあえず採集しに行かなければならないという現実を前に渋るオオガミ。

 

「ほら、早く行きますよ。先輩」

「私も行くわ。面白そうだもの」

「うああ……また金リンゴセルフ食べ放題の時がやってきた~……!!」

 

 クリスマスの時に食べた量を超える量が補充されたので、ある程度は融通が利く。が、それはそれ。エンドレス周回は精神的にダメージを与えるのだ。

 当然、自業自得なので情けをかける余地はないのだった。




 いやぁ……想定外ですよね。はい。具体的には14個ほど足りません。

 アガルタ回るぞぅ!!(バリバリ


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槍の秘石がフリクエで落ちるなんて迷信では(異様に出ませんでしたよね。諦めましょうよ先輩)

「はっははは……いやぁ……うん。根気が足りないのか、運がないのか、まさかこれだけ出ないとは思わないよねぇ……」

「ますたぁ……私、疲れちゃったわ……」

「見てましたけど、かなり食べてましたよね……10個くらい食べても一個も出ないとは思いませんでした……」

 

 帰還し、ぐったりと倒れたオオガミとアビゲイル。

 マシュも、予想外の事態に同情する。

 

「うぅむ……これはあれか。やっぱり修練場を待つしかないというわけか」

「一日は無理になってしまったわ……うぅ……」

「アビーの気にすることじゃないよ。まぁ、次の槍修練場の時に絶対終わらせるけどね」

「そうですね。アビゲイルさんのせいではなく、先輩のせいですし。砂集めをサボったツケが回ってきたのかと」

「ツケが回ってくるの、早すぎじゃないですかね」

 

 苦笑いで言うオオガミに、微笑んで返すマシュ。

 すると、アビゲイルは起き上がってスカートの汚れを払うと、スタスタと何かを探しに行った。

 マシュとオオガミはそれを見送り、首をかしげる。

 

「アビゲイルさん、何を探しに行ったんでしょうか……」

「さぁ……? まぁ、俺もお腹空いたし、何か食べようか」

「良いですけど……誰が料理をするんですか?」

「ふっふっふ……それは俺がやるとしよう。エミヤ師匠直伝の料理スキル、今ここで使うときだよっ!」

 

 ドヤ顔で言うオオガミ。マシュは驚きで目を丸くする。

 

「せ、先輩? 無理しなくても良いんですよ?」

「無理じゃないやい! というか、そんなに料理するのが想定外なんですか!」

「だ、だって、先輩ですよ……? 私、そこまで出来るとは思ってなかったんですけど……」

「失礼な!! というか、結構やってたと思うんだけどね!? エウリュアレにパフェ作ったりとか!」

「あれはその、先輩の場合はただ乗っけてただけのような?」

「日に日に上達していってたのに!! 酷いっ!」

 

 今までのは料理判定では無いようだった。

 なので、今回はその評価を覆すため、料理に挑戦するわけだ。

 

「じゃあ改めて、エミヤ師匠と頼光さんに教わった料理を見せてあげるよ!!」

「師匠増えてますね、先輩。他にもいたりしません……?」

「えっ……まぁ、後はパライソさんとか、ノッブとかBBとかいるけど……」

「待ってください後半二人が不安要素なんですけど!!」

 

 明らかにゲテモノ専門のような二人。

 だが、オオガミは平然と、

 

「大丈夫。5回に1回くらいでゲテモノに変わるだけだから」

「十分凶器です。なので、ゲテモノになったら直ちに棄てるか、信長さんとBBさんに食べさせましょう」

「最近、後輩の性格が凶暴になってる件について」

 

 ついにノッブとBBにまで矛先は向き始めた怒り。

 まぁ、毒を盛られる可能性を作ったので、自業自得ではあるのだが。

 

 その後、しばらくオオガミは料理に挑戦し続けるのだった。




 あははははは。私、諦めました。10個くらい食べて一個も出ないとか、やってられないので。

 諦めて修練場待っていた方が明らかにメルトを早く育てられそう……スキル一個犠牲になりますが。


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何もかも、真っ白に燃え尽きたぜ……(いつか来るかもしれない未来に託しましょうか)

「あ~……もうやめて良い? 人理修復やめて良い? だってほら、メルト来なかったし」

「先輩待ってください。そんな今にも死にそうな顔しないでくださいまだチャンスはありますよきっと!!」

「そうよそうよ! 私はマスターが冒険に連れていってくれるって言ってたから来たのに、まだ1回も冒険してないのよ!?」

 

 今にも消えそうな状態のオオガミに、本気で慰めにかかるマシュとアビゲイル。

 メルトリリスが出なかったことがそれほどまでに心に響いたのだ。死のうか悩むくらいには。

 

「あ~……だってさぁ……無理じゃん。来てくれないじゃん……絶対嫌われてるよねこれ……なんか、準備してたのがアホらしくなってきた」

「そ、それは……いえ、無駄ではないかと!! まだ使い道はありますし!!」

「それはそれだよ。結局メルトが出なかったなら実質意味ないし」

「でも、他にもいろんな人が来てくれたわ。機械のお姉さんと、竜殺しのお兄さん、あと、その、上半身裸のお兄さんとか……」

「うん、来てくれたけど……正直アビーの方が数倍良いので問題なし。というか、育てられる気しないし」

「あ。後、紫色の鎧を着た――――」

「アビゲイルさん。あの人は気にしなくて大丈夫です。あれはダメ人間ですので。出来るだけ見ないようにしていてください」

「ひゃぅ!? わ、分かったわ……?」

 

 アビゲイルに被せるように言ったマシュに、アビゲイルは若干怯えを含みつつ了承する。

 

「マシュが瞳に殺意を宿してる……なんというか、いつもの五倍くらい」

「いつものと言われても、私は殺意を宿した覚えはないんですけど……」

「マシュさん、たまに怖くなるわ……今日のは一段と怖かったけれど」

「まぁ、うちの可愛い後輩はこういうちょっと怖い面があるけど、基本いい子だからね。怖くなるのは、かなりはっちゃけたりとか、ふざけたりした時だね。今回は全く別の要因だけど」

「紫色の騎士様は禁句なのね。分かったわ」

 

 アビゲイルは両手で口を押さえ、もう言わないと態度で示す。

 

「さて……うん、そうだね。メルトガチャがやってる間に使える石はもうほとんどないから、今回も諦めで。んで、次回の復刻まで回さなきゃいいわけだ」

「先輩……それ、もうすでに何度も言っていますが、一回も出来てませんよね。なんだかんだ言ってエレシュキガルさんの時に使っちゃってましたし」

「……まぁ、次のエレちゃんでも使いそうだけども」

「ほら……だからダメなんですよ……次は頑張ってくださいよ?」

「うぅ……まぁ頑張るけども」

「マスター、私も協力するわ。マスターが石を使おうとしていたら隠せばいいのよね?」

「えっ……いや、えっ?」

「そうですね。先輩から隠しちゃいましょう。そうすればきっと使えませんから」

「あ、え、そう言う方向に行きます? マジで? えぇ~……」

 

 落ち込んでいるオオガミを目の前に、石を隠す事を決意する二人なのだった。




 え~……普通に大爆死ですね。えぇ、はい。心の底から動けなくなりそうな勢いで。

 今回来てくれた金鯖は、ジークさん、フランちゃん、剣スロット、新シンさんです。
 そして、個人的にちょっと上向き思考になれた礼装は、2030年と、カレスコ。ともに初ゲットですよ。やったー(白目


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現実は大体こんな感じだよね(時には諦めも肝心ってことだよ)

「まぁ、ね? やった。やったんですよ、必死に。でもさ、無理じゃないですか。どう見ても詰んでるじゃないですか。だったらもう、諦めて次回を待つのが賢い方法ですよ」

「まぁ、そうですね。先輩はそろそろ諦めた方がいいかと。ちゃんと寝てください」

「マスター……顔色悪いわよ?」

 

 何があったかなど、聞くまでもない。

 死んだ魚のような目で明後日の方向を見ているオオガミを見れば一目瞭然。昨日と同じというわけだ。

 

「最初から、こうなるような気はしていたんだよ。うん」

「あの、先輩。割りと真面目に休んでください。なんというか、セイレムを思い出しそうなくらい最悪な顔色です……!!」

「流石にそこまで酷くはないと思うんだけどなぁ……」

「本当に酷い顔よ? お医者様に見てもらった方が良いんじゃないかしら……」

「しばらくすれば治ると思うんだけどね? 具体的には一週間くらい」

「だいぶありますけど……いえ、それくらいならなんとか。ちゃんと治してくださいね?」

「無理はダメよ。あ! 私も一緒に寝てあげましょうか?」

「いやいやいや。流石にそれはアウトかな。見た目的に」

 

 オオガミの言葉に、首をかしげるアビゲイル。

 見た目的に。という言葉でふと思い出したのだが、清姫も冷静に考えるとかなり不味いということに気付いた。字面にするだけでもかなり酷い。

 まぁ、そもそも彼女の行動は、年齢を考えずともかなりのものなのだが。

 オオガミは、そんな思考を振り払うと、アビゲイルの頭を撫でつつ、

 

「種火は余ってるから、そのうち一気にレベル上げるね。流石に600個越えてるんだし、大丈夫だと思うから」

「本当? 皆と並んで戦えるようになるのが楽しみだわ! じゃあ、そのためにも早く元気になってね。マスター!」

「任せといて。回復力なら自信あるから」

「そうですよね。毎度なんだかんだ言って、すぐに起き上がってきますし。今回も早めに回復してくださいね」

 

 マシュはそう言うと、アビゲイル連れていく。

 元気に手を振るアビゲイルに手を振り返し、見えなくなった頃。

 

「新シンさん。いる?」

「あいよー。呼ばれて飛び出てってね。何か用かい? マスター」

「うむ。個人的にかなり重要な用事だよ」

 

 突如出現するは新シンさんこと、新宿のアサシン。オオガミ的には、書けるけど読めない名前第一位だ。

 よって、人の名前を覚えるのが苦手で、且つ漢字で読めないので愛称と称して新シンさん呼んでいる。

 

「さて、新シンさん。変装。お得意ですよね?」

「そりゃまぁ、当然。得意分野だけども、誰かに化けて欲しいということ?」

「まぁ、そういう感じ。お願いできる?」

「もっちろん。じゃあ、要望をどうぞ」

「じゃあ――――」

 

 その言葉を皮切りに、新シンさん大変装大会が始まるのだった。




 新シンさんが来たらやろうと思っていたこと。
 ついでにナーサリーも入れて、同じサーヴァントが三人! って言うのもしてみたかったり。


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先輩は引きこもってますね(意外と暇ね。何かないかしら)

「先輩、起きてきませんね……」

「マスターだって人間だもの。疲れることはあるわ。特に、精神的に」

「……まぁ、目立った事件もないですし、問題ないですね。ゆっくりさせてあげましょう」

 

 そう言って、緑茶を飲むマシュ。

 アビゲイルもそれを見て飲んでみるが、苦くて舌を出す。一緒に出ている和菓子を食べても、口の中の苦さは若干残っていたりする。

 

「マシュさん。どうしてそんなに普通に飲めるんですか?」

「やっぱり苦いですか? うぅ~ん……信長さんがいれるとナーサリーさん達にも人気なくらいおいしいんですけど……」

「そうなの? むむむ……私も飲んでみたいわ……」

「早めに召喚出来るようになれば良いんですけどね……ただ、信長さんの茶室は無くなってしまいましたし、お茶をいれるには召喚した後もしばらくかかるんじゃないかと」

「お茶をいれるための部屋があるの!? びっくりだわ! どんな部屋なのかしら!!」

「確か写真があったはずです。見てみますか?」

「見るわ! 他にも写真は無いかしら?」

 

 ぴょんぴょんと跳ねながら、写真を催促するアビゲイル。

 マシュはその姿を見て、何処にしまったかを思い出す。

 

「たぶん、ホームズさんが回収してくれてるはずなんですけど……」

「私も一緒に探すわ! 二人で探した方が早いはずよ!」

「はい。お願いします」

 

 そう言って、ホームズが回収してきた荷物の中からアルバムを探し始める二人。

 意外とサーヴァント達が置いていったものが目立つが、今は置いておく。

 

「見たことないのがいっぱいね。これは何かしら?」

「それは……確か、信長さんが作った懐中電灯だったかと。手回し発電機付きで、電池が無くても再利用できるので、何かと便利な物ですね。まぁ、作った原因は何か企んでの事だと思いますけど」

 

 手回し発電機の他に、つまみがついていて、回すとライトの色を変えられるという遊び心付きの懐中電灯。他にも、ライトの明るさも変えられたりする。

 作った理由は、手元に明かりが欲しいというだけの、意外にも普通としか言えない理由だったのだが、いつの間にか遊び心が加わり、気付いたらサイズが大きくなってしまい、どう処分しようか悩んでいたところ、その利便性から休憩室に置かれたアイテムだったりする。

 ただ、最終的には『バックライトにするために巨大化しても良いんじゃね?』と考えていた辺り、やはり企んでいたのではないだろうか。

 

 そんな裏話を知らない二人は、黙々と探し続け、

 

「アビーさん。見つかりました?」

「え~っと……たぶん、これかしら?」

「あぁ、それです。ここにありましたか」

 

 そう言って、取り出したのは黒いアルバム。

 ちなみに、カメラも、プリンターも、安心と信頼のダ・ヴィンチちゃん製だ。

 

「写真もちゃんと残ってますね。見てみましょう」

「楽しみだわ。私の知らないカルデア……一体どんな冒険をしていたのかしら!」

 

 そう言って、二人は最初のページを捲るのだった。




 あまりタイトルが関係なくなってきた今日この頃。あれ。前から関係なかったような?

 しかし、ノッブがいなくなってから明かされる発明の数々。不思議ですね……本人がいるときはほとんど出なかったのに……


 さて。そろそろアビーとマシュとオオガミの三人での会話がネタ切れしてきた……というか、ノッブの発明品に流れている辺りほぼ最初っから……


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引きこもってもやること無いと暇死する(引きこもり期間って、何なんでしょうね)

「ぐぅ……こんなことだったら、何かゲームでも貰っておくんだった……!!」

「刑部姫さん、携帯ゲームもかなり持ってましたもんね。ですが、一応自腹らしいですよ?」

「えっ!? 稼いでたの!?」

 

 カルデア内限定の販売ではあったが、刑部姫は本を出していたりした。今は脱出の際に紛失してしまったので誰も持っていないが、一部のサーヴァントも読んでいたとか。

 ちなみに、オオガミがいるのは、引きこもっていてもやることが無さすぎて暇だったからである。

 

「私も見てみたかったわ。一体どんな本だったのかしら」

「さぁ……? 私も見てみたかったのですが、なぜか皆さん、見せてくれなかったんですよね。不思議です」

「ん。まぁ、年齢制限掛かってたらしいからね。俺も中身は知らないよ」

「年齢制限……何か、嫌な予感がするのですけど……」

「うん。ノッブは知ってるっぽかったんだけど、全力で話を逸らされたからね」

「どうしてそこで問い詰めなかったんですか」

「なんというか、問い詰めたら殺されそうな勢いだった。具体的には、黒ひげからバレンタインのお返しを貰ったとき並の危険な感じだったよ」

「……今度刑部姫さんに会ったときは少し聞いてみましょうか……」

 

 なんとなく、マシュが不穏な雰囲気を漂わせているが、帰って来たサーヴァントのうち、一体何人がマシュの説教コースに行くのか。ちょっと楽しみにしているオオガミがいた。

 

「マスター。私、遊びたいのだけど、何かないかしら?」

「ん~……あぁ、もしホームズがアイテムを全部持ってきてくれてるなら、あったはず」

「あぁ、そういえば、一つは持ってましたね。たぶん持ってきてくださってると思うのですが……」

「私も探すわ。早く遊んでみたいもの!」

 

 二日連続で荷物漁り。だが、まるで疲れを見せないアビゲイルに、喜んで協力してもらう。

 実際、かなり重い荷物もあるので、小さいとはいえ力持ちな彼女が協力してくれることに文句はない。

 

「しかし、ホームズもよく持ってきてくれたよね。こんな大荷物」

「そうですね。たぶん、カルデア脱出までは暇だったのではないかと。なんだかんだ、ちびノッブ達の時はお世話になりましたし」

「あの早さでの登場……事前にわかっていたのか、気付いて駆けつけたのか、微妙な判定だよね」

 

 隠れていた場所も謎のままなので、もしかしたら近くだったのかもしれない。という可能性も捨てきれない。名探偵にも、想定外の事はあるのだろうし。

 

「っと、これかな。バッテリーは……うん。まだ残量はあるね」

「その小さい機械がそうなのかしら?」

「うん。カセットも入ってるし、遊べるね。問題は一人用というところだけど」

「意味ないわ!?」

 

 せっかく見つけたゲーム機も、アビゲイルの一言で再度しまわれることになり、探してる最中に見つけたUNOで遊ぶことにしたのだった。




 メルトピックアップ再来!! まだチャンスはある!! 願いよ届けぇ!!

 あ、最後に見つけたのは、遠い昔のP◯Pさんです。ノッブによるFFは懐かしい話です……


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ダ・ヴィンチと七人の贋作英霊
ボックスガチャは嬉しいけど、ボックスの中に石がないのはどうかと思うわけですよ(交換所だと個数限られるんですけどっ!!!)


「いくら復刻でも、最新ストーリーが決死の脱出をしている最中にやるのは、流石だと思うよ。うん。判定的には回想か走馬灯か。どっちがいい?」

「回想……ですかね……?」

「それだと、私がいる事が不自然になってしまうわ。でも、そうすると不思議ね。あ、夢と言うのはどうかしら?」

「あぁ、それが一番かも」

 

 アビゲイルの発案に納得する二人。

 夢ならば問題ない。ちょっとアビゲイルが不良っぽくなってるのも、夢なのだから問題ない。

 

「じゃあ、ここからは夢という事で」

「誰に向けての宣言なんですか……」

「宣言は大事だよ、マシュ。それだけでフラグが立てられることもあるんだから」

「何と言いますか……今日の先輩、いつもと雰囲気違うような……?」

 

 今回はだいぶメタ要素が多いのが原因かもしれないが、現在の復刻がぐだぐだの雰囲気を感じるので、現在車内にはセルフぐだぐだ粒子が蔓延(まんえん)していたりする。

 

「それで、今回はどうするの?」

「もちろん、バーサーカーを懸念して本音としてはやるつもりのなかったアビー育成計画です」

「種火ね!? 種火がもらえるのね!?」

「メルトリリスさんの為の種火だったのでは?」

 

 オオガミの計画に、別々の反応を返す二人。

 当の本人は、明後日の方向を見つつ、

 

「今回アビーに渡す分は、プレゼントボックス内に眠ってる『×1』金種火だから……大した量じゃないんだよ……」

「そうなの!? どうしてくれないのよマスター!! 私、頑張るわ!!」

「周回はしてもらうけど、不良レベルの上昇が怖い……」

「状態を一段階目で固定していればいいのでは……?」

 

 言いながらも、すでにアビゲイルの再臨段階が上がっているので、それと共に若干不良具合が上がっていた。

 手遅れとは思いつつ、マシュは提案してみる。

 

「まぁ、そうするつもりだったんだけどね。とりあえず、最後まで行ったら変更しようかと。それまではたぶん変更しても自動変更はいるはずだし」

「いいじゃない、姿なんて!! 早く再臨したいわ!!」

「うぅむ……じゃあ、そのための周回するよ」

「わかったわ!! このレベルでも十分戦えるのが分かったから、頑張るわ!!」

 

 そういって、準備をし始めるアビー。

 その熱意にマシュは、

 

「すごいやる気ですね……」

「ん~……まぁ、比較的やる気がある方だよね。ただ、昔のノッブを思い出すんだよねぇ……」

「あぁ……そういえば、確かに前は前線に出たいと(しき)りに言ってましたもんね。いつから言わなくなったんでしたっけ……」

「え~っと……思い出せないな……でも、ハロウィン前には言わなくなってたような? ネロ祭り前後かな……?」

 

 ぼんやりとした記憶。

 そんなことを思い出していると、支度を終えたアビゲイルが、

 

「行きましょうよマスター!! 冒険よ!!」

「えっ、ちょ、本気ですかアビー……!?」

 

 拒否権はなく、連れていかれるオオガミ。マシュはそれを、ただ呆然と見送るだけだった。




 いやぁ……本当に、最新ストーリーで全力逃走してるのに、復刻を平然とやり始めるという、『私はどの世界線にいるんだ』現象ですよ。摩訶不思議……


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メタ空間なら、大体許される(たとえ本来サーヴァントが呼べないとしてもね)

「やっぱりね、アビーだけだと限界があるわけだよ」

「そこでBBちゃんと言うわけですね!」

「あのぉ……私もいるんですけど……」

 

 自然に出てくるBB。リップもついてきているが、BBは見ない振りをしている。

 現在いるのは吹雪吹き荒れる場所。どこなのかもよく分かっていなかったりするが、贋作英霊とはかくも不思議なところにいるものだ。

 

「BBさん? 私はアビー。よろしくね」

「えぇ、はい。なんとなく貴方とは、私と同じ雰囲気を感じるので、ちょっと仲良くしてあげます」

「うぅぅ……なんか、ノッブさんとは別の方向で大変そうな予感がします……」

「中々のカオス。物作りによるいたずらがノッブタッグだとしたら、アビーと一緒なら普通に世界終焉レベルの嫌がらせタッグかな?」

「先輩。死人が出ますので、全力で止めてください」

 

 ガチトーンのマシュ。洒落にならないのは、オオガミでも分かっていることではあるのだが。

 

「それで、センパイ。BBちゃんが呼ばれたのは、珍しく戦闘ですか?」

「まぁ、そういうこと。ストーリーも周回も、BBが必要なわけだよ」

「ふっふ~ん! そうでしょうそうでしょう。なんせ私は、なんでも出来る後輩ですからね。うっかり惚れちゃっても知りませんよ~?」

「あっはははは。たぶん無いかな」

「バッサリ言いますね!?」

 

 ハッキリ言われ、地味に精神ダメージを負うBB。

 

「良いです良いです。仕方無いので、周回でBBちゃんの重要性を思い知らせてあげますから。覚悟してくださいねセンパイ!」

「私も頑張りますから、見ていてくださいね?」

「もちろん。頑張りは見てるよ」

「私も頑張るわ! レベルはまだ60に届いてないけど、なんとかなるわよね!」

「まぁ、レベルは上げるけどね?」

 

 別に種火を渡したくないというわけではない。むしろ、種火が余っているのなら、普通に渡すくらいだ。

 もちろん、メルトリリス用なので、残しておくものはあるのだが。

 

「さて。レア泥も狙いつつ、ボックスガチャをひたすら回せるように、アイテムを全力で集めにいきましょう!!」

「当然。今度こそ100箱だ」

「リンゴ食べつつ大周回ですね。中々大変な気がします」

「初めてだけど、精一杯頑張るわ」

「あうぅ……周回、大変なんですよねぇ……うっかりやられそうになっちゃいますし……」

 

 楽しそうに、面倒そうに、辛そうに、嬉しそうに。それぞれがそれぞれの想いで暴れるために、周回へ赴くのだ。

 

「さて、まずは礼装。全部交換しに行きますか!」




 まずはストーリーに従うというのをスルー。正直三人だけなのは無理ゲーじみてきましたよ。


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自称最弱ってだけじゃなく、レベルすら上がってないもんな(だからって別に種火が欲しいわけじゃないぜ?)

「おいおいお~い。マスター、オレは召喚されたときに言ったように、最弱なんだぜ? しかもレベル1のままだから、まさに最弱! さてはイジメだな?」

「別にそんなつもりはないけども。というか、まだ一回も前線に出してないよ」

 

 妙に得意気な顔をしているアンリに、オオガミはため息を吐きつつ言葉を返す。

 

「いやいや。前線に出なくても、メンバーに入れられてるだけでもプレッシャーかかるんだぜ? 頼られたら困るじゃん?」

「もうすでにそのコストに救われてるけどね? 礼装持ってくれてるだけで助かるし」

「なるほど、荷物持ちか。それはそれで面倒だねぇ。出来れば、オレは何もしなくていいのが良いんだけど」

「後ろで見ていてくれるだけで良いんだけども。レベルはそのうち上げるから……」

「おっと。別にオレに貢ぐ必要はねぇぜ? その方が無茶振りさせられなさそうだし」

「うん。まぁ、渡すけども」

「おっと。オレの話を無視するとは流石だなマスター。鬼だなあんた」

「ふふん。人の話を聞かないことに定評があるからね。そのうち頑張ってもらうことがあると思うからね」

「あららぁ……地雷踏んじまったかね? このマスター、天邪鬼(あまのじゃく)だ」

 

 苦い顔をするアンリ。オオガミのドヤ顔は、なんとなく殴りたくなるものがある。

 しかし、ここは自制するアンリ。いつか倍返しの時が来るはずだと予感して。

 

「まぁいいや。なんにせよ、選ぶのはマスターだからな。で、見守ってるだけで良いのか?」

「うん。戦闘はBB達がやってくれるからね」

「ふぅん? まぁ、オレは言われたことをこなすだけなんだけどな。しっかり見守る仕事は全うするぜ~」

「最後のだらけた感じはいらないでしょ絶対。不安になるわ」

 

 言葉使いを指摘してくるオオガミに、アンリはやれやれと言いたそうな表情でこたえる。

 

「別にその程度気にしなくてもいいだろ~? てか、オレばっかりに構ってて良いのか? 周回あるんだろ?」

「むっ……まぁ、行くけども……なんとなく逸らされた感があるんだけど」

「気のせいじゃねぇの? オレはマスターのためを思って言ったんだし」

「うぅむ、それなら良いんだけども。なんにせよ、とりあえずは周回。アンリも来るんだからね?」

「おうさ。ちゃんとついていくぜ? 召喚されて初のイベントだ。どんなもんか、見てみたいじゃねぇの」

 

 楽しそうに笑うアンリに、オオガミは若干不安になりつつ、BB達を呼びに行く。

 ちなみに、アビゲイルは不良娘に変わっていた。後ろから出ている触手を見ればそれは明らかだった。




 アンリは1/4に参戦ですね。メルトのために種火を貯めている私には渡せる種火がない……!!


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レベルはちょっとずつね(私、精一杯やるわよ?)

「一日一回、ちょっとずつレベルが上がっていくわ……」

「ふはは。一日二箱のボックスから出る『×1』金種火と、銀種火渡してるからね。上がるはずだよ。うん」

 

 レベルが上がってご機嫌なアビゲイルと、蒼白顔色で笑うオオガミ。

 パッと見の顔の白さはアビゲイルが勝っているような気がしないでもないが、それは置いておく。

 

「あら、マスターは体調が悪いのかしら?」

「そういう訳じゃないけどね。ただ、今いるメンバーは、客観的に見るととんでもないメンバーだよなぁって思っただけ」

「そうかしら……?」

 

 オオガミがそういうのは、ある意味当然ではある。

 BBは見た目や態度に反して電子戦では最強レベルのAI。最強の悪神の名を持つアンリマユ。そして、外なる神の写し身たるアビゲイル。

 過去に戦った三体のビーストにも引けを取らなそうな三人が、今現在イベントを周回しているという、ある意味異質な状況。人類を破壊しそうなメンバーが人理を救うという皮肉の聞いた話だ。

 

「大丈夫よマスター。私はマスターの事を裏切らないわ。マスターが人理を救ってこいって言うのなら救うし、壊せと言うのなら……盛大に壊すわ。だからマスター。私を置いていかないでね?」

「もちろん置いていかないけども、なんとなく遠回しな脅迫の気がしてるんだけど?」

「嫌だわマスター。私はそんなことしないわよ。むしろ、言われたことをやるだけですもの」

 

 ふふふ。と無邪気に笑うアビゲイルに、苦笑いで返すオオガミ。

 そんな二人に近寄る影が一つ。

 

「やぁお二人さん! 仲が良さそうで結構なことで! オレはこの荷物持ちの役目が無くならないかと今か今かと待ち受けてるんだが、そこら辺どうだいお嬢さん」

 

 二人の肩を背後から掴み抱き寄せるアンリ。

 しかし、突然のことだったにも関わらず、アビゲイルは平然と答える。

 

「まぁ。それは私が決めることではないわ。マスター決めることよ?」

「おっと。まさかマスターの裁量に投げ掛けるとは。どうやら聞く人を間違えたようだ。その辺そこの旦那はどう思うよ」

 

 不意に背後に問うアンリ。

 その視線を追って二人は振り向く。

 

「ふん。我が共犯者がそれを望むのならば、するのが当然だろう?」

 

 そこにいたのは巌窟王。

 彼の答えを聞いたアンリは苦笑いになり、

 

「あちゃあ。まさかアンタもそっち側か。こりゃ、荷物持ちは続きそうだね。参ったなこりゃ」

「別に貴様が動くわけでもなかろうに。荷物持ち程度、大したことでもないだろう」

「はいはい。わぁかってますって。んじゃ、マスターは引き続きオレを戦わせないようによろしく~っ!」

 

 それだけ言って、アンリは消えていく。

 

「う、うぅむ……今のはなんだったのか。どう思いますかアビーさん」

「私はとても面白そうな人だと思ったけれど。そちらのお兄さんはどうかしら?」

「……あまり、奴といないようにした方が良いと思うがな。まぁ、共犯者が今のままで良いと言うのなら、それを否定することはない」

「ふむ……じゃあ、今のままで良いか」

 

 うんうん。と一人頷くと、オオガミは気持ちを切り替え、

 

「じゃあ、周回行きますか」

 

 そう言って、逃げていったアンリを含めたメンバー集めるのだった。




 アンリは今回の不憫役。荷物持ちはイベントが終わるまで続くと思うよ。アンリ……


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後衛って暇だよなぁ(やることもほとんど無いですしねぇ……)

「最近、見ているだけなのが多くなってきて、危険はないのは良いことなのですが、お役に立ててないような気がしてならないんですが」

「別に良いんじゃねぇの? マスターは戦わせるつもりは欠片も無いようだし。問題ないだろ」

「それでも、役に立てないのはどうかと……」

「アンタ、面倒な性格してるねぇ……」

 

 マシュが不満そうな顔をして、やれやれと首を振るアンリ。

 

「それにしても、面倒なイベントだよなぁ。どんだけ回す気なのかねぇマスターは」

「さぁ……? でも、少なくとも両方50箱開ける勢いだと思いますけどね。それだけ集められるかという疑問はありますけど」

「うっへぇ……合わせて100箱は集めるつもりなのかぁ……こりゃ休める気がしないね」

「まぁ、いつもそこまで集めないで終わりますし、今回もそうなる可能性の方が多い気がしますけどね」

「でも、やるつもりではあるんだろ? でも、それならここで時間潰してて良いのかねぇ……マスターはどっか行っちまったし、周回は止まってるし」

「そうなんですよね……毎度頑張るって言って、休憩して結局集められないというサイクルです」

「ははぁん? つまり、なんだかんだ言って結局休みが多いわけだ。なら、まだ頑張れる気がするね」

「そんなに気張る必要無いですしね。基本前衛の方々が頑張ってるのが多いですし」

「ま、オレはあまり出番がないわけか。そりゃ良いことだ」

 

 ニヤリと笑いつつそう言うアンリに、苦笑いを向けるマシュ。

 

「それにしても、本当に暇だねぇ。ちょっと遊んでみるかい?」

「遊ぶ……? 一体何をするつもりですか?」

「なぁに。ちっとだけ戦うだけさっ!」

「っ!」

 

 寸でのところで回避するマシュ。

 笑いながら襲撃してきたアンリに困惑するマシュは、

 

「何をするんですか!」

「ハハハ。何、ちっと体を動かすだけさ。加減はする。かわしてみなっ!」

 

 そう言って、再び振るわれる刃。

 しかし、

 

「あら? 何か、面白いことをしてますね?」

 

 現れたBBちゃんに止められるアンリ。

 

「うへぇ……もう来たのかよ」

「アンリさん、ダメですよ? マシュは私が貰うんですから報復、終わっていませんし」

「ん~……こりゃ遊べるような相手じゃないねぇ。むしろ遊ばれそうだ。諦めて降参しますよ~」

 

 両手を上げて降参のポーズを取るアンリ。

 BBはそれを見て不吉な笑みを浮かべると、

 

「じゃあ、ちょ~っと向こうまでついてきて貰いましょうか。別に何も企んでないので安心してくださいね」

「嫌な予感しかしないんだけども……オレはまだ死にたくないぞ~」

 

 冗談っぽく本気で言うアンリ。BBはそれを無視して引きずっていく。

 

「……なんでBBさんが真っ先に駆け付けてくれたんでしょうか……?」

 

 二人に置いていかれたマシュは、困惑しながらそう呟くのだった。




 冷静に考えると、マシュの戦闘性能皆無ですよ。盾持ってないじゃん。ということに気付いて、防御じゃなく回避に変更。危うくマシュ死んでしまうところだった……


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メルトは……うん。まぁ、こんなですよね(先輩、立ち直ってください……先輩!!)

「……よし。もうダメだこれ」

「次回ですね。次はきっと出ますよ」

 

 一切の反論の余地もないほどの爆死。

 新たに人が来ることもなく、再び訪れたチャンスは消し飛んだわけだ。

 

「あ~……まぁ、その、なんだ……まだ契約してくれないみたいです」

「マスター、大丈夫よ。出てきてくれないのなら、無理矢理引きずり出せば良いわ」

「マスター、アンタ何かに取り憑かれてるんじゃねぇの?」

「センパイが取り憑かれてるとか、無いですって。だってほら、BBちゃんがいますし?」

「どういう自信なんですかそれは。というか、マスターにこれ以上ダメージを与えないでください。主にそこの真っ黒な三人!」

 

 マシュに言われ、BB達は互いに顔を見合わせると、

 

「オレは真っ青だけど?」

「私は灰色よ?」

「BBちゃんは……あれ、意外と黒い……でも、イメージカラーは紫と言うことで!」

「イメージカラーじゃないですから!! 後、アンリさんは再臨して誤魔化さないでください!! アビーさんは……まぁ、灰色なんですけど。ただ、とりあえずマスターに変なこと囁かないでください!」

「へいへーい。どーせ中身も見た目も真っ黒ですよ~」

「変なことを言ったつもりはないのだけれど……?」

「ブーブー。だとしても、BBちゃんはそんな真っ黒じゃないですよ~だっ!」

 

 マシュの剣幕に、黒に戻りながらやれやれとばかりに首を振るアンリと、何がおかしいのか分かっていないアビゲイル。そして、若干自分は腹黒いと認めているBB。

 

「マシュさん……たぶん、マスター移動させた方が早いんじゃないかと」

「リップさん……それもそうなんですけど、運びようが無いじゃないですか……むしろこの三人をどうにかした方が良い気がしてきました」

 

 頭を抱えてどうしたものかと悩むマシュ。

 リップも苦笑いでマシュを見るが、流石にあの三人に勝てる自信はないので黙っておく。

 

「あ~……うん。もうね、メルト来なかったし、プレゼントボックス内の種火を一新しよう。どうせ後一年くらいは来ないと思うし」

「一年では流石に来ないと思いますけど……そうですね。それが良いかと」

「でも、誰に渡すんですか?」

「ん~……まぁ、とりあえずアビーとアンリに渡してから考える感じで」

 

 そう言って視線を向けるオオガミ。

 その視線を受けた二人は、

 

「おっと。オレに貢ぐたぁ、資源が余ってるってことかい? 暇だねぇ」

「レベルアップが出来るのね? ふふふ……これでもっとマスターの役に立てるわ」

 

 ある意味対照的な二人。言外に要らないというアンリと、嬉しそうなアビゲイル。

 

「まぁ、素材が余ってる訳じゃないし、歯車を持っていったのは恨むけど、アンリは育てるよ」

「うへぇ……恨まれるのに育てられるとか、新手のイジメ?」

「諦めなさいなアンリさん。きっとレベルが上がったら良いことがあるわ」

「オレが言えたことじゃないんだろうけど、アンタ、性格ブレブレじゃね?」

「それは言っちゃダメよ。でないと……ふふふ?」

「ほらすぐそういう脅しする~。まぁ、死にたくないから言わないんだけども」

 

 アンリはそう言うと、アビゲイルから距離を取る。

 不穏な笑みを浮かべるアビゲイルに、アンリは目を逸らすのだった。

 

「よ~し。とりあえず、周回しようか」

「お~。荷物持ち、頑張るぜ~」

「任せてねマスター。今回も頑張るわ」

「BBちゃんにお任せを! サクッとやっちゃいますよ~!」

「私も頑張りますね。マシュさんはアンリさんと一緒に待っていてくださいね」

「アンリさんと……はい。今度はちゃんと気を付けて待ってます」

 

 皆はそう言うと、オオガミについていくのだった。




 まぁ、根本的に石が少なかったですし、仕方ないかなぁとは思ってたんですけど。ただ、合計で既にかなりの回数回しているような……

 そろそろメルトショックから立ち直れなさそう……何時になったら来てくれるんですかメルト様……


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自画像とモナ・リザ(意外と後少しなんだよね)

「さぁて。残りは自画像とモナリザ。さっさと終わらせて手稿集めにいきたいね」

 

 回るために軽い準備運動をするオオガミ。

 それを見ていたアンリは、

 

「別にボックスはどうでも良いんじゃねぇの? 別に育てたいのもいないんだろ?」

「いや、スキル上げをしないとさ? QPもだけど、素材も手に入れられて一石二鳥。だから回さないと」

「あ~……素材はしゃあないよなぁ……つか、オレに割いたのも原因じゃね?」

「あれは必要経費。無駄遣いではないよ」

「必要経費って……オレが弱いのは分かってるだろ?」

 

 アンリの言葉に、オオガミは首を振ると、

 

「それはそれ、これはこれだよ。使いたいから使う。それで無くなる素材は、そうなる運命だったということで。んで、それを集めるのもセット」

「め、めんどくせ~……回収までするとか、マメだねぇ……」

「使用と回収はセットだよ。当然じゃん?」

 

 何を言っているのか。と言いたげなオオガミ。

 アンリはその視線を受けて苦笑いになる。

 

「まぁ、マスターのやり方をとやかく言うつもりはないが、頑張れ~」

「うん。まぁ、アンリには付き合ってもらうけどね」

「ですよね~……まぁ、やるんだけどさ」

 

 ため息を吐き、呆れたような表情をするアンリ。

 オオガミは妙にやる気の満ちた笑みで返す。

 

「さて。そろそろ周回しますか」

「えぇ~? オレとしてはまだ休憩してたいんだけど」

「別に戦ってもないでしょうが。行くよアンリ」

「ぶーぶー。って、本気だあれ。止まる気しねぇな。しゃあない。ついていきますかね」

 

 置いていかれそうになったアンリは、走ってオオガミを追う。

 

「ったく、冗談が通じないねぇマスターは」

「いや、冗談を分からないんじゃなくて、その話をしてる暇がないだけなんだけども」

「疲れてるのなら寝た方が良いぜ? だから周回止めて休憩だ休憩」

「どうしてそう、休もうとするのか……なんとなく、サボりに誘う悪友の印象」

「オレのイメージは悪友かぁ……いやまぁ、悪ってついてるだけマシと考えるべきか。んじゃ、その悪友として言ってみるか。サボろうぜ?」

「だから、それは問題なんだってば」

 

 へらっと笑いながら言うアンリに、突っ込みをいれるオオガミ。

 

「全く。どうしてそう頑ななんだ? 別に急ぐ必要はないだろ?」

「それはそれ。っていうか、QPはスキル上げに消費したから取り戻さないとわりと不味い」

「あ~……そりゃ不味い。特にマシュにバレたときは不味い。急いで回収しにいこうかマスター」

「……? マシュと何かあったの?」

「いや、別に何でもないよ。とりあえず行こうぜー」

「う、うん……なんか納得いかないけども」

 

 首をかしげるオオガミの前を歩いていくアンリ。

 そのまま周回へと向かうのだった。




 悪友スタイルのアンリ。わりとアンリが気に入ってる私……キャラ崩壊してる気がしなくもないですけど。


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ぐだぐだ力の高い敵だ……(私……あれが欲しいのだけど)

「なんかさ……敵にぐだぐだ感溢れるのがいたよね……」

「文字通り偽者でしたね……分類レベルで」

「機械にされるくらいとは恐れ入ったな~。他にもあんなやついるの?」

「アルバムにメカエリチャンという方がいたわ。会ってみたいのだけど、いつ会えるのかしら……」

 

 ノッブゥ! だの、ノブノブゥ!! だのと叫びつつ銃や体当たり爆発やビームを出していたりした。

 今日のアビゲイルは触手を抑えて、初期まで戻っていた。

 そんなアビゲイルとアンリの会話を聞いて、オオガミは苦い顔をしつつ、

 

「カルデアの時はナーサリーの自室にいたんだよねぇ……アレ」

「あのロボットが!?」

「元はサーヴァントなうえ、派生の原本は人形に近いんだけどねぇ……」

「お人形さんなの!? 私も欲しいのだけど!!」

「あ~……カルデア奪われたときに失われたと言いますか……なんと言いますか……」

「そんな……悲しいわ……」

「まぁ、次の拠点ではノッブが作ってくれるでしょう」

 

 ノッブに全投げするオオガミ。

 アビゲイルは目を輝かせ、

 

「ノッブさんはあの人形さんを作ってくれるの!? それは……楽しみだわ!!」

「えぇ~……でも、攻撃性はあのまんまなんじゃねぇの~? そんなのに廊下とかでばったりあったら、オレ死んじゃうぜ?」

「アンリはそのくらいで死なないでしょ。酷くても致命傷くらいだよ」

「もっと酷いじゃねぇか! 致命傷とか、一番痛いパターンだから!! すぐに回復できるとしても、致命傷は洒落にならねぇからな……?」

 

 頬を引きつらせながら言うアンリに、ドヤ顔で返すオオガミ。

 

「はぁ~……ノッブさんは、アルバムで見たよりも器用なのかしら。楽しみだわ……!!」

「ん~……ノッブ器用かと言われると、まぁ器用なんだけども……あの器用さはなんと言うか、機械系と言いますか。裁縫はメディアさんですかねぇ……」

「メディア……? どんな方かしら。出来れば今すぐにでも会って、お話がしてみたいわ。そして、あのお人形さんを作ってもらうの。どうかしらマスター!」

「ん~……そうだね。メディアさんなら行ける。完璧だね。機械系ノッブに関してはノッブが何とかしてくれるはずだし。出来なかったらBBに頼もう」

「そうね、BBさんに頼みましょう。ノッブさんがどんなのを作れるかも気になるわ」

 

 上機嫌なのが一目でわかるほどの表情をしているアビゲイル。オオガミもその表情を見て、どこか嬉しげだ。

 

「まぁ、なんにしても、しばらくは周回だ。行こうか」

 

 オオガミはそう言うと、再び突撃していくのだった。




 再来のノッブ。アビーが気になるのも仕方ない。あの見た目ですし!


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ね、眠い……(寝るならせめてタオルケットをかけてくださいね)

「あ~……今日はもう疲れた」

「そうね。私ももう寝ようかしら」

 

 ふあぁ……と欠伸をするオオガミとアビゲイル。

 それに釣られて欠伸をしかけたマシュは、それをなんとか押さえ込むと、

 

「お二人とも、寝るならちゃんとタオルケットをかけて寝てください。夜は冷えますし、油断大敵です。特にマスターは風邪を引いたらこっちにまで支障出るんですからね?」

「うぅ~……マシュがお母さんとかお姉さんとか、そんな雰囲気なんだけど……」

「叔父様みたいだわ。なんだか、眠くなってきて来ちゃったわ」

「分かりましたから、タオルケットはちゃんとかけて寝てくださいね? 良いですか先輩」

「ぐぐぐ……まぁ、一応冬だしね……そもそも季節感を失いそうな勢いではあるけども」

「冷静考えると、そもそも地域によっては季節がバラバラですからね……一方では冬でも、反対は夏ですから」

「うん……で、ここの季節は?」

「……それは聞いちゃいけない所です。ですが、夏でもかけておかないと、どの道風邪を引くかと」

「まぁ、確かにそうだけども……うん。とりあえずタオルケットを用意。これで寝れるね」

「最初から用意してたんですか……」

 

 平然とタオルケットを取り出したオオガミに、マシュは苦笑いになる。

 

「マスターは、意外と用意が良いのね。ところで、そのタオルケットは何処から取り出したの?」

「それは秘密というものだよアビー。どこから出てくるだなんていう、つまらない事は言っちゃいけないんだよ」

「そ、そうなのね……ごめんなさいマスター」

「うんうん、次から気を付ければいいんだよ。大丈夫大丈夫」

「待ってください先輩。私は普通に気になるんですけど。そういう隠し芸うまいですよね。どうやってるんですか?」

「おっとマシュ。それ以上はいけない。全力の逃走術を見せる事になるよ」

「ぐっ……ハロウィンの時には一度煮え湯を飲まされてますからね……ですが、次はありませんからね」

「ふっふっふ……残念だったなマシュ。今の私には別の逃走手段がある!! 見せてあげよう!!」

 

 タオルケットでアビゲイルを包み、抱え上げるオオガミ。

 何をするかと身構えたマシュは、しかし。次のオオガミの行動に目を見開く。

 

「礼装身代わりの術……!! まさか目の前でやられるとは……!! というか、なんでリミテッド/ゼロオーバーを選んだんですか!?」

 

 当然、声は返って来ない。

 更に言えば、オオガミだけでなく、アビゲイルまでいなくなっていた。自分以外も連れて行けると誰が想像しただろうか。

 

「大方、この前のハロウィンの後から練習に練習を重ねていた上に信長さんたちの目に留まり色々と助言をいただいた結果と見ました……どこに逃げたんですか先輩!!」

 

 マシュはそう言って、オオガミを探しに行ってしまう。

 実際、オオガミはすぐ近くの物陰に隠れているだけなのだが。

 

「……そう言えば、どうしてこんな話になったんだっけ?」

「分からないわ。でも、マスターのことは私が守ればいいわ。さぁ、寝ましょう? マスター」

「うん。おやすみアビー」

 

 二人はそう言って、寝るのだった。




 私の眠いという気持ちが反映された結果こんな事に……あ、アイテム交換は終わったので、現在は手稿を集める作業です。回すぞ~!!


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さて……クリスマスガチャの再来かな(100箱はまた無理ですかね?)

「はぁぁ~……ボックス、終わる気がしない……」

「今回、いつもよりやる気が上がってる様な……前回何箱でしたっけ……」

「40箱くらいだったはず……」

「……あれ、もしかして、今回もさほど変わらない……?」

「そ、それを言われると心に刺さるよマシュ……」

 

 クリスマスの時よりも頑張ると言っていた手前、すでに引けないオオガミ。

 

「今現在、両方10箱開けている……さらに、互いに4000ずつ。超えるなら何とかなるはず……」

「明日には何とかなりそうですね。25箱ずつは開けられますかね?」

「50箱ずつ開けられるのが理想だけどね。まぁ、無理はしない方向で」

 

 なんだかんだ言って、諦めが早い。メルトリリスの時の呪いに近い思いはボックスガチャには適用されないようだ。

 

「よぉよぉマスター。随分疲れてるみたいじゃね~の?」

「出たな妖怪まっくろくろすけ。何をしに現れたんですかい」

「ハハッ! いやいや、なんかマスターが落ち込んでるみたいだし? ちょっと励ましてやろうかと思ってね?」

「嘘よ! この人、マスターをからかうって言ってこっちに来てたわ!!」

 

 木から飛び降りてきたアンリ。そして、そのアンリの頭を狙って飛び降りてきたアビゲイル。

 着地を狙われたアンリはなすすべなく押しつぶされるのだった。

 

「……な~んか、召喚されてから碌な扱いされてねぇなオレ……マスターは殺しに来てるし、変なあだ名がつくし、今オレの上に乗ってるのはなんか妙に絡んでくるし……ついでにBBとか言うのは更に面倒」

「アンリ。それ以上はいけない。それ以上はあの危ない系AIが召喚されちゃう」

「先輩はBBさんの事をなんだと思ってるんですか」

「BB殴り倒し担当に言われたくないんですけど」

 

 たしなめるように声をかけたマシュにカウンターを叩き込むオオガミ。

 全く否定できないので、何も言い返せないマシュ。

 

「へぇ……あの悪魔を殴り倒し担当とか、相当強いんだなアンタ」

「今は戦闘力皆無ですよ。流石にもうBBさんを倒せたりしないです。精々ランスロット卿をぶつけるだけです」

「悪化してるんだけど。というか、BBを殴るためにランスロットを育成してるわけじゃないからね!?」

「マスターは悪い人ね……」

「うぅむ、中々の理不尽」

 

 アビゲイルの理不尽パンチに頭を抱えるオオガミ。マシュはマシュで、妙に張り切ってるのが問題だ。ランスロット卿が何をしたというのか。

 

「はぁ……とりあえず、この上に乗ってるの、どかしてくれねぇかなマスター」

「アンリ……アビー。もう少し乗ってていいよ」

「分かったわ!」

「何殺意マシマシなんだこのマスター!!」

 

 八つ当たりの被害に遭うアンリ。

 そして、しばらくの間アンリはアビゲイルに捕まえられていたのだった。




 100箱とか、普通に無理かと思ってきました。なので、妥協して累計50を狙う……!!(妥協

 何となく、しばらくはアビーとアンリがメインサーヴァントの予感。エウエウとノッブの感覚に近い感じ……なんとなく書きやすいという。で、何時エウエウは復活するんです?(エウエウ欠乏症


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ボックスガチャ終わり!(戦果は大体いつも通りでしたね)

「ボックス、結局合計で50箱とちょっとか」

「あまり変わりませんでしたね。まぁ、QPだけで言うとマイナスが多いですが、代わりに手に入れたものもありましたから、全体的にはプラスかと」

「骨は増えなかったけどね~……まぁ、プラスなら良いか」

 

 今回のボックスガチャも、やはりというべきか、100箱に届かなかったオオガミ。

 色々と育成をしていたせいでQPこそ無いものの、代わりに大量の種火を手に入れていた。

 

「まぁ、スキル上げは出来ないけど、レベルアップなら可能だしね……なんだかんだ言って、レベルがあればなんとかなるし、スキルはまたそのうちという事で」

「そうですね。アビゲイルさんも納得してくださるでしょう。今日はお疲れ様でした」

「うん。マシュも、素材運びお疲れ様。ホームズは忙しいとか言って参加してくれなかったから、後で報復しておくよ」

「先輩。ホームズさんも嫌がらせのためにやらなかったわけではないんですから、許してあげましょう」

「むむ……マシュがそう言うなら許す。まぁ、アビーもいてくれたしね。誰もいないわけじゃないから、良かったんだけど。ところで、アビーは?」

 

 ホームズへの報復を保留し、そこでふと、手伝ってくれていたアビーがいないことに気付く。

 

「逃げたしたアンリさんを捕まえてくると言って、行ってしまいました」

「な、なるほど……アンリも大変だね。捕まって無いと良いけど」

「はい……車外に出ていったので、南極からここまで来れるのか、心配です」

「ちょっと待ってマシュ。何サラッととんでもない情報を言ってるの。車外? 飛び出したの? 二人とも?」

「はい。霊体化して、飛び出していきました」

「……ねぇ、あの二人、単独行動持ってなかったよね? 魔力、持つの?」

「さぁ……? ですが、アビーさんは自信満々に飛び出していったので、たぶん帰ってくる手段は考えていると思います」

「あ~……アビーは……大丈夫かなぁ……? アンリを捕まえたまま帰ってくるつもりだよね、たぶん」

 

 極寒の大地以前に、どれだけ離れても大丈夫なのかが気になるオオガミ。

 アビゲイルは銀の鍵で帰ってくる可能性はあるものの、アンリはアビゲイルに捕まらなければ帰ってこれる保証はないわけだ。

 

「ん~……まぁ、あの二人なら大丈夫かなぁ……というか、アンリって実は分かってやってたりする?」

「さ、流石にそれは無いんじゃないですかね……逃げるときの目が本気でしたし」

「死ぬ気で逃げるとは……」

 

 一体どこで何をしていたのだろうか。と考えるも、最終的には二人が無事に帰ってくることを願うオオガミなのだった。




 25+25と数回を回して終了。なんだかんだ、あまり集められなかったのが悔しいですね……3Tパーティーも組めていたので、なんとかなるかと思ったんですが、現実は甘くなかった……


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日常
アンリさんを捕まえてきたわ(がっちり固定されてらっしゃる)


「マスター。いつまでアンリさんを捕まえてれば良いのかしら?」

「そもそも捕まえてなくても良いんだけど……別に、何も怒ってることがある訳じゃないし」

「そうなの? マスターは寛大ね」

 

 そう言うと、アビゲイルの触手に縛られていたアンリは投げ出され、力無くそのまま重力に引かれて鈍い音を出して落ちる。

 

 

「くっは~……死ぬかと思ったわ。ったく、サーヴァントの制御くらいしておいてほしいなマスター。危うく殺されるところだったじゃんか」

「制御できてたらそもそもアンリは逃げ出せなかったと思うんだけど」

「それはそれ。というか、わりと殺す気来てたんだが、あれは故意だよな絶対」

「あら、そんなことはないわ?私はただ、そうした方が良いと思っただけだもの」

「はいはい。もうその話は終わり。二人とも無事に帰ってきたんだし、問題なし。それで良いね?」

「えぇ、私は大丈夫よ。そっちはどう?」

「チッ……異議な~し。命あっての物種だ。文句はねぇよ」

 

 微笑みながら同意するアビゲイルと、苦い表情をしながら渋々了承するアンリ。

 ただ、アンリを見たアビゲイルの目が笑っていなかったのが気になるところだったりする。

 

「つか、そもそもなんでオレは追いかけられたんだ?」

「うわぉ。まさか理由もわからず逃げ出して捕まってるとは思わなかった」

「だって、私を見つけたらすぐさま逃げるんだもの。追いかけるしかないでしょう?」

「うん、その理論は飛躍しすぎてる気もするけど、分からなくもない。で、なんでアンリは逃げたのさ」

「そりゃそうだろ。タコアシ振り回しながら迫ってくるような奴を、分かっていて眼前に来るまで待てるほど精神力強くないっての」

「……アビー、何やってるの?」

「私は知らないわ。きっとアンリさんの冗談よ」

「うっわぁ……まさか堂々と嘘を吐かれるとは。やべぇぞマスター、コイツ悪の側面を出してきたぞ」

「まぁ。人聞きの言わないで。私はいつもと変わらないわ」

「いやいや。自覚は無いかもしれないけど、イベント前より格段に悪っぽくなってるぜ?」

 

 あまり自覚のないアビゲイルは、言われても首をかしげるだけだった。

 

「マスター。私、そんなに違うかしら?」

「ん~……まぁ、たまにね?」

「そう……でも、関係無いわ。私は私よ。それで良いわよね。マスター」

「うん。というか、自己完結してない?」

「良いでしょう? それはそれで、個性だと思うわ。どうかしらマスター。こんな私でも良い?」

「う、うぅむ、それを聞かれても困るんだけど……まぁ、人それぞれだしね。良いんじゃない?」

「そうよね。マスターならそう言ってくれるって思ったわ!」

 

 嬉しそうに笑うアビゲイル。さらりと話の中に入れなくなってたアンリ不機嫌そうだが、アビゲイルがご機嫌なので気にしないことにするのだった。




 今日からいつものようにQP稼ぎですよ。なんだかんだ、イベントでQPの回収はしきれませんでしたし。何故かQPだけマイナスですよ。
 頑張って3T周回するんじゃぁ。


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アビー抱き枕……?(私、抱き枕になるのかしら?)

「ふあぁ……アビーは抱き心地が良い……」

「私、抱き枕なのかしら?」

 

 オオガミの膝の上に乗るということで、ちゃんと服を着ているアビゲイルは、目をぱちくりとさせつつ呟く。

 そんなアビゲイルの疑問に答えたのは捕まえているオオガミ。

 

「いやぁ……前はエウリュアレがいたんだけど、今はいないから……ある意味代用ということで」

「むぅ……代用なのは、何か面白くないわ。一番じゃないのね」

「ん~……まぁねぇ……譲れないところがあるからね。そこは仕方ない」

「そうなの……残念だわ……」

 

 少し悲しそうなアビゲイル。

 オオガミはなだめるように頭を撫でると、

 

「まぁ、今はアビーがいるから、アビーを抱き枕にするわけです。嫌なら振り払ってくださいな」

「ん……良いわ。私は、その人から一番を奪うもの。マスターの膝の上は私のものよ」

「うわぉ。謎の戦いが始まる予感」

 

 ここにいないエウリュアレに宣戦布告するアビゲイル。

 だが、そもそもエウリュアレを抱き枕にしてるのはオオガミの独断だったりするので、エウリュアレからすれば何の事だがさっぱりという感じだ。

 

「でもでも、今のうちに頑張れば、その人の場所が取れるかもしれないわ。マスターはそういう人よ」

「酷い偏見……メルトリリスの例はどうなるんですか……」

「そ、それはそれよ。きっとなんとかなるわ」

「うぅむ、アバウト。というか、エウリュアレに聞かせてみたいな、今のセリフ。何て反応返してくれるんだろう」

「もぅ。マスターはマナー違反よ。話してて思ったけど、女性と話すときは他の女性の話をするのはマナー違反よ! 分かってるの? マスター」

「うぅむ、突然。今までずっと言われなかったことを突然言われると困惑するよね。まぁ、反省はしてるんだけども」

 

 ちょっとだけ申し訳なさそうにするオオガミ。

 アビゲイルはそんなオオガミの雰囲気を感じ取って、怒っている顔を一転。楽しそうに笑う。

 

「ふふっ。マスターとのお話は楽しいわ。ところで、マシュさんとアンリは何処に行ったの?」

「アンリは呼び捨てなのね……二人はあれだよ。倉庫整理かな。正確には、勝手に持ち出してないかの確認。ちなみに、勝手にスキル上げしてたらこの前めっちゃ怒られた」

「まぁ。マスターはどうして勝手にしちゃうのかしら。ちゃんと言わなくちゃダメよ?」

「うぅ……アビーにまで言われるとは……まぁ、気を付けているけども、たまに忘れるんだよ……特にイベント中。マシュに見付からないように種火を持ってきてるんだけど、どうしてバレるんだろ?」

「黙って持ってくるからじゃないかしら? まぁ、次に気を付ければ良いわ。マスター」

 

 アビゲイルに若干説教され、オオガミは疲れたような表情でアビゲイルにもたれ掛かるのだった。




 最近眠いのか、こういう話を書きたくなる私です。検定が終わったからかしら……


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明日から百重の塔……(ねぇ、今更だけど、気になる単語が……)

「ついに明日から百重の塔攻略です。だけど、一つ気になることが」

「はぁ……? 何があったんでしょう?」

 

 一人、真剣な表情でそんなことを言うオオガミに、首をかしげつつ聞くマシュ。

 

「うむ……この部分を見てほしい」

「イベントの概要ですね……これがどうか……あれ、レイシフト……?」

「うん、そういうこと。つまりこれは、実はイベントをすると謎時空に飛ばされる可能性だよ」

「今まで適当に流していた話題をやっちゃうんですね先輩……」

 

 ある意味、触れてはいけない案件。しかし、オオガミは止まらない。

 

「つまりはだよ。このカオス空間なら、平然と他のサーヴァントいても良いんじゃないかと思ったわけです」

「は、はぁ……いえ、先輩のおっしゃりたいことは分かるんですが、それで良いんですか……?」

「……ノーコメントで」

 

 目を逸らすオオガミ。マシュは不安になる。

 

「ま、まぁ、向こう側のみなら良いんじゃないかな……?」

「それなら良いと思いますけど……大丈夫ですかね……」

「マシュさんは心配性ね。きっと誰も気にしないわ」

 

 ひょっこりと現れたアビゲイル。本日もちゃんと服を着ていた。

 マシュは複雑な表情になると、

 

「アビーさん……でも、先輩の場合、なんだかんだ言って連れてきそうなので……」

「なんという信頼の無さ。一周回って泣きそうだよ」

「そうね……連れて帰ってきてしまったら、ただでさえも狭いのに、もっと狭くなっちゃうわ。霊体化をすれば良いけれど、それだとマスターと触れ合えないものね」

「はい。流石に人が増えすぎるのも問題ですしね。そもそもマスターの魔力が持たないと言いますか、カルデアと比べたら圧倒的に魔力が足りないと言いますか」

 

 要するに、保っていられないわけだ。

 アビーは少し考えると、

 

「じゃあ、ダメね! 私はマスターのそばを離れるつもりはないもの!」

「はっきり宣言しましたけど、ついさっきまでいませんでしたよね?」

「そんなことはないわ。ちゃんといたわよ」

 

 満面の笑みでそう言い切るアビゲイル。

 マシュはその笑みに苦笑いで返し、

 

「まぁ、なんにしても、魔力が足りないわけです。イベント中ならよく分からない謎の力でイベント空間だけならなんとかなると思うので、その時だけですからね。それ以上は延ばせませんから」

「わ、分かったよ……っていうか、流石にそこまで無理言うわけじゃないし……」

「そうしてくださいね。私は明日のために準備してきますので」

「りょ、了解。こっちも準備しておくね」

 

 そう言って、マシュは別れたのだった。




 私が気になるのも仕方ないと思う。だって、エウエウ復活チャンス……!!


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節分酒宴絵巻 鬼楽百重塔
百重塔を登り続けるこの戦い(温泉から戻るのも一苦労だわ)


「ふあぁ……とっても高いわぁ……!!」

「落ちるんじゃねぇぞ~? 戻ってくるの、疲れるからな~?」

 

 アビゲイルが欄干(らんかん)に掴まりつつ、そこから見える景色に目を輝かせていた。

 アンリは少し離れた所からそれを見つつ、注意する。

 それに反論するべくアビゲイルは振り返り、アンリを見る。

 

「もぅ。私はそこまでひどくないわ! ちゃんとそれくらい気を付けるわ!!」

「えぇ~? 本当か~? うっかり落ちちゃったりするんだろぉ~?」

「落ちたとしても、また戻って来れるわ!! たぶんマスターも待ってくれるわよ!!」

「おぅおぅ。とりあえず、今オレ達はマスターよりも下にいるからな? 上に行かなくていいのか?」

「そ、それは……マスターが待ってろっていうから……」

 

 アンリから目を逸らしつつ、実は上の様子をどうにかして見ようと頑張っているアビゲイル。

 その頑張りを知っているアンリは、特に何か言うわけでもないが、どうなるかは体験して知るべし。

 

「あうぅ……またちょっとくらくらしてきちゃったわ……温泉に戻ろうかしら……」

「オレはもう登りなおしたくないんだけどなぁ……マスターはなんでこう、任せたかなぁ……」

 

 そう。アビゲイルとアンリが共に居るのは、オオガミがアンリにアビゲイルを見張っているように言われたからだ。

 理由はよく分かっていないのだが、頼まれたものは仕方ないと割り切り、アンリは今こうしてアビゲイルを見張っているわけだ。

 

「それで? 本当に戻るのか?」

「ん~……やっぱりいいわ。まだ大丈夫、上に行くわよ!!」

「へいへい。つか、マスターも進みが早いねぇ……ここまで登ってるとは流石に思わなかったわ」

「ふふん。マスターだもの。これくらいいけるわ!!」

「ん~……オレにはどうしてアンタがそんな自信あるのか分からないけどね。いやぁ、マスターは愛されてるねぇ」

 

 軽い足取りで階段を上がっていくアビゲイルを見送りつつ、ため息を吐くアンリ。

 なんとなく、アンリは先ほどまでアビゲイルがいた場所に行くと、

 

「しかし、高いなぁ……これは、確かに夢中になるのも分からなくねぇな。ま、落ちたら即死な――――」

 

 ドンッ。という鈍い音と共に空中に放り出されるアンリ。

 原因は視界の端に移った触手に違いない。そう確信して、

 

「いつかやられると思った!!!」

 

 当然の如く落ちて行くアンリ。しかし、その直後に触手に捕まり、落下が止まる。

 

「もぅ。ちゃんと周囲を見てなきゃダメよ? こうやって落ちちゃうわ」

「ハハッ……落とした本人に言われるとか、もう何も言えないわ」

 

 引き上げられ、苦い顔をしているアンリ。

 元の階に戻されたところで、容赦なくアビゲイルに刃を叩き付ける。

 

「危ないじゃない。ここから温泉に帰るの、大変なのよ?」

「ダイレクト帰宅させようとさせてた本人が言うんじゃねぇよ……はぁ。全く、本当に辛い……」

「ふふっ。でも、いつでも置いていけるのに、全く置いて行こうとしない所は凄いと思うわ」

「落とされた後に言われても説得力ないけどな? まぁいいや。行こうぜ」

「えぇ、そうね」

 

 そう言うと、二人は階段を登って行くのだった。




 まぁ、アビーはまだ一回も出撃してないんですけどね。アンリは30階で頑張っていました……


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もう、雲に届きそうだわ(80階とは、高いねぇ)

「高い……高いわ……ここ、何階なのかしら……」

「雲が近くなってきたねぇ。確か80階だっけか」

「うぅ……この高さはちょっと、大丈夫だとしてもちょっと怖いわ……」

「オレは即死だから、突き落とさないでくれよ?」

 

 下を見て頬を引きつらせているアビゲイルと、念のため距離を取っているアンリ。

 

「マスター、早いわね」

「ささっと登っていくねぇ。あのスピード、いつまで持つかねぇ」

「まぁ。マスターならきっと大丈夫よ。さ、早く行きましょ」

 

 アビゲイルは走って階段を登っていき、アンリも追いかける。

 

 そして、八十二階にて、休んでいるオオガミを見つけるアビゲイル達。

 

「あ、お疲れ。今休憩中だよ」

「お疲れ様マスター。明日も頑張るの?」

「うん。明日には百階を攻略したいかなって思ってる」

「頑張るねぇマスター。んで? 今日はここで終わりかい?」

「まぁね。二人も階段を登るので疲れたでしょ。一旦休憩という事で」

「ハハッ。まぁ、始まったばかりでここまで行けるなら上出来だろうさ。休み休み行こうぜマスター」

「だから休憩してるんだってば」

 

 ため息を吐き、大の字に寝転がるオオガミ。

 

「そういや、他に誰かいないのか?」

「みんな温泉だよ。疲れてるからね……俺も入ってきたいけど、ここに戻ってくるのも一苦労だから寝たいなぁって」

「あら。毛布くらいかけて寝ましょう? 風邪を引いてしまうわ?」

「それもそうだね……たくさん持ってきた魔術礼装をかけて寝よう」

「贅沢だなぁ~……てか、こんな使い方想定してないだろうなぁ~……」

 

 アンリの声を無視して寝ようとするオオガミ。さりげなくアビゲイルも一緒に横になって寝ようとするが、アンリはそれを引きずり出して止める。

 

「何をするのよっ!」

「こっちのセリフだっての。それだとマスターが寝れないだろうが。見張ってるくらいで良いんだっての」

「むぅ。それは寂しいわ。私は一緒に寝たいの」

「何言ってるんだコイツ……だから、マスターは今疲れてるんだっての。それなのにアンタが入っていったら、静かに寝れねぇだろう?」

「そう? 私はむしろちゃんと寝れるわ。ふふん」

「何と張り合ってるんだよ……いや、確かにそういうのもいるだろうけども」

「ねぇ……アンリは、どうしてそんなに必死にマスターをしっかり寝させようと必死なの?」

 

 ピシリッと一瞬固まるアンリ。

 アビゲイルそれを見逃さない。

 

「何の話かさっぱりだ。オレは普通に、マスターのはしっかりと休んでもらいたいと思ってるだけだけどな?」

「嘘よ。だって、アンリはそんなこと気にしないじゃない」

「……あ~……本音はアレだ。錯乱してオレを使うとか言い出さないように、判断力を回復してもらおうかと」

「ふぅん?じゃあ、そういうことにしましょう。じゃあ、おやすみなさいアンリ」

「おぅ。おやす――――おいちょっと待て。どこで寝る気だ」

 

 アンリの奮闘むなしく、アビゲイルは当然のようにオオガミの横を陣取るのだった。

 頭を抱えたアンリは、諦めて、アビゲイルが犠牲なるのを祈る事にしたのだった。




 珍しく23時越えてしまった……やらかした……うぐぐ……


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上り終わったんだよ。頂上にも着いたんだよ(延長戦は、ちょっと時間かかりそう)

 百階攻略後推奨。











「うっひゃぁ~……二週目辛いわ~……」

「百階まで上がったら塔が消し飛んで登り直しとか、笑えるわ~。しかも、夜になってるから見難いわ~」

「もう。アンリはいるだけなんだからいいでしょっ! ねぇマスター? お星さまを見ない?」

「気を付けろよマスター。そいつ、窓の外に突き落としてくるからな?」

「アレはアンリだけ!! マスターを落としたりなんてしないわよ!!」

 

 そもそも落とすな。と言いたいアンリだが、アビゲイルが聞いてくれるとは微塵も思っていないので、心の中で叫ぶだけにする。

 オオガミはアンリの忠告を聞きつつも、アビゲイルに連れられて欄干に出て空を見上げる。

 

「ん~……ここだと、ちょっと見難いね」

「そうね。残念だわ……でも、下も綺麗よ。月光で見えるわ」

「確かに。やっぱり明るい時とは印象が変わるね……」

「暗くなっただけなのに、こんなにも変わるなんて。不思議だわ」

「アンリも見ない? むしろ、俺がいるから安全だと思うけど」

「いや、オレは後でいい。つか、今日はこれで終わりか? マスター」

「うん。今日はここで休憩。明日は五十階まで進むよ」

「うへぇ~……明日だけで三十階とは、やる気溢れてるねぇマスター。ボックスの時とは大違いだ」

「ものが違うでしょうが。アレは林檎爆食い大回転地獄。今やってるこれはサーヴァント縛り疑似単騎連続バトル。全く違う上に、こっちの方がやりがいがあるわけだよ。前に進んでいるのが明らかにわかるしね」

「あ~……うん、そうだな。マスターがある意味変人なのはよく分かった。まぁいいや。オレは寝るぞ~」

 

 そう言うと、アンリは部屋の真ん中で大の字になって寝始める。

 

「マスター……私、もうちょっと空を見ていてもいいかしら?」

「良いよ。明日にはもっと高く登ってもっと見えるようにするから」

「まぁ。それは嬉しいわ。ありがとうマスター」

「どういたしまして。と言っても、まだたどり着いてないけどね。今日はまだ低いけど、我慢してね」

「二十階でも十分高いわ。でも、お昼の百階はとても高くて、地面がとっても遠く見えたわ。雲もとっても近かったし」

「楽しかったなら良かったよ。明後日までには攻略を終わらせるつもりだけどね。まぁ、取りあえず今日はもう寝ようか」

「えぇ。マスターがそう言うのなら、寝るわ。あぁ、明日が楽しみだわ」

 

 アビゲイルはそう言うと、屋内に入って行く。

 オオガミはふと、下の温泉を見て、

 

「終わったら、マシュを誘ってみるかな……」

 

 そんなことを呟くのだった。




 いやぁ……百階は強敵でしたね。そして、まさか本当にバラキーがゲームできるとは思わなかったの。私びっくり……


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もうこんなに高くなったわ(明日には終わるかな?)

 前回同様、百階攻略後推奨











「ふあぁ……もう六十階なのね……」

「うん。空に近くなった。明日くらいにはたどり着けるかなぁ~……」

「くぅ~……オレがボロボロにやられてる間に楽しそうなこって。こちとらこれから温泉だっつの」

 

 先程まで倒れていたアンリは、ボロボロの状態で起き上がって、温泉に向かうために降りようとしていた。

 アビゲイルはそれを見て、

 

「言ってくれれば、下ろしてあげたのに。えい!」

 

 触手で器用に掴み、アンリを温泉直上付近まで持っていくと、そのまま下に降ろしていく。

 

「待て待て待て待て待て! 死ぬ!! わりとこれは洒落にならん!! 死ぬ!! 一度殺されかけた方としては不安しかない!!」

「あら。じゃあ、ここで放す?」

「悪魔かテメェ!! いや悪魔だ!!」

「ふふふ。文句は戻ってきたら聞いてあげるわ。じゃあねアンリ」

 

 そう言って、騒ぐアンリを5階ほどの高さで投げ捨てるアビゲイル。

 水柱が上がっているのが見えたので、本当に落としたと気付いたオオガミが、苦い顔をしている。

 

「ふふっ。これで私とマスターしかいないわ」

「うん。まぁ、そうなんだけど、残念なことに、通信は繋がると言うか、マシュは見てると言うか」

「マシュさんなら良いの。だって、私はお話がしたいだけだし。マスター。夜風は冷えるから、中に入りましょう?」

 

 アビゲイルに言われるままに入り、それと同時にアビゲイルが扉を全て閉める。

 予め点けておいた蝋燭だけが頼りの空間だ。

 

「ねぇマスター。終わったら、パンケーキを食べたいわ」

「パンケーキくらいならそんな言い方しなくても普通に作ってあげるのに。どうしたの突然」

「別に、何かある訳じゃないの。ただ、なんとなく、次の場所にたどり着いたら、私の敵がいる気がして」

「次の場所……次の階ってこと?」

「そうじゃないわ。拠点に着いて、m前の人たちが召喚されたらよ。だから、マスターを盗られないようにしなくちゃ」

 

 なんとなく、嫌な予感がしてくるオオガミ。

 今のセリフを聞いたら、一部のサーヴァントが荒ぶりそうな話だ。清姫とか、静謐とか、頼光とか。

 ただ、不思議とエウリュアレは全く気にしないで、いつものように絡んでくる気がした。

 

「マスター、今他の人のことを考えてたの?」

「いや、別に? でも、とりあえず敵って感じるような人はいないんじゃないかな?」

 

 一部は殺意を持って襲い掛かってくるだろうが、半分はバーサーカーだと思われるので、アビゲイルなら問題ないと思うオオガミ。

 アビゲイルは面白くなさそうな顔を一瞬した後、

 

「まぁ良いわ。ねぇマスター。今日はカルデアのお話をしてちょうだい。良いでしょう?」

「ん~……明日も登るから、あんまり長くは話せないからね?」

「えぇ、それで良いわ。お願いね、マスター」

 

 アビゲイルに言われて、オオガミは何を話そうか少し考えた後、話し始めた。




 うぅむ、攻略が終わったら温泉に降りるか……そろそろ二部始まってほしいんですけど、たぶんバレンタイン先ですよねぇ……


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登り切った!!(一番星空に近いわ!!)

 今回も百階攻略した方推奨。









「頂上!! 頂上よマスター!!」

「うっはぁ~……オレ、何回死んだんだろ~……疲れたわぁ~……」

「現実を言うと、あまり死んでないアンリ。そもそもルーラーを相手にした時しか出てない。たぶん二回くらい」

「アンリ、案外タフなのね。もっとやられてたと思ったわ」

「この野郎……さりげなくオレを排除しに来てたくせに、平然とそんな事を……」

 

 いつもの様に暗黒面が表面に出ているアビゲイル。

 アンリはそんなアビゲイルを見て苦い顔をする。

 

「まぁまぁ。アビーもそんな悪魔の様な顔で笑ってないの。今度は降りるっていう最大の難関があるんだから」

「んなの、オレみたいに飛び降りりゃいいんじゃねぇの?」

「それはアンリだけよ。だから、アンリ。帰る時は飛び降りてね?」

「……アンタ、本当に性格悪いなぁ……」

「ふふっ。アンリには負けるわ」

「明らかにアビーの方が真っ黒……いや、これ以上はこっちの身まで危ない。しばらくは諦めてくれアンリ……」

 

 アンリを見捨てるオオガミ。真っ黒な笑顔を浮かべるアビゲイルを止められるような力は無かった。

 

「おいおいおいおい。マスターに見放されたら、本格的に投げ飛ばされる奴じゃねぇかコレ……!!」

「フフフッ。分かってるのね。じゃあ、お望み通り、投げ飛ばしてあげるわ!!」

「だぁ~!!! やめ、ぐあぁぁぁ~~!?」

 

 もはやお馴染みの光景になりつつあるアンリ投げ飛ばし。

 今回のは流石に危ない気がしなくもないが、途中で展開された触手で温泉に向かって軌道修正されていたので、きっと大丈夫だろう。某ゲームの様に、落下ダメージが無かったり水に落ちれば落下ダメージが無かったりするわけではないが。

 アビゲイルはやり切ったという表情をした後、触手を消していそいそと服を着始める。当然、オオガミは後ろを向いている。

 

「さて、どうする? アビゲイルも降りる?」

「ん~……もう少し星を見ていたいわ。だって、一番綺麗に見えるんだもの。屋根の上から見たら、もっと綺麗かしら」

「屋根の上かぁ……ちょっと寒そうだけど、それもありだね。行ってみる?」

「えぇ! 屋根の上なんて、お行儀が悪いかもだけれど、一度乗ってみたかったの!!」

 

 そう言うと、アビゲイルは手すりの上に登り、ジャンプしていってしまう。

 置いて行かれたオオガミは、弱体解除できる魔術礼装に変えてからゆっくりと登る。どこからかロープを取り出して命綱を作っているあたり、安全面に抜かりはない。

 何とかして登り切ったオオガミは、すでに大の字で横になっているアビゲイルを見つける。

 

「どう? 綺麗?」

 

 アビゲイルと同じように大の字に横になりつつ、オオガミは聞く。

 

「えぇ。星空が煌めいて、とっても綺麗だわ。月も強く輝いているし、本当に楽しい一日だったわ」

「それならよかった。楽しいなら何よりだよ」

「ん~……ちょっと肌寒いわ。でも、仕方ないわよね。屋根の上だもの。綺麗な景色が見られただけでも良かったと思わなくちゃ」

「そうだね。じゃあ、もうしばらく星空を見て、それから下に降りようか」

「えぇ。分かったわ」

 

 そう言うと、二人は静かに空を見ているのだった。




 ついに登り切って、そして暇になってしまった私……
 難敵だったのは裏の70階と80階……90階と100階は割と余裕でした。90階はアビーとリップで殴り、100階は前からやりたかった魅了ハメでさっくりと終わりました。
 えぇ、はい。ステンノ様は犠牲になりましたが(吐血


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温泉といえば、ある意味やることは一つだと思うぜ? マスター(向こうのメンバーを考えて言いなさい)

「あ~……生き返るわぁ~……」

「アンリめ。真っ先に入って俺が言いたかったこと言いやがった……!!」

「へっへ~ん。お先だぜ~」

 

 温泉。最初からあったにも関わらず、ここまでアンリ投げ入れエリアというかなり不当な扱いをされていた可哀想な場所だ。

 そして、先に入ったアンリを恨めしそうに睨みながら、オオガミも入る。

 

「いやぁ……暖まるねぇこれは。どうだいマスター。オレが見つけたわけでもねぇが、中々なもんだろ?」

「うんうん。特に、濁り湯ってところが、温泉らしさを引き立ててる気がするよ」

「っは~……極楽極楽。いやまぁ、混浴ならもっと言いかもしれんがな?」

 

 アンリの発言と共に、静かになる場。

 二人とも天を仰いで、黙っている。

 

 その沈黙を破ったのは、オオガミ。

 

「流石にそれは死ぬんじゃない?」

「いや……可能性はある」

 

 ねぇよ。と全力で突っ込みかけたオオガミは、その気持ちを必死で押さえ、

 

「な、なんでそう思うのさ」

「そりゃ、何かあったらマスターを盾にするし」

「躊躇いなく犠牲にしやがったコイツ!!」

「おぅ。塔でのこと、忘れたとは言わせねぇからな?」

 

 躊躇なく瞬時にアビーにアンリを売ったオオガミは、およそ許されることはない。

 

「まぁまぁ。アンリ温泉投げ込み事件は忘れていこうじゃないか」

「いつか三倍返しにするって決めたからな。だから、今ここでマスターを盾にしながら女湯に乗り込むのもありかと」

「うぅむ、見つかったら確実に殺される。そして何より、入っているメンバーを考慮してないのがダメかと。アンリよ……アビーとマシュだぞ……?」

「アビゲイルはどうでも良いだろうが。狙うはマシュだろ? 何当然の事言ってるんだ」

「どのみち即死なんですが。アンリが気にせずとも、アビーは気にするんですよ。当然でしょうが」

「それはそれ。これはこれだ。どのみちマスターを盾にするから問題ない」

「アビーの攻撃は背後からも来るんだよねぇ……」

 

 実質、全方位から攻撃される可能性は高い。なので、実質盾など無意味だろう。

 つまり、

 

「要するにだ。あれだろ? 走って逃げろってことだろ? マスターをアビゲイルに叩き付けて、即時撤退。完璧じゃね?」

「どこら辺が完璧なのかを問いただしたいところなんだが?」

「どこって、そりゃ、全体的に?」

「もはやどこが全体なのかも見失ってきたな……うん。女湯潜入も、混浴も、殺される道しかないので無しで。大人しくしてましょう」

「へいへい。夢のないこって。じゃ、オレは一足お先に、行ってるからな」

「もう出るの……いや、今の流れからして明らかに死にに行ったかアンリ!!」

 

 止める暇もなく、アンリは女湯に突撃していった。

 直後、巨大な水しぶきと共にアンリが頭から温泉に飛び込んできたのは、言うまでもないだろう。




 アンリは英雄だったよ……だけど、その代償はあまりにも大きすぎた……さよならアンリ。君の勇気は忘れない……!!(どうあがいても変態


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アンリは反省するべきだと思うの(視界に入る前に叩き出しましょう)

 アンリが空を舞い、男湯に戻されたのを確認したアビゲイルは、温泉に肩まで浸かると、

 

「全く、アンリには失礼しちゃうわ。こっちに入ってくるなんて、マナー違反よ」

「普通に犯罪行為なんですよね。まぁ、アビーさんが前もって投げ飛ばしてくれたので、私としては助かったんですけどね」

「えぇ、えぇ。本当に許せないわ。マスターならまだしも、アンリはダメよ」

「そうですね。ですが、一つだけ。先輩もダメですから」

 

 マシュの目は笑っていなかった。アビゲイルは即座に目を逸らした。

 

「でも、先輩も一緒に入ってるはずなのに、一緒に来なかったというのは珍しいような。アンリさんと一緒に悪ノリで入ってくると思ったんですけどね?」

「マシュさんはマスターをどうしたいのかしら……入ってくるなって言ったのに、入ってくると思っていたなんて……」

「入ってきて欲しくはないですし、入ってきたら叩き出すつもりですけど、こういう状況で先輩が動かないというのは、なんとも気持ち悪いと言いますか、何を考えているのか不安になると言いますか……なので、見えないところで迎撃されているのが理想ですね」

「入ってくる前にやられるってことかしら……何もしてないのに可哀想だわ……」

 

 ここまでアンリが何もしていないときでも理不尽に八つ当たりしていたり、投げ飛ばしたりしていたのを無かったことにしつつ、アビゲイルはそんなことを言う。

 

「先輩は、基本自由すぎるんです。もう少し落ち着いてもいいと思うんですよね。遊ぶのも程々にして、やることをやった方がいいと思うんです」

「あら。マスターは頑張っていると思うわ? 遊んでるように見えても、今回だってすぐに終わっちゃったじゃない」

「これがいつもならいいんですけど、結構サボるんですよ。特にボックスガチャイベントの時は、自分の目標を達成できてませんからね」

「まぁ、それは見ていて分かるけど……でも、意外とやる時はやると思うわ」

「やる時は、やるんですけどね……基本、やらないので……」

「……で、でも、頑張っているのは確かよね?」

「そうですね。ちょっと許せないときもありますが、やる時はちゃんとやってますしね」

 

 カルデアでは休憩室で暴れていたり、ノッブやBBに混ざってふざけていたり、今はアビゲイルやアンリと遊んでいたりするが、やる時はやるし、なんだかんだ育成をしていたりするので、一概にやってないとは言えない。

 

「さて。本題に戻るんですが、先輩が入ってきたら全力で叩き出してくださいね。アンリさんも一緒に」

「当然よ。私だって恥ずかしいもの。入ってくる前に追い出すわ」

 

 そう言って、アビゲイルは男湯と女湯の境に目を向けると、水柱が上がる。

 

「またアンリね。マスターじゃないもの」

「アンリさん、懲りませんね……」

 

 二人は、やれやれと言いたそうに、首を振るのだった。




 アンリ……君は勇者だと思うよ……なむなむ。


 あ、インフルにかかりました。B型です。もしかしたら更新できないかもしれないので、その時は倒れていると思ってください。


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バレンタイン2018~繁栄のチョコレートガーデンズ・オブ・バレンタイン~
バレンタイン、始まったねぇ(温泉から出たらすぐですよ。すぐ。早すぎません?)


「う~ん……温泉から上がると、ここは空中庭園だったって事でいいと思う?」

「ま、それで良いんじゃね? ぶっちゃけ誰も気にしないと思うし」

「気にした方がいいと思うんですけど……あの、アビーさん。私だけ帰してくださいません?」

「えぇ……マシュさんももう少しいましょうよ。色々見て回りたいわ!!」

「この、何にも恐れていない感じがまた怖いです……!!」

 

 アビゲイルに連れられて姿を消すマシュ。実質一般人となっている彼女だが、アビゲイルがいるのでなんとかなるだろう。

 

「で、オレらはどうするんだ? マスター」

「そんなの決まってるじゃん。設備強化でしょ。全力全霊を持ってしてね」

「……珍しくやる気だねぇ……」

 

 やれやれと首を振るアンリ。当然、オオガミは気にしない。

 そして、今回はアンリだけではない。

 

「よぅし。じゃ、ランスロットにも出て来てもらおうか」

「えぇ~? マシュに散々言われてる、あのランスロットか? もうちょっとマシなのはいなかったのかねぇ……」

「貴公は、私に何か恨みでもあるのか……」

 

 颯爽と登場しようとしたところをアンリの何気ない一言で撃墜されたランスロット。

 

「おわぉ、真後ろにいたのか。ハハッ、そりゃすまなかった。別に恨みも何も無いけど、妙にマシュが言ってたことが耳に残っててな。ガラスの心じゃないことを祈ってるぜ」

「いえ、何の心構えも出来ていなかった私のミスです……カルデアでは何時いかなるときも不意打ちに備えなくてはいけない……また一つ、学びました」

「うっわぁ~……若干の皮肉も混ざってたはずなのに、ここまでしっかり返されるとなんとなく蹴り飛ばしてぇ」

「なんでアンリはそんな殺意持ってるのさ。積年の鬱憤を晴らすときが来たかのような清々しい表情で言ってるのも気になるんだけど? 後、ランスロットもそんな事学ばないで欲しい……理由はちょっと言えないけど」

 

 まさか、ノッブとBBと一緒にイタズラするときの障害になるからなどと言えるわけもない。というか、言ったら確実に警戒されるというのは想像に難くない。

 

「まぁ、マスターがまた良からぬ事を考えていても、ランスロットという壁を一回通ってからオレに来るようになったな。これで準備が出来るようになった」

「えっ、私は壁なんですか?」

「肉壁……かな。アンリの」

「私の扱い……!! いえ、まぁ、良いのですが。それよりも、マスターが良からぬ事、とは、一体何をするのですか……?」

「そりゃ、色々だろ。疲れ果ててる奴を百階ある塔から投げ捨てたり、温泉に叩き付けたり、女湯に突撃していったり」

「何をしているんですか本当に! 特に最後!! 本当にやったんですか……!!」

「アンリがね。衝立に手をかけた瞬間に下から現れた触手に殴り飛ばされてたけど」

 

 アンリが無惨に吹き飛んでいったのを、オオガミはしっかりと目撃していた。

 当然、オオガミはその後リスクを考えて、塔を登って上から見ようと思ったが、出てきたときには既にこれだった。手遅れである。

 

「ま、サクッと行こうか」

「あいよ~。緩くいきますかねぇ」

「えぇ、薙ぎ払って見せますとも」

 

 いつものようにしているオオガミとアンリ。

 見慣れていないランスロットは、若干不安そうにするのだった。




 バレンタインだl! チョコだぁ!!
 ……あれ? これ、実質的な個数制限ありません……?

 そんなこんなで、開幕から女性皆無のバレンタイン編。
 あぁ、今年のバレンタインはエウ様もノッブもBBもいないのか……後、うちの設定上使える女性キャラはカーミラ様……?


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チョコ大量生産の時は来た!(倍率上げていくぜ~!)

「う~ん、ゴーレム、デカイなぁ……」

「でけぇよなぁ……よくこれであんな動きが出来るぜ。感心するわ」

「チョコで作られているため、生産が容易く、しかもある程度の硬度も確保されている。更に再利用も可能ですか……ふむ。訓練にも使えそうですね」

 

 大きさに驚くオオガミとアンリとは別に、その性能に目を向けているランスロット。

 空中庭園の警護やチョコの製造、力仕事を主にやってくれているので、邪魔しない範囲で見学しているというわけだ。

 

「ん~……やっぱ変形できるって良いよね」

「チョコだからある程度は加工できるかねぇ?」

「二重構造にするとかもありか」

「オレはまだ変身を二回残している的な?」

「良いねそれ。採用しようか」

「……あの、マスター達は何を話しているんでしょうか……」

「「三段階変形ゴーレム作成計画」」

「……やるんですかそれ」

「ノッブとBBが来た辺りで」

 

 大体あの二人なら実現してくれるという、確信を持った言葉。

 なんだかんだ、信頼しているというべきか。

 

「まぁ、設計図は後で考えるとして、今はチョコを増やすのが先決。ふふふ……チョコを貰うのが楽しみなんじゃぁ……」

「うん。いつも通りだなマスターは」

「これでいつも通りなんですか……」

 

 大体いつも通りである。特に、こういうイベント事では。

 あまり長い付き合いではないアンリでも、なんとなく通常運行だと言うのは想像できるようなことだった。

 

「それにしても、アビー達帰ってこないね?」

「そりゃ、バレンタイン近いんだぜ? 気にしないようにしな」

「ん……そうだね。何というか、気にしたらチョコが消えてしまう気がする」

「うん。察しが良いね。流石だマスター。こういう貰い物系に関しての嗅覚は良い気がするぜ?」

 

 まぁ、そんなこと無いと思うけど。と小さく付け足しておくアンリ。聞いている人は誰もいないのだが。

 だが、オオガミも気にしている様子がないので、問題はないだろう。

 

「さて、適当に話を変えるように、話を戻すとしよう。三段階変形ゴーレムのチョコを考えよう」

「おぅ! 楽しみだなそれは!!」

「この空中庭園には多種多様なチョコがあるから、試行錯誤は出来るね」

「そうだな。でもなマスター。それ以前に必要なことがある」

「……チョコの製造だね……」

「あぁ、そういうこった」

 

 アンリは頷くと、一度大きく伸びをして、

 

「さてとぉ……んじゃマスター。さっさとチョコを生産しようぜ、マスター」

「そうだね。急いで施設も増産しないと」

「えっと、えぇ、はい。必要なものも多いですから、急いでいきましょうか」

 

 そういうと、三人は周回に向かうのだった。




 未だ礼装全交換しかしていない私です……施設拡張せねば……


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あれ? 先輩は何処に行ったんですか?(ありゃ、すれ違いになったのか?)

 一部ピジョンレポートとアビゲイルチョコのネタバレアリ。ご注意ください。


「あれ、先輩はどうしたんですか?」

 

 アンリを見つけたマシュの第一声はそれだった。

 そんなマシュの声に首をかしげたアンリは、

 

「そっちに行ったと思ったんだけどな? なんせ、マスターはアビゲイルに会いに行ったんだからな。つか、アビゲイルはどうしたんだ?」

「アビーさんは途中で研究所の受付係に任命されて行ってしまったので、そこで別れました。なので、先輩がいるであろうこちらに来たのですが……」

 

 どうやら、運悪く入れ違ったらしい。そう気付いたアンリは、

 

「おいランスロットさんさぁ……どうおも――――あれ? いねぇ」

「どうかしたんですか?」

 

 後ろにいるはずのランスロットに声をかけて振り返って、いつの間にかいなくなっていたことに気付く。

 何処行ったんだ。と考えるが、消えた原因はなんとなく予想がつく。

 仕方ないとは思いつつも、そういう態度も一役買っているのではないかと思うアンリだった。

 

「あ~……いや、なんでもねぇよ。まぁ、どっちにしろ、マスターはいねぇよ。探しに行ってみるか?」

「そうですね……ちょっと探し回ってみましょうか」

 

 そういうと、二人はオオガミを探し始めた。

 

 

 * * *

 

 

 その頃オオガミは、アビゲイルを肩車して全力疾走していた。

 

「ま、マスター!? どうして走っているのかしら!?」

「そりゃ、走りたいほどい嬉しいからかな!!」

 

 空中庭園をひたすら走っていたオオガミだが、ふと、歩き始める。

 

「きゅ、急に走ったり、歩き出したり……どうしたの? マスター」

「いや、一気に開拓したから、見覚えの無いものもあるんじゃないかと思って。明日は施設の見回りをしてみようか」

「そうね。走っている間に色々出来ちゃったから、もう一回最初から見たいわ!」

「了解。じゃあ、明日は皆と一緒に施設の見回りだね。一日で見回れる量じゃないと思うけど、数日かければ大丈夫かな」

「えぇ。でも、きっとその間にも増えると思うから増えた施設もお願いしたいわ」

「もちろん。施設の見回りは必要なものだし、怒られないと思うしね」

 

 チョコ生産をサボっているわけではなく、点検という名目で見回れば何も言われないという自信があった。許可されなくても礼装身代わり逃走するのだが。

 

「あぁ、楽しみねマスター。どこから見て見ようかしら」

「作った順番から見て行こうかなって思ってるけどねぇ……アビーは見て見たいところがあったりする?」

「ん~……施設と言うよりも、ゴーレムさんを見てみたいわ」

「う~ん、夜に警備しているゴーレムさんを見てるのもいいかもしれないね。巡回ルートの確認も出来るだろうし」

「なんか、お仕事と一緒になっちゃうかもしれないわね?」

「あはは……さて。じゃあ、マシュ達を探しに行こうか」

「えぇ!! 行きましょ――――って、なんで走るのおぉぉぉぉぉぉ!!! きゃああぁぁぁぁぁ!!!」

 

 走り始めたオオガミに驚き、叫びながらもアビゲイルはしっかりとオオガミに掴まるのだった。




 走り出すオオガミ君。アビーのチョコは大事にしまっておこう……鑑賞するけど。

 あと、あの話を見て、且つピジョンレポートのアビーの話を見たら書かざるを得なくなってしまった……アレはちょっと、書きたくなる欲が。
 正直、アビーの受付姿をめちゃくちゃ見たくなったのは私だけじゃないはず。


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遠足気分だよね(こっちは視察だけどな)

「カカオ豆よ! 私、初めて見たわ!!」

「同じく――――と言いたいんだけど、去年ジャガーからカカオ豆貰ったから初めてではないんだよねぇ……まぁ、チョコに変わるところは見たところ無いんだけど」

 

 アビゲイルに手を引かれながら、カカオの木々に向かって進むオオガミ。

 そんな二人を、遠くから見守るアンリとマシュ。何かやらかすと信じて、即座に対応できるように。とは本人達の談。

 ランスロット卿は体調不良(自己申告)で逃走していた。

 

「確か、私達が加工できるような、特殊なカカオ豆なのよね。一体どんな事をしたのかしら。気になるわ」

「まぁ、それはこっちも気になるんだけどね。そもそも、チョコが耐えられない加工って何さ」

 

 気になり始めると、追っていきたいこの二人。調べたい欲が湧いてくるが、まだ施設見回り計画はスタートしたばかりだ。

 ここは気持ちをぐっと堪えて、次の場所へ進むべきだろう。

 

「カカオ豆……とっても気になるものだったわ……」

「うん。いずれこのカカオの凄さを調べに来るんだ……解明できないと思うけど」

「なんで追い付いたら悟ったような顔してるんだこの二人」

「何かあったんですかね……それと、先輩。そのカカオ豆はちゃんと工場に送っておいてくださいよ」

 

 マシュの言葉はもっともだった。研究以前に、追い出されたら元も子もないわけで。

 

「……よし、次のところ行こうか」

「異常はなかったわ。ふふっ。次はパラケル君ね!」

「えぇ~……何を見るってのさ」

「視察ですし、何か企んでないか見るだけというのもありではないかと」

「ま、見ないわけにはいかないってことか」

「そうなりますね」

 

 アンリは小さくため息を吐くと、拳を振り上げて楽しそうにしているオオガミとアビゲイルに、マシュと共についていく。

 

 

 * * *

 

 

 とはいっても、パラケル君は空中庭園のどこか。根本的に会えるかどうかわからないわけだ。

 だが、そこはアビゲイルの発見力。彼女の言うままに進んでいくと、パラケル君を無事見つけられる。

 

「ふふっ。小さくてかわいいわよねマスター。私、もっと種類があっても良い気がするわ」

「ホムンクルスだけど、そこら辺は気にしないのかな……」

「むしろ、ホムンクルスで良いわ。だって、お話ができるじゃない」

「あ~……なるほど。まぁ、意思疏通は難しいけど、ちびノブも同じようなものか」

「そうそう。そのちびノブも欲しいわ! 私、お願いしてばかりだけれど、その代わりにこれからも頑張るから!」

「まぁ、ちびノブは昔捕まえたし、再度集め直すくらい問題ないよ」

「ありがとうマスター!」

 

 アビゲイルはそう言って、オオガミに抱きつく。

 アンリはそれを横目で見つつ、

 

「ま。まだ平穏だな。何か起こす感じもねぇ。もうしばらくは放置してもいいと思うぜ?」

「了解です。会議している様子も確認できてないので、大丈夫でしょう。何かあったら来ることにしましょうか」

「おぅ。じゃ、次だ次」

 

 そう言って、アンリはオオガミを急かすのだった。




 マイペースなオオガミとアビゲイル。それを監視しつつ名目上の理由をこなしていくアンリとマシュ……後衛部隊が優秀な件について……!!


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チョコレート工場の映画って、結構懐かしいような(帰ったら見てみましょうよマスター)

「はわ~……チョコレート工場、やっぱり大きいわねマスター……」

「何気に10棟も立ってるからね。というか、一応アビーの働いてるところだよね」

「受付をしているだけだから、あまり中には入らないの。だから、ここまで来るのは珍しいのよ」

「なるほど。まぁ、防犯上の問題もあるしね」

 

 確かに、某チョコレート映画のような広さだと頷くオオガミ。ライオンさんが映画を撮ると言っていたが、本気なのだろうか。主に、出演メンバー的な意味で。

 

「アビーは元の映画、見たことある?」

「いいえ。私はあまり映画は見てないわ。マスターは?」

「一応見たことあるけど、あんまし憶えてないんだよね。後で見直そうか」

「えぇ。私も見てみたいわ」

 

 いくつかの試食チョコを食べつつ、二人は工場内を突き進んでいく。

 いつもの如く後ろをついて行っているアンリとマシュは、所々の備品をチェックしながら進んでいく。

 

「二人とも、表上の目的忘れてますよね……」

「まぁいいんじゃねぇの? アンタもひっそりと何かを準備してるんだろ?」

「それは……まぁ、そうなんですけど。というか、なんで知ってるんですか」

「そりゃ、見てりゃ分かる。マスターが知ってるかどうかは分からんがな。なんだかんだ、気付いてても黙ってたりする奴だし」

「忘れっぽい人ですからね。うっかり忘れちゃってるのを願ってます」

「ハハッ。案外酷いなアンタ」

「いえいえ。アンリさんほどじゃないです」

「おっ。言ってくれるじゃねぇの」

 

 不敵に笑い合う二人。さり気に、今回の見回りで一番友好度が上がっているような気がする。

 

「じゃ、もう少し見たら、次の所に行こうか」

「えぇ、私はそれでいいわ」

「一応点検部分は見終わったので、いつでも大丈夫です」

「おぅ。好きなタイミングでよろしくな~」

 

 

 * * *

 

 

 移動して、警備中のゴーレムを見に行く四人。

 一番楽しみにしていたアビゲイルは、ゴーレムによじ登って肩の上に乗るのだった。

 

「やっぱり高いわ! このゴーレムさん、チョコだからもっと大きくできるのよね!?」

「出来るとは思うけど、限界はあると思うよ?」

「むぅ……それはしょうがないわ。でも、もっと高く大きくしたら、もっと大きなものも持って行けたりすると思うの。どうかしら!!」

「まぁ、警備の観点的にも、大きさによる威圧感はあるしね。大きいってだけで利点だよ。認めてくれるかは別だと思うけど」

「出来ないのなら仕方ないのだけれどね」

 

 ゴーレムの上のアビゲイルを見上げながら、オオガミは大きくできるか悩む。

 

「それで、出来んのか? 巨大化とか」

「さぁ……? 私の専門じゃないですから……ゴーレム担当の方に聞かないと無理ですかね……?」

「なんだゴーレム担当って……」

 

 果たして大きくできるのか。それは、今の所誰にもわからない。なので、とりあえず後で聞いてみる事にするのだった。




 ハンス君としゅてんちゃんとか言う、明らかに人選ミス感否めないおっそろしい話……ちょっと見てみたい私がいる……まぁ、このレポート見たの一昨日くらいなんですけどね。


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恐ろしい悲鳴にご注意を(耳栓してるから会話出来ないよね)

「この農園は好きじゃないわ! 皆の声がほとんど聞こえないし、この声を聞いちゃうと倒れちゃうもの!!」

「声は聞こえないけど、言おうとしてることはよく分かる。正直、叫ぶ前に倒せばいいと思う」

「全く聞こえないですけど、先輩が無茶なことを言ってるのは分かります」

「……なんか、オレ以外意志疎通出来てねぇか?」

 

 正確にはアビゲイルも出来ていないのだが、アンリは気付かない。

 マンドチョコラゴラ農園。一つの悲鳴で多数死亡する凶悪なチョコ植物育成場。耳栓は必須アイテムだが、意思の疎通が図りにくいというのが現状だ。

 今でさえ、オオガミは読唇術で、マシュは長年の経験則で言葉を読んでいるくらいで、アンリもアビゲイルも、一切会話が出来ていない。

 

「マスター! ここだとお話出来ないわ! 他のところに行きましょ!」

「まぁ、そうだよね。こんな音響兵器の近くでのんびりのんびり会話できる精神は持ち合わせてないや。っていうか、念話をすっかり忘れてるなこれ」

「今更ですね。というか、使う機会が無さすぎたのも問題かと」

「平然と話続けてるだろこの三人。オレ全く聞こえないんだけど。え? 移動するの? いや、まぁ、助かるけど。耳栓の効果は確かだし、良いのか……?」

 

 アンリは微妙に納得いかなそうな表情をしていたが、離れることにあまり異論はないらしい。

 そうして、三人は農園を離れる。

 

 

 * * *

 

 

 死チョコ魔術研究所。何処をどう切り取ってみても、ただの危ない研究所でしかない。正直、誰がここで働こうと思うのかと考えるくらい怪しい雰囲気だ。

 実際、働いているのも、ほとんど見た目中身共に危ない人だ。

 

「なんか、ここは面白そうよね。チョコの蘇生って、不思議な響きよ」

「全く理解出来ないレベルだよね……そうか、死霊魔術はそんなところにまで手を伸ばしていたのか……食材の魂って、恐ろしいなぁ……」

「なんとなく、食べ物の恨み的なそれの雰囲気ありますよね」

「倍返し以上が普通だな。具体的には、他人のプリンを食ったら三日間断食させられ、目の前で美味しそうに自分が買ってきたプリンを食べられる刑ってくらい」

「倍ってレベルじゃねぇぞそれ……!!」

 

 倍返しと言えばアンリということで話始めた例え話に、うっすらと恐怖を感じつつ突っ込むオオガミ。心の底から突っ込んでいたりする。

 何か心当たりでもあるのだろうか。

 

「というか、このチョコって美味しいのかな……」

「どうかしら……見ていて面白いけれど、食べるのはちょっと勇気がいるわ」

「私もちょっと抵抗がありますね……」

「別に不味くはねぇぞ? まぁ、食い過ぎは良くねぇけどな」

「それは当然だけども。ってか、不味くはないって、中々グレーな発言で……」

「気にすんなってマスター。ほれ、食ってみ?」

「え、遠慮しとく」

 

 妙に良い顔でチョコを押し付けてくるアンリに、オオガミは苦笑いしながら断るのだった。




 ようやくストーリー終わったので、聖杯君まで見に行ける……でも、まだチョコは3分の2あるんですよね……遠い……

 しかし、死チョコは美味しいのか否か。ちょっと気になる……


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精神と時とチョコの部屋という無駄技術(無駄に洗練された無駄のない無駄しかない技術。最後のチョコの部分だけいらないと思うの)

「この部屋にいると、時間の流れがゆっくりになるって言っていたけど、私にはとっても早く動いてるだけに見えるのだけれど」

「うん……この部屋にいると、目が痛くなってくる」

「部屋の中でチョコ関連の何かをしてないと時間がいつもと変わらず流れますからねぇ……限定的ですし」

「ま、意外と条件はガバガバな気もするけどな」

 

 チョコの事を意識すれば時間が延びる。という、あまりにも使い勝手の悪い特殊な部屋。

 大体、こんな部屋の需要はあるのだろうか。チョコの生産面を見ると確かに良いのだが。

 

「いやぁ……この部屋、どういう理論なんだろ」

「応用したらトレーニングも休憩も多く時間が取れそうですよね」

「おっと。マシュ嬢が恐ろしいこと考えてんぞ?」

「いえ、別に変なこと考えてませんよ……? ただ、先輩のやる気回復速度を上げられないかなぁって考えているだけで」

「流石だマシュ。この駄目マスターにもっと言ってやれ」

「アンリがすっごい手のひら返ししてくるんだけど」

「安心してマスター。後でアンリにも同じ目に遭ってもらうわ」

「うん。何の安心も出来ない。どう考えても被害に遭うのは確定してる」

 

 事前回避ではなく、事後反撃だった。アビゲイルの中ではマスターが犠牲になるのは確定のようだった。

 ただ、時間が遅くなるのは、意外と良い技術の様な気がしなくもない。作家だけでなく、工作要員にも。

 

「まぁ、時間遅延技術は技術班に任せるとして、そろそろ移動しようか。何となく、アビーとマシュの目が怖くなってきた」

「賛成。とっとと逃げよう」

 

 そう言って、そそくさと走って逃げるオオガミとアンリ。それをマシュとアビゲイルが追いかけるのだった。

 

 

 * * *

 

 

 流星の如く降ってきて当然の如く不時着する三日月に見える完全チョコ製宇宙船。使い捨てなのかどうかは分からないが、どの道ここでは解体されるので使い捨てのようなものだろう。

 

「そう言えば、この宇宙船には点滅するカビがいるって聞いたのだけれど……」

「それは別の船体じゃないかな……?」

「そうなの? でも、やっぱりカビはいたのね。私、ちょっと見てみたかったわ」

「まぁ、流石に取って置けませんでしたけどね。ただ、何か企んでいたようですし、手を出さなくてよかったと思いますけどね」

「残念。ちょっと見たかったのに」

 

 アビゲイルは残念そうな顔をして、さりげなく宇宙船の一部を削って食べる。

 

「あら。意外に美味しいわコレ。大気圏突入時の熱でちょっと焼けた感じがまた良いわ。マスターも食べてみない?」

「ん。食べる食べる。って、ちょっと待った。バレたら殺されない……?」

「流石に大丈夫かと。報告するような事でもないですし、たぶんまだ増えるでしょうし」

「雑だよねぇ……記念とは一体」

 

 このチョコ製宇宙船をくれる惑星の人々は、なぜそんな記念品をくれるのか。謎が深まるばかりである。

 

「うん。まぁ、チョコは美味しいし、良いか」

「そうね。ねぇマスター。次の所行きましょ?」

「そうだね。ここにいると何時爆撃を受けるかわかったもんじゃないし」

「地面も壊れてはいませんし、大丈夫ですね。行けますよ」

「いつ降って来るかって、気が気じゃなかったぜ」

 

 そう言って一番着地点に近かったアンリは、オオガミ達を追いかけるようにちょっと駆け足になり―――――

 

 突撃してきた宇宙船に叩き潰されるのだった。

 

「「「あ、アンリ(さん)――――ッ!!」」」




 悲しい、事件だったね……


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一回も見たことないんだよなぁ、チョコリッチ(厳重に守られた部屋で使ってますし、仕方ないかと)

「振るとチョコが出てくる魔法の剣……なのよね?」

「まぁ、見たことないけどね。女帝さんが部屋で作ってるっぽいし」

「まぁ、見れないですし、チェックのしようがないですね。諦めて最後の施設に行きません?」

「ちょっと見てみたいよなぁ~。チョコリッチが動いてるところ~」

「見に行ったら殺されますよ?」

 

 アンリの発言に、マシュは何とも言い難い表情で止める。

 ふと思い立った瞬間に動き始めるのがアンリなので、釘を刺しておかないと地面に倒れていたりする。

 

「別に、殺されねぇと思うけどな?」

「そう言ってアンリが何度地面に落ちていたのか、憶えてるの?」

「……ちょっと記憶にねぇな。要するに問題ねぇって事だ」

「こっちにまで被害が出たら困るからやめろって言ってるんですよアンリ君」

「ちぇ。ま、流石に死にたくないし、自重はするけどな」

「えぇ、そうしてください。意外と連帯責任なので」

「ま、まぁ、それは流石にスマン。次は気を付けるわ」

 

 やめると言わない辺り、おそらくまだやるつもりはあるようだった。

 

「見れないなら面白くないわ。昨日の速い部屋よりもつまらないわね。行きましょマスター」

「次の所も見どころあるか分からないんだよねぇ……」

「まぁ、アレは何処を見ればいいのか。という感じですね。そもそもどういう原理でチョコを生成してるのかが分かりませんし。一応見に行ってみます?」

「えぇ、行ってみましょう!! 楽しみねマスター!」

「一体何が起こっているのか。結構気になってたりするけど、正直怖い」

 

 不安そうなオオガミを引きつれて、アビゲイルは走り出すのだった。

 

 

 * * *

 

 

 チョコ英霊とチョコ英霊がチョコ聖杯を求めて戦うチョコ聖杯戦争。チョコの宝具から放たれるチョコのビーム。チョコのチョコによるチョコの為のチョコ聖杯戦争。チョコ英霊だが、願いはおそらく本物だろう。

 

「……見てて、なんか空しくなってきちゃったわ……」

「何というか、ひたすら繰り返される聖杯戦争なんて、地獄以外の何物でもないですよね……」

「この施設、即時解体した方が良いんじゃない……?」

「……一個だけ貰ってくるか」

 

 さりげなく物騒な事を呟いた復讐者が一人。止められるのは目に見えているが。

 

「しかし……どうしてこれを思いつくのか……発想がどうかと思うよね」

「根本的に聖杯を生み出せるのがおかしいかと」

「不思議ね。そんなに増やせるものなのかしら、コレ」

「まぁ、量産は普通出来ないんだよね……何を考えたら作ろうと思えるのか。謎過ぎる……」

 

 大体、作れるというのはいかがなモノか。

 

「それで? これで一通り回ったぞ?」

「ん。じゃあ、受付に戻ろうかしら。楽しかったわマスター! また後で会いましょうね!!」

「えっ、帰るの早くない? そんな急ぐ必要も無いと思ったんだけど?」

「早い方が良いもの。怒られるのはあまり慣れていないの。後で見に来てねマスター!!」

「あ、うん。後で行くよ!」

 

 アビゲイルはそう言うと、走って行ってしまうのだった。

 

「ククッ。んじゃマスター。そろそろ周回の時間だぜ? 休憩はもう十分したろ?」

「うぐぐ……しゃあなし。マシュ。行ってくるね」

「はい。頑張ってくださいね、先輩」

 

 そう言うと、オオガミとアンリは周回に向かうのだった。




 チョコ聖杯戦争のくだりでチョコをゲシュタルト崩壊させたかった……


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チョコの生産は、終わったんだよ(ミルクで素材交換ほとんどしてねぇな)

「ん~……平和だと思わない? アンリ」

「あ~……平和すぎてマスターの命狙ってみたくなるくらいには」

「反逆心というか、一種のボケなのか。どう取れば良いのか分からないそういうのはどうかと思う」

「意外と冗談だぜマスター」

「いくらか本気だったわコイツ」

 

 バビロンの庭の端の方で、横になって青い空を見上げつつ、ちょっと本気の殺意を向けてくるアンリに苦笑いになるオオガミ。

 近くでマシュに怯えつつもすぐに来れる範囲にランスロットがいるとはいえ、襲われたら一溜まりもないだろう。

 

「はぁ~……アンリはどうしてこう、殺意高めなのか」

「オレが高確率で殺されかかってるからだと思うぜ? 滅茶苦茶命狙われるし。具体的にはアビゲイルに」

「まぁ、アビーはねぇ……制御しきれない部分が多いし、しばらくはアンリがダメージ担当ということで。皆が帰ってきたらダメージ受けるの俺だし、しばらくはアンリが壁になってくれると助かるんだけどねぇ……」

「……宝具撃たれるんだったか」

「わりと普通に」

 

 オオガミの感覚が壊れているような気がしなくもない。聞いているアンリは、どうしてそうなるのかが不思議で仕方がないのだが。

 根本的に、宝具をそんな簡単に撃って良いのだろうか。と思うのだった。

 

「……ねぇアンリ?」

「あ? なんだマスター」

「平和なのは良いんだけど、暇になってきた」

「知るか。周回でも行って来ればいいだろ?」

「ん~……まぁ、ミルク終わってないから、理由はあるけども……」

「じゃあ良いじゃん。暇も潰せて、素材も取れて。一石二鳥だな」

「うぐぐ……ぐうの音も出ない……」

「んじゃ決まりだ。行こうぜマスター。周回が呼んでるだろ?」

「よ、呼ばれても嬉しくね~……」

 

 ほとんど無限に周回するマラソン状態。チョコの生産は報酬が出なくなったのでもういいのだが、ミルクが終わっていないのが問題だった。

 それさえ終わっていれば、一日中アビゲイルの受付姿を見ているのも良いと思っていたりするのだが。

 

「ぐうぅ……アビーの仕事姿を見るため、今日は頑張って周回するか……」

「おぅ。まぁ、素材を諦めるだけでサクッと終わるんだけどな」

「それは言っちゃいけないでしょ……諦めたら困るし。早く終わらせないとなぁ……期限はあるけど、早めに終わらせて損はないはず。その分宝物庫回ったり、アビーの仕事姿を見てたり出来るからね」

「あ~……ソウダナー。ソレデイインジャナイカー?」

 

 なんとなく、これ以上は面倒だと感じたアンリは、雑に返事をしつつ、起き上がって周回に向かうのだった。




 なんというか、ランスロット卿の存在感は薄くなっていく……不思議だ……


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見ちゃいけないものもあるんだよ(チョコ制作現場もそうだとは思わなかったよ)

「……何、やってるんですか……?」

「……殺すわ」

 

 目が合い、直後殺しにかかるカーミラ。

 一体何を見てしまったのか。それは、調理場といえば分かるだろう。

 

「ちょっとストップ。見なかったことにするのはダメですかね?」

「えぇ、ダメよ。容赦なく殺すわ」

「待って待って。見てない見てない。何も見てない。何を作ってるかは見てない。一瞬エリちゃんの料理を思い出したけど何でもない。なので逃げるね」

「させないわ。追って殺す」

「うっわぁ……この流れはあれだ。宝具撃たれる可能性まで考慮しなくちゃいけない奴だ……危険度はエウリュアレ以上かなっ!!」

 

 一瞬の隙を見て走り出すオオガミ。

 しかし、いつも手加減してくれているエウリュアレ達と違い、本気のサーヴァントに脚力で勝てるはずもない。が、そのためにいくつか秘策は考えていた。

 わりと本気で殺しに走ってきているカーミラを確認した直後、

 

「秘技、礼装身代わりの術!!」

「甘いわ!!」

 

 リミテッド/ゼロオーバーを身代わりにしようとした直後、振り下ろされる鉄の処女(アイアン・メイデン)

 だが、一瞬の差で、緊急回避を発動して回避する。

 そのまま瞬間強化を使って全力逃走を開始。礼装身代わりの術も忘れずに行使しておく。

 

「に、逃げ足ばかり速いわね……しかも、手慣れている感じが強いわ。余程逃げ惑うような生き方をしてきたのね……」

 

 オオガミを見失い、立ち止まってそう考察するカーミラ。

 まさか、普段サーヴァントに悪戯をしているせいで追われることが多く、それが原因で逃避スキルが劇的に上昇しているなどとは誰も思わないだろう。

 

「はぁ……でも、流石にあそこまで本気で逃げるのもどうかと思うのだけれど」

 

 本気で殺しに行っておきながらそう言うのはいかがなものかと思わなくもないが、本気で殺しに行くようなものだったのだから仕方ない事だろう。それほど重い事ではある。

 

 

 * * *

 

 

「はぁ……死ぬかと思った……」

 

 全力逃走で逃げ切ったオオガミは、カカオの木に登って休憩していた。

 逃げ切れたと思っているわけではないので、しばらくはランスロット並みに逃げるのだが。

 

「……マスター。何やってんだよ」

「えっ、あ、アンリ? 何してるって、逃走中?」

「今回は何やったんだよ」

「ただ単に、調理現場をうっかり見ちゃっただけなんだけど……」

「あ~……それで死ぬ目に遭ってるわけか。まぁ、自業自得だな」

「理不尽も良い所だよ……明らかにどうしようもないじゃん……」

「まぁ、そう言う事もあるさ。つか、そこでサボってんなら手伝ってくんね?」

「ん~……了解。逃げながら手伝うよ」

「おぅ。じゃ、行こうぜ」

 

 オオガミはカカオの木から飛び降りると、アンリを手伝いに行くのだった。




 まぁ、よくある事ですよね。見る機会があるかは置いておいて。

 カーミラ様は要望より。今は出せるキャラ少ないんで、出来るのと出来ないのがあるんですけどね。カーミラ様は今年入ってからなのでセーフ……だと思いたい。


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このバンダナ、かっこいいよね……(服装と合ってないのが問題ですよね)

「ん~……かっこいい?」

「服装には合ってないかと」

「ないわ~。つか、売ると思って渡したんだけどな~?」

 

 基本、貰い物は出来るだけ売らない主義。そんなオオガミは、当然アンリのセリフを右から左に聞き流して即座に装備するのだ。

 なお、服装はカルデアの通常魔術礼装だ。ほぼ私服なので、よく着ている。

 

「うぅむ……やっぱ似合わないかぁ……」

「服を変えりゃあいいんじゃねぇの? それ以外の服もあるんだろ?」

「魔術礼装しかないけどねぇ……うぅむ、あんまり似合わないのが悲しい」

「いえ、バンダナ自体は似合ってると思うのですが、いかんせん服装が似合わないのが問題ですね。魔術礼装で似合うのがあればよかったのですが……」

 

 悲しい事に、見つからない。都合よくそんな礼装があるわけは無いのだ。

 

「しっかし、よくもまぁ使うつもりになったよなぁ……」

「汚くはないし、問題ないかなって。う~ん、これはあれだな。メディアさんが帰ってきたら一着作ってもらおうかな」

「英霊をなんだと思ってるんだこのマスター。服屋扱いか?」

「流石に先輩もそんな事思ってないと思いますよ? むしろ、何も考えてないだけかと……」

「それはそれで、問題だと思うんだがな……」

 

 苦笑いの二人。事実、何か考えているような気がしないのがオオガミだ。

 

「つーかさ、チョコ集めは良いのかよ。こんなところで遊んでていいのか?」

「ん? 終わったから遊んでるんだけど。アビーもそろそろ呼びに行くところだしね」

「む。マジか。意外と早いじゃん?」

「まぁ、それなりにはね。でも、そんなに早くも無いと思うよ? ほとんど期限残ってないし」

「四日も残れば十分だろ……不満な点が分からんわ」

「不満はないけども、チョコ渡したり貰ったりしないと……」

「……誰から?」

「誰からって……そりゃ、まだ貰い終わっても渡し終わってもいないし……カーミラさんとか新シンさんとか」

「なるほどねぇ……マスターは強欲な事で。一体どれだけのチョコとアイテムを貰うのか、楽しみだ」

「まぁ、楽しみにしといてよ。いくつ貰えるかは分からないけどね」

「おぅ。自慢待ってるぜ?」

 

 アンリとそんな話をしながら、実際にいくつ貰ったのか把握していないことに気付く。果たしていくつあるのだろうか。今回貰い終わったら数えてみる事にしよう。そう思うオオガミだった。

 

「んじゃ、オレは片付けに行くとするか。この後解体作業だろ? いやぁ、自分たちで建てたものを解体するってのは、何とも言えない気持ちになるねぇ全く」

「あはは……アビーを迎えに行ったら参加するよ。それまでよろしくね」

「お~。のんびり来いよ~」

 

 そう言うと、アンリはスタスタと行ってしまう。

 なんだかんだ、頼ったりしているオオガミなのだった。




 うちのアンリは便利なやられ役兼裏方で頑張ってる系サーヴァント……あれ、不憫すぎるような……?

 まぁ、そんなことは置いておくとして、一応素材交換及びチョコ生産終了!! 後はチョコを渡し渡されるだけ……まぁ、こっちではくれる人もあげられる人もめちゃくちゃ少ないんですけど……コフッ


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受付のお仕事が終わったら解体が始まっているのだけれど……?(作って間も無く解体するよっ!)

「マスターマスター! ようやく受付が終わったのだけど、施設が取り壊されていくわ。もうおしまいなのかしら?」

「うん。チョコ生産も終わったから、女帝様が解体するってさ。今はその作業中」

 

 パタパタと元気に走ってくるアビゲイルに、真実を誤魔化しながら伝えるオオガミ。

 まさか本当は――が―――で、――の中に――がいて、今までずっと――に――――いただなんて言えるだろうか。いや、言えない。ここは誤魔化しておくのが一番だろう。

 

「そういえばマスター。私、結局女帝様に会っていない気がするわ? 顔も見ないままさようならというのはどうなのかしら……」

「ん~……一回も見てないで、一回も話していないなら、別に気にする必要ないんじゃないかな? 迷惑かけた訳じゃないし」

「でも、お礼を言うのも必要だと思うわ。だから、出来れば案内して欲しいのだけど。それとも、私は会っちゃいけないのかしら……?」

「うぅ……会わせたくなくて言ってるんじゃなくて、会えないと言いますか、会わせたくても制限に引っ掛かると言いますか……」

「……なにかしら……マスターにこれ以上追究したらいけない気がしてきたわ……」

 

 なんとなく嫌な予感を感じてオオガミへの追究を止めるアビゲイル。これ以上は、何か触れてはいけないもののような気がしたのだ。

 

「ねぇマスター? 解体の作業、するんでしょう? 手伝ってもいいかしら?」

「まぁ、良いけども……何処からやろうか?」

「そうね……まずは……チョコ聖杯なんてどうかしら?」

 

 不意に悪い顔になるアビゲイル。

 オオガミは苦笑いになりつつも、とりあえず理由を聞いてみる。

 

「えっと、どうしてチョコ聖杯から?」

「だって、壊したとき一番面白そうだと思わないかしら?」

 

 目が危なかった。本気で思っているのが分かるくらいには。

 

「ん、ん~……壊しがいはありそうだけども……まぁ、壊しに行こうか」

「えぇ、楽しみだわ。ふふふ……」

 

 はしゃいでいるのか、機嫌が悪いのか、楽しんでいるのか、怒っているのか。

 その真相は分からないが、不気味に笑うのだけは止めて欲しいと思うオオガミだった。

 

「……ねぇマスター。チョコ聖杯を壊すなら、きっとチョコ英霊も倒さなきゃよね?」

「どうなんだろ。聖杯を求めてる場合は向かってくるけど、そうじゃない場合はむしろ協力してくれるんじゃない?」

「そうかしら……とりあえず、全員倒せばいいのよね?」

「んん? 本当にアビー? 裏の方出てない?」

「どっちも私よっ。全く、マスターは失礼ね!」

 

 結局、アビゲイルは頬を膨らませて、怒ったようにチョコ聖杯の元へと向かうのだった。

 オオガミはなんで怒っているのか、よく分かっていないのだが。




 チョコ聖杯君は、その後無惨な姿で発見されるのだった……


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うっし。一番面倒な解体を始めるぞ~(う~ん、これは解体に参加できない感じ)

「おぅマスター。ようやく来たか」

「あ~……うん。ようやく終わったよ」

「アビーさん、ご機嫌ですね?」

「えぇ! 大暴れ出来て、とっても楽しかったわ!」

 

 結局、チョコ聖杯をチョコ英霊ごと破壊してきたアビゲイル。オオガミもそれを見ていて苦笑いだったが、無事終わったのでホッとしている。

 

「あちゃ~……な~んか、大変なことがあったみたいだなこりゃ。ま、こっちには関係無い事情なんで、働いてもらうぜ~」

「アンリの鬼! 悪魔!」

「はいはい。なんとでも言ってくれや。実際、マスターはいるだけで良いしな」

「存在の必要性……!!」

 

 アンリの言い分に、涙目になるオオガミ。

 だが、目の前のモノを解体するには、やはりオオガミではほとんど無力だろう。

 

「うっし。アビゲイルも来たことだし、サクッとやるか~」

「はわ~……こんなに大きいの、壊せるかしら……」

 

 チョコレート工場。見上げるほどのソレは、普通に壊したら一体何週間、何ヵ月掛かるか分かったものではない。それが10棟あるのだから、一番時間が掛かる。

 それを短時間で終わらせようというのだから、サーヴァントは凄い。

 

「しっかし、オレとアビゲイルで終わるかねぇ、コレ。どう思うよ」

「今私は機嫌が良いのよ。すぐに終わるわ、このくらい」

「言うじゃねぇの。んじゃ、二人とも下がっとけよ~。オレは潰れても良いけど、アンタらは死んじまうからな。気を付けろよ?」

「うぐぐ……なんかアンリがしっかりしてるから不安だけど、仕方ない。危ないのは確かだしね」

「えぇ。少しの間、先輩と離れて見ていますね。頑張ってください!」

「おぅさ。こういう時は任せとけ」

「えぇ、頑張るわ! マシュ! マスター!」

 

 そういうと、屋根の上まで器用に登っていく二人。アビゲイルは、触手で。アンリはわずかな隙間に手をかけて登っていく。

 マシュとオオガミは離れつつそれを見ていた。

 

「ん~……アビーの登り方は想定通りなんだけど、アンリの登り方、プロの動き方のような……」

「解体業者のですか?」

「外壁を登っていく解体業者とかめっちゃ見てみたいわ。じゃなくて、あの外壁のちょっとした凹凸に指をかけて登っていく感じ。ボルダリングとかそこら辺の雰囲気だよね。うぅむ、修得したい……」

「先輩は何処を目指してるんですか……それ以上スキルを身に付けたら、割となんでも出来る超人になっちゃいますよ?」

「それはそれで……アリかな」

「先輩はそういう人ですよねぇ……というか、クライミングが出来ないのは意外でした……先輩ならフリーランニングを出来ると思ったんですけど」

「流石にまだ出来ないかなぁ……出来たらもうちょっと無茶してる」

「そうですか……つまり、今までも無茶と思いながらやってたことがいくつかあるんですね? そうですか……残念です……」

「えっ、何? あれ、なんかとっても不味い地雷を踏んだ気分。えっ、なんで? なんか嫌な雰囲気なんだけど? マシュ? マシュ~? 聞いてる? マシュ~!?」

 

 ススス……と距離を取っていくマシュ。オオガミはそれを、必死に追うのだった。




 一体オオガミ君は何処を目指しているのだろうか……おそらく器用貧乏ルート……


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大体喧嘩してるよね、あの二人(喧嘩するほどって、言うじゃないですか)

「うおりゃっ!!」

「きゃっ!」

 

 ガゴンッ!! と音を立てて崩れ落ちる天井。

 巻き込まれたアビゲイルは短く悲鳴を上げながら、しかし咄嗟に触手を伸ばして残っている天井に着地する。

 

「全く、ビックリするじゃない!! うっかり落ちかけたわ!!」

「若干狙ってた節があったんだが、やっぱ落ちないよなぁ……」

「アンリは悪い人ね……お返しよっ!」

「うごぁ!?」

 

 門を開き、アンリの周囲の天井を一気に破壊して落とすアビゲイル。

 アンリはアビゲイルの様に触手等の復帰手段が無いので、落ち続ける天井を蹴って壁に掴まる。

 

「こ、この野郎! オレの場合シャレにならねぇんだっつの!!」

「私を落としておいて、シャレも何もないわ!! 許さないわ!!」

「ふ、ふざけやがって……ちょっと待ってろ、すぐそっち行くからな!!」

「ふふんっ! アンリが来る前に終わらせるから、別にいらないわ!!」

「チックショウ!! 楽が出来そうだけど、その言い方はなんかムカつく!!」

 

 ひょいひょいっと軽々動いて解体していくアビゲイル。

 アンリも作業が全部終わる前にたどり着けるように、必死で登るのだった。

 

 

 * * *

 

 

「……なんというか、あの二人、仲がいいのか悪いのか分からないよねぇ……」

「喧嘩するほど、と言う奴でしょうか。でも、何となくいつもアンリさんが死にかけているような……?」

「うん。それは思う」

 

 何を思ったのか、軽いピクニック気分のオオガミとマシュ。シートを引いて、麦茶の入っている水筒を置いて、今朝作ったサンドイッチを食べながら解体の様子を見ている。

 すると、

 

「ん~? マスター、何してんの?」

「ん? あ、新シンさん。今は工場の解体を見てるの」

「ふぅん? じゃ、お邪魔しようかね。いいかい?」

「私は先輩が良いなら構いませんよ?」

「じゃあ、どうぞどうぞ」

 

 そう言って、新シンを招待する二人。

 招待された新シンは、オオガミが中央に来るようにマシュの反対に座る。

 

「いやぁ、しっかし、俺達がマンドチョコラゴラを相手している間に、面白そうなことしてるじゃん。そろそろ終わるっぽいし、手伝えることは無いと思うけどね」

「まぁね。ってか、そっちはどうなの?」

「ん? あぁ、こっちも割と順調だぜ? って言っても、畑を潰すだけなんだけどさ」

「その潰すのが大変なんじゃないのかな……?」

「収穫するんじゃないから、叫ぶ前に壊せば問題無しって感じさ。俺以外にもカーミラとか、ランスロットとかいるしね」

 

 マシュから麦茶を受け取り、飲みながら作業を見る新シンさん。サンドイッチもちょいちょいつまんでいる。

 

「あ~……それなら簡単……なのかな? まぁ、そっちはそっちで頑張ってもらうしかないよね。そのうち手伝いに行くよ。こっちは見張ってないと殺し合い始めそうな勢いだから……」

「あ~……まぁ、見てれば分かる位に仲悪いよなぁ。っと、じゃ、ちょいと休憩もしたし、俺はまた作業に戻るかな」

「うん。頑張って~」

「頑張ってくださいね」

 

 手を振って、送り出す二人。新シンも振り返してくれた。

 そう言って二人は工場に視線を戻し、直後、轟音と共に工場が崩れ去るのだった。

 決め手はアビゲイルの触手だった。




 新シンさんは、真名で呼ぶよりもしっくりくる不思議。

 というか、どうしてうちのアンリとアビーは仲が悪いのだろう……?


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工場解体、疲れたわ(なんでコイツと作業しなきゃならんのか)

「オレ、もう二度とコイツとこんな作業しねぇ」

「私も、アンリとなんかやりたくないわ」

 

 お互いに服や顔を汚しながら帰ってきたアンリとアビゲイル。

 ただ、二人とも布面積がほとんど無いような服なので、体が煤で汚れているというのが一番のような気がする。

 それを見て、オオガミとマシュは苦笑いで、

 

「お疲れ様。見てて思ったんだけど、そこまで喧嘩するなら半分ずつ担当すれば良かったんじゃない?」

「それだとアンリに攻撃出来ないじゃない」

「オレは逃げ回ってたんだっつの」

「対抗してたように見えましたけどね……」

「えぇ。お陰でこんなに汚れてしまったわ。これもアンリのせいよ」

「こちとら天井から地上まで真っ逆さまだったんだけどな。何度死ぬと思ったか……」

「なんで戻ってきても喧嘩してるのさ……」

 

 もはや手の施しようもない。ただ、聞いている限り、アビゲイルが大体先のようだ。

 

「アビー。とりあえず、ちょっと自重しよう。具体的には、他の英霊が来るまで。そうしたら暴れていいから」

「もう。マスターったら……私は暴れないわ。アンリとは違うもの」

「おぅ。まさか遠回しにオレは暴れると言われるたぁ思わなかったわ。つか、コイツたまに性格違うんだけど、何? 多重人格なの? 面倒くさい系なの?」

「アンリ? それ以上は触手で圧殺されても何も言えなくなっちゃうよ?」

「うっそぉ……オレ、ちょっと言い返しただけで殺されんの? 理不尽~……やられ役も楽じゃないわ~……」

「気持ちは分かるけども。まぁ、皆が帰ってきたら、その位置にいるのはアンリじゃなくなると思うんだよねぇ……」

「はい。先輩の立ち位置ですね」

「あら。マスターも大変なのね」

「う~ん、一体何をしたというのか」

「ってことは……そのうちオレは部屋の隅で日がな一日観察してるだけで良くなるのか」

「ん~……まぁ、そうなるかなぁ……誰にも目をつけられなければの話だけど」

 

 ぼぅっとしているだけだと、そのうち誰かが手伝わせるために引きずっていったりするのだが、それ知らないアンリはまだ平和なのだろう。

 暇人は手伝いに駆り出される運命にあるのだ。

 

「なんか、その達観したような目が怖いんだけど……オレ、生き残れるか……?」

「大丈夫だと思うよ? 流石にエルキドゥも動かないだろうし。ただ、人手が足りないと捕まるんじゃないかなぁって。何の人手かは分からないけど」

「あ~、なるほど。手伝いに駆り出されるって事か……まぁ、それくらいなら問題ねぇな。うっし。んじゃあ、他のところも片付けに行きますかね」

 

 やれやれ。と言いたげ感じで、アンリは歩き出す。

 オオガミ達は顔を見合わせると、アンリを追いかけるのだった。




 さて……苦労人ポジション交換は何時になるのか……帰ってきたときの反応はいくつか考えてるんですけど、実行できない……うぐぐ……


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空の境界/the Garden of Order -Revival-
イベントに次ぐイベント……終わりは来るのか……?(節分で塔を登ったと思ったら、今度はマンションを登っていた……)


「う~ん、解体も終わって、帰ってみたら新天地。目の前のマンション登って行こうだなんて、流石だよアンリ」

「そりゃそうだろ。死が集まって変質して危ねぇっつっても、そもそも役立たず代表ことオレと、変質とか抵抗(レジスト)しそうなヤベー奴(アビゲイル)。何の問題もねぇだろ。あ、マスターとマシュは例外な」

「一番重要なところが例外なんですがそれは」

 

 もはや怒濤のイベントで、休む間もないオオガミ達。

 イベントへの順応も早いもので、何の躊躇もなく怪しいところに突撃する精神だった。

 

「ねぇアンリ? 今、私のところだけ変じゃなかったかしら。何か、他の意味も込めてたみたいだけれど。例えば、危ないとか、そういう感じの」

「ハハッ、まっさかぁ。んな死ぬ要素自分で作るわけねぇじゃん?」

「そうよね。アンリは考えなしじゃないものね!」

「分かりきってることだろ? あんだけ殺しに来てたんだしな!」

「聞いてみただけよ。気にしないで!」

 

 二人とも笑いながら話している。だが、若干怖いのはなぜなのだろうか。

 オオガミは考えつつ、

 

「まぁ、直接言い合わなくなっただけ前進かな?」

「いえ先輩、これは進捗無しです。最悪の状態から微動だにしてません!」

「うん。自信満々にドヤ顔で言われてどう反応すれば良いのか分からないんだけど?」

 

 昨日色々とやっていたせいで、今日はやけにテンションの高いマシュ。

 なんだかんだ、引きこもっているだけというのも疲れるもので、作業を手伝ったりしてたまに息抜きするのも重要ということだろう。

 と、オオガミはふと気付く。

 

「てか、アビーは?」

「外に行ったけど? 見たことがないから、面白そうとか言って」

「ある意味一番放っちゃいけないのを世に放った感強いんだけど。どうして止めなかったアンリ」

「知らねぇよ。つか、マスターの真横を通り過ぎて行ったわ。アンタが止めりゃ良かった話だろうが」

「うぐぐ……それを言われると耳が痛い話だ……」

 

 しかし、いつの間に通り過ぎたのか。オオガミは首をかしげながら考えるが、目を離したのは数秒である。アンリと舌戦していたところまでは確かにいたはずなのだが。

 

「うぅむ、不思議だ……どうやって潜り抜けていったのか……そんな無駄技術手に入れなくて良いのに……」

「オレからしたら、アンタが一番無駄技術持ってる無駄スペックだよ」

「人のこと言えないというか、サーヴァントのことを言えないというか。そんなレベルのスペックですよ先輩」

「それ、喜ぶべきところ? それとも嘆いた方がいい?」

 

 段々と、自重した方がいいんじゃないかと思ってきたオオガミ。

 出れるのなら、いつかSA○UKEとか出てみて、一度自分がどれだけ異常なのかを確認してみたかったりしていたりする。

 

「まぁ、とりあえずマンションを攻略しないとね。黒幕とかに会わないとさ」

「へいへい。そういうのはサーヴァントの仕事だ。任せとけよマスター」

「私は後ろで見守ってますね。頑張ってください」

 

 そう言って、マシュはオオガミの後ろにいるようにするのだった。




 今回の目標はサクッと全部終わらせてQPを稼ぐ! これですね!

 というか、昨日がバレンタインデーだったということをすっかり忘れていた……正直チョコを回収し終わったからといって油断していたのが悪かったですね……ちくせう……!!


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マンションの一室を借りようかな(こんな場所で料理できるとか、凄い精神だな)

「マスター! まだかしら!」

「ちょっと待ってね~。っていうか、なぜ俺が料理担当?」

 

 マンションの一室を無断で借りつつ、アビゲイルの要望であるパンケーキを作るオオガミ。

 材料はアビゲイルとマシュを連れてスーパーまで。真っ暗だが、意外とやっているものだ。

 すると、オオガミの様子を見ていた式が、

 

「お前、よくこんなところで平然と料理できるよな」

「そりゃ、三回、四回くらい冥界落ちしてたら、死の集まるマンションって言われても気にしなくなるもんだよ」

「へぇ、冥界を四回も。って言われても実感沸かないんだけどな。死後の世界を四回とか、なんで生きてるんだ?」

「さぁ? 冥界の女神と友達になったからかも?」

「女神と来たか。そりゃ、一度見てみたいもんだ。いるのか? そのカルデアって所にも」

「いたけど……再召喚できるまでは会えないかな。まぁ、アビーも、神を呼んでいるようなものだけど」

 

 そう言いつつ、焼き終わった二枚のパンケーキを重ね、中心にホイップクリームを乗せた後、ハチミツをかける。

 待っていたアビゲイルはそれを受けとると、

 

「ありがとうマスター! とっても美味しそうね!」

「どういたしまして。さて、式さんは何か要望はある?」

「いや、オレは要らないよ。腹も減らないしな。まぁ、そこのアイスでも食ってるさ」

「そう? じゃあいいか。マシュとアンリは?」

 

 そう言って振り向くと、なにやら遠くを見ていた二人。

 声をかけられて我に帰ったのか、慌てた様子でこちらを見る。

 

「あ、え、えっと、どうかしたんですか? 先輩」

「いや、食べたいものあるかなって。まぁ、材料もそんな無いから作れるものも少ないけど」

「オレは要らねぇぞ。あれだ、食欲がないって奴。そもそも、食料がそんなに無いのにこっちにまで回すなっての」

「ふむ。アンリは要らないっと。マシュは? 最低でもマシュも食べなきゃじゃん?」

「わ、私はそうですね……アビーさんと同じでも大丈夫でしょうか?」

「良いけど……大丈夫? 実質夜食で、甘いパンケーキというカロリーお化け作るけど」

「先輩。それ以上はダメです」

「あっ、うん。まぁ、うん。黙って作るよ」

 

 視線に殺されたオオガミ。静かに調理を始めるのだった。

 

「あっはは! なんだお前ら。こんなところでも普通にふざけていられるとか、肝が据わってるな」

「ぐぅ……そ、そりゃ、マンション一つでビビるような神経してないよ。それなりに修羅場はくぐってるわけだし。そっちも同じようなものでしょ?」

「まぁ、そんなところかな。じゃ、オレは見回ってくる」

 

 式はそういうと、部屋を出ていく。

 オオガミはそれを見送ると、

 

「うぅむ、やっぱ、もう少し色々買ってくるべきだったか……アビーの要望しか聞かなかったのが問題かな」

「それ以前にも色々と問題があるような……?」

 

 呟いたオオガミは、同じく呟いたマシュには気付かないのだった。




 実はアビーがパンケーキを食べる話を書きたかっただけという。

 殺式さん……性格よく分かってないので不安……崩壊してませんか……?


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料理するマスターってのも、割と少数だと思うんだけど、どう思うよ(少なくとも、つまみ食い用に激辛麻婆設置してるのはいねぇと思う)

「うぅむ、どうしようか」

「考えるまでも無く、ラプンツェルを探し出して倒すだけだろ?」

「そうじゃなくて、晩御飯」

「うわぉ。周回の事何も考えてねぇなマスター」

「そりゃ、まだ余裕あるし……ねぇ?」

「そうだけどさぁ……まぁいいや。昨日はパンケーキだったし、今日はあれでいいんじゃね? 日本料理系」

「ふむ……考えてみるかな」

 

 首をかしげて考えつつ、オオガミは台所に向かっていく。

 それを見送ったアンリは、

 

「なんつうか、うちのマスターってマイペースだよなぁ……」

「こんな状況で平然と飯を食えるのが正常だとは思わないけどな?」

「まぁ、気にしなさんな。アレがうちの普通みたいなもんだ」

「ハハッ! これが普通とは、やっぱ変な所だな。カルデアってのは」

「違いない。まぁ、オレはまだ行ったことないんだけどな」

「そうなのか。どんなところか気になるんだがなぁ……今いけないっていうし、どうしたもんか……」

「そのうち行けるようになるから、あんまり気にしなくていいんじゃね?」

 

 式と話しながら、アンリは自販機に向かったマシュとアビゲイルを見るためにベランダから下を見る。

 

「あ~……絡まれては無いみたいだな。っつか、今更ながら、金はどっから出て来てるんだ?」

「ん? あぁ、マスターが普通に持ってたけどな。財布持ってたし」

「マジか。そもそも、給料まだ貰ってなかったって聞いたんだが、いくら持ってんだよ」

「さぁな。財布の中身を覗く趣味は無いよ」

「そりゃそうか。さて、つまみ食いにでも行くか。アンタも行くか?」

「いや、遠慮しとくよ。というか、つまみ食い出来る様なモノがあるのか?」

「無いとは思わないけどねぇ……昨日の様子を見るに、割と余り物を出しそうな性格と見た」

「そうか。まぁ、ばれて叱られるのはオレじゃない。勝手にしろ」

「はいは~い。んじゃ、行ってきますかね」

 

 そう言うと、アンリは台所に突撃していく。

 そして、ほんの少し後に、

 

「ちょ、アンリ!! それ、食べちゃダメだっての!! それは伝説の……あぁ、言わんこっちゃない。南無南無……」

「……なんで、日本料理をリクエストしたのに、麻婆豆腐があるんだよ……」

「好奇心に負けるから……まぁ、つまみ食いに来た奴に食べさせる予定だったんだけど。自分から食べたし、自業自得って事で?」

「こ、この野郎……あ、やばい。口が痛い死ぬ。ゴフッ」

「あぁ、アンリ……コイツは最後まで人の話を聞かないから……」

 

 と、賑やかなやり取りが聞こえてきた。

 そして、料理が作り終わった辺りで、ちょうどマシュ達が帰って来るのだった。




 23時に書き終わる予定が、ちょっと遅れてこんな時間に……

 昨日も平然と買い出し言ってたけど、そもそもお金はどこから出てるのか。まさかQPが通貨じゃないですよね……

 しかし、あの麻婆豆腐、どれだけ辛いのかちょっと怖いもの見たさで食べてみたい気持ちはある……プリヤの麻婆ラーメンとか。


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冷静になっちゃいけないことって、あるのかもしれない(指摘されて初めておかしいと思うことって、ありますよね)

「都合のいい悪役はオレの専売特許だとして、都合のいい黒幕とか、都合のいい変態とか多いよな、ここ」

「黒髭さん、恐ろしかったわ……」

 

 古今東西異世界過去未来問わず様々な英霊がやって来るのだ。都合のいい○○が増えるのも仕方の無いことだろう。

 

「……悪役と黒幕の違いが分からない……最終的に倒されるのに変わりはないはず……どう違うんだろう……」

「悪役は表で堂々と暴れて、且つネタバレにならない範囲で素性を隠さないで、黒幕は素性を隠して暗躍しつつ、最後に全部喋って倒される……とかでしょうか」

「マシュが全うに答えてくれたのは嬉しいんだけど、なんか黒幕の印象がすっごい悪くなってる……後、なんか弱そう」

「では、バビロニアでの三女神同盟が悪役として、ティアマトさんが黒幕というのはどうでしょう?」

「な、なるほど……? まぁ、的確ではあるか……確かに、ティアマトは後半で一気に来たもんなぁ……」

 

 うんうん。と納得するオオガミ。マシュはそれを見つつ、

 

「先輩。話は変わるんですが……今日は、その……私も料理をしても良いでしょうか!」

「ん? 良いよ。というか、遠慮する必要はないと思うけどね?」

「あ、ありがとうございます……頑張りますね、先輩!」

「うんうん。なんでそんなに気合い入ってるのかは分からないけど、頑張れマシュ!」

 

 そんなやり取りをしつつ、きれいな部屋を探す一行。

 ただ、式のこの一言で我に帰る。

 

「お前達、平然と部屋を無断で借りて行くけど、その光熱費水道費ガス代諸々、誰が払うと思ってるんだ?」

「……えっと、請求書はカルデアに送っておいてください」

「……何も考えてなかったんだな……」

 

 普通に呆れる式。オオガミも、普段カルデアで気にしないせいで、感覚がおかしくなっていた。

 

「そういえば、式さんがいるから大丈夫だと思うんですが、普通に考えれば、不法侵入みたいなものですよね……」

「そうだな。逮捕されても文句言えないと思うぜ? まぁ、そこら辺は気にするな。今は別に重要じゃない。ただ気になっただけだ」

「そ、そう? 良かったぁ……すっごい心臓に悪い……」

「安心しろって。一応、こっちの都合もあるからな。よろしく頼むぜマスター」

「う、うん……ちょっと自信無くなってきた」

 

 思い返せば、普通に警察に厄介になってもおかしくないことを何度もしている事に気付くが、まぁ、それはそれ。今はまだ気にしなくてもいいのだろう。

 

「さて、この部屋は大丈夫そうだ。少し休憩していこうか」

「そうだね……あれ、そういえば、なんで部屋を変えながら移動してるんだっけ……?」

「アビーさんが、『高いところがいいわ!』と言ったのが原因だったかと」

「あぁ、なるほど……」

 

 なら仕方ないか。と思いつつ、オオガミ達は部屋にお邪魔するのだった。




 あれ……前に何処かで似たような事を書いた覚え……気のせいですよね、たぶん……そう何度も我に帰ってないはず……


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依頼いったん終了!!(残ってる二つ、なんだろな?)

「……冷静に考えるとさ、ミッションってこれで終わりじゃないんだよね……」

「って言っても、残り二つだろ? 案外サクッと終わるんじゃね?」

「ふ、不安だなぁ……」

 

 入口で依頼書を眺めながら、そんなことを呟くオオガミとアンリ。

 残るは開示されていない謎のミッション二つ。一体どんなミッションなのかと考えてしまうのはある意味自然な事と言えるだろう。

 

「しっかし、意外と時間かかったなぁ……サボってたせい?」

「言うほどサボってないでしょうが。意外と頑張ってたよ」

「まぁ、何気に最後の二つが開示される前に終わってるしな。まぁいいや。ここからどうするんだ?」

「ん~……素材交換、かな……?」

「また時間かかる奴~……まぁ、分かってたけども。よぅし、だるいからアビゲイルに任せよ~っと」

「……まぁ、アンリはそう言う奴だよね。知ってた」

 

 颯爽とアビゲイルの元へと走っていくアンリ。

 オオガミはアンリを見送りつつ、依頼書をしまう。

 

「終わるかなぁ……何気にアンリのせいで終わらなそうな雰囲気あるけど……」

「何が終わらないんですか?」

 

 反射的に振り向くと、マシュがそこにいた。

 本日の買い出しはマシュと式だったので、無事に帰って来たようだった。

 実は入口で待っていたのは、マシュが心配だったからなどとは、口が裂けても言えないオオガミ。

 

「ま、マシュか……びっくりした。いや、さっきアンリが、さりげなくフラグ立てていってさ……まぁ、ミッションがクリアできなくなるとは思ってないけども。それで、何を買って来たの?」

「はい。今日は魚を。お刺身とか、焼き魚とかどうでしょう?」

「ん~……そうだね。じゃあ、晩御飯はそれで。って、式さん、どうしたの?」

 

 いつの間にか奪われていた依頼書を眺めている式が、どこか驚いているような雰囲気を出していたので、聞いてみるオオガミ。

 

「ん? あぁいや、依頼が無くなったと思ってね。意外と仕事が早いんだな」

「……さっき、アンリに真逆の事を言われたような……まぁ、良いよね」

「ハハハッ。そうか、アイツはそんな事言ってたのか。随分仕事が早いと思われてるんだな、マスター?」

「そんな事考えてると思ってないけどねぇ~……」

 

 先ほど、遅いと言われたような事を思い出しつつ、褒められたのだから忘れる事にするのが一番だろう。

 依頼書を返してもらい、三人は部屋に戻る。

 

「そう言えば、アンリさんとアビーさんは?」

「先に部屋にいるよ。さっきまではアンリもいたけど、アビーに周回を押し付けようと意気揚々と走って行った」

「何してるんですかアンリさんは……」

「まぁ、誰が行くのか、決めるのはマスターだけどな? 編成、頼むよ」

「まぁ、任せといて」

 

 そう言って、アビーの提案により、無駄に高い部屋に言ったため、無駄に長く階段を登るのだった。




 ラスト二つの恐怖……


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危ない二人が買い物ですか……(流石に問題を起こさないと思うけどね?)

「マシュ……そろそろ禁断症状が出そうだよ……」

「なんですか突然。そんな設定ありましたっけ?」

「設定じゃないやい!! というか、設定は禁句!! 諸々の事情で禁句とさせて貰います!!」

「は、はぁ……じゃあ、禁句だとして、一体何の禁断症状ですか?」

 

 マンションの一室。置いてあった机と椅子を軽くきれいにしたあと座っていた二人。

 そんなときに訳の分からないことを言い始めたオオガミに、思わずマシュが突っ込むも、何故か叱られる。

 困惑するものの、とりあえず何を言いたいかだけ聞くことにした。

 

「そう、最近、まったりとお菓子を食べたりしてないんだよ。要するに、慌ただしすぎて、休みたい病が――――」

「そう思うんだったら早く終わらせてゆっくりすればいいじゃないですか」

「違う……違うんだよマシュ。大変なときにゆっくりするのが一番なんだよ……!!」

「ダメ人間の理論!! 目を覚ましてください先輩!! それ以上はダメです! 堕落したまま帰ってこれなくなっちゃいます!!」

「酷い言われよう! そんなダメ人間になるって思われるのは心外なんだけど!?」

 

 完全に、普段の態度が悪いのだろう。疑われても仕方ない。

 本人に自覚がないのが問題なのかもしれないが。

 

「で、ダメ人間先輩は今度は何を企んでるんですか?」

「凄い……一瞬であだ名がダメ人間に変わった……企んでるって言っても、そんなでもないよ。アンリとアビゲイルが面白そうなお菓子を買いに行っただけだし」

「……待ってください。なんで制御不能のあの二人組に行かせたんですか。店が壊されるか、残高が無くなるじゃないですか」

「マシュはあの二人をなんだと思ってるのさ……限度額も言ったし、お金もサブの財布に限度額分だけ入れたから、絶対使い切らないって流石に」

「本当にそう思いますか……? あの二人、特にアビゲイルさんは、先輩の財布を遠距離から奪えるんじゃ……」

「……転移門は考えてなかったなぁ……」

 

 本当に想定外だったのか、急いで財布を取り出すオオガミ。中身も確認して、どうやら大丈夫だったようだ。

 

「うん……流石にそこまでやらないとは思うけど、一応確認しておいて損はないからね。うんうん」

「はい。流石に持っていかれていたら、私も手の出しようがないので良かったです」

 

 ほっとした二人。すると、玄関の方から騒がしい声が聞こえる。

 

「帰ってきたっぽいね」

「そうですね……? でも、何か言い争っているような……」

 

 そう言って二人は見に行くと、大荷物を両手に持ったアンリに肩車されているアビゲイルがいた。

 

「……何してるの?」

「……コイツが、帰りを楽にする代わりにしろって行ってきたから……」

「……それを引き受けるアンリに感心したよ……」

 

 オオガミはアンリの言葉を聞いて、何故か悲しそうな目をしながらアンリの荷物の半分を持つのだった。




 わりとうちでは常識無い判定を受けてるアンリとアビゲイル。大体私のせい。


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圧倒的健康に悪い感……!!(毎食は出さないからね……?)

「こう、たまに食べる健康度外視料理ってのも良いよなぁ~……」

「えぇ、とっても美味しいわ……」

「先輩……この二人がこういう発言をしていると、不安になってくるのですが……私、なんだか食べない方がいい気がしてきました」

 

 幸せ感全開のアンリとアビゲイル。

 その二人を見て、むしろ不安になるのは、普段の行いが原因か。

 だが、その原因はどうということはない。オオガミがふと思い立って、カップ麺を出しただけのことである。

 

「別に毒とかが入ってるわけじゃないよ……単純に、栄養が偏ってるってだけ。毎食じゃなきゃ問題ないよ」

「なるほどそういう……」

「えっ。こういう料理が今度から出てくるんじゃなくてか?」

「そうなのマスター!?」

「自分達が問題ないからってそれは流石に許さないよ。そういうこと言う子には一つまみの塩を混ぜた水を入れたコップだけを渡しますからね」

「悪魔かマスター。腹は膨れないんだけど?」

「喉が潤うようで実際は喉を渇かしに来てるわ。マスター、恐ろしいわ……!!」

 

 ちょっとした工夫で出来る地獄のような苦しみである。

 なお、実際にするかと聞かれると、見ている方が辛いので朝やって止めるのだろう。

 

「あの、先輩って、たまに仕返しを考えないときってありますよね……いえ、いつも考えてないとは思ってるんですけど」

「マシュ。さてはバカにしているな? 心はガラスなんだからやめてくれマシュ……」

「ガラスと言っても、耐爆ガラスですよね。割れそうにないですし、自己修復出来ますよね」

「うわぉ。強靭無敵なガラスハートとは、もはやガラスハートじゃねぇなそれ」

「殴っても壊れなさそうだわ……」

「人のことを好き勝手言いやがるぜこの三人……」

 

 どうしてくれようか。と考えるが、今はまだ争うべきではないと思い直すオオガミ。そう、戦いは皆が帰ってきた後でも問題ないのだ。

 

「……っていうか、仕返しって何さ」

「えっ? いえ、思ったことをそのまま呟いていただけなので、私は何も考えていませんけど?」

「ふむふむ……つまり、アンリは何かを企んでいる、と」

「オレ限定かよ!?」

「そりゃ、アビーが何か企んでても、現状阻止の仕様がないからね。アンリに矛先を向けるのが生存のコツだよ」

「対策が取りやすいオレを標的にするとか、考えるじゃねぇかマスター……!! 泣くぞ……!?」

 

 あくまでも、アンリに勝てると言う意味ではなく、アンリなら対策して逃げ切れる可能性が高いというだけの話である。

 流石のオオガミも、転移門相手には分が悪いとか、そういうレベルの話ではなかった。

 

「さて……カップ麺の楽なところは、食べたら捨てるだけで良いというところです。あ、汁は流しておくように。飲めるなら飲んだ方がいいけど、苦手な人は苦手なので。ごちそうさまでした。ゆっくり食べててね」

「ごちそうさまでした。美味しかったわマスター。他にもこういう料理はあるのかしら?」

 

 なんだかんだ騒ぎつつも、ちゃんと食べているオオガミ達。ただ、途中から話していたマシュとアンリは、未だ食べ終わっていなかった。

 

「さりげに自分はしっかり食べていやがる……」

「ま、まぁ、急ぐ必要もないので良いですよ」

「まぁいいんだけどさ……」

 

 そういいながら、二人は再び食べ始めるのだった。




 カップ麺の話と思わせて、マスターの精神強度の話してた……
 ち、違うんや……カップ麺の話と言うよりも、ラーメンの話を書きたかったんや……


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今回の高難易度ヤバすぎません?(即死怖すぎる)

「なんっだあれ!! 無茶苦茶だろ!?」

「私……ちょっと、自信を無くしてしまったわ……」

「無理です……どうしますかマスター」

「……いや、引ける訳ないじゃん? 絶対倒すよ?」

 

 屋上にて。何度か強敵を倒した後、高難易度が襲い掛かってきた。

 未だ、倒せない凶悪な敵。

 

「あ~……アレ、倒せるのかぁ……? 無茶言うねぇ……」

「そうは言っても、やるしかないわ。即死……あれを何とかしないと……」

「チャージはバスターで落とせますし、それで何とかするしかないですよね……」

「それでも無茶は無茶よ。はぁ……どうしましょう……」

 

 体育座りをして、不満そうな顔になるアビゲイル。

 

「はぁ……マスターも、酷な事を言うのね。でも、きっと何とか出来るわ」

「まぁ、勝てないわけじゃないと思うしなぁ……令呪切らねぇのか?」

「令呪は出来れば使いたくないんだけど……流石に、令呪使えば勝てる気がするし……」

「戦いに勝って、勝負に負けたって感じね。何となく分かるわ」

「基本令呪はあんまり使いたくないですよね……昔は全力で使ってましたけど」

「せ、成長したって事で……」

 

 昔と今は違うのだと主張するオオガミ。

 令呪の効果は、なんだかんだと言って優秀なのだった。三画切って勝てない相手は、基本どれだけ頑張っても勝てないというのがオオガミの判断基準だった。

 

「それで……どうする? 何度挑む?」

「だから、勝てるまでだって。後ろにいる奴は、即死が効くみたいだしうまくいけば何とか出来るけど、そこからが本番だよね……」

「えぇ……そうすれば、バスターで殴るだけね……」

 

 アビゲイルはそう言うと、立ち上がって鍵を出す。

 

「マスター、もう一回よ。何度でも勝てるまで挑んで、絶対倒して見せるわ」

「簡単に言うなよアビゲイル。勝てるまで何度でも戦うとか、裏を返せば、勝てるまで何度も倒されるって事じゃねぇか。痛いぜ絶対」

「フフフッ。別に関係ないでしょう? 私たちは英霊だもの……マスターさえ生き残っていれば、何度でも帰って来れるわ。本来は違うとしても、今ここではね。さぁ、行きましょう?」

「無茶苦茶いうなぁコイツ。まぁいいぜ。行こうかマスター。再戦だ」

「が、頑張ってくださいね先輩」

「うん、行ってくるよマシュ。後10回戦ったら帰って来るね」

「10回は負けるのね……」

「10回も殺されるのか……」

 

 ドヤ顔で進むオオガミに、やる気だったアビゲイルとアンリは苦笑いになってついて行く。

 なお、それを見送ったマシュは、果てしなく不安になるのだった。




 後ちょっと……即死が刺さるまで撤退を繰り返して、即死が刺さってからが本番と言う。無理だろコレ……


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徹夜でやるより、一回寝た方がいいってのは本当だったな(昨日の苦労って、何だったんだろう……?)

「ハッハァ!! やってやったぜこのやろう!」

「えぇ、えぇ! 大勝利よ!」

「ほ、本当に勝てました……やれば出来るものなんですね……」

「まぁ、無理ゲーではなかったってのは分かった……即死最高」

 

 まさか、一度休憩という事で寝てから再戦を挑み、一回目で勝てるなど、誰が想像できただろうか。

 何にしても、これで自由に屋上にいれるわけだ。

 

「いや、流石だマスター。正直勝てるとか欠片も思ってなかったからな」

「いや……どちらかっていうと、式が即死を入れてくれたからじゃない?」

「そんなの、微々たるものだろ? オレはほとんど何もやってないよ」

 

 そう語っているのは、今回の実質MVPである式。

 肩をすくめて、やれやれとばかりに首を振る。

 確かに、累計ダメージとしては違うが、根本的なものとして、式の即死が無ければ勝てなかった戦いである。

 

「それで? 屋上は解放された。このマンションは後は放置するだけで勝手に霊も散っていく。それでもなお、何かするか?」

「……当然。むしろ、ここからが本番だ」

 

 依頼は終了した。交換も終わった。しかしそれでもなお、望むのは、

 

「だってほら、QP(資金)を集めなきゃいけないじゃん?」

 

 要するに、金策だった。

 何かといって、すぐに溶けて消えていくのだ。戦力増強など、どうしてそんなに吹き飛ぶんだよ。と突っ込みたいほどには。

 

「ぷっ。あっははは! あ~……いやいや、ここから先が本番だって言ったから、何かと思って身構えたら、金策か。いや、わかるぜ。何かと使うよな」

「そりゃね。無理無茶無謀はしたくないし、してるのも出来るだけ見たくないから、比較的有利に進められるように準備しておきたいじゃん?」

「あぁ、そうだな。まぁ頑張れ。オレも出来る範囲で手伝うぜ?」

「うん。よろしく」

 

 オオガミが式にそういうと同時、右から抉り込むようにオオガミに抱き付く黒い影が。

 オオガミは悲鳴や奇声を上げる暇すらなく、むしろ深刻すぎて黙る勢いで飛んでいく。

 ある程度進んだところでピタリと止まった影は、

 

「ねぇマスター! 今度はどこへ行くのかしら! 私、今から楽しみで仕方ないわ!! 今度はどんな人が待ってるのかしら!!」

「ぐ……ゴフッ……あ、アビー……あの、わりと痛いので、次は加減をして……ください……」

「まぁ大変! マスターが倒れちゃったわ!! どうしましょう!!」

「自分でやっておいて、知らぬ存ぜぬは無理がありすぎだゴフッ!」

 

 黒い影――――アビゲイルの衝突により倒れたオオガミに、さも自分は悪くないとばかりに振る舞うアビゲイルの姿を見たアンリが、目を逸らしながら突っ込んだ結果、アンリは突然現れた門から飛び出た触手を回避出来ずにみ鳩尾に一撃くらい沈んだ。

 当然、オオガミの安否の方が重要なので、アンリは放置されるのだった。




 朝起きて挑んだら一発勝ちして困惑した私です。おかしいな……一発で即死が刺さって、その後普通に勝てるとは……昨日全く勝てなかったのに……


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黒猫フィギュア、持って帰れるかしら(今まで普通に持って帰ってたような……?)

「黒猫さん……欲しいわ……」

「い、今さらだね……いや、あげるけども。一個くらい誤差だよ誤差」

「それが後でマスターを苦しめるんだな。まぁ、誤差なんだろうけど」

「フラグのようでフラグでない発言ですね。ほぼアウトかと」

 

 黒猫フィギュアをオオガミから受け取り、嬉しそうにしているアビゲイルを見つつ、ぼそりと呟いたアンリ。

 昨日さりげなく殴り飛ばされたのを根に持っていたりするのでそんなことを呟いたのだが、マシュに突っ込まれる。

 なお、本日は第一再臨なのでおとなしい方のアビゲイルだ。

 

「ねぇマスター? これって、持って帰って大丈夫なものなの?」

「えっ……いや、それは……今まで普通に持って帰ってたけど、冷静に考えると、大丈夫なものなのか……? ダ・ヴィンチちゃんに一回も怒られてないし、大丈夫……かな……?」

「えと、変なこと聞いてしまったみたい……マシュさん、大丈夫なのよね?」

「そうですね……普通に余った交換アイテムはカルデアに置いてありましたし、問題ないですね」

「そう。それなら良かったわ! お部屋を貰えたら、飾りたいわ。あぁ、楽しみだわ!!」

 

 くるくると回りつつ、とても嬉しそうにするアビゲイル。

 だが、マシュはそれから目を逸らしつつ

 

「……カルデアは凍結されて、今は逃亡中なんですよね……考えてみると、どうしてこんなところにいるんでしょう……」

「そりゃ考えちゃいけねぇ奴だ。ってか、夕飯まだか~?」

「リクエストして~」

「何も考えてなかったなアイツ……」

 

 マシュの思考を中断させつつ本日の夕飯を聞いたアンリだったが、どうやらオオガミは何も考えてなかったようだ。

 アンリはため息を吐き、

 

「オレは肉喰いてぇな。ステーキとかどうよ。分厚いの」

「……分厚い肉……ワイバーンの備蓄なら……」

「なんであるんだワイバーン肉。むしろそっちが気になるわ。どこで仕入れたそんなもん」

 

 少なくとも、このマンションで会った憶えはなかった。

 まさか、前やその前のイベントの時のだとでも言うのだろうか。

 

「いやぁ……秘密」

「怪しい! 絶対ヤバイだろそんなの!」

「大丈夫! 保存状態は完璧だから!! 文句無しだから!」

「そういう問題じゃねぇだろ!! 何時の肉だ! 言ってみろ!!」

「えっ……それはその……百重搭の奴……」

「あのときのかよ!! 半月以上前のじゃねぇか! どうやって保存してた!」

「それは企業秘密」

「それが一番信用できねぇ……!!」

 

 不安しか募らないオオガミの言い分。

 一体何を隠しているのだろうか。ただ、一つだけ言えることは、

 

「よし……買い出し行くぞマスター。アビゲイル連れていけばすぐだろ? 早めに済ませようぜ」

「うぐぐ……まぁ、良いけども。アンリに言われてステーキ気分だよ。はぁ……今日は全員で行こうか」

 

 そういうと、ご機嫌なアビゲイルを説得して、全員で買い出しに行くのだった。




 バレンタインイベントのカカオを見るに、特異点からの持ち帰りとか、平然にやってるっぽいし、問題ないですね。これは安全。


 最近、投稿時間に間に合わなくなってきてる……そろそろ限界……?


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後どれくらいここにいられるのかしら(長いようで短いマンション暮らし)

「ねぇマスター。後どれくらいここにいられるのかしら?」

「そうだねぇ……後……今日入れて4日かな? でも、4日目の昼には帰れるはずだよ。もしかしたら他のところに飛ぶかもしれないけど」

 

 屋上で寝転がり、星を見つつ話す二人。

 屋上にいるのは二人だけで、残りは部屋で待っていた。本日の料理担当はマシュで、待ち時間に二人だけ屋上に来たのだ。

 料理が出来たときは、アンリが呼びに来る予定なので、問題ないだろう。

 

「なんだか、ここが一番過ごしやすい気がするわ」

「ん~……まぁ、風呂とかトイレのことを考えると微妙だけど、それ以外は普通に色々揃ってるしね。快適なのは確かだね。うぅむ、日本……数多く渡ってきた中で、かなり過ごしやすいのは言うまでもない……このレベルで比べるのだとしたら、新宿かな……」

「新宿? それはどこにあるのかしら?」

「そうだね……うぅむ、口で説明するのは難しいから、今度日本地図を見ることにしようか」

「分かったわ。約束よ、マスター」

「当然。約束しなくとも見せるともさ」

 

 そう言って、笑いあう二人。

 日本地図を手に入れてないのが問題なので、車の中に戻れれば、荷物の中に日本地図くらい入っているだろう。

 

「それにしても、晩御飯なんだろうね?」

「何かしらね……でも、マシュさんは『健康料理を!』と言っていたわ。お野菜がいっぱいというのはちょっと考えたくないわ……」

「うぐ……内容によっては嫌な顔をしてしまうかもしれない……野菜大盛りかぁ……マシュ……栄養は偏り無く、かつ美味しいものをお願いします……」

「もしお野菜が山盛りで出てきたら、私、逃げるわ」

「令呪を使ってでも道連れにする」

「あ、悪魔だわ……マスターが悪魔のようだわ……!!」

 

 見なくても分かるくらい動揺しているアビゲイル。

 オオガミは一緒に逃げる側だと思っていたらしく、オオガミの言葉がまさに想定外のようだった。

 

「な、なんで逃げないの? 苦手なものもあると思うわ?」

「いや、だって、後でマシュに涙目で睨まれたら死ぬしかないし……」

「そこまでかしら……い、いえ、きっと理由があるのよね。たぶん、マシュさんは怒ると怖いのよ。えぇ、きっとそうだわ」

「うん。わりと怖い。結構前に、カルデアのテレビを半分ジャックしたBBが、画面が切り替わって数秒で捕縛されたのをみて、怒らせたら危ないって思ったね」

「えっ……BBさんって、何時だったかさりげなくいて、さりげなく消えていたあの人よね。あの人が数秒で縛り上げられるほどなの……? マシュさん、実はとっても怖い人なのね……!!」

「先輩? それ以上適当な事を言っていますと、晩御飯が無くなりますがいいですね?」

「あっ……マシュ……えっと、ごめんなさい……」

 

 噂をすれば、という奴だろうか。いつの間にか近づいてきていたマシュは、とてもいい笑顔でオオガミの顔を覗き込んでいた。

 オオガミは何も言い返すこと無く、ただ謝るのだった。

 それを見ていたアビゲイルは、マシュは出来るだけ怒らせないようにしておくのが一番だと思うのだった。




 うちのマシュは強い。主に精神力。
 身体能力の差を考えないこの精神力ですよ。しかも、平然とオオガミ君を脅すこの強かさ……!! 敵に回しちゃいけない……


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黒猫の量が膨大に(部屋を埋める勢いだな……)

「なんだか、凄い量ね。黒猫さん」

「燃やしたら面白そうなくらいだなぁ……燃やす?」

「……三千万QP」

「自重しま~す」

 

 ぼそりと呟いたオオガミの言葉を聞いて、即座に謝るアンリ。

 苦労してこの量を集めたのだ。燃やされるのは流石にやめてもらいたい。

 

「しっかし、これが全部QPに変わるのかぁ……持ち運び辛そうだなぁ……なんせ部屋一つ分。オレは持ち運びたくない量だ」

「私が門を使うからアンリがやらなくても大丈夫よ? 非力だものね?」

「おっと。温厚と名高いアンリさんも、ちょっと今のは悔しいかな? これはちょっと本気出すしかないかな?」

「勝手に人の思考にアテレコしてるアホマスターが代理だ。コイツなら余裕だろ」

「酷い!! アンリはそういうこと言うんだね!! それならこっちにだって考えがあるわけです」

 

 そういうと、オオガミはどこからか概念礼装を取り出すと、アンリに投げ渡す。

 

「あ? なんだこれ」

「ターゲット集中礼装」

「はぁっ!? 殺す気かマスターテメェ!!」

「安心して。ちゃんと回復はしてあげるから」

「苦しめる気だコイツ!!」

 

 いつものようにアンリを攻撃していくオオガミ。当然、後で報復されるのは目に見えているが、それはそれだ。報復をして、されてを繰り返し、互いの報復の精度は上がっていくのだから。

 全くもって、嫌なサイクルである。

 

「それで? 黒猫を持っていくって話だっけ? 当然、やらないよ。だってほら、一気に持てないし、重いというよりかさ張るし、マンションの通路を通れるような大きさじゃないし。ここは素直にアビーの力に甘えよう……」

「……アビゲイルがもしいなかったらどうしてたんだ?」

「窓から投げ捨ててた」

「うっわぁ……効率良いけど損壊が酷そう……下にいた奴は悲惨だな……」

「下にいるのマンション霊とかそこら辺だし、お潰しても問題ないよねっ!」

「そうだな。運が良ければそのままランタンゲットだ。って、アホかコイツ!! 落下ダメージくらいで死ねばこっちは苦労しねぇっての!!」

「えっ……でも、この前骸骨が砕け散ったよ……?」

「……アンタ、どんな速度でぶつけたんだよ……」

 

 マンションの8階から投げてぶつけたのだ。しかも、人形とはいえ魔力が籠っている物を。

 軽くダメージが通ることもあるだろうが、流石に砕け散るのは少し異常だろう。一応魔力があるだけの一般人なのだが。

 

「なんつうか、今度マスターと一回模擬戦闘してみてぇんだけど……わりと攻撃が通じなさそう。なんせ、最弱英霊ですし?」

「えぇ~……英霊相手とか、流石に無理だと思うんだけどなぁ……まぁ、今度ね」

「おぅ」

 

 そういうと、オオガミ達は少し休憩してから、黒猫を袋に積めていくのだった。アビゲイルに召喚してもらった後、交換してもらうときに持っていきやすいように。




 貯まっていく猫……一気に交換するのが楽しみです。


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明日の昼に、マンションとお別れ(なんとなく、修学旅行気分)

「もうそろそろこのマンションともお別れね」

「記録があっても、それはそれ。実体験してるのとは違うからな~」

「まぁ、お別れは来るものです。それに、そのうちまた似たようなところに来ますよ」

「……正直、こんなマンションがいっぱいあったら、きっとそれだけで世界がピンチだと思うの」

 

 わりとまともなことを言うアビゲイル。確かに、死霊蔓延るマンションそこかしこにあったら、それはもう、それだけで厄災レベルなのではないだろうか。

 そんなことを考えつつ、オオガミ達はついに四千個を超えた黒猫フィギュアをまとめていた。

 誰かがうっかり扉を開けたのだろう。とオオガミは考えていた。犯人はおおよそ目星がついている。現実逃避をしているような言葉を発している人物だろう。

 

「もぅ……お片付けくらい一人で頑張ってよマスター!」

「俺が散らかしたみたいに言わないでくれます!? そもそも、ご丁寧にぶちまけるのが何処かにいるのが原因じゃないかな!?」

「私の事かしら? もしかして、マスターは私の事を言っているのかしら……!?」

「いや、普通に考えてそうだろ。うっかりこの部屋を開けて黒猫大放出したのはアビゲイルだし」

「酷いわアンリ!! 私は気になって開けただけ。そこに黒猫さんがいっぱい詰まってるだなんて聞いてなかったわ!」

 

 やいのやいのと騒ぎつつ暴れ始めるアビゲイルアンリ。ついでに巻き込まれているようでそもそも部屋に黒猫フィギュアをぶちこんだ張本人であるオオガミの争いを見つつ、マシュは地道に一つずつ回収していく。

 そんな感じで、一人だけちゃんと頑張っているマシュを置いて、三人の争いは激化していく。

 

「大体、アンリだって一緒にいたじゃない。忠告くらいしてくれてもよかったと思うわ! だって、最初に片付けたときはアンリもいたんでしょ!?」

「おぉっと。こっちに責任転嫁してくるか。だが甘い。甘いぜ嬢ちゃん。なんせ、オレは止める間もなかったからな。オレの気付かぬうちに目を輝かせて凄い勢いで扉を開け放たれちゃ、オレの出る幕はないね」

「聞いてると凄い不思議なんだけど、なんでそんなことになるのさ……」

「私は面白そうな気配がしたから、何かと思って扉を開いただけよ。何も悪くないわ!!」

「オレはコイツが妙に上機嫌で災難に見舞われる気がしてため息を吐いたら、次の瞬間には左側から黒猫の波に襲われて沈んだ」

 

 どうやら、話を聞いている限り、今片付けをしているのはアビゲイルが原因のようだった。

 オオガミの片付けが雑だったのもあるだろうが、量が多いと言うのも問題だった。

 マシュは呆れつつ、作業していた玄関部分がようやく終わり、奥への道が拓けてきた。まぁ、背後には黒猫フィギュアがたくさん詰まった袋が大量にあるのだが。

 そんな時、ふと、マシュは閃く。

 

「……先輩。私、閃いたんですけど、これだけ多いなら、アビーさんに、この部屋の床部分に門を開いてもらって、排出される門の下で袋を構えてるのが一番楽じゃないですか?」

「……アビー。出来そう?」

「……思い付きもしなかったわ。たぶん出来ると思うから、やってみるわ」

 

 そこまでは考えなかったと三人は思い、マシュの言われた通りにしてみる。

 

「うわぁ……なにこれスッゴい楽」

「今までなんで真面目にやってたんだろ……」

「三人とも、ほとんど何もしてませんから。ケンカしてただけですから」

「……門の維持が一番大変だと思うの……」

 

 そこは、元凶なので頑張ってもらうことにしていただく。

 マシュは、これで9割くらいは終わりそうだと、安堵するのだった。




 実際、全部落とせはしないと思うんですよね……最悪余計なものまで落としますし。なので、いくらかは結局手作業になるわけです。マシュが一番苦労してる……

 というか、うちのアビーちゃん、全く大人びたところがない……めっちゃ子供……


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日常
危険人物召喚の可能性(絶対呼んじゃダメよ、マスター)


「うっわぁ……危ない人だぁ……」

「ね、ねぇマスター? 絶対に、絶対に呼んじゃダメよ? 私、死んじゃうかもしれないわ……!!」

「相性ってあるよなぁ……ぜひ呼んでくれ。コイツを制御できるのが欲しい」

「アホアンリ。呼んだら全員洗脳ENDだっての」

「……ガチでやべぇ奴じゃん」

 

 ピックアップ。1200万という事で、一体誰が来るのだろうかと気になっていたが、その内容を見て、オオガミは苦笑いで石を再びしまう。

 流石に、名前を呼ぶのすら怖いような人を呼びたくはない。

 

「……でも、こっちじゃなくて、リップの方ならいいんじゃねぇの? 感動の再会じゃね?」

「なんという再召喚。うぅむ、やる価値はあるな……宝具レベルも上げたいし……」

「えぇっ……私は反対よ。それでうっかり召喚されたらどうするの……!?」

「まぁ、その時はその時だ」

「おぅ。オレは別段止めねぇけど、とりあえず思い出したから聞くぜ? マシュはそれ知ってんのか?」

「……の、ノーコメントで」

「……マシュさんに知らせてくるわね!!」

「あっ、こらアビー!!」

 

 止める間もなかった。いつの間にか車の中の空間が広くなっているが、アビゲイルにとってはそんなことは関係ない。

 そもそも、なんで車の中なのに距離が離れるのかと言う疑問がわくが、そんなことを考えていては生き残れない。SE.RA.PHの如き理不尽さと考えておくべきだろう。

 ともかく、アビゲイルはマシュの所へオオガミが石を勝手に使おうとしていることを報告しに行った。

 残されたオオガミとアンリは、

 

「……帰ってくるまでに回すか」

「アンタの心臓は鋼かよ」

 

 怒られるなど、もはやいつもの事。この程度で止まるオオガミではない。

 反省しろよ。とか思わなくもないが、大体反省しないのがいつもの事なので、基本的に諦めているのがほとんどだ。

 

「さて。では大事な大事な石召喚です。ちなみに、このうちの20個は、50日毎にどこかから支給される石であります」

「どこから支給されてんだよ……」

「深く考えちゃいけない……感じるんだ……」

 

 そんな冗談を言いながら、石を召喚陣の中に投げ込む。

 狭い車内が謎技術で広くなっているので、何人か増えても問題ないだろう。

 そう思い、誰が召喚されるかと楽しみにして――――

 

「――――エルバサさんかぁ……」

「む。なぜ残念そうにするのか。戦力増強は望ましい事だろう?」

「そうだけども……」

 

 召喚されたのは、エルドラドのバーサーカー。そろそろ真名で呼んでも良い気がするのだが、いかがなモノか。呼び方を安定させないとこの先も大変だろう。

 

「まぁいいや。よろしく。エルバサさん」

「あぁ、任せろマスター。全て破壊してやろう」

 

 そんな二人を見つつ、何となく危険な雰囲気を感じてきたアンリは、二人が話しているうちに静かに逃げるのだった。




 人類悪顕現……アビーの天敵である。恐ろしい事です……絶対呼んじゃいけない……


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危険人物、ダメ、絶対(平和維持のため、マスターは部屋に閉じ込めましょう)

「ふぅ……良かったわ。明らかに危ないあの人は召喚されなかったみたい」

「えぇ、本当に良かったです。これで召喚されていたら、全滅してました」

 

 オオガミとアンリを縛り上げて吊るして放置したマシュとアビゲイル。

 石が30個と呼符が5枚無くなっていたが、結果的に存在が危ないあの人は召喚されていなかった。

 これもマスターの普段の行いのせいか、はたまた。

 何はともあれ、安全のままだった。

 

「とりあえず、しばらく反省してもらいましょう。具体的にはピックアップが終わるまで。リップさんを呼べないのは辛いですが、危ないあの人が来ないなら問題ないですね」

「私としてはどっちも天敵なのだけれど……まぁ、来ないなら問題ないわ」

 

 スキップをしてしまうくらい気分がいいアビゲイル。

 マシュはそれを微笑みながら見ているが、ふと、先ほど縛り上げた二人を思い出す。

 確かにしっかりと縛り上げたはずなのだが、それ以前に、オオガミがほとんど抵抗しなかったというところだ。

 何を企んでいるのか。アビゲイルがいるから逃げ出さなかったのか、それとも縄抜けの練習をしているのか。

 ただ、オオガミは知らない。マシュも、オオガミに対抗するべく捕縛術を習得しまくっているのだ。簡単に抜けられるとは思っていない。

 

「マシュさん。どうしたの?」

 

 考えていると、前に立って首をかしげて顔を覗き込むアビゲイル。

 マシュは考えていたことを振り払い、何でもないと伝える。

 

「あんまり無理しちゃダメよ? マシュさんが頑張ってくれているのは知ってるけども、ダメなときはちゃんと休んでね?」

「はい。自分でちゃんと管理もしていますし、無茶はしないように心掛けていますよ。ただ、私が休憩しているときに先輩が何かやらかすと、真っ先に私に連絡が来るので、出来れば自重してほしいです」

「うぅん……じゃあ、マシュさんが休んでいる間は私が対応するわ! 受付に勤めていたんだもの。たぶん大丈夫よ!」

「受付とこれとはまた別のような気もしますけどね……? ですが、そうですね。よろしくお願いします」

「えぇ、任されたわ!!」

 

 胸を張り、自信満々に請け負うアビゲイル。

 ただ、そんなアビゲイルの後ろをこそこそと通る影を、マシュは見てしまった。

 

「……アビーさん。先輩達はちゃんと捕縛しましたよね」

「もちろん。絶対解けないはずよ!」

「……じゃあ、先輩が抜け出してるわけ無いですよね」

「当然……待ってマシュさん。それを聞くってことは、つまり……」

「……そう言うことです」

 

 瞬時に振り返るアビゲイル。そこにはいつの間にか抜け出したオオガミとアンリの姿が。

 見つかったことに気付いた二人は、次の瞬間全力で走り出す。何処へ向かっているのかなど考える暇はない。とにかく逃げるのみだ。

 当然、それを見送るアビゲイルではない。マシュを置いて、二人を追いかけ始めるのだった。

 

「……これは、たぶん日付が変わるまでに捕まえられますよね」

 

 一人残されたマシュは、冷静にそう呟くのだった。




 アビーの本気の追跡からは流石に逃げられないですよねぇ……門を使われたら一発で捕まる……


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脱走兵はより強力な牢獄へ!(監視しておけば良かったのでは?)

「全く……再召喚されて初の命令がマスターの捕縛だとは思わなかった。というか、なんでそんなことになるのか」

「それに素直に従うエルバサさんもどうかと思う……」

「オレが一番の被害者だと思うんだ……だってほら、何もしてないし……」

「マスターを止めなかったでしょ?」

「止めないと一緒に捕縛されるのかぁ……」

 

 アビゲイルとエルバサに見張られているオオガミとアンリ。

 全身ぐるぐる巻きにされて天井から逆さ吊りされているとしても、関係無い。何せ、抜け出した前科があるからだ。

 ちなみに、アンリをイケニエに逃げ切ろうとしたオオガミだったが、突如現れたエルバサに、成す術なく捕まったという経緯があったりする。

 

「それにしても、なんで抜け出せたのかしら……」

「そうだな……服の――――例えば、袖の中に刃物を仕込んでいたとかだろうか。証拠として、縄が鋭利なもので切られた後がある」

「なるほど……エルバサさんはどうした方がいいと思う?」

「それを聞かれると困るのだが……そうだな。ワイヤー等で縛るのはどうだろうか」

「う~ん……そうね。そうしましょう。マシュさんに言って、貰ってくるわ!」

 

 そう言うと、アビゲイルはパタパタと走っていく。

 それを見送ったエルバサは、マスターに視線を戻すと、

 

「一体何をしたのか、聞かせてもらおうか。なんで逃げるようなことになっていたのかを」

「……エルバサさん再召喚の時に消費した石とか呼符とかは無断使用だったので……」

「何してるんだか……マシュはそこまで資源に対し厳しくもないだろう?」

「いやぁ……確認するよりも早く回したくて……」

「バカか貴様。資源管理は必須。無断使用が認められるわけないだろう。確かにそれほど厳しくする必要は無いとはいえ、連絡は必要だ。前にいた土方という男はその辺は分かっていたのだが」

「あ~……うん、分かる分かる。土方さんもその辺うるさかったなぁ……あれ、これ切腹ものかな?」

「オイオイオイ。オレまで巻き込んで切腹とか洒落にならねぇからな!? マスターを殺すのは不味いんだから、必然的に俺だけ犠牲になるじゃねぇか!」

「すまないアンリ……」

「サクッと売りやがったこのやろう!!」

 

 慈悲はなかった。オオガミは、アンリに向かって黙祷するのだった。

 そんな殺伐とした空間に、訪れる天使が一人。

 

「ワイヤー持ってきたわ! って、何かしら、この雰囲気」

「おぉ、取ってきてくれたか。アンリに処罰は出来るとして、マスターはこれで縛っておかなければな……」

「あれぇ? これ、もしかして被害に遭うの俺だけなのでは?」

「ハッハァー! ざまぁねぇなマスター!! お前もこっち側なんだよ!!」

「コイツ、一気に調子乗りやがって……アビーさん、やっておしまいなさい!」

「えぇ……マスターがイタズラして捕まったのに、アンリを巻き込むのはどうかと思うわ」

「なんでこういうときに限ってイイ人ぶるんですかねこの子は!!」

「よぅし!! これでマスターはワイヤーで吊し上げじゃぁ!! 縄よりも痛いな絶対。めっちゃ痛そう。後、鉄臭くなったら近付かないでくれ」

「調子乗ってるじゃないのアンリ君……後で覚えとけよ貴様……」

「ワイヤー地獄を無事に生き残れたら考えとくぜマスター」

 

 二人はそう言ってにらみ合いつつも、その後に降りかかる地獄の前に、何も出来ずに崩れ落ちるのだった。




 イケニエ等、無意味なのだった……しかし、ワイヤーで縛り上げるのは、最悪死ぬんじゃ……?


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一体俺が何をしたって言うんだろうか(三倍返しだぜ、マスター)

 吊られたまま一日。つい最近アビゲイルとアンリにやった行為を似たような感じで返されているオオガミ。

 本日の食事は塩一つまみと水4杯。修行僧でも無いであろう食事とも言えない内容。マスターに対する仕打ちとしては恐ろしすぎた。

 ちなみに、アンリはどこかへと連れ去られた。

 

「くぅ……めっちゃ腹減った……殺意高すぎだろ……おかしいじゃんか……」

 

 わりと泣きそうなオオガミ。

 ほぼ自業自得なのだが、本人は認めないというのが問題だった。

 そんなオオガミのもとに現れるアビゲイル。その手に持っているおぼんの上にラーメンを乗せていた。

 

「マスター! 見て、これ!! 私のお夕飯よ!」

「なるほどぉ……で、アビー。僕の夕飯は?」

「あっ、そうそう。マスターのご飯も預かってきたんだったわ」

 

 そう言って、アビゲイルはオオガミの下までやって来て、おぼんを置くと、その上にちょこんと乗っけてあった白い塊と水を差し出し、

 

「はい。塩タブレットとお水よ!」

「……誰がそれを渡せって言ってたの?」

「えっ? アンリよ?」

「アンリあのやろう次会ったら覚えとけ!!」

 

 吊られながらも器用に暴れるオオガミ。

 アビゲイルは持っていた塩タブレットと水をその場に置くと、部屋の隅の方に置いてあった机と椅子を持ってきて、ラーメンを食べ始める。

 誰が作ったのかは知らないが、山盛りの野菜の上に大きなチャーシュー。麺もスープもインスタントではあるものの、その匂いは空腹の人間には辛いものであるのは確かだった

 

「うぎぎ……なんでこの部屋で食べるんだ……」

「マスターはそれだけしかないから、匂いだけでも楽しんでもらおうと思って!」

「悪意でやってるとしか思えないんだけど……!!」

「あら、酷いわ。マスターは私が悪い子だとでも言うの?」

「少なくとも、悪意無しでそれをやっているのなら後でお話する必要があると思うくらいには」

「まぁ。怖いわ……とは言っても、本当はダメだと思っていてやっているから、悪意があるってことなのかしら?」

「よぅし分かった。絶対抜け出して、仕返ししてやるからなアビー。覚えとけよ」

「マスターが怖い事を言うわ……でも、私は強い子よ。こんなことでめげないわ!」

「出来れば今後しないようにしてほしいな! 教育が必要ですよこのお嬢さん!!」

 

 最近、なんだかアンリにしていたのが返ってきた気がするオオガミ。これがアンリの宝具とでも言いたそうだ。こんなことでも返ってくるのだろうか……

 そんなことを思っている間に、ペロリと平らげたアビゲイルは、さっさと帰っていく。

 

「じゃあマスター。また後で来るわね」

「その頃までに逃げ出しておいてやるからな!」

 

 アビゲイルはそれに対し、意味深に微笑み、去っていくのだった。




 うちのアンリは宝具1だから2倍返ししか出来ないはず……!!

 うぅむ、悪意の塊しかいないぞ現在のうちのカルデア……悪との人数比不思議……


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うちのアイドルの歌が聞きたい(この場合の病院ってどこでしょうか……)

「……やばい、ついに頭おかしくなったかも」

「どうしたんですか先輩。いきなりそんな、今更な事を……」

「マシュが心の底からそう思っているのは分かった。後でひっそりと仕返しするのは確定として、そうじゃないんだ」

 

 互いが互いに悪意のような、一周回った信頼のような会話をしつつも、とりあえず話を聞いてみるマシュ。

 

「何というか、突発的に、エリちゃんの歌を聞きたくなった」

「ダメです先輩。それは流石にやっちゃダメです。明らかにその道は死亡確定です」

「やっぱり? 死ぬよねぇ……でもさ、何となく、聞きたくなってしまったんだからしょうがない。禁断症状だよ」

「歌を聞いて死んで、歌を聞かなくても死ぬ……どうするんですか先輩。どうあがいても死ぬじゃないですか!!」

「まぁ、どうせ死ぬなら聞いて死ぬのが本望かと」

「……そ、そういう人でしたよね……えぇ、はい。それで、今エリザさんはいませんけど、どうするんですか?」

「そう、そこが問題なわけです……エリちゃんいないからね……更に言えば、こうやって縛られてるからね……」

「……そうですね。ですが、昨日夜中にひっそりと抜け出していたというのを聞いたんですが、どうなんですか?」

「…………」

 

 目を逸らすオオガミ。バレているのが予想外だったようだ。

 

「はぁ……先輩が逃げ出すと思ってるに決まってるじゃないですか。当然、見張りはいますよ」

「……なんで、マスターよりも後輩の方が信頼高いんだろうね?」

「それは、あれですよ。普段の行いですね。というか、どうして見張りがいないと思ったんですか……」

「いや、ちゃんと見張りがいないかどうかを確認したんだよ? いなかったはずなんだけどなぁ……」

「隠蔽工作くらいは普通にしますよ……」

 

 アサシンの全力の気配遮断を使ってもらっていたので、それでバレたらオオガミは気配感知を持っているのか。というレベルだ。

 流石にそこまでは無かったようだとホッとする反面、オオガミが抜け出したのは事実なようで、内心どうしたものかと考えるマシュ。

 

「全く……どうやったらこの状況から抜け出せるんですか……」

「それは、企業秘密だよ。流石にこれを対策されると打つ手無しなんで」

「ですよね。じゃあ、仕方ないので何とかして暴いてみますよ」

「あ、ホームズの力を借りるのは禁止だからね」

「聞いても教えてくれなさそうですけどね……まぁ、召喚をさせなければ勝ちなので。あんまり気にはしないんですけどね。本当に止めるつもりになったら何とかします」

「こ、怖いわぁ……」

 

 オオガミはそう言うと、ため息を吐くのだった。




 ワイヤーで縛られてるのに脱出……書いてて、どうやったんだろう。と思ったのはここだけの話。奴はもう、ほとんど人間じゃねぇ……


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いい加減、自由になりたいんだけど(させませんからね。絶対)

「ふふふ……なんか、サナギ気分」

「まぁ。脱皮するのかしら?」

「まさに、変態ですかね?」

「うまいこと言うなぁ……マシュ……」

 

 荒ぶり始めたオオガミに、軽く一撃入れていくマシュ。

 アビゲイルは若干ついていけてないが、気にしてはいけない。

 

「それで、突然どうしたんです? 笑いだしたのも、なんか不気味ですし……」

「昨日から十分不気味だった自覚があるけど……はっきり言えちゃうマシュちゃんが凄いと思うぜ……チクショウ、さりげなくお茶の用意しやがって。何縛られてる人を見ながら談笑するつもり満々なんだ」

「先輩、何かと寂しがり屋なので、せめて話し相手になってあげようと言う配慮ですよ」

「うわぁ……アビーが手伝うと凄い楽そう……というか、アンリって何処行ったの?」

 

 着々とお茶の準備をしていく二人を見ながら、話を変えていくオオガミ。

 気になってはいたのだ。連れ去られたアンリは何処へ連れていかれたのかということを。

 

「アンリさんは……そうですね、別室にいます。ちょっと言えないですけど」

「うわぉ、不穏。さりげなくマシュが一番危ないんじゃないかと思ってきた」

「そんなこと無いですよ。むしろ、私が一番無害です」

「マシュさんが一番無害だなんて……ここまでの作戦はマシュさんが主導なのに……」

「アビーさん、それは言っちゃいけない奴です」

「あ、ごめんなさい。失言だったわ」

 

 両手で口を塞ぎつつ、やってしまった。と言わんがばかりの表情のアビゲイル。

 マシュは苦笑いでアビゲイルの頭を撫でつつ、オオガミを思いっきり揺らす。

 

「ああぁぁぁぁああ~………ゆ、揺らされるうぅぅ~……」

「ふふふふふふ。何もなかったことにしないとですね。一番簡単なのは、先輩の記憶を吹き飛ばす事でしょうか?」

「な、なんで今日のマシュはこんなにも殺意高いんだろう……とりあえず、酔うので止めていただきたい……」

「先輩……私だって色々あるんですよ。後始末に呼ばれたり後始末に呼ばれたり……あと後始末に呼ばれたりするんです。最近はホームズさんを引きずり回して頑張ってますけど、あの人も先輩並み、いや、それ以上に逃げるので、大変なんです。なので、手伝って欲しいとは言いませんから、せめて何もしないようにしてください。後で大変なのは私なんですよ?」

「……い、以後気を付けます……なので、その、出来ればそろそろ止めてほしいかなぁって……」

「止めるわけないじゃないですか」

「ですよね~……」

 

 ぐるぐると回されながら、オオガミはマシュの迷惑にならないことは出来るだけしないようにしようと誓う。

 そして、ストレス軽減のために、少しくらい何か手伝ってあげるのも良いな。と思うものの、どうせすぐ忘れて何かしでかすというのは、自分でも自覚があるので今日くらいは気が済むまでやられていよう。とオオガミは決め、とりあえず気の抜けた悲鳴を上げるのだった。




 恐らく現状一番危険で一番苦労しているマシュさん……オオガミ君があんなだからいけないんだ……

 さて……四月まで四月まで持つかどうか……


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メルト強化!! やったぁ!!(まぁ、うちにはいませんけどね)

「ひゃふぅ~! メルト強化だぁ~!!」

「……メルトさん、いたかしら?」

「えぇ、いません。完全に暴走してるだけです」

 

 叫び暴れるオオガミを見ながら聞いたアビゲイルに、悲しそうな表情で首を振るマシュ。

 いつも通りといえばいつも通りではあるが、いつもよりうるさいのは確かだ。

 

「何気に、今マスターを縛ってる理由はメルトさんが原因なんですけどね」

「まぁ。もしかして石を貯めてるのはメルトさんを召喚するため?」

「はい。まぁ、ここまで出てないので、そろそろ洒落にならない予感がするのですが……」

「石がたくさんあっても、来てくれないのね……やっぱり、数だけじゃダメなのね……」

「えぇ、まずは先輩を矯正するところからかと」

 

 嬉しそうに荒ぶるオオガミに呆れつつ、マシュはレーズンを混ぜたスコーンを取り出す。

 アビゲイルはスコーンに目が釘付けになり、

 

「ね、ねぇマシュさん。それ、食べても良いのかしら?」

「はい。先輩の隠し持っていたお菓子なので、問題ないかと」

「まさかマシュに荷物を荒らされてるとは思わなかったんだけど」

「私も驚いてるわ……マシュさんはそういうことをしないと思っていたのだけど」

「先輩に対してだけですよ。というか、休憩室から持って来たやつじゃないですか。なんでこんなの保存してたんですか」

「いや、持って帰れるかなぁって。なんとなく日保ちしそうだったし……」

「はぁ……流石に無理があるかと。というか、スコーンを持ち帰ろうとするのは驚きました。見つけたときにビックリしましたし」

「むしろ平然と中身を覗いてる後輩にビックリだよ。流石に服類は見てないよね?」

「当然です。衣服のバッグだけはちゃんと覚えてますから」

「むしろ不安だよ!! なんでそれだけ知ってるの!! 最初から漁る気しか無かったでしょ!!」

「言いがかりです。衣服のバッグしか知らなかったのは、ちょっとした情報網のお陰です」

「何それ不穏。衣服バッグだけ調べてる情報網とか、絶対ロクなもんじゃない。是非紹介してほしい」

「マスター……本音が漏れてるわ」

「おっとこれは失態。ともかく、そのスコーンを食べるのなら一口ください。再現用なんだよそれ……」

「むむむっ。そう言われると悩んじゃいます……どうしましょう、アビーさん」

「渡して良いと思うのだけれど……だって、作って貰えるのでしょう? 私は作ってもらう方が断然いいと思うわ」

「仕方ありませんね……一個で大丈夫ですか?」

「まぁ、大丈夫かな。問題は、今すぐは作れないってところだ。なんせ必要な道具も食材もないし」

「残念。でも、いつか作ってくださいな」

「出来るだけ早くするよ」

 

 オオガミはアビゲイルに約束をし、マシュからスコーンを貰うのだった。




 忘れてはいけない。彼は、今縛られ吊るされているのだということを。

 そんなことよりメルト強化ですメルト強化。私は持ってないから関係無いとか思っているそこのあなた。めっちゃ泣きたくなるのでお止めください。致命傷です。
 それはそれとして、嬉しいことは確かです。やったぜ。


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ヤバイのが来た(お前じゃないっ! お前じゃないんだっ!)

「あっ」

 

 その呟きは、平和を一瞬にして破壊する。

 

「アルターエゴ、殺生院キアラ。参上いたしました」

 

 声だけで分かる。それは猛毒そのもの。今回、絶対に呼んではいけないサーヴァント第一位。人類悪そのものである。

 金枠のアルターエゴまでは良かったのだ。だが、現実はこうだった。

 運命とは、かくも殺意に満ち溢れているものだ。狙いは来ず、引いてはいけないものは引く。今回が一番良い事例だったかもしれない。

 あぁ、だが、悲しきかな。学んだとしても、活かす場所はもう無いのだ――――

 

「(とか言ってる場合じゃねぇぇぇーーーー!!! マジでどうするんだこんなの!! マシュのお仕置きコースってレベルじゃねぇぞ!! 独房ひとりぼっちの刑だ死ぬ!! なんだよなんで今日に限って来るんだよこの人……!!)」

 

 とにもかくにも、今はこの状況を打破することが先決。この危険物質を如何にバレないようにするかが重要――――

 

「マスター? またマシュさんに黙って召喚して――――」

「あっ」

「あら?」

 

 目が合った。合ってしまった。

 マシュの次にこの人と会わせてはいけない人物――――アビゲイルがそこにはいた。

 刹那。アビゲイルは何処かへと走り去った。全力で。あまりにも焦りすぎて、門の存在を忘れているほどに。

 

「あらあら……何を逃げる必要があるのでしょう……別に、取って食べたりするわけでもないのに……」

「不穏。何か企んでる気しかしない」

「まさか。こんな状況で好き放題暴れるほど私は子供じゃありません。えぇ……人理焼却の次は人理凍結ですか……ふふ。これはなんとも、面白そうじゃないですか」

「……やっぱ危ないよこの人」

 

 疑念は確信に変わった。ある程度改善されていても、根本はそのままだった。

 解き放ったら危険でしかないので、何処かに投げ込んでおくべきだろう。となると――――

 

 そこまで考えて、ふと思い出す。何処かへと走り去ったアビゲイルの事だ。

 彼女は何処へ向かったのか。決まっている。マシュのところだ。つまり、キアラを召喚したのはすぐにバレる。結果、

 

「……あれ、詰んでね?」

「四面楚歌、でしょうか。ふふふ。これは存外、退屈しないで済みそうです。先程の少女も気になるところ……少し歩き回ってもよろしいですね?」

「よろしくないよろしくない。危険人物さんはそこで座っていてください。すぐにうちのやられ役連れてくるんで」

「あらあら。やられ役だなんて……一体、どんなお方なのでしょう?」

「……なんだか。アンリが一瞬で蒸発する気がしてきた……まぁ良いや、じゃ、動かないでね。今我が家のイケニエを呼んでくるんで」

「はい。行ってらっしゃいませ」

 

 キアラの言葉を最後まで聞く前に全力でアンリを捕獲しにいくオオガミ。時間はもうほとんどない。マシュがたどり着く前になんとしてもアンリをイケニエにする必要があるのだった。




 まさか出るわけない。そう思って回した結果がこれだよ!! アルターエゴだからリップ期待したのに!! メルトいないからもう引かない!!(吐血


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車内滅亡まで後何時間だろうね(アンリさんが犠牲になってる間に何とかしないと!!)

「先輩。先輩をイケニエにするってことで良いですね?」

「大変よろしくない。具体的には死んじゃう」

「自業自得よ。反省してね、マスター」

「アビーにまで見捨てられた……」

 

 そんな事を話しているうちにも、マシュとアビゲイルは一歩、また一歩と後ろに下がっていく。

 原因は分かりきっていた。あの変態(キアラ)は、流石にアンリ一人では手に余るようだった。この時空間において、レベルなど関係無いのだ……そう、いくらレベルがあっても、シナリオパートでは何も出来ないのと同レベルなのだ。

 

「ふぅ……こりゃダメだね。最後の希望をかけて召喚するくらいしかないや」

「学習しないですねこの人!! アビーさん、CEO呼んできてください! CEO!!」

「よ、良く分からないけど、分かったわ!! たぶんエルバサさんね!! 行ってくるわ!!」

 

 無謀な作戦というより、ただの自棄にしか見えないオオガミの行動に、即座にアビゲイルにエルバサを呼びに行かせるマシュ。最悪バーサーカーならまだ勝ち目はあった。最悪の場合、ホームズをイケニエにする気分だ。ルーラー特攻の彼女にはほとんど壁にすらならないだろうが、無いよりはマシだろう。

 

「ふっふ~ん。今の運なら軽く引けちゃうよね」

「何処から来るんですかその自信! 本音を言っちゃいますと、どう考えてもアホですよね先輩!!」

「……マシュが精神攻撃してくるんだけど。誰だマシュをあんな性格にしたの」

 

 お前だ。などと突っ込んでくれる人はいない。

 気の抜けた会話をしつつも、昨日キアラを引いた後使ってなかった呼符を投げ込む。余り物なのだから、あまり気にしなくても良いだろう。

 

「あぁぁ……!! また簡単に資源を使って……!! それでこの状況を打開できなかった恨みますからね……!!」

「おっと。命がかかってしまった。大変不味い状況だ……」

 

 そう言っていると、いつもより三倍輝く召喚陣。具体的には虹色だった。

 

「確定! 確定だよこれ!」

「こういう時だけ運良いですよね先輩! 素直に凄いと思いますけど、そもそもその運のせいでこんな状況になってるんですからね!!」

「良いことしてるはずなのに酷い言われよう!! 自覚あるけど!!」

 

 そんな大騒ぎをしている間に召喚は完了し――――

 

「――――セイバー、アーサー。召喚に応じ参上した。って、なんだい? 何処かおかしいかな?」

「……いよっしゃぁ!! 打開策キターー!!」

「これで何とか大丈夫そうです! 先輩!!」

 

 嬉しさに喜びを隠せない二人。その状況を飲み込めていないアーサーは、首をかしげつつ、

 

「僕、何かしたかな?」

 

 と呟くのだった。




 まさかの二日連続星5獲得。
 嬉しいが素直に喜べない不思議。今メルトが来てれば当てられる気がするのに……

 しかし、プーサーさんはキアラを倒せるのか……エクスカリバー起動するかが問題……


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いい加減大人しく捕まってほしいのだけど(いつまで耐えられるのでしょう?)

「中々、骨のあるお方ですねぇ……」

「召喚されて、その直後にこんな激戦になるとは思わなかったね……」

 

 不敵に微笑むキアラと、苦笑いをするアーサー。

 後ろにオオガミと震えるアビゲイルがいる。マシュはアンリを連れて退避済みだった。

 そこへ、エルバサが到着する。

 

「ふむ……一体、私はどっちを倒すべきだ?」

「それは、キアラ――――向こうの尼さんだけども」

「分かった……が、まだ余裕がありそうだな。私はマスターを守ることに徹するとしよう。それでいいな?」

「そうだね。そうしてくれると助かるよ」

「うふふ。必死で戦うつもりのようですが、本音を言いますと、私は戦うつもりはないのですよ?」

「目が危ないんですがそれは」

「思い込みというものですわ。私が一体何をしたというのでしょうか」

「去年の五月の地獄を俺は忘れない……」

「私、根本的にあの人と合わないの……」

 

 圧倒的天敵。報復の時を狙っているオオガミと、クラス相性的にも人としての相性的にも最悪としか言いようのないアビゲイルにとって、むしろ徹底抗戦の構えだ。

 巻き込まれている方からすると何とも言えないが、根本的に危ない人ではあるから、ある意味捕縛は必須だろう。

 

「まぁ、僕からすると、君は危険な雰囲気がするからね……現状においては危険すぎるかな」

「そうですか……まぁ、自覚はありますけど、大人しくしているつもりなのですが」

「中々、信用は勝ち取れてないみたいだね。僕としてはここで大人しく捕まるのをお勧めするけど、どうする?」

「もちろん抵抗させてもらいますわ。大人しく捕まっているのも良いですが、こうやって戦うのも楽しいですから」

「ハハハ……何をしてもあまり効果が無さそうだ。僕が出来るのは、時間を稼ぐことくらいかな?」

「私から見ても、倒し切るのは難しいだろうな。というか、マスター。サーヴァントだというのなら、令呪を使えばいいだろう?」

「令呪が効くと思えないんだよねぇ……キャンセルされかねない」

「ふむ。そこまでの相手か……」

 

 流石に令呪キャンセルされる可能性を考えると、使うのはあまり得策ではない。令呪が無くなった瞬間に襲われたら本気で打つ手が無くなるからだ。

 

「はぁ……宝具を使うのは、流石に問題かな。出来れば早めに逃げ場が欲しいのだけど」

「その意見には同意なんだけど、最短でも後五日かな」

「流石に、そこまで耐えきれる気がしないなぁ……」

 

 やれやれ。といいたそうな苦笑い。だが、再度剣を握り直し、時間稼ぎは続けるようだ。

 それを見たエルバサは、

 

「……マスターを連れだしておこう」

「あぁ、よろしく頼む」

 

 エルバサはそれを聞くと、オオガミとアビゲイルを引きずっていくのだった。

 そして、オオガミは引きずられながら思う。

 

「ほのぼのからかけ離れ始めたな……」

「あの人を呼んだ時点で手遅れだと思うの」




 なんか、後戻りできなくなってきた……キアラさんの存在感が強すぎるんですが……軌道修正どうしよう……


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危険人物は自分からお縄にかかるんだね(自重はあまりしないみたいだけど)

「もしかして、俺が邪魔だった?」

「少しはあるが、影響は無いに等しかった。実際に重要だったのは貴様の確保だ。元凶だからな」

「僕もあまり状況を飲み込めてないけど、とりあえず、何とかなったみたいだね」

 

 オオガミはキアラから強制的に引きずり出された後、今までのように吊し上げられていた。

 隣では同じようにキアラも吊られているが、こちらはただただ笑顔を浮かべているだけだ。大変不気味である。

 エルバサは不機嫌そうに。アーサーはなんとも言えない表情をしている。

 その後ろでマシュとアビゲイルがこちらを見ていた。

 

「キアラを捕獲とか、良くできたよね」

「何を言っている。捕獲なんかしていない。大人しくなっただけだ。何をしたかは知らんがな」

「あぁ、うん。そこは本人に聞いてくれると助かるかな」

 

 二人とも良くわからないようで、キアラが自分から捕まったこと以外分からない。

 なので、仕方なく本人に尋ねることにした。

 

「えっと、なんで突然大人しくなったの?」

「当然ですわ。だって、あくまでも私はマスターが私に溺れるのを待っているのであって、戦うこと自体は目的ではありませんし……えぇ、マスターがいないのであれば、戦う理由もございません」

「……じゃあ、大人しく捕まっている理由は?」

「何をおっしゃいますか。大人しくしているだなんて、私の性に合いません。えぇ、えぇ。まずはお話でもいかがかと思いまして。戦うよりも、そちらの方がよろしいのでは?」

「うん、ダメだこれ。マシュ~。別室にして~」

「却下です」

「断固拒否よ」

 

 マシュどころか、アビゲイルすら拒否してきた。

 どうやら変態は変態に任せよう。一応マスターだし。というつもりもようだ。

 

「流石に相性悪いと思うんだよ。同族は同族でも、ダメな方の同族と言いますか。役違いですよこれ。どこぞの作家を連れてきて、任せた方がいいと思うんだけど」

「召喚させませんからね。先輩、余計なことをするのだけは人一倍なんですから」

「すっごい信頼の無さ。あまりにも凄すぎて泣きそうなくらいなんだけど」

「マスターはちょっと落ち着いた方がいいと思うの。その人を呼んだらダメだって言ったのに呼んでしまったんだもの」

「あぁ、うん。そこは言い訳できないなぁ……素直にごめんなさい。話題を変えよう」

 

 話題を変えて逃げようとするオオガミ。

 マシュは別に反省するとは思っていないので、あまり気にしていない様子。周りもマシュに倣って異論はない様子。

 

「アンリ、どうなった?」

「アンリさんですか……はい。未だ倒れてます」

「うぅむ、回復するのに時間かかるかぁ……イケニエ作戦はもう出来そうにないね。よし、諦めて犠牲になりますよ~っと」

「先輩が物分かり良いとか、明日は世界崩壊するんでしょうか……」

「ふふっ。現在進行形で崩壊しているのに、崩壊するだなんて。えぇ、見てみたいですわ」

「あんまり突っ込んじゃ行けないやつだこれ。か、解散! しばらく外で見張ってるように!!」

 

 なんとなくダメな感じがしたオオガミは、マシュ達を追い出すことにしたのだった。




 作家を召喚……すると、更にカオスになる予感。


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ほのぼのいこうぜ、ほのぼのと(マスターはいないけれどね)

「あ~……疲れたぁ~……」

「お疲れ様です、アンリさん。ところで、どうやってキアラさんを止めようとしたんですか……」

「あ? どうやっても何も、普通に逃げようとしたら捕まって、仕方無いから宝具回して殴ってを繰り返してただけなんだけどな?」

 

 平然と答えるアンリ。発見したときは白目で倒れていたのだが、なんとか回復したらしい。

 

「アンリも凄いわ。よくあんな人に立ち向かえたわね」

「おぅ。見直したか?」

「えぇ。次はアンリを盾にするわね」

「うわぉ。全く嬉しくねぇ」

 

 アビゲイルの真顔の肉盾宣言に、苦笑いで返すアンリ。

 そんな二人にマシュは、

 

「まぁ、今は先輩が引き受けてくれていますし、気にしないで良いかと。生存能力に関しては右に出る人は少ないはずです。逃走能力とか」

「あ~……確かに、逃げるのに関しては超一流だよなぁ……ありゃなんかの補正あるわ」

「ぐだぐだ時空に似てると言いますか、何と言いますか……不思議ですね」

「えぇ、全くだわ。なんだかんだ言っても、アンリを捕まえたのよ? その力は一体どこにあるのかしら。脱出した方法も分からないし」

「なんつうか、あれだな。ビックリ人間だアレ。そりゃ、人類最後のマスターになったり、人理救ったりするわけだ。まぁ、今は人理が凍てついてるけども」

「まぁ、それ以上は触れない方がいいと思うがな。まぁ、マスターがおかしいというのは分かるが」

 

 会話に入ってくるエルバサ。召喚されたときには既に人理は救われており、活躍する機会も無かったのだが、実はひっそりと活躍できるのではないかとチャンスを待っていたりする。

 彼女はオオガミの様子を見に行ってくれていた。それを知っていたマシュは、

 

「エルバサさん。どうでした?」

「あぁ。マスターはいつも通りだったさ。いや全く。どうして世間話出来るのか。私には分からないね」

「うわお。世間話してるのかよ……相当な精神してるねぇ……」

「場数を踏んできたとかではなく、先輩の場合、それが素ですからね。ビックリしますよ……」

「何の話をしていたのかが気になるのだけど……」

「あぁ、聞いてきた。聞いてきたが……あまり話すようなことでもない。ごく普通の自己紹介のようなものだ。いつも通りに接することができる辺り、流石と言えるな」

「ですよね……えぇ、分かってます。よく自己紹介できるな。とか、今更ですから」

「マスター……実は凄い人だったのね……でも、私には真似出来そうにないかも」

「いや、するようなもんじゃねぇだろ、アレは」

 

 羨望の眼差しのアビゲイルに、突っ込みを入れるアンリ。切り替えの早さは、もはや真似できるものでもないのだろう。

 そんなことを話ながら、夜は更けていく。




 オオガミ君がいないまったり回も良いんじゃないだろうか。と思って書いたけど、書きにくい……


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冷静に考えたら、キアラ呼んじゃったんだし、縛る意味なくね?(それはそれ、これはこれ、です)

「むぅ……マスターが縛られてるから、あまりお話しできないのが欠点ね」

「仕方無いです。先輩は大体何かしてますし、何かやらかしてます」

「圧倒的信頼。何かやらかすのが前提とか、流石すぎる」

「アンリがマスターの事を馬鹿にしてるのはわかったわ」

 

 本日ものんびりとしている三人。今日のおやつはチョコドーナツのようだ。

 

「それにしても、意外とキアラさんと閉じ込めても平然と戻って来そうな感じがするんですよね……」

「よく大丈夫よね……私はちょっと無理だわ」

「自分で閉じ込めておきながらよく言うよなぁ……逃げ出しても知らね~っと」

「自業自得だもの。それに、なんだかんだ言ってもマスターはそこまで本気で逃げないわ。ちょっと抜け出して、召喚してすぐに戻るわ」

「それでも召喚はするんだな……」

 

 もう召喚を止める事は出来ないと確信しているアビゲイル。

 マシュも一応止めようとはしているが、召喚を防げたことは無いので諦めていたりもする。あくまでも忠告というだけだ。

 

「いやぁ、流石だわ。よくまぁあんなに召喚するぜ。確かに戦力増強は文句無いけど、資源消費も凄いよなぁ」

「まぁ、回している量はそれほどでもないんですけどね。ここ最近は石は減っていませんし。今のところは呼符しか使ってませんよ」

「マジか。案外やるな……いや、もしかして、ピックアップ待ち……?」

「いや、まさか、そんな……あれ、あり得そうなんですけど……」

「えっと……マスターの様子を見に行ってくるわね!!」

「おぅ。気を付けてな~」

 

 なんとなく不安になったアビゲイルは、オオガミの様子を見に行った。

 キアラもいると思うのだが、すっかり忘れている様子。エルバサもいるから大丈夫だとは思うが、少し不安だったりする。

 

「キアラさんに見つかっても、きっとエルバサさんが救出してくれるでしょう」

「もしダメだったら僕が行くことにするよ。良いかい?」

「えっ。あ、はい。むしろよろしくお願いします」

「……いつの間にそこにいたんだよ……」

 

 自然と座っているアーサー。いつ座ったのかは知らないが、何かあったら助けてくれるようなので、別に問題はない。

 出来ればそんなことが起こらないように祈るのがマシュなのだが。

 

「無事なら良いんですけど。最悪資源は先輩が自力で取ってくれば良いですし」

「マスターを扱き使うなぁ……」

「あはは。僕もそうなったら協力するけどね」

 

 そもそも、ほとんどが自力で手に入れたものだったりするが、あまり突っ込んではいけない。

 なんだかんだありつつも、数分後に涙目でアビゲイルが帰ってくるのだった。




 まだ、呼符しか使ってませんよ。はい。明日は……その……はい。オルタニキ欲しいなぁっ!!


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まぁ、そうなるよね! 知ってた!!(それでも召喚を止めないっ!!)

「うわはははは!! もうやだ泣きたい!!」

「マスターが泣きながら笑ってるとか、どう考えてもホラーだよねぇ? まぁ、宝具レベル上がっただけなんだけども。ビックリするね」

「再召喚早々叫ばれるとか、なんかしたか?」

 

 荒ぶっているオオガミと、困惑している新シンとベオウルフ。

 新シンは年明け。ベオウルフはバラキーの前日にはいたので、二人とも再召喚だ。結局狙っているのが来ないのはもはや通常運行であろう。

 

「ふ、ふふふ……もうダメだね……これはもう、諦めてキアラと一緒にしまわれていよう……」

「あぁ? なんだ? マスターは閉じ込められでもしてんのか?」

「まぁ、色々やってたからね。仕方無いでしょ」

 

 部屋の隅でカタカタと震え始めたオオガミを見て、何かあったのかと疑問に思うベオウルフと、真相を知っている新シン。

 

「へぇ……何したんだ? 喧嘩ってことは無いだろうし」

「マシュ嬢はいつも『資源がない』って言ってるのに、無断で召喚したっぽいよ? んで、キアラってサーヴァントを召喚したんだってさ」

「ほぅ? ソイツ、強いのか」

「さぁね? でもまぁ、変態ってだけじゃあ流石にうちのマスターは逃げないでしょ。つまり、強いんじゃない?」

「おぉ、面白そうじゃねぇか。手合わせ願いたいな」

「絶対止めた方がいいと思うけどね」

 

 ちょっと立て直したのか、ベオウルフを見ながら呟くオオガミ。

 

「なんだ、負けるってか?」

「いや、そういう意味じゃなくって、現状逃走手段が無いから、止めておいた方がいいかなって。車自体にもダメージが入るだろうし。拠点が見つかった後ならたぶん問題はないんだけどね」

「あぁ、そういうことか。オーケー。じゃあまだ大人しくしておくさ。だが、戦えるようになったらやらせてくれや。良いだろ?」

「出来たらね。まぁ、溺れない程度で」

「陸で溺れるだぁ? どういう意味だよ……」

「あ~……そういや、そんなこと言ってたねぇ。しかし、陸で溺れるたぁ面白い表現だ。いいね、やる時は是非呼んでくれ。見てみたいからな」

「おうさ。中々面白そうな相手だからな。楽しませてもらうぜ」

「うぅむ……アレでもキアラさん、攻撃方法が主に拳なんだよね……怖い怖い……まぁ、筋力はアビー劣るけども」

 

 そうは言っても、それを上回る魔力があるので、きっと大丈夫なのだろう。

 オオガミはそんなことを思いつつ、ベオウルフが召喚された時点でマシュにバレない可能性は無くなったので、言い訳を考える。

 

「さてと。んじゃマスター。そろそろゲーム終了のお時間だ。感動のご対面ってところかな?」

「……悪意あるよね。狙ってるよね。さては分かってたよねっ!?」

「んじゃ、オレはここでおさらばっ!」

「逃げやがった!!」

 

 逃げる新シンに気をとられている隙に、さりげなく霊体化して立ち去るベオウルフ。

 そして、二人と入れ替わるように、彼女は来た。

 

「……先輩?」

「……ごめんなさい」

 

 オオガミは一瞬の迷いもなく、綺麗な土下座をするのだった。




 えぇ、えぇ。出ませんでしたとも。弟が出したりリア友出したときには吐血ものですよ。ちくしょー。


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ホワイトデー当日に拘束されてるってどうなのさ(全く機能してませんけどね)

「今日は何の日か……知ってますか、キアラさん」

「確か、ホワイトデー……でしたか? えぇ、知っていますとも。バレンタインデーのお返しを渡す日で、それが日本独自の風習である、ということも。それがどうかなされたので?」

「うん。どうしてそう、要らない知識があるのかは気になるところだよ。まぁ、それは置いておくとして。今日はそのホワイトデーなわけです」

 

 資源を溶かしきったので、吊り下げから両手足拘束にグレードダウンされているのだが、そもそも拘束が効いていないのだが、拘束する意味はあるのだろうか。

 ともかく、拘束されていては何もできないという事だ。何気に昨日怒られたばかりなので、自重しようと思うくらいの心はある。

 

「ですが、もし出られたとして、いかがなさるおつもりで? 調理器具は無いと聞いておりますが……」

「ふっふっふ……甘く見てもらっちゃ困るよ。ちゃんとこの日の為に用意はしてあるわけです。特殊チョコを使って日持ちするようになっているチョコドーナツをね!!」

 

 それを聞いたキアラは神妙な面持ちで、

 

「私の勘違いでなければ……それは一昨日食べられていたかと。マスターがこっそりと抜け出している間に見てきたのですが、マスターの荷物の中からチョコドーナツを持って行っていた方がいたかと」

「……そう言う事をするのはマシュだと思うんだけど、どうだろうか」

「えぇ、合っています」

「……い、いや、持って行く分には別に問題はないんだけどさ……何となく、お返しの日と言うのを忘れてないかなって。確かに即日返したには返したけど、それはそれ。これはこれだと思うわけです」

「えぇ、マスターにはマスターのこだわりがあるわけですね。分かりますとも。それで、マスターはどうなさるおつもりで?」

「そりゃ、これまた別枠で用意していたものがございますので。チョコクッキーなんですけども」

「なるほど。では、マスターのバッグはこちらに」

「うん。なんであるのかな?」

 

 さも何でもないことの様に平然と用意されているバッグ。しかも、ピンポイントで隠していたクッキーが入っているバッグだ。

 

「もちろん、あらかじめ使うと思って持ってきていたからです。驚くほどの事でもないかと思いますが?」

「十分びっくりだよ。だって、行動がバレている様なもんじゃん。しかも荷物の中身まで……」

「別に、ばれても困る物は入っていないでしょう? あぁ、いえ、そうですね。あのアルバムを覗いて、でしょうか」

「……もしかしなくても、それは過去黒髭から貰って中身が気になるけど開けたら死ぬ。だけど捨てるのも忍びないからとりあえず持って帰ろうって思ったアレの事かな?」

「おそらくはそれかと」

 

 ピンポイントで見られてはいけない人に見られてはいけないものを見られたようだ。

 だが、なんだかんだ黙っていてくれそうなので、心配するまでも無いかもしれない。

 

「まぁいいや。適当に袋詰めして、メッセージカード入れて元の場所に戻しておけばマシュが気付くでしょう」

「では、私が元の場所に戻しておきますね」

「うん。よろしくね」

 

 そう言って、オオガミは拘束を外して用意を始めるのだった。




 最初の変態性は何処に行ったのかというくらいに常識人枠面しているキアラさん……何を企んでいるんだろう……


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セイバーウォーズ〜リリィのコスモ武者修行〜
何もない平原だ……(ついに自由に暴れられますよ……)


「イベントキターー!!」

「屋外ですよ屋外!! 平原だからなおさら爽快です!!」

「これでいっぱい遊べるわ!!」

 

 飛び出す三人。だが、即座に取り押さえられるオオガミ。

 捕まったオオガミは首をかしげ、

 

「なんで捕まってるのかな?」

「むしろ、なんで脱走してるんですか」

「逃がすと思ったの?」

「……あぅ、アビーも説教してくるようになった……」

 

 しくしくと泣きつつ、簀巻きにされていくオオガミ。

 何故かアビゲイルが楽しそうにしているのは気のせいだろう。

 

「ふふふっ。マスターを捕まえるのも何度目かしら」

「そうですねぇ……五回は越えていると思いますよ?」

「じゃあ、後何回逃げ出すかしら。ちゃんとその度に捕まえるわね。マスター」

「あっはは……はぁ……なんと言うか、どこに逃げてもダメな感じなんだけど。確かその門は時空間越えてくるじゃん……」

「当然よ。私が逃がすわけないわ。だって、私のマスターですもの。どこへ逃げても、必ず捕まえてあげるわ」

「ひゃふぅ……これからの人生詰んだ気がするぅ……」

 

 どこへ逃げてもアビゲイルは追ってくる予感がするオオガミ。

 それを魅力と考えるか、闇と考えるかは別とするが。

 

「あはは……随分と余裕があるようだね。これも無数の特異点を潜り抜けてきた実績からかな?」

「大体いつもこんな感じだからなぁ……うん。でも、簀巻きにされるのは想定外だよねぇ」

「あぁ。僕も、まさかマスターが簀巻きにされていて、その上で余裕の表情というのも想定外だよ。中々精神が強いと見える」

 

 珍しく褒められるオオガミ。しかし、それを見ていたマシュは、

 

「あまり褒めないでください。アーサーさん。先輩はそうやって甘やかすと、何処までも面倒なことをする天才ですから」

「何処までも面倒なとは何さ!! 出来る範囲で出来る事を楽しんでやってるだけだよ!?」

「それで色んな技術を手に入れてるから困ってるんです。礼装身代わりの術以外にももっと変なの持ってるじゃないですか!!」

「ほら、ネタはバリエーション豊富な方がいいから。色々出来るようにしておくと後々良いことがあるんだよ。きっと」

「最後、なんでちょっと自信無さそうなんだい?」

「そりゃ、その無駄技術のせいでこうなってるからかな?」

「あぁ……なるほど」

 

 どうやらアーサーにも納得できるようだった。自分で言ったのにも関わらず、それで納得されると複雑な気持ちになるのだった。

 

「と、とりあえず、マシュ! 周回行くよ!!」

「了解です!! 報酬アップのために穀潰しを使い潰す勢いで!!」

 

 変なところに気合いが入っているマシュに引きずられつつ、今回のイベントは始まるのだった。




 もはやマスターへの扱いじゃない……しかし、全く抵抗しないとは、これ如何に。


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気付いたら木に吊るされて、修行用サンドバッグ扱いされている件(どうせ避けきるんだからいいじゃないですか)

「あ、あの、本当にいいんですか?」

「はい。その竹刀なら安全ですので、全力でやっちゃってください」

「は、はぁ……分かりました。では、いきますね!」

 

 しっかりと竹刀を握り、攻撃を始めるセイバーリリィ。

 対象は、木にぶら下げられている白い物体。実は中にオオガミが入っていたりするのだが、彼女は知らない。

 もちろんオオガミは外のようすが聞こえているので、自分に危機が迫っているのも分かっていた。ならば、やることはひとつ。

 

「はぁっ! ……あれ?」

 

 横薙ぎの一閃。しかし、突如として的が大きく動いたため、空振りに終わる。

 疑問に思うリリィ。振り返り、マシュを見ると、笑顔過ぎてむしろ不気味な顔をしていた。

 反射的に目を逸らしたリリィは、気のせいだったのだろう。と思い直して再挑戦。

 

「てぇい!」

 

 袈裟斬り。しかし、的は明確な意思を持ってかわす。

 確信した。何かが入っていると。

 

「あの、マシュさん」

「はい、なんでしょう?」

「この中に誰か入っていますか?」

 

 誤魔化しはしない。単刀直入、聞いてみる。

 そして、返ってきた答えは、

 

「先輩が入ってます」

「せん……ぱい……? さ、サーヴァントの方ですか?」

「いえ、マスターです」

「マスター!? なんでこの中に!? いえ、召喚された時点で不思議には思ったんです! マスターいませんし、変なのはぶら下がってるしで!! と、とりあえず助けないと……!!」

「あぁ、いえ、大丈夫ですよ。今のこの状況は自業自得もとい、自主的にアルトリアさんの修行を手伝いたいと言う先輩の申し出ですから」

「えっ……いえ、でも、がっちり縛られて……」

「それで捕まえていられるのなら、苦労しないんですが……平然と脱出できるので、もし本当に当たりそうになったら脱出すると思います。なので、先輩に当たるまで竹刀を振り続けると、自然と鍛えられると思いますよ? それに、最初から伝えなかったのは、そうしないとやりにくいと思うだろうという、先輩の配慮です」

「マスター……そうまでして私の修行を手伝おうとしてくれるだなんて……分かりました。では、私も全力でいきますね!!」

 

 もはや迷いはない。そんな勢いで振り続けられる竹刀を、オオガミは見えていないにも関わらず紙一重でかわしていく。

 マシュはその様子を見ながら少し距離をとり、座り込む。

 すると、隣にアンリがやって来て、同じく座り込むと、

 

「さりげない報復しちゃってまぁ。いや、あの程度で倒れるようなマスターじゃねぇってことは分かるんだけどな?」

「えぇ。なんというか、あの回避技術は一体どこから来るのかって思いますよね……」

「全くだ。つか、マジでマスターは手伝いたいって言ってたのか?」

「当然、言ってません。言ってませんが、言うと思うので溢れんばかりの善意でやっておきました」

「それを善意って言い切るの、すげぇと思うわ」

 

 アンリは苦笑いで、マシュの事を見るのだった。




 若者の人間離れが激しい……そして、何の疑いもせずに口車に乗っちゃうリリィちゃん。それはそれとして、マシュが平然と嘘を吐く悪い子になっちゃってるんですが。いつの間にこんな真っ黒に……


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最初に配布以外の星4で宝具5になるのは彼女なのでは……?(十分あり得そうなんだよね)

「やっほーマスター。再召喚だよ~……って、どういう状況?」

 

 さりげなく総計四度目の召喚をされた鈴鹿御前。内訳は退去前三回、そして今回だ。

 そんな鈴鹿の前には、昨日と同じく巻かれたまま頭だけ出した状態のオオガミがリリィに引きずられていた。

 ちなみに、足の方を縄で縛られているため、引きずられると頭を地面に擦るようになっている。発案者はアンリだったりする。

 

「み、見ての通り、修行の手伝いだとも」

「どう見てもマスターがいじめられているようにしか見えないんですけど……?」

「9割正解」

「ほとんど全部じゃん。何があったの?」

「実はかくかくしかじかで……」

「ふむふむ……なるほどそういうことね。って分からないし!」

 

 通用しなかった。流石に無言の意思疏通はまだ出来ないようだった。

 気を取り直して、聞き直した鈴鹿。それに対してオオガミは今度こそ普通に答えた。

 それを聞いた鈴鹿は、

 

「あぁ、なるほど。それはマスターの自業自得じゃん? それでこうなるのも納得なんだけど……でも、流石にちょっと厳しすぎる気がしないでもないね」

「うん。マシュが考えていたときのは全部生き残れたんだけど、アンリの案はちょっと死にそうだからちょっとお仕置きしてくれるとありがたい」

「りょーかい。じゃ、行ってくるね~」

「うん。任せた~」

 

 そう言って立ち去る鈴鹿。

 ただ、一つ忘れてはいけない事がある。それは、今も進行形でオオガミが引きずられているということ。

 鈴鹿もそこについては触れなかったので、誰かが解いてくれるまでそのままということだ。

 

「……ついでにリリィを止めてもらって、縄を解いてもらえば良かったかな?」

 

 そう呟くも、一応修行の一環ということでこの状態になっているので、自分で止める勇気は無いのだった。

 

 

 * * *

 

 

「いやぁ、四度目のダブりとはお疲れ様だな」

「別に気にしてないけど? で、何やってるの?」

「次の修行の道具だな」

 

 ドヤ顔で言うアンリに、苦笑いの鈴鹿。

 何かの作業をしているようだった。

 

「あんまりやり過ぎないでよ?」

「手加減してるっての。つか、殺せる気がしないんだけど?」

「まぁ、分からなくもないけども……とにかく、やりすぎは禁止。マシュにも言ってくるからね」

「あいよ~」

 

 そう言うと、鈴鹿はマシュを探しに行ってしまう。

 残されたアンリは、作業を続けつつ、

 

「つか、オレは提案しただけで、実行はマシュなんだけどな……?」

 

 黒幕はマシュ。もはやこのカルデアおいて常識と化してきているのだった。




 鈴鹿さんがさりげなく宝具4……誰が最初に宝具5になるんでしょ……


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ついにそんな芸当まで覚えたのか……(流石にそこまで行くのはダメじゃないかな)

「あ~……マスター? マシュは完全に止め時を見失ってるみたいなんだけど。『先輩が助けを求めてこないんです』って言ってるし」

 

 鈴鹿は、今元気よくカリバーンを避けているオオガミにそう報告する。

 流石のマシュも、ここまでやる予定ではなかったらしい。どの時点でやりすぎだと思っていたかはさだかではないが。

 オオガミはそれを言われて、何か納得したような表情で、

 

「そういえば、まだマシュ自身に助けを求めていない気がする……」

「それが原因なんじゃ……?」

「いや、まさか……確かに次の修行に移る時にマシュがすっごい微妙そうな顔をしている気がしたのは気のせいじゃなかったというのか……」

「うん、まぁ、そうなんだけどさ……平然と宝具を避けて行くのはどうなの?」

「緊急回避のおかげです」

「すっごい必中付けたいんだけど」

 

 魔術礼装のおかげだとしても、完璧に回避されているのは複雑な気分の様だった。

 そんな鈴鹿に苦笑いのオオガミ。

 

「ハァッ……ハァッ……い、一発も当たらないなんて……流石です、マスター。いや、たぶんオオガミさんは特殊な部類なのだと思うんですけど……」

「こんなマスターが普通だったら英霊が形無しじゃん?」

「なんという言われよう……こんなか弱いマスターに向かって何を言ってるんですか」

「か、か弱い……?」

「マスターのそれはか弱いとは言えないと思うんだけどなぁ……」

「なん……だと……」

 

 自称か弱い系マスター。宝具の直撃を受けて生き残っていたり、そもそも宝具を回避したりするようなマスターはか弱いとは言えないだろう。

 

「それで、どうして宝具回避をしてるの?」

「あぁ、リリィの宝具が強くなるように、とりあえず撃って見てる感じ」

「ふぅん……それ、普通に宝具レベル――――」

「鈴鹿。それ以上いけない」

「えっ。あ、うん。分かったけど……まぁ、宝具威力って上下するよね。同じ条件で撃ったのに威力が違ったり」

「あぁ、それは確かに。あれ、どうしてなんだろうね?」

「魔力の収束量がまちまちだったりするからですかね?」

「一理あるよね。というか、話すなら普通に休憩にしよう。まだ宝具撃てそうにないでしょ?」

「す、すみません。流石に疲れてしまって……」

「魔力ごっそり持って行かれてるはずなのに、なんでこんな元気なのかなぁ。うちのマスター」

 

 やはり人間ではないのかもしれない。実は魔力の塊だったりしないだろうか。なんて考えられたりもしているのだが、本人は気付いていなかったりする。

 

「まぁ、今は気にしなくてもいっか」

 

 鈴鹿はそう言って、考えるのを放棄した。




 なんか、英霊退去した辺りか本格的に人間辞めはじめた気がするオオガミ君。


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あの変態さん、何企んでるんだ……?(ん? 何かこっちに向かってくるような……?)

 さて。草原に出てから突如として失踪したキアラだが、その真相は単純明快。宇宙船を目指す外敵を一人で引き付けていたのだ。

 それだけなら良い話なのだろうが、ところがどっこい。そこはキアラさん。いつも通り余計なことをしてくれる。

 

「ふふふ。私、マスターの為を思いまして、ワイバーンを持って参りました」

「拘束されてなくて、且つこっちを殺しに来てるのを持ってきたって言わない!! 巻き込み(トレイン)したって言うの!」

 

 大量のモンスター群。満面の笑みなので、わかってやっているところが更にたちが悪い。

 

「まぁまぁ。マスターなら何とか出来るのでしょう?」

「どこ情報ですかそれは!! マスターは普通弱いから!!」

「まぁ。サーヴァントの宝具を直撃して生きているようなマスターが普通だとは思えませんが……」

「どうしてそういうところはまともなのかなこの人!」

 

 言っている間にも迫ってきているワイバーン。

 ここまで全て紙一重でかわしているのは、過去にメイドオルタにやられたスパルタ修行のお陰だろうか。

 あの時もワイバーンに襲われていたので、今とあまり変わらない状況と言えるだろう。ワイバーンに混ざって変態が約一名いるくらいの違いだ。誤差の範囲だろう。

 

「それにしても、よく避けますね……一度くらい噛みつかれると思ったのですが……」

「噛まれたら普通に痛いから嫌なんだけど!? なんでそういうことしてくるかな!?」

「いえ、どれくらい耐えるのだろう、と思いまして……」

「絶対良からぬ事考えてる……!! 絶対考えてる……!!」

 

 完全にキアラを危険人物だと認識するオオガミ。ホワイトデーの時に積み上げていたキアラへの好感度は一瞬にして急降下したのだった。

 再び心の壁が築かれたが、お構いなしのキアラ。

 

「さて、ではマスター。殲滅いたしますが、よろしいですか?」

「問題なし! というか、そもそもなんでこっちに連れてきたし!」

「ですからそれは――――」

「良いからワイバーンもろとも切り潰す」

 

 一閃。ワイバーンを切り裂きながらキアラに迫るのは鈴鹿。

 

「あら、まぁ。また私を殺しに来たのですか?」

「何度でも殺してあげるし。つか、何マスターを殺そうとしてる」

「嫌ですね。ちゃんと助けるつもりでしたよ?」

「信用できないし。さっさとアンタごと始末するから」

「ふふふっ。怖いですねぇ」

 

 そう言うと、二人はオオガミそっちのけで戦いだす。

 残されたオオガミは、一度深呼吸をして、

 

「うん。逃げよう」

 

 全力で逃げ出したのだった。




 影ながら頑張っていた変態さんはやっぱり余計なことをしてくれました。ワイバーンの群れに襲われるとか、何話ぶりだろう……


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ドラゴン狩りじゃあぁぁ!!(逆鱗も石も渡してぇ!)

「ふふふ……出たなドラゴン」

「あぁ、そういえば、竜の逆鱗が少ないんでした」

「ついでに槍の秘石も回収しないといけないわ。だって、術の秘石並みに無いわ」

 

 無い無い尽くしだった素材が、一気に手に入るクエスト。シンクウカーンが手に入らないという問題はあるが、モニュメントが取れないだけなので、些細な問題だ。

 シンクウカーンが一個につき10,000QPというのは、気にしないことにする。

 

「さて、鈴鹿はキアラを倒すのに大忙しだからアンリも巻き込ませておいて、こっちはこっちでアルトリウム回収するぞぅ!!」

「おー!」

「お、お~……!」

「マシュ副隊長! 声が小さい!」

「私が副隊長なんですか……?」

「それは予め言って……無いけど、アビーに任せられるわけないだろぅ!? 隊員を守るのは隊長の役目だしね!」

「マスターだと頼りないのだけど」

「グハッ!」

 

 アビゲイルの何気無い言葉に精神をやられ、倒れ伏すオオガミ。

 実際、オオガミよりもアビゲイルの方が強いのだから仕方無いことだろう。

 

「それに、隊長さんは全体の指揮を執らなくちゃいけないのだから、全体が見れる位置にいないとダメだと思うの」

「くぅっ……わりと正論だから何も言えない……!!」

「そうでしょう? じゃあ、マスターは私やマシュさんが怪我をしないように命令してちょうだいね。信じてるわ」

「むむむ……任せて!全力で頑張るとも!!」

「えぇ。お願いね!」

「……完全にアビーさんの手のひらの上では……?」

 

 さりげなくオオガミの扱いがうまくなっているアビゲイル。

 どこでそんな技を手にいれたのかは分からないが、どう見ても現状はアビゲイルの手のひらの上で踊っているような雰囲気。

 マシュはその状況に一人気付いて嘆くが、オオガミは気付いていないようで、やる気に満ち溢れた表情をしていた。

 マシュはそれがなんとなく気に入らなかったが、やる気のようなので、あまり深くは突っ込まないようにしようと思うのだった。

 

「さて、先輩。私が私が副隊長に勝手に任命されていることについては後でお話をするとして、とりあえず資源集めです。一切合財根こそぎ奪い取ってきてください!!」

「お、おぉ……なんかマシュが海賊っぽいことを……ドレイク船長のせい……? いや、まぁ良いか、もちろん答えはひとつ! 任せとけ!!」

 

 ぐっ! と拳を握ると、オオガミはアビゲイルを連れて周回に向かうのだった。

 一人さりげなく残されたマシュは、

 

「まぁ、私、非戦闘員ですし……置いていかれても……仕方無いですよね……」

 

 と、置いていかれたことにショックを隠しきれないのだった。




 シンクウカーンでQP集める予定が、気付いたら逆鱗と石に釣られていた……あれは悪魔の囁きだぜぃ……


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なんか、このまま戦っても終わらない気がしてきた(私は別に気にしないのですけど)

「……なんか、不毛に思えてきたんだけど」

「あらあら。私は構いませんよ? マスターは高難易度に挑みに行ったみたいですから。それで、どうしますか?」

 

 刀を納めつつ、鈴鹿はキアラの言葉を聞き、見回してみると、確かにいない。魔力もほとんど感じられなかった。

 

「へぇ……マスター行ったんだ。ってか、なんで知ってるし」

「それは……一応、あの方もマスターですから。位置くらいはなんとなく分かりますよ」

「ふぅん? まぁ分かるけどね」

 

 分からなくはない。だが、それでも高難易度に挑んでいるまで分かるというのは、少し分からなかった。

 だが、嘘を言う理由もないだろうから、嘘ではないと考える。

 

「さて……それで、どういたします? 様子を見に行くくらいなら出来ると思いますが」

「ん~……いや、いいっしょ。アビゲイルもマシュもいないから、一緒にいると思うし。むしろ、未だ狙われ続けるこの宇宙船を守るべきじゃん?」

「そうですか……では、私も行きましょうか」

 

 平然とついてくるつもりのキアラに、目を点にする鈴鹿。

 

「えっ。いや、要らないし。来なくて良いし。つか、なんで来るんだし」

「私もまだ楽しみたいですから。よろしいでしょう?」

「……戦力が増える分には良いけど、邪魔はしないでよ?」

「あらあら。邪魔だなんて……私はそんなこといたしませんわ」

「どうだか。まぁとにかく、暴れてきますか!」

 

 鈴鹿はそう言うと、迫ってきている敵を倒しに行くのだった。

 

 

 * * *

 

 

「あ~……冷静に考えなくても、オレってば八つ当たりされてね?」

 

 二人が去った後、ワイバーンと共に地面に転がされていたアンリが起き上がる。

 さりげないオオガミの悪意によって戦闘中の二人のど真ん中に送り込まれたアンリは、案の定ワイバーンに紛れて潰されたのだった。

 

「つーか、容赦ねぇよなあの二人。途中から分かって叩いてたろ」

 

 誰も聞いていないが、思わず呟かずにはいられないアンリ。

 とりあえずワイバーンを邪魔にならないように端に寄せ、その上に座る。

 

「なんつうか、これだけ倒してまだ暴れる余裕があるとかやべぇわ。ちょっと一緒にいたくないわ。死んじゃうぜこれ」

 

 ため息を吐きつつ、遠くを見るアンリ。ワイバーンのお陰でいつもより視点が高いので、遠くまで見える。

 そこから鈴鹿とキアラの姿も見えるが、生き生きと暴れているのを見て、思わずパタリと横になる。

 

「はぁ……まぁ、しばらくは寝てられるだろ……」

 

 アンリはそう言うと、そのまま目を閉じるのだった。




 高難易度は、いつもと比べて異様に楽でした。感覚がおかしくなった感じがすごい……高難易度ってなんですっけ……


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アルトリウムを何かに使えないものか(絶対止めてください。先輩)

「お疲れ様です、マスター!」

「り、リリィ……す、すごい……お疲れ様とか、すっごい久しぶりに言われた……!!」

「いや、先輩がそもそも労われるようなことをあまりしないのが原因では……?」

「マスター、自由だものね」

 

 リリィの労いの言葉に感動しているオオガミに突っ込むマシュとアビゲイル。

 リリィは感動しているオオガミに首をかしげるが、すぐに気にしないことにした。

 

「あ、それとですね。ついに宝具レベルが5になりました!!」

「おぉ! ようやくかぁ……うんうん。良かった良かった。まぁ、まだアホ毛を引き抜く作業は続くんだけど……」

「あ、アホ毛? アルトリウムではなく?」

「あぁ、いや、こっちの話。というか、アルトリウムの万能さは凄いな……うん。これはノッブに渡すしかないわ」

「絶対止めてください。ぐだぐだ粒子とアルトリウムが合わさって凶悪なウイルスになりかねないです」

「ん~……超万能ギャグ時空粒子が出来れば面白いと思うんだけどなぁ……」

「迷惑極まりないです。バイオハザード起こさないでください」

「そうなる前に私がそれを海に投げ捨てれば問題ないわ!」

「環境が破壊されかねないね」

「め、迷惑にしかならないのね……」

 

 ぐだぐだアルトリウム粒子という安直な名前をつけてばら蒔こうと思っていたが、技術者たるノッブとBBがいないので、マシュ側のサーヴァントに見付からないように隠し通せるかが問題だ。

 ちなみに、危険なようだったらちびノッブに詰め込んで爆発させて処理する予定なので問題ないだろう。

 

「さて……まぁ、アホ毛リウムは置いておくとして、見たくない現実を見ることにしよう。何があった」

 

 ワイバーンの死体や屑鉄の群れ。そしてさりげなくドラゴンの下敷きになっているアンリ。

 大体主犯は分かっているが、注意するのは気が引けた。

 

「えっと……はい。なんとなく分かると思うんですが、キアラさんと鈴鹿さんの影響です」

「あっはは……遠慮ねぇなあの人達」

「先輩は人の事言えないです」

「マシュは黙ってなさい」

 

 余計な突っ込みを入れてくるマシュを静かにさせると、とりあえず簡単な目標を考える。

 

「よし。じゃあ、まずはアンリを救出しようか。アビー、何とか出来る?」

「出来るけど……」

「じゃあ、お願い」

「……えぇ。分かったわ」

 

 少し悩んだアビゲイルは、仕方ないとばかりに門を展開し、アンリを引きずり出す。

 

「ん~……これは、完全にとばっちりで致命傷を受けてるね」

「なんか、アンリさん、いつもこんな目に遭っているような……」

「黒幕は大体マスターなのだけれどね……」

 

 ピクリとも動かないアンリを見て手当てし始めたオオガミの後ろでコソコソと話すマシュとアビゲイル。

 

「とりあえず、うん。片付けようか」

「まぁ、邪魔ですしね」

「あそこにアンリさんがまとめていたので、私たちもあそこにまとめましょう」

「分かったわ」

 

 そう言うと、四人はアンリを放置して片付け始めるのだった。




 究極融合……やったら大惨事確定ですね


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絆レベル上げのための周回が始まる……(逆鱗と秘石集めのおまけというのは内緒)

「ついにこの時が来ちまったか……」

「うん……地獄の周回の時間だ」

 

 絆ポイント。それは、もはや一周回ってサーヴァントを苦しめるものだ。

 特に、幕間の物語に絆レベルが10必要だというサーヴァントにとっては。

 

「オレってば最弱だぜ? 前線に出たら瞬殺されるんだぜ? それでも連れていくつもりか?」

「当然じゃん? コスト的にも最適だしねっ!」

「えぇぇ……効率求めろよ~……そこで無理して使う理由作る必要ないだろ~?」

「ダメ。行く。絶対」

「子供かっ!」

「子供だっ!」

「ダメだったこのマスター!」

 

 圧倒的手遅れ感。仕方無いだろう、こういうマスターなのだから。

 だが、アンリとしては、なんとしてもこの場から逃げ出したい。周回に引っ張られていくなど、断固拒否である。

 しかし、自称子供マスターがおとなしく逃がしてくれるわけがない。

 

「くぅ……逃げるにはマスターを気絶させるしかないか……!!」

「ククク……そんなの想定済みよっ!」

 

 とりあえず蹴り飛ばす。という意思と共にオオガミの頭部を狙った正確な蹴り。だが、わかっていたかのようにしゃがんで避けるオオガミ。

 その勢いのまま軸足を払われ、体勢を崩すアンリ。

 転んだが最後、周囲から突然触手が現れ、両手足を拘束された。

 

「ナイスアビー!」

「チクショウ!! セコいぞマスター!! アビゲイルを連れてくるとか本気すぎるだろ!!」

「ふふふ。良い様ね、アンリ。そのまま頑張ってね?」

「クソッ! こいつ、一々オレの邪魔しやがる……!」

「まぁ、私はアンリがマスターに足払いを受けてそのまま倒れるとは思っていなかったのだけど……アンリ、意外と弱いの……?」

「オレだって想定外だわ!! いや、最弱だからしょうがないのかもしれないけどな!?」

「そう……じゃあ、やっぱりオモチャね」

「サーヴァントとしての尊厳っ!!」

 

 触手はびくともしないので、もはや諦めのアンリ。

 されるがままに簀巻きにされ、オオガミがそのまま担ぐと、

 

「よし。じゃあ、周回行ってくるね」

「頑張ってね、マスター」

「……えっ。このまま行くの?」

 

 アンリの呟きはスルーされた。

 平然と運んでいるものの、それなりに重いはずのアンリ。それを走って運べる辺り、相当力はあるのだろう。

 ただ、一つだけ言いたいのは、ピンポイントで鳩尾に肩が刺さるのを止めて欲しかった。

 

「ま、マス、ター……さては、殺す気、だな?」

「えっ。何かした?」

 

 急に止まるオオガミ。その反動で一際強く突き刺さり、焦点がぶれ始める。

 

「あ、あ~……運ぶなら、せめてもう少しゆっくりしてほしいんだが……鳩尾に肩が刺さる」

「えぇ……なんでそんな器用な……まぁ、分かったよ」

 

 そう言うと、歩き出すオオガミ。走っていないので、衝撃がほとんど来なくなり、ようやく一息つくアンリ。

 結局、周回で振り回されるが、後衛だっただけマシだろう。




 アンリの幕間は……難易度高いんですよねぇ……後4つで挑めるんですけど、これが一番辛いんじゃないかと。


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終わったはずなのに終わらない周回(まだまだ続くよ周回は)

「つ、疲れたぁ……寝たい……」

「お疲れ様です、先輩。後は素材を集めて回るだけですね」

「圧倒的絶望感」

 

 地面に横たわりつつ、オオガミはマシュの言葉に死んだ魚のような目をしながらそういう。

 アルトリウム報酬は貰いきった。素材交換も終わった。後はひたすら、逆鱗と秘石を集めるために周回するだけだ。

 だが、それはそれとして大変なものはある。

 

「ヒロインZ怖いわぁ……体力おかしいわぁ……」

「まぁ、かなりのタフネスでしたよね……」

「それでも全力を出したら一ターンでZを倒せるのね……」

「なぁ……オレがいる必要やっぱり無くね?」

 

 確かに、HPを全て消し飛ばせるだけの攻撃力は得たが、問題はそれでも時間はかかると言うことだろう。

 ついでにアンリの言葉は、当然スルー。連行確定である。

 

「さて……最高効率で戦った。次は最短で戦うのかぁ……」

「あの体力を一撃で消し飛ばせるとは思わないんですけど……」

「消し飛ばせなくても消し飛ばすしかないでしょ。倒さざるを得ない……石と逆鱗のための生け贄となれ、ヒロインZ……!!」

 

 ヒロインZ絶対倒す。そういう意思を込めて小さく声を上げるオオガミ。

 段々と気配が薄くなってきたアンリは、それに便乗して逃げようとしたが、即座にアビゲイルに捕獲された。

 

「最短っつっても、相手の体力考えろよ。100万越えだろ?」

「難しいねぇ……勝てそうにないなぁ……」

「頑張ってください先輩。わりと色々足りてないんですから」

「ですよねぇ……いやぁ……後輩ちゃんは殺意高いなぁ……」

「いや、先輩は死なないじゃないですか。その点に関しては超一級の信頼をしていますよ?」

「その信頼のされ方はどうなんだろ……」

 

 絶対死なないと思われてるからこそ、さりげなく過労に追いやろうとしている後輩ちゃんに苦笑いを隠せなかった。

 

「さて……アンリよ。とりあえずお前は引きずり回しの刑だ。一緒に行こうや」

「おぅ。この最弱に道連れになれたぁ、流石だわ。マスターやるねぇ。どうしてやろうかこのやろう」

 

 肩を掴まれているアンリは、掴んでいるオオガミを見ながら引きつった笑いを浮かべる。

 

「まぁ、アンリはもっと行ってきても良いわ。どんどん走ってね?」

「こいつ……自分は関係ねぇからって、調子に乗りやがって……」

「……なんか忘れてるみたいだけど、いずれはアビーもだよ?」

「私はいつでもウェルカムだもの。でも、今回はコストが足りないじゃない」

「まぁ、それを言われると耳が痛い話なのだけども。どのみち、今すぐにではないし」

「それは楽しみだわ」

 

 本当に嫌味無く答えるアビゲイルに、オオガミとアンリは顔を見合わせて苦い顔をする。

 

「まぁ、うん。とりあえず行ってくるよ」

「あ~……なんだかんだ、逃げるのに一番良い言い訳はマスターの周回に付き合う事な気がしてきた」

 

 二人はそう言うと、地獄の超時空級周回へと向かうのだった。




 ようやく終わりましたよ……まぁ、終わらないんですけど。


 アガサ・クリスティのドラマに見入って、書き負われなかった私……おそらく明日も……いや、明日は何とかしたいと思ってるんですけどね。


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地獄の超周回ですよ……(いつもリンゴの食べ方に苦労してる……)

「ふん。まだ余裕だな」

「礼装ガン積みとはいえ、一撃で消し飛ばすのは流石の一言だよ……」

「強すぎるわ……私もあんな攻撃してみたいわ……」

 

 流石アマゾネス。強いカッコいいという、最強な感じがまた良い。

 

「まぁ、私じゃなくとも出来るだろうさ。今回はたまたま、相性が良いのとNP回収が出来ただけだ。次を待っていろ」

「うぅ……そうね、バレンタインの時は私が頑張ったものね……じゃあ、仕方無いわ。頑張ってね。エルバサさん」

 

 アビゲイルはそう言うと、そそくさと遠くで倒れているアンリのもとへと向かっていく。

 なんだかんだ、アビゲイルは何かとアンリのところに行くので、本気で嫌っていたりはしないらしい。

 

「しかし、意外と行けるものだよねぇ……うぅむ、攻撃力合計450%アップの恐ろしさよ……」

「あそこまで出るとは思わなかったからな。自分でも驚いているよ」

「バフが乗ってるとは言っても、流石にここまで出ると、なんというか、スカッとするよね」

「そうだな。これは中々、爽快だ」

「ただ、リンゴが少なくなってきたんだよねぇ……」

 

 オオガミの呟きに、エルバサは頷く。

 このまま周回していても、リンゴが足りなくなる。実際には金と銀のリンゴは70個以上。銅は170個以上はある。

 だが、もう少し余裕を持っていたいのは、勿体無い病と言うやつか。

 

「ふむ、銅の果実なら使っても良いのではないか?」

「ん~……そうだね。消費速度は凄いけど、まだある方だからね」

「ただ、食べるのが辛いな……」

「……ジュースにするとか……」

「体積が増えて、更に飲み物にした分、重くなるのでは……?」

「……いや、キューブ状のアイスにするとかどう?」

「どうやって凍らせるつもりだ?」

「それは……うぅむ、どうするか……」

 

 考えるが、思い付かなかったので、諦める。

 

「ぐぬぬ……結局地道に食べるしかないのか……」

「まぁ、イベントの時は死ぬほど食べているからな……消化が早いと言うのか、それとも腹持ちが悪いと言うのか。果たしてどっちだろうな?」

「あはは……腹持ちが悪いってのを推すよ」

「そうか。まぁ、喰えなくなったら喰わせてやるからな。安心して喰うと良い」

「何と言う強制食事……死んじゃうわそんなの」

「なら、頑張って食べるんだな」

「チクショウ。八方塞がりじゃん……」

 

 食べると倒れ、食べれなくなったら食べさせられる。どうあがいても食べ過ぎな未来が見えた。

 

「まぁ、素材が集まるまでの辛抱だ。頑張れマスター」

「うぐぐ……仕方あるまい……」

 

 そう言うと、オオガミは銅リンゴを食べ始めるのだった。




 そのうちリンゴを10秒チャージしてそう……


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一応目標数は集まったね(まだ終わらないですよね?)

「むむ……目標には一応たどり着いた……?」

「目標は通過点ですよ、先輩」

「いや、目標にたどり着いたらリンゴは使わないけどね?」

「そういうところでケチらないでください」

 

 マシュの一言がぐさりと刺さるが、オオガミは目を逸らしてじりじりと距離を取る。対するマシュは、逃げるオオガミをじりじりと追っていく。

 一瞬の間。勢いよく逃げ出したオオガミ。同時に駆け出すマシュ。

 だが、普段逃げまくるような生活をしているオオガミにマシュが追い付けるわけもなく、すぐに引き離されていった。

 それを見ていたアビゲイルは、

 

「不思議ね。マスター、なんであんなに速いのかしら」

「そりゃ、普段サーヴァント相手に逃走劇してるんだぜ? マシュに追い付けるわけ無いだろ?」

「むぅ……わからなくはないのだけど、なんだか納得いかないわ……」

 

 アビゲイルはオオガミが逃げ切ったのが不満のようで、むすっとしていた。

 アンリはため息を吐き、逃げ去ったオオガミを捕まえるか考える。

 ただ、別に捕まえても得がないのではないかと気付いたアンリは、どこに逃げたか予想はついているものの、黙っていることにした。

 

「まぁ、マシュは頑張った方だと思うけどな。それに、一応目標は終わってるんだろ? なら良いじゃねぇか。放っておいても良いだろ? やりたくなったらそのうち戻ってくると思うし」

「……アンリがやりたくないだけなんじゃないの?」

「……いやいや。あり得ないって。そういう言い掛かりは良くないって」

「アンリは自分の益になる事は人をあの手この手で誘導してやらせようとするし、同様に損することはやらないし言わないじゃない。そんなアンリがマスターを擁護するってことは、そういうことでしょう?」

「ひ、ひでぇ言われよう……つか、ある意味悪口なんじゃねぇのかそれ」

 

 アンリは愚痴るが、機嫌が直ったのか、少し楽しそうに笑っているアビゲイル。

 それを見たアンリは、やれやれといった表情で首を振る。

 

「まぁ良いさ。どうする? マスターを追うか?」

「そうね……確かにマスターはすぐに帰ってくるわよね。何気に寂しがり屋だもの」

「前にも聞いた気がするんだよなぁ……気のせいか?」

「どっちだって良いじゃない。とりあえず、マシュさんを落ち着かせましょう。一応終わってはいるのだもの。無理に追う必要はないわ」

「あいよ。っていうか、どこまで行ったんだよ……」

「さぁ? もしかしたらマスター戻ってくる方が早いかも」

「それは無いと良いんだけどな……」

 

 二人はそう言うと、楽しそうにマシュ探しに行くのだった。




 アンリとアビーの仲が深まっていく……なんだこの状況……


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既に二週間近く放置……(大体いつものこと)

「なぁ……いつまでここで化け者共を殺してれば良いんだ?」

 

 ワイバーンを一撃で倒し、式は一緒にいる他のサーヴァントに話しかける。

 

「ん~……そうだねぇ。倒し終わるか、移動するかじゃない?」

「私は向こうの連中さえこっちに来なければ良いわ」

「それわかる。特にあの尼さんの方にはこっちに来てほしくはない」

 

 カーミラの見ている方へ式と新シンも目を向ける。

 遠くで戦っているキアラと鈴鹿。さりげなく不意討ちを入れあっているが、どちらもかわしていた。

 それを見ていて、新シンは、

 

「まぁ、最悪あそこの騎士を差し出せば良いんじゃない?」

「それもそうか」

「私が言うことではないのでしょうけど、慈悲はないのね」

「そりゃ、何事にも犠牲は必要ってことさ」

「必要犠牲だし、それに一番生き残れるだろ」

「バッサリね」

 

 遠くでホムンクルスやヘルタースケルターと戦っているランスロット。こちらに気付いていない彼は、犠牲にされるのが確定しているようだった。

 

「しかし、かれこれ二週間近くなんだがな……」

「まぁ、イベントなんてそんなもんじゃない? こっちは何気に3ヶ月近く放置だしね」

「あなた達は新参だから良いじゃない。私は半年近く経っているのだけれど。未だにレベルは上がらないし……」

「あ~……それは確かにあるね。まぁ、種火も少ないみたいだし、しばらく待つしかないだろうけど」

「すぐにレベルが上がっていくのもいるけどな」

「別に気にすることでもないのだけれど。何もなくとも私は問題ないもの」

「俺は面白いのを見るのが良いから、出来るだけ何かあるのが一番だけどね~。ただ、バレンタインの時みたいに畑仕事をし続けるのは流石に辛いわ」

「へぇ。畑仕事とかもするのか。カルデアって、やっぱり色々変なことしてるんだなぁ……」

「バレンタインの時のは特殊なものでしょう。まぁ、私のチェイテ城に逆さピラミッドと姫路城乗ったりしていたのだけども……」

「なんだそれ。超見てみたい」

「なんというか、霊基が覚えてる感じがするねぇ、それ。マスター背負って登ったような気がする」

「あ~……登ってたわねぇ……それはもう、軽々と」

「やっぱり? うっかり落としたりとかしてなかった?」

「あなたが落としていたらマスターがあそこで走り回っていたりしないわ」

「あぁ、それもそうか」

「……何やってんだ? アイツ」

 

 マスターの話になった辺りから遠くに見え始めたオオガミ。

 何かから逃げているように見えるが、その方向にいるのはキアラと鈴鹿。あの喧嘩に巻き込まれるつもりなのだろうか。

 

「いやぁ……逃げることに関しては上手いねぇ」

「戦いなさいよ。いや、マスターが戦うと言うのはちょっと違うわね」

「まぁ、助けに行くのは何に追われてるか見てからでも遅くないだろ」

 

 そう言って見ていると、オオガミを追っている者の影が見え始める。

 

 デーモンだった。

 

「……パス」

「私も」

「こういう時こそあそこの騎士投げとけば良いんじゃない?」

「採用。ってことで、発案者の侠客。頑張れ」

「丸投げかい。だが、とりあえずマスターの危機だ。いっちょ頑張りますかね」

「頑張るのは騎士の方だがな」

 

 式の突っ込みを聞きつつ、新シンは即座にランスロットに向かっていくのだった。




 ランスロット不遇説。まぁ、今更ですね。


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うちのマスター、いつも追われてるな(大体事件起こしてるよな)

「なんであのマスター、いつも追われてんだ?」

「そりゃ、色々しでかしてるからでしょう」

 

 昨日はデーモン。今日はアンリとアビゲイルに追われていた。

 ついに門と触手にまで対応し始めたオオガミを止められるサーヴァントはいるのだろうか。

 そんなことを話ながら、式はザクザクと敵を倒していく。

 

「いよっと。まぁほら、マスターはマスターなりに何かやってるんじゃない? なんで追われてるかまでは知らないけど」

「それが分からなかったら意味ないだろ」

「そうよ。その部分を話しているのだから、そこを知ってから来なさいな」

「おぉ、なんという理不尽。って言っても、遠目からだと言い合いした後にマスターが逃げ出したようにしか見えないんだけどな?」

「ふぅん……言い合いねぇ……」

「大方、素材集めをサボっているのでしょうよ」

「あ~……言いそう。んで、マシュ辺りに怒られて逃げ出して、で、アビゲイルとアンリが追ってるって感じだな」

「いやに具体的な予想ね」

「もうそれで合ってる気がしてきた」

「……実は俺も言ってて思った」

 

 満場一致で原因はマスターのようだった。

 

「まぁ、昨日と違って命の危機は無いっぽいし、放っておいても良いだろ」

「えぇ、そうね」

「異議無しだ。と、話は変わるんだが、昨日まで喧嘩していた二人。何処行ったか知らね?」

「「さぁ?」」

 

 新シンに言われ見渡してみて初めて、キアラと鈴鹿がいないことに気付いた二人。ついでにランスロットもいなかったりするのだが、そこについては触れないことにしているのだった。

 

 

 * * *

 

 

 さて。問題のキアラと鈴鹿だが、二人は場所を変えて戦っていた。ちょうど式達アサシン集団の死角になっているので、見渡してみても見えなかったというわけだ。

 そして、本日も逃げまくっているオオガミだが、今回の理由は、周回への拒否ではない。キアラと鈴鹿の喧嘩の被害がさりげなく拡がっているのでいい加減止めてきてほしいというマシュから逃げているというわけだ。

 

「だから、あの二人を止めるとか、死ねってことですか!!」

「別にマシュさんはそこまで言ってないと思うのだけど」

「いや、遠回しに一回痛い目に遭えという意思は見えた」

「なんでアンリはそういうこと言うのかしら……言っちゃいけないって言われたでしょう?」

「えっ。待って、本当に言われたのか?」

「えっ」

「えっ」

「後ろから不穏なワードが聞こえるんだけど!! うちの可愛い後輩はそんなこと言わないって信じてるから!!」

「マスター……」

「そうだな。現実は見た方が良いぜ?」

「アンリは後で酷い目に遭わせてやる!!」

「オレだけかよ!?」

 

 我が家の後輩ちゃんは今日もマスターへの殺意(親愛)ゲージは高かったようだった。

 そして、しばらく逃げまくるオオガミだったが、一瞬の油断で捕縛されるのだった。




 我が家の後輩ちゃんは、今日も笑顔でマスターを正座させています。平和ダナー。


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日常
ついに来週……!!(みなさんが帰ってくると決まったわけじゃないですけどね)


「ふむ……来週か……」

「えぇ、来週ですね……」

「……三か月の沈黙……?」

「アンリ。そこは突っ込んじゃいけない所だと思うの」

 

 久しぶりに車内に戻ってきた四人。二週間ぶりだが、妙に長く感じたのはなぜだろうか。

 ちなみに、キアラは安全のために捕縛されていたりする。

 

「ん~……来週になればみんな帰ってくるかなぁ……」

「むしろ帰ってきてくれないとオレが困るんだがな。流石のオレも疲れてきたわ」

「アンリは別に何もしてないじゃない」

「お前の面倒を見るほうだっつの」

「まぁ。なんてことを言うのかしら。アンリのくせに」

「へいへい。なんとでも言ってくださいっつの」

「なんというか……アンリがどっかで見たことあるような感じになってきた……」

「ロビンさんがこんな感じでしたよね」

「まぁ、ロビンさんは苦労人だからね……エリちゃんとかリップ相手によくやってくれますよ」

「エリザさんにはたまに尻尾で叩かれて倒れてますけどね」

「それは言っちゃいけないと思う」

 

 何気に最終再臨済みにも関わらず影の人なロビンさん。影が薄いというか、裏方で頑張っているというか。基本的にはひっそりとカルデアを支えていてくれたりしているのだが、あまりにも影が薄いのでもはやレアキャラ扱いされていたりする。

 

「まぁ、ロビンさんの事は置いておこう。で、とにかく来週なわけです」

「はい。なので、今週は宝物庫を漁りましょう。QP不足なので」

「お~。頑張れ~」

「ん? 何言ってるの? アンリも行くんだよ?」

「……もうそのテンプレやめようぜマスター」

「じゃあそうやって自分が行かないと思わないでよ」

「なんでオレが悪いみたいに言われてんだ……」

「それは、ほら。アンリだもの」

「理不尽に見えて妙に納得いくんだが」

「アンリの宿命ね」

「んな滅茶苦茶な……」

 

 ため息を吐くアンリ。オオガミはそんなアンリを引きずって、残っているAPを使って宝物子へと向かうのだった。

 アビゲイルとマシュはそれを見送りつつ、

 

「なんだかんだ、アンリも嫌がってないのよ? あれは照れ隠しみたいなものだと思うの」

「そうなんですか? 明らかに嫌がっているように見えるのですけど……」

「だって、本気で嫌だったら引きずられていくわけないじゃない」

「……いえ、先輩のスペック的に、たぶん抵抗は無意味かと……魔術礼装の使い方がどこかおかしいので……」

「……なんとなく、わかる気がするわ……もしかして、アンリは諦めてる感じなのかしら……?」

「さぁ……?」

 

 アンリは自分からついて行っているのか、それとも逃げられないのか。どちらかなのかは本人しかわからないのだった。




 あぁ、来週が待ち遠しい……というか、そろそろネタの限界を感じる……


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飯はまだか~(アンリも手伝えば良いのに)

「おいマスター。飯はまだか~」

「お腹空いちゃったわ~……」

「ちょっと待ってね~。あ、アンリは雑草でもどうぞ」

「うわ~……男女差別だよ。サイテー」

「違います。アンリ差別です」

「悪化してんじゃねぇか」

 

 男女差別を越えた個人差別。色々と問題しかない発言だが、それを言っているオオガミ自身、他の職員一同から一緒にされたくないと思われていたりいなかったり。

 

「というか、なんで平然と先輩が料理してるんですか」

「そりゃ……消去法?」

「私は何処に……」

「いや、マシュは素材管理という、重大且つ実質無意味な仕事があって、他のメンバーは作れないor作らない。ならば、もう必然的にやらざるを得ないわけだよ」

「なるほど……って、ちょっと待ってください。今さりげなく私の仕事を無意味だって言いませんでした? 先輩? 事と次第によっては私もそれなりの反撃をさせていただきますよ?」

「うん。何が起こるか考えたくもないので即座に謝ります。ごめんなさい」

 

 瞬時に謝るオオガミ。根本的なところではどうしても頭が上がらないオオガミだった。

 それを見ていたアビゲイルとアンリは、

 

「……こういうやり取りを見てると、なんだかんだマスターはマシュさんに本気では逆らえないのね」

「いや、マシュが素材管理しないと盗む時にバラバラに置いてあって盗みにくいからだろ?」

「アンリはすぐそうやって裏を考える……マスターはそんな悪い人じゃないわ。……たぶん」

「一瞬で不安にさせるなよ。そこまで言ったら言い切れよ……」

 

 なんとなく言ったことが当たっていそうで不安になってくるアンリ。

 本当に当たっていたらあまりにも酷すぎて思わず殴り飛ばすレベルだが、流石にそこまでゲスくはないと信じている。

 

「ま、まぁ、マシュも食べる?」

「……何を作ってるんですか?」

「ワイバーンカツ」

「またワイバーンを具材にしてるんですか!?」

「だって今一番手に入れやすい食材じゃんか!!」

「そうなんですけど、そうなんですけど!! でも、なんか違いませんか!?」

「だって、意外と美味しいし……」

「肉厚ジューシーですけど……!! 凄い分かるんですけど……!! でも先輩。ワイバーンは本来手に入らない貴重なもの……!!」

「関係ない!! 食わなきゃ勿体無い!!」

「ド正論!!」

「おい待てゴリ押されてるだけだろ」

「しーっ! アンリは余計なこと言わない!!」

 

 ここ最近ずっとワイバーン料理が続いているのだが、その原因はここにあったりする。

 そのせいで、オオガミはワイバーン料理が妙に得意になっていたりする。

 

「はぁ……ワイバーン以外にも頑張りましょうよ……」

「うぅむ……じゃあ、明日ちょっと考えてみるよ」

「よろしくお願いしますね、先輩」

 

 そう言って、オオガミは調理に戻るのだった。




 ワイバーン以外に使える食材……うごご……


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よし!! 今日は遊ぼう!!(先輩、宝物庫……)

「さて。本日は素材集めをしようかと」

「「おー!」」

「せ、先輩? 宝物庫は何処に……?」

 

 気付いたら消え、いつの間にか戻ってきていたオオガミは、アンリとアビゲイルを引き連れていた。

 

「宝物庫はしばし休憩!! 行けるだけ行ってきたしね!! リンゴは使わないぜ!!」

「そ、それなら良いんですけど、何をするつもりなんですか?」

「ふっふっふ……決まってるじゃないか……狩りだよ」

「狩り……?」

「獣狩りではなく、モンスターハントだよ。パーティープレイはこっちが好きだからねっ!!」

「でも、マスター。私たち、まだキャラも作ってないわ?」

「まぁ、キャラ作成は時間がかかるものだから、終わるまでの間一人でやってるけどね」

「じゃあ、さっさと作るか」

「ふふん! 精一杯可愛いのを作るんだから!!」

 

 そう言ってパタパタと走っていくアビゲイルと、その後ろをついていくアンリ。

 マシュは話を聞いていて、内容はほとんど分かっていないが、前にオオガミ達がやっていたゲームの話だろうと気付く。

 

「先輩。ほどほどにしてくださいよ?」

「それくらい分かってるって。ちゃんと宝物庫周回はするから」

「それもですけど、今日の晩御飯はどうするんですか?」

「……そうだね……うん。後で考える!!」

「あっ! ちょ、逃げないでください!!」

 

 全力で逃げ出すオオガミ。マシュが止めるより早く逃げていくので、止められなかった。

 

「ぐぅ……いい加減、エウリュアレさんだけでも召喚した方が良いんでしょうか……何気に私の時よりもしっかり聞いてくれそうですし……!!」

「まぁ、あまり深く考えすぎない方がいいと思うよ? だって、あのマスターだよ? 誰々だから聞くとか、あんまり無さそうじゃん?」

「鈴鹿さん……いえ、それはそれで問題なんですよ」

「うぐっ。まぁ、確かにそうだよね……言うこと聞いて欲しいときに聞いてくれないのが一番困るからね……」

「はい……まぁ、先輩は裏で何かやろうとするのが多いので、表面上あれでも何とかしてくれるって言うのは信じてるんですけど……」

「まぁ、表でもちゃんとやってほしいよね」

「はい……」

 

 マシュと鈴鹿の二人は、深いため息を吐くのだった。

 そこを通りがかったエルバサは、

 

「二人とも、何をしているんだ?」

「あぁ、エルバサさん……」

「マスターは人の話を聞かないよね~って話」

「ふむ……まぁ、確かにマスターはあまり話を聞かないな。というか、それがほとんどのサーヴァントの共通認識になっているというのは、中々酷い状態じゃないか……?」

「……そう言われると……」

「確かに……」

 

 ほとんどのサーヴァントから人の話を聞かない認定されているマスターというのは、字面だけだととんでもないのだが、その実態は、やることはやるけどやった後回りを巻き込むくらいに自由に振る舞っているだけだったりする。

 あくまでも自由にしてる最中は相当深刻でない限り聞かないというだけだ。

 

「まぁ、最低限の事はやっていますし、良いんですけど……はぁ、もう少し他の事もやってほしいです」

「いや、もう少しポジティブに考えよう。なんだかんだ、マシュの作業の邪魔はしていないだろう? そういう良いところを考えれば、少しは許せるはずだ」

「そうですね……あ、そういえば、まだ終わってない仕事があるのを思い出しました。行ってきますね!!」

「手伝うか?」

「いえ、一人でも大丈夫ですので!」

「そうか。なら、頑張れ」

「はい!」

 

 そう言って、マシュを送り出すのだった。




 モンハンワールドでHR100目指しつつ、Bloodborneでトロフィーコンプまで後一つにし、何故かとある人物にアンダーテールのGルートを進めろと言われてやらされている不思議……歴戦古龍ヤバイんですけど(語彙消失


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二年目は嘘と共に(先輩が騙されてるじゃないですか……)

「アビーさんアビーさん。今日は何の日か知っていますかね?」

「え? えっと、マスターさんマスターさん。今日はエイプリルフールよ? それがどうかしましたか?」

「はい。ではアビーさん。ルールってご存知ですか?」

「ルール? エイプリルフールの?」

 

 首をかしげながら聞くアビゲイル。

 オオガミは頷きつつ、

 

「うむうむ。実はね? 嘘は正午までっていうのがあるんだよ」

「そ、そうなの!? 知らなかったわ……!」

「うん。まぁ、ローカルルールで、実はそこ以外はあんまり通用しないルールなんだけどね?」

「……マスターさん?」

「ちなみに、大国は大体一日中オッケーだったりする」

「なんでそんな豆知識を……いえ、きっと何処かで聞いたと思うのだけど、どうして突然言ってくるのかしら……?」

「うんうん。じゃあ、嘘か本当か微妙なラインの事を言った後に一つだけ。実は去年の四月からずっと異世界に見られていたりします」

「えっ?」

 

 何を言っているのだろうか。と思うアビゲイル。

 周囲を見渡しても何もないので、別に何かあるわけではなかった。

 

「別に、何もないのだけれど……」

「はてさて。今のは嘘か本当か。ちなみに、記録されていたりもするよ」

「記録……? いえ、そんなこと、なんでマスターが知っているのかしら」

「ん~……それはあれです。秘密ってやつだよ」

「ふぅん? まぁ良いわ。たぶん、私にはあまり害のない事だもの。でしょう? マスター」

「まぁ、確かに。あんまり害はないね」

「マスターが言うって事は、ある程度は安全だもの。信じているわ」

「う、うん……あれ……? なんとなく予定と違ってきているような……?」

 

 何か企んでいたようだが、どうやら想像と違ってきたらしい。

 うんうんと唸っているオオガミを見て、アビゲイルは微笑むと、

 

「じゃあマスター。巨大パンケーキ、楽しみにしてるわね!」

「えっ? 巨大パンケーキ? え、そんな約束……あれ!?」

 

 颯爽と立ち去っていくアビゲイル。

 残されたオオガミは、突然の事にしばし呆然とし、

 

「え、えぇ……巨大パンケーキ……約束した覚えないんだけど……仕方ない。何とかして作るか……」

「……先輩、あの、何を作るおつもりで……?」

 

 オオガミが声に反応して振り向くと、物陰から現れるマシュ。

 

「あぁ、うん。巨大パンケーキを一つ、作ろうかと」

「巨大パンケーキですか? あの、先輩……もしかして、さっきアビーさんが言ってることを言っているのでしたら……その、あれはエイプリルフールのジョーク……嘘なんじゃないかと……」

「アビーがそんなこと言うわけないでしょっ! 全く……作るよ、マシュ!!」

「え、えぇぇぇ~!!?」

 

 拒否する間もなく捕まるマシュ。そして、そのまま調理場へと連れていかれるのだった。

 流石は人の話を聞かない系マスター。思い込みで走り出すことに関しては一流だった。




 なお、実際は分かっていて悪のりしている模様。誰もこのマスターを止められないのだ……

 あ、前回が365話。つまり一年ラスト投稿だったにも関わらず投稿することに頭一杯でスパッと忘れていたのが私です。二年目突入したぜ。わーい。


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嘘を嘘だと言わせない先輩……酷すぎます……(昨日はエイプリルフールのはずなのに……)

「ふふふ……ついに完成……巨大パンケーキはでっかくなる子に任せるとして、俺が作れる巨大スイーツと言えばこれしかなかろう!!」

「先輩の得意料理……ですかね?」

「ねぇ……私、マスターがこれを作るのって、エウリュアレの時だけだと思ってたんだけど」

 

 ついに完成してしまった巨大パフェ。

 本日はイチゴメインで作られていた。材料は何処で手に入れたかは聞いてはいけない。

 

「さて……最大の問題発生だよマシュ」

「でしょうね。どうやって持っていくつもりだったんですか」

「いや……作ってるときは持っていくこととか考えてなかったよね……」

「完全にここで食べるつもりだったんじゃん。というか、アビーだけで食べられる?」

「た、たぶん……っていうか、いつの間に鈴鹿もアビーって呼ぶようになったんだね」

「あぁ、うん。まぁね。キアラと戦ってたらなんかそう呼んでほしいって言われて」

「なるほど……まぁ、天敵だもんなぁ……うん、まぁ、今のところ反逆出来るの、鈴鹿くらいだしね」

「エルバサちゃんもいけると思うけどね?」

「まぁ、そうだけども、自分から突撃していくのは鈴鹿だけなんだよ」

「あ~……そういうこと。まぁ、流石に自分から行こうとは思わないよね~」

「うんうん。つまり、キアラ防衛線の要が鈴鹿ということです」

「マジで? いつの間に……」

 

 言われて、自分がいつの間にか対キアラの要になっていることを知る鈴鹿。それもそのはず。オオガミが今考えて言っているので、知るわけがない。

 

「さて……これはアビーを連れてくるのが一番か……」

「食べきれますかねぇ……」

「アビーならいけると思うけどね?」

「マスターはアビーに何を期待してるの……」

「いや、流石に無理そうなら食べるけども、巨大パンケーキを作れなかったお詫びだからね」

「お詫びと言う名の拷問……」

「これはもう、致命的に重いよね……」

 

 食べられる量というのを軽く越えているであろう量。もしエウリュアレに出したとして、すぐ回りのサーヴァントを呼び集めて食べさせるレベルだ。

 

「どうしたの? マスター」

「むっ。その声はアビー! ちょうど良いところに!」

 

 いつの間にか背後にいたアビゲイル。

 瞬時にそれを察したオオガミは、すぐに捕まえてパフェの前まで連れていく。

 

「ま、マスター? 何かしら、この、パフェは」

「昨日の巨大パンケーキは無理だったから、代わりに巨大パフェで許してもらおうかと思ってね!!」

「いえ、昨日はエイプリルフールでしょう? そのつもりだったのだけど……え、あ、なんでもないわっ! ちゃ、ちゃんと食べるわね!!」

 

 昨日のは嘘だと言おうとした瞬間、凄い悲しそうな顔をしたオオガミを見て、反射的に食べると宣言してしまったアビゲイル。

 

「うっわぁ……マスター大人げない……」

「だから止めた方がいいって言ったじゃないですか……」

 

 そう言って、マシュと鈴鹿はため息を吐くのだった。




 恒例のパフェ。最後に出たのはいつの事だったか……


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ついに明日ですよ明日!!(極寒の大地へとアイキャンフライ!!)

「よっしゃあ!! 明日だコンチクショウ!!」

「ついに明日なのね、マスター!!」

「ようやくですか……というか、次は極寒ですよ? 分かってますか先輩?」

「……ふっ。極寒ごときで死ぬ俺じゃない!! 伊達にノリと勢いでカルデアの外に飛び出たんじゃないんだよ!!」

「先輩、それ、私もじゃないですか……?」

「マシュは『すーぱーぼでー』なので、何の問題も無しですね」

「先輩は私をなんだと思っているんでしょう……」

 

 『すーぱーぼでー』という謎補正。一体『すーぱーぼでー』とは何なのだろうか。

 だが、なんにせよ、南極に薄着で出れるのは流石だろう。

 

「まぁ、寒かったら厚着すればいいんだよ。新宿の青わんこから手に入れた毛を使って作ったモフモフコートを装備しよう」

「いつの間に作ったんですかそれは」

「そりゃもちろん、秘密裏にね。制作補助はメディアさんだよ」

「あぁ、それなら安心ですね」

「マシュさんの判断基準がすごいわ……」

 

 オオガミが一人で作ったのではないとわかると同時に安堵するマシュ。

 アビゲイルはそれを見て苦笑いになるのだった。

 

「まぁ、先輩のスペックは信頼してるんですけど、割と変なギミックを仕込んだりするんですよ……」

「た、例えば?」

「例えば……あ、いえ、すいません。ちょっとぱっと思いつくのはなかったです……」

「そう……じゃあ、今度見せてほしいわ」

「そうですね。わかりました、探しておきます」

「うぅむ……仕掛け装備の案の半分はノッブとBBなんだけどなぁ……」

 

 作成者が三人いて、そのうちの半分をオオガミが提案していることについては、本人は気付いていないようだった。

 

「それで? マスターは明日どうするの?」

「ん~……あれだね。宝物庫を軽く回って、特異点開放と同時に突撃だよ」

「なるほど! じゃあ、私もそれに合わせて準備しないとよね!!」

「そうですね。私も防寒具とか準備しないとですし」

「うんうん。でもね、マシュ。マシュの防寒具はこのコートがもうあるわけだよ」

「……先輩。そのコート、呪われていそうなので辞退しますね」

「なん……だと……せっかくマシュに合うように作ったのに……!!」

「なんで先輩が私に合うように作れるんでしょう……なんとなく怖いんですけど……」

「サイズって、どうやって測ったのかしら……」

「それは、企業秘密だよ」

 

 いろいろと謎が多いオオガミ。大体原因はノッブとBBの発明品だったりするので、この二人に聞いてみるとすぐ出てきたりするのだが、悲しいことに二人はいないので、原因であろう発明品はわからないのだった。

 

「よし、じゃあノルマの宝物庫周回行くよ、アンリ!!」

「突然のオレ!?」

 

 偶然近くを通ったアンリは捕まり、そのまま引きずられていくのだった。




 ハイスペックマスターことオオガミ君。ついに遠い昔に仲良し計画とかしていたワンコ君再登場。コートになってなぁ!!(錯乱


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永久凍土帝国アナスタシア
皆呼べない……ダメだこれ(ま、まだ始まったばかりですから……!!!)


 アナスタシア、ネタバレ注意


「くそぅ、くそぅ!! ついに召喚かと思たら出来ねぇじゃねぇかチクショウ!!」

「諦めてください先輩。夢の中では美味しいものを食べられたじゃないですか……!!」

「くそぅ、レーションも限界とか意味分からんし……ゲテモノでも食べれば栄養……!!」

「円卓ソウルです、円卓ソウル。どんなお肉にも怖気ずに行きましょう……」

 

 魔獣肉。とはいえど、既にワイバーン肉やゲイザー肉を食べているのだ。今更毒があるくらいで倒れる様なモノでもない。

 しかし、いい加減少しは普通の肉を食べたいものだ。

 

「ぐぬぬ……個室なのは嬉しいけど、帰れてないんだから関係ないんじゃないかな……!!」

「仕方ないです。というより、帰っても意味ないですよ。レーションも限界ですし」

「レーション……レーションなぁ……なんかもう、レーション食べるくらいなら魔物肉食ってる方が良い気がしてくるよね……」

「先輩……その発言は一周回って危ないんですけど……」

「フフッ……円卓ソウルってやつだよ……」

「ゲテモノ食べる精神ってやつですね……」

 

 某銀の腕の騎士のおかげで、円卓はゲテモノでも平然と食べるという謎理論が出来上がっており、つまり円卓ソウルとは、ゲテモノでも何でも食べ尽す精神というわけだ。

 本人たちが聞いたら激怒ものだろう。

 それはそれとして、極寒の大地を歩くというのは大変な事で、大量の雪は体力を奪っていく。

 

「極地用装備とはいえ、雪に足を取られて体力を削られるのは辛かったね……」

「寒さと別に、辛い要素ですよね……」

「うん……まぁ、ゴーレムパワーで今は楽だけどね」

 

 雪をかき分けたり、乗せて運んでくれるゴーレム。

 強力なのだが、使っていてふと思うのは、このゴーレムが原因で戦闘になったりしないのだろうか。

 具体的には、反逆軍だとか、魔術師だとかの意味で。

 

「さて……大丈夫かな、この状況」

「そうですね……まぁ、戦闘限定でも皆さんが呼べるのはまだマシなんじゃないかと」

「まぁね……ただ、話し相手が少なくて辛いっていうのはある」

「それは、仕方ないです、先輩。私一人で我慢してください」

「ぐぅ……マシュだけでも十分と言えなくなってしまった自分が悲しい……!!」

「先輩の精神安定のためにも早く召喚できるようにしないとですね……」

 

 二人はそんなことを話しつつ、先へと進んでいくのだった。

 まだ極寒の特異点の旅は始まったばかり。あちらこちらへと進みつつ、彼らは次の目的地へと向かうのだった。




 アナスタシア引いたんじゃーー!!! 自慢したいのに作品に出せないんじゃチクショーーーーー!!!!!(吐血


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そろそろ終盤かな?(しかしホームズの態度よ……)

 ※アナスタシア、ネタバレ注意


「ふぅ……ようやく一息。だけどさぁ……なんでホームズは平然と紅茶飲んでるのかなぁ……」

「私は私で、やることがあってね。リラックスしないでやれるような事でもないのさ」

「ふぅん……まぁ、それで楽になるのならいいんだけど……」

「まぁ、任せたまえ」

 

 平然と紅茶を飲みつつ、ホームズは答える。

 オオガミはそれを見て、複雑な顔をするが、ここの防衛の要なので仕方ない。

 

「ん~……さて、どうしようか」

「まぁ、君なら心配はいらないだろうさ。精一杯頑張ってくれたまえ」

「出来る限りはやるよ。うん。マシュだっているしね。安心して、とは言えないけど、被害は少なく済ませる自信はあるよ」

「あぁ。では、その自信を信じて行きたまえ」

「もちろん。全力でやってくる」

 

 オオガミがそう言ったところで、ホームズはカップを置くと、

 

「さて、では、突撃前の休憩だ。短い時間だが、ゆっくり休んでおくといい」

「うん。じゃあ、時間になったら呼んでね」

「もちろんだとも」

 

 オオガミはそう言うと、個室へと向かうのだった。

 

 

 * * *

 

 

「あの、先輩。わりと一大事なんですが。先輩が一人とか、大問題なのですがっ!!」

「いきなり言ってくれるじゃないかマシュ。戦闘時の一時的展開とはいえ、皆の力が借りれるなら負けないって」

「そうやって調子に乗ると碌な目に合わないんですから! 慢心しないでください!!」

「ぐぬぬ……的を射てるから何も言い返せない……!!」

 

 いつもより二割増しで怒っているようなマシュ。それもそうだろう。見守るだけと言うのは想像しがたいほどの苦痛があるのだ。

 

「まぁ、慢心はしないよ。全力で戦うし、勝って帰ってくる。いつもみたいにね!」

「先輩はいつもそうやって……まぁいいです。まだ大きな怪我も無いみたいですし。大丈夫ならいいんです。えぇ、本当に」

「だから、マシュは安心して待っててよ。こっちが安心して帰って来れるようにさ」

「うぅ……分かりました。その代わり、ちゃんと勝って、無事に帰ってきてくださいね。いつもと違って、怪我一つで大惨事につながるんですから」

「当然。というか、流石に零下100度とか言う凍死案件の場所でいつもと同じようにふざける自信はないよ。ふざけるならもっと安全な所でするし」

「そうしてください。あ、いえ、そもそもふざけないでくださいっ!」

「あはは。いやいや、ふざける余裕がなくなったらいよいよ末期だよ。それはもう、切羽詰まってるって事だしね。ふざける時にはふざける。重要な事だぜ、後輩ちゃん」

「ぐぅ……はぁ。分かりました。では、先輩。ちゃんと休憩して、頑張ってください」

「任せとけ!」

 

 オオガミはそう言って、ベッドで横になるのだった。




 シリアスしたいけどしていいのか悩むというのが、私の通常サイクル。ギャグでシリアスやるってどうなんでしょう……あり……?


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攻略完了!!(しかし、状況は悪化の一方……)

 ※アナスタシア、弱ネタバレ注意


「うん……もう、メタ空間でいいよね、マシュ」

「えぇ、そうですね。異聞帯も抜けましたし、もういいと思います。ただ、アナスタシアさんは抜きで」

「いや、うん。まぁ、熱が冷めるまでは触れない方向で行きたい」

 

 冷静に、なぜ召喚できるのだろうかと思ってしまうオオガミ。

 あんな倒れ方など、精神的に来るものがある。彼とセットにして置いておきたいほどには。

 

「はぁ……流石にね? あんなカップル見た後に平然と単身で出せるほど精神強くないよ。むしろセットでカルデアにいろよ。めっちゃ微笑ましく見ていたいわ」

「いや、それだと逃げられる可能性もあるんですが……」

「それはそれ。実際するのと、見ていたいのは別物だよ」

「まぁ、分からなくもないのですが……」

「ああいう甘いのは、見ていてほのぼのするしね。良いぞもっとやれ! の精神だ」

「そうですね。別室に隔離してみるのも面白いかもしれません。確か、一回だけあったじゃないですか。部屋に閉じ込められて、何かしないと出れない部屋が」

「あぁ、あれはねぇ……うん、まぁ、ありか」

「問題は、どこにそれを作るかって事だよ」

「むむむ……難しいですね……」

 

 シャドウ・ボーダー内を大改装するわけにはいかないので、果たしてどうするかと考えるマシュとオオガミ。

 

「……というか、別にすぐにやる必要は無いよね」

「……冷静に考えると、そうですよね。やってる余裕がないですし」

「まぁ、カルデアに帰れたら、だよねぇ……」

「手伝ってくれそうな皆さんも召喚しないとですよねぇ……」

「……結局、誰も召喚できなかったし……」

「仕方ないです。電力が無いですし……」

「えぇ、えぇ。全く大変よね、マスターも」

「うんうん。アビーもそう思うでしょ?」

「……さりげなくアビーさんがいるんですよねぇ……」

 

 何事も無かったかのように平然とオオガミの隣にいるアビゲイル。

 マシュはそれを見て微妙な顔をするのだが、オオガミはまったく気にしていない。というより、いるのが普通とでも思っていないだろうか。

 

「あの、先輩? アビーさんがいる事に対してノーコメントなんです?」

「だってほら、アビーは渡って来れるし……」

「私に時間とかタイミングとか、問い詰めちゃだめよ。だって、私の移動に時間なんて関係ないもの」

「武蔵ちゃんの上位互換だよねぇ、どう考えても」

「そうなんですかね……? いえ、確かに何となくそんな感じもしますけど……」

 

 ドヤ顔の二人を見て、本当にそうなんじゃないだろうかと考えてしまうマシュ。

 ともかく、なぜかは置いておくとして、アビゲイルがいるという事は、一応歓迎すべきことだろう。

 

「まぁいいです。これで先輩と二人きりで、沈黙して凄い気まずい空間が生まれたりするのは防げそうですし」

「えぇ……こっちは別にそんな事思ってないんだけどなぁ……」

「静かなのは嫌よね。でも、二人だけだと会話のネタも尽きるもの。やっぱり私が来て正解ね!」

「それはそうなんですけど……むむむ……素直に納得できない私がいます……」

 

 深く悩んでしまうマシュ。これは彼女の性というものだろう。仕方ないものだった。

 そんなマシュを見て、二人は苦笑いするのだった。




 なんだあのラブコメ!! アナスタシア出すつもりだったのに萎えたじゃないか!!(八つ当たり
 いいぞもっとやれ!!(血涙


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日常
育成は重要だと再認識した(それもそうですけど、私の出番はまだでしょうかっ!)


「さて、召喚出来る出来ないは別としても、今回みたいに限定召喚の場合でも、育成不足は地獄を見るというのが分かったから、種火集めだよ」

「そうですね。育成は重要です。ところで先輩。私の出番はまだでしょうか」

「予定は無いね!」

「そんなっ!?」

 

 言い切られ、ショックを受けるマシュ。

 オオガミは少し考えた後、

 

「だってほら、なんだかんだマシュ強いし」

「……嘘ですよね……私が弱いからですよね……」

「おっと。マシュが疑ってくるんだけど、なんでだろ?」

「マスターの普段の行いの結果だと思うわ」

「因果応報って奴か……!!」

 

 隅でいじけるマシュを見て、罪悪感が強くなるオオガミ。

 隣のアビゲイルの視線もあり、どうするべきかと必死で考える。

 

「ま、まぁ、マシュにはずっとお世話になってたからね。出来る範囲で頑張ってもらおうと思ってるんだよ」

「うぅ……本当ですか……?」

「うんうん、本当本当。マシュは最強だしね。ただ、通常時は流石に無理かな」

「むむ……仕方ありませんね。私は先輩のサーヴァントですから、重要な時に精一杯頑張れるように待機してますねっ!」

「うん。お願いね」

 

 すぐに立ち直るマシュ。今日はなんとなくテンションが高い気がするのだが、何かあったのだろうか。

 心当たりは種火の話を始めた事しかない。いや、それが原因なのだろうか。

 

「と、とりあえず、種火集めだ。行ってくるね、マシュ」

「はい。行ってらっしゃい、先輩!」

「頑張ってね、マスター」

 

 見送るマシュとアビゲイル。

 そこで、ふと疑問に思うマシュ。

 

「アビーさんがここにいるのに周回……? 誰と行っているんでしょう……」

「限定召喚は継続中だと思うのだけど。つまり、そういうことだと思うわ」

「なるほど……」

「そうそう。だからついにオレもお役ごめんって事だ」

 

 マシュの背後から出てくるアンリ。

 それに驚いたマシュが何かを言う前に、アンリが答える。

 

「なんでここにいるかって? 分かってるくせに。アナスタシア開放した後すぐくらいに再召喚されたんだっつの」

「アンリは立ち去ってすぐに召喚されるっていうのは、もはやギャグだと思うの」

「あれだけ嫌だと言っていたのに戻ってくるんですね……」

「うるせえ。コイツまで戻ってきてるとは思わねぇだろ。冷静に考えれば分かったことだけども」

「ふふっ。アンリは変なところで抜けてるわ」

「マスターもマスターだって。即座にオレを召喚するとか、どれだけオレに苦労かけたいんだっての」

「あら。次からずぅっと戦闘参加かしら?」

「それは嫌なんだがなぁ……」

 

 アンリはそう言って、深くため息を吐くのだった。

 さりげなく宝具レベルが2になったアンリ。この後も、アンリはきっと大変な目に遭うのだろう。三人はそれぞれ別々の気持ちで、そう思うのだった。




 さりげなく宝具レベル2になっていたアンリ。一体どうしてこうなったのか……まぁ、再召喚だから問題ないですねっ!(キリッ


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狭い空間は辛いよね(先輩、狭いところが好きなんじゃ……?)

「うむむ……やっぱり狭い空間とは辛いものです」

「え。先輩、狭いところが大好きなんじゃ……」

「おっと? 後輩ちゃんがとんでもないことを言い出したぞぅ? いつ狭いところ大好きになったんだ俺?」

「だって、信長さんの工房って、意外と狭かったじゃないですか……そこに入り浸ってましたし……」

「あぁ、うん……ぐうの音も出ないわ……」

 

 言い負けたオオガミ。確かにあの工房は製作物によってサイズが変わったりしていたが、基本的に狭いときが多かったので、確かに狭いところが好きなのかもしれないと思い直すのだった。

 

「うぅむ……それは置いておくとしても、やっぱり狭いよ。うん。人数的な意味で」

「そうですね……」

「あぁ? 霊体化すりゃ良いだけの話だろ?」

「アンリ。それだと一方的にしか見れないでしょ? つまり、部屋を広くしたい。または、広いところに行きたいってことよ」

「ふぅん? そういうもんか? オレにはよく分からねぇけど」

「そういうものよ」

「なんとなく、最近アビーさんがだんだん大人びてきているような……? 気のせいですかね?」

「気のせいだと思いたいなぁ……というか、もうブラックアビーとホワイトアビーの境目がどんどん無くなってきてる気がするなぁ……」

 

 今更過ぎる気もしなくはないが、どんどんアビーは真っ黒の割合が多くなってきている。見た目的にも、中身的にも。

 代わりにアンリのダメージが少なくなってきているので、悪いだけではないようだ。

 

「シャドウ・ボーダーの難点は、昔と違ってお菓子などをすぐに出せないところだね。あぁ、休憩室に行けば簡単に食べられるあの頃に戻りたい……」

「そうですね……願わくば、人理焼却に本気で頑張っていた先輩も帰ってきてほしいです……」

「おかしい……今も昔も全力だったはずなのに……後輩ちゃんに認知されてないよ……どうしよう……」

「普段の行いの結果としか言えないよなー」

「自業自得というものよね。マスター、昨日も同じことを言っていたわ」

「もはや口癖レベルじゃないか……!!」

 

 どれだけ自分が周りを振り回していたかが分かるという不思議。問題があるとすれば、振り回されていた当人達。特に、某女神がこれを見ていないため、帰ってきたら同じ目に遭わされるだろうという想像がすぐに出来るところだろう。

 

「あぁ、皆が帰ってきてほしい気持ちがある一方、帰ってこないでほしいという気持ちも出てくる不思議……!! 願わくば、怒りゲージだけ無くなっていますように……!!」

「むしろ怒りだけ持って帰ってきても良いな」

「それ、ありですね」

「アンリとマシュさんが恐ろしい会話をしているわ……」

 

 一人呻くオオガミ。それを見て惨劇が起こってほしいような会話をする二人。その状況に、アビゲイルはため息を吐くのだった。




 うぅむ……再召喚の縛りを解くべきか……とは言っても、それをしたとして、エウリュアレが出るまで引かないといけない問題。むむむ……


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育成の種火を集め続けねばならぬ……(キャスターの日以外回るつもりないじゃないですか)

「さて……わりと成長に時間がかかるよね……」

「先輩……あのですね? そりゃ、種火周回をしなかったら育成できないと思いますよ?」

「いや……ほら、今日はキャスターじゃないし……」

「そう言う言い訳はいらないです。レッツゴー先輩」

「チクショウうちの後輩ちゃんはやっぱり真っ黒だぜ……!!」

「とっても普通の事を言っていると思うの……」

 

 もぐもぐと魔獣の肉を食べているアビゲイル。

 実はエウリュアレがいないせいでオオガミの習性である人に物を食べさせるという、田舎のおばあちゃん的ソウルがアビゲイルを標的にしていたりする。

 平然と食べてはいるが、実はすでに三回くらい追加されていたりする。

 

「しかし、クリチャーチはもう少し狩っておいた方が良かった気がしますね……先輩の悪癖を忘れてました……」

「悪癖……このお肉の事よね……まぁ、少なくなったら私が取って来るわ。それでいいわよね?」

「そうですね。最悪の場合ですけど、先輩が本当にやり過ぎたらお願いします。自重はすると思いますけどね」

「本人を前によく言うよねぇ……泣くぞチクショウ」

「泣いてもいいのよ、マスター」

 

 半泣きのオオガミに、微笑みで返すアビゲイル。余裕の態度が更にオオガミの精神値を削っていたりするのだが、当然本人は全く気にしていないので、オオガミの精神値の減少は留まるところを知らない。

 意外と、エウリュアレが帰ってきたらオオガミの精神値は残っていなさそうだ。エウリュアレを見て完全回復する可能性もあるが。

 

「はぁ……何気に、今年入ってからずっと精神がガリガリ削られてるから、いい加減凄い癒しが欲しい……エウリュアレとお菓子タイムはまだですかね?」

「再召喚してください。まぁ、信長さんとBBさんは再召喚できないと思いますけどね。ついでに、石は禁止ですよ」

「ふふふ……言ってくれるじゃないかマシュ……いいさやってやる。フレンドポイント超回転じゃああぁぁ!!!」

 

 オオガミはそう言うと、召喚をしに走って行ってしまう。

 それを見送ったマシュとアビゲイルは、

 

「まぁ、エウリュアレさんを召喚できるとは思ってないんですけどね……」

「でも、マスターは意地でやってしまいそうよねぇ……」

「……まぁ、結構回せますし……ゴリ押しでたぶん引きますよね……」

「そうよねぇ……エウリュアレさんが召喚されたら、私のマスコット的ポジションが奪われちゃいそうな……」

「いえ、別に奪われはしないと思いますよ?」

「いいえ、きっと今の状況は彼女がいないからよ。だから、ちゃんと存在を示しておかないと……」

 

 謎のやる気を出すアビゲイル。マシュはそれを見て、微妙な表情になるのだった。




 冷静に、今年入ってからいつものメンバーを全くと言っていいほど書いてなくて、地味に精神ダメージ入ってたりするんですよ……あぁ、エウリュアレよ……


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まぁ、狙ってだそうとするとそうなるよね……(まだフレンドポイントはたくさん余ってるんですけどね)

「…………」

「ねぇ、マスターはなんでベッドに倒れてるのかしら……」

「エウリュアレさんをまだ引けてないんじゃないですかね。一向に姿が見えませんし」

「そうなの……マスターも大変なのね……」

 

 倒れているオオガミに近付くアビゲイル。

 だが、その様子を見ていてマシュはふとオオガミの悪癖をひとつ思い出す。

 直後の事だった。

 

「きゃっ……!!」

 

 腕を掴まれ、そのまま引っ張られて抱き込まれるアビゲイル。抱き枕状態だった。

 

「えぇ……マスター……?」

「あぁ……アビゲイルさんも犠牲になってしまいましたか……」

「ど、どういうことなの?」

「先輩は、時々人を捕まえて抱き枕にする癖があるんです。たぶん、疲れきっていたのと、エウリュアレさんが再召喚出来なかった精神ダメージのせいで起こってしまったんじゃないかと」

「ま、マスター……そんなに疲れていたのね……まぁ、私も嫌ではないから良いわ。思わぬお得ね」

「ぐぅっ……羨まじゃなかった。先輩が調子に乗らないくらいにしてくださいね」

「えぇ。でも、マスターが離してくれないと無理ね」

「あ~……基本的に起きるまで離してくれないので、数時間はそのまま……」

「じゃあ、数時間はこのままね。私はこのままマスターと寝るわ」

「ついにエウリュアレさん以外にも……!? だ、ダメです先輩っ! たぶん先輩にはそういうつもりは無いと思うんですが、それ以上は本当に、あらぬ誤解を受けると思うんですっ!」

 

 そう言ってマシュはオオガミを起こそうとするが、今更だ。もはや手遅れと言って良いかもしれないレベルだ。

 

「マシュさん。もう手遅れだと思うの。それに、周りからの評価が最底辺でも私は構わないわ。だって、マスターと一緒ならたくさん冒険出来そうじゃない」

「アビーさん……そうですね。先輩は私を助けようと精一杯頑張ってくれたときもありました……でもダメです。それはそれ。これはこれです。基本的に先輩は周りに助けられながら進む人ですから」

「……実はマシュさん、マスターの事が嫌いだったりする……?」

「そんなわけないじゃないですか。最大の敬意と親愛をもっていますとも。だから全力でダメ人間の道から遠ざけてるんじゃないですか」

「だ、ダメ人間……?」

 

 散々に言われているオオガミ。寝ているとはいえ、本人を前にして言えるというのは、一周回って凄い勇気だと思うアビゲイル。

 最近、どちらが子供なのか分からなくなってきているが、今は気にしない。

 

「というか、マシュさん、さっき私が捕まったときに羨ましいって――――」

「あぁっ!! 急用を思い出しました! それではこれで!!」

「え、あ……行っちゃったわ……でも、否定も何もしないで行ったのは、どっちとも言えるから問題だと思うの……」

 

 オオガミに捕まれているため、追うことが出来ないアビゲイルは、去っていくマシュをただ見ていることしか出来ないのだった。




 まぁ、ほとんど引いてないんですけどね。200回くらいです。普通に出ませんでしたけど。
 明日も頑張らねば……


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女神の再来(代償はちょっと語れない)

「ふふ……ふふふ……ふふふふふ……!!」

「ど、どうしたんですか、アビーさん」

 

 不気味に笑うアビゲイル。あまりにも不穏な笑い声に、聞いていたマシュは困惑する。

 

「ふふふっ。昨日マスターに抱き枕にされていたときに啓示がきたの。そう、ヒロイン力がエウリュアレさんに匹敵するって!!」

「え、えぇ~……エウリュアレさんに会ったことがないのに凄い自信……本人が聞いたら怒りそうですね……」

「むしろどんと来い、よっ! 私は逃げも隠れもしないわっ!」

「へぇ……そう。私に勝つって言うのね」

 

 背後から聞こえる冷たい声。

 ピシッと固まるアビゲイル。それほどまでにその声には感情が籠っていた。

 それを見ていたマシュは、苦笑いになると、半泣きになっているアビゲイルに振り向くように促す。

 そして、アビゲイルがゆっくりと振り向くと、そこには予想通り、美しいまでの笑みを浮かべた、殺意全開のエウリュアレがいた。

 

「えぇ、えぇ。私がいないうちにマスターを奪おうとするのは良い考えだったんじゃないかしら。でもね。残念だけど、私は貴女よりランクが低いから、ことカルデアにおいては何度でも召喚されやすいのよ?」

「……で、でも、私は諦めないわ。絶対貴女に勝って見せるもの!」

「残念だけど、それは無理だと思うわ」

「……どうしてかしら?」

 

 わりと真剣に問うアビゲイル。

 エウリュアレはそれに対し、苦い表情で、

 

「だって、マスターは未だに深海の白鳥に心を奪われたままだもの」

「深海の白鳥……?」

「あぁ、メルトリリスさんの事ですね」

「え、マシュさん! メルトリリスさんって、一体誰なの!?」

「去年のゴールデンウィーク中の事なんですけど、先輩とその時にいた私を除くサーヴァント以外誰も覚えてないんですよね……えぇ、私もぼんやりとしか分かりませんとも。ただ、BBさんを許さないというのは私の心が叫んでます」

「BB……一体何をしたのかしら……」

 

 一体何があったのか分からないアビゲイル。マシュもよく分かっていないので、説明させると更に謎が深まるだけだ。主要人物は登録霊基を見ているのでなんとか分かるという程度だったりする。

 

「まぁ、そういうわけで、残念ながら、私も貴女もヒロイン枠には上がれないわ」

「そんな……!! 実質的ヒロインなのに……!!」

「……ここに先輩がいたら、きっと修羅場というものを見れたのでしょうね……」

 

 若干昨日の状態がそれに近かったりしたのだが、自分が中心にいると、中々気付かないものだ。

 

「ぐぐぐ……仕方無いわ。じゃあ、今からマスターに突撃してくるわ!」

「そうね。行ってらっしゃい。……そもそも、私と彼女の場合、そもそも根本的な部分が違うと思うから、勝負になら無いと思うのよね……」

「まぁ、エウリュアレさんとアビーさんは、なんというか、属性が違いますもんね」

 

 アビゲイルを見送った二人は、そう呟くのだった。

 なお、数秒後に、エウリュアレを召喚するために失った代償で精神ダメージを受けていたオオガミが奇襲されて悲鳴を上げたりしたのだが、その声を聞いて、エウリュアレは楽しそうに笑うのだった。




 いやぁ……まさか貯めてあったフレポが全部無くなるとは思いませんでしたよね~。はっはっは~。おぅ。おかげで石もなくなっちゃったぜチクショウ。さりげなくデオンが宝具4になったよ出番作れないのに。


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これが女神パワー……!!(先輩が堕落していく……!!)

「なんでマスターはまたベッドに倒れているのかしら……」

「さぁ……? 私にもさっぱりです」

「テンションを無理矢理上げて頑張ってたけど、私が来たから緊張が切れて倒れたと見たわ」

 

 ドヤ顔で言うエウリュアレに、まさかそんなわけ無いだろう。と言いたそうな表情返すマシュとアビゲイル。

 

「まぁ、別に言ってみただけよ。あまり本気にしないでほしいわ」

「あそこまで完璧なドヤ顔を見せられたら、本気で思ってたとしか思えないのだけど……」

「更に言えば、わりとあり得そうだというのが問題なんですよ……」

「えぇ……なによ、本当に疲れてたの……? 確かに、私が召喚されたのを見た瞬間に倒れたけども……」

「-100度ですからね……極地用礼装を装備していたとしても、精神的な疲労はどうしようもないですし。エウリュアレさんを召喚しようとしたのだって、たぶんそういうのもあるんですよ。出来るだけカルデアと同じ状態にしたい的なものが」

「ふぅん……まぁ、頑張りは評価してあげるわ。しばらくは休んでいても良いようにしましょう。宝物庫くらい、私がなんとかするわ」

 

 エウリュアレはそう言うと。さりげなくオオガミに膝枕をする。

 その自然な様子にマシュとアビゲイルは一瞬硬直すると、

 

「な、なんて自然に膝枕を……!!」

「しまったわ、完全に油断していたっ! エウリュアレさんは、あんなでもマスターと一番親しいのだもの、ああいう事をする可能性を考えるべきだったわ……!!」

 

 驚いているマシュと、悔しがるアビゲイル。

 それを見てエウリュアレは、少し見ない間に面白いことになったな。と内心笑っていた。

 これは、オオガミが起きたときが一番面白そうなのだが、きっと疲れているのは本当だと思い、叩き起こす事はしない。

 

「ふふふ。あぁ、楽しみだわ。マスターはどんな事をすれば表情を変えてくれるかしら。怒っても泣いても良いのだけれど、とりあえずは困らせてみたいわ」

「ま、マシュさん……何かしら、エウリュアレさんが凄く不穏な事を言っているのだけれど……」

「あ、安心してください、アビーさん。カルデアでも滅多に見れないんですが、あれは確か、機嫌が良いときのエウリュアレさんです。下手に刺激しなければ、先輩以外には被害はありません。それに、被害と言っても、精々落書きされているか、起きたときに無茶振りを言われるくらいです」

「十分過ぎると思うのだけど……!!」

 

 確かに、今エウリュアレの機嫌は良いが、目の前でコソコソと話されて寛容なほど彼女が大人なわけもなく。

 

「マシュ。苦労を三倍にしてあげるわ。覚悟しなさい」

「そんなっ!?」

「アビー? いつ呼んだのかは知らないけど、あの変態を解き放たれたくないなら宝物庫に行ってらっしゃい。行けるわよね?」

「はうっ!? なんで私はやることが明確なのっ!?」

 

 反撃を許さない無言の笑み。その威圧感は意外と凄まじく、数秒の沈黙の後、マシュは逃走し、アビゲイルは宝物庫に突撃するのだった。




 帰ってきて若干のキャラ変化が起こっている女神様……アリですかね……?


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なんとなく予期していた事態(エウリュアレのヒロイン力よ)

「あ~……なんか、凄い疲れてるんだけど……」

「なによ。私の膝枕は寝苦しいっていうの?」

「いや、そんなことはないけども……むしろ、寝心地良いけども。でもほら、それはそれだと思う。疲れが取れるかどうかは別的な?」

「そう……仕方無いわね。嘘を言ってないみたいだし、許してあげるわ。ふふっ。私も優しくなったものね」

 

 昨日に引き続き、機嫌の良いエウリュアレ。

 オオガミはそれに釣られて笑顔になるが、なんとなく嫌な予感がしてきた。

 

「ん~……エウリュアレと話すのはかなり久しぶりで嬉しいのはあるんだけど、マシュとアビゲイルは……?」

「知らないわ。私はマスターの膝枕をしていただけだもの」

「そ、そう……? いや、起きてから見てないなぁって思って……それに、APも減ってるし……」

「気にしなくて良いわ。えぇ、気にしなくて良いのよ。ふふふふふ……」

 

 先ほどと同じような笑顔なのにも関わらず、先ほどより凄みを感じるエウリュアレの笑顔。

 ただ、オオガミは、絶対何かやらかしていると確信する。なんとなく、昔と性格が若干違う気がするのだが、不思議だ。

 

「まぁ、うん。マシュとアビーがいないのはたぶんエウリュアレのせいだと思うんだけどさ……」

「あら、酷いわ。なんで私がそんなことをしないといけないのかしら?」

「いや、理由は知らないけど、なんとなくやりかねないなって思って……」

「全く……私が意味もなくやるわけないでしょう?」

「うん。つまり、やる意味はあったんでしょ?」

「言うじゃない……ふふふ。じゃあ、何なんで分かるかしら?」

「むむむ……」

 

 考え始めるオオガミ。

 エウリュアレは不敵に笑う。なんせ、オオガミが当てられるとは思っていないからだ。

 

「そう……だなぁ……むむむ。追い出したい理由が……あ。膝枕をしてくれてたからとか?」

「まぁ、ほんの少しはあるかもしれないわね。あぁ、本当に面白いわ。だって、帰ってきたら知らない子がいるんですもの。それも、ちょっかいかけたら面白そうな子が。じゃあ、遊ばない手はないじゃない?」

「あ、あぁ~……そういう……どうりで生き生きしてるわけだ」

「えぇ。おかげでとっても楽しいわ。ありがとうマスター。あんな面白い子を召喚してくれて」

「本人が聞いたら激怒しそうだよねぇ……」

 

 満面の笑みを浮かべるエウリュアレに、苦笑いしか出来ないオオガミ。

 きっと本人が聞いたら、エウリュアレに飛び掛かってるのではないかと思うほどなのだが、謀ったかのように本人はいないのだった。




 エウリュアレが黒くなって帰ってくるという……あれ、前からこんなだったっけ……? いや、そんなことはないはず……


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なんで全てかわされるのかしら……(年期が違うのよ)

「うりゃー!!」

「甘いわ」

 

 虚空の開いた門から飛び掛かるアビゲイル。襲撃されたエウリュアレは、しかし平然とオオガミを盾にする。

 当然、盾にされたオオガミにとっても、盾を出されたアビゲイルも想定外。そのまま何も対応できないまま距離はどんどん縮まり、

 

「はぐぁっ!?」

「うきゃっ!?」

 

 ぶつかる頭と頭。

 短い悲鳴と同時に、アビゲイルの勢いによって押し倒されるオオガミ。

 エウリュアレはそれを見て笑みを浮かべると、

 

「あらあら。奇声を上げて飛び出してきたと思ったら、マスター押し倒すのが目的だったのかしら?」

「ち、違うわっ! 私はマスターを押し倒すつもりじゃなかったのよっ! というか、私は貴女を狙ったのだけどっ!!」

「でも、私には当たってないもの。もう少し努力するべきね」

「むがー!!」

 

 オオガミを踏み台にしつつ再度飛び掛かるアビゲイル。しかし、エウリュアレは普通に回避して、オオガミの上に座る。

 何度もダメージを蓄積させられたオオガミは、そろそろ限界かもしれない。

 

「ふふふ。あぁ、本当に面白いわね、貴女。前は貴女みたいな子はいなかったから、今すっごく楽しいわ」

「そんな……どうしてかしら、この三ヶ月、積み上げたヒロイン力が崩れ去っていく気がするの……!!」

「あら、私に勝てるとでも思ったのかしら。残念だけど、今のところはまだ私のものみたいよ。もっと頑張りなさいな」

「なんて自信なの……!? ずるいっ! 私もそれくらいになりたいのだけど!」

「いえ、その、私としては、とっても不思議なんだけどね。そもそも聖杯だって、なんで渡されたのか分からないもの……」

 

 遠い目をするエウリュアレ。なお、エウリュアレに聖杯を捧げた原因で、且つ今下に敷かれているオオガミは、この状況を見なかったことにしようとしている。

 

「さて、そろそろ良いかしら。再召喚されてからお菓子も食べられないもの。お茶もないみたいだし、私としては不満なの」

「えぇ……何をするつもりなの……?」

「そうね。私のストレス発散に付き合ってもらおうかしら。マスターは無理矢理連れていくとして、護衛してくれたりしないかしら?」

「拒否したら……?」

「それは言えないわ。だって、分からない方が面白いでしょ?」

「エウリュアレさんは悪い人ね……」

「残念だけど、私はそこまで悪い人じゃなかったりするわ」

 

 これで悪い人じゃないのならなんなのだろうか。とオオガミは思うが、思った瞬間に脇腹に蹴りが入った。

 しばらく考えた後、アビゲイルはエウリュアレの提案に乗ってついていくのだった。




 冷静に考えると、エウリュアレにこうやって絡む子っていなかったんだなぁって、書いていて思いました。


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シャドウ・ボーダー内って暇よね(記録見直す?)

「はぁ……本当に何もないわね。マスターならゲームくらい持ってきてると思ったのだけど」

「いや、持ってきてはいるけど、充電がね? 流石に使うわけにもいかないでしょ」

「むぐぐ……じゃあ、他に何か出来るのはないかしら」

 

 種火などにも行ってみたが、結局やれる回数自体が少ないので、暇を持て余しているエウリュアレ。

 対して、オオガミは今、これまでの記録を読んでいた。

 

「ん~……じゃあ、一緒に記録を見るとかどう?」

「特異点での記録?」

「うん。ほら、結構いろんなところを旅してるし、記録はいっぱいあるんだよ」

「ふぅん? そうね。私がいない間の記録もあるんでしょうし、気になるわ」

「エウリュアレがいない間の記録……一月から三月……?」

「そうね。あ、この節分って気になるのだけど」

「あぁ……うん。百重の塔ね。阿保みたいに難易度が高かったよ……敵と言うよりも、制限が」

「制限ね……どんなだったの?」

「一回出撃するとしばらく出れないんだよね。温泉で短くはなるんだけど、それはそれとして時間がかかったね」

「温泉……私も入りたかったわ。鬼ヶ島以降見ても聞いても入ってもいないし」

「鬼ヶ島の時は俺入って無いんだよねぇ……うぐぐ」

「整備されてるわけじゃないし、許すわけないじゃない」

「まぁ、そりゃそうだけども……とりあえず、見るの?」

「えぇ。面白そうじゃない」

 

 そう言って楽しそうな笑みを浮かべるエウリュアレ。

 オオガミはそれを見て、記録を開く。

 それを意気揚々とエウリュアレが見始めた辺りで、マシュが入ってくる。

 

「先輩。今大丈夫――――って、本当に仲がいいですよね、先輩とエウリュアレさん。今日は何してるんですか」

「あぁ、いや、記録を見直してるだけだからね。で、何かあった?」

「記録の見直しですか……主にエウリュアレさんが見てるみたいですし、問題なさそうですね。で、先輩。種火の回収をしているアビーさんが悲鳴を上げてるんですが、どうするんですか?」

「どうするって言われても……そもそもなんでアビーが種火に行ってるのか知らないんだけど……」

「え……先輩が一人で行かせたんじゃないんですか?」

「いやいや。流石にそんな事しないけども。そんな鬼畜じゃないって」

「えぇ……じゃあ、誰が原因なんでしょう……?」

「あぁ、あの子が悲鳴上げてるの? じゃあ、休憩させてあげればいいわ。戻ってきてもいいんだけど」

「エウリュアレが原因か……」

「えぇっと……伝えてきますね」

 

 今になってアビゲイルがいない原因に気付いたオオガミとマシュ。

 その後、二人はアビゲイルを呼び戻すのだった。




 そろそろ絆MAXのせいでニート化が進行していっているエウリュアレ。実際はエウリュアレよりもニートしているヘラクレスという最強のバーサーカーがおってな……


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もしや、女神さまのターン……?(私も出番が欲しいのだけど!!)

「おぉぉぉぉぉ……ついにエウリュアレの出番が来たよ……」

「え。私の出番? どうしてよ。面倒なんだけど……」

「私は!? 私は無いの!? マスター!!」

「あ、アビーは……無いね……」

「なんでえぇぇーーー!!」

 

 叫びながら転がりまわるアビゲイル。

 オオガミはそれを見て苦笑いをし、エウリュアレはオオガミの横から情報を見つつ面倒臭そうな顔をする。

 

「まぁ、どの道アビーには参加してもらうと思うけどね。結局エウリュアレでも有利不利はあるし。その点、アビーはほとんど無いからね」

「むむむ……出番があるならいいわ。ふっふっふ。ようやく私の出番ね!! ちゃんと大活躍するんだからっ!!」

「やる気ねぇ……とはいっても、これを見る感じ、どう見てもアイテムが集まるまでは私が戦うのよね」

「でも、アイテム回収が終わったら基本アビーのターンじゃない? まぁ、確かにアイテム回収が鬼門だと思うんだけどね」

「やっぱり私が一番大変なんじゃ……?」

 

 首をかしげて考えるエウリュアレ。事実、今までのことを考えると、どう考えてもほとんどエウリュアレの出番しかなさそうだった。

 

「むぐぐ……なんだか、エウリュアレさんがずっと出る気がするのだけど! ちゃんと私も出番あるのよね!?」

「あるってば。まぁ、場合によっては最初から最後までずっと出続けることになるけど」

「……貴女も大変なことになりそうね」

「え? なに? 何か問題があるの……?」

 

 不穏な雰囲気になってくる。特に、エウリュアレの生暖かい視線が、更にアビゲイルの不安を煽る。

 イベントによる超地獄周回。その地獄を味わっている身としては、複雑な心境のようだ。

 

「まぁ、貴女は実際に味わえばいいと思うわ。ふふふ。すごい楽しみだわ」

「うぅむ、だんだんと真っ黒になってきたな、エウエウ。本性を現してきてる感じ?」

「ふふふ。日本には、『雉も鳴かずば撃たれまい』って言葉があるみたいだけど……意味は言わなくてもマスターはわかるわよね?」

「もちろんだとも。だけど、見えてる地雷は踏み抜いていくのが信条だよ」

「そんな信条捨ててほしいのだけど」

「マスターのそういうところは悪いところだと思うの」

「うぅむ、バッサリ言われるなっ!」

 

 許されなかったらしい。下手な言葉は言うものではないとオオガミは再認識するが、反省はあまりしていなかったりする。

 ともかく、次のイベントはエウリュアレだけか、もしくは二人ともが地獄の大周回へと行くことになるのだろう。

 そんなことを考えながら、三人はそれぞれ明後日のことを考えるのだった。




 もはや確定している地獄周回。果たしてアイテム回収は終わるのか……始まってすらいないけど苦戦するのは目に見えている恐怖……


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最近マシュが凄い毒吐いてきてる気がするんだけど(まぁ、大体先輩のせいですよね)

「マシュ~、マシュ~? いる~?」

「はいはい。なんですか、先輩」

 

 呼ばれるのは珍しいな。と思いつつ、オオガミの部屋に入るマシュ。

 そして、目の前に飛び込んできた光景は――――

 

「――――なんというか、もう見慣れた光景ですよね」

「おぉっと。マシュが明後日の方向を向いてる。というより、見慣れた光景って何さ」

 

 アビゲイルに膝枕をさせられ、背にはエウリュアレが寄り掛かっている状態。

 カルデア時代ではあまり見られなかった光景だが、シャドウ・ボーダーでは、ここ最近よく見る光景なので、あまり気にしなくなってきていた。

 

「まあ良いです。それで、何の用ですか?」

「いやね? マシュだけを働かせっぱなしはダメだよなぁって思って、仕事を変わろうかと。それに、明日のイベントまで暇だからね。ちゃんと手伝おうかと」

「先輩……」

 

 キリッとした顔で言うオオガミにマシュは目を見開き、そして、

 

「その、変なものでも食べました? それとも、おかしくなってしまったんでしょうか……とりあえず、ダ・ヴィンチちゃんのところで一回休んだ方がいいんじゃ……」

「えぇぇ……今の一瞬で自分の評価が一発で分かるけど、結果が一切嬉しくない……」

 

 本気で心配するマシュに、肩を落として落ち込むオオガミ。

 そのオオガミの後ろで、声を殺して笑っている女神がいるが、助け船を出してくれるとは微塵も思っていないので、スルーする。

 

「というか、もしかして手助けって要らなかったりする?」

「えっ……そう、ですね……そもそも、先輩が手伝ってどうにかなるような案件がないと言いますか、先輩のスキルが活躍出来る場所がないと言いますか……ともかく、今は大丈夫です」

「それ、暗に戦力外通告出されてる……?」

 

 悪気が一切ないからこそ刺さる言葉。

 わりと笑えない話なのだが、後ろの女神様はしっかり笑っている。というより、この場で笑っているのは彼女しかいなかったりする。

 

「あぁ、そうですね。一つだけ大きな仕事があります」

「な、なになに!? どんな仕事!?」

「それはですね」マシュは一拍置いて、「余計な騒ぎを起こさないことです」

 

 目からハイライト消えるオオガミ。精神へのダメージは大きかった。

 そして、笑いをこらえていたエウリュアレが寄り掛かっていたオオガミの背から逸れ、そのままベッドの上に倒れた。

 

「……エウリュアレ? 言いたいことがあるなら聞くよ?」

「い、いえ、別に、気にしなくていいわ。ふふっ。いえ、まぁ、そうね。バッサリ言われてショックを受けてる貴方を見ていて、面白くて。えぇ、もっとやってくれて構わないわ」

「うぐぐ……なんかいつもエウリュアレが一人勝ちしてる気がする……」

「……まぁ、先輩が落ち着いてくれたなら良かったです。とりあえず、今はやる事はありませんので、明日にそなえてゆっくりしていてください。先輩は特異点修復が仕事なんですから」

「むぅ……それを言われると反論のしようがないや。じゃあ、明日まで休憩しているね」

「えぇ、そうしてください」

 

 そう言って、マシュはオオガミの部屋を出て行くのだった。




 エウリュアレの子供っぽさが上がっているかもしれない……(今更

 しかし、このオオガミ君の扱いよ……もう、この評価は変動しなさそうな予感……


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星の三蔵ちゃん、天竺に行く
そもそも、エウリュアレは対男性特化だった(だから私を先頭にしないでほしいのだけど)


「えぇ、まぁ、予想はしていたわ。でもね、実際にそうなったとき、私はどうすれば良いのかしら」

「笑えば、良いと思うよ」

 

 ドヤ顔で言ったオオガミの足を蹴るエウリュアレ。

 まさか物理的な反撃が飛んでくるとは思わなかったオオガミは、脛を蹴られた痛みに打ち震える。

 

「はぁ……いくらボーナスにメイン戦力が私しかいないからって、前線に私を置く必要はないと思うの。というか、むしろ私を守りなさいよ」

「しょ、正直、最強がエウリュアレだから頑張ってもらいたいのですが……っ!」

「ふん。良いわよ、別に。サーヴァントとして召喚されてから、私は守られる側じゃなくて守る側っぽいし。でも、序盤だからまだのんびりしていても良いわよね」

「そ、そうだね……うん、まぁ、ボーナス入ってないみたいだし、アビーと交代でも良いかもしれない」

「それはちょっと看過できないわ」

「なんでさ……」

 

 ムッとしているエウリュアレ。昔はあんなに出撃するのを拒否していたのに、何故か今は嫌らしい。

 

「だって、なんか私の方が弱いみたいじゃない。納得いかないわ」

「いや、適材適所なだけだと思うんだけど……だってほら、エウリュアレは対男性最強なだけで、どんな敵にも通じる訳じゃないじゃん?」

「凄い不服だけど、そこは分かってるわ。でも、それはそれとして譲れないものがあるのよ」

「えぇぇ……」

 

 じゃあどうしろと。と言いたいオオガミ。しかし、そうは思っても言わないのがオオガミだった。

 

「じゃあ、二人一緒とかどう?」

「そうね……いえ、でも、わりとどうにかなっているのだから、別に組み込む必要はないんじゃないかしら。盾が欲しいわ」

「盾役って……アビーでいいんじゃ……」

「ぐぬぬ……欠点が少ないから頭ごなしに否定できないのが辛いわ……!」

 

 全体宝具では無いにしろ、使い勝手が良いと言うのは事実で、そこはエウリュアレも理解していた。

 なので、はたしてどうしたものかとエウリュアレは考えるが、

 

「まぁ、アビーはマシュの所に置いてきたから、来ないと思うけどね」

「お、置いてきた? 連れてこなかったの?」

「うん。だって、アビーは自力で来れるだろうし。むしろ、マシュが一番危ないんじゃないかな。だって、アンリが野放しになってるし……」

「なんで野放しにしてるのよ……ちゃんと捕まえておきなさいよ……」

 

 気付いたときにはいなくなっていたアンリ。一体どこに消えたのか分からないので、とりあえずアビゲイルにマシュ近辺を捜索させているわけだ。

 

「まぁ、アンリが見つかるか、マシュと連絡がつくまではこのままだよ。頑張って、エウリュアレ」

「……仕方無いわね。私の力、見せてあげるわ」

 

 そう言って、気を取り直してエウリュアレはやる気を出すのだった。




 ボーナスキャラオンリーで組んだらメイン戦力がゴルゴーン三姉妹という……あれ、私らしい……?


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ゴルゴーン三姉妹VSゴルゴーン三姉妹(なんであんな事をしたのか説明してもらいたいわ)

「えぇ、嫌な予感はしてたわ。セイレムの西遊記の時に私が敵だったもの。戦うのは分かってたわ」

 

 据わった目のエウリュアレ。淡々と言ってはいるが、その怒りは計り知れない。

 

「えぇ、戦うのは予想してたの。でもね? まさか全く同じ編成で行くとは思わないじゃない?」

「……いや、その……まさか相手も同じ編成だとは思わなかったんです……」

「言い訳はいらないわ。まずはその顔を叩かせなさい!!」

「いやぁ!! エウリュアレが珍しくマジギレしてるぅ!!」

 

 敵が『メドゥーサ・エウリュアレ・ステンノ』の順番で出してきたのに対し、『エウリュアレ・ステンノ・メドゥーサ』で対抗したオオガミ。

 クエスト名からなんとなく察していたような気がしなくもないが、どうせ一回くらい雑魚戦を挟んでからだろうと思っていたのが悪かった。

 もちろん、負ける気は一切なく、全力で叩き潰したが。

 

 それはそれとして、エウリュアレは弓を使ってオオガミの足元を狙い、転ばせようとしてくる。先ほどの顔を叩くというのは本気なのだろう。

 

「な、なんでこんなことになるのさ……!! 偶然の一致で殺されそうになってるとか、わりと笑えないと思う……!!」

「神の怒りなんてそんなものよ。だから、諦めて受けなさい!!」

「絶対に断る!!」

 

 もはや見慣れている光景。毎度エウリュアレを怒らせている気がするが、反省しないのがオオガミだ。むしろ、怒られる度に行動パターンが増えていく分、鬱陶しいことこの上ない。

 だが、それと共にエウリュアレの攻撃もバリエーションが増えていくので、どちらが先に策が尽きるかという戦いになってたりする。

 

 ともかく、今日も元気に暴れるエウリュアレと逃げ回るオオガミ。まるで某ネコとネズミのようだが、当然ながら二人は気づいていない。

 と、そんなときにふとオオガミは閃いた。

 

「そう! 桃!! 桃とか食べませんか女神様!!」

「桃……?」

「おうとも! 超レアアイテムですよ!! 美味しいはずだし!!」

「むむ……それは、ちょっと気になるわ……」

「でしょ? じゃあ、弓を下ろして――――」

「あげるわけないでしょう?」

「えぇ~……今までなら許してくれたのに……!!」

「私も変わったということよ。だから――――」

 

 ついにエウリュアレの矢はオオガミのズボンと地面を縫い付け、

 

「これで許してあげるっ!」

 

 全力で蹴り上げ、オオガミを倒すのだった。

 

「はぁ……全く。懲りない人ね。どうしてこう、変なことばっかりするのかしら」

 

 やれやれ。と言いたげなエウリュアレ。正直どちらもあまり変わらないのだが、そこに気付くのなら、きっと争いはしないだろう。

 その後、オオガミが起きるまでエウリュアレは桃を食べようと頑張るのだった。




 完全に偶然の一致。イベントボーナスを持ってるキャラだけで突撃したらこんなことに……めっちゃ笑いました。


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想像したくはない食事風景(風景というより、臭いだと思うのだけど)

 ※三蔵ちゃんイベントネタバレ注意


「お、恐ろしいことをするわね……」

「オキシドールって、じゃぶじゃぶつけて良いものだっけ……というか、目が痛いんじゃ……」

「そういうレベルでもないと思うのだけど」

 

 苦い顔をしているオオガミとエウリュアレ。

 そもそも、傷口に染みて痛くなるようなものに顔を突っ込ませるのは如何なものか。

 

「というか、食器から机まで全部消毒液臭いのは流石に勘弁だよね」

「想像もしたくないレベルね」

 

 二人はそう言いつつ、ため息を吐く。

 そこまで徹底的にやると、一周回って不衛生な気もするのだが、そこら辺はどうなのか。是非とも専門家に聞いてみたいが、生憎と専門家は近くにいなかった。

 ただ、精神衛生的には地獄なのはよく分かった。牛魔王が御仏に頼りたくなるのも納得である。

 

「あぁ、なんというか、英国料理を食べてみたくなったのだけど」

「うぅむ、そう言われてもなぁ……円卓式で良いです?」

「……本気で言っているのかしら?」

 

 笑顔で返すエウリュアレ。もちろん、目は笑っていない。むしろ殺意があった。

 それもそうだろう。消毒臭とは別の方向性で、精神ダメージが大きい。なんせ、オオガミの円卓イメージはゲテモノ料理だからだったりする。

 とはいえ、何を出すつもりなのか分からないのが問題だ。今日はワイバーンを主に狩ったような気がするので、おそらくその辺だろうが。

 

「うぅむ、ベオウルフにドラゴンステーキを学んでくるべきだったか……」

「そういう問題じゃないの。というか、それ、英国料理なのかしら……?」

「まぁ、ステーキ以外にも作れるだろうし、頑張ってみるよ。正直エミヤ師匠に帰ってきてほしいのだけど……」

「そうねぇ……流石に経験には勝てないものね。なんだかんだ、バリエーションが豊富だもの」

「レベルが足りないんだよ……仕方ない……」

 

 作りたいものと、作れるものは別ということだ。やりたいことにやれることがついてこないのはよくあることだ。

 とは言っても、料理の話をしていたせいで腹が減ってきた二人。どうしたものかと顔を見合わせ、

 

「そう言えば、肉まんがあったわよね」

「あぁ、肉まんがあったね……」

「食べられるかしら……」

「食べてみる……?」

「そうね。毒味をお願いするわ」

「マスターに毒味をさせるとは、流石エウリュアレ。悪魔だなっ!」

 

 文句は言いつつも、取り出して食べるオオガミ。何の躊躇いもなく食べるので、見ている方が心配になったりするのだが、普通に食べているので問題ないようだ。

 

「どう? 美味しい?」

「うん、結構美味しい。ほら、エウリュアレも食べようよ」

「そうね、いただくわ」

 

 そう言って、エウリュアレに新しい肉まんを差し出す。エウリュアレはそれを両手で受けとると、ぱくり、ぱくりと少しずつ食べ進めていくのだった。




 なんだろう、色々言ったけど、最終的に肉まんのメシテロ……?


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ようやく見つけたわ!!(そんな怒る必要は無いと思うのだけど)

「ようやく見つけたわ!! マスターを返しなさい!!」

「何度も言うけど、貴女のじゃないから。返すつもりは全くないわ」

「人を物の様に扱うのはどうかと思うんだよ……」

 

 虚空に現れた門から叫びつつ飛び出てくるアビゲイル。

 エウリュアレはそれに平然と返す。しかも、オオガミの膝の上に乗っているので、説得力倍増だ。

 

「なんでマスターが膝の上にエウリュアレさんを乗せてるのかが気になるのだけど!」

「当然よ。だってほら、本人がそう望んでいるし」

「勝手に乗って来たんだけどなぁ……」

「マスター!! 本当に望んでいたの!?」

「だから、そんな事ないって――――」

「そんなっ!! マスターがそんなことを思ってただなんて……これもエウリュアレさんのせいね!!」

「あ、これダメだ。聞こえてない奴だ」

 

 スルーされ、そのまま勝手に話が進んでいく。

 特に、妙に楽しそうなエウリュアレがいるので、不安が更に煽られる。

 

「さて、じゃあ私が悪いと仮定して、一体どうするつもりなのかしら?」

「それはもちろん、物理的に退かして、再洗脳――――じゃなかった、元に戻すんだから!!」

「今完全に洗脳って言った! 俺、洗脳されてるの!?」

「ふふふ。それは良いわね。でも、それだと戦力が減るだけで意味がないと思うから、私と代わりたいなら私以上に敵を倒せばいいわ」

「その提案、乗ったわ! 何時から始めるの!?」

「え? もう始まっているのだけど」

「えぇ!? い、急がなくちゃ……!!」

 

 瞬時に走っていくアビゲイル。

 それを見ながら、エウリュアレは不敵に笑っていた。

 オオガミはそれを見送りつつ、

 

「それで、どういう作戦で?」

「簡単よ。私が召喚されてからここまでの戦いで私が戦った数が私の討伐数。で、彼女が召喚されてからここまでの戦いが、彼女の討伐数よ」

「うわぁ……悪意しかないなぁ……」

「失礼ね。これでも善なのよ?」

「どう見ても悪だよねぇ……いや、どっちかっていうと、混沌の方が出てるのかな?」

「ん~……とりあえず、それ以上下手な事を言うと、殴るわよ?」

「止めてください死んでしまいます」

 

 視線を逸らしながら、オオガミは言う。

 実はさっきから右足の甲を踵で蹴っていたりするのだが、そこを指摘すると肘鉄が飛んでくるのは想像できることだった。

 

「まぁ、私たちも行きましょうか。もしうっかり彼女がやられても困るもの」

「そうだね。流石にアビゲイルがやられるのは困るし、マシュが半殺しにしてきそう」

「……マシュには、ちょっと勝てる気がしないわよね……」

 

 エウリュアレはそう言って、遠い目をするのだった。




 圧倒的悪……!!(善
 何というか、最近書いていて、どこら辺が善なのか分からなくなってきました……(今更


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なんでエウリュアレさんはいつも余裕そうなのかしら(女神的に切羽詰まってる様な表情は出せないのよ)

「ふふん。もうたくさん倒してきたわ。エウリュアレさんは?」

「私はほら、貴方が来る前に倒していたもの。頑張ってね」

 

 ドヤ顔で言ってくるアビゲイルに対して、

 

「……なんか、凄い負けてる気分なのだけど……」

「そんなわけないわ。ほら、まだ私の方が有利よ?」

「むぐぐ……!! っていうか、さっきから気になってたんだけど、マスターは?」

 

 そう言って、周りを見渡すアビゲイル。

 最近にしては珍しく、オオガミがエウリュアレの近くにいなかった。

 

「さっき一人でどこかに行ったわ。まぁ、探さなくても大丈夫だとは思うけど」

「えっ!? いや、一人だと危ないと思うのだけど!?」

「運が良ければ死にはしないと思うけど、そもそも私やノッブの攻撃を避ける様なマスターが簡単にやられるとは思えないのよね」

「えぇ……そんなになの……?」

「えぇ。わりと信じたくはないのだけどね。でも、事実なんだから仕方ないじゃない?」

「マスターの回避能力って、どうなってるのかしら」

 

 エウリュアレが平然としている謎は解けたが、オオガミの性能に驚きを隠せないアビゲイル。

 そんなことを話していると、遠くから大量の足音が聞こえてくる。

 何事かと思ってその方向を見ると、

 

ぃ~~~ゃ~~~~~~~だ~~~~~~!!!!! た~~~~~~~~~す~~~~~~け~~~~~て~~~~~~~!!!」

 

 徐々に聞こえてくる聞きなれた声。

 その後ろに見えるのは、竜骨兵に獣人、人面馬の群れだった。

 礼装が無いから回転数で誤魔化そうとしているのが見え隠れしているように見えるが、ともかく、追われているのに変わりはない。

 

「あぁ、マスターはどうしてこう、いつも面白い事を引きつれてくるのかしら……」

「いや、面白がっている場合じゃないでしょう!? なんでそんな、さも自分は関係ないかのようにいられるのかしら!!」

「だってほら、私に直接助けを求められてる訳じゃないから、良いかなって」

「そんなバッサリ!? って、そんなこと言ってる場合じゃないわ! 早くどうにかしないと……!!」

「……別に、貴女が門を使ってどこかに送り飛ばしてしまえばいいと思うのだけど」

「……それもそうね!!」

 

 そう言われ、即座に行動に移すアビゲイル。

 真っ先にオオガミの真下に門を開いて自分の隣に落とすと、残りの追ってきている軍勢の真下に別の門を開き、かなり離れている場所へ超上空から落とした。

 

「ふぅ。これで一件落着ね」

「そうね。マスターはそこで沈んでるけど」

「……まぁ、助けられたのだし、問題ないわね!!」

 

 結果良ければすべてよし。そう胸を張って言うアビゲイルに、エウリュアレは特に反論するでもなく見守るのだった。




 エウリュアレは基本余裕の態度を崩さない。一部の状況を除いては……


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デーモン狩りが一番なんやねって(ねぇマスター? 私の出番は?)

「よぅし……ようやく、今になって天竺級がいいと言うのに気付いたぞぅ……」

「心臓も貰えるものね。周回にも最適ね」

「でも、私はあんまり活躍できないのよね……」

 

 ムスッとしているアビゲイル。

 ついにデーモン狩りを始めたオオガミ。エウリュアレはそれを見て楽しんでいたが、アビゲイルは自分が戦えていないのが不満らしかった。

 

「まぁ、アビーは強いからね。わりと使う場面も少なくなるわけです」

「えぇ……普通、強いから戦うんじゃないの……?」

「ん~……なんというか、負けた感じ凄い……?」

「なんで疑問形なのよ……別に私が戦っても良いと思うのだけど?」

「ん~……相性とかもあるしね。色々と仕方ない面はあるんだよ」

「むぐぐ……でも、エウリュアレさんは連れ回されてるじゃない」

「あら。残念だけど、今はフリーなの。だって、私の相手は、セイバーか、もしくは男性の時。後は今回みたいに、イベントボーナスがあったりするときよ?」

「いや、まぁ、それ以外では連れてないかというと怪しいけども……まぁ、未だに対男性最終兵器だもんね、エウリュアレは……」

「わ、私はっ!? 私はそういう役割は無いの!?」

「「対軍団バーサーカー最終防衛ライン」」

「対軍勢専門っ!」

 

 単体バーサーカーならばなんとかなるが、軍勢になると意外と捌き切れないので、自然とアビゲイルに任せる他ないのだ。今の所、そんな状況になった事は無いのだが。

 

「私って、単体宝具のはずなのだけど……」

「関係ないわよ。だって、うちには全体宝具のフォーリナーはいないでしょ?」

「要するに、アビーしかいないわけだよ」

「うむむ……嬉しいけど、何か違うわ……」

「まぁ、是非も無いよね」

 

 うんうん。とうなずくオオガミ。

 二人はそれぞれ違う理由で、苦い顔になるのだが、オオガミは気付かない。

 

「はぁ……とりあえず、周回行ってきなさいよ。それと、昨日みたいに大量のデーモンを連れてくるとかは止めてよ?」

「いや、あれは狙ってやったんじゃないんだけど……というか、エウリュアレのその助けようと思わない姿勢は一周回って凄いと思うの。もっと優しくしてくれてもいいのよ?」

「嫌よ。だって、感謝されたらあんまりからかえなくなるでしょ? それは面白くないもの」

「うわぉ、想像斜め上過ぎて何も言い返せないぞぅ? まさかからかえなくなるから助けないと言われるとは……」

「えぇ。それに、そんな簡単に死なないじゃない。と言うより、私の攻撃を避けておいて死なれても困るわ。えぇ、当然死なないわよね?」

「なんという理論……信頼が一周回ってある意味殺意になってる不思議っ!」

「私としては、どう見ても見捨てているようにしか見えないの……!!」

 

 オオガミとアビゲイルは戦慄しつつ、エウリュアレを見るのだった。

 そんな風に見られていると自覚しているエウリュアレは、本音かどうか悟らせないかの如く、笑顔を張り付けるのだった。




 最近、アビゲイルが出番出番と言っていて、ふと思った事。これ、ノッブに近しい状態じゃないです……?


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久しぶりの海よねぇ(あれ、何時振りだろ……)

 浜辺にて。

 襲いかかって来たデーモン達を薙ぎ払い、適当なところでシートを広げて海を眺めていた。

 なお、珍しくオオガミの膝の上はアビゲイルが占拠していた。そして、いつもなら膝の上にいるはずのエウリュアレは、オオガミの右側に座っていた。

 

「あぁ、久しぶりに海に来たわね」

「ん~……そうだっけ? あぁ、いや、そうだね。意外と思ったより最近じゃないかも」

「あれ……私、行った記憶がないのだけれど……」

 

 さざ波の音を聞きながら、最後に海辺に来たのは何時だったかと考える三人。この四ヶ月程の間に、はたして行っただろうか?

 しかし、三人はあまり深く考える気はなく、わりと早めに考えるのをやめる。

 

「まぁ、海に来たのだし、何をするかを考えましょう。夏ではないから、本来来るべきではないのかもしれないけど」

「えぇ~……そういうこと言っちゃう? 分かるけども……そうだね。まずは食料の確保だよね。ドラゴンステーキだけだと飽きちゃうし」

「あ~……そうね。流石にもうドラゴンステーキは要らないわ。で、海に来たということは、魚ね?」

「そういうこと。ん~……でも、どうやって捕るかが悩ましいところだよねぇ……」

 

 釣りをしようにも、釣糸も釣り針もない。銛を作ったところで捕れるとは思わない。ではどうするか。そう考えたときに出てくるのは、

 

「まぁ、罠かな?」

「……それこそ、出来るの?」

「最後に作ったのがかなり昔だからなぁ……やってみないとわかんないや」

「そう。必要なものとか、あるの?」

「ん~……丈夫な枝とか、かなぁ……後、ツタとかの、巻けそうな植物。頑丈で出来るだけ細いのでお願い」

「分かったわ」

 

 エウリュアレはそう言うと、森の中へ入っていく。

 すると、今まで静観していたアビゲイルが、

 

「ねぇ、私が直接取りに行くのは? 意外と出来ると思うのだけど」

「ん~……食料が無くて急いでるならそうするけど、まだいくらか食えるのはあるしねぇ……エウリュアレもああは言ってるけど、別に急かしてるわけでもないし、まだ急がなくても良いかなぁって。それに、捕ったとしても、食べなかったらすぐに腐っちゃうし」

「ふぅん? まぁ、要らないのなら良いのだけど。ところで、私に手伝えることって、まだあるかしら」

「エウリュアレに頼んだのと同じかな。罠は複数あっても困らないしね」

「分かったわ。行ってくるわね」

 

 アビゲイルはそう言うと、オオガミを置いてエウリュアレと同じように森の中へと入っていくのだった。

 それを見送ったオオガミは、

 

「……あれ、これって、かなり不味い状況なんじゃ……」

 

 二人がいなくなったことにより、守ってくれる人が誰もいないという状況。そして、この浜辺はデーモンの住み処だ。つまり、これはいつデーモンと出くわしてもおかしくないということ。

 なんとなく感じる嫌な予感に、オオガミは静かに、逃げる準備を始めるのだった。




 完全に誰も考えていなかった盲点。とは言っても、逃げ切ること自体は問題なさそうなのが凄い……問題は合流できるかですね(キリッ


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最近、マシュが空気になってる気がする(彼女、こっちに来れないものね)

「いい加減、マシュと話せないのも辛くなってきた」

 

 オオガミの言葉に、エウリュアレとアビゲイルが瞬時に反応する。

 

「どうするつもりなの?」

「うん。アビーなら行けるかなって」

「なるほど……私が要ってことね!」

 

 むふーっ。と嬉しそうなアビゲイル。

 エウリュアレは不満そうな表情なのだが、オオガミは気にしないことにした。

 

「それで、どうするの?」

「ん~……気合い?」

「気合いで出来る範囲を越えてる気がするのだけどっ!」

 

 たまに無茶振りをしてくるオオガミに、半泣きになるアビゲイル。

 一体どうしろというのか。アビゲイルは当然悩む。

 

「まぁ、本音としてはアビゲイルと一緒に門で帰れば良いかなって」

「でも、ここは放置?」

「いや、帰ってくるけども」

 

 当然だと言いたげなオオガミ。

 そんな予感はしていたので、二人は突っ込んだりしない。

 とはいえ、誰もいなくなるのも問題なわけだ。

 

「ん~……通信出来ないかなぁ……」

「むむむ……ちょっと聞いてくるわね」

 

 アビゲイルはそう言うと、門を開いて飛び込んでいった。

 オオガミとエウリュアレは、それを見送った後、

 

「じゃあ、こっちはこっちで準備をしよう」

「……何の準備かしら?」

「食料を持ち帰る準備だよ」

 

 ドヤ顔のオオガミ。確かにドラゴンの肉は量はあるが、アビゲイルが門で送れば良い話ではないのだろうか。と何時もの如く思うエウリュアレ。

 だが、物はそれだけではないらしい。

 

「ほら、昨日仕掛けた罠を回収しにいかないと」

「あぁ……そうね。罠に掛かっててくれると嬉しいのだけど」

「まぁ、掛かってないときは掛かってないからねぇ……それはもう、運としか言いようがないや」

「それもそうね。じゃあ、確認しに行きましょ」

 

 そう言うと、二人は罠を確認しに行くのだった。

 

 

 * * *

 

 

 日も暮れ、星がきれいに見える中、焚き火の灯りを囲むエウリュアレとオオガミ。

 

「意外と、捕れるものね」

「絶対普通じゃないと思うの」

 

 罠いっぱいに入っていた魚。幸い罠自体があまり大きくなかったこともあり、そこまで量がないのが救いだろう。腐る前には食べきれそうだった。

 

「というかさ、内臓を取ってて思ったんだけど、これってほとんどオスじゃない?」

「あら。メスは少なかったの?」

「まぁ、かなり。凄い比率だよ。1:9くらい?」

「凄いわね。まぁ、それも運よ運」

「……まぁ、これくらいなら問題ないかな」

 

 オオガミはそう言って、串に刺さっている焼けた魚を取ると、エウリュアレに渡す。

 

「まぁ、アビゲイルが帰ってくるまでは魚で生き残るか」

「今度は魚生活ね……」

 

 そう言って、エウリュアレは遠い目をするのだった。




 串焼き魚……うまそぅ……


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マシュ、お久しぶり!(どうして後二日、待てなかったのか)

「先輩……戻って来たんですか……?」

「当然。とは言っても、またすぐに戻るけどね」

「そうなんですか……」

 

 少し寂しそうなマシュ。

 昨日、通信を繋げたいだのなんだのと言っていたが、結局直接会いに行くオオガミ。

 ちなみに、エウリュアレとアビゲイルは二人でワイバーンとドラゴン狩りに精を出している。

 

「まぁ、本当はもうすぐイベントが終わるし、そのうち帰って来るんだけどね」

「えぇ……じゃあなんで帰って来たんですか」

「それは、ほら。最近全然マシュに会えてないと思って」

「……それだけですか?」

「え、あ、うん。そうだけど……」

 

 そう言うと、複雑そうな表情になるマシュ。嬉しいが、それはそれとしてちゃんと周回してほしいというのが見て取れる。

 

「それで、先輩。ふと気づいたんですけど、どうやって戻るんですか?」

「……あ、アビー……?」

「連絡って、どうするんでしょう?」

「……あれ、これって、エウリュアレとアビゲイルを置いてきた感じ……?」

 

 やってしまったと気付いたオオガミ。

 だが、冷静に考えると、アビゲイルに関しては平然と出てくる気がしてならない。

 とはいえ、エウリュアレを放置すると殺されかねない。なので、意地でも戻る必要があるわけだ。

 

「ぐぬぬ……どうするべきか……」

「令呪を使うとかですかね?」

「むぐぅ、令呪の使い方よ……連絡手段が無いから使うとか、アリなんだろうか……」

「いえ、その、先輩は特殊じゃないですか。一日一画令呪が回復しますし……」

「だからって、無駄遣いするのはどうかと思うんだけど……」

「日が変わる寸前なんですから、割と無駄遣いしても良いと思うのですが。少なくとも、石を一気に削るのよりはマシかと」

 

 マシュの言葉がグサリと刺さるオオガミ。事実、今回も石を投げ捨てていたりするので、普段よりも突き刺さる。

 

「ぐぎぎ……令呪、使うかぁ……」

「はい。そうしてください」

「こういう使い方、アリなのかぁ……令呪を持って命ず。来い、アビゲイル!」

 

 一画、薄くなる令呪。それと同時に、門が開いて飛び出してくるアビゲイル。

 出てきたアビゲイルはドヤ顔で、

 

「意外と早かったわね、マスター」

「うん。早かったのはそうなんだけど、そのドヤ顔の理由が凄く知りたい。どうしてそうもドヤ顔が出来るのか」

 

 妙に自信満々なアビゲイルが不思議でならないオオガミ。

 しかし、アビゲイルを呼んだのは良いが、エウリュアレが今どうしているのかがとても気になった。

 

「とりあえず、急いで戻るね。まだ素材の交換も終わってないし」

「えぇ、頑張ってくださいね、先輩」

 

 マシュはそう言って、アビゲイルの開いた門に飛び込んでいくオオガミ達を見送るのだった。




 流石にネタ切れが激しくなってきた今日この頃。三蔵ちゃん、辛すぎて素材収集が全然できない……


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帰って来たよ、あの男(マシュさんに見つかったらどうなるのかしらね?)

「さて、残るは石と大蓮華交換アイテムだ」

「前半は何とかなると思うけど、後半はもう無謀だとしか思えないのだけど」

「早くから林檎を使わないからだと思うのだけど」

「ぐぅっ、マスターに厳しい世の中じゃて……」

 

 何となくオオガミの口調が壊れているが、エウリュアレとアビゲイルは深くは突っ込まない。アビゲイルは記録で、エウリュアレは実際に何度か同じ展開を見ているので、直し様が無いと思っていたりする。

 

「さて、そうやってうずくまってるのでもいいけど、早く行かないと間に合わないと思うのだけど」

「むっ。それを言われると否定できない……よし、レッツゴー!!」

「……これ、防衛してくれる人が欲しいわよね……」

 

 今まで、周回に行く度に奪われる浜辺拠点。毎度の如く殴り飛ばしているのだが、真夏の雑草の如き再生力とタフネスを併せ持つ恐ろしきデーモン……どこかに召喚の魔法陣でもあるというのだろうか。

 なので、周回している間に拠点防衛をしてくれるサーヴァントが必要と言うわけだ。

 

「……あぁ、防衛ね。カモン、アンリ!」

「あいよー。ってか、人使い荒過ぎんだろ……」

 

 オオガミが呼ぶと同時に真横に現れるアンリ。

 アビゲイルをして、普通に気付かなかった。なので、アビゲイルがとても悔しそうにしているが、一番反応していたのはエウリュアレで、既にアンリの真後ろで構えていたりする。具体的には、宝具を。

 

「それで、あの逃亡犯は?」

「最弱に頼む内容じゃないと思うんだよなぁ……というか、オレを今まさに英霊の座に帰そうとしている女神にやらせろよ……」

「あら。その頭、吹き飛ばされたいのかしら?」

「マジ勘弁。いや、捕まえて来たけどさ……流石に死ぬかと思ったんだが。本気で抵抗されたし」

「それでも平然と戻ってきてる辺り、アンリだと思う」

「なんか含みのある言い方だなぁ……」

「で、その人は?」

「そこの木に縛り付けてるんだけど……いい加減、弓を下ろしてほしいんだけど。後、正面の触手も引っ込めてほしい」

「仕方ないわね……」

「むぅ……エウリュアレさんが下すのなら、私も引っ込めるわ。じゃあ、私はあっちを見に行ってくるわね~」

 

 そう言って、縄が見える木に向かって歩いて行くアビゲイル。そこで見たのは、剣を取り上げられたうえで両手足を縛られ、体を木に縛り付けられているランスロットの姿だった。

 

「……この人、再召喚されたの……?」

「うん。瞬間的に逃げられたけど」

「マシュさんによっぽど会いたくないのかしら……」

 

 よくアンリが捕まえられたな。と思ったが、それはそれとして、防衛としては心強いので、縄を解いてあげるアビゲイルなのだった。




 いやぁ、予想通り終わらないですね。
 剣スロットに関しては、実は一昨日位にはすでにいたんですけどね。


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意外と恒例行事だと思う(そんな恒例行事は捨て去って良いと思うのだけど)

「マスター? 何か、私に言う事がないかしら」

「私もその言葉、聞きたいのだけど」

 

 満面の笑みを浮かべるエウリュアレとアビゲイル。その二人が見ているのは、正座しているオオガミ。

 進捗はと言うと、ちょうど先ほど金丹の交換がすべて終わり、残りは大蓮華のみという状況だ。

 

「あ~……その~……早く終わらせるとしましょう!!」

「マスター?」

「あら、逃げるつもり?」

 

 凄みのある微笑み。さりげなくアビゲイルによって正座の状態でガッチリと固定されたため、逃げる方法が無い。

 大体よくある事ではあったが、ここまで本気なのも珍しいな。と思うオオガミ。

 

「いやぁ、逃げるつもりはないんですけどね? その、ね? サボった分も含めて、急がなきゃかなぁって」

「そうね。それは確かにいい心がけだわ。で、今日は何をしていたの?」

「いや、何も……」

「えぇ、バッチリ遊んでたわ。金を全身に着けた羊みたいなドラゴンと戦ってたわ」

「あるぇ? バレてるぅ?」

「……なんというか、分かっててやってるんじゃないかしら、このマスター」

「なんとなく、私もそう思えてきたのだけど……」

 

 周回をするとは何だったのか。なんだかんだ言ってほとんど終わってないのだが、残る時間はもう一日も無い。寝て起きたら半日も無いわけだ。

 つまり、今日中に出来るだけ終わらせる必要があるわけだ。

 

「まぁいいわ。早めに終わらせないと、明日が本当に地獄になるもの」

「恒例の地獄周回かしら? 私はあまり味わったことないけれど」

「そうね……まぁ、そうならない方が楽でいいのだけれど。とにかく、残りは途方もないし、早く行かないとね」

「むぅ。まぁいいわ。さっさと終わらせに行きましょ? 次のイベントもありますし」

 

 オオガミの拘束を解き、しかし今度は胴体を掴んで運ぶアビゲイル。

 サボらない様に、という意味を込めているであろうそれは、オオガミとしてはマシュが見ていなくてよかったと、心の底から思うような状況だったりする。

 

「と、とりあえず、功徳の玉をメインで集めて行く必要があるわけだよ」

「まぁ、そうね。ただ、そこのボスはランサーだし、私じゃどうしようもないわ。任せたわよ」

「分かったわ。任せて、エウリュアレさん」

 

 エウリュアレに言われ、心なしか嬉しそうなアビゲイル。それはエウリュアレに任されたからと言うよりも、オオガミを連れて歩けるというのが原因の様にも思えるが。

 

「さて、なんかもう捕まってる状態だけど、とりあえず行こうか」

「えぇ、ちゃんと頑張るわよっ!」

 

 オオガミの言葉に、元気良く反応するアビゲイル。エウリュアレはアンリとランスロットと共に拠点を守ってくれているであろう。たぶん。




 毎度恒例、終わらない事件。今回に限って言えば、もはや手遅れの予感。大丈夫なのかこれは……マム・タロトを狩ってる場合じゃないのでは……?(今更


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Apocrypha/Inheritance of Glory
イベント終わってまたイベント(結局取り終わってないじゃないのよ!!)


「……ねぇ、アホなのかしら。私たちのマスター、アホなのかしら」

「すごい今更だと思うのだけど、何も考えてないだけだと思うの」

 

 真剣な顔で言うと、苦笑いで答えるアビゲイル。

 現在オオガミは夢の中。結局幼角が4つほど取れなかったことに文句を言おうと思っていたのだが、夢の中へと逃げられてしまったので不満なわけだ。

 

「はぁ……全く、いつもの如く夢の中とか、ふざけているのかしら」

「まぁまぁ、特定するまで待ってちょうだいな。すぐに見つけるわ」

「シャドウ・ボーダーで探すより、アビゲイルさんの方が早い気がするんですが、なんでですかね……」

 

 不思議と遠い目をしているマシュ。何かアビゲイルに言いたそうだが、あまり触れない方が良さそうなので、見ないことにする。アビゲイルに至っては忙しいフリをして誤魔化していた。

 そして、しばらくの無言。その状況に最初に耐え切れなくなった私は、

 

「今、マスターって何してると思う?」

「そうですねぇ……電力持って行かれてるみたいですし、戦闘してるんじゃないかと」

「なんで電力を持って行かれてるのは分かるのに、どこで戦ってるかは分からないのかしら……」

「私も追っているのだけど、難しいわ……」

「まぁ、見つけなくてもそのうち帰って来そうですけど」

「……否定できないわね……」

 

 意気消沈しているマシュ。なんというか、壊れ気味なのだが、誰か彼女を救えないのだろうか。

 それはそれとして、今は失踪したオオガミの事だ。肉体はシャドウ・ボーダーにあるが、中身が無いに等しいわけだ。

 

「とりあえず、先輩の顔に落書きしておきましょうか」

「名案ね。採用しましょう」

「マスターの体に落書きするのは私の役目ね!」

「上半身だけよ?」

「と、当然でしょっ!?」

 

 少し目が泳いでいるような気がするが、きっと気のせいだろう。流石に私も悪魔ではないので、追及はしない。

 後、隣でマシュが少し楽しそうにしているのも、気にしないことにする。

 

「それで、ペンは?」

「ここに、全12色のカラーペンを持ってきました」

「なんで用意が良いのかしら、この娘」

 

 平然と用意しているマシュを見て、戦慄する。明らかにこのために持ってきたと言わんがばかりの表情がまた凄い。それだけオオガミに恨みがあると思うべきか、単純に偶然だったと思い込むべきか。そこが悩みどころだ。

 

「ま、まぁ、とりあえずは、そうね。何を描くのか決めましょう。でないとほら、きれいじゃなくなるでしょう?」

「それもそうですね……じゃあ、計画しましょう。紙は偶然持ってます」

「絶対偶然じゃないでしょ……」

「楽しみね。頑張るわよっ!」

「アビーもそこでやる気を出さないで探す方にやる気を割いて欲しいのだけど」

 

 顔が引きつっている気がするが、ともかく、オオガミの平穏は後少しだけ守られるだろう。起きた時にはきっと落書きまみれだろうが。

 そう思い、私も落書き案を作るべく二人の間に入って行くのだった。




 珍しく一人称視点。エウリュアレ視点ですが、最初は三人称で書いていたので文章がおかしいかもしれないです。

 それはそれとして、アヴィケブロン先生、約三時間なんですがそれは……


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マスターによるサーヴァント狩りよ……(あなたも1~3ターンで倒しているのだけどね?)

「うわ~……残酷だなぁ~……」

「あっという間に消し飛んでいたわよね、第一回戦。でも、今回の三人は意外としぶといわよね」

「一人、既にお亡くなりになっているのだけど……」

 

 今朝、オオガミのいる場所を補足して移動してきたエウリュアレとアビゲイル。

 昨日はエウリュアレがいなかったため早めに就寝したのだが、どこか別の世界のマスター達がサクッと殲滅していた。その状況にオオガミは遠い目をしてしまうのも仕方ないだろう。

 

「あぁ、そう言えば、マシュは?」

「マシュさんは……」

「えぇ、そうね。帰ったら謝るか、自分の行いを見直すか、諦めて現実を受け入れてマシュに土下座してきなさい」

「……なんだろう、無性に帰りたくなくなってきた」

 

 エウリュアレがここまで言うという事はどういう状況なのかを知っているオオガミは、帰ったらランスロットと一緒に姿をくらます覚悟をする。

 問題は、アビゲイルというGPSも真っ青な探知レーダーがある事だろう。しかも、いつの間にかエウリュアレに懐柔されているので、はたしてこちら側に引き込めるか。

 

「とりあえず、アタランテとスパルタクス終わったし、残るはフラン……」

「男性じゃないからエウリュアレさんは無力ね!!」

「なんでいきなり元気になるのよ、この娘」

「ふふふ。最近戦っているようで全くメイン運用されていなかった恨み、ここで晴らすわ!!」

「……まぁ、今回のバーサーカーだけだと思うんだけどね……」

「マスター。そう言う事言わない。凹むと割と大変なんだから」

「え、また宥め役やってるの……?」

 

 脇腹に刺さる肘。ひっそりとオオガミの出す精神的被害を押さえているのだが、オオガミのせいでエウリュアレのダメージがどんどん蓄積されていたりする。ただ、エウリュアレはオオガミを弄って回復しているので、問題無かったりする。

 

「全く、どうして私が苦労しなくちゃいけないのかしら」

「まぁ、それはそうなんだけども……エウリュアレのおかげで助かってるから、あんまり止めてほしくないと言いますか……」

「はぁ……えぇ、良いわよ。別に構わないわ。ただ、出来ればもう少し頻度を押さえてほしいのだけど。私の身が持たないわ」

「善処します」

 

 オオガミは少し小さくなりながら、反省する。

 エウリュアレはそんなオオガミを見て楽しそうに笑うと、

 

「じゃあ、アビー。ササッと終わらしてきましょうか」

「分かったわっ! マスターがなんで沈んでるかは突っ込まない方が良いわよね!」

「えぇ。突っ込んだら置いて行くわ」

「自分で帰れないのにそうやって置いて行くの、本当にすごいと思うの」

 

 二人はそんなことを言いながら、サーヴァント狩りへと向かうのだった。




 寝て起きたら終わっていた第一戦後半。皆本気すぎません? 気付いたら全滅してましたよ?

 しかし、アタランテさんはクリティカルバスターさえ入れば1ターン、スパルタクスとフランはほぼ確実に1ターン、運が悪くて2ターン。割といけるなこれは(キリッ


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あの量を平日の昼にやらせるもんじゃないと思う(超ギリギリじゃないですかね、アレは)

「怖い怖い怖い。本当に終わるの? コレ」

「昼のアレは怖かったわね……ギリギリだったし……」

「アレって、本当に終わったの?」

 

 昼。11時55分時点で残り二万体が二組だったのだが、本当に終わったのかと言う疑問が残る。攻略速度的に行けるような気もするが、どうなったかを見たわけではないので、確証はない。

 とにかく、今は復活してきたシェイクスピアが辻バイカーに轢かれて消えたので、おかげでセイバー二人とライダーだ。

 

「ふふふ……うふふふふ……!! 私の時間ね!!」

「あぁ、その、うん。えっとね……すまないさん以外にはちょっと活躍できないかなって……」

「……興味が失せたわ。城に戻ってるわね」

「一瞬過ぎない!? 見ていてくれるだけでもいいんだよ!?」

「嫌よ。だってここ、襲われるもの」

「大丈夫よ、エウリュアレさん。だって、私がいるもの!!」

「アビーも、その……バーサーカーいないし、あんまり活躍できないかなぁって……」

「……お城でお茶会しましょう、エウリュアレさん」

「あっ、誰も残ってくれない感じですね!?」

 

 笑顔で城へ戻ろうとするエウリュアレとアビゲイルを必死で引き留めるオオガミ。

 近づく途中にアビゲイルが足払いや拘束など妨害を仕掛けていたのだが、自然に回避していくので、止めきれなかった。

 

「もう……どうしてそう、必死で止めようとするのかしら」

「流石に一人は心細いと言いますか、うっかり殺されかけないと言いますか……」

「他にも人がいるでしょ? その人たちに頼みなさいよ」

「バッサリ見捨てて行くね!? 泣くよ!? 鬱陶しいくらい泣くよ!?」

「あぁもう、面倒ね。そんなにいて欲しいの?」

「イエス!!」

「そ、即答ね……本気すぎない?」

「悲しいけど、頼れる人誰もいないしね」

「じゃあなんで私たちのやる気を削る様な事を言ってるのよ……」

「わざと言ってるつもりはないんだけどね……?」

「尚更悪いわ。とりあえず、見ているこっちが悲しくなるから、その手を放して」

「うぐっ……了解です……」

 

 掴んでいたエウリュアレとアビゲイルの腕を離すオオガミ。

 妙にアビゲイルが楽しそうなのが気になるが、今は気にしないことにする。

 

「まぁ、別に本気じゃないわよ。ただ、こっちにはお菓子くらいありそうじゃない? ちょっと冒険してみようかと思って。本気で行くつもりなら、歩かないでアビゲイルに門を開いてもらうもの」

「……もしかして、エウリュアレさんって、私の事を移動を便利にする人として扱ってたりする……?」

「あら。そんなわけないわ。そのつもりなら最初から扱いが違うわ」

「うむむ……どこか納得いかないのだけど……」

「気にしない方が良いわ。さて、とりあえず、あの竜殺しから始末していきましょうか」

「了解っ!」

 

 そう言うと、不満そうなアビゲイルを連れて二人はジークフリートを倒しに行くのだった。




 ライダーを1ターンはちょっと想像できないので、アストルフォは放置の方向で(キリッ


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コインは終わったんですよ(それ以外が終わってないでしょう?)

「むに~」

「むぃ~……」

「……何やってるのよ、貴方達」

 

 楽しそうにアビゲイルの頬を引っ張るオオガミ。

 エウリュアレはそれを見て、呆れたような顔をしていた。

 

「いやぁ……アビーの頬を引っ張るのが楽しくて……」 「アビーの表情が死んでいるのだけど、大丈夫かしら……」

「……まだ殴られてないから平気だと思う」

「殴られるレベルは、アウトを通り越したアウトなのだけど」

 

 やれやれ。と首を振るエウリュアレ。

 だが、オオガミは一向に止めそうにない。

 

「ふにふにで柔らかい、餅のような感触のアビー。エウリュアレも触ってみる?」

「いいえ、別にいいわ。だって、いつでも触れるもの」

「ぐぅ……同性お姉さん系立ち位置の特権行使……! しかも、慕われているというのが合わさり、最強に見える……!!」

「貴方のそれは、マスターという立場を使ったパワハラ?」

「合意の上だよっ!」

「もう一度言うけど、目が死んでるのだけど」

 

 それもそうだろう。なんせ、アビゲイルの頬で遊び始めてからかれこれ30分ほど経っているのだ。想像斜め上過ぎて、遠い目をしてしまうのも仕方ないだろう。

 

「はぁ……いい加減、離してあげなさいよ。暇なら探索すればいいでしょ?」

「うむむ……仕方あるまい。何時までも触っていたいけど、やり過ぎると殺されてしまいそうだからね……止めるとします」

 

 そう言って、手を離すオオガミ。

 解放されたアビゲイルは、涙目で頬をさすりながら自然な動きでエウリュアレの後ろへと逃げ込む。

 

「……自然と逃げられた……」

「当然でしょうが。自分がやったことを省みて言いなさいな」

「うん、まぁ、そうなんだけど、エウリュアレに言われると納得いかない」

「ここから落とすわよ?」

「空中庭園ですよエウリュアレ様! 流石に死にます!」

「えぇ、そうね。それがどうしたのかしら?」

「うん、悪魔の微笑み!」

 

 とても楽しそうに笑うエウリュアレを見て、オオガミも思わずにっこり。その目には涙があったような気もするが、誰も気にしない。

 

「まぁいいわ。とりあえず、マスターは周回に行って。コインが終わったからって、素材の回収は終わってないわよ?」

「了解ですっ! 即座に行って参ります!」

 

 そう言うと、オオガミは走っていき、すぐに見えなくなる。

 エウリュアレはそれを見てため息を吐くと、

 

「全く。マスターもマスターだけど、アビーもアビーよ。あんな表情になるまで引っ張られ続けなくてもいいのに」

「その、なんていうか、マスターが凄い楽しそうで、止めるタイミングを逃しちゃったの……正直、エウリュアレさんが止めてくれなきゃ永遠やってたかもしれないわ……」

「……そうなの。まぁ、あっちはあっちで止めるタイミングを見失ったようにも見えたけどね……どっちもどっちかしら。とりあえず、追いかけましょうか」

 

 エウリュアレはそう言うと、アビゲイルを連れてオオガミが去っていった方へと歩き始めるのだった。




 うぅむ、後は素材集め……長い戦いになりそうだぜぃ。


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唐突な欲求ってあるよね(一応言っておくのだけど、ここは敵地のど真ん中だからね?)

「ハッ! ハニートースト……!!」

「突然どうしたのよ美味しそうだから作りなさい」

「な、流れるように注文するのね。エウリュアレさん」

 

 突発的に何かが舞い降りてきたオオガミの呟きを聞き逃さず、そのまま注文するエウリュアレ。

 アビゲイルはそれを見て苦笑いになる。

 それもそうだろう。まさか、敵地のど真ん中でこんな会話をするとは思わない。

 

「あぁぁ、いや、でも……食材も器具もない……」

「うぐぐ……私のハニートースト……! お願い、アビゲイル!」

「えぇぇ!? 本当にここで作るの!?」

「当然じゃない。それまで守りきるのが私たちの役目よ!」

「作り終えたら誰が守るんだろう……」

「そんなの、その時考えればいいわ!」

「それ、絶対私が頑張る事になるじゃない……!」

 

 半泣きになりながらも、必要になるだろう素材を門を使って城から回収するアビゲイル。雑に放り込まれているが、落ちる前にオオガミが拾っているので問題ない。

 

「……パン一斤?」

「ナイスアビー! これでオッケー!」

「絶対大きすぎると思うのだけど! 本当に大丈夫!?」

「エウリュアレ用だし、よゆー!」

「エウリュアレさん用だと良いの!?」

「マスター。後で憶えてなさいよ?」

「ひぇ……」

 

 エウリュアレの威圧に気圧されるオオガミ。

 とは言いつつも、回収した食材や調理器具を整頓して、ようやく調理に取り掛かる。

 

「ふっふっふ。気合で30分で終わらせるね」

「15分で作って」

「んな無茶な!?」

「じゃあ20分」

「ぐぬぬ……気合で出来る範囲で頑張るぞオラー!」

 

 張り切って作り始めるオオガミ。

 食材や器具を回収していたアビゲイルはすでに疲れているような雰囲気だが、隣にいるエウリュアレが楽しみにしているのを見て責めるにも責められない。彼女自身も楽しみにしているので、尚更なのだが。

 

「あぁ、楽しみね。でもとりあえず、邪魔させない様に潰さないとよね」

「一人残らずこの先には行かせないわ。そのせいで私が取ってきたものを台無しにされたら困るもの」

「ふふふ。ハニートーストは誰にも渡さないわ!」

「トッピング用の食材が無かったことの恨みをここで晴らすわ!!」

 

 お怒りなアビゲイル。事実、オオガミが手に入れた食材にはトッピング出来る物はほとんど無かった。

 エウリュアレはそれを聞いて一瞬動きを止めたりしていたが、気にしない。

 

「ふ、ふふふ……ありえないわ。トッピング無しとかどうかと思うのだけど」

「……いえ、まぁ、一応アイスクリームとかは見つけたのだけど、それ以外は無かったって話よ?」

「そう……とりあえず、敵は全滅させておきましょうか」

「アッ……了解デス」

 

 少し不穏なエウリュアレの笑みを見て、思わず片言になるアビゲイル。後ろではオオガミが張り切っているので、二人は防衛戦を始めるのだった。




 女神さま、ブレない。とはいえ、どうやってトースト作るんだろう……予定していたカルナがいなくなったし……うむむ……


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二度ネタ禁止っ!(でも、それは流石に食材が用意出来ないわよね)

「ハッ! 柏餅……!」

「それは明日よ今から準備しなさい」

「二日連続同じネタはどうかと思うの!」

 

 オオガミの後頭部を叩きながら突っ込むアビゲイル。

 昨日も同じような流れで大変なことになっていた彼女としては、本気で止めようとしていたりする。

 

「ぐふぅ……致命の一撃だよこれは……」

「普通に痛そうよね……まぁ、柏餅に関してはそもそも食材が集まりそうにないから別にいいのだけど」

「よ、よかったわ……また取って来いと言われたら困ったもの……どこを探せばいいのかしら」

「ちょっと別の世界まで?」

「そんな無茶苦茶を……いえ、エウリュアレさんなら言うと思ったわ。えぇ」

「流石に言わないわよ。だって、それをすると私が一人で戦う事になるじゃない」

「あぁ、そうよね。エウリュアレさんはそっちの方が嫌よね」

「それにほら、あの大きい球体とか、どう見ても性別無いから天敵ね。男性じゃないならお帰り頂くわ」

「逆に男性だったらよかったのかしら……?」

 

 男性以外には妙に弱気なエウリュアレ。あくまでも戦闘面の話ではあるが、本気で苦手なのはわかっているのでアビゲイルは特には何も言わない。

 

「はぁ……まぁ、あの大聖杯とか言うのは面倒だもの。サーヴァント召喚とか、ふざけてるわよね」

「ここ、大聖杯の内部だったと思うのだけど。大聖杯内部で大聖杯……デタラメね……」

「自分の力を使って自分を顕現とか、不思議ね。弱体化は絶対すると思うけど、量産速度に関しては想定外よね」

 

 大聖杯の数だけ生成されるサーヴァント。とは言うが、召喚されようが一撃で消し飛ばしてしまえば関係ない。ついでによく分からない理論で幻影召喚は出来るので問題無かったりする。

 

「うごご……バーサーカー相手なら無敵を誇るアビーちゃんがいるので問題ないけど……」

「……あと一時間追加で寝てなさい」

 

 倒れているオオガミの頭を勢いよく踏んで気絶させるエウリュアレ。何か気に入らないことがあったのだろうが、正確な事はきっと本人以外には分からないのだろう。

 とはいえ、セイバー相手にすら二分の一でしか活躍できないエウリュアレである。バーサーカー相手にも同様と言うのが悔やまれるが、それでもかなり戦える方だろう。

 

「ふ、ふふふ。どう考えても私に対して悪意があるわよね? えぇ、えぇ。でも、今はもうセイバーもバーサーカーもいないから私もアビーも役に立たないわね。って事で、全面で壁になりなさいマスター」

「気絶させておいて壁にする……まさにエウリュアレさん……!!」

 

 残酷すぎる宣言。明らかに楽しそうなので少し怖くなるアビゲイル。

 不気味に微笑むエウリュアレはそのまま大聖杯に向かっていく。置いていかれると一人で心細いので、アビゲイルもついて行くのだった。




 柏餅……流石に、手に……はい……らない気がするんですよねぇ……
 これは今年のイベント食材不足の危機……


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交換素材は終わった(本番はここからかもしれない)

「ハッ! 素材交換が終わった……!!」

「QP回収がまだ残ってるわよ早く回りなさい」

「もうリンゴがほとんど無いのだけど!?」

 

 流石に周回用資源が枯渇してきているので、周回速度がゆっくりになっている。素材もそれほど急いでいる物は少ないので、問題ないだろうと慢心中のオオガミ。

 しかし、カルナの落とす骨は枯渇気味なので貰っておいて損はない。現状一番欲しいのは貝殻だったりするが。

 

「リンゴ、足りないのよねぇ……どうしようか……」

「フリークエスト温存してるから、後で回収してくるしかないわ」

「うへぇ……フリークエスト周回もあるんじゃぁ……」

「そっちは林檎を使うつもりもないし、回収だけしていきましょうか」

「まだミミクリー終わってないのだけど」

「圧倒的絶望感」

「素材とQPを貰いながらゆっくり倒していけばいいんじゃないかしら?」

「まぁ、配布サーヴァント交換と言うラスボスが残っているっていうのは、きっと突っ込んじゃいけないわよね。交換終わってないわよ、とか、言っちゃだめよね」

「一つ分かったことは、たぶん今回の苦労人はエウリュアレかな」

「私が一番面倒ごとをやらされてた気がするの……」

 

 気苦労担当エウリュアレ。実労働担当アビゲイル。そして料理担当オオガミ。正直オオガミが一切働いていないように思えるのだが、壁にされたり死と隣り合わせの状況で料理させられたりしているので、きっと働いてはいるのだろう。

 

「……今気づいたのだけど、会話のキャッチボールが一切できてないと思うのだけど」

「……皆、疲れてるんだよ。うん」

「もう、誰かに投げて今日は休みましょう……絶対皆疲れてるって……誰か引きこんで押し付けるのとかどうかしら」

「アビーがおかしくなってきた……!!」

「大体最初からでしょ?」

 

 会話が二転三転としていき、もはや方向性すら掴めなくなってきている会話。誰が何を話しているのかすら互いにあやふやになってきているので、そろそろ末期かもしれない。

 

「……数日休んでいいですかね」

「失踪の元だと思うの」

「私もそう思うわ」

「やはり休みは無いのね……」

 

 今休んだら迷うことなく忘れ去りそうな勢いなので、ショックを受けつつも予想はついていたオオガミ。

 ため息を吐いた後に一度深呼吸をすると、

 

「さて。じゃあ、後少し。ラストスパートかけようか」

「明日には終わるわよね。気楽に行きましょうか」

「ファイトー、オー!」

 

 空元気で駆け抜ける勢い。疲れを覆い隠すように笑いながら、彼らは戦いに赴くのだった。




 リンゴが無くて周回できないぃ……どうすんじゃこれぇ……

 というか、そろそろ話が頭の中でまとまらなくなってきた……ネタ切れをネタにし始めたら末期だと思うんです(真顔


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レイド戦? ちょっと知らないです(とにかく私は帰ってきたんだぁぁ!!)

「ふ、ふふふ、ふふふふはははは!! ただいまマシューーー!!!」

「うわぁぁぁ!!」

 

 跳びかかってきたオオガミを反射的に盾で殴り飛ばすマシュ。

 狭い車内をそこら中にぶつかりながら転がっていくオオガミ。

 

「ハァ……ハァ……! 一体どうしたっていうんですか。思わず全力で殴っちゃったじゃないですか……」

「うん……全力で殴り飛ばすマシュは、なんというか、流石と言うしかないです……」

「目覚めたばっかりの相手に盾で殴りかかるとか、容赦ないわね……」

「流石マシュさん。危険人物第一位ね」

「……もしかして、カルデアとは危険なのだろうか……」

「いえ、カルデアが危険と言うより先輩が危険――――あの、どちら様ですか?」

 

 聞きなれない声に反応して、声の主を確認するマシュ。

 

「あぁ、すまない。挨拶が遅れた。ジークだ、よろしく頼む」

「ジークさんですね。あはは。お見苦しい所をお見せしちゃいました。今片付けますね」

「片付けると言って、マスターを引きずっていくとは、流石マシュね。完全に邪魔者扱い……」

「昏睡から目覚めてすぐにマシュさんに跳びかかるのも問題だと思うの。マスターもマスターね」

「……やはり、危険なのではなかろうか……?」

「わりと日常よ。慣れた方が良いわ」

「そうか。では、頑張ってみる」

 

 生真面目なのか、真面目なのか。とはいえ、慣れる慣れないは頑張ってどうにかなるようなものでもないと思うので、エウリュアレは黙っておく。

 アビゲイルは楽しそうに笑っているので、きっと何かやるつもりなのだろうと予想するエウリュアレは、最終的にオオガミに投げればいいかと思い、見なかったことにした。

 

「というか、今更だけど、悲鳴が『うわぁ!』ってどうなのよ。普通『キャァ!』とかじゃないの? 僕の可愛い後輩は『うわぁ!』派なの?」

「……貴方、面倒な性格しているわね」

「咄嗟の叫びをコントロール出来るものなのだろうか……」

「そこじゃないです。どうしてその悲鳴を求めてるかが問題なんです。先輩。とりあえずシャドウ・ボーダーの外にぶら下げる感じでいいですかね?」

「あっ。マシュの殺意が本気を物語る。これは死んだな」

「マスターは加減を知らないからこういうことになるのよ。縄は用意できてるわ!」

「一体今の一瞬でどこから持ってきたんだ!?」

 

 瞬時に取り出された縄を見て困惑するジーク。

 取り出された縄と殺意高めのマシュが合わさることによって死告天使が舞い降りそうなオオガミ。

 エウリュアレはその状況を見て、

 

「じゃあ、マスターを縛り上げましょうか」

 

 面白そうな方へ手を貸すのだった。




 極地用礼装なら生き残れますよね、たぶん!

 そしてあんまりジーク君が話に入れなかった……いえ、未だに登場してないアナスタシアよりはマシかもしれないけど……


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お菓子の為に動くのはいつもの事(珍しくエウリュアレが原因だね?)

「ふぅ……酷い目に遭った……」

「本当に無事で帰ってきたのかっ!」

「開幕酷い言われよう!」

 

 驚愕の視線でジークに見られたオオガミは、想定外過ぎて半泣きになる。流石のオオガミも、純粋な言葉には弱いらしい。

 

「なんというか、想像通りだけど、信じたくないわよね……」

「マスターの人外っぷりが加速してるわね……」

「先輩。いつになったら人間になるんです……?」

「最初から人間ですけど!?」

 

 まるで最初から人間ではなかったような言われように驚きを隠せないオオガミ。

 マシュ達が、『またまた。ご冗談を』とばかりの笑顔を浮かべているので、ジークも人外説を信じそうになっていて不安しかない。

 

「はぁ……なんというか、どんどん人外みたいに言われている……」

「事実、スペックがぶっ壊れてるじゃない。体力とか、色々と」

「否定できないのが悲しい……」

「ふと思ったのだが、これが普通だったりはしないんだな?」

「これが普通だったら英霊の立つ瀬がないのだけど」

「英霊に匹敵するの、本当にどうかと思うの」

「英霊に匹敵するマスターとは一体……」

 

 とはいえ、言っているジークもジークだったりするのだが、それはそれ。気にしてはいけないのだ。

 

「そういえば、マスター。もう料理とか作らないの?」

「え? おやつは作ってたはずだけど……」

「えっ?」

「えっ?」

「え、私、食べてないのだけど……?」

「んん……? エウリュアレ……?」

「……私は知らないわ」

「彼女は受け取った後隠れて全て食べた後、片付けていたが」

「ちょ、見ていたの!?」

「エウリュアレ~?」

「わ、私のおやつは食べられてしまっていたのね……?」

 

 しくしく。と泣いているアビゲイルを見て、少し苦い顔になるエウリュアレ。

 そして、エウリュアレはオオガミの方を見て、何とかしろと言わんがばかりの視線で見てくる。

 

「あ~……ん~……トゥリファスで手に入れてきたのがあるし、クッキーでも作りますか。アビー、手伝ってくれる?」

「むぅぅ……分かったわ。とはいっても、何をすればいいのかしら?」

「とりあえず、ミレニア城塞にもう一回かな……器具がね……揃ってるからね……」

「分かったわ。私のクッキーの為に、レッツゴー!」

「そういえば、俺の宝具レベルがまだMAXじゃないな……素材が不足しているのなら、ついでに手に入れて来ようか」

「エウリュアレさんも行ってきますか?」

「うぐっ……えぇ、行くわよ。大体私のせいだしね」

 

 アビゲイルが開いた門に、次々と入って行くオオガミ達。

 それを見送ったマシュは、

 

「次のイベントでは私も参加できますかね……」

 

 そう呟くのだった。




 実はひっそりと終わってないジーク宝具アップ。残るはヒポグリフとチョーク。ともに200……さっくり終わるはずだったんですけど……


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一体何度目の高高度逆さ吊り(あなたの罪の数の分だけ、かしら?)

「ふふふ……今日のおやつはマドレーヌ~」

 

 すこぶる上機嫌なアビゲイル。

 それを見て、エウリュアレは遠い目をしながら、

 

「今日のはアビー優先よ。えぇ、私が悪かったわよ……」

「珍しくエウリュアレが反省してるっていうかやさぐれてるっ!」

「マスター。後で空中庭園ね」

「未だ残ってるからってそこに呼び出して何をするつもりですかね!?」

「それは当然、分かりきってるじゃない」

「もう高高度逆さ吊りはこりごりなんですけど!」

「じゃあ発言には気を付けなさい?」

「それは無理!」

「じゃあ諦めなさい」

「そんな非情なっ!!」

 

 許されないオオガミ。自覚があっても止められない止めない止めるわけがないという、自重しないスタイル。

 エウリュアレもそれを分かっているので、言うには言うが、治るとは一切思っていない。

 

「うぐぐ……カルデアにいる頃からお菓子を作ったりしてたのに、なんで逆さ吊りにされるんだろ……」

「普通に、自分の普段の行いを振り返った方が良いと思うの」

「……アビーに言われると、妙に精神がやられる……」

「不思議なのだけど、私に言われても精神ダメージ受けないのに、アビーだとダメージ受けるっていうのは納得いかないんだけど」

「エウリュアレはほら……そう言う系だし」

「そう言う系って、どういう意味かしら……凄い不満なのだけど……」

「エウリュアレさんは精神攻撃系って事ね!」

「外宇宙的なアビーの方が絶対危険な気がするのだけど……」

「アビーはねぇ……侵食してくるよねぇ……」

「酷いわ。まるで私が侵食して内部から洗脳しようとしてるみたいだわ」

「大体あってる」

「前に洗脳って言いかけてたというより、もろに言ってた子が、どうしてそう思われてないのかと不思議なのだけど」

「何というか、大変なんだな、マスターと言うのは」

 

 どこからか現れるジーク。先ほどまでは何かを取りに行っていたらしくいなかったのだが、戻ってきたみたいだ。

 

「ジーク、何時の間に戻ったの?」

「今戻って来たばかりだ。きっと必要だろうと思って、いくつか食材も持ってきた。これで大丈夫だろうか?」

「どれ? あ~……全然大丈夫。ある程度なら新所長に回復してもらおう」

「お肉を一瞬で霜降りに変えるお肉魔術、凄いわよね。マスターも使えるようにならないかしら?」

「おっと。アビーの無垢な視線が心に刺さるぞぅ?」

 

 本当に無垢な視線だろうかと突っ込みたくなったのが二名ほどいた気がしなくもないが、そんなことはお構いなしなアビゲイル。向けられている本人がそう思っているのだから、それが正解だろう。

 

「まぁ、あの魔術は新所長のアイデンティティーだからね。奪うのはいけないんだよ」

「マスターの場合、覚えるのが面倒なだけにも思えるけどね?」

「うぐっ……ま、まぁいい。とりあえず、完成したマドレーヌから運んでいこう……アビー、手伝って?」

「分かったわ!」

 

 強引に話を逸らし、オオガミはアビーと共に逃げるのだった。




 啓蒙が高まりそうなアビーの侵食。彼女はきっと、某ゲームをやると聖杯地下暮らしをすることになるのだろう……私、血晶石厳選とか、やったことないんですけどねっ!


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ようやく宝具5になった~!(宝物庫入りの未来はほぼ確定の模様)

「ふむ。これが宝具5か……あまり実感はないが、今までよりはマシになるはずだ」

「よぅし、ようやくだね。とは言っても、レベルが上がってないからもうしばらく待機かな?」

「そうか。それなら仕方ない。裏方に回るとするさ」

 

 そう言って、アビゲイルと共に運んできたチョークを綺麗に整頓し始めるジーク。

 今まで、わりと出番を寄越せと叫ぶサーヴァントが多かったせいで、素直に裏方に回ってくれたジークに感動を覚えるオオガミ。

 

「あぁ、これでマシュの一人きり荷物整理が終了するのか……」

「貴方……マシュに全部任せるのはどうかと思うのだけど」

「エウリュアレの正論が耳に痛い……!!」

「マスターも、時間があれば手伝っていたけれどね?」

「いえ、基本気分屋だから、気が向いた時以外やらないわよ?」

「ここ最近は良く手伝ってるけどね。まぁ、流石にイベント中はあんまりできないけどね?」

「誰かが交代しながら手伝ってたりしたけど、今はそもそも人数が少ないしね。手伝ってくれる人が増えるのは良い事だわ」

「役に立てるのならそれに越した事は無い。どこまで出来るかはわからないけど、精一杯やってみせよう」

「将来的には宝物庫周回があったりするのだけど……いや、しばらくは無いし、問題ないね」

「一体何があるのだろう……」

「いずれ分かることになるはずよ……知らない方が良いこともあるけどね」

「エウリュアレさんって、人を不安にさせたがるわよね……えぇ、私は不安になら無いけどね!」

「貴女は何と張り合ってるのよ……」

「まぁ、楽しそうだし良いんじゃない?」

「流石にとんでもないようなことではないだろう? その時が来たら悩むことにするよ」

「そうね。それが一番じゃないかしら」

「不安を煽るだけ煽って放置するエウリュアレさんに対して、あまり気にしてなさそうなジークさん……相性良いのかしら?」

「ある意味悪いと思う」

 

 平然としているジークに対して、不満そうなエウリュアレ。相手が戸惑っているのを見るのが楽しみなエウリュアレからしたら、ある意味天敵である。

 

「まぁ、これで交換終わったし、後は素材を回収するための周回かな?」

「面倒よね……まぁ、私は見ているだけなんだけど」

「エウリュアレさんのその逃げる速度、流石だと思うの」

「事実なんだけど、なんとなくダメ女神な気がしてくる」

「駄女神?」

「アビー。後で覚えてなさい?」

「ひぇ……」

 

 地雷を踏み抜いてしまったアビゲイル。エウリュアレの笑顔が怖く見えるのは、最近よくあることだったりする。

 なので、アビゲイルはオオガミと共に逃走を図るのだった。




 あれ……なんとなく、最近この二人、結構逃げてる気がする……気のせい……?


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マシュさんパネェです(あの目が怖いのよね……)

 もぐもぐとパンケーキを食べているアビゲイル。

 本日のおやつは、つまりそう言う事である。

 

「ねぇマスター? ジークさんをシャドウ・ボーダーに送って、本当によかったの?」

「ん? そりゃ、後こっちでやることは少ないし。向こうでマシュの手伝いをしてもらってた方が良いかなって」

「ふぅん? まぁ、マシュの方が私たちより大変だしね。マスターが雑に素材を送り込むから、いつもマシュが大変なのだけど」

「なんでエウリュアレがマシュの仕事を知っているのか……」

「たまに手伝わされてるから……」

「女神すら使うマシュさんマジパネェ」

 

 マシュの行動が最近文字通り神をも恐れぬ行動を平然としているので、不安なオオガミ。そのうち殺されそうなのだが、たぶん大丈夫だろう。きっと反逆しに来た神々すら手のひらで弄びそうな勢いなのだから。

 

「マシュさん、最近凄い怖い感じがするのだけど……なんというか、有無を言わせない凄みがあるというか……」

「あの目で見られると、精神を揺さぶられるというか……拒否できないのよね……」

「マシュ……いつの間にか凄い子になって……いや、うん。もうちょっと手に負えないですね」

「貴方の後輩でしょう? 何とかしなさい」

「マシュさんを止めてくれないとそのうち重労働の未来が……あれ、今もあまり変わらないような……?」

「こっちの方が気が楽だけどね……敵を倒していればいいだけだし」

「マシュさんの方は、物を整理したり、記録したりだものね……あれはちょっと、精神的に疲れちゃうわ」

「なんだろう、そろそろマシュが怖くなってきたんだけど、どうやって休ませよう……」

「貴方が全力でマシュの仕事を奪う勢いで全部やればいいと思うけど」

「……一人でできる気がしないから、手伝ってね!」

「最初の一日だけ手伝ってあげるわ」

「触手は貸してあげるわ!」

「うん。あんまり協力的じゃないことだけは分かった」

 

 少し寂しいオオガミ。それだけでどれだけ面倒な仕事なのかが分かるので、自分が何をやっているのかが何となくわかって来た。

 

「というか、触手を貸し出してもらっても、どうやって動かせと……?」

「気合で何とかなるわ!!」

「交信しろって事かな……?」

 

 努力でどうにかなるようなものなのだろうか。と疑問に思うが、アビゲイルのドヤ顔を見て、何とかならなかったらお菓子で釣ろう。と思うのだった。

 

「まぁ、とりあえず、今はこっちだね。明日謎解きイベントがあるとか知らない」

「あぁ……推理、苦手なのよね。分かってるわ」

「頑張っていきましょうね、マスター」

 

 現実から目を逸らそうとするオオガミに、笑顔でそう言うエウリュアレとアビゲイル。

 どうやらイベントには強制参加らしい。オオガミの平穏は訪れそうになかった。




 神すら従わせるマシュの目力……


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虚月館殺人事件
謎解き、開始!!(まだ事件は起こってないんだよねぇ……)


※ イベントのネタバレがあるよ! 作者の個人的推理も入ってたりするので、気にしない方はどうぞ!!


 数々のミステリーは、数々の名探偵によって暴かれてきた。

 しかし、はたして巻き込まれたこのポンコツ体力バカで有名なアホマスターが謎を解決できるのかと言うと、大変難しい。

 

「……犯人は俺……?」

 

 こんなことを思った時点で、もう手遅れな気がしてくる。

 そも、まだ殺人事件が起こったわけではない。名誉毀損とか、傷害とか、子供のいたずらによるわりと大きな事件があったとしても、とりあえず事件は起こっていないのだ。

 

「マシュの書いてくれた図は有効活用したいけど、夢の中じゃ見られない。諦めて地道に解いていくしかないけど……起こってない事件の犯人を推理とか、中々斬新じゃない?」

 

 余計なことを考え始めるオオガミ。

 とはいえ、あの場にエウリュアレが混ざっているということは、かなりの美人か、極度の気分屋。最近苦労人のイメージが出てきているが、本来の彼女はそういう英霊だったはずだ。

 同様に、ステンノが反映されているという事は、二人の元になった人物はとてもよく似ていて、且つ美人。で、姉の方は冷酷と言うより、話していた感じ、きっと感情と理性を割り切れる人物なのだろう。

 

「ただ……新茶さんが採用されてる時点で、あの医者さんめっちゃ信用ならないんだけど……」

 

 個人的に主治医が気になって仕方がない。個人的に医者は何かを隠しているので、大体信用ならないのだ。

 信用ならない、という点では、曰く乗り移った対象であるこの体の持ち主が気絶する原因になっていたのは、あのメッフィーである。

 実際、とんでもない爆弾を主人公の頭にぶつけてくれたわけだ。ボールを頭に当てて、転倒させた上に階段から滑り落とすとは流石としか言いようがない。それに対して一切怒らないのもどうかと思うが。

 

「……そう言えば、ランスロットと頼光さんが夫婦って、どうなんだろ……」

 

 ランスロットは父親として最悪と言うイメージしかないのだが、実際のところ何をしたのかはあまり知らない。

 頼光も同じで、カルデアで超絶お母さんをしていた覚えしかないのだが、今回の役割は子供溺愛お母さんという役割なのだろうか。

 

「あ~……ただ、モーさんは性別反転しただけな感じが凄い……アレは完全にモーさんだよね……」

 

 粗野で暴力的。とはいえ、今回悪かったのはこちらなので、あまり言えない。モーさんに見えるからモーさんだとは言えないというわけだ。

 その父親であるフィンは、やはりあまり知らない。一応霊基登録はされているし、カルデアにもいたが、ほとんど関わらなかったので知らないのだ。

 また、妻がマリーと言うのは、金遣いが荒いという示唆か、美人と言いたいのか。自分の子供に甘いというのもあるのかもしれないが、まだ真相は分からない。

 また、その二人の子であるバニヤンは、無垢という意味合いで採用されたのだろう。流石に、巨大化したり木を切り倒すのが趣味と言うのは無茶があるはずだから。

 

「マーブル商会は……カオスだよね」

 

 ジャガ村さんに新シンさん。そして我が家の単体最強火力ベディさん。この三人がメインではあるが、信用第一の商会という事は、殺人事件など起こしたら信用は一気に失墜するので、ほぼないと言ってもいいだろう。

 だが、無いとは言い切れないのも不思議なモノで、信用第一の商会でもやる時はやるのだ。一番可能性が高いのは新シンさんか、ベディさんか。

 

「……まぁ、事件が起こるまでどうしようもないね」

 

 一人、そう頷くと、とりあえず事件が起こるのを待つのだった。




 個人的には、主人公、新茶、ステンノの順番で疑ってたり。とりあえず第一被害者はモーリスでいいんじゃないかな。何となく最後まで生き残りそうだけど、納得いかないので最初の被害者になってください(キリッ


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第一の殺人!(何やってんだよ探偵!!)

※ 本日もまた、ネタバレと作者の個人的考察が入っています! 気にしない方や、もう読んでいる方はお楽しみください!


「あぁ、全く予想だにしなかったよ!」

 

 想像斜め上の殺人。一体何人が予想できたのかと聞きたいほどの被害者。

 17行ほどの出演なので、なんで登場させたのかと問いたくなってしまうが、ミステリーに探偵は必須なのだから仕方ない。

 

 しかし、殺人事件最初の被害者に選ばれると言うのは確かに不思議だった。

 推理ものにおいて、最も死ににくいはずの探偵。だが、今回においては一瞬だった。本当に何もせずに退場した。

 

「ん~……けど、本当に死んだのか怪しいところだけど……」

 

 検死もされて脈も無かったとは言っていた。触れずに検死できるのは流石だと思う。

 とはいえ、左利きの人物が最後に探偵と会っていたという事だ。

 しかし、思いつくのはモーリスくらいだった。右手を怪我していたにもかかわらず翌日には平然と食事を出来る。それはつまり、左利きという事だろう。

 

「うん、まぁ、問題は、母親が奔放って所だよね」

 

 主治医に明かされた衝撃の事実。奔放の場合、真っ先に思いつくのはエウリュアレだ。頼光さんは奔放とは言い難い気がする。あれは……やはり、母性の塊と言うべきだろう。

 しかし、そうすると、ハリエットがジュリエットの母となる。

 

「しかし、クリスさんはどうして探偵が死んでいると確信したんだろ……」

 

 倒れているのを見ただけなのか、それとも触れて確認したのか。だが、移動時間を含めると、悲鳴までの感覚が短い。となると、見ただけで死んでいると思ったと考えるべきだろう。

 また、伍さんも、見ただけで手遅れだと断じた。自然死に見えなくもない毒殺なのだから、ハッキリと死んでいると断じられるのはいかがなモノだろう。普通は見分けられないと思うのだが。

 ただ、普段ドンパチやっているようなので、おそらく数々の死体を見てきた経験則みたいなものだろう。

 

「そう言えば……どうしてモーリスはドロシーを左利きだと言ったんだろう……」

 

 人が死んだというのに、自分を産んだ母とは違うとはいえ、冗談でも犯人と疑われるような事を言うだろうか。

 それに、彼女は前日にネックレスで騒いでいた。つまり、騒ぐほどの物なのだろう。ネックレスも、物によっては収納できるものもある。

 つまり、彼女が犯人と言う可能性も出てきているわけだ。

 

「可能性はあるけど、確証はない……な。どうしたものか……」

 

 事件はまだまだ続く。朝食を食べて四時間という事は、次はきっと昼食前後くらいの目覚めだろう。

 

 今頃エウリュアレとアビゲイルはどうしているだろうか。そう思いつつ、次の目覚めを感じるのだった。




 何やってんだよホームズ!!
 とはいえ、ついに起こった殺人。語り部は本当に安全なのか。プレイヤーが見ていないところで動いている可能性も捨てきれないんですが、さすがにそれはないよなって信じたいです。

 とりあえず、現状の私の犯人予想はドロシー、モーリス、伍さんですね。まぁ、動機は一切わからないんですけど。推理ものを推理しないで見る人が考えるもんじゃないですよね!!(ドヤァ


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ガバ推理三本目!(疑ってたのが消えると困惑するよね)

※ お察しの通り、今回もネタバレあります! もはやガバ推理過ぎて当たる気しなくなってきましたけどね!!


「さて、今日の推理だね」

 

 案の定、最後の密会者はモーリスだった。

 ただ、そのまま失踪されたのは想定外なのだが、ただ、二家の合併を阻止したいのなら、確かに繋がりになるだろう人物を消すのは正しい。

 しかし、ローリーの証言は失踪したモーリスを疑えと思わせる様なもの。また、ネックレスの時もそうだが、妙にローリーがきっかけに事が動いているような気がする。

 

「そういえば、ケインとローリーは仲がよさそうだよね?」

 

 意外と仲がよさそうな二人。更に言えば、繋がる直前に気絶していたのは、ケインのボールが原因だ。

 とはいえ、ケインがこういうことをして、得があるかは怪しい。

 

「しかし、クリスさんが代用されるとなると、次の標的はクリスかジュリエットか」

 

 そう思い、はたしてどうしたものかと考える。

 もしジュリエットを失ったとして、妹が代用されるのはほぼ確実。つまり、もう代用がいないであろうことに賭けてクリスを殺すしかない。

 しかし、クリスはモーリスを押さえつけたのを見た通り、モーリスや実力の知れない探偵よりはるかに強い。

 

「となると、必然、殺しやすいジュリエットが標的になるわけか」

 

 守るべきはジュリエット。だが、守るといっても、どうするべきかはわからない。

 だが、ジュリエットはホームズでいうところのワトソン役だろう。それが死ぬような事態はそうそうないが、真っ先に探偵が退場するような推理ものが、ワトソン役を生き残らせるかと言われると怪しい。

 

 それに、今のところ被害がゴールディ家のみというのも不思議だ。

 ヴァイオレット家にも被害が出てもおかしくないような気がするのだが、これからということか、それとも。

 

「なんにしても、次がどうなるかだ。現状ケインが怪しいけども、確定してるわけじゃない。一番怪しかったモーリスが失踪したしね」

 

 とはいえ、モーリスが死んだと確定いたわけではない。むしろ、失踪というのは誰にも悟られず動けるという利点がある。

 故に、未だモーリスの疑いは晴れないので、警戒のレベルは変わらない。

 だからこそ、次の被害者がどちらかというのが気になるところだ。

 

 もし今度もゴールディ家が再び被害にあったとしたら、ヴァイオレット家の方に犯人がいると考えるべきだろう。

 だが、もしヴァイオレット家のほうに被害が出たのなら、第三者の可能性も出てくるというわけだ。

 

「うん。そろそろ整理も終わった。次へ行こう」

 

 目覚めを感じ、整理した内容を反芻して次の謎へと向かう覚悟を決めるのだった。




 もう、モーリス失踪しちゃったよ。そして、ケインめっちゃ怪しいよ……ローリーの不穏さやばいよ……

 あ、オオガミ君は今日の話の最後のローリーとケインの話は観測してないので知らないという感じです。なので、一応私の現状推理はケイン、モーリスですね。ちょっとこの二人以外今は思いついてないです。


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デッド・オア・アライブ!!(もはや謎解く前に死ぬ!)

※ ネタバレ注意。謎解きって、急展開に次ぐ急展開なんですね?


「その六にしてこの進み具合……これは裏があると見た」

 

 強襲されて意識が落ちたわけだが、その程度で慌てるほど弱い精神はしていない。むしろ、戻ったらどうするかを冷静と考えるレベルだ。

 

「ただ、現状と証拠を考えても、確かにあり得そうな話だけど、どうしてここまで非常に徹することが出来るのか……」

 

 当然、それなりの理由もあるのだろう。とはいえ、見つかったときのリスクは大きい――――

 

「いや、待て。もしバレたとして、どこに問題がある?そもそも、ここを手配したのは彼ら商会。バレたとしても、全員始末してしまえば良いだけの事……」

 

 そこまで考え、ふと、彼らの商売を思い出す。

 『信用で商売』している人達だ。

 また、ここで抗争が終結した場合、抗争に必要な武力を売るという、最大の商売が消えるわけだ。

 

「さて、もう終盤に差し掛かってきているけども、全く分からないね。とりあえずアンさんを殴り倒せば真犯人かな?」

 

 もはや物理に訴えるという推理を冒涜するが如き脳筋発想。

 とはいえ、物理的に生命の危機に陥っているというのは、些か不安だ。具体的にはうっかり殺されでもしたらジュリエットを守れないわけで、あのラブコメの続きを見れなくなってしまうわけだ。

 それはちょっと解せない。そんな事態は個人的に許せない。

 というより、あの一枚絵に殺されたのが主な理由だが。

 

「さて、次の目覚めは、ベッドの上か、椅子に縛り付けか、既に首吊り状態か、海流しの刑か。理想は地下かなぁ?」

 

 というより、それが一番可能性が高そうだよな。と思いつつ、格闘できるような人間に敵うほど強くないので、普通に死ぬ。もはや逃げる事すら敵わないと思うので、諦めて悲鳴を上げつつ殺されるしかないだろう。

 正直、謎解きのなの字すらない無情さ。

 

「まぁ、探偵が被害者になるのは自然だよね!! 諦めて死のう!!」

 

 なんて言いつつ、死ぬつもりは微塵も無い。数多の戦場を越えてきた人類最後のマスターが謎解きごときで死ぬなど、あってはいけないのだ。というより、死んだら殺されそうな気がするのが不思議だ。

 

「さて、じゃあ次の謎解きと行こう。後半戦。とりあえず、目覚めたら生きるか死ぬかの戦争をしないとね」

 

 最初からクライマックス。目覚めると同時に逃げるという心づもりをしておこうと思い、状況の最終整理をする。。

 武器は持っていないはずなので、やる事はただ一つ。魔術礼装などないから全力で逃げるのみ。

 そして、目覚めを感じて、逃げる事だけを意識するのだった。




 一体これ以上どうしろってんですか。すでに死にそうなんですけど? どうするんです? 死んじゃいますよ?
 というか、状況証拠的にアンさん以外いない気がするんですけど? もはや殺人した場合の利点しか分からないですけど。もう疑い始めたら止まらない……


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ついに問題編が終わったね(さて、最後の謎解きだね)

「最後の推理の時間だね」

 

 やはり偽装だったあの探偵。なんで死んでないのかと疑問で仕方ないが、とりあえず真相解明をしてくれるらしいので、妨害してみたい気持ちはあった。

 なので、状況を整理していこう。

 

「まず第一に。シュリンガムはホームで、偽装死していた。つまり、死体の擬装用の死体は無く、死んだ人間はこれで固定される」

 

 つまり、モーリスの死は確定され、死者はモーリスとクリスのみだ。

 そして、シュリンガムの死は自発的偽装。よって、シュリンガムの時にアリバイがあろうとも、無意味という事。

 

「んで、ケインの証言として、11時20分にかくれんぼをしていて見つかった。また、ローリーとかくれんぼをしていたのだから、見つけた人は絞られ……いや、確定されるよね」

 

 ケインは周りの対応を見るに、心配されるほどの年齢でもない。つまり、ヴァイオレット家はケインがいないことを気にしたりはしないという事だ。

 つまりは、心配するのはドロシーのみ。また、ローリーを探していたためにクリスが死んだ時間のアリバイはドロシーにはない。

 モーリスの失踪も、そもそもいつ失踪もしたかすら分からないので、全員にアリバイは無いようなものだろう。

 また、平然と海ではしゃいでいたのも明らかにおかしいだろう。

 一緒に騒いでいたエヴァも中々図太い神経だが、不用心に遊ぶというのは、殺人事件の真っ只中で、且つ、後継者がどんどん死んで行ってしまっている側の行動とは言い難い。

 

「クリスのダイイングメッセージであるmom。これは、生みの親且つ育ての親であるアンを指すんじゃなく、養子入りした時の母になるドロシーの事を指すわけか」

 

 そうすると、意外と辻褄が合う。

 動機としても、おそらく自分の娘であるローリーを立てたいのだろう。だから、自分の実の子ではないモーリスとクリスを殺したのだろう。

 そうすると、どうしてネックレスをあんなに必死に探していたのかも、前に推理した通り、中に薬が入っていたのだろう。毒薬か睡眠薬かは難しい所ではあるが、可能性としては、持ち込みにくい毒薬の方だろう。

 

 アンの方を疑わない理由として、前回気絶させられた時に殺されていない時点でほぼシロ。更に言えば、あれだけ全力で死人を出さない様に努力しているのだ。これで犯人だったら投げ捨てるレベルだ。

 

「とはいえ、これは個人的な推理。合ってればいいんだけど、外したらクッソ恥ずかしいなぁ……」

 

 流石にホームズの様には行く気がしないので、とりあえず心に留めておくつもりだが、そのうちエウリュアレにうっかり話しそうだから、せめて当たっていてほしかった。

 なので、謎解きの答えを聞くために、ホームズの言葉を待つのだった。




 もう、ドロシー以外疑ってないんですけど。確定だと思うんですけど。むしろこれ以外だったら投稿が止まるほどの精神ダメージです(迫真

 いえ、止めるつもりないんですけどね。まぁ、話数が多くなって、そろそろスクロールがしにくいというか、スマホだと固まるというか……作品を分けた方が良いです……?


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まぁ、マスターはもう推理終わってるわよね(じゃあ、私たちも考えてみても良いわよね!)

※ ネタバレ&ガバ推理あり! 中間結果を見て見直して再推理ですよ何やってんだよ私!!


「それで、誰が犯人だと思う?」

「う~ん……私はドロシーさんだと思ったのだけど?」

 

 トゥリファスでさりげなく手に入れていた紅茶を飲みながら、エウリュアレとアビゲイルはオオガミと同じ謎解きをしていた。

 なお、アビゲイルはオオガミと同じ結論のようだった。

 

「まぁ、マスターも同じ結論に至りそうだけど、私たちはマスターも知らない情報も持っているのを忘れないで?」

「えっと……かくれんぼの事?」

「えぇ。じゃあ、次にケインは何時に見つけられたって言ってたかしら?」

「ん~……11時20分よね」

「じゃあ、クリスが死んだ時間は?」

「11時25分? って、あぁ、アリバイがちゃんとあるのね」

「そういうこと。だから、ドロシーだと少し無理があるのよ。時計を割ったのが25分だとしたら、見つけてから5分以内に会いに行って毒針を刺す必要がある。それに、ローリーを寝かしつけるのに5分未満は難しいわ。移動も合わせたら、もう既に向かってなくちゃいけないもの」

「なるほど……じゃあ、エウリュアレさんは誰が犯人だと思うの?」

 

 自分の予想を否定されたのに、妙に上機嫌なアビゲイル。

 エウリュアレはその反応を見て、ちょっと得意気に、

 

「消去法で、ハリエットかしらね」

「ハリエット? どうしてかしら?」

 

 エウリュアレの答えを聞いて、不思議そうに首をかしげる。

 

「そうね……クリスの方は動機までは分からないけど、一応殺害方法は分かるわ。まぁ、モーリスに関しては、ほぼ全員が出来るだろうから、クリスの方だけ考えれば良いかしら」

「そうね。モーリスさんに関しては、いつ失踪したかもあやふやだもの。あまり気にする必要はないわよね。で、なんでハリエットさんが殺せるの?」

「そうね。じゃあ、マスターは寝ていて、隣の部屋でポーカーをしてたっての、覚えてるわよね?」

「えぇ。確か、アーロンさん、アダムスカさん、アンさん、ホーソーンさんよね」

「そう。それを伍が見張っていて、この5人のアリバイはあるわ。で、さっきも言った通り、ドロシーとローリー、ケインは、かくれんぼをしていたからアリバイがある。最後に、ジュリエットとエヴァは互いに部屋にいたから、アリバイはあるわ。じゃあ、ハリエットは何をしてたかしら」

「確か……部屋で休んでいた……?」

「えぇ。つまり、誰もハリエットを見ていないのよ」

「むむぅ……なるほど。確かに、エヴァさんが言ってたのは、10~11時の間に休みに行ったって言ってただけだものね。部屋にいたとは言ってないし」

「まぁ、マスターはそれに気付いてなかったと思うし、気付かないだろうし」

「なんでエウリュアレさんはマスターについてそんな詳しいのかしら……」

「あら。初絆10だったりするのだけど、知らないわけないわよね?」

「その自信が羨ましかったりそうじゃなかったり。まぁ、答え合わせを待ちましょう」

「そうね。間違ってたら、とりあえずマスターに八つ当たりしましょう」

「……なんというか、不憫ね……」

 

 新所長からパクってきたお菓子を食べつつ、二人はホームズの答え合わせを待つのだった。




 中間発表終わった辺りから書き始めて、19時くらいにデータが消し飛んだとき、私は死にそうになってました……序盤は大体書き直し前と同じですけど、後半ほとんど全部変わるという……なんだろう、この空しい気持ちは……

 あ、前回のガバ推理は安定のガバ推理でした。時間を読み違えてるとか、初歩の初歩も良いところですよね。死にたいです(キリッ


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推理なんてそんなものだよ(まぁ、考えないよりはマシかしら?)

※ 虚月館殺人事件犯人ネタバレあり! ストーリーを読み終わってない人、興味ない人はどうぞ!


「うああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「うわぁ! ちょっと、いきなり叫ばないでよ!」

「真っ赤な顔で叫んでるわ……これは、ドヤ顔推理で思いっきり空振ったと見たわ!」

 

 赤面しながら床を転がるオオガミ。

 突然の事にエウリュアレは驚くが、冷静にアビゲイルはオオガミが何を考えていたかを推測する。

 

「な、なんでアビーは知ってるの……!?」

「ふふん! 私の勝ちね! これで私の推理が間違ってたことを誤魔化せるわ!」

「自分で公言しちゃったら隠すも何もないでしょうが」

「ハッ……! 何て巧妙な罠なの……!? まさか私の口から言わせるなんて……! 謀ったわね!?」

「自爆じゃないの……」

「……二人も謎解きしてたの……?」

「まぁね」

 

 話の展開に困惑していたが、どうやら謎解きをこちらでもしていたようだった。

 また、アビゲイルの自爆によって、アビゲイルも間違えていたのであろう事が推測できる。

 

「それで、どうだった? やっぱり予想はドロシーで、結果はハリエットだったかしら」

「なっ!? 犯人はともかくとして、どうして推測まで知ってるのかな!?」

「まぁ、かくれんぼの様子を知らないマスターからしたら、推測は難しかったでしょうね。というか、容姿が私に見えるから疑わなかったとか無いわよね?」

「え、エー。ソンナコトナイデスヨー?」

「そういうのは要らないわ。本音は?」

 

 片言で言うオオガミに対して、少し睨むような目付きで見るエウリュアレ。

 オオガミはその目を見てため息を吐くと、

 

「いや、母と妹の錯誤には気付いたけど、アリバイをちゃんと見てなかったのがミスだったかなって」

「あら、あっさり認めるのね」

「そりゃ、粘る理由がないし、エウリュアレなら見抜くだろうし」

「そうかしら。流石に反省内容までは分からないわよ」

「どうかねぇ?」

「エウリュアレさん、私の回答を聞いて、『マスターも同じ結論に至りそう』とか言ったのよ? しかも、実際あってるし。なんか、納得いかないわ」

「アビー? それ以上言うと……ね?」

「ん。私は何も言ってないわ。えぇ、何も言ってないわ」

 

 凄みのある笑みを浮かべたエウリュアレに気圧され、視線を逸らすアビゲイル。

 そんな状況に、オオガミは苦笑いになりつつも、何故かエウリュアレから逃げられなさそうな雰囲気を感じた。

 まるで、頭の中まで監視されていそうな気分だった。

 

「うん、まぁ、謎解きは盛大にミスったけど、ホームズのせい――――じゃなかった。ホームズのおかげで、無事事件は解決。あのヒロインっぷりをみるに、ステンノ強化フラグ! 勝ったなこれは!」

「そういうフラグを立てるのは良くないと思うの」

「マスター。そろそろ矢が恋しいのかしら?」

「おっと。私は別に矢で貫かれたい願望がある訳じゃないんで、ここらで一眠りさせてもらうよ! おやすみ!」

「夢の中に逃げても、追い回してあげるわ」

 

 オオガミが去る間際に呟くエウリュアレ。

 その言葉は、妙にオオガミとアビゲイルを不安にさせるのだった。




 結末に泣いた。なんというか、報われない……殺人事件の最後は、得てしてそんなものなのでしょうか……
 まさか娘二人ともとか、想像しないよ。残酷すぎるぜぃ……


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ぐだぐだ明治維新
イベントラッシュが終わったんや……(残念。まだ続いてるのよね)


「うえぇ~……エウリュアレぇ~……」

「何よ、突然膝の上に頭を乗せて……叩けば良いの?」

「追い討ちかけてくるエウリュアレ……悪魔のような女神……出来れば止めて欲しい」

「そう。じゃあ、止めておくわ」

 

 そう言ってエウリュアレは微笑むと、何処かから櫛を取り出してオオガミの髪を梳く。

 それだけの事だが、正直彼らはこれだけで一時間は過ごせたりする。

 

「……で、突然どうしたのよ」

「ん~……なんと言うか、ここ最近イベント続きだったから疲れたって感じかな」

「そう。じゃあ、そんな貴方に朗報ね。今回はぐだぐだイベントだって」

「え!?」

 

 少し楽しそうに言うエウリュアレに、驚きの声を上げつつ体を起こすオオガミ。

 それと同時に部屋に飛び込んでくるアビゲイル。その手には捕獲されているチビノブ達。

 

「マスターマスター!! 何!? 何かしらこれは!!」

「すっごいアビーが目を輝かせてる……それほどまでに琴線に触れるものだったか」

「ほら、説明してらっしゃい。私はいつも通り背後から撃ち抜いてあげるから」

「うぅむ、深読みしちゃうなぁっ!!」

 

 前には目を輝かせて説明を求めるアビゲイル。後方ではにっこりと笑っているエウリュアレ。先ほどまでオオガミの髪を梳いていた時の微笑みは何処に行ってしまったのかと言うレベルだ。

 なので、諦めてアビゲイルに説明しに行く。

 

「それはぐだぐだ粒子によって生まれたノッブの容姿に酷似してる謎の生命体だよ。カルデアで一時期飼ってたけど、アナスタシアに氷漬けにされたせいでどこかに消えたよ……」

「えぇっ……じゃあ、また飼えるのね!? よぅし!! もっと捕まえるわよぅ!!」

「えっ……えっ……」

 

 エウリュアレに救いを求めるかのような視線を向けるオオガミ。

 しかし、エウリュアレは無言で微笑むだけで、助け舟を出すつもりはないようだった。

 

「エウリュアレさんも行くわよね!?」

「え? えぇ。行くわよ。だってあそこ、茶屋があるんですもの。お団子、久しぶりね」

「むむむっ! それ、私も食べたいわ! 連れて行ってね、マスター!」

「ん~……経費は織田軍持ちって事で食べればいいか」

「そう言うところは頭が回るのね……」

「まぁ、食べられればあんまり文句は言わないわ。早く行きましょ!!」

「うん。エウリュアレも一緒だから、連れてくよ」

「別に手を引かれなくても行くってば」

 

 アビゲイルに腕を引かれているオオガミ。

 そんなオオガミに手を引かれるエウリュアレ。困ったような表情をしつつも引かれるままに走っていた。

 そして、アビゲイルは門を開くと、

 

「突撃~!!」

「レイシフト無いから門なんですね分かりますぅぅ!?」

「もう、行き来に抵抗が無くなってきたわ……」

 

 それぞれがそれぞれの思いを呟きつつ、門の中へと入って行くのだった。




 終わると思った? とばかりの連続イベントラッシュ。リンゴが回復しない不思議……今回は林檎を使わないくらいでのんびりやって行こうかな……


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今更だけど、コレ二回目のイベントなのよね(おかげで概念礼装はいっぱいあるよ。配布のだけ)

※ 弱ネタバレあり……?


「色とりどりで、見ていても楽しいわ。食べるとすごく甘くて美味しいのもまた格別だけど」

「三色団子は見ても食べても美味しいという完璧具合。誰が考えたんだろうね。きっと天才だよね」

「私はこし餡団子が一番だけれどね」

 

 三人揃って団子を食べつつ、時々襲い掛かってくるチビノブを追い払っていた。

 

「むむむ……エウリュアレさんのお団子も食べてみたいわ……!」

「仕方ないわね。良いわよ」

「わーい!」

 

 そう言って、エウリュアレの食べかけの団子を食べるアビゲイル。

 嬉しそうに食べるアビゲイルを見て、微笑ましそうに笑うエウリュアレ。

 だが、口に含んだ団子を飲み込むと、今度はオオガミが持っているヨモギ団子を狙っていた。

 

「……食べる?」

「良いのかしら?」

「まぁ、凄い食べたそうにしてるしね。まだ残ってるし、問題ないよ」

「わーい!」

 

 そう言って、同じく食べかけだった、二つのうちの一つを持って行かれ、更に当然の如くエウリュアレが最後の一個を持って行ってしまった。

 刺さっていた団子が無くなってしまった串を呆然と見つつ、もしや残ってるのも食べられるんじゃなかろうかと不安になる。

 

「……えっと、とりあえず、拠点に戻ろうか」

「ん~……次は、あれよね。陽動か奇襲かだったわよね。今回はどうするの?」

「ノッブが陽動だから、陽動だよ。だってほら、ノッブの方についてないと織田幕府のお金が使えないし」

「そう言う理由でそっちにつくのね……いえ、気にはしないのだけど」

 

 やれやれ。と言いたそうに首を振るエウリュアレ。アビゲイルは特に気にしないで団子を食べていた。

 

「それにしても、陽動かぁ……とりあえず、アビーの門と触手で強襲とか?」

「陽動なのに奇襲をかけるという謎ね……流石と言うか、目的を間違えているというか」

「でも、楽しそうではあるわ! ふふ。やってみるわ!!」

「いや、だからやっちゃダメだって……いえ、もういいわ」

 

 エウリュアレが苦い顔になっているが、オオガミとアビゲイルは気にしていなかった。

 陽動とは言っても、一切陽動するつもりも無く、正面から堂々と奇襲をかけるつもりだった。

 

「まぁ、混乱させられるのは確かよね……奇襲が意味をなさなくなると思うけど」

「それはほら、新選組の方々に頑張ってもらうしかないんじゃないかなって」

「他人任せねぇ……でも、大体いつも通りね。それでいいのならいいけど、向こうは大変そうね」

「あんまり気にしないから問題ないと思うし、土方さんなら何とかしてくれるでしょう。うちには沖田さん来なかったし、知らないね!」

「カルデアに来なかった相手には容赦ないわね……」

 

 満面の笑みで言い切るオオガミに、そろそろ胃が痛くなってくるんじゃないかと思うエウリュアレ。

 そんなことを話しながら三人は陽動戦へと向かっていくのだった。




 なんだろう、ほとんどイベントについて語らないレアな奴……とりあえず、終始織田軍で過ごしてみようかなと、今回は思っております(キリッ


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あの城はおやつ資金(全部砕いて溶かして小判に変えよう)

※ 若干のネタバレあります。あんまり気にならない程度だとは思いますので、気にしない方はどうぞ。


「京の都って言っても、内陸側だから魚とかはほとんどないよね」

「穀物がメインよね。野菜とかもあるけれど」

「お米はあってもパンはないのね。パンケーキも無いのかしら」

「時代的に無いね」

「残念。まぁ、お団子があるし、そこまでの不満はないのだけど」

 

 スキップしながら歩くアビゲイル。きんつばも買っていたりするが、今の彼女は団子だけで満足しているようだ。

 

「そういえば、金色の城、解体すればまだ買えるんじゃないかしら」

「あぁ……昔も同じような会話をした思い出……」

「……砕けば良いのかしら」

 

 真顔のアビゲイル。とは言っても、金をどこで売れば良いのか。

 そこまでは考えていないので、アビゲイルは仕方なく断念する。

 

「むぐぅ……私の和菓子制覇計画がぁ……」

「京都だけじゃ制覇出来ないって。汎人類史を取り戻したら日本に行こうか」

「……給料って、どうしたんだったかしら?」

「……ダ・ヴィンチちゃんに後で請求しよう」

 

 言われて、マンション暮らしの時に使った後どこに置いていたか忘れている。

 実はマシュが持っていたりするのだが、オオガミが知るよしもない。

 

「追い討ちをかけるみたいで悪いのだけど、クリプターとの戦いって、給料が出ないんじゃなかったかしら」

「なん……だと……? じゃあ、ダ・ヴィンチちゃんのへそくりを奪うしか……?」

「マスター……悪い人ね?」

「まぁ、平和のための犠牲ってことで」

「そうよね。私のおやつの犠牲になりなさい」

「私のおやつ代にもなるわ」

 

 何故か得意気な二人。

 今頃ダ・ヴィンチちゃんはシャドウ・ボーダーで悪寒を感じているだろう。

 

「さて。今日は攻城戦です。どうやって攻める?」

「上空から強襲!」

「アビゲイルで殲滅」

「アビーはともかく、エウリュアレのその他人任せなスタイル、嫌いじゃないよ」

「悪意があるわよね、それ」

 

 笑顔を浮かべつつ、しかし全く笑ってない目。

 そんな笑顔に、オオガミは引きつった笑顔を浮かべるしか出来ない。

 アビゲイルはそれを見て少し楽しそうにしているのが、オオガミの顔の引きつりを悪化させる。

 

「ま、まぁ、アビーによる奇襲ってことだね……うん。奇襲は正義ってことだ」

「えぇ。善的にはオッケーよ」

「悪的にもオッケーだわ」

「善も悪も信用ならない……実質どっちも悪じゃ……」

 

 事実、二人とも混沌なので、オオガミの見解はあながち間違ってはいない。

 ともあれ、方針は決まったも同然。なので、おやつをカルデアに送って、金策をしに向かうのだった。




 総額を考えるより、実際に貨幣にしてみればいいよね!(錯乱


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私のお汁粉のために!(だから今、日輪城を砕いて売る!)

※ ほとんどネタバレもなにも無い気がしますが、一応予防線です。


「なんか、疲れてきたよ」

「別に急いでもいないし、ゆっくりやれば良いわ」

「今日はお汁粉ね! あの控えめな甘さが好きよ」

「……いつの間にか、エウリュアレよりもお菓子を求めるようになっちゃったね……アビー……」

「そういうの、言わないで欲しいのだけど……こっちが恥ずかしいわ」

 

 ぐだぐだと京都に来て以降、大体アビゲイルが行きたいところに行っているのがほとんどだった。

 なんとなく親子気分だと呟いた時に瞬時にエウリュアレに脛を蹴られたのは記憶に新しい。

 

「それで、汁粉だっけ。茶屋は生きてるかな……?」

「生きているはずだわ! ダメなら門を使って過去まで行って食べるわ!!」

「なんでそこまで本気なの……? 小豆を買えば作れると思うけど」

「むむぅ……じゃあ、大量の小豆とお餅を買ってこないとよね」

「そうね。出来るだけ多く買わないと、しばらく生きられないわ」

「私のおやつの生け贄となってね、日輪城!」

「ひぇ……解体する気だ……」

 

 事実、現在進行形で触手で殴って砕いてを繰り返して門で回収してを繰り返していた。

 とりあえず、そのうち来るであろう茶々に任せれば日輪城の金は有効に使えるだろう。

 

「まぁ、チビノブ達を倒せばお金は手に入るし、金策は出来ない訳じゃないけどね」

「たくさんの生け贄が必要なわけね」

「じゃあ、たくさん倒さないとよね。待ってなさい、私のおやつ~!!」

 

 颯爽と城へ乗り込んでいくアビゲイル。

 置いていかれた二人は顔を見合わせると、

 

「チビノブの捕獲計画ってどうなったの?」

「捕獲しても、飼うスペースが無いんだよね」

「貴方の部屋に置いておけば良いじゃない。そのうち打開策が見つかるでしょ」

「なんて雑な……最悪爆発するんだけど?」

「大丈夫。爆発程度で死ぬとは思ってないから。だってほら、不死身でしょう?」

「死ぬときは死ぬと思うんだけどなぁ……」

 

 とは言っても、事実ほぼ不死身と言っても過言ではないだろう。潜り抜けてきた修羅場的に。

 

「さて。アビゲイルを放っておくわけにはいかないし、行こうか」

「そうね。なんだかんだ、危なっかしいものね。助けに行かないともしかしたら包囲されてるかもだし」

「包囲されてても抜け出しそうだけどね。場合によってはこっちがピンチになりそう」

「……その時は、その時ね。オケアノスの時みたいによろしくね」

「む、無茶苦茶な……いや、精一杯やるけどもさ」

「えぇ。期待しているわ」

 

 そう言って、微笑むエウリュアレ。

 オオガミはそれを見て、そんな状況にならないように祈るのだった。




 最近エウリュアレより食べているような……不思議です……


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茶々復活の時!(でも、メインは茶々じゃないんでしょ? 知ってた)

「茶々復活!!」

「バーサーカー! 倒さないと!」

「圧倒的理不尽感」

「マスター。あの二人を止めてね。私は遠くから見守ってるから」

「巻き込まれて即死の予感」

 

 どうあがいても死。茶々バーニングで死ぬか、アビゲイル触手パンチで死ぬか、エウリュアレアローで彼方へ飛ばされるか。

 どれにしろ、重傷は免れないだろう。

 

「ん~……まぁ、微笑ましい部類だから大丈夫じゃない?」

「そうかしら。どっちも危ない気がするのだけど」

 

 アビゲイルの触手を、本人もよく分かってない理論で出る炎で焼いたり刀で切ったりしていた。

 その影響で地面に落ちた触手をオオガミは拾うと、

 

「……今更だけど、タコっぽいよね」

「食べたらお腹を壊すと思うのだけど」

「ん~……臭い的に食える気がする。食べる?」

「流石に食べようとは思わないわよ……」

「そう? エウリュアレなら女神の神核で大丈夫そうだけど」

「食べれるのと食べたいのは違うの。分かる?」

「分かるけど分からないことにしておくね!」

「無理に食べさせに来たら殺すからね?」

 

 珍しく目が本気だった。

 なので、強行は死を招くと確信したオオガミは、諦めて今日カルデアに送る荷物の一番下に入れるのだった。

 

「え、ちょ、待って待って。今どこにしまったの?」

「持ち帰る荷物の一番下」

「堂々と言うじゃない……私も怒る時は怒るわよ?」

「ふふん。別にエウリュアレに怒られても、三日間食事が喉も通らないくらいに凹むだけだし。大したダメージじゃないね!」

「致命傷レベルよね、それ……」

 

 ドヤ顔で言い放つオオガミに、叱っていたエウリュアレも流石に困惑する。

 しかも、言っている本人はさも当然のようにしているため、自分がおかしいのかと疑いたくなるレベルの困惑だ。

 

「あ、あぁ……えっと……本気で凹んでる……?」

「そんなわけ無いじゃん! そう簡単に凹むと思う?」

「…………」

 

 次の瞬間繰り出される蹴り上げ。それは見事にオオガミの頭にぶつかり、綺麗な弧を描きながらオオガミは宙を舞った。

 ドサリと音をたてて地面に落ちたオオガミを見て、エウリュアレは少し冷静さを取り戻したのか、

 

「あぁ、証拠隠滅しないとよね。とりあえず火葬すれば良いのかしら」

「ぶはっ! げほっげほっ! 死んだことにされたっ!」

「あ、生きていたの? じゃあ、念入りに殺しておかないとよね」

「あ、ヤバイ。錯乱してるよこれ。とりあえず逃げとこっ!」

 

 満面の笑みで弓を引き絞るエウリュアレを見て、オオガミは逃げ出すのだった。

 なお、アビゲイルと茶々が二人に気付くまで続くのだった。




 うぅむ、最近エウリュアレが暴れてる……そろそろ狂気に飲まれてきた……?
 そして、茶々が空気なのはわりとよくあること。


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ついにレベルカンストしてしまった……(でも、あまり大きく差はないのよね)

「ふふん。ついにレベル140という大台だよ」

「私たちよりレベルが高いのに戦闘能力皆無なのよね。まぁ、指揮してくれているから助かるけどね」

「エウリュアレさんはひねくれないで思ってることを言えば良いのに。マスターおめでとう!」

 

 現状の上限レベルに達したオオガミ。

 それに対して、皮肉混じりに言うエウリュアレと、素直に祝うアビゲイル。

 茶々は今、城を崩して手に入れた金塊を意気揚々と交換しに行ったので、今はいなかった。ちなみに、出来るかどうかは気にしていない。

 

「それで、レベル140に至った感想は?」

「うん。編成がほんのちょっと楽になった」

「あまり変わらないのね。でも、楽になったのなら良かったわ」

「ふふふ。もっとハッキリ褒めてもいいんだよ?」

「あまり調子に乗らないでよ?」

 

 明らかに調子に乗っているオオガミを見て、注意するエウリュアレ。

 アビゲイルは困ったように笑うが、すぐに気を取り直し、

 

「ねぇマスター。今回の高難易度もエウリュアレさんが一番だったし、次は私がメインでやりたいなって思うのだけど」

「ん? 何言ってるの。素材回収が終わったら、アビー単騎で攻略だよ?」

「……え?」

 

 唐突な単騎運用宣言。

 突然の事過ぎて、半ば放心状態になったアビゲイルだったが、言葉の意味を理解すると同時に両手を振り上げて喜びを表現する。

 

「やったー! 単騎運用! いきなりはビックリしたけど、私はやったのよーー!!」

 

 満面の笑みで走り回るアビゲイル。一緒に触手も荒ぶっているところを見るに、余程嬉しかったのだろう。

 

「いやぁ……ここまで喜ばれるなら、もう少し早く機会を用意しててもよかったかも?」

「貴方、ノッブも同じくらい叫んでた気がするのだけど?」

「それはそれ。ノッブはノッブ、アビーはアビーだよ。適材適所。相性の問題だよね!」

「ハッキリと言うわね……というぁ、ちゃんと相性を考えてたのね。何も考えていないのかと思ったわ」

「酷い言われよう。ちゃんと考えてるって。エウリュアレは男性相手に出して、アビーはバーサーカーが大量に来たときに最終防衛ラインとする。完璧だね」

「ごめんなさい。めちゃくちゃ大雑把だったわ。このマスター、あまり考えていないもの」

 

 呆れたように首を振るエウリュアレ。

 とはいっても、そのおかげで自由なところもあるので、本気で否定する気はない。

 そんなところに響く声。

 

「茶々、再び!!」

 

 テンション高めに登場する茶々。

 その手にはお金が入っているであろう袋。

 

「マスター! ちゃんとやって来たよ!」

「ナイス茶々! よし、町に食事処を探しに行こう!」

「「おー!」」

「あ、ちょ、私もついていくからね!」

 

 どんどんと進んでいってしまうオオガミ達を、エウリュアレは追いかけるのだった。




 ついにレベルカンスト。しかし、これはきっとFGOマスターの第一歩なんでしょう……きっと、たぶん。


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単騎運用と沖田ガチャ(約束された爆死の結末)

「新撰組……怖い、怖いわ……」

「あぁ、これはもう、諦めるしかないわ……」

「二人とも、そんなになるようなことでもないでしょ? まぁ、マスターは後でマシュに怒られるでしょうけど」

 

 宿屋の一室を借り、周回をチマチマとしているオオガミ達。

 そして、アビゲイルとオオガミは、その部屋の隅で、同じようにカタカタと震えていた。

 

「戻ったよっ! って、ナニコレどうなってるの?」

「えぇ。アビゲイルは、土方に一勝二敗して落ち込んでて、マスターは、持っていた石と貯蔵していた聖晶片を使い切って大爆死したの。アビゲイルに関しては、運が無かっただけなんだけど、マスターは前半は許せるとして、後半はもうちょっと自制するべきだと思うわ」

「はい……ごもっともです……」

「うわ。ガチで凹んでるやつ。大丈夫だってマスター! 茶々だって、殿下のお金でめっちゃ遊んだし!」

「まぁ、だからと言って、マスターが怒られる運命は変わらないのだけどね」

「残念。殿下ほど甘くはなかったかぁ……」

 

 死んだ目の二人を見つつ、エウリュアレは楽しそうに、茶々は励ますように話す。

 とはいえ、やったことはもう戻らないので、アビゲイルの件はともかく、オオガミはマシュに吊し上げられる運命だろう。

 

「茶々的には良いと思うんだけどね? もっと気楽に行こうよマスター」

「やっちまった事実と、爆死した事実と、マシュに怒られる運命の三コンボで轟沈です……」

「あれは重傷ね……流石に無理だと思うのだけど」

「むぅ……中々の強敵……というか、落ち込んでるのが隣り合わせになってるのが問題なんだよっ! つまり、アビーの方をどうにかするべきだと茶々は見たね!」

「そう? で、対策は?」

「……カルデアを取り戻したら、叔母上をいくらでもサンドバッグに出来るから楽しみに待っててねっ!!」

「ノッブ……売られたわね」

 

 ここにはいないノッブは、静かに生け贄宣言された。

 しかも、結構ハッキリとサンドバッグ宣言だ。帰ってくるなり悲惨な目に遭うのだろうと、容易に想像できるのだった。

 

「ふ、ふふ。ふふふ。大丈夫、大丈夫よ。私は別に怒ってないもの。ただ、スッゴく疲れただけだもの。でも、マスターの近くで休んでたからもう大丈夫よ。あぁ、マスター。次も私、頑張るわ」

「……一番危険じゃない? アレ」

「……私、たまにアビーが一番怖いのよね……」

 

 狂気を感じるアビゲイルの微笑み。

 いつの間にかオオガミを引き倒して自分の膝の上に頭を乗せていたのだが、それ以上にその微笑みは怖かった。

 なので、そんな微笑みを見たエウリュアレと茶々は、一瞬身震いした後、オオガミを置いて外へと脱出したのだった。




 狂気全開アビゲイルっ! 気付いたらアビーがこんなことになってましたよ……

 とりあえず、沖田さんは来てくれないらしいので、もうメルトリリスを引くまで引く予定はないですね。


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やっぱり和菓子も良いよね(最近茶屋に入り浸ってない?)

「ふぅ……やっぱり和菓子には緑茶だよね」

「私にはちょっと苦いわ」

「むぅ……叔母上のお茶の方が美味しくない?」

「質が違うと思うのだけど」

 

 和菓子を食べに来て、何故かお茶の方が話題に上がるという謎。やはり美味しい茶菓子には美味しいお茶を求めるものなのだろうか。

 

「まぁ、お茶はともかく、和菓子は美味しいわ。見た目良し、味良しで言うことは無いわ」

「マスター。マスターは和菓子作れる?」

「それはエミヤに習ってないなぁ……でもまぁ、頑張ればそのうち?」

「出来ないって言わないところが、茶々はすごいと思う。というか、もうマスター一人で良いんじゃないかな?」

「ダメよ。マスター一人だと、精神攻撃で一発退場よ。せめて精神耐性は上げておかないと無理だわ」

「待って。肉体面は? 根本的にそこが足りないと思うんだけど?」

「自分のやって来たことを振り返ってから言いなさい。精神面をどうにかしたら、筋力と耐久スペック的にはアンリに近付くと思うわよ?」

「Eって事だね、分かるとも!」

 

 半泣きのオオガミ。とはいえ、Eでも人間としてはかなり高いのだが、そこに突っ込む者は誰もいなかった。

 

「それで、エウリュアレは何がお望みで? さっきからチラチラと店の中を見てるけど」

「べ、別に見てないわよ。ただ、宇治金時っていうのが気になるなぁって思って」

「別に気にしなくて良いじゃん? だってほら、茶々が一周すれば終わるし! 敵は大体、茶々の業火で一発だし! お姉さん! 宇治金時4つ!」

「茶々……意外と強いのね……! 私も負けてられないわ! マスター、私も頑張るわ!」

「うん。アビーが頑張ってくれるのはわかった。でも、ちょっと待て茶々。なにさりげなく4つも頼んでるんだ?」

「え? まさかマスター、食べないの!? じゃあ茶々が貰っておくね! ありがとう!」

「あぁぁ!! やぶ蛇だった! 食べるから! 俺も食べるからぁ!」

 

 下手に突っ込んだせいで茶々に宇治金時を奪われそうな危機に瀕しているオオガミと、勝ち誇って、宇治金時を奪うつもり全開な茶々。

 それを見て、エウリュアレは微笑ましそうに、アビゲイルは楽しそうに笑ってみていた。

 

「全く。二人とも、はしゃぎすぎよ。そんなに騒ぐなら、私が貰うわね?」

「茶々悪くないし。叫んでるの、マスターだけだし。よって茶々無罪。宇治金時ゲット!」

「え、ズルくない? 同罪でしょ? え、俺だけ悪いの?」

「誰も貴方が悪いとは言ってないのだけど、そう思っているのなら、きっと悪いのよね。じゃあ、宇治金時は貰っておくわ」

「え、エウリュアレが酷い……!!」

 

 半泣きのオオガミと、エウリュアレに言われると同時に背筋を伸ばして無罪アピールする茶々。

 そして、実際に宇治金時来たときも、わいわいと騒ぎながら食べるのだった。




 最近、イベントとかその他諸々を放り出して日常書いてる不思議……しかし、そろそろお菓子ネタが尽きそう……


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好きなだけ買うのは良いと思うわ(でも、シャドウ・ボーダーは食糧難なのよね)

「金銀小判がざっくざく~♪」

「そっして~ぜっんぶ~おっかしっにな~る~♪」

「で、全部食べて振り出しに戻ったと。そういうことで良いのね?」

「エウリュアレ……声のトーンがガチ過ぎるって……」

 

 歌ってたアビゲイルと茶々は、エウリュアレの声に反応して瞬時に正座する。

 なお、オオガミはエウリュアレをなだめようとしているが、おそらくそのうち一緒に叱られる。

 

「二人とも、忘れちゃいけないんだけど、シャドウ・ボーダーは食糧難だから、食材を確保しないと帰ったら何もないんだからね?」

「「……!?」」

「すっかり忘れてたみたいね。じゃあ、何をしなくちゃいけないか分かるでしょ?」

「私のご飯!」

「茶々のお菓子!」

「そのための資金集め。ほら、早くしないと特異点が無くなるわよ」

「「行ってきます!」」

 

 飛び出し、走っていく二人。

 エウリュアレはそれを見て面白そうに微笑み、オオガミはエウリュアレが狙っていることを予想していた。

 そして、二人の姿が小さくなって、声が届かなくなった辺りでエウリュアレは振り返り、オオガミを見ると、

 

「扱いやすくて助かるわ。じゃあ、マスター。行きましょうか」

「うぇ? ど、どこに?」

 

 腕を絡められ、引っ張られるオオガミ。

 本来なら嬉しいと思うところなのだろうが、いつもと全く違うため、警戒しかしていない。更に言えば、エウリュアレが満面の笑みなのも不安に拍車をかけている。

 

「別に、決めてないわ。目についたものを食べようと思って。食べ歩きってところね」

「うぅむ、二人に言ってたのが方便だったってことだ。流石エウリュアレ。年長者は伊達じゃないってことだね」

「別に、そういうことじゃないのだけど。ただ単にあの二人を追い払いたかっただけだし。食べ物に反応してくれて助かったわ」

「ふぅん? で、何で追い払う必要があったの?」

「だってほら、二人がいると食い扶持が減るでしょ。それはなんか嫌じゃない」

「あぁ、なるほど……てっきり食べ歩きをしたいけど、二人の前でやるのはなんか恥ずかしいって奴だと思ってた」

「むぅ……もっと拡大解釈して、私がマスターと一緒に行きたかったからっていうのだったら思いっきり笑ったのに。どうしてそう面白くない答えなのかしら」

「それは、ほら。エウリュアレはそういうことは思わないって思ってるし」

「…………」

 

 次の瞬間、オオガミの脛は蹴り飛ばされ、短く悲鳴を上げる。

 

「っつぅ~……何するんだよぅ……」

「別に、マスターが私の事を分かってくれていて良かったと思って。さぁ、行きましょ」

 

 何故かさっきより少し機嫌が悪そうなエウリュアレに連れられ、二人は町中を散策するのだった。




 うぅむ、なんとなく阻止したくなってしまう甘い空間。そのうち書いても良い……ですかね……?


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尾行開始っ!(既に暴れたいんだけど……!)

「ふっふっふ……エウリュアレさんも、流石にすぐ引き返してくるとは思わないはずよ」

「二人っきりで放置したらどうなるか見たこと無いし、ちょっと楽しみな茶々がいる……んで、場合によってはマシュに報告しよ。炎上間違いなし! やだっ、茶々ってば、パパラッチ!?」

 

 走り去ってすぐに、門を開いて帰って来た二人。アイコンタクトだけで見事な連携を取り、こうやって二人から隠れた辺り、かなり相性が良いのだろう。

 という事で、二人の監視を始める二人。その直後。

 

「わ、わわわっ! マスターの腕にエウリュアレさんが抱き付いているのだけど! なんで!?」

「わぉ。開幕大胆だねエウリュアレ。茶々ビックリ。どうする? もう乱入しちゃう?」

「えっ……い、いいえ! 乱入しないわ。今日は偵察だもの。エウリュアレさんが何をするのか、ちゃんと見届けないと……!」

「ふぅん? ま、茶々は面白ければオッケーだし。やだ、茶々ってば、悪女?」

 

 既に頬がぷっくら膨らんできたアビゲイル。それを見て、茶々は内心笑いつつも、表面上では悟らせない。

 

「むむっ……茶屋の方向ねっ! 移動するわよ!」

「門の多用は察知されるだけだと、茶々は思うのです。まぁ、歩きたくないから使うけど」

 

 監視対象が移動すると同時に、門を開いて位置を変えるアビゲイルと茶々。

 門を開くときの魔力でバレるんじゃないかという茶々の呟きは、誰も聞いていなかった。

 

 

 * * *

 

 

「……?」

「どうしたの? エウリュアレ」

「いえ……なんでもないわ。気にしないで」

「そう? じゃあ、買ってくるね」

 

 そう言って、大判焼きを買いに行くオオガミ。エウリュアレはそれを見送った後、すぐに周囲を軽く見渡す。

 そして、すぐにオオガミに視線を戻す。

 

「ん~……後行ってないところってあったかしら……」

「食べ物系はコンプだよ。まぁ、裏路地に店があるとしたら別だけど」

「流石にそこまでは言わないわよ。裏路地入って面倒なのに絡まれても面倒だしね」

「そうだね。よし、じゃあ散策しながら食べようか」

「えぇ」

 

 オオガミの左腕を掴み、隣を歩きながら左手で持った大判焼きを食べつつ歩いていく。

 

「ん。ねぇマスター。中身違う?」

「いや、こしあんかつぶあんかってくらいだよ?」

「そう? 私のはこしあんだから……そっちのもちょうだい?」

「いいけど……はい」

「ありがと」

 

 そういって、オオガミの大判焼きを食べるエウリュアレ。

 

「ん~……私はやっぱこっちで良いかも」

「了解。帰ってからのお菓子作りでもそこら辺考えないとなぁ……」

「頑張ってね、マスター」

 

 そう言って、二人はまたしばらく歩くのだった。




 裏路地で触手をビッタンビッタンしている幼女がいたとかなんとか……


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そろそろ、ここともお別れね(まぁ、後少しだけど、満喫しよう)

「後2日だけど、大丈夫?」

「……まぁ、なんとかなるかなって思ってる」

 

 野菜を見つつ、返事をするオオガミ。

 現状、ポイントも素材交換も終わっていない。小判に至っては、手も出していないような状況に近い。

 なのでエウリュアレは心配したが、それほど気にするべき事でもないようだった。

 

「貴方がなんとかなるって言うのなら、なんとかなるんでしょうね。茶々が大活躍かしら」

「そうなると思うよ。なんだかんだ、最強は今のところ茶々だし」

「本人が聞いたら自慢して、アビーに叩き潰されそうね」

「ハハッ。十分あり得る。アビーはそういう感じの子だし」

「本人が聞いてたら吊し上げられるわよ?」

「まぁ、その時はその時だよ」

 

 いくつかの野菜を買い、次は肉屋へと向かう。

 つもりだったが、足を止めて、別の方向へと歩き出すオオガミ。

 

「どうしたの……って、櫛?」

「うん。エウリュアレの髪をとかすのに良いかなって思って。人数分揃えるのは……流石に無理があるかな」

「そう……じゃあ、私も選ぼうかしら」

 

 そう言って、奥の方まで探しに行く二人。

 

 

 * * *

 

 

「櫛を買いに行ったのかしら。なんか、いろんな色がいっぱいあるわ」

「まぁ、普通の櫛以外にも、飾り櫛とかあるし。というか、ちゃんと見えてるの?」

 

 何処かから調達してきた双眼鏡でオオガミ達を監視しつつ、話す二人。

 屋根の上から見ているが、本来なら双眼鏡無しでも普通に見える距離だ。なので、双眼鏡は見た目的な問題だろう。雰囲気は大事だった。

 

「ん~……二人とも、凄い楽しそうで、ちょっと羨ましいのだけど」

「ま、あの二人だし、是非もないよね。叔母上も、何時かやるって思ってたって言うだろうし」

「むぐぐ……流石エウリュアレさんね……何時か乗り越えなくちゃいけない壁……!」

「茶々、越えられないと思うの。あれはもう、マスター洗脳するしか……」

「洗脳……ありね」

「あぁ……そういえば、出来る側だった……茶々、そのうちマスターがおかしくなっちゃうんじゃないかと、ワクワクしてる」

「茶々さんも普通に怖いわよね。発想的に」

「実行しない分、圧倒的にマシだと自負してる」

 

 暗にアビゲイルは実行しかねないと思っている茶々。

 当然、アビゲイルはやるつもりだった。というより、過去に実行しようとして、何度もエウリュアレに撃ち落とされていた。

 

「むぅ……エウリュアレさんの防衛、普通に攻めにくいのよね。なんでか分からないのだけど、門の出現場所を先読みされて迎撃されるし、女神の神核のせいで洗脳されないし……」

「なんで戦闘してるの……茶々、実は絶体絶命の危機だったりする……?」

 

 隣のアビゲイルを横目で見つつ、ゆっくりと距離を取ろうとする茶々。しかし、すぐに触手に捕まって、引き戻された。

 宇宙的恐怖からは逃げられない。茶々はそう察したのだった。




 正直櫛を買いたいがために続けていた節がある……
 しかし、尾行してる二人組が怪しくなってきた……これ、茶々の安否が心配……


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地獄のマラソン開始のお知らせ(誰だこんなになるまで放置した奴)

 宿屋に戻り、先ほど買った櫛でエウリュアレの髪を梳かした後、(かんざし)で髪をまとめる練習をしてみる。

 最初は簡単にできるだろうと楽観的に考えていたが、しばらくやって、想像以上に難しい事に気付く。

 

「あ~……初心者用じゃないっぽい。帰ってからゆっくりやろうか」

「そう。まぁ、貴方が無理ならダメね。しばらくは止めておきましょうか」

「うぅむ、鈴鹿か玉藻に習っておくべきだったか……」

「まぁ、また今度ね、その時はまたお願いするわ」

「うん。髪型は何時ものに戻しておくね」

 

 再度髪を梳かし直し、何時ものツインテールに戻す。

 帰ったら茶々に教えてもらおうかと思いつつ、根本的に茶々が出来るのかと言う不安があったりなかったりしていた。

 

「はぁ……せっかくいい感じの簪があったから、エウリュアレに着けてもらおうと思ったんだけどなぁ……」

「私も残念だったわ。でもまぁ、時間はあるし、もうちょっとゆっくりでも大丈夫よ」

「ぐぬぬ……簪が出来なかったし、仕方ないからエウリュアレ用の着物も買っておくか……」

 

 何か決意を固めたようなオオガミ。

 そんなオオガミを見て、エウリュアレは短くため息を吐いた後、

 

「さて。いい加減、現実を見ましょうか」

 

 エウリュアレの声に、ビクリと反応するオオガミ。

 大いに心当たりがあるので、エウリュアレの方を見るのも躊躇うレベルだった。

 

「残り期限は一日を切ったわ。現状はどうかしら?」

「……砂金が残り半分、小判が手付かず。新撰組ポイントが4割残ってる」

「そう……じゃあ、私が何を言いたいのかも分かるわよね?」

「あっと、えっと……荷物置いてから周回に行こうか」

「素直なのは良いことね。早く支度しなさい」

「了解ですっ!!」

 

 半泣きで走り出すオオガミ。態度が先ほどとは違かったので、流石に焦っていた。

 エウリュアレはそれを見送った後、窓の外のある一点を見つつ、

 

「二人とも。ちゃんとマスターを見守ってなさいよ?」

 

 そう言うと、すぐに荷物を整え始めるエウリュアレ。帰る準備は万端だった。

 

 

 * * *

 

 

「待って待って……普通にバレていたのだけど……!!」

「だから茶々言ったじゃん……バレてるって……」

「まさか位置までバレてるなんて思わないじゃない……!!」

 

 視線が合ってしまった気がしたアビゲイル。

 口の動きから察するに、オオガミを守れ的なモノだろうと想像するアビゲイル。

 

「むぅ……見つけられてたのなら仕方ないわ。ちゃんとマスターを守りに行くわよ」

「うへぇ……茶々、ちょっと休みたいんだけどぉ……」

「レッツゴー!!」

「ダメだ茶々の言う事聞いてないよ。伯母上並みだよ」

 

 門を潜っていくアビゲイルを見送ろうとした茶々だったが、触手に捕まって門へ投げ込まれてしまうのだった。




 簪って、なんか難しそうですよね(小並感

 というか、本格的にこれ、イベント終わるかな……が、頑張るしかない、か……(コフッ


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勝ったっ!! 明治維新、完っ!(まぁ、最終的にこうなるわよね)

「ふぅ……一件落着。これで素材回収は完了だね」

「えぇ。モニュメントがないのを除けば、完璧よね」

 

 マイルームに戻ってきたオオガミ達。

 そして、エウリュアレの一言に苦い顔になるオオガミ。

 事実、モニュメントの回収は出来なかったので、言い返せないのだ。

 とはいっても、モニュメントはかなりの数を持っているので、そこまで重要度は高くない。

 

「でも、素材回収が終わって本当によかったわ。どうしてこんなになるまで放置してたのかしら」

「茶々、知ってるけど黙っておくね。マスターの名誉のために」

「ちょっと待って茶々。何を知ってるの? ねぇ、何を知ってるの?」

 

 少し怒っているアビゲイルと、不穏な笑みを浮かべた茶々。

 オオガミは茶々が何を知っているのかと不安になるオオガミだったが、じりじりと距離を取って絶対に捕まらないようにしている茶々を捕まえられるわけもなかった。

 

「まぁ、マスターの事だし、余裕だと油断しまくってこうなったんでしょうね」

「マスター……残念なのね……」

「ねぇ、エウリュアレ? 知らないところで評価を下げていくの止めて?」

「嫌よ。面白いもの」

「うぐぐ……意外とダメージデカいのに……!」

「ふふふ。そう言う反応が好きなのよ」

「エウリュアレさんも、性格悪いのね」

 

 意外と同類の様な気がするエウリュアレとアビゲイル。

 オオガミとしては、ぜひとも止めてほしかった。

 

「まぁ、とりあえずマシュに会おうか。送った食料がどうなったのか気になるし」

「ジークさんもいるし、大丈夫だと思うのだけど」

 

 そんなことを話しながら扉を開けると、

 

「あぁ、おかえりマスター。一応彼女に許可は取って八連双晶を使わせてもらっているよ」

「ご、ゴーレム……!! て、敵じゃない安全なゴーレムなのよね!? 乗ってもいいかしら!?」

「アビー、ストップ。ちょっと落ち着いて。エウリュアレ、チェンジ」

「はいはい。アビー。こっちよ」

 

 目を輝かせながら騒ぐアビゲイルを再び室内に引き込んでいくエウリュアレ。

 ほっとため息を吐くと、通路の奥からジークが出てくる。

 

「あぁ、もうイベントは終わったのか。突然彼が召喚されて驚いたが、食料運搬用のゴーレムを作成してくれたのは助かった。素材を一部借りているが……問題ないだろうか」

「あぁ、いや、マシュが許可したなら問題ないんだけど。で、そのマシュは?」

「彼女は今、部屋で休んでいるよ。僕がするまで働き詰めの様だったからね」

「休んだ方が良いとは言っていたのだが、あまり聞いてくれなくて困っていた所に彼が召喚されて助かった。大量のゴーレムを見て、ようやく休んでくれたよ」

「……ちょっとマシュの所に行ってくるね。エウリュアレ、アビーと茶々をよろしく」

「私の苦労が一番だと思うのだけど」

 

 エウリュアレの言葉を最後まで聞かずにマシュの元へと向かうオオガミ。

 無視されたエウリュアレはため息を吐いて、仕方がないとばかりに暴れるアビゲイルを解き放つのだった。




 モニュメントロストは想定内。

 1300万? ちょっと知らないですね。骨美味しいです。


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ハンティング
茶々、別に物理的にハントしたいわけじゃないんだけど(青いドラゴン、狩りたかったなぁ……)


「ハンティングクエストッ!」

「モンスターをハンティングッ!」

「茶々、新しく出た青いドラゴン狩らないといけないからパス!」

「残念だけど、私とアビゲイルはともかく、貴女はメイン戦力だからダメよ」

 

 エウリュアレの指摘と同時にアビゲイルが触手を出して茶々を引きずっていく。

 茶々は本気で抵抗しているようだが、圧倒的に相性が悪いようで、大した反撃も出来ずに引きずられていた。

 

「なんで茶々以外にアタッカーがいないのか、問い詰めたい気分なんだけど。茶々、めっちゃ不服。青いドラゴンを大剣でぶった切るというめっちゃ楽しいのやりたかったのに……」

「帰ったらね。太刀で援護するよ」

「当たんない所で振ってねマスター」

「……私、未だ皆に追いつかないのよね……というか、ノッブとマスターの進行速度がおかしいと思うのだけど……」

「私も帰ったらやらせてもらいたいわ」

 

 移動にアビゲイルの門を使うというのが自然になってきた今日この頃。

 もはや依存してきているような気がしなくもないが、あまり気にしなくても特異点に出れば走りまくる羽目になるので、何ら問題はない。

 

「さて、骨はちょっと集まったけど全く足りないね」

「でも、もう終わっちゃったから、今はラミアさんね」

「蛇の宝玉だよね。とはいえ、今の所そんな必要だとは思ってないけど、持っておいて損はないしね。取れる分だけは取って置こうか」

「骨の方が重要だった気がするのだけど……まぁ、のんびり行きましょうか」

「レッツゴー!」

 

 そう言って、突撃する四人。

 マシュも連れて行く予定だったのだが、ぐっすり寝ていたので、仕方なく置いて行く事にした。マシュの代わりとしてジークが頑張ってくれているので、気にせず暴れられるのだった。

 

「よし、エウリュアレとアビーは休憩して、茶々は主力。レッツゴー」

「圧倒的理不尽!! 茶々だけ重労働!!」

「大丈夫。二人はいざという時の最終手段だから」

「最終手段第一号よ」

「最終手段第二号なの?」

「一人疑問形なんだけど! 茶々、マスターが頑張ってるところを見て笑ってたい!!」

「悪意しかないねそれ」

「残念だけど、その役目は私がやっておくわ。任せて茶々、貴女の戦い、最後まで見守っているわね」

「見守るんじゃなくて、変わってほしいんだけど!!」

 

 ノットチェンジ。イエスファイアー。

 そんな意思を感じた茶々は、これ以上騒いでも無駄だと悟り、とりあえず敵に向かう。

 

「茶々がダメだったら、マスター何とかしてよね!」

「任せといて」

 

 嫌そうな顔をしながらも、茶々はラミアの群れに突撃するのだった。




 ナナ・テスカトリ復活!! なんかめっちゃかっこいいんだけど!!
 装備も強いし、久しぶりに周回だなこれは。とケツイを固めた私です。


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あれば困らないけど、今すぐ必要ではない感じ(そもそも育成自体ほとんどやらなくなってきてるしね)

「うぅむ、牙と酒かぁ……今のところ、切羽詰まってる訳じゃないんだよねぇ……」

「でも、取っておいて損はないわ。一応行けるだけ行って集めておきましょうよ」

「うへぇ……たまに廊下で倒れてる花咲かせてる魔術師って、たぶん同じことしてたんだろうなぁって……」

「見てるだけなのに、なんでかしら。悲しくなってきたわ」

 

 冷静に手に入るアイテムを分析しつつ、とりあえず回ろうと決めるオオガミとエウリュアレ。

 それに反して、地面に倒れて死にそうになってる茶々と、悲しそうな表情のアビゲイル。

 とはいえ、茶々と代わろうと言うつもりがある人物は誰もいなかった。

 

「まぁ、茶々にはハンティングクエストが出てる間は周回してもらうけどね」

「ちゃ、茶々、もう帰りたい……帰ってゲームするんだ……」

「一週間頑張ってね、茶々さん……」

「そうやってすぐ助けるのを諦めるの、茶々素直に尊敬する」

「影響されないでよ。というか、割と誰にでもそんな感じよ?」

「私、そんなにひどくはないと思うのだけど」

「自己評価と周囲の評価は別って事だよ。だってほら、未だに謎の悪評が絶えないマスターがいるんだから」

「明らかにマスターの事だそれー!」

 

 後輩が重労働している中、特異点で楽しんでいるといういわれも無い噂が立っている不思議。

 なので、そんな噂がいつの間にか立ってしまっていたオオガミは、そんな経験談からアビゲイルを慰めるが、明らかにオオガミのダメージの方が大きいのでアビゲイルが逆に泣きそうになっていた。

 

「さて、とりあえずサクッと周回していこうか」

「サクッとやるために茶々が倒れるんだけど……伯母上に全部任せたい」

「ノッブは限定的にしか強くないから、無しです。つまり、茶々無双って事だよ」

「たぶん本来なら嬉しいんだろうけど、茶々的には拒否したい欲が……」

「それで拒否できるなら私は絆10になってないわよ。諦めて周回に行ってきなさい」

「茶々、遠くから見守っているわね! マスターはこっちで守っておくわ!」

「茶々は救われないのかー……茶々以外戦えるアタッカーがいないのが問題だよねこれ……」

 

 増えないアタッカー。朝にオオガミが召喚していた全体宝具バーサーカーがいたような気がするが、レベルが足りないので、シャドウ・ボーダーで留守番という放置スタイル。今頃料理担当になっているだろう。

 

「ねぇマスター。今ふと気になったのだけど、どうやって召喚しているのかしら。召喚施設はここにはないと思ったのだけど……」

「アビーに一時的に開いてもらって召喚して置いて行ってる感じ。帰ったら場合によっては殺される気がする」

「なんで最初からクライマックスなのか。茶々は面白いのでもっとやれって思います」

 

 エウリュアレの質問に、サラリと死ぬ可能性をほのめかして答えるオオガミ。

 茶々はそれを聞いて、とても楽しそうな表情になるのだった。




 種火が落ちるからゆっくりとレベルが上がっていく優しさ。とはいえ、そんなに変わりはないんですけどね。


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あれ、単体バーサーカー……?(茶々のワンオペ終了のお知らせ!)

「あ、バーサーカー」

「えっ」

「やったっ! 茶々以外のアタッカーキタコレ!!」

 

 オオガミの呟きに頬を引きつらせるアビゲイルと、同士が増えた事によって喜ぶ茶々。

 エウリュアレは見なかったことにして、落ちた種火を拾っていた。

 

「ふっふっふ。これで茶々のボッチ解消だね。茶々大勝利!」

「い、いえ、待ってマスター。複数体いるのだから、茶々さんの方が良いはずよ」

「いや、敵は一体なんで、アビーでもいける」

「そんな……! いつもなら嬉しいはずなのに、今回だけはすっごい微妙……! 茶々さんを見てたからかしら……?」

「茶々と同じ運命を辿ってね! 期待してる!」

「そんな期待は嬉しくないわ!」

「くっくっく……ついでに茶々の秘密の情報も言っておくと、マスターは大体ひねくれものだから、一番絆ポイントが美味しいメインを星4以下で走ったりするし、大体詰まる相手も似たようなのだから、絆10を出して終わらせるせいで、周回以外で絆を上げる方法がないよっ!」

「ぐだぐだ組だからって、言って良いことと悪いことがあるからな!? 分かってるのか、茶々!」

「茶々、子供だから分かんない!」

「こういう時だけ子供になるのをやめよう!?」

「わ、悪い人ね……!!」

 

 わなわなと震えるアビゲイル。

 オオガミは茶々のグレーすぎる発言に震えていた。

 そして、当の本人である茶々はドヤ顔をしていた。

 

「ね、ねぇマスター……今の方法なら何言っても許されるのかしら!!」

「常識を持って用法・用量・節度を守って使ってね!?」

「使うこと自体に文句を言わないマスター、流石だと思う!」

 

 今のやり取りを見ておきながら、普通に参考にしていいのかを聞いてくるアビゲイルもさることながら、それに対して使用禁止しないオオガミも流石だろう。

 茶々的には、自分がやる事も問題ないと暗に言われているので、文句を言う理由も無い。

 

「全く……エウリュアレもなんか言ってよ」

「……そう言えば、エウリュアレさんの姿を見てないような……?」

「ん……あ、あそこにいるよ」

 

 そう言って茶々が指差した先を見ると、種火に囲まれた状態で黒武者とキメラに襲われているエウリュアレの姿が。

 

「……え、いや、待って待って待って。いや待つんじゃない、とりあえず助けに行くよ!?」

「え~、茶々メンドくさ――――」

「第一投!! 茶々さん砲!!」

 

 突然触手に捕まれ、投げられる茶々。

 投げたアビゲイル以外が呆然としている間も、茶々は敵の群れのど真ん中へと突撃していっている。

 

「え、いや、ちょっ、茶々砲ってなんなげふぅ!!」

「ぐだぐだ勢っぽい着地……!! やっぱりノッブの姪なんだなって……!!」

「騒いでるのはいいけど、ミイラ取りがミイラにって状況になってるんじゃないの?」

 

 顔面から着地した茶々を見て、目を輝かせるオオガミに、冷静に突っ込むエウリュアレ。

 それで冷静になったオオガミは、アビゲイルを連れて二人を救出に向かうのだった。




 もはやカオス。そして、アーラシュ・頼光・アビゲイルでダブルマーリンを使って周回しているのが実際の風景だったりします。いやぁ、勾玉は完全に不足してましたからねぇ……まぁ、リンゴは使わないんですけど。

 茶々の火力じゃ削り切れない悲しさ……


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ランサー地獄……!!(ライダーを相手するのも地味にキツイ)

「やばい……回りたいのに、天敵しかいない……!!」

「セイバーいないものね……」

「茶々的にも勝てるか怪しいんだけど……」

「私はキメラの相手で疲れたから、ちょっと寝てるわ……」

 

 竜の逆鱗は意外と必要量が多いので、出来るだけ取っておきたいオオガミ。

 しかし、相性が悪いのは仕方がなかった。

 

「ぐぎぎ……昨日と打って変わって一気にピンチ……これはもう、茶々に頑張ってもらうしかないね!!」

「茶々の心が大ピンチ……それもこれも、茶々の手から出るなんかすごい炎が悪いんだ……帰ったら狩猟生活しないで探索してよう……クイナ集めてふわふわに癒されるんだ……」

「ノッブがいたときには無かったから、最近なのよね……ん? あれ? じゃあなんで最近戻ってきた茶々が詳しいのかしら……?」

「エウリュアレさん、それ以上考えちゃだめよ。大体、ぐだぐだだもの。最後の方まで出てこなかったのは、きっと遊んでたからなのよ」

「あぁ、そう言われると、そんな気もするわ……」

「で、実際どうなの?」

「え、茶々は普通に皆が帰ってくるまでゲームしてたけど?」

「どこで遊んでたんだろ……マシュなら知ってるかな……?」

「ふっふっふ。伯母上があんな面白そうなマッスィーン、見逃すわけないじゃん! これが伯母上マジック……!」

「何してんだあの戦国武将」

「どこかを二回叩くとかで開く扉なのかしら」

「ギミック仕込まれてるのが確定している安心と信頼のノッブ建築」

 

 明らかにシャドウ・ボーダーに手が加えられていそうな雰囲気だが、はたしてダ・ヴィンチちゃんは容認済みなんだろうか。

 

「ちなみに、伯母上のデータと、BBさんのデータもあるよ。あの二人が揃うと相手が一瞬で消えて行くのが凄いと思った」

「一体どこで何が起こってるっていうんだ……」

「とりあえずノッブが元凶って事だけ分かったから、戻ってきたら一応倒しておきましょうか」

「理不尽に散る伯母上……南無南無。周回をしない分、いっぱい散ってね、伯母上」

「普通にノッブが吹き飛ぶことを容認するどころか、もっとやれとばかりの茶々、流石……」

「帰ったら一回シャドウ・ボーダー内を探索してみようかしら……」

 

 ノッブが散る事を確定させている間に、アビゲイルはシャドウ・ボーダー内の探索を決意していた。

 

「さて、とりあえず今回のムシュフシュとドラゴンをどうにかして倒そう……気合出せばなんとか行けるよな……」

「アーチャーだから流石に私は無理ね。男性じゃないし」

「ぐぅ……基本的にWEAK取れる茶々自身の才能が恨めしい……!!」

「クラスが大体原因な気がするわ」

 

 そんなことを言いながら、ムシュフシュ達に突撃するのだった。




 何とか回るんだ……逆鱗……!! って思ってたら、100個近くあったでござる……


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アサシン相手ならキャスターだよね(今更だけど、花の魔術師呼び出せばよかったよね)

「無間の歯車という戦争の火種……」

「鳳凰の羽じゃないせいで炎上不可避ね」

「もうなにしても炎上しちゃうと思うから、とりあえず秘石確定ドロップか、3桁配布で良いと思うの」

「茶々はいい加減休憩したいなって」

 

 明後日の方向を見る茶々に、流石に良心が痛み、黙祷するオオガミ。

 

「さて、茶々を休憩させるのはなんとかなるとして、代理は彼女しかいないかな。レベル的に」

「ハッ! まさかマスター……あの、宝物庫荒らしに理不尽にも任命されちゃった彼女を呼ぶのね……!?」

「なんでアビーは何でも知ってる風なのかしら」

「茶々分かる。たぶんシャドウ・ボーダー一番乗りの英霊だから知ってるんだよ。で、マスターが見つけられなくて困ってたのも知ってる」

「来た時に即座に門送りにしてたもの……大体主犯はアビーよね」

 

 後ろで色々と言われているアビゲイルだが、一切気にしていないのは、流石と言うべきか。

 とにかく、彼女の居場所を知っているのはアビゲイルだけなので、呼び出してもらう。

 

「私の楽の為に、召喚!!」

「ひっどい理由よね」

「茶々は文句言わない。贅沢は必須だと思った」

「貴女も大概よね」

 

 そんなことを話している間に門が開かれ、落ちてきたのは一人の少女。

 しかし、明らかに突然連れて来られたにもかかわらず、普通に着地する。

 

「あら、突然落とされて驚いたのだけど、マスターがいるわ。というか、かなり久しぶりに会った気がするわ」

「こっちも同じ気分なんだけど、そもそもシャドウ・ボーダーで会わないのはなぜ……?」

「私も分からないわ。でも、シャドウ・ボーダー内にいたのは確かよ」

「むむむ……探索が足りなかった……?」

 

 考えるオオガミ。しかし、当の本人のはずである少女――――アナスタシアは、全く気にしている様子は無かった。

 そんな二人を見ていたエウリュアレと茶々の横にさりげなく並ぶアビゲイル。

 

「で、どこに隠してたの?」

「既にアビーが隠してた前提の聞き方に茶々びっくりだよ」

「マシュさんの部屋に送り込んでたわよ? マスターがマシュさんの所に向かった時は慌ててマスターの部屋に移動させたわよ。そんなに門送りにしてないはずなのに、適応されてすっごい複雑な気分なのだけど」

「事実アビーが原因なのが茶々的にホラーポイント」

 

 もはや一周回った信頼がある二人。

 茶々は驚きを隠せないが、平然とアナスタシアを隠そうとするアビゲイルにはちょっと恐怖していた。

 

「とりあえず、アナスタシアでどれだけいけるかだね。最悪の場合茶々皆勤賞の可能性」

「えっ……もう茶々やりたくないんだけど。茶々、もう帰りたいんだけどっ!」

「まぁまぁ。行きたくなくても、門を開けるのは私だけだから頑張ってね」

「茶々……強く生きてね……」

「エウリュアレのアホー!!」

 

 アナスタシアと共に向かうオオガミ。

 その後ろを、茶々は叫びながらもアビゲイルに連れて行かれ、エウリュアレはそれを見守るのだった。




 当然、今なお生存中であろう花の魔術師は声だけ参加してもらう事に。英雄作成して幻術かけて夢幻のカリスマ使ってくれるだけでええんやで……(ブラック感


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日常
理不尽な怒りだぁ……(だとしても許さない)


「あぁ、ここが一番涼しい……」

「その頭、吹き飛ばすわよ?」

「私、どっちを倒せば良いのかしら……」

「茶々、修羅場展開は見ないことにしてるから。だってほら、巻き込まれたら痛いし」

 

 オオガミの発言と同時に殺伐とする空気。

 理由も分かりやすいもので、オオガミがわざわざアナスタシアの近くまで移動したのが原因だった。

 夏の足音は、何故か何処にいようと影響を及ぼしてくるので、常に冷気を出し続けているアナスタシアの元へと行ってしまうのも仕方の無いことだった。

 だが、周囲がそれを容認するかは別問題だった。

 

「うぅむ、明らかに殺意全開なんだけど、なんで殺されそうになってるか。ここが分からない……」

「知らなくても良いわ。でもとりあえず射っておくわね」

「えっ、ちょっ、ひどっ!」

 

 放たれた矢を紙一重でかわすオオガミ。

 同時に、わりと本気の舌打ちがエウリュアレから聞こえる。

 

「うん、なんというか、今のは本気で殺しに来てるなって思った。ヘルプミー茶々!」

「止めてマスター! わりと本気で! 流れ矢で死にたくない!」

「思いっきり見捨てられた!?」

 

 アナスタシアでもアビゲイルでもなく、真っ先に助けを求めた相手は茶々。

 あくまでも撃退できそうな人物に向かっていっただけなのだが、その選択は一瞬で敵を増やす。

 

「とりあえず、後何本か射っておきましょうか」

「触手で足止めしても良いと思うのだけど」

「氷漬けでも良いと思うわ」

「待って待って待って。まだアビーが敵に回るのは分かる。なんでアナスタシアもそっち側なのかな!?」

「だって、マスターは一番近くにいた私に頼らず、茶々さんの方へ行ったんだもの。私、凄く傷ついたわ。えぇ、とっても」

「うぅむ、どうやら勝手に地雷を踏んで、敵を三倍に増やした上に味方ゼロと……つまり諦めろと!」

 

 ドヤ顔で言い切るオオガミ。

 そして、三人は真顔で同時に攻撃を始める。

 

「うん。懐かしいけど、一発でも当たったら即死なんだよねコレッ!」

 

 ノッブの三千世界を思い出す程の攻撃だが、その全てが自分に向かってきていると考えると、恐ろしすぎた。

 なので、回避をしたり無敵を張ったりして逃走するのだった。

 

「くぅ……いつも通り全く当たらないのだけど」

「とても不思議なのだけど、なんで門の出現位置がバレてるのかしら……未来視持ちじゃなかったはずなのだけど……」

「予測回避があるもの。絶対に避けられない攻撃以外は対応するわよ」

「私の時は、回避一回だった気がするのだけど、気のせいかしら……?」

「それも不思議だけど……エウリュアレさんもアナスタシアさんも、このまま行くとオートマタとも戦うことになると思うのだけど」

「「問題ないわ」」

「凄いやる気を感じるのだけど……でも、私も同じなのよね」

 

 そう言って、途中で出てくるオートマタ達を破壊しつつ、三人はオオガミを追いかけるのだった。




 ちょっと殺伐感を入れようとすると一瞬にして追いかけられるオオガミ君。彼は呪われてるのかもしれない……(遠い目


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圧倒的イベント発生速度(とりあえず一時休憩だよね)

「終わらないイベントの闇……私は永遠に門を開き続けるの……」

「アビーが末期……!! 衛生兵!! 誰かー!!」

「貴方がどうにかしなさいよ」

「とりあえず、私のコートをかけておきましょう」

「アナスタシアの方が対応高いんだけど……マスター、負けてるよ?」

「何の勝負……?」

 

 シャドウ・ボーダーに帰って来るなり、倒れてブツブツと呟いているアビゲイルにコートをかけるアナスタシア。

 オオガミはそんなアビゲイルを、かけられたコートに包んでお姫様抱っこをする。

 

「まぁ、ずっと移動してたしねぇ……移動を手伝ってくれた代償は重かったわけだ」

「私も原因の一つかしらね。流石にやり過ぎたわ」

「茶々とアナスタシアは無罪だね。二人が原因って事で!!」

「事実だけど茶々の言い方がなんかムカつくから茶々も制裁入れておきましょう」

「茶々理不尽!!」

 

 どんな制裁を入れるかはまだ未定だが、出来るだけアビゲイルの意見を取り入れるつもりではあった。

 

「とりあえずマイルームがいいのかな?」

「良いと思うわよ? というか、そこ以外は無いんじゃないかしら……」

「異論なーし。というか、マスターの部屋が一番ものが置いてあって遊べるから好き」

「私も気になるわ。ついて行ってもいいかしら」

「断らなくても基本拒否しないからいつでも大丈夫よ。ほら、早く行きましょ」

 

 部屋主の是非を聞くよりも先にエウリュアレが許可を出す。

 別にエウリュアレの言うように拒否をするつもりはなかったが、自分以外が許可するのはどうなのだろうかと思うオオガミ。

 とはいえ、別段何があるというわけでもないので、そのままにしておく。

 

「あ……誰か開けて~……」

「そんな寂しそうな顔を……普通に開けてあげるわよ……」

 

 そう言って扉を開けた直後、目に入ってくるのは、エウリュアレと同じ髪色の少女。

 互いに目が合い、一言。

 

「マスター……姉様を連れてセクハラですか……」

「酷い言いがかりだね!?」

「大体あってるわ」

「エウリュアレさん!? 何を言っておるので!?」

「やはりそうだったんですね……」

「アナさんも偏見が酷くないかな!?」

 

 そんなやり取りを聞いて、ピクリと動くアビゲイル。

 門が開き、触手によってオオガミの手から離れて地面に着地すると、

 

「また人が増えたのだけど!! もう一回ロシアに全員放り投げようかしら!!」

「アビゲイルストップ!! どうして何人かいないのか、凄い気になってたけど、その答えはアビーだったんだね!?」

「ナイスアビゲイル。でも、そのうち回収してきて頂戴ね」

「茶々……良く生き残ってるなって……」

 

 シャドウ・ボーダー内で密かに起きていた失踪事件の正体はアビゲイルによるものだと判明したので、真相解明されてほっとする反面、妙にエウリュアレが良い表情なのが不思議で仕方なかったりする。

 というより、ロシアに捨ててくるという発想が、既に狂気的な気がした。

 

「と、とりあえず、マシュの様子見てくるね……」

「行ってらっしゃい。茶々、マスターが生き残る可能性に5QP賭けるね!」

「おっと。死ぬ可能性もあるって言われちゃったんだけど」

 

 そんなことを言いながら、オオガミはその場から逃げ出すのだった。




 魔神セイバーキタアアァァァァァァーーーーーー!!!!!
 めっちゃかっこよくて勝ちゲーですね。アルターエゴはかっこいいのがほとんどだな……!!!
 とりあえず、来週までに貯められるだけ貯めて、回せるだけ回すんじゃァ……!!


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イベントがないと暇だね(マスターが働いてるときしか仕事はないですしね)

 本日もオオガミの部屋は騒がしい。

 だが、周囲はわりと平和だった。

 なにかと言って、あの周辺は危険なことがよく起こる。宝具が飛んでたり、異次元の門が開かれてたり、オオガミが転がってきたりする。

 なので、オオガミの部屋の近くを通るのは、大体の人が嫌がっていたりする。

 

「まぁ、彼らの意見も分からなくはない。僕自身、今すっごい不安だからね」

「流石に突然攻撃が飛んできたりはしないだろう。マスターも、彼女たちも、自重はするだろう」

「それで自重してくれるのなら、エルキドゥさん達は苦労してませんって」

 

 ついに復活したマシュと共に、ジークとアヴィケブロンは廊下を歩く。

 オオガミがあまり活動していないので、三人も暇だった。

 

「しかし、意外とやることがないときは本当に無いんだね。驚いたよ」

「あぁ。これで貴方も研究に没頭できるのでは?」

「それなんだが、ここは工房が作れないから無理なんだ。拠点を手にいれるまでの辛抱だな」

「ゴーレムが量産されてるだけで、かなり助かるんですけどね。まぁ、来週までは休めるんじゃないかと思います」

「一週間か……ふむ。じゃあ、他にもゴーレムの素材になりそうなものを見に行ってみるかな」

「俺も一緒に行こう。素材の置き場も再確認しておきたいからな」

「召喚されてそのままこっちの仕事を手伝っていただいてありがとうございます。先輩には後でしっかりお話ししておきますね」

「俺はあまり気にしていないが……そうだな。ほどほどに頼む」

「僕としては、工房さえくれれば文句はないけどね。じゃあ行ってくるよ」

 

 そう言って二人は別れ、マシュはオオガミの部屋へと向かう。

 直後、部屋から転がり出てくるオオガミ。

 

「ストップ! そろそろこのやり取りは飽きられてきてると思うから!」

「大丈夫です。私が相手ですから」

「相手の問題じゃないと思うの!」

 

 鎌を構え、どう調理しようかと言いたげな目。

 命乞いをするオオガミも、いつもより本気な気がする。

 だが、本当に恐ろしいのは、それを冷静に分析しているマシュ自身だろう。

 

「先輩……今日は何をしたんですか?」

「ま、マシュ!? いや、別に特に変なことはしてないよ!? そもそも、なんでこんな目に遭ってるかあんま分かんないし!」

「アナさん?」

「確かに深い理由はありませんが、強いて言うならば、サーヴァントの人数が多いのと、石の貯蔵がほとんど無くなっているので、それに対する追及です。マシュさんもその情報は欲しいでしょうし」

「なるほど……分かりました。存分にやっちゃってください」

「思いっきり見捨てられた!? やるじゃねぇのこの後輩……!!」

「では、捕縛させてもらいます!」

「ぎゃああぁぁ!!」

 

 マシュの決定と共に動き出す二人。

 アナの攻撃を紙一重でかわし、オオガミは逃げ出すのだった。




 また追われてるよこのマスター(呆れ


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逃げることに関しては追随を許さない系マスター(大体いつも逃げ切ってる不思議)

「さて、逃げ切ったところで再開だ」

「なんで逃げ切れるのかしら……私、手伝ってないのだけど……」

「茶々がいないでしょ? つまりそう言う事よ」

「オーダーチェンジ……?」

 

 実際には、茶々はたまたま部屋を出て行ったのと同時に帰って来ただけで、普通にガンドで拘束した後に全力で逃げ出しただけである。

 そして、それを証明するように、普通に戻ってくる。何処かから手に入れたのだろうクッキーの箱を持って。

 

「ふぅ……しかし、なんか妙に強い幻獣さんだよなぁ……攻撃力がちょっと強い感じ」

「茶々一撃で死ぬんだけどぉ……なんでマスター、弓で狩れるんだし……」

「一撃離脱大剣で殴ろうぜ茶々……」

「ぐぅ……心眼掘りが終わらないのが悪い……!」

「俺は心眼以外に超心も無いから、護石とマム胴でカバーしてるんだよね……」

「見てて思うのは、私にはちょっとついていけそうにないってことかしら」

「私はランスを極めてみるわね! カウンターとかカッコいいわ!」

「……なんでランスなのかしら」

「攻撃を防ぎきって、一方的に蹂躙する的な?」

「モンスターという名のバーサーカーを制すってことかしら……?」

「強引解釈ってことだねっ! でも、茶々は許容するのです」

 

 そう言いつつも、視線も手も止めない茶々。隣でオオガミも手伝っているが、白い幻獣さんはびくともしない。

 なお、アビゲイルは、今のところティラノ擬きと戦闘中だった。

 

「硬いなぁ……しかも、雷纏われると顔面以外当たらないしなぁ……」

「でも、的確に当ててるのよね……実はアーチャー?」

「現実は甘くないのです。的確に当たるかどうか以前に、弓も銃も持ったことも無いって」

「要練習ね。あぁ、でも、肝心の銃弾がないんだったわね。残念。戦うマスターも見てみたかったのだけど」

「マスターが戦うときって、相当ピンチな時だと思うの。まぁ、訓練はするけどさ……」

 

 どうやらかなり削っていたのか、びくともしないように思えた幻獣さんは足を引きずりながら最上層へと逃げていく。

 

「攻撃から逃げるのは、普段から訓練してるよね。茶々は見逃さないのです。だって、本気で命懸けてるもん。背後からの攻撃がめっちゃ殺しに来てたし」

「なんでか分からないけど、いつも一緒にいる人に限って、殺しに来てる気がする。なんでだろ……」

「それはマスターがげんい……ぎゃああぁぁ!! また雷で一撃なんだけどぉ!!」

「なんか確信に迫るような事を言いかけていたような……? 茶々、もう一回言って――――あ、倒しちゃった」

「マスタアァァァァァァァァァァァ!!!」

 

 茶々が倒れてすぐに倒れる幻獣さん。

 悲鳴を上げる茶々は、移動用の特殊装備で風に乗り、最上層まで飛ぶ。

 なんとか剥ぎ取りも終わり、ホッとしたところで改めてオオガミに殴りかかる茶々。

 

「茶々が止め刺したかったんだけど!」

「そう言われてもね!? 流石にさっくり終わると思わないじゃん! しかも、茶々が倒れた瞬間に!」

「すまん……ただ、一つだけ言うのだとすれば、このクエストは報酬が本体なんだよね……幻獣チケット集めだし」

「それはそれ、コレはコレだよ、マスター! 幻獣チケットはめっちゃ欲しいけどね! とりあえず後6周!」

 

 荒ぶる茶々。オオガミ的には拒否する必要がないので、そのまま続行するのだった。

 

「で、アビーは終わりそう?」

「調子に乗って二回やられちゃったのだけど……エウリュアレさん、見ててくれると助かるのだけど」

「あまり役に立たないアドバイスは任せて。マスターからのお墨付きよ」

「威張れることじゃないと思うの……」

 

 そんな事を言いながら、エウリュアレはアビゲイルのプレイを見守るのだった。




 歴戦王に弓で挑むと勝てるんですけど、太刀で瞬殺されたんですよね……近接で挑むなってことなのかと思って、とりあえず後五回倒してから考えることにした私です。


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新人プレイを見てると、ほのぼのする派とイライラする派に別れるよね(第三勢力として、ニヤニヤ派がいたりすると思う)

「いやっほぉぅ!!」

「うっわカッケェ。カウンターキルとかロマン過ぎる」

「茶々もやりたいんだけど……カッコいい……」

「茶々には大剣という攻撃力ロマン搭載済みじゃん」

「マスターって、それとこれは別だっていうの、分かっててそういうこと言うよね。茶々、そういうところはどうかと思う」

 

 そんな事を言いながら、アビゲイルのプレイを見守るオオガミと茶々。

 本日はアビゲイルとエウリュアレ、そしてマシュの三人がやっていた。

 アビゲイルは昨日と同じくランスで、マシュも同じ。エウリュアレは安定の弓だった。

 

「クラス的なそれなのか、エウリュアレの弓使い、かなり上手いよね」

「でも、本人は集中してるから声をかけると怒られる不思議」

「意外とソロの方が強いエウエウだったりします。我が家の可愛い後輩ちゃんはマルチじゃないとポンコツだったりします」

「先輩! 全く攻撃が当たらないんですけど! なんででしょう!!」

「そりゃ、敵の体に当たってないからじゃないかな。上突きでやれば当たると思うけど」

「う、上突き……? ボタンが分かりません! 助けて先輩!」

「◯ボタンだよ。右上に操作説明出てるでしょ?」

「溢れるポンコツ感……まさかゲームだとここまで残念になるとは、茶々もビックリ……」

「マルチだとめっちゃ優秀なんだけどねぇ……」

 

 味方がいるかどうかで性能が左右される不思議。とは言っても、そう言っている二人も、多少は変化しているので、あまり笑えない。

 

「ふぅ。ようやくやられてくれたわ。でも、やっぱり大きい敵は良いわ。狙いが多少雑でも当たってくれるもの。で、これがラスボスで良いのよね?」

「そうそう。エンディング見れるよ」

「まだ上位に上がってないマシュと赤ワンコ倒したばかりのアビゲイルの横で平然とエンディングを流すなんて……茶々は残酷過ぎると思うのです」

「二人とも集中してて見てないからセーフじゃない?」

「茶々はアウトだと思うんだけどなぁ……」

 

 悩ましげに言う茶々と、あまり気にしていないオオガミ。

 なお、アビゲイルもマシュも、本当に気にしている余裕はないので、心配の必要はなかった。

 

「さて、とりあえずマシュの支援に行こうかしら。というか、全員バラバラの事をしているのに、同じ集会所に集まった意味よね……いえ、今から私が手伝うから、意味はあるんでしょうけど」

「頑張れ~。応援してるよ~」

「では、マスターは宝物庫へと行きましょうか。あぁ、種火でも良いですよ?」

「……えぇっとぉ……行ってきますぅ……」

「マスター頑張ってね~!」

 

 背後から聞こえたアナの声に、瞬時に一切の抵抗を諦めて連行されるオオガミ。

 茶々はそれを見て、ここ最近で一番の笑顔で送り出すのだった。




 やっぱ盾って言ったらランスで、マシュだと思うんです。ガンランスも考えたけど、個人的にランス推し(ガンス勢の足音

 後、マルチって、ソロの時と立ち回りが違うからやりにくかったりしますよね。分からない人もいると思うんですけどね。私はそうなんですよ……これがボッチ症候群……?(吐血


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爆弾魔は許されない(雷弓で即殺してあげるわ)

「爆弾魔あぁぁ~!!!」

「うわあぁぁぁ!?」

「私もおぉぉ!?」

 

 吹き飛ぶエウリュアレ達三人。昨日に引き続き進めているが、上位の爆弾魔にまとめて消し飛ばされていた。

 

「あ~……悲しいねぇ……あの爆弾魔、毎度爆破してくるよね」

「戦闘を嗅ぎつけて襲ってくる姿はまるで、新選組のあの男みたいよね」

「ほ、本人には言わないようにね……?」

 

 そんなことを話しつつ、吹き飛んでやり直しとなった三人に苦笑いを向けるオオガミと、楽しそうに笑う茶々。

 

「で、マスターは何してるの?」

「獣狩り」

「……モンスターじゃなくて?」

「獣狩り。というか、どちらかと言うと血晶マラソン。物理乗算の方が使うはずなのに、弓を使いたいがために血強化血晶を掘る必要が……レベル縛りしてないからいいんだけども……」

「モンスターはもう狩りしないの? っていうか、今更だけど、マスターの部屋ってどんだけゲームあるの?」

「アビゲイルマジックだよ……いやぁ、カルデアから全部持ってこれるっていいよね。おっきーとノッブとBBに殺されそうだけど」

「あぁ……マスター、ギルティ」

 

 いずれバレる運命。しかし、それを恐れず行動しているこのマスターは勇敢と言うよりも、アホだった。

 とはいえ、茶々のデータも、ノッブのデータと一緒だったりする。

 

「まぁ、バレたとしてもなんとかなるでしょう。たぶん」

「マスターのその図太い神経、凄いと思う」

「まぁね。任しといてよ」

「誉めてるんじゃないんだけどなぁ……」

 

 苦い顔の茶々と、得意気なオオガミ。相も変わらず、どこからその自信が来るのだろうか。

 そんなことを言いつつ、大剣で敵を叩き潰すオオガミ。やはり欲しいものは中々出ないものだ。

 

「さて、三人の方は?」

「再戦始まったばっかりだよ……というか、ピンクドラゴンの尻尾、硬いよね」

「白ですら弾かれる可能性のある恐怖……というか、普通に弾かれる。切れ味紫の実装まだですかね?」

「斬れないなら斬れるような切れ味を要求するマスター……心眼は?」

「そんな便利な珠を持ってると思うなよ茶々ぁ!!」

「茶々の方が怒られる理不尽……!! そう言えば、弱特一個と見切り二個、散弾珠くらいしかないんだった、このマスター……!!」

「エウリュアレの強運に嫉妬しかないぞコンチクショウ……!!」

 

 平然の女神の効果を使って欲しい装飾品を出していくエウリュアレに嫉妬しているオオガミ。

 そんなオオガミを見て、茶々は悲しそうな表情をするのだった。




 エウリュアレでも爆弾魔はどうしようも無かったよ……


 しかし、獣狩りの方がハイスピードなんで、調査団から狩人に戻った私です。
 いい加減マルチをしたいなって思ったので、レベル縛り用新キャラ作って一周回した後ぼちぼちと聖杯周回したいなぁ……(白目

 まぁ、対人も協力も、クソ雑魚ナメクジなんですけどね(ソロプレイヤー


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マスターって、意外と甘いよね(見ての通り甘いの間違いじゃないかしら)

「ふふん。やっぱり茶々の前では無力! 大剣パワーで潰れろぅ!」

「私の盾は、今のところは破られてません! ガード、ガードです!」

「属性バーストッ! 爆発カッコイー!」

「荒ぶってるなぁ……というか、コイツそこまで強くないから、もはや雑魚扱いだよね……」

「大きいから多段ヒットするし、私的にはお得でしかないわ。だからほら、早く倒しなさいよ」

 

 ようやく到達したラスボス。しかし、茶々とオオガミからすると、もはや舐めプ対象だった。

 

「いやぁ……久し振りに戦うからなぁ……」

「正面に立って一矢よ。ほら、不動で早く早く」

「自殺行為じゃん……ビームで消し飛ぶよ?」

「大丈夫大丈夫。マスターなら運良くスレスレをビームが通り抜けるわよ」

「んな適当な……って、本当にスレスレじゃねぇか」

「茶々ビックリ。本当にスレスレ通るとか、あり得なくない? 茶々、絶対当たったと思ったんだけど」

「流石ねマスター。私もそんな事してみたいわ」

「私はスタミナが続くまで防御ですね……わりと攻撃が届きませんし…難しいです……」

 

 危なっかしい事この上ないスレスレビームに冷や汗を流しつつ、最大溜めの一矢を叩き込むオオガミ。連続ダメージが気持ちいいほどに入るが、それ以上に隣の高火力ビームが恐ろしい。

 

「というか、なんでエウリュアレじゃないのか。プレイヤーはエウリュアレでも良かったと思うの。弓だし」

「嫌よ、HP高いんだもの。こういうのはマスターに任せるに限るわ」

「要するに、面倒な敵は任せるってことね。まぁ良いけどさ……」

「マスターは甘いよね。殿下並みじゃない?」

「羨ましいわ。私もマスターに甘やかされたいのに」

「アビーさん、実は先輩、押しに弱いんですよ。大体ゴリ押せば行けます」

「おっと。信頼してる可愛い後輩ちゃんから酷い言われようだ。そして否定できないのが悲しいね」

 

 敵の攻撃を的確にかわして反撃していく茶々とオオガミ。それとは逆に、ダメージ覚悟で突撃していくアビゲイルと、ガードしつつタイミングを見て攻撃するマシュ。

 オオガミの甘いところを話しつつも、しっかりと操作している四人に、見ているエウリュアレは楽しそうだった。

 

「否定できないんだ。茶々的には否定すると思ってたんだけど」

「私をあれだけ甘やかしていたもの。しかも、私はマシュが言ったようなお願いだけで聞いてもらってたしね」

「むむむ……私も今度やってみようかしら」

「うぅむ。なんか、自分の攻略法を身近な人がばらしていくから、弱点が周知されていく不思議……」

「不思議でもなんでもないよね。マスターが自分から見せてるし」

「う~ん……悩ましいものだよ全く……あ、終わった」

「「「お疲れ様(です)~」」」

 

 ちょうど倒し終わり、一息吐く四人。

 喋りながらは不安だったが、案外いけるものだと思うのだった。




 実際、押されるとめっちゃ弱いオオガミ君です。甘いからね。仕方ないね。是非もなしだね。


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明日から本番!!(石の貯蔵は十分か!!)

「さて、貴重な一週間の休憩時間をモンスターハントに費やしたところで、ついに明日が本番です」

「茶々、後三週間欲しい」

「じゃあ私が引きずって行くわね」

「最近、アビーさんが危険なんですが……」

「暴力性マシマシよね」

 

 少し楽しげなアビゲイルに、苦笑いのマシュとエウリュアレ。

 そして、引きづられていくのが確定している茶々は、苦い顔をしていた。

 

「いやぁ……休憩時間が作れて本当によかったと思ったよ……うん。マシュの精神も回復してくれて、本当によかった……うん……」

「まぁ、マシュはかなり疲れていたしね……久しぶりに遊んで、楽しめたんじゃないかしら」

「それならいいんだけど。でも、明日からまたイベントっていうのを思うと、複雑……」

「まぁ、マシュならたぶん大丈夫よ。ぐだぐだに飲まれたりは……あんまりしないと思うし」

「あはは……いや、ぐだぐだの波は皆平等にぐだぐだになる……けど、今回のはぐだぐだ風味が少ないと言いますか何と言いますか……ガチで回るね。金リンゴ余ってるし」

「やだ、マスターが本気で回るとか、冗談も良い所なのだけど。ついにおかしくなっちゃったかしら」

「う~ん、期待していた反応と全く違うところがエウリュアレらしいなっ!! でもそうするってわかってた!!」

 

 本音としては、頑張れ的なフレーズで応援してくれると思っていたのだが、そんな事は無いというのが現実だった。

 当然、エウリュアレは狙ってやっているのでとても満足そうだった。

 

「ふふふ。それで、準備は無いのかしら」

「まぁ、ぐだぐだイベントだし、どうせイベントボーナスって言っても、攻撃力上昇だと思うから、場合によってはエウリュアレによる出張だね。今回は男性多そうだし」

「……また私なのね……」

 

 結局、絆MAXになったからと言って、休めるわけではないというのは、既に何度も呼ばれている時点で察している。

 そして、そんな二人を見ていない三人は、最後の休日をやはりゲームで過ごすようだった。

 

「とりあえず、向こうに行っても生き残れるように、礼装の最終確認と、留守番のお願いを言って回って来るね」

「行ってらっしゃい。私はここでプレイを見てるわね」

「了解。まぁ、茶々がいるからゲーム方面では心配してないんだけどね」

「えぇ、まぁ、私より茶々の方が上手いものね……分かってるわ」

 

 そう言って、部屋の外へと出て行くオオガミを見送るエウリュアレ。

 そして、エウリュアレは三人のプレイを見守るのだった。




 レッツぐだぐだ。とはいえ、ぐだぐだしてない感凄いですよね……(ワクワク


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ぐだぐだ帝都聖杯奇譚-極東魔人戦線1945-
ついに帝都っ!(探偵事務所で引きこもりたいっ!)


※帝都聖杯奇譚弱ネタバレあり! ご注意ください!!






「ひゃっはー! 新鮮なイベントだぁ!!」

「スッゴい殺伐としてるんだけどっ!! 茶々、帰りたいんだけど!!」

「陣取り合戦ね! 全部一色にすれば良いのよね!」

「バーサーカーよりバーサーカー……クラススキルの狂気は伊達じゃないってことかしら」

「あ、私もなんですね。ストッパーとしてでしょうか?」

 

 突撃するオオガミとアビゲイル。そして、悲鳴を上げながら触手に捕らわれている茶々と、その触手に座っているエウリュアレ。最後に、おまけ感覚で連れてこられたアナ。

 そんなこんなで、今は探偵事務所の端を占拠しているのだった。

 

「意気揚々と乗り込んで、最初にすることが拠点散策。これ、重要ね。逃げ場の確保と、食糧の備蓄は見ておかないと」

「前回と違って、あまり買えそうにないものね。残念だわ。買い物に行くの、楽しみだったのに」

「この時代なら、また新しいお菓子が出ていると思ったのに。私、やること無くなっちゃったわ」

「エウリュアレはある程度やる気で決められるから良いと思うの。こっちは永久周回だよっ!」

「まぁ、茶々さんの攻撃力は高いので、自然と編成に組み込まれることが多くなると思います。が、私は基本戦闘するのはほとんどなく、後ろで万が一に備え続けるという、精神ダメージだけが強いやつです」

「……なんか、ごめんなさい」

「いえ、私自身はあまり苦だとは感じてないので。引き続き頑張ってください」

 

 なんとか買い物が出来ないものかと画策している横で、茶々を宥めるアナ。

 宥めるとは言っても、自分の状況を言っただけなので、特に大それた事はしていなかった。

 

「さて、とりあえず、今回はよく分からないカエルグッズだね。お持ち帰り用は用意しておくとして、精一杯集めるぞー!」

「おー!」

「これだけサーヴァントがいて、反応するのがアビーだけっていうのも凄いわね……」

 

 そういうエウリュアレも、反応しないということに対しては、他のサーヴァントと同じだった。

 

「それじゃあ手始めに、事務所の周りで暴れてる、あのゴールデンなヤンキーを倒しにいくよ!」

「おー!」

「むっ。早速茶々の出番の予感。もう帰りたいかなっ!」

「諦めてください。マスターは意外と逃がしてくれないので、早く帰りたいなら早く倒すしかないです」

「なんて面倒な……!! でも、茶々がんばるもんね!」

「はい。その意気です」

 

 アナに言われ、やる気を出す茶々。そんな姿を見て、オオガミは隣のエウリュアレをチラリと見つつ、

 

「ゴルゴーン姉妹って、精神誘導させるタイプの神様?」

「あら、最初からそんなものだったような気がするのだけど?」

「あぁ、うん。そんなだった気もする」

 

 と、何か納得するのだった。




 普通に雑魚が強いんですがそれは……周回も楽じゃないんですが……!


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安心と信頼の紅茶さん(ついに料理係が……!)

「さて。今日の夕飯の要望はあるか?」

「パンケーキ!」

「ハンバーグ!」

「両方取ってお子さまランチ!」

「なんでマスターからお子さまランチって意見が出るのよ」

 

 エミヤの質問にアビゲイル、茶々、オオガミの順で答え、すかさずエウリュアレに叩かれるオオガミ。

 なお、アナは我関せずとばかりに目を逸らしている。

 

「いやなに、作る分には問題ない。が、アビゲイル嬢にはカルデア――――いや、シャドウ・ボーダーから食材を持ってきてもらう必要があるな。頼めるだろうか?」

「任せて! 荷物運びは超一流よ!」

「それは凄い。お手並み拝見させていただこう」

 

 頼んでいるエミヤと、やる気満々なアビゲイルを見て、エウリュアレは一言。

 

「何故かしら。無性に宝具を撃ちたいのだけど」

「謎の怒りに燃えないでください女神様」

「姉様。やるなら私が」

「アナも乗らないでください」

 

 暴走しそうな姉妹を止めるオオガミ。

 二人とも、やると言ったら本当にやりかねないので、意外と笑えなかった。

 そんな事を話していると、どうやらエミヤの方の準備が終わったらしかった。

 

「ふふん! これで全部ね!」

「あぁ、助かったよ。では、早速調理に入るとしよう」

「隣で見ていても良いかしら?」

「構わないとも」

 

 そう言って、エミヤの後ろをついていくアビゲイルを見て、エウリュアレは一言。

 

「メドゥーサを差し向けてあげようかしら……」

「ストップエウリュアレ。それ以上いけない」

「分かりました。斬り潰しておきます」

「絶対やるんじゃないよアナ」

「なんで止めるのよ」

「料理係がいなくなったら、おやつ消滅の危機だけど良いの?」

「……仕方ないわね。今日のところは許してあげるわ」

「めっちゃ上から目線……」

 

 今日は妙に機嫌の悪いエウリュアレ。アナもエウリュアレに言われて行動しかけるので、本当に危なかった。

 しかし、やはりおやつを盾にすることで落ち着いてくれるのは助かった。

 

「ふっふっふ……マスター、大変みたいだね」

「おぅ茶々。お陰で周回が捗りそうだから、後で走るよ」

「そんな……っ! マスターが辛い目に遭うと、茶々に甚大な被害が……!!」

「ククク……今更気付いてももう遅いのです……!」

「ま、マスターのおにー! あくまー! ガチャ爆死ー!」

「いや待て茶々それはめっちゃ効グフッ!」

 

 血を吐いて倒れるオオガミ。その一言は、オオガミに大ダメージが入ったようだった。

 

「よ、よし……マスターは死んだ。これで茶々の労働終了!」

「く、クケケ……茶々もこっちへ来ると良いよ……」

「ひ、ひぃっ! 諦めて成仏して! 早く! 帰って!」

「拒否が本気すぎると思うんだけど、見てて面白いからもっとやって良いわよ」

「エウリュアレも悪魔みたいだな……!」

「今更だし! ていうか、血塗れで向かってくるの、本当に怖いんだけど!?」

 

 来るなと言っているときに茶々が蹴ったせいで怪我をしていたりするのだが、そこら辺を棚にあげて言ってくる辺り、流石と言ったところだろうか。

 そんなオオガミを見かねて、エウリュアレはオオガミを引きずっていくのだった。




 なお、シャドウ・ボーダーにはタマキャがいる模様。カルデア料理部はこれで揃ってたりする。

 えぇ、えぇ。今回の戦果は、まぁ、はい。そんな感じでしたとも。エミヤ一人と李書文二人というコンボですとも(吐血


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茶々の特効って一体……(後半戦に期待かな?)

※帝都聖杯奇譚にネタバレあります! ご注意ください!!







「……茶々、周回でめっちゃ頑張ってるのに、イベント一切絡んでなくない?」

「茶々、それ以上いけない」

「あまり深入りすると、酷い目に遭うわよ」

「毎度出てくる三人集もいないですしね」

「アナもそこを言っちゃいけない」

「珍しく爆弾が連続するわね」

 

 ついに限界までストーリーを進めてしまったため、残りのクエストをゆっくり消化するだけになったオオガミ達。

 急ぐ理由もそれほどないので、事務所で寛ぐ四人。

 なお、アビゲイルとエミヤは厨房へ行ったまま帰ってこない。

 そのせいでエウリュアレの機嫌が悪かったりするのだが、オオガミが色々と頑張ったお陰で、今は大人しくなっている。

 

「むぅ……茶々、周回以外でも活躍したかったな。てか、叔母上また燃えてたんだけど」

「茶々は宝具撃つ度に燃えてるよね」

「マスター……後でその頭燃やすから」

「茶々が殺意高いんだけど……!!」

「そうね……でも、頭が燃えると、顔変わっちゃうかもしれないから、出来ればあんまり燃やさないで欲しいのだけど。失明されたら、髪をセットする人が変わっちゃうじゃない」

「姉様。私もできますよ」

「えぇ、そのうちお願いするわ」

「なんだろう。最近、マスターってよりも、お世話係化し始めてる予感」

「めっちゃ今更だよね!」

 

 オオガミが自分の現状に気付き始めているが、茶々は何を今更とばかりに満面の笑みを浮かべるのだった。

 

「あ~……あ、そうだ。エミヤのところに行ってなんか手伝って来よう」

「あの厨房の英雄を手伝いにいくとは……茶々、楽しみに待ってるね!」

「パフェを久し振りに作ってくれてもいいのよ?」

「出来たら私のも……いえ、なんでもありません」

「はいはい。材料があったら作るよ。待っててね」

 

 そう言って、エミヤの所へ向かっていくオオガミ。

 エウリュアレはそれを見送ったあと、一気に不機嫌そうな顔になると、

 

「大体皆エミヤの所へ行っちゃって、面白くないわ」

「素直に行かないで欲しいって言えばいいのに。ワガママっての、どこ行っちゃったのさ」

「むぅ……私は別に、そんなこと思ってないもの。止める必要なんかないわ」

「じゃあなんでそうやって頬を膨らませてるのさ」

「ふ、膨らませてなんかないわよ。メドゥーサもそう思うでしょ?」

「私は姉様が楽しそうなので、少しマスターが羨ましいくらいです」

「貴女まで……そんなに違うかしら……私、あんまり変わってない気がするのだけど」

「まぁ、得てして自分じゃ分からないよねっ!」

 

 リスのように頬を膨らませてるエウリュアレに、茶々は楽しそうに笑い、アナは笑みを浮かべるのだった。




 いやぁ……オルタさんめっちゃ欲しくなったんですけど(血涙


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今ならちびが複製も可能……?(一体どれだけ作る気なのかしら)

※微々たるものですが、帝都聖杯奇譚のネタバレが含まれているかもしれません! ご注意ください!!






「うむうむ。さりげに今までのノッブ全員集合してるし、アヴィケブロンに持って帰ろうか」

「マスターの部屋においた、爆発しないように改造したのが持っていかれたら困るものね!」

「それ以上に、なんでマスターの部屋においてるのかが凄い気になるのだけど。誰も倉庫に持っていかなかったの……?」

「アビゲイルが阻止したので、私ではどうしようも。姉様が特に何も言っていませんでしたし、優先度は低いものとしてましたが」

「茶々は時々イラッとした時に殴ってストレス発散してるから有効活用してるよっ!」

「そういう活用法でいいのか……? ノッブ泣いてない……?」

 

 自分の叔母に似ている生物に容赦なくストレスを叩きつける茶々に、なんとも言えない顔をするオオガミ。

 しかし、わりといつもの事なので今更な気もする。

 

「まぁ、ノッブは色んな所に恨みを買ってるからね。しかも変なカリスマもあるから、トラブルメーカーだし」

「叔母上は恨み買いやすいからね! 仕方ないよね!」

「是非もなし! とか良いそうだしね。ノッブだし」

「二人とも、ノッブへの当たりが強いわよね……いえ、分かるのだけど。毎度追いかけられてるような気もするし」

「追いかけられた記憶もあるけどね……?」

「それはマスターだけだと思うのだけど?」

 

 大体何かをし始めるのはノッブだったりするので、別段嫌われているわけではないのだが、周囲への被害がいつも酷かったりするので、サンドバッグノッブがあったりした。

 当然、本人は知らない。ついでだが、BBちゃん版もあった。

 正直すぐにバレて処分されると思っていたので、三ヶ月も生き残っていたのが奇跡のようだった。

 

「あぁ……そういえば、もしかしたら彼なら複製してくれるかもね?」

「ハッ……! そうか、これはゴーレムみたいなものか……!! つまり、ちびノブ量産計画……!! これはもう、頼むしかないね!!」

「あ、変なスイッチ入れちゃったかも……」

「エウリュアレが面倒なスイッチ入れた……! 茶々の地獄がグレードアップする……!!」

「安心して! 私が捕獲するから、茶々さんは何も考えず倒しちゃって大丈夫よ!」

「ほんと!? やったー! 面倒なのが増えなかった! でも面倒なのは変わらないくっそー……」

「茶々のテンションの変わりようについていける気がしないのだけど……」

 

 茶々のテンションの変化になんとも言えない顔をしているエウリュアレに、お前が言うのかとばかりの表情を浮かべるアビゲイルとアナ。

 オオガミは人の事を言えないのを自覚しているので、何も言わない。

 

「まぁ、少ししたら、ちょっとだけ周回して帰ってこようか。急ぐ理由もないしね」

「ちびノブ集め、頑張るわ!」

「とりあえず全部焼けばいいよねっ!」

 

 ちびノブを保護しようと気合いを入れるアビゲイルと、一切合切焼き尽くすつもりの茶々。二人が相反しているので、喧嘩にならないだろうかと危惧するオオガミだった。




 我がカルデアにおいて、わりとノッブとBBは指名手配級だったりします。危険人物的な意味で。
 大体いつもの事だけどねっ! 是非もなし!


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流石に焼くの疲れてきた(放火魔ですら言わなそうなセリフを平然と言ってらっしゃる)

※帝都聖杯奇譚のネタバレにならなそうな勢いですが予防線を張っておきます。もしネタバレだったとしても自己責任でっ!!






「茶々、そろそろファイアーに飽きてきたんだけど。もう燃やし疲れた」

「見てれば分かるけど、見ないととんでもないセリフだよね。それ。一見さん誤解必至」

「とはいえ、燃やさないと周回が終わらないのは変わらないわよ?」

「うぐぐ……やっぱ燃やさないとだめかぁ……仕方ない。ちゃんと伯母上を火葬しないとね」

「あの人はいつも焼かれてますね……」

 

 たまに焼かれてたりしたが、いつも反省しないので、いつも同じ目に遭ってたりする。

 そんな事を思い出しつつ、アナは目の前で焼かれているちびノブの群れを見る。

 

「う~ん……あんまり取れないわ。やっぱり焼けた中から取り出すのは難しいかも」

「じゃあアビーが叩けばいいんじゃない? 壊れないくらいの強さで」

「何度か試しているのだけど、今のところ、まだ力加減が出来てないみたいで、うっかり壊しちゃうわ。もう少し頑張ってはみるけど、エウリュアレさんも手伝ってくれないかしら?」

「そうね。ついでにマスターにも――――」

 

 そう言って、オオガミの方へ視線を向けて、エウリュアレは硬直する。

 

「う~ん、こんなものかな?」

 

 そう言って悩むオオガミの前には、山のように積まれたちびノブシリーズ。

 隣でエミヤが苦笑いをしているのも、納得の状況だった。

 

「エウリュアレさん? どうした――――うわっ! マスターが捕まえたの!?」

「え? あぁ、いいや? 俺がちびノブをガンドで止めて、エミヤが作った拘束具で捕らえてるだけ。とりあえず、兵器は回収したけど、問題は体内の爆弾かなぁ……」

「流石に三度目だものね。要領も良くなる筈よ。っていうか、私達がやる必要ないんじゃないの?」

「いや、ほら、サンプルはいっぱいあった方が良いでしょ? だから数は集めておこうと思って」

「十分すぎると思うのだけど……っていうか、全クラス分って、普通におかしいわよね……」

「一体だけ釣って、捕獲。狩りの基本だよね」

 

 ドヤ顔で語るオオガミに、エウリュアレはため息を吐きつつ、

 

「パワーでいつもゴリ押す人が何か言ってるわ。もっと攻めた姿勢だと思ったのだけど」

「そこまでパワー型でもないような……? マスターって、意外と一対一で戦ってるときの方が多いと思うのだけど」

「慎重且つ大胆を地でやってるマスターにそれを言っても意味無いと思うんだけど。パワー型の癖にわりとちゃんとした戦略立ててくるからあんまりマスターを相手にしたくないなって」

「……褒められているのか、批難されてるのか微妙なところね……本人的にはどっちだと思う?」

「超好意的に受け取って褒められてるってことでどうですかね女神様」

「……まぁ、貴方がそういうならそれで良いんじゃないかしら。とりあえず、そのちびノブの群れは片付けておいてくれると助かるのだけど」

 

 エウリュアレはオオガミにそう言って、改めてアビゲイルの手助けへと向かったのだった。




 ネタバレになるようなネタなんて無いんや……ってか、ぐだぐだイベントの度にちびノブ捕まえてんなコイツら。

 というか、腰が痛くて、座るのも辛くなってきたんですが……うぅ……バドミントンで腰から落ちるって何さ……運動音痴過ぎません……?(先週の水曜日の話




 う~ん、暇すぎて死にそう……獣狩りをするしかないんじゃぁ……ローゲリウスは強敵だった……


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もはやいつもの光景(本当、なんでこんなところに来たのかしら)

「う~ん……どうするかなぁ……」

「本当にね。なんで屋根の上に登ったのよ」

「いやぁ、登りたかったとしか言いようがないね」

 

 唐突に探偵事務所の屋根に登ったオオガミ。

 なんとなく後ろをついていったエウリュアレも、同じように屋根の上でぼーっとしていた。

 

「でもまぁ、やっぱ景色は良いよね」

「まぁね。でも、アビーに高いところに行かせてもらうのもありかもね」

「それはそれでありだと思うけど、こっちはこっちで、自力で来た感があるからそれ込みでいい感じもあるわけだよ」

「ふぅん……? まぁ、わからなくもないけど、よく登ったわよね……」

「それを言ったら、なんでエウリュアレがついてきたのかが気になるんだけど……?」

 

 どこからか手に入れてきた鉤縄で登ってきたオオガミもオオガミだが、特に何の意味もなくオオガミを追って一階から跳躍して屋根の上まで来たエウリュアレに、思わずオオガミが吹き出したのは仕方のないことだろう。

 

「私はほら、やることないんだもの。皆エミヤの所に行ってるんだもの」

「あ~……まぁ、エミヤはご飯係として優秀だからね……お菓子とか、作ってくれるしね」

「私も腕は認めるんだけど、なんで皆あんなに集まるのかしら」

「ん~……まぁ、一回行ってみたら?」

「むぅ……なんか、凄い負けた感じがするんだけど……」

「なるほど……うん。じゃあ、一緒に一回行ってみようか」

「えぇ~……私、別に興味ないのだけど……」

「まぁ、調理してるのを見てるのも楽しいと思うんだけど」

「別に、マスターだけでいいんだけど」

「……それを言われると、何も言えなくなるんだけど……?」

 

 いつも通りの声と表情で、エウリュアレが言った言葉に対し、オオガミは何とも言えない表情になる。

 しかし、途中で自分が何を言ったのか気付いたのか、エウリュアレはひっそりと距離をとる。

 

「いえ、その、別に他意がある訳じゃないわ。単純にお菓子はマスターが作ってくれるのがあるから良いかなって思ってね?」

「あ、あぁ、うん。いや、流石にエミヤに勝てる気はしないんだけど、まぁ、エウリュアレが認めてくれてるなら良いかな……?」

「あぁ……変なこと言っちゃったわ。これで変なこと言われても嫌なのだけど……聞いてる人はいないわよね?」

「まぁ、見た感じいないかな。もしかしたらいるかもしれないけど」

「もしいたら、マスターを消し去って無かったことにするわ」

「あぁ、こっちに被害が来るのね……」

 

 エウリュアレの覚悟を決めたような言葉。

 オオガミはそう言って、遠い目をするのだった。




 ネタ切れすると甘いのを書きたくなる不思議。
 本当にエウリュアレメインヒロイン説……


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アイテム交換終わるかな……?(ちょっと無理そうな予感)

※帝都聖杯奇譚弱ネタバレあり! 注意してください!


「う~ん、意外と集まらないよね」

「ドロップ量があんまり多くないものね」

「か、カエルアイテムの群れ……もう呪いのレベルなんじゃないかな……」

「カエルですか……皮を剥いで内蔵を取って焼けば、食べられる部類でした」

「一人だけ感想がおかしいのだが?」

 

 アイテムの話をしているのに、一人だけ生物的なカエルの話で、しかも料理の部類だった。

 ゴルゴーンには蛇っぽいイメージはあるが、だからと言ってまるで食べたことがあるかのような感想は如何なものだろうか。

 

「う~ん、カエル料理かぁ……鶏肉っぽいって有名だよね。ちょっと挑戦してみたいってのはある」

「あいにくだが、食用のカエルを見分けられる程の技術は持っていなくてね。捌いた経験もないから、私は協力できそうにない」

「待って待って、なんで普通に作るつもりでいるのかしら。え、私は嫌よ?」

「茶々も勘弁。エミヤの美味しいご飯でいいや」

「カエルって、食べれるのね……いえ、別に、挑戦はしたくないけどね?」

 

 全力で拒否するエウリュアレ達と料理長。

 そんな四人を見て、アナは改めてオオガミの方を向くと、

 

「……やります?」

「いややらないよ!?」

 

 貴方は食べますよね? とばかりの視線に、即座に突っ込むオオガミ。

 挑戦してみたいとは言ったが、今すぐにとは言っていないし、そこまで困ってもいないので全力で拒否をする。

 

「仕方ないですね。まぁ、マスターにはいつか振る舞いますので、覚悟していてください」

「うぅむ、遠回しな殺意が見える……でも、流石に毒ガエルは使わないって信じてる」

「…………」

 

 プイッと顔を逸らすアナ。直後、オオガミの顔が引きつったのは言うまでもないだろう。

 

「いや、マシュのお陰で毒は効かないけども、そうじゃなかったら大惨事なんだけど?」

「本来の私達はそういうものだったと思うんですが。むしろ、これでもわりと変格してるような感じかと」

「もっと優しくしてくれても良いんだけど?」

「これくらいで嫌われるとは思っていないので。というか、毒が効かないなら食べたとしても気付かないでしょうし」

「うん。そういう問題じゃないと思う」

 

 アナの考えに思わず突っ込むオオガミ。

 とはいえ、確かに一切気付かずに毒ガエルを食べる可能性は大いにあるので、本当にやられたとして嫌ったりはしないだろう。

 だが、それはそれ。これはこれである。

 

「少なくとも、毒を食べさせようとしたので、お仕置きです。アナはしばらくエミヤの手伝いをしてね」

「……それくらいでいいんですか?」

「そりゃ、それ以外にやることないし。むしろ何を想像していたのさ」

「姉様がやってくるようなのと同じかそれ以下かな、と。でも、ここまで優しいものだとは思っていませんでしたが」

「一体人をなんだと思っているんだよ……そんな悪魔の所業みたいな事をすると……?」

「あら。さりげなく私が悪魔みたいだと言われた気がするのだけど?」

「あ、え、その……じゃ、アナは仕事頑張ってね。逃げるから!!」

 

 うっかり口を滑らせた瞬間に後ろから凄い威圧感を感じたオオガミは、振り返ることなく逃げ出すのだった。

 それを追うエウリュアレと、置いていかれたアナ。

 エミヤは一部始終を見送ったあと、

 

「まぁ、マスターに言われてしまったのなら仕方ないだろう。軽いものだが、手伝ってくれるだろうか」

「あ、はい。分かりました」

 

 そう言って、エミヤについていく。

 そして、その二人を見送るのが二人。

 

「茶々、今日は休みかな」

「私、最近空気な気がするわ」

 

 そう呟いて、二人は帝都の空を見上げるのだった。




 カエルを食わされそうになる系マスター。
 とはいえ、実際にカエルって美味しいんでしょうか……わりと気になる部類なんですが、如何せんタイミングがなくて食べたことないんですよね……まぁ、もうしばらくは無いと思いますけど。


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真の帝都を見せてやろう!(ようやくぐだぐだしてきた……)

※帝都聖杯奇譚のネタバレ注意!! ようやくぐだぐだしてきたやったー!!









「う~ん、そういえば確かにCMでアイス食べてたよね。聖杯っぽい器で」

「つまり、倒せばいいのよね?」

「ねぇマスター。あの眼鏡とマフラーをつけた人が飲んでたのは何かしら。私も食べたいのだけど……」

「アーチャーの敵はお任せください。ちゃんと狩り取ります」

「バーサクライダー並みのことはしないように祈るよ。首は要らないです」

 

 遂に始まったぐだぐだな戦い。

 というかそのアイスは誰が作ってどこで買ったんだよと突っ込みたいのが何名かいるが、大方エミヤが原因なのでノーコメントでいるオオガミ。

 

「とりあえずランサーから仕留めたけど、何あのちびノブ。すっごい聞き覚えのある鳴き声だったんだけど」

「赤い槍を持ってそうだったわよね」

「クワを持ってても違和感無さそうな声だったわ」

「青タイツっぽい声でしたよね」

「あくまでも遠回しに言っているようだが、ほぼ特定されるな」

「いや、ほら。一応遠回しに言っておかないと、本人に怒られるかもしれないし」

 

 某青タイツさんのプライバシーを考え、遠回しに言うオオガミ達に、苦笑いをするエミヤ。

 もはや個人特定出来るレベルなので、隠しているようで全く隠れていなかった。

 

「しかし、ダビデ印のコーヒー牛乳とは……ノッブめ、俺ですら飲んでないものを……」

「……いえ、気付いてないだけでマスターも飲んでるわよ……?」

「え?」

「だって、カルデアでたまに私が飲んでたコーヒー牛乳はそれだもの。少し飲ませてあげたはずなのだけど」

「え、あ、う~ん……あぁ、あれか! うん、飲んでたわ!!」

「思い出したかしら。お礼はアビーが食べたがっているもの私の分も用意してくれればいいわ」

 

 ドヤ顔のエウリュアレの後ろに回って抱きつくアビゲイルと、全く気付いてなかった自分に殴りかかりたいオオガミ。

 とはいえ、文系バーサーカーが頼んでいたものは、テキストにして三行分に近い量があった。

 

「思いっきり要求してきたね……いや、買ってくるけども。というか、ついてきてよ?」

「えぇ。アビーと一緒に行くわ。アナも行く?」

「姉様が行くのであれば私も行きます。留守番はエミヤさんに任せます」

「あぁ、行ってくると良い。私は待っていよう」

「エミヤにはいつも迷惑をかけているような……まぁ、料理長してもらっている時点でかなり大変なのは分かってるんだけど」

「後で労ってあげれば良いんじゃないかしら。まぁ、私の領分じゃないわね」

「むぅ……まぁ、やれることはやってみようか」

 

 見送るエミヤと、見送られるオオガミ達。

 謎の長文注文への戦いへと赴くオオガミの姿に、エミヤは面白そうに笑みを浮かべるのだった。




 聖杯っぽい器ごと売っているアイスとは……
 しかし、ダビデ印のコーヒー牛乳……ちょっと飲んでみたい……


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何やってんだよ船長!!(なんでいつも捕まってるのか……)

※帝都聖杯奇譚のネタバレ注意!! エネミーネームもぐだぐだしてて好きっ!!







「船長、また免停されてる……」

「そろそろ免許取り消しになるんじゃないかしら……」

「あの人、そんなに危ないのかしら……」

「普段はいい人なんですけど、飲酒運転で免停されやすいんですよね……性格的に」

「船長……そろそろ学習してください……」

 

 本人が聞いていたら言い訳しそうだが、少なくとも向こうの船長はおそらく飲酒運転によって免停されたのだろう。

 ともかく、船長、何やってるんですか。という状況だった。

 

「まぁ、個人的にはお忍びアイドルに会いに行きたいんだけど」

「お忍びなのに会いに行くっているのはなかなか凄いわね……お忍びってなんだったかしら」

「でもダメよ。私は許さないわ。だって、デカノブじゃないわ。金色だけど、おっきくないからNGよ」

「ちぃ……やっぱり宣教師を倒すしかないか……」

「宣教師さん……何度倒したかしら……」

「そんな倒してませんよ。で、黒幕になって消えた彼女はどうしたんでしょうか」

「まぁ、明日くらいにはカチコミかけられるはず」

「ド派手に登場したいわよね」

 

 やはりドッキリは欠かせないとばかりにやる気十分なエウリュアレ。

 アナも妙に楽しそうにしているのも気になるが、ド派手に登場とは、何をする気なのだろうか。

 

「ふふん。ド派手に登場と言ったら私よね! 勢いとパワーと派手さを見せてあげるわ!」

「大体何処にいるかは分かってるから、後はどうやって登場するかよね。ちゃんと計画しないといけないわ」

「私も手伝います。任せてください」

「茶々が何をしたって言うんだろう……」

「敵側に回ったなら、精一杯驚かしてぐだぐだにさせないといけないじゃない? だってほら、わりとギャグ要員なのにシリアス設定持ってるし」

「めっちゃギャグっぽいのに設定だけはガチ過ぎる茶々さん……むしろ設定だけ見るとシリアスなのしかいないぐだぐだ組。ぐだぐだとは一体……」

「真面目にぐだぐだしてるんですよ、きっと。素のままだと今回みたいなことになるんですよ、きっと」

「いや、素でギャグやってるわよ、あれは。一緒にいてわりとそう思ったわ」

「存在自体は真面目なのに中身がギャグ要員という、謎しかない設定……」

「まぁ、大体そんなものです」

 

 そもそも、今オオガミの周囲にいるエウリュアレ達も、冷静に考えると同じような気もする。

 なんて事に気付いてしまったオオガミは、気付かなかったことにして話を変える。

 

「とりあえず、明日茶々の所に行くために倒してこようか」

「サクッと倒して計画を練るわよ!」

「おー!」

「最速で片付けましょう」

 

 やる気全開の三人に引きずられていく形で、オオガミはミッション攻略へと向かうのだった。




 あと少しで黒幕にたどり着く……!!
 いやぁ……ぐだぐだの設定だけシリアスは本当に苦笑いものですよ……特に茶々。


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茶々、もう疲れたよ……(なんであんな登場方法するかなぁ……?)

※帝都聖杯奇譚のネタバレあり! 注意してください!








「茶々、デストロイして疲れた……マスターの登場の仕方にも疲れた……」

「まぁ、天井壊しながら侵入したら、普通ビックリするわよね……」

「精一杯頑張りました」

「バスターの威力を見せつけました」

「隣で見てました」

「止めてよ!? 茶々、正面から入ってくるのをめっちゃ楽しみにしてたのに!!」

 

 天井を壊し奇襲したオオガミ達。

 オオガミはどこからか取り出してきたツルハシで頑張っていたが、アビゲイルの触手のパワーに勝てるわけもなく、呆気なく砕かれてオオガミだけ瓦礫と一緒に落ちていったのは記憶に新しい。

 当然、アイスを食べていた茶々は目の前に突然落ちてきた瓦礫の群れに硬直するのは仕方のないことだろう。

 

「というか、何よりビックリしたのは、マスターが下敷きになってるにも関わらず容赦なくその瓦礫の上に乗る三人だよ!? 叔母上並みじゃん!!」

「ノッブの扱い。一周回った信頼に苦笑いだよ」

「いえ、たぶん茶々さんが言いたいことは全く別のことだと――――」

「それを言っちゃダメよ。完全にブーメラン刺さってるのに全く気付いてないんだから、そっとしておくのが一番よ」

 

 ノッブの扱いも問題だが、それ以上にオオガミが下敷きになっている瓦礫の上でそんな事をやっているというのは、オオガミに対する扱いが目に見えている。これも一周回った苦笑いにしかならない信頼にような気もするが、本人は気付いていないようだった。

 

「私、よくマスターが生きてるなって思うの。普通死んでると思うのだけど……」

「一番元気にポーズ取ってた人がさもめっちゃ心配してたみたいに言ってる……!!」

「……茶々さんだけどこか別の場所に飛ばしてあげるから、感謝してくださいな」

「おっと。ごめんなさい。ちゃんとシャドウ・ボーダーに帰りたいな」

「残念だけど、私の空間、4人用なの。ごめんなさいね?」

「なん……だと……!? じゃあ、茶々はどうしてここに……!?」

「黒幕だったから……?」

「そんな理由で……!?」

「そもそもの原因がイベントに参戦できなかったからというぐだぐだな件について」

 

 ともかく、余計なことを言った茶々は亜空間を無事に渡りきれるかというセルフホラーに強制参加の流れに。

 茶々はどうにかして確実に帰れないかと考えるが、機嫌を取る事に秀でているオオガミに聞けるような状況じゃなかった。

 

「まぁ、まだ素材回収が終わってないし、もうしばらくいるけどね」

「うふふ。延命出来るわね、茶々さん」

「茶々、命拾い……? 延命しただけの可能性……これは生き残る術を探す時間ができたと考えるべきかな……!?」

 

 オオガミの一言に、不穏な笑みを浮かべるアビゲイルと、生き残れる可能性が出来たと喜ぶ茶々。

 エウリュアレとアナは、そんな三人に苦笑いをするのだった。




 瓦礫の下敷きになっていたはずなのに無傷のように振る舞うオオガミ君の頑丈さ。こいつ、さては人間じゃねぇな……? 


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もう帝都とか関係ないよね(まだ素材回収が終わってないのが悪いよこれは)

「カレーの時間だおらー!」

 

 茶々の正面に置かれるカレー。

 茶々は目を輝かせるが、瞬時にオオガミを睨む。

 

「野菜一杯なんだけど!! お肉は!?」

「ふふん。茶々だけ野菜盛りにしてやりました」

「よぅしマスター喧嘩売ってるんだね!! 茶々のパワー見せてやるぅ!!」

 

 お怒りの茶々。だがしかし、遠距離系の総攻撃を避け切る様なマスターに近接攻撃が届くわけも無く、平然と回避される。

 それを見ていたエウリュアレは、

 

「マスター、茶々をおちょくらないの。それは私の特権よ」

「もっと言ってやってよエウ……あれ? 今、なんかおかしかった気がするんだけど」

「気のせいよ、気のせい」

「えぇ。茶々さんで遊ぶのはエウリュアレさんと私の特権だもの」

「んん~……?」

「今は、という意味です。はい。皆が帰ってきたら増えると思いますが」

「うん……? ねぇ、やっぱなんかおかしくない?」

「気のせいよ気のせい。ほら、とりあえずマスターを倒すのに集中しなさい。わりと当たらないから」

「……今更なんだけど、マスターって人間だよね……?」

「人間だよ! 一般的且つ常識的な人間だよ!!」

「え?」

「え?」

「マスター、そんな冗談を言う必要は無いですよ?」

「あれ、冗談だと思われてる!?」

 

 想定外だとばかりに衝撃を受けるオオガミ。

 しかし、そんな事をしている間にも、茶々の襲撃は止まない。

 わりと目が本気なので、余程野菜カレーがお気に召さないようだった。

 そんな様子を、遠くからエウリュアレ達はカレーを食べつつ見守る。

 

「見ていて思ったのだけど、普通にお肉いっぱいのカレーを出せばいいんじゃないかしら」

「それを言っちゃだめよ。それをすると面白くないじゃない」

「……アビーって、たまにとんでもない事言うわよね」

「姉様もあんまり人の事を言えな――――いえ、何でもないです」

 

 アナが言いかけるも、エウリュアレの視線が向いた瞬間に目を逸らす。

 エウリュアレは不穏な笑みを浮かべるが、特に何もしないで食べ進める。

 アナはそこはかとない嫌な予感を感じるが、早く食べないと別の人が怒りそうなので、早めに食べる。

 

「でも、よくマスターは避けられるわよね。あの炎、躱せるとは思わないんだけど」

「えぇ。更に言うと、ノッブの三段撃ちも躱せるようなものじゃないわ。緊急回避って、あそこまでえげつないのね」

「私の触手を躱すときも使っていたような……?」

「あの緊急回避、ちゃんとピンポイントで使ってくるから面倒なのよね……たまに素で回避してるし」

「……何と言いますか、この会話、マスター対策案みたいですね……」

 

 エウリュアレとアビゲイルの会話を聞いていたアナは、ふと、そう呟くのだった。




 礼装を使いこなしているマスター。しかも一部サーヴァント直伝の技も持っているという面倒さ。このマスター、当然の如く人間辞めてるんやで……(今更


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周回疲れた(じゃあ、一狩り行こうか!)

「なんで矢が弾かれるんだあり得ねーだろそれぇ!!」

「そんな時は茶々の大剣で――――障気の削り尋常じゃないやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

「まぁ、頭と尻尾だけ狙えば行けるわよね、これ」

「それが出来れば誰も文句言わないと思うの」

 

 飽きてシャドウ・ボーダーに帰ってきたオオガミ達。

 本日も狩りをしているらしいが、戦っているのはオオガミと茶々だけで、後は見ているだけだった。

 見事に全滅し、作戦会議。

 

「マジでおかしいんだけど何こいつ。太刀だとごっそり持ってかれるし、弓だと弾くし」

「めっちゃ持ってかれるんだけど……一発大剣とかじゃないときついかも……」

「でも、一発大剣作ってないじゃん」

「うぐぐ……悔しい……抜刀会心持ってないばっかりに……」

「装備で誤魔化すのが一番かな。装備作る?」

「装備は爆弾魔装備で誤魔化せるけど、やっぱ装飾品でやれないのは辛い……」

「歴戦周回……フェイク……うっ、頭が……!!」

「裏切りは許されない……でも、裏切っちゃう。装飾品だもの」

「……まぁ、私には関係のない話ね」

 

 倒れているオオガミを見つつ、欲しいものは手に入れているエウリュアレは勝利の意味を込めて呟く。

 当然、オオガミの心にその一言は強く刺さる。

 

「心眼……超心……溜め追加……もう、出ないから歴戦ナナやって素材集めの追加でドロップするの待ちだよ……」

「茶々は歴戦とか面倒だから良いや。叔母上に投げとく」

「他人に投げるとは……酷い……」

「あぁ、それを聞いて思ったんだけど、なんで私は自力でやったのかしら……?」

「姉様が楽しそうにやっていたので、私は後ろで見守ってました」

「エウリュアレ、時々凄い長時間遊んでるよね。なんというか、話しかけられないレベルで」

「そんなにかしら……?」

 

 無自覚なエウリュアレ。とはいえ、実際にエウリュアレがオオガミの部屋を占領して遊んでいたときがあった。

 なので、それを知っている古参組は温かい笑みを浮かべるのだった。

 

「むぅ……なんというか、ムカッとするわ。とりあえず蹴らせなさい」

「え、酷っ! なんで、さっ!?」

「イラッと来たから……?」

「なんでさも当然だと言わんがばかりの疑問顔……?」

「姉様の中ではそういう常識ですから。諦めてください」

「時々エウリュアレさんが暴走するわよね……いえ、私は構わないのだけど」

「茶々はこういうの見てて楽しめちゃう方のサーヴァントだからね。安心してね」

「どういう意味で安心しろと!?」

「邪魔しないってことだよ」

「ドヤ顔でなんてこといってるんだこいつ……」

 

 オオガミの嘆きは、温かい目をしている茶々達には届くわけもないのだった。




 歴戦王ヴァルハザクやったんですけど、太刀の時ボコられたんで弓で反逆してやりました。後悔はしてない(キリッ


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遂に素材回収がおわった!(残るは高難易度……)

※帝都聖杯奇譚のネタバレあり! 注意してください!


「周回終わり! 終了! もう頑張らない!!」

「ところがどっこい。高難易度終わってないんだな」

「うがー! 茶々の出番じゃないんだよそれは!」

 

 帝都で最後の周回を終え、発狂する茶々。

 八つ当たり気味にオオガミを投げるが、アビゲイルが触手で受け止めてくれて大惨事は免れた。

 

「うぐぅ……いや、茶々の出番ではないのは分かるけど、敵はノッブだよ?」

「マスターなんでそれを先に言わないの! すぐ行くよ!」

「切り替え速度が流石すぎる……」

 

 ボスの正体を知った瞬間にやる気を出す茶々に、オオガミは苦笑いになる。

 

「まぁ、良いんじゃないかしら。頑張ってきなさいな。女性相手なら私の出番はないだろうし」

「バーサーカーかしら。ねぇ、バーサーカーかしら!」

「いやそれは分からないけども。でもとりあえず、アーチャーではあるよね」

「とりあえず私の出番かしら! 吹き飛ばしちゃうわ!」

「残念だけど、ノッブは神性特効持ってるから、場合によっては一発アウトの可能性あるんだけど」

「えっ……ノッブさんって、そんなに危険なの……?」

「えぇ。神性持ちは一発退場のリスクが常に付きまとうわ。だから、二重の意味で私はダメね」

「むぅぅ……難しいのね。残念だけど、今回は辞退するわ」

「……まぁ、私は普通に編成に組まれるんですよね」

 

 遠い目をするアナ。

 当然、敵が暫定アーチャーなのだから、貴重な単体宝具ランサーは入れられるのだ。

 神性持ちじゃないランサー入れろよ。と思うかもしれないが、そもそも神性持ちじゃない単体ランサーがレア過ぎた。

 

「神性なのに戦うのね……と、とにかく、一回行ってみないと分からないわ。もしかしたらバーサーカーもあるかもしれないし」

「まぁ、その時はその時ね。マスター、頑張りなさいな」

「はいはい。行ってきますよ~っと」

 

 そう言って、高難易度へ向かうオオガミ達。

 エウリュアレは小さく手を振って見送ると、

 

「さて、今のうちに、紅茶には一杯デザートを作ってもらおうかしら」

「あぁ、なんだ。私は休めると思ったのだが、そうでもないみたいだな」

「えぇ。だってほら、東洋には、鬼の居ぬ間にってことわざがあるらしいし。マスターがいない間に、普段はあまりやらないことでもやろうかと思って」

「いくらスキルで体型が変わらないとはいえ、あまり食べ過ぎるのもどうかと思うがな」

「じゃあ、作ってくれないのかしら」

「いや、禁止されているわけでもないから、普通に作るとも。要望はあるか?」

「シェフのオススメで。期待しているわ」

 

 エウリュアレはそう言って微笑み、エミヤの料理を待つのだった。




 高難易度だけまだ終わっていないんですよねぇ……早くやらないと……


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高難易度終了! 帝都聖杯奇譚完全勝利!!(茶々の冒険、終了!!)

「完全に終わったー!! 茶々の冒険終了!! 完!!」

「そして明日にはレース開催よ。準備はいいかしら」

「大丈夫。こっちの準備は出来てる」

「礼装だけはいっぱいあるわよね……どれが使えるのかしら」

「石、貯まる気がしませんね」

 

 どんどん削られていく石の貯蔵。というより、もう石の貯蔵は無い。

 帰ったらマシュに簀巻きにされるのは確定的に明らかで、今すぐにでもレース会場へと逃げ込みたいオオガミ。

 しかし、彼は一つ忘れていることがある。あのマイルームは、マシュと一緒に作業する場所だという事を。

 

「石はほら、気付いたら無くなるものだし。仕方ないよ」

「……またメルトが来たときに苦労すると思うのだけど」

「うっ……い、いや、もうしばらくは復刻しないと思う……あ、でも、どうだろ……記念で復刻する可能性があるかもしれない……」

「そしたら頑張るしかないわね。見守っていてあげるわ」

「あぁ、うん。見守るだけなのね……いや、まったく気にしないけど。任しといて」

「大丈夫! 私はちゃんと手伝うわ!!」

「まぁ、姉様も本気で手伝うつもりがないわけじゃないでしょうし、助けを求めるときにはあまり悩まなくてもいいんじゃないかと思います」

「アナ。後で別室ね」

「……最近、マスターのせいで警戒が緩んでる気がするので、後で八つ当たりさせてもらいます」

「うん。ここ最近で一番の理不尽だなこれ!!」

 

 メルト復刻の可能性に震えていたオオガミも、アナの不用意な発言からのエウリュアレのお仕置き、アナの八つ当たりで巡り巡ってオオガミへ被害が降り注ぐ。

 完全に悪いのはアナなのに、とりあえずとばかりに八つ当たりされるオオガミ。とはいえ、誰も突っ込まないのだった。

 

「まぁ、マスターも大概だと思うの」

「存在自体が理不尽よね。色々な意味で」

「ど、どういうことなの……」

「今までの行いの結果……ですかね」

「なんですと……? いや、流石にそんなとんでもないことした覚えはないんだけど……?」

「それ以上話してると、いつも通りの展開になるのが見えたのだけど。とりあえず、明日の話をしましょう」

 

 エウリュアレはそういって会話を変えて、いつもの流れを止めた。

 別段何があるというわけでもないのだが、いつも同じような話をするのもどうかと思ったのだった。

 

「う~ん、明日、明日ねぇ……とりあえず、周回をするのに変わりはないんだけど、メンバーは未だ未定なのよね。まぁ、始まったら決まるよ」

「茶々タイムはもう無いよね!?」

「可能性はあるけど、たぶんない……かな?」

「よぅし!! これで茶々は安心してレースを見れるね!!」

 

 茶々はそう言って、ガッツポーズをとるのだった。




 石の貯蔵は十分か……? 私は、出来てない……(致命傷


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デッドヒート・サマーレース!~夢と希望のイシュタルカップ2017~
夏だ! レースだ! 突っ走れ~!(茶々は待ってるね!)


※デッドヒートサマーレースの微弱ネタバレあり!注意するほどでもないですけど!


「よぅし叔母上ぶっ飛ばす!!」

「また暴れてるの? ちょっと向こうまで行って周回に混ざってきたら?」

「それは断固拒否!! 茶々はもう周回には触れないのです!」

 

 レース会場の観覧席で、飲み物片手にノッブが負けるように祈る茶々と、オオガミの財布でアナをお使いに行かせているエウリュアレ。

 今回は一時顕現が出来るようなので、全員休んでいるというわけだ。

 

「けど、今回は前回と比べて楽そうね。礼装が揃ってるってのもあるんでしょうけど」

「そりゃ、ちょうど5人いちゃったからね。しかもバランスが良いし。茶々は爆笑ものです」

「攻撃力が上がらなくても強いしね……えぇ。メイドも暴君もいるのなら、問題ないわね。私の出番は来ないわ」

「……果たしてそれはどうかな……?」

 

 茶々は意味深そうに言うが、内心としては、敵が基本女性しかないので、出ることは無いだろうと予想していた。

 それ以上に、マスターが出すつもりがなさそうだった。

 

「まぁ、一時顕現が出来るなら、私の役目は無いわよね」

「うんうん。つまり、茶々も戦わないね!」

「えぇ。つまり、今回は二人とも自由ってことよ」

「やったー!」

 

 喜ぶ茶々。微笑むエウリュアレ。

 とはいえ、エウリュアレに関しては前回も休んでいたのだが、そこは気にしないらしい。

 

「それにしても、普通にレースよねぇ……もっと争っても良いのに」

「それでも爆発は起こってるというホラー。その度に吹き飛ぶチンピラさん達に、茶々は合掌」

「自分から突っ込んで自爆しているだけなのだけどね……あのビーム、本当に強いわね」

「茶々もあんなビーム出したいなぁ……今回は茶々が水着になったりしないかな」

「え、ビーム出したいの……?」

「茶々の場合はたぶん炎だけどね! 茶々の本気を見るが良い!」

 

 ドヤ顔の茶々に、苦笑いになるエウリュアレ。

 そこに帰ってくるアナと、何故かいるアナスタシア。

 エウリュアレは首をかしげつつ、

 

「なんであなたがいるのかしら」

「かき氷の手伝いをしていたのだけど、休憩になってしまって。単に気になってやっていただけなのだけど。それで、どうしようか迷っているところに、荷物を抱えてた彼女がいたから」

「助けていただきました。流石に一人で持ちきれる量ではなかったので……」

「あら。貴女なら出来ると思ったのだけど。それとも、誘うための口実かしら」

「どちらも、ですね。私一人では持ちきれませんでしたし、彼女が困っていたので。それに、姉様にも得だと思ったので。少しでも涼しくなるんじゃないかと思ったのですが、どうでしょう?」

「それは、まぁ、涼しいけども……意外と言うようになって来たわね……そのうち立場が逆転したりしないかしら……」

「まさか。私が姉様達に敵うわけがないです」

 

 アナはそう言って、買ってきたものの一部をエウリュアレに渡す。

 

「……一杯買って来たわね……」

「冷たいものはアナスタシアさんに任せてあるので、しばらくは溶けないと思います。安心してください」

「そ、そう……分かったわ」

 

 エウリュアレは妙に張り切っているアナを見て、おそらく暑さで疲れているんだろうな。と解釈して、深く考えないことにするのだった。




 という事で、観客席サイドです。アビーもここですけど、今はたこ焼き屋で張り切っているので未登場。


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もう夏祭り気分だよね(なにこのたこ焼き!!)

「色々と種類があるね。以蔵さんは何にする?」

「そうさのう……って、なんでおまんは儂のとなりにいるんじゃ!」

「お竜さんもいるぞ」

「しっちゅうわ! つか、儂ぁ一人でええんじゃ! ほっとけ!」

 

 そう言って、ずかずかと進んでいく以蔵。龍馬は苦笑いしつつ追いかけ、お竜さんはその後ろをついていく。

 すると、異様な雰囲気の屋台を見つける以蔵。その雰囲気に誘われるようにそこへ向かうと、

 

「あら。特製たこ焼きはいかがかしら。エミヤさんから教わったのだけど、うまくできているか分からないの。6個入りで200QPよ」

 

 暗黒面全開のアビゲイル。

 その独特の雰囲気に飲まれた以蔵は、

 

「ん、あ……おぅ。じゃあ、一つ」

「お買い上げありがとうございます。少々お待ちください」

 

 妙に大人びた雰囲気。接客に慣れたのか、何かに飲まれたのかは分からないが、オオガミ達が今のアビゲイルを見ても、思わず硬直するレベルの変わりようだった。

 そして、出来立ての妙な圧を放つたこ焼きを渡された以蔵は、それを持って呆然としていた。

 

「ようやく追い付いた……って、何買ってるの以蔵さん!! それ明らかにヤバイと思うんだけど!!」

「わ、儂だってわからんちや!! 気付いたら買っちょったんじゃ!!」

 

 追い付いた龍馬は、以蔵の持っているたこ焼きに驚きつつ、どうしたものかと考える。

 が、後ろにいたお竜さんが、勝手に一つ食べる。

 

「……うん、龍馬は絶対食べちゃダメだぞ。これは腹を壊す。流石のお竜さんも、これはダメだ」

「お竜さんがダメなレベルは不味すぎるんだけど!! ここ、こんな怖いところなの!?」

 

 悲鳴を上げる龍馬。

 怖いところも何も、人類悪を相手取るようなサーヴァント達が集う場所が恐ろしくないわけがない。

 

「安心してくれて構わない。こういうのは特殊だ。とはいえ、俺も最近来たばかりだがな」

 

 そう声をかけるのは、同じようにたこ焼きを買ってしまい、真っ青な顔で話すジーク。本能的にコレが危険なものだと気付いているらしい。

 その隣では、ジークと同じような表情で、しかし勇敢にもたこ焼きと戦おうと自分を奮い立たせようとしている騎士姫がいた。

 

「こ、これは……中々、食べるのが難しいです……なんというか、食べたらこっちが食べられそうと言うか……」

「あぁ。いや、こういう時はマスターの元へ行くのが一番だとマシュに聞いた。これ以上被害が拡大しないためにも早めに向かおうと思うのだが」

「僕もついていくよ。これは流石に不味い。急いだ方がいいと見たね」

 

 そう言って、ジークと龍馬がスタッフルームへ向かうとしたとき、背後で倒れる音がした。

 そこには、青い顔をして倒れている騎士姫と以蔵がいた。

 

「い、以蔵さーん!!!」

「あ~あ。やめた方がいいっていったのに」

「不味いな……こっちも大変なことになってる。とりあえず最初に向かうのは医務室だな」

「あぁ、大至急ね!!」

 

 そう言って、二人を抱えて、龍馬とジークは走り出すのだった。




 なんで食べたんや……以蔵さん……騎士姫……(犯人


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平和だと思いたかった(とりあえずアビーさんをどうにかしてください)

「いやぁ……平和だねぇ……」

「平和じゃないです先輩。アビーさんが暴走してます。あの屋台を一回止めてきてください」

「……一人で?」

 

 イシュタルからの報告で聞いていたアビゲイルのたこ焼き屋。

 買わずにいられない雰囲気があって、実際に買って食べると倒れるという怪奇現象。まるで提灯鮟鱇(ちょうちんあんこう)の光に誘われる魚のごとき入れ食い状態だった。

 

「先程坂本さんからも被害届が来たので、至急対処してください。アルトリアリリィさんが倒れたので、ここから一気に子供系サーヴァントの皆さんが被害に遭うと思います」

「そりゃ不味い。大至急行ってくる」

「はい。ちゃんと魔術礼装は装備していってくださいね」

「うん。とりあえず、何とかしてみるよ」

「いってらっしゃい、先輩」

 

 そう言って、スタッフルームを出るオオガミ。

 マシュはそれを手を振って見送るのだった。

 

「って、やっぱ暑いなぁ……」

「そんな時は、私がいるわ。涼しくするなら私が一番ね」

「うわぁ!?」

 

 いつの間にか真後ろに立っているアナスタシア。流石に暑いのか、コート類は着ていなかった。

 

「い、いつからそこに?」

「茶々さんが例のたこ焼き屋のたこ焼きを食べて動けなくなっていたから、とりあえず報告に来ただけよ。エウリュアレさん達が介抱しているわ」

「なるほど……じゃあ、俺は向こうを止めてくるから、アナスタシアは医務室に行ってくれる? 面倒ならいいけど。医務室を涼しくしておいて」

「分かったわ。マスターも頑張ってね」

 

 そう言って別れる二人。

 おそらく茶々は野次馬のつもりで突撃していって、被害者になったのだろう。ミイラ取りがミイラになったわけだ。

 

「ったく、分かってて突っ込むんだよなぁ……いや、人の事は言えないんだけど。まぁ、なんとかなるかな?」

 

 礼装を確認し、対話(物理)になってもいいようにするオオガミ。

 そして、件のたこ焼き屋の前にたどり着く。

 

「いらっしゃいマスター。売れ行きは好調よ。一人で500個買ってくださった方もいたわ」

「何500個って。良く売り切れてないなここ。材料調達早すぎんだろ」

 

 思わず突っ込むオオガミ。500個も買っていった人の安否が気になるが、それ以上に、それだけの数を売ったにも関わらず売り切れないというのは、材料がどれだけあるのかという疑問も湧いてくるというものだ。

 というか、それだけ売れているなら完売していて欲しかった。

 

「私だって、ちゃんと考えているわ。500個売れたときは流石に焦ったけど、なんとか乗りきったもの」

「その手腕は認めるけど、中に何入れてるの? 普通のタコだったら被害は出ないと思うんだけど」

「えぇ。ただのタコもシンプルで良いと思ったのだけど、この触手、タコに似てるから使ってみたの。そうしたら売れ始めたから、このままで良いかなって」

「絶対それが原因じゃん! 禁止! 触手禁止!! ちゃんと普通のタコを使ってください!!」

「む。マスターに言われたのなら仕方ないわ。次はちゃんと普通のタコにするわね。そのために、今日はもう終了ね」

 

 そう言って、アビゲイルはちょうど焼き上がったものをパックに詰めて、今日の営業を終了する。

 

「……それはどうするの?」

「ちびノブさんに渡そうかなって。一杯いるから、一人くらいこれを食べても問題ないわよね」

「ん~……その時は、アビーが責任もって世話をしてね?」

「えぇ、頑張るわ。じゃあ、明日のためにタコを取りに行ってくるわね」

 

 そう言って、門を開いて行ってしまうアビゲイル。

 オオガミは、どこに取りに行ったのだろうかと考えるが、とりあえずミッションは達成したので帰宅することにした。




 アビー特製たこ焼きを500個買っていった人、誰でしょうかね……(遠い目
 あ、一個=1パック(6個入り)ですよ(キリッ


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茶々の殺意が今日も高い(新しい屋台も出来たみたいよ)

※デッドヒートサマーレース微ネタバレあり!注意するほどでもないですけど!


「遂に川まで来たわね」

「叔母上はっやーい! 茶々あれ爆破したーい!」

「大気圏突入可能らしいですし、爆破もある程度は防ぐんじゃないでしょうか。切断系も、セイバー対策とかで付いている気がしますけど」

「じゃあ横殴りしかないじゃん! 叔母上めんどいな!」

 

 茶々がぷんぷんと怒るが、エウリュアレは隣で微笑むだけだった。

 昨日たこ焼き被害に遭って、今日にはもう動けるというのは、流石の一言だった。

 

「茶々はもう学習したからね。次はちゃんと警戒するよ」

「……フリかしら?」

「流石の茶々も基本は『いのちだいじに』だよ!?」

「えっ」

「えっ!?」

 

 驚くエウリュアレと困惑する茶々。

 隣にいるアナは、我関せずとばかりにレースを見守っていた。

 

「いやいやいや。むしろ、そうじゃなかったら茶々じゃないでしょ!?」

「そうかしら。てっきり、ぐだぐだ組だから『ガンガンいこうぜ』的なものだと思っていたわ」

「なん……だと……!? 叔母上たちのせいで茶々まで印象操作されてる……叔母上死すべし慈悲はない!」

「『いのちだいじに』『てきはころす』という若干の矛盾ね。敵の命は大事じゃないみたい」

「もちろんですとも。茶々ですから」

「……やっぱぐだぐだ組じゃない」

「どういうことなの!?」

 

 ぐだぐだ組というジャンルに驚いているのと、そのジャンルに自分が入れられているのに納得されたことの二重の衝撃だった。

 

「まぁ、ぐだぐだ組の話はおいておくとして、さっき新しい屋台が出来てたわよ。制覇したいって言ってたから、一応伝えておくわね」

「新しい屋台!? ちょっと行ってくる!!」

「えぇ、行ってらっしゃい」

 

 そう言って茶々を送り出すエウリュアレ。

 しかし、それを聞いていたアナは、不思議そうな顔で、

 

「良いんですか?」

「え? 何か問題があったかしら」

「いえ……今日新しく追加されたのは、いか焼きですよ? アビゲイルさんが作っている」

「……それはもっと早く言って欲しかったわ!!」

 

 そう言って茶々の後を追うエウリュアレ。アナはそれを見送りつつ、またレース観戦に戻る。

 

「……まぁ、あのいか焼きはまともそうでしたけどね。たこ焼きの二の舞にはならないと思いますし」

「えぇ。私も医務室で氷を作る係にならなくてすみそうだわ」

 

 ぼそりと呟いたアナの隣に座るアナスタシア。

 その手には、例のいか焼きを持っていた。

 

「……大丈夫そうですか?」

「流石に形を変えてまでやらないと思っているのだけど。食べる前に不安にさせないでほしいわ」

「それはすいません。じゃあ、毒味はさせてもらいます」

「いいわ、気にしなくて。ただ、私が倒れたら医務室まで運んでくださる?」

「……では、それで」

 

 そう言って、一口食べるアナスタシア。

 かなり微妙な差だが、表情が明るくなったのを見て、美味しかったのだと思うアナだった。




 平和ないか焼き。安心して食べれますよ(白目


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帰って来たあの悪魔(そんな、ロシア送りにしたのに……!!)

「あらあら……中々、不思議な地形ですわね」

「っ……!! なんで戻って……!?」

 

 声の主を見て、驚愕するアビゲイル。

 ロシアでさりげなく追い出していたのだが、いつの間にか帰ってきていたらしい。

 

「おぅ。俺もいるぞ。むしろなんで俺まで追い出されたのか分かんないんだけど、そこんとこ説明してくれね? 極寒の中をここまで来るの、普通に死ねるんだけど」

「くぅっ……やっぱりもう少し遠くまで飛ばさないとダメだったのね……!!」

「いや、単独顕現に対して遠くも何もないと思うんだよ俺。諦めた方がいいって」

「アンリは少し黙ってて」

「あまり騒ぎすぎるのも、よろしくないと思いますよ」

「なんで俺だけこんな役目なんだ?」

 

 召喚された頃からわりとこんな役目な自分に疑問を持つが、今更すぎるのですぐに考えるのを止めるアンリ。

 

「ふふふ。別に気にしていませんわ。ですが、少々いたずらが過ぎると思いましたので、お仕置きをさせていただこうかと」

「い、いや……! やめて……!!」

「うふふ……逃がしませんわ?」

 

 逃げようとしたアビゲイルを、出現した巨大な白い手がアビゲイルを包んで逃がさんとする。

 しかし、必死でもがくが、アビゲイルは一向に逃げられない。

 そんなアビゲイルにゆっくりと近付くキアラ。

 

「ふふふ。さて、どんなお仕置きにしましょうか……」

「き、キャーーー!!!」

「あ~はいはい。俺は店番しておくよ~。あ、店主はご覧の通りお取り込み中なので俺に注文してくれよな。え、500個? なんでこんな購入履歴あるんだよ。この店の材料凄すぎんだろ。在庫はどっから出てるんだよ……店主が自分で採ってきたんか、流石だな。門の乱用じゃねぇか」

 

 連れ去られたアビゲイルを見送り、自然な様子で店番を代わるアンリ。

 しかし、店の在庫状態や売り上げ履歴で困惑するアンリ。だが、注文に対して対応する辺り、手慣れていた。

 

「あら、今日はアビーじゃないのね」

「ん? あぁ、アンタか。なんだよ、女神っつっても、普通に楽しんでるんだな」

「えぇ。なにか問題かしら。別にいいでしょう? 食べ物も美味しいし、レースも見ていて飽きないし。むしろ、楽しまない理由がないわ」

「……まぁ、それもそうだな。いやなに、別段何かあるって訳でもないから気にしないでくれ。で、注文か?」

「そうね……とりあえず、二本でどうかしら。昨日はアビーだったから警戒していたけど、アンリなら大丈夫でしょう」

「信頼してくれてるって思っても良いのか?」

「貴方の勝手にしなさいな。私はいか焼きが食べられれば文句はないわ」

「へいへい。んじゃ、200QPなんで、払ってくださいな」

「たこ焼きと変わらないのは、料金を変えるのが面倒だったのかしらね」

「さぁね? 俺は本人じゃないからな」

 

 そう言って、料金を払うエウリュアレ。

 そして、アンリは軽口を叩きながらイカを焼くのだった。




 久しぶりのアンリ。そして一番の問題点はキアラ復活なのでは……?


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茶々はそろそろエネルギー切れかもしれない(じゃあ静かにレースを見てたらいいんじゃない?)

※デッドヒートサマーレースの弱ネタバレあり! ご注意ください!!






「茶々は止まらぬ……屋台がある限り……!!」

「……でも、制覇してなかったっけ?」

「……茶々、もうダメ。伯母上許さん」

 

 ノルマの如く恨まれるノッブ。

 エウリュアレは苦笑いになるしかなかった。

 

「それで、何するの?」

「むぅ……なんか伯母上有利だし、許せないからあんまり見たくないんだけど、何とか伯母上が負けるのを見たい……どうにかならないかな!?」

「……マスターに直談判しに行ったら?」

「なるほど!! じゃあ言ってくる!!」

「え、本当に行くの? ま、まぁ、頑張って」

 

 スタッフルームへ走り出す茶々。エウリュアレはそれを見送るが、おそらく適当にあしらわれて泣きながら帰って来るんだろうな。と思った。

 

「まぁ、かき氷でも買ってきてあげようかしら」

「では、アナスタシアさんの所へ向かいますか?」

「……えぇ、そうね。そうなのだけど……どこから出てきたの?」

「最初からいたのですが……」

「……あぁ、その、ごめんなさい普通に気付かなかったわ」

「い、意外と心に刺さりますね……」

 

 おそらく今までは大丈夫だったのだろうが、オオガミと居たせいでメンタルが微妙に脆くなっているのだろう。全体的に。

 ある意味、猛毒の様なマスターだった。

 

「昔はもっと強く当たってたと思うのだけど、なんというか、感覚が思い出せないわ……」

「私も昔の様な精神力はちょっと今持ってないみたいです……」

「……女神の神核が機能してない気がするのだけど」

 

 精神が変化しないという効果は一体どこへ行ってしまったのかと思うエウリュアレとアナ。

 だが、その原因はとりあえずマスターにあると決めつけ、とりあえずかき氷を買いに行くことにするエウリュアレ達。

 

「あら、来たの? 今日はまだ残ってるわよ」

「そもそも貴女が氷を作り続ける限り売り切れないと思うのだけど。とりあえず、イチゴとメロンで」

「あ、私は抹茶が良いです」

「分かったわ。少し待っててちょうだいね」

「えぇ、分かったわ」

 

 そう言って、待っている間にレースでも見ていようと目を向けると、

 

「……あ、落ちた」

「落ちましたね」

 

 真っ逆さまに落ちて行く橋と車。乗っていたサーヴァント達も一斉に落ちて行った。

 

「あ~……うん。まぁ、何とかなるわよね。楽しみだわ」

「ここからでもレース続けるんですかね? というか、簡単に落とせる橋っていうのも凄いと思います」

「あら、貴女もやろうと思えばできるんじゃない?」

「今の私では流石に。あそこまでの力は出ませんよ」

「そう……残念ね」

 

 そう言って、アナスタシアに振り向くと、どうやらもう出来ているようだった。

 

「イチゴ、メロン、抹茶よね。合計450QPよ」

「ちょっと待ってね……はい。これでいいかしら」

「えぇ、大丈夫よ。また来て頂戴ね」

「そのうちね」

 

 エウリュアレはイチゴを持ち、アナが残りの二つを持つ。

 そうして、二人は元の席へ向かっていくのだった。




 意外とこの観客席のノリが好きになってきた今日この頃。割といろんなキャラ出せて楽しい……


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なんとか帰ってこれたわ……(良く無事に帰ってこれたな。いや、ホント)

※デッドヒートサマーレース微弱ネタバレあり! 注意するほどでもないですけど!






「ひ、酷い目に遭ったわ……」

「うぉ、生きて帰ってきやがった。不死身かよ」

「ただではやられないわ……アーサーさんをぶつけて逃げてきたの」

「圧倒的迷惑の極み。俺より危ねぇよこいつ」

 

 レース会場とも、コースとも全く関係ない世界の端まで逃げ、追ってきたキアラに、焼き鳥を食べていたアーサーをぶつけて戻ってきたアビゲイル。

 一瞬エクスカリバーに巻き込まれかけたが、触手が2本ほど犠牲になっただけで済んだ。

 そんなボロボロのアビゲイルを見て、アンリは苦い顔になるのだった。

 

「これでしばらくは大丈夫だと思いたいのだけど、もしかしたらまたこっちに来るかもしれないわね……」

「いやぁ……お前もわりとこっち側だからなぁ……一緒に消し飛ばされるんじゃね?」

「い、いえ……流石にそんなことは無いはずよ……たぶん」

 

 うんうん。と一人納得し、自然な様子でアンリの隣へ移動する。

 

「さて、じゃあ、交代よ。また襲撃されたら呼び出すわね」

「俺は便利屋か何かになったのか? いや、構わないけどさ。さっきかき氷屋の方がちょっと騒がしかったから、ちょっと見てくるわ」

「えぇ、行ってらっしゃい」

 

 かき氷屋へと一直線に向かっていくアンリを見送ったアビゲイルは、エミヤお手製のエプロンを装備して再びイカを焼き始める。

 

「あぅ……逃げるのに手間取ったせいで、補充がほとんど出来てない……今日の分が終わったら補充しにいかないと」

「ふむ。仕入れも自力とは、中々力強い屋台だな。一本買いたいのだが、良いか?」

「一本200QPよ。焼けるまでちょっと待っててくださいな」

 

 そう言って、相手の顔を見ると、P地溝帯で筋肉自慢していたゴリウー系女王だった。

 

「……お仕事お疲れ様でした」

「む? 何か勘違いしてるかもしれないが、私はオオガミのサーヴァントとしての私だ。コースの守護を任されていたのとはまた別だぞ?」

「そうなの? でも、働いてはいたのでしょう?」

「資材の運搬や、屋台の設置の手伝い程度だがな。何、軽い運動だ。対価は貰ったしな」

「や、屋台の設置……? そんなのがあっただなんて……私も頼めば良かったわ……!」

「でも、自力でやったのだろう? なら、それはいい経験になるはずだ。いつか、また屋台を出すときにな。一人でも出来ることに越したことはない。出来ない者に教えることが出来るからな」

 

 そう言って笑うゴリウー系女王。

 釣られてアビゲイルも笑顔になった。

 

「ところで、そろそろ良い加減じゃないか?」

「あら、本当ね。じゃあ……はい、どうぞ。またいらしてくださいね」

「あぁ、そのうちにな」

 

 そう言って彼女は去っていくのだった。




 ゴリウー系女王……いい人だった……(適当


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デスジェイル・サマーエスケイプ~罪と絶望のメイヴ大監獄2017~
ふはは! 乗っ取ってやったわ!(やりすぎは……ね?)


※デスジュエル・サマーエスケイプのネタバレあり! 注意してください!






『さてさて、ゴール直前から橋の下へと落とされた6チーム! そこから最速脱出し、最初にゴールするのは誰か!! ここからの実況は、俺ことアンリマユと!』

『解説の茶々だよ! とりあえず叔母上死すべし慈悲はない!』

 

 めちゃくちゃノリノリの二人。イシュタルのマイクを強奪して実況を始め、マイクを強奪されたイシュタルは何故かアナに拘束されていた。

 

『いやぁ~……地上戦は中々の接戦でしたが、地下脱出戦はどうなることか。茶々さん、どう予想する?』

『そうだね。地上でさりげなく一位を一回取った叔母上は爆発四散すれば良いと思うよ! もしくは地下労働懲役1050年!』

『DEAD OR WORKってことだななにそれ恐ろしいんだけど。誰だこいつをここに置いたの』

 

 既に実況さんの心労が尋常じゃない。

 隣の茶々は元気一杯、ノッブへの殺意全開でお送りいたしております。

 

『真面目に不利そうなのはフランちゃんの所かな。だってほら、おじさん二人だし。特にあの白いおひげの方、腰が弱そうだし。ツルハシ振ってギックリ腰で即退場だよ』

『なるほどなるほど。ちなみに、有利そうなのは?』

『ライオンがいるところ! 電動掘削ドリル来るよねこれ! 手回しでも良いけど、天元突破する勢いで掘ってほしいな! そのドリルで天を突けっ!』

『電動掘削ドリルなんか持ってないし、手回しもないと思うんだけど!? だがまぁ気持ちは分かる! ぜひともマスターには調達を頑張ってもらわないとな!!』

 

 それはペンダントっぽいドリルを作れということなのかと悩むオオガミ。

 とはいえ、ノッブもBBもいないので、設計は出来たとしても製作が出来ないのが現状である。

 

『まぁ、マスターが苦労するのは全く気にしないので、アビーと一緒に世界旅行してきてね! マシュもつけるよ!』

『ハハハハハ! まさかマスターを投げ捨てるって発想はなかったわ! 魔力補給とかどうするんだし!』

『シャドウ・ボーダー頼りだよね! もしくは素材を片っ端から魔力に変換しないとだね!』

『マスターが泣くなそれ! いいね、それで行こう!』

 

 実況席に突撃しようとしているオオガミ。マシュとジーク、アルトリアリリィが必死で止めるが、若干引きずられている。

 しかし、流石に二人は暴れすぎた。当然、オオガミ以外にも動く者はいた。

 例えば――――

 

「ねぇ、茶々さん。それ以上は、分かってるわよね?」

『ひぃっ……!』

『あ、俺は退散させてもらうわ』

「なんて、言わせると思ったのかしら? ほら、私のマイク、返してもらうわよ!」

 

 触手で絡め取り、茶々を拘束するアビゲイルと、青筋立てて頬を引きつらせつつアンリを捕縛するイシュタル。

 二人は逃げることなどできるわけもなく、オオガミの前に投げ捨てられる。

 

「ナイス二人とも」

「私はマイクを奪い返す次いでだから気にしないで」

「茶々さんが変なことを言うから、ついお店を放置して来ちゃったわ。じゃあ、私はこれで」

 

 そう言って、それぞれ元の場所へ戻っていく。

 そして、改めてアンリと茶々を見たオオガミは、

 

「じゃあ、お仕置きの時間だよ。覚悟は良いね?」

「あ~……茶々の冒険はここで終わってしまった……的な……?」

「いやぁ……今回はふざけすぎたわ……うん、まぁ、仕方の無いことだな。じゃ、俺は逃げ――――」

「ガンド」

「ガフッ!」

 

 逃げようとした瞬間にガンドで拘束されるアンリ。

 そして、そのまま茶々と一緒にスタッフルームへと引きずられていくのだった。




 この実況乗っ取りスタイルを数話にかけてやろうとして、話題が続かなかった……アンリのキャラ崩壊が一番だった気がする……


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エウリュアレが常識人ポジ狙ってる(だって他にできる人いないじゃない)

「茶々……暴れすぎちゃダメって言ったでしょ?」

「うぅ……エウリュアレが常識人っぽいこと言ってる……」

「……アナ。ちょっと宝具打ってスタンさせて」

「うっかり倒してしまうと思うんですが」

「それでも良いわ」

「おっと。茶々の命の危険を感じる」

 

 下手なことを言ったせいで、一瞬にして命の危機に瀕する茶々。

 完全に自業自得で、茶々自身も認めてるとはいえ、わざわざ自分から殺されに行くような精神はしていない。

 故に、当然逃げる。

 

「うわははは! 逃げることなら伯母上にも負けないし! だってほら、怒られるの嫌だしね!」

「……アナ」

「分かりました」

 

 エウリュアレの言葉と同時に茶々を追いかけるアナ。

 茶々の抵抗虚しく、瞬時に鎖で拘束される。

 

「うぅ……まさか、全力で追ってくるとか思わなかった……目の前に鎌が刺さったときは、死んだと思った……」

「そんな下手な投げ方はしませんよ……ちゃんと当てたいところに当てます。9割は」

「1割の不安! それが当たってたら、もれなく茶々は座に帰ってたよ!?」

「別に、当てないだけならなんとかなります。ただ、スレスレを狙うとちょっと怪しいくらいで」

「じゃあ狙われてたんだね!? 茶々、スレスレを狙われてたんだね!?」

「……ちょっとだけです。気にしないでください」

「致命傷だよ!? もうやだ安置は無いの!?」

 

 こめかみ付近を通り過ぎて目の前に刺さった鎌に頬を引きつらせて硬直した瞬間に捕らえられたのは嫌な思い出だ。

 また、さりげなくうっかり殺されかけてたという衝撃的な事実に震える茶々。

 

「暴れなければそれほど危険なところはないと思うのだけど」

「じゃあ茶々は八方塞がりなわけだ。やっぱスタッフルームに突撃するしかないね」

「……ねぇ、本当に突撃したの? スタッフルーム」

「んぇ? 当然じゃん。むしろ、茶々が突撃しないとでも?」

「普通しないわよ……いえ、私も人のこと言えないのかしら……」

「そうですね……マスターのところに突撃するのは良く見ます」

 

 アナの一言に、頭を抱えるエウリュアレ。

 茶々もアナの言葉に同意するように頷いていた。

 

「むぐぐ……私、そんなに一緒にいるかしら……」

「まぁ、最近はあんまり見ないけどね。でも、カルデアではめっちゃ見た」

「えぇ……そこまでじゃないと思うのだけど……」

「私が姉様を探すときには、真っ先にマスターを探すくらいには一緒にいますよ?」

「……そんなに……?」

 

 エウリュアレは全く自覚がなく、ただ首をかしげるのだった。




 いつの間にかエウリュアレが常識人ポジに座ってる不思議。いつからこうなってたんだろう……


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ついに直接集りに来たか(で、渡した財布は?)

「……マシュ。助けて」

「一気に集まってきましたね……狙ってたんでしょうか」

 

 スタッフルームを出た瞬間に捕獲されるオオガミ。

 右腕をエウリュアレに、左腕を茶々に、そして背中にアビゲイルがくっつき、もはや新手の魔物のごとき状態だった。

 マシュはそんなオオガミを助け出そうとし、後ろからアナスタシアに手を引かれる。

 

「マシュさん、向こうにラムネというものがあって気になったのだけど、一緒に行きましょ?」

「そう、ですね。行きましょうか。じゃあ先輩、行ってきます!」

「うん、思いっきり見捨てられたね! でも心当たりしかないから泣きそうだよチクショウ!」

 

 瞬時に見捨てられたオオガミ。

 当然追いかけることなど出来るわけもない。張り付いた三人のパワーは尋常じゃなかった。

 

「……で、なんで捕まってるんでしょ。教えてエウリュアレ」

「ノーコメント」

「えぇ……じゃあ、アビーは?」

「考えないで良いのよ。別に、みんなマスターと店を回りたいだけだし」

「あぁ、うん。なるほどね……まぁ、マシュもアナスタシアと行っちゃったし、こっちはこっちで行こうか。で、エウリュアレ。盗んだ財布はどうしたの?」

「……ちょっと何の事か分からないわ」

「……無くしたの? それとも中身が無くなったの? どっち? 本当のことを言って?」

 

 オオガミの雰囲気の変化に、瞬時に邪魔にならないように離れる茶々。なお、アビゲイルは背中に背中に張り付いたままだった。

 問い詰められるエウリュアレ。頬をむにむにと引っ張られても、意地でも視線を合わせようとしない。

 

「いえ、その、財布は確かメドゥーサに渡したはず……なんだけど、渡ってないのなら、たぶんまだ持ってるんじゃないかしら……」

「なるほど……いや、別に無いと困るわけじゃないんだけどね。一応エウリュアレに渡したのとは別の財布はあるし」

「マスター流石じゃん。分割管理とか、茶々ビックリ! やらないものだと思ってた!」

「いや、そりゃ、エウリュアレが遊ぶお金を出してるのは俺だし。当然分割くらいするよ。だって全額渡したら使い切るのがエウリュアレだし」

「なるほど茶々と同じか!」

「マスターの財布を奪うってところが十分問題だと思うの」

「私も加減くらいするわよ……! 何でもかんでも全部使うわけ無いじゃない」

「うん、まぁ、渡してる財布の中身が毎度無くなってるのを見るに、嘘だと言うのは分かる」

「えぇっ!? そんなに無くなってる!?」

「まぁ、エウリュアレじゃ中身は分からないよね! だって自分で払ってないし!」

 

 茶々はそう言って笑うのだった。

 そして、そんな茶々の脛を、エウリュアレはひたすら蹴り続けるのだった。




 ちゃんと節度を守った料金を渡してますよ? えぇ、そんな大金は流石に渡しませんって。


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七夕って言っても、願い事とか思い付かないわよね(そもそも、願いの方向性を分かってる人が少ないのでは……?)

 今回、ちょっと途中から自分でなに言ってんだこいつ状態なので、温かい目で、その、お願いします(吐血


「今は七夕! 短冊も笹もないけどね!! 伯母上風に、是非もなし!」

「笹……笹……これかしら」

「短冊は代用できるし、出来るんだけどね。ただ……」

「…………」

 

 オオガミの視線の先には、なんとなく不機嫌そうに見えるエウリュアレ。

 それを見た茶々とアビゲイルは、顔を見合わせた後、

 

「日本は良いところだけ持ってく文化だから、続行で!」

「私は大問題なのだけどね! でも面白そうだからやるわ!」

「そんな雑で良いのか信仰の祈り……!」

 

 それを言ったら、いつもの様子も問題のような気がするが、深く考えてはいけない。

 アイテムはアビゲイルが、設置は茶々がしていた。

 そんな二人を眺めつつ、オオガミはエウリュアレの隣まで行き、

 

「信仰の方向性も、信仰地域も違うし、あんまり気にしなくて良いと思うけど。ギリシアも多神神話だし、どうかなって思ったんだけど。ダメ?」

「別に、問題ないわよ。私が不機嫌そうに見えるなら、目が腐ってるわ。取り替えてきなさい」

「まぁ、自分が主役じゃないのはあんまり好きじゃないだけだよね。でも、エウリュアレの場合、主役になりたいときとそうじゃないときがあるよね」

「いやちょっと待って。なんで私が主役になりたいとか思ってることになってるの?」

「え? 違った?」

 

 むしろそれ以外あるのかとばかりの表情のオオガミ。

 エウリュアレはため息を吐きつつ、

 

「違うわよ……いえ、まぁ、完全に間違っているわけでもないけど、今回は違うわよ。私としては、なんでもっと早く言わないのって思っただけだし。嫌って訳じゃないわ」

「んん……? じゃあ、普通に手伝っても良かったんじゃ……?」

「それはそれよ。私以外の神聖視されてるようななのに祈るような女神じゃないわ。分かる?」

「あぁ、なるほど。つまり、特に理由はないけど手伝いたくはないから若干距離を取ってたと」

「えぇ、大体あってるわ」

 

 なるほど。とは言ったものの、良くわかってないオオガミ。複雑と言うかなんと言うか。

 

「それで、どうする? エウリュアレも書く?」

「そうねぇ……えぇ、書くわ。特に何を願うわけでもないけどね」

「願いがないのに願い事を書くと言う矛盾。いや、エウリュアレらしいのかな……?」

「私は普段どんなだと思われてるのかしら……」

 

 短冊を受け取りつつ、呟くエウリュアレ。

 オオガミはそれに気づいていないようで、アビゲイルと茶々に混ざって短冊に願いを書いていた。

 エウリュアレはそれを見て苦笑いをしつつ、一緒に混ざるのだった。




 神様とかによって、叶えてくれる願い事は変わるって、わちきどっかで聞いた……

 そして、もうレースを見てすらいないという。

 あと、エウリュアレの言葉が迷走してるんですが、何が言いたいんだろこれ……


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レースの観客席が地獄のように暑い(どうにかして涼しく過ごしたいわよね)

「うへぇ~……めっちゃ暑い~……」

「そうねぇ……ちょっと暑いわよね……」

「……ところで、アビーは?」

「仕入れがあるって言って飛び出したわ。あの子、私たちの中で一番大人びてる気がするのだけど」

 

 今日もアナスタシアのところでかき氷を買ってきてシャクシャクと食べるエウリュアレと茶々。

 ちなみに、アナは実況のゲストとして連れていかれた。実況エリアだけ急造の部屋が作られ、クーラーが入っていると言う羨ましい限りの空間だった。

 

「……またアナスタシアのところに行こうかしら。あそこが一番涼しいわ」

「でも、一番湿度が高いと言う悲しい状況……わざとやってるのかな……?」

「単純に茶々が熱いから氷が融けて勝手に蒸されてるだけじゃないかしら……?」

「そんな……!! 茶々が強すぎるせいでセルフ蒸し風呂が出来てるの……!?」

 

 そんなバカな。と言いたげな茶々。

 事実、エウリュアレは普通に涼んでいる。

 アナスタシアは、そんなセルフ蒸し風呂を作っている茶々は営業妨害だと思っているので、茶々対策を考えていたりする。

 

「もう、茶々用の涼み部屋をくれても良いと思う!」

「そうねぇ……私も欲しいかも。たまにかき氷屋にアナスタシアがいない時は困るもの……スタッフルームに突撃するしかないわよね」

「だからいつもマスターと一緒にいるって言われるんだよ……」

「それが原因……? じゃあ私、何もできなくない……?」

「どうしてそこに落ち着くのかが疑問だよ。もはや半分マスターに依存してるよこの女神……これが駄女神……!?」

「それ、前にも誰かに言われた気がするのだけど……」

 

 もはやオオガミがいるのが自然になってきて、大体近くにいると基本的に快適になるのでとりあえず困ったら突撃するというのが普通になっていた。

 なので、茶々に言われて思い返すと、実際その通りで何も言い返せない。

 

「……とりあえず、マスターを卒業しないと、ダメになりそう……堕落させるのは私の方なはずなのに、いつの間にか私が堕落させられていたなんて……」

「凄いねマスター。精神変化しないはずの女神の精神をいともたやすく変化させるとか、さてはマスター人間じゃないね?」

「凄い敗北感。許せないのだけど。絶対いつかやり返すわ」

「既に敗北してる人がやり返すって、要するに沼るだけだと思うんだけど。それどう見ても夫婦じゃないかな?」

 

 茶々が呟いた言葉はエウリュアレには届いていないようで、エウリュアレはとりあえず卒業するための第一弾として、アナスタシアの元へと向かうのだった。

 茶々はそれに気づき、置いていかれてたまるもんかとばかりについて行くのだった。




 エウリュアレのマスター卒業練習。その成果は実るのか否か。
 普通にエウリュアレを堕落させるオオガミ君の従者力を前に、エウリュアレは我慢が効くのかという戦いですね。


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これが今夏最高傑作……!(恥ずかしいですからやめてください!!)

「ふぅ……ようやく完成ね。良い出来だと思うわ」

「何してくれてるんですかアナスタシアさん! 公開処刑ですかそうですか!?」

 

 かき氷屋の隣に、氷の彫像1/1スケールの水着マシュが鎮座しており、クオリティが高い故に尚更赤面し砕きたい衝動に駆られる。

 しかし、そこはアナスタシア。薄く、しかし妙に硬い氷の壁で、見事にマシュの攻撃を防ぐ。

 

「あら、如何にマシュさんとはいえ、この傑作を砕かせたりしないわ。夏の暑さにだって耐えさせて見せる……!」

「そんな覚悟要りませんから! 諦めて溶かされるか今ここで砕かれるかしてください!」

「お断りよ。ちゃんと自力で彫ったんだもの。せめてマスターに見せるまでは保存するわ」

「なんて事を……!! 先輩が来たら、自動的にエウリュアレさんや茶々さん、アビーさんも集まってくるじゃないですか!恥ずかしいので却下です! というか、どうしてモデルが私なんですか!」

「だって、私自身をモデルにしても、面白くないもの。やっぱり、作ってるときに楽しい方が良いに決まってるわ」

「先輩でも良かったと思うのですが……!」

「無理よ。だって、完成したら絶対盗まれるわ」

「あ、なるほど。確かに想像できます。具体的には真っ先にアビーさんが盗んでいきそうです」

 

 犯人まで特定できるレベルの信頼性。

 溶岩水泳部並みに危ないと思われているアビゲイルは、果たしてどこに向かっているのだろうか。

 

「で、ですが、エウリュアレさんたちでも良かったのでは……?」

「そうね……エウリュアレさんなら行けるかもしれないわ。自分の像が作られて嫌な神様はいないでしょうし。でも、他は無理ね。マシュさんみたいに障壁が間に合わないわ。特に茶々。彼女は氷を溶かしてくるから、どうやっても無理よ……本当、どうしましょうか……」

「……とりあえず、エウリュアレさんの像と私の像をチェンジで」

「それは無理」

「そんなっ」

 

 意地でもマシュの像を撤去しようとしないアナスタシア。

 傑作だったのが問題なのだろう。アナスタシアの目は本気を物語っていた。

 

「じゃあ、交換でどうでしょう……このカメラでどうか、手を打ってください……」

 

 確かカメラが好きだったような。というおぼろげな記憶を頼りに、記録用の予備に持っていたカメラを渡すマシュ。

 すると、アナスタシアは、

 

「……仕方無いわね。ここは譲ります」

 

 そう言ってマシュからカメラを受け取り、流れるようにマシュの像を写真に納め、360度撮った後に氷像を氷の塊に戻す。

 

 

「ふふふ。これで完璧ね。マシュさんの像の写真も手に入れ、カメラも手に入れて、これでようやく思いっきり遊べるわ」

「あ……な……まさか、アナスタシアさん……このために私の像を……!?」

「いいえ、そういうわけではないわ。たまたま、偶然というものよ。だって、マシュさんがカメラを持ってるだなんて思ってなかったし」

「じゃあ、私の像は単純に作りたかっただけなんですね……いえ、それはそれでどうかと思いますけど!」

「まぁまぁ。エウリュアレさんのも作るわ。それで良いでしょう?」

「な、なにかが違う気がする……!」

 

 その違和感に気付けなかったマシュは、言われるままにアナスタシアと一緒にエウリュアレの氷像を作るのだった。




 アナスタシアと友好を深めるマシュ……そしてさりげなく危険人物扱いされているアビー……


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ついに、ゴールイン!!(とりあえず優勝者は本能寺しとこう! 伯母上風に!)

「ゴール! 伯母上優勝! 帰ってきたら吊し上げる!」

「本能寺ですか。本能寺するんですか茶々さん」

「あら、もしかしてマシュも危ない枠入りかしら……」

「そ、それはダメよ! マシュさんもこっちに来ちゃったら、誰が止めるの!?」

 

 危ない人枠(こっち側)に入りそうなマシュを、本気で止めようとするアビゲイル。既にマシュ以外に常識枠がいないと思っているのは如何なものかと思うが。

 とはいえ、事実、マシュが危ない人枠に入ると、暴走組を止める人がいなくなるというのはあった。

 

「まぁ、アナがいるし、良いんじゃないかしら」

「なんだろう……それだと、エウリュアレだけ見逃されそう……それはダメだと思う……!!」

「じゃあ、マスター?」

「一番論外だと思う。だって首謀者だし。大体の犯人だし。新宿のお爺ちゃん並にダメ」

「先輩が酷い言われよう……でも、間違ってないから問題ないですね」

 

 むしろそっちの方が問題の気がするが、マシュは大変錯乱しているのだろう。その事に気付かない。

 

「ん~……じゃあ、アナスタシア?」

「……それだっ!」

「でも、茶々さんの場合、氷で足止めされても溶かして逃げられるわね……」

「じゃあ、アナスタシアに加えてアナも加われば問題ないわ」

「それで良いんですか三人とも……」

 

 自分の首を絞めている気がするが、三人とも自分の安全だけは確保しているので、もしマシュがこっちに来た場合、被害に遭うのはマシュだけだったりする。

 

「ん~……とりあえず、マシュの代用はそんな感じね」

「あ。今更だけど、ジーク君とかアヴィケブロンとかいるよね。あそこの扱いは?」

「……倉庫番?」

「裏方……?」

「事務と倉庫管理です……まぁ、私もはっちゃけるのは、こういうイベントの時だけにしておきますね。それ以外だと、お二人が大変なことになるので。まだ説明終わってないので、余計にですね」

「むむぅ……マシュもこっち側に来れば、向かうところ敵無しなのに」

「仕方ないわ。だって、いなくなられると本気で困る裏方、マシュだもの。二人に引き継ぎが終わるまではどうも出来ないわ」

「私もイベントが終わったらちょっとお手伝いするわね。聖杯を五つも貰って、今とっても調子が良いの」

「「「……聖杯?」」」

 

 良く良く見ると、いつもより強そうなアビゲイル。エウリュアレはそれに覚えがあった。そう、聖杯によるレベルアップ。そして、オオガミは中途半端なレベルとかがあんまり好きではない。ということは、

 

「……レベル100かしら?」

「んなっ……!?」

「先輩……また勝手に……というか、今回のが一番問題なんですが! 聖杯無断使用なんて、良くやりましたね! どのタイミングでやったんですか!!」

「昨日イカ焼きを作っていたときに、代金と一緒に大量の種火とQPと一緒に渡されたわ。えぇ、消費するのが一苦労だったわ」

 

 さりげなくレベル100になっているアビゲイル。

 それを知ったマシュたち未聖杯組は、

 

「これはちょっと抗議してくるしかないですね」

「おーっ!」

「マシュは確か聖杯でレベルアップできないんじゃ……」

「それでは、行ってきます!」

「あぁ……行っちゃったわ……」

 

 エウリュアレの言葉を一切聞かず走り出したマシュ達。

 置いていかれたエウリュアレとアビゲイルは、走り去ったマシュ達を呆然と眺めるのだった。




 あ、うちでは尾張の暴走ロケットが優勝しました。

 ちなみに、アビーがレベル100になったのは、友人に唆されて悪のりした結果です。超満足してます(キリッ


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縄が体に食い込んで地獄の苦しみ(自業自得じゃないかしら?)

「なんというか、めっちゃ理不尽に怒られてる感ある」

 

 突然マシュに捕まり、ゴールゲートに吊るされているオオガミ。

 マシュは満足げな表情をしているので、きっと八つ当たりの部類だろうと予想する。

 

「ん~……やっぱアビーをレベル100にしたのがバレたのかな……」

 

 ノリと勢いで上げたが、後悔はしてない。

 とはいえ、マシュに何も言わないで聖杯を使ったのは流石に不味いとは思った。一瞬見えた目は、明らかに殺意を宿していた。

 

「それにしても、なんでバレたんだろ」

「ごめんなさいマスター。私が言っちゃったのが悪かったわ」

「えぇ、とっても面白かったわ。次は誰に聖杯を使うのかしら」

 

 少し申し訳なさそうにしているアビゲイルと、楽しそうに微笑むエウリュアレ。

 なお、エウリュアレの雰囲気的に助けてくれなさそうなので、アビゲイルも助けてくれないと考える。

 さりげなくオオガミが言うよりもエウリュアレ言う方が動いてくれるサーヴァントが何人かいるため、彼女が助け船を出さない限りどうしようもないときがあったりする。

 

「聖杯が貯まるまではメルトの予定なのは変わらないよ。まぁ、来てくれるかは置いておくとして」

「ふふふ。そうね、来てくれれば良いわね」

「ん~……マスターがイベント以降も召喚したいって言ってるの、今のところメルトさん以外聞いてないわね……いないのだけど」

「ゴフッ……マジ無理……このまま縄を切り落とそう……」

「……落ちても平然と着地する未来しか見えないのだけど」

「私がなにもしなくても問題無さそうよね……」

「いや、今回に限っては礼装積んでないからわりと厳しい……」

「でも、乗り越えるんでしょう?」

「大丈夫よマスター。もし本当に落ちたら私が助けるわ」

 

 アビゲイルは微笑み、エウリュアレは楽しそうに笑う。

 オオガミは苦い顔になるが、落ちたら本当に助けてもらおうと決意する。

 

「あぁ、そういえば、高難易度は間に合うのかしら」

「ん~……怪しいね。リンゴの回収も終わってないから、本気でいけば間に合うかもしれない程度かな……?」

「じゃあ、今回は犬の時だけかしら」

「そうだね……アビーはゴリウー系女王のところで頑張ってもらおう」

「ふふん。レベル100になった私の力、見せてあげるわ!」

 

 ドヤ顔のアビゲイル。

 エウリュアレとオオガミはそれを見て微笑ましく笑い、直後、命を繋いでいた一本の縄が焼き切られる。

 

「茶々貴様あぁぁぁぁ!!!」

「マスターに良い思いさせてたまるか! 茶々めっちゃ苦労したんだし、これくらい仕返しても良いよね!」

 

 犯人は考えるまでもなく茶々。なので、とりあえず茶々に向けて叫びを上げつつ、アビーに助けを求める。

 そして、すぐに門を潜った感覚があり、次の瞬間には触手に受け止められていた。

 

「……助かった……」

「あら、本当にダメだったのね」

「間に合ってよかったわ……うっかりしたら間に合わなかったもの」

 

 ほっとするオオガミとアビゲイル。

 エウリュアレは必死だったオオガミに驚きつつ、とりあえず縄を焼き切った茶々に矢を射つのだった。




 茶々は犠牲となったのだ……

 そして、幕間追加……とりあえずリップのだけやって来ます。アビーはまたいつかだ……


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大連続高難易度攻略クエスト(なんで一日で消化しようとしたのか。これが分からない)

※復刻夏イベ弱ネタバレあり! ご注意ください!







「お、終わった……良く勝てたよ、あの牛に……」

「足だけであんなに強いのに、全身が出てきたら本当に手が付けられなくなるわ……」

「昔、どうやって勝ったんだっけ……私、全く覚えてないのだけど……」

 

 もはや遠い記憶の彼方にあるグガランナ戦。

 その時の事は思い出せないので、仕方なく今回は自力で何とかした。とはいえ、去年は令呪を三画使った気もした。

 だが、今回は一画だけで何とかなったので、おそらくはマシになったのだろう。

 

「まぁ、なんにせよ、勝てたから問題ないね」

「そうね。でも、令呪を使うんじゃ、まだまだってことよね」

「むぅ……私があんまり活躍できなかったのが悔しいわ……」

 

 アビゲイルは頬を膨らませてそう言うが、エウリュアレもアビゲイルも一回しか戦いに参加していないので、二人とも威厳的なものは少なかった。ほとんど参戦していたアナがおそらく一番だろう。

 次点でエルキドゥ。幻影ですらあそこまで活躍できるのだから、帰ってきたら勝てる気がしない。

 

「とりあえず、私はアナさんに聖杯を使うのが一番だと、私は思ったわ。後五つよ……レベル100にしてても問題ないわ。むしろするべきよ」

「スッゴい癪なのだけど……メドゥーサは確かに強いのよね……」

「うぅむ……でもなぁ……聖杯が無いしなぁ……」

「うぐぐ……私に使った分で全部だったのね……!」

「まぁ、仕方ないわ。確か今は八個。つまり、後二個あればメドゥーサをレベル100に出来るわ」

「んん……? なんでエウリュアレが把握してるの……?」

「マシュに教えてもらっただけよ。聞いたら普通に教えてくれたわ」

「わぉ……でもまぁ、マシュが教えたのなら問題ないよね。うんうん。つまりマシュの殺意メーターは上がらないと言うわけだ」

「そうね。マシュさんも流石に怒らないと思うわ」

「そこまで理不尽な訳でもないでしょ? そもそも貴方が何かをやらかさない限り怒らないじゃない」

「いや……最近はストレス発散のために八つ当たりされてるときがあったりする……」

「……まぁ、日頃の行いね」

 

 もう救いようがないと気付いたエウリュアレ。

 オオガミもエウリュアレの考えに気付いたようで、苦い顔になっていた。

 

「日頃の行いって言っても、私、そこまででもないと思うのだけど。なんでそんなに言われてるのかしら」

「カルデアの時が一番酷かったわよ。大体ノッブとBBと一緒に何か企んでるし。それで騒ぎを起こして全力で止めに行くのと、むしろ悪のりしてマスター側につくのとで別れてたし。まぁ、大体みんなエルキドゥに倒されてたけど」

「……エルキドゥさん、本当に怖いわ……」

 

 単に相性の問題のような気もするが、強かったことに変わりはないので、否定できない二人。

 そんな二人を見て、アビゲイルはより一層、まだ話したこともないエルキドゥに恐怖するのだった。




 今更ながら、去年のなんだからその時期に書いてたのを見直せば分かったんじゃないかと思う私です。手遅れじゃん。
 流石に二度目はやりたくないですし、真相は闇の中と言うことで……


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日常
明日は石10個……(どうにかして隠さなきゃよね)


「さて、どうしたものかしら」

 

 レース終了と同時に始まったピックアップイベント。とはいえ、オオガミが興味を引かれるかと言われると、いささか怪しいものだった。

 では、今エウリュアレは何を悩んでいるのかと聞かれると、ガチャとは切れない縁で結ばれている例の石不足だった。

 

「ん~……明日には石10個……それだけあったら絶対に回すわ……どこに隠そうかしら。マシュの部屋にでも入れておこうかしら」

「そんな時は私の門の向こうに投げちゃえば良いのよ!」

 

 悩んでいるエウリュアレの後ろから飛び出すアビゲイル。

 とんでもないことを言い出したアビゲイルに、エウリュアレは苦い顔をしながら、

 

「それ、どこに飛ばすつもりなの?」

「未定よ。とりあえずどこか遠いところに飛ばせば良いのよね!」

「……回収できないと意味がないのだけど……」

「……じゃあ、ダメね。この案は廃止にしておくわ」

 

 嬉々として開いていた門を閉じ、別の案を考える。

 というより、門を開いてみたものの、流石に賛成されないだろうと思っていたので、別段気にしてはいない。

 

「そういえば、マスターは今何してるの?」

「茶々さんと一緒に狩りに行ってるわ。ゲームだけど」

「そう……まぁ、気付いてないならいいわ。気付かれると取りに来そうだし。やっぱりマシュの部屋に隠しておくのが一番かしら……」

「そうね、そこが一番かしら。私たちの部屋よりも安全そう」

 

 そう言ってアビゲイルはうなずいた後、ふと、

 

「ねぇ、そう言えば、エウリュアレさんはどこで寝てるのかしら……私たちの部屋にはいないみたいだし……」

「え? 普通にマスターの部屋にいるけど?」

「そ、そんな……エウリュアレさんはマスターと寝てるの……!?」

「ん~……まぁ、そうね。でも、私は遊んでるだけなんだけどね。その時間しかあまり出来ないもの」

「むぅ……でも、一緒の部屋なのはどうなのかしら」

「誰も気にしてないんだし、良いんじゃないかしら。アビーも来る?」

「えっ、えっ……良いの……?」

「大丈夫よ。マスターも気にしないわ」

「じゃ、じゃあ、今日から行くわ」

 

 若干顔を赤くしつつ、しかし目の輝きを隠しきれてないアビゲイルを見て、エウリュアレは不穏な笑みを浮かべる。

 

「じゃあ、とりあえず明日の石はマシュの部屋に隠しておきましょう。それじゃあ、また後でね」

「えぇ、また後で。ふふふ。今日は楽しみだわ」

 

 二人はそう言って別れ、オオガミの部屋で再び集まることを約束するのだった。




 いつの間にか占拠される事が多いオオガミ君の部屋。エウリュアレに不法占拠されやすいからね。是非もないね。


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よくそれで操作できるよね(場合によっては足を引っ張りあう事になる)

「ん~……どういうの作るか……」

「そうねぇ……とりあえず、ベッドよねぇ……というか、これすっごいやりづらいのだけど」

 

 二人で一つのコントローラを操作するというある種の縛りプレイ。

 戦闘はほとんどないゲームとはいえ、難しいことに代わりはない。

 今も、羊を追いかけるのに一苦労だった。

 

「……何奇っ怪なプレイしてるの……?」

「「二人一役プレイ」」

「……茶々、見なかったことにしよ」

 

 思わず茶々は見なかったことにして、二人とは違うゲームをやっていた。

 モンスターをハントするゲームも、もう夏イベントが始まっていた。

 

「むぅ……今回の追加、あんまり可愛くないんだけど。思わず伯母上を本能寺したくなるレベル」

「本気で殺しにいってるじゃない……っていうか、どれだけ悲しんでるのよ……」

「気軽に燃やされる本能寺よ……あ、木材確保しないと」

「あんまり高いと届かないから出来れば低い木がいいわ」

「……隣の二人を燃やした方が良い気がしてきた」

 

 オオガミのあぐらの上に座っているエウリュアレ。

 夏場で良くできると思いながら、とりあえずこの二人のところだけをあげてやろうかと企む茶々。

 ゲームも、別段違和感無く操作できている辺り、連携が取れているというか、流石は絆10と言うべきか。

 

「今更だけど、マスター遊んでて大丈夫なの? 宝物庫行かないといけないんじゃなかったっけ?」

「のんびりで大丈夫だから問題なし。むしろ、今やるとマシュが怒る」

「整理してる最中に物を増やされるんだもの。手が足りてないのに増やしたら、倒れるわよ」

「そこまで分かってて手伝わない精神凄いと思う」

「「仕事が増えるって言われた」」

「戦力外通告受けてたか~……」

 

 余計なことをしないのが仕事になっていた。

 よって、二人とも暇になった結果、今ここでゲームをして時間を潰しているのだった。

 

「よし、剣が出来たし、お肉を狩りにいこう」

「もうそろそろ夜になるのに? 寝てから行きたいのだけど」

「むむ。それは確かに……よし、じゃあ、とりあえず朝にしてから出陣しよう」

「操作難易度上がってる状況で普通にモンスターが湧く夜に出歩こうとするマスター驚きだよ。難易度設定一体いくつなの……?」

「ハード一択」

「それ以外にするわけないわ」

「うわぉ、無謀過ぎるよこの二人! どう考えてもアホの行動だよ!」

 

 ただでさえもやりにくい状況で、更に難易度を難しくしていく二人。

 オオガミとしては、簡単なのをやるつもりはなく、エウリュアレとしては、移動操作が自分なので、モンスターから逃げるか突撃していくかを決められるからだ。

 敵の強さをあまり気にしないオオガミと、オオガミを苦しませたいエウリュアレが合わさった結果のハード、ということだ。

 

「う、うぅ~ん……マスターがアホなのも、エウリュアレがなんかすっごい悪いこと考えてるのも分かった。よし、茶々は何も聞かなかったことにするね」

「そうね、そうした方が良いわ」

「え、変なこと言ったっけ……?」

 

 茶々の言っているのが分かっているエウリュアレと、全く分かってないオオガミ。

 そんな二人に、茶々は苦笑いになるのだった。




 二人で一つのコントローラを操作するのって、絶対難易度高いと思うんですよ……良くできるな、あの二人。


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変な操作が流行ってる……?(これを私以外が出来るなら見てみたいわ!)

「ふ、ふふふ……ふふふふふ……!! コレが一人四コントロールプレイよ!!」

「さっすがアビー! 出来ると思ってた!!」

「全部の画面を見る方だけでも難しいと思うのだけど……」

「いや、それ以上に、そもそもやろうっていうのがどうかと、茶々は思う。昨日に引き続き変態プレイを見る茶々の気持ちにもなってよ。なんか要求されてるみたいじゃん」

 

 触手を運用したコントローラ四つ同時操作でモンスター狩り。

 明らかに無理に思えるが、悪い子モードのアビーはその無茶をこなしていた。

 そんな様子を見て、茶々もこういうのを覚えろという遠回しな何かなのかと勘繰る茶々。当然、三人ともやってみたというだけの話で、他人に強要するつもりはないのだが。

 

「ま、マスター……そろそろ辛くなってきたのだけど……!!」

「行ける行ける! あとちょっとで倒せる!」

「初戦をネギにするその勇気だけは凄いと思うわ。真似したいとは全く思わないけど」

「ていうか、普通に戦えてるの凄いんだけど。ナニコレ、絶対裏で練習してたでしょ。ビックリなんだけど」

 

 善戦どころか、倒しそうな勢い。一キャラだけ異様にうまいからというわけでもなく、四キャラともちゃんと立ち回っているのだから恐ろしい。

 仮にも看板モンスターなのだから、こんなヘンテコプレイしてるようなのに負けるなよ。と内心突っ込む茶々。だが、看板モンスターは基本派手なだけで強くないのが、悲しいことによくあることだ。

 

「寝た……! でも、今がチャンス……! ここで爆弾を置いて、一斉竜撃砲!」

「ロマン砲……! 大爆発の確信……!!」

「派手さは大事よね」

「んん……? エウリュアレとは思えない発言が聞こえた気がする……」

「「バースト!」」

 

 ちゅどーん。という音と共に爆発で真っ白になる画面。そして、直後にクエスト達成のお知らせ。

 乙無し完全勝利だった。

 ここは一周回って全滅エンドでもありだったんじゃなかろうかと茶々は思うが、このみんなが喜んでいる状況でそんなことが言えるはずもないので黙っていた。

 

「ふふん! 頑張ればこれくらい出来るわ!!」

「さっすがアビー! 出来ると思ってた!!」

「流石ね。これからも頑張りなさい」

「いや、努力の方向性も褒める方向性も間違ってるから。むしろよくあんなプレイさせたよねって、茶々は心から思うのです」

「はい、そうですね。なんでアビーさんはここにいるんでしょうか」

 

 ふと聞こえた、いないはずの5人目の声。

 それは扉から、オオガミ達を、特にアビゲイルを見ていた。

 そう、マシュである。

 

「アビーさん、私は遊ぶのは悪いとは思いません。むしろ程々のは良いと思います。ですが、触手で身代わりをして逃げるだけならまだしも、その触手を暴走させるのは些か問題だと思うのですが、どう思います? 先輩」

「……どうぞ、マシュ様」

「自然に売られた! 酷いわマスター! 私にくれた聖杯は偽りだったの!?」

「これ以上マシュを怒らせると色々な意味で死ぬ。わりとマジで。後、余計なことを言って場を混沌とさせようとするのは良くないと思う。お互いのためにも」

「えっ……?」

 

 アビゲイルがそう呟いたとき、マシュは満面の笑みを浮かべながら、

 

「それじゃあ失礼しました、先輩。想定外のアクシデントで時間がかかってますが、明日には終わらせますので、宝物庫。よろしくお願いしますね? あと、アビーさんは後でお話をしますので、かなり時間がかかります」

「は、はい……」

 

 恐怖を感じる笑みで威圧して、部屋を出ていくのだった。

 残されたオオガミ達は、明日向かうことになるであろう宝物庫に備え、今日はもう寝ることにしたのだった。




 四コン同時操作という鬼畜の所業。ちょっとリアルでやってる人は見たことないですね……

 あ、ガンスは私、専門外なので、使い方おかしいとかありましたら、突っ込んでくださいな。
 いやまぁ、なんでゲームやってんだよ的なのは自分で思ってるんですが。明日からは宝物庫に逃げ込もう……(白目


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茶々の金庫の防御力を上げないと……(とりあえず宝物庫と同じようなのにしたいよね)

「うへぇ~……扉がいっぱい……」

「片っ端から砕いていけば、QPが稼げるし、良いんじゃないかしら」

 

 扉を焼いて砕きながら、大量の扉に苦い顔をする茶々。

 エウリュアレとしては、仕方ないと思って、近付いてきている扉から打ち抜いていた。

 

「……素朴な疑問なのだけど、扉を生かしたままこじ開けて、中身を取り尽くすのはダメかしら……?」

「あぁ、それね……ただ中身が散らばるだけで、得が一切ないわ。増えないもの」

 

 過去に一度だけ試し、異常なまでのQPを、一個ずつ手作業で集めた嫌な思い出。

 エルキドゥがいたのでその時は助かったのだが、今もう一度同じことをする気はなかった。

 

「むしろ、私としてはなんで扉が自律して、かつ攻撃してくるのかが分からないわ。扉なら扉らしく大人しく開けられなさいよ」

「そこはほら、宝物を盗られるとか嫌だから、防犯機能でしょ? ……茶々も金庫をそうすれば良いんじゃない? そしたら伯母上に盗まれなくなるはず」

「……何故かしら。その金庫を破壊されて泣いてる茶々の姿が目に浮かぶわ」

「むしろ中身だけ奪われてそうだよね。原因はアビーの門を参考にして作られた移動システムとかで。工作班のノッブとBBなら絶対やると思う」

「そこのエウリュアレとマスター! 縁起でもないこと言わないで! 現実になったら絶対泣くから!!」

 

 既に半泣きの茶々。自分でも想像して、あり得そうだと思ったようだ。

 扉の波も一段落し、休憩しつつ話を続ける。

 

「まぁ、流石のノッブも、二回も茶々の金庫から盗まないでしょ」

「……茶々のプリンは何度も無断で食べられるのに?」

「ノッブは工房に監禁しておくのが一番じゃないかしら」

「……わりと脱出・脱獄が上手いのに?」

「……もう、諦めるしかないのでは」

「逃げたねマスター! でももう茶々は逃がすつもりはないからね! 伯母上対策は任せた!!」

「んな無茶な!」

「ダメよ茶々。カルデアの時を思い出して? ノッブとマスターが一番組み合わせちゃいけないわ。そこにBBも付け加えたら、エルキドゥ以外は誰も手をつけられなくなるのは明らかよ。そういう危険性を考えて言いなさい」

「……じゃあエウリュアレが監視……?」

「良いけれど、代わりにマスターが暴れ始めるわよ?」 「ん? ちょっとエウリュアレ、今聞き捨てならない事を言わなかった?」

「むむ……マスターが暴れるのは困るな……マシュは多分BBに掛かりっきりなるし……」

「待って待って。なんで俺が暴れるのが前提なの?」

「でしょ? ならそこは、エルキドゥでもぶつけておくべきよ」

「むしろエルキドゥがいるなら監視はいらないのでは……?」

 

 どうあがいてもエルキドゥは必要らしかった。

 オオガミはそこもだが、それ以上に自分が監視されてないといけないような扱いを受けているのが不満というよりも理解不能らしかった。自分では自覚がないのだから仕方ない。

 

「むぅ……とりあえず、金庫に警報をつけておいて、次の策を考えないと……」

「そうね。まぁ、頑張りなさい。相談には乗るわ」

 

 そう言って、再び現れ始めた扉を相手に攻撃を始めるのだった。




 そもそも、宝物庫システムの金庫を作るのにノッブとBBの技術力が必要という、残酷な現実。アヴィケブ先生に作ってもらうのもあり……?


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近付く新異聞帯(そのためにも休息は大事ということで)

 オオガミの部屋。そこはわりとサーヴァントが乗り込んできたり、占領されたりする部屋だが、一応マスターの部屋なのは確かだ。

 そんな部屋で、ベッドで横になりながら考え事をするオオガミ。

 

「……そろそろ次の異聞帯かぁ……北欧とか、なんか色々出てきそうな感じ凄いよねぇ……」

 

 神話だとわりと残念そうな神が多い気もするが、性能が高いのは確かだろう。まぁ、神霊がどれ程現界出来るのかは置いておくが。

 

「まぁ、いつも通りのんびりとやるしかないよねぇ……」

 

 そう呟き、だんだんと重くなってくる目蓋を下ろし、寝始めるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「まぁ、暇になったらここに来るのが一番よね」

 

 そう言って、堂々と入ってきたのはエウリュアレ。

 もはやエウリュアレにとって、オオガミの部屋は自室のようなものだった。

 

「って、あら、寝てるのかしら」

 

 目をつぶって規則正しい呼吸をしていて、更にエウリュアレが入ってきたことに気づいてない辺り、ぐっすり眠っているのだろうと推測するエウリュアレ。

 どうしようかと考えたエウリュアレは、とりあえずオオガミの腕の中に背を向ける形で潜り込み、改めて何をするかを考える。

 

「ん~……ゲームはいつもと変わらないのよねぇ……」

 

 久しぶりにトランプ等でもやろうかと思ったが、全員整理を手伝っている上に、最後の頼みの綱であるオオガミは寝ていた。

 なので、どうしたものかと考えるのは自然なことだろう。

 

「……それにしても、本当にぐっすり寝ているわね……何しても反応しないんじゃないかしら。落書きでもしましょうか」

 

 そう思い立ち、行動しようとオオガミの腕をどかそうとした瞬間、逆に力が込められ、抱き締められる形となっていた。

 

「ちょ、この状況は流石に不味いわ。どうして寝てるのに、簡単に振りほどけないように捕まえるのか……! さては起きてるんじゃないでしょうね!?」

 

 しかし、後ろにオオガミの顔があるため、エウリュアレからは見えない。そのため、起きているかどうかも不明だった。

 その後もエウリュアレはなんとか抜け出そうと必死にもがくが、一向に抜け出せる気配はなく、そのうち疲れて諦め、そのまま寝てしまうのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ようやく解放されたわ! 遊びましょうますた……あ……?」

 

 そう言ってオオガミの部屋の扉を開けたアビゲイルが真っ先に見たものは、寝ているエウリュアレを背後から抱き締めて同じく寝ているオオガミの姿だった。

 

「な、なっ……何をして……ハッ!!」

 

 思わず叫びかけ、一瞬にして状況を再認識したアビゲイル。

 すなわち、『今ならさりげなく一緒に寝れるんじゃないか』という事に気付いたのだ。

 

「ふっふっふ……扉にロックをかけて、門でマスターの背後まで移動っ!」

 

 言葉通り、オオガミの部屋の扉に鍵を掛け、門を使って音も無くオオガミの背後に横になった状態で移動。そのまま首を絞めない程度に抱き締める。

 

「これでようやく休憩できるわ。ふふん。特等席ね」

 

 得意気な表情のアビゲイル。だが、やはりマシュの作業を手伝ったのはかなり疲れたのか、あまり騒ぐこともなくすぐに寝息をたてるのだった。




 最近エウリュアレとの絡みが目立ってきてる気がする……そろそろ他のサーヴァントも出さないと……


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無間氷焔世紀ゲッテルデメルング
レッツゴー!! 新異聞帯!!(縛り!? 当然入れるでしょ!!)


※第二部プロローグ以降の話を若干含んでおります。ご注意ください。







「乗り込む準備は出来たかー!!」

「おーっ!!」

「ちなみに、今回は☆5、絆マ、令呪、マーリン禁止縛り! なお、マシュは復活したのでVRマシュ縛りだよ!!」

「どうしてそう、普通に攻略する気が無いんだろうこのマスター!!」

 

 ちなみに、その宣告によって、一瞬で傍観役になったアビゲイルとエウリュアレ。もう自分も突撃するつもりだったアビゲイルに至っては、その場で倒れてピクリとも動かなくなるレベルだった。

 

「ふ、ふふふ……私はまたお留守番なのね……えぇ、えぇ。もういいわ……アンリで遊んでくる」

「ストップアビー、それは後にしておきなさい。今回はシャドウ・ボーダーでのんびりとマスター観察してましょう。見ていて楽しいわよ?」

「むむむ……じゃあ、アンリは止めて、見てみるわ。たぶんアンリも出るものね。そのためにも止めておきましょう」

「えぇ。個人的には、魔性菩薩さえ一緒の部屋じゃなきゃいいもの」

 

 ☆5禁止という事は、あの魔性菩薩ことキアラもシャドウ・ボーダー待機な事実に、苦い顔をするエウリュアレとアビゲイル。

 とはいっても、一番被害に遭うのはおそらくアビゲイルなので、エウリュアレとしては損はほとんど無かったりする。

 そんな事を話している間にも、オオガミ達の話は続いていた。

 

「さて、マシュ!! 食料品をぶっこむ袋の用意は十分か!?」

「安心してください先輩!! バッチリ10袋です!! 背負い袋なので、8袋は先輩持ちです!!」

「マスターに重労働させるその精神、正直なので良しとする!! 後輩特権だし!!」

「茶々が言ったら全力で拒否した後意地でも半分に使用と交渉してくる気がする!! 差別だ!! ずるい!!」

「茶々は茶々、可愛い後輩は可愛い後輩。一緒なわけないでしょ!!」

「はっきり言いやがったこのマスター!! おこだよ! 茶々おこだよ!!」

 

 オオガミと茶々の戦争。割と本気で殴り合っているので、そのうちオオガミがやられて動かなくなるだろうと予想するエウリュアレ。

 バーサーカーのクラスは伊達じゃないのだ。そのパワーに、オオガミが無事であるはずも無く。

 

「はいはい、お二人さんそこまでにしとけって。ほれ、次の異聞帯が来ちまうぞ?」

「アンリは出ないじゃん! 黙ってて!!」

「確かにアンリを出す予定はないけど、それはそれとして次の異聞帯に乗り込むのが遅れるのは不味い!! 俺への怒りは敵にぶつけていいから、とりあえず離して!! これ以上殴られると動けなくなるから!! 死んじゃうから!!」

「マスターが死ぬわけないじゃん!! 宝具喰らって無事なのが殴られて死ぬはずないし!!」

「偏見!! そもそも回避してるから!! 直撃は……うん。無いから」

「一瞬止まったの何……? え、直撃したの……? え……マスターマジで不死身なんじゃ……」

 

 アンリの制止に反論したりしつつ、一瞬どもったオオガミに困惑を隠せない茶々。

 その一瞬の隙に、足を掴んでいた茶々の腕を振りほどいたオオガミは、改めて話を始める。

 

「じゃあ、到着と同時に突撃!! 食料の確保を優先的に行くよ!!」

「了解です!! ゴルドルフ新所長にはお肉用魔術の準備をしていてもらいます!!」

「よし、それじゃあ次の異聞帯に向けて、覚悟を決めろ~!!」

 

 オオガミの言葉に応えるように、全員は声を上げるのだった。




 食料品大事。後、せっかく育てたアビーですが、今回はお留守番です。残酷な事だ……

 そして、所長はお肉魔術を酷使していただくのです……


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これ、第二ピックアップで石枯渇確定かしら(まだピックアップされないという希望はある)

※ゲッテンデメルングネタバレアリ!! ご注意ください!!!










「あ、資材枯渇ほぼ確定ね」

「判断が早すぎないかしら……いえ、私も思ったのだけど」

 

 シャドウ・ボーダー内から、アビゲイルの門を使ってひっそりと様子を見ている二人。

 そして、そこから見えた確実に恒常じゃない雰囲気のサーヴァント。むしろ第二ピックアップに来るかも怪しいが、もし来たとしたらオオガミが瞬時に石を溶かすことは確定していた。

 ちなみに、前回隠していた12個の石は、既に消滅していたりする。

 

「もう隠しても無駄ね。諦めてマシュに怒られるように誘導しましょう」

「売りに行くエウリュアレさん、流石ね。私でも思い付かないわ……!」

「貶してるのか褒めてるのか分からないのだけど、どっちだったとしてもキアラに差し出す気分になったわ」

「それは本当に止めて欲しいのだけど。本気で死んじゃうわ。もう二度と相手をしたくないのだけど」

 

 前回はアーサーを生け贄にする事で逃げたが、今ここで同じことをやると、シャドウ・ボーダーに大きな負担がかかるのは分かり切っているので、アビゲイルに逃げ場はないのだ。

 故に、エウリュアレにそれをされると、本気でどうしようもなくなるのが悲しい所だろう。

 

「まぁ、流石にやらないわよ。とりあえず、今石はどれくらいあったかしら」

「えっと……確か、そろそろ30個になるはずよ」

「えぇ……昨日一瞬で溶かしたばっかりなのに……?」

「うん。マスターの回収分と、手に入った15個で、結構な量になってるわ」

「そう……でも、どうせ一瞬で溶かすのよねぇ……」

「そうね……マスター、何も考えないで衝動的に使っちゃうんだもの……貯蓄するって何だったのかしら……」

「マスターが貯蓄するところなんて、全然見てないのだけど……」

 

 貯蓄するといって、次の瞬間には消し飛んでいたりする。カルデアの頃から全く変わらないので、若干諦めの域に達しているエウリュアレ。完全に、貯められるとは思ってない目だった。

 

「ん~……でも、中々大変そうよねぇ……アビーが向かうだけでも凄い楽になると思うのだけど。明らかにバーサーカーが多いじゃない」

「確かに……普通に10万以上のHPの敵もいっぱいいるものね……本当に私は編成しないまま行くのかしら……」

「やるって言ったら、本気でやるもの……まぁ、完全に詰んだら諦めてこっちに来るわよ」

「そう……まぁ、前回もそうだったものね。じゃあ、のんびり待つとするわ」

「えぇ。じゃあ、引き続きマスターの観察をしてましょうか」

 

 そう言って、二人はオオガミの観察を再開するのだった。




 仕方ないんや……地下牢で会った人物は、精神的に大ダメージを与えてきたので仕方ないんや……全力で回さなきゃダメだと思うんです(真顔


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空想切除縛りで完走!!(本当にやったのだけど……)

※ゲッテンデメルングのネタバレ注意!! 攻略済みマスターかネタバレ気にしない方のみどうぞ!!!






「うっそぉ……初めて最後まで縛りを破らないで完走したわ……」

「ほ、本当に私の出番が無かったのだけど……!」

 

 空想切除。神話対戦の如き戦いを駆け抜け、帰って来たオオガミ達。

 マシュは嬉しそうに笑い、茶々は最後まで出番が無かったので不満そうだった。

 

「聞いてエウリュアレ!! 茶々、結局放置されてたんだけど!! さりげなく暖房扱いだったんだけど!!」

「あぁ、だから妙に寒かったのね……ここで見てる時、ゆっくりと気温が下がっていくから、辛かったわ」

「寒かったわ……茶々さんの所にも門を開いておけばよかったかしら」

「いや、二人とも、シャドウ・ボーダー内なら暖房かかってて温かかったでしょ……?」

「どうしてそう言う事言うのかしら」

「そうよマスター。ここは適当な事を茶々さんに言って、混乱させるのよ」

「実はこの二人が一番の敵なんじゃないかなって、茶々は今思ってるよ」

 

 エウリュアレとアビゲイルの言葉に、戦慄する茶々。

 オオガミは苦い顔をするが、大体いつも通りなので、特に何も言えない。更に言えば、オオガミも同じ扱いにされることが多々あるので、何か言えるわけも無かった。

 

「それで、マシュが凄い良い笑顔なんだけど、何かあったのかしら」

「そりゃもう、前線で張り切ってたからね。最後まで頑張ってくれたから、それでじゃないかな?」

「えぇ。久しぶりに暴れられましたから! 普段のストレスも含めて、精一杯やりましたとも!!」

「……酷い話ね。ストレス発散で殴り飛ばされる巨人……まぁ、そう言う事もあるわよね」

 

 戦いに出る度に言っているような気もするが、マシュが満足そうなので気にしないことにする。

 なので、新素材により整理がまた面倒になった倉庫は、アビゲイルと一緒に手伝いに行こうかと考えるエウリュアレ。

 

「さて、じゃあ、次の異聞帯まで休憩かしらね。また宝物庫?」

「そうなるね。まぁ、宝物庫はアナスタシアの出番なのだけども」

「茶々お休み!! やったぁ!! これでゆっくり遊べる!! 後は任せた!!」

「えぇ、ヴィイは全てを凍てつかせてくれるわ。でも、三連続を何度もやるのは疲れるわ」

「マスター、本当にとんでもない事するよね……三連続宝具とか、よくやるよね」

「普通にやるけども。むしろ、一回キアラ運用も考えてたけども。スキルが足りなかったよ」

「スキルが足りてたらやったの……?」

「まぁ、マスターならやりかねないわね」

 

 茶々の困惑に対し、エウリュアレは冷静に判断した。

 ちなみに、キアラに関しては本当にスキルレベルが上がってたりする。

 

「じゃあ、とりあえず宝物庫周回行ってくる」

「行ってらっしゃい」

「じゃ、茶々は遊んでくる」

「私も行ってるわね」

 

 オオガミを見送るエウリュアレと、遊ぶために部屋に向かう茶々とアビゲイル。

 そして、マシュは倉庫整理に自然と向かうのだった。




 最後の三連続が強かった……そして、何気に初めての縛りで完走……


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日常
異聞帯での料理(思い出すだけで泣けそう)


※二部以降のネタバレあり! ご注意ください!









「右は暑くて、左が寒い……」

「背後にいる私もその影響を受けているのだけど……」

 

 右には茶々、左にはアナスタシア。そして背中に張り付くエウリュアレ。

 じゃあ背中に張り付いていなければ良いのではないだろうかと思うが、それを言うと腰に一撃思い蹴りが入って数分動けなくなるのは明らかなので、何も言わないでおくオオガミ。

 このせいで裏で『エウリュアレに甘い』だとか『実質夫婦』とか変な噂がたっていたりするが、アビゲイルが秘密裏に消し去っているので本人たちの耳に入っていなかったりする。

 

「今更だけど、何をするの?」

「いや、何をするという訳じゃなかったんだけど……そもそも、部屋を出た瞬間についてきたのは三人じゃん……?」

「茶々、何も言ってないんだけど?」

「えぇ。私も、ただついていっているだけですし。何をするかなんて気にしてないわ」

「そ、そう……? 気にする方がおかしいのかしら……」

 

 全く気にしていない様子の二人に、自分の感覚を疑うエウリュアレ。

 

「いや、そこはそれぞれだから気にしないけど、そうだね。とりあえず、シチューでも、作ろうか。うん、ゲッテンデメルングで食べたシチューが記憶に残ってるからね。なんというか、消える前に作っておこうかなって」

「……別に、わざわざ作る必要はないと思うのだけど……そもそも、アナスタシアの時は作らなかったでしょう?」

「そりゃ、あそこじゃ、食べる事自体が難しかったし、料理なんて文化もなかったからね。言うなれば、あの肉自体がアナスタシアでの料理かな? 火酒はちょっと再現できないけど」

「そ、そう……でも、材料的には作れるの?」

「……あぁ、それは考えなかった……仕方ない。レシピをメモしておいて、いつか作ることにしよう。今日は諦めて他のものを作るとするよ」

「イベントの時にまたかき集めないとね。茶々も手伝うよ。整理をね!」

「私もそっちで頑張るわ。私の担当は宝物庫だもの。それ以外の時は倉庫整理を手伝っているわ」

「……実は、マシュの苦労はかなり減っているのでは……?」

 

 しかし、マシュは今でもひたすらに働いているので、不思議に思うオオガミ。

 ジークやアヴィケブロンに至っては、ほぼ常に手伝っているので、もうほとんどやることがなくなっていても不思議ではないし、むしろ休んでいても良いくらいだろう。

 

「……マシュ、何か隠してる……?」

「さぁ……? でも、ちょっと気になるわよね」

「うん……まぁ、いつか探ってみるかな。とりあえず、今はご飯が優先かな」

 

 そう言って、オオガミ達は厨房へと向かうのだった。




 料理の話でも書くか~って思った瞬間に、ゲッテンデメルングでの場面を思い出して再び精神ダメージを受けた私です。致命傷……(コフッ


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はたしてマシュは何を企んでいたのか(何の確証も無しに突撃して、ばれたらどうするのか)

「さて、マシュの部屋に侵入したわけだけども……」

「見つかったら絶対殺されるわ……キャメロットは伊達じゃないのよ……?」

「あらゆる攻撃を無にする白亜の城は洒落にならない。マジ無理そうなったらマスター差し出して茶々逃げる」

「じゃあついて来なければ良いじゃん……! なんでわざわざ来たの……!?」

 

 ヒソヒソと話しつつ、マシュの部屋を捜索するオオガミ達。

 ちなみに、今回のメンバーは、もはやお馴染みのエウリュアレ・アビゲイル・茶々の四人組だ。

 マシュの部屋に何をしに来たのかと言われれば、なぜマシュが作業量が減っているはずなのにひたすら働いているのか、その実態を知るためだった。

 

「まぁ、マシュが近付いてきたらアビーの門で退避で。後、あまり部屋の物を弄らないこと。バレる確率が上がるからね」

「分かったわ、マスター!」

「茶々も殺されたくないから下手に触らないし。大丈夫大丈夫」

「……本当に潜入してるみたいで、なんとなく後ろめたいような……」

「それじゃ、順番に探っていこうか」

 

 そう言って、マシュの机の上を調べ始めるオオガミ。

 しかし、特にめぼしい物は見当たらないのはある意味自然だった。

 

「むむぅ……一体どこに隠しているのか……」

「そもそも何が見つかると思ってたのかしら……」

「マスターの事だから、特には考えてなかったと思うの」

「茶々もそう思うけどね。まぁ、何か出てきたら面白そうだとは思った」

「……じゃあ、帰ろうか」

 

 想像以上に何も無かったので、仕方なく帰る四人。だが、オオガミは部屋を出る寸前で、

 

「何というか、割と不安になるレベルで何もないんだけど……本当に大丈夫なのかな……?」

 

 異様に何もない机に、そんな事を呟いて外に出るオオガミ。

 そして、誰もいなくなったはずの部屋に、天井から降りてくる人影。

 

「ふぅ……何とか先輩に気付かれなくて済みました。いえ、エウリュアレさんだけはなぜかこっちを見てたんですけど。まぁ、黙っててくれたので結果良しです。流石にバレると不味いですからね」

 

 そう言って、土方印、カーミラ印の拷問術書を机に戻すマシュ。

 対オオガミ及びBB用に用意したものではあるが、今では無用の長物と化している。

 だが、いずれは使うだろうという事で机の中に保管していたのだが、オオガミ達が来ることを察知したマシュが予め天井に隠し、そのまま自分も隠れたというわけだ。

 エウリュアレ以外にバレなかったのが奇跡だろう。

 

「まぁ、先輩も心配してくれていたみたいですし、一切合切持って逃げる必要は無かったですかね……」

 

 そう思うが、オオガミのいつもの行動を考えると、あまり心配する必要も無い気がしてきた。

 

「ん~……とりあえず、先輩の後を追いますか」

 

 天井へ持ち込んだものを適当に机の中にしまい、マシュはオオガミを追いかけるのだった。




 なお、拷問術書はこれ以外にもある模様。恐ろしい話である……

 そして、そろそろオオガミ君以外にもスペックバグを起こし始めたのが出てきた模様。エウリュアレ……オオガミの近くにいるから……(今更


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永遠と回り続ける宝物庫(一体なぜひたすらに扉を壊しているのか)

「……なんで宝物庫を回っているのか。途中から分からなくなる……」

「なんでって……え、足りないからじゃないの?」

 

 唐突に変なことを言い出すオオガミに、困惑するエウリュアレ。

 扉の破壊はアビゲイルが元気一杯全力で異界送りにして、宝箱だけ取り上げていた。

 

「いや……正直スキル上げに使わないならそんな必要ないんだよね……」

「でも、そもそも他にやることないじゃない。それに、貴方の事だから、どうせ突発的に育成したくなったりするんだから、集めておいた方が明らかに得だと思うのだけれど」

「むむぅ……確かにそうだけど、でも、種火も集めておいた方が良いのかなって思ってさ」

「1500個近くあるのに何言ってるのよ……既に十分以上じゃない。これ以上集める必要はないと思うのだけど」

 

 その種火は、既に倉庫に収まるわけもなく、プレゼントボックスの中に入れられたまま放置されているほどだ。

 そして、それだけあるにも関わらず、まだ集めようとしているのかと呆れるエウリュアレ。

 ちなみに、1500個の金種火は、レベル1をレベル100にしても余るほどの量だったりする。

 

「むぅ……まぁ、まだQP上限には達してないし、集めておくのはありだとは思うんだけど……なんというか、代わり映えしない光景に涙が……」

「……素材集めに行く? 骨とか、火薬とか、貝殻とか」

「ん~……それはそれで闇を垣間見ることになる……出来るだけ見たくない……」

「……じゃあ、諦めて宝物庫を回るのね」

 

 優柔不断なオオガミに、最終的に安定する宝物庫を勧めるエウリュアレ。

 なんだかんだ素材は足りていないのだが、オオガミ的にはメルトリリス用の素材は集まっているので、今すぐ集めようとは思っていなかった。

 

「まぁ、QPは上限に達するまではかなりあるから、限界まで集めましょう。スキル上げに使ったら一瞬で溶けるんだから」

「スキル上げ……一瞬で溶けるQP……失踪した素材……うっ、頭がっ」

 

 今までのスキル上げの数々が頭の中を巡り、謎の精神ダメージを受けて倒れたオオガミ。

 介抱するのは面倒なのでしないが、近付いてくる扉だけはアビゲイルの方へと追いやるように迎撃していた。

 

「とりあえず、司令塔なんだからさっさと起きて。いつもやってるからって言っても、油断したらダメよ。根本的に一撃が致命傷でしょ」

「あぁ……いや、ちびノブの爆破にも耐えられるなら、ワンチャン行けるんじゃ……?」

「……じゃあ、一回受けて見なさい」

 

 そう言って、エウリュアレはオオガミを盾にするのだった。




 QPも素材も足りない……でも、種火だけは足りている謎。


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朝起きると、アンリが増えていた(たまにはそういうときもあるよね)

「いよっす。みんなのアンリさんだ」

「今日は二人に増えてサポートするぜ?」

「え……え……? アンリが二人……? あれ、いつからここは同一人物が同時に出現できるように……!?」

 

 オオガミの前に現れた二人のアンリ。

 しかし、宝具を重ねたのは数ヵ月前の事だ。つまり、唐突な仕様変更ということだろうか。

 

「いやぁ、朝起きたら増えててさぁ」

「別段害は無さそうだし、作業を手伝ってもらおうかと思ってさ。まぁ明日には治ってんじゃね?」

「え、あ……う、うん。マシュを困惑させないようにね……?」

「そりゃあ」

「保証しかねるな」

「えぇ……」

 

 そう言って、二人のアンリがオオガミの隣を通り過ぎ、倉庫へ入ろうとしたときだった。

 

「あっ」「げっ」

「? アンリが二人……?」

 

 偶然にも、倉庫から出てきたのはアビゲイル。

 出てきた人物に気付いたアンリは、片方は瞬時に、もう片方はワンテンポ遅れて反応し、後退りをした。

 そして、即座に反応した方のアンリ(以下アンリA)は、少し焦った様子で、

 

「あ、あぁ、そうそう。朝起きたら二人に増えててさ。別段問題もねぇし、整理の時に役立つじゃん? それで、手伝ってもらおうと思ってさ」

「ふぅん……? でも、仕事は今終わったわ。代わりに私と遊びましょ?」

「……それは、遠慮させてもらうぜ」

「オレもちょっと用事があるんで、ここらで失礼させてもらうわ」

「逃がさないわ?」

 

 直後、触手によって逃げ場を塞がれる二人。

 見ていたオオガミは、その急展開を目を輝かせながら見守っていた。

 そして、その状況で先に動いたのは、先ほどワンテンポ遅れて反応した方(以下アンリB)。

 

「よ、よし、そうだ。良いことを思い付いた。流石に二人は要らないだろ? だからさ、片方だけにしようぜ? どっちかだけだ。それで良いだろ?」

「おまっ、何言って」

「分かったわ。そうしましょう」

「ま、マジかよ……」

 

 苦い顔をするアンリAと、頬を引きつらせているアンリB。

 アビゲイルはその二人を改めて見た後、

 

「それじゃあ、こっちにするわね」

 

 そう言って、背後から突然現れた触手によって思いっきり地面に叩き伏せられたアンリA。

 触手が退いた後もピクリともしないが、おそらく生きているのだろう。

 隣にいたアンリBは、その重たい一撃が真横を通り過ぎたことで、少しも移動する気はなかった。むしろ、この状況で下手に動いたら死ぬとまで幻視できるほどだ。

 そして、アビゲイルは動かなくなったアンリを担ぐと、

 

「じゃあね偽者さん。後、あまり変装しないことをオススメするわ」

「ハハッ、お見通しってことか」

 

 そう言って、変装を解くアンリ。

 正体は新シンさんだった。

 

「完璧に変装できてたと思ったんだけどなぁ?」

「そうね。じゃあ、次はマスターに変装して、二人で一緒にエウリュアレさんのところに行くのをオススメするわ」

「……死ねってことかい?」

「さぁね?」

 

 そう言って、アビゲイルはアンリを抱えて何処かへ行ってしまうのだった。

 残された新シンさんは、少し考えたあと、

 

「まぁ、やってみるのも一興か」

 

 そう言って、オオガミが隠れている場所を見るのだった。




 アビーだから本人を狙うけど、果たしてマシュやエウリュアレに同じことをして生きて帰れるのか。新シンさんの探求は続く……


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ほのぼのしてるだけの時間(殺伐よりはマシかしら?)

「……おはよう」

「んぇ? あぁ、おはよう。起こしちゃった?」

「いえ、別にそう言うわけじゃないのだけど……」

 

 本を読んでいたオオガミにどこか不機嫌そうな顔をするエウリュアレ。

 ベッドを占領していたエウリュアレだが、罪悪感があるかのような微妙な表情をしていた。

 

「あぁ、良い寝顔だったよっ!!」

「どういう意味よそれ」

「要するに写真を撮ったわけで、それを複数媒体に保存しているわけだ。ちなみにエウリュアレ以外のもある」

「全部ぶっ壊せばいいのかしら」

「それは全力で止めてほしい。破壊されても良い機材に移動させときます」

「それは壊せって事かしら」

「全力で壊さないでくれるとうれしいです」

 

 謝るオオガミを見て、くすりと笑うエウリュアレ。

 流石に本気で壊す気は無いが、このノリはわりと好きだった。

 

「でも、珍しくそこに座ってるのね」

「別に珍しくも無いと思うけどね? まぁ、本を読んでるのは珍しいかもしれないけど」

「そうね。そもそもどこに本があったの?」

「荷物にいくつか入れてたからね。今更になって取り出してきたんだよ。マシュに聞いて、取って来るのに時間がかかったしね。読み始めたのはさっきだよ?」

「そうなの?」

「まぁね。というか、今まで読むだけの時間が無かったというかなんというか。昔と違って、長く離れてたせいで読む速度が結構落ちてるっぽいしね」

「ふぅん? 私も読もうかしら」

「いいよ。移動しようか?」

「いえ、そのままでいいわ」

 

 そう言って、オオガミの膝の上に座るエウリュアレ。

 膝の上に座られたオオガミは、少し考えた後、

 

「髪、ツインテじゃなくて、ポニテにしても良い?」

「あぁ、顔にかかって見辛いの? 貴方がやってくれるならいいわよ?」

「じゃあ、ちょっと失礼するね」

「えぇ、手早くお願いね」

 

 そう言うと、エウリュアレに読みかけの本を渡して、エウリュアレの髪を結い始めるオオガミ。

 その間に、オオガミと同じところまで読み進めるエウリュアレ。

 オオガミの宣言通り、確かにほとんど進んでいないので、オオガミが結い終わるまでに読む事が出来た。

 

「さてと。これで大丈夫?」

「えぇ、私としても問題ないわ。ただ、いつもと違うのって、なんだか変な感じね」

「ん~……自分の髪を弄った事は無いから、あんまりわかんないかなぁ……」

「じゃあ、今度やってあげるわ。まぁ、そもそも私は滅多にやらないから、出来るかどうかも分からないけどね」

「あ~……確かに、滅多にエウリュアレが自分でやってるのを見ないよね……大体メドゥーサかアナだよね」

「……いえ、最近は貴方にやってもらってる方が多いわよ……?」

「……まぁ、この部屋で寝てるとねぇ……自然、やるのは俺しかいなくなっちゃうよねぇ……」

 

 何とも言えない表情で、オオガミは笑うのだった。

 

「さてと、じゃあ、読もうか」

「えぇ、そうしましょ」

 

 そう言って、エウリュアレはオオガミに本を渡すのだった。




 妙にほのぼの話が書きたかっただけなんです……


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突撃! マスターの部屋!(って、なんでこんな状況になってるの!?)

「マスターの部屋に突撃どーんっきゃああぁぁぁぁぁ!!??」

 

 言葉の通り、オオガミの部屋に突撃したアビゲイルは、椅子の上でエウリュアレを抱えたまま寝ているオオガミの姿を見つけ、悲鳴をあげた。

 抱えられていたエウリュアレは、アビゲイルが叫び始めると同時に読んでいた本を膝の上に置いて素早く弓矢を取り出し、眉間に矢を放つ。

 その素早い一連の動作に、驚いていたアビゲイルが避けられるはずも無く回避することなく直撃し、部屋の外へと吹き飛んでいった。

 

「ふぅ……あまりうるさくすると、起きるでしょ。起きたら読み直す時間が無くなるんだから、止めてほしいわ」

「う……ぐぅ……なんで突然射られたのかしら」

「今言ったじゃない。もっと静かにしなさい。マスターって、意外と寝てなかったりするんだから」

「えっ、本当に? じゃあなんでマスターがそこで寝てるの?」

「……それはその、あれよ。本を読んでたら寝落ちしただけよ」

「そう……じゃあ、なんでエウリュアレさんはマスターの膝の上にいるのかしら」

「……まぁ、一緒に本を読んでいたからかしらね?」

「じゃあ、マスターが寝たんだから、移動しても良いと思うのだけど! あと、なんか髪型が変わってない!?」

「それは、本を読むのに邪魔だって言われたから、髪型を変えてもらっただけよ。それと、本を読んでいたから動きたくなかったのよ」

「むむむっ……エウリュアレさんだけずるいわ! 私もそこに座るから!」

「え、嫌よ」

 

 跳びかかってきたアビゲイルを冷静に射落とすエウリュアレ。

 触手の展開すらも間に合わない一瞬の出来事だった。

 

「むぐぅ……まさか一瞬で止められるとは思わなかったわ……というか、門を開くより速いとか、前より強くなってないかしら……」

「暇つぶしの賜物ね。貴女の門は、開いたとしてもまだ対応できるもの」

「なんでかしら……私も強くなったと思うのだけど……」

「レベルが上がったからって、勝てるなんて言えないわ。運悪く、相性が悪かったと思ってなさい」

「そんなぁ……」

 

 先ほどからエウリュアレの真上に門を開いて襲撃しようとしているが、開こうと思っている地点になぜかエウリュアレが的確に矢を向けていることから、開くと同時に射られそうなのでどうしようかと考えるアビゲイル。

 

「まぁ、ベッドなら使っててもいいんじゃないかしら。もしくは、新しく椅子を持ってきて、隣に座ったらどうかしら」

「むぅ……じゃあ、そうするわ」

 

 アビゲイルはそう言うと、門を開いて椅子を設置して、その上に座るアビゲイル。

 不機嫌そうだが、オオガミの隣に移動したので、少し嬉しそうにもしていた。

 エウリュアレはその様子を見て、安心したようにため息を吐いた後、また本を読み始めるのだった。




 誰がこんな風にしたんや……エウリュアレの性能がぶっ飛んでるじゃろ……どんどん設定を超越していくぅ……


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なんで追い出されたんだろ……(どうせマスターが何かしたんじゃないですか?)

「……何やってるんですか、こんなところで」

 

 廊下に転がされていたオオガミに、思わず声をかけるアナ。

 それに気づいたオオガミは、起き上がりつつ、

 

「いや……起きたらなんかアビゲイルに部屋を追い出されて、よく分からないままにエウリュアレに締め出された。あまりにも意味不明だった……」

「そうですか……どうせ、何かやったんじゃないですか?」

「いや、だから何もしてないんだってば……」

 

 いくつかの荷物を運んでいる最中だったアナは、話している最中のオオガミを平然と置いて行こうとするが、追い出されたオオガミが素直に置いていかれるわけも無く、一緒について行く。

 

「それで、本当は何があったんですか?」

「エウリュアレと一緒に本を読んでたのまでは記憶あるんだけどねぇ……寝落ちして、気付いたら隣にアビゲイルがいて、次の瞬間には外に追い出されてた。八つ当たりか何かで追い出されたんじゃないかなぁって……」

「なるほど……一つ気になるのですが、姉様と一緒に本を読むって、一体どういう状況ですか」

「あぁ、うん。それは、突っ込まれると返答に困る奴。最初はベッドを占領されてただけなんだけどね?」

「ふむ……まぁ、姉様が良いなら別に気にしませんが、なんででしょうね? アビゲイルさんが関係してるんでしょうか」

「そう、そこです。つまり、気になるから調べてほしいんだけど」

「嫌です。そう言うのは自分で調べてください」

「えぇ……なんでさぁ……」

「……あまり諜報は得意じゃないんです。特に姉様達に対しては」

「あぁ……まぁ、それなら仕方ないか……でも、エウリュアレが入れてくれるかなぁ……」

「頑張ってください。姉様の機嫌を損ねてるのだとしたら、とりあえず首を狩りますよ?」

「ひぅ……なんか平然と殺害宣言されてるぅ……」

「……避け切るくせに、よく言いますね」

「そこまで人間辞めてないってば。鎖に足を引っかけて転びかけるくらいはするって。重症以上の傷だけは意地でも避けるけど」

「むしろ重症には絶対ならないというその自信がどこから来るのか。というか、見分けついてるんですね」

「そりゃね。だって、どの攻撃を受けても重症だし。普通に全部避けるよね」

「結局全部避けるんじゃないですか」

 

 ジト目で隣のオオガミを見るアナ。

 オオガミは苦笑いをしながらアナの荷物の半分近くを取り上げ、一緒に倉庫へと向かう。

 

「……別に、感謝はしませんよ」

「別にそう言うつもりじゃないし。自分だけ持ってないのは、なんか、ねぇ? 居心地が悪いというかなんというか。だから、別に気にしなくていいよ」

「……それなら、お願いします。場所は言いますから」

「任せといて」

 

 不愛想にそう言って、少し早歩きになるアナ。

 オオガミはそんなアナを見て、困ったように笑って追いかけるのだった。




 明日か明後日くらいまではこのほのぼのな雰囲気が続く気配……ハンティングクエストが出たらそっちに走るかもしれない……


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メモリアルクエストが地獄過ぎる(亜種第三特異点強すぎありえない)

「はぁ……意外と、面倒な敵だったわね」

「エウリュアレさんは最初だけだったじゃない。私はほとんど出てたわ」

「防御スキルを使ってアーツで殴って宝具……防御スキルを使ってアーツで殴って宝具……ふふ……ふふふっ……」

「マスター。マシュさんがおかしくなってます。助けてください」

「……いや、こっちの方が助けてほしいんだけど」

 

 死んでいるかのようにベッドから動かないオオガミ。目と口だけは動いているが、メモリアルクエストを一気に終わらせたので、その反動で疲れて動けなくなっているわけだ。

 それを好機とばかりに顔に落書きしに行くエウリュアレと茶々、アビゲイルの三人。

 ちなみに、今回茶々は一回も出撃していない。

 

「全く、情けないです。どうしてそうなるんですか」

「礼装使いまくったし、最後に至ってはもうめっちゃ時間かかったし……」

「わりといつもの事じゃないですか。そもそも、そんなに急ぐ必要もありませんし」

「まぁいいじゃない。マスターもそれなりにやってたんだし。アナが別段大変だったわけでもないのだし。まぁ……マシュが凄い事になってるけども」

「えぇ。そして、それが一番の問題だったりします」

 

 ひたすらに防御をして、ちまちまと攻撃を与え続ける作業を思い出して死んだ目をして椅子に座っているマシュ。久しぶりの戦いが、まさかひたすらに精神を削る戦いになるとは思っていなかったのだろう。

 その何とも言えない表情に、全員、あまり見ないようにしていた。

 

「ほら、早く起きなさいよ。マシュが精神的に疲れてるんだから、代わりにマスターが頑張る番でしょ」

「えぇ……こっちはさりげなく飛んでくる余波を避けるので精一杯で肉体的疲労が凄いんですけど……そもそも、なんでここで倒れているかを考えてほしい」

「茶々は見てないし。だからほら、気にもしないし! よって、起きてくれるって信じてるからね、マスター!!」

「無茶ぶりを……!!」

 

 オオガミを無理矢理起こそうとする茶々に、アビゲイルが協力し、エウリュアレは止めようと一瞬動いたが、すぐに諦めて見守る事にしていた。

 

「とりあえず、マシュは置いておくとしても、ダメージトライアルはどうするの? やるの?」

「あ~……よく分かんないから、今日は放置で。なんというか、今日は疲れた。明日やる」

「そう。じゃあ、保留なわけね。マシュは、このままここで寝るの? それなら、私は向こうで寝させてもらうけど」

「へ……えぇっ!? あ、いえ、それは遠慮します! 向こうで寝ますので!! では、これで!!」

 

 そう言って、慌てたようにマシュはオオガミの部屋を出て行く。

 エウリュアレはそれを見送ると、今から更に落書きされつつあるオオガミを見守るのだった。




 亜種第三特異点が強すぎて、なんで昔の自分はこいつらを倒せたのかと自問自答するレベルでした。令呪切りました。

 あ、特異点Fはマシュ・マーリン・玉藻という脳死で二ゲージ削って、玉藻が尊い犠牲となり、悲しみに暮れたままダブルマーリンマシュによって150ターンかけて倒しました。あんなの相性ゲーもクソも無いです(発狂


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嬉しいけど、違うんです!!(大体想像できてた範疇ね)

「チックショウ!! 個人的には外れだけど、戦略的に言えば当たりという、何とも言えない悔しい状況っ!!」

「荒れてるわね……いえ、無理もないと思うけど」

「いやぁ、むしろ来た瞬間にこんな状況になってるってのも、荒れたくなるような状況なんだがなぁ……」

「マスターは、その、いつもこんな感じなのよ。あまり気にしないでね、北斎さん」

 

 トレーニングルームでアンリに八つ当たりしているオオガミを見て、エウリュアレが呆れたような表情をしている。

 そして、その後ろで状況がいまいち掴めていない北斎と、アビゲイル。

 

「それで、今回は北斎が来て、荒れてるのね。というか、宝具レベルが2っていうの、どうなってるのかしら」

「こっちだってそれは思ったけども! でも、来たんだし、是非もないよね!」

「嬉しさを上回る悔しさがあるのはわかったから、とりあえず攻撃を止めねぇか? なんで魔術は素人の癖に、こんなに物理攻撃だけこんなに威力あんだよ……」

「スパルタ式! レオニダスブートキャンプのせいだね、諦めて!」

「身体強化を含めて殴ってますから、普通に危ないですよ、その人」

「なんだそれ……魔術素人ってなんだっけ。絶対嘘だろ」

「生死の境をさまようような戦いを二年近くやってたら、自然とそうなるわよ。というか、私たちの攻撃を避けるレベルよ? 割とシャレにならないわ」

「……もう八つ当たりを受けるの止めるわ。死ぬぞコレ」

「アンリだからきっと大丈夫よ。何とかなるわ」

「その無駄な信頼要らねぇし、分かっててその役目を渡したエウリュアレとアビゲイルは後でささやかな報復をしてやる」

「あら、矛先をこっちに向けるのね?」

「負けないわよ?」

 

 恨みがましい視線を向けるアンリは、微笑み返してくるエウリュアレと、謎のやる気を出しているアビゲイルの二人の反応を見て、半泣きになりながらオオガミの攻撃を避け続けていた。

 それを見ていた北斎は、

 

「あ~……なんだか、あたいは邪魔な気がしてきたねぇ……」

「割と、いつもの事よ。いずれ慣れるわ。それより、シャドウ・ボーダーの中を案内しようかと思うのだけど、どうかしら」

「お、そりゃ本当かい? なら、お願いしようかね。御礼はあんたの肖像画とかどうだい?」

「あら。それは楽しみね」

「あ、ズルい! 私も行くわ! フォーリナーの先輩として、色々教えるの!」

「おぅおぅ、そりゃ楽しみだね。んじゃああたいの作業部屋が出来たら、色々と描いてあげるさ。楽しみにしときな!」

「本当!? とっても楽しみだわ! じゃあ早く行きましょ!」

 

 そう言って、北斎と案内をしようとしていたアナスタシアの手を引いて、部屋の外へと出るのだった。




 北斎とサリエリの二枚抜きは嬉しいけど、違う、そうじゃない!!

 まぁ、メルトは復刻しますし! 全然! 泣いてませんし! も、問題ないですしぃ!?(吐血


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帰ってきてやったぞ雑種ぅ!!(後ろの人が今回の本命なのに、自己主張が激しい王様だぁ!!)

「ふはははははは!!! (オレ)が帰って来たぞ雑種! 良くもまぁ現界と同時に帰還させてくれたものよ! 今回も即座に帰還させるなどとほざいたらどうなるか、分かっているだろうなぁ!!」

「ふっ、そう騒ぐな、汎人類史の英霊よ。そなたの怒り、分からぬわけではないがあまり騒ぐのは些か余裕が無く見えるぞ?」

 

 召喚され、即座に一触即発の空気になる召喚室。

 なお、さりげなく三度目の召喚がされたランスロットは、部屋の隅に転がされていた。

 

「あ、アナスタシア~!! スカディさんを持って行って~!! 出ないとギル様が荒ぶる!!」

「あら、私なの? アビゲイルさん達の方が良い気がするけれど」

「そっちはギル様を対応させるから!」

「ほぅ? 我を抑えつけるだと? ふはは!! やってみるが良い!!」

 

 アナスタシアがスカディを連れて部屋を出て行くと同時に、アビゲイルによって強制的にトレーニングルームに送り込まれるオオガミとギルガメッシュ。

 そこにはすでにエウリュアレとマシュが構えていた。

 

「フッ、我を楽しませろよ、雑種!!」

「マジ無理もう逃げたい……!!」

「巻き込まれたこっちの身にもなってほしいのだけど」

「……アビゲイルさんがいないのですが、もしかしてスカディさんの方に行きました……?」

「逃げられた!?」

 

 転移門を開いてから全く来る気配のないアビゲイルに、オオガミは頬を引きつらせるのだった。

 

 

 * * *

 

 

 マシュの想像通り、何事も無かったかのようにアナスタシアとスカディの前を歩いて案内をしているアビゲイルがいた。

 

「ねぇアビゲイル? マスターの手助けに行かなくてもいいのかしら」

「大丈夫よ。マスターは負けないわ。勝ちもしないと思うけど」

「ふふっ。中々あやつを買っているのだな」

「もちろんよ! スカディさんも、ゲッテンデメルングで見たでしょう?」

「……あぁ、そうだな。ただ、バイクとやらで引かれたことは忘れんぞ?」

「あ、あはは……でも、スカディさんもクリティカルで一瞬でこっちの体力を一気に削ってたし……仕方なかったのよ」

「ふふっ。そんなに困らせるつもりはなかったのだが、意外と反応が良い。良いぞ」

「……ほ、褒められたのよね……?」

「たぶん、そうよ。私も分からないけど」

「ふふっ。愛い奴め」

 

 ふにふにとアビゲイルの頬をつまむスカディに、何とも言えない表情のアビゲイル。

 アナスタシアはその様子を見て、どうしたものかと思っていた。

 

「さて、次は……そうさな。どこか、私の部屋として使える場所は無いだろうか」

「個人部屋は無いのだけど、アナスタシアさんと茶々さんと一緒でもいいのなら、そこで!」

「ふむ。やはり車体が狭いと何かと問題があるな。まぁ良い、面白そうだ。そこへ案内してくれるか?」

「えぇ、もちろん!」

 

 そう言って、アビゲイルはスカディの手を引いて走っていくのだった。




 これでキャスター四天王のうち三人が我が家に……問題があるとしたら、主に石が無いせいでスキルレベルが上がらないことですかね……!!

 キャラも増えて来て、そろそろ昔の様に扱いきれなくなってきた頃……そもそも誰がいるのかが分からないというのが最大の問題。誰がこんな縛りしたの。

 あ、上姉さま強化来ましたね!! みんな、強化解除をするんだ! え、アビゲイルで十分? 天草が全部吹っ飛ばす? ルルブレがあるじゃないか? そこは突っ込んじゃいけない所だと思うんですがっ!


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コマンドコード実装……ねぇ?(果たしてこれからどれだけ種類が増えるか)

「コマンドコード……ね。扱い辛そうだけど……まぁ、面白そうではあるわね」

「まぁねぇ……でも、よくわかんない鍵を手に入れないと運用できないし、解除用のアイテムも必要みたいだから、まぁ、明らかに扱い辛いよね」

「鍵の入手法も、購入っぽいしね。でも、たぶんコレ、イベントで手に入れる事になるわよね。また回収素材が増えるわ」

 

 オオガミとエウリュアレは、二人でコード・オープナーを見ながら、そんなことを話す。

 

「確かに、これはイベント入手だよねぇ……フォウ君と同じ枠かなぁ……」

「でもまぁ、そうなると、いつも通りあまりそうよねぇ……」

「まぁ、しばらくは枯渇してると思うけどね。そもそも、手に入るかは確定してないし。とりあえず今は保管しておくかな」

「そうね。それが一番じゃないかしら」

 

 そう言って、コード・オープナーをオオガミに渡すエウリュアレ。

 渡されたオオガミがそれをポケットにしまうと、エウリュアレはオオガミの膝の上に乗る。

 

「それにしても、まだ種類が少ないわよね。星3は今一枚しかないし」

「基本星1と2だよね。しかも、効果はやっぱり微妙なの。でも、そのうちNP獲得とか出てきそうだよね。それでただでさえも回転数がヤバいのが、更に高速回転するようになったり」

「あぁ。あり得るわね、それ。それで私の宝具も高速回転できるようになったら完璧ね。そしたら、本当に男なら逆らえなくなるわ」

「まぁ、そうだったら本当にそうなるね。ゴルゴーン三姉妹に逆らえる男性無しってね。まぁ、システム的には単体ならって感じだけども」

「あまりそれ以上言わない方が良いわ。それに、(ステンノ)は強化解除が搭載されたし、無敵や回避は無力になるわね。ふふっ。対単体男性お手玉状態ね」

「まぁ、負ける気はしないよね。というか、強化解除を持っているサーヴァントが多くなってきてるよね……」

 

 現状のカルデアを思い、それなりに強化解除や、無敵貫通を持っているサーヴァントの多さに何とも言えない表情をするのだった。

 

「……ねぇマスター。そろそろお腹が空いたのだけど、どうしましょうか」

「そうだねぇ……とりあえず、食堂に行って何か作る? もしくは、エミヤに作ってもらうか」

「う~ん……そうね。とりあえず、行ってから考えましょう。中身を見ないと、何が出来るかもわからないわ」

「あ~……なるほど。じゃあ、行こうか」

「えぇ。そうしましょう」

 

 エウリュアレは膝から降りて、オオガミの手を引いて急かすのだった。




 NP獲得が出たら、どうあがいても荒れる……カレスコ級ですよねぇ……パスターでNPが獲得できるようになったら、うん。ちょっとバランス崩壊しそうな気配しますよね。


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茶々の部屋、めっちゃ寒いんだけど!!(まぁ、是非も無い事情だしね)

「ま、マスター! 茶々の部屋、異様に寒いんだけどー!!」

 

 そう言って、オオガミの部屋に飛び込んでくる茶々。

 それに対し、意外と遅かったなと思いつつ膝の上に乗っているエウリュアレを隣に座らせるオオガミ。

 

「そりゃ、そうでしょ。異聞帯の、それも寒い地域のサーヴァントを全員その部屋に入れてるし」

「酷いよね! なんで茶々だけそんな寒い部屋に入れられてるのさ!」

「だって、茶々がいると暑いし……少しは冷えるかなって」

「冷えないよ! いや、もし冷えたとしても、それはたぶん冷たくなってるよ!」

「それはわりと大変だ。暖房が無くなってしまう……」

「悪意フルスロットルだよこのマスター! というか、平常時ならそれほど熱くもないと思うんだけど!」

 

 襟を掴まれ前後に揺さぶられるオオガミ。

 意識が飛びそうになるが、流石人理焼却を救っただけはある人類最後のマスター。この程度では意識は飛ばさないが、吐き気は凄い勢いでこみあげてくる。

 

「だって、たまに燃えるじゃん……」

「それはほら、是非もないことだし! 茶々にもちょっとどうしようもできないし!」

「まぁ、涼しくなるかと思っただけなんだけどね。寒いならアビーのところ行けば良いんじゃない? 今なら肖像画描いてくれたりすると思うけど」

「なんで!? あ、あの葛飾北斎っての!? あの、スカディと一緒で来た当日に一気にレベルMAXにされたあの!?」

「凄い何か言いたげな感じだけど、まぁそうだよ。否定はしない。事実だし。それで、行くの?」

「まぁ、そうだね! 行ってくる!!」

 

 そう言うと、茶々は部屋を出て行くのだった。

 それを見送ったオオガミは、

 

「……バーサーカーなのにあそこに突撃するのは、流石だよね」

「分かってて送り込むマスターも、かなり酷いと思うのだけど」

「いや……茶々なら混ざっても大丈夫かなって思って。ダメなら……どうしようか」

「どうしようかしらねぇ……王様の所にでも送り込みましょうか」

「ん~……まぁ、術王様なら大丈夫だと思うんだけど……」

 

 そう考えるが、大丈夫かどうかは茶々次第だろう。

 そもそも、茶々が無事に帰って来れたらの話だが。

 

「まぁ、それもダメだったらしばらくゲームでもしてから何事も無かったかのように部屋に戻そう」

「問題の先送りね……それ、バレたらぶっ飛ばされるんじゃ……」

「その時はアビーを呼び出そう」

「そこは諦めてそのまま受けなさいよ」

「流石に直撃したら死ぬんだけど……」

「まぁ、是非も無いわ」

 

 エウリュアレはそう言って、何事も無かったかのようにオオガミの膝の上に戻るのだった。




 極寒の茶々の部屋。占領され、奪われた悲しき茶々の運命やいかに!


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なんで遊んでるのこのカルデアは(今日も今日とて一狩り行くぞーっ!)

「ま、マジ無理あの竜巻!! 長くない!? 長くない!?」

「雷もあり得ない! どうやって避けんだよアレ!!」

「根本的に、相手の行動パターンを見切る前に突撃してるんだし、最初の一回くらい仕方ないと思うのだけど」

「ふ、ふふふ……まだ……まだ負けないわ……!!」

「が、ガードが難しいんですが……そもそも勝てるんですかコレ……!!」

 

 容赦のないメテオがオオガミ達を襲い、気付くと全滅していた。

 

「ま、マジ無理……しばらく休憩しよ……」

「正直あと何回かやれば勝てると思うんだけど、茶々的に伯母上とBB来てほしい……」

「あそこの二人は全力過ぎるじゃない……どっちが先にソロ攻略するかを競ってそうなレベルだけど……」

「それはそれで見てみたいですね……どうやって倒すんでしょ……」

「……というか、アビーが一人だけ無言のソロリトライしてるんだけど、実は一番成長速度が早いのって、ここに理由があるの……?」

 

 即座にアイテムを再補充して突撃しているアビゲイルに、茶々は戦慄しているような視線で、マシュは何とも言えない表情で。オオガミとエウリュアレは相手の行動分析のために画面の方を見ていた。

 

「……お菓子取って来よ」

「あ、私も行きます。食べたいお菓子がありましたし」

「行ってらっしゃ~い」

「私たちは待ってるわ」

「うん。いくつか持ってくるね」

 

 そう言って部屋を出て行く茶々とマシュ。

 オオガミとエウリュアレは手を振って送り出し、改めて画面に目を向ける。

 

「でも、割と大きな動きが多いわよね」

「そうだね……大きく動くから、冷静になれば結構避けられると思うんだけど、やってる最中にはすぐ判断できないし、避けられたら幸運だったなって思ってたりするレベルだよ」

「普通に狙って避けてるように見えたけど……まぁ、貴方がそう言うならそうなんでしょ。っていうか、アビーも普通にうまいのだけど」

「まぁ、さり気にここで一番遊んでるのはアビーだし……なんか、俺が寝てる時もやってるっぽいし……」

「あぁ……うん、確かにそうね。寝てると時々ゲームが起動する音がするもの。でも、起きると消されてるのよね……何時終わってるのかしら……」

「さぁ……? 少なくとも、起きた時には終わってるから、あんまやってないんじゃ……?」

「でも、成長速度は凄いのよね……不思議ね」

 

 首を傾げる二人。果たしてアビゲイルは一日何時間プレイなのか。本人を前にして考えるが、あくまでも本人には確認しようとしない不思議な二人。

 

「まぁ、気にしないで置こうかしら。そもそも、サーヴァントは寝る必要は基本ないし」

「それはそうだけども、こう、ビジュアル的にどうなのよ。って思うんだけど……」

「それを言ったら、今の貴方の状況もどうかと思うけどね……?」

「……サボってるわけではないから、セーフ」

「……そう言う意味ではないのだけどね」

 

 そう言ってエウリュアレはオオガミに寄りかかるのだが、オオガミはエウリュアレの言っている意味はよく分かっておらず、やはり一人首を傾げて考えるのだった。




 ベヒさんマジヤバいっす。ソロでボコボコにやられて心折れて、友人一人連れて二人クリアするのにリトライ3回。4回目でめでたくクリアし、まさかのそれがマルチ100回という奇跡感。
 そして終わってから感じる武器防具の為にもう何回か行かないといけない地獄。レッツゴーソロハント。あんなのVC無しでクリアできるかってんです(吐血

 ちなみに、二人の話を聞かされているアビーの操作は必然的に荒いものへと変わっていく……摂理ですね(キリッ


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さよなら茶々……君の事は忘れない(茶々死んでないし!)

「――……ふふっ」

 

 そう言って、真っ赤に染まった手のひらを向けてくるアビゲイルに、オオガミは茶々を盾にして逃げ出した――――。

 

 

 * * *

 

 

 木々の間をすり抜けるように走って逃げる。

 後ろからは木々が倒れるような音が響いてきて、それがだんだんと近付いてくる気配に冷や汗が流れる。

 おそらく、茶々は既にやられたのだろう。後誰が残っているのか。それを考えつつ、しかし速度は一切緩めない。

 

「はぁっ、はぁっ……あ、明らかに狙われてるよね、これ……!」

 

 迷いなく近付いてくる音は、確実にオオガミを狙っていると確信できる。

 果たして何を元に追ってきているのかを考え、足跡だと判断したオオガミは、近くの木に登り、右側へと逃げていく。

 

「これで様子見……でも、これでもまだ追ってきたらどうするか……」

 

 そう言いながら、ダミー人形を作る。

 音を確認してみると、音は止まっている。つまり、動いていないか、木を倒していくのを不毛と捉えたかの2択。

 それを確認すると同時に完成したダミー人形を遠くへ投げ、撹乱する。

 

「さて、早々に茶々を生け贄にして逃げたは良いけど、敵がアビーなのは相性が悪いよね……」

 

 逃げ切れる可能性はかなり低い。当然、武装も魔術礼装のみであり、それ以外は自力で現地調達するしかないわけだ。

 

「……後、五分」

 

 そう、息を整えるために立ち止まってから呟くと、目の前に赤く塗れた手が出現し、

 

「見つけたわ」

「っ!!」

 

 反射的に後ろに下がるが、ここは木の上。後ろに足場などあるわけも無く、自然と落ちる事になる。

 だが、仮にも人理を救ったマスター。必死に手を動かし、何とか木を掴み、速度を減衰させながら落ちて行き、受け身を取って軽傷で済ますと、そのまま逃げ始める。

 普段なら気にもしないほど短い時間ではあるが、この状況においてはかなり危ない。

 なので、限界まで近付かれたらガンドで防ごうと考え――――

 

「えいっ」

「グフッ!」

 

 横から飛び出してきた誰かに止められ、それを引き剥がす時間も無く、アビゲイルに捕らえられるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「だぁ~~!!! 捕まったぁ~~!!」

 

 アビーの手形の形で顔を赤く塗られたオオガミ。

 それを見て、楽しそうに微笑むエウリュアレと呆れたように見下ろすアビゲイル。

 

「ふふっ。やっぱりそう動くとは思ったのよ」

「エウリュアレまでは意識を割いてなかった……チクショウ、アビーだけ考えてれば行けると思ったんだけどなぁ……」

「エウリュアレさんも鬼なのに、気にしないなんてどうかと思うのだけど」

「開幕茶々を犠牲にして逃げるのはちょっと予想外だったけどね。ふふっ。今の貴方と同じように顔を赤くされて怒ってるわよ?」

「流石に言い訳できないって……うん、後で謝っておこう……」

「えぇ、そうした方が良いわ」

 

 エウリュアレはそう言って、オオガミを助け起こす。

 

「さて、鬼ごっこ終了。一つ気になったのは、どうしてアビーが始まった時に不穏な笑い方をしていたのか。これが分からない……」

「雰囲気的なモノがあるでしょ。あの方が雰囲気あるって思ったの」

「そうね。あの方が雰囲気あったわ。というか、それで茶々を置き去りにしてるんだから、効果はあったでしょ?」

「まぁ、うん。確かに効果はあった。良く思いつくよ、本当に」

「この鬼ごっこも、良く思いついたと思うわ。というか、この赤い液体、本当にどこで手に入れたの?」

「……ノーコメントで。よし、帰ろうか」

「え、本当に何? なんでそこでスルーするの? ちょ、洗えば落ちるわよね!?」

 

 エウリュアレが聞くも、オオガミは無視して歩いて行くのだった。




 気付くと鬼ごっこしてた……何を言ってるかわからないと思いますけど、書いてる私も分からない……


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褒める殺害法(恥ずか死させる褒め方って何なのかしら……)

「スカディさん……いや、スカサハ様マジヤベェ!! 強くね!?」

「まぁ、私には無関係なんだけど……」

「むしろこの場に関係あるのいなくない? クイック宝具いないよ?」

「……高笑いするアヴェンジャーさんを呼ぶしかないか……」

 

 スキルが中途半端ではあるが、某高笑いするアヴェンジャーさんが荒ぶっていたので、やはりスカディは流石だと思うオオガミ。

 

「ふふ、当然だ。何せ私だからな。もっと褒めるが良いぞ」

「さっすがですスカサハ様! マジ最高! 最強じゃないですか!」

「ぐぅ……クイックさん羨ましい……バスターとかアーツとかは無いのかしら……!」

「いえ、マーリンと玉藻がいるから、戦闘時に限っては何の問題もないわよ?」

「それはそれ、これはこれよ! あの凄いパワーがずるいなって思うだけだもの!」

「そう……まぁ、分からなくはないけれども」

 

 事実、このカルデアには三強キャスターが揃っているので、後はNP軍師さえいれば完成するレベルだったりする。

 

「でも、スカディの絆レベルが凄い勢いで上がっていくから、何となくチョロイン枠な気がして……」

「私も不安なんだけど……まぁ、あんまり気にしなくていいはずよ。大丈夫大丈夫」

 

 そう言って、アビゲイルは震える手でお茶を飲んでいた。

 エウリュアレも、それを見て苦笑いをする。

 

「それで、いつまで褒め倒してるのよ」

「うぇ? あ、いや、別に深い意味も無くただ褒めたいから褒め続けるという対象は特に限定しない行動なので今からエウリュアレやアビーに矛先を向けてもいいんだよ?」

「じゃあ私で!! だってどう見てもスカディさん恥ずか死してるもの!!」

 

 アビゲイルの言うように、恥ずかしさで耳まで赤くして蹲ってしまっているスカディを見て、オオガミは特に疑問にも思わず。エウリュアレは若干距離を取ってアビゲイルを生け贄にするように後ろに隠れる。

 そして始まる褒め殺し。聞いていてダメージが入る様なのが多いので、エウリュアレはむしろオオガミの死角に入る。

 そんな時に、部屋に入ってくるマシュ。アビゲイルが顔を赤くしながらオオガミの言葉に顔を覆いたくなっている状況を見て、マシュは困惑する。

 

「あの、先輩は何をしているんでしょう……」

「スカディが褒めて良いって言ったから調子に乗って褒め殺して本当に殺したからそのままアビーに矛先が向いて惨劇が起こってる感じ。マシュも受けてきたら?」

「……じゃ、じゃあ、ちょっと行ってきます」

「……本当に行くの……?」

 

 突撃するマシュに困惑するエウリュアレ。

 そして、マシュと交代したアビゲイルは轟沈し、スカディの隣で倒れるのだった。




 最近、何がしたかったのか分からないのをひたすら書いてる気がする……そして安定の、なんで褒め殺してんだろうコイツ……


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意外と暇なのよね(ふむ、じゃあどうしようか)

「……何をしようかしらね」

「……また本を貸そうか?」

 

 ベッドで横になっているエウリュアレは、近くの椅子に座っているオオガミの左袖を引っ張りつつ言うエウリュアレに、困ったように笑いながらそばに置いていた本を差し出す。

 

「まぁ、それでもいいけど……いえ、何でもないわ。ところで、オーロラ鋼は集まったの?」

「うっ……それを言われると頭が痛いんだけど……まぁ、今日は酷く運が悪いので、明日に持ち越そうと思ってですね。なんで、休憩中です」

「ふぅん? まぁ、のんびり頑張りなさい。もしかしたらイベントで来るかもしれないしね?」

 

 オオガミに渡された本を読みつつ、エウリュアレは言う。

 それに対してオオガミは考えつつ、

 

「それは、確かに……でも、う~ん……まぁ、そもそも術の秘石ないし、仕方ないか……」

「……根本的にそれが足りないのになんでオーロラ鋼を集めているのかしら……まだQP集めてたら……?」

「う~ん……術の秘石を集め終わったら一気に上げられるようにしておきたいんだよね……」

「尚更QPが必要なんじゃない……? どうせイベントが始まったらそっちに集中してやらなくなるんだから」

「うぐぅ……何も言えない……」

 

 自覚があるので、言い返せないオオガミ。

 エウリュアレはその反応に苦笑いしつつ、

 

「まぁ、頑張ってね。私はここで寝ているから」

「……なんというか、駄女神になりそうな勢いだよね」

「ちょっと、どういう意味よそれ」

「いえ、別に……なんというか、このままだと食べて寝て遊んでるだけな感じ凄いよね……」

「それは貴方が私を放置するからじゃない? やることが無いなら、これしかすることが無いもの」

「なるほどねぇ……」

 

 そう呟いて、どうしたものかと考えるオオガミ。

 エウリュアレはぼんやりと本を読みつつ、

 

「正直、何か遊べるものでもあればいいと思うんだけどね」

「う~ん……ちょっと、王様に聞いてみるかなぁ……」

「何をしに行くのよ……」

「今はわりと機嫌良いと思うし、誘えば遊べるかなって。まぁ、怒られたら諦めよう」

「一体何で遊ぶ気かしら……」

 

 本から目を話してジト目でオオガミを見るエウリュアレ。

 オオガミはその視線から目を逸らしつつ、

 

「とりあえず、王様は色々と持ってそうだから、何か面白そうなのがないか聞きに行こうかなって」

「明らかに殺されるルートじゃない……無謀も良いところでしょ」

「まぁ、運が良ければ殺されないよ。大丈夫大丈夫。じゃ、行ってくる」

「ちょっと不安だから私もついていくわ」

 

 そう言って、術ギルに突撃しにいくオオガミをエウリュアレが追いかけるのだった。




 術ギルならわりと温厚なイメージ……実際どうなんだろ……


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邪ンヌハイ・ファイ・セットですってよ!(今年はジャンヌ祭かしらね?)

「ジャンヌぅ~!」

「何気におっきい方が来たこと無いのよね。おまけでなサンタの方を再召喚する?」

「……それは、どうなんだろうか……」

 

 エウリュアレの提案に考えるオオガミ。

 調子に乗って再召喚するのはありなのだろうかと考えるが、帰って来たバニヤンの事を考えると悩ましいものだった。

 

「……そういえば、バニヤンは?」

「あぁ、バニヤンならCEOに預けてるよ。キャットもいるし、大丈夫だと思うけど」

「そう。それなら良いわ。後、メドゥーサはどうしてるの? 最近見ない気がするけど」

「最近は厨房にいるよ? オカンとキャットの二人に料理教わってる」

「ふぅん? そんなことやってるの……ちょっとちょっかいかけてこようかしら」

「邪魔にならないようにね?」

「もちろんよ。ちゃんとつまみ食いしてくるわ」

「だからそれを止めろって言って……あぁ、うん。聞いてないよね」

 

 走り去ったエウリュアレに、オオガミはため息を吐く。

 追って行ってもなぜか一緒に怒られるのが目に見えているので、見なかったことにしておくのだった。

 

「さて……そろそろ突撃してくるのがいるかな……」

「突撃ぃ~!!」

「わ~~い!!」

「本当に容赦なく突撃していくんだな……」

 

 オオガミの読み通り、突撃してきたアビゲイルとバニヤン。エルバサもついて来てはいるが、止める様子は無かった。

 

「珍しくエウエウがいない! ならばマスターに突撃ぃ~!!」

「倒れるぞぉ~!!」

「ゴフゥッ……回避不可能な状況で突撃してくるとは、やるじゃないかアビー……」

「ふふん! バニヤンとの連携プレイで攻めた甲斐があったわ!」

「えへへ~。初めてマスターのお膝に乗ったかも~」

「ぬわあぁぁ!! 私も乗りたいんだけどぉ!!」

「だめ~。先に座ったもの勝ちだもん。エウリュアレが言ってた」

「あの人は何を教えてるの……!?」

「また変なことしてるねぇ……」

「お前もあまり人の事は言えんがな」

「……エルバサさんは厳しいです……昨日も王様に叱られたばっかりなんだけどなぁ……」

 

 オオガミの膝を取り合って取っ組み合いをしている二人を見ながら、エルバサの指摘に苦笑いをするオオガミ。

 昨日術ギルの元へ突撃して「仕事をしろ」と怒られたのが聞いているようだった。

 

「というか、なんで部屋に突撃しに来たのさ」

「ん? あぁ、アビゲイルが提案してな。バニヤンも一緒に向かったから仕方なくだ。特に深い理由はないだろうさ」

「そ、そう……まぁ、来るのは構わないんだけどね。保護者同伴は珍しいのでつい」

「誰が保護者だ。どちらかと言うと、お前の方が保護者だろう」

「あぁ、うん。そうなんだけどさ……こう、雰囲気的なものだよ」

「……そういうものか」

 

 エルバサはそう言って、一人頷くのだった。




 エルバサさんの保護者感……どこから来たんだろう……


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明後日に開放かぁ……(待っている間にQP周回だよね)

「……明後日かぁ……」

「明後日ねぇ……」

「むぅ~……明後日にならないとお外に出れないのね!」

「マスターご飯~」

「……人も、増えて来たねぇ……」

 

 右腕をエウリュアレに、左腕をアビゲイルに、そして肩車の様にバニヤンに乗られつつも本を読むのを止めようとはしないオオガミ。

 明後日の水着に備えてオーロラ鋼集めをQP周回に変更して稼いでいた。

 

「とりあえず、QPはある程度貯まったけど、足りるかなぁ……」

「まぁ、何とかなるんじゃないかしら。問題は種火が足りないと思うわ」

「後は、素材に新素材を使わなければ完璧ね」

「そうだったら致命傷だなぁ……うん。とりあえず、バニヤンの要望に応えてご飯にしよう。今日はパスタで行こうか」

 

 オオガミが起き上がろうとするが、降りるつもりは一切ないバニヤンと両腕にくっついて離れそうにない二人に頬を引きつらせる。

 だが、何とか起きて厨房へと向かう。

 

「……邪魔じゃないの?」

「邪魔な自覚があるなら退いてくれるとありがたいんだけどね?」

「それでも私は退かないわ」

「もちろん私もね?」

「両腕の女神が邪魔過ぎる……」

 

 そんなことを言っていると、その両腕の女神が徐々に力を入れてきているので、腕がゆっくりと悲鳴を上げていく。

 涙が出そうになってきたオオガミは、しかし反撃する事も無くなされるがままにしている。

 

「そ、それで、何か要望はある?」

「あ。マスターの国のナポリタンっていうの食べてみたい!」

「トマトバジルパスタ」

「カルボナーラが良いわ!」

「見事にバラバラ。でもこなしてやろうと思うのが私です。やったろうじゃねぇか」

「頑張ってマスター!」

「期待してるわ」

「楽しみに待ってるわね!」

 

 三人が三人とも違うものを頼んでくるが、オオガミはやり切るつもりだった。

 そんなこんなで厨房に着くと、中から何か聞こえる。

 気になって入ってみると、

 

「どうしてそれをくれぬのだ!」

「夕飯前だ、我慢してくれ。その後ならいいんだが」

「そうだワン。それでキャットの料理を残したらみじん切りにしてスープに混ぜるぞ」

「君のそれはやり過ぎだがな……まぁ、夕飯を食べたらデザートを特別に用意しようか」

「む。それは確かだな? なら良い。待たせてもらう」

 

 どうやらスカディとエミヤ、キャットの三人がアイスを巡って言い争っていたらしい。

 そんな中にオオガミは入って行くが、なぜかこちらに気付いたスカディからの視線が痛かった。

 オオガミが厨房に目を向けた瞬間にその場から離れるエウリュアレ達。

 

「えっと……厨房借りて良い?」

「あぁ、良いぞ。何を使う?」

「キャットは見抜いたぞ。さてはご主人、その三人の料理を作るのだな? そうはさせんぞご主人! ご主人の料理はこのキャットが作る!」

「あぁ、じゃあ、俺の分はキャットで、それ以外は俺が作るって事で。それなら問題ないでしょ?」

「むむむ。よろしい。それで手を打とう。請け負ったぞご主人」

「よろしくキャット。じゃあエミヤ。いくつか欲しいんだけど、あるかな」

 

 そう言ってオオガミが厨房に向かったところで、スカディの近くを陣取るエウリュアレ達。

 そして、ぼんやりとオオガミ達を眺めるのだった。




 実はオオガミ君は幼稚園の先生と言う気分で書いてたり……それがなぜかハーレム野郎に見える不思議(迫真


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迫り来る水着イベント(ついに明日開戦!)

「明日……ね」

「決戦の時は近付いている……石の貯蔵はある程度はある。呼符も17枚までならある……ならば後は開戦を待つだけよ……」

「スッゴい近年稀に見るマスターの本気顔なのだけど、水着イベントってそこまで本気になるものだったかしら……」

 

 真剣な顔で石と呼符を確認するオオガミを不思議そうな顔で眺めるアビゲイル。

 エウリュアレはそんなオオガミに目もくれず、借りた本を読んでいた。

 

「……ねぇエウリュアレさん。それ、面白い?」

「えぇ、意外と面白いわよ。読む?」

「読みたいけど……でも、今持ってるのは一冊だけでしょ? 読み終わったらで良いわ」

「あぁ、いえ。これ、一応読み終わっているのよ。読み返してただけ。だから良いわよ」

「そう? じゃあ、読ませてもらうわ」

 

 そう言って、エウリュアレから本を渡されたアビゲイルは、椅子に座って読み始める。

 それと入れ替わるように、オオガミの背後へ近づいたエウリュアレは、

 

「ねぇ、背中に文字を書いて当てる問題、あったじゃない。あれ、やってみない?」

「……まぁ、良いよ。エウリュアレからやる?」

「そうさせてもらうわ」

 

 そう言うと、エウリュアレはオオガミの背中に指を乗せ、まずは横に一本線を引く。そして、先程の横線の中央より少し高いところから垂直に下ろし、交わって少し進んだところで左側に小さい円を作り若干左下へ向かうように払う。

 続いて上下二本の平行な横線を書き、左斜め上から右斜め下へ向かうように引いた後、ほぼ真横に払う。そして、その左下辺りに緩やかなカーブを描いた短い線を引き、終わる。

 

「どう? 分かったかしら」

「ん~……もう一回。って言いたいけど、止めておこう。じゃあ、こっちの番だね」

「答え合わせ前に出題? まぁ、良いわよ」

 

 不敵の笑みでエウリュアレは背中を差し出す。

 オオガミはその背中に指を当て、まずは真っ直ぐな縦線を一本。そのまま指を離さずに、先程の半分ほどの長さで一本引く。

 次に縦長の円を描く。

 今度は左上から右下へかけての斜め線。そしてそのまま指を離さずに右上へと上がって指を離す。

 最後に横線を引き、その左端から横線の二倍ほどの縦線を引き、その中央から、右に向かって横へ真っ直ぐ引いて、同様に一番下も引く。

 

「……分かった?」

「えぇ……これ、答え辛いわね」

「うん。分かってくれて何よりです。じゃあ、そろそろ厨房に行こうか。マシュに怒られたくないしね」

「えぇ、そうね。アビー、行くわよ」

「ふぇ? あ、ちょ、待って! すぐ行くわ!」

 

 先に出ようとしているオオガミとエウリュアレに置いていかれまいと、アビゲイルは椅子から立ち上がるのだった。




 文字当てヒント。エウリュアレはひらがなで2文字。オオガミは大文字アルファベットで4文字です。
 後、一行につき一文字書かれてます。
 分かった人はもれなく感想欄か私へのメッセージでドヤ顔出来ます。ヤッタネ


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サーヴァント・サマー・フェスティバル!
海だ! ハワイだ! サバフェスだ!?(〆切一週間で本一冊とか無謀の極みだよね!!)


※サバフェスのネタバレあり! 気にしない方、ある程度は進めたという方はどうぞそのままお進みください!









「ハワイだぁ~!!」

「突撃ぃ~!!」

「海へダーイブ!!」

 

 海へ飛び込むオオガミとアビゲイル、バニヤンの三人。

 その後ろでビーチパラソルなどを準備するロビンとアナの二人。

 

「……とても暑いわよね……」

「ガッデムホット。マントを脱いでも誤差よ誤差。地獄みたいな暑さだわ。その薄着が凄い羨ましいのだけど」

「……えぇ、そうね。私も視界に入ってだんだんと暑くなってくるわ」

 

 最初に設置されたビーチパラソルの下で海に飛び込んでいった三人を見ているのは、エウリュアレとアナスタシア。

 一応、オオガミが去年ノッブとBBに言って作ってもらった小型扇風機を使っているが、焼け石に水の状態だ。

 

「貴女の氷で涼しくできないかしら」

「あんまり意味ないと思うわ……後、私が涼しくないのにやりたくない」

「……まぁ、そうよね。仕方ない。私も泳いで来るかしら」

「そのヒラヒラな服で?」

「きっとマスターが何とかしてくれるわよ」

 

 そう言って、アビゲイルとバニヤンに捕まって沈みかけているオオガミに向かって走り出すエウリュアレ。

 アナスタシアはその姿を苦い顔で見送り、受け取った小型扇風機を回す。

 その風はやはり熱風をかき回すだけで、ひたすらに地獄は続いていた。

 直後、背後で倒れる音。振り向くと、出来うる限りの薄着に再臨しているスカディが倒れていた。

 

「あ、あ~つ~い~……これ、もう災害だろう。こんな暑さ、まるでスルトの奴めがいたときの様ではないか……まさか、汎人類史でも暴れているのか……」

「いえ、流石に暴れては無いと思うけど……でも、そうね。北欧神話の炎の巨人が暴れていると言われても納得できるわ。だって、この暑さは流石に異常よ……」

 

 流石にスカディを見殺しにするのはどうかと思ったアナスタシアは、スカディの周囲を囲うように氷を作る。

 

「部屋に戻ってクーラーをかけましょうか……外の海辺に行くのも良いと思ったけど、暑すぎて死にそうね……」

「あぁ、そうだな……この暑さの中活動するなんて、生物としてどうかしている……帰ろう今すぐに。涼しい部屋でしばらく耐えれば、サバフェスとやらが始まる日付になるだろうさ」

「えぇ。それまでにあの暑さを克服する手段を考えないといけないわ……」

 

 そう言って部屋へと帰っていくアナスタシアとスカディ。

 その頃になってようやく荷物の整理も終わったようで、アナとロビンは押し寄せる波を足で受けつつ、空を仰ぐ。

 そして、ロビンは一言呟く。

 

「……なんで、こんなことになっちまったんだろうなぁ……」




 ちなみにジャンヌ引きました。石270個と呼符13枚使ってバラキー来ないんですが不具合ですかね? 泣いていいですかね? とりあえずジャンヌはレベル90にしてやったよチクショウ。

 後、ジャンヌの第二再臨がマキマキにしか見えなかった……


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水着っぽい見た目ならきっと泳げる(観光もしたいよね! とりあえず山からかな!)

※サバフェスのネタバレアリ! ネタバレ気にしない方、お前なんかより圧倒的に先に進んでるんだよ! と言う方はお進みください!












「いやぁ、真夏のハワイってのは暑いねぇ」

「そうねぇ……でも、別段悪くはないわ。むしろいいわね。もっと暴れられるんじゃないかしら」

「あんまし暴れっと、そのうち捕縛されんじゃね? やめとけやめとけ。海辺を泳いで魚捕まえて焼いて食ってるのが平和だって」

 

 ほぼ水着の様な霊衣の新シンさんと、水着なライダーイシュタル。

 そして、シュノーケルとフィン(足ひれ)を装備し、(もり)を手に持ったアンリ。

 遊ぶつもりの二人と、漁師かと見紛う見た目がヤバいのが一人。

 

「……それ、本気で潜るの……?」

「あったりまえよ。一昨年無人島に言ってたとか聞いたからな。オレもちょっとやってみたかったなとか思っちゃうわけだよ。だからまずは形からってな」

「いやぁ、無人島なら素手っしょ。シュノーケルとフィンは無しじゃない?」

「むむむ……つまり、いつものナイフだけか……それはそれでアリだな。よっしゃ。やってみるか」

 

 そう言って装備を外して武装を整えるアンリ。真っ黒なのは日焼けがばれない様になのだろうか。

 

「ふむ……じゃあ、俺も参加するか。面白そうだし」

「お。やるか? じゃあ判定はアンタに任すぜ、女神サマ?」

「ふぅん? なんか面白そうね。丸焼きの魚とかめったに食べられないし、それでいいわ。じゃあここで待ってるわね」

「よし、レッツゴー!」

「負けるつもりはないぜ?」

 

 そう言って、海に飛び込む二人。残されたイシュタルはサングラスをかけて、ビーチパラソルのしたに設置してあるビーチチェアに座ってぼんやりと海を眺めるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「海……良いですね! 私も水着というものを着てみたかったのですが……」

「茶々も水着欲しかったな!! 伯母上だけずるいよね! 本当に、ずるいよね!!」

「……姉様もいませんし、私は帰ってもいいですか……?」

 

 海を前に少し残念そうな顔をする騎士姫と、ノッブへの殺意を隠しもしない茶々。そして、そんな茶々になぜか捕まっているアナ。

 朝食を食べていたら拉致されたのだが、今エウリュアレはオオガミが一生懸命作業をしているのを妨害するのを楽しんでいたので、おそらく海へはしばらく来ないだろう。

 

「よーし、とりあえず観光に行こう!! 実際あんまり観光してないし!!」

「そうですね。サバフェスまで後五日。しばらくは観光できそうです!」

「サバフェスも楽しみだけど、まずは観光だよね! とりあえず山行こう山!! 海行けないし山だよ!!」

「まさかの街中観光じゃなくて山ですか! でも面白そうなので行きます!!」

「あの、私は姉様の所に戻りたいのですが――――」

 

 アナの言葉は当然の如く茶々たちには届かず、引きずられていくのだった。




 正直、ネタバレ要素無いよね(白目
 たまにイベントネタバレの注意喚起要らないんじゃないかと思うんですが……

 終わらない夏休み……ほとんど変わらない話……うっ、頭がっ!


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一人で町に出てみようかしら(姉様の危険を察知!)

※サバフェスのネタバレあり! ご注意ください!











「ふぅん……ラーメン……ね。美味しそうだし、食べに行こうかしら。でも、アナは茶々に連れ去られたのよね……」

 

 そう、手に持った本を閉じて呟くエウリュアレ。

 一人で街中に出るのも良いが、基本財布をアナかオオガミに持たせているので、自分で持つことがほとんど無かったりする。

 

「……カバンも、ついでに買おうかしら」

 

 出来ればショルダーポーチみたいに出来るだけ軽いものが良いなと思いつつ財布を手に持って部屋を出る。

 

 

 * * *

 

 

「……!! 茶々の面白センサーが受信した! 町に戻るよ!」

「えぇ!? すぐにですか!? まだ片付けが終わってない……!」

「……!! 姉様が面倒事に巻き込まれる気配がします。急いで戻らないと……!」

「アナさんもですか!? しかも同じ方向を見てるし……!!」

 

 野宿をして山頂からの朝日を拝んだ茶々たちは、茶々の判断的に目標を達成したらしいので、現在は撤収準備をしていた。

 

「というか、手伝ってくれるとありがたいんですけど!」

「あぁ、すいません。今やりますね」

「じゃ、茶々は先に行って見物に良さそうな場所押さえておくね!」

「誰が行かせますか。貴女も手伝うんです」

 

 逃げようとした茶々の足を鎖で捕らえ引きずり戻す。

 当然足をとられた茶々は盛大に顔面を地面に打ち付け、沈黙する。

 それを見た騎士姫は、

 

「あ、あの、茶々さんが物凄く痛そうな音をたてて倒れたんですが……!」

「大丈夫です。アレくらいで死ぬような人じゃありませんし、血も出てないでしょう」

「いや、流石に茶々でも血は出るよ!?」

 

 ガバリと起き上がり、額から血を流しながら半泣きになっている茶々に若干震える騎士姫。

 アナはそんなことに目もくれず、テキパキと作業をこなしていく。

 

「てか、アナがやるなら茶々要らなくない?」

「それはそれ、これはこれです。というか、自分でやろうと言ったのだから、片付けもやってください」

「むぅ……エウリュアレの時と全然対応違うし……ぐぬぬ。なんかめっちゃ羨ましいんだけど……!」

「姉様と同じ扱いなわけないじゃないですか」

「スッゴい辛辣……!」

 

 アナの対応に若干泣きそうな茶々。

 騎士姫も、茶々に釣られてちょっと泣きそうになっていた。

 

「とりあえず、片付けは終わりましたから、行きますよ。姉様が待ってるんです。急がないと」

「ほとんど一人でやってたじゃん……! やっぱ茶々を捕まえてなくても良かったでしょ!」

「それはそれ、これはこれです。さぁ、早く行きますよ」

 

 そう言って、アナを先頭として、三人は下山するのだった。




 拉麺好き好きアナスタシアさん……ちょっと普通に読んでみたいと思ったんですけど……誰か書いてくれないかな……(チラッチラッ


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魚取りの結果は一体(それはそれとして、イシュタルは料理できるのか)

※サバフェス弱ネタバレあり! ご注意ください!















「いやー……あっついねぇ。こんなの、焼け死ぬよなぁ」

「そりゃお前さん、真っ黒だしな。熱が集まる色彩だし、燃えるでしょ」

「いや、流石に燃えやしねぇけども……まぁ、暑いのは確かだ」

 

 浜辺を歩くアンリと新シン。

 一緒にいたはずのイシュタルは取れた魚を楽しそうに焼いていた。

 ちなみに、魚取りの結果は引き分け。というより、サメと格闘してうやむやになった。

 

「というか、下処理は手伝った方が良かったんじゃねぇの?」

「それもそうなんだけど、イシュタルが自分でやりたいって言ってたし、放っておくのが一番かなってさ。まぁ、何とかなるでしょ」

「……丸焼きなんだけど、なんか嫌な予感がするよなぁ……」

 

 アンリはそんなことを呟きつつ、イシュタルの方へと向かう。

 新シンもアンリに合わせてついて行く。

 

「でも、丸焼きで失敗って、どんなのがある?」

「丸コゲが一番だろ」

「生焼け……もあるか? 生臭いのは流石にねぇ……内臓くらいはちゃんと取り出してくれるとは思うけど」

 

 そんなことを話しながら、アンリと新シンはイシュタルの元へと若干急ぐのだった。

 

 

 * * *

 

 

「茶々登場!」

「姉様は――――」

 

 町まで駆け下りてきた茶々達。

 そんな三人に、ショルダーバッグを買って機嫌が良かったエウリュアレは不思議そうな顔をしながら、

 

「どうしたの? 何かあったのかしら」

「ね、姉様が一人で町に……!? マスターは!?」

「本を作ってるし、流石にちょっと妨害は出来ないでしょ……最初はやってたけど、普通に無いように興味出てきたし……読める本にはなってほしいわ」

「な、なるほど……? では、姉様が一人なので、私はここで」

「面白そうだから茶々もついてく!」

「えぇ……本気でフリーダムだこの人……」

「……リリィも振り回されて大変ね。少しは休めると思うし、一緒に行きましょ」

「は、はい……」

 

 エウリュアレは騎士姫の手を引いて、街巡りを再開する。

 

「それで、姉様は何をしようとしてたんですか?」

「とりあえず財布を入れるバッグは買ったから、食べ歩きでもしようかなって。パンケーキとか気になったしね。皆と合流したから、一人で入らなくで良くなったわ。流石に一人はちょっと寂しいからね」

「なるほど……じゃあ、行きましょう」

「パンケーキ……ハワイのパンケーキは一味違うと聞いた……!! 茶々楽しみだなっ!」

「凄いパンケーキ……ですか。私も気になりますね……一体どんなパンケーキなんでしょうか……」

 

 エウリュアレの提案に、アナはとりあえず向かおうとし、茶々と騎士姫はとても楽しみにして向かうのだった。




 エウリュアレが出ないと死んじゃう病なのか私は……

 というか、初日を除いて登場しないオオガミ君よ……


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気分転換は必要だよ(待って。エウリュアレはどの財布を持っていった……?)

※サバフェスのネタバレあり! ご注意ください!












「エウリュアレ――――は、町に出たんだっけ」

「はい。先輩いじりに飽きたから散策してくると言って先輩のお財布を持って出ていきました」

「はっは~……な~るほどね? 道理でエウリュアレ用の予備財布しか無いと思ったよ」

 

 息抜きに町へ行こうと財布を探したところ、資金のほとんどが入っている方の長財布を持っていかれたことに気付くオオガミ。

 財布を持って行かせる時に、自分で取らせないでちゃんと渡せばよかったと後悔するが既に遅い。

 オオガミは諦めたように大きくため息を吐き、仕方なくエウリュアレ用の財布を持つと、

 

「マシュ、行こうか。邪ンヌも行くよー」

「はい。何時でも行けます、先輩!」

「ちょっと待って。カメラの準備があるから」

「あ、そうだった。中のデータを移動させておかないと……」

「先輩……そういうのはもうちょっと早めにやっておきましょうよ……」

 

 呆れたようにため息を吐くマシュ。

 そして、改めて準備が終わったオオガミと邪ンヌは、

 

「よし、レッツゴー」

「はい。写真を撮りまくります!」

「えぇ。使える写真が撮れると良いのだけど」

 

 そう言って、部屋を出て下へ降りる三人。

 高いところは普通に登り降りがキツいと百重塔で学んだオオガミだが、エレベーターがある幸せを密かに噛み締めていたりする。

 と、エレベーターが動き始めた辺りでふとオオガミが、

 

「でも、エウリュアレが一人で外に出るって珍しいよね……」

「えぇ。基本的に先輩の近くにいるのに、いませんもんね。レアです。滅多にみられませんよ滅多に見られませんよ」

「どれだけ一緒にいるのよ……」

「別にそんなに一緒にいるつもりはないんだけどね?」

「先輩。それ思ってるの、先輩だけです。そろそろ刺されますよ」

「えっ!? なんで!?」

 

 本気で困惑するオオガミ。

 マシュの目が真実だと訴えてくるから尚更だった。

 邪ンヌは何か言おうとし、そのタイミングでエレベーターは下まで降りたので言い出せなかった。

 

「さて。とりあえずビーチかな。でも、山も捨てがたいよね……」

「そうね……ビーチに行って良い被写体がいたら撮って、いなかったら山に行きましょ。まだ時間はあるもの。大丈夫よ」

「はい。じゃあ、行きましょう先輩!」

「おぅ、珍しくマシュがやる気だ。これは頑張らねばならないね」

「はいはい。じゃあ、私は向こうにいくから、あんたたちは向こう側で」

「邪ンヌも一緒じゃなくて良いの?」

「えぇ。気分転換もしたいし、食べ物でも見てこようかなって」

「じゃあ一緒に行こうよ」

「そうですね。ハワイの有名なパンケーキも全然食べてませんし、この際行きましょう。さぁ、早く! 善は急げです!」

「あ~……分かった、分かったわ。行くわよ。あんたも良いわね?」

「問題なし。幸いお金はあるしね。いやぁ、エウリュアレに全額奪われてなくて安心です」

 

 オオガミはそう言って、邪ンヌと一緒にマシュに手を引かれていくのだった。




 エウリュアレがいないという事実。でも名前は出たのでノルマ達成ですね(キリッ


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この輝かしいガチャ結果に怨嗟の声が(でも私は悪くない。あえて言うなら寝ぼけ10連回転は強いという事)

※サバフェスのネタバレアリ! 注意してください!!















「クッハハハハハハ!!! 吾が来たぞ!」

「私たちも来たよ、お母さん!!」

「先輩……? 先輩……どうしてガチャ引いたんですか……」

「俺は悪くない……俺は悪くない……大当たりガチャだったから全く問題無し……!!」

 

 襟を掴まれ前後にガックンガックンと揺らされて徐々に気持ち悪くなってくるオオガミ。

 だが、輝かしいガチャ結果に目を逸らすことなく、ガッツポーズを決める。

 

「うむうむ。中々いい声だ。ところで、吾は何をすればいいのだ?」

「あぁ、うん。実はまだ何も考えてなかったりする。でもバラキーなら誰にも取れない写真を撮れるって信じてるから。頑張ってね! 期待してる! 鬼なら余裕だもんね!!」

「む、ぅ……そこまで言われたらやらぬわけにはいくまい。鬼の名に懸けてな!」

「私たちも手伝うね!」

「任せたッ!」

 

 そろそろ平衡感覚が消滅しかけてるオオガミは、バラキーにカメラを渡して送り出す。

 

「……で、先輩。どこから石が出てきたんですか」

「……聖晶片あったんで……それを全部ふっ飛ばした感じです……えぇ、21個全部……その後8個くらい増えて吐血ものだけども」

「先輩先輩。この戦いが終わったら、簀巻きにしてキアラさんの前に転がしますね?」

「ひっ……マシュの殺意が高い……!! キアラに売るとか、滅多にないはずなのに……!!」

「アンタたち……遊んでないで手伝いなさいよ」

「あ、すいませんオルタさん」

 

 マシュはパッと手を離しオオガミを落とすが、あまり気にせず作業に戻るのだった。

 

「……アンタ、割と酷い目に遭ってるわよね」

「だ、大体いつも通りです……」

 

 ぐったりと倒れているオオガミに、呆れたような顔をする邪ンヌ。

 その後、邪ンヌは一度大きくため息を吐いてから作業に戻るのだった。

 

 

 * * *

 

 

「水着とは良いものだ。存分に泳げるからな。ククク……この前はサメに変化して暴れてたところを叩き潰されたが、今回はそうなるまい」

 

 そう言ってカメラを片手に仁王立ちをするバラキーの付近に、既にジャックの姿は無く、なぜかアビーが目を輝かせて待機していた。

 

「……もしかしなくても、吾、狙われてる?」

「そんなことないわ! 日本の鬼と言うのがとても気になっていて、本当にいるのを今見て感動してるの!!」

「……い、今の吾はバーサーカーではないぞ。だから、決して攻撃してくるでない……」

「そんなことをするつもりはないわ!! でも、一緒について行って良いかしら!!」

「う、うむ……だが、吾も今は役目があるからな。構っていられるわけではないがな。それでも良いなら吾は構わん」

「じゃあそれで!!」

 

 そう言って、バラキーの後ろを嬉々としてついて行くアビゲイル。

 そして、その少し後にたまたまその様子を見たロビンが、何となく写真を撮って置くのだった。




 10連で星3サーヴァント確定って、実は星3以上確定って事だったんですね……星3サーヴァントは確定だと思ってた私……デマじゃなかったんだ……

 あ、はい。バラキー二枚抜きのジャックすり抜けです。発狂して憤死するかと思いました。


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バラキーは悲しき不幸役(なんで吾はいつもこんな目に遭うのか……)

※サバフェスのネタバレアリ! 注意してください!!


「クフフッ……今更ではあるが、ランサーにクラスが変更されたからな。今ならばエウリュアレに止められるはずもない……!!」

「ふぅん? でも、代わりにセイバーには無力よ? バーサーカーの方がまだ有利だったんじゃないかしら」

 

 そう言って、何やら悪だくみをしているバラキーに、いつの間にか背後に這い寄っていたエウリュアレがにやにやと笑いながらバラキーにもたれ掛かる。

 バラキーは突如現れたエウリュアレにちょっと泣きそうになりつつ、

 

「……吾、なんでこう、不幸な目に遭うのだろうか……」

「別に、私は何もしてないでしょ……ただ単に背後から近づいただけじゃない」

「それが問題なのだが……というか、吾、ランサーだぞ? 相性不利であろう?」

「あら、関係ないわ。バラキーはバラキーよ。だって、クラスが変わった程度で私の態度は変わらないわ」

「ぐぬぬ……なんだか負けた気分だ……」

 

 不敵に笑うエウリュアレに、バラキーは苦い顔をする。

 

「それで、何をしに来たんだエウリュアレ」

「いいえ、別に? ただ、バラキーの姿が見えるから近づいただけよ。良ければ一緒に観光でもしようかなって思っただけで。どうかしら?」

「……まぁ、吾は構わん。だが、資金はどうしたものか……吾、自分の分しかないし」

「大丈夫よ、私の分はあるわ。まぁ、マスターから奪ってきたものだけど」

「……(なれ)も十分悪よな……」

 

 バラキーの横でオオガミの財布を持って笑うエウリュアレに、バラキーは頬を引きつらせる。

 と、そこでふとバラキーは気付く。

 

「……ふと思ったのだが、召喚されてから一度もエウリュアレとマスターが一緒にいるのを見た覚えが無いのだが……喧嘩でもしてるのか?」

「え? あぁ、いや、そういうのじゃないわ」

「本当か? 喧嘩は良くないぞ……? 喧嘩とか、良いことないからなぁ……」

「……たまに、バラキーが本当に鬼なのか怪しくなるわよね……」

「……吾も、たまにエウリュアレが女神なのか怪しく思う時があるのだが……」

 

 互いに互いの存在を怪しむも、結局あまり深く追及はせず、街道を歩く。

 

「それで、どこに行くの?」

「うむ。『ろこもこ』なるものを食べてみたくてな! 有名な店に行こうと思う!!」

「ロコモコねぇ……えぇ、分かったわ。じゃあ行きましょうか」

「うむ。食べ物に関してはエウリュアレを信用してるからな! 楽しみにしてるぞ!」

 

 そう言って、自信満々に先導するエウリュアレ。

 その後ろを、バラキーは期待で胸をいっぱいにして追うのだった。



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なんだか今回一番暴れてるの茶々じゃない?(誰も彼女を止めようとしないんですけど……!)

※サバフェスのネタバレあり! ご注意ください!












「……姉様、何処に行ってしまったんでしょう……」

 

 パンケーキ屋ではぐれてからエウリュアレを探そうとしているアナ。

 しかし、実際のところは茶々に引きずり回されて探しに行けていない。

 

「茶々さん……その、いい加減アナさんを解放して上げても良いんじゃないでしょうか……」

「ヤダ! だってほら、まだ遊び足りないし!」

「この人もサバフェス送りにした方が良いんじゃないですかね?」

「それ、初日に言ったんですよ……全然聞いてくれなかったんですけどね……」

「……えぇ、そうでしょうね……聞いてくれてたら今こうなってないでしょうし」

 

 諦めたような表情で呟くアナ。

 騎士姫も苦笑いでついてくるが、既に茶々の説得は諦めていた。

 だが、直後の事だった。

 

「ぎゃああぁぁ!!」

「逃がさないわ……!」

「あははは! アビーの追い方、本当に怖いわね!」

 

 隣の路地から飛び出てきたバラキーと、それを追うアビゲイル。その触手の一本に座って楽しそうに笑っているエウリュアレ。

 それを見た茶々達は、

 

「な、なにあれ! めっちゃ面白そうなんだけど!」

「姉様!? 何してるんですか!?」

「ま、待ってください! えっ!? あれ追うんですか!? 正気ですか!?」

 

 目を輝かせて言う茶々と、一体何があったのかと困惑するアナ。

 そして、二人して追おうとした瞬間に、そんな馬鹿なと言いたげな表情で騎士姫が言ったのに対し、

 

「当然じゃん! あんな面白そうなの、追わないわけないでしょ!」

「姉様がいるんです。追わないわけないでしょう!」

「え、えぇ~……茶々さんはちょっと分かりますけど、アナさんのはどうなんでしょうそれ……というか、観光は?」

「それはまた後で!」

「人が多い方が茶々さんに迷惑をかけられる確率が減りますよ!」

「分かりました追いましょう! 絶対に仲間に引き入れます!」

 

 アナの説得を聞いて瞬時にやる気を出した騎士姫は、魔力放出をしてまで全力で追いかける。

 それに気付いたエウリュアレは、

 

「あら、アビー。後ろについてきてるのがいるわ。とりあえずバラキーを早く捕まえて向こうに行きましょうか」

「ふぇ? あ、本当ね。ん~……もう少し追いかけっこしてたかったけど、一回終了ね。また明日ってことで」

 

 そう言うと、アビーは門を開いてバラキーの足を掴んで引きずり出すと、その場に急停止して後ろから追ってくる騎士姫達を待つ。

 

「あら、そんなに急いでどうしたのかしら」

「はい! 茶々さんに振り回されてください! 私のためにも!」

「エウリュアレさんエウリュアレさん! ドストレートに面倒事を送り込んできたわよ!?」

「……まぁ、私は気にしないけど……アナは?」

「後ろです。先行してきました。だって茶々さんがいるとなんでか話が出来ないですから……!」

「……茶々、振り回しすぎじゃないかしら……」

「なんだか面白そう。えぇ、バラキーさんは起きる起きない関係無く連れていくとして、面白そうだからついていくわね」

「ありがとうございます! 助かります!!」

 

 そう言って、騎士姫は茶々冒険団に入ってくれるというエウリュアレ達に感謝するのだった。




 茶々、いつも暴走してるけど、前回よりエグいくらいに暴れてる……誰がこいつを止めるんだろう……


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部屋に籠ってるのに疲れたし、海に行きましょうか(吾、なんで背後を狙われてるのだろうか)

※サバフェスのネタバレアリ! 注意してください!!














「うんうん。同人活動も一段落したし、後はBBをぶっ飛ばすだけ。これで安心して遊べるわけです」

「えぇ、そうね。海に行きましょ、海。これでようやく泳げるわ」

「うむ、うむ! 吾も遊ぶぞ! 海は昨日アビゲイルに捕まって酷い目に遭ったが、何。見つからなければ遊べるだろうて!!」

 

 仕事から解放され、砂浜で仁王立ちして目を輝かせるオオガミ、邪ンヌ、バラキーの三人。

 ちなみに、バラキーは昨日海辺でアビゲイルに振り回されている時に一瞬の隙をついて仕切り直しで逃走を図った。結果はここにいる事から察する事が出来るだろう。

 

「というか、茨木さんは昨日何をしてたんですか? 結構悲鳴が届いてきたんですけど……」

「ん? あぁ、それはだな……正直吾にも分からん。ただ、山の頂上で街を見下ろしてたら突然背後にアビゲイルが現れて、追いかけてきてな。昼くらいから夜までずっと追われてた。たぶんエウリュアレが犯人だな」

「正解。バラキーと久しぶりに会えたから、ちょっと悪戯しちゃったわ。まぁ、エルキドゥよりはマシだったんじゃないかしら」

「……まぁ、そうなのだが……捕まってからの扱いは明らかにエルキドゥの方が良いのだが……」

 

 当然の様に背後から出てくるエウリュアレに、バラキーは何とも言えない表情をしつつ、捕まった感想を交えて答える。

 それに気づいたオオガミは、

 

「……エウリュアレ、財布返して。たぶんほとんど使ってるでしょ?」

「そんなに使ってないわよ。えぇ、本当に。半分くらいしか使ってないわ」

「半分も減ったのか……いや、全然いいんだけどさ。うん。大丈夫、まだ致命傷。とりあえず財布はマシュに預けておこう」

「分かりました。ちゃんと預かっておきますね。私も泳ぎますけど」

「……うん。自分で管理しておきます」

 

 エウリュアレから財布を回収して、マシュに預けようとしてからマシュの返答に硬直し、そのまま自分のバッグの中に入れた。

 それを見ていた邪ンヌは、

 

「よし、じゃあ準備はいいわね。ビーチバレーやりましょ、ビーチバレー。定番らしいし。ロビン、準備できるわよね?」

「えっ、オレに投げるの? オタクらが勝手にやるのを止めやしないが、こっちにまで飛び火させんな――――待て待て分かった分かった。準備するから刀を抜くな。それ普通に痛いんだよ」

「分かったならいいわ」

「ったく、なんでこんな役回りなんですかね……」

「あ、手伝うよ。だって、ビーチバレーの選手側にされたら死ぬ」

「いや、マスターなら大丈夫でしょ。筋力強化しとけば跳ね返せるんじゃね?」

「ロビンさんも人外扱いしてくるんですか。良いんですよ? 俺はBBを引きに行っても。来年にしようと思ったけど、今年が良い?」

「おっと、さっきの言葉は撤回するから本気でそれは止めてくれ。もうこれ以上俺の心労を増やしたくない」

「じゃあレッツゴー」

 

 そう言って、オオガミとロビンは邪ンヌの要望に応えるために道具を一式取りに行くのだった。




 エウリュアレが最近アサシン並みの気配遮断してくる……我が家において暇人は性能がバグる仕様になってます。きっと。


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浜辺のドッヂボールで死人が出る勢い(マスターが人間を止めてるのは今更なこと)

※サバフェスのネタバレあり! ご注意ください!










「ふははは! 茶々に負けてられっかぁ!」

「なんでマスターが茶々に対抗できるのか全くわっかんないけど、負けられないよね! ぶっ飛ばぁす!」

 

 飛んでくるボールを掴み、即座に反撃するオオガミ。

 しかし、投げ返したボールも茶々によって受け止められる。

 そしてその様子をビーチチェアーで横になりながら見ているエウリュアレは、隣で同じように見ているバラキーに、

 

「なんというか、こう……よく張り合えるわよね」

「本当にのぅ……何故か、吾も混ざったとして、勝てる気がしないのだが」

「そうよねぇ……というか、なんで他の人が全滅しているにも関わらず、マスターが生き残ってるのよ」

「一番の謎よな……」

 

 投げ合うボールは、もはや弾丸の様で、互いに受け合うのは明らかにおかしいレベルだった。

 とはいえ、エウリュアレはどちらかというと周囲の方が少し気になっているようで、バラキーはそれに気付くと釣られて周囲の方を見る。

 

「……賭け事が始まってるとは思わなんだ。いしゅたるめ、面白がっておるな。だが……あやつがやるのは最後の最後で酷い目に遭いそうだ」

「そうね。最後の最後でボール飛んできて何も残らなかったりして」

「そりゃ言えてますわ。去年のを見ても、ありゃダメになるわな」

 

 いつの間にか隣にいたロビンは、イシュタルが茶々とマスターのどっちが勝つかという賭けを始め、そちらはそちらで大盛り上がりをしているのを見て、面白そうに笑う。

 

「おい、緑の人よ。吾としては全く構わんが、遊んでて良いのか? BBはどうする?」

「ん? あぁ、そのうち出てくるでしょうよ。その時にでも対処すれば良いんじゃないですかね? つか、オレはもう関わりたくないんですよ。オタクでいう頼光みたいなもんよ」

「むっ……それは確かに、関わりたくない……というか、霊基も感じたくない。よく耐えられるな緑の人!」

「耐えてるっつぅより、諦めてるようなもんなんだが……いや、まぁ、耐えてるってので良いや」

「ふふっ。まぁ、貴方がBBに豚にされるのも見てみたいけど、BBが再召喚されるまでそれは見れなさそうね」

「縁起でもねぇこと言いなさんな! それで再召喚されたら死ぬっての!」

「ふむ……いや、それは鬼的にありなのだろうか……BBが召喚されるのを楽しみにするのと、鬼的には……うむむ……」

 

 エウリュアレがロビンをからかい、バラキーは何故か自問自答を始める。

 そんな風に三人が話している間にもオオガミと茶々の殺し合うドッヂボール続き、イシュタルの賭けは更に盛り上がっていくのだった。




 BB……結構引きたい気持ちが高まってきた……ロビンさんには悪いが……許せロビン……


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スカディさん、どんな装備ですか……(この姿はかなり涼しいぞ?)

「ふっ。私ほどになればこの程度の温度、何てことはない」

「それにしては重装備ですねスカサハ様」

 

 額に冷えピタを張り、保冷剤を全身くまなく張り付けた状態で何故か涼しい顔をしているスカディ。

 そんな摩訶不思議の塊のようなスカディに、思わずオオガミが突っ込みたくなるのも自然なことだろう。

 

「ふん。せっかくの知らぬ島を探索することも出来ないというのは、悔しいからな」

「そ、そういうことですか……」

「あぁ、そうとも。だから、お前もついてこい」

「えっ……マジで言ってるんですかスカサハ様」

「当然だろう? あの氷の皇女と歩くつもりだったが、悲しいことに部屋を出てすぐに倒れてな。仕方無いと置いてきた」

「えぇっ、ちょっと待って。それ、アナスタシアが倒れてるってことじゃ――――」

「安心するといい。私が誰も置かずに出てくるわけないであろう? 茶々に任せてきた」

「うわ、オカンがいない今では対病人最強の茶々を運用するとかマジ最強ですかスカサハ様マジパネェっす」

 

 それ以上に、よく茶々を捕まえられたな。とオオガミが思うのは、普段の横暴っぷりに悩まされているからだろうか。

 

「それで、来てくれるだろうか」

 

 そう、改めてスカディに聞かれ、オオガミは既に日が沈んだ外に目を向けつつ、

 

「……どこまで行きます? スカサハ様」

「ふふっ。あぁ、そうだな。町を巡ってみたいのだが、構わないか?」

「えぇ、構いませんよ? お好きなように行きましょう」

 

 そう言って、オオガミはスカディと一緒に町へ出るのだった。

 

 

 * * *

 

 

 もちろん、それを影から見ていた人物はいる。

 例えば、茶々に振り回されていたメンバーとか。

 

「はわわわ……な、何してるんですか、マスターは……!」

「あの人、今度はスカディさんにまで振り回されてるんですか……絶対わざとやってますよね」

 

 そして、そんな事を呟くアナと騎士姫の後ろで、不適な笑みを浮かべているエウリュアレは、

 

「まぁ、私は構わないわ。むしろ、アナスタシアは大丈夫かしら。茶々のことだから問題ないと思うんだけど、ちょっと気になるわ」

「ね、姉様……本当に良いんですか?」

「えぇ、本当に良いのよ? というか、別にマスターが何をしてようと気にしないわよ。むしろ、なんで私が反応すると思ってるの……?」

「えぇっ!? 本気で言ってるんですかこの人!」

「な、何よ……本気も何も、それ以外言えないじゃない……何? そんなに私がマスターの事を気に掛けないのがおかしいの?」

 

 一人、怪訝そうな顔をするエウリュアレに、二人は顔を見合わせるのだった。




 スカディさんの装備を想像すると、シュール過ぎて……誰がこんなことをしたんだ……


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ポイントが貯まらない……(いつもより周回数が足りないじゃない)

※サバフェスのネタバレあり! ご注意ください!










「うぅ~ん……ポイントが終わらないなぁ……」

「そりゃ、全然周回してないじゃない。貴方にしては珍しいじゃない」

「えぇ、だってその人、遊んでましたし」

 

 オオガミが呟いた事に対して、即座に突っ込むエウリュアレとアナ。

 マウナ・ケアへ向かっていたオオガミの右腕をエウリュアレが、左腕をアナが掴んでいた。

 

「遊んでいたのは否定しないけど、それは二人も同じじゃないの……?」

「まぁ、そうなんだけどね。少なくとも私は」

「私は茶々さんに振り回されていたので、ノーカウントです。昨日ようやく解放されたので、これからです」

「……目下最大の謎は、なんで両腕を掴まれてるのかだよ」

 

 いつもの事だと言えば済んでしまうのだろうが、それでも突っ込まなくちゃいけないのだと思うオオガミ。

 それに対して二人は、

 

「あら、私じゃ不満かしら?」

「私は姉様がしていたので、なんとなくです」

「うぐぐ……別段断る理由もないし、良いんだけども……」

 

 神妙な顔をするオオガミに、楽しそうに微笑むエウリュアレ。

 そんな三人が歩いていると、横からスカディがジャックを抱えて出てくる。

 

「あ、おかあさん! やっほー!」

「やっほー。ジャックは何してるの?」

「うん! バニヤンを探してたら、このお姉さんが困ってたから、案内してたの! おかあさんこそどうしたの?」

「あぁ、いや、別にこの状況に深い意味はないんだよ。強いて言うなら、取り憑かれた」

「あら、随分な言い様じゃない」

「その首、刈り取りますよ?」

「ご、ごめんなさい……」

 

 ジャックの質問に答えていたら、腕を締め付ける力が強くなり、右からは凄みのある笑顔で、左からは今にでもその首を刈ると言いたげな視線で、叱られるオオガミ。

 スカディはそれを見て、

 

「ふふっ。女神二人を侍らせるとは、人の子としては中々だ。通りで昨日は落ち着いていたはずだ」

「そりゃ、深夜でも構わずパフェを食べるようなのが右側にいますしって痛い痛い痛い! 腕が折れるって二人とも! つか、エウリュアレは分かるけど、なんでアナまで!?」

「姉様が怒ってますし、怒っておくべきだと思って」

「そうだよねアナは姉様至上主義だもんね許して!?」

「分かれば良いんです」

「あら、アナへの言い訳は良いけれど、私に対しては無いのかしら?」

「だって事実だし、別段俺は気にしてないし……むしろ、最近控えめだから調子が悪いのかと心配してる」

「そう……自重してみていたのだけど、どうやら不満みたいね。じゃあ、次から遠慮しないで食べてあげるわ。感謝しなさい?」

「……まぁ、こんな感じなんで、全く気にする必要もな痛い痛い!! 今日はちょっと暴力的じゃないかな!?」

 

 悲鳴をあげるオオガミの腕。その痛みにオオガミは膝を着くが、その状況を作っているエウリュアレは不穏な笑みを浮かべるのだった。

 アナはオオガミが暴れだした辺りで距離を取り、

 

「いつもの事なので、あまり気にしなくても大丈夫です。後、バニヤンさんは新シンさんが面倒をみているので、浜辺へ行った方が良いと思います」

「ふむ、そうか。ではそちらに向かってみるとする。この前は倒れてしまって、なんだかんだ海を見れていないからな。ちゃんと砂浜に立って、波を感じてみたい」

「じゃあ行こう! じゃあねおかあさん!」

 

 そう言って、ジャックとスカディは、悲鳴をあげているオオガミを置いて浜辺へ向かうのだった。




 うぅ~ん……巌窟王Wスカディで3T周回しても、意外と時間がかかるポイント周回……一回二万くらいという……終わるかなぁ、これ……


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先輩、どこに行ってしまったんでしょう(私も一緒に探しますよ)

※サバフェスのネタバレアリ! 注意してください!!













「先輩……どこに行ってしまったんでしょうか……」

 

 きょろきょろと周囲を見渡しながら、街を歩くマシュ。

 その隣にいるのは、騎士姫。たまたま出会ったので、困っているマシュの手伝いをしようと思ったようだった。

 

「まぁ、マスターは神出鬼没と言いますか、探すならエウリュアレさんを探した方が早いと言いますか……」

「そうなんですけど……そのエウリュアレさんもいないので、困っているというかなんというか……でもまぁ、別にいいんですけどね。ポイントが足りてないから気になっていただけですし。えっと、リリィさんは何かしたいことありますか?」

 

 既にオオガミを探すのを止めて遊ぼうとしているマシュ。

 騎士姫は困惑しつつ、

 

「えぇっ。マスター探しはいいんですか?」

「はい。街中にいないって事は、たぶんエウリュアレさんに連れられてポイントを集めに行ってるんだと思います。なので、遊んでしまおうかと」

「なるほど……じゃあ、あれです! ダイビングをしてみたいです!!」

「じゃあ、行きましょうか。この前はサメが出ると言われていたので警戒していたんですが、アンリさんと新シンさんが撃退したと聞いたので、遠慮なく遊べますね」

「はい! でも、一応最低限の武装はしますね。まだいないとも限りませんし」

「そうですね。私も盾はしっかり持っているようにします」

 

 最低限の武装だけは持って、浜辺へ向かう二人だった。

 

 

 * * *

 

 

「……茶々、暴れすぎたからもしかするとここに閉じ込められてるんじゃ……?」

「それだと、私も閉じ込められていることになるのだけど」

 

 ホテルの部屋から街を見下ろす茶々は、遠い目をしているが、呟いた言葉にアナスタシアが文句を言う。

 

「まぁ、アナスタシアが元気になったなら良いんだけどね。それで、もう大丈夫なの?」

「えぇ、すっかり良くなったわ。でも、外は暑くてどうしようもないわ。スカサハさんは大量の保冷剤を持って行っていたけど、正直重そうだし、更に言えばその方が熱そうだから真似できないわ……」

「ん~……それは茶々じゃどうしようもないなぁ……」

 

 ため息を吐いて、茶々は部屋の外へと向かう。

 

「最近、マスターが料理をしようとしてるし、茶々もなんか作れるようになりたいからね。アナスタシアには実験台になってもらおうかと」

「わ、私は普通の料理を食べたいのだけど……」

「流石に赤マントに教えてもらうつもりだから美味しくないのは出来ないと思うんだけど……」

「帰ってからでもいいじゃない」

「むむっ……それを言われると、確かに……是非も無し。わざわざ旅先で練習する必要は無いよね! じゃあ今日はキャットにハワイ料理を出してもらおう!」

「……本当に、切り替えが早いわ……」

 

 アナスタシアは呟き、茶々を追うのだった。




 タイトルをほんの数行で裏切っていくスタイル。もはやいつもの光景ではある……


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残るポイントは活動力(案外あっさり終わりそうね)

※サバフェスのネタバレアリ! 注意してください!!


「うぅ~ん……スカディさんマジ強い……」

「本当に終わりそうね。後は活動力が終われば一段落かしら」

 

 一段落と言ってはいるが、活動力さえ集め終われば収集は終わり、遊んで過ごすだけだったりする。

 オオガミとエウリュアレの会話を聞きながら、きっと本人たちはそんなことに気付いていないのだろうな。と思うアナは、スカディの元へと向かう。

 

「お疲れ様です。大丈夫ですか?」

「あぁ、問題ない。むしろ、調子がいいくらいだとも」

「そうですか……夜なら何とかなりますけど、昼はまだ暑いですし、無理はしないで、限界だったらマスターを氷漬けにしてでも涼んでください」

「ふふっ、もしそうなったらそうさせてもらうとも。さて、今日はもう終わりだな?」

「……マスター、どうするんです?」

「解散で!!」

「よし。なら、私は帰らせてもらおう」

 

 そう言って、平静を装いつつも全力で帰宅するスカディ。

 それをアナは引きつった顔で見送るのだった。

 

「……うん。まぁ、そろそろ終わりそうだし、明日から本格的に観光できそうだね……」

「じゃあ、終わったらハワイ料理を食べ尽しましょうか」

「ん~……そうだね。結構食べてた気もするけど、習得できてるわけじゃないし。食べ歩き……大人数で行くのがセオリーだよね」

「そうね。メドゥーサは当然として、アビーとマシュと……茶々は暴れるから微妙よね」

「いや、流石に置いて行くのはどうかと……後、ジークも呼んでおこうか」

「そうね。そうしましょうか。でも、どうやって呼ぶの?」

「それはほら、マシュが独自回線を持っておりまして、そこからちょちょいと連絡をば」

「なんで、貴方より連絡網が豊富なのかしらね……?」

 

 そんなことを言っている間に戻ってきたアナ。

 エウリュアレはそれを確認するとアナの隣に移動し、

 

「ほら、早く戻りましょ。明日また頑張るんだし、今日は休憩よ。少し遊んでから帰りましょうよ」

「遊ぶって言っても……下山するだけでも十分な運動だと思うんですよ。どうなんです?」

「それはそれ、これはこれ、よ。ほら、街に行きましょうよ。私も色々と食べたいものがあるし」

「良いけど……アナも大丈夫?」

「私はその、姉様が良いならそれで。ただ、早めに行かないと、店も閉まっちゃうんじゃないかな、と思うだけで」

「……それが一番重要だよね。全力で帰るよ!!」

「そうね。早めに行かないと、遊ぶ予定も組めないわ」

「……事前調査のほとんどは私の役目なんですけどね……」

 

 そう言いながら、三人は走って下山するのだった。




 観光だのなんだの言っていますが、ところがどっこい。まだ素材交換が終わってないんですねこれが!

 まぁ、それもWスカディシステムなら何とかなる恐怖。万能すぎるよこの人……


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マスター……行方不明なの?(大体気付いたら帰って来るので、あんまり気にしてません)

※サバフェスのネタバレアリ! 注意してください!!














「先輩……ですか? いえ、行方不明ですけど」

 

 そう答えたマシュの視線の先にいるのは、邪ンヌ。

 海辺でくつろいでいたマシュと騎士姫は、既にオオガミを探すつもりが無いのは目に見えていた。

 

「う~ん……別段用があるわけでもないんだけど、何となく嫌な予感がするのよね……」

「嫌な予感ですか? ん~……基本先輩は何とかするんですけど……邪ンヌさんが言うなら、一応気にした方が良いですかね」

「そうですね。そもそもマシュさんはマスターを探していたわけですし、探しに行くのもありじゃないですか?」

「なんでアンタ達はアイツがどこにいるのか気にしないのよ……」

「まぁ、先輩は無駄に強固ですし……」

「結構狙われても生き残ってますしね……」

「えぇ……何よそれ……」

 

 マシュと騎士姫の反応に、困惑する邪ンヌ。

 そんな邪ンヌの困惑をスルーしつつ、サクサクと片づけを始める二人。ようやくオオガミを探すつもりになったのだろう。

 

「よし、じゃあ探しましょうか。それで、どこにいるんでしょうか」

「いや、私はそれを聞きに来たんだけど……」

「邪ンヌさんが嫌な予感を感じでここに来たんですから、きっと浜辺にいますよ!」

「なるほど。じゃあ、とりあえず向こうから探していきましょうか

「う、うぅ~ん……まぁ、それで行きましょうか。そのうち見つかるわ」

 

 そう言って、浜辺を歩き始める三人なのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ところでお姉ちゃん。イルカを撃つのは流石にどうかと思う」

「はぅっ。それを言われると反論できないのですが……!!」

「……今更なのだけど、どういう状況なのよコレ」

 

 ジャンヌを姉の様に扱うオオガミと、オオガミを弟の様に扱うジャンヌという状況に困惑するエウリュアレ。

 今は特に意味も無く浜辺を散策していた。

 

「イルカを射出するという発想が凄いですよね。撃つとは思いませんし、その上あの正面からの見た目はちょっと怖いですよね」

「いや、それはそうだけど、そうじゃないでしょう? とりあえず、突撃しようかしら」

「えっ、姉様、何をするつもりですか?」

 

 アナの確認よりも先に、オオガミの肩に乗るエウリュアレ。

 オオガミは一瞬よろめいたが、すぐに体勢を立て直して落ちないようにする。

 

「まぁ。エウリュアレさんは弟君がお好きなんですね!」

「そんなわけないわ。むしろ逆よ。私を好きなのがマスターなのよ」

「……一番の被害者であろう俺は何処から突っ込めばいいんだと思いますかアナさん」

「素直に殺されてみればどうでしょうか。冥界帰りはお手の物でしょう?」

「やだこの娘……殺しに来てる……」

 

 ジャンヌとエウリュアレの言い合いを聞きつつ、オオガミはひっそりとアナに殺されそうになっていた。




 そろそろジャンヌもこちら側に引きずり込めるのでは……? だが、先に引きずり込むのは恐らく邪ンヌが先になる気がする……


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聖杯、いくつあったかしら(使おうとしても、QPも種火もないけどね)

※サバフェスのネタバレあり! ご注意ください!










「……冷静に考えると、聖杯、集まったわよね……」

「QPも種火もないからアナの育成は出来ないけどね」

「いえ……別に私は要らないのですが……既に二つ貰ってますし……」

 

 聖杯の数に気付いたエウリュアレが呟くと、不思議とアナに使う事になっており、アナもそれとなく断っていた。

 

「なんで聖杯の数を言っただけでメドゥーサに使う事になるのよ?」

「え? エウリュアレがアナのレベルを100にするって言ってたんじゃなかったっけ?」

「そう……だったかしら。まぁ、たぶん言ったのよね……いえ、まぁ、同じ事を言おうとしていただけだから良いのだけど……」

「ですから、私は要りませんって……」

「あら、貴女に拒否権があると思ってるのかしら」

「……姉様にお任せします……」

 

 諦めたアナは、最終決定権をエウリュアレに任せ、話を聞く側に回る。

 それを見たオオガミは、少し考えた後に、

 

「でも、アナ以外に使うとなると……バラキーくらい?」

「ん~……まぁ、それもありかしらね。あぁ、もちろんバーサーカーの方よ?」

「ランサーは……その……あいにくと足りてしまってるんでな……」

「でも、霊基はどうやって戻そうかしら……」

「バラキーは自前で戻れるだろうし、スカサハさんがやったならスカディさんが出来ないわけないのだよ。よって大丈夫」

「スッゴい穴だらけの気もするのだけど……まぁ、大丈夫だと思うことにするわ」

 

 聖杯の矛先がバラキーに向いたが、恐らく最終的には自分に来るのだろうと思うアナ。

 だが、アナはそれを言ったりせず、黙っておく。バラキーに渡した方が良いと言っても、無視されるのは目に見えているからだ。

 

「というか、今気付いたのだけど、周回はまだ終わらないの?」

「あぁ、いや、その……やってはいるんだよ? だけど、ほら。時間がかかるものはかかるんだよ。もう少し待ってて欲しいんだけど」

「むぅ……早めに終わらせてくれないと、こっちは計画が組めないのよ……終わってから全員に招集をかけるんだし」

「うぐぐ……それを言われると何も言えない……って、ジークとかは?」

 

 シャドウ・ボーダーで倉庫整理をしているジークやアヴィケブロン達はどうしたのだろうかと聞くオオガミに、エウリュアレは当然と言いたげな表情で、

 

「待機組はもう呼び出してるわ。だって、そうしないとどうあがいても間に合わないもの」

「つまり、マスターが周回を終わらせると同時に休暇になるので、早く終わらせたらその分長く遊べるんです」

「だから、早く終わらせてくれないかしら」

「……明日中には終わるように頑張るよ」

 

 そう言って、オオガミは周回に向かうのだった。




 聖杯はアナに使うとして、種火を大盤振る舞いし過ぎて枯渇したのが致命的です……QPはそのうち集まるからエエんや……


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ようやく自由だー!!(これで心置きなく遊べるわね)

※サバフェスのネタバレアリ! 注意してください!!














「自由だー!!」

「ふははは!! ようやく茶々は看病卒業だね!! めっちゃ遊ぶよ!!」

「暇なんですかこの人は」

「暇というか、アナスタシアさんを押し付けたから暴走してるだけなんじゃないですか……?」

 

 オオガミが、ついにイベントポイント及び交換アイテムの回収が終わり、岩の上に立って自由になったと叫んでいる所、隣で同じく自由を叫ぶ茶々と、その後ろでコソコソと話すアナと騎士姫。

 なお、エウリュアレはマシュを呼びに行っており、今はいない。

 

「マスター!! 私も来たわよ!!」

「おれは行かねぇって言ったんだが、あびーが無理矢理引っ張りやがってよ……だから、よろしく頼むよ、ますたぁ」

「あぁ、アビーと北斎も来たね。よしよし、後はエウリュアレがマシュを連れてくれば、全員揃うかな」

 

 オオガミがそう言って岩から降りると同時に、

 

「おいおいマスター。オレを忘れるってのはどうなんだよ?」

「そうそう。オレも忘れちゃ困るぜ?」

「いや、二人は大体いつの間にか集まって来るって思ってるから……」

「その信頼のされ方されてるの、すっごい複雑よねぇ~。ぷぷぷ~っ」

「イシュタルは……来ると問題を起こすっていう信頼はあるよ。この間の賭けはどうだった?」

「うっさい!! 気付いたら誰かに全額持ってかれたわよ!! ドローだったからさりげなく全額貰っていこうと思ったら、何時の間にか無くなってたわよ!!」

 

 いつの間にか現れていたアンリと新シンさん。

 そして、スクーターに乗ってやってきたイシュタルが、オオガミに聞かれて半泣きになっていた所、

 

「ん? あぁ、放っておいても良いかと思っていたのだがどうせなら吾が有効活用しようと思ってな。全部貰っていった」

「犯人はアンタかー!!!」

 

 棒アイスを食べながら話に入ってきたバラキーを締め上げるイシュタル。

 大所帯になればカオスになると言うが、大体いつも通りの様な気がするオオガミ。

 なので、きっと近付いてくるマシュも飲まれてくれだろうと祈るのだった。

 

「絶対変なこと考えてますね、先輩」

「そんな……!! 考えが読まれてる……!!」

「アンタ、何考えてたのよ……」

「弟君は変な事なんて考えてませんよ。根は真面目ですから!」

「何言ってるのかしら、この聖女……マスターが真面目な時なんて基本無いのに……」

 

 マシュ、邪ンヌ、ジャンヌ、エウリュアレの四人が到着する。が、オオガミはふと気付く。

 

「ねぇ、ジーク達は?」

 

 直後、リースを呼び出して全力で退避するジャンヌ。

 何か、変な事を言ってしまったらしい。

 

「ジークさん達なんですが……少し遅れるそうです。後で空港に寄っていただけますか?」

「ん、了解。じゃあ、行こうか」

 

 マシュの報告を聞いたオオガミは、全員を再度集めるのだった。




 夏イベントの魔力に誘われて、全員集合という魔境が生まれた……うちのメンバーが勢ぞろいすると、カオス確定するという……扱いきれるかなぁ……


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全員集まりましたよ、マスター(バスガイドはBBちゃんで~す!)

「お~い、全員ついて来てるか~? 置いてきたりしてねぇだろうな?」

「あぁ、問題ない。俺と、アヴィケブロンだけでよかったのか?」

「問題ねぇですよ。オタクら以外は全員いるんでな」

「いや、ホームズを置いてきているのだが……」

「来たかったらもう来てるでしょうし、気にしないでいいんじゃないですかね?」

 

 空港でそんなことを話しながらのんびりと集合場所へ向かうロビンたち。

 そして、集合地点では、

 

「吾……実はあそこの真っ黒の奴と、任侠に退治されかかったんだが……」

「それ、サメに変化してた時じゃなくて?」

「むっ。まさか汝……見てたのか?」

「いや、さっきアンリがサメを一体倒そうとして逃げられたって。捌いて食ってみたかったって言われたから……」

「……まぁ、明らかに食われそうだったな……アレは、流石に本気で命の危機を感じた……」

 

 集団とは少し離れた所でバラキーと話すオオガミ。

 すると、オオガミがロビンに気付き、手を振る。

 

「おぉ、緑の人!」

「よぅ、河童。キュウリはいるか?」

「!?」

 

 お菓子を貰おうとロビンに話しかけると同時に、キュウリを取り出しつつバラキーの事を河童と呼ぶロビン。

 バラキーは瞬時にロビンの近くに行くと、

 

「わ、吾は鬼だぞ!? 断じて、断じて河童などではない!!」

「へぇ~……じゃあ、キュウリはいらないか」

「いや、それは貰う。貰えるものは貰う。貰えないものは奪う。それが鬼の領分だからな」

「そうだな~。それより、頭に水はかけなくていいのか? 皿、乾くと死んじまうんだろ?」

「だから吾は河童ではないと言っているだろう!?」

 

 珍しくロビンが優勢だった。

 そう言えば河童なんじゃないかと考えてたような気がするな。とオオガミは思いつつ、ジーク達の方へと向かう。

 

「お疲れ。飛行機はどうだった?」

「自分が乗っていいのだろうかと悶々と考えながら乗っていたので、ほとんど覚えていない……」

「えぇ……まぁ、帰りもあるし、今は大丈夫だよね。で、アヴィケブ先生は……聞くまでも無さそうだね」

「あぁ、そうだね。知識としてはあったが、乗った事は無いからね。実際に乗ってみて、かなり快適だった。あのようなゴーレムを作るのも良いね。あぁ、楽しみだ」

「なるほど……あれ、もしかして、ノッブとBBの代行にアヴィケブ先生……? それもありかな……?」

「ん? 何の話だい? マスター」

「あぁ、いや、こっちの話。とりあえず、皆の所に行こうか」

 

 そう言って、全員が集まって、今から観光をしようという時だった。

 

「BB~チャンネル~!! In ルルハワ~!!」

 

 突然現れるBB。そして、瞬時に睨まれるBB――――ではなく、オオガミ。特にマシュの視線が鋭く突き刺さる。

 

「あれあれぇ~? 皆さんどうしちゃったんです? もしかして、私は召喚されてないだなんて安心しちゃいました? ところがどっこい。私は今朝召喚されちゃったんですね~! ふふん。残念でした。BBちゃんは課金爆死して絶望した後に無料配布石で満を持して登場し、なんで課金したのかと自問自答させちゃう系後輩なのでした!」

「……先輩?」

「ひぅっ!? い、いや、ちょっと何言ってるか分からないというか……そんな、人を殺すような目で見られると本当に死にそうというか……あの、マシュさん? その、地味に足を踏んでくるの止めてもらっていいです? い、痛い痛い痛い。なんで? なんで怒られてるの?」

 

 げしげしとオオガミの足を踏みつけるマシュに、半泣きになっているオオガミは、周囲に助けを求める。

 それを見ていたアナはため息を吐いて、

 

「姉様、マスターの方は任せて良いですか?」

「……私が止めた方が良いの?」

「たぶん、姉様が最適だと思うので。アビーさんを使うと、大戦争になるかと」

「あぁ……分かったわ。じゃあ、貴女はBBの方をお願い」

「はい。行ってきますね」

 

 そう言って、BBの前に出るアナ。

 BBは不思議そうな顔をして、

 

「はて。何の用でしょうか。私は今から皆さんをバスツアーに招待するつもりだったんですけど……」

「そうですか……バスは誰が用意したんですか?」

「流石のBBちゃんも、今回ばかりは自重しますよ。珍しくちゃんと用意したんですよ?」

「……変なことをしたら、即座に締め上げますからね」

「そんなに信頼無いですか? 私……」

「いえ、絶対何かをやらかすという信頼があるので、ちゃんと裏切ってくださいね?」

「そんな期待されたら……応えたくなっちゃうのが私ですよ? まぁ、パーフェクト後輩の力をとくとご覧下さい!」

 

 BBはそう言って、全員をバスまで先導するのだった。




 おはようございますガチャは今のところむちゃくちゃ強い……今回の勝率の9割……

 誰かいないな……と思い、気付いた私。ジャックとバニヤンは……!?


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修学旅行の車内みたい(とりあえず騒がしい事だけは分かったわ)

「え~……そもそも、全員十分にルルハワを満喫しているので、既にどこに行ってももう行ったという方々がいると思うので、どこへ向かおうかと悩んでいるBBちゃんなのですが、とりあえず意見をガン無視してダイビングから行こうと思いま~す!!」

 

 元気に宣言するBBに、オオガミはボソリと、

 

「ダイビングはまだやってないから問題ないけど、ダイビングって、さりげなく消し去ろうとするときに消しやすそう」

「センパイ、全然信頼してないですね!? ちゃんと安全管理はしますよ!? っていうか、センパイの周りは大体助けてくれるじゃないですか!!」

「それはそれ、これはこれ。というか、狙われるのが俺とは言ってない」

 

 おおよそこの場合の被害者はアンリと相場が決まっているのだ。

 オオガミはそう思って一番後ろを陣取っているアンリに目を向けると、隣でニコニコしてるアビゲイルに怯えていた。

 

「一つだけ言っておくけど、私が役に立つとは思わないでね?」

「エウエウは泳げるイメージ無いので問題なし。むしろ引っ張る事になると予想してる」

「バッサリ言うわね。背後から射貫くわよ?」

「この理不尽に命狙われる感じ。もう慣れたよ」

 

 ちなみに、オオガミは通路側、エウリュアレは窓側に座っており、二人揃って先頭だった。

 更に、オオガミの後ろにはジークが、エウリュアレの後ろにはアナが座っていた。

 

「姉様姉様。私がいるので大丈夫ですよ」

「メドゥーサとだと、普段とほとんど変わらないんじゃないかしら」

「……マスター、後で憶えててください」

「酷い飛び火を見た。というか、アナの行動がすっごいアグレッシブになってるんだけど。ねぇ、茶々のせい? 茶々のせいじゃない?」

「茶々に飛び火させないでほしいんだけど!!」

 

 通路を挟んで隣にいるのは茶々。窓側には騎士姫がいて、徒歩とは違った視点に目を輝かせていた。

 オオガミの言葉に文句を言う茶々だが、茶々がアナを引きずり回してからこんなに変わったように思うオオガミとしては、やはり犯人は茶々しかいないと思っていた。

 

「ん~……とりあえず、アナが目に見えて元気になったのはいいんだけど、命の危険が前より強くなってるのが怖いよね」

「別に、今までと変わらないんじゃないかしら。むしろ弱くなったんじゃない?」

「つまり、表面上に見えないのが一番怖いわけだ……」

 

 オオガミはそう言って頷き、遠い目をしながら茶々の方を見ると、

 

「茶々のお菓子がぁ!!」

「貰ったー!」

「わぁーい!」

「ま、まぁまぁ。落ち着いてください、茶々さん」

 

 半泣きになって後ろの席のジャックとバニヤンが持っているお菓子を取り戻そうとしている茶々と、それをなだめている騎士姫。

 メドゥーサの話をしている間に、一体何があったのだろうかと思うオオガミ。

 と、そんなことを思っていると、どうやら目的地に着いたようだった。

 

「じゃ、皆さんついて来てくださいね? レッツゴー!」

 

 BBがそう言うと、全員動き始めるのだった。




 ダイビング、始まると思いました? 残念! 海の中は会話できないので描写力が足りない私には無理なのでした!!

 あ、高難易度、令呪三画を使ってぶっ飛ばしてきました。令呪無しもやろうと思ったけど、後二体と言うところまで来たので気分的にやり直したくなかったので思わず使ってしまった。後悔はしてないし、ホームズとアナに感動した。反省はちょっとしてる。


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ダイビングの内容は脳内保管で(バスガイドさんは紙耐久)

「さてさて、皆さん乗りました? 誰かうっかりいなくなってたりしません? 特にセンパイは大丈夫ですか?」

「流石に誰かさんの目論見通り消されるわけも無くここにいるよ」

「それは残念――――じゃなくて、よかったです! あ、マシュさん。盾はダメです。それ痛いんですイッタァー!!」

 

 ガゴンッ! と鈍い音が響き、そのままマシュの盾に押しつぶされるように倒れるBB。

 そして、マシュが前へ出てきて盾を回収して席に戻って行った。

 

「……レベルが上がってないので、流石のBBちゃんもこれには座に帰る勢い……」

「えぇ……お、応急手当」

 

 流石に座に帰られると困るので、魔術礼装でBBを回復させるオオガミ。

 それで回復したらしいBBは、よろけながらも起き上がると、

 

「は、はいっ! それでは、次のところへ向かおうと思います! ダイビングで疲れてお腹も空いたでしょう。お楽しみのご飯の時間でぇ~っす!」

 

 その言葉に盛り上がる車内。英霊は食べなくても良いんじゃないか等という野暮な突っ込みをするようなのはいなかった。

 

「では、会場へと向かいます! あ、今この時点でいない人は、アビーさんに引っ張ってきてもらうので悪しからず。集合時間を守れない方々は狂気を垣間見ちゃってくださいね?」

「い、一応全員いると思うのだけど……」

「ま、いなかったらそん時さ。なぁに、もし忘れられたやつがいたって、自分で来るだろうさ」

「そ、そうね。北斎さんの言うとおりよね。安心して乗ってて良いのよね」

 

 BBの物騒な物言いに、瞬時に全員いることを確認するアビゲイル。

 その様子を見て北斎は安心するように話し、事実アビゲイルはいつもと同じ様子に戻った。

 

「で、ちゃんとデザートは出るのよね?」

「エウリュアレさんはいつからスイーツキャラになったんですか……いえ、今更でしたね。カルデアの時はほぼ毎日お菓子食べてましたし。えぇ、もちろんありますとも! しかも、色々と自分が食べたいものを食べたいだけ食べるのが良いんじゃないかなと私も思いまして、なんと! バイキング形式です!」

 

 直後、ざわめく車内。

 好意的なものも、若干不安を感じているものもいた。

 

「おぉ~。マジでか」

「茶々知ってる。局所的大人気を誇るのがスゴい速度で無くなって供給が追い付かなくなるやつだ」

「デザートの方が無くなりそうだよなぁ……絶対エウリュアレ辺りがめっちゃ食うぜ?」

「俺らも食いたいしねぇ……確保だけはしとくべきかな?」

「流石にそんな速度で食べないでしょ……普通に食べれば良いと思うんだけど。なに、大食いでもするの?」

「「……それもありか」」

「……メドゥーサに締め上げられそうね……」

 

 はたしてバイキング形式は正解だったのか。

 そうBBはひっそりと思いつつ、バスは目的地へと真っ直ぐ向かうのだった。




 さて、問題は、明日にはサバフェスが終わってしまう事……これ、収集つかなくない……?


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気付いたらルルハワでの夏休みももう終わり(つまりシャドウ・ボーダーに帰るわけです)

「え~……皆さんには大変申し訳ないのですが……今からすぐに空港へ直行です。はい。みなさん乗りましたね~?」

「うぅ……なにあのロコモコ……お腹痛いのだけど……」

「サーヴァントすらダウンさせる、何故か天辺にそそり立つゲソが印象的な麻婆ロコモコ……料理人はエミヤとキャットだけだったよね……?」

「何者かの策謀な気がしてならないです……」

 

 オオガミが興味本意で持ってきた『麻婆ロコモコ ~頂きのゲソ天~』という謎料理を見て、隣からエウリュアレが奪っていった後、そのまま倒れた。

 なので、そこから今まで看病していたオオガミは、このまま飛行機に乗れるのか不安になっていた。

 

「ぷぇ~……茶々、お腹一杯食べた。しばらくは食べなくても良いかな」

「だから食べ過ぎだっていったじゃないですか……」

「茶々、怒られてるね」

「気持ち悪くなるまで食べちゃ、メッ! だよ」

「待って! 茶々一度も食べ過ぎたって言ってない! 勝手に話を盛るのはどうかなって思うよ!?」

 

 茶々の悲鳴は三人には届かず、三人は茶々が食べ過ぎたと言って楽しんでいた。

 

 そして、最後尾の方では、

 

「も、もう無理……マジで食い過ぎた……」

「俺も食い過ぎたねぇ……つか、食ってる俺らより、周りの方が盛り上がってた気がするんだが……」

「どうせそこのポンコツ女神がなんか仕組んだんだろうさ……」

「酷い言いようじゃない! せっかくここまで連れてきてあげたのにその態度なんて……良いわ、表に出なさい。女神の力を見せてあげるわ」

「遠慮しておくわ……オレじゃなくて、こっちの任侠に見せとけよ」

「えぇ~……今は良いかなぁ……帰ってからゆっくり見せてもらうわ……」

「あんた達ねぇ……!!」

 

 怒り頂点とばかりにプルプルと震え始めるイシュタル。

 それを見かねたアビゲイルは、

 

「まぁまぁ、落ち着いて? イシュタルさん」

「そうそう。こんなやつらに奴等に構う必要なんかねぇって。まぁ、事実ではあるんだし、見逃してやったらどうだい?」

「うぐぐ……まぁ、私は別に怒ってないから良いけどね!」

 

 そう言って、そっぽを向くイシュタルに苦笑いするアビゲイルと北斎。

 そして、そんなカオスな空間で、ロビンは遠くを見ながら、

 

「おかしいなぁ……俺の予定じゃあ茨木のお守りをするつもりは無かったんだがなぁ……なんで俺の役目になってるんですかねぇ……」

「んぁ? 緑の人よ。何か言ったか?」

「なんでもねぇですよ。というか、どれだけ食うんですかオタクは」

「ふふん。当然であろう。吾は鬼だからな。大いに奪い、大いに喰らう。これは霊基が変わろうと変わらぬものよ。故に人間。喰われたくなければ、供物を捧げるのだなぁ……!」

「へいへい。んじゃ、献上品の飴ちゃんですよ~」

「うむ。許すぞ!」

「……鬼って、こんな簡単に懐柔できるもんかねぇ……」

 

 ロビンはそう呟きつつ、バスの外をぼんやりと見るのだった。




 誰だ麻婆ロコモコとか考えた人は!! 出てきなさい!!

 というか、今回妙にイシュタル・新シン・アンリの三人が出張ってた気がする……関係性皆無の様な……?


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日常
施設拡張、したいよね(明らかに相談する人を間違えてる気がしますが……まぁ、頑張りますよ!)


「ん~……ノッブがいないと、本体を作るのに時間がかかるのが問題ですよねぇ~……」

「何気にノッブの製作スキルがずば抜けてたからね……アヴィケブ先生とか、実はひっそりとうちにいるライオンさんとか?」

 

 発電施設を作って魔力を作り、なんとか部屋を増やせないかと考えているオオガミとBB。

 そのための発電機作りをどうするかと考えている所だった。

 

「そうですねぇ……いえ、ノッブじゃないと伝わらないことが多いでしょうし、来るまで一人で作りますよ」

「そう? まぁ、また何度か来るよ。部屋にはいつでも来てね?」

「えぇ~? だってセンパイの部屋、エウリュアレさんに占拠されてるじゃないですか。というか、センパイの周りって、常に女性がいません?」

「いや、そんなわけ……あるか……うん。ノーコメントで」

「自覚はあるんですね……BBちゃん、センパイが後ろから刺されても知りませんよ?」

「刺されるというより、首を落とされそうなんだよね……今の所」

「あれ。もう既に狙われてます?」

「うん。既に狙われてます」

 

 オオガミの言葉に、何とも言えない表情になるBB。

 だが、言っている本人は特に気にした様子も無く、

 

「ま、息抜きは必要だし、いつでも遊びに来てね。待ってるよ」

「あ、はい。気が向いたら行きますね」

 

 そう言ってオオガミを見送ったBBは、

 

「さぁて……どうしましょうか。さすがの私も、機材から作るのは流石に難しいんですよねぇ……」

 

 そう呟きながら、オオガミが用意だけはしてくれた材料と道具を前に悩むのだった。

 

 

 * * *

 

 

「お、マスター。何してんの?」

「あ、アンリと新シンさん。二人一緒にいるの、なんか最近良く見るね?」

 

 アンリと新シンに会ったオオガミは、最近セットで良く見る事を疑問に思って聞く。

 

「ほら、前に俺がアンリに化けた事あるじゃん? それ以降付き合いがあるんだよ」

「へぇ……意外と相性良かったの?」

「まぁ、そんな所だ。それで、マスターの方はどうなんだよ。何かあったのか?」

「え? いや、BBに部屋数を増やせないかを相談してて。材料と道具は用意したけど、大丈夫か不安で……ノッブがいれば安心度が違うんだけどね。二人揃えば最強だし」

 

 考えながらそう言うオオガミに、新シンは、

 

「ふぅん……まぁ、こっちでも気にかけてみるさ。無理しない程度には見張ってようか」

「えぇ~……オレは別に興味ないんだけど……まぁいいか。やる事もないし。とりあえず、アンタは先に厨房の大戦争を止める方が先だろうしな」

「えっ、待って。何それ、一体何が起こってるの!?」

「百聞は一見に如かず。行った方が早いぜ?」

「誰が何をしてるかも話してくれないとは……アンリめ、やりおる……!! じゃ、行ってくる!!」

「おぅ。気を付けろよ~」

「危険だったら救援は呼ぶようにな~」

 

 そう言って、アンリと新シンはオオガミを見送るのだった。




 ノッブさえいれば……ノッブさえいれば……!!!

 というか、ノッブまで来たら、実質できないことがほとんどなくなるというさりげないホラー。自由度が高くなる……!


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別段争いも無い平和な日(久しぶりにパフェが食べたいわ)

「マスター、何をしているんだ?」

 

 厨房でパフェを作っているオオガミに、エミヤは声をかける。

 

「あぁ、エウリュアレにちょっとね。唐突に食べたいって言い出して」

「そうか。何か手伝えることがあるなら手伝うが、必要か?」

「いや、今はいいかな。ただ、もしかしたらエウリュアレにつられて後何人か来るかもしれないからその時はお願い」

「分かった。デザート系で良いのか?」

「これと違って、少量でお願いね」

「任せてくれ。要望にはしっかりと応えよう」

 

 そう言って、オオガミが完成させたのと入れ替わる様にエミヤが作り始める。

 そして、オオガミがパフェを持って行く先には当然エウリュアレがいるわけで、

 

「意外と早かったわね。また作る速度を上げたの?」

「そりゃ、これだけ作ってたら、自然と作る速度は上がるよね。で、やっぱり増えてますよね」

 

 オオガミの予想通り、エウリュアレの周りにはアビゲイルとジャック、バニヤンが座っていた。

 

「美味しいパフェが食べられると聞いて!」

「お母さんがおいしそうなモノを作ってるって聞いて!」

「甘いものが食べられると聞いて!」

「どういう噂の広がり方をしたのさ」

 

 そう言いつつ、エウリュアレの前にパフェを置くオオガミ。

 エウリュアレはそのパフェを前にして、

 

「今更だけど、地味に量も増えていってるのよね……」

「エウリュアレなら食べられるでしょ?」

「私は何だと思われてるのかしら……」

「まぁ、無理だったら周囲が狙ってるし……良いんじゃない?」

「……私の半分くらいのを一人一つ食べて、その上で食べられるのはいないと思うのだけど」

 

 そう言って、エウリュアレの視線の先を見ると、エウリュアレの言った通り、半分サイズのパフェが三つ出てきて、アビゲイル達の前に置かれる。

 

「気付いたら作り過ぎてしまってな……許してほしい」

「エミヤ……あれ、残ったら誰が食べると思って……」

「それはマスターしかいるまい。自分で蒔いた種だ。頑張るんだな」

「……図ったね?」

「そんな、まさか。私はこれで失礼させていただくよ」

「あっ、ちょ、霊体化して逃げやがった……!!」

 

 オオガミが止める間もなく霊体化して逃げるエミヤ。

 エウリュアレはその様子を見て楽しそうに笑いながら、

 

「まぁ、そんなに残さないわ。もしかしたら残んないかもしれないし、そこで見てたらどうかしら」

「ぐぅ……まぁ、良いけどさ……」

 

 そう言って、オオガミはエウリュアレの近くの席に座り、四人が食べ進めるのをぼんやりと眺めるのだった。




 最後……何時登場しましたっけ……凄い懐かしい気がする……

 あ、ちなみに裏では周回してスカディの第三スキルが8まで上がりました。レベル10まで後少し……!!


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そろそろ暴れ疲れたわ(だからって言って、人の膝の上を占拠しないで)

「ふぅ……疲れたわ」

「エウリュアレは何もしてないでしょ……むしろ、疲れさせる方だったじゃん」

「…………」

「あっ、痛い痛い痛い。太ももを抓ってくるのは止めて!」

 

 オオガミの膝に頭を乗せていたエウリュアレは、無表情で枕を思いっきりつねる。

 そして、オオガミの悲鳴を少し聞いたあと、手を離して、

 

「そうやって、毎度変なことを言うからこういう目に遭うんでしょ?」

「な、納得いかない……」

 

 つねられた場所が、エウリュアレの下なので、押さえることも出来ずに半泣きになるオオガミ。

 その事を分かっていてやったエウリュアレは、楽しそうに微笑んでいた。

 

「それで、何をどう思ってエウリュアレは膝枕を要望してきたの?」

「最近ドタバタしてたから疲れただけよ。別に、深い意味はないわ。ただ、そのうちここが私専用の席じゃなくなると思って」

「何の話ですか……そもそも、専用席にされた覚えはないんだけど」

「私がそうと決めたらそうなるのよ」

「えぇ……」

 

 オオガミがそう呟くも、エウリュアレはそのまま寝に入る。

 それに気付いたオオガミは、エウリュアレの頭を撫でつつ、どうするかを考えていた。

 すると、

 

「マスター! 遊びに来たわよ!!」

「お母さんあそぼー!!」

「私も来たよ、マスター!」

「流石に三人も抑え切れませんでした……」

 

 アビゲイル、ジャック、バニヤンの三人と、引きずられるように入ってきたアナ。

 単純に力で引っ張られてきたんだろうな、と思いつつ、諦めるオオガミ。

 

「エウリュアレが寝てるので、静かに入ってきてね」

「むっ。エウリュアレさんが寝てるのはいいけど、なんでマスターに膝枕をされてるのかしら!!」

「じゃあ私は右~」

「じゃあ、私は後ろだね!」

「あぁっ! ずるいわ!!」

 

 アビゲイルが文句を言っている間に、ジャックは右側を、バニヤンは背後を陣取る。

 エウリュアレが左側に横になっているせいで、もう取り付ける場所は無いのだった。

 

「うぐぐ……まさか先を越されると思わなかったのだけど……!! ジャックとバニヤンは良いとしても、エウリュアレさんはそろそろ自重してほしいわ!」

「姉様が自重するわけないじゃないですか。姉様ですし。基本自由ですよ、あの人」

「アナ……それ、本人に聞かれたら酷い目に遭うと思うんだけど……」

「大丈夫です。マスターがいるなら、言った本人よりもマスターの方に八つ当たりしますし。大丈夫です」

「どの辺が大丈夫なのかな!? 明らかにオレが被害に遭うのは確定したって事じゃないの!?」

「静かにしてください。姉様が起きたらどうするんですか」

「んな理不尽な……!?」

 

 そうオオガミが言った時だった。

 我慢の限界が来たのか、アビゲイルがオオガミの隣を奪うために、エウリュアレへ跳びかかるのだった。




 アビゲイルのキャラがダントツで迷走してる(今更


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スカディのスキル上げはいったん終了(それで、次はどうなるの?)

「う~ん……どうしようか」

「どうするって、何がよ」

 

 机に突っ伏しながら呟くオオガミに、邪ンヌが聞く。

 オオガミはぐでっとしたまま、

 

「いやね? そろそろオーロラ鋼も集め終わったし、次はやっぱり種火を集めるべきかなって思って」

「ふぅん? まぁ、良いんじゃない? 種火はあっても困らないでしょうし」

「……まぁ、それしかやることないしね」

 

 そう呟きつつ、机の上に置いておいた煎餅をバリバリと食べるオオガミ。

 そんなオオガミを見ていた邪ンヌは、ふと、

 

「ねぇ、オーロラ鋼を集め終わったって事は、つまりあの女王のスキル上げは終わったって事?」

「まぁね。って言っても、最低限しかやってないよ? 第一スキルと第三スキルだけだし。まぁ、それだけあればしばらくは大丈夫でしょ」

「そう……第二は後でもいいのね」

「上げといた方が良いのは確かだけどね。でも、急を要するものではないって感じかな」

 

 そう言って、二枚目に手を出すオオガミ。

 釣られて邪ンヌも煎餅を食べ始める。

 

「……それで、私のスキルは何時上がるの?」

「未定。そもそも、貝殻使う人は放置予定」

「ふぅん……じゃあ私は放置されるの?」

「うん。まぁ、お姉ちゃんの方は、システムが出来るかどうかで育成が決まるけど。アーチャーの石は余ってるしね」

「なんでアイツが出来て、私が出来ないのよ!! おかしいでしょ!!」

「キレられても困るんですよお客様ぁ!!」

 

 オオガミの襟を掴んで怒る邪ンヌと、悲鳴を上げるオオガミ。

 そして、そこに颯爽と現れる黒い影。

 

「邪ンヌさん……何をしているの?」

「ひっ!」

「あ、アビー。いや、これはあれだよ。じゃ、じゃれてるだけだから。ステイステイ。アビーが殴ると邪ンヌが吹っ飛ぶ」

「えぇ、そうね。相性不利に加えてレベル差20ですもの。苦しませないわ。一ターンで消し飛ばす」

「ちょっと、殺意が全く薄れないんだけど……!?」

 

 一撃で消し飛ばすくらいの殺意があふれるアビゲイル。

 それに対し、邪ンヌだけでなくオオガミも頬を引きつらせている。

 

「と、とりあえず手を離そう邪ンヌ! このままだと俺まで巻き込まれる!」

「諦めなさい。死なば諸共よ……!!」

「そんな理由で死にたくないんだけど!? というか、なんでアビーは微笑んだまま固まってるの!? ここ最近で一番の理不尽だと思うんだけど! 邪ンヌよりジャンヌを優先するかもしれないってだけでシバかれる理不尽さ……!!」

「大体いつも理不尽に攻撃受けてるくせに、なんで私だけ理不尽さを強調されなくちゃいけないのよ……!?」

「大丈夫よ邪ンヌさん。だって、二人まとめて吹っ飛ばすもの」

「「犠牲はこっちだけで!!」」

 

 そう言った直後、二人は吹っ飛ばされるのだった。




 どうしてこうなった……と、とりあえず、これでスカスカシステムは安定するはず……邪ンヌはもう少し放置ですかね。


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これ、どういう状況なのかしら(お姉ちゃん的には、膝枕をしたいのですけどね)

「……何してるの?」

「あら、エウリュアレさん。何って、お姉ちゃんとして、弟君の寝顔を見ていただけですよ」

「普通はしないと思うのだけど」

 

 そういうエウリュアレの視線の先には、ぐったりとして寝ているオオガミと、その隣に椅子を持ってきて、座っているジャンヌがいた。

 

「お姉ちゃん的には、膝枕をしたいんですが、ちょっと無理そうなんですよ」

「何考えているのかしら、この聖女……というか、なんでよ。やろうと思えばできるでしょうに」

「いえ、流石にこの状態でやるのは無理ですよ……」

 

 そう言って、ジャンヌがオオガミに掛かっている布団を捲ると、そこにはアビゲイル、ジャック、バニヤンの三人がいた。

 

「……どういう状況?」

「見たままとしか……私が来たときからこんな感じでしたよ」

「そう……ところで、貴女のオルタの方は? 昨日アビーがマスターを引きずってきてから見てないけど」

 

 もうオオガミの事は気にしないようにして、昨日以降見てない邪ンヌについて聞く。

 

「あ、そうですそうです。聞いてください。あの子ったら、昨日部屋に帰ってきたと思ったらスッゴいボロボロで、そのまま寝ようとしたんですよ! 流石にお風呂に入れましたけど、なんでボロボロなのかは一向に答えてくれないんです! 酷いじゃないですか!」

「いえ、流石に酷いとは思わないけど……結局答えは分かったの?」

「それがさっぱり。今もぐっすり寝てるので、ジーク君がいる場所を避けながらここに来たんです。きっと弟君なら知ってると思ったので」

「……つまり、昨日何があったかを知るためにここに来て、寝てるマスターに遭遇したわけね」

「大体そんな感じです。ところで、エウリュアレさんは何をしに来たんですか?」

 

 ジャンヌに逆に聞かれ、言葉に詰まるエウリュアレ。

 少し考えたあと、

 

「本をね、借りに来たのよ」

「本ですか? 一体どんな本を?」

「この前のサバフェスで買ったものよ。マスター、色々なものを買ってきたから」

「そうですか。もし良かったら、私の部屋のも見ていきますか? たぶん、弟君よりもあると思いますし」

「そうなの? じゃあ、今度お邪魔させてもらおうかしら」

「ふふっ。案外、エウリュアレさんも人間らしいところがあるんですね」

「……私、そんなに変わった覚えはないのだけど?」

「じゃあ、きっと最初からそうだったのかもです。まぁ、私は見てないので知りませんが。ただ、弟君――――いえ、マスターとほとんど一緒にいるので、たぶん気が合うんですよね。これからもよろしくお願いしますね」

「別に、お願いされるまでもないわよ……」

 

 そう言って、ジャンヌの隣に椅子を持ってきて座るエウリュアレ。

 

「まぁ、私としては、自然体でいても何も言われないから楽なのよ。それに、イタズラしてもそこまで嫌われないっぽいし」

「それは良いことです。自然体でいれるということは、信頼してる、されてるということですから。ただ、あまり迷惑はかけないようにしてくださいね? 逆もまたしかり。弟君が迷惑をかけていたら、私に言ってください。しっかり叱りますので!」

「ふふっ。お手柔らかにね」

 

 そう言って、エウリュアレはジャンヌに微笑むのだった。




 ジャンヌさん、ブレッブレ。否、キレッキレ。誰だこんなキャラにしたのは……


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風紀組が来た!(風紀組にはヤベェ奴をぶつけとけ)

「風紀の乱れは気の乱れ……要するに、この状況は私的に見逃せないわ!!」

 

 オオガミの部屋に乗り込んできて、そう言いきったマルタ。

 それを唖然としながら聞いていたオオガミ達は、その言葉を理解すると同時に、

 

「アビー! 門を開いて! 逃げるよ!!」

「BBは荷物を持って! 早く!! 座に還されるわよ!!」

「もう開いたわ!」

「持ちました! 逃げますよ!!」

「逃がすか!!」

 

 逃げ始めると同時に攻撃を仕掛けてくるマルタ。

 攻撃が当たる寸前でアビゲイルが触手を使って防ごうとするが、防ぎ切れずにオオガミの顔の真横に拳が来る。

 

「ひっ……!!」

「危ない危ない。うっかりマスターを殴るところだったわ。さ、観念しなさい!」

「が、ガンド!!」

 

 殺されそうな雰囲気を感じたオオガミは、ガンドを使って拘束して全力で逃走する。

 何とか門を潜って逃げた先は倉庫。今日は種火を集めていただけなので、アビゲイルに運んでもらうだけで済んでいたので、マシュ達は休んでいる。

 そして、この後マルタからどうやって逃げるかを相談していると、

 

「ここに逃げたのは分かってるのよ!」

 

 そう言って、倉庫の扉が開けられる。

 とりあえずアビゲイルに門だけ開かせ、後は逃げるタイミングだけだった。

 そんなときである。

 

「あらあら……見ない方がいらっしゃいますね?」

「……こっちの方が危ない気がするわ……!!」

 

 響いてくる声は、マルタとキアラ。

 一番最初に反応したのはアビゲイルだった。

 

「ま、マスター……! 私、今すぐ逃げたいのだけど……!!」

「い、今のタイミングは危ない気がする……」

「いえ、今のうちに逃げた方が良いわ。これ以上は巻き込まれる可能性があるもの」

「BBちゃんもそう思います……撤退です撤退」

「……よし、じゃあ逃走で」

 

 そう言って逃走するオオガミ達。

 逃げ先はキッチン。マルタが暴れるよりも先に、真顔でキャットとエミヤが止めてくると踏んでここへ逃げ込んだ。

 

「ふぅ……ここまで逃げれば大丈夫でしょ。休憩しよう、お菓子とかないかな」

「あ、私も見に行って良いかしら」

「私も行くわ! ちょっと一人ではいたくないもの」

「BBちゃんは、マルタさん対策を考えておきますね。一番最悪なのは、マシュさんと手を組まれることですが……まぁ、無い事を祈るしかないですね」

 

 そう言って、お菓子を探しに行くオオガミ達と、対策を考えるBBに分かれる。

 

「ところで、お菓子って、誰が補充してるの?」

「いや、分かり切ってると思うけど、エミヤと俺でやってるよ。キャットもたまにやってくれるけど」

「ふぅん? そんなに保存できないんじゃないの?」

「だからほら、エウリュアレが毎日食べる事になってるわけだよ」

「……私、そんなに食べてるつもりはないのだけど」

「まぁ、ジャックとバニヤンにも渡してるしね」

「私も食べてるし! 美味しいよね!」

 

 とはいえ、手軽に作れるクッキーはあまり保存がきかないので、長期保存が出来るように頑張りたいオオガミだった。

 

「さてと、んじゃ、適当に取ったらBBの所に戻ろうか」

 

 そう言って、オオガミ達はお菓子を選ぶのだった。




 キアラさえぶつけて置けば、風紀委員も形無しよ……それだけ危ないって事ですね。はい。

 さて、本格的にマルタさんは強敵。アンリじゃ勝てないだろうし……うぅむ。


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Fate/Accel Zero Order -LAP_2-
始まったZeroコラボ!(弛くまったり行きたいね)


※Fate/Accel Zero Orderの微ネタバレあり! 気になさる方はご注意ください!


「礼装良し! 編成良し! アンリ拘束よし!!」

「おい待てクソマスター! 何さりげなくオレを捕縛してやがる!!」

「だって、アンリ、逃げるんだもの。ちゃんと連れて行かないと……」

 

 第四次聖杯戦争に乗り込んだオオガミ達。

 先ほどから騒いでいるアンリは、逃げ出そうと暴れているのでアビゲイルが拘束している。

 

「それで、今回のやる気は?」

「ゆるゆるっと頑張ろうかなと」

「すっごいふわふわね。どれくらいで終わるのかしら……今回もクエスト式なのに」

「マスター、クエスト式とはかなり相性が悪いですしね。それに、この次にネロ祭が控えてることを考えると、リンゴまでは使わないんじゃないかと思ってます」

「甘いわよメドゥーサ。この男、自分の計画をスパッと忘れて使うからね?」

「ネロ祭は流石に本気でやるけども! リンゴは全力行使だから!!」

「そうやって言いつつ、最終的にほとんどやらないで終わるんですよね?」

「……前向きに、精一杯、頑張ろうかなって思います」

 

 目を逸らしながら答えるオオガミ。アナの追及はそれでも続いていた。

 それを横目で見つつ、エウリュアレはアビゲイルの方を向き、

 

「とりあえず、今回は実質誰でもイベントサーヴァント状態だから礼装さえあれば問題ないわ。で、その礼装もある程度揃ってるから、その場で変えていけば問題ない。でもって、アンリは結構優秀だから今回はたらい回しよ。そして、前面二枠は周回専用人員で、残りの二つのうち、一つはほぼ確定でマシュだから、残る一つが自由要素ね。つまり、それ以外は基本暇なのよ」

「なるほど……! つまり、観光し放題ってことね!?」

「なんでお前らはいつもそんなフリーダムなんだよ……自由すぎんだろ」

 

 アンリとマシュは生け贄になると確信しているエウリュアレと、それを何の疑いもなく信じるアビゲイル。

 色々と突っ込みたいところはあるものの、最終的にはマスターを無視して自分達で遊び始める辺りに頬を引きつらせるアンリ。

 

「そうは言うけど、アンリ。マシュがいるのにマスターがピンチになるなんて思えないのだけど」

「えぇ。それに、弱いことに定評のあるアンリがいて、生き残れないわけないわ。アンリなら引き際くらい分かるはずだもの」

「言いたい放題しやがって……はいはい。任せとけって。オレがいる以上、マスターだけは大丈夫だろうさ」

「アンリが自信満々に言うのって、一番信用できないのだけど……」

「テメェいつか殴り飛ばしてやるからな! 覚悟しろよ!」

 

 エウリュアレとアビゲイルに説得され、マスターだけは守ると言った直後におちょくるアビゲイル。

 とはいえ、二人とも楽しんでいる節があるので、エウリュアレはくすりと笑うのだった。




 前面は巌窟スカディ、後方はフリー……わりとサクサク進んでて逆に怖い私です。


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最近働き詰めのスカディさん(しかし周回性能高いので過労死枠)

※Fate/Accel Zero Orderの微ネタバレあり! 気になさる方はご注意ください!


「ふぅ……しかし、私はここに来てから休んでいる日がほとんどない気がするのだが……」

「お疲れ様。これでも食べて、休んでください」

「……まぁ、良いか。うむ、ありがたく受け取ろう」

 

 ひたすら周回させられていたスカディは、ふと疑問を口にするが、オオガミにアイスを貰い、気分が良くなったので気にしないことにした。

 それを見ていたアナは、

 

「女神への扱いが雑だと思うんですが」

「マスターへの扱いがぶっちぎりで雑な人が何をおっしゃいますか」

 

 即座に言い返すオオガミ。

 とはいえ、自覚はあるのでそれ以上は言わない。アイス一つで女神を懐柔しようとしているのだから。

 

「アナも食べる?」

「……モナカのやつが良いです」

「はいはい。じゃ、これで良い?」

「よくありましたね……」

「遊びに行った二人の分以外は買ってきたからね。アンリとマシュはどうする?」

 

 振り返り、遠くにいるマシュとアンリにも声をかけるオオガミ。

 アナは貰ったアイスを食べつつ、遊びに出掛けたエウリュアレとアビゲイルを思う。

 

「姉様……大丈夫でしょうか……最近はマスターといるから安心していたのですが、アビゲイルさんと一緒ですし……やっぱり私もついて行った方が良かったんじゃ……」

 

 アナの表情がだんだん険しくなっていく。

 エウリュアレと離れているのは、エウリュアレにオオガミの近くにいろと言われたのが主な原因だった。

 そんなときだった。アナは頭を乱雑に撫でられる。

 困惑して顔を上げると、そこにはオオガミがいた。

 

「……何をするんですか。刈り取りますよ?」

「いや、なんか険しい顔してるなぁって。頬を膨らませるのはまだ良いと思うけど、睨み付けるような目はどうかなって思うんだよ。それと、言いたいことは素直に言って良いんだよ?」

「……髪がボサボサになってしまいました。直してください。これじゃあ姉様に顔向けできませんから」

「任せといて。ちゃんと整えるから」

 

 そう言って、どこから取り出したのか、櫛を手に持って座れる場所まで移動する。

 アナは大人しくついていき、オオガミの正面に背を向けた状態で座るのだった。

 

 

 * * *

 

 

「先輩、私にはやってくれたこと無いんですよ」

「そりゃお前、単純だろ。そもそも一緒にいないじゃん。今から行って、やってもらえば良いだろうが」

「流石にそれは……う~ん……」

 

 不満そうに唇を尖らせつつカップアイスを食べるマシュと、釘を打つこともできると話題の鋼鉄あずきアイスと格闘するアンリ。

 ちなみに、エウリュアレとアビゲイルは、本当に遊びに出掛けている。もちろん、財布はオオガミが渡した分の金額しか入っていない。

 

「まぁ、うちのマスターは言わないやつは基本放置の方向だから、やってほしいなら言いに行くこった。しっかし、このアイス……食えねぇなぁ……」

「うぐぐ……やっぱり言わないとダメですか……でも……うぅん……」

 

 煮え切らないマシュを横目に、アイスを相手に苦戦しているアンリなのだった。




 のんびりとやっているので全然終わらない……

 エウリュアレがいないのって、意外と珍しいような……


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これ、終わるかな……(最悪スパートかければ行けるんじゃね?)

※Fate/Accel Zero Orderの微ネタバレあり! 気になさる方はご注意ください!


「……終わんのか?」

「……順調にいけば、たぶん」

 

 苦い顔をしつつ、アンリの疑問に答えるオオガミ。

 今は休憩中だが、APが回復したらまた周回再開するつもりだった。

 

「つか、リンゴ使えば早く終わるんだろ? さっさと使っちまえよ」

「いや、そこまで急いでる訳じゃないから良いんだけどさ。ただ、そもそもどれだけあるのか知らないから、急いだ方がいいのかも分からないのが、困ったところ」

「ふぅん……ま、良いんなら問題ねぇか。ところでさ……マシュに黙ってガチャ引きまくってるが、良いのか? バレたら殺されんじゃねぇの?」

「……まぁ、バレなきゃ安全なんで……最悪、全力で逃げるつもり」

「なるほどな。だってさ、マシュ」

「えっ」

 

 直後、背後から抱き締められるオオガミ。

 正面でアンリがニヤニヤと笑い、止める間もなく逃げ出した。

 背後にいるのは、先程の流れからも、背中に当たる感触からも容易に想像できた。

 

「先輩……私、使わないでくださいって、あれだけ言ったじゃないですか……」

「……ぐうの音も出ないです……」

「また、勝手に使ったんですね?」

「……イスカンダルが来たのなら、引かざるを得ないかなって。是非もない事象というものですよ」

「じゃあ、今から私が先輩に八つ当たりをするのも、是非もない事象ですね」

「いや、それは――――」

 

 直後、オオガミの悲鳴が響き渡るのだった。

 

 

 * * *

 

 

「……今、マスターがとんでもない目に遭っている気がしたのだけど」

 

 そう呟くエウリュアレに、店員からクレープを受け取っていたアビゲイルとアナが振り返る。

 

「姉様……突然どうしたんですか?」

「マスターがとんでもない目に遭ってるって……一体どんなこと? 正直に言って、マスターはそう簡単にやられないと思うのだけど。だって、マスターよ?」

「……なんとなく、貴女達がマスターの事をどう思ってるかが分かるのだけど……でも、マシュ相手には結構甘いから、たぶん今頃黙って呼符と石を使ったのがバレて怒られてるんじゃないかしら……」

 

 大体現在のオオガミの状況と合っていた。

 だが、アビゲイルは流石に信じられず、

 

「まさか、マスターが負けるわけないじゃない。どうせすぐ逃げるわ」

「どうかしらね。今のところ、マシュが本気で追いかけて捕まらない方が珍しいのだけど」

「えぇ……じゃあ、なんで私達じゃ捕まらないのかしら……」

「……姉様が探すと、すぐに見つかりますけどね……」

「……エウリュアレさんを越えられる気がしないのだけど」

「失礼な……私もそこまでじゃないわよ」

 

 そう言って、なんとなくオオガミがピンチなような気がしつつも、それを無視して食べ歩きを続行するエウリュアレ達なのだった。




 ひっそりとマシュは対オオガミ特攻。


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全然帰ってこないよね、エウリュアレ(あんまり心配しなくても良いだろ?)

※Fate/Accel Zero Orderのネタバレあり! ご注意ください!


「……そういえば、エウリュアレってどこに行ったの?」

「なんだよマスター、いきなりだな」

 

 再びAP回復待ちの休憩中のこと。

 ふと思ったオオガミが呟き、アンリがそれに反応する。

 

「いやね? 流石に三日間帰ってこないと心配になるじゃん。サバフェスの時でも、そんなに長期間姿を見ない時はなかったし」

「あ~……なるほどな。まぁ、そんな気にすることでもないだろ。マスターみたいな人間じゃねぇんだ。流石にそう簡単には死なねぇって」

「ん~……そうは言ってもねぇ……心配なものは心配なのよ」

「アンタは母親かっての。流石にそこまで心配する必要はないって」

「むぅ……」

 

 悩ましいような声を上げるオオガミに、アンリはため息を吐く。

 

「とりあえず、周回しないとかなぁ……」

「そうだな。んで? 今は何をしないとだっけか」

「ホムンクルスを30体かなぁ……サクッと終わらないかなぁ……」

「行かなきゃ終わらねぇし。ほら、さっさと行くぞ」

 

 アンリはそう言って立ち上がり、オオガミに手を差し出す。

 

「うへぇ……行かなきゃだよねぇ……」

「当たり前だろ。でなきゃ終わらねぇっての。ホムンクルス30体くらい余裕だろ?」

「そうだけども……まぁ、美味しいイベントではあるし、やろうか」

 

 そう言ってアンリの手を取って立ち上がるオオガミ。

 そして、スカディに声をかけて周回を再開するのだった。

 

 

 * * *

 

 

「……そろそろ一回帰ろうかしら」

 

 そう呟くエウリュアレに、大判焼きを受け取っていたアナとアビゲイルが振り返る。

 

「突然どうしたんですか姉様」

「まだ橋の向こうに行ってないけど……もう帰るの?」

「流石にね……三日くらい帰ってなかった気がするし、一回戻らないとマスターが文句言いそうだし」

「……私、そんなこと言われた覚えがないのだけど」

「姉様といると、わりと良くあるやつですね」

「私もそんなに言われたことないわよ……適当なこと言わないでほしいわ」

 

 アナに文句を言いつつ、大判焼きを受け取るエウリュアレ。

 アビゲイルは首をかしげつつ、

 

「でも、どこにいるのかしら。場所がわからないと門を開けないのだけど」

「そうねぇ……確か、城があったわよね。ちょっとそこに行ってみましょう。あぁ、でも、正確な場所がわからないなら止めといた方がいいかしら。方角的にはあっちのはずだし、歩いていきましょうか」

「食べ歩きは一時中断ね。うん」

「一回帰って顔を見せたらまた再開よ。そんな長くはいるつもりはないもの」

「そうですか。じゃあ、早めに行って済ませてしまいましょう」

 

 そう言って、三人は歩き出すのだった。




 なんか、エウリュアレって毎度食べ歩きツアーしてる気がする……


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特定モンスター100体とか、普通に面倒くさい(でもマスターはなんだかんだ言ってやるのよね!)

※Fate/Accel Zero Orderのネタバレあり! 気になさる方はご注意ください!


「マスター! 帰ってきたわよ!!」

「うわっぷ! あ、アビーが飛びかかってくるとは思わなかった……」

 

 遠目に見えた瞬間に門を開いて飛び掛かってきたアビゲイルを正面から受け止めるオオガミ。

 ちなみに、オオガミはようやくハサン集団を倒して再び帰ってきたばかりだった。

 

「それで、離れている間、何してたの?」

「食べ歩きをしていただけよ。エウリュアレさんが先導して、ずっと食べてたわ」

「あぁ……うん。エウリュアレらしいね。それで、どれだけ使ったの?」

「さぁ? アナさんが止めなかったから、たぶん残ってるとは思うのだけど」

「ん~……アナはエウリュアレ相手だと基本止めないから……後で見ておくよ」

「えぇ、お願いね。マスターの顔を見たらすぐにまた行くって言っていたもの。用意しておかないとダメよ?」

「あはは……いや、残金の消耗が尋常じゃない……次回の給料に期待せざるを得ない……」

 

 遠い目をするオオガミ。アビゲイルは苦い顔をするも、特には言わない。

 そこでようやくエウリュアレ達が戻ってくる。

 

「あら、アビーだけがいれば良かったかしら」

「帰って来なくても良かったかもしれませんね。今から戻りますか?」

「流石にそこまではしないわよ……というか、帰るのにもアビーの門を使いたいのだけど」

 

 そう言って、オオガミの近くに移動するエウリュアレ。アナは少し離れたところから見守っていた。

 

「ところで、どれくらい終わったの?」

「さぁ……? 正直、どれだけ掛かるのか分かんないから、進み具合も不明。ただ、なんとなく後半な気はする」

「そう……まぁ、順調なら良いわ。それで、私たちの出番はありそう?」

「いや、無いかな。正直、三人の出番は、あったとしても高難易度くらいじゃない?」

「ふぅん……じゃあ、たぶん出番はないわね。ねぇ、バニヤンとジャックも呼んで良いかしら。その方が騒げると思うし」

「流石にこれ以上サーヴァントを増やすのは微妙。どっちかって言うと、マシュに殺されそう」

「あ~……それならダメね。諦めましょう。まぁ、ネロ祭の時に暴れられるでしょうし、その時で良いわ」

 

 エウリュアレはそう言ってオオガミから離れる。

 すると、アビゲイルもオオガミから降りてエウリュアレについていった。

 首をかしげるオオガミに、アナが声をかける。

 

「姉様は、たぶん話し相手を増やしたいだけですよ。今のままでも十分だけど、多ければ多いほど良いというだけの感覚です。あんまり気にしないでください」

「そうは言われてもね……チビッ子サーヴァントはエミヤさんがしばらく見てくれてると思うし、安心して任せてはいるんだけど……たぶん、心配なところもあるんだろうなぁって」

 

 オオガミはそう言って少しの間エウリュアレを見たあと、ふと思い出したようにアナの方を向くと、

 

「そういえば、財布の中身って残ってるの?」

「……どうぞ」

 

 そう言って、アナは目を逸らしつつオオガミに財布を渡すのだった。




 エウリュアレが何かを気にかけるときって、なんとなく何かをやらかしているときな気分……気のせい……?


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ちょっとしたお願いを聞いてほしいのだけど(想定外の方向に振り切れたお願いでビックリだよ)

「……何故、こんな状況になったものか。肩車とか、要求されるとは思わなかったよ」

「……高さが違うのよね。でも、まぁ、これはこれでいいわ」

 

 そういうエウリュアレは、オオガミに肩車をされていた。

 オオガミとしては別段構わないのだが、少し離れたところを歩いているアナの視線がまるで絶対零度のごとき冷たさだった。

 

「そういえば、アビーは?」

「今はスカディのところで話してるわよ。まぁ、楽しんでいるなら良いんじゃないかしら」

「スカサハ様のところ……ねぇ……まぁ、何の話をしてるかは知らないけど、気にすることでもないか」

「そうですね。姉様を放り出してまで気にする必要はないかと。えぇ、はい」

「……アナが若干怖いのですが、お姉さんから言ってやってください」

 

 アナが若干暴走気味なので、姉であるエウリュアレに叱ってもらおうと思い、投げ掛けたが、エウリュアレはなんでもないような表情で、

 

「私は別に良いのだけど。メドゥーサが暴走しても、マスターの責任じゃない?」

「うぐぐ……反論出来ない……」

 

 サーヴァントの暴走はマスターの責任。その言葉に、なんとなくペットを飼っているような、そんな気分になってしまうのだが、この暴走具合はどちらかというと、子供の世話をしているような感覚だった。

 

「そういえば、アンリの姿を見てない気がする……」

「アンリなら、さっき買い物に行って来るって言ってたわよ」

「買い物……? あぁ、いや、うん。まぁ、長期戦になるだろうしね。飲み物を買ってきたりするのも必要だよね……うんうん」

「……ちょっと様子を見に行ってきますね。流石に彼一人だと、帰ってこれない可能性がありますし」

「うん、お願い。実際、アンリだけだと不安だしね」

「はい。じゃあ、行ってきます」

「行ってらっしゃい。しばらくはここから動かない予定だよ」

 

 それを聞くと、アンリを探しに行くアナ。

 それを見送ったオオガミとエウリュアレは、

 

「一昨日くらいに美味しそうな店を見かけたのだけれど、行ってみない?」

「ん~……そうだね、後で行ってみようか。とりあえず、全員揃ったらかな」

 

 オオガミがそう答えると、なんとも言えない表情になるエウリュアレ。

 

「……はぁ。まぁ、それでいいわ。まずは向こうにいるマシュ達を誘いましょうか。三人とも揃ってるし、ちょうどいいでしょ。後はアンリとメドゥーサを待つくらいかしら」

「そうだね。まぁ、アナのことだからそんなに時間はかからないと思うし、大丈夫だよね」

「えぇ、そうね。ほら、早く行きましょ」

 

 そう言って、二人はマシュ達の方へと向かうのだった。




 ずっと肩車をしていることを考えると、かなり不審者な気がしないでもない。いや、いつも通りですね……


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これでようやく一段落?(明日、更新があるわよ?)

※Fate/Accel Zero Orderのネタバレあり! 気になさる方はご注意ください!


「これで一段落かな?」

 

 大聖杯は破壊され、アイリを召喚できた事で、一息吐くオオガミ達。

 ただ、アンリは一人複雑そうな表情をしていた。

 

「……なんつーか、今更なんだが、俺消されちゃいそうじゃね?」

「アンリは消えないわ。消えたら私が引きずり戻すもの」

 

 そう言ってアンリの隣に座るのはアビゲイル。

 それに対して、言われたアンリの方は苦笑いしか出来ない。

 

「あら、アンリはそう簡単に死ねないようにされたみたいね。ふふっ、頑張りなさい?」

「そもそも前線に出ないのに消えるも何もないと思うのですが」

「おいマスター。こっちの姉妹はアンタの担当だろうが。毒吐いてくるんですけど~」

「それを言うとほとんどは俺の担当になるんですが。アンリは誰担当なのさ」

「……オレはほら、あぶれ者担当だからな。いや、暇人担当か?」

「……このイベント終わったら厨房担当する?」

「いや、それは止めておくわ。あそこ一番危ねぇじゃん」

 

 現在、厨房はエミヤとキャットの二人体制だが、スカディを筆頭に子供サーヴァント達がおやつを巡って争っていることがよくあった。

 なので、わりと危険地域ではあるのだ。そして、アンリは当然、それを知っている。

 

「まぁ、やるとしても倉庫番辺りだろ。まだ安全そうだ」

「そう? マシュの管轄だから分かんないけど、わりと大変そうだよ?」

「えぇ……はい。アンリは全く手伝わないの分からないと思いますが、整理はとっても時間がかかりますし、倉庫番は監視範囲が広い上に狙ってくるのが複数人いるのでかなり辛いですよ」

「……ニートで良い?」

「許すと思った?」

 

 アナの言葉を聞いて、震えながら無職宣言をするアンリに向かって、無情にも却下するオオガミ。

 

「いや、いやいや、マスター? 冷静に考えろよ。オレは最弱サーヴァントだぜ? 使う価値とか無いだろ」

「ネタ枠」

「最低だなアンタ! いや、この性能だと否定できねぇんだけどさ!?」

「まぁ、アンリはいてくれるだけで助かるので。具体的には、犠牲者が増える」

「被害者の会……! 一体何の被害者だよ……!?」

「そりゃあ……BBとか、アビーとか?」

「なるほど。そりゃ、納得だ。だがな、マスター。本人がいる状況で言うのはどうかと思う」

 

 そういうアンリの隣では、無言で満面の笑みを浮かべるアビゲイルの姿があった。

 そんなアビゲイルの後ろからひょっこりと顔だけ出したエウリュアレは、

 

「酷いわね。マスターったら、アビーはBBと同じ問題児だって言い切ったわよ? これは一度仕置きしないとよね?」

「……マスター覚悟ぉ!!」

「ぎゃああぁぁぁ!!」

 

 飛びかかってくるアビゲイルから、必死で逃げるオオガミ。

 それを見て、満足そうなエウリュアレと、苦笑いを浮かべるアンリが残されるのだった。




 激戦区は厨房……スカディの支援は強敵……

 アイリは今日来たばかりなので、種火がない我がカルデアにおいて、しばらくは使えない悲劇。


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残りクエストは少しだけ!(さっさと終わらせちまおうぜ)

※Fate/Accel Zero Orderのネタバレあり! 気になさる方はご注意ください!


「さてさてぇ? クエストも残り少なくなってきたが、やる気のほどはどうだ? マスター」

「ぼちぼちってところかな。まぁ、リンゴ使ったら終わるでしょ」

 

 そういうオオガミの隣には、既に銀リンゴが積まれていた。とはいえ、実際にはほとんど使わないで終わる予定だった。

 

「うぅ……私はそろそろ、休みたいのだが……」

「……スカサハ様は、その、絆マになるまでは周回するかと」

「いや、流石に働かせ過ぎだと思うのだが。私も疲れるんだぞ?」

「分かってはいるんですけど……あ、ソフトクリーム食べる?」

「それは食べる。む、今誤魔化された気がしたのだが……」

「おいマスター。実はチョロいだろこの女神」

「アンリ。それ以上はいけない」

 

 ソフトクリームを貰ってご機嫌になったスカディを見て、その残念さに苦笑いになるアンリ。

 オオガミはそんなアンリに突っ込みつつ、アンリにもソフトクリームを渡す。

 

「ところで、あの女神達はどこ行ったんだ?」

「エウリュアレ達の事? それなら、また食べ歩きに行ったよ」

「ま、またかよ……暇なのか?」

「まぁ、気にしてないんだけどさ。ただ、お土産くらい持ってきてくれても良いんじゃないかなって、時々思う」

「あ~……いや、あれじゃね? お土産買って、渡すつもりが気付いたら食べてる感じのやつ。あんな感じだろ」

「あぁ、なるほど。納得できる。それなら確かに持ってこないよね」

「……適当に言ったんだが、納得されるとか思わなかったわ」

 

 オオガミの反応に困惑するアンリ。

 とはいえ、エウリュアレならばやりかねない気がするのがまた不思議なところだ。

 

「つか、マスターはあんまりついて行かねぇけど、クエストがあるからなのか?」

「まぁね。暇があるなら食べ歩きに参加したいし。正直、エウリュアレにレストランに誘われたときは結構考えた。行こうかと思ったけど、アナを迎えに行かせている間に行くのもどうかと思って止めたんだけどね……」

「そこは行けよマスター。男らしく行けって」

「流石に頼んでおいて、放置して食べに行くのはどうなのさ……」

「……変に良いやつなんだよなぁ、このマスター。普段は人の事を生け贄にして逃げるくせに。むしろその時こそ行っちゃうべきだったろ」

「うぐぐ……それを言われると耳が痛い……まぁ、周回が終わったら行くよ」

「……よし。じゃあさっさと終わらせるか。四元素アイリとか言うあいつらをさっさとぶっ飛ばしてエウリュアレを呼びに行くぞ」

「えっ、ちょっと待ってよ!」

 

 そう言って、オオガミとアンリアンリは周回を再開するのだった。




 エウリュアレが出ないのに、エウリュアレが話題の中心にいる不思議……


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日常
衣装チェンジもしたいよね(既に準備を整えているところは流石だと思うわ)


「エウリュアレならば、タンクトップにホットパンツコンボでもかなり可愛いんじゃなかろうか」

「突然どうしたこのマスター」

 

 突然変なことを言い出すオオガミに困惑するアンリ。

 すると、真剣そうな表情でオオガミが続ける。

 

「活発な雰囲気出そうじゃん? 普段のフリルドレスみたいな格好も良いけど、たまには別の姿も見たい。でも、再臨状態を変えたところでそこまで大幅には変わらないのでならばもう買ってくるしかなかろうと思いまして」

「お、おぅ……いや待て。その話の流れからすると、明らかに今から買ってくるかのような雰囲気だったが、その手に持っている袋はなんだ」

「何言ってんのアンリ。思い立ったら即実行。既に購入済みな訳だよ」

「全くもって理解できねぇ……!」

 

 既にオオガミの手にはいくつもの袋があった。明らかに今言っていたものだけでないことが分かる。

 

「他に何を買ってきたんだよ……」

「何って……上下一着ずつじゃどうかと思うし、ついでにアナとアビーの分も買ってきて、髪飾りも何種類か買ってきた。髪留めも色々買ったしね」

「……それは?」

「ん? あぁ、これ? これは伊達眼鏡。エウリュアレにこの服を着せるときに髪をポニーテールにしようと閃いて、直後に眼鏡も似合うのでは? と思ったのでノータイムで即購入。でも、そこまで眼鏡にこだわりがないので特には考えないで買ってきた。眼鏡警察に殺されるんじゃないかと震えている所存です」

「……なんだ、その……なんだ。もう、オレの手には負えねぇ案件だな」

 

 頭を抱えるアンリと、生き生きとしているオオガミ。

 そこで、ふとアンリは、一番重要なことに気付く。

 

「なぁマスター……それ、サイズ合ってるのか?」

「え? あぁ、アビーとアナは怪しいけど、エウリュアレは合ってる、丁度くらいだと思うよ? アビーとアナも、違ったとしても誤差の範囲だろうし」

「なんで分かるんだよ……」

「そりゃ、普段どれだけ一緒にいると思っているのか。むしろ分からないわけがないと思うんだよ」

「それを平然と言えるアンタにオレはビックリだわ。アンタが一番おかしいだろ」

「えぇ……」

 

 はぁ……と深いため息を吐くアンリ。

 そして、冷静に考えると、エウリュアレを着替えさせたいためだけに女性用の服を一人で買ってくるオオガミは、かなり大物なのではなかろうか。

 

「……つか、着てくれない可能性は考えないんだな」

「……その時は、ほら……うん。諦めて収納しておこうかと。エウリュアレとアナは体型変わらないし、アビーのは多少変わっても問題ない服だし……うん。気にしないよ」

「今にも血を吐きそうな顔してるんだが……」

 

 青い顔になっているオオガミに、アンリはなんとも言えない表情になるのだった。




 全く絵を描かないから、絵を描けないのが悔やまれる……練習しろよ私ぃ……!!


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荷物が増えすぎたかも(どうするんだよその量)

※Fate/Accel Zero Orderのネタバレあり! 気になさる方はご注意ください!


「裁縫とか出来るようになりたいよね」

「だから一式揃えてきましたってか。もうどこから突っ込めば良いんだよ」

 

 明らかに暴走しているオオガミ。

 その手には、昨日と同じようにいくつもの袋があり、今回は更にミシンも買ってきたらしい。

 

「んで、その荷物どうするんだよ。アビゲイルに送ってもらうのか?」

「予定としてはね。ただ、いつ帰ってくるのか分からないから、その間どこかに保管しておかないと……」

「さっさと買うから……呼び戻して送りゃ良いのに」

「出来たら苦労しないんだよね……仕方ないから待つしかあるまいよ」

 

 どうしたものかと悩むオオガミに、呆れるアンリ。

 そこへ、スカディがやって来て、昨日買った荷物を覗いていた。

 

「ふむ……これは、服か? サイズから見て、一昨日の者達へのか。ふぅむ……そうだ。私のも新調してくれないだろうか」

「えっ」

「おぅ、良かったな。直々の依頼だ。頑張れよー」

 

 楽しみにしているような表情でオオガミを見つめるスカディ。

 それに戦慄するオオガミと、楽しそうに笑うアンリ。

 真っ先に思ったのは、はたしてどのような物が似合うだろうかということ。

 

「よぅし……探しますよ! 要望はありますか!?」

「そうさなぁ……動きやすい服が良いな。可愛らしいのも良いが、些か私には……いや、なんでもない。まぁ、好きに見繕ってくれるとありがたいよ」

「ふむふむ……じゃあ、頑張ってみますね!」

「あぁ、任せたぞ」

 

 そう言って、どこかへ歩いていってしまうスカディ。

 それを見送ってから、オオガミはアンリに向けて、

 

「すまないアンリ……アンリには、もしかしたら死んできてもらう必要があるかもしれない……」

「は? いやいや、なんでだよ。唐突すぎるだろ?」

 

 当然の反応だった。

 だが、オオガミは酷く深刻そうな顔で、

 

「……スカディのサイズが分かんない」

「……オレに頼むのはおかしいだろ」

 

 要するに、スカディの体型を測ってこいという、遠回しな死刑宣告だった。

 アンリとしても、そんな理由で殺されたくはない。

 なので、他の人物へ依頼をぶつけさせる。

 

「あれだよ。アナにやらせれば良いじゃねぇか。別段、俺じゃなきゃ支障がある訳じゃねぇし。むしろ、そっちの方が平和的に解決するだろうさ」

「えぇ……それ、三人とも呼び戻すことになるじゃん……というか、そもそも連絡手段が無いんだけど」

「……チッ。仕方ねぇな。オレが呼んでくりゃ良いんだろ? 任せとけ。すぐ戻る」

 

 そう言うと、アンリはアナ達を探しに行くのだった。

 それを見送ったオオガミは、

 

「……入れ違いにならなければ良いんだけど」

 

 そう言って、荷物をまとめるのだった。




 こうしてのんびりしてますが、実はクエストは全部終わっているオオガミ君。今は素材交換を終わらせるために周回中……


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また私の宝具レベルが上がったんですが(まぁ、是非もないことだよ)

※Fate/Accel Zero Orderのネタバレあり! 気になさる方はご注意ください!


「何故か私の宝具レベルが上がったから急いで帰ってみたら……どういう状況ですか?」

 

 そう言うアナの視線の先には、簀巻きにされて転がされているオオガミがいた。

 なお、アビゲイルは先程マシュに連れていかれ、荷物を荷物を送っていて、エウリュアレは高難易度の準備といって軽く体を動かしにいった。

 大体彼の指揮でこうなっているわけだが、不可解なのは、当の本人が簀巻きにされているのは一体どういう事なのだろうか。

 

「そりゃ、お察しの通りですとも。アナの宝具レベルが上がるということは、つまりはそういうことです」

「まぁ、そうですよね。それでバレて、そうなってるわけですか。でも、抜けられるんでしょう? 早めにした方がいいんじゃないですか?」

「まぁ、うん。それもそうなんだけど……アナを残したのには理由があってね……お願いがあるわけです」

「……内容によります。なんですか?」

 

 アナの冷たい視線に見られ、一瞬躊躇ったオオガミは、しかし意を決したように言う。

 

「スカディのサイズを測ってきて!」

「嫌です」

 

 即答だった。

 しかし、すぐに理由を説明するオオガミ。

 

「実は、エウリュアレ達にと思って買った服を見たスカディに、『私のも買ってきてくれないだろうか』と頼まれて、受けたは良いものの、体格を把握していない状態では流石に無理なので、今こうして頼んでいるわけだよ」

「何してるんですかこのダメマスターは。怒濤の展開過ぎてついていけません。あと今、凄い気になるのを聞いた気がするんですが、姉様に服を買ってきたんですか?」

「……ともかくだよ。そういう複雑な理由から、測ってきてほしいわけです!」

「……仕方ないですね。条件として、姉様を説得して着替えさせること。そして、着替えたあとで写真を下を除く全方位から撮影することを約束してもらえればやります。えぇ、任せてください。キッチリやりきりますとも」

「凄いやる気……なら、それに答えざるを得ない……任せて! 必ず写真は撮るから!」

「はい。マスターのこういうところだけは信頼しているので、しっかりとこなしてくださいね」

 

 そう言って、メジャーを持ってスカディのもとへと走っていくアナ。

 そして、それと入れ違いになるように戻ってきたアンリは、

 

「あ~……見付からなかったわ。スマン」

「それに対しての返答はね……入れ違いだよ。お疲れ様。だね」

「嘘だろ……なんで教えてくれなかったんだよ……!」

「連絡手段ないし。その、お疲れ様」

 

 その言葉を聞いて、アンリはその場に崩れ落ちるのだった。




 朝起きて、一息いれて、さぁ10連。出たのは金回転アナでした(吐血


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コーディネートって、美的感覚を問われてる気がする(センスが無いなら誰かに頼めばいいんじゃない?)

※Fate/Accel Zero Orderのネタバレあり! 気になさる方はご注意ください!


「さて。スカディにどんな服を買っていくか。そこが問題です」

「はいはーい。なんでその問題にオレらまで付き合わされてんの~?」

「そうね。まずはそこからかしら。なにか理由があるのでしょう?」

 

 アンリとエウリュアレに言われ、その場の全員の視線を一斉に受けるオオガミ。

 それに対してオオガミは、

 

「それには深いわけがあるのだけど、それは言えない。あと、アンリはこっち側なので悪しからず」

「だからなんで二次被害確定なんですかねぇ!? ちったぁオレにも配慮しやがれ!」

「それに関しては、御愁傷様とだけ。遠慮も配慮もしないで全力で巻き込んでいくね」

「悪びれないどころかむしろ巻き込んでいく宣言されたんだが」

 

 真顔で巻き込んでいくと宣言するオオガミに、アンリは頬を引きつらせながら半泣きだった。

 

「まぁ、言えないのは分かったけど、そもそもどういうのがあるのかしら。私たちのもちょっと買ってみたいわよね」

「そうですね、行きましょう。私も気になりますし」

「あれ? でも、マシュさん。私が送った荷物の中にお洋服も入ってなかったかしら?」

「そうでしたっけ? 先輩、買いました?」

「それは帰ってからで。まだ準備は整ってないし、アナも戻ってきてないし。なので、まぁ、とりあえず行ってみようか。アンリは行く?」

「オレは待ってるわ……ついて行っても特に何もねぇしな……」

「じゃあ、アナにも伝えて置いて」

「あいよ。んじゃ、待ってるぜ」

 

 そう言って、オオガミ達から離れて行くアンリ。

 オオガミはそれを見送って、全員を連れて、エウリュアレ達の服を揃えた店を回ることにした。

 

 

 * * *

 

 

「てなわけで、あいつらは買い物に行ったぜ」

 

 そう言うアンリの前には、アナがいた。

 先ほどまでスカディと話していて、ちょうど別れた辺りでアンリと合流したのだった。

 

「ありがとうございます。というか、本当に伝えに来てくれたんですね……」

「まぁ、約束は守るさ……ただ、とりあえず、帰ってもマスターは殺さないようにな?」

「はい? どういうことですか、それは。なにか私が怒る様な事をしたんですか……?」

「まぁ、うん。知らないならいいんだ。気にするな」

「かなり気になるんですが……とりあえず、マスターを追いますか……服屋に向かったんですよね?」

 

 アンリの不穏な発言に首を傾げるアナだったが、すぐに気を取り直してマスターを追う事にした。

 

「あぁ、そのはずだぜ。そもそもスカディの服を買いに行ったんだし。むしろそれ以外は無いだろ……」

「そうですか。まぁ、私も姉様用に何か買いたいですし、早く向かわないと財布を盗まないといけなくなりますし」

「まぁ、向こうの方に向かえばいいと思うぜ」

「ありがとうございます。じゃあ、行ってきますね」

 

 そう言って、アンリの指差した方へとアンリは走っていくのだった。




 スカディ様、一体どんな服を着せればいいんだ……こう、かっこいい服なら似合う気がするんだけど、可愛い服だと喜んでくれる気がして……うごご……


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本人を連れてくるのもありだったんじゃなかろうか(既に手遅れ感はあるけどね)

※Fate/Accel Zero Orderのネタバレあり! 気になさる方はご注意ください!


「今更なのだけど、本人に聞くのは考えなかったの?」

「考えたけど、買ってくると言ったのに一緒に行こうっていうのは些かどうなのかと思ってさ……」

「そんな気にする必要は無いと思うのだけど……」

 

 エウリュアレの疑問に少し困ったような表情で答えるオオガミに、ため息を吐くエウリュアレ。

 とはいえ、スカディはそこはかとなく絡み辛い雰囲気があるのは確かなので、次の時には誘ってあげようかと思うエウリュアレだった。

 

「あ、もしかして、あのお店でしょうか」

 

 そう言うマシュの指差した先にあるのは、確かにオオガミの目的地だった。

 

「さて、スカディ様の服……どうするかなぁ……」

「紫だからねぇ……あ、でも、ドレスでもいいかもね。カラーは……黄色か、黄緑色のものかしらね」

「流石に売ってるとは思えないけど……まぁ、売ってなかったら、メディア大先生にご教授願って作ろうか……」

「……本当に、どこに向かってるのよ。出来る事が増えてない……?」

 

 どんどん出来る事が増えていっているオオガミに、そのうち屋内の生産系は色々出来るようになっている気がしてきた。

 

「そんなに出来ないって。そんな才色兼備の最強的存在じゃないし。まぁ、料理のバリエーションは増えたけど」

「……なんで増えているのかしら。というか、お菓子作りじゃなくて料理なのね……えっ、普通に作れるの?」

「……あれ、作ったことなかったっけ……」

 

 そんな事を話している二人を、後ろから見ていたアビゲイルは、

 

「ねぇねぇマシュさん。どうしてあの二人はお洋服を見に行くのにお料理の話をしているのかしら……」

「あの二人、たまに目的を忘れるんですよね……まぁ、放っておいても大丈夫だと思います。はい。むしろ放っておいた方が安全です。飛び火してくると面倒なので」

「な、なんだか手馴れているわね、マシュさん……」

 

 もはや危険物扱いな二人。

 ただ、何もしていなくとも突然飛んでくる場合があるので、その時のために受け流しスキルは必須だと語るマシュ。

 アビゲイルはその評価に困惑するが、手慣れているマシュの言っている事なので、とりあえず聞いておく。

 

「それで、マシュさんはどういうのが良いと思うの?」

「私ですか? そうですね……ズボン系ですかね。でも、上着はどうしましょうか……」

「そもそも、あまりお洋服とか見ないのに決めようっていうのが無理な気がするの。メンバーがかなりダメだと思うのだけど。他の方……いなかったのかしら……」

「まぁ、エミヤさんか、キャットさんを連れてくるべきでしたよね……あ、茶々さんでもいいですか。少なくとも、そこら辺の人は連れてくるべきでした。まぁ、させなかったのは私なんですが……」

 

 そういって果たしてどうしたものかと、店を前にして考え始める二人。

 そして、四人は店の中へと入って行くのだった。




 冷静に考えると、島に引きこもっていた女神と、南極に強制的に閉じ込められていた少女と、片田舎に軟禁されていた幼女しかいないのなら、着る服を考えてもらう相手としては割と選択ミスなんじゃ?


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やはりファッションは難しい……(明日にはニューヨークに行くのよね……)

「……やっぱり、本人を連れてきた方がいいわよ」

「……やっぱり、メディア大先生に頼むしかないか……」

 

 遠い目をしながら、両手にいくつもの袋を持っているオオガミ。

 その隣で、エウリュアレも遠い目をしていた。

 その後ろでは、アビゲイルが自分たち用に買った服をポイポイと門の中へと投げ込んでいっていた。

 

「とりあえず落ち着いたクリーム色のコートとか、女性用のジーンズとか買ったけど、他に何を買ったの?」

「私は自分で選ぶ事は無いし、とりあえずマシュに任せたわ。確か、黄色いフレアスカートに白いシャツだったわ。後は普通に白いワンピースとか? これは最悪私が着るのもアリね」

「スカディ様のサイズじゃエウリュアレは着れないでしょ」

 

 そう言った瞬間に脛を蹴られるオオガミ。

 わりと力を入れて蹴ったので、オオガミはその場に蹲ってしまう。

 

「普通にスーツとかも似合う気がするけど、明らかにこう、なんというか、『違う』のよね。だから、スカート系にしようかと思ったのだけど」

「うぐぐ……まぁ、確かに、スーツはね……普段着にはどうかと思うし。まぁ、普通に部屋着とかも買って来ようか……」

「ハッ……パジャマ……? 私、いままでこのままだったけど、流石に問題よね……買ってこようかしら。よし、もう一回よ」

「マジか。一回スカディ様に見せてからもう一回来ようかと思ってたんだけど」

「それは貴方が一人でやって。私はもう一回行って自分の分を買ってくるわ。行くわよアビー」

「えっえっ、あ、分かったわ! ちょっと待ってくださいな!」

 

 そう言って、アビゲイルと一緒に再び店に戻って行くエウリュアレ。

 置いていかれたオオガミは、どうしたものかと考えた後、

 

「まぁ、別にエウリュアレがいなくちゃいけないわけじゃないし、一回帰ってまた来ればいいか……マシュはどうする?」

「あ、私ですか? 私は、そうですね……先輩について行きます。一応、スカディさんに直でオススメしたいですし。やっぱり、先輩に伝えてもらうのと、自分で伝えるのは違う気がするんですよね」

 

 突然話を振られたマシュは、一瞬困惑するも、すぐに答える。

 それを聞いたオオガミは、

 

「まぁ、確かに。じゃあ、行こうか」

「はい、先輩!」

 

 そう言えば、マシュと二人きりで歩くのは久しぶりだな。なんて思いつつスカディの元へと向かうオオガミ。

 マシュは自然な様子でオオガミの左手から袋を取ると、いつもより上機嫌になっていた。

 そうして、二人はエウリュアレ達を置いて戻るのだった。




 明日にはニューヨークに旅立つとは思えない平和さだ……

 まぁ、買った服はいつか見れるって事で。まぁ、憶えて入ればですけど……


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バトル・イン・ニューヨーク2018
いざニューヨーク!!(買った服を着て行こうかしら)


「んっ、よし。じゃあ行きましょうか」

 

 そう言うエウリュアレは、オオガミが買ってきたタンクトップとホットパンツを着て、結ってもらったポニーテールを揺らしながらオオガミに手を差し出す。

 差し出されたオオガミは、一瞬呆然とした後、カメラを片手にエウリュアレの手を掴んで起き上がる。

 

「……ねぇ、なんで私の手を取るよりも先にカメラなの?」

「そりゃ、エウリュアレの事を撮るからだけど……」

「……まぁ、良いわ。アナは準備できたの?」

 

 そう言ってアナの方に目を向けたエウリュアレは、一瞬硬直する。

 

「あ、あの……似合いますか?」

「……ねぇマスター。どういう選択でああなったの……?」

「いや、かなり似合ってると思うんだけど……」

 

 明るい黄色のワンピースを着ているアナを見て、オオガミの襟を掴んで揺らすエウリュアレ。

 揺らされているオオガミは、特に気にする様子も無くぐわんぐわんと揺れる視界の中でも冷静にエウリュアレを写真に納めていく。

 

「で、エウリュアレ的には似合ってた?」

「えぇ、似合ってるわよ。むしろ似合わないわけがないじゃない。なんでそんな当然のことを聞くのかしら」

「いや、本人が一番聞きたがってると思うし……」

 

 そう言って、カメラの方向をさりげなくアナの方へ向けて写真を撮る。

 そこには、顔を真っ赤にしているアナがいた。

 

「ね?」

「……そういう変な気遣いは要らないわよ……!」

「いや、うん。気遣いではなくあの顔を撮りたかっただけなんだけども。とりあえず、俺が言っても効果ないのが分かってるのと、言わせたうえで瀕死にされる覚悟は無いので今から逃げる」

「逃がすとは思わないことね……!!」

「しまった! いつもより運動しやすい格好だから殺される可能性が上がってる……!!」

 

 弓を持ちつつ追いかけるエウリュアレと、写真を撮りつつ逃げるオオガミ。

 アナはあまり慣れないワンピースなので、流石にいつもの様に鎌を持って暴れるだけの元気は無いようだった。

 そこへやってきたアビゲイルは、白地に黒の水玉模様が入っている半袖のシャツに、赤いミニスカートを着ていた。

 

「お待たせしちゃった、わ……? あれ、何があったのかしら。早く行かないとギル祭始まっちゃうわよ?」

「あ、アビーさんですか。えっと、いつもの奴だと考えてもらえれば……」

「そういう事ね。あ、アナさん、その服、とっても似合ってるわ!」

「ありがとうございます。アビーさんの服も似合ってますよ。姉様にも褒めていただいたので、今ちょっと表情が緩んでるかもしれないです」

「まぁ。笑顔の方が可愛いわ。えっと、とりあえず、二人は置いて、先に行っていた方が良いのかしら。エミヤさんとキャットさんは先に向こうに行ってお店を構えているらしいから、早速行ってみましょう! 今回はQPでお買い物が出来るから、お小遣いを使えるわ」

「そうですね。私も自分の財布を持って行きます」

 

 そう言って、二人はオオガミとエウリュアレを置いて、先にニューヨークへと向かうのだった。




 ちゃんとアナの要望に応えつつ、しかしアナにも流れ弾を当てて行くスタイル。なお、その写真は姉に売りつけるつもりの模様。


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目指せ夢の100箱!!(まずは10個攻略!!)

※バトル・オブ・ニューヨーク2018ネタバレあり! ご注意ください!!








「ふ、ふふふ……10箱終了! 残り90箱!」

「早いわね……問題は、この勢いが最後まで続くかよね」

 

 当たり素材を回収し終わり、礼装交換も終了したうえでいくつかドロップしているので、割と余裕があった。

 

「まぁ、後何枚か取れれば効率も上がるはず。いける、行けるぞコレは……夢の100箱……!!」

「贋作の時には半分だったものね……」

「今回も言うだけで半分だけだと思っていたのですが……まさか、これだけ頑張るとは思ってなかったです……」

「私もびっくりだわ……ただ、エキシビションもやると考えると、行けるのかしらね……」

 

 今日の分のエキシビションは終わっているが、それでもいくらか時間は持って行かれていた。だが、それでも10箱は開けられているのだから、この調子が続けば100箱は夢ではなかった。

 

「ん~……でも、流石に戦闘になったら装備変更しないとだよねぇ……アナ、髪を梳かすからこっち来て」

「あ、その前に着替えても良いですか……?」

「まぁ、良いよ。いってらっしゃい」

「はい。行ってきます」

 

 そう言ってアナが見えなくなったところで、エウリュアレはオオガミを椅子に座らせてその膝の上に乗る。

 

「……えっと、何の用でございましょうか、エウリュアレ様?」

「……私の髪を梳かすのが先よ」

「いやいや、エウリュアレは別に乱れても……あぁ、はい。そうですね。やりますよ~っと」

「そうそう。そうやって素直にすればいいのよ」

 

 少し楽しそうに笑うエウリュアレに、何とも言えない表情になるオオガミ。

 そんな二人の後ろに現れたのはアンリ。

 

「あ~……マスター? 今大丈夫か?」

「アンリ? 何かあったの?」

「あぁ、それなんだがな、今アビーが店を出そうと企んでる。どうする?」

 

 一瞬手が止まるオオガミ。しかし、次の瞬間には先ほどと同じように手を動かすが、その動きは何処かぎこちない。

 

「えっと、何料理?」

「イカ系だったな。あれはグレーだぜ」

「グレーかぁ……うん。待って、それは明らかにグレーじゃなくて黒。何かやらかそうとしたら報告しに来て」

「おぅ。後、アナスタシアも出すつもりっぽいが、そっちは放っておいても良いか?」

「そっちは後で見に行くよ。あ、後、アナスタシアにはこの服をあげて来て。暑いって言ってたからゆったりとした服買ってきたから。これならたぶん着れるはず」

「ん? あぁ、分かった。任せとけ」

 

 そう言って、オオガミが差し出した袋を受け取って去って行くアンリ。

 それと入れ替わる様にアナがやってくると、

 

「着替えてきましたが……もう少しかかりそうですかね?」

「いや、エウリュアレはもうほとんど終わってるからちょっと待ってて。ほら、終わったよ」

「ありがと。じゃ、アナもお願いね?」

「ん。任せといて。とはいっても、エウリュアレとは違って髪を結ったりはしなくても大丈夫だしあんまり時間はかからないと思う」

「じゃあ、お願いしますね」

 

 そう言って、アナはオオガミの膝の上に座るのだった。




 一日10箱。開催日は約14日……つまり、100箱いけるんじゃないですかね!?(発狂

 あと、さりげなくこの作品が日間ランキング入りしてて震えてます。しかも最初に見た時より順位上がってるし……ありがたやぁ~……


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なんだあの無限の壁(おかげでノルマ達成が怪しいわね)

※バトル・オブ・ニューヨーク2018ネタバレあり! ご注意ください!!








「……ノルマクリア、出来無さそう」

「まぁ、エキシビションに時間を取られたものね……というか、奇跡的に勝てたわね」

「あぁ、うん。どう考えてもゴリ押しで勝利したから、ひたすらに疲れたんだけどね……」

 

 ベッドに突っ伏しているオオガミの隣に腰掛けるエウリュアレ。

 

「それで、アビーの様子は見に行かないの?」

「……それは、確かに見に行かないと不味い気がする……でも、眠いしなぁ……」

「はぁ……まぁ、アンリが報告しに来るまでは休んでていいんじゃないかしら。来たら起こしてあげるわ」

「ん……お願い。任せたよ」

「えぇ、任されたわ」

 

 そう言ってオオガミが目を閉じ、寝息を立て始めたのを確認してからエウリュアレはオオガミの頭を撫で始める。

 

「さて、それじゃあとりあえず遠目から確認だけしておきましょう。あの金ぴかの事だし、そうそう変なことにはならないでしょ」

 

 そう言ってエウリュアレが立ち上がったところに、アナが戻ってくる。

 

「姉様、見てきました。一応、まだ変な事はしてませんでしたよ」

「まだって……今は開店準備中ってこと?」

「そんな感じです。とりあえず、明日までは大丈夫だと思います。声をかけに行きますか?」

「そうね……アンリが来たら起こすって言ったけど、まぁ、アンリを途中で捕まえれば問題ないわね」

「アンリさんですか……一応探してみますが、もしかしたら見つけられないかもしれないです」

「流石にそこまで完璧に隠れてるとは思えないのだけど……あぁ、アビーに捕まってる可能性はあるかもね」

「そうですね……では、先に行って待ってますね。姉様も後からどうぞ」

「えぇ、そうさせてもらうわ」

 

 そう言って再び部屋を出て行くアナ。

 そして、それと入れ替わる様に入ってくるのはBB。

 

「お久しぶりですセンパイ! って、あれれ? 寝ちゃってます? ならしょうがないですね。エウリュアレさんでもいいです。余裕あります?」

「……何よ。これでも、アビーの店が不安で見に行きたいのだけど」

「あぁ、それは心配しなくても良いと思いますけど……まぁ、それは良いです。私としては、センパイが今配っているという服に興味があって来たのですが、私には無いんですか?」

「いや、それは知らないけど……なんで私に聞くのよ」

「それは、エウリュアレさんが一番センパイの近くにいますし……知ってるんじゃないかな~と」

「そこまでは知らないわよ……用事はそれだけ?」

「まぁ、そうなんですけど……何かあります?」

「そうね……どうせだから、一緒に行きましょう。ほら、行きましょ」

「えぇ~? むぅ、仕方ないですね。付き合ってあげます。感謝してくださいね?」

「はいはい。それじゃ、行くわよ」

 

 エウリュアレはそう言うと、BBを引っ張って部屋を出て行くのだった。




 ノルマ→一日10箱

 マジテルモピュライパネェです。こちとら人権キャスター全積み+マシュで北斎援護しつつ全てを海に沈める方法しかなかったんや!(吐血


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全て触手で消し飛ばしてしまえばいいのよ!!(天誅されたくなぁい!!)

※バトル・オブ・ニューヨーク2018ネタバレあり! ご注意ください!!









「天誅!!」

「ぬおわっ!? なんじゃあいきなり!!」

 

 突然出現したアビゲイルによる飛び蹴り。

 寸でのところで回避した以蔵は、即座に刀を抜いてアビゲイルに向ける。

 

「ふ、ふふふ……エキシビションで散々やられた仕返しを今ここで……!!」

「そ、それはおかしいじゃろ!! おまんはわしに勝ったじゃか!! むしろわしが仕返す方ぜよ!!」

「やられた北斎さんの為にも、やっぱり私がやるべきよね!!」

「り、理不尽じゃあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 四方八方から襲い掛かる触手に向かって斬って避けてを繰り返す以蔵。

 すると、アビゲイルの真下から白い手が現れ、拘束する。

 アビゲイルは突然の事に驚いてもがくが、一向にほどける気はしなかった。

 そして、それをやった本人が前に立った時、頬を引きつらせた。

 

「あまり悪戯が過ぎると……食べてしまいますよ?」

「……あの、お店の準備に戻っても良いです……?」

「そうですねぇ……まずは、マスターに聞いてからですかねぇ……?」

「ひぅ……逃げられないし……詰んだわ……」

 

 門を作ったところで逃げられないので、完全に打つ手が無くなったアビゲイル。

 触手で攻撃したところで即座に止められてしまうので、目の前で不穏な笑みを浮かべているキアラを倒す事も出来なかった。

 そこへやって来たオオガミは、以蔵が倒れているのと、アビゲイルがキアラに拘束されているこの惨状に頬を引きつらせると、

 

「主犯がアビーなのは察したんだけど、何時の間にキアラさんはこっちに?」

「あら、マスター。何時と言われましても、最初からいたとしか……まぁ、見て回っていただけなので、別に何もしておりませんよ」

「……ちなみに、アビーの店は?」

「まだ、開店していないという事しか。そちらに関しては、さきほどアナさんに連れ去られたアンリさんの方が詳しいのでは?」

「……いや、起きてエウリュアレがいないからおかしいなって思ったんだよ。絶対アナと一緒に何かしてるでしょ……まぁ、良いか。で、アビーは何をしてたの?」

 

 そう言って話を振られたアビゲイルは、視線を逸らしつつ、

 

「べ、別に何もしてないわ。えぇ、特に何もしてないわ」

「……キアラさん。アビーは何をしていたの?」

「経緯は見ていませんが、とりあえずそこの侍を袋叩きにしていたようにしか見えませんでしたね」

「なるほど……じゃあ、一応離して大丈夫ですよ。後はこっちで何とかします」

「そうですか。では、お願いしますね。私はそちらの方を医務室へ連れて行きますね」

 

 そう言って、アビゲイルの拘束を解いてから以蔵を担いでいくキアラ。

 若干の不安を覚えるも、まぁ大丈夫だろうと自己暗示をするオオガミは、アビゲイルを捕まえて、

 

「とりあえず、何をしたかは置いておくとして、まずはエウリュアレを見つけるのを手伝ってもらうよ」

「……はい。分かりました」

 

 捕まったアビゲイルは、大人しくオオガミの手伝いをするのだった。




 天誅っ!! でも、昨日のスパルタの方がヤバかった……


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本戦突入!(ようやくエウリュアレ達と合流かな)

※バトル・オブ・ニューヨーク2018ネタバレあり! ご注意ください!!












「さて、ようやく見つけたのはいいけど……どうしてBBと一緒なんだろ」

「さぁ……? 私にはさっぱりだわ。というか、アナスタシアさんがまたかき氷を作ってるわね……ねぇ、私、お店に戻ってもいいかしら」

 

 離れた所からエウリュアレ達を見つけたオオガミは、隣で頬を膨らませているアビゲイルに、

 

「とりあえず、食材の点検だけ。前科持ちだし、それくらいはしてください」

「うぅ……自業自得ではあるのだけれど、マスターが敬語っぽいのはちょっと傷付くわ……」

 

 そう言って、アビゲイルはシクシクと泣きつつ、使う予定だった食材をオオガミに渡す。

 オオガミはそれに一通り目を通し、

 

「まぁ、これなら大丈夫かな。流石に隠してるとは思いたくはないし」

「そこまでしてわざわざ出すものじゃないし……流石にしないわ。アンリにならやるかもしれないけど」

「……アンリは、いつも絡まれてるな……うん。まぁ、是非も無い事だね。じゃあ、もう戻ってもいいよ」

「ようやく支度が出来るわ……明日に間に合うかしら」

 

 食材を返してもらったアビゲイルは、いつまで経っても終わらない準備に嘆きつつ、門を潜っていく。

 それを見送ったオオガミは、エウリュアレ達の所へと向かっていく。

 すると、オオガミに真っ先に気付いたエウリュアレは、

 

「あら、ようやく起きてきたの? もっと早く来れると思っていたのだけど」

「いや、もっと早くも何も、ノーヒントで真っ先に向かって来れるほど探知能力強いわけじゃないし……正直アビーを捕まえなかったらもっと遅れてたと思うんだけど……」

「正直アビーさんを使ったと言っても、数日で見つけられるのは流石ですね……」

「たまに変な感知能力ありますし……そのうち気にならなくなりますよ」

「私がいなかった間に何があったんですか……あ、そうだ。センパイ! 私にはプレゼント無いんですか?」

 

 そう言って手を差し出すBBを見て、オオガミは少し考えた後、

 

「じゃあ、BBには何か奢ってあげよう」

「……つまり、何も用意してなかったんですね。まぁ、分かってましたけど。とりあえず、アナスタシアさんの所でかき氷を買っていきましょう」

「まぁ、ここはQP買いが出来るからね……うん。問題無し。レッツゴー」

 

 そう言ってBBと一緒にアナスタシアの元へと向かうオオガミ。

 それを後ろから見守っていたエウリュアレは、ぼそりと、

 

「なんか、BBのテンションが若干おかしい気がするのだけど、気のせいかしら……」

 

 そう呟いて、アナと一緒にオオガミの元へと向かうのだった。




 ドロップ構成が変わらず量が増えただけという事に気付き、ポテトとホットドッグを回収しに走ってる私……なんか、凄い眠い不思議……


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なぜかBBの私服を望まれている気がする……(ようやくアナスタシアの店にたどり着いたね)

※バトル・オブ・ニューヨーク2018ネタバレあり! ご注意ください!!








「あぁ、来たのね、マスター。貰った服を着てみたのだけどどうかしら」

 

 そう言って、くるりと一回転するアナスタシア。

 白地に空色で雪だるまが描かれているTシャツにデニムを穿いて、腰には赤いチェックのシャツを巻いていた。

 

「うん。似合ってるよ」

「ふふっ、それならよかったわ。ありがとう、マスター」

 

 アナスタシアはそう言って微笑む。

 それを見ていたBBは、アナスタシアの服を指差しながら、

 

「……コレ、センパイのチョイスですか?」

「……そうだけど、何かあった?」

「あぁ、いえ、そこまでは悪くないんじゃないかなって思っただけです。というか、なんで私にはお洋服無いんですか。私も欲しいんですけど」

「えぇ……とりあえずかき氷買ってから行かない……?」

 

 あまり乗り気でなさそうなオオガミに、BBは頬を膨らませると、

 

「むぅ……じゃあブルーハワイで!」

「練乳イチゴかなぁ……」

「センパイ、甘いのを選びますね……普通逆じゃないですか?」

「真っ先にブルーハワイ選びに行ったAIに言われたくないんだけども」

 

 意外そうな、それでいてどこか納得のいかないような複雑な表情をするBB。

 

「はい、ブルーハワイ。こっちは練乳イチゴね。じゃあマスター。またよろしく」

「うん。値段は?」

「合計250QPね」

「ん。これでピッタリかな?」

「えぇ、ちょうどね」

「じゃ、また後で来るよ。じゃあね」

 

 そう言って、アナスタシアの所を離れ、BBの要望に応えるべく洋服店を探しに行くオオガミ。

 それと入れ替わる様にエウリュアレとアナがやってきて、

 

「お疲れ様。売れてる?」

「まぁまぁって所よ。ところで、エウリュアレさんはマスターと一緒じゃなくてよかったの?」

「だから、別にいつも一緒にいるわけじゃないから。というか、どうして一緒にいるのが前提みたいになってるのよ」

「それは……普段の自分の様子を考えてみれば良いと思うのだけど……まぁ、分からないなら仕方ないわ」

「変な事を言うわね……」

 

 エウリュアレはそう言い、ため息を吐くと、

 

「まぁいいわ。私の一つ頂戴。練乳イチゴが良いわ」

「……頼む物まで一緒なのね」

「えっ……じゃあ、メロンでいいわ。被るのは、なんか言われそうで嫌だわ」

「別に気にしなくても良いでしょうに。それで、アナさんは?」

「そうですね……レモンでお願いします」

「よくそんなの選べるわね……」

「いえ、少し気になって……」

「ふぅん……まぁ、財布を持っているのは貴女だもの。私は特に言う事は無いわ」

「ふふっ、メロンとレモンね。ちょっと待ってて」

 

 そう言って、かき氷を作り始めるアナスタシア。

 二人はそれをのんびり眺めつつ、待っているのだった。




 なぜか望まれている気がするBB私服。とはいえ、需要あるのだろうか……自分の私服センスは死んでるから全く自信ないんですよね……


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どうするんだこの高難易度(ジャガ村の国が修羅過ぎる)

※バトル・オブ・ニューヨーク2018ネタバレあり! ご注意ください!!








「さて、どうするかなぁ……」

「……まさか、本当に買ってくれるとは思いませんでした。センパイ、意外と律儀ですよね」

「……よし、じゃあBBは最前線で」

「なんでですか!?」

 

 突然最前線に放り投げられるBB。

 とはいえ、別にBBが嫌と言うわけではない。むしろ、どうしようもなくなっているので全力で育成して、そのまま流れるように高難易度送りである。

 

「とりあえず、洋服は預かっておくね」

「あぁっ! 早速着ようと思ってたのに、お預けだなんて……そう言うのはBBちゃんの特権じゃないんですか!?」

「いや、それはカルデアの時から無かったから。マシュが来るよ? しかも、マシュにはまだ何も買ってあげてないから、ただでさえも俺は殺されそうなのに、おまけで一緒に狩られるよ?」

「なんでそんな爆弾を落としていくんですか……!! くぅっ……一蓮托生、運命共同という事ですか……!!」

「まぁ、そんな所だね。ほら、高難易度に行って誤魔化していこう」

「一切オブラートに包まないですねセンパイ。そんなだからマシュさんに狙われるんですよ」

「うぐっ……全く反論できない……」

 

 BBの言葉がクリティカルヒットし、苦い顔になるオオガミ。

 最近ひたすら買っていたが、なぜかマシュのだけ買っていないので、やはりマシュに殺されそうになっているオオガミ。

 当然の如くそれにBBまで巻き込んでいくので、厄介極まりなかった。

 

「というか、勝てる気がしないんですけど……どうやるんですか、あれ。全く自重してくれませんよ?」

「ん~……とりあえず何度も挑んでみるしかないかと……そのうち攻略出来る事を祈るしか……」

「そんな適当な……もう少し考えましょうよ」

「いや、気合と多量の運しかないんじゃないかと……まぁ、そのうち閃くさ……」

「何も考えてませんよこの駄目マスター!! 本当にダメダメなんですけど!!」

 

 完全に手遅れ感あふれる雑さ。試行錯誤ではなく、ただひたすらに戦って負けて、そのうち勝てるだろうという、明らかに勝つつもりが無さそうな戦い方だった。

 

「ぐぅ……私の触手さんでも、流石にアレは無理ですよ……ジャガ村さん、おかしいじゃないですか……防御力どうなってるんですか……」

「全員一斉に倒さないと地獄を見るってのがきついよねぇ……しかも、それぞれがそれぞれのカードに耐性があるという……どうしろと」

「超火力で二撃ですかね? でも、それだけの火力は出ませんよねぇ……いえ、本当にどうするんですか……」

「……最悪、諦めですかね」

 

 そう言って、二人はエキシビションを前に頬を引きつらせるのだった。




 どうやって勝つんですかアレ(発狂

 wiki使わないでいたけど、流石に解禁しようと思って見たらおおよそ参考にならないと来たので、諦めて自力ですねこれは(吐血


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ジャガ村が攻略できない……(運に頼らざるを得ない修羅の国)

※バトル・オブ・ニューヨーク2018ネタバレあり! ご注意ください!!








「うぅ~ん……惜しいところまでは行きますけど、それ以上にはなりませんね……」

「なんと言うか、疲れてきたよ。結局、ノルマを全然消化出来てないし……」

 

 今日はひたすらジャガ村を攻略しようと四苦八苦していたのだが、後少しというところで、全滅させられるというのを繰り返していた。

 

「ん~……BBの火力が足りないってより、耐久できないのが問題かなぁ……」

「速攻仕掛けるしか無いですよねぇ……まぁ、最高のカードが引けるまで、運頼みですね」

「運頼みはあんまりしたくないんだけどねぇ……まぁ、そういう戦いしか出来ないよね……悔しいけど、いずれ出来るようになるはず。とりあえず、今回これを攻略するのは、もう使命と言うかなんというか」

「なんか、人理修復よりも本気じゃありません? 気のせいですか?」

 

 明らかに人理修復よりも張り切っているオオガミをジト目で見るBB。

 しかし、オオガミは全く気にしていないような様子で、

 

「気のせい気のせい。全力で挑んでるからそう見えるだけだって」

「まぁ、高難易度ですしね……そりゃ、縛りは無謀ってものですけど、令呪使うのって基本イベントだけですし。なんですか。余裕かましてるんですか」

「余裕も何も、使うところがないだけなんだけど……」

「むぅ……もっとピンチになっても良いのに……」

「今まさにその状況だと思うんだけど」

 

 オオガミの言うとおり、令呪を使っても勝てる気がしない強敵。

 だが、BBはそういう意味じゃないと言いたげな表情をしていた。

 

「さて、とりあえず、APが勿体無いから何回か周回するかな」

「はぁ……仕方無いですね。まぁ、周回は私の仕事じゃないので、そこはスカディさんに譲りますよ」

「うんうん。あ、そう言えば、作ってたのってどうなったの?」

 

 ふと思い出したように、この前シャドウ・ボーダー内で作ってた物の作成具合を聞くオオガミ。

 BBは少し考えた後に、

 

「あぁ、あれですか。あれはもうちょっとかかりますね。まぁ、安心してください。そのうち完成しますよ」

「なんというか、他の人なら微妙な言い方なんだけど、BBとノッブなら信頼できる不思議。まぁ、信頼してるよ。じゃあ、行ってくるね」

「えぇ、はい。また後で会いましょう」

 

 そう言って手を振るBB。そして、オオガミが見えなくなった頃に、ため息を吐くと、

 

「全く。センパイ、マシュさんに何も買ってあげられないとか行ってますけど、選びきれないだけなんでしょうね……まぁ良いです。とりあえず、ちょっとずつでも作らないとですし。全く……ノッブさえいれば、ちゃちゃっと終わるのに」

 

 そんなことを呟きながら、BBは作業机をどこからともなく取り出し、作業を始めるのだった。




 もう、運ゲー過ぎて……BBちゃんが後少しまで持っていってくれてるんだ……後もう少し……!


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ジャガ村は強すぎたんだ……(やはり最強系小悪魔後輩ちゃんが負けるわけ無いよねぇ!)

※バトル・オブ・ニューヨーク2018ネタバレあり! ご注意ください!










「ふ、ふふふ……あはははは!! ようやく倒しましたよ!! いやぁ、勝てないとか思いましたけど、やっぱり最後には勝てるんです!」

「マジ、もう、無理。来年復刻されたらもっと楽な攻略法を探す。絶対クリティカルなんかさせてやるものか」

 

 ドヤ顔のBBと、大の字に寝転がって動かないオオガミ。

 ついに因縁のジャガ村を攻略し、チケット集めの意欲が激減していた。

 

「はぁ……もう、50箱開けたし、良くない? 今年の祭りはこれで終わりじゃない?」

「ちょ、ちょっと、なんで意気消沈してるんですか! お祭りはまだまだこれからですよ! 決勝も残ってますし! リンゴ足りませんよ!」

「あ~……リンゴ足りないなら周回できないわ~……諦めて次回頑張ろ~」

「普段からダメダメなセンパイが、ジャガ村を越えたことで普段の数倍はダメダメに……! これ、マシュさん案件じゃないですか……!?」

「いや、うん。頑張ったよ。頑張ったからさ、とりあえず甘いものを探しにいこう。話はそれからだ」

「センパイ、甘いの好きですもんね。エウリュアレさんの影響もあるんでしょうか?」

 

 首をかしげるBBに、オオガミは首を横に振り、

 

「いや、むしろエウリュアレをお菓子漬けにしたのが俺で、ある意味エウリュアレは被害者なわけです。まぁ、反省も後悔もしてないけどね」

「あれ……そうでしたっけ……わりと最初からだったような……?」

「……まぁ、うん。好みに関しては俺寄りじゃないかな。アナスタシアの所のかき氷屋でも、おそらく俺と同じ練乳イチゴ。次点でメロンだよね」

「……後でエウリュアレさんに聞いてみますか……じゃあ、センパイ! 今回私がたくさん活躍したので、私にはちょっと多目でお願いしますね!」

 

 そう、普段よりテンション高めで言うBBに、オオガミは少し考えた後、

 

「じゃあ、後アナと北斎ちゃんとアビーも呼ばなきゃだね。マシュはそのうちいつの間にかいるはず」

「センパイのマシュさんの扱い、酷すぎません? いつか絶対後ろから刺されますよ?」

「まぁ、マシュになら是非もない。八つ裂きにされないだけマシじゃない?」

「どっちも致命傷ですって。いえ、八つ裂き死んでますけど。というか、仕方無いで済ませられるほどの事をしている自信があるんですね……」

「……かなり。正直、返せる自信がないよ」

 

 オオガミがそう返すと、BBはため息を吐き、

 

「じゃあ、まずは自分から誘うところからです。センパイ、マシュさんをあまり自分から誘わないじゃないですか。でも、ただついていくのと、誘われてついていくのは、心持ちが全然違うんですから。アビーさんたちは私が誘いますから、センパイはマシュさんのところに行ってください。分かりましたか?」

「……なんでBBがそこまで心配してくれるのか、あんまり分からないけど、了解。行ってくるね」

 

 そう言って、走り出すオオガミ。

 BBは、それを少し困ったような表情で見送るのだった。




 敗因は、生き残ったジャガーマンを倒すのに、わざわざ自前の鯖で行こうとしていたこと。フレンド武蔵ちゃん強すぎるぅ……


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決勝スタート!(まずは一回休憩だね)

※バトル・オブ・ニューヨーク2018ネタバレあり! ご注意ください!










「さて、まだエキシビションはあと二つ残ってるけど、とりあえず、第一回、お疲れ様会だよ!」

「今回も私プロデュースのケーキバイキングです! 支払いはセンパイなので、気にせず食べ尽くしましょー!」

 

 おー! と声を上げるのは、今回エキシビションで活躍してくれたサーヴァントの一部。

 それに加えて、一部無関係のサーヴァントも混ざっているが、そこは深く追及するべきではないだろう。

 

「珍しく先輩が誘ってくれたので来てみたら……今回、私って頑張りましたっけ」

 

 そう言って首をかしげるマシュ。

 それに対してオオガミは、当然と言いたげな表情で、

 

「マシュがいなかったら危ない戦いがいくつかあったので、必須です。むしろいなきゃ困るし。というか、一番無関係なのは、隣の女神だと思うの」

「そもそも連れていかなかったのは貴方なのに、私が責められるのはおかしいんじゃないかしら」

 

 そう言って、オオガミの足をグリグリと(かかと)で踏むエウリュアレ。

 現状オオガミは左にマシュ、右にエウリュアレという構図なので、逃げることはできない状態だった。

 

「なんというか、今日の先輩、少しおかしいような? 私を誘ってくれたのもそうですが、エウリュアレさんにそういう言い方をするのは珍しいような……」

「う、うん……まぁ、それは自覚があるけども……今だって、さっきの言い方のせいで痛い目に遭ってるし……あの、エウリュアレ様?お許しくださいません?」

「嫌よ。だって、その痛がってる表情が良いんだもの。ふふふふふ?」

「あぁ、なんというか、たぶん今日のエウリュアレの機嫌が悪すぎた……」

「いえ、明らかに先輩のせいかと。どう見ても自業自得です」

 

 呆れたようにため息を吐くマシュ。

 エウリュアレはようやく足を退け、にっこりと微笑んでオオガミの皿を一枚奪っていった。

 

「全く……先輩はたまにおかしな事をし始めるんですから……今回のケーキバイキングは、BBさんの主催ですよね。ちょっとお話ししてきます」

「えっ、あ、喧嘩しないようにね?」

「はい。平和的にいこうと思います」

「うん。行ってらっしゃい」

 

 そう言ってマシュを見送るオオガミ。

 ただ、なんとなく不安を感じるエウリュアレは、

 

「ねぇ、本当に見に行かなくて良いの?」

「まぁ、流石にすぐ喧嘩したりはしないと思うんだけど……喧嘩し始めたら、止めに行くよ」

「何気にエルキドゥがいないと、それはそれで大変よね……まぁ、頑張って。私はのんびり食べているわ」

「……食欲お化け」

「思いっきり噛みついてあげましょうか?」

 

 オオガミのぼそりと言った言葉に、エウリュアレは笑顔で答えるのだった。




 ちなみに、ドルセントはライダー金時が全てを薙ぎ払っていきました。轢き逃げ強い……


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よぅし、久しぶりに周回だ!(オーロラ鋼も落ちるし、一石二鳥だね!)

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「うん、よし。周回するか」

「その姿で言われると、流石に心配なのだが……」

 

 全身に湿布や絆創膏を張りながらそう言うオオガミに、スカディは苦い顔をしながら言う。

 

「いや、流石にマシュとBBの喧嘩を止める途中で大怪我負ったからと言って、周回を止めるわけにはいかないんだよ」

「ふむ……不思議なものだな。普通は止まるだろうに。そこまでするものなのか?」

「まぁ、貴重なアイテム大量取得イベントだしね。というか、これくらいの傷ならすぐ治るって」

「そうか……? まぁ、それならいいが……うむ。では、行くとしようか」

 

 そう言って、前を歩くスカディ。あちらこちらへと揺れるポニーテールを見ながら、はたしてスカディは渡し合服をどうしたのかと考える。

 と言うのも、ここまで着ているのを見ていないからだったりする。

 

「ん~……シャドウ・ボーダーに置いてきたのかな……?」

「いえ、先輩が見ていないだけで、一日ごとに切り替えで着てますよ?」

「えっ……マシュ、なんでそれを……?」

「それは、先輩と別行動しているのが多いからですかね……?」

「うぅむ、なんか、納得がいかないけど、まぁ、仕方ないか……いつか見れるのを期待しておこうかな」

「はぁ……そうですか。まぁ、先輩が言うなら仕方ないですね」

「うんうん。それじゃ、周回行くよ~!」

「はい。オーロラ鋼も集まりますし、スカディさんのスキル上げにもなりますからね。まぁ、骨も欲しいですが……」

「流石に求め過ぎはいけないと思うの」

 

 そんな事を言いつつ、二人はスカディを追うように周回へと向かっていく。

 

 

 * * *

 

 

「むぅ……マスター、来ないわね」

 

 そういうアビゲイルの隣には、ジャックが食材を切り刻んでいた。

 その奥にバニヤンが木箱の上に座っているのだが、彼女は完全にいるだけだったりする。

 

「アビー、終わったよ。でも、イカ焼きじゃなかったの?」

「ありがとう。そのつもりだったんだけど、たこ焼きが作りたくなったから急遽変更よ。まぁ、イカ焼きも並行で作るのだけど。うぅ……火が使えれば、火力調整も簡単なのかしら……」

「ナーサリーなら火が使えたんだけどね。再召喚されてないのが残念なんだけどね」

「むぅ……ナーサリーさん……私もあってみたいわ」

「私たちも会ってないから、すっごく楽しみ! 会えたら仲良くなれる気がする……!」

「どこからその自信は来るのかしら……」

 

 そんなことを言っていると、ギルガメッシュと茶々が店の前を通る。

 そして、三人は二人に向かって呼びかけを行うのだった。




 ナーサリーと邪ンタで幼女パが……!


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エキシビションとか、もう疲れたよ(でも、諦めるつもりはないんでしょう?)

※バトル・オブ・ニューヨーク2018ネタバレあり! ご注意ください!










「うん。諦めて周回しようか」

「ついにぶん投げたわね。それが賢明だと思うわ」

 

 清々しいほどの笑顔で諦めた宣言するオオガミに、エウリュアレは苦笑いで答える。

 

「それにしても、まさかそこまでHPがあるとは思わなかったよ……」

「普通に体力がぶっ飛んでるもの……しかも、攻撃力も高い。無理じゃない?」

「うぅむ……取り巻きを倒し続ければいいのかなぁ……」

「難しいわねぇ……」

 

 うんうんと考える二人。とはいえ、エウリュアレに出番が無いのは確定しているので、完全に裏方だったりする。

 

「まぁ、取り巻きを全滅させてからぶん殴るのが正解かな」

「それで倒せれば苦労しないけどねぇ……っていうか、実は諦めるつもりないでしょ」

「おっと。正解だよエウリュアレ。あの程度で諦められるほど、やわな精神してないんですよ」

「普通に頑丈よねぇ……肉体的にも、精神的にも。さて、それじゃあ周回よね。行ってらっしゃい」

「出稼ぎ担当は行ってきますよ、はい。まぁ、のんびりやってくるよ」

 

 そう言って、手をひらひらと振って周回へと向かうオオガミ。

 エウリュアレはそれを見送ってから、何をしようかと首を傾げる。

 

「アナ。アビーの店に行きたいのだけれど、案内を頼めるかしら」

 

 そう呟くと、アナがどこからともなく現れる。

 久しぶりの登場の仕方なので、何となく恥ずかしいのか、若干顔を赤くしているアナ。

 

「アビーさんの店……ですよね。じゃあ、案内しますね」

「えぇ、お願いね」

 

 そう言って、アナはエウリュアレを案内するのだった。

 

 

 * * *

 

 

「イカ焼き、買いませんかー!」

「おいしいよ~!」

「たこ焼きもあるよ~!」

 

 そういう三人の屋台は、いつの間にか金ぴかに飾られていた。

 原因として、昨日装飾を施していったギルガメッシュと茶々のせいだろう。

 悪乗りに悪乗りを重ねた結果、いつの間にかこんなことになってしまっていた。

 

「ふはははは!! 流石にこれは我もやり過ぎたかもしれないな!」

「ふはははは!! 茶々も正直これはもう悪趣味の域だと思う! 殿下もドン引きするんじゃない!?」

「あはは……なんで、私のお店がこんなキラキラ輝くことになっちゃったんだろ……」

 

 元凶が隣で爆笑しているのだが、流石に強く出る事も出来ず、苦笑いするしかできないのだった。

 

「来たわよアビー。いつの間にか、とんでもない装飾を施しているわね」

「あぁ、エウリュアレさん……いえ、これは私がやったんじゃなくて、隣の二人がやったのだけど……どうしてこうなったのかしらね……」

 

 そんな事を言いつつ、エウリュアレとアナはイカ焼きとたこ焼きを一つずつ頼み、出来るまでの間アビーと話すのだった。




 究極散財ウーマンと大金持ち賢王様。相性がいいのか悪いのか……

 エキシビションは許さん(発狂


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今日はマスターの誕生日(でも、ギル祭続いてるんですよ)

※バトル・オブ・ニューヨーク2018ネタバレあり! ご注意ください!










「よっすマスター。今さら帰ってきたぜ」

「本当に今さらだね……何かあった?」

 

 たこ焼き片手に近付いてくるアンリに、オオガミは苦笑いしながら聞く。

 すると、アンリは不思議そうに首をかしげ、

 

「いや、何かも何も、今日はアンタの誕生日だろ? せっかく祝ってやろうと思って帰ってきたのによ」

「うわぉ。アンリがそんなことを考えてくれているとは思わなかったよ」

「まぁ、普段から生け贄担当してやってるし、今日は身代わりになってやった分をまとめて受けやがれとも思ったんだが、流石に自重するわ。なんせそんなことをしたらぶっ殺されそうなんでな」

 

 そういうアンリの視線の先には、にっこりと微笑むBBの姿があった。

 そして、アンリはBBと目があった瞬間に、

 

「よし、じゃあ俺はこれで帰るわ。あぁ、あと、アビゲイルが別料理出してるが、普通に旨いから後で行って見ろよな~!」

「えっ、あ、うん……なんであんな急いで逃げたんだろ……」

 

 そう言ったところで、背後から這いよるBB。一瞬のうちに距離を詰めたので、反応することすら許さない。

 オオガミはそれに気付くと、特に驚く様子もなく、

 

「それで、BBは何の用事?」

「センパイ、本当に驚きませんよね。これだけの事をして無反応だと、BBちゃん泣いちゃいますよ?」

「いや、BBは一回で終わらないじゃん……一回一回驚いてたら体が持たないって」

「ぶーぶー。それでも驚いてくれるのがセンパイでしょう? もうちょっと頑張ってくださいよ~」

「そうは言われてもねぇ……で、何かあったの?」

「えぇ、はい。センパイの誕生日が」

 

 そう言うと、BBは一歩、二歩と距離を取り、にやにやとしながら、どこから取り出したのかオオガミより高い何かを取り出す。

 布がかけられているため、中身は見えない。

 

「それでですね? 今日急いで作業を進めたんです。で、完成しました! えぇ、頑張りましたので、後で何か奢ってください! ノッブ無しで苦労したので!」

 

 そう言って布を取り払ったと同時に露になるソレ。

 ソレは、一つの巨大な機械。見せられても全くわからないであろうそれは、しかしBBとオオガミだけは分かっていた。

 

「えっ、本当に出来たの!?」

「えぇ、もちろん! BBちゃんは最強のAIですので! これ一つでサーヴァント維持分の電力は賄いますとも! まぁ、ダ・ヴィンチにバレないかは少し不安ですけど。とにかく、これでノッブを再召喚すればこの機械も補強できますし、部屋数もこっそり増やせます! これでもう私は地獄を見る必要はないんですね!」

「よし! じゃあ、それを稼働させるのはギル祭が終わってからだね! お疲れ様BB! 何か奢るね!」

「さすがセンパイ! 話が分かりますね! じゃあ散策しましょう!」

「おー!」

 

 そう言って二人が手を振り上げた直後、ぬるりと這いよられる感覚を覚えるオオガミ。

 思わず硬直するが、すぐにそれがエウリュアレによるものだと気付くと、

 

「えぇ~っと……エウリュアレは何をしに来たの?」

「見ての通りなのだけど……えぇ、そうね。せっかくの誕生日だもの。祝って上げようかと思って来たわ。場所はアビーのお店で良いかしら?」

「……BBは?」

「あら、拒否権はないし、二人で行かせると思わないことね。ほら、早く行くわよ」

 

 そう言ってオオガミを引っ張っていこうとするエウリュアレを止めようとBBが手を伸ばした瞬間、間に入り込むアナ。

 

「姉様が珍しく機嫌が悪いので、今日は諦めてください。明日は良いので」

「うぐぐ……えぇ、はい。良いですけど? 別に、完全に独占されたわけじゃないですし! えぇ、行きますよ! 早く案内してください!」

 

 そう言って、機械を収納しつつアナについていくBBなのだった。




 はい。誕生日です。ふふふ……このためにBBを意地でも召喚したんだ……これで縛りから解放されるはず……!

 そしてさりげなく久しぶりのアンリ。いつぶりだろう……

 あ。ミドキャス当たりました(ドヤッ


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金ぴか、減ったのね(流石に目が痛いのは問題だと思う)

※バトル・オブ・ニューヨーク2018ネタバレあり! ご注意ください!










「ふん、ようやく来たか」

「あらあら。エウリュアレさんはマスターにべったりのようですね~? 貴女は行かなくて良いんですか?」

「今はお店があるから良いわ。代わりに後で遊んでもらうもの」

 

 シバの女王の指導で金ぴかが目が痛くない程度に抑えられたアビーの店。

 その邪魔にならないであろうところに机と椅子を置いて優雅に座っているギルガメッシュとシバの女王。

 アビーは若干不満そうだが、集客の邪魔になっていないので別段移動してもらおうとは考えてはいなかった。

 

「あ~……これは、どういう状況?」

「さぁ? でも、さっき見たときよりだいぶ見やすくなっているわ」

 

 そこへとやって来たオオガミとエウリュアレは、会話の流れについていけず、首をかしげるのだった。

 

(オレ)とてただ金色であれば良いと言うわけでもない。あの時は睡眠不足だったからな……日輪娘の言葉に悪ノリしてしまったわ」

 

 苦い顔でそう言うギルガメッシュ。

 アビーはそれを聞いてますます不機嫌そうな顔になると、

 

「全く、その犯人である茶々を逃がすだなんて。真っ先にジャックを送るべきだったわ」

「全力だね……まぁ、たぶんその金ぴかの時を見れば言っている意味が分かるんだろうけど……今は直っているんだし、良いんじゃないの?」

「マスター。それはそれ、これはこれよ。ティテュバ……じゃなかった。シバの女王さんに教えてもらったわ」

「来てすぐに何を教えてるんだこの女王」

「言い掛かりですぅ~! 私、別になにもしてませんってぇ!」

 

 ひ~んっ! と悲鳴を上げながら、自分は悪くないと主張するシバの女王。

 そもそも何があったらそんな事を教えることになるのかと思うが、隣でギルガメッシュが顔を伏せているので、おそらく何か手引きをしたのだろう。

 そう思っていると、ギルガメッシュは突然顔を上げ、

 

「いや何、貴様が考えている様なことではない。この女が自ら仕掛けたことをやり返されただけのことよ。何、気にする事ではない」

「いや、気になるけども……まぁいいや。じゃあ、アビー。たこ焼き二つで。一つはこっち、もう一つは後から来るアナとBBにお願い」

「分かったわ」

 

 そう言って、作業を始めるアビー。

 ちなみに、ジャックは食材のほとんどを切り刻んでしまってやることが無くなったので、バニヤンと一緒に遊び回っていた。

 

「ようやく追い付きました……センパイ、意外と移動速度速いですよね。もう少し遅くてもいいと思うんですけど」

「マスターの性分なので仕方ないかと。というか、たぶん姉様が速くて、マスターがそれに合わせているようなものかと」

 

 そう言いながらやって来たアナとBBを見て、オオガミは手を振るのだった。




 いやぁ……周回が進まないですねぇ……100箱、たどり着くだろうか……


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ついにフィナーレ!!(後輩ちゃんパワー見せてあげます!!)

※バトル・オブ・ニューヨーク2018ネタバレあり! ご注意ください!










「さて、フィナーレだ。ぶっ飛ばしに行くよ」

「ふふん。やっぱりBBちゃんの力が必要という事ですね! 今回の祭り、もしかしてBBちゃんゲーなんじゃないです?」

 

 ドヤ顔をかますBBに、苦笑いで応えるオオガミ。

 とはいえ、やはり今回も運用するので、あながち嘘と言うわけでもない。

 

「まぁ、アビーよりもクリティカルが強いからなぁ……ハイパワーだよねぇ……」

「BBちゃんですし! えぇ、はい! まぁ、任せてくださいよ!!」

「期待してるよ。うん、そのパワーが大事だよ」

 

 そう言って、装備を整えるオオガミ。

 BBは楽しそうににやにやと笑いながら、準備を手伝っていた。

 

「珍しく機嫌がいいね?」

「そうですか? でも、まぁ、ちょっと楽しみなのは確かですね。最近いっぱい暴れられてますしね!」

「う~ん……そのうちエウリュアレも暴れさせないと、うっかり撃たれそうだなぁ……」

「それは……あれ、本当にあり得そうなんですけど……センパイ、命を狙われるのが似合い過ぎてません?」

「それは、バカにされているって事ですかね?」

「あら、それはノーコメントで。ほら、早く行きましょうセンパイ!」

 

 そう言って、オオガミを急かすBB。

 そして、そのまま二人はフィナーレへと向かうのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ま、BBちゃんの敵じゃないって事です!!」

「通常モードと邪神モードの二重で完全勝利を収める後輩ちゃんパネェ。強いわぁ」

 

 胸を張ってドヤ顔をしているBBと、その圧倒的パワーに頬を引きつらせているオオガミ。

 本当に尽くを狩りとっていくのは流石過ぎた。

 

「う~ん……なんだろう、BBの性能が強すぎるんだけど、でも明らかに高難易度用だよね……」

「それを言われるとどうしようもないんですが……そうですね、私は高難易度専用って感じですね。出来れば通常でも戦えるといいんですけどね~。まぁ、それはどうしようもないですし。システムハックはBANですし」

「何の話をしているの……よし、取り合えず終わったし、アビーの店に戻ろうか」

「そうですね。アビーさんも怒りそうですし」

「アビーが怒るって……BB的には気にしなくても良い事なんじゃ?」

「いえいえ、あの子、なんでか知りませんが、たまに殺しに来るんですよね。しかも、時々宝具まで飛んでくるんですよ……」

「何したの……」

「そうですね……最近襲われたのは、ジャガ村さんを殲滅した時ですね」

「……活躍したから……?」

「あぁ、いえ、その後ドヤ顔で自慢しに行ったら殴りかかられました」

「自業自得じゃん」

 

 オオガミはそう言って、ため息を吐くのだった。




 フィナーレが一番エキシビションらしい戦いでした。最高だった……


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明日には終了!(最後に遊んで回りたいわよね)

「よし、後2000かな」

「それで目標の100箱ね。やりきれるなら良いのだけど」

「流石にここまで来て止めるつもりはないんだけど……」

 

 そう言って、リンゴの数を数えるオオガミと、それを見つめるエウリュアレ。

 そこにやって来たのはスカディ。

 

「ふむ……もしや、後少しか? なら、急いで終わらせるとしよう」

「えぇ……めっちゃ生き生きとしてるんだけど……いや、気持ちは分かるけども」

「めちゃくちゃ振り回してたものね……ずっとスキルを使いまくってたもの」

「あぁ、流石に飽きてきた。だから、終わったら少し散策を手伝ってもらうぞ人の子よ」

「了解です。まぁ、一人じゃないかもしれないですけど」

 

 そう言って、ちらりとエウリュアレを見るオオガミ。

 その表情は笑顔だが、置いていったら射つという意思を感じた。

 

「あぁ、私は構わない。多いのは良いことだ。一人よりはな。むしろ、何人か誘ってもらう予定だったから、気にしなくていい」

「なるほど。じゃあ、何人か誘ってみますね!」

 

 そう言って、誰を誘うかと考えるオオガミ。

 エウリュアレはそれを微笑ましそうな表情で見つつ、

 

「さて、じゃあ散策のために準備しようかしら。リンゴは準備済みよ」

「いや、それ俺が準備した奴じゃ……まぁいいや。じゃあ、さっさと終わらせようか。エウリュアレは適当に声かけてきてね」

「そうね、そうするわ。行ってらっしゃい」

「うん、行ってきます」

 

 オオガミはそう言って、スカディと一緒に周回へと向かっていくのだった。

 

 

 * * *

 

 

「って訳で、行きたい人」

「はいはいはいはいはい!! 絶対行くわ!」

 

 そう、元気一杯に手を上げるアビゲイル。とはいえ、それは想定済みなので気にしないことにする。

 

「アナスタシアはどうする? まぁ、午前中だけなんだけどね」

「そうね……ちょうどお店の片付けも終わったし、遊びに行こうかしら」

「じゃあ行くのね。アナは強制として、後はジャックとバニヤンかしらね?」

「まぁ、そんなところかしら……」

「吾、忘れられてないか!?」

「あ、バラキー……ごめん、忘れてたわ。じゃあ、今のところは五人かしら?」

「そんなところですかね? とりあえず参加する人をメモっておきましょうか」

 

 そう言って、さらさらとメモっていくアナ。

 久しぶりに見た気がする茨木は、どうも楽しんでいたようで、色々な食べ物やお土産を持っていた。

 

「よし、じゃあ、とりあえず行きたいところを大まかに決めておきましょう。どうせ、時間がないと思うし」

 

 エウリュアレはそう提案して、地図を開くのだった。




 後少しで終わる……そして、メカエリちゃんを取るんだ……(錯乱


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ハロウィン・ストライク!魔のビルドクライマー/姫路城大決戦
復刻ハロウィン開始!!(チェイテピラミッド姫路城の再来)


「レッツハロウィーン!」

「吾の時季だな! 菓子を寄越せぇ!」

 

 楽しそうにしているBBと茨木。

 なお、その後ろにはチビッ子鯖が待機している。

 

「今回のチェイテ城はサクッとクリアして、リンゴを貯めたいんだよねぇ……休憩したい……」

「あぁ……流石に、店を見て回っただけで疲れは消えぬ……今回はあの果実は使わぬよな……?」

「流石に休憩。切羽詰まったら使いますけども」

 

 疲れきった顔をしているスカディと、出来るだけリンゴを貯めたいオオガミ。

 とはいえ、そもそも今回は三ターンで回る必要もないので、スカディは休憩になりそうだった。

 

「まぁ、スカディさんはそろそろ休憩かな。代わりに……ん~……アビー行く?」

「むっ! マスターが私の力を求めている予感っ! 当然行くわ!」

「……文字通り跳んできたわね」

 

 そう、文字通り時空の壁を跳んできたというわけだ。

 ドヤ顔のアビゲイルと、半笑いのエウリュアレ。

 

「よし、じゃあアビーは行くとして、後はどうしようか」

 

 オオガミがそう言うと、背後から、

 

「はいはい! おかあさん、私たちも戦いたい!」

「あぁ、ジャック……うん、そうだね。じゃあジャックで。ライダーもいたしね」

 

 そう言って、ジャックも採用するオオガミ。

 

「さて、エウリュアレは留守番だから、何か遊べるものはないかな……」

「別にチェイテ城を散策するから要らないわよ……アナを連れていくわよ」

「えっ、BBさんじゃなくって良いんですか? 姉様」

「暇になったらついてくるでしょ」

 

 そう言って、エウリュアレはアナを連れてチェイテ城に向かっていく。

 あまりの自由さに頬がひきつるが、わりといつものことだと自分を落ち着かせる。

 

「ま、まぁ、アナは今回も休憩の予定だったからいいけど……うん、何のためらいもなく持っていくのは流石すぎるよ」

「BBさんも良いの?」

「……うん、BBも最低でも高難易度までは放置かな。たぶんエウリュアレについていくよ」

「ふぅん? 今更なのだけど、エウリュアレさんのマスター理解力、おかしくないかしら……」

 

 アビゲイルがぼそりと言った言葉に、聞こえていた古参組は苦笑いをする。

 昔よりも精度が上がっているので、むしろオオガミよりもオオガミの事を知っているのではないかというレベルだった。

 だが、その言葉にオオガミは気付くことなく、

 

「ん~……そんな事はないと思うけどね。さて、とりあえずAPが無くなるまで周回するかな」

 

 オオガミはそう言って、アビゲイルとジャックを連れて周回へと向かうのだった。




 懐かしいチェイテピラミッド姫路城……速攻終われるものじゃないんですけどねぇ……

 あ、ニューヨーク散策回はカットです。結論から言うと、茶々とBBを忘れてオオガミが吊るされました。


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このチェイテピラミッド姫路城、本当に凄いよね(違法建築な物理法則無視事故物件)

※ハロウィンストライク! 魔のビルドクライマー姫路城大決戦 のネタバレアリ! 注意してください!













「ふむ……ふと思ったのだが、この館……奇妙な形をしているな。館に、ピラミッドとやらを逆さに突き刺し、その上に城を建てるとは……中々見れない光景だな」

「中々っていうか、普通は見れないですスカサハ様」

 

 ひっくり返りそうなくらいに見上げているスカディを見つつ、オオガミはその呟きに答える。

 

「ふむ……汎人類史は凄いな。実は異聞帯よりもおかしいのではないか……?」

「否定できないのがびっくりだぁ……」

「センパイそこは頑張ってください」

「何を頑張れと……」

 

 神妙な顔で呟くスカディに突っ込みつつ、謎の応援をするBBにも突っ込むオオガミ。

 今回は周回ものんびりなので、出会う敵を適当にあしらいながらの城内探索もしていた。

 アビーとジャックは出現した巨大メカエリちゃん二号と大きさ対決をしているバニヤンの肩の上に立っていたりする。

 

「それで、エウリュアレさんを追って探索するんですか?」

「そのうちね。今はまだいいかな」

「そうですか。あ、そうだ。センパイ。マシュさんが失踪したんですが、どこに行ったか知ってます?」

「いや、知らないけど……あぁ、たぶん、こっちに来ないでシャドウ・ボーダーに帰ったんじゃないかな……ボックスを100箱開けたら素材がじゃんじゃか入るし……それに、イベントで新シンさんとCEOが出張するし……」

「あぁ……倉庫整理ですか……暇になったらちょっと手伝ってあげましょうか……」

「うん、そうしてあげて。一週間くらいの休憩はあるから、その時には俺も手伝うけど」

「あれっ。休憩時間があるなら、ササッとノッブを召喚して楽できるようにしたらいいんじゃ……? あ、いえ、やっぱ何でもないです!」

 

 BBは何でもないと言って笑みを浮かべ、絶対に追及させないとばかりの勢いだった。

 その勢いに気圧されたオオガミは、それ以上は特には何も言わずに前を向く。すると、

 

「継ぎ目の部分……気になるな。人間は面白い事を考える。さて、暮らしやすいのだろうか?」

「絶対に暮らしにくいですからねっ!? しかも、明らかな事故(物理)物件ですから!!」

「天然なのかわざと言っているのか分からないのが凄いですその人。ちょっと流石のBBちゃんも勝てる気がしないです」

「BBはそもそも張り合う対象として見ないで!!」

「流石に張り合いませんよ!? というか、私をどういう目線で見てるんですか!!」

 

 元気に中へと入って行くスカディについて行くオオガミと、抗議しながらついて行くBB。

 上空ではバニヤンたちの謎の張り合いの声が聞こえてくるが、三人は気にしないのだった。




 礼装詰みまくって、アイテム無視してのんびりクエスト消化中……リンゴ無しで行けるか……?


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この建造物、一体どうやって建ってるのかねぇ?(今年も元気に建ってるようで何よりだが、倒壊しそうで怖い)

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「っはぁ~……いやぁ~、特異点ってなぁとんでもねぇ。こりゃ南蛮のど偉ぇ大工がやったんだろなぁ……描きがいがあるってもんよ!」

「いや、これは事故が原因なのだが……あぁ、うむ。これは聞いていないな。吾分かる。びぃびぃとマスターが悪巧みしてるときくらいだ」

 

 自分の世界に入り込んで絵を描く北斎と、その後ろでため息を吐くバラキー。

 さりげなくとばっちりを受けているオオガミとBBだが、あながち間違ってもいないので否定するのは誰もいない。

 

「それにしても、今年もこれを見れるとはなぁ……うむ、酒呑にも見せたかった……」

「あん? 酒呑って、あの酒呑童子かい? そういやアンタはあの茨木童子か。そりゃ縁もあるわけだが……うちにはいねぇってことは、つまり召喚されてねぇってことか」

「……あぁ、そういうことだ。吾も召喚できないかと思ってはいるが、それを提案するとマシュの視線が痛くてな……」

「あぁ~……それは分かるねぇ……あの視線は強烈さぁ。冷や汗たらたらだよ全く」

「うむ……なんとかして召喚してもらいたいのだがなぁ……」

 

 うんうんと悩むバラキーに、苦笑いを向ける北斎。

 マシュの怒っているときの目は、明確な殺意が見えるので、流石に受けたくないというのが共通認識だった。

 とはいえ、その視線を受けても平然としているのがオオガミなので、ある意味最強なのではなかろうか。

 

「……しかし、去年は無かったが……あれはあれで面白そうよのぅ……」

「あん? あぁ、あのデカブツ同士の喧嘩ねぇ……いや、ちょいと待ちな。普通に面白そうじゃねぇか。これはこれで描きたいねぇ……」

 

 ギルガメッシュと茶々の二大コンビで再び行われている黄金装飾。今回はロボっぽいものを重視した巨大な鎧をバニヤンに装備させ、巨大メカエリちゃんを威嚇するという状況。

 それを見て、建物と喧嘩のどちらを描こうか悩んでいる北斎に、バラキーはため息を吐いて、

 

「描けば良いだろう? やりたいことをやりたいときにやりたいだけする。それが鬼の流儀よ」

「へぇ……鬼ってのは案外いいこと言うじゃないか。いいね、じゃあ描こうか。建物ってなぁ簡単には消えんが、ありゃそんとき限りだからな。描く他無いね!」

「うむ、そうだな。ただ……この、チェイテピラミッド姫路城は……倒壊しそうな勢いだから、気を付けないとダメだぞ」

「……まぁ、倒れてきたらそんときさ!」

 

 そう笑い飛ばして、北斎絵を描き続ける。

 バラキーはそれを見て若干楽しそうにしつつ、傍らに置いていたマカロンに手を伸ばし、

 

「…………」

 

 その手は空を切る。

 疑問に思い視線を向けると、そこには代わりとばかりに一枚の紙が。それには、

 

『怪盗茶々参上! マカロンは貰っていくねっ!』

 

 と書いており、暫しの硬直。そして、

 

「また盗まれたぁーーー!!」

 

 去年の反省を生かせず、今年もマカロンを奪われた鬼の姿が、そこにはあった。




 昔を見直し、ふと、初期の頃は注意とかなかったんだな。と気付いた私です。良いのかこれは……修正した方がいいのか……?

 そして、さりげなくマスターもエウリュアレも出てこない珍しい回。

 あ、日間18位! ありがとうございます! これからものんびり書き続けますね!


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期限内に終わるかなぁ……(それよりも、外がとんでもないことになってるんですが)

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「う~ん……クエストが終わらないなぁ……」

「いや、二週間もあるんですし、仕方の無いことだと思いますよ? というか、ペースとしては良い方だと思いますけど」

 

 姫路城の中から座って外を見つつ呟くオオガミと、同じく外を眺めながら答えるBB。

 外では巨大メカエリちゃんと黄金のバニヤンによる怪獣大戦争が行われていた。

 肩に乗っているアビーを始めとしたチビッ子鯖に手を振り、そんなチビッ子鯖達に混ざって遊んでいるギルガメッシュに頬を引きつらせる。

 

「……ねぇBB。これ、終わる気がする?」

「……それは、リンゴを使わずにってことですよね?」

「うん」

「そうですねぇ……今の手持ちなら、ギリギリですかね? まぁ、うまくいけばリンゴ無しで行けるかと。ただ、代わりにアイテム交換は諦めることになると思いますよ?」

「ぐぬぬ……難しい問題だよねぇ……」

 

 そんな事を良いながら外に目を向けると、バニヤンの肩に乗っていた茶々に飛び掛かるバラキー。

 バニヤンの足下から飛び上がってきたので、若干のホラーだった。

 突然のことに茶々は対応出来ずにバラキーに捕まって真っ逆さまに落ちていく二人。

 とはいえ、その場にアビーもいるので、すぐに門で回収されてバニヤンの肩の上に戻った。

 

「……さっきから外を見てるとさ。とんでもないことが起こってるんだけど……BBさん。どう見ます?」

「いやぁ……あの金ぴか王、たまにとんでもないことしますよね。というか、子供に甘いと言いますか……こっち来てからずっとあのメンバー固まってる気がするんですが」

「だよねぇ……うんうん。ところで、スカディさんがどこに行ったのか知ってる?」

「センパイが知らないのに分かるわけ無いじゃないですか……というか、二人揃って見失ったんですから、探すしかないです」

「ですよねぇ……なんで見失うのか。自由すぎるでしょあの人」

 

 失踪したスカディの事を思いつつ、しかし既に探すのは疲れたので休憩し続ける二人。

 すると、後ろの(ふすま)が開き、

 

「あら? こんなところで何をしているのかしら」

「エウリュアレ……?」

 

 エウリュアレが、アナとスカディを連れて入ってきた。

 

「えっとぉ……なんでスカディさんはそっちに?」

「お前たちが迷子になったから探していたら偶然会ってな。そのまま一緒に行動していたわけだ」

「あ~……なるほど~……」

 

 お前が迷子になってたんだよっ! とは言えない状況。

 オオガミもBBも共に頭を抱えるが、流石にスカディには悟らせない。

 とはいえ、エウリュアレにはバレバレだったりする。

 

「まぁ、せっかく合流したんだもの。少しの間、一緒に行きましょう?」

「ん……そうだね。じゃあそうしようか」

 

 そう言ってオオガミは立ち上がると、大乱闘が起こっているバニヤンの肩の上から目を逸らすのだった。




 ここまで一切主軸になって展開されないバニヤンサイド。わりと愉快すぎる……


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神性アーチャーって、姫路城にもいたよね(本当に容赦なく倒すわね)

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「さて、さっきまで隣にエウリュアレがいる状態でエウリュアレが出てくるエリアを周回していた訳ですが」

「えぇ、後で覚悟しておきなさい?」

 

 先程までひたすらに周回していたが、途中でアーチャーで神性持ちなら姫路城にもう一人いたことを思い出し、今さらになって移動した。

 当然、目の前でぶっ飛ばされているのを見ていたので、エウリュアレは凄みのある笑顔をしていた。

 

「うん。後でエウリュアレの機嫌を取るために奔走するのは確定したんだけど、そうじゃなくて、外がとんでもないことになってるんだよ」

「……そうねぇ……いつもより、ちょっと暴れてるわよねぇ……」

「えぇ~……センパイ達、なんであんなのに慣れてるんですか……私的に結構衝撃的だったんですけど」

 

 外では、今まさにビームが撃たれ、それをバニヤンがチェーンソーでぶったぎっていた。そのせいで弾かれたビームが周囲に飛び散るが、ギルガメッシュとアビーが迎撃しているので今のところ被害はない。

 

「あれってさぁ……どっちを止めれば良いんだろ……」

「とりあえず、始めたのはおおよそアビーだから、アビーを叱っておけば良いんじゃないかしら。後、あの金ぴかは後始末ね。茶々は天守閣から逆さ吊りで許しましょう」

「ジャックとバニヤンにはお菓子の試食を手伝ってもらうかな。ロシアンクッキーを作るよ」

「……それ、私に出したら締め上げるわよ?」

「エウリュアレなら食べないでしょ。たぶん」

「えっ、BBちゃん、なんとなく想像できるんですけど、間違いなくその時に限って呼ばれますよね? もしくは呼びまくって警戒が薄れたところに突然投げ込んできますよね?」

「いやいや、流石にそんなことしないって」

 

 オオガミは苦笑いをしながら、しかし、その手もあったと思う。

 エウリュアレはそんな事を考えているのだろうと思いつつ、外で戦闘している巨人戦士バニヤーンとメガメカエリちゃんによる戦闘を見ていた。

 そして、一人で被害妄想を加速させているBBは、何もしないと言っているにもかかわらず既に半泣きだった。

 そんな時に、ふとエウリュアレは気付く。

 

「……スカディは?」

「……また失踪したのかあの女神さま!?」

「あぁ、いえ、失踪したというより、あそこに混ざってます」

 

 BBに言われて視線を向けると、バニヤンの肩の上に乗って、ギルガメッシュと話しながら鎧や武器に無駄に装飾を施していっていた。

 ただ、アナも一緒にいるので、暴れすぎないようにしてくれるだろう。

 

「……自由か!!」

「絶対センパイには言われたくないと思います」

「えぇ、貴方は言っちゃいけない言葉ね」

「えぇっ……めっちゃ理不尽……」

 

 二人に即答され、半泣きになるオオガミ。

 とはいえ、そろそろバニヤンの見た目が主人公と言うよりもボスキャラに近づいて来ていた。

 しかし、誰もそれを言及しないので、ひたすらにバニヤンの装備は強い見た目になっていくのだった。




 エウリュアレだろうと、敵なら容赦なく倒すオオガミ君……ある意味割り切っている感。
 というか、イシュタルがいたのを完全に忘れてたんですよね……

 はい。バニヤンがめっちゃごつくなってます。誰だこんなことにしたのは。


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そろそろハロウィンのためにお菓子を貯蓄しないと……(そもそも作れる状況じゃないわよね)

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「むっ、今唐突に閃いたっ!」

「悪巧みを?」

「ひ、酷い言い様だよ……」

 

 目を見開いて、まさに閃いたとばかりの表情をしたオオガミに、合いの手を入れるエウリュアレ。

 流石に悪巧みを考えていたわけではないオオガミは、半泣きだった。

 

「それで、何を思い付いたのよ」

「あぁ、うん。最近お菓子を作ってないからどうしようかと考えてたんだけど、そうだよね。ここで作れば良いんだよね」

「その発想は分からないわ。というか、道具も何もないでしょ?」

「そう、そこが問題だった。だけどね……どうにかなることに気付いたんだよっ!」

 

 オオガミが叫ぶと同時、オオガミの数歩後ろに落ちるメカエリビーム。

 まるで雷が落ちたエフェクトに見えなくもない。

 ただ、うっかり当たっていたら、流石のオオガミも瀕死は免れないので、少し不安になるエウリュアレ。

 

「……で、その方法は?」

「アマゾネスCEOに持ってきて貰えば良いんだよ!」

「あ~……なるほどねぇ~……うん。機材が揃っても、ダメだと思うわ。ここだとどんな邪魔されるか分からないもの」

「いや、簡単なものを作るだけだし……砂糖と水と火があれば出来るかなぁ……」

「……飴でも作るのかしら……」

「まぁ、そんなところ。っていうか、BBは?」

「聞きながら真っ先にバニヤンの肩を確認しないで……普通に探索しに行ったわよ。AP回復するまでには戻ってくるって言ってたし、たぶん大丈夫よ」

「そっか~……」

 

 そう言って、バニヤンから視線を外すオオガミ。

 完全に混ざりに行っているのだと思っていたので、若干期待外れである。

 

「それで、本当に作るの?」

「ん~……そうだなぁ……いや、作るつもりではいたんだけどさ、冷静に考えると、ハロウィンが近付いてきているわけで……そっち用にも作っておかないと不味いわけで……そっちは真面目に作りたいからキッチンを使いたいわけで……うぅむ……」

「普通に帰ってからにしなさいよ。別に、今ここで作る必要もないんだし」

「それもそうだね……とりあえず、何を作るかだけは決めておこうかな」

 

 そう言って、窓際に座りつつメモ帳を取り出すオオガミ。

 エウリュアレは隣に座りつつ、

 

「……それ、私も提案して良いのかしら」

「もちろん。エウリュアレにも渡すしね」

「……複雑ね。怒れば良いのか、喜べば良いのか」

「素直に思った方で良いんじゃない?」

 

 子供扱いされていると怒るべきか、お菓子をもらえることを喜ぶべきか。

 エウリュアレはそれを考えて、しばし考え込んでしまうのだった。




 珍しくバニヤンサイドがほとんど無い……うぅむ、入れるタイミングを見失った……


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私の出撃頻度多くないですか?(比較的少ないと思うけど)

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「ん~……ここの景色はやっぱいいよね~」

「そうね~……でも、ここまで来ると、むしろ足がすくむのが普通だと思うわ」

 

 姫路城の屋根の上から遠くを見るオオガミ。

 隣のエウリュアレは、下を見て苦笑いしていた。

 

「はぁ……私、ずっと周回してる気がするんですけど。アビーさんよりしてません?」

「そうねぇ~……ギル祭以降、ずっと運用され続けてるものね」

「まぁ、エウリュアレやドレイク船長よりはまだ運用してないと思うんだけど」

「……ねぇセンパイ? 私、ドレイクさんに会った覚えがないんですけど……」

「うん。再召喚されてないのもあるけど、そもそも最近はドレイク船長が出るまでもなく終わるからね」

「えぇ~……じゃあ私も待機で良くないですか?」

「そりゃ、BBは今のところ優秀なアタッカーなので、三ターン高速周回しない限り外されることは基本無いね」

「それをされるとモノ作りに大きなダメージが……いえ、何でもないです。まぁ、こればっかりは仕方無いですしね。次のアタッカー補充までは私が担当しますよ~っと」

 

 頬を膨らませて不機嫌そうな態度をするBB。

 それを見て、エウリュアレとオオガミは苦笑しつつ、

 

「まぁ、今回のイベントが終わったら、一週間くらい暇はあるし。次の敵増加系イベントまでは休憩できるよ」

「むぅ……私知ってますよ? 次のイベントも明らかに敵増加系イベントだってこと。えぇ、はい。後輩レーダーにビビっと来てますとも」

「……正直、もう敵増加系はやりたくないんだけど……うん。まぁ、BBの後輩レーダーに引っ掛かったなら、きっと敵増加系なんだろうなぁ……コフッ」

「セルフ擬音っ! そんなレベルで嫌ですか! いえ、私も嫌ですけど!」

「まぁ、そもそも大量の敵だと、事故りやすいものね……」

 

 セルフ擬音を呟きながら屋根の上に倒れるオオガミと、その嫌がりように突っ込むBBと事故の恐怖を知っていて共感しているエウリュアレ。

 今でも三騎士は苦手なのは変わらない。

 

「……そう言えば、バニヤンさん達、静かになりましたね……」

「あぁ……今は一旦休憩だって言って、エミヤのご飯を食べてるよ。お腹空いたってさ」

「……平和というかなんと言うか……あの巨大メカエリちゃんに挑んで見逃してもらえるんですねぇ……」

「まぁ、エリザ粒子不足だし、仕方ないんじゃないかな。自立してないし」

「……変な粒子、後どれだけ増えるんでしょうか……」

 

 BBは、ノッブならきっと粒子を研究してとんでもないものを作るんだろうなぁ……と思いつつ遠い目をする。

 オオガミは、これ以上増えられたら突然変異ウィルスでも生まれるんじゃないかという嫌な予感がしていた。

 エウリュアレはそんな二人を見て、苦笑するのだった。




 もう既に手遅れの可能性。
 というか、前に実際ノッブが作ろうとしてた気がするんですが……うぅむ、思い出せない……


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残りクエストは後少し(実質あってないようなもの)

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「案外、終わらないわよねぇ……」

「まぁ、期限にかなり余裕があるから、そんなに急いでもないしねぇ……」

「私は暴れられてるから良いんですけどね」

 

 残り7日。現状で既に90個以上のクエストが終わっているのだから、のんびりしていても終わるだろう。

 ただ、不安があるとすれば、素材回収が終わってないところだろうか。

 

「素材回収はどうするの?」

「あぁ、一応全取り予定。ただ、ピースとモニュメントは最悪放置かな」

「センパイ、珍しくピースとモニュメントを逃しますよね~……サウンド解放しないんです?」

「出来ればいいけどねぇ……優先はしてないかな」

「まぁ、おまけみたいなものだしね。そんなに頑張る必要もないし」

「そんなもんですよね。まぁ、コンプリート癖でもない限り、そんなにやらないですよねぇ……」

「うんうん、流石にやってられないって」

「でも、センパイならいけますよね!」

「無茶言うなぁこのリトルデビル系後輩ちゃん。まぁ、そのうちね」

 

 無駄に期待をしていくBBに、苦笑いしながら答えるオオガミ。

 

「ん~……とりあえず、今はクエストを終わらせるのを優先しないとかなぁ」

「そうですねぇ……とはいっても、言うほど量は無いので、気張る必要も無いんですけどね」

「早めに終わらせないと素材回収が出来ないから出来るだけ急ぐけどね」

「うへぇ……結局周回はしなきゃならないのが面倒ですねぇ……」

「まぁ、それは仕方ないしねぇ……周回しなきゃ終わんないし」

「たまに事故ってやられるのさえどうにかしてくれればいいんですけどねぇ……私一人で戦線を支えられるわけじゃないですし……」

「まぁ、礼装変えれば出来るかなぁ……ただ、威力不足が心配だな……まぁ、祈るしかないかな」

「流石に威力不足にはならないと思いますけどぉ……まぁ、そうですね。いつもの初期礼装でいいんじゃないですか? レベルMAXですし」

「まぁ、そうなるよね。回復も回避も出来るし。それでいいかな」

 

 そう言って、礼装を変えるオオガミ。

 

「さて、APが回復するまでは暇だし、アビーたちの様子を見に行こうか」

「そうですね~。結局、バニヤンさんの装備、どこまで変化したんでしょうか……」

「あの金ぴか鎧、どれだけ改造されたのかしら。というか、斧とチェーンソーも地味に装飾されてなかったかしら?」

「まぁ、それを見に行くんだし、その時に確認すればいいよ。えっと、チェイテ城の前にいるんだっけ……飛び降りて良い?」

「無視するわよ」

「むしろ加速させて落としますね!」

「ひゅぅ……殺意高いぜ」

 

 そう言って、三人は降りて行くのだった。




 意外とサクサク進んで、リンゴが貯まって行っている事実ににまにましてる私です。


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クエストコンプリート!!(あとは高難易度とアイテム交換だけ!)

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「ふぃ~……クエストコンプリートかな」

「意外とあっさり終わるものですねぇ……まぁ、高難易度が残ってるんですけど」

「素材交換も残ってるわね……」

 

 クエスト100個を達成して、姫路城の屋根の上で一息ついているところに追い打ちを仕掛けてくるBBとエウリュアレ。

 オオガミはその対応に涙目になるが、想像以上に残っているので、何も言えなかった。

 

「いやぁ……うん。今日は頑張ったんだけど、労いは無いんですか」

「それなら真っ先にBBちゃんを労ってほしいんですけど。BBちゃん、フル出演ですよ?」

「あぁ、うん。BBちゃんは頑張った。次のイベントまでは休憩に入ってどうぞ」

「雑ですぅ! もうちょっとBBちゃんにも構ってくださいよ!」

 

 頬を膨らませて怒るBBに、オオガミは苦笑いをしながら受け流す。

 エウリュアレはそんな二人を見て、少し頬を膨らませると、オオガミを引っ張って自分の膝の上に倒す。

 突然の事に困惑するオオガミとBB。

 

「え、えぇっと、エウリュアレさん? 突然どうしたの?」

「何よ。貴方が労って欲しいと言ったんじゃない。それとも、これは労いには含まないのかしら?」

「いや、そんなことはないけど……エウリュアレからしてくれるのは珍しいなって」

「そうね。実際、私も自分で珍しいって思ってるわ。でもまぁ、ギル祭で100箱開けたときにはなにもしてなかったしね。それに、貴方の誕生日にも。だから、今日くらいは良いかなって思っただけよ」

「そ、そういうこと……」

 

 オオガミがそう言って、ようやく力を抜いた。

 そして、エウリュアレはにこにことしながらBBに鋭い視線を向ける。

 その視線は、なんとなく「今日は譲らない」と言っているようにも見えた。

 それに対して、BBは面白くなさそうな表情をするが、すぐに何かを思い付いたような顔をして、スタスタと屋根から降りていった。

 

「……それにしても、本当に最近私は何もしてないわよね」

「ん~……まぁね。昔と違って、戦力も増えてきたし、エウリュアレがいなくてもなんとかなるようになったのが大きいかな。戦力が昔のままなら、エウリュアレとロビンさんのアーチャー二大戦線だったんだろうなって」

「そもそもアーチャーが少ないものね……そりゃ、私とロビンの二人で、時々ノッブかアルテラってなってるわよね。まぁ、エミヤもジャンヌも、後さりげなくいる水辺の騎士王たちのおかげで今ではアーチャーは足りてるんだけどね。というか、これで全クラスの戦力は足りてるんじゃないかしら」

「まぁ、ジャックも来たしね。全クラス星5も達成かな」

「そうね。でも、エクストラクラスの運用が多すぎないかしら」

「まぁ、相性を気にしなくて良いからねぇ……真面目じゃないならそれでなんとかなるもの」

 

 そう言いながら二人は話続けるが、BBが帰ってくる頃には二人して寝ているのだった。




 珍しくデレデレなエウリュアレ。やりたくなってしまったのだから仕方ない……


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グミの回収完了!(ラムネとクッキー……終わるかしらね?)

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「これでグミは終わりかな」

「むしろ過剰に手に入れてますし。まぁ、ラムネに回せるので良いんですけど」

「ただ、ラムネもクッキーも、礼装が少ないから時間は掛かりそうね」

 

 今日も今日とて姫路城の屋根の上で休憩するオオガミ達。

 今日はグミが終わり、残すはラムネとクッキーだけとなった。

 

「さってと。一段落したし、余ったグミでも食べますか」

「あら、アビー達には?」

「配ってきた余りだよ。後、今なんで静かなのかって思って聞いてきたら、メカエリちゃんと遊んでるからっぽい。まぁ、カッコいいし、仕方無いよね」

「あ~……あのロケットパンチとか、面白いわよね」

「ノッブが前に作ってたガシャドクロも似たような機能をつけようとしてましたよね」

「あれは……うん。完成させられなかったのが悔やまれる……」

「骨が足りなかったのが原因よね……」

 

 メカエリちゃんのロケットパンチから、ノッブが作っていたガシャドクロの話に飛んでいく会話。

 大体の話題からノッブに至れるので、結構いろんな事をしていたんだなと思う一同。

 とはいえ、今はいない相手。再召喚はいつになるか分からないのが難点だった。

 

「……さりげなく、一番いろんな事をしてたのって、ノッブですよねぇ……」

「そうねぇ……一番暴れてたのはマスターのはずなのにね」

「あれ? なんかめっちゃバカにされてる気がする……全く暴れた記憶なんか無いんだけどな……」

「そうね。いつものことだものね」

「センパイは暴れてないときは基本無いですし」

「暴れてるときがないって何!?」

 

 何かをするときはほぼ確実に騒ぎを起こすので、ノッブやBBよりも質が悪かったりするオオガミ。

 とはいえ、それでも指揮はしっかりしているのでそれほど文句を言えないのも現状だ。

 

「よし。じゃあ、エウリュアレの分。で、これがBBの分。まぁ、量も質も変わんないんだけどね」

「えぇ、ありがとう」

「ありがとうございます。っていうか、凄い見た目ですよね……なんていうか、刺さりそうというか、岩も砕けそうというか」

「まぁ、普通に美味しいけどね。ソーダ味かしらね?」

「そうですね。というか、コレを集めて、刑部姫さんはどうしたいんでしょう。食べるんですかね?」

「まぁ、特異点の特殊アイテムだから、普通に虫歯になったり太ったりするんじゃないかな」

「まぁ、女神の神核で私は変わらないけどね」

「BBちゃんも、そこら辺は完璧に備えてるので問題無しです! えぇ、全く体型が変わらないっていうのは、きっと女性の敵って言われるんでしょうね!」

「……積極的に喧嘩売っていくなぁ……」

 

 ドヤ顔の二人に、オオガミは苦笑いをするのだった。




 ラムネは実質そんな効率変わらないんですけど、問題はクッキーなんですよねぇ……礼装一枚もないと言う……詰んでないですかね……?


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エウリュアレさん、良いご身分ですよね(わりと昔からだけどね)

「……良いご身分ですね、エウリュアレさん」

「あはは……」

 

 オオガミに膝枕をされているエウリュアレを見つつ、BBは文句を言う。

 オオガミはそれに対して曖昧に笑うしかなかった。

 

「全く……私が戦っている間ものんびりと寝て……少し位は手伝ってくれたって良いと思うんです」

「いや、手伝うって言っても、すること無いし……大人しく寝ていてくれるのが一番かなって」

「そ、それはそれで酷いですね……エウリュアレさんはマスコットですか……?」

「マスコットだねぇ……まぁ、それでもほとんど困ることはないし、良いんじゃない?」

「センパイが指揮を取らないのは、それだけ問題だと思うんですけどねぇ~……えぇ、はい。エウリュアレさん以外にも構った方がいいと思います。いや、本当に」

「あ~……そこは言い訳できないなぁ……うん。ごめんなさい」

 

 そういうオオガミは、確かに最近エウリュアレとBB以外に話していない気がする。

 とはいえ、北斎は周回が終わるとバラキーと一緒にいなくなってしまったり、アビーとジャックはすぐにバニヤンの元へと向かったりして、あまり話す時間がなかったりする。

 

「……帰ったら遊ぶ機会を増やすかぁ」

「サーヴァントと遊ぶっていう発想が出るのって、結構凄いことだと思うんですけど……だってセンパイ、審判するつもり無いでしょう?」

「まぁね。ガッツリ混ざる予定」

「それがおかしいんですって……流石のBBちゃんも、それは許容範囲外です」

「えぇ~……そんなにおかしいかな……」

「はい。普通英霊と競いません。だって、普通勝てませんもん」

「ん~……でも、それは競わない理由にはならないね。むしろレッツチャレンジ」

「どこからそのやる気は来るんですか……」

 

 エウリュアレの髪をどこからか取り出した櫛でとかしつつ、サーヴァントに混ざって遊ぶつもり満々のオオガミに呆れるBB。

 やられているエウリュアレが若干嬉しそうなのがまた、BBの機嫌を悪くさせる。

 

「……ねぇセンパイ? それ、私にもやってくれませんか?」

「え? あぁ、髪をとかすの? 了解。今はブラシが無いからちょっと待ってて」

「むぅ……なんでエウリュアレさんのだけ揃ってるんですか……」

「うぅ~ん……エウリュアレには良くやるから……かなぁ……?」

「納得できるけどしたくないですね……センパイ、エウリュアレさんに甘過ぎじゃないですか?」

「あ~……否定できないなぁ……結構言われるもん」

「そりゃ、今の状況を見るだけで分かりますよ……はぁ、私はお邪魔ですかね」

「そんなことはないけどね。あぁ、アビーならブラシを持ってきてくれるかも」

「……もう、仕方無いですね」

 

 BBはそういうと、姫路城の屋根から飛び降りるのだった。




 この二人……嫉妬しあってる……というか、アビーよりもライバルしてるよBBちゃん……


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BBさん、面倒くさいのよね(あんまり邪険にされると泣いちゃいますよ?)

「ってことがあってですね~? お二人が全然構ってくれないんですよぉ~……」

「それを言うためだけにここに来たの……? もしかして、BBさんって暇なのかしら……」

「いや、アビーさんが言うことでもないですけどね?」

 

 エウリュアレとオオガミが構ってくれないと文句を言いに来たBBに、頬を引きつらせるアビゲイル。

 今はハロウィンの仮装用に衣装を作っているところだったので、あまり邪魔をされたくないのが本音だった。

 

「むぅ……さては、アビーさんも私を邪魔者扱いしてますね?」

「えっ、い、いや、そう言うわけではないのだけど……」

「じゃあなんでちょっと引き気味なんですか……」

「いえ、引き気味と言うより、今はちょっと面倒くさいなぁって思っただけなのだけど」

「やっぱり邪魔者扱いじゃないですかー! 流石のBBちゃんも、ここまで邪険にされると泣いちゃいますよ!?」

「えぇ~……泣かれると慰めないといけないから困るんだけど……」

「手間のかかる子扱い……!!」

 

 運ぶ予定だった荷物を触手に代行させ、仕方ないとばかりにBBの話に付き合う事にするアビゲイル。

 構ってもらえそうな気配に気づいたBBは目を輝かせると、

 

「アビーさんなら邪険にしないって信じてました!」

「さっき言ってたことの真逆の事を平然と言えるの、凄いと思うわ。そう言うところ、尊敬するのだけど……」

「むふふ~。そんなことを言われたら、機嫌よくなっちゃいますよ? 何か手伝いましょうか?」

「えぇ~……BBさん、工学担当じゃない。お裁縫、出来るの?」

「こ、工学担当……そもそも私、システムを弄れるだけでそこまで工学サイドじゃないんですけど……ちゃんと裁縫も出来ますよ」

「本当に? ノリと勢いで裁縫してるのに途中からメカエリちゃんみたいなのを作ろうとしたりしない?」

「そ、それはちょっと保証できないですねぇ……興が乗ったら作っちゃうかと」

 

 やはり工学サイドの趣味人だった。ノッブと一緒にとんでもマシーンを作っていたのは伊達じゃないということか。

 アビゲイルはそんなことを思いながら、

 

「むぅ……まぁいいわ。お裁縫が出来るなら助っ人になるわ。文句を言い続けるより、何か作業した方が気分は晴れるわ。レッツ仮装! お裁縫の時間よ!」

「な、なんだかわかりませんが、BBちゃんも頑張りますよ! 鍛えた後輩力ってものを見せてあげます!」

 

 そう言って胸を張るBBを見て、アビゲイルは後輩力に関して考えつつ、既に作業をしているジャック達の元へと向かうのだった。




 ついに二人が完全にBBに構わなくなった様子。BBが面倒というよりも単純に二人の世界に入った可能性……

 さて、チビッ子の仮装……どうしようかなぁ……


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手先の器用さ、羨ましいわ(整備は好きだったりする)

「それにしても、本当にお前は器用ですね」

「むしろ器用なところしか取り柄がないと思うんだけどなぁ……」

 

 最近頑張ってくれているメカエリチャンの整備をしているオオガミ。その後ろには順番待ちの二号機もいた。

 ここ最近ずっと一緒にいたエウリュアレは、アナの元へと向かうと言っていなくなってしまっていた。

 ちなみにBBは、昨日いなくなってから帰ってきていない。

 

「器用なことだけが取り柄……ねぇ……それが本当だったら、貴方のような人間が世界に無数にいることになるのですが……その場合、もう英霊を必要としない気がするのですが」

「おっと。遠回しに人外判定食らったんだけど? 全く。一体人をなんだと思っているのか」

「少なくとも、既に人の領域は越えているものだと。寿命は人間並みとしても、生命力はワイバーン並み、逃げる速度はゴキブリ並み。流石にただの人間とは言いがたいのですが」

「……まぁ、攻撃力はないし、問題ないでしょ。一般人の領域を出ないって」

「私のデータと比べると、十分異常なのですが……」

「私も同じです。私たちが揃ってなお結果が変わらないということは、やはり一般人では無いのでは……?」

「…………」

 

 二人に言われ、黙ってしまうオオガミ。

 若干自覚はしていても、ここまではっきり言われると心に来るものがあった。

 

「あぁもう。そこまで人外扱いしたいならすれば良いさ! 俺は断固として認めないけどね!」

「なぜここまで言われて認めないのか……いえ、私としても、ここで人間ではないと結論付けると、私のパイロットは人間ではないことになるのでは……?」

「そ、それは問題です。大問題です。マスターは人間でないと、私たちが悪役になってしまいます!」

「悪役サイドの人型ロボット兵器だよねぇ……バベッジさんも、似たような感じ。どっちもロマンを感じる……あれ、今なら英霊ロボット大戦出来るのでは?」

「いや、流石にそれは……」

「無理だと思いますよ、マスター」

「……うん。XXさんいないし、是非もないよね……」

 

 そもそもロボット系の英霊が少ないのだが、誰もそこを突っ込まない。

 

「でも、ロボット英霊が増えるのはワクワクするよねぇ……バベッジさんみたいなのが増えるのもありかも」

「正直、増えられると個性を奪われている感じであまり好きではないのですが……」

「私も、出来ればこれ以上増えないのが最適ですね。このボディに勝るものはいないと思いますが、もし現れたら、それを破壊したくなってしまうので」

「ひゅぅ……破壊的ぃ……」

 

 二人の発言に戦慄しつつ、オオガミはメカエリチャンの整備を仕上げるのだった。




 作成は出来なくとも整備は出来る。そんなオオガミ君……そして、さりげなくメカエリチャンが出たのはこれが初めてなんじゃ……?


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後一日でイベント終了なのだけど(モニュメントを諦めれば普通に終わるかな)

「で、終わりそう?」

 

 オオガミの膝の上に座りつつ、イベントの進捗を聞くエウリュアレ。

 それに対して、オオガミは少し考えると、

 

「まぁ、モニュメントをやらなきゃいけるかな」

 

 エウリュアレはそれを聞いて、足をぶらぶらと揺らしながら、

 

「モニュメントは別に必要ってほどでもないしねぇ……放っておいても良いわね」

「そうだねぇ……ところで、昨日は結局何をしに行ってたの? アナを連れてくるかと思ったらそんなこともないし」

「あぁ……ただ様子を見に行っただけだから気にしないで。とりあえず、貴方はお菓子を貯蓄しておいた方が良いと思うわよ」

「えぇ……いや、するけども……なんでそんなアドバイスを?」

「そうねぇ……ハロウィンだから、かしら」

「ハロウィンだからかぁ……なら仕方ないなぁ……」

 

 オオガミはそう言って、エウリュアレに深く追求しないでおく。

 おおよその理由は想像がつくので、あえて追求する必要も無いし、何より、エウリュアレが楽しそうにしているのを邪魔するほどの事でもないからだ。

 

「……ところで、貴方こそ、昨日は何をしてたのかしら。鉄と油の臭いがするのだけど」

「あはは……いや、メカエリチャンの整備をしてただけだよ。二人分だったから結構時間経っちゃったけどね。半日で終わったから良かったけどね」

「ふぅん……まぁ、それなら良いわ。ここら辺、オートマタとかがいるから気になっただけだもの。無事なら問題ないわ」

「じゃあ、問題ないかな。怪我もしてないしね。心配してくれてありがとね」

「……えぇ、感謝しなさい。滅多にしないことだもの」

 

 そう言って顔を見られないように前を向くエウリュアレ。

 オオガミは、そんなエウリュアレの事を転がり落ちないように支えつつ、どうしたものかと考える。

 

「ん~……ねぇエウリュアレ。食べたいお菓子ってある?」

「……たまごタルト」

「ミニタルトかぁ……挑戦してみるかなぁ……」

「あれ、出来るんじゃないの?」

「基本的に、作れるのはエウリュアレに頼まれたのと、それの応用で出来るやつだけだよ?」

「私以外には頼まれないの?」

「頼まれても、応用の範囲で出来るしねぇ……そもそも、滅多に頼まれないし」

「そう……貴方が出来ることは大半のサーヴァントは知っているはずなのだけど……」

「なんでだろうねぇ……」

 

 そんなことを言いながら考える二人。

 とはいえ、この二人が悩んだところで答えは出ない。

 しばらく悩んだ後に、二人はきっとエミヤがいるからなのだろうと結論付けるのだった。




 さて……そろそろエウリュアレ分を補給したので、馬鹿話に戻らないと……戻れなくなりそう……


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イベント終了! モニュメントなんて無かったんや!(新兵器こたつを導入したわ)

「くっははははは!! やはり吾の一撃は効いたか! うむ! 吾は満足だ!!」

「ぐぬぬ……バニヤン達と遊んでいる間にイベントが終わってたわ……というか、最後の方はずっとBBさんの愚痴を聞いていたのだけど……!」

 

 高難易度を爽快に殴り飛ばし、そのせいでかなり機嫌が良いバラキーと、最初の数回以外ずっと編成から外されていたアビゲイル。

 イベントの片付けを終わらせ、シャドウ・ボーダーに帰ってきたばかりだった。

 

「はふぅ……あ、お帰りなさい」

「ただいま~! あ、あったかそう! 私たちも入って良い?」

「えぇ、良いわ。あぁ……この温かさ、癖になりそう……」

 

 そう言って、だらしなく溶けているのはアナスタシア。

 新しく手に入れたこたつに一番に入ったのは彼女のようだった。

 ジャックとバニヤン、アビゲイルの三人が入って、すぐに四面は埋まってしまった。

 バラキーはそれに気付くと、

 

「む。吾が入る場所はない、か……なら仕方あるまい。今日のところは貴様らに譲ってやろう。だが、いずれも吾が奪いに来ることを、首を洗って待っているのだな! クハハハハハハ!!」

 

 そう言って、自然に部屋を出ていく。

 ちなみに、他に特異点に行っていた組は資材庫に送っているので、この場に転移したのは四人だけだった。

 

「むぅ……バラキーも、行ってくれれば私のところに入れたのに」

「まぁ、あれが彼女の良いところではあるわ。優しい、と言ったら怒りそうだけどね」

「バラキーはすぐ怒るの! でも、口では文句を言ってても、ちゃんと遊んでくれるところが好き!」

「チェーンソーに火を付けたのはバラキーだしね!」

「……一体何をしていたのかしら……とっても気になるのだけど。後で記録を見てみましょうか……」

 

 まさか巨大ロボを相手に張り合っていたと記録を見せられても理解できないだろう。

 何せ、実際にあそこにいた自分達ですら、あれが現実なのか怪しいのだから。

 ちなみに、改造防具は一式ギルガメッシュに回収され、チェーンソーや斧の改造も元に戻された。なので、証拠品は王の財宝の中ということだ。

 

「あはは……でも、茶々さんが落ちたときにはビックリしたわ。バラキーさん、バニヤンの足元から一気に肩まで飛び上がってきたんですもの。それで茶々さんが捕まって、一緒に真っ逆さまに落ちていったのを見て慌てて回収したわ」

「でも、あれは茶々がバラキーのマカロンを盗んだのが悪いんだよ? 自業自得って奴だね!」

「まさか隣で食べてるのが盗品だって思わないわ。サーヴァントって怖いのね」

「まぁ、怪我がなかったのなら良いんじゃないかしら。でも、そうね。後で茶々からもお話を聞きましょうか。そっちも面白そうだわ」

「うん! ちゃんと聞いてあげてね!」

 

 一体どんな冒険をしていたのか。子供三人から聞く話を聞きつつ、それぞれ違う事を言うのだろうと期待して、今回遊びに行っていたサーヴァント達に話を聞こうと決意するアナスタシアなのだった。




 バラキーの宝具回転力とハイパワーに戦慄しました……スター発生率落ちても宝具撃っちゃえば関係無いところがこれまたエグい……水着バラキーの存在感よ……

 しかし、ギャグ路線に帰れるのだろうか……?


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日常
吾は菓子が食いたい!!(オレじゃなくてマスターに集れって!)


「緑の人よ! 今日は菓子はないのか!?」

「あ~……今日はねぇな~って、待て待て待て! わざわざバーサーカーじゃなくてランサーの方で来るな!」

 

 バラキーの槍を紙一重で回避したロビン。

 そして、バラキーが不満そうな顔をしているので、追撃が来る予感がした。

 

「そ、そうだ! マスターなら持ってるはずだ。それに、言えば作ってくれるはずだ。そっちに頼んだ方が良いんじゃねぇか?」

「ぬぅ……行ってみるとするか。緑の人よ。次来るときまでに菓子を補充しておくのだぞ!」

「へいへい。あ~……別に、アイツの菓子係になった覚えはないんですがねぇ……」

 

 嵐のように走り去っていったバラキーを見て、ロビンはため息を吐くのだった。

 

 

 * * *

 

 

「という訳で、やって来たぞ! 菓子はないか!」

 

 厨房でオオガミにこれまでの経緯を説明してから改めて要求するバラキー。

 オオガミは少し考えた後、

 

「時間がかかるけど、今から作る試作品を食べるか、ハロウィンの時にお菓子が貰えなくなる代わりに作り置きのを食べるか。どっちが良い?」

「むっ……ならば待つ。吾は待つことの出来る鬼だからな! だが、試作品であろうと美味いものでなければ許さぬからな」

「はいよ。あ、それと、今から作るのは内緒だからね?」

「くふっ! 吾は鬼の首魁。約束は守るとも。それに、知られなければ吾が独占する事も出来よう。教えたら吾の分が無くなるからな!」

「うんうん。よし、じゃあ作るかな」

 

 そう言って、立ち上がるオオガミ。

 すると、バラキーは、

 

「……吾も隣で見ていても良いか?」

「ん、見る? 見ててもそんなに面白くはないと思うけど、バラキーがそれでいいならいいよ」

「じゃあ見る。少し気になっていたからな」

「ん~……手伝う?」

「吾でも出来る事はあるのか?」

「そうだね……うん。何か思いついたら頼むことにするよ」

「うむ。分かった」

 

 そう言って、オオガミの隣を歩くバラキー。

 オオガミは何を作るかと考え、

 

「うん。まずはタルトからだね」

「タルト? それは、吾が手伝えるものか?」

「そうだね。バラキーは力があるし、生地作りを手伝ってもらおうかな」

「ふむ……力仕事なら任せて良いぞ! 鬼だからな、力は負けぬ!」

「うん、そうだね。バラキーは強いもんね」

 

 そう言いながら、バラキーは筋力Bなんだよなぁ……と思いつつ素材と道具を取り出す。

 

「さて、じゃあバラキー。任せたよ」

「うむ! 鬼の力、とくと見るがいい!!」

 

 そう言って道具を受け取り、説明を聞きながらバラキーは生地作りを始めるのだった。




 ちょっとだけ出番があったロビンさん。サバフェスぶりですね……

 書きながらタルトが食べたくなった私は、とりあえず作ってみようかと思い、なんで買うって選択肢が無いんだろうかと首を傾げました。はて……どうしてそうなったのか……


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さて、問題児を再召喚しますか(三大問題児とか、不名誉な名前つけられてたりしますよ?)

「さてさて、んじゃ、うちの最初の問題児を召喚しますか」

「センパイセンパイ。最初の問題児はセンパイで、二番目がノッブだと思うんですが。ちなみに私は問題児ではないので含みませんよ?」

「最大の問題児が何を言ってるのか」

 

 自分は問題児だと認めないと満面の笑みを浮かべるBBと、いい加減認めろよとばかりのため息を吐くオオガミ。

 そんな二人の前にあるのは、オオガミの誕生日の時に持ってきた機械だった。

 

「ところで、これはどうやって使うの?」

「あぁ、それはですね。適当に要らない物をポイポイ入れていけば大丈夫です。火力発電的なそれですね。要らない礼装でもぶっ込んで貰えれば」

「ざ、雑ぅ……というか、手動な上に有限資源ですか……」

「あぁ、いえ、あくまでもノッブが来るまでの仮置きなので、本命はノッブに期待です」

「なるほど。というか、ノッブがいないと完成しないのか……」

「動力は基本ノッブの謎エンジンですし……本人がいないと流石に作れないですね……」

「謎エンジンって……BBでも分からないものを作ってるとか、ノッブ危な過ぎるでしょ……」

「本当に謎ですからねぇ~……召喚して作ってもらうしかないですね~」

「……まぁ、召喚するけども……不安だなぁ……」

 

 BBすら分からない製法で作られるノッブ印の謎エンジン。

 そう言えば、ナーサリーのメカウサギを作った時もなんで動いていたのかが分からなかったことを思い出す。

 

「……まぁいいや。幸い、フレポで色々余ってるし、サクッと行くでしょ」

「再召喚で、宝具レベルが上げられるわけでもないので、そんなにコストはいらないですよ。星3礼装を数枚って所ですかね」

「ん~……フレポで出来るって辺りは優しいけど、数枚って所は厳しいね。まぁ、大丈夫だけども」

 

 そう言って、いつも逃走の時に身代わりにする要らない礼装を機械に突っ込むオオガミ。

 

「……一括で入れられないの?」

「システムは出来ますけど、本体はノッブの担当なので、無理です! 最強リトルデビル系後輩でも、完全無欠ではないので!」

「そこは認めるんだ……いや、良いんだけどさ」

 

 オオガミはため息を吐いて、一枚一枚手作業で突っ込んでいく。途中から面倒になってきていたが、ノッブが来るまでの辛抱だ。

 

「これくらいで良い?」

「はい。じゃああとは、隣のレバーをガチャッとやっちゃってください!」

「このレバーね。はい、ガチャッとな」

 

 そう言って、雑に倒されるレバー。すると、機械は震えだし、それと同時に機械を中心に魔方陣が展開される。

 

「……ねぇ、これの素材、聞いてないんだけどさ……」

「大丈夫です。センパイが思ってるようなのは入ってません」

「そう? なら良いんだけどさ」

 

 直後、体から何かが抜け出る感覚。そして、魔方陣が一際強く輝いて、

 

「儂、復活! うむうむ。今は本能寺かな? 再復刻かな?」

「いや全く。無関係も良いところです」

「えぇ、えぇ! 技術班が私だけなのは許せないので、召喚させてもらいましたよ! ノッブ!」

「おぉぅ……儂、座に帰っても良い?」

 

 ドヤ顔で召喚されたノッブは、オオガミに推理を瞬間で否定され、若干怒ってる声を上げつつ、しかし不気味なまでの笑顔を浮かべているBBを見て、すぐに座へ帰ろうとするノッブ。

 しかし、BBがそれを許すはずもなく、即座に捕まってそのままどこかへ連れ去られるのだった。

 

「……さらばノッブ。君の事は忘れない……」

 

 連れ去られたノッブを見送ったオオガミは、とりあえずマシュにバレないように機械を隠蔽しておくのだった。




 リーダー:オオガミ
 副リーダー:ノッブ
 ヤベー奴:BB
 三人そろって三大問題児。シャドウ・ボーダー内で超有名な危険人物三人衆。三人が集会しているところを見つけ次第マシュに報告するべし。


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儂、何もしてないんじゃけど(あの門番は卑怯だと思うんです)

「あ~……来て早々BBに捕まって、流れるように作業部屋に詰め込まれるとは思わなんだ。普通新エリアなら自由に散策させてくれるじゃろ」

「作業が終わったらいくらでもしてください。でも、こっちの方が急いでるんですよ。部屋数が足りてないので、もうぎゅうぎゅう詰めなんです。ここだけは死守してますけど、他の部屋は、それはもう凄いことに……」

 

 愚痴を言うノッブと、サボらないように見張りつつ自分は自分で作業をするBB。

 

「うへぇ~……つか、材料足らなすぎるんじゃよ。もっと聖杯とかみたいな、面白アイテムでもないんか?」

「そんなアイテムがあったら私が使ってないわけないじゃないですか!」

「それもそうじゃな……うむ、そうじゃ。気分転換に遊ぶか。どうせゲーム機全部残ってるじゃろ」

「あぁ、そういえば、新しい狩りゲーを入れたとかなんとか。マスターも気が利いてますよね~」

「むぅ? マスターがそんな事を善意だけでやるわけがない……これは何かあるな」

「いやですねぇノッブ。マスターですよ? そんな事を考えてるわけ無いじゃないですか~」

 

 そう言って、さりげなく作っていたテレビを取り出し、いつの間にか持ってきていたゲーム機を繋げる。

 

「むぅ……儂、引っ掛かるんじゃよねぇ……まぁ、起動すれば分かるか」

「そうですね。じゃ、スイッチオーン!」

 

 そう言って、電源を入れるBBとノッブ。

 そして、気付く。

 

「誰かやってません……?」

「トロフィー埋まってるんじゃけど……!」

 

 BBはほとんどを。ノッブは全てのトロフィーを埋められていた。

 一体誰がやったのか。それはもう想像がついているので置いておくとしても、いくらなんでも酷ではなかろうか。

 幸い、主犯は分かっていた。後は乗り込むだけである。

 

「センパイ許すマジ!」

「茶々ぶっ飛ばす!」

 

 やろうとしていることは同じだが、犯人は別な二人。とはいえ、確かに犯人はこの二人なので、反論の余地はなかった。

 しかし、飛び出すと言う寸前でほぼ同時に止まる二人。

 

「……今、スッゴい悪寒がしたんじゃが……」

「奇遇ですね……今、私も同じ事を同じ事を思ったんですよ……」

 

 出たら殺される。そんな雰囲気を感じた二人は、一度息を整え、

 

「儂は右。お主は左でどうじゃ」

「乗りました。それで行きましょう」

 

 そう言って、勢い良く扉を開け――――

 

「あらBB、偶然ね。それで、何をしようとしてたのかしら?」

「すいません。でも、姉様にノッブを見たら倒せ、と言われてしまったので、見逃すわけにはいかないんです」

 

 門番のように立っていたマルタとアナに二人は半泣きで扉を閉めるのだった。




 エウリュアレ曰く、
『ノッブとBBはマスターに頼まれて何かを作ってるっぽいから、完成報告か材料不足以外で部屋を抜け出そうとしたら気絶させてから部屋に戻して』
 とのこと。

 なお、マルタさんは通りすがりの模様。


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明日のイベント楽しみだなぁ……(石の貯蔵は十分かしら?)

「ん~……明日からイベント始まるんだよね」

「石を貯めないといけないわよ?」

 

 現状、60個程という、あるけども多くはないという石の量。

 その状況にオオガミは苦い顔をし、エウリュアレはため息を吐く。

 

「全く。復刻ハロウィンで無駄に石を使うからよ」

「うぐぐ……礼装が欲しいからって回しすぎたよ……結局出なかったし」

「出れば儲けだけど、出なかったらただの損よね。まぁ、復刻版だから、再復刻しないと思うから仕方ないんだけどね。悩んでも仕方ないし、さっさと集めるわよ」

 

 そう言って、オオガミの手を引くエウリュアレ。

 オオガミはそろそろ飽きてきたりしているが、エウリュアレがそれを許すわけもなかった。

 

「とはいっても、フリークエストを周回するつもりはないから、これ以上集めようがないんだよね」

「……それを先に言いなさいよ」

 

 そう言って手を離すエウリュアレ。若干頬が膨らんでいることから、怒っているのが分かる。

 

「いや、まぁ、エウリュアレはフリークエストを周回させるつもりなのかなって思ったからさ。流石にフリークエストまでやると、本気で備蓄がなくなるから」

「まぁ、メルトリリス用の石が完全に無くなるものね。確かにそれは問題だわ。でもねマスター。私、こうも思うの」

 

 エウリュアレは一拍置き、

 

「どうせなんだかんだ言って使っちゃうんだし、今使っても良くない?」

「それは言っちゃいけないと思う」

 

 根本的に、このマスターは意思力が弱かった。

 エウリュアレの評価に半泣きのオオガミ。

 そこへどこからともなく現れたノッブは、

 

「のぅマスター。面白いものを作ってみたんじゃが、ちょいと見ていかんか?」

「……今度は何を開発したのさ……」

 

 ノッブに言われ、ふらふらとついていくオオガミ。

 エウリュアレはなんとなく嫌な予感がして、こっそりとついていく。

 そして、二人が入っていったのはノッブとBBを閉じ込めていた部屋。

 そこには見慣れない機械があり、BBがとっても不安そうにしていた。

 

「ノッブ……本当にやるんですか?」

「せっかく作ったんじゃし、一回試してみたいじゃろ。失敗したら~……うむ。儂と機械がぶん投げられるだけじゃな」

「私も巻き込まれちゃったりしないです? 大丈夫ですか?」

「いやぁ……流石にそれはないじゃろ~。マスターなら八つ当たりはしないじゃろうし」

「うっわぁ~……不安ですぅ~……」

 

 はたして何を作ったのか。

 オオガミはそう思い、機械の前に立つ。

 

「んで、使い方なんじゃが、まだ作りかけでな。今のところは初動の魔力不足でな。いくらか魔力を入れたら後は勝手に増幅してくれる」

「……永久機関?」

「そうじゃな。まぁ、近いだけじゃけど。聖杯に似たシステムを作れないかと錯誤した結果、こうなった。扱いを間違えるとボンッ! ってなるが、まぁ問題ないじゃろ!」

「大問題だよ! アホか!」

「ぬおあぁ!? マジで壊しにいく奴がいるかぁ!!」

 

 瞬間強化で機械に蹴りをかますオオガミに、悲鳴を上げるノッブ。

 わりととんでもない発明品なのだが、危険すぎるので粉砕しにいく辺り、やはり人理を修復しただけはあるだろう。

 

「ったく。BBが内部構造を手伝ってるのは分かってるからね! 後で覚悟しておいてよ!」

「いえ、私としては、軽い気持ちで作ったのをそのまま運用しようとするノッブの精神が流石すぎて、止められなくなってたので助かります。えぇ、はい。よくやりますよこの武将」

「BBだってノリノリで手伝ってたじゃろ!? 儂だけじゃないし!」

「じゃあ、二人とも締め上げれば良いんでしょうか」

 

 背後から響いた声に反応するよりも早く、ノッブは鎖で宙吊りにされる。

 下ではアナがほぼ無表情に近い、しかし見るものが見れば怒っていると分かる表情をしていた。

 

「……儂、疲れてるんじゃよ……うむ。仕置きが終わったら後でトレーニングルームに行くから、連れていってくれ」

「了解。じゃ、アナはそのままノッブを連れてって。BBはこっちで手伝って」

「は~い。というか、何をさせる気ですか……」

「毒味」

「……本当に毒が入ってたりしませんよね?」

 

 そう言って、オオガミとBBは部屋を出ていき、ノッブはアナに引きずられ、部屋を出た辺りでニヤニヤとしているエウリュアレを合流してどこかへと連れ去られるのだった。




 途中から何を書いてるのか分からなくなってた私です。
 さりげなくノッブがやべぇもん作ってますが、ギャグ時空なんで何事もなかったかのように処理したいです。処理したいです。(大事なことだからry


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神秘の国のONILAND!!〜鬼の王とカムイの黄金〜
鬼救阿が来た~~!!(流石にこの爆死は心に響く……)


※神秘の国のONILAND‼鬼の王とカムイの黄金 のネタバレあり! 注意してください!














「鬼救阿! 鬼救阿だぞマスター!!」

「鬼救阿! まるで休日朝にやっているアニメのようだわ! バラキーと見たもの!」

「私もやってみたいなぁ! でも、あそこまで力はないからなぁ……!」

 

 はしゃぐバラキーとアビゲイル、バニヤンの三人。

 その後ろには、ベンチに座って魂が抜けているオオガミと、その隣でチュロスをモグモグと食べているエウリュアレ。

 

「……別に、いつもの事じゃない。気にする必要は無いでしょ」

「いつものことだからかなぁ……うん。礼装は二枚ずつ手に入ったけどさ……そうじゃないでしょ……」

「そうねぇ……まぁ、いくら石を集めても手に入らないのが多いわよねぇ……」

「……今日はふて寝しても良いよね」

「……明日から頑張りなさいよ」

 

 膝の上に倒れてきたオオガミを振り払うことなく、諦めたようにそのまま膝枕をするエウリュアレ。

 当然、他のサーヴァントからすると、オオガミの状態など知ったことではない。

 それを証明するかのようにバラキーが突撃してくる。

 

「早く周回して鬼救阿を強化するのだ! いや、(なれ)はしなければならぬ! さぁ早く行ぐぉぁ!?」

「今日のマスターは終了よ。暴れ足りないなら私が付き合うわ。ほら、周回でしょ。早く行くわよ」

「な、エウリュアレ! 何故邪魔をする!」

「そうねぇ~……特に理由はないけど、今起こされるのは気にくわないわ。ほら、周回なら私と一緒でも問題ないでしょ?」

「だ、だがぁ……!」

「礼装も人数も揃ってるんだし、行かない理由はないわよね」

「むむ……それもそうだな! なら、吾が一番だ! 鬼の力、見せてくれよう!」

 

 そう言って走り出すバラキーを、エウリュアレは追いかけていく。

 そんな二人が見えなくなった頃に、入れ替わるようにオオガミの所へ現れるアビゲイル。

 

「マスターが寝てるのに、エウリュアレさんが置いていくなんて珍しいわね……」

 

 そう呟いたアビゲイルは、少し考えた後、何を思ったのか、オオガミの頭をそっと持ち上げ、自分の膝の上に乗せる。

 

「……これ、エウリュアレさんにバレたら怒られるのかしら……」

 

 アビゲイルはそんな事を呟くが、おそらくエウリュアレは怒らない。むしろアナの方が妙に反応しそうなのだが、今のアビゲイルは気付けないのだった。

 

「ねぇ、何をしてるの?」

「うわひゃぁ!?」

 

 背後からかけられた声に驚いて悲鳴を上げるアビゲイル。

 振り向くと、そこにはジャックが不思議そうな顔をして見ていた。

 

「あぁ、いえ、その、なんでもないわ。ちょっと魔が差しただけなの。うん。ジャックも後でする?」

「ううん。むしろ私はしてもらいたいな。後でお願いしよ!」

「そ、そうね。じゃあ、マスターが起きたらお願いしてみましょう」

「うん!」

 

 そうして、アビゲイルはほっと息を吐き、ジャックと一緒にオオガミが起きるのを待つのだった。




 大体いつも通り。しかし精神ダメージがデカい……

 唯一の救いは、恒常だから焦る必要はないってことですかね……(吐血


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ポイントはそんなに気にしなくてもいいかな?(今日はのんびりしていても大丈夫かしらね)

※神秘の国のONILAND‼鬼の王とカムイの黄金 のネタバレあり! 注意してください!













「ん~……素材を集めてたらポイント貯まるか……」

「そうねぇ……というか、スカディの出番ないわよね」

「急ぐ理由もないしね」

 

 のんびりと歩いているオオガミとエウリュアレ。

 今日のエウリュアレの服装は、白い薄手の長袖にクリーム色のロングコートを着て、白地に黒いチェック柄が入っているミニスカート、ニーソックスに茶色のファー付きブーツを履いていた。

 

「……今さらなんだけど、どこからその服を取り出したの?」

「アビーに頼んだだけよ。頼んだら、妙に素直に応えてくれたのよね……何かしたのかしら」

「自分が何かした可能性を考えない辺り、エウリュアレだなぁって」

「ちょっと、どういう意味よ」

 

 オオガミの足を軽く蹴るエウリュアレ。

 それほど力を入れていないので、軽くよろける程度だ。

 

「それにしても、遊園地とかいつ以来だろ……もう、ほとんど覚えてないなぁ……」

「……じゃあ、終わったら観光してみましょうか。アビーやジャック、バニヤンも来るでしょ?」

「アナとバラキーも来ると思うけどね。というか、いい加減マシュを誘わないと、拗ねるというよりも泣かれる。流石にそれは困るから、一緒に回るよ」

「えぇ、そうしなさいな。その間は他の子たちは私が引き受けるわね」

「……最近、エウリュアレが保護者的立ち位置を確保しててびっくりだよ」

「誰が保護者よ」

 

 保護者扱いに頬を膨らませるエウリュアレ。

 オオガミはそれを見て笑いながら膨らんだエウリュアレの頬を突く。

 

「……噛み付くわよ?」

「それは流石に痛いかなぁ……」

「じゃあ、そうしたくなるような事はしないでね」

「うん、ごめん。次は気を付ける」

「えぇ、反省したのならいいわ。ほら、軽く下見に行くわよ。終わった後、遊びに行くんだから」

 

 そう言って、オオガミの手を引くエウリュアレ。

 とはいえ、今いける所はそれほど広くはなかった。

 

「……まだ鬼が多いよねぇ……」

「そうねぇ……早めに終わらせないと遊びまわれないわねぇ……」

「そして、後日ノッブに頼むのである」

「シミュレーションで再現した方が安全そうね」

 

 ノッブに頼むのは危険の方が強いというのは、暴れている側としても、暴れられている側からしても同じ認識の様だった。

 なんだかんだとノッブとBBを比べると、実行量も危険度もノッブの方が高くなるのは、きっと自然な事なのだろう。無論、二人合わさればより凶悪になるのは言うまでも無い。

 そんなことを話しながら、二人は鬼に見つからない様に園内を見て回るのだった。




 エウリュアレ成分を補給したはずなのに、どうしてすぐヒロイン力出してしまうん?

 さりげなく衣装チェンジしまくってるエウリュアレさん。この人だけですよ、無駄に服の種類多いの。


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8時半って、冷静に考えたら某ニチアサアニメの時間じゃん(たぶん気付いてない人の方が少数だと思うのだけど)

※神秘の国のONILAND‼鬼の王とカムイの黄金 のネタバレあり! 注意してください!













「今さら気付いたけど、なんでクエスト解放が8時半なのか。それは、ニチアサが大体この時間だからじゃない……?」

「なんでそんな大発見みたいに言ってるのよ」

 

 衝撃の事実と言わんがばかりの表情をしているオオガミに、冷めた目を向けるエウリュアレ。

 服装は同じだが、髪をおろして黒縁のメガネを掛けているので、昨日とは少し印象が違う。

 何故メガネを掛けたのかを聞くと、変装のため、だそうだ。はたして誰の目を欺くのだろうか。

 

「いや、なんとなくみんな気付いてるんじゃないかなって思ってた。でも、言わずにはいられなかった」

「そ、そう……まぁ、良いんじゃないかしら。周りに誰かいる訳じゃないし」

「本当にねぇ……みんな何処に行ったんだろう」

 

 いつの間にか誰もいなくなっている拠点に、どうしたものかと考える二人。

 アナだけでもいるかと思っていたのだが、探してもいないので、やはりいないのだろう。

 

「……霊体化してたりしない?」

「それならあなたも分かるでしょ。自分のサーヴァントなんだし」

「だよねぇ……ってことは、本当に遊びにいったのか……」

「いえ、アビーがいるから、食べ歩いてる可能性もあるわ」

「まさか。エウリュアレじゃないんだし」

「…………」

 

 直後、飛び蹴りを食らって転がっていくオオガミ。

 無言の飛び蹴りは、肉体的にも精神的にも大ダメージだった。

 

「全く。誰が食欲魔神よ。私、一回もそんなことになった覚えはないのだけど」

「誰もそう呼んでないのにも関わらず自分でそう言っちゃう辺り、自覚があるんですね……」

「……何よ。自覚した上で変えようとしてないのは問題かしら?」

「いや、それは無いよ。それを言ったら、こっちも変えなきゃだし」

「……まぁ、そういうところを変えられたら、私も困るわ」

 

 エウリュアレはそう言ってそっぽを向き、頬を膨らませる。

 オオガミは少し困ったように笑う。

 とはいえ、食事目的以外でこの場を離れるとしたら、遊びに行くくらいだろうか。

 アナもいないのは、バラキーかアビゲイルに連れていかれたのだろう。

 

「とにかく、今はみんな見つからないから、探しに行かないといけないわけだけど、どうする?」

「探しにいくわよ。新しいところを見てみましょう。そこにいるかもだし」

「そうだね。見落としてるとしたらそこくらいか。じゃあ、行こうか」

「えぇ、そうね。早く行かないとすぐ他の場所に行きそうなメンバーだものね」

 

 そう言って、小走りでティーカップへと二人は向かうのだった。




 オニランドを鎮圧しないでも平然と遊べるのがここのマスターとエウリュアレ。
 集団で暴れながら遊ぶのが現在失踪している子供組。

 はたしてどっちの方が危ないのか……


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フードコートで食事の時間です(マスター達を置いてきたの、本当によかったのかしら)

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「んっ、んんっ? ん~……!! んおぉ……これは旨いな! もっとだ、もっと寄越せぇ!」

「バラキー、もうちょっと静かにした方がいいわ。また鬼が来ちゃうわよ?」

「復活したのなら、殲滅し直せば良いのでは?」

「あまりの物騒さに茶々ビックリなんだけど!」

 

 フードコートで騒ぎながら食べているのは6人。

 周囲にはカボチャ頭の鬼や武者が倒れているが、誰も気にしない。

 

「うむ、焼きそばはやはり旨いな。流石だ赤い人」

「ハンバーグも美味しいよ!」

「うん! バラキーも食べて食べて!」

「止めろぉ! 吾に貢ぐのは良いが、一気に渡されると困る! せめて一つずつだ!」

「「は~い」」

「分かってないではないがむっ!?」

 

 差し出される二つのハンバーグに、一つずつにしろと抗議するバラキーだったが、結局言葉は聞き入れられず、無情にも無理矢理口の中に押し込まれるのだった。

 

「はぁ……どうしてこうも、バラキーは弄られ役なのかしら」

「前からですし、今更な事です。特に食事やお茶の時は基本こんな感じですし。ただ、息を詰まらせて死ぬのは止めてくださいね。笑い話にしかなりませんよ」

「む、ぐ、が……んぐっ……ぷはぁ……! ほ、本気で死ぬかと思った……吾、ハンバーグで殺されかけるとは思わなかった……」

「喉にハンバーグを詰まらせて死亡……餅よりも無様なのでは?」

「ダメだよバラキー。ちゃんと噛まなきゃ」

「うんうん。噛まないと体に悪いよ」

「誰のせいで死にかけたと!? 言っておくが、吾は焼きそば以外持ってきてないからな!?」

 

 バラキーを殺しかけた犯人二人は、さも自分達は悪くないかのように言うが、当然バラキーは怒る。

 とはいえ、直接攻撃をしたりしない辺り、自制は出来ているのだろう。

 

「まぁまぁ。立派なジャパニーズオーガがハンバーグで死ぬだなんて思ってないわ。むしろあれくらい普通じゃないの?」

「流石の鬼も、あれほど豪快には食べんわ!」

「あのサイズを普通にされると、茨木さん達が異常なまでに小さいことになるんですが……」

「じゃあ、バラキーは小さいんだ!」

「いいなぁ、私は大きいもん!」

「ばにやんは小さくなれるだろう!? というか、今既に小さいだろう!?」

「まぁまぁ。落ち着いてバラキー。あんまり怒ると、今度は咳き込むわ」

「ぐ、ぬぅ……はぁ、まぁよい。不味くはない、むしろ旨かったからな。吾は怒ってない」

「バラキー、時々すっごい優しいよね。これがリーダーってやつ? 茶々憧れちゃうな~!」

「む、ぅ……いや待て。それは鬼としてのアイデンティティの喪失じゃないか?」

「まぁ、そういうこともありますよ。そして、それを無理に挽回しようとすると取り返しのつかないことになる事も。食べ終わったらマスター達のところへ戻りましょうか」

 

 アナはそう言って、持っていたホットドッグを頬張るのだった。




 平和な食事回。バラキーが死にかけているが平和です。


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ミラーハウスって怖いよね(自分を見失いそうになるしね)

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「ミラーハウス……! これ自体はそれほどでもないのだが、迷いすぎて飽きてきた」

「バラキー、何も考えずに走って行くんだもの。ちゃんと考えて歩かないと迷子になるに決まってるわ」

「というか、拠点に帰るって言って、そのまま遊びにいくとは思わなかったよ。拠点とは一体」

「こんなことになるとは思っていたので、別に気にしてはないのですが……まぁ、姉様はマスターといるはずですし、問題ないですね」

 

 そういう彼女たちは、ミラーハウスの中を探索していた。

 別段深い意味はなく、強いて言うなら、目についたから入った。だろうか。

 ともかく、入ってから既に30分。最初は目を輝かせていた面々も、既に方向感覚を失い始めていた。

 

「う~ん……別に、門で出ちゃえばすぐなのだけど、それは何か違うわよね……」

「まぁ、私も先導はする予定はないですが……後30分経っても出られなさそうなら、出ます」

「つまり、それまでに脱出出来れば私たちの勝ちだね! 頑張るぞー!」

「おー!」

「あ、おい! 勝手に行動すると更に迷子になるだろう!?」

 

 走っていくジャックとバニヤンを追いかけるバラキー。

 アビゲイルとアナは、何故かぼんやりとしている茶々を引っ張って、三人を追いかけるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「って感じで、右沿い。もしくは左沿いにひたすら歩いてるだけで、自然と出口に着くわけです」

 

 そう話ながら歩いているのは、オオガミとエウリュアレ。

 アビゲイル達が入った30分後に入ったので、つまり入ったばかりということだ。

 

「ふぅん? でも、普通に入ったみたいだけど。壁沿いに歩いてないじゃない」

「普通に楽しもうとしてみただけなんだけどね。まぁ、その方法だとしらみ潰しになるからっていうのもあるんだけどね」

「まぁ、あんまり長居はしたくないものね。ここ、感覚がおかしくなるもの」

「不安になるしねぇ……」

 

 常に自分達の姿が見えていて、前後左右から常に視線を受けているような不思議な感覚。

 苦手な人はとことん苦手だが、平気な人はおそらくいくらでも平気なのだろう。

 

「ん~……ミラーハウスは普通に難しいのに、更に魔力が吸われると来た。これ、魔力不足で死なない?」

「長居しすぎると座に帰りそうな勢いよ。というか何で入ったのよ」

「いや、目についたから……」

「そんな安直な理由で……いえ、まぁ、いつものことだし気にしないけど……脱出出来れば良いわね。アビーがいないから、緊急脱出も出来ないわよ?」

「まぁ、たぶん何とかなるでしょ」

 

 そう言って二人は歩き続ける。

 彼らがアビゲイル達と会うまで、後少し――――。




 動画で見るだけでも怖くなってくるミラーハウス。ちょっと実際には行きたくないかも……


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観覧車に乗りましょう(エウリュアレ達が帰ってきたらね)

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「マスター。観覧車には乗らないの?」

「ん~……エウリュアレとアナの二人が降りてきたらね。まぁ、アナは気分的に拷問だろうけど」

 

 観覧車近くのベンチで座っている6人。

 エウリュアレとアナは、現在観覧車に乗って高いところへと連れていかれていた。

 

「ふん。あのような遊具、吾が入れるようなものではない。やはり鬼は高く広いところでなければな」

「もしかして、バラキー怖いの?」

「そ、そそそんなわけなかろう!! 吾は鬼だぞ!? たかがあのような物、怖いわけなかろう!!」

「そっかー。じゃあ、後で茶々と一緒に乗るぞ! ふはは! 逃がしはせんぞぉ~!」

「わ、吾は別に逃げぬわ! むしろ、(なれ)が逃げ出さぬようにな!」

「ふふ~ん。茶々が逃げ出すわけないし。むしろバラキー逃げ出さないように見張る勢いだよ?」

 

 互いに見張り合うバラキーと茶々。

 そんな二人を他所に、ジャックとバニヤンはオオガミに近付くと、

 

「ねぇおかあさん。今からバニヤンと乗ってきても良い?」

「お願いマスター」

「ん。あ~……うん。よし、行ってきて良いよ。二人だけで乗れる?」

「うん! 大丈夫! さっきエウリュアレ達が乗るの見てたもん!」

「一緒に見てたから大丈夫だよ!」

「そう。じゃあ、行ってらっしゃい」

 

 そう言って、走っていくジャックとバニヤンを見送るオオガミ。

 アビゲイルはそれを見ていて、オオガミの頭の上に自分の頭を乗せると、

 

「行かせても良かったの? 待ってたんじゃなかったかしら」

「ん? あぁ、うん。あくまでもエウリュアレとアナを待ってるだけなんだけどね。あぁ、アビーは行っちゃダメだよ。一応防衛戦力だから」

「あぁ、なるほど。確かにエウリュアレさんとアナさんは大戦力よね。二人がいないと降りてきた瞬間に包囲されてるかもしれないもの」

「うん。ちなみに、アビーは緊急退避要員だから。最悪の場合すぐ逃げられるようにね。まぁ、エウリュアレとアナが降りてくれば、戻ってくるまでの間は稼げる筈だし」

「むぅ……エウリュアレさんとアナさんへの信頼が羨ましいわ」

「本人たちは時々煙たがってるけどね」

 

 頬を膨らませるアビゲイルと、アビゲイルが頭を上に乗せてるせいで動けなくなっているオオガミ。

 

「……アビー。隣に座るのじゃダメ?」

「ふぇ? あ、ごめんなさい。ちょっとやってみたくなって……」

「いや、別に怒ってる訳じゃないから良いんだけどね。ただ、ちょっと顔を動かせなくなってるだけで」

「大問題よね。うん。隣に行くわ」

 

 そう言って、オオガミの隣に座るアビゲイル。

 二人はバラキーと茶々のやり取りを見つつ、のんびりとエウリュアレ達が帰ってくるのを待つのだった。




 珍しくアビーが一緒という。


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ついに鬼王降臨!(BGMで誰なのか若干想像できるんだけど)

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「ふふっ……逃がさないわ?」

「くはは! 吾から逃げられると思ったか! 次は殺す!」

 

 鬼王へ突撃していく二人。

 毎度アビゲイルが最後まで残ってトドメを持っていき、バラキーは突撃しては倒され突撃しては倒されを繰り返していた。

 

「ねぇおかあさん。私たちは行かなくて良いの?」

「チェーンソーは万全だよ?」

「茶々の炎もバラキーを焼きたくて疼いてるよ?」

「今のところ三人とも休憩かな。後茶々。バラキー焼きは禁止ね。シャドウ・ボーダーに帰るまで我慢して」

「ぐぬぬ……バラキー焼き禁止された……」

 

 バラキーへの殺意が妙に高い茶々に、落ち着けと思いつつバラキー焼きを禁止するオオガミ。

 すると、ジャックは不思議そうな顔をして、

 

「バラキーを焼くの? 解体じゃなくて?」

「開拓じゃないの?」

「バラキーを解体は分かるけど、開拓ってなんだろう……潜在スキル強制開放的な?」

 

 およそ何も考えずに行ったであろう言葉を首をかしげて考えるオオガミ。

 それをベンチに座って見ていたエウリュアレは、

 

「ねぇアナ。観覧車に乗ってる間に何があったんだと思う?」

「さぁ……? でも、たぶんバラキーが茶々に何かをしたんじゃないでしょうか」

「そうよねぇ……でも、ハロウィンの時から妙に仲悪いからねぇ……」

「まぁ、たぶん大丈夫ですよ。どうせマスターがどうにかしてくれますって」

「そうねぇ……まぁ、最終的に私が引っ張られるんでしょうけど」

「その時は私も一緒に行きますよ」

「……あまり、戦いたくはないのだけど」

「私がどうにかします。たぶんその方が良いでしょうし」

 

 そう言って、エウリュアレの斜め後ろに立っているアナはオオガミ達を見守る。

 その本人達と言えば、

 

「とりあえずさ、マスター。こう、ちょちょいとバラキーを燃やしたいだけなんだよ。そうしたら茶々の気も晴れるしさ?」

「いや、それで茶々の気が晴れても、次はバラキーが報復しにいくから。茶々より話を聞いてくれないんだから止めてよ」

「ちょっと待って。今さりげなく茶々は話を聞かない方に分類しなかった? 茶々怒るよ!? 自覚あっても怒るよ!?」

「理不尽だね!? アビーに襲撃させるよ!?」

「バッチコイだよ! 茶々負けないし! むしろウェルカムだし! 返り討ちにしてやらぁ!」

「ノッブ並みになってきてるよ茶々! いや、礼装持っていくから負ける気しないけど!」

「マスターも来るのは卑怯じゃない!? 一対一じゃないの!?」

「鎮圧には全力で! 今だけ風紀組だし!」

「最低だこのマスター!」

 

 二人はそう言い合って喧嘩をしていた。

 ジャックたちはそんな二人に飽きて、エウリュアレの近くに移動していた。

 そんな二人に、エウリュアレはため息を吐くのだった。




 竜属性……鮮血魔嬢……一体誰なんだ……


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Trick or Treat!(お菓子とイタズラされる準備は良いかしら?)

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「「「トリックオアトリート!」」」

 

 左から順に、カボチャ頭にオーバーオールのチェーンソー少女、目の部分だけ開いている白い布を被っている双短剣少女、箒を持った魔女服アビゲイルの三人。左二人はともかく、アビゲイルは盛大なボケにしか見えないのだが、本当にそれで良いのかと突っ込みたい。

 ちなみに、エウリュアレは男装して吸血鬼に仮装し、その隣には鎖鎌を持った黒いフード付きのローブを被った、白い骸骨の仮面をつけている少女が立っている。

 

「よしよし。じゃあ、順番に配るから並んでね。ところで、前面の三人の声は聞こえたけど、後ろの二人は良いの?」

「三人がもらってから改めて言うわ。後二人来てないもの」

「そう? じゃあ、先にあげちゃおう」

 

 そう言って、オオガミはお菓子の入った袋をアビゲイル達に手渡ししていく。

 そして、配り終えた辺りでエウリュアレが、

 

「あぁ、やっと来たわ」

 

 そう言って、視線を向ける。オオガミもその方向へ目を向けると、そこにはミイラの仮装をしたアナと、バーサーカー姿のバラキーがいた。

 

「すいません姉様。巻き付けるのに時間がかかってしまって……」

「えぇ、気にしなくて良いわ。今から貰うんだし」

「む? ククッ、あぁ、(なれ)はそういう仮装か……ふむ。そういうのもありかぁ……」

 

 黒いローブの少女の前で何やら頷くバラキー。

 しかし、少女の方は不満なようで、鎌を持って斬りかかるが、骨刀で軽くいなされ、鎌が地面に弾かれたせいで手が痺れたのか、そのまま取り落とす。

 

「あぁ、これは回収しておきますね。危険ですし。これ以上は自分のでやってください」

「あぁっ! ハロウィン終わるまでは貸してくれる予定だったじゃん! そんなぁ!」

「だったら雑に扱わないでください。壊れたらかなり困るんですから」

「むぐぐ……是非もなし……」

 

 そう言って倒れる、黒いローブの少女改め茶々。

 しかし、すぐに復活すると、

 

「よし! マスターマスター!! トリックオアトリート! お菓子ちょうだい!」

「トリックオアトリート! 吾にも菓子を寄越せ!」

「トリックオアトリートです。くれないのなら観覧車に吊るします」

「殺意全開のイタズラだね。もうイタズラの域を越えてるよ」

 

 言いながら、茶々、バラキー、アナの三人にお菓子を渡す。

 そして、エウリュアレは妙に良い笑顔で、

 

「Trick and Treat」

「……えっ?」

「Trick and Treat」

「…………」

「あら、意味が分からないかしら。お菓子もちょうだい。イタズラもさせなさい?」

「……アナ。あなたの姉様がご乱心だよ」

「ご乱心も何も、姉様は最初からその予定でしたよ? 諦めて両方いってください」

「バカな……アナが止めないとか、もうダメじゃん……」

「失礼ね。貴方、私をなんだと思ってるのよ。流石にそこまでの要求はしないわよ」

「……お菓子でご勘弁を」

「えぇ、そうね。じゃあ、これで目的の半分。さぁ、イタズラの時間よ?」

「あの、その、えっと……撤退!」

「逃がすわけ無いじゃない」

 

 そう言って、逃げ出すオオガミを、エウリュアレが全力で追いかけるのだった。




 いつもよりはっちゃけてるエウリュアレ。とはいえ、やってることがいつも通りな気がする不思議。


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全力で周回をするぞぉ~!(私たちはのんびり休憩ね)

※神秘の国のONILAND‼鬼の王とカムイの黄金 のネタバレあり! 注意してください!













「さて、そろそろ本気の周回かな」

「お姉ちゃんの出番ですねっ!? 任せてください!」

「ふむ。しばらく呼ばれていなかったからな。良い、許す。私の力を使うと良い」

 

 このくそ寒い千歳に召喚された薄着のお姉ちゃん(ヤバイ系聖女)と、もとより寒いところから来た女神。

 二人を連れて向かうはフードコート。明らかに戦う場所ではないだろうと思わなくもないが、そこに目当てのブツを落とす敵がいるのだから仕方ない。

 

「さてさて、お姉ちゃんが宝具で敵を吹っ飛ばしてくれるから、スカサハ様は援護を。そうすればサクッと終わるはず」

「了解です! お姉ちゃんパワーを見せつけちゃいますよぅ!」

「ふむ。まぁ、いつも通りということか。たまには高難易度とやらにも行ってみたいのだが……」

「それはまた今度です。まぁ、そのうちですね」

「あぁ、待っているとしよう」

 

 そう言って、三人はフードコートにいる鬼達を倒しに向かうのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ホットドッグ一つ」

「「焼きそば二つ!」」

「フランクフルトで」

「バーガーって売ってるかしら?」

「茶々はカレーで!」

「順番にやっていくから少し待ってくれ。まずはホットドッグからだ」

 

 エウリュアレ達の注文を聞きつつ、手早く作ったホットドッグを差し出すエミヤ。

 その後ろではキャットが焼きそばを作りつつカレーをよそっていく。

 

「お先にカレーなのだナ! 焼きそばはしばし待て。めちゃめちゃうまい焼きそばを出してやる」

「あぁ、任せた。よし。フランクフルトも出来た。受け取りたまえ」

「やっほー! カレーだぁ!」

「ありがとうございます。というか、アビーさん、バーガー食べれるんですか? サイズ、結構大きかった気がしますけど」

「うっ……その時は、バラキーと一緒に食べるわ。大丈夫、バラキーなら食べられるわ」

「まぁ、彼女ならきっと食べられると思いますけど……そういえば、彼女はどこに行ったんでしょうか」

「うぇ? バラキーいないの? マジで?」

 

 フードコートに来てからバラキーの姿を見た覚えがない三人。

 果たしてどこに行ったのだろうと考えていると、エウリュアレが、

 

「バラキーなら、さっきもう一度観覧車に乗ってくるって言ってマシュを連れて走って行ったわ」

「マシュさん、呼ばれてすぐにバラキーに連れていかれたのね……後でバラキーは捕まえておくわ」

「えぇ、マスターは任せておいて。どうせすぐ捕まるわ」

「そのセリフ言えるの、エウリュアレだけなんだよねぇ……茶々、エウリュアレにだけは喧嘩売らないよ」

 

 やれやれ。と言いたげに首を振る茶々に、首をかしげるエウリュアレ。

 

「いや、別に、私以外にも捕まえられるサーヴァントはいるでしょ?」

「茶々が知ってるなかにはエルキドゥしかいないんだよねぇ……特に、今のマスターはね」

「……別段、何か変わってるとは思わないのだけど……いつも通りじゃないの?」

「あれがいつも通りなら、なおのこと問題だと思うんだよ……」

「まぁ、マスターと鬼ごっこでもしてたら、そのうち捕まえられるようになると思うわよ。そんなに速くないから、捕まえやすいと思うわ」

「えぇ……無茶言われてるぅ……」

「ま、まぁ、とりあえず、すぐバラキーを捕まえられるように観覧車に行ってるわね。エウリュアレさんは、マスターが周回終わったら連れてきて」

「えぇ、任せて。ちゃんと連れていくわ」

 

 そう言って、エウリュアレは去っていき、アビゲイルは想像よりも大きなハンバーガーを渡されて頬をひきつらせるのだった。




 マスターを捕まえられるのは極少数という問題点。逃げのプロは伊達じゃないのです。


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バラキーは本当に自由よね(吾、少し休む……)

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「ぬおぉ……も、もう観覧車には乗らぬ……吾、もう十分乗った……」

「はいはい。全く。バラキーは勝手に行っちゃうんだから。言ってくれれば一緒に行ったのに」

 

 アビゲイルに膝枕をされつつ、うなされているバラキー。

 きっと意地を張りすぎて疲れたのだろう。とアビゲイルは思っていた。

 

「ぬぅ……汝はエウリュアレと共にフードコートへ向かっていたではないか……暴れられても困るからなぁ……」

「なんで私が暴れるのが前提になってるの……別に、私は気にしないわ」

「ぬぅ……」

 

 そう呟いて、静かになるバラキー。

 アビゲイルはどうしようかと少し考え、

 

「ねぇバラキー。ハンバーガー食べる?」

「むっ。あのギル祭とやらの時のバーガーか?」

「うん。作って貰ったわ。食べる?」

「うむ、食べるぞ!」

 

 バラキーの返答を聞き、アビゲイルはバーガーを取り出す。

 バラキーはそれを見て首をかしげ、

 

「はて。これ、ここまで大きいものだったか……?」

「やっぱりそうよねぇ……ONILANDサイズなのかしら……」

 

 アビゲイルはギリギリ持てるくらいのビッグサイズ。

 はたしてどうやって食べてものかとアビゲイルが考えていると、横からバラキーがバーガーにかじりつく。

 

「あぁっ!?」

「むぐむぐ……うむ。やはり赤い人は流石だな! これほど美味で食べごたえがあるものはあまり見ないからな!」

「もうっ! ナイフで切り分けようと思ってたのに、勝手に食べちゃうんだから!」

「知ったことではない。それに、このかじりつくのが良いのではないか。切り分ける必要なぞ無かろう?」

「むぅ……! 良いわ! このまま食べるわよ!」

 

 そう言って、アビゲイルもバーガーにかじりつき、若干崩れる形に苦い顔をするが、バーガーの味ですぐに顔を輝かせる。

 

「美味しい! 美味しいわね!」

「うむうむ。やはり肉がうまいことは当然としても、ソースの味、シャキシャキの葉物の食感、そして溢れ出た肉汁を受けとめ、更に味が良くなるカリカリのバンズとやら。やはり旨いな!」

「とっても美味しいわ! これは、もしかしたら一個じゃ足りないかもね!」

「まぁ、足りなかったらまたフードコートへ行けば良い。バーガー以外にもあるしな!」

「それもそうね! 後でいきましょう!」

 

 そう言って、楽しそうに笑う二人。

 そして、しばらくバーガーを食べ進め――――

 

「……喉が乾いたな……」

「……フードコートにお水があったはず……行きましょ?」

「うむ。流石にバーガーを喉に詰まらせるのは嫌だ。流石にそんな理由で座に帰りたくはない……」

 

 そう言って、二人はテクテクとフードコートへ向かうのだった。




 なんだかんだ言って、バラキーとアビーは仲が良いんですよ……あれ、そういや、最近アンリを見てないな……


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ファイアーマウンテン……一体どんなアトラクションがあるのか(行ってみて確かめよう!)

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「うむ! このチュロスとやら、美味しいな!」

 

 美味しそうにカナボーチュロスを食べているバラキー。

 すると、隣から茶々が入ってきて、

 

「茶々にも頂戴!」

「あぁっ!? 吾了承してないのに!?」

 

 一気に半分以上食べられるバラキー。

 茶々はとても満足げな表情だった。

 

「うぅっ……吾、自力で取ってきたのに……奪われるとは思わなかった……!」

「フッフッフー。そんなバラキーに朗報です。このサンデーを食べない?」

「むっ……食べる。が、何を企んでる?」

「別になんにも企んでないし。ただちょっと、食べようかなぁって思っただけだし」

「むぅ……というか、一つしかないのか」

「二つ取ってきたら持ちきれないし。ほら、スプーンあげる」

 

 差し出されたスプーンを受け取り、茶々と一緒にサンデーを食べるバラキー。

 すると、突如隣に門が開き、アビゲイルが出てくる。

 

「あら、サンデー? じゃあ、ポップコーンは邪魔だったかしら」

「あ、サンデー食べ終わったら食べる! アビーも食べる?」

「いいの? バラキーは?」

「気にしない。というか、吾、今そんなに食べられない。さっき一人でバーガーを制覇してきたばかりだからな」

「えっ、あのバーガーを? よくそれでサンデーとか食べられるわね……」

「甘いものは別だ。が、それはそれとして腹は膨れているからあまり食えないのは悔やまれる……」

「食い意地張ってるなぁ……」

「いくらでも食べられるのね……」

 

 サンデーをモグモグと食べ進めていくバラキーに苦笑いをしつつ、一緒になって食べる茶々とアビゲイル。

 

「ん。そうだ。吾はファイアーマウンテンに行ってみようかと思うのだが、汝らは行くか?」

「ファイアーマウンテン? そういえば行ってない気がするわ。行ってみようかしら」

「でも、あそこって何かあったっけ?」

「それが分からぬから見に行くのだが……」

 

 考え出す茶々に、だから見に行くのだと答えるバラキー。

 すると、アビゲイルは何かに気付いたように目を輝かせ、

 

「きっとジェットコースターとかあるんじゃないかしら。遊園地では定番だと思うの!」

「あるかなぁ……ここ、オニランドだからなぁ……茶々的に、あるだけな感じするよ?」

「まぁ、その時はその時だ。吾は見てみたいだけだからな」

「もちろん、遊べるなら遊ぶわよね?」

「ジェットコースターって、絶叫で有名だしね。バラキー好きでしょ?」

「まぁ、うむ。そうだな。とりあえず、行くとしよう」

 

 そう言って、三人はファイアーマウンテンへと向かっていくのだった。




 そろそろこの三人でメンバー固定されそうなくらいずっと一緒にいる気がする……


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ティーカップに乗ってみよう!(吾、どうなっても知らぬからな)

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「うむ。特には無かったな」

「暖かかっただけね。ジェットコースターも無かったわ」

「マハトマ~って叫んでる人がいただけだし。というか、いつもあの人マハトマしてない?」

 

 ファイアーマウンテンの観光をして、フードコートへと戻っていく三人。

 持っていたお菓子は食べ尽くしたので、補充のために戻っているようなものだが。

 その時、ふと目に映ったティーカップにバラキーは、

 

「そう言えば、ティーカップは面白いのか? 吾にはとんと分からぬが」

「もしかして、バラキー乗ってないでしょ。乗ってみればわかるって。ほら、行ってみよう行ってみよう」

「あ、私も乗りたいわ。早く行きましょ。イベントが終わる前に遊ばなきゃ!」

 

 予定を変更し、ティーカップへと向かっていく三人。

 

「(ふっふっふ……ここのティーカップは聖杯の最強エンジンで、且つブレーキが息をしてないから回せば回すほど加速することは確認済み! 思いっきり回してバラキーを酔わせれば勝ち!)」

「(とか、考えていそうだ。いや、吾が茶々より先に酔う心配はないのだが。まぁ、好きにやらせてみるのも一興よな)」

 

 茶々とバラキーは互いにそんなことを思いつつ、三人で同じカップに乗り込む。そして、茶々がハンドルを握ろうとし――――

 

 ――――アビーが触手を使って全面を奪う。

 

「えっ」

「あっ」

「ふ、ふふふ……一回全力で回してみたかったの! 行くわよ!!」

 

 直後、じわじわと、だが確実に上がっていく速度。

 周囲の景色は、段々と物と物の境界が無くなっていき、やがて線のようになっていき、体が浮くような感覚がやってくる。

 流石にこれは不味いのではなかろうかと茶々が思ったときには既に手遅れ。逃げられるような速度はとうの昔に通りすぎており、逃げ場などなかった。

 視線をバラキーに向けると、しかし既にそこにはバラキーは居らず、ただポツンと空間が空いていただけだった。

 

「(仕切り直しで逃げたな!?)」

 

 正解だった。補足するとしたら、アビゲイルが回し始めた段階で既に逃げ出していたということだろうか。

 その証拠に、ファミパン聖女(お姉ちゃん)に捕まって、一緒のティーカップに乗っていた。

 しかし、そんなことは知らない茶々としては、今この状況をどうやって打破するかを考えるしかない。

 だが、どういう手段をとろうか考え始めた直後、

 

「あっ」

「えっ」

 

 パキンッ! という小気味良い音と共に、アビゲイルの手にはハンドルが握られていた。

 ただし、そのハンドルはティーカップとは接しておらず、宙に浮いている状態。

 簡潔に言って壊れた。

 

「…………」

「…………」

「……てへっ」

「いや洒落にならんし!」

 

 完全に詰んだ茶々。

 どうあがいても死なので、泣きながらティーカップから飛び出していくのだった――――。




 はたして、茶々の運命やいかに。
 だが、それ以上に、ファミパン聖女に捕まったバラキーの方が心配。ファミリーにされてない? 大丈夫?


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鬼救阿ヒーローショー!(特等席で見ましょうか)

※神秘の国のONILAND‼鬼の王とカムイの黄金 のネタバレあり! 注意してください!













「はっ! 護法少女ヒーローショーだと!? 見に行かねば!」

「それ、五日前にマスターが攻略してたような気がするのだけど……」

「まぁまぁ。バラキーの夢は壊さず、行ってみれば良いよ。レッツゴー!」

 

 そう言って、ヒーローショーの行われるメインストリートへと向かっていく三人。

 メインストリートに着くと、既に人だかりが出来ていて、ほとんど見えない状況だった。

 

「ぐぬぬ……吾も見たいのに……!!」

「さっすがに見れないかなぁ~……前の方もぎっしりだし」

「ん~……そうねぇ……門でも使うかしら」

 

 そう言って、門を三人の足元に開くアビゲイル。

 直後三人は自由落下するが、すぐに二本の触手に支えられ、ステージがよく見える空中に腰掛ける。

 

「おぉ! 絶景かな! うむ、これは良い。鬼救阿の活躍を全部見れる!」

「見つかったら叩き落とされそうだけど、うん。眺めは最高だね!」

「気に入ってもらえたなら良いんだけど……ヒーローショーでこの見方をしてると、たぶん敵みたいに扱われそうよね……」

 

 無邪気に楽しむバラキーと、若干不安そうな茶々とアビゲイル。

 

「さて、そろそろ始まるわね……」

「ヒーローショーだぁぁ!」

「鬼救阿のヒーローショーって、ありなのかな……鬼の流儀聞いてる感じ、ダメな感じすごいんですけど……」

「まぁ、こっちに来たらとりあえず全力で迎撃してみるわ」

「うん。茶々は退避しとく」

「退避は落ちるしかないからおすすめしないけどね」

「また落下かぁ……嫌だなぁ……」

 

 ティーカップからの決死の脱出を思い出しつつ、苦い顔をする茶々。

 そんな二人は、どこから取り出したのか分からない、某光る棒を持っているバラキーを見つつ、ため息を吐くのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ヒーローショー……? この前マスターが攻略してたような気がするのだけど……再演かしら。でもまぁ、見てないから見に行くのもありね」

「姉様が行くのなら私も行きます」

「ヒーローショー! 見てみたかったんだ! 楽しみ!」

「頑張れ鬼救阿~!」

「……こっちの二人は既にスイッチ入ってるみたいだし、行かないわけにはいかないわね」

 

 エウリュアレとアナは、ジャックとバニヤンを連れてメインストリートへと移動していた。

 とはいえ、高難易度と同じ名前のものなので、警戒するに越したことはないだろう。

 ちなみに、オオガミは今、マシュと一緒に遊園地を回っていた。

 

「とりあえず、あんまり離れないようにね。迷子になると困るから。じゃ、行くわよ」

「「は~い!!」」

 

 そう言って、ジャックとバニヤンが離れすぎないように見張りつつ、のんびりと向かうのだった。




 アビー達のほのぼのパートもそろそろ終わりが近づいてます……


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ヒーローショーで散々な目に遭ったわ(バラキー絶対許さない)

※神秘の国のONILAND‼鬼の王とカムイの黄金 のネタバレあり! 注意してください!













「はぁ……散々な目に遭ったわ」

「茶々も被害者なんだけどぉ~……くっ、バラキーめ、寝返りおって……」

 

 結局見つかって悪役にされたアビゲイルと茶々。

 バラキーは当然のように裏切って敵になったが、劣勢の時にやって来たキアラとBBに助けられ、逃げ延びた。

 とはいえ、二人が何か不穏なことを言っていた気もするので、手放しには喜べなかった。

 

「貸し一つ……ね。私、返せるかしら」

「叔母上払いで許してもらおう。さらば叔母上。私の平穏の犠牲となれ」

「清々しいくらいの売りようね……まぁ、私は真似できないのだけど」

「いや、むしろ茶々は叔母上を売ることを求められてる気がした。アビーはほら、門があるから。たぶん逃げた叔母上を捕まえるときか、もしくは逃げるときに使われそうだから、自分から動く必要はないと思うよ」

「そうかしら……」

「うんうん。とりあえず、ほら。どこかで見てたはずのマスターの所に行くよ。最悪マスターを生け贄にすれば良いしね」

 

 マスターすら売るつもりの茶々に、アビゲイルは苦笑いしつつ、しかし実際にそれをするとどうなるかを想像し、若干青くなる。

 

「マスターを売ると、マシュさん辺りに怒られそうなのよね……」

「叔母上とBBとマスターが揃うと危ないしねぇ……うん。マシュは怒るね。まぁ、なんとかなるよ!」

「うぅ……マスターとマシュさん、一緒にいるわよね……だからエウリュアレさんがマスターと一緒にいないんだもの……」

「片方を見るだけでもう片方がどういう状況なのか大体推測できるって、すごい状況だと思うの。まぁ、茶々も分かるんだけどさ……」

 

 そう言って、二人は今も戦っているか、もしくは倒れているであろうバラキーが気にかかるも、敵に回ったのでぼろ負けしても良いんじゃないかと。むしろ思いっきり痛い目に遭えと思っている二人は、マスターを探して歩いていた。

 

「ところで、マスターどこにいるの?」

「それが分かってるのなら、歩いて探してないわ。門で一直線よ」

「だよねぇ……うん。マスターどこ行ったんだろ」

「まぁ、エウリュアレさんと一緒じゃないのは確かよ。ジャックとバニヤンを連れていたもの」

「ん~……観覧車かな? マスター乗ってなかったよね」

「え? いえ、私とマスターは一緒に乗ったわ。茶々とバラキーは気づいてなかったみたいだけど……」

「えぇっ!? 茶々とバラキー以外は知ってたの!? マジで!?」

「まぁ、ジャックとバニヤンの二人と入れ違いだったから……二人は先に乗ってたものね」

「ぐぬぬ……いや、別に知ってても得無いや」

 

 そんな事を話しつつ、二人はマスターを探すのだった。




 1500万DL記念……趣味枠のゴルゴーンを取るか、性能枠のバサスロを取るか、趣味と実益を兼ねたアタランテorワルキューレにするか……悩みどころです。


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シャドウ・ボーダーに帰るわよ~(骨を収集したいんですが!)

※神秘の国のONILAND‼鬼の王とカムイの黄金 のネタバレあり! 注意してください!













「「遊園地終了のお知らせっ!」」

「がふっ!?」

 

 背後からのタックルが直撃し、前に勢いよく倒れるオオガミ。

 犯人はアビゲイルと茶々。隣にいたマシュは驚いて固まっていた。

 

「うぐ……し、死ぬかと思った……」

「マスターはこんくらいじゃ死なないって! 一撃じゃないならどうせすぐ回復するし!」

「私は回避されるか無敵を張られるかって考えていたのだけど……流石に門を使ってのタックルは良くなかったんじゃないかしら……」

「お、お二人とも、いくら先輩が頑丈で死ににくい、実質不死身だからと言っても、流石に限度があると思うんです。いえ、まぁ、サーヴァントのタックルを食らって無事なところを見ると、不安になってきますけど……」

「ちょっとマシュ? 庇うなら不安にならないでいよう? それだとまるで人間やめてるみたいに聞こえるよ?」

「マスター今更じゃんね!?」

「無敵貫通や強化解除がない宝具に対しては掠りもしないマスターはわりと人間じゃないと思うの……」

「おっと。恒例の人間じゃないでしょ判定だね? 泣いてやる!」

 

 現に今タックルを食らって要所を擦りむいているのだが、別段痛がっている様子もなくテキパキと治療していくのを見て、流石に慣れすぎてるのではないかと思う三人。

 というより、その治療キットはどこから取り出したのだろうか。アビゲイルはその部分が特に気になっていた。

 

「はぁ……しかし、遊園地も終わりかぁ……意外と骨が収集できてたんだけどなぁ……」

「大丈夫よ。きっと次のイベントも貰えるわ! その時に集めれば良いじゃない!」

「ほら、次はボックスだし! 美味しいから自然と周回するし! だよね、マスター!」

「あ~……うん。次はクリスマスボックスガチャだね! 全然行けるじゃん! 余裕余裕!」

 

 笑い合うオオガミと茶々を見ていたアビゲイルは、苦笑いで、

 

「……これがフラグってものなのかしら……」

「たぶん、そんなにリンゴを使わないで終わると思うんですよね……例年を考えると」

「そうよねぇ……うん、皆を探してこようかしら」

「ちゃんと連れてきたから、後は帰るだけよ」

 

 振り向くと、バラキーの襟首を掴んでいるエウリュアレがいた。

 それだけでバラキーを引きずってきた事が分かってしまうのだが、それ以上に、後ろでアナに引きずられてきたBBとキアラの方が衝撃的だった。

 

「えっと……二人とも、負けたの?」

「勝ちそうだったから倒しておいたわ。とはいっても、私が止めを刺した訳じゃないけど。流石にヒーローショーでヒーローが負けるのは問題じゃないかしら。高難易度をやってるなら分かるけど、普通のヒーローショーよ?」

「えぇ……いえ、まぁ、分かるのだけど……う~ん……まぁ、気にしなくても大丈夫ね。というか、向こう側で悪役を用意してないのってどうなのかしら……」

 

 アビゲイルはそんなことを呟きつつ、門を開けるのだった。




 ん~……セイレムピックアップ回すか、次に来るエレちゃん待つか……うぅむ、難しいところです。


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日常
突撃! 目覚めの一撃!(儂、死ぬかと思ったんじゃが)


「きゃふー!」

「ダーイブ!」

「てやーっ!」

「グハァッ!?」

 

 アビゲイル、ジャック、バニヤンの同時ダイブ攻撃を受けて肺の中の空気が全て吐き出されて瀕死になるノッブ。

 心地の良い睡眠から一転、地獄のような起こされ方で青い顔になっているノッブを見て、すぐに起き上がる三人。

 

「あ、あれ……マスターはこれをしても大丈夫だったのだけど……」

「ノッブ、大丈夫? 解体する?」

「スープ飲む? 回復するよ?」

「う、うむ……儂は大丈夫じゃ……とりあえず、退いてくれんか? 流石に腹の上で膝立ちは死ぬ」

「え? ……あ、ダメよジャック。それはマスターの時でもダメよ?」

「ノッブはサーヴァントだから大丈夫かなって思ったんだけど……ダメ?」

「ダ~メ。ノッブさん、打たれ弱いんだから」

「えっ、ちょっと待って儂そんなに打たれ弱いはずないんじゃが? 訴訟するぞ?」

「良く分かんないけど負けないぞ~?」

「隠蔽しなきゃ……」

「魔女裁判……する?」

「うん。儂圧倒的不利だね」

 

 情報抹消のプロに、ヤベェ裁判の少女。

 バニヤンが戦力外としても、流石に勝てるような相手ではない。

 

「はぁ……で、儂に何のようじゃ?」

「あぁ、そうそう。マスターが、後で遊びに行くから準備しておいて、だって」

「ん。分かった。お主らはどうする?」

「私たちは茶々とバラキーと一緒に遊びに行くよ?」

「でも、アビーはマスターと一緒に遊ぶって言ってたよ?」

「ふむ。じゃあ、準備はあれとあれと……うむ。まぁ、それくらいか」

 

 立ち上がり、自作の収納ボックスを漁りに行くノッブ。

 しばらくすると、いくつかの機械を持って戻ってくる。

 

「まぁ、これくらいで良いじゃろ。アビゲイルも遊ぶなら手伝え。それと、ジャックとバニヤンにはこれをやろう」

 

 そう言って、何かを放り投げるノッブ。

 咄嗟にそれを受け取ったジャックとバニヤンは、その正体に目を輝かせる。

 

「猫の形の飴?」

「ノッブが隠し持ってたー!」

「人聞きの悪いことを……それはこの前マスターが作ったやつの余りじゃ。ラッピングは儂じゃけどね」

「ノッブ、そういうところ器用よね」

「そういうところだけじゃないじゃろ。最近設備にまで手を出し始めた儂に死角はない!」

「無駄に器用よね……マスターも似たようなものだけど……」

 

 割れないように透明な箱に入っている飴を眺める二人と、その二人を見て改めてオオガミとノッブの器用さを再認識するアビゲイル。

 ノッブはため息を吐くと、

 

「ほれ、あと二つあるから、これを持っていけ。さて、アビゲイルは手伝ってもらうからな。まずは荷物運びからじゃ」

「は~い」

 

 そう言って、ノッブの後ろをアビゲイルはついていくのだった。




 マスターなら大丈夫というパワーワード。


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お菓子を奪いに行くぞ!(茶々の身の安全は!?)

「くふふっ、今日は厨房に行って菓子を奪う。良いな?」

「はーい!」

「私たちとバニヤンは情報抹消しておくね」

「あれっ、茶々は? バラキーは良いとして、茶々は?」

 

 茶々の部屋で作戦会議をするバラキー達。

 どうやらバラキーと茶々は見つかったときにすかさず売られそうな雰囲気が漂っているが。

 ちなみに、アナスタシアとスカディも相部屋なのだが、二人ともコタツの魔力にやられて、ダメな()になっていた。

 

「うむ。まぁ、茶々以外は逃げられるし良いか。では、狙うは菓子棚の中だ。各員、失敗したら撤退だ。では行くぞ!」

「ちょっと待って!? 茶々逃げられる要素無いんだけど!?」

「頑張ってね! 茶々!」

「大丈夫! 茶々なら逃げられるよ!」

「圧倒的不安しかない!」

 

 どうあがいても一人孤立して取り残される感。

 しかし、そもそもとして、見つからなければ問題ないのだ。

 

「ぐぬぬ……どうか誰も見張っていませんように……!」

「まぁ、赤い人も猫狐犬もいない時間は調べ終わっているからな。うむ。後は実行するだけだ!」

「レッツお菓子!」

「食べるぞ~!」

 

 そう言って、四人は部屋を出ていった。

 それを見送ったアナスタシアは、さりげなくスマホを取り出すと、何処かへと電話を掛ける。

 

「えぇ、えぇ。今出ていったわ。えぇ、もちろん。コタツ代くらいは働くわ。次も任せて」

「……それはなんだ?」

 

 電話を切ってしまおうとしたときに、スカディがそれを止める。

 アナスタシアは少し考え、それをコタツの上に置く。

 

「これはスマホというものよ。きっと貴女も情報だけはあるんじゃないかしら」

「あぁ、これが例のスマホとやらか。触っても良いだろうか?」

「えぇ。とはいっても、私も最近使い始めたばかりだから、まだ初心者なのだけど。カメラ機能と電話機能しか使ったことがないわ」

「ふむふむ……さて、私でも操作出来るだろうか」

「私が出来たんだもの。貴女が出来ないはずないわ。さぁ、挑戦してみましょう?」

 

 そう言って、アナスタシアはスカディにスマホを差し出すのだった。

 

 

 * * *

 

 

「あ。そう言えばマスター。交換どうするんじゃ?」

「え? あぁ……うん。候補は決まってるけど確定してないかなぁ……土壇場で悩んでる感じ」

「煮えきらないのぅ……」

 

 そんな事を呟きつつ対戦ゲームをしていると、勢いよく扉が開き、

 

「もちろん(ステンノ)よね!」

「あ、BBちゃんも来ました~。寝起きなので加減してくださいね~」

「いや、流石にステンノ様は……召喚してもゴルゴーンかなぁ……」

「むっ。じゃあ、私が対戦で勝ったら(ステンノ)ね。分かった?」

「えぇ~……理不尽~……」

「早くやるわよ。覚悟しなさい!」

 

 そう言って、エウリュアレはノッブからコントローラを奪ってオオガミと対戦を始めるのだった。




 さて、交換どうしよう……

 まぁ、ステンノ様じゃないのは確定ですね(断言


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吾まだ何もしてないのだが!!(茶々は何もしてないんだけど!?)

「吾まだなにもしてない!」

「バラキーがやりました! 茶々知らない!」

「私はまだ何も言ってはいないのだが……」

「だがキャットには分かるぞ。例え喋らなかろうがその腹の虫は全てを語る。覚えておくのだな」

 

 椅子に縛り付けられ、逃げることすら許されないバラキーと茶々。

 無罪を主張するバラキーと、バラキーを売って助かろうとしている茶々。しかし、エミヤはともかく、キャットは何故か爛々と目を光らせていた。

 

「まぁ、二人とも聞かれることは分かっているみたいだが、とりあえず聞いておく。お菓子を盗んだな?」

「吾がまだ何もしてないのは本当だ! というか、後二人いた気がするのだが!!」

「その肝心の二人がいないってことはやっぱバラキーが犯人なんじゃないかな! ほら、やっぱ茶々無罪! 叔母上の所に逃げさせてもらいます!」

「それは許さんのだな。何故かって?それは至極単純。茶々はクッキーを持っているからだ。ふははバカめ。エミヤは騙されようともこのキャットは騙せないぞ」

「お菓子の棚に近づけてもないのに!? マジですかうわマジだー!」

 

 キャットの手が茶々の懐に入り、そこから小さな袋に入ったクッキーが出てくる。

 そして、その事実に誰よりも驚いているのは茶々だったりする。

 

「茶々……汝、吾を犯人とか言いながら自分は盗んでいるとか、流石にどうかと思うぞ……」

「茶々お菓子の棚に触れてすらいなかったんだけど……えぇ……」

「だが事実菓子は出た。つまり有罪。罰を受けるがいい」

「いやぁぁぁ!! 茶々は嵌められたんだぁぁぁ!」

 

 茶々の抵抗虚しくキャットに連れ去られていった。

 それを見送ったエミヤとバラキーは、

 

「うむ。まぁ、犯人は茶々ということで。というか、本当に後二人いた気がするのだが……」

「事実、いたとしても証拠がないからな。諦めてくれ」

「そんなぁ……」

 

 青い顔になるバラキー。しかし、無慈悲にも茶々と同じように連れていかれるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「本当に置いていって良かったの?」

「うん。だって、お母さんが置いて行っていいって言ってたし。それよりも、早くスカサハさんのところに持っていかないと」

 

 茶々の懐にクッキーを入れ、自分達に関する情報を消し去ったジャックとバニヤンは、スカディの元へと走っていく。

 

「あら、ジャックとバニヤン。もう戻ってきたの?」

「ん、来たか。よしよし。良くやったぞ」

「わーい!」

「褒められたー!」

「……真犯人は貴女だったの……?」

 

 さりげなくジャックとバニヤンを使って自分のお菓子を手に入れたスカディは、隣で驚いているアナスタシアを横目に、そのお菓子を二人と一緒に食べ始めるのだった。




 黒幕はスカディ。全ては彼女の手のひらの上……


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なんでこういうときだけ全力なのよ!(というか、チケットはもう……)

「一戦も勝てなかったどころか、一撃も当てられなかったのだけど」

「今回は趣味枠じゃなくて実用枠だから……というか、ステンノ様は既に召喚済みだから、そのうち戻ってこれると思うんだけど」

「まぁ、そもそもカルデア以外にあれだけサーヴァントを置いておける場所はあるか分かんないんじゃけどね!」

「今の状況を理解していたら出ないセリフですね。まぁ、それもこれも、BBちゃんの活躍あってこそのものですけど!」

 

 オオガミの膝の上に頭を乗せてうちひしがれるエウリュアレ。

 その頭を撫でつつ、苦笑するオオガミ。

 とはいえ、そのうち再召喚されそうなステンノ様にチケットを使う予定はなかった。というよりも、

 

「もう、チケット使ってるんだよね」

「!?」

 

 飛び起きるエウリュアレ。いつもの冷静さはどこへ消えたのかというほどに取り乱しているように見える。

 

「誰を召喚したの?」

「ん~……クイックアーチャーかな」

「アルテミスの所の狩人ね!? えぇ、えぇ。よくも(ステンノ)の代わりに召喚されたわね。覚悟してもらうわ!」

 

 そう言って、何処かへと走り去るエウリュアレ。

 オオガミはそれを見送り、どうしたものかと悩む。

 

「ん~……あの情報だけですぐに気付いたのはいつも通りとして、その問題のアタランテさんが何処にいるかってことです」

「えっ。マスター、知らずにいたんか? あやつなら今アナスタシアの所じゃろ。現状、コタツが実装されてるのあそこだけじゃし」

「コタツが実装されてるからって……いやいや。猫じゃないんだから……」

「まぁ、猫っていうよりも、虎や豹ですよねぇ……あれっ? どっちも猫科ですし実質同じじゃないですか?」

「BBはそうやってすぐに喧嘩を売りに行くぅ……そういうところだよ?」

 

 完全にアタランテを猫扱いしているBB。

 それに対し、オオガミはため息を吐く。

 

「私、事実しか言ってないのに喧嘩を売りにいってるって言われるの、スッゴい心外なんですけど。というか、ここにはいつ設置されるんですか!」

「自分達で作るしかないかと」

「何でここだけ自給自足なんです!?」

 

 シャドウ・ボーダー内で最大の自給自足一派。素材、アイテム、遊具に至るまで自主製作しているという集団。更に言えば、後は料理枠さえいればある意味独立できるレベルだったりする。

 

「さて……とりあえず、エウリュアレがアタランテさんを捕まえる前に保護してこようかな。およそアナを引っ張っていくだろうし。レベル100が二人いたら勝てないって」

「ん? 何言っとるんじゃ。三人じゃろ。アビーおらんし、エウリュアレと一緒じゃよ?」

「……一番ダメなやつじゃんね!?」

 

 ノッブに言われ、オオガミはアタランテがいるであろう場所へ走っていくのだった。




 アタランテ姐さん、さりげなく昨日から周回にいるという。幕間やる前で周回できるのは少し楽……まぁ、威力足りないんですが。


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なんかアビーの宝具レベルが上がっているのだけど(とりあえずマスターを吊るしましょう)

「なんか強くなった気がするわ! 特に宝具!」

「そうね……宝具レベルがアップしてるわね……」

「どうしますか姉様。先にマスターを捕まえて吊るしますか?」

 

 宝具レベルが上がって喜ぶアビゲイルと、アタランテとマスターのどちらを先に吊し上げるかを聞いてくるアナ。

 そもそも、アナに関しては前提が違った。

 あくまでもエウリュアレは、アナに挨拶に行くと言っただけである。そこから吊し上げる方向へと変わったのは、はたしてエウリュアレのいつもの行い故か。

 

「というか、アビゲイルの宝具レベルが上がったってことは、石を使ったってことよね? 私よりも、いち早く反応するのって――――」

 

 直後、響き渡る轟音。

 どうやら、彼女も気付いたらしい。

 

「……まぁ、あっちは彼女に任せましょうか」

「マシュさんなら問題ないでしょうしね」

「ふふっ。早くこのパワーアップした力を使ってみたいわ!」

 

 三人はそう言いつつ、アタランテを探すのだった。

 

 

 * * *

 

 

「っとと。危ないのぅ……儂が何をしたと言うんじゃ」

「いえ、信長さんではなく、先輩に用があってきたのですが」

 

 既に数回ぶつかり合って、ようやく話し始める二人。

 後ろで見ているBBは、我関せずと言わんがばかりだった。

 

「いやぁ……すまんな。儂にはそれをどうしようも出来ん。なんせマスターおらんし」

「……となると、一昨日来たアタランテさんところでしょうか……仕方ないですね。BBさんを一度叩いてから行きます!」

「あれっ!? 今スッゴい理不尽にこっちに照準向きませんでした!?」

 

 とりあえず八つ当たりをする。そういう意思を感じたBBは、理不尽さに悲鳴を上げるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「……なんで俺だけ吊し上げられてるのかな?」

 

 逆さ吊りにされているオオガミと、それを見張るアナとアビゲイル。

 それを見ているのは、コタツに入って出来立てのアップルパイ食べている、アナスタシア、スカディ、アタランテ、エウリュアレの四人。半分は神なので、若干強張っているアタランテだが、隣のアナスタシアは平然としている。

 

「ふむ。それで、どのような余興が始まる? 吊るして終わりではあるまい」

「待って待って待って。なんで更に過酷にしようとするんですかスカサハ様! いやスカサハ様ならやりかねないけども!」

「マスター。私は別に苦しむ姿がみたいという訳ではない。ただ、恐ろしいほどに暇だから、何かを見たいというだけで、他意はない」

「えぇ……」

「じゃあ、その状態でアップルパイおかわりをお願い」

「エウリュアレが一番悪魔だよ……アビー。移動だけお願い」

「マスターの、出来ないって言わないところは凄いと思うわ」

 

 そう言いつつ、アビゲイルはオオガミをキッチンに連れていくのだった。




 姉様過激派なアナ。一体どうしてこうなってしまったのか……

 あ。アビゲイル出ました(ドヤ


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エレシュキガル狙いだ! 祈れぇ!!(そういうところで回すからダメなんじゃないかしら)

「……明日からだね」

「吊るされた状態でキメ顔しないで。笑っちゃうわ」

 

 昨日から引き続き吊られているオオガミ。

 明日からイベントということで張り切っているようだが、吊るされているので格好がつかない。

 

「本当にその体勢で作り上げるとは……さては人間ではないな?」

「ちょっと待って。人間だから。超人間だから。人間以外の何者でもないから!」

「まぁ、今更よね」

 

 既に何度も言われている光景。

 新人のアタランテにすら言われるのだから、相当なものだろう。

 

「それで、まぁ、確かに明日からイベントなのだけど。でも、ボックスは10個までよ?」

「まぁ、前夜祭みたいなものだし仕方ないかなって。真の戦いは次回ってことだよ」

「……でも、ガチャは本番なんでしょう?」

「エレシュキガルだよ? 回すしかないでしょ」

「そこで回しちゃうからメルトが来ないんじゃないの?」

「エウリュアレが的確に傷を抉ってくるんだけど!!」

 

 じたばたと暴れるオオガミ。

 しかし、縛られているのでぐるぐるとその場を回っていた。

 それを見てエウリュアレはため息を吐き、

 

「別に、自力で解けるでしょ? 早く降りてくれば良いじゃない」

「良いの?」

「そうね……そろそろ来る彼女をその状態で迎えるって言うなら良いんだけど」

 

 エウリュアレがそういった直後、素早く縄を解いて降りるオオガミ。

 そして、それとほぼ同時に開く扉。

 

「バンカーボルトっ! 覚悟してください先輩!」

「最近のマシュはすぐ怒るなぁ全く!!」

 

 お前が原因だと突っ込みたい一同。

 しかし、オオガミに振り下ろされた盾の一撃はわりと力がこもっていた。

 

「石は貯蓄! 良いですね先輩!」

「絶対にNO! 使いたいときに使うのが一番だよ!」

「だから毎度メルトさんの時に石が枯渇して泣くことになるんじゃないですか! 学習してください!」

「止めたければ力づくで止めるんだな! ってことで逃げる!」

「今日こそ逃がしません!」

 

 逃げ出すオオガミと、全力で追いかけるマシュ。

 それを見送ったエウリュアレは、

 

「まぁ、いつも通りよね。気にしないでアップルパイ食べちゃいましょ」

「これがいつも通りとは……カルデア……思っていたよりも恐ろしいところなのでは?」

「今はシャドウ・ボーダーだがな。ただ……うむ。料理がうまいとは言っておこう。きっと感動するものがあるだろう」

「万能料理長のエミヤ、副料理長のキャット、お菓子のマスター。大体こんな感じよね」

「えぇ。でも、最近普通の料理も時々出してくれるわ」

「……ついに本格的に料理にまで手を出し始めたのね……」

 

 

 アナスタシアからもたらされた情報に、エウリュアレは遠い目をするのだった。




 こういうところで回すからダメなんじゃないですかね(自問自答

 というか、オオガミ君の出来る範囲が徐々に広がっていってるんですが。


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冥界のメリークリスマス
一年ぶりのシュメル熱だね!(絶対エレシュキガルをぶっ飛ばすわ)


※冥界のメリークリスマスのネタバレがあります! ご注意ください!!










「さてと。それじゃあまたシュメル熱を治しに行きますか」

「絶対召喚させる。冥界に引きこもらせない。シュメル熱を流行らせた彼女には絶対報復する」

「はいはい。エウリュアレは静かに寝ててね」

 

 無理に起きようとするエウリュアレを寝かせつつ、シュメル熱を治しに向かうオオガミ。

 しかし、自室を出てすぐに、倒れているアビゲイルを見つける。

 

「あ、アビー……? 生きてる……?」

「頭がぼ~ってなってるけど、私は大丈夫よ。うん。ちょっと茶々の所に遊びに行ってくるわね」

「たぶん茶々も寝込んでると思うんだけどなぁ……寝込んでると思うんだけどなぁ……運んであげるよ」

「そ、そんな、別に良いわ。私は一人で――――きゃっ!」

 

 ふらふらとしているアビゲイルを持ち上げ、茶々の部屋の前へ置いていくオオガミ。

 そして、少し歩くと、

 

「ん? おぉ、マスターか」

「やっぱりセンパイは無事でしたねぇ。まぁ、去年も無事でしたけども」

「二人とも……よく平然としていられるよね」

「わははは! これが平然としているように見えるか!」

「あはははは!! ダメに決まってるじゃないですかノッブとか今にも倒れそうですよ」

「何言っとるんじゃ。BBの方が今にも死にそうじゃろ」

「なんです? やるんですか? 今ならBBちゃんアルティメットサクラビームしちゃいますよ?」

「ハッ! くらうかそんな弱そうなもん! やってみるが良い!」

「言いましたね!? やっちゃいますからね! 今必殺の――――」

「はい、終了。フラフラで争うと災害が広がるので禁止です」

 

 軽く小突くと倒れる二人。

 目一杯気を張っていたのだろうが、流石に体力の限界らしかった。

 オオガミはため息を吐くと、二人を担いで作業部屋に運んでいく。

 

「意地にならなくて良いから。むしろ、帰ってくるまで休んでて」

「ぐぬぬ……不覚じゃ……マスターにやられるとか……これ、後で鍛えんとなぁ……」

「センパイに倒されるとか、私もダメですねぇ……予想以上に深刻みたいです。こういうときこそBBちゃんの出番のはずなんですけどねぇ……」

「まぁ、回避不能だから仕方ないって。諦めて回復するまで寝てて」

「うぅっ……センパイの言い方が、言うことを聞かない子供に叱ってるみたいな口調なんですが……!」

「儂ノーコメントで。あっ、揺れると吐きそう」

「極力揺れないようにしてるんだけどね? それでも限界はあるよ?」

 

 なんとかたどり着き、未だに騒ぐ二人を無理矢理寝かせるオオガミ。

 一息ついて、ようやく冥界へと向かうのだった。




 あ、アナがさりげなく宝具4になっちゃってます。エレシュキガルは……?


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なんでこの子はついてきたのかな!?(ちょっと抗議したいことがあったので)

※冥界のメリークリスマスのネタバレがあります! ご注意ください!!










「ふはははは!! 負ける気がしない!!」

「あの、さらっと私の宝具レベルを5にするのはどうかと思うのですが」

 

 元気よく、しかし涙目で周回しているオオガミと、若干顔が赤いものの、わりと平気そうなアナ。

 オオガミが涙目なのは、在庫がなくなった石貯蔵庫から察することが出来るだろう。

 

「アナはそういうけどね! こっちはエレシュキガル狙いだったんだからね!?」

「でも私じゃないですか」

「召喚に応じたのはアナだよね!?」

 

 まるで、オオガミが悪いかのように言うアナに困惑するオオガミ。

 むしろ、欠片も来る気配がないエレシュキガルにはめちゃくちゃ嫌われてないかと悩むが、本人がいないのだから判断することは出来ない。どのみち泣き出したいオオガミだった。

 

「ところで、ですね。実は私もそろそろ倒れそうなんですが」

「真顔で言われるとスッゴい困るんだけど! というか、なんで来たし!」

「だって、姉様が行ってこいって……」

「エウリュアレ何してんの!? あぁもう! 一番下に行かないと帰れないのについてくるから……! ほら、背負っていくよ」

「うぅ……すいません……」

 

 倒れるようにオオガミに寄り掛かるアナ。

 オオガミはアナをしっかり背負うと、ゆっくりと歩きだす。

 

「はぁ……うん。まぁ、解決すれば治るでしょ」

「そう、ですね……ところで、戦力にあては……?」

「あるよ。サンタさん」

「あぁ……ランサーには、勝てなさそうですね……」

「まぁね。相手がランサーなら、一時召喚するしかないかな」

「……その設定、一応残ってるんですね……」

「設定って言わないで!? ていうか、突然のメタ発言は止めよう!?」

「いえ……私含め、普通に出てるので……もう無くなったのかなと。でも、ノッブを除いて再召喚された人しかいませんし、実質セーフですね」

「アウトに近いけどねぇ……って、そうじゃないそうじゃない。とりあえず、安全なところに行かないと…… ここだとトナカイに襲われるし」

「安全なところ……ですか。マスター、忘れているようなので言っておきますが、ここ、冥界ですよ?」

「……あぁ、安全なところなんてないって意味ね!」

 

 背後から迫る気配に、全力で走り出すオオガミ。

 とはいえ、闇雲に逃げ回ったところで捕まってしまうのは時間の問題。ならば、

 

「サンタさ~ん! とりあえず4ターンほど時間稼ぎをしてからこっちに来て!」

「あぁ。だが、逃げ切れるのか?」

「逃げ切って見せるとも!」

 

 隣に来て質問するアルテラに、ニヤリと笑って答えるオオガミ。

 それを聞いたアルテラは頷いて、

 

「うむ。なら、ここは私が引き受けよう! さぁ、マスターは急ぐと良い!」

「ありがとうサンタさん! また後で!」

 

 オオガミはそういうと、その場から全力で逃げるのだった。




 シュメル熱なのに平然としているメンツ多くない……? なんで……?

 あ、さりげなくアナの宝具レベルが5になってます。エレシュキガルの時に金ランサーでアナが出たときの絶望感。嬉しいのに嬉しくないと言う……


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そろそろシュメル熱に慣れてきたな……(だからって無理に動かないでくださいねぇ……)

※冥界のメリークリスマスのネタバレがあります! ご注意ください!!










「あ~……そろそろ、慣れてきたな……」

「ダメですよノッブ。無理に動くとセンパイからの制裁が後で飛んできます」

「な~んでマスターはそういうところを見てるんじゃ。アホか。アホなのか」

「まぁ、センパイですし、仕方ないんじゃないかなぁって……」

 

 起き上がろうとしたノッブを止めるBB。

 その理由がかなり酷いが、本当にやって来そうなところが恐ろしい。

 

「はぁ……儂、ゲームしたいんじゃけど……」

「音が頭に響くので遠慮してください。BBちゃん、今傷心中なんですから」

「わはは。たかが熱を出して寝込んだくらいで傷心とか、それなら儂、もう死ぬしかなくなっちゃうじゃろ!」

「ノッブと違ってBBちゃんは繊細なんですぅ~! あんまり言うと泣いちゃいますよ?」

「えぇ~? BBが泣くとか想像できんし、是非とも遠慮してもらいたいんじゃけど」

「私もしたくないですけどね……でも、本当にやめてください。頭に響くので……」

 

 ノッブよりも深刻そうなBB。

 かなり弱っているので、流石のノッブもどう扱ったものかと悩む。

 

「うむ……なんか、甘いものでも取ってくるか。何が良い?」

「私バニラで」

「ん。わかった。少し部屋を出てくぞ~」

「行ってきてください~」

 

 ノッブに手を振るBBは、すぐに力尽きて寝入るのだった。

 

 

 * * *

 

 

「はぁ……この状態で儂以外に起きてる奴はおらんじゃろ……」

 

 厨房へと向かうノッブ。流石に気合いで押さえつけているだけなので、未だに視界は揺れているが、それを微塵も感じさせないのは流石としか言えない。

 その時、部屋から声が聞こえてくる。

 

「ふふふ……いえ、まだよ…。まだ私は負けてないわ……!」

「アビーは一体何と張り合ってるの……!?」

 

 その声を聞いたノッブは、その部屋の扉を開ける。

 そこには、妙に元気なアビゲイルがいた。

 

「何しとるんじゃアビー」

「ふぇ!? ノッブさん!? なんで!?」

「お主が耐えられるなら儂に耐えられんはずなかろう。というか、それだけ元気ならちょうど良い。ついて参れ」

「えぇ……!?」

「叔母上。流石に、それはないと思うの。アビーのは空元気とかそういうのだと思うの」

「安心せい。ダメそうだったら帰すからな。なに、アイスを取ってくるだけじゃ。ただ、儂一人だと持てるのに限りがあるからついてくればその分お得というだけじゃからな」

「あぁ、なるほど……」

「じゃあ、私も行くわ! ゴーゴーよ!」

「いってらっしゃ~い。あ、茶々はチョコが良いな~」

 

 ノッブはアビゲイルを連れていき、茶々は少し嬉しそうな笑顔で手を振るのだった。




 ノッブが若干の魔王モード入ってる気がするのはシュメル熱のせい。


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な~んでお主がおるんじゃ(何よ。いたら悪いっていうの?)

※冥界のメリークリスマスのネタバレがあります! ご注意ください!!










「……なんでお主がここにおるんじゃ」

「……なによ。悪い?」

 

 厨房に当然のようにいるエウリュアレ。その手元にはアイスがある。

 顔が赤いところを見るにも治っているようには思えない。

 

「何しとったんじゃ?」

「見ればわかるでしょ。アイスを食べてるの」

「そうじゃな……残っとるか?」

「えぇ、たくさん。マスターの作り置きよ」

「ふむ。ならいいんじゃ。いくつかもらっていくぞ」

 

 そう言って、冷蔵庫へと向かっていくノッブ。それとは逆に、エウリュアレの方へと向かっていくアビゲイル。

 

「あら、どうしたの?」

「疲れたわ……エウリュアレさんの所に行って良い……?」

「いいけど……マスターの部屋よ……?」

「……なんでエウリュアレさんがマスターの部屋に住んでるのかが分からないわ……」

 

 今さらではあるが、突っ込みどころしかない状況。補足しておくと、オオガミの部屋にベッドは一つしかない。

 

「いえ、だって、私は部屋を持ってないもの」

「えっ。エウリュアレさん、お部屋なかったの……?」

「そうよ? でも、誰も言及しないのよねぇ……いえ、私も不自由してる訳じゃないから良いのだけど」

「マスターの部屋に住んでたら、確かに誰も言わないわ……」

「場所がないから仕方なくそこにいるだけなのだけどね……まぁ、そこでも良いなら部屋に来ても良いのだけど」

「ん~……ノッブさんと一緒にアイスを届けてから行くわ」

「そう? じゃあ、ノッブ。ちゃんと連れてきなさいよ」

「おぅおぅ。なぜ儂じゃ。一人でも大丈夫じゃろ」

 

 突然話を振られたノッブは、アイスが入った袋をもって戻ってきていた。

 

「あら、出来ないの?」

「たわけ。出来ぬわけ無かろう。儂に任せい。しかと届けてみせるとも」

「……今日のノッブ、扱いやすいのね……」

「熱に浮かされているんじゃないかしら……」

「儂だってそう思うし。というか、分かっていてそういうことをするお主もお主よな」

「さてね。ほら、さっさと荷物を届けてきなさい。アビーも頑張ってね」

「えぇ、頑張るわ……」

「儂には無いんか?」

「BBによろしくね?」

「儂にじゃないじゃん! 期待はしとらんけども!」

 

 そう叫び、しかし自分に響いたのかうずくまるノッブ。

 しかし、すぐに立ち上がると、

 

「はぁ……ほれ、アビー。さっさと配って。ー、マスターの部屋に行くんじゃろ。行くぞ。それとエウリュアレ。動けないなら動けないなりにどうにかしてマスターの部屋に戻るんじゃぞ」

「……えぇ、分かってるわよ」

 

 ノッブとアビゲイルは出ていき、エウリュアレはノッブの言葉に対してポツリと呟くのだった。




 ちゃんと観察しているノッブと、プライドが限界突破しているエウリュアレ。アビーは癒し枠となるのです。


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いざ深淵の中へ!!(私はもう帰りたいんですが)

※冥界のメリークリスマスのネタバレがあります! ご注意ください!!










「……何してるんですか」

「いや、もしかしたら冷たいかなって」

 

 冥界の砂を袋に詰めてアナの頭の上に置くオオガミに、思わず聞いてしまうアナ。

 聞いても砂の感覚があるだけで、対して効果がある感じはしなかった。

 

「ん~……温いと言うか、感じないと言いますか……はっきり言ってただただ邪魔です」

「そ、そう……うん。じゃあ、やめておくよ」

 

 そう言って、砂を片付けるオオガミ。

 すると、アルテラがやって来て、

 

「なんだ。そんなに持っていたのか……交換しないのか?」

「ん~……全部集まってからで良いかなぁって。でないと育成しちゃいそうだし……」

「なるほど……ふむ。そういうのもあるのか。ボックスガチャとは難しいな……」

「サンタよりは簡単かと……うん、まぁ、とりあえずアナが大丈夫なら移動しようか」

「どんどん下へ向かっていくからな。寒くなるかもしれないが、覚悟はしてほしい」

「いえ、さっさと令呪で帰してくれても良いんですが」

「……それは思い付かなかった」

「盲点だった。そういえば、令呪はそのように使えたな」

「なんで二人揃ってそんななんですか……」

 

 ちょっと残念な二人。こんなだからシュメル熱も効かないのだろうかと考えるが、それならもっと多くのサーヴァントがシュメル熱に掛かってないのではないかと思い、やっぱり違うかと考えを振り払う。

 オオガミはそんなアナを背負うと、

 

「とりあえず、明日くらいには終わるだろうし、一日くらい誤差だよね」

「誤差じゃないです戻れるだけで良いんです返してください」

「返事は聞いてない! レッツゴー!」

「いつものことですけど、理不尽過ぎますぅ~!」

 

 アナを背負ったまま門から飛び降りるオオガミと、それを追いかけるアルテラ。

 三人は、深い深い暗闇へと落ちていく。

 

 

 * * *

 

 

「で、どうじゃ? ちゃんと連れてきたじゃろ?」

「アビーが倒れてるじゃない……誰が抱えてきてって言ったかしら」

「きゅぅ~……」

 

 ノッブに抱えられてオオガミの部屋にやって来たアビゲイル。

 エウリュアレはその状況に、思わず突っ込みを入れる。

 

「だって仕方ないじゃろ。最後にBBに届けに行ったら倒れたんじゃし。仕方ないからこうやって連れてくるしか無かろう?」

「あぁ……それなら仕方ないわね……こっちに連れてきてもらえるかしら」

「うむ。というか、本当にマスターのベッドを占領しとるんじゃなぁ……」

「占領しているわけではないのだけどね……」

「そっちはそっちで問題な気もするんじゃがな……」

 

 ノッブはそんなことを言いながら、エウリュアレ座っているオオガミのベッドへと向かうのだった。




 不憫なアナ……どうしてこうなってしまったのか……


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病人が病人を看病するって、アホすぎると思うんじゃが(茶々、寝たいんだけどなぁっ!)

※冥界のメリークリスマスのネタバレがあります! ご注意ください!!










「のっぶぅ~……頭痛いですぅ~……」

「たわけっ!! 儂の分のアイスまで食ったらそりゃ頭も痛くなるじゃろ! 反省せい!」

「う、うるさいです~! もっと病人には優しくしなきゃですよ~!?」

「儂も病人なんじゃけどね!?」

 

 シュメル熱に掛かっていようがわりと騒がしいノッブとBBの工房。

 とはいえ、そもそもそんな大きな声を出すつもりの無かったノッブだが、目の前に自分が食べる予定だったアイスが空になって置いてあったら、激怒くらいするだろう。

 

「うぅ~……熱が下がったら私が用意しますから~……今はちょっと静かにしててください~……」

「……いや、まぁ、許すけども、氷でも取ってくるか?」

「それも良いですけど、今は耳栓がほしいです……」

「阿呆。それをすると気持ち悪くて寝れんわ。音は諦めよ」

「じゃあ、静かにしててくれると助かります」

「ん。まぁ、儂も辛いしな……もう一個アイス取ってこよ」

「あ、イチゴが良いです」

「懲りんな貴様!」

 

 ノッブはそう言って、再び部屋を出ていくのだった。

 

 

 * * *

 

 

「あぁ、風邪なんて何時以来かしら……」

「出来れば掛かりたくないけど、そもそもこれはシュメル熱だからもっとヤバイものだって、茶々は主張するの」

「暑いのに、寒い……不思議な感覚だ……なるほど、これが人の子らの言う風邪と言うものか……」

「いやだからシュメル熱だって。というか、なんで茶々が看病してるんだし」

 

 アビゲイルがいなくなった後、あったか濡れタオルを二人の額の上に乗せていた茶々。

 ちなみに、お湯は二人が勝手に生成する氷を溶かして作っている。

 

「あぁもぅ、茶々だって寝たいんだけどなぁ……! でも見捨てられないしなぁ……!」

「ありがとう茶々さん……治ったら、なにかお礼をするわ」

「死にそうな顔でなんて事を……! さてはこの子、死亡フラグを知らないとみた!」

「脂肪フラグよね。知ってるわ。ラーメンを食べ過ぎると立つのよね」

「ダメだ思考回路がバグってる……!」

「そうか……人の子は、そうも簡単に体型が変わってしまうのだな……」

「なんで脂肪フラグを理解してるのかなそこの女神様は! あと、自分は太らないんです宣言は要らないからっ!」

 

 ドヤ顔で誤認識した内容を語るアナスタシアと、その隣で神妙な顔をしてさりげなく煽ってくるスカディに、思わず頭を抱えて「まともなのは私だけか……!」となってしまうのは是非もないことだろう。

 

「はぁ……とにかく、治ったらの事は治ってから考える。今はゆっくり休むこと。分かった?」

「は~い」

「きっと、この感覚も今のうちだからな……楽しむとしよう」

「この駄女神め!」

 

 素直なアナスタシアと違い、やはり少しずれているスカディに、茶々はスカディの頭を軽く叩きつつ言うのだった。




 個人的に病気だろうが問答無用で超絶元気そうな二人。こういう緊急時じゃなきゃぶっ飛ばされそうなことをしてますよねぇ……


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姉様。私は帰ってきました(シュメル熱を治して帰ってきたらこの扱い……)

※冥界のメリークリスマスのネタバレがあります! ご注意ください!!










「姉様帰ってきました」

「エウリュアレ。妹様が荒ぶっておられます」

「良くやったわアナ。お手柄ね」

「ダメだ敵しかいねぇ」

 

 簀巻きにされてマイルームに転がされるオオガミ。

 既にほとんどのサーヴァントがシュメル熱から回復しているが、病み上がりということもあって、まだ寝ているサーヴァントも何人かいる。

 エウリュアレの膝の上で寝ているアビゲイルもその一人だ。

 

「さて、それじゃあマスター。まずはお疲れ様。シュメル熱は去年と同じくらいの大災害だったわ。えぇ。ノッブ以外倒れていたもの。まぁ、一部無理に動いて悪化させたのがいたけども」

「あぁ、うん。見れば分かる。アビーの事だね」

「えぇ、そうね。まぁ、回復したアナスタシアが若干泣きながら茶々が倒れたって言いに来たときは、一体何事かって思ったけども」

「ちょっと待って。ってことは、茶々も無理してたってことでは?」

「まぁ、そうなるわね。ついでに、さっきからずっとBBがあっちに行ったりこっちに行ったりしてるわ」

「それノッブ倒れてない!? 見に行きたいんだけど!?」

「あら、偶然ね。私も見に行きたいと思ってたの。じゃあアナ。マスターを引きずってきてね?」

「はい。問答無用で引きずり回します」

「おっと仕返しの精神だね!? さてはエウリュアレ分かってるね!?」

 

 冥界を連れ回した恨みを今ここで晴らすかの如く目を輝かせているアナに、オオガミは頬を引きつらせる。

 そんな二人を楽しそうに見ているエウリュアレは、アビゲイルが起きないように、自分の膝と枕を入れ換えて、軽い足取りで部屋を出ていくのだった。

 

 

 * * *

 

 

「あ、マスター! 帰ってきたのね! スカサハ様と会話が成り立たないの! 助けて!?」

「あぁ、お前か。私には人の扱いが分からず難儀していたのだ……代わってくれないだろうか」

「看病のお返しは極寒送り……がくっ」

 

 何故か霜が降りている室内に、オオガミ達は頬を引きつらせる。

 

 

 * * *

 

 

「で、何があったの」

 

 あの後、急いで茶々を引きずり出してノッブの工房に投げ込んで、同じくぶっ倒れてたノッブの隣に寝かせていた。

 当然BBが悲鳴をあげて慌てていたがオオガミ達は気にしている余裕はなかった。

 

「いえ、私は額に乗せるくらいの氷を作ろうとしただけよ? そしたら――――」

「その程度では足りなかろうと、私が部屋を冷やしてな。とても叱られた」

「なるほど。つまり善意の暴走ってわけだ」

「うん。そういうことだ」

「素直ですねスカサハ様。とりあえず、アナスタシアはそういうことで納得できるかな」

「……えぇ、反省してくださっているのなら問題ないです。次に気を付ければ良いですし」

 

 どうやらアナスタシアとスカディが和解したようなので、オオガミは頷きつつ、

 

「うんうん。よし、それじゃあ二人とも看病手伝ってもらうよ。ちなみに、ノッブの方はBBちゃんが責任をもってお世話をするので放置で良いです」

「あれ!? BBちゃんさりげなくとんでもないこと押し付けられました!?」

 

 ノッブの事は全部任せた。

 そう暗に言われたBBが抗議の声をあげるが、アドバイス無しでも看病できる人は放っておくのが今の最適解だろう。

 

「よし、エウリュアレはアビーの世話があるだろうから二人は帰って良いよ」

「……なんでマスターは脱出してるのかしら」

「茶々さんの部屋に入った瞬間から抜け出してましたよ?」

「なんで自然に脱出してるのかしら……いえ、良いのだけど。じゃあ、行ってくるから、二人にちゃんと教えるのよ」

「当然。得意分野だよ」

 

 エウリュアレとアナが部屋を出ていくのを見送り、オオガミ達は行動を始めるのだった。




 冥界を下るよりもわりと大惨事なカルデア。シュメル熱が治ったら看病してるサーヴァントが倒れる惨劇……まだ看病ループは終わらない……


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ようやくBBちゃんも休憩ですね(儂、アイス食べたいんじゃけど~)

※冥界のメリークリスマスのネタバレがあります! ご注意ください!!










「さてさて。BBちゃん、やれることはやったと思うので、そろそろ休憩しても良いですかね」

 

 一通りやることをやって、ようやく休憩とばかりにノッブの隣に座るBB。

 すると、ノッブが、

 

「あ~……うむ。そうじゃなぁ~……アイス食べたいのぅ……なんじゃっけ、バニラとイチゴと、後、儂が食べられなかった抹茶食べたいな~」

「全部私が食べた奴じゃないですか! 嫌味なんですか!?」

「いやぁ~……儂はそんなつもりないんじゃけどねぇ? ただ、なんとなく食べたいのがそれってだけで」

「絶対わざとですよね!? BBちゃん知ってます! ノッブはそういう人ですし!」

「あ~……病人には大きな音は辛いんじゃけど~。止めてくれ~」

「全部仕返しですね!? でも仕方無いので従ってあげますっ!」

「叔母上とBBうるさい。いちゃつかないで」

「なんでそうなるんじゃ、茶々よ」

「そうです! なんで私がノッブといちゃついてることになるんですか!」

「……そういうところだよ」

 

 呆れたようにため息を吐き、深く布団を被る茶々。

 ちなみに、オオガミ達は病人食を作りに厨房へ行っている。

 

「むぅ……茶々がいじけてしまった……貴様のせいだぞ、BB」

「そんな理不尽なこと言われましても……私、別になにもしてませんし……というか、病人が暴れないでください。CCC(カースド・キューピット・クレンザー)しますよ?」

「流石にあの特大注射器は食らいたくはないのぅ……うむ。儂は静かに寝るとする」

「えぇ、そうしてください。何かあったら呼んでくださいね」

 

 そう言って、静かに寝始めるノッブと、その隣で本を取り出して読み始めるBB。

 そして、少ししたところで工房の扉が開き、

 

「んぅ……寒いわ……」

 

 そう言って入ってくるアビゲイル。

 BBはオオガミの部屋で寝ていたのではないかと首をかしげるが、脱走したか完治したかのどちらかだろうと思い、そのままにする。

 すると、アビゲイルは突然茶々の布団に潜り込む。

 しばらくモゾモゾと動いていたと思うと、

 

「ぎにゃー!!」

「なんじゃあ!?」

「な、なんか今、ものスッゴい冷たいのに触られたんだけどっ! なに!?」

 

 突然悲鳴を上げつつ飛び起きる茶々と、それにつられて飛び起きるノッブ。

 BBはため息を吐き、

 

「二人とも静かにしてください。いえ、茶々さんのは仕方無いんですけど。たぶんそれはアビーさんです。布団に潜り込んでいたので」

「え、えぇ……何してるのさアビー。マスターの部屋にいたんじゃなかったっけ?」

「ん……寒いわ……」

「え、ちょっ、きゃあっ!」

 

 じりじりと距離を取っていると、突如触手に捕まって再び布団の中に引きずり込まれる。

 しばらく抵抗があったが、次第に収まっていき、最後には静かになった。

 

「……ノッブも同じことをしましょうか?」

「……添い寝は勘弁してもらいたいなぁ……うむ、儂は静かに寝る。何も見なかった。それで良いな」

「仕方無いですね……まぁ、アビーさんはそのうち保護者に引き取ってもらいます」

 

 そう言って、BBはエウリュアレ(保護者)に連絡をするのだった。




 エウリュアレはチビッ子鯖の総まとめ役なので、保護者になるのは是非もないことですよね。


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日常
儂大復活じゃ!(ついでに茶々も大復活!)


「茶々大復活!」

「儂も大復活じゃ!」

「病み上がりで騒がないでくださいよ……病み上がりらしくしていてください」

 

 パジャマ姿で仁王立ちするノッブと茶々に、BBはため息を吐いて、二人の足元で寝ているアビゲイルを見る。

 あの後エウリュアレがやって来たが、ここで寝かせておけと行ってきたので渋々茶々の布団の中に入れておいたのだが、二人が治ったにも関わらず動く気配がないのはどう言うことだろうか。

 

「はぁ……二人とも、ゲームするんですよね。なら、向こうでしててください。私はもう少しアビーさんの事を見てるので」

「え? アビーは――――」

「茶々、行くぞ! 儂らの戦いは始まったばかりじゃ!」

 

 何かを言いかけていた茶々を強引に連れ、ノッブは工房の奥の方へと移動していく。

 BBはそれを見送った後、

 

「全く……マスターの部屋じゃダメだったんです?」

「……マスター、こっちの方にいるんだもの。こっちに来てここで寝るのが一番だと思うの」

「まぁ、それは確かにそう思いますけど。というか、私たちの工房、わりと溜まり場になってきてますよね」

「……ここ、一番広いのよ?」

「あ~……工房のために拡張したのが原因でしたか~……とんでもない盲点……!」

「それに、遊べるものも多いし、集まりやすいわ」

「くぅっ、カルデアみたいに分かりづらい入り口にしておけばよかったです……!」

 

 溜まり場になっているのがそんなに悔しいのか、BBは若干涙目になっていた。

 

「というか、やっぱりアビーさん、もう治ってますよね?」

「えぇ。というか、普通にみんなと同じくらいに治ってたわ」

「まぁ、熱がないですし、治ってますよね。だからエウリュアレさんは回収していかなかったんですね……」

「茶々さんも気付いてたみたいだけどね」

「……病人の横で寝る精神は英霊ならではだと思いますけど、その英霊ですら死にかけるほどのシュメル熱が流行した直後なんですが……」

「でも、それはマスターが解決したんでしょう? なら、問題ないわ」

「そこでそうやって割りきれるの、流石ですね……」

「だって、マスターよ? 他の人ならダメかもしれないけど、マスターならきっと大丈夫よ」

「その信頼、流石ですね……まぁ、気持ちはわかります。それで、別に病気じゃないなら、向こうでノッブ達と遊びます?」

「……えぇ、行ってくるわ」

「じゃあ、もう病人はいないので、BBちゃんの仕事も終了ですね。片付けて私も混ざります!」

 

 BBはそう言って、布団を片付け始めるのだった。




 最近アビーの悪い子レベルが上がってる気がする……


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ようやく解放されるっ!(猛毒飲んで、良くそんなに元気よね……)

※Lostbert 3―intro―のネタバレあり! ご注意ください!


「ひゃっほい! 新鮮な施設だぁ!」

「猛毒飲まされた人間が何言ってるのよ」

 

 新マイルームのベッドに飛び込み、休憩するオオガミ。

 若干視界が揺れるが、全く問題なかった。効いていないと言うより、慣れのようなものだ。

 そんなオオガミに、エウリュアレは呆れたようにため息を吐く。

 

「全く……騒ぐと毒が早く回るわよ」

「マシュがいる限り平気だし、大丈夫だよ。たぶん。うん、マシュにダイレクトアタックされない限り」

「そう……じゃあ、そんな貴方に元気な彼女を突撃させてあげるわ」

「えっ?」

 

 エウリュアレはオオガミから少し距離を取る。

 オオガミがその行動に首をかしげた直後、門が開いて飛び出してくるアビゲイル。

 当然、本調子じゃないオオガミが回避することなど出来るはずもなく、なすすべなくその突撃を受ける。

 

「あ、あれ……私の予定だと、普通に受け止められるか、もしくはかわされると思っていたのだけど、直撃するとは思ってなかったわ……」

「……冷静に言ってるけど、それ、つまりマスターが直撃を受けて倒れたってこと分かってるの?」

「……マスターしっかりしてっ!?」

「殺されるかと思った……」

 

 いつもならば例え直撃しようがわりと大丈夫なのだが、今日のオオガミは意外にもかなり弱っていた。

 流石のアビゲイルも、その状況に焦ったような表情をする。

 

「あのあの、エウリュアレさん。BBさんのところで寝かせたりはしないの?」

「いえ、ここが一番安全だと思うわ。それに、BBとノッブは、秘密工房を作ろうと必死だから、寝れる場所はないわよ?」

「あぁ……そういえば、またノッブさんたちの部屋はボイラー室の隣だったわね……そういう宿命なのかしら……」

「まぁ、それで諦められないのがノッブで、つまり、今全力で秘密工房を作ろうとしているわけなのだけど」

「あの二人は、放っておけばそのうち帰ってくるからね……野良猫とか、そんな感じだよ……」

「え、えぇ……いえ、まぁ、マスターが良いのなら良いのだけど……というか、マスター、本当にボロボロじゃないかしら……」

「そうねぇ……今なら攻撃、当たるかしら」

「当たったら即死なんですけど~?」

「……まぁ、死なない程度に抑えておくわ」

「やめるって訳じゃないですね。エウリュアレ様マジ鬼畜です」

「アーチャーをランサーに突撃させるマスターよりはきっとマシよ」

「おっと、その返しをされると何も言えなくなるね。ごめんなさいだよ」

 

 そんな話をしつつ、三人は新カルデアでのんびりと過ごすのだった。




 よぅし、これで遠慮なく再召喚できるんじゃないかなっ! そろそろ許されるよねっ!?


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なんでマスターはあんなに落ち込んでるの……?(いつも通りの理由よ)

「ねぇエウリュアレさん。マスターはどうしたの? 明らかに風邪とは関係無いダメージを負ってるみたいなのだけど」

 

 食堂にて、何故か机に突っ伏しているオオガミを見て、首をかしげて隣にいるエウリュアレに聞くアビゲイル。

 それに対して、エウリュアレは苦笑しつつ、

 

「あれは、石を全部溶かしたのにエレシュキガルが来なくて、その上使ったことがバレてマシュにひたすら叩かれただけよ。だから気にすることはないわ」

「そ、そう……? でも、マシュさんに叩かれたのなら大ダメージなんじゃ……」

「まぁ、マシュも手加減してるし、マスターもダメージを軽減してるから大丈夫じゃないかしら。だって、あれはどちらかと言うと、精神的なダメージだもの。隣に行ってきたら?」

「……うん。行ってくるわ」

 

 エウリュアレに言われるがままにオオガミの隣へと移動するアビゲイル。

 エウリュアレがその様子に微笑んでいると、隣に座る人影が。

 振り向くと、何故かボロボロのノッブがいた。

 

「ど、どうしたの?」

「うむ……案の定秘密の工房を作ったんじゃが、耐久テストと称してBBと一戦交えて、このザマじゃ」

「……BBは?」

「ん? 工房で寝とる。耐久テストは合格じゃな」

「さりげなく勝ってるのね……」

 

 曰く、BBが昔の状態なら負けてたかもしれなかったらしい。

 ともあれ、秘密工房は出来たらしい。

 後で遊びにいこうとエウリュアレは思うが、そもそもカルデアの秘密工房も見付けられていない自分に見付けられるかと考える。が、オオガミがいればおそらく大丈夫だろう。

 

「それより、マスターはどうしたんじゃ? 爆死か?」

「まぁ、そうね。エレシュキガルが来なくて精神的にやられてる感じ。加えて言うと、その後マシュに見つかってかなり怒られたからそっちもあるんじゃないかしら」

「あ~……だからアビゲイルが慰めに行ってるんじゃな。あれ、お主は行かんのか?」

「私は別に。アビーがいれば十分よ」

「そうか……? まぁ、それで良いなら良いんじゃけど……」

「えぇ、良いんだから良いのよ。というか、BBは放置で良いの?」

「ん? あぁ、BBはちゃんと布団に寝かせたからな。別に、必要以上にいる理由は無いじゃろ」

「そうね。ついでに言うと、私がマスターの所に行かないのは同じ理由よ」

「……まぁ、確かに。エウリュアレでなくとも、気にかける者はおるしな。誰もいなくなってからでも良いのか」

「えぇ。とりあえず、甘いものでも食べる? マスターがうっかり食べたのとは違う、ショートケーキだけど」

「……うむ。食べる」

 

 そう言って、エウリュアレが差し出したケーキをノッブは受け取るのだった。




 エレシュキガル……来てくれると思ったんだけどなぁ……


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BBちゃん、復活しました~(明らかに復活してないわよね)

「BBちゃん復活です~」

「明らかにテンションが低いんじゃが……」

「そりゃ、貴女にボコボコにやられたんじゃない……それこそ、是非もないことよ」

 

 疲れきったような表情で食堂に入ってきたBBを見て、ノッブは不思議そうに、エウリュアレは呆れたように言う。

 

「全く……私が放っておいてって言ったのが原因だと思うんですけど、まさか本当に放置されるとは思わなかったです……」

「なんじゃよ……置いていけと言うから、寝床まで用意して行ったのに。残れと?」

「いえ、見に来るくらいはしても良いんじゃないかなぁって思っただけです」

「あ~……見舞いは考えとらんかったなぁ……うむ、次は気を付けるとする」

「……昨日戦った仲とは思えないわね……」

「あれは耐久テストでしたし~。BBちゃん全力じゃないですし~。よってノーカンですっ!」

「ふははは! 負け惜しみ存分にするが良い! 儂が勝ったのに変わり無いしの! わははは!!」

「うぐぐ……! 何時か絶対やり返してやります!」

 

 頬を膨らませて怒るBBと、豪快に笑うノッブ。

 エウリュアレはそれを見て苦笑いをするだけだった。

 

「それで、BBは何しに来たの?」

「あぁ、それはですね……普通にお菓子を食べに来たんですよ。一応魔力供給はされてますけど、やっぱり甘いものを食べたいじゃないですか」

「うむ。なんだかんだ秘密工房作っても、食事は結局ここじゃしね」

「まぁ、美味しいし仕方無いわよね。あ、そういえば、今毒で倒れているマスターの代わりに、エミヤがティラミスを作ってたわよ?」

「……ほぅ?」

「なるほど。つまりBBちゃんへの献上品ですね? なら遠慮なく貰っちゃいますね?」

 

 エミヤが作っていると知ったとたん、奪おうと即決する二人。

 当然、エウリュアレも巻き込まれるのは確定しているので、すぐに奪うルートを考える。

 

「とりあえず、BBを犠牲にして奪うルートはいくつか考えてあるんじゃけどね?」

「ちょっと待ってください。なんで瞬時に私を売りに来てるんですか」

「囮じゃなくて犠牲な所にこだわりを感じるわね……」

「別にこだわってはないんじゃけどね? というか、囮じゃなくて、犠牲じゃからな?」

「……文字通りってことね」

「尚更質が悪いですね……」

 

 比喩ではなく、文字通りの意味でBBを犠牲にしにいっているノッブに、BBは苦い顔をする。

 が、エウリュアレは特に気にした様子もなく、

 

「まぁ、最終的には私が二人とも売って、全うな手段で食べるから良いんだけどね?」

「ま、巻き込まれる気ゼロなんじゃけど……!」

「自由人同盟はどうしたんですっ!?」

「そもそもそんな同盟、入った覚え無いんだけど?」

「えぇっ!? だって、マスターがエウリュアレもこっち側だって……!」

「そう……まぁ、マスターは後でどうとでもするから良いのだけど、その同盟、誰が入ってるのよ」

「そ、それは秘密です。幹部的に、個人情報の流出は重罪なので。具体的には二日ほど魔力供給がカットされます」

「いやに具体的且つダメージの大きい罰ね……というか、自由人なのに縛られてるって、ある意味矛盾よね」

「それはほら、秩序的なのは必要ですし。仕方ないですよ」

「ふぅん……まぁ良いわ。とりあえず、その話はマスター直接聞いてくるから。あと、ティラミスは大人しく待っていればそのうち出てくるから安心しなさい」

「……なんか、あやされてるみたいです……」

「そうじゃなぁ……まぁ、マスターがやられている間にティラミスを食べてさっさと撤収するか」

「そうですね」

 

 去っていったエウリュアレを見送り、二人はティラミスが出てくるのを待つのだった。




 自由人同盟という、ヤバさしか感じない同盟……

 しかし、いつ皆を呼び戻そう……


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えっ、神がかり過ぎてる。さては現実ではないのでは?(召喚するのは良いのだけど、育成しなさいよ?)

「召喚応じ馳せ参じたわ! ねぇ、初日退去とか無いわよね!? って、ギャー! マスターが倒れているのだけれど!?」

「むしろ私は初日退去をさせてもらいたい。霊基がここは過労死させに来ると悲鳴を上げている。なぁ、さっさと帰れないのか? おい、なんとか言え」

 

 召喚されたサーヴァントはエレシュキガルと諸葛孔明。

 それを認識した瞬間、マシュに殴られるよりも早く、ぶっ倒れるオオガミ。

 きっと現実を受け止められなかったのだろう。キャパオーバーというやつだ。

 エウリュアレはそれに対して苦笑いをし、オオガミを叩けなかったマシュは襟を掴んで持ち上げる。

 

「先輩! 無断で召喚したのはこの際気にしませんが、どうやって育成するんですかっ! 種火は!?」

「ちょっと……そいつ、気絶してるのよ……?」

「関係無いですっ! 先輩は無駄に頑丈ですからっ!」

「そ、そう……まぁ、殺さない程度にね?」

 

 エウリュアレの言葉を最後まで聞く前に、オオガミを連れ去るマシュ。

 本気でマスターを心配しているエレシュキガルと、本気で過労死させられるんじゃないかと不安な孔明。

 途端、誰かが迫ってくる気配にエウリュアレが気付くと同時に開けられる扉。

 そこにいるのは明らかに全速力で来たであろうスカディだった。

 

「孔明とやらはどっちだ?」

「あっちの老け顔で今にも死にそうな方」

「ずいぶんな言い草だなっ!」

「ここ……さては修羅の国というやつなのでは……? 私、カルデアに召喚されたんじゃなかったかしら……?」

 

 スカディはエウリュアレの言葉を聞いて、孔明に近付くと、

 

「ふふっ……ふふふふふっ……! 良く来たな。誉めて使わす。さぁ、種火をたんと食べろ。今すぐに、たくさんと!」

「うん分かったさては周回地獄に引き込もうとしてるな!? 嫌だ俺は行かないからな!」

「あ、エレシュキガルの分はちゃんとあるから。ついでに、なけなしのQPでスキル育成も一応するわよ。まぁ、本当にほとんどないから、スキルを一つMAXにするのが限界じゃないかしら」

「そんな、厚待遇過ぎないかしら……本当に良いの?」

「えぇ、種火なら腐るほどにあるし。むしろ消費してもらわないと困るわ。マシュはなんでか知らないけど怒ってるけれど」

「そ、そうなの? じゃあ、お言葉に甘えて、貰うわね」

 

 無理矢理スカディに引きずられていく孔明と、上機嫌でエウリュアレについていくエレシュキガル。

 とはいえ、最近はQPを使いすぎているので、そちらが原因で、ほとんど育成はできないだろうとエウリュアレは思うのだった。




 友人二人の神引きに感謝。虹回転と金回転とか、そんな見れるものじゃないですって……

 まぁ、孔明の育成はクリスマスボックス待ちになるんですけどね……


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甘くて美味しいお菓子と飲み物だわ(まぁ、お菓子はマスターの作ったやつを黙って取ってきたんだけどね)

「ふぅ……甘くて美味しいのだわ」

「まぁ、ココアとチョコクッキーのコンボだし、美味しいのは間違いないわよね」

「……そのクッキー、昨日マスターが自分用に焼いていたような気がするのですが」

 

 幸せそうにしていたエレシュキガルの表情は、アナの一言で凍り付く。

 

「別に、マスターの事だから気にしないと思うのだけど」

「……まぁ、それもそうですね。気にしなくても良いでしょう」

「そんな気軽に!? ほ、本当に良いの!? っていうか、こんなに美味しいのを作れたのね!」

「姉様がやるなら大体許されるので。いえ、姉様でなくても大半は許されますね……」

「フリーダム過ぎるのだわ……! それで成り立つのね……」

「あぁ、いえ、たまに暴動が起きるので、そうとも言い切れません」

「今は鎮圧出来るのが少ないからねぇ……暴れられたら鎮圧にちょっと時間がかかるわ」

「まぁ、姉様が関わってない限り私が止めるので問題ないです」

「やっぱりここ、物騒な所じゃないかしら……!?」

 

 マスターが夜こっそり作ったお菓子を盗んだり、暴動が起こったりする時点で、危険しかない。

 とはいえ、もはやその状況が日常となっているので、誰も突っ込まないのが現実だ。

 

「今のうちに慣れていた方が良いわよ? みんなが帰ってきたら、絶対悪化するわ」

「そんなに……!? というか、なんか少ないな~って思ったら、やっぱり少ないのね?」

「えぇ。北欧に捨てられてきたのと、再召喚されていないのに分かれるけどね」

「えっ、捨てられてきた……?」

「アビーがね。適当なところで、ポイポイポイ~って」

「そんな気軽に置いていかれるのね……」

「いえ、文字通り捨てていっていたわ。門を足元に開いて、落ちたサーヴァントがそのまま車外に出されるの。まぁ、ほとんどすぐ帰ってくるんだけどね」

「もしかして、いつか私もされるんじゃ……」

「いえ、あれは危険としか言い様のないサーヴァントを不法投棄してただけだから。そのまま海の中を漂っててくれないかしら……」

「それは無理です。昨日廊下で会いましたから」

「……毎度、帰ってくるのが早すぎるのだけど……」

「そんなに追い出されているの……?」

「まぁ、会えばきっと分かるわ。あれは追い出すべきだと思うもの」

 

 とはいえ、それほど迷惑をかけているかと言われると微妙なところである。むしろ、追い出された後に食料を持って帰ってくる辺り、食料調達委員として使われている節があった。

 そんな話を聞いて、エレシュキガルはうんうんと考える。

 

「そんなに追い出されるほどのサーヴァント……怖いけど、でもちょっと見てみたい気もするのだわ……」

「そのうち嫌でも会うことになるわ。別に、そんなに身構える必要も……ないわ。たぶん」

「その間と最後のが一層不安にさせてくるのだけどっ!」

 

 三人はそんな風にのんびりと雑談をするのだった。




 マスターの物は実質エウリュアレの物。つまりマスター用のクッキーはエウリュアレの物ってことですね(超理論


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人智統合真国SIN
なるほど新機能(なんて厄介なのを搭載してくれたのかしら……!!)


※人智統合真国 シン ネタバレアリ! 注意してください!!















「……ステルス?」

「ちょっと待って。マスターがこれ以上逃げる性能上がるのは反対よ」

「でも、もう搭載されちゃいましたから……」

 

 遠方からとはいえ、立派なステルス機能。それをオオガミが持つとは、つまり、厄介レベルが上がるという事だ。

 そのせいでエウリュアレとアナが苦い顔をしているのだが、オオガミは満足そうだった。

 

「ハァ……まぁいいわ。それで、今回はどんな感じ?」

「あぁ、うん。当初の予定を変更していつも通りで行こうかと。エレちゃんにはもうちょっとお休みしてもらうかなぁ……」

「別に、レアリティまで縛る必要は無いと思うのだけど。絆礼装を貰っていないサーヴァントを連れて行くってだけでいいじゃない」

「ん~……それもそうなんだけどさぁ……容赦なく行ってもいいんだけど、それだと案外さっくり終わりそうじゃん? それはなんというか、味気ないかなぁって」

「自分の命がかかってるとは思えないセリフよね、それ」

 

 特に意味も無く編成に縛りを入れているあたり、意外と末期なのかもしれない。

 

「というか、当初の予定って?」

「ん? あぁ、クラス編成縛りをしてたんだけど、勝てない敵が出たので諦めていつもの奴に変更したってだけ。チャージアタックもスキルも厄介だから、やってられなかった」

「なるほどね……いえ、だから、縛る必要はないんじゃないかしら?」

「いや、なんというか、やらなきゃいけない感じがして……」

「別に誰も望んではいないと思うのよね……そんな使命感捨てちゃいなさいよ」

「ん~……完全にダメってなったら、その時だね。まぁ、この分だと、最悪エウリュアレが出てくるかもだけど」

「……あぁ、墓穴だったわ……」

 

 今ので、なんとなく呼び出されそうな雰囲気を感じ取るエウリュアレ。実際にどうなるかはわからないが。

 

「でも、姉様。たぶん今のマスターは、容赦なく連れていくというよりも、勝機があるから連れていくという方が多いので、昔と違って楽だとは思います」

「……まぁ、その通りではあるけども、でも、そうじゃないのよ。私が出るときって言うのは、要するに、本気でどうしようもなかったときってことなのよ。男性が相手の時に限るけどね。だから、呼び出される可能性があるってことは、男性で、それだけ面倒なのがいるってことよ」

「……あぁ、そういうことですか」

 

 要するに、面倒な相手を投げつけるな。ということらしい。

 当然とばかりの表情をするエウリュアレに、アナは苦笑いをするのだった。




 最初は、たぶんメインサーヴァントはセイバーかなーって思ったので、セイバーオンリー縛りで行こうかと思った後、四節ラストで詰まったので縛り変更。妥協しないと終わりそうになかった……


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何あれ儂欲しいんじゃけど!(えぇ~……明らかに悪趣味なんですけどぉ~……)

※人智統合真国 シン ネタバレアリ! 注意してください!!















「なんじゃあれ! 儂欲しいんじゃけどぉ!!」

「えぇ~……明らかに悪趣味なんですけどぉ……BBちゃん反対ですぅ」

 

 明らかに危なそうな戦車擬きに目を輝かせるノッブと、心の底から嫌そうな顔をするBB。

 

「よぅし、捕獲じゃ。乗っとるぞ!」

「あぁ、いえ、そのですね。乗っとり自体は簡単なんですよ。あれ、無人機なんで」

「……そういうの面白くないと思うんじゃけど。いや、構わないんじゃけども」

「えぇ~……ハッキング掛ければ瞬殺ですよ」

「いやいや……未知のテクノロジーじゃろ? 流石にのぅ……」

「月のテクノロジーですよ? 負けるわけないじゃないですか」

「うっわぁ~……月ってヤバイんじゃなぁ……」

「こんな所に負けられるほど月は弱くないんです~。ムーンセルは伊達じゃないんですから」

「ふぅむ……じゃあ、BBには後であれを作ってもらうとするか」

「えっ、絶対嫌ですけど」

 

 直後、二人の大乱闘が始まった。

 

 

 * * *

 

 

「という訳で、エウリュアレ様の出番は終了です」

「……絆上限を上げてまでルールを守るのね……絆マじゃないから良いとか、それで良いのかしら」

 

 そう言いながら、戻ってくるエウリュアレ。

 男性のバーサーカーやセイバーに負ける訳もなく、むしろその二種こそ、彼女の独壇場そのものである。

 

「でも、もう出てきそうにないわよね、あの二人」

「……まぁ、最大の難所が終わったんだから、問題ないわ。ゆっくり休憩させて貰うわね」

「うん。また出番があったら呼ぶね」

「えぇ。久しぶりに暴れられて良かったわ。やっぱり、たまに戦うくらいがちょうど良いわね」

 

 そう言って、オオガミの後ろに座り込むエウリュアレ。

 とはいえ、オオガミも本調子ではないため、後ろにいられても困るのだった。

 

「ねぇマスター。いつになったら私の出番はあるの?」

「ん~……アビーの出番はしばらくはないかなぁ……そろそろ縛りを緩めても良いかなぁって思ってるけども。うぅん、どうしよ」

「まぁ、少なくとも今回は無いわよねぇ……もうバーサーカーは当分来ないだろうし、来ても私が対処するんだろうし」

「むぅ~……私も暴れたいのだけど……」

 

 メインストーリーでは滅多に暴れられないアビゲイルは、不満で頬を膨らます。

 オオガミはそれに苦笑いで返し、そして、どうしようかと考える。

 

「そもそも、縛る理由がないと思うのだけど」

「それを言われると耳が痛い……でも、何も無しで行くのも、なんとなく面白味がないなぁって」

「別に面白味を求める必要はないんじゃないかしら……」

「ん~……でもねぇ……まぁ、次回はもうちょっと緩めるよ」

 

 オオガミはそう言って、休憩するのだった。




 まぁ、エウリュアレがいて負けるわけ無いんで。あの二人はエウリュアレの前では無力に等しい……


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あれ、勝てる相手じゃないでしょ(縛ってる余裕ないって)

※人智統合真国 シン ネタバレアリ! 注意してください!!















「何よアレ……まさに大災害ね……」

「いやいや、マジで無理じゃろ、あんなの。しかも、いつもの性別不詳じゃし。詐欺してんじゃないっつかその声からして明らかに男じゃろ?」

「縛ってる場合じゃないです。というか、縛らなくても勝てる気がしないです。すぐさま縛りを止めて全力を出すべきかと」

「うん……とりあえず、縛らないで全力でぶつかってみるしかないか……」

 

 とはいえ、一撃で倒せない上にかなり硬く、しかもこちらを一撃で潰してくるので、どうしたものかと悩む。

 

「なんというか、城塞って感じよね。難攻不落の超装甲で超火力。一撃で潰してくる感じがまさにそんな感じ」

「あんなのとは戦いたくないなぁ……いや、ほんと、冗談になってないって」

「BBちゃんもお断りです。クリティカルでワンキルとか、笑えませんよ。スカディさんを思い出しましたよ」

「あれも怖かった。ライダーが一瞬で溶けるんだもん……バフ宝具の人危な過ぎない……?」

「やっぱバフの人はそのバフを封じなきゃです。一片も残さず塵にしてやりましょう」

「待ってさっきからアナが凄い殺気立ってるんだけど! お姉さまどうにかしません!?」

「マスターは諦めて相手をすればいいと思うの。さて、対策を考えるとしましょうか」

 

 アナににじり寄られて震えるオオガミを尻目に、どうやって倒すかを考えるエウリュアレ達。

 とはいえ、あの高攻撃力を突破するにはやはりバフを止めるか、かき消すかをするしかない。

 

「とりあえず、強化無効をするって感じかしら」

「それが一番ですねぇ……まぁ、出来たらの話ですけど」

 

 そんなことを言いながら会議して、結論が出たころにはかなり時間が経っており、振り向くと既に疲れ切っているオオガミと、そんなオオガミに膝枕をしているアナがいた。

 

「……何してるのかしら」

「あぁ、はい。先ほどマスターがあの難敵を倒しまして、帰って来たばかりで疲れているっぽいので、とりあえず寝かせようかと思って、こんな状況です」

「……作戦考えるよりも、何度も行って無理矢理攻略するって、中々強引過ぎると思うの」

「まぁ、結局縛りはほとんど残ってませんでしたけどね。令呪と石を使わなかったくらいですかね?」

「……縛りが原型留めてないわね……まぁ、それくらい強かったんだと思うんだけども」

「成功した時の状況が結構圧倒的でしたけどね……まぁ、今回は縛ること自体がほぼ無謀だったかと」

「……まぁ、仕方ないわね。はぁ……休憩したら次に行くわよ」

「……今回だけで、銅リンゴがほとんど溶けたんだけど……」

 

 疲労感を隠せない声で呟いたオオガミの言葉を、聞いている人はほとんどいないのだった。




 なんだアレ。勝てる気しねぇ。そう思って、攻略サイトを泣きながら見に言ったら一発という(発狂


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空想切除完了!(これでいつもの作業に戻るわけです)

※人智統合真国 シン ネタバレアリ! 注意してください!!















「はぁ……毒も治って、空想樹も叩ききって、一件落着って所だね」

「そうねぇ……最後の方は、縛りが息してなかったけど。まぁ、仕方無いことよね」

「ま、是非もないよねっ!」

「私も若干暴れられたし、満足よ」

 

 食堂にて、疲れ果てているオオガミを労うエウリュアレとノッブ。アビゲイルは自分で取ってきた一口サイズのイチゴタルトを美味しそうに頬張っていた。

 

「さて。一段落したことだし、これからはいつもの宝物庫を荒らす作業に戻ります。つまり、アタランテ姐さんとスカサハ様の出番です」

「あぁ……お疲れ様ね」

「まぁ、あの二人は周回の要になっちゃったし、是非もなし。というか、最近また儂の出番無くね?」

「ノッブはほら、ネタ枠だから。というか、戦車擬き作るんじゃなかったの?」

 

 異聞帯での会話を思い出し、ノッブに聞くオオガミ。

 すると、ノッブは苦い顔をし、

 

「それはBBからの全力抗議で取り消しじゃ。儂、あれはあれで良いと思うんじゃけどなぁ……」

「なんだかんだ言って、基本的に意見一致しないと作らないよね。独断で作ったりしないの?」

「ん~……そういえば、確かにそういうのはあまりせんな……まぁ、儂が外部を作って、BBが内部を作るというのが基本じゃし、意見一致しなきゃそもそも作れるものが限られるってことじゃな」

「BBが内部設計、ノッブが外部設計をしてるんだよね。外見はどっち依存?」

「半々じゃな。儂主導の時は儂が。BB主導の時はBBがって感じじゃし」

「ふぅん? やっぱり設計図は描くの?」

「そりゃ、描かんと仕事にならんし。流石に図面無しで互いの想像通りのものが出来るわけもなし。そこまで完璧に意思疏通は出来んわ。現に、今BBがどこにおるか分からんし。エウリュアレのマスター探知能力並の精度だったら、たぶん設計図無しでも行ける気がするんじゃけどね」

 

 そう言って、アビゲイルのイチゴタルトを一つ奪って食べるノッブ。

 直後、触手に袋叩きにされたのは言うまでもないだろう。

 地面に埋められたノッブを見て、オオガミが頬を引きつらせていると、エウリュアレが、

 

「それで、エレシュキガルもだけど、孔明も育成しなきゃよね。大丈夫なの?」

「う、うぅむ……大丈夫かと聞かれると、大分怪しいところ。とりあえず、今年のクリスマスでどれだけQPが稼げるかにかかってるかなぁ……」

「そう……なら、リンゴは無駄遣いできないわね。ちゃんとたくさん集めるのよ?」

「……頑張ります」

 

 エウリュアレの笑顔の圧力を前に、視線を逸らして答えるオオガミ。

 今回のクリスマスは周回しやすくあってくれと願うオオガミに、果たしてサンタは応えてくれるのか。




 空想樹とか、魔神柱とかととことん相性が悪い私です。空想樹相手に令呪を切ろうか本気で悩んだ……


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日常
私、穀潰しじゃないかしら……(誰かこの女神に仕事を与えてやれ~)


「はっ……! 私、ここに来てから、完全にタダ飯喰らいなのだわ……!」

「別に良いんじゃねぇの~? 誰もそれに文句を言わないんだし、そもそも、いるだけのやつとか、ほとんどがその部類だぜ? ま、俺もその一人だけど。そこの金ぴかもな?」

 

 自分の現状に愕然とするエレシュキガルに、気にする必要はないと(おし)えるアンリ。

 しかし、例として選んだ相手が悪かった。

 

「ふん。(オレ)を貴様ら雑種ごときと一緒にするではないわ。貴様らの食っている菓子の材料を何処から調達していると思っている。ほとんどは(オレ)の宝物庫からだと知れ」

「おぉぅマジか。そりゃ知らなかったわ。オレより働いてんじゃん」

「当然だ。全ては(オレ)のめくるめくサンタライフの為……プレゼントのためには良い子にしているべきだろう?」

「お、おぅ……お前、なんか大変そうだな……」

「なに、これも余興よな。たまにはそういうのも良かろう。カルデア復活記念でもあるしな」

「へぇ……案外気配りってのは出来るんだな。てっきり出来ないもんだと思ってたわ」

「たわけ。出来ないのではない。しないのだ。あまり益にもならんし、何より(オレ)に似合わん。まぁ、するときはするがな」

「ふぅん? つまり、今はするときのわけか」

「まぁ、流石に貧相な食事ばかりでは、何よりも(オレ)の精神衛生上良くないからな」

「そういうもんか。あぁ、そうだ。良かったらで良いんだけどよ、こいつの仕事を割り当ててやってくれよ。そういうの得意だろ?」

「……ここの責任者は別だ。そっちに聞け」

「えぇ~? そういうところはやってくれないのかよ~……ちぇ。仕方ねぇか。ほれ、そこの女神様? さっさとマシュのところに行くぞ~」

「え、えぇ、分かったわ!」

 

 エレシュキガルは慌てて立ち上がり、机に足をぶつけ、椅子を倒す大災害。それを見て、ギルガメッシュもアンリも大笑いするのだった。

 

「うぅぅ……! 後で二人とも冥界の底まで送り込んでやるのだわ……!」

「ふははははは! この程度で冥界の底まで落とされるのとは、安いな冥界! ふははは!!」

「理不尽と無茶振りをするのはいつだって神様か! アッハハハ! もうこれ以上落ちても何も変わる気がしないけどな! ハハハハ!」

「くうぅぅ……! は、早くマシュのところに連れていくのだわ!」

「ふははは!! 良いぞ黒いの! さっさと連れて行け! とはいえ、それほど仕事もないだろうがな」

「まぁ、今のところ人手は足りてるしな。ま、行くだけ行ってきますよ~」

 

 そう言って、顔を真っ赤にして怒るエレシュキガルを連れて、アンリはマシュの元へと向かうのだった。




 そもそも役割らしい役割を持って動いているのが超少数派な気がする……


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茶々の部屋、安定の極寒なんだけど!(儂ら、ボイラー室の隣なんじゃけど?)

「あ~……茶々、家出したい。家出と言うより部屋出したい。スッゴイ寒い」

「いや知らん。というか、工房に来るでないわ」

 

 新生工房でのんびりとしていたノッブの元へ突撃を仕掛けた茶々。

 しかし、ノッブは適当に返した後、少し考え、

 

「ふむ……ボイラー室の隣にいたから寒いというのとかなり離れていたが……うむ、温まれるようなものが必要というわけか」

「うんうん。叔母上ならちょちょいのちょいでしょ?」

「そうじゃな。ボイラー室にいけば良いんじゃね? 明らか暖かいじゃろ」

「それ暖かい越えて暑いよ!? もうちょっと良い感じのところは!?」

「ん~……そうじゃのぅ……あぁ、そうだ。よしよし、思い立ったらすぐ行動。着替えを持って参れ。あと、仲の良い奴等にも伝えておけ。あぁ、それと、女性限定じゃ。男性は禁制じゃし」

「わ、わかった。行ってくる!」

 

 そう言って、工房を飛び出していく茶々。

 ノッブはそれを見送り、さりげなく自分の個室を用意しているBBを部屋から無理矢理引きずり出す。

 

「な、なんですか! 人がせっかく大人しくしてたのに!」

「カルデア中の監視カメラにハッキング仕掛けて覗き見してるのは大人しくしとるとは言わんからな?」

 

 何枚ものモニターに映し出されているのは、カルデア内の監視カメラの映像。当然、リアルタイムで動いているものだ。録画データではない。

 

「うぅぅ……機材の調子を確認していたら見付かるとは……いえ、ノッブにしかバレてないなら問題ないですね。口封じをすれば良いんですし」

「まぁ、それは置いておくとしてじゃ。今はお主の力を借りて、ちょっとしたイベントをしようかと思ったんじゃよ」

「……私に何をしろと?」

「いやなに、そんな難しいことじゃないんじゃけどね? ちょいとシミュレーションルームを使って、小旅行をしようかと思ってな。何、実行してからのお楽しみじゃ」

「なんで勿体振るんですか……まぁ良いですけど。期待くらいの事はしてくださいよ?」

「まぁ任せておくが良い。とはいえ、期待に添えるかは分からんがな」

「んもぅ。そういう時は言い切ってくださいよ。どうせ出来るでしょう?」

「いやぁ……こればかりは相性じゃしねぇ……」

 

 何かと言葉を濁すノッブに、謎の不安を覚えるBBだったが、なんだかんだと言っても、実際に反映するのは自分なので、その時点で何をしたいのかが分かるだろうと考える。

 

「はぁ……それじゃ、シミュレーションルームに行きますか」

「うむ。あ、そうじゃ。着替えは持っておけよ?」

「着替え? まぁ良いですけど……本当に何をさせるつもりなんです?」

「大体着替えが必要なところとか限られると思うんじゃけどね」

 

 疑問を残したまま、二人は工房を出るのだった。




 まぁ、着替えが必要で、小旅行で、この季節……お察しの方は多いと思います。


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吹雪の中で目指す場所(絶対にこの装備で行くところじゃないと思うの)

「うわははは! めっちゃ寒いな!」

「そりゃこの極寒の最中、露天風呂とかアホの極みですよ。二度と出れなくなりますって」

 

 一面の雪の中、豪快に笑うノッブと、腕を擦って寒いとアピールするBB。

 当然、その後ろには茶々もいる。

 

「叔母上、茶々は温まりたいって言ったけども、真冬の温泉は寒いの。そして、温泉に入ったら最後。もう二度と抜け出せなくなる未来は目に見えてると思うの」

「うむ。お主らがのぼせるまでは分かった。その時は儂が引っ張り出すから安心せい。後ろもそれで良いな」

「ふぁい」

「えぇ」

「うむ。それでよいぞ」

 

 茶々に呼ばれてきたのは、アビゲイル、アナスタシア、スカディの三人。そして、ノッブが呼んだマシュは、何故か防寒バッチリのモコモコ装備だった。

 

「というか、なんで吹雪なんでしょう。もう少しマシな環境でも良かったのでは?」

「いやいや、やはり吹雪じゃろ。芯まで温まるまで絶対に出ようとは思わんからな」

「この気温なら普通に出ようと思わないよ!? なんで吹雪まで足したの!?」

「あ、そこはBBちゃんの優しさです。もっと誉めてくれても良いんですよ?」

「誰が誉めるか! 茶々の楽しみにしていた気持ちを返してっ!」

「返品不可なので、どうぞ楽しんでってくださいね~?」

「この悪魔ぁー!」

 

 容赦の無いBBの嫌がらせ。とはいえ、やっている本人もダメージを受けているので、イタズラというよりも、周囲を巻き込んだ自爆だろう。

 

「まぁもう! これで温泉は嘘でしたーとか言われたら、あの工房を焼き尽くすからね!」

「……ちょっとノッブ! 余計なことをしたせいで私の工房が襲撃される危険が出てきたんですけど!?」

「儂の工房も併設されとるからな? 死なば諸ともじゃ」

「なんで私まで巻き込まれなきゃなんですか!」

「いやぁ……儂も吹雪を肯定しては見たが、これは明らかにやりすぎじゃろ。じゃから自重せいと……」

「言ってないですよね!? というか、提案したときに一番乗り気だったのはノッブじゃないですか! さては裏切りましたね!?」

「人聞きの悪い……別にそんなつもりはないんじゃけど……まぁ、温泉自体は満足してもらえるじゃろ」

「ほ、本当に大丈夫ですかぁ……?」

 

 とても弱気になっているBBを見て笑うノッブ。その自信は何処から来るのだと、BBは問い詰めたかった。

 

「さて、それじゃあ行くかの。ついて参れ」

「……まぁ、ノッブが言うなら大丈夫なんだと思うんですが……燃やされたら恨みますからね」

「茶々の楽園に向けて、いざ行かん! 温泉!」

 

 そう言って、ノッブ達は吹雪の中を進んでいくのだった。




 ピックアップ2来ましたね。えぇ、誰も来なかったというか、ただの礼装ガチャでしたけど。

 ゲームやってたら書くの忘れて間に合わなかった……くぅっ……


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屋内に吹雪はなかった(でも景色は真っ白よね)

「ふあぁぁ……屋内は吹雪入って来ないんだぁ……」

「屋内にまで吹雪いていたら、それはもう吹雪ではないなにかなのでは……?」

「流石に屋内にまで来ないとしても、吹雪だと景色がほとんど見れないのは問題だと思うの」

「温泉……一体どんなものなのかしら……」

「温かい泉と書いて温泉。つまり、そのまま解釈するとお湯ということだが……はて、それだけでここまで来る必要のはあるのだろうか」

「おぅスカディは風情が分からんと見た。絶対に認めさせてやるつもりじゃが、何をするにもこの吹雪をもう少し抑えて欲しいんじゃけど。BB、出来ぬのか?」

「うるさいですねぇ……今そのために緊急用に置いておいたコンソールを探してるんじゃないですか! 先に行ってて良いですよっ!」

 

 温泉施設にたどり着いた一行は、玄関部分でそんな事を話していた。

 他のサーヴァント達が中に入って休憩しているなか、BBだけはスタッフルームらしき所へ入っていって、探し物をしていた。

 ノッブはそれを見て、

 

「まぁ、是非もなし。先に行っておるぞ~」

「えぇ、ささっと見つけてこの雪をいい感じにします!」

「うむ、任せたぞ」

 

 そう言って、ノッブは茶々たちを連れて温泉へ先に向かう。

 

「本当に置いてきても大丈夫?」

「ん? BBじゃし、出来ぬわけなかろうよ。それに、やらないわけ無いしな。あれでいて、一応言ったことは実行するからな」

「まぁ、良いことでも悪いことでも、有言実行はしますからね、あの人は……私としては、イタズラ方面で出て欲しくないです」

「まぁ、イタズラに関しては諦めろとしか言えんな。っと、じゃ、適当に服脱いで、そこらにある籠に服を入れておけ。見分けは付くようにな。儂が管理するのも良いんじゃけど、なんか無くなってたときに責任を問われたくないんで各自管理じゃ。まぁ、浴場内への物品持ち込みは限られているがな。それじゃ、準備が出来たものから浴場へ突撃じゃ」

 

 そう言って、脱衣室へ入っていくノッブ達だったが、一番乗りをしたノッブは首をかしげる。

 

「……儂ら以外にいないはずじゃよね?」

「叔母上そういうホラー始めるぅ……止めてよねそういうの~」

「う、む……まぁ、そうじゃな。気のせいじゃろ」

 

 何故か既に四つ使われているのだが、気にするほどでもないかと頭の隅へ放っておく。

 そして、いざ入ろうと思ったとき、服があるのだから、今入っているのではないかと気付き、どうしたものかと考えたが、後ろからやって来た茶々が躊躇い無く扉を開けて飛び出していき――――

 

「――――あぁ、なるほど」

 

 そこには、何故かエウリュアレとアナ、ジャック、バニヤンの四人がいるのだった。




 私の持病が荒ぶってこうなってしまった……今回はお留守番の予定だったのに……!


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温泉と聞いて(誰から聞いたんじゃ)

「ようやく来たのね。遅かったじゃない」

「儂らが入ったときは誰もいなかったと思うんじゃけどな? なんで先回りされとるのか」

 

 エウリュアレ達が湯に浸かっている中、ノッブ達は体を洗う。

 数名ほどそのまま入ろうとしたが、ノッブが止めて洗いにいかせた。

 

「私たちはちゃんと後から来たわ。まぁ、全速力で走ってきたから、途中で追い抜いたけど」

「速度で負けたかぁ~……うむ、まぁ、儂ら歩きじゃったし、是非もなしか。それで、四人だけか?」

「いえ、バラキーもいるのだけど、施設内を探索してくるって言ってどこかに行ったわ」

「ふむ……つまり、5人か」

「あぁ、いえ、来たのは7人よ」

「む? ここにはおらぬが……?」

「そりゃ、男性二人だもの。衝立(ついたて)の向こう側にいるわ」

「……うむ」

 

 体についている石鹸を流そうとしていた手を止め、火縄銃を召喚して衝立に向かって引き金を引く。

 乾いた音の後に、向こう側で何かが倒れる音がした。

 

『あ、アンリ~~っ!!』

「う、うわぁ……叔母上、ヘッドショットしてるぅ……」

「なんでそんなに精度高いのかしら」

「誰もアンリを心配しないのね……」

「まぁ、いつもの事じゃし……とりあえず、向こうにいるのはアンリとマスターか。放っておいても良いか」

「その為だけにアンリは犠牲になったのね……」

 

 わりと引き気味のメンバー。遊んでいるジャックとバニヤンが唯一の癒しだろう。

 ただ、一人だけ静かにしていたスカディが、

 

「い、痛い! なんだこの液体は! ぬううぅ……!」

「あぁ……シャンプーが目に入ってしまったのね……早く洗い流しましょ」

「う、うわぁ……ひどくかっこがつかないんじゃけど、この女神……」

「ちょっとノッブ。それは私への宣戦布告ととっても良いの?」

「なんでお主が反応するんじゃ面倒くさい。妹の方も反応するなって」

 

 衝立の穴を適当に塞いで、石鹸を流すノッブは、すぐにスカディを助けに行く。

 

「ぬうぅ……このような武器があるとは思わなかった……まさか目を潰されるとは……」

「まぁ、顔にかけられたらと考えると肝が冷えるが、そもそも髪を洗うだけじゃしなぁ……基本目には入らんて」

「いや、目には入るって。入らないように洗えるようになってるだけで。子供の頃とか基本それじゃん。シャンプーハット取ってこよう」

「いや、もう洗い終わるから良いんじゃけど……」

「そういう道具があるなら先に教えてくれても良かろう! なぜこの洗い終わるタイミングなのか!」

「だって出来ないって思わないじゃん? 想定外の極み……」

「というか、身長差があるから凄い構図よね。頭一つ分違うんだもの」

「エウリュアレ程じゃないんじゃけどね? まだ分かる範囲じゃろ。というか、身長的なものなら、エウリュアレがやる方が適任だと思うんじゃけどね?」

「嫌よ、面倒くさい」

 

 ま、そうじゃろうな。と答えつつ、ノッブはスカディの頭にお湯をかけてシャンプーを流す。

 

「流石に体は自分で洗えるじゃろ。出来んかったら……まぁ、その時じゃ」

「ぬぅ……またよく分からぬものが……」

「これはこう使うんです」

「あぁ、なるほど……」

 

 ノッブが去っていった後、アナスタシアがスカディのフォローをする。

 

「さて、そろそろじゃろ」

「何が?」

「ん? あぁ、外を見とれば分かる」

 

 疑問を浮かべるエウリュアレだったが、すぐにノッブの言っていることを理解した。

 

「あぁ……えぇ、これは良いわね」

「ふふん。そうであろう?」

 

 吹雪が止み、射し込む光でキラキラと輝く雪。

 眼前に広がるのは、白く煌めく山だった。

 

「モデルは?」

「ん。無い! 温泉が近くにある雪山とか、そんな覚えとらんし、そもそもBBに用意させる上で、共有とか出来んからな」

「そう……まぁ、それならそれで良いのだけどね」

 

 そう言って、エウリュアレはぼんやりと目の前の山を眺めるのだった。




 ほのぼのしている裏で、確かにアンリが犠牲になっているということを覚えていて欲しい……去らばアンリ(無情


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何故吾が!(圧倒的巻き込まれ!)

「くぅ……まさか早々にアンリが死んでしまうとは……」

 

 体を洗い終わり、いざ風呂へ入ろうというところで正確無比に脳天へ向けて銃弾が叩き込まれたアンリは、本気で悔しそうな顔をして強制送還された。

 オオガミはそれを見送り、アンリの分まで楽しむのだと決意を固めたが、

 

「それにしても、なぜバラキーを連れて逃げてるのか……」

 

 温泉を堪能し、満足とばかりに服を着て脱衣所を出たところで、必死の形相のバラキーと、背筋に寒気が走るくらい怖い笑顔のBBがいた。

 咄嗟に逃げ出したは良いが、その後ろをピッタリとバラキーがついてきて、同じようにBBも追ってきていた。

 なので、バラキーの仕切り直しを使って逃げたのは是非もないことだろう。

 

「それで、なんで狙われてたのさ……」

「し、知らぬ……吾は何もしておらぬ……強いていうならば、お菓子を食べ漁っていたくらいなのだが……な、何か不味いものでも食べたか……?」

「ん~……テンプレだけども、名前付きのとか?」

「そのくらい、当然吾は確認して――――あっ」

「さては心当たりあったね?」

「……そういえば、名前の書いてあるプリンがあったようなと思ってな……そうか、あれが原因かぁ……」

「……見捨てていい見捨てていい?」

「代わりに常について回るが良いな?」

「それは流石に困る……仕方無いかぁ……」

 

 外へ逃げ出した二人は、雪が降り止んだとはいえ、気温的にはほぼ変わらない寒い中、施設の周囲を歩いていた。

 

「ねぇ……これさ、どこかで温泉に当たらない?」

「その時はその時。というか、軽く見回ってた感じ、温泉があるとこは崖に近いから、崖の壁を掴んで移動すればバレずに反対側に行けるのではないか……?」

「どこにそんな筋力と体力があるのさ……!」

「ふふん。そのための鬼。そのためのサーヴァントであろう?」

「……いや、確実にこのためではないとは思うよ? いやまぁ、便利ではあるけども」

 

 サーヴァントとは何なのだろうかと一瞬考えてしまったが、そもそも人のものを食い逃げして逃げ切るためのものではないと気付くオオガミ。

 だが、バラキーが無駄に自信満々なので、もしかしたらその可能性もあるのではないかと考えてしまうが。

 

「まぁなんだ。吾はBBにさえ見付からなければ良いのだそして、忘れた頃にさりげなく戻る。そうすれば、吾は謝らず、そしてBBは怒りもしない。それこそ、吾は不幸にならない結末だ!」

「うん……そうだね。絶対にうまくいかないと思うけど、出来たら良いね……」

 

 ドヤ顔のバラキーに、疲れきったような声で答えるオオガミ。

 なんせ、ことこのカルデアにおいては、一、二を争うほどに執念深いのが、BBだ。その計画が遂行されるのに果たしてどれ程の時間が必要なのか。オオガミは考えることをやめたのだった。




 アンリは犠牲となったのだ……物理的に。

 というか、バラキーって、出てくると高確率で仕切り直し使う状況になってない……? なんで……?


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事故が起こったんです(とりあえず有罪で)

「で、なんであんなところにいたのかしら」

「……事故です」

 

 エウリュアレの冷たい声と、アナの冷たい鎌が首に当たる感触に冷や汗をかきつつ、オオガミが答えた。

 バラキーは既に簀巻きにされて宙吊りの刑に処されているが、おそらくすぐにやって来るだろうBBに渡されて惨劇が起こることは確定していた。

 

「そう……どういう事故なのかしら」

「……崖が滑りやすくなっていたのと、真上が女湯だったのと、仕切り直しが思わぬ方向に向かっていったことですかね」

「ふぅん……で、ゼロタイム迎撃を受けて今ここで捕まっていると。なるほどね。有罪、アンリと同じ目に遭わすわ」

「脳天一撃で即死じゃないですか! 無慈悲な!」

 

 一撃で確実に殺すという意思を感じるエウリュアレの視線に、目を逸らすことも出来ないオオガミ。

 だが、エウリュアレはため息を吐くと、

 

「まぁ良いわ。別に、そこまで怒ってもないし。そもそも実害特になかったしね」

「そうじゃなぁ……まぁ、着地の衝撃で落ちてきた雪で、景色が塗りつぶされたくらいじゃし、それ以外の被害は無いに等しいし。儂としては別に構わんのじゃけど」

「うん。むしろ、向こうで殺意全開にしているBBを見て、一気に怒る気力が無くなったんだけど……」

「まぁ、あれだけ憤慨しているとな。ただ、同じことをされたら私も同じくらい怒りそうだ」

「そんなに簡単に怒っても良いことはないと思うわ。三回目で怒るようにしましょう、女神様」

「なんで仏ソウルを植えようとしてるんじゃそこの皇女」

「まぁ良いじゃん叔母上! お怒りゲージがあるなら怒られにくくなるし、お得だよ!」

「う、うぅむ……まぁ、それで良いのなら良いんじゃが……」

 

 後方ではやって来たBBが弱い攻撃をひたすらバラキーに叩き込むという拷問のようなことを行っていた。

 スカディがあのBBと同じくらい怒るということは、もしや体の端からじわじわと凍らされるのではないかという恐怖に駆られるのだが、流石にそこまではしないだろうと思い、気を落ち着ける。

 

「それで、どうするの? このまま解放する?」

「まぁ、バラキーが十分罰を受けてるし良いんじゃない? 茶々知らなーい」

「そう……じゃあ、縄を解いてあげて。あぁ、それと、帰ったら覚えておきなさいよ、マスター?」

「エウリュアレは許してくれてないよねこれ! 一人だけ目が怖いもん!」

「姉様。私も手伝いますね」

「アナのそれは単純にエウリュアレへの信頼しかないから……! ある意味純粋だから……!」

「もうその純粋は手遅れだと思うんじゃけど」

「もう狂信の域だよね」

「もう手遅れだったか……!」

 

 分かりきっていた気もするが、手遅れなことを再認識したオオガミは、そんな事を言ったがばかりに怪我が増えることになるのだった。




 さりげなく大ダメージを受けてるバラキー。まぁ、自業自得ですけど。
 ちなみに、オオガミ君は女湯と判断するより早く意識を意識を飛ばされたので、そもそも女湯に入ったかは目覚めた後の推測だったりします。惜しいことをしたなオオガミ君め。


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カルデアよ、朕が来たぞ!(なんであの人がいるんですかっ!)

「うむ、先程ぶりだなカルデアよ。朕である」

「あ、始皇帝さぶべらっ!」

「マスタァァァァ!!」

 

 温泉から帰ってきたオオガミ達を迎えたのは、始皇帝。

 それを認識すると同時にマシュの強烈なアッパーカットによって、オオガミは沈んだ。

 それを見ていた茶々が悲鳴をあげるのも仕方のないことだろう。

 

「あぁ、すいません始皇帝さん。お見苦しいところをお見せしました」

「いや、構わぬが……いやしかし、サーヴァントとはマスターを容赦なく殴り飛ばすものだったろうか……」

「あそこの二人が異常なだけで、普通はあそこまで全力で殴ったりしないわ」

「そ、そうか……ところで、技術部とやらがあるというのを聞いたのだが、誰が技術部だ?」

「ん。儂か?」

「BBちゃんもですね。えぇ、そう言われるのは私たちしかいないかと」

 

 ひょっこりと顔を出すノッブとBB。ただ、BBの手には意識の無いボロボロのバラキーが握られているのは、かなりのホラーだった。

 

「ふむ……その二人か。なるほど、工房を見ても良いだろうか。朕はあれ以来気になって気になって仕方がないからな」

「むっ……始皇帝……? まさか、あの超絶イケテる戦車を作った奴か!」

「おぉ! 朕のセンスが分かるとは!」

「え、えぇ~……? あの人ですかぁ……まぁ良いですけど、あんまり弄らないでくださいね」

「あぁ、バラす時は一言断ってからするとしよう」

「既にバラした時にネジを余らせるという事件を起こしてる時点で不安しかないんですけど! 隣で監視してないとダメじゃないですかね!?」

 

 既に過去にやらかしている実績があるので、しばらく監視されるであろう始皇帝。

 だが、本人は大して気にした様子もなく、むしろその方がありがたいとばかりに首を縦に振る。

 

「なんなんですか、監視されたい変態さんなんですか。流石のBBちゃんもドン引きです」

「いや、純粋に技術担当をしてるやつが隣にいるんじゃから、バラすよりも簡単に機構が知ることが出来るというだけの意味じゃろ? 他意はないはずじゃ。だってこやつ、工房行きたい顔しとるもん」

「どんな顔ですか! BBちゃんにも理解できる限界はあるんですからね!?」

「なに、考えるな、感じろ。という話じゃ」

「適当ですね! いえいつも通りでした!」

 

 とはいえ、ノッブがここまで言うならたぶん大丈夫なのだろうと思うBB。

 だが、おそらく見張ることになるのはBBで、ノッブはきっと気にしないのだろうとも思っていた。

 

「はぁ……アナさん、バラキーをお願いしますね。私はこの人を案内するので」

「分かりました。マスターの方は……マシュさんがやってくれますか。頑張ってください」

「えぇ、頑張りますよ。ほら、ノッブも行くんですよ」

「うへぇ~……儂もかぁ……」

「当然です。ほら、あなたも行くんですよ」

「あい分かった。よろしく頼むぞ」

 

 そう言って、三人は部屋を出ていくのだった。




 マスターが死んだっ!

 まぁ、朕は安定の技術部ですよね。でも、既に完成されてる技術部のどこに配備するか……そこが悩みどころ……


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クリスマスの気配を感じる……!(何でそんなのを首から提げてる……?)

「はっ……新たなクリスマスの気配……!」

「ん? 私もか?」

「えっ……水着なのに特効なの? こんなくそ寒い……じゃなかった。コホン。肌に刺さるような気温ですのに?」

「本性がちょいちょい出るなぁ、この聖女サマ。別に無理して隠す必要もねぇだろうに」

「あら、別に本性を隠してなんていませんよ。ほほほ」

「お、おぅ、そうかい。こいつぁ面倒そうなことに首を突っ込んだ気がするなぁ……」

 

 食堂で、首から次回のクリスマスイベント特効サーヴァントが書かれているカードを提げているアナスタシアを見て反応したのは、アルテラを筆頭として、エルバサ、マルタ、北斎の四人。

 すると、四人に気付いたアナスタシアが近付いてくる。

 

「あら、四人とも特効なの?」

「あぁ、そんなところだ。というか、なぜそれを首から提げているんだ?」

「それは、マスターが提げておけと。特に意味はないらしいのだけど、一応四人の分もあるわ」

 

 そう言って、カードを四枚取り出すアナスタシア。

 それに対して四人は顔をしかめ、

 

「罰ゲームか何かか?」

「そんなつもりは無いけれど、皆で装備すれば連帯感出てる感じがすると思ったのだけど」

「連帯感よりも先に羞恥心が漏れ出そうではあるが……まぁ、仕方ない。私も提げるとしよう」

「ふむ。皆で同じ装備か。面白そうだな。うん。参加しよう」

「えぇ……流れ的に提げないといけない感じ? いえ、構いませんけども」

「なんでぇ、みんな提げるのか。ならおれも提げるしかないな。ほれ、寄越しな」

 

 そう言って、四人はそれぞれ一枚ずつカードを貰い、首から提げる。

 とはいえ、これは一体誰に向けて告知しているのだろうと疑問に思う四人。特効サーヴァントを集めたいのなら、直接召集をかければ良い筈だ。

 

「皆提げたかしら」

「あぁ、これで良いだろう?」

「うむ。完璧だな」

「うぅ……やっぱり、ちょっと恥ずかしいわ」

「別に気にするもんでもねぇだろ? ま、絵を描くにはちょいと邪魔だけどな」

 

 そう言って、四人がカードを提げ終わったのを確認したアナスタシアは、さりげなくスマホと自撮り棒を取り出して四人が入るようにすると、

 

「写真を撮るわ。こっちを向いてくれるかしら」

「むっ……構わんが、唐突だな」

「写真とな。後で貰えるのだろうか?」

「これでかぁ……まぁ、別に良いか」

「それがスマホって奴かい。写真ってぇのも気になってたからな。良い機会だ。後で見せてくれ」

「えぇ、構わないわ」

 

 そうしてそれぞれが承認したのを確認して、アナスタシアは写真を撮るのだった。




 以外にもイベント特効サーヴァントをあんまり持ってなかった……というか、クラスかぶりが多かった……


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なんでピックアップされてるのかしら!!(水着で参戦なんて、流石だわ)

「なんで私がピックアップされてるの!? しかも水着なんだけど!?」

「真冬に水着……とても寒さに強いのね……」

「いや寒いんだけど!?」

 

 何故か用意されていたイベント特効者用の部屋に何となく集まっているのは三人。

 極寒の真冬でも容赦なくピックアップされる水着鉄拳聖女。

 その状況に困惑する本人と、寒い中でも水着で問題ないのかと驚愕するアナスタシア。

 だが、当の本人は本気で寒がっているのだが。

 エルバサはその様子を見て、ため息を吐く。

 

「ど、どうしてこの寒い中で水着しか許されないのよ……」

「それは、ライダーで召喚されていないからだろう?」

「順序が逆だと思うんだけど!! ライダーが先じゃないの!?」

「ここにおいてそれは適応されないからな……水着しかないサーヴァントも割といる」

「でもやっぱりこのカルデアおかしいわ……!!」

「あぁ、新生カルデアスだからな。カルデアとは違う」

「そう言う意味じゃないんだけどね!?」

 

 そもそも水着以外の服装が欲しいマルタだったが、このカルデアにおいて、上位に食い込むほどの防衛人物。

 なので、石の使用は出来ないので、おそらくこの水着姿が治る時は来ないだろう。

 そんな三人の元へ走ってくるジャック。

 

「むっ、ジャックか。どうした?」

「うん。おかあさんがこれを特効の皆にって」

「これは……?」

「……温かそうではあるけども、これは違くないかしら……」

 

 そう言ってジャックから受け取ったのは、赤色のジャージ。それぞれ名前が書いてあるところが無駄に凝っていると思う三人。

 

「皆が寒いと思うから、持って行ってねって言われたよ?」

「そ、そう……えぇ、ありがたく着るわ」

「う、うぅん……あんまり着たくは無いのだけど……」

「機能美に優れた良い服だ。マスターにも感謝を伝えておいてくれ」

「うん、わかった。じゃあまた後でね」

「あぁ、後でな」

 

 そう言って、スタスタと走っていくジャック。

 それを見送った三人は、少し考えた後、その服に袖を通す。

 

「……温かいけど、でも、何かしら……なんだろう、何か大切なモノを失っている気がする……」

「まぁ、ファッションとしてはどうかなって思うわよね。というか、私は普段着の方が温かい気がするのだけど」

「そこは考えない方が良いだろう。私も普段着の方が動きやすいしな」

「薄着だから動きやすいわよね……流石にそれは寒いと思うんだけど」

「動けばそのうち熱くなる。だが、動いていない時はこちらでもいいか」

「まぁ、普段のドレスよりも動きやすいのは確かね……スカディさんに見せに行きましょうか」

「ファッション性に突っ込みを入れていたのに店に行く度胸があるとは思わなかったわ……」

 

 そう言って、アナスタシアは部屋を出て行くのだった。




 もはやイジメられてるとしか思えない水着参戦組。なんでこんなことになってしまったのか……楽しみすぎる……


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クリスマス2018 ホーリー・サンバ・ナイト ~雪降る遺跡と少女騎士~
レッツゴーサンバ!!(サンバじゃなくてルチャじゃない!!)


※クリスマス2018 ホーリー・サンバ・ナイト のネタバレアリ! ご注意ください!









「サンバ要素は!?」

「ハ~イ! 私がいますよ~?」

「それしかないんだけど!?」

 

 突っ込み役が板についてきたように思えるマルタ。

 ルチャのお姉さんことケツァルマスクは、準備運動をしていた。

 

「はぁ……それで、手合わせをするの? 言っておきますが、神様を相手に戦うだなんて出来ないのですけど」

「私はサンタで、今はただのルチャドーラ。だから、全然気にしないでください」

「そうは言いますけど……はぁ、仕方ないです。ただ、ルールはあまり知らないので、そこはご了承ください」

「ハイ! では、準備が出来たらお願いますね」

 

 そう言ってリングへと上がるケツァルマスクと、軽く準備運動をしてから着ていたジャージを脱いで動きやすい水着の姿になってリングへと上がるマルタ。

 それを見ていたアナスタシアは一人だけ用意していた椅子に座り、

 

「私もやってみようかしら」

「打たれ弱い身体でやるのはあまりオススメしないがな」

 

 いつの間にか隣に立っていたエルバサに驚くアナスタシアだったが、彼女は気にせず話を続ける。

 

「まぁ、肉体はそれ以上変化しないとしても、体の動かし方くらいは学べるだろう。練習してみるか?」

「えっと……そうね。お願いするわ」

 

 少し考えてからお願いするアナスタシア。

 エルバサはそれを聞いて、最初から用意していたらしいパンチングミットを取り出すと、

 

「マルタをしばらく観察して、その後に軽くやるとする。とはいえ、初めてだからな。少しだけだ」

「えぇ、分かったわ。服装は……このままでいいかしら」

「あぁ、あの普段着は動きにくいからな。その服のままだ」

「そう。じゃあ、頑張るわ」

 

 そう言って、視線をリングへと戻すアナスタシア。

 エルバサもそちらへ視線を向けるが、じっとしているアナスタシアとは違い、軽く動きながら見ていた。

 

「……なんつーか、居心地悪いっていうか、場違い感凄くないかい?」

「そう言われても、絵を描いていてとしか言えないんだよね……別に、あっちの二人みたいに、練習したくも無いでしょ?」

「まぁ、そりゃそうさ。絵を描いてる方が楽しいし、さーばんとになってからは疲れ知らずだしなぁ。あぁ、いや、疲れ知らずは言い過ぎか。まぁ、かなりマシにはなってるよ」

「それならいいんだけどさ。まぁ、何かやりたい事が出来たら言ってね。出来る範囲でするから」

「応。その時は頼むぜ、ますたぁ?」

 

 そう言って、絵を描き始める北斎から離れてアナスタシアの方へと向かっていくオオガミだった。




 明らかにサンバ要素要らなかったのでは……? 明らかにネタだけだよね……?

 あ、目標は200箱です。果たして出来るのか……


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まさか本当にコーチになるとは(とりあえず体力作りね)

※クリスマス2018 ホーリー・サンバ・ナイト のネタバレアリ! ご注意ください!










「まさかストーリー的にも絡んでくるとは思わなかった」

「まさかコーチになるとは思わなかった」

「私、もう、疲れたのだけど……」

「まぁ、初めてにしては良い感じか」

 

 一回戦が終わって帰ってくると、気付いたらマルタが正式にコーチになっていて、それとは無関係にアナスタシアが倒れていた。

 

「……中々辛いのだけど。動ける気がしないわ」

「そのうち慣れるさ。やる気があるなら手伝うが、どうする?」

「……やるわ。カルデアの中だと、居心地良すぎて動かなくなっちゃうんだもの」

「あぁ、分かる。何かとやることもないしな。気付いたら時間が過ぎていることもある。まぁ、暇潰しとしては十分だろう」

「そうね。他にも誘おうかしら」

「あぁ、それも良いな」

 

 そんなことを話す二人に、オオガミは苦笑いをして北斎の所へと向かう。

 

「ねぇ、何があったの……?」

「ん? 何って、見ての通り体力作りをしていただけさ。ま、おれは見てただけだがな。ますたぁも混ざるかい?」

「いや、混ざったら死ぬって。いや、死なないまでも動けなくなるって」

「そんなところを襲われたらどうしようもねぇか。でも、体力をつけておいて損はねぇんじゃねぇか?」

「あ~……それもそうかぁ……うん。まぁ、頑張るよ」

「応。死なないように気を付けな」

「死なないように頑張るよ」

 

 そう言って、オオガミはエルバサの所へと向かう。

 そして、ケツァルマスク及びマルタは、スパーリングを始める。

 

「まさか、こんなことで戦うことになるなんて思いませんでしたよ」

「私も相手が増えるなんて思ってなかったので嬉しいデース」

「とりあえず、一回。終わったら少し外を歩くとします」

「オーケーね。じゃあ、行くわよ?」

 

 そう言って二人が構え、ゴングが鳴り響く。

 

 

 * * *

 

 

「無理。死ぬ。疲れて死ぬ」

「流石にやり過ぎたか……というか、意外と体力あるんだな……」

「ふ、ふふふ……逃げのプロは伊達じゃないんだよ……体力がないと逃げられるものも逃げられないからね……」

「なるほどな……いやしかし、本当に体力も筋肉もある。確かに逃げる分には問題ないか……」

「うん……というか、これを毎日はキツいなぁ……」

「そのうち慣れてくるさ……ただ、それをするとマシュ辺りに怒られそうな気がするのだが……」

「マシュの魔の手はここにまで伸びてきていたか……くそぅ、肉体強化すらダメか……!」

「いや、それは構わんが、ついてこれるかが問題だな。なに、アナスタシアよりは早く終わるだろうさ」

「んな無茶を……」

 

 そう言って、疲れ果てたオオガミは、そのまま意識を手放すのだった。




 ルチャの宝具に笑いをこらえられなかった私です。やべぇよ、じゃが村凄いよ……


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はっ……嫌な予感を感じる……!(絶対それは嫌なんじゃけど)

「はっ……マスターが強化されてる気配を感じる……!」

「なんてことを考えるんじゃエウリュアレ。それはダメじゃろ」

「マジでそれは正気じゃないですって。BBちゃんもドン引きですよ」

「吾も勘弁なのだが。いや、問題はないかもしれないが、巻き込まれると吾だけやられることになる……」

「我欲が強いなぁ……いや、オレは別に気にしないんだけどさ」

 

 カルデアでいつものように休憩していたエウリュアレ達だったが、唐突に何かを受信したエウリュアレの言葉に、ノッブ達が反応する。

 

「それで、具体的にはどんな感じのパワーアップじゃ?」

「えぇ……ノッブそこ聞いちゃいます? 私、あんまり聞きたくないんですけど」

「いや、知らんと対策取れんし。まずは相手を知るところからじゃろ」

「なんで私がそこまで分かる前提で話すのよ」

「えっ、エウリュアレじゃし」

「そうですよ。センパイの事に関しては無駄に精度の良い関知能力あるんですし」

「そんな精度は高くないんだけど……というか、精度が高いって何よ」

「まぁ、こういうのは自覚無い奴が多いしな。儂知ってる」

「まぁ、そんなものですよね。分かってます分かってます」

「何を分かってるのよ……」

 

 何故か優しい笑顔をしてくるノッブとBBにエウリュアレは困惑するが、なんとなく分かるような気もするので、強くは言い返せなかった。

 

「まぁ、なんとなくだけども、体力とか増えそうよ」

「うえぇ……体力とか、一番どうしようもないんじゃけどぉ……」

「対策のしようが無いじゃないですかぁ……私は逃げておきます」

「やっぱ吾だけ置いていかれるのでは……? 一緒に逃げていると思ったら吾だけ置いていかれるのでは……?」

「オレはまぁ、もう既にどうしようもないですし? 流石に速度で負ける気はしねぇけども、他の奴が出てきたら敗北確定ですし。アビーとか特に無理。速度関係ないじゃんアイツ」

「何の話をしてるの?」

 

 エウリュアレの話を聞いて倒れているノッブ達の所へ現れるアビゲイル。

 ノッブ達は飛び起きると、

 

「よしアビー! お主をマスター最終防衛ラインの要とする! まぁ、マスターが単体で暴れるとは思わないんじゃけどね!」

「えっ!? えっ!?」

「最終的に私たちも加担してると思うんですけど、それでも頑張ってくださいね!」

「えぇっ!? 私一人なの!?」

 

 突然の展開に困惑するアビゲイルと、そんなアビゲイルにゴリ押して頷かせに行く悪人二人。

 それはまるで、悪徳商法をされている少女のようだったと、後に他の面々は語るのだった。




 遊びすぎて書くのがぼちぼち遅くなってきた……そろそろ日を跨ぎそう……


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不意打ちとは卑怯な……!(でも、相手の正体は大体予想がついたわよね)

※クリスマス2018 ホーリー・サンバ・ナイト のネタバレアリ! ご注意ください!









「くぅっ……不意打ちとは卑怯な……!」

「正直相手が大体予想がつくのだけど。ところで、マスターも一緒にやるの?」

 

 次回対戦相手による刺客を送る卑怯戦法に悔しがるオオガミと、相手の正体の予想はついているが、それ以上にマスターが一緒にエルバサと修行をするという事実に困惑するアナスタシア。

 なお、オオガミはさも当然だとばかりの表情で、

 

「いや、だって続けないと身に付かないし。体力上げないと、そろそろノッブとBBに生け贄として捧げられそうだし」

「その言い方だと、今までは捧げられる前に逃げ切ってるみたいよね……」

「いや、事実そうなんだけども……」

「そ、そう……でも、それでもマシュはマスターを捕まえているのだけど……どうしてかしら……」

「それはむしろこっちが聞きたい。最近追ってくる速度が洒落にならないんだけど。これはアタランテに走り方を学ぶしかないのでは……?」

 

 真剣に考え始めるマスターに、アナスタシアは嫌そうな顔をすると、

 

「それ以上速くなっても困るのだけど……というか、アタランテさんに勝ったらそれはそれで問題が発生する気がするわ」

「うぅむ……それを言われると反論出来ないくらいには同じ予感がしてるわけで……つまり、速度に関しては自力でどうにかするしかないと」

「いえ、諦めて自首をしなさいと言っているの」

「うわぁお。まだ何もしてないのに素早く犯人扱いだぁ。絶対何かをやらかすって思われてるよ」

「だって、事実でしょう?」

「真実は時として残酷なんだよ」

 

 悲しい事実を前に遠い目をするオオガミを見て、アナスタシアはなんとも言えない表情になるが、その時になってエルバサが来る。

 

「私が言うことではないと思うんだが……マネージャーが遊んでて良いのか?」

「ん~……まぁ、向こうは向こうで人がいるから良いかなって。マネージャー的にはいた方がいいかもしれないんだけど、そこはそれ。というか、完成されているからもうどうしようもないんだよね」

「あぁ……まぁ、確かにそこまでいかれると鍛えがいがないというのは分かる。ただ、それでも誰かが見ているというのはかなり重要だと思うのだが」

「むむぅ……まぁ、見に行くのは良いんだけど、見てるとこっちも体を動かしたくなっちゃうのがなぁ……なんというか、こう、じっとしていられないというか、なんというか……」

「言いたいことは分かる。が、かといってマスターがあそこに混ざれるかと言えばそうでもないのが現状だ。難儀だな……」

 

 オオガミの言い分に共感するエルバサ。

 アナスタシアはその感覚があまり分からず、首をかしげるのだった。




 独断で無駄に強くなっていくオオガミ君。そろそろストッパーが負ける日も近いのでは……?


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まさか毒をくらうだなんて……(解毒は出来ないっぽいしねぇ……)

※クリスマス2018 ホーリー・サンバ・ナイト のネタバレアリ! ご注意ください!









「汚いっ! 流石女帝汚いっ!」

「でも、正直予想の範囲内だったわね。もっと凄いことをしてくるかと思ったわ。爆発とか」

「爆発って……そんなまさか……いや、それはそれで気になるけども」

「それでリングが破壊されたら激怒するだろうからな。流石に誰もしないだろう」

 

 先程の中華代表との戦いを越えて、ダウンしているケツァルマスクを介抱しつつ、三人は話す。

 

「ところで、北斎さんは?」

「そういえば、今日は見てないのだけど……もしかして、外にいるのかしら」

「あぁ~……ちょっと見に行ってくるよ」

 

 オオガミはそう言うと、待機室の外へ出る。

 外はやはり雪景色で、雪の積もった密林という珍しい状況に心を揺さぶられたのか、予想通り北斎はそこにいた。

 

「うん? あぁ、ますたぁかい。その様子からして、おれを探しに来たってところか」

「まぁ、そんなところ。良い絵は描けそう?」

「応。たまには外に出るのも良いものさ。とはいえ、既にかるであの中だけでもネタには困らねぇけどな。記録を見るだけで面白そうなのはかなりあったね。ま、体験までは出来ないだろうけど」

「流石にねぇ……まぁ、これからも機会があったら色んな所に行ってみようか」

「無理しない程度で頼むとするよ。まだ描き足りねぇものがわんさかあるからな」

 

 そう言って、楽しそうに筆を走らせる北斎を見て、オオガミは大丈夫そうだと思い中へ戻ることにした。

 すると、先程まで奥のスタッフルームに籠っていたマルタが出てきていた。

 

「あ、マルタさん」

「あぁ、戻ってきたわね。何をしていたのかしら」

「あぁ、姿が見えない北斎さんを探しにちょっと外まで。何かあった?」

「いえ、別に何かあったわけではないわ。ただ、姿が見えないから気になっただけ。それと、カルデアからの通信で、体力作りは禁止だって言ってたわ」

「なんでっ!? 体力作り禁止の理由がよく分からないっていうのとか諸々聞きたいことはあるけど、何よりも分からないのは、なんでカルデアにいる誰にも言ってないのに向こうでバレてるのかな!? 誰か言ったの!?」

「向こう曰く、エウリュアレさんがなんとなく体力作りをしているのではないかと呟いたので念のために禁止にしておこう。だそうよ」

「んな理不尽な!? というか、ピンポイントで当ててくるなあの女神サマ!」

「なんというか、災難ね。でも、諦めてもらうしかないわ。というか、マスターとしては十分すぎるくらいのスペックだと思うのだけど」

「それはそれ、これはこれ。あって困るものでもないしね!」

「まぁ、それはそうだけど……とりあえず、言ったからね」

 

 そう言うと、マルタは足早にいなくなるのだった。




 さりげなく炸裂している女神パワー。あの女神サマ怖いわぁ……


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ようやく出番ですよマルタさん!(いい加減にしなさい!!)

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「ついにマルタさんも出陣ですね!」

「一回だけ! 一回だけだから!! 実質あってないようなものだって!」

「でも出陣ですからね! とりあえず次回も楽しみにしてますね!!」

「だから一回だけだって言ってるでしょ!」

 

 必死で弁解するマルタと、聞く耳を一切持とうとしないオオガミ。

 そして容赦なく突き刺さるマルタの拳に、反応する事が出来ずに顔面に直撃を受け、倒れる。

 

「ハァ……ハァ……あ、やっちゃった……とりあえず、奥の部屋にしまっておけばバレないわよね……」

 

 一人頷き、誰もいないことを確認して素早く投げ込む。

 軽く手を叩いて何もなかったかのように戻る。

 

「あ、マルタさん。マスターを見なかったかしら」

「えっ」

 

 今しがた殴り倒したオオガミの事を探しているアナスタシアに会ってしまったマルタ。

 アナスタシアはマルタがオオガミを殴り倒したことなど知るわけも無いので、マルタの反応に首を傾げている。

 

「どうかしたのかしら?」

「い、いえ、何でもありません。マスターは……寝ているのではないでしょうか。私は見てないですね」

「そうなの? おかしいわね……マルタさんを煽りに行くって言って行ったのに、すれ違いになったのかしら」

「あぁ、だから――――いえ、そうですね。たぶんすれ違いになったのかもしれません。私はやることがあるので、見に行ってもらえますか?」

「まぁ、そうね。全く。マスターったら、今日も体力作りをするって言ってたのに、疲れたのかしら」

「禁止令出てもガン無視してやるって所に彼らしいわ……それじゃあね」

「えぇ。また後で」

 

 そう言って、その場を離れるマルタ。

 入れ替わる様にアナスタシアはマルタが出てきた部屋を探しに行く。

 マルタはというと、用があるとは言ったが、実際のところは何もない。

 なので、適当に外を歩き回るくらいだ。

 

「お、聖女様か。密林の雪景色に聖女様たぁ映えるが……しかし、薄着だと冬って感じがしねぇな。寒くないのか?」

「貴女は……葛飾北斎、東方の画家でしたか。こんなところで何をしているんですか?」

 

 地面に座り、紙に筆を走らせる北斎に会ったマルタは、近くに座りつつ質問に質問で返す。

 

「そりゃあ、画家が紙の前で筆を持ってるってこたぁ、やる事は一つしかねぇだろ。見たまま、絵を描いてるのサ」

「なるほど……あぁ、一応答えておきますが、ちょっと寒いです。霊基の問題で服を着込めないのでこういう状況と言うだけです」

「あ~……そりゃ難儀だな。ご愁傷さまだ」

 

 そんなことを話しながら、マルタは時間をつぶすのだった。




 流石のマルタ神拳を直撃して倒れないほど人間辞めてないですよ。いえ、まぁ、死んでないというのは、それはそれで問題な気もしますけど。


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明日の決勝戦に備えなきゃ(まぁ、自由に過ごそうか)

※クリスマス2018 ホーリー・サンバ・ナイト のネタバレアリ! ご注意ください!












「よぅし、残るは一試合。それさえ超えれば周回するだけだね」

「今になって周回を話題に出すのね……あえて避けてる感じだったと思ったのだけど」

「そりゃ、試合があるし、そんな遊んでられないし……うん。まぁ、そんな理由で避けてたよ」

「その配慮があるならこの決勝戦前日に話す事も無いと思うのだけど」

 

 明日が決勝戦という事で、あまり張り詰めて練習しない様に少し休憩するメンバー。

 とはいえ、運動したい人は運動し、休みたい人は休んでいるので、結局練習し続けているという人もいた。

 

「それで、マスター。マスターが話を振ったから聞くのだけど、箱はどれだけ開けられるの?」

「ん。今時点で50箱くらいかな。まぁ、目標の半分くらい?」

「もう半分なのね……いえ、ようやく、かしら? まぁ、どちらかはわからないのだけど、でも、頑張ってねマスター。試合に負けた私たちが手伝うわ」

「今の、微妙に棘があった気がしたんだけど……」

「気のせいよ。私は気にしてないわ。むしろあの必殺技に感動したくらいよ。クリスマスプレゼントの如く落ちてくる彼女の姿にやられたのは事実だし、認めているもの」

「そ、そう……ならいいんだけども……」

 

 気にしていないと言いつつも冷気が漏れ出ているので、オオガミが苦い顔になっているという事を彼女は知らない。

 ただでさえも寒い中、どんどん冷えて行くので、どうしたものかと考えていると、

 

「なんだ、意外と元気じゃないか。という事は、今日もやるか?」

「むっ……えぇ、やるわ。次こそ勝つの」

「やっぱ気にしてるじゃん」

「マスター、うるさいわ」

「うわっ、さむっ!!」

 

 アナスタシアに明らかに根に持っていることを指摘した瞬間に吹き荒ぶ冷気。あまりの寒さにオオガミは涙目である。

 すると、エルバサはため息を吐きつつ、

 

「まぁ、今日は軽いものにしておく。明日観戦しに行くだろう? なのに、疲れて倒れているわけにはいかないだろうからな。それでいいか?」

「えぇ。むしろ、配慮してくれてありがたいわ。これで、決勝で負けたなんて言われたらマスターを凍らせるもの」

「おっと、凍るのは俺か! まぁ、是非も無いけども!!」

 

 明日の試合次第では強制コールドスリープさせられるらしいオオガミ。そのまま割られる可能性もあるので、ある意味永久の眠りになる可能性があるが。

 

「それで、今日はどんな練習?」

「あぁ、そうだな。まずは――――」

 

 そうして、今日もまた二人は訓練を始めるのだった。




 とりあえず100箱を目標にのんびり周回中。ルチャのパワー凄い……


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クリスマスタッグマッチ決着!!(よっしゃぁ! 周回開始じゃあぁぁ!!)

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「さてさて、決着ついたね。優勝おめでとう!! そして今からスカディさんと孔明を本格的に呼んで全力周回で!!」

「相手はアーチャーだから、ランサーも一緒に呼びましょう。いっぱい宝具が撃てるサーヴァントが良いわ」

 

 ついに決勝戦を勝ち抜き、全ての縛りから解き放たれたオオガミは、素早く周回用メンバーの召喚準備を整えていた。

 後ろでは、何故かオオガミよりも興奮しているアナスタシアが待機していた。

 

「さてさて、誰を呼ぶかな……あ、そうだ。今こそ彼女の出番っ!」

「誰かしら! 誰を呼ぶのかしら!!」

 

 魔法陣に魔力を流し込み、カルデアに接続して召喚する。

 とりあえず。と呼び出したのは三人。うち二人は不満そうな顔で、一人は目を点にしていた。

 

「良い。皆まで言う事は無い。もう既に想像できている」

「あぁ……これが例の過労死労働か……もうこの時点で疲れてきた。帰っていいか?」

「えっ、周回? 周回なの? 本当に? 今から食堂に行くつもりだったのに……」

 

 既に周回疲れを起こしている孔明とスカディ。それに、食堂を目指していたというエレシュキガルは、涙目になってきていた。

 

「う、うぅむ……やる気皆無しかいない……というか、エレちゃん、ちょっと見ない間に一気に染まってるね……」

「えぇ、染まってるわ。あれはこたつを前にしたらみかんを持って入ってくる感じのキャラよ」

「キャラとか言わない。いや、別にいいけども……さて、どう説得しようか……」

「あ、スカディさんは私が説得するわ。マスターは二人をお願いね」

「う、うん……分かったけど、大丈夫?」

「えぇ、大丈夫よ」

 

 そう言って、スカディの元へと向かうアナスタシア。

 オオガミはどうするかを考えつつ二人に近付き、

 

「はぁ……いや、もう召喚された時点でどうしようもないことは分かっていた。もう諦めているから気にするな。手伝うとするさ」

「あれ、孔明先生は自己完結した……ありがたいけど、良いの?」

「何、いつか結局来るのなら、今来たとしても大差ないと思っただけだ」

「あぁ、なるほど……となると、エレちゃんだけど……こっちは何とかなるかな」

 

 そう言って振り向くと、エレシュキガルはしゃがんで呆然としていた。

 

「えぇ、えぇ。別にいいのだわ。そんなに気にしてないし。ただ、最近美味しいご飯を楽しみにして夜の見回りとかしてるから、今日のご飯はなんだろうなって思って行ったら突然の召喚。えぇ、役立てるのは嬉しいわ。けど、タイミングが微妙に悪かったかなぁ~って思ったり思わなあったりするだけだし?――――」

「え、エレちゃん。帰ったらお菓子作るからそれで我慢してくれる?」

「……本当に?」

「うん。一応今の所そんなに嘘を吐いた覚えはないし。それに妙に評判がいいから、作り甲斐もあるからね。それで、大丈夫かな?」

「……仕方ないわね! 冥界の力を見せてあげるわ!」

 

 立ち上がって元気になったエレシュキガル。

 オオガミはホッと息を吐き、振り向くと、どうやらアナスタシアも説得を終わらせたらしかった。

 

「よぅし、じゃあ、行こうか」

 

 そう言って、オオガミは召喚した三人を連れて周回へ向かうのだった。




 一応60箱は超えたので、100箱まで後少し。頑張れ私! 頑張れ孔明スカディ!!


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長く辛い戦いが始まる……(私はいかなくて良かったわ)

「タッグマッチ、終わったらしいわよ?」

「なるほど。じゃからあやつらが連れていかれたのか。これからひたすらにボックス集めじゃなぁ……」

 

 遠い目をしつつ、今日のお菓子であるカステラを食べるノッブ。

 

「まぁ、今回は連れ回されなくて良かったわ。絆上限上げたから連れ回し、なんてことにならなくて」

「ふぅん……それにしては不服そうじゃな?」

「まぁね。新しい特異点よ? しかも、行ったことの無いメキシコ。一体どんな食べ物があるのか気になるじゃない」

「食べ物関連かぁ……全く。お主は気付いたらモグモグキャラになりおって……」

「私だっていつの間にかこんなことになってるんだからビックリよ。一体誰のせいかしらね」

「そうじゃなぁ……とりあえず、そのカステラを食べる手を止めたらどうじゃ?」

 

 ノッブがそう言うと、エウリュアレはとても不服そうな表情で、

 

「それはそれ、これはこれよ。食べたいものは食べたいの。食べたいなら食べるべきだと思うの。つまり、食べるべきよ」

「とんでもない理論じゃな……まぁ、神様っぽいけども。というか、それで太らんからなぁ……少しくらい痛い目にあっても良いと思うんじゃよ」

「嫌よ。このスキルはお菓子を食べるためにあるの。食べたいときに食べられるだけ食べるためにね」

「絶対違うからな? 流石にその為だけのスキルとか無いからな? あの夢魔じゃ無いんじゃぞ。趣味のために気合いで手に入れるとか、んな無茶苦茶は許されんって」

「いいえ、私は最初からあったわけで、なんの問題もないわ。つまり、私の霊基は、好きなときに好きなだけ食べて、好きなときに好きなだけ寝るのを許された体ってことよ」

「それはない」

 

 ドヤ顔で語るエウリュアレをバッサリ切り捨てるノッブ。

 すると、今まで静かだったバラキーが、

 

「この前、深夜まで遊んでてエレシュキガルに叱られてたし、一昨日だって、深夜に盗み食いをしてるところをエレシュキガルに見つかって部屋に放り込まれていた気がするのだが」

「そ、それは私のせいじゃないし……というか、なんで見回りしてるのよ。ランサーの防衛力おかしくないかしら。なんでピンポイントで狙ってくるのよ。おかしいじゃない。気付いたら後ろにいて、鐘の音と共に吹っ飛ばされるのよ? とんでもなく怖いのだけど」

「まぁ、儂らはランサーと相性悪いしのぅ……ま、是非もないよね!」

 

 諦めるノッブに対して、エウリュアレとバラキーは複雑そうな顔をするのだった。




 エレシュキガルは新生風紀委員委員長になれる可能性を内包しているのです……


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とりあえず目標はクリア(レッツゴーEXマッチ!)

「とっても周回した気がするのだけど、まだやるの?」

「イベント終了まで終わらないんだよ周回は……正直もうリンゴが尽きるか時間が来るかだよ……」

「資源がどんどん減っていくな……もう残り少ないだろうに」

「なんでそれなのに回るのか。それがわからない……」

 

 既に目標である100箱を超え、現在延長戦。残り三日でどれだけ伸ばすかが楽しみになっていた。

 だが、それはあくまでもオオガミだけで、他の三人は、本気で容赦なく回るオオガミに頬を引きつらせていた。

 

「目標は終わったんだから、そろそろ休憩でも良いのではないか?」

「……まぁ、そうか……しゃあなし。他の終わってないクエストを終わらせようか。特にEXマッチ」

「ねぇ、それって、二人だけのやつよね。私たち、出るの?」

「いや、外宇宙パーティーで行こうかなって。だから、三人とも一時休憩かな」

「本当に?」

「本当だって。先に戻ってて。北斎さん探しに行ってくるから」

「え、えぇ、分かったのだわ。ちゃんと終わったら戻ってきてね!」

 

 そう言って、オオガミと別れる三人は、顔を見合わせ少し考えた後、待機室へと戻る事にした。

 

 

 * * *

 

 

「あぁ、いたいた。北斎さん、出番だよ」

「あん? 出番があるなんて聞いてなかったんだが……まぁ良いか。それで? おれだけかい?」

「いや、もう一人いるよ。カモン! アビー!」

 

 突然叫んだオオガミに、北斎は首をかしげる。

 すると、オオガミの近くに門が開き、飛び出てくるアビゲイル。

 そして、アビゲイルはドヤ顔をしながら、

 

「呼ばれた気がしたのだけど!」

「呼んだしね! でも正直出てくるとは思ってなかったからちょっとビビってるけども」

「ほ、本当に出てくるたぁ思わなかった。監視してたのかってくらいのタイミングだな……それで、二人で行くのかい?」

 

 完璧なタイミングで出てきたアビゲイルに若干ビビりつつも、このメンバーかを確認する北斎。

 オオガミは頷くと、

 

「うん。まぁ、きっとすぐ終わるだろうから、そんな気張らなくても良いと思うよ。二人だけで8タッグ抜きです。レッツゴー!」

「なんだかよく分からないけど、頑張るわ!」

「よく分からないまま頑張れるってのはすげぇと思うんだが、まぁ、やれるだけの事はやるサ。任せな」

 

 要するに、16人を倒せってことか。と思いつつ、北斎は筆を持ち、本当に何をするのか全く分かっていないアビゲイルは、とりあえず誰かを倒すんだな。くらいの軽い気持ちでオオガミについていくのだった。




 趣味と実力を兼ねた趣味パで挑んだら勝ちゲーだったでござる。


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タオルが増えるのぅ……(どこまで積み上がるかしらね)

「ん~……タオルは増えてるけど、素材自体は増えないでリンゴが減ってる……ということは、貯めてるってことかしら」

「それしかないじゃろ。というか、尋常じゃない量なんじゃけど……」

 

 倉庫に積み上がっているタオルの山。

 別段彼女達に害はないので放って置いている。

 

「……やっぱり、ついて行きたかったんじゃろ。アビーも行ったし」

「……何度も言わなくて良いわよ。というか、行きたかったって言った気がしたのだけど、聞いてなかった?」

「いやいや、料理だけじゃなかろう? 一週間近くマスターを見とらんしな」

「どうしてそうなるのかしら……そもそも、一週間以上見ないのとか、わりといつもの事じゃない。なんで今になってそんなことを言うのかしら」

「別に今になってって訳でもないんじゃけどねぇ……あぁ、そうか。イベント終わったらわりと一緒にいることが多いのはそれでか。なるほどのぅ……」

「何をそんなしみじみ言ってるのよ……それに、そんな一緒にいるって訳でもないでしょ?」

「ん~……冗談で言っていないところがまた笑えるところなんじゃけどなぁ……あまりにも自覚が無さすぎるからなぁ……」

 

 何やら温かい目をしてくるノッブに、エウリュアレは怪訝そうな目で見ながら、

 

「何よ……そんなに一緒にいたかしら……」

「思い出せば分かる。8割くらい一緒にいる。特異点でも、結構いる。儂知ってる。最近はいないから気になってるんじゃけどね」

「……まぁ、確かに思い出すとほとんどいるような、そうでもないような……?」

「そんなことあるから言っとるんじゃってば。まぁ、今ならBBに言えば乗り込むくらいは出来るじゃろ。行くか?」

「そこまでしては行かないわよ……というか、行けるの?」

 

 まるで散歩でも行くかのように提案してくるノッブに思わず聞き返すエウリュアレ。

 すると、ノッブは平然とした表情で、

 

「まぁ、なんとかなるじゃろ。出来るかは知らんが、あやつなら出来るって」

「要するに無茶ぶりしに行くってことね……絶対マシュが来るからさせないわ。そんな手段を手に入れたら何するか分かったものじゃないもの。何故か最終的に怒られるのは私なんだから」

「まぁ、一番の黒幕が高確率でマスターじゃしねぇ。そりゃ、エウリュアレが怒られるのは是非もなかろう。まぁ、諦めるんじゃな」

「そんな理不尽な理由で怒られるのを諦めろって言われても……嫌だとしか言えないわ」

「まぁ、そうじゃろうなぁ……とりあえず、食堂に戻るかぁ。今は工房も休止しとるしな。さてさて、今日の菓子はなんじゃろな~」

「今日はイチゴのミニタルトよ」

「うわぁ……なんで知っとるんじゃこいつぅ……」

 

 そんな事を話ながら、二人は食堂へと向かうのだった。




 そろそろ周回に飽きてきたような、でもなんとなく楽しいような。そんな感じです。(+10周回


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イベント終了まで後一日……!(あの女神もそろそろ限界みたいだが)

「残り一日……それさえ乗りきれば、この周回も終わりなのだわ……!」

「まぁ、正確には一日半だけども。それさえ乗りきれば半年近くはないはず」

「ら、ラストスパートなのだわ! 私、ファイトー!」

 

 張り切るエレシュキガル。しかし、傍らで倒れている孔明は、既に目に光を失っていた。

 ちなみに、スカディは想定外な事にやることがなかったので、一足先にアビゲイルと一緒にカルデアに帰った。

 その時の孔明へ向けたドヤ顔は、きっと後で報復されているのを考えていないからこそ出来たのだろう。

 

「おかしいだろう……一番働いている気がするのだが……」

「一人だけガンガン絆レベル上がっていくしねぇ……うん。ファイトだよ先生」

「これはもう、絆レベルというよりも、過労死レベルだろう……全部貯まると礼装を落として死ぬ」

「なんてこったい。先生が壊れた」

「あっちの女神はあっちの女神で壊れたがな」

 

 倒れたままエレシュキガルを指差す孔明。

 確かに、エレシュキガルはエレシュキガルで、暴走気味ではあった。ただ、完全に意気消沈して今にも座へ帰りそうな孔明と比べれば幾分かマシだろう。

 

「まぁ、それでも頑張ってもらうしかないです。ファイトです先生」

「なら休みを寄越せ休みを。流石にこれは重労働過ぎる。労働基準法違反だろう」

「えっ。国が滅びてるから法も何もないのでは? 故に無法ってことでこれは無罪ですね先生っ!」

「ちょっと良いこと言った風に言うな! それに、いくらなんでもこれ以上は辛い。一時間ほど休憩させろ」

 

 ようやく起き上がる孔明。

 オオガミは孔明の要求への返答を考え、

 

「まぁ、それくらいは普通に良いけど……というか、食事中とか、寝てる間は自由時間だったような?」

「それはそれだ。働き詰めは集中も続かん。お前も休め。というより、お前が休め。周回しすぎだ」

「しっかり休憩してるつもりなんだけどなぁ……」

「精神的な疲れが溜まってる。気分転換に散策でもしてきたらどうだ。何、その頃にはあの女神も落ち着いているだろうさ」

 

 そう言い、再び孔明が指差した先にいるエレシュキガルは、何故かその場に倒れて、ガゼルに鼻先でつつかれていた。

 

「……助けた方がいいかな」

「その必要はないだろう。むしろ、放っておいて良い。ほら、散歩でもしてこい。その方が効率も良くなる筈だ。根を詰めすぎてもペースが落ちていくだけだからな」

「は~い。行ってきますよ~」

 

 オオガミはそう言って、二人のもとを離れて密林へと入っていくのだった。




 実際はたぶん辛いからというよりも、頼られるのが嬉しくてひたすらやって止め時を見失ってるようにも見えなくもない……


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日常
クリスマスの準備よ(イブから既に始まってる気もするんじゃけどね)


「準備はどう?」

「飾りつけは、まぁ一通りってところじゃな。そっちはどうじゃ」

「こっちも大体終わったわ。というか、エウリュアレさんは何をしてるのよ……」

 

 クリスマスの装飾をしているのは、カルデア待機メンバー。そのメンバーを取りまとめているのはエウリュアレだった。

 

「何よ……手伝おうとしたらこんなことをしろって言ってきたのはBBよ? まぁ、邪魔をするなって雰囲気があったけども……」

「エウリュアレさん、去年何をしたの?」

「何もしとらん筈なんじゃけどなぁ……うむ。何もしとらんかった」

「役立たずだったってこと?」

「そういう意味ではないんじゃけどねぇ……まぁ、儂としてはああやって巡回してもらってた方が楽なんじゃよ」

「難しいのね……何をしたのかしら……」

「あれはマスターが悪いって……うむ、詳細は言えんがな」

「とっても気になるわ……! どうして教えてくれないの!?」

「そりゃ、エウリュアレの視線が、言ったら殺すって訴えててのぅ……」

「……う、迂闊だったわ……」

 

 にっこりと微笑むエウリュアレに、頬を引き吊らせるアビゲイル。

 当然、気付いていたノッブは静かにその場を離れていた。

 

「よぅし。儂はチビ達を誘ってツリーの飾りつけに行くか~」

「わ、私も行きたいのだけど!? ジャックやバニヤンも行くんでしょ!?」

「そうじゃねぇ……まぁ、たぶんそうなるじゃろ。お主は~……生きて帰れたらじゃな」

「私死ぬの!?」

 

 颯爽と逃げ去るノッブに助けを求めるも、既に遠くへ移動しているのだった。

 そして、入れ替わるようにやって来たエウリュアレは、やはり怖いくらいの笑顔を浮かべていた。

 

「別に、何も無かったわよ。えぇ、何も。去年は、今年と同じように限界まで粘って、帰ってきたのが強制退去の数時間前だっただけで。強いて言うなら、マスターが帰ってこなかったくらいかしら」

「……マスターのせいなのね……というか、マスターらしいというかなんというか……強制退去の数時間前って……問題よね」

「まぁ、あのときは今ほど周回用の戦力が足りなかったのもあるし、仕方ないと思ってるわ。えぇ、許さないけど」

「それは、恨まれても仕方ないわよね……うん。仕方ないわ」

「えぇ、そんな感じよ。それと、私が巡回してるのは、単純に戦力外だからよ。去年もそうだったし」

「えぇ……不器用なの?」

「そういうことじゃないんだけどね。ただ、なんでか知らないけど遠ざけられたわ。不思議よね……」

「……まぁ、威厳だけはあるんだもの。仕方ないと思うわ」

「そんな威厳、別に要らないのだけど……」

「マスターのそばにずっといるんだもの。自然とそうなっても不思議じゃないと思うの」

「そういうものかしら……」

「えぇ、そうよ。じゃあ、私も行ってくるわね」

 

 そう言って、アビゲイルはノッブのところへと向かうのだった。




 まぁ、エウリュアレはうちでは性能バグ起こしてますし、是非もないですね。威厳たっぷりです。


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メリークリスマス!!(まぁ、名目だけのただの宴じゃよね)

「「「「メリークリスマス!!」」」」

 

 パパパンッ!! と響くクラッカーの音。

 当然、ボックス帰りのオオガミ達も参加していた。

 

「あぁ、乗りきったのだわ……! これで私も一人前のカルデア職員よね!」

「カルデア職員の条件高くない? あのボックス周回が条件なの?」

「そんなわけ無いですけど……誰ですか、そんな嘘を言ったのは」

「ん。犯人はあっちでチキン取りに行っとる」

 

 ノッブが指差す先にいるのはBB。

 それに気付いたマシュは、素早く盾を取り出してBBに近付くと、BBを背後から叩き潰しに行った。

 チキンに夢中だったBBはそれに気付くのが遅れ、反撃できずにチキンを死守して叩き潰された。

 ノッブはその様子を見て黙祷しつつ、自分用に取っておいたチキンをモグモグと食べる。

 

「ん。孔明達はどうしたんじゃ?」

「それなら、あっちで倒れてるわ。まぁ、あの二人は頑張ってたしねぇ……仕方無いわ」

「まぁ、ずっと連れ回されておったからのぅ……エウリュアレは今回待機じゃったしな」

「そうねぇ……って、気にしてないのだけど? むしろ、連れ回されなくて助かったのだけど……」

「そうじゃな。うんうん。儂分かるよ。うんうん」

「絶対わかってないでしょ。適当に言ってるわよね」

「うむ。そんなもんじゃよ」

「神様の話くらい聞きなさいよ……」

「儂、神殺しじゃし。是非もないねっ!」

 

 ドヤ顔のノッブに、チキンの骨を投げつけるエウリュアレ。

 ノッブはそれを平然とかわし、偶然後ろにいたアナが回避することができずに当たって倒れる。

 持っていた料理は、隣にいたアビゲイルが受け取って大惨事にはならなかった。

 

「危ないのぅ……当たってたら痛いじゃろ」

「当てるつもりだったのに……」

「あの、アナさんが普通に動けなくなっているのだけど……」

「私のせいじゃないわ」

「儂も悪くないな」

「えぇ……」

 

 仕方がないとばかりに触手を使ってアナを医務室まで連れていくアビゲイル。一緒に料理も持っていったので、食べ損ねることはないだろう。

 

「それで、マスターがいつの間にかいないんじゃけど?」

「あぁ、BBの介抱に行ったわ。マシュが容赦なく叩き潰してたし。手伝いに行く?」

「いや、儂はここで食べとるよ。うむ、ピザうまいな」

「そうねぇ……なんというか、美味しいから手の止め時を失うわよね……」

「わりとずっと食えるしのぅ……」

「くはは! 止められるものなら止めてみるが良い!!」

 

 ぼんやりとしていた二人の隣を走り抜けるバラキー。

 その影響で皿が一枚落ち、割れて散らばる。

 それを見たエウリュアレは、笑顔でバラキーを呼び出すのだった。




 オカンなエウリュアレ。

 あ、170箱で飽きたので止めました。リンゴ無くなるぅ。


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ノッブえぐいんだけど!(助けてマスター!)

「ふははははは!! 儂は負けんわぁ!」

「叔母上いつも通り理不尽なんだけど!」

「ふはは! 一騎討ちだノッブ!」

「あぁぁ!? センパイに落とされたぁ!?」

 

 仲良く大乱闘をしている四人。

 茶々が奈落行きになり、BBが吹っ飛んでから始まるオオガミとノッブの一騎討ち。

 

「うわははは! ピンクのボールごときに負ける儂ではない!」

「ふはは! こちとらおやつのために惑星救ったり壊したりする悪魔だぞ! 負けるわけないねぇ!」

「叔母上、爆弾の使い方がやらしいよ」

「ハンマーで彼方に飛ばされたんですけど……えげつなくないですか……?」

 

 殴りあっているようで、投げ合いをしている二人。武器とはどこへ行ったのかと言わんがばかりだが、両者が危険域に入った瞬間に本気で殺しに行く両者。

 一瞬の油断すら許されない緊迫した状況。その直後、

 

「助けてマスター!」

「不味い。私も巻き込まれたのだが。あれはマスター管轄だろう?」

「えっ、何々!?」

「貰ったぁ!!」

 

 突然やって来たアビゲイルとスカディの方に意識を割かれたオオガミは、ノッブの一撃を回避できず、空の彼方へと吹き飛ばされた。

 オオガミが本気で悔しがって頭を抱えたその瞬間、真横を通り抜けて壁に突き刺さる一本の矢。

 振り向くと、何故かお怒りなエウリュアレがいた。

 

「アビー……スカディ……? 二人とも、覚悟は決まったかしら」

「ま、マスターを射ることはできない筈よ! だからマスターを盾にすればあんぜ――――」

 

 ヒュッ! とオオガミの陰に隠れていたアビゲイルの耳元を通り抜けるエウリュアレの一矢。

 アビゲイルとスカディは、震えながらオオガミを本格的に壁にする。

 

「ちょ、何をしたの!? なんであんなにエウリュアレがキレてるわけ!?」

「私たちがお菓子を食べてたら怒ったわ……!」

「全部食べただけなのに……! 全部食べただけなのに!」

「二度も言わなくても分かる! それは怒る! ところで今日のお菓子は何だったの!?」

「シュガーラスクよ。サクサクカリカリで美味しかったわ」

「よしエウリュアレ! 同じのを作るので手を打ってくれない!?」

「……まぁ、いいわ。それと交換よ」

 

 エウリュアレが弓を下ろし、オオガミが立ち上がったところで、アビゲイルとスカディが目を輝かせながら、

 

「助かったわマスター!」

「うむ。ついでに私の分も頼む」

「……後でキアラさんに預けてくるか」

「それだけは止めて!?」

「おやつなしでもいいからそれ勘弁だ!」

「ほ、本気の懇願ですね……」

 

 本気で悲鳴をあげる二人に、BBは苦笑いをするのだった。




 そろそろ今日のお菓子ネタがない……


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マスター製のパフェ(食べられる人って少数なのよね)

「んふふ……マスターのパフェ……!」

「……本当に美味しそうに食べるわね……」

 

 エウリュアレの正面で、美味しそうにオオガミが作ったパフェを食べるエレシュキガル。

 なお、オオガミは今、ノッブの工房で昨日と同じようにノッブ達と遊んでいた。今回は孔明も参戦しているらしい。

 

「周回が終わったら作ってくれるって約束だったから。ちゃんと作って貰ったわっ」

「うんうん。それで、美味しい?」

「えぇ。とっても美味しいわ!」

「そう、それならよかったわ」

 

 そう言って、自分のパフェも食べ進めるエウリュアレ。すると、食堂に入ってくるスカディとアナスタシア。

 

「ん。何やら美味しそうな物を食べているな。私の分はないのか?」

「無いわよ。アイスなら冷蔵庫の中よ」

「むぅ……仕方ないな。取ってくるとする」

 

 そう言って、一人冷蔵庫へと一直線に向かっていくスカディ。

 そして、アナスタシアはエウリュアレ達の方へと近付くと、

 

「いつもの、マスターが作ってくれたパフェかしら」

「えぇ、そうよ。まぁ、作った本人は遊びに行ったのだけど」

「そうよねぇ……だから作れないのでしょうし」

「作れなくはないでしょうけど、まぁ、エミヤが作ることになるかしら。もしくはキャットね」

「そう……いいわね。私も一度食べてみたいのだけど、そんなに作られないものなのよ?」

「えっ、ほ、本当に? 普通に提案してきたから、よくあることだと思ったのだけど……それに、クリスマスのパーティーの時に、よく分からない金色の器を5つ貰ったし……」

「……金色の器?」

「え、えぇ。とっても魔力のこもった器なのだわ。一応部屋に置いておいたのだけど……やっぱり貴重なものなのかしら……」

「……いつの間に聖杯を持ち出してたのかしら。後でマシュにバレたら大惨事でしょうに」

「そ、そんなに大変なものだったの!? ど、どうしようかしら……!」

 

 エウリュアレの反応にあたふたと慌て出すエレシュキガル。

 それを見て、エウリュアレはため息を吐き、

 

「別に、貴女が気にすることじゃないわ。むしろ、マスターが適当すぎるのよ。聖杯を勝手に持ち出して、気付いたら使ってるし……」

「今のところ、誰に使われているの?」

「……そうね。私、アナ、アビー、バラキー。そして、今回判明したエレシュキガルね。合計で……28個使ってる?」

「結構使ってるのね……」

「むしろそんなに手に入って良いものなの!?」

「まぁ、そこは例外というか……色々あるのよ」

「そ、そうなのね……」

「とりあえず、聖杯を盗んでもバレなさそうよね」

「それだけは本当に止めといた方がいいと思うわ……」

 

 そうして、三人はスカディが戻ってくるまでそんな話をしているのだった。




 あ、さりげなく聖杯をエレシュキガルに使ってます。周回アタッカーMVPですからねっ!


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ようやくボックス開けが終わったぁ(結構色々集まったわね)

「……結構な量になったわね……」

「でも、たぶん足りなくなるよね……」

 

 山のように積み上がったQPと種火を見て、苦笑いをするエウリュアレとオオガミ。

 マシュは笑顔だが、ここまで集める過程で発生した種火処理に、素材がいくつか持っていかれたため、不足しているのがあるというのを彼女はまだ知らない。

 

「それで、これはしばらく放置?」

「するしかないでしょ。使いどころないし」

「まぁ、全員育てられる訳じゃないしね。というか、逆鱗、大丈夫?」

「……まぁ、ギリギリかな。むしろ、個数的には心臓の方が無いんだけども」

「それはそれよ。いつも言ってたメルトリリス貯金の話をしてるのだけど」

「分かってるよ……だから、逆鱗はギリギリって言ったの。うん。本当にギリギリ。だって、メルトリリスで使ったらピッタリ無くなる」

「大問題なんじゃ……?」

 

 エウリュアレが不安そうな表情で言うと、オオガミは真面目そうな表情で、

 

「うん。ついでに言うと、伝承結晶が足りないからピンチ。スキルマ出来ない」

「そうね、大問題ね。バカじゃないのかしら。イベント無いのにもし元旦に来たらどうするつもりだったのかしら」

「は、反論できない……って、なんでエウリュアレがメルトを引けるかの心配してるの……?」

「っ……別に、この無駄に貯まってる種火とかを消費できる絶好の機会だもの。貴方は嬉しくて、私は心を痛めなくて、そしてきっとマシュも許可を出してくれるだろう、そういう計画よ。問題あるかしら」

「な、なるほど……確かに、常日頃からメルトの事を言っているんだから、マシュだって許してくれるはず……! うんうん。これなら完璧――――って、あれ? 今、心を痛めなくて済むって言った? なんで心を痛めるの……?」

 

 何か今おかしいような言葉が聞こえたような? と首をかしげるオオガミに、エウリュアレはキョトンとした顔で、

 

「別にそんなこと言ってないけど?」

「あれ? 聞き間違いかな……まぁ、マシュが殴ってこないなら完璧。とりあえず召喚したときのためにカメラを用意しておかなきゃ……」

「……何言ってるのかしらこのマスター」

 

 何かを決心したような表情をしているオオガミに、エウリュアレはジト目で返す。

 

「さてと。それじゃあ、食堂に戻ろうか。今日のおやつは何かなぁ」

「エミヤ製のチョコチップクッキーよ。美味しかったわ」

「……エウリュアレは要らなそうだね」

「もちろん私も食べるに決まってるでしょ」

 

 オオガミの脛を蹴り、軽やかな足取りでエウリュアレは前を歩くのだった。




 ふぅ……久しぶりにこの二人しか出ないのを書いた気がする。


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宴か。宴の準備か?(短期間で二度目のパーティー……?)

「……残り三日かぁ」

「ん。宴か。大晦日に向けての宴の準備か?」

「宴!? なら、茶々叔母上の敦盛見た~い!」

「死亡フラグ立つからダメじゃ」

「えぇ~……ちぇ。仕方ないからBBに愚痴ってこよ~っと」

「今行くのはおすすめしないんじゃけど……」

「……誰も宴をするって言ってないと思うんだけど……」

 

 文句を言いながらBBの工房へと向かった茶々を不安げに見守るノッブと、そもそも人の話を聞く気無いなコイツら。と悟るオオガミ。

 そして、オオガミの背中に寄りかかっていたエウリュアレは、

 

「パーティー、しないの?」

「え、エウリュアレまで……いや、いいけどさ……」

「なんじゃよ……儂が言っても微妙そうな顔しとったのに、エウリュアレが言うと一発か」

「別にエウリュアレが言ったからって意味じゃなくてさ。クリスマスにパーティーして、一週間ちょっとでもう一回やるの? って思って。準備する?」

「ん~……そうじゃのぅ。そういや、アビーがチビノブ持っておったよな。借りてくるか」

「手伝わせるの?」

「まぁ、頑張れば手伝ってくれるじゃろ。そうと決まったらすぐ行動じゃな。レッツゴー!」

 

 そう言って、工房を出てアビゲイルの部屋へと向かうノッブ。

 

「……行っちゃったわよ?」

「行っちゃったねぇ……え、なに、なんかあった?」

「いえ、BBにも言っておいた方が良いんじゃないの?」

「あ~……確かに。だけど、さっき茶々がBBの工房に行くときに、ノッブがおすすめしないって言ってたんだけど、どういう意味だと思う?」

「それは……そうね、覗いてみた方がいいんじゃないかしら」

「えぇ~……いや、良いけどさぁ……」

 

 そう言ってオオガミが立ち上がると、寄りかかっていたエウリュアレは支えを失って倒れる。

 

「……だから言ったのに」

「……分かってたなら言いなさいよ」

 

 エウリュアレに睨まれたオオガミは、ため息を吐きながらエウリュアレに手を伸ばす。

 エウリュアレはその手を取り、起こしてもらうと、近くの椅子まで歩いていって、座る。

 

「全く……行ってきていいわよ」

「はいはい。行ってきますよ」

 

 そう言ってオオガミはBBの工房への扉を開き、

 

「ぎゃああああぁぁぁぁぁ!! やめてぇぇぇ!!」

「ふふふ……新作BBスロットの試運転を受けてくださいっ!」

「ちょ、あ、ま、マスター! 助け」

 

 パタン。と扉を閉じて見なかったことにするオオガミ。

 しかし、防音性がかなり高いんだな。と改めて認識したオオガミは、その防音性に感謝しつつ、そそくさと扉から離れる。

 

「あら、どうしたの?」

「いや、BBへは後で良いかなって。うん。後で良いかな」

「そ、そう……早めにしておきなさいよ」

 

 オオガミは椅子をとってきてエウリュアレの隣へ行き、座り込んで脱力するのだった。




 そういえば……今日、コミケ初日だったんですね……いえ、今年は行かないから良いんですけどね。
 平成最後なのに……っ!


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チビノブは働き者(わ、儂も働くからな……?)

「ノッブゥー!」

「ノブブ! ノブ、ノッブー!」

「……めっちゃ真面目に働いてる……」

 

 年末のパーティーを準備するカルデアメンバーと、ノッブがアビゲイルから借りてきたチビノブ達。

 彼(彼女?)らは、現状一番働いているのではないかというくらい頑張っていた。

 

「これは、待遇を変える必要があるんじゃ……?」

「おいマスター。何故儂を見る」

「……さらばノッブ……」

「マジかっ! 今の一瞬で儂要らん子か! 嘘じゃろ!?」

「お疲れ様だよ叔母上っ!」

「茶々!? 縁起でもないんじゃけど!?」

「ノッブが見捨てられたなら、私が貰っていきますね! 下僕として働き続けてもらいますっ!」

「絶対嫌なんじゃけど!?」

 

 チビノブの優秀さにリストラされそうなノッブだったが、引き取り先はいるようなので安心できる。

 本人は本気で悲鳴をあげているが。

 

「さて。まぁ、なんだかんだ言って皆乗り気で良かったよ。そうじゃなかったら出来ないからね。特に料理班とか」

「クリスマスイベントの時に集めた食料が残っているからね。ついでに正月料理も作っておくとするよ」

「任せろ。キャットが本気を出せば三が日を乗り切れるほどのおせち料理を用意することも可能……だが、それだとキャットは二日も料理を作らないことになり存在意義を失うので一日で消費しきってもらう。慈悲はないと知れ」

「キャットが恐ろしいんだけど。仕方ないから残ったらノッブに食べてもらおう」

「えっ! エウリュアレじゃなく儂か!? 最近儂への当たり強い気がするんじゃけど!?」

 

 一体何をしたと言うのか。そう言わんがばかりのノッブだが、遠回りなBBの攻撃なので、それに気付くまではノッブはこのままだろう。

 

「ん。そういや、エウリュアレは?」

「あぁ……現場監督とか言ってサボってたから、向こうでジャック達と一緒に飾りつけを任せてるよ」

「あぁ……やっぱサボってたんか……クリスマスの時もサボっておったからなぁ……基本マスターの言うことしか聞かんから助かる」

「なるほど……まぁ、言うことを聞いてくれるようなキャラしてないしねぇ……」

「もう諦めとるからいいんじゃけどね?」

「ん~……まぁ、やってくれるように言ってみるよ」

「うむ。期待せんで待っとるわ」

 

 そう言って、その場を離れるオオガミ。

 ノッブ達はその姿を見送ったあと、

 

「さてさてノッブ。お仕事の時間です。逃がすつもりはないので観念して働いてくださいね?」

「わ、儂はチビノブのメンテが――――」

「大丈夫です。食事関係は全部マシュさんとアビゲイルさんがやってるので。ほら、行きますよ」

「い、嫌じゃああ! 儂は行きたくない! サボりたい!」

「却下します♪」

 

 そうして、ノッブは悲鳴をあげつつ、BBに連れ去られるのだった。




 さて、大晦日に何をしようか……


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騒げよ騒げ。大晦日の宴だぁ!(あ、ストッパー呼んでおきますね)

「うわははは! 今年は騒ぐぞぉ!」

「えぇ! 去年の強制退去を乗り越えた私たちに怖いものなんて無いです!」

「強制退去……クリスマス……くっ、頭が痛い……何やら去年、呼び出されてすぐに何かが起こったような……(オレ)に何があった……!」

「それ、一日退去させられた可能性があるのだわ……御愁傷様」

 

 騒ぎ出すノッブ達と、頭を抱えて思い出そうとするギルガメッシュと、哀れみの目でそれを見るエレシュキガル。

 開幕からカオスだった。

 

「ふふっ。ドタバタな年末というのも良いわね。去年は気付いたら新年だったし。最初の年越しはこんなに人数いなかったしね」

「だねぇ……あ~……今年はエリちゃんライブ聞いてないから久しぶりに聞きたくなってきたかも」

「自殺したいなら一人でやってね。ネロも送りつけておきましょうか」

「あ~……ありかもしれない」

「……正気を失ってないかしら……」

 

 しばらくの間聞いていなかったので、思い出に昇華されたからなのだろうか。あの地獄ライブをしようと言っているオオガミに頬を引き吊らせるエウリュアレ。

 

「っと、年開ける前に蕎麦を取りに行かなきゃ」

「あぁ……貴方の国の風習だったわね。でも、最初の時は食べなかったわよね」

「まぁ、余裕も無かったし、何よりも料理担当がいなかったし。今年は人がいて助かるよ」

「そうねぇ……あ、私も手伝うわ。そうすればつまみ食いも……ふふふっ」

「……そう言えば、去年エミヤに吊し上げられてた戦国武将がいたよね……」

「あぁ……彼女は、バカだったのよ……」

 

 それは去年のクリスマスの事なのだが、誰も突っ込まない。

 そんなことを言いながら厨房へと向かっていくオオガミとエウリュアレ。

 

「あぁ、マスターか。ちょうどいい。この蕎麦を持っていってもらっていいか?」

「うん。そのつもりだったし。天ぷらは?」

「今やっている。出来たらすぐに持っていくから、食べたい者から食べていっていいぞ」

「はーい」

 

 エミヤに蕎麦と蕎麦汁を渡され、エウリュアレと一緒に持っていくオオガミ。

 

「あ、私も手伝うわマスター」

「ん、アビー。後から天ぷらが来るから、そっちを手伝ってもらってもいい?」

「わかったわ。行くわよジャック! バニヤン!」

「「おー!」」

 

 そう言って、走っていくアビゲイル達。

 

「ふぅ……なんだかんだ言って、皆楽しめてるみたいで良かったよ」

「えぇ、そうね」

「あぁ、良かったよ。おかげで僕の出番は無さそうだ」

 

 その一言に凍り付く二人。振り向くと、そこにはエルキドゥがさりげなくいた。

 

「やぁ、久しぶりだねマスター」

「……いつの間に……?」

「さっき、マシュ嬢に呼ばれてね」

「あ、あぁ……マシュめ、何て事を……」

 

 そう言って、オオガミは遠い目をするのだった。




 大晦日要素? さぁ……どこ行ったんでしょうね……


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雀のお宿の活動日誌~閻魔亭繁盛記~
明けましておめでとうございます!(まぁ、今年も遊び暴れるだけだよね)


「明けましておめでとうございます! 今年もよろしく!」

「はいはい、よろしくね。あ、新年初サーヴァントの私よ」

「なんでさりげなく新年初サーヴァントがエウリュアレなんじゃ! わざとか!?」

 

 オオガミによる新年の挨拶と、さりげなく新年で初再召喚されたとドヤ顔をするエウリュアレ。

 当然ノッブは文句を言い、そして、

 

「で、そこの新鯖は?」

「あ、私? 私は宮本武蔵。さっき呼ばれたわ。気軽に武蔵ちゃんでいいわ。よろしくね」

「う、うむ……いや、それもそうなんじゃけど、問題はマシュは知っとるのかってことじゃ。知らんかったら儂らも巻き込まれる気がするんじゃけど」

「ちゃんと許可を貰ってるよ。隣にいたし。おかげでカメラを隠しておくことになったんだけど、使う状況にならなかったから、用意したのも隠したのも無駄になっちゃった」

「ほぅ……? まぁ、カメラを用意した意味は分かるんじゃけど、隠したままか?」

「……バレる前に回収しないと……!」

「ということで、回収してきたわっ!」

「なんでアビーはすぐに見つけられたの!?」

「だって、マスターの隠し場所なんて大体想像がつくもの。後は一斉に探せばあっという間よ!」

「サーヴァントの力を使ったゴリ押し……!!」

「だってそれが一番簡単だもの! それにマシュさんにもバレないわ!」

 

 自信満々に言うアビゲイルに、頬を引き吊らせるオオガミ。

 何よりも、隠し場所の予想がたてられている辺りが特に不味かった。

 

「ま、まぁ、隠し場所は後で他のを考えておこう……とりあえず、マシュの準備が終わるのを待とう……」

「ん……なんじゃマスター。何処に行くんじゃ?」

「どこって……い、慰安旅行……?」

「ほぉぅ……? 儂ら聞いてないんじゃけどなぁ……?」

「あ、あはは……まぁ、秘密裏にってやつだよ」

「なんじゃそれは! 儂も誘え!!」

「嫌だ! 絶対休まらないじゃん!」

「うむ! 休ませるつもりないしな!」

「じゃあ誘われるわけないよね!?」

 

 争うノッブとオオガミ。

 エウリュアレはそれを見つつ、

 

「……旅行に行くなら、貴方も準備が必要なんじゃないの?」

「あぁ、うん。それはもう終わってるんだよ。だからマシュ待ちってこと」

 

 そう。とエウリュアレが呟いたとき、部屋に入ってくるマシュ。

 

「終わりましたよ先輩! 行きましょう!」

「元気にやって来たねマシュ。うん、それじゃあ行こうか」

「えぇ! 久しぶりのレイシフトです。実験とはいえ、楽しみですね!」

「まぁ、あっち行ったりこっち行ったりで遊んではいるけどね」

「それはそれです。さぁ、早く行きましょう!」

 

 そう言って、マシュはオオガミの手を引いて走り出すのだった。




 年明けイベントはエグい……あ、メルトリリスは出ませんでした(発狂


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温泉を開かなきゃ(木材を集めてくださいね先輩!)

※雀のお宿の活動日誌~閻魔亭繁盛記~ のネタバレ注意!











「ん~……木材が足りないなぁ……」

「じゃあ集めに行きましょう先輩。あ、私は掃除してますね」

「あ、ついてきてくれる訳じゃないのね……」

 

 慰安旅行なんてものは無く、いつの間にか旅館で働く状況に、別段違和感を覚えない二人。

 仕事の分担も、マシュがサクサクと決めていくので困るところはなかった。

 なので、今日も施設増設のために必要な木材が足りないことに苦い表情になるオオガミに、マシュは笑顔でやることを教える。

 

「さて、また山に行かないとかぁ」

「あ、温泉も解放しないとですよ。むしろ温泉メインでお願いしますね!」

「入れるかは分からないけどね……?」

「でも、無かったら入れる可能性はゼロなのでやはり必須ですよ。早くしてください先輩!」

「先輩使いの荒い後輩に育ったなぁ……うんうん。先輩はちょっと悲しいよ」

「先輩がこうしたんじゃないですか。じゃあ、お願いしますね」

「はいは~い」

 

 そう言って、マシュの要望に応えるために森へ向かっていくオオガミ。

 そして、それを遠目で見つつ待っていた孔明は、大きくため息を吐き、

 

「また私か。休ませてくれるつもりはないみたいだな……」

「あはは……まぁ、温泉が出来たらゆっくりしてください。すぐ呼びますけど」

「ゆっくりさせるつもりないだろ。まぁ、もう諦めているから良いんだが……温泉だと男女が別れるだろう。その場合、私は女湯の方へ行けるわけないからな」

「俺だって行けませんよ。向こうの戦いは女性陣に任せるしかないじゃないですか……エウリュアレ呼ばないと……」

「……本当に信頼しているな……マシュではダメなのか?」

「マシュは……そうだね。マシュでも行けるか。うん。むしろマシュの方が安全かも。うん。マシュに任せることにしよう」

「……何も考えてなかっただろう」

「……ノーコメントです」

 

 目を逸らすオオガミに、孔明はまたため息を吐き、

 

「戦いから遠ざけるのは良いが、なんだかんだ言って手伝いたいところはあるんだろう。たまには任せてみても良いんじゃないか」

「ん~……いや、それで周回を任せるのもどうかと思うんですけど」

「……そう思うのなら、私を休ませても言いと思うのだが」

「そこは諦めてください」

 

 どうあがいても孔明は周回に連れ回される運命らしい。

 

「……さっさと済ませて帰るとするか」

「えぇ、諦めが肝心ですよ孔明先生」

「お前がイベントを諦めれば済む話だろうがっ!」

 

 オオガミは孔明の話を聞き流しながら、山へと向かうのだった。




 温泉の怨霊に笑いをこらえられなかった……本人連れていこうか悩んだ私です。


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普通に大変なイベントなのでは?(休めるようになるまで働くしかないですよ先輩)

※雀のお宿の活動日誌~閻魔亭繁盛記~ のネタバレ注意!













「……なんか、このイベント普通に辛くない?」

「先輩……慰安旅行ってなんでしょうか」

 

 もはや休憩も何もなく、ほとんど働き詰めだった。

 まるで最初からこうなる運命だったかのようで、おそらくその通りなのだろう。

 

「うん、まぁ、温泉も解放したし、天守閣へも行けるし、屋上庭園も作ったし、遊技場も出来たしで遊べると思うんだ。うん。ある程度余裕が出来たら遊びに行こう。満喫しよう」

「はい。私はそのために全力で頑張ります……!」

 

 そう言って、それぞれの仕事場へと向かう二人。

 そこへスカディがやって来て、

 

「とても不思議なのだが、なぜ私は温泉で杖を振るわねばならないのだろうか。なぜさりげなく周回をさせられているのだろうか。とっても不思議なのだが」

「それはほら、スカサハ様は優秀ですし……まぁ、マシュがいないときは休憩できると思いますけど……」

「そ、そうか……まぁ、クリスマスの時はなにもしなかったからな。許容しよう……孔明は休んでいるか?」

「今温泉で休憩してますよ。いえ、周回とかではなく」

「そうか……それはよかった。奴に倒れられると今度は私に回ってくるからな……」

「あ、そっちの心配……」

 

 休んでいる孔明を労うかと思っていたら、仕事がこっちの回ってこないようにビクビクしているだけのようだった。

 それに気づいたオオガミは苦笑いをし、

 

「まぁ、そのうちですよ。今はのんびりしててくださいな」

「あぁ……そうしておく。私は遊技場に何があるのか見に行ってくる」

「行ってらっしゃい」

 

 そう言って、手を振ってスカディを見送るオオガミ。

 見えなくなった辺りでまた仕事場へと向かっていく。

 

「あ、ようやく見つけました」

「普通に歩いてたら見つかったわね……」

「だから無理に探す必要はないと言ったでしょう」

「えっと……何か用事でも……?」

 

 オオガミがばったりと出くわしたのはゴルゴーン三姉妹こと、ステンノ、エウリュアレ、アナの三人。

 ステンノはおそらくこの温泉騒ぎの間に呼び出されたのだろう。

 

「用事ってほどでもないのだけど……屋上庭園って言うのを見てみたくて。案内してくれるかしら」

「屋上庭園……あぁ、分かりました。ではこちらへ」

 

 そう言って案内を始めるオオガミの後ろを三人は歩きつつ、

 

「それにしても、敬語で話されるとどこかむず痒いわ」

「まぁ。仲が良いのね」

「エウリュアレ姉様はいつもマスターと一緒にいますし……」

「そ、そんなことないわよ……」

「ふふっ。(エウリュアレ)が照れるだなんて、珍しいわね」

「照れてはないのだけど。変なことを言わないでよ(ステンノ)

「ふふっ。ごめんなさいね」

 

 そんなことを後ろで話されているオオガミは、何とも言えない複雑な気持ちなのだった。




 普通に大変なイベントなのでは? 周回大変ですし、周回何度は上がっても効率が上がってる気がしないし……ふ、不思議すぎる……


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とりあえず一段落かなぁ(リンゴ無しで最終日前日まで頑張る)

「ふぅ……一段落ってところかぁ……」

「リンゴは使うな。もう無くても最低限は回れるだろう」

「最終日前日までは温存しておくよ」

 

 そう言って、客室で倒れているオオガミ。

 孔明はそれを見てため息を吐くが、

 

「なぁ、私にアイスを買うQPをくれないか」

「えっ……もう無くなったの?」

「あぁ。振っても出てこない」

「アイスだけでそんなに消費できるわけ……」

「小さき子の分も買っていたからな。気付いたらすっからかんだ」

「あぁ……なら仕方ないかぁ……」

 

 そう言って、オオガミは何故かマシュの管轄になっている自分の財布からQPをスカディに渡し、

 

「これが限界ですよ。これでやりくりしてね」

「うむ。頑張る」

 

 すたすたと走り去るスカディを見送ると、孔明は呆れたような顔で、

 

「良かったのか?」

「ん~……まぁ、周回分の特別手当てということで」

「……その場合、私は無いのか?」

「孔明先生は……ゲームします?」

「……遊技場にあっただろうか……」

「行ってみて考えましょうか」

 

 そう言って、オオガミと孔明は遊技場へ向かうのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ハッ……先輩が遊んでいる気配……!」

「なんでそんな敏感に察知してるのよ……」

 

 なにかを感じ取ったマシュにため息を吐くエウリュアレ。

 人の事を言えないだろう。という突っ込みを入れる者は誰もいなかった。

 

「というか、エウリュアレさんは何をしてるんですか?」

「いえ……何でかわからないのだけど、アナや(ステンノ)といると弄られるのよね……私が何をしたのかしら……」

「何をしたというより、常にマスターと一緒にいるからじゃないですかね……」

「なんでそれだけで弄られるのよ……解せないわ」

「まぁ、本人は気付かないことが多いって言いますしね。他人から見ると面白いみたいです」

「ふぅん……あ、その窓拭き手伝う?」

「いえ、一応仕事なので……」

「そう……」

 

 エウリュアレとしては、手持ち無沙汰なので手伝わせて欲しかったわけだが、マシュ相手にはあまり強く出れないので諦める。

 

「ん~……何かないかしら。やれること」

「そうですね……温泉とか、屋上庭園とかどうですか?」

「屋上庭園はもう行ったからいいわ。温泉……まぁ、温泉にしましょうか。そっちの方が良さそうだもの。一緒には入れる人はいるかしら……」

「アナスタシアさんや信長さん達を誘えば良いんじゃないでしょうか」

「そうねぇ……じゃあ、そうするわ。じゃあね」

「はい。また後で」

 

 そう言って、エウリュアレはアナスタシア達を探しに行くのだった。




 サボりに厳しいマシュ姐さん。


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アヴァロンから出張してきたよ(最近聞いてないな王の話)

「やぁマスター。久しぶりのアヴァロンからの出張だよ」

「出たな妖怪王の話マシーン!」

「人聞きの悪いことを言わないで欲しいね!?」

 

 顔を見た瞬間の一言に頬を引き吊らせるマーリン。

 むしろ、王の話をさせているのはオオガミの方である。

 

「まぁ、最近王の話は全然聞いてないんだけども」

「なんせ呼ばれてすらいないからね。そろそろお役ごめんかな?」

「まさか。瞬間火力は期待してますよっ!」

「えぇ……」

 

 目を輝かせて言うのをオオガミに、マーリンは困ったような顔をする。

 

「それで、何のご用でしょうかお客様」

「突然接客モードになってもついていけないんだけど……いや、そもそも特に用はないよ?」

「そうですか……では、温泉とかいかがでしょう。リラックス出来ると思いますよ?」

「そうだね……って、なんだろう。俗に言う過労死組はほぼ全員温泉に向かってないかい?」

「いやいやそんなわけないじゃないですかほら早く行きましょうそうしましょう」

「やけに温泉を推すね!?」

 

 まるで何かを企んでいるかのごとき行動だが、本人は特になにも考えないで行動していたりする。

 あえて理由をつけるとするならば、まとめておけば呼び出すときに楽になる、というくらいか。

 

「マーリンさん。それ以上の詮索は地獄に落とします」

「脅してきたよこのマスター! あと地獄って何さ! 本来の意味通りではないって言うのはわかったけど!」

「エリちゃんライブ18時間耐久レース行きます? あ、ネロの飛び入り参戦オプションもつきますよ」

「良し分かった温泉に行くとしよう」

 

 そう言うと、マーリンはさっさと温泉へ向かっていった。

 オオガミはそれを見送ると、

 

「ふぅ……暇人おじいちゃん撃退っとこれで掃除に戻れる。気付いたら王の話をしだすからなぁあの人」

「なんだよマスター。働いてんなら一声かけてくれって。笑いに来てやったのに」

「……別な意味で面倒なのが来た……」

 

 マーリンを撃退したオオガミの後ろには、いつの間にかアンリが立っていた。

 

「……何しに来たの」

「おいおいこっちは客だぜー? もうちょっと口調気を付けた方がいいんじゃねぇのー? ま、敬語使われても怖いだけだからそのままで良いけどさ。んで、用事だっけ? 別にないけど来た。ついでに温泉はもう行ったから良いや」

「……天守閣とかどう? アビーも呼ぶよ?」

「さてはオレを排除したいんだろマスター」

「呼ばれて飛び出て私よマスター!」

「ほれ見たことか来たじゃんか!」

「名前呼んだだけなんですけど!?」

 

 地獄耳か、もしくは特殊センサーでもつけているのかと言わんがばかりの登場に、オオガミもアンリも困惑しながらアビゲイルを見るのだった。




 最悪高難易度もスカディ様で事足りるので高難易度ですら呼ばれなくなってきたマーリンさん。もう王の話は聞けないのだろうか。


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温泉は良いよね(とりあえずそこの覗き魔は倒しておくべきじゃないだろうか)

「ん~……温泉は良いよねぇ……」

「そうだな……とりあえず、あそこの覗き魔を退治した方がいいんじゃないか?」

「……レッツゴー巌窟王」

「共犯者よ。その呼ばれ方はかなり不本意だが……まぁ良い。請け負った」

 

 巌窟王はそう言うと、どうにかして覗けないかと頑張っているアンリが吹き飛ばされる。

 

「な、何て事をしてくれやがるマスター……夢の扉が遠ざかるだろうが……」

「それでこの前一撃退場してた人が何を言うんですか。隣は夢の国かもしれないけど、覗いた瞬間地獄へ早変わり。血の海に沈むことになるよ」

「その程度で止まってたら男じゃないだろマスター。とりあえず全力で行って、んで盛大に見つかって血の海の中に沈むとしても一瞬の天国と引き換えなら仕方のないことだと満足して死ぬ。これしかねぇだろ!」

「想像斜め上だけど面白いから許す! あとでBBとアビーに報告しておくね!」

「正気かマスター! その二人は明らかにダメだろ!」

「ノッブじゃないだけマシだと思うんだなアンリ!」

「ロマンが分からねぇのかこのマスター!」

 

 アンリはひたすらに言うが、オオガミは過去にやろうとして未然に防がれた上に殺されかけた思い出があるので止めているのだが、そろそろアンリも痛い目にあってもいいんじゃないかと思ってきた。

 

「うん。わかった。仕方ないからまずはアンリを斥候に出そう。頑張るんだぞアンリ」

「お、おぅ……唐突になんだよ気持ち悪いな……」

 

 そう言って、オオガミの事を気にしながらも、とりあえず突撃するアンリ。

 しかし、次の瞬間無数の鎖がアンリを拘束する。

 

「だから言ったのに……」

「いやぁ、今日もエルキドゥは元気にやってるねぇ」

「……日常なのかこれは……」

 

 ため息を吐くオオガミと、楽しそうに眺めるマーリン。そして、まるで気にしている様子がない二人に困惑する孔明。

 宙吊りにされているアンリは、もがいていたが、突如温泉に投げ込まれる。

 

「あっ、ちょ、波がでかおぶぁ!」

「あ~……これは怒られそうだねぇ……」

「……思いっきりタオルが流されたんだが」

 

 波に飲まれて湯船の端まで流され、マーリンは平然と回避して、肩まで浸かっていた孔明は正面から波を受けてずぶ濡れになりつつ、タオルが流されたことを怒っていた。

 そして、温泉に叩き込まれた本人であるアンリは、静かに沈んでいた。

 

「……とりあえず、アンリを投げ出そうか」

「同意する」

「息してそうにないんだけど、大丈夫かい?」

「……踏んだら起きるんじゃない?」

「強引だなぁ」

 

 そう言いつつ、オオガミ達はアンリを温泉の外に運び出すのだった。




 エルキドゥという最強セコムが来た時点で覗きなんてできないのです。悲しいかな……


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なんか手伝うことはあるかい?(流石に一人じゃできないや)

「……手伝うか?」

「……お願いします、新シンさん」

 

 そう言って、建築用の木材を渡すオオガミ。

 新シンはそれを受け取り、打ち付ける場所に添える。

 

「流石に一人でやるのは無理があると思うぜ?」

「ん~……頑張れば行けるかなぁって思ったんだよ。結果はこれだけど」

「だろうなぁ……大工じゃないんだから無理するなって。ま、その分の給料は要求するけどな」

「……まぁ、出来る範囲なら」

「そうやってなんだかんだ了承してくれるところ、嫌いじゃない。さてと。そんじゃ、サクッと終わらせるとしますか」

 

 新シンはそう言うと、どこからか金槌を取り出して、オオガミと同じように、しかし数段早く終わらせる。

 

「そういえば、何を要求するつもりなの?」

「いやなに、少しで良いから遊べないかと思ってな。チビ共に頼まれたら断るわけにもいかないだろ?」

「あ~……納得。確かに断れないや」

「俺が代役をするのも考えたんだが、俺は俺で役割があるらしいからな。こういう手段に出るしかないわけだ」

「ふむふむ。まぁ、この後は時間あるし、全然大丈夫だけど、誰がいるの?」

「ん? あぁ、俺に依頼してきたのは本を持った子で、後は、バニヤンとジャックと、サンタ服の子だな。後は分からん」

「ふむふむ……まぁ、想定内の四人組だね。よし、補修もこれくらいで良いか。行くよ新シンさん」

「おぅ。って、突然飛び降りてくるなっ!」

 

 新シン目掛けて飛び降りてきたオオガミを咄嗟に受け止める。

 とはいえ、受け止めてから、もしかして受け止めなくても大丈夫だったんじゃないかと思う新シン。

 

「ふぅ……新シンさんに受け止めて貰えなかったら瞬間強化して受け身を取るしかなかったよ」

「やっぱり受け止めなくても無事だったか……でも、あの降り方は危ないから止めてくれ。心臓が止まるかと思った」

「あはは……まぁ、新シンさんなら受け止めてくれると思ってたし。次はちゃんと言ってから降りるよ」

「いや、そもそも飛び降りして欲しくないんだが……」

「善処するよ。うん。前向きに」

「絶対やらないやつだろそれは」

「……まぁね」

「はぁ……後でマシュに報告しておくか」

「それは止めて。やめるから」

「お、おぅ……マシュは強し、というところか。あのマスターがここまで大人しくなるってのは、面白いな」

「正直洒落にならないから……」

 

 面白そうに笑う新シンと、苦い顔をしているオオガミ。

 二人はその後片付けてから、子供たちのもとへと向かうのだった。




 お久しぶりな新シンさん。あと忘れ去ってるのは誰がいるかな……


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吾は犬ではないぞ(別にそんなつもりはないけどね?)

「ほいっ」

「はぐっ!」

 

 投げられた饅頭を口で見事に受け止めるバラキー。

 そして、よく噛んでから飲み込むと、不満そうな顔で、

 

「さては汝、吾の事を犬かなにかと勘違いしてないか?」

「いやいや。そんなことないって。ただ、うまく食べるものだから面白くなってきちゃって」

「流石に食いにくいのだが。あと茶をくれ。喉が乾いた」

「はいはい。用意はしてるよ」

「……本当に準備が良いな汝は……」

 

 そう言いつつオオガミからお茶を受けとると、一瞬ためらったあと一気に飲み、そのまま倒れる。

 

「なんでためらったのに飲んだの!? 熱いでしょ!?」

「い、行けると思ったが、予想より熱かった……吾、しばらく休む……」

「何をしに来たのさ……」

 

 思いっきり火傷をしたバラキーにため息を吐き、そもそも何故ここに来たのかを聞くオオガミ。

 バラキーは少し考えたあと、

 

「さっきまで暴れていたんだが、あびげいるに捕まってな……何故か叱られ、触手で殴られまくったからここに逃げてきた」

「あぁ……なるほど。よし、じゃあ軽く旅館内を歩いてみよう。面白いものもあるかもだし」

「……まぁ、汝がどうしてもというのなら、吾も行かないことはない」

「じゃあ、どうしても。行こうよバラキー」

「ふふん。汝は仕方のないやつだ。鬼の頭領たる吾がついててやらんとな」

 

 そう言うと、先程のやけどはなんだったのかと思うくらい元気になるバラキー。

 オオガミは苦笑しつつ、バラキーを連れて歩き出す。

 

 

 * * *

 

 

「あ、あらマスター。奇遇ね」

「あ、エレちゃん。どう? 楽しめてる?」

 

 廊下で偶然会ったエレシュキガルに声をかけるオオガミ。

 すると、エレシュキガルは目を輝かせて、

 

「えぇ、とっても! 温泉も屋上庭園も天守閣からの景色もとっても良かったわ――――ハッ! い、いえ、私の冥界も負けてないけどね!?」

「うんうん。楽しめてるみたいで良かったよ」

 

 途中から自分の冥界のアピールを始めたが、ともかく楽しんでいることが確認できたオオガミは頷く。

 すると、エレシュキガルはオオガミの後ろに隠れて自分の事をじっと見つめるバラキーに気付く。

 

「(な、なんなのかしら……とっても見られているのだわ……もしかして、私なにかおかしいかしら!? 昨日は遊びすぎて遅くまで起きちゃってたから朝起きるのが遅くなって準備もちょっと雑になっちゃったのがバレてる!? いやそんなまさか……でもでも、可能性はあるのだわ! あぁどうしよう……)」

 

 と、突然赤くなったり青くなったり首を振ったりと不自然な動きを始めたエレシュキガルを見て、オオガミは微笑むと、

 

「この時間帯は人がいないから、温泉を占拠できると思うよ。行ってみたら?」

「そ、そうなの!? それなら昨日試せなかった温泉でアイスを食べるって言うのも出来るかも……用事が出来たから行ってくるのだわーっ!」

 

 エレシュキガルはそう言うと、走っていってしまう。

 そして、それを聞いてたバラキーは、

 

「汝。本当に人はいないのか?」

「実際は分からないけどね。エルキドゥに聞いた方が確実だと思うけど、今なら大体皆遊んでると思うよ」

「そうか……うむ。まぁ、今日は行かぬがな。もう少し探索しよう」

「うん。レッツゴー」

 

 そう言って、二人は歩き出すのだった。




 放送コードに引っ掛かりそうな聖女さんはこの平和旅館には出さない……! たぶん……!


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戻って参りましたよ、マスター(いつもいつの間にかいなくなってるよね)

「あら、マスター。今は休憩中でございますか?」

「あぁ……キアラさん……もうどこから出てきたのかは追及しないでおくよアーサーは?」

「彼でしたら、疲れたので温泉へ行くと言ってました。マスターも行きますか?」

「いや、今は遠慮しておくよ。まだ仕事が残ってるし」

 

 そう言って、座っていたオオガミが立ち上がると、さりげなくキアラはその後ろに立つ。

 

「……なんで後ろに立ったのさ」

「いえ、特に理由はないのですが……そうですね。ここが安心すると言いますか……」

「……まぁ、すごい不安だけどいいや。それで、なにか用があるの?」

「いえ、見かけたので挨拶をしただけで、別に用はありません。とりあえず、裏山にでも行ってみようかと」

「なるほどね……あ、後で呼ぶかもしれないから、その時はよろしくね」

「えぇ、その時はお任せください」

 

 そう言って、キアラはスタスタと歩いていってしまう。

 オオガミはそれを見送ると、木材と釘、金槌を持ち、修繕箇所へ移動する。

 

 

 * * *

 

 

「先輩ですか?」

「えぇ! 今回こそ私のライブをするの! だからそのためのステージを用意してもらおうと思って!」

 

 そう言って、ドヤ顔をするエリザベート。

 マシュは考えつつ、

 

「そうですか……まぁ先輩も聞きたがってましたし、教えるのは良いんですが……たぶん、天守閣の補修をしてるかと……」

「天守閣ぅ?」

「はい。バルムンクとエクスカリバーの余波の影響で所々壊れかけていたので、それの修繕に行きました」

「……いつの間にかマスター使いが荒くなったわよね、マシュって」

「えぇ、はい。先輩の影響でこうなっちゃいました」

「そう……マシュも大変なのね。私にはわからないけど」

「えぇ、まぁ、はい。色々あるんです」

 

 マシュに同情するエリザベート。とはいえ、その苦労はほとんどわからない。

 

「よし、じゃあマスターのところに行ってくるわね!」

「はい。先輩によろしくお願いします」

 

 そう言って、走り去っていくエリザベートを見送りつつ、マシュはふと、

 

「そういえば、ネロさんを見てませんけど……もしかして、もう向かってたりしますかね……?」

「むっ。ライブと余の話をしているということは、もしや既にエリザベートは来ていたか!? くぅっ、先を越されたか……!」

 

 いつの間にか背後にいたネロ。この真冬に水着で入れるというのは、中々な精神力と忍耐力だ。

 

「えっと……先輩は天守閣です」

「あい分かった! ではまた後で会おうマシュ!」

「あ、はい。待ってますね」

 

 そう言って、エリザベートと同じように走り去るネロを見送るのだった。




 エリザベートライブ! ネロ様の乱入あり!
 果たして耐えられるのは何人いるかな……?


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ライブステージを作らなきゃ(力仕事なら頑張りますね!)

「あっ……マスターさん。お久しぶりです」

「リップ、久しぶり。楽しんでる?」

 

 今日は修理ではなく、エリザベート用の野外ライブステージを作っていた。

 

「あの、なにか手伝いますか?」

「あ~……ん~……そうだね……特には思い付かないかな。でも、見てるだけでも良いよ?」

「はうぅ……まぁ、そんなに器用じゃないですし、こういうのはあんまり手伝えないかもです」

「あぁ、いや、後で大きい木材を運ぶから、その時に手伝って欲しいんだけど」

「も、もちろんです! 任せてください!」

 

 自分に出来ることがわかると、途端に目を輝かせるリップ。

 すると、その後ろから、

 

「あれあれぇ? センパイ、何してるんですかぁ~?」

「あっ、BB……!」

「何しに来たの? 見ての通り忙しいんだけど?」

 

 にやにやと笑っているBBを見て、苦い顔をするリップとオオガミ。

 

「ちょっと、なんですか二人とも。そんな面倒なやつが来た~って感じの表情するんですか。私なにもしてませんよ!?」

「でも、これからするんでしょ?」

「えっ。まぁ、はい。流石にあの二人の音響兵器(うた)をそのまま流すわけにはいきませんし……機材くらいは作らないと……」

「あぁ……うん。まぁ、それは必須だ。で、その機材は?」

「もちろん、この日のために作成済みですとも。絶対こうなると思いましたし。むしろこのために作ってましたし」

「流石優秀な技術部。やるときはやるね」

「えぇ。始皇帝の分解作業を阻止した甲斐がありましたよ。あそこで分解されてたら使えなくなってましたよ」

 

 そう言って、取り出した機材にもたれ掛かるBB。相当苦労したのだろう、思い出したくもないという雰囲気がひしひしと伝わってきた。

 

「まぁ、おかげで安全に二人のライブを楽しめそうだよ。うん」

「えっ、何を言ってるんですか。ちゃんとセンパイは直撃を食らうようにしておきましたとも」

「あ~……そういう感じかぁ~」

 

 センパイ絶対虐める系後輩として、そこは譲れなかったのだろう。最近アイデンティティーを失ってきていたBBにとって、きっと最終防衛ラインなのだろう。

 

「まぁ、そもそもフィルター無しのつもりだったから良いけどさ……うん。とりあえずそれの配線をしよう」

「むぅ……その余裕は面白くないですが、仕方無いです。私も手伝いますよ」

「あ、運ぶのは手伝いますね!」

「えぇ~? リップがですかぁ~? 精密機器を持てるとは思えないんですけど~」

「BBは黙っててっ!」

「フフっ。頑張ってくださいね~」

 

 BBはそう言って、リップの事を煽るのだった。




 なんだかんだ言って、結構オオガミ君ってライブの準備を結構やってるような……


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久しぶりの長時間トークだったよ(全盛期の半分未満じゃないですか)

「ふはは! 指示されるというのも面白いものだな!」

「久しぶりの戦いだったが……いや、まさかやられるとは思わなかったね」

「ん~、久しぶりに王の話をしたね。いや、まさか久しぶりのトークがあんなに長くなるなんてね」

「なに言ってるんですか。まだ短い方でしょう? 最長のときの半分にも満たないじゃないですか」

 

 楽しそうに笑う始皇帝と、遠い目をするホームズ。

 マーリンは喉の調子を気にしているが、玉藻はそれを見てため息を吐いていた。

 

「いやいや、流石に突然話をしろと言われて、一年近く話してないのにずっと話続けられる程の喉はしてないよ」

「そうですか。まぁ、喉がやられても治してやりますのでずっと話続けてくださいまし」

「君もずいぶんと悪魔じみてるよね」

「いえいえ。貴方ほどではないかと」

 

 不適に微笑む玉藻と、頬を引き吊らせるマーリン。

 

「いやしかし、まだ朕の力が通用するようで良かった。もしかしたら通じないのではと思ったが、杞憂だったようだな」

「ハハハ。始皇帝の力が通じないのに私が駆り出させるわけありませんよ」

「そうか? うむ、まぁこれからも手伝うとしよう。まずはもう少し技術部の技術を手に入れないとだな」

 

 始皇帝はそう言うと、考え込む。

 そして、そんな四人を遠くから見ていたエウリュアレとマシュは、

 

「なんというか、呼ばれたは良いけどなにもしないで終わったわね……」

「ですね……というか、いつも後ろなのですが。私のアイデンティティーも始皇帝さんにほとんど取られたんですが」

「いえ、そこまでじゃないと思うのだけど……宝具打たないとターゲット集中無いし、無敵もないし」

「そうですね……チャージ減少にスタン、NP獲得が出来ますしね……あれ、私より優秀なんじゃ……?」

「まぁ、それ以上は考えちゃダメよ。少なくとも、マシュは確実に二回までは防衛できるじゃない。そこは適材適所ってやつよ」

「そ、そうですか……でも、やっぱり前の方と比べると……」

 

 マシュがそう言うと、エウリュアレはため息を吐き、

 

「それはそれ。これはこれ、よ。あまり比べるものでもないと思うの。だって、それを言うと、男性相手なら私だけど、それ以外と考えると、弓王の方が優秀じゃない?」

「まぁ、それはそうですが……」

「でしょう? だから、マシュにはマシュの出来ることが。他には他の出来ることがあって……そして、特になにも考えず編成するのが私たちのマスターよ」

「あ、そこに繋げるんですね。なるほど」

 

 結論は、やっぱりマスターは何も考えてないだろう。というところに落ち着いたのだった。




 高難易度は強かった……でも、朕が強かった……流石朕!


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やっほー、まーちゃん(姫ちゃん、やっほー)

「あ、まーちゃんだ。やっほー」

「やっほー。おっきー何してるの?」

 

 ヒラヒラと手を振りながら近付いてくる刑部姫に、オオガミは手を振り返して答える。

 

「いや~、久しぶりに来たけど、変わってない感じで良かったよ。うんうん。まーちゃんが働いてるのは想定外だったけど。あ、手伝わないからね? 姫は原稿が忙しいんだから」

「そう? 後で遊技場でゲーム大会やるつもりだったんだけど、原稿が忙しいなら仕方ないね。誘うのは止めておくよ」

「えっ、なにそれ姫聞いてないんだけど」

「まぁ、今初めて言ったし……でも、原稿忙しいんでしょ?」

 

 そう言うと、刑部姫は目を泳がしながら、

 

「あ~……いや~……べ、別に時間はあるしぃ? まだまだ余裕あるから、一回くらい遊んだって全然平気だしぃ?」

「そう? じゃあ、エントリーしとく?」

「するする~。まーちゃんに姫の本気見せてあげるし。姫、強いんだからね」

「うんうん。知ってる。けど、今回はそう簡単に行くかな? 孔明先生もエントリーしてるからね」

「ふぅ~ん? まーちゃんは出るの?」

「いや、今回は進行役。裏方はBB一人だよ」

「えぇ~? BBちゃん一人とか、大丈夫? 人手足りてる?」

「まぁ、BBならいけるって信じてるし。むしろいけないわけ無いし」

「言うねぇ……ちなみに、まーちゃんのいつものメンバーは誰が出るの?」

「ノッブだけかなぁ……いや、茶々も行くかも」

「そっかー……じゃあ、他のメンバーを集めるの、頑張ってね」

「うん。姫も知り合いに声をかけてくれるとありがたいよ」

「ま、まぁ、声をかけられる人がいたらね。うん」

 

 刑部姫はそう言いながら、立ち去るのだった。

 そして、それと入れ替わるようにやって来たのはエリザベート。

 

「ちょっと子イヌ。ライブステージは出来たの?」

「あ、エリちゃん。一応完成したけど、見に行く?」

「ん~……そうね。見ないと演出も考えられないしね。行くわよ子イヌ!」

「うん。あ、ちょっと待ってね。サクッと用事済ませてくるから」

「んもぅ! 子イヌはいつも準備が悪いんだから! 私のマネージャーなんだから、もっとちゃんとやってよね!」

「いや、わりと予定に無かったんだけど……あ、いや、なんでもないよ。とりあえず、マシュに言ってからじゃないと、締め上げられる可能性があるから……」

「そ、そう……なら仕方無いわね。私も手伝うから、さっさと終わらせてステージを見に行くわよ!」

「うん。エリちゃんがいるならさっさと終わるでしょ」

 

 そう言って、二人は歩き出すのだった。




 HF見てきました。めっちゃ面白かった!(ネタバレしない最大限の配慮


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朝までノンストップライブよー!!(裏方はなんで二人なんですか)

「今日で最終日! 明日は荷物をまとめて帰るだけなんだし、今日はバカみたいに騒いで、踊って、歌うわよー!」

 

 エリザベートの宣言と轟くような歓声を合図に始まる閻魔亭特別ライブ。

 演出にメカエリチャン二名とダブルエリちゃんによる二大ボーカルに会場は開幕から大盛況。

 

「うわははは! 大盛り上がりだね! 最高じゃん!」

「なんでハイパーボイスの直撃を受けて一切ダメージがないかのごとく笑えるんですかこの人! ぶっちゃけ人間辞めすぎてて笑えてくるんですけど!」

「奏者よ! 余の出番はまだか!」

 

 裏方で楽しんでいるオオガミと、オオガミが楽しんでいる事に困惑するBB。そして、唐突に現れたネロに二人の視線が向く。

 

「ネロ様始まったばかりです。装備整えて待機しててください」

「余も出たい! あとどれくらいだ!?」

「ん~……次の曲が終わったくらいに衣装チェンジがあるので、その間に二曲ですかね。なので楽屋で中継映像見ててください。呼びに行くので」

「むぅ……仕方ない。ちゃんと呼びに来るのだぞ!」

「うんうん。行くからね」

 

 そう言って、手を振るオオガミに、頬を膨らませながら楽屋に戻っていくネロ。

 BBはそれを見送りつつ、

 

「センパイ、わりと扱い雑なときありますよね」

「そう? わりと丁寧にしてるつもりだけどなぁ……」

「まぁ、ネロさんへの扱いは丁寧なんですけど、私とかノッブとかの話です。差別ですか?」

「区別です。というか、別段丁寧に話されても嫌でしょ?」

「そうですけどぉ……でも、それはそれじゃないですか。もうちょっと優しくしてくれてもいいと思うんです」

「ん~……BBちゃんは正直優しくする対象じゃないというか、なんというか。さて、次の準備しなきゃ」

「センパイ、話を逸らさないでくださいよ~」

 

 そう言うBBをスルーしつつ、部屋を出るのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ん~……不思議とダメージを受けんな……BBが手を加えておるんじゃろうか」

「流石にそうでしょ。まぁ、このくらいが一番よね。相変わらず調整が良い感じで感心するわ」

 

 ノッブと一緒に後ろの方で見ているエウリュアレ。

 ノッブは首を傾げつつ、

 

「うむぅ……儂に何の連絡も無かったんじゃけど。まさかBB一人でやったんじゃろか……」

「まぁ、そんな感じじゃない? というか、聞くつもりないでしょ」

「いやいや、ちゃんと聞いとるし。つか、なんで聞いてないって思われた」

「ノッブならそんな感じかなぁって」

 

 エウリュアレはそう言うと、ノッブは何も言い換えさずライブに集中しているかのように振る舞うのだった。




 レッツ徹夜ライブ。明日は寝不足ですね(確信


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明日は旅行最終日!(帰り支度をしなくちゃね)

「さて、延長ライブも終わったことだし、そろそろ帰り支度しましょうか」

「あの、マスターが息をしてないのだけど……」

「あれは本望じゃろ。是非も無し」

 

 倒れて動かなくなっているオオガミを無視して部屋に戻ろうとするノッブとエウリュアレに、アビゲイルは首をかしげて聞く。

 

「本望って……何かあったの?」

「えぇ、さっきBBを捕まえて話を聞いたのだけど、一人だけフィルター無しで聞いてたみたいよ。あの宝具級のボイスを、生で」

「えっと……マスター、虐められてるの?」

「まぁ、BBはそのつもりだったようなんじゃけど、あいにくとマスターは耐えられるんじゃよねぇ……」

「明日には何事もなかったかのように戻ってきとるじゃろ」

「マスター、本当に不死身なのね……」

 

 その異常な耐久力を再認識して、アビゲイルは二人を追いかける。

 そして、それと入れ替わるようにやって来たのは、先程ノッブたちといなくなったはずのエウリュアレ。

 

「はぁ……BBと話してたら遅くなったわ――――って、誰もいないのだけど……ねぇマスター。ノッブたちはどこに行ったのよ」

 

 倒れているオオガミを無理矢理起こし、質問するエウリュアレ。

 オオガミは明らかに体調の悪そうな顔色で、

 

「ノッブたちなら、エウリュアレに変装した新シンさんと一緒に部屋に戻ったよ……あと、揺らすの止めて。気持ち悪い……」

「完全にやられてるじゃない……だからフィルターをつけてもらいなさいって言ったのに」

「それはそれ、これはこれ、だよ。聞きたいんだから仕方ない」

「別に、命の危機に陥る必要はないと思うのだけど……」

 

 ただでさえも青かった顔が更に青くなったところで投げ捨て、エウリュアレはため息を吐く。

 

「はぁ……仕方ないわ。ほら、さっさと起きなさい。私の泊まってる方に新シンがいるのはなんとなく許せないから取り返しに行くわよ」

「えぇ……寝てちゃダメ……?」

「まだ仕事は残ってるわよ。ほら、早く起きて仕事しなさい。そして明日帰るわよ」

「うぅ……エウリュアレが時々マシュ並みに厳しい……」

「バカなこと言ってないで早く行くわよ。どっちかって言うと、新シンがアナに殺されてないかが心配だわ」

「あ、それは一理ある。急がなきゃ」

 

 そう言って、普通に立ち上がるオオガミを見て、エウリュアレは半目になりつつ脛を蹴ると、

 

「普通に立てるならさっさと立ちなさいよ」

「ひ、酷いっ! 立てるようになったから立ったら思いっきり蹴られた……!」

 

 頬を膨らませながら歩くエウリュアレの後ろを、オオガミは涙目で追いかけるのだった。




 さりげなく変装を見破ってるいつもの光景。


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日常
旅行から帰ってきたわよ(いつもののんびり空間が帰ってきたよ)


「ふぅ……長い旅行だったわね」

「長い労働だったんだけど」

「まぁまぁ。マスターもなんだかんだ楽しんでおったじゃろ?」

「それはそれだと思う」

 

 最近定位置と化してきた食堂の一角で、いつものようにお菓子を食べるエウリュアレ。

 オオガミは机に突っ伏し、ノッブは愉快そうに笑っていた。

 

「まぁ、レイシフト実験は成功だし、それなりに休暇にはなったしでいい感じじゃない? 働いてるって言っても、いつもの旅とは一味違う新鮮な感じだったでしょ」

「そうだけども……」

「なんですか。姉様に不満があるなら命を対価に聞いてあげます」

「ちょっとエウリュアレさん。妹さんがしばらく会ってなかったせいで凶悪になってるんでどうにかしてください」

 

 エウリュアレに、何時にも増して凶暴になっているアナをどうにかしてほしいと抗議すると、エウリュアレは少し考えたあと、

 

「アナ。下手なことをするとエルキドゥの攻撃が私まで飛んでくるからもうしばらく我慢して」

「姉様が言うなら仕方ないですね。大人しくしておきます」

 

 エウリュアレに言われて大人しくなったアナを見て、オオガミは考えると、

 

「姉様。妹さんがマスターの言うこと聞いてくれないんですけど。どうなってるんですか」

「それは貴方が悪いと思うから諦めなさい」

「バッサリ言うなぁ……」

 

 鋭い切り返しに精神的ダメージを負うオオガミ。

 

「まぁ、アナも素直じゃないもの。基本トゲしかないから」

「たまに優しいけどね」

「そう。たまに、よ。基本はこんなじゃない」

「まぁ、そうだけども……」

「なら別にいいじゃない。というか、ここ最近気にしてなかったじゃない」

「そうだけどさぁ……気になったら気になっちゃうもんなんだよ」

「そう? じゃあ、どうにかするのね。私は手伝わないけど」

「えぇ……手伝ってくれないの……?」

「当然でしょ……なんで手伝うと思ってるのよ……」

「あの、本人を前にそういう話しますか……?」

 

 居心地が悪そうな顔のアナを見て、二人は顔を見合わせると、

 

「まぁ、マスターのせいよね」

「えっ、何かした?」

「目の前で話す話でもなかったわ。自重しなさい」

「えぇ……珍しく叱られた……」

 

 珍しくオオガミを叱るエウリュアレ。

 とはいえ、そもそもエウリュアレに叱られるようなことはほとんどないのだが、エウリュアレに叱られるのが珍しすぎてオオガミは困惑していた。

 

「まぁ、そのうちなんとかなるでしょ。えぇ、そんな感じよ」

「雑だなぁ、この女神さま」

「貴方のサーヴァントらしいでしょ?」

「……そうだね」

 

 微笑むエウリュアレに、オオガミは苦笑いを返すしかないのだった。




 紅ちゃんは来てくれなかったよ……


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平和だとやること無いわよね(だからってドタバタしてるのもどうかと思うよ)

「……平和だとやること無いわよね」

「いや、流石にイベントの休憩は欲しいんだけど」

 

 マイルームのベッドで横になっているオオガミの隣に腰掛けるエウリュアレ。

 ベッドをもう少し大きく出来ないかと考えていた時期もあったが、今では諦めて腰掛ける事にしていた。

 

「そうは言ってもね、意外と素材がないのよ。逆鱗も、心臓も、貝殻も。種火だって、そのうちなくなるわよ、絶対」

「まぁ、すぐ使いきっちゃうしねぇ……でも、補充は疲れるし……リンゴ無いし……」

「……まぁ、だらだらするのも良いわね。でも、私が暇なのだけど」

「あ~……うん。それなら、何かしようか」

「そうやって、特に理由もないのに付き合ってくれるんだもの。助かるわ」

「別になにもしてないけどね」

「謙虚なのも得点高いわよ」

 

 なんて、茶化しながら立ち上がるエウリュアレ。

 オオガミもすぐに起き上がり、エウリュアレの後ろに行く。

 

「それで、どこからいく?」

「まぁ、安定の工房かしら。でも、今日はまだお菓子を食べてないのよね……」

「一日中部屋に籠ってたしね……食堂に行く?」

「ん~……そうしましょうか」

 

 そう言って、二人は部屋を出るのだった。

 

 

 * * *

 

 

「それで、ようやく顔を出したと言うことか」

「うん。本を読んでただけだしね」

「それで頼むのがラーメンというのは、いささか胃に負担を掛けすぎじゃないか?」

「いやいや、そんなことないって。だってほら、隣は饅頭を山のように積んで食べてるわけだし」

「サーヴァントと一緒にするな。というか、彼女はもうそういうレベルの話じゃないだろう」

「まぁ、お菓子はかなり食べる方だし」

 

 オオガミの隣にいるのは当然のごとくエウリュアレ。そして、その前には、オオガミの言うように山のように積まれている饅頭と、エウリュアレにバレまいと反対側から饅頭を食べ進めるバラキーがいた。

 

「……言わなくていいのか?」

「いや、エウリュアレは気付いてるだろうし、その上で放置してるなら良いかなって。あんまり言うと睨まれるし」

「そうか……いや、それならいい。気にしないでくれ」

「うん。分かったけど、とりあえず、エウリュアレが無茶を言ってくるなら報告してよ。対処するから」

「あぁ……それは頼んだ。戦力的にというよりも、地位的に彼女がほぼ頂点にいるから、下手なことを言えないからな。旅行最終日の新シンは散々な目に遭っていたからな……」

「あ、うん……あれは自業自得な気もするけどね」

 

 オオガミはそう言いつつ、エウリュアレが見ていないところで何をしているのが知る必要があるかもしれないと思いつつ、エミヤ特製ラーメンを食べるのだった。




 イベントがないとネタに悩む日々……でもイベント用のリンゴがもうほとんどない……!


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久しぶりの膝枕ね(普通はしてくれないけどね?)

「ん~……久しぶりに膝枕してる気がするわ」

「まぁ、普通しないしね……」

 

 言いながら、休憩室のソファーでエリザベートに膝枕をされているオオガミ。

 理由はオオガミが頼んだからなのだが、快く受け入れてくれたのは気紛れ故か。

 

「あれっ。じゃあ、普通しないならなんで私はしてるのかしら」

「気紛れじゃない?」

「そ、そうね。気紛れなら、こういうことがあっても不思議じゃないものね。うんうん。それで、(アタシ)は何すれば良いのかしら」

「ん~……いや、特にして欲しいことはないんだけど」

「えぇ……」

 

 オオガミの言葉に、困ったような顔をするエリザベート。

 だが、やがて何かを思い付いたようで、微笑むと、鼻唄を歌い出す。

 それを聞きながら、ふとオオガミは、

 

「……そういえば、この前のライブ、良かったよ」

「――――ふふーん。そうでしょ! (アタシ)だもの!」

「うんうん。エリちゃんもネロも凄い声援だったよ。流石アイドルだね」

「えぇ。でも、次こそはネロに勝つわ。絶対にね!」

「うんうん。まぁ、エリちゃんなら行けるよ」

「流石私のマネージャーね。分かってるじゃない。でも、余計な演出は無しよ。あくまでも公平にね?」

「当然。どっちかだけに肩入れしたりはしないよ」

「ならいいわ。もちろん、信じてたけどね」

 

 そう言って笑うエリザベート。

 すると、

 

「……汝、何をしているのだ……」

 

 と、呆れたように言ってくるのはバラキー。

 エリザベートはそれに気付くと、

 

「あ、バラキー。元気?」

「元気も何も、旅館から帰ってきてからずっと頼光から逃げてたわ。自分がおいていかれたのを余程根に持っているようで、しつこい」

「つまり、今は逃げきったところ?」

「うむ。で、汝は何をしている」

「いや、見ての通り膝枕をしてもらってるんだけど?」 「何を当然のような反応で返すのか……いや、吾も相手がエウリュアレだったのなら何も言わん。言わんのだが……エリザだろう? 些かどうかと……」

「えっ、そこ気にするんだ……」

「まぁいいじゃない。なんとなく頼まれて、なんとなく許可したのは私だもの。それに、どうせあの女神は気にしないわよ」

「むぅ……確かに、言われてみるとそんな気がするが……いやしかし、良いのだろうか……?」

「まぁ、良いにしろ悪いにしろ、最終的に怒られるのは子イヌだもの。私には全く関係ないわ!」

「なるほど。なら問題ないな」

「基準そこなんだ!?」

 

 エリザベートの言葉に納得するバラキーに、オオガミは思わず突っ込むのだった。




 まぁ、エリちゃんはさりげなく初期勢という特別枠なので……


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リップ! お着替えの時間よ!(突然なんですかぁ!?)

「はぁ……なんでこうなるんでしょう……」

「あらリップ。何が不満なの? こんなにキレイに飾ったのに。フワフワと飾ったのに。欲張りさんはダメなのだわ!」

 

 トレーニングルームにて、ため息を吐くリップに、唇を尖らせて叱るナーサリー。

 リップはいつもと違い、フワフワな白セーターを着ていて、更に4つの金色の星がついている冠を被されていた。

 

「でもですよ? 私にはこのお洋服は似合わないと思うんです。それに、手袋とか、つけられませんよ」

「もう。なんでそんなこと言うの! バニヤン、お願い!」

「うん! 頑張るよ!」

 

 ナーサリーに言われて、体を大きくしてリップを持ち上げるバニヤン。

 そして、その浮いたリップの手に手袋をはめるナーサリーとジャック。

 

「ふ、不思議な気分です……私が持ち上げられるなんて……」

「ふふん! バニヤンは力持ちなんだから!」

「おもーい! 早くしてー!」

「バニヤンがんばれー!」

 

 無邪気に言う少女たちの声は微笑ましいものだが、超重量ということを考えると、死と隣り合わせで作業をしているということだ。

 よって、この状況は持ち上げられている側からすると、とてつもなく怖かったりする。

 

「あ、あの……そろそろ下ろしてくれてもいいんですよ……?」

「ナーサリー! 終わった~?」

「もう大丈夫よ~! ゆっくり下ろしてね~」

 

 ナーサリーの返答を聞き、バニヤンはゆっくりとリップを下ろす。

 降りたリップは、いつもと違う感触に新鮮さを感じる。その手にはフワフワな手袋が。指先は穴が開いており、地面を擦ることはなさそうだった。

 その感触をリップが確かめている間に、バニヤンは小さい姿に戻っていた。

 

「ふわぁ……ありがとうございます! でも、なんで突然……?」

「エウリュアレが持っていってって!」

「リップにあげてって!」

「頼まれたなら、やるしかないわ。ジャンヌは見つからなかったから一緒に出来なかったのだけどね」

 

 ジャンヌリリィは、現在長女と次女に突撃しに行っているため不在なのだが、ことごとくすれ違いになったナーサリー達は知らないのだった。

 リップはそんな三人の主張を聞いて、少し考えると、

 

「エウリュアレさん、マスターから頼まれたんでしょうか……」

「それなら不思議ね。なんで自分でしないのかしら」

「ん~……まぁ、マスターは色々やることがありますし……でも、手芸が出来るって聞いたことないんですけど……」

「マスターだもの。私たちがいない間に出来るようになったのかもしれないわ。流石ねマスター」

「そうですね。後でお礼を言わなきゃです」

「なら今から行こう! すぐ行こう!」

「ゴーゴー! 思い付いたらすぐ実行って、ノッブが言ってた!」

 

 そう言って、バニヤンとジャックはリップの袖を引っ張るのだった。




 珍しくオオガミ君不在。でも存在は主張していく不思議。


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これは回すしかないと思うんです(石の貯蔵が無いのに何を言っているのかしら)

「それで、準備はどうするの?」

「まずは石集めからじゃないかな」

 

 何時になく真剣な表情で話す二人に、たまたま食堂に居合わせた他のサーヴァント達は今度は何をやらかすのかと一瞬気構えたが、石集めという単語からマシュへの報告案件だと判断して安心して自分のやることをしに戻る。

 

「でも、石集めってどうするのよ。強化クエストとか、面倒でやろうとしないじゃない」

「いや、むしろこの前紅ちゃんの為に思いっきり周回したせいでもうほとんど残ってないんだよ」

「じゃあ……あれね。今から全力で育成するしかないわ」

「流石に遠慮したいんだけど。正気ですか女神さま」

「正気で貴方のサーヴァントが出来ると思ったら大間違いよ」

 

 切り返しの一撃に精神的大ダメージを受けたオオガミは、机に突っ伏す。

 

「まぁ、そんな気を落とさなくてもいいわ。だって大体皆そんなつもりだもの。別に気にする必要はないわ」

「いや、気にしなくてもいいって言われても気にしちゃうものだよ」

「そう? まぁ、それは後でもいいわ。で、次のイベントにいくつ石を持っていくの?」

「予定は未定とだけは言っておこう」

「予測はしておきなさいよ」

 

 石を使うつもりのマスターを、止めるどころかむしろ積極的に溶かさせようとしているエウリュアレ。

 オオガミは真顔で考えるが、現実問題そもそもその溶かせる石をどうやって用意するかが問題だ。

 

「そうだね……うん。とりあえず30個は集めておきたい」

「そう……なら、まずは強化クエストからよ。次は幕間。集まらなかったら諦めて当日に祈って。フリークエストはメルト用なんでしょ?」

「うん。とりあえず、そういう感じで行くよ」

「えぇ。宝物庫に潜ってQPを集めるより、ずっと楽しそうでしょ?」

 

 そう言って、笑う二人に影が射す。

 振り向くと、そこにはマシュ(悪魔)がいた。

 

「センパイ。石の貯蓄はどうしたんですか……? 旅行に行って帰ってきたらすっからかんとか、私、ビックリだったのですが……」

「あ、え、マシュ……? ちゃんと言わなかったっけ……?」

「えぇ、はい。一回も聞いていませんが……言い訳はありますか?」

「ええとですね、はい。紅ちゃんが来ればなぁって思いながら全部溶かしましたとも。えぇ、もちろん」

「……とりあえず叩きますね」

「そんな昭和家電の直し方みたいな強引な方法を取らないでくださいマシュ様!?」

 

 盾を掲げて今にも殴りかかってきそうなマシュから、オオガミは全力で逃げ出すのだった。




 やったぜイリヤ復刻! 回さざるを得ない!


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トナカイさん、トナカイさ~ん!(どうしたのリリィ)

「トナカイさん、トナカイさ~ん!」

「どうしたのジャンtぐふぅっ!」

 

 オオガミは自分を目掛けて飛び込んできたジャンタをかわすことなど人として出来るわけもなく、鳩尾へと突き刺さったジャンタの頭に悶絶する。

 飛び込んだ本人は気付いている様子もなく、困惑している様子で言葉を紡ぐ。

 

「あのあのっ、イルカを飛ばすおっきい私もそうなんですけど、それ以上に、あの刀を持って黒い炎を飛ばす残念な方のおっきい私はなんでいるんですか!?」

「いや、それは来てくれたから以外に理由はないと思うんだけど……何かあったの?」

「はい! 残念な方のおっきい私に頭をポンポン叩かれました! なんか不気味な笑顔でした!」

「誰の笑顔が不気味だってぇ?」

「うぎゃああぁぁぁぁ!」

 

 ギリギリと音が聞こえそうなくらいに頭を締め付けられているジャンタ。

 その状況を引き起こしているのは、件の邪ンヌだった。

 そして、邪ンヌが手を離すと同時に崩れ落ちるジャンタ。

 

「あ、頭がぁ……! 頭がぁ……!」

「レベルと相性を考えるのね」

「バーサーカー相手に有利も何も無いじゃないですかぁ……!」

「じゃ、先制勝ちね」

「一撃必殺ということですか……ガクッ」

 

 そう言って動かなくなるジャンタに、邪ンヌはため息を吐く。

 オオガミはそれを見て、

 

「わざわざ倒れるときに自分で効果音をつけてる辺り、ふざけあってる感じあるよね」

「そう思うなら勝手にどうぞ。ま、私も流石に本気は出さないけども」

「全く……貴女は素直じゃないんですから。お姉ちゃんはもっと素直になってほしいです」

 

 そう言って、ひょっこりと顔を出してきたジャンヌ。

 それを見て邪ンヌは嫌そうな顔をして、

 

「げっ」

「あ、真っ当な方のお姉ちゃんだ」

「いつまでその設定引っ張ってるのよっ!」

 

 反射的に刀を振るう邪ンヌ。

 オオガミはそれを寸でのところで回避しつつ、

 

「危ないなぁ……刀はむやみやたらと振り回しちゃいけないって習わなかったの?」

「それ以前に、平然と回避しないで。自信無くすわ」

「当たったら死ぬんですけど」

「それくらい諦めなさい」

「流石にまだ死ねないって」

 

 そんなやり取りをしていると、後ろから、

 

「オルタ。お姉ちゃんは悲しいです。お姉ちゃんは弟君に刃物を向けるような子に育てた覚えはありませんよっ」

「そもそも育てられてないんだけど?」

「問答無用です! 今日は朝までたっぷりお説教しますからね!」

「ハッ! お説教!? トナカイさん助けてっ! お説教だけは嫌ですっ!」

「あ、ちょ、リリィあんたずるいわよ! 私だってそいつの後ろに隠れる予定だったのに……!」

「今日という今日は逃がしませんからね!」

「あぁもう! うっとうしい!」

 

 邪ンヌはそう言って、走り去っていくのだった。




 今更だけど、ジャンヌ三姉妹は揃ったんですね……二人ほど水着だけど。


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早くガチャ引きたい(少しはおとなしくしてなさい)

「……ピックアップまだですか」

「いい加減にしなさい」

 

 エウリュアレの手刀を受け、大人しくなるオオガミ。

 アビゲイルはそれを見て、

 

「マスター、いつになくやる気よね。何でかしら」

「まぁ、マスターの中で召喚優先順位が結構高いサーヴァントだから……とはいっても、メルトよりは下っぽいけど」

「そうなの……ちなみに、私は?」

「その更に下よ」

「……そこまでハッキリ言われると、流石に傷付くわ」

「それでも、私よりは優先順位が高いのだけど」

「だってもう宝具5だものね!」

 

 そう言って頬を膨らますアビゲイルに、エウリュアレは微笑みつつ、

 

「でもまぁ、宝具2なのだから、もっと胸を張ってもいいと思うわ。レベルも100なのだし」

「それはそれだと思うの。もう少し私を構ってくれてもいいと思うのだけど!」

「そうねぇ……ナーサリーの所に行ってきたらどうかしら。意外と楽しいと思うわよ。たまにアナも連れていかれてるし」

「な、ナーサリーさんのところ……んむむ……え、遠慮しておくわ。その、ナーサリーさんはちょっと苦手なの。まるで……そう。まるで、心の内まで見透かされているようなの」

「……まぁ、子ども達の英雄は伊達じゃないってことね。何かと子ども達のリーダーをやってるのは、そこから来てるのかも」

 

 そんなことを言っていると、

 

「あら、エウリュアレさん、お久しぶりね。アナさんはいらっしゃる?」

「えぇ、久しぶりね。アナは倉庫整理に貸し出してるの。そのうち戻ってくると思うわ」

「そうなの……お茶会に誘おうかと思ったのだけど、いないなら仕方ないわね。後は誰を誘おうかしら」

「ん。それならちょうどいいじゃない。あそこに暇そうなのがいるわ」

 

 そう言ってエウリュアレが指差した先にいるのはアビゲイル。

 それに気付いたアビゲイルは顔を青くし、ナーサリーは目を輝かせる。

 

「アビゲイル! そういえば、貴女を誘ったことがない気がするわ! どうかしら。私たちと楽しいお茶会をしない?」

「えっと……あの……その……」

「恥ずかしがることはないわ。だって貴女はお客様。キラキラフワフワ楽しい世界で、クスクスコロコロ笑いましょ? えぇ、きっと楽しいお茶会になるわ!」

「…………」

 

 どうしよう。と言いたげな視線を送ってくるアビゲイルに、エウリュアレはニヤニヤと笑いつつ、一つ、ナーサリーに聞く。

 

「今のところ、誰が行く予定なの?」

「えっと……そうね。暇そうなエルキドゥさんと、廊下に倒れていた小さいサンタさんを誘ってるわ」

「微妙な人選ね……」

「えぇ。そこにアビゲイル来たら、とっても面白そうだわ。ねっ? 行きましょ?」

「……アビー。一回行ってみたら? 案外面白いかもしれないよ。耐えられなかったら戻ってくればいいし」

「そうね。私たちと違って、一瞬で帰ってこれるんだし」

 

 今まで静かにしていたオオガミと、楽しそうに微笑むエウリュアレの二人に言われ、アビゲイルは少し考えたあと、

 

「うぅ……分かったわ。行く事にするわ」

「ありがとう! とっても楽しいお茶会にするわね!!」

 

 そう言って、ナーサリーはアビゲイルの手を引くのだった。




 ガチャはまだですか(ガチャ欠乏症


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なんで不機嫌なのさ(別に、怒ってなんかないわ)

「……エウリュアレ、どうしたの?」

「……別に、なんでもないわ」

 

 オオガミのマイルームで、部屋主であるオオガミの膝の上に座って頬を膨らますエウリュアレ。

 明らかに機嫌が悪いのだが、オオガミはその理由が思い付かない。

 

「じゃあなんでそんな怒ってるのさ」

「いいえ、怒ってなんてないわ」

「そんなわけないじゃん。怒ってる雰囲気だよ。誰かにお菓子を横取りでもされた?」

「そこまで心狭くはないわよ!?」

「じゃあ、なんでなの?」

「それは……言えないわ」

 

 そう言って顔を見ようともしないエウリュアレに、オオガミはため息を吐く。

 

「別に、何があったか追及したりはしないけどさ。気晴らしになにか食べる?」

「……パンケーキが食べたいわ」

「はいはい。じゃ、食堂に行こうか」

「ん。ちゃんと連れていきなさい」

「……今日はワガママが強いね」

 

 何て言いつつも、オオガミはエウリュアレをお姫様抱っこをして運んでいく。

 

 

 * * *

 

 

「ビックリしました。姉様が運ばれてくるんですよ。驚くに決まってるじゃないですか」

「別に、そんな言うことでもないじゃない。それ以上はその頬を引っ張るわ。マスターが」

「姉様じゃなくてマスターがですか……あ、いえ、何でもないです」

 

 そう言うアナの視線は、エウリュアレの少し上。当然のように椅子にされているオオガミに向けられる。

 

「わりと向けられる視線に殺意しか感じないんだけど」

「えぇ。向けてますし」

「でも、なんだかんだ見る言い訳が出来たのが嬉しいんだと思うわよ」

「なっ、そんなこと無いです!」

「って、本人は言ってますが」

「あらマスター。照れ隠しって知ってるかしら?」

 

 そう言ってニヤニヤと笑うエウリュアレと、悪乗りするオオガミの二人に言われ、アナはだんだんと涙目になっていく。

 すると、オオガミは、切り分けたパンケーキを食べているエウリュアレを見つつ、

 

「でも、エウリュアレの機嫌が直って良かったよ」

「ん……だから、最初から怒ってないって言ってるじゃない。私はただ、貴方が石を集めなくていいのかって思っただけだもの。別に、本人が気にしてないなら私が気にすることでもないわ」

「あぁ、なるほど……」

「結局マスターのせいですか。一回死んでみますか?」

「殺意高いなぁ……!」

 

 とりあえず鎌を取り出すアナに、オオガミは頬を引き吊らせる。

 そんな二人に、エウリュアレはため息を吐くと、

 

「マスター。おかわり。今度はアナの分もね」

「はいはい。じゃあ焼いてくるね」

 

 オオガミはそう言うと、エウリュアレを浮かせて下から抜け、エウリュアレをそっと椅子に降ろすと、厨房へ向かっていくのだった。




 明日は戦争開始なので最後の休息ポイント……


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魔法少女紀行 ~プリズマ・コーズ~ -Re-install-
魔法少女イベントの始まりじゃぁぁ!!(さっさと探索するわよ~)


「ふははは! 一瞬で無意味に石が溶けたよチクショウ!」

「はいはい。じゃあさっさと探索するわよ~」

 

 後ろで叫ぶオオガミを無視し、平然と号令をかけるエウリュアレ。

 

「あんなぁ……うち、こないな所へ呼び出されても、困るんやけど……ちょいと甘すぎる気がするわ。こういうんは、茨木の領分やない?」

「別に、気にする必要はないと思うの。それに、お菓子の国以外にもあるのよ? つまり、甘いところだけじゃないわ。きっと」

「まぁ、姉様がいるのなら、場所はあまり気にしませんが……ちょっと居心地が悪い気はします」

 

 エウリュアレの言葉に反応したのは護法少女とアビゲイルとアナの三人。

 バラキーは、到着と同時に駆け出していってしまったので、現在行方不明だ。

 

「まぁ、バラキーは後でアビーに探してもらうからいいとして、たぶんバラバラで行動するのはダメな気がするから、一緒に動くわよ。良いわね」

「ええよ。ちゃちゃっと片付けて、かるであに戻って終わりにしよか」

「えっと、私はバラキーを探せばいいのかしら……まぁ、頑張るわ」

「私はとりあえず姉様の護衛をしますね。マスターは自力で生き残れるでしょうし」

「信用されてるって解釈でいいの……?」

 

 アナの言葉に反応するオオガミ。

 それに対してエウリュアレため息を吐くと、

 

「なんで私がこんなことしてると思ってるの。アナの信用の前に、私の方を手伝いなさいよ」

「ご、ごめんごめん……なんだかんだエウリュアレが指揮してるから、やることあるのかと思って……」

「私よりも貴方の方が得意でしょ。で、どっちに行くの」

「ん~……じゃあ、向こうに行こうか」

「ん。分かったわ。じゃあそうしましょ。行くわよ~」

 

 オオガミが適当に決めた方向に進み始めるエウリュアレ。護法少女はそれを見つつ、誰に聞くでもなく声を出す。

 

「わりと適当に決めるんやねぇ……もうちょい考えはったりはしないん?」

「大体いつもこんな感じだもの。深く気にしたら負けだわ」

「そうですね。特に、姉様とセットの時は本当に雑になるので。姉様がフォローにすぐ入れるのも、マスターが残念になっていく原因の一端かなぁ、と思ったりもします」

「ふぅん……難儀やねぇ……でもまぁ、こういうのもたまにはええなぁ。ほな、さっさと行こか。このままやと置いていかれてまうからね」

 

 護法少女はそういってカラカラと笑いながら、先導するオオガミとエウリュアレの後ろを歩く。

 そして、アビゲイルとアナは顔を見合わせたあと、すぐさま追いかけるのだった。




 やばい、イベントやってて時間を忘れたせいで日を跨いだ……!


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という訳で、新人さんです(よ、よろしくお願いします!)

「という訳で、新人のイリヤさんでぐはぁ!」

「うひゃぁ!?」

 

 突然飛び蹴りをされて吹き飛んだオオガミに驚くのは、新人ことイリヤ。

 そして、オオガミの蹴飛ばした張本人であるエウリュアレに怯えの視線を向ける。

 

「で、どうやって召喚したのよ。言い訳は聞くわ」

「ふ、ふふふ……魔法の力で330個という暴力の結果よなぁ……ぐふっ」

「明らかにテンションおかしくなってるじゃない。で、もう一人は?」

「召喚できてたらいるに決まってるでしょ言わせないで死にたくなる!」

 

 もはやテンションの変化がおかしくなっているオオガミ。

 エウリュアレは一つため息を吐くと、イリヤの方を向き、

 

「貴女は気にしなくていいわ。だって、いつものことだもの。といっても、しばらくは気にすると思うのだけどね」

「え、あ、はい……もしかして、カルデアって危ないところだったのかな……?」

「あら、そんなことないわ。ちゃんと楽しいところよ?」

 

 背後から突然現れた気配に振り向くと、そこにいたのはアビゲイル。第一再臨の姿ではあるものの、その微笑みはどこか蠱惑的で、且つうっすらと恐怖を感じる。

 

「えっとぉ……貴女は……?」

「私はアビゲイル。気軽にアビーって呼んで?」

「あ、アビーさん……その、本当にいつもこんな感じなんですか?」

「えぇ。まぁ、エウリュアレさんが言ってるみたいにいつもよりテンションが高い気もするけど。でも、大体いつも通りよ」

「そ、そうなんだ……ど、どうしようルビー。私、危ないところに来ちゃったみたい……」

「何言ってるんですかイリヤさん。このカルデアという場所はネタの宝庫の予感がぷんぷんしますよ! なので前進あるのみです!」

「自分は関係無いからってぇ……!」

 

 楽観的に構えるルビーに声を震わせるイリヤ。

 すると、背後から手が伸びてきて、ルビーが掴まれる。

 

「あら、喋るステッキなんて、面白いものを持っているわね。でも……下手に喋ると、後で痛い目を見ることになるわよ……?」

 

 振り向いてはいけない。それを見てはいけない。脳の中を駆け巡るその警鐘に、イリヤ振り向くことが出来ずにいた。

 だが、ルビーはそれを感知できた。出来てしまった。

 アビゲイルの背後から覗く無数の触手を。人の精神を踏み潰す異形の存在を。

 とはいえ、それは一瞬のこと。威圧感はすぐに消え去り、ルビーを掴んでいた手が離れると同時に振り向くと、そこには微笑むアビゲイルがいた。

 

「これからもよろしくね、イリヤさん。それと、喋るステッキさんは、技術部に捕まらないようにしてくださいね」

「よ、よろしく、アビーさん……」

「き、肝に命じておきます……」

 

 そうして、一人と一本は、アビゲイルにはあまり逆らわないでおこうと決めるのだった。




 ふはは。110連の成果はすり抜け4人とイリヤ二人、美遊礼装二枚で終わったよ美遊本体が来ないんですがぁぁぁぁ!?


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よろしくね。クロエ(えぇ、頑張らせてもらうわ)

「じゃ、よろしくね。マスター?」

「うん。よろしく」

「あー!? なんでクロまでいるのー!?」

 

 オオガミに挨拶するクロエを見て、声をあげるイリヤ。

 そして、その影からこちらを見たエウリュアレが、

 

「あぁ、もう決着着いたの? 案外あっさりね」

「そんなこと言いますけど、エウリュアレさん遊んでただけでしょうが」

「そりゃ、貴方が前線に出してくれなかったし。むしろ大人しくしていたのを褒めてほしいわ」

「はいはい。偉い偉い。ところで、他のメンバーは?」

「護法少女はあそこで星見酒、バラキーはアビーに捕まって今あそこで強制睡眠させられてるわ。アナは……さっき突然現れたナーサリーに拉致られたわ」

「いや初耳な上に大問題なんですけど!?」

 

 さっきと言っても、いつの事なのかわからないので、困惑するオオガミ。それに対してエウリュアレは、

 

「まぁ、私しか見てなかったし、仕方ないと思うわ。大方、BB辺りが原因だろうから、帰ったら言っておくわ。『借りるなら一言言っていけ』ってね」

「それだと借りてもいい感じしません……?」

「あら、だって、それなら貴方に報告するだけでいいじゃない」

「くっ……さりげなく他人に罪を擦り付けようとしてる……!」

 

 そんなことを言いつつも、結局オオガミため息を吐いたあと、

 

「まぁ、後の祭りだし、仕方ないか。やられたんじゃなく連れ帰られたなら、戻ったらすぐ会えるだろうし、犯人もすぐわかるでしょ」

「……貴方のそう言うところ、どうかと思うのだけど」

 

 そんなやり取りをする。

 そして、そんな状況を見ていた二人の魔法少女は――――

 

「ね、ねぇクロ……もしかしてあの二人って、も、もしかするのかなぁ……?」

「そんなに気になるなら聞いてきなさいよ……私は嫌だからね?」

「そ、そんなぁ……クロは気にならないの? だって、あんなにいい雰囲気だよ……? お邪魔していいのかな……?」

「別に気にする必要もないでしょ。だって、ほら、見てみなさいよ」

 

 そういって、オオガミ達の間に割って入るように突撃するアビゲイルを指差すクロエ。

 それを見て、イリヤは頬を引きつらせ、

 

「あ、あの人は例外だと思うの……あれは、そう。他の人と違う感じだよ。うん」

「な、なんでそんな怯えてるのよ……一体何があったわけ?」

「ちょ、ちょっと言えない……でも、本当に怖かったんだからっ!」

「分かった、分かったわよ……後でマスターにでも聞いておくわ」

「う、うん……そうして? 私はあんまり思い出したくないから……」

「……イリヤにここまで言わせるなんて、何をしたのよ……」

 

 考えるクロエに、しかしイリヤは答えられないのだった。




 とりあえず、前半戦は終了ですかね……? 後はクエスト消化しないと……


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これ以上悪い虫をつかせはしないわ……!(適当に頑張りなさい)

「ふふふ……これ以上マスターに悪い虫は付かせないわ……!」

「まぁ、気楽に頑張りなさいよ~」

 

 書庫の中で不気味に笑うアビゲイルを、床に座って本を読みつつ適当に応援するエウリュアレ。

 なお、件のマスターはイリヤと護法少女とマシュを連れて周回中である。

 

「でも、具体化にどうするの?」

「ん~……マスターは隔離しても出てくるから、虫を排除していくしかないかしら」

「物騒ねぇ……」

「でも、それ以外無いと思うのだけど」

 

 そういうアビゲイルの言葉に、内心同意するエウリュアレ。

 事実、あのマスターは監禁しようとしても気付くと脱出するので、どうしようもできない。

 ならば、周りを倒した方が早いというのは、エウリュアレも知っていた。

 

「でも、そもそもはマスターが原因で起こってるのよ?」

「えぇ……そこが問題なの。だから、私は思ったの。むしろ、ずっと一緒にいる印象をつけておけば、誰も近づいてこないんじゃないかって」

「その理論が通じてるなら今頃マスターの近くにいるのは私と貴女だけよ」

 

 その手段が通じないことは、現状を見れば既に証明されていた。

 その事実に気付いたアビゲイルは、静かになると同時にうずくまり、

 

「なんだかバカらしくなってきちゃったわ。ふて寝する」

「はいはい。膝は貸してあげるわよ」

 

 エウリュアレがそう言うと、アビゲイルは門を使ってエウリュアレの隣まで行くと、その膝を枕にする。

 

「はぅ……なんだか落ち着くわ……」

「まぁ、そのうちもう一度やる気が出るでしょ。そしたらもう一回行ってらっしゃい」

「……止めないのね」

「えぇ。だって、その方が面白そうでしょう?」

「……そうね。ふふっ」

 

 そう言って笑うエウリュアレに、アビゲイルも笑って返すのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ただいま~……って、寝てる?」

「あぁ、お帰りマスター。アビーは寝てるわ。理由は聞かないで。そうすると、あまり面白くないもの」

 

 帰って来たオオガミに、微笑みながらそう言うエウリュアレ。

 膝の上で寝ているアビゲイルの髪を片手で弄りながら、本を読んでいた。

 

「そう……なら聞かないけど。でも、エウリュアレがそうやって本を読んでるの、久しぶりに見たよ。暇だった?」

「えぇ。暇だったわ。何処かの誰かさんが置いていくんだもの。とっても暇だったわ」

「ん~……BB呼ぶ?」

「いつの間に連絡が着くようになってたのよ……」

「ついさっき。突然出て来て、通信機だけ置いていった」

「……向こうも暇なのかしら」

 

 エウリュアレはそう呟いて、ため息を吐くのだった。




 エウリュアレの膝枕をされるという貴重な体験。果たして何人がその膝の上で寝ることができただろうか……


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クエストはほとんど終わったかな(お疲れ様。ゆっくり休んでちょうだい)

「ふぅ……ある程度クエストは終わったかな」

「お疲れ様。ゆっくり休みなさい」

 

 そういうエウリュアレは、ぽんぽんと膝を叩きつつオオガミに視線を送る。

 

「……寝ろと?」

「えぇ。最近膝の上に何かがあるのが多いから、無くなると一周回って不安になるから」

「そ、そう……じゃあ、遠慮なく」

 

 オオガミはそう言って、エウリュアレの膝の上に頭をのせる。

 水晶の大地で軌跡を残していく星を見ながら、ふと、

 

「アビーは?」

「あぁ、それなら、向こうでバラキーとマシュと一緒に遊んでるわ。イリヤとクロも誘ったらしいけど、断られたみたいよ」

「ふぅん……ん? そういえば、ルビーを見てないような……」

「……いや、そんなはずはないでしょう?」

 

 そう言って、考え込む二人。そして、

 

「あれあれぇ~? 何してるんですか、お二人とも」

「……やっぱ自律してるんだね」

「よっぽど暇なのかしら」

 

 突然現れた魔法のステッキこと、ルビーに苦笑いする二人。

 周囲を見回してもイリヤがいないところを見るに、単独だろう。

 

「あんまり主人の元を離れるのは良くないと思うんだけど」

「あ~……いえいえ。大丈夫ですって。戦闘じゃないのなら、私はあまり必要ないですし。まぁ、私はずっと一緒にいてもいいんですけどね~」

「ふむふむ……あ、そうだ。この前言ってた秘蔵写真を見せ――――ぐふぅっ!」

 

 容赦なく落ちる肘鉄。見事なまでに額に突き刺さった一撃に、オオガミは悶絶する。

 そして、エウリュアレは凄みを感じる笑顔で、

 

「ルビー。別に貴方が何をしていようと勝手だけれど、マスターを弄るのは感心しないわ。後で痛い目に遭ってもらうことになるわよ」

「……なんでこう、ここの女性は危ない人しかないんでしょう……もしやこのカルデアに来たのはミスだったのでは?」

「あら、ミスだなんて、そんなことないわ。むしろ、まだ一端しか見てないじゃない。というより、一番危ない技術部を見ていないのだから、判断は早すぎると思うの」

「一端でこれならその技術部は相当危ないと思うのですが! ルビーちゃんは帰らせていただきます!」

 

 そう言ってルビーが逃げようとした瞬間、

 

「おはようからお休みまで! あなたの隣に気付くと這い寄る混沌、BBちゃんですよ~! あ、チャンネルは現在休止中なので悪しからず!」

 

 と、突然現れたBBに気付くも、すぐに方向転換できるわけもなく、

 

「あぶなーい!」

「おっと。不意打ちとはいい度胸ですね?」

 

 素早く掴まれるルビー。

 必死で逃げようとするもびくともせず、それでも必死であがいていると、

 

「ちょっとセンパイ、何ですかこれ。完全自律式礼装ですか? 面白そうなので持ち帰って研究していいですか?」

「ちょっと! ルビーちゃんはイリヤさんの元に戻るという使命があるんです! 離してください!」

「BB。帰ったらもう一回会わせるから、それまで我慢して」

「むぅ……仕方無いですね。センパイに免じて許してあげます」

 

 そう言って、BBはルビーを手放し、それと同時にルビーは全速力で逃げ出すのだった。




 後半クエスト待ちな私です。心臓集めて待機しなきゃ……


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とりあえず、現状を伝えておきます(なんか儂の知らんところで面白そうなことしとるんじゃけど?)

「――――という訳で、向こうに魔法少女が来たらしいです」

「BB……儂はむしろ、単独で向こうに行けるようになってるところに突っ込みたいんじゃけど」

 

 技術部工房の真ん中で、座椅子に寄り掛かりながらため息を吐くノッブ。

 BBはそれに対して、

 

「いや、前にも見せたと思うんですけど」

「ん~……そうじゃったか? まぁ、覚えてないし、見てないようなもんじゃろ」

「えぇ~……まぁいいです。それで、どうします? あのステッキ、何やら面白そうなのを持ってたんですが。具体的には薬品です」

 

 明らかに適当なノッブにBBはため息を吐きつつ、本題に入る。

 ノッブは少し考えた後、

 

「……儂らのところに薬品担当はおらんからな……自前調合できるなら技術部入りもありじゃろ」

「ふむふむ……じゃあ、そういう方向で。作れなかったらバラしちゃいましょ!」

「いや魔法少女のステッキ分解はお茶の間大絶叫じゃから止めとけ? 儂、子どもの敵にまではなりたくないんじゃけど? 何より、それは風紀委員案件じゃろ」

「むぅ……じゃあ、分解しないで解放します。でもまぁ、魔法少女のコスチュームも気になりますし、今度見てきましょう。面白そうだったらセンパイにでも着せてあげます」

「うわははっ! なんじゃそれ、めちゃくちゃ面白そうなんじゃが!」

 

 そう言って愉快そうに笑うノッブとBB。そして、

 

「うむ。その話、朕も一枚噛ませてくれまいか」

「うひゃぁぁ!?」

「うぐぅ……喧しいぞBB。別に、驚くことでもないじゃろ」

 

 いつの間にか隣にいた始皇帝に驚いて悲鳴をあげるBB。

 その声が思いっきり頭に響き、耳を押さえつつ叱るノッブ。

 

「ふむ……話から察するに、そのステッキとやらは会話が出来るようだし、話し合うのもアリではないか?」

「いや、むしろ儂はそのつもりなんじゃけど、BBだけ分解促進してるんじゃよなぁ……」

「だって、あのステッキ、生意気にもBBちゃんの立場を奪いに来てるんですよ!? 立ち位置一致による戦争は回避不可能ですよ!」

「いや、妥協という方向はないのか方向はないのかお主は」

「あるわけないじゃないですか! 徹底抗戦の構えです。一方的に捩じ伏せるくらいの力で倒してやりますよ!」

「……朕から見ると、件のステッキとBBは、似て非なるものに見えるが、ノッブとやら。其方はどう思う?」

「まぁ、役割が違うからのぅ……というか、マスターに薬剤は効かんし、BBの方が優位じゃろ。どこに怯える要素があるのか儂には分からん」

「だって、センパイですよ!? 絶対同類扱いしますって!」

「ん~……まぁ、マスターに限ってそんなことないじゃろ」

 

 そう言って笑うノッブに、BBは若干不安そうな表情をするのだった。




 技術部という暇人集団。未だに朕の扱いはふわふわしてる……


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またまた新人さんだよ(一体何人来るのよ)

「よろしくお願いします。マスター」

「うん。よろしくね」

 

 挨拶し、微笑むメディアリリィと、なぜか半泣きなオオガミ。

 エウリュアレはその様子を見てため息を吐くと、

 

「そろそろマシュの粛清を食らっても文句言えないわよ? 容赦なく売るからね?」

「さては悪魔だなエウリュアレっ」

「生憎と女神よ。でもまぁ、堕落させる点では同じかしらね?」

 

 そう言って、クスクスと笑うエウリュアレ。

 

「まぁ、マシュに報告されると困るよね……絶対殺される」

「全くよ。何故か監視責任で私も怒られるのは勘弁だわ」

「……え、怒られるの?」

「そうよ。なんでちゃんと見張ってないのかって言われるんだもの。全く……私が何をしたって言うのよ」

「まぁ、一緒になって暴れてるときもあるし、ノーコメントで」

「基本私じゃないわよね。というか、ほぼ全部貴方じゃない」

「……あの、もしかして、私はいない方がいいですか……?」

「……あぁ、ごめんなさい。すっかり忘れてたわ」

 

 そう言うエウリュアレは、メディアリリィに謝ってから他のサーヴァントがいる場所を伝える。

 

「じゃあ、私はそちらの方に行っていますので。何かあったら呼んでくださいね」

「うん。じゃあ、後でね」

 

 そう言って、スタスタと走っていくメディアリリィ。

 それを見送った二人は、

 

「で、どうするの。マシュに言い訳したって殴られると思うけど」

「いやぁ……素直に殴られるしかないでしょ。全力全霊の一撃とかじゃない限り死にはしないと思う……」

「まぁ、そういうときだけは頑丈さが役に立つわよね」

「こんな形で役立ってほしい訳じゃないんだけどね?」

 

 そう言うオオガミに、エウリュアレはにっこりと笑い、

 

「それじゃ、安心して貴方を売れるわね。楽しみだわ」

「やっぱ悪魔なのでは……?」

 

 エウリュアレの宣言に、オオガミは頬を引きつらせる。

 だが、エウリュアレはすぐに満足げにすると、

 

「別に、本当に言ったりはしないわ。ただ、帰ったらおやつ、よろしくね?」

「……はいはい。全く、別に脅さなくったってそれくらい作るってば」

「でも、意味はなくてもしてみたいときはしてみたいものよ。だから、諦めてね?」

「もう随分と前からそんな調子だった気もするけどね。今日は殊更機嫌が良いようで」

「えぇ、まぁ、そうとも言えるかしらね。楽しいのは事実だし。でも、貴方にやってるっていうのが一番の理由かしら。メドゥーサの代わりなんて、そう簡単に出来るものじゃないもの」

「……あれ、地味に酷いこと言われてる?」

「まさか。そんなことはないわ。むしろ光栄なものだと思うけど」

 

 そう言うエウリュアレに、オオガミは首をかしげるのだった。




 何があったかは聞かない方がいい……結果だけ聞いていた方が良いこともあるんです……


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さて、クエスト追加よ(あの、マスターさんは……?)

「さてと。クエストも増えたことだし、さっさとやっていきましょうか」

「あ、あの……マスターさんはあのまま放置なんですか……?」

 

 そう言って、イリヤが指差す先にいるオオガミは、地面に倒れ伏し、微動だにしない。

 故に、エウリュアレはにっこりと微笑んで、

 

「えぇ。何も考えずに突っ込んで消し飛ばされた人は立ち直るまでは面白くないから置いていくわ。そのうち戻ってくるはずだもの」

「え、えぇ~……わりとさっぱりしてるぅ……」

 

 困惑ここに極まれり。といった感じの表情をしているイリヤに、エウリュアレは困ったように笑いながら、

 

「前にも何度もあったもの。まぁ、今回は流石に堪えてるみたいだけど、それでも月を跨いだらまた突撃してるでしょ。すぐに倒れると思うけど」

「手伝ってあげたりはしないんですか?」

「無理よ。何せ、私と彼女に縁はないし。むしろ、その点で言ったらあなたの方が何倍も役立つと思うけど……まぁ、行かせたら面白くないからあなたはこっちよ」

「えぇっ!? 面白さ優先なの!?」

 

 今にも死にそうな雰囲気のオオガミを置いていき、目的の手助けになりそうな存在を引き離しにかかる辺り、的確にダメージを入れていくエウリュアレに、イリヤはやはり困惑の声をあげるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「……生きてるかしら?」

「生きてないかもよ?」

「解体してみる?」

「それ、生きてても死んじゃうので止めてあげましょう……流石にトナカイさんが可哀想です」

「いえ、可哀想で済ませられるレベルでは無いと思うのですが」

 

 そんな声に反応し、オオガミが顔をあげると、ナーサリー達四人組に加え、アナがそこに立っていた。

 

「あらマスター。もう目覚めてしまったの? 今からワンダーランドへ招待しようと思ったのに」

「ワンダーランドってどんなところ?」

「きっと楽しいところだよ。だってナーサリーが言ってるんだもん」

「夢の国、不思議な国。ワンダーランドへご招待っ! って、する予定だったのに。もう。マスターが早く目覚めるからっ!」

「あれ、おかしいです……私はトナカイさんを起こしに行くんだと言われてついてきたはずなんですけど」

「明らかに息の根を止めに来てるので、もしかしたら私たちはストッパーだったのかもしれません」

「なるほど! 正気じゃないですね!?」

 

 そも、目的であるオオガミを放置して遊び始めている辺り、既に正気な者はいないような気もするいないような気もする。

 

「……まぁ、楽しそうだしいいか」

 

 オオガミは現状を認識してから、そう呟いて再び夢の中へと飛び立っていくのだった。




 それ以上考えてはいけない……何があったかとか、追加の330個はどうしたとか、そう言うのは聞いちゃいけない……言うんじゃない……察してくれ……(血涙


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変態紳士は殲滅だよ(教育に悪そうな奴は残さず消し飛ばすわ)

「ん~……とりあえず、変態紳士は殴り倒していくに限るけど、リンゴを使わないと案外時間がかかりそうだな……」

「そりゃかかるわよ……むしろ、なんでかからないと思ったのかが知りたいわ」

「それはそうなのだけど、あの、マスター。どうして私は肩車をされてるの……?」

 

 アビゲイルを肩に乗せながら真面目な顔で話すオオガミ。隣にいるエウリュアレも気にしていないので、尚更アビゲイルは首をかしげる。

 それに対して、エウリュアレは、

 

「それは簡単よ。だって、マスターが空元気の時に近付いたんだもの。そんな状態のマスターに近付いた時点で、肩車されるのは自然なことよ」

「えっ、初耳なんだけど!?」

「なんでマスターが驚いているの!?」

 

 エウリュアレの説明に、誰よりも驚いているオオガミ。

 むしろアビゲイルはオオガミが驚いていることに驚いていた。

 

「まぁ、無自覚なことに定評があるマスターだもの。というか、ほとんど何も考えてないときの方が多いわ」

「そ、そうなの……でも、やる時はちゃんとやるもの。マスターのそう言うところがいいと思うの」

「むしろやるとき以外は残念なのだけど。貴女も思い当たるところはあるでしょ?」

「ねぇ待って二人とも。本人を置いて話を進めないで……」

 

 何やら変な方向に流れ始めた会話に、思わず声をあげるオオガミ。

 すると、エウリュアレは心の底から不思議そうな顔で、

 

「……むしろ、この話は本人が聞いてちゃ行けないと思うの」

「じゃあなんで目の前で話すんだよ!?」

 

 正論過ぎる突っ込み。

 しかし、エウリュアレは少し考えると、

 

「つまり、今から貴方を追い出せばいいってこと?」

「あ、そう言う方向に持っていくんですね!?」

 

 つまりは、いる方が悪いので、排除する。ということだろう。中々狂気的で、オオガミも思わず頬を引きつらせる。

 

「という訳で、アビー。やってしまいなさい」

「アイアイマム!」

 

 アビゲイルはそう言って、器用にオオガミの肩から飛び降りると、即座に門を使ってオオガミを落とすのだった。

 エウリュアレはそれを笑顔で見送り、数秒してから一瞬で真顔になると、

 

「……記憶を消すために殴っておくのを忘れたわ」

「あっ……ど、どうしましょう……今から追いかけて殴っておこうかしら……」

 

 どうやら、冷静を装っているものの、内心は恥ずかしさで真っ赤になっているようだ。

 しかし、エウリュアレはため息を吐くと、

 

「まぁ、やっちゃったものはしょうがないわ……今から行っても手遅れだろうし、そのうち忘れるでしょ」

「そ、そうね……でも、意外と驚いたわ。エウリュアレさんでも、あんなに動揺するのね」

「……別に、そんなことはないわ」

「……ふふっ。えぇ、そう言うことにしておくわね」

 

 不機嫌そうな雰囲気になったエウリュアレに、アビゲイルはにこにこと笑いながらついていくのだった。




 普段何気なく言っていることも、ふと自覚すると何言ってるんだってなるときありますよね……


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さっさと終わらすぞオラー!!(そういえば、マシュの姿を見ないのよね)

「よっしゃぁ! 次は星原だオラー!」

「うきゃあああぁぁぁぁ!!」

「待ってマスター! それ、想像以上に恥ずかしいのよ!?」

「あははっ! イリヤったら、良い気味ね!」

「……私、このメンバーを取りまとめなきゃいけないのかしら……」

 

 雪原を抜け、中立地帯から星原に向けて走っていくオオガミ達。

 昨日のアビゲイルの様に強制肩車をされ、悲鳴をあげるイリヤ。

 それを見ているクロエはとても楽しそうで、同じく見ているエウリュアレは苦い顔をしていた。

 

「というか、マシュはどうしたのよ……ああなったのを止めるのはあの子の役目でしょ?」

「姉様。マシュさんなら、さっきエルキドゥさんを呼びに帰りました。防衛はいないので準備が終わり次第そのまま突撃してきます」

「なんでそういう重要な事を早く言わないのよ。よし、今のうちに逃げておきましょ」

「強く生きてくださいね、マスター」

 

 そう言って、二人はオオガミと距離を取り、安全圏から見守るのだった。

 

 

 * * *

 

 

「――――あれ、エウリュアレは?」

「ほぇ? 私はマスターさんに捕まるのに必死だったから分かんないけど……クロ、分かる?」

「え? あぁ、それなら、中立地帯で別れたわよ。アナって子と一緒に」

「……なんか、スッゴイ嫌な予感がするんだけど……」

「ま、マスターさんも……? 私もスッゴイ嫌な予感がするんだけど……具体的には、スッゴイ怖い人が今から来る感じ……」

「あ、私も逃げとこ」

「クロずるいんだけど!! 私も逃げたいのに、何故か必死にマスターさんが阻止してくるんだけど!!」

「一人だけ逃がしたりしないわ!」

「え? ふぎゃっ!!」

 

 颯爽と逃げ出したクロエを即座に門を使って阻止するアビゲイル。

 何が起こったのか分からないような顔で左右を見渡し、逃げられなかったことに気付くと、観念したようにその場に座り込む。

 

「それで、誰が来るのよ。心当たりはあるんでしょ?」

「ん~……え、エルキドゥかなぁ……エウリュアレがあのレベルで逃げるって事は、それくらいしか考えられないかなぁ……」

「……まぁ、私も出来る限り協力するけど、いざとなったらすぐ逃げるからね?」

「大丈夫。捕まったら負けだから!」

「どこら辺が大丈夫なのか分からないんだけど!?」

「それは、捕まったら逃げようがないからじゃないかな?」

「な、なるほど……つまり捕まったら負け――――って、誰?」

 

 イリヤの不思議そうな声とほぼ同時に駆けだすオオガミ。

 子供とはいえ、人一人を乗せた状態での全力疾走でもそれなりの速度が出る辺り、スパルタ式の訓練の効果が如実に表れている。が、そもそも、それで逃げ切れるのなら、彼、もしくは彼女は、このカルデアにおいて最強などと呼ばれてはいない。

 

「全く……マシュからの救助要請だったからとりあえず様子見で来たものの、そうも元気に逃げられると、つい捕まえたくなるじゃないか」

「だって、そんなこと言いながらも毎度全力で捕まえてくるじゃないですか!!」

「そうか……なら、仕方ない。久しぶりの運動に、ちょっと付き合ってもらうよ、マスター」

「援護は任せた!!」

「なんで私たちまで巻き込まれてるのおぉぉぉ!?」

 

 そう言いながら、オオガミを追いかけるエルキドゥを、イリヤたちは攻撃することで援護するのだった。




 そろそろ調子に乗り過ぎたのでエルキドゥの登場。

 まだだ……まだ呼符があるっ!!!


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勝った! 完全勝利よなぁ!(暴走しないでちょうだいね)

「ふ、ふふふ……ふははははははは!!! もう怖いものなんてないね! やっぱ呼符が最強なんじゃないかなぁ!?」

「はいはい。暴走しないの。思いっきり引かれるわよ」

 

 発狂しているオオガミを後ろから蹴飛ばすエウリュアレ。

 その様子を、クロエの後ろに隠れているイリヤの後ろに隠れて見ていた美遊は、

 

「ねぇイリヤ……あの人は、いつもあんな感じなの?」

「あ、あはは……私が見た中でも一番テンション高いかな……」

「ま、同じくらい機嫌も良いわね。ダントツよ」

「そ、そうなんだ……」

「でも、テンションは基本あんな感じですよ。まぁ、今日は元気すぎますけど」

 

 こそこそと話す三人の隣にいつの間にかいるアナ。

 三人はそれに驚くが、関係無く話を続ける。

 

「とはいえ、このまま行くとそのうちこっちに来そうですね……姉様が頑張っている隙に逃げるしかないかと。ではまた」

「えっ、あ、逃げるんだ!?」

「助けるんじゃないのね……」

「イリヤはどうするの?」

「えっ……い、いやぁ……別にマスターに捕まるのは良いんだけど、あの名状しがたい女の子だけが不安……今ここにいないけど、見つかったらと思うと気が気じゃない……」

 

 カタカタと震えるイリヤに、首をかしげる美遊。

 クロエは少し考えるようなそぶりをしつつ、

 

「でも、昨日話した感じ、そんなに警戒することないと思うんだけど……」

「いやいや、クロエさん。あの人は本性隠してますって。もっと気を付けた方がいいですよ~? 気付いたらまな板の上かもしれませんし」

「それ、ルビーのことだよね……」

「な、何てことを言うんですかイリヤさん! 私がまな板の上に転がるわけないじゃないですか!」

「いや、この前乗りかけてたからね!?」

「あ~……確かに、捕まってたわねぇ……よく脱出したわね」

「ふふん。ルビーちゃんがあの程度、脱出出来ないわけないじゃないですか!」

「何やってるんですか姉さん」

「捕まってること事態わからないんだけど……」

「サファイアちゃんと美遊さんまでそんな冷めた視線を向けないでください! 照れちゃうじゃないですか!」

「照れる要素を微塵も感じないんだけど!?」

 

 うっすらと赤くなるルビーに、困惑するイリヤ達。

 

「というか、逃げなくて良いの?」

「あ、そうだった……」

「イリヤがそうするなら私も」

「さっさと逃げてしまいましょう! 昨日の鎖の人が来る前に!」

「姉さん。あとで情報共有をお願いしますね」

 

 そう言って、三人はエウリュアレとオオガミの二人から距離をとるのだった。




 結局呼符で来た美遊。嬉しいなぁ……(白目


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そろそろイベントが終わりそうな気配がするわ。(でも、まだ日数はあるから)

「そろそろイベントが終わりそうな気配がするわ」

「うん……でも、なんで私達、お茶会なんてしてるんだろう……」

「イリヤが捕まるから……」

「えっ、私のせいなの!?」

「ん、私は気にしない。イリヤがいるから」

「なんか美遊が重いんだけど……!」

 

 ナーサリーのお茶会に参加している魔法少女三人組。

 原因はといえば、昨日逃げている最中に突然現れたナーサリーにイリヤが捕まったのが原因だろう。

 

「ふふっ。イベントが終わったら、ようやくカルデアに正式にご招待ね。面白い人も、怖い人も、美味しいお菓子を作ってくれる人もいるのよ。私が案内してあげるわね」

「えぇ、よろしくお願いするわ」

「でも、マスターさんが案内してくれるかも……」

「大丈夫。マスターには私から言っておくわ。たぶん、大丈夫だと思うんだけど……」

「大丈夫じゃない可能性があるんですか……」

「いえ、マスターが根回しをしてくれないと、危ない人がいるから……」

「やっぱりカルデアって物騒なところなんじゃない!?」

「危ないのは一部だけよ。基本はいい人達だもの。でも、オモチャを作ってくれるノッブは、どちらかというと悪い人なのが欠点かしら……」

「オモチャを作るってことは、そのノッブって人は、ちょくちょく話に入ってくる技術部なんじゃない?」

「えぇ、その通りよ。他にもいるのだけど……なんか、人数が増えてて、私にはよく分からないわ」

「ふ、増えてるんだ……なんというか、ここに来てから驚きっぱなしで疲れてきたよ……」

「大丈夫。イリヤは私がちゃんと守るから」

「もしかして、私ってそんなに頼りないの……?」

 

 妙に守ることを強調してくる美遊に、困ったような顔をするイリヤ。

 とはいえ、美遊以外は苦笑いをするだけで、特に何も言わなかった。

 

「さて、マスターがここにたどり着く前にお茶会を終わりましょ。今は元気すぎるもの。もう少し落ち着いたら、またみんなでお茶会をしましょ。今度はマスターも一緒にね」

「えぇ。その時を楽しみにしてるわね」

「あ、えっと、ありがとうございました! 紅茶美味しかったよ!」

「ん。ごちそうさまでした」

 

 そう言って、三人が席を立つ。すると、ナーサリーは思い出したように、

 

「あぁ、そうだ。三人とも、ちゃんと楽しんでいってね。恐れても、怯えても、楽しむ心はあれば、()()()()()は応えるから。じゃあ、また後でね」

 

 ナーサリーがそう言うと同時に、周囲は霧に包まれ、晴れたときにはナーサリーも、お茶会をしていた場所もなくなって、イリヤが捕まった場所に戻ってきていた。

 

「……なんだったのかしら」

「サファイア。さっきのサーヴァントは……?」

「すいません美遊様。イリヤ様が捕まってからの記録が隠蔽されていて、解析できません……」

「ルビーちゃんも同じくです」

「そうなんだ……でも、たぶん大丈夫! すぐにまた会える気がするもん! だから……今はマスターさんから逃げるということで!」

 

 そう言って、三人は特に行き先を決めずに走り出すのだった。




 なんでナーサリーを謎キャラにしたのか。それは私にも分からんのです……


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意外と暇ねー(イリヤだけ連れ回されてる……)

「はぁ……暇ねー……」

「まさかイリヤが連れ回されて帰ってこないとは思わなかった……私もついていけば良かったかな……」

「いえ、マスターについていくのは大変よ……?」

 

 中立地帯で座ってぼんやりとしていたクロエと美遊の二人。

 そして、その後ろに突然現れるアビゲイル。

 

「あら。イリヤが苦手な人じゃない」

「え? じゃあ、この人がイリヤの言っていた人……?」

「ん~……初対面なのに、とても警戒されてるわ……」

 

 座ったままアビゲイルを見上げるクロエと、すぐに立ち上がり、距離を取りつつステッキを構える美遊。

 

「何やったのかは知らないけど、イリヤとルビーがとっても怯えてるんだもの。私はともかく、美遊は全力で警戒するわ」

「ふぅん……じゃあ、あなたには優しく接することにするわ。とはいっても、そもそもイリヤさんを怯えさせるつもりはなかったのだけど。なんでああなっちゃったのかしら」

「うん? そもそも、何をしたのか知らないのだけど。私達、イリヤから何も聞けてないのよ」

「ん~……そうね……私はただ、ルビーさんが大惨事にならないように忠告したつもりだったのだけど……まぁ、怯えさせちゃうこともあるわよね」

 

 そう言って、少し寂しそうな表情をするアビゲイル。

 しかし、すぐに笑顔に戻ると、

 

「きっと、そのうち仲良くなれるもの! だから、今はあなた達とお友達になりたいわ!」

「ふぅん……そう。良いわ。なってあげる。って言っても、特に何かするって訳じゃないんだけどね」

「ありがとう! お名前を聞いても良いかしら!」

「クロエよ。クロエ・フォン・アインツベルン。よろしくね」

「えぇ! そちらのあなたは?」

「……美遊・エーデルフェルトです。よろしくお願いします」

「えぇ、よろしくね! じゃあ、私は失礼するわね!」

 

 そう言って、アビゲイルは門を潜って何処かへと行ってしまう。

 その嵐のような少女に、二人は呆然とするのだった。

 

 

 * * *

 

 

「で、どこに行ってたの?」

「クロエさんと、美遊さんのところよ。お友達になりたかったから」

 

 そう言うアビゲイルは、とても楽しそうに笑う。

 それを見て、エウリュアレは、

 

「そう……イリヤは良かったの?」

「ん~……イリヤさんは、ちょっと機嫌が悪いときに会話しちゃったから、時間をかけないと無理かなって。第一印象は中々消えないもの」

「ふぅん。アビーのことだから、気にしないで突撃すると思ったわ」

「そこまで気にしない訳じゃないわ! むしろ、とっても気にするわよ!」

 

 そう言って、アビゲイルは頬を膨らませてエウリュアレに抗議をするのだった。




 クロと美遊は、友人との取り決めにより、次回の異聞帯まで絆もスキルレベルも5以上に出来ない苦しみ……なんだよオール5未満縛りって……


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新イベントの気配がする……(今もイベント中なんじゃ……?)

「――――! 新イベントの気配がする……!」

「えっ、今イベント中じゃなかったんですか……?」

「イベントが終わったらそのままカルデアに戻らないで直行するってことよ。まぁ、マスターだけなんだけどね」

 

 何かを感じ取ったオオガミに、困惑するイリヤ。

 エウリュアレはそんな二人にため息を吐き、イリヤの疑問に答える。

 

「ほえぇ……マスターさん、休憩無しなんだ……私じゃ考えられないや」

「なんだかんだ、二週間ずっとですもんねぇ……まぁ、マスターの魔力というより、カルデアのバックアップの力って感じですけど」

「あら、そのステッキ、ちゃんと見るところは見てるのね」

「す、すいません、うちの残念ステッキが……」

「残念とはなんですか残念とは! ルビーちゃんは誠心誠意精一杯頑張ってるじゃないですか!」

 

 そう言って、抗議をするルビーを見て、オオガミは、

 

「うんうん。まぁ、ルビーが言うことはごもっともだ。じゃあ、反対に超優秀なルビーに良い話があるんだけど、その力、より活かせる場所があるとしたら、行ってみたくない? もちろん、イタズラ的な意味で」

「おぉ! なんですか面白そうですね!」

「ちょ、これ以上はたぶん死活問題に発展すると思うんですけど!?」

「私もあまりおすすめしないけど……まぁ、面白そうなら良いわ」

 

 オオガミの言葉に、三者三様の反応をする。

 そして、ルビーはオオガミに近付くと、

 

「ではでは、どういったところなのかお聞かせ願えますか? マスターさん」

「うん。それはね……技術部って言うんだけどさ」

 

 ニヤリとオオガミが笑うと同時に出現する門。

 それはアビゲイルのものとはどこか違う雰囲気を漂わせており、故に、出てくるものは――――

 

「ナイスですセンパイ! では、このステッキ、貰っていきますね!」

「ふはは! こやつが例の面白ステッキか! 薬品担当の試験に合格できるか楽しみじゃ!」

「生半可なものでは朕もつまらぬ。どれ、お手並み拝見といこう」

「だ、騙しましたねぇぇぇ!?」

「いやぁ……騙してないんだよねぇ……だって、そこが一番イタズラするところだし」

 

 そう言って、BB達に引きずり込まれたルビーに手を振る。

 それを呆然と見ていたイリヤは、ふと我に帰ると、

 

「ど、どうしよう! いろんな人に技術部には近付くなって言われてたのに、ルビーが引きずり込まれちゃった!」

「気にしないでおきなさい。どうせすぐに帰ってくるわ……あれ、でも、あの二人に捕まったらしばらくは帰ってこないかも……?」

「ルビーがいないと変身できないんですけどー!?」

 

 そう悲鳴をあげるイリヤに、オオガミは、

 

「大丈夫。代わりにエウリュアレ出るから」

「出ないわよバカ」

 

 即座にオオガミは蹴り倒され、静かになるのだった。

 その怒濤の展開についていけないイリヤに、エウリュアレは、

 

「ま、適当にライダーでも呼んでくるわ。マスターはともかく、サーヴァントは基本休めるから。二人のところに行って遊んできなさい」

「え、でも……」

「戦力にならないのを連れ回すほど悪魔じゃないわよ。このマスターは」

 

 そう言って、エウリュアレはイリヤが遊びに行けるようにする。

 イリヤもその意思を汲んで、お礼を言って走っていくのだった。

 

「……まぁ、戦力にならないのを連れ回したのは、私の時だけよね……そんな良い思い出でもないけど」

 

 そう呟いて、苦笑いをするのだった。




 紫式部……でもまぁ……礼装狙いで終わりですかね。お兄ちゃんになった代償は石の消滅なのですシトナイは狙いたい。


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バレンタイン2019 ボイス&レター・これくしょん!〜紫式部と7つの呪本〜
帰ったら何か出来てるんだけど!(地下大図書館ねぇ……)


「帰ってきたよカルデア!」

「地下室に大図書館ねぇ……ちょっと気になるし、私はしばらく籠るわね」

「エウリュアレさんが真っ先にいなくなったのだけど!?」

 

 カルデアに帰ってくるなり、新設されたという地下大図書館にやって来たオオガミ達。

 颯爽と本の群れに突撃していったエウリュアレに驚くアビゲイル。

 ちなみに、現在食堂ではイリヤ達の歓迎会の準備が行われている。にも関わらず、なぜオオガミ達がここにいるかと言えば、単純な話、邪魔だと追い出されたわけだ。

 なので、暇潰しを兼ねて、オオガミが二人を連れて地下大図書館へと向かったわけである。

 

「ま、マスター! 追わなくて良いの!?」

「いや……追わなくても歓迎会までには戻ってくるし……大丈夫じゃない?」

「なんて信頼感! でも若干投げやりな感じがするのだけど……!」

「いやいや、そんなまさか。というか、今回は様子見だよ。明日は歓迎会だし、その次から本気出す」

「それ、出さないやつだと思うのだけど……!」

 

 実際やる気がなさそうに見えるオオガミ。

 ただ、こんな残念そうな感じでも、毎度イベントを最後までこなしているので、なんとなく大丈夫な予感だけはする。

 そんな時だった。外から足音が聞こえ、直後、扉が開かれる。

 

「それで、ここが新しく出来た大図書館! 一体どこにこんな数の本が眠っていたかなんて、誰にも分からないのだけどね!」

「えっ、誰にも分からないのにあるの? 不気味じゃない?」

「よくある事よ。だってここは、絵本のように不思議なところ! 物語の中のよう! ジャバウォックの様に凶暴な怪物だって、眠りネズミのように怠惰な人だっているのよ!」

「す、凄い……何言ってるのか全然分かんないけど、なんか凄いことだけはわかった気がする……!」

「それ、つまり何も分かってないってことじゃない」

「おそらく、『不思議の国のアリス』の登場人物が主になっているのかと。ですので、会話を理解するには読んでおくのが最適かと」

「ありがとうサファイア。あとでイリヤと読んでみるね」

「お役に立てたのなら光栄です」

 

 そう言って、入ってきたのはナーサリーと魔法少女三人組。

 ただ、イリヤの手にルビーがいないのは、未だ技術部に囚われているからだろう。

 

「あ、マスターさん! マスターさんも見回りですか?」

「いや、次のイベント会場はここだから……というか、ここにいると襲撃されるよ?」

「大丈夫です。イリヤは私が守るので」

「大丈夫。私もいるもの。それに、今マスターの影に隠れている子が、そもそも私達に近付けさせないでしょ?」

 

 そう言って、クロエはオオガミの後ろに隠れているアビゲイルを指す。

 

「まぁ、イリヤに見付かると逃げられる気がするのはわかるけど、話さなきゃ始まらないわ。あなたもこっちに来なさいよ」

「……どうしよう、マスターさん……」

 

 クロエに言われたアビゲイルは困ったような顔をするが、オオガミはため息を吐き、

 

「こっちは大丈夫だから、行ってきて良いよ。そもそも、暇潰しで来たんだし。エウリュアレを探して一緒にいれば安全でしょ」

「……じゃあ、行ってくるわ」

 

 アビゲイルはそう言うと、イリヤ達のところへと向かうのだった。




 うぅん……礼装が欲しい……


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イリヤ達の歓迎会!(わ、私は厨房に行っちゃダメなの!?)

「ということで! 魔法少女組の歓迎会を始めるよー! カンパーイ!」

「「「カンパーイ!」」」

 

 そう言って始まる大宴会。

 当然、今回の主賓であるイリヤ達三人組は、オオガミの隣という目立つところにいる。

 

「な、なんだろう……凄い場違い感あるよ……」

「私達の歓迎会なのに場違い感ってなによ……」

「なんとなくイリヤの気持ちが分かる。周りが大人ばっかりだから、威圧される感じ」

「大丈夫。私達もいるもの。気軽に楽しめば良いわ!」

 

 緊張しているイリヤの隣にやって来たナーサリー。

 

「あ。お料理はとっても美味しいのよ。昨日のお菓子も、ここで作ったものだもの! 期待して良いわ!」

「あ! あの美味しいお菓子! でも、お菓子とご飯は別だよね……? 美味しいのかな……」

「食べればすぐ分かるわ!」

「わ~、楽しみ~……って、なにこの禍々しいたこ焼きは……!」

 

 料理に引かれてテーブルに来たイリヤは、中央にさりげなく置かれている、周囲の料理とは明らかに違う雰囲気のたこ焼きに威圧される。

 

「あ~! マスター! またアビゲイルがたこ焼きを作ってるわ! なんで許可したの!」

「いつの間に焼いたんだアビー!」

「な、なんでバレたの!? そして、なんでエウリュアレさんは既に私を捕まえてるの!?」

「観念しなさい。逃がしはしないわ。全部あなたが食べるまでね」

「ぜ、全部!? いくつあると思ってるの!? いっぱい作ったのよ!?」

「BBいるんでしょ。手伝いなさい」

「は~い! 面白そうなので手伝いますね~! ではアビゲイルさん、諦めてタコパしましょう!」

「実質一人なのだけど!」

 

 イリヤの目の前にあったたこ焼きがテーブルに飲まれるように消えていくのを見たあと、響いてくる悲鳴。

 明らかに熱々だったので、そのダメージは言うまでもないだろう。

 

「……あのたこ焼きって、そんなに美味しくないの……?」

「いいえ、美味しいとか美味しくないとか、そんなレベルじゃないわ。あれはもう、危険物質よ。食べたら倒れちゃうもの」

「もう料理の域じゃない……! なんでそんなものが……!?」

「分からないわ。でも、あのたこ焼き以外は大丈夫なはずよ。このラザニアなんて、美味しさでこのチーズの様に伸びてからほっぺたが落ちちゃうわ!」

「そ、そんなに……?」

 

 ナーサリーに勧められたラザニアを取り皿に取ると、そのままフォークで一口。

 

「お、美味しい……! とっても美味しい! 誰が作ったの!? 後でお礼を言わなきゃ!」

「それはたぶん、あの赤い外套の――――あれ、いなくなっちゃったわ。どこに行ったのかしら……」

「……赤い外套……? なんだろう、意図的に避けられてる気がする……」

「ん~……まぁ、 そのうち会えるわ。大丈夫よ」

「うん……」

 

 そう言って、お礼を言うのは諦めて、美遊達が来るまで二人はそこで料理を楽しむのだった。




 く、くそぅ……書く時間がなくてやりたいことが全部は出来なかった……! オオガミ君魔法少女変身回とかやりたかったのに……!

 日も跨いじゃったし! ちくせうっ!


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大声って頭に響くよね(それ以上にヤバイこともあった気がするんですが!)

「う~ん、昨日の大絶叫で今も頭が痛い……」

「おやおやぁ~? マスターさん、随分と辛そうですねぇ~?」

「誰のせいだと思ってるんだこのポンコツ……!」

「キャ~! 暴力反対ですよ~!」

 

 そう言って、オオガミに輪の部分を鷲掴みにされて声をあげるルビー。

 とはいえ、ダメージを受けていないように見えるのは、おそらく気のせいではないのだろう。

 

「はぁ……突然手元に来たと思ったら次の瞬間には強制変身とか、驚きすぎて一瞬動けなかったからね。代わりに真横から矢が飛んできた時は死んだかと思ったよ」

「むしろ私としては、全力で魔力障壁を張ったのに完璧に回避されて面白くなかったんですけど。なんですかあれはズルすぎません?」

「いや、普通命狙われたら避けるよね? 特にエウリュアレが射って来てるから容赦なく狙ってきてたからね? 避けなかったら死んでたよ?」

「なんで一番仲の良さそうな方が一番命を狙ってきてるんですか。ルビーちゃん的謎がまた増えたんですけど」

 

 そう言って悩むルビー。

 しかし、オオガミ自身もその理由が分かっていないので、エウリュアレに聞いて欲しいと思った。

 

「で、なんでルビーはこっちにいるのさ。イリヤはどうしたの」

「ん~、正直常に一緒にいる必要はないので、安全なうちは私はフリーで大丈夫かな~って思いまして」

「ふぅん……まぁいいけどさ。でも、そろそろノッブ達が来るんだけど」

「大丈夫ですよ! ルビーちゃんは意気投合したので、安全ですとも!」

「おっと。それは技術部をよく見てないね。大丈夫、直に慣れるさ」

 

 そう言うと同時に、図書館の扉が勢いよく開け放たれる。

 

「調査は儂が担当するんじゃ! BBは下がっておれ!」

「嫌ですぅ! こんな地下空間とか、めちゃめちゃ面白そうじゃないですか! ノッブだけ抜け駆けさせませんよ!」

「む。朕は関係無いぞ。本を借りるついでにこの空間の解析をするだけだし」

「「それを抜け駆けって言ってるんじゃ(です)!」」

 

 そう言いながら、火縄銃でBBと始皇帝を狙うノッブと、黒い鎌と触手を振るうBB。わりと興味なさそうな顔で水銀を操り防御する始皇帝。

 それを見ていたルビーは、

 

「な、なんですかあれは……」

「ん~……内容的には突然出来た大図書館を見て回りたいし、どうやって成り立ってるのか気になるから解析したいけど、他の二人には先を越されたくないノッブとBB。始皇帝は別に速度重視じゃないけどとりあえず解析したいって感じかな。止めに行くよ」

「えぇ!? あの中に突っ込むんですか!? 明らかに自殺行為ですよ!?」

「気にしない気にしない。んじゃ、突撃~」

「さては命知らずですねこの人!」

 

 そう言って、オオガミはルビーを片手に喧嘩している技術部に突撃していくのだった。




 最終的には仲良くやるので、ただ単に喧嘩をしたいだけなのかもしれない技術部……


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こんなすぐに呼び出させるとは思わなかったよ(アタッカーキャスターは貴重だからね)

「まさかもう呼び出しがかかるとは思わなかったよ……」

 

 そう言って、ため息を吐くのはイリヤ。

 オオガミはそれに対して苦笑いをしながら、

 

「まぁ、キャスターでアタッカーとか少ないからね……本当は護法少女でも良いかなって思ったんだけど、回転率欲しいから。どうせ何回か撃つことになるだろうし」

「ん~……全体宝具とかでも良いんじゃないですか? わざわざ単体にする必要もないでしょう」

「体力も多いから、単体の方が良いんだよ。威力重視だよ」

「あらマスター。私は威力がないのかしら」

 

 そう言って現れたのはナーサリー。

 頬を膨らませている様子から、大変ご立腹なのだろう。

 

「いやいや、そう言うわけじゃないんだけど、一撃で倒せないからさ。後押しは必要でしょ」

「むぅ……でも、イリヤなら良いわ! わがまま皇帝やイタズラ皇女じゃないんですもの!」

「あの二人に一体何の恨みが……」

「私から全体宝具を取ったらクリティカルしか残らないのに、とっても強い全体宝具だもの。許せないわ!」

「あ、単体は許すんですかそうですか」

「だって単体の攻撃力は真似できないもの」

 

 そう言ってにこやかに笑うナーサリーに、オオガミとイリヤは苦笑いになる。

 

「で、でも、ナーサリーさんなら安心できるよ。だって、カルデアに来て一番最初のお友達だし!」

「……アビーは?」

「あ、アビゲイルさんはちょっと……まだ怖いかな……でも、頑張ればお友達になれると思うし、努力中です!」

「エウリュアレはどうかしら。一番仲良くなりやすいと思うの!」

「エウリュアレさんは、友達というよりも……なんだろう。リズみたいな人……かな。あ、リズって言うのはうちの家政婦さんなんですけど、いつもごろごろだらだらしてる仕事をしている方が珍しい人で――――って、ちょっと語りすぎちゃったかも。まぁ、そんな感じの人だと思ってます」

「ふむふむ……つまり駄女神と」

「どうしましょうマスター。この子、正体を見抜いているわ!」

「誰の正体が駄女神よ」

 

 言葉と共にオオガミの頬を掠めていく矢。

 その事実を認識した瞬間に、オオガミは本棚を壁にして、

 

「とりあえず場所はわかってるけど、矢を向けてるのはどうかと思うので下げてくれませんか女神様!」

「あら、矢を向けられるようなことをしたのかしら?」

「逆にしてない可能性があるのに何も聞かないでとりあえず射るわけないので! それに、第一声が殺意こもってたし!」

 

 そう言い合う二人に、イリヤは、

 

「ねぇ、なんでマスターさんは射たれかけたのに平然としているの……?」

「マスターは人間じゃないかもしれないわ。でも、いつものことだから。アンデルセンも、『あんな喧嘩犬も喰わん。放っておけ』って言うわ。だから、私達は二人が静かになるまで冒険してましょ!」

「えぇ!? 放置して良いの!?」

 

 そう言うイリヤの手を引いて、ナーサリーは図書館の奥へと向かっていくのだった。




 最近エウリュアレを自重できなくなってきた……一度どこかで補給せねば……


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今日は厨房の人数が多いわね(もう残り四日ですよ姉様)

「……今日は、厨房の人数が多いようだけど」

「まぁ、後四日ですから。今ギルガメッシュ王がマスターを抑えている間にある程度準備をしておきたいというのは自然な事かと」

 

 ふぅん、と呟いて、エウリュアレは椅子に座りつつ厨房を眺める。

 隣に座ったアナは、ティーセットを一式持っていた。

 確かに、エミヤは追い出されたのか、居心地が悪そうに座っているところを見るに、厨房で頑張っているのはチョコレートを作っているのだろう。

 

「……貴女はいいの?」

「私は作り終わってますから。姉様は良いんですか?」

「アイツが貰いに来ないから、暇なのよ。周回にはまるのはいいけど、抜け出せなくなるのはどうかと思うわ」

「いえ、マスターも14日まで待つと言っていたので、周回しているだけかと」

「……日付を重視する気持ちは分からなくはないけど、さっさと貰いに来ても良いと思うわ」

「ちなみに、全員から貰う準備は終わっているそうです」

「尚更早く貰いに来ても良いと思うのだけど」

 

 そう言って、頬を膨らませるエウリュアレ。アナはそんなエウリュアレに苦笑いする。

 そんな二人の隣に、さりげなく座ってくるのは武蔵。

 

「やっほ~。いつもマスターと一緒にいるからちょっと話してみたくなっちゃった」

「あら、宮本武蔵、だったかしら。下総国と、私は知らないけどアナスタシアの時もありがとね」

「あ~……その時の事、私、うっすらとしか覚えてないのよね~。だから、あんまり聞かないでくれると助かるかなぁって」

「そうなの? まぁ、それでもいいのだけど。それで、何を話しに来たのかしら」

 

 余裕そうな表情で紅茶を飲みつつ武蔵にそう聞くエウリュアレ。

 すると、武蔵はとても目を輝かせながら、

 

「エウリュアレさんとマスターの関係性を聞いてみたくて! 基本一緒にいるから気になっちゃって!!」

「……一定期間ごとに一回聞かないと気が済まないのかしらこのカルデア」

「姉様。全員違う人です。というか、そんなに聞かれてないです」

 

 思いっきり動揺しているエウリュアレに、アナが突っ込む。

 

「ま、まぁ、別に私は気にしないけど、そんなに気になるものかしら」

「えぇそれはもう! 色恋沙汰っていうのは何時の世も好まれるわ!」

「そ、そう……ん~……どこから話せばいいかしら。まぁ、そもそも私がこうなったところから、かしら」

 

 そう言って、遠い目をするエウリュアレ。

 それに対して、武蔵は目の輝きを増していく。

 そんな武蔵に、エウリュアレはため息を吐いて、静かにしているアナをちらりと見つつ、話し始めるのだった。




 気が付くとエウリュアレの昔語りしてる……

 あ、まだ誰からもチョコ貰ってません。手持ち全員分のチョコは揃ったんですけどね。


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一体何をしたら足止めを頼まれるような事になるんだ?(なんで男性が足止めに来るんだろうね?)

「あ~……なんか、ナーサリーにオタクの足止めを頼まれたんだが……何したんだ?」

「むしろこっちが聞きたいんだけど」

 

 ロビンの疑問に即座に聞き返すオオガミ。

 

「さっきまで王様と話してたし、今度はロビンさんだし。というか、なんでナーサリーに頼まれてるの……」

「いや、むしろあの金ぴかと平然と話せるアンタはよくやってると思うよ。オレは勘弁だけどな」

「別に話が通じないわけじゃないし。ただ、選択肢をミスったら殺される可能性があったのはちょっと震えたけど。まぁ、楽しめたので良かったかなって」

「へぇ~……楽しめるほど肝が据わってるってのがすげぇわ。つか、そんな大物と何を話せってのかねぇ……」

「いやいや、ロビンさんは気楽に話せる相手だし。別物だよ」

「さいですか。ん~……あぁ、そうだ。アンタに聞きたいことがあったんだ。あの技術部っての、面白そうだが、未だにどこにあるか分からなくてな。そのうち連れて行ってくれ」

「良いけど……BBいるよ?」

「止めておくわ」

 

 ルルハワで悲鳴を上げていたことを思い出し伝えた瞬間、ロビンが顔を青くしたところを見るに、どうやら最近怒涛の勢いで人が増えている技術部にBBがいる事を忘れていたらしい。

 

「はぁ……なんでいつもアイツはいるのかねぇ……いやまぁ? 別にそこまで嫌ってるわけじゃねぇけど、ブタにしてこようとするのだけは勘弁だわ。どう思うよ」

「いや、セイレムで一回されかかったけど……?」

「……ブタ、流行ってんのかねぇ……」

「まぁ、美味しいしね。是非も無し」

「……そう言う意味じゃないんだがな?」

「分かってるって。ワザとだよ」

「いや、オタクの場合、本気で言ってるようにしか思えねぇんだが……」

 

 困ったように言うロビンに、笑みを浮かべるオオガミ。

 

「それで、技術部の件は流す?」

「あ~……まぁ、保留で。流石にBBの下で働く気にはなれねぇわ」

「別に上下関係があるわけじゃないんだけど。まぁ、リーダーは一応ノッブだけど」

「あれ、アンタじゃなかったのか。てっきりアンタがまとめてんのかと思ってたぜ」

「いやいや。あの集団をまとめられるとか、それこそ超人でしょ。無理無理。カリスマの塊が初期でノッブ。自由人が一人だよ? 無理に決まってるじゃん。カリスマさんに投げるに決まってるじゃん」

「まぁ、適当にまとめられそうなやつに投げた方が楽だわな。しかも、謀反起こしそうなのしかいねぇし」

「うんうん。背後から刺されたくないので、謀反で死んだことをネタにしてる人に押し付けるしかないでしょ」

「なるほどねぇ……」

 

 そんな感じで二人はしばらく話し、あっという間に時間が過ぎて行くのだった。




 ロビンさんを出したかったけど、セリフ回しが分からなくて調べまくって時間が過ぎる……滅多に出さない人って、そんなにうちのカルデア色に染められない……


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こそこそと何をしてるのよ(えっとぉ……ロビンさんにパス)

「……何してるのよ」

「あ、いや……ろ、ロビンさん。パス」

「えっ。オレに投げるの? ズルくね?」

 

 図書館で、なにやらこそこそしていた二人に声をかけるエウリュアレ。

 オオガミは即座に説明をロビンに投げつけ、ロビンは投げつけられたことで頬を引きつらせる。

 

「いや、別にやましいことはしてねぇよ? ただ、マスターにトラップの張り方とか聞かれて、ちょっと熱が入っていたというか、そんなもんだぜ? 何の問題もないって」

「普通のマスターならそうなのかもだけど、ソイツに限っては別だわ。だって、教えられたことは基本すぐに覚えるもの。しかも、無駄に応用してくる……果てしなく面倒なことになるのだけど、分かっているのかしら?」

「……もしかして、オレ、マズったか?」

「大丈夫! ロビンはなにもしてない! という事で、マントだけ拝借してくね」

「いやそれはねぇだろマスター!! 何一人だけ逃げ出そうとしてるんだ!」

 

 そう言って、皐月の王を奪おうとするオオガミに抵抗するロビン。

 瞬間、その二人の間を駆け抜ける一本の矢。

 ぎこちなく振り向き、矢が刺さっているのを認識した二人は、一瞬で顔を真っ青にする。

 

「抵抗してないでよこせぇ!」

「だから一人で恩恵にあやかろうとしてんじゃねぇよ!? 明らかに見捨てる気満々じゃねぇか!」

「大丈夫! ロビンさんならこの状況でも逃げられるって!」

「バカ言ってんじゃねぇですよ! 死ぬわ! アイツの目を見ろ! 明らかに『どっちも殺す』って目をしてるじゃねぇか! つか、オレに関しては若干八つ当たりな感じで、しかも本来は別の理由があるのを隠して、トラップの話にこじつけてる感あるし!」

「……ヤバい、心当たりがありすぎてどれで怒られてるのか分からない……」

「なんでそんなになるまで放っておいたんだよ……!」

 

 明らかに自分が原因で怒っているのは分かるが、心当たりがありすぎるという問題。

 当然、ロビンもそこまで酷いとは思っておらず、顔色以上に内心は真っ青だ。

 そんな二人に、一声かけられる。

 

「それで、どっちが犠牲になるのかしら?」

「「コイツで!」」

「両方ね」

 

 二言目で、二人揃って射たれるのが確定した。

 当然逃げ出す二人。容赦の無い攻撃で、涙目になりつつも、走って逃げ回る。

 

「なんでオレ、いつもこうなるんですかねぇ……」

「まぁ、イケメン属性は得てして不幸属性も持っているってことだよ! ヒロイン枠だし!」

「おいそれは女顔って言いたいのかマスター! 聞き捨てならねぇんだが!」

「いや、もっと根本的なところが……いやまぁ、やる時はやってくれるから、ヒーローでもあるけど! やったねロビンさん! どっちも行けるよ!」

「オレヒロインはやりたくねぇんですけど!?」

 

 そう言って、笑いながら逃げるオオガミの後ろを、エウリュアレの矢を迎撃しながらロビンは追いかけるのだった。




 なお、女神の美声でロビンが魅了されて追い詰められるまでがオオガミクオリティ。ただ、それでも抜け出せそうな不思議……


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なんでそんなことになってるんだよマスター?(とっても珍しいわよね)

「……珍しいこともあるもんだなぁ」

「マスターさん、大丈夫?」

 

 そう言うアンリとアビゲイルの前には、落とし穴にはまったのか、首から上だけ出ているオオガミがいた。

 

「……エウリュアレにやられた」

「オイオイマスター。捕まっちまうとかなっさけねぇなぁ! でもいいぜ。なに、問題はない。そもそも英霊と張り合おうってのがおかしいんだ。ま、ゆっくり穴に埋まって頭を冷やして、次をどうするか考えりゃいいさ」

「とりあえず引っ張り出すわ」

「お願いアビー」

「オレの話はスルーですかそうですか」

 

 話をまるで聞いていない二人に、思わず突っ込むアンリ。

 しかし、アビゲイルが引っ張ろうともびくともしない事に、アビゲイルは首をかしげる。

 

「ねぇマスター……なんで抜けないの?」

「……何でだろうね。全く検討もつかない」

「まぁ、休めってことだマスター。周回はコイツが代わりにやってくれるだろうよ」

「いや、穴に埋まったまま休むとか、そんな高度なこと出来ないって。休めるけど、起きたとき身体中が痛いんだって」

「やったことあるかのような言い分なんだが……」

「穴はないけど、宙吊りはあるよ。頭に血が上って死ぬかと」

「……実はこのマスター。アホなんじゃないかと最近思い始めた」

「何言ってるのアンリ」

 

 アンリの言葉に反応するアビゲイル。

 オオガミはどんな反論が出るのかと期待し、

 

「とっても今更なことだと思うの」

「なるほど気付くのが遅いって言ってるのかコイツ」

「まさか今更って言われるとは思わなかったんだが……マスター、普段何をしたらこんなこと言われるんだよ」

「こっちは聞きたいんだけど……えぇ~……何をしたよ……」

「そう思うなら、マスターは普段の自分を振り返った方がいいと思うの」

「な、なんで説教されてるんだろう……穴に埋められて、少女に叩かれながら説教される……何やってるんだろう……」

 

 段々とテンションが落ちていくオオガミ。

 それに気付いたアビゲイルは、慌てたように、

 

「ど、どうしましょう!! マスターが落ち込んでしまったわ!」

「いや、原因はお前だよ」

「えぇ!? いや、そんなはず無いわ!」

「なんでそんな自信満々に言い切れるのか、不思議でしかねぇ……」

「いや、いつも通りとしか言えないけども……」

「……最初に会ったときと変わったなぁ……マスター一直線だったときはどこに行っちまったんだろうなぁ……」

「エウリュアレに似てきた感じはする……」

 

 それに対して、アンリは軽くうなずいて納得するのだった。




 よし。チョコをもらう準備は出来た……後はイヤホン装備して一気に貰うぞぅ……!


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なんだかんだヒロイン力高いよね(とっても嬉しそうですね、姉様)

「ふふ……ふふふふふ……!!」

「嬉しそうですね、姉様」

 

 食堂の片隅で、頬が緩んで笑みを浮かべるエウリュアレに、アナが声をかける。

 すると、エウリュアレは勢いよく振り向き、

 

「ッ、アナ、何時からいたの?」

「今来たところです。マスターへは渡せたのですか?」

「まぁね。貴女も渡せたのでしょう?」

「はい。それと……これは私からエウリュアレ姉様へ。ステンノ姉様はまだ見つかりませんので……」

「あぁ、そうだったわ。すっかり逃げるのを忘れてた。恐るべし、マスターね。なんか他にも色々貰っているようだし、帰ってきたらたっぷりとイジめてあげようかしら」

 

 そう言ってクスリと笑うエウリュアレに、アナは微笑むと、

 

「それじゃあ姉様。私はこれで失礼させていただきます。今日中にステンノ姉様を見つけないとですので」

「えぇ、頑張りなさいよ~」

 

 そう言って、去って行くアナに手を振る。

 

「……さて、それじゃあ、監視カメラの確認を再開しようかしら」

 

 そう言って、エウリュアレはBBから貰って来たノートパソコンを取り出し、準備を始める。

 

「全く……近代英霊どころか、神代の神霊に対して要求することじゃないと思うのだけど。こういうのは、刑部姫とか、始皇帝とか、そういうのが得意なサーヴァントに押し付けるべきだと思うの」

「いやいや。だって、エウリュアレさんに渡したら、センパイの事を確実に探してくれるじゃないですか。しかも、妙にピンポイントで」

「……来てるなら、お菓子の一つでも差し入れるべきだと思うわ」

 

 いつの間にか後ろに来て画面をのぞき込んでいるBB。

 エウリュアレはため息を吐きつつ、

 

「で、何しに来たのよ」

「センパイは今どこにいるかなぁって思いまして。というか、てっきり気付いてたのかと思いましたよ」

「最近は戦闘してないもの。連れまわされてもないし、マスターを追い回してもないし」

「一昨日くらいに追いかけていたって聞きましたけど?」

「それはそれよ。というか、どこからそんな噂が出てるのよ」

「いえ、昨日ロビンさんが倒れてたからちょっと聞いてみたらそんなことを言っていたので」

「ふぅん……あの緑、もう少し話した方が良かったかしらね」

「ちょっと! ロビンさんは私のおもちゃなので、エウリュアレさんはメドゥーサさんで我慢してくださーい!」

「あら、そうだったの? じゃあ、そっちは良いわ。それで、マスターの居場所だっけ? 今は……適当に廊下歩いてるわよ。用があるなら行ったらいいけど、あんまりふざけすぎるなら、撃ち落すわ」

「嫌ですねぇ……そんなに脅されなくても、別に何もしませんよ? もう私も渡しましたし。今年はBADENDを選ばなかったので不満なんですけどね。来年に期待です☆」

「……そう。まぁ、楽しそうでよかったわ。じゃあ、また後でね」

「は~い。ではでは~」

 

 そう言って去って行くBBに、エウリュアレは雑に手を振るのだった。




 真っ先に渡したのは安定のエウリュアレ。というか、ゴルゴーン三姉妹に渡して、アビーに渡してから後はランダムで。女性陣ラスト変態尼さんだったのは笑ってください……


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やっと配り終えたぁ……(お疲れ様、マスター)

「ふぃ~……ようやく配り終えたぁ……」

「お疲れ様。一直線に帰ってきたのね」

 

 ベッドに倒れ込むオオガミに、労いの言葉をかけるエウリュアレ。

 

「……よく寄り道してないって分かったね」

「まぁ、BBが逐一確認しに来てたし。おかげで監視カメラを見れるようになっちゃったわ」

「そ、そう……というか、なんでBBからそんなのを受け取ったのさ」

「だって、『エウリュアレさんならすぐにセンパイを見つけてくれるでしょう?』なんて言われたもの。反論したくて請け負うじゃない。そしたら適当に開いたところに貴方がいるんだもの。BBに『千里眼でも使ってるんですか?』なんて言われたわよ。許さないわ」

「あれっ、これ怒られてるの?」

「えぇ、そうよ。怒ってるの」

「う、うぅむ……理不尽」

「えぇ。でも、いつも通りでしょ」

「そうだけどさぁ……で、今は何をしてるの?」

 

 椅子に座って何かをしている様子のエウリュアレに気付いたら、何をしているのか気になってしまうのは彼の性だろう。

 それに対して、エウリュアレはニヤリと笑い、

 

「今、BBと通話してるの。今までの会話、全部筒抜けよ」

「……それ、恥ずかしいのってエウリュアレの方なんじゃない?」

「…………」

 

 オオガミに言われ、エウリュアレが少し考えたあと、カチリ。という音がし、同時に机に突っ伏す。

 

「向こうでBBが笑ってる気がするんだけど」

「……最後に『バラすの早すぎです! もうちょっと黙っててくださいよ!』なんて言われたけど、にやにや笑ってるのが許せなかったから切ったわ」

「……エウリュアレって、ボケてるときとんでもないことをやるよね」

「……うるさい」

 

 開いていたノートパソコンを閉じ、扉にロックをかけてからオオガミの隣に寝るエウリュアレ。

 

「珍しいことして疲れたんじゃない。ゆっくり休んでよエウリュアレ」

「言われなくても休むわ。BBが覗かないようにはしたはずだし、天井も溶接済み。扉にもロックをかけたあと巌窟王を見張りにしたからたぶん大丈夫でしょ……」

「完全防御なんだけど……密室にされてるとは思わなかった……まぁ、安全とは言い切れないけど、エルキドゥもいるだろうし、大丈夫かな」

「えぇ、そうね……貴方も夜更かししないでさっさと寝なさい。明日も周回するんでしょ?」

「うん。じゃあ、おやすみなさい。エウリュアレ」

「えぇ、おやすみなさい。オオガミ」

 

 そう言って、目を閉じるエウリュアレ。

 反対に、オオガミは硬直し、

 

「……名前を呼ばれるとは思わなかったわ~……」

 

 と、小さく呟いて悶えるのだった。




 いやぁ……昨日で全部終わらせるつもりだったけど、一つ一つの衝撃に勝てなかった……


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なんで今復刻するんですか正気ですか(石集めのためにさっさとイベント終わらせるわよ)

「……詰んだ」

「そうね。さっさとイベント終わらせて石集めに行くわよ」

 

 魂が抜けかけているオオガミの首根っこを掴み、図書館まで引きずっていく。

 

「はぁ……まさかこの短期間で復刻コラボがあるとは思わないじゃん……去年の例を見れば、半年に一回ってくらいだったじゃん。おかしくない? もう少しあるでしょ普通」

「そうね。でも現実は見ての通りよ。さっさと石集めないと手遅れになるわ」

 

 今にも死にそうなオオガミの言葉に適当に答えつつ、周回準備を整えて行く。

 

「本当にさぁ……どうやって当てろっていうんですか……前回めっちゃ溶かしたのに来なかったじゃないですか。何をしたっていうんですか全く」

「その少量で当てればいいのよ。大丈夫。何とかなるわ」

「……エウリュアレの加護を~……」

「別にいいけど、それをすると、他の女神が近づいてこなくなると思うのだけど」

「……今言ってから思ったんだけど、加護ついてなかったのか……」

「むしろなんでついてると思ったのよ」

「いや……配布を除いたら、最後に来たのはエレシュキガルなんだけど……つまり、新年入ってから新しい神様が来た憶えないんだけど」

「……気のせいじゃないかしら」

 

 最近神性持ちがあまり来ないのはそれが原因なのかと思うオオガミ。しかし、エウリュアレが否定しているので違うのかと考え直す。

 

「普通に運が悪いのは貴方の問題じゃないの? だからほら、さっさと交換素材を終わらせて石を集めに行くわよ。正直これを逃したら次が来るかもわからないんだから」

「……やるとも。さっさと終わらせに行くよ」

「最初からそうしなさいって。ほら、周回要員は集めて置いたわよ」

「めっちゃ気が利く女神さまもそうなんだけど、エウリュアレに言われて素直に集まる皆もどうかと思うの」

「えぇ~!? お姉ちゃん、弟君が困ってるって聞いて急いで準備してきたのになんで怒られるんですか!?」

「本を読むのにも飽きてきたところだったからな。軽く運動をするのも良いかと思ったまでよ。そこの狐も同じものだろうさ」

「だぁれが狐ですかこの金ぴか! 私はマスターがお困りだと聞いたので馳せ参じただけですぅ~! 呼ばれてないなら来ないですって!!」

 

 エウリュアレの号令で集まったメンバーに、ため息を吐くオオガミ。

 エウリュアレも妙に満足げなのが何とも言えない気持ちになる。

 

「まぁいいや。んじゃ、全力で周回して素材交換が終わったらフリークエストだオラー!」

 

 オオガミはそう叫んで、図書館の奥へと向かっていくのだった。




 イリヤたちに使ったせいで色々と足りないんですけど。もう少し期間があると高をくくってたらこのざまですよ美遊に使い過ぎた……


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これ、次のイベントまでに石集め終わるかな(そう思うならさっさと周回しなさい)

「……間に合わない気がする」

「言う前に回る。ほら、さっさと行くわよ」

 

 そう言って、オオガミを引きずっていくエウリュアレ。

 

「なんか、エウリュアレの方がやる気がある気がするんだけど」

「バカ言わないで。周回してるのは貴方で、私は引きずり回してるだけよ」

「……まぁ、そう言うことにしておくね」

「えぇ、そう言うことにしておきなさい」

 

 そう言う二人の後ろから這い寄る影。

 

「そんな気張らずいこうじゃないかマスター。素材さえ集まればあとは石を集めるだけなんだろう? なら早く終わらせて食堂で飯でも食おうじゃないか!」

「元気だね船長。いや、言ってることは分かるんだけどさ」

「いや、僕はもう終わりでいいと思うけどね。最近王の話をした記憶がほとんど無いよ!」

「そりゃ、スキルしか使ってないしね。マーリン」

「俺もそうだが……明らかにスキル数が多いだろ」

「孔明先生。めっちゃ怖いです」

「早めに終わらせましょうマスター。姉様もお怒りのようなので」

「黙りなさいメドゥーサ。貴女がすぐに終わらせればいいのよ。ほら、もう一周」

 

 既にボロボロの周回メンバー。ドレイク船長だけが機嫌がいいのが救いだろうか。

 

「ん~……マーリンと孔明はフリクエ周回でも来て貰うからなぁ……」

「うん、分かっていたとも!」

「だろうな。はぁ……仕方ない。やれるだけやるとしよう」

「それじゃ、行くぞー!」

 

 そう言って、突撃していくオオガミ達。

 

 

 * * *

 

 

「暇じゃのう……」

「暇なら監視カメラ見てましょうよ。センパイ達が頑張ってるのを見てるの楽しいですよ?」

「えぇ~……儂、見てるより戦いたいんじゃけどぉ……」

「むぅ……そうですか。じゃあ私は一人で見てますね~」

 

 工房でぐったりとしているノッブと、モニターを前に楽しそうなBB。

 

「……ゲームでもするか」

「あ。対戦ゲームなら参戦しますよ!」

「ん~……今日は戦場仕様でストック2でどうじゃ?」

「えぇ~? 終点じゃないんですか?」

「儂、正直ギミックありでもいいんじゃけど」

「あ、それにしましょう。ギミックとか久し振りに見てみたいです。戦場とか終点とか、正直ギミックが無さすぎてBBちゃん的には面白くないです。やっぱりトラップありきですよねぇ」

「手のひらの返し方エグいな……いや、全然いいんじゃけどね」

 

 そう言って、ゲームの準備を進めるノッブとBB。

 そうして遊び始める二人のもとへ、だんだんと人が集まっていき、リアル大乱闘を始めるためにシミュレーションルームに向かうのはいつものことだった。




 まだ硯と筆が残ってるんですが。終わる気がしない……


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レッツゴーフリクエ!(あれ、BBちゃんもですか?)

「モニュメントはパス! レッツゴーフリクエ!」

「BB! さっさと行くわよ!」

「まさかの起用! ノッブも連れ回していいですか!」

「アーチャー要員で許可!」

「おっと。儂、理不尽に連行されるんじゃが」

「ようこそこちら側へ! 君はもっと戦線に駆り出されてもいいと思う! 英雄に仕立てあげようじゃないか!」

「今なら軍師もついてる。お買い得だぞ?」

「この二人から闇を感じるんじゃけど! パス出来ぬのかこれ!」

 

 そう言って突撃していくオオガミ達。

 そんなことが起こっているなど露知らず、平和に過ごしている者もいる。

 

 

 * * *

 

 

「うむ。今日もやること無いな。赤い人に菓子でも作って貰うか」

「そうね! 何を作ってもらおうかしら!」

「甘いのがいいな! サクサクなのがいいな!」

「ではクッキーですね! エミヤさん! お願いします!」

「……なぜ吾の回りに集まってくるのか……」

 

 厨房にいるエミヤのもとへと向かおうとしたバラキーの周囲を囲むように現れたナーサリー、ジャック、ジャンタの三人。

 最近よく絡まれるようになったのだが、何故だろうと考えるバラキー。

 バラキーはため息を吐きつつ、エミヤに近付くと、

 

「はぁ……赤い人。吾の分もだ」

「あぁ、分かっているとも。しかし、最近マスターが厨房に立つのをあまり見ていないが、知らないか?」

「……何故吾に聞く」

「いや何、知っているような気がしてな。だが、知らないとしても問題はない」

「……祭りなり周回なりであちらこちらへ行っているようだからな。今は確か、『がちゃ石』とやらを集めるためにBB達を連れ回している。吾は誘われてないがな」

「そうか……なら、次のイベントためか。なるほど。ありがとう。おまけをしておくとしよう」

「おまけ? おまけ……うむ! 良いものの気がする! 期待しているぞ、赤い人!」

 

 そう言って、機嫌がよくなるバラキー。

 そんなバラキーの周囲には依然として三人がおり、

 

「バラキーだけずるい!」

「私たちにはないのかしら!」

 

 と、文句を言うナーサリーとジャック。

 そんな二人を見たエミヤは、そのままジャンタにも視線を移すが、ジャンタは首を横に振りつつ、

 

「いや、私は別にこだわってませんけど……」

「吾は情報提供の代わりにおまけがつくのだから、何も無しにつくわけなかろう?」

「まぁ、そうだな。では、次のイベントが何か、調べてきてくれるか? 誰かが知っているだろう」

「分かったわ!」

「ナーサリーよりも先に調べるよ!」

 

 そう言って、走り去っていく二人。

 そんな二人を見送った三人は、

 

「汝は行かんのか?」

「私は知ってるので……」

「そうか。その上で抜け駆けしないのなら、吾は別に構わんが。それに、赤い人もどうせ分かっていて聞いたのだろう?」

「むっ。私は君が嫌がるかと思って提案したが……気にしないのであればそのまま渡してもよかっただろうか」

「何を言う。吾は鬼だぞ? そんな納得の出来ぬことをするのなら、奴らの菓子を残さず奪い、食ろうてくれるわ」

「なら、私の判断は間違っていなかったかな? まぁ、どのみち君の分は特別にしておくさ」

「うむ。楽しみにしているぞ」

 

 そう言って、バラキーとジャンタは食堂の椅子に座るのだった。




 強化クエストが増えたおかげでガチャ回数が増える……ふへへ……


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終わる気がしないこの戦い!!(正直イベントより強敵な気もするわよね)

「ふはは!! やばい終わる気がしない!!」

「リンゴがどんどん溶けていくわね……」

「私、そろそろ握力無くなって来たんですけど……握りつぶすの大変なんですけど……一周につき大体二回握りつぶすんですけど……」

「うわはは!! なんか途中から儂見てるだけじゃし、全然構わんわ!! もっとやれい!!」

「覚えて置くといいよ信長君……君もいずれこちら側に来る時が来る……その時は、笑っていられなくなるよ……全体宝具はいずれこうなるのさ!」

「その時は私も嬉々として知力を振り絞ってやろう。バフはガン済み。楽しそうだろう?」

「儂やっぱ帰りたいんじゃけど!!」

 

 シンで周回をしているオオガミ達。

 キャスター達の今にも死にそうな表情を見て、一瞬で顔を青くするノッブ。

 

「まぁ、頑張れば明日の午前中に終わるでしょ。強化クエスト優先でいいんじゃない?」

「もとよりその予定だけど、消費リンゴ量がエグイ……」

「でも石の為の致し方のない犠牲よ。そのうち増えるでしょ」

「……まぁ、必要経費って事で……」

 

 仕方ないとばかりにため息を吐くオオガミ。

 そして、再び周回へと向かうのだった。

 

 

 * * *

 

 

「最近マスターさんがあんまり構ってくれないの」

「ま、マスターも忙しいみたいだし、仕方ないと思うよ?」

「うんうん。というか、最近貴女もここに入り浸ってるじゃない」

「それ言われると弱いわ……」

 

 机に頭を乗せてぐだ~っとしているアビゲイルと、イリヤたち三人組。

 机の中央に置かれているお菓子は、全部アビゲイルが食堂から持ってきたものだったりする。

 

「それで、今日は何しに来たの?」

「ん~……特にないわ。何となく来たの。ナーサリーたちはバラキーと一緒にいるんだもの」

「随分とあいまいな理由ね……」

「まぁ、私は全然かまいませんよ? 美少女たちによるお茶会も十分絵になりますし!」

「姉さん。この前それをして触手に締め上げられていたじゃないですか」

「それで諦める私じゃありませんよぉ!! 何度だって挑みますとも!!」

 

 そう言って騒ぐルビーとサファイア。

 とはいえ、アビーが前回ルビーを瀕死にした犯人なので、何か変な行動をとった瞬間締め上げられるのはルビーも分かっているはずなのだが、

 

「では、録画を――――しませんっ!! しませんってば破壊はしないでぇ!!」

「姉さん!!」

「性懲りも無く……何度だって締め上げてあげるわよ」

「珍しくルビーが負けてる……」

「本当に珍しいわよねぇ……」

 

 ルビーが悲鳴を上げている状況に、イリヤたちは珍しいものを見る様に見ているのだった。




 前半の狂気、後半の平和。予定では50個ちょいの予定だったんですけど、強化クエストとか絆レベル上昇石のおかげで予定より増えそう……60は確実に……


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深海電脳楽土 SE.RA.PH -Second Ballet-
フリクエ周回が予想以上に長いんだけど(文句言ってないで周回するわよ)


「ちょっと、始まったわよ?」

「集め終わってないんだから行けるわけ無いでしょエウリュアレ!」

「BBちゃん出演するから早めに準備したいんですけどぉ! さっさと終わらせてくださいって!」

「儂帰って良い? ダメ? そんなぁ……」

 

 イベントが始まったとはいえ、そんなの関係なく周回を続けるオオガミ達。

 現実は非情である。今日中に参戦できるかも怪しかった。

 ちなみに、キャスター二名は先程から静かになっていた。

 

「ど、どうしましょうセンパイ! キャスター二名の目が死んでます!」

「いや、結構前からじゃよね?」

「正直あの二人はやりたくないと抗議しているだけで、出来るはずなので問題なし! というか、連れ回し歴はBBよりも多いはずなので体力が無いわけない!」

「おかしいわよね。だって、BBの方が孔明より先に来てるのに、孔明の方が連れ回し歴は上なんですもの。不思議よねぇ……」

 

 既に瀕死の様相の二人を見て、染々思うエウリュアレ。

 それに対してBBは胸を張りつつ、

 

「そりゃ、センパイがBBちゃんの性能を信じてませんでしたし? でもでも、今はもうBBちゃんの虜ですから。完全にBBちゃんに依存してますって!」

「クリティカルで殴るならカード固定は優秀じゃからな。儂知ってる。クリティカル要員じゃ」

「ノッブは黙っててください!」

「理不尽なんじゃけど!?」

 

 何故か怒られたノッブは驚きつつも、あまり気にしていないような雰囲気があった。

 

「しっかし、あんまり面白いもんもないのぅ……」

「ノッブはあれです。次はオートマタを作りたいので、あそこら辺のを解体して構造解明しておいてください」

「えぇ~? 面倒なんじゃけど」

「暇なら良いじゃないですか。それに、人形は汎用性がありますし!」

「あ~……そうじゃのぅ。なら是非もなし。BBが倒したのを回収してくるか」

「行ってらっしゃいノッブ! 今のうちに移動しておきますね!」

「わざとか貴様ぁ!」

 

 颯爽と立ち去ろうとするBBを捕まえるノッブ。

 

「いや、BB。終わってないんだから移動できるわけ無いでしょ。ほら、次のクエストよ」

「い、嫌です! いい加減手が痛いです! 一回一回地面ごと握り潰すんですよ!? 地面クレーターだらけですって!」

「大丈夫。そのうち修復されるわよ」

「適当ですね!? 固有結界だからってなんでも許される訳じゃないんですよ!?」

「いいから敵ごと握り潰しなさい。でないと終わらないんだから」

「嫌ですってばぁ!!」

 

 そう言って悲鳴をあげるBBを引きずっていくエウリュアレ。さりげなくエウリュアレの支援をしているキャスター二名は、BBも同じ穴に落とすつもりなのだろう。

 そんな二人を見つつ、

 

「で、ノッブはどうする?」

「儂は回収作業してくる。移動するときは声をかけるんじゃよ」

「はいよ。じゃ、レッツゴー」

 

 そう言って、ノッブはオオガミ達と別れて行動するのだった。




 結構多いよどうなってんの……本当に終わるのかなこれ……


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マスターさん、生きてます?(死んでることにしてください)

「……マスターさん、生きてます?」

「死んでま~す」

 

 教会の床に倒れ、動こうとしないオオガミ。

 目が死んでいるのと、先ほどまであった石がすでに無くなっていることから、何があったかは明白だろう。

 

「あのあの、クエストをやればまた石が手に入ると思うんです! なので、もう少し頑張っても良いと思います!」

「……いや、もう十分頑張ったと思うの。まさかこれほどでないとは思わないじゃん……」

「そう言われても……どうしましょう?」

「えぇ~? マスターが意志消沈してるとか、聞いてないし。ちょっとBB。どうなってんの?」

「私が原因じゃないですし。メルトが全く来ないとか聞いてないですって。あんだけ私が握りつぶしまくったんですから、来てくれたっていいじゃないですか!」

「アンタが集めたってのが原因じゃない?」

「なんでですかー!!」

 

 鈴鹿の言葉に不機嫌そうに頬を膨らませるBB。

 

「それで、どうすんの? 復活待つ? 無理矢理引き連れる?」

「無理矢理連れて行くのでもいいですけど、私、その場合お手伝いできませんよ?」

「そうですねぇ……私たちが連れ歩くと戦闘に支障が出ますし、エウリュアレさんに応援を頼みましょうか」

「BBが頼るなんて……」

「あれ、頼むの? アンタなら問答無用で呼び出しても不思議じゃないんだけど」

「あ、そうでしたね。じゃ、それで行きましょう。サモンエウリュアレさん!!」

 

 そう言って問答無用の召喚をするBB。

 直後、落ちてきたのは、

 

「あうっ!! あれ!? ここは何処!? 突然エウリュアレさんに袖を引かれたと思ったら!?」

「……強制召喚に生け贄を用意して回避するとは、さてはバグキャラになってますね?」

 

 状況を理解できず困惑しているのはアビゲイル。

 しかし、BBは気を取り直すと、

 

「じゃ、アビーさん。センパイを連れてきてください。傷心中で怠惰状態なので、無理矢理で大丈夫です!」

「え、えぇ~……」

「そんな嫌そうな顔しないでくださいって。別に戦ってくださいって言ってるわけじゃないんですし。石も呼符も集めなきゃなんですよ。ちゃんと連れてきてくださいね」

「ん~……分かったわ」

「BB先導とか、嫌な予感しかしないんですけど~」

「やっぱりマスターの説得してやる気を出してもらった方が良いんじゃない?」

「あら、なら、私が指揮を執ってもよろしいでしょうか?」

「「「絶対ダメ」」」

 

 自然に入ってきたキアラの提案を即座に却下し、全員は教会を出て、ミッションを攻略しに行くのだった。




 今は寄り道して精神療養中。出ない衝撃は想像の何倍も強かった……


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本当にこれ現実?(現実ですから受け止めてください!)

「……現実?」

「現実です。というか、本当に出すんですか……」

「もう! BBったら、素直にお祝いできないの!?」

「なんで私リップに怒られてるんでしょ?」

「……来て三十分もしないでここまで強化されるなんて思わなかったのだけど、どういうことなの、コレ」

 

 今までの行動を鑑みれば、もっと発狂していてもおかしくないのだが、もはや驚きが一周して呆然としているらしい。

 そんなオオガミに、召喚されたばかりのメルトが、

 

「私のマスターなら、もう少ししっかりしてほしいものね。あぁ、いえ。静かなお人形の様でもいいのだけれど」

「あ~……メルトが想像してる何倍もそのマスター、凶暴なのだけど……」

「そうですよ。尋常じゃないくらい危険なんですから。しかも、そんなマスターに切望された貴女がどうなるなんて、私にもちょっと想像できないです。頑張って生き残ってくださいね?」

「あの、とりあえずエウリュアレさんを呼んでおくわ。緊急時に止められる人が欲しいもの……」

 

 そう言って、アビゲイルは門を開く。

 BB達はそれを横目で見つつ、マスターが不審な動きをしないか見張っていた。

 

「……よし。とりあえず、一回落ち着こう。現実を受け入れるために、周回で」

「逃げた! 珍しく逃げましたよこのマスター!」

「でもなんか安心しました!!」

「あれ、エウリュアレさん必要なかった……?」

「なんか、過剰に反応されているのだけど……普段どんなことをしてたらこんなことになるのよ」

 

 しかし、そんなメルトの疑問に答える者はおらず、ただ一人、状況に置いていかれていた。

 

 

 * * *

 

 

「……ま、私が行く必要は無さそうね」

「なんじゃ……儂、エウリュアレが嫉妬して突撃すると思ったんじゃけど」

「そんなことするわけないでしょ。誰が嫉妬するのよ……」

「ふむ。まぁ、お主がそう言うのならそういう事にしておくか」

 

 食堂で、アビゲイルの門を隣にノッブと話すエウリュアレ。

 

「それにしても、BBが向こうに行っておるから、儂やることないんじゃよね。何かないか?」

「……それじゃ、久しぶりにゲームでもしましょうか。NPCはレベル9でいいわよね」

「ふむ……それ、チーム分けは?」

「あなた一人に対して私は三人。これで同じくらいじゃないかしら?」

「マジかぁ……いや、是非も無し。受けて立とうではないか」

「えぇ。じゃあ行きましょうか。アナ。行くわよ」

「えっ、私もですか。あ、はい。行きます」

 

 足早に工房へと向かうエウリュアレ達に、アナは急いでついて行くのだった。




 めちゃくちゃ祈って出なかったのが突然出ると、頭の中が真っ白になって何をすればいいのか分からなくなるんですね……とりあえず困惑したのでレベル100オールスキルマフォウ2000/2000の強化クエストクリアまで終わらせておきました。宝具レベルが1なのが悔しい所。


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やっぱり来ることになるのね(どう見ても本気で拘束してるわよね)

「はぁ……結局私が駆り出されるのね」

 

 そう言ってため息を吐くエウリュアレの前には、気絶して縛り上げられて転がされているオオガミがいた。

 

「いやぁ……BBちゃんとしてはこのまま見ていたかったんですけど、リップが抗議するので仕方なく。文句はあちらへ」

「だってBBが不気味な笑顔をしてたし、メルトもちょっと機嫌悪そうになってたから……」

「別に、私は気にしてないけど。というか、あそこまで目の色を変えてくるとは思わなかったわ」

「まぁ、気持ちは分からなくも無いけどね~。アンタが来るの、めっちゃ待ってたし」

「そう……別に、そこまで頑丈に拘束する必要も無いでしょ」

「いやいや。これでも弱い方ですって。簡単に抜けてきますよこんな縄」

「そんな訳ないでしょ。これだけしっかり拘束されてるなら抜け出せるわけないじゃない」

 

 何変な事を言ってるのよ。というメルトに、やれやれとばかりに首を振るBB達。

 よく分かっていないメルトは、首を傾げるだけだった。

 

「正直、気絶してるのも珍しいくらいなのだけど。不意打ち出来るくらい油断してるとは思わなかったわ」

「アナタ達が不甲斐ないだけじゃなくて?」

「アハハ! 言うじゃん。でもまぁ、見ていればそのうち嫌でも分かるし」

「メルトの前でだけ弱くなるとかあったら、とっても便利なんですけどねぇ……」

「……なんだか、面白そうな話しか聞かないのだけど、そんなに面白い事をするの?」

「まぁ、周回しないとだし、起こすとしましょうか」

 

 こちらを疑い続けるメルトに、エウリュアレは諦めたようにため息を吐くと、オオガミを起こしに行く。

 

「……えっと、おはようございます? あの、なんでエウリュアレがいるの?」

「そこで寝てるアビーに呼ばれてきたのよ。というか、なんで道具を一つも持ってないのに通報ものの事をしてるのよ」

「いや、持ち込みカメラでばれない様に撮影してただけなんだけど……アビーまでは気を配って無かった……そうだ、エウリュアレの召喚権はBBだけじゃないんだった……」

「珍しい事もあるのね。いつもは注意深いくせに。それだけ舞い上がっていたのかしら」

「そりゃ舞い上がってるけども……そんなに警戒心が薄れてたかぁ……」

 

 そう言いながら、さりげなく縄を解き、立ち上がるオオガミ。

 それにメルトは少し目を大きくし、

 

「ど、どうやったのよ! 人間に抜けられるとは思わなかったのだけど!」

「え? いや、それは企業秘密なので。ばれたら対策されるし」

「ほら、言ったでしょう? こういうことを普通にしてくるんですってこの人」

「いえ、でも、それくらいならBBまで面倒くさがるわけないわ……」

「分かればいいんです分かれば。ほら、センパイ。さっさと周回行きますよ。流石にエウリュアレさんのいる前で下手なこと出来ないでしょ?」

「いや、別にエウリュアレがいるいないはそんなに関係ないんだけど……」

 

 そういうオオガミの足に蹴りを入れるエウリュアレ。

 痛みにうずくまるオオガミを無視し、アビゲイルに目を向けると、

 

「アビー。寝るならカルデアに戻りなさい。用があったらノッブ経由で伝えるわ」

「ふぇ!? あ、分かったわ! 戻っておくわね!」

 

 エウリュアレに言われ、門を使ってカルデアへ戻るアビゲイル。

 それに対してBBは、

 

「良いんです? 私、センパイの護衛用に呼んだって言うのもあるんですけど」

「最初に呼ぶ予定だったのは私でしょ。予定通りになっただけでしょう?」

「まぁ、そうですね。じゃあ大丈夫です。センパイ行きますよ!」

「行きますってそんな引っ張らないでエウリュアレ。首絞まってる」

「それで死ぬんなら今頃死んでるわよ」

「……まぁ、そうよね。私以外にもいるに決まってるわよね」

 

 エウリュアレに引きずられていくオオガミを見つつ、メルトはそう呟くのだった。




 うぅむ、メルトをヒロインにしようとしても、エウリュアレの存在が大きすぎてどうしようも出来ない……


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真面目に頑張ってみますか(今更取り繕ってもねぇ……?)

「さてと、それじゃあ真面目に頑張ってみますか」

「今更取り繕ったって無理だと思うの」

 

 唐突にやる気を出すオオガミに、冷静に突っ込むエウリュアレ。

 

「それで、私を連れまわすのは確定なのでしょう? なら、早く行きましょう?」

「エウリュアレよりも優しい……!!」

「よく言ったわ痛い目を見なさい」

 

 素早い蹴りを寸前で避けるオオガミ。それに舌打ちをするエウリュアレは、弓矢を取り出して二回射る。

 しかし、当然の様にそれを躱しつつ、

 

「唐突に攻撃してくるのはどうかと思うんだよ本当に」

「大丈夫。最悪BBがいるから何とかなるわ。自称何でもできる万能系後輩らしいし?」

「ちょっとエウリュアレさん! 失礼な事を言わないでください! そもそも、私一応保険医ですよ? 傷を治す事にかけては今の所一番ですからね!」

「あ、いや、どうだろう……メディリリが回復系だからなぁ……」

「そ、それを言われると困りますけど……」

 

 そう言って困ったような顔をするBBに、エウリュアレは、

 

「別に、今ここにいるのは貴方だけだからそう言っただけなのだけど。それ以上でもそれ以下でもないわ」

「そ、そうですか……いえ、別に嬉しくないですけど。それで、やるんですか? 協力しますけど」

「おっと敵対がもう一人か最後まで抵抗するぞこの野郎!」

「野郎じゃないです乙女ですぅ!!」

「突っ込むのはそこなんですね……でも、マスターさんが捕まる様子が一切思い浮かばないのが不思議です……」

「なんか、この状況に慣れ始めてる私がいるのだけど……」

「順調に侵食されてるし。いや、別に慣れちゃっても問題ないけどね」

「そう……」

 

 鈴鹿に言われ、何とも言えない表情になるメルト。

 すると、エウリュアレとBBに追われているオオガミがメルト達の方に向かって走ってくると、

 

「逃げるよ!! 全力で!! 死にたくないから!!」

「だからって私らも巻き込むなし!!」

「あら、じゃあ私も狩る側に回ってみましょうか」

「あれ!? メルトは私と一緒にマスターさんを守る側に回ると思ってたのに!?」

「バカねリップ。BBの味方は癪だけど、こちらの方が面白そうなのだから、こちら側に回るに決まってるじゃない」

「リップが追い付けないから実質一人で三人の攻撃をかいくぐるんですねあり得ねぇ!!」

 

 まさかの三対一という状況に、顔を青くしながら走るオオガミ。

 手持ちの礼装を見つつ、相性の悪さに頬を引きつらせながら鈴鹿を巻き込みつつ周回地点まで走って逃げるのだった。




 ヒロインは追う側に回る法則……? 正直強化解除されたらオオガミ君も無能化する可能性が……


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逃げ切ってやるぅ!(なんで逃げ切るって事になるのよ!)

「よぅし、逃げ切った!! これでどうだ!!」

「なんで逃げ切れるのよ……おかしいじゃない……」

「強化解除があったからいつもより追い詰められたのだけどね……周回エリアまでの制限が無かったら勝ってたわ」

「くぅ……悔しいですけど、メルトがいる方が追い詰められてます……やっぱり人数が多い方が有利ですね……」

「マスターを平然と追う相手として見てるのもそうなんだけど、何よりも、負けるってのが意味分かんないし……というか、私まで追いかけるのは違くない?」

「結局私、役に立ちませんでしたぁ……ごめんなさいマスター……」

 

 勝ち誇るオオガミと、倒れる面々。ちなみに、疲れはオオガミとの追いかけっこと言うよりも、周回の疲れがメインだ。

 

「それで、周回するの? 二回目は一撃入れるわ」

「なんで生死をかけた鬼ごっこをもう一回しなきゃなのさ!!」

「今は止めておきなさい。帰ったらいくらでもシミュレーションで遊んでいいから」

「なるほど。それならいくらでも遊べますね!! センパイへのフィードバックを最小限にすれば何回でも行けそうですね!!」

「理不尽な……!! せめて半日で!!」

「むしろ半日までならやるの!? マスターマジで何者だし!!」

 

 オオガミの発言に突っ込む鈴鹿。

 半日までならあの鬼ごっこに付き合えるとは、本当に何者なのかが気になってしまうのも仕方ない事だろう。

 

「いやぁ……センパイなら断らないとは思いましたけど、まさか半日も付き合ってくれるとは思いませんでしたよ……」

「貴方、そこまで人を辞めてるとは思わなかったわ……」

「いやいやいや。流石にレオニダス隊長ほどじゃないって。五分寝れば回復するほどの力はないって」

「そう言う意味じゃないのだけど……」

 

 むしろ、レオニダスを目指しているあたり、強靭無敵の最強戦士にでもなるつもりなのかと思うエウリュアレ。

 

「半日も猶予があるなんて嫌よ。なんだか舐められてるみたいじゃない。一時間。それで捕まえるわ」

「一時間もかけるんですか? 30分で捕まえるって豪語しちゃいましょうよ!」

「うるさいわBB。そもそも貴女も捕まえられてないでしょ」

「それを言われると反論できないですけどぉ……そもそも、今の所、センパイをすぐに縛り上げられるのなんて、エルキドゥさんくらいですしぃ? でも、最近のセンパイを見てると、そのうちエルキドゥさんにすら逃げ切るんじゃないかと思ってきたんですよね……」

「そこまでヤバくはならないって。人間を勝手に辞めさせないで」

「既に手遅れでしょ」

 

 好き勝手に言うBBに文句を言うオオガミ。

 しかし、現状からして、そこまで的外れでもないのが問題ではあった。

 

「まぁそこら辺の話はまた後でしましょ。ほら、さっさと周回に行くわよ。追いかけっこは……やりたいならやりましょうか」

「今日は拒否で!!」

「いいえ今日こそ反撃の時よ!!」

 

 そう言って、メルトはオオガミを追いかけ、そのまま周回エリアに向かって逃げ出すオオガミをみんなで追いかけるのだった。




 まぁ、強化解除って言っても、基本使い捨てで動いてるから、されたところで変わらないか……と思った私です。不死身かマスター。


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魔性菩薩、どうやって倒そうか(普通に戦えばいいじゃないですか)

「あ~……どうやって倒すかな……」

「素直にKP使いましょうよ~。あと、自重しないで殴れば勝てますって」

「……前回、どうやって勝ったか全く覚えてないんだよね」

「だからって何も考えないでとりあえずKP無視して突撃しようとしないでくださ~い!」

 

 教室の椅子に座り、ぐったりと倒れているオオガミをぺしぺしと叩くBB。

 リップも抗議するが、効果は薄そうだった。

 

「いやぁ……強化解除全体宝具とかどうにもならないよねぇ……何気に強化解除耐性持ちとか少ないし。というか、北斎さんしかいないんじゃ……?」

「まぁ、逆に相手を無能に変えてしまえばいいんですよ。攻撃力も宝具威力もガンガン削っちゃいましょう!!」

「……宝具を撃たせなければいいのでは?」

「待ちなさい。それ、明らかに無茶が過ぎると思うのだけど」

「うぅむ……やっぱ難しいかなぁ……」

 

 メルトに言われて考え込むオオガミに、エウリュアレは、

 

「あら、珍しいわね。諦めるの?」

「……それを言われるとやめられなくなるの分かって言うんだから質が悪いよ」

「ふふふ。まぁ、無理しない程度にしておきなさいよ。少なくとも、三日かかってクリア出来なかったら諦めて縛りを捨ててやりなさい」

「むぅ……時間制限までつけられたなら、それまでにやらざるを得ない……」

「えぇ、頑張りなさい」

 

 そう言って去って行くエウリュアレに、BB達は呆然としていたが、ふと我に返ると、

 

「何よアレ。とてもヒロインっぽいのだけど」

「何言ってるんですか。悔しいですけど、ここでは彼女が一番ヒロインしてると思いますよ?」

「はぅ……退去前よりも更に仲良くなってます……」

「でも気持ちはメルトの方にあるっていうのがとんでもない事ですよねぇ……」

「……いや、それは無いでしょう?」

「私もそう思いたいです」

「ところがどっこいってやつです」

「本人の前でそう言う話をしないでほしいんだけど……」

 

 エウリュアレが去って行ったとて、まだオオガミは残っていた。

 だが、BBは一切悪びれることなく、

 

「あ、センパイいたんですか? BBちゃん、気付きませんでした!」

「アンタ、本当に良い性格してるわよね……」

「お母さま、いい加減自重した方が良いと思うんです」

「私が自重したら誰がはっちゃけるんですか!!」

「別にはっちゃける必要なんてないでしょう?」

「それじゃあ面白くないでしょう? やっぱりBBちゃんはこのカルデアに必須なんですって! まぁ、技術部としての側面が主な気もしますけど」

「ちょっと待って。部って言った? 部って事は、少なくとも二人以上はいるって事よね。誰よ、そんな危ないのに所属してるのは! 私自ら抗議しに行くわ!!」

「行かせません! ノッブは私のおもちゃですからね!」

「何時の間におもちゃになったんだろうノッブ……」

 

 BBの言葉にそう呟くオオガミの声は、三人の会話にかき消されて誰にも届かないのだった。




 復刻ならKP使わずに勝ちたくなる不思議……いや、人員も揃って来たって言うのもあるんですけど……でも、強化解除どうやって突破しよう……


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こんなんで挫けてたまるかってんです!(変にこだわってたわよね)

「ふはは!! 負けてたまるかってんですよ!!」

「ぶち抜いてあげたわ!! 負けるはずないもの!!」

「あのー……実質私とメディリリさんのおかげでは?」

「回復頑張りました! えっへん!」

「まさか本当に突破するとは思わなかったわ……」

「正直ドン引きです……私のKPは何だったんですか……」

「というか、期限を決めた翌日に攻略してるって、頑張りましたよね……流石ですマスターさん!」

 

 カルデアに帰還してそんな話をするオオガミ達。

 魔性菩薩を倒した事に一番困惑しているのはオオガミだったりする。

 

「まぁ? チャージ攻撃を半減させたのだから、当然と言えば当然よ。怖いものなんて無いわ」

「まぁ、回復の回転が遅かったら全滅してましたけどねぇ……やっぱり回復は重要ですね。私ももっと回復力が欲しいです」

「回復力が私の取り柄なのに、それを取られたら何が残るんですか!? 後はちょっとお料理が出来るくらいしか無いんですよ……!?」

「十分じゃありませんか……というか、回復はあなたには勝てませんって。連続で4000オーバーも回復されたら勝ち目無いですから。しかも最大だと10000以上じゃないですか。あんな高レベルの回復、他にいませんって」

 

 そう言って、苦い顔をする玉藻。

 メディリリはそれでも不服そうな顔をしていたが、リップに何か言われて、管制室を出ていく。

 

「……リップ。何を言ったの?」

「ちょっと頼み事を。後でみんなで取りに行きましょう」

「なんとなく嫌な予感がするけど、まぁ、大丈夫だと信じよう……」

 

 オオガミはそう言って、ため息を吐き、

 

「それじゃ、今からメルトにカルデアを案内しようと思うんだけど、一緒に行きたい人いる?」

「どうせ貴方一人だと途中で投げ出すでしょ。ついて行くわよ」

「BBちゃんもついて行きたいですけど、ノッブがサボってないかの確認があるので無理です! ではこれで!」

「ん~……私もついて行きたいけど……私がいると移動が遅れちゃうから……食堂で待ってますね」

「アタシも食堂行ってるかな~。別について行く理由ないし。ていうか、エウリュアレ以外ついて行かない感じじゃん?」

「……じゃあ、私も止めておこうかしら」

「おっと。全員いなくなった」

「別に案内に大人数もいらないでしょう? というか、そもそも案内もいらないのだけど」

「根底を覆すような言葉を言わないでくださいメルトさん!!」

 

 そう言って、その場に崩れ落ちるオオガミ。

 メルトはため息を吐くと、

 

「分かった。分かったわよ。ほら、さっさと行くわよ」

「よ、よし……案内頑張るぞぅ!」

「はいはい。期待しないでおくわ」

 

 そう言って、オオガミとメルトは管制室を出るのだった。




 メルトで攻略することにこだわって確立したのはメルト玉藻メディリリ。メディリリの回復量、化け物かと突っ込みたくなるほどの凶悪さ……最高一万越えってなんですか。瀕死からの完全復活とか、敵だと思ったらホラーですよ。


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早くクエスト終わらせないと……(後半ストーリーがあるものね)

「さて……周回しないと……明日は面倒臭い人が面倒なことをするから、そのためにクエストを終わらせておかなきゃ」

「ちょっと。面倒臭いってなんですか。BBちゃんはこんなにキュートで万能感溢れる小悪魔系後輩の何が不満なんですか」

「むしろ貴女に面倒臭くない所があったかしら」

 

 久しぶりに食堂でぐったりとしているオオガミの左右で不満そうな顔をするBBとメルト。

 それを見たエウリュアレは、

 

「あら、珍しく貴女の隣が空いてないわね」

「あら、コイツの隣は貴女の席だったのね。なら私が退くわ」

「いえ、別にいいのよ。私は正面に座るもの」

「そう? じゃあ、BBを退かせようかしら」

「ちょっとメルト。来て早々レベル100オールスキルマされたからって調子乗らないでください! センパイの隣は特に理由も無く死守しますからね!!」

「理由ないんかい」

「そりゃ、センパイの隣には大抵メルトさんですから? 代理品のくせに私を無視するなんていい度胸だって思うじゃないですか。じゃあ、無意味に嫌がらせするのも自然な事だと思うんです」

「何てフリーダムな奴……」

「それがBBちゃんの良い所だと自負してますからね!」

「いや欠点でしょ」

「私はそろそろ慣れてきたわよ」

 

 今にも戦闘を始めそうなBBとメルトに挟まれ、だんだんと顔を青くしていくオオガミ。

 エウリュアレは対面に座りつつそれを見て、

 

「随分と、人気みたいね。取り合いでも始まるのかしら」

「珍しくドストレートに毒を吐いてくるね。機嫌悪いの?」

「いいえ、別に? ただ、見てて面白いなって思って。ふふっ。もう少し見ててもいいかも」

「助けてくれるわけじゃないことにエウリュアレらしさがあるよ……」

「最近、ただの良い神って見られてる気がするから、本領を発揮していかないと」

「正直そう言うのは誰も求めてないと思うんだよ……」

「あら。求められてることに応えるだなんて、本来私らしくないと思うわ」

「少なくともいつもらしくはないから……」

「まぁね。でも、たまにはこういうのも悪くないと思うわ。BBだけの特権じゃないのよ」

「……まぁ、気まぐれだろうし、良いか」

 

 オオガミはそう言って、お茶を飲むと、

 

「とりあえず、二人はここで争わないでよ。戦うならシミュレーター起動するから」

「あら、それはいいわね。決着をつけてあげるわ」

「あれあれぇ~? なんでメルト如きが私に勝てると思ってるんですかぁ~? センパイのサーヴァントになったからって、私に勝てると思わないことですね!」

「あ、俺はメルト側だよ」

「あれぇ!? 裏切られたんですけど!?」

「勝てるとは思わない、だったかしら? 今はどうかしらね!!」

「むぐぐぐぐ……良いです良いです! 私一人で二人とも倒してやるんですからねー!!」

 

 そう言って、三人はシミュレーションルームへ向かうのだった。




 何だろう……何をしてもエウリュアレのヒロイン力が際立ってる気がする……積み重ねた歳月って強いんですね……


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BBを仕留めなきゃ(SE.RA.PHのBBの話よね?)

「……何を準備してるの?」

 

 倉庫の一室で、礼装を見ながら考えているオオガミを見て、エウリュアレが聞く。

 

「え? そりゃ、BBを仕留める準備だよ。無論、メルトでね」

「……あぁ、SE.RA.PHのBBね。ビックリした。今日も蹴り倒しにいくのかと思ったわ」

 

 そう言って、ほぅ、と息を吐くエウリュアレ。

 それに対してオオガミは笑いながら、

 

「いやいや。流石にBBが可哀想だし、そこまではしないよ。それに、周回メンバーだし」

「そうねぇ……そういえば、今更だけどメルトとBBを一緒にしてよかったの? 一緒のパーティーに入れたら蹴り殺すって言われてなかったっけ?」

「それはほら。BBを蹴り殺したことで相殺という事で」

「一回倒されたのね……まぁ、邪神モードだったのが裏目に出たわね。回避貫けないもの」

「いや、使わ(やら)れる前に()る。これで勝てる」

「ゴリ押しじゃない……メルトは不満そうにしてたんじゃない?」

「ん~……本人に聞いてみたら?」

 

 そう言って、奥へと視線を向けるオオガミ。

 それにつられて目を向けると、奥で同じく礼装を見ているメルトがいた。

 

「……何してるのよ」

「ん。あら、来てたの? BBを蹴り殺すために礼装を選んでいたのだけど、どうしようかしら」

「別に、気にする必要は無いと思うけど……どうせ選んでくれるでしょ」

「ん~……それもそうね、で、何か用かしら」

 

 そう言って、エウリュアレに近付くメルト。

 

「いえ、速攻で倒すのは良かったのかって思って。ゴリ押しをあまりよく思わないんじゃないかと思ったら」

「そこまでゴリ押しをしてるとは思っていないのだけど……まぁ、あんまり良いとは思わないけど。でも、BBに勝てたのだから、気にしないわ」

「そう……まぁ、貴女が良いならそれでいいのだけど……」

「えぇ。今の所は、まだ気にする事は無いわ」

 

 そう言って、置いてあった椅子に腰を下ろす。

 

「というか、早くいかないかしら。まだセンチネルも倒してないのよ?」

「うん、それはそうなんだけど……どうしようか」

「いつもみたいに適当でいいじゃない。無理ならその時に考える方が貴方らしいと思うのだけど」

「……仕方ない。じゃあそれで行こうか」

「そんな雑な感じで良く生き残れたわね……いえ、まぁ、殺生院を倒した時も同じだったわね……」

「全く。そんな雑な感じなのに無駄に優秀な所、BBちゃんずるいと思います!」

「何処から出てきたのよ」

 

 突然現れたBB。

 思わずエウリュアレが突っ込むが、BBは答えず、

 

「センパイ。いい加減行かないと、BBちゃん暴れ出しますよ? あんな邪悪なBBちゃん、許せるわけないじゃないですか!」

「邪悪はどっちもだと思うんだよなぁ……」

「どっちをとっても邪悪なんだから、どっちも蹴るしかないわ」

「酷いッ!! 皆そうやってBBちゃんをいじめるんですね!? 良いです良いです! さっさと邪悪BBちゃんを倒して私が聖なるBBちゃんとして君臨するのです!!」

「いえ、どう考えても無理だと思うのだけど」

「トドメはエウリュアレさん!! 仕方ないのでセンパイを拉致らせてもらいます!!」

「んな理不尽な!?」

 

 そう言って、オオガミを連れ去るBB。

 それを呆然と見送った二人は、顔を見合わせると、急いで追いかけて行くのだった。




 うぅむ、CCCイベントが終わるまでCCC周回メンバー以外が滅多に出ない……個人的にはロビンさんを出したいなと思いつつ、出すネタが無いから困っている私……


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大体メルトがトドメ刺してたよね(最初から最後まで編成に入れていたからじゃない)

「今回のイベント、最初から最後までメルトで蹴り殺してた気がする……」

「最初から最後までずっと編成に入れていたらそうなるでしょう? 全く不思議でもないわよ」

 

 ぐったりとしているオオガミと、その隣に座っているメルト。

 食堂でそんな事を話している二人のもとへ、

 

「おぅ……儂が知らんうちにめっちゃ仲良くなっとるなお主ら……」

「ノッブはメルトと初会合じゃないですか? この子、面倒な性格してますから気をつけてくださいね?」

「お主ほどじゃないじゃろBB。帰ってきて早々デスコンボ叩き込んできた事、忘れんからな」

 

 と言いながらやって来て、当然のように正面に座るノッブとBB。

 

「あらBB。そっちのが件の技術部ってやつかしら?」

「えぇそうですとも! ロビンさんでも良かったですけど、技術面で使えるので今はノッブを駒使いにしてます!」

「それはこの前決着つけたじゃろうが。負けたんじゃから黙っとれ」

「あぁ!? それ言うとメルトが調子に乗るので言わないで欲しかったんですが!!」

「あらぁ? BB、敗北続きなのね? それは良いことを聞いたわ。えぇ。しばらくはこれで弄り続けられるわね。BB?」

「むぐぐ……! あれはただ、うっかり邪神モードだったのが原因で……通常だったら勝ちましたからね!」

「それ、毎度言ってる気がするんじゃけど……」

 

 そう言って、面倒そうにしながらノッブは持ってきていたうどんを食べ始める。

 

「……夜食?」

「何を言うか。夕食じゃ。さっきまで工房に籠ってたからな。食いに来た」

「なるほどねぇ……何か作ってるの?」

「むっ。それはまだ秘密じゃ。設計段階じゃしな。来ても何も無いぞ」

「ふむふむ……じゃあ見に行こうかな」

「さてはセンパイ、何も聞いてないですね?」

「いやいや。聞いてたから。その上で言ってるから」

「暇ですか……まだイベント続いてますよ~」

「いや、クエスト終わったから後はのんびり周回するだけだし……素材交換も終わってるし……」

「えぇ~? 止めちゃうんですか~? 行きましょうよ~!」

「……じゃあ、BBメインで行こうか。周回好きでしょ?」

「あ、いや、その、遠慮しておきますね! ではこれで!」

 

 そう言って走り去るBBを見て、オオガミは、

 

「余程フリクエ周回にトラウマを持ってるみたいだ……まぁ、ずっと握りつぶしてたから仕方ないか」

「……一体何があったのよ……」

 

 オオガミの言葉に、その時を知らないメルトが聞く。

 そして、その問いに答えたのは、オオガミではなく、正面にいたノッブが、

 

「お主を召喚するための石を集めに、BBが駆り出されてたんじゃよ。ま、全体宝具で相性を基本気にしなくていいからな。便利だったんじゃよ」

「ふぅん……」

 

 メルトはそう呟いて、BBの出ていった扉を見つめるのだった。




 全クエスト完了! 素材交換も終わり!


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エウリュアレの自室……?(そう言えば、どこにあるのかしらね)

「……今更なのだけど、貴女、自室は無いの?」

「……ねぇ、私の部屋ってどこかしら」

「……どこだろうね?」

 

 オオガミの部屋で首を傾げる三人。

 メルトがエウリュアレの部屋を聞いただけなのだが、首を傾げるという謎に、メルトはさらに不思議に思う。

 

「もしかして、無いの?」

「いえ、探したことも無いのよ。いつもここで寝てるから」

「別に気にしてなかったのもあるからね……そもそも用意されてるのかな……」

「なんで用意されてない可能性があるのよ。普通あるんじゃないの?」

「前からずっとこの状態だったんだもの。というか、貴女の部屋は用意されてた?」

「私はリップと同じ部屋だったわ。てっきり、ここに入り浸ってるだけだと思っていたのだけど、まさか住んでいたなんて……」

 

 そう言って、何やら複雑そうな顔をするメルト。

 しかし、エウリュアレは、

 

「別に、貴女が思っているようなものじゃないと思うわよ。まぁ、住んでるっていうのは確かなのだけど」

「そう……ちょっと待って。私が想像してることってどういう事よ」

「それは言わない方が良いと思ったのだけど。一応、マスターは気付いてないと思うわよ」

「……さりげなく馬鹿にされた気がする」

「普通に馬鹿にされていると思うのだけど」

 

 ベッドに追いやられているオオガミに、椅子に座りながらため息を吐くエウリュアレ。

 

「まぁ、立ちっぱなしも疲れるでしょう? ベッドに座りなさいな。あぁ、マスターの上でもいいけど」

「そう……じゃあ、座らせてもらうわ」

「……あぁ、隣なのね。うん。いや、何でもない」

 

 エウリュアレに言われ、ベッドに腰掛けるメルト。

 何故かオオガミはショックを受けているような様子だった。

 

「何よ。座ってもらいたかったの?」

「いや、だからそう言うわけじゃないって」

「あら、ごめんなさい。そこまでは気付かなかったわ。でも、気が乗らないから止めておくわね」

「だからそう言うつもりはないってば!! エウリュアレも変な事言わないで!?」

「あら、気持ちを代理しただけなのだけど。まぁいいわ。それで、私の部屋だったわね……ん~……別に、このままでいいかなって思ってたけど、そうね。そろそろ場所を変えた方が良いわよね……ステンノの所に行こうかしら。私がいなくても問題ないでしょ?」

「ん~……ダメだったら呼ぶよ。うん。というか、向こうにベッドある?」

「別に、無いなら同じベッドで寝ればいいのよ。というか、この部屋にも一つしかないっていうの、忘れてないかしら」

「あぁ、それもそうか」

「……確かに、この部屋にベッドって一つしかないわよね……」

 

 何となく、二人が普通にしているから気になっていなかったが、この部屋にはベッドが一つしかないという事実に気付いたメルトは、何とも言えない表情で二人を見るのだった。




 エウリュアレの部屋……無いじゃろそんなん。だって、エウリュアレの部屋って、マスターの部屋じゃろ?(技術部の戦国武将)
 エウリュアレさんの部屋って、センパイの部屋ですよね?(技術部のAI)
 えっ!? エウリュアレ、マスターから逃げるの!? 何!? 喧嘩でもした!?(技術部に入り浸る炎上系少女)

 雛祭りネタがある事を書き終わった後思い出した。このカルデア、イベントに無頓着なんですけど……

 言い忘れてましたけど、さりげなく昨日ワルキューレが来てたりします。出すタイミング逃した……


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何気に周回してますよね(そりゃ、QPも素材も美味しいしね?)

「なんだかんだ、ちゃんと周回してますよね、センパイ」

「そりゃ、QPも逆鱗も欲しいしね。周回しないとだよ」

「で、最近一緒にいるメルトはどうしたんじゃ?」

「ここに連れてくるわけにもいかないでしょ。エウリュアレと一緒に食堂だよ」

 

 ノッブの工房で、設計図を見ながらそんなことを話す三人。

 

「それにしても、これってちびノッブじゃない?」

「いえ、メカちびノッブですね。で、作る理由は、ちびノッブ達は聖杯で生まれてたので、聖杯を除いても作れるようにしたいな~と思ったので、その試作を。とはいっても、流石に自爆した後の再生機能はまだどうしようもないので、武器を使って戦う感じで!」

「なんで戦闘能力を持たせようとしてるのさ……暴走したら誰が止めるの?」

「そりゃ、儂らじゃろ?」

「だよねぇ……」

 

 そう言って、ため息を吐くオオガミ。

 だが、すぐに気を取り直すと、

 

「まぁ、暴走したらその時考えようか。じゃあ、作っちゃおうか」

「軽く言いますねセンパイ……まぁ、頑張りますけど」

「うむ。儂も張り切るぞ~」

 

 そう言って、作業を始めるノッブとBB。そして、オオガミはその補助をするのだった。

 

 

 * * *

 

 

「――――で、アイツはどこに行ったのかしら」

「まぁ、どこにいるかは大体予想がつくけど、今は黙っておくわ。そのうち戻ってくるわよ」

「……そう。なら良いのだけど」

 

 食堂で、そんな事を話ながらココアクッキーを食べるエウリュアレ。

 

「……食べないの?」

「……別に私は要らないわ」

「ふぅん……美味しいのに。これ、マスターの作り置きよ?」

「……食べるわ。ちょっと待って」

 

 そう言って、バタバタと袖を振るメルト。

 そうやって頑張って手を出し、クッキーを食べると、

 

「ん……意外といい味ね。本当にアイツが作ったの?」

「そうよ。遠目で見てたもの」

「ふぅん……器用なのね」

「えぇ、本当に。組み立てとかも得意よ。この前は技術部の工作で巨大ロボットを作ってた時、ずっと補助をしていたもの」

「へぇ、そうなの。それなら、私の積んであるのも組み立ててくれるかしら」

「まぁ、貴女なら、遅くなったとしても断られる事は無いと思うわよ。というか、遅くなることも無いんじゃないかしら」

「そうなの? まぁ、次会ったら言ってみようかしら」

「そうね。そうした方が良いんじゃないかしら」

 

 そう言って、最後の一枚を食べるエウリュアレ。

 メルトは一人頷くと、手についた粉をペロリと舐め、

 

「それじゃ、適当にそこら辺を歩いてくるわ」

「そう。ついて行かなくても大丈夫?」

「平気よ。迷う事は無いでしょ」

 

 そう言って、食堂を出て行くメルト。

 それを見送ったエウリュアレは、歩いているバラキーを捕まえて、

 

「今出て行ったメルトが迷ってたら道案内して上げて」

「……何故吾が」

「暇そうなのが貴女しかないんだもの。報酬はマスターが作ったプリンでどうかしら」

「うむ。前払いで一つ。終わったら二つでどうだ」

「……まぁ、それなりにあるから、それでいいわ」

「引き受けた。フハハ! プリンは吾の物だぁぁ!!」

 

 そう言ってバラキーはプリンを一つ貰い、メルトを追いかけるのだった。




 書き終わってから、頼むのはロビンでも良かったんじゃないかと思いつつ、今更書き換えるのもどうかと思ってバラキーに全てを投げた私だった。


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日常
センパイ! イベント延長ですよ!!(まぁ、やる事は変わらないけどね)


「センパイ! イベント延長ですって!!」

 

 そう言いながら、食堂に入ってくるBB。

 オオガミは持っていたタイマーを置きながら、

 

「いや、延長したってやること変わらないし……」

「そ、それはそうですけどぉ……あのー……何してるんです?」

「今日はアップルパイをね。ナーサリーに頼まれたから」

「キャットは補助だワン。というか、BBは暇なのか?」

「キャットは黙っててください。それに、私は暇じゃないです~。むしろバリバリ働いてますからね?」

「嘘だナ。どうせまたトンでもないことを企んでると見た」

「なんて無駄な観察眼……そういう有能なところも置いてくれば良かったんですよ」

「何を言うか。打倒オリジナルのためには手段を選ばぬ……そう、今のキャットも仮の姿という事だ!」

「……いえ、どこがどうしてそうなったのかが分からないので、放置しますね」

「ふはは良かろう! 料理人に喧嘩を売るということがどれ程愚かなことなのか教えてやろうではないか!」

「キャット。終了。パイの様子見てて」

「合点承知! キャットは業務に戻るのだ。命拾いをしたなBB」

 

 オオガミに言われ、すぐにオーブンに向き合うキャット。

 BBは疲れたような顔で、

 

「助かりました……正直あのままじゃうっとうしくて思わずプチっと殺っちゃうところでした」

「カウンターで一撃もらうのがオチでしょ。やめといた方がいいって」

「むっ。センパイ、最近BBちゃんを馬鹿にし過ぎてませんか? これでもBBちゃん、強い方ですからね?」

「でも、BBちゃんは詰めが甘いって事で有名だから……」

「も~っ! ルルハワみたいなことを起こしますよ!?」

「そうしたら全力で倒しに行くけど、それでもいい?」

「……止めておきます。最近来た始皇帝さんにクリティカルでひたすら殴られる未来が見えました……」

 

 目を逸らしながら言うBBに、オオガミは頷きつつ、

 

「状況が容易に想像できる。うん。BBもボケ担当になって来たね」

「そんな担当になりたくないんですけど! 出来れば騒動の発端的立ち位置をキープしたかったんですが!!」

「まぁ、技術部の主要メンバーだし、仕方ないよね……ボケ担当も諦めるしかないって」

「その担当に収まりたくないんですけど!?」

「でももう手遅れだし……」

「手遅れなんですか!? 修正不可能なんですか!?」

「まぁ、一度ついたイメージは中々消えないからねぇ……うん。本当に消えないから……」

「……何があったんですか」

「いや……その、出来るだけ早めに、大きめのベッドが欲しいなって……」

「……そう言えば、確かにあのベッド小さいですからね……エウリュアレさんと一緒だと狭いですよね」

「うん。そういうイメージね。いや、確かに狭いけども。でもそうじゃない。常に一緒に寝てる感じを出されるといまいち納得いかない」

「そう言っても、事実ですし……」

「……まぁ、うん。とりあえず、お願い」

「分かりましたよ。片手間で作っておきますって」

 

 そう言って、BBは食堂を出て行った。

 それを見送ったオオガミに、

 

「そう言えばご主人。BBは何の用で来たんだろうな?」

「……イベントの延長を伝えに来てくれただけ……?」

 

 そう答えたオオガミは、作っていたアップルパイに意識を戻すのだった。




 久しぶりのキャット……あれ、男性鯖、最後に出たの何時……?


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ベッドを作るんですよね(出来るだけ大きいやつね)

「それで……ベッドの大きさでしたっけ」

「うん。まぁ、エウリュアレが出ていくって言ってるから、意味ないかもだけど」

 

 いつもの工房で、ベッドの設計をしながら話すBBとオオガミ。

 ノッブは別の作業をしているので、二人の手伝いには参加していない。

 

「エウリュアレさんが出ていくって……流石に無いと思うんですけどねぇ……いや、まぁ、センパイの最近のメルトへの執心っぷりを見て幻滅した可能性はありますけど……そもそも、そこを理解した上であんな風に接してたんですし、やっぱり関係ないんじゃ……?」

「本人がそう言ってたんだから……あと、ステンノ様達の部屋って、ベッド空いてたっけ?」

「いえ、あそこも現状一人用です。メドゥーサさんは派生含めて全員同じ部屋ですから。というか、ステンノさんもそっちの部屋に行っていたような?」

「……つまり、実質空き部屋?」

「まぁ、そうなりますね~。というか、あの人の性格的に部屋の中でひとりって言うのは似合わないですよね」

「それは分かる」

 

 そう言いながら、大体の大きさを決めて行くBB。

 

「あ。二人分でいいんですか? 三人分とかじゃなくて」

「そんな大きいの作っても……というか、さっきも言ったように、エウリュアレ出て行ったらほとんど意味ないからね?」

「そしたらメルトを送り込むので! あ、BBちゃんの方がお望みですか?」

「はいはい。ふざけてないでサクッと作ってちびノッブの方に取りかかろうよ」

「むぅ……センパイ、ノリが悪いです。もっと嬉しそうにしてくれてもいいんですよ?」

「しないって。というか、何を期待してるのさ」

「え? そりゃ、おもちゃとしてもっと反応が欲しいって事ですよ。それ以外にあります?」

「いや、それくらいしかないだろうとは思っていたけども。メルトを巻き込む必要は無いんじゃない?」

「何言ってるんですか。今の状況でメルトを使わないわけないじゃないですか。一番面白そうですし!」

「混沌的な意味でだよね。何やろうとしてるかは分かるけど、ほとんど意味ないと思うよ?」

「そんなことないと思うんですけど……まぁ、それはそのうちやるとしましょう。それじゃ、とりあえずこんな感じでいいですかね?」

「うん。そのくらいのサイズでいいかな。入れ替えられる?」

「えぇ。一応、アビーさんみたいな門を使えるようになってますし。もう転移はアビーさんの特権じゃないんですよっ!」

「そ、そう……なら大丈夫かな。じゃあ、完成したらお願いね」

「えぇ! 要らなくなるベッドは、エウリュアレさんが移動する時に有効活用させていただきますね!」

「えっ。有効活用ってどうするつもり?」

 

 オオガミが聞くがBBは微笑むだけで答えようとしないのだった。




 どう考えてもエウリュアレが出て行くのが想像つかない不思議……


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何してんだマスター?(見ての通りとしか)

「よぉマスター。遊びに来たぜーって、なんだこれ」

「ん。アンリ? ごめん。今手を離せないから遊べないよ」

 

 オオガミの部屋に入ってきたアンリは、大量のプラモデルに囲まれ、机に座り複数の道具を持って作業をしているオオガミと、ベッドに腰を掛けてそれを見ているメルトがいた。

 

「いやぁ……今度はこっち系に手を出し始めたかぁ……多趣味だねぇマスター」

「まぁ、極めてるわけじゃないからねぇ……ちょっと手を出してるってだけだし。ノッブ達には勝てないって」

「いやいや。生死をかけてるわけでもねぇんだから、そんくらいでちょうどいい感じじゃね? 人間もっと堕落しても生きていけるぜ?」

「いや、あいにく普通の部類じゃなくなっちゃったから、これくらい色々とないと、出来る事が減ってきてる実情やれることが無くなっちゃうから」

「ふぅん……ま、オレからしたら関係ないんだけど……そっちのお嬢さんは放置でいいのかい?」

「むしろ、そっちのお嬢さんの依頼なんですよコレ」

「あら、引き受けると言ったのは貴方でしょう?」

「うん。そうだよ。だからやり遂げるけども」

「あらら。すっかり尻に敷かれちゃって、まぁ。苦労しますぜ旦那。止めといた方が良いんじゃない?」

「ちょくちょく煽ってくるよね……いや、そう言う奴だってわかってはいるんだけども」

 

 とはいえ、言い過ぎで何時アンリが蹴られるのかと冷や冷やしているオオガミ。

 だが、当の本人は全く気にした様子も無く、

 

「こんなえっげつない量のもんを渡して組み立てろとか、恐ろしすぎんだろ。というか、アンタの彼女ってあのちっこい女神じゃなかったの? 鞍替え? 宗旨替えってやつ?」

「それ、エウリュアレに聞かれてたら即死案件だよ? つか、メルトが聞いてる時点で即死案件だと思うんだけど」

「今の所殺されてないからセーフだろ。ほれほれ、答えてみろって」

「いや、宗旨替えもしてないし、そもそも彼女でもなかったと思うんだけど」

「うわっ、この男無自覚か! いやぁ、こりゃあっちの女神も、こっちの新しい方も苦労するねぇ」

「何を言ってるのさ……」

「いやいや、何でもないぜ? それじゃ、適当に暇潰せたし、食堂行って厨房の連中に声かけてくるわ~」

「殺されないようにね~」

 

 そう言って出て行くアンリを見送り、作業に戻るオオガミ。

 そんなオオガミに寄り掛かるメルト。

 

「……何かあった?」

「いえ、なんか、さっきの黒い奴がかなり失礼な事を言っていた気がするから、何を言っていたのか聞こうと思って。内容次第で溶かしに行くわ」

「と、溶かしに行くのは止めてあげて……後で周回行くから、その時の敵で我慢して」

「内容によるわ。ほら、さっさと話しなさい」

「え、えぇ~……作業しながらで良い?」

「もちろんよ。でも、私はこのままだから頑張りなさい?」

「はいはい。分かりましたよ」

 

 そう言って、オオガミは作業をしながら、出来るだけアンリが殺されない様に適度に誤魔化しつつ話すのだった。




 正直そろそろ周回が飽きてきた……しかも、たまに事故るから大惨事になりかねない……


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結局出て行く気配が無いよね(出て行ってほしいの?)

「……結局出て行かないよね」

「あら、出て行ってほしかったの?」

「別にそう言うわけじゃないけど、寝辛くない?」

 

 作業の手を止めずに聞くオオガミ。

 未だに箱の山は崩し終わらず、軽く整理してようやく足場がある程度の状況だった。

 なので、エウリュアレはベッドに寝ながら、オオガミを見ている。

 

「別に、寝るのに支障が無いくらいには片付いてるでしょ。気遣いが出来ているのだから、私は気にしないわ」

「まぁ、いくつかメルトに持って帰ってもらったからね……昨日はギリギリ外に出れるくらいだったし。箱の隙間から見えるけど、そこに行くには至難の業って感じ」

「……アンリはメルトがいたって言ってたけど」

「……そういや、意識してなかったけど、どうやってベッドまで行ったんだろ……メルトがいるのは知ってたけど、片付けるまで足場も無かったような……?」

「ん~……まぁ、あんまり気にしないでおきましょうか」

「別に、気にすることでもないでしょ。うん」

 

 オオガミはそう言って、直後、ふと思い出したように、

 

「そういえば、昨日帰って来なかったよね」

「あら、帰ってきてほしかったの?」

「まぁ、気になった程度だけども。それで、どこに行ってたの?」

「素直じゃないわね……ノッブの工房に行って遊んでただけよ」

 

 若干拗ねたような口調で言うエウリュアレ。

 だが、オオガミは気にした様子も無く、

 

「なるほど。そっちはゲームしてたわけか。うぅむ、あとでノッブにこっちを手伝ってもらおうかなぁ……」

「向こうは向こうで何か作ってるみたいだったけど?」

「正直、向こうのは後回しでもいいから……対策は結局こっち任せだし。先に手伝ってもらっても良いでしょ」

「そうなの……呼んでくる?」

「いや、まだいいよ。どうせ後で向こうに行くし。エウリュアレはどうする? 今日はもう休む?」

「ん~……そうねぇ……もう少し貴方の作業を見てようかしら。飽きたら寝るわ」

「分かった。じゃあ、もう少しやって、俺も寝るよ」

「えぇ、そうしなさい。貴方は人間で、英霊じゃないんだから。えぇ、そう。貴方は人間……うん。人間だから……よく人外っぽくなってる気がするけど、人間だものね。寝ないとダメよ」

「今、スッゴイ久しぶりに罵倒されてる気がする」

「別に、罵倒したつもりはないのだけど」

「うん。でも、褒められてもいないと思う」

「それはまぁ、確かにそうね」

「否定しないんだね……いや、分かってたけどさ」

 

 そんなことを話しながら、オオガミはしばらく作業を続けるのだった。




 あれ……エウリュアレが平然とヒロイン枠に座ってない……?


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先輩、やつれました?(一応生きてるからセーフ)

「先輩……最近見ないと思ったら、なんだかやつれました……?」

「あ……マシュ……久しぶり。一応生きてるよ」

 

 完成したプラモデルを梱包しつつ、返事をするオオガミ。

 その場には何故か倒れているノッブとBBがいた。

 

「あの、お二人はどうしたんですか?」

「あぁ、うん。組み立て要員として二人を収集して、一日中やってた」

「な、なるほど……それで昨日は食堂にいたという報告もなかったんですね……」

「えっ、報告?」

「あ、いえ、何でもないです」

「そう? なら良いけど」

 

 そう言って、最後の一つを箱に入れ、荷物をまとめて持ち上げると、

 

「さて、それじゃ、メルトの所に突撃してくるかな。お届けものがあるからね」

「分かりました。終わったらメディカルルームに来てくださいね」

「うん、わかった。帰りに寄るよ」

「お願いしますね。最近先輩、来てませんから」

「それは、まぁ、うん。ごめんなさい」

 

 謝りつつ、部屋を出て行くオオガミ。

 マシュはそれを見送ってから、部屋で倒れてる二人を介抱しに行く。

 

 

 * * *

 

 

「……で、なんで吾はこうなっているのだ」

「もう、バラキーったら……人のお菓子を持って行くのはダメなのよ?」

「ナーサリー。解体するの?」

「えぇ。でも、もう少し待ってねジャック。もう少しやることがあるの。向こうでバニヤンと遊んでて。出番には呼ぶわ」

「はーい!」

 

 走り去っていくジャックを見送り、ナーサリーは拘束されているバラキーに目を向ける。

 

「うむ……まさか吾も捕まるとは思わなかった……吾、そこまで油断してるとは思わなんだ……一度鬼らしいことをやらねば、このまま怠けそうだな……」

「別に、もっと怠けてしまえばいいじゃない! 眠りネズミの様に全部忘れてお眠りなさいな!」

「むっ。最近鬼らしい扱いが無い故仕方ないような気もするが、吾の事を舐めてはいないか?」

「あの、ナーサリー。バラキーは何したんですか?」

 

 何故か言い合っている二人に、首を傾げながら聞く邪ンタ。

 ナーサリーはそれに対して、

 

「お茶会用に確保しておいたお菓子をバラキーに食べられてしまったの! 一度しっかり叱っておかないといけないと思ったわ!」

「えっと、マスターにそれは言ったんですか?」

「言ってないわ。最近なんだか忙しそうなんだもの」

「そ、そうですか……えっと、一応報告してきますね」

「あっ! 行っちゃったわ……どうしようかしら……」

「何をどうするの?」

「マスターを呼びに行ったジャンヌを止めた方が良いのか、それともバラキーへのお説教を続けた方が良いのか……そう言うのを悩んでいたのだけど――――」

 

 そう言って、声の方にナーサリーが振り向くと、そこにはオオガミがいた。

 その事に驚いているナーサリーに気付いた様子も無く、オオガミは、

 

「ふむふむ……状況を見るに、バラキーがお菓子を食べたとかそんな感じかな? なら、バラキーはこっちで話す事にするけど、どうする? 説教をするより、次のお茶会の準備をし直した方が良いと思うけど」

「あ、えっと……じゃあ、お願いするわマスター」

「うん。任された。じゃ、行くよバラキー」

「むぅ……吾、捕まり損なのでは? そもそも、吾、何も変な事はしていないだろうに……」

 

 首を傾げながらブツブツと呟くバラキーの拘束を解き連れて行くオオガミ。

 それを見送ったナーサリーは、すぐに新しいお菓子を調達しに行くのだった。




 久しぶりのマシュ姐さんの登場。何時ぶりですかマシュ姐さん……


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なんでこんな魔境みたいになっちまってるんだろうな?(いつの間にかこうなってた感じだよね)

「あ~……マスター? なんだか、おっそろしい事になってやがるじゃねぇの。つか、見知った奴等がほぼ全員集まったんじゃねぇか? そのうち殺されそうなくらいには危険地帯になっちまったなぁ……」

「何言ってるのロビンさん……ルルハワみたいにパシリじゃないんだから安心すればいいのに」

「いつまたパシリになってもおかしくない状況になったから言ってるんですけどね!?」

 

 食堂の隅の方でそんなことを話しているオオガミとロビン。

 クッキーをつまみつつ、不満そうなロビンに、オオガミは、

 

「まぁ、パシリの代役させられてるし、ロビンさんには回ってこないんじゃない?」

「いやいや、マスターをパシリにするって発想も十分おかしいって気付けよな?」

「そう? 別に気にしたことないけど。そんなもんじゃないの?」

「そんな訳あるか。明らかに異常だっつの。いやまぁ、パシリにされたいってわけじゃあ無いんだがな?」

「分かってるけど……でも、ほら。やっぱりサーヴァントと比べて戦闘力ないし、こういう陰ながら支えて行く立場でありたいなという気持ちがあってね?」

「いやいやいや。考え方がおかしいって。マスターは戦況を見極めて指示を出すのが役目であって、戦おうってのがおかしいんだって。まずマスターが戦わなくちゃいけないような状況を作らない様にサーヴァントがいるんだぜ?」

「そうそう。つまり、作家系サーヴァントとか、その中でも特にオレとか、特大級の外れサーヴァントって事だ。いや、まぁ、サーヴァントに対しても平気で殴り合えるマスターなら関係ないだろうけどな?」

 

 二人の会話に平然と入り込んでくるアンリ。

 あまりに唐突過ぎて困惑する二人。

 だが、アンリは気付いた様子も無く、

 

「てか、ここの場合? 俺以外にも超優秀な方々が揃ってますし? もう余裕でしょ。俺の役目とか無くね? もう編成に組み込まれても一番後ろで寝てるだけとか、そもそも絆レベル最大だから編成にも組み込まれずカルデアで寝てるだけでいいんじゃね?」

「まぁ、アンリはそれでもいいと思うけど……ロビンさんは出るからね?」

「あれ? オレ、一回でも出たくないって言いましたっけ? いや、出来るなら他の方々に押し付けたいですけど? でも、呼ばれたら普通に手伝いますよオレは」

「ほら、アンリももうちょっと協力的になってよ」

「オイオイマスター。なんで矛先が大回転してんだよ。つか、別に協力してないわけじゃないだろ~? ただ、オレは戦闘したくないってだけで」

「いやオタク、そう言う所じゃねぇの? つか、キャスターでもねぇのに同列ってのはどうなんだソレ」

「お。いいぜいいぜ~? オレの最弱さ見せてやるよ。シミュレーションルーム行こうぜマスター。目に物見せてやらぁ」

「いや、なんで戦うんだよ」

「良いね。やってみようか」

「えっ、行くの? マジで? 正気かこいつら」

「行くよロビンさん」

「あ、やっぱオレなんすね。しゃあない。行くか」

 

 そう言って、ロビンはオオガミとアンリの後ろをついて行くのだった。




 珍しく男性しかいない。今までこんなことあっただろうか……?


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旧き蜘蛛は懐古と共に糸を紡ぐ
新イベントが来たわね(今回は特攻とかあんまり気にしないで行こう)


「さて、久しぶりに私も遊んで来ようかしら」

「あら、またイベント? しょうがないわね。付き合ってあげるわ」

「久しぶりの戦闘ね! 戦いはあまり好きでもないけど、マスターの役に立つなら喜んで!」

 

 楽しそうに戦闘に向かっていくエウリュアレ達。

 後方ではオオガミに加え、やる気の無さそうなロビンとバラキーがいた。

 

「なぁマスター? オレ、なんでここにいるんだ? 明らかにいると不幸が助走をつけて蹴りつけてきそうなんだけど?」

「おい緑の人。菓子を。『まかろん』をくれ」

「だからオレはお菓子係じゃねぇっての! ほらよ!」

「あ、ロビンさん持ってるんだ……びっくりした……」

「えぇ持ってますよ。自分用のでしたけどね! コイツと一緒にいるとオレの菓子が持ってかれるんだよ!」

「なるほど……今度、ロビンさん用にお菓子を作っておくね。バラキー用のお菓子も」

「はて。もしかしてオタク、オレをコイツ用のお菓子を与える道具かだと思ってます? だとしたらとても心外なんですけど。オレが何をしたってんですか」

「いや、別にそんなこと思ってないけど……むしろ、ロビンさん用のお菓子を確保しようってだけだったんだけど」

「あぁいや、別に嫌だったわけじゃねぇよ。だがまぁ、そもそもコイツと組ませないでくれって話です。マジで勘弁願いたい」

 

 そう言うロビンに、オオガミは頷きつつ、

 

「なるほどなるほど……うん。却下で」

「えぇ!? 今の流れ、許可してくれる流れだったじゃねぇか! そのまま裏切るか普通!?」

「大丈夫。今回は基本この編成で行くから。仕方ないよね」

「なるほどそう言う事を言うのか。良いぜ昨日の報復がまだだったな。今ここで仕返しをさせてもらうぞおらぁ!」

「ひゃぁ~! 珍しく怒ったぁ~!!」

 

 そう言って逃げ出すオオガミを追いかけるロビン。

 次の瞬間、オオガミの眼前に魔剣の如き爪先が振り下ろされ、ロビンには無数の触手が現れ、足を止めさせる。

 

「私たちが戦っている間、随分と楽しそうね。マスター?」

「あ、はい……その、すいませんでした」

「あ~……何となくわかった。この流れ、オレも怒られる奴だ。静かに反省しとくとします」

「あら、随分と物分かりが良いのね。じゃあ、逆さ吊りにして持ってるお菓子を全部貰っていくわ」

「あれ~? オレの方が罪が重くね? マジかよマスターこれ不平等じゃね?」

「大丈夫よロビンさん。マスターさんは帰ってからしっかり怒られるもの。お菓子で終わるのだから、ロビンさんの方が軽いわ」

「えっ……帰ったら何があるの? 死ぬの?」

 

 アビゲイルの不穏な一言に、明らかに不安そうな顔になるオオガミ。

 だが、その場の誰も、にっこりと笑うだけで答えてはくれないのだった。




 なお、バラキーはロビンの懐から盗んだお菓子を食べていたので気付いていない模様。


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久しぶりの休暇です!(うむ。休んで良いぞ)

「うぁ~……おはようございます、ノッブ……」

「うお、どうしたんじゃBB。んな二日酔いみたいな声を出しおって……」

 

 よろよろと自室から出てきたBBに驚くノッブ。

 青い顔のBBは頭を押さえつつ、

 

「いえ……ベッドから落ちまして……頭を打った衝撃でちょっとふらふらしてるだけです……」

「だいぶ重症みたいじゃけど……医務室に行くか? 儂も付き添うが」

「いえ、大丈夫です。少しおとなしくしてれば治ります……たぶん」

「それならいいんじゃけど。無理はするもんじゃないからな?」

 

 隣に来て横になるBBをちらりと見つつ、ノッブは淡々と作業をする。

 

「しっかし、新イベントが始まったと言っておったから、てっきりお主も行っておったと思ったんじゃが。わりと意外じゃ」

「あ~……それに関してはですねぇ、センパイが編成したメンバー的にコストオーバーだったんですよ。なので、BBちゃんはおとなしくお留守番です。なので、研究を進められるんですけど~……頭が痛いので休憩しますね」

「まぁ、急いで進めるものでもないからのぅ。のんびりじゃからな。無理せず寝ておれ。出来るようになったらやればいいんじゃし」

「はい……そうしておきますね」

 

 そう言って静かになるBBに、ノッブは仮眠用に置いてあった毛布をかけて作業に戻る。

 直後、工房の扉が勢いよく開かれ、始皇帝が入ってくる。

 

「朕の帰還である! さてさて? 今は何をやっているのか聞かせてもらおうか」

「静かにせい。寝とる奴がおるんじゃからな」

「む。それはすまなかった。気付かなかった故な。しかし、珍しいな。そやつはそうそう倒れるものではないと思っていたが……ふむ。何が原因だ?」

「ベッドから落ちたんじゃと。盛大に落ちたんじゃろうなぁ……こやつが部屋から出てくる前にデカい物音したからのぅ……ま、是非も無いよね」

 

 ノッブがそう言うと、始皇帝はBBに近付き、

 

「ふむ……見た所そこまで重症ってわけではないな。医務室に行くまでも無かろう。安静にしておれば治るはずだ」

「じゃろうな。英霊の肉体がベッドから落ちる程度でやられるとかありえんし――――って、ベッドから落ちただけじゃったような? うん? じゃあなんでここまでダメージを……?」

「いやなに。内部に直接響いただけなら、十分ダメージになりうるだろうさ。して、何をしている?」

「あぁ、これについては、そっちに設計図があるから適当に見ておけ。提案があったら言うんじゃぞ」

「うむ了解した」

 

 そう言うと、始皇帝は設計図を覗き込むのだった。




 久しぶりの始皇帝……BBの久しぶりの休暇……


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あれ、マスターは何処に行きやがった?(向こうへ周回に行ったぞ)

「はぁ~……とんでもねぇ目に遭ったわ。って、あれ? マスターは何処に行きやがった?」

「ん。緑の人も置いていかれたか。マスターなら向こうへ行った。吾等は少しの間自由時間と言っておったぞ」

 

 アビゲイルによって一時帰還したロビンがお菓子を補充して帰ってきたら、近くにいるのはバラキーだけという状況。

 ただ、不機嫌そうなバラキーを見て、ロビンは少し考え、

 

「……あ~、そこで何してんだ?」

「別に関係なかろう。久しぶりに暴れられると思ったのに後衛待機だから退屈しているとか、そういうのではない」

「へいへいそうですかぁ~っと。んじゃあゲームをしようか」

「……なぜ吾がそのような事をせねばならぬのだ」

「あらら。鬼の頭領がゲームの一つも受けないのか。いや別に俺はいいけど? だってほら、舐め腐ってるやつに勝てないとか、悔しすぎて舌を噛み切っちまうレベルだもんな」

「……その手には乗らぬ。前にも同じような事があった気がするからな。確かBB辺りだったか。あの時は試作品の試運転を強要されたような……死ぬ前に脱出できたのは良かった。あのままだったら一緒に爆発しているところだったからな……」

「あ~……なんか、触れちゃいけない所に触れたみたいだ。スマン。つか、アイツはアイツで何やってんだか……」

 

 遠い目をし始めたバラキーを見て、思わず謝るロビン。

 ついでにこの微妙な空気の原因である人物たちを軽く恨んでいると、

 

「それで、げーむだったか。まぁやれることも無いからな。受けるとしよう」

「あ、受けるの? まぁいいや。コイントスをしよう。勝てたら菓子でどうだ?」

「あぁ、それでいい」

 

 そう言って、ロビンは一枚のコインを取り出すのだった。

 

 

 * * *

 

 

「……あの、なんでこうなってるんでしょう」

 

 ロビンがバラキーとゲームをしている頃、APが尽きたオオガミは、正座をさせられて触手によって固定させられていた。

 

「あら、てっきり分かっている物だと思っていたのだけど」

「えっと……周回を見てないで遊んでたところでしょうか……」

 

 エウリュアレに言われ、心当たりを言った瞬間に、ドスッ! と地面に突き刺さるメルトの爪先。なお、メルト本人は妙にいい笑顔なので、三倍増しで恐ろしい。

 当然だが、オオガミを正座状態に拘束しているアビゲイルに視線を向けても、困ったように微笑むだけで解決には全く役に立たない。

 

「あの、構図が完璧にヤクザに恐喝されてる一般人なんですけど……」

「あら、そんな優しく見えるのかしら。でも、それなら安心ね。ほら、遊んでた言い訳でもしてみなさい?」

「いや、そのですね? 別に遊んでるつもりはなかったというか、ちょっとした出来心というか。そもそも、話してただけで、遊んでは無かったのでセーフじゃないですかね」

 

 そう、必至で紡いだ言葉は、顔を上げた時に見えたエウリュアレとメルトの笑顔で止まり、オオガミは悟ったような笑顔になるのだった。




 ロビンとバラキーは平和枠。オオガミメンバーは修羅場。なんでこうなったんだろ……?


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大変な目に遭ったよ……(半分以上自業自得だろう?)

「はぁ……大変な目に遭った……」

「お疲れマスター。いやまぁ、自業自得な面もあるだろうがな?」

 

 倒れているオオガミに、苦笑いをしながら声をかけるロビン。

 その手に握られているクッキーは、オオガミが渡したものだった。

 

「いやぁ……正直、予め準備して無かったら危うかったね。ミンチにされるところだった」

「マジかそんなレベルかよ。どんだけ悪事を働いたんだ?」

「別に、そんな悪事を働いた覚えはないんだけどねぇ……よく分からないけど、とりあえずエウリュアレとメルトには殺されるかと思った」

「驚いた。てっきりBBにやられたのかと思ったが、あの二人か……まぁ、理由は分からんでもねぇですけど、そればっかりはマスターが悪いわなぁ」

「えぇ~……いや、予想はつくけども。まさか怒涛の攻撃が襲ってくるとは思わないじゃん。矢を避けたら蹴りが飛んでくるとか、死んじゃうって」

「よく逃げられるよ本当に……オレなら速攻で粉微塵ですよ。やっぱり人間辞めてんじゃねぇの?」

「皆に言われるからそろそろ認めないといけないような気がしてきたから反論しておくね。分類は人間です」

 

 そう言って座るオオガミ。

 ロビンは軽く笑いながら、

 

「まぁ、無理に認める必要はねぇわな。つか、英霊に混じって一緒に特訓してたら、そりゃあんだけ強くもなるか」

「ちゃんとした訓練の成果なので。つまり訓練さえすれば英霊の攻撃を避けられる……?」

「んなわけあってたまりますかってんだ。人並み外れた強さに決まってんだろ? 英霊クラスの性能のただの人間とか、そいつはもう全身凶器だっつの」

「それもそうか……あれ、今もしかして、暗に全身凶器って言われた?」

「まぁまぁ。そんなことは気にしなさんな。それで? 我らがマスターは、あの二人からどうやって逃げ仰せたんだい? 聞かせてくれ。もしかしたらオレの時の参考になるかも知れねぇしな」

 

 悶々と悩むオオガミに、話を逸らして聞くロビン。

 オオガミは、若干不満そうにしつつも、

 

「普通にホワイトデーのプレゼントをあげただけだよ。渡す前に襲われたから受け取ってもらえるか不安だったけど。あ……もしかして、最後に渡したのが原因……? でも、最後に回したかったからなぁ……うぅむ……」

「あ~……その、なんだ。全く参考にならねぇってのは分かったわ。ちなみに、何を渡したんだ?」

「えっとね、バリエーション豊富な飴。一種類だけじゃ飽きると思って。まぁ、日本の風習で、しかも地域によって意味がコロコロ変わるから、分からないかもしれないけどね。マカロンとかもあったけど、やっぱり飴の方がいいかなって。クッキーが大半だけどね。チョコ要りマシュマロという原点も考えたけど、試作段階で断念したよ。うん」

「なるほどねぇ……んじゃあそういうことで、俺はここらで逃げさせてもらいますよ~っと。んじゃなマスター。生きてたらまた会おうぜ」

「え? 生きてたらって、どういう――――?」

 

 ロビンは逃げた。背後に見えた二人に、素直にオオガミ(イケニエ)を差し出して。

 故にその後オオガミがどうなったのか。それは当事者である三人にしか分からないことだった。




 なお、他の通常サーヴァントはクッキー。聖杯持ちはマカロンだった模様(但しバラキーはお菓子詰め合わせ)
 


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日常
ようやく帰って来たよ!(久しぶりじゃなマスター)


「たっだいまぁ~!」

「む、帰ったか。久しぶりじゃなマスター」

「意外とお早い帰還ですね。あ、昨日のクッキー美味しかったのでおかわりください」

 

 レイシフトから帰ってきたオオガミが工房に入るなり、すぐに反応してくる二人。

 

「BB。おかわりは食堂に行けばあるからね?」

「バカ言わないでください。センパイのお菓子はいつも謎の人気ですぐに無くなるんですよ?」

「えっ……週一だと足りてないの……?」

「足りてるわけないじゃないですか! 子供サーヴァントもそうですけど、何よりもエウリュアレさんがトップですよ! ほとんど全部持っていきますからね!?」

「いやいやまさか……そんな……えっ、本当に?」

「うむ。マジじゃよ。儂隣で見ておったし」

「マジかぁ……うん、週二回くらいにしよう。あと量も増やしておこう……」

「今回のお返しクッキーで今後の需要も多くなると用意に想像できますよ!」

 

 BBの力説を聞いて、確かにその可能性がありそうだと思うオオガミ。

 だが、ノッブはため息を吐いて、

 

「そんなに多くする必要は無いと思うぞマスター。どうせ一時的なモノじゃろうし、いつもの量を週二回で十分じゃ。むしろ、ひっそり作っておいたものが無くなってる方を心配せい」

「あ~……でも、エウリュアレなら食べるんじゃない?」

「まぁ、それはそうなんじゃけど、一応希少価値ってものがあってな? マスターの菓子は割と高レア部類になってるからその価値を暴落させるわけにはいかなくてな……」

「えっ、何、市場でも出来上がってるの? お菓子を巡って? 本気?」

「冗談だと思いたい気持ちは分かるんじゃけど、事実なんじゃよねぇ……正直、マスターの菓子を販売すればぼろ儲け出来るのでは……?」

「やらないしやらせないからね。やってるのを発見次第エルキドゥ呼ぶよ」

「うむ。やるわけない。BBは知らんがな」

「私はそもそも自分用すら満足に手に入らないんですけど……人に販売してる場合じゃないですって。本当に」

「あぁ、うん。二人ともあんまり食堂に来ないしね……こっちはこっちで作って置こうか。少量で」

「いや、儂はたまにエウリュアレや茶々から貰っとるからな。BBは悪用するから食堂用だけにしておけ」

「そっか。じゃあいらないね」

「えぇ!? BBちゃんのクッキーは無しなんですか!? なんで!?」

 

 愕然とするBBに、ため息を吐くノッブとにやりと笑うオオガミ。

 そして、オオガミはしばらく工房で進捗を確認した後、食堂へと向かうのだった。




 冷静に考えると、セラフからほぼノータイムで今回のイベントに飛んでいるので三週間近くカルデアに帰ってないという。


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姫の部屋が……(なんでそんなことになってるのさ)

「あっ! まーちゃん!」

「あれ、おっきー。珍しいね。ネタ探し?」

 

 廊下でばったりと会ったオオガミと刑部姫。

 

「ち、違わい! 部屋が占領されてるんだってば!」

「占領……占領? あ、おっきーの部屋にあるこたつ、片付けないとだね」

「それくらい自分でやるし! いや、まぁ、そのこたつのせいでこうなってるんだけど……」

「こたつのせい……?」

 

 首を傾げるオオガミに、刑部姫は袖を引きつつ、

 

「とりあえず来て。あれはもう、まーちゃんじゃないとどうしようも出来ないから」

「うぅむ……こたつ……こたつ……あ。あの雪国の高貴なお方々か」

 

 心当たりに思い当たったので、少し駆け足で刑部姫の部屋へと向かうのだった。

 

 

 * * *

 

 

「あらマスター。久しぶりね。どうかしたのかしら」

「うむ。最近は召集されることもないし、私はもっとこうしてだらだらしていたい」

「あぁ、ダメだこの二人。カリスマが消し飛んでる……」

「この二人がいると、室温が下がるから困ってるんだけど……あと、姫のゲームが勝手に使われてるの……」

 

 こたつに入って寝転がってゲームをしているアナスタシアとスカディ。

 しくしくと泣きながら言う刑部姫に、オオガミは少し考え、

 

「二人とも、なんでこの部屋にいるの? 専用のこたつを用意したはずなんだけど……」

「だって、ここには面白いものがいっぱいあるんだもの。ここで一年を乗り越すわ」

「賛成だ。ここが一番安全な気もするからな」

「姫の部屋なんですけど! というか、引きこもりにこんな眩しい人たち見せないで! 泣いちゃう!」

「そこまで眩しい……?」

「まーちゃんはいつも一緒にいるのが美の女神しかいないからそういうことになるの! 感覚麻痺だよ! 美人の供給過多で姫惨めすぎて死んじゃいそう!」

「いや、おっきーも一応美人なんだけど……むしろ美人じゃないって言ったら袋叩きにされそうな雰囲気もあるんだよ?」

「お、お世辞とか要らないから、とにかくここの二人をどうにかして!?」

 

 若干顔が赤くなっている刑部姫を見て、仕方ないとばかりにため息を吐くオオガミ。

 

「二人とも、一回食堂行こうよ。おやつでも食べて来て。そのうちに同じような部屋にしておくから」

「むぅ……仕方ないわ。ちゃんとゲームを用意しておいてちょうだいね」

「ふむ……冷凍庫にアイスはあっただろうか……無いなら行かぬよ」

「周回に連れていくよ」

「無いなら作らせるとしようそこを退くが良い」

 

 素直に出ていくアナスタシアと、若干青い顔でそそくさと出ていくスカディ。

 

「あ、ありがとうまーちゃん! これで引きこもれる! やったー!」

「うん。そのためにはもう少し手伝ってもらうことがあるけどね。ノッブとBBを呼んできて。見つからなかったらエウリュアレに頼んで呼んできてもらって。集合場所はアナスタシアとスカディの部屋の前で」

「えぇ!? 姫使い荒くない!?」

「大丈夫。出来なかったらまたあの二人がやって来るだけだから。ファイト」

「それ、もう軽い脅しなのでは……!? えぇい仕方ない。姫もちゃんと出来るところを見せるんだから……!」

 

 そう言って、刑部姫は折り紙のコウモリをばらまいて、捜索を始めるのだった。




 久しぶりにおっきーを出すならこれしかあるまいと……おっきーがいないうちにアナスタシアたちが来てるから……


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久しぶりだね羊のお兄さん(別に周回をしたいわけじゃないからね?)

「やぁマスター。久方ぶりだね。元気だったかい?」

「あ、羊のお兄さん。自分から出てくるなんて珍しいね。でも残念ながら三ターンをする予定は今のところ無いからごめんね」

「いや別に周回をしたくて現れたんじゃないということだけ知っておいてほしいかな」

 

 冗談半分で言ったオオガミの言葉に、笑顔のまま焦ったように言うマーリン。

 

「それで、何の用?」

「あぁ。高難易度はどうだった? そこまでは見ていなかったからね。聞いてみようかと」

「あぁ、うん。終わったよ。過程はアナに聞いてみたら?」

「う~ん……正直、彼女には嫌われてる気がするんだけど……」

「じゃあ、諦めた方が良いと思うよ」

「意地悪だなぁ……教えてくれてもいいと思うんだけど」

「残念ね。彼も私の妹も、教えてくれないわ。その方が面白そうだもの。えぇ、そうね。(エウリュアレ)にも伝えておくわ」

「あ、ステンノ様。食堂行きます?」

 

 オオガミの後ろからすっと現れるステンノに、何とも言えない顔になるマーリン。

 

「そうね。でも、私よりも(エウリュアレ)を誘った方が良いのではないかしら。えぇ。どうやら(エウリュアレ)は貴方にご執心の様ですし。バレンタインの時にかけた言葉が、まさか……いえ、何でもないです。では、私はこれで。それと、私にも敬語は必要ないですよ」

「あ、そう? じゃあまた後でね」

「えぇ、また後で会いましょう」

 

 そう言って去って行くステンノ。

 それを見送ったオオガミ達は、

 

「……本当に教えてくれないのかい?」

「まぁ、ステンノ様もああ言ってたし。教えてあげない方向で」

「え、えぇ~……中々捻くれてきたね……もっと素直になっても良いと思うんだけど」

「正直、言おうと思ったところにステンノ様の登場があったので、こっちからは言えないのです。どうにかしてBBを捕まえて知った方が良いかなって思います。ファイトだよお兄さん」

 

 そう言うオオガミに、苦笑いになるマーリン。

 

「えっと、なんでBBなんだい?」

「そりゃ、お兄さん並みに監視してるしねぇ……しかも、無駄に記録なんかしてるから。聞いてみた方が良いと思うよ?」

「なるほどねぇ……とすると、あそこかな? そうだね。行ってみるとするよ」

「あれ、ばれてる? なら、大丈夫かな。ファイトだよお兄さん」

「投げやりだねマスター君。だけど私は楽しむためにやれるだけの事をしようじゃないか」

 

 そう言って、歩いて行くマーリン。

 オオガミはそれを見送った後、食堂に向かうのだった。




 はい。今回の高難易度はゴルゴーン三姉妹による魅了ハメコンボで悩殺でした(ミスって何度か殴られたけど全員瀕死ながら生存)


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今日のお菓子はありますか!(出来るまでもう少し待っててね)

「あ。オオガミお兄さん! 今日はお菓子はありますか?」

「あぁ、イリヤ。もう少しで焼けるから、周囲に隠れてる危ない奴等に気を付けて待っててね」

 

 そう言って、オーブンに目を向けるオオガミ。

 また、忠告を聞いたイリヤは、食堂を見渡し、

 

「えっと……なんだろう。ここにいたら、後ろから刺されそうな雰囲気なんだけど……」

「残念だったわねイリヤ。最近のマスター特製のお菓子の需要はとっても高いのよ」

「く、クロ!? なにか知ってるの!?」

 

 訳知り顔で現れたクロエに聞くイリヤ。

 クロエはとっても楽しそうにしながら、

 

「それはそう……先日のホワイトデーが原因よ。今までマスターのお菓子に触れもしなかったサーヴァント達が、マスター特製のクッキーを食べたことが全ての始まり……」

「ほ、ホワイトデーのクッキー……確かに、あれはとっても美味しかった……はっ、まさか!」

「そう。不定期に現れるマスター特製のお菓子は、ほぼ全てエウリュアレさんが持っていくからあまり広まらなかった味をマスター自身が広めることにより、一気に需要が跳ね上がってしまったのよ!」

「な、なんですってぇ~!?」

 

 ズガビシャーンッ!! と雷が落ちそうなほど大げさなリアクションをとるイリヤ。

 それを見て気分が良くなったのか、クロエは得意気な顔になる。

 そんな二人に、オオガミは首をかしげつつ、、

 

「あれ。不定期だっけ。週一で出してたつもりなんだけど」

「いやいや。イベントとか特異点とか異聞帯とかを攻略している最中は出ないんだから、不定期よ。そもそも、厨房に立ってるのを見かけることが既にレアなのよ?」

「あ~……そういえば、最近はあっち行ったりこっち行ったりで厨房に立ってなかったかぁ……まぁ、それなら確かにレア物だね。うん」

「ほぇ~……あ、そうだ! お兄さん。私たちもお手伝い出来ることはない? 最近はあまりバトルもしてないし、調理実習とか、やってみたいなって。どうかな?」

「ん~……そう言うのはあっちの赤い外套の――――って、逃げたか。ん~……となると……うん。そうだね。キャットがリップに料理を教えてるときがあるから、その時にお願いしにいくと良いよ。お菓子なら多少は教えられるけど、普通の料理は他のメンバーが強いし。あぁ、そうだね。今度ナーサリー達も集めて料理教室でもしてみようか。お菓子しか出来ないからそっち方面になるけど、まぁ、ナーサリーには有益かな」

「え~っと……?」

「あぁ、ごめんごめん。まぁ、要するに、考えておくよ。イベントが来なければ今週中にはしようかな」

「ほ、本当ですか!? ありがとうございます!」

 

 そう言って喜ぶイリヤを見てオオガミは笑みを浮かべつつ、

 

「じゃ、今回のお菓子はチョコチップカップケーキで。はい。ほしい人は並んでくださいな」

 

 その宣告と同時に、イリヤとクロエを先頭にずらりと並ぶ面々。

 その長さに、思わずオオガミは頬を引きつらせるのだった。




 さて。そろそろ今日のおやつに被りが出てくるんじゃないかと思う今日この頃。とはいっても、ここまでのを全部覚えているわけじゃないので、既にかぶってる可能性も。うぅむ……


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試作品完成じゃ!(じゃあ試運転をしましょう!)

「さて。そろそろ実行段階なんじゃが、マスター。準備は良いか?」

「なにこれクオリティ高くない? なんでこんなところで本気を出したのさ」

「まぁ、BBちゃんにかかれば形を整えるくらい造作もないことです。えぇ、はい。このためにわざわざ道具を作ったとか、そういうことはないんですよ?」

 

 完成したちびメカノッブを見ながら話す三人。

 武器を装備させるという話だったが、それはどうなったのだろうかと首をかしげるオオガミ。

 

「仕事が早いのは良いんだけど、装備ってどうしたの?」

「あ~……それなんじゃけど、これは試作品で、武器は無しじゃ。運搬用で使うんじゃよ」

「つまり、倉庫番?」

「その予定なんじゃけど、運用テストはここでする。いきなり倉庫に持っていって試して暴走でもしたらマシュに殺されるのは分かりきってるからな……」

 

 確かに。と納得するオオガミ。

 すると、BBは何かを思い出したようにオオガミの方へ顔を向けると、

 

「あ。マシュさん、最近大人しいですけど、あれはいじけてるだけなので後でちょっかい出しに行ってくださいよセンパイ。大丈夫です。殺されはしないと思いますから」

「死の危険と隣り合わせになる可能性があるの? 可愛い後輩ちゃんはどこへ?」

「私も可愛い後輩ですと文句を言ってやりたいですが、マシュさんは悪くないと思います。むしろ健気可愛い後輩を無視して遊び呆けてるセンパイに問題があるのでは?」

「なるほど正論だ。マシュの所へは後で行くとして、とりあえずこっちを片付けなきゃか」

 

 現在怒っているらしい可愛い後輩の相手をしなければいけない使命感を感じつつも、それはそれとして目の前の仕事を片付ける事を優先する。

 

「ところで、試運転って、何をさせるの?」

「うむ。まずはモノの認識確認と、命令を聞くかのテストじゃ。命令に関しては、複数の命令を与えて、効率的に処理できるかも見る。まぁ、最初の時点で躓いたらやり直しなんじゃけどね」

 

 そう言って、テストエリアの話をしてくれるノッブ。

 内容を聞いていると、どうやら本当に運搬実験だけのようだった。

 

「意外にちゃんと設定されてる……どこかでふざけると思ったのに」

「うむ。もしかして儂全く信頼されてないじゃろ。ちゃんと真面目なのを作るときは真面目じゃからな?」

「BBちゃんとしてはおふざけ系のイベントを入れても良かったと思うんですけど、ノッブに止められたので無しという感じに。障害物は置いて良いと言われたので耐久テストも兼ねて全力を出しました」

「き、貴様BB! あれだけやるなと言ったのにやりおったな!? トラップの内容を全部教えろ! モノによっては撤去じゃ撤去!」

「そ、そんなぁ!? BBちゃんの憂さ晴らしだったのに! そんな無慈悲なことをして良いと思ってるんですか!?」

「するわたわけ! 儂手ずから作り上げた試作品じゃぞ! 壊れたらさすがの儂も凹むからな!?」

「外的要因で壊れる方が悪いんですぅー! BBちゃんは悪くありませーん!」

「こやつ、さてはプログラムミスがあってもトラップにかかったせいだと言って儂に責任を押し付けるつもりじゃな……? そうはさせぬぞBB!」

「そんなつもりはないです……って、きゃあぁぁぁ!」

 

 ノッブに飛びかかられたBBは、かわすことも出来ず捕まり、そのまま大乱闘に派生していった。

 そんな二人を横目に、オオガミは飛んできたマニュアルを見ながら試運転を開始するのだった。




 なお、試運転の結果は合格だった模様。

 えっ、来週からまたイベントですか? もう少し時間を空けてもいいんじゃよ……?


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なんで私たちは呼ばれたのよ(とりあえず行ってみたら良いんじゃないですかねー)

「で、なんで私たちは集められたのかしら」

「なんでもお菓子作りするんだとさ。教室を開きたいから練習だってよ」

「ふぅん、そう。帰っていい?」

「いやいやいや……とりあえず参加しとけって」

 

 帰ろうとする邪ンヌを引き留めるロビン。

 すると、メイドオルタが歩いてくるのを見つける。

 

「あらメイドじゃない。なに? アンタも料理教室とやらに行くの?」

「バカを言うな。私は食べる側であり、今回は監視員として呼ばれている。お前のように突然暴れだすようなのがいないとも限らんからな」

「なんですって……? もっぺん言ってみなさい。消し炭にしてやるわ」

「どうどうどう。待て待てお二人さん。ここでおっ始めたら周りに大迷惑をかけるってのを忘れんなよ?」

「……チッ。命拾いをしたわね」

「それはこっちのセリフだ」

 

 ロビンに止められ、にらみ合いの状態になる二人。

 すると、メイドオルタは何かに気付いたように、

 

「しかし……貴様は料理教室に参加するというのか。それは……マスターも苦労するだろうな」

「ちょ、どういう意味よ!!」

 

 ロビンの制止も虚しく、メイドオルタの言葉で戦争開始寸前の雰囲気に戻る二人。

 今にも噛みつきそうな邪ンヌに、メイドオルタは、

 

「いやなに、貴様が如何に頑張ったとて旨いものを作れないだろうからな。マスターはさぞ苦しむだろうな、と心配しているだけだ」

「な、なんですってぇ? バカにしないでくださる? 私だってお菓子のひとつや二つ。簡単に作れるんだからね? 絶対アンタに旨いって言わせてあげるわ。行くわよ緑!」

「えっ、それもしかしてオレの事? マジで? またパシリ枠なの? ふ、不幸すぎねぇか……?」

 

 メイドオルタに宣言して颯爽と去っていく邪ンヌの後ろを、半泣きでついていくロビン。

 そんな二人を見送ったメイドオルタは、ずっと左手に持っていた紙を見て、

 

「さて、これで全員か。しかし、意外と人数がいるが、手が回るのか……? 赤い外套の男は辞退しているのがかなりの痛手だと思うのだが……全く。ヤツにも困ったものだ。戦場に背を向けて逃げ出すなど……今度見かけたら鍛えてやらねばな」

 

 紙に書かれているのは名前。それは、料理教室の前準備として、子供を相手にする前に適当な人員を集めて予行練習をするために呼ばれた者の名前。

 メイドオルタは、そのメンバーを呼びに言っていたのだった。

 

「さて、そろそろ時間か。逃亡を図った者には容赦なく撃ち込んでやろう」

 

 そう言って、メイドオルタはセクエンスをくるくると指先で回しながら廊下を歩くのだった。




 なお、集められたのは大体いつものメンバーである。このときの話は後日書くかもしれない……


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どうしてこうなったのか(やる前から想像はついてただろ?)

「おかしいなぁ……どうしてああなるんだろ……」

「そりゃ、メンツが悪ぃとしか言えねぇな……聞いてる限り、まともに従ってくれそうなのが半分もいねぇじゃねぇか。何を思ったらあの連中に料理を教えるって話になるんだ?」

 

 現在修理中の食堂の隅で、半泣きで机を直していくオオガミと、隣で手伝うクー・フーリン。

 破壊の原因である料理教室参加者の一部も手伝っていた。

 

「いやぁ……子供相手にやるから、子供っぽいのを相手にうまく行けたら行けるんじゃないかと思って……」

「子供の方が何倍も素直だな。むしろ、成長しても変わらないやつってのは面倒だぜ……」

「うん、まぁ、そのせいでこうなってるんだけども」

 

 主犯は邪ンヌとメイド。邪ンヌが突撃し、メイドに煽り返されたので激怒した邪ンヌによる大災害。

 主犯の二人は当然修理メンバーだが、その時邪ンヌの怒りに油を撒きまくっていたノッブとBBも修理に加わっていた。

 

「ったく……何だってオレもこんなこと手伝ってんすかね~……」

「ロビンさんはBBのパシリ枠だから……」

「そんな枠要らねぇっての。オタクにやるよ」

「えぇ……パシリ枠の先輩にそんなこと言われても困ると言いますか……もっと犠牲になってロビンさん」

「ひ、ひでぇ……つか、結局マスターもパシリ枠なのかよ。どんだけパシリ増やすんだあの女……」

「でもほら。基本どっちかしか動いてないし、問題ないでしょ」

「そのうち同時に呼び出されそうな気もするが……いや、待てよ? マスターはどっちかってぇと、アイツと一緒にバカやる方じゃねぇか……? あれ、これってオレだけ被害に遭ってるんじゃ……?」

「いやいや。むしろロビンさんに迷惑が行かないように精一杯頑張ってるんですけどね?」

「はぁ……まぁ、そういうことにしときますよ。んじゃ、オレは向こうをやって来るんで、修理が終わったらあっちに持ってってくださいよ」

「うん。ロビンさんも頑張ってね~」

 

 そう言って去っていくロビン。

 それを見てたクー・フーリンは、

 

「完成したもんはあっちか。任せとけ。俺が運んでおくさ。それと、材料は既に揃ってるぜ。後は何か手伝う事はあるか?」

「うぉ、流石仕事がお早い……ん~……それじゃあ、ノッブと入れ替わってもらっても良い? あっちはどちらかというと力仕事だから。ノッブにはこっちの作業を手伝ってもらいたいから、お願い」

「おぅ、任しとけ。そんじゃあまた後でな~」

 

 そう言って走っていくクー・フーリンを横目に、作業を続けるオオガミなのだった。




 惨劇が起こるのは是非もないこと……そしてさりげなく槍ニキです。初登場ではなかったはず……?


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エミヤさん、何をしてるんですか?(料理教室の裏方をな)

「あれ、エミヤさん、何をしているんですか?」

「あぁ、リップか。いやなに、マスターが料理教室をすると言っててな。その手伝いをな。裏方だが、いないと大変だろう」

 

 荷物を運びつつ答えるエミヤ。

 リップは首をかしげつつ、

 

「教えるなら、あなたの方が良いんじゃないですか? マスターだけだとダメなんじゃ……」

「いや、そうでもないさ。事前に手順の説明をしている。私がいなくても問題なかろうさ」

「そうでしょうか……あなたがいないとダメな気もするんですけど……いいえ、マスターですし、大丈夫ですよね。子供が怖くて怯えてる赤い外套の人とかいなくても大丈夫でしょうし」

「別に怯えてなどいない。ただ、苦手なのがいるだけだ」

「でも、逃げたのは変わらないんですよね? まぁ、何でもいいですけど。私も混ざってきますね」

「あぁ、そうしたまえ。私は裏にいるからな」

 

 去って行くリップを見送りつつ、エミヤは準備を続ける。

 そんなエミヤに忍び寄っていたロビンは、

 

「オタクも大変そうだねぇ。いやぁ、オレは昨日頑張りましたし? アンタも苦労してくれねぇと割に合わねぇって感じだ。頑張れよ赤いの」

「ふん。貴様か。嫌味を言うためだけに来るとはな……全く、今日は厄日だ」

 

 ため息を吐くエミヤに、ロビンは考える様な素振りをしながら、

 

「厄日ねぇ……なんかあったんですかい?」

「貴様、聞く気は無いだろう? マスターの補助に行くなら食堂に行くといい」

「いやいや。オレは別にマスターの世話をしに行くんじゃないんですけどね? なんだかんだ、リップに引きづり回されてるっつうか? まぁ、そんな感じなだけで、オレはあんまり行きたくないんで。そこは理解してもらえればっつうか、察しろとしか」

「そうか。あいにくと、察する気は無いのでな。それと、食堂に行くならこれを持って行け」

「おぅおぅ。アンタも人使いが荒いねぇ……ま、これくらいはしておきますよ。んじゃ、頑張れよ」

 

 そう言って去って行くロビン。

 持って行くものも無くなったエミヤは、何をしようかと考え、

 

「仕方あるまい。マスターの部屋を掃除しておくとしよう。食堂前を通ると鉢合わせるかもしれないからな……遠回りで行くとするか」

「あぁ、それならあちらから行くと良い。行くまでの間、少し話に付き合ってもらってもいいかな?」

 

 突然現れたエルキドゥにエミヤは面を食らうものの、すぐに気を取り直すと、

 

「あぁ、そのくらいなら構わんよ。では、行くとしようか」

 

 そう言って、エルキドゥと一緒に歩き始めるのだった。




 久しぶりのエルキドゥ。とはいえ、リップの被虐体質って、これでいいのかなぁと思いつつ。早く原作をやらねば……


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いつから保護者同伴になったのか(たぶん誰も保護者を呼んでないと思うんです)

「うん。まぁ、別にいいんだけどさ……何時から保護者同伴になったの?」

「違うんです……私が来てほしいって言ったんじゃなくて、勝手についてきたんですぅ……」

「ふっふ~ん! ジャガーは気付いたのです。お菓子を食べたいのなら、自分で作ればいいじゃないと。マスター特製クッキーを食べられないというのはとっても残念だけども、しかし問題ない。そのためにこのクッキー作り講座に来たと言っても過言ではない」

 

 イリヤ達の隣で、何故かドヤ顔をしているジャガー。

 また、同じく参加しているナーサリーたちにはギルガメッシュが。茶々にはノッブが。アビゲイルとバラキーにはBBがついていた。

 そして、これまた不思議な事に、別枠として参戦しているリップはロビンを連れていた。

 

「なんというか、凄いメンバーだよね……王様、教える側じゃないんですね……」

「ふん。(オレ)は様子を見に来ただけよ。学ぶに値するものかをな。しかし……メンバーも酷いものよな。何せ破滅の予感しかせん」

「あのぉ……オレ、帰って良いです? 正直辛いんですけど。こう、空気が」

「あ、ロビンさんは出れない様に細工させていただきましたので、ファイトです!」

「ピンポイント……!? 他にはいないのか!?」

「えぇ、はい。後はセンパイだけですね」

「おっと。こっちにも飛び火してたか。しかたない。それは後で解除出来るか試すとして、今はお菓子作りをするとします。うん。大人な方は少し大人しくしててください」

「大人は大人しくか……大人なのに大人らしくとな……うむ。地味に矛盾じゃよなこれ」

「ノッブは黙ってる。あと薬品をぶち込むという考えは捨ててルビーと一緒に退場して」

「儂への当たり強くない?」

「えぇ!? ルビーちゃんもですか!?」

「うん。強制退場で」

「そ、そんな……BBも同じじゃろぉ~!?」

 

 オオガミが手を叩くと同時に現れた巌窟王が、ノッブの首根っこを掴み、ルビーをしっかと握りしめて出て行った。

 

「それじゃ、切り替えて行こうか……あぁ、うん。空気が冷え切ってるのが分かる……盛り上げ担当兼先生のキャットに任せるとしよう……」

「むっ。ご主人がそれでいいのならそうするが、なに。彼らも気にしなかろう。むしろご主人でなければ問題のような気もするが」

「そ、そう……? じゃあ、うん。頑張ってみるけども」

 

 始まりから既にグダグダな感じの現状に半分泣きそうなオオガミを鼓舞するキャット。

 オオガミはその鼓舞を受けて、やる気を出すのだった。




 保護者の半数がヤバい奴等な事について。そして一ミリも進まない料理教室。途中から何やってるかわからなくなってきたんですよ……


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一応成功したんだと思いたい(ご主人頑張った事だけは知ってるぞ)

「まぁ、うん。イリヤ達が作れたから、成功で良いんだよね……」

「うむ。お疲れ様だご主人。しかしあそこまでリップが暴れるとは思わなかった……まさか緑茶を亡き者にしようとしていたとは……」

「あぁ……それで食堂がとんでもないことになっていたのね……リップが不機嫌だったのは。始末出来なかったからかしら」

 

 結局、あの後頑張ったものの、無事に完成できたのはイリヤ達とナーサリー達の二班で、後は細切れにされた何かが入っているクッキーだったり、パートナーを握りつぶそうとしたり、邪魔な伯母上を焼き付くそうとする過程で一緒にクッキーが燃えたりしていた。

 そんな話を聞きながら、楽しそうに笑うメルト。

 

「それで、二回目をやるの? それなら、私も見に行こうかと思ったんだけど」

「むっ……なら、後一回くらいは頑張ろうかな……」

「マジかご主人。メルトで一本釣り出来るとは……これはキャットでも一本釣り出来るようにならねばならぬと判断したぞ。待っていろ。キャットはご主人に認められるほどのスーパーキャットになって見せるワン」

「だ、大丈夫。キャットは今の状態で既にスーパーキャットだから。無理に頑張らないでも大丈夫。なんせ、料理教室の時に真っ先に手伝ってくれたし」

「キャットは最強ゆえな。だがやはりご主人にそう言ってもらえるのは嬉しい。して、次は何時だ? キャットは今からでも構わんが」

 

 上機嫌なキャットに、オオガミは少し考えて、

 

「まぁ、後一回くらいはお菓子を作る予定だし……あぁ、でも、イベントあるからなぁ……正直、当初の目的は達成したからやる必要はないんだよね……」

「そうなの? てっきり、後何度かやるものだと思っていたのだけど」

「そもそもイリヤ達がやるためにやってただけだしねぇ……メルトが見学に来るからやるってのも、改めて考えると周りに迷惑になっちゃうし……そうだ。次作るときに手伝ってよ。やってると人が集まってくるかもだけど」

「……二人だけじゃないのね。まぁ、そっちの方が貴方らしいけど……良いわ。やるときに呼びなさい。結局この前は貴方に全部任せて気付いたら終わっていたんだもの。近くで見れるのなら……」

「まぁ、一緒に作るんだし、近くではあるよね。じゃ、キャット。明日作るから、予想以上に人数が増えたらそっちで引き受けて」

「あい分かった。キャットも混ざりたいが自重するとしよう……キャットは出来る女だからな。だからご主人。ニンジンで手を打とう!」

「よし。任せといて。最高のニンジンを用意しよう」

 

 そう言って、二人はそれぞれ準備に向かうのだった。

 その二人に置いていかれたメルトは、

 

「……まぁ、準備ができたら呼ぶわよね」

 

 と、若干不安そうに呟くのだった。




 料理系はエミヤよりもキャットの感じ……不思議……


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あら、本当に作るのね(やると言ったからにはやらねばならぬよ)

「うん。じゃあ、次は型取りなんだけど……取ってくるね」

「流石に足でやるわけにはいかないものね……えぇ、分かったわ」

 

 そう言って、クッキーの型を取りに行っているオオガミを待つメルト。

 昨日言っていた通り、本当に呼びに来たので、一緒に作っていた。

 

「それにしても、意外と出来るものね。てっきり失敗すると思っていたのだけど」

「普通は失敗しないと思うわよ。まぁ、私は手伝った事は無いのだけど」

「……貴女、参考になるようで全くならないことを言うのはやめてほしいわね」

 

 横から覗き込んでくるエウリュアレに、何とも言えない表情になるメルト。

 

「別に、私が手伝った事は無くても、作っているのを見ればある程度は分かるわよ」

「そう……今度手伝ってみれば良いんじゃないかしら。意外と大変よ?」

「ふぅん……じゃあ、次に作る時は手伝ってみようかしら。アナも一緒にね」

「ふむ。ではエウリュアレよ。今からでも参加できるクッキー作りがあるので参加するのはどうだワン?」

「……今日は止めておくわ。次のイベントが終わった辺りでいいかしらね」

「それ、やらないやつよね……」

 

 なんとなく逃げ出すような雰囲気があるが、はたしてキャットがそれを許すだろうかと考えると、怪しい所だった。

 

「うむ。ならばイベントが終わり次第作ることにしよう。ふふふ。キャットから逃げ切れるとは思うなよ?」

「なんというか、本当に逃げられそうにないのだけど……」

「なら、逃げないでそのまま受ければ良いじゃない」

「バカなことを言わないでちょうだい。私は絶対に逃げ切って見せるわ。バーサーカーに捕まってなるものですか」

「変なところでスイッチが入るよね、エウリュアレって」

 

 キャット相手に本気で逃げ切ろうとしているエウリュアレに、後ろから声をかけるオオガミ。

 すぐにエウリュアレは振り向くと、

 

「何よ。イタズラには本気だし、怒られたくもないから必死にもなるわ。えぇ、えぇ。絶対に面倒なことをしてなるものですか」

「素直に作った方が面倒じゃないと思うんだけどなぁ……」

「こういうのはね、肉体的なものじゃないの。精神的に面倒だな、と思うことが面倒なことなの。スポーツをするのと、片付けをするのは面倒さが違うように。だから、精神的に辛いことからは絶対に逃げるって言うのが私のポリシーなの。分かったかしら」

「分かるけど、今日は一段と喋るね……何か良いことでもあった?」

「いいえ、全く。アビーにはなんか変なものが入ってそうなクッキーを渡されたし、最近食堂に入れなかったし、アナは出掛けてるし、貴方は部屋に帰ってこないしで散々だったわ」

「あぁ、うん。なんかごめんね……半分以上こっちが原因っぽいし……」

「えぇ、分かれば良いわ。ほら、さっさと終わらせなさい。そのクッキーを食べるために来たんだから」

「はいはい。じゃ、メルト。型抜きしてね。好きな形で良いから」

「えぇ、分かったわ」

 

 そう言って、エウリュアレが横から見ているなかオオガミとメルトは型抜きを始めるのだった。




 突然現れるエウリュアレ。果たして何時ぶりだろうか。

 というか、エウリュアレのキャラ、迷走してない? 大丈夫?


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明日からイベントだよ(やはりイベントですね。参りましょう)

「さて。ついに明日に迫ったイベントなのですが、今回は特攻サーヴァント編成でとりあえず行ってみようと思います」

「あら、私は編成されないの?」

「意外ね。私の時みたいに連れまわすと思ってたわ」

 

 食堂の一角で、意外と言いたげな表情のメルトとエウリュアレ。

 しかし、オオガミは首を傾げて、

 

「いや、メルトは連れて行くけど……エウリュアレも来たかった?」

「……特攻サーヴァント編成って何かしらね……」

「何となくそんな予感はしていたわ……別に嫌なわけではないし、構わないのだけどね」

「まぁ、貴女が良いならそれでいいわ。あぁ、別に私は行かないわよ。カルデアで大人しくしておくわ」

「そう? じゃあ、エウリュアレはお休みかな。それじゃ、編成を組みに行こうかな」

 

 そう言った時だった。自然な様子でエウリュアレの隣に座った彼女は、

 

「やはり編成ですね。私も参りましょう」

「殺生院……」

 

 確実にこれをやりたかっただけだろうという状況に、何とも言えない表情になる二人。

 

「で、何しに来たの?」

「いえ、次のイベントで私が特効だと聞いて、馳せ参じただけでございます。私、楽しみで楽しみで……うずいてしまいますわ」

「な、なんでこの人、突然こんなことを言い始めるの……」

「コイツのこれは平常運転じゃないかしら。何を言ってもどうしようもないと思うわ」

「そうね。私もどうしようもないと思ってるから、今日は部屋に帰るとするわ」

「そうね。私も帰りましょうか」

「……そういえば、最近広くしたベッドがいつもよりも狭いのって、気のせいじゃないよね」

「あらあら、マスター? 詳しくお聞かせ願ってもよろしいでしょうか?」

 

 思い出したように言うオオガミの言葉に即座に反応するキアラ。

 そんなオオガミを、満面の笑みを浮かべて、二人の女神は見捨てるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「それで、編成だったわよね。流れ的に、キアラは入れないとでしょうし、後は同じように特攻が入っているパールヴァティーと、お得なマシュも入れておきましょう。後は……特にいないから、バラキーでも入れておきましょう」

「あ、私は入れるのね。忘れるかと思っていたのだけど」

「まぁ、私もずっと入れられてた時があったし、同じ扱いにしておいた方が良いかなって」

「そんな気遣いいらないわ。それで、これでいいの?」

「そうねぇ……うん。このくらいで良いんじゃないかしら。たぶん私と同じ編成にすると思うわ」

「ふぅん……それなら、これでいいのね。はぁ、明日にはまた行かなきゃね」

「えぇ、頑張りなさい」

 

 そう言って、二人は編成表を組み終えるのだった。




 エウリュアレの編成は大体オオガミと一致する……こういうことをするから嫁って言われる……是非も無し。


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徳川廻天迷宮 大奥
迷宮じゃなくない?(どちらかというと迷路ですよね)


※徳川廻天迷宮 大奥 のネタバレアリ。ご注意ください。


「ダンジョンだこれ」

「迷宮の名に恥じないものですね。進むも抜け出すも、一苦労でございましょう」

「う~ん……迷宮ではなく迷路だと思うのですが……あまり言わない方が良いでしょうか……」

 

 当たりの道だろうが外れの道だろうが、行ってみたくなってしまうというのは、探索者の性か。

 下手に外れの道を突き進むとろくなことにならないような気もしなくも無いが、それでも向かいたくなってしまうのは仕方のない事だろう。

 

「しかし、なんだかんだ言って、事前編成全部ぶち壊されたよね……」

「そうですね……私も、昨日の話からメルトリリスも来ると思っていましたのに……」

「私としては、あまり話したことが無いのでこの機会に話せたらなぁって思ってたんですが……仕方ないですね」

「はぁ……正直編成に組み込んだのはメルトであって、パールさんじゃないんだけど……」

「えぇ~……ちゃんと組み込まれてましたってば。メルトさんは後で合流できますよ、きっと」

「別に、戦闘の時には来てくれるけども……うぅ、編成制限はどうにもならないよね……」

 

 苦い顔のオオガミに、パールは苦笑いをしながら、

 

「でも、普通の周回なら編成制限もありませんし、何とかできると思いますよ? まぁ、普通に進むときにはどうしようも出来ないのは事実ですが」

「むぅ……まぁ、それなら問題はないよね。それで、キアラさんはどうしたの?」

 

 どこかぼーっとしているキアラに声をかけるオオガミ。

 キアラは首を傾げつつ、

 

「いえ、なんとなく違和感を覚えまして……今のカルデアは誰もいらっしゃらないはずなのに、メルトリリスを呼ぶ事が出来る……不思議な話でございますね?」

「き、キアラさん……それは……」

「触れちゃいけない部類の話ですよ……!?」

 

 二人に言われ、ますます首を傾げるキアラ。だが、すぐに気を取り直すと、

 

「まぁ、触れるな、とおっしゃられるのでしたらそうしますが、それにしても、不思議なモノです。どうやらマスターは、あえて外れの道を選んでいるようにも思えるのですが……」

「えっ。まぁ、うん。確かにわざと外れの道を選んではいるけども……ダメ?」

「いえ、そう言うわけではございません。探索したいという欲は、私にも分かりますので。ですが、急いでいるのならば遠慮なさったほうがよろしいのでは、と」

「あ~……それはほら、あまり急いでも、どうせ行ける限界はあるだろうし、焦る事は無いかなって。流石に馬鹿じゃないでしょ。侵入された直後なんだから気を張ってると思うし、むしろ進行して相手の心に余裕が出来た時に一気に攻め込んだ方が良いんじゃない? 心当たりもあるでしょ」

「それを言われると返しようが無いので、そう言う事にしておきましょう。では、散策をしつついける所まで行く、という事でよろしいのですね?」

「うん。そういうことで。それじゃ、行くよ」

 

 そういって、三人は先へと進むのだった。




 迷路と迷宮の違いは、たぶん自力で調べた方が分かるんじゃないかと思います……

 しかし、編成制限は面倒臭い……何せ、メルトの絆上げに最適なマシュを連れて行くと苦しくなるんですからね。仕方ないので、メルトとキアラの二人が頑張ってますよ。


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やっぱり迷路じゃないかなコレ(とんでもなく広いですよね、ココ)

※徳川廻天迷宮 大奥 のネタバレアリ。ご注意ください。


「なんか、一気に行ける場所が増えたよね」

「そうですね……まぁ、のんびり進むのでしたら、端から全部試していくのがいいんじゃないでしょう?」

「長い道程になりそうですねぇ」

 

 そう言って、のんびりと歩く三人。

 

「それにしても、こういうのって、いつも思うんだけど、絶対住みにくいよね」

「答えを分かっていても、かなり距離ありますからね……右へ左へ歩いて最奥まで行ってようやく下へ。しかも、そこからまたひたすら進んでようやく下へ、という構造ですからね……移動の面倒さは異常なくらいありますよね」

「流石に、これだけの距離がありますと、戻るだけで一苦労ですし、来るのが億劫になってしまいますね……」

「でもまぁ、転移できるなら関係ないのかな……でも、出来る人は限られてるからなぁ……」

「そうでございますね……おそらく、裏道の様なモノがあるのでしょう。もしくは霊体化をしているか……ただ、そうなるとあの御仁はどのように移動していらっしゃるのか……」

「そうですね……目を離した隙に逃げられていますし、すぐ追ってもいないという事は、やはり裏道なんでしょうか」

「ん~……普通に走ってる可能性もあるけどね。英霊並みの身体能力だったらだけど」

「どうなんでしょうか……」

「まぁ、今は情報不足です。もう少し情報を得てから考えるといたしましょう」

「……キアラさん、なんだかんだただの変態ではないんだよね……」

 

 昨日からずっと雰囲気が違うキアラに、何とも言えない表情になるオオガミ。

 キアラはそれに対して微笑むと、

 

「私も、時と場合位は弁えますよ。それに、頼れるサーヴァントの方が、マスターも好ましいでしょう?」

「そうだけど……まぁ、気にしないことにしておこう。それで、どっちに進もうか」

「そうでございますね……遠回りをするなら、こちらでよろしいでしょう。面白そうな予感がいたします」

「なるほど……じゃあ、そっちに行こうか」

「えっ。本当に遠回りをするんですか? 進まないんです?」

「そりゃあ、まぁ、うん。お宝探ししたいし」

「本音が出ましたね……いえ、まぁ、横道にそれたいのは分かりますけど、ここはやっぱり進んでおくべきかなって思うんですよ……」

「じゃあ、パールさんはどっちに行くか分かる?」

「……そうですね。遠回りになるかもしれませんが、進まなければわかりません。行ってみましょう」

「うん。じゃあそう言う事で、レッツゴー」

 

 そう言って、三人は戸を開くのだった。




 割と広くて終わらない……


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謎部屋が多いよね(面白い部屋も多いですしね)

※徳川廻天迷宮 大奥 のネタバレアリ。ご注意ください。


「ん~……変な部屋が多いよね……広いだけじゃないし、ギャグテイストだし。強風の部屋は楽しかったね」

「屏風の部屋の蹴倒すのは中々楽しかったですけど……その後の箪笥の部屋は大変でしたね。まぁ、結局押し通りましたけど」

「押し通れるなら全然問題にならないね。うん。良き良き」

 

 楽しそうに進むオオガミ達。とはいえ、進んでも進んでも続く部屋というものは、本当に前に進めているか不安になる。

 当然オオガミも不安になっていたりするが、次の部屋はどのような部屋なのだろうかという期待の方が高いので、今の所心配はないのだが。

 

「しかし、三階も深そうだよねぇ……大体こういうのって、下に行けば行くほど深くなるからどんどん広くなっていくのが定石だし……まぁ、不思議のダンジョンみたいに、毎度地形が変動するとか言うえげつないしようじゃないし、何とかなるでしょ」

「楽観的ですね……いえ、今の所問題はないのでいいのですが」

「そう、でございますね……いえ、マスター。部屋数が多くなるという事は、罠も増えるという事でしょう。直接身を傷つけるようなものは少ないかと思いますが、精神的なモノはより多くなるかと。楽しむのも結構でございますが、一応警戒をしておいたほうがよろしいかと」

「んむむ……まぁ、これだけお酒の匂いが強いとね……アルコールって、毒判定なのかな……」

「過度な酒気は毒ですし、一応毒なのでは? 確か……羅生門では大丈夫だったのでは?」

「あ~……そう言えばそうだったような。という事は、一応酔っぱらう事は無いのかな……あれ、でもそれって、成人してお酒を飲んでも酔えないって事じゃ……?」

「マスターさんの耐性は、効力を安全域にまで抑える程度のモノでしょうし、おそらくは適度に酔うくらいのものではないでしょうか。まぁ、飲まないに越した事は無いのですけど」

「無理に飲む必要も無いでしょう。それに、それはあくまでも英霊と契約をしてのもの。この戦いが終わった頃には、消えているかもしれません。それほど心配する必要は無いかと」

「そうかなぁ……」

 

 酒気が漂う廊下で、ひたすらに進む三人。

 とはいえ、耐性があるのはオオガミだけで、他の二人は怪しい所だが。

 

「しかし、あんまり周回するような場所でもないね。本当に、ひたすら突き進んでるって感じ。終わりは5階層くらいかな?」

「こんな広い所を後2回も進むんですか……? 流石に疲れます……どこかで休憩したいですね」

「あまりこの階にいるのは得策ではないと思いますので、次の階層で休憩なさるのがよろしいかと」

「うぅむ……まぁ、次の階に行けるようになったら休憩にしようか」

 

 そう言って、オオガミは不満そうなパールと、どこか楽しそうに微笑むキアラを連れて先へと進むのだった。




 アンドロイドさんにはキツイイベント……読み込み長いなぁって思いつつ、でも素材がおいしいのでそこまで文句はないです。


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マシュにバレたら殺されかねないな(既に気付いてます。先輩)

※徳川廻天迷宮 大奥 のネタバレアリ。ご注意ください。


「さて……いかがいたしましょうか。盗むというのも中々骨の折れる事ですね。実際にやっているのは私ではないとしても、時間がかかってしまいます」

「まぁ、急いでるわけじゃないし、良いんだけどさ……それはそれとして、めちゃくちゃ長いのは問題だと思うよ。住んでる場合の話ではあるんだけど」

「まぁ、確かにそうですね……それはそれとして、マスターさん? 私、とっても聞きたいことがあるんですが」

 

 どこか青い顔をしているパールに言われ、何となく予想がつくオオガミ。マシュからもそろそろ連絡が来るのではないかと思うオオガミに、

 

「あの、カルデアに嫌な気配を感じるのですが……カーマを召喚していたりはしませんよね?」

「……はて、何のことやら……」

「大丈夫です先輩。もうばれてます。後、せっかくちょっと貯めた種火もほとんど全部使ったというのも含めて」

「……ごめんなさい」

 

 マシュから飛んできた通信に、オオガミは反論することも無く素直に認めた。

 マシュがとんでもないほどにいい笑顔なのだが、あれは怒っているのだとはっきりとわかっていた。

 

「はて……呼べるという事は、縁を結べるという事で……いえ、私も同じようなモノでしたか」

「キアラさんは何を悩んでるのさ?」

「いえいえ、何でもございませんよ。カーマさんがカルデアに入ったというのであれば、こちらのカーマとはまた別の存在。遠慮せずとも良いという事でございますね?」

「まぁ、そう言う事ではあるのかな……? うん、まぁ、そう言う事にしておこう。遠慮なく全力でよし。最初からそのつもりではあるんだけども」

「私も頑張りますからね! 置いて行かないでくださいよ!?」

「いや、置いて行きはしないけどね?」

「だって、なんか置いて行かれそうな雰囲気なんですもの……!!」

「マスターが置いて行く訳ないじゃないですか。エウリュアレさんやメルトの様に、否応にも連れまわされる方がいるように、一度連れまわすと決めたら、マスターは置いて行きません。えぇ、本当に。少し羨ましいです」

「あの、キアラさん? それ、基本批判されてるから止めてほしいんだけど……それに、今回の連れまわしメンバーはキアラさんもだからね?」

「分かっています。えぇ。中々無い事ではありますからね。珍しさに私、昂ってしまいます」

「あ、はい。うん。これ以上は突かない方が良い気がしてきた。よし、行こう。鍵を盗んで謎を解いて階段まで一直線だ」

 

 そう言って、オオガミは進んでいくのだった。




 カーマさん顕現。何気にキングプロテア以外の桜サーヴァントが全員そろってるような?

 とりあえず、レベル90にしておいて、縛り用に封印。めっちゃ強いアサシンですからね。女性にジャック。それ以外にカーマですよ。
 星五礼装が一枚も来なかったのは致命傷……


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なんでこんなにポンポン出てくるのさ(殲滅すれば問題ありません!!)

※徳川廻天迷宮 大奥 のネタバレアリ。ご注意ください。


「……さて、後半になってカーマが増し増しなんですけど」

「殲滅です。一人残らず殲滅です!」

「まぁまぁ。少し落ち着いた方がよろしいのでは? マスターのやる気にあてられて張り切るのはよろしいですが、目的を忘れないでくださいませ」

「忘れませんよ!? というか、進行方向にいるのだから倒すしかないじゃないですか」

 

 キアラに言われ、不満そうに頬を膨らますパール。

 確かに、進めば進むほどに出て来て、更に言えば寄り道もするのだから、どうあがいても戦うことになる。最終的には殲滅することになるのだろう。

 

「しかし……不思議なことでもありますね。こちらが早く助ければメルトもそれだけ早く帰ってくるというのに、そうはしない……あえて遠回りをしているのには、きっとなにかがあるのだとは思うのですが、やはり疑問でございます……」

「そういえば、マスターさんはメルトさんを召喚するために全力でしたね……でも、助けるのが遅れるメリットはあるのでしょうか?」

「最後に全て奪うつもりの私としましては、ここで冷めていますとあまり面白くないのですが……」

「冷めている……その線も――――あれ、キアラさん、何か今妙なことをおっしゃいませんでした?」

「はて、何の事でございましょう。私はただマスターとメルトの関係性が不安なだけなのですが?」

「そうですか……私の聞き違いでしょうか……?」

 

 何やら不穏な気配を感じたパールだったが、気のせいだと思うことにした。

 すると、先程まで静かだったオオガミが、

 

「今更だけどさ……大奥を構成してるのって、逆召喚されたサーヴァントなんでしょ?」

「再確認ではありますが、そうですね」

「つまりだよ。ある意味ここはサーヴァントの中でもあるわけで、意識があるにしろ無いにしろ、下手なことは出来ないわけですよ」

「はぁ……そうでございますね?」

「でも、でもだよ。サーヴァントの中と仮定するなら、つまり人形やカーマは害あるものということで、排除すべきだと思うんです。よって、全部屋開けて中の敵を殲滅して攻略する。これに限るわけです」

「な、なるほど! それなら納得です!」

「ふむ……では、そういうことにしておくとしましょう。本音は別のような気もしますが、暴く必要は無いでしょうし。それではマスター。どちらへお進みになりますか?」

「んむむ……じゃあ、あっちで行こう。レッツゴー!」

 

 そうやって、とりあえず直感に任せて突き進むオオガミ達なのだった。




 直感に任せると正規ルートを進むので真面目に考えて進まなきゃ……あれ……つまり直感で誤解破ってるのか私……?


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前もこんなことあった気がするな~って(失ったものが割と大きい気がします)

※徳川廻天迷宮 大奥 のネタバレアリ。ご注意ください。


「さて……魔界村の様な振出しに戻る感ですけども、キアラさんを失うとか実質戦力半減では……?」

「気持ちは分からなくはないですけど、それだと何となく私たちはキアラさんよりも下って事になる様な……?」

「いや、ほら、判定範囲が全然違うから……それに、ストーリー上いくら増えてもそのサーヴァントを持っていなければ、そして育成していなければいないのと同じ……故に。パールさんオンリーになったので戦力半減は物理的なモノです」

 

 文字通り戦力半減したオオガミ達。

 とはいえ、負けるつもりはさらさらないので、全力で向かう事は変わらない。

 

「さて……無限のお話お兄さんがいれば余裕で突破できる気がするんだけど……」

「あの人はずるすぎじゃ……いえ、ビースト相手に卑怯とは言っていられないのは分かりますけど、他にないんですか?」

「ん~……回復か欲しいからなぁ……玉藻さん運用かな?」

「カルデアバックアップがどれだけ強いのか再確認です……まぁ、最後のひとつの印籠を手に入れたらどうするか考えましょう。今はとにかく花札を集めないとですね」

「うん。これでようやく謎のゲージの正体も分かりそうだしね」

 

 そう言って頷く二人。

 

「さて。速攻で残っている部屋を漁って札を取り出して、封じられていた部屋の前でダ・ヴィンチちゃんの遺したゲームで遊びながら開くのを待つとしよう」

「えっ、すぐ入らないんですか?」

「いや、入りたくても入れないから……しばらく待機だよ」

「えぇ……なんですかそれ……仕方ないですね。入れるようになるまで待つとします。では、休憩のために頑張って花札を集めましょう! 打倒カーマです!」

「おー!!」

 

 そう言って、意気揚々と進んでいくオオガミ達。

 

 

 * * *

 

 

 その内容を通信越しに聞いていたマシュは、

 

「……先輩、私の事を忘れてますよね……いえ、もう分かってますけど……最近先輩構ってくれませんし……」

「あらあら……大丈夫ですよ。私は気にいたしません。ほら、休憩なさってください」

「……カーマさん。思わず盾で殴りそうになるので止めてくださいね」

「そうですか。それは残念です。まぁ、私は今敵側ですし、明確な敵意を向けられるのも仕方ないんですけど、そこまで本気で怒らなくてもいいじゃないですか。余裕が無いと疲れますよ?」

「言ってることは分かりますけど、そこまで余裕が無いわけじゃないです。はぁ……先輩が帰ってきたらどこに行かせるか決めるので、それまでは大人しくしていてください。食堂にお菓子ありますから」

「むぅ……仲間外れにされている感じで納得いきませんが、仕方ないです。行くとしますよ」

 

 そう言って、カーマは去って行くのだった。




 さて。FGOQuestを進めつつストーリーも進めつつ、さりげなく三年目に突入した本作は一体どこへ向かおうとしているんだこれ以上ぐだぐだするのは不味いですって!
 是非も無いよねっ!


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何だあの性能勝てる気はしない(それでもやらなきゃですよ!!)

※徳川廻天迷宮 大奥 のネタバレアリ。ご注意ください。


「……勝てるかこれ?」

「あのー……花札使いましょうよ……流石に余裕かましてる場合じゃないですって……」

「まぁ、うん。そうなんだけどさ……仕方ない。諦めて花札を使うか……敗北感凄いけども……」

「勝てなかったら意味ないですって……」

 

 不満そうな表情のオオガミに、呆れたような顔をするパール。

 

「さて……無敵貫通スキルと強化無効デバフ……弱化を解除しつつ強化を無効化する必要があるって事か……宝具威力を下げても通常威力はかなり高いから攻撃力を下げるのが一番だけども、はたして回せるかどうか……全体を殴るのが最善か……」

「……あの、今最難関に突撃してるからあの強さなのであって、たぶん段階を下げたらかなり楽になると思いますよ……?」

「ふむ……まぁ、とりあえず全力で挑んでみよう。勝てたらいいけど、勝てなかったら対策を考えなきゃ……」

「ちゃんと勝ってくださいよ……?」

「うん……印籠が邪魔すぎる……けど、何とかできるって。たぶん、きっと」

「なんで不安にさせるんですか!! ちゃんと言い切ってください!!」

「……メルトがいないしねぇ……やる気も半減ですよ。エウリュアレもいないし」

 

 悲しそうに言うオオガミ。

 しかし、すぐににやりと笑うと、

 

「でもまぁ、それでも勝てないのは許せないよね。とりあえず一回狩るしかないよね」

「……なんか怖いですけど、その方がマスターさんらしいです。それじゃあ、花札。交換しましょう」

「うん。よろしくね」

 

 そう言って、花札を取り出すオオガミ。

 パールはそれを受け取り、

 

「それでは、徳川を押さえますね」

「うん。流石に全部抑えても勝てないなら、投げるからね。やれるだけはやるよ。うん。本気でね」

 

 徳川化を抑え込み、カーマに対して有利な条件になるオオガミ。

 どことなく悔しそうではあるが、しかし、勝てなければ始まらない。なので、今回はただ勝つのみ。完全勝利は次の機会と決める。

 

「さて、それじゃあ行きますか。絶対倒してカルデアに帰る。んで、全部終わった後にもう一回だ。必ず勝つよ」

「えぇ、そうですね。絶対に勝ちますよ、マスターさん」

 

 そう言って、不敵に笑いながらカーマ。あるいはマーラに向かっていくオオガミとパール。

 無限の獣とはいえど、倒せるのならば問題ない。そう言えるのは、乗り越えてきた壁ゆえか。それとも、カルデアには同じくらいの恐ろしいサーヴァントたちがいるからなのか。

 どちらにせよ、オオガミ達は怯むことなく突き進んでいくのだった。




 無茶苦茶強かったので泣きながら花札全部使って弱体化させてメルトで殴り倒しました。めちゃくちゃ悔しい……再戦しなきゃ……


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無事に帰ってきましたよ~(じゃあマスター? 君はこっちだよ)

「ただいま~」

「あら、無事に帰って来たんですね。どうでした? 私。強かったでしょう?」

「……カーマがいるじゃないですか!! なんでですかマスターさん!!」

 

 帰って来るなり出迎えたカーマを見て、オオガミの襟をつかみ前後に振るパール。

 揺られているオオガミは視線を逸らしつつ、

 

「いやぁ……ちょっと分かんないですねぇ……ただ、マシュに殺されたくはないんで逃げるとしますね~……」

「そうだね。確かにマシュ嬢は怒っていたよ。だから、今マスターを逃がすわけにはいかないんだ」

「……風紀委員長お久しぶりですぅ……前よりも強くなってません? 具体的には宝具レベルが一つ上がってません?」

「心当たり、あるだろう? 石が無くなっていたのはさっき確認してきたし」

「……さよならパールさん。強く生きて……」

「マスターさーん!?」

 

 エルキドゥに連れ去られるオオガミ。

 手を伸ばしつつも連れ去るのを本気で阻止しようとしていない辺り、オオガミに非がある事は分かっているらしい。

 カーマはそんな三人を見て、楽しそうにオオガミについて行く。

 

 

 * * *

 

 

「……気付いたら、サーヴァントが増えてるみたいね」

「そうですねぇ……また私たちと似たような顔のサーヴァントですよ……しかも愛の神ですって。私に喧嘩売ってるんでしょうか。BBちゃん、不満です」

「いや、お主は混沌じゃろ。愛の要素どこじゃ」

「ひ、酷い言われよう……泣いちゃいますよ?」

「……まぁ、そっちもだけど、あっちの黒い獣みたいなサーヴァントよ」

 

 そう言って視線を向けると、そこにいるのはアタランテオルタ。

 昼頃にエルキドゥが強化されたのと同じくらいの時間帯にやってきたサーヴァントだった。

 

「はぁ……またマシュが怒るわよ? どうするの?」

「まぁマスターなら大丈夫じゃろ。是非も無いよねっ!」

「センパイですし、エルキドゥさんに見つからなければ何とかなるんじゃないですか? 無駄にスペックは高いですし」

「……で、そのエルキドゥは?」

「ん~……儂は知らんよ」

 

 そう言っていると、食堂の扉が開いてメルトが入ってくると、その後ろをエルキドゥに引きずられているオオガミが通る。

 エウリュアレ達はそれを見て顔を見合わすと、

 

「……どこに行くと思う?」

「「監禁部屋」」

「じゃ、ちょっと見に行きましょうか」

「儂も行こう」

「私も行きますね」

 

 そう言って、ついでとばかりに入って来たばかりのメルトを捕まえて、三人は連れて行かれるオオガミを追いかけるのだった。




 不思議ですよねぇ……概念礼装狙ったらエルキドゥとアタランテオルタですよ……さて、アタランテオルタの略称どうしよう。このままだと長いから文字数が……

 あ、完全体カーマは現状じゃ勝ち目ないんで放置です。知らんよあんなやつ。


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珍しいこともあるのぅ(面白いので動画で撮っておきましょう)

「ふむ。珍しいこともあるもんじゃな」

「そうですねぇ……まぁ、自爆らしいですし、映像記録だけ残しておいてあげるとします」

 

 そう言ってビデオカメラを構えるBBと、ニヤニヤと笑うノッブの視線の先には、キャットに見張られてクッキーを作らされているエウリュアレがいた。

 そして、当然のように隣で手伝っているのはオオガミ。キャットが見張っているだけなのは、主にそれが理由だった。

 

「……なんでこんな目に遭っているのかしら」

「自業自得としか……というか、よく大人しく従ったね」

「そんなわけないでしょ。抵抗したわよ。でも、キャットだけならまだしも、エルキドゥは無理よ。そんな強力なの呼ばれたら私じゃ無理」

「あ~……確かにそれは無理だね……」

「えぇ。だから、仕方なくよ。ちなみに、貴方がそこにいるのは私が出した条件だからよ。諦めて手伝いなさい」

「なんとなくそんな気はしてた。というか、あそこの二人は巻き込まなくて良かったの?」

「あっちはまた別の報復をするわ。最近全くイタズラをしてないもの。盛大にやってやるわ」

「手加減……は、しないよね。うん。分かってる」

 

 ムッとした表情で、既に怒っていることは分かりきっていた。

 なので、オオガミは特に止めることはなく、

 

「まぁ、死なない程度には手加減してあげてよ」

「殺したらイタズラじゃないわよ……でも、泣かすくらいのはやって見せるわ」

「……あの二人が泣くくらいの事かぁ……ふむ。ちょっと興味出てきた」

 

 果たして何をするつもりなのかとちょっと楽しみになってきたオオガミ。

 ただ、流石にイタズラの内容は教えてくれないだろうと思い、決行時間だけ聞いておこうとする。

 

「何時やるの?」

「ん~……決めてはあるけど、教えないわ。ただ、何をしたかはすぐに分かるんじゃないかしら。あぁ、でも、あんまり効果無いかも。どうしよう、泣かせることが出来るかしら」

「……まぁ、エウリュアレが楽しそうでよかったよ」

 

 そう言って、クッキー生地を伸ばしているエウリュアレの隣にクッキーの型を用意するオオガミ。

 なんだかんだ文句を言いつつも、ほとんどはエウリュアレが作り、オオガミは道具を用意したり仕上がりを確認したりするだけだった。

 

「不思議ね。なんで私がこんなことをしているのかしら」

「そりゃ、イベント開始前にやらかしちゃったからじゃないかな」

「私、そんな悪いことしたかしら……」

「そんな悪いことでもないような気がするけどねぇ……まぁ、次からはお菓子作りの手伝いを『出来ない』で断れなくなったくらいじゃない?」

「……! まさか、断れなくなるようにそうしたのかしら……!?」

「キャットは絶対そんなこと考えてないと思うよ……」

 

 衝撃の事実かの如く目を見開いてるエウリュアレに、オオガミはなんとも言えない表情になるのだった。




 いつかの約束は守られるのだった……

 なお、エウリュアレの報復処置は滞りなく行われる模様。


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高難易度と相性が悪いみたい(多数相手には不利だから)

「……私じゃ、無理みたいね」

「まぁ、相性的にねぇ。頑張ればいけると思うけど、そこまでやる気は無いかな」

 

 若干大奥化しているオオガミのマイルームで、不満そうにするメルトに、困ったように笑うオオガミ。

 

「高難易度はキアラとカーマが最適みたいだもの。単体宝具には辛い所よね」

「貴女はさりげなく後ろにいたじゃない……」

「不思議よね……私、どう見ても有利になる要素が無いのだけど」

「アルターエゴに防御有利は取れるから……」

「……私はそんなに強くはないわよ。というか、宝具も有利全然取れないのだけど。女性しかいないもの」

 

 そう言って、複雑そうな顔をするエウリュアレ。

 メルトも不満そうな顔で、

 

「単体宝具が悪いっていうの?」

「いや、そう言うわけじゃないけど、相性の問題だから……全体宝具が相性がいいって言うよりも、キアラの全体強化解除が強いって話なんだけど……」

「あいつに負けるのはとっても不満なのだけど。納得いかないわ」

「別に負けてるわけじゃないと思うけど……適材適所。そんなに気にすることでもないと思うわ」

「そうね。でも、理解していても嫌なものは嫌よ」

「でもほら、メルトは代わりにキアラに倒せない敵を倒せるし。というか、単純な攻撃力だけならメルトの方が遥かに強いよ」

「そ、そう……それで、再戦は何時かしら」

「いや、だからやらないって」

 

 聞いているようで聞いていないメルトに、オオガミは苦笑いをする。

 すると、戸が勢いよく開き、

 

「ちょっと、どういうことですか! パールヴァティーへの嫌がらせの為に色々しようとしていたら、同じような顔が他にも――――って、ここにもいるんですか!?」

「……何この失礼なの。蹴って良いかしら」

「時々メルトがめちゃくちゃ暴力的になる……シミュレーションルーム行く?」

「最初からこんなじゃなかったかしら……」

 

 カーマの言葉を聞くなり素早く蹴りの体勢に入るメルトを止めながら、オオガミはカーマに続きを促す。

 

「えっと、何の用?」

「あぁ、そうでした。このままだと私によるパールヴァティーへの嫌がらせの効果が半減しちゃうって事です。似たような顔がたくさんいたら効果が分散しちゃうじゃないですか」

「いや……どうかなぁ……パールさんじゃない誰かに一点集中しそうな雰囲気あるけど……」

「まぁ、そうよね。その顔なら、BBがまず疑われた後に容赦なく粛清されるわ。見た目と雰囲気がそっくりだもの」

「結局パールヴァティーにはダメージないって事じゃないですか。くっ……なんでこううまくいかないんですか……!!」

「ん~……まぁ、BBがいつも暴れまわってるからなぁ……パールさんに被害が出るのだとしたら、たぶん既に出てると思うんだよねぇ……」

「……ちょっと今パールがどう思われてるか聞いて来ます。ただでさえも嫌いですけど、これで好感度が高かったらさらに嫌いになりますけど」

「あ~……うん。ちょっと気になってきた。頑張って」

 

 パールへの嫌がらせをするために、そもそもパールへの印象がどうなのかを調査しに行くカーマを、オオガミは笑顔で送り出すのだった。




 推しキャラだからって、そのキャラで何でも攻略しないといけないわけじゃないと思うんだ……


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予想より人がいるんですけど(勝手にマイルームを改造しないでくれるかな)

「ちょっと……なんでその人がいるんですか。メルトとエウリュアレさんだけだと思ってたんですけど」

「BB……色々突っ込みたいことがあるけど、まずはなんで畳の下から出てきたのかを聞いておこう」

 

 マイルームにて、突然持ち上がった畳から顔だけ出してこちらを睨んでいるBBに対して、オオガミは首をかしげつつ聞く。

 

「あれ、センパイ聞いてないんでしたっけ。例のアレの試運転を兼ねてここと工房を繋げる計画があったんですよ。あ、ちなみにこれは出る専用なのでここからは入れないですよ」

「逃走経路にここを巻き込むな……!」

「この部屋、ただでさえも魔境だったのに、さらにおかしくなっていくわね」

「そうねぇ……最初はもっと大人しかったのにね。不思議だわ」

「ここ、本当に大丈夫なんですか……? 逆召喚した私が言うのもなんですが、奇跡的に成り立ってますよね、ここ……」

 

 遠い目をするメルトとエウリュアレに、不安そうな顔になるカーマ。

 ただ、マイルームが魔境と言うのは今に始まったことではないだろう。

 

「それで、BBは何をしに来たの?」

「あぁ、そうですそうです。最近アビーさんが工房に入り浸ってノッブと遊んでるせいで作業が進まないので連れてって貰えません?」

「あ~……確かにそれは問題だね。アビーの教育上良くないや」

「ちょっと行って連れてくるわね」

「うん、お願い」

 

 すぐに部屋を出ていくエウリュアレを見送る四人。

 BBは不思議そうに、

 

「エウリュアレさんで良かったんです? そこの二人は無理だとしても、センパイが行った方が早いんじゃ?」

「いやいや、エウリュアレの方が良いよ。アビーの説得なら、基本エウリュアレがよくやってるし、得意だろうから」

「そ、そうですか……まぁ、センパイがそれで良いと言うなら良いんですけど……あ、とりあえず、試運転は成功なので、機体の耐久テストをしておきますね。脆かったら意味ないので」

「最終的には倉庫に実装予定だしねぇ……アヴィケブロン先生のゴーレム以上の耐久はないとね」

「ゴーレムに負けてたまりますか! 絶対勝ちますからね!」

 

 そう言って闘志を燃やすBBを見ながら、メルトは、

 

「でも、たぶん最後の最後で盛大にやらかしてしまうんじゃないかしら。BBならあり得るわ」

「あ~……緻密に計画してもちょっとした目測の誤りで台無しにするタイプですか……残念な人ですね」

 

 メルトの発言に同意するカーマ。

 それは特大のブーメランにも思えるが、幸いなのか、ここにそれを指摘する者はいないのだった。




 既にマイルームに入り浸っているカーマ。
 でもきっとそのうち忘れられる……


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勝てば良かろうなのだぁ!(普段使わないし良いんじゃないの?)

「令呪三画を生け贄にすれば負けることなんてないし……!」

「そうねぇ……最後の方はほぼ八つ当たりみたいだったもの。普通本当に三画も消費するかしら……」

「……完勝できなかったことだけが心残りね。令呪無しでも勝てないかしら……」

 

 死にかけているオオガミと、呆れたように言うエウリュアレ。不服そうなメルトの三人は、食堂に集まっていた。

 そんな三人のもとにやってくるアビゲイルは、

 

「マスターさん。最近私、何もしていない気がするのだけど、良いの?」

「あ~……そういえば、最近アビーをあんまり組み込んでないなぁ……でも、今回はアルターエゴがメインでいるからダメかな」

「そう……なら仕方ないわ……」

「……まぁ、機会があったら組むよ。ただ、今回は無理かな」

「えぇ。そのときはちゃんと呼んでね、マスター」

 

 そう言って約束をするオオガミ。

 それを見ていたエウリュアレ達は、

 

「ああやって行きたいって言えている間は良いのよねぇ……」

「そうねぇ……クラス相性で休めるのなら良いかもしれないわね。まぁ、私はその程度で休みはしないのだけど」

「……休めないんじゃなくて?」

「休む理由はないもの。だって、最後には勝つもの」

「そう……意外と前向きなのね。私と真逆みたいだわ」

「そうみたいね。でも、別に貴女の事は嫌いじゃないわ。私よりもマスターといたのだもの。私の知らないどんなことを知っているのか興味があるもの」

 

 そう言って笑うメルトに、エウリュアレも釣られて笑う。

 そんな二人を見ていたオオガミとアビーは、

 

「……なんか、あの二人、楽しそうだよね。時々妙な疎外感があるんだ……」

「でもマスター。あの二人はマスターの事で意気投合しているだけだと思うわ。だから、気にしない方が良いと思うの」

「なんで的確な助言をアビーから貰ってるんだろうね……」

「女の子には秘密がいっぱいなのよ、マスター。だから、マスターが分からないことを分かっていても不思議じゃないわ」

「そういうものかなぁ……」

 

 なんとなく言いくるめられているように感じるオオガミ。

 そんな四人のもとへやって来たのは、

 

「久し振りなのだわ、マスター……って、なんだか前よりも周りにいるサーヴァントが増えている気がするのだわ……!」

「あ、エレちゃん。おひさ~」

「久し振りなのにそんな砕けた口調なのね」

「なんか、いつも以上に軽いわ。どうしたのかしら、マスター」

「……まぁ、楽しそうで何よりだわ」

 

 そう言って、エレシュキガルを含んだ五人でしばらく談笑をするのだった。




 ちなみに、何気にメンバーが聖杯積みレベル100オンリーの会合ですよ。


 ゲージMAXカーマは強敵だった……でも令呪があれば勝てない訳じゃない……
 攻略動画見ても宝具レベルが足りないので苦い顔をしつつもとりあえず突撃して見たら案外なんとかなっちゃって最後のゲージを割る寸前で全滅したから勢いに任せて令呪切りました。勝ったので良し。


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周回終了お疲れ様!(今回のイベントのMVPはキアラさんかな)

「ふぅ……そろそろ周回も終わりか。今回は早いな」

「お疲れ様です孔明先生。次回もあるよ」

「おかわりは要らん。スカディやマーリンを連れて行け。私は部屋に帰らせてもらう」

 

 そう言って自室に帰っていく孔明。

 オオガミはそれを見送った後、

 

「まぁ、今回のMVPはキアラさんだよね。最後まで優秀だったし」

「最後は周回にまで駆り出されるとは思いませんでした。えぇ。マスターがそう望むのでしたら、いくらでも戦いますけどね」

「すっごい不満なのだけど。なんでこいつと一緒なのよ。本当に、最初から最後まで一緒だったのだけど」

「そりゃ、趣味枠だったし。仕方ないって」

「尚更納得いかないのだけど。私がこいつに劣ってるっていうの?」

「いや、そう言う意味じゃなくって、特攻の問題だよ。雑魚をまとめて倒すのはキアラさんの方が有利だし。逆にカーマの初戦はメルトのおかげだろうし」

「……ならいいわ。頼っているならいいのよ」

「むしろ最近頼ってない時があったかなぁ……」

 

 首を傾げるオオガミ。

 メルトはどこか得意げだが、キアラはどことなく不満そうで、

 

「なにやら私が負けているような感じがするのですが、納得いきません。私もそれなりには戦っていたのですが」

「……まぁ、キアラさんはキアラさんで結構有能だったしね。うん。これ以上はたぶんこっちが殺される。撤退撤退」

「逃がさないわ」

「今回ばかりは逃がしませんよ」

「これは死んだなぁ……」

 

 そう言って、捕まったまま遠い目をするオオガミだった。

 

 

 * * *

 

 

「……またマスターが馬鹿な事をして捕まった気がするわ」

「お主のその対マスター用レーダーは何なんじゃ……」

「あ、本当です。管制室でメルトとキアラに捕まって迫られてますね。死んじゃうんじゃないですか、これ?」

「えっと、門で回収してきた方が良いのかしら」

 

 工房でゲームをして遊んでいた四人は、エウリュアレの一言でガタガタと動き出す。

 

「別に、回収しないでいいわよ。そのうちボロボロで戻って来るもの。ただ、部屋には戻っておくわ。たぶん戻ったらそのまま寝そうだもの」

「まるで嫁じゃな……」

「今更のような気もしますけどねぇ……」

「むぅ……マスターさんを理解している感が羨ましいわ」

「アレはエウリュアレだけじゃしなぁ……あと可能性があるなら、メルトくらいじゃろ」

「メルトもあれを習得するんですかぁ……? ちょっと想像できないんですけど」

「出来ないんじゃなくてしないだけじゃろお主の場合」

「まぁ、そうですけど。メルトがあんなの覚えるとか、考えたくないです」

 

 そう言いながら、BBが管制室の状況をモニターで見つつ、ゲームを再開するのだった。




 リンゴ無しで交換アイテム全部交換できる優しさ……孔明先生もこれにはにっこり。


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日常
何したんすかマスター?(見て察してくださいロビンさん)


「……なにやってんだマスター」

「あ、ロビンさん。見ての通り吊られてるよ。いつも通りじゃないのは廊下に吊られてるってことじゃないかな」

 

 オオガミの言うように、ここは廊下で、オオガミは吊られている。

 また、その隣にこれ見よがしと置かれている黒い油性ペンから、どういう刑に処されているのかは分かった。

 

「……で、罪状はなんですかい。内容によっては助けるけど」

「エウリュアレが不機嫌だったのでこうなった」

「なるほど。それは助けられねぇわ。じゃあなマスター。ガキどもにはここに来るように伝えておくさ」

「一番ダメなやつだよね!? 酷くない!?」

 

 そう言って、オオガミの悲鳴をスルーしてひらひらと手を振って去っていくロビン。

 エウリュアレと問題児組には関わってはならない。それは暗黙の了解なのだ。

 そんなこんなで見捨てられたオオガミは、

 

「……くぅ、逃げられたか……まぁ、呼ばれても致命的ではないけども……エレちゃんとかは過剰に反応しそうだから見つかったら不味いなぁ……はたしてエウリュアレはいつ帰ってくるか……出来るだけ早く帰ってきてくれぇ~……」

 

 と、呟きつつ左右に揺れる。

 この状態を作り上げたエウリュアレは、作り上げたと同時にスタスタとどこかへ歩いていってしまって、未だに帰って来ていない。

 すると、

 

「……何をやってるんですかマスター。いえ、何をしたんですかマスター」

「あ、やらかしたのが前提に来るのね。うん。間違ってないんだろうけど、悲しいなぁ……」

 

 通りかかったアナから冷ややかな視線をもらい、若干涙目になるオオガミ。

 

「今回ばかりはなにかやった覚えはないんだけど。むしろ、修羅場を抜けたら拷問部屋にたどり着いたくらい意味不明なんだけど。あ、いや、今の例えだと不思議と筋が通っている気がする。うぅむ、何て説明するべきか」

「なんとなく分かりました。大方姉様関連なのでしょう。なので、手出しは出来ませんね……あ、落書きはしておきます」

「むしろ落書きをやめて!?」

 

 悲鳴をあげるオオガミに、しかしてアナは気にすることなく左右の頬に三本ずつ線を引き、

 

「まぁ、これくらいで良いでしょう。姉様も許してくれるはずです」

 

 と言って、ペンを置く。

 まるで猫の髭のように引かれた黒い線に、アナはクスリと笑い、

 

「マスターへのイタズラ第一号は私と言うことで。これで後から来た人には意図が分かりやすくなったでしょうし、姉様たちも怒らないはずです。では、これで失礼しますね」

 

 そう言って、去っていくアナ。

 オオガミはそれを呆然と見送ったあと、ハッ! と我に帰ると、

 

「……あれ、つまり状況を悪化させたってこと? 酷くない!? 悪魔か!?」

 

 しかし、その犯人は既におらず、代わりにパタパタと複数の小さな足音が響いてくるのだった。




 ロビンさんとアナの策略により顔が酷いことになるのが確定したオオガミくん。
 なお、当然のごとくそこには監視カメラがついている模様。


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一緒にケーキを食べましょう?(他の人を誘ったらどうですか)

「カーマさんカーマさん。ケーキを一緒に食べましょう?」

「……他の人を誘ったらどうですか。私は私で持ってきていますし」

 

 食堂で、一人でいたカーマに話しかけるアビゲイル。

 だが、冷たい態度で返されたアビゲイルは、悲しそうな雰囲気を出しながら、

 

「そうよね……私みたいな悪い子と一緒に食べてくれないわよね……いいわ。一人で食べるもの……」

「……別に、ダメとは言っていないです。お好きにどうぞ」

「冷たいのね……やっぱり悪い子とは関わりたくないのよね……」

 

 わざとらしく、しくしくとなくアビゲイル。

 それによって周囲からカーマへ刺さる視線が刺々しいものへと変わっていく。

 さては計画的犯行なのではと思うが、対策があるわけでもないので仕方ないとばかりにため息を吐き、

 

「あ~はいはい分かりましたよ。一緒に食べましょう。これで良いんですか?」

「ありがとうカーマさん!」

 

 そう言って、目の前の席に座るアビゲイル。

 表情が一気に変わったので、やはり仕組まれていたかと思うカーマ。

 とはいっても、はっきりとした実害はない。

 

「それで、突然何の用なんですか。わざわざ私と一緒に食べたいとか、それだけじゃないんでしょう?」

「うん? 一緒にケーキを食べたかっただけとしか言いようがないのだけど……」

「まさかそれだけのために泣き落としまでしたって訳じゃないでしょう? あと、次からは止めてください。私が周りから殺されそうなので」

「皆そんなことはしないわ。素直にエルキドゥさんに報告するだけだもの」

「……なんでしょう、とっても相性が悪い気がするんですが、何者なんですかそのサーヴァントは」

「ん~……マスター達に聞いた方が良いと思うわ。文字通り、身をもって味わったらしいもの。詳しいに決まっているわ」

「……そうですか。では、今度そうするとします」

 

 そう言いつつ、ケーキを一口食べるカーマ。

 目の前でとても美味しそうにケーキを食べるアビゲイルに、カーマは困ったように、

 

「……本当に食べに来ただけなんですか? もっとこう、何かあるとかではなく」

「だから、最初から言っているじゃない。一緒にケーキを食べたかっただけ。それ以上でもそれ以下でもないわ。でも、一つだけあるとしたら、カーマさんの取ってきたケーキも食べたいわ」

「……なんだかあまり面白くないです。もっとドロドロしたのがあっても良いと思うんですけど」

「そういうのはないわ。ただ、カーマさんとは一緒に遊んでみたいわ。BBさんみたいにイタズラが得意そうだし」

「……仕方ないですね。今度一回だけですよ。良いですか」

「えぇ、分かったわ!」

 

 そう言って、二人は悪巧みを始めるのだった。




 アビーの悪い子レベルが上がっていく……


 1600万DL記念かぁ……と思って情報確認して、めちゃくちゃ石が手に入る事が分かったのでとりあえず30個手に入れて回したらラーマ来ました。なんですか。インドピックアップですか。やったぜ。


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今日はエウリュアレはいないのね(いつも一緒なわけじゃないってば)

「あら、マスターじゃない。今日はエウリュアレはいないのね」

「別にいつも一緒にいる訳じゃないでしょ……」

 

 休憩室でぼーっとしていたところをエリザベートに声をかけられるオオガミ。

 返された言葉にエリザベートは首をかしげつつ、

 

「そうだったかしら? まぁいいわ。それはともかくとして、提案があるの」

「……嫌な予感しかしないけど、何?」

「次はインドに入るんでしょ? だから、皆の士気を上げるために、ライブをしようと思うわ。だから、その準備をしなさい。良いわね?」

 

 それを聞いた瞬間、懐から小さな機械を取り出し、ボタンを押して机に置くオオガミ。

 そして、改めてエリザベートに向き直り、

 

「……ゲストは?」

「そこはマスターに任せるわ。だってほら、アタシってば、最高のアイドルだし? どこだろうと誰が相手だろうと目立っちゃうんだから、自分から引き立て役を指名するだなんて、そんな残酷なことは出来ないわ」

「そ、そう……じゃあ、色々と設定しておくよ。レイシフトは使えないから、シミュレーションかここか……」

「あ、シミュレーションが良いわ。だって、この部屋だと私の歌声に耐えられないんだもの。それになんと言っても狭い! これが一番ダメね。だって観客が少なくなっちゃうもの!」

「ふむふむ……じゃあ、シミュレーションルームで考えてみるよ」

「えぇ、任せたわ! 決まったらすぐに連絡しなさいよ!」

 

 そう言って去っていくエリザベート。

 それを見送ったオオガミは、機械――――通信機を手に取り耳に当てると、

 

「で、どうする?」

『どうするもこうするも、センパイが約束したせいでやらざるを得ないじゃないですか』

『断るという選択肢がないのがお主らしいんじゃけど、まぁ、今回に限っては恨まれても是非もないよね!』

「反論できねぇ……BB。この前の機材は?」

『あ~……埃被ってるかもですねぇ……確認してきます』

『あ、確かアレの後ろじゃ』

『どこですか……あぁ、これですか』

 

 向こうから物を動かす音が聞こえてきて、しばらくすると収まる。

 

「……あった?」

『はいは~い。ありましたよ~。流石BBちゃん。これはバッチリ動きそうです!』

『確認せんで良い訳ないじゃろ。メンテナンスするぞ。こっちに寄越せ』

『じゃあ作業エリアに置いておきますね。ちゃんと調べておいてくださいね~』

『当たり前じゃ。なんせ、絶対儂らも駆り出されるからな。エルキドゥもそうなんじゃけど、最近はマスターからも逃げられる気がしないんじゃが』

「そこまで人間辞めてないって。とりあえず、対策をしにそっちに行くよ」

『あい分かった。待っとるぞ~』

『早めに来てくださいね~』

 

 そう言って、通信が切れる。

 オオガミは悩ましそうな顔をしながら、工房へと向かうのだった。




 ……帝都ですってね。4章まだですかそうですか……


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ぐだぐだ帝都聖杯奇譚-極東魔人戦線1945-
探偵事務所に帰ってきたよ(前よりも静かだけどね)


「お久しぶりですね。この探偵事務所」

「本当にね。ただ、前よりは静かだね」

 

 探偵事務所でくつろぐオオガミ。

 今回はこの事務所の持ち主たる龍馬と、エウリュアレ、メルトの三人だけだ。

 

「まぁ、BB辺りが覗き見してるだろうから、困ったら声をかければなんとかなるって」

「なんだか、どんどんスペック上がっていってるわね、あそこ。そろそろエルキドゥも対処できないんじゃない?」

「いや、あそこは大体の技術に神性を織り混ぜてるからエルキドゥに対抗出来ないんじゃないかな」

「なんでダメなのがわかっててやるのかしら……さてはバカなのかしら」

「エルキドゥ単体対策はあるっぽいけどねぇ」

 

 そんなことをエウリュアレと話ながら、わざわざカルデアから持ってきた煎餅をバリバリと食べるオオガミ。

 すると、今まで静かにしていたメルトが、

 

「それで、今回はどれくらいやる気なの?」

「ん~……リンゴ最小限で行く感じで。あんまり消費したくないからね」

「そう……分かったわ。じゃあ、そんなに周回はしないのね」

「その予定。実際にどうなるかは分からないけどね」

 

 そう言って、お茶を飲むオオガミ。

 メルトは目を細めつつ、

 

「それにしても、負傷しても結構早く回復するのね。脇腹を撃ち抜かれたんじゃなかったかしら」

「いや、ほとんど回復してないよ。まぁ、普通にしてれば大丈夫ってくらいかな。しぶとく生き残るよ」

「そう……ならいいわ。死なないならそれで」

「そりゃ、死にはしないけども。とにかく、今回はのんびりやっていくよ」

「……私、それを聞いて本当だった経験あまりないのだけど」

 

 エウリュアレの一言に、オオガミが凍り付く。

 事実、のんびりやると言って本当にのんびりだったのはほとんどないため、反論のしようがなかった。

 

「まぁ、確かにボックス系イベントと比べたら格段にやる気が違うけど、はたしてそこで考えて良いものかしら」

「大奥は結局果実を使わなかったし、進行も遅かったから、そこを基準に考えれば良いかしら」

「確かに、あの速度ならのんびりって言えるわね」

「……ハードル高くない?」

「そうかしら?」

「礼装が揃ってないものね。えぇ、頑張りなさい」

 

 ニコニコと笑いながら無茶ぶりをしてくるエウリュアレと、自分の言っていることの恐ろしさに気づいていないメルトの視線に、オオガミは頬を引きつらせるのだった。

 そんな三人を見ていたお竜さんは、

 

「おいリョーマ。あいつらいつもと全く変わらないぞ。お竜さんとリョーマを忘れてないか?」

「もしそうだったとしても、僕はあの輪の中に入る勇気はないかな。場合によっては殺されそうだし……」

 

 そう言って、龍馬はお竜さんをなだめながら次の出撃まで待機するのだった。




 去年どういう風に過ごしてたかを見返して、とんでもねぇ状況だったのを確認した私。今年は静かだ……


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マスター、茶々の事忘れてない?(龍馬ぁ! どこじゃぁ!!)

「龍馬ぁぁぁ!! どこじゃぁぁぁぁ!」

「うわっ、なんかヤバイの来たよ。どうしようゴージャス!」

「ふむ……ゴージャス……うむ。やはり響きがよい。今はオフ故、その呼称を許そう。そして、貴様の問いに対してだが、あのような輩はBBめに投げておけ。もしくは貴様の伯母だ」

「なるほど……面倒だしいっか! ゴージャス! やっつけちゃって!」

 

 休憩室でソファーに座って対戦ゲームをして遊んでいた茶々とギルガメッシュ。

 そこに刀を振りながら飛び込んできた以蔵を見て、キリッとした表情でギルガメッシュに命令する茶々。

 それにギルガメッシュは表情を変えるでもなく、

 

「たわけ。今はオフだと言っておろう。そのような雑事、他の者にやらせておけ」

「う~ん……じゃあ、あれがこっちに来たら守ってよね」

「善処しよう」

 

 そう言って、何事もなかったかのようにゲームを再開する二人。

 そして、しばらくすると以蔵は再び叫びながら部屋を出ていった。

 

「……汝等、全く動じないな……」

「あ、バラキーいたの?」

 

 ソファーの陰から出てきたバラキーが顔を見せると同時に驚く茶々。

 だが、ギルガメッシュは大して驚くでもなく、

 

「初めからいたではないか。奴が入ってくると同時に隠れていたがな」

「あ、あまり適当なことを言うな! 吾だって相手をしたくない輩はいるからな!?」

「えぇ~? 茶々、バラキーが面と向かって歯向かってるの、あんまり見ないんだけど。大丈夫?」

「だ、大丈夫だ……吾、ちゃんと鬼だし……」

 

 目が泳いでいるバラキーに、見ている側である茶々の方が不安になってきていた。

 すると、ギルガメッシュが、

 

「我は少し疲れた。おい貴様。代わりにやっておけ」

「う、む……? おい待て。吾に何をしろと……?」

 

 コントローラーを投げ渡され、首をかしげるバラキーと場所を入れ替わるギルガメッシュ。

 

「よぅし、次はバラキーをタコ殴りにすれば良いんだね! 任せて! ゴージャスの意志は受け継いだ!」

「な、なんだかよく分からぬが、なんとなくバカにされているのは分かった。吾は受けて立つぞ」

「ふふん! 負けないからね!」

「あまり油断していると殺られるぞ。何せ、あの引きこもりの部屋でひたすらに遊んでいたからな」

「えっ」

 

 去り際にギルガメッシュが言い残していったセリフに、頬を引きつらせる茶々。

 隣に座って、さも初見ですと言わんがばかりの表情をしていたバラキーは、試合開始と同時に悪巧みに成功した子供のようにニヤリと笑い、

 

「真なる鬼の力、見せてやろう!」

「なんですとぉ~!?」

 

 バラキーの想像を絶する強さに、茶々に焦りが出てくるのは時間の問題だった。




 忘れ去られた以蔵さん……是非もなし……


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これ、終わるのかしら?(さっさと果実を用意しないとダメだわ)

「……これ、終わるの?」

「無理じゃない?」

「さっさと果実を用意しなさい。タイトル通りのぐだぐだは技術部だけで十分よ」

 

 そう言ってオオガミを急かすエウリュアレ。

 持ってきたお菓子を初日に全部食べたのが原因だろうか。とっても不機嫌だった。

 

「えっと、見回りしてくるけど、大丈夫かい?」

「あ、じゃあこっちはこっちで出掛けますよ~」

「そう? なら、戸締まりをしておこうか。お竜さん。お願いできる?」

「リョーマはお竜さん使いが荒いな。だが、お竜さんはやるぞ。良い女だからな」

「はいはい。よろしく頼むよ」

「合点」

 

 そう言って、テキパキと戸締まりをするお竜さんに、オオガミは、

 

「お竜さん並に話を聞いてくれたらなぁ……」

「ノッブには無理でしょ」

「BBに出来るわけ無いわ」

「……なぜ相手が技術部だと思われているのか」

 

 日頃の行いのせいだろう。と言ってくれる人はこの場にいなかった。

 全員は戸締まりが終わったことを確認して、帝都に出る。

 

「じゃあ、僕たちは向こうに行くからね」

「こっちはあっちに用があるので真逆ですね。じゃあまた後で」

「あぁ。気を付けてねマスター」

「あんまりリョーマに心配させるんじゃないぞ人間」

 

 そう言って、オオガミ達は龍馬たちと別れると、

 

「それじゃ、お菓子を買いに行くよ。マシュから支給されてるお小遣いでどれだけ買えるか分かんないけどね」

「何時からマシュに財布を握られてたのよ」

「情けないわね。盛大に使い切るくらいの根性を見せなさいよ」

「バカっ、マシュに殺されちゃうでしょっ」

「……貴女にとってマシュってなんなのかしら」

「頼れるけど時々かなり怖い後輩」

「なるほどね。まぁ良いわ。早くお店に行きましょう」

「話題がコロコロ入れ替わるね……って、メルト? 行かないの?」

 

 動かないメルトに、声をかけるオオガミ。

 メルトは我に返ったような顔で、

 

「え、えぇ、そうね。早く行きましょう。物騒なのは構わないけど、それで貴方が殺られたら元も子もないわ。買い物をするだけなのだし、それほど危険は無いでしょうけど」

「まぁ、店に入って突然ノッブに撃ち抜かれるとかしない限り大丈夫じゃない?」

「なんで貴方はそういつも自分から不穏なことを言っていくのかしら。死にたいのかしら」

「いや、死にたくはないけども。もし出てきても守ってくれるって思ってるし」

「バカ。そもそも守られなくても大丈夫なように立ち回りなさいな」

「えぇ、そうよ。私たちがいつでもいるって訳じゃないもの」

「はいはい。じゃ、気を付けて行きますよ~」

 

 そう言って、オオガミ達はお菓子を求めて帝都をさまようのだった。




 全然終わらない。これ、ライト版じゃない……? 消費AP多くない……?


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あんまり覗き見とか面白くないのぅ(じゃあお菓子とか持って来てくださいよ)

「のぅBB……これ、何やっとるんじゃ?」

「何って……普通にお菓子を食べてるんじゃないですか?」

 

 カルデアのシステムを利用して監視しているBB達。緊急時にはアビゲイルを呼び出して人員を送り込むという名目があるわけだが、当然、技術部が勝手にやっていることで、管制室のメンバーは誰一人として知らない。

 

「むぅ……なんじゃ……面白いもんでも見れるかと思ったら、そうでもなさそうじゃなぁ……少し席を外すが、なにかあったら呼ぶんじゃぞ」

「えぇ、それはもちろん。食事中でもお風呂中でも容赦なく呼び出すのでご安心を」

「うむ。全く安心できないが安心じゃな。では行ってくる」

「は~い。あ、お菓子を取りに行くならBBちゃんの分もお願いしますね~」

 

 そう言うBBに見送られ、ノッブは部屋を出るのだった。

 

 

 * * *

 

 

「しかし、面白そうじゃと思って作ってみたは良いが……案外面白くはなかったな。BBは熱中してるようじゃけど、儂は別に興味もなかったしなぁ……」

 

 覗き見用の機材を作ったは良いものの、覗き見よりも一緒に暴れたいノッブからすると、そこまで魅力的でもなかった。

 なので、とりあえず気晴らしに外へ出たものの、行くところと言えば食堂くらいしかなかった。

 

「ふむ……別にサーヴァントだから要らぬと言えば要らぬが……握り飯の一つでも用意しておくべきじゃったか。旨いものの有無はモチベーションに関わるし、厨房にいるやつに適当に作らせるか」

 

 そんなことを良いながら、食堂に向かうノッブ。すると、

 

「あら?」

「むっ……お主は……」

 

 向かってくるカーマに気付くノッブ。

 カーマは首をかしげながら、

 

「貴女は確か……第六天魔王を名乗ってた方でしたっけ」

「あぁ、そう言えば、お主は第六天魔王であったか。うむ。そこはあえてノーコメントで行くとしよう。考えてみるのも一興であろう?」

「そうですか……では、私は貴女に第六天魔王と名乗る権利をあげましょう。嫌ですけど」

「なんじゃ、奇っ怪な奴め。別に許可を取らんでも名乗るわ。だがまぁ、本人お墨付きというのも悪くはないか……うむうむ。なんだか良さそうじゃ! ではカーマよ。とりあえず儂と一緒に食堂行くぞ!」

「えっ、ちょ、私、ようやく解放されたばかりなのに!?」

 

 強く手を引かれ、逃げる暇もなく連れ去られるカーマ。

 つい先程子供サーヴァントによる包囲網を無事突破してきた直後にノッブに捕まる辺り、見る人が見れば涙を浮かべるような状況だった。




 BBの依頼が忘れ去られるのは時間の問題だった……


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久しぶりの戦闘じゃあ!!(珍しく暴れられるわ)

「うわははは!! やはり儂の出番じゃな!」

「珍しく私も戦線ね。まぁ、セイバー相手なのだし、仕方ないと思うけど」

「本当に相性不利を加味しないわね。編成に入れているだけでも枠を圧迫するでしょうに……でも、そう言うの、嫌いじゃないわ」

 

 珍しく前線で楽しんでいるノッブとエウリュアレ。

 編成に入っているが後方に送られたメルトは不満そうだが、相性不利なので仕方がないと分かってはいる。

 

「しかし、儂だけで良かったのか?」

「あぁ、うん。BBは等倍だし特効無いしで今回は見送り。アビーはバーサーカー処理に有用なので時が来たら呼ぶよ」

「ほぅほぅ。つまり、BBは放置じゃな?」

「うん。そう言うこと」

「酷くないですか!? 私が何をしたんですか!!」

 

 明らかにBBを遠ざけているような雰囲気に門を開いて慌てて飛び出してくるBB。

 しかし、その時を狙っていたかのようなメルトの鋭い膝の一撃がBBに突き刺さる。

 その衝撃でゴロゴロと地面を転がったBBは、壁に激突して止まり、ゆっくりと体を起こす。

 

「あら。これはこれは、お母様? 突然私の前に出て来て、そんなに蹴られたかったのかしら?」

「……そうですか、そうですか……良いですよ。分かりました。戦争ですね? 一方的に蹂躙してあげます」

「あら、ここは月ではないというのを忘れてるみたいね。すぐに泣かせてあげるわ!」

 

 出会って数秒。即座に始まる戦闘に、オオガミはため息を吐き、

 

「ノッブ。『三千世界(さんだんうち)』やっちゃって」

「撃って良いのか? ならば撃つぞ。うわははは! これが魔王の『三千世界(さんだんうち)』じゃあ!」

 

 即座に放たれるノッブの宝具。ここが事務所ではなくて良かったと心底思うオオガミ。

 そして、宝具を受けた二人は、

 

「危ないじゃない。BBごと撃つなんて止めてちょうだい」

「お。無傷じゃな? おかわりいるか?」

「要らないわ。撃つならBBだけにして」

「くっ……先に一撃だけ入れて回避を剥がしていくなんて……メルトめ……恨みますからね……」

 

 宝具の直撃を受けて動けなくなるBBと、回避したメルト。

 確実にBBを始末しにいっている辺り、ちゃっかりしていた。

 

「それで、BBがこっちに来ちゃったわけだけど、どうしようか。とりあえず連れて帰る?」

「それが一番じゃろ。そこら辺に投げてたらちっこい儂に回収されるのがオチじゃ。こやつを持っていかれると儂が困るからな」

「了解。じゃ、一回事務所に帰るよ~」

 

 そう言って、オオガミ達はBBを引きずりながら事務所へと帰るのだった。




 沖田さんを倒したのはノッブ……やるなノッブ。やっぱ強い……でもNP回転悪いので困ってないとき専用……


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予想以上に進みやすいかもしれない(どうせリンゴがないと詰むって知ってる)

「最初さえ越えれば意外と進めるのね」

「最初が最難関……あとは流れでなんとかなる……」

「そう言って、最後には全部リンゴで解決することになるんだから反省しなさい」

 

 余裕で終わると思っているオオガミの頭を軽く叩くエウリュアレ。

 それを見ていたBBが、

 

「スッゴい今さらですけど、エウリュアレさん、本分を何処に置いてきたんです? 元々無理難題を言って、達成できなかった人間を笑うかぐや姫的ポジションじゃなかったでしたっけ?」

「そうなの? てっきりこういう神なのだとばかり。ずいぶんと堕落したのね」

 

 その言葉に、エウリュアレは少し考え、

 

「まぁ、そうね。聖杯を入れられてからじゃないかしら。あと、何を言っても相手が誰でも連れ回された時に諦めたのもあったわ」

「え、あ……素直に答えられるとは思ってなかったのでちょっと想定外なんですが……」

「あら。そんなに無理難題を出してほしかったのかしら。おかしいわね。貴女が来たときはてっきり似たようなものだとおもったのだけど……逆だったみたいね」

「いえいえ。私はちゃんと出す側で、出されたいわけじゃないので。なので全く要りません」

 

 にっこりと笑うエウリュアレに張り付けたような笑顔で否定するBB。

 それを見ていたメルトは、

 

「……ねぇマスター? 彼女は何時から連れ回しているのかしら」

「え? 三年前くらいからじゃない? 太陽ゴリラを倒すときに必死で育成したし」

「太陽ゴリラ……いえ、言わなくても分かるわ。一人しか思い付かないもの」

 

 誰の事を言っているのか分かったメルトは、納得したように頷く。

 そこへ、

 

「おぅマスター。買い出しから帰ったぞ~」

「最近オレの呼び出し多くないっすかね。いや、まぁ、あの真っ黒英霊よりはマシだと思いますけど。最近アビー嬢ちゃんに捕まってるらしいですし。ただ、なんで行く先々にこのポンコツAIまで一緒なのか小一時間ほど文句を言いたいですが」

「誰がポンコツですか! ロビンさんの方が何倍もポンコツじゃないですか!!」

 

 ノッブと一緒に買い出しに行っていたロビンの言葉に反応するBB。

 剣幕なBBに、苦い顔をしながら後ずさるロビンだったが、やがて壁まで追い詰められ、鎌によって逃走も出来ない状態にされる。

 

「わ、分かった分かった! オレが悪かったよ! 文句は言わねぇから!」

「分かれば良いんです。ただし、余計なことを言った罰として、今度手伝ってもらいますよ」

「それ、危険じゃねぇだろうな……?」

「安心してください。センパイも一緒です」

「バカ野郎平然とマスターまで巻き込むんじゃありません! 自重しやがれってんですよ!」

「ちゃんと安全に配慮してるって意味のつもりなんですけど!? というか、私が危険な事にセンパイを巻き込むとお思いで!?」

「今までの行動を振り返ってから考えな! おい、マスターからも何かを言ってくれよ!」

「え? いや、ほら、たぶん犠牲になるならロビンさんだけかなぁって」

「チクショウ味方がいねぇや!」

 

 そう言うと、ロビンは鎌の隙間をすり抜けて、外へと逃走するのだった。

 

「あっ! 絶対逃がしませんからね! じゃあセンパイ。行ってきます!」

「ちゃんと連れ帰ってきてね」

「そのまま帰ってこなくても良いわよ?」

「メルトは後でじっくりとお話をするとします!」

 

 そう言って、BBはロビンを追いかけるのだった。




 たぶんメインストーリーは終わるけど、素材回収が間に合わない奴……い、行けるだろうか……

 ロビンさん、いつも不憫……誰か救ってあげて……


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最近、気付いたら資源が減ってるんです(誰が持ち出しているのかしらね)

「あら、マシュさん。どうしたの?」

「あ。アビーさん」

 

 倉庫の前で首を捻って考えていたマシュに声をかけるアビゲイル。

 声をかけられたマシュは、すぐに振り向くと、

 

「最近、気付くと資材が無くなっているんですよね……いつも先輩が原因だと思ってるんですが、あまり疑いすぎるのもどうかと思って……」

「そうなの? 最近だと、何がなくなったの?」

「呼符12枚ですね。二週間とこの前のボーナスで貰えたのを保管していたのですが、先程確認したら忽然と」

「……えっと、呼符を他に使いそうな人は思い付かないのだけど……」

「ですよね……やっぱり、先輩が犯人なんでしょうか」

「ノッブさんもBBさんも、呼符というか、倉庫の素材には一切手を出さないから……だから、マスターしかいないと思うわ」

「そうですね……とりあえず、帰ってきたら追及してみるとしましょう。私は食堂に行きますけど、アビーさんはどうしますか?」

「えぇ、私も行くわ。今日はエミヤさんにおっきなパンケーキをお願いしたの!」

「そうなんですね。一体どれくらい大きいんでしょうか」

 

 そんなことを話ながら食堂に向かう二人だった。

 

 

 * * *

 

 

「……! 帰ったらマシュに説教されるコースでは!?」

「むしろあれだけ召喚をしまくってマシュにバレないとでも思っていたのかしら」

 

 衝撃の事実を知ったようなオオガミの反応に、呆れるエウリュアレ。

 メルトはそれを見て不思議そうに、

 

「マシュって、そんなに強いの?」

「いや、物理的に強いから怖いとかじゃなくてな、あれは相性的な奴じゃ。どれだけ無敵そうに見えても、後輩に弱いんじゃよ」

「ふぅん……なんとなく分かったわ。要するに、BBと緑茶みたいなものよね」

「おいおいおい。そりゃねぇぜ。オレとアイツは、そんな生易しいようなもんじゃねぇだろうが。もっとこう……血と臓物が飛び散るくらいドロドロなやつで、マスターとマシュ嬢ちゃんみたいなふわふわしたもんじゃないって」

「そんな、血と臓物なんて大袈裟です。せいぜい奴隷と主人くらいじゃないですか。やだなぁロビンさんったら」

「おっと。さては気づかぬ振りだな? 実際、さっきここまで連れてくるときだって、背後から注射器で突き刺して動けなくしてから「さくらビーム!」うぎゃあああ!!」

 

 話している最中のロビンを吹き飛ばす、桜色の光線。

 直撃を受けたロビンは、生きてはいるが、きっと余計(BBに不利益)なことを話せなくなっているだろう。

 

「ふぅ……危ない危ない。うっかりロビンさんが口を滑らすところでした。次にパシるときにもう一回呼び出すことにして、今はお別れしましょう。さよならロビンさん!」

「て、てめぇBB……! 覚えてやがれ……!」

 

 そう言ってBBの開いた門に沈んでいったロビンは、どこか可哀想であった。




 いぞーさん、ようやく来てくれて、これで宝具3。あと二人必要だという真実に、私は泣きたい。


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このままならのんびり行ける!(のんびりってなんだっけ)

「よ、よし……このままの調子なら、当初の予定通りのんびり行ける……!」

「のんびりってなにかしらね」

「リンゴを食わなきゃ良いと思っとるんじゃろ。まぁ、実際周回数も少ない方だと思うんじゃけど、如何せんマスターが疲弊してるのにのんびりとは言えんじゃろ……」

 

 既に死にかけのオオガミをつつきながら言うメルトとノッブ。

 エウリュアレはそれを見ながら、

 

「まぁ、最後の方はのんびりできるかもしれないわね。でも、結局クエストを全部終わらせるのにリンゴを使うと見たわ」

「なんでそうやってフラグを立てていくのかなエウリュアレは!」

「いやセンパイ。どう見ても事実です。なので、買ってきたお菓子を食べたら補充ついでに周回ですよ」

「待って。なにさりげなくBBは周回をさせようとしてるのさ」

「いえ、だって、絶対センパイはサボろうとするじゃないですか。なら、今のうちにやらせておいた方がいいと思いまして」

「……BBも、マスターの性格をわかってきたのぅ……というか、そろそろこのメンバーでマスターを理解してない奴などおらんじゃろ」

「……あれ。つまり、もう言いくるめられないんじゃ……」

「いや、そうは言い切れんが……まぁ、ほとんど聞かないじゃろ」

 

 まだメルトには効くような気もするが、言いくるめようとしているかどうかは大方バレてしまうような状況になっていた事に気付いたオオガミ。

 しかし、エウリュアレは呆れたような顔で、

 

「そもそも、言いくるめる事なんてほとんど出来てないじゃない。いつも通りでしょ」

「あ、あれぇ……? 誰にも通じてないのか……」

「えぇ、そうですそうです。言いくるめられるわけないじゃないですか特にBBちゃんなんて、言いくるめられる可能性は皆無ですよ!」

「いや、たぶん一番やられてるのはお主だからな?」

「えっ」

「どっちかって言うと、言いくるめてるんじゃなくて説得しているような気がするけどね」

「えっ。ちょ、本当ですか? 私、そんなチョロインでした?」

 

 左右を見ながら聞くBBに、しかし誰も反応せず、

 

「とりあえず、ストーリーを終わらせないといけないわ。流石に、そこが終わらないと始まらないもの。さっさとキャスターを始末して帰るわよ」

「うん。後半戦でBBは活躍すると思うしね」

「センパイ、それ運用するつもり無いですよね? BBちゃん、泣きますよ?」

「いや、BBが泣いてもマスターは揺るがんじゃろ」

「待ってノッブ。そこまで極悪人じゃないから。ちゃんと運用する予定だから。問題はたどり着けるかってことくらい」

「一大事じゃないですか! 行きましょう早く行きましょう私のの活躍のためにいざ行かん!!」

「えっ、ちょ、強制連行!?」

 

 抵抗する間もなく引きずられているオオガミを、エウリュアレ達は見送るのだった。




 終わる気がしてたけどもしかしたら終わらないかもしれないという不安感……


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後半戦突入だオラァ!!(のんびり行くんじゃなかったかしら?)

「ふ、ふふふ……行くぞ茶々ぁ!!」

「そこまで本気になる必要ないでしょう……?」

「あれ、ノッブは何処に行きました?」

「ダビデ印のコーヒー牛乳を飲んで腹を壊して帰ったわ」

「正気ですかあの戦国武将!! いい加減学習したらどうです!?」

 

 去年から何も学習してないなと嘆くBBを横目に、発狂しながら周回に向かうオオガミ。

 のんびりという雰囲気は何処へ飛んでいったのかと思うが、今の所リンゴを使っていないのでセーフだろう。

 

「それはそれとして、普通に強くて手に負えないのよね……どうしましょうか」

「いい加減舐めてかかるのを止めたらいいんじゃない?」

「礼装縛りを止めろって事ですか。じゃあ礼装のレベル上げをどこでやれば……!!」

「いや、知らないわよ……どうせすぐに新しいイベントが来るんだから、その時を待てばいいでしょ」

「というか、大体使うの固定でしょ。育ててもあまり使わないじゃない」

「つ、使う時があったら困るでしょ……!!」

「使わないような気がするんだけど……」

「これは何を言っても聞きそうにないわよね……」

 

 だんだんと周回で負けそうになっているのにもかかわらず、礼装が回復できるようなものではない為、ぎりぎりの状況が続いている。

 だが、オオガミは礼装を変えるつもりも無いようで、

 

「とりあえず、本当に負けたら考えるとしよう……か、勝てるのなら問題ないし」

「勝てなくなったら諦めなさいよ」

「アルターエゴでも厳しい時はあるのよ」

「バーサーカーは誰でも無理だから……」

 

 現状、事故を起こす原因はバーサーカーがほとんどなので、そろそろアビーを呼び出さなければならないなと思った時だった。

 

「呼ばれた気がしてやって来たわマスター!! 誰を倒せばいいのかしら!!」

「思っただけで飛んできたよこの娘!!」

「アビーのストーカー力も上がったわね……」

「いえ、待って? 思考するだけで飛んでくるの? 流石に恐ろしいものがあるのだけど?」

「前は呟いただけで飛んできたんだけどね。ついに考えただけで飛んでくるようになったわ。えぇ、私にはそんなこと出来ないけれどね」

「いえ、エウリュアレさんは四六時中一緒にいるので飛んでくる必要が無いから会得してないんだと思います。代わりにどんな時でもセンパイの位置を把握してるじゃないですか」

「そ、そこまでじゃないわよ……」

 

 BBに言われ、視線を逸らしながら言うエウリュアレだったが、説得力は皆無だった。

 

「……なんだか、変なメンバーね」

「その中に貴女もいるっていうのを忘れないでねメルト」

「……」

 

 エウリュアレに言われ、遠い目になるメルトなのだった。




 アビーの異常性が成長していく……こんな特性を付けたのは誰なのか……あの清楚可愛いアビーは何処へ行ってしまったのか……あれ、最初からなかったような……?


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後半戦入ったけど全く進まない(サボったら進まないに決まってるでしょ)

「凄いよ……七本槍の誰にも会えない……」

「そりゃサボったら会えないわよ。さっさと英霊兵を倒しに行くわよ」

 

 そう言って、オオガミを引きずっていくエウリュアレ。

 メルトはそれを見つつ、

 

「なんだか、この光景を見慣れてきている私がいるわ」

「あらあら。メルトも染まってきてるみたいですねぇ? ふふふ……これで残念組に一名追加ですね……!!」

「ねぇBBさん? その残念組って、誰が入っているのかしら?」

 

 メルトに囁いたBBに、アビゲイルが満面の笑みで聞く。

 

「ふふん。決まってるじゃないですか! センパイにエウリュアレさん、ノッブにアビーさんですとも! 最近はカーマさんとメルトも候補ですね!」

「そう……私はもう入ってるのね。でも、一人足りないと思うの」

「そうですか? ちゃんと全員いると思うんですけど」

「筆頭がいないわ。えぇ、そう。BBさんが入って無いわ!」

「何言ってるんですか。BBちゃんはパーフェクトなので残念要素皆無です~! 残念でした~!」

「そう言うところがBBさんのダメな所だと思うわ!!」

「うわっ、ちょ、何をするんですか止めてくださいぃいや~!!」

 

 BBに飛びかかるアビゲイル。

 逃げる間もなく両手足を触手に拘束されたBBは、迫り来るアビゲイルを悲鳴を上げながら見ている事しかできないのだった。

 メルトはその様子を眺めながら、

 

「……加勢しようかしら」

「メルトはこっちよ」

「あの二人に付き合っていい事は無いしね。いや、どっちかっていうと、BBに付き合っていい事は無い感じかな。アビーは暴走して無ければ可愛いだけだよ」

「そ、そうなの……というか、周回に行くんじゃなかったの?」

 

 加勢しようかと悩んでいたメルトに声をかけるオオガミとエウリュアレ。

 メルトは話を聞きつつ、周回に行くはずだったろうと首を傾げつつ聞くと、

 

「あぁ、そうそう。周回ね。だからメルトを呼びに来たよ」

「……いい加減、後方に回したらどうかしら」

「キャスター相手にメルトを出さない理由は無いから。ほら、行くよ」

「ちなみに拒否権は無いわ。だって、私の時も無かったもの」

「そう……まぁ、もとより断るつもりも無いからいいのだけど。あの二人は放置でいいの?」

「そのうち疲れて帰って来るでしょ。それまではいいかな」

「雑ね」

「いつもこんな感じだよ」

 

 そう言って、オオガミ達はアビゲイルとBBを放置して周回へと向かう。

 それからしばらく、帝都でチビノブ達の悲鳴が聞こえたとか聞こえないとか。




 書きながらようやく一か所解放した私です。終わる気がしないんですが。最終日にリンゴ食べながら周回している様子が容易に想像できる不思議……

 そして、さりげなくこの帝都で忘れ去られているライダーが一人いることにお気づきでしょうか……どこに行ったんだろう……


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次回イベントはぐだぐだじゃないんですか?(今のイベントが既に終わるかわからんのですが)

「……あの、イベント終わってないのに今からイベント来る感じの雰囲気出してるんですけど。急げって事?」

「そもそも今週で終わるんだから、急がなきゃ終わらないに決まってるでしょ。馬鹿な事言ってないでさっさと行くわよ」

「最近輪をかけてエウリュアレが問答無用になってきた……!!」

 

 逃げる間もなく素早く襟首をつかまれるオオガミ。

 もはや逃げるのも諦めているオオガミは大人しく捕まり、

 

「しかし、リンゴ不足はイベントの進行具合にも関わってくるね……びっくりするほど進まねぇ」

「ちゃんとどこに何が出てくるかを考えて動いてたらもっと早く終わってたでしょ。というか、次もあるのにここでリンゴ使ってる場合じゃないわ。だって、貴方、絶対次のイベントで使うつもりでしょ?」

「……おっしゃる通りで。全力で飛ばしていくつもりだったよ」

「そんなつもりなのにここで使ったら後で苦しくなるのは確実よ。それに、まだ先だとはいえ、ボックスイベントだってあるのよ。貯めておいて損はないわ」

 

 そう言ってオオガミを引きずっていくエウリュアレ。

 BBはその様子を不思議そうに見ながら、

 

「……私の記憶が正しければ、エウリュアレさんって、堕落させる側ですよね? 節約させに行ってません?」

「今更だと思うわ。エウリュアレさんはいつも細かいところまで目が行き届いているもの」

「細かい所を責めるから細かいところまで目が行き届く……物は言いようですね……」

「それだと、BBはどうなるのかしらね。どう思う? アビー」

「ん~……困ったときにお助けアイテムをくれる人?」

「ちょっと待ってください。それ、通常どういう人判定なんですか?」

「えっ……よく分からない発明をしている危ない人……?」

「あ、危ない人……なんでしょう。何とも言えない微妙な気持ちです……」

「危ない人って所は否定しないのね。自覚してくれたみたいでよかったわ。ついでにここで死んでくれても良かったのだけど」

「それをしたら技術部の戦力半減ですよ!? それは問題です!!」

「あぁ、それが無かったらいいのね……壊滅させに行ってみようかしら。そうすれば納得して死んでくれそうだわ」

「メルトの目が本気なんですが……侵入されない様に防護壁をアップデートしておきましょう……」

「メルトさんなら溶かして突破してくると思うの……無意味じゃないかしら」

 

 後でセキュリティ強化をノッブとしようと計画するBB。

 そんなBBを見ながら、アビゲイルは不思議そうに首を傾げるのだった。




 なんですか。もうエルメロイ先生ですか。ぐだぐだ成分は復刻やったでしょって事ですか。しかし私はコラボ終わった後に突然のぐだぐだだと信じてる……


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先輩、帰ってきませんね(暇ならば遊ぶしかなかろう)

「はぁ……先輩は帰ってきませんし、アビーさんも行ってしまいましたし……やることがないです」

「むっ。魔酒(マシュ)か。不満そうだが、どうかしたのか?」

 

 食堂にマシュが入るなり、椅子に座ったまま声をかけてくるバラキー。

 ちなみに、バラキーの対面にはカーマが座っており、持っているケーキを渡しはしないという意思を感じる眼をマシュに向けていた。

 

「茨木さん……先輩が帰ってこないので、ちょっと気が抜けてる感じです。資源はそんなに増えてないので、整理する事もありませんし」

「ふむ……ならば、しばし付き合ってもらおうか。もちろんカーマも一緒にな」

「え、嫌ですけど。なんで従わなくちゃいけないんですか」

「まぁそう急くでない。吾にも考えはある。汝はパールヴァティーを貶めたい。吾は暴れたい。そして魔酒も暴れたい。ならば、答えは簡単だ」

「全く関連性が見えないんですけど」

「あの、別に私は暴れたいわけではないのですが……」

 

 バラキーの言葉に二人から突っ込みが入る。

 が、バラキーは特に気にすることもなく、

 

「カーマに良い噂が立つということは、間接的にパールヴァティーを貶めることになるはずだ。カーマが目立ち、パールヴァティーはそのうち忘れられる……忘れられるのはわりと辛い。うむ。吾にも経験ある。そして、良い噂が立つためにすることと言えば、とりあえず暴れているのを倒す! これが一番だ!」

「凄いです。全くダメージを与えられる気がしないのにそんなに自信満々に言われると変な説得力ありますね」

「そう言うのはエルキドゥさんが日々やっているような……いえ、良いですが。ただ、それが茨木さんの口から出たのが驚きです」

 

 最もらしい、しかしあまり関連性のない言葉に、変に納得する二人。

 そして、

 

「まぁ、特に予定もないですし、その案に乗ってあげます。感謝してくださいね」

「エルキドゥさんの休憩にも繋がるでしょうし、私も手伝いますね。それで、あてはあるんですか?」

 

 仕方ないとばかりに、最後の一口を食べて立ち上がるカーマと、盾を準備するマシュ。

 それに対して、バラキーは自信満々に、

 

「決まっている。あの恐ろしき子どもの国だ! つい先日解体されそうになったからな。今こそ反撃の時! 行くぞ! 新生大江山盗賊団出撃ぃ!」

「ていっ」

「ふっ」

 

 今まさに突撃しようとしたバラキーの足はカーマに射抜かれ、そのダメージで下がった頭に重い盾の一撃が突き刺さる。

 

「な、なぜだぁ……」

「無用な敵は増やしたくないので」

「流石に彼女達に挑むのは無理があるので……ジャックさんに一方的にやられて終わるかと」

「そ、そんな……がくっ」

 

 そう言って気を失ったバラキーを、二人は医務室へと連れていくのだった。




 新生大江山盗賊団。仲間の反乱により数秒で壊滅した模様。

 しかし、イベントが本当に終わらない……終わるのだろうかこれ……やっぱりリンゴ必須……?


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未だ茶々に会えないんだけど(怒っているかもしれないわね)

「ほとんどクエストは終わったけど、未だに茶々に会えないんだけど」

「そうね……『早く来てくれなかった』とか言って怒ってたら、迷わず生け贄に差し出してあげるわ」

「ドストレートな悪意……いや、全く悪意ないのか……!?」

「もはやいつものやり取りですし、悪意がなくなってても不思議に思わない私も、結構毒されてるかもしれないですね……」

「貴女も同じようなものだからじゃないの?」

 

 エウリュアレによってさりげなく茶々への生け贄にされることが確定したオオガミ。

 そんな定例のようなやり取りに、BBは首をかしげて自己分析を始めるが、メルトの一言でバッサリと切られる。

 

「失礼な。私はやるときはちゃんとやってますからね?いつもの発明品も、3割は悪意です!」

「それ、全く自慢になってないと思うのだけど……一度、あそこの部屋にあるのを外に投げた方がいいのかしら」

「ダメよアビゲイル。ちゃんと粉々に砕いてからじゃないと。拾ってくるかもしれないわ」

「それもそうね。そのときはお願いします。メルトさん」

 

 にっこりと笑って、そんな極悪非道なことを考えている二人に、BBは頬を引きつらせながら、

 

「な、なんでしょう……最近、風紀委員とは別で、私単体を標的にしてるチームが生まれつつある気がするんですが……私、そんな恨まれることをしましたか……?」

「自分の胸に手を当てて考えてみなさい」

「ん~……胸に手を当てても、BBちゃんにはさっぱりです」

「そういうところじゃないかしら」

 

 本当に分からなそうな顔をしているBBに、呆れたような顔で返すメルトとアビゲイル。

 なにかをやるときは9割はなにかやらかすと思われているBBは、実際、ノッブ以上に要注意監視対象だったり、逃げ足が早いので、共犯者よりも逃げ切ることが多いことから、特にBBは許さないと思っているメンバーが存在していたりする。

 ちなみに、そのメンバーの中にマシュがいることを、まだBBは知らない。

 

「しかし……おかげで、また防護壁を強化しなくちゃです……技術部の資材は倉庫から出ないので、実費なのが厳しいところ……うぅっ。活動費のために自主的に周回しないといけないのが悲しい……」

「なんだか大変そうね。まぁ、頑張りなさい。応援はしないけど」

「頑張って作っても、全部メルトさんが溶かしちゃうもの」

「どっちが悪なのか分からない戦いになってきてるんですけど……」

 

 二人の容赦も慈悲もない言葉に、BBはノッブも巻き込むことを決めたのだった。




 極悪パーティー結成の瞬間である……防御が意味をなさない恐怖……


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明らかに無理な雰囲気が漂ってきたよ(仕方がないから使うしかないでしょう?)

「うん。無理だねこれは」

「早めにやっておかないからこうなるのよ……アビー。リンゴを用意してもらえるかしら。あと、ついでに巌窟王とスカディもお願いね」

「えぇ。そう言われると思って、あらかじめ用意していたわ!」

 

 そう言うアビゲイルの手には、いくつものリンゴが乗っていた。

 その後ろには、スカディがいて、

 

「あぁ……結局こうなってしまうのか……私は嫌だと言っていたのに……そうだ。孔明とやらが代理でも良いのではないか……? 別に私にこだわる必要はなかろう……!」

「クハハハハハ!! オレを呼んだな!? では行こうではないか共犯者よ!」

 

 と叫ぶ、スカディとは真逆の、テンションが高い巌窟王がいた。

 

「スゴいね。見事なまでに真逆。それとスカディ様。残念だけど、クイックはスカディ様しか出来ないから、代理はいないよ」

「なんだと!? で、では……私は周回から逃げられないのか……!?」

「御愁傷様。でも、正直スキルを使って見ているだけなんだから、そんなに辛いものでもないと思うけど?」

「お前達には分かるまい……スキルだけでも神経を削るのだ……ずっと使い続けていると、結構疲れるのだぞ!?」

「そう……大変なのね。私には分からないけど」

 

 エウリュアレがそう言うと、スカディは少し考え、

 

「そうだな……お前にも伝わるように言うのだとしたら……エルキドゥがこちらをじっと見てきているくらいには精神をすり減らす」

「めちゃめちゃ疲れるじゃない」

「ちょっとセンパイ。もっとスカディさんを労ってくださいよ」

「エルキドゥさんにじっと見られてるなんて……なんだか悪い子とをしてしまったんじゃないかって不安になるもの……とっても疲れるわ……」

「とんでもない手のひら返しを見た」

 

 さっきまでの態度はなんだったのかと思うくらいにスカディに優しくなるエウリュアレ達。

 ちゃっかり混ざっているBBは、おそらく周回に参加したいのだと思われるので、後で容赦なく振り回すことに決めたオオガミ。

 だが、それはそれとして、

 

「残念ながら、代わりになれるのはいないので、それでも出撃です」

「な、なぜだ……これならば行けるとマーリンとやらが言っていたのに……」

 

 そう言ってその場に崩れ落ちるスカディ。

 だが、その言葉にオオガミとエウリュアレは反応し、

 

「ほぅ? その話、詳しく聞かせてくれる?」

「あの男、また変な事を吹き込んでいるみたいね。一度くらい痛い目を見せてもいいかもしれないわ」

「センパイ。自重は無しですよ。全力で叩いて、そして周回メンバー入りです」

「次のイベントでは孔明先生は強制だからね……マーリンも一緒に来てもらうとしようか」

 

 そう言って、不気味に笑うオオガミ達に、スカディは嫌な予感を隠せないでいるのだった。




 帝都をリンゴ無しで攻略とか、無理があったんだ……うごご……
 ノブノブ系統は全部終わってるから3ターンパーティに変更しても問題無し……待ってろ茶々。絶対そこに行くからなッ!


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イベントはスライディングセーフだよ(高難易度に令呪を全部持っていかれたけどね)

「いやぁ……ギリギリスライディングセーフだったね……」

「本当にギリギリよね……おかげで高難易度のノッブを倒すのに令呪行使したじゃない」

「リンゴはそんなに使わなかったわね。意外と進めてたみたい」

 

 帝都から帰って来たオオガミ達は、想像以上にサクッと終わり、令呪を犠牲にしつつ帰って来た。

 そして、

 

「お帰りなさい先輩。では、エウリュアレさん。ちょっと先輩を借りていきますね」

「えっ?」

「あら、今回も早いのね。良いわよ。持っていって」

「えっ?」

「ありがとうございます。では、エルキドゥさん。お願いしますね」

「あぁ、分かったよ」

「えっ」

 

 抵抗する間もなかった。

 エルキドゥによって素早く鎖で縛り上げられたオオガミは、にっこりと笑うマシュに連れ去られるのだった。

 そんな嵐のようなやり取りを見ていたメルトは、

 

「……あの子、昔からあんなにマスターへ当たりが強かったの?」

「いいえ、全く。昔はメドゥーサ見たいに従順で可愛かったわよ。ただ、マスターにあてられたのか、気付いたら今の状態よ。強制退去前まではもうちょっと柔らかかったと思ったのだけど」

「そう……人間にも色々あるのね」

「えぇ、そうね。貴女もそのうち同じことを言うことになると思うけど」

「? どういうことよ」

「そのうち分かるわ。さて、食堂に行きましょうか。やっぱりお菓子はいつものが一番よ」

 

 そう言って食堂に向かって歩き出すエウリュアレ。

 メルトはその後ろを、首をかしげながらついていく。

 

 

 * * *

 

 

「――――という訳で、吾が二回殴り飛ばし、無事信長狩りは終わったというわけだ。つまり、吾のおかげだな!」

「おぉ~! バラキーすごーい!」

「いいな~。私ももっと開拓したいなぁ……」

「ん~……どこか盛っている気もするけど、面白かったから気にしないわ。あぁ、私ももっとマスターと冒険できたら良いのだけど」

 

 食堂に着くなり、聞こえてきたバラキーと子ども組の声。

 どうやら高難易度のときの話をしているらしいが、一部始終を見ていたエウリュアレとメルトは、嘘とは言い切れない微妙なラインを攻めているバラキーになんとも言えない表情になる。

 そんな二人の気配に気付いたのか、バラキーは二人に目を向けると、

 

「おぉ、汝らも帰ってきたか。む? だが、マスターが見えないようだが……あぁ、魔酒(マシュ)に捕まったか」

「あら、知ってたの?」

「三日前に言っていたからな……帰ってきたら捕まるのではないかと思っていたが、まさか本当に捕まるとは……」

「まぁ、向こうの時点で気付いてたみたいだけど、イベントを終わらせた安心感で忘れたんでしょ。私にはどうしようもできないわ」

 

 そう言って、エウリュアレはお菓子を取りに行き、

 

「……あぁ、そうよね……マスターがいないんだから、お菓子が補充されているわけないわ。仕方ない。赤い外套のアーチャーに作って貰おうかしら」

「あら、意外ね。無理にでも引き戻すのかと思ったのだけど」

「流石に、マシュを相手にそれは出来ないわ……最近疲れてるみたいだし、息抜きも兼ねてるはずだもの……」

「ふぅん……まぁ、良いのだけど。先に席に座ってるとするわ」

「えぇ、後でね」

 

 そう言って、エウリュアレとメルトは別れるのだった。




 いやぁ……リンゴが4、5個持っていかれてしまった……新規イベント楽しみだなぁ(白目


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レディ・ライネスの事件簿
管制室が大混乱なのだけど(さっさと情報を開示しなさいBB)


「BB。うちのバカマスターはどこに行ったのかしら」

「さっさと教えなさい。でないと切り刻むわよ」

「きゃあぁぁ!! 防護壁を新調したばかりなのにぃ!?」

 

 イベントが始まって数刻もしないで工房のドアが破壊され、エウリュアレ達が乗り込んでくる。

 先日の帝都でのやりとりから、急造でいくつか追加しておいた防護壁は、メルトの一撃で全て突破されたらしい。

 

「ちょ、エウリュアレさんがいるんだから、普通に入ってきてくださいよ!! わざわざ破壊しないでください!!」

「あら、耐久実験を手伝ってあげただけなのだけど。だって、私対策として作るつもりだったんでしょう?」

「そうですけど、そうじゃないです!! 仮組みを壊されたんですよ!」

「そう。じゃあ良いじゃない。どっちみちすぐ壊されるんだもの。遅かれ早かれ同じことよ」

「納得いきませんよ!?」

 

 そんな風にメルトとBBの言い合いが始まるが、エウリュアレはその様子を少し静観したあと、

 

「BB。私はマスターがどこに飛ばされたのかを聞きに来ただけなのだけど。ちゃんとわかっているのよね?」

「っ……今やってたところです。覗き見をするにも、準備が必要なんです。管制室に気付かれない様にプログラムを走らせるチキンレースをしてるんですから、邪魔をしないでくださいよ」

「ちなみに、防護壁のいくつかには情報遮断の効果があるのもあったんじゃけど、ものの見事に破壊されてるし、BBが嘆くのも是非も無いよねっ!」

「笑い事じゃないですから! 後でノッブも修理を手伝うんですからね!!」

「えぇ~……儂が壊したんじゃないんじゃけどぉ~……」

「分かってて見送ったのは知ってますからね!」

「チッ……バレとったか……まぁ、是非も無し。任せておけ。儂が完璧に修復してやろう」

「えぇ、任せましたよ。こっちは覗き見できるように先輩の存在証明情報をひっそりコピーするので忙しいんですから」

「おぅ。頑張れ~。早めに終わらさんと、待っとる二人が暴れ出すからな~」

「妙なタイムリミットを残していかないでください……!!」

 

 不穏な言葉を言い残して去って行くノッブに文句を言うBB。

 しかし、後ろにいるエウリュアレとメルトの不気味なほどの笑顔が見えた瞬間、頬を引きつらせてモニターに向き直り、

 

「くぅ……どうして私がこんな目に遭うんですかぁ……!!」

「日頃の行いじゃないかしら」

 

 ボソリと呟いた言葉に対して、メルトから中々に鋭い突っ込みを受けたBBは、しくしくと静かに泣きながら作業を続けるのだった。




 現在はのんびりやってます。さて、どこで林檎を使う事になるか……


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また置いていかれたんですけど!!(まぁ、いつも通りじゃよね)

「あぁぁぁ!! また置いていかれました!」

「しっかりメルトとエウリュアレを呼び出している辺り、いつも通りじゃな……」

 

 叫ぶBBと、特に気にもせず特異点にいるオオガミ達を眺めるノッブ。

 

「つか、あやつが死んだの、マスターによる酷使で過労死した可能性が高い気がするんじゃけど。つか、死んでも霊基は残ってるから周回に組み込みかぁ……ライネスとやらが来ていたら、おそらく同じ目に遭っていたんじゃろう……」

「単体付与ならマーリンさんに並びますけど、全体的に孔明さんの下位互換……あぁ、いえ、でも、マスターなら嬉々として使いますね。宝具による防御不利無効は優秀ですし」

「バーサーカー無双始まる気がするんじゃが。やっぱりおかしいじゃろあれ。攻撃相性不利じゃなきゃ大体何とかなる雰囲気出てきたな……」

 

 とはいえ、来なければどうしようもならないことに変わりはない。

 ちなみに、今回も30個集まった瞬間に溶けて消えたので、マシュはお怒りだった。

 何度叱られても反省しない辺り、問題児筆頭だというのも頷ける。

 

「はぁ……もうフォーリナー以外ならバーサーカーで破壊し続けるという暴力でほとんど解決できるんじゃないですか……?」

「そんな気もするんじゃよなぁ……まぁ、等倍は危険じゃし、普通に相性有利で挑んだほうが楽じゃけどな。つか、アルターエゴでごり押しするじゃろどうせ。バーサーカーよりそっちの方が多いと思うんじゃが」

「あぁ、確かに。センパイなら容赦なくメルトでぶち抜きますね……というか、最近バーサーカーがあまり出ていないような……」

「メインアタッカーがいない場合くらいじゃなぁ……スカディがいなくとも、孔明が二連射まで可能にするし……あれ。戦力だけ見ると、儂ら結構強い?」

 

 ふと冷静に戦力を見直し、その強さに驚く。

 だが、BBは冷静な表情で、

 

「戦略性かなぐり捨ててるからただキャラでゴリ押してるだけですけどね。まぁ、それでも最近は過労死組が出てない方が多いですが。今回みたいに、特攻じゃない限りって言うのがつきますけど」

「まぁ、三ターンは楽なだけで面白味はないからな……余裕があるときは地道に周回するのが一番じゃろ」

「ですねぇ……まぁ、それでもBBちゃんは滅多に呼ばれないんですけどね」

「基本全部等倍じゃからな。諦めい」

 

 自身のクラスがそれほど有利を取れないことを悔やむBB。

 そんなBBをノッブは笑いながら、マスター達の様子を眺めるのだった。




 意外とミッションが簡単なわりに、メインストーリーを進めるためにミッションをかなりの数やらねばならぬ苦しみ……

 ガチャ結果? 当然、イベント☆4概念礼装一枚ゲットで大勝利ですけど?(血涙


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連絡が取れずとも何とかなるさ(いつも通りよねマスターは)

「さて。結局、連絡が取れないみたいだけど、どうするの?」

「いやぁ……トランクが無かったらどうしようもなかったけど、あるんなら何とかなるって。これがあるならBBが探知してると思うしね。問題は、一方的にしか伝わらないって事かな」

「そうね。普通に呼んだら、通信機を持ってこれないものね……」

「問題は、こっちの音声が通じてるかよね」

「BBならやるでしょ。そう言うところは信じているわ」

 

 のんびりとパッチワークを巡りながらそんなことを話す三人。

 その後ろに、

 

「……意外と、慣れてきたものだな」

「拙は、師匠が呼ばれる度に逃げ出していたと聞いていたのですが……そのような事は無いようで安心しました」

 

 最近、あまり逃げ出さなくなってきた孔明と、その長い髪を見ながら歩くグレイ。

 時々オオガミ達から向けられる視線を鬱陶しそうにしているのは、変な気恥しさもあるのだろうか。

 

「しかし、孔明先生が私生活がポンコツって言うのは知らなかった……面白そうだから一回部屋を監視してみよう」

「止めろマスター。そんなことをしたら、しばらくどこかに監禁することになるが構わないな?」

「おっと。これ以上は触れない方が身のためみたいだ」

「自分で地雷を踏んだんだから、私は助けないわよ」

「その時はBBが監視できるようにしてるでしょうし、そこで見てることにしておくわ」

「二人とも助けるって選択肢はないんだね? チクショウ現実は残酷だっ」

 

 変なちょっかいをかけようものなら封印をしてきそうな雰囲気を出している孔明に、オオガミは頬を引きつらせながら前を向く。

 

「全く……変な事を言うからそう言う事になるのよ。というか、貴方も時々そんなことになってるでしょ」

「えっ……いや……そんな……」

「たまに私やエウリュアレ、マシュが起こしているわよね……」

「今度起きなかったら、別の方向で攻めてみましょうか……」

「普通に起こすだけじゃ芸が無いものね。蹴って起こしてみようかしら」

「それは前やってたよね?」

「あら。アレは膝よ。蹴るんだから、上から下に真っ直ぐよ」

「逃げられないように全力か……!!」

「結局、避けるないじゃない……問題ないでしょ?」

「寝起きで死の危険を感じたくはない……」

「大丈夫。殺さない程度に加減はしておくわ」

「それでも大怪我する可能性を提示されて嬉しいとでも思ったか……!!」

「あら、いつも通りじゃないの?」

「いつも挑発するくせに、よく言うわ」

「そんな挑発してないけどね……?」

 

 そう言いながら進む三人を見ながら、

 

「師匠。あれは、いつも通りなんですか……?」

「認めたくないが、事実だな。大体いつもあんなやり取りをしている」

「そうなんですか……」

 

 そう言って、グレイはオオガミ達を見るのだった。




 グレイさんの口調を掴めず扱いに困っている私……とりあえず、原作を買ってくるまで放置しかない……うごご……


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いやぁ、生きててよかった!(死んでいたら私たちも死んでいるところだった)

「いやぁ、よかったよかった。孔明くん、生きているみたいだ」

「そうか……よかった。これでこっちに周回要請は来ないはずだな。流石のマスターも二重で呼び出したりはしないはずだからな」

「あはは。スカディさんは面白いことを言いますね。孔明さんはNP補填係なので、三ターンで回るなら結局私たちがメインだというのは変わりませんよ?」

 

 休憩室の端で、わりと真剣な表情で話していた三人は、通称過労死組。

 マスターの状況をマーリンが報告しつつ、場合によっては逃走を図る予定だった。

 

「ん~……この感じからすると、後半までは何もなさそうだね。うん。たぶん大丈夫じゃないかな?」

「貴方が言うと、不思議と信用できないんですよねぇ……というか、貴方だけ先抜けで絆礼装渡してますし、正直もう周回に呼ばれないんじゃないですか?」

「どうだろうね? むしろ、玉藻君がメインのアーツパーティーは組みにくいから僕よりも出にくい気がするけど」

「おい。その流れだと、私が一番確率が高いような気がするのだが」

 

 玉藻とマーリンのやり取りを聞いていたスカディは、嫌な予感がして思わず聞く。

 すると、マーリンはにっこりと笑い、玉藻はきょとんと首をかしげながら、

 

「当然だとも。最有力候補だからね」

「むしろ、貴女以外出ないのでは?」

「とっても不満なのだが。さては貴様たち、私を売るために構えていたりしないだろうな……!?」

「いえいえ。そんなまさか」

「そうだとも。仲間を売るだなんて、そんなことできるわけがないじゃないか」

「全く信用できない……!」

 

 雰囲気や素性から、本当に売られないか不安になるスカディ。

 しかし、現状一人で逃げ切れるわけもないので、協力するしかないのは確かだった。

 

「でも、向こうに孔明さんがいるなら、逃げられる気がしないんですが。あの人、絶対道連れにしてこようとするでしょ?」

「う~ん……それはちょっと、否定できないね。まぁ、そのときはどうしようもないね。僕たちに弱化解除はないからね!」

「威張って言うことではないと思うんですけど……」

「なに、スタンが入らなければなんとかなる。たぶん」

「というか、マーリンさんは相性最悪ですよ。だって、向こうにエウリュアレさんがいますし。秒殺されるのは目に見えてます」

「計画段階ですでに破綻してないだろうか……? 本当に大丈夫なのか……?」

「考えれば考えるほど無理に思えてきたけど、なんとかなるさ!」

 

 そう言って、花の魔術師は笑う。

 玉藻とスカディは、それに対して不安を隠しきれない視線を向けるのだった。




 平成最後の投稿は、孔明が生きていたことに喜ぶ過労死組……人柱は多い方がいいのだ……(真っ黒


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太陽の沈んだ太陽ゴリラなど(6章の恨みは全て晴らされたのだ)

「ふっ……太陽の加護がない太陽の剣なんて、私の敵じゃないわ」

「一撃で倒すのね……なんだか、不憫に思えるくらいに」

「ふ、ふふふ……6章の恨みは晴らした……いや、正直6章は個人的に聖槍の方がトラウマだけども」

 

 6章の頃のトラウマを思い出しつつ、なんだかんだその全てを正面から殴り倒した事に喜びを覚えるオオガミ。

 当然、6章当時においてMVPを取ったのはエウリュアレであった。

 

「それで? 大体のクエストは終わったけど、どうするの?」

「そりゃ、期限までのんびりクエスト消化でしょ。さっさとやっていくよ」

「今回は案外簡単に進むわね。リンゴもそんなに使ってないし」

「……正直使いたいけどね。たぶん、後半戦で全力を出すから……」

「あぁ……」

 

 遠い目をするオオガミに、何かを理解するエウリュアレ。

 メルトだけはその状況になったことが無いので、首を傾げる。

 そして、そのさらに後ろでは、孔明が頭を抱え、

 

「これは……採集決戦の予感がする……あぁ、これはスカディかマーリンを呼ぶしかあるまい」

「師匠……採集決戦はそんなに苦しいのですか?」

「あぁ……終わるまでスキルを使い続け、宝具を放ち、戦闘終了間もなく次の戦闘が始まる……連戦と変わらんからな。利点といえば、効率化された結果として受けるダメージが少なく済む、と言った所か」

「なるほど……けど、怪我を負わず、スキルを使うだけなのでしたら、それほど辛くはないのでは……? たしか、カルデアからのバックアップがあると言っていた気がするのですが」

「あぁ、言ったとも。だがな……精神的なものはあるんだ。ボックスイベントはひたすらに雑魚を始末する作業だったが、採集決戦は違う。平行世界線のマスター達と、獲物を貪りあう狂気のイベント……数時間後には、ただの残骸しか残らないと言われている……かの魔神王ですら、瞬く間に貪り尽くされたと聞く……」

「それを聞いたら、拙は、どちらが悪なのか検討もつかないのですが……本当に大丈夫なのでしょうか……」 「なに、気負うことはないさレディ。なんせ苦しむのは主に私みたいな、NPの配布、攻撃力の底上げ、バフ・デバフ宝具の持ち主だからな……義妹が来ていたのなら、おそらく同じ目にあっただろうが……なに、来なければ同じ目にあうことはなかろう」

「師匠……」

 

 そう言って、遠い目をする孔明をなんとも言えない表情で見るグレイ。

 だが、悲しいかな。孔明は採集決戦に初参加。真の地獄を知らない者なのだ。

 だからこそ、オオガミとエウリュアレの視線に気付くことはないのだった。




 令和になろうとも何も変わらないこのメンバー……しかし、採集決戦仕様とは……孔明先生過労死しちゃう……本当に死んじゃう……

 ちなみに私は太陽ゴリラよりもロンゴミニアドに爆砕されたマスターなので、無敵貫通全体宝具はめちゃくちゃ恨んでます。許さんからな槍トリア。


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儂、暇なんじゃけど(遊んでくればいいじゃないですか)

「びぃびぃ~……儂、飽きたんじゃけどぉ~」

「知らないですよ……休憩室に行って他の人たちと遊んで来ればいいじゃないですか……私はセンパイに通信機を渡す手段を考えてるんですから」

 

 後ろで椅子に座って足をバタバタとしているノッブに、忙しそうにしながら適当に答えるBB。

 だが、ノッブは不満そうな顔で、

 

「集まってくるのは子供サーヴァントや金ぴかくらいだからな……あんまりおもしろくないわけじゃ。戦闘力が違う、というところじゃ」

「……金ぴかさんに堂々喧嘩を売れる辺り、流石ノッブって感じです。それなら、刑部さんとかどうですか?」

「あ~……それなんじゃけど、あやつはいつも締め切りに追われててな……なんというか、押し掛けるのは悪い気がするんじゃよ……」

「えぇ……面倒ですねこの武将……じゃあ、アナさんを呼んで遊んでてください。ついでに、アナさんは時々センパイと遊んでるので、結構強いと思いますよ。特に最近はほとんど戦闘をしてないので、大体遊んでますし」

「……それは知らんかったな……最近見ないとは思ったが、まさかそんなことになってるとは思わなんだ……うむ。なんか可哀想だから儂、ちょっと行ってくる。流石におっきーみたいのを量産するわけにはいかんからな」

「そうですね~。行ってらっしゃ~い……って、ちょっと待ってください。刑部さんみたいなのの定義って――――」

 

 どうなっているんですか。という問い掛けと共に振り返るが、既にノッブの姿はなかった。

 

 

 * * *

 

 

 工房を抜け出したノッブがアナのいる部屋に向かうと、その部屋の前で、うんうんと首をかしげて何やら考えている少女を見つける。

 

「ん。ステンノか。どうしたんじゃ? そこ、自室じゃろ?」

「あぁ……貴女は確か……信長さん、だったかしら。今、ちょっと困ったことになっていて……妹がおかしくなってしまったんです」

「いや、エウリュアレは元からおかしかったじゃろ」

「いえそっちではなく」

 

 即答で返されたノッブは、そういえば妹ではなく私と表現していたな。と思い出しつつ、

 

「それで、困ったってのは、どういうことじゃ?」

「ん~……実際に見ていただいた方が早いかと。私にはさっぱりです」

「ふむ……まぁ、見てみるとするか」

 

 そう言って扉を開けると、部屋の中は暗く、しかし奥に置かれているディスプレイで部屋は微かに照らされていた。

 そのディスプレイの前に陣取っているのは、エウリュアレやステンノとそっくりの見た目の少女と、その少女が大人になったような女性。

 言わずもがな、メドゥーサである。

 

「くっ……やりづらいですね……」

「攻撃力だけで武器を変更するからです。このゲーム、一応難易度は高い方ですからね?」

「分かってます。ただ、マスターが出来ていたので、私もできるかと思ったのですが……」

「何しとるんじゃ二人とも」

「「あっ」」

 

 不意に後ろから声をかけられ、敵の一撃を喰らって塩に変わっていくプレイヤーキャラ。

 操作していたアナとメドゥーサは声の主に目を向け、

 

「何の用ですか?」

「見ての通り、私たちは今忙しいのですが」

「いや、分かるけどな? 儂もやったしね? じゃが、ほら、あやつの目を見てたら、なんかだんだん怖くなるじゃろ?」

 

 そう言って後方を指差すノッブ。

 その方向へ視線を向けた二人は、ドアの前でにっこり笑っているステンノを見て、焦ったように素早く片付けを始める。

 そんな二人に、ノッブは、

 

「のぅ……良かったらなんじゃけど、儂の部屋に行かぬか? ちょいと暇でな……遊び相手になってくれると嬉しいんじゃが」

「えぇ、行きます。早めに行きましょう。姉様に殺される前に」

「片付けは終わらせました。では颯爽と行くとしましょう」

 

 そう言って立ち去ろうとする三人。

 だが、ステンノの魔の手がメドゥーサだけを掴み、

 

「アナは持っていって良いわ。だから、代わりにメドゥーサを貰っていくわね」

「うむ。分かった」

「去らばです。大きい私」

「そんな薄情な!?」

 

 そう言って、メドゥーサを生け贄に、ノッブとアナは逃げ出すのだった。




 私のところ、ゲームが出来そうなサーヴァントいないよなぁ……と思い、アナとメドゥーサを落としてみた……想像したら案外行けそうなのでやってみてしまったのです。

 正直、やってるゲームの内容を分かる人いるのかなって思いつつ、そもそも誰も気にしてないと考える私がいた……


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お待ちかねの魔神柱狩りじゃあ!!(わざわざ死ぬために蘇るなんて……)

※注意 レディ・ライネスの事件簿のネタバレアリ!







「ひゃっはぁ!! 魔神柱狩りじゃオラァ!!」

「彼、わざわざ蘇ってまでミンチにされに来るなんて、凄い変態ね」

「でも、私の出番はないみたいね」

 

 そう言って、遠い目をするメルトは、目の前で泣きながら宝具を撃ち続けるイリヤを見る。

 孔明によってブーストをかけられたイリヤによる砲撃は、一撃で魔神柱をへし折っていく。

 

「想像以上に強いわね……」

「私たち、後ろで見てるだけなのよね……」

「突撃してもいいんじゃない?」

「あら。じゃあ、行ってみましょうか」

「いやいやいや。ちょっと待って二人ともっ!」

 

 突然意気揚々と突撃していこうとするエウリュアレとメルトを引き留めるオオガミ。

 止められた二人はキョトンとした顔で、

 

「いや、だって、私たち、いなくても大丈夫でしょ?」

「そうよ。戦力なら別だけど、後ろにいるだけなら遊んでても良いでしょ?」

「だからって魔神柱に突撃していくのはどうなんですかね……!?」

「だって、ちょっとちょっかいかけるだけよ? 無理そうだったらすぐ逃げるし」

「えぇ。ちょっと攻撃して、怒らせるのが目的よ」

「ちょっと待って。明らかに挑発しにいくってことだよね!?」

「「えぇ、もちろん」」

 

 微笑む二人に、頬を引きつらせるオオガミ。

 そして、硬直しているオオガミに、二人は、

 

「見てるだけじゃ面白くないもの。それに、ただ見ているのなら、もっと必死に頑張ってる方がいいじゃない?」

「えぇ。安定しているのとか、見ていて面白くないもの」

「「だから、相手に喝をいれてこようかと」」

「傍迷惑な話だね!?」

 

 確かにかなり安定してるとはいえ、妨害をされても問題ないと言い切れるほどではない。

 なので、オオガミはどうしたものかと考え、

 

「うん。止めるよりは突撃させた方が良いかもだし、いってらっしゃい! 無理だったら帰ってきてね!」

「あ。止めるのを諦めたわよこの男」

「じゃあ、遠慮なく戦場を引っ掻き回すわ。援護は任せたわよエウリュアレ」

「えぇ、もちろん。任せなさい、嫌がらせに関しては負けないわ」

「……敵に回したくないチームだなぁ……」

 

 嫌がらせの女神と、ドSの女神による魔神柱イジメ。

 一切の容赦なしに蹴って、膝を打ち込んで、踵で切り裂くメルトと、メルトを狙う魔神柱の攻撃を矢を射って絶妙に邪魔していくエウリュアレに、オオガミは頬を引きつらせる。

 そして、その二人が魔神柱の意識を逸らしている間に、イリヤは着々と魔神柱を消し飛ばしていた。

 

「……まぁ、戦況に影響は無いっぽいし、帰ってきたら回復してあげるとしよう……」

 

 そう言って、オオガミは魔神柱狩りに集中することにした。




 おいしい……おいしい……そざいがおいしい……(亡者感

 ちなみに、執筆完了時点で16体討伐……もっと狩らねばなるまい……


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一体何本狩るのよ(やる気が尽きるまで)

「……何本狩るの?」

「そりゃ、やる気が尽きるまでかな?」

「100本はもう越えてるのよね……」

 

 イリヤによってバンバン消し飛んでいくバルバトスを見ながら、ぼんやりとするエウリュアレとメルト。

 魔神柱を煽るのにも飽きたので、静かに帰ってきていた二人は、他に面白いことを思い付くまで休憩していた。

 

「はぁ……終わらんなこれは」

「うぅ……私、なんでこんなに宝具撃ってるんだろ……」

「まぁ、イリヤさんはレア度に見合う強さですし、アサシン相手ならメイン運用されるのも仕方のないことと言いますか、むしろ敵が単体なのにイリヤさんを運用しない方がおかしいと思いますけど」

「言ってることが分かるようで分からない……」

 

 疲れたような孔明のため息と、宝具の反動で疲れてきているイリヤと対照的に楽しそうなルビー。

 

「というか、あっちの軍師さんは、もう目が死んでるんだけど……」

「いやぁ……大変そうですよねぇ……目が死んでますし、この秘密工房の隅っこで作った薬、一発ぶち込んじゃってもいい感じですかね?」

「ダメだよ!? というか、なんでこっちに来てまでそんなの作ってるの!?」

「それはもう、日課ですからね! むしろ、作れるだけの環境が最初から揃っていて、私の方がびっくりしましたけど。いやぁ……あんなに充実していると、もっといいのが作れそうで楽しいですよ!!」

「誰ですかそんなものを用意したのはー!!」

 

 当然、そんなものを用意するのは技術部くらいである。

 しかし、そんな事を知らないイリヤは、八つ当たりの様にルビーを魔神柱に投げつける。

 

「良いのか。ステッキを投げて」

「えっ、あ、はい! 大丈夫です! ルビーならすぐ帰って来るので!」

「だからと言って、あんな危ないのに投げられると困るんですけど……うっかり捕まったらイリヤさんも危ないんですよ?」

「ほら、こんな感じですぐ戻って来るので、問題ないです!」

「そ、そうか……ならいいんだが」

 

 困ったように笑う孔明。

 イリヤはそれに対して苦笑いをしながら、

 

「えっと、とりあえず、終わるまでひたすら倒さないといけないんでしょうか……」

「そうだな……出来ればマーリンでも引っ張って来たいところだったが、あいにく私だけで十分みたいだからな……チッ、巻き込めないか」

「あ、あはは……なんだろう、怖い先生と一緒に組まされた人みたいになってないかな、私……」

「大丈夫ですよイリヤさん! イリヤさんなら乗り切れますって!」

 

 そう言って、孔明にちょっと怯えてるイリヤを、ルビーは励ますのだった。




 もっとよこせ、バルバトス!!

 とはいえ、もう140体狩ってるんですよね……うぅむ、何本狩れるか……


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殺したかっただけで死んでほしくは無かった(ひどく悲しい事件だったわね)

「ば、バルバトスウウウゥゥゥゥゥゥ!!! なんで死んでしまったんだぁぁ!!」

「悲しい事件だったわね……」

「明らかに殺しに行っていたのに、なんでそんなに同情しているような声が出せるのか全く分からないわ」

 

 ついに滅ぼされたバルバトスに泣きながら叫ぶオオガミ。

 エウリュアレもどこか悲しげな表情だが、なぜ平然とそんな表情が出来るのか分からないメルト。

 それとは対照的に、宝具とスキルを回し続けていたイリヤと孔明は、

 

「や、やっと……終わった……」

「まさか、200体近く倒す事になるとは……精々100体くらいでやめると思っていたんだが、なんだ。切り抜けられてよかった。流石にもうおかわりは無いだろう」

 

 途中、イリヤのコスチュームが黒色(テスタメント・フォーム)に変化したが、それ以外は特に問題も無く、いたって平和に、泣きながら周回していた。

 そして、その地獄を切り抜け、今、解放されたイリヤたちは地面に横たわる。

 

「大丈夫……次は、私じゃないはずだから……」

「いや、どうでしょうね? やっぱり、カルデアの戦力的に、イリヤさんは攻撃力も宝具レベルも高いですし、次も単体アサシンなら、イリヤさんが出るしかないんじゃないですか?」

「ルビー……後で覚えててね……」

「あらら。これ以上はイリヤさんにどんな目にあわされるか分かりませんし、秘蔵のイリヤさんコレクションでマスターを買収して助けてもらうしか……」

「ちょっと待って。秘蔵コレクションって何!? どんなのがあるのよ!」

「えぇ! それはもう、あんなイリヤさんや、こんなイリヤさんの可愛い写真ですとも!! って、あれ? イリヤさん? なんでそんな怒ってるんです……?」

「ふ、ふふふ……ルビー……今日と言う今日は、本当に怒ったんだから!!」

「きゃああぁぁぁ!! イリヤさんに襲われるぅ~!!」

 

 そう言って逃げるルビーを追いかけるイリヤ。

 そんなイリヤたちを見ながら、メルトは、

 

「なんだか、あのステッキも、BBと同じくらい性格悪そうよね」

「そこまでではないと思うけど……まぁ、楽しそうで何よりだわ」

「そうね……で、そこのマスターはどうするの?」

「……とりあえず、引きずっていきましょうか」

 

 バルバトスショックで倒れているオオガミを見て、呆れたようにため息を吐くエウリュアレとメルト。

 とはいえ、急ぐ必要も無いので、しばらく休憩していてもいいか。と思いつつ、オオガミを孔明たちの近くまで引きずっていくのだった。




 193体だったかなぁ……結局、200体に届かなかったので、次回はもう少し頑張ろうかなと思ってます。ちくせう。


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帰ってきたよ~(マシュが心労で倒れたぞ)

「ただいま~」

「ん。今帰ったかマスター。心労で体調を崩したマシュの代わりに儂が来たぞ」

「あ、BBちゃんも臨時出張中です~。後でセンパイ印のお菓子ください。報酬です」

 

 そう言って、何故か他の職員に交ざって仕事をしているBBとノッブにオオガミは首をかしげる。

 

「マシュが心労で倒れたって、どういうこと?」

「それに関しては、センパイにも心当たりあるんじゃないですか? ヒントは石です」

「ごめん、心当たりしかない。すまないマシュ……」

「部屋で休んでるから、見舞いに行ってこい。んで、終わったらキッチンに行って適当に何か作って持っていけ。こやつの報酬とか、勝手に言ってるだけじゃから無視しとけ」

「あれ!? じゃあ私、何のためにこんな面倒なことをやらされてるんですか!?」

 

 ノッブの裏切りに困惑するBBだったが、オオガミは迷うことなくノッブの提案に頷き、管制室を出ていく。

 それを静観していたエウリュアレとメルトは、

 

「まぁ、ここ最近、貯まっては無くなり、貯まるかと思いきや無くなりを繰り返してたから、流石に耐えきれなくなったみたいね」

「なんでそんなに取られやすいのかしら。防犯システムはどうなってるのよ」

「マスターはシステムに引っ掛からないから、止めようがないのよ」

「素直に諦めれば良いのに」

 

 防犯も何も、所有者はオオガミなので、自由に取り出し出来るので、マシュによる物理的防御がなければ普通に持っていかれる。

 なので、防護など無いのだが、貯蓄しない主義のオオガミが不安でしょうがないので、マシュは自分が管理しようと躍起になっているのだった。

 とはいえ、それが実を結んだことがないのは周知の事実であった。

 

「さて、BB。仕事も終わったことじゃし、食堂に行こう。儂、南国風のパンケーキを食いたい」

「あれ、結構量があると思うんですけど……あ、引き継ぎデータは置いておくので見てといてください。じゃあ、行きますよノッブ」

「うむ。エウリュアレとメルトも行くじゃろ?」

「えぇ。行くわよ」

「最近、BBと行動しているのが不満だけど、まぁ良いわ」

「なんですか。そんなに不満なら帰っても結構ですからね。私は断固帰りませんけど」

「あら、私も帰るつもりはないけど。早く行くわよノッブ」

「お、おぅ……儂らをお主らのいざこざに巻き込むんじゃないぞ~」

「巻き込むならマスターにしなさいね。面白そうだから私も見に行って上げるわ」

 

 そう言って、互いをにらみ合いながら進んでいくBBとメルトの後ろを、ノッブとエウリュアレはついていくのだった。




 最近ガチャを回し続けるから……


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やっと帰って来れたよぉ……(イリヤ、お疲れ様)

「うぅ……やっと帰って来れたぁ……」

「イリヤ……っ!」

 

 部屋に帰って来るなり、倒れるイリヤを支えに行く美遊。

 クロエはそれを見て、

 

「随分とボロボロね……何があったの?」

「それはもう、壮絶な戦いでした……あ、録画しているので見ます?」

 

 そう言って、イリヤの影から現れるルビー。

 それに対してサファイアが、

 

「姉さん……また余計な事をしてませんか?」

「酷いッ! 私がそんな事をするとでも!? ちゃんと健全に録画しましたとも!」

「そう言う事が聞きたいんじゃないと思うんだけどなぁ……」

「そうです。みなさんに迷惑をかけてたりしないか心配で……」

「も~。サファイアちゃんは心配性なんですから。ちゃんと敵に嫌がらせの限りをしてきましたとも!」

「下手に活躍してきたって言われるより説得力があるのは何でかしらね……」

 

 苦笑いで言うクロエに、同意するように動くサファイア。

 それに対してルビーは、やれやれと言いたげに動くと、

 

「クロエさんは一言多いと思いますよ? 論より証拠。ささ。上映しちゃいましょう」

「うん。イリヤの活躍、この目に焼き付けないと」

「えっ、ちょ、ルビーダメぇ!! あんなの見せられないからぁ!!」

 

 そう言って今まさに上映を始めようとするルビーを止めようとするイリヤ。しかし、

 

「って、あれ!? 美遊!? なんで止めるの!?」

「たとえイリヤでも、今だけはルビーの邪魔はさせない……それに、私の意志で一緒に戦えるわけじゃないから、せめてイリヤの活躍を見たい」

「あぅ……そんな真っ直ぐな目で見られるととっても困るんだけど……で、でも。やっぱりアレは人に見せられるものじゃないし……うぅ、どうすれば……」

「なんてイリヤさんが悩んでる間に上映準備完了! 初戦から決着までのベストシーンを切り取ってのここにしかない完全版! 休憩中のイリヤさんのあんな姿やこんな姿も見れるかも!? 始まり始まり!」

「題名からして嫌な予感しかしないんだけどぉ!?」

 

 明らかに何かを企んでいるであろうルビーに嫌な予感を感じたイリヤが阻止しようとするも、美遊の妨害によってそれも出来ず、上映会は始まるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ブラックじゃない。よく生き残れたわね」

「酷い……マスターに抗議してこなきゃ……」

「美遊の目が怖いんだけど!! 待って美遊! 今行ったら帰って来れなくなりそうだから待って!?」

 

 必死の形相で美遊を止めるイリヤ。

 ひたすらに魔神柱を破壊し続ける戦いに、だんだんと目の色を失っていき、イリヤがテスタメント・フォームになった辺りで越えてはいけない一線を越えたかのような雰囲気を感じたイリヤ。

 どうにかして美遊を落ち着かせたイリヤは、

 

「だ、大丈夫だから。次は無い……と、思うから、安心して?」

「……次があったら、その時は私もついて行く」

「えっ」

「そうしたら、安心できるから」

「えっ」

「そうね。美遊がいるなら安心じゃない。その時は私もついて行くけど」

「おぉっ! 久しぶりに魔法少女全員出動ですね! その時を楽しみに待っているとしましょう!」

 

 困惑するイリヤを置いて決定してしまう魔法少女部隊。

 とはいえ、逆の立場なら自分も同じことをする可能性があるので、そこまで強く否定できないのが困ったところだった。




 オオガミ君の知らない所で修羅場は起こるさ。背後に気を付けないと唐突に刺されそうだな……

 久しぶりに三人同時に出せて満足……


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散財癖を何とかしてください(前向きに検討するように善処します)

「はぁ……先輩はもう少し使わないでおくというのを覚えてほしいです」

「まぁ、うん……反省します」

 

 復活したマシュに叱られるオオガミ。

 だが、マシュはすぐに表情を変え、

 

「でも、帰ってくるなり私の様子を見に来てくれたというのを聞いたときはちょっと嬉しかったです」

「えっ、あ、うん……まぁ、心配だったしね」

 

 そう言って目を逸らすオオガミ。

 自覚があるからこそ、なんとも言えない表情になっていた。

 

「そういえば、BBさんと信長さんはちゃんと仕事をしてくれてましたか?」

「うん。ちゃんとやってたよ。倉庫整理も管制室も。しばらくは休んでて良いんじゃない?」

「そういうわけにもいきません。休むとやり方を忘れてしまうので……」

「そう? まぁ、止めはしないけど……無理はしないでね?」

「はい。無理はしませんよ。では、倉庫の確認からいってきますね」

「うん、行ってらっしゃい」

 

 そう言って、マシュと一緒に部屋を出るオオガミ。

 そして、マシュが見えなくなった辺りで、

 

「さて、食堂に向かいますか」

「そうね。ノッブとBBが待ってるもの」

「どこで待ってたんですか女神様」

 

 食堂に向かおうとするオオガミの後ろから現れるエウリュアレ。

 大して悪びれた様子もなく、むしろ上機嫌で、

 

「最初から、かしらね。メルトは置いてきたわ。大人しく待ってるような子でもないでしょ?」

「それ、魔神柱戦の時の自分に言ってやってくださいよ」

「でも、多少のアクシデントがある方が楽しいでしょ? というか、その他人行儀なのを止めて。噛み付くわよ」

「吸血する気……?」

「……考えなかったけど、してほしいの?」

「あぁ、いや、何でもない。何も聞かなかった。良いね?」

「無理な話ね。そういうの、私が大好きだって知ってるでしょ?」

「……あぁ~……がんばれ~、明日のオレ~……」

 

 遠い目をしたオオガミは、舌舐めずりをして楽しそうに笑うエウリュアレを見て、抵抗することもなくその襲撃を受け入れた。

 

 

 * * *

 

 

「で、マスターはエウリュアレのせいで瀕死ということか」

「なんで今日に限ってそんな事をしたんですか……アビーさんが連れてこなかったらセンパイ、死んでたんじゃないですか?」

「反省してるわよ……興が乗ったと言うか、舞い上がってたと言うか……それもこれも、魔神柱のせいよ。レイドなんてして、気分を上げさせるから……」

「気持ちは分かるわ……何が酷いって、目の前で戦ってるのに、参加できないってところよね。えぇ、分かるわ」

 

 そういう彼女たちは、いつもの工房で死にかけていたオオガミを治療していた。

 反省しているエウリュアレに、BBは、

 

「とりあえず、看病はエウリュアレさんがやってくださいよ。私たちもそんなに暇じゃないですし」

「えぇ、分かったわ。この私の完璧な看病を見せつけて上げるわ」

「フラグにしか聞こえんのじゃが……」

 

 エウリュアレの不穏な発言に全員は不安になるも、オオガミの容態が安定した辺りで、一時解散となるのだった。




 これは……イチャイチャ判定で良いの……? あ、アウト……?


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マスター、大人気だわ(一応重症なのだけどね?)

「で、どうしてこうなってるの?」

「私は止めたわ。結果は見ての通りだけど」

 

 そういうエウリュアレとアビゲイルの視線の先にいるのは、子どもサーヴァントに身動きを封じられたオオガミ。

 血が足りなくて寝ているところに襲撃され、しかもそのまま全員寝ているので、ピクリとも動けない状況だった。

 

「……明後日にはイベントが終わるから、たぶんそのあとなら一週間くらい遊べるよって言ったらこうなった」

「懐かれてるのね」

「でも、私が飛び付く場所が無くなっちゃったわ」

「どさくさに紛れて何言ってるのこの子は」

 

 うずうずとしているアビゲイルに、思わず突っ込むエウリュアレ。

 とはいえ、エウリュアレも同じ事を思っていたりするのだが、わざわざ突撃するほどではないのだ。

 

「というか、メルトさんは? 一緒じゃないの?」

「あぁ……メルトは周回よ。アサシン相手だし、問題ないとは思うけどね。指揮は孔明だし、大丈夫じゃないかしら」

「前線に出なくても、後方で戦うことになるのね……公明さん、休める日は来るのかしら」

「さぁ? イベントが終わったらじゃないかしら。暇な時間はスカディと巌窟王がメインだもの」

「そう……私、マーリンさんが戦ってるの、滅多に見ないのだけど」

「それはそうよ。だって、周回には向かないもの。高難易度向けよ」

「そうなの?」

「そこで埋まってるのがよく知ってるわ」

「……トゲがあるんですが、何でだろ……」

 

 やっぱり抜け出すだけの体力はないのか、動かずに話すオオガミ。

 エウリュアレはやれやれと首を振ると、

 

「別にそんなの無いわよ。で、起きたいの? それとも寝てるの?」

「お腹空いたので起きたいんですが……」

「分かったわ。じゃ、アビーお願いね」

「そこで私に振るのね……」

 

 そう言って、渋々と門を開くアビゲイル。

 全員送ったのを確認した後、エウリュアレは、

 

「何を食べるの。持ってくるわよ」

「普通に食堂に行くから……」

「そう。じゃあ――――」

「そんなセンパイにプレゼントー!」

 

 突然壁に開かれた門から飛び出てくるBB。

 そして、そんな彼女が押しているのは、どう見ても車椅子だった。

 

「いやぁ、ギリギリ間に合いましたね。センパイが食堂に行く前に完成させられて良かったです!」

「何しに来たのよ」

「いやいや、エウリュアレさん。どうしたも何も、今まさにエウリュアレさんがその肩を貸して食堂に向かうと言う、オトコノコ的に致命傷な行為をする前にBBちゃんが助けに来た次第です! ささ! 早く座ってください!」

「嫌な予感しかしないけど……まぁ、座るしかない……」

 

 そう言って、ふらふらしつつもなんとか座るオオガミ。

 しかし、だ。果たして誰がその車椅子を押すのか。そこまでは意識が回らなかったオオガミは、その代償を即座に払うことになる。

 

「じゃあ、飛ばしますよぉ!」

「えっ、ちょ、速いんだけどぉ!?」

 

 急加速急旋回。息を吐かせる間も無くオオガミを連れ去るBB。

 その一部始終をポカンとした顔で見送った二人は、すぐに我に帰ると、急いで追いかけるのだった。




 展開に困ったらBBを出せばお茶を濁せると思っているのが私です。この暴走は、誰にも止められない……(制御不能


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一方的に蹴り殺せた快感(犠牲は大きかったがな)

「ふふっ……ほぼ一方的に蹴り殺せるのは気持ちがいいわ」

「そのために、割と被害は出たがな」

「もう今更一度や二度程度で私の心にダメージは無い。ふふっ。これが成長というものか」

 

 生き生きとしているメルトとは反対に、死んだ目をしている孔明と遠い目をしているスカディ。

 高難易度を全力で蹴り飛ばして帰って来た三人は、

 

「そういえば、二人はいつもどんなふうに過ごしてるのかしら。周回でしか会わないから、ちょっと気になってたのよね」

「私は基本部屋で過ごしているが、周回に良く駆り出されるからな。最近はあまり部屋に帰らずに、休憩室にいる」

「私は食堂にいるぞ。あそこはアイスが置いてあるからな。うむ。もう周回してないでアイスばかり食べていたい」

「部屋に帰れないくらい忙しいって大変そうね……私も人の事言えないけど」

 

 二人の状況に同情しつつも、自分も似たような所があるので何とも言えない。

 

「そういうお前はどうなのだ。私たちとは違う理由で振り回されてる気がするが」

「私は……そうね。もう部屋がフィギュア部屋になったわ。今マスターの部屋にいるもの」

「あそこは危険地帯と有名だが、ちゃんと過ごせるんだな……」

「私は一度も行ったことが無いから知らんが、なんでそう呼ばれているんだ……?」

「あ~……何となくだけど、マスターの周囲が無茶苦茶恐ろしいからじゃないかしら……BBなんか、最近障害物すら無視しに来てるもの……」

「アビゲイル嬢みたいに門を使うと聞いたが……まさか本当なのか?」

「水着に変わったときからずっと使ってる。あれは敵に回すと厄介だ……」

「結構使ってるからてっきり貴方も知ってると思ったけど。まぁ、事実よ。使い方はやっぱりBBの方が悪質だけど」

 

 そう言って、苦い顔をするメルト。

 すると、

 

「全く……なんで私がメルトを探しに行かなきゃならないんですか……相性悪いのはセンパイも知ってるはずじゃないですか……」

「噂をすればなんとやら、ね」

「あぁ、全くだ」

 

 嫌そうな顔で歩いてくるBBを見て、苦い顔をするメルト達。

 そんな三人を見つけたBBは、

 

「あぁ、いましたいました。っていうか、なんでみんな嫌なものが来たみたいな顔をしてるんですか」

「今貴方が言った通りよ。噂をしてすぐに来るなんて、どこかで聞いてたんじゃないの?」

「えぇ~……センパイに言われて嫌々探してたのに、まさかそんなこと言われるとか思わなかったんですけど……BBちゃん心外です」

「日頃の行いをもっと見直しなさい」

「もう言われ慣れてきたんですけど……最近結構頑張ってる様な?」

 

 首を傾げるBBにメルトはため息を吐き、

 

「まぁいいわ。マスターが呼んでるなら、さっさと行くわよ。じゃあね。話が聞けて良かったわ」

「あぁ。こちらもいろいろ聞けて良かった」

「食堂に来ればアイスをいくらでも用意するぞ」

「えぇ、またね」

 

 そう言って、BBを急かしつつ去って行くメルト。

 孔明とスカディはそれを見送ってから、各々の目的地へ向かうのだった。




 高難易度はメルトでぶっ飛ばしました。やっぱりメルトは最強だなって!(錯乱


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イベントお疲れ様~!(全回収は出来なかったけどね)

「イベント終了! お疲れ様~!」

「結局一個だけ素材回収出来なかったわね」

「直前にやる気だしても、突然900個とか、正気じゃないと思うの」

 

 イベントが終わり、気が楽になったオオガミ達。

 若干の取り逃しがあったが、一応完走できたので良しとする。

 

「さてと……これでしばらくは暇ね。久しぶりに部屋で休もうかしら」

「たぶん、部屋ってマスターの部屋よね……なんというか、マスターはお部屋が狭くないのかしら」

「部屋よりも、寝るときベッドが狭くて困ってるけどね……夏とか、考えただけで死にそう……」

「ベッドを広くしてもらえばいいじゃない。どうせBB達に頼むんだし、さっさと注文しに行きましょ」

「エウリュアレさん、若干不機嫌なのかしら」

「むしろ機嫌が良いと思うけどね。あんなに乗り気なのは珍しいし」

 

 そんな会話をしながら、先を歩くエウリュアレに追い付くために、二人は駆け足になる。

 

 

 * * *

 

 

「やっぱりサイズ小さいんじゃないですか……エウリュアレさんが出ていかないなんて、分かりきってたと思うんですが」

「そう思うんならもう一段階大きいやつを作ってくれても良かったんじゃないかなって」

「誰がが原因ですか~。そこの部分わかってますか~?」

「くっ、反論できないのが悔しい……!」

 

 頼みに行き、すぐにBBに正座をさせられて怒られるオオガミ。

 前回頼みに行った時に注意されたにも関わらずすぐに来たので、ぶつぶつと文句を言われていた。

 

「それで、結局作ってくれるの?」

「作りますけど、次は無いことを祈ります。というか、三人が乗るって、結構大きいベッドなんですけど……」

「まぁ、時間はかかると思ってるし、夏までに出来てくれれば良いわ」

「夏までですか……ん~……まぁ、出来ると思いますよ。今残ってるのは趣味工作ですし、後回しにしちゃえばいいですからね。今月中に終わらせておきますよ」

「やった! これで地味な息苦しさから解放される!」

「センパイは反省してください」

「へぶっ!」

 

 反省しているように見えないオオガミに軽く蹴りを入れるBB。

 

「マスター、たまにわざとやってる気がするのだけど、気のせいかしら」

「何言ってるの。6割本気よ」

「半分以上は本当にやってるのね……」

「むしろ4割わざとなんですか……どういうときがわざとなのかちょっと知りたいところですけど、とりあえずベッド作りのためにノッブ呼んできますね」

「あぁ、それはこっちで声をかけておくよ。じゃあお願いね」

「分かりました。進捗は不定期で送りますね」

「分かったわ。じゃあ任せたわよ」

「お願いします、BBさん」

 

 そう言って部屋を出ていったオオガミ達を見送るBBなのだった。




 ネタがそろそろ切れそうな拙作ですが、どうぜぐだぐだなのだから問題ないのではと錯乱する今日この頃。


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日常
菓子の取り合い(なんで私もいるんでしょう……)


「さて……今日はマスターが菓子当番。故に、今が襲撃時ということだ」

「ふぅん? 普通に貰ってくればいいんじゃないですか?」

 

 食堂の机に隠れつつ厨房を覗くバラキーとカーマ。

 平然と言うカーマは、しかし、オオガミのお菓子希少性を知らない。

 

「そんなに簡単に手に入るのなら争いは起こらん……マスターの菓子は美味いが、ほとんどエウリュアレが持っていくからな……めったに手に入らない事で有名なのだ……この前のホワイトデーとやらは、珍しく菓子が配られた……そのせいで求める者が増え、今や出来上がるまでのこの時間は空気が針のように刺さる……」

「なんだか面倒そうですね……というか、そんなに美味しいんですか……ちょっと気になります」

「アビゲイルやナーサリーの茶会に出たなら口にしているかもしれんがな……なぜ奴等が許されるのに吾は許されぬのか。不思議でならぬ」

「目的の違いですかね……まぁいいです。それで? 今は何をしてるんですか」

 

 ため息混じりに聞くカーマ。

 それに対してバラキーは思い出したように、

 

「あぁ、そうだ。菓子が出来ると同時に取り合いが始めるから、教えておこうと思ったのだ。取り合いといっても、ルールは存在する。第一に、菓子を手にした者への攻撃はなし。これを禁止せねば、菓子を取ったものは安心して食えんからな……吾も怯えながら食いたくはない。次に、一人一袋までだ」

「袋? 小包にされてるんですか?」

「うむ。最近まではしていなかったが、ついに実装された。なんせ、一枚一枚を取り合いをしていたら苦労のわりに成果が少なくて泣けるからな……」

「なるほど。まぁ、納得です。他にはあるんですか?」

「うむ。最後に、死人を出すな。だな。気絶はいいらしい。最終的に意識を刈り取ったもの勝ちなのだが、まぁ、それほど簡単でもない」

「そうなんですか……ちなみに、監視役とかいるんですか?」

「いるぞ。エルキドゥだ」

「……正直、一回も戦ったことがないので、どれだけヤバイのか分からないんですが……」

「神性はかなり相性悪いぞ……何せ拘束されるからな。吾は神性無いけど思いっきり締め上げられたからな……まぁ、一度身をもって体感した方が早いと思うがな……」

「アバウトですね……」

 

 そんなやり取りをしていると、厨房から袋詰めをしているような音が聞こえてくる。

 

「むっ。そろそろか……行くぞカーマ。吾らの菓子のため、今こそ死力を振り絞るとき!」

「絶対使い道間違えてますって。ちゃんとタイミングを考えましょうよ」

 

 しかし、そんなカーマの心配はバラキーには届かず、いくつもの袋をかごに入れたオオガミによる開始の合図と共に、取り合いが始まるのだった。




 イベントが無い空白期間最高……種火集めよ……


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どうしてすぐ殺伐とするのか(自分の言動を振り替えって?)

「あら、アンリじゃない。何をしているの?」

「そのふてぶてしい感じ……エウリュアレだな? これはちょっと自信あるぜ」

「射殺すわよ」

「ちょいと殺伐すぎません? えっ、どっちか当てようとしただけで殺されかけるのかオレ」

 

 返した言葉が殺意で返ってくる状況に困惑するアンリ。

 とはいえ、本気で言っているというわけもなく、そうなるかもしれないという予想はあった。

 ただ、エウリュアレは似たようなことを時々してくる誰かさんを知っているので、表面上は怒りつつも、あまり腹を立ててはいない。

 

「それで、何の用ですかね。この吹けば消し飛ぶ最弱英霊さんを捕まえてさ」

「用って程でもないのだけど、普段何をしてるの?」

「おっとお嬢さん。そりゃ禁句ってもんだ。うっかり口にした瞬間、オレは詰みだからな。どこからあの触手が出てくるか分かったもんじゃない。もうなんか監視されてる感じすらあるからな」

「ふぅん? じゃあ問題ないわね。どこで遊んでるの?」

「人の話を聞いてましたかねこの女神サマは!」

 

 どこが問題ないのかと憤慨するアンリ。

 だが、エウリュアレはどこ吹く風で、

 

「そう……教えてくれないなら別にいいけど。だってほら、教えてくれないってことは、見かけ次第連れ回していいってことでしょう?」

「横暴すぎる……!」

「あら、何を言ってるの。神は何時だって横暴で身勝手よ。何処の神だって同じでしょう?」

「あんたらのところは筋金入りだがな……はぁ。別にいいけど、どこに行くってんだ?」

「休憩室。ゲームの相手をしてほしいの」

「はぁ? そんなの、マスターにやってもらえばいいだろ? オレがわざわざ行く必要あるか?」

「無理よ。ついていけないもの。レベルが違うって言うのかしらね……とにかく、無理よ」

「あ~……言いたいことは何となくわかる。しゃあねぇな。付き合ってやるとしますかー」

 

 そう言って、二人は休憩室に向かうのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ってことで、連れてきたわよ」

「嵌められた……! 完全に罠だった……!!」

 

 そう言ってうずくまるアンリを囲むのは、エウリュアレを含め、メルト、アビゲイルの三人。

 

「逃がさないから覚悟しなさいよね?」

「逃げられないようにしなくちゃ。えぇ、えぇ。頑張るわ」

「努力の方向性間違ってませんかねぇ……!」

 

 そう恨み言を漏らすアンリだったが、

 

「ほら、そんなこと言ってる暇ないわ。マスターが帰ってくるまでしか出来ないんだから、さっさと始めるわよ。アンリも、そんなに時間は取らないから準備して」

「……切り替え早すぎるだろ……いや、助かるけどな?」

 

 そう言いながら、三人に混じってゲームの準備を始めるアンリ。

 この女神達、わりと現代に順応しているよな、という思いを心に秘めるアンリなのだった。




 オオガミ君関連で神性を持ってないのはマシュとノッブしかいないんじゃないかということに気づいた私です。あれ、前も同じ事を言った気がする……

 空白期間って、実はあんまりネタがないので虚無ってたりします。


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いつもと同じだけど、いつもと違う(久しぶりにイタズラでもしましょうか)

「おはよう、マスター」

「……おはよう。メルトは?」

 

 目を覚ますと、紫髪の少女がそこにいた。

 メルトの姿が見えないので不思議に思い聞くと、

 

「えっと……たしか、食堂に行ってくると言ってました」

「そう……なら心配ないかな。さて、ステンノ様。今日は何をしに来たの?」

「あら、面白くない人。何時から気付いていたの?」

 

 紫髪の少女もとい、ステンノは不機嫌そうにそういう。

 

「何時からって聞かれても、最初から、としか。雰囲気が違いますし」

「そう……ところで、ずっと疑問だったのだけど、どうして私には敬語なのかしら。私、ちょっぴり傷付いてるわ」

「なぜ……なぜか……うぅむ、あんまり気にしてなかったから、それと言った理由はないんですけど……」

「あら。じゃあ、敬語じゃなくなっても問題ないわね。そうしましょう。いえ、そうしなさい」

「ずいぶんと横暴な……いや、何でもないです」

 

 ステンノに笑顔のまま睨まれ、目を逸らすオオガミ。

 器用なことをするなぁ。なんて思いつつ、

 

「というか、本当に何をしに来たの?」

「あら、そうだったわ。気付いたのなら教えてあげなくちゃよね。これは(エウリュアレ)に言われてやってるだけよ。何となく面白そうだから入れ替わってみたの。(エウリュアレ)はメルトと一緒に食堂へ行ったわ。さぁ、私たちも行きましょう?」

「なんだか嫌な予感しかしないけど、行くしかないんだよね。分かってる。よし、行こう」

 

 オオガミはそう言うと、ステンノと一緒に食堂へ向かうのだった。

 

 

 * * *

 

 

「「あらマスター。おはよう」」

「……おはようエウリュアレ。なんだか二人に見えるね?」

 

 食堂にたどり着くと、なぜか二人いるエウリュアレ。

 遠くでアンリが笑っていることから、少なくとも片方は偽物であることがわかる。

 

「二人に見えるというか、事実二人なのだけど、そうね。どっちかが新シンよ。さぁ、どっちかしら」

「前にも似たようなことがあった気がするんだけどなぁ……気のせいじゃないよなぁ……」

「ほら、早く答えを言いなさい。ふふっ。ちゃんと当てられるか楽しみだわ」

 

 そう言って笑う二人のエウリュアレ。

 ぼんやりと周囲を見渡すと、メルトにアビゲイルとロビンさん、ジャックとジャンタとバニヤンに、アンリ。

 そして、最後に二人のエウリュアレに視線を戻し、

 

「右が新シンさんで、左がナーサリー。で、エウリュアレはたぶんアビーの後ろ辺りじゃないかな。最初から一緒にいた可能性も無くはないけど、たぶん低いと思う」

 

 そう言って、二人のエウリュアレを見るオオガミ。

 すると、二人とも苦笑いになると、

 

「正解だ。見破られないと思ったんだけどなぁ……」

「残念だわ。マスターを騙せると思ったのに。やっぱり、エウリュアレさんには勝てないみたいよ」

「いや、正直ロビンさんがいてくれなかったらちょっと分かんなかった。だってほら、ロビンさんがマント持ってないからさ……」

 

 オオガミがそう言うと、全員一斉にロビンを見て、

 

「そう……やっぱり追い出しておくべきだったわね」

 

 そう言って、アビゲイルの隣に現れるエウリュアレ。

 ロビンは顔をひきつらせると、

 

「あれあれ? ちょっと待て。何これ、オレが悪い感じ? マジで? 宝具まで貸したのにか。ウルトラ運がねぇじゃねぇか……!」

「総員、捕獲!」

 

 エウリュアレの号令と共に拘束されるロビン。

 オオガミはその光景を見つつ、隣のステンノに、

 

「で、なんでこんなことを?」

「あら、知らないの? 少し前にあった虚月館みたいなイベントが来るって聞いて、みんなで準備したのよ。すぐに見破られたけど。準備期間は短かったし、仕方ないかもしれないけど」

「あぁ……謎解きイベント……なるほどね」

 

 オオガミそう言って、一人納得するのだった。




 謎解きイベントですってよ奥さん。私、前回醜態を晒したので今回は黙っといた方が賢明なんじゃないですかね?
 でもしゃべっちゃう! 私ですから!


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惑う鳴鳳荘の考察
映画撮影かぁ……(今回はどんな謎解きかしらね)


「映画……映画かぁ……ビデオカメラ……いいよねぇビデオカメラ。どう思う?」

「撮りながら聞かないで。何となく壊したくなっちゃうわ」

「ビデオカメラにトラウマでもあるんですか……」

 

 どことなく不機嫌そうなエウリュアレを見て、仕方ないと思いビデオカメラを別の方向へ向ける。

 その先にいた邪ンヌはエウリュアレの何倍も不機嫌そうにしていた。

 

「あ、メインみたいにドヤ顔かまして配役の一人だった邪ンヌさん。気分はいかがです?」

「これが嬉しそうに見えてんのなら、今すぐ眼科に行くべきよ」

「おっと。地雷を踏んでしまったみたいだ。ところで、いつまで水着なんです?」

「じゃあさっさと本来の霊基を召喚してくれるかしら! 一年中水着の気持ちがわかる!? 意外と寒いわよ!?」

「むしろ意外とで済んでる辺りさすが英霊だよね。極寒地獄ですよ冬とか特に」

「だから通常霊基が欲しいのですが! 冬のためにコートのひとつでもくれない!?」

「まぁまぁ。これから夏だし、今からコートとか、むしろ変態だよ?」

「冬支度なのですが!?」

 

 おそらくこれからも水着で居続けるであろう邪ンヌに涙を流していると、後ろからつつかれる。

 振り向くと、そこにはアビゲイルがいた。

 

「ま、マスター……もしかして、それ、ビデオカメラというものかしら!」

「うん。貰い物だけどね。イベントが終わっても使えるならホームビデオみたいのでも作ってみようか」

「あら、それはいい提案ね。それなら映っても良いかも」

 

 そう言いながら、アビゲイルの腕抱き付くエウリュアレ。

 

「……今さらだけど、エウリュアレって本当に小さいよね。何となくお姉さんっぽくしてるけど、身長だけならアビーの方がお姉さんだよね」

「あら。身長だけが姉の条件だと思わないことね。もしそうなら、メドゥーサが姉みたいだわ。次言ったら血を抜くわよ」

「つい最近起こった悲劇を話題に出してくるなんて……めちゃくちゃ想像できるから止めてほしいんですけど」

 

 ふふふ。と不敵に笑うエウリュアレに、オオガミは苦い顔をしつつ、

 

「まぁ、エウリュアレは事実姉としての威厳があるし、アビーが妹になるのは避けられない事実だよ」

「あ、あれ? それ、良いことなのかしら……なんとなく、負けてるって言われてる気がするのだけど……」

「妹には妹の魅力があるよ。うん。アナとかに相談してみたらいいんじゃないかな。あとルビー」

「なんでかしら。ルビーさんだけは絶対にダメな気がするわ」

 

 そう言って困ったような顔をするアビゲイルに、エウリュアレも頷くのだった。




 短すぎて続きが気になって悶絶してる私です。ちなみにガチャはまだ出来ません(吐血

 エウリュアレがカメラを苦手としてる理由は実はそんなになかったり。でも、気が乗らない時ってありますよね。


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目を開けるだけで印象変わるよね(それほどまでに酷いのでしょうか)

「うわその目こわっ」

「私は悲しい……目を見開いただけで怖がられてしまった……」

 

 ポロロン。と響く琴の音色。

 一瞬だけ開けられた目に思わず声を出してしまったオオガミだが、敵としてなら何度か開けられた目を見ていたような気がするな、と思い、少し反省する。

 

「しかし、迫真の演技だったね。さすがトリ。メルトに褒められるだけはあるよね」

「どうしてでしょう。褒められているような気もしますが、それ以上にマスターの目が怖いような……」

「いやいやそんなこと無いって。まぁまぁ。闇打ちはしないから」

「とても不安でしかない……」

 

 再び、ポロロン。と響く音。

 そんなところにやって来たメルトは、

 

「マスター、エウリュアレに呼ばれてきたのだけど……どうやらトリと話してたみたいね。邪魔したのなら帰るわ」

「エウリュアレに呼ばれてって、どういうことなの……?」

「知らないわよ。久しぶりに一人だから遊んでたのに、急に呼び出されてきたのよ? しかも、来たらトリと話してるし、訳が分からないわ」

「な、なんかごめん……とりあえず、呼び出した張本人であるエウリュアレに文句を言いに行くしかないかな。じゃあねトリ! 次も迫真の開眼、よろしく!」

「演技ではなく開眼を要求されるとは思いませんでした……」

 

 そう言って、本日三度目のポロロンを聞きながらその場を離れるオオガミとメルトなのだった。

 

 

 * * *

 

 

「呼んだ理由? そうそう。ウノをやってみようと思って。あんまりカードゲームで遊んだこと無いし、良いかなって。どう? やらない?」

「……そうね。ちょうど退屈してたし、いい機会だわ。やるとしましょう」

「まぁ、今は休憩時間だしね。次の撮影までなら遊ぶよ」

 

 そう言って、輪の中に入るオオガミ達。

 エウリュアレ以外にも、アビゲイルと邪ンヌがいた。

 すると、アビゲイルが、

 

「あら、マスターは撮影開始前にマシュさんが立ち回りの説明をするって言ってたわ。アドリブなのだし、頑張ってねマスター」

「ありがとうアビー。殺されない程度に頑張るよ……」

 

 オオガミはそう言って、ぐっと親指を立てる。

 エウリュアレはため息を吐きつつ、

 

「それにしても、即興とは思えない完成度ね。実は最初から想定してたんじゃないの? 作家さん?」

「バカ。あんな大手が書き上げるのよ? 演じられるってだけでもビックリよ。代筆とか、考えるわけ無いでしょ」

「まぁ、そうよねぇ……でも、うまく出来てると思うわ。今のところは。名探偵の流れはちょっと張り切りすぎてた気もするけど」

「私もそう思うけど、何しろこっちは素人。演じるなんて縁の無かった連中ばっかりよ。我が強いのがほとんどなのに、よくここまで何もないって思うわ。本当、不気味なくらいにね」

 

 そう言って、ずっとシャッフルしていたカードを置く邪ンヌ。

 

「それで、ルールは?」

「さっきBBから聞いたルールで良いかと思ってるわ。ドローの連鎖で大量のカードを引くマスターを見てみたいもの」

「おっと。エウリュアレの目が怖いぞぅ……?」

 

 そう言いながら、エウリュアレは全員にカードを七枚配るのだった。




 トリ……お前、目を開ける時って、平和回の時は基本笑わせに来るよね……でも見た目がかっこいいのが悔しい……中身はアレなのに……

 あ、私はトリのこと、スッゴい苦手です。6章とCCCの時の苦しみは忘れない……


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結局、何を推理すれば良いのよ(今のところ問題が行方不明)

「はてさて……以蔵さんが重役ね……」

「顔が隠れてたっていっても、それだけで記憶喪失と繋がるかしら」

「というか、絵師はどこに行ったのよ。毒殺の原因は絵の具じゃないかと言ってたじゃない。そこの部分はどうするの?」

 

 ぶつぶつと議論するオオガミ達。

 とはいえ、代案がないので、はっきりと言えるわけでもない。

 

「というか、殺人事件で殺陣っているかしら。もっとこう、暗殺的なそれで行くんじゃないの? 普通は」

「まぁ、錯乱した相手ってことにすると、大抵殺陣が必要になるんだけど……なんとなく、そういうのじゃない気がするよねぇ……」

「……で、そっちの考察は?」

 

 そう言って、通信の向こう側で考え込んでいたBBに尋ねるエウリュアレ。

 

『そうですねぇ……まず、大前提として、殺人事件になったのはたぶん故意ではないと思いますが……まぁ、それを置いておくとして、現状の矛盾点は絵の具ですね。サラザールさんが館の使用人なのだとしたら、絵の具を事前に用意すると思うので、わざわざ絵画から取る必要もないかと。殺陣自体は冒頭でやってるので何とも言えませんが、そのままで行くと王様以外のストーリーは掘り下げられないのではないかと。すべての配役に意味があるという前提でしたら、そこも問題じゃないですか?』

「……真面目に分析してるのね。意外だったわ」

『まぁ、あんまりない経験なので、ちょっと楽しんでたりはします。録画機までフル活用して頑張って考察中です』

「そ、そう……ちなみに、犯人の予想は?」

『犯人の予想って……今のところそこまで考えてませんけど、トリさんの役は探偵なので、トリさんと助手のマシュさんは一応除外ですかね……あと、邪ンヌさんは語り手側だと思うので……あ、いえ、どうでしょう。犯人視点の推理ものもありますし、無いとも言いきれませんか』

 

 う~ん、と唸って再び考え始めるBB。

 オオガミはそれを聞きつつ、

 

「本編入り方が邪ンヌメインだったから、最後まで邪ンヌ視点で行くと思ったけど……冒頭の以蔵さんの妹食わせて行く必要があるという発言。そして、式部さんは養子……とすると、おそらく妹は式部さんで、サラザールさんが記憶を失い使用人になってるってのは、教授の計らいかな……難しい問題だ……」

「そもそも、自由に動いてるのに整合性が取れるのかしら。わりとめちゃくちゃじゃない?」

「それを言ったら終わりよ。最終的に丸く収まれば良いのだし、多少の整合性はずれてても問題ないんじゃないかしら」

 

 メルトの前提を破壊するかのような発言に、エウリュアレはため息を吐いて首を振りつつ、そんなことを言うのだった。




 これ、普通の犯人当てと違って、ストーリーを読み解くために、キャラクターの性格を読まないといけない不思議……なんというか、キャラ情報だけで犯人当てをしてる気分……氷◯で見たことある気がする……


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果たしてラストをどうするか(結果はいつも一つよ)

「ん~……考察による最後の演出を決める投票だったか……正直どれも捨てがたい」

「マスターが犯人役ね……面白そうね。良いわよ邪ンヌ。私は採用するわ」

「よしっ! アンタの賛同を得られた時点で私に投票されるのは確実ね」

「ちょっと待って結論出すの早すぎじゃない?」

 

 誰の考察を採用しようか悩んでる隣で、一切のためらいも無くエウリュアレに即時採用された邪ンヌの案。

 だが、流石にエウリュアレが決めたからと言って即採用されるわけではない。

 

「でも、結末がはっきりと想像できるのは、アーラシュ先輩と龍馬さん、後邪ンヌくらいだよね」

「サリエリは軽くなら想像できなくも無いけどね。トリはちょっと分かんないけど」

「メタはBBとノッブの役割じゃないかしら。呼んだ方が良い?」

「あの二人が来たら不味い事になるので封印で。アビー。妨害しててね」

「えぇ、分かったわ。開いたらそのまま返せばいいのよね。任せて!」

 

 ドヤ顔で言うアビゲイル。

 オオガミはその頭を撫でながら、

 

「正直、以蔵さんの妹が式部さんかなって思ってたから、龍馬さんの意見と同じなんだ。そして、欲を言うなら邪ンヌと龍馬さんの二人の案を掛け合わせたかったり。でも、どっちかを選ぶなら……うぅむ……」

「正直殺陣を見たい気持ちはあるわね。けど、ストーリー的には私は邪ンヌが良いけど」

「ん~……難しいところだよね……」

 

 うぅむ。と再び考え始めるオオガミ。

 そんなオオガミを見て、エウリュアレはため息を吐くと、

 

「別に、そんな悩むことでもないと思うのだけど。普通に見たいと思ったのに投票するだけでしょ。終わったら全部見れるんだし、気負うことでもないんじゃない?」

「そう簡単に言われてもね……全部見てみたいのだから困るわけですよ。どうしようかなって」

「ふぅん……じゃあ、ある意味誰でも良いわよね。じゃあ邪ンヌに投票するわ。ほら、早くしなさい」

「問答無用だね……いや、もういいけどさ……じゃあ、そういうことで。明後日にどういう結果が訪れるのか。とっても楽しみですよ私は」

「……なんだか、強引に決まった感じよね。問題は、いつもの光景だと思ってきてる辺りかしら」

「メルトさんも染まっちゃったのね。ふふっ。お友達がどんどん増えるわ」

「絶対なにかを間違えてるわよ貴女」

 

 問答無用でエウリュアレの意見を投票させられるオオガミ。

 それを見ながら呟いたメルトに、アビゲイルが不穏な言葉と共に笑っているのだから、思わず突っ込むのも仕方の無いことだろう。

 とにもかくにも、オオガミ達は早めに投票を終えるのだった。




 カメラマン真犯人説はどうなんだろうなぁ、と思いつつ、正直邪ンヌがどんな話を展開するのか気になってしまう私です。
 龍馬さんも見たいんですよねぇ……いぞーさんの妹が式部さん説は私も考えてましたから。うむむ。結果発表が待ち遠しい……


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圧倒的人気パワー(差が4倍近いって凄いですよね)

「やっぱり邪ンヌが人気じゃな」

「大差ありすぎじゃないですかね……圧勝じゃないですか……」

 

 カルデアにて、投票結果を見ながらそう言うノッブとBB。

 4倍近く差を広げている邪ンヌの圧倒的票数に、何とも言えない表情になるBBと、豪快に笑うノッブ。

 

「いやぁ、面白いのぅ! なんとなく予想は出来ておったが、まさか事実になるとはな!」

「なんというか、一応サバフェスで一位を取っただけはあります。まぁ、投票のほとんどはキャラ人気だと思いますけど」

「儂は言いと思うけどなー。カメラマン犯人説。予想外のところから犯人が出るとか、儂好きだぞ。桶狭間っぽくない?」

「桶狭間っぽいかは議論対象ですけど、まぁ、不意を打つ感じは奇襲のそれですよね。うぅむ……明日が待ち遠しい……」

 

 早く見たいとうずうずしているBBに、ノッブは、

 

「あと一日じゃから、気長に待てば良いじゃろ……というか、今マシュが向こうにいるんじゃから、こっちで倉庫整理じゃろ?」

「あぁ、いえ、アヴィケブロンさんのゴーレムと、試作ちびノブが働いているので、やること無しです。のんびりできますよ」

「むっ。なら良いか……というか、いつまで試作なんじゃ。いい加減完成させた方がいいだろうに」

「そうなんですけど……まぁ、色々あるんですよ。未だに音声認識に問題があったり、命令系統に微妙な不備があったり。出すならもうちょっとバグ取りしたいです」

「ほぅほぅ……なら、今からじゃな。終わる頃には明日になってるじゃろ」

「えっ、徹夜ですか? 正気です?」

 

 心の底から驚いているような表情をするBBに、ノッブは苦い顔で、

 

「なんじゃその、頭おかしいんじゃないかと言いたげなのは。流石の儂もちと傷つくんじゃけど」

「だって、最近遊び回ってなにもしてなかったじゃないですか……それを、突然仕事をするとか……槍でも振るんですか?」

「……お主、技術部がなんで出来たと思ってるんじゃ……儂が作ったというのを忘れてるのか?」

「あぁ、いえ、そういえばそうでした。確かに、ノッブが最初でしたね……今は、私に始皇帝、カレイドステッキとかがいますけど」

「増えたもんじゃよなぁ……ククッ。もっと増えるかもしれんなぁ……それはそれで面白そうじゃ。大人数でなら、作れる幅も広がるじゃろうて」

「むっ。そう考えると、増えても面白そうですね? 中国の秘技、電子の頭脳、マジカルステッキに戦国武将……あれ、ノッブだけすっごい弱そうですね。実は大したことないのでは?」

「うむ。分かった。宣戦布告じゃな? 武器をとれ。今ここで消し炭にしてやる」

「マジトーンですよ。死にたくないので全力で抵抗しますね!」

 

 そう言って、唐突に戦闘が始まるのだった。




 なんじゃそりゃ。って思うくらいの票数差でビビりました。圧倒的じゃないか……


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なんだかんだ全部持ってくんですね(ストーリーが良いと言うところがまた何とも言えない)

「うおぁぁぁ!!? あの野郎、最後に全部持っていきやがったぁ!!」

「多少の違和感はあっても、十分よね……でもまぁ、貴方が犯人っていうのも良かったけど。えぇ、一生懸命演技しているのは、とても見ごたえあったわよ?」

 

 完成した作品を見て、叫ぶオオガミ。

 とはいえ、作品自体は出来が良いので文句の付け所がないのだが、それはそれとして文句を言いたいのだった。

 

「まぁ、別に良いけどね。映画なんて、そうそう撮るものでもないし。貴重な経験だわ。サバフェスも楽しみね」

「夏休み……サバフェス……終わらない一週間……人気トップ……徹夜からの頒布……うっ、頭が……!」

「そういえば、去年はほとんどホテルにこもってたから、一緒に外出してないわね……今年は大丈夫かしらね」

「……善処します」

 

 自主製作映画もありか。なんて思いつつ、エウリュアレから目を逸らして答えるオオガミ。

 だが、エウリュアレが誤魔化しなど許すわけもなく、

 

「事前に対策打っておかないとまた私は一人観光地巡りなのだけど? そろそろ本気で怒るわよ?」

「まるでいままで一度も本気で怒ったことがないような言い分だ……あ、いや、なんでもないですエウリュアレ様。絞め落とすならアンリとかが適任だとおもぐえぇ!」

「ふふっ。今まで素手で攻撃してないでしょ? だから、ちょっと英霊としてのパワーにものを言わせたパワープレイをしてみようかなって。だってほら、貴方、矢だと避けるから」

「納得できるけど納得したくない……!」

「ふふっ。ほら、だんだんと首を絞めていくわよ? それで、次のサバフェスは余裕をもって進められるのかしら?」

「れ、礼装はあるんで、リンゴ次第でぅ……」

「そう……じゃあ、さっさと終わらせないとよね。えぇ、行ってみたいみお店がたくさんあったわ。だから、早く終わらせて外に出てきなさいね。良いわね?」

「ひゃ、ひゃい……」

 

 逆らわせるつもりのない強い眼光に気圧され、了承するオオガミ。

 どうやら急がないと命の危機に陥るようなので、全力で周回することを決めるオオガミ。

 とはいえ、おそらくサバフェスまでに互いに忘れているはずなので、あまり強く意識しなくても良いのではないかと考える。

 

「さて、マスターへの脅迫も済んだことだし、打ち上げにいきましょう。焼き肉が良いって聞くわ。厨房組に相談しに行きましょう?」

「なにか間違ってる。微妙に何かが違うからちょっと待ちなさい!?」

 

 颯爽と去っていくエウリュアレを追いかける邪ンヌ。

 オオガミはその嵐を見送ったあと、

 

「……とりあえず、地獄の執筆作業だよね。うん」

 

 そう言って、オオガミは遠い目をするのだった。




 まぁ、邪ンヌの圧勝でしたね。案外サクッとエンディングを迎えてビックリでしたけど。まぁ、あれくらいがちょうど良いですかね?

 というか、邪ンヌを見てるとサバフェスしか出て来なくなるんですけど……末期……?


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日常
やぁ、久しぶりだねマスター君(とりあえず黒幕だな貴様!)


「やぁ。久しぶりだね、マスター君」

「出たな黒幕っ!」

 

 マーリンに会うなり言い放つオオガミ。

 それに対してマーリンは肩をすくめながら、

 

「僕は黒幕なんかしたこと無いけどね? むしろ、ずっと君たちを支えてきたと思ったけど」

「いやぁ……うちには某数学教授がいないからね。黒幕っぽいのはマーリンしかいないわけだよ」

「中々酷い言い分だね? キャスパリーグみたいなことを言うようになってきた。もしかして、キャスパリーグの影響でも受けたのかい?」

「フォウはマシュと一緒だよ。というか、その千里眼で見てるんじゃないの?」

「もし見ているのなら、きっと会うことはなかったけどね」

「ふぅん?」

 

 

 まるで、会わないようにしているかのような物言いに、不思議そうに首をかしげるオオガミ。

 それに気付いたマーリンは、さも当然と言いたげな表情で、

 

「僕は舞台を見に来た観客であって、演者になりたいわけではないんだ。あくまでも観測者。必要以上の関わりはあまりしない方がいいと思っているんだよ」

「ふぅん? つまり、周回はしたくはないと。そういうこと?」

「まぁそういうことだよ。だってほら、呪文は噛むからね。スキルも宝具も、使いたくないよ! 何せ、呪文は噛むからね!」

「……久しぶりに王の話を聞かせてもらおうかな!」

「人の話を聞いてたかい!?」

 

 妙に言い顔で言うオオガミに突っ込むマーリン。

 珍しいような光景ではあるものの、それを指摘する人はここにはいない。

 

「というか、普段は何をしてるの? あんまり噂を聞かないけど」

「おっと、その話はしないよ。流石にそこまで見つかるわけにはいかないからね」

「……隠し部屋か……よし。探知しなくちゃだね。絶対見つけ出してやる!」

「おっと。そろそろ本格的に逃げ出す準備を――――あぁ、そういえば、君にはアビゲイルがいたね。うん。これは逃げ切れない気がしてきたぞ!」

 

 どこへ逃げようとも、BBの追跡とアビゲイルによる門は凶悪なようで、顔色が悪くなっているのがわかる。

 

「さて、それじゃあ僕はそろそろ退散させてもらおうかな。ここにいると、何故か身の危険を感じるからね」

「うん。ちゃんと生き残ってね」

「不穏なことを言うね君は。素直に言えないのかい?」

「いやいや、素直に言ってるよ? だってほら、来たし」

「えっ?」

 

 オオガミの言葉に困惑するマーリン。

 しかし、次の瞬間マーリンの後頭部に振り下ろされる鎖鎌の柄。

 容赦なくマーリンを殴り倒したアナは、昏倒したマーリンを一瞥(いちべつ)した後、オオガミに向き直ると、

 

「図書館で紙芝居を読む予定だったのを脱走していたので、助かりました」

「紙芝居を読む予定だったのね……ねぇ、その紙芝居、代役で誰かが読んだの?」

「いえ、開始時刻前なので、今から連れて帰って読ませます」

「なるほど……じゃあ、ついていこうかな。久しぶりにマーリンが読む話を聞いてみたいし」

「良いですが……あまり時間がないので、駆け足になりますよ」

「任せて。走るのには自信あるから。無理ならアビー呼んで後から向かうよ」

「アビーさんを駒使いみたいに……いえ、サーヴァントですから、変なことではないですね。分かりました。じゃあ行きますよ」

 

 そう言ってマーリンを引きずりながら走り出すアナを、オオガミは追いかけるのだった。




 マーリンはなにもしてなくても黒幕な雰囲気ある……数学教授もですけど。
 そして、マーリンはアナが管理してるイメージ……7章の印象が強いんだろうなぁ……


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さては肩車出来るのでは?(ついに壊れたわ。このマスター)

「実はメルトを肩車出来るんじゃないだろうか」

「どうしようついに壊れたわ」

 

 オオガミの一言に対して今更のような事を言うエウリュアレ。

 前々からダメだと思っていたが、ついに変なことを言い出し始めたので、何があったのかを仕方なく尋ねる。

 

「それで、何があってそんなことを言い始めたのよ」

「いや、ふと思い立ってマテリアルを確認してさ、エウリュアレとメルトの体重はそんな変わらないっぽいのを見て、もしや行けるのでは、と」

「暴論ね……ちゃんと読んだの? ヒールを除いてるわよ?」

「大丈夫大丈夫。スパルタ式とアッセイ式で鍛えられたこの体に不可能はないっ」

「そう……ついでに言っておくと、身長は貴方よりも高いのよ。ヒールを含むけど」

「……そこが難点だよねぇ……」

 

 う~ん、と悩むオオガミ。

 エウリュアレは呆れたようにため息を吐き、提案をしようとしたときである。

 扉の開く音と共にメルトが入ってくる。

 

「はぁ……やっぱり刑部姫のコレクションは良いの揃ってるわ。私が持ってないものいくつかあったし。しばらく入り浸ってようかしら……」

「それはおっきーの心臓が持たなそうだなぁ……」

「それ、本人に同じこと言われたのだけど……それで、何か話してたみたいだけど、何かあったの?」

 

 嬉しそうに笑ってたメルトは、そのまま話を切り替えてくる。

 オオガミはそれに対し表情を凍らせるが、エウリュアレは面白そうに、

 

「そうね。マスターが、貴女を肩車出来るんじゃないかって息巻いてて。私とあまり体重が変わらないのだから行けるだろうって言ってるのだけど、私は止めた方がいいんじゃないかとは言ってるのよ?」

「ふぅん? 肩車ね……面白そうじゃない。でも、もし持ち上げられなかったら、蹴るわよ?」

「おっと、対価は命みたいだ。ひょっとしなくても、これ、よろけても死ですかね?」

「そうね。とっても楽しそうで何よりだわ。善は急げと言うし、早めにしましょう。マスターはもう準備できてるみたいだしね。えぇ、楽しみだわ」

「絶対良からぬ事を考えてるなこの女神サマ。目が怖いもん」

 

 急かすエウリュアレの目が怪しく光っているのを見て、嫌な予感がするオオガミ。

 だが、される側であるメルトも微妙に乗り気なせいで、完全に逃げ場がない。

 

「さぁ、いつでも良いわ!」

「ほら、存分にやりなさい?」

「……」

 

 何とも言えない面持ちで、その場にしゃがむオオガミ。

 そして、肩にメルトが乗ったのを確認すると、しっかりと支えて立ち上がる。

 

「……なんというか、もうちょっと天井が高い場所でやるべきだったわね」

「当たりはしないけど、外には出れないよね……アビーの時みたいにカルデア一周は無理か……」

「わりと恐ろしいこと考えてたのね。やったら膝を叩き込むわよ?」

「いや、しないって。メルトの頭を強打させる気はないし」

「それなら良いけど……やったら絶対に承知しないわよ」

 

 ゆっくりと首を絞めながら言うメルトに、オオガミは何とも言えない表情になるのだった。




 そういえば、前にも壊れてたような……定期的に壊れないと気が済まないんだろうか……

 しかし、このマスター……肩車しておきながらあの太ももの魔力にやられないとは……さては人間じゃないな……?


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なんでまーちゃんはここにいるのかな?(そりゃあ逃走中ですとも)

「えっとぉ……まーちゃん? どうしてここにいるの?」

「エウリュアレから逃走中。昨日メルトを肩車した辺りから微妙に機嫌が悪いので、見つかったら殺される」

 

 良く分からないことを言いながら、姫の原稿のアシスタントをしているオオガミ。

 刑部姫は首をかしげ、

 

「ちょっと待って? なんでメルトが肩車されてるの? そこが一番わかんないんだけど」

「いや、体重的に行けるんじゃないかと思ってエウリュアレと話してたら、そこにメルトが帰ってきて、することになったわけです」

「いや、普通ならないと思うんだけど? 普通、『変態っ!』て言われて叩かれるんじゃないの? 乗り気とか、好感度高すぎじゃない?」

「……気にしないようにしてたけど、やっぱ変?」

「うん。かなり変」

 

 刑部姫に面と向かって言われ目に見えて落ち込むオオガミ。

 とはいえ、分かっていなかったわけでもないので、衝撃はそこまで大きくはない。

 

「で、おっきー。なんでエウリュアレは怒ってると思う?」

「えっ、それ聞くの? 後から来たメルトがあれなんだから、エウリュアレもそんなに変わんないでしょ? うん。そう言うことなんじゃないの? 姫、理解しがたいけど。でも、ネタ的にはアリなんじゃないかなって思うよ。ファイト。まーちゃん」

「なにその、既に死にそうな応援は……というか、何に対する応援なの? えっ、死なないように?」

「……うん。まーちゃんはそういう反応だよね。噂で聞いてる感じ、普通手が出てもおかしくない状況で平然としてるもんね。うん。まーちゃんに天罰が下れば良いのにって思うよ」

「おっきー? なんか目が怖いよ?」

 

 なんとなく、怒り2割、呆れ8割のような雰囲気を感じ取るオオガミ。

 

「はぁ……全く。まーちゃんはそうやって下手に好感度を稼ぐから、変な目に遭うんだよ? だからほら、素直にエウリュアレに謝って肩車してあげて。でないと後で酷い目に遭うんだからね?」

「うん……うん? 待って? そこで肩車をする流れになるのが分かんないんだけど?」

「良いから、早く行ってきなって。ほら、もうすぐエウリュアレが来るから」

「ま、まるで呼んだみたいだね?」

「うん。呼んだもん」

「何て事をしてくれるんですか!?」

 

 刑部姫の一言に慌てるオオガミ。

 そんなオオガミを見て、刑部姫は、

 

「逃げようとしてるでしょ……」

「ぐっ……バレたか……」

「逃がさないからね。姫の落書き対象にするんだから。ほら、早くエウリュアレを肩車するんだぁ~!!」

「そっちが本音だな貴様ぁ~!!」

 

 襲撃されるオオガミ。それと同時に扉が開けられ、エウリュアレが入ってきたことにより更に場が混沌とするのだった。




 なんでおっきーはこんなキャラに……この、負けヒロイン感ダメですって……バレンタインのヒロインパワーはどこへ……


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次のルルハワでは思いっきり遊ぼうと思います(だからってそれは無しだと思うんじゃが)

「さて、ルルハワで思いっきり遊ぼうかと思うんですけど、とりあえず鬼ごっこで行こうかと思います」

「何言ってんじゃこのマスター。ロンドン鬼ごっこで懲りなかったのか」

 

 過去に引き起こした鬼ごっこと言う惨劇を再度引き起こそうとしているオオガミ。

 だが、ノッブはため息を吐くと、

 

「で、今回も鬼はあの犬っころなのか?」

「ん~……それも良いかなぁって思ったけど、ヘラクレスとキャットだよ」

「バーサーカーオンリーとか、そっちの方がヤバいと思うんじゃけど?」

「大丈夫。何とかなるって」

「雑か。というか、逃げる側は誰なんじゃ。儂、出るの?」

「そうだねぇ……うん。今回はノッブとBBは裏方で。メンバーは、エウリュアレとおっきーとバラキーとロビンさんかな?」

「む? マスターは裏方か?」

「いや、当然逃げる側だよ。訓練の一環としてね。ふふふ。命懸けの訓練ですとも」

「なんで鬼ごっこに比喩ではない命を懸けとるんじゃ……」

「大丈夫。当たらなければ問題なしだよ」

「正気とは思えん発想……技術部故是非もなしか」

 

 うんうん。と頷くノッブ。

 そして、

 

「であるなら、あのちびノブを使ってエリア管理をするかの。BBには中継と実況をしてもらって、解説は孔明辺りが一番か」

「先生なら解説としてピッタリだね。よし、それでいこう」

「観客席はバニヤンに手伝ってもらって作ればすぐじゃろ。よしよし。これで完璧じゃな。後は各々が勝手に店を開くじゃろうし、ショバ代だけ貰えば大儲けじゃな。うむ。我ながらナイスアイデア。儲かったら活動資金になるしな!」

「流石ノッブ。正直観客がいるのか気になるところだけど、儲かったらこっちのもんだね。大々的にやるだけの価値はあるよ絶対」

「下手したら死人が出そうな大会じゃけどね! 警備係としてエルキドゥを呼んでおくか……顔合わせたら即拘束とかにはならんじゃろ……たぶん……」

「エルキドゥを引き入れるなら手伝うよ? 主催として。というか、死ぬつもりは毛頭ないよ……? ヘラクレスからは戦斧も没収しておくし。あくまでも素手ということで」

「ふむ……なら、エルキドゥの説得は任せるとしよう。で、今回は攻撃はありなのか?」

「ん~……一応無しでいこうか。ただ、スキルはありで。禁止にするとバラキーを入れた意味を失うからね」

「暗に仕切り直ししか期待してないな……? まぁ、良いけども。というか、ふと思ったんじゃけど、前回もなんだが、これ、ケイドロなんじゃないか?」

「……気にしたら負けだと思うよ」

 

 そう言って、オオガミは目を逸らすのだった。




 鬼ごっこって……捕まったら鬼交代だったような。と思い我に返ると、これ鬼ごっこじゃなくね? と思いました。ここでの鬼ごっこはケイドロっぽいやつとします(暴論


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とんでもないことを今思い出した……(それを忘れてたのは大問題じゃないですかね)

「……今、唐突に約一ヶ月前の約束を思い出したんだけど、どうしようか」

「一ヶ月前……? 何かしましたっけ?」

「……あ。特大の爆弾があったな」

 

 真剣な表情のオオガミに言われ、考えるノッブとBB。

 そして、その内容を思い出したノッブは若干青い顔になる。

 

「ノッブは気付いたみたいだね……そう。エリちゃんのライブだよ」

「……一大事じゃないですか」

 

 オオガミに言われ、数瞬放心した後に顔を青くしながら言うBB。

 思い出せば、そう。その約束をしたのは4月の中旬辺り。そして今はと言えば、もう五月も終わろうとしている。

 流石にこれ以上放置したら、大災害が起こること間違い無しである。最悪死人が出るレベルだ。比喩ではなく、文字通りの。

 

「さて。それを忘れてたこっちも悪いんだけど、そもそも通信越しで二人とも聞いてたのに忘れてるのは酷くない? 同罪でいいよね?」

「あ~……そういえばログも残ってますねぇ……いやぁ、反論できないですね。はい。ノッブが責任取りますね」

「おっと。全部儂に丸投げとか、余程働きたいと見える。うむ。儂が責任を取るからな。代わりに貴様は儂に顎で使われるんじゃな」

「なるほど。じゃあBBは雑用だね?」

「えっ。ちょ、そこまでランク下がります!? というか、私をそのレベルにしたら、他の二人はどうなるんですか!」

「いや、なにも変わらんが?」

「そもそも技術部に上下はないと思うんだけど?」

「あれぇ? わりと存在してたと思うんですけど。上下関係。気のせいですか?」

 

 何を言っているんだこいつは。と言いたげな二人に困惑するBB。

 

「上下関係というか、主導が誰かってだけじゃよ? じゃから、お主がメインの時は儂は従ったし、儂がメインの時はお主が従う。単純じゃろ?」

「言われてみると確かにそんな気もするので、全く反論できないんですけど……ここは我の強いのがほとんどですし、その方が良いって言うのはなんとなく分かるんですけど、やっぱりなんか納得いきません」

 

 複雑そうな顔をするBBに、やれやれと首を振るノッブ。

 

「まぁ、それはそれとして、まずはエリちゃんのライブをどうするかってことだよ」

「……そうじゃな。とりあえず、機材のチェックは済ませておくとして、会場じゃな……冬木にでもいくか。めっちゃ燃えてるけど」

「メソポタミアの中心でゲリラで良いと思います!」

「BBが文明破壊する気なんですけど。ヤバイでしょそれは」

「むぅ……じゃあキャメロットで粛清騎士相手に突発ライブで良いですよ。冬木は却下です」

「うん。じゃあそれでいこう。冬木は却下で」

「えぇ~……儂、自然に却下されたんじゃけどぉ~……」

 

 悲しそうに言うノッブに、しかし二人は反応しないで話を進めるのだった。




 今日リヨイベントをやって、エリちゃんの事を見てたらふと思い出してしまったライブの約束……誰ですかこんな爆弾を忘れてたのは……!


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なんでルルハワがあんなハードスケジュールなの?(正直漫画描きながらの仕事量ではないよね)

「ねぇマスター? 私、ここ最近のマスターの会話を聞いていて、どう考えても無茶な日程を組んでると思うの」

「うん。まずどこで聞いてたのかを小一時間ほど問い詰めたいところだね?」

 

 何やら不穏なことを言うアビゲイルに、思わず聞いてしまうオオガミ。

 明らかにほとんど全部を聞いているようなので、もはやどこから突っ込めば良いのか分からなかった。

 

「それはちょっと言えないけど……でも、マスターのその日程は、一周目で出来る内容じゃないと思うの……」

「うん? あれ? アビーって記憶が……って、そうか。本来はアビーの所だったね。うん。あの変態尼さんがおかしかったんだよね。うん。ならおかしくはないんだけど……盗み聞きは良くないと思う」

「それ、BBさんにも言ってくれるかしら」

 

 アビゲイルの的確な突っ込みに、黙るオオガミ。

 現状、このカルデアではBBが一番盗撮盗聴をしているのだ。それはそれ、と言いたいところだが、おそらく聞いてもらえないだろう。特に、微妙に悪い子モードに入りかけている今のアビゲイルには。

 

「うん、まぁ、BBにも言うけども……それはそれとして、別段、一周目で全部やる必要はないって。最後の週にやれれば問題なし。それに、毎度やってBBに精神ダメージを叩きつけるのもありかなってね……

ふふふ。嫌がらせはしてやるとも」

「た、大変ね……なんだかんだ言って、一週間のうちに漫画を描いて、鬼ごっこをして、エリザベートさんのライブを開催して、最後にエウリュアレさんとデート。とっても大変そうね」

「うん……うん? デート……デート? あれ? もしやこのまま行くと、死亡コースなのでは?」

「絶対に時間足りないと思うの……もうちょっと計画しないとダメよ……?」

「うむむ……って、いや、待って? エリちゃんのライブは別じゃなかったっけ……?」

「でも、早めにしないとそろそろ怒ると思うの……インドに着く前にまずエリザベートさんによってここが粉砕されかねないわ……」

「やばい……納得できる自分がいる……流石に早めにしないとか……インドが先に来るならキャメロット粉砕。出来ないならルルハワしかないね」

「えぇ、そうしましょう」

 

 うんうん。と頷くアビゲイル。

 すると、アビゲイルは何かにふと気づいた様な顔で、

 

「ところで、エウリュアレさんは?」

「あぁ、エウリュアレなら、アナを連れてどこかに行ったよ。どこに行ったのかわかんないけどね。用があるなら探すけど?」

「いえ、そこまでの事じゃないわ。あぁ、それと、もっとナーサリーたちにも構ってあげてね。じゃあ私はこれで。またね、マスター」

「うん、またね」

 

 そう言って別れる二人。

 アビゲイルを見送ったオオガミは、少し考えてから、

 

「とりあえず、ナーサリーの所にでも行くかな」

 

 そう呟いて歩き出すのだった。




 冷静に考えるとルルハワで一気に消化すると楽なんじゃないかと思いつつ、そんなハードスケジュール、私が管理しきれるわけないと確信している私がいる……


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なんか、オレがルルハワで重労働する羽目になるって聞いたんだが(ルルハワが楽しみですね!!)

「よぉマスター。なんだかオレが酷い目に遭うような話をちょいと小耳にはさんだんだが、なんか知ってるか?」

「あぁ、ロビンさん。そりゃもちろん知ってますとも。次のルルハワが楽しみですね!」

 

 食堂で食事をしていたオオガミの前に来て、質問しに来たロビンに笑顔で返すオオガミ。

 何やらロビンの表情が引きつっているようにも思えるが、きっと気のせいだろう。

 

「な、なぁ……ルルハワって、アシスタント以外にって事か? 何をさせるつもりだよ?」

「えぇっと……去年のに加えて、ライブの裏方と、レクリエーションかな。大丈夫。刺激的な夏になることは確実だよ!」

「刺激的で済まないよな確実に!! 死ぬ気がするんですけどねぇ!?」

 

 自分に降りかかるであろう災難を大雑把に予感しているロビン。

 だが、オオガミはにっこりと笑っているだけで、詳細を話すつもりは無さそうだった。

 そんな二人を見ていたエウリュアレは、

 

「大丈夫よ。死なないわ。死んだとしても骨は拾うもの。だから安心して。とっても楽しみにしているわ」

「マスターも大概だが、アンタも意外と信用できないんですよねぇ……何が不安って、マスター以上にいい笑顔って所がもう怖い。絶対貧乏くじ引いてるじゃないですかコレ。死なないとしても、きっと七日間を乗り越えたら干からびてるんじゃねぇか……?」

「あぁ、ロビンさんにはオマケで行っておくけど、ループが解けるまでやり続けるよ?」

「一大事じゃねぇか。何週間そのハードスケジュールで生きろってんだ」

「仕方ないじゃん。このスケジュール、ループ外の人を巻き込むから、何度もやるしかないんだよ」

「さ、最短で終わらせねぇとだ……流石に何週もしたら死ぬ……ってか、それはマスターも同じじゃねぇのか?」

「ふっふっふ。安心して。ちゃんとエウリュアレ以外の処置は出来るようにしてるから、耐えられなくなったらそれを起動する!」

「いや最初からそれでいいだろうが。なんで体力尽きるまでやるんだよ?」

「そりゃ、ある意味事前演習に近いものだからね……どうなるのかくらいは確認しておくべきだと思うの」

「あぁ……なるほどね。そりゃ確かに重要だわ。ってか、マスターは他にもなんかあるのかよ……最悪こっちよりもハードスケジュールなんじゃねぇのか?」

「そうですけど、何か? 今からルルハワの設計をBBから聞き出して去年の記憶を頼りにどういうステージを組むのかとか、ルールを作るとか、めちゃくちゃ大変ですけど? 死んじゃうので、今のうちに最大限の努力をしてルルハワで楽するんだコノヤロー」

「お、おぅ……その、なんだ。何かあったら手伝うから、呼んでくれよな」

「うん。後でね」

 

 そう言って、去って行くロビン。

 最後の方は何とも言えない表情をしていた気がするが、オオガミとしては割といつも通りの気分なので、あまり気にしてはいないのだった。




 一周ごとの話を書けるわけも無いので、最終週の話だけをピックアップするか、初週の話をピックアップするのか。悩ましい所。アンケート機能を使ってみましょうかね……


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なんでこんなことしてるんだっけ?(もちろん尻尾枕のためだとも)

「ねぇ子イヌ? なんで(アタシ)、ここにいるんだっけ?」

「それはもちろん、尻尾の貸し出し。尻尾枕のためだとも」

 

 困惑した様子のエリザベートに、ドヤ顔で答えるオオガミ。

 これは、オオガミがついに忙しさから逃げ出し、休憩室でソファーに寝てたエリザベートの尻尾を枕にして寝始めたのが原因だった。

 それからかれこれ三時間。体勢を変えたりおやつを食べたりとエリザベートがしている横で、オオガミは何かに取り憑かれているかのようにエリザベートの尻尾を追っていた。

 

「ねぇ、なんで(アタシ)なわけ? エウリュアレとかメルトとかがいるじゃない。尻尾なら、あの性悪狐とかキャットとかいるし」

「ん~……そうだねぇ……ひんやりしてるのと、触り心地が最高だからかなぁ……このスベスベ感が堪らない……ふふふふふ……」

「な、なんかキモい……ん~……そんなにいいかしら? 確かに自慢ではあるけども、そんなに良いとは思えないんだけど」

 

 そう言いながらも、ちょっと嬉しそうに尻尾の先端をペチペチとソファーに叩き付けるエリザベート。

 だが、オオガミは若干不満そうに、

 

「エリちゃんの尻尾はね、夏仕様なんだよ。これはね、通常のケモ尻尾じゃ出せない圧倒的利点だとも。玉藻とかの尻尾は暖かいところだと毛によって温度が上がり、湿気を含み、とんでもないダメージを叩きつけてくる。それに比べてエリちゃんの尻尾は、毛とかが無いから熱を増幅しないパーフェクトな尻尾。この爬虫類特有の触り心地もまた完璧……うん。なんで水着が出ないのかが不思議でならないよ」

「え、あ、そ、そう? 正直言ってることがほとんど理解できないけど、褒められてるのは分かったから良いわ。うん。えへへ……」

 

 オオガミによる言葉の洪水を受け、少し慌てるも、褒められていることだけは分かったエリザベートは、堪えきれず表情が緩む。

 

「それで、子イヌ。ライブの準備はいい感じ?」

「うっ!」

 

 ビクリと震えるオオガミ。

 エリザベートはそれを不思議に思いつつ、

 

「だってほら、いっぱい待ったし、きっととても素敵な舞台になるって思ったら、もういても経ってもいられないわ。だから、一枚一枚手書きでチケットを作ってるの! 全部世界に一枚だけのプレミアよ! ふふっ! 喜んでくれるかしら!」

「お、おぉ……期待が重い……エリちゃん、その、そこまで頑張らなくてもいいよ……?」

「何言ってるのよ。だってほら、(アタシ)のライブよ? それはもう、集まってきたブタどもに最高のライブをするために、こういう細かいところから徹底しないとダメよ。でないと、ライバルに勝てないもの」

「……なるほどね」

 

 オオガミはそう言うと、体を起こし、

 

「さてと。それじゃ、仕事に戻りますか。エリちゃんも無理しすぎないでね。当日に倒れるとか、そんな事にならないでよ?」

「もちろん。あんまり(アタシ)を舐めないでよね。体調管理もバッチリなんだから!」

 

 そう言うエリザベートに手を振り、オオガミは工房へと戻るのだった。




 微妙に重い空気になってるんですけどぉ……もっとふわふわの予定だったんですけどぉ……無理にエウリュアレを出さなかった弊害がこんなところに来るなんて……


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ハンティング
ハンティングの時間だぁ!(リンゴは使わなくていいからな!?)


「やろーども! ハンティングの時間だぁぁぁぁ!!」

「「止めろおぉぉぉぉ!!」」

 

 オオガミの歓喜の声と共に発せられる孔明とスカディの悲鳴。

 アタッカーとして来ている巌窟王は、どこか遠い目をしていた。

 

「いやぁ、たっぷり待った後に来たのは美味しい種火・素材・QP! ふはは! 集めるしかなかろう! リンゴは使わないけどネ!」

「そ、そうか……なら、行く回数も限られる……いや、マーリンを連れまわしたらどうだ。最近あやつは周回に連れまわされないから調子に乗っていてかなりうざい……幻術を使って逃げ出すから捕まえる事すら出来ないからな……」

「流石のオレも、アレは捕まえられん。全く分からんからな。予測して攻撃しようにも、実態を持っているからビクともしない……いい加減無敵貫通持ちのサーヴァントを連れている必要があるか……」

「マーリンに対しての殺意高いなぁ……」

 

 二人のマーリンに対するあたりが強いのは明らかに彼が一年近く全くと言っていいほど戦闘に参加してないからだろう。

 とはいっても、周回に使いにくい性能なのだから仕方ないのだが。

 

「とにかく、今はランサーで凶骨。うん。稼ぎ時だけど、ここは落ち着いて節約周回です。リンゴ第一主義。無駄遣いはそろそろマシュに殺される」

「その言葉、毎度聞いているが、結局生きているのだからなんだかんだ殺されないだろう?」

「いや、まぁ、マシュは基本注意しかしてこないけど、周りがそうじゃないから……そろそろエルキドゥが怖い……何気にマシュよりも怒ってる……」

「確かに、エルキドゥはマシュ側だからな。だが、それほどまで怒ってはいなかったと思うが……いや、最近会っていないから、今は違うかもしれんな」

 

 ようやく会話に入ってきた巌窟王。

 風紀委員組であった彼が言っているので信ぴょう性は高いが、最近会っていないの一言で一気に不安になる。

 

「ん~……とりあえず、エルキドゥに怒られないくらいに頑張ろうかな……いや、マシュが怒らないようにするのが一番なんだけども、そろそろ何をしても怒られる気がしてきたんだよ……」

「むしろ何もしなくても叱られそうだな、マスター?」

「ふふっ。私を酷使するからそのような目に遭うのだ。分かったのなら今の環境改善をせよ。具体的にはあの弓兵を説得してせめてアイスを一日二個にしてくれ」

「割とささやかな願いですね? いや、エミヤを相手にするとなるとちょっと簡単とは言い難いけどね」

「そうだろう? 正直私も攻めあぐねていてな……マスターの口添えがあればいけるだろうという思いだ。頼むぞ」

「うん。孔明先生は、うん。ゲーム機とやる時間だね。目でわかる」

 

 そう言ってオオガミはうなずくと、

 

「じゃ、そのためにもハンティングクエスト頑張るぞ~!」

 

 そう声を上げて突撃しに行くのだった。




 ハンティングの時間だぁ!! 素材を寄越せぇ!! あと種火とQPも寄越せぇ!! 絆ポイントもおいしいのでとりあえず狩るぞぉ!!

 で、貝殻は来るんです?


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骨の次は杭を狩らねばならぬ(だからと言ってオレをメインにするな。泣くぞ)

「さて、バーサーカーだから、NPチャージによるゴリ押しの時間です。つまり孔明先生の出番です」

「要らん。そんな出番は要らん。火力要員でマーリンでも呼べ」

「ふ、ふふ、ふふふふふ。ようやく解放された! 助かったぞ~!!」

 

 オオガミの宣言によって、いつもより三割増しで機嫌が悪い孔明と、滅多に見せないであろう笑顔を浮かべたスカディがいた。

 そこへやって来た巌窟王は、

 

「では、一度帰らせてもらう。明日、また呼ぶのだろう? なら、急速は早めの方がいい。ついでにマシュやエルキドゥの様子も見てくるとしよう」

「ま、待て。明日また呼ばれるのか? 本気か? 流石の私も怒るぞ?」

「あはは……巌窟王。お願いね」

「あぁ。お前こそ、倒れぬように注意するがいい」

 

 そう言って、抵抗するスカディと共にカルデアに帰還する巌窟王。

 それと入れ替わりで来たのは、

 

「いつもニコニコ! 貴方の隣に這い寄る後輩。BBちゃんです! 待ちわびました? 待ちわびましたよね? でもそんな情けないことを口に出来ない恥ずかしがり屋なマスターさんに、優しいBBちゃんは自ら来てあげましたよ!」

「うん。呼び出したもんね。来てくれなかったらノッブに連絡するところだったよ」

「あ、それはマジで止めてください。わりとお仕置きが洒落にならないので。容赦なく宝具放ってくるんで普通に致命傷です」

 

 いつにも増して真顔で答えるBBに、オオガミは苦笑しつつ、

 

「身内にも容赦ないあたり、実にノッブらしい……でも、あくまでも来なかった場合だからね。うん。よく来たね。ようこそ周回エリアへ」

「う~ん。今すぐ帰りたいですね!」

 

 ハッキリと言い切るBBは、今からやるであろう事がしっかり分かっているのだった。

 

「あ。そういえばセンパイ。帰ってきたら顔を見せるようにって、アナスタシアさんが言ってましたよ? 何かしたんです?」

「え……いや、何もしてないはず……うぅむ。何かしただろうか……」

 

 考えるオオガミに、BBは首をかしげ、

 

「怒ってる感じではなかったんですけど、どちらかと言えば、困ってた感じと言うか……まぁ、行けば分かりますよ。もしかしたらハンティングクエストが終わったらすぐにイベントかもしれないですけどね。出来るだけ早く行った方がいいかと。具体的には夏前に」

「すごく具体的だね? 明らかに用事の内容分かってるよね?」

「いえいえ。そんなことは無いですよ。えぇ、はい」

 

 そう言いながら目を逸らすBBを、オオガミはしばらく怪訝そうな目で見つめていたが、

 

「まぁいいや。行くよ。杭が我らを待っているのだ!」

 

 そう言って、オオガミは歩き出すのだった。




 孔明先生なら大体のことは対応できるって信じてる……あと、水着BBが強いってのは前から知ってる……最強コンビでは?


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切り替えはいつも早い(もう少し休みがほしかった!)

「早い!! 休憩が短い!! 後二日は寝ていたかった!!」

「叫びがガチなんだけど。めちゃくちゃ悪い事をしてる気分になるんだけど」

 

 半泣きで叫ぶスカディを見て、すごくいたたまれない気持ちになるオオガミ。

 それに対して、BBは呆れたような顔で、

 

「そりゃ、あれだけ連れ回してたらそうなるに決まってるじゃないですか……一時期のエウリュアレさん並の連れ回しですよ。いえ、まぁ、実際に当時のエウリュアレさんを見てはいないんですけどね?」

「いや、事実そうだ。オレは見ていたとも。我が共犯者は彼女を女性ランサー相手だろうが問答無用で連れ回してたのをな」

「ちょ、巌窟王!? すっごい人聞きの悪いこと言ってない!?」

「あ、それはリアタイで見てました。って、あれ? ということは、つまり……あぁ、ちゃんと見てたみたいです! 最近のエウリュアレさんを見てたらすっかり忘れてました!」

「こっちのAIも中々不安なことを言ってるぞぅ……?」

 

 だが、どちらにせよ、その時のエウリュアレで例えるということは、わりと深刻だったりする。

 しかし、だからと言ってそれを聞き入れてくれるオオガミではない。

 

「まぁ何にせよ、周回をしなきゃ周回は終わらないんだけどね?」

「スゴいですね。哲学的です。至極当たり前のことなのに。不思議ですね?」

「元来、哲学とはそう言うものだ。最も、根源への接続を目的とする我ら魔術師も、哲学者を笑えるものではないがな」

「そうですね~。私も月では色々ありましたし。でも、やっぱりそういう無意味なところも人間らしいですよね! 情けなくて!」

「全方位に喧嘩を売ったような気もするが、BB。そろそろ帰らなくていいのか。信長辺りが騒ぎ出す頃合いだろう?」

「ノッブはそこまでしないと思いますけど……まぁ、出番も終わったのでそろそろ帰ろうと思ってたのでちょうど良かったです。ではセンパイ。帰ってきたら遊びましょうね~」

 

 そう言って、平然と門を開いて帰っていくBB。

 邪神を取り込んで以来ガンガン使っているが、悪影響がなければいいなぁと思うオオガミ。

 

「それで、スカディ様。そろそろ起きません?」

「嫌だ。私は寝る。ふて寝と言うやつだ。起こすなよ?」

「いえ、起こしますけど。おはようございます。さっさと終わらせて時間を作ったらアイスを貰いに行きますよ」

「それならそうと先に言え。では行くぞ巌窟王。私のアイスのため、あの魔本には犠牲になってもらう」

「フッ。即物的だな。だが、それもいい。では、期待に応えてやるとしよう」

 

 そう言って、いつになく乗り気の二人は周回へと向かうのだった。




 実は孔明先生、ハンティングクエストで出るの、たぶんバーサーカーがラストだと思うんですよ……ついでに言うと、孔明先生の編成率、結構低いので、忙しいのはスカディだけだったりします。
 スカスカ巌窟王が爽快すぎるのが悪いのだと私は言い訳します。


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お久しぶりです、マスターさん(1日だけかもしれないけどよろしくね)

「お久しぶりですマスターさん。最後にお呼ばれしたのは……去年のクリスマスでしたっけ。ずいぶん久しぶりなのでうまく戦えるか分かりませんけど、精一杯頑張りますね」

「うん。よろしくパールヴァティー。まぁ、たぶん1日だけだけどね」

 

 丁寧に挨拶してくれるパールに、珍しくしっかりと答えるオオガミ。

 そんなパールは、オオガミの後ろを見て、

 

「その~……スカディさん達は大丈夫ですか? なんか、目が死んでるような気もするんですが……」

「ふ、ふふふ……いや、大事ない。なに、少しばかり休憩していただけだ。そうであろう? 巌窟王」

「あぁ、そうだな。オレはこれで帰るのだが」

「な、なんだと!? どういう事だマスター! 私と巌窟王は私が終わるまでいると思っていたのだが!!」

 

 そそくさと帰ろうとする巌窟王のマントを引っ張りながら抗議するスカディ。

 

「そんなわけないだろう。アタッカーは適材適所。オレは汎用的なだけで絶対と言うわけではない。敵がアーチャーとセイバーの時は特にだ」

「ゆ、許さん! なんだかそれは不公平だ!! 帰さんぞ!」

「何を言うか。そも、ランスロットが来れば奴以外は出なくなる確率が高い。ある意味奴が来るまでだ。オレにこだわる必要はないだろう」

「バカを言うな。ここまでほとんど一緒だったんだ。これからも引きずり回すに決まっているだろう。私だけが周回をさせられるとか勘弁だ!!」

「知らん! とにかくオレは帰る! だから早くその手を離せ!」

「い~や~だ~!! 絶対に離さない! このままここにいるか、もしくは私も連れていけ!」

 

 マントから手を離させようとする巌窟王と、必死でしがみつくスカディ。

 何も知らない人が見たらとんでもない状況のような気もするが、本人達は気づいている様子はない。

 そして、ついに巌窟王はため息を吐くと、

 

「分かった。そこまで言うのならここにいよう。だが、編成には入らん。見ているだけだ。良いな?」

「うむ。それでいい。一人で休むとか、そんなズルいことはさせないからな」

 

 そう言って、何故か得意気な表情になるスカディ。

 それを見ていたパールヴァティーは、オオガミの隣に行くと、小声で、

 

「その、マスターさん。スカディさんって、あんな面倒な感じの人でしたっけ……?」

「いや、周回してたらだんだんとああなっていったよ」

「そ、そうですか……周回って、なんだか怖いですね……」

「本来はそんなに怖くないはずなんだけどねぇ……やっぱりお休みは重要だなって。まぁ、余裕があったらあんまり出てないサーヴァントだけで編成するのもありかなって」

「そうですね……そうしないと、スカディさんも辛いんじゃないですかね……孔明さんも辛そうでしたし。何時くらいを予定してるんです?」

「次の異聞帯突入時。なんとか勝てるといいんだけど……」

「えっと、頑張ってください。応援してますね」

「うん。ありがとう。じゃあ、スカディ様を連れて、周回行こうか……」

「はい。頑張りますね」

 

 そう言って、オオガミはスカディに声をかけに行くのだった。




 まぁ、弓兵が続くとは思えないので、明日はどうせ巌窟王……そして、スカディ様が私の中で日々残念美人になっていく……


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攻撃力の低さは致命的でしたね(次回は対抗策を考えておくよ)

「その~……何と言いますか、攻撃力が低すぎて私じゃちょっと荷が重かったと言いますか……倒し切れないことが結構ありましたね……」

「まぁ、うん。乱数には勝てなかったね……最後の最後で対抗策を思いついたけど、やる前に時間切れだったし……」

「もっと早めに思いついていてくれれば実行に移せたんですけどね……まぁ、次回に期待です。それでは、私が来れで。お疲れ様でした~」

 

 そう言って、カルデアに帰るパールヴァティー。

 オオガミはそれを見送り、

 

「さて、次はアサシンだからキャスターか……うん。アナスタシアかな」

「むっ。巌窟王ではなく、且つクイックではないという事は、私は帰っても良いのか!?」

「す、スカディ様、心の声駄々漏れですけど、良いんです?」

「既に手遅れだろう。何日も前からああなっているのは、お前も知っているはずだ」

「まぁ、確かにそうだけども……」

 

 複雑そうな顔をするオオガミに、巌窟王はため息を吐く。

 

「とにかく、今は事実を教えるだけで構わんだろう。帰れるかどうかを聞きたがっているのだからな」

「うん。次の更新まではお休みの予定だよ。お疲れ様」

「あぁ! ではすぐに帰るぞ巌窟王!! でないと気付いたら呼ばれるからな!! 休憩も楽じゃない……あれ、休憩が楽じゃなくなったらダメなのでは……?」

「それ以上は考えん方が良い。また呼ぶがいい我が共犯者」

「うん。またね」

 

 そう言って手を振って見送るオオガミ。

 そして、そんな二人と入れ違いでやって来たのは、

 

「また呼ばれた……さて。そろそろ呼び出しシステムに細工をするとしようか」

「待って待って。何変な事言ってるの孔明先生。落ち着いて。一回落ち着いて!」

 

 真顔で言い出す孔明を止めようとするオオガミ。

 その後ろから、

 

「久しぶりなのに、初っぱなから無視されるとは思わなかったわ。意外と酷いのね、マスター」

「アナスタシアさん!? 無視したわけではないのですよ!? あと、明らかに他の理由でも怒ってますよね!?」

「あら。細かいところにも気付くのね。良いわ。これはポイントマイナスね」

「なんで!? 今のプラスになる雰囲気じゃなかった!?」

「ふふ、冗談よ。ちゃんとプラスになってるわ。ところで、どうやら止められてないみたいだけど、良いのかしら?」

「良いわけないよ助けて!?」

 

 面白そうに笑うアナスタシアは、仕方ないとばかりに手を貸して孔明を止める。

 

「くっ……マスターだけならば無視できたものを。皇女まで来られたら流石に無理か……そも、細工するにも準備が足りてないのだがな……」

「じゃあやらないでほしいんですけどね!? 心臓に悪いなぁもう!!」

 

 そう言って、諦めた孔明は、ため息を吐くと、

 

「さて、周回をするのなら早めにするとしよう。早く終わればその分だけ休憩できるというのは知っているからな」

「任せて。ヴィイが全てを凍らせるわ」

「うん。じゃあ、さっさと行ってすぐ終わるとしようか」

 

 そう言って、三人は周回へ向かうのだった。




 正直、パールヴァティーで行けると思ったんですけど、2wave目が難敵だった……
 そして、今回もアナスタシアの攻撃力が足りなくてどうしようか思考中な私です(吐血


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意外と早く終わったわね(日替わりなのだからこのくらいだろう)

「あら、もう終わりかしら。意外と短いのね」

「日替わりだからな。で、次はドラゴンか。これはスカディ案件だな」

 

 つまらなそうなアナスタシアと、遠い目をする孔明。

 そんな二人を見て、オオガミは、

 

「そうだねぇ……うん。お疲れ様。ちなみに孔明先生に言っておくと、スカディが絆マになったら孔明先生が絆マになるまで周回要員に変わるので。ついでに言うとそろそろスカディさんから絆礼装貰えそう」

「おいバカ止めろ! 冗談じゃないぞ!?」

 

 衝撃の事実を聞かされ本気で嫌そうな顔をする孔明。

 だが、オオガミは笑顔で手を振りつつ、

 

「とりあえず交代かな。お疲れ様~」

「えぇ。また呼んでちょうだい」

「まだスカディの絆レベルを上げ切るなよマスター!!」

 

 アナスタシアは静かに、孔明は叫びながら帰っていき、それと入れ違いでスカディ達はやって来た。

 

「くっ……また呼び出しか……日替わり呼び出しは精神ダメージが大きい……せめて二日は休みたい……」

「はいはい。ハンティングクエストが終わったら休めるはずだから、それまで頑張って」

「なに、文句を言っているだけだ。それに、キッチリアイスを二つ食ってきているからな。報酬は十分だろう」

「なっ、それは言うなと言ったはずだが……!?」

 

 驚愕の表情で固まるスカディに、ため息を吐く巌窟王。

 なんだか巌窟王が保護者に見えてきたのだが、恐らくは気のせいではないのだろう。

 

「それで、今回はドラゴンか。また厄介なのを用意したものだ。体力によっては最悪こっちがやられるぞ」

「まぁ、なんとかなるでしょ。というか、代替要員いないので頑張ってもらうしかねぇです」

「だろうな。だが、それでも構わん。やれるだけのことはやるとしよう」

 

 そう言って、準備をする巌窟王。

 それを見てから、オオガミはスカディを見ると、

 

「な、なんだ? トカゲ風情に殺される私だと思うなよ? しっかりと逃げる準備はしてあるぞ」

「せめて抵抗してください。日に日に残念な人になってますよ?」

「なっ、なっ! 言ってはならんことを言ったな!? そういう奴はこうだっ! ていっ、ていっ!」

「あれっ、痛い。普通に痛い。ちょっと待って意外と力入れてないかなこの女神様! 普通にエウリュアレの蹴りよりも痛いんですが!」

 

 だんだんと強くなる攻撃に、流石のオオガミも回避を始める。

 ルーンを使っていないのだから本気ではないことは確かだが、それはそれとして力を入れているのも確かなことだった。

 

「しゅ、周回! 周回行きますよ! 憂さ晴らしはドラゴンにしてください!」

 

 そう言って、オオガミはお怒り気味のスカディを連れながら周回へと向かうのだった。




 そろそろスカディ様が礼装をくれるそうなので、どうしようか考え中。とりあえず孔明を代打ですかね?


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これでゆっくりと休めるな!(そんな事をさせると思ってるんです?)

「ふふっ。礼装を渡したからな。これで休憩し放題と言うことだ。ようやくアナスタシアと遊びに行ける。では私はこれで帰るぞ」

「えっ、行かせないよ?」

「残念だが、まだ仕事が残っているぞ」

 

 颯爽と帰ろうとするスカディを捕まえ、逃がさない巌窟王。

 必死に逃げ出そうとしているように見えるが、同じくらいの筋力である巌窟王から逃げ切れてない辺り、加減はしているのだろう。

 

「くっ……ドラゴンとか、本気で面倒なのだが……処理を失敗すると私に被害が来るからな……」

「何回かやられたしね……あれは不味いと思った」

「全くだ。後衛がいなかったら全滅していたな」

「……今更だが、あの二人は放置でいいのか? 何気に最初から最後までずっといた気がするが」

 

 そう言ってスカディが指差すのは、現在5周目に突入する人生ゲームをしているエウリュアレとメルト。

 一応盛り上がっているのだが、誰も触れないのでもはや空気だった。

 

「後衛主力の2名があんななので、前衛主力に頑張ってもらうしかないんですよ」

「いやいやいや。おかしいだろう? 明らかにあっちの二人を連れてくるべきではないのか?」

「あっちは単体宝具なんで、本気でどうしようもないとき限定です」

「これが全体宝具でもサポートスキルでもないサーヴァントとの差か……! なんだか釈然としない……!」

「最初からこうだったからな。とはいえ、オレの仕事は貴様が来てから生まれたわけだが、いなくなったら必然的にオレも休みと言うわけだ。またカルデアを散策するだけだな」

「巌窟王……なんか寂しい……」

 

 巌窟王の知られざる生活の一部を知って、何とも言えない複雑な気持ちになったオオガミ。

 だが、休みになるのは事実なので、否定は出来ない。

 

「まぁ、次はインドみたいだし、エリちゃんライブの日程も変更だね。場所はキャメロットで確定だけど、何時するかってことです」

「今週のうちにしておけばいいだろう。それがちょうどいいくらいだ。時間的にな」

「まぁ、聞いたあとしばらく動けないサーヴァントもいるからね……回復とかの面を考えてその辺りか……うん。繰り上げでちょっと忙しくなるけど、問題ないね。よし。それじゃあ周回にいこう」

「あぁ、任せろ」

「い、嫌だ! 私は行きたくなぁぁぁ~~~~…………」

 

 だんだん声が小さくなっていっているのは、引きずられるのことで首が地味に絞まっていったからだろう。

 当然巌窟王は気付いてないわけがなかったが、静かになったのだから良いだろう。という精神のもと、引きずるのだった。




 今朝絆礼装を貰ったんですけど、孔明先生用にメンバーを整えるのが面倒になったのでハンティング終了までスカディ様はもうしばらく運用なのです。


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日常
ハンティングクエスト終わり!(しばらくは呼ぶなよマスター!)


「ハンティングクエスト終わり!! 解散!! お疲れ様でしたぁ!!」

「帰る!! 即刻帰る!! 三日はアナスタシアと遊ぶから来るんじゃないぞマスター!!」

 

 ハンティングクエストから帰って来るなり、走り去っていくスカディ。

 絆礼装を貰ったのでしばらくは呼ばない予定ではあったが、これほどまで全力で逃げられると、ちょっと呼び戻したくなっちゃう気持ちがわいてくるが、なんとか理性で抑える。

 

「よし。それじゃ、エリちゃんライブの支度をしなきゃだ。巌窟王はどうする?」

「オレは……そうだな。ついて行くとしよう。やることは無いからな。人では多い方が良いだろう?」

「うん。じゃあ、とりあえずノッブとBBを呼んでくるね」

 

 そう言って、走っていくオオガミ。

 巌窟王はそれを見送ると、

 

「人手が必要なら、幾人か人を集めておくとしよう」

 

 そう呟き、管制室を出るのだった。

 

 

 * * *

 

 

「という事でやってきましたキャメロット!! 軽く制圧してステージステージを作るよ!!」

「やってることが蛮族過ぎて笑い殺されそうなんじゃけど! 正気とは思えんなこれ! わはははは!!」

「粛清騎士さん、昔は無茶苦茶強かった的な事を聞きますけど、今じゃ完全に雑魚的扱いですよね……」

 

 ついにキャメロットに乗り込んだ技術部達。

 そして、そんな三人に追従するように、また数人現れる。

 

「あの~、マスター? オレは別に、建築できるわけじゃないっすよ? むしろ苦手な部類ですよ? 陰に隠れて戦うアーチャーが、そんな重労働できるわけないでしょうが」

「うわっ、なんでロビンさんもいるんですか……セクハラするだけなら帰ってください。邪魔です。キューブにしちゃいますよ?」

「はて。巌窟王君に呼ばれてきたはいいけど、なんでキャメロットにいるんだろうね? 僕、帰ってもいいかな?」

 

 やって来たのは、ロビン、リップ、マーリンの三人。

 リップとロビンを誘ったのはオオガミなのだが、マーリンがいる事に首を傾げ、いつの間にか隣に立っていた巌窟王に聞く。

 

「えっと、なんでマーリン? 全く建築できないと思うんだけど」

「ロビンと同じだ。制圧したと言っても、殲滅できるわけじゃない。自然に現れるのだから、邪魔をされないようにしておく必要があるだろう? なら、防衛要員も必要だと思い呼んだ。奴の幻術は、使えるからな」

「なるほど。なら、問題ないね。後は、制圧した後にカルデアにいるアヴィケブロン先生に連絡してステージ用の素材を持ってきてもらわなきゃだ」

「そのためにもまずは騎士を払わんとじゃな。さて、さっさと行くぞマスター」

「BBちゃんもやりますよ~! この間のハンティングクエストでちょっとやる気出てるので、飛ばしていきますよ~!!」

 

 そう言って、オオガミ達はまずは粛清騎士を掃滅しにかかるのだった。




 さてさて。幕間クエストを消化して、スキル強化内容にクリ威力上昇多すぎじゃないかと突っ込みかけたけど、私は元気です。

 インドが来るならライブを巻きでやらねばならぬ。これはもう、数日かけてライブの話をするしか無かろうっ!


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とりあえず広場を制圧だね(どんなステージを作る気だマスターは)

「さて。とりあえず、ステージを建てられるくらいには倒したかな?」

「うっわぁ……こんなデケェ広場を制圧とか、こりゃとんでもねぇステージになりそうだ……」

「あれ。なんでロビンさんがまだ生きてるんでしょう……さっき殴ったと思ったんですけど」

「さっきのはやっぱりテメェかオラー!」

「やめてくださーい!」

 

 キャメロットに乗り込み、大きい広場を制圧したオオガミ達。

 さりげなくリップによって無き者にされかけていたロビンは、その事実に気付きリップを襲撃する。

 そんな二人を横目に、ノッブとBBは、

 

「さてさて。儂の予想とほぼ変わらん広場じゃな。ライブ中はあの王の話マシーンに幻術を張ってもらって入場箇所を制限すればいいから、とりあえず仮組じゃな。BB。アヴィケブロンに連絡じゃ」

「はいはい。私は小間使いじゃないですよ~っと。あ、もしもし? 準備が出来たので、資材運搬お願いしま~す!」

 

 そう言って、アヴィケブロンに連絡するBB。

 ノッブはそれを聞いて、巌窟王に目を向けると、

 

「お主はレイシフト地点を聞いて、ここまで先導してくれ。設計の構想はあるが、実際とはちと違うからな。修正するから手が離せん。任せたぞ」

「了解した」

 

 そう言って、BBにレイシフト地点を聞く巌窟王。

 そして、最後にオオガミを見て、

 

「よし。マスターは防衛じゃな。ロビンとマーリンを連れていけ。まぁ、マーリンは後で借りるがな」

「うん。分かった。とりあえずロビンさんを回収してくるね」

「おぅ。任せたぞ~」

 

 そう言ってオオガミを見送るノッブ。

 BBが巌窟王に教え終わったのを確認すると、

 

「さて。では、ステージの再設計じゃ!」

 

 そう言って、持ってきていた設計図を広げるのだった。

 

 

 * * *

 

「ここら辺か……」

 

 広場から少し離れた街道。直接広場に送った方が早い気もするが、資材が届き次第作り始めるようなので、もし場所ずれが起こったとき大惨事にならないように、ということだった。

 そして、次の瞬間現れたのは、レイシフトの光ではなく、黒い門。

 そこから、アヴィケブロンのゴーレムがどんどんやって来て、そのうちの一体のゴーレムが運ぶ長い木材の上に、少女が三人乗っていた。

 

「あら。片付いてるわね。着くなり騎士がいるのかもって思ってたけど、見る限りいないわね」

「つまらないわね。っていっても、どうせ建ててる間にわいてくるわよね。その時に蹴散らせばいいわね」

「私は資材の運搬が終わるまで門を開いてなきゃだから、あんまりここを動けないのだけど……」

「そうなの? じゃあ、終わるまではこっちね。メルトはどうする?」

「一度向こうに行って、場所だけ確認しようと思ってたのだけど……まぁ、最後のゴーレムについていけば良いわよね。えぇ、私も残るわ。BBを見ると、蹴りたくなっちゃうもの」

 

 そう言って木材から降りる、エウリュアレ、メルト、アビゲイルの三人。

 三人は巌窟王を見つけると、

 

「迎え……いえ、先導かしら。あっちのゴーレムが先頭だから、連れていってくれるかしら。私たちは運び終わるまでここにいるから、こっちは心配しなくていいわ」

「あぁ、任せた。何かあれば呼べ」

「えぇ、そうさせてもらうわ」

 

 そう言って、巌窟王はゴーレムを連れて広場へと戻るのだった。




 結局ライブ当日まで私がエウリュアレ達を出すのを我慢できるわけもなく。でもメインではないのでちょっと自重。


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あと少しでステージ完成!(英霊パワーでゴリ押し建築ですよ)

「よしよし。いい感じだね。完成はもうすぐだ!」

「英霊パワーによるゴリ押し建築……というか、このときのための自作ちびノブだった気がするんですけど……」

「うわははは! マシュに全部持ってかれたんじゃから諦めい! でもやっぱり人員はもう少しほしかったな!」

 

 八割方ステージを作ったノッブ達。

 途中ほとんどをBBが作っていたが、ノッブがほとんど働いてないということで全力の抗議を受けて、仕方なく手伝っているノッブが印象的だった。

 

「さて。後は舞台装置なんじゃが……何が必要か聞いておくか」

「エリザベートさん、何気にいっぱいいますからね……ランサーの方と、メカの方の、計二人――――一人と一機? に聞くだけでいいんじゃないですか?」

「そうじゃなぁ……ランサーだけだと、話が噛み合わんかもしれん……つか、二人とも呼べばいいんじゃないか? 儂天才じゃん! よしマスター! さっさとエリザを呼べい!」

「えっ、連絡手段無いんだけど?」

 

 そうオオガミが言ったときだった。

 突然真横に出現する門。そして、そこから転がり出てくるのは、もはや追跡能力察知能力完ストしてるんじゃないかと誰もが予感している時空超越邪神系幼女ことアビゲイルだった。

 

「呼ばれた気がして二人を置いて来ちゃったわ。それで、何かご用はあったかしら?」

「あ、いや……うん。まぁ、あるにはあるけど、アビーはゴーレム用の門を開いてるって巌窟王から聞いてたけど、良かったの?」

「……だ、大丈夫よ。門は閉じてないもの……ちょっと大変だけど」

 

 そう言って、視線を逸らすアビゲイル。

 そんなアビゲイルに頼むのはどうかと悩むが、これで頼まない方がショックを受けそうだなと感じたオオガミは、

 

「えっと、エリちゃん呼んでくれる? ランサーと、メカエリちゃんの初号機の方。お願いできる?」

「えぇ、もちろん! でも怪我をしたら怖いから、ちょっと向こうに行って直接呼んでくるわ」

「うん。お願い」

 

 オオガミがそう言うと、アビゲイルは門を開いてカルデアへ戻る。

 

「あ。ついでに機材も持ってきてもらえばよかったか……」

「あぁ、いえ。それは私が持ってくるので問題無しです。ってことで行ってきますね~。後の事はよろしくお願いしますね!」

「あっ、待て逃げる気か貴様っ!」

 

 しかし、ノッブが止めるよりも早く門を潜って消えるBB。

 逃げられたノッブは深い深いため息を吐くと、

 

「まか、是非もなし。何とかして完成させるとするか。そろそろ資材も運び終わるしな……ゴーレムを借りればなんとかなるじゃろ」

「まぁ、うん。頑張って」

 

 若干目が死んでるノッブに、オオガミは苦笑いをしながらそういうのだった。




 ついに直前イベント始まった……でも実質関係ないので虚無期間とあんまり変わらないのである意味楽……


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明日開催するぞ!(と、突然すぎないかしら?)

「明日、開催するから、準備をしておくんじゃよ。エリザ」

「は、早くない? いえ、いつでもいいように準備してるけど、集まるかしら……」

「チケットをもらえばすぐにでもバラ撒いてきますけど。まぁ、行く行かないの意思とか関係無く強引に引きずり出すんですけど」

「暴君の二人が言うと説得力の塊だよね」

 

 悪い顔をして笑うノッブとBBに挟まれてプルプルと震えているエリザベート。

 そんな三人を苦笑いで見ていたオオガミは、隣から脇腹をつつかれる。

 

「な、何するんだよエウリュアレ……」

「なんとなくよ。つつきやすい脇腹があったら、ちょっとつついてみたくなっちゃうのは仕方のないことだと思うの」

「とんでも理論だね? でも、やり返すとセクハラ扱いなんでしょ?」

「そうね。私以外はセクハラ扱いで縛り首じゃない?」

「おっと。完全に死ぬねそれは――――って、うん? 今、ちょっと変じゃなかった?」

「気のせいじゃない?」

 

 エウリュアレはそう言って、カルデアから持ってきた椅子にオオガミを座らせ、その膝の上に座る。

 

「……今日は機嫌が良いね?」

「そうね。指摘しなかったらもっと機嫌がよかったと思うわ」

「そ、そう……そういえば、メルトは? 一緒に来たって聞いたけど」

「防衛の方に行ったわ。メルトじゃ不利だって言ったけど、『それはそれ』って言われちゃったら、止めるわけにもいかないでしょ?」

「いや、止めようよそこは。適当なところで帰ってくるとは思うけどさ?」

「なら尚更止める必要ないじゃない。勝手に帰ってくるんだもの」

「なにその、子犬みたいな扱い……本人に聞かれたら殺される気がする……」

「大丈夫よ。被害に遭うのは貴方だもの」

「なるほどね? 自分は問題ないからいいと。泣くよ?」

「ふふっ。そのときは目の前で泣いてね?」

「今日は珍しく毒気が強いね? 何かいいことでもあったの?」

 

 そう聞くオオガミに、しかしエウリュアレはにっこりと笑って答えない。

 それでなんとなく何かがあったのであろう事を察するが、問題は、その何があったかがわからないというところだった。

 

「……まぁ、いいや。で、エリちゃんのライブって、どのくらい広まってるの?」

「あなた達がキャメロットに行ったときからやるんじゃないかって一瞬で広まったわよ。えぇ、面白いくらいに。だから、チケットを配ればみんな来るんじゃないかしら。なんせ、あなたがいるもの」

「雑な理由だね? まぁ、来てくれるならいいけどさ」

 

 オオガミはそう言って、明日無事開催されるのを祈るのだった。




 はい。書いてて再確認しました。この作品のメインヒロインはエウリュアレです。メルトをあんなに欲してたのに、結局エウリュアレの使いやすさがすごい。これはダメだ。沼る。メルトの出番、エウリュアレに奪われちった……


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開幕まであと一時間じゃ!(久しぶりだからちょっと緊張するわ)

「よしよし。開幕一時間前じゃ! 準備せい準備!」

「久しぶりだから、ちょっと緊張するけど、うん! 任せて! 今からでも大丈夫よ!」

「演出の準備があるので準備が必要なんです。分かってますかエリザベート」

「うぅ~ん、あのオリジナルにも全く容赦がないあの感じ。どこかで似たようなのを見た気が……」

「そうだね……とりあえず鏡でも見た方が良いと思うよ?」

「えぇ、そうね。ちゃんと見た方が良いと思うわ」

「なんか後ろがスッゴイ辛辣なんですけど」

 

 ついに始まるエリちゃんライブ。その最後の準備のために奔走するノッブ達。

 

「つか、マスターは何しとるんじゃ。舐め腐っとるんか撃ち落すぞ」

「いや全くふざけてないけどって本当に撃たないで!?」

 

 真横を通り抜けて行く弾丸に顔を真っ青にするオオガミ。

 座って見ていたのが悪かったのか、それともメルトが膝の上に乗っていたのが悪かったのか分からないが、メルトは弾丸に対して全力で回避をする姿勢だった。

 

「ちょっと。私の椅子を血まみれにしないでくれる? 座り心地が悪くなるでしょ」

「完全にマスターとして見られてないよね? 椅子扱いじゃんね?」

「昨日も同じ扱いだったじゃない。何をいまさら言ってるのかしら」

「全く否定できないの、なんか納得いかない」

「つか、そもそも椅子に座らず働けって言っとるんじゃそこの三人。特に今目をそらしたエウリュアレ。貴様じゃ」

 

 メルトと一緒になってオオガミを弄ってたエウリュアレは、指名されて首をかしげる。

 

「私、何かしたかしら?」

「むしろなにもしてない方が問題なんじゃが。いや、機材は運べないとはわかっとるが、せめて防衛に回らんか」

「そろそろライブが始まるんだし、防衛は撤退させてもいいんじゃない? 観客いっぱいね。おめでとうエリザ」

「えぇ! 見てくれるブタが増えるのは大歓迎よ! あと子イヌ! 後で髪を弄らせなさいね!」

「えっ、良いけど、なんでこのタイミングで爆弾落としていくの?」

 

 エリザベートの一言で、周囲の、主に膝の上と真横からの視線が突き刺さるオオガミ。

 だが、本人は全く気にしていないようで、

 

「さぁ、勇者の(アタシ)とメカの(アタシ)! 全力で行くわよ!」

「えぇ! 最高のライブにするわよ(アタシ)!」

「やるからには最高のライブにしますよ。良いですね?」

「演出の準備が終わったわ。いつでも行けるから、準備が整ったら言って」

 

 そう言って、楽しそうに円陣を組むエリザベート達。

 そんな四人を見ながら、ノッブは会場を覗き、

 

「うおっ。予想以上に集まっとるな……BB。準備はいいか」

「えぇ。何時でも大丈夫です。ロビンさんの方も、全員撤収したみたいですし、行けますよ」

「よし。では、開幕じゃ! 楽しめよエリザ!」

「えぇ、行ってくるわ! 見ててねマスター!」

 

 そう言って、ノッブの合図と同時に、エリザベート達はステージにあがる――――。




 そして伝説へ――――。

 この後、スペシャルゲストが来たり特殊演出(粛清騎士乱入)があったりで楽しい時間が過ぎるかもしれないけどそれはみんなの心の中にあります(ぶん投げ)。


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インド前のやること終わり!(あとはのんびり待つだけじゃな)

「さて。ライブも終わったので、インドに行く前にやり残したことはないね」

「うむ。というか、あのライブ、そういえばインドへの士気上昇目的じゃったな……BBがあれを作っとらんかったら効果が真逆になってた気がするんじゃが?」

「それはまぁ、是非もなしだよね」

「センパイはたぶん、あろうとなかろうとやった気がしますよ? まぁ、流石にそんな大災害は起こさせないとばかりに皆が止めに入るでしょうけど」

 

 そう言って笑うBB。

 ライブは大成功に終わり、再利用できる物だけ回収してバニヤンの踏みつけで一発解体して、帰って来た。

 現在はいつものように技術部の工房で、いつものメンバーで集まっていた。

 

「それにしても、本当に楽々処理できるようになったわね」

「本当にね。やっぱりエリちゃんバフがあったのかな?」

「歌が宝具なんだから、ある意味バフよね。デバフだけど」

「まぁ、どちらにせよ、無事に終わったんじゃ。ほれマスター。開始直前で言われておった約束、守りに行くとよいぞ」

 

 ノッブが言うと同時に、左右にいたエウリュアレとメルトの視線の温度が下がった気がした。

 

「そういえば、そうだったね……うん。行ってくるよ。どうなるか分かんないけど」

「面白そうだからついていくわ。ついでに私も遊んでくる」

「私もついていくわ。どんな目に遭うか楽しみだもの」

「うむ。なんか二人とも楽しそうじゃな。精々死なぬようにするんじゃなマスター」

「えっ、今の何処に死ぬ要素が? えっ、死ぬの? マジで?」

「安心してくださいセンパイ。死んだら骨は拾ってあげます!」

「助けに来るんじゃないんだね!?」

 

 清々しいまでの笑顔で見放されるオオガミ。

 だが、たぶん死ぬの意味が違うんだろうな。と思いつつ、監視カメラだけは絶対に潰すという決意を固める。

 

「あ、エリザベートさんは今休憩室のソファーで上機嫌で待ってるので、早めに行った方がいいですよ?」

「的確に場所を教えてくれてありがとう! お礼に監視カメラは全部潰しておくね!」

「無駄な労力、お疲れ様です! 楽しんできてくださいね~!」

 

 捨て台詞を吐きながら走り去ったオオガミを、満面の笑顔で送り出すBB。

 オオガミの後を追っていったエウリュアレ達も見えなくなったところで、ノッブが、

 

「して、対策は何をしてるんじゃ?」

「簡単ですよ。最近背景に溶け込んできたちびノブの一部を操作して、監視です。ちゃんとカメラ機能も内蔵されていますので!」

「なんでそんな変な機能を盛り込んだんじゃ……」

 

 ドヤ顔のBBに、呆れたようにため息を吐くノッブは、それはそれとしてオオガミがどんな髪型に変えられるのかをBBと一緒に見るのだった。




 昨日が800話だったことに気付き震えてる私です。ピンポイントで800話とか、ビビりました。日曜にライブしようとしか考えてなかったから三倍増しでビックリです。
 やっぱりうちのアイドルは一味違いますね!(錯乱


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イジメられてるのかマスター?(なんでこうなったんだろうね?)

「……その、なんだ。イジメられてるのかマスター?」

「本当にね。なんでこうなったんだろうね」

 

 ロビンの目の前にいるのは、黒髪ロングの女性用カルデア服を着ているオオガミだった。

 変に似合っているので、ロビンの頬が微妙に引きつっていた。

 

「いやぁ、昨日髪を弄られてただけのはずなんだけど、気付いたら服装ごと変えられて、今日の朝も同じことをされたので一日これだよ」

「……その見た目で一日いれる精神すげぇと思うわ。つか、それスカートの下どうしてるんだ? まさかパンツそのままってわけじゃないだろ?」

「流石に短パンは穿いてるよ……エウリュアレ達はそのままで追い出すつもりだったみたいだけど、流石に尊厳を守ったとも」

「お、おぅ……強いな。話の感じ、たぶん三人がかりだろう? よく守り抜けたもんだ……」

「まぁね……流石に、その、負けられない。とりあえず回避で切り抜けたよ」

「強化解除が無いのが救いだったわけだ」

 

 オオガミは、本気で阻止して来ようとしていた三人を思い出し、蒼い顔になる。

 それを見たロビンも、想像して頬を引きつらせていた。

 

「さて。それじゃあ、食堂に行ってくるね。あんまり遅くなると、なんか心配されるから」

「いや、むしろ服装の方が心配されるっていうか、ヤベェって言うか、なんつーか……うん。もういいや。ファイトだマスター」

「面倒になってぶん投げたね? 別にいいけどさ。ロビンさんも行く?」

「……いや、同類扱いされたくないから止めとくわ」

「今スッゴイ馬鹿にされた気がする……!!」

 

 謎の反応をするオオガミに、ロビンは乾いた笑いで、

 

「いやいやぁ? 全然、そんなことないですけど、まぁ、大変だなぁって。ほら、早く行った方が良いんじゃねぇの?」

「なんだか言いくるめられた気がする……まぁいいや。じゃあねロビンさん! いつか同じ目に遭わせてやるからね! BBと一緒に!」

「なんで一番厄介な奴をそう言うのに誘うんですかねこの野郎!」

 

 去って行くオオガミの捨て台詞に震えながら文句を言うロビン。

 まさか本当に来たりしないだろうな、と呟きつつ、その場を後にする。

 そして、誰もいなくなった廊下で、影からゆっくりと現れるBB。

 

「ロビンさんに女装ですか……う~ん。似合いそうにないので無しですね。それならノッブに男装してもらった方が何倍も良いと思うんですけど。でもまぁ、センパイに言われたらやるしかないですね! 準備しておきましょ~っと」

 

 そう言って、BBはスキップしながら工房に帰っていくのだった。




 もうロビンさんはこういう役目の方だと思うの。そして、最近エウリュアレ達、暴走しすぎでは……?(今更


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この忍者アクション面白いんじゃが!(同じことやってみたいですよね!)

「ぬあ~……ようやくトロコン終わったわ~……スキル全習得難易度高すぎじゃろ……」

「でも、空中忍殺、かっこいいですよねぇ……使える所めちゃくちゃ少ないですけど」

「修羅おじいちゃん許せねぇ……あの威力おかしいでしょ……」

 

 久しぶりとも思えるゲーム。

 チマチマとやっていたノッブはついに目標をクリアして、達成感で倒れていた。

 

「つか、あの攻撃、割と再現できそうじゃな……よし。ちょっと滞空時間長い奴を呼べい。んで、儂がそれを攻撃する。うむ。楽しそうじゃ」

「それ、容赦なく反撃される可能性も考えてよ?」

「とりあえずロビンさん呼びましょうか。たぶん出来るはずですし」

「……微妙に八つ当たり入って無い?」

「イヤですね。そんなわけないじゃないですか。私よりも先にノッブがトロコンしたからって、怒ってませんよ?」

「明らかに怒ってるときの言い分じゃろ……つか、儂の方が長くやってるんじゃから、先に終わるのは自明の理じゃろ」

「えぇ、わかってますよ。でもですね? それはそれ。これはこれと言うものがあるんです。というか、毎度勝てないからそろそろ面白くないんですよ。なので、ロビンさんで憂さ晴らしです!」

「やっぱりとばっちりじゃないかロビンさん……」

 

 最近不幸属性が強化されつつあるロビンさんを不憫に思いつつも、それはそれとして犠牲になってほしい気持ちがあるのは否定できないオオガミ。

 

「さて。三時間ほど練習すれば行けるじゃろ。レッツ忍殺!」

「……今考えれば、忍者組は出来るんじゃ……?」

「センパイ。それは言っちゃいけないやつです」

「あっ、はい」

 

 BBに言われ、反射的に答えるオオガミ。

 そもそも、見たいのではなく、やりたいのだ。それを忘れてはならない。

 

 

 * * *

 

 

「よっ!」

「ぐはぁっ!」

 

 キレイに空中で狩られ、そのまま倒れるノッブ。

 そして、ノッブを斬った武蔵は、

 

「うんうん! こんな感じね!」

「な、なぜ儂が斬られるんじゃぁ……」

 

 刀を軽く振り、感覚を確かめて納得する。

 そして、ノッブは想像とは真逆の状況にもはや何も言えずに倒れるのだった。

 そして、そんな光景を目の当たりにしたオオガミとBBは、

 

「センパイ。なんであの人がいるんですか。ロビンさんはどうしたんですか」

「その話、目の前でやってたでしょうが。自分で思い出しなさい」

「えぇ~……」

 

 BBにそう言いつつも、現状がよく分からなくなっているのはオオガミも同じだった。

 ロビンを誘ったら、拒否られて代役として武蔵ちゃんが来た。何て言っても、全く訳がわからない。

 ただ、同じゲームをやっていた刑部姫の画面を見て、面白そうだから試した、というのは、あながち嘘でもないのだろう。

 

「よし、それじゃあもう一回!」

「儂、反撃できなきゃ死ぬんじゃなかろうか……」

「死んだら骨は拾っておくので安心してください!」 「一ミリも安心できんわ!」

 

 ノッブはそう叫びつつ、刀を構えるのだった。




 斜陽にあるお城を四回ほど滅ぼしたのでその記念。ソロゲーだから侵入無いし、ハイスピードでめちゃくちゃ楽しいゲームだったのでおすすめです。


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昨日って、何の日か知ってる?(なんかありましたっけ?)

「ねぇマスター。昨日って、なんの日だったか知ってるかしら?」

「昨日……? ん~……なんかあったっけ」

 

 エウリュアレに言われ、首をかしげるオオガミ。

 しかし、特に思い至るものはなく、

 

「なんかあったっけ?」

「そう……やっぱり知らないのね。恋人の日なんだって。なにかないの?」

「……いや、別に何もないけど……」

 

 言った直後、足を思いっきり踏まれる。

 その痛みに反射的にうずくまるオオガミの肩に体重をかけるエウリュアレ。

 

「そう……何もないのね。というか、あなた、わりとイベントをスルーしすぎじゃないかしら。特に、出身国のイベントを。もっと大切にしなさいな」

「い、いや……そもそも知らないのだから是非もないと思う……マイナーイベントの部類だと思うのですが……!」

「それでも気にかけるのが日本人って聞いたのだけど。イベントいっぱいじゃない」

「それ、毎日誰かの誕生日ってくらい、どうでもいいものの部類の気もする……身近なことじゃないと知らないことって、結構あるんだよ? 特に、恋人の日とか、今までなら、というか、今でもあんまり関係ないと思うんだけど……」

「へぇ、そう……そういうのね? 良いわ。やっちゃってアビー」

 

 エウリュアレはさりげなく距離を取り、そういうと、オオガミの真上からアビゲイルが降ってくる。

 

「てーい!」

「えっ、ちょ、ふぐぁ!」

 

 かわすことは物理的に可能でも精神的に不可能なので、慌てて受け止めようとするも、失敗して下敷きになるオオガミ。

 潰した方であるアビゲイルはどこか満足そうで、

 

「ふふん! 久しぶりにマスターに飛びかかったわ! しかも、今回はエウリュアレさんに言われてやったから、お叱りは無しね!」

「そうね。ついでに締め上げても良いわ」

「そ、そこまではしないわ……そこまですると、今度はマシュさんが怒りそうだもの……」

「資源を勝手に使っていたから叱ったって言えば、すむ気もするけどね?」

「……もしや、エウリュアレさん、相当怒ってます?」

「いいえ? そんなこと、これっぽっちもないけれど?」

「めっちゃ怒ってるじゃないですか……!!」

 

 不気味なほどに良い笑みを浮かべているエウリュアレを見て、半泣きになるオオガミ。

 昨日はしゃぎすぎたので罰が下ったのだろうかと思いつつ、

 

「何が望みなんだエウリュアレ……!」

「え? あ、あぁ~……そう……ね……どうしよう。なんにも考えてなかったわ」

「盛大にやられ損なのでは!?」

「それはそれ。これはこれよ。構わなかったのが悪いわ」

「え、えぇ~……」

 

 納得いかないオオガミ。しかし、アビゲイルを退かすことも出来ないので、エウリュアレが何か思い付くまでこのままだった。

 そして、

 

「じゃあ、今日は私が寝るまで膝枕をすることで許してあげるわ」

「徹夜コースですねわかります……!」

 

 だが、それ以外の選択肢がないオオガミは、にっこりと微笑むエウリュアレの案を、承諾するしかないのだった。




 なお、私が知ったのは今日ツイッター開いてから知ったので、昨日の投稿後のことである。


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本当に周回に行かないな(代わりの犠牲者がいるけどね?)

「なんというか……本当にピタリと止まるんだな……」

「そうだとも。だからほら、最近は孔明君が必死でやっているだろう?」

「お前ら、好き勝手言いやがって……スカディはともかく、お前はなにもやっていないだろうが……!」

 

 何時からだろうか。誰が言うでもなく自然と集まる過労死組メンバー。大体休憩室の隅なり食堂の隅なりに集まっていたりするが、今日はスカディの部屋に集まっていた。

 だが、忘れてはいけない。スカディは一人部屋ではないのだ。

 

「ねぇ……どうしてみんなここに集まるのかしら」

「それはもう、ここが涼しいからね?」

「避暑地だ。我慢してくれ」

「そのせいで私が暑いのは全く納得がいかないのだけど。あなた達が氷になりなさい」

「「それは断る」」

 

 息ピッタリで拒否するマーリンと孔明。

 アナスタシアはそれにかなりイラっとしたものの、すぐに気を取り直し、

 

「まぁ、後でマスターに持っていってもらえば良いかしら。きっと喜んで持っていってもらえるわ」

「ぐっ……奴に出てこられたらここから出る他あるまい……なんとしても阻止しなくては……」

「いや、君がいる時点で無理じゃないかな? 今、ことカルデアにおいて千里眼に匹敵するレベルで監視網を張ってる子がいるからね。彼女の告げ口一発でここがばれるよ」

「迷惑すぎる! 何処にいる! 潰してくれる!」

「BBだね。廊下を歩いてれば会うんじゃないかな?」

「……監視網から逃れる術を考える方が有意義そうだ」

 

 悟ったような顔で明後日の方を見る孔明。

 そんな孔明を見つつも、アナスタシアは、

 

「BBさん、確かこの部屋にもつけていったと思うのだけど。要するに、今のやり取りは駄々漏れだと思うわ」

「そんなバカな!?」

「さてはスカディ、僕たちを嵌めたね!?」

「私も初耳なのだが! 真実なのかアナスタシア!」

 

 そう言って、騒ぎ始めたときだった。

 突如として開かれる扉。そこから覗くオオガミの目。

 全員がビクリと反応し、

 

「孔明先生! 出番ですよ!」

「い、嫌だ! 行きたくないからな!?」

「問答無用! 今だアビー! 捕獲!」

「了解よマスター!」

 

 その声が響くなり、孔明の足下に生まれる門。

 そのまま自由落下して孔明が消え、

 

「あぁ、そういえば、マーリンのことをノッブが探してるんだった。ついでに送っておいて!」

「はーい!」

「ついでとか、ちょっと失礼じゃないかな!?」

 

 叫ぶマーリン。しかし、その言葉にオオガミが返答するよりも早く、門の向こうへと行ってしまった。

 そして、嵐のように彼らが過ぎ去ったあとで、スカディはアナスタシアに、

 

「さっきの話……本当だったのか……」

「完全に冗談だったんですけど……」

 

 その返答に、スカディはもちろん、アナスタシアも不安になり、部屋中を捜索するのだった。




 何気に今の周回のメインアタッカーはBBちゃんを運用していたり。といっても、孔明で無理矢理二連射で、2wave目を北斎さんが流してるんですけどね。一切スマートさを感じない……


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ついにインド突入!(ということで、今回の縛りなわけだ)

「さて諸君! ついにインドがやって来た! 故に、これから作戦概要を伝えるよ!」

「一瞬で軟化したわね。最後まで貫きなさいよ最初の口調」

 

 ドヤ顔で言った直後にエウリュアレに蹴り飛ばされるオオガミ。

 流れるような蹴りは、絶妙な加減がされており、軽いダメージしかない。

 とはいえ、痛いものは痛いので、その場にうずくまるオオガミ。

 すると、集められたメンバーの一人――――クロエが挙手する。

 

「一つだけ聞きたいんだけど、なんであんまり周回について行っていないメンバーたちだけなの? メタ的に言うと、絆レベルが5未満のメンバーなの?」

「そうね。それについて説明しておきましょう。簡潔に言うなら、そういう縛りみたいよ。楽しみね。観戦してるから、頑張ってちょうだい」

「自分に関係ないからって、かなり余裕ね……あそこから引きずり下ろしたいわ」

「でも、クロ。一番マスターと一緒にいるのはあの人。最近だと種火周回にも付き合わされてたから、間違いないと思う」

「……なんか、大変なのね……ごめんなさい。きっと、かなり振り回されたのよね……」

「変に同情しないで。こっちが恥ずかしいから」

 

 素直に謝ってくるクロエと可哀想なモノを見るような目で見てくる美遊に、恥ずかしくなるエウリュアレ。

 そのタイミングで起き上がってきたオオガミは、

 

「とりあえず、エウリュアレの言うように、絆レベル5未満で、スキルも5未満。ついでにレア度も5未満だよ……まぁ、いける所までそれで行くよ。皆、ファイト」

「指揮が貴方なんだから、貴方が一番頑張るのよ」

「は、はい……」

 

 横からチクチクと攻撃を受けるオオガミ。

 そんなオオガミの、当然の様に横に現れたカーマは、

 

「私、何時になったら戦闘に呼ばれるんです? もうかなり呼ばれてないんですが。というか、一回も呼ばれてないんですが。どういう事なんです?」

「そりゃ、呼んでないからとしか……正直、ジャックちゃんも呼ぶタイミング無くてずっとカルデア待機だから、不健康にならないように外に出してあげたいんだけど……」

「私も不健康になるんですが! お菓子ばっかり食べてるから不健康ですよ!」

「それは自重しなさい」

 

 うっかり口を滑らせ余計な事を言ったがためにエウリュアレのチョップが頭に刺さるカーマ。

 当然オオガミの視線もいくらか冷ややかなモノに変わる。

 

「えっと……じゃあ、カーマはしばらくおやつ禁止で、BBの方で手伝いを、という事で。BB。強制連行」

「は~い! お任せを! ちょうど頑丈な実験台が欲しかったところです、ノッブが!」

「えっ、ちょ、本当に連行されるんですかコレ! 同じ顔のサーヴァントなんですが! ちょ、手心は無いんですね!?」

 

 門を通って現れたBB。

 そして、連れ去られるまで声を上げ続けるカーマだったが、ものの数秒で門の向こうに放り投げられ、静かになる。

 

「それじゃ、これで! インドでの活躍、楽しみにしてますね!」

 

 BBは最後にそう言って、同じく門に飛び込んでいった。

 嵐の過ぎ去ったような場で、オオガミは一言。

 

「それじゃ、インドに突撃で」

 

 こんなぐだぐだでいいのだろうか。

 図らずも、その場の全員の思いが一致した瞬間だった。




 今回の縛り一覧

・スキル5未満
・星5未満
・絆5未満
・NPC縛り(NPC不在時は除く
・コンティニュー禁止
・石禁止

 優先度が低い順なので、上から順番に破られるという。でも、メンバーを見てる感じ、一つも破られる感じがしないのがちょっと不安点……勝てるんだろうか……


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創世滅亡輪廻ユガ・クシェートラ
凶悪すぎる縛りなんだが(そうは言っても止まってないではないか!)


「無理……キツイ……」

「呵々! そうは言うが、躓きはすれど、止まってはおらぬではないか!」

「正直とんでもない足止めは喰らったけどね……?」

「大丈夫ですよマスター。私がいれば問題ありません。何とかなります」

「うん。トリの全体回避と強化解除は助かったよ」

 

 ぐだっとしているオオガミと、楽しそうに笑う李書文。そして、誇らしげなトリスタン。

 そんな三人を遠巻きに見ていたカーミラは、

 

「はぁ……なんでこう、むさ苦しいのかしら。どうなってるのよ……」

「あら、良いじゃない。見ていても良いものよ? あのくらいなら、私のグッドルッキングブレイブに入れてもいいかもしれないわ」

「……なんというか、貴方の血を浴びたら気分が悪くなりそうだわ」

「……なんですってぇ~!!」

 

 カーミラの襟首をつかみ前後に揺らすメイヴ。

 そんな時だった。突然通信が開き、半泣きの刑部姫が出てくる。

 

『ちょ、ちょっとまーちゃん!! なんか姫の部屋に知らない石像があるんだけど! 何アレ怖いんだけど!!』

「あぁ、おっきー……うん。その石像、たぶん姫と同じ部類だから安心して。まぁ、ある意味で真逆なんだけど。生産者と消費者的な意味で」

『何それどういう事? というか、姫に面倒なのを押し付けないで! 返却します~!!』

『再臨……再臨をさせるのだ……』

『ぎゃーーー!! 喋ったーーーー!!! というか、動いたーーーー!? これ、呪われてない!? 呪いは玉藻っちが専門なのでそっちで!! 姫こういうのダメだから!!』

「いや、再臨をさせろって言ってるだけじゃん……サーヴァントだよその石像」

『えっ、う、うっそぉ~……同じ部類って事は、もしや、趣味とか……? あの、好きな事って、なんですか?』

『深夜ポテチ……最高だよね……』

ダメ人間(どうるい)だーーーー!!』

「それでいいのか姫……」

 

 何か通じ合ったような二人(?)を見つつ、ため息を吐くオオガミ。

 そこでふと、疑問に思った事を聞く。

 

「ねぇおっきー? どこから通信してる?」

『うん? どこって、管制室だよ? だからさっき姫は勝手に動いてることに驚いてたじゃん』

「……異聞帯の中に通信をいれるって、管制室からは無理だったような……さては、BB……?」

 

 不可思議な現象は大体彼女のせい。そう目を瞑り考えつつ呟いたが、向こう側から返答が帰って来ない。

 見れば、既に通信が終了していた。

 

「……逃げられたか」

「ふむ。召喚されたサーヴァントはこちらではなく向こうに召喚されていたか。いやはや、すぐにこちらに来ると思っていただけに、少し拍子抜けといった所か。いや、敵であった時は猛威を振るっていたが、味方になっても同じだろうか?」

「そのうち周回要員になるし、その時だね」

 

 そう言って、オオガミは脱力するのだった。




 三節と四節で止められた……HP多くて全体宝具とか強敵……


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これは流石に無理じゃない?(それでも縛りをやめないのはどういうわけか)

「無理。駄目。勝てないってこれ」

「流石に、コレは厳しい……私でも分かる。だが、なぜそれでも自らの枷を外さんのだ」

「そりゃアレだ。『本気なら勝てるから』だろ? うちにはアレくらい何でもねぇってくらいのがいるからな。強化解除は、まぁ、難点だが、それがあろうとなかろうとなんとかできるくらいの戦力はいるって訳だ」

「……いたとしても、使わぬなら変わらんだろう?」

「ま、それを言われちゃなんも言えんわな」

 

 未だ縛りを継続しておよそ最終戦。もし後があるとしても一度か二度だろう。

 しかし、そこに来て完全な停滞。勝てる気がしないので、放心状態だった。

 当然、なぜ縛っているのか分からないバサランテからすれば、首をかしげるもので、なんとなく分かるベオウルフは苦笑しながら答える。

 

「しっかしまぁ、弱体が効かねぇんじゃ、対策の打ちようがねぇな。宝具は止められねぇあのクソ火力も抑えられねぇってんじゃ、無理くせぇ。どうするよマスター」

「どうするって言ったって、そりゃ、考えるしか無いけどさ……突破口が見つからないんだよね……」

「だから、アビゲイル……いや、北斎をだな?」

「ですので、それはNGとなっております」

「何故なのだ!?」

 

 バサランテの悲鳴が聞こえるが、聞こえないことにする。

 

「まぁ、最悪、令呪を使うしかないでしょ。頑張れ~……明日のわたし~……」

「ずいぶんと投げやりになったな……」

「だから、メイン戦力をだな……いや、もうこれ以上言っても変わらんか……」

「お。ついにバサランテが諦めた。ふふふ。ようやく私が融通の聞かないやつだと分かってもらえたようで」

「……この、何とも言えない敗北感はなんだろうか……」

 

 納得のいかないバサランテはしばらく首をかしげていたが、諦めたように大きくため息を吐くと、

 

「まぁ、最後に勝てるなら構わん。勝ちにこだわる訳ではないが、奴のやり方は気に食わん。とりあえず全力で殴らせろ、という気分だ」

「それは、うん。叶うと思うけど。だってほら、メインアタッカーですし?」

「……今日は、私の出番が多いな……」

「おう。オレはそろそろ限界みたいだからな。どうしてもそっちが多いみてぇだ。俺もやりたいんだがな……」

「……あぁ、なるほど。信長達が言っていたのはこういうことか……」

 

 バサランテはそう言って、遠い目をする。これが、おそらく戦いたいサーヴァントと戦いたくないサーヴァントの差なのだろうと、身をもって実感したのだった。




 流石にコンティニューはしても良いんじゃないかなって思ってきました。というか、普通にめっちゃ難しいんですけどこれ。


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無事帰還したぞ~!(令呪はどうしたのかしら)

「ただいま~!! 空想切除してきたよー!」

「おかえりなさい……って、令呪はどうしたのよ」

「うぐっ! そ、それはですね……?」

「『一回だけ……一回だけだから……』と言いながら使ってました。私もあれ以上よく分からない波動で吹き飛ばされたくなかったので黙ってました」

 

 マイルームに帰ってくるなり、椅子に座ったエウリュアレに令呪がないことを突っ込まれるオオガミ。

 言い訳しようとした瞬間にトリスタンに先手を打たれ、硬直する。

 

「ふぅん……そう。全部ないってことは、コンティニューしたのね。で、石も割ったのかしら」

「いや、それはしてない。もうね、マシュに怒られるとか関係なく、あれはガチャ用だから、無いです」

「全力で否定するわね……まぁ、倉庫番が誰も騒いでないし、事実なんでしょうけど……その一回がなければ達成したのにね」

「本当にね。強化解除がなければ余裕だったのにね! もしくは弱化無効無し!」

「……ちなみに、真面目にやるとしたら、どうやってたの?」

「開幕カーマとスカディ様使って吹き飛ばして次ターンは適当。マーリン孔明で北斎さん囲って殴り飛ばす」

「自重無しだと発想が悪よね……あの三人、どんなときでも使われるじゃない……」

 

 一切の自重無く。とはいえ、これで勝てるとは思ってはいない。

 もう少し工夫が必要になる気がするが、方向性としてはこうなるだろう。

 

「まぁ、どっちみち自重しないならコンティニューなんだけど」

「知ってたわ」

 

 コンティニューして勝てないというのは、推奨レベルを大きく下回ってない限りそうそう無いので、大体一回すれば勝てるだろう。

 それは、既にやったことで証明されていた。

 

「まぁなんにせよ、無事に帰ってきたみたいでよかったわ。ところで、今更ではあるのだけど、なんでトリがいるのかしら。射落としても良いかしら」

「流石にそれは勘弁願いますので、私はこれで」

「うん。お疲れ」

 

 そう言って、颯爽と消えるトリスタン。

 エウリュアレの目が本気だったので、それも仕方ないのだろう。

 

「……さて。縛りも破ったのは一つだけ。なら、そうね。及第点ってところじゃないかしら」

「わりと手厳しいね? 何かあったの?」

 

 オオガミの言葉に、一瞬ピクリと反応するエウリュアレ。

 いつもなら何でもないと帰ってきそうな雰囲気だが、

 

「……そうね。頑張ってクリアしたのだから、報酬があって当然じゃない?」

 

 言いながら、エウリュアレは椅子から立ってベッドに腰掛ける。

 

「だからほら、こっちに来なさいな」

 

 そう言って、膝をぽんぽんと叩くエウリュアレ。

 オオガミはその意図を察した瞬間硬直し、

 

「……エウリュアレにそれをされるのって、なんか気恥ずかしい……」

「何よ。こっちはなんとも思ってないとでも? 意識刈り取るわよ?」

「……よろしくお願いします」

 

 観念したように、エウリュアレの膝枕を受けるオオガミ。

 そんなオオガミの頭を撫でつつ、エウリュアレは微笑むのだった。




 こいつらどんだけ膝枕してたっけ。と思い全文検索したら、めっちゃ膝枕してんじゃねぇかこの二人。と思い、膝枕好きか私は。と思ったのでこれからも膝枕をさせていこうと思います。欲望に忠実に生きます。

 あ、ラスボスは楽しかったです。超楽しい。正直最後から二個手前の方が地獄でした。令呪使いましたし。
 でもラスボス手前はイベント戦に近いので盛り上がって死にそうでした。


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日常
今更になって怒られたよ(お久しぶりですねマスター)


「いや~っははは……そろそろこの状況にも慣れてきたよ」

「あらあら。お久しぶりですマスター。今度はどのようなことで捕まったのでございましょう」

 

 もはやいつものように、平然と牢屋に投げ込まれるオオガミ。

 なんでこんな部屋を設けているのか気になるところではあるが、有効活用されているのだから問題ないのだろう。

 それはもちろん、現在正面で微笑んでいるキアラのための牢屋ではあるのだが。

 

「まぁ、うん。いつも通りのやつだよ。マシュに怒られたので、ポイッと」

「なるほど。そうでございましたか……まぁ、おはぎでも食べておくつろぎくださいませ」

「……ヨモツヘグイとか無いよね?」

「ここは黄泉ではありませんし、そもそもこれは食堂から少々拝借したもので作りましたので、ありません。ただ、マスターが自らここに戻ってくるのは止められません。けれど、マスターがここに来てくだされば、こうしてお話ができるので、私としては願ってもないことですね」

「……まぁ、うん。流石に洗脳はされないと思うし、されてもエウリュアレがどうにかしてくれるだろうから良いけどさ……おはぎ、いただきます」

「えぇ、どうぞ。時間はたっぷりありますので、ゆっくり食べてくださいね」

 

 ふふふ。と微笑むキアラを横目に、キアラ特製のおはぎを一口食べるオオガミ。

 

「……バレンタインの時もそうだったけど、キアラさんのおはぎって、普通に美味しいよね。うぅむ、食堂に置いても良いのでは……?」

「それはその、なんと言いますか……皆さんが納得してくださらないので、無理かと。それに、これはマスターにと思って作っていたので、数を作る予定はありませんので」

「むむむ。じゃあしょうがないね。この美味しいおはぎは今のところ独占な訳だ」

「そうですね。そういうことでございます。ふふ。独占するのではなく、独占されるだなんて……不思議な気分ではありますが、存外、悪いものではありませんね」

 

 そう言って気恥ずかしげにするキアラに、何とも言えない表情を返すオオガミ。

 

「そういえば、キアラさんって、ここに閉じ込められてるのに、物はわりと充実してるよね……どこから取ってるの?」

「そうですね……スキルで取りに行くときもありますが、ここはその、BBが無害な失敗作を投げ入れてくるので、自然とたまっていくと言いますか……おかげで生活するのになんら苦ではないのですが、失敗作がたまっているので、危険は多くなってきているのですよね……」

「だ、大丈夫? 爆発しない?」

「えぇ、大丈夫ですよ。危険なものはあらかた片付けましたので。おそらく、マスターがいる間はBBも余計なものは投げ入れないと思いますし、もし入れられても対処するので安心してください」

「なんか、スッゴい頼もしい……」

 

 聖母のように微笑むキアラに、オオガミは感嘆の声をあげるのだった。




 キアラさん、こんなキャラでしたっけ……なんか、スゴいほのぼのしてる……


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とりあえず撮っておきますね(ばらまいたら覚えておいてよ?)

「……とりあえず写真に納めておきましょうか」

「ちょ、止めなさいBB!!」

 

 オオガミの部屋に入ったBBは、呟きつつカメラを取り出すと、パシャリ。と音が響く。

 それと同時に顔を真っ赤にしたメルトが固まってしまった。

 そして、そんなメルトを膝の上に乗せているオオガミは、

 

「あ、BB。その写真、後でちょうだい」

「マスター!?」

「はーい! 通常版とデコったのをプレゼントしますね~!」

「BBも!?」

 

 なにやら交渉が成立したような二人に、困惑を隠せないメルト。

 そんなメルトのリボンをほどいて髪を櫛で梳いているオオガミは、

 

「まぁ、うん。ばらまいたりしたら、エルキドゥで締め上げるからね」

「えっ、あ……さ、流石にしませんよ……?」

「……まぁいいわ。ばらまかないなら、貫かないであげる……」

 

 顔を真っ赤にしながらも、ゆっくりとオオガミが髪を梳きやすいように姿勢を正す。

 だが、そんな状況に、BBはちょっと楽しそうに、

 

「なんか、こういうメルトって、本当に珍しいですよねぇ~……とりあえず録画しておきますね~」

「だっ……! だからっ、そう言うのを止めろって言って……!!」

「BB~? それ以上は有料だよ~?」

「あ、止めまーす」

 

 ビデオを撮ろうとしたBBに慌てたメルトを見て、すぐに対応するオオガミ。

 写真は良いけど映像は駄目なのかとBBとメルトの二人が思うが、これ以上言ったらわりに合わない対価を払う確信があったBBは素直にカメラをしまい、

 

「よぅし。写真を現像してきますね~。あ、リボンもうひとつ要ります?」

「いや、ポニテにするから要らないよ」

「そうですか。じゃあ仕方無いですね。また後で会いましょうねセンパイ!」

 

 そう言って部屋を出ていくBB。

 その足音が完全に去ったのを確認してから、

 

「で、あのデータはどうするのよ……BBなら絶対ばらまくわよ」

「大丈夫。本当にばらまいたら容赦しないから。泣かせにいくから」

「……なら、良いのだけど」

 

 一体何をする気なのだろう。と言いたげな表情のメルト。

 だが、オオガミはそれに気付くことなく、黙々と髪を纏めあげ、BBへの宣言通りメルトの髪型をポニーテールに変える。

 

「ふふん。複雑なのはあんまり出来ないけど、こういうのはエウリュアレのおかげでサクサク出来るようになったよ」

「そ、そう……なんだか複雑なのだけど、そのエウリュアレはどこに行ったのよ」

「うん? 久しぶりにアナと一緒に食堂に行ってたよ。メルトも行きたかった?」

「ん。そういう訳じゃないけど、ちょっと気になっただけよ」

「そう? じゃあ、髪型も変えたし、食堂行こうか。のんびりお菓子食べたいし」

「……別に、こっちに持ってくれば良いと思うのだけど」

「……了解。ダッシュで行ってダッシュで帰ってくるね」

 

 そう言うと、オオガミはメルトがなにか言うよりも先に走りだし、食堂へ向かうのだった。




 うん。やっぱりメルトは可愛いなぁ!(吐血

 それはそれとして、最後にアナが出たのって何時でしたっけ……ずいぶん出してない気がする……


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本当に仲いいよなアンタら(そんなに言うほど?)

「……なんつーか、ほんっとうに仲いいよなアンタら」

「うん? どこまでの範囲?」

「そこのグループ全体ですよ」

 

 やれやれと首を振るロビン。

 そんな事を言われたオオガミ達は顔を見合わせると、首をかしげ、

 

「そんなに?」

「全く意識してないのだけど」

「どこらへんがそう見えるのよ?」

「無意識かよ。いや、そんな気はしてたがよ……まぁなんだ。仲が良いのを悪いとは言わねぇよ。ただなマスター。痴話喧嘩をオレに持ち込むのだけは勘弁な」

「えぇ~……ロビンさんが一番巻き込みやすいのに……」

「いや、巻き込むなって言ってんでしょうが」

 

 そう言って苦い顔をするロビンに、悪い事を企んでいる子供のように笑うオオガミ。

 だが、そんなロビンに対して、エウリュアレとメルトは、

 

「大丈夫よ。そっちには迷惑はいかないはずだから」

「えぇ。もしそういう喧嘩が起きたらって言う仮定があるけど、もしそうなるなら」

「「絶対に逃がさないから」」

「……説得力あるな……」

「……完全に殺されるのでは?」

 

 一切容赦なく逃がす気はないという強い意思を感じたので、おそらく令呪なんて関係無しに捕獲してくるんだろうなぁと思いつつ、今日のおやつである抹茶のパウンドケーキを食べるオオガミ。

 目が怖いので、たぶんロビンがいなくなったあとで恐ろしい目に遭うかもしれないという漠然とした予感があった。

 

「さて。それじゃあオレはこれで失礼しますかね」

 

 そう言って立ち去ろうとしたロビンのマントを掴み、逃がさない。

 

「……あの~……行かせてもらえませんかねマスター?」

「ダメ。一人だけ逃がしはしないよ」

「目が本気じゃねぇか……!」

 

 せめてそのマントは置いていけと言わんがばかりの視線に、たじろぐロビン。

 当然、ちょっと動揺したからとはいえ優しくするつもりは一切ないのだが、無駄に力が強いので振り払うにも難しかった。

 

「くっ……どうしろってんですか……」

「いや、何もしなくていいからそこにいて……死にたくない……」

「殺さないわよ……」

「逃げられないようにするけど、それだけよ。えぇ。とりあえず、部屋に帰りましょうか。ちょっと話す事が出来たしね?」

「……ロビンさんも一緒に」

「行かねぇよ素直に諦めて帰れよ!?」

 

 必死で捕まえてくるオオガミをどうにか振りほどこうとしつつ、無駄にいい笑顔をしているエウリュアレとメルトから距離を取るロビン。

 

「マジで止めろマスター! マント渡すから明日までに返せよ!?」

「しばらく潜伏しておくね!」

「どれだけ逃げても、アビーなら捕まえてくれると思うから別に構わないけど……ちょっとお話の時間が延びちゃうかもしれないわね」

「……素直に行きます」

「そうそう。そうやって素直に行くのが……って、待てマスター! マントは持って行くってのか!?」

「まぁ、貰えるものは貰っておくという事で」

「あげては無いからな!? 返せよ使うんだから!」

 

 そう言って、エウリュアレとメルトに連れ去られていくオオガミをロビンは見送るのだった。




 毎度ロビンさん不憫な目に遭ってるなぁ……とりあえず、ロビンさんのマントを剥いだぞぅ! これで隠密に関しては完璧だな!


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吾は止まらぬぅ!!(ここで暴れられると私が怒られるんです!)

「うわはははは!!! 吾は止まらぬぅ! 当然菓子も貰うぅ~!!」

「暴れないでください! なんでかしわ寄せがこっちに来るんですから!」

「吾には関係ないなぁ!! ふはははは!!!」

 

 そう言ってお菓子を持って走るバラキーを追いかけるカーマ。

 そんな時だった。ドンッとぶつかり、バラキーは反動で倒れる。

 見上げると、そこにいるのは褐色赤髮の男。

 

「あぁ? 走り回ったら危ないだろうが。ちゃんと前見て歩け」

「ぐっ……わ、分かっておるわ。だが、(なれ)は誰だ。吾が知らぬという事は、新参か?」

「そうだが……なんかあるのか?」

「いや、無いが……名前を聞いておこうと思ってな。うむ。後ろから追いかけてくるカーマからも似たような気配がするからな」

「あぁ? 後ろだぁ……?」

「げっ……嫌な気配がすると思ったら、貴方、シヴァの化身ですか……本当に、ここはどうなってるんですか……」

「……どっかで会ったか……? いや、ちげぇな。シヴァの方に反応するのと、その気配……カーマか?」

 

 褐色の男に名前を言われたカーマは、全力で嫌そうな顔をする。

 だが、そんな事はお構いなしに空気を読まないバラキーは男の脛を蹴り、

 

「誰もカーマと話していいなどとは言ってない。早く名前を言えと言ってるだろうが」

「う、ぐうぅ……い、意外と良い蹴りすんじゃねぇかクソが……!」

「ふん……もう一発入れてやっても良いが、(なれ)はアーチャーだろう? 吾はランサーだからな。次でトドメになると思うが、それでも言わぬか?」

「なんだよココ……想像より何倍もアブねぇんだけど……怒る暇もねぇんだが……!」

 

 容赦のない一撃に、困惑を隠せない男。

 

「……で、名前は?」

「……アシュヴァッターマン。なんとでも呼べ」

「ふむ。あしゅう゛ぁったーまんか……長いな。短くならないのか?」

「あぁ? 短くなるわけねぇだろうが。ったくよぉ……挨拶だけしようと思ったらこんな目に遭うしよぉ……わけわかんねぇわ!」

 

 そう言って怒りを露わにして立ち上がったアシュヴァッターマンに、容赦なく槍を叩き込んで静かにさせるバラキー。

 その場で倒れたので、本当に気絶させただけである。

 

「ふぅ……とりあえず、これはますたーに押し付けておくか。迷惑料として菓子を要求するとしよう」

「……アッサリですね……なんというか、もっと面倒なことになると思ったんですけど、意外と強いんですね貴女……」

「……吾は鬼なのだが。鬼が弱いわけなかろう?」

「……そうですか。まぁ、別に良いんですけど。それはそれとして、暴れるならマスターの部屋で暴れてください。ここだとなぜか私が叱られるので」

「いや……マスターの部屋は、頼光の部屋並みにだめだ……エウリュアレが怖い……」

「……シミュレーションなら付き合いますから、そこにしてください」

「む。仕方あるまい。出来るだけ善処する」

 

 そう言って、アシュヴァッターマンを槍の先に引っかけて、バラキーとカーマはマスターの部屋に向かうのだった。




 バラキーを出したい気持ちとカーマを出したい気持ちと今日引いた新鮮なアシュヴァッターマン兄貴を出したい気持ちがせめぎあい結果としてアシュヴァッターマン兄貴が残念になってしまった。
 違う……違うんですよ兄貴……本当はもっとかっこよくするはずだったんだ……すまねぇ……すまねぇ兄貴……!


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納得いかねぇんだが(気持ちはスゴいわかる)

「納得いかねぇ」

 

 気がついて、一言目がそれだった。

 突然バラキーがアシュヴァッターマンを運び込んできて、何があったのかを聞いていたオオガミ達は、起きて早々そんなことを言いたくなるアシュヴァッターマンの気持ちが分からないでもない。

 

「まぁまぁ……いや、気持ちはめちゃくちゃわかるけども」

「バラキーの行動は明らかにやりすぎだけどね。それに、何かする前にやられてるんだから、完全に被害者よ。エルキドゥを呼んでバラキーをキアラ(お仕置き)部屋に放り込んだ大丈夫かしら」

「頼光さんのところに送り込むより最悪酷いことにならない? 大丈夫?」

「BBも監視してるし、大丈夫じゃない? 知らないけど」

 

 そう言って、オオガミの疑問に適当に答えるエウリュアレとメルトは、ああでもないこうでもないと言いながらジグソーパズルをやっていた。

 その状況に、アシュヴァッターマンは首をかしげつつ、

 

「おいマスター。アレ、放っておいても良いのか?」

「うん? まぁ、平気だよ? わりといつものことだし」

「……なら良いんだけどよ」

 

 何とも言えない複雑そうな表情を浮かべるアシュヴァッターマンに、オオガミは苦笑いしつつ、

 

「まぁ、そのうち慣れるよ。ただ、順応すると、たぶん突っ込み役に回るんじゃないかなって思ってる」

「あぁ? 突っ込み役だぁ? んだよ、漫才でもすんのか?」

「いや、天然でボケるのが多いから、そんな感じになってるだけ。そのうち否応にもわかるよ」

「お、おぅ……何が起こるんだよここは……」

 

 先行きが不安になってくるアシュヴァッターマン。

 隣のマスターがのほほんとしている分、なおのこと不安が募る。

 そんなときだった。部屋の扉が開けられ、現れたのはサングラスをかけたノッブとBB。

 一体何事かと思っていると、

 

「怒りパワーで火を出すサーヴァントが現れたと聞いて!」

「その炎で火力発電を行うためにやって来ました!」

「……あ? アイツら、オレを探してんのか?」

 

 変なことを言い出す二人に、反応してしまうアシュヴァッターマン。

 慌ててアシュヴァッターマンを隠そうとオオガミが動くが、それを見逃してくれる技術部(ふたり)ではない。

 

「行けいBB! 儂らの開発環境のために!」

「言われるまでもないです! 確保ー!!」

「うおあぁ!? なんだ、てめっ、やめろぉ!」

 

 ドッタンバッタンと騒いだ末に、なんとかアシュヴァッターマンを捕獲した二人は、

 

「騒がせたな! さらばじゃ!」

「そのうち返しますので、それまでよろしく!」

 

 そう言って、二人はアシュヴァッターマンを片手に走り去っていってしまうのだった。




 なんかもう、こういう宿命なのでは? ロビンさんばりの不憫さなんですが。

 どうにかならないものかなぁ……たぶんならないなぁ……


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こことんでもねぇ所じゃねぇかクソが(大変そうだな新人さんよ)

「あぁ~……クソ。とんでもねぇ所だなクソが」

「おぅおぅ、荒れてんねぇ。大変そうだな新人さんよ」

「あぁ? 誰だテメェ」

「ん~……そうだなぁ……いやいいや。ロビンだ。よろしく頼むぜ」

 

 どうにかBB達の魔の手から逃げ出したアシュヴァッターマンが、食堂で頭を抱えてるところにやってきたロビン。

 何の用だと言いたげなアシュヴァッターマンの表情を見て、ロビンは、

 

「あ~、一応言っておくが、オレはなにもしないぞ。というか、マスターの周辺の奴等以外はそんな危険はねぇ」

「なんだそりゃ。マスターを守んなら近くにいなきゃ無理だろうが。なのに、そのマスターの近くが危険ってのはわりと謎なんだが」

「あ~……説明は難しいんだが、そうだな。マスターの部屋に行ったことはあるか?」

「あぁ、ある」

「じゃあ、そこに女が二人いたはずだ。覚えは?」

「あるな。薄紫の髪をしたのと、青い髪の二人だ」

「うんうん。じゃあ、その二人とは別で、黒髪のヤバいやつと、紫髪のヤバいやつはいたか?」

「……いたもなにも、オレを捕まえて火力発電だのなんだのを抜かしてたヤツだわ! 次はブッ飛ばす!」

「おぉ……もう接触済みか……いやまぁ、なんだ。その四人が、現状一番危ない奴等だ。関わらん方がいいんだが……そうもいかないか」

「応とも! やられたまま引き下がるなんざ、オレには出来ねぇな! 準備整えてからもう一戦だオラァ!」

「あ~、ダメだこりゃ。そのうちやらかしてエウリュアレの目に留まるな」

 

 怒り狂うアシュヴァッターマンを見て、遠い目をするロビン。

 とはいえ、内心は応援していたりする。なんせ、BBとノッブに振り回されているのは彼だけではなく、むしろ振り回されていない人物を探す方が難しいとまで思えるほどだった。

 そんなときだった。食堂の扉が開き、茶々が入ってくる。

 

「ぷっりん! ぷっりん! 伯母上から没収したぷっりんを食っべるぅ~……ってうおぁ!? 怒りの炎が吹き荒れてるぅ~!?」

「はいはい。吹き荒れてますけど、報告しないでくださいね~」

「むむっ。さてはその褐色怒りマン、茶々の怒りぱぅわーと似たものを感じるよ!」

「あぁ!? なんだテメェ、分かるやつか!」

「なんかシンパシーを感じるよ! 名前を教えて褐色の怒りマン!」

「おぅ! アシュヴァッターマンだ! 好きに呼べ!」

「よろしくねアシュたん! 茶々だよ! 茶々って呼んで!」

「その呼び名はちょっと話し合いたいが、まぁいい! 行くぜ! まずはあの黒髪からだ!」

「話の流れは全くわかんないけど、黒髪で燃やしたくなるのは伯母上しかいないから燃やしに行こうアシュたん! レッツゴー!」

 

 うわははは! と高笑いしながら飛び出していく二人を見送ったロビンは、

 

「もしかしなくても、問題児が増えた感じですかね? オレ、自分の苦労増やしたやつ?」

 

 そう呟いて、またひとつ増えた悩みの種に、大きなため息を吐くのだった。




 そこはかとなく緩和されたような気がするけど、これ、問題児が増えただけなんじゃないかとロビンさんと同じように思いつつ、なってしまったのだし、是非もないよねとノッブみたいに笑い飛ばすことにしました。

 是非もないよねっ!


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なんだったんじゃ一体(ノッブの自業自得じゃないです?)

「ふぅ……なんだったんじゃ一体……つかBB。別に手伝ってもよかったんじゃよ?」

「えぇ~? だってほら、銃弾と炎が飛び交うとか、BBちゃん的には服が焦げる可能性があるので却下と言いますか……きれいなお肌が煤けるとか、論外ですね!」

「ついこの間まで鉄と油にまみれて作業していたくせによく言うわ」

 

 やれやれ。とでも言うかのように首を振るノッブ。

 突如として工房を襲撃してきたアシュヴァッターマンと茶々のファイアーコンビに驚きはすれど、すぐさま反撃に移るのはここならではだろう。

 ちなみに、なにもしてないと言われているBBは戦闘の影響で壊れそうなものを奥の部屋に移動させていたりする。

 

「で、こ奴等はどうするか……おそらく首謀は茶々だと思うんじゃが……」

「まぁ、アシュヴァッターマンさんにはちょっと悪いことしましたし、茶々さんだけ発電所行きにしますか」

「そうじゃな。じゃあ、アシュヴァッターマンは儂が持っていくから、茶々は適当に放り込んでおけ」

「は~い。手早く済ませて、部屋を元に戻しておきますね~」

 

 そう言って、二人はそれぞれアシュヴァッターマンと茶々を抱えて別れるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「という訳じゃ。うむ。んじゃ、預けたぞ」

「おいおいおいおい! なに自然にオレに預けようとしてるんですかね!?」

 

 廊下を歩いていたロビンを捕まえ、一方的に押し付けるノッブ。

 

「全く、いい加減にしてくれよ? 未だにマスターにはマント奪われたままだから違和感あるし。これ以上面倒事は嫌なんですけど」

「気持ちは分かる。儂も面倒なのは嫌じゃし。だから、とりあえず任せられる奴に任せるのが一番じゃろ」

「そりゃそうだが……いや、まさかそれがオレだとか言う気です? 正気かアンタ」

「そういうつもりじゃし、もちろん正気じゃ。というか、顔の広さに関してはお主以上はそんなにいないと思うんじゃけど。どうせ、押し付けられるのはもう分かってるから、誰に渡すかを今考えてる最中だと思ってるんじゃが、深読みのし過ぎと言うわけではなかろう?」

「……いやまぁ、そうなんですけど。つっても、カルナの所に連れていくくらいだがな」

「ん。まぁ、それで十分じゃろ。ほれ、持っていけ」

「マジで押し付けんのかい。そこまで聞いたら仕方ないから持っていってやるとか無いんですかね?」

「うむ。そこまで聞いたのなら仕方ない。持っていかせてやろう」

「理不尽すぎる!」

 

 しかし、ロビンはそう叫びながらも、ノッブに差し出されたアシュヴァッターマンを受けとるのだった。




 苦労人ロビンさん。なお、未だにマントは帰ってきてない模様。


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なんか居心地悪くなってきましたね(廊下で鉢合わせるとさらに酷いぞ)

「あ~……なんか、だんだんとここの居心地悪くなってきたんですけど……」

「吾は前からだがな。頼光と廊下で鉢合わせたらどうしようもないからな……」

 

 言いながら、サクサクとバタークッキーを食べるバラキーとカーマ。

 最近になってシヴァの半身たるアシュヴァッターマンが来て、ついに天敵が揃ったかと言わんがばかりに渋い顔をするカーマと、通常モードと水着モードの二種類で絶対に殺しに来ようとする頼光に内心怯えているバラキーは、いつの間にか一緒にいることが多くなっていた。

 

「というか、何飲んでるんです?」

「む? これはな、『たぴおかみるくてぃー』なるものだ。最初はなんだこの黒いのはと思ったが、食べてみると意外とうまい。このなんとも言えぬ食感が良い」

「そうですか……それ、誰に言えば貰えます?」

「赤い弓兵だな。奴は作れる幅が一番多いからな。とりあえず頼むと出てくる」

「へぇ……じゃあ私もいってきますね。クッキー残しておいてくださいよ」

「戻ってくるときに新しいのを持ってくれば解決だな。待ってるぞ」

「えぇ~……仕方ないですね……」

 

 そう言いながら、カーマは厨房のエミヤに向かって歩いていく。

 そして、入れ替わるようにやって来たのはネロ。そろそろ暑くなってきたからなのか、いつもの花嫁衣装を脱いで水着になっていた。

 

「むっ。タピオカミルクティーか。貴様も流行に乗る気だな?」

「流行は知らぬ。吾はあると言われたから興味本意で貰っただけだ。ただまぁ、少し気になるから仔細を聞かせよ」

「むぅ……そこはかとなく余よりも偉そうにしている気がするが、まぁ良い。余は寛大だからな。その程度の無礼は許そう。して、仔細についてだが、巷ではなにやらタピオカチャレンジなるものがあるらしいのだ」

「なんだそれは……これを一気飲みでもするのか……? どう考えても喉に詰まらせて死ぬぞ……」「うむ。確かにそれは余と言えど一度死ぬかもしれぬ。というか、やりたくない。でだな。それがどんなチャレンジかと言うと、胸の上にそのミルクティーを乗せ、飲むものだと聞いた。ちなみにそれを自室で言っていたマスターはメルトとエウリュアレに蹴られて悶えていたぞ」

「それ死んでないか!? エウリュアレはともかく、メルトは致命傷になりかねないが!」

「うむ。余も思ったけど、生きてたしエウリュアレとメルトに医務室に連れて行かれたからおそらく大丈夫だ……と、思うぞ」

 

 目を逸らしながら言うネロに、何とも言えない表情になるバラキー。

 そんな時だった。わざわざ第三再臨にしてやってきたカーマは、胸の上にプラスチックカップに入ったタピオカミルクティーを乗せてドヤ顔をしつつ、

 

「ふふん。つまり、こういうことでしょう? どうです?」

「なっ……! 余が先にやりたかったのに先にやられるとは!」

「ふふん。私は出来ましたけど、貴女に出来ます?」

「やって見せようではないか! そこで待ってるが良い!」

「は~い。頑張ってくださいね~?」

 

 そう言って、走り去るネロに手を振るカーマ。

 それを見ていたバラキーは、ぼそりと、

 

「BBに似てきた気がするなぁ……」

 

 その呟きはカーマには届くことなく、カーマ自身は楽しそうに席に座るのだった。




 タピチャレに今更乗ってみましたけど、戦争起こりそうだなこれ……何が酷いって、オオガミ君の周囲でまともに出来るのっでBBだけでは……?

 書いてる時にメンテが終わり、開くとそこにはネロがいた……ちょうどネロを出したと同時だったので、思わず笑ってしまったのは仕方のない事だと思う……


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ニートゲーマー舐めないで欲しいっすね(姫のアイデンティティーのために負けられない!)

「ふっふっふ。ニートゲーマー舐めないでほしいっすね。やり込みが違いますとも」

「ぐぬぬ……姫も負けられない……ここで負けたら姫のアイデンティティーが消失しちゃうし! まーちゃんにカッコ悪いところを見せるわけにはいかないからね!」

「お主のアイデンティティーそこでエエんか」

「あの歴史に残るチェイテピラミッド姫路城を違法建築したのは些事らしいですよ。大物みたいなこと言ってません?」

「全ては些事……いや待って悪かった変なこと言ったのは謝るから集中砲火は止めて死ぬぅ! 死んだっ!」

 

 ゲームで大乱闘をしている五人。

 オオガミ、ノッブ、BB、刑部姫に加え、新メンバーのガネーシャによる大混戦。

 ボケをかましたオオガミが四人に一斉に叩かれると言う事件があったものの、なんだかんだ最終的に刑部姫とガネーシャの一騎討ちになる状況が先程から続いていた。

 

「やり込み具合が段違いじゃなぁ……息抜き程度の実力じゃ足りぬか……」

「いえいえ。ジャイアントキルの機会はまだありますし、そろそろ行動の癖も見えてきたので、ここから大逆転しますとも!」

「それ負けフラグでしょ。知ってる知ってる」

「センパイは黙っててください!」

 

 既に二人の的確な一撃で彼方へぶっ飛ばされた三人は、のんびりと観戦しながら雑談をしていた。

 そして、余計なことを言うオオガミはBBに軽く叩かれていた。

 その気配を感じたのか、刑部姫は不満そうに、

 

「な~んかBBとまーちゃんの距離近くない!? とりあえず次のときはBBちゃんから始末するね!」

「いや、そうしたら今度はマスターに乗り掛かるBBが出来るだけじゃないっすか? ボクたちが出来ることといったら、どっちかを秒殺して、次の戦いを始めるくらいですよ」

「……なるほど。なら、ここはやっぱり姫が勝つしかないんじゃないかな!」

「ボクに勝てるとか思わないことっすね! ガネーシャさんの神聖ぱぅわーで粉微塵にしてくれます!」

 

 ギャーギャーと騒ぎながら雰囲気と戦闘が激化していく状況。ただでさえも無駄の少ない動きが、更に洗練されていくのを後ろから見ている三人は、

 

「……まぐれ勝ちいけそう?」

「BBがさっきいけそうとか言っておったし、有言実行してくれるじゃろ」

「あれ、地味にハードル上げてます? ていうか、ノッブも出来ますよね!? 私だけみたいな雰囲気にしないでくれます!?」

「頑張ってねBB」

「応援しておるぞ~」

「見捨てましたね!?」

 

 一人で頑張れとばかりの笑顔で手を振る二人に、BBは涙目になるのだった。




 これを書くためだけにガネーシャ様をレベル90にして、おまけでスキルマまでしたので貯金が消し飛びました。ついでに鏡も枯渇しました。宝物庫はまた今度……


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茶々はとっても不満です(マスターへのイタズラなら手伝うわ)

「茶々ね、とっても不満な事があるの」

 

 むすっとした顔で、全身から不満ですというオーラを出す茶々。

 そんな茶々に、アナスタシアは目を輝かせながら、

 

「マスターがイタズラを当然のように回避することかしら。だとしたら手伝うわ。この前転ばせようと床を凍らせたらマスターがかかる前にエルキドゥに叱られたのはまだ納得いかないの」

「それは当然の対処だと思う」

「そんなっ!」

「そうだな。正面から堂々やれば問題なかったと思う」

「違う、そうじゃない」

「全くだ。んなことやってガキどもが怪我したらどうすんだ。やるんならすぐ引っ掛かるように通る寸前でやれ」

「アシュたんは間を取った名案みたいなの生み出さないで。話が進まないから」

 

 けどそれはそれとして後で実践するけどね。と付け加えつつ、咳払いを一つ。

 

「なんでアシュたんがここにいるのかってことです」

「それはあれだ。一昨日くらいに緑茶が運んでいたのを貰ったからだな。マスターがここに涼みに来たら厄介なので番犬だ」

「番犬……」

「おぅそれ以上繰り返したら燃やすぞ」

 

 繰り返したせいでアシュヴァッターマンに睨まれる茶々。

 すると、それを見ていたアナスタシアは、ニヤリと笑い、

 

「……番犬」

「いぃ度胸だゴラァ! 燃やし尽くしてやらぁ!」

 

 そう言ってアナスタシアを追いかけるアシュヴァッターマン。

 なんとなくこうなる予感がしていた茶々は苦笑い浮かべ、スカディはクスリと笑う。

 そして、アナスタシアが扉を背にし、アシュヴァッターマンが拳を振るったときだった。

 

「アナスタシアさんいますか」

「「「あ」」」

 

 唐突に開かれた扉の先には、アナがいた。

 既に拳を振るっているアシュヴァッターマンと、それをかわしたアナスタシアはもちろん、見ていた茶々とスカディも止める余裕もない。

 そして、燃え盛る拳が迫ったアナは――――

 

 

 身を屈め、当たる寸前でアシュヴァッターマンの顎にサマーソルトキックを叩き込み、吹き飛ばす。

 容赦のないその一撃を受けたアシュヴァッターマンは、過去最速の勢いで昏倒するのだった。

 それを見た三人は、少しの沈黙のあと、

 

「またアシュたん倒れてるんだけど」

「相性不利の上にレベル差99。クリティカルだから一撃なのも仕方ないわね」

「さて。とりあえず医務室だな。私が連れていこう」

 

 あまりに酷い展開に、流石のスカディも同情したのか、普段なら自分でしない医務室へ連れていくという行為を自らする。

 

「……それで、アナスタシアになんか用なの? 話は聞くけど」

「あぁ、そうでした。かき氷を作るので氷を作ってくれとマスターが。よろしくお願いします」

「え、えぇ……分かったわ」

 

 そう言って、茶々以外が部屋を出る。

 そして、茶々は明後日の方を見ると、

 

「アシュたんにはもっと平和に過ごせる場所に行ってもらおう」

 

 そう呟いて、部屋の片付けを始めるのだった。




 アシュ兄貴はキレ芸一撃昏倒ネタ枠になってしまった……? どうしてこうなった……?

 感想でアナの名前を見て、最近全く出してないことに気付いたので組み込もうとして、その前に考えてたネタに無理矢理組み込んだらアシュ兄貴が死んでた……なんで?


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ぐだぐだファイナルですって(いや終わらんじゃろそれ)

「という事で、ぐだぐだファイナルが来るらしいのですがノッブ。どう思います?」

「また本能寺なんじゃけど。儂また燃やされるん? やるなら殺るって言って欲しいんじゃけど。敦盛踊る?」

「言えば良いんです? じゃあ専用ステージ作るので一回燃やしましょうか。ダンスステージ欲しいです?」

 

 いつもの工房で、楽しそうに言うノッブとBBに、オオガミは苦笑する。

 死因をネタにするのはいつものことだが、流石にステージまで用意するのは不味い。ノッブが意気揚々と退場する可能性がかなり高いからだ。

 

「そのステージはきっと次のイベントで作られてるだろうからいいとして、今回のメンバーをどうしようかって思うんだけど」

「ふむ? 深く考える必要ない気がするんじゃが。だってほら、いつもの攻撃力アップじゃろ? 正直要らんじゃろ」

「要するに、センパイが連れ回したいサーヴァントを自由に選ぶってことです! もちろん、BBちゃんでも良いんですよ?」

「ん~……とすると、インドで絆レベルを上げきれなかったサーヴァントを連れ回すしかないかな……」

「あれ。それって、もうBBちゃんの可能性ゼロじゃないです?」

「ふっ。更に言えば儂ら織田軍は全員絆レベル上がっとるからな。人斬りサークルの樽たくあんと以蔵しかおらんわ。おかしいんじゃけど!儂より茶々の方が絆レベル高くない!?」

「連れ回さないと絆レベルは上がらないから……連れ回すのが面倒なノッブは置いていかれる定めなんだよ……」

「面倒と言い始めたらエウリュアレとメルトとか、まさにそれだと思うんじゃけど!! 単体だし! 儂全体なんじゃけど!!」

「そこはほら、越えられない壁があるから」

「嘘じゃ! 絶対嘘じゃ! 儂知ってるからな! メルト一筋っぽく振る舞っておきながら、最終的にはエウリュアレを選んでおったのを! つまり儂も連れ回しメンバーに「入れません」納得いかんわぁーーー!!!」

 

 三人の間にあったちゃぶ台がひっくり返される。

 だが、それを最初から予想していたとばかりに、オオガミは横に転がってかわし、BBは門を使ってちゃぶ台をオオガミの正面に飛ばす。

 ゴッ。と鈍い音を立てて、頭に激突したちゃぶ台の下敷きになるオオガミ。

 それを行ったBBは満足そうにすると、

 

「まぁ、私も邪神霊基じゃないと使われませんし。ノッブも次のイベントで強い霊基になれば良いわけです。ふふふ。つまり、BBちゃんによる邪神的合成をすれば確実に強力なサーヴァントになると思うんですよ!」

「……儂は遠慮しておくぞー。やろうとしたら蜂の巣にするぞ」

「は~い。しませんってそんなこと。面倒ですし、万が一にも失敗したら私の負担が増えますし。それじゃ、センパイを医務室へ運んでおきますね~」

 

 そう言って、ちゃぶ台の下からオオガミを引きずり出したBBは、工房を出ていくのだった。




 星五ノッブ、期待してます。つよつよノッブが見たいんじゃぁ……波旬を使うノッブが見たいんじゃぁ……


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エリちゃ~ん!!(突然どうしたのよ子イヌ!)

「エリちゃ~ん!」

「うわぁ!? 何々どうしたのよ子イヌ!!」

 

 オオガミに飛びかかられたエリザベートは、そのまま押し倒される。

 

「いったたた……突然どうしたのよ……」

「いや、特に深い理由は無いんだけど……なんというか、衝動と言いますか、何と言いますか?」

「そ、そんな……でもでも、(アタシ)は皆のアイドルだしぃ、子イヌだけのになるにはちょっと無理っていうかぁ……」

「うん。まぁ、それは分かってるけど。んで、何をする予定だったの?」

 

 先に起き上がるオオガミは、エリザベートを助け起こしつつ、そんなことを聞く。

 エリザベートはオオガミの手を借りながら立ち上がると、首を傾げ、

 

「何をするって言われても困るんだけど……食堂でクッキーでも食べようかなって。そっちは大丈夫なの? その、エウリュアレとか」

「あぁ、うん。大丈夫。ちゃんと寝てるうちに来たから」

「何その密会みたいなの。バレたら殺されちゃうんじゃない?」

「それはほら、たぶん何やっても変わらないので」

「ま、巻き込まれたくはないんだけど……一緒に吹き飛ぶとか、勘弁願いたいのだけど」

「いや、流石に害はないと思うけどさ……大丈夫大丈夫。ちゃんと逃げれば問題ないって」

「ちゃんと生け贄にするからね。覚えてなさいよ?」

「はいはい。じゃあレッツゴー!」

 

 そう言って、二人は食堂に向かうのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ふむ。二人でいるのは珍しいな」

「まぁね~。エウリュアレもメルトもいないのは激レアだよ」

「逃げてきたんだって。珍しいわよね!」

「あぁ。明日には弓でも降るのではないか?」

 

 そう言って、皮肉っぽく笑うエミヤ。

 そんなに激レアですか。と突っ込みつつ、持ってきたクッキーと食べる。

 

「いやなに、あれだけ一緒にいるんだ。一心同体。いや、比翼の如く、離れたら死んでしまうような雰囲気があったからな。一人でも入れるのかと思ってな」

「エミヤさんは余計な事言いますよね。今度エウリュアレに撃たれてみます?」

「遠慮しておこう。彼女の宝具は男性には厳しいからな。それで、何かを作った方が良いか?」

「あ~……エリちゃんは何かある?」

「クッキーのおかわりを所望するわ!」

「了解だ。用意するとしよう」

 

 そう言って、オオガミ達と別れて厨房の奥へ行くエミヤ。

 それを見送った二人は、

 

「で、本当にお茶をするだけなの?」

「えっ。それ以外にある?」

「……ライブの予定とか?」

「あ~……そうだねぇ……余裕があったらルルハワかその後にでも用意しようか」

「本当に!? 嘘じゃないでしょうね!!」

「出来るかはわからないけどね。出来なかったら、その時はごめんね?」

「えぇ、気にしないわ! だってほら、マスターはやってくれるって信じてるもの!」

「うぐっ、信頼が重い……」

 

 そう言って胸を押さえるオオガミ。

 そんなオオガミの首に背後から腕が回され、

 

「そうねぇ。大丈夫。やってくれるわ。私が寝てるうちに遊びに行くくらいの茶目っ気があるけど。きっとやってくれるわ」

「ヒィッ」

「……やっぱり見つかったじゃない……」

 

 エウリュアレの声に、一瞬で顔が青くなるオオガミと、目を逸らすエリザベート。

 

「何時になるかは分からないけど、期待していいと思うわよ。そういう約束に関しては破らないもの。えぇ、本当に」

「そ、そう。うん。分かったわ。練習しておくわね」

「えぇ。楽しみにしてるわ」

 

 そう言って、エウリュアレはオオガミから離れて行くのだった。

 それを見送ったエリザベートは、

 

「ちょっと。スッゴイ怒ってた気がするんですけど! どうするの!?」

「あ、後でどうにかしてきます……うん。エリちゃんは気にしないでライブの練習しても大丈夫だよ……!」

 

 そう言ってグッと親指を立てるオオガミの顔は、真っ青だったので安心できないエリザベートなのだった。




 発作的にエリちゃんを出したくなったので出した。まるでヒロインみたいだとかエウリュアレは捨てたんですかとかメルトのことは遊びだったんですかとかは聞くけど聞き流すか声を大にして私はメルトが好きですと叫ぶので安心してください。エリちゃん可愛いから絆マにしてよね!(早口


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なんで振り回されるんでしょうね?(面倒見がいいとか言われぬか?)

「はぁ~……なんでこう、振り回されてるんでしょう。納得いかないんですけど」

(なれ)、面倒見がいいとか言われないか? 毎度吾と一緒にいるのどうかと思うぞ」

「振り回してる張本人にそれを言われるのはより一層納得いかないんですけど!」

 

 もっしもっしとピーチタルトを食べるバラキー。

 その様子を見ながら、カーマは不満そうに言う。

 

「そうは言ってもなぁ……吾は別にずっとついてこいとか言ってないのだが。毎度暇そうにしている汝に声をかけてはいるがな?」

「うぐっ。それを言われると返す言葉もないんですが……まぁ、確かに暇ですけど。でも、毎度構っていられるほど暇って訳でもないんですよ」

「いや、だからそのときは吾は誘わぬだろうが」

「なんで声をかけてくれないんですか!」

「えぇ!? それ、吾が怒られるところか!?」

 

 八つ当たりのような文句に、困惑するバラキー。

 カーマは頬を膨らませながら、

 

「全く。貴女は変なところで気が利くので、鬼らしく気を利かせないでください。そういう横暴なので良いんですよ」

「えぇ……吾、前にそれをして厨房組に菓子を取り上げられたからしたくないのだが……」

「なんで懐柔されてるんですか!? 鬼ってそんなのでしたっけ!?」

「いや、吾もどうかと思うが……しかし、随分と鬼らしいことにこだわるな? 何かあるのか?」

 

 訝しげな視線をカーマに向けるバラキー。

 だが、当の本人であるカーマは、不思議そうな顔で、

 

「えっ。いえ、別になにもないですけど。ただ、なんとなくそうするのが貴女の目標なのでしょう?」

「……汝にそれを言われるのは、些か気分が悪い。次言ったら許さぬぞ」

「はぁ。よく分かりませんけど、分かりました」

 

 分からないながらも、別段機嫌を損ねたいわけでもないカーマは、素直に頷く。

 

「しかし、カーマは喰わぬのか?」

「え? あぁ、タルトですか? 貰って良いのなら貰いますけど」

「む。喰わぬか。とは聞いたが、吾のをやる。とは言ってないぞ」

「……じゃあ、奪わせてもらいます」

「なぁっ!?」

 

 突然バラキーのタルトに手を伸ばしてくる。

 それに対して、バラキーは素早く皿ごと移動させてカーマの魔の手をかわす。

 

「な、何をする! 吾のタルトを奪う気か!?」

「えぇ。宣言したでしょう? 諦めて私に渡しなさい!」

「絶対に嫌だ! 断る!! ハロウィンのマカロン事件を忘れておらぬからなぁ!!」

「いや、それはカーマとは関係ねーでしょうが」

 

 ズビシッ! と背後からバラキーの頭にチョップをいれるロビン。

 二人は硬直し、そして、怒られている子供のようにロビンから目を逸らして下を向く。

 

「……あ~、食いたいなら取ってきてやるよ。だからほら、皿を下ろせ茨木」

「むぅ……緑の人に言われたならば仕方あるまい……」

「完全に手なずけられてるじゃないですか……」

「んじゃ、おとなしく待ってろよ~」

 

 そう言って、ロビンは厨房に向かっていく。

 それを見ていたカーマは、下りてきていた皿の上からタルトを奪いつつ、

 

「なんだかんだ、苦労しそうな性格してますよね。あの人……あ、このタルト美味しいですね」

「うむ。吾も思う。あと吾は許可してないぞ」

「そうですね。貰いました。ロビンさんが持ってきたら少しあげますよ」

「約束だぞ」

 

 そう言って、二人は笑うのだった。




 カーマとバラキーの仲の良さが凄い事に……まぁ、仲がいいならいいかな……?


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……なにこれ?(コレじゃないですぅ~!)

「……なにこれ」

 

 廊下でそう言うオオガミの前には、二頭身でちびノブくらいの大きさのちびBB。

 すると、彼女は怒ったような表情になり、

 

「コレじゃないです! センパイの可愛い後輩、BBちゃんですからね! 正確にはちょっと違うんですけど……まぁ、ちびノブをベースにして、一昨年のレースの時のイシュタルさんを参考にして個人的に作ったものなんですけど。試運転を兼ねてちょっとカルデア一周してます」

「なるほど? じゃあ、一緒に行こうか?」

「ん。そうですね……敵だと思われるのも癪なので、一緒に来てくれるとありがたいです」

「了解」

「えっ、ちょ、うひゃぁ!!」

 

 ひょい。とちびBBを抱えあげるオオガミ。

 恥ずかしいのか分からないが、じたばたと暴れたちびBBだったが、やがて離そうとしないオオガミに諦め、

 

「もう……エウリュアレさんに見つかっても知りませんからね」

「うん。ちゃんとBBを差し出しておくね」

「私を生け贄にしてません?」

「大丈夫大丈夫。流石に今のBBを砕きはしないでしょ。人形みたいだし。まぁ、メルトだったら確実に破壊しに来ると思うけど」

「あ~……ありそうですねぇ……人形でも、私の顔をしているのなら平然とぶち壊しに来そうですし」

「そうね。私は物騒だもの。とりあえずBBの顔があったら蹴り砕いちゃうかもしれないわ」

「だよね~!」

 

 あはははは。と笑い、一拍。流れるように、いつの間にか後ろにいたメルトにちびBBを渡す。

 暴れるちびBBを見たメルトは、しかし。それを受けとることなくオオガミに近付くと、

 

「別にコレが欲しい訳じゃないの。私が我慢ならないのは、コイツに構ってて、私をないがしろにされるのが我慢ならないの。分かる?」

「う、むぅ……ごめん。忘れてた訳じゃないんだけど、何をしようか考えてたら時間経っちゃってて」

「良いわ。それで、何をする予定だったの?」

「このちびBBの試運転を兼ねてカルデアを回ろうかなって。まぁ、決めたのはBBなんだけど」

「ふぅん。そう。じゃあ行きましょう? エウリュアレはしばらく食堂にいるはずだから、最後に食堂に行けば問題ないわね」

 

 そう言って、オオガミの手を引くメルト。

 すると、ここまで静かにしていたちびBBが突如抜け出すと、その場からメルトに向かって蹴りを叩き込む。

 そして、

 

「目の前で突然いちゃつかないでください!! 思わず蹴りたくなっちゃうじゃないですか!」

「もう蹴ってますけど!?」

 

 胸を張ってそんな事を言い張るちびBB。

 そんなBBに蹴られたメルトは、ゆらりと起き上がると、

 

「いい度胸してるじゃない……無視してあげようと思ったけど、やっぱりやめたわ。今ここで蹴り砕く!!」

「きゃ~! コワ~い!!」

 

 そんなふざけた声を出しながら、ちびBBはメルトの蹴りをひらりひらりとかわしながら廊下を進んでいき、その後ろをオオガミはついて行くのだった。




 ちびBBネタは考えてたんですけど、監獄のイシュタルを思い出したのでこれによってBBによる遠隔操作を可能としたのです。やはりBBちゃんは有能……

 メルトを可愛いツンデレ風味に出来た気がする……出来た気がするだけ……?


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壊されちゃいました……(容赦なくいったのう……)

「とりあえず、メルトにも壊されないように補強しなきゃですね~」

「うわっ、本当に壊れとる……流石に防御力が足りぬか……」

 

 無惨に蹴り砕かれたちびBBをノッブに見せつつ嘆くBB。

 ノッブは少し考えると、

 

「とりあえず、試運転としてはどうだったんじゃ?」

「えぇ、まぁ、当初の目的は果たせましたが、やっぱり壊されたのが悔やまれます……やっぱり煽りすぎましたか……」

「いや、あれは儂も同じ立場ならやるからなんとも言えんが……動いたんなら問題ないな。んじゃ、サクッと作り直すかのー」

「はいぃ……お願いします~」

 

 しくしくと泣きながらちびBBをノッブに渡すBB。

 ノッブはそれを受け取り、怪我の具合を見ると、

 

「あ~……まぁ、頑張れば行けるかのぅ……一週間くらいで終わる気がするが……イベント行ったら遅くなるやもしれぬ……」

「まぁ、そのときは仕方ないですし。私だけでも直せると思いますけど、ノッブの方が早い気がするんですよねぇ……うぅむ、でも、ノッブは特攻ですし、絆レベルボーナスありますし……ボーナスのためだけに入れられる可能性が無きにしもあらずというか、むしろその為だけに入れないのは最近のセンパイらしくないような気がすると言いますか……」

「まぁ、儂が編成に入れられるのも? 優秀すぎるからじゃし? 是非もないと言うか? むしろ、もっと呼ぶべきと言うかじゃし?」

「あ~……はい。そうですね。ノッブは一部に対してむちゃくちゃ刺さるので、優秀です。まぁ、その一部が稀少なんですけど」

「……儂傷付いた。しばらく引きこもる」

「えぇぇぇ!? ちょ、やめてくださいよ謝りますからぁ!」

 

 暗い顔で奥の工房へとこもろうとするノッブを必死で引き止めるBB。

 すると、ノッブは深くため息を吐くと、

 

「大丈夫じゃ。コレは直すし、マスターに呼ばれたらさっさと仕度していく。ここだと設備が悪いから奥に行くだけじゃ。手伝うならお主も来い」

「そりゃ、行けるなら行きますけど……このサイズ、二人でやるんです?」

「なんで同時に作業する扱いなんじゃよ……こういう小さいのをやるときは助手をせい。工具を探し回るのは面倒じゃし、時間かかるからな」

「なんで整理してないんですか……まぁ良いです。困ったら私の部屋から持ってくれば良いですし」

「ま、その方が楽じゃな。んじゃ、さっさと作業するぞー。明日は最低でもどっちかは駆り出されるじゃろうし」

「今日中に進めておかないとですね~」

 

 そう言って、二人は作業部屋へ向かうのだった。




 最近複雑になってきた工房。現状、例の隠し階段を降りた先に休憩スペースがあり、そこにはソファーとかテレビとかゲームとかが置いてある。来客用エリア。
 そこから奥に続く扉が三つあり、それぞれノッブの作業場、BBの作業場、資材その他の置き場になっている。

 ちなみに、始皇帝やルビーは資材その他の置き場に設備を置いているので、奥の工房までは入ってない。
 そして、そのエリアは部屋主の許可がない人物は入らないようにされていたりする。

 とかなんとか。そんな感じになっていたり。ちなみにオオガミの部屋への秘密通路はBBの部屋から直通です。
 ちなみに、わりと頻繁に改装工事が繰り返されるので、間取りは高頻度で変わります。大体喧嘩のせい。


 それはそれとして、ついに星五ノッブ! やった! コレは引くしかない!! 超かっこいいノッブ欲しい!! でもあれは技術部には入れねぇな(確信


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オール信長総進撃 ぐだぐだファイナル本能寺2019
気付くと私は戦国大名だった(頑張って領地を増やしなさいね)


「さてさて。戦国時代に送り込まれて気付けば大名ということですけど、とりあえず隣国を占領するってことでいいのかな?」

「そうね。こういうのは好きよ。殺伐としてて。それで、私は守られる側ということでいいわよね?」

「たぶん私も貴女も戦う側の気がするけど?」

「……わかってるわよ。あぁもう。お姫様も楽じゃないわ」

 

 そう言って、オオガミの右腕をしっかりと抱き締めて動かせないように拘束しているエウリュアレは、同じようにオオガミの左腕を押さえ込んでいるメルトをちらりと見ると、前を向く。

 

「それにしても、ノッブが多いわよねぇ……いえ、全然構わないし、せっかくだからまた一体くらい持ち帰ろうかと思ってるのだけど」

「まぁ、新しくなる度グレードアップしてるしねぇ……命令を聞けてる時点で初期のよりは訓練されてるもの。うちのちびノブたちもそうしない?」

「初期って、本当に初期では……? それに、ちびノブを管理してるのはナーサリーだし、今カルデアを徘徊しているちびノブは技術部製だよ? いつの間にか統率とれてるし、技術部製はマシュの命令を聞けてるから、既に出来てるんじゃない?」

「……まぁ、小間使いは何人も要らないわね。マスター? 私のために頑張って国を盗りなさい」

「はいはい。頑張りますよ~。まぁ、二人とも編成に入れるんですけど」

「……そうね。裏だけど入るわよね。知ってたわ」

「私は構わないわ。どうせBBも編成に入ってるとは思うけど、もう慣れたわ」

 

 少し怒っているような二人に、オオガミは困ったような笑顔を浮かべ、

 

「ん~……まぁ、たぶん難易度的にはそこまでじゃないと思うから、ノッブとBBを入れて……あとどうしようか」

「アビーでいいんじゃない? 最近呼んでないでしょ?」

「ん~……そうだね。じゃあアビーにしよう。マシュは大忙しだろうし」

「そうねぇ~……ただ、この状態を見られたら殺されそうな気がするのだけど」

「私がいるから大丈夫だと思うけど……まぁ、殺されないようにね」

 

 そんな話をしていると、いつものように、当然の様に門が開き、必然の様にオオガミに飛びかかってくるアビゲイル。

 それを最初から分かっていたかのようにかわすエウリュアレとメルト。そして、まさか飛び込んでくるとは全く予想していなかったオオガミはその飛びかかりを避けられず、直撃して倒れる。

 

「ふふふ! お久しぶりねマスター!! 最近全然戦闘に呼んでくれないんだもの!」

「あ~……うん。なんかごめんね。アビーが出なきゃいけないほどの敵がいなかったし、是非も無いかなって」

「別に気にしないで呼んでいいのよ? メルトさんとエウリュアレさんは問答無用じゃない」

「いやぁ、それを言われると何も言えないね。メルトがいるからコストに関しても言えないしね」

 

 抱き着いて動かないアビゲイルをどうしようかと悩むオオガミは、

 

「エウリュアレ~。とりあえず指揮取って置いて~」

「はいはい。じゃ、アビーは連れて来てよ。行くわよメルト」

「分かったわ。先に行ってるわよマスター」

 

 そう言って、先に出て行くエウリュアレとメルト。

 それを見送ったオオガミは、本格的にアビゲイルを引き剥がしにかかるのだった。




 魔王ノッブ欲しいんですけどー。かっこいいんですけどー。あ、関東占領しました。敵が弱いので助かる……けど絆は貯まらない……


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やっぱ儂強いな!(私が一番頑張ったんですけど)

「うわはははは!!! やっぱ儂のおかげじゃな!! だからその足軽とか言うの外すべきじゃろ!」

「馬鹿言わないでくださいよ。ほとんど私のおかげじゃないですか! なので、もっとセンパイは私を優遇してくれてもいいと思うんですけど!!」

「今回は私も頑張ったわ! えへん!」

 

 高笑いするノッブと文句を言うBB。そして、胸を張って得意気に言うアビゲイルの三人。

 そんなアビゲイルの頭を撫でつつ、オオガミは、

 

「うんうん。アビーはめっちゃ頑張った。なんせバフが大変有能。やっぱノッブには出来ないところだと思うよ」

「あれっ、儂遠回しにディスられた?」

「いや、あれはもう直接ですよ。ドストレートです。一切遠慮なしですよ」

「えっ、儂撃って良いよね? それで撃たれても是非もないよね?」

「はい。是非もないので撃っておきましょう。最近調子乗ってますし」

「マスター。夜道に気を付けた方がいいかもしれないわ」

「えっ、なに、刺されるの? 心当たりがありすぎて分からないんだけど?」

「儂が何もせんでも死にそうじゃなマスター」

「まぁ、例の二人の防御を誰も突破できないので絶対殺されないんじゃないですかね~」

「あぁ、そりゃ無理じゃな。カルデアのエース二人じゃし」

 

 例の二人とは、もはや言うまでもないだろうが、エウリュアレとメルトの二人である。

 未だ聖杯でレベル100になったサーヴァントはあと二人ほどいるが、フォウまで積まれているのは彼女たちだけだった。

 

「さて。じゃ、あとは周回だけだし、いつも通り孔明さん呼ぼうか」

「えっ。いやいや、センパイ。別に急ぎでもないですし、このメンバーのままで良いんじゃないですか?」

「面倒じゃしなぁ~。儂も活躍したいしな~」

「わ、私も出来ればこのままが良いわ。滅多に手伝える機会がないもの。お願いできないかしら」

 

 三人に頼まれたオオガミは、少し考えたあと、アビーを自分の前に引っ張ってノッブ達の方へ向かせると、

 

「アビーの可愛さに免じてこのまま続行で。あとBBはどちらにしろ引きずり回されるのは確定してるから諦めて」

「あ、私はノッブさえ巻き込めれば言うことないので大丈夫です」

「うむ。実質マスターが面倒な思いをするだけじゃし、問題ないな。頑張れよマスター」

「あ、は~い。頑張りますよ~」

 

 とはいえ、実際に戦うのはBB達なので、大変なのはオオガミではない。

 大変なときが来ると言えば、リンゴを食べまくらなくてはいけないときくらいだったりする。

 

「まぁ、とりあえず行こうか」

「「「おー!」」」

 

 そう言って、周回へ向かうのだった。




 ストーリー終わってしまった……


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なんでショップ店員しながら周回してるんでしょうね!(儂、ついに編成から追い出されてるんじゃが?)

「あははははは!! 不思議です! ショップ店員をやりながら自分で交換用の素材を集めるとか、ワケわかりませんね!」

「その気持ち儂にも分かる! 本能寺で散々やったしな! いやまぁ、あのときはショップは沖田だったような気がするけども!」

「私もやりましたよ~。えぇ、はい。クエスト、ショップ、KPショップの三つをやってますし。あれ、私が一番働いてません? いえ、ショップに不満はありませんけど」

 

 景虎、ノッブ、BBの三人はわいわいと騒ぎながら周回をしていく。

 とはいえ、実際にはノッブは景虎と交代しており、ノッブ自身は無関係だったりする。

 

「んで、なんで儂は追い出されたん? つか、なんで編成外にされたのにここにいるんじゃ?」

「ん~……なんででしょうね? でもまぁ、アビーさんをあの三人に近付けるのは危ないですからね~。精神的に」

「まぁ、アビーはエウリュアレに可愛がられとるからなぁ……攻撃はされんが、教育上よろしくないわな」

「まぁ、私たちも似たようなものですけどね」

 

 むしろ、教育上よろしいサーヴァントがいただろうか。と考えるが、思い当たらなかったので考えるのをやめた。

 

「ふむ……確かに、悪い気もしますね……引き剥がすのもやぶさかではありませんが、どうします?」

「やめとけやめとけ。後でとんでもない報復が来る。しかもだんだんと笑えなくなってくからな。しかもメンタルダメージなんじゃよ。物理的な」

「……? 精神ダメージなのに物理的って、なんか変な気もするんですが?」

「いえいえ。なんだかんだ物理ダメージが精神に刺さったりしますよ。というか、エウリュアレさんの宝具は、矢を受けた相手に多大な精神ダメージを与えて倒してると思うんですよね。なんせ宝具名が女神の視線ですし。物理を伴った精神ダメージですよあれは」

「なるほど……? まぁ、肉体の欠損が士気に関わったりしますし、そう言うのが物理的精神ダメージですかね?」

「そうそう。そんな感じじゃ。ちなみに、メルトは物理的に溶かしてくる」

「えぇ。この前センパイの部屋に仕掛けておいたカメラが溶かされましたもん。ほとんど使わないから、大丈夫かなって安心したところでそれです。貴重な素材が経験値に還元させられたときは泣きました。もうレベルカンストしてるのにそう言うことをするのは良くないと思うんですけど」

「いやそれは知らん。自業自得じゃろ」

「辛辣な一言……! わりとショックなんですけど……」

「嘘つけ微塵もそんなこと思ってないじゃろうが」

「あ、バレました? まぁ、カメラが犠牲になったのは本当なんですけどね。特に支障はないです」

「あはははは!! オオガミ自身も奇妙な存在ですけど、その周りも同じくらい変なのが多いですね!!」

 

 呆れたように首を振るノッブと軽快に笑うBBを見て、景虎は豪快に笑う。

 そんな三人を無視して、アビゲイルは今日もオオガミにタックルをしに行くのだった。




 ノッブよりも景虎さんの方が有能なので余裕でチェンジです。ノッブはまた戦力外通告なのだ……魔王か足軽変わったら考えるのではよ来いなのですよ。


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マスターは帰ってきてくれるかしら(七夕だけど、大丈夫かな?)

「マスターは帰ってくるのかしら」

「うんうん! きっとお母さんは帰ってくるよ!」

「もう帰れるって言ってましたし、きっと帰ってきますから、準備しておきましょう!」

 

 パタパタと走りながら七夕の準備をする子供サーヴァント達。

 そんな様子を見ながら、カーマは、

 

「あれ、大丈夫なんです? マスターが帰ってくるって保証は無いと思うんですけど」

「そうですねぇ……連絡できる者が尽く向こうに行っているから、どうしようもないですしねぇ……誰か向こうに行けるとかなら良いんですけど」

「普通にレイシフトすれば良いのでは……?」

「それが出来るんなら苦労しねぇんですよ。ま、あっちにはエウリュアレがいるんだ。適当にイチャついてから帰ってくるんだろうさ」

「なんですかそれ。今日中に帰ってこないんじゃないですか?」

「いや、マスターはチビ達を優先するからな。帰ってくんだろ。いやいや、身長的な意味ではなく、中身的な意味で。中身だけガキみたいのがいるけどそれも含むのかって感じの目をされてもオレには答えらんねぇんだが」

 

 全身からふざけてんのかと言わんがばかりのオーラを放つカーマに、ロビンは頬を引きつらせながら答える。

 そんな二人の間に突撃してくるバラキーは、

 

「おい緑の人。汝も手伝え。竹の調達へ行くぞ」

「え、今から? もう用意されてんじゃねぇの?」

「そんなわけなかろう。誰かがいつも持ってきてくれると思うなかれ。吾等が取りに行かねばならぬのだ」

「なんだそれ……クッソ面倒じゃねぇですか」

「だが、行かねばナーサリー達が煩いからな……行かないという選択肢はないのだ……」

「……なんつーか、鬼っていうか、小鬼?」

「なっ! 何を言うか! 吾は大江山の鬼の首魁、茨木童子なるぞ! その吾を小鬼風情と同じにするなど、焼き尽くしてくれようか!」

「あぁすまんすまん。いやなに、最近静かだなって思ってな。挙げ句オレに頼ってくるとか、あのおっそろしい鬼様も人間に頼っちまうのか~って思ってな。いやいや、悪いことじゃねぇんだぜ? うんうん。下総国なら集まるんじゃねぇか? さっさと行こうか茨木童子サマ?」

「ぐ、ぬぬぬぅあぁぁ! 良い! 吾が一人で行く! 汝はここでナーサリー達を手伝っているが良い!」

「おやおや、良いんです? オレがいなくても」

「良いわぁ! 吾一人でも出来るところを見せてやるからな!! カーマも来るなよ!」

「いえ、一瞬でも行きたいような顔見せました?」

「はいはい。楽しみに待ってますよ~」

 

 半泣きで走り去っていくバラキー。

 それを見送ったカーマは、同じく見送っていたロビンを見ながら、

 

「良いんです? あんなこと言って」

「まぁ、問題ないだろ。ちゃんと取ってくるはずだし」

「いえ、そうではなく、後で斬られません?」

「……一回くらいやられても、いいんじゃねぇか……? いや、やっぱ嫌だから帰ってくる寸前で隠れるわ」

「えぇ、そうですね。じゃ、私は向こうを手伝ってきますのでこれで」

「いや、オレも行くからな?」

 

 そう言って、子供サーヴァントの所へ向かおうとしたときだった。

 扉が開き、苦い顔でバラキーが帰って来た。

 

「ん? どうしたんだ? なんかあったのか?」

「……吾も想定外だった……そうくるか~……」

 

 何があったんだよ。とロビンが言う前に、入ってくるオオガミ達。その手には、大きな竹があった。

 

「今回はちゃんと持ってきたとも! どうかな! ギリギリ立てられるサイズだと思うんだけど!」

「あ~……まぁ、マスターが珍しく行事に反応するとは思わなかったわなぁ……」

 

 そう言って、本当にギリギリ立てられた竹を見上げるのだった。




 珍しく反応できた……ストーリー終わらせてなかったら流してた……終わらせててよかった~……


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肩車をしながら障害物競争(なんで私を誘わなかったのよ)

「……何してるのよ」

「見ての通り、アビーを肩車して城の中を走り回ってるよ」

「マスターが遊んでくれるっていうから、お願いしたの。バレンタインの時も似たような事をしたけれど、ここはカルデアじゃなくてジパングだから、色んな景色が見れて楽しいわ!」

「ふぅ~ん……」

 

 訝しげな視線を向けるエウリュアレに、とても楽しそうな笑顔で応えるオオガミとアビゲイル。

 そんな二人の後ろから、ふらふらと現れたBBは、

 

「こ、この二人……今、領地になった城を門を使って走り回ってたんですよ……えぇ、はい。出会う敵を全部走り抜けてかわしていくので、追ってる方は気が気じゃないんですが……」

「……それは確かに楽しそうね。なんで私を誘わなかったのよ」

「ん~……機動力的に、アビー一人が限界だったからね。エウリュアレがいたら斬られてたところが所々あったよ」

「そうですねぇ……後ろで援護してる側の気持ちにもなってくださいよ……」

「援護してたのは私でしょ。貴女がついてこれるように道を作ってたんだから」

 

 やれやれ。と言いたげに、ふらふらになっているBBを軽く蹴りながら、メルトは言う。

 どうやら置いていかれていたのは自分だけだと気付いたエウリュアレは、

 

「ねぇ、なんでメルトはいるのに、私は誘わなかったの?」

「ち、違う違う! 元々アビーしかいなかったから! 他は後からついてきたから!」

「そりゃついていくわよね……マスターが、アビゲイル以外連れずに敵がいる中を走っていくんだもの。BBが合流するまでが一番だったわね。門が閉じるギリギリで中に入るんだもの。中々スリルがあったわ」

「えぇ、ビックリしましたよ。適当に城を見て回ってたら、突然センパイがアビーさんを肩車して現れるんですよ? しかも、閉じかけた門から現れたメルトに捕まって協力するまで引きずり回されますし」

「そう……ずいぶんと楽しそうね」

「あれあれ? エウリュアレさん、私の話聞いてました?」

 

 お~い。と言うBBを無視して、オオガミの目を見るエウリュアレ。

 そんなエウリュアレを見て、オオガミは観念したように、

 

「わかったわかった。エウリュアレもやりたいんでしょ。うんうん。なら仕方ない。で、肩車とお姫様抱っこ。どっちが良い?」

「お……いえ、肩車で良いわ」

「了解。アビー、降りてくれる?」

「は~い。また今度お願いね。マスター」

 

 そう言って、素直に降りるアビゲイル。

 オオガミはそれを確認した後、エウリュアレをお姫様抱っこする。

 

「えっ、ちょ、なっ!」

「よぅし! 二週目だ! BB! 門は任せたよ!」

「えぇ!? 私ですかぁ!?」

「後で何か作るから!」

「約束ですよ? 破ったら実験台になってもらいますからね?」

「流石にそれは勘弁願いたいなぁ!!」

 

 そう言って、走り出すオオガミと、それを追うBB。

 その後ろで、アビーを背負ったメルトが追いかけるのだった。




 オオガミ君の身体能力おかしいですね?(今更

 でもまぁ、速度で後ろを振り切るってより、攻撃してきた敵をかわしたら後ろが被害にあっているってだけなので、是非もないことかな……? いや、それでも少女を肩車しながらやって良いことじゃねぇな……
 まぁ、オオガミ君クオリティかな……?


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流石に暇になるね……(計画性皆無なんですね!!)

「……流石に、暇になるね……」

「どうしてダッシュで終わらせたのかしらね……」

「あはは! 計画性皆無ですね! さてはバカなんですか!? まぁ、私は構いませんが!」

 

 魔王城から外の風景を眺めつつ、そんな事を話すオオガミとエウリュアレに、大笑いしながらMACYOを突き砕く景虎。

 もはや見慣れた光景になったこの周回に、遠い目をするのは仕方のないことだろう。出番の無いエウリュアレとメルトなど、完全に観光をしているだけだった。

 

「あ~……一区切りついたら城下町を見て回ろうか。帝都とか、面白そうなのを売ってる気がするんだよねぇ」

「ちびノブの人形で良いわ。ふわふわのやつ」

「売ってるかなぁ……」

「売ってたわよ。メルトと一緒に色々見て回ってたときに売ってたの」

「なんでそういうときに誘ってくれないんですかね?」

「だって貴女が領地を広めてる最中のことよ? 誘える雰囲気じゃなかったじゃない」

「なるほどそれはこっちの責任だね?」

 

 なら仕方ないな。と頷くオオガミ。

 確かに帝都を落としたときにメルトと一緒に遊びに行っていた気がするな。と納得する。

 

「他には何かあったの?」

「ん~……お菓子がほとんどなかったのが解せないわ」

「時代の問題だね?」

 

 それは本当にどうしようもなくないか。と思うも、それなら人形が売ってるのもおかしいのではないかと考えるが、そもそもあそこだけ近代レベルのスペックだと言うことを思い出し、考えるのをやめた。

 

「ん~……それじゃあ、周回を終えたら皆で帝都に観光かな? どうせそんなにやることもないし」

「まぁ、ストーリー更新が来るまでこのままよね。明後日だったかしら」

「そうそう。だから暇なわけですよ」

「後半戦はどれだけあるかしら……今回は今までと形式が違うからあんまり想像できないけれど……」

「どのみちすぐ終わると思うけどね」

「パーティー固定はそんなに意味無かったものね」

「そもそもスペックが高いって言うのを忘れてたからね~」

 

 純粋に、BBとアビゲイルが強いので、縛ってたのにほとんど苦労しないと言う状況。最後の敵だけ、ちょっと采配を間違えてやり直しをしたくらいで、実質苦労と言うほどのことはしていなかった。

 

「まぁ、最後だけはギリギリの戦いだったよね」

「そうねぇ……あのメンバーで私とメルトが引きずり出されるなんて思わなかったもの」

「金山だけは仕方ないよね」

「あれはよく一回でクリア出来たわよね。今思い返しても、なんで勝てたかわからないのだけど」

「気合いと努力と根性。そして何よりもゴリ押し」

「ゴリ押しじゃないの……」

 

 そんな他愛の無いことを話している裏では、今も魔導僧兵が槍に突かれ、ちびノブ戦車が触手に叩き潰され、まとめてクレーターに変えられているのだった。




 この二人。他のメンバーが頑張って周回をしている最中にこんなことをしているのである。いつも通りだったわ……

 ちなみに、指令代理はノッブ。編成から外されて暇になったのを良いことにこき使われているのです。


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ちびノブがちびノブを売ってる……(しかもこれ、大量生産じゃないわ)

「う~む。ちびノブがちびノブ人形を売っているのは想定外だった」

「しかもこの人形、手作りなのよ……全部ちょっとずつ違いがあったのは驚いたわ」

 

 そう言って、人形をしっかりと抱えるエウリュアレ。

 オオガミはその隣で同じ人形をメルトに渡しつつ、面白そうな店を探す。

 

「そりゃそうですよ。カイザー・ノッブは軍事力のために発展させてるっぽいですし。娯楽用品にまで手は回らないでしょう」

「なんでそんなことを知っているのかしらね。不思議だわ」

「そうじゃなぁ~……昨日、集めた資料の一部が無くなったって、マシュが騒いでおったもんなぁ……」

「その資料は今朝返ってきましたよ。BBさんの謝罪サイン入りで」

 

 悪質な落書きですよ。と文句を言うマシュと、それを聞いて目を逸らすBBに向けてニヤニヤと笑うノッブ。

 メルトは呆れたようにため息を吐きつつ、

 

「まぁ、そのおかげで、面白そうな気になる店とその場所が書かれてるメモを手に入れたのだけど。いるかしら?」

「あぁ! 資料を返しにいった後に無くしたと思ったら、貴女が持ってたんですか!!」

「あら。親切にも落としていった誰かさんがいただけよ? 私は知らないわ」

「あぁ、だからBBは来るときに焦ってたのか」

「うわはははは!! 阿呆じゃ! 計画書落とすとか、阿呆の極みじゃろ!! うわはははは!!」

「う、うるさいですね! それ以上笑ったらアッパーかましますよ!?」

 

 そう言って、ギャーギャーと騒ぎ出すBBとノッブを尻目に、オオガミはメルトからメモを受けとる。

 

「ん~……確かに気になるところはあるね……って、そういえば、景虎さんは? 一緒にいたよね?」

「あぁ、彼女なら、ちょっとお酒を見てきます。って言って、いなくなったわ」

「なるほど? 帰ってこれれば良いんだけど」

「戦闘中でも飲んでるんだし、大丈夫じゃない? そのうち帰ってくると思うわ」

「それなら良いんだけど。あの人、ずれてるのもそうなんだけど、どこかぼんやりしているところがあるからなぁ……」

「まぁ、あやつは酔ってるくらいがちょうど良いじゃろ。つか、それよりも儂等が迷わんことを気を付けるんじゃな」

「……気付いてるなら早めに言った方がいいと思うよ? ノッブ」

 

 そう言って、オオガミはノッブにメモを渡す。

 受け取ったノッブは、少し悩んだあと、BBに投げつけると、

 

「いや、住所だけ書かれても分からんわ」

「是非もないですよね。私も現地で調べようとしてたんですし」

 

 そう言って、およそ場所を誰もわかっていないメモ。

 それを覗き込んだマシュは、

 

「そこでしたら……たぶん、あちらの方にあったかと。一応わかる範囲のものがほとんどですし、わかるものだけで良いのでしたら案内もしますよ」

 

 そう、何でもないことのように言うマシュに、全員は目を向け、その代表として、オオガミは、

 

「マシュ様、お願いします……」

「そ、そんなかしこまらないでください先輩……」

 

 いつになく真剣に言うオオガミに、マシュは困ったように笑うのだった。




 マシュ姐さんは情報屋な状態。有能なのですよ。お久しぶりの登場ですが。

 あ、お察しかもしれませんが、カイザー・ノッブのくだりは適当です。たぶんそうなんじゃないかな~と思いつつ。

 さりげなく私自身はエリちゃん欠乏症にかかってます。エリちゃん出したい……


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何やってるんですかまじんさん(オルタ化の波がぐだぐだにも来てる……)

「う~む。まじんさん、何やってるんだろうね?」

「とりあえずオルタがいっぱいって言うのは分かったわ。適当に脱出しましょう」

「単調な作業時ではなくなりましたが、最終的に周回に戻るので、気分転換ですね。張り切りますよー!」

「この新人、大物過ぎるんじゃが。戦闘狂こわいわぁ~……」

「それ、ノッブは言っちゃだめだと思うんです。明らかに貴女も戦闘狂の部類じゃないですか」

「正直エウリュアレ以外変わらないと思うのだけど」

「わ、私はマスターの役に立ちたいだけよ!?」

 

 わいわいと騒ぎながら、新しく現れたエリアを制圧していくカルデア家。

 軍備をしっかりと蓄えていたので、ノンストップで突き進む。

 

「いやぁ、これだけあれば余裕で終わるのぅ。いや、フラグじゃなくて。真面目に」

「なんでノッブは何を言ってもフラグっぽいんですかね?」

「さぁ? 中身がダメなんじゃない?」

「あれ、儂めっちゃディスられてる? 儂怒って良い奴じゃよね?」

「まぁ、それは帰ってからですね。じゃ、さっさと終わらせちゃいましょう」

 

 機嫌の良さそうなBBが先頭に立ち、進軍していく。

 今回は最近にしては珍しく門を使わない徒歩での移動なので、ピクニック気分で楽しいのだろう。

 

「う~む。しかし、歩くのも少なくなったものじゃなぁ……やっぱ門が便利過ぎるのが問題か……」

「便利だと思わず使っちゃいますよね~。私もなんですけど。いやぁ、これ、人間だったらあっという間にふくよかになってますよ?」

「ぶくぶく太って動けんくなりそうじゃよなぁ」

「ま、マスターはそうならないわよね……?」

「さぁ、どうかしらね。最近そんなに訓練もしてないみたいだし」

「いやいや。ちゃんとやってるからね? 見られてないだけでさ」

「そうなの? てっきりサボってるのかと思ったわ」

「……私、サボってる時なんか一度も見たことが無いのだけど。私が見てるのに気づくまでずっとやってない?」

「えっ、あれ、見られてた……? あぁ、いや、見られちゃいけないわけじゃないけど……うぅむ……」

「大丈夫ですってセンパイ。センパイのトレーニング記録はこっちで勝手に付けてますから! ちゃんとマシュさんへのワイロになってるので安心してくださいね!」

「一ミリも安心できない……!! とりあえず、帰ったら監視カメラを全部破壊しておこう……」

「隠蔽は本気ですから、絶対見つからないですよ。このカメラだけは全身全霊を込めましたので、リフォームしても無駄ですので!」

「……部屋を変えるしかないか」

「あっ、それは流石に防げないですねぇ……」

「むしろそれでも追いかけるんなら、儂は全力で引くわ。ストーカーじゃろ」

 

 それでも、リフォームは無駄だというのはどういうことなのだろうか。と思わなくも無いが、そこには触れないことにした。

 

「さて、後少しでまた魔王城。サクッと終わらせようか」

「「「おー!」」」

 

 そう言って、カルデア家は再び魔王城に進軍するのだった。




 あ、聖杯貰いました。ターン毎に回復するのは、高火力を用意してない時には泣きを見るので、もう少しHP少な目でいて欲しかったなぁと思いました。毘沙門天を信じれば勝てる……


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最高にロックじゃな!(神性持ちの私にはキツいんですが!!)

「うわはははは!! これでさらにBBをタコ殴りにできるわぁ!!」

「なんでそんな迷惑な変化してるんですか! エリザベートさんのライブに混ぜ込みますよ!?」

「……ロックだよねぇ」

「ロックって何かしらねぇ……」

 

 バスターTシャツを着て、大喜びなノッブ。

 爆音でギターを弾きながら暴れている辺り、相当嬉しいのだろう。

 

「まぁ、結局魔王は来てくれなかったね」

「代わりに水着なのにダサTを着てる渚の魔王が来たわね」

「このパーティー、神性が多いからあのノッブからしたらカモじゃないかしら」

「天敵だよね。宝具直撃したらアビー以外落ちるんじゃない?」

「そうよねぇ……今の所、バーサーカー相手にまともに戦えるのはアビーくらいだし。特攻があっても耐えそうだもの」

「あの、私はそんなに耐久出来る方じゃないのだけど……」

 

 そう言って困ったように笑うアビーに、三人は、

 

「「「あの柴田を倒しておいて?」」」

「なんだか、誤解が生まれている気がするわ……」

 

 男性なんだから、魅了でハメられるよね。失敗した時の予備としてアビゲイルに特攻礼装持たせておこう。という、あまりにも雑な理由で置かれた彼女は、結果として、ほぼ単独で半分以上削り取っていた。

 もはや、アビゲイルが倒したと言っても過言ではないだろうとは、エウリュアレの談である。

 

「私は防御できないし、回復も出来ないのよ? 一人だとやられてしまうわ」

「スキル構成を見るとそう見えるのに、速攻で倒すの方が合ってるのよね……」

「私たちの中で、無敵系のスキルを持ってるのって、メルトしかいないわよね」

「……必中はかわせないけどね」

「かわす術があるだけ良いんじゃないかしら」

 

 こっちは何もなければ直撃するだけよ。と文句を言い、ため息を吐くエウリュアレ。

 正直味方に頼るか、魅了でハメ殺すかしか宝具の回避を出来ないので、気持ちとしては複雑ではあるが、そういう女神なのだから仕方ないだろう。と胸を張って主張する。

 

「でも、うん、そうね。バーサーカー相手なら、負ける気がしないわ。特に、一人になってからが本番よ」

「……宝具のゴリ押しが見えるわ……」

「アーツ三枚は伊達じゃないからね……回収効率は置いておくけど」

「暗に集まりにくいって言ってるわよね」

「いや、そんな、まさか。そんなこと無いに決まってるじゃん?」

「とんでもないくらいの怪しさの塊なのだけど。処すわよ?」

「……ふと思ったけど、森くんとエウリュアレって、とんでもないくらいに相性悪そうだよね」

「強引に話を逸らしてきたけど、それならたぶん、メルトも引っ掛かると思うわ」

「えぇ。この前七夕で帰ったときに絡まれて、とりあえず蹴倒しておいたわ」

「う~む、既に手遅れ。帰ったら怖いなぁ」

 

 そんな事を話しつつ、暴れているBBとノッブを呼び戻して周回に向かうのだった。




 今回は一枚を生け贄にガチャを回し、結果として、水着ノッブが4枚と言う……あと一人は……?
 あと、森くんが5になって、魔王は来ませんでした(吐血
 ついでに、殺してでも助ける系のバーサーカー看護士様がログインしました。カルデアは今最大の危機を迎えています。

 あ、高難易度は安定の魅了ハメをしようとしたら失敗して最終的にアビーが殴り飛ばしました。触手先輩大活躍。

 正直、森くんの忠犬具合が、完全に手を噛んでくるレベルな気がするんですよね。大丈夫? オオガミ君殺されない?


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日常
突撃エリちゃん!!(二度目だと思うのだけど!!)


「エリちゃ~ん!!」

「うわぁ!? こんな展開前も見た気がぐほぁ!」

 

 つい最近似たようなことがあったような気がすると叫びつつも、避けることもなくオオガミの飛び掛かりを受けて倒されるエリザベート。

 完全に受け止めてくれるものだと信じて飛び込んできているので、一切遠慮がないのがオオガミだった。

 

「いったたた……全く、ちょっとは速度抑えなさいよ……受け止めきれなかったら私じゃなくて貴方が怪我してるのよ? 分かってる?」

「大丈夫大丈夫。ちゃんと受け止められなかった時用の対策してるから」

「そうなの? ならいいけど……いえ、やっぱダメよ! そもそも、アイドルを押し倒すのはマナー違反じゃない!?」

「それは反論できない……うむむ。そうすると、どうしたものか」

 

 う~ん。と考え込むオオガミに、エリザベートは困ったように首を傾げつつ、

 

「普通に声をかけてくれればいいと思うの。なんでタックルしてくるのよ」

「合法的に密着できるからでは……正直、身近で密着して犯罪臭漂わないのはエリちゃんだけでは……」

「め、メルトとかいるでしょ? 私にこだわる必要なくない?」

「他は何というか、悪友というか、なんというか、返り討ちに遭って殺されそうと言いますか……気軽に触れられるのが良いと思うんですよエリちゃんは」

「そう言うのはなんか違くない? 私の理想じゃないんだけど……」

「まぁまぁ。何とかなるって」

 

 うんうん。と頷きながら、前回同様エリザベートを助け起こすオオガミ。

 納得いかないような顔をしながらも、その手を取って起こされたエリザベートは、

 

「それで、今日は何の用なの?」

「うん? いや、突然のエリちゃん成分補給に」

「えっ、何それ。怖いんですけど……私、何時の間にそんな成分を出せるように……」

「この成分を出せるようになったらきっとアイドルとして大きな一歩だと思うんですよ。なので、問題ないんじゃないかなって。むしろどんどん出していこうよ」

「いや、なくても問題だと思うのだけど……むしろ、出せた方が不気味なんだけど……」

「まぁまぁ。とりあえず、おそらく次に来るであろうルルハワの為に、練習しておきましょう。レッツゴー!」

「な、なんでそんな急に!? 何かあったんでしょ!? ねえ、何があったの!?」

 

 まぁまぁ。と言いながらエリザベートの背中を押してシミュレーションルームに移動していくオオガミ。

 なんだか違和感を感じつつも、エリザベートは強く抵抗しないまま、連れて行かれるのだった。




 エリちゃん病は時々発病する、エリちゃん不足による発狂を引き起こす危険な病です。かかったものは全国放送でエリちゃんのライブCDを流すなどの暴挙に出ます。たぶん。


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テメェやんのかコノヤロー!(僕とも争うんだ……面白いね)

「あぁ!? なんだテメェオラァ! やんのかゴラァ!」

「あぁ!? 受けて立つぜコノヤロー! テメェのその首斬って、マスターに献上するぜコノヤロー!」

 

 そう叫びながら、額を突き合わせ今にも殴り合う雰囲気を漂わせるアシュヴァッターマンと森長可。

 だが、次の瞬間には金色の鎖が二人を拘束する。

 

「全く……最近は技術部が大人しいからこっちも休んでたけど、新人は大分荒れてるね?」

「んだよこの鎖は! びくともしやがらねぇ……!」

「うわははは!! なんだこれ! 全く動けねぇんだけど!!」

 

 エルキドゥの鎖に拘束され、動けない二人。

 しかし、肘と膝から先が動けることに気付いた瞬間にニヤリと笑い、

 

「「だがよぉ……」」

 

 アシュヴァッターマンは怒りの炎を纏ってチャクラムを眼前に出し、森長可は赤いオーラを纏いながら足元に落ちている槍の穂先をエルキドゥに向け、

 

「「こんな拘束じゃあ止まらねぇぜ!!」」

 

 蹴り飛ばされるチャクラムと槍。

 それに一瞬驚いたエルキドゥは、しかしすぐに鎖を出してチャクラムを抑え、低空を飛んでくる槍を踏むことで静止させる。

 そして、今度は楽しそうな笑みを浮かべると、

 

「あの状態から反撃されたのは初めてかな……いいね。相手をしてあげるよ。シミュレーションルームに行こうか」

「上等だ。ぶっ飛ばしてやる!」

「返り討ちにしてやるぜ! 楽しみにしてろよ!」

「あぁ、楽しみにしているよ」

 

 そう言って、騒ぐ二人を連れていくエルキドゥ。

 その一部始終を見ていたロビンは、

 

「ひゃ~……おっかないねぇ……アシュの旦那はまだ話が通じるんだが、あっちのバーサーカーの方は微塵も話が通じる気がしねぇな……あんなやつとどうやって縁を結んだんだよマスターは」

「会って名を知ることがあれば、それだけで縁と言うものは結ばれる。が……あやつのあれは、そういう短いものではないと見えるな……うむ。おそらく一時的にサーヴァント契約していたのではないかと吾は見るぞ」

「……今回のイベント、相当苦労したんだろうなぁ……あれ、たぶんマスターの命令があっても暴走するんじゃないですかね」

「ここまでハッキリと意思がすれ違うというのも珍しいですよね……いえ、バーサーカーなんだから普通そういうもののような気もしますけど。まぁでも? 一応彼も愛せますとも。えぇ、はい」

「別にありか無しかを聞いてるんじゃねぇですよ。つか、そのセリフ誰にでも言うでしょうが。もう聞き飽きてますよ」

「うるさいですねぇ……黙らせますよ。物理的(バイオレンス)に」

「それ死にません? いや、まぁ、全力で抵抗しますけど」

 

 そう言って、ロビンはまだ食いかかってこようとするカーマに面倒そうに手を振りつつ、嬉しそうにバニラアイスを頬張るバラキーを見るのだった。




 もはや思い出すのも難しいほどに久しぶりの登場をするエルキドゥ。技術部が大人しい(当社比)ため暇なのだった。

 ロビンはもうバラキーとカーマの二人とセットですね。地味にこの三人の組み合わせが気に入っています。

 


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貴女がそこに座ってるのね(たまには座っても良いじゃない)

「……貴女が座ってるのは珍しいわね」

「たまたま空いていたんだもの。良いじゃない?」

「いやあの、そんなドヤ顔で人の膝の上を占領されても困るんですけど……」

 

 膝の上を上機嫌なメルトに座られているオオガミ。

 別段何かあるわけではないので、無理に退かそうというつもりはないのだが、エウリュアレが物珍しげに見てくるので、何とも言えない表情になる。

 

「まぁいいわ。別に邪魔する必要も理由もないし。普通に座れば良いもの」

「うん。それはいいけどさ……こっちに寄りかかってくる必要はないのでは?」

「別に良いでしょ。それとも嫌なの?」

「いやそういうわけじゃないけど……」

「なら文句言わない。わかった?」

「うん、わかった」

 

 ならよし。と言って、オオガミの右腕に寄りかかるエウリュアレ。

 

「そういえば、エルキドゥが珍しく上機嫌だって聞いたのだけど、知ってる?」

「何それ。天変地異の前触れ?」

「流石にそれは杞憂だと思うけど、どうなのかしらね。ロビンの話だと、アシュヴァッターマンと森の二人が連れていかれたって言ってたわ」

「えっ。なにそのチーム。常に怒りと喧嘩を振り撒いてそうな物騒な感じがあるんですけど」

「そうね。実際、その二人が喧嘩をしたことから始まったみたいだし」

「ふむふむ……あれ。反撃されて上機嫌になったんなら、不味いような。だってほら、あの二人って――――」

 

 そう言ったときだった。

 部屋の扉が開き、乱暴に投げ入れられるアシュヴァッターマンと森の二人。

 投げ込んだ時に見えたのが金色の鎖ということから、誰が投げ入れたかは明白だった。

 

「やぁマスター。今日は僕にしては珍しいと自覚しているけど、お願いに来たんだ」

「え、エルキドゥ……」

 

 ニコニコと笑いながら入ってきたのは、予想通りエルキドゥだった。

 

「おや、取り込み中だったかい? それなら一回帰るけど」

「あ、あぁ、うん。別に大丈夫だけど、お願いって?」 「うん。それはね、この二人を強化してほしくて。いやぁ、楽しかったよ。二人とも気絶するまで止まらないし、ほぼ初対面で喧嘩しそうだったにも関わらず、僕と戦ったらすぐに連携をし始めたしね」

「えっ……森くんと連携できるアシュ兄貴パネェ……」

「いえ、森の方も優秀よ。暴れまわるだけで、連携できないわけじゃないし」

「うん。一撃大きいのをもらったときにはちょっと驚いたけどね。バーサーカーの彼がマスター以外の命令を聞きそうにないのがちょっと問題かな」

「スッゴイ高評価なんですけど……まぁ、うん。種火が集まったらやるよ。それまでは無理かな」

「そうか……じゃあ、それまではいつもの仕事をしておこうかな」

「う、うん……頑張って」

 

 そう言って、エルキドゥは再び二人を連れて行ってしまうのだった。

 

「……二人ともヤバイね」

「エルキドゥに反撃したの、初めてじゃない? いえ、私たちも頑張ってたけども」

「私、彼に目をつけられるなって、色々なサーヴァントに言われたけど……理由に納得したわ。あの金ぴかより面倒そうじゃない……」

 

 そう言って、三人はしばらく呆然としているのだった。




 エルキドゥをヒヤリとさせたレアキャラ、怒り戦士と鬼武蔵です。ちなみに、めっちゃ好きですけど種火不足で二人ともレベル1です。正直短期間で私の好きな男性鯖の上位に食い込んでます。トップはロビンさん。


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水着サーヴァントでサポート枠が埋まるのね(育成はいまいちだけどね?)

「ふぅん……サーヴァント枠、全員水着で埋められるのね」

「うん……でも、ふと思ったんだけど、水着霊基でしか召喚出来てない人ってさ、一年以上水着で過ごしてきたんだよね……」

「真冬に薄着とか、正気じゃないわよね」

「絶対メルトにだけは言われたくないと思うよ?」

 

 なんで? と言いたげな視線を向けてくるメルトに、何とも言えない表情を浮かべるオオガミ。

 

「そりゃ……滅茶苦茶薄着だし……少なくとも冬で着てるような服じゃないかなって」

「というか、サンタですら冬装備っぽいのがいないと思うのだけど」

「水着みたいな服装に申し訳程度のサンタ要素だし。正直見てる方が寒いサンタ達だよ……」

「……カルデアの英霊って、全体的に寒そうなのね」

「いや、メルトもだよ?」

 

 オオガミに言われ、やはり不思議そうに首をかしげるメルト。

 エウリュアレは諦めたようにため息を吐くと、

 

「まぁ、これから夏なんだし、今は問題ないわよ。いい加減温かそうな装備のサーヴァントが出ても良いと思うけどね」

「うん。温かそうな季節イベントサーヴァントが出てほしいね。特にサンタ。もうビキニじゃんあれは」

「前回はサンバだったわね。もうクリスマス要素皆無のプロレスだったもの。プレゼント要素どこかしら」

「あれは、宝具がプレゼントだったから……」

「プレゼントで全てを押し潰す……プレゼントって何かしらね……」

「要するに、その場合は圧殺をプレゼントするってことでしょ? これが俗にいうブラックサンタクロースってヤツかしら……」

「悪い子は皆まとめてプレゼントの下敷き(物理)ってことか……プレスプレゼントフォー・ユー。相手は死ぬ。なるほどね」

「絶対納得しちゃいけないと思うのだけど。古き良きサンタクロースを返しなさいよ」

「ノーマルサンタさんはカルデアにはお呼ばれされたくないみたいです」

「ねぇ、話が明後日の方に飛んでいってるって突っ込んで良いのかしら」

 

 途中からサンタの話になっていっている事にメルトの突っ込みで気付いたオオガミとエウリュアレは、

 

「まぁ、ルルハワの周回は困らなそうね。さて。あなたとゆっくり遊べるのは、何周目の私かしらね」

「ん~……とりあえず、同人誌を全部集めたらかなぁ。というか、BBちゃんにエウリュアレとメルトも範囲外にしてもらえば良いのでは」

「名案ね。よし、そうと決まれば今から行きましょう」

「私も行くわ。ついでに蹴りの一つでも入れていきましょう」

「特に理由のない暴力がBBを襲うっ!」

 

 そんな事を話ながら、三人はノッブ達の工房へ向かうのだった。




 スキルレベルとかを考えなければ、レベルMAX水着サーヴァントだけでサポート枠を全部埋められるという。
 とりあえずオール枠は過労死王にしてるんですけど、たぶんすぐにメルトに変わるんじゃないかなぁ……


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サーヴァント・サマー・フェスティバル!
ついにルルハワ上陸してしまった……(またエンドレスサバフェスが始まるよ)


「……来たわね~……」

「そうっすね~……またアシスタントかぁ……」

「うむ。吾には分からんな。遊びにいってくる」

 

 空港に着くなり、疲れきった顔をしている邪ンヌとロビン。

 それとは逆に、一瞬のためらいもなく海に向かって走り去っていくオオガミと、それを追いかけるバラキー。

 しかし、すぐに現れたBBが二人を捕まえて戻ってくる。

 

「もぅ、せっかくのルール説明ですよ? 最初の一回だけなんですし、ちゃんと聞いてください」

「あのねぇ、サークル一位とか、普通取れないからね? ふざけてんの?」

「それが分かってるなら現実逃避してないで筆取ってくださーい! 一位を取ったらいつものメンバーの時間ループも解除しますから。大盤振る舞いですよ? もっと褒めてください。私、罵倒では伸びませんから。褒めて伸びるタイプなんですよ?」

「よしよし。BBはえらいね~。でも周回にはお前も来るんだよ」

 

 優しさ全開で褒めた後、ルルハワ連れ回し宣言をするオオガミ。

 すると、BBはニヤリと笑いつつ、

 

「おっと。やっぱり編成に私も入ってるんですね? も~センパイったら、BBちゃん無しじゃなんにも出来ないんですから~! 可愛いやつめ。うりうり~」

「マルタさん呼ぶよ」

「ごめんなさいそれだけは勘弁してください」

 

 流石の邪神系後輩(BB)も、水辺で最強のグラップラーとなった聖マルタには手も足も出ないので、素直に謝る。

 そんなBBに、オオガミは深くため息を吐くと、

 

「全く、本当に自由なんだから……まぁ、周回は手伝ってもらうけど、それ以外はフリーだよ。今回はのんびりやるからよろしく」

「のんびりって言っても、礼装揃ってますし、普通に駆け抜けてきますよね? BBちゃん知ってますよ?」

「……BBを殴り倒すときはスカディ様とメルト呼んで一方的に殴るね」

「本気じゃないですか……! 私が何をしたっていうんですか……!?」

「自分の行いを、悔い改めて。神性を持った自分を恨むんだね」

「神性は弱体判定なんですか……!?」

 

 何を今更。と言いたげな表情でBBを見るオオガミ。

 事実、神性特攻がじわじわと増えてきた現在、美味しいパッシブでしか無いのが現実だった。

 

「まぁ、育成終わってたらスペシャルゲストでノッブも連れていくね。ロックに砕け散ろう?」

「ロックってなんですか……! もう、完全に概念ですよね……!? とりあえずロックって言っておけばどんな蛮行も正当化されたりすると思ってますよね!? そんなことないですよ!?」

「でもほら、ギターへし折ったりドラム壊したりするし……」

「あれは例外です! というか、この話は殺される気がするのでNGで!」

「うん、まぁ、とにかく。敵対するまではよろしくね?」

「絶対殴り飛ばすって顔してるじゃないですかぁ……!」

 

 にっこりと微笑むオオガミに、BBは若干涙目になるのだった。




 ルルハワの間に、鬼ごっことエウリュアレデートをしなければならない宿命に囚われているマスターはここです。そして出来ればエリちゃんライブも盛り込むのです。
 果たして書き切れるだろうか……


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吾は遊ぶぅ! 止まらぬぅ! 遠泳だぁ!(限界まで泳ぎ続けろ~!!)

「うわはははは!! 吾は止まらんぞ~!!」

「むしろこっちは止まりたいぞ~!! 遊びたいわ~!!!」

 

 そう言いながら、海に飛び込むオオガミとバラキー。

 そんな二人を見守るロビンと邪ンヌは、

 

「あいつら、本当に楽しそうよねぇ……なんだか、真面目に原稿を考え続けてるこっちがバカらしくなってくるんだけど」

「そう言いなさんな。それに、あれで何も考えてないわけじゃないし、何事にも息抜きは大事って事だ。分かったらアンタも遊んで来い」

「……そうね。でも、今はストリートに行って何か買い食いでもしてくるわ」

「あら、海には行かないんで?」

「すぐにあの女が来る気配がするの。一瞬一秒でもいたくないわ」

「あ~、なるほど……んじゃ、オレも行きますかね。あんまりバラバラも良くないでしょうし」

「そうね。でも、カーマを召喚するのだけはNGね」

「いや、それはオレの意志じゃねぇですよ!?」

 

 そう言って、二人は海辺から離れるのだった。

 そして、そんなことを知らず泳ぎまくっていたオオガミとバラキーは、

 

「うむうむ! やはり泳げるというのは良い!! 通常の霊基で泳げぬことが悔やまれるな……」

「本当にね~……って、うぼぁ!?」

「むぁ!? どうし……ぐぼぁ!!」

 

 突如として水の中に引きずり込まれるオオガミとバラキー。

 しかし、すぐに浮き上がった二人は、黒い背びれの付いた生き物にうつ伏せで乗っていた。

 そんな二人の元へやって来たジャンヌは、

 

「だ、大丈夫ですか!? リースが突然あなた方の方へ向かっていって……って、弟くん? 何をしてるんですか、こんなところで?」

「……お宅のイルカさんに海中に引きずり込まれましてね……妹ともども死にかけですとも……」

「だ、誰が妹か……吾は、鬼の首魁ぞ……ぐふっ」

「まぁ! それは大変です! 急いで陸まで戻らなくては! それはそれとして、勝手に妹を増やすのはどうかと思いますよ?」

「いやそれお姉ちゃんにだけは言われたくないね?」

 

 つい先日、あとちょっとで褐色妹が手に入るチャンスだったのに! と叫んでいたイルカ使いの聖女がいたとかいないとか。

 しかし、当の本人は気にした様子もなく、

 

「何を言っているんですか。妹を増やすのは姉の役目です。お姉ちゃんの大事な仕事を奪わないでください」

「発想が狂人のそれだ……!」

「吾、ここから逃げたいのだが……」

 

 しかし、逃がすわけないだろうとばかりにこちらに視線を向けてくるその他の海洋生物達の気配を前に、バラキーはおとなしく従うのだった。




 【速報】ここまでエウリュアレ及びメルト無し。

 お姉ちゃんがナチュラルやべーヤツというのは皆の共通認識だと思うんですけど。そしてさりげなくお姉ちゃんをこのカルデア色に染めることに成功しました。ヤバイんですけど。


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山登りも意外と楽しいわね(だからってルルハワまで来て登るかしら)

 ※サーヴァント・サマー・フェスティバルの盛大なネタバレあり! ご注意ください!!






















「ふぅ……だいぶ上まで来たわね」

「なんで南国にまで来て、私たちは山に登ってるのかしら」

「そうね……島が一望出来るのって、とても気分が良いと思うのだけど、どうかしら。どうせ水着を持ってないから泳げないのだし」

「ん~……そうね。なら、山登りも悪くはないわね」

 

 そんな事を話しながらマウナケア山に登るエウリュアレとメルト。

 原生生物が襲ってきたら危ないと言ってついてきたアナは、スタスタと先に進んで、今ではもう見えなくなっていた。

 

「それにしても、なんでついてきてくれたの? 興味もなかったでしょうに」

「あぁ……なんというか、暇だったのよ。皆忙しそうだし、邪魔できないじゃない? だから、面白そうだからついてきただけよ。本当ならオオガミに言ってやろうと思ったけど、アイツが一番忙しそうだもの」

「えぇ、本当にね。今何周目かは知らないけど、私と遊べる時間は作れるのかしら」

「何周目って……何よ。まるでやり直しでもしてるみたいね」

「そうね……まぁ、そのうち分かるわ」

「ふぅん……気になったら調べることにするわ」

「えぇ、そうしてちょうだい」

 

 そう言って、先へ先へと進む二人。

 すると、遠くで座っているアナが見えてくる。

 アナからも見えたのか、すぐに立ち上がって二人の元へ走ってくると、

 

「姉様。障壁のようなものが展開されていて、先に進めません。引き返すことをオススメしますが……どうしますか?」

「障壁? ん~……どうしようかしら……」

「進みたいなら、力を貸すけど……どうする?」

「あら。進めるなら進みましょう。えぇ、障壁を張った相手が誰なのかは知っているもの。とりあえず一週間を認識できるようにならなくちゃね?」

「何の事かさっぱりですが、姉様が行くと言うのであれば私も行きます」

「はいはい。じゃ、行くわよ」

 

 そう言って障壁の前まで行くと、メルトは障壁にウィルスを叩き込んで融解させる。

 

「まぁ、これで数分はなんとかなるんじゃないかしら」

「十分よ。さっさとやることを済ませてキラウェア山に行きましょう」

「あら、両方制覇するの?」

「えぇ、当然登るわよ。片方だけで満足なんてしないわ。それに、こっちは登るだけで終わらないだろうし」

 

 エウリュアレの呟きに首をかしげるメルト。

 そんな三人が山頂まで来たときだった。

 

「あぁ~!! やっぱりメルトですか! あんな無茶苦茶な方法で障壁を突破してくるのなんて貴女しかいないとは思ってましたけど!」

「あら、BBも山登りかしら。殊勝なことね。最近引きこもってるから肥えてきたんじゃないの?」

「太ってま~せ~ん~! というか、サーヴァントは太りませ~ん! そう言うのはガネーシャさんだけで十分です!」

 

 出てくるなり文句を言うBBにすかさず毒を吐くメルト。

 しかし、そんな二人とは別に、エウリュアレは微笑みながら、

 

「ねぇBB。今から思い付く嫌がらせの限りを尽くそうと思うのだけど、どうかしら」

「え、エウリュアレさん……何が望みです?」

「そうね……私、ルルハワをもう少し楽しみたいの。どう思うかしら」

「それはとっても楽しそうですね! それはお一人でですか?」

「ん~……この三人で。もちろん、マスター達の仕事が終わるまでで良いわ。出来ると思う?」

「お任せください! 出来ますとも!」

「そう、それは良かったわ。出来れば二度目がないと良いわね」

「そうですね。私もそれが良いと思います! それは、センパイには?」

「言ってませんよ? じゃあ、写真撮って帰るからよろしくね?」

「は~い! あっちに撮影スポットがあるのでどうぞ!」

「……騙したら私じゃない誰かが怒るわよ?」

「分かってますとも。安全に帰れるようにしておきますよ~」

 

 そう言って手を振るBB。

 エウリュアレはふふふ。と笑いながら指された方に向かっていった。

 それを見送ったBBは深くため息を吐くと、

 

「どうしましょう……センパイと約束しましたけど、その前にエウリュアレさんのループ解かないといけないっぽいんですけど。アビーさんの気配もありましたし、あれはループを感知してきますね……う~ん、センパイには伝えてないみたいですし、黙っててくれますかねぇ……」

 

 うんうんと悩みながら、BBはエウリュアレ達の帰り道を軽く掃除しにいくのだった。




 裏を知ったのならやるよね。エウリュアレはね。と思い気付いたらメルトと一緒に犯行に及んでました。まぁ、必須用件は変わらないんですけどね。

 エウリュアレとBBのやり取りは個人的にうまくできたかな……と。言ってる意味がわからないというのも、あんまり無いんじゃないかなぁって……わからねぇよ! と言われたらこの下に書き足しておきますね。


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これが噂のバナナボートですか……!(デカいボートも良いけど、小さいのとかも良いんじゃない?)

「こんなボートとかどうだろう妹リリィよ」

「妹リリィじゃなくてリリィが良いですお兄ちゃん。妹要らないです。そしてこれがバナナボートというわけですね……!」

「そういうデカいボートも良いけど、小さいけど威厳のあるシャチも良いわね。うんうん。あ、イルカはダメ。アイツが来る」

「いやまったく威厳無いですけど。というか、おっきい方の私はイルカにトラウマでもあるんですか……?」

「中二病妹はね、お姉ちゃんが怖いわけです。なのでその使い魔であるイルカもあだだだ! 痛い痛い頭が割れる!」

 

 頭を握りつぶすかのような力に、悲鳴を上げるオオガミ。

 怒りのオーラを放ちながら笑う邪ンヌに、ジャンタは少し距離を取りつつバナナボートを持って海へ向かう。

 

「邪ンヌストップ! リリィが流されちゃうから! 緊急だから!!」

「チッ! 仕方ないわね。ってか、なんで三人乗りのを選んだのよ。誰が引っ張るつもりだったの?」

「えっ、そりゃあほら……今リリィを救出した人」

「あぁ!? って……げぇっ! なんとなく予想はしてたけど、現実にするんじゃないわよ!」

 

 そう叫ぶ邪ンヌの視線の先には、水上バイクに乗ってジャンタの前に躍り出たジャンヌは、バナナボートの先端に縄を繋ぐと、砂浜に向かって走ってくる。

 

「ヤッホー! お姉ちゃんが来ましたよ! さあ弟くんもオルタも、一緒に走りましょう!」

「絶対イヤ。誰が好き好んで絶叫系に乗るんですか。乗らないから」

「えっ、邪ンヌ来ないの? マジで? じゃあ中二病妹から絶叫よわよわ妹にクラスチェンジだね?」

「えっ!? おっきい私、絶叫系ダメなんです!? うっわぁ~! なんですかそれ! ソリに乗っただけで泡吹きそうですね!」

「オルタ? 無理はしなくて良いですからね。お姉ちゃん気にしませんから」

「……アンタ達、いい度胸してるじゃない……良いわ。全然怖くないし。乗ろうじゃないの。でも絶対誰か振り落とされるだろうし、賭けをしましょう。最初に落ちたヤツがパンケーキ奢りね。どうかしら」

 

 得意気に言う邪ンヌに、全員頷く。

 が、オオガミはハッと目を見開くと、

 

「リリィが落ちた場合は俺が出すね。だからリリィは安心して落ちていいよ」

「お、落ちませんよ!? ちょっとバカにしてません!?」

「大丈夫大丈夫。たぶん落ちるのはリリィ以外だし。で、誰も落ちなかった場合は?」

「ん。そうね……どうしましょう」

「あ、それなら、お姉ちゃんが奢りますとも。お姉ちゃん、弟くんと一緒に周回してるので、ちゃんとお金持ってるんですから!」

「そうね。でもそれ、リリィ以外同じことが言えるのよね。私もずっといるもの」

「わ、わた、私だけ、ハブられてます……!?」

「いやいやいや違くないけど違うから! 別にリリィをハブってるわけではなくて、今回のイベントのポイント重視でやってたら自然とリリィは編成に組み込めないしそもそもリリィに怪我をさせたくないので是非もないことだと思うのです俺は! なので基本遊んでてくれると嬉しいな!」

「む、むぅ……そこまで言われたら何も言えないじゃないですか……まぁいいです! 正しい方のお姉ちゃん! やりましょう! 私が先頭で、ダメな方の私が最後で、お兄ちゃんが真ん中でどうですか!」

「じゃあ、リリィの案を採用します! 異論は無しということで!」

「は~い!」

「姉の独裁ね。まぁ、並び順とか気にしないけど。さぁ、やりましょう? 私が落ちるとか、そんな無様なこと起こりませんけどね!」

 

 そう言いながら四人が所定の位置に着くと、ジャンヌによる殺人水上ドライブが始まるのだった。




 ファミパン洗脳済みのリリィがお兄ちゃんと呼んでくれる世界観です。過去最高に可愛いリリィを書けた気がするので私は満足。

 バナナボートを書き始めたときって、こう、子ども用の小さいヤツを思い浮かべてたんですけど、そういえばなんか大きいのもあったよなぁ、と思って調べた結果、今回のになりました。小さいバナナボートを想像していたときの名残がシャチボートです。調べたらカッコよさ皆無で可愛かったので可愛くなりました。シャチの威厳とは。

 ちなみに、真っ先に落ちるのはオオガミ君によるサンオイルの計略に嵌まった邪ンヌです。義妹にも容赦のない男ですよコイツは。


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海に来たからって海に入らなきゃいけないわけじゃない(潜るの以外なら問題ないわよね)

「海に入らなくても、水上の遊びなら参加できるわよね。水上バイクとか」

「でも貴女騎乗スキルないじゃない。更に言えば、私は乗り物にはあんまり乗れないから」

「騎乗スキル持ちながら何を言っているのかしら」

 

 そう言いながら、桟橋でボートを見るエウリュアレとメルト。

 運転できなければ借りる意味がないので、誰か良さそうなのはいないだろうかと見ていた。

 そんな時だった。

 

「あら、ごきげんよう。今日はメイドの仕事は無いのかしら」

「むっ。貴様は……エウリュアレか。どうした。今日はマスターは一緒ではないようだが」

「いつも一緒にいるってわけじゃないわよ。サバフェスで会うもの。問題ないわ」

「ほぅ? 珍しいな。どちらかを探せば自然と二人でいるものだから、そう言うものだと思っていた」

「……最近、否定するのも面倒になって来たわ」

「諦めなさいよ。もう二人で一人なのは事実なんだから」

「それを認めたら負けな気がするの。だから最後まで抗うわ」

「一体何と戦ってるのよ貴女は……」

 

 呆れたようにため息を吐くメルトに、エウリュアレは頬を膨らませる。

 そんな二人を見ながらメイドオルタは、

 

「それで? 何用だったんだ。声をかけただけとは言うまいな?」

「あら。声をかけただけというのはダメなのかしら」

「いや、そういうわけではないが、貴様に限ってそのようなことはない、と思っているからな」

「イヤな信頼ね。まぁ、あってはいるのだけど」

「そうだろう? ほら、さっさと用件を話せ」

「その言い分がとっても気に入らないけど、そうね。私たちはちょっと海に出たかったの。海岸でもいいけど、ちょっと遠くまで出るのも面白そうかなって。それで運転手を探してたの。お願いできるかしら」

 

 エウリュアレの話を聞き、メイドオルタは少し悩んだあと、

 

「ふむ。人を雇うのだ。それなりの報酬はあるんだろうな」

「ん~……昼食をバーガーとかどうかしら。もちろん奢りで」

「良いだろう、その条件で成立だ。ただし、私の運転は少し荒い。振り落とされるなよ?」

「えぇ、もちろん。あ、それと、水上スキーって出来るのかしら。あぁ、興味本意で聞いただけだから、出来ないならそれでいいのだけど」

「それなら出来る。が、エウリュアレはともかく、メルトのそのヒールでは難しいと思うが良いのか?」

「あら。沈む気なんてサラサラ無いのだけど。白鳥が海に溺れるだなんて滑稽なことするはずもないでしょ?」

「……まぁ、貴様がそう言うのなら私は構わんが、後悔しても知らんぞ」

「大丈夫。エウリュアレはどうしようもないかもしれないけど、私は何とか浜辺まで帰れるもの」

「そうか。なら、問題ないな。なら乗れ。すぐ出発だ」

 

 そう言って、二人がボートに乗るのを待ってから、メイドオルタはボートを出すのだった。




 メイドオルタってこんな感じでしたっけ。ちょっとキツイ性格にし過ぎた……?

 ちなみに、個人的にエウリュアレはオオガミ君と離れてる期間が長くなるほど機嫌が悪くなりやすくなると良いなぁって思ってたり。この設定が生きるかは分からないですけど。


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動けないほどに積まれた砂(とりあえず誰か助けてくれません?)

「う~む、全く動けない」

「ふふっ、どうかしらマスター。ジャンタが砂風呂というのを教えてくれたから、マスターで試してみたのだけど!」

「もっと積んだ方がいいのかな? もっと固めた方がいいのかな?」

「ぎゅ~っと押したら固くなるよ! えいっえいっ!」

「……まぁ、楽しんでいるならいいか……」

 

 動けなくなるほどに乗せられて固められた砂に埋められたオオガミは、埋めた張本人であるナーサリー達が楽しそうなのでよしとする。

 

「あと、ナーサリー。砂風呂はこんなに固めなくていいからね。もっと緩くていいから」

「そうなの? じゃあ、次はそうするわ」

「うん。それで、そろそろ掘り起こしてほしいんだけど……」

「それは出来ないわ。それじゃあねマスター。死なないことを祈ってるわ」

「待って待って。何が起こるんですか一体! 殺されるようなことがあるの!?」

「大丈夫よ。マスターの日頃の行いが良ければ、きっとそんなことにはならないはずだもの」

「不穏な予感しかない……!」

「それじゃあ、バイバイマスター。また後で会いましょう」

「ばいば~い!」

「楽しかったよマスター!」

 

 そう言って去っていくナーサリー達を、オオガミは呆然と見ていた。

 遠くで、何やらうさんくさい雰囲気の溢れる白いローブを着てフードを深く被った人物から何かを貰っている姿が見えたのだが、そのうさんくさい雰囲気に見覚えがあるような感じがしたので、後で王に話をつけてもらおうと決める。

 そんなときだった。

 

「あら、不自然に砂山が出来てると思ったら、あなたがいたのね」

「ん、エウリュアレ。久しぶりだね?」

「そんなに離れていたかしら……今何周目?」

「ループものは他人に周回数を言うとろくなことにならないからね。秘密だよ」

「そう……なら、そうね。今回で終わりそう?」

「無理。まだかかるよ」

「残念。じゃあ、あと一ヶ月くらいは待っているわね。よろしく」

「いや、一ヶ月じゃ終わらな……ん? 待って。なんで一ヶ月? 分からないはずじゃ……?」

「それは、終わったら教えてあげるわ。それまで頑張ってね?」

「あ、うん……」

 

 エウリュアレに言われ、頷くオオガミ。

 ただ、一ヶ月あって本当に終わらないかと言われると、少し悩むくらいの速度ではあった。

 だが、それ以前に、オオガミには目下最大の敵がいた。

 

「それはそれとして、助けてくれない?」

「気が向いたらね」

 

 そう言って、オオガミを押し潰している砂の上に座るエウリュアレ。

 今更少し重くなったところでなんとも思わないが、座られているのは何とも言えない気まずさがあった。

 そんなオオガミの気持ちを、知ってか知らずか、楽しそうに笑いつつ、

 

「メルト~。ちょうどいい椅子があったわよ~」

「えっ、メルトもいるの!?」

「いるわよ。ずっと一緒にいたもの」

 

 当然でしょ? と言わんがばかりの表情に、オオガミは頬を引きつらせる。

 そして、そんなオオガミのことなど知らずにやって来たメルトは、

 

「椅子って聞いたけど……何やってるのよ。マスターを辞めて椅子に転職したの? 随分とまぁ劇的ね。気分はいかがかしら?」

「いやぁ、全くと言って良いほど動けないからねぇ……素直に助けてほしいなぁって」

「そう。じゃあ私たちが飽きるまで椅子になっててちょうだいね。マスター」

「悪意しかねぇなこの二人……!」

 

 オオガミがそう声をあげても、二人は楽しそうに笑いながら遠慮なくオオガミの上に座るのだった。




 久しぶりに合流。なお同人の進捗は微妙という。まぁ、なんとかなるんじゃないかなぁと思いつつ。

 ところで、砂ってどれだけ乗せたら動けなくなるんでしょうね?


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サメで暴れるとかロックじゃな!(頭を増やすとか良さそうではないか!?)

「うわははは!! 行けいバラキー! カップル撲滅運動じゃ~!!」

「くははは! 任せよ! 頭が増えるサメで脅かしてくれよう!」

 

 そう言って、去年にも見たような巨大且つ何故か頭の二つあるサメが、背中に水着のノッブを乗せた状態で砂浜を襲撃する。

 当然カップルで来ている客もおり、彼女を守ろうと前へ出る者、彼女を置き去りにして脇目も振らず走り去る者等が多い中、

 

「ダブルヘッドジョーズじゃん……とりあえず写真撮っておこう」

「ねぇ、サメって美味しいのかしら。狩ってみて良い?」

「アンモニア臭がするとか言うわよね。でも食べるところもあるし、新鮮なら美味しいかもしれないわ。とりあえず狩りましょう」

 

 という、激しく物騒な言葉を言うサーヴァント二人と人間一人と、

 

「なんじゃぁ? こじゃんちふっといヤツは……サメか?」

「おぉ? 中々食いでのありそうなサメじゃねぇか。サクッと狩ってマスターに届けるとすっか?」

「良いぜ任せろ! オレの人間無骨はサメにも効くって所を殿様に証明しねぇとな! 名前しか見ないで勘違いしてそうだし!」

 

 そう言って、すぐさま臨戦態勢に入る三人のサーヴァント。

 その不穏な雰囲気に、バラキーとノッブは顔を青くし、

 

「全力撤退じゃ~!!」

「変化! そして仕切り直し! さらば信長! 強く生きよ!」

「ぬわぁ!? 見捨てたなバラキー!!」

 

 美しいまでに早い裏切りと逃走。

 それにより残されたノッブは、獲物を失ったサーヴァント達の猛攻撃を受けることになるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「いや、そんな予感はしてたんだよね。ノッブ乗ってたし。他は知らないけど」

「……サメ肉って、美味しいのかしら。私、気になるのだけど」

「私も少しだけ気になるのだけど。どこかに売ってたりしない?」

「売っとらんわ。つか、儂も食ってみたいわ。食えるんかあれ」

「……誰かが前に言ってた気がする」

「おう。言ってた本人の登場だぜ。喜べマスター。前回の雪辱を晴らしにちょいと遠出して狩ってきたぜ。今からサメステーキ食うが、来るか?」

 

 そう言って、どこからともなく現れるアンリ。

 一体何処にいたのだろうかと考えるだけ無駄だと言うことは、周知の事実だった。

 

「今から? う~ん……よし行こう。もう食べる機会無さそうだしね」

「えぇ、行きましょう! 私も食べたいもの!」

「そうね。すぐ行きましょう早く行きましょう走って行くわよ!」

「うっへぇ……この二人が乗り気とか、珍しすぎて怖いんじゃけど……」

 

 とても楽しそうにしている二人に引っ張られ、オオガミは困ったように笑いながらアンリに先導を頼み、その後ろをノッブはついていくのだった。




 あのサメ、今三つまで増えたんですっけ。見たことないですけど。

 でも、カップルを別れさせに行って食われかけるサメとは……運が悪かったなバラキーよ……


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うむ! これは美味いな!(でもコレ大きくないですか?)

「くはは! うむ、美味い! 良いなコレ! 後でマスターに作らせるか!」

「そこで何故マスターなんですか。他にも料理上手な人はいるでしょう?」

 

 わりと大きめのハワイアンハンバーガーに豪快にかぶりつくバラキーを横目に、同じサイズのバーガーを前にして食べあぐねているカーマ。

 口に入りきらないのはどうなのだろうか。としばらく悩むも、諦めたようにため息を吐くと、食べられるであろう大人の状態にまで再臨する。

 

「……いや、これ凄く食べづらくないですか? どうやって食べてるんですかバラキーは」

「ん? それはあれだ。ちょっと無理をするくらいの大口を開けて、一気に喰らう。一口で口の中がいっぱいになるから食べごたえがあって美味だ。ぱいなっぷるを入れるという発想に驚きはしたが、存外美味いものだ。肉の甘味と果物の甘味は別のものであり、組み合わせるなど普通は思わぬ。だからこそこの食い合わせは目を見張るものがあった。うむ。コレを作ったヤツは相当ひねくれていたのだろうな!」

「貴女に言われるとか、発案者が可哀想ですね」

「なにおう!? 吾としては最大限に褒めていたのだが!?」

「えぇ~……」

 

 そう言いながら意を決してハンバーガーにかぶりつくカーマ。

 たった一口で口の中いっぱいに広がったハンバーガーをどうにか噛み砕いて飲み込むと、

 

「お、美味しいんですけど、この食べづらさが厳しい……人間には厳しいんじゃ――――」

「――――んぁ?」

 

 文句を言いながら隣を見ると、顎が外れているのではないかというほど大きく口を開けてハンバーガーにかぶりつくバラキーの姿。

 それを見て、数秒硬直したカーマは、

 

「あ、あ~……そうですよねぇ~……バラキーはそもそも人間じゃないですし、変化で口を大きくすれば食べられますよねぇ……」

「むぐむぐ……んぐっ、げふっ……いや、そんな当然のことを言われても反応に困るが……マスターは押し潰して食べようとしていたな。エウリュアレとメルトは分解していたが」

「……なんでそんなこと知ってるんですか」

「ストリートを散歩しているときにこの店でたまたま見ただけだが……まぁ、マスターは一人で、エウリュアレとメルトは一緒にいたな。昨日は一緒にいたから仲違いではないだろうが……何故別々だったのだろうか」

「そういう気分だったんじゃないですか? 知らないですけど」

 

 そう言い、パティだけを器用に引きずり出して食べるカーマ。

 それをバラキーは自分のハンバーガーにかぶりつきつつ、

 

「食いきれんのなら吾が食うから寄越せ」

「いえ、流石に自分のは食べますよ……というか、食べにくいだけで食べきれない訳じゃないですし」

「なら良いが……無理をするでないぞ」

「分かってますよ」

 

 そう言いながら、カーマは少し薄くなったハンバーガーにかぶりつくのだった。




 ハンバーガー食べたい(素直

 パイン入りハンバーガー、わりと美味しいんですよ……食べたいなぁ……
 ところで、ハワイのハンバーガーって、どれだけ大きいんでしょう。ハワイ行ったこと無いので知らないんですよね……写真はたまに見るんですけど。


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全てはメルトの蹴りが制す(なんでそんなに執拗にメルトを使うんですか!)

「うわははは!! メルトが全部蹴り殺すぜオラァ!」

「えぇ、えぇ! 魔神柱も蹴り殺したし、殺生院もまた蹴り殺したし、BBなんて、二人に増えてくれたから二度も蹴り殺せたわ!」

「もうイヤなんですけど! ほんっとうにメルトは私の邪魔をするんですから!!」

「私も納得いきません。なぜそこでわざわざメルトを用意してくるのですか。ルーラーの方々を使ってくださるのが慈悲というものでは!?」

「ルーラー特攻持ちながらルーラー催促するとか、明らかに狩りに来てるじゃない……」

 

 全て容赦なく蹴り砕いていったオオガミとメルトは大変上機嫌で、それとは対照的に、泣き出しそうなBBと不満全開のキアラ。

 不満を言っているキアラに突っ込みつつ、エウリュアレはため息を吐き、

 

「とりあえず、あとはポイント全部貯めて、素材交換して終わりよね。あぁ、楽しみね。いつ遊ぶのかしら」

「うん、まぁ、有耶無耶に出来ないとは思ってたよ。まぁ、明後日くらいに遊ぼうか。明日は準備だね……」

 

 オオガミはそう言って少し考えると、

 

「よし。お姉ちゃん理論的には敗者は勝者に従うものらしいので、BB。ノッブを呼んできて。こっちは邪ンヌ達呼んでくるから。BBのお金で打ち上げしよう!」

「それはいいわね! すぐ行きましょう! お店は私とメルトで探してくるわ!」

「ほらBB。通信機持ってるでしょ。出しなさい」

「ひぃん……カツアゲされた上に通信機器まで持っていくとか、悪魔ですか……親の顔が見てみたいですっ!」

 

 そう言って泣きながら通信機をメルトに差し出すBB。

 そんな様子を見ながら、キアラは頬に手を当てて困ったような顔をしながら、

 

「……あの、私は何をすれば……?」

「……キアラさんは、大人しくしてるのならメルトについてって。外面は聖人だし、最悪メルトなら対応できるでしょ?」

「もうっ! なんでメルトと一緒にされなくてはいけないのですか! そろそろいじけますよ!」

「えぇ……もう面倒だからBBが預かってよ。どうすればいいのこれは」

「センパイが雑な扱いをするからそうなるんじゃないですか……この人、素直に言っても普段の行いで誤解されるような人ですし。優しくしてあげてください。これで中身は子供です」

「こ、子供ではありません! 失礼なことを言わないでください!」

「はいはい。そうですね~。じゃあ混ぜてもらえなかったからってアビゲイルさんの役目を奪って夜の殺生院とか突然やり出さないでください。もう過ぎたことですし良いですけど。で、キアラさんはどうしたいんですか~。私と来るか、メルトと行くか。あ、マスターはダメですよ。メルト以上に苦手なのと会うことになると思うので」

「……なら仕方ありません。BBで我慢するといたしましょう……」

「すっごい引っ掛かる言い方ですけど、まぁいいです。じゃあセンパイ。また後で会いましょうね。連絡はノッブのでお願いします」

「はいは~い」

 

 そう言って、三組はそれぞれの方向に向かうのだった。




 相性とか完全に無視して蹴り砕いていくメルトパネェっす。スカスカで強化されたスーパークイックメルトの蹴りを浴びて座に帰るのです……


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明日は鬼ごっこですね~(裏方は全部任せたよBB)

「とりあえず、逃走エリアはストリートだけで良いかな?」

 

 ルルハワの簡易地図とワイキキストリートの地図を開きつつ、そう言うオオガミ。

 その地図を一緒に覗き込んでいるBBは、

 

「そうですね~。一応建物が壊されないように防御張っておきますけど、壊されるかもしれないので、気を付けてくださいね」

「うん、そうしておく。ノッブの方はどう?」

「完成しそうですよ。暇そうにしてたサーヴァントを総動員してますし。あっち、バイト代出るんですって。こっちにはないんですか?」

「賭け事でもすれば良いんじゃない? あとは飲み物を売るとか」

「あれ。てっきり諦めろとか言われると思ったんですけど、意外ですね」

「だってほら、イシュタルが勝手にやるから、先にこっちでやっておく方が面倒事は少なそうだし」

「あ~……なるほど。確かに彼女、やらかしのプロですからね。それに、私たちのイベントで他人に稼がせるほど、私は優しくないんです」

「うん。よろしく頼むよBB」

 

 オオガミはそう言って、地図を畳んでBBに渡す。

 

「そういえば、センパイは参加組でしたっけ。こっち側にいたら八百長になりそうですが」

「いや、ルール決めたりエリアを決めたりしてるだけだから、言うほど有利になる訳じゃないよ。鬼役はBBとノッブに任せてるし。ギミックもそっち任せでしょ。という訳で、司会は任せたよBB」

「は~い。じゃあ、実況はノッブで、解説は孔明さんですね。一応事前募集はしますけど、センパイの方でも声かけしておいてくださいね?」

「うん。というか、引き入れたいサーヴァントには声をかけてるんだよね。あとは自由参加がどうなるかって感じ」

「流石センパイ、仕事が早いですね。それじゃ、こっちも準備があるので行きますね~。鬼役、楽しみにしておいてくださいね!」

 

 そう言って門を開いてどこかへ行くBB。

 オオガミはそれを見送った後、

 

「さて、どうしようか。明日に向けて休むか、遊ぼうか……」

「それ以前にまだ同人誌全部作ってないでしょうが。帰って周回するわよマスター」

「クソッ! 逃げ切れなかったか!」

 

 どうしようか悩んでいたオオガミは、後ろからにっこりと笑って近づいてきた邪ンヌに捕まり、半泣きになる。

 

「まぁ、別に急ぐ必要はないけど、早めに終わらせて遊ぶ方が気が楽でしょ」

「まぁねぇ……仕方ない。サクサク作っていこうか」

「そんなサクサク作れるもんでもないわよ……というか、なんで毎度一週間なのよ。もっと期間を延ばしてくれても良いと思うのだけど」

「そもそも現地入りした時点で一週間前だしねぇ……どうしようもないんじゃない?」

「チッ……まぁ今更変わっても大変なだけだから良いけど。ほら、さっさと行くわよ」

「はいはい。頑張りますよ~」

 

 そう言って、オオガミは邪ンヌと一緒にホテルへ戻るのだった。




 問題は、明日だけで書ききれるかという問題があって……いえ、まぁ、頑張りますけど……書きたいのが全部書けるかなぁ……


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ワイキキストリート占領逃走ゲーム!(大会進行はBBちゃんでお送りいたします!)

「さぁさお集まりの皆々様!! ついにやってまいりましたワイキキストリートを占領しての地獄の逃走ゲーム!! 今回の逃走者は一味も二味も違うかもしれません!! また、今回からは私BBが大会管理をしますので、皆様お馴染みBBスロット搭載となります!! ワクドキのデンジャラスタイム完備! 予定では合計三回、最高六回までのステキタイム、お楽しみに!!」

 

 その宣言によってライブ映像が流れ始める。

 ワイキキストリートの空撮ライブ映像が流れつつ、BBは説明を続ける。

 

「まずはこのイカれたイベントのスタッフ陣営から! 本日の司会兼実況担当、皆のアイドル! 月のスーパーAIことBBちゃんです!! 知らない人も知ってる人も皆よろしくぅ!!」

 

 その紹介に飛び交うのは、歓声よりもブーイングの方が多いように思えるのはおそらく気のせいだろう。

 

「は~い! 今ブーイングした人達、顔覚えましたからね? 覚えててくださいよ? 後でまとめて虚数送り一か月しますから。貴重な夏休みや地獄の夏季出勤を虚無の彼方に消し飛ばして、帰ってきたら夏休みは終わり、一か月間無断欠勤という惨劇が貴方達を襲うので、頑張って生き残ってくださいね?」

「ナチュラルクズじゃねぇかテメェ!!」

「あっ、そういう事を言うロビンさんはブタさん状態で頑張ってくださいね! 最初のスロットまでブタさんモード、先行体験です!」

「ふざっ、マジでやる奴があるかってんですよ!!」

「チッ……なんでこっちのカルデアにはあの残念魔女がいないのにそんな対策出来るんですか……!!」

「師匠の方はいなくても弟子の方は揃ってるんでな! 残念でした~!」

「そうですかそうですか。じゃあそれは今発覚したので、削除しておきますね! 邪魔ですし! って、ロビンさんに構ってる場合じゃありませんでした。紹介をしないとですね」

 

 後ろでロビンが事前にBB対策に仕込んでいた術式が無残に破壊されていく映像を流しながら、BBは咳ばらいを一つする。

 

「さてさて。お次に紹介するのは同じく実況担当、今回は運良く手に入れた水着でやるそうです。渚の魔王、織田信長!!」

「うわはははは!! 儂じゃ!! ワールドワイドに輝く予定じゃからみんな名前を憶えて行くんじゃよ!! この後ライブの予定もあるから見てってネ!l」

 

 イエーイ!! と声を上げるノッブに、盛り上がる会場。

 

「なんで私よりノッブの方が人気なのか全くわかんないんですけど、ここで一々突っかかるほど私は子供じゃありませんので。それじゃ、次のメンバーです!! スキル構成が有能過ぎておよそどこのカルデアでも召喚されたら吐くほど振り回されることで有名! 恒常と言う現実に震えて今日も眠れない! 諸葛孔め……あれ、ノッブ。孔明さんはどこ行ったんですか?」

「んあ? 今朝休養が出来たから休みって言ってたぞ。代理で白フードが来てるんじゃが」

「うんうん。こういうのには僕も混ぜてほしいな。面白そうじゃないか! 特に見てることとか、僕の専売特許だよね! 解説とかは噛むから遠慮したいけど!」

「……マジスカ。仕方ないですね……じゃあ改めまして。第三スキルで脳筋育成一直線! こいつが見たら大体英雄! バスターゴリラ育成所! 王の話を聞かせて喉枯れた! 実は現界したのを後悔してそうなグランド候補キャスター! 本日諸葛孔明代理で解説として参戦!! お話マスター、マーリン!!」

 

 直後、歓声とブーイングが真っ二つに分かれた会場。おおよそバスターゴリラにされてしまった方々と、その余波で休みが増えたサーヴァントたちだろう。

 

「あれ、解説なの? 本当に? 孔明君には実況だって聞いてたんだけど。騙されたの?」

「なんですかこの人。騙されたんです? グランド候補なのに? さては馬鹿ですか?」

「いや、千里眼使えても現在時間にしか対応しとらんし、どうせ裏取りしとらんかったんじゃろ。つか、儂気付いたんじゃけど、さては周回キャスター組って、さては仲悪いな?」

「そりゃ、誰かが犠牲になってる間だけ助かるんですし。ノッブ的に言うなら、是非も無いってやつです」

「……まぁ、その話はそれ以上はやめておいた方が良いんじゃないかな。うん。次の紹介に進もう?」

 

 そう言って進行を促すマーリン。

 BBは仕方ないとばかりに了承すると、

 

「さて、それでは次は逃走者の紹介をしますね!! エントリー№1番!! いつもみんなと騒いでる! 基本編成はエウリュアレとメルトに囲まれる! それで付き合ってないとか一周回って不純では? われら技術部のリーダー、このイベントの主催者! なんでお前はこっちじゃないんだ! 部下に全部分投げてるんじゃねぇぞと約二名から怒涛のブーイングお手紙大量投函されて昨日はツンデレオルタとホテルで一夜を過ごしたと密かに有名! 主催者特権で1番先取、オオガミだぁー!!」

「説明に悪意しかないんじゃないかな!?」

 

 歓声とブーイング入り混じるコールに、個人的事情が多大に含まれているであろうみんなのマスターことオオガミ。

 既に名声が悪い意味に振り切れていそうなオオガミは、何をしても殺されそうな雰囲気を感じて、カメラから隠れる。

 

「さてさて。では引き続き行きましょう! 逃走メンバー№2!! 指定席はマスターの膝の上! 実質マスターの嫁だよね! 男性皆彼女の餌! ランサーだろうが消し飛ばす! さり気にマシュさんに次ぐ権力者! なんでこんな女神に渡したんだと疑問が尽きない! 責任者は痛い目見るゾ! えげつない悪戯をたまにするのが日課です! お嫁権限で二番を先取、エウリュアレだぁー!!」

「ふふっ。BB、後で憶えてなさいよ?」

「おっと。みなさん、イベント終了したら私の盾になってくださいね?」

 

 満面の笑みを浮かべてカメラに宣言するエウリュアレに、頬を引きつらせるBB。

 誰も解説に宣言しない辺り、誰もが納得しているのだろう。

 

「さてさて、三人目の紹介に行きたいですが……ここで一旦CMです!」

 

 そう言って、BBはキラッ! とポーズをとるのだった。




 さりげなく100万文字突破。やったぁ。わーい。

 くぅっ……やっぱり無理……今日中に終わんなかった……スマホ壊してデータ復旧に時間を取られた……
 正直、明日も終わるかな……と言う気分です。少なくとも明後日には終わるはず……


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逃走者は貴方達!(逃げ切れ明日の我が身の為に!)

 ドルセントによる印刷所のCMが終わるとともに、ステージの画面が再びワイキキストリートを映し出す。

 

「さてさて! CMも明けたのでお次はエントリー№3!! 水辺は実質彼女の支配下! 湖の白鳥は地獄の底から羽ばたき戻る! 正ヒロイン予定から召喚遅すぎ案件によりサブヒロインへの降格が決まったか!? 私の切り捨てた欲望の末路! さりげなくセンパイによって強制的に参加者になっていた地味な被害者! ゼリーになりたい奴から前に出ろ! 永遠の偶像(スワン)、メルトリリスだぁー!!」

「手始めにこのうるさい司会からゼリーにしましょうか」

 

 画面越しの笑顔はやはり威圧感があり、BBはにっこりと笑顔を浮かべたまま冷や汗をかく。

 

「なんだか、この司会をやってると命の危機にかなり会う気がするんですけど、司会って大変な職なんですね!」

「いや、お主が毎度ボロクソに煽るからじゃろ。楽しそうじゃなぁ……」

「僕は傍観者だけど、君は引っ掻き回すのが好きみたいだね。流石に未来や並行世界の観測までは出来ないから一体どんな面白い物語を歩んできたのかな? いやはや、君みたいな存在も、物語に彩を添えてくれる。もちろん、倒されるところまで含めてね」

「む。マーリンさんは一言多いですね。あとノッブは罪状追加です。実況もちゃんとお願いしますね」

「おぅ。罪状追加は納得できんが、まぁよい。反撃カードはあるしな。ほれ、さっさと次の紹介をせい」

「仕方ないですね……じゃあさっさと行きましょう」

 

 そう言って切り替わるライブ映像。

 再びマイクを握りしめてBBは笑顔を作ると、

 

「お次はエントリー№4!! 今からもう罰ゲームの準備か!? 私を煽るだなんて無謀の極み! 貴方は私のおもちゃです! 楽しい家畜生活をワンモアアゲイン! 豚がとてもよく似合う緑の狩人! お前のマントは没収な! 破壊工作子どものお世話なんでもござれ! カルデアが生んだ狩人に見せかけた何でも屋! ロビンフッドだぁー!!」

「ちょっと待て! オレ何時から何でも屋になったんですか!? 聞いてないですよそんなこと!」

「あ、それを言い始めたのは俺ね」

「やっぱテメェかマスター!!」

 

 もはや本職は何だっただろうかと思われなくも無い、森の狩人ことロビンフッド。最近本当に色々な雑務を押し付けられている自覚はあるので、否定しきれないのも問題ではあった。

 

「つか、なんでオレより前のエントリーは全員主催側が選んでるんすか。普通主催エントリーはラストじゃねぇの?」

「えっ、ロビンさん、そんなに一番になりたかったんですか? 今からでも変えてあげますけど、一番は対センパイ用に無茶苦茶な選択肢が多いですけど……大丈夫です? 最悪素っ裸ですよ?」

「むしろそんなのをマスターにさせようってのが分かんねぇんだが……!?」

「大丈夫です。命に別状はありません。何かあったら医療班が突貫しますので。文字通り。一直線に」

「いやどっちかってぇとそっちの方が不安なんだが!?」

 

 もはや医療班の方が怖いのは、世の常だろう。命の最前線は怖いのだ。救ってる側の行動が。

 

「というか、ロビンさんだけに時間を割くわけにもいきません。次に行きますね!」

「おぅ。ササッと進めてCM入ろう。儂そろそろTシャツ着たい」

「このクソ暑い中、一枚着ようとするのは乙女の威厳か、それとも焼けたくないのか。でも焼いた方がノッブはいいんじゃないんです? オルタっぽく見えますよ?」

「儂もう魔王とかになっとるから良いかなぁって。そのうち霊衣解放で褐色の儂が出来るじゃろ」

「うわありそう。止めてくださいそう言う現実的にあり得そうなことを言うの。怖いです」

「うっさいわ。ほれ、次じゃ次」

 

 ノッブに急かされ、ため息を吐きながらもライブカメラをさらっと操作する。

 

「ではではお次の参加者! エントリー№5!! 出来ればこっちに来てほしかった! そのスキルはホラーゲームで大活躍しそう! 見たものすべてに変化可能? 逃げの速度は超一級! 今年は水着姿で参戦だ! 大江山の意地を見せると彼女は言う! たぶんそれは無理だと皆は言う! 鬼界のヒロイン! 真面目系鬼っ娘、茨木童子だぁー!!」

「BB貴様やはり吾を馬鹿にしておるな!?」

「してませ~ん! でも期待はしてるので、頑張ってくださいね~!」

「ぐぬぬ……憶えておれBB! 水着の音も含めて返してやる!」

「あれ、さては本当にいい子ちゃんなのでは? こっちに引き込むのはちょっと気が引けてきました。どう思いますノッブ」

「いや、もともと引き込んでも得が無いわ。今度ピコピコハンマー渡すからそれで満足してもらおう」

「なぜだろう……いい加減腹も立たなくなってきた……これ、鬼としては終わりでは……?」

 

 そろそろ自分の本分を見いだせなくなってきているバラキー。

 だがそんなことはお構いなしと、BBは楽しそうに笑いながら、

 

「それではラスト! バラキーに連れられ友情出演! その名は日本の誰かも名乗ってる! 仏教徒のまさに天敵! 向かう全ては虚空に果てろ! でもでも中身はただの女の子! 三段階成長とか羨ましいぞ! 強制恋愛ブースト弓矢は私も欲しい! 本家第六天魔王、マーラを混合した最強悪神! 人が嫌いでも人を愛すのを止められない! 全人類は私が愛す、カーマだぁー!!」

「なんですかアレ。最後ほとんど同じこと言ってません? というか、実況席に私の名前を語る方もいるんですけど。そもそもなんで私ここに呼ばれたんですか」

「吾と一緒に登録したであろう……さては何も聞いておらんかったな……?」

「ココナッツミルクの話をしてたような気がしますけど、その後何かありましたっけ……」

「ダメだこやつ。吾にはどうしようもない……」

 

 もはや本人がなぜここにいるのかを理解していない様子だった。

 だが、BBにとってはそんなことは関係なく、来ているのなら参加者。つまりはそういう事だ。

 

「ではでは、最後にルールの確認を。まずは、今回のこのゲームは基本的に捕まったらその時点で別室に待機していただきます。また、一定時間ごとにミッションが全員に配布され、それの結果によって、BBスロットが回ったり回らなかったりします。スロット自体は、時間経過によって三回。序盤、中盤、終盤の三回には確定で回しますので、そこんところよろしくお願いしますね? まぁぶっちゃけて要約しますと、最後まで捕まんないで配られるミッションをクリアしてBBスロットをかいくぐれ! って事ですね!」

「無茶苦茶ぶっちゃけたね」

「でも大体あっとるし良いじゃろ。分かりやすい方が一番じゃよ」

 

 画面に映し出されたフリップと一緒に、適当に説明するBB。

 それを聞いたマーリンとノッブは、適当にコメントしつつ、BBの言葉に耳を傾ける。

 

「最後にスキルや宝具の使用についてですね。現在ワイキキストリートには、カードをいろんな場所に配置しております。そのカードはスキルカードと名付けまして、このカードを一枚消費することで、スキル一回使用する、という感じになってます。前回は無制限でしたので、それだと面白さ半減。バラキー一人で勝利確定と言う面白みのない感じでしたが、今回は趣向を変えてこのような形とさせていただきました。ちなみに宝具は禁止で、鬼役の直接攻撃は捕まったのと同じ判定とさせていただきます。いくら殴りたくても、殴った時点で別室送りなのでご注意くださいね?」

「要するに宝具は実質禁止って事じゃな。もちろん得物で殴っても変わらぬぞ。スキルカードを探していつでも使えるようにしておくのが一番という事じゃな」

 

 BBの説明に対してノッブが補足する。

 マーリンはそれに頷きつつ、

 

「なるほどね。というか、ふと思ったんだけど、コレ、僕と君の立ち場逆じゃない?」

「お主はスキル解説の方じゃから安心せい。噛んだらシバく」

「あはは。流石にそれはシャレにならなそうだから頑張るよ」

 

 命がけのトークになりそうな予感だ。と感じるマーリン。

 そんなマーリンの気持ちなど考慮することなく、BBは高らかに宣言する。

 

「それでは!! サマーフェスティバル前夜祭! 照りつける灼熱の太陽の元、黒き恐怖が貴方を襲う……貴方はこの地獄を乗り切れるか! 『ワイキキストリート逃走中!』スタートです!!」

「あぁ!! ついに言ってはいけない言葉言いおったなBBぃ!!」




 どこへ向かうんだコレ。正直口上文が楽しいくらいしか考えてなかったんですけど……

 あ、無事復旧いたしましたので、元気100倍。やる気1000倍。明日から頑張っていきますよぅ!


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レッツエスケープ!!(走り回れ! ワイキキストリート!!)

 BBの宣誓とともにオオガミ達の前に落ちてくるサイズの違う頑丈そうな檻。

 その中にいるのは――――

 

「ヘラクレスとキャット……?」

「普通に追われても速いんだけど。敏捷Aよ? バカじゃないの?」

「まぁ、鬼としては最適よね。素直に逃げ出すべきよ。ほら、逃げるわよ!!」

 

 エウリュアレの声によって全員は走り出す――――。

 

 

 * * *

 

 

「さてさて、今更ですが鬼役の説明です。今回は開始から3分後に解放されます。そして、BBスロットとミッションの失敗をトリガーに追加される感じですね。追加される人員は、後半に連れて割と容赦なくなっていくので、お楽しみに!!」

「うむ。何とか全員了承してくれてな……問題は解放されなかったら儂食われるかもしれん……」

「大丈夫です。その時は骨だけは貰ってきますから」

「うん。全く助ける気が無いのが伝わってくるね。さて、実況の二人がうるさいけど、ここは鬼役の二人の説明をするとしよう」

 

 マイクを忘れて話し始めるノッブとBBを横目に、マーリンは話を始める。

 

「まず、大きな檻の方にいるのはヘラクレス。言わずと知れたギリシアの大英霊だね。よくこのふざけたイベントに、それも敵役として参加してくれるなんて、心が広いというか、これも狂化の影響なのかな?」

「いや、普通に笑いながら了承してくれたんじゃが。マジで狂化かかっとるんかアレ」

「普通にかかってますけどね。普通に精神異常耐性が高いから微妙にレジストしてるんじゃないですかね?」

 

 普通に会話が成立するのを不思議に思っているが、ノッブもバーサーカーと言うのを忘れていそうだった。

 

「さて、次はタマモキャット。どういう経緯でああなったかは定かではないけど、とにかく玉藻の前を笑顔で亡き者にして来ようとするあたり、因縁が深いものだと予想できるよ。カルデアの厨房担当の一人でもある彼女には、サーヴァントたちも頭が上がらないことが多々あるそうだ。このルルハワにも、彼女が働いているホテルがあるらしいけど、そこはもう満席。とはいっても、宿を予約していない人はもういないだろうから関係のない話だね!」

「実際うまいからなぁ……つか、カルデアの厨房に外れは無いからな。うむうむ。思い出しただけで腹が減って来るな……」

「本当に美味しいですよねぇ……なんというか、ああやって料理が上手いと、それだけで引く手数多なんじゃないかなって思うんですけど、冷静に考えると、歴史に名を遺す英霊に厨房を任せるって、随分ととんでもない所ですよね。私は美味しいご飯を食べられるのでいいんですけど」

 

 だんだんとキャットの話題から厨房の話になっていく実況二人にマーリンは苦笑いをしつつ、

 

「さて、エウリュアレの方に動きがあったようだね。見てみようか」

 

 鬼が解放されてから10分ほど経った頃だった。

 

 

 * * *

 

 

「あぁ、これがスキルカードかしら」

「その黄色いカード? どこにあったの?」

 

 どこからか手に入れたのであろう黄色いカードをオオガミとメルトに見せるエウリュアレ。

 二人はそれを見ながら、どこにあったのかを聞く。

 

「そこの植え込みに隠されてたわ。たぶん、ちょっとしたところに隠されてるんじゃないかしら。配られたカードホルダーに入れておけばすぐに取り出せるみたいだし、見つけたらすぐに入れて置いていいんじゃないかしら。落とすよりはいいわ」

「なるほど……というか、ふと思ったのだけど、私たちは効果があるけど、貴方は使えるの?」

「いや、どうなんだろう……魔術礼装を発動できるのかな……それなら戦闘服でガンドを叩き込むのが一番かな……?」

「まぁ、数に余裕が出てきたら試す感じでいいんじゃないかしら。とにかく、見つかってないなら探すのが一番かしらね」

「分かったわ。それじゃ、探し始めましょう」

 

 そう言って、三人はそれぞれ互いが見える範囲でカードを探し始める。

 

 

 * * *

 

 

「さて。ようやくスキルカードが見つかったという事で、今回はスキルカードの説明を! マーリンさん、お願いしますね!」

「おや、僕かい? てっきり君が説明するものだと……って、まさか説明書まで用意されてるとは思わなかったね……」

「まぁ、流石に儂らがこれ以上説明したら、真面目に解説の存在意義が無いしな……ほれ、任せたぞ」

 

 えぇ……と嫌そうな顔をするが、ノッブがギターを取り出したあたりで笑顔を顔に張り付けて説明書を読み始める。

 

「え~、スキルカードの説明だね。今回のこのスキルカードシステムは、文字通り、スキルを使うためのカードだよ。ステージであるワイキキストリートはスキルの発動を永続的に禁止しているけど、スキルカードがある時だけ使える。スキルカードスキルカードは、スキルの発動に際して自動的に消費されて、スキルカードが無い時はスキルが使えない。単純だね。ちなみにマスターによるスキルカードの発動だけど、本人も言っていた通り、魔術礼装が使えるよ。ちなみに、これは事前に配った企画説明書に書かれているので、きっと彼はゲームを説明書を読まないで進めるタイプだろう。チュートリアルが無いゲームとか、絶対苦労しそうだよね」

「はい。ありがとうございましたマーリンさん! という事で、さりげなくセンパイに対してディスってたような気がしますけど、おおむねそのような感じで! ちなみに、スキルカードは最初から全て配られているのではなく、これも鬼と同様にミッションの結果によって増加いたします!」

 

 そんな説明をしている間にも、各逃走者が一人一枚は最低でも持っている状況になった。

 

「さて。現状、マスター、エウリュアレ、メルトの三人と、ロビンフッドのソロ、バラキーとカーマの二人組という感じで動いておるが、このゲームにおいてこの陣形。どうじゃろうか。解説のマーリン」

「うん、そうだね。まず、このゲームにおいて、スキルカードは重要だね。人数がいればカードの配分は出来るけど、各々の耐久は落ちる。回避を持っている人は単独で動いた方が良いだろうけど、例えばエウリュアレの魅了、マスターのガンドなどの鬼を拘束するスキル。茨木童子の仕切り直しの様な高速離脱スキルなどは、少数で行動しても損は少ないね。だから、回避スキルを持つロビンフッドのソロ、仕切り直しスキルで離脱出来る茨木童子と自力で走って逃げるしかないカーマのペアは理に適ってると言えるね。でも、マスターのパーティーは、マスターとエウリュアレはともかく、メルトリリスだけは回避スキルが死んでしまっているね。まぁ、拘束できる二人と行動できるというのは、逃げ切るとしたら最適ともいえる。バランスとしてはいいんじゃないかな?」

 

 マーリンの解説を聞いて、なるほど。と頷く二人。

 そんな時だった。

 

「おぉっと! ついに鬼役と真の鬼(笑)との会合か! 今、ついに、走り出したぁー!!!」

 

 

 * * *

 

 

「ちょ、まっ、速い速い!! 吾捕まるぅ!?」

「なんで私より貴女の方が遅いんですか! さてはこのために私を参加させましたね!?」

 

 大人の姿になってバラキーを抱えたまま疾走するカーマ。

 その後ろを走って追いかけてくるキャットの目は、明らかに得物を目の前にした猫のソレだった。

 

「クッ、まだ序盤も序盤の気がするが、スキルカードとやらを使うしかないか……! 跳ぶぞカーマ!」

「何時でもいいです早く跳んでください!」

 

 今まさに捕まるといった寸前で、スキルカードが黄色く光りだすと同時に仕切り直しによってまるで消滅したかのような速度で逃げ去るバラキーとカーマ。

 二人を見失ったキャットは諦めたように肩を落とすと、再び逃走者の捜索を始めるのだった、

 

 

 * * *

 

 

「おっと。ついに発動しましたスキルカード! このように、カードがスキルの発動に反応して光り始めている間だけスキルを発動する事が出来ます! もちろん、ストックしているカードや、他人が持ってるカードは誤作動で発動したりはしない仕様ですので、安心して使えますよ!」

「それ、最初の説明の時に言うべきだった気がするんじゃが」

「段取りが意外と適当だよね。まぁ、テンポ的にはいいんじゃないかな?」

 

 そんな話をするノッブとマーリン。

 そんな時だった。アラームが会場とワイキキストリート全域に響き渡る。

 

「おぉっと!! さてさてやってまいりました! 第一回ワイキキストリート専用BBスロットぉー!!!」

 

 力強い地響きと共に現れる目に悪い光を放つBBスロット。そこには様々な効果があるであろう絵が描かれていた。

 

「さてさて、お楽しみのBBスロット! レッツルーレットォー!!」

 

 ガゴン! という重たい音と共に引かれるレバー。軽快な音を響かせながら回るスロットマシーンは――――




 結構場面転換とか解説による長文とかを使いまくってるんですが、大丈夫ですかね……読みにくくないですか?
 とはいっても、もっと読みやすくは私にできるか怪しいですが。雰囲気が伝わればいいかなって感じです。つたわれぇ~……!

 たぶん次からは解説もちょっと大人しくなるはず……!!





 ……あれ。これ、ルルハワ終わるまでに完結する……?


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BBスロットの恐怖に震えろっ!(一体どんなえげつないのが入ってるんじゃ……)

 ゴゴンッ! という重い音と共に止まるBBスロット。

 それは拘束されたヘラクレスの絵。それを見て、BBは大げさに手を広げながら、

 

「出ました! 記念すべき第一回BBスロットの結果はぁ~!! 鬼の追加だぁー!! ランダムな場所に転送される鬼役に怯えて震えろぉー!!」

 

 その声と共に、ライブ映像に突然出現する二つの檻。その中にいるのは、メドゥーサと李書文。

 

「なんというか、見事に敏捷Aで固めてるね。鬼役が本気すぎて怖いよ」

「うむ。問題は後何人出せるかって事じゃな。場合によっては参加者の倍の鬼が放出される気がする」

「普通にシャレにならなそうだ。でも、勝ち目は残しているんだろう?」

「そりゃ、逃走者はスキルが使えるが、鬼は一切スキル使えんしな。もちろん宝具も禁止。純粋な身体能力だけじゃし。まぁ、攻撃が飛んでこないから問題ないじゃろ」

「ふむ。その理論で行くと、メルトを捕まえられそうにないね。彼女だけは敏捷A+。はてさて、どうなるかな?」

 

 そう語るマーリンとノッブ。

 BBは楽しそうに笑いながら、

 

「では、行ってみましょう! 鬼解放!」

 

 その言葉と共に、鬼役が封印されていた檻が開け放たれる。

 

 

 * * *

 

 

「うげっ、追加!? しかもメドゥーサと李書文先生って、どっちも速くなかったっけ」

「どっちもステータスは敏捷Aよ。というか、私がいるのを分かっててちゃんと男性も用意してるとか、やるじゃないBB。公平は伊達じゃないのね」

 

 BBからの全域通信で知らされた鬼の追加。誰がやっているのかまで教えてくれるのは、ありがたいのかネタバレなのか。悩ましい所ではあったりする。

 

「まぁ、そう言うところはしっかりしているもの。というか、大丈夫? 私は何とかなると思うけど、二人は厳しいんじゃないの?」

「ん~……まぁ、何とかなるかなぁって。最悪ガンド連打で」

「まだ三人合計で5枚よ。連打できるほどは無いわ」

「まぁ、三回でも十分よ。まだ鬼は4人。全員集まるって事も無いでしょ。割と広いし。むしろ全員集まったら意図的なモノを感じるわよ……」

「まぁ、それもそうか。よし。とりあえず探索を続けようか」

 

 そう言って、オオガミ達はカードを探しながら鬼を警戒するのだった。

 

 

 * * *

 

 

「鬼の追加ねぇ……そういや、屋内はダメだって言われたが、屋根の上とかって良いのかね? まぁ、下手な事をしたらマジでブタにされそうだからやらねぇが……しかし、一人のままとか、どうしたもんかねぇ……」

 

 路地裏でワイキキストリートのマップを眺めながらそう呟くロビン。

 

「攻撃は捕まったのと同じ判定って言ってたが、破壊工作はどっちだって感じだな。とにかく、見つかったら皐月の王で逃げるしかねぇわな。1ターン分もあれば何とかなるだろ」

 

 そう言って、手に入れた3枚のスキルカードを確認しながら、表通りに出る。

 

 

 * * *

 

 

「し、死ぬかと思った……あの目、めちゃくちゃコワかったのだが……」

「な、なんですか……あの程度で怖いとか、日本の鬼も大したことないですね……! ほら、さっさと使ったスキルカードを補てんしていきますよ。まぁ、見つかるかは分かんないですけど……」

 

 仕切り直しで何とか逃げ切ったバラキーとカーマは、蒼い顔をしながらもなんとか立ち上がると、すぐにカードを探し出す。

 

「しかし、カードが無ければ何も出来ぬというのは複雑な気分よな……うむ。一枚はあった。もう二枚ほど欲しいが、そう都合よくも転がってはおらぬか……」

「そうですねぇ……まぁ、距離も取れたでしょうし、のんびり散策しても――――」

「ん? どうしたカー、マ――――」

 

 二人の視線の先にいるのは、ロビン。

 だが、それだけではない。その後ろに見える大柄な人物は、どこからどう見てもヘラクレスだった。

 

「こ、こっちへ来るな緑の人ぉーーー!!!!」

「ばっかやろう! 先にいるのが悪いわ!! つか、どうやって逃げ切れってんだよぉ!?」

「良いから曲がって! こっちに来ないでくださいよ!!」

「ま、曲がれって、この道――――!?」

 

 曲がろうと右の道を見た瞬間、ただでさえも青い顔をさらに青くして逃げてくるロビン。

 

「無理無理無理無理!! アレ、メドゥーサだろ!? 死ぬって! 敏捷で勝てねぇって!! ヘルプ!!」

「この距離だと吾等も危ない……えぇい緑の人! 後でカードを一枚寄越せ!」 

「いいよやるからさっさと助けてくれ!!」

 

 何とかバラキー達の所まで逃げてきたロビンは、直後バラキーに腕を掴まれ、

 

「仕切り直し!」

「うおあぁぁぁ!?」

「この感覚、慣れる気がしないです……!」

 

 そう言いながら、三人はその場を離れるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「チッ。往生際が悪いですね。そのまま捕まった方が楽だったと思うんですが」

「実況せい実況。悪意しかないではないか」

「うんうん。悪意の塊みたいだ。まぁ、運よく合流できた、と言う感じだね。でも、なんで彼はスキルカードを使わず茨木童子達に助けを求めたのか。ここが気になるね」

「儂の見立てではバラキー達にスキルカードを使わせて自分だけ安全に行くつもりなのかと思ったんじゃが、カードの受け渡しを受理しおったからな……騙してる可能性が無いというわけではないが、はたしてどうするのか。儂は楽しみじゃ」

 

 うんうん。と頷くマーリン。

 BBは複雑そうな顔をしながら、

 

「意外と裏切りは少ないんですよね。彼。なので、ヘラクレスを前にして一瞬思考が吹っ飛んだとか、そう言う感じかと。いえ、まぁ、そんなことないと思うんですけど。ですが、ここまでセンパイ達が一度も鬼と会っていない。これは微妙な感じですね……」

「確かに、マスター達はまだ一度も会っておらんな。じゃが、そういつまでも運よく逃げ切れるとは限らん。そろそろ幸運のツケが回ってくる頃じゃろ」

 

 そう言って、ノッブは笑うのだった。




 今日は神が降りて来なくて筆が乗らなんだ……私は悲しい……(ポロロン

 しかし、誰から落としていくか。これが問題だ……


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出会っちまった悲しみに(いやそれは酷くないかな!?)

「さて。じゃあ鬼の説明かな?」

「そうですね~。お願いしますマーリンさん」

 

 BBに言われ、了承するマーリン。

 

「まず、メドゥーサについてだね。皆も知っての通り、エウリュアレとステンノの妹だ。今回は邪眼を封印しているから、強制的な拘束で捕まる事は無い事になってるよ。それと、エウリュアレが参加しているという事で、BBによってエウリュアレ、オオガミ、メルトリリスの三人には、メドゥーサを認識できないようにしてあるよ。エウリュアレが認識したら確実に弄って来るからね。鬼が精神ダメージを負って動けなくなるとか、もうギャグでしかないしね」

「マジでパシリにされてるからのぅ……いや、主にちっこいメドゥーサの方ではあるが……たまに儂が手伝うレベルで酷いんじゃが。つか、よく捕まえられたと思う。どうやったんじゃよBB」

「えっ。それはちょっと言えないと言いますか……DVD特典とか、オマケ短編とか、そういうので明かされる裏話的な奴ですよ。なので秘密ですっ」

「う~ん、それを言われると、今までの解説にもそう言う裏話的所が多々あったと思うんだけど。まぁ今更言っても遅いような気もするけどね」

 

 目を逸らすBBに、マーリンは困ったように笑う。

 

「じゃ、次は李書文だね。言わずと知れた二の打ち要らず。一撃必殺の拳の使い手。まぁ、うちにいるのはアサシンではなく、神槍の使い手だけどね。当然、彼に捕まる時にうっかり殺されちゃうかもしれないけど、死なないように気を付けた方が良いね。喰らったら、たぶんメディア辺りが助けてくれると思うよ。医療班が真っ先に飛んでくると思うけどね」

「うっかり拳が出ないように言ってはいるんですけど、たぶん忘れて殴ってくると思うのでお気をつけて! 槍は没収してますけど、一応槍にも気を付けてくださいね!」

「怖すぎるんじゃが。檻行きじゃなくて座に強制送還とか、ホラーじゃろ。ドストレートに消し飛ばしに行ってるんじゃが」

「まぁ、死んでも直接送り込むシステムを組み込んでるので、安心してお亡くなりになってください!」

「このゲーム、明らかにプレイヤーを殺しにかかってるんじゃが」

 

 明らかに危険すぎるゲームだという事に今更気づいたノッブは、頬を引きつらせながら笑う。

 

「と言ったところで、どうやら、先輩たちと、鬼が――――出会っちまったぁー!!」

 

 

 

 * * *

 

 

「うおあぁぁぁ!? 中々ふざけてんなこのやろぉーーーー!!!」

「大丈夫! まだ一人目! スキルカードでどうにか――――」

「……まぁ、デカブツ一人くらいなら何とかなるでしょ」

「使う気ないのね分かったわ!!」

「■■■■■■■―――――!!!!」

 

 風を砕きながら進んでくるヘラクレスから全力で逃げるオオガミ達。

 余裕そうなメルトの隣を必死で並走するオオガミ。

 メルトとは違い、エウリュアレを抱えているというハンデを負っているにもかかわらず、それでも何とかメルトに追いついているオオガミは、やはり人間を辞めているとしか思えない。

 

「んで、どうやって逃げ切るの!?」

「確か建物には破壊されないように防護壁が張られてるって言ってたから、路地裏を走り抜けるのが一番かな! よって、そこの路地を走り抜け!」

「私を落とさないでね~」

「気楽なモノねエウリュアレは!!」

 

 まるで私は無関係だと言わんがばかりの反応に、悪態を吐きながらも逃げるメルトとオオガミ。

 何とかして細い路地裏に逃げ込んだ三人。その後ろで同じく入ろうと頑張っているヘラクレスは、しかし壊れない店によって阻まれていた。

 

「と、とりあえず一安心かな……いや、反対側から来られたら不味いから、今のうちに逃げ出すのが一番かな」

「そうね……というか、いつまで乗ってるのよエウリュアレ」

「はぁ……しょうがないわね。自分で歩くわよ」

 

 そう言って、大人しく降りるエウリュアレ。

 そうして三人が反対側から出た時だった。

 

「ふむ。これで良いのか?」

「あっ」

「えっ」

「……嘘でしょ」

 

 路地裏から出た瞬間、肩に手を置かれて硬直するエウリュアレと、それを見て即座にエウリュアレ――――正確には、その後ろにいる男から距離を取る二人。

 そこにいたのは李書文。肩に手を置かれているエウリュアレは既に確保判定が出たらしく、スピーカーからBBの声が響く。

 

「っ、メルト!」

「逃げるわよ!」

 

 オオガミは持っている二枚のスキルカードを素早く取り出すと、一枚をメルトに投げつけ、カルデア戦闘服に切り替えて李書文に指先を向けると、

 

「ガンド!!」

「チィッ!」

 

 咄嗟に避けようとした李書文は、しかしギリギリ当たり拘束される。

 そのうちにオオガミとメルトは走って逃げだす。

 

「なんで私に投げたの! もう一発使うでしょ!?」

「だって先生相手なら外す可能性があったし! 最悪の展開だけはダメだってば! つか、真っ先にエウリュアレ潰されたんだけど……!! エウリュアレも二枚持ってなかったっけ……!?」

「私が一枚、貴方が二枚、んでもって、エウリュアレが二枚で5枚だったでしょ! エウリュアレが捕まったのと、さっきガンドで使ったので残り二枚! 補充しなきゃ次は無理!」

「普通に見つかったらジ・エンドって、やっぱえぐいね……! 純粋な速度で逃げ切れるの、メルトくらいじゃない!?」

「会話しながら逃げれる時点で貴方も余裕でしょ!」

 

 言いながら、後ろをちらりと見るオオガミ。

 そこにはやはりと言うべきか、こちらに向かってくる李書文の姿があった。

 

「無理無理無理!! というか、速いって! 無理だって! どうやって逃げ切れと!?」

「あぁぁ、もう! もう一回ガンド! そしたら私が運ぶわ!」

「オッケー任せて!」

 

 メルトからカードを貰い、再度李書文にガンドを打ち込むオオガミ。

 しかし、

 

「うえぇぇぇぇえええ!? 躱されたんですけど!!」

「チッ! やっぱりさっきのは近かったから当たっただけなのね! ふざけてるじゃない……!!」

 

 言いながら、メルトはオオガミの事を足払いして宙に浮かせると、そのまま地面との間に割り込んで無理矢理背負うと、全力で走り出す。

 

「やるならやるって言ってよね!?」

「余裕があったらそうするわよ!!」

 

 そう言いながら、二人はワイキキストリートを駆けるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「おぉっと意外や意外! 最初に確保されたのは、エウリュアレだぁー!! 大番狂わせ! なんだかんだ言って最後まで残るんだろうと思われてたエウリュアレが最初に落ちたぁー!!」

「ま、マジか! 儂、マスターがおるから余裕だと思ってたんじゃが!! 嘘じゃろ!?」

「う~ん、これはマスター達大ピンチと言うところだね。スキルカードが二枚失われたのも手痛い所だけど、エウリュアレによる魅了も失われて、男性へのアドバンテージが無くなったという事は、あの二人はガンドかメルトの速力だけでゴリ押すしかないね。いやぁ、面白くなってきたよ」

 

 そう言ったところで、ライブ映像用のディスプレイがもう一つ用意され、そこには牢屋の映像が流れる。

 

「さてさて。一応牢屋用の映像も用意しておりますが、メインはこちらの逃走映像。いじけてるプレイヤーを見るのも良いですけど、ちゃんと逃走者も見てあげてくださいね?」

 

 そう言って、BBは楽しそうに笑顔を浮かべる。

 

「いやぁ、それにしても、あの狩り方は見事だったね。直前までのを見ていても、彼自身事前に待ち構えていたわけではなく、偶然マスター達が出てきただけなわけだけど、咄嗟に捕まえるという発想に至るのはやはり歴戦の勇士であることを如実に表しているね。うん。とてもいい。逃げ切れるだけじゃないというのがはっきりと示されているね」

「うむ。本気でビビったが、流石李書文よな。しっかりと対応しておった。見事なもんじゃ」

 

 うんうん。と頷くマーリンとノッブ。

 BBはそれを見つつ、

 

「ではでは、初の捕獲者が出たりしたこのタイミングで! 第一回のミッション! ド定番な奴を行っちゃいましょーう!!」

 

 そう言って、BBは全域に放送をかけるのだった。




 李書文先生は私の中でやばい人。たぶん分かりしころなんだから体力お化けだよなぁ。と思いつつ。

 しかし、ここ数日だけで1万文字余裕で越えたんですけど……びっくりじゃぁ……


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ミッションこなして生き残れ~!(そろそろ展開がぐだって来たな)

『みなさ~ん! お楽しみいただいてますか~! いただいてますね~! という事でぇ~! こういう奴ではど定番! 二体の鬼の解放を阻止せよ! 適当にばらまいた鍵を探して、拘束してくださいね!』

 

 

 * * *

 

 

「う~ん、どうしろって言うんですかこれぇ……」

「とりあえず、逃げ切りはしたけど……鍵探しからよねぇ……いや、スキルカードも探さなきゃだからやるけども、どうしようかしら」

「あ~……とりあえず、誰が放たれるのかを知るために檻を探しに行かなきゃな……」

 

 そう言って、李書文から何とか逃げ切った二人は檻を探して歩き回る。

 

 

 * * *

 

 

「……鬼封じだとよ。どうするお二人さん」

「ハァ……ハァ……何故、吾が鬼を封じねばならぬのか……というか、吾が鬼では……? あれ……吾、鬼よな……?」

「不安にならないでくださいよ……私も第六天魔王とか名乗ってるのがいるんですから。個人名のはずが役職みたいになっているんですけど。それと、このミッションをやらないとさっきみたいなのが起こりやすくなるって事ですよ」

「……やる。やらねばならぬ。さっきここに逃げてくる最中に檻を一つ見かけた。錠が一つあったから、鍵を探しに行くに決まっておろう」

 

 カーマに言われ、すぐ立ち上がるバラキー。

 よほど追われるのが嫌だったのだろう。目が本気だった。

 

「まぁ鍵はオレも探すが、捕まらんように気を付けろよ」

「あぁ……それはそれとして、カードを寄越せ緑の人。逃げたらここに縛り付ける」

「忘れてなかったか……ほらよ、カードだ」

「うむ。確かに貰った。ではまたな」

「あぁ。じゃあな」

 

 そう言って別れるロビン。

 バラキーとカーマはそれを最後まで見送ることなく、

 

「まぁ、鍵はここに一つあるのだがな」

「酷い事しますね……いえ、別に構いませんけど。楽しそうですねバラキー」

「最近ずっとホテルに籠っておったからな。こういうのもたまには悪くない」

 

 クククッ。と笑いながら鍵を握りなおすバラキー。

 

「では、早めに鍵をかけておくか」

「えぇ、そうしましょう。これ以上追いかけてくるのを増やしたくないですし」

 

 そう言って、二人は檻に向かって歩き始める。

 

 

 * * *

 

 

 

「おっと。発表からほとんど時間が経っていませんが、もう一つ施錠されました! 残念です……カルナさんというレアキャラでしたのに、解放できず……お疲れ様です。回収してガネーシャさんにお届けしておきますね~」

「なぜガネーシャなのかは聞かんが、しかしカルナじゃったかぁ……見たかったのぅ……」

「次がありましたらそのときはまたお願いしますね~!」

 

 BBの言葉と共に消える檻。

 とはいえ、これはまだ二つのうちの一つ。まだ一つ残っているのを忘れてはならない。

 

「いやぁ、このミッションはサクッと終わりそうだね。もっと難しいのでも良かったんじゃないかい?」

「いえ、もともとクリアできるのが前提なので最初はこれでいいんです。無茶ぶりは後半からしていきましょう!」

「無茶ぶりはあるんじゃなぁ……」

 

 そうしみじみ言うノッブに対し、BBは最高の笑顔でサムズアップしてくるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「っと、これが檻かな?」

「そうみたいね。覗けるみたいだけど……」

 

 そう言って二人が檻の中を覗くと、中ではパライソが困ったような顔をしていた。

 ただ、喋る様子が無い事から、おそらく会話出来ないようになっているのだろう。

 

「まぁ、案の定速いよね……というか、搦め手で逃げるのが前提じゃない?」

「正面切って逃げるのは想定されてないわね。そのためのスキルカードでしょうし」

「そうだよねぇ……とにかく、解放されないように鍵を探して来なきゃだ」

「えぇ、急ぎましょう」

 

 そう言って、二人はその場を去るのだった。

 

 

 * * *

 

 

 そして二人と入れ替わるように現れるロビン。

 彼は檻の前まで行くと、

 

「これで全部か。さっきマスター達が走って行ったし、たぶんもう片方はバラキーあたりがやったんですかね。ってことは、そんな離れてないのか?」

 

 そんなことを言いながら、錠をかける。

 それから間を置かずに消滅していく檻。

 ロビンはそれを見届けた後、

 

「そんじゃ、スキルカードを探しますとしますか」

 

 そう言って、ロビンは路地裏に潜るのだった。

 

 

 * * *

 

 

「う~む。本当に適当に配置したらサクッと終わっちゃいましたね。これは次回への課題です」

「そうじゃな。ただまぁ、行動も早かった。バラキーがさりげなく鍵を見つけ出していなければもう少し時間がかかったじゃろう。それとロビンも、こういう探索は得意分野であろうよ。次のミッションが気になるが、果たしてどうなるか……儂は楽しみじゃ」

 

 そう言って笑うノッブ。

 マーリンはそれを聞いていて、

 

「僕の言う事が奪われてしまったね。そもそも解説なんて、やれることが少ないものではあるけど」

「まぁ、マーリンさんはそう言う役なので。ではでは、ミッションも一つ解決いたしましたし、勝者には褒美を。敗者には苦痛をという事で、レッツスロットタ~イム!!」

 

 BBの宣誓と共に現れる巨大BBスロット。

 まさかこのタイミングで出てくると思っていなかったのか、ノッブは目を見開きながら、

 

「随分と早いスロットじゃな。様子見はせんのか?」

「まぁ、諸事情による巻きですね。何もない時間と言うのはギャラリーにとって意外と退屈なモノです。なによりも、私が退屈なので! スロットスタート!!」

 

 そう言って、BBはスロットマシーンを作動させるのだった。




 中だるみしてきた……これ絶対どっかで止めた方が一番マシに終わらない? と、創作初心者みたいなことを言い出す私。何よりも、エウリュアレデートが組み込めない(血涙


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BBスロットはBADだけだと思ってました?(八割がたはBADじゃよねそれ)

 ガゴンッ! と音を立てて止まるBBスロット。

 そこには二枚の黄色のカードと、『×2』の文字。

 

「おぉ~っと! グッドラーック! これは激レア効果の、スキルカード二倍化だぁー!! 現在の手持ちカードが二倍になるという最強レベルのお助け効果ですとも! これは生き残れる可能性が大いに増えてしまったぁー!」

「う~む、見てる側としては一番微妙な効果。解説のマリーン。どう見る?」

「人を海みたいに言ってくれるね。幻術で君を溺れさせるよ?」

「目がマジなんじゃが。冗談聞かんのかコイツ」

「単純にキャパオーバーなだけでは。きっと心労が溜まってるんですよ。後でナイチンゲールさんに渡しておきましょう」

「それだけは勘弁願いたいね。とまぁ、真面目に解説するとだ」

 

 気を取り直して、咳払いを一つ。

 

「まず、スキルカードはこのゲームにおいて生命線。多ければ優位になるというのは自明の理だろう。なので、それが二倍になるということは、基本生存確率も伴って上がるというわけだ。もちろん二倍になる訳じゃないし、最初に捕まったエウリュアレのように、気づく前に終わるというのも十分ありえるからね。結局逃げるときに有利になるだけなんだし」

「うむ。真面目すぎてつまらんな。合ってるから文句はないが」

「つまらないって言う感想が文句に入らないんだね? よぅし楽しみにしててね。すぐに言い返してあげようじゃないか」

 

 ノッブの余計な言葉に素直に反応するマーリン。

 BBはそんな様子を横目に、

 

「ではでは、BBスロットの効果でどうなってしまったか。これがバランスブレイカーになってしまったか。エウリュアレさんだけ捕まり損か。見てみましょー!」

 

 

 * * *

 

 

「ふっはははははは!! この程度で止まらぬぅ!! スカサハ師匠とメイドオルタに殺されかけながら砂浜を走ったのは伊達じゃないんだよぉ!!」

「どんどん人間辞めていくわね。サーヴァントステータスのDには届くんじゃない?」

「まだ人間の範囲だよたぶん!」

 

 そう言いながら、二人は向かってくるメドゥーサから全力で逃げていた。

 メドゥーサから何故か異様にやる気を感じられるのは、果たしてエウリュアレが捕まって遠慮する相手がいなくなったからなのか、それとも別の狙いがあるのか。

 全くもってその内容は分からないが、とにもかくにも相手が本気で追いかけてきているのだけは確実だった。

 

「しかし、本当にどうしたものか。頑張ればガンドは当てられると思うけど、逃げ切れる自信ないんだけど」

「さっきも同じこと言ってたわ。で、カード二倍の効果はどうだったの?」

「逃げながら確認しろとか無茶言うよね! 返してもらったカードが二枚になってたよ!」

「あら、本当に増えたのね。こっちを見てるのは分かってるんだけど、どうやって増やしてるのかしら。もしかしてここ、電子世界に変えられてたり……?」

「いやまさかそんな。まぁ、そうだったとしても何かある訳じゃないけど……っ!」

 

 やはりと言うべきか、人間では追ってくるメドゥーサから逃げ切れる訳もなく、みるみる距離を縮められていく。

 メルトはそれを確認すると、

 

「で、どうするの。そろそろ限界っぽいけど」

「細い道を通っても有利なのはあっち……だけど、それは何も出来ない場合。要するに、反撃の術があればいけるわけだ! 路地に逃げる! メルトはこのまま直進で逃げて!」

「……捕まるんじゃないわよ!」

「もちろん!」

 

 そう言って、二手に別れる二人。

 案の定オオガミを追ってきたメドゥーサ。

 

「まぁ、こんな細い路地ならかわされないでしょ……ガンド!」

 

 細い通路を曲がってすぐ、真後ろに放つガンド。

 メドゥーサは飛び出た直後だったため反応することすら出来ずに直撃し、それを確認することもなくオオガミは路地を走り抜ける。

 

 

 * * *

 

 

「クハハハハ! 負ける気がしないな!!」

「分かりましたから黙っててください!」

 

 騒ぐバラキーに静かにしろとチョップを叩き込むカーマ。

 バラキーは頭をおさえつつ、

 

「吾、不思議なのだが、何故こんなところに隠れなければならんのだ……?」

「大通りを通ったら見つかりやすいに決まってるじゃないですか……! だからわざわざこんな細い通路を通ってるんです!」

「いや、それは何とも言えぬが……だってほら、曲がり角で思わず出くわすとか、吾おっきーの部屋でよく見た展開なのだが……」

「それはあくまでもそう言う話の中だけで、現実でそう言う事が起こるのは――――」

 

 チラリ、と曲がり角の先を覗いたカーマは、バラキーを抱えて道を逆走する。

 

「うむ。最後まで聞くまでも無く、追われてるのだろう? 吾、逃げていいか?」

「私も一緒にお願いしますね!」

 

 カーマがそう言うと、バラキーはカーマの腕の中から抜け出すと、すぐにカーマを抱えて仕切り直しを発動させる。

 

「……これ、スキルカードが無くなったら諦めるしかないのでは?」

「一蓮托生です。無くなったら精一杯逃げて諦めましょう」

「潔過ぎないか……? それで何故ボスまでやったのか……やはりレイドボスではないのがダメなのだろうか……」

「私、その話を聞いた時スッゴイ不機嫌そうにしてたのを知ってるんですが。ボコボコにされたとか、一撃で倒されたとか、バスター怖いとか。なんでそんな叩いておいて、人に勧めるんですが。鬼ですか。悪魔ですか」

「うむ。吾、鬼だな」

 

 そう言いながら、路地裏から逃げ去るバラキーとカーマ。

 

 

 * * *

 

 

『という事で、第二回ミッション! 今回はお得アイテムの期間限定配布のお知らせです! 今回は特殊装甲という事で、触れられた事に反応して相手を拘束する、リアクティブアーマーですとも! 数は2つ! 前回に引き続き暗号とかは別段用意していないので、頑張って探してくださいね~!』

 

 

 * * *

 

 

「あ~……必要なの、あの二人じゃねぇか? オレもマスター達も一応逃げる手段あるし……スキルカードが無くなったら終わりなのはアイツらだ」

 

 ロビンはそう言ってため息を吐くと、

 

「仕方ねぇな……譲渡禁止とは言われてねぇし、探す分には問題ないか」

 

 そんなことを言いながら、ロビンは路地裏を出て――――

 

「この捕まえ方は儂の本意ではないが……仕方あるまいよ」

「う~ん締まらねぇ」

 

 つい最近別の誰かが同じ捕まり方をしてたような事を思い出しつつ、ロビンは遠い目をするのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ダッサ! 正気ですかロビンさん! その捕まり方めちゃくちゃダサいです!!」

「うおぉ……何気に今の所李書文に全員捕まえられとるぅ……」

「気配遮断は無いはずなんだけどね? 不思議な事だ。なんでだろうね?」

 

 う~ん。と考えるマーリンだったが、おそらくそれほど不思議なモノでもないもので、単純に気付かなかっただけの事だろう。

 

「しかし、特殊装甲。面白そうじゃな?」

「そうだね。彼女の話の説明の通りだとすると、その装甲は触れられると同時に相手を拘束する。つまり、とても楽になるものだろう。逃げるのに心持ち楽になるしね。二つなのは、競争させるつもりなんだろうね」

「いや、単純に時間が足りんくて作り切れなかっただけじゃ。アレは儂には手伝えんし」

「なるほどね。でも、こっちの方が楽しくなりそうだ」

 

 そう言って、マーリンはにやりと笑うのだった。

 

 

 * * *

 

 

「さて。メルトと別れちゃったけど、どうしよう。逃げ切れるかな」

 

 そう言いながら、リアクティブアーマーを探すオオガミ。

 メルトと別れてメドゥーサを撒いたのは良いが、次に誰かに見つかったらかなり不味い状況だった。

 手持ちのカードは一枚。つまり、対抗策は一つという事だ。

 

「ま、急いで見つければ問題ないか」

 

 そう言って、話し始めるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「……一番は私かしら」

 

 無造作に置かれているリアクティブアーマーを前に、そう言うメルト。

 左右を見渡しても誰もいないのでどうしたものかと考えるが、

 

「まぁ、誰かが来るまでここで時間をつぶしてましょうか」

 

 そう言って、メルトは天を仰ぐのだった。

 

 

 * * *

 

 

「吾、いい加減スキル使い過ぎで疲れたのだが。休んでいいか?」

「仕方ないですねぇ……次は何とかして私が撒きますよ。ほら。乗ってください」

 

 そう言って、バラキーを背負うカーマ。

 

「さて、それじゃあそのリアクティブアーマー? とやらを探しに行きましょうか。あったらかなり有利になりますし」

「うむ。見つかっても楽になるというのは中々良い事だ。しかし、どこにあるか。これが分からぬ……だが、BBのすることだ。分かりやすい所に置かれているだろう」

「なら、大通りですね……あんまり通りたくないですけど、しょうがないですね」

 

 そう言いながら、二人は大通りを歩いて行くのだった。

 

 

 * * *

 

 

「はてさて。メルトが最初にたどり着きましたが、取る様子が一向にないという事は、おそらく自分以外に渡すつもりなのでしょう。しかしあそこでのんびり待つなんて、かなり余裕ですね?」

「まぁ、彼女は普通に速いからね。スキルカードがあるという事もあって、余裕はかなりあるんじゃないかな?」

「そうじゃな。スキルカードはマスターが1枚。メルトが2枚、バラキーとカーマが3枚という所じゃな。あの二人はバラキーに集中して集めているから、一緒に数えるのが一番であろう」

 

 三人はそれぞれ意見を言いつつ、BBが、

 

「では、誰がたどり着くかと面白くなってきたこの時に! ぶちかましますよBBスロット! グレート・デス・クロー!」

 

 ガゴンッ! と重苦しい音を立てて、BBは元気にレバーを引くのだった。




 無理。エウリュアレデート延期! 次の夏イベが何とかしてくれるでしょう! とりあえず明日には決着付けるぞぉ!!

 というか、結構撒いたんですけど、それでもエグイ文字数になってません……? こんだけ長いと、割と読み辛い気もしてきたんですが。とりあえず駆け抜けますね。頑張ります。


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皆さん、引きが強くないですか?(そして幕は閉じる)

 最後のBBスロット。それはゴゴンッ……と重い音を立てて止まるスロット。

 それは天の鎖の絵。エルキドゥを連想するそれは、

 

「またまたグッドラーック! 中々引きがいいですね! こちらは皆さんお馴染み! 私にとっても因縁深い天の鎖が鬼を襲います! 要するに、鬼を一定時間拘束と言うことで! 今のうちにアーマーを頑張って探してくださ~い!」

 

 そうBBが言うと同時、鎖の音がワイキキストリートに響くのだった。

 

 

 * * *

 

 

「クハハハハ! これはもう吾らの勝ちと決まったようなものよ! この装備にあのスロットと来れば、完全無敵! 怖いものなしと言ったところか!」

「なんで貴女はそうやってすぐフラグを立てようとするんですか!! バカなんじゃないですか!? 一緒にいる私も私ですけど!」

「アンタ達うるさいわ。黙って持っていけないのかしら」

 

 メルトに言われ、不思議そうに首をかしげるカーマ。

 

「そもそも、貴女は何をしてるんですか? 私たちがここに来たときからずっといましたし」

「別に良いでしょ。途中で別れたヤツ待ちよ」

「あ~……うむ。カーマ。これは関わらん方がいい。吾知ってる。これ以上関わると良いこと無い。腹に膝は死ぬ……」

「いやに具体的ですね……受けたんですか?」

「……吾を巻き込まんのなら受けても良いが、このゲームには復活できぬぞ……」

「あ~……まぁ、大奥でひたすら蹴られましたし、もう蹴られたくないので遠慮しておきます。どうせマスターの事でしょうし。それじゃ、頑張って逃げ回ってくださいね」

「一言余計。ほら、さっさと行きなさい」

 

 そう言って二人を追い出すメルト。

 そうして誰もいなくなった通りで、メルトは未だに来ないマスターに怒りを覚えつつ、仕方なく最後の一着を手に取る。

 

 

 * * *

 

 

「さてさて、ついにアーマーは完売。こういう時だけ運がないことに定評のあるセンパイは今も何処かをさ迷っているみたいですし。ともかく、天の鎖による拘束時間も終了。鬼の再稼働と同時にお知らせを!」

 

 意気揚々と話すBBに、嫌な予感を感じるノッブとマーリン。

 

「過半数が生き残るという、BBちゃん的にちょっと面白くない状況なので、きっと皆さんなら乗り越えられると信じて! 第三ミッションの代用として! 特製BBスロット! 使っちゃいま~す!」

「お前それどうなってようが使う気じゃったろ! ニッコニコで用意しておったもんなぁ!!」

「僕としてはそれだけは使わない方がいいんじゃないかと思うんだけどどうかな! 今からでも止めない?」

「え~……今からミッション用意するのも面倒ですし、スロットスタート!」

「「問答無用!」」

 

 容赦なく回される特製BBスロット。

 一体なのが特製なのか。それは言わずと知れた事。もちろん中身が凶悪だと言うことだろう。何よりもノッブの顔が雄弁に語っている。

 だがしかし。そんな思いはBBスロットに伝わるわけもなく、無情にもスロットは停止する。

 それは、緑の髪を持った、白いローブを来ている性別不明の人物。彼もしくは彼女の姿が描かれていた。

 

「というわけでぇ~! デンジャラスターイム! 最終兵器! エルキドゥさん発進! ちゃんと逃げ切れるように仕込んだんですから、ちゃんと逃げ切ってくださいね!!」

「無茶振りが過ぎないか!?」

「でも速度だけならメルトリリスが有利なのは変わらないね。うん。そういうところも勝ち目があると言うことなんだろう。大丈夫。きっと勝てるさ」

 

 そう言っている間に、エルキドゥがワイキキストリートに降り立つのだった。

 

 

 * * *

 

 

「無理無理無理無理!! 性能とか問題じゃないです! 根本的にダメです! 逃げ切れる気が全くしないです!」

「う~む。吾もあれは素直に諦めるのがいい気がする……まぁ鬼として最後まで足掻くが。去らばだ!」

 

 真っ先にバラキーとカーマを見つけたエルキドゥは、やはり容赦なく追ってくる。

 とはいえ、これまでの鬼と同じくらいの速度の為、速度的にダメと言うより、相性的に苦手というのが現状正しいだろう。

 

「仕切りなお――――」

「それはもう見切ったワン!」

「なっ!」

 

 逃げ出す寸前。路地裏から飛び出てきたキャットに狩られるバラキー。

 しかし、事前に着ていたアーマーが反応し、キャットを拘束する。

 

「吾が一枚上手だったな! 去らばだ! 仕切り直し!」

 

 そう言っていつものごとく飛び去るバラキー。

 それを確認したエルキドゥは、すぐに別の標的を探しにいく。

 

 

 * * *

 

 

「うんまぁ俺が一番狙いやすいよね分かるとも!!」

 

 路地裏を減速することなく器用に曲がっていくオオガミ。

 だが、サーヴァント相手にいつまでも逃げていられるほど体力があるわけでも、速力があるわけでもない。

 しかもスキルカードも心許ないオオガミは、自力でエルキドゥの追跡を逃れるしかないのだった。

 

「まぁ、スキルカードの補充をする余裕がなかったのが原因ではあるけど、ある意味自爆な点があるから仕方無いけど、それにしても運がないなぁ本当に! エウリュアレが捕まったのが運の尽きですかねっ!」

 

 そう言いながら室外機を乗り越えたオオガミ。

 その後を追うようにエルキドゥが室外機を飛び越えたその瞬間、素早く反転したオオガミは指先をエルキドゥに向け、

 

「ガンド!」

 

 空中で、それも物を飛び越そうと意識を逸らした一瞬の隙に叩き込まれた一撃。

 その弾丸の速度ゆえに回避が出来なかったエルキドゥは直撃し、その場に崩れ落ちる。

 それをやはり最後まで確認することなく逃げ去ったオオガミは、なんだかんだ言って逃げることに関しては優秀だった。

 ただ、一つ誤算があったとすれば、

 

「あ~、うん。無理。ごめんねメルト。これは運がなかった」

 

 偶然か計略か。路地裏から出た先に何故かいたヘラクレスに捕まるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「……エルキドゥだけ、ちゃんと考えて動いてる……?プログラム通り動くんじゃなく、他の鬼役がどう動いているかを考えながら追い詰めてる……まぁそれでも勝てなくはないでしょうけど、殺意が高すぎないかしら」

「冷静に分析してる場合ですか! というか、なんでこっちに押し付けに来たんですか!」

「自分だけ速いことを良いことに吾らに擦り付けていく気か。スキルカードがもう少ないから使いたくないのだが……えぇいここで捕まるよりはマシか! 何度仕切り直せばいいのか分からぬな! 羅生門のトラウマがまた掘り起こされそうだ!」

「いいから早くジャンプ! さっき捕まりかけてましたし!」

 

 再びエルキドゥから逃げるバラキーとカーマ。

 その原因は隣で余裕の表情でエルキドゥの考察をしているメルト。

 

「吾らは先に逃げさせてもらう! 仕切り直し!」

「すぐに着地地点を予測してそこに向かうから覚悟しておいてね」

「なんですかこの人! 私たちが何しましたっけ!」

 

 カーマの発言を残したままその場から離脱する二人。

 そして、メルトは小さくため息を吐くと、

 

「それじゃ、最後まで逃げ切ってあげるわ」

 

 そう言って、エルキドゥを挑発するのだった。

 

 

 * * *

 

 

「残り時間ももう少し! 逃げ切りなるか! 土壇場で捕まるか! そろそろ幸運尽きたかバラキーチーム! 白鳥は優雅に飛ぶかメルトリリス! 『ワイキキストリート逃走中!』決着までぇ!」

 

 BBは大きく腕を振りかぶりながら、

 

「5!」

 

 ノッブも楽しそうに、

 

「4!」

 

 マーリンは興奮しながら、

 

「3!」

 

 観客席も盛り上がり、

 

『1!』

 

 幕を閉じる。

 

『0!』

 

「『ワイキキストリート逃走中!』逃げ切り勝利はぁーーー!!」

 

 

 * * *

 

 

「せ、セーフ……? アウトじゃないんです……? あ、あぁ……助かったぁ……」

 

 拘束されているヘラクレスと、カーマに触れる寸前の李書文。

 紙一重生きていたと言う状況に心の底から安堵する。

 そんなカーマに近付くメルトは、

 

「あら、バラキーはギリギリアウト? 残念ね。着地地点に運悪く鬼でもいた?」

「えぇ、全くその通りですよ。逃げた先にいるとか、もうギャグじゃないですか……無理ですって」

「残念ね。逃げ切れるものだと思ってたわ」

 

 そう言って、心底残念そうにため息を吐くメルト。

 そんな二人にライブカメラが近付き、

 

 

 * * *

 

 

「メルトリリス&カーマだぁーー!!」

 

 うおおぉぉぉーーーー!! と沸き立つ観客席。

 実況席のノッブも騒いでいるが、気にしない。

 

「最後の白熱の状況に、皆さん驚いたことでしょう。メルトはスキルカードを全部使っての逃走戦で、カーマはバラキーが先に狙われたことと、リアクティブアーマーが健在だったことによって運良く生き残った感じですね。最後まで安定して逃げ切ったのはメルト。終始ギリギリだったのがカーマですね。いやぁ、面白い大会でした!」

「うん。司会にまとめられてしまうと解説としてはやるせないけど、とても面白い戦いだったよ。特に最後。メルトリリスがエルキドゥのターゲットが二人に向かないように防戦をしていたのは見物だったね。中々見られない戦いだったよ。ありがとう!」

「実況的にも司会の自由奔放さに言葉を失ったが、主催者側としてはかなり良いものに出来たのではないかとちょっと思っておる。何より、エルキドゥが出てなお捕まらないのは、驚いたものじゃ。うむ。良き試合であった。お疲れさまじゃ!」

 

 ノッブが締め括ると、BBは最後に会場に二人を強制召喚すると、

 

「ではでは、勝者となった二人には、特別賞です! 100万QPとか貰っても嬉しくないでしょうから、こちら! センパイのお菓子を優先して貰える引換券です! ちなみにこちら、センパイが発行しているので、効果は確実です。なんせ本人発行ですし。ではでは、皆さん! また次回がありましたらお会いいたしましょう!」

 

 BBはそう言って手を大きく振り、戦いの幕は閉じられるのだった。




 ようやく完結。ルルハワ終わったんですが(吐血
 どうでした? 楽しんでもらえたなら幸いです。



 個人的には100点中70点くらい。もうちょっとミッション盛り込みたかったなぁと思いつつ、自分の技量と続かないやる気を恨む私です。
 エウリュアレデートはラスベガスに任せた! 頑張れ次の私!


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日常
なんだか技術部も増えたね(いつの間にこんな大所帯になったのかしらね)


「ハァ……結局二人で遊ぶって事は出来なかったわね」

「本当にね。なんだかんだ鬼ごっこに時間をかけ過ぎたよ。でもまぁ、次はラスベガス。去年も行ったルルハワよりも新しい楽しみがあると思うから、そっちで遊ぼう。ルルハワは微妙にトラウマだよ」

 

 そう言って、オオガミは技術部の工房への扉を開く。

 

「うわははは!! やっべぇメンバーになって来たな技術部! 儂BB以外どうしようもならんのじゃけど!!」

「私だけなら何とかなるとか思われてるの、かなり心外なんですけど。BBちゃんは誰にも制御出来ないのです!」

「朕も制御されるつもりなど毛頭も無いな!」

「ルビーちゃん的には、気軽な実験台が出来たので問題ないんですが。英霊にも効くお薬とか、結構凄いのでは? ルビーちゃん自画自賛しますけど、実はナイチンゲールさんに見つかると殺されそうなんですよね」

「う~ん、見事にバラバラな専門だね。これをまとめ上げるとか、中々すごいねマスターくんは。これを全部まとめ上げた時の作品は、きっと凄いものになるだろうなぁ!」

 

 いつの間にこんな大所帯になったのだったか。

 ノッブとBBといういつものメンバーに加え、始皇帝、ルビー、二代目ダ・ヴィンチちゃんことロリンチちゃん。

 オオガミはその光景に苦笑しながら、

 

「ノッブとBB、お疲れ。逃走中はどうだった?」

「おぅマスター! 儂はあれで満足じゃよ。BBは不満そうだが」

「本当にそうですよ。頑張って色々しましたけど、結局半分も出来てませんし。次はもうちょっと時間を増やしてプロットも余裕を持って組まないとですねぇ……あと台本です。うっかり忘れるとかありましたし、試作としては上々という感じです。次回はもうちょっとうまくできると思うんですが、まぁやってみたらですね」

 

 そう言って改善案をオオガミに渡すBB。

 

「正直、センパイは最後まで生き残ると思ってたんですけどねぇ……意外でした。あんなにアッサリ捕まるなんて……」

「いや、流石に挟み撃ちになったら無理だって。カードもなかったからガンド使えないし。無理無理。酷かったのはエウリュアレとロビンでしょ」

「あれだけは本気で抗議しようかと思ったのだけど。ロビンは自責の念で死んでたわ」

「ロビンさん弱すぎません……? いえ、まぁしょうがないとは思いますけど。と言うわけで、BBちゃん的には何とも言えない微妙な感じでした。まぁ、楽しんでたんですけど」

「うんうん。次は私も参加したいな~。もっと映像綺麗にしたくない? 企画も手伝うよ? むしろやらせて!」

「うわぁ! ちょ、急に乗りかからないでください! びっくりするじゃないですか! もう!」

 

 飛びついてきたロリンチちゃんに倒されそうになるも何とか堪えるBB。

 ノッブはそんなロリンチちゃんの言葉を聞いて、

 

「おぉ! やっと協力的な人員が増えた! 正直皆身勝手でまとめたくないから放置気味じゃったし、助かる!」

「えぇっ!? 技術部入りは予想してましたけど、こっち側です!? また工房拡張ですか面倒臭い!」

「うるさいわほとんど儂が働くんじゃからええじゃろうが」

 

 そう言って文句を言うBBをねじ伏せるノッブ。

 なんだかんだ、企画・運用はノッブが主体が多いのだった。やはり技術部実質リーダーたるノッブは、その役職だと言われるだけの実績があるという事。

 

「ま、これからは好きな時に来ていいぞ。明日までにBBに拡張させておくし」

「やっぱり私じゃないですかぁ!!」

 

 なんだかんだと無茶ぶりをされるBBは、それでもノッブに言われた通りやるのだった。




 エウリュアレデートはラスベガス。待て次回という事で。とりあえずイベントすっぽかしてエウリュアレとラスベガスデート。自由散策禁止にされてたら発狂します(真顔

 それにしても、ロリンチちゃん有能なんですけど。宝物庫のアーツシステムがサクッと組めた……まだレベル80でスキルも6/1/7なのに……パネェ……


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なんでこうなってるのかな?(わりとよくある事よ)

「う~ん、正式にサーヴァントになったからって、この扱いを受けるのはちょっと意外だったかなぁ~……」

「正直、低身長女性サーヴァントでされてないのって実は少なかったりするのよね。まぁ、洗礼みたいなものじゃない?」

「何の洗礼ですか何の。誰もそんなの作ってないって」

「でも少なくとも私たちは全員されているのだけど」

 

 オオガミに肩車をされているロリンチちゃん。

 エウリュアレとメルトはある意味いつも通りなオオガミにため息を吐く。

 

「そんなに有名なことだったかな……う~ん、あんまりカルデア内の噂を聞いてなかったのが敗因か……」

「待って待って。敗因って何さ。えっ、肩車をされるのは負けって事なの?」

「うん? いえ、そんなことないと思うけど。子ども達には人気なのよ? 一応」

「まぁ、肩車できるのなら誰でも肩車をするのがマスターだもの。認めたくない気持ちはあるけども」

 

 そう言って、オオガミの脇腹を突くメルトとエウリュアレ。

 オオガミはその攻撃にピクピクと反応し、ロリンチちゃんもそれによって揺らされる。

 

「というか、なんで私は肩車をされてるんだっけ?」

「ん~……逃走防止?」

「する必要無くないかな!? 別に逃げたりはしないよ!?」

「いえ、今の言い方的に、たぶん特に深い理由はないんじゃないかしら。目についたから捕まえただけじゃない?」

「発想が怖い……! そのとりあえず捕まえるって発想はおかしいと思うよ!?」

「普段の行動もそんなものじゃないかしら。つい最近もあったし」

「大体いつものことよ。気にしない気にしない。今までのイベントの方がヤバいから」

 

 平然と部屋を出て食堂に向かうオオガミ。

 ロリンチちゃんが恥ずかしがろうとも関係なしなところも、いつも通りだった。

 

「それにしても、AP半減ボーナスで周回数が増えて、BBちゃんも孔明先生も大変だね」

「大変にしてるのは貴方なのだけど。それに、その子も宝物庫メンバー行きじゃない」

「雑に構築できたのはちょっと笑いそうになったわ。有能だったのね。ダ・ヴィンチって」

「まさか一日でそんな宣言をされるとは思わなかったよ。まぁそれも? 私が天才過ぎるのが原因だから仕方ないんだけどね!」

「う~ん天才。やはり天才は一味も二味も違うね。おかげで玉藻が過労死メンバー入りしそうになってるね」

「ついに過労死組も完全体になるのね。私たちの所はアタッカーが足りなかったから玉藻は保留されてたけど、ついに始動ね」

「宝物庫はね。種火は孔明先生監修BBちゃんのお手軽クレーター制作講座だけど。しかも、マナプリズムが必要になったからしばらくは種火だね」

 

 そう言って、ロリンチちゃんを肩車したまま食堂の部屋を開けるのだった。




 辻肩車してくるマスター。さてはコイツ危ない人だな?


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いつまでこのパーティーなんですか?(必要数が集まるまでじゃない?)

「センパイ……今さらなんですけど、いつまでこのメンバーなんですか?」

「うん? BBは不満?」

 

 今にも眠ろうとしている孔明を横目に言うBBに、なんて事はないように聞き返すオオガミ。

 BBは視線をオオガミに向けながら、

 

「いえ、ふと気になっただけです。ダヴィンチさんが来てからアーツシステムが構築できたとか言って騒いでいたのに、どうしてこのメンバーのままなのかって。普通にダヴィンチさんを運用すればいいんじゃないかと思いまして」

「あぁ……まぁ、そうなんだけどさ。問題は、レベル不足にスキル不足。二重に足りないから現状宝物庫専用だよ。正直、まだ運用する予定はないし」

「そうなんですか? てっきりすぐに運用するものだと思っていたので予想外です。QP不足ですか?」

「ふはは。分かってるなら黙ってるんだよBB。マシュに殺されちゃうからね」

「まぁ私は黙ってますけど……種火周回なら私たちって事ですか」

「そうそう。更に言えば、ロリンチちゃんはライダーだからアサシンに弱いわけですよ。だから、やっぱりBBちゃんの方が有利なわけです」

「なるほど……って、それ結局私を使いまくるって事じゃないですか……? というか、その余波で北斎さんと孔明さんにもダメージが入ってるんですが。大丈夫ですか?」

「……まぁ、致し方のない犠牲という事でここはひとつ……」

 

 とはいえ、実際に倒れているのは孔明だけで、今は北斎によって顔に落書きをされていた。

 なぜ孔明だけ倒れているのかは分からないが、きっと疲れているのだろう。とりあえず休憩時間なので放置していた。

 

「それにしても、孔明さんは体力なさすぎじゃないですか? あれで大丈夫なんです?」

「いや……どちらかと言うと、帰ったらイスカンダルがいるからじゃない? なんか浅からぬ思いがあるみたいだし」

「悪い方面じゃないとは思いますけど、たぶん孔明さんが複雑にしてるだけじゃないですかねぇ……まぁ、本人が嫌なら仕方ないですけど。それで、今回はいくつですか?」

「ん~……まぁ、7000くらい?」

「無茶ぶりですねぇ……まぁ、頑張りますケド。というか、早く集めないとなんじゃないですか? 期間限定交換でしょう?」

「本当にねぇ……終わる気がしないよ……」

 

 そう言って苦笑いをするオオガミに、BBは楽しそうに笑いながら、

 

「このままだと、メルトよりも先に私の方が絆MAXになりそうですね?」

「いやそれは無い」

 

 言いきられたBBは笑顔を凍りつかせ、

 

「そうですかそうですか……よし。後でセンパイには酷い目に遭ってもらいますので安心してください。私はちゃんと報復しますからね?」

「えぇ……マシュに報告しておくね……」

「両成敗になるのが確実じゃないですか……自爆はよくないと思いますよ。ちゃんと立ち向かってください」

「じゃあ、メルトとエウリュアレに報告しておくね」

「悪質な嫌がらせが始まるじゃないですか……」

 

 容赦のない嫌がらせをしてくる二人を思い描きながら、苦い顔をするBB。

 

「私はそのうちでいいですよ~だ。じゃ、一回帰りましょう。ノッブの様子も気になりますし」

「そうだね。いったん帰るよ~」

 

 そう言って、オオガミは北斎と孔明にも声をかけ、シミュレーションルームを出るのだった。




 種火は今ゴリ押ししかしてないんですよね……まぁ、孔明先生の絆レベル上げを含めてるからなんですけども。


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最近マスターが連れていってくれません(メルトとエウリュアレばっかりだものね)

「はぁ……マスターさん、メルトが来てからずっとメルトを連れ回してます……」

「そうねリップ。マスターはメルトにつきっきりだものね。でもたぶん私たちにはどうしようもないと思うの。具体的にはエウリュアレが怖いわ」

「解体されちゃう?」

「伐採されちゃうかも」

「流石におに……トナカイさんと遊んだくらいでそこまではしないと思うんですが……」

 

 もう半年近く経つにも関わらず、未だにメルトを連れ回し続けているオオガミに、頬を膨らませて不満さを隠そうともしないリップ。

 その回りでは、ナーサリー率いる子どもサーヴァントがリップの爪に登ったりして遊んでいた。

 

「そんな考えじゃダメよジャンヌ。エウリュアレはチェシャ猫のように笑っていてハートの女王のように傲慢で恐ろしい女神なのよ!」

「う~ん。本人に聞かれていたら殺されそうな発言です……」

「でも、エウリュアレがお母さんを取られたら実際にして来るよ?」

「この前マスターにパンケーキを焼いてもらって、そのときはエウリュアレと、メルトと、アビーと一緒に食べたよ。美味しかったなぁ」

「あれ、意外と優しい……? っていうか、エウリュアレさんの恐ろしさじゃなくて、何か他の話だった気がするんですが」

「話は鮮度が大事よジャンヌ。過去の話にいつまでも囚われてたら時計ウサギのようになってしまうわ」

「まるで狂った帽子屋(マッド・ハッター)のような意見ですね。というか、話が逸れていくと私たちの命が危険になる気がします……具体的には二人に刺されそうなんですが」

 

 ナーサリーに言われても、微妙な顔をしながら言い返すジャンタ。

 すると、頬を膨らませていたリップは、

 

「別に、私は怒ってないですし……エウリュアレさんも優しくしてくれるしメルトも優しいですけど、でも、BBが呼ばれているのに私が呼ばれないのはなんだか納得いきません……」

「ん~……でも、連れ回されている人達はみんな死んだような顔になっていますが」

「それはその人が弱いんだと思います」

「バッサリ言いますねこの人……」

「リップはたまにこうなるの。気にしないであげて。私はいじめるけど」

「あ~! ダメだよナーサリー! そういうことをするとエルキドゥに叱られるんだよ!」

「鎖でビシッと拘束されて、解体されちゃうのよ!」

「そうですね……叱ってるときは本当に怖いですから……」

 

 ジャックたちに言われ、仕方ないとばかりにため息を吐くナーサリー。

 そして、リップの肩によじ登ると、

 

「それじゃあ、マスターのところに突撃しましょう! 行けぇー! リップー!」

「えぇ!? お、おぉー?」

 

 そう言いながら、リップ達はマスターを探しにいくのだった。




 いつぞやのノッブのようなことを言い出したリップ。

 何気にリップは絆レベル9なんですよね。メルトを先に絆10にしたくて封印してるんですが。



 あ、コミケ行ってきます。二日目以外参加するので、更新できるようには頑張りますが疲れきって更新止まったらすいません。


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なんでそんな事をしちゃったのかしら(普通考えたら分かるでしょうに)

「はぁ……バカじゃないの?」

「全くよ。リップの場合腕が重量のほとんどなんだから、外してもらえば良かったでしょ」

「流石に、それはなんか違うと思った……」

「す、すいませんマスターさん……」

 

 そのベッドに腰掛けているエウリュアレとメルトは、少し離れたところでしくしくと泣いているリップに連れてこられた、ベッドに倒れているオオガミの腰に湿布を貼っていた。

 

「というか、なんでこっちに持ってきたのよ。医務室に投げ込んでくれば良かったじゃない」

「だ、だって、あの人怖かったんですもん……目が、とっても……」

「それでもあっちに投げてきた方が早く治ったでしょ。まぁ、私も行きたくはないけど」

「呼んでくると言うのは誰も思ってくれないんですかね……」

「思わないんじゃなくて実行しないの。ちゃんと全員思ってるわ」

「そっちの方が悪質では……ん~……忍者の誰か~。ない……いや、マシュに伝えてきて~」

 

 オオガミがそう言うと、上の方から何かが動く気配がした。

 メルトはそれを感じて、

 

「……聞いてないと思ったけど、BBが見れるんだから他のやつらが見えないわけないわよね」

「ちょっとメルト! それどういう意味ですか! あ、センパイ。今日のBBちゃんはナースモードですので、安心して任せてくださいね! さぁいきますよセンパ痛い!」

 

 何時だったかに作られた脱出口から飛び出てきたBBは、飛び出た瞬間にメルトに蹴り落とされ戻される。

 

「ふぅ……害虫は駆除したわ。じゃあマシュが来るまで待機ね」

「BB……ついに害虫になったのか……」

「あの人はそういうところありますから……」

「害虫なのを否定されない辺り、悲しいわね……」

「エウリュアレ、絶対思ってないよね」

「あら、今更だと思うのだけど」

 

 そう言って笑うエウリュアレ。

 オオガミは苦笑いをしつつ、

 

「まぁ、BBも悪い事するって訳でもないし、許してあげて」

「……許しはしないけど、入れてはあげるわ。変な事するんじゃないわよ」

「うぅ……しませんよぉ……ちゃんとお世話しに来たんですぅ~。というか、マシュさん来たら必然的にナイチンゲールさんもくっついてくると思うんですが。という事で、BBちゃん特製のコルセットです! 腰に大ダメージ与えた残念なセンパイに、BBちゃんからプレゼントという事で、装備させてあげましょう!」

「いえ、私がやるから帰っていいわ」

「エウリュアレさんがいつも以上に辛辣っ!」

 

 ひぃんっ! と涙目になるBBだったが、周囲の謎の威圧に気圧され、渋々とコルセットを差し出して脱出口から帰っていった。

 

「……あそこ、一方通行じゃなかったっけ?」

「改良したんじゃないの?」

 

 オオガミの疑問に、エウリュアレは適当に返すのだった。




 腰をゴキっとなぁ……去らばマスター……


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ロリンチちゃんだけ羨ましいです(儂らは出せんから作るしかないじゃろ)

「さてさて。センパイがうまいことダメージを負って動けないので、今のうちに出来ることをやっておきますか」

「ん~……別に隠す必要もないと思うんじゃが……」

 

 工房で、コソコソと何かを準備するBB。

 ノッブはそれを手伝いながらぼやく。

 

「それで、何から手をつけるか……」

「ん~……とりあえずエンジンからですかね。そして、出せる最大に合わせて他を作っていけばたぶんいい感じになります」

「いい加減よな……ま、儂は気にせんけどね。本職じゃないし」

「え?」

「は?」

 

 何を言っているんだと言いたげなBBの反応に、思わず素で返すノッブ。

 しかし即座に怒るのは不味いと理性を総動員させ堪えたノッブは、

 

「BB……儂を何だと思ってるんじゃ」

「え……工業系サーヴァントですよね?」

「よしわかったいつも通り喧嘩を売っとるんじゃな買うぞ表に出よBB」

「ちょちょちょ、待ってくださいノッブ! センパイがダウンしている今、エルキドゥさんの監視網が甘くなっているからと言って完全に無くなった訳じゃないですし、それ以上に私を殴っても得はないですよ!?」

 

 慌てるBBに、ノッブはニヤリと笑いながら、

 

「いやいや、得はあるとも――――儂がスッキリする」

「ドストレートに自己満足! でも私もそういうときあるので分かりますよ!」

 

 そう言うと、BBは走って逃げ出す。

 

 

 * * *

 

 

「良いですか。医務室には患者が寝ているのです。もちろん、マスターもその一人ではあります。ですが、だからと言って大声を出しながら入ってくるのはマナー違反。許されざる行為だと知りなさい」

「すいません……」

「儂悪くなくない? なんで儂も?」

「首謀者というのは予想がついていましたし、とあるルートからの通報がありましたので。では二人とも、早々に去りなさい」

「「は~い」」

 

 ナイチンゲールに叱られ、素直に引き下がる二人。

 手に持っている爆弾はたぶん聞き分けなかった時の為だろうと思いつつその場を離れた二人は、

 

「さて。とりあえず、エンジンの作成じゃったか……というか、何と張り合うつもりなんじゃお主」

「え? あぁ、あの小さいダヴィンチさんが乗っている車が羨ましかったので私も対抗しようかと。あ、運転はノッブの方が面白そうなので任せます」

「酷い話なんじゃが、いやまぁ運転はしておったしなぁ……レースも出ておったし。やるなら高性能マシンじゃな。今度はイシュタルにも落とせぬ強靭なモノを作るんじゃ」

「そうですね。ちゃんと反撃用の武装を作らないとです」

 

 そう言って、二人は工房に帰っていくのだった。




 たまに喧嘩を始めるこの二人。でも喧嘩友達なのでセーフ。
 そしてさりげなく婦長初登場では? 名前だけは出てても、本体出たのは初の気がする……


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なんでマスターは戦闘に行かせてくれねぇんだよ!(シミュレーションルームとか言う場所があるみてぇだぞ!)

「でよぉ……未だにマスターが戦わせてくれねぇんだよ」

「分かる。ずっと待機とか、ストレスで切れそうだからどうしたもんか悩むわ」

 

 頷くアシュヴァッターマンと森。

 互いに未だレベルが上がる事も無く、且つ戦闘に駆り出されることも無い二人。

 だが、手当たり次第に喧嘩を売るのは不味いだろうと自制しているアシュヴァッターマン。

 

「あ~……そういや、シミュレーションルームとかがあるってマスターから聞いたなぁ……そこら辺のに聞いてみりゃ行けるか?」

「シミュレーションルームぅ? まぁ暴れられんならいいが、とりあえず行ってみるか」

「おぅ、ちょっと聞いてくるわ」

 

 そう言って、近くに座っていたサーヴァントにシミュレーションルームの場所を聞きに行く森。

 そして、

 

「……まぁ、良いですけど」

「おぉ! よろしく頼むわ!」

 

 案内人としてアナを捕まえてきた。

 そのまま三人はシミュレーションルームに向かいながら、

 

「あ~……オレが聞くのもなんだが、良いのかアンタは。なんかあってあそこにいたんじゃねぇのか?」

「いえ、別に私は何かしていたわけじゃないので……最近はマスターにも連れまわされたりはしませんし。姉様に頼まれごともされてませんので、いくらでもいいですよ。よろしければ相手もしますが」

「いやいや、流石にそこまでは出来ねぇって。女子供に手を上げるほどじゃねぇよ」

「……まぁ、レベルも違いますしね」

 

 その一言で硬直する二人。

 そんな二人の反応を察してなのか、アナは振り向いてにやりと笑う。

 

「おぅ。喧嘩なら買うぜ。良いのか?」

「やれるものならやってみてください。ただ……相性悪いですよね。お二人とも」

「……やってやらぁ!」

「オレの人間無骨でぶち抜いてやらぁ!!」

 

 そう言って二人がやる気を出し始めた辺りで、シミュレーションルームに着くのだった。

 

 

 * * *

 

 

「およ。誰かシミュレーションを使ってるの?」

「あぁ、今はアシュヴァッターマンと森長可。それとアナが使ってるね。君も乱入するかい?」

「ん~……良いね。私も行きましょう。貴方も入るところだったんでしょ?」

「まぁね。そろそろ終わるころだと思って、という別の意味ではあるけど」

 

 そう言って、エルキドゥと武蔵の二人がシミュレーションルームに入る。

 そこに広がっていたのは、木々に囲まれた広場で倒れているアシュヴァッターマンと森。そして、それを見下ろすアナだった。

 

「もう終わりですか。それならそれでいいですけど、ちょっと消化不良といった所ですか……やはりマスターに協力してもらって育成させた方が良いのでは……エルキドゥさんの事を言えなくなってきましたね……」

 

 軽く鎌を振るって霊体化させると、エルキドゥと武蔵の方に目を向ける。

 

「あれ、武蔵さんも来たんですか」

「えぇ! 最近というか、ほぼ全くと言っていいほど戦闘に出れない武蔵ちゃんです。今日は適当にシミュレーションをしてみようと思って」

「そうですか……エルキドゥさん。この二人をお願いしますね」

「あぁ、もちろんだとも。ところで、増員はいるかい?」

「私はいりません。たぶん私じゃ武蔵さんには勝てないでしょうし。問題は彼女が物足りるかと言うところですが」

「私は構いませんとも! こんなかわいい子に剣を向けるのはちょっと気持ちが揺るいじゃうけど、やっぱり相性が無いなら天敵になるかと思うほどですとも。じゃあ、その二人を回収してもらったら始めましょうか!」

 

 そう言って、エルキドゥが二人を引きずっていく中、二人は間を取り、相手を見て、得物を構え、

 二人が退かされてすぐに、

 

「いざ尋常に――――」

「――――勝負!」

 

 二人の一撃が互いに襲い掛かるのだった。




 この戦闘狂二名を育成しようと思いつつ、ロリンチちゃんのスキルレベルを上げるので宝物庫廻るので放置中。かっこいいけど育成が回らないのはどうしようもないのだ……


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さては私、過労死メンバーに片足突っ込んでますね?(不思議と私も同じ分類のような気がします)

「ん~……もしかしなくても、私、あの過労死メンバーに片足突っ込んでます?」

「えぇ、そうですね……最近は花嫁姿の皇帝が見えないのが気がかりですね。というか、彼女は何をしているのですか」

「残念だけど、彼女は諸事情(オダチェンが面倒)で参加できないよ。でも本人が一番悔しがってるから、そのうちひょっこり現れるかもね?」

 

 宝物庫で扉を轢き飛ばしながら言うロリンチに、何とも言えない表情を返す玉藻とパラケルスス。

 とはいえ、来てほしいと言うわけでもない玉藻は、

 

「私としましては、正直来ない方が面倒事が少なくて良いのですけど……勝手に暴れて勝手に怒って行く暴君がいない方が捗りますし……周回が出来ているのに文句を言う理由もありませんしね?」

「それにしてはだいぶ私怨が強そうな言い回しに聞こえるけど。まぁ良いさ。突然仲違いして座に帰る! とか言い出さなければね」

「私はそんな子どもではありませんので。あちらはどうか知りませんけども」

「喧嘩するほど仲が良い、ということわざがマスターの国にはあるそうですが、まさに彼女たちがその代名詞の気がしてなりません」

「あははっ。パラケルススも言うねぇ。でもそれ、悪手じゃない? 玉藻が怒ってるよ?」

「おや。何を怒るようなことがあるでしょうか。私はただ事実を述べただけ……その火球。もしや落とそうなどとは――――」

 

 パラケルススが言い終わる前に生み出した火球でパラケルススを焼く玉藻。

 流石に社内で燃えるのは大変困るロリンチはこんなときのためにつけておいたスプリンクラーで鎮火する。

 

「二人とも、そこには精密機械があるんだから火とか起こさないでほしいんだけど?」

「それを言うなら貴女も思いっきり水をかけてますけど……これはいいんですか」

「防水加工はしてあるからね。大丈夫だとも。まぁともかく、あんまり暴れないでくれたまえよ?」

「ハイハイ分かりましたよ~。それで、パラケルススさんはいつまで寝てる振りをするんですか。無事なのはわかっているんですからね」

「いやはや、まさか一瞬も躊躇わず焼かれるとは思いませんでした。危険すぎるので覚えておきましょう」

 

 そう言って、軽く白衣をはたいて汚れを落としつつ、何処かから取り出したメモ帳にメモをしていく。

 

「っと、そろそろ周回も終わりかな。ドライブは楽しんでいただけたかな? たぶん他の周回組と比べてかなり楽にしていると思うんだけど」

「社内で座っているだけですしねぇ。とっても楽です。ありがとうございますダヴィンチさん」

「そんな堅苦しく言わないでほしいけどなぁ。マスター達みたいに、気軽にロリンチちゃんと呼んでくれたまえ」

「あら、そちらの呼称でよろしいので? まぁ、それで良いのでしたらそれで。これからもお願いしますね。ロリンチちゃん」

「あぁ! よろしく頼むよ。玉藻の前!」

 

 そう言って、ロリンチはシャドウ・ボーダーで宝物庫を駆け抜けるのだった。




 玉藻パラケルススは定番。ロリンチちゃんは有能なのでスキルレベルもレベル80でも宝物庫を三ターン出来る強み……最強……


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なんですかこのミニマムなのは(きっと気のせいじゃろ)

「う~ん……私、普通に乗れるのが作りたかったんですけど……」

「乗れるじゃろ。ちびノブとか、子どもとかが」

 

 ウンウンと唸るBBの前にあるのは、遊園地などに置いてありそうな小さな車。

 あからさまに子供用のそれは、BBが作りたかったものとは離れていた。

 

「いえ、途中でおかしいなぁとは思ったんですよ。予想よりも小さいなぁとか。でもほら、ノッブはちゃんと仕事してくれると思っているので任せたじゃないですか……で、なんですかこれは」

「本能寺バスター1号」

「本能寺をバスターするんですか! 確かに無ければ弱点になり得ないですしね! でも違うと思うんですが!」

「うん? なんか勘違いしておるようじゃが、本能寺バスターは本能寺をバスターするんじゃないぞ? 本能寺でバスターするんじゃ」

「そっちの方が意味わかんないんですが……!」

 

 困惑するBBに答えるように、ノッブが本能寺バスター近付きボタンを押すと、ガシャン! ガゴ! カシュ! スコン! と音を立てて変形すると、

 

「……正気ですかこれ」

「まぁ、寺をトラックの荷台に乗せて走ったアサシンがいたらしいし、寺が走っても違和感無いじゃろ」

 

 本能寺完全再現と銘打たれそうな、どこからどう見てもお寺な車。否、車要素すら感じないただの寺だった。

 

「……これ走るんですか? 本当に?」

「うむ。そして、その運転のために呼んだのがこのちびノブじゃ」

「ノッブゥ!」

「……本気でちびノブ用じゃないですか……」

 

 BBは頭を抱えるが、気にした様子もなくさも当然とばかりに寺の中に入っていくちびノブ。

 そして、エンジンがかかるような音が響いた辺りで我に返ったBBは、

 

「ちょ、ぶつからないでくださいよ!? わりと壊されたら困る物が多いんですから!」

「よしやれい!」

「ノッブブノッブゥ!」

「ちょ、片付けますから待ってくださぁい!」

 

 寺が動き始めるよりも早く部屋を片付けたBB。

 そして、ついに動き始めた寺は――――

 

「……想像の何倍も遅いんですが」

「まぁ今はパワー抑えてるし。そもそもこんなところで運転させるつもりなどないわ。安全運転じゃよ」

「そ、そうですか……じゃあどこで試運転するんです?」

「そりゃシミュレーションルームに決まっとるじゃろ。ほれ、行くぞ」

「えぇ……って、ちょっと! ちゃんとノッブが持ってって――――ヒィッ!」

 

 ガション! と音を立てて寺の四つ角からそれぞれ飛び出す脚。

 馬のような形をしたその脚をうまく使いノッブの後ろをついて階段を登っていく寺。

 いつの間にこんなギミックを仕込んだのだろうかとBBは思うが、今更足が生えたところで驚くものでもないかとため息を吐き、ノッブの後を追うのだった。




 本能寺バスターはたぶんもう出ないんじゃないかな……あと一個だけギミックというか、こっちが本命と言うか、そういう機能をぶちこんでますが、きっともう出てこないんじゃないですかね。気が向いたら再来します。


 コミケ行って来ました。いつかサークル参加してみたいなぁと思い、何をしようか考えてる私です。今日のカルデアを適当にまとめて書き下ろしを書いてみるとか、新規で書いてみるとか。
 でもまぁ、たぶん考えるだけで終わる気がするので、そのうち自分を追い込むまでなにもしない気がする……


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明日からラスベガス行き!(一体どんな魔境かしらね)

「よぅし明日からラスベガス! でもお出掛けスポット調べてもどうせルルハワみたいに地形変動起こすんだから要らないよね!」

「完全に前回の邪ンヌに起こってた現象を引きずっているのだけど……」

「そうね……それでも調べておいて損はないと思うのだけど。だって、変わらない店もあるかじゃない? その可能性を考えておきなさいよ」

 

 ベッドの上に横になり、調べるつもりがないかのような様子だった。

 それを見てやれやれと首を振るエウリュアレとメルトに、オオガミは複雑そうな顔をする。

 

「いや、水着イベントってことは、つまり水場じゃん……? でもさ……ラスベガスって内陸な訳だよ……地形変動確定では……?」

「それは本気で何も言い返せないわ……海があるのならそこは確実におかしいもの……」

「でもカジノって聞いたのだけど。実は水着はそんなに関係無かったりしない?」

「……一昨年はレースだったもんね……水着関係ないよね……レースクイーンだよねあれは……」

 

 エウリュアレに言われて夏のレースをした事を思い出し、仕方ないとばかりに起き上がるオオガミ。

 

「まぁ、現地で散策してから考えようかと思ったけど、どうせなら一緒に行く方が良いしね」

「えぇ、そうね。外れならそれはそれでいいものよ」

 

 そう言って笑い合う二人を見て、メルトは一瞬複雑そうな顔をすると、

 

「……不思議ね。何故だか分からないけど、その一緒にって言うのの中に私はいないというのが分かるわ。まぁ、そんなに長くないでしょうし、その時くらいは私も適当に遊んでくるわ」

「あ~……うん、その、ごめんね? 埋め合わせはいつかするから」

「別に良いわよ。でも、その視線をすぐにエウリュアレから奪ってみせるわ」

「あら……面白いわね。楽しみだわ」

「えぇ、楽しみにしていて? もちろん貴方もよ、マスター?」

 

 そう言って、不適に微笑むメルト。

 オオガミはそれを聞いて、腕を組んで真剣な顔で悩むようなポーズをすると、

 

「う~ん……嬉しいけど、一体何が来るのかなぁ……水着とかなら大歓迎だけど、ダイレクトアタックは頭真っ白になる。自信あるよ」

「そんな自信要らないわよ」

「もっと過激に攻めるのもアリよね」

「それは確実にキャパオーバーだね。分かるとも」

 

 オオガミは頷くと、大きく伸びをし、

 

「それじゃ、軽く調べて明日に備えますか!」

「えぇ、そうね。仮決めは大事だもの」

「そのうちのどれだけの店が無事か見物(みもの)だわ」

 

 そう言って、三人はラスベガスの店を調べ始めるのだった。




 ワクワクが止まらない……水着メルトまだかな……! お財布の中身すっからかんだけど!


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見参!ラスベガス御前試合~水着剣豪七色勝負!
水着メルトでるよやったね回せぇ!(後半をゆっくり待ちなさいよ馬鹿)


「ふはははははは!!! これメルト水着確定だよね! やったぁ!! 今回のイベント、リンゴ喰らってでも全力疾走するからなぁ!! 覚悟してろよメルトぉ!!」

「っ……どうしましょう。とても今更ではあるのだけど、マスターがおかしくなったわ」

「本当に今更だなっ? っていうか、なんでオレなんですかね! いつも通りメルトじゃダメだったんすか!?」

 

 叫ぶロビンに、オオガミは真顔になると、

 

「ロビンさんはこれから水着を着てくれるって言う子を連れまわして水着を着させないという、自分に対する拷問をするの? バカなの? 残念なの? 実は女の子なの?」

「いや待て前二つは分かるが最後だけ全く理解出来ねぇぞ。なんで女になることになるんだよ?」

「いつも理由があると思ったら大間違いだよ! 突然ブタにされるように、突然女の子にされることもあるんだよ!」

「いやねぇよ!? そんなことされた記憶もねぇからな!?」

「あれ、そうなの? てっきりBBならやるんじゃないかと思ってたけど、そんなことないのかな?」

「流石にしねぇよ……いや、オレが知らないだけか……?」

 

 考えるロビン。だが、オオガミはすぐに興味を無くしたのか、

 

「とにかく、今はメルトが召喚できるようになるまでQPを稼ぐしかないという事だよ。正直石を集めろって感じだけど、そんな集められる石は無いし。当てるしか無かろう」

「なんだその言い方……いや、出来るんならいいけども……まぁ頑張れよマスター。応援はしてるぜ」

「えぇ、そうね。出来ればいいのだけど。きっと大丈夫だって信じてるわよ」

 

 エウリュアレにまで言われ、何とも言えない表情になるオオガミ。

 そして、気持ちを切り替えるためか、一度ため息を吐いてから真面目な顔に戻ると、

 

「それじゃ、リンゴを齧りながら周回と行きますか」

「えぇそうね。頑張りなさいよロビン」

「あれ、オレだけ? もしかしてアンタは裏ですらない?」

「当然じゃない。コイツがこういうのに私を連れて行くとか、滅多にないわよ。だって、イベント特攻サーヴァントがいるんだもの。そっちを優先する男よ」

「あっははは……言い返せねぇ。だって事実だし。是非も無いよね」

「へぇ……でもまぁ、必要性が無いって気付いたら切り替えるってのも聞いたんだが、どうなんだそれは」

「そうね。それはあるけど……今回は絆アップもあるんだもの。大体入れるわよ」

「一部を除いてね」

「……まぁ、最初から最後までじゃねぇってわけだな。まぁ良いぜ、オレは気にしねぇさ」

 

 そう言って、ロビンはルルハワで手に入れたパーカーを羽織るのだった。




 水着メルトですよペンギンメルトですよ無理尊いしんどい死ぬ……とまぁこんな感じで今暴走しながら周回してます。水着剣豪の戦闘に入る時の演出好きだよもっとやってほしいね?


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サバゲー……いつかやりたいものだ(サーヴァントの中に混じってても行けるでしょ)

「ん~……サーヴァント同士のサバゲーじゃなきゃ参加できたかも……」

「ふぅん……でも、かわすのは余裕なんでしょ?」

「いや、そこまで人間辞めてないよ? 当たるときは当たるよ?」

「そもそも当たらねぇって話だよマスター。逃げることなら超一級だろうが」

「うぅむ、納得いかない……なんというか、褒められてる気がしない」

 

 複雑そうな顔で悩むオオガミ。

 だが、エウリュアレは首を振り、

 

「褒めてるわよ、ちゃんと。だって囮にちょうど良いじゃない」

「回避盾扱いとは酷いじゃないか……いや、理由は分かるけども。その時はちゃんと敵を始末してくれるんですよね」

「えぇもちろん。ロビンがやるわ」

「だろうな! もう話の流れから分かったわ! でもそんときはオレの実力見せてやるぜ。っていうか、それならメンバーはどうするんだよ?」

 

 ロビンに言われ、少し考えるオオガミ。そして、

 

「まぁ、エウリュアレとロビン、最後にメカエリチャンで良いんじゃない? 正直メイン戦力はロビンとメカエリチャンだけど」

「実質二人! 勝てる可能性が無い気がするので辞退させてもらうぞ!?」

「その時は令呪を使ってでも止める」

「本気すぎる……!」

 

 無慈悲なオオガミの宣告に震えるロビン。

 とはいえ、実際に嫌がったらそこまで無理強いをする事は無いはずだ。

 

「とりあえず、サバゲーはまたの機会で。メルトが来たあとに余力があるならおっきーも狙ってみよう……」

「おぅ。無理言い出したぞこのマスター」

「いつもの事よ。だって、未だにメルトを重ねて宝具威力最大ぶちかますって言ってるもの。どこからその自信は来るのかしら……」

 

 そう言って、呆れたようにため息を吐くエウリュアレ。

 もはや恒例行事の様相になってきたが、オオガミは至極真面目だった。

 

「あ。そういやオタク、そろそろ絆レベル上がるんじゃなかったですっけ」

「えぇ。だから石をちゃんと持って待っているのだけど、一向に上げようとしないから困ったものだわ。あぁ、いや、これはなにか違うわ……どこかおかしい感じがする……あぁもう! 何かしらこのもどかしいのは! とにかく、アイツが放置するの! 分かったわね!」

「あぁ、そりゃもうバッチリ。マスターが悪いだろうなそれは。気が向いたら矢で射ってやりゃいいさ」

「……一回も当たったことが無いのよね……なんでかしら」

「……それは何とも言いようがねぇな」

 

 遠い目をするエウリュアレとロビン。

 だが、オオガミは気付いた様子も無く二人を見ると、

 

「とりあえず、QPを稼ぎにカジノ巡りしますか。レッツゴー!」

「えぇ良いわ。カードなら負ける気しないもの。任せなさい」

「任せてくれ。オレも負ける気はしないからよ」

 

 そう言って、三人はカジノに向かうのだった。




 カジノ巡り楽しぃ……QP増えるぅ……

 で、メインストーリー追加まだですかね(発狂


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こういうゲームなら負けないわ(それはイカサマじゃないんですかね?)

「ふふふふっ! 全く負ける気がしないわ!」

「マジかよ何連勝だ? ちょっと勝ちすぎで怖いくらいだな」

「あ~……うん、まぁ、そうだね……」

 

 白いパーティードレスに身を包み、カードを片手に余裕の笑みを見せるエウリュアレ。

 完全に野次馬に回ってるロビンのセリフに、エウリュアレの左後ろに立っているオオガミは何とも言えない顔になる。

 その原因は当然、ゲームにあった。

 

「……イカサマしてるのは周りなんだけど、その原因はエウリュアレなんだよね……」

 

 ホームズから教えてもらったイカサマの見破り方を使いつつ見ている限り、イカサマをしているのはエウリュアレではない。

 が、そんなよく分からない現象を起こしているのは、エウリュアレ。しかも意図的に。

 不自然すぎるイカサマは、自らが勝つためでなく、エウリュアレに勝たせるために行われているというのが何よりも恐ろしいところだった。

 

「エウリュアレ。楽しい?」

「えぇ、最高よ。だってこんなにも勝てるのだもの。不思議ね。なんでかしら!」

「そんな嬉々として言われても……かなりわざとらしいよ?」

「あら、そう? でも良いじゃない。レジストされないってことは、つまりそういう事よ」

 

 エウリュアレによる真っ赤な不正。それは同じテーブルには男性しかいないと言うことだった。

 意図的に声を出し、魅了する。後は単純明快勝手に貢いでくる。最後に残るのは破産した男だけだ。

 そしてその魅了は常人に防げるわけもなく、たった一言で魅了して底無しの闇に突き落としていく様は、世間一般では女神ではなく悪魔ではないかと思ってしまうのは無理もないことだろう。

 

「まぁ正直、この感覚が久しぶりすぎて逆に新鮮ってだけだから、すぐに飽きると思うわ。本人が言うのだから確かよ」

「むしろ本人が言ってるから確率下がってるんだよねぇ……これはしばらく終わりそうにないね」

「むぅ……納得いかないわ。というか、ロビンを連れて来なければもう少し羽目を外せたのだけど」

「ついにロビンを邪魔って言い始めたよこの女神。ただでさえも脇役になってるロビンさんが消えちゃうじゃん」

「消して良いわよ別に」

「あれもしかしてオレ要らない奴宣告くらってます? 一人で遊び歩くぜ?」

「ほらぁ! ロビンがダメな子になっちゃうよ!」

「いや待って? 私とそれは関連性皆無じゃない? なんで関係あるみたいに言われるのよ」

「いやそれオレからしても疑問なんだが。なんだこのマスター。親みてぇな事言い出したぞ」

 

 若干暴走し出しているオオガミに困惑するエウリュアレとロビン。

 そんな状況でやっているわけにもいかず、切り上げるエウリュアレ。

 

「私は楽しめたし、今日はもう帰りましょう。えぇ、その方がいいわ。今無理にやる必要もないし。撤退よ」

「ほいさ。オラオラそこ退けそこ退け。んじゃな皆の衆。また来るぜ~」

 

 そう言って、ロビンは暴走しかけのオオガミを掴み、エウリュアレと一緒に脱出するのだった。




 ロビンさんがダメな子になっちゃうよお母さん! というのも考えたんですが、これをしたら本気でどうしようもなくなる(ルート的に)気がしたので、オオガミ君がいつも通り暴走している路線に変更。それでもダメな気がするのは何故だろう……

 あ、まだ全然ストーリー進んでないです。カーミラ姉さん、カード投げうまいですよね。中二病力高いですよ。


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入場料が異常では……(勝って帰れば問題なしよ)

「ん~……流石に10億QPとか無理だよね」

「そうねぇ……まぁ私はあるから入るけど」

「えっ、ズルくない!? 置いていくんですかエウリュアレ様!」

「ハイハイそうね。だったら手早く着替えなさい。執事っぽいのがいいわ」

 

 昨日に引き続きドレスを着ているエウリュアレに言われ、アニバーサリー・ブロンドに着替えるオオガミ。

 それを見て満足そうに笑うエウリュアレは、

 

「それじゃ、行きましょうか」

 

 そう言って、エウリュアレは進んでいく。

 

 

 * * *

 

 

「レートが改正されてるわ……」

「前回と比べてだいぶ安くなったね……担保も減額されてたし」

「ん~……遊びやすくなったのは良いけど、代わりにスリルも減ったわね……残念。まぁ、それでも遊んでいくのだけど」

 

 そう言って、当然のようにカードゲームを選ぶエウリュアレ。

 オオガミはついに置いていかれたロビンを思いつつエウリュアレの左後ろに立つ。すると、

 

「やぁ、お二人さん。お邪魔させてもらうよ」

「ふん。(オレ)と席を共に出来ることを光栄と思え雑種。此度は暇潰しのために立ち寄ったが、よもや貴様らと会うことになるとは思わなんだ。故に我を楽しませてみせよ」

 

 そう言って、両サイドの席を埋めてくるマーリンとギルガメッシュ。

 それに対して、エウリュアレは不敵に微笑み、オオガミは苦笑いになる。

 

「残念だけど、相手は私よ。マスターは付き添いなの。それでもかしら?」

「もちろんだとも。というより、君達は二人一組だろう?」

「無論(オレ)も気にせん。なに。セレブなら従者を侍らすのも良くあることよ。だが魅了が効くと思うなよ? 既に対策はしているからな。そも、それが出来ねば挑めるわけもないが」

 

 言いながら、チップを積む二人。

 それを見て、エウリュアレは若干不機嫌になりつつ、

 

「良いわ、負けないもの。宝物庫の一割は貰うんだから」

「フハハハハハ! 威勢だけで終わってくれるなよ! (オレ)に全力を出させてみよ!」

「一割とか、途方も無さすぎて先に王様が飽きるんじゃない?」

「良い良い。なに、その威勢が良いのだ。して、ドルセントですら使いきれんほどのこの財宝を一割奪うと豪語するのだ。なに、こやつらならば飽きることも無いだろうよ」

 

 そう言って、楽しそうに笑うギルガメッシュ。

 それに呼応するようにエウリュアレも笑みを浮かべ、

 

「それじゃ、行きましょうか。どんなイカサマも純粋な運で叩き潰してあげる」

「フッ。やれるならやってみよ。だが、(オレ)は勝負に関しては運を味方につけていると思え」

「イカサマ出来る幸運野郎とか迷惑極まりないよね。でもなんだろう。今回一番損をするのは僕な気がするぞぅ?」

 

 しかし、二人はマーリンにそれ以上話させず、勝負を始めるのだった。




 ギル様元気。夏になると毎度おかしくなってないかなこの人。あ、運動会シーズンもでしたね……


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水天宮じゃオラァ!(あのペンギンパーカー羨ましいわ!)

「いよっしゃぁ!! 水天宮じゃオラァ!!」

「なぁにがリヴァイアサンよ! ただの可愛いペンギンじゃない羨ましいわ私に作りなさいマスター!」

「あれ、おかしいわね……私への文句じゃなかったのかしら……」

 

 いつの間にかメルトへの文句からオオガミへの要望に変わっているエウリュアレの言い分に首を傾げるメルト。

 だが、オオガミが適当に了承してしまうので、案外無茶でも通るものである。

 

「っていうか、何時こっちに帰って来たのよ」

「うん? そりゃ、負けたのだから戻ってくるわよね。ステージで踊る私と、こっちで遊ぶ私。あのドラゴン娘が分裂するんだから、私が分裂しても不思議はないわよね?」

「いや不思議しかないけど? メルトが分裂するとかこっちは即死案件ですけど? 血を吐いて『犯人はメルト』って書いて死ぬよ?」

「ちょっと、まるで私が直接手にかけたかのような表現はやめてちょうだい。ちゃんと『メルト様バンザイ』って書いて死になさい」

「あっ、死ぬのはいいんですね……」

「死んだら私が殺すけどいいのかしら」

 

 あからさまに笑っていないエウリュアレの笑顔。目がしっかりとオオガミを捉えているのが、その本気度を表していた。

 

「エウリュアレの目が本気なんですけど。ヘルプメルト」

「まだ水着じゃないからクラス相性的に不利なのよね……だから却下。水着を持って来られたら考えてあげるわ」

「難題過ぎません……? いや、やりますけど。是が非でも当てに行きますけど。覚悟しとけよメルト。目に物言わせてやる」

「良いわよ。受けて立ってあげる」

「ねぇ待って。それ私のセリフじゃないの? 普通私に言うべきセリフじゃないの? 最近私の事雑に扱ってない?」

 

 オオガミの右腕を掴み前後に揺らすエウリュアレ。

 揺らされているオオガミは複雑そうな顔をしながら、

 

「まぁ、エウリュアレはまた後でちょっと色々あるので……」

「っ……それなら、別に良いわ……今日は先に帰ってるわね。じゃ、ペンギンは任せたわよ」

「任しといて。頑張るよ」

 

 そう言って、スタスタと歩き去っていくエウリュアレ。

 それを見送ったメルトは、

 

「だから、ペンギンじゃなくてリヴァイアサンなのだけど……まぁ良いわ。それじゃ、適当に見て回りましょう? 私が作った場所だもの。たくさん楽しんでちょうだい。水天宮支配者として歓迎するわ。マスター」

 

 そう言って微笑むメルト。

 オオガミはそれに釣られて笑みを浮かべると、

 

「じゃ、お言葉に甘えて、特大レートのここで豪遊してこうじゃんか」

「えぇ、無様に悲惨に融かしていってちょうだい」

 

 そんな話をしながら、二人は水天宮を見て回るのだった。




 とりあえず走り抜けて、最高に可愛いラムダリリスをスクショしまくったので今は落ち着いてます。なんだよあれ……可愛すぎかよぉ……

 思わず宝具演出をみる前に倒しきりそうだったので急遽攻撃を抑えたら全滅しかけたという。宝具が洒落にならなかった……
 でもまぁ、3ヒットで全体なら頑張れば3T行けるはずなのでとりあえず来てくれたら必死で構築するのは確定しました。ただ、自由枠ほとんど捨てる勢いですね。超楽しみ(白目


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とりあえず、適当に見て回ろうか(エウリュアレはどうするのよ)

「ふぅ……それじゃ、ひとしきり遊んだし、ラスベガスを適当に見て回ろうか」

「あら、帰るんじゃないの? エウリュアレはどうするのよ」

 

 水天宮を出て、一度大きく伸びをしながら歩いていたオオガミは、メルトに質問で立ち止まると、

 

「正直、前回のルルハワの時に二人で遊びに行くって言って、なんだかんだドタバタしたせいで行けなかったんだよ。それで、代わりにラスベガスで遊ぼうって事になったんだけど……うん。今の所一番遊べるのが水天宮の気がする……カジノさえしなければ危険はないし」

「そう……あれ。でも普通にスロットで遊んでたわよね……?」

「まぁ、無理のない範囲でね。紫は一枚も使ってないし、QPはまだあるから問題なし。たぶんエウリュアレならいけるでしょ」

「その信頼は何処から来てるのかとても気になるけど、まぁいいわ。なんだかんだ、水天宮を気にいってもらえたみたいだし。私は今の所は満足よ」

 

 そう言ってオオガミの右側を、言葉通り満足そうな顔で歩くメルト。

 オオガミはそんなメルトの手を強く握ると、

 

「それじゃ、適当に見て回ろうか。観光自体はそんなしてないでしょ?」

「っ! ……えぇ、そうね。ここに来てからずっと舞っていたもの。観光している余裕なんてないわ。敵情視察なんてしてもいないしね」

「うん。じゃあ、姫路城から行こうか」

「えぇ、楽しみだわ」

 

 そう言って、メルトは少し赤くなった顔を隠すようにそっぽを向きながら、オオガミの手を壊さないように気を付けながら慎重に握り返すのだった。

 

 

 * * *

 

 

「よし。とりあえず殺しましょう。マスターを暗殺しましょう。えぇ、すぐしましょう」

「え、エウリュアレさん、かなり怖くなってるのだけど……大丈夫かしら……私、エウリュアレさんを手伝っていいの……?」

 

 建物の陰に隠れているエウリュアレと、その後ろでどうしようか悩んでいるアビゲイル。

 その隣でアナは鎌を研ぎながら、

 

「暗殺なら、夜を待ちましょう。あの人外性能でも、流石に倒せると思いますが」

「……どうかしら。何気にあのマスター、即死級の攻撃に対しては異常なまでの幸運を発揮するもの。たぶん死なないわ」

「いえ、普通に止めた方が良いと思うのだけど……たぶん、ろくなことにならないと思うの……」

「……アビーがそういうのなら、もうちょっとだけ待つわ」

「不思議だわ……ラスベガスに来てから、エウリュアレさんがいつも以上におかしくなってるわ……」

「たぶんルルハワで約束が果たされなかったからだと思うんですけど、姉様が楽しんでいるようなので私は気にしません」

「えぇ……マスター優先じゃないのね……」

 

 エウリュアレにつられて元気になっているアナに、アビゲイルは苦笑いをしながら返事をするのだった。




 ラスベガスに来て暴走してるエウリュアレ様。なんでこうなってしまったのか……まぁ、これはこれで……?


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あのぐだぐだっぷりは凄まじいよ(でもジェットパックは良いと思ったわ)

「う~ん、楽市楽座……案の定ぐだぐだしてたね……」

「そうねぇ……あのジェットパックは面白かったわね……振り回されてないのが物足りなかったけど」

「普通に乗りこなしてたよね……練習したんだよきっと……」

 

 そう言って頷くオオガミ。メルトはその横で呆れたような顔をしながら、

 

「それで、水着の私の使い心地は如何だったかしらマスターさん?」

「そりゃもう最高ですとも。とりあえず三ターン周回の目途は経ったから孔明先生には過労死してもらうよ」

「……貴方、実は優しくないわよね……」

 

 にっこりと笑って言い放ったセリフに呆れ交じりの笑顔を浮かべるメルト。

 そんなオオガミの後ろから、

 

「ねぇマスター? 私を放置するなんていい度胸じゃない。覚悟はできてるわよね?」

「おぉっと。どうやら殺されそうだ。どうしよう詰んだ」

「別に逃げる必要も無いでしょ。じゃ、私は適当に見て回ってるから、二人で行ってきなさい」

「えぇ。また後で会いましょう」

 

 そう言って、エウリュアレはオオガミを強引に引っ張っていく。

 引っ張られているオオガミはメルトに見送られながら、

 

「それで、どこ回る? 個人的には視察のつもりだったんだけど……」

「視察は二人で一緒にって話だったでしょ。初見の方がどっちも楽しいからって。別にぐだぐだでもいいの。だからほら、早く行くわよ」

「……そう言えばそうだったね。うん。じゃあ行こうか。でもそんなに持ってないからあんまり派手に遊べないんだけどね……」

「別に良いわよ、私が持ってるもの。甘やかされるのは好きだけど、その状態がずっとっていうのは飽きるのよ。たまには自分があげる側になるのも悪くないわ」

 

 そう言って、楽しそうに微笑むエウリュアレ。

 その笑顔を見てオオガミは複雑そうに笑うと。

 

「ここは縁日エリアっぽいし、色々遊べそうだよね。射的とかあるみたいだし、撃ち放題じゃない?」

「私が撃つのよね。アーチャーだもの。えぇ、任せなさい。珍しくやる気はあるの。でも貴方も一緒よ」

「そりゃもちろん。一緒にやらせてもらうよ。射的は結構好きだし、何よりルルハワで射撃は鍛えられたからね……」

「……若干トラウマになってない?」

「いや、トラウマになるようなものでもなかったけど、教官は鬼だったよねって。うん。当てられたし、マシュは元気になったしでアレはよかったんだけど、終わった後の鶏は許さないって思ったよ」

「あぁ……そう言えばそうね……まぁ、今じゃ楽しい思い出よね。ルルハワは。たぶんもう行けないでしょうし」

「本当にねぇ……同人誌を描くって言う一大イベントはあったけど、かなり楽しかったもんね」

 

 そう言って、二人は笑いながら楽市楽座カジノを見て回るのだった。




 メルトはW孔明で3T出来るので当てれば勝ち! 当てればな!!(吐血

 しっかし沖田さんネタモリモリで凄かったですね……いや本当に。ネタが分からないのがちょくちょくありましたもん。


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やったぜ完璧大勝利!!(まさか本当に当てるだなんてね)

「ふはははははは!!! やったぜ完璧大勝利ってなぁ!!」

「えぇそうね~……本気すぎない?」

「そうね。ふふっ、本当に私を当てるとは思わなかったわ。もちろん召喚されたのだから出来る範囲で手伝うわよ」

 

 ハイテンションのオオガミと、呆れるエウリュアレ。

 その隣でペンギン(リヴァイアサン)パーカーを着てドヤ顔をしているメルトならぬラムダ。当然の様に種火を注ぎ込まれたが、80で止まってしまった事を悔やんでいるマスターがいる事を彼女は知らない。

 

「とりあえず! カジノの上限に達しちゃったから、真理の卵を集めに行くしかないね。リンゴ食べてでも終わらすぞぉ~!」

「本当に本気じゃない……素材周回とかやらないっていつもなら言ってるのに」

「それはそれ。何事にも例外はあるって事だよ。特にメルト関連はガチ。そう言う事だよ」

「そうね。本当に怖いくらいだもの。いつもなら絶対やらないことをするから、周りも振り回されるのよね」

「でもすぐ飽きるでしょ? 大丈夫。今すぐじゃなくても文句は言わないわ。えぇ、全く。さぁ、貝殻を集めましょう? どうせ必要になるのだから」

「うん? いや、メルトに必要ないのなら、しばらくは放置で。QPカウントも止まってるしね」

 

 平然と言うオオガミに、声を詰まらせるラムダ。

 エウリュアレは呆れたようにため息を吐き、

 

「こう言う奴よ、マスターは。貴方が通常霊基で来た時も同じだったと思うのだけど……あぁ、そうね。あの時は素材が全部揃ってからだったわ。あれ、貴女の分は絶対に使わなかったのよ。だからすぐ終わったの。それじゃ、種火を周回しに行きましょうか。安心して? 周回をするのは貴女よ。そのために計画までしてたんだから。ほら、さっさと行きましょう?」

「私が回るの……? いえ、別に構わないけど。楽しみね。それだけやるのかしら」

 

 そう言って笑うラムダは、なんとも言えない複雑な表情をしているエウリュアレに気付かないのだった。

 

 

 * * *

 

 

「本当に休み無いのね……いえ、いつも後ろで見ていたから知ってはいたけど」

「……私、今回は休みの予定ではありませんでしたか?」

「うるさい、NP回収率が低いから必須になったんだ。諦めてスキルを回せ」

 

 ひたすらに宝具を撃ち続けるラムダと、それをひたすらに援護する孔明とパラケルスス。

 その後ろで、エウリュアレは大きく伸びをしつつ、

 

「今日の埋め合わせはしなさいよ。楽しんでいられるのは後半戦に入るまでなんだから」

「その後半戦の合図が後半ピックアップなんだけど、まぁすぐに遊べるようにするよ。その時は、ね。楽しみにしててよ」

「……えぇ、楽しみにしてるわ。それじゃ、終わったら起こして」

「うん。お疲れさま」

 

 そう言って、エウリュアレは少し離れた所の木に寄りかかるのだった。




 いぃやっほぅ!! 最高の気分だぁ~!!
 という事でラムダリリスを当てて、すぐにシステムを組んだ私です。とりあえず弓キャスの種火周回は出来たので、残りを検証しないと……たぶんセイバーライダーは無理……
 聖杯は種火不足なので、今種火周回して成長させてを繰り返しているので、今日中にはレベル100には到達するはず……そしてスキルマには卵が足りなかったよ(血涙

 しかしまぁ、私の愛って実は重いのではと時々考えますけど、こんなものの様な気がしますよね……

 さて、ここで喜びまくってエウリュアレデートをやらないのは不味いので、考えなければ……心がメルトに傾きまくってる私に行けるかぁ……?


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お姉ちゃん、今回暴れすぎじゃない?(前回も十分危険人物よ)

「クッ……お姉ちゃん、負けちゃいました……!」

「いや、だからアンタは姉じゃないっての。いい加減分かれ」

「全うな方の私が、おかしくなってます……」

 

 とてつもなく落ち込んでいるジャンヌ。

 その隣で呆れたように首を振る邪ンヌと、ショックを受けているジャンタ。

 そんな三人にオオガミは、

 

「真面目に、そろそろお姉ちゃんが危険人物じゃないかと思ってきた」

「いや今更過ぎない? 去年からずっと危険人物だったわよ?」

「コイツ、時々とんでもないくらいアホになるわよね。で、去年もこんなだったの?」

「えぇ。去年もルルハワで殴り飛ばされて弟にされてたわ」

「……何故かしら。このマスター、変なのに好かれやすいわよね。特にダメな方向の奴」

「そうね……実際、異常なまでに変なのに好かれるもの。おかげでそれに振り回される私の身にもなってほしいわよ」

 

 やれやれ。と首を振るエウリュアレ。

 ラムダは考える様な素振りをすると、

 

「護衛をもっと付けた方が良いかしら。私たちが離れてる時に変なのに捕まっても嫌よね……」

「もう姉を名乗ってたり母を名乗ってたりするのがいるのだけど。召喚済みよ? 大丈夫?」

「……手遅れって事ね……何よ。私よりも先にとんでもないのを召喚してるじゃない」

「正直とんでもなさすぎて手に負えないわ。それで、どうする? いける?」

「ふ、フフフフフ! 全く問題ないわ。むしろ張り合いがあるってものよ! マスターを奪わせなければいいのでしょう? 任せなさい。絶対やってやるわ」

 

 不敵に笑うラムダに、エウリュアレは苦笑いをしつつ、

 

「まぁ、相性はいいから問題ないわよね。必要だったら呼んで。手伝うわよ?」

「いいえ要らないわ。私が一人で決着をつけてくるもの」

「そう。じゃあ、マスターには私がついてるわね。いってらっしゃい」

「えぇ、行ってくるわ!」

 

 そう言って、ジャンヌ達の元へ走り出すラムダ。

 そして、エウリュアレがオオガミの目を隠して見えなくした辺りで、

 

「さぁ、今度は一対三で勝負よ!」

「今このタイミングで仕掛けてくるとかおかしいんじゃないの!? 何が白鳥よ撃ち落してくれるわ!」

「起きてくださいまともな私! ラムダさんにやられちゃいます!」

「お、お姉ちゃんは負けませんよ……! 相性不利くらいで負けて――――レベル差アリは無理ですぅー!!」

 

 邪ンヌとジャンタをすり抜けて、最速最短でジャンヌを蹴り抜くラムダ。

 その酷い戦いをオオガミに見せないように、エウリュアレはオオガミの目を隠したまま引きずって離れるのだった。




 最高にイカれてるお姉ちゃん……今回もフルブーストでしたね……母も怖い……

 ラムダ宝具3到達……残り2! ついでにレベル100到達と第三スキル10にしたので、残りスキル1と2の分の卵残り9個集めて重ねられることを祈りまくってエウリュアレから石貰うだけ……


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ちょっと冷静になってきた(じゃあ卵集めは一旦休憩ね)

「……なんかね、そろそろ落ち着いてきたよ」

「そう……じゃあ、卵集めは一旦終了?」

「うん。なんというか、いい加減リンゴが足りなくなってきた」

 

 残りスキル一つとなったところで急に冷静になったオオガミに、たいして気にしていなさそうなラムダ。

 そしてエウリュアレはと言えば、

 

「せっかくあげたのに、すり抜けるとかどうなのよそれ」

「ニトクリスさん、タイミング悪かったんですよ……まぁ、かくいう沖田さんも、ラムダさんと一緒に来てしまったから三日も放置されてるんですけど……更に言えば、未だにレベル1ですよ。ラムダさん100なのに」

 

 そう言って、ため息を吐く二人。

 どちらも悩んでいる内容は違うが、最終的にオオガミに繋がるのだけは同じだった。

 

「……それにしても、昔はあなたを召喚しようと必死だったのにね。いつの間にかメルト優先になってたのね……」

「えっ、なんですかそれ。沖田さん、実はマスターに好評だった? ならこの待遇はおかしくないですかね? 完全に忘れてる人の行動ですよあれは!」

「だから、昔の話よ。三年前くらいの話。その頃に来てたらヒロインだったかもね?」

「な、なんですと……!? それ、本能寺復刻辺りの話じゃないですか……!」

「えぇ、そのくらいよ。ついでにメルトも同じくらい待たされたけど、あっちはもうレベル100で絆10。礼装も昨日貰ってたわ」

「が、ガチすぎません……? だってあの方星5ですよ……? 正気ですか……?」

「まぁ、五ヶ月半かかってるし、ずっとパーティーに入れ続けてればそうなるわよ」

「そういうものですか……? あぁでも、もうラムダリリスさんは絆6ですし、そういうこともあるって事ですね……いえやっぱりおかしいですよ」

「残念だけどここでは良くあることよ。まぁ、今回はトップレベルでおかしいけど」

「やっぱりおかしいんじゃないですかぁ!」

 

 ひぃん! と悲鳴をあげる沖田。

 そんな彼女を横目にエウリュアレは立ち上がると、

 

「マスター。卵終わるのならさっさとラスベガスに帰りましょう? QPも枯渇しそうなんだから、集めちゃった方がいいと思うんだけど」

「その予定だよ。で、沖田さんと何話してたの?」

「貴方が自由すぎるって話」

「え、なに悪評ばらまいてんの? 悪質すぎない?」

 

 エウリュアレの返答に困惑しているオオガミから少し離れたところでラムダが、

 

「先に戻ってるわね。それじゃまた後で呼んでちょうだい」

「うん。またね~」

 

 そう言ってそそくさと去っていくラムダを見て、沖田は気付く。

 

「さてはここ、かなり自由ですね?」

 

 この閃きに、自由ではなく無法だ。と突っ込むものは良くも悪くもいないのだった。




 昨日報告しようと思ってスパッと忘れたメルト絆10。そして今日ラムダ絆6とエウリュアレ絆11到達という。エウリュアレに追加の夢火を渡すか考え中なのですよ……

 あ、沖田さんはラムダと同着でした。実は同日にふーやーちゃんが来ていて、更に今日すり抜けニトクリスさんです。そろそろ周回に本気で困らなくなってきた……


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真犯人は明後日殴り飛ばす(私が出ても良いわよ?)

「くっ……真犯人が判明したのに、ネタバレ防止のために殴り飛ばしに行けない……!!」

「別に、明後日始末しに行くんだからいいでしょ。どうせなら私を出しても良いわよ。暇になったし」

「貴女が出たらすぐ終わるじゃない……」

 

 言いながら、カジノ・キャメロットの中を見て回る三人。

 エウリュアレはテーブルをいくつか見て、

 

「行けそうではあるけど、あのアロハ三騎士がやっぱり面倒ね……正確には、その取り巻きが邪魔をしてきそう」

「そうね……正直、本人よりも周りの方が面倒というのはよくある事よね……」

「取り巻きは取り巻きでも、女性陣が邪魔だよね……円卓は顔が良いからね。イカサマしても女性のゴリ押しが通っちゃうんだよ。威圧感やばいもん」

「なんだか私が指摘されてる気がするけど、気のせいよね」

 

 そう言って、壁際に立つ三人。

 その前を通るコンドルを見て、

 

「……アレはマスコット的扱いなのかな……」

「それなら、ドラゴンもそう言う扱いなのかしらね……」

 

 言いながら、奥にいるドラゴンを眺めるエウリュアレ。

 相性が悪い相手の為、喧嘩を売ろうと思わないエウリュアレは、比較的冷静だった。

 話が逸れていたことに気付いたオオガミは、一つ咳ばらいをすると、

 

「まぁ、普通の騎士もディーラーをやってるみたいだし、いけるんじゃない?」

「そうね……まぁ、軽く挑んでみましょうか。見ている限り、ランスロットがイカサマをしているみたいだし、バレなきゃいいかしら」

「そもそも、イカサマ自体バレたらダメなのだけど。だからうちではスロットだけにしているの」

「なるほどね……まぁいいわ。とりあえず、一回やってみましょうか」

 

 そう言って、適当なテーブルに座るエウリュアレ。しっかり男性ディーラーを選んでいるあたり、やろうとしている事は明白だった。

 それを知ってか知らずか、ラムダもその隣に座り、オオガミはその間に立つ。

 

「……マスターは参加しないの?」

「こういう賭け事は沼にはまるのが目に見えてるから……」

「そう……ねぇ、初日からこんなだったの?」

「そうね……最初にやって、沼るって言ってからずっと後ろよ。実際、その時は結構注ぎ込んでたし、危険だったわ。破産するつもりなんじゃないかって思ったもの」

「……そうなのね」

 

 ラムダはそれを聞いて、どこか可哀想なモノを見る目を向ける。

 オオガミはその視線から目を逸らし、見なかったことにする。

 エウリュアレはそれをみて苦笑いしつつ、視線を戻すと、

 

「それじゃ、お願いするわね」

 

 魔力を乗せて、ディーラーの粛清騎士に言うのだった。




 今日バニー王に一度負けて困惑しまくったのでメルト(ラムダに非ず)とリップで始末するという。やはりリップの攻撃力おかしい……

 エウリュアレデートが想像通り膨らみまくって来たので、前後編で分けるか、一本でやるかちょっと悩んでます。どうしたものか……


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やれることがないと暇ね(じゃあ儂と軽く見て回るか)

「むぅ……なんだかやることがなくて暇ね」

「そうですねぇ……じゃあ、適当に見て回りますか。ノッブも来ますよね?」

「あからさまに拒否権無いって言われてるんじゃが。いやまぁ構わぬが。どうせならようやっと来た沖田も連れていこうかと思ったが……おらんか。まぁ、そのうち合流出来るじゃろ」

 

 そう言って、いつもの軍服からバスターTシャツに着替えるノッブ。

 BBもチアガール風の水着に着替えると、アビゲイルの手を引いて町へ繰り出す。

 

 

 * * *

 

 

「いや、射的は余裕ですよね。ノッブの十八番じゃないですか」

「うむ。まぁ、儂は鉄砲が好きなだけで、射撃が上手い訳じゃないけどね! だってほら、殺せりゃ問題ないし!」

「……これだから戦国脳は……」

「いやだって、儂は点攻撃を面攻撃に変えただけじゃし……面なら上手い下手関係無いじゃろうが」

 

 むむっ。と睨み合う二人の間に挟まれたアビゲイルは、数秒あたふたとした後すぐになにかを閃いたかのような表情になると、

 

「喧嘩はダメよ!」

「「えっ、ちょ、まぁっ!?」」

 

 一瞬の躊躇いもなく放たれたデコビームに呑まれる二人。

 ビームから解放された二人は、苦い顔をしながら服の煤を払い落とし、

 

「よっしゃ。儂良いとこ見せるからな。見ておれよアビゲイル」

「えぇ。とっても楽しみだわ! 私、あのウサギのぬいぐるみが欲しいわ!」

「あ、BBちゃんはゲーム機希望で! やれるって信じてますからね!」

「阿呆! 儂はアビゲイルのを狙うからお主は自分でやれ!」

「ちぇ。仕方ないですね……じゃあそちらのを手伝うとしますか」

 

 二人はそう言うと、二人分のお代を払って一人二丁持ち、標的であるそれなりに大きいウサギのぬいぐるみに照準合わせ、

 

「これだと四段撃ちじゃないですか?」

「いや一斉に撃ったら一段じゃからな? つか、この数じゃ足りんからな?」

「細かいですねぇ……まぁいいですよ。よゆーです」

 

 そう言ってから一拍。パパン! パンパン! と放たれるコルク弾。

 まずノッブが放った弾がウサギの頭部に当たり後ろに仰け反りきったところに後押しするようにBBの放った弾が追加で一発、二発と叩き込まれ、大きく揺れると同時、素早く再装填されたノッブのコルク弾が二発叩き込まれ後ろに倒れ落ちていく。

 

「うわははは! 儂の勝ちよな! んじゃ、景品は貰うぞ~」

「もちろんイカサマとか言わせませんからね? イカサマは、ぬいぐるみの底に貼り付けてた両面テープの事ですから」

 

 BBにニッコリと笑って言われ、硬直する店主は、渋々といった様子でノッブに渡すと、

 

「ほれ、これで完璧じゃろ?」

「えぇ、えぇ! ありがとう、信長さん!」

「え、あれ、私は?」

「お主はほら、基本的に迷惑の方が度合い高いし……是非もないよね?」

「えぇ~……なんか悔しいんですけど……」

「あはは……BBさんもありがとう。とっても嬉しいわ」

「……なんだか同情された感じで、嬉しいような悲しいような……」

「面倒なやつじゃなぁ……」

 

 ノッブはそう言うとBBの頭をわしゃわしゃと荒く撫で、

 

「うむ。お主はよくやった。何気儂に合わせておったし。じゃ、儂オススメのうどん屋へ行くか。まぁ、武蔵のヤツに教えてもらったんじゃけどな」

「む、ぐぅ……髪がボサボサに……整えるのに時間はかかりませんけど、出来ればやめてほしいです……」

「どんなおうどんなのかしら! 美味しかったら、画家の方の北斎さんを誘っていきたいわ!」

「う、むぅ……いや、剣豪の方と会わせなければ良いか……そうじゃな。部屋にこもってると思うから引きずり出せば良いぞ」

「えぇ、アドバイスありがとう信長さん」

 

 アビゲイルはウサギのぬいぐるみを抱きしめながらそう言うのだった。




 久方ぶりのアビー。そして激レアな絡み。何気にこの組み合わせほとんど無いような……

 正直この二人の組み合わせを相手にイカサマを通すのは教授くらいじゃないですかね……


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儂のカジノ、また潰されたんじゃが(むしろ潰されない方がおかしいのでは?)

「さてさて……悲しくもノッブが二つ目のカジノを潰されましたけど、もうちょっと遊んでいきましょうか」

「ぶっ飛ばすぞBB貴様。霊基変更しても捕まるとか、マジありえんじゃろあの人斬り。普通に斬って来たぞ」

「マスターも一緒だったわね。とっても楽しそうだったわ、新選組。私も入れるのかしら」

「あの弱小人斬りサークルに? マジかー。儂、あそこに負けたかー……」

 

 アビゲイルが楽しそうに言うのを聞いて、地味にショックを受けるノッブ。

 BBはそれをにっこりと笑って見つつ、

 

「まぁ新選組もそこまで酷いわけじゃないですしねぇ。たくあんお化けが怖いだけで。沖田さん自体は割と緩いですし」

「いやいや。それなら儂も負けてないと思うのだが。やっぱあれか! ジェットか! 儂結局あらゆる可能性とか言うの手に入れてないからジェットに人気を吸われたのか! 許さん沖田ぁ!!」

「いえ、貴女の場合はその性格に難ありだと思うんですが。ちょっと怖いですもんノッブって」

「デジマぁ!? そんな怖いか儂! そんなことないじゃろ!?」

「さっきまで一緒に笑ってた相手にゼロフレームで発砲とか、普通にホラーですよ。自称魔王なだけはありますね?」

「いや儂の魔王は自称というか、むしろ勝手に呼ばれたというか……いやまぁ最終的に自分で名乗ってるけどね!?」

 

 ちょっと泣きそうなノッブ。

 だが、アビゲイルは申し訳なさそうに、

 

「ご、ごめんなさい信長さん……そう言うつもりではなかったの。でも、ちょっとあのジェットが面白そうだと思ったのは確かで……えっとその、信長さんが怖いわけではないのだけど、あの……」

「あぁ、良い良い。分かってる分かってる。うむ。なんか悪い事をしてる気分になってきた……」

「ダメじゃないですかノッブ。女の子は大事にしなきゃですよ?」

「そうじゃな……まずは貴様からぶっ飛ばすか……」

「け、喧嘩はダメよ……? でないと、またビームをしなくちゃならないわ……」

「「いや、喧嘩しててもビームはなしじゃろ(です)」」

「そ、そう……じゃあ、次は叩いて止めるわ……」

「「出来ればそれも断りたいのぅ(ですね)……」」

 

 昨日の一撃がちょっとした嫌な思い出になっている二人。

 気持ち的には年長者な二人は、小さな子に叱られるのは気持ち的に良いものではないのだった。

 

「それで、どうします? どこに遊びに行きますか」

「ん~……まぁ無難に水天宮かルカンじゃが……マスターならともかく、儂じゃ水天宮のチケットは手に入れられんから、ルカンじゃな。確かジャック達もおったし、ちょうどいいじゃろ」

「そうね! とっても楽しみだわ!!」

 

 そう言って、三人はルカンの劇を見に行くのだった。




 いやぁ……最終戦の名乗りがかっこよかったですねぇ……うんうん。
 しかし、聖杯でご飯ですか……うどんですか……なるほどなぁ……

 この三人、書いてる時は親子かなぁって思ったんですけど、振り返ってみたらどちらかと言うと年の離れた従姉妹では……?


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ごきげんようマスター(寝起きで心臓が止まるかと思った)

「あらマスター、ごきげんよう。気分はどうかしら」

「……寝起きドッキリ? 明らかに待ってたよね?」

 

 目を覚ますと自分が寝ているベッドに腰かけているラムダ。

 いや、今はスタァではないオフの状態で、更にいつもの霊基に戻っているのも相まってメルトと呼ぶべきだろう。

 

「えぇ、待っていたわよ? 今日は午後だもの、急ぐ必要もないしね。朝食には行けるかしら?」

「行けるよ。ちょっと待ってね」

 

 オオガミはそう言って起き上がると、メルトが目を反らした一瞬で着替えて、財布をポケットにしまうと、

 

「よし、もう大丈夫だよ」

「……なんか、着替える速度がどんどん上がってない?」

「そりゃ、いつもエウリュアレがいるところで着替えなきゃいけないわけですし。最近はメルトも一緒だしね。早着替えの修得に力を入れますとも」

「そ、そう……というか、よくその状態で暮らせるわね」

「主犯の一人に言われたくないなぁ……」

 

 そう言いながら、メルトの手を取って立ち上がらせると、

 

「じゃ、行こうか」

「……えぇ、行きましょうか」

 

 何処か不満そうな彼女を連れて、部屋を出る。

 

 

 * * *

 

 

「むっ。今日はお二人様かご主人。エウリュアレは先に食べて出ていったゾ?」

「あぁうん。大丈夫。今日はそういう予定だから」

「ふぅむ? よくわからんが、たぶんこういうのは普通逆になると思う。キャットの野生の勘がそう囁いてる……ご主人。夜道には気を付けるのだワン」

「めちゃめちゃ不穏なこと言ってくるね? まぁ気を付けるけど。じゃ、二人でよろしく」

「あい分かった。お好きな席に座って待つが良い。すぐにキャットの出来立てほかほか栄養満点朝御飯を運んでやろう」

「うん、よろしく」

 

 オオガミはそう言うと、メルトと一緒に手近なテーブルに向かい合って座る。

 

「キャットって、どこでも厨房を任されてる気がするのだけど、遊んでる時ってあるのかしら」

「たまに鬼ごっこをするときは嬉々として突撃してくるよ?」

「……この前みたいな事をそんな頻繁にやってるの?」

「修行の一環で。スカサハ師匠とメイドオルタが『体力をつけるには走り込みが一番。ゲーム形式で鬼ごっこでもやるか』とか言い出したのが原因。しかもそっちは礼装の使用禁止だから見つかったら終わりのかくれんぼですとも。唯一の救いは、師匠のルーンのお陰で魔力探知をされないことくらい?」

「……さてはあの二人、殺す気じゃないの?」

 

 自分のマスターがとんでもない目に合っているらしい事を知ったメルトは、若干不機嫌そうに顔をしかめる。

 

「まぁまぁ。別に困ってはないし、良いんじゃないかなって思ってるんだけどね? 何より、体力がつけばそれだけ遊んでいられるってことだし」

「そう? まぁ、アンタが嫌じゃないなら良いわ。それに、気が向いたら手伝うのも良いかもしれないわね?」

「それはその、師匠とメイドに相談してほしいなぁ……」

 

 オオガミのその言葉を聞いて、一瞬驚いたような顔をしたと思えば、すぐに悪巧みを思い付いたかのような笑みを浮かべるメルト。

 そして、そんな二人の間にキャットは料理を置く。

 ジュージューと響く肉の音。気泡が弾ける度に鼻を突き抜ける甘いソースの香り。それだけで美味しいと分かるその存在は、しかし朝から食べられるようなものではないと心が震える。

 

「コンドル100%デミグラスハンバーグ! 存分に食うと良いぞご主人!」

「あ、コンドルか。ならヘルシーだね?」

「ちょっと待って多いに騙されてるわよそれ。ヘルシーの欠片もないでしょうが」

「取れたて新鮮なコンドルをサクッと絞めてトコトンミンチにして作った自家製ハンバーグ。確実に旨いぞ。メルトはどうする。食えるか?」

「いや、量的にちょっと……サンドイッチとかお願いできないかしら」

「任せろ。ハムエッグで良いナ?」

「えぇ。シェフに任せるわ」

 

 メルトの意見を聞き、去っていくキャット。

 オオガミはとりあえず、とナイフとフォークを取り出すと、

 

「い、いただきます……!」

 

 そう言って、意を決して食べ始める。

 まずハンバーグを固定するためにフォークを刺す。直後にソースを弾きながら溢れ出る肉汁は、ヘルシーさを欠片も思わせない程の量で、ナイフの刃を軽く滑らせるだけでするりと切れる。

 その断面から流れ出る肉汁に勿体ないと言う気持ちを抑えつつ口へと運び、噛み締める。

 

「……うん、うまい!」

「そ、そう……食べられそう……?」

「うん。これなら余裕そう。メルトも食べる?」

「そうね。貴方が食べさせてくれるって言うのなら、食べても良いわ」

「じゃあ、はい。あーん」

「……一瞬も悩まず差し出してくるあたり、分かってたんでしょ」

「まぁね。ほら、食べて」

 

 オオガミに言われ、仕方ないとばかりに食べるメルト。

 そして、しばらくの沈黙の後飲みこむと、

 

「……美味しいじゃない」

「だよね……かなり当たりでは……カルデアでも食べられないかな……」

「コンドルを密輸入すればあるいは……?」

「嫌な賭けになりそうだね……」

「普通に頼めば輸入できそうだけども」

 

 そんな事を真剣に話しているうちに、メルトにもサンドイッチが届くのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ふぅ……意外にも食べれてしまった……」

「釣られて私も食べてしまったわ……恐ろしいわねキャット……」

 

 メルトはそう言いながら、霊基を変化させてラムダに――――スタァになる。

 そして、サングラスをかけると、

 

「それじゃ、私はこれで。あぁそれと、ペアチケットを上げるから、後で来なさいよ。午後からだからね」

「うん。ちゃんと行くよ」

「えぇ。次はステージと観客席ね。待ってるわ」

 

 ラムダはそう言うと、水天宮に向けて歩いて行くのだった。




 もう少し先延ばしに使用かと思ったんですけど、早めにやらないと私が持ちそうにない……というか、今回やりたかったの、最後のチケット渡しだけだったんですけど、気付いたらいつもの倍書いてるんですが。メルト凄いな執筆量増えたよ!?

 でも明日が本番。期待に応えられるように頑張るます……


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エウリュアレと二人で(夢のようなひとときを)

「ふふっ。さぁマスター? 今日は何処に連れていってくれるのかしら」

 

 そう言って、楽しそうに笑うエウリュアレの差し出した手を取りながら、オオガミは、

 

「ん~……とりあえずご飯食べてからかな?」

「……まぁ、お昼時だものね。私も食べてないから良いけど、私が食べてたらどうするつもりだったの?」

「あ~……その可能性は考えてなかった。エウリュアレはこういう時は食べてこないと思ってたし」

「……信じすぎてないかしら。そんなに信用されてると、裏切りたくなっちゃうわ」

「それはイヤだなぁ……」

 

 ふふっ。と笑うエウリュアレに、オオガミも笑みを返す。

 

 

 * * *

 

 

 ジェットな沖田さんに潰されたとはいえ、そこはジャパニーズソウル。復興は早い。

 既にカジノとしての機能だけでなく飲食店も復活しているので、今回はここで食事をすることにします。とオオガミは言う。

 

「ここって、大丈夫なの? その、色々と」

「まぁ、カジノはともかく、料理は大丈夫だと思う。値段のわりに美味しいのが日本なので」

「そう……で、何を食べるの?」

「うどん」

「……ここまで来て?」

「いやいや。ここのうどんは美味しいからね? 武蔵ちゃんお墨付きだよ?」

 

 そういう二人の脳裏に、『いえーい』とピースしながらルルハワで634杯のうどんを平らげた武蔵が(よぎ)る。

 あの時はココナッツうどんと言っていた気がするが、ゲテモノ的雰囲気でも平らげそうな彼女がオススメするというのは、どこまで信じていいのか分からないのが問題ではあった。

 そんなときだった。

 

「あれ? マスターじゃないですか。何してるんですか? こんなところで。ちんちろですか? やめた方がいいですよ~? ここ、イカサマが横行しているらしいので」

「いややらないよ。というか、沖田さんこそ何してるのさ」

「私ですか? 私は昼食を食べに来ました。そこの路地に入って少し行ったところの右手側に美味しいうどん屋があるんですよ! いやぁ、武蔵さんに教えて貰って正解でした! 是非マスターも行ってみてください! では私はこれで!」

 

 ではでは~! と言ってジェットで飛び去っていく沖田。

 それを見送った二人は、

 

「水着に浮かれているとは言え、沖田さんが好評なら美味しいのでは?」

「えぇ、あれは信頼できそうね。同じところ?」

「うん。教えられた場所と同じ。じゃ、行ってみようか」

「そうね」

 

 人通りが多いからはぐれないようにと互いに手を強く握りながら、二人は路地へと向かう。

 

 

 * * *

 

 

「普通に美味しかったわね。ラスベガス要素皆無だったけど」

「別にラスベガスっぽいものを食べなきゃいけない訳じゃないし、そもそもエウリュアレは揚げバター食べたでしょ」

「ふふん。女神だからどれだけ高カロリーでも肉体的に影響はゼロよ」

「な、なんてこった……それは普通に羨ましい……!」

「えぇ、存分に羨みなさい。で、次はどこ?」

 

 楽市楽座を出たエウリュアレは、オオガミ先導のもと、何処かへと向かっていた。

 

「ん~……水天宮に向かおうか、シルク・ドゥ・ルカンに寄り道しようか考えてて……」

「ふぅん? じゃあ、水天宮に行きましょう。ルカンは時間を忘れやすいもの。後に回した方がいいわ。それに、水天宮は動物とのふれ合いもあるでしょ。そっちの方がいいわ」

「そう? じゃあそうしようか」

 

 オオガミがそう言うと、エウリュアレはオオガミの横に並んで歩く。

 

「それにしても、何度通ってもスゴいところよね……」

「警察が文字通り奔走してるって、普通じゃ考えられないよね」

「えぇ、本当に。そのうち死体でも降ってきそうだわ」

「はははは……いやまさかね?」

 

 そう言いながらちらりと後ろを確認したオオガミは、次の瞬間にはエウリュアレの手を強く引いて自分の前で抱き止めると、真横を燃え盛る大車輪が転がっていく。

 それを見送って深いため息を吐くオオガミと、それに気付かず抱き止められたまま硬直しているエウリュアレ。

 そんな二人の後ろから、

 

「おぉ、マスターじゃねぇか! どうしたよ何してんだ?」

「こっちのセリフだよ。いきなり大車輪が飛んでくるとか、ホラーだよ。何があったの?」

「あ? いやな? オレもモリもあんまカジノ向いてなくてな。賭けられる側なら楽しそうだってんで、ベオウルフに頼んでモリと戦ってんだよ」

「殺伐としてらっしゃる……全く。危ないから気を付けてよ」

「おぅ。じゃ、そっちも頑張れよな!」

「うん……うん? まぁ、がんばる~」

 

 走り去っていくアシュヴァッターマン。

 オオガミはそれを見送ったあと、エウリュアレを解放すると、

 

「それじゃ、行こうか」

「……なんか、不意打ちを食らった気分よ」

 

 エウリュアレはそう呟いて、オオガミの脛を軽く蹴る。

 

 

 * * *

 

 

 ラムダから渡されていたペアチケットで入場する二人。

 なんとなく感じていた視線が少なくなったので、ある程度は撒けたらしい。

 

「う~ん……やっぱりこの経験値をチップにされる感覚は慣れないや……メルトに免除出来ないか聞いてみようかな」

「諦めた方がいいと思うけど。むしろ嬉々として強化しそうよ?」

「ぐぬぬ……まぁ正直その通りの気がする。しょうがない。何度も出入りしなきゃいい話だし、諦めよう」

 

 蹴られた場所を気にしながら、オオガミはエウリュアレの手を引いて歩き出す。

 

「あぁ……なんであの子達はリヴァイアサンなんて呼ばれてるのかしら。不思議ね」

「関連性は無さそうなんだけどなぁ……まぁ、メルトが言ってるんだし、そっとしておこう」

「地雷を踏みに来たんじゃないしね。えぇ、楽しみだわ。どんな舞台なのかしら」

「毎度見に来てるけど、それでも飽きないからね。流石メルト――――いや、今はラムダの方がいいのかな」

「そうね。スタァな彼女はラムダよ。でもまぁ、本人は気にしてなさそうだけど。芸名みたいなものじゃないかしら」

PN(ペンネーム)みたいなものだよね。そういう職業だし、是非もないか」

「……たまに出るわよね。ノッブみたいに是非もないって。私は気にしないけど、気を付けた方がいいんじゃない?」

「そう? まぁ、気にしておくよ」

 

 オオガミはそう言って、ペンギン――――リヴァイアサンに近付くと、

 

「あだっ、痛い痛い! エウリュアレ気を付けて! つついてくるよコイツら!」

「そりゃそうでしょうよ……だって不審者を前にしたら誰だって突き刺すわ。もちろん私もね」

 

 エウリュアレはそう言うと、ペンギンから逃げてきたオオガミの脇腹をツンツンと突く。

 

「ちょ、や、ヤメロォ!」

「ふふふふふ……ちょっと楽しくなってきたわ」

「あ、悪魔だ……悪魔がいる……!」

「残念女神よ。だからもっと甘やかしなさい」

 

 エウリュアレはそう言いながら、楽しそうにオオガミの脇腹を突き続け、最終的にオオガミがエウリュアレを抱えてステージまで連れていくのだった。

 

 

 * * *

 

 

「はぁ……やっぱりいつ見ても良いわね……」

「本当にね。地味に沼に嵌まってる気がするよ。メルトにしてやられた感じ」

「そうね……というか、貴方の場合、ステージを見ているのが好きなんじゃなくて、ステージで踊っているメルトが好きなんじゃないの?」

「ふっ……否定しきれないね……」

「そういう正直なところも、貴方の厄介なところよ」

 

 エウリュアレはそう言って頬を膨らませると、

 

「私だってそのうち出来るようにするわ」

「え……いや、無理しないで? それで怪我したら殺されるの俺なんだけど?」

「別に、怪我をしなきゃ良いのよ。何の問題もないわ」

 

 エウリュアレはそう言ってオオガミの腕に自分の腕を絡ませると、

 

「じゃあ次ね。何処へ行くのかしら」

「ん~……この時間だとキャメロットはそろそろ営業終了するから……HIMEJIとか?」

「そうね……えぇ、そうしましょうか」

 

 そう言って、エウリュアレは上機嫌に歩き出し、我に返ったかのように硬直すると、

 

「……今さらだけど、今してるのって、カジノ巡りよね……それってどうなのかしら……」

「いや、カジノって言ったって、楽市楽座は縁日状態だし、水天宮はラムダのステージだし、ルカンは演劇舞台だし、HIMEJIはサバゲー場だよ? 全うなカジノとして動いてるのはキャメロットとピラミッドくらいじゃない……?」

「……なるほど。そう考えたら何の問題もないわね。よし。じゃあHIMEJIに……って、待って? サバゲーに二人で行くのは無謀じゃない?」

「いや、別に観戦するだけでも十分だと思うんだけど……」

「……やっぱりルカンにしましょう。HIMEJIはみんなと行きたいわ」

「了解。じゃ、ルカンに向けてレッツゴー!」

 

 オオガミはそう言うと、ルカンに向けて歩き始めるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「あ、弟くん! いらっしゃい!」

「お姉ちゃん、もう復活してるのか……」

 

 入るなり、自称姉(ジャンヌ)に見つかるオオガミ。

 だが、彼女はすぐにオオガミの隣にいるエウリュアレを見ると、

 

「あらあら……これはお姉ちゃん、邪魔しちゃいけないと見ました! 次の劇は10分後なので、出来るだけ早く席を取っておいた方がいいですよ! お姉ちゃんからのアドバイスです!」

「あぁ、うん……勘違いはされてないと思うけど、それはそれとして、あんまり茶化されるとラムダ呼ぶからね」

「物理的にお姉ちゃんを始末しに来てます……? というか、お姉ちゃんは別に気にしませんって。二股はどうかと思いますけど」

「それは否定しきれない……でもきっとギリシャ神話的にセーフだと思う……!」

「……ゼウスの浮気相手って、ヘラに理不尽な制裁を受けまくったのよね……」

「今その話をするって正気ですかエウリュアレ様!?」

 

 正妻が一番怖いというのは、たぶんどこの世界でも同じなのだろう。

 そもそも一番正気とは思えない行為をしているのはオオガミの方だった。

 

「そ、それで、次の劇には出るの?」

「私は……そうですね。弟くんが見たいのであれば。オルタとリリィも連れてきますよ?」

「いや、劇に出るのはお姉ちゃんだけで。三姉妹じゃないときの演技ってどんなかなって思ってさ」

「ん。そうですか……じゃあ仕方ないですね。お姉ちゃんのスゴいところ、弟くんにバッチリ見せちゃいますから!」

 

 そう言って走っていくジャンヌを見送った二人は、

 

「じゃ、席取り行こうか」

「もう席埋まってると思うけどね」

 

 そんな事を話しながら向かう。

 

 

 * * *

 

 

「ふぅ……やっぱり一人ならマトモみたいだね」

「いや、表面だけよ、アレは。だって時々私たちを見ていたもの。凄いアピールしてたわ」

「……なるほどねぇ。お姉ちゃん、変わらずと言うところか。ルーラーで召喚できればマシになる……?」

「うちだとそうならない気がするわね……むしろ堅牢さが合わさって城塞並みのウザさになるのが見えるわ……」

「現実は非情……」

 

 町が太陽の赤さとネオンの刺々しい色を拮抗させてる時間帯。そんな時間にルカンから出てきた二人は、特別目立ってたジャンヌに複雑そうな顔をしていた。

 が、すぐに気を取り直すと、

 

「そんじゃ、そろそろ暗くなってきたし、向かいますか」

「あら、どこに行くの?」

「ふっふっふ。それは秘密だよ」

 

 そう言いながら、歩き始める二人。

 しばらく歩いていると、

 

「あら、マスターさん?」

「ん? なんじゃマスターか。何して……あぁ、いや、察した」

「なるほどなるほど。BBちゃんも分かりましたよ? お楽しみみたいですね!」

「珍しい組み合わせだね……何してるの?」

 

 ノッブ、BB、アビゲイルの三人に会った二人は、気まずそうに笑う。

 

「儂等はちょいと散策してただけじゃ。沖田にカジノは爆砕されるし、なんだかんだラスベガスであんまり遊んでなかったし、後ついでにアビゲイルが暇そうにしてたから連れ回して遊んでるんじゃよ」

「なるほど……まぁ、遊ぶのは良いけど、あんまりアビーに悪いこと吹き込まないでよ?」

「いやいや。子どもはちょいと悪い方が良いんじゃよ。そっちの方が、事の善悪の区別がつきやすいってもんじゃ。いや、サーヴァントは成長せんけど。まぁちょっとは変わるじゃろ」

「ノッブの悪いはちょっとレベルが違う気がするんだよね……」

「大丈夫よマスターさん。私もちゃんと良いことと悪いことの区別くらいつくわ!」

「大丈夫よアビー。マスターはあの二人と一緒にいる人全員に言うもの」

 

 そう言ってアビーをなだめるエウリュアレ。

 オオガミはそれを見て、

 

「アビーが抱えてるウサギのぬいぐるみは作ったの?」

「いや、景品じゃ。儂のところの射的屋をちょいと荒らして取ってきた。イカサマしとったし、文句言えんじゃろ」

「自分の領地で行われてる不正を正面からぶち破ったのかノッブ。良いの?」

「うん? いやだってほら、やるのは別に構わんが、儂にされたら腹立つし。全うに金は払ったんじゃから文句言われる筋合いはなかろう」

「それなら良いけどさ……そこの店、破産するんだろうなぁ……」

 

 オオガミはそんな事を言いながら、それはそれとして喧嘩を売った相手が悪かったのだろうと、店主に黙祷する。

 

「んで、そっちはどっか行く予定があったんじゃろ? ここで油売ってて良いのか?」

「あぁ、うん。急ぐ必要はそんなにないし、もうちょっと暗くなった方が良いだろうし。そっちは?」

「ふむ……なんとなく何処へ向かうか分かったが……まぁ、確かに時間かけた方が良いか。儂等はそっちの目的地からの帰りでな。水天宮に入れなかった代わりじゃ。で、飯をどうするかってところで今悩んどる。なんか案あるか?」

「武蔵ちゃんオススメのうどん屋とか?」

「あぁいや、それはもう行った。旨かったわ。あのうどん狂いの舌はちゃんと肥えておったわ……ラスベガスに来てまで何食べてんだろうってちょっとなったけどね……後はギルダレイ・ホテルのキャットとか?」

「いやそれ確実に旨いのが分かってるから面白味皆無じゃろうが。他にないのか。他に」

「えぇ~……じゃあ、ルカンとか。あそこ、劇を見る人を対象に軽食を売ってるから良いと思うんだけど」

「うぅむ……またルカンかぁ……いや、あそこは毎度違う劇が売りじゃし、楽しめるか。よし。行き先決まったぞー! 早めにせんと混むじゃろうし、ささっと向かうからなー!」

 

 ノッブがそう言うと、BBとアビゲイルはすぐに集まり、

 

「んじゃ、楽しめよマスター」

「後でメルトと一緒に感想を聞きに行きますね~」

「いってらっしゃい、マスターさん!」

 

 そう言って去っていく三人を見送るオオガミとエウリュアレ。

 そして、

 

「それじゃ、こっちも向かおうか」

「えぇ、エスコートお願いね、マスター?」

 

 

 * * *

 

 

 町は既に街頭とネオンの刺々しい光だけが大地を照らしていた。

 そんな町並みを、二人は観覧車から見下ろし、

 

「今日は、どうだった?」

「そうね……まぁ、良かったんじゃない? 所々アクシデントがあったにせよ、大体計画通りでしょ?」

「まぁね。最大の懸念事項は飽きてないかってことだったけども」

「あら、人が違えば、それだけで新鮮なのよ? 更に、同じ人でも、一回目と二回目は感じ方が違うのだから、何度行っても、楽しいところは楽しいわ。だから、また次もよろしくね? オオガミさん?」

「……そこで名前を呼ぶのはズルいと思うなぁ……」

 

 オオガミはそう言って視線をエウリュアレから窓の外へと逸らす。

 エウリュアレはそれを見て笑みをこぼすと、オオガミの隣に移動して、寄りかかるのだった。


































 うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!(理性蒸発(夢火を注ぎ込む音(悶死

 書いててダメでした。恥ずか死です。なんですかこのエウリュアレデレ過ぎじゃないです? これが絆11の力か? タグに"ヒロインはエウリュアレ"を書き込むべきか? いや書かなければならないのでは? とりあえずこれは今年最高の一話だな……

 …………よし。メルトで正気に戻った。エウリュアレ様が名前を呼ぶのはズルいと思います(洗脳継続

 とりあえず、夢火を注ぎ込む決意が生まれてしまったので、メルト用の一つが溶けます。後4つしかないのだが(震え


 あ、次のデート回を誰にするかのアンケートしますね。ご協力お願いします。期限は思い立ったときですので、すぐ終わる可能性もありますのでお早めに。


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昨日はお楽しみでしたね?(意味深なことは何もないわよ)

「で、どうだったんです? デート」

「……普通に楽しかったけど?」

 

 話を聞かせてもらう代わりに、と言ってBBが持ってきたチョコレートを食べながら答えるエウリュアレ。

 それを聞いてBBは不満そうな顔をすると、

 

「そう言うのが聞きたいんじゃないんですよ。昨日会った時点で楽しんでるのは分かってましたし。どういうところが良かったかっていうのを聞きたいんです~っ!」

「どういうところって言われても……あぁ、ノッブのところにあったうどん屋は美味しかったわ。なんでラスベガスに来てまでって思ったけど」

「いや、どんだけうどん推すんですか。なんですか。誤魔化すときはみんなそれを言えって言われてるんですか。もう、ふざけないでくださいよ」

「そうねぇ……腹筋がちゃんと硬かったのは流石だったわねぇ……ちゃんと鍛えてたわ」

「なんで身体の方に行くんですか……というか、それってノロケなんです? どこのタイミングでそんなの確認したんですか……」

「水天宮でペンギンと一緒に隣からつついてただけよ。怒られたけど」

「いやそりゃ怒りますよ。っていうか、ペンギンにつつかれて無傷だったんですかあの人。あそこのペンギン、結構攻撃力あると思うんですけど」

 

 ついに防御力も上がってきたかぁ。と思いつつも、そんなペンギンに紛れてオオガミの脇腹をつついているエウリュアレを想像して笑みがこぼれるBB。

 

「後は……そうね。ルカンも凄かったわ。やっぱりあの即興劇は何時見ても良いものだわ。集団で行くときは、劇よりも周りの方が気になっちゃって集中できないし。まぁ、ジャンヌがいたからそれはそれで集中出来なかったけども」

「そうなんですか……あの自称姉。結構厄介ですね……鮫を召喚してましたし、変な神と契約してそうな雰囲気なんですよね……黒い鬼を従え始めたらいよいよ私の敵ですね。海に沈めないといけません……」

「聖女が悪魔を従えるってどうなのかしら……」

「彼女ならあるいはあり得るような気もするんですけどね……まぁ、夜鬼なんて早々出てきませんって」

 

 なんとなくフラグっぽいことを言うBBにエウリュアレは苦笑いをしつつ、

 

「まぁ、私はそんな感じだったわ。個人的には楽しめたし、そっちはそっちで遊んでたんでしょ。良いじゃない、別に」

「乙女的に気になるんですよ? そういうものなんです」

「そう……まぁ、楽しそうで何よりよ。それじゃ、私はメルトと遊んでくるわ」

「き、昨日の今日でですか……いえ、まぁ、センパイもキャメロットに殴り込みに行ってますけど。余韻もなにもあったものじゃないですね……」

「余韻って……毎度あなた達と会わないだけでわりといつもの事だもの。変に意識して気まずくなる方が嫌だもの。それじゃあね」

 

 エウリュアレはそう言うと、BBから貰ったチョコレートの箱を抱えて去っていく。

 しかし、その耳が赤くなっていることに気づいたBBは、にんまりと笑うのだった。




 エウリュアレのこのかわいさをどうするべきか、どう表現をして良いのかが分かってないのです。ヒロインの性能を活かせぬまま死にたくはないでござる……

 そしてアンケートで優勢なメルト……でもなんだかんだ拮抗してるのがスゴい。何より技術部が意外と人気で驚いてます。ノッブとBBだよ? 良いのかそれで。私も見たいけども。


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なんだかこういうのにも慣れてきた(だからって私にひたすら食べさせないで)

「……なんかもう、慣れてきてる自分がいるよね」

「……だからって、どれだけ詰め込めるかみたいな事しなくて良いから。そろそろ蹴るわよ」

 

 そう言って、自分で買ってきたマカロンを食べさせるようにオオガミに催促するメルト。

 

「今日はメルトなの? スタァはおやすみ?」

「……見たい?」

「うん。見たいけど、お願いできる?」

「えぇ、貴方が見たいならね」

 

 そう言うとメルトは全身を水に変え、次の瞬間にはリヴァイアサンパーカーを着てラムダへとなっていた。

 

「今日はオフのつもりだったけど、貴方の部屋だもの。気にしなくて良いわよね」

「流石にここまでは……いや、可能性はある……?」

「あら、それならやめておこうかしら。スキャンダルはダメなの」

「今さらだと思うけどね……食べさせてる時点でカッコいいより可愛いの方が強い、じゃなかった。スキャンダルになると思うよ?」

「……やっぱり戻すわ」

「あぁぁ! ごめんなさいパパラッチは始末しておきます!」

「物騒すぎるのだけど。極端じゃない? 別にそこまでしなくても、責任をとって貰えるならそれで良いわ」

 

 そう言って、舌舐めずりをしてニヤリと笑うラムダ。

 オオガミは少し戸惑いつつ、

 

「う、あ……あの、それはつまり、アレですか。邪魔するものは殲滅しろってことですか」

「いや、だからそこまで言ってないわよ。あぁごめんなさい。もしかしなくても、私の蹴りがご要望だったのかしら。仕方ないわね膝で落とすわ」

「や、やめ、ぐはぁ!」

 

 笑顔に青筋を浮かべながらオオガミの鳩尾に膝蹴りを叩き込むラムダ。

 オオガミはその場に崩れ落ち、

 

「やっぱり……パパラッチは、始末すべきだと……」

「まだ言ってる……私としては、記者の取材に耐えれるかって聞きたかったのだけど。でもそうすると、エウリュアレはライバルになるのかしら。争った方がいいの?」

「それで争い始めたら真っ先に殺されそうなのはこっちなんですが。主に周囲に」

「別に、一夫多妻制を取り入れちゃいけないわけでもないでしょうに……あぁ、貴方が日本国籍だからそっちで判定されてるのかしら」

「たぶんね。どのみち、エウリュアレの所だと確か一夫一婦制だったと思うし」

「面倒ね……いえ、まぁ、気にしなくても良いかしら。たぶん、カルデア内ならそんな気にしないでしょ」

「嫉妬の視線は痛いのですが……」

「ふふっ。この姿の私は、ちょっと嫉妬深いわよ?」

 

 そう言って、蠱惑的な笑みを浮かべるラムダにオオガミは微笑み返してマカロンをひとつ取ると、

 

「嫉妬深くても、別段困る事はないかな」

「……もう」

 

 そう言ってオオガミが差し出したマカロンを、ラムダは食べるのだった。




 メルト、そろそろ私の制御を離れそうなんですけど……

 そして、アンケートのメルト率よ……メルト書かなきゃ……


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マスター一人とは珍しいのぅ(みんなやることがあるんだよ)

「めっずらしいのぅ。いつもくっついてるエウリュアレとメルトはどうしたんじゃ?」

「メルトは水天宮の仕事でいなくて、エウリュアレは久しぶりに姉妹で遊んでくるって言ってステンノとアナ、それに見つかってしまったメドゥーサを連れて出掛けたよ」

「あぁ、なるほど。それで暇になったからこっちに来たんですね」

 

 それならしょうがないですね。と一人頷くBBにトランプを箱で投げつけるオオガミ。

 だがBBはそれを片手で取ると、

 

「全く……センパイ、素直じゃないんですから。素直に言えばBBちゃんだって遊んであげますからね」

「いや別にBBは……」

「えっ、なんですかその反応。普通に傷付くんですけど……」

 

 地味に、しかし少なくないダメージを受けているような様子のBBを横目に、ノッブは立ち上がると、

 

「よし。そこらへん歩いてるはずのメイドを捕まえてサバゲーでも行くか。このチームなら行けるじゃろ」

「ふむふむ……あれ、そうするとロビンさん(肉壁)がいない? BBちゃん大ピンチでは?」

「平然とロビンさんを壁扱いしてるんだけど。ノッブ、パートナーでしょ。なんとかして」

「儂にも流石に出来んことはある。BBの事は諦めるんじゃ……どうしようもない……」

「待って待って。待ってください。なんで私手遅れな子みたいな扱いを受けてるんですか。話を聞かないだけでやることはちゃんとしてますよ! 特攻隊で良いですか!?」

「いやアサシンばりの背面奇襲担当じゃ」

「ある意味前線より危ない……!」

 

 とりあえずBBで始末ができるよね。と言いたげな二人に戦慄するBB。

 ノッブはその間にも出掛ける支度をしつつ、

 

「霊基は水着で良いか。マスターはどうする。アトラス院か?」

「ん? いや、その場で着替えるから特には。BB。メイドオルタがどこにいるか分かる?」

「あぁ、それなら検討はついてます。暴れるならと考えて、一応全員の行動は把握してますから」

「なんでそんな危険人物みたいな事を……あぁいや、危険人物だったね。ごめん」

「納得いかないです……! BBちゃん、ちゃんとしている方が多いと思うんですが……!」

「それを遥かに上回る行為しとるんじゃし、是非もなくない? まぁ、儂も同じようなもんじゃけど」

「ノッブは分かります。でもなんで私まで同じ扱いなのか。コレが納得いきません……!」

「どっちもどっちだよ……」

「ひ、ひどい……! センパイがそんなことを言うなんて……!」

 

 しくしくと泣くBBだが、あいにくオオガミもノッブもうそ泣きだと気付いているのだった。

 

「よし。じゃあ行くか」

「おー」

「あ、ちょっと、さりげなく置いていこうとしないでください!」

 

 そう言って、三人はHIMEJIカジノに向かうのだった。




 なんだかんだこの悪友三人組が一番気楽な気がする……エウリュアレもメルトも甘いので胸焼けしやすいのでは……?

 しかしここまで恋愛要素皆無で突き進めるの、こいつらくらいでは……? 何よりも一番ギャグ寄りなのだ……

 そして安定のメルト。やはりメルト回は見たい人多いんですね……


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イカサマとかに弱そうですよね(吾だって負けるだけではない)

「ここ、イカサマとか普通に行われてるんですね。大丈夫ですか? 貴女、騙されやすいですし」

 

 違法カジノを歩きながら、バラキーに聞くカーマ。

 すると、バラキーは若干不機嫌そうに、

 

「ふん。いい加減吾だって学習する。勝ったら殴る。負けたら殴る。最後にイカサマをしているのが分かったら花火に変える。これであってるだろう?」

「いや全く分かんないんですけど。最初から勝負するつもり皆無じゃないですか」

「いやなに、別に相手を殴るわけではない。大体はコンドルが悪いとオオガミが言っていた故な。憂さ晴らしはそこらへんを歩いてるコンドルでするというわけだ。うむ。完璧だな」

「何言ってるんですかあの人。暴力の化身ですか?」

「後、イカサマしてるやつは打ち上げておけとノッブが言っていた。ここの頭領が許可していると言うことは、認められているのだから存分にやるぞ」

「違法カジノでしたよね、ここ……あぁ、新撰組対策ですか……」

 

 それで一回滅ぼされましたもんね。とカーマは呟きつつ、適当に店を覗く。

 

「まぁ、遊ばなくても楽しめそうな所ではありますけど……どうします?」

「うむ……正直遊びたいのだが、お小遣いがもう心許ない。今はどうしたものかと悩んでいる」

「お小遣い制だったんですか……正直それが一番驚きなんですけど」

 

 財布の中をカーマに見せながら悲しそうに言うバラキー。

 カーマはそれを見て少し考えると、

 

「仕方無いですね……ちょっと待っててください」

「う、うむ……分かった」

 

 頷くバラキーを置いて、カジノに入っていく。

 

 

 * * *

 

 

「はい、あげます。私が使うより、貴女が使った方が絶対面白いですし」

「う、む……貰えるなら貰うが……何故だろう。素直に喜べぬ……」

 

 ものの数分で大量にQPを稼いできたカーマ。それをバラキーに渡すと、貰ったバラキーが複雑そうな顔になっていた。

 

「ほら、遊べますよ。大丈夫です。私としては失っても惜しくない金額ですし。相性良いので稼げるんですよね、ここ」

「そ、そうか……うぅむ……カーマは人ではないから人間からの施しではない……ならまぁ、ありか……?」

「お小遣い制の時点でそこを気にする必要ないと思うんですが……」

 

 悶々と悩むバラキーに、カーマはため息を吐くと、

 

「じゃあ私に何か買ってきてください。それで貸し借りは無しです。良いですか」

「うむ……分かった。要望はあるか?」

「いえ、別に。本当に何でもいいです。お任せしますね」

「それが一番困るのだが……何か指標はないのか。結構厳しいのだが……」

「はぁ。全くしょうがないですね……じゃあ、貴女が食べたいと思ったものでいいですよ。もちろん、貴女も買ってくること。それでどうです?」

「うむ! 任せろ!」

 

 そう言って、バラキーはカーマの手を取って走り出すのだった。




 カーマは詰めが甘いだけでポンコツではないのです……伊達にカルデアを半壊させたのではないのですよ……

 それにしても、なんだかこの二人、年の離れた姉妹か母子にも見えるような……?


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何してるの景虎さん(おやマスター。しばらくぶりですね?)

「む。マスターではないですか。どうしたのですかこの様なところで」

「いやむしろ景虎さんの方が何してるのさ」

 

 もはや慣れた楽市楽座の出店のひとつにいる景虎に声をかけたオオガミ。

 何やら不穏な気配があったので声をかけたのだが、普通の店に見える。

 

「ここ、何の店?」

「こちらですか? こちらはたこ焼き屋ですね。私は雇われた身なのですが、オーナーがこれまた小さな子でして……しっかりと管理できているのは素晴らしいと思います。ただ、たこ焼きのメインが何処産なのか教えてくれないのです……かなりの大ダコのようなのですが、足しか送られてこないものでさっぱりです」

「うん、不穏な気配の正体はこれか。で、肝心のオーナーは?」

「さぁ? 今朝から姿は見てないですね」

「なるほどね……」

 

 そう言って頷くオオガミは、ポケットから通信機を取り出し、

 

「緊急。アビー捜索お願い」

『はいはーい。すぐ連れていきますね~』

 

 BBにお願いしたオオガミは通信機を切り、景虎に向き直ると、

 

「たぶん、タコだけ変えれば出店できると思うよ。じゃ、よろしくね」

「はぁ……? とは言われましても、この量ですし、処分も大変と言いますか……お任せしたいんですが」

「オーナーに文句を言うしかないかなぁ……完全に自爆だよ、うん」

 

 そんなことを言っていると、オオガミの隣に開いた門から飛び出してくるBBとアビゲイル。

 しかしそこで想定外だったのは、二人の手には何故かたこ焼きがあることだった。

 

「……さてBB。どういう状況?」

「まぁまぁセンパイ。おひとついかがです? 美味しいですよ、このたこ焼き」

「いやぁ……目から生気を失ってる人におすすめされてもなぁ……景虎さん任せた!」

「承知!」

 

 飛び出す景虎。しかし、突き出された槍は下から現れた触手によって上方に弾かれる。

 それと同時にBBの手が、正確に景虎の口の中へとたこ焼きを放り込む。

 それを見ていたアビゲイルは、不気味な笑みを浮かべながら、

 

「ふ、ふふふ……ようやく完成したわ……初めてのお料理から皆の目を盗んでコツコツと作り続けた甲斐があったわ……『おいしい"たこ"やき』完成品一号! なんかスゴい神様の力を使ってマスター包囲網を完成させるわ!」

「なんかめちゃくちゃ悪い子になってるぅ!」

 

 そう言っている間にも何かに抵抗していた景虎は、しかし不穏な予感と共に振り返る。

 

「さぁ、みんな! マスターを捕まえるのよ!」

「「おー!!」」

「洗脳兵器か凶悪すぎる!」

 

 誰が彼女にあんな知恵を授けたのかと思いつつ、全力で逃げ始める。

 

 

 * * *

 

 

「あらマスター。また鬼ごっこ? 暇なのかしら」

「違うどちらかと言えばパンデミック!」

 

 はぁ? と不審そうな顔でオオガミを見るラムダ。

 しかし、後ろから追いかけてくるBBと景虎を見て、

 

「あぁそう言うこと。良いわよ、私の邪魔をしたこと、後悔させてあげるわ! BB!」

「ピンポイントな恨み!」

「おかしいですなんで私だげほぁ!」

 

 女の子としてそのダメージボイスはどうなのだろうかというツッコミは置いておくとしても、見事なまでの頭突き。追撃のペンギンもそのダメージに拍車をかけている。

 

「チッ……始末できなかったわね」

「ひ、酷い……今回私は被害者なのに……」

 

 しくしくと泣くBB。しかし、当然のごとく無視され、その間に景虎も同様に頭突きをくらい、倒れていた。

 

「一切の容赦なし……うんうん。清々しい一撃だ……」

「それ褒めてるの? まぁ良いわ。それで? なんでこうなったのよ」

 

 ラムダは呆れたように、オオガミに尋ねた。

 

 

 * * *

 

 

「……そう。つまりBBがしくったのが原因なのね?」

「あれちょっと待ってください。そう纏められると私が元凶みたいじゃないですか」

 

 流石にそれはない。と文句を言うBB。

 それに割り込むように景虎が、

 

「あのたこ焼き凄かったんですよ。美味しいんですけど、こう、内部から侵食されてる感じがして……悪意を感じないのが逆に怖いですよ」

 

 そう言って、どことなく悔しそうな顔をする景虎。

 ラムダはそれらを聞いて、

 

「まぁ、ともかく。アビゲイルを止めれば一件落着でしょ?」

「うん、とりあえずの目標はそれ。注意点は、たこ焼きくらいかな?」

「忠告としてはかなり意味不明だけども。要するに経験値に変えてしまえば良いだけの事じゃない。何の問題もないわね」

「うん、まぁ、うん。それはメルトにしか出来ないっていうツッコミはしないよ……じゃあBB。アビーの所によろしく」

「は~い。思わぬ無様を晒したBBちゃんはおとなしく従いま~す」

 

 BBはそう言って門を開き、オオガミとメルトは躊躇なく飛び込んでいくのだった。

 

 

 * * *

 

 

 これは後にSAN値ハザードと呼ばれ、一部関係者にトラウマを植え付ける戦いになるとは、この時には誰も知るよしはないのだった。




 なんでこうなったのかを自問自答し、とりあえずアビーのたこ焼き屋を再び出したかったのだけは思い出しました。どうしてこうなったかは分かんないです。なんとなく長編になりそうな予感がしたので急遽ダイジェストに。ぐだぐだになったのもあって消化不良……


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水着なのに水着らしいことしてなくないですか?(夏イベに あると思うな 水遊び)

「今更なんですけど、水着になったのに戦ってばっかりで、一切水着らしいことしてなくないですか?」

「それ以上はいけないぞBB……! 一昨年なんか水辺ですら無い方が多かったんだ……!」

「そうじゃよね……儂ら、レースして脱獄しただけじゃもんね……水着要素の必要性皆無じゃったしね……」

 

 ラスベガスをぶらぶらと散歩しながら、三人は自分達の姿を見て遠い目をする。

 しかしめげないBBはすぐさま立ち直ると、

 

「プールに行きましょうプール! 外縁はプールでしたよね!」

「あ~……まぁプールじゃなぁ……」

「プールでは、あるよねぇ……」

「なら迷わず前進! とりあえず水着の本来の役目を果たさせましょう!」

 

 そう言って、BBは神妙な顔をしている二人を引きずってラスベガスの外に向かって走り出す。

 

 

 * * *

 

 

「ほら、プールじゃろ?」

「……いやこれはプールじゃないです」

 

 激流。大荒れと評しても良いほどの凶悪な流れに、流石のBBも頬を引きつらせる。

 しかしそれでももしかしたら泳いでいる人がいるかもしれないと、諦め悪く嵐の海のごときプールを見渡し、

 

「あ! 人がいますよ! 大丈夫。泳げるみたいです!」

「はぁ? いやいや。この波じゃぞ。無理に決まっとるって」

「えぇ? いや、でもほら、見えるじゃないですか」

「どこじゃ? どうせ幻覚じゃろ……っている~!」

「やっぱりいるじゃないですか! お~い! どんな感じですか~!!」

 

 そう言って、手を振るBB。

 しかし、すぐさま嫌な予感を感じたオオガミは、一人プールから離れる。

 それに気づかない二人は無邪気に手を振り続け、顔が分かるかどうかというところまで近付いてきた時だった。

 

「んっ……儂、なんか嫌な予感がする」

「奇遇ですね。私もです……」

 

 そういった直後だった。

 プールの中の人物が潜ると同時、二人の周囲を水が囲う。

 そして即席の水の檻は宙に浮かぶと、

 

「『その夏露は硝子のように(ブルーサマー・パラディオン)』!!」

「「ギャーーー!!!」」

 

 息もつかせぬ一撃必殺。

 貫かれた二人はそのまま地面に落ち、貫いた本人は優雅にオオガミの正面へと着地する。

 

「ごきげんようマスター。こんなところに何用かしら?」

「いやね、BBが、せっかく水着なんだから、水着っぽいことをしたいって言い出して、それでこのプールに来たわけだよ」

「なるほどね……他にもあったと思うのだけど。まぁ、泳げるなら泳いでみればいいわ。すぐ流されるから」

「だよねぇ。で、ラムダはどうしてここに?」

 

 降ろしていた髪は一本のサイドテールに纏められ、水着は上下が別れたフリル盛りだくさんの水着を着ているラムダ。要するに第3再臨の姿な訳で、オオガミに見せびらかすようにポーズを取りつつ、

 

「私はほら、泳げるもの。最初はエウリュアレに誘われたのだけど、彼女もここだと泳げないし。今はここから少し離れた所で椅子とビーチパラソルを置いて寝てるわ」

「え、誰が準備したの? 明らかに二人だけじゃないよね?」

「えぇ。アナも一緒だったわ。ステンノは、他の用事があるって言って来なかったけど……おかしいわね。あの二人って、実質二人で一人じゃなかったかしら……」

「ステンノ様は神出鬼没だから……何処にいるとか分かんないから……」

「そ、そうなの……まぁいいわ。貴方も一緒に戻りましょう? どうせ暇でしょ」

「まぁ、たった今一緒に遊んでた二人が倒れたしね。とりあえず二人とも連れていくよ」

 

 オオガミはそう言って、BBとノッブを雑に担ぎ上げると、

 

「それじゃ、行こうか」

「それ、女性を持ち上げる持ち方ではないわよね」

 

 冷ややかなラムダの視線を受けつつも、オオガミは案内を頼むのだった。




 今回もわりと水着関係無くないですか?(言ってはいけないツッコミ

 まぁでも、そんな夏イベも明日で終わり。明日からはボックスイベントが来るのです(願望
 まぁ虚無期間ならおとなしく種火貯めてますけどね。周回要員増やさなきゃ……


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日常
なんでこんなことをしているのかしら(大体いつもの事じゃない?)


「ねぇ子イヌ? 不思議なのだけど、なんでこんなことになってるの?」

「いつものことだよ。気にしない気にしない」

 

 そう言って、当然のごとくエリザベートの尻尾枕を享受するオオガミ。

 枕にされている方もその説明で適当に納得してしまうのだから不思議だった。

 そして、オオガミが意識を手放しかけているときだった。

 

「ねぇ子イヌ。(アタシ)、またライブしたいなぁって思うんだけど、どうかしら」

「どうかしらって……そりゃやるしかないのでは……?」

「そ、そうよね! そう言うと思ったわ! でねでね子イヌ! そのセッティングをやって貰いたいんだけど、お願い出来るかしら!」

「……まぁ、それで尻尾枕を堪能できるなら、なんとか……」

 

 もはや働いていない頭で返答しているオオガミ。

 なんとなく、マシュ辺りに怒られそうだと思いつつも、尻尾の誘惑に勝てないオオガミは、

 

「起きたら改めて考えるから、起こさないでね……おやすみ……」

「えぇ、おやすみ、子イヌ」

 

 そう言って、オオガミの頭を撫でつつ眠りにつかせるエリザベート。

 時々やられるので、既に熟練の対応をしていた。

 

「んんっ……なんというか、子イヌの性格を利用しているようで悪い気分になっちゃうけど、約束すれば守ってくれるのは利点よね。遅れたとしても、ちゃんとやってくれるもの」

 

 そう言いながらも、妙な罪悪感が沸いてくるエリザベート。

 だがすぐに気持ちを切り替え、意識しないと緩んでしまう頬を両手で押さえつつ、

 

「なんだかんだ言って、コイツが尻尾枕を要求するのって、私が一番よね。ふふふふふ……これだけならエウリュアレやメルトにも負けないわ!」

「そうね。私たち、尻尾はないものね」

「膝枕だとしても、私はされる側だから。する側じゃないから」

「ひぅっ!」

 

 いつの間にか後ろから覗き込んでるエウリュアレとメルト。

 エリザベートはそれに気付くと同時に短く悲鳴をあげる。

 オオガミへの配慮で声のボリュームを落としているのは、全員同じだった。

 

「あぁ、勘違いしないでよエリザ。別に怒っているとかじゃないわ」

「じゃ、じゃあ何しに来たのよ……暇なの?」

「そう、暇なのよ。やることがなくて、適当に立ち寄ったら二人がいただけ。ちゃんと休ませなさいよ」

「わ、分かってるわよ! 適当に遊びにいってなさい! しっし!」

「まぁ、酷い言われよう。でも良いわ。許してあげる。じゃあ、また後でね」

「絶対会いたくない……!」

 

 去っていった二人を見送ったエリザベートは、ほっと息を吐くと、

 

「……本当に、偶然なのかしら」

 

 そう呟いて、一人悶々と悩むのだった。




 久し振りの膝枕ならぬ尻尾枕。裏ヒロインエリザです。よろしく。


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ボイラー室隣の部屋に人がいないんですが(あそこにいるのって少数だよね)

「あ、マスター! ラスベガスぶりですね! こんにちは!」

「こんにちは沖田さん。それと、ラスベガスは昨日まではやってたよ?」

「いや、それはまぁそうなんですけど。実際カルデアで会うのは初なので。まぁあんまり気にしないでください」

 

 廊下でバッタリ会った沖田に挨拶をする。

 すると、沖田は思い出したように、

 

「そうだ! マスター。ノッブ知りません? カルデアのボイラー室隣が部屋だって言われたんですけど、昨日から会ってないんですよ! どこ行ったんでしょう……帰ってないとか?」

「いや、帰ってきてるけど、ボイラー室隣にはあんまり帰らないよ? というか、今あそこは完全に土方さんの部屋になってるよ」

「え、なんですかそれ。坂本さんとかどうしたんです? 以蔵とか、消えました?」

「いや、その隣の部屋が坂本さんとかの部屋。だってほら、ノッブたちがいるから戦争にならなかっただけで、薩長土肥の土佐だから。殺伐になっちゃう……」

「あ~……なるほど。それは確かに土方さんならやりますね。というか、茶々さんも?」

 

 完全に土方が占拠しているというのだけは分かった沖田は、それはそれとして他のメンバーの居場所を突き止めようとする沖田。

 

「ん~……茶々はスカディ様とアナスタシアの部屋かな。ノウムカルデアになった時くらいに押し込んでからずっとそのまま。なんか仲良くなってるっぽいよ?」

「マジですか。え、もしかしてみんなペアいます? 沖田さん置いてけぼり? ボッチ新撰組ですか?」

「いやいや。土方さんがいるよ」

「え、えぇ~……別に土方さんは……まぁいいです。それで、ノッブは何処ですか?」

「あぁ、うん。やっぱりそこに戻るよね……」

 

 聞かれたオオガミは困ったように笑うと、通信機を取り出し、

 

「もしもしBB。工房に一名様。ノッブに片付けるように言っておいて。粉微塵にされたくないやつは特に。頼んだよ? ……いや、マシュではないけど、どちらかと言えば風紀側。ノッブ関係なのでBBは逃げるのを推奨するよ。じゃ、そっち行くから、三分で終わらせて」

 

 そう言って、通信機の向こうで騒ぐ声を無視して終了させると、沖田さんに笑顔を向け、

 

「それじゃ、行こうか」

「マスター、今スゴい悪い顔をしてますよ?」

 

 どこか恐ろしさを感じる笑みに思わず苦笑いになる沖田。

 一体どこへ向かうのかと不安で胸をいっぱいにしながら、とりあえず警戒しておこうと完全装備を展開しつつ、オオガミの後ろをついていくのだった。




 弊カルデアは自由すぎてぐだぐだ組が定位置にいないという。ノッブは工房暮らし、茶々は別室持ちという。まともに住んでるの土方さんしかいなくない? 織田軍自由すぎじゃない?


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来るな沖田ぁ!(死ぬときは一緒ですよ!)

「止めろ沖田ぁ! 来るなぁ!!」

「死ぬときは一緒ですよ。安心ですね」

「うっわぁ、仲良死ですね。心中とか正気じゃないですよ」

 

 ドカーン。と軽快な爆発音と共に倒れるノッブと沖田。

 倒れた二人を見ていたBBは一人勝ちし、ゲームセット。

 リアルファイトに発展しそうな爆弾ゲームをしているノッブ達。

 当然のようにオオガミの周りにはエウリュアレとメルトがいた。

 

「なんで沖田は儂を狙ってくるんじゃ……」

「いえいえ。別に狙ってませんって。目の前を通ってるのが偶然ノッブなんですって」

「開始と同時に向かっていっておいてよく言いますよねこの人。ヤバくないですか?」

「漁夫の利を狙ってるBBもBBだけどね。全く……こっちは交代プレイなんだよ?」

「このメンバーで交代するとか、貴方も大概よね」

「私は見ているだけで退屈なのだけど……まぁ良いわ。ちょっと休ませてもらうわね」

 

 コントローラをエウリュアレに渡しつつ、膝の上に乗っているメルトを支えるオオガミ。

 エウリュアレはそれを横目にコントローラを受け取り、

 

「で、そっちの二人は未だに喧嘩してるの?」

「だって閉じ込められましたし! 反撃は必須だと思うんです!! 例え相討ちでも!」

「いや相討ち以外で頑張らんか!!」

「そうじゃなきゃ倒せないじゃないですか! 強すぎません!?」

「何時間やったと思ってるんじゃ……儂、やりこんだんじゃけど……むしろ相討ちされるくらいの成長ぶりに儂泣きそう」

「やーいノッブのざーこ! BBちゃんに勝てないのにやるからで~す!」

「うっわ、珍しく煽ってくるな貴様! 調子乗るなよ儂が爆破してやる!」

「沖田さんを忘れたときが最後です……爆散させてやります……!」

 

 開始直後、互いの標的に突撃していく三人。

 対称的にエウリュアレはアイテムを適当に拾いつつマイペースにプレイしていた。

 

「いやぁ……見事なまでにエウリュアレがハブられてるねぇ……」

「まぁ、ほら。こうやって無視されてるからこそ出来ることっていうのもあるのよ」

「とりあえずノッブぶっとばーす!」

「まずはBBからじゃ! 後ろにやベーストーカーがいる恐怖を教えてやる!」

「キャー! コワーイ! とりあえず反撃しておきますね!」

 

 そう言って暴れてる三人が封鎖されてるエリアに入り込んだ瞬間に、出入り口を塞ぎ、沖田がノッブを爆殺させるために爆弾を置き、ノッブもBBを巻き添えにするために置き、BBは笑顔を凍らせた。

 

「……まぁ、これが漁夫の利ってやつよね」

 

 エウリュアレの完勝だった。

 ノッブ達が珍しいミスをしたなぁ。と思ったオオガミだが、沖田にペースを乱されたのなら是非もないか。と改め、

 

「乱戦ゲームの時はエウリュアレがめちゃくちゃ強いよね」

 

 そう言って、エウリュアレからコントローラを受けとるのだった。




 リアルファイトに発展するときありますよね。あの爆弾ゲー。

 たぶん沖田さんはこういうキャラで固定しそうな感じ……


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マスター! 死ぬんじゃなぁい!(これはもう、ダメかもしれない……)

「マスター! 生きてぇ!」

「もうダメっぽい……ごめんね茶々……」

「ま、ますたああぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 泣き叫ぶ茶々の手を、力無くすり抜けるオオガミの腕。

 その様子を見て、ノッブ達は、

 

「なんじゃこれ」

「本当に謎ですねこれ」

 

 呆然としながら眺めているのだった。

 

 

 * * *

 

 

「で、どうしたの?」

「うん? いや、茶々が休憩室に来たら、なんかマスターが血まみれで倒れてたからとりあえず……」

「とりあえずで殺されたの?」

「いや死んでないけども」

 

 何故か血まみれのオオガミが起き上がり、(自称)か弱い女子陣の短い悲鳴が上がる。

 

「なんじゃ……マスター。血糊とかどこで貰ったんじゃ……」

「うん? ロリンチちゃんから貰ってきたよ? 言ったら出てきたからとりあえずね」

「とりあえずで無駄遣いするな」

「いやいやいや。無駄遣いじゃないよ。ちゃんとノってくれた人いたし」

「茶々だね。でも、本気にした人がいたらさ、マスター危ないよ?」

「え? なんで――――」

 

 言い切る前だった。

 突如として開けられた扉の前に立つのはナイチンゲール。

 その目はやはり狂気に呑まれていて――――

 

「急患がいると聞きました! 貴方ですねマスター! エレシュキガルさんから血まみれで倒れていると聞いたので大人しくしてください!」

「いや待って婦長これは違う怪我じゃないから!」

「問答無用! 殺菌!」

 

 飛んできたベッドを反射的に伏せてかわすと、

 

「ヘルプ! 死んじゃうから!」

「え、知らないけど。諦めて連れていかれたら?」

「血まみれだもの。擁護できないわ」

「あれ意外と薄情じゃないですか!?」

 

 遠慮無く見捨ててくるエウリュアレとメルトに半泣きになりつつ、オオガミはナイチンゲールの魔の手をすり抜けつつ何処かへと逃げ、ナイチンゲールはその後ろを追いかける。

 

「……嵐みたいね」

「とりあえずベッドを退かしておきましょうか」

 

 ベッドを避けられず潰されたノッブとBB。それを仕方なく救助するエウリュアレとメルト。

 ベッドを分解してドレインしたメルトは、のびてる二人を叩き起こし、

 

「工房を壊されないように向かった方がいいんじゃない?」

「えっ。何があったんじゃ今の一瞬で」

「……ちょっと先に行ってますね」

「あ、ちょっと待て儂も行くから!」

 

 即座に門を開けて飛び込んで消えた二人を見送り、残された二人は、

 

「じゃ、茶々。片付けておいてね」

「えっ、茶々!? 二人は!?」

「拘束されてくるはずのマスターを医務室で待ってるわ。たぶんそろそろあの象神が帰ってくるはずだから手伝わせなさい」

「お、横暴だぁ……」

 

 去っていく二人に呆れながら、茶々は仕方なく片付けを始めるのだった。




 後に冒頭のような展開を医務室で見ることになるのだった……たぶん。


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ジョークが真実になった(自業自得じゃなマスター?)

「血糊が本物に変わった」

「嘘から出た真。まぁあのバーサク看護師がいるのに不用意なネタをかましたのが運の尽きじゃな」

 

 決め手はベッド投げだったらしい。

 見事に負傷したオオガミは現在医務室で拘束され、恐ろしい笑みを浮かべるエウリュアレとメルトに挟まれていた。

 見舞いに来たときからそれだったので、ノッブとBBは呆れたように首を振る。

 ナイチンゲールは診断書を眺めつつ、

 

「貴方は再生能力が異常に高いので、三日ほどで完治するはずです」

「それでも三日かかるのかぁ……」

「ベッドに圧殺されかけて三日って異常だと思うのだけど」

「会話出来てる時点でおかしいからな。儂深く突っ込まんぞ」

「一般人なら死んでますよねこれ。筋肉の鎧で耐えてるんですか? 鍛えたお陰ですね。おめでとうございます! でも手枷足枷を筋力だけで破壊するのは普通ドン引きされると思うのでやらない方がいいと思いますよ?」

「いやほら、それは副産物であって、単純にレオニダスブートキャンプに行って、スパルタクスに捕まった末に破壊しなきゃいけない状況を作られて仕方なく爆砕しただけで……」

 

 まるで日常の、ちょっとした出来事かのように語るオオガミに、全員は思わず納得しかけ、

 

「……平然と言うから何でもないことのように感じそうだけど、十分異常なのよね」

「英霊ならともかく、人間のやることではないわね」

「やっぱり人間ではないのでは?」

「ん~……勝蔵なら出来そうじゃな……あやつ、マジで止まらんかったし」

 

 そう言うノッブに、あれは別枠だと言いたげな顔をする全員。

 そんなところに、

 

「えっと、医務室はここであってるかしら……」

「ん。エレちゃん?」

「あ、マスター! って、なにかしらこの状況。みんなお揃いで……?」

 

 果物が入ったカゴを持って入ってきたエレシュキガルは、エウリュアレ達に囲まれているオオガミを見て苦笑いになっていた。

 

「ほら、エレちゃんのお見舞いが一番模範的だと思うんだけど! なんでみんな手ぶらなのさ!」

「それは貴方の自業自得だからよね」

「見舞いに来て"あげた"の。私たち自体が既に土産よ?」

「うわなんじゃそれ。こっぱずかしいこと言ってるんじゃけど」

「ですよねぇ~。私たちはからかいに来ただけですし。土産はどちらかというと貰う側ですね!」

「うぅむ、ノッブとBBは追い出していいんじゃないかな!」

「それは是非もないなー」

 

 ノッブはそう言うと、不満そうなBBを連れて、部屋を出ていき、入れ違うようにエレシュキガルが席を取るのだった。




 エレシュキガル……久方ぶりすぎて気分は新キャラ。

 しかし、手枷足枷ネタは公式だって言うんですからやはり原作もちゃんと化け物だなと再認識。一般人のハードル高いなぁ……


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今年もニューヨークかぁ(アメリカが連続しているわね?)

「あ、今年もニューヨークかぁ。ボックスの中身は何かなぁ」

「またアメリカ? この前ラスベガスに行ったばかりよね」

「ふふん。夏に新調したこの霊基で楽しむわ」

 

 楽しそうなエウリュアレとメルト。

 現在も医務室で倒れているオオガミの元にお見舞いに来ていたエレシュキガルは、隣で果物の皮を剥いているアナに、

 

「ね、ねぇ……ボックスって、去年のクリスマスみたいなあれのことかしら……」

「……そうですね、まぁ中身は違えどそんなところです。ただ、今回は貴方じゃなくメルトさん……いえ、ラムダさんが優先されると思いますよ。敵がアーチャーならという前提ですが」

「そうなの……じゃあ、今回は私は見ているだけかしら……」

「どうでしょう……攻撃力が足りなかったら出なきゃですし。まぁ、それでも私は出ないのですが。出ても高難易度だけでしょうし」

「それ、大変じゃないの?」

「そうでもないです。基本的には魅了するか目からビーム出すかですし。去年のクリスマスみたいにクリティカル祈りと宝具連打という訳でもないですし。何より一回やったら終わりですからね。すぐ終わります」

「あぁ、一回だけ……そうなのね……確かに私と違うわ」

 

 うんうん。と頷くエレシュキガル。

 そして、オオガミ達はというと、

 

「で、次はどうするの? とりあえず種火は回ってるけど、育成は間に合わないでしょ?」

「そりゃね。まぁ、ラムダが殲滅してくれるんじゃないかな」

「ん……それ、ニューヨークを見て回れないんじゃ……?」

「周回の休憩時間なら遊びに行けるし、何より俺も遊びに行きたい」

「そう……ってことは、ずっと一緒かしら」

「だね。たぶんエウリュアレもだけど」

「そう。まぁ、気にしないわ。楽しみね」

「うん。とりあえず、王様の高難易度を突破する方法を考えなきゃ……」

「それは治ってからにしなさい。だからほら、今は大人しく寝る。良いわね」

「はい……おやすみなさい……」

 

 エウリュアレに言われ、大人しく目を閉じるオオガミ。

 それを見ていたエレシュキガルは、

 

「凄いわ。マスターが大人しく従うなんて……! エウリュアレ、実は凄い女神なのね……!」

「いえ、あれは脇腹に矢を突きつけられて大人しく目を閉じただけです。まぁ、消耗しているのは確かなのですぐ寝ると思いますが」

「そ、そう……」

 

 そう言って、エレシュキガルは先ほどまで皮を剥いていた果物を食べ始めるアナを見ていると、

 

「……食べます?」

「えっ、あ、その、お、お願いします……」

「はい。少し待っていてくださいね」

 

 そう言って、果物カゴから適当にひとつ選び、再び皮を剥き始めるのだった。




 複数育成推奨という恐怖フレーズにタワー式じゃないことを祈りつつ、ボックスの中身に貝殻と卵を望むマスターこと私です。
 今年は何箱開けられるかなぁ!


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カーマ製のレモネードはうまい!(栄養豊富どころか栄養過多なのですが)

「うむ。やはりカーマ製のレモネードはうまい! 腹に溜まる感じもあるが、きっと栄養豊富ということだろう!」

「はぁ。まぁ、栄養豊富ではありますけど、どちらかと言えば栄養過多ですが……貴女には関係無さそうですね」

 

 食堂で、カーマに作ってもらったレモネードを美味しそうにゴクゴクと飲むバラキー。

 既に三杯目だが、全く飽きる気配がない。

 

「まだ飲むんですか……?」

「む。そのつもりではあるが、もう作れぬというのであれば諦める。幸い菓子はあるからな。カーマも食べるだろう?」

「そうですね……パウンドケーキですか。そういえば、レモネード入りとかもあったような……今度作ってみますか」

「ほぅ。新作か! うむうむ! 試作品はいくらでも食べよう! たんと寄越すが良い!」

 

 そう言って、楽しそうに笑うバラキーを見て、カーマは複雑そうな顔で、

 

「別に、ただ喜ばせるものではないんですけど……これだから体型が変化しないサーヴァントは面白くないんです」

「いや、別に変化しないわけではなく、むしろ変化しているからこの姿なのだが。食べる度に体重が増えていくから変化で魔力消費をしているだけで、十分効いてはいるぞ」

「……見た目に変化が出ないなら意味ないんです。はぁ……もうパールヴァティーには効かないでしょうし、そうですね。マスター周りに配ってみるのも良いかもしれません」

 

 立ち上がり、楽しそうに目を輝かせるカーマに、どこか悲壮感の漂う顔をするバラキーは、

 

「あ~……いやそれは……うん、まぁ、知らぬが仏という言葉もあるし、やってみるだけやるのも良いか」

「……なんで貴女はいつも不穏なことを言うんですか」

「いや、あそこは報復が本気で怖いからな……一ミリも容赦なく殴ってくるぞ……」

「えぇ……なんですかそれ。そんな蛮族集団でしたっけ。一気に会いたくなくなったんですけど」

 

 椅子に座り直し、頬を膨らませて残念そうな顔をするカーマに、バラキーは苦笑いをしつつ、

 

「まぁ、なんだ。バレたら報復されるのだから、バレなければ問題ないということよ。要するに、自分だとバレなければ良い。そのための変化というわけだ」

「おぉっ。それは名案ですね。で、誰に罪を擦り付けるつもりなんです?」

「クハハ。なに、適任者がいるではないか」

「ほうほう……」

 

 興味深そうにカーマがバラキーを見ていると、突如として変化するバラキー。

 それは全身真っ黒で、唯一見えるのは目だけ。

 カーマはそれを見て、

 

「あぁなるほど。彼に押し付けるんですね。確かにまぁ、生け贄っぽいですけど、大丈夫なんです?」

「ハハハ! なに、行けるって。変化は完璧バレるわけなし! 余裕で大勝利って訳だ!」

「おぅおぅ。そりゃすげぇ! 何がすげぇって、英霊サマがオレごときに変化してくれたところだよなー! オレって有名人? 意外なところで活躍してる? やっぱ生け贄記録ナンバーワンは伊達じゃないってな! ところで何すんの聞かせてくれよ!」

 

 変化したバラキーの後ろから、全く一緒の存在がひょっこりと現れ、それに驚いたバラキーは思わず変化を解除する。

 

「あらら、もう終わり? でもまぁ流石に本人登場はビックリもんか。物真似芸人の前に本人が現れるようなものだもんな。あらまビックリ仰天ひっくり返るってな。で、実際何しようとしてたわけだ? 面白そうなら協力するぜー」

「う、む……いや、本当に神出鬼没だな。というか、別にそこまで面白くもないと思うが……」

「いやいや、神と鬼が会合してるんだぜ? それだけで面白そうだろ。まぁ何よりも鬼と神様が揃ってるってのに、神出鬼没ってのも不思議なもんだが。うん。これ以上口を挟むと話が進まねぇな。うん。どうぞ進めて?」

「なんか調子狂うのだが……まぁなんだ。このレモネードはサーヴァントでも太らせられるから、マスター周りにでも飲ませてみようという計画でな。汝に変化して渡して来ようという計画だったわけだ」

「なるほどなるほど。そりゃまたスゴい計画で。面白そうだなそれ。んじゃちょっくら行って来るわ!」

 

 アンリはそう言うと、まだ手をつけていないレモネードを持って、走り去っていくのだった。




 久し振りのアンリ。正直マシンガントーク大好きだけど、する人がいないのではと思い、アンリは私の趣味の犠牲となったのです(生け贄ノルマ達成)

 それにしてもあのレモネード、女神の神核貫通とかえげつない……生成方法を手に入れなきゃ……


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完全復活! もうベッドとか怖くない!(ようやく回復したのね)

「フハハハ完全復活だぜ! もうベッドとか怖くない!」

「あら、ようやく来たのね」

「まっひゃく、おひょいひゃなひ」

 

 そう言って、食堂の一番手前の席を陣取っているメルトとエウリュアレ。

 やって来たオオガミは、ストローでレモネードをゴクゴクと飲むエウリュアレを見て、

 

「あれ……エウリュアレ、ちょっとふっくらした?」

「……はっ倒すわひょっ!?」

「……このほっぺたの弾力……前よりももっちりしてる……あと大きくなってる……これはこれでありなのではぐぅっ!?」

「ふっざけるんじゃないわよ。私の体型が変化? そんなわけないじゃない。スキルの効果もおまけでついてるのよ!? そんな、そんなわけ……」

 

 オオガミを蹴り倒した後に、エウリュアレは自分の体を所々確認すると、

 

「……ふんっ!」

「理不尽っ!?」

 

 とりあえずとばかりに、前の一撃でダウンしているオオガミを蹴り飛ばし、エウリュアレは一息吐く。

 そして、メルトに向き直ると、

 

「メルトのドレインでどうにかできないかしら」

「サボらないで適度に運動した方が明らかに良いと思うのだけど」

「良いの。どうせ戦闘に駆り出されるのなんてしばらくやらないもの。だから楽するの、良いでしょ」

「なんか、誰かのために使うのは違うから嫌。相手はするから普通に頑張りなさいよ。太ったって言っても、魔力貯蔵が急上昇しただけだろうし、消費しちゃえば元通りよ」

「そう……? まぁ、それなら……えぇ。犯人っぽいアンリ辺りに手伝ってもらおうかしら」

「そうね。ついでに刑部姫とガネーシャも連れていったら? たぶんあの二人も困ってるだろうし」

「……レクリエーションルームよね。たぶん。ちょっと声をかけてくるわ」

 

 エウリュアレはそう言うと、部屋を出ていく。

 そして、その間うずくまっていたオオガミにメルトは、

 

「ほら、さっさと起きなさい。それと、さっきのは貴方が100%悪いから」

「あぁ、うん……それは分かってる……流石にやり過ぎた……」

 

 退院してすぐにボロボロなオオガミ。

 反省しているようなオオガミを見て、メルトはリヴァイアサンパーカーを着てラムダに変わると、

 

「大丈夫よ。そんな怒ってないわ。大体は照れ隠しよ」

「怒ってる要素はありはするんだね。うん。そりゃそうだ」

 

 サーヴァントとはいえ、女性というのに変わりはなく、むしろ本来ならば体型が変化しないからこそ、気にしてしまうこともあるということだろう。

 それを理解したオオガミは、

 

「じゃあ、手伝ってくるかな」

「貴方、意外と酷いわよね」

「なんで!?」

 

 メルトに言われ、ショックを受けるのだった。




 でも正直エウリュアレはもうちょっと肉がついてた方が可愛いんじゃないかと思うんですが私だけ?

 ちなみに案の定前回のアンリが原因。太るというのを伝えないまま飲ませればあとは勝手に飲んでくれるエウリュアレチョロいのです。


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もう二度と太ったとか言わせないから(ちゃんとお痩せになってる!)

「ふふふふふ。もう二度と太ったとか言わせないから」

「あぁっ、お痩せになってる!」

「ちょっと。私を挟んで喧嘩を売らないで」

 

 膝の上にラムダを乗せたままエウリュアレに遠回しな文句を言うオオガミ。

 昨日派手に蹴られたにも関わらず、1、2のポカン! と忘れたかのように同じ過ちを繰り返すオオガミに、ラムダはいつエウリュアレが蹴りかかってくるかと反射的に身構える。

 

「もう……乙女的に痩せてた方がいいの。分かるでしょ?」

「でも最近は痩せてるを越えて痩せすぎなのが多いから、やっぱりもう少しふっくらとだね……」

「それ以上は戦争だから。貴方相手でも容赦しないわ」

「え、えぇ……だってほら……エウリュアレの腕とか、折れそうなほど細いし……って、そうか。エウリュアレの在り方的にはそっちの方が正しいのか。なるほど……じゃあはい。レモネード」

「一ミリも理解してないじゃないバカ」

 

 文句を言いながらも、受け取って飲むエウリュアレ。

 そして、何かに気づいたように口を離すと、

 

「あれ、昨日のとは違うわ?」

「そりゃね。作ったもん」

 

 当然でしょ? と言いたげなオオガミに、エウリュアレは呆れたように笑うと、

 

「私が飲まなかったらどうしたのよ」

「飲まない場合とか考えてると思う? 正直試作品でこっちはお腹いっぱいだよ?」

「えぇ全く。おかげで私はもう飲めないわ。というか、しばらく見たくない……」

「どれだけ作ったのよ……」

 

 どこか青い顔をしている二人に、エウリュアレは呆れているような、喜んでいるような、そんな複雑な笑みを浮かべ、

 

「で、試作のレモネードはどうなったの? 全部飲んだ訳じゃないんでしょ?」

「あ~……うん。ナーサリー達のレモネード屋に寄付した。委託販売って大変なんだね」

「委託販売って……売ってるの?」

「うん。カーマ製のには及ばないにしても、売れるには売れるし。試作品だったとしてもバレないでしょ」

「……そうかしらねぇ……」

 

 そう言って目を逸らすエウリュアレに、首をかしげるオオガミとラムダ。

 そんな時だった。食堂の扉が開き、入ってくるバラキー。

 そして、オオガミを見つけるや否や、

 

「マスター! レモネードを出せ!」

「おっと強盗かな?」

 

 骨刀をオオガミに向けるバラキーに、エウリュアレは楽しそうに道を空け、ラムダはどこからか取り出したサングラスをかけて不敵に笑う。

 そして、狙われているオオガミはと言えば、

 

「ナーサリー達のレモネード屋は?」

「うむ。目の前で売り切れた。カーマは作りたくないと言って頑なに拒否してくるからこちらへ来た、というわけだ」

「根負けしたのか……まぁ、いいよ。作ろうか」

「ちょっと……それだと私が退かないとじゃない」

「抱えたままは作れないので退いてくださいラムダ様」

「情けないわね……余裕で作ってみなさいよ」

「腕が足りないので無理です。ほら、退いて。ついでに何か持ってくるから」

「あ、私ケーキ欲しいわ。持ってきて」

「私の分も頼んだわよ」

「欲望に素直!」

 

 頑なに動こうとしなかったラムダはケーキで買収できるという事実からオオガミは目を逸らしつつ、すぐに厨房に向かうのだった。




 ちゃんとフォローしつつもやらかしの方が大きいのはデフォルト。

 でもやっぱりエウリュアレは(以下略


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ここに来てからずっと遊んでるだけじゃない?(そもそもまともに戦ってるのはイリヤだけよ?)

「なんか、ここに来てからずっと遊んでるだけの気がする……」

 

 神妙な顔をして言うイリヤに、美遊とクロエは顔を見合わせ、

 

「大分今更じゃない?」

「むしろ、イリヤ以外まともに戦闘に出てない。トレーニングはしてるけど、それでも技術は衰えるから、一度実戦をしたいんだけど、そんな機会がなくて困ってる……」

「いやっ、戦いたいって意味ではないんだけど……! ほら、なにかこう、お手伝いとかしなくていいのかなぁ~って思って!」

 

 決して戦いをしたいわけではないと強調しつつ、そう聞くイリヤに、クロエは呆れたようにため息を吐くと、

 

「別に、やりたいならやれば良いでしょ? 出来ない訳じゃないんだし。この前美遊は厨房で料理作るのを手伝ってたわよ」

「えっ!? なんで誘ってくれなかったの!?」

「あれは、ブーティカさんとの話の流れで作ることになっただけで、自発的と言う訳じゃ……」

「うぐぐぐぐ……これじゃあ私とクロエだけダメ人間扱いされてしまう……!」

「いやいや。私は私でちゃんとやってますぅ~。やってないのはイリヤだけよ」

「嘘でしょ……!? じゃあ私だけなの……!? あれ、でも、私いつもどっちかと一緒にいる気がするんですけど! なんで!?」

「いや、なんでも何も、こっちだって不定期だしね? そもそも働いてない方が多いもの。サーヴァントの本業は戦闘。それがないなら基本やることはないの。分かる?」

「で、でもぉ……」

「でもも何もないの。休憩も仕事の内。暇ならレクリエーションルームに行きましょう。あそこはいるだけで結構楽しいわよ?」

 

 そう提案されたイリヤは神妙そうな顔をすると、

 

「あそこは危ないって聞くんだけど……大丈夫なの?」

「あ~……そうねぇ。自制心があれば怖くはないわ。あそこはほら、堕落させようとしてくる大人ばっかりだから……」

「ガネーシャさんと刑部姫さんが遊んでるのがほとんどだから、他の人は逆にあまり気にされないんだけど、でも、興味深い話が聞けるから、行ってみるのもありだと思う」

「絶対ロクでもないことを吹き込まれてるんじゃないかな!? あのタイプは例を見なかったけど、でもなんとなくダメダメにしてくる雰囲気だけは分かる!」

「でも、おかげで必殺コンボとか、魅せる戦いとか分かったし……」

「既に手遅れな感じ! どうして誰も止めなかった!?」

「本人がノリノリだし、何よりも周りが持て囃してたから止めるに止められなかったのよね~」

「大丈夫。二日しかやってないよ」

「その二日が、合計プレイ時間数時間かそれとも48時間かで意味合いが全然変わっちゃうやつ……!」

「安心してイリヤ。後者だから」

「どこに安心しろと!?」

 

 そう叫ぶイリヤ達は、何だかんだと言ってレクリエーションルームに赴き、続々と集まってきたダメなやつら(マスター達)と、ブーティカに怒られるまで遊び続けるのだった。




 弊カルデアは魔法少女ではなく、NP軍師とアルケミストと花嫁皇帝とスタァで回っております。魔法少女はお休みです。

 正直周回は固定メンバーだし、イベントはイベント特効編成だし、絆上げ裏配置以外で運用とか、メインストーリーするか、塔イベントで縛り編成してるときくらいしか使わないんですよね。しかも裏配置はエウリュアレとメルトorラムダが占領するので入る隙間はないと言う。
 正直他のサーヴァントの絆上げはエウリュアレ・メルト・ラムダの三人が絆15になってからでは……あとはネタ編成で攻略してるときくらい……?
 果たしていつになったら絆レベル全員5に出来るのか。先は長そうです。


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種火ならセイバー相手にも連れ回すわね?(実際回れるのだから連れて行く他無い)

「ふぅ……なんというか、今更だけど、種火ならセイバー相手にも平然と連れて行くようになったわね……」

「周回できるんだから仕方ないと思うんだ……」

「まぁ、私は倒せるなら文句ないんだけど。ほら、たまに残るのが嫌な所よ」

 

 そう文句を言いながらトレーニングルームから出てくるラムダとオオガミ。

 

「正直、あの皇帝に頼るのは気分的によろしくないのだけど……」

「でもネロは有能だから……編成しないと回らないことに気付いてしまったから……」

「くっ……アイツ、なんで変にスペックいいのよ……」

「嫁皇帝に隙は無かった……つまりはそう言う事なんだよ……」

「なんか、悔しいのだけど……」

 

 ぐぬぬ。と唸りながら歩くラムダ。

 オオガミはため息を吐きながら、

 

「まぁ、ほら。勝てるんなら大丈夫でしょ。大丈夫。勝てないわけじゃないし」

「そうね。別に、使えるなら使った方が良いもの」

「中々酷い事を言われている気がする……余は悲しい……」

「おっと。ネロちゃま何時からお隣に」

 

 いつの間にか隣に来てわざとらしく泣いているネロに、声をかけるオオガミ。

 すると、ネロは先ほどまでの様子は何だったのかと言う勢いで明るい表情に変わり、

 

「うむ! 特に何と言うわけではないが、久しぶりにマスターと話そうかと思ってな。まぁ、今日もいつも通りメルトと一緒にいるわけではあったが。たぶん食堂辺りでエウリュアレと合流するのだろう?」

「ちょっと、完全に行動が読まれてるじゃない」

「いや、正直自分の行動がワンパターンなのは何となく感じてたけど、実際に言われるとびっくりするね?」

 

 うんうん。と何かに納得するかのように頷くオオガミ。

 だが、隣にいるラムダは気が気じゃないのか、オオガミの腕に抱き着きながら、

 

「いい? 渡しはしないからね?」

「分かっておる。余もそこまで必死で奪いには行かぬし、何よりエウリュアレの壁が高すぎてちょっと気軽に手を出せないというか……うむ。それでもいずれ狙うので覚悟しておけ」

「あれ、自然に宣戦布告してる」

「いい度胸じゃない。秒で海に沈めてあげる。楽しみにしてなさいよね」

 

 オオガミを挟みひっそりと冷戦状態の二人に、挟まれている当事者はと言うと、

 

「正直現状で手一杯なのですが。とりあえず、ネロちゃまも食堂にお菓子を食べに行く?」

「もちろんだとも! ただ……その、ちゃまとは何だ。ちゃまとは。なんだか可愛い響きだが、軽んじてないか? 皇帝だぞ? 偉いのだぞ?」

「別に軽んじては無いけど、愛称っぽくしたいよねって。ほら、なんか親しみやすさは上がるじゃん?」

「むぅ……まぁ、親しみやすさは重要だな。ならそれも許可しよう。ちゃま。なんだかただでさえも可愛い余が更に可愛くなるような気がするな!」

「うんうん。じゃ、今日はキャンディークッキーでも出そうかな」

 

 そう言いながら、三人は食堂へと向かうのだった。




 セイバー相手にも回すんですよラムダ。乱数の関係でたまに残しますけど、まぁカバーできる範囲内。やはりラムダが最強……種火なら余裕ですよ。

 まぁ、編成条件が嫁ネロ・パラケルスス・孔明とか言うイカれたメンバーなんですけども。

 あ、ネロちゃまのヒロイン予定はないです(無慈悲


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今日は上機嫌だなご主人(たまにはそんな日もあるんです)

「うむ。中々良い手腕だったぞご主人。ではキャットは厨房に戻る。遅刻しないようにナ」

「うん。よろしく~」

 

 そう言って、櫛を持ったまま手を振るオオガミと、サラサラになった髪をまとめ上げてから部屋を出ていくキャット。

 そして、キャットと入れ違いに入ってきたラムダは、何を言うでもなく平然とオオガミの膝の上に座りフードを脱ぐと、

 

「……えっと」

「……ん」

「……あぁ、うん。じゃ、ちょっと失礼しますね~」

 

 そう言って、パーカーの中に入っている髪の毛を全部出してから梳き始める。

 そうしていると、ラムダは機嫌が良いのか、鼻歌を歌い出す。

 

「~~♪」

「……よく分かんないけど、楽しいなら良いよ」

「ん~……そうね。楽しいと言うより、嬉しいのかしら。なんだかんだ、何度もこうやってくっついてたけど、滅多に拒否しないじゃない?」

「そりゃね? 来るもの拒まず、去るもの逃がさずですとも。可愛いメルトは逃がさない側だもの。拒否しないって」

「……それ、エウリュアレにも言ってるんでしょ」

「うん? 思いはしてるけど、言ったのは今のところメルトだけだよ?」

「そ、そう。そうなの。ふぅん。へぇ……ふふっ。ふふふふっ。えぇ、えぇ。それはとっても良いわ。えぇ全く。良い意味で裏切ってくるじゃない」

「気に入ってくれたみたいで良かったよ。正直蹴られるかと震えてた」

「そ、そんなに暴力的じゃないわよ。貴方もそれほど蹴られてないでしょ」

「ん、ん~……そうだったかなぁ……」

「何よ……蹴らないように頑張ってたつもりだったのだけど。それなら別にどんどん蹴っても問題ないわね。えぇ、楽しみだわ」

「うぅむ怖い。蹴られても生き残れるように防御固めておかないとなぁ」

「えぇ。貧弱な防御なら、全部貫いて上げるわ」

 

 そう言って笑うラムダにオオガミは苦笑しつつ、最後の仕上げに髪をまとめ上げると、

 

「じゃ、第二再臨でお願いね」

「仕方のないマスターね。良いわ。応えてあげる」

 

 ラムダはそう言うと、サイドテールを気にしながら体だけに水をまとってステージ衣装へと変化させる。

 

「これでどうかしら。満足?」

「うん。やっぱり第二再臨も可愛い。ラスベガスで見るのとカルデアで見るのは全然違うね。普段着はパーカーだし、周回は第三だもん。何気にカルデアでは初じゃない?」

「そうかしら。いえ、そうだったかも。どう? 新鮮で可愛くて。最高の気分でしょう?」

「うん、本当に。正直このままずっと部屋にいたい気分だし、メルトを外に出したくないけど、流石にご飯に遅刻したらキャットに殺されるから、そろそろ行こうか」

「あら残念。それじゃ、貴方だけの私はもう少しお預けね。マスターさん?」

 

 そう言って、ラムダは意地の悪い笑みを浮かべるのだった。




 アンケートの投票を終了させつつ、アンケート勝者に前祝い的何かを叩きつける私。問題はいい加減この作品をラブコメと認めてない自分。吹っ切れればもうちょっと書ける気もするんですけどねぇ……これはコメディなんだという心ブレーキがですねぇ……(言い訳


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ノッブはどこで遊んできたの(暴れてれば勝手にこうなる)

「ノッブの髪って、結構な確率で絡まってるよね」

 

 ノッブの髪に櫛を通しながらそう言うオオガミ。

 昨日に引き続きやっているが、今回は自室ではなくノッブ達の工房。事前に連絡をしてから櫛を持って襲撃を仕掛けたのだ。

 

「まぁ、動くからなぁ……是非もないよね!」

「全くですよ。この前なんか、髪を梳かしてたら枝とか砂利とか落ちてきましたし」

 

 横から見ているBBがそう言うと、ノッブはムッとした顔になり、

 

「それは散々遊び回った後にやったからじゃろ。儂が悪いというよか、BBのやるタイミングのせいじゃ。儂悪くない」

「いや、ノッブも大概酷いですよ。だってほら、今だってお菓子のカスがポロポロ落ちてくるじゃないですか。なんでそうなるんですか」

「これは儂の頭の上で食べるのがいて、それでつけられたんじゃ! いつもは気合いで炎上して燃やしてるんじゃけど、流石にマスターにやってもらう前に焼くのはどうよ。絶対熱いじゃん。という冷静な判断でやめた」

「なるほど一理ありますね。炎上するくらいの熱とか、普通にやけどしますし、櫛にも大ダメージですよ」

「というか、よくノッブが頭の上で食べるのを許したね」

「許しとらんわ。何度も叱ったが聞いてくれん……次は撃つか」

「いやぁ、なんだかんだ甘いからなぁ、ノッブは撃たないでしょ」

「いえ、この前撃とうとしてましたよ。バラキーに叩き落とされてましたけど」

「ぐぬぅ……近接戦闘は苦手でなぁ……霊基を変えれば行けるんじゃけどなぁ……」

「とりあえず、脅すにしても既に敵として見られてないのでおもちゃってことです」

「完全に舐められてんじゃん」

「うっさいわ!」

 

 頬を膨らませ怒っているのを全身で表現するノッブを押さえ付けポニーテールに結ぶと、

 

「はい終わり。次はBBね」

「おっと。BBちゃんにもですか。てっきりノッブをやったら満足すると思ったんですけど」

「いやいや。ちゃんと平等にやるとも。逃がしはしないよ」

「それ、櫛を片手に欲望にまみれた顔をしてなければ良いセリフだと思うんです。反省してくださいセンパイ」

「まみれてないわ! ごく普通だわ!」

「えっ……センパイ、自分を普通と思ってました……? ごめんなさい、センパイが予想以上に残念だと思わなくて……お詫びにBBちゃんの天使のような髪に触らせてあげますよ」

「はいはい。ほら、ノッブと場所変わって」

「うぅむ、適当に流された気がする……」

「実際その通りだと思いますよ~」

 

 そう言って二人は場所を入れ替え、今度はBBの髪を梳かすのだった。




 別段ノッブが悪いわけではなく遊び回った末に髪の毛に絡み付くという、子供のような理由。だから子供がくっついてくるんだよノッブ。

 BBとノッブの仲の良さが書くたびに上がっていってる気がする不思議。沖田さんとのコンビは復活するのだろうか……


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新作への道は険しいです(一体どんな理由で悩んでるの)

「う~ん……新作への道は険しいです……」

「何悩んでるの?」

 

 厨房の片隅でうんうんと唸るカーマに声をかけるオオガミ。

 カーマはそれに気付くと一瞬驚いた顔をするも、すぐに不満そうな顔になり、

 

「どこから聞いてたんですか」

「どこからって……その新作らしきドーナツを作ってる辺りから」

「ほぼ最初からじゃないですか! なんですか! 邪魔しにきたんですか! 生憎まだ完成してないので帰ってください!」

「いや、邪魔しにきたのなら完成してないからこそでしょ。というか、お菓子の補充に来ただけなんだけど……」

「はぁ? 補充?」

「うん。作ったやつは全部捌けきってるからね。自分用は別で用意しなきゃな訳です」

「……さては商売敵ですね?」

「うぅむ納得いかない」

 

 ただ声をかけただけで敵対されてしまうのはどこか納得がいかないオオガミ。

 とはいえ、カーマはもとからこんなだった気もするので、強く気にしてはいないのだった。

 

「で、新作はどうダメなの?」

「む。そうです。これだとリソースが足りずに女神の神核を貫通できないんです。なのでこれじゃあただの美味しいドーナツ……私の目指すものではないんです」

「なるほど。それはまた悪意に満ちて……うん。まぁその失敗作は美味しそうだから貰っていくね」

「あっ、ちょ! 勝手なことをしないでください!」

「いやいや。考えてほしい。コレが広まって美味しいと判断されて、しかも害はない。ならばとまた貰いに来る人に完成品を渡すことで、皆疑いもせずに食べまくるという事ですよ。どう思う?」

「むぅ……なんだか言いくるめられてる気がするのが何とも言えないですが……まぁ良いです。その案に乗ってあげます。と言っても、そもそもそんなに数は無いですし効果は薄いでしょうけど」

「うん。じゃあ貰っていくね~」

 

 そう言って去っていくオオガミを胡乱な目で見送ったカーマは、一つ大きなため息を吐くと、

 

「いやほんと、なんで私はこんなの作ってるんでしょ……そもそもこれを選んだのは私じゃなくてバラキーですし……うぅ……なんだかだんだん絆されている気がして、あまりいい気分じゃないんですけど……良いように使われてません? 私」

 

 そう言いながらも、一つ、また一つとドーナツを作っていくカーマ。

 ぶつくさと文句を言いながらも、その動きに無駄は少なく、何度も練習したのであろう事は明らかだった。

 

「ん~……やっぱり生地に大量のリソースを混ぜ込んで、油にも入れますかねぇ……揚げるときに油を吸収して程よくなりますかねぇ……」

「うむ。なら、それは吾が喰う。全部寄越すが良いぞ。カーマよ」

「……いきなり出て来ないでくださいよバラキー。まだ出来てないです。完成まで待ってください」

 

 後ろからひょっこり現れたバラキーに、カーマは若干嫌な顔をする。

 だが、バラキーは楽しそうに笑いながら、

 

「いやなに、マスターがうまそうなドーナツを持っていたのでな。聞けばカーマが作ったという。なら食べるしかないだろう? うむ。旨かった。という事で、おかわり」

「え、全部食べたんですか?」

「いや、新しい方が旨いと言われたから、すぐにこっちに来た。だから、楽しみにしてるぞ」

「……はいはい。じゃ、席に座って待っててください」

 

 カーマに言われてバラキーは笑いながら厨房を出ていき、カーマは困ったように笑うと、

 

「全く、ああやって純粋に来られるとやりづらいです。ま、今度こそでっぷりとさせてあげますとも」

 

 そう言って、カーマはドーナツを作っていくのだった。




 最近カーマとバラキーも仲良すぎでは。何があったんだこの二人。

 そして安定のヤバめの新作ドーナツ。ダミーで心を掴んでからの満を持して本命。全サーヴァントぶくぶく計画……許されない……


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バトル・イン・ニューヨーク 2019
ついに来たぞギル祭!(再来のニューヨークにレッツゴー!)


「いやぁ、一年ぶりのニューヨーク! エキシビションマッチというワクワクバトル! パカパカ開けるよボックスガチャ! レッツゴー煌めく周回地獄へ!」

「地獄って言っちゃってるじゃない」

「うふふ。大丈夫、私は周回からは逃げられるから」

 

 にっこりと笑って手を振るエウリュアレに、複雑そうな顔をするラムダ。

 とはいえ、実際にエウリュアレは観客席待機なので、言っていること自体は間違っていなかったりする。

 

「さて、じゃあまずは礼装を集めて……そのために素材を集めて……あれ、結局周回しかないのでは」

「結局周回じゃない」

「今なら素材を落とすのはアーチャーね。走り時じゃない?」

「でもなぁ……回りにくいんだよねぇ……」

 

 うぅむ。と悩むオオガミに、エウリュアレは、

 

「大丈夫よ。どうせすぐ回れるようになるわ。だってほら、回れるようにするでしょ? 貴方」

「う~ん、理解度が高いと先に言われてしまう悲しさ……複雑ぅ」

「暗に私はどうあがいても周回させられるってこと? まぁ良いけど……最高のショーを見せてあげるわ」

「ラスベガスだけでなく、ニューヨークでも見られるなんて! やったぜいつでもショータイム!」

「種火周回でも散々見たじゃない……」

「それはそれ。これはこれだよエウリュアレ。地形効果ってのはあるんだよ。普段見ないところで見るからこそ良いものだと再認識できるってことだよやったね!」

「あぁ、うん。そうね。貴方はそういうやつだったわね……まぁ、それならそれで……頑張ってねメルト」

「え、なに。何が起こるの? 過労死はしないわよ? 周りはさせるけど」

「そりゃ、周囲の生気吸うもんね」

「なんだか危ない感じね」

 

 危険な香りが漂っているが、周囲からNPを回収して宝具を撃つのだからあまり間違っていないだろう。

 

「ま、とりあえずは周回で良いかな。クジエリアがキャスターだしね。きっとアーチャーになることを信じてのんびり頑張ろう」

「あ、これきっとダメなやつね。頑張ってマスター。応援してるわ」

「別に私メインじゃなくたって勝てるでしょ。頑張りなさいマスター?」

「あれ、今自然に諦められた? え、酷くない? 泣けるんだけど。って、待って待って。そんな晴れやかな顔で入っていかないで!?」

 

 そう言いながら、先にタワーに入っていくエウリュアレとラムダを追いかけ、オオガミも入っていく。

 そんな三人に遅れて、

 

「……去年、結構な割合で私が倒してた気がするんですが……今年もでしょうか……」

「大丈夫! 何かあったらマスターが何とかしてくれるさ! はっはっは!」

「うるさいですねこの残念魔術師」

 

 そう文句を言いながら、アナとマーリンも入場する。




 とりあえずお米屋さんをクリア。マーリン・始皇帝・ガネーシャの三人で行って、結局礼装無しのアナが最強だったというオチ。お米にはアナ。これですね。


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全部まとめてぶち抜くわ!(ラムダに隙は無し!)

「ふ、ふふふ……あはははは! 相性有利? 等倍? バーサーカー? 関係無いわ。全部射程範囲内! 一切合切まとめて全部ぶち抜いてあげる!」

「ひゃっはぁ! やっぱりラムダが最強だぁ!」

「おっと。私を忘れないでくれたまえよ? マスター。キャスターならこの天才にお任せを! シャドウ・ボーダーがサクッと解決さ!」

 

 高笑いをしてご機嫌なラムダと、楽しそうなオオガミとロリンチの声。

 それを少し離れたところで見ている玉藻とパラケルススは、

 

「なんですかこれ……あの能天気な皇帝が疲れきった顔をして代わったものだから不安だったんですけど、想像以上に大変なんですが」

「えぇ。私はついに宝具まで運用するようになりました……まぁ、戦えるだけ恵まれてるのかもしれませんが、やはり連戦していると手元が狂うこともしばしばあります」

「貴方も大変ですねぇ……」

 

 玉藻はそう言いながら、今までのスカディや孔明を思い、

 

「あの方々は今の私と同じ感じだったんですね……これはまぁ、確かにボイコットしたくなる気持ちも分かります……今まで生け贄になっていた分、ちょっと優しくしてあげましょうか……」

「あぁそうだな。だが忘れてもらっては困るぞ。今回も私は周回要員として連れ回されていることを」

 

 そう言って、どんよりとした思い雰囲気をまとって後ろから現れた孔明に、玉藻は苦い顔をしつつ、

 

「……いえ、忘れてはいませんけど、そうやって出て来られるとちょっと対処に困ると言いますか……グレイさん、連れて参りましょうか?」

「いや、それには及ばん。というより、来られると無理をしそうでな……すまん。少し寝かせてくれ」

「はいはい。どうせしばらくはリンゴを使わないでしょうし、どうぞゆっくりおやすみくださいませ」

 

 そう言って、壁に寄りかかって休む孔明を見て、

 

「う~む、どちらかと言えば精神的な疲れですかねぇ……軍師が脳死してどうするんですか。とはいえ、このまま放置するのも全面的に良くないので……脳には糖分を。何か甘いものでも差し入れしますか」

 

 呟きつつ、差し入れ候補をメモしていく玉藻。

 しかし、ふと何かに気付いたように顔を上げると、

 

「これ、もしかしなくても、後で自分もほしくなる奴じゃないですか? 余分に用意しておいた方がいいですね……」

「あ、私の分もお願いします。このままだと干からびます」

「貴方は自力でなんとか出来るでしょう? まぁ良いです。今回は皇帝さんの分も用意しますし、貴方の分も用意しますので、そのうち届けますね」

「ありがとうございます。お礼の品も用意しておきましょう」

 

 そう言ってお辞儀をして去っていくパラケルススを見送り、

 

「……まぁ、頑張るとしましょうか」

 

 玉藻はメモをしまって、騒ぐオオガミ達の方へと向かうのだった。




 中々復刻エキシビションが難しくて、過去の自分がどう勝ったのか一ミリも思い出せないという。どうやって倒せたのか……教えて過去の自分……


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確率三ターンは困るなぁ(なんだか面倒そうなので悩んでるわね)

「う~ん、攻撃力不足かなぁ。どうしてもあとちょっとだけ貯まらないときがあるね。どう補おうか……」

「う~む、純粋に攻撃力を強化するのが手っ取り早いけど、その手段がないからなぁ……礼装を重ねれば解決しそうだけども、ドロップしてくれないし」

「「困ったなぁ」」

 

 そう言って悩むオオガミとロリンチ。

 それを見ていたラムダは、

 

「なんだか面倒なことに悩んでるのだけはわかったのだけど、何で悩んでるの?」

「一撃必殺計画」

「スッゴい簡潔で意味不明だけど、周回のことだってなんとなく察したわ。というか、礼装を全員が持っててよく回れるわね……」

「回れてないから悩んでいるのだけど。まぁ、そこら辺は時間が解決してくれるでしょ」

「雑ねぇ……ま、私は構わないけど」

 

 そう言って、ラムダは軽くストレッチをしながら、

 

「じゃ、軽く運動してこようかしら。一緒に来る?」

「ん~……どうしようかしら。行っても良いけど、見ているのも楽しいのよね……」

「別に、この後戦うかもしれないから体を動かしておこうってだけだし、無理に来る必要はないわよ」

「そうねぇ……ちょっと玉藻の様子を見てから行こうかしら。編成から外れて、微妙に不機嫌そうだったし」

「そう。じゃあ先に行ってるわね」

「えぇ、すぐ行くわ」

 

 そう言って去っていくラムダに手を振り、エウリュアレは玉藻を探しに出る。

 

 

 * * *

 

 

「ん~……どれが良いと思います?」

「むぐむぐ……うむ。これは旨いな。というか、どれも旨いから選べん……全部で良いだろ」

 

 カルデアの食堂で、モグモグと出される菓子を食べていくバラキーに、玉藻は苦笑いをしつつ、

 

「なんと言いますか、人選間違えた気もしますけど、なんというか、ここまで素直に感想を言われるとなんだかそれで良い気がしてきますね……」

「いや何言ってるんですか。というか、なんでバラキーに餌付けしてるんです? それは私の仕事ですよ?」

「あぁもう、面倒ですねぇ。貴女も食べて感想を聞かせなさい!」

 

 そう言って、隣で喧しく騒ぐカーマの口に和菓子を叩き込んで無理矢理座らせる。

 叩き込まれたカーマはというと、少しの間は不機嫌そうにしていたが、すぐに機嫌を良くすると、

 

「ま、まぁ、控え目な甘さで良いんじゃないですか? 強すぎないので胸焼けもしないでしょうし。お腹も膨れるようなので、糖分補給にも食用にも良いものだと思いますけど? 強いていうなら、私はこっちの方が好きです。可愛いですし」

「ふむふむ。やっぱり形も重要ですよね。じゃ、こちらの方にしますか。では、残りはそちらで処理してくださって構いませんので」

「うむ! ありがたくもらおう!」

「いつかお返ししますね~」

「いつぞやのレモネードみたいなのは突き返しますからね」

「チッ」

 

 舌打ちをするカーマに笑顔で返しつつ、玉藻は厨房の奥へと入っていくのだった。




 どうあがいても礼装の問題で三ターンが出来ないので礼装ドロップを切望している私です。後最低二枚……!


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此度の祭も吾の出る場所はないな(昨日はカルデアに戻ってましたしね)

「うぅむ、此度の祭も吾が出るものは無いなぁ……」

「昨日なんか、一回カルデアに帰ってお菓子食べてましたしね。というか、こっちでも出店はありますよね?」

 

 ニューヨークの観客席で足をぶらぶらとさせながら戦いを見ているバラキーは、不満そうにわたあめを食べていた。

 その隣で同じくわたあめを食べながら観戦しているカーマは、試合よりもわたあめを見ていた。

 

「……吾、わたあめを圧縮するのはやめた方がいいと思う」

「まだ何も言ってないんですけど?」

「いや、最近の動向を見てるとそういうことを考えてる気がして……でも、当たっているだろう?」

「まぁそうなんですけど。ただ、要するにこれって、砂糖を溶かして繊維状にして棒に巻き付けた感じですよね……というか、実際それですか……そうですね。砂糖に色をつけて、その着色に魔力を練り込めばカロリーお化けに大変身……行けるんじゃないですかこれ!」

「うぅむ、これが本物か……自爆する未来が見える……」

「なんですか。失礼ですねぇ……ちゃんと成功するときもありますからね?」

「成功するときがあると言ってる時点で普段失敗すると暴露しているようなものでは……?」

「っ、なんでこういう時だけ察しが良いんですか! なんなんですか、もう!」

「いや、そんなキレ方されても困るのだが……吾、どうすれば良いのか分からぬ……」

「あぁもう、それなら黙っててください!」

「う、うむ……」

 

 顔を赤くして怒るカーマに気圧され、バラキーは渋々頷く。

 すると、カーマの向こう側から声が聞こえてくる。

 

「あら。あらあら? なんだか私っぽいけど一ミリも似てないちっこいのがいますねぇ?」

「はて。なんでしょうか。ひたすらにウザそうな声が聞こえるのですけど。その面の皮を剥がされたいんでしょうか?」

 

 ニッコリと。どこか恐ろしい雰囲気を孕んだ笑顔で振り向いたカーマの前には、ノッブを連れたBBが立っていた。

 

「何のようですか? ポンコツさん」

「いえいえ。なんだか毎度くだらないことを企んでは盛大に自爆する残念そうな顔が見えたので、思わず声が出ちゃっただけですよ?」

「おいBB。特大ブーメラン刺さっとるぞぉ~……」

「あらあら。自分の欲望を切り離した人は言うことが違いますね? 自分の欲望に反旗を翻される気分はどうでしたぁ?」

「うむ。まぁ、カーマは本体の増産で、欲望を切り離した訳ではないしな……でも相手に合わせて変化をするというのは自壊する可能性もあったし、やはり汝も人の事を言えぬのでは?」

「「外野は黙っててください!」」

 

 二人は互いの足を蹴りつつ、自分の相方に文句を言う。

 言われた二人は互いに顔を見合わせため息を吐くと、

 

「じゃ、儂らは向こうに行くか」

「吾らは出店に行くぞカーマ。売り切れる前に急ぐぞー」

「ちょっとノッブ! まだ決着がついてません! 行きませんよ私は!」

「こっちの台詞です! 離してくださいバラキー! すぐに倒してくるので!」

 

 そう言って暴れる二人を抱えていた相方二名は、真顔で二人の意識を奪い、連れていくのだった。




 意識を落とした手段は各自脳内保管で。

 BBとカーマは、互いの悪評が互いに刺さるので仲が悪いのです。たぶん。どっちも似たり寄ったりな部分が多いですしね。

 もはやこの二組は私のお気に入り。マスター陣営はちょっと特殊なので保留ですけども。


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『すぱるた』には墨を塗れ(これぞ天下の葛飾北斎ってな!)

「あっははは! いいねぇいいねぇ! 『すぱるた』には墨を塗れってな! べっとりねっとり泥まみれ墨まみれの真っ黒黒けさ!」

「う~ん、久しぶりの王の話は如何だったかなマスター? 正直久しぶりにしては結構喋った方だと思うよ?」

「先輩! どうでしたか!? 私、活躍出来てたでしょうか! 最近全く呼ばれないので不安になっていたんですが……久しぶり過ぎたので加減がうまく出来たかどうか……」

「うん。今回の防衛MVPはマシュだね。流石防御の要。自慢の後輩だよ」

 

 そう言ってマシュの頭を撫でるオオガミ。

 何故か自信満々のマーリンにはのど飴を投げつけ、ドヤ顔の北斎も頭を撫でる。

 

「んで。もはやニューヨークどころか宇宙規模になってるわけだけど、どうなるのコレ」

「そりゃ、とりあえず乗り込むしかないんじゃないかな? やる事はいつも通りでしょ」

「頑張ってくださいね先輩。応援してますよ!」

「うん、まぁ、うん。頑張るけども」

「ははは。なんでこっちを見るんだいマスター。とっても嫌な予感がするんだけど」

 

 引きつったような笑いを浮かべるマーリンに、全開の笑顔で返すオオガミ。

 

「よぅしマーリン! 周回行くよ!」

「う~んそういうと思ったよ!」

 

 苦虫を噛み潰したような顔に変わるマーリン。

 それとは反対に異様に良い笑顔を浮かべているオオガミは、そのままマーリンを連れて宇宙船へのゲートをくぐる。

 

 

 * * *

 

 

「おやマスター。意外と遅かったね?」

「流石にスパルタ軍は洒落になら無いくらい強いって。そりゃ時間もかかるよ」

「ジャガー村は突破できそう?」

「糸口は見えたけど面倒になったので休憩。じゃ、あっちで倒れてる孔明さん連れて周回行こうか」

「ぐぬぅ……横暴すぎる……」

 

 そう言いつつも孔明は起き上がるとタバコに火をつけて、髪を軽く整える。

 

「ふぅ~……よし。まずは敵の戦力確認だ。敵によってメンバーを変えねばならんが、なんとかなるだろう。大半はラムダとダ・ヴィンチを起点とした作戦になるが、行けるだろうか」

「まっかせて。どんどん宝具を回すよ」

「えぇ。いくらでも海に沈めてあげる。地上に返さなくても良いんでしょう?」

「怖いねぇ。やっぱり僕は要らなくないかな? 帰って良いかい?」

「貴様はそこで王の話でもしておけ。出番が来たら呼ぶ」

「おっと。出番があるって言われてしまった。これは困った。傍観者を続けられないね?」

 

 そう言って肩を落とすマーリンにオオガミはニヤリと笑うと、

 

「大丈夫。あくまでも可能性の話だからね!」

「嫌な予感しかしないなぁ本当に!」




 とりあえずスパルタとサムライクリムゾンをぶっ倒したので休憩。ジャガーは許さぬ。

 あ、70箱到達しました。100箱終わらない……新エリアのチケットがセイバーとルーラーとか、マジでありえねぇですよ……


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なんで勝てないのよ!(私に勝てなくてそんなに悔しいかしら?)

「あぁぁぁもう! なんで勝てないのよ!」

「あらあらあらあら。何々ラムダ。私に勝てなくてそんなに悔しい? 悔しい? ふふ、悔しい?」

「うっわぁ……エウリュアレがめっちゃ楽しそうだぁ……こっちもイラッとしてくるぅ」

 

 ラムダに向かって笑顔で近付くエウリュアレを見つつ、オオガミは苦笑いをしながら呟く。

 実際にあの防御力に殺られているので、効果的な返しはできないのだが。

 

「ふふっ。でもマスター? 貴方、既にギミックは予測しているのでしょう? なら、ちゃんと対策をしたパーティーで来るべきじゃないかしら」

「ん~……まぁ、確かにある程度対策は思い付いてるし、実行も出来る環境だけど……」

 

 オオガミは言いながらラムダの横に立ち、

 

「それはそれとして、ラムダで勝ちたいじゃん?」

「オオガミ……」

「……ふぅん? まぁ、確かに令呪を使えば勝てそうな場面はあったしね。じゃあ、こっちはその上から潰してあげる。私に勝てる日が楽しみね。マスター?」

「うん。全力で倒しにいくよ」

 

 そう言ってエウリュアレに宣戦布告し、エウリュアレは心底楽しそうに笑う。

 

 

 * * *

 

 

「ノッブはどう思います? センパイ、勝てると思います?」

「う~む、令呪三角消費で最速クリア目指す方が楽そう」

「う~んゴリ押し! 暗に勝てそうにないって意味ですかね!」

 

 そう言って笑うBBに、同じく楽しそうに笑うノッブ。

 

「いやぁ、あれは無理じゃろ~。ターン開始時にHP減少、異常なまでの回復力、くそ固い防御。儂ぶん投げると思うなぁ」

「いやいや。でも私気になるんですけど、センパイ、二人ともブレイクしてから戦うじゃないですか。あれ、ブレイクしないとどうなるんですかね? 実はHP取られないんじゃないです?」

「なるほどな~……つまりあれか。マスター無駄な努力してる説。無理にしなきゃ行けるって話じゃな」

「ですです。なので、もしかしたら行けるんじゃないかなぁって私は思いますけどね~。ま、次のセンパイはやってくれるでしょう。たぶん」

「うぅむ適当。まぁ、そんな感じで良いと思うけども」

「あはは。それで、結局ノッブはどう思います? 私はもちろん諦めて他のサーヴァントで攻略すると思いますけど」

「うむ。令呪でゴリ押し」

「じゃあ私は令呪無しで攻略ですね」

 

 突然入ってきた声に向かって振り向くと、そこにはマシュがいた。

 

「マシュさん、意外と乗り気ですね?」

「もちろんです。年に数回の、先輩が本気を出す大会ですし。たまには真面目に頑張らないと、いざというときに力を発揮できませんからね。最近はただの高難易度はつまらないと言って雑に済ませてしまいますし。無茶な程度でちょうど良いと思います」

「うぅむ。マシュって意外とスパルタじゃな」

「だからセンパイを支えられたんですねぇ……」

 

 マシュにそう感想を抱きながら、二人は試合を観戦するのだった。




 なんですかあれエッグい強いんですけど。でもまだ本気出してないし。行けるし。か、勝てるし(目逸らし

 エウリュアレがエキシビションに出るなら書かなきゃならんよなと思ったときには既に挑んでいた。惨敗してますとも。


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どう見ても勝てそうにない!(貴方が先に諦めたら勝てないでしょ!?)

「無理! もうやだ!」

「ちょ、マスターが先に諦めたら勝てないでしょ!?」

「なんだかドロドロしてきそうね。あぁ、楽しいわぁ……!」

 

 そう言って楽しそうに笑うエウリュアレと、あーでもないこーでもないと騒ぎながら編成を考えるオオガミとラムダ。

 ついには孔明を生贄にしてきたので、向こう側のキャスター組は戦々恐々としている。

 

「無理しないで、他のサーヴァントなら勝てると思うのだけど」

「でも、マスターは無理をしたいのでしょう?」

「そうだけど……それで勝てないのもどうかと思うわ」

「ふふっ、そうね。未だに私たち二人の片方すら倒せていないもの」

「えぇ、全くよ。まぁ? 私たちの大きな大きな盾は壊されちゃったみたいだけれど」

「はぁ……頑張ってはいるのですけど、まぁ、案の定強烈でして……何しろ一撃で体力がほとんど持っていかれるくらいには強化されてましたし」

「言い訳しないの。ほら、次に備えて準備しておく!」

「はい。頑張ります」

 

 エウリュアレに言われ、渋々と下がっていくメドゥーサ。

 それを見て、ステンノは輝かんばかりの笑顔を浮かべ、

 

「まぁ、きっとマスターたちはそのうち勝ってくれるわ。その時のメインが彼女かどうかはともかくとして、ね?」

「……それもそうね。信じてのんびり待つとしましょう」

「それまでは、メドゥーサに頑張って貰わないとね?」

「えぇ、もちろん。頑張って貰うわよメドゥーサ」

「……マスター、早く終わらせてくれないでしょうか……」

 

 怖い笑顔を浮かべる二人に、メドゥーサは目を逸らすのだった。

 

 

 * * *

 

 

「諦めて良いですか!」

「却下! 後ちょっとなんだから頑張りなさいよ!」

「いや、後ちょっとって、そのちょっとが削れなくて困ってるんじゃんか! 無理でしょ40万ちょっとを削りきるとか!」

「良いわよやれるわよ! でもあの盾をどうやって越えれば良いのかしら。気合い?」

「優雅さの欠片もないね? いやそれが最適解だと思うけど」

「いい? 勝てなかったら意味ないの。なら結果を出すために何でもするのは普通よ! だからとにかくエウリュアレをぶっ飛ばす!」

「なるほどその敵意だけは分かった。なんで敵意があるのかは分かんないけど」

 

 オオガミがそう言った直後に腹部に突き刺さる蹴り。

 くらったオオガミは呻きながら倒れるも、自業自得なのだけはなんとなく分かっているので文句は言わない。

 

「むぐぅ……と、とにかく、一回保留……短期決戦用の戦略思い付くまで待って……」

「もう……仕方ないわね。じゃあ周回に行きましょ。休憩よ」

「私たちは一切休みが無いのだが……!」

 

 ラムダの発言に孔明が文句を言うのだった。




 どうやってラムダで勝つんですかね。カード運に全振りするしかないんですが。クリティカル頼みですねこれ。それでも倒せる気しないんですけど。誰かラムダでクリアしました……?


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勝った! 勝ったわマスター!(令呪二画の尊い犠牲の上に立つ)

「あはははは!! 勝った! 勝ったわオオガミ! やったわ!」

「これぞ計略……令呪二画の犠牲は伊達じゃないんですよ」

「宝具に一画も割いてないけどね。一騎討ちは最高だったわ」

 

 宝具三連射ですら倒れないエウリュアレ達に戦慄したものの、どうにかステンノを倒すと同時にラムダ以外退場。令呪による後押しでどうにか勝てた辛勝だった。

 

「いやぁ、久しぶりに令呪に祈ったよ。というか、なんであんなに無茶してたんだろ……」

「まぁ良いじゃない。勝てたんだから。えぇそう。勝ったのよ。私が! エウリュアレに!」

「うるさいわ。そんな何度も言わなくたって伝わってるわよ!」

 

 頬を膨らませ真っ赤にしながらラムダに文句を言うエウリュアレの後ろから、ステンノはニッコリと笑いつつ、

 

「ふふっ、ごめんなさいね。(エウリュアレ)は負けず嫌いだから」

「ステンノ様もでしょ? 隠しきれてないし」

「……そうね。令呪が無ければ勝てていたもの。あぁ、失敗。私が負けても、まだ(エウリュアレ)がいるから勝てると思ったのに。やっぱり相性って大事ね」

「まぁ、エウリュアレに有利を取れてなきゃまずやらない戦いだったし……有利は大事ですよ」

「えぇ。ところでマスター? どうして敬語なのかしら。貴方達は勝者で、私たちは敗者。つまり、力関係は貴方達の方が上ということになるのだけど……なんでかしらね? (エウリュアレ)には無いのに。不思議ね?」

「……いやまぁ、特にそれと言った理由は無いですけどぉ……」

 

 そう言って、視線をエウリュアレとラムダの方に向けて助けを求めるが、悲しいかな。二人は今喧嘩をしているのだった。

 

「はぁ……何度言っても止めてくれないのね。もしかして、私が怖いのかしら。それとも私が姉だからかしら。それなら遠慮する必要はないわ。むしろどんどん来てほしいわ」

「おっと、危険な香りがしてきた。ヘルプミーメドゥーサ!」

「いえ、私は姉様側ですので。むしろ捕まえる側かと」

「くそぅ敵か!」

 

 そう悪態をつくオオガミに、ステンノは微笑みながら、

 

「行きなさいメドゥーサ」

「御意に」

「サーヴァントに勝てるわけ!」

 

 一瞬で肉薄してきたメドゥーサに短く悲鳴をあげるも、次の瞬間、白煙と共に消えるオオガミ。

 その場に残されたのは一枚の礼装で、

 

「……『勝者の余裕』ですか……どことなくムカつく顔ですね」

 

 そう言いながらメドゥーサは礼装を握りつぶし、オオガミの行方を探す。

 

 

 * * *

 

 

「……スゴい格好よね」

「……めちゃくちゃ恥ずかしいのだけど」

「たすけてぇ……お許しをぉ……」

 

 そうかすかに聞こえるオオガミの声は、ラムダの着ているリヴァイアサンパーカーからしていた。

 それは、エウリュアレとラムダが喧嘩している一瞬、パーカーが浮かび上がった一瞬の隙に潜り込まれたのだった。

 当然二人は即座に喧嘩を中断したわけだが、

 

「……どうしましょうか。それ」

「さっきから流体化しようとする度にガンドを撃って止めてくるのだけど……どうしたら良いかしら」

「それ、つまり動けないってこと?」

「いえ、そこまでひどい訳じゃなくて、スキルが使えないくらい……調節が絶妙に上手くなっているのは褒めて良いのかしら。叱るべき?」

「そこは悩むべきところではないと思うのだけど」

 

 エウリュアレのツッコミに我に帰ったようにハッとするラムダ。

 そんなとき、メドゥーサがやって来て、

 

「姉様。マスターを見ませんでしたか?」

「…………」

 

 メドゥーサに聞かれ、どうする? とラムダに視線を送るエウリュアレ。

 ラムダは少し考えた後に頷き、それを見たエウリュアレはラムダに頷き返して、

 

「あのパーカーの中にいるから引きずり出して持っていって」

「えっ……あ、本当ですね。では失礼して……」

 

 メドゥーサはそう言って、パーカーの上からオオガミの頭の位置を割り出して一撃入れてから引きずり出し、

 

「ご協力感謝します。では」

 

 そう言って去っていくのだった。




 勝った! 勝ったんだ! 令呪使っちゃったけど!

 最後の最後でエウリュアレとの一騎討ちになったときはまず負けられないと思ったので、ノータイムで令呪使う覚悟を決めて殴り合い。完全勝利ですよこれは! やったぜラムダァ!!

 ところでこのマスター、ステンノ様に敬語を注意させられるの、ついに三度目なのですが。懲りないですね?


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借金取りなんかに負けないわよ(まさか朕が驚かされるとはな)

「ふふん。借金取りになんか負けないわよ」

「あぁ全く、本当に度し難いな汎人類史。まさか菓子の為にあそこまで躍起になるとは思わなかったぞ」

「いやまぁ、彼女が特殊なんですけど。むしろ秦は彼女の逆鱗だと思うんですけど……」

 

 そう言って、復刻クエストの文系バーサーカーとファイナルを消し飛ばした始皇帝と、借金取りとジャガ村を海に沈めたラムダに微妙な笑みを浮かべるオオガミ。

 

「分かるわ。あそこは完全栄養食こそあれど、特に変わらないサイクルを繰り返す面白味のないところだもの。甘味もないし、何が楽しいのかサッパリよ」

「ふむ……だがやはり、周りとは違う美味なるものがあれば、それだけで闘争は起こる。ならば、やはり無い方が良いに決まっているだろう。争いが起こらなければ滅びたりはせん。確実な生存はそうする他なかろう?」

「だからって、それで欲を失くしちゃ世話無いわよ。無意味無価値。欲望こそが人を生き物足らしめ、思考こそが人を人足らしめる。それなのにそのどちらも奪われたら、それは人ではなく自律した人形そのものね。あぁ全く。私の目指した理想のようで、かけ離れたくそみたいな世界だわ」

「ほぅ……言ってくれるではないか娘よ。儒こそ人、争いこそ生き物か。世界のバグから作られたにしては、中々な答えよ」

 

 始皇帝の言葉に、ラムダは一瞬目を大きく見開き、次の瞬間にはメルトリリスとしての霊基に変質させ、殺意のこもった視線で、

 

「……次同じ事を言ってみなさい。ぶち殺してあげる」

「ふむ。どうやら逆鱗に触れたようだ。それはすまん。何分そなたとはあまり話す機会がなくてな。あまり調べてもおらぬゆえ、何が悪かったのか……あぁいや、待てマスター。朕も事を構えようと言うわけではない」

「なら良いんですけど。まぁ、次始皇帝を呼ぶときにはメルトがいないときにしよう。うん。それが一番な気がする」

 

 オオガミはそう言って一人頷き、今まさに噛みつかんとしているメルトをお姫様抱っこで抱えあげると、始皇帝に笑顔をみせ、

 

「じゃあオレはこれで。また何かあったら呼びますね。始皇帝」

「うむ。困ったのなら遠慮なく呼ぶが良い。許すぞ」

 

 始皇帝に言われ、一礼してその場を後にするオオガミ。

 当然メルトは不満で、今にも暴れだしそうな勢いのまま、

 

「ちょっと! アイツに一撃入れられないじゃない!

 

 そうオオガミに文句を言うと、

 

「大丈夫大丈夫。そのうち仕返し出来るときが絶対来るから。確実に、来るから」

「っ……そ、そう……まぁ、それなら良いわ……」

 

 オオガミの顔を見て、メルトは思わず視線を逸らすのだった。




 なんで秒で喧嘩になってんのこの二人。何をしたらこうなるの。あとメモリアルクエストを楽しみにしないでオオガミ君。始皇帝とか二度とやりたくねぇから。


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真紅の勇者伝説!(次は劇場版かしら!)

「アッハハハハ!! 最高のステージね! えぇ! これは本に出来るわね!」

「う~ん、半分近くが王の話をしていそうな本になりそうだね。魔本になる可能性が高そうだ」

 

 うんうん。と頷くオオガミに、隣からマーリンが、

 

「安心してくれたまえマスター。私は四天王編でやられているからね。それに、どの媒体でも、基本一度やったら後はカットさ。序盤にちょっとやって終わりじゃないかな?」

「ふふん。BBちゃんはかわいい『そうりょ』ちゃんなので。そこの遊び人とは違うので悪しからず。ちゃんと優遇してくださいね?」

「いやどっちも同じでは」

「センパイ、さりげなく酷いですね?」

 

 オオガミに言われ、わざとらしく泣き真似をするBB。

 だが全く見向きもしないオオガミは、そのまま今回の勇者のもとへ向かうと、

 

「よっしゃ! そんじゃHDリマスター攻略記念に、エリちゃんライブをどこかでやりまぐはっ!」

 

 言いかけたオオガミの頭を全力でひっぱたきに行ったBBとマーリン。

 見事に叩き伏せられたオオガミは、ピクリとも動かなくなった。

 

「あっとぉ……あまりの危機感に思わずBBちゃん、手が出ちゃいました……」

「まさかあんな恐ろしいことを再びやろうとするとは。殴ってしまったのも仕方の無いことさ」

「えっ、何々? 何の話……って、ギャーーーー!! 子イヌが死んでるぅーー!!」

「いえいえ。死にかけてるだけなので何の問題もないです。それよりも、皆さんに武勇伝を聞かせた方がいいんじゃないですか? そっちの方が盛り上がると思います!」

「そ、そう? BBにしては良いこと言うじゃない。じゃ、行ってくるわ!」

「えぇ、行ってらっしゃいませ!」

 

 そう言って走り去っていくエリザを見送ったBBは、

 

「よし、今のうちにセンパイを拘束しておきましょう。放っておくとロクなことになりません。何かする前に拘束。これが鉄則です」

「良いとも。拘束しようじゃないか」

「いや、何バカなことを言ってるのよ。貰っていくわ」

 

 横から当然のように伸びてきた手に掴まれ、オオガミの体が引きずられていく。

 突然の展開に一瞬硬直したBBは、すぐさま振り返り犯人を見ると、やはりというべきか、エウリュアレとラムダがそこにはいた。

 

「ちょっと、センパイはもはや恒例のライブを開こうとしてたんですよ? 拘束すべきです!」

「うるさいわねぇ……要するに、ライブを開かせなければ良いんでしょ。任せなさい。別のものに変えておくわ」

「えっ、いや、何をする気ですか……」

「ん~……まぁ、楽しみにしてなさい」

 

 そう言って去っていく二人に、BBは不安を隠しきれないのだった。




 いやぁ、真紅の勇者伝説は神作でしたね。180分の超大作。旅立ちの原因となった旅人『はなのおにいさん』と『ぐんしのおにいさん』を連れ、ドラゴンキラーになり、四天王との激しい戦い、村人の奪還、蘇りし竜との戦い、ぐんしのおにいさんとの別れ……新たなる仲間『こあくまそうりょ(こうはい)』との出会い……激化する戦いの中で芽生えた友情と別れを描いた感動のストーリーでした……

 護衛系でめちゃくちゃ楽しかったのでこういうのもっとほしい。


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残りエキシビションは二つ!(さくっと行けるわよね!)

「さてと、エキシビションマッチも残り二つ。サクッと行けるかな?」

「行けるわ。ニンジンとローマとか、敵じゃないわね!」

「流石にそんな簡単じゃないでしょ……」

 

 余裕そうなオオガミとラムダに、やれやれと首を振るエウリュアレ。

 とはいえ、真面目にやれば順調なのは確かだった。

 

「自重しないのは良いけど、あそこで殺されてないのに死にそうなのはどうするの?」

「なんだかんだ死なないから大丈夫。孔明先生だけは丁重に扱うからね」

「スカディは良いの?」

「今は高難易度しか出番無いし、大丈夫かな。嫌がってたらアイスを渡そう」

「そ、そう……なんだか扱いが上手くなってきたと言うか、雑になってきたわね」

 

 もはや隠す気もなく雑に扱い始めるオオガミ。

 孔明だけ扱いが違うのは、どこでもお世話になっているからだろう。

 

「そう言えば、ポテトとか、ホットドッグとか、ハンバーガーは集めないの?」

「ん。い、今からやるですよ……?」

「何それ……なんかダメそうね?」

「いやいやいや。行ける行ける。ちょっと無理すれば余裕ですとも」

「無理しないといけない時点でダメでしょ。ちゃんと気を付けなさい」

「ぐぬぬ……はぁい」

 

 エウリュアレに言われ、仕方ないと言いたげな表情をしつつも従うオオガミ。

 それを隣で聞いていたラムダは一瞬不満そうな顔をし、しかしすぐにイタズラな笑みを浮かべると、そのままオオガミの左腕に抱き付き、

 

「じゃあ、今日は遊びましょう? 息抜きも大事なことなんだから、出来るときにするべきだわ」

「えぇっ、今から? 別に良いけど……何する?」

「あら、そうね。観光とかどうかしら」

 

 ラムダに対抗してか、右腕に抱き付くエウリュアレ。

 そのまま二人の視線がぶつかり合い火花を飛ばし、挟まれているオオガミは複雑そうな顔を浮かべる。

 

「ん~……あ~……うん。じゃあ観光に行こう。残念金星神はサンフランシスコに行ってたらしいし、ニューヨークを観光しちゃいけない訳じゃないだろうし。宇宙船が襲来しても変わんないでしょ」

「そんなものかしら。神代なら、全力で逃げ出すものだけど」

「野生を失った人類に危機感はないのね。それだとあっさりドレイン出来そうで面白くないわ。なんでそんなに死にたがるのかしら」

「ん~……日本人がおかしいのかもしれないけどねぇ……というか、あれ? ここ特異点だよね。サンフランシスコがあるのって謎じゃない? 漂白も崩壊もしてないのはおかしくない?」

「……それ以上は突っ込まない方がいいと思うわ」

 

 ふと出てきた疑問に、エウリュアレは悟ったような顔で諭すのだった。




 ニンジンとローマ……どうせ朕が倒してくれそうだけど、どうせなら意地で戦いたい……メルトで殴る……?


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センパイ達、どこ行きました?(どうせ遊んどるから気にするだけ無駄じゃ)

「あれ、ノッブノッブ。センパイ達、どこ行きました?」

「おま、珍しく出店許可取って忙しく働いてるときに……ほい、焼きそば一つ。300QPじゃ。え、高い? 物価高騰してるし是非もないよね?」

 

 作った焼きそばを売りながら、隣で堂々とサボっているBBに目を向けるノッブ。

 

「いえ、ですので、センパイがいないんですよ。正確には、センパイとエウリュアレさんとメルトなんですけど。周回はロリンチちゃんと鈴鹿さん、あと孔明さんの三人がメインな上に、後ろにいるはずのラムダが人形パネルですし」

「あぁ、その二人なら、今頃ニューヨークを観光してるじゃろ。マスターに誘われたが両サイドの二人が怖かったので辞退した。ちょうど許可が下りたときだったし。BBを置いていくのもな?」

「えぇ~? なんですかそれ。BBちゃん、一緒に行きたかったんですけどぉ~。ハブられるのに納得いきませ~ん」

 

 ブーブーと文句を言うBBに呆れたような顔を向け、ノッブはため息を吐くと、

 

「仕方ないのぅ……全部売り切れたら、残りの時間で遊びに行くぞ。遅ければ遅いだけ損じゃからな~」

「ぐっ、一切隠す気がない餌……! そうやってれば簡単にBBちゃんが飛び付くと思ったら大間違いですよ!」

「え、行きたくない?」

「そうは言ってません! ちゃちゃっと終わらせて行きますよ!」

 

 そう言って張り切るBBを見て、ノッブは隣で正体不明のタコっぽい何かを焼こうとしているアビゲイルに手刀を入れつつ、

 

「こういうところが残念じゃよなぁ……いやまぁ、欠点ではないのじゃけども。むしろ利点じゃが、なんというか、うむ。残念なんじゃ……」

「もしかして今BBちゃん憐れまれてます?」

 

 BBは、可哀想なものを見るノッブの視線に半泣きになるも、やはりノッブの隣で勝手に鉄板の上に謎の軟体生物を置こうとするアビゲイルに、置かれた直後の軟体生物を門を使って直接口の中に送り込む。

 隣でのたうち回っているアビゲイルを見なかったことにしつつ、

 

「ところでノッブ。行くなら二人きりですか?」

「二人が良いか? 別に儂は気にせんけど」

「ん~……誘えそうな人います? 何気に私、嫌われてる率の方が高いのでいないんですよね。誘える人」

「ボッチだったかぁ~……まぁ、沖田を呼んでいくかのぅ……」

「スーパー人斬りジェットですね。BBちゃん知ってます」

 

 うんうん。と頷くBB。ノッブはそれに対して複雑そうな顔で、

 

「あと、この悪がきも連れていくか」

「あ、流石に気付いてますよね」

「きゃーー! 誘拐されるわーー!」

「うるさいわ! 貴様、さっきから変なもんを混ぜ込もうとしおって! このまま店を放置したら絶対ろくなことしないじゃろうが! 一緒に行くぞアビー!」

「ひぃん! ごめんなさーい!」

 

 頬を引っ張られ半泣きになるアビゲイル。

 それでも止めようとしないノッブをBBが横から落ち着かせ、BBの監視のもと、アビゲイルも働かされるのだった。




 ノッブのキャラが、完全に慕われる姉御肌……でもそんなノッブが好きなんやで……

 そして懲りないアビー。彼女は闇落ち期間が長過ぎて帰ってこれなくなりました。イタズラ少女アビー爆誕。アナスタシアとの合流だけは全力阻止の姿勢ですよ。


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交換アイテム終了!(残りはチケット回収だぁ~!)

「よし。これで交換アイテムも終了。チケット取るぞ~!」

「お~!」

「いやおかしいだろう!?」

 

 元気良く突撃しようとするオオガミとロリンチに悲壮感漂う声を上げる孔明。

 当然のようにオオガミは首をかしげ、

 

「あれ、おかしなところ、あったかな……?」

「いや? 私にはサッパリ。一日で交換アイテムを集めきるのはちょっぴりオーバーワークの気がしたけど、それだけさ」

「そうだそこだそれがおかしいと言っている! 平然とするなバカ!」

 

 オオガミに強めの手刀を入れつつ、孔明は不機嫌そうな顔をする。

 オオガミはそれに対して叩かれた場所を押さえながら更に首をかしげ、

 

「周回疲れ?」

「それもあるが、この際それはどうでも良い。今はマスターの休息が必要だと言っている。全く……こんな疲れきった顔で返されても困るんだ。さっさと寝ろ」

「え、えぇ~……でもほら、ボックスがさぁ……」

「言ってる場合か。マスターは体が資本。いや本来は魔力だが、お前の場合それはカルデアが、今は彷徨海が賄っているんだ。なら、マスターなら肉体だけは万全にしなければならない。決して徹夜して遊び回ろうだとか、命を削って周回をしようだとか考えるな。分かったな?」

「は、はい……」

「ふん……分かれば良い。それと、休むのには私の部屋を使え。あそこなら……まぁ、たまにグレイが出入りはするが、基本人は来ない。エウリュアレとメルトを連れていくなよ。絶対に休めないからな」

「あれ、それってほとんど隔離状態では?」

「当たり前だ。お前は全く気づいてないようだが、サーヴァントの近くにいるだけで微量に魔力は吸われていく。特にあの二人は意図的にやっている節があるからな。今の状態で会わせるわけにはいかない。話は私からしておく。明日、回復したら戻ってこい」

「は、はい……じゃあ、後の周回は任せたよ孔明先生」

「……あ、あぁ、任せたまえ。こなして見せるとも」

 

 それを聞いて安心したのか、オオガミは笑みを浮かべ、

 

「それじゃ、休んでくる!」

「あぁ、ゆっくりしていろ」

 

 そう言って、走り去っていく。

 それを見ていたロリンチは、

 

「良いのかい? マスターを行かせちゃって」

「構わんさ。何より、居られると準備が出来ないのでな」

「うん? 準備? 何のだい?」

 

 純粋な目で見てくるロリンチに、孔明はため息を吐くと、

 

「明日はマスターの誕生日だ。だからほら、誰もいないだろう?」

「おや、言われてみれば、観客席の人数が少ないね? なるほどそういうわけだったのか……って、それって一大事じゃないか。なんでもっと早く教えてくれないんだい?」

「いや、知っているものだと思っていたのだが。まさか本当に知らなかったのか」

「くっ、なんだか悔しい……! でも、それさえ分かればこっちのものさ。さぁ、誕生日プレゼントを用意しようか!」

 

 そう言って、ロリンチは張り切るのだった。




 今さら思ったんですけど、この話書いてて虚しいな……?

 あ、高難易度しなきゃ……(現実逃避


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今日はマスターの誕生日!(祝いの品を送らなきゃ!)

「うわっ、なによその荷物」

「何って……貰い物。誕生日プレゼントの群れだよ。ケーキもあるからちょっと大変だけど」

 

 バトル・イン・ニューヨークの待機室の一角で、大量のプレゼントに埋もれながら、机の上に並べてあるケーキをひたすらに食べていくオオガミ。

 それを見たラムダは、少し困ったように、

 

「もしかして、私のケーキは余計だったかしら」

「いや、真っ先に食べたけど」

 

 ノータイムで返答してくるオオガミにラムダは一瞬目を丸くし、すぐに表情を取り繕うと、

 

「ふ、ふぅん? 最後じゃないのね」

「いやぁ……意地で食べるのはなんか違うじゃん……一番美味しいと思える状態で食べたいよね」

「そ、そう。そうなの……」

 

 そう言って、目を泳がせているラムダに、オオガミは首をかしげ、ハッと気付いたように、

 

「さ、流石にラムダにもこれはあげられないよ? 貰い物を渡すほど外道になったつもりはないし」

「別に貰おうと思ってないわよ……というか、前に誰かに取られかけたわけ?」

「あぁ……うん。エウリュアレが平然と食べようとね……たぶん、なんでも貢ぎ物だと思ってるよ、あの動き」

「何かしら……私、そんなのと張り合ってるの……?」

 

 何とも言えない複雑な表情になるラムダに、オオガミは苦笑いをしながら、

 

「まぁ、あれはあれでエウリュアレの在り方なんだろうし、否定まではしないけど、ちょっと自重してほしい気持ちはある」

「そうよね……流石にやりすぎよね……」

「それは去年の話でしょ。流石に今年はしないわよ」

 

 そう言うエウリュアレは、いつの間にか不機嫌そうな顔でラムダの隣に立っていた。

 

「全く……今年はまだ手を伸ばしてすらいないのにこの言われよう。納得いかないわ」

「去年やっちゃったからじゃないの? それしか考えられないのだけど」

「そんなに気にすること? ちっちゃいのね」

「いやぁ、エウリュアレに言われるだなんて、感激だね。泣くよ?」

「ねぇどうしましょうメルト。マスターがいつも以上に情緒不安定なのだけど」

「ごめん待って? 私いつも通りにしか見えないのだけどどこでそう思ったのかしら」

 

 怯えるように言うエウリュアレに困惑するラムダ。

 そんなラムダに反論しようと言葉を出しかけたエウリュアレは、考え込み、

 

「なんでかしら……こう、直感的なもの……かしら」

「そう……でも一応警戒しておきましょうか……」

 

 ラムダがそう言ったときだった。

 オオガミは何かに気付いたように顔を上げると、

 

「あ、これはあげる」

「……ゲテモノじゃない……」

 

 それは、よく分からない、かき氷のようななにか。

 黒いのに、どこか星空のような美しさのある、かき氷。

 そのシロップは甘い香りを漂わせ、正気を削るようなものだった。

 

「……誰が作ったの?」

「アナスタシア曰く、アビーとカーマの三人による合作」

「地獄じゃない」

 

 どうしたものかと考える二人に、オオガミは苦笑いをし、

 

「まぁ、食べないならこっちで丁重に扱うので大丈夫。とりあえず覚悟を決めないと……」

「こういうのの適任者がいるから連れてくるわ」

「絶対食べるんじゃないわよ」

 

 二人はそう言うと、どこかへ走り去っていくのだった。




 宇宙は空にある(啓蒙99

 冒涜的見た目で冒涜的な味のする冒涜的カロリーを携えた『さいきょう』のかき氷。提案を秒で採用し冒涜的にしていくスタイル。どうも、いつも通りの私です。

 ニンジン嫌いカーマで堕とす。そう思ってたらなんとか勝てたので大満足。MVPは朕。

 正直誕生日を忘れ始めてて、プリコネ起動して思い出しました。今日誕生日でした。


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日常
ギル祭終了のお知らせ!(ローマには勝てなかったよ……)


「ちょっと~。ギル祭終わったわよ~」

「え、マジか……はぁ、ローマに勝てなかったし、いいよもう……150箱強開けられたし、満足だよ……」

 

 リンゴを片手にふらふらとしていたオオガミの腕を引いているエウリュアレ。

 なんだかんだ強くなっている自信はあったので、ローマに勝てなかったことを悔いているオオガミ。

 

「まぁ来年復刻するかはかなり怪しいけど、正直時間が迫ってたから焦って選択ミスしてただけで、勝てない訳じゃないでしょ」

「いや、正直どうすれば勝てるのか全く浮かんでこないけど……なんだかんだ全体的にレベルが足りないと言うか、宝具レベルが何よりも足りてない……」

「致命的よね……武蔵も、ベティヴィエールも微妙に足りなかったもの」

「攻撃力不足はどうしようもない……」

 

 ぐぬぅ、と唸りながらエウリュアレに連れられるオオガミは、現在自分がどこに向かっているかすら分かっていなかったりする。

 

「ねぇエウリュアレ……今どこに向かってるの?」

「どこって、貴方の部屋でしょ。今日はもう寝なさい」

「えぇ~……今日はもう少し遊びたかったんだけど……」

「バカ言わないで。連日周回して疲れてるのに遊ぶとか、あの金ぴかみたいな死に方をする気?」

「あぁ……うん。過労死したくはないし、素直に寝よう」

「おい待て雑種。それだとまるで(オレ)が最悪の死に方をしたみたいではないか」

「げぇっ、賢王様!」

 

 反射的にそう言ってしまうオオガミ。

 当然それを聞いたギルガメッシュは不機嫌そうに眉を上げると、

 

「げぇっ、とはなんだ、げぇっ、とは。良い度胸だなマスター? 良かろう。我直々に貴様に処罰をくれてやろう」

「うおああぁぁ! お許しくださいませ賢王様ぁ!」

「うるさいわねぇマスター。こんなやつ私一人で黙らせられるって言うのに、もう……」

 

 そう言いつつもギルガメッシュを止めようとしないエウリュアレ。

 そして黄金の波紋から突如として射出されたそれは、オオガミの頭にぶつかり、自分だけは被害を受けないようにとエウリュアレが手を離したせいで大きくのけぞってオオガミはその場に倒れる。

 そして、

 

「ふ、ふかふか枕だ……」

「あら本当ね。取っても寝やすそう。私ももらえないかしら」

「たわけ。此度はこやつめがボックスを開けまくった褒美よ。あの軍師も言っていたが、こやつは休まぬときは本当に休まぬゆえ、仕方なくだ。とはいえ、当然その枕は我の財宝の中でもグレードは下の方……中の下辺りよ。今の貴様にはそれで十分だろうがな。部屋も整えてやった。感謝しながら寝付くが良い」

 

 そう言うギルガメッシュに、エウリュアレはジト目で、

 

「……やるときはやるわよね。政治とか、私にはサッパリだけど」

「我は無駄なことに労力は割かぬだけよ。当然必要ならばする。今までする必要がなかっただけのことよ」

「ふぅん、そう。まぁいいわ。私はあれを運ばなくちゃだから」

「あぁ、それはもうよい。せっかく来たのだ。我自ら運ぶと言うのも良いかと思ってな。貴様は部屋に帰ってゆっくりしているが良い」

「……私、そいつと同じ部屋なのだけど」

「……あぁ、そうであったな」

 

 ギルガメッシュは納得し、宣言通りオオガミを抱えてエウリュアレと共に部屋まで向かうのだった。




 ローマ強すぎて無理……ベティが宝具4……むりぃ……

 という事で令呪三画でもダメだったので諦めの境地に達し、泣きながらチケット回収をしてました。やってられないんだぜ!

 あ、戦果は158箱強です。ほぼ159箱。現在所持しているセイバーとアーチャーとライダーの育成が終わったと言う……


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突然どうしたのよ(特に何があるわけではないけども)

「ん……どうしたのよ」

「いや……特に何があるって訳じゃないんだけど」

 

 マイルームで、膝の上に乗っているエウリュアレを抱き寄せるオオガミ。

 突然の行動にエウリュアレは一瞬戸惑うも、すぐに何事もなかったかのように持っていた本を読み始める。

 

「ん~……眠いかも」

「そう……寝れば良いじゃない」

「うん……このまま寝て良い?」

「……ダメって言っても寝るでしょ」

 

 エウリュアレの言葉に、オオガミは一拍置き、

 

「まぁ、なんだかんだ許してくれるとは思ってるし……」

「なんだか最近甘く見られている気がするわ。でもまぁ、否定はしないけど」

「うん……じゃ、おやすみ」

「えぇ、おやすみ。マスター」

 

 そう言って、エウリュアレの肩に頭を乗せて寝始めるオオガミ。

 エウリュアレはそれを邪魔そうにしながらも、黙々と読み続ける。

 すると、

 

「おーぅ。ちょっと遊びに来た……って、うわ、お邪魔じゃったか」

「うるさいわね。さっさと帰りなさいよ」

 

 突然入ってきたノッブに、帰れと文句を言うエウリュアレ。

 だがノッブは笑いながら、

 

「いやぁ、BBめに追い出されてなぁ。『一回掃除するので出てってくださーい』ってな。儂、掃除は基本任せる主義じゃから任せて遊びに来た」

「いや手伝ってきなさいよ。なんで逃げて来たの」

「いやぁ、邪魔したら殺されそうな勢いだったんでな~……流石に儂も掃除されたくはない……」

「さり気にゴミ判定されてる……?」

 

 ノッブの言葉に疑問を覚えつつ、呆れたような顔をすると、

 

「で、帰ってくれるの?」

「まさか。儂が帰るわけなかろう……と、言いたいところなんじゃが、流石にこの空間に居られんからな……レクリエーションルームに行ってくる」

「えぇ、さっさと行きなさい。そしてこの部屋の鍵を閉めて行って」

「いや流石に儂には無理。というかやりたくないんで頑張れ。誰も来ないようにしておくがな~」

「あ、ちょ、使えないわね……」

 

 そう言ってさっさと去って行くノッブに、エウリュアレは文句を言いつつも、すぐに読書に戻る。

 すると、静かに寝ていたオオガミがもぞりと動き、

 

「ん……どのくらい寝てた?」

「そんなに時間は経ってないわよ。ほんの数分よ」

「そう……ん~、やっぱり寝辛いのかな……ぐぬぬ。どうしたものか」

「もう普通に寝ればいいじゃない。仕方ないから退いてあげる」

「うん。おやすみ……」

 

 そう言ってベッドで横になるオオガミ。

 エウリュアレは当然の様にオオガミの横に寝転がり、腕を枕にして読書を再開するのだった。




 エウぐだを補給したくて調べるもエウぐだはエウぐだでもエウぐだ(♀)だったので発狂し、仕方ないから今日のカルデアとは別で書こうと思うもいつものノリになり、結局こっちで書くことにしたという。もっと増えろエウぐだ(♂)……


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たまにアイツっておかしくなるわよね(いつもあんなものよ)

「ねぇ、今さらなんだけど……たまにオオガミっておかしくなってるわよね」

「おかしくって、例えば?」

 

 食堂の片隅でこそこそと質問するメルトに、エウリュアレは首をかしげる。

 

「例えばって……ん~……昨日みたいな? と言っても、直接見た訳じゃないのだけど」

「昨日……あぁ、べったりくっついてくる感じの? まぁ、数週間に一回くらいのペースでああなるわね。見たことなかったっけ?」

「寝ている瞬間は稀に見るのだけど、一回もされた覚えがないのよね……」

「そうだったかしら……でも、そんなに良いものでもないわよ。重いし」

「……なぜかしら。無性にイラッとするわね、そのセリフ」

 

 エウリュアレの言葉にむっとした顔になるメルト。

 だがエウリュアレは大して気にした様子もなく、

 

「まぁ、まず貴女にはしないと思うけど。なんだかんだ、貴女は特別枠みたいだし」

「ふぅん……まぁ、悪い気はしないけど、なんだか不満」

「そうは言ってもねぇ……貴女の前だと基本気を張ってるのよ。たまにおかしくなるけど」

「……なんだか貴女のアドバイスって、その、なんと言えば良いのかしら……」

「エウリュアレのアドバイスって、おばあちゃんみたいだよね! 大丈夫! 茶々分かるから!」

 

 突然エウリュアレの横に出現する茶々。

 何時からいたのかと問う前に、真っ先に手を伸ばしたエウリュアレは、そのまま茶々の頭を両手で掴み、

 

「誰がおばあちゃんかしら。ねぇ、誰がおばあちゃんなの?」

「あっれぇ? おかしいな。茶々、エウリュアレの筋力は弱いって聞いたからやったのに、想像の何倍も痛いんですけど。具体的には頭割れそう」

「聖杯パワーは伊達じゃないの。覚えておきなさい?」

「うん。ダメですね。ここは素直に謝る戦法です。エウリュアレ様ごめんなさい。茶々のやったことだから許して?」

「……愛される女神に愛嬌をぶつけてくるとか、正気じゃないと思うのだけど」

 

 エウリュアレはそう言いながら、全力で締めていた頭を解放し、座り直す。

 

「それで、何しに来たの?」

「え? いや、理由なんかないけど。来たかったから来た、的な?」

「理由が雑ね……まぁいいけど。マカロンでも食べる?」

「わーい! 茶々マカロン大好きー!」

「……私も一つ貰おうかしら」

 

 そう言う二人に、一つずつマカロンを食べさせるエウリュアレ。

 そして、茶々はマカロンを飲み込むと、

 

「やっぱり、エウリュアレはもう田舎のおばあちゃんって感じだよねええあああ痛い痛い痛い!」

「わざとよね。あからさまにわざとよね。許さないわよ?」

「ひぃんっ! エウリュアレがいじめるぅ!」

「完全に自業自得じゃない」

 

 泣きついてきた茶々をバッサリ切り捨て、メルトはため息を吐くと、

 

「なんだか、考えてるのが馬鹿馬鹿しくなってきちゃったわ。アイツが来るまでここで寝てようかしら」

「食堂で寝てるとうるさいのが来そうだけど……まま、大丈夫でしょ。おやすみなさい、メルト」

 

 そうエウリュアレに言われ、メルトは机に突っ伏して目を閉じるのだった。




 オオガミ君はたまに幼児退行するので。プリコネ太郎には勝てませんけど。

 それでも基本メルトの前ではあんまり退行してないはず……してましたっけ……


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新作アイテム作ってませんね?(別に義務はないんじゃが)

「そう言えば、最近センパイに新作を届けてませんね」

「いや、儂らは気ままに作るだけで、作らなきゃいけない訳じゃないからな? 技術部とか、名前だけだし」

 

 工房で何時ものようにゲームをしながら話す二人。

 今回は『錬金術とか面白そうじゃよね』という事でアトリエ系だった。

 

「こんなゲームしてたら作らなきゃいけないと思うんですよ。なんですか、アトリエって。錬金術とか、これ本職の人に殺されません?」

「いやほら……本職とか普通いないし。普通賢者の石とか作らんし。そもそもこれどっちかって言うと戦闘メインなところあるし」

「そうですよね冒険者ですもんね! 採取道具より爆弾積んでますもんね!」

 

 BBの言葉に反論しないノッブ。

 さりげなくではあるが、これはオオガミの私物だったりする。

 

「というか、なんでセンパイこんなの持ってるんですか……? 普通、もっとバリバリバトル系のじゃないんです……? ドラ○エとか」

「うむ。まぁ、儂も最初はバイ○ハザードを借りに行ったしな。持ってなかったから代わりに借りてきた」

「いや明らかに代わりになりませんよね?」

 

 明らかに方向性がほぼ真逆だろうと突っ込みつつも、進めていく。

 

「それにしても、これを見てると面白そうですよねぇ、錬金術。実際はもっと面倒くさそうですけど。ただちょくちょく作ってみたいのとか出てきます……」

「ふむ……例えば?」

「いやもう、普通にこのぷにが欲しいです。絶対感触良さそうじゃないですか。一生触ってられそうですよ?」

「む。案外普通と言うか、女の子らしいと言うか。てっきり二回行動系アイテムかと」

「はぁ……バカですねぇノッブは。ラスボス系後輩の私にとって、それは常時効果です。加入時点で持ってて、敵になっても持ってる。それがラスボスパワーですとも!」

「仲間になったら劣化しそうじゃなぁ……」

「まぁ、後輩ですし。センパイより目立っちゃいけないと思うんです。そう言う気遣いが出来るってパーフェクトだと思うんですが」

「う~ん、自分で言ってる時点で強みを理解してると思って50点。内訳は慢心すると思うのでマイナス50点。以上」

「あれ、スッゴいバカにされてます?」

 

 怪訝そうなBBの視線を受けながらも、ノッブは平然としつつ、

 

「儂、これほしい。暗黒水。三重苦とかクッソ楽しそう。弓に塗りたくって射ちたくない?」

「全力で戦闘能力じゃないですか。実用性重視で面白くないですねぇ……」

「いや、普通そうなるじゃろ。儂、創作意欲が湧くかと思ってやってるだけじゃし……」

「えぇ~……まぁ、良いんですけど。確かに作りたくなってきますし。思い付いたら中断して作っちゃいましょうか」

「そうじゃな~。まぁ、モンスターの方が面白そうなんじゃけど」

 

 そんなことを話ながら、二人はゲームを続けるのだった。




 最近技術部が大人しいことに気付いた私。ネタ切れが危険領域では……?

 アトリエシリーズはアーランドしかやったことなかったり……トトリが好き……ライザ買いました。


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ONILANDが近付いてくる(早め早めの準備が大事)

「……次の金曜日からONILANDよね」

「ハッ……遊園地だと……?」

 

 何かに気付いたように顔を上げるオオガミ。

 エウリュアレは呆れたように、

 

「何かあるの?」

「いや、まぁ、個人的には大きなことだけどエウリュアレは関係ないと言いますか……」

「何よそれ……もしかして、私聞いちゃいけない奴?」

「ん。そう言われると、確かに聞かれちゃいけない奴……」

「ふぅん……まぁ、大方メルト絡みでしょうけど。何したの?」

「したと言うか、すると言うか……いやまぁ、要因は過去だから『した』であってるのかな……」

「……なぜかしら。原因の一部に私がいる気がするわ」

「そりゃまぁ、その通りですし」

 

 オオガミに言われ、原因を考えるエウリュアレ。

 

「……もしかして、ラスベガス?」

「うん。まぁ、その話題が出たのはもうちょっと後だけど」

「そう……まぁ、貴方のことだから行くのでしょうけど。ちゃんと考えてるの?」

「去年のパンフレットを見つけ出したので考えてる。問題は何時行くかなんだけど……うぅむ、どうしたものか」

「まぁ、イベントでドタバタするし、何よりもエリア支配者のせいで気軽に散策できないものね」

「うん……まぁ、たぶん遊ぶ分には良いと思うんだけど、メルト的に大丈夫かどうか……一部即座に蹴り飛ばしに行きそうなのが数名……鬼救阿と一緒に殲滅し終わってからにするべき……?」

「ん~……そうね。終わったらすぐに、で良いんじゃないかしら」

「なら、その方向で固めていこうかな。よし、それじゃあ頑張るかな!」

 

 そう言ってオオガミは気合いをいれるために頬を叩き、

 

「あれ、待って? この状況なんか変じゃない? 普通手伝ってもらう?」

「そもそも行こうとしてる時点で、約束をしてる時点でどうかと思うけど。でもほら、貴方はそう言う人で、そんな残念な男を見てきたのが私達で。なら今さら抵抗なんてないし、むしろ最後に貴方の隣に誰がいるのか、取っても気になるじゃない」

「……なんか、めちゃくちゃ歪んでる気もするなぁ……」

「貴方には言われたくないわ」

 

 そう言って笑うエウリュアレ。

 オオガミはそれに苦笑いしか出来ず、反応に困っていた。

 そして、エウリュアレは笑顔のまま、

 

「そうそう。そう言う顔が見たいの。貴方、自分からは無意識に行くのにいざ返されると混乱してダメになっちゃうの、治した方が良いわよ。でないと、ほら。私みたいなのに食べられてしまうから」

 

 そう言って、先程とは違う、どこか不穏な気配を漂わせながら、エウリュアレはオオガミに言う。

 それを受けたオオガミは観念したように両手を上げ、

 

「女神様に食べられるって言うのはあんまり突っ込まないけど、善処します」

「……一言多いのよ。バカ」

 

 エウリュアレはそう言って、そっぽを向くのだった。




 はて。メルトとのデート回のフラグ立てに作ったらエウリュアレ回になってた。どう言うことかわからないけど、少なくともエウリュアレの好感度がちょっと上がったと言うのだけは確かです。大丈夫かオオガミ君。安心して後ろから刺されてくれ。


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ハロウィンの為にアタシは行く!(今年も溺れるんですね)

「ハロウィン……それは甘美な響き……じゃあ子イヌ。ちょっと行ってくるわね」

「今年は溺れないでね~」

 

 意気揚々と出掛けていくエリザベートを見送るオオガミ。

 どこへ行くのかは聞かなかったものの、どうせすぐ会えると確信していた。

 そんな様子を影から見守っていたアナは、

 

「あの、大丈夫ですか? 確実に悲惨な目に遭う気がするのですが」

「まぁ、うん……それはそうなんだけど、エリちゃんはやりたいことをやらせた方が確実に成長してくるから……もう一回遭難してジパングにたどり着いて今年こそエリちゃんJAPANの霊衣をもぎ取ってきてほしい」

「後半欲望駄々漏れでは」

 

 素早い切り返しで突っ込むアナに、オオガミは満足そうな笑みを浮かべつつ、

 

「大丈夫。なんだかんだ予想斜め上を突き抜けるのがエリちゃんだと信じてるから……!」

「それは少し、いや、かなり無理があると思うのですが。本当に大丈夫ですか?」

「ダメだったらその時は今年のハロウィンに賭けるしかないけど、いい加減あのロックなエリちゃんを運用したい……場合によってはカルデアでライブをすることも辞さない」

「やばいですこの人テロを起こす気ですよ……! これは姉様を呼んでも良いですね」

「う~んエウリュアレを呼ばれると殺されそうだなぁ」

 

 そもそも開催するなと言わんがばかりに脛を狙って蹴り続けるアナ。

 回避できないようにしっかりと足を踏んでからやっているのがアナの怖い所で、当然オオガミはうずくまりながら、

 

「あ、あのですねアナ様。そこを執拗に蹴られると死ぬほど痛いんですが」

「そうですか。なら、死んだ方が良いんじゃないですか?」

「し、辛辣ぅ……」

 

 無慈悲な一言に倒れるオオガミ。

 楽しそうな笑みを小さく浮かべているのは、やはり姉と同じ血が流れているという事だろうか。

 

「それで、姉様は何処にいるんでしょうか。最近あまり会っていないので……」

「今は食堂でメルトとお菓子を食べてるはず……今朝作ったばかりだし」

「最近は争いが沈静化してきましたから、食堂は平和になってますしね。そもそも、マスターの菓子は話題性で争われていただけですし。はぁ、ようやく姉様から貰わずとも食べられます……」

「個人的にはなんでエウリュアレが主になってるのかわかんないんだけど」

「それはまぁ、最初に聖杯を貰って、最初に強化済みになってますし……なんででしょうね」

 

 誰もよく分かってないエウリュアレの強者感に、二人は首を傾げるのだった。




 最近ネタ以上に書く気力がなくなってきていて、息抜きにオリジナルを書いてたらめちゃくちゃ書けて止められなくなった結果がコレです。やばいよONILANDまで気力が持ちそうにないよぅ……

 でも、これはたぶん最近騎空士になってしまったのも原因の一つのような気もします……


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これの使い道無いんですが(そもそもこれ以上作るものなど無かろう?)

「ん~……これ、作ったは良いですけど、使い道無いんですが」

「そも、自律型ちびノブを作った時点でほぼ何も要らんだろ。こうやって、オーバーウェポンを作るだけじゃよ」

「いやそれもどうかと思いますけど」

 

 何時だったかに粉砕されたちびBBを再生産し、ちびノブと並べるBB。

 ノッブはそんなちびノブに武者鎧を着せ、ポーズを取らせていた。

 

「その装備、何が出来るんですか?」

「筋力を強化しつつあらゆる衝撃を地面に逃す」

「空中に打ち上げてのラッシュで殺されそうですね?」

 

 まぁそれが最適解じゃな。と言いながらちびノブに兜を被らせる。

 

「うむ。まぁ、こんなところじゃろ。実際受け流せるかは知らぬが」

「それ、一番大事なところじゃないですか。メイン要素ですよね?」

「いやぁ、正直それが出来るなら常時無敵みたいなもんじゃし、反則じゃろ。儂チートはあまり好かんのよね」

「それBBちゃんの構成要素を否定してません……?」

「バグとチートは違うから。バグはほら、ルールの穴みたいなもんじゃから。ルールの穴をついてるのは好みじゃけど、チートはルールをねじ曲げるから。全く別物じゃよ」

「ん~……じゃあやっぱりBBちゃんはチートでは?」

「まぁ、まだルールの範囲内だから問題ないんじゃね? 知らんけど」

「雑ですねぇノッブは……」

 

 呆れたように肩を落とすBB。

 ノッブは楽しそうに笑いながら、

 

「なんにせよ、BBがこっち側なのには助かっておるしな」

「そうですか? 完全で無敵で完璧な完成形後輩ことBBちゃん、そんなにお役に立ててます?」

「うむ。移動とかめっちゃ楽」

「私は何時から足になったんですかね?」

 

 恐ろしいまでの落差に流石のBBも笑顔のままノッブの首を絞める。

 当然ノッブももがきながらBBの腕をタップするが、一切力を緩めることなく全力で締め上げ、ついにはノッブは気絶する。

 それを確認したBBは、

 

「ちびノブさん。とりあえずノッブを運んでいきたいので、ドアを開けてくれますか?」

「ノッブぅ!」

 

 そう声をあげて走っていくちびノブ。

 BBはその後ろをついていき、扉を開けてもらうと、

 

「それじゃ、皆さんはここの扉を閉めたらマシュさんのところに行ってください。それと、この工房の立て札は返しておくように。いいですね。では解散」

 

 そうBBが言い終わると同時、威勢の良い返事と共に部屋の扉が閉められる。

 そして、ちびノブ達はこそこそと話し合った後、BBが片付け忘れていた超小型カメラを扉の下から中が見えるように配置し、工房を出ていくのだった。




 ガタッ)

 はたして何が撮れたのか。それはちびノブ達のみぞ知る世界……後に厳重封印されてカルデアのどこかに隠されている模様。


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ONILANDですか……(吾のオススメだ!)

「ふぅん……ONILANDですか……」

「うむ、ONILANDは良いぞ。何せ鬼救阿(おにきゅあ)がいるからな! 遊べるところも旨いものも盛りだくさんよ!」

 

 ブドウジュースをストローで飲みながら、バラキーから渡されたパンフレットを読むカーマ。

 バラキーのものと言うこともあってか、色々なところにカラフルな線が引かれていたり、注釈が書かれていたりする。

 

「……というか、鬼救阿とか以前に、これ、読みにくいんですけど」

「むっ。そう言われると困るな……あぁ、マスターなら持っていたかもしれん。今取ってくる!」

「え、いや、別にそこまでほしい訳じゃ……って、もういないんですが。行動早すぎでしょう……」

 

 風のように去っていったバラキーに文句を言いつつ、パンフレットを広げながらストローに息を吹き込む。

 ブクブクと泡立つジュースに少し楽しくなりつつパンフレットを読んでいると、

 

「お~お~、ONILAND。去年のはろうぃんのやねぇ。今年はまだ時間があるけど、復刻ってやつ? よう知らへんけど」

「……いきなりなんですか」

 

 ふわりと香る甘い匂いに不快そうな顔をするも、そう返すカーマ。

 彼女の隣に座った護法少女は、

 

「なんや、懐かしいもんを見とるなぁ思って。それ、茨木のやろ? ずいぶん仲良ぉしてもろうてるみたいで。ありがたいわぁ」

「そうですか。別に私は気にしてませんけど。というか、誰ですか貴女」

「誰かって言われても……うちはうちとしか言いようがないなぁ。まぁあえて名乗るのなら、護法少女? 茨木には鬼救阿って呼ばれとるなぁ」

 

 ニヤニヤと笑いながら言う彼女にカーマは一瞬驚いたような顔をするも、すぐに表情を取り繕い、

 

「あぁ、貴女が。なんでそんなのを名乗ってるんですか」

「それは言えへんなぁ……でもまぁ、ONILANDにくれば分かるんちゃう?」

「……そうですか。まぁ、せっかくですし、行ってあげますよ。楽しみにしててください」

「せやなぁ……覚えてたらね。ほな、さいなら~」

 

 そう言って霊体化して去っていく護法少女。

 カーマはそれを不機嫌そうに見送り、入れ替わるようにバラキーが帰ってくる。

 

「カーマ! マスターより奪ってきたこの地図ならどうだ!」

「はいはい。そんなに騒がなくても聞こえますって。それで、どこがオススメなんですか。ちゃんと回ってあげるので教えてください」

「うむ! まず吾がオススメするのはだな――――」

 

 そう言って楽しそうに語るバラキーを横目で見つつ、カーマは笑うのだった。




 バラキーは可愛いなぁ!(吐血

 シトナイを今年こそ当てるのです……来たれシトナイ。バビロニアピックのギルガメッシュをぶっ飛ばすために、いざ!

 うちではもうバラキーとカーマはセットなので。なんでこのペアなのかは忘れましたけど、ペアなので。ポンコツ悪属性ペアなので。もっとすこれ~!


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ONILANDってどんなとこ?(私が教えてあげましょう!)

「遊園地?」

「えぇ。ONILANDって言うんだけどね?」

 

 イリヤの疑問に、楽しそうに答えるアビゲイル。

 それを一緒に聞いていたクロエと美遊は、

 

「ふぅん? ONILANDって、何があるのかしら」

「パンフレットとか、そう言うのってありますか?」

「えぇ。去年のがあるわ。はい、これ」

 

 そう言ってパンフレットを取り出すアビゲイル。

 三人は物珍しそうにパンフレットを開き、

 

「これ、本当に特異点?」

「フツーに遊園地よね、これ。楽しそうなんだけど……」

「でも周りは雪だらけ……場所はどこなんだろう」

「えっと、確かジパングの、カムイ……だったかしら」

「じ、じぱんぐ? え、なにそれ。そんな国あったっけ?」

「日本よ日本。それとカムイは北海道。わかる?」

「わ、分かるよ、北海道くらい。行ったことないけど……ってことは、寒いの? 大丈夫?」

「防寒着をちゃんと用意しないと……あ、でも、英霊になってるなら対策しなくても大丈夫なのかな。変身すれば大丈夫?」

「美遊様、そちらはお任せを。姉さんもきっと用意しているはずですのでお二人は問題ありません」

 

 ひょっこりと、美遊の後ろから現れるサファイア。

 クロエはそれを聞いて少し考えてから、

 

「ってことは……もしかして、わたしだけ何もない? ん~……なら何か投影して行くしかないわね」

「なんて卑怯な……!」

「私に関しては、再臨したら服がなくなるのだけど……そもそも、ONILANDはそんなに寒くなかったはずよ?」

 

 苦笑しながら言うアビゲイルに、三人は少し残念そうな顔をする。

 

「まぁ、寒冷地用の装備はまた今度ね。そのうち使うことになると思うけど」

「うん……というか、クロは戦闘用の服しか持ってないし、私と美遊は制服だし……普段着は? 普段着はないの?」

「イリヤ……たぶん一般服はここにはないから、作るしかないと思うよ。安心して。イリヤの分も作るから。だからほら、採寸させて……!」

 

 ジャッ! と音をたてながら伸ばされたメジャーと、若干焦点の合ってない目。

 身の危険を感じたイリヤはジリジリと後退しつつ、

 

「待って待って美遊の目が怖い! どこからメジャーとか取り出してきたの!?」

「賑やかで楽しいわね」

「和やかに言いながら私を拘束しないで!? なにこの触手ぅ!」

「あら、じゃあわたしも参加しようかしら」

「ギャー! 二人ともやめてぇー!」

 

 にっこりと笑うアビゲイルの触手に拘束されたイリヤは、目を爛々と輝かせた美遊とクロエに飛びかかられるのだった。




 久しぶりの魔法少女メンバー。アビゲイルはこっちに入れていいのだろうか……分類魔女ですけど……まぁ、可愛いので良し。アビーの変態性は落ち着いたし。

 マスターレベルが150になったのでついにリンゴ以外でAPが回復しなくなってしまった……私は悲しい……(ポロロン


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週末北方遊園ONI♥LAND
やって来たぞONILAND!!(楽しみ、奪い、喰らうのが鬼よ!)


「うわははは!! 吾が来たぞ! 恐れよぉ、讃えよぉ!」

「鬼らしくないって叫んでたのに、遊んで食べられると分かったらこの転身。見倣いたいね」

「むしろ貴女の性質に寄ってるから貴方のせいだと思うの」

 

 高笑いをしているバラキーを見て呟くオオガミに、鋭い一言を突き刺すエウリュアレ。

 実際、バラキーのテンションはどこかオオガミと似ている雰囲気があるので、否定しきれない。

 

「ONILANDって言うから、どんな魔境かって思ったのだけど、なによ。普通の遊園地じゃない」

「いつぞやの鬼ヶ島みたいなのじゃないから……まぁ、内容は日アサだし。楽しんでいこう」

 

 オオガミはそう言って、不満そうなメルトに目を向ける。

 メルトは仕方ないとばかりにため息を吐くと、ラムダの姿となり、

 

「まぁ、そうと決まったらこっちの服装の方が良いわね。ラスベガスならともかく、こっちなら騒ぎにならないだろうし」

「メルトはどこでも可愛いしね。どんな姿でも目立っちゃうんだから仕方ない」

「えぇ、当然でしょう? 私が人気じゃないとかあり得ないもの。だから、そんな私の隣に立てることを光栄に思いなさい。マスター?」

「そりゃもちろん。光栄に思いつつ誰にも譲る気はありませんけど?」

「あら、意外と強欲なのね。えぇ、良いわ。ついて来られるのならいつまでも隣に置いてあげる」

 

 そう言って笑うラムダに、オオガミも笑顔で返すのだった。

 そしてそれを見ていたエウリュアレは、

 

「自分がやるのは良いけど、他人にやられるとやっぱりどこかムッとするわね」

「どうします? 拘束しますか?」

「ん~……そこまでして邪魔したいかと言われるとそうでもないのだけど……まぁ良いわ、今回は譲ると言ったもの。言ったことくらいは守るわよ」

「姉様……」

 

 アナの視線に機嫌を良くしたのか、エウリュアレは楽しそうに、

 

「さ、メドゥーサ。今回は二人で遊びましょ。ステンノは別行動するって言ってたし」

「えっ……それ、本当ですか? 気になるんですが……」

「気にしないの。ほら、早く行かないとあっちに巻き込まれてクレーマー扱いされちゃうわ」

「姉様のそう言う見捨てるところに躊躇がないの、羨ましく思います」

「あんまり良いものでもないのだけどね……まぁ、貴女にそう言ってもらえるのなら、それはそれで良いかしら」

 

 エウリュアレはそう言うと、一瞬悲しそうな笑みを浮かべ、すぐに何事もなかったかのような楽しそうな笑みに変えると、アナの手を引いて走り出すのだった。




 結局シトナイは来なかったよ(号泣

 30回回しても来ないのでたぶん縁がなかったんですね……私は悲しい……


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なるほどメリーゴーランドですか(吾、何が面白いがてんで理解できぬ)

「メリーゴーランドですか……まぁ、悪くはないですね」

「うむ。まぁ、吾は面白くはないのだが……未だになぜ人気かが分からぬ。何がしたいのだ」

「誘っておいてそれを言うんですか」

 

 自分から誘っておいてそう言うバラキーに、不満そうな顔をするカーマ。

 だが、バラキーは悪びれたようすもなく、

 

「まぁなんだ。吾が誘わぬとポツンといそうだからな……」

「あれ、もしかして哀れまれてます? 本気ですか。私女神なんですけど。一人とか別に構わないんですけど。え、何なんですか?」

「いや、そう言うわけではなく、汝が一人でいるとマスターだけでなく吾にまで被害が来そうなことをしそうだからな……マスターにするのは構わぬが、吾まで巻き込まれては堪らぬ。つまりはまぁ、そう言うことだ」

「……言い訳がましいですけど、まぁそう言うことにしておいてあげます」

 

 そう言って、ようやく停止したメリーゴーランドから降りるカーマ。

 バラキーもそれに続いて降りると、

 

「しかし、どうしたものか。今は他に行けるところは少ないのだが、メリーゴーランドはあまり楽しくないしなぁ……」

「スモールラビリンスとか、わりと時間を潰せそうですけど。普通に迷路でしょう? 楽しそうじゃないですか」

「うぅむ……迷路は去年さんざん迷った想い出が……いいや、今年は違う! 二年連続で負けると思うなよ鬼王! 吾は学習する鬼。二度通じると思うな!」

「おーおー。すごいやる気です。普通そこまでやる気出します? まぁ去年迷子になったのならそうもなるかもしれませんけど。私は気にしませんけどね~。それじゃ、行きますか」

「うむ! 絶対突破してやろう!」

 

 そう言って、気だるそうなカーマと、元気いっぱいのバラキーはスモールラビリンスへと向かうのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ひぐっ、うぐっ。また迷子になった……」

「情け無さすぎるんですが。なんでなにも考えないで一直線に走っていくんですか。迷いが無さすぎて道を知ってるのかと思いましたよ」

 

 案の定迷子になったバラキーとカーマ。迷いのない迷子の行動に振り回された結果だった。

 カーマはため息を吐くと、

 

「ほら、いつまで泣いているんですか。鬼なら鬼らしく迷っても笑うべきなんじゃないですか。それとも、貴女の言う鬼はその程度のものだったんですか?」

「むっ、そ、そんなわけ無かろう。迷子になって泣くなど、笑われてしまう。うむ、もう大丈夫だ。何を迷う必要があるのか。この程度、越えられるに決まっているとも!」

 

 そう言ってバラキーは元気よく走りだし、数十分後、カーマに助けを求めるのだった。




 うちのバラキーはこんなにポンコツで正解なのです。かわいい平和な世界……

 台風、気を付けてください。と言っても、明日にはほとんど通り過ぎてると思いますけどね。


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無限回転ティーカップ!(あれは竜巻になりそうよなぁ)

「なんで私とノッブが一緒なんですか……」

「儂が聞きたいよなぁ……」

 

 そう言う二人は、クルクルと回り続け、且つBBによって加速し続けるティーカップに乗っているのだった。

 

 

 * * *

 

 

「何があったらあんな速度で回す耐久ゲームになるんですか」

「新しい発明品を見たマスターが、『二人ともシバくか、今から二人がティーカップに乗って、先にダウンした方を極刑にするか』と問うたら意気揚々と二人で乗り込んで、ああなった」

「なるほどバカなんですね?」

 

 外から見ているバラキーとカーマ。

 だんだんと加速し続けるそのティーカップは、なにやら風が可視化できるようになってきていた。

 

「あれ、どうなったら終わるんです?」

「聞いていた限り、どちらかが倒れるまでのようだが……まぁ、なにか騙されている気がしなくもない。というか、あのままだとどちらも共倒れでは?」

「たぶんそれを狙ってるんでしょうね。あの二人は喧嘩する方面の仲の良さなので、焚き付ければ勝手に燃えますから。それでたぶんこう言うんです。『二人とも倒れたのでどっちも極刑ってことで』って。囚人のジレンマに近いものを感じますね」

「うわっ、人間汚いなぁ……吾そこまでしない……」

 

 ある意味出来レースをさせられている二人を見ながら、カーマの言葉に若干引くバラキー。

 オオガミがやると思っている辺り、流石と言えるだろう。

 

「それで、どうやって止める気なんでしょう。そろそろ周りに被害が出そうですけど」

「おーおー。これはスゴいものになる気がするなぁ……まぁ、マスターは当然のごとく真っ先に逃げておったが」

「保護者ぁー!! もしくは管理者ぁー!! 何真っ先に逃げてるんですかぁー!!」

 

 誰よりも早くこうなると察していたオオガミは、既にメルトと一緒に逃げていたと言う真実。

 カーマは悲鳴をあげるものの、その声は誰にも届かない。

 その間にもどんどん悪化していくティーカップの回転に、

 

「ちょ、どうするんですかこれ! 中の二人、既に失神してるんですけど!」

「……これはこれで鬼王を倒せるのでは?」

「バカなこと言ってないで解決してください!」

 

 真剣におかしな事を言い出したバラキーに突っ込みを入れつつ、カーマはため息を吐く。

 

「良いですかバラキー。このままだと、ティーカップだけでなくフードコートにも被害が出ます。すると、食べ物がなくなります」

「むっ。それは困る……仕方あるまい、吾が出るか」

「えぇ、任せましたよ!」

 

 そう言うと、一切迷うことなくバラキーはティーカップに槍を持って走っていくのだった。




 モンハンに時間を持っていかれた……致命傷……

 オオガミ君の話はまた後日と言うことで……


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なんでフードコートでボランティアしてるんですか(どこでも料理を作っているよな)

「ボランティアって、聞こえは良いですけど、要するにタダ働きですよね」

「戦果を上げても何も貰えぬとは、鬼より待遇が悪いのではないか。人間は」

 

 呆れるようにため息を吐くバラキー。

 だが、カーマは気にした様子もなくフィッシュバーガーを食べ、

 

「まぁ基本自分第一ですし、そんなものですよ。どんなに落ちぶれても、私は愛しますけど」

「そうか……(なれ)も大変なのだな……」

「……何か納得いかないんですけど、まぁいいです。というか、このフィッシュバーガー、ハワイで食べたのにも負けず劣らずですね……やっぱり新鮮と言うのはそれだけで武器になりうるんですね……くぅっ、舌を肥えさせられている気がします……」

「うまいものを食べるために皆頑張るものだろう? なら、活力の源だ。知っておくことに問題はあるまい?」

「そうなんですけど、そうじゃなくて……いや、やっぱりダメです。これ以上されると私のイタズラの精度が落ちる気がします……!」

「むっ。それは確かに一大事よな……そこは失ってはいけない部分……うぅむ、うまいものとイタズラ力。両立させねばならぬのが吾等の辛い所よな……」

「いや待ってください。なんで私まで巻き込まれてるんですか。嫌ですよそんなよく分かんないのに入れられているの」

「む? 今更だと思うが……既に手遅れだぞ?」

 

 バラキーに言われ、食べようとしていたフライドポテトを思わず取り落とすカーマ。

 そして、理解すると同時に、

 

「な、なんでですか!? まさか、貴女と一緒にいたからとかそんな理由ですか!?」

「まぁそんな理由なのだが」

「はあぁぁぁぁ!? なんでですか! 別に何かやったわけじゃないんですけどぉ!?」

「いやまぁ、吾もそう言う扱いをされているのは知っていたし、てっきりカーマも知ってるものだと思っていたのだが、うむ。全くそんな雰囲気を感じられなかったから、予感的中と言った所だな」

「こっちからすれば想定外も良い所なんですけど!? なんてことをしてくれたんですか!」

「でもほら、カーマ一人になると、今度は『甘味爆弾』と呼ばれることになるのだが……」

「誰ですかそんな名前名付けたのは!」

「BB」

「あのポンコツですか分かりました今から殴りこみに行ってきます!」

「あっ、今は信長と一緒に医務室にいるから行ったら死ぬ……って、もう行ってしまった……」

 

 急いでバーガーとポテトを平らげて走っていくカーマ。

 バラキーは一連のそれを見送り、まぁいいかと思って自分のカレーを食べるのだった。




 甘味爆弾。サーヴァントすら太らせる特大のカロリー爆弾を落としてくるのでこのあだ名がつくという。被害に遭った一部のサーヴァントからよく陰で呼ばれていたりするカーマ。大体あってる。

 今回のONILANDはバラキー&カーマ縛り……思えば、なぜこんなことをやっているんだろう……うぅむ? まぁほのぼのしているので良し。


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これが件のミラーハウスですか(吾、もう迷子にならんし)

「これが件のミラーハウスですか」

「ここ、ずっと自分の顔が見えて嫌になる。出来れば入りたくないのだが……」

 

 ミラーハウスの前でしり込みするバラキーと、フードコートにあったアイスキャンディーを食べているカーマ。

 

「というか、よく無事だったなカーマ。吾驚いたのだが」

「はぁ? なんで私が殺られかけてたように言うんですか。そもそも穏便に済ませてきましたよ。えぇ。穏便に、美味しいお菓子を食べさせてきました。優しいでしょう?」

「う~む悪の所業。だが吾としては圧倒的にアリ。むしろどんどんやっていくべきだと推進する」

「……こういうことをしてるからコンビ扱いされてるんですかね?」

「それは否定できない。吾気にしてないけどね」

「でしょうね。話を聞いたときからそうだろうとは思いましたとも」

 

 カーマは数瞬遠い目をするも、すぐに我に返ると、

 

「まぁいいです。そんなことよりほら、去年の復讐のために今度こそクリアをするのでしょう? さっさと行ってすぐに出ちゃいましょう。で、終わったらまたフードコートに戻りましょう。その頃には店も空いているはず……全制覇してから帰ります」

「えぇ~……まだアトラクションは残っておるのだが……まぁよいか。ナイトパレードに参加さえすれば。いやでも、観覧車もなぁ……」

 

 考えるバラキーの手を引いて、カーマはミラーハウスへと入っていくのだった。

 

 

 * * *

 

 

「これは確かに、厄介ですね……」

「だろう? 鏡のせいで、前にあるのが鏡か通路か分かりにくい。しかも魔力が漂ってるせいで魔力探知も出来ないからな。とりあえず突き進んでみると言うのをすると、確実に迷う。前回はマスターとアビゲイルが脱出したのだが、まぁかなり厳しいのは事実だ。今どっちもいないからな」

「……えぇ良いですよ? マスターよりも優秀だという事を今示してあげますとも。当然、私は女神ですし。あんな触手系邪神が抜け出せたのに私が抜け出せないとか、ありませんし」

 

 カーマはそう言うと意気揚々と歩いて行き、バラキーはそれについて行く。

 だが、しばらく歩いていると、

 

「……なぁカーマ」

「なんですか。何か見つけました?」

「いやまぁ、見つけたというか、気付いたというか……ここ、さっき見た」

「……見覚えがある似たような場所、と言うだけじゃないですか?」

「においがな……ある。ここは一度通った」

「なんでそんな嗅覚があって迷子になるんですか!」

 

 カーマに言われ、バラキーは困ったような顔をしつつ、

 

「まぁとりあえず、あっちとかどうだ?」

「絶対答え分かってますよね……!?」

 

 カーマの叫びをバラキーはスルーしつつ、指差した方へ進むのだった。




 書いてる途中で直感でガチャを回したらシトナイ……思わず暴れました。

 ミラーハウス、行ったことないんですけど、想像しただけで結構迷いそうなんですよねぇ……


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観覧車って良いですよねぇ(吾にはあまり良さが分からぬが)

「観覧車。良いですよねぇ、この密室感と浮遊感。確かにデートスポットとしては最適ですよ。強制的に距離が近くなりますし」

「ん。あぁ、そうなのか。うむ。吾には分からぬが」

 

 どこか上の空のような返事をするバラキーを不思議に思ったカーマはバラキーを見る。

 すると、なぜか青い顔をしているバラキーがいた。

 

「どうしたんです? もしかして、高いところが苦手とか?」

「そ、そんなわけない! 吾は鬼。恐れられはすれど、恐れるわけはなし!」

「ふぅん。そうですか……それじゃあ、なんでそんな青い顔をしてるんですか」

「そ、そそそ、そんな顔はしておらぬ! 見間違いと言うヤツだ!」

「……まぁ、それならそれで良いんですけど」

 

 カーマはそう言うと、またぼんやりと外を見て、

 

「ランド内、北方とは思えない暖かさですよね……雪も降りそうにないですし。過ごしやすいのは良いんですけどね」

「まぁ、鬼王とやらがそうしているのは分かる。ただ、やはり気に食わぬのは確かよ。去年やったから正体は分かっているが、なんというか、こう……うむ。やはりもう一度打ち上げるしかなかろう」

「どうあがいてももう打ち上げるのは決定事項なんですね。いえ、まぁ、分かりますけど。名乗ってるのにやってることが真逆とか、確かにイラッとしますけど」

「だろう? なら、吾がまたぶっ飛ばしに行くのも自然というわけだ。うむ。分かるな?」

「いや、だから分かってますって。そんなに強調しなくても良いですから。なんですか。そんなに同意してもらいたいんですか」

「い、言っているだけだ。別に他意はない……ただまぁ、確かに同意してほしいという気持ちが無いわけでもない」

「どっちなんですか。まぁでも、話が纏まらないくらい動揺してるのは分かりましたから、観覧車を降りたら何をしようか考えましょうか」

「うむ! そうしよう!」

 

 カーマはバラキーの隣に座ると、パンフレットを開き現在地を指す。

 

「まず、今はここなので、わりとどこに行くにも遠いです。まぁ気にしませんけど。そして、ここが例のパレードがあるメインストリートなので、早めに行かないと席取りが出来ません。まぁ、ぶっ壊しに行くのが目的に近いので関係無いかもしれませんけど。なので、私としては、フードコートで時間を潰すか、メリーゴーランドやティーカップに行くか、メインストリートに行って売店を見て回るか。わたしとしてはどれでも構いませんけど」

「む~……もう日が暮れ始めているからなぁ……そういえば、メインストリートをじっくり散策したことはないな。うむ。ならメインストリートに行くとするか」

 

 朱く染まった空を見つつ言うバラキー。

 カーマはパンフレットを閉じて立ち上がると、

 

「じゃあ、そうしますか。もうそろそろ地上ですので、出れるようにしておいてくださいね」

「降りれるようにも何も、そもそも手荷物など無いだろうが……いつでも出れる。というか、カーマはパンフレットをどこから出した?」

「私は秘密がいっぱいなので。教えてあげませんよ」

「そうか……いやまぁいいのだが。忘れるなよ?」

「それこそ余計なお世話です。それじゃ、行きましょうか」

 

 軽い衝撃。少ししてから開かれた扉と共にカーマは手を差し出し、バラキーはその手を取って立ち上がるのだった。




 カーマ式衝撃回避法:少し浮きます。以上。

 シトナイを出すタイミングを失い困る私。これはあれです。イベントが終わるまで出てこない説ありますよ。


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流石ナイトパレードですね(花火が上がっているのも良い)

「ナイトパレードも良いものですね。老若男女関係無く楽しめるという一点に関しては、流石と言わざるを得ません。私も作ってみるのもありかもしれないですね?」

「流石にそれは……いや、ありやもしれぬな? 吾には似合わぬが、堕落という点に置いては優れているかもしれぬ。夢の国なる遊園地もあるらしいからな」

 

 言いながら、襲い掛かる小鬼を蹴散らす二人。

 鬼王はスカディとアナの二人で倒しに行っているので、そのうち鬼も消えるだろうと考えていた。

 その二人を指揮しているのがエウリュアレなのは、オオガミがメルトと一緒に失踪したままだからだ。

 

「マスターさん、どこに行ったんでしょうね?」

「今一緒にいるのはメルトだからな。こんな小鬼に負けたとは思えぬ。そのうち宝具が見えると思うのだが」

「そうですか……というか、この土産、どうするんですか? そろそろ戦闘の邪魔なんですけど」

 

 高く積み上げられた土産を横目に文句を言うカーマ。

 だが、バラキーは不思議そうな顔で、

 

「いや、持ち帰るに決まっているだろう。というか、なぜ小さいまま戦うのか。あのでっかい杭のようなものを投げつければよかろう?」

「杭って……どう見えてるんですか一体。まぁ良いですけど、再臨すると消費魔力が増えるのであんまりやりたくないんですよねぇ……」

「言ってる場合か? 数の暴力は吾等よりも昔から恐れられる戦法。いくらサーヴァントと言えど、早めに片付けねば疲れてどうしようもなくなる。なら短期決戦に持ち込むしかないだろうに」

「なんでこう、鬼に正論を振りかざされてるんでしょうね……? 納得できるところが更に嫌なポイントなんですけど」

 

 すると、突如として地面が海へと変換されていく。

 その現象にいち早く気づいたバラキーは素早く土産を持ち上げ、濡れるのを回避する。

 直後、周りにいた小鬼が宙に浮き水球に閉じ込められ、

 

「『その夏露は硝子のように(ブルーサマー・パラディオン)』!」

 

 一条の青い光と共に消し飛ばされる。

 その攻撃を叩き込んだラムダは着地すると、振り返り、

 

「ふぅ……こんなものかしら。どう? マスター。見てくれたかしら」

「最初から最後まで見てたよ。特等席で、死ぬかと思いながら」

「あら、不満? もっと安全な所から観戦したかったかしら?」

「そう言う訳じゃないけども。特等席でありがとうって感じ」

 

 滑るようにオオガミの横へ移動するラムダ。

 一連のそれを見ていたバラキーとカーマは、

 

「なんですかなんですか。見せつけに来たんです? さっさと鬼王のところに行ったらどうなんですかマスターさん」

「吾もそう思うなぁ。でもなぁ……愛は怖いからなぁ……正直エウリュアレで戦線を維持できているから要らぬ気もする」

「ちょ、なんで気圧されてるんですかバラキー! ここで譲ったら二人このままどこか行く気ですよ!?」

「いや鬼王倒しにいきますけど!?」

 

 カーマの言い分に、思わず声を荒げて言うオオガミ。

 すると、カーマは胡乱な目で、

 

「ONILANDでの様子を見る限りそうとは思えないんですけどぉ? 二人でずっといたじゃないですか。なにか言い分はありますぅ?」

「あっ、おいカーマ。それ以上は不味い」

「バラキーは黙っててください。これは私個人のそれですので。で、言い訳はあるんです?」

「ん~……言い訳はないんだけど……」

「じゃあなんです? 言ってみてくださいよ」

 

 そう言って、カーマがにじり寄った時だった。

 真横から飛んできた矢に側頭部を射られ、その勢いのまま倒れるカーマ。

 優しさがあるとしたら、矢の先端が丸く、団子状に変えられていたことだろう。

 バラキーはそれを見てため息を吐くと、

 

「だから言ったのだが。エウリュアレが許可している以上、邪魔したら殺されるに決まっているだろう? 二人は行け。吾はカーマを医務室に投げ入れなくては行かないからな」

「う、うん。じゃあね」

「また後で会いましょう?」

「次はカルデアでがいいなぁ吾は」

 

 去っていく二人に小さく手を振りながら、バラキーはそう言うのだった。




 ラムダ、突然の登場時は大抵宝具撃ってるような? まぁ是非もなし。

 当然カーマの意識を刈り取ったのはあのお方。逆らえば死ぞ……

 しかし鬼王……卵落とすとは思わなかったです。うまうま。


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もう嫌です動きたくないです(カ~マ~。早く行くぞ~)

「あ~……もう無理です。動けません。寝てますね」

「いや、もう回復済みだろう? あの看護師が言うのだから間違いない。ほら行くぞ~」

「い~や~で~す~! 私は寝るんですぅ~!」

「煩いので出ていきなさい! 他の患者に迷惑です!」

 

 ナイチンゲールの一瞬の隙すらない見事な動作に、二人とも反撃できずに外へと投げ出される。

 すると、カーマは不機嫌そうに、

 

「バラキーのせいで私まで追い出されたじゃないですか。というか、先に来てたはずの二人が今もいるんですが、なんで私より回復が遅いんですか」

「いや、あれは二度目で、一回退院した後に自爆してまた戻ってきただけだ。吾、直接聞いてきたから知ってるぞ」

「アホなんですかいえバカなんですね!? 本気でなにも考えてないですよねあの二人!」

「まぁ歴戦のアホだからな。毎度エルキドゥに吊るされているのは伊達じゃない。今回もきっと帰ったら廊下に吊るされていると思うからな。見に行くぞ~」

「お~……じゃ、無いですよっ! というか、なんですかエルキドゥに吊るされるって! 初めて聞いたんですけど! え、そんなに危険なんですか!? なんでそれを早く教えてくれないんですか!」

「いや、普通に知っていると思ったのだが……」

 

 半泣きで掴みかかってくるカーマをなだめながら、バラキーは言う。

 実際自分達もそろそろ吊られそうな予感がしているバラキーは、

 

「まぁ、今回までは見逃されるだろうし、次回からは危ないだろうな。吾はあまり気にせぬが、神性持ちの(なれ)は抜け出せぬだろうな」

「神性特効ですか!? あれ、もしかしなくても大奥で厄介に……いやまさかそんな……いやいやでも……えぇ、あの時はあのメルトとか言うのが殴り込みに来てただけ……だ、大丈夫なはず……いや会ってる。会ってます。カルデアに帰って来た間抜け面のマスターの顔を見に行ったときに一緒にいました! うわぁ、顔覚えられてたら嫌なんですけどぉ……絶対捕まるじゃないですか……」

「既にカルデアはヤツの領域。基本どこにいようと関係無いのだが。まぁ、工房に引きこもっているのは別とするが」

「だからあの二人はイベント直後にしか捕まらないとか、そう言う感じなんです……? というか、それって今から何をしても無駄ってことでは……?」

「まぁつまりそう言うことな訳だが、物理的被害は出してないので問題ないと思うのだが。捕まったらその時。二、三日で許されるのだから気にせず行くぞ。まずは売店だ!」

「ちょ、買いましたよね? 大量に買いましたよね? まだ買う気なんですか!?」

 

 どんどん進むバラキーに、カーマは必死でついていくのだった。




 数多の謎をばらまいていくバラキー&カーマパート。その真相はどこかで明かされるかもしれないし明かされないかもしれません。謎は謎なのです……

 あ、この二人組気に入ったのでまたどこかで使いますね。連続で。


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吾が帰ってきたぞ!(土産、ちゃんと持って帰ってこれましたね)

「うわははは!! 帰ってきたぞカルデア! ちゃんと土産も持って帰ってこれたのは僥倖! でもどうしようこれ!」

「全くの未定で買いましたね!? というか、僥倖って、それ持って帰れると思ってなかったってことですか!?」

 

 笑うバラキーに、文句を言うカーマ。

 二人は目の前すら見えないほどに大量の荷物を持ってカルデアに戻ってきた。

 

「しかし、うむ。どうせ消滅するならと大量に取ってきたは良いが、これはちょっと手に負えぬ。BBめから盗んできた冷蔵庫にも入りきらぬな」

「冷蔵庫持ってるんですか……というか、盗品なんですね。まぁ分かってましたけど。あのポンコツの悔しがる顔が見えるのなら良しとします。むしろもっとやってください」

「必要な分しか奪わぬのだが……というか、それ以外目ぼしいものが無い……」

「あぁ……あそこは半分以上趣味部屋だって聞きましたし、ロクなのが無さそうです……私も潜り込んでみますか」

「見つかると酷い目に遭うから気を付けるようにな。とりあえず、これは吾の部屋だな」

 

 バラキーはそう言って管制室を出ると、どこかから声が聞こえてきた。

 

「だ~か~ら~! 私は魔法少女なんかにならないって!」

「でも素質がありますって! やりましょうよ!」

「イヤよ恥ずかしい! あのスッゴいフリフリの服になるんでしょ!?」

「大丈夫ですってめちゃくちゃ似合いますよ!」

「そう言う問題じゃないの! あ~も~、なんでカルデアにはこんな変なステッキしかいないの!? 皆どこ行ったのよ!」

「今はONILANDですねぇ~。私は必要なときだけ呼ぶからと言われて置いていかれました~」

「スッゴい明るく言うわね……でもそんなこと言われても何もしないけど」

「ぐぬぅ、強情ですね……」

 

 そう、段々と近付いてくる声に思わず足を止めるバラキー。

 それに釣られてカーマも足を止めたとき、

 

「あれ、誰かいる?」

「あ、脱走してたのがバレたら閉じ込められそう……では私はこれで~」

「え、なにあの迷惑なステッキ……言うだけ言って消えたのだけど……まぁ良いや。すいませ~ん。来たばっかりだから色々と案内してほしいんだけど……って、スゴい荷物ね。半分持つわ」

 

 そう言って、ひょいっと持ち上げられる土産。

 そしてバラキー、目の前にいる人物を改めて認識する。

 

「私はシトナイ。今日から、というか、二日くらい前からいたんだけど誰もいないから困ってたのよね……って、何々なんで泣いてるの!?」

「ん……な、泣いてなどおらぬ! これは……そう、目にゴミが入っただけよ! だから、うむ。なんでもない」

 

 そう言って浮かんでいた水滴を拭い、バラキーは笑う。

 シトナイは困惑して首をかしげるが、すぐに笑みを返すと、

 

「それで、お願いできるかしら」

「うむ。任せよ。ここはもう、吾の庭のようなものよ!」

 

 そう、元気に答えるのだった。




 なお、カーマは何も言わずにクールに去るのです。愛の女神はそう言うところに敏感なのです。

 シトナイ初登場が変に重くてこれから使えるのか不安になるんですが。きっと出ますよ? たぶん。バラキーと組ませたかったキャラですし……でもなぁ、カーマがなぁ……

 ところであの迷惑高性能ステッキ、そのうちヤバいことやらかしますよ(確信


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メリーゴーランドな~、面白くなさそうじゃよなぁ(改造するとか面白そうですよね)

「ちょっとノッブ。そのダサいTシャツで隣に並ばないでくれますぅ?」

「は? ダサいとはなんじゃダサいとは。カッコいいじゃろバスターTシャツ」

「いやダサいですけど。拷問かってレベルで。どこに売ってるんですかそのセンス無い服」

「そんなに!?」

 

 ONILANDをぶらぶらと散策するノッブとBB。

 そんな二人はメリーゴーランドを横目に、

 

「あれ、普通に乗ったら面白くなさそうじゃよなぁ……」

「本当の馬に乗ってる訳じゃないですしねぇ……ふむ。改造するとかですかね?」

「おっ、それ面白そうじゃな! ちょいと設計してみるか!」

「遊園地に来てまでやるのはどうかと思いますけど、残念私もそっち側なのでノリノリです! 上下移動だけなのが問題点なのでそこをまず改造しましょう!」

 

 そう言って、楽しそうに紙とペンを取り出すノッブ。

 BBもノリノリでそれに書き込んでいく。

 

「ここを、こう……したら、どうですかね?」

「おっ、じゃあ、これをこうするとかどうじゃ? 良い感じだと思うんじゃが」

「うんうん。じゃあ帰ってから実行しようか」

「いやここで実行するのも……ん?」

 

 二人が顔をあげると、そこにはオオガミとラムダがいた。

 二人は笑顔を浮かべつつ顔を青くし、

 

「えっとぉ……いや、なんでもないんですよ? ただほら、メリーゴーランドとか、ちょっと面白味がないかなぁって……」

「ふぅん……でもさぁ……メリーゴーランドの空中歩行機能って、もうメリーゴーランドじゃないよね。これ別のアトラクションじゃない?」

「いや、それはちょっと否定できないですね……まぁ、楽しそうなので作るんですけどね?」

「うんうん。それじゃ……ちょっと邪魔になるのでエルキドゥを呼ぼうかな」

「後生ですやめてください!」

 

 必死で止めに行くBB。ノッブはもはやどこか諦めの雰囲気を醸し出していた。

 そんな二人にオオガミは笑みを浮かべると、

 

「じゃ、こうしよう。今諦めて投降すれば二人まとめてエルキドゥ。それか、今から二人でティーカップに乗って回転させ続けて、先にダウンした方に極刑。どうする?」

「よっしゃBB。さっさとティーカップに乗るぞ」

「圧倒的手のひら返し。というか、いつの間に服を着替えたんですか」

 

 いつの間にやら軍服に着替えているノッブに突っ込みつつ、BBも立ち上がると、

 

「それじゃ、サクッと勝って免除されますか」

「うわははは! いや儂負けぬけど?」

 

 ノッブはそう笑って、ティーカップに乗り込み、BBも不敵な笑みを浮かべつつ続くように乗り込むのだった。




 でも実際、メリーゴーランドって、説明しがたい面白さはありますよね。


 ラムダ編を書こうと思ったんですけど、今は砂糖を錬成できそうになかったので技術部に手を伸ばしました。ついでに自爆の話も書いて一日余裕を作るのだ……


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ノンブレーキティーカップの恐怖(やっぱりセーフティは重要じゃよねぇ)

「あ~……ブレーキ無しなんじゃなぁ、あのティーカップ」

「普通一定速度でストッパーが働きますよねぇ……」

 

 全身ボロボロでONILANDの即席医務室のベッドに倒れているノッブとBB。

 バラキーの攻撃によって無理矢理止められたティーカップは殴られた衝撃で分解し、その遠心力によって弾丸のように放たれた二人はそれぞれ別の場所に突き刺さり気を失ったのだった。

 そして、ナイチンゲールの処置によって急速に回復しつつある二人は、

 

「そういえば、夜にはパレードがあったんじゃっけ」

「ですね。最終決戦だったと思います」

「ふむ……」

 

 そう言って、何かを考え出すノッブ。

 どんな悪巧みをしているのだろうかとBBが興味を持ち始め、

 

「何をする気なんです?」

「いや、敵が集団なら、そこに爆弾のひとつでも投げつければかなり有利になるのでは……?」

「……正気ですか?」

「いや、貧血で正気じゃないかもしれぬ。が、面白そうなので作っちゃうのが儂。どうせマスターとメルトはデートで、臨時でエウリュアレが指揮じゃろ? なら大抵の無茶は押し通せるはずじゃ。うはは! 儂冴えてね?」

「いや明らかにイカれてますけど。寝た方がいいんじゃないです?」

「やるぞ~。儂がやるって言ったらやるんじゃ。よし、道具を準備するぞBB!」

「えぇ……止められそうにないですねこれ。仕方無いですね、協力しますよ」

 

 全力で飛び起きるノッブと、イヤそうに起きるBB。

 だが、ノッブはすぐにその場にしゃがみ、BBは首をかしげる。

 

「どうしたんです?」

「いや……これ、あの看護師にバレたら殺される気がして……出来るだけ音を立てずに逃げ出す感じで」

「……ま、それもそうですね。じゃあお先に失礼します」

「は?」

 

 ノッブが振り向くと、そこにはBBの姿はなく、今まさに閉じようとしている門があった。

 それも悲しいかな、認識した瞬間には閉じられてしまった。

 

「……うっそだろおい」

 

 思わずいつもの口調すらどこかへ吹っ飛んでいく状況に困惑するノッブ。

 だが、すぐに切り替えると、

 

「よし。まずは爆弾を作って、BBを爆破。これじゃな。儂完璧。一部の隙もない完璧な計画。どこに逃げたかはすぐ分かるし問題ないとして、まず爆弾じゃな。聖杯使う? いやでも持ってないから出来んか。うむ。とりあえず全力で撃ち殺すのもありかもしれんな。脱出してから考えるか」

 

 即座に物騒な作戦を考えつつ、脱出のために衣擦れ音出さないように水着に着替えたノッブは、ナイチンゲールに見つからないように最大限警戒しながら移動を始めるのだった。




 その数分後、盛大な爆発音と共に約二名は医務室に戻るのだった。

 原因が仲間割れなのはもはや平常運転。高確率で自爆してませんかねこの二人。


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不満そうだなぁアビゲイル(なんとなく天敵が増えた予感がするの)

「むうぅ……」

「なんでぃ、不満そうだなぁアビゲイル」

 

 頬を膨らませて不機嫌そうなアビゲイルに声をかける北斎。

 いつもの大筆は何処かへ置いてきたのか、持っておらず、代わりにONILAND製のポップコーンの箱を持っていた。

 

「別に、北斎さんが悪い訳じゃないの。ん~……何て言ったら良いのかしら……なんだか、イヤな予感がすると言うか、また苦手な人が増えたような、そんな予感というか……でもでも、苦手な相手って言っても、クラス相性的なものだから、会話は合うかもしれないというか……」

「あぁん? いやまぁ、言いたいことは分かるけど、ずいぶんまぁいきなりな予感だな?」

「またマスターが召喚したのかも……マシュさんに報告しなきゃ」

「……即座に告げ口されるってのは、中々にヒデェ様にも思えるんだが、実は割りと普通だったりするのか?」

「いいえ? でも、美味しいパフェが代わりに食べられるのだもの。だから、犠牲はしょうがないの」

「……実はそっちが本命だな、こんにゃろめ」

「えへへ……」

 

 照れくさそうに笑うアビゲイルの頬をふにふにとつつきつつ、それはそれとしてパフェの代わりに売られるのはマスターとしてどうなのだろうか考える北斎。

 だが、すぐに考えるのが面倒になり、ポップコーンの箱をアビゲイルに渡しながら、

 

「まぁ今は適当に遊ぶさ。なにか乗りたいのとかあるか?」

「ん~……そうね。今年は北斎さんと一緒だから、観覧車とかどうかしら。去年は乗らなかったの」

「ふぅん。観覧車ってぇのは、あのドデカいのだろ? いいね。気になってたんだ。高いところから見たONILANDも見てみたいからな。いやぁ、何かと嫌われる鬼達のONILAND。人が賑わい笑顔のなるってぇのは不思議なもんだが、いやはやこれはこれで良いもんさ。まぁ、本場の鬼はどうかって話はあるけどな?」

「まぁ、鬼救阿さんは悪いことって言っていたのだから、きっと鬼にとっては悪いことなのね。人間にはとっても難しいことなのに」

「まぁ、それが流儀ってもんさ。人種が違けりゃ文化も違う。海の向こうから来たやつらだって言葉も文化も違うってもんさ。人も鬼も皆同じ。まぁなんだ。そこにはそこのルールがあるってことさ。おれもとと様も、そういうのに振り回されたり振り回されなかったりして江戸で絵を描いてたわけで、だからまぁ、人間からしたら良い行いでも、そりゃ悪役の鬼がやって良いことではないって訳さ」

 

 そう言ってから、北斎は口を閉じ、空を見上げると、

 

「それはそれとして、あの鬼救阿ってのとは一度じっくり話して、絵の題材になってほしいもんだ。お願いできないもんかねぇ……」

「……確かに、北斎さんの描いた鬼救阿さんを見てみたいわ。私も頼んでみようかしら」

「おぅ。その時はよろしく頼むぜ、アビゲイル。それじゃ、観覧車に行くとするかね」

「えぇ!」

 

 そう言って、二人は観覧車に向かうのだった。




 だぁぁ!! ラムダ編を書く時間が取れなぁぁぁい!!

 ONILANDが終わるまでに書ききれ私! うごあぁぁ……!


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これだけ鏡があると感覚がおかしくなるよね(ゲシュタルト崩壊って、こういうことを言うのかな?)

「うわぁ……なんか、これだけ鏡があると自分がどれか分からなくなるね……」

「ゲシュタルト崩壊って、こういうことを言うのかな」

「魔力を取られて地味にピンチなんだけど。ONILAND苦手かも……」

 

 ミラーハウスを探険するイリヤ達。

 既に30分以上さ迷っているので、そろそろ色々と崩壊し始めていた。

 

「るびー……は、置いてきたんだった。ん~……持ってくればよかったかなぁ」

「サファイアはいるけど、元気がないみたい……早く脱出した方がいいかも」

「私もちょっと魔力取られ過ぎで元気無いんですけど~。私には何か無いの?」

「クロは脱出出来るんじゃないの?」

「ムリムリ。ここ、魔力が漂ってるせいで方向感覚おかしくされてるんだもの。真面目に脱出しなきゃなの。他に迷子なのはいないかしら……」

「それ、迷子が増えるだけで解決にならないんじゃないの……?」

「いや、人手が多いことに越したことはないし……っと、噂をすればってところかしら」

 

 クロエが言い、それと同時くらいに聞こえてくる足音。

 その音は二つ。三人は顔を見合わせて頷くと、音に向かって進んでいく。

 

「ね、ねぇクロ……突然襲われたりしないよね?」

「しないとは思うけど……どうかしら」

「もし襲ってきても、私がイリヤを守るから、大丈夫。サファイアがちょっと心配だけど、いざとなったら投げつける」

「投げないで!?」

 

 そう言いながら向かっていた三人は、先頭を走っていたクロエが曲がり角で止まることで、玉突き事故のように倒れる。

 

「いったたた……ちょっとクロ! なんで急に止まるの!?」

「こ、答えるにしても、とりあえず上から退いてくれない?」

「あ、ごめんイリヤ。重かった?」

「美遊は全然重くないよ! うん! 大丈夫! あとクロもごめんね?」

「良いわよ別に。突然止まったのはこっちだし。で、急停止した理由だけど……あれを見たら、出てって良いのか考えるわよ」

「「あれ?」」

 

 そう言ってイリヤと美遊は首をかしげ、曲がり角の先を見る。

そこには、オオガミとラムダが二人で歩いていた。

 

「あれは……マスターさんと、ラムダさん? 二人一緒みたいだけど……」

「むしろ、二人以外いない。足音も二つだけだし、周りに誰かいるって訳じゃないみたい」

「え? じゃあ、二人っきり遊園地を回ってるの? それって、デートってこと?」

「だと思う。本当はどうかはわからないけど」

「ん~……あれ? でも、マスターさんって、エウリュアレさんと付き合ってるんじゃ……?」

「でも、告白もしてないし、何かがあったって訳でもないみたいだから、正式に付き合ってるとは言い難い状況じゃない?」

「ん~……それだと、二股ってこと……?」

「いや待って。そこまで間違ってない気もするけど待って。その現実を突きつけないでっ」

 

 三人の会話に割り込んでくるオオガミ。

 三人は聞こえていたのかと驚くが、知らぬうちに声が大きくなっていたのかもしれないと反省する。

 しかしクロエはすぐに立ち直りニヤリと笑うと、

 

「それで、どっちなの? マスターは、どっちと付き合ってるの?」

「……あやふやにね、しておいた方がいいこともあるんだよ……」

「え、目が本気なんですけど……触れない方がいいところ?」

「えぇ、それ以上はNG。あやふやにしておかないと、変なのが飛んでくるもの。スキャンダルとか、今は遠慮したいの」

 

 そう言って、オオガミの前に立つラムダ。

 スキャンダルとか既に手遅れ状態では? と思わなくもないが、イリヤ達は突っ込まない。

 すると、ラムダは、

 

「あなた達、迷子かしら。一緒に来る?」

「え、良いんですか? お邪魔だったりは……」

「しないわよ。というか、私が言わなくてもコイツが言うもの。どっちが言っても変わらないわ」

「そ、そうですか……じゃ、じゃあ、お願いします!」

「えぇ。じゃ、任せたわよ。マスターさん?」

「う~ん、目が笑ってない」

 

 そう言いながら、オオガミとラムダを加えた五人は、ミラーハウスを進んでいくのだった。




 デート回書き終わらんですが! 明後日最終日なのですが! これ、書ききれないのでは?(直感

 ま、まぁ、隠れてない伏線はばらまいたので、後は回収するだけ……ガンバルゾー。


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ONILAND終了まであと少しね(少しだけでも遊びませんか?)

「ふぅ、ようやく終わりかしら。エリザベートも回収したし、後は帰るだけ?」

「遊びに行く、というのもあります。今回姉様はアトラクションマネージャーの掃除を最優先にしてたので、ほとんどまともに見て回ってないのでは?」

 

 鬼王のパレード台を奪い取ったエウリュアレは、そこからONILANDを見渡しつつ考える。

 

「そうは言っても、もう夜なのよね。明日には消え去るし、どうしたものかしら」

「今からでも、観覧車やティーカップ、メリーゴーランドなどはやってます。ミラーハウスは危険なので夜間はやってないみたいですが」

「そう……アナはちゃんと見ているのね。なら、貴女が乗りたいのに乗りましょうか。何が良い?」

 

 微笑んだまま聞くエウリュアレに、アナは大きく目を見開いたあと恥ずかしそうに、

 

「その……一緒に、観覧車に乗っていただけないでしょうか……」

「……ふふっ。えぇ、良いわよ。去年一緒に乗ったときは顔が真っ赤で大変そうだったけど、今年は大丈夫かしら?」

「こ、今年は大丈夫、です。それに、ONILANDの夜景を見れるのは貴重ですし、見ておきたいな、と」

「まぁ次があるか分からないしね。行けるうちに行っておきたいのは確かだもの。良いわね、行きましょうか」

 

 エウリュアレはそういうと、パレード台から飛び降りて、アナに手を伸ばす。

 アナがその手を取ると、エウリュアレは微笑んで観覧車に向かって歩き出す。

 

「それにしても、去年は夜に見て回らなかったから新鮮ね。夜景ってどんなかしら。花火も上がってるし、地面もライトアップされてるから、綺麗なんでしょうね」

「えぇ、私もそう思います。でも姉様、本当によかったんですか?」

「何がかしら。私が貴女とずっと一緒にいること?」

「えっと……はい。そうです」

 

 すると、駆け足気味だったエウリュアレは普通に歩き始める。

 アナがそれを不思議に思うと、

 

「まぁ、騒動の中心よりも、外から見てた方が楽しいもの」

「はぁ……それとマスターと一緒にいないのに関係はあるんでしょうか」

「えぇ、大いにあるわ。だってほら、彼はいつも中心にいるもの。だから、騒動に混ざりたいなら近くに。傍観していたいなら離れたところにいるのが一番よ。記録係はアンリに任せているから、帰ったら楽しみね」

「……さすが姉様です。ただ見てるんじゃなくて、ちゃんと管理しているんですね。見習わなきゃ……」

「えぇ、存分に見習いなさい。そしてこれからもよろしくね。アナ」

「はい、姉様」

 

 そう言って笑顔を向けるアナに、エウリュアレも笑顔を返すのだった。




 エウリュアレえぇぇ……どうしてラムダデートの筆が進まないのぉ~……はっ、これもクリプターの陰謀か!(風評被害


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メルトと一日を(遊園地でのんびりと)

「それで、どこから行くの?」

「まずはメリーゴーランド。どうかな?」

 

 そういう二人の前には、想像以上に人気のあるメリーゴーランドがあった。

 ラムダはそれを見て若干不機嫌そうに、

 

「何よ……プラスチック製の馬? これならまだあの工房に作らせた方が面白いと思うのだけど」

「あそこはメリーゴーランドを魔改造して兵器に変えるのでNGです」

「……言われてみると、確かにやりそうね。BBがいるからなおのこと」

「でしょ? まぁ、とりあえず乗ろうよ。面白いかどうかはその後でも遅くはないでしょ?」

「……まぁ、それはそうなんだけど」

 

 そう言いながら、二人は列に並ぶ。

 回転率も良いもので、かなりの早さで進んでいく。

 そんなとき、ふとラムダが、

 

「ねぇ、アトラクションマネージャーがいるって聞いたのだけど、ここにはいないの?」

「あぁ、黄金を持ってる? それならエウリュアレがさっきアナと一緒に辻斬りみたいに倒していったよ」

「……そんなことをしてたの? 言ってくれれば私も参加したのに」

「う~ん、それはまぁ、エウリュアレなりの優しさというか、なんというか。あまり触れない方がいいところだよ。うん」

「ふぅん……まぁいいけど。それよりもほら、進んでるわよ」

「え? あ、ほんとだ」

 

 そう言って、オオガミは進むのだった。

 

 

 * * *

 

 

「まぁ、うん。正直ちょっと楽しかった」

「そう? 私は物足りなかったのだけど、まぁ貴方が楽しかったのなら今はそれで良いわ。さ、次に行きましょ」

 

 そう言って、オオガミの腕に掴まるラムダ。

 次に二人が向かった先は、ティーカップ。あまり並んでいないのは、ティーカップの雰囲気のせいだろうかと考える。

 

「何が楽しいのかしらね、これ。ずっとぐるぐる回ってるから、人間は目が回っちゃうんじゃないの?」

「ん~……普通そこまで回んないし、目を回さない乗り方もあるからなんとも言えないね。正直乗ってみないとわからないや」

「そう……じゃあ乗りましょう。でも、速度は貴方がやってちょうだい。私だと回しすぎるわ」

「別にそれでも構わないけど、メルトが言うなら回すよ。自重しないくらいでいこう」

「私もそれで構わないけど、酔って吐かないでよ?」

「最低限は守りますけどね!?」

 

 言いながら、乗り込む二人。

 狭いカップの中で、ピッタリと横についてくるラムダ。

 オオガミは複雑そうな顔をし、

 

「えっと、正面とかは?」

「何よ。隣は嫌だって言うの?」

「そういう訳じゃないんだけど……うん、まぁいいや。ちゃんと掴まっててよ?」

「えぇ、どんどん回しなさい」

 

 ラムダがそう言って左腕をしっかりと掴むと同時、片手で回さなきゃいけない事実に気づくオオガミ。

 だが今さら話してくれとは言えないオオガミは、なんでもないかのようにカップを回し始める。

 

「……意外と、悪くないわね。こういうのも」

「そう? それならよかった」

「えぇ、貴方と一緒で良かった。だって、一人だったら乗らないもの」

「まぁ、あんまり一人で乗りたいものじゃないしね」

「本当にそうね。一人で乗るのは、何が楽しいのか分からないわ。周りにカップルしかいないじゃない」

「まぁ、ここもその一つな訳ですけども」

「それ以上言ったら膝よ膝。いえ、今なら頭突きでも良いわね?」

「メルトはすぐそうやって照れ隠しで膝をしてくる。おかげで防御力が上がるんですが」

「良いじゃない、頑丈になれて。また一段と蹴りやすくなるわ」

「照れ隠しを別の手段に変えるとか」

「……どう言うのよ」

「ん~……抱き着いてくるとか?」

「……鯖折りにされる覚悟はあるかしら?」

「う~ん即死ですね!」

 

 そう言って笑うオオガミ。

 メルトも釣られて笑い、また地味に距離を詰める。

 完全に密着されてオオガミは笑顔のまま冷や汗を流していた。

 

「えっと……メルト? これどういう状況?」

「どういうって、見ての通りだけど。嫌かしら」

「いや全く。むしろどんとこいって感じです」

「……堂々と言われるとなんか嫌ね」

「えぇ……」

 

 どことなく嫌そうな顔をされたオオガミは悲しそうな声をあげる。

 すると、ラムダは楽しそうな笑い声をあげ、

 

「そんな捨てられた犬みたいな顔しなくても良いじゃない。でも面白かったわ。またやってもらおうかしら」

「それはそれでなんか悲しい……まぁ、メルトらしいと言えばらしいけどね」

「ふふっ、分かってきたじゃない。さ、もっと回転をあげなさい。マスター?」

「はいはい。分かりましたよ~」

 

 そう言って、オオガミは台を回す。

 

 

 * * *

 

 

「ふふふ。案外楽しめたわね」

「ん~……大分危ないレベルまで速度が出てた気もする……まぁ、事故が起こってないなら大丈夫か」

 

 そう言いながら降りる二人。

 すると、オオガミは視界の端にノッブとBBを捉える。

 目を向けると、悪そうな顔で紙に何かを書き込んでいるようだった。

 止めた方がいいだろうかと悩んでいると、隣でラムダが、

 

「ねぇマスター? あの二人は放置で良いのかしら。絶対ろくでもないことを企んでいるのだけど」

「ラムダと一緒にいるからどうしようか考えたんだけど……止めた方がいいかな?」

「別に急いでる訳じゃないもの。むしろこういうハプニングを楽しんでいきましょう。ほら行くわよ」

 

 そう言って、オオガミの袖を引くラムダ。

 オオガミは諦めたようにノッブ達に近づくと、二人の声と書いているものが見えてくる。

 

「ここを、こう……したら、どうですかね?」

「おっ、じゃあ、これをこうするとかどうじゃ? 良い感じだと思うんじゃが」

 

 それは、メリーゴーランドのようで、かけ離れたナニカ。馬ではなくペガサスで、不規則な動きを取り、ボタン一つで狙った場所を爆発する。もはや一部の人物を狙っているかのような設計に、思わずオオガミは、

 

「うんうん。じゃあ帰ってから実行しようか」

「いやここで実行するのも……ん?」

 

 なんだ? とばかりに顔をあげる二人に、笑顔で対応する。

 何故か二人は顔を引きつらせた笑みを浮かべ、

 

「えっとぉ……いや、なんでもないんですよ? ただほら、メリーゴーランドとか、ちょっと面白味がないかなぁって……」

「ふぅん……でもさぁ……メリーゴーランドの空中歩行機能って、もうメリーゴーランドじゃないよね。これ別のアトラクションじゃない?」

「いや、それはちょっと否定できないですね……まぁ、楽しそうなので作るんですけどね?」

「うんうん。それじゃ……ちょっと邪魔になるのでエルキドゥを呼ぼうかな」

「後生ですやめてください!」

 

 流石のBBも、エルキドゥだけはダメなのか、本気で止めに来る。

 逆にノッブは何かを悟ったように目を閉じ、諦めきっているようだった。

 そんな二人にオオガミは笑みを浮かべると、

 

「じゃ、こうしよう。今諦めて投降すれば二人まとめてエルキドゥ。それか、今から二人でティーカップに乗って回転させ続けて、先にダウンした方に極刑。どうする?」

「よっしゃBB。さっさとティーカップに乗るぞ」

「圧倒的手のひら返し。というか、いつの間に服を着替えたんですか」

 

 素早い速度でアーチャー装備に着替えたノッブは意気揚々とティーカップへ向かい、BBもそれを追う。

 二人は楽しそうに、

 

「それじゃ、サクッと勝って免除されますか」

「うわははは! いや儂負けぬけど?」

 

 そう言って、二人はティーカップに乗り込む。

 すると、オオガミは少し早足で距離を取っていたラムダの手を掴むと、

 

「じゃ、次はフードコートで。そろそろお昼だし、ごはん食べよう」

「え、えぇ、良いけど……何をそんな焦っているの?」

「焦ってはないよ。ただ危険地帯から逃げるだけ。それに結果はフードコートからでも見れそうだしね」

「そう? なら、行きましょうか。フードコートは……あっちね」

 

 そう言って、二人はその場を離れるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「あら、また働いているの? 貴方どこでも働いているわね。そんなに楽しいの?」

「わざわざ来て言うことはないだろう。それとも、注文か?」

「えぇ注文よ。ハンバーガー一つ」

「承った。が、君は手を使うのは大丈夫だったか?」

「残念。今日は私専用の手があるの。貴方は作ってくれるだけでいいわ。食べてみたかったのよ、ハンバーガー」

「ふむ。まぁそこまで言うのなら作らないわけにはいかないな。待っていたまえ」

 

 そう言って調理を始めるエミヤ。

 ラムダがその様子を見ていると、

 

「メルト。食べるの決まった?」

「あらマスター。私はハンバーガーよ。ちゃんと持ってきてね?」

「あぁ、うん。それは持っていくけど、大丈夫? 食べられる?」

「えぇ。貴方がいるじゃない。ちゃんと食べさせてね?」

「……なるほどそう来たか~」

 

 先に席に行っているわね。と言って去っていったラムダ。

 オオガミは手に持った焼きそばのパックをペコペコと鳴らして、ハンバーガーが出来るのを待っていた。

 すると、

 

「やれやれ、君も大変だな。マスター」

「エミヤさん。いやまぁ、大変だけど見返りは貰っているから良いかなって」

「そう、か。それなら良いのだが。ほら、出来たぞ。持っていけ」

「ん。ありがとね。エミヤさん」

 

 そう言って、オオガミはバーガーショップを後にする。

 テーブルに先に座って待っていたラムダは、足を組み、頬杖をついて今か今かと待ち続け、ようやくオオガミが来るのを見つけると、

 

「ちょっと、遅いじゃない。そんなに時間がかかったの?」

「ちょっとね。はい、ハンバーガー。って言っても、食べさせるんでしたっけ」

 

 食べさせるというのを思い出したオオガミは、正面ではなく、真横に座る。

 ラムダはそれを見て何故か自慢気な笑顔を浮かべ、

 

「あ~」

「……いや、早いですメルト様」

「むっ。貴方が遅いの。なんで準備してないのよ」

「すごい言い分。まぁいいけども。はい、あーん」

「あ~……んっ」

 

 一口。想像よりも小さめに食べられたハンバーガー。

 エウリュアレはもっと豪快に食べていたような。と思うも、すぐにあれはエウリュアレがおかしいのか。と思い直す。

 

「どう?」

「ん。悔しいけど、美味しいわよ。流石というところかしら。そういうところが気にくわないんだけど」

「まぁ、エミヤさんはねぇ。たまに言動が残念というか、なんというか。でもごはんが美味しいので逆らえないんだよね」

「やっぱり胃袋を握られるのは生物として危険よね……食の豊かさは味に対して敏感になるもの……具体的には美味しくないものに対しての忌避感が強くなる……!」

「うんうん。美味しいは正義。食が一番ということだね」

「あぁもう、もっと寄越しなさい。全部食べるんだから」

「はいはい。どうぞ、あ~ん」

「あ~……んっ」

 

 また一口、小さく食べるラムダに、どこか微笑ましさを感じるオオガミ。

 すると、ラムダは首をかしげ、

 

「な、なに? なにかおかしかったかしら……」

「うん? いや、可愛いって思っただけだけど?」

「っ! そ、そんな面を向かって言わなくても……それに、ただ食べてるときに言われるのは、なんか納得いかないわ……」

「十分魅力だと思うんだけどね。まぁ、メルトが認めたくないのならそれでも良いけど。はい、あーん」

「あ~……んっ」

 

 もはや有無を言わせず食べさせるオオガミ。

 なんだかんだと言って、この食事において主導権を握っているのはオオガミのようだった。

 

「ん~……スッゴい食べさせてて飽きないんだけど、どこかでこの構図を見たんだよなぁ……」

 

 そう言いながらも、オオガミの差し出しているハンバーガーをチマチマと食べているラムダ。

 そして、残り少しとなったところで、

 

「あぁ、水天宮の時に餌やりをしたペンギンそっくりなのか」

「っ!?」

 

 なにかショックを受けたようなラムダは、最後の一口を大口で食べ、その勢いのままオオガミにロケット頭突きを叩き込む。

 その攻撃により吹っ飛ばされ、二転三転と地面を転がり倒れる。

 そして、頭突きをしたラムダは起き上がると、口の回りをペーパーで拭き、

 

「次は彼方までぶっ飛ばす……!」

「本気だぁ……」

 

 そう言いながらヨロヨロと起き上がるオオガミ。

 ラムダはオオガミに近付くと、

 

「ほら、さっさと起き上がって焼きそばを食べちゃいなさい。時間が経つと冷めちゃうし、他のところに行く余裕もなくなるんだから」

「だったら盛大な頭突きを叩き込まないでくれませんかね……?」

 

 そうオオガミが言うも、そっぽを向いて聞いていないと言いたげにアピールするラムダ。

 仕方ないとオオガミはため息を吐き、ラムダと一緒にテーブルへ戻ってペーパーを一枚取ると、

 

「雑に拭いたら伸びちゃうから。じっとして」

「んっ、んくっ、ちょ、や、やめ、やめなさいよ!?」

 

 言いながら、なんとか突き飛ばすラムダ。

 だが、オオガミは何もなかったかのようにペーパーを丸めるとゴミ箱へ捨て、

 

「取れたので良し。じゃ、すぐに焼きそばを食べちゃうね」

「……えぇ、そうして」

 

 どこか調子を狂わされる。そんな状況に、ラムダはちょっと不満そうに頬を膨らませるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ここがミラーハウスね」

「うん。バラキーが苦手な迷路。しかも全面鏡だから頭がおかしくなりそうになるよ」

 

 ミラーハウスの前で、そんなことを話す二人。

 既に準備は万端で、今にも入りたそうにしているラムダ。

 オオガミはそれを見てラムダの手を取ると、

 

「じゃ、行こうか」

「えぇ、離さないでね」

 

 そう言って、ミラーハウスの中に入っていく。

 中は前と変わらず想像通り鏡だらけで、どれが通路でどれが鏡か見分けるのも一苦労する場所だった。

 ラムダは少し考えると、

 

「よくこんなのを作れるわよね。正直普通に迷子になるのだけど」

「まぁ、構造自体は普通の迷路と大差無いんだけど、問題なのは鏡のせいでどこが通路か分からない点だよね。行けそう?」

「ん……まぁ、大丈夫だと思うわ。最後はしらみつぶしでいけば出れるはず」

「う~んゴリ押し。緊急脱出用アビーを読んでおくべきだったかな……?」

「そんなの要らないわよ。気合いで突破するもの」

「なんという強者発言。流石メルト。信じてる!」

 

 そう言って、歩き始める二人。

 しばらく歩いていると、後ろからヒソヒソと声が聞こえてくる。

 

「だと思う。本当はどうかはわからないけど」

「ん~……あれ? でも、マスターさんって、エウリュアレさんと付き合ってるんじゃ……?」

 

 なんとなく嫌な予感がしてきたオオガミは、すぐさま声のする方へと進んでいくと、そこにはイリヤ、美遊、クロエの三人がいるようだった。

 

「でも、告白もしてないし、何かがあったって訳でもないみたいだから、正式に付き合ってるとは言い難い状況じゃない?」

「ん~……それだと、二股ってこと……?」

「いや待って。そこまで間違ってない気もするけど待って。その現実を突きつけないでっ」

 

 思わず声をあげるオオガミ。イリヤと美遊は驚いて固まったが、クロエは一人だけニヤリと笑うと、

 

「それで、どっちなの? マスターは、どっちと付き合ってるの?」

 

 聞かれたオオガミはどう答えようか悩み、しかし次の瞬間妙な寒気が背筋を駆け抜けた。

 そのせいで顔を青くしながら、

 

「……あやふやにね、しておいた方がいいこともあるんだよ……」

「え、目が本気なんですけど……触れない方がいいところ?」

「えぇ、それ以上はNG。あやふやにしておかないと、変なのが飛んでくるもの。スキャンダルとか、今は遠慮したいの」

 

 そう言って、三人とオオガミの間に入るラムダ。

 スキャンダルはもう回避できないのでは? という突っ込みはぐっとこらえ、ラムダの話を聞く。

 

「あなた達、迷子かしら。一緒に来る?」

「え、良いんですか? お邪魔だったりは……」

「しないわよ。というか、私が言わなくてもコイツが言うもの。どっちが言っても変わらないわ」

 

 ラムダが言うと、イリヤが『本当に?』と言いたげな視線を向けてくる。

 それに対してオオガミは素直に頷いて答えると、

 

「そ、そうですか……じゃ、じゃあ、お願いします!」

「えぇ。じゃ、任せたわよ。マスターさん?」

「う~ん、目が笑ってない」

 

 いたずらな笑みを浮かべながらも、どこか不機嫌そうなラムダに言われ、五人でミラーハウスを脱出するために歩き始めるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ありがとうございました! 私たちだけだったらもう二度と太陽を見れなかったかも……」

「それはちょっと大袈裟な気もするけどね。というか、もう夕方……というか、夜か。パレード始まっちゃうじゃん」

「パレード……? って、見に行く予定だったやつ! じゃ、じゃあ私たちはこれで! じゃあね! マスターさん!」

「そっちもね~」

 

 そう言って、見送るオオガミ。

 もう空は暗く、代わりに大地はイルミネーションで彩られていた。

 

「ん~……そろそろ鬼王タイム。パレード、行ってみる?」

「そうね。ちょっと寄ってみましょうか」

 

 そう言うと、二人はパレードが一番賑わっているメインストリートに向かって歩き出す。

 すると、小鬼がわらわらと集まってきて、

 

「お客様のご迷惑になりますので……!」

「お客様のご迷惑になりますので……!」

「お客様のご迷惑になりますので……!」

「……なによコイツら」

「障害。蹴散らした方がいいやつ」

「そう……じゃ、遠慮なく行きましょうか」

 

 そう言って、ラムダは戦闘態勢になるのだった。

 

 

 * * *

 

 

 バラキー達を助けた後、観覧車に向かう二人。

 鬼王はアナが討ち取ったという報告が既に流れていて、早いなぁと思いつつ歩いていく。

 

「鬼王、案外すぐ終わっちゃったわね」

「まぁ、今回のイベントの性質上ねぇ。攻撃力500%は異常だって」

「ふぅん……まぁ、そんなものかしら」

 

 そう言いながら、二人は最後のアトラクション、観覧車に乗り込む。

 昼間の喧騒はどこへやら。観覧車の駆動音だけが静かに響く密室で、隣り合わせに座る二人。

 

「今日はどうだった?」

「そうね……まぁ、総合的には良かったわ。満足とは、言い難いけど」

「うむむ。やっぱり難しいなぁ。でもまぁ、楽しんでくれたなら良かった」

「えぇ、なんだかんだ要所要所で私を気遣ってくれたもの。それだけで、十分よ」

「……それならよかった」

 

 二人は暫し沈黙する。

 観覧車は二人に構うことなく動き、ちょうど真上に来たときだった。

 

「ねぇマスター……いえ、オオガミ」

「なに? メルト」

「その……次はあるのかしら」

「……メルトが望むのならね」

「……その言い方は、なんだかズルいわね」

 

 そう、少し残念そうな顔をしてオオガミに寄りかかるメルト。

 その手は、オオガミの腕を強く抱き締めるのだった。





















っはあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああぁぁぁぁ!!!(吐糖

 なんでしょうね。なんなんでしょうねこれは! なんで最後しんみりさせたんでしょうね分かんないなぁ!
 でも観覧車なところはエウリュアレと一致。可愛いメルトを愛でろよなぁ!?

 今回序盤は筆が乗らず難産状態でしたけど、中盤から一気にネタが降り注いで書ききれないんじゃないかと青い顔になったけど書ききれたので私の勝ち! もっとメルトを愛でろください!

 それじゃあアンケート入りまーす!


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日常
スペースイシュタルだって?(中身が別人で見た目だけ同じとか、そういう感じかもしれないわ)


「え? スペースイシュタル?」

 

 食堂でそう声をあげるエルキドゥ。

 その目は真剣で、しかしどこか輝いていた。

 そんなエルキドゥの視線に気付いたエレシュキガルは、どこか不安そうに、

 

「で、でも、スペースってことは、イシュタルとは別ってことよね。つまり、名前が同じなだけの人物、とかないかしら」

「いいや。あれは普通のイシュタルと変わらない。僕の身体が今すぐ貫けって言うんだ。間違いない」

「ぶ、物騒すぎるのだわ……」

 

 若干怯えたように言うエレシュキガル。

 そんな二人のもとへやって来たアルトリリィは、

 

「あ、あれっ、セイバーウォーズですか? ということは、また師匠に会えるんでしょうか……今回こそはカルデアに来てくださるといいんですが……」

「おや、君の師匠も出てくるのかい?」

「あ、エルキドゥさん。そうなんですよ。前回は地球に不時着して、宇宙船を直すためにアルトリウムが必要だーって。どうにかしてアルトリウムを集めて、私の修行もして、一人前になるのと同じくらいに宇宙船が直って帰っていったんですけど、今度は何があったんでしょうか」

 

 首をかしげるアルトリリィにエルキドゥは微笑みながら、

 

「大丈夫。今回は何があろうと悪いのはイシュタルだ。だから遠慮せず、目の前にイシュタルが来たら斬りかかるんだよ。良いね?」

「え、あ、その、はい! 頑張ります!」

「おいポンコツ粘土。何を教えてんのよ」

 

 エルキドゥに向けられて放たれた罵声。

 その声に反応してエルキドゥはゆらりと立ち上がると、

 

「おやおや。これはこれはギル祭りで真逆の位置に行っていた能無し女神じゃないか。今度は宇宙規模になって自らのポンコツっぷりを見せびらかすんだろう? だったらほら、僕に構ってる暇は無いんじゃないかな? でもそれはそれとして報復はさせてもらうよ」

「あらあら。言葉で勝てないからってすぐ暴力に頼るのかしら。そういうところがポンコツなのよ。当たらない鎖をぶんぶん振り回して無様に鳴いてなさいな!」

「僕がいつ暴力を振るうだって? 勝手な解釈を押し付けないでほしいね。すぐに暴力を振るうのはそっちだろう? 脳ミソスカスカの木偶女神は記憶も無いようだ」

「なんですってぇ~……!?」

「はは。ほら、すぐにそうやって言葉を荒げる。低能なのが透けて見えるね。でもまぁ、それはそれとして」

「えぇ、こっちだって貴方に構ってる暇はないの。だから」

 

「惨めに泣かせてあげるよ」「速攻で沈めてあげるわ」

 

 直後ぶつかり合おうと前に出た二人は、瞬きよりも早く出現した門に飲み込まれ、消える。

 それをやった張本人であるアビゲイルは、

 

「あ、危ないわ……ここで暴れたら後でいろんな人に叱られるもの……ま、まだ何も起こってなかったわよね。せ、セーフかしら……」

 

 そう言って、鍵をしまいながら椅子に座り直すのだった。

 また、目の前で戦闘が始まりそうになっていたアルトリリィとエレシュキガルは、門を開いてどこかに飛ばしてくれたアビゲイルに感謝しに飛んでいくのだった。




 風紀ではないレアなエルキドゥさん。イシュタルと混ぜたら危険なので、お取り扱いにはご注意ください。

 あ、アンケートの補足ですが、全部が採用された場合、一気に消化するのはちょっと作成コスト過多なので投票の多い順に処理していくので。だれだー。調子乗って全部とか入れたやつー。


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ちょっと宇宙にハロウィンを届けてくるわ!(宇宙漂流しないようにね~)

「じゃ、子イヌ。今度はちょっと宇宙に羽ばたいてくるわ。今年のハロウィンはスペースワイド。宇宙に進出できなくてハロウィンなんて片腹痛いわ。謎のヒロインなんたらとか、スペースなんたらとかが出てきたんですもの。やっぱり負けてられないわ!」

「あ、うん……前回は難破して海を漂ったんだから、ちゃんと宇宙でも大丈夫なように宇宙服は着続けるんだよ?」

「任せて! ちゃんと宇宙にハロウィンを届けて地球に帰ってくるわ! その時は、またみんなの前でライブをするからね!」

「ダメそうなら令呪で戻すから教えてね~」

 

 そうして、ロリンチちゃんとBB、ノッブの凶悪パーティー製作の宇宙船に乗り込み、無数のちびノブと共に旅立つエリザベート。

 それを見送ったオオガミは、

 

「よし。おっきーのところに転がり込むか」

 

 

 * * *

 

 

「いや、マジでやめて。目の前で遊ばれると集中できない」

「大丈夫大丈夫。ちょっと遊ぶだけだから。それにおっきーも息抜きは必要でしょ?」

「その息抜きのし過ぎで今困ってるんですけど。まーちゃんアシ出来るんなら手伝っていってよ」

 

 ぶーぶー。と頬を膨らませて文句を言う刑部姫。

 オオガミは仕方ないとばかりにため息を吐き、

 

「言っても、ルルハワでやった程度ですけど。それでもいいのなら手伝うよ」

「じゅーぶんじゅーぶん。こっちも趣味の範囲だし文句言わないって。じゃ、ここお願いねー」

「はいはーい。任されたー」

 

 そう言って、刑部姫の部屋に標準装備されているこたつに足を入れ、違和感を感じる。

 

「……ねぇおっきー。このこたつ、まだ異界化してるの?」

「へ? 今はしてないはずだけど、なんで?」

「いや、なんか足に変な感触が……」

 

 そう言って、こたつをめくりあげると、そこには丸まっているアナがいた。

 それを見たオオガミは少し考え、

 

「おっきー。誘拐はダメだと思うよ?」

「してないけど!? 酷い言い掛かりじゃない!?」

「いやだって、アナが中で寝てるし……これは言い逃れ出来ないのでは?」

「不可抗力! さっき入ってきたの! 別に邪魔してる訳じゃないし、良いかなって思っただけだし!」

「ふむ。では被告。言い分を聞こう」

「もう犯罪者扱い……!?」

 

 そう言って、作業しながらそんな掛け合いをする二人。

 すると、中で寝ていたアナがごそごそとこたつから出て来て、

 

「なんですか、騒々しい……せっかく気持ちよくお昼寝をしていたのに起きてしまったじゃないですか」

「あ、おはよーアナちゃん」

「おはようアナ。ちょっとこっち来て膝の上に座って?」

「は?」

「……分かりました……」

「え?」

 

 寝ぼけているのか、オオガミの膝の上にすっぽりと収まるアナ。

 困惑する刑部姫に、オオガミはドヤ顔で、

 

「これがマスター特権」

「姫今からまーちゃん殺して権利を奪う」

 

 目が本気だった。




 まーちゃん 殺して 権利を 奪う
*ケツイ

 スペースワイドなハロウィンに期待……!


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なぜハロウィンが中止なのだ!?(セイバーウォーズが悪いんじゃねぇの?)

「おい緑の人! 今年のハロウィン中止とはどういうわけだ!?」

 

 食堂でのんびりとしていたロビンに襲いかかるバラキー。

 襲撃されたロビンは苦い顔をすると、

 

「オレに言われても困るんですが。セイバーウォーズとかのせいじゃねぇのか? ちょいと乗り込んで荒らしてくればハロウィンが復活するかも知れねぇぜ?」

「本当か!? ちょっと行ってくる!」

「あ、おい! ったく、本当に走っていきやがったよ……」

 

 はぁ、とため息を吐き、少し考え込むロビン。

 

「しっかし、ハロウィン消滅ってのは良くねぇよな。ハロウィンが無くなっちまったらチビ共が暴動を起こしかねねぇ。なんせチビ共もハロウィンのために仮装を用意してるからな。それが日の目を見ないとかダメだろ」

「全くだ。何より、宝物庫より菓子を厳選した(オレ)の労力を無にしようなどと、到底許されることではないわ」

 

 そう言って、ロビンの正面に座るのは、賢王ギルガメッシュ。

 なんとなく嫌な予感がするロビンは、

 

「……何用ですかね、金ぴか」

「ふん、語るまでもなかろうよ。目的は同じハロウィン。ならばその障壁を取り除くのに数を集めていると知れ」

「……なるほどね。言いたいことは分かりましたよ。要するにセイバーウォーズに乗り込んでさっさと終わらせろってことね」

「あぁそうだ。本当はもう何人かつけて計画を磐石にしたいところだが、一番暇そうにしているはずのマーリンが見当たらなくてな。後はろくなのがいないのと『自分は貰う側だ』と言わんがばかりの顔をしている大人しかいなくてな。貴様に白羽の矢が立ったわけだ」

「人選かなり雑だな? いや良いけどよ。どうせオタクも付いてくるんだろ?」

「ふん。むしろ我一人で事足りることについてこれる名誉をやるのだ。存分に感謝せよ」

「へいへい。分かりましたよ~」

 

 ロビンはそう言うと気だるそうに立ち上がり、

 

「そんじゃ、適当に使えそうなのを探してきますよ。王様は座っててください」

「任せよ。ついでにマーリンも探せ。ヤツが見つかればかなりの戦力になるのは間違いない」

「はいよ。って、オタクが見つけられなかったのをオレが見つけられると思います? 無理でしょ流石に」

「さてな。ともかく、だ。探してこい」

「あ~もう、行ってきますよ!」

 

 そう言って食堂の扉を開き、

 

「さて今日はどれだけ人が集まってるかな? そろそろ晩御飯の時間だからね。今日も隅っこの方で待たせてもらおうか!」

「……いたわ」

「ん? どうかしたかいロビン君……って、おや、ギルガメッシュ王じゃないか!」

「……確保!」

「なぁっ!?」

 

 即座に拘束されるマーリン。

 あまりの速度に驚いたマーリンは、少し考え、

 

「う~ん、捕まってしまったわけだけど、何かしてもらいたいことでもあったのかい? それならこんな拘束なんてしなくとも良いのに」

「貴様は縛っておかねば話も聞かずにのらりくらりとかわすだろうが。違うか?」

「おや、わかってらっしゃる。なら僕から言えることは何もないか。聞かせて貰うとしよう」

「あぁ。そこに座れ。それと緑の弓兵。貴様は他に人を集めてこい。メンバーが多いほど楽になるだろうよ」

「へいへい。って言っても、こっちで勝手にやっちまえば良いんじゃねぇかと思わなくもねぇけどな」

 

 すると、ギルガメッシュは眉をひそめ、

 

「たわけ。それだと菓子を配る人員が足りぬわ。豪華すぎず多すぎぬ程度でなければ子供が持ち運べるわけなかろう」

「あ~……なるほどな。質が良すぎると萎縮しちまうし、一度に貰うのが多すぎると持ち運べない。で、数多く貰うなら回数を増やすってことか。それなら一度部屋に寄れば中身を置いてから行けるしな。流石王様だ」

「ふん。わかったのならさっさと行け」

「あいよー。んじゃまた後でなー」

 

 そう言って、ロビンは食堂を出ていくのだった。




 ハロウィンを取り戻す戦いが今始まる……! とかなんとか。
 これは、平成に置いていかれたハロウィンを取り戻す戦い……こっちの方がしっくり来る……?

 ちなみにお菓子を配る側は実際少数で、悪のりした大人まで要求してくるので大変なのです。


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マスターを見ないのだけど(廊下にでも吊るされてるわ)

「……ねぇエウリュアレ。マスターは?」

「ONILANDから帰って来て昨日まで逃亡してたんだけど、さっきようやく捕まって廊下に吊るされてたわ」

「なにそれ……バカなの?」

 

 呆れたようにため息を吐くメルトに、何を今さら。と読んでいた本を閉じながら答えるエウリュアレ。

 目前に迫ったイベントを前に吊し上げられていることなど割りと良くあるので、基本的には誰も気にすることなく受け入れていたりする。

 なので、誰かが増えたイベント後には、部屋ではなく廊下を探した方が早いと言うのは、一部のサーヴァントの間では常識になっていた。

 

「それで? なにか用があったの?」

「別に、雑談でもしようかと思っただけ。それ以上でもそれ以下でもないから気にしなくていいわ。あくまでも暇潰しの一貫。なんてことのないことよ」

「そう。じゃあちょっとした雑談ね。ゲームだと基本的に貴女に不利だし」

「否定できないわね……正直、トランプも微妙だもの。カードを繊細に扱えなくて」

「まぁ出来なくてもなんとかなると思うし、気にしなくていいんじゃないかしら。それに、カルデア(ここ)でなら、きっと都合の良い奇跡も起こるかもしれないもの」

「……まぁ、その奇跡は今は要らないけどね。マスターがいるだけで十分。召し使いがいるって言うのは、とても気が楽ね」

「えぇ、本当にね。アナ、よろしく」

 

 エウリュアレが言い終わると同時に現れたアナは、テーブルと紅茶、お菓子を用意してすぐにいなくなる。

 その早業を見ていたメルトは、

 

「す、スゴいわね。マスターにも是非覚えてもらいたいわ……」

「むしろあれはマスターのスキルよ。『昔のバイトの経験が生きた』らしいわ。アナも嬉々として覚えるからいつの間にか二人して早業大会みたいになってるし」

「そうなの? 変なところでスゴいわね」

「えぇ全く。変なところでスゴいから扱いにも困るの」

「本当に面倒ね。大体、こっちから何かしようとするとすぐ見つかるのも納得いかないわ。なに? 越えてきた特異点の数だけ感覚が強化されるの?」

「まぁそれだけ無茶なことしてるしね。アメリカだと死にかけたらしいし」

「え……それなのにあんな平気そうな顔で今も戦ってるの? ……本当に人間?」

「えぇ、あれで人間。かなり勇者よりの精神をしているただの人間。英霊の加護無しには特異点の修復すら困難な一般人。だけど、堕落させられなくて悔しいわ。幾人もの英霊に守られているから勇者の試練も普通に越えてくるし。難しいところよね」

「……で、自分が堕落したと」

「いいえ? 染まっただけよ。彼の雰囲気に。だって、楽しいのは事実だもの。何より、ここならまた(ステンノ)やメドゥーサとも居られるしね」

「……あぁもう、甘いったらありゃしないわ」

「ふふふ」

 

 そう言って笑うエウリュアレと、若干顔を赤くさせながらお菓子を食べるメルト。

 すると、エウリュアレは思い出したように、

 

「そうだ。あれを見ましょう。アビー、アンリからカメラ貰ってきてちょうだい」

「もう貰ってるわ!」

 

 シュバッ! と門から飛び出てくるアビゲイル。

 一体どこから聞いていたのかと突っ込みたくなるが、メルトはその突っ込みを飲み込む。

 

「ふふっ、じゃあ観賞会と行きましょうか。レクリエーションルームになら機材が一式揃っているかしら」

「ぱそこん? でも見れるって聞いたわ。マスターの部屋にあるから、このケーブルを持っていきなさいって、ダ・ヴィンチさんが」

「あら、用意してくれたのね。じゃあ大人数に見られなくて良かったかしら。本人はどうか知らないけど」

「……なんでそこで私を見るのよ」

「分からないならそれでも良いわ。すぐに分かるし。それじゃあ準備しましょうか」

 

 そう言ってエウリュアレは微笑みながら準備を始め、中身を分かっていないメルトは首をかしげながら手伝うのだった。




 なお、数分後にメルトは倒れる模様。




 エウリュアレが! 礼装! 惚れろ! みんなエウリュアレを崇め称えろ! 私はもうしている!(発狂

 ところで、ついに宇宙進出ですか? 星見が星渡りになってるんですが。なに? ビヤーキーでも捕まえました?
 あと何気に初のエクストラアタック強化ですね。でもクリティカル威力は乗らないからなぁ……うーむ。とりあえず礼装狙い、ですかね? でもなんとなくシステムが組めそう。そんな気がする私です。アーツパに革命が……


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セイバーウォーズⅡ ―始まりの宇宙―
ここがスペースユニヴァース……(とりあえず早く帰らないとね)


「う~ん、今度はこっちが宇宙かぁ」

「攻撃力アップとドロップが同じカードみたいだし、わりと楽かしら。まぁのんびり行きましょう?」

「先輩! リンゴはしまっておきますので、こちらにいただけますか?」

「おっと我らが後輩が久しぶりに絶好調だ! リンゴを隠せ!」

 

 言うと同時に飛んできた盾に飛ばされるオオガミ。

 マシュはその間にオオガミが隠し持っているリンゴと石を回収してカルデアに送り返していた。

 そしてマシュの持ち物チェックが終了した後、ついてきたエルキドゥはオオガミを抱えあげると、

 

「マスターには、これからイシュタルを倒してもらわなくちゃならないからね。ゆっくり休んで貰うよ」

「……イシュタルって、こっち側よね?」

「仲間だろうと僕にとっては敵だからね。召喚するのは構わないけど、僕は全力で攻撃させて貰うよ?」

「まぁ、そうなるわよね」

 

 エウリュアレはそう言って、エルキドゥに抱えられているオオガミの頬をペシペシと叩く。

 しかし、マシュによる投擲で沈められたオオガミが起きるわけもなく、むしろ悪夢を見ているかのように呻き声をあげる。

 

「ちょっと、マシュ? マスターが起きないのだけど」

「安心してください。今までの経験を活かした完璧な峰打ちでしたので、一切問題ないと思います。大丈夫。気絶しただけですよ?」

「手際よく気絶させるのは誇って良いところかしら……ん~……まぁ、マスターなら喜びそうだし問題ないわね」

「先輩のお役に立つ。そのための努力は怠りませんので! 先輩のためなら先輩を気絶させるのも、もう心が痛みません……!」

「それちょっと私怨入ってない?」

 

 最後の一言で一瞬で不安になったエウリュアレ。

 だが、輝くばかりのマシュの微笑みに気圧され、突っ込んだものの目を逸らす。

 そんなときだった。

 

「ちょっと皆さん何を和気あいあいと……って、マスターが倒れてるー!?」

「あら、X。ようやく起きたの?」

「ようやくってなんですか! 最初から起きてましたけど!? むしろ、今の今までメルトさん? に捕まってたんですが! なんですかあれ面倒くさい!」

 

 入ってくるなり文句を言ってくるXに、エウリュアレは微笑みながら、

 

「昨日ちょっと、色々とあってね。ささくれてたの。特効薬予定のマスターすら拒否られたから諦めて放置。ついてきてくれただけマシじゃないかしら」

「なんですかそれ……スーパーメンドクサイモードで連れてきたんですか。私種火貰ってないし強化クエストもやってないしマスターと絆も深めてないから幕間もないので逆らったら即死の恐怖に襲われてたんですが……!」

「生きているなら問題ないんじゃないの?」

「極論ですよそれは!」

 

 そう叫ぶXにエウリュアレは微笑みながら対応し、その間にマシュとエルキドゥはオオガミを連れてその場を離れるのだった。




 マアンナ号に入ってないけど入ったという体で。たぶん今日中には入りますし。

 フレンドからSイシュタル使ってみた所感、システム組めそうな感じが……行けるかなぁ……? でもオダチェン必須な感じがなんとも。


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あれ、今日ハロウィンでは?(宇宙にいるから参加できない悲しさ)

「昨日は夢を見ていた気がする……」

「うなされていましたしね。まぁかくいう私も同じなのですが。なんですか。クソ長ヒールの女性に八つ当たりされる夢って。どんな夢ですか」

 

 オオガミもXも、頭を押さえながらそう呻く。

 なにやら夢の中のマアンナ号は広かった気もするが、現実はそう優しくなく、四人で満員。追加四人など、宇宙に投げ出すしかないだろう。

 

「しかしまぁ、昨日戦った感じ、みんな呼べるみたいだし、そんな怖くはないかな。行けるでしょ、たぶん」

「マスターって、実は怖いもの知らずですよね。リリィの修行の時はサンドバッグ役でしたし」

「それはただ吊られてただけですむしろ殺されかけてる」

「そうでしたっけ。てっきり吊るし切りされる趣味なのかと」

「なにその趣味。変態越えてイカれてるでしょ。吊るし切り専門とか、コア過ぎない?」

「最初から吊るされてましたし、てっきりそういう趣味なのかと……」

「そんなコア過ぎる趣味認定されても……」

 

 オオガミはそう言うと、少し考え、

 

「さて、ハロウィンイベントが平成に置いていかれたとしても、ハロウィン自体は今もわりと普通に巡ってくる……つまり今日がハロウィンなわけだけど、くそぅ、自分でお菓子を渡せない……!」

「むっ。それはつまり、ここに来なければマスターからお菓子が貰えていたということ……? くっ、許しませんよ、マスターを誘拐したイシュタルっぽいの! えっちゃんだったら粉微塵にすること間違いなしです!」

 

 そう叫ぶXと、無念そうな顔をするオオガミなのだった。

 

 

 * * *

 

 

「「「トリック・オア・トリート!」」」

「ふふ。いらっしゃいナーサリー達。当然イタズラはされたくないからマスターが残していったお菓子をあげるわ」

「「「ありがとう!」」」

 

 エウリュアレは仮装をしてきたナーサリー達に一つずつ菓子袋を渡していく。

 まるで市販品のような包装だが、オオガミが丁寧に包装していたのを知っているエウリュアレからすると、やはり無駄に器用という印象しかない。

 ミイラの仮装をしたナーサリー、オオカミ女の仮装をしたジャック。吸血鬼の仮装をしたジャンタ、魔女の仮装をしたバニヤン、異常なまでのクオリティのゾンビの仮装をしたアビゲイル。そして、最後の白い布を被った人物にお菓子を渡しかけて止まる。

 

「……なんでカーマがそっち側なのかしら」

「待ってくださいまだ一言も喋ってないんですが」

 

 動揺して慌てているような声を出すカーマ。何よりも、なぜバレたのかが気になっているのだろう。

 だがエウリュアレは笑顔のまま、

 

「まぁ、マスターは用意しているのだけど。感謝しなさい。あとバラキーを野に放たないで」

「あれ、私が管理してる扱いなんですか? というか、バラキーに関しては勝手に飛び出していったので行方知れずなんですが」

「それはそれで問題なのだけど……まぁ、いいわ。見かけたらここに来るように教えて。じゃ、これね」

「くっ、私だけお使いですか……いやまぁ良いですけど。ありがとうございます」

 

 カーマは受け取り、引き下がると、

 

「エウリュアレさん、ありがとう! また後でね!」

「えぇ、また後で」

 

 そう言って、ナーサリー達は走り去っていくのだった。




 エウステ礼装、白いのがステンノで黒いのがエウリュアレかな~って思ってたら、Twitterで絵師さんがそう言っていて震えました。ついに見分けられるようになってしまった(狂乱


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このためのエミヤさんというわけか(カレーを作るための布石だったんですね)

「エミヤさん、事ある毎に料理セットくれるよね」

「キッチンを使えるとわかった瞬間の喜びように私は引いてるんですが美味しいものが出てくるのでオッケーです」

 

 宇宙旅行も良いけど景色だけで満足できない。ならば料理をするしかなかろうよ。と言ってマアンナ号のキッチンを占領するオオガミ。そのせいで幾度か襲われたが、彼は一切ぶれない。エリchan登場時に思わず飛び出したが、それもまぁ、いつものノリだった。

 

「しかしまぁ、スペース神陰流もバカなものよ。我が家にはセイバー男性絶対殺すウーマンことエウリュアレ様が鎮座しておるというのに、わざわざセイバーで来てくれる優しさ。容赦のない女神の視線が彼らを突き穿つわけですとも」

「本当に容赦ないですよねぇ。というか、女性相手でも普通に通してましたよね? もはやセイバーなら誰でも良いところありません?」

「バッチを着けただけのエセセイバー風情に勝てるエウリュアレ様ではないのだ」

「むしろバッチのせいで悪化している気も。でもまぁ、たまに出てくるランサーが厄介です」

「ふっ……セイバー皆無なこのマアンナ号において、ランサーとか驚異でしかないので。丁重にお帰り願いましょう」

「メインストーリー攻略キャラ縛りはどうかと思うんですが。普通に恐ろしい桁の敵が来てますし」

「大丈夫大丈夫。それでもゼンジョーは越えられたし、行けるって」

「そうですね。でもマスター。猿に食料を奪われたにも関わらずキッチンに立つのやめてもらえません? スゴい心臓に悪いです」

「だいじょーぶ……次の惑星に着くまでの辛抱だから……うんうん。だいじょーぶ……だいじょーぶ……」

「おっと、予想以上に精神ヤバイですよこのマスター。さては外れか。外れですかこのマスター。チェンジですチェンジ! もうちょっと頑丈メンタルなのでお願いします!」

 

 だんだんおかしくなってきたオオガミを見て悲鳴をあげるX。

 だが、何かに気付いたように顔をあげたオオガミは、

 

「師匠……アルトリウムって食べられるのかな……?」

「何言ってるんですかそれも含めて全部盗まれたでしょうが。とりあえず、近くの惑星やコロニーが無いかを探すんです。見つかればご飯も料理もし放題ですよ!」

「よっしゃぁ探すぞコノヤロー!」

 

 言うなりスゴい速度で操縦室に向かっていくオオガミ。

 それを呆然と見送ったXは、

 

「もしかして、目的のために一直線的なそれですか?」

 

 そう呟く。

 その数時間後、彼らはコロニーに着港するのだった。




 現在グリーン・キッチンです。リンゴも攻略サイトも使わないと完走できるか怪しいな……?

 それはそれとしてエウリュアレ無双過ぎて好き。礼装になっただけはある……


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そろそろ乗り込もうかしら(それ行けスペースユニヴァース!)

「……そろそろ乗り込もうかしら」

「それ行けスペースユニヴァース! マスターなら頑張れば探知出来るわ!」

「どこから突っ込めば良いんですかそれ」

 

 カーマと会話をしている最中に、思い立ったかのように言って立ち上がるエウリュアレと、さも当然のように門から飛び出てくるアビゲイル。

 当然置いていかれているカーマは、自作のタピオカミルクティーを飲みつつ、どうすれば良いのか悩んでいた。

 

「カーマも行くかしら」

「ん~……そうですねぇ。まぁ、気が向いたら後から行きますよ。行く手段はありますし。というか、気軽に世界線越えるのはどうかと思うんですけど」

「知らないわよ。連れていかれたマスターを引きずり戻すのに向こうに配慮しなくちゃ行けないなんて馬鹿馬鹿しいじゃない。私のモノを取り返すのに許可が必要?」

「……なんとなく感じてましたけど、貴女って、結構独占欲強いですよね。気持ちは分かりますけど」

「……それは、初めて言われたかもしれないわ」

 

 純粋に、驚いたような顔をするエウリュアレ。

 カーマは一瞬、何を言っているのか分からないとばかりに首をかしげ、理解してもやはり不思議そうに首をかしげる。

 

「え、待ってください。本当に初めて言われたんです? わりと分かりやすいと思うんですが」

「誰も言わなかったけど。そう思われてたのかしら……あ、でも、確かにそんな感じの発言をしたような気もするわね……」

「自覚の方はあるのに指摘されないってことは、どれだけ恐れられてるんですか……」

「恐れられては……うん。いるかもしれないわ。ちょっと自覚はあるの」

「そうですか……まぁ、主に対象はマスターでしょうし、関係無いんですが。大変ですねぇマスターも。四方八方から狙われてるとか、見てて面白いのでもっとやってほしいです。自分から災厄を振り撒いているのが特に良いです」

 

 そう言ってニヤリと笑うカーマに、エウリュアレは苦笑しつつ、

 

「貴女も大概よね」

「お互い様ってことですね」

 

 そう言って笑う二人。

 そんな二人に、今まで静かにしていたアビゲイルは、

 

「マスターの電波(けはい)を受信したわ! レッツゴー宇宙の彼方へ!」

「……あっちはあっちで何か拗らせてそうですね」

「その辺をどうにかするのもアイツの課題よ」

 

 元気いっぱいなアビゲイルを見て、やれやれといった感じのカーマと、楽しそうなエウリュアレ。

 

「それで、来ないの?」

「えぇ。言った通り、後から行きますよ。それじゃあまた後で」

「そう。じゃあまた後でね」

 

 そう言って、エウリュアレはアビゲイルの開いた門に飛び込むのだった。




 エウリュアレの独占欲? (この作品において)何を今さら。

 アビーちゃん最近出番無かったからおかしくなっちゃった……一体誰がこんなことを……

 ところで、バラキーと一緒にいないカーマを新鮮に感じるのはもう末期ですかね?


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マスターが誘拐されたらしいぞ(マジですかふざけんなですよ)

「のぅBB」

「あ、お帰りなさいノッブ。ちゃんと頼んだのはゲット出来ました?」

「おぅ。それは当然じゃ」

 

 バスターTシャツに短パンというラフな格好をしているノッブは、片手に持っていた小さいビニール袋から取り出したものをBBに投げ付ける。

 あからさまに寝起きですと主張している顔をしているBBは、ヨレヨレの服を直すことなく投げられたそれをキャッチすると、

 

「投げたってそう簡単に壊れないからって、気軽に投げられても困るんですけど……掴み損ねたらぐちゃってなってましたよ?」

「いや、儂アーチャーだし。投げミスとかせんからな?」

「霊基がバーサーカーなんですがそれは」

「いやまぁそれは誤差じゃろ誤差。ちゃんと正確に投げたしノーカン」

 

 口笛を鳴らしつつ目を逸らすノッブ。

 BBは寝不足なのかいつもより三割増しで鋭くなった目で睨むも、すぐに諦めたようにため息を吐き、

 

「それで? 何か言いたげでしたけど、何かあったんですか?」

「あ。そうそうそれなんじゃけどな?」

 

 椅子と机を適当に引っ張り出して座るノッブと、その正面に自分の椅子を持ってきて座るBB。

 彼女はノッブから渡されたモノ――――包装されたドーナツの袋を開けつつ、話を聞く。

 

「マスターが真っ黒イシュタルに誘拐されたらしい」

「マジですかふざけんなですよ」

 

 一息で文句を言い、ドーナツを食べるBB。

 心底嫌そうな顔をしているので、その怒りは見て伝わる。

 

「今時、うちの残念マスターさらって得する人なんかいます? 人理最後のマスターとしての箔が先行してますけど、中身ポンコツですよ? 私が容赦なく殴って良いと思うレベルで」

「一周回ってそれはもう信頼じゃろ。つか、それだけ言うのに秒速でタブレット取り出した辺り今もう探し始めてるじゃろ」

「はぁ? 当然じゃないですか。マスターを弄って良いのは限られてますし、何より私が今の今まで気付いてなかったって言うのが一番嫌なんですよ。さっさとマスター見つけて引きずり戻すんですよ」

「おぅおぅ。当然儂は専門外なんでぶん投げるぞ。アビゲイルはもう探し始めてるらしいし、エウリュアレもすぐに来るじゃろ。ほれ急げー」

「全部ぶん投げないでください。ぶん投げるならご飯とかお願いします」

「面倒じゃな~……まぁBBは徹夜で何か作ってたみたいじゃし、仕方あるまい。やってやるか~」

「流石ノッブ。任せましたよ」

「うむ。正直寝ろよと思わなくもないがそれは置いておこう。んじゃ、なんか食えるもんを持ってくるか」

「えぇ、ここで待ってますよ」

 

 そう言って、ノッブにBBは手を振るのだった。




 秒速悪口BBちゃん。ところで徹夜で何を作ってたんですかねBBさん。ちょっと工房を見させて――――


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やはり女神経典必須か……(サボったのが裏目に出ましたね)

「女神経典やっぱり必要だったか……」

「いやぁ、集めておかなかったのはミスでしたね~……必要な気はしてましたけど」

 

 各地を飛び回ってアルトリウムを集めながら進むマアンナ号。

 なんとなく感じていた必要なものをあえてスルーしながら進んできたツケが巡り巡ってここに来たということだろう。

 

「しかしまぁ、賞金首から奪わなくちゃ行けないとか、中々骨が折れるなぁ……」

「まぁ、サボったのは私たちですし。遠慮なく賞金首を狩りましょう。報酬は美味しいですし」

「うんうん。何より、早く狩り尽くしてユニヴァースを平和にしないとエウリュアレ達に殺される」

「なんですかそれ……って、顔真っ青なんですが! マジなんですか! それ余波で私まで狩られたりしませんよね!?」

「一緒にいた罪で拘束される可能性があったりなかったりします」

「物騒すぎますねそっち! とっても理不尽!」

 

 拘束されるだけならマシだと思うよ。という言葉を飲み込み、笑顔で返す。

 Xはそれを見て青い顔になるが、何を想像したのかは彼女のみぞ知るところだ。

 

「さて、ミッションも徐々に消化しつつ、残るのも少なくなってきましたがXさん。正直そろそろ上下左右の感覚が崩壊しているのが怖くなってきたんですが」

「あ~……宇宙酔いですかねぇ……数行で治る顔色が未だに青いですし」

「なんかメタ的発言に聞こえますねXさん」

「まぁメタ的発言ですし。ただ生憎千里眼は持ってないのでこの後いつエウリュアレさん達が来るかは全く分かんないです。でも身の危険だけは感じるのでそのうち感動的別れで自主退場しますね」

「逃がさんぞX」

「カレーは美味しかったですよマスターくん。ではネクストシーズンで会いましょう」

 

 そう言って逃げ出そうとするXのマフラーを掴んで逃がさないオオガミ。

 勢い良く捕まれたせいで引っ張られたXは突っ張ったマフラーによってそのまま倒される。

 

「いったた……というか、そんな顔を青くして良く普通に動けますね……」

「ふっ……残念だったねX。これでも性能30%減なのだよ……」

「嘘ですよね!? それで!? おかしくないですか!?」

「いやだってほら、いつもより体が軽かったり重かったりするからこう、結構酔いポイント高くてですね……」

「あ、本当に酔ってますね? 宇宙酔い止め薬をあげましょう。マアンナ号にも重力はあるのでお水を飲んで喉を通らず窒息死なんて言うのは無いので安心して飲んでくださいね」

「一気に不安にさせるねX師匠」

「まぁ窒息しかけたら何とかしますので。銀河流星剣で行けそう?」

「絶対無理なのでやめて」

 

 言いながら、Xから渡された水と薬を飲むオオガミ。

 それで一息ついてサブ席に座ると、

 

「まぁ、うん。ありがとうX」

「いえいえ、死なれたら困りますし。私の命が。物理的に」

「あははは。大丈夫。霊基崩壊しても殴られ続けるだけだよたぶん」

「再召喚されて殴られ続ける予感。本気で危機では? 主に精神的な!」

 

 そう言うXに、オオガミは笑いながら答えるのだった。




 サボったのが裏目に出ましたね(キリッ(ドヤッ

 裏目も何も必要だと示唆されてたのに分かった上でガン無視したヤツがいるらしいですよ。マジですか。原始宇宙に還るべきでは?(消滅する音

 さて。Xさんにはノッブに続くメタ枠として頑張ってもらわねばならない……


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よし紅ちゃんのところに寄ろう(嫌な予感がするんですが)

「ふぅ……休憩! 紅ちゃんのところに行こう」

「えぇ……出来れば行きたくないんですけど……まぁ仕方無いですね。寄りましょうか」

 

 そう言って、グリーン・キッチンに進路を取るマアンナ号。

 食料もぼちぼち無くなるというところだったので全く無意味というわけではない。

 そういった言い訳をするオオガミを横目にXは前方を見て、

 

「……なんですかあれ。スッゴい嫌な予感がするんですが」

「えぇ? ……あ~、急速旋回したいなぁ……」

 

 どこかで見たような巨大人型艦に、嫌な顔をするオオガミ。

 しかし次の瞬間嫌な予感を感じ振り向くと、

 

「私参上! 迎えに来たわよマスター!」

「ハッ! 指名手配書の!」

「なるほど偽物か!」

「酷い!?」

 

 瞬間的に戦闘準備を整える二人に涙目になるアビゲイル。すると、開いていた門から飛んできた矢が的確にXの剣を弾く。

 あまりの状況に困惑する三人だったが、すぐに門から犯人は出てくる。

 

「全く、私の妹分に剣を向けるなんて良い度胸ね。射抜くわよ?」

「流石エウリュアレさん! ありがとう!」

 

 そう言ってエウリュアレを褒め称えるアビゲイル。

 更に困惑するXの隣で、オオガミは既に正座をしていた。

 

「あら、私を見るなり正座なんて、一体何をしたのかしら。聞かせてちょうだい?」

「いやぁははは……宇宙旅行がちょっと楽しかったなぁって。いやまぁ、現在も女神経典探して奔走しているんですけども」

「ふぅん? そう。じゃあこれから私たちもアレで追い掛けるから」

「……やっぱりアレかぁ……」

 

 エウリュアレが指差すソレは、例の巨大人型艦――――巨大メカノッブだった。

 当然そんなものを作る人員は限られていて、

 

「……とりあえずグリーン・キッチンに寄ろう」

「なんかもう疲れたんですが。着いたら一回休みます……」

 

 そう言って、グリーン・キッチンへ向かう。

 

 

 * * *

 

 

「おぅマスター。ようやく来たか!」

「遅かったですね? 結構待たされたんですが」

「ほらやっぱりこの二人だよ」

 

 元気に獣狩りをして食料調達をしている逞しい二人。少し離れたところではカーマとバラキーが並んで座っていた。

 

「で、何しに来たの?」

「うん? そりゃ、BBがマスターを見つけたからと言って飛び出して、着いていったら良くわからんコロニーで、エウリュアレとアビゲイルもさ迷ってるからとりあえずBBと一緒に工房から荷物を引っ張り出して宇宙戦艦メカノッブを建造してマスター探しに行く直前だったわけじゃ」

「あ~……なるほどそういうこと。いや怖いわ。平然と建造しないで」

「出来ないわけじゃないなら問題ない。それが我ら工房組ですよセンパイ?」

「無敵かこいつら」

 

 そう言うオオガミに、ノッブとBBは笑顔で答えるのだった。




 攻略終わったら合流させようかと思ったけど無理でした。これ以上引き伸ばせねぇよぅ……


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銀河レベルの敵とかヤバイな!?(完全に見てるだけでしたね~)

「うわははは! ついに地球越えて銀河レベルの敵とか、もう儂らに無理な範囲じゃね!?」

「いやまぁ、だから見守ってただけなんですけどね?」

「え、マジで遊びに来ただけですかこれ。帰りますよ?」

 

 崩壊した古代神殿の欠片を然り気無く回収するメカノッブ号。

 それを見て見ぬふりをしつつ、カーマは無重力によって目を回しているバラキーを揺さぶる。

 

「う、うおぉぉ……よ、酔う……死んでしまう……」

「吐かないでください気合いで抑え込んで。でないと窒息しますよそれと、なんか大団円で面白そうなところは見逃したっぽいので帰りますよ」

「あ、帰れるのか……? すぐ帰る。気持ち悪いからな。うむ。無重力とか無理。来年リベンジする……」

「その理論で遊園地も越えられなかったじゃないですか諦めてください」

「それを言われると反論できない……ぬおぉ……弱点があってたまるかぁ……!」

「そんな弱々しい雰囲気でなに言ってもダメですから。さ、帰りますよ」

 

 そう言って、バラキーを引っ張っていくカーマ。

 このメカノッブ内にはカルデア直通の一方通行ワープゲートをBBとノッブが作ってあるので、帰るだけなら自由なのだった。

 

「っていうか、現状戦闘参加してるのって、エウリュアレとアビゲイルさんだけじゃないです? 更に言えば、今留守番しているはずのメルトがMVPでは?」

「まぁほら、儂らはギャグ要員だし。儂とか、マジで出る幕無いし。アーチャーモードどころかバーサーカーですら呼ばれんぞ。BBの方が戦闘出てない?」

「まぁ最強系後輩は伊達じゃないので。NP50%回収はドデカいんです」

「やっぱ宝具回転か! 儂も欲しいなぁNPチャージ!」

 

 そう言ってぶーぶーとブーイングするノッブ。

 だがBBは勝ち誇った顔をして、

 

「まぁ? NPチャージがあっても私の勝ちでしょうけどね。BBちゃんが負けるはず無いですし」

「あ~……そうじゃなぁ……欠点ほぼ皆無は強いからなぁ……儂には無理。後は任せたぞBB」

「いやそこで本当に諦められてもなんか悔しいんですが?」

 

 そう言って、今度はBBが不満そうに頬を膨らませる。

 ノッブはそれを見るまでもなく疲れたようにため息を吐き、

 

「BBって、負けず嫌いな上に面倒な性格なんじゃけど……まぁ良い。久し振りに殺り合うか!」

「よぅし良いですよ全力で殴り倒します!」

 

 火縄銃を担ぐノッブと、注射器を構えるBB。

 離れたところで我関せずとばかりにアビゲイルを膝枕させていたエウリュアレは、面倒そうに矢を射つのだった。




 女神経典を集め、とりあえず女神を蹴倒し真の強敵を見てしまったのでとりあえず今日は終了。またアルトリウムを集めなきゃなんですね……


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宇宙旅行はどうだったの?(死にかけても楽しかったので問題なし!)

「で、どうだったの? 宇宙旅行」

「何回か死にかけたけど楽しかったよ」

 

 バターケーキを切り分けながら、カウンターで待つラムダに話すオオガミ。

 エウリュアレは既に席を取って待っているので、席が取られることはないと思いながら、おやつの準備をする。

 

「それにしても、本当に厨房に馴染んでるわよね。貴方」

「まぁ、なんだかんだ結構作ってるし。料理の師匠はいっぱいいるしね。その分上達も早いというわけです」

「そう。じゃあ今日もその腕を存分に振るったそのケーキ、食べさせてもらいましょうか」

「もちろん。じゃ、ちゃんと席に座ってよ」

「言われずとも。当然私の隣に座りなさいよ」

 

 そう言って、楽しそうに笑いながらオオガミと一緒に席に向かうラムダ。

 ふと、自分と同じか少し小さいくらいのラムダに、最近メルトの状態で会うことが少ないなと感じるオオガミ。

 ただ、ラムダに限って特に意味がないと言うことはないだろうと思い、特に指摘はしない。

 そんなこんなで、オオガミの正面にエウリュアレ。隣にラムダが来るように座る。

 そして、エウリュアレが開口一番、

 

「スゴい甘い匂いね」

「バビロニアの時のやつだけど、これは普通に激重カロリー爆弾なのでサーヴァント以外にオススメしません。製作過程のアレを見たらオススメ出来ないって」

「い、一体何を見たのよ……」

 

 とりあえずとばかりに一人一切れ、取り皿に乗せるオオガミ。

 切り分けられたそのケーキ、エウリュアレは目を輝かせながら、フォークを容赦なく突き立てる。

 ごくりっ。と喉の鳴る音が響き、沈黙が場を支配する。

 そぅっと持ち上げられたバターケーキは、脳を蕩けさせるほどの甘い匂いを放ち、濃厚なバターを感じさせる。

 そして、それはエウリュアレの口の中へと導かれ――――

 

「……ん~~っ! 美味しいわ!」

「よし! 完璧!」

「ちょ、私にも食べさせなさいよ!」

 

 いつも以上に美味しそうな顔をするエウリュアレ。

 それを見たラムダは、私もとばかりにオオガミを急かしつつ口を開けてくる。

 オオガミはそんなラムダの口にバターケーキを運び、食べさせる。

 直後、ラムダの目は輝き、

 

「とっても甘いわね!」

 

 そう言って、柔らかい笑みを浮かべるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「そう言えば、ノッブ達は?」

「『蒼輝銀河面白そうだから探索してくる』と言って今も宇宙をさ迷ってるわ」

「……そのうち向こうのノッブと合流してぐだぐだフィールド展開しそうだね?」

 

 どこへ行ったのかと疑問ではあったが、未だに向こうにいるようなので、ある意味安心したオオガミ。

 まだ終わっていないことがあるので戻る予定があるオオガミとしては、そちらの方がありがたかった。

 

「まぁ、アビーがいれば向こうに行けるか」

「次は私も一緒に行こうかしら」

「何言ってるの。ちゃんとアビー含めた四人で行くに決まってるでしょ」

「う~んついてくるのは確定なんだね。分かるとも」

 

 そう言って、オオガミはバターケーキのお供に淹れた紅茶を飲むのだった。




 バターケーキ美味しそうですよねぇ……ココスかぁ……う~ん……

 あ、まだアルトリウム不足でダーク・ラウンズには挑めてないですとも。ぐむむ。アルトン星を滅ぼす勢いで回らねば。


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ダーク・ラウンズ許すまじ(令呪三画とか珍しいわよね)

「もう無理寝るわ……」

「今回のイベント、令呪三画を二回も使ったのね。まぁ、最初の一回はみていないのだけども」

 

 帰ってくるなりベッドに倒れ伏すオオガミ。

 その手にあったはずの令呪は霞んでおり、使われたのだろうという形跡だけだった。

 それを確認したエウリュアレは少し考え、

 

「……ふむ。今なら令呪が無いからやりたい放題……?」

「今とんでもなく嫌な予感がした」

 

 顔だけ起こしてエウリュアレを見るオオガミ。

 しかし、見られているエウリュアレは、むしろ楽しそうに笑い、

 

「一切制止がないならイタズラしたい放題ね。サーヴァントの筋力に勝てると思わないでよ……!!」

「ぬおおぉぉぉ……!! 意地でもやらせはせぬぞエウリュアレえぇぇ!!」

 

 そう言って、取っ組み合いを始める二人。

 エウリュアレの両手に持っているペンだけが、イタズラへの熱意を物語る。

 そんな混沌とした状況の中、部屋の扉が開き、

 

「いやぁ大量じゃったな! また行きたいなぁ蒼輝銀河!」

「大収穫でしたもんね……え? 何やってるんですか二人とも」

「「加勢して!」」

 

 有無を言わさぬ加勢要請。二人は顔を見合わし、再度二人の様子を見ると、

 

「よっしゃエウリュアレに加勢じゃ!」

「センパイを拘束すれば勝ちですね!」

 

 即座にオオガミを取り押さえにかかるノッブとBB。

 裏切られたとばかりの表情をするオオガミは、しかし瞬く間に両腕を拘束され、

 

「ハロウィンの日にお菓子を貰えなかった恨み、ここで晴らしましょう……!」

「それは理不尽ってやつじゃないですかね……!!」

 

 オオガミはそう言って、やがて静かになるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「……似合いすぎて気持ち悪いですねこれ」

「ん~……とりあえず撮っておくか」

「現像したら私に一枚寄越しなさいよ」

「好き勝手言いますね三人とも」

 

 気付くと、女性用の制服を着させられていたオオガミ。

 最初に姿見で見せられたときは困惑していたものの、すぐにポーズを取り始めている辺り、楽しんでいるのではなかろうか。

 

「それで? ノッブ達は何しに来たの?」

「あ、そのまま話を進めるんじゃな」

「絶対気にいってますよアレ。元気すぎません?」

「面白いからどんどん撮りましょ」

「話を聞けぃ話をぉ」

 

 全スルーして三人だけで話すのを見て、思わずツッコミを入れるオオガミ。

 すると、ノッブは面倒そうに、

 

「別に、お主の女装より価値はないから気にせんで良いぞ。後メカノッブ号はグリーン・キッチンに置いてきた。資材は運び込んだがな」

「何してんだコイツ!?」

 

 平然と置いてきたらしい。でも資材は持ってきている辺り、流石と言ったところか。

 オオガミはヒラヒラと揺れるスカートを気にしつつ、

 

「で、何を作る予定なの?」

「えぇいうるさい! 黙って被写体になれマスター! 話はその後じゃ!」

「突然の暴走! でも後でなら聞いてくれるんですねいくらでも撮れよオラァ!」

 

 熱意が暴走しつつある三人に、オオガミは涙目で応えるのだった。




 アレはヤバイ。超高難易度伊達じゃないですね。令呪使わされましたよ。
 人なら北斎ちゃん。やはり大物絵師は強いのだ……


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セイバー狩りの時間です!(おっ、やる気~?)

「そこのセイバー覚悟ぉ!!」

「え? うわぁっ!?」

 

 シミュレーションルームで適当に呼び出した相手と戦っていた武蔵は、威勢のいい声と共に突撃してきたXの剣戟を反射的に防ぐ。

 防がれた事ですぐさま距離を取ったXは、

 

「くっ、渾身の不意打ちだったのに……防ぐとは運の良いセイバーですね」

「いや、運がいいも何も、あんなに声を上げて斬りかかってきたら防ぐでしょ……でもまぁ、貴女ならいい相手になりそうね?」

「その余裕、いつまで続きますかね……行きますよ!」

「どんと来い!」

 

 飛びかかってくるXに、武蔵は構えるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「で、負けたと」

「支援砲撃がガードされて宝具によってあえなく撃沈……瞬殺されました。向こうはなんか満足してましたけど……」

「まぁ、単騎なら宝具の回転速度恐ろしいからね、武蔵ちゃん」

 

 ボロボロのXは、食堂でオオガミに絡んでいた。

 なお、近くにいるエウリュアレとメルトは不満そうな顔をしていた。

 

「それで? 勝算はありそうなの?」

「もう一人くらい居れば行けそうなんですけどねぇ……でもまぁ、セイバー狩りは私の個人的な趣味が大きいのであんまり人と一緒にやるのはなぁというのがありまして。難しい所ですよ」

 

 そう言って、机の上に置いてあるパウンドケーキを食べるX。

 一瞬エウリュアレとメルトから殺気が飛び出たような気がするが、Xは気付く様子も無くモグモグと食べていた。

 

「ところで、三人は一緒にいるのをよく見るんですけど、ノッブってどこにいるんです? 全く見ないんですけど」

「あ~……最近は工房にずっとこもりっぱなし?」

「私に聞かれても困るけど、蒼輝銀河で新素材を手に入れたから珍しく工房を真面目に稼働させるって言いってたわよ」

「マジですか不安しかねぇ」

「なんですか工房って……?」

 

 一人話についていけていないX。

 オオガミはそれを見て、

 

「ん~……まぁ、簡単に言えばあんな感じのを作ってる」

「あんな感じ……って、あの小さいノッブですか? サーヴァントっぽさを感じないからノッブではないだろうなとは思ってたんですけど、まさか作ったものだったなんて……驚きですね。器用だったのか……」

「ここでは器用よ。えぇ、とっても。ちょっと迷惑なくらいに」

「大分とんでもないものを作ってたって聞いたけどね。真相は知らないけど」

「あの時期は試作品とか、どれくらい作れるのかみたいな時期だったからね……ウサギロボット事件はちょっとトラウマ」

「あぁ、あの事件……まぁ、楽しかったわ。笑っちゃうくらい本気で焦っててね?」

「ちょっと聞きたいわねそれ」

「ふむ……これはちょっとノッブに会う必要が出てきたかもしれませんね……」

 

 Xはそう言って、エウリュアレの話を聞きながら考えるのだった。




 武蔵ちゃんに勝てると思うなよぉ!(無敵・無敵貫通・超高速NP回転

 ウサギロボット事件……未だに記憶に残ってるあの事件……BBが来る前のいにしえの事件ですね……

 セイバーウォーズの交換アイテムが集まらず私は静かに泣いております。ちくせぅ……


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何か悩み事かしら?(カーマが目的を見失っていそう)

「あら、何か悩んでるようだけどどうしたの?」

「む。シトナイか……」

 

 食堂にて、何かを悩んでいるバラキーに声をかけるシトナイ。

 珍しく一人だなぁと思いつつ聞いてみると、

 

「カーマがまた菓子を作ると息巻いていてな……最近なんだか目的を見失っている気がして……まぁ旨いので止める気はないのだが」

「ふぅん……害がないならいいんじゃない?」

「う~む……邪神的にアリなのか……?」

「誰が邪神ですか焼きますよ?」

「うおぉぉ!? 鉄板はダメだろぉ!?」

 

 ジュウウゥゥ……と焼けるような音が響いてくる、鉄板を乗せられたバラキーの腕。

 それだけでその鉄板が熱せられていることが分かるが、それをやっているカーマがいい笑顔なのがまた恐ろしさを際立たせる。

 更にシトナイは、バラキーの悲鳴を総スルーし、鉄板の――――少し特殊な形状をした鉄板を見て、

 

「マドレーヌ?」

「えぇ、今回は焼き菓子です。挑戦してみたら意外と大変で。美味しい焼き菓子って難しいですね」

「そう? 十分美味しそうだけど」

「これ、試作3回目くらいですし。厨房組から隠れて作るのもそろそろ限界を感じますよ」

「なんで隠れる必要が……? 普通に作ればいいじゃない」

「……まぁまぁ。お一つどうぞ?」

「なんか不安なのだけど……まぁ良いわ。美味しそうだし」

 

 そう言って、焼きたてのマドレーヌをもらって食べるシトナイ。

 熱いからとチマチマ食べつつ、満足そうに微笑む。

 

「うん。美味しいわ。でもなんで厨房組から隠れないとなの?」

「まぁ、いわゆる『かろりーばくだん』らしく、サーヴァントでも太るらしい。それを何個も食べて倒れているのが何人かいた」

「……へぇ」

 

 一瞬でハイライトが消えるシトナイ。

 カーマはそれを見てにっこりと笑うと、

 

「大丈夫です。食べ過ぎ注意、ほどほど重視で制限をつければいくらでも食べられますとも。まぁ、気にしないで食べて、運動すれば良いって考えもアリですけどね?」

「……運動すればいいのね……じゃあ、ちょっと女神でも狩ろうかしら。えぇ。対乙女特効兵器を作る悪い邪神を」

「おっとピンポイントですね? 全力で抵抗しますよ?」

 

 そう言って、即座に武装を展開する二人。

 バラキーはそれを見ながら、

 

「とりあえず、吾の腕の上から鉄板を退かしてくれないかなぁ、と思うのだが」

 

 そう呟くバラキーの声は、既に周りが目に入っていない二人には届かず、

 

「うん。久しぶりに仕事かな?」

 

 随分と久しぶりなエルキドゥが、鎖を構えつつ鉄板を持ち上げるのだった。




 本気でネタ切れを起こした者の末路。でも日は跨いでない。ギリギリセーフ……

 エルキドゥが久しぶりすぎて、誰?な状態……

 ところで、アンケートがスゴいことになってません? エウリュアレが玉虫色の回答に勝ちそうなんですが。良いぞぅ、もっとエウリュアレ教増えろ!


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帰ってきたわよ子イヌぅ!(世界線を越えて漂流してきたの?)

「こ、子イヌぅ! 宇宙船が大破して漂流したその先で怪獣になってて会った人全員に古代ハロウィン文明を破壊したとか言われたんですけどぉ~!」

「ごふっ! せ、世界線越えてない? どんな漂流したのさ」

 

 レクリエーションルームで遊んでいたオオガミの背中に飛び掛かるように抱きついて言うエリザベートに、オオガミは困ったように聞く。

 

「えっと……まずメチャクチャドデカい隕石にぶつかってね?」

「もうその時点で大分カオスだね?」

「うん。でもその時はまだちびノブが修理してくれたんだけど、とりあえず一回惑星に降りようって提案されて着陸したらなんかアメリカっぽいところでね?」

「う~ん漂うテキサス・ビヨンド感」

「それで、変なバッチを着けたサーヴァントっぽいチンピラセイバーに襲われたから、宇宙船が修理終わるまで守って、ようやく脱出したところでバカデカイサーヴァントに当たって、どこかの惑星に不時着して気付いたら彗星になってたわ……」

「古代ハロウィン文明を滅ぼしたキングエリchanだったか貴様……!」

 

 そう言うと、全力で首を振るエリザベート。

 地味に角がぶつかっているのだが、全く気にしている様子がない辺り、必死のようだった。

 

「それで、どうやって帰ってきたの? 令呪使ってないけど」

「えっと、彗星になってたとき、誰かに破壊されてからまた飛ばされてたんだけど、グリーン・キッチンってところに拾われて、そこにあった、あの人形っぽい宇宙船の中のワープ装置帰ってきたわ。アレがなかったらきっと帰ってこられなかったわね……」

「……置いてきたのは無意味じゃなかったかぁ」

 

 どうやら帰ってこれた要因はノッブたちらしいので、後で何か持っていくかと考えるオオガミ。

 すると、エリザベートは、

 

「……子イヌ。今日はこのままでしばらくいていいかしら……」

「別に構わないけど、背中に張り付いてるので良いの?」

「うん……横と前はエウリュアレとメルトに殺されちゃうから……」

「えっ、なにそれ。そんな暗黙の了解が?」

「わりと前から。知らなかったの?」

「知らないよ……って言うか、それならX師匠死ぬのでは?」

「Xって言うのが誰かは分からないけど、さっきエルキドゥに逆さ吊りにされてたのがいたわよ。『セイバーぶっ殺ぉーす!』って叫んでるのが」

「……平常運転だけど、誰に挑んで返り討ちにあったんだろう……」

 

 とはいえ、想像した展開とは違うようなので、オオガミはひと安心するのだった。




 エリちゃん漂流記~新曲目指してn光年~

 真面目に今回ハロウィン置いてきてましたね。ジョークじゃなかったよ……かわいそうなエリちゃん……


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明日が最終日だと……?(当然交換は終わってるんでしょ?)

「ハッ……明日最終日……?」

「えぇもちろん。当然交換は終わってるわよね。いつも通り」

 

 若干顔の青いオオガミに、小さなカップケーキを片手ににっこりと微笑むエウリュアレ。

 蒼輝銀河から帰ってきて以降、高頻度でオオガミがお菓子を作るようになったので少しご機嫌なエウリュアレだったが、今の微笑みはどこか不穏な気配を感じる。

 

「い、いやぁ、ははは……サボりサボって今ここです」

「……私がいなくても大丈夫だと思ったんだけど?」

「やる気の減衰は厳しいよ。何よりもリンゴがないから回るに回れないんだよね」

「ふぅん……なら仕方ないわね。クリスマス用に控えているのを引きずり出せとは言えないもの」

「この理解力。エウリュアレ様、察しが良くなりすぎでは?」

「そりゃ三年近く一緒にいればそんなものでしょ。古参は大体出来るんじゃない?」

「う~ん……古参へのハードルが高くなってません? エウリュアレはわりとハイスペックだよ?」

 

 オオガミにそう言われ、エウリュアレはチマチマとカップケーキを食べつつ、

 

「……貴方がそういう風に望んだからそういう風になったのよ。カミサマってのはわりとそういうところがあるんだから」

「汝神であれかし。なんて、不思議な話だよね。ギリシアは神故に神なのだって思考じゃなかったっけ」

「そこはほら、貴方が日本人だから、多少はそういうところがあるわよ。そもそも英霊召喚システムは日本人が作ったとか、そんな話を聞いたけど」

「そうなの? そこら辺は全く詳しくないけど」

 

 食べかけのカップケーキを置いて、紅茶を一口飲むエウリュアレ。

 それとは対照にカップケーキを一口で食べたオオガミは、

 

「まぁ、日本人に構築されたって言っても、神道がメインじゃなくてむしろ中国の風水じゃない? 地脈とか」

「どうなのかしらね。でも、いつの世も、伝承が全てよ。皆が想い、願ったのが私たち。でしょ?」

「ん~……哲学。正直カルデアに来てから学んでるのであんまりわかんないや。でもまぁ、エウリュアレが強いのはわかった」

「えぇ。それだけわかっていれば満点。でも武力には弱いので気を付けてね」

「あれ。武力的強さだと思ってたんだけどまさか精神的な意味で取られた?」

「……私、非力で守られる少女の象徴なのだけど」

「むしろ無敵女神では?」

「……非力って何かしらねぇ……」

 

 概念的な何かじゃない? と適当に答えるオオガミの脛を爪先で蹴り、怒った顔のままカップケーキを一口で食べるのだった。




 終わっているわけもなく。クリスマス用にリンゴを確保するのは無理なのではないかと薄々感じている私。
 まぁやれるだけはやるんですけどね。

 最近復活してきた飯テロ欲。お菓子を被らせないようにと思ってましたけど、流石にボキャブラリー足りず断念。無理なものは素直に諦めるべき……


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日常
これがサボりのツケですか(交換は終わったみたいね)


「ぐはっ、めっちゃ疲れた」

「お疲れ様。交換は終わったみたいね」

「全く。こんなギリギリになるなんてダメじゃない。次からはもっと余裕をもって行動しなさい。そして一番の功労者の私を労いなむぐっ」

 

 最後まで言わせるものかとばかりにスイートポテトをラムダの口の中に投げ込むオオガミ。

 そのままラムダの手を引いて膝の上に乗せると、

 

「とりあえず、宇宙にはしばらく行かないはず。イベントが始まったら分かんないけど」

「宇宙に飛び出なくても世界を飛び回るんだから変わんないわよ。むしろ地上から離れた今回は面白かったわ」

「おや、意外と人気……? う~ん、これは惑星間旅行を組み込むのもありかもしれない。幸いX師匠がいるし行けなくはないのでは」

「……貴方が言うと本気でやりそうなのだけど。でもその時皆で行きましょう。そっちの方が楽しいだろうし」

「まぁうん。そのつもりだけどね」

 

 そう言って、なんとかスイートポテトを食べ終わり文句を言おうと口を開けたラムダの口の中に再びスイートポテトを突っ込み、

 

「安全が確保されるまでは中々行けないよね」

「まぁ、特異点関連でもなく遊びに行くわけだしね。当然と言えば当然よね」

 

 そう言って、エウリュアレもスイートポテトを一つ取って食べる。

 オオガミはといえば、先程から一切ラムダに喋らせまいとスイートポテトを構え、ついにラムダの肘鉄という制裁を受ける。

 

「んんっ。ったく、美味しかったから許すけど、次やったら埋めるわ。蹴って」

「蹴って埋められるくらいに硬いと思われてるのはなぜ……? か弱い一般人だから死んじゃいますが……?」

「……か弱いの定義が壊れるのだけど」

「いやだってエウリュアレがか弱いなら十分俺もか弱いでしょ」

「……まぁ、そう言われたら確かに」

「なんでか弱いのに喧嘩を売っていくのかしら。バカなの?」

 

 怒ったように頬を膨らませるラムダをオオガミがなだめていると、エウリュアレはふと、

 

「そういえば、最近ずっとメルトと一緒よね」

「ん。まぁ、確かにね。周回パワー強いので重宝してますとも」

「その重宝している相手の口にひたすらスイートポテトを突っ込み続けたバカは誰かしら」

「さぁ……ちょっと分かんないなぁ……」

「適当になだめておけば静かになると思わないでよ」

 

 ゲシゲシと足を蹴ってくるラムダ。

 容赦ない蹴りにおお段々と涙目になるも、ラムダが落ちないように支えているのを見て、エウリュアレは何とも言えない笑みを浮かべるのだった。




 はてさて星4配布。誰を交換しようかなぁ……戦力がわりと揃っていることに気づいたので趣味降り……ゴルゴーンかゲーマーインフェルノですねぇ……

 あ、モニュメントとピース以外は回収したので満足です。やったぁ。


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なんで私はお菓子を作ってるんでしょう(汝が作りたかったのでは?)

「ねぇバラキー? 今さらだけど、どうして私は貴女にお菓子を作ってるんです?」

「それを菓子とするかは議論の余地があるが、(なれ)が作りたいと言ったからなのだが……まぁ、目的はイタズラだろうなぁ……この前シトナイにひたすら殴られたのに懲りずに作ってるし」

 

 そう言って、皿に乗せられた焼きたてのアップルパイに手を伸ばすバラキー。

 すると、カーマは皿ごとひょい、と取り上げると、

 

「なんですか。要らないならそう言ってください。ちょっと配り歩いてきます」

「うおぉぉ!? そ、そうではないが!? 要らないとは一言も言っていないが!?」

 

 立ち上がろうとするカーマを必死に止めつつ、なんとかアップルパイを奪えないかと手を伸ばすバラキー。

 だがカーマは肉体を変化させながらかわすため、バラキーは触れることすら叶わない。

 

「ふふん。これですっかりバラキーも私の虜ですね。やはり胃袋を掴めば勝ちというわけです。全生物共通の弱点ですからね。神も悪魔も鬼も人も変わりませんよ」

「なんだかバカにされている気もするが一つも否定できない!」

「えぇ。ですから、ほら。私から逃げられないくらいに堕落してくださいね?」

「ふぅん。まぁ60点くらいかしら。まだマスターのナシタルトの方が美味しいわ」

「こっちも十分美味しいと思うのだけど。お料理教室に行ってないのにこんなに美味しいのよ?」

「え? あ、きゃぁ!」

 

 少し離れたところで聞こえた声に困惑するカーマ。

 その一瞬の隙を突いて飛び掛かったバラキーに捕まり、カーマは倒れる。

 その時一緒に落ちるはずだった皿は既に手元にはなく、もはや目的を忘れて飛び付いているバラキーを邪魔そうに引き剥がしつつ探すと、少し離れたところでエウリュアレとアビゲイルが食べていた。

 

「ちょ、ちょっと! それ私のなんですが!?」

「あら、落としそうだったから拾ってあげたのだけど。代わりに一切れもらってるわ」

「嘘ですよね半分減ってるんですが!? 八等分にしたはずなんですが!」

「嘘は言ってないわ。一切れよ。一切れ。四分のね」

「純粋な情報不足! そんなデタラメ理論やめてくれませんか!? 小さい子達が真似したらどうするんですか! 教育に悪いですよ!」

「えっ……ど、どうしましょうエウリュアレさん。この人、鏡を見た方が良いと思うのだけど」

「むしろ一周回った説得力があるわね。マスターなら、『お前が言うな』とか言いそうだけど」

「うぐぐ……と、とにかく返してください! それ、本当にただのアップルパイですから! 英霊用に調節してないただのアップルパイですから!」

 

 カーマがそう言うと、エウリュアレは少し考え、

 

「……それって、この前のヤツみたいに太らないってことよね。返す理由がなくなったのだけど」

「面倒ですねこの女神! バラキーやっちゃってください!」

「いやぁ、この前ランサーでも負けたからあの二人には勝てぬ」

「早々に諦めムードなのなんでなんですか!?」

 

 ギャーギャーと騒ぐカーマ。

 それをひとしきり楽しんだ後、エウリュアレはアップルパイと一緒に紅茶を渡すのだった。




 なんでカーマが良い子ちゃんになってるんですかねぇ……まぁ平和なのでよし。だんだんとゆる~くなっていくこの二人。初期の方がヤバかったような……?

 星四交換をどうしようかなぁと考えつつ私はお空の古戦場へと向かうのです。


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これが英霊召喚チケットでございます(当然ゴルゴーンよね?)

「さて、英霊召喚チケットでございます」

「当然ゴルゴーンよね拒否権はないわ」

 

 マイルームで、オオガミが椅子に座って受け取ったチケットを眺めていると、背後から首に抱きついて、右肩から顔を覗かせるエウリュアレ。

 オオガミはその状況に震えつつ、

 

「ほ、ほら……バサスロさんとか、戦力ですよ……?」

「別に戦力とかもう要らないでしょ」

「う~ん否定できないこの事実」

 

 確かに戦力として必須なのは無いなぁ。と呟くオオガミ。

 既に一度エウリュアレの要望で使っているので、もう一度使うことも別に問題はないだろう。

 なので、

 

「とりあえず保留」

「えぇ……」

 

 はぁ……とため息を漏らしつつ、エウリュアレはオオガミから離れるが、すぐにオオガミの前に来てその膝の上に座る。

 そして、遠慮無く体重をかけて寄り掛かると、

 

「まぁ、別にすぐ使わなくても良いけど、忘れないようにしなさいよ?」

「うん。早めに使うよ」

「えぇ、そうしなさい。私はゴルゴーンを期待しているから」

「はいはい。まぁ、一応予定はゴルゴーンにしておくよ」

「お願いね。って言っても、貴方が私に甘いのは知っているけども」

「……本人に向かって言いますかね普通」

 

 オオガミの疑問に、エウリュアレはオオガミの手を自分の膝の上に乗せて、

 

「だって、私が堕落させたもの」

 

 そう言って、にっこりと微笑む。

 それに対してオオガミは苦笑いをしつつ、

 

「いつの間にか堕落していたらしい」

「だって、当然のように私に貢ぐでしょ? まぁ、私に溺れている訳じゃないのがちょっと残念だけど、それでも貴方は私のもの。自覚はあるんでしょう?」

「エウリュアレだけのものになったつもりは無いけどね」

「……空気読みなさいよ」

「空気を読んで言ったら『言質を取った』って言ってカルデア中にばらまくでしょ。分かってるからね」

「……ちぇ。やっぱりそんな甘くないわね」

 

 仕方ない。と言いたげな表情で、机の上にボイスレコーダーを置くエウリュアレ。

 本当に持っていたという事実に震えるも、何でもないかのように取り繕うオオガミは、良くも悪くも成長したということだろう。

 

「というか、なんでここまでしても平然としてるのよ。普通もうちょっと反応があっても良いと思うんだけど」

「何年一緒にいると思ってるの。寝食共にして早二年。え、二年も経ってるの? ヤバくない?」

「そこで詰まられると困るのだけど、言いたいことはわかったわ。つまりもう慣れたんでしょ?」

「いや、気合いで堪えられるようになった」

「それを慣れたって言うのよ!」

 

 ゴスッ! と突き刺さるエウリュアレの肘に呻くオオガミ。

 しかし、突かれたところを押さえようにもエウリュアレが両手をしっかりと掴んで離さないので、どうすることも出来ず、やはり呻くことしか出来ない。

 

「こういうところもどうかと思うのですが」

「ふん。私は悪くないわ。自業自得よ、バカ」

「とてもひどい理不尽を感じる……」

 

 オオガミはそう呟いて、エウリュアレを抱き寄せるという抵抗をするのだった。




 これはヒロイン。しかし、なぜデート回でもないのにこんなことやってるんでしょう……不思議だなぁ……

 ところで、最近じわじわとエウリュアレ様の独占欲が見え隠れしているんですが気のせいです?


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英霊召喚チケットの奪い合い始まる(ひでぇ戦いだな?)

「そんで、あれはなんだ?」

「ん。英霊召喚チケットの取り合い」

 

 バラキーは、隣にいるロビンから貰ったチョコクッキーを食べつつ答える。

 そんな二人の目の前には、オオガミに集まる数名の男女。

 

「なるほどねぇ……しかしまぁ、そこまでして欲しいかねぇ?」

「ん。吾も酒呑が呼べるのならば奪いに行くからな。気持ちはわかる」

「……なるほど。そりゃ欲しがるわな」

 

 不機嫌そうなバラキーを見て頷くロビン。

 段々と周りを囲っているサーヴァントが増えていって、更に言えば小競り合いも起こっていた。

 宝具を重ねてほしいという願いや彼、彼女を召喚してほしいだのと言ってオオガミを襲っているが、流石は人理を修復したマスターというべきか、サーヴァントに捕まらないようにかわしていた。

 ただ、こういうときはいつもと言っていいくらい参加しているエウリュアレは、メルトとアビゲイル、アナの三人と一緒に遠くから見守っていた。

 それが微妙に気になるロビンはそこを警戒しつつ、オオガミの方を見る。

 

「それにしても、よくかわせるな。流石過ぎるわ」

「まぁ、訓練の賜物ではあるな。吾、あやつの訓練を見てると、人間を辞める気ではないかと思う。特に『れおにだす』に鍛えられてるときは殊更にな」

「へぇ……いや、想像できるわ。戦場で5分寝て感覚だけで起きて即座に反撃とか、人間辞めるしかねぇわ。てかその訓練してるのか人間辞める気かマスター」

 

 あの極致に至るつもりなのかと震えるロビン。

 そんなときだった。オオガミの方でひっそりとチケットを抜き取ったカーマが全力で逃げ出した瞬間、エウリュアレ達が瞬時に立ち上がり、矢で足を止めペンギンで転ばしアナが鎖で縛ってアビゲイルが触手で叩き潰す。

 流れるような動きに凍り付く空気。

 その中を悠然と歩き、カーマからチケットを取り返したエウリュアレは、

 

「ほら、返すわ。最終決定は貴方だからね?」

「あ、うん……あ、ありがとう?」

 

 そう言って、オオガミに満面の笑みで返すエウリュアレ。

 オオガミに集まっていたサーヴァント達は、それを見てゆっくりと、若干怯えるように解散していく。

 それを見ていたロビンとバラキーは、

 

「恐ろしいわ。牽制してくるとは思わなかったな」

「いやぁ、やるとは思ったが、ここまで徹底的とは思わんかったなぁ……カーマ回収して吾は部屋にこもるかなぁ……」

「オレも一緒に行くか。カーマを連れていくのも一苦労だろ?」

「うむ。任せたぞ緑の人」

 

 そう言って、二人はカーマを回収して部屋に向かうのだった。




 最近のエウリュアレはこういうところあるんですよね。いつからこんな風になってしまったのか……でもちょっと楽しい……

 オオガミ君人外説が久しぶりに登場。人間離れに拍車をかけていくのです。


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と言うわけでこちら交換したサーヴァントです(これがカルデア……か……?)

「と言うわけで、こちらゴルゴーンさんです」

「おいなんでそんな気軽に話しかけ――――姉様!?」

「ふふん。やっぱり私の頼みが一番に通るわよね」

 

 ドヤ顔で言うエウリュアレに対し、オオガミの後ろに顔だけは隠すゴルゴーン。

 隠れられているオオガミは苦笑いをしつつ、

 

「まぁ、これでゴルゴーンは完成だね。末妹だけ三人いるけど」

「問題ないわ。むしろ盾が二枚なんだから、負ける要素は皆無ね」

「アナは盾じゃないのが有情」

「アナは愛でるので精一杯だから無理ね。盾はメドゥーサとゴルゴーンに任せたわ」

「全力で盾扱いしていくのは酷いよね」

「大きいのだから仕方ないと思うの」

 

 そんなことを言っている間にそそくさと逃げようとしているゴルゴーンの尻尾を掴み、逃がさない。

 

「それで? どこに行こうというのかしらゴルゴーン?」

「ひっ! い、いえその、せっかくこのような所に来たので散策でもしようかと思いまして……」

「そう。それなら私も行くわ。じゃあねマスター。おやつを用意していてちょうだい?」

 

 そう言ってにっこりと笑うエウリュアレ。

 すると、ゴルゴーンは顔を真っ青にしながら、

 

「うおおおあああぁぁぁぁぁ!!! た、助けろマスター! いや、助けてくれマスター!!」

「ふふっ。助けてだなんて、一体何から助けてほしいのかしら。まさか私からだなんて、言わないわよね?」

「ひっ! そ、そんなこと言いませんとも……は、ははは……い、行ってくるぞ、マスター……」

「いってらっしゃ~い」

 

 そう言って無邪気を装い手を振るオオガミと、恨みがましそうにオオガミを睨みつけつつエウリュアレについて行くゴルゴーン。そして、そんなゴルゴーンを連れたエウリュアレは、かなり上機嫌の笑顔だった。

 それを見送ったオオガミは、

 

「さて、殺されないためにロクデナシ魔術師呼ぼうかな。幻術で守ってもらおう」

「自分を守ってくれる相手をロクデナシってのはどうなのかなって思うんだけど、もう今更否定もしないよ?」

「平然と隣に出て来られるとビビるんですが。どうしたんですか花のお兄さん。命の危機でも感じました?」

 

 平然と隣に立っているマーリンにオオガミは突っ込みつつ、部屋を出る。

 当然の様についてくるマーリンは、

 

「いやぁ、あのままいると殺されそうな予感がしてね。具体的には機嫌のいいエウリュアレの宝具を喰らって殺されそうな感じかな?」

「なるほど納得。それじゃ、食堂に行ってお菓子作らなきゃなぁ」

「私もそれについて行くとしよう。その方が生存率は高そうだからね」

「精一杯死なないように生きてね?」

 

 そう言って、食堂に向かうのだった。




 みんな知ってた結末。やはりゴルゴーン召喚は確定事項なのです。ふはは。


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ハァイ、センパイ?(BB何してるのさ)

「ハァイ、センパイ?」

「うわっ、何してるのBB……」

 

 廊下の壁の一部が某側溝のように不自然に切り取られており、そこから顔を覗かせて手を振ってくるBB。

 オオガミは少し警戒しつつも近付き、声をかける。

 すると、

 

「挨拶はしてくれないんです?」

「……こんばんは?」

「はいこんばんは。ふふっ。なんか楽しいですねこれ」

「こっちはなにしてんだろうって気持ちでいっぱいだけどね?」

 

 楽しそうに笑うBBに、困惑するオオガミ。

 すると、BBは下に潜ると、ちびBBを持って戻ってきて、

 

「これ、いかがです? 最新機なんですが。センパイ、最新とか好きですよね?」

「むしろ最近はレトロゲーが好きですね」

「……」

 

 真顔になり、再び下に潜って、今度はファ◯コンを持ってきて

 

「どうです? 今ならお安くしますよ?」

「無料じゃないんだ」

「こちらも慈善でやっていけるほどお金がある訳じゃないので……」

「世知辛いね」

「レトロゲーの方が高価ですしね」

 

 そう言って、しばし沈黙する二人。

 ハッと我に返ったBBは、

 

「それで、要ります?」

「残念だけど、怪しいものは買わないようにしてるんだ。販売者も怪しいし」

「いえいえまさかそんな。私は月の超スーパーエリートAIのBBちゃんですよ? 信頼度マックスです。えぇもちろん。ほら、これで怪しい人ではなくなりましたよ?」

「そうだね。ちょっとノッブに教育についてお話ししてこなきゃだね」

「ちょ、待ってくださいよ!?」

 

 おそらく工房に向かおうとしているだろうオオガミを全力で止めようとするBB。

 するとオオガミは仕方なさそうに戻ってくる。それを見たBBはホッとしたように息を吐き、すぐに楽しそうな笑みに切り替えると、

 

「これ、置いていっちゃうんですか?」

「あっ! 聖晶石!」

 

 聖晶石を見せびらかすBB。その得意気な顔は、きっと欲しがっているはずのオオガミを見て楽しんでいるのだろう。

 だが、オオガミの言葉の意味はほぼ真逆に近い。

 ちらりと一瞬だけ左を見ると、側溝に近付きつつ、

 

「それ、どこから取ってきたの?」

「秘密です。でも、ここには30個あるので、10連一回分!欲しいですよねぇ?」

「いやまぁそりゃ欲しいけども……」

「えぇ、えぇ。ほら、早く手を伸ばして取ってくれて良いんですよ? さぁ、どうぞ?」

 

 そう言って、側溝から出そうなくらいに手を伸ばして見せつけてくるBB。

 しかし次の瞬間、その手が掴まれ、

 

「ハァイ、BBさん?」

「ひぇ、マシュ……」

 

 にっこりと笑いながら現れるマシュ・キリエライト(最強の倉庫番)

 がっしりと掴まれた手を引っ張られ、側溝を破壊しつつ外まで引きずり出されたBBは、笑顔で微笑むマシュに、

 

「あ、あはは……ちょっとした出来心でやってたんですよ……えぇ、はい。他意は特に無いです。面白そうだなぁ~って。でもほら、センパイを釣るとか難しいですし? もうわりと何を提示してもスルーされそうなのでちょっと石をですね?」

「なるほど分かりました。じゃあそこの石を持ってちょっとついてきてください。あ、ハワイの時お世話になったあの触手、まだ使えますよね?」

「手を使わなくて良いことまでバレてるのなら離してくれないですよねぇやっぱり。分かりましたついていきますよ。うぅ……センパイ拉致計画失敗です……」

「拉致って何する気だったんだこのAI……」

 

 マシュに引きずられていくBBを見送りつつ、オオガミはそう呟くのだった。




 いつかやろうと思ってたピエロネタをやったら容赦の無いマシュの攻撃を受けてBBが死んでしまった……釣ろうと思ったら釣られるだなんて……というか、前よりも狂暴になってないですかね、マシュ姐様。


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やぁアナ。何してるの?(うわ、マスター……!)

「やぁアナ。何してるの?」

「げ、マスター……」

 

 オオガミを見るなり、後退りをするアナ。

 不思議に思うオオガミは首をかしげ、

 

「なにもしてなくない?」

「姉様もメルトさんもいないときに近付くとろくなことがないのは知ってるんです。どうせどこかに連れていく気でしょう?」

「スゴい誤解されそうなワードと全力の逃げの姿勢。別に何かするつもりはないんだけどなぁ……」

 

 なにもしないとばかりに両手をあげて示すオオガミ。

 それを見て、アナはため息を吐くと、

 

「それで、何の用でしょうか」

「話は聞いてくれる感じかな?」

「マーリンよりは、信頼してますので」

「マーリンと比べられちゃうのかぁ……」

「そこは別にいいです。早く用件を」

「あぁうん。それね」

 

 一度咳払いをし、

 

「アイス作ってみたんだけど、試食する?」

「……しょうがないですね」

 

 無表情なまま、しかし目を輝かせてアナはオオガミについていくのだった。

 

 

 * * *

 

 

「……騙されました」

「騙しては無い」

「姉様もいるなんて聞いてません」

「言ってないからね」

「騙されました!」

「騙してはないかな?」

「いや騙してるわよ」

 

 アナとのやり取りを聞いていたエウリュアレに突っ込まれ、静かになるオオガミ。

 アナは一瞬だけ勝ち誇ったような笑みを浮かべるも、すぐに無表情を取り繕うと、

 

「それで、姉様は何をしているんですか?」

「何って……貴女と同じよ。さっきまでメドゥーサとゴルゴーンを連れ回していたのだけど、逃げられたわ……次は(ステンノ)も一緒じゃないとダメそうね」

 

 そう言って、真剣そうに思案するエウリュアレを見て、アナは何かを決心したような顔をすると、

 

「あ、あの、姉様……私がいるので、二人を連れ回さないようにするとか、出来ますか……?」

「無理」

 

 一撃だった。

 容赦なく一撃で斬り伏せたエウリュアレはそのままにっこりと笑うと、

 

「だってほら、次は全員で行くんだもの。誰も抜けさせないし逃がさないわよ?」

「ひぅ……」

 

 逃げられないと気付いたアナは悲鳴のように短く息を吸い、何事もなかったのようにエウリュアレの隣に座る。

 そして、オオガミがアイスを持ってくると、再び目に生気が宿るアナ。

 

「というわけで、豆乳アイスです。牛乳はないので豆乳です」

「ふぅん? でもまぁ、美味しいと思っているから良いわ」

「食べる前からそう言われると反応に困るんだけど」

 

 そう言って困ったように笑うオオガミに、エウリュアレは楽しそうに笑いながら食べるのだった。




 エウリュアレの上機嫌モードは続く……メドゥーサ組はもうしばらく振り回されるのだろう……南無三。


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子イヌぅ……疲れたわぁ……(どうしたのエリちゃん)

「はぅ……疲れたわ……」

「どうしたのエリちゃん」

 

 レクリエーションルームでゲームをしていたオオガミの膝を枕にするように倒れるエリザベート。

 オオガミは咄嗟に周囲を見渡すが、エウリュアレもメルトもいないのを確認してホッと息を吐く。

 そして、エリザベートの言葉を待つと、

 

「この前言ってた怪獣呼ばわりされたってやつで、ダ・ヴィンチに捕まって色々聞かれたの」

「ふむふむ。それが原因で疲れる?」

「ううん。そこが原因じゃなくて、そこからが問題で……精密検査だーって言われて体の隅々まで調べられて、ようやく終わったな~って思ったら今度はノッブとBBに捕まってさっきまで色々とあったの……もう嫌なのだけど」

「あぁ……うん。それは仕方ない。疲れる。絶対に」

「でしょ?お陰で今猛烈に眠いから、寝るわ。おやすみ子イヌ」

「うん。おやすみエリちゃん」

 

 そう言うと、糸が切れたように動かなくなるエリザベート。

 あの二人に絡まれたのならしょうがないよなぁ。とオオガミは呟きつつ、コントローラを片手にエリザベートの頭を軽く撫でるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「んんっ……へっくち! っは、ふぅ……あ、あれ? 子イヌ?」

 

 くしゃみをしながら目を覚ますと、いつの間にかオオガミの姿はなくなっていた。

 タオルケットがかけられているのを見ると、さっきまで寝ていた実感がわいてくるが、はたしていつかけられたのだろうか。

 

「……見捨てられたとか、そう言うのじゃないわよね。うん。たまたま席を離れてるだけよ。うん」

 

 実際、ゲームもポーズ画面のままだし。と前向きに考え、再び横になる。

 とはいえ、なぜ暖房が入っていないのだろうと疑問に思う。

 

「……やっぱ忘れられてる? 私忘れられてるの? 泣いちゃうわよ?」

「忘れてないし泣かれても困るのだけど……」

 

 聞こえた声に、すぐさま振り向く。

 そこにいたのは、困ったように笑うオオガミだった。

 

「~~っ! もぅ! どこ行ってたのよ!!」

「いや、トイレに行くついでに、暖房をつけにね。この部屋寒いし」

「行くなら行くって言いなさいよ! ちょっと寂しかったでしょ!?」

「えぇ~……尻尾がブンブン振られてるから気持ちはわかるけど、まぁ、うん。次は気を付けるよ」

 

 そう言って、隣に座るオオガミ。

 そんな彼に寄りかかりつつ、

 

「あ、そうだ子イヌ。今度私にもお菓子を作ってくれないかしら! 作るのは任せるわ!」

「無茶ぶりだねぇ……まぁいいけど。あんまり期待はしないでよ?」

「えぇ。信頼してるわ!」

「全く分かってないね」

 

 そう言いながら、彼がゲームをしているのを見るのだった。




 時々生まれるエリちゃんパート。初期メンバーだから優遇してしまうのも是非もないと思うんです。そもそもエウリュアレも初聖杯だから優遇してたのが現在ですからね! 不思議だなぁ!!


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ハンティングの時間だぁ!(なぜ絶対にラムダで回るのですか……)

「よし……ハンティングの時間だぁ!」

 

 拳を高く掲げながら言うオオガミと、その隣に立って楽しそうに微笑むラムダ。

 そんな二人の後方で、死にそうな顔をしているパラケルススは、

 

「なぜ……ランサーに、ランサーをぶつけるのですか……あぁ、絆上げ……? なるほど。であれば休息を取るべきだと進言します。具体的にはシステムを変更するべきかと」

「このマスターが聞くとお思いで? 少なくともラムダが10になるまでは休みなんてありませんよ。確実に」

「だろうな。今さら止められるとも思わんからな。どのシステムだろうが組み込まれるのだから気にするだけ無駄だろう」

「あ、悟ってますねこの人。これはもうダメみたいです」

 

 死んだ目で言う孔明を見て、苦い顔をする玉藻。

 だが、それはそれとして一向に止まる様子の無いオオガミにため息を吐く。

 

「別に、周回するのは構いませんけど、相性くらいは見てほしいですよねぇ……って、そうでした。ランサーに有利をとれる周回メンバーはいないんでしたね……」

「なぜランスロットではなくゴルゴーンを取ったのか……理由が全くわかりませんね……」

「現状セイバーでなければラムダさんで飛ばせますし、バーサーカーを用意する必要はなかったってことでは?」

「くっ、彼女が優秀すぎたゆえか……」

「ままならないものですね。まぁ、私たちが振り回されているのは自らのスキルが原因なのですが」

「悔やむべきか喜ぶべきか……本来ならば素直に喜べるものを……」

「周回を体験すると、悩ましいものですね」

 

 同じ顔を見続けると言うのも疲れるものだ。と呟きつつ、孔明は目頭を押さえる。

 すると、

 

「あ、更新です? 今度は粛正騎士ですか……セイバー? じゃあ休みですか?」

「……いや、メンバーはこのまま続投みたいだな。はぁ……セイバー相手でも倒しきれるなら構わないと言うその精神は、あまりに豪胆すぎると思うのだが」

「我がマスターは正気ですか……いえ、思えば最初から正気ではなかった気もしますね」

「今更ですよ。まぁ、周回できるなら良いんじゃないです? 問題なのは勝てない方ですし」

「まぁ、一撃で終わらせるのは、無傷だからな……いや、最近はそうとも言えなくなってきたか……」

 

 そういう孔明の言葉に、二人は脳裏に同じ人物を思い浮かべる。

 褐色にキラリと光るメガネ。とにかく二言目には自爆させようとしてくるあの戦術は、お前軍師としてどうなんだよと思わせるもの。

 あのムカつく笑顔に苛立ちを覚えつつもその名は飲み込み、

 

「まぁ、うちのマスターは『人道的にダメでしょ』と言ってNG出してますし、しばらくは高難易度の時の貴方以外犠牲にはならないはずですよ」

「やはり私が犠牲になるのではないか……!」

 

 うおおおぉぉぉ……と呻く孔明を見て二人は首を振るのだった。




 セイバー? 狩れるなら周回できるでしょ。(鬼畜マスター並感

 ラムダがセイバーごときに負けるわけなく。特にラストがランサーならシステムに敗北はないのです。さすラム。


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アーチャーならラムダでしょ!(休憩時間はどこへ……?)

 え? アーチャー? これは休んでる暇無いなラムダシステムの本領発揮だ今こそラムダの力を見せつけるとき! 行くぞー!!

 

「そう言って、オオガミがメンバーを集めに走っていったのがついさっき」

「あの人に休憩の概念はあるんでしょうか……」

「召喚されてから、奴等が丸一日休んでいるのを見たことがないのだが」

「他はともかく、孔明さんには頭が上がりません。夢火を使っていないから正確には分かりませんが、それでも確実に11は越えていると思えるほど連れ回されてますからね」

「頼られるのも、良し悪しですね。あそこまで引っ張りだこだと、疲れそうです」

「現にあそこで死にそうな顔で嫌がっている男がいるのですが」

「目を合わせたら捕まるから注意しなさい」

 

 なんですかそれ。と言いたい気持ちをグッとこらえ、はい。と答えるメドゥーサ達。

 向こうでは、煽りに来たマーリンが孔明に捕まり引きずられていく姿があった。宝具まで運用しての拘束を見ると、如何に本気かが分かる。

 

「というか、マスターから隠れきったにも関わらず行く辺り、律儀ですよね」

「私ならそのまま潜伏します」

「最初に見つかってるから逃げられないのよ。何より、根が真面目だから断れないの」

「……難儀な性格ですね」

「悪用されてません?」

「マスターは混沌・悪ではないのか?」

「ボロクソに叩くわね……」

 

 メドゥーサ達の意見に思わず突っ込むエウリュアレ。

 とはいえ、分からないでもないのが困ったところである。

 

「とにかく、うっかり周回素質を持ってたりしない限りは安全よ。後は……その……絆上げ要員にならなければ参加は基本しないわ」

「姉様の枠ですね」

「なんだと?」

「あぁ、いつものコスト調整編成……いえ、姉様専用枠ですね。失礼しました」

「まとめて撃ち抜くわよ?」

 

 魔力で生み出した矢をペン回しのようにクルクルと回しながら笑顔で言うエウリュアレに、三人とも笑顔のまま固まる。

 

「そ、それで、姉様はマスターを追いかけなくても?」

「ん、私? 私はほら、色々あるから……正直見てるだけだもの……」

「それで行かないと言うのも中々だと思うのですが」

「これ以上絆レベルを上げられても対応に困るのだけど……」

 

 ぶつぶつと呟き始めるエウリュアレ。

 メドゥーサ達は、こういう姿を見て、ずっとこのままなら害はないんだけどなぁ。と思う。

 するとエウリュアレが、

 

「……貴女達、なにか変なこと考えなかった?」

「「「いえ、全く」」」

「そう……ならいいけど」

 

 殺されたかと思った。後にメドゥーサ達はそう証言するのだった。




 ラムダを運用できるなら行く。恐ろしいなぁ……
 なお現実は敵がラムダシステムで倒しやすくなって喜ぶもそこまで回る気はないのです。

 サンタナイチンゲールですってよ奥さん。やったぜ!


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なんかやる気が起きない(だからって髪で遊ばないで)

「ふぅ……なんかやる気起きない……」

「だからって私の髪で遊ぶのはどうかと思うの」

 

 櫛を片手に、ひたすら膝の上にいるエウリュアレの髪を梳かし続けるオオガミ。

 髪型を変えて遊んでいたせいで変な癖が付き始めているが、エウリュアレが気付いている様子はなかった。

 

「というか、ハンティングは?」

「いやぁ……歯車も髄液も今のところ必要最低限は揃ってるから……案の定AP消化するくらいかなぁって感じ」

「何が来ても同じ対処でしょ。まぁ、貝殻だけはちょっと違うと思うけど」

「……貝殻に関してはどうしようもない……不足し過ぎて最早無いのが常では……?」

「あ、ちょ、落ち込むのは良いけど髪を梳かす手まで雑にならないで!?」

 

 心情を表すように櫛を持つ手が震えているので、エウリュアレとしては気が気ではなかった。

 ようやくオオガミの手が止まったのを確認すると、思いっきり寄りかかり、

 

「今日は髪を下ろしていようかしら。でもちょっと邪魔なのよね……」

「じゃ、ポニーテールで」

「……実は好きよね、ポニーテール」

「……はて。何のことやら」

 

 目を逸らしながら答えるオオガミ。

 エウリュアレはそれを顔だけ振り向きながら見つつ、

 

「だってほら、いつもの髪型以外を任せると、貴方、必ず一回ポニーテールを挟むじゃない。そのあと絶対ふざけてくるけど」

「いやぁ……そんなにしてますっけ?」

「してるわ。というか、メルトにも同じことやってたじゃない。流石に気付くわよ」

「なんで見てるのさ……!」

「この部屋、ほぼ共有部屋なのだけど。私もメルトもここに帰ってくるんだから見てるに決まってるでしょ」

「突っ込みたいのはそこじゃない……なんで入ってこないのかってことなんだよ……?」

「……雰囲気的に、入りづらいもの」

「空気を読んでた……?」

 

 あり得ないものを見たと言いたげな表情をするオオガミ。

 それを見たエウリュアレは無表情にオオガミの脛に踵を叩き付ける。

 救いがあるとすれば、今エウリュアレは裸足だったことだろう。

 だがそれでも痛いものは痛いのでオオガミが呻いていると、

 

「まぁ、良いわ。今日はもう寝るとしましょう。髪型は明日の私が考えるわ」

「寝るなら髪型を整える必要もないね……?」

「えぇ。だからほら、貴方も寝なさい。明日になればやる気も湧いてくるだろうし、それに、一緒に寝れて光栄でしょ?」

「いつもの事だけどね。まぁ光栄ですよ女神サマ」

 

 ベッドに飛び込んだエウリュアレに袖を引かれ、オオガミも仕方なさそうに一緒のベッドに入るのだった。




 最近砂糖出しすぎてみんな慣れてきてそうなのでギャグ寄りに戻さなきゃ……いつの間にラブコメになってしまったんだ……


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やっほーまーちゃん(おっきー何してるの?)

「あ、やっほーまーちゃん」

「やっほーおっきー。何してんの?」

「原稿の休憩に軽く遊ぼうかと思って」

 

 なるほど? と疑問を抱きつつ反応するオオガミ。

 折り紙製の動物たちに部屋を片付けさせつつ刑部姫は準備をして、

 

「じゃーん! これが最新のダイエットだよ!」

「あ、死ぬほどきついって噂のリアル体力ゲーだ」

「ふっふっふ……これでまーちゃんに姫の真の力を見てもらうのだ……決して太ったとかそういう訳じゃないのだ!」

「いやでもさっきダイエットって……」

「気のせいじゃないかな! さ、姫の実力を見せるよ!」

 

 そう言って、刑部姫はゲームを始めるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ぜひぃ……ぜひゅぅ……ゲホッゴホッ……む、無理……引きこもりが出来るやつじゃないよぅ……」

「もはややってることがジムなんだよね……どうあがいても地獄では? レオニダス先生の方がもっと体は楽な気がする」

「れ、冷静な分析なのかな、それ……ところで、レオニダス式ってこれより優しいってほんと?」

「いや、痩せる目的なら絶対止めた方がいいと思う。終わった後には筋肉で体重が増えてるから」

「……脂肪が筋肉になるまで終われないキャンプとかやだぁ……」

 

 ぐったりして動かない刑部姫を横目に、オオガミはゲームを片付ける。

 そして、改めて刑部姫に向き直ると、

 

「もう体力残ってないでしょ」

「うぐっ、否定できないの悔しい……!」

「うんうん。シャワールームまで連れていく?」

「それは勘弁してください」

 

 目が本気だった。

 オオガミはそれを見て少し考えると、

 

「とりあえず、飲み物でも用意しようか?」

「お、お願いします」

 

 そう言って、刑部姫は目を瞑るのだった。

 

 

 * * *

 

 

「は~……生き返ったぁ~……」

「お疲れ様。続きそう?」

「封印です。最低一ヶ月は封印」

「夏付近に再開しそうだね?」

「うぐぐ……」

 

 にっこりと笑うオオガミに、刑部姫は複雑そうな顔をする。

 

「まぁ、夏になるとまたレモネード隊が出現するし、一進一退の攻防になりそうだけど」

「ん? 待ってまーちゃん。なんでレモネード隊が私の体型と関連するわけ? 関係なくない?」

「え? あ、おっきーは知らないのか。ならまぁ、黙っておいた方がいいか」

「え、ちょっと待って、そこで秘密にするのはズルくない? メチャクチャ気になって夜しか眠れないんだけど?」

「普段夜型なのが改善されていいと思うので黙っておこう」

「うわぁぁぁ! ネタにマジレスしてきたよこれはひどい!」

「まぁほら、生活改善的には勝ちなので。今日の巡回はナイチンゲールと巌窟王だよ」

「夜更かし絶対殺すマン……! くっ、それで前回ガネーシャと一緒にやられたのに……!」

「同じ過ちを繰り返すことなく、素直に眠るのです。おっきーよ……」

「まーちゃんにそれを言われたら逆らえないじゃんかぁ……!」

「うんうん。じゃ、俺も殺されたくないので帰るね」

「うぎぎ……おやすみぃ……」

「おやすみ。原稿ファイト~」

「今日はもう寝ますけど!?」

 

 刑部姫の叫びを聞いて、オオガミは笑いながら部屋を出るのだった。




 おっきーはこの距離感が良いのです。これ以上になるとおっきーと私のキャパがオーバーして即死入っておっきーは座に。私は部屋に籠ることになるのです。


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ロビンさん何をして……?(昨日BBから届いてな……)

 静かに回転する中心部分から飛び出す細い糸。

 そこから漂う甘い香りに釣られていくと、そこにはロビンがいた。

 

「……何してるのロビンさん」

「ん? あぁマスターか。昨日BBから届いてな。適当に試運転中だ。んで、これが試作品」

 

 ロビンはそういうと、オオガミにふわふわの綿菓子を渡す。

 貰ったオオガミは困ったように笑い、

 

「お菓子を作りに来たらお菓子を貰ってしまった」

「ハハッ。たまには貰う側でもいいんじゃねぇの? なんだかんだハロウィンも参加出来てねぇだろ?」

「うぐっ……エウリュアレから皆には作り置きのお菓子を渡したって聞いてるけど、正直色々と用意したかったのは事実……」

「いや待て。なんで渡す側なんだよ貰えよそこは」

「いやぁ、あの集団に混ざって仮装してお菓子貰いに行くのはハードル高いって……」

「くっ、変なところでダメだなこのマスター……」

 

 ロビンは首を横に振り、ため息を吐く。

 だがオオガミは気にした様子もなく、

 

「まぁ、来年は行けるでしょ」

「来年まで人理救えない宣言はどうなんですかねぇ……」

 

 そう言って、ため息を吐くロビン。

 しかし、オオガミは楽しそうな笑みを浮かべながら、

 

「人理を救っても一緒にいたいよねって話だよ。まぁ、ロビンさんが嫌なら、ロビンさんだけ帰って貰うけどね?」

「……なんか、最近嫌な意味でBBに似てきたよな?」

「え、うそ、マジで? 気を付けよ……」

「なんですかその反応! 普通に傷付くんですけど!?」

「うおぁ!? か、隠れてやがったのかBB!」

 

 物陰から飛び出てくるBBに驚くロビン。

 だが、BBはそんなこと一切気にせず、

 

「ちょっと、どこら辺がセンパイと同じなんですか! こんな、可憐でキュートな小悪魔系完璧後輩と、このポンコツ残念なマスターさんが! どこら辺ですか!?」

「雰囲気自体が似てきてる」

「「それはない」」

「互いが互いに寄ってきてるんだよアンタらは」

 

 ロビンに言われ、不満そうな顔をする二人。

 どことなく似たような雰囲気を感じているのは、おそらくロビンだけではないのだろう。

 

「まぁいいや。んで? BBは受け取りに来たのか?」

「え? あぁ、いえ、ロビンさんが送られたものを律儀に使ってるのかなぁ~と思いまして。いえ、ダメって訳じゃなく、むしろ使って貰いたいんですけど、怪しまれて放置されてたらすりつぶそうかと」

「おっと、デッドエンドスレスレだったとは思わなかったわ。綿菓子に命を懸けたくねぇな」

「えぇ、そうでしょ? それでセンパイ、その綿菓子食べました?」

「いや、まだだけど。食べる?」

「ん~……そうですね。貰います。エウリュアレさんにあげるなら後継機の方が優秀ですしね」

 

 そう言って、一口食べるBB。

 だが、すぐ不満そうな顔をすると、

 

「ん~……やっぱ変換効率がまばらですねぇ……」

「変換効率?」

 

 オオガミが聞くと、BBは少し上機嫌に、

 

「ふふん。今回のは魔力をエンジンにした特殊わたあめ製造機でして、使用者の魔力を吸収して稼働するんですけど、実験が中々難しくてですね、試運転をしたくても先にこっちがぶっ倒れちゃうので、ロビンさんにやらせてみようと思って今ここにあるんですよ」

「……へぇ?」

「あぁ、もちろんタダじゃないですよ? このザラメも、カーマさんから技術を奪い取って手に入れた圧縮魔力による特殊ザラメですし。使った分は食べれば回復。むしろオーバーなので作れば作るほどお得になるシステムですとも。まぁ、作らないで食べまくると太りますし、食べないと座に帰るんですけどね」

「先に言えよ! てか、コンセントは飾りだったのかよ!」

 

 コンセントを引き抜きながら怒るロビンに、BBは目を逸らしながら、

 

「コンセントはそれっぽいかなぁと思って。というか、先に言わなかったのはセンパイが来るとか思ってなかったので……それに、子供達が来ないようにマーリンさんに根回ししてましたし……今頃みんな揃ってレクリエーションルームで花のお兄さんの『王の話~劇場版~』を聞いてますよ」

「なんだ劇場版って。そっちの方が気になるんだが」

「ちょっと聞いてくるか……」

「センパイはともかくロビンさんはわたあめ作っててくださいよ。そのためのマーリンさんなんですから」

「いや、もう作っただろ……?」

「いえ、後3つ作ってください。それで一応最低限のデータは集まるので」

「……しょうがねぇな、3つだけだぞ」

「えぇ。ロビンさんならやってくれるって思ってました! よっ、チョロイン!」

「殴るぞテメェ!」

 

 そう言って、怒るロビンに、BBはキャ~☆と言いながら走り去るのだった。




 綿菓子シーズンは真逆ではないかと内心突っ込みながら書きました。でも楽しかった。そういうところだぞロビンさん。


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明日からクリスマスかぁ……(まだ11月よ……?)

「明日からクリスマスだね……」

「まだ11月なのよねぇ……」

 

 クリスマス備えて準備をしている厨房を見ながら、オオガミとエウリュアレは呟く。

 

「今年のサンタはクッソカッコいいのですが。本当にサンタ?」

「必ず殺す(治す)意思を感じたわ」

「やっぱりヤバさがBBを越える雰囲気なの怖いなぁ……夜中の見廻りが婦長の時は早めに寝るくらい怖い」

「アビーの悲鳴が毎度聞こえてくるものね……いい加減学習してほしいのだけど」

「まぁ、バラキーとカーマの悲鳴も毎度のことだし、もう気にならないかな……」

 

 もはや悲鳴にすら動じないこの二人。

 ちなみにではあるが、毎度メルトが反応するせいで夜中に二人が起きる時がわりとあったりする。

 

「それにしても、またボックスかぁ……リンゴ足りないなぁ……」

「今回の方が少ない素材だしね。重要性高いし……また周回しなきゃねぇ……」

 

 遠い目をするオオガミとエウリュアレ。

 とはいえ、一番大変なのは孔明たち実働班なので、まだ見ているだけの二人はマシなのだが。

 エウリュアレはバタークッキーを食べつつ、

 

「うん。とりあえず、ボックスを掘るためにパーティーを整えないとよね。今回はクイック有利な感じがあるから、スカディを引っ張って来るべきかしら……」

「ん~……個人的にはラムダを運用したいんだけどねぇ……まぁ、攻撃力さえ足りれば行けるかな。ボーナスは無いけど、気合でいけるでしょ」

「ナイチンゲールがクイック全体だったら可能性はあるのよね……って、なんで私まで戦略を考えているのかしら……」

「……なんでだろうね?」

 

 平然と会議をして、ふと思い出したように言うエウリュアレに、同じく疑問で返すオオガミ。

 ただ、なんだかんだ戦闘を見守っていたことが多いのはエウリュアレが一番多いのは確かだろう。

 なので、オオガミはエウリュアレのカップに紅茶を注ぎつつ、

 

「なんにせよ、後ちょっとでラムダから絆礼装がもらえるから、夢火の準備しておかないとだね」

「もう十全に用意してるくせによく言うわ。まぁ、まだ三人分も揃ってないし仕方ないんだけど、まだ揃ってなくても大丈夫でしょ?」

「まぁね。というか、なんだかんだラムダが優秀過ぎて適当に編成組んでも周回できるの凄いと思うんだ……」

「本当にね。おかげでパラケルススと孔明が死んでるけど」

「まぁ、何とかなるさ。強く生きてもらおう」

「雑ねぇ……」

 

 案の定適当に済ませようとするオオガミに、エウリュアレは呆れたように微笑むのだった。




 クイック礼装かぁと思い、最終的にスカスカにしなくちゃいけないという現実に発狂しそうな私です。スカスカは楽だけど基本的に推しキャラを運用できないのが厳しい所……フレンドがスカディに染まったので孔明主軸の私は死んだ……


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サンタの季節がやって来たわ!(繰り上げクリスマスって良いんでしょうか……)

「サンタの季節がやって来たわ!」

「今年は早めなの!」

「繰り上げクリスマスってどうなんでしょう……大きい方の私は頭の中が漫画でいっぱいなのと世界を海水で満たしたいのしかいないから相談できませんし……」

 

 楽しそうに声をあげるナーサリー達の後ろで、悩ましそうに頭を抱えるジャンタ。

 しかし、そんな彼女の悩みなど関係なく、今年のクリスマスはかなり繰り上げて始まる。

 

 

 * * *

 

 

「ん? くりすますぅ? うむ、吾に関係ないなそれ。呼び出されなかったからな。吾には分かる」

「いやまぁ、確かに関係ないですけど……普通そこまで確信を持って言いますか?」

 

 ドーナツを食べながらドヤ顔で言うバラキーに、ため息を吐くカーマ。

 ちなみにだが、オオガミとエウリュアレ、ラムダの三人は、特効サーヴァントといつものアーツパーティーを連れてイベントへと旅立っていた。

 それもあって、カーマは不満そうな顔をすると、

 

「マスターさんもいないですし、監視役も減っているので今が遊び時だと思うんですが」

「ん……まぁ、それを言われると確かにそうなのだが……吾、まだ食べきってない……」

「完全に餌付けされてるじゃないですか……」

「否定はしない。吾絶対にキッチンにだけは手を出さぬからな」

「ダメダメじゃないですか。完全に手遅れなくらい餌付けされてますね……?」

「まぁ、カーマの作るものも美味いがな。比べられはせぬ」

「……まぁ、私は素材で殴ってるだけですし。あれ。もしかして厨房の食材に私の使っているのを紛れ込ませられたらカロリーパンデミックを起こせる……?」

「や、やめろカーマ。それ以上は殺される……!」

「えぇ~? 怖じ気づいちゃったんです?」

 

 青い顔をして言うバラキーに、カーマはニヤリと笑いながら言う。

 だが、バラキーは苦い顔をしながら、

 

「同じような性能を持っていたチョコレートを使って同じようなことをしたのがいて、即座に斬り捨てられたのがいてな……見ているこちらが痛くなるような凄惨な事件だった……」

「マジなやつじゃないですか……というか、バレンタインにそんなのあったんですね……」

「うむ……あの時は本当に無謀なことをするものがいるんだなぁと……吾ビックリ。真っ黒な人は何でもやるなぁと感心してしまった。人間ながら天晴れよな……」

「バラキーがそこまで言うなんて、とんでもないですね……一体何者なんでしょう」

「まぁ、今はアビゲイルのおもちゃ状態なのだがな」

「えぇ~……」

 

 感心していたカーマは、最後の言葉で一気に不満そうな顔をするのだった。




 書き終わるくらいにはメンテも終わってるだろうと思いつつ、さては明日までできないなこれ? と嫌な予感がしている私です。

 ログインは……していたはず……


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クリスマス2019 ナイチンゲールのクリスマス・キャロル
ヤッホーアストルフォだよっ!(うわ出たな十二勇士)


「やっほーマスター! お初かな! セイバーアストルフォだよ!」

「うわ出た」

「ちょ、マシュに殺されるわよ?」

「あっれぇ? コレもしかして歓迎されてない~?」

 

 召喚されて挨拶をするも、オオガミとエウリュアレの慌てようを見て何となく嫌な雰囲気を感じるアストルフォ。

 そして、オオガミは顔をあげると、

 

「よし。じゃあボックスだから、アストルフォにはこのギル祭で溜め込んだ種火を食べて貰おう」

「すごい適当な理由で育てるんだね君は」

 

 大量に袋詰めされた種火を渡されたアストルフォは、困ったような表情をしながらも種火を受けとる。

 

「うわっ、スゴい量。これ、最終再臨まで行けるんじゃないの?」

「まぁね。使った分は補充するつもりだから、使われてもそんななにダメージ無いのでドーンと使っちゃって?」

「豪気だなぁ……足りなくなっても返さないからね?」

「むしろ返すとかどうやるのか知りたいよ?」

「ほら……種火を食べさせて肥えたサーヴァントを他のサーヴァントの養分にするとか……」

「その発想はなかったわ……今度陳宮をそうやって処理しよう」

「うん。ヘイトは他の人が取ってくれてたみたいだね。よぅし、全部貰っちゃうぞぉ!」

 

 そう言って、アストルフォはポリポリと種火を食べ始める。

 そんなアストルフォを横目に、エウリュアレはオオガミの袖を引いて耳を近付けさせると、

 

「本当に上げてよかったの?」

「いや、まぁ、全然構わないけど……というか、いつも通り回るつもりだから確実に種火がある程度溢れるんだけど」

「……まぁ、確かにそうよね……でも、素材を雑に減らしたせいで色々足りてない気がするのだけど」

「あ~……うん。それはまぁ、そのうちね」

「地獄を見そうね。私は関係ないけど」

 

 一番悲鳴を上げそうなメンバーは、今はここにおらず、休んでいるのだった。

 そんな事を言っていると、ラムダがやってきて、

 

「ちょっと、想像以上に寒いのだけどどういうこと?」

「あ、ラムダ。ここは一応サンタアイランドとかいう名前の極寒の地だからね……」

 

 パーカーを着てサングラスまでつけて寒いと抗議しに来たラムダにカイロを渡しつつ。

 

「これで足りるかな」

「……もうちょっとこっちに来なさいよ」

「ハイハイ。って、うぉ、びっくりした」

「ふぅ……これでいいわね」

 

 そう言って、オオガミの腕の中にすっぽりと埋まるラムダ。

 それを見てエウリュアレじゃすかさずオオガミの足に一撃蹴りを入れるが、オオガミは顔を引きつらせながらもそれに耐える。

 

「それで? 何をしてたのよ」

「種火贈与」

「あぁ……私はドレインしたから関係無いヤツね」

 

 そう言って、もりもりと種火を食べるアストルフォを、三人は見守るのだった。




 10連一回アストルフォ2枚抜き礼装なし……あれ、目的の礼装が全種類一枚も来てないぞ……?


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どうしてマスターさんはいないのかしら(そりゃイベントだしな?)

「……どうしてマスターさんはいないのかしら……」

「だからって部屋に勝手に入って占拠してもなんも変わんねぇと思うぜオレは」

 

 部屋でベッドに転がってバタバタと足を振るアビゲイル。

 その様子を椅子に座りながら見ているアンリは、だるそうにあくびをする。

 

「そもそもよぉ、イベントなんだからもう出発してんだろ。お得意のマスター感知で探し出せばいいんじゃねぇのか?」

「まぁ、そう言われるとそうなのだけど……最近やり過ぎて、ダ・ヴィンチさんに使っちゃダメって言われたの。このおしゃれなブレスレット、門を開こうとすると集中力を乱すんだって」

「へぇ? 面白そうな機能だな。それってあれだろ? お得意の触手も出せないんだろ?」

「いいえ? それは普通に出るわよ?」

 

 言うなり、飛び出た触手がアンリの足首を掴み宙づりにする。

 宙づりにされたまま揺れているアンリは複雑そうな顔をすると、

 

「出来るじゃねぇか。足首壊れてないし、制御は出来てるんだろ?」

「ん~……でも、ぼんやりするわ。制御できないわけじゃないんだけど、探すのは大変な感じ。いつもみたいに探せない感じって言うか……」

「なるほどな。で、降ろしてくれんの?」

「降ろしてほしいの?」

「いやまぁ、落とされたくはないわな?」

「ん~……まぁいいわ」

「お、やったぜげぶぁ!?」

 

 安心したようにアンリが言うと同時、触手が緩んで落とされる。

 見事に顔面から落ちたので、痛そうに顔を押さえながら立ち上がると。

 

「ってぇ~……絶対やると思ったわ……」

「受け身取れてないけど……良いの?」

「いや痛いのはオレだしな……つか、落とす方がどうかと思うんだが」

「まぁ、それは、うん……アンリだし……良いかなって」

「う~ん納得のいく納得したくねぇ理由だな全く!」

 

 はぁ。とため息を吐き、アビゲイルに近付くアンリ。

 近づいてくるアンリを見上げ、アビゲイルは首をかしげると、

 

「何?」

「いや、さっさと管制室に行ってマスター達んところ行こうぜって思ってよ」

「ん……迷惑になっちゃわないかしら」

「ならねぇよ。あのマスター、そう言うところが良いんだろ?」

「んむむ……分かったわ。管制室まで行って、どの時代のどこかさえわかればたぶん何とかなるわ!」

「不穏だな……まぁ、付き合うけどよ?」

「ふふん。じゃあそうと決めたら一直線! 行くわよアンリ! レッツゴー!!」

 

 そう言って、アンリの手を引いて走り出すアビゲイル。

 アンリは困ったように笑いながら、ついて行くのだった。




 のんびりAP消化する程度の周回してる感じです。礼装取得に時間かかるなぁ……


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アシュヴァッターマン参上!!(ブラックサンタが負けるわけにはいかねぇな!!)

「乗着! 憤怒の化身、至尊の戦士! アシュヴァッターマン参上!」

「ブラックサンタとしては負けられねぇなぁ! そうだろアビゲイル!」

「アンリが殴られるのは分かるのだけど、私まで倒されるのは納得いかないわ」

「おっと。どっちも敵みたいだな! ま、やれるだけやりますか!」

 

 そう言って、ステージを駆けるアンリ。

 その黒い影を落とすべく、燃え盛るチャクラムは疾走する――――。

 

 

 * * *

 

 

「おぉ……これは、ヒーローショーもありかもしれない……次ラスベガスに行ったときにルカンでやってみようかな」

「その時は私も一緒に参加しようかしら。あのイルカ女のエリアを荒らすのもアリよね」

「いいわね。私も行こうかしら。ヒーローは複数で悪役は一人なんでしょう? リンチとか、最高に私向きじゃない」

「絶対間違えてる」

「その発想なら私がリーダーでいいわね」

「物騒過ぎるヒーローね」

「「発案者の発言じゃない」」

 

 二人の突っ込みを受け、反省するでもなくむしろ何故か気分がよさそうにドヤ顔をする。

 そんなことをしている間にも、いつの間にかチャクラムと触手に追われているアンリがいた。

 

「……あれ、もはやイジメよね」

「まぁ、アビーが敵対するのは分かってたし、実質三つ巴の戦い」

「平然と争うあの二人ね。なんというか、いつも通りよね」

 

 何度も触手に襲われるも紙一重で躱し続けるアンリ。

 まるでどこから来るのかを分かっているようなその動きは、どれほど日常的に行われているかを象徴しているようだった。

 

「なんというか、あの正確な回避はどこかの誰かを思い出すわ……」

「アンリ……カルデアに帰ったら何か美味しいものでもあげよう……」

「マジで大丈夫かしらこのカルデア」

 

 不穏な事を言っている二人に、ちょっと引いているラムダ。

 だが、やがてアビーもアンリに追いついて行き、触手に足を引っかけられた瞬間炎を撒き散らしながら突撃してくるチャクラムに引かれるアンリ。

 それがトドメとなったのか、アンリは親指を立て、がくりと気を失う。

 アビゲイルはそれを見届けると、

 

「ふふっ。憤怒の化身さん。貴方、中々やるのね。見直したわ」

「おぅ。黒サンタってのは縁起がワリィからな。だが、テメェも敵なんだろう?」

「えぇ……私がサンタキラー、大掃除の魔女よ。でも決着の時は今じゃないわ。また今度、改めて戦うとしましょう……バイバイ、夢と希望のサンタクロース」

 

 そう言って、触手でアンリを引きずりながらステージ裏へと入って行くアビゲイル。

 勝利のポーズをとるアシュヴァッターマンを見ながら、三人は、

 

「アビーの演技力に脱帽」

「あれ、素だと思うの」

「あんなの素でやられても困るのだけど」

 

 そんなことを言いながら、拍手を送るのだった。




 アシュ兄貴好き……かっこいい……

 あ、アンリが狙われているのは今日だけで宝具レベルが2上がったからです。別に嫌ってるわけではなく、これは単にアンリとオオガミ君が近い設定なので。


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ボックス周回準備は終わった?(礼装ドロップ待ちなんですがそれは)

「ボックス周回準備はそろそろいい感じかしらね?」

「いやぁ、全然終わんないね。礼装ドロップまだですか」

 

 楽しそうにゴーストを引きつぶしていくロリンチを見ながら、ぼんやりと話すオオガミとエウリュアレ。

 支援物資としてBBから送られてきたコートとニット帽をかぶって手袋まで装備したエウリュアレは、先ほどオオガミがたき火で温めたばかりのホットチョコレートを飲んでいた。

 

「礼装が落ちないと効率上がらないものね。どうしたものかしら」

「いやまぁ、ドロップの為にも周回しなきゃいけないのが現実なんだけどね。正直辛い」

「そうよねぇ……って言っても、今は周回しやすいんだから、今のうちに楽をしておくべきじゃないの?」

「まぁ、そう言われるとそうなんだけども……」

「やりたくない気持ちは分かるけどね。というか、最近雑にやり過ぎて感覚麻痺って来たんじゃないの? 大丈夫? ちゃんと戦える?」

「いやぁ、縛りをするだけの脳があるかだなぁ……最近だらけてるのは事実だし……」

 

 はぁ。とため息を吐き頭を抱えるオオガミ。

 エウリュアレはオオガミに寄りかかりつつ、

 

「ねぇ、いい加減真面目に戦ったら?」

「勝てると分かってる戦いにスリルは無いから……」

「別にスリルは要らないわよ……というか、それで毎度泣きそうになってるやつに言われたくないのだけど」

「でもほら、バフもりもりして戦うからそうそう負ける事は無いし……全力出すのは高難易度の時くらい……いや、高難易度もゴリ押しで叩きつぶすからあんまり関係ないかも……」

「雑に戦える戦力が揃うと大体こうなるのね……なんというか、ちょっと学んだわ」

「なんだか残念な奴って思われてる気がする」

「事実だから問題ないわね」

 

 固まり始めたチョコレートをオオガミに渡して温めてもらいつつ、同じく送られてきたマシュマロを串に刺してたき火にかざして焼き始める。

 

「……こう、じわじわと熱が入っていく感じ、良いわよねぇ……焼け跡を作らないようにゆっくり焼いていく感じとか。真っ白なまま焼き上がると最高よね」

「そこまで出来るのって普通にスゴいと思うよね。どう考えても焼き跡付くでしょ」

「こう、火の当たり具合を調節すれば行けるわ。えぇ、わりと簡単よ?」

「う~ん、目の前でやられると簡単そうに見えるなぁ……」

「ほら、貴方もやりなさいよ」

 

 そう言って、マシュマロを渡してくるエウリュアレ。

 オオガミは温め終わったチョコレートを渡しつつ、仕方無そうに参戦するのだった。




 ちなみに、焼け跡無しのとろとろマシュマロ。実際に出来るので、機会があったら挑戦してみてください。謎の達成感あると思います。

 まぁ、私自身マシュマロ焼いてるのって滅多に見ないから、普通に出来るのかもしれませんけどね。

 え? 周回? 全然してませんよ(白目


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良いご身分ねマスター(お疲れ様ですスタァ)

「あらオオガミ。エウリュアレに寄りかかられて、良いご身分ね」

「あぁ、ラムダ。お疲れ様」

 

 夜も遅くなり、寝ているエウリュアレに寄りかかられているオオガミは、やってきたラムダに挨拶を返す。

 それを見てラムダはため息を吐くと、

 

「貴方ね、否定くらいしなさいよ」

「なんで? 女神さまに気を許されている時点で結構良い身分だと思うけど。そんなに安くないでしょ」

「ぐぅ……否定できないじゃない」

「まぁ、当然ラムダの隣も安くないけども。お隣いかがですか。スタァ」

「……バカにしてるのか、本気で言ってるのか。どちらにせよ、一発蹴って良いかしら」

「暴力反対ですよスタァ」

「大丈夫。調子乗ってる犬に躾をするだけだから、何の問題もないわ」

「う~ん、後でで良いですか」

「……まぁ、エウリュアレを起こしたら大変なのはこっちだもの。そのうちやり返すから」

「ありがとうね。で、隣に座る?」

「言うまでもないわよ」

 

 ラムダはそう言うと、オオガミの隣に座り、エウリュアレと同じようにオオガミに寄り掛かる。

 オオガミはラムダの足に膝掛けをかけてカイロを渡し、たき火に薪をくべる。

 ゆらゆらと揺れる炎に目を奪われているのか、じぃっと見つめているラムダを横目に、今度は余っていたマシュマロを焼き始める。

 

「ねぇオオガミ?」

「どうかしたの?」

「その、鬼ランドの時みたいにまた二人で出掛けるとか、出来るかしら。無理なら無理で良いのだけど……」

「うん? 全然良いけど……良さそうなところが見つかったときで良いかな。楽しめるところとか分かんないし」

「初見で良いのよ。一緒に新鮮に遊べる方が良いでしょ。面白いものでも、何度もやってたら飽きるわ」

「まぁ、確かに。じゃあ、なんか面白そうなところがあったらその時は誘うね」

「良いわねそれ。私の時はまた別のでお願いね?」

 

 突如入ってくる声にビクリと震えるラムダ。

 オオガミは起きているのに気づいていたので、大して驚いている様子は無かった。

 そして意気揚々と入ってきたエウリュアレは、

 

「さてさて、どんな所かしらね。ラスベガスはもう行ったし、初見で行くならどこかのイベントか次の夏イベントかじゃない?」

「そうねぇ……というか、ラスベガスとかはステージで何もできないのだけど。その時は二人で遊んでなさいよ」

「ん~……もう遊んだのだけど、まぁ楽しめると思うわ。一年も経ったら一周回って新鮮よね」

「うんうん。じゃ、ラスベガスではエウリュアレとかな……あれ、そう言えば、BBとノッブにどこかに連れて行けって騒がれた覚えがあるなぁ……」

 

 そんな事を思いながら、オオガミは残り少ないマシュマロを焼いては左右の二人に渡していくのだった。




 最近距離感が一気に近付いている気がするこの三人。まぁ唯一夢火使ってる勢なので是非も無し……?


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そろそろ本気を出しますか(最初から出してほしいわね)

「さて、それじゃあそろそろ本気を出しますか」

「最初からそうしてくれると助かるのだけど」

「コイツの場合、単純にやる気がなかっただけだと思うのだけど」

 

 要するにサボってただけでしょ? というラムダの指摘を受け、明後日の方を見るオオガミ。

 その態度が何よりも雄弁に心情を表しているのだが、素なのかわざとなのかは彼にしかわからない。

 

「それで、相手はランサーみたいだけど、どうするの?」

「またラムダでゴリ押しをだね……」

「ゴリ押しが過ぎると思うのだけど……」

 

 はぁ……とため息を吐く二人。

 オオガミはそれを聞いて少し考えると、

 

「まぁ、とりあえずまだ素材交換が全部終わってはいないし、先にそっちを集めてからかな?」

「まぁ、そうなるわよね。だから昨日のうちに終わらせておくべきだったと思うのだけど」

「申し訳もないですけど、スゴく納得いかない」

「言われた時点で負けよ。諦めなさい」

 

 ぐぬぬ。と唸るオオガミに、微笑んで返すエウリュアレとラムダ。

 

「まぁ何にせよ、今回の過労死枠は嫁ネロですね」

「ついにオブラートに包まなくなったわね」

「どこでも運用という意味なら私が一番その枠だと思うのだけど」

 

 双方向から別の突っ込みが突き刺さり、困ったように笑うオオガミ。

 というよりも、反論が出来ないので笑うしかないのだった。

 

「まぁ、ラムダは優秀すぎてわりとどこでも周回できるから、連れ回しちゃうのは是非もないと思うんだ」

「だからって限度があるでしょうが。セイバー相手にも連れていく理由になると思わないでよ? キャスター達はバフ要員だからライダー相手でも分かるけど、アタッカーな私の相性不利までは別よね?」

「あれ……ラムダをセイバーで連れ回したのって種火くらいじゃない……?」

「たまにイベントでも雑に配置するでしょうが……!」

「あ、あ~……そういえばお姉ちゃん運用前はとりあえずラムダで行ってる気もするなぁ……う~んセイバーでも回れるラムダってば最強?」

「私が最強なのは当然のことだけど、それはそれとして戦いたくない相手だっているのだけど……相性くらいは考えてほしいわ」

「薙ぎ払えるならそれで良しの精神じゃダメですか」

「なに? 次はお腹にくちばしを食らいたいって?」

「ごめんなさいでした」

 

 笑顔で聞くラムダに、芸術点の高い土下座で即座に答えるオオガミ。

 それを横から見ていたエウリュアレは笑いながら、

 

「ふふっ。単体から全体になって周回しやすい性能をしている時点で今さらって感じよね。これからもセイバー相手に運用されると思うし、頑張ってねラムダ」

「なんでセイバーも倒さなきゃならないのかしら……私、ランサーなのだけど……」

 

 ラムダはそう文句を言いながらも、どこか楽しそうなのだった。




 気付いたら寝てて起きたら23時過ぎてたでござる(戦慄

 とりあえず交換素材交換し終わってからランサー対策を考える後回し戦法ですね。最悪ラムダが頑張る。


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ソロステージチケットゲットだぁーー!!(渡したの、失敗だったかしら……)

 ※若干のラムダ絆礼装バレあります。ご注意ください。

















「ぃよっしゃぁ!! ソロステージチケットゲットだぁー!!」

「ぐぅ……渡したの、失敗だったかしら」

「まぁ、あれだけ喜んでるから良いんじゃないの?」

 

 もはや発狂していると言えるほどのレベルで喜ぶオオガミを見て、ラムダはため息を吐き、エウリュアレは首を振る。

 そんな狂乱の中にいるオオガミに向かって投げ付けられる白い弾丸。

 当たって弾けているので雪なのは確実で、では誰が投げたのかと投げられた方を見ると、

 

「うがー! 余は疲れた! スキルだけ使って後ろに下がるのはストレスが溜まるだけだ! 余にも戦わせろぉ!」

「あら。完全にお怒りなのが来たわね」

「確かにスキルだけとか嫌ね。戦いたいもの」

「アタッカーの貴女が言うと、皮肉なような、理解できるような……微妙なところね」

 

 ともかく、ネロの容赦のない雪弾は次々とオオガミの頭に叩き込まれていく。

 すると、どこからともなくアナスタシアがやって来てネロの隣に立つと、

 

「ダメよネロ。そんな雪玉じゃダメ」

「む、ぅ……? 何がダメなのか皆目見当がつかないが……聞くだけ聞こう」

「えぇ。簡単なことよ……小さい氷を混ぜ込むのよ」

「想像以上の殺意!」

「ヤバイわよあの雪玉に殺意が込められて流石のアイツも死ぬわ」

「アーチャーの矢はかわすのにセイバーの投擲は当たるの……? 普通逆じゃない?」

 

 ラムダの疑問に答える声はなく、何故か楽しそうに見ているエウリュアレがいた。

 一方、ネロとアナスタシアの凶弾を察知したのか、ガバリと起き上がるオオガミ。即座に左右を見渡してネロとアナスタシアを見つけると、チケットをしまってからラムダ達に向かって逃げていく。

 

「……ねぇエウリュアレ? アイツがこっち来てるってことは……」

「……あの雪玉がこっちに飛んでくるってことよね」

「「……」」

 

 二人は顔を見合わせ、逃げてくるオオガミではなくアナスタシアを見る。

 そこには楽しそうに目を輝かせているアナスタシアと、なにかと葛藤しているネロ。

 

「よし。ヴィイの加護もあるから、これで絶対必中ね。必ず倒せるわ」

「絶対なにかを間違えている気がするのだが……まぁ、思い付かぬのなら無いと同じだな! よぅし! まずは一投!」

 

 無敵貫通。脳裏に浮かんだその言葉を反芻し、直後、攻撃範囲から逃れようと全力で逃走するラムダとエウリュアレ。

 涙目で逃げてくるオオガミは見捨てる方針だった。

 

「助けてぇ~!!」

「無理。強く生きて」

「ソロステージに来なかったら殺すから。意地でも逃げ切りなさい」

「見捨てながら言うセリフじゃねぇな!?」

 

 そう言うオオガミの真横を雪弾が通り抜け、三人は戦慄するのだった。




 約4ヶ月……ここまで大変でした……ひたすらラムダを運用するために無理を通して道理を壊す生活……セイバーとか敵じゃねぇから宣言……セイバーウォーズで一番世話になったのがラムダって、相性って知ってる? と聞かれそうな暴挙ですね……

 とにかく、嬉しすぎて私は死にました。これでラムダもメルトも絆10……これから15にしなきゃ……(ハァハァ


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箱は順調かしら(モチベーション問題が大きい)

「箱はどう? 順調?」

「ラムダシステムを組めなきゃモチベーションに関わるので必死に模索中」

「孔明達より酷い理由の選出されてない?」

 

 現在、孔明の援護を受けながら張り切っているプーサーとアルトリアリリィ。

 今回は敵がランサーのせいでシステムをぶん投げたため、ついに相手を殴れるようになった孔明の顔は、どこか生き生きとしていた。

 そんな中、二人は不穏な話し合いを続ける。

 

「それで、組めそうなの?」

「え、そこ聞いちゃうの?」

「礼装が完成すればおそらくいける」

「いけないでほしいのだけど」

 

 そう言えば解放された始めの頃に一回だけ回ったような、と考えるラムダ。

 その時のデータだけでやろうとしている事がぼんやりと分かると、オオガミから少し距離を取る。

 

「現状最大の問題は礼装だけど、まぁなんとかなるでしょ」

「肝心なところを雑に済ませて良いの?」

「祈るしかないし……仕方ないと思うんだ」

「前は回転数でゴリ押してたけど、今はリンゴが足りないのよね……」

「あればゴリ押すんだけどねぇ……うぅむ、難しいものだよ」

「そこに周回する側の意思は?」

「あると思う?」

「あるはずもなく」

「……まぁ、私でもそういうわね。えぇ。孔明達を見れば一目瞭然だったわ……」

 

 そう言って、苦笑いをするラムダ。

 息ピッタリな二人に呆れつつネロの方に目を向ければ、周回から解放された喜びから歌い始め、連れ回されているパラケルススは泡を吹いていた。

 歌声がここまで届いてこない幸運に感謝しながらも、礼装が揃い次第の顔が曇ると思うと、可哀想と思いつつも頬がにやけるのが止められないラムダ。

 だが、慌てて顔を叩き表情を戻すと、

 

「んんっ、それで? 予定としてはどれくらい?」

「明日中に出来れば良いなぁとは思ってる。早く終わるならそれに越したことはないけどね」

「そう。じゃあ、私は待ってるわね。出番が来たら呼んでちょうだい」

「うん。お疲れ様ラムダ」

「後で私もそっちに行くわ。待っててね」

「入れ替わりにならなければ良いけど」

 

 そう言いながら、ラムダはその場を離れる。

 オオガミはそれを見送り、

 

「さて……じゃあ礼装を取りに行きますか」

「絆創膏を集めるついでが礼装なんじゃないのかしら」

「ま、最終的にはどっちも必要だから意味的にはそんな変わらないよ」

「どこか違う気もするのよねぇ……」

「気にしない気にしない。じゃ、レッツゴー!」

 

 そう言って進むオオガミに、首をかしげながらエウリュアレはついていくのだった。




 とりあえず1日10箱以上は行けそうなんですけど、やはり3Tじゃないので精神衛生上よろしくないのですね……
 ラムダシステム完成が求められる……! 礼装落ちろぉ……!


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結局私に帰ってくるのね(宣告通りと言うわけですよ)

「結局私に帰ってくるのね」

「ふっ。宣告通り成し遂げたぜ……」

「不屈の精神過ぎないかしら」

 

 昨日宣言した通り、礼装ドロップと同時にラムダ編成を構築したオオガミ。

 その勝ち誇ったようなドヤ顔を見て、エウリュアレはオオガミの足を執拗に一点だけを軽く蹴り続ける。

 対して、編成に組み込まれたメンバーの目は既に死んでいた。

 

「あぁ、なるほど。これはいつものメンバーです。玉藻さんは……留守番のようですが」

「アーツパーティーなら本来余の場所はキャス狐がいるはずでは……? 何故余が周回メンバーなのか……」

「考えるまでもなく第一スキルの影響ですよ皇帝。私は全スキルが原因ですが」

「メンバーの目が澱んでいて、もはや周回どころの話じゃないのだけど」

「ネロはスキルだけだけど残り二人は攻撃してるでしょ」

「ほぼ誤差だ」

「あまり変わらないですね」

「カタパルトに詰め込まれたい?」

「横暴が過ぎる……!」

「なるほどこれが暴君ですか」

「散々な言われようね?」

「ここまで言われたら否定できないわ」

 

 ついに否定することを諦めたオオガミ。

 そして、少し考えたオオガミは、

 

「よし。じゃあクリスマス終わったら三人とも休憩!」

「よし! それでこそ我がマスター!」

「久しぶりに研究が出来そうですね」

「余は寝る……後美味しいお菓子を食べる……余は疲れた……」

 

 そう言って、喜ぶ者ともはや喜ぶ気力すらない者とでわりと別れていた。

 しかし、そんな三人に追い討ちをかけるようにオオガミは言う。

 

「ただし、代償はスカディ様で」

「「「!?」」」

「巌窟王は頑張ってくれると思うので、種火周回はなんとかなるはず」

「な、なんだこのマスターは……素直に休みを出せないと言うのか……!」

「超回復薬を調合するしかなさそうです」

「……余、別に関係無いのでは?」

 

 悩む二人と、真実に気付くネロ。

 やがて悩んでいた孔明はハッと気付いたように顔をあげると、

 

「マーリンで手を打てるのでは?」

「マーリンなら良いんだ……」

 

 オオガミの静かな突っ込みにキリッとした顔でサムズアップする孔明。

 何気にマーリン単品だけ嫌われているような気もするが、気のせいだろう。

 

「まぁ、マーリン単品で周回するならちょっと工夫しなきゃなぁ……」

「前はカレイドスコープに虚数魔術でゴリ押していただろう」

「あぁ、懐かしのあの戦法! それなら確かに。じゃあ、休憩期間はマーリンが周回ですね。よぅし、そのためにも箱開けしますか」

「……結局周回からはまだ逃れられんと言うことか……」

 

 孔明はそう言いながら、頭を抱えるのだった。




 ラムダ周回……! これでモチベーションが無限大ですね。なんでこんなにラムダにこだわるのか……自分でもわからないけど推しで周回できるならその方が良いですよね!


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ゲームって個性出るよね(特にこういうゲームだと尚更ですよね)

「こういうサンドボックスゲームってさ。やっぱ差が出るじゃん? RPGとかよりもわりと極端に。目標とかって考えてる?」

「そっすねぇ……とりあえず冒険し尽くす! って感じっすかねぇ。時間は有り余ってますし、一通りアイテム揃えて倒せる敵倒し終わるまでとか?」

「建築派はいないのか……」

「姫ちんみたいにゲームの中まで引きこもらないって」

「拙者も武器持ってとりあえず突撃するからなぁ……建築センス皆無というのもありますが」

「くっ、だからいつも姫だけ建築なのか……!」

 

 珍しく、三人揃ってレクリエーションルームに集まって同じゲームで遊んでいた。

 何故揃っているかと言われれば、クリスマスの雰囲気にあてられて特に何かしようと言う雰囲気になり、その勢いのまま飛び出した三人がバッタリと出会ったからなのだが。

 とにもかくにも、出会った三人は、無駄に時間を喰らっていく魔性のサンドボックスゲームに手を出していた。

 

「というか、姫ちんの建築、いつも芸術レベル高すぎでは? 毎度本当に住んでいいのかレベルなんだけど」

「部屋数が多すぎるのと、そもそもがデカすぎて構造把握が厳しすぎるでござる。拙者的にちょっと住み辛い」

「姫はただいつも通りやってるだけなんだけどなぁ……」

「「要求素材が多すぎる」」

「それ皆言うんだけど」

 

 そう言って、刑部姫は遠い目をする。

 言い放ったガネーシャと黒髭は、何十スタック単位で要求される必要素材に戦慄しているのだが、要求している本人がこれなので何を言うのも馬鹿馬鹿しくなっていた。

 

「それで、姫ちんは懲りずに何を作ろうとしているのさ」

「次は……そうだね。キャメロットとか? この前マテリアルで見て面白そうだなって思って」

「とんでもないこと言ってますよこの人」

「次は石英ですかね。ラピスラズリも?」

「エンチャント素材が資材として出荷されていく……建築のための致し方ない犠牲……」

「いや、別にウールでも構わないんだけど……」

 

 しかし、刑部姫の声は届かず、二人は既に集めるつもりでいるようだった。

 そんな二人を見て刑部姫は、

 

「どちらかと言うと、この是が非でも集める姿勢が姫の退路を断ってるんだけど……」

「なんか言ったっすか?」

「えっ、あっ、おや、何でもないよ!」

「はいはい。何か必要だったら言ってくださいよ~」

「うん、分かった~」

 

 そう刑部姫は返事をしつつ、既に何か覚悟を決めたような顔をしている二人に、うっすらと恐怖を覚えるのだった。




 ボックスから逃げて遊んでいるのは私です。マイクラたのちぃ。


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今年は無事にクリスマスを迎えられるのだろうか(心配しても仕方ないって)

「ふむ。クリスマスというと、私としては一昨年の印象がわりと大きいのだが……今年は無事迎えられるのだろうか」

「あっはは。不穏なこと言うもんじゃないよ? というか、是が非でも迎えさせるんだから。流石に強制退去はしばらくしないでしょ」

「まぁ、そう言われると確かにそうなのだが……」

「でしょ? なら、料理作った方が絶対良いって。ほらほら、準備するよ」

 

 そう言って、エミヤを急かすブーティカ。

 急かされたエミヤは仕方ないとばかりに調理を再開する。

 

「しかしマスター達が帰ってこないのは分かっているが、戦闘に参加しない者も何名か消えていないか?」

「ん~……遊びに行ったのかな? 私も見てないからなんとも言えないけど」

「ふむ……まぁ、帰ってくれば良いのだが」

 

 そう言って、エミヤは今ここにいない一部のサーヴァントを思うのだった。

 

 

 * * *

 

 

「寒い! なんで寒いのにこんなところに来なきゃいけないんですか!」

「風の噂ではあるが、様々な料理があると聞いて飛び出した。クリスマスパーティー開催までは暇だからな。御馳走があるのなら飛び出すのが鬼の性よ」

「それに巻き込まれた私は何に怒れば良いんですか……!」

 

 猛吹雪の中、腰まで雪に埋まりながらも速度を緩めず疾走するバラキーと、先頭が作っていった道を走って追いかけるカーマ。

 もはや前など見えていないが、自信満々に突き進む彼女を止められるわけもなく、目的地を定めているらしいのでひたすらについていく。

 

「それで、場所は分かってるんですか!?」

「分からんが美味そうな匂いがするからおそらくこっちだ!」

「この極寒の中でも嗅覚が働くとか、鬼ってスゴいですね……!」

「クハハ! そうであろう!?」

「嫌味を真に受けないでくださいよ……!」

 

 皮肉も通じないのかと頭を抱えるカーマだが、冷静に考えると皮肉が通じる方がレアだと考えを改める。

 そんなこんなでだんだんと吹雪が収まってきたとき、バラキーがふと立ち止まる。

 

「どうしたんです? 目的地ですか?」

「いや……甘い菓子よりも先に血痕を見つけてな……どうしたものかと」

「はぁ? こんな吹雪の中の血痕とか、そんなのもう凍え死んでますって……」

 

 そう言ってバラキーが見ているところを覗き込むカーマ。

 そこにはまるで人形のような血痕があった。

 魔術で雪が積もらないようにされている辺り、何か残したかったのだろうか。

 

「う~ん……何の跡でしょうか……わざわざ残してるとか、ワケわかんないんですが……」

「おおよそ周回に疲れた奴等の遊び心か……ということは、近くにマスターがいるな」

「は? いや、待ってください。なんでそうなるんです?」

「ん? 何故と言われても、吾がいたときもやっていたからなぁ……人間とはわりと脆いものよ……」

「えぇ……」

 

 どう言うことですか……というカーマの突っ込みも空しく、やがてそういうものだと理解するのだった。




 はたして無事にクリスマスを迎えられるのか……このイベント日程、ゲーティアの時も似た感じだった気がするんですが一体……


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子イヌが弱っている予感!(気になるなら行ってみます?)

「ハッ……! なんとなく子イヌが弱ってる予感! 今なら強引なライブ予約も出来るのでは!?」

「いや待て待て待ちやがれこの自称アイドル! させませんよそんなこと!」

 

 走り出そうとするエリザベートの首根っこを掴み引き戻す玉藻。

 その勢いに倒されるエリザベートだったが、すぐに起き上がると、

 

「だって、今年中にやりたいじゃない! 止まれないわこの気持ち! ネロもきっと参戦してくれるはず!」

「被害を拡大させないでくださいおバカ! あぁもう、マスターは未だにサンタアイランドですか!?」

「えぇはい、そうですけど。なにかご用ですか? 玉藻さん?」

 

 玉藻の嘆きに応えるかのように声をかけてくるBB。

 それを見た玉藻は頬をひきつらせ嫌そうな顔をすると、

 

「うげ、BB……! また厄介事を持ってきやがりましたか……!?」

「人を厄ネタ扱いしないでくれます? こっちはいい加減暇なのでセンパイを回収しにいこうか考えてるんですから」

「回収って……まだ周回中でしょう? それで引き戻したら二名ほどぶちギレて殺されるんじゃないですか?」

「……あの二人を相手にはしたくないですねぇ……まぁ、様子見くらいなら行けますか……」

「行くならこのトカゲ女も持ってってくださいまし。そのうち管制室に殴り込む勢いでしたので」

「BB! 連れていってくれるのよね!?」

「……面倒事を押し付けられましたか……」

 

 BBは苦い顔をするも、渋々と了承する。

 そして、いつものように門を開くと、

 

「行くのは、エリザベートさんと貴女ですか?」

「いえ、私はまだやることがございますので。ささっと行ってください」

「そうですか。まぁ、何かあればノッブに言ってください。一応会話が出来るようにはしてあるので」

「本当になんでもありですねぇ……カルデアに来ても御変わり無いようで」

「まぁ最強系小悪魔後輩は伊達じゃないので。ではまた後で~」

「ライブ、楽しみにしてなさいよね!」

「はいはい。待ってますよ~」

 

 そう言って、手を振る玉藻の前で、エリザベートとBBは門に飛び込むのだった。

 

 

 * * *

 

 

 端的に言うなら、地獄絵図だった。

 バラキーがオオガミの保存食を漁り、オオガミ本人は硬い何かに頭を殴られたのか、血を流しながら倒れており、メルトとエウリュアレはそれを見て若干慌てて、カーマが応急手当をしている状態だった。

 遠く離れたところで周回をしていたのであろう孔明達が倒れており、そのうちの一人であろうネロはアナスタシアと一緒になにかを喜んでいた。

 

「……ちょっと手に負える案件じゃないですねこれ」

「また後で出直した方が良い気がしてきたわ……」

 

 二人はそう呟き、顔を見合わせてから素直に帰っていくのだった。




 玉藻さんいつぶり……?

 ちなみにマスターが死んでるのは大体バラキーのドロップキックのせい。鬼パワーは伊達じゃないのだ。


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明日にはボックス終わらせて帰るぞぉ!(明日中に本当に終わるかしら……)

「よし! 明日にはボックス終わらせて高難易度やって帰るよ!」

「決心したのは良いですけど頭から血を流しながら言わないでください心臓に悪い!」

「死にかけなのに元気なのはある意味もうすぐ死ぬ合図よね」

「自分の治療を盾にするのは新しすぎないかしら」

「いやわりと前からあったと思いましたけど。はいはい。周回行かない私たちが応急処置はしますよ~」

 

 そう言って、オオガミを座らせて拘束しつつ、治療を始めるBB。

 エウリュアレとラムダ以上にカーマが気が気ではない様子なのだが、あえて深くは突っ込まない二人。

 元凶であるバラキーは既に逃亡しており、おそらくカエサルのところにたどり着いているだろうとオオガミは言う。

 

「それで、明日には終わらせるって言ってたけど、出来るの?」

「今日気合いでやったから、明日も同じくらい頑張れば達成。残り……25箱?」

「皮算用も良い所じゃないのそれ。出来る気が全くしないわね」

「出来るって。たぶん。頑張るぞぅ!」

「絶対明後日まで掛かるわ。経験則上。確実に」

「すごい信用されてますねセンパイ! エウリュアレさんにここまで言われるとか、センパイくらいじゃないですか?」

「BB。資材没収」

「横暴が過ぎませんか!?」

 

 あまりにも理不尽な宣言に半泣きになるBB。

 ただ、実際にやらないことは分かっているので、振りだけではあるのだが。

 

「あ、そうだセンパイ。資材で思い出したんですけど、エリザベートさんのステージどうするんです? エリザベートさんの証言を聞いていると、どうやら既にやることが決まっていたらしいですけど」

「えっ、あ、あぁ~……そこはまぁ、うん。そのうちかな? でもまぁ、一応いつもの装備は整えておいて」

「了解です。じゃあ、とりあえずこんな感じで良いですかね」

 

 そう言ってBBは手鏡を見せ、オオガミに処置をしたのを見てもらう。

 オオガミはそれを確認して、

 

「これでまだ動けるかな?」

「正直安静にしてほしいですけどねぇ……雪玉のダメージじゃないですよこれ。投石?」

「石が仕込まれていたから実質投石」

「雪合戦最上位禁止事項じゃないですか。どうなんですかそれ。いや、サーヴァントの投擲を受けて無事なセンパイの体もわりとおかしいですけどね?」

 

 BBはそう言いながらオオガミを立たせると、

 

「じゃ、エリザベートさんには伝えておきますから、ささっと終わらせて帰ってきてくださいよ~」

「うん。ありがとうね」

「保健室の先生としては治療はちょっと負けられないので。まぁ、どこぞの看護師には勝てないですけどね」

 

 そう言ってBBは門を開くと、

 

「あ、カーマさんも帰ります?」

「ん。じゃあ一緒に帰らせてもらいます。こんな甘々空間にはいられません。爆発させてあげたいです」

「どこに甘々要素が……」

「自分の姿を見直してから来てください。じゃ、また後で~」

「カーマさんの言うとおりですね。センパイは自重……いや、これだけいて、未だに二人だけだから自重してる方なんですかね……まぁ良いです。とにかく、多方面に喧嘩を売らないでくださいね。それでは~」

 

 そう言って、BBとカーマは帰っていくのだった。




 今日だけでかなりボックス数増やしましたし、行けるでしょ(白目

 オオガミくんの反応に関しては、「マスター怪我負ったんだし心配しても普通だよね」というリアクションです。鈍感なわけではない。
 ただまぁ、心配しているサーヴァントがサーヴァントですので。まぁ、そういうことです。


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今日中には終わらなそうね?(これくらいならサクッと終わるって!)

「さて。『明日には』……なんだったかしら?」

「な、なぁに、残り少しくらい、サクッと終わるさ! たぶん! 問題は高難易度かな!?」

「最重要じゃない……」

 

 どこか楽観的なオオガミに呆れたようにため息を吐くエウリュアレとラムダ。

 あからさまに反省していないオオガミは、最近もう見慣れてしまった金リンゴを取り出す。

 何だかんだと言って全て使いきっていないので、わりと余裕があるのが現状だった。

 

「よっしゃ、全力で回せば終わるんだからさっさと行って高難易度!」

「昨日と同じこと言ってるのだけど」

「最初からそれしか言ってないじゃない」

「良いから行くよ! 考える前に動くべき!」

「あからさまに何も考えてないじゃない」

 

 エウリュアレはそう言うと、走り出そうとするオオガミを捕まえ、

 

「まず、今日は高難易度。勝てたら周回。良いわね。それと、夜には寝ること。絶対効率が悪いから。周回が終わる前に貴方が死ぬわよ。もしくは私は背後から殺す」

「エウリュアレ、最近アサシン染みてきたよね」

「射るわよ?」

「ごめんなさい」

 

 でも伝承に殴りかかってる状況ですよ。という突っ込みをこらえ、エウリュアレのお叱りを素直に受けるオオガミ。

 そして、保護者染みてきたエウリュアレの説教が終わると同時、オオガミは顔を上げ、

 

「つまり高難易度を秒殺して周回に戻れば良いんだね?」

「全く何も聞いてなかったのかしらこのダメマスター」

 

 ついにぶん投げたエウリュアレ。ラムダもこれには首を振り、どうしようもないと態度で表す。

 もはや病人かというくらいに周回をしようとしているオオガミに対し、もはや諦めの境地とも言える表情をしている孔明たちには素直に黙祷しつつ、二人の本来の性質が垣間見える笑みを浮かべる。

 

「まぁ、マスターが自分から止めないって言うんだもの。止められないわよね」

「えぇ。仕方ないわ……って待って? 冷静に考えたら私も大変じゃないのこれ。周回アタッカー私よ? とりあえず倒すとか言う雑さで戦える私じゃないのよ?」

「えぇ。応援しているわ。ちなみに、オオガミは高難易度も貴女で蹴散らすつもりみたいよ?」

「少しはなにか考えるとかしたらどうなの!? いい加減相性くらい考えなさい!」

「つい数か月前までは相性有利でしか挑まなかったのだから、一周回って頭を使ってるんじゃないかしら。貴女限定で」

「それは……喜ぶべきかもしれないけど、とても複雑ね……!」

 

 にやけそうになる顔を気合いで引き締めつつ、しかしほんのり赤くなった顔までは誤魔化せないラムダを見て、エウリュアレは苦笑いをするのだった。




 アズールなレーンのコラボ最終日に慌ててやり出して、結局終わらず八つ当たりぎみに周回しているマスターは私です。
 まぁ、後10箱くらいですし、サクッと終わりますって。ラムダで殴っていればすぐですよ。

 相性? ちょっと知らないですね。


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日常
やはりラムダに敗けは無し!(今回ほとんど私じゃない?)


「ふ、ふふふ……ふははははは!!! やはりラムダに敗けは無し! 高難易度4T成し遂げたぜ!」

「今回、ほとんど私だけだった気がするのだけど。他のアタッカーは?」

「もう今後は貴女がメインで回る気がしてきたわ」

「私もそんな気がするわよ……」

 

 カルデアのマイルームに帰ってきてもうるさいマスターに、呆れたように首を振るラムダ。

 とはいえ、今は一昨日言っていた通りイベントが終わったので孔明たちはフリータイムで、それに伴ってラムダとエウリュアレも暇になっているのだった。

 

「それで、ボックス開けは終わったの?」

「うん、終わったとも。おかげで塵難民だよ」

「育成に躓いたのね……久しぶりじゃないの? 育成出来ないの」

「いやぁ……素材が足りないとか、何時振りだろうねぇ……再臨で足りなかったとか、異聞帯メンバーですらレアだったんだけど……やはり塵は沼なんですね……」

 

 遠い目をするオオガミ。

 そこはかとない周回の気配が漂うが、既に自分達は無関係だと言うことが確定しているエウリュアレ達は、特に気にしている様子はなかった。

 

「とりあえず、終わったんだから、ゆっくりしましょう。カルデアで遊ぶのもアリなんじゃない?」

「まぁ、そうしたい気持ちは山々なんだけどねぇ……」

 

 歯切れの悪い返答に、エウリュアレは怪訝そうに目を細めつつ、

 

「今度は何をやらかしたの?」

「エリちゃんライブの予定……?」

「……いつもの事じゃない」

「そりゃ、いつものことですし……」

 

 やれやれね。とエウリュアレは呟き、ベッドに寝転がる。

 何時、誰がメイキングしているのか分からないが、帰ってくればキレイに整っているベッドの上をゴロゴロと転がり、

 

「そういえば、この前のユニヴァースの時に、私が(ステンノ)と一緒にアイドルとして宇宙に名を馳せていたって言ってたわよね」

「言ったけど……何かあった?」

「いえ……私も飛び込みで参加するのも面白いかなぁって思って。何人か捕まえて巻き込みましょうか……まずはメドゥーサ達を呼んでこなきゃね。アナは私たちと一緒に歌って、残り二人は舞台装置かしら。石化の魔眼とか使えないかしら」

「即死トラップですかねエウリュアレ様?」

「耐えれば良いだけなのだし、そもそも魔眼に耐えられないのに私たちの歌を聞こうって方が烏滸がましくないかしら」

「飛び入り参加する予定で無茶言ってますね?」

「あら。想定してない方が悪いのよ?」

 

 ふふふ。と笑うエウリュアレ。

 オオガミはどう説得しても止まらなそうだな。というのを確信し、エウリュアレに対しての対策も考えるのだった。




 今回のイベントを一言で表すなら『ラムダ無双』
 相手がセイバーじゃなければ周回できるの強いなぁ……しかも、セイバーを周回できないのは攻撃力が足りないだけという……要するにすっ飛ばせるならクラス関係無いんだなぁ……さすがラムダ様。


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儂、最近めっきり出番無いんじゃが(そもそも出番があるようなことしてませんよ)

「儂、最近めっきり出番無いんじゃが」

「まぁ、最近何も作ってませんからねぇ……」

 

 そう言って、ボーッとしたままゲームを進めるノッブ。

 暇を持て余してタイムアタックなどやってみたが、サーヴァントのスキルをフル活用するせいでボタンがぶっ壊れたので二度とやらないと誓っていたりした。

 そんなノッブに呆れたような視線を向けるBBは、ふと思い出したような顔をすると、

 

「そう言えば、今センパイが『システム無しでのんびり塵を集める』って言って北米に行きましたよ。実際にかなり雑なメンバーでしたし、言えば入れるんじゃないですか?」

「お主が言うくらい雑とか、儂の余地ありありのありでは?」

「たぶん何も考えてない編成ですし、普通に入れると思いますよ?」

「よし。ちょいと行ってくるか!」

「はいはい。ちゃんと電源落としていってくださいよ。でないとセーブデータ上書きしますから」

「それ一番やっちゃいけないやつじゃからね!?」

 

 言いながらささっと準備を終わらせたノッブは、バスターTシャツとギターを持って、

 

「じゃ、行ってくる!」

「行ってらっしゃい。戦闘見ながら待ってますね~」

「さては儂の事言えないくらい暇じゃろ!」

「まぁ、コスト的に私まで入るわけにはいきませんし。存分に遊んできてくださいね」

 

 そう言って手を振るBB。

 ノッブも大きく振り返しながら、工房を出ていくのだった。

 

 

 * * *

 

 

「あっ」

「ふべっ!」

 

 廊下を曲がると同時に何かに引っ掛かり転ぶノッブ。

 顔を上げれば、やってしまったとばかりの苦い顔をしているカーマがいた。

 

「あ~……その、大丈夫ですか?」

「む。まぁ、この程度で怪我を負う儂じゃないしな。んで、そっちはあのワイヤーを仕掛けた……そうじゃ。カーマとか言うやつ。第六天魔王らしいな! 儂もそう名乗ってるけど、お主もそういう感じのやつか?」

「はぁ? 本人ですけど。正確には構成要素の一部って感じですけど、私が第六天魔王です。というか、そっちこそなんですか? 私のファンなんです?」

「え、本人? スッゴい弱そうなんじゃけど……ちっこいし、ありがたさとか感じない……あぁいや、魔王だから禍々しさか? どちらにせよ、近所の悪ガキが精々じゃろ。バラキーに振り回されているのをよく見るしな」

 

 そう言ってノッブはやれやれと言いたげに首を振る。

 カーマはそれを見て頬を引きつらせつつ、

 

「……言いたい放題言ってくれますね……ふ、ふふふ……人間風情が意気がって……身の程と言うものを教えて上げましょうか……?」

「うはは! なんかスッゴい強キャラ感出してるんじゃけど! でもそのセリフ、秒殺されるやつがよく言うやつ!」

「……燃えなさい!」

「効くかぁ!」

 

 カーマの放ったレーザーをギターで殴り飛ばすノッブ。

 そしてそのままギターを担ぐと、

 

「うはは! やっぱ大したこと無いな! でもまぁ? 儂、心広いし? 一矢報えるくらいがちょうど良いじゃろ」

「一々嫌味なこと言いますね……そもそも軽めの攻撃防いだ程度で調子に乗られるの、とっても癪に障るんですけど……」

「まぁ聞け。儂は今からマスターの所に行く。んで、お主もついてくる。そして、ゲームをする。なに、単純なもんじゃよ。多くの塵を集めた方の勝ち。簡単すぎて欠伸ものじゃろ? ただまぁ、『面倒だから降りる』とか言われたら、あまりに張り合いが無さすぎてやはり笑ってしまうなぁ……第六天魔王とか、そんなちんけなもんだったとかなぁ……」

「……良いですよ? その挑発、乗って上げます。バカにしたことを後悔させてあげますから」

「うひひっ! それでこそじゃな! んじゃレッツゴー管制室! あ、そこのワイヤーは危ないから回収しておくんじゃぞ。子供達が一番引っ掛かる」

「仕掛けた直後に引っ掛かった人に言われたくないですね……」

 

 言いながらも、カーマは律儀に回収してからノッブについて行くのだった。




 リクエストを消化しようと思ったらノッブがとっても嫌味なキャラになってしまった……書いてて楽しいと思えるくらいこんなノッブも好き……
 まぁ、そもそも先にイタズラを仕掛けたのはカーマなんですけどね。でも平然と喧嘩を売る信長カッコいい……


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これ、一緒に回ったら意味なくないですか?(そういや勝負じゃったな)

「……これ、一緒に回ったらどっちが多く落としたのか分からなくないですか?」

「うん? あぁ、そう言えば勝負じゃったな。ま、別にどっちでもエエじゃろ。それともあれか? ちゃんと決めないと嫌なタイプか? 儂、普通に殴り合うのでも良いが」

「はぁ……もう良いです。普通に手伝って帰ります。とりあえずやるだけやって帰るので良いですよね」

 

 カーマは疲れたような顔をしながらオオガミに聞く。

 聞かれたオオガミは親指を立てつつ、

 

「交代の時は言うね!」

「あ、そういう感じですかぁ……ノルマ式なんですね。じゃあ頑張りますか」

「うむ。儂も逃げ出せないみたいだしな! BBが阻止してくる!」

「……実は仲悪いんですか?」

「うん? まぁ、仲が悪いと言うか、これが平常運転と言うか……あくまでも互いに楽しんでるだけじゃし。わりと愉快だから楽しいからな。儂もやり返すし、どっちもどっちじゃな」

「なるほど……それはまぁ、愉快そうですね。羨ましい限りですよ」

「うはは! お主とバラキーみたいなもんじゃよ!」

「……あぁ、なるほど。それは確かに楽しいんでしょうね」

「うむ。この楽しさが分かるじゃろ?」

「えぇ、はい。じゃ、私も戻るためにもう少し働きますか」

 

 カーマはそう言って、オオガミの方へと向かうのだった。

 

 

 * * *

 

 

「そう言えば、カーマは何処へ?」

「あ~……うちのノッブと一緒にセンパイと周回してますよ」

「うげ、BB……いつの間にいたのだ……」

 

 食堂で一人ボリボリとクッキーを食べているバラキーの背後から声をかけるBB。

 バラキーはそれを見て嫌そうな顔をする。

 

「人の事を幽霊みたいに言わないでくれます? 泣きますよ?」 「いや泣かれても……吾にはどうしようも出来ぬ……」

「まぁ、茨木さんは何も出来ないって言うのは分かっているので。まぁ今は機嫌が良いので特に気にしてないんですけどね」

「……汝の機嫌が良いと、吾は嫌な予感しかせんのだが……今回は何があったのだ?」

「いえいえ、特に特別なことは何も。ただ単純に、バーサーカーノッブの戦闘データが取れて、私が反撃のための材料が増えたってだけですし。皆さんにはとくに還元されないやつです」

「……まぁ、汝らの問題ならそれでよし。ところでマスターはいつ菓子を更新するのだ。吾結構待ってるのだが」

「あ~……伝えておきますね。私はたぶんセンパイの言うところのノルマは終わっているので。まぁ帰ってきたらだと思うので気長に待っていてください」

「うむ。任せたぞ~」

 

 そう言って、バラキーはBBに手を振るのだった。




 ノッブはこういうところあると思う。

 まぁ、今まで暴れられなかったからね。是非もないね!


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儂ノルマ終わりぃ!(何の張り合いだったんですかこれ)

「うっし。儂ノルマ終わりぃ! 儂の勝ちぃ!」

「何の張り合いですか。というか、絆レベルがノルマだったんですね……まぁ、だからと言ってもマスターに心を許したりは……まぁ、もう少しくらいは様子見で」

 

 何とも言えない表情をしているカーマを見て、ノッブは楽しそうに笑みを浮かべると、

 

「うはは! それあと少しで落とされそうなヤツのセリフじゃな!! 良い良い! 面白いからもっとやれ!!」

「くっ……なんかスゴい余裕そうでムカつきますね……むしろそっちはそんな簡単に心を許して良いんですか?」

「いや、心を許すも何も、儂ってばわりと古参じゃから今更すぎるじゃろ。むしろ今まで上がってなかった方が問題の気もするのだが」

「あぁ、なるほど。編成に入れられないとそうなるんですねぇ……まぁ、水着の話なんでしょうけど」

「うむ。まぁ、アーチャーの方もわりと酷いけどな」

「確かに、あの人雑そうですしねぇ……そういうところですよね……」

「マスターはメルトとエウリュアレの二人以外に対して雑なんじゃよねぇ……今回みたいのはかなりレアだと言うのを覚えておくべきじゃな」

「雑すぎますねぇ……両極端というかなんと言うか」

「ま、そんくらいの関係が一番楽なんじゃけどね」

「……貴女も大概ですね?」

「伊達に第六天魔王名乗っておらぬわ。いやまぁ、関係ある訳じゃないがな?」

「ほぼ無関係ですねぇ……まぁ良いです。大体貴女の事はわかりましたし。お疲れ様です」

「また後でな~!」

 

 そう言って手を振って去っていくノッブ。

 彼女が帰ろうとしたまさにその時現れたのは、

 

「んあ? おぉ! 大殿じゃねぇか!」

「おぅ? 勝蔵か! なんじゃお主が交代か! うはは! 気張れよぉ!」

「おぅ! よく分からねぇけど分かった! 任せろ大殿!」

「うはは! 安心して帰れるわ! ではなカーマ!」

「はいはい。さっさと帰ってくださいねぇ~」

 

 そう言って適当に手を振るカーマ。

 そしてノッブか帰ると同時にカーマの喉元に槍の穂先が向けられる。

 それをカーマは冷めた目で見て、

 

「……なんですかこれ。まさか、私に喧嘩を売ってるとか?」

「あっはは! んなわけねぇだろ? 大殿の手前ちょっと静かにしてたが、なんださっきのは。大殿に対して失礼だろうが」

「はぁ……面倒ですねぇ貴方。ここで倒してしまった方があと腐れなさそうです」

「……やれるもんならやってみな」

「あらあら。既に腰が引けてるのに睨んでも、説得力ないですよぉ? まぁ、そんな姿がお似合いですね?」

「よし殺す今殺す死ねやオラァ!」

「あはは! 逆上しやすいだなんて、相手しやすくて好きですよ私!」

 

 そう言って、カーマの挑発に乗った森は、容赦なくカーマを殺そうと奔走し、それをオオガミが止めるまで続くのだった。




 絶対森くんと仲悪そうだよなぁカーマと思ったら動いてしまっていた……相性極悪では……?


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儂メインにいけないのでは?(今さらな話ですよね?)

「あ……これ、儂メインにいけないのでは?」

「そもそも全然行かないじゃないですか。無関係も良いところですよ」

 

 エミヤ特製のポテチを食べながらそんな話をする二人。

 工房で食べているため、ポロポロとこぼれてもそんなに気にしなくて良いので遠慮はなかった。

 

「まぁ良いか。儂はわりとピーキーな構成だしな。扱いづらいじゃろ」

「自分で言うんですかそれ。まぁ、私が優秀なのはわかりきっているので、編成に組み込まれない時点でセンパイが本気じゃないのは丸分かりです」

「いや、最近お主も一緒じゃろうが……どっちもどっちじゃよ。攻撃力不足が祟ったなぁ」

「……いえ、たぶんこれはメルトに対する入れ込みも原因の一つかなぁと思わなくもないですね……」

「原因の一つどころかほぼ全てじゃろ。エウリュアレは逆に連れ回され過ぎて目が死んでるがな」

「いや彼女世間話してるだけですよね!? 一番何もしてないですよ!?」

「ふっ……なにもしないのはそれはそれで辛い……儂もたまにさせられるからな。宝具使えないし撃てないしでなんか虚しくなる」

「あぁ……私は基本殴る人なので関係ないですね」

「そういうところじゃよなぁ……お主、水着が強すぎるじゃろ……まぁ良い。とりあえず菓子を補充してくるか」

「あ、飲み物も持ってきましょう」

「そうじゃな……ん? お主のあの緑使えばよくない?」

「あ~、ロビンさんですね。今は……あ、暇そうにしてますね。呼び出しますか」

 

 んんっ、と軽く咳払いをして、BBはロビンの正面に映像を送り、

 

「ロビンさ~ん!」

『うおぁ!? な、なんだいきなり! 何のようだよ!?』

「暇そうにしているので、ちょっとお使いをしてもらおうかと思いまして! 食堂に行ってポテチと適当な飲み物持ってきてもらえます? こう、商標とか色々面倒じゃない感じのやつで!」

『なんか複雑な事情でも抱えてんのかよ……? いやまぁ、いいけどさ……どこに持ってきゃ良いんだ?』

「あ、それはこっちから門を開くので直通で! 取ったら廊下に出てくれれば手配しますよ~」

『オタクにしては気が利きすぎてやしないか……? 一応素直に受けとりますがね?』

「も~、変な勘繰りされると荷物だけ回収しますよ? ほら、ささっとお願いしますね~」

『はいはい。んじゃな~』

 

 そう言って、通信を切るBB。

 それを見ていたノッブは、

 

「実は仲良いじゃろ」

「は? 殺しますよ?」

「うわこわ。地雷じゃったか……うぅむ、触れちゃいけないところじゃったなぁ……」

 

 そう言って、ノッブは残りのポテチをBBに差し出すのだった。




 今回はそんなに縛らないかなぁと考え中。というか、もう縛り内容を考えるのが面倒になってきていたり。なんか無いですかねぇ……いつも通り星四以下ですかねぇ……


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伯母上遊びに来たよ!(なんじゃ遊びに来たのか)

「伯母上ぇ! 遊びに来たってうわぁ!?」

「なんじゃ茶々、遊びに来たんか。菓子はそこじゃよ」

「なんですかこの人。座禅マスターですか。微動だにしないとかあります?」

 

 白いボードの上に乗り、座禅を組んでいるノッブ。

 どうやらゲームをしているのだろうと気付いた茶々は、BBのそばにある机に座り、その上のお菓子を平然と食べる。

 

「あ~……人数が増えたならまたロビン宅配を呼ぶべきですかね?」

「そうじゃなぁ……あ、今度はあやつ自身も連れてきてこれをやらせるとかどうじゃ? 人数多い方が騒ぎやすいじゃろ」

「センパイはしばらく帰ってきそうにないですからねぇ……まぁ、お菓子と一緒に来てもらいましょうか」

「任せた~」

「伯母上雑じゃんね? アナスタシアとか呼んでくる?」

 

 『終了』と低い男性の声が響き、蝋燭が燃え尽きて消える。

 ノッブが気を緩めて座禅を解くと、BBが遠くから流れるように再スタートを押す。

 ノッブはそれを見て思わずBBを睨み付けるが、すぐに茶々に視線を向けて話を戻す。

 

「そこは沖田とかじゃないんか。そのチョイスは儂もビックリ」

「ふふん。茶々のコミュ力の高さを見せないとね!」

「その自慢のされ方は納得いかんのじゃが……」

「だって伯母上、呼べる友達少ないじゃん」

「おま、それは言っちゃだめじゃ『喝っ!』あっ」

 

 茶々の一言に動揺したノッブ。

 それと共に響いた男性の言葉と共に、ついたばかりの蝋燭の火がかき消され、座禅が終了する。

 それを見ていたBBはとても満足げに笑みを浮かべ、

 

「ふ、ふふふ……! ようやく動揺しましたね! やりました私の勝ちです!」

「いやノーカンじゃろ流石に! そもそもここまで10本ぐらい溶かしきってるからな!?」

「知りません知りません聞きませ~ん! 勝ちは勝ちです完全勝利!」

「だぁぁぁ! なんじゃこいつ話聞かないんじゃが!?」

 

 高笑いをするBBと、必死で文句を言うノッブ。

 茶々はその様子をお菓子を食べながら見つつ、首をかしげる。

 

「何々? 伯母上がどう負けたのかは知らないけど、何か賭けてたの?」

「いえ、そう言うんじゃないんですけど、私がすぐ終わるのにノッブがずっと消えないのがイラッと来まして、どうにかして消せないかなぁと思案しているところに茶々さんの一撃! これで私よりも最速の蝋燭消滅プレイヤーはノッブですね!」

「いや流石にノーカンじゃろ……というか、ランキングが上から下まで全部儂なんじゃが……せめて一つくらいBBにしてほしいんじゃけど?」

「それ全部消すしかないじゃないですか……!」

「いやだから、そう言ってるんじゃけど?」

「よぅし売られた喧嘩は買いますよぉ! 見ていてください! 最低でも一つは抗いますから!」

「おぅ、頑張れ~」

 

 ノッブはそう言って応援し、茶々は一人お菓子を食べつつ、

 

「お菓子補充の話はどこに行ったんだろう……」

 

 そう呟くのだった。




 みんながリングでフィットネスしているなか、買えなかった難民はボードでフィットネスするしかないんですね……


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なんでそんなに鍛えているのかしら(無茶振り対応用ですかねぇ……)

「そう言えば、なんで貴方はそんなに鍛えているの?」

「……まぁ、こういう無茶ぶりに応えるためじゃない……?」

 

 腕立て伏せをしているオオガミの上に乗りながら聞いてくるメルトに、特に苦しそうな様子も見せず答えるオオガミ。

 だが、メルトは納得していないのか、不機嫌そうな顔で、

 

「……真面目に聞いているのだけど」

「真面目に聞いているのなら退いてほしいなぁ……」

「それは無理。性分だもの。仕方ないわ」

「……絶好調ですね?」

「当然じゃない。ちょうど座りやすい椅子があったのだもの」「その椅子、動いてしゃべりますけど?」

「あら、なにか問題が?」

「いいえ全く。今日も可愛いですねメルト様?」

「ふふん。当たり前の事でも、言われて嬉しくないわけないわ。もっと言いなさい?」

「くそぅ、調子に乗らせただけか……!」

 

 どうあがいても退く気がないということが分かったので、諦めるオオガミ。

 そろそろ死にそうだがそれはそれ。ちょっと見栄を張りたくなるときもあるのだ。

 

「それで、なんで鍛えてるの?」

「あ、そこに戻るのね……」

「逃がしはしないわ。それで? どうしてかしら」

「そりゃまぁ、魔術の才能皆無ですし、マスター適性とレイシフト適性しかないのなら体鍛えて生存率上げるしかないじゃん?」

「そうねぇ……でも、それであの太陽ゴリラみたいになられても困るのだけど」

「ならないしなりたくないけどね? まぁほら……最悪メルトが良い感じにドレインすれば良いんじゃないかな」

「あら、私にそれを期待するの? 言っておくけど、私は0か1よ?」

「くっ、極端だったか……!」

「まぁ、貴方がゴリラになるのは私も不本意だし、協力するわよ。感謝しなさい?」

「さすが女神様! ありがとうございます!」

「ふふっ、もっと敬い崇めなさい?」

「そういう調子の乗り方は私の役割でしょ」

「きゃっ」

「ぐえっ」

 

 飛んできた矢を避けるために急に動いたせいで体勢が崩れ、そのせいで下にいたオオガミは耐えきれず倒れる。

 それを起こした張本人であるエウリュアレは楽しそうな笑みを浮かべつつ、

 

「マスターごきげんよう。最近北米に行ったまま帰ってこないけど、どう言うことかしら」

「え、あ……いやまぁ、塵掃除をね。ちょっとね。素材不足には抗えないと言いますか……」

「ふぅん……まぁ良いけど」

 

 エウリュアレはそういうと、オオガミを立ち上がらせ、

 

「そろそろアトランティス大陸だけど、準備は完璧?」

「レディ・パーフェクトリー。神様なんて何度でも落としてやる」

「えぇ、十分ね。私たち以外の神様なんて一切合切落としなさい」

 

 そう言って、エウリュアレは笑うのだった。




 いよいよアトランティス。書いているのは生放送前だからいつ開始か分かってないぞぅ……! でも今日じゃないかなと期待してます!


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神代巨神海洋アトランティス
おっすおらオリオン!(俺もいるっすよ~)


「おっす! おらオリオン! カルデアに召喚されたぜ!」

「う~っす、俺も来たっすよ~。マンドリカルド参上っす~」

「あれ、一人足りなくない?」

 

 マイルームでだらけていたオオガミの元にやって来た二人。

 召喚時に挨拶はしているが、それはそれである。なので、オオガミは召喚したはずなのにいない一名を二人に聞くと、マンドリカルドは手を挙げつつ、

 

「まだ異聞帯で会ってないでしょ~って言って隠れました~」

「マンドリくんのそのダル~っとした感じ嫌いじゃないよ」

「それ素直に受け取って良いやつか……?」

 

 オオガミの言葉に困惑するマンドリカルド。

 だが、次の瞬間背後から蹴り飛ばされたマンドリカルドは、短い悲鳴を上げて倒れる。

 そんな彼を倒した本人は、

 

「おいマスター! 水着の父上しかいねぇんだがどう言うことだオイ!」

「ヤクザキックバスターですかモーさん!」

 

 白い甲冑を着て、ドスを効かせた声で言うモードレッド。

 だがオリオンはマンドリカルドに近付き、

 

「やべぇよ……マンドリカルドが死んじまった……」

「いや、死んでないっすけど……あれ、死んだ方が良いっすか……?」

「いや待てそこで死なれると困る。モーさんに殺されちゃう……!」

「いや殺しゃあしねぇよ! オレをなんだと思ってんだよマスター!」

「てっきり皆殺しに来たバーサーカーかと……」

「よぅし、ぶっ殺されてぇみたいだな。ぶっ殺す」

「いやっほぅ! 殺意全開だぜにっげろぉ!」

「逃がすかぁ!!」

「……殺伐としてんなぁ、カルデア」

「やっぱり陰キャには辛いわぁ……」

「いやもう陰キャとか関係ないだろこれは」

 

 魔力放出まではしていないにしても、声からして笑いながら斬りかかるモードレッドの攻撃を回避しているオオガミの動きはもはや慣れ切った雰囲気を感じさせる。

 狭い部屋の中を縦横無尽に駆け回るマスターは一体何者なのかと考えるが、モードレッドがベッドを踏んだ瞬間、素早く出現した触手がモードレッドを拘束する。

 

「……めちゃくちゃ痛いのだけど……マスターの部屋って一番安全じゃなかったかしら……」

「一番修羅場だと思うよ。闖入者撃退で毎度荒れるから。でもアビーがそこで寝てるのは知らなかったんだけど?」

「編成外の時にはここにいるもの……」

「エウリュアレの方がいると思ったんだけどなぁ……」

 

 そう言っていると、モードレッドが暴れ始め、ようやくモードレッドに気付いたアビゲイルは、

 

「えっと……新しいサーヴァントさん?」

「うん。丁重に食堂にお返しして上げて」

「分かったわ」

 

 そう言うと、アビゲイルは門を開き、ふと気づいたように触手で殴りつけながらお帰り頂く。

 

「……おっかねぇな、カルデア」

「もう帰りてぇ……」

 

 オリオンとマンドリカルドはそう呟くのだった。




 ピックアップメンバー全員当てたかわりにPU2用の石は尽きたのです……


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最高レアリティは伊達じゃないんだね(三騎士相手に蹴りを叩き込むのも楽じゃないわ)

「ふぅ……やっぱり最高レアリティは伊達じゃないんだね」

「そうねぇ……でも私はそれ以上に、三騎士相手に蹴りを叩き込んでたのが一番ワケわからなかったわ……」

 

 アトランティスから帰って来て、オオガミと一緒にベッドに倒れ込むメルト。

 オオガミはメルトの袖にぺしぺしと叩かれながら、

 

「そりゃまぁ、他にアサシンとかいましたし」

「バーサーカーがいるときは私も編成にいたわ。後ろに」

 

 むふん。と鼻息を鳴らしながら胸を張るアビゲイル。

 メルトはしばらく首をかしげ、思い出したのか納得したように頷くと、

 

「無敵解除要員ね」

「貴女の回避も解除して良い?」

「物騒すぎて逃げたいけどたぶんこの二人の喧嘩の原因はおそらく自分なので逃げられない」

 

 もはやベッドから動くこともなく顔を背けるオオガミを見て、ラムダに姿を変えながら壁とオオガミに挟まれるような位置に移動してベッドに横になると、

 

「分かってるじゃない。じゃあ、おやすみ」

「わざわざラムダになってまで一緒に寝たいですか」

「あら、嫌かしら?」

「まさかまさか。女神様と一緒に寝れるなんて光栄ですが。でもそれ以上に後ろからの圧がスゴい」

「ふふっ、エウリュアレがいないにも関わらず何も出来ないお子様は敵じゃないわ。だからほら、今日くらいは私以外見ないでちょうだい?」

「……二人きりだとしてこないくせにね?」

「なっ」

「それ、どう言うことかしら!」

「あ、ちょ、言わせないわ!」

「ごはっ!」

 

 蹴り一撃でオオガミを昏倒させるラムダ。

 容赦のない一撃にアビゲイルは少し後ずさったが、すぐに触手を出しつつ、怒ったような表情になると、

 

「マスターから離れて!」

「なんでよ。今日はエウリュアレがメドゥーサのところで寝るっていうから来ただけなのに」

「マスターさんを蹴る人なんて信用できないわ!」

「エウリュアレに関しては矢まで射っているのだけどそれは良いのかしら」

 

 ラムダの反撃に対して、アビゲイルは言葉に詰まる。だが、すぐに言葉を思い付いたのか、

 

「それはそれ!」

「とんでもなく雑な判定じゃない! いえ、エウリュアレに逆らわない気持ちは分からなくもないけれど!」

「私は貴女を倒すわ! せいばーい!」

「え、ちょ……その触手は出しただけなのね!?」

 

 怒っているような、しかしどこか楽しげな声をあげながらオオガミとラムダの両方に向かって飛び掛かるアビゲイル。

 展開していた触手はただの飾りのようで、子供らしい体重で二人を押し潰すのだった。

 




 今回は何を言ってもネタバレになる気がするので全力で日常続行。あ、アトランティスはクリアしました。縛りゆるゆるでやったのでそんなに詰まらなかった優しさ。次回はどうしようかなぁ……


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日常
シャワールームも廊下も寒いわね(真冬仕様だしね)


「ふぅ……シャワールームも、廊下も、寒いわね。そういうところまで季節に合わせなくても良いと思うのだけど」

 

 シャワーから帰って来たエウリュアレは、まだほんのりと赤い肌としっとりと濡れた髪を見せつけるようにオオガミに近付く。

 オオガミは一瞬硬直するも、すぐに平静を装うと、

 

「まぁ、日付とか曖昧になりがちだし、北半球のスタッフが基本だからそこの気候に合わせた方が、ぼんやりと季節感覚が残るからね。修復が終わって、いざ戻ってみたら季節が真逆だったりしたら感覚狂うし」

「南半球も考慮してあげなさいよ……」

「まぁ、それは何とも言えない」

 

 エウリュアレは言いながら、オオガミの膝の上に座る。

 何事かと一瞬迷うも、すぐに差し出されたドライヤーと櫛で、何をすべきかを理解する。

 

「でもまぁ、冬も悪くはないわ」

「うん? どうして?」

「言うまでもないでしょ? こたつにみかん。後はメドゥーサにくっつく言い訳とか」

「なるほど。それは確かに良いかもね」

「えぇ。という事でマスター、この部屋にもこたつを置かないかしら」

「暖房が全力稼働中なのでもうしばらくはありません」

「ちぇ。ケチね」

 

 オオガミによって髪を乾かされながら、足をパタパタと振るエウリュアレ。

 その(かかと)が時折足にぶつかるのを耐えつつ、オオガミはドライヤーと手櫛で髪を乾かしていく。

 

「でもまぁ、ノッブたちに相談してみようか」

「……そう言えば、前にこたつを作っていたわよね……よし。奪いに行きましょう。それでこの寒い日々とはさよならよ」

「一瞬の躊躇もなく奪う方に考えをシフトさせるのは流石だと思うんだけど。穏便な方法はないんですか」

「だってほら、あの二人は無いなら作るの精神だから、持っていっても大丈夫よ。きっと」

「うわぉ、スゴい雑。酷い話もあったものですね」

 

 オオガミはそう言いながら、ドライヤーを置いて髪を櫛で梳かしていく。

 エウリュアレは下を向きつつ、

 

「ん~……でも、こたつが来ても置き場所がないかしら。どうしましょうか」

「まぁ、物を移動させればこたつを置くスペースくらいは作れるだろうし、大丈夫だと思うよ。こたつが出来てから考えるのでも遅くはないだろうし。ある程度小さくして、おっきーのこたつみたいな異空間に繋げるのもあり……?」

「それは無しの方向で。足が当たらないのは良いけど、それ以上の何かを失うかもしれないもの……危険すぎるわ」

「まぁ、分かる。考えないとだねぇ……」

 

 そう言いながら、オオガミは最後の仕上げとばかりにエウリュアレの髪を後ろで一本にまとめる。

 寝る時用なので、邪魔にならないようにという配慮だった。

 

「さてと。それじゃ、寝ましょうか」

「うん。おやすみエウリュアレ」

「えぇ。おやすみなさい、オオガミ。貴方も同じベッドに寝るのだけどね?」

「……はいはい」

 

 もう逃げる気もないですよ。と降参するようにオオガミは両手をあげるのだった。




 暖房のかかってないところはどこも寒いけど、暖房のかかっているところは暑い……中間がほしい今日この頃です。


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技術部! 仕事の時間だオラァ(儂のみかんがぁ!)

「技術部! 仕事の時間だオラァ!」

「うおわぁ!? 儂のみかんがぁ!」

「リアクションでみかんを落とさないでくださいよ……まぁ、門でちょちょいと回収できるので良いんですけど」

 

 そう言って、ノッブが取り落としたみかんを回収して投げ付けるBB。

 そんなこたつに入ってのんびりとしている二人に、オオガミは企画書を叩き付け、

 

「こたつ作成よろしくぅ!」

「うげっ、ストレートに面倒そうな案件……」

「いや、これ結構面白そうなんですが。移動式とかふざけてるのが特に良いですね」

「……儂の作ったやつなんじゃが?」

「あ、分かる?」

「自分で作ったからなぁ……何より儂の字だしなぁ……」

 

 そう言って、仕方なさそうにこたつから出るノッブ。

 そのまま発明品を適当に押し込んでいる倉庫の中に入っていくと、

 

「あ~……確か去年の冬に作ったんじゃけど、どうしたかのぅ……BB覚えておるか~?」

「去年ですか? 確か左奥の方じゃなかったですっけ」

「ん~……どうじゃったかな~……最悪もう一個作らなきゃならんか~……」

「面倒なので意地でも見つけ出してください」

「そもそもそれは見付けられなくて作ったやつじゃろ~?」

「……そう言えば確かにそうですね」

 

 そう言って、みかんを剥く手を止めるBB。

 オオガミに手招きをしてこたつに座らせると、剥きかけのみかんを渡しつつ、

 

「仕方ないですね。センパイそれ剥いてください。センパイが三つ剥き終わるまでに見付からなかったら作りますね~」

「え、剥いたら食べて良いの?」

「ストックしておいてください」

「あ、うん。分かった」

「お願いしますね~」

 

 そう言って、倉庫へ応援に向かうBB。

 オオガミはそれを見送って、みかんを剥くのだった。

 

 

 * * *

 

 

「あ~! みかん食べられてるんですけど!」

「しかも三つどころかその倍は剥かれてるな」

「三つ剥いたけど食べちゃったからね。追加分は必須でしょ」

 

 こたつを持って帰って来た二人に、みかんを差し出しつつ、オオガミはみかんの皮を袋に入れる。

 それを見たBBは、

 

「その皮、どうするんです?」

「みかん風呂にでもするんか?」

「お、ノッブ正解。所長に聞いて許可を貰ったらだけどね」

「あ~……儂らもゴミ箱に入れずに取っておけばよかったのぅ……」

 

 そう言って、オオガミが差し出していたみかんを取りつつぼやく二人。

 こたつは適当なところに置き、再びこたつの中に戻っていく。

 

「それじゃ、帰ろうかな」

「おぅ。エウリュアレによろしくのぅ」

「後でなにか請求しますね~」

「はいよ~」

 

 そう言って、オオガミはこたつを持って帰るのだった。




 小さい机なら筋肉で解決できるんですね。怖いなぁ……


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マスターは行ったかしら(しばらく帰ってこないと思うわ)

「さて、マスターは行ったかしら」

「今日は強化クエストを消化するって言ってたから、しばらくは帰ってこないと思うわ」

「そう。じゃあ、始められるわね」

 

 そう言って、こたつで温まりながら雰囲気だけは威厳があるエウリュアレ。

 それを見て、同じこたつに入っているメルトとアビゲイル、ノッブが苦笑いをし、少し離れているところで電気ストーブに当たっているBBは苦い顔をすると、

 

「この工房、別に秘密会議用の部屋じゃないんですけど。まぁ、盗聴とか、そういう類いの対策はしてますけど」

「分かってるわよ……というか、それじゃなきゃここに来ないって」

「あ~……それが原因でしたか……というか、そもそもセンパイは魔術を使えないから物理防御をしっかりとしておけば良いんじゃないんですか?」

「何言ってるの。マスターに何をしても無意味に決まってるでしょ?」

「う~ん、物理に対して強くなりすぎるのも問題ですねぇ……」

 

 手枷足枷を気合いで破壊する相手に対策も何もないでしょう? と言うエウリュアレ。

 BBは苦い顔をすると、

 

「でも、サーヴァント相手の攻撃も守るのに、センパイの攻撃には無力なんですか?」

「いいえ? 開けられなくて諦めるけど?」

「えぇ……じゃあやっぱりこの工房でやる必要無いじゃないですか……」

「儂は別に良いけどな?」

「ちょ、ノッブにそれを言われたら反対できなくなるんですけど……」

「まぁほら、どうせ明日の話じゃし、ええじゃろ?」

「あれ、ノッブに言ったかしら」

「いや、時期的にそれしかないしな……で、とりあえず明後日に怯えてるマスターに、パーティーでもやるか?」

「そもそも今年はまだパーティーやってないのよね……イベントの時にやる雰囲気を出してたけど、結局やってないじゃない?」

 

 そう言われて、全員は思い返し、

 

「あ、本当にやってませんね。てっきりいつも通りやってたかと……一ヶ月近く前だからやらなかったんでしたっけ」

「おぅ。儂も記憶に無いしな」

「みんな楽しみにしていたけど、流石に一ヶ月早いのはダメだよねって言ってやめたのよ?」

「……別の意味でやらなきゃいけなくなったわ……」

「うむ……ちと食堂に用があったのを思い出した」

「私もよ。行きましょうか」

「BBも行くか?」

「あ、行く流れですかこれ。メルトとアビゲイルさんは待っててくださいね。センパイが来たら適当に引き留めててください」

「分かったわ。お留守番は任せて!」

「別に、BBは帰ってこなくても良いのだけど?」

「メルトは一言多いですね……まぁ良いです。それでは~」

 

 そう言って、エウリュアレとノッブの二人についていくBB。

 メルトとアビゲイルは、それを見送るのだった。




 やるって言ってたらやってなかった不思議。

 クリスマス回をやることが確定ですね? 明後日かぁ……明後日ぇ……?


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カルデアのクリスマスに宗教観は皆無よね(触れちゃいけない所もあると思うの)

 クリスマスの装飾でワイのワイのと騒ぐカルデアの面々。

 昨日の今日で出来たというわけではなく、事前に準備していた厨房組の成果といえる。

 グループで固まっていたり、一人でいたりと様々だが、そのほぼ全員がオオガミに声をかけられていた。

 あちらこちらへ奔走するオオガミをぼんやりと見ながら、配られているシャンパンに似せた炭酸ジュースを飲むエウリュアレ。

 

「あれ、エウリュアレさんはお一人?」

「あらアビゲイル。えぇ、今は一人よ。貴女も?」

「いいえ? 北斎さんと一緒なの。今は他の人とお話ししているから離れてきたのだけどね」

「あぁ、そういう……だったら私も一人じゃないわね」

「誰と一緒なの?」

「あそこで全員に声をかけまくっているやつ」

「……いつものってことね」

 

 バタバタと走るオオガミを見て、納得するアビゲイル。

 エウリュアレはキレイに盛られていた、今は無惨に食べ散らかされているサラダを摘まみつつ、

 

「うん。なんだかんだ言っても、厨房メンバーの料理は美味しいのよね」

「えぇ。どれもこれも美味しいわ。ただ、まぁ、苦手なのもあるのだけど……」

「それはまぁ、誰でもあるものよ。ほら、北斎も呼んでいるみたいだし、行って来たら?」

「あ、うん。行ってくるわね!」

 

 そう言って、手を振りながら去っていくアビゲイル。

 それと入れ替わるように帰って来たオオガミは、メルトと一緒にいくつかの料理を皿に乗せてきた。

 

「ただいま~」

「お帰りマスター。スター独り占め自慢はしてきたの?」

「してないって。というか、何故しないといけないのさ」

「……まぁ、そうよね。いつものことだもの、言うまでもないわよね」

「そもそも、メルトを独り占めとか、出来るわけないでしょ。湖面の白鳥は、飛び立つ姿がとても綺麗なんだから」

「……皿は受け取っておいてあげるわね」

「え? なんで……げふぅっ!」

 

 エウリュアレがオオガミから皿を受け取ると同時に叩き込まれるメルトの蹴り。

 わりと洒落にならなそうなダメージではあるが、ブレードではなくただ硬質化しただけの足に変わっていたため、鈍器で殴られた程度のダメージになっていた。

 オオガミはその場でうずくまりつつ、メルトを見上げると、

 

「ぐ、おぉ……内蔵に響くデストロイアタックぅ……うっかりしてたら死んでたんですけどぉ……」

「人間、そんなに柔じゃないわ。少なくとも、マスターは大丈夫ね」

「どこからその信頼が出てくるんですかねぇ……」

 

 メルトに言い返し、蹴られた場所を押さえながら立ち上がるオオガミ。

 既にその顔からは痛みの表情が抜けてきており、大丈夫なように見える。

 そんなオオガミに、エウリュアレは楽しそうな笑みを浮かべると、

 

「さてマスター? 今日はこんなに美人な女神が二人いるのだけど貢物は無いのかしら」

「その美味しい料理じゃダメですかね」

「もう貰っちゃったからダメね」

「えぇ~……」

 

 そう言うと、どうしようかと考え始めるオオガミ。

 そんなオオガミを見て、エウリュアレは更に楽しそうな笑みを浮かべると、

 

「まぁ、その料理でも食べて考えましょ。大丈夫。まだ時間はあるわ」

「ん~……そうだね。何かちゃんと考えるよ」

 

 そう言ってオオガミはエウリュアレから皿を受け取り、三人で一緒に食べ始めるのだった。




 なんだかんだ言って万能な『日本式』
 多宗教国家の強みと言うかなんというか。まぁ、一部サーヴァントは怒ってそうな気もしますけど、マスターが日本人ですし日本式ですね。平和。


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クリスマスにはプレゼントが付き物なんだぜ?(我ら技術部、仕事の時間だ)

 消灯の時間。誰もが寝静まり、それは英霊とて例外ではない。

 管制室では何名かの職員や補助として数名のサーヴァントがいる程度で、どこもかしこも真っ暗だった。

 だが、そんな暗闇で蠢く影がいくつか。

 

「うはは! やっぱ儂の発明はしっかりしておるな!」

「こっちの要求にしっかり応えてくれるノッブの本体設計は悔しいですけど称賛ものです。で、どう回るんですか、センパイ」

「正直このメンバーならBBの門で秒速で終わりそうだけどそれは禁止で! とりあえず近い所から順番に行くよ」

「「了解」」

 

 技術部特製の暗視ゴーグルを装着し、これまた技術部制の特殊サンタ服に身を包んだオオガミ達は特徴的な赤色を夜闇に紛れさせながら目的地に向かって突き進む。

 三人とも、この日の為に何度か予行練習と言いながら遊んでいたので、既にどの部屋に誰がいるかは完全に理解していた。

 

「それで、最初は茶々さんからですか」

「もちろん。まぁ、茶々だけに渡すと攻撃的になる女神と皇女がいそうだけど、まぁ、無視で」

「はいは~い。じゃ、音が出ないように扉を開けますね~」

 

 そう言って、ゆっくりと扉を開けるBB。

 オオガミはグッと親指を立てて、プレゼント袋を担いで中へと入る。

 当然の様に真っ暗な部屋で、きれいに片付いていた。

 茶々はアナスタシアの上のベッドに寝ており、二段ベッドの上と言う、かなり面倒な位置にいた。

 とはいえ、オオガミがそれで止まるわけも無く、小太郎に教わった音消しを実践しつつ、ゆっくりと近づいて行く。

 

 

 * * *

 

 

「なぁ、儂必要?」

「生け贄です」

「あ~……マスターの代わりにボコられる係かぁ……いや納得いかんな?」

「後はあれです。一部屋に二人以上いたときとか、巡回の誤魔化しとかです」

「なるほど……あれ、でも今日の巡回って誰じゃ……?」

「……エレシュキガルさんですね」

「適任はマスターな気もするんじゃが」

「私もそう思うんですけどねぇ……」

 

 二人がため息を吐くと同時に、帰ってくるオオガミ。

 

「あ、閉めますね」

「よろしく」

「はいは~い」

 

 そう言って、BBは静かに扉を閉める。

 

 

 * * *

 

 

「あらマスター。何をしているの?」

「あ、エレちゃん。こんばんは」

「えぇこんばんは。それで、そんな赤い服を着て何をしているのかしら?」

「ん~……まぁ、こういうことかな」

 

 そう言うと、オオガミはプレゼント袋からプレゼントを一つ取り出すと、エレシュキガルに差し出すと、

 

「メリークリスマス」

「……あ、あぁ! あの、夕食の時のやつね! え、プレゼントを貰っちゃうだなんて……どうしましょう、お返しできるものが無いのだわ……!」

「いやいや。別にお返しとかはいいよ。ただ、この事は秘密ね?」

「あ……えぇ、分かったわ。マスターはこんな嬉しいことをみんなに分けてあげてるんだもの。邪魔しちゃダメよね。頑張ってね、マスター」

「うん。巡回お疲れさま。今度は昼間にね」

「えぇ、昼間に。そちらのお二人もね」

 

 そう言って、立ち去るエレシュキガル。

 それを見送ったノッブとBBは、

 

「……コミュ力お化けを心配したのがバカみたいなんですけど」

「儂の必要性無くなったんじゃが」

「二人とも行くよ~」

「……まぁ、機器の不備があったらって感じですね」

「整備係までランク落ちかぁ」

 

 ノッブはそう言って肩を落としながら、オオガミを追うのだった。

 

 

 * * *

 

 

「じゃ、解散で!」

「ほとんどセンパイしかやってないじゃないですか……!」

「儂最後まで要らんかったわ。帰ろ~」

 

 オオガミのマイルームの前で解散する三人。

 二人が帰ったのを確認したオオガミは、静かにマイルームに入ると、ベッドで寝ているエウリュアレとメルトに近付き、

 

「……メリークリスマス、エウリュアレ、メルト」

「えぇ、メリークリスマス」

「可愛い可愛い私達のマスター?」

「……可愛いはちょっと複雑かなぁ……うわわっ!」

 

 困ったように笑った瞬間、ベッドに引きずり込まれるオオガミ。

 しばらくバタバタと動いていたものの、やがて完全に取り込まれ、静かになるのだった。




 クリスマスにはプレゼントが付き物なんだぜ?(子供に限る
 まぁ、実年齢を気にしちゃいけないカルデアに置いて、中身が子供か外見が子供なら判定内ですかね。アンデルセンは深夜まで起きてるので悪い子ボーナスでカットです。あとナーサリー泣かせた罪。

 この為だけに早朝(未明)投稿。実質一日二本。

 ではでは、メリークリスマス! 良いクリスマスゲームを!(現実逃避


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祝1000回?(儂らはいつだってマイペースじゃろ)

「うはは! マスター死んどらんか!?」

「昨日結局部屋から出てきてませんしね~。別れた後何があったんでしょうね?」

「監視カメラとか付ければ良かったなぁ!」

「付けてたら記憶を消去しなきゃならなかったから、命拾いしたねノッブ?」

 

 食堂の隅。笑いながら話していたノッブの背後で恐ろしい顔をしているオオガミに、BBの表情も凍る。

 当然、背後から直接声をかけられているノッブは顔を青くしながら振り返ると、

 

「あ、あはは……儂がそんなことするわけなかろう? 前に何度か仕掛けていたのはエウリュアレとアビゲイルに丁寧に破壊されて、仕掛けるのは諦めたわ……アビゲイルにやられたのは、盛大にホラーじゃったからな……監視員ゲーム思い出したわ……あのクマの人形を使うのは無しじゃろ……」

「何をされたかは大体分かった。うん。あの二人が本気を出して隠しきれるわけも無いね」

「おぅ。儂らには無理。隠蔽工作までしたのに秒速でばれたからな。ちょいと荷が勝ちすぎてる」

「無理な事もあるんだねぇ……」

「そりゃまぁ、お主の周りを相手にするときは流石になぁ……エウリュアレの観察眼がおかしくなっておるしなぁ……」

「まぁ、うん……誰があんなにしたんだろうねぇ……」

「し、白々しいですねこの人」

「儂らのマスターらしいな。うむ。それでこそという感じじゃ」

「全くもって笑い事ですね」

 

 そう言って、苦笑いをするBB。ノッブは悔しそうにしているなか、オオガミはどこか誇らしげであった。

 

「それで、エウリュアレさんとメルトはどうしたんです?」

「二人とも寝てる。流石に疲れたって」

「……マジで昨日何してたんじゃ……」

「それ言われたら背後から刺されたり射抜かれたりされちゃうので触れちゃいけない話です」

「……うむ。儂らも殺されそうじゃな?」

 

 そこはかとない命の危険を感じたノッブは、これ以上話さないように話題を変える。

 

「で、マスターは何しに来たんじゃ?」

「そりゃまぁ、食事ですとも。昨日ほとんど食えてないし」

「えぇ……軽く軟禁されとらん?」

「されてた。逃がしてくれないからね」

「ん~……結局その話に戻っちゃいますね?」

「実はマスター、儂らの事を殺しに来てる?」

「あははそんなわけ無いって。そのつもりなら最初から暴露してるよ」

「どうだか。最近儂らみたいに嵌めようと画策してるみたいじゃし、うっかり嵌められるかもしれんからな」

「う~ん、一周回った信頼」

「全く、誰がこんなマスターにしたんじゃろなぁ……」

「あはは。ノッブじゃないですか?」

「二人じゃないかな」

「「「あはははははは」」」

 

 そう言って笑い合い、次の瞬間飛来した二本の矢がノッブとBBの頭に突き刺さるのだった。




 オオガミくん、一体何があったんでしょうね……触れたら刺されますけどね(にっこり

 祝1000回という事で、なにかパーティーでもするかと思ったんですけど、なにもしない方がこの作品らしい気がしたのでそのまま続行。やっぱこれがうちのカルデアですね。


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こんばんはマスター。あめでもいかが?(圧倒的おばあちゃま?)

「あら、こんばんはマスター。初めまして、の方が良いのかしら? あめ、食べる?」

「エウロペさん? え、あめ?」

 

 はいどうぞ。と飴を渡され、困惑するオオガミ。

 渡したエウロペはとても楽しそうに微笑むと、

 

「私は強くないサーヴァントだけど、召喚してくれてありがとうね。おかげでたくさんの子孫達に会えたわ」

「な、なるほど……?」

「えぇ。毎日楽しいわ。戦いではきっと役に立たないけど、甘いあめや美味しいご飯なんかを作って待っているわ。もちろん、求められればタロスとタウロスと一緒に戦うわ」

「あ、うん……その、ありがとうございます?」

「えぇ、えぇ。みんな可愛い子供たちだもの。戦い以外なら頼ってもらって構わないわ」

「……おばあちゃま?」

「あら、貴方もそう呼びたいの? う~ん、いいわよ。本当は違うのでしょうけど、貴方がそう思ってくれるのならそうでもいいわ」

 

 ふふふ。と楽しそうに笑いながら、エウロペはもう一つ飴を渡すと、

 

「それじゃあ、私は食堂に向かいますね。また後で会いましょう?」

「うん。またねおばあちゃま」

 

 なんだか許されたらしい呼び方を使い、オオガミはエウロペを見送る。

 それと入れ替わるようにやってきたエウリュアレは、

 

「あら、どうかしたの? マスター」

「ん~……エウロペ様をおばあちゃまと読んだらそれでいいって言われてしまった」

「……なぜそう呼ぶことになったのかを聞き出す義務が私にはあると思うのだけど」

「え、いや、飴玉をちょくちょくくれるのが何となくそんな雰囲気があって思わず声に出ちゃっただけなんだけど……」

「まぁ、確かにそんな雰囲気があるのは確かだけど……だからって普通そう呼ぶ?」

「無意識だったんだって。仕方ないでしょ? 分かるならそう言う事だよ」

「むむ……それを言われると確かに何も言えないけど。それで? エウロペ様は?」

「食堂に。行きます?」

 

 言われ、エウリュアレは悩ましそうに唸ると、

 

「ん~……あんまり鉢合わせたくないわね……アステリオスにも絡んでるみたいだし……おばあちゃんとして接するのはいいのだけどね。複雑な気持ちよ」

「ふぅん? まぁいいけど。で、エウリュアレは何をしに来たの?」

「ん? お菓子でも取りに行こうかと思ったのだけど、エウロペ様と鉢合わせるのだったら仕方ないわね。ちょっと作って来なさい。もちろん見つからないようにね?」

「難問を押し付けてきますね?」

「出来ないの?」

「まさか。マシュ対策に磨き上げた隠密術を見せてあげようじゃないか」

「……また無駄な所で無駄な技術を磨き上げてるのね?」

「有益に決まってるでしょ。これでひっそりと石を拝借できるわけですとも」

「それはそれは。大変素晴らしい技能で! では、その技能を少しだけお見せいただけますか?」

「おっと。これは無理みたいですよエウリュアレ様」

 

 にっこりと微笑む後輩に笑顔を浮かべたまま青い顔をするオオガミ。

 エウリュアレはそれを見て楽しそうに笑うと、

 

「じゃあマスター。後はよろしくね? マシュも、ちゃんと手伝ってあげて?」

「えぇ。しっかり見ておきますね!」

「おぉっと。これは売られたかな?」

 

 そう言って、オオガミはマシュに引きずられ、エウリュアレはそれを見送るのだった。




 エウロペ様のおばあちゃま力に震えました。おばあちゃまですね。震えました。思わず様付けしちゃう。圧倒的おばあちゃま。


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どうして貴方が厨房に立ってるの?(おせち料理とかあるからね)

「ねぇオオガミ。どうして厨房に立ってるの?」

「おせち作るのに人数は必要だしねぇ。お手伝いってところ」

 

 食堂で、エプロンと三角巾を着けてまるで調理実習の学生のようなオオガミに、ため息を吐くメルト。

 

「それで、いつ終わるの?」

「ん~……一応そろそろ終わり。明日も手伝うけどね」

「そう……じゃあ、待っていようかしら」

「そろそろって言っても、時間かかるよ? 座ってた方がいいと思うけど」

「いいえ? 貴方を見ているから、気にしなくていいわ。どうせすることもないもの」

「なら、いいけど……座りたかったら座ってね? あと、邪魔にならないように」

「分かってるわよ。子供じゃないのだし……むしろ、貴方の方が大丈夫? 年末に何か考えてるんでしょ?」

 

 調理をしていた腕が一瞬止まり、視線を泳がせるオオガミ。

 

「あぁいや、それは……この時期はみんな忙しいから、出来たらって話になってるんだけど」

「ふぅん……まぁ、それならそれで構わないけど。そのうちやるのは確定なんでしょ?」

「まぁね。とはいえ、今回の企画は技術部メインメンバー使えないからなぁ……」

「そうなの? 面倒ね。まぁ、手伝いはしないけど」

「それなりに準備すればなんとかなるはず。あの二人に頼りっぱなしだと肝心なところで何かやられそうだからね……ぼったくられたら目も当てられないし」

「あの二人ならやりそうね。他にも頼る先を作るのは、まぁ間違いではないわね。そういう面ではその企画も良いのかもね」

「うん。何よりもあの二人を舞台に引きずり出せるのが一番の理由」

「あぁ……確かに、私たちだけ振り回されるのは納得いかないものね。それは、えぇ。本当に成功させないとね?」

「う~ん、メルトがやる気になったぞぅ?」

「あら、不味いの?」

「いや、そういうわけじゃないけどね。ただ、メルトにも協力してもらうのはあるよ?」

「もちろん。楽しめるならいくらでも。でもしょうもないのだったらお腹にくちばしよ」

「ん~……期待に添えるか分かんないなぁ……」

「ふふっ。まぁ、努力しなさい」

 

 悪い笑みを浮かべるメルトに、楽しそうな笑顔で返すオオガミ。

 すると、メルトは視線を下に向け、

 

「それ、大丈夫なの?」

「え? ……あ! っちゃぁ~……作り直しかなぁ……」

「まぁ、そういうこともあるわよ。喋りすぎ注意ね」

「うぅ……メルトにそれを言われるのはなんか納得いかない……」

「ふふっ。これも私の甘い毒かもしれないわね?」

「それならまぁ、ありかもね?」

 

 そんなことを言いながら、オオガミは調理を再開するのだった。




 さりげなくお料理出来る子オオガミ君。私が出来るとは言ってない。

 年末の企画はコミケから帰って体力があったらですかねぇ……明日と四日目なんですよねぇ……


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どうしたカーマ(別になにもないですけど?)

「うん? どうしたカーマ」

「え? あぁ、大したことじゃないので気にしないでください」

 

 ぼんやりとしていたカーマは、バラキーに声をかけられて我に返る。

 バラキーは不思議そうに首をかしげると、

 

「体調が優れないのならば部屋に戻った方がいいと思うぞ」

「だから、なんでもないですって。ただぼんやりしていただけですから」

「ふむ。なら良いが……無理はするなよ? 倒れられたら吾ちょっと困る」

「どれだけ私の体調が悪く見えたんですか……別に、最近マスターが厨房に立っているなぁとか、そんなことを考えていただけです。ここ最近、いつも以上に暇ですし」

「うむ。それを言われると吾も何も言えぬ。イタズラを仕掛けようにも、今の時期は通常の三倍叱られ、片付けさせられるからな。吾の目にも涙てきな?」

 

 ふふん。とドヤ顔をするバラキーに、カーマは不満そうに顔を歪めると、

 

「何気にうまいことを言った的な顔をするのやめてくれません? なんだか無性にイラつきます」

「クハハ。なんで吾こんな叱られるのか分からぬのだが。もはや今のは理不尽では?」

「きっと自業自得なので諦めてください」

「汝が断定してない時点でやはり吾悪くないのでは?」

「そういう判断するんですか……」

「汝はそういうところあるからな。吾も最近分かってきた」

「えぇ~……なんか分析されてるんですけど……」

 

 机にぐで~っと倒れ、バラキーを見るカーマ。

 バラキーはため息を吐くと、

 

「分析というか、単に理解しているだけというか。吾もなんだかんだ長く汝といる気がするのだが」

「……そういえば、確かに私が召喚されたときから私といますね……暇なんですか?」

「いや、そういうわけではないのだが……シトナイと会っていたりはするが、なんだかんだ汝は吾と同じ気配がする……」

「あれ、もしかしてバカにされてます?」

「してるわけなかろう」

 

 何をバカな。と言いたげにカーマを見るバラキーに、カーマは笑顔を見せ、

 

「言ってみただけです。まぁ、私はバラキーと一緒だなんて思ってないですけど」

「だろうな。汝は汝。吾と相性が良いだけでほとんど違うからな。わりと真逆だと思うし」

「全くです……あれ、じゃあなんで一緒にいるんです?」

「……何故だったか……吾も忘れた」

「……まぁ、そんなものですよね」

「うむ。そんなものだ」

 

 そう言って、カーマと同じように机にぐで~っと倒れるバラキー。

 そう言って二人は顔を見合わせると、特に理由もなく笑い出すのだった。




 なぁんかバラキーのセリフがノッブに寄っちゃうんですよねえ……なんででしょ。まぁこれはこれでアリですかね?


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大掃除の時間です(別に明日でもいいと思うんですけど~)

「さて、やって来ました大掃除!」

「マイルームにゴミがないからこっちに応援よ」

 

 そう言って工房に入ってくるオオガミとエウリュアレ、メルトの三人。

 ノッブとBBはその三人を見て、

 

「おぉ! 応援じゃぁ! 助かったぞBB!」

「応援はいいんですけど、メルトがいると破壊されたくないのが壊されそうなんですが……」

「ちょっとBB。だいぶふざけたことを言ってくれるじゃない。貴女の部屋をめちゃくちゃにしに来たんじゃないのだけど」

「そうだよBB。それ以上言ったら一切合切粉々にするよ?」

「なんでメルトよりもセンパイの方が攻撃力高いんですか。私何かしましたっけ?」

「いや、なんにも?」

「あぁ……確実に逆鱗はメルトですかねぇ……というか、一番戦力として期待していたアビゲイルさんは?」

「北斎の所に走っていったよ」

「あぁ……北斎さん、掃除出来なさそうですもんね……」

 

 助っ人メンバーに頭を抱えるBB。だが、すぐに切り替えると、

 

「とりあえず、仕事の分担ですかね。正直メルト役に立ちます?」

「バカ言わないで。荷物運びくらいは簡単よ? 貴女も知っての通り、器用じゃないだけで腕は使えるんだから」

「いやまぁ、そうなんですけど……雑に落とされると困るものもあるので……ふむ。適材適所ですね。無理に任せなきゃいい話ですよね」

「いやBB。普通にメイン戦力はオオガミとエウリュアレじゃよ?」

「え、ハッキリ言っちゃうんです?」

 

 え? と顔を見合わせて言う二人。

 BBはBBなりに考えてたようだが、ノッブは特に考えていなかったようだった。

 

「……まぁいいです。じゃあ、センパイはゴミの分別を。エウリュアレさんは……何やらせてもダメなのでは?」

「別扱いしてもらわなくていいわよ……ゴミの分別とかやるわよ。というか、なんでしてないの」

「いや、金属とプラスチックなので……」

「……重量がある方なら無理ね。荷物運び担当で」

「はい。じゃあ、メルトと一緒に、そこの箱を向こうに運んでいってください」

「分かったわ」

 

 エウリュアレはそう言って、メルトと一緒に荷物を取りに行く。

 オオガミはそれを横目に、必要なものかどうかを仕分けているノッブに近づき、

 

「で、ゴミ分別って?」

「そこに放り込んだヤツを、解体してそっちに入れてくれ。ネジとかはそっちにな~」

「ほいほい。道具は?」

「そこの机の上に揃っとるはず」

「了解。取ってくる」

「おぅ。行ってこい」

 

 そう言って、オオガミは解体用の道具を取りに行くのだった。




 エウリュアレ様がいるのに埃一つ塵一つでも落ちているわけないだろの精神で、マイルームは常に清潔です。ナイチンゲールチェック通過です。やったね。

 ところで、私の中で、技術部工房の汚し率は9:1でノッブの方が多いイメージなんですけど。皆さんどう思います?


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もう今年も終わりねぇ……(このメンバー、何年目だったっけ)

「ふぅ……もう今年も終わりねぇ……」

「ん~……このメンバー、もう見慣れたんだけど、何年目だったっけ」

「三年目かしら……」

「少なくとも私は今年初なんだけど」

 

 並べられていく蕎麦や天ぷら、薬味などが並べられていく中、ほのぼのと向かい合って話すオオガミとエウリュアレに突っ込むメルト。

 もはやこのメンバーでいることに違和感が無くなるどころか、昔を想像できないレベルにまでなってきている二人には、もうメルトは昔からの戦友だった気がしてならないのだった。

 

「というか、こんな食べ物、私にどうしろって言うの。箸とか、知っての通り全く使えないのだけど」

「それはほら、マスターがいるじゃない」

「あぁなるほど」

「ふふん。日頃メルトに食べさせ続け、何故かお怒りのエウリュアレにも食べさせた私のスキルは既に高レベル……麺類でも余裕ですとも。二人場織りでも余裕でこなしますけど?」

「……すごく不安になってきたのだけど」

「バカみたいなことを言ってても、ちゃんとこなすから……正直私の時よりもちゃんとしているもの」

「そ、そう……」

 

 エウリュアレに言われ、複雑そうな顔をするメルトと、何故か誇らしげなオオガミ。

 メルトは隣で満足そうに笑うオオガミの足を軽く踏みつけ、

 

「じゃあマスター? それだけ自身があるんだから、汁の一滴でも飛ばしたら……ね?」

「う~ん、これはもう失敗するわけにはいかないね」

「ん~……もちろん、私にもお願いね?」

「あ、うん。任せて。一人増えたところで止まる俺じゃないんだよ」

「いや、普通は止まると思うんじゃが?」

「何言ってるんですかノッブ。センパイですよ? 一人食べさせたらもう一人を食べさせて、最終的に自分のまで取られるのがオチです」

 

 そう言って、当然のようにエウリュアレの隣に座るノッブとBB。

 困ったように笑うオオガミとは逆に、全力で嫌そうな顔をするエウリュアレとメルト。

 

「何しに来たのよ」

「返答次第では蹴り殺すわよ」

「なんでこの二人、揃って殺意高いんですか」

「好感度上がりすぎでヤンデレ化とか?」

「なるほど。じゃあ、そういうことにしましょう」

「え、本気ですか?」

「最近エウリュアレが冗談通じなくなってきて怖いんじゃけど」

「むしろわざと冗談に乗ってきてますよ」

「うぅむ悪乗り」

 

 にっこりと笑うエウリュアレに、ノッブとBBは頬を引きつらせ、メルトは視線だけで二人を射殺すかのごとく見ていた。

 

「……メルトの視線が怖いのはなんでじゃろなぁ……」

「年越しそばを食べに来ただけで殺されたくないんですけど……」

 

 二人はそう言い、並べ終わったそばを見て、三人に食べるように勧めるのだった。




 ガキ使見てたら書くのが遅れた私です。ちょくちょく手が止まる魔力ありますよこれ……

 さて。2019年も終わって新年へと向かってるなか、今年を振り返ってみれば、メルトが定着したどころか定着しすぎていなかった頃が思い出せなくなった私です。

 なんだかんだ、メルトって今年加入組なんですよね。今年はメルトの年でした……

 ではでは皆さん。あと少しですが、よいお年を!


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明けましておめでとう!(今年も楽しい一年だ!)

「あけおめぇ!」

「明けましておめでとうございます、センパイ」

「おぅマスター。あけおめ~」

 

 本日二度目の挨拶。

 徹夜などさせないとばかりに集まった保護者軍団によって年明けと共に寝させられたオオガミは、不満などまるで見せずに挨拶をする。

 当然それについていったメルトとエウリュアレは、マイルームに入ろうとしている保護者集団を追い出してオオガミを寝かせにいっていたので、オオガミの後ろにいるのだった。

 

「いやぁ、マスターがいなくなった後とか笑えたわ。うむ。子供たちも寝かしつけられてたからなぁ。だがまぁ、楽しい宴じゃったわ」

「いやまぁ、大晦日がそれだっただけで、普通にお正月としての行事は残ってるんですけどね」

 

 そう言って、おせち料理をモグモグと食べるBB。

 オオガミは意識せずにノッブの隣に座ると、その隣にメルトが座り、エウリュアレは正面に座る。

 

「しかしまぁ、新年もやって来たが、ことしはどうなるかのぅ」

「さぁね。でもまぁ、また騒がしいのは確実じゃないかな」

「じゃろうな。ま、面白ければよし。これからの旅路に乾杯ってところかの?」

「う~ん、そういうことで行こう!」

「雑じゃなぁ……」

「自分で言ってそういうんですかノッブ……」

 

 メルトに雑煮を食べさせながら、そんなやり取りをするオオガミ。

 先程からエウリュアレに脛を軽く蹴られているオオガミなのだが、優先順位がメルト優先になるというのはわりと今さらなことでもある。

 だが、ノッブはそれを見て、

 

「ん~……それにしても、本当にメルト優先じゃよなぁ……」

「なんだかんだ本気で愛されてますよねぇ……」

「う、うるさいわねぇ……最近エウリュアレの視線が怖いときがあるんだから……!」

「それはまぁ、儂らにも向けられるしなぁ……」

「たま~に後でアナさんが襲ってきますよねぇ」

「まぁほら、そういうこともあるよなぁと儂諦めてる。調べた感じ、ギリシア神は嫉妬深いみたいじゃし」

「ちょっと、本人の前でそういう話する?」

「「事実しか言ってないですし(からな)」」

「よし分かったわ。後でとは言わず今すぐよ」

 

 そう言って、アナを呼んで二人に襲いかからせるエウリュアレ。

 ドタバタと暴れる三人と、それを止めようと参戦するもの、面白そうだと便乗して暴れるものも入り雑じり、一瞬で場がカオスになるのだった。

 オオガミはそれを見て笑いながら、

 

「まぁ、今年も良い年になりそうだね?」

「いつもどおりのドタバタよ」

「もう慣れたわ」

 

 三者三様、楽しそうな笑みを浮かべて言うのだった。




 考えていたネタが書く直前で頭から消し飛ぶ事件。でもまぁ、いつもどおりですねこれは。

 ちなみに新年福袋はキアラでした(憤慨


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おせち料理が続くとちょっと考えますよね(そもそもおせちは三日間食べるんじゃがな)

「ふぅ……三ヶ日とは言え、お正月が過ぎるとわりと平常よな」

「なんだかんだ一番のイベントはそこですし。まぁ、しばらくはおせち料理みたいですけど」

「厨房組を休ませるのも必要じゃろ。ローテーションとか関係無くな」

 

 ノッブはそう言って、二日目のおせち料理を食べる。

 それとは反対に、BBは不満そうな顔で食べていた。

 

「ん~……美味しくない訳じゃないんですけど、まぁ、昨日のですからねぇ……」

「別に、儂が作っても良いなら何か作るが」

「え、ノッブ出来るんです?」

「まぁ、ある程度出来ないと死ぬからなぁ……味は保証せんけど」

「……おせちを食べていた方が良さそうです」

「ま、そういう訳じゃな」

 

 ノッブがそういってBBを見ると、BBの視線はノッブの後ろに注がれていた。

 気になって振り返ると、そこにはオムライスを食べているバラキーがいた。

 そのまま視線を厨房に向けてみれば、そこにはカーマの姿があった。

 

「……彼女、作れたんですねぇ……」

「まぁ、あらゆる可能性を内包しあらゆる需要に対応するというのなら、料理が出来るのもいるじゃろ」

「なるほど……私も作った方が良いんですかこれ」

「対抗するなら良いんじゃけど、そのつもりじゃないなら要らんじゃろ」

「う~ん、じゃあ作りますか。なんか最近便利キャラとしても忘れられているのでヒロイン力見せなくちゃですね」

「どう考えても手遅れじゃろ」

 

 張り切るBBに容赦のない一言を突き刺すノッブ。

 ムスッとしたBBに軽く蹴られるが、一切表情を変えず、

 

「じゃ、儂もオムライスで」

「わっかりました! カーマさ~ん! 対決しましょ~!」

「は? なんですかいきなり……対決? 良くわかんないんですけどとりあえず面倒そうなので嫌です」

「まぁまぁそう言わず! 最近小悪魔力とヒロイン力の両方を奪われつつある私の八つ当たりを受けてください!」

「ほぼストレートな嫌がらせですか!」

 

 そう、文句を言いつつも最終的には受けることにしたらしいカーマ。

 ノッブがそれを見ていると、いつの間にか正面に移動していたバラキーが、

 

「吾が知らぬ間に話が進んでいるみたいなのだが、知っているか?」

「儂もさっぱり。一ミリも隠さず喧嘩を売りに行くとは思わんかったからなぁ……というか、バラキー。それうまいか?」

「ん? まぁ、カーマはふざけて作ったものでも味は悪くない。今回はケチャップ文字の練習とかなんとか言っていた」

「なるほどのぅ……まぁ、無惨にもぐちゃぐちゃなんじゃが」

「吾が読むより早く消された。何故かは知らぬが、おそらく失敗したのだろ……で、何をしているのだあれは」

「料理の完成度対決?」

「……吾、食べられるかなぁ……」

「作った本人に食べさせるから大丈夫じゃろ」

「ならよし。まぁ出来るだけ喰らうがな」

 

 そう言って、バラキーは残りのオムライスを食べるのだった。




 おせちは三日間分というイメージがあるんですが、そもそもあの風習っていつから始まったんでしょうね……今はもう一日目で終わってる方が多い気もしますけど。場合によってはそもそもおせちを食べない人もいるんでしょうか……

 楊貴妃はお迎えできなかったのでおとなしく紅閻魔様お迎えしなきゃ……


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父上似のアサシンは何者だ?(X師匠ですねこれは)

「……ところでよぉ、マスター。あの父上に似たアサシンはなんだ? さっき殺されかけたんだが」

「なにって……あぁ、Xのこと? まぁ、あれは複雑な事情から生まれた悪魔的セイバースレイヤーだから」

「はぁ? なんだそれ。それで殺されかけたってのか?」

 

 呆れたような顔をして、首を振るモードレッド。

 だが、オオガミは報告書を書きながら困ったように笑うと、

 

「正直、セイバーの通過儀礼みたいなところがあるから。一部以外狩られてます」

「なんだそりゃ。普通に危ないじゃねぇか」

「うん。普通に危険。たまに風紀組が動くくらいには危険」

「……風紀組ってなんだ?」

「エルキドゥをメインに、数人が集まって生まれた部隊……的な?」

「なんだそれ……でも、関わるのは得策じゃなさそうだな……」

「うんうん。フランもジキルもいるから、その二人と居ればある程度は安全なんじゃないかな」

「いや、別に安全とかはいいけどよ……お前は大丈夫なのかよ」

「まぁ、基本セイバーにしか害はないし……」

「ざっつだなぁ……ま、オレも構わねぇけど。要するに、遠慮なく殴り返しても良いって事だろ?」

「うん。遠慮なくどうぞ」

「おぅ! じゃあなマスター!」

「ばいば~い」

 

 そう言って、部屋を出て行くモードレッド。

 すると、入れ替わるように入ってきたエウリュアレは、

 

「何かあったの?」

「X師匠に襲撃された苦情」

「あぁ……まだやってたのね。もう終わったと思ってたのだけど」

「思い出したように襲撃を仕掛けて、見かけた武蔵ちゃんにボコられて泣いて帰って来るから放置してたんだよね……」

「なるほどね……まぁ、それなら放置してても良さそうね。でも、イアソンが倒れているのを何回か見たのだけど」

「あれは多方面から狙われているので……」

「……確かに、要因が多すぎるわね。彼だけはちょっとどうしようもないもの」

「う~ん、エウリュアレに言われるレベルかぁ……」

 

 報告書を書き終わり、背伸びをするオオガミ。

 そんなオオガミの伸ばした手をエウリュアレは引っ張ると、

 

「ふふっ、イアソンのことを言うのは良いけど、貴方も同じようになるかもしれないわよ?」

「いやぁ、どうだろうね。イアソンみたいにかっこ良くないと思うよ?」

「どうかしら。貴方も私たちにボロボロにされるかもしれないわ」

「うわぉ。でもそれ、イアソンの逸話じゃなくない?」

「ん~……栄光と堕落は英雄の持つものだと思うのだけど。少なくとも、貴方が私といれば、いずれ訪れるわ」

「そりゃ怖い。でも何より、パソコンに映ったメルトの視線が怖いなぁ」

 

 そう言った直後、エウリュアレの拳がオオガミに刺さるのだった。




 X師匠は常にセイバーを斬り続けるもの……対セイバーアサシンは伊達じゃない(武蔵ちゃんに全戦全敗

 衝動に身を任せメルトフィギュアを購入して顔を青くしているのが私です。お金保っているかしら……


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雀のお宿の活動日誌~閻魔亭繁盛記~
帰ってきたぜ閻魔亭!(一年ぶりのお仕事です!)


「帰ってきたぜ閻魔亭!」

「……マシュの笑顔がいつもの何倍も恐ろしいのだけど」

 

 一年ぶりの旅館に浮かれているオオガミと、容赦なく石を使ったのをお怒りなマシュ。

 そんな二人に部屋へと案内されているメルトは、スタアとして表面上の平静を保ちつつも、マシュの威圧感に冷や汗を流しているのだった。

 

「それで、私の部屋は?」

「まぁ、スタアだから良い部屋を用意したいわけですけども、あいにくと部屋が解放されていないので無いんですね。なので、とりあえず今解放されている中で出来るだけ良いところにね。スタアが来たってだけで宣伝になりますし」

「あら、私を広告塔にするだなんて……ずいぶんと良いご身分ね?」

「何言ってるのさ。メルトにしか頼めないことだからね。出来るだけ最速で温泉も客間も解放するから」

「ん……じゃあ、急いで温泉を解放してよ。入れるまでは居座るから」

「うん。楽しんでいってね」

 

 そう言って、メルトに部屋を案内して別れるオオガミとマシュ。

 二人はそのまま次の仕事に向かう。

 

「そう言えば、エウリュアレさんよりも先にメルトさんが来ましたね」

「エウリュアレはほら、妹を追い回すのに時間がかかってるから……」

「……メドゥーサさん、三人に増えましたからね……」

「時代別三段階だからね。時間かかるよ」

「最近のエウリュアレさんを見ていると、普通に一人でも来そうなんですけど……まぁ、来ると先輩の苦労が増えるでしょうし、来ない分には構わないのですが……」

「一番苦労が増えるのはBBなんだけど……その次は実はメルト。こう、全体的に心臓に悪い。声も仕草も全部心臓に悪い。スキンシップがエウリュアレ以上なので死ぬ」

「……嫌そうな顔じゃないんですが」

「いや、嫌じゃないのと疲れるのは別。むしろ好きだからこそ一定以上の触れ合いは死に通ずるのです」

「その、なんというか……複雑なんですね。色々と」

「清姫も押すのは得意だけど押されると死んでるでしょ。そういうこと」

「ふむふむ……ん~……私も先輩マイスターになるために努力しないとですね」

「……なにそれ」

「それは秘密です」

 

 疑問を浮かべるオオガミに、マシュは笑顔で返し、追及させない姿勢を取る。

 オオガミはその圧に負け、大人しく引き下がると、

 

「それじゃあマシュ。とりあえず、終わってない補修を終わらせていこうか。まず目標は温泉! レッツゴー!」

「メルトさん贔屓もどうかと思いますよ先輩!」

 

 オオガミの提案に、笑顔のまま刺してくるマシュなのだった。




 紅閻魔先生は私の元へは来てくださらないようです。代わりにブラダマンテが来ました。あとバサスロとディルムッドの二人。確率に勝って戦いに負けた、そんなマスターは私です(コフッ


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温泉解放!(ようやく羽が伸ばせそうです)

「よぅし! 温泉解放!」

「やりましたね先輩! 今年も羅刹さんは立ち入り禁止ですのでお呼びしないように!」

 

 どこからか、嘆きの声が聞こえるような気もしたが、なんて事はなく切り替えるオオガミ。

 生き霊には爆散していただいたため、男湯組と女湯組に別れて温泉掃除を楽しんでする二人。

 そして、それに付き合わされているのは、

 

「……なんで私は男湯なんですか」

「こっちが一番聞きたいんだけど」

 

 デッキブラシを振り回しながら掃除をするカーマ。

 何故か男湯に入れるカーマにオオガミは首をかしげるも、特性上の問題かなぁと思うオオガミ。

 つまり、男性化も出来るんだなぁと学んだオオガミは、暴れまわった代償として手伝わされているアストルフォと、保護者としてついてきたジークに、

 

「そっちは大丈夫?」

「あぁ、大丈夫だマスター。先程から走り回っているライダー……いや、今はセイバーか。ともかく、彼が危なっかしいだけで、掃除は……まぁ、順調だ」

「あっはは! 勢い付ければデッキブラシに乗って滑れる~! ジークもやろ……あだっ!」

「だ、大丈夫かライ、セイバー!?」

 

 デッキブラシで疾走していたアストルフォは盛大に転んで顔面から温泉の床にぶつかる。

 ジークはそれを見て起こしに行く。

 オオガミはため息を吐くと、

 

「というか、なんでメンバーはこれだけなの?」

「問題児しか集めてないですし。私もバラキーと付き合ってきたらこの始末です。今回は普通に旅行で来たんですけどね~……まぁ、一回だけで良いって言われましたし、素直にやって解放されますよ」

「なるほど…問題児がここに集められていると……女性陣は?」

「私がこっちに飛ばされてくるくらいには大量ですよ」

「……まぁ、マシュなら御しきれるかなぁ……」

「彼女、デミサーヴァントだった覚えがあるんですけど、気のせいですかね……あぁ、そう言えばサーヴァントみたいなマスターもいましたね」

 

 カーマはそう言って、気だるそうに掃除をする。

 オオガミはそれに苦笑すると、

 

「まぁ、カーマがこっちを手伝ってくれてありがたい限りです」

「全く不本意ですけどね。というか、許可するのもどうかと思うんですが。私一応女なんですけど。訴訟ものですよ?」

「相手に合わせて変化できるならそれは男でも許されるのでは?」

「理解できますけど納得したくないです。なのでこれは反逆ですね」

 

 文句を言いながら、カーマはにっこりと笑ってオオガミにデッキブラシを向けて襲いかかるのだった。




 カーマは男湯にも入れる(衝撃の事実

 カーマ君は公式で許可されてたんですね……ふむふむ(にっこり


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ようやく見つけたわ!(一体何があったんですか)

 スパンッ! と勢いよく開けられる襖。

 室内でのんびりとお茶を飲んで休憩していたオオガミは驚きつつ振り向くと、そこには慌てた様子のエウリュアレがいた。

 そして、オオガミを見つけるなり、

 

「ようやく見つけたわ!」

「ど、どうしたの?」

「どうしたもこうしたもないわよ……! とりあえず匿って!」

「え? いや全くわからないんだけど……」

 

 困惑するオオガミに、しかし事情を話さず押し入れの中に隠れるエウリュアレ。

 すると、

 

「あれ、ますたー?」

「アステリオス? どうかしたの?」

 

 ゆっくりと歩いてきたアステリオス。

 オオガミは首をかしげると、

 

「えっと、えうりゅあれと来たんだけどね、えうろぺおばあちゃまの顔を見たら、走って逃げちゃって……」

「……苦手なのかな……」

「わかんない。それで、追いかけてきたんだけど……ますたー、知ってる?」

「ん~……えっと、エウロペおばあちゃまは?」

「は~い。エウロペおばあちゃまですよ~」

 

 そう言って、ひょっこりと出てくるエウロペ。

 オオガミは持っていたお茶を置いて立ち上がると、

 

「どうかしたんです?」

「いいえ? 私はなにも。ただ、挨拶をしていつものようにあめをあげようと思ったら、すごい勢いで逃げられちゃって。なんでかしら……私、もしかして嫌われているのかしら……?」

「あ~……そうじゃないとは思いますよ。たぶん、照れてるだけとか、そんな感じかなって。部屋で待っていたらそのうち戻ってくると思います」

「そう? じゃあ、待っていようかしら。ありがとうね。はい。お礼のあめちゃんよ」

「ありがとう。エウロペおばあちゃま」

「うふふ。こちらこそありがとうね。それじゃあ行きましょう。アステリオス」

「うん。ばいばい、ますたー」

「うん。またね~」

 

 そう言って、去っていくエウロペとアステリオス。

 見送ったオオガミは、ため息をついて押し入れを開けると、

 

「それで、照れ隠しですか女神様」

「うっさい。なんで私の心を読むのよ」

「読むまでもないし……完全に久しぶりに親戚に会った気まずさ全開の雰囲気なんだもの……流石に分かる」

「……じゃあ、私が出ないのも分かってるわよね」

「それはダメです」

「イヤだ~っ!」

 

 駄々をこねるエウリュアレを押し入れから引きずり出し、机の前に座らせ、その隣に自分も座る。

 

「まぁ、エウリュアレが照れ隠しで逃げ出すのは今に始まったことではないけども、今回はどうしたの?」

「別に、なんでもないわよ。ただなんとなく、エウロペ様といると、こう、なんていうのかしら……私が私らしくいられないというか……そんな感じがするだけ」

「なるほど、なるほど……」

 

 うんうん。と頷き、オオガミは言う。

 

「うん。面倒なやつだね」

「何も考えてない返答ありがとう。お礼に後で猿をお届けするわ」

「猿……泥団子……宝石弾……うっ、頭がっ!」

「なにそれ。ちょっと気になるじゃない」

 

 そう言って、笑顔を見せたエウリュアレを見てオオガミは笑うと、

 

「で、誰がこの部屋を教えたの?」

「去年の調査の成果よ」

「なんで去年のことを覚えているのさエウリュアレ……!」

「ふふっ、忘れるわけないでしょ。あんな酷い目に遭ったイベントを」

「ですよね~……」

 

 去年は最終的にステンノとアナから逃げていたような。と思い返し、苦笑いをするオオガミ。

 そして、オオガミは立ち上がると、

 

「それじゃ、そろそろ仕事に戻るけど、エウリュアレはもう少しここにいる?」

「いいえ。そろそろ戻るわ。逃げてばっかりじゃいられないしね。仲良くなって帰ってくるわよ」

「その意気だ。ファイトだよ」

「応援されるまでもないわ。じゃ、頑張りなさいよ」

 

 そう言って、二人は部屋の外で別れるのだった。




 エウロペ様は誰であろうと確実に甘やかすのである意味エウリュアレの天敵。

 そして、オオガミ君の部屋は既に一部のサーヴァントには知られているのは言うまでもない事実……プライバシーは侵害されるのですね……


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お役目終了旅行タイム!(お疲れ様です先輩!)

「ふぃ~……ようやく改修も終わって、お役目も無事終了。あとは温泉でゆっくりって所かな」

「お疲れ様です先輩。ゆっくりお休みください」

 

 そう言って、背伸びをするオオガミと、楽しそうに笑うマシュ。

 

「マシュはどうする? 温泉に行く?」

「そうですね……何だかんだ忙しくてまだゆっくりと見られていない所があるので、屋上庭園をゆっくり見て来ようかと思います」

「なるほどなるほど。ん~……遊技場に行ってくるのもありか……?」

「そうですね。私も後で行こうかと。温泉は最後の予定ですね」

「ん~……じゃあ、先に遊技場に行こうかな。また後でねマシュ」

「はい。先輩もごゆっくり!」

 

 そう言って別れる二人。

 そんなオオガミの前に転がってくるBB。

 その先にあるのは目的地の遊技場で、

 

「あ、センパイ……」

「BB、何があったの?」

「なんというかですね……まぁ、意地の張り合い的なものが勃発しまして、今、ノッブと沖田さんが争っている感じです」

「なるほど……? なんとなく面倒そうな事態なのは察した」

「はい……とりあえず、見ていってください」

 

 そう言うBBに急かされるように遊技場に入ったオオガミは、直後、

 

「うははは!! 万年人斬りやっとるやつに儂が負けるかぁ!」

「ぐあぁあぁぁぁあぁ!!!! また負けたんですがぁ!? コフッ!」

 

 立ち上がって勝ち誇るノッブと、仰向けになって血を吐いて倒れている沖田。

 異様な光景のように思えるこの惨状を、いつも通りだと思えてしまう自分に戦々恐々としながらも、少し離れているところで傍観していた茶々に話を聞きに行く。

 

「茶々。これどういう状況?」

「あ、お疲れマスター! 見ての通り、沖田が伯母上にボコられてるところ!」

「なるほど。全く要領を得ないな? そもそも何があったの?」

「最近伯母上に構って貰えなかった沖田が伯母上に勝負を仕掛けて、惨敗したところ」

「なるほど理解」

「え、それで良いんですか?」

 

 そんな説明で良いのかと突っ込むBB。

 だが、オオガミはそこには触れず、

 

「いつからやってるの?」

「今朝からずっと」

「暇なのかあの二人」

「まぁ、一日温泉入っているときもあったし。羽伸ばすなら全力で! が信条だもん」

「それはまぁ、確かにああなるのか……?」

「え、センパイ、今平然とBBちゃんスルーしました?」

「二人とも楽しそうだから茶々は良いかなーって。沖田ちゃんがいないのが悔やまれる」

「それはちょっとどうしようもない」

「センパイ、平然と無視続行しますね?」

 

 リアクションすらしてもらえないBBは涙目でペシペシとオオガミのことを叩くが、案の定無視。

 そして、

 

「じゃ、乱入してくる」

「いってらっしゃ~い」

「ちょ、最後までスルーなんですかぁ!?」

 

 そう言って、オオガミはノッブと沖田のもとへと向かうのだった。




 最速で駆け抜けてあとは遊ぶ! のんびり閻魔亭暮らしなのですね!


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いやぁ、温泉は良いねぇ!(これをカルデアにも常設してくれないものか)

「いやぁ、温泉は良いねぇ! そうは思わないかい? 孔明くん」

「あぁ全くだ! これをカルデアにも常設してくれないものか!」

 

 温泉に入り、盛大なため息と共に湯に浸かる孔明。

 マーリンはそれを見てニヤリと笑うと、

 

「ずいぶんと気に入ったみたいだね?」

「あぁ。正直、これ無しで周回を乗り越えられる気がしない程にはな」

「あはは。まるで依存しているみたいだ」

「ふむ……それは言い得ていて、しかし納得したくないな」

「おぅおぅ、やつれ顔で言うと説得力強いなぁ。まぁ、認めたくなかろうと事実なんだがな?」

 

 そう言って、話に入りつつ湯に入ってくるアンリ。

 二人は距離を取りつつ、

 

「やぁアンリくん。お久しぶりかな?」

「よく言うぜ観測者さんよ。基本カルデア内に居やしねぇのにこういうときばっかり出てきやがって。何企んでんだ?」

「企んでいるわけないだろう? そろそろ高難易度だから呼ばれるだろうと思って出てきた私の気持ちにもなってほしい」

「楽しんでるじゃねぇか」

「まぁ、夜は流石にね。女将に見つからない程度なら問題ないと思ってね」

「どうだか。で、そっちの死に顔のオッサンは大丈夫か?」

「オッサンと言うな」

「おっと。悪い悪い。オニイサンが良いか?」

「……孔明と呼んでくれないか」

「はいは~い」

 

 そう軽薄に答えるアンリに、孔明は眉間を押さえつつ、

 

「大丈夫かと問われれば、まぁ、大丈夫だろう。どこぞの王のように過労死するわけでもなし。温泉に浸かっていればそのうち回復するからな」

「ふ~ん? 別に百重塔(ひゃくじゅうのとう)みたいな回復効果がある訳じゃないのにな?」

「プラシーボ効果的なものとかじゃないかな?」

「なるほど思い込み効果か。それは考えなかったなぁ……確かに、疲れは肉体的なものと言うより精神的なものの方が多いからなぁ……そう考えると、マスター周辺の奴等はマスター自体がストレス回復アイテムになってるから楽そうだな?」

「確かに。ひたすら宝具を放ち続けているはずのラムダは少しも疲れを見せないのはそう言うことだったか」

「そんな単純なものでも……いや、確かにマスターの部屋は見ていて飽きないね。そう言うことだったのか。う~ん、新発見だね」

「……覗き見をしすぎると殺されるぞ?」

「私もそれだけは忠告しておこう。一部のやろうとしたサーヴァントはひっそりと始末されているようだからな……」

「残念だけど、既に体験済みだからね。あまり近寄らないのさ」

「「手遅れだったか……」」

 

 頭を抱える二人と、何故か誇らしげなマーリン。

 そこへやって来たオオガミは、

 

「あれ、なんか珍しい組み合わせだね?」

「おぅ? マスターじゃねぇか。てっきり貸し切り混浴なもんだと」

「んなわけないでしょ。こちとら健全男子です。死んじゃうでしょうが」

「殺されるとは考えない辺りスゴいな」

「彼は殺される前に自害しそうな雰囲気があるからな」

「孔明先生正解!」

「これは嬉しくなさそうな正解だね? 複雑そうな顔をしてるし」

 

 そう言って笑うマーリンとアンリ。

 オオガミは首をかしげながらも、孔明の隣に座るのだった。




 なお、実際のラムダシステムに置いて最大の被害者はパラケルススだったりします。場合によっては孔明先生じゃなくたっていけますしね。まぁ、次点は孔明先生なんですけども。

 珍しく男メンバーだけの回。そしてさりげない超レアキャラの花のお兄さん。最後に出たのいつです?


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ライブバトルの始まりだ!(ちゃんと野外に追い出されてますね)

「うむ! 余の舞台は整った! 此度も余とエリザの対決の場ともなる閻魔亭ではあるが、多方面からの依頼により野外ステージと相成った! 皆の者! 覚悟は良いか!」

 

 ウオオオオオオオオオオォォォォォォ!!! と沸き上がる割れんばかりの大歓声。

 ネロは満足げに頷くと、

 

「では! ここに、第34回ライブバトル開催をここに宣言する!!」

 

 宣言と同時に打ち上がる無数の花火。

 夜ならば眩いほどに輝き心に残るであろうそれは、しかし昼間である現在でも爆発音に色彩豊かな閃光で場を盛り上げる。

 そして、ネロが舞台袖に消えると同時に、無数のミサイルが舞台より放たれ、その煙幕の中から特徴的な影が現れ、

 

「さぁ、私たちのライブを始めるわよ!」

 

 爆音と共に、エリザベートの宣言が観客を震わせるのだった。

 

 

 * * *

 

 

 それは昨日の事。

 突然やってきたネロが言い放ったことが原因だった。

 

『余もライブをする!』

 

 当然、エリザベートの意見すら悩まず採用する男である。見事即採用。既に会場の下地はあるので、撤収する予定だった機材をBBとノッブに無理を言い再設置させたので、弾丸開催をすることになったわけである。

 後は女将の説得をと考えたら、それは既に雀一同が説得済みだったようで、OKが即座に出た。事前に相談しろと突かれたことはこの際隅に置いておくものとする。

 そんなこんなで、ライブに備え戦々恐々としつつも、オオガミは自分の部屋でお茶を飲んでくつろぎながらマシュと話す。

 

「それで、もう完成ですか……早いですね……」

「仕事だけは早いから。それじゃなきゃ遊んでられないってあの二人。まぁ、ネロがライブをする時点で突撃してくる人がいるのは予想済みなんだけども」

 

 そんなオオガミの期待に応えるように、やってくる足音。

 勢いよく開け放たれる襖の先には、何やら覚悟を決めているような顔をしているエリザベート。

 そして、

 

「子イヌ! 私も参加するから!」

「当然。既にスケジュールに組み込んでる」

「マジで!? 流石私のジャーマネ! しっかり出来てるわね!」

「もちろん。安心して参加して。どうせ歌えるでしょ?」

「えぇ! 明日楽しみにしてるわね!」

「ほいほ~い」

 

 そう言って去って行くエリザベートに手を振るオオガミ。

 マシュはそのやり取りを見ていて、

 

「エリザベートさんも参加なさるんですね?」

「その予定で組んでたけど、本人もああ言ってるし、参加は確実だと思うよ」

「……参加しない場合はどうしたんですか?」

「いや、それならネロのソロライブだけど」

「なるほど……」

 

 何に感心しているのか分からない後輩に首を傾げるオオガミの元へ、

 

「儂も混ぜろぉ!!」

 

 襖を破壊しながら入ってきた、完全に予想外の水着ノッブの登場にオオガミは困惑を隠せないのだった。




 宿への被害を考えた屋外追い出し。猿も片付けられていくらでも盛り上がれる最高の舞台ですね。これには王様もにっこり。

 当然ノッブも混ざる、参加者が増えたある種伝説のライブと化す今回のライブ。なお、毎度伝説になっている模様。


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とりあえず、証拠隠滅です(理不尽の極みではないでしょうか!)

「あ、おにいさ…………殺します」

「待って待って今のは悪くなくない!?」

 

 相手の言い間違えで殺されかけるオオガミ。

 ただエウリュアレと一緒に歩いているときに偶然アナに会っただけであった。

 そして、当然その場に居るエウリュアレはと言えば、

 

「……ねぇアナ? どう間違えたらそう言う呼び名になるの?」

「聞きたい気持ちは分かるけど、とりあえず助けて!?」

「防げてるんだから止める必要もないでしょ」

「一般人に無理言いますね!?」

 

 立て掛けてあったモップで必死にアナの攻撃を防ぐも、英霊の攻撃に先にモップが壊れそうだった。

 エウリュアレはため息を吐くと、

 

「アナ。質問に答えて?」

「……上姉様がそう呼ぶようにしなさい、とおっしゃっていたので。呼ぶつもりはなかったのですが、何度も言われたので自然と出てしまったので証拠隠滅です」

「殺伐! そして完全に被害者じゃないのこれ!?」

(ステンノ)が……? なんでそんなことをしたのかしら……」

「あ、聞いてないんですねエウリュアレ様は!?」

 

 直後モップが叩き割られたが、同時にアナの攻撃も止む。

 あまりにも理不尽に襲われたオオガミはエウリュアレの陰に隠れつつ、

 

「で、なんでお兄さん?」

「よく分かりませんが、『外堀から埋めてしまいましょう』とだけ。その第一弾だとか……」

「……え、それ、本当にステンノが言ってたの?」

「はい。確かに」

「ちょっと、どういう意味よそれ」

「いやぁ……たぶんステンノには弟って呼ばれそうだなぁって思いまして」

「はぁ? どうしたらそうなる……え、正気?」

 

 言っている途中で何かに気付いたのか、頬を引きつらせるエウリュアレ。

 アナは嫌そうな顔をしながら、

 

「私だって止めました。でも、『絶対その方が面白いわ』なんて言われたら、あぁ、これ絶対に曲げてくれないなって思いますよ。目も本気でしたから」

「な、なるほど……というか、その包囲網が完成したらすなわち死では? もはや誰に殺されるかわかんないけど」

「私は安全そうね。殺される要素ないもの」

「ギリシャ理論だと?」

「……島の外は野蛮が過ぎていけないわ」

 

 カルデアにも危険思想は何人か居たわね。なんて呟きながら、ステンノの所業に頭を抱えるエウリュアレ。見てないところでやるな、等と言おうものなら正面からやって来るのだろう事は想像に難くない。

 

「それで、アナ。ステンノはどこにいるの?」

「それは……私にもわかりません。ここにいるのは分かっているんですけど、どこにいるかまでは」

「そうか……よし。探しにいこう」

「そうね。さっさと見つけて止めないと」

「頑張ってください」

 

 アナに見送られ、二人はステンノを探しにいくのだった。




 ステンノ様は暴走を続ける……なんとなく外堀を埋めよう計画を思い付くと同時に行動するのはステンノ様クオリティ。

 なんだかんだ外堀から埋めようとしている時点でステンノ様的にOK出ているのでは?

 メルトの場合、外堀を埋める前に本人が動く。たぶん。きっと。おそらく。確実に。


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猿は去年と変わらないね?(新規は私だけで余裕だったわね)

「去年と変わらず、朕の勝利であるな」

「去年と何も変わらない戦いだったねぇ……まぁ、安全に倒せるならそれに越したことはないね」

「まぁ、見えていた結末、というものだな。今回はそちらのレディを褒め称える方が賢明だとも」

 

 去年と同じと言いつつも、なんだかんだと少し有利に立ち回った始皇帝、ホームズ、マーリンの三人。

 そして、ホームズに指されたメルトと言えば、

 

「ふん。当然でしょ? 負けるわけないじゃない。ただでさえも有利属性で、バフまであんなに盛って……流石に負けられないわよ……」

「うむ。私もいるのに負けてもらっては困る。本当に困る。アイスタイム返上してまで来たのに負けられると食べられなくなる」

「物欲的な女神に育ってますね……センパイ、育成方向間違えてません?」

「勝手に育ったんですけど」

 

 オオガミの右腕をしっかりと抱き込みつつドヤ顔をするメルトと、アイスクリームを食べて満足げなスカディ、呆れたように笑うBBの三人。

 

「というか、あまりにもあっさりしてて達成感とか全くないのだけど」

「今回の頑張りポイントがカード運の時点でお察しですよね。最近センパイ雑では?」

「最小限のリスクで勝つ。戦う前に勝利を確信するくらいの戦力を整える。流石です孔明先生!」

「清々しいまでに罪を被せにいったね。あれはもはや尊敬の域じゃないかな? 私も見習おう」

 

 オオガミの態度に苦笑いをするマーリン。

 だが、ホームズは目を細めつつ、

 

「どちらかと言えば君が原因だろう?」

「そうかい? 元からあんなだった気もするけども」

「ふっ、朕としてはどちらでもよい。が、彼奴の行動に影響を与えるのはある意味では名誉なことではないか。中々狙えることではあるまい」

「ふむ。そう言われるとなんだか利点みたいだね。じゃあ僕の功績ということで!」

「と言うことらしい。どう思う? Mr.孔明」

「磔刑としよう。天守閣の上で三日でどうだろうか」

「おっと、どうやら嵌められたようだ」

 

 当然のように現れる孔明に頬を引きつらせるマーリン。

 そして、逃げ出すより早くホームズに拘束されるのだった。

 

 

 * * *

 

 

 そんな騒ぎに気付いていないオオガミ達は、

 

「それじゃ、残り一週間、遊んで回ろうか!」

「賛成。後、ついでに宿を取り直して私と同じ部屋にしなさい」

「キャー! メルトったら大胆ですね! でもダメですよ? あいにくと、カルデアでは許されてますけどここだと普通に阻止されますので。三日目辺りにエウリュアレさんがやろうとして女将にNGされてました」

「くっ、ガードが硬いわね……」

「まぁ、潜入は出来るみたいなので。昨日エウリュアレさんがやってましたから」

「待ってBB。その情報はどこから入ってるの?」

「ちょっと頑張ればこのくらいの調査なら余裕ですとも。最強系小悪魔後輩なので!」

「そこまで来るとストーカーの域では?」

 

 BBに変な疑惑をつけつつ、アイスを食べてご満悦なスカディを連れて四人は遊戯室に向かうのだった。




 ちゅちゅんは普通に強くて結局去年と同じ編成になってしまった……
 新規はやっぱりメルトスカスカで一掃ですね。強いなぁ……


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屋上庭園は落ち着ける(竹林なんて滅多にないのだけどね)

「ふぅ……なんだかんだ、ココが一番落ち着くね」

「そうね。まぁ、竹林なんて滅多に来ないけど」

 

 屋内庭園内にある椅子に座るオオガミと、その膝の上で体重を押し付けながらくつろぐエウリュアレ。

 快晴の空と風に揺れる竹の葉をぼんやりと眺めつつ、オオガミは、

 

「なんか、このまま数時間過ぎそうなんだけど」

「正直、もう眠いのだけど」

 

 暖かい日の光とちょうどいいくらいの風を受け、うとうととして来る二人。

 冬真っただ中とはいえ今は地獄。暖かい気候もおかしくはないだろうと思いつつ、二人の瞼はゆっくりと落ちて行くのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ん、おいカーマ」

「はいはいなんですか……って、本当に何ですか。寝ているんですか? のんきですねぇ……」

 

 屋上庭園を散策しつつ、邪魔な魔物を狩っているバラキーとカーマは、寝ている二人を見つける。

 よくよく見れば、サルも数匹集まって一緒に寝ているので、尚更二人は首を傾げる。

 

「よくあの状態で寝られますね……」

「吾としては、サルも共に寝ている方が気になるのだが……」

「まぁ、あそこに泥を投げようものなら殺されますよね。分かります。勘がそう囁いていますもん」

「吾もちょっとイヤだなぁ……酒呑程とは言わぬが、起こしたら殺されそうだ……」

「触らぬ神に祟りなし。逃げるが勝ちです」

「でもでもぉ、ここで逃げたら敗けだと思いますよ? カーマさん」

 

 そう言って、どこからともなく現れるBB。

 カーマは嫌そうな顔をしつつ、

 

「なんですかいきなり……あれはどう見ても触れない方がいいでしょう? かき回すのは好きですけど、痛い目に遭うのは嫌なんです。分かります?」

「分かります分かります。でも、今なら泥団子投げ放題ですよ? だってほら、サルがあんなにたくさんいるんですから。あのうちの一匹が投げたことにするなんて容易でしょう?」

「……そう言われるとそうですけど……でも嫌な予感がするんですよね……」

「全く。そんなにひよってたらセンパイは堕とせませんよ?」

「なんです? マスターの敵なんですか?」

「いえ別にそう言う訳じゃないです」

「ややこしい人ですね……!?」

 

 即答するBBに頭が痛くなりつつも、まぁそれはそれとしてやるのはありかと思うカーマ。

 

「まぁ? そんなに言うんでしたら? やってあげないこともないですけど」

「そうそう。その意気です! さぁ、どーんとやっちゃってください!」

 

 そう言って、応援するBBに見られながら、カーマは湿り気のある土を練り、泥団子に変えていく。そして、

 

「……ふっ!」

 

 全力の一投。

 それは見事なストレートでオオガミの顔面に向かって飛んでいき――――突如として出現した門によって消え去り、それと同時に背後からゴッ! と鈍い音を響かせながらBBが飛んでいく。

 その一部始終を見ていたバラキーは、

 

「まぁ、そうなるだろうな」

「……なんですかあれ……ズルくないです?」

 

 文句を言うカーマ。

 すると、これまた突然門が開き、中から現れた触手が泥団子を投げつけ、べしゃりと音をたててカーマの顔面を泥まみれにして消え去る。

 それにより硬直したカーマは、我に返ると同時に炎を噴出させて泥を剥がすと、

 

「とりあえず、BBさんを殴りにいきますか」

「お、おぅ。吾も付き合うぞ」

 

 そう言って、怒っているカーマについていきながら、バラキーはオオガミ達の後ろの方に手を振るのだった。




 自動防衛機構アビーセコム。攻撃は立案者に返っていく安心設計。ついでに実行犯にも優しく仕返し。

 ほぅ、塔イベントですか……準備は万端なのでいつから出撃できます?
 まぁ、このイベントは個人差溢れますけど、私は大好きです(グッ


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私をはなれに置いていくだなんて良い度胸じゃない(大変申し訳ございませんでした……!)

「で、私をはなれに押し込んで遊んでいたって?」

「……はい」

「普通に楽しかったわ」

「感想は聞いてないの。次言ったらマスターのお腹に膝よ」

 

 見慣れたペンギンパーカーの奥から覗くラムダの目はどう見てもお怒りで、オオガミは目を逸らす。

 それとは対照的に、目を輝かせながら言うエウリュアレによって、ラムダの怒りに油が注がれる。

 

「それで? 私には何もないわけ?」

「えっとぉ……お食事、行きます?」

「もちろん行くわ。食事時だもの。今すぐよ」

 

 有無を言わせない怒涛の勢いに二人は気圧されつつ、仕方ないとばかりに立ち上がり、

 

「それじゃあマスター? 私の食事の手伝いは任せたわよ」

「あ、うん……任せて。もう何か手慣れたこの技術を見せてあげよう」

「それ、誇って良いの?」

「ふふん。スタァに貢献できるならそれは誇れることでは?」

「やだ、私のマスター、意識高すぎ……?」

「やだ、私のマスター、洗脳されてる……?」

 

 ドヤ顔のオオガミに別々の衝撃を受けるラムダとエウリュアレ。

 だが、二人はすぐに我に返ると、右手をエウリュアレ、左手をラムダが引きながら、

 

「ほら、さっさと行くわよ」

「いくらメルトに押されても、貴方の隣は譲れないものよ」

「あっはは……これ、刺されそうな展開だね」

「スタァの隣よ? 光栄に思いなさい」

「誰もが羨む女神の隣よ? 泣いて喜びなさい」

 

 そう言って不敵に笑う二人にオオガミは、楽しいような困ったような笑みを浮かべつつ、連れていかれる。

 

 

 * * *

 

 

「おぅおぅ。久しぶりにやってるねぇ……いや悪化してねぇか? 見てるこっちが火傷しそうなんだが」

「そうかぁ? オレにはいつも通りに見えるけどなぁ?」

 

 両サイドをエウリュアレとラムダに押さえられ、左右交互に料理を口に運んでいくオオガミ。

 あの場所だけ違う空間ではないかと思うような場面を見ながら呟くロビンと、さして気にもしていないアンリ。

 アンリに至っては、隣で静かに食べているアビゲイルの方が気になって仕方がないのだった

 

「なんつーか、毎度のことだがマスターも甘やかしすぎじゃねぇの? 普通にカモにされてねぇか?」

「いーんだよ、あそこはあれで。下手にちょっかい出すと先にこっちの首がコロンと行くぜ? 触らぬ神に祟りなし。あんな面倒なの二人も抱えて大丈夫な方も問題だって話だ。気にするだけ無駄だって」

「ん~……まぁ、マスターがそれで良いって言うなら良いか。ただ、あれはこれから先も苦労するねぇ……」

「ま、過労死しなきゃいいさ」

「どっかの王様みたいにってか?」

「そりゃ言えてるわ」

 

 ハッハッハ! と、マテリアルで見たいつかの話を掘り返して笑っていると、

 

「ほぅ? 貴様ら、共に働きたいようだな……良いぞ? (オレ)が許そう。食事が済み次第馬車馬のように働く覚悟は出来ているだろうな?」

「おっと。地雷を踏み抜いちまったようだぜ狩人」

「言い訳できねぇがテメェも道連れだコンチクショウ……!」

 

 そう言って、賢王の視線を受けながら二人は互いに小突き合うのだった。




 なおラムダも手を引いているように見えて、実は力がほぼ入っていないので悪しからず。

 王様への明けましてお悔やみ申し上げますが好きすぎて未だに私のトレンド一位だったりします。センス光ってるなぁ……


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ヘイ! マイフレンド!(おっすマスター。上機嫌っすね)

「ヘイ! マイフレンド!」

「ぅお!? お、おっすマスター。上機嫌っすね。なんかあったんすか?」

 

 楽しそうにニコニコと笑っているオオガミに、首をかしげながら聞くマンドリカルド。

 だが、オオガミもくびをかしげると、

 

「いや、用事とかなんにも考えてないけど。単純に話したかっただけだよ?」

「マジすか。それは、光栄っすけどなんか重い……ギリシャでの事とか、何も覚えてねぇっすよ?」

「そんなの気にしないぜマイフレンド。絆なんて今から作りゃいいんです。ってことでトランプしようぜ!」

「すげぇ……説得力溢れるようでその実トランプに誘いたいだけ……参考にするっすよ」

「いや絶対止めとけって。ろくなことにならないぞ?」

「うげっ、イアソン……!」

 

 後ろから現れたイアソンに頭を掴まれ、青い顔をするオオガミ。

 だが、マンドリカルドは目を輝かせ、

 

「イアソン! あんた、オケアノスでヘクトールの指揮官をしてたって聞いたんだが、本当か!?」

「ん? あぁ、本当だとも。ただ、あの時はこいつにやられて、良い思い出とか全く無いがな! 最終的に魔神柱にされるとか悪夢だろ!」

「ってことは、マスターはあのヘクトールを破ったってのか……すげぇな……」

 

 そう言って、尊敬の眼差しで見てくるマンドリカルドに、オオガミはドヤ顔をしつつ、

 

「ふふん、もちろんですとも。まぁ、トドメはエウリュアレだったわけですけども」

「おぉ……ってことは、イアソンはマスターとエウリュアレの仲を知ってたわけで?」

「んなわけあるか。あの時はひよっこだぞ? 再びあったらなんか無茶苦茶雰囲気変わってるし、女神二人も侍らせてるしで困惑だっての」

「侍らせてないし。そんなこと本人に聞かれたら殺されてるし」

 

 わしゃわしゃと乱雑に撫でられボサボサになっていく髪。

 オオガミが止めようとするも、サーヴァントらしく力を入れて抵抗してくるので、何もできずに荒らされる。

 その様子を見ていたマンドリカルドは、

 

「そういや、マスターにトランプをやらないかって誘われたんすけど、イアソンはやるんすか?」

「あぁ? やるともやりますとも。大富豪とか得意だぜ?」

「うんうん。上から下に落ちるのが早いよね」

「おいそれは言っちゃダメだろうが」

 

 頭をゆっくりと絞められているオオガミはイアソンの腕をタップしつつ悲鳴を上げる。

 イアソンは楽しそうに笑いつつ、

 

「ははは! よし、大富豪しようぜ! マンドリカルド、お前もだ!」

「強引っすね。まぁやりますけど」

「女神二名誘わないと後で何か言われる……!!」

「うるせぇお前だけモテてると殴りたくなるから許さねぇ!」

「そ、そんな……!!」

 

 イアソンに頭を掴まれたまま引きずられていくオオガミ。その後ろを楽しそうにマンドリカルドはついて行くのだった。




 マイフレンド好き……でも使いどころさん無いんですよね……いや、次の百重塔イベントならば行けるな。頑張れマイフレンド!

 うちのカルデアは新生アルゴノーツ作れないんですよ……アキレウスがいないので……彼以外は揃ってたはず……瀕死って言いつつ絶対に死なないあの英雄欲しいなぁ……


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最近温泉に来てるの忘れてねぇか?(10連敗さんが何を言ってるんです?)

「さて。最近温泉に来ているのを忘れて室内で遊んでますが、いい加減外に出ようぜマスター」

「あれ、ロビンさん怒ってる?」

「いやまったく。10連敗して怒ってるとか無いから」

 

 そう言いつつも、どこかムスッとしているロビン。

 イアソンはニヤニヤと笑いつつ、

 

「良いなそれは! よしよし。んじゃ、裏山に行って獲物狩りだな! 審判は任せろ。この大富豪イアソン様が直々に行ってやろうじゃないか!」

「うわウッザ! おいマスターコイツ蹴って良いか? いや射るわ。とりあえず撃ち抜くわ。毒にして宝具でドン! で良いだろ」

「うわ怖! 何が怖いってそこまで言ってるにも関わらず顔が微動だにしないところだよ! もちっと嫌そうな顔をしやがれ!」

「してるしてる。マスターが笑ってるんだししてるだろ」

「お前は笑ってないで止めろよな!?」

 

 イアソンに言われ、倒れるほどに笑っていたオオガミは起き上がると、

 

「あはは、いや、ロビンさんに噛みつくのは良いけど、王様キラーですけど、覚悟できてます?」

「いやオレが戦うとは言ってないからな!? むしろお前がやれ!」

「えぇ……イアソン様、こんなか弱いマスターに特攻しろって言うんです……? なんて無慈悲なんでしょう……」

「可愛い子ぶっても可愛くねぇけど声だけは可愛いせいでちょっと背筋がゾッとするからやめてくれ……!」

 

 嫌そうに頭を抑えオオガミに手を振るイアソン。

 オオガミはそれを見てニヤニヤと笑うと、

 

「声だけで弱るとかさてはイアソン様雑魚……?」

「うるせぇ! いいよ分かったやってやろう! この! 大富豪が! 貴様みたいな大貧民に実力でも勝っていることを証明してやる! 行くぞマンドリカルド!」

「えっ、オレっすか?」

「お前以外に誰がいる。現状平民だろうが。さぁ馬車馬のように働け! 私が指揮を執る!」

「さっすがイアソン様。じゃあ富豪なのでロビン側につきますね。ついでにアンリもこっちで」

「あれ、うまく隠れてたつもりなんだがな?」

「残念だけどメンバー全員覚えているからいなくてもバレるのだバカめ!」

「うっわ、今日のマスター荒れてんなぁ……まぁいいや。お供するぜ~」

 

 そう言って、ロビン側につくオオガミとアンリ。

 イアソンは傍らにいるマンドリカルドを見て、再度ロビンたちに目を向けると、

 

「いや不公平すぎないか!? 人数差はあからさまに不利だろ!?」

「あれあれ、天下のイアソン様も平等じゃなきゃ勝てないとか、そういうこと言っちゃうんですか? 悲しいなぁ……イアソン様なら部下が一人でも戦えると思ったんだけどなぁ……」

「いや、流石にそれには乗らねぇからな!? 不利は不利だ。何より上空に対してこっちは何も出来ない! つまり鳥類に対して何も出来ないわけだ! アーチャーを一人寄越せ!」

「いやいや。イアソン様はなにか勘違いしてますね。こっちのパーティーはロビンさん以外無力ですがなにか!? 戦力だけで考えるならそちらの方が圧倒的に有利! 何もおかしいことはないですよ!」

「今回のは個人より集団の方が有利じゃねぇか!」

 

 獲物狩り。つまりどちらがより多く倒せるかと言う問題なのだから、罠や索敵など、人数が多い方が有利なことばかり。なので、個人よりも集団の方が有利、というのは深く考えずとも分かることだろう。

 よって、一切ごまかされないイアソンはオオガミに噛みつき、オオガミはそれを丸め込もうと必須なわけだ。

 だが、そんな言い合いも突然に終わりを迎える。

 

「なんだなんだ? 面白そうなことか? グループ分けされてるってことは勝負とか?」

「あ、オリオン」

「あ、どうもっす」

 

 通りすがりの超人オリオン。彼を見た瞬間にイアソンは目を輝かせ、

 

「よし! オリオン、貴様もこっちのチームだ! これで条件はフェアだな!」

「あぁ!? くそぅ、アンリを蹴ってでもオリオンを入れるべきだったか……!」

「おいなにサラッとひでぇこと言ってんだマスター? 気持ちはわかるが流石に心に来るぜそれ」

「よくわからんが、とにかくイアソンのチームに入れば良いのか? よろしくな!」

「おぅ! よしマスター。こっちはこれで完璧だ。さっさとやろうじゃないか!」

「くそぅ、清々しいまでに良い笑顔をしやがって……! 二人とも、絶対勝つよ!」

「おー」

「おー……って、なんでこうなったんだ?」

「知らね。でも発端はアンタだな」

「言い訳なんざしねぇけど、納得したくねぇなぁ……」

 

 そう言って、六人は裏山に向かうのだった。




 特に意味のない10連敗がロビンを襲う……! 普通にやってたら10連敗とかしないのでは……? とか思うも、きっと裏でBBに妨害されてたんだろうなぁと予想。


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死んでるのだわ……!?(気絶してるだけでしょ?)

「し……死んでるのだわ……!?」

「んなわけないでしょ。というか、アンタがそう言うとわりと縁起悪いのだけど」

 

 裏山で倒れているオオガミを発見したエレシュキガルとイシュタル。

 イシュタルはその辺の木の枝を頬をつつき、エレシュキガルは心配そうに顔を覗き込む。

 

「それにしても、なんだってこんなところに……うわっ、ロビンとかアンリも倒れてるじゃない」

「本当ね……ん~、巨獣がいた痕跡はあるけど、肝心の本体が見付からないのは逃げられたってことかしら。ということはつまり、マスターはソイツと戦って負けたということなのだわ!?」

「いや、流石にそれはないと思うけど……いや、それもありね。よし。エレシュキガル! とりあえずコイツらを閻魔亭に投げ込むわよ!」

「分かったのだわ! って、イシュタルは?」

「私はその巨獣を探して縛り上げておくわ。だって危険でしょ? こういう時くらい女神らしく始末しなきゃね!」

「……本当にそれだけなのでしょうね?」

「……へ、下手に疑うのもよくないわよ。マスターに嫌われるかもしれないわ」

「そ、そうかしら……でもそれはそれ。そもそも、貴女は前科がありすぎて野放しにしたくないのだけど」

「あぁもう面倒ね! 良いわよさっさと二人で巨獣倒して帰るわよ! 来る日も来る日も温泉ばっかりで体が鈍ってるのよ! そろそろ発散しないといつぞやの真夏のレモネード事件みたいにブクブク太るんだから!」

 

 うがー! と激昂しながら言うイシュタル。

 それを聞いたエレシュキガルは顔を赤くしつつ、

 

「そ、そんな筈無いのだわ!? ふ、太るはずないし!」

「神が集まる神性モリモリなここで食べるものがサーヴァントにとって栄養にならないわけないでしょ! 普通に栄養よ! 太るに決まってるでしょ!」

「う、うそ……そんなことあっていいはずないのだわ……」

「認めないのはいいけど、それはそれとしてさっさと回収して一か所にまとめておかないとサルたちに身ぐるみ剥がれて捨てられるわよ!」

「そ、それは流石に困るのだわ……先に閻魔亭に届けてくるから、貴女はそこで待ってなさい!」

「えぇ~……まぁいいけど、早く帰って来なさいよねぇ~」

 

 そう言って手を振るイシュタル。

 エレシュキガルがオオガミ達を連れて行ったのを見送ってから軽く体を伸ばして準備運動をすると、

 

「さてと。マスターチームは全滅でイアソンチームの勝ちかしら」

「ふはは! やはり私に負けは無い! いやまぁ、あいつらを倒した奴らからは逃げたわけだが」

「いやぁ、流石にアレは無理だろ。勝てなくはないだろうが、割と辛いぞ~?」

「殺されそうになったら助けに入る予定だったんすけど、軽く戦ったら帰っていったんで、そこまで怒って無かったんじゃないかなぁと」

「なるほどね。じゃ、そいつを始末しに行こうかしら。どうせ普通の獣でしょ?」

「魔獣の域に気もしたがな。だが後々面倒そうなのは確かだから始末するのは賛成だ。場所は目星がついているからな。準備ができ次第行くぞ」

「……この男、意外と仕切るわね」

「リーダーとしては優秀だからなぁ……」

 

 無駄にカリスマ性を発揮しているイアソンを見ながら、イシュタルとオリオンはそう話すのだった。




 一体何にやられたのか……でも編成的に戦力になるのがロビンさんしかいない時点で勝てる敵は割と少ないのだな……

 イシュタルとエレシュキガルって、仲悪かった気がするけどマスターがマスターなので是非も無いですね。ちなみにうちのイシュタルは悲しい事にライダーです。アーチャーは……?


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おはようマスター。気分はいかが?(ご立腹ですかエウリュアレ様)

「うおぉ……魔猪がぁ……ドラゴンがぁ……ハッ!」

 

 目を覚ますと、眼前にはドラゴン――――ではなく、にっこりと微笑むエウリュアレがいた。

 

「おはようマスター。気分はどうかしら」

「女神の膝枕とか人類の夢ですよね。最高ですよ?」

「そう。それは良かったわ」

 

 言いながらも、にっこりと笑ったままのエウリュアレ。

 怒っているような気配を感じつつ、オオガミは、

 

「それにしても、なんか手慣れてきたね。膝枕」

「あら、床に落とされる方が好みかしら。じゃあ今すぐそうしてあげないとね」

「ごめんなさい許してください神様女神様エウリュアレ様!」

「ふふっ、冗談冗談。それで? いつまで私の膝枕を堪能するつもり?」

 

 そう言って微笑むエウリュアレに、オオガミは真剣な顔で考え、

 

「……あと三日」

「バカ。明日には全員チェックアウトなんだから、出来ても今日一日だけよ。というか、そんなことしてたら私の食事をどうしてくれるわけ?」

「そういえばそうでした。食事大事。そろそろ起きます。あと五分」

「ズルズルと延ばしていくつもりじゃない」

「マシュに怒られるまではいけるな……」

「いかせないわよ落とされたいの?」

「後頭部強打はイヤだ……」

「じゃあそろそろ起きなさい」

「ぐぬぬ……おはようございます」

「はいおはよう。全く、心配する必要なんてどこにもないわよね」

「ランサーなドラゴンは相性悪すぎたので猛省してます」

 

 起き上がり、素直に謝るオオガミ。エウリュアレはため息を吐くと、オオガミの頭を軽く小突き、

 

「全滅する前に撤退して。でないと次は四六時中アナに見張らせるわよ」

「それは……アナが可哀想なのでやめてあげて……」

「私もメルトもいるから交代はいくらでもできるわ。ともかく。見張られたくないのなら無茶しないこと。良いわね?」

「はい……」

 

 深く頭を下げたオオガミは、ふと周囲を見渡すと、

 

「そういえば、メルトは?」

「今貴方たちを全滅させた魔獣を狩りにいってるわ。貴方がいなくともイアソンがいるから、多少なら大丈夫なはずよ」

「イアソン様はボロボロになってからが本番だからなぁ……」

「まぁ、誰が失敗してもメルトが倒すでしょ。セイバーじゃないんだし」

「……セイバー以外なら雑に勝てるメルトマジやばくね……?」

「そうしたのは貴方でしょ」

「これが過剰戦力か……」

「過剰でちょうど良いくらいよ。それくらい無いと、私のバカなマスターは死んでしまいそうだし?」

「……ご立腹ですね。反省します」

 

 隠しているようで全く隠れていない言葉のトゲに、オオガミは正座をして謝る。今日だけで何度謝るのだろうかを思っていると、

 

「それじゃ、食事に行きましょう。それで私は許すわ」

「ご飯いただきます……」

「えぇ、さっさと立って行くわよ」

 

 エウリュアレに手を引かれながら立ち上がり、二人は部屋を出るのだった。




 最近エウリュアレ様がよく怒ってらっしゃるのですが。なんででしょ……まぁ可愛いのでよしとします。可愛いは正義。

 そしてセイバー以外なら倒せるようになってしまった最強アルターエゴ(ランサー)なメルト。有効範囲はランサーの方が広く周回性能もランサーの方が高いけど最高火力は流石に負けないメルト。宝具レベル上がってくれメルト様。バレンタインはまだですか。


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日常
ただいまカルデア!(おかえりマスターくん!)


「ただいま!」

「おかえりマスターくん。どうだった?」

「最高でした。閻魔亭にあと一年居座っても良いですか?」

「ダメです。息抜きはいいけど、遊び過ぎはダメだぞ~?」

 

 ダ・ヴィンチちゃんに言われて残念そうな顔をするオオガミ。

 だが、ダ・ヴィンチはすぐにイタズラな笑みを浮かべると、

 

「それで? 女神様とはどうだったのかな。進展した? まさか後退はしてないよねぇ?」

「ふっ……湯上がりの二人は最高に可愛いので。写真撮ろうとしたらエウリュアレに砕かれたけど」

「おぉ! それは確かに写真を残せなかったのが悔やまれるね……! でも、それだとエウリュアレしか反応してない感じがするけど、どうなんだい?」

「メルトは反応しないってより、むしろ撮られにきてたので。そっちは撮影した上で多重バックアップからの現像まで終わってますとも」

「君、こういうときに限ってめちゃくちゃアクティブだよね」

「そりゃ、思い出は大量に欲しいでしょ?」

「……もしかして、エウリュアレの方も撮ってる?」

 

 オオガミの、どこか誇らしげな表情に何かを感じ取ったダ・ヴィンチが聞くと、オオガミは楽しそうに笑い、

 

「当然マスター特権乱用しながら撮りましたとも。これが令呪の使い方なんですね……!」

「通常そんな使い方されたら殺されるのだけは覚えていてね……!」

 

 どこか闇を感じるオオガミの目に、嫌な予感を感じつつダ・ヴィンチは釘を刺す。

 オオガミはにっこりと笑うと、

 

「大丈夫。その日のうちにボコられたので反省してる」

「……後悔はしてないね?」

「当然じゃん。するわけないのです」

「うん。なんというか、意思が強いね」

「これが人理を修復したマスターですよ」

「そこでそれを誇られるのは違うなぁ……」

 

 困ったように笑うダ・ヴィンチに、ドヤ顔を返すオオガミ。

 そんなオオガミの背後に忍び寄った影は、

 

「マスター? いつ撮ったのかしら」

「いつって言うか、常に? 既に写真集が数冊作れるレベルでたまってるし、既に何冊か作った……ん? さては死んだなこれ」

 

 言っている途中からダ・ヴィンチちゃんの顔がドンドン引き吊っていくのを見て、オオガミは既に手遅れな事に気付き覚悟を決めた顔になる。

 そして、その想像を現実にするように後ろから襲い掛かるエウリュアレ。

 首を絞められ、気絶させに来るエウリュアレの攻撃を受けながら、オオガミは、

 

「これは……医務室、行きですね……わかります……」

「よくその状態で喋れるね!?」

「フィジカルお化けじゃない……!?」

「窒息は無理……さらばエウリュアレ……ガクッ」

 

 そう言って意識を手放すオオガミ。

 エウリュアレは頬を引き吊らせながら、

 

「どう見ても余裕だったのだけど……」

「……医療班! 連れてってー!」

 

 不死身なのでは? と思いつつも、二人はオオガミを医務室に持っていってもらうのだった。




 オオガミくんは日々肉体強化に勤しんでいるので優秀な肉壁(弊カルデア基準


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儂ら運送するんか!(運送と言ったらやっぱりトラックですよね~)

「うははは! 次は荷物運びするんじゃと! 儂ら運送業者じゃな!」

「運送……デコトラ……はて、なんとなく関連性がある人がいる気がするんですよね……お寺運んだりしてた気が」

「なぜ寺……? 燃やすのか……?」

 

 なにかを受信しているBBに首をかしげるノッブ。

 BBは考えるのを中断しため息を吐くと、

 

「ノッブはいい加減寺=燃やすっていうのやめません? 持ちネタと言われれば持ちネタですけど、そもそも焼かれた方で、貴方自身は祈った方が多いじゃないですか」

「ええじゃろ別にぃ。儂の死因再現とか無理だしバラしてもノーダメージじゃろ」

「いや、再現できるとか出来ないとか、そういう話じゃなくてですね?」

「分かっとる分かっとる。くどいのはNGってことじゃろ? 分かっとるとも。んじゃ、運送用の機材作ってエジソンに売り込むかの~。儲かりそうじゃし、手伝うついでに経営に一枚噛むか」

 

 そう言って鼻歌交じりにノッブが紙とペンを取り出すと、BBは横から覗きこみながら。

 

「あぁ、ノッブ。どちらかと言うと仕分け用の方がいいですよ。運ぶのはサーヴァントらしいので。仕分けられてる方が運送は楽ですし」

「ふむ……人件費にモノを言わせた配達とは恐れ入る……迅速に届ける人員を急募とは……確かにサーヴァントにしか出来ぬ仕事じゃな。アホか?」

「至って大真面目だと思いますよ。コストが凄そうですけど」

 

 分からんわ~。と言いながら嫌な顔をするノッブ。

 BBは苦笑しながら、

 

「まぁ、仕分けも大事な作業ですし、なによりノッブの大好きな準備ですよ」

「いや、儂準備が好きなんじゃなく、完全無欠の勝利が好きなんじゃけど。あくまでも準備はその過程というか……うん。まぁ、準備好きじゃな」

「否定する言葉が思いつかないとか凄いですね?」

「まぁ、儂の戦い方、わりと準備が本体な所もあるし……電撃作戦もするけども」

「とりあえず、本人も認めてくれたみたいですし、作っていきましょうか」

「おぅ。問題はユニヴァースが舞台な気がするわけじゃが……いや、アルトリウム回収してきたな。あれの使い方とか一応色々試したし、使えるか?」

「あぁ、あの時の。そうですね……そっち方面で作りますか。じゃあ、引っ張り出してきますね。確か倉庫の奥の方に押し込んだような……燃料部類だからあっちですかね」

「うむ。任せたぞ~。こっちはとりあえず設計考えるか」

「ちゃんとやってくださいね~」

 

 そうして、いつものようにBBは倉庫に向かい、ノッブは設計図を作り始めるのだった。




 ユニヴァースの気配を感じつつ、実際どうなるのか戦々恐々としている私です。荷物運びと塔イベントの組み合わせ、よく考えたら意味不明ですね?


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紅ちゃん土産を配らなきゃ(私もついていくわよ)

「紅ちゃん土産、美味しいんだけど女将はお持ち帰りできなかったんだよねぇ……」

「そう。残念ね」

「軽いなぁ……いやまぁ、マシュも呆れてたけども」

 

 閻魔亭のお土産のまんじゅうを留守番組に渡して回るオオガミと、そのまんじゅうを隣でモグモグと食べながらついてくるエウリュアレ。

 旅行も良いが、なんだかんだカルデアが一番安心すると思いつつ、差し出されたまんじゅうを食べる。

 

「……なんでさっきから食べかけしかくれないの?」

「……なんでかしらね」

「一口で食べれば解決じゃないの?」

「貴方の食べる分が無くなるけど良いの?」

「丸々一つくれればいいと思うんですけど……?」

「それはちょっと出来ないわ」

「えぇ……まぁいいけどさ……」

 

 差し出されたら食べるというのが刷り込まれているのか、食べかけだろうと差し出されれば食べるの繰り返し。

 気付けば一箱空いていて、食べさせていたエウリュアレの方が首をかしげていた。

 

「いつの間にか無くなっていたのだけど……」

「ほとんど食べてないのに不思議だね?」

「えぇ……一体誰がこんなに食べたのかしら」

「誰だろうねぇ~……でも悪くないと思うな~」

「……なによ。私が悪いっていうの?」

「悪くないと思うって言ったんだけどなぁ~?」

「ふぅん? つまり、私が食べたっていうの?」

「どうあがいてもダメなんですか!?」

「ふふっ、冗談冗談。そんなに怒ってはないわ」

「怒ってはいるんだね」

 

 オオガミがそう言って苦笑いをすると、エウリュアレはイタズラな笑みを浮かべ、

 

「だって、あんなに食べたのにねぇ? 認めないんだもの」

「全部食べかけだったでしょ。自分で一口しか食べなかったのに文句言わないでください」

「うるさいわね……もう一つ寄越しなさい!」

「ダメです。代わりにこれあげるので静かにしててねエウリュアレ」

 

 機嫌を直そうとしているのか、オオガミはエウリュアレに透明な瓶を渡す。

 その瓶には色とりどりの小さな粒のようなものが入っており、ラベルには『金平糖』と書かれていた。

 

「……私を子ども扱いするなんて、覚悟は出来てるんでしょうね? どんなイタズラをしてあげようかしら」

「イタズラをするなら、これは要らないよね。後でメルトにあげようかな」

「ちょっと、要らないとは言ってないじゃない」

「じゃ、どうぞ」

 

 オオガミはそう言ってエウリュアレに手渡すと、すぐさまふたを開けてポリポリと食べていく。

 それを見てリスのようだなぁと思いつつ、残りのお土産を配っていくのだった。




 エウリュアレ様の行動が暴走気味なの凄い……最近想像以上に暴れ狂ってるなこの女神さま……


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荷物運びって言われても、私には無理よ(台車でもくくりつけます?)

「荷物運びって言われても、私は出来ないわよね」

「腰に台車でもくくりつけられたいんですか?」

 

 こたつに入ってオオガミからみかんを食べさせられているメルトに、目が笑っていない笑顔で言うBB。

 オオガミはエウリュアレ用のみかんも剥きつつ、

 

「まぁ、運送中の障害を壊すのも仕事でしょ。家の壁とか粉微塵にしないと」

「いやもうそれは配達とは呼べないんじゃないですか?」

「そこに壁があるなら壊せば良いじゃない。そう、物理的にね。最速最短で駆け抜けるとはこういうことなのですよ」

「めちゃくちゃ迷惑ですね?」

「致し方のない犠牲と言うものです」

「お届けの度に部屋が破壊されるとか考えたくもないんですが……!」

 

 そう言って頭を抱えるBB。

 誰も『お前が言えることではないのでは?』と突っ込まないのは優しさからだろう。

 

「それで、メルトには壁破壊を頼むってことですか?」

「いや全く。そんな予定皆無だけど」

「じゃあなんでそんなこと言ったんですか……!?」

「壁破壊の仕事もあるのかなぁって思って。壁というか、どちらかと言えば通行止めエリアを通れるようにするとかそういう感じのやつ」

「あぁなるほど。それなら確かにメルトの能力は有用ですね。そんなことあります?」

「もしもって話。どのみち、役に立たない可能性があっても連れていくけど」

「……わりと雑ですよね、センパイ。いや、雑と言うより甘すぎるって言った方が良いですか? どのみち、エウリュアレさんとメルトに対して異常に優しいんですが。いくらメルトに調教されてるからって、優遇しすぎじゃないですか?」

「優遇されていたらこんなに周回に連れ回されて疲弊してたりしないと思うのだけど」

「それはそれです。こっちに至っては周回とかほとんどしないのでもはや別世界の話ですよ」

 

 やれやれとばかりに首を振るBB。

 オオガミは首をかしげながら、

 

「でも、周回したいって訳じゃないでしょ?」

「いえいえ。誘われるなら行きますよ? いつでもウェルカムです。どうぞ遠慮なくマスター権限で連れ回してください?」

「ふむ。じゃあ余裕が出来たらそうしようかな。今はちょっと時間がないから無理だけど」

「それは残念です。まぁ、明日から運送業ですし、仕方ないかもしれませんけど。というか、塔イベントってどれだけ大変なのか知らないんですけど」

「あぁ、そう言えばあの時はほとんど全員退去してたんだっけ」

「えぇ、はい。なので、さっぱりです。どうなんです?」

「実際余裕」

「四日で制覇してたわね」

「一ミリも不安がなくなったんですが」

 

 全く辛そうじゃないんですけど~。と言いながら、オオガミの正面に座るBB。

 直後両サイドの二人が動いたような気配と、引き吊った涙目の笑顔を浮かべるBB。

 だが、すぐに表情を取り繕うと、

 

「と、とりあえず、明日に備えてノッブの進捗を待ちますね……あの、エウリュアレさん? みかんをくれませんか?」

「ごめんなさい。このみかん、二人用なの」

「なんですか二人用のみかんって!? というか、なんで二人用なんですか!?」

「何言ってるのBB。エウリュアレとメルトの口にしか入らないに決まってるでしょ?」

「何の自信ですかそれは……いえ、まぁ、そんな予感はしてましたけど……というか、それで私も食べられないのは心外なんですけど……」

「箱の中にまだあるから取ってくれば良いじゃない」

「……はい。行ってきます」

 

 しくしくと泣きながら、BBは入ったばかりのこたつから出ていくのだった。




 メルトが活躍するのは障害を溶融させる時ですよきっと。

 そしてBBに辛辣ないつものメンバー。別段BBちゃん悪いことそんなにしてないんですけどねぇ……普段の態度ですかね?


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救え! アマゾネス・ドットコム~CEOクライシス 2020~
アマゾネスドットコム辺境惑星チェイテピラミッド姫路城臨時支店(字面だけだと全く理解できないわね)


「ん~……まさかチェイテピラミッド姫路城が帰って来るとは思わなかったなぁ……」

「気付いたら支部になっているの怖いわね……」

「ちょっと他人事な感じで言ってますけど、普通に今回のイベント会場で、イベント終わるまでの仕事先なんですけど。中身が別物なのは分かりますけど、これは中々厳しいものが……」

「いや全くないじゃろ」

「……色物を見慣れ過ぎて違和感感じなくなっちゃってますね私も」

 

 懐かしのチェイテピラミッド姫路城は、今では立派なアマゾネスドットコム辺境惑星臨時支部に。

 そこで働くという反応に困る状況に頭を悩ませつつも、ノッブの一言で外見に対する問題が頭の中からぽろっと落ちてしまうBB。

 

「さて……配達自体は楽なんだけど、些か時間がかかる。快速で終わらせても難しい所だよこれは」

「前回四日で終わらせた人が言うこのじゃないだろマスター。アビゲイルとか、ちびっ子たちと一緒に倉庫を走り回って遊んでるぜ? だからほら、気にせず今出せる最速で走り抜けようや」

「……アンリ。ちびっ子たちが荷物に手を出さないようにして」

「……無茶言いますね?」

「応援はいる?」

「まさか。ガキのお守りに救援なんて、あの王様の話マシーン以外要らないですよ」

「よし。聞こえてたねマーリン。出撃」

 

 オオガミの一言に、どこからか『人使いが荒すぎないかな君は』行ってますという声が聞こえたような気がするが、気にしないことにして、アンリも行かせる。

 それを見送ったオオガミは、今なお横で苦い顔をしているエウリュアレに、

 

「まぁ、配達に一回行ったら英雄健康ランド行けるし、ササッと終わらせて休むのもいいんじゃない?」

「あら、私たちで使っていいの? てっきりマーリンや孔明を入れさせるものだと思ったけど」

「戦力的に余裕があり過ぎるからね。最強バフキャスター四人衆は最悪単品で使われるのでは?」

「そうなの? まぁ、それならそれでいいのだけど……じゃあ、ささっと行ってメルトと一緒に遊んでようかしら。貴方の事だし、入れるでしょう?」

「それはまぁ、当然なのだけど……不思議な事に、メルトにボイコットされています」

「……ちょっと、どうにかして連れてくるわね」

 

 どうして中々見つからないわけね。と言いながら、エウリュアレはカルデアにメルトを送ってくるように連絡する。

 そんなエウリュアレを横目に、先ほどから何か企んでいそうなノッブとBBを見て、

 

「二人とも、何をするにしても一回CEOを通してよ?」

「ん? おぅ。任せよ。ちょいと機械の売り込みをしてくるだけじゃ。儂らの製品の売り込みをな!」

「安全安心がモットーですからね。お任せください!」

「不穏過ぎるなぁ……」

 

 オオガミはそう呟きながら、走り去る二人を見送るのだった。




 何がどうなったらこんな発想になるのか頭が痛くなりつつとりあえず古戦場と並行処理をしていく私です。

 まぁ、今回もサクッと終わるでしょう。たぶん。


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中々いい施設よね(最近休憩続きの気もするけど)

「ん~っ、ふぅ。この施設もかなり良いところよね」

「えぇ、全くよ。ついこの間まで旅館に籠っていて、次はここ。最近休息続きじゃない?」

 

 大きく伸びをして、スッキリした顔をしているエウリュアレと、どこか不満そうなラムダ。

 それに対してエウリュアレはため息を吐くと、

 

「そもそも、今までずっと周回していたのがおかしいの。周回しすぎ。ずっとそんなことしてたら霊基もすり減るわよ」

「そんなものかしら」

「そんなものよ。疲れているとか、すり減っているとか、そういうのは本人が一番分かってないの。そして、貴女の場合、オオガミと同じで倒れかけるまで気付かせないくらい気を張ってるから尚更分からないの。分かったら休んで。良いわね?」

「むぅ……そこまで言われたら仕方ないわ。休息もスタァの仕事だもの。しっかり休んでくるわ」

「えぇ、行ってらっしゃい」

 

 そう言って、エステに向かっていくラムダ。

 それを見送ったエウリュアレは、大きくため息を吐くと、

 

「どうしてこう、仕事をしてないと死んじゃいそうなのしかいないのかしら……分からないわ。働かなくてはいけないのだとしても、死んでしまっては意味がないでしょうに……」

「そりゃあれだ。価値観の相違ってヤツだぜ女神サマ」

 

 そう言って、エウリュアレの隣に立つアンリ。

 エウリュアレは特に気にするでもなく、視線を向けないまま、

 

「それくらい私にも分かってるわ。だってほら、女神だし、そう言うのはたくさん見てきたもの。とても愚かに見えるけれどね」

「そりゃそうだけどよ? 例えばだ。楽しいことをしているだけで良いって言われたらどうする?」

「それは、まぁ、楽しむけれど……えぇ、貴方が言いたいことも分かるのだけど」

「ありゃ、この例え、鉄板過ぎた?」

「まぁ、そうね。でも、そもそもその例えは人間だからこそよ? だって私たちは女神だもの。死因は寿命じゃなくて他殺や自殺に限られる存在。最初から最後まで遊んできたのだから全く関係ないわ」

「あ~……そりゃ言っても意味ねぇわな。こりゃ失敬」

「別に構わないわよ。昔から私は、私達(ゴルゴーン)は貰う存在。貢がれるものよ。人の命だって貢がれていたのだから、醜さも恐ろしさも知っているもの。だから私は人間を信用も信頼もしてない……はずだったのだけどね」

 

 そう言って、首を振るエウリュアレ。

 アンリはそれを見てニヤリと笑うと、

 

「おぉ? 惚気かぁ?」

「バカ。そんなんじゃないわ。変なこと口走っちゃったし、もう寝るわ。オオガミが帰ってくるまで起こさないで」

「へいへい。マスターが起きてくるまで起こしませんよ~」

 

 そう言って楽しそうに笑うアンリは、顔を赤くして去っていくエウリュアレを見送るのだった。




 古戦場回りすぎて頭がおかしくなってしまった……なんでこんなこと書いてるんだろう……

 まぁ、エウリュアレ様が楽しそうなので良し。


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なんだかケーキを食べているだけで終わっちゃったみたい(たさひたすら休んでるだけだったわね)

「むぐむぐ……なんだか、ケーキを食べているだけで終わっちゃったみたい……私なにもしてないような……」

「そうねぇ……私もほとんど何もしてないし、休んでいるだけね」

 

 アビゲイルとエウリュアレは、スイーツコーナーでそんなことを話しつつモグモグとケーキを食べていた。

 エミヤ達が取り仕切っているのは伊達ではなく、いつもの何倍も豊富な種類のケーキを前にアビゲイルもエウリュアレも、とにかく全制覇しようとずっと食べていた。

 

「なんというか、いつもの持ったない精神が悪さをしてるみたいだし、気付いたらもうアルテミスタワーは攻略されているんだもの。ビックリだわ」

「あまりにやれることがなくて私の触手も暴れだしちゃうわ」

「それは流石に怒られるわよ……?」

「それくらい分かってるわ……でも、ダメってものほどやりたくなってしまうの……」

「分かる……分かるわ。私ももっとイタズラしたいもの」

「ではしましょう! エウリュアレさんもご一緒に!」

「えぇ、しましょう! 全力でイタズラを!」

 

 そう言って手を取り合う二人。

 その様子を遠くから見ていたアンリは、隣にいるロビンの袖を引くと、

 

「おいおい……なんかヤベェのが生まれそうな予感がするんだが」

「あん? 一体なんだってんですか……オレはBB以上のヤバイヤツとかなら遠慮したいんですが」

「いや、それはちょっと判断しづらいが……少なくとも廊下中にトラップとか、そういう感じのが出来そうな雰囲気だ」

「……罠解除とかさせられるのか。もしかして。マジで?」

「いや、可能性の話だし、今は罠をどうにかできるサーヴァントとかいるじゃねぇか」

「それはまぁそうだが……つか、誰が仕掛けるんだよ」

 

 ロビンが聞くと、アンリは指を指しながら、

 

「あそこで怪しい雰囲気出してるエウリュアレとアビゲイル」

「……可愛げのあるトラップなら良いんだが」

「アビゲイルの発案の時点では安全で、エウリュアレによって可愛くなくなると見た」

「お前……マジで当たりそうな予想するなよ。事実になったらどうしてくれんだ」

「そんときは素直にバーサーカーで対処的解除で」

「それつまり、わざとかかって全部解除するってのか? 脳筋が過ぎねぇか?」

「時には思考放棄が正解の時もあるってことだ。出来るだけ頑丈なヤツに任せりゃ行けるだろ」

「……どうかねぇ……」

「流石にアイツらも即死トラップとかは設置しねぇだろ? なら行けるって。よゆーよゆー。まぁ、かかるのはオレじゃないけど」

「あの二人の人間基準がマスターなら、どうだろうなぁ……」

 

 ロビンの呟きに、アンリは頬を引きつらせるのだった。




 とりあえず聖杯貰ったので休憩! 後はのんびり消化して行くだけなので高レアだけで攻略しても良いかもしれない……


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高レアは休みじゃなかったの?(お姉ちゃんは嬉しいですけど)

「はぁ……高レアは休みじゃなかったの? 普通に配達させられてるんだけど」

「でも、お姉ちゃんはオルタと居れて嬉しいですよ?」

「はいはいそうですね~」

「もぅ、大きい方の私はもう少し愛想よくしてください! 配達員として良くないと思います!」

「アンタも面倒臭いわね……というか、なんでこの三人なわけ? アイツ、今から行って燃やしてこようかしら」

 

 邪ンヌは嫌そうな顔をしながら、二人に囲まれて荷物を運ぶ。

 だが、事態が好転するわけでもなく、この状況を抜け出すにはさっさと終わらせるしかない。

 なので、後ろをのんびり歩いているオオガミを睨みつけ、

 

「さっさと行くわよ駄目マスター! この編成にしたの許さないからね!?」

「おっと。わざとふざけた編成にしたのがばれてしまう……」

「最初っからばれてるわよ明らかにわざとでしょうが!」

「まぁ、うん。お姉ちゃんがね。うん」

「……洗脳、抜けてないの?」

「いや、こう、区別というか、そんな感じ」

「そう……ならいいけど、それが区別じゃなくて素になったら不味いと思うのだけど」

「まぁ、そうならないように気を付けてはいるよ?」

「ならいいわ。さ、これを持って」

「え、正気?」

 

 荷物をオオガミに持たせ、身軽になって階段を駆け上がる邪ンヌ。

 オオガミは苦笑いをすると、

 

「じゃあ邪ンヌ。お客様の説得、お願いね?」

「任せなさい。ササッと終わらせて帰るわよ」

「お姉ちゃんも手伝いますよ~」

「仕方ないので私も手伝います」

「二人とも一緒の配達員でしょうが。一緒にやるのは当然でしょ」

 

 そう言って、一足先に部屋に向かう邪ンヌ。

 それを見送ったオオガミ達は、

 

「オルタも、楽しそうですね。弟君もですか?」

「まぁ、一応。活き活きとしているのを見ると楽しいじゃん? そう言う事です」

「なるほど。まぁ、弟君がそういうならそう言う事に……って思いましたけど、そうですよね、はい。エウリュアレさんとメルトさんがいるからこれ以上は流石に不味いですものね……何よりもあの二人を相手にって時点で色々重い様な……」

「真面目な方の私もおかしくなっちゃいました?」

「サンタさん。それ以上は粉微塵にされちゃうからだ静かにしてようね」

「は、はい……確かにそんな感じはしますね……」

 

 不穏な気配を感じつつ、静かになるジャンタ。

 オオガミは苦笑いをすると、上の方から爆発音が聞こえる。

 三人は硬直すると、

 

「じゃ、邪ンヌ!?」

「可愛い妹が!?」

「ダメな方の私が爆発……? まぁ、それもアリですね?」

「よろしくないと思いますがどうなんでしょうお姉ちゃん!」

「可愛いサンタな妹ちゃんは後でお説教です!」

 

 そんなことを言いながら、三人は急いで階段を駆け上がっていくのだった。




 実際は噛み合っていないので運用しないけど運用したい……


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これは良い眺めね(姉様方、危ないのでお止めを……)

「ふふっ、これは良い眺めね。(ステンノ)

「えぇ、遠くまで見渡せるわ。(エウリュアレ)

「姉様方……危ないのでお止めを……」

 

 楽しそうに笑うステンノとエウリュアレに制止の声をかけるのは、今二人を左右の肩に乗せているゴルゴーンだった。

 案の定、原因は後ろでニコニコと笑みを浮かべているオオガミであり、ゴルゴーンが睨み付けるのも無理もないことだろう。

 そんなオオガミに、

 

「マスターも、酷いことをしますね」

「そう? 本当にそう思ってる?」

「……ノーコメントで」

「アナも大概じゃない?」

「そんなことは……無いです。はい。全く。マーリンが胡散臭くなくなるのと同じくらいあり得ないです」

「なるほど。例えが絶妙で好きなのでそういうことにしよう」

「それでよろしいのですかマスター」

 

 アナに対して異様に優しい気がするオオガミに、思わず突っ込むメドゥーサ。

 だが、オオガミは良い笑顔で、

 

「後で俺が酷い目に遭う時の生け贄なので」

「えっ」

「えっ、ちょっと待ってくださいマスター。何があるんですか。何が起こるんですか!?」

「ゴルゴーンとの追いかけっこが始まったらアナがあの二人を引き受けてメドゥーサも犠牲になるということで」

「そ、そういう計画ですか……!? なんて恐ろしい計画……!」

「本当にしたりしませんよね!? 冗談ですよね、マスター!?」

 

 必死の形相で止めようとしてくる二人に、オオガミは儚げな顔で、

 

「もう、ゴルゴーンに追われることは確定してるから……悲しいことだけど、二人には受け入れて貰うしかないね……」

「そ、そんな……」

「このメンバーな時点で察するべきでした……マスターにはイタズラ心をもう少し抑えていただきたい……」

「時々こういうことをしたくなってしまう瞬間というものはあるんだよ……というか、二人ももう対処は手慣れたものじゃないの?」

「それはそれ、これはこれです、マスター」

「出来るのとやりたいのは違うものなので、やりたくないのですが」

「でももう手遅れなので強制です」

「被害拡大ですよ……!」

「速やかに捕まって大人しく姉様方に散々に言われてください」

「逃げることに関しては英霊にも負けない自信があるよ」

「出来る限りの妨害をしますね」

「優しく捕縛してあげます」

「優しくなんてしませんから」

「う~んこの二人の方が怖いかもしれない」

 

 カルデアに長くいるだけはあり、二人に対する耐性が高いせいで厄介な敵を増やしてしまったのではないかと苦い顔をするオオガミ。

 そんなこんなで、配達先にたどり着くのだった。




 これがゴルゴーン三姉妹……! オオガミ君は生け贄になるのです……

 実際、このパーティーは男性に対して無敵……運用はしないんですけども。ラフムショックで書いてしまった……


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クレーム対応なら私の出番ね(クレーマーは殲滅よ)

「さて、クレーム対応なら私の出番ね」

 

 そう言って、サングラスをかけながら立ち上がるメルト。その身には既にペンギンパーカーを羽織り、ラムダとしての姿になっていた。

 そして、最後の配達から帰って来たオオガミに、

 

「さぁマスター。馬鹿なクレームを殲滅しに行きましょう?」

「帰ったばかりなのにクレーム対応ですかスタァ様? お風呂位入りたいんだけど」

「私は全く気にしないからさっさと行きましょう。それとも誰かに運んでもらって私の膝の上で寝る?」

「え、休み過ぎでおかしくなった……?」

「うるさいわね。さっさと編成組みなさいよ」

「横暴だぁ……いやまぁ、構わないですけど。今回一回も働いてないいつものキャスター陣を連れて来ようか」

 

 オオガミの声に、様々な所から悲鳴のようなものが聞こえる。

 だが、ラムダは不敵に笑うと、

 

「メンバーは?」

「玉藻とネロかな?」

「……嫌な人選ね」

「でも効果的なのは認める所だと思うけど」

「ふふっ、良いわ。私はクレーマーを消し飛ばせるならそれでいいわ。クレーマー自身はどうでもいいけど、私に歯向かうんだもの……消し飛ばすには十分すぎるわ」

「う~ん、理屈が分からない……」

「簡単な事よ。貴方は私のモノで、私のモノに喧嘩を売るって事は私の敵。つまり貴方に攻撃をするって事は私に攻撃してきたも同じものだもの。殲滅しなきゃでしょう?」

「……なるほどなぁ」

 

 遠い目をするオオガミ。

 ラムダは楽しそうな笑みを浮かべ、

 

「じゃあ、すぐに集めてくるから出られるように準備をしなさい。あと、クレーマーの場所も。私が纏めて消してあげるわ」

「メルト、実は楽しんでるでしょ」

「最高に楽しいわ。最近周回ばっかりかと思えば何もしない期間があったりしたし、何よりずっとこの格好。いい加減スタァじゃなくて私として戦いたいのだけど」

「……なら、スカディとふーやーちゃんのほうがいいかも? クイックメインだし」

「……そう言えば、私クイック宝具だったわね」

「素で忘れないで……?」

「最近ずっとアーツだったから……すっかり忘れてたわ。最後にクイック宝具を使ったのは何時だったかしら……」

「数か月前の気がするけど、そもそもメルトが来たの、まだギリギリ一年経ってないんだよね……」

 

 そう言われ、ラムダは目をパチパチとさせて首を傾げると、

 

「そうだったかしら……?」

「最近エウリュアレに言われて同じ反応をした自分がいたしその時メルトもいましたよね」

「……そうだった気もするわね……一年経ったと思ったけど、そう言えば来たのは二月だったかしら……」

「うん、そのくらい。なのでまぁ、とりあえずスカディとふーやーちゃん呼んで来ないとね」

「ん、その二人とはあまり面識ないわね……」

「じゃ、連れてくるよ。それとも一緒に来る?」

「変に時間を取られるのも嫌だし、ついて行くわ」

 

 そう言って、二人はメンバーを呼びに行くのだった。




 クレーマー殲滅過激派メルトリリス。アリですね?

 アルテミスタワー登り終わったので後はひたすらクレーマーをミンチにしなきゃ……


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クレーマー……難敵ね(流石はモンスタークレーマー)

「クレーマー、意外と面倒な相手ね……」

「まぁ、モンスタークレーマーだからね。多少大きくて頑丈でも仕方ないよ」

「多少というか、全部超大型の怪物揃いなのだけど」

 

 読書スペースでぐったりとしているメルトに、苦笑いをするオオガミ。

 メルトはそんなオオガミを見て、

 

「ちょっと。こっちに来なさいよ」

「えっ、なんで……? いや、行くけども」

「……普通、聞いて疑問に思ったら動かないものなんじゃないの?」

「普通ならね。メルトには普通じゃないから」

「……そう。それは殊勝な心がけね」

 

 そう言って、気恥ずかしそうに目を逸らすメルト。

 オオガミは少し嬉しそうな顔をしつつメルトの隣に行くと、

 

「それで、何の用?」

「用ってほどでもないわ。とりあえず、そこに座って」

「はいはい。で、これは?」

 

 オオガミが座ると同時に差し出される一冊の本。

 なんてことのない恋愛ものの様で、オオガミが首をかしげていると、

 

「あまり手を使いたくなくてずっとあの機械を使っていたのだけど、感動が伝わるだけとかかなりナンセンスだったから、紙媒体で読みたかったの。でも、私は不器用とか、そういうレベルじゃないじゃない。だから手が足りてなかったの。休憩中は捲ってくれないかしら」

「またとんでもない要求を……でも良いよ。任せて」

「それでこそ私のマスターね。任せたわよ」

 

 そう言って、楽しそうに笑うメルト。

 オオガミはその笑顔に応えられるように覚悟を決めるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「なんですかあれ。邪魔すればいいですか?」

「よせBB。融かされて終わりじゃぞ」

 

 突撃しようとしているBBを抑えるノッブ。

 既に鎌を構えていつでも突撃できるBBは、ノッブを押しながら、

 

「退いてくださいノッブ。いい加減見ていてイライラするんです。早くやらせてください」

「だからダメじゃってば。それでお主が殺されると儂の苦労跳ね上がるし利益分配10:0にするがよいか? 良いなさっさとやってこい!」

「ちょ、さりげなく全部持っていかないでくださいよ!? 渡しませんからね!?」

「チッ。我を忘れてなかったか……利権で戻ってくるとは思わなんだ……」

 

 がめついヤツめ。と悪態を吐きながら残念そうにするノッブ。

 さりげなく今回の稼ぎを全て持っていこうとするノッブに突っ込みをいれて冷静になったBBは、鎌を消しながら腰に手を当て、

 

「なんでこう、ノッブはすぐに私の資金を奪おうとするんですか。さりげなさ過ぎて奪われるところでしたよ」

「そのまま奪われてもよいのでは?」

「それはそれ。これはこれです。はぁ……今日のところは撮影をするだけで済ませておきましょう」

 

 BBはそう言って、カメラを取り出すのだった。




 用意がいいBBちゃん。

 それにしても、モンスタークレーマー、なかなか強い……


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これでクレーマーは粉微塵(オブラートに包んで?)

「よし。これでクレーマーは粉微塵……いや、静かになりましたね」

「どこも隠せてない。全く隠せてないわ。言っちゃってるもの」

 

 時間をかけていたとはいえ、最終的に一切の容赦なく討伐されるクレーマー達。

 そんなクレーマーに対して怒りを隠しきれてないオオガミに突っ込みを入れるエウリュアレ。

 そんな二人を見て、カーマはため息を吐くと、

 

「目の前でいちゃつかれるとイラッとするんですけど。やめてくれません? そういうの」

「あら、嫉妬? でも残念。いちゃついてる訳じゃないわ。暴れだしそうなマスターを必死で抑えてるの。なんだかんだメルトをほとんど活躍させられなかったから」

「……実はかなり面倒な人ですね?」

「えぇ本当に。私のときはそういうのは無いのだけどね」

「……真偽はバラキーに確認します」

「本人談が信じられないってどうなってるのかしら……」

 

 一切信用されていないらしいエウリュアレは、とても悲しそうな顔でカーマを見る。

 だが、カーマがその程度で反応するはずもなく、むしろ冷めた目で見返す。

 それに気付いたエウリュアレはため息を吐くと、

 

「バラキーはスイーツコーナーでずっと食べてるわ」

「ありがとうございます。ではこれで」

 

 そう言って、スイーツコーナーに向かうカーマ。

 それを見送ったエウリュアレは、

 

「グガランナMVPも、なんだか気難しそうね」

「エウリュアレと同じくらいチョロいんじゃない?」

「……えい」

「イッタイ小指がぁー!」

 

 容赦なく踵でオオガミの小指を狙うエウリュアレ。

 油断しているオオガミが避けるはずもなく、致命的なダメージを負って足を抑える。

 そんなオオガミに、エウリュアレはニッコリと笑って、

 

「それじゃ、私たちも休みましょうか。エステは貴方に合わないわよね。トレーニング? 読書? それともスイーツ?」

「スイーツコーナーというよりも、普通にご飯が食べたい……」

「じゃあ、こっちね。ちゃんと歩けるかしら」

「歩ける。歩けるよ。大丈夫。そんな目を輝かせなくても歩くよ。むしろ歩かせて」

「そう……なら仕方ないわね。腕を出しなさい。もっと歩きづらくさせてあげるわ」

「くっ、どっちに転んでもダメだったか……!」

「あらあら。女神に抱き着かれるのがそんなに嫌かしら。仕方ないわね。アルテミスがオリオンにしたように、首に抱き着いてあげましょうか? 全力で」

「死んじゃう死んじゃう死んじゃいますから! 腕出しますから我慢してください!」

「ふふっ。最初からそうやって素直に差し出していれば良いのよ。じゃあ、行くわよ」

 

 そう言って、オオガミの腕を抱きながらスイーツコーナーに併設されている食堂に引っ張っていくのだった。




 これがカルデアのクレーマー対応力……! クレーマーが消滅すればクレーマーはいなくなるのです(暴論

 それにしても、最近女神様二名が荒ぶっておられるのですが。いえまぁ、好きですけど。


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食堂はいつものメンバーなんだね(ここは基本変わらんさ)

「食堂はいつものメンバーなんだね」

 

 エウリュアレと一緒にアマゾネス・ドットコム内の食堂に来たオオガミは、そこで働いているメンバーを見てそう言う。

 すると、それに気付いたらしいエミヤが振り返り、

 

「あぁ、マスターか。エウリュアレに連れられて、と言うことはようやく休憩と言うことか? 食事は取っていたのだろうな」

「取ってたよ。ユニヴァース製の携行食料とかに興味があったから今回は食べてたんだけど、やっぱり食堂のご飯が一番です」

「ふっ。そう言って貰えると嬉しい限りだ。では期待に応えられるよう、精一杯作らせてもらおうか。さぁ、注文はなんだマスター」

「シェフのおすすめで。エウリュアレは?」

「同じので良いわ。食べさせたいのはこっちだもの」

「了解した。席に座って待っていると良い」

 

 そう言って、冷蔵庫に向かうエミヤ。

 二人は手近な席に横並びで座ると、

 

「平気そうな顔をしてたけど、もう大丈夫な訳?」

「大丈夫大丈夫。折れてるわけじゃないと思うし」

「そう言う問題じゃないと思うけど……まぁいいわ。貴方かそれでいいなら」

「うんうん。本人がオッケーなんだからオッケーなんです。だから気にしないで」

「まぁ、そう言うならいいけど……やせ我慢なら蹴り飛ばすから」

「あ、はい……なんか最近みんな異様に甘やかしてくるんだけどなんで?」

「そういうのは、自分の行いを鑑みてから言ってちょうだい」

 

 そう言われたオオガミは、自分の事を振り返り、

 

「最近ずっと働き詰めだった以外にあったっけ」

「そこが問題だって言ってるの」

「えぇ!? いやいや、そんなまさか……えぇ~……?」

 

 そんなこと無いでしょ? とでも言いたげなオオガミに、エウリュアレは頭を抱え、

 

「そもそも、大体の行動原因は貴方よ。自覚していないでしょうけど、その自分を省みない働きをやめて。休憩できるんだからしなさい。良い?」

「はい……なんだかお母さん染みてきたね」

「次言ったらメドゥーサ達を呼ぶわよ」

「はい。ごめんなさい」

 

 素直に謝るオオガミ。

 エウリュアレは呆れたようにため息を吐くと、

 

「で、その大事に抱えている紙は何? また配達依頼?」

「え? あぁ、これはまた別のヤツ。アビー専用だから探してたんだけど……」

「呼んだ方が早いでしょ?」

「呼ばれなくても登場ですっ!」

 

 そう言って、さも当然のごとく現れるアビゲイル。

 二人はもう驚きもせず、いつものことだと思い、

 

「じゃあアビー。これ、お願いね。配達はボディーガードをつけていくんだよ」

「えぇ、分かったわ! ……って、これ、本当に良いの? ダメって言われてたような……」

「良いの良いの。厨房組にも許可を貰ったことは伝えておいてね」

「はい! じゃあ、行ってきます!」

 

 そう言って、アビーはスタスタと走っていくのだった。

 それを見ていたエウリュアレは、

 

「で、あれは?」

「とある食品。発狂間違い無しのデリシャスヤベーヤツ」

「……それが注文されてくるとか、とんでもないわね……」

 

 そう言って少し遠い目をするオオガミとエウリュアレ。

 そして、アビゲイルと入れ替わるようにエミヤが食事を持ってくるのだった。




 発狂間違い無しのデリシャスヤベーヤツ……一体何焼きなんだ……

 それはそれとして、カルデアマスターは働きすぎでは……? 慰安旅行で働くとか正気じゃなくない? スナック感覚で配送業とかおかしくない……? 何でも屋スペックガンガン上がっていくんですが。


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さて、周回を始めよう!(いい加減休みなさい)

「さて。そんじゃあ、周回だな!」

「おかしいおかしい。休めって言っていたと思ったのだけど」

「誰かコイツ拘束しておいて! 周回はこの病人を始末してからよ!!」

 

 一日の休憩を挟んだからか、意地でも周回に行こうとするオオガミを押さえ、絶対に行かせまいとするエウリュアレとメルト。

 すると、二人の声を聞いてやってきたロビンが、

 

「よしよしマスター。とりあえずこっちなー」

「え、なんで真っ先に現れるのがロビンさんなの?」

「いや、たまたま通りかかっただけだって。アンリは真っ先に逃げたがな」

「流石最弱。危険な事に対して見抜く力は一流だね?」

「そうだな。それじゃ、そんな自覚ありなマスターに朗報だ。旅館でやったトランプ、あのメンバーに数名加えて大復活だ。さっさとやろうぜ」

「え、あ、強制? うん。その力の入れ具合は本気だね。なに? 二人に脅されてるの?」

「ふっ。勝てない喧嘩は売らない主義なんでな。殺されたくないんでさっさと行くぜ」

「は~い」

 

 そう言って立ち去る二人。

 そんな二人を見送ったエウリュアレとメルトは、異様にいい笑顔をしながら、

 

「大分、ふざけたことを言ってたわね」

「あの緑、後でお腹に膝ね」

「私も協力するわ。えぇ、遠慮なく」

 

 そう言って、悪い笑顔を浮かべる二人。

 だが、すぐにため息を吐くと、

 

「マスター、わりとワーカーホリックよね」

「そうね。破滅するのは構わないけど、どうせならこちらの手で破滅してほしいわね」

「えぇ。勝手に破滅されるのは面白くないもの。どうせなら私が引導を渡したいものね」

「……なんだかんだ、似た者同士なのかしらね。私たち」

「だからアイツと一緒にいるのかもしれないわね?」

「むしろ、それが主な原因の気もするわね」

 

 ふふふ、あはは。と笑いあう二人。

 だが、その目は笑っておらず、本気で思っているのか怪しい所だった。

 

「それで、周回はどうするつもり?」

「暇そうな人員を捕まえて行くわよ。塵が足りないって嘆いてたし、また北米かしらね」

「北米ね……前もシャーロットに向かってたし、大変そうね。人理最後のマスターって言うのも」

「全くよ。なんで私が指揮をとらなくちゃいけないのかしら。代わる?」

「遠慮しておくわ。指揮なんて、私には似合わないもの。私は舞うのであって、舞わせるのではないもの」

「そう、それは残念。じゃあ、行ってくるわ。貴女も休むでしょ?」

「いえ、一応ついて行くわ。貴女の指揮を見ているのも楽しそうだし」

「そう。勝手にしなさい」

 

 そう言って、二人は暇人をかき集めて周回に向かうのだった。




 どうしてオオガミ君はすぐに働こうとするの……

 しかし、女神さまたちも大変だなぁ……周回代行とは……


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マスターも大変そうですね?(エウリュアレとメルトが上位だからな)

「はぁ……なんというか、マスターも楽じゃなさそうですね」

「んあ? あぁ、うむ。最近はエウリュアレとメルトが上位だからな。吾近付きたくない」

「あっはは。そんなこと言われるとか、ヤバすぎません? いやまぁ、アレを見てる限り確かにそう思いますけど」

 

 そう言って、もぐもぐとケーキを食べるバラキー。

 カーマはため息を吐くと、

 

「バラキー、ずっと食べてますね。美味しいです?」

「ん。かなりうまい。カーマも食うか?」

「え、あ、じゃあ貰います」

 

 そう言って、カーマは皿とフォークだけ持ってきて、バラキーからチーズケーキを一つ貰う。

 バラキーにしては珍しいなと思いながら、

 

「機嫌良いですね。何かありました?」

「ん~……機嫌がいいと言うより、それはあまり得意じゃなかったというだけなのだが……」

「……押し付けられた感じですか」

「乗せ過ぎたというのもある」

「なるほど。てっきり全部食べられるものかと思ってましたけど、そうでもないんですね?」

「食べられるのと食べたいのは別だ。流石に飽きる……」

「あぁ、そうですね。飽きはいけないです。私たち神性持ちは信仰こそが力の源。飽きられたら終わりみたいなところありますしね。いや、燃やされるのを信仰されるとか嫌ですけど」

「吾、逃げたのと手を切り落とされたのが有名なのだが」

「……どっちも変わらないくらい酷いですね?」

 

 そう言って、貰ったチーズケーキを食べるカーマ。

 バラキーが言うようにやはり美味しいもので、市販のものと比べても遜色ないほどの物だった。

 

「ん~……コレ、誰が作ったんですっけ」

「メディアリリィっぽい菓子屋が作ったのと、厨房組が作っているのがある。それは厨房組」

「あぁ、なるほど……本当に異様にレベル高いですよね……」

「吾は美味ければソレで良いんだが……」

「……まぁ、そう言うものですよね。バラキーと話してると色々考えるのが面倒になるんですよね。というか、単純化しちゃうというか。ある意味猛毒ですね?」

「まぁ、吾は鬼だしな?」

「鬼は猛毒でしたか」

 

 なるほどなるほど。と言って納得している様子のカーマ。

 それを聞いたバラキーは少し不満そうに、

 

「それで納得されるのも、吾ちょっと不満なのだが……」

「自分で言っておいて不機嫌になられると私も困るんですけど……」

「こういうところも鬼らしいだろう?」

「いや、それって鬼らしいんですか?」

「それは……どうなのだろうな?」

「さては感覚だけで話してますね……?」

「ん、むぅ。最近、うまいものを食べると話を聞いてない気がしているのだが、どうやら事実のようだな……?」

「えぇ……まぁ、良いですけど。私もわりと適当な話しかしてないですしね」

 

 そう言って、カーマは美味しそうに食べるバラキーを見ながら自分のチーズケーキを食べ進めるのだった。




 この二人を書いていると、無限に駄弁ってるんですよねぇ……不思議……


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狩人の本気を見な(絶対仕込んでるだろ!)

「ふっ。狩人は獲物の機微は見逃さねぇのさ。いやぁ、トップですまないねぇ」

「ふっざけやがって! カードに仕込みとかしてないだろうな!? いや、してるだろう絶対!」

「いや、あんだけ表情出てたらガキでも分かるだろ。てっきりわざとだと思ってたらマジでやってたよ。ビックリだぜマスター」

 

 今回のババ抜きバトルは前回の真逆で、ロビンが連戦連勝。イアソン大敗北という状況だった。。

 アンリはそれを聞きながら呆れたように首を振り、隣にいるオオガミに話を振る。

 突然振られたオオガミはしかし不思議そうな顔で、

 

「アンリ、今真っ黒だけど、これってあり? 顔見えないからポーカーフェイスとか関係無いよね? 不正では?」

「いやいやマスター。考えても見てくれ。これはマスクだと考えれば簡単なものだろ? マスクだぜマスク。病気の時につけるものでも、お祭りの日に買うものでもあるあのマスク。いや、後者はお面か。どのみちそんな感じのヤツだ。よーするに、誰だってつけられるもんだし、そういうのはつけてるヤツじゃなくてつけないヤツの方が悪くねぇか? つまりオレ悪くねぇだろ?」

「……なるほど?」

「なるほど。まぁ筋が通ってるような気もするわな。じゃあ良いんじゃねぇの? 全員つければ」

「は~、仮面ババ抜きっすか。つまり相手の反応が見れないと……それ、要するに駆け引きが無くなるってことじゃ……あ、いや、なんでもないっす」

「あぁ、確かに。駆け引きのないババ抜きとか、それもはやただのカード交換じゃない?」

 

 説得されかかっていたオリオンとオオガミは、マンドリカルドの一言で我に返り、指摘する。

 そんな全員の視線を受けたアンリは、

 

「チッ。あ~はいはい分かりました~。黒いの禁止ですね~。んじゃ青く発光してやらぁ」

「ぴかーって光るもんね。イルミネーション黒サンタ」

「黒サンタは赤白サンタに対抗して青黒サンタって訳か。そりゃいい。が、年明けたばかりだぞ」

「サンターズも言ってた。年が明けたなら今年のクリスマスがある。つまり既にクリスマスは始まっていると!」

「それ、クリスマスじゃない日が6日しかない計算だよな。サンタになったヤツはおかしくなるのか……?」

「その理論だとアンリも頭おかしいことになるけど」

「あ、じゃあ正常だな」

「手のひらドリルか?」

 

 クルクルと意見を帰るアンリに思わず突っ込むイアソン。

 だが、彼はすぐにニヤリと笑うと、

 

「つまり今まで顔を見せないようにしてきたってことはポーカーフェイスが苦手って訳だ! これで最下位は交代だ! ハッハッハッハッハ!」

 

 そう言って高笑いをしながら、イアソンは再戦を宣言するのだった。




 数分後、彼の悲痛な叫びが響いたのは言うまでもないだろう。

 なんでこの男衆は書いててこんなに平和なのか。六人集まってババ抜きですよ。絶対楽しいじゃん……


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マスター! 配達が終わったわ!(お疲れ様アビゲイル)

「マスター! 配達終わったわ!」

「あ、アビー。お疲れ様~」

「ちょっと遅れてしまったけど、ちゃんと出来たわ!」

「うんうん。偉い偉い」

 

 昨日に引き続きトランプで遊んでいるオオガミ達のもとに門を使って入ってくるアビゲイル。

 オオガミに頭を撫でられ満足そうに笑った彼女は、そのままオオガミの膝の上に座ると、

 

「それで、何をしていたの?」

「全力でババ抜き」

「全力でババ抜き……?」

「いや、普通に最下位が全員にジュース一本おごるってだけだぜ? 単純にスリル無いよなぁってイアソンが言い出したことだし、ここまで五連続イアソンが最下位だ。つまり言い出しっぺ以外誰も損してないわけだな」

 

 アンリの補足を聞いて、納得するアビゲイル。

 すると、ロビンがニヤニヤと笑いながら、

 

「いあ~、損してるねぇ、イアソン?」

「は? ロビンお前それ面白いと思ってんのか。この野郎」

「最高に面白いと思ってる。大富豪でふんぞり返ってたときが懐かしいねぇ。どんな気持ちだい?」

「最低最悪の気分だわクソが! 次は勝って土下座で謝らせてやる……! もう一回だ!」

「おいおいイアソン。貯金あるのか? 足りないとかやめろよ?」

「そんなに無いわけじゃねぇよ!? オリオンお前、俺をどんなヤツだと思ってんだ!?」

「いや、やりそうなぁ……と」

「流石にそこまで落ちぶれてないわ!」

「ん。まぁ、持ち金があるかとかはあんま気にしてないんすけど、もう一回やるなら、えっと、アビゲイルさん? はどうするんです?」

 

 イアソンによって脱線していく会話をゲームに戻すマンドリカルド。

 ようやくこのメンバーに慣れてきたのか、それとも無限に会話が脱線し続けるのを悟ったか、すっかり会話を元に戻す役目になっていた。

 そして、話を振られたアビゲイルは困ったように笑うと、

 

「えっと、私は見ているだけで楽しいから大丈夫です。それに、その、負けてしまっても皆様にジュースをお渡しできないから……」

「いやいやいや。流石に子供に要求するほど畜生じゃねぇよ!? おいイアソン。お前も何か言えって」

「あ? なんか問題あるか?」

「さては想像以上にクズか……!?」

「は? ……いや待て。絶対何か勘違いしてる。まず意見を聞かなきゃならないのはそこの保護者からだろ? んで、そいつが言わないなら問題ないだろうが!」

 

 そう言って、オオガミを指差すイアソン。

 オオガミは数秒首をかしげ、

 

「あ、そうか。現状保護者扱いなんですね。良いですとも。アビーが負けたら俺が払おうじゃないか。ただしイアソンが負けたらアビーに二本ね」

「なんで俺だけ!?」

「代わりに俺のヤツは無しで良いよ。もう五本分の権利は貰ったし」

「それ、お前の分の権利が移譲しただけじゃないか……!」

「うん。そういうこと。で、アビーはやる? 本当にやりたくないならやらなくても良いけど。あぁ、財布は気にしないで。未だにこの前のボックス貯金が消えてないからいくらでも払えるよ」

「え、えっと……その、じゃあ、やらせてもらうわ。よろしくお願いします」

「よし。じゃあ、こっちは二人で一チームだから配る枚数は変えなくていいよ」

「うっす。じゃあ配りますよ~」

 

 そう言って、マンドリカルドはトランプを配り始めるのだった。




 平和な賭け事は良くあること。

 ところで、既にイアソンとロビンの関係性が固まりつつあるんですが。性格真逆の喧嘩仲間ってわりと好き……


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帰り支度を始めないとね(支度することとかあったか?)

「さて。明日には帰るから、支度していかないとね」

「支度? なんかあったか?」

「レッツゴーラムダチャレンジ」

 

 そう言って、立ち上がるオオガミ。

 オオガミが十分すぎるほど勝ちまくったおかげで、アビゲイルは無数のジュースに囲まれ、楽しそうに『いけないわ……いけないわ……!』と言いながら美味しそうにジュースを飲んでいた。

 

「おいマスター。アビゲイルどうするんだよ。置いていく気か?」

「いや、その数は流石に持てないから。アビー。飲みきれなかったらマイルームに送っておいて」

「は~い。冷蔵庫の中にしまって置けば良いのよね」

「うん。よろしく~」

「いってらっしゃいマスター」

 

 そう言って、パタパタと袖を揺らしながら手を振るアビゲイル。

 そんな彼女を置いていかれた五人は、

 

「おい、ロビン。どうすんだこれ」

「どうするって……気にしなきゃ良いでしょうが」

「いや、気にするなって言っても、無理があるだろ。この男しかいないんだぞ? 気まずいだろ。俺たちが」

「お前がかよ」

 

 こそこそとロビンに言うイアソン。

 ロビンは呆れながらため息を吐き、

 

「アビゲイル。もう少しここにいるか?」

「いいえ? マスターがいないから、バラキーのところに遊びにいくわ。ジュースもいっぱい貰ったもの」

「なるほどな~……だそうだぜ?」

「くっ、俺が弱いのを喜ぶべきか、アイツが強いのを喜ぶべきか……!」

「いや、流石にそこまでは面倒見切れねぇよ」

 

 悩むイアソンに、呆れたようにため息を吐くロビン。

 すると、アビゲイル立ち上がり、

 

「それじゃあ、私は行くわね。皆さん、楽しんでいてね」

「え、あ、おぅ。あの鬼っ子によろしくな~」

「えぇ。ちゃんと伝えておくわ」

 

 そう言って、手慣れた様子で門を出して消えていくアビゲイル。

 それを見送った四人は、

 

「……あれ、誰かいなくねぇか?」

「……あ、えっと……アンリさんがよくわかんねぇ触手に引きずり込まれていったのが見えたんすけど……気のせいってことに出来ないですかね……」

「……いつも通りアビゲイルに捕まったわけか。いや、通りで静かなわけだ。いないんだもんな。簡単な話だわ」

「連れ去られるとかあるのかよ。怖いなカルデア!」

「俺座にかえって良いか? こんな危険地帯、指揮官のいるべきところじゃないだろ」

「恐ろしすぎるんすけど……俺も捕まるんすか……?」

「いや、あれはアンリが特殊なだけだから安心しろって。アイツだけ危険な目に遭うんだよ。理由は知らんけどな」

 

 そう言って、首を振るロビンと、苦い顔をする三人なのだった。




 最近アンリが平和でなんか悔しいのでとりあえず触手召喚で。南無三アンリ……


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日常
ラムダチャレンジ失敗……!(令呪一画くらい多めに見なさいよ)


「ぐっはぁ~……敗北した……ラムダチャレンジ失敗だわぁ……」

「令呪一画使っただけで、三ターンは出来てたじゃない。不満なの?」

「令呪使った時点で気持ち的大敗北。次は絶対勝つから」

 

 そんなことを言いながら帰ってくるオオガミ達。

 どうやら最後に戻ってきたようで、既に事情聴取という名目で、ロリンチにマンドリカルドが捕まっていた。

 そんな光景を見ていたラムダは、

 

「ま、早めにチャレンジしなかった自分を恨みなさい。せっかく帰ってきたんだし、ゆっくり休みなさい」

「休むって言ったって、ここ一週間くらいずっと遊んでたんだけど。これ以上何をしろと?」

「あぁ……そう言えば、そうだったわね。エウリュアレが無理矢理休ませたんだったわ」

 

 ラムダはそう言い、ごく自然な感じでオオガミに近付くと、

 

「それじゃあ、久しぶりに私の部屋を掃除してもらおうかしら。そろそろ埃が看過できないのよね」

「最初から看過しないでください。普通に呼んで?」

「嫌よ。見られたくないじゃない」

「あまりにも今更すぎない? もう手遅れだと思うけど」

「それはそれよ。気にするところはあるの。分かるでしょ?」

「まぁ、分かるけど……いや、なんでもない。とりあえず、掃除だね。任せて。すぐに終わらせるとも」

「えぇ。なんでかは知らないけど、こういう雑用得意だものね?」

 

 管制室を出て、掃除用具を取りに倉庫に向かう二人。

 ラムダに言われたオオガミは遠い目をして、

 

「ふっ……いわゆる処世術というヤツです。やらないと殺されそうな場面とか、意外とあったりするからね。みんな無茶ぶり好きなんだから……苦労しちゃうな全く」

「……ふぅん。無茶振り、聞くのね」

「聞きますし、応えますけど? 何かある?」

「いえ、それはそのうち……あぁ、そう言えば、新宿の時に女装したって言ってたわよね」

 

 ラムダの一言に、ビクリと震えるオオガミ。

 その一瞬の反応にラムダはニヤリと笑うと、

 

「見てみたいわね~……どんな姿なのかしら~。とっても気になるのだけど、見れないのかしら」

「……ここぞとばかりに言ってくるね。なに? 女装したまま掃除をしろって?」

「そこまでは言ってないけど……してくれるなら嬉しいわね。えぇ、ちゃんと撮影もしてあげるわ」

「くっ、無茶振りを加速させていく……!」

 

 しかし、そうは言っても断れないのがこのマスターである。

 仕方ないとばかりに、たどり着いた倉庫の奥へと向かうと、要望に応えるための装備を一式揃えに行くのだった。




 惜しかった……カード運があれば突破できたはずなんだ……! 条件が二ターン連続ラムダアーツカードだったしても……!

 チャレンジするのがもう少し早ければ行けたかなぁと思いつつ、諦めの私です。次の私に期待……


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これがマスターの本気の女装さ!(想像以上に似合っているのだけど……!)

「ふっふっふ……見るがよい! これがパーフェクトぷりちーメイドさんモードですとも!」

「……どうしましょう。想像以上に似合っているのだけど……!」

 

 顔を赤くしてプルプルと震えながら、専用に改造されたカメラのシャッターを切りまくるメルト。

 それに対してオオガミはポーズをとりながら、

 

「一通り撮り終わったら掃除に行っても良いです?」

「えぇ。掃除中も撮るからそのつもりでいなさい。常に完璧、パーフェクトであるという意識を持つのよ。自分なりのプロ根性というのを見せなさい」

「お任せを、お嬢様」

「とても良いわ! 合格よ!」

 

 そう言って、興奮しながらメルトは写真を撮るのだった。

 

 

 * * *

 

 

「うわっ、正気ですかこれ。全部現像? アルバムを作る? 本気で言って……ますね。はい。分かりました。カラー且つ高解像度で一枚600QPです」

「お釣りは要らないわ。アルバム作成オプションまでつけなさい」

「はぁ? そんなの足りるわけ……うわっ、なんですかこの大金。センパイの所持金の半分近くないですか!?」

「五億QP。足りないとは言わせないわよ」

「いやむしろ過剰ですけど!?同じアルバム三冊作っても余りますよ!?」

「じゃあ三冊作って。残りはあげるわ。ただし、妥協したら溶かすから。あと、他言無用よ」

 

 そう言って、大量のマスターの女装写真が収められたカメラと大金を置いてBBの工房を出ていくメルト。

 残されたBBは呆然とし、やがて頭を抱えるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ふぅん。女装したの。また懲りずに」

「しましたとも。まぁ、今回はこっちからなのでいつもとは違いますけど。見たいならメルトに言ってよ。カメラ持っていっちゃったから」

「そう……じゃあ、BBの所にでも行ってこようかしら。たぶんそこにあるだろうし」

 

 そう言って、お汁粉を食べるエウリュアレ。

 いつか喉に詰まらせるんじゃないかと冷々しているオオガミは、

 

「まぁ、確かにメルトだとBBだよね。他に頼れるところ知らないし。どこかある?」

「……エジソン?」

「ん~……正直あそこ機密性微妙だからなぁ……メルトなら頼まないかも」

「ダ・ヴィンチもあり得るかもだけど、メルトは行かない気がするわね。そう考えると、ある意味安心できるBBの所じゃない?」

「まぁ、それもそうか。じゃあ、それを食べ終わったらだね……うん? でも、機密性を気にしてBBに頼んでいるのに、BBが素直に答えてくれるか……?」

「……メルトも連れていかないとね」

 

 そう言って、エウリュアレはお汁粉を食べ進めるのだった。




 ぐだおの女装が完璧なのは既に新宿で明言されている……つまりこれはいつでも美少女キットなのですね。うむうむ。

 等と言いつつ、私はグラブルVSに突撃していくのです。


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メルトウイルス……興味深いな(誰が差し出すものですか)

「ほぅ……メルトウイルスだと? 中々興味深い。いかなるものなのか研究させて貰おうか」

「はぁ? 嫌に決まってるでしょ。誰が好き好んで自分の体液を差し出すって言うのよ。バカじゃないの?」

「……そうか。なら興味はない。さっさと失せろ。愚患者に構っているほど暇じゃないんだ」

「は? 殺すわよ」

 

 新しく来たアスクレピオスが、サーヴァント達を一通り見たいと言い、マスター同伴のもと一人ずつ医務室に呼ばれるサーヴァント達。

 アスクレピオスの隣にはナイチンゲールがおり、下手なことをすればベッドがいつでも飛んでくる状況だった。

 

「ちょっと、なんで止めるのよオオガミ! 今ここでこいつを始末しなきゃ私の気が晴れないのだけど! 蹴らせなさい! メルトウイルスを直で味わってもらうわ!」

「ストップメルト! 今は抑えて! 後でいくらでもして良いから!」

「くっ……覚えておきなさい。私は執念深いんだから! 必ず泣かせてあげる!」

「覚えているわけ無いだろうがバカめ。だが貴様のスキルで溶かされかかっているヤツを治療するというのも面白そうだ。是非その時は呼んでくれ」

「なんでアスクレピオス先生はすぐ挑発するの!?」

「バカね。一瞬で溶かすから治す隙なんて与えるはず無いでしょうが! 溶けて消えなさい!」

「失礼。医務室ではお静かに」

 

 直後、砲弾のごとく飛んでくるベッド。

 メルトはそれを溶かすことで両断し、自分を抑えているオオガミを守る。そして、

 

「ちょっと、ナイチンゲール! 今のが当たったら怪我じゃすまないわ!」

「無機物でも溶かせるというのが嘘でないなら問題ないと思ったのですが、そもそも貴女がマスターを置いて逃げるわけもないでしょうに。それに安心してください。即死はしませんので私が必ず助けます」

「マッチポンプ! そんなことをする人だったかしら!?」

「いいえ。ですが、貴女のウイルスのサンプルを採るのには最適だったかと」

「良くやった。これが解明できれば医療の幅も広がるというものだ」

「くっ、とことん迷惑なやつらね……!」

 

 アスクレピオスはそう言って、溶かされつつあるベッドの破片をサンプルとして回収し、メルトは怒りが一周回ってどうでも良くなってきていた。

 

「……はぁ、もう良いわ。帰る。帰って大人しく本でも読んでるわ。さっさと終わらせて部屋に戻ってきなさいよ」

「う、うん……お疲れ様」

 

 そう言って、力なさげに帰っていくメルト。

 オオガミは一緒に出て、

 

「それじゃ、次の方~……って、劇薬じゃん」

「え、センパイ、面と向かってそういうこと言いますか普通」

 

 待っていたBBを見て、嫌な顔をするのだった。




 アスクレぴっぴが想像の何倍も悪い子になっちゃって驚いてる私です。どうしてこうなった……?


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二人揃って何をしている?(たまには狩りでもしようかってな)

「む。ロビンフッドにウィリアム・テルか。何をしているのだ?」

「んあ? あぁ、アタランテか。いや、たまには狩人らしく狩りでもしようと思ってな。戦闘訓練も兼ねてマスター引き連れてウィリアムの爺さんと一緒に適当な山にでもレイシフトしようと思ってな。食料補充も必要だろうし」

「そういうことだ。それと、嬢ちゃんもウィリアムと呼んでくれ。フルネームはムズ痒くて仕方ない」

 

 そう言って、準備を進めていく二人。

 話を聞いたアタランテは首をかしげ、

 

「そういうわりには、マスターがいないようだが……」

「あぁ、マスターには注文したものを取りに行ってもらっててな。すぐ戻ってくると思うんだが……」

「お待たせ~」

「お、ちょうど戻ってきたか」

 

 そう言ったロビンの視線を追って声の方を見ると、段ボールを運んでくるオオガミがいた。

 オオガミもこちらに気付いたようで、

 

「あれ、アタランテも行くの?」

「ん。いや、私は別に――――」

「おぅ。行くぜ。暇そうにしてるしな」

「なっ、ロビンフッド貴様!」

「まぁ良いじゃねぇか。オレたちだって神代の狩人ってのを見てみたいしな。一体どれだけスゴいのかってのをよ」

「もちろん、ワシらも腐っても狩人。負けるとは思ってないが、その技術を見てみたいというのは誰しも思うだろうよ。まぁ、無理にとは言わないがな」

「うん? 決定してない感じ?」

 

 ニカッと笑う二人と、純粋に首をかしげるオオガミ。

 アタランテは呆れたように笑うと、

 

「まぁ、そこまで言われて悪い気もしないし、狩りに同行するくらい問題ない。良いだろう、同行させてもらう」

「よっし。これで三人。相当数狩れるだろ。晩飯は肉厚ステーキか?」

「おいおい若いの。取ってもないのに取った後の事ばかり考えるなよ? 足元掬われるぜ?」

「ふっ、全くだ。だが、気が逸るのも致し方無い。勝負というのはいつでも心踊るものだ」

 

 アタランテがそういうと、ロビンとウィリアムは真剣な顔になり、

 

「勝負か……考えてなかったが、冷静に考えたらそれもありだな?」

「勝負となりゃ手を抜くわけには行かねぇな……ウーリの狩人伊達ではないというのを見せるしかないだろうな」

「うん? なんだ、勝負ではなかったのか?」

「いいや、今からこれは勝負だな。ルールを明確にしよう」

「三頭で総合重量が最も多い者が勝ちでどうだ。取りすぎは良くないからな」

「構わない。もちろん、三頭以上を狩るのは禁止だ。また、時間は一週間だ。保存ならスカディに頼めば持つはず。三頭狩り終わったら戻ってきて残りを待つというのでどうだろうか」

「一週間は長くないか? 次のイベントに間に合わないだろ?」

「ふむ……なら三日。これでどうだ?」

「意義なし」

「規模がわからんから何とも言えんが……問題ない。獲物の回収はどうする。拠点を決めるか?」

「あ、それならBBにやらせるよ。たぶん暇だろうし」

「えぇ……アイツを使うのか?」

「アビーが良い?」

「……BBを使うほうが心に優しいな。よし。問題なし」

「よし。ではまとめよう」

 

 そう言って、アタランテは一つ咳払いをする。

 

「一つ、期限は三日間だ。二つ、三頭以上の狩りを禁ずる。また、三頭に届かずとも期限を迎えた場合その時点で狩れていたもののみを判定する。三つ、狩った獲物の総重量が最も大きい者が勝者だ。異論は?」

「なし」

「構わん」

「では、準備が出来次第レイシフトとしよう」

「ワシはもう出来ておる」

「オレも大丈夫だ。っと、マスター。その段ボールは部屋に置いといてくれねぇか?」

「了解。じゃ、BB呼んでくるね~。先に行ってて~」

 

 そう言ってオオガミは駆け出し、BBを迎えに行くのだった。




 果たして三日後、三人は生きているのか! 何より私が覚えているのか! 頑張れ三日後の私!


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マスターはどこに行ったの?(狩人の勝負の現地観戦)

「あら、エウリュアレ一人?」

「えぇ、そうよ。マスターは狩人の戦いを見届けるって言ってレイシフトしていったわ。ほとんど待っているだけの戦いに近いし、何が楽しいのか分からないけど」

 

 オオガミの部屋でベッドに寝転がりながらタブレットを見ているエウリュアレ。

 

「ふぅん……その言い方だと、まるで見てきたみたいね」

「見てたわよ。数分で飽きたわ」

 

 そう言って、エウリュアレはメルトにタブレットを向ける。

 メルトはそれを受け取り見てみると、そこには森が映っていた。

 

「なにこれ」

「中継映像ですって。BBがカメラを飛ばしまくって森中を監視してるらしいわよ。で、それだけだとつまらないからって言って、中継映像を流してるんですって」

「……ウイルスとか紛れてないでしょうね」

「さぁ。マスターのだから知らないわ」

「問答無用で入れるとか、流石ね。いえ、まぁアイツのならBBも下手なことしないでしょ」

「えぇ。だってタブレットに盗聴とか入れなくてももうマイクもカメラも仕掛けられているものね」

「その度に破壊しているはずなのだけど。また仕掛けられていたの?」

「いいえ? 私は見てないわ。言ってみただけだもの」

「そう……いえ、それに越したことはないのですけど」

 

 そう言って、ベッドに腰掛けるメルト。

 エウリュアレはゴロゴロとベッドの上を転がりながら、

 

「それ、三日間やるらしいの」

「ふぅん……? 意外と長いわね。イベントとか大丈夫なわけ?」

「ん~……一応イベントまでには帰って来れるようにって理由で三日間らしいのよね。本当は一週間だったらしいわよ」

「一週間……完全にイベントとか考えてないわよね」

「全くよね。まぁ、問題はそこじゃなくて、BBが一緒に行ってることなのよね」

「どう言うこと?」

 

 意味深に言うエウリュアレに聞き返すメルト。

 すると、エウリュアレは起き上がってメルトの隣に座ると、

 

「つまりその間BBは手が離せないってことなのよね。で、BBが監視してた問題児が今解き放たれているらしいのだけど、誰が対処するのかしら」

「BBが監視……あ」

 

 その正体に思い至ったメルトは嫌な顔をすると、

 

「嘘でしょ? 本気で言ってるわけ?」

「本気も本気よ。今まさに行われているけど見る?」

「なんでそこまで準備万端なの……というか、見れるの?」

「現場ならすぐそこに」

 

 そう言ってエウリュアレが部屋の扉を指し示すと、そこにはにっこりと微笑むキアラがいた。

 

「あらあら、お二人とも……どうかしたのでしょうか。マスターにご挨拶をと思ったのですが……」

「生憎と留守よ。でも、そうね。厨房でおはぎでも作っていれば良いんじゃないの? きっとマスターも喜んでくれるわ」

「まぁまぁ。マスターの事を良くご存じの貴女が言うのです。作ってみてもよいかもしれませんね。それではごきげんよう」

 

 そう言って、大人しく去っていくキアラ。

 メルトは嫌そうな顔をしながら、

 

「大丈夫なの?」

「こっちからなにもしなければ害がないのに騒ぎ立てる方がバカらしくない?」

「……そう言われると、確かにそうね」

 

 メルトはそう言って、ため息を吐くのだった。




 だが忘れてはならない。厨房にはまた別のビーストがいると言うことを……(チラッ)ビーストって、なんだっけ……


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今年もチョコを追いかける季節ね(チョコを追いかけるって何よ)

「さて……今年もチョコを追いかける季節ね」

「チョコを追いかける……? え、逃げるものなの?」

「逃げるわよ。カルデアだもの」

 

 そう言って、オオガミの部屋を出るエウリュアレとメルト。

 向かう先は食堂。今年もやってくる戦いのために準備をするのだとエウリュアレは言う。

 

「去年は……メルトはギリギリ贈れたんだったかしら?」

「えぇ、余っていたチョコでね。召喚された直後でしたけども。あんなに必死になって言われるんだもの。思わず作ってしまったわ」

「そう。まぁイベントも終わった後だったし、あのチョコを見てないのも仕方ないわね」

「逃げるチョコとか、それチョコとしてどうなのよ。チョコで良いの?」

「逃げるだけなら良いんだけど、襲ってくるのよねぇ……」

「は? 攻撃もしてくるの? もうそれ新手のテロじゃないの?」

「恒例行事よ。如何に早くチョコを砕いてプレゼントに変えるかが勝負だもの。砕かなきゃ食べられるのはこっちよ」

「チョコっていつからそんな狂暴な生物になったのかしら……」

 

 はぁ、とため息を吐くメルト。

 まさかそんな狂気染みたイベントだと思っていない彼女が未知の事に警戒するのも仕方のないことだろう。

 エウリュアレはそんなことを考えながら、

 

「今年もそれなりに新規がいるし、大丈夫じゃないかしら。正直一番怖いのはカーマだもの。真逆のパールヴァティーが圧倒的質量で胃袋を破壊しに来るから、どうするのかって感じ。同じく物量とか言われたらもれなくマスターが吐くわ」

「洒落になってないわね。出来れば吐かないでほしいのだけど」

「まぁ、また倉庫行きね。あれはもう、食べ物ってレベルじゃないもの」

「一体どんなものなのかしら……とっても気になるけど、見たら後悔しそうね」

「えぇ、とっても後悔するわ。でも面白いから見るのがおすすめよ」

「……どっちなの?」

「おすすめは見る方」

「そう……じゃあ、楽しみにしていようかしら」

 

 一体何が来るのだろうかと身構えつつも、どこかソワソワしているメルト。

 エウリュアレはふふっと笑いつつ、

 

「それじゃ、楽しみにしながらチョコを追いかける準備をしておこうかしら。マスターは明日戻ってくるみたいだし、今のうちに準備しておくべきよ」

「チョコを追いかける準備とか、最高に意味がわからないのだけど。普通今のうちに作っておくとかじゃないの?」

「逃げるもの。仕方ないわ」

 

 エウリュアレはそう言って楽しそうに笑い、メルトは初のバレンタインイベントに身構えるのだった。




 キラキラの清少納言の陰キャ特効は笑いました。礼装のためにガチャ回します。


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なんだかカルデアの様子がおかしい……(あぁ、そういう季節だわな)

「ただいま~……って、なんか怖いんだけど。何かあった?」

 

 不穏な雰囲気のカルデア。

 その気配を感じたオオガミは首をかしげ、その隣にいたロビンが顔を青くする。

 

「あ~……こりゃあれか。勝負で最下位になったからカバーするのはオレか」

「分かっているではないか。では後は任せたぞ」

「ワシには全くわからんが……任せたぞ若いの」

「へいへい。んじゃマスター、食堂厳禁だ。部屋に行くぞ」

「え、でもご飯……」

「任せろ。狩人料理を楽しみにするんだな」

 

 さっさと去っていったアタランテとテルを追い掛けるように、ロビンとオオガミは管制室を出る。

 

 

 * * *

 

 

「皆さんに朗報で~す! センパイが帰還しました~! 今は獲物を毒殺したせいで最下位になってしまった残念なロビンさんが抑えてくれてますけど、明日のイベント進行次第で来ますので気を付けてくださいね~!」

「めちゃくちゃアバウトね! 参考にならないわ!」

「あ、メルトは最速で終わらせなくちゃよ? たぶん周回で連れ回されるから」

「……おかしいわね! なんで私だけ別枠なのかしら!」

 

 そう言って、悪態を吐くメルト。

 チョコレート作りは戦争というのは、わりと比喩でもないかもしれないと思い、バレンタインプレゼントを作り続ける。

 BBはそれを楽しそうに見ながら、

 

「それじゃあ私は動画の編集があるのでこれで! センパイに動きがあったらまた来ますね~!」

 

 そう言って去っていく。

 カーマはその様子をぼんやりと見つつ、

 

「皆さん、一生懸命作ってますけど、そんなに頑張るものですか?」

「それパールヴァティーに言ってあげて」

「嫌で~す。あれは100%の善意で悪意を上回る天才ですから。そっちの方が面白いに決まってるでしょ?」

「本質見てるわね……で、貴女は作らないの?」

「面倒ですし。どうせ大量に貰うでしょうからそんなしっかりしたのにする必要もないでしょう? だから私はこうやってバラキーにお菓子を与えていた方が楽しいので」

「そう。まぁ、それならそれで良いのだけど」

「んむ? なんだか吾、バカにされている気がするのだが」

 

 カーマにお菓子を与えられているバラキーは不思議そうに首をかしげるも、何故そう思われているかが分からないのだった。

 そんなときだった。BBが慌てた様子で戻ってきて、

 

「センパイが聖杯持ち出してステンノさんに渡してたんですが!!」

「「「はぁ!?」」」

 

 その場にいた全員が驚きの声をあげ、ステンノがいないことに気付くと、エウリュアレが部屋を飛び出していくのだった。




 という事で衝動に身を任せステンノ様に聖杯をIN。マナプリ用に集めてた種火をぶっ混んで現在87。中途半端だなぁ……


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バレンタイン2020 いみじかりしバレンタイン~紫式部と五人のパリピギャル軍団~
今年は夢の中とは思わなかったわ(爆睡だもんなぁ)


「……今年は夢の中とは思わなかったわ。厨房に行くのを阻止するまでもないじゃない」

「いや、だからってここ来て良いんすか」

「まぁ、後はこいつが起きるの待ちだもの」

 

 そう言って、いつものようにオオガミの寝ているベッドに腰を掛けるエウリュアレ。

 少し離れたところの椅子に座っていたロビンは適当な本を一冊選んで開きながら、

 

「なんつーか、愛されてんな。マスターは」

「なに? 呪いだとでも言いたいの?」

「いいや? 最高に羨ましい限りだって話さ。なんだかんだマスターも楽しそうだからな」

「……そう。でももうこの席は誰にも譲らないわよ」

「いや要らねぇよ。メルトとでも争ってろ」

「えぇ、任せなさい。キッチリ勝ってあげるから」

「……絶対になびかなそうなアンタが落とされてる時点で中々だよ。昔のお前に見せてやりたいね」

「ふふっ。随分な言いようだけど、ちょっと自覚あるからそれ以上言うなら射つわね」

「短気なのは変わってねぇな。だからってすぐ殺しに来るのはよろしくねぇぜこのやろう」

「あら、てっきりいつものノリで殺されたいのかと」

「いつもも何も一回もないだろうが……!」

 

 本を元のところに戻し、嫌そうな顔をするロビン。

 エウリュアレは楽しそうに微笑みつつ、

 

「ま、ロビンも貰うでしょうし、ここで殺すと後で誰に何を言われるか分かったものじゃないから早く行きなさい。メルトに見つかったら粉微塵よ?」

「マジか恐すぎるんだが。んじゃ、退散させて貰うぜ。頑張れよ~」

「えぇ。持てる手段を駆使して寝ていようがなんだろうがこれを届けるもの。私に惚れられたのだから、死ぬほどに愛されても文句はないでしょう?」

「……なるほどね。こりゃ、確かに一般人には重い愛だわな」

「えぇ、ギリシアの愛は重いの。特に女性のはね」

「ハハッ! そりゃいいや。変なことしないように見張っておけよ?」

「そうね。今度こそ逃がしはしないわ」

 

 そう言って、寝ているオオガミの頭を撫でるエウリュアレ。

 ロビンは苦笑いしながら立ち上がり、

 

「んじゃ、邪魔物は退散しますかね。頑張れよ~」

「えぇ。今度なにか作ってあげるわね。メドゥーサが」

「……遠慮しておくわ」

 

 そう言って、部屋を出ていくロビン。

 入れ替わるように入ってきたメルトは、

 

「何あれ。アイツ凄い機嫌が良かったんだけどなんかあったの?」

「いいえ? ただ、ギリシアの愛は重いって教えただけよ?」

「なにそれ。不思議なこと言うのね」

「えぇ。でもまぁ、アルテミスの神格を持っている貴女ならそのうち分かるわ」

「……納得いかないわ」

 

 メルトはそう言って、唇を尖らせるのだった。




 愛が重いのはギリシアの特権。可愛いなぁエウリュアレは!(洗脳済み


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機嫌良いじゃねぇか女神ーズ(変に略すなんて死にたいようね)

「んあ? 機嫌良いじゃねぇか女神ーズ」

「何が女神ーズよ。殺されたいの?」

「安易な簡略化は自分の寿命を縮めるだけだってどうして理解しないのかしら」

「スッゴい殺意。手のひら返すように刺してくるじゃねぇの」

 

 機嫌の良さそうな笑顔から一転。アンリの一言で何故か強烈な殺意を叩きつけてくるエウリュアレとメルト。

 だが、アンリはその殺意に怖じけることなく、

 

「大方理由は思い付くが、一応聞いておこう。マスター関連で機嫌が良かったんだろ?」

「えぇそうよ? あまりにも面白いことをされて、とても楽しかったわ」

「あの執念だけは驚いたわね。でもまぁ、こちらとしても、心配事がなくなったって言うのはあるけど」

「へぇ、そんな面白かったのか」

「えぇ、本当に。なんでああなったか全くわからないけどね」

「どうせあの盗撮魔は録画しているだろうから、すぐにデータを貰いに行こうかと思って」

「……完全に良い様に使ってるよな。オレ、最初に会った時はラスボス感ヤベェなぁとか思ってたんだが」

「あんなの化けの皮よ。剥がれればアレ。というか、サクラファイブとかがいい例よね。アイツが余分だって言って切り捨てた部分だし。むしろ今は撮影班として使えてとっても便利ね。まぁ、顔を合わせる度に蹴りたくなるのは未だに変わらないけど」

「蹴らないの?」

「便利なのは事実だもの」

 

 そう言って、楽しそうに笑うエウリュアレとメルト。

 アンリは苦笑いをしつつ、

 

「それで? マスターは何をしたわけだ?」

「ふふっ。聞いたら笑えるのだけどね? さっき、私たちのチョコを貰うためだけに起きて、貰ったらガッツポーズを決めて冷蔵庫にしまってからまた気絶するように寝てたわ」

「なんだそりゃ。結局食べられなかったのか?」

「えぇ。結局食べられないまま寝たわ。起きたら食べさせてあげるもの。でもとりあえず動画だけは貰わないとでしょ。ちゃんとBBも工房にいるように脅し……ごほん。優しく説得したし、急いでいかないとだもの」

「そうね。それじゃ、私たちはBBの所に行くわね」

「お、おぅ……その、頑張れ。うん。じゃあな」

「えぇ、じゃあね」

 

 そう言って、二人を別れるアンリ。

 アンリはしばらく歩いた後、走ってロビンの部屋に転がり込むと、

 

「めっちゃ怖いんだが! マスター凄すぎだろ流石に耐えられねぇよあの重圧!!」

「突然人の部屋に転がり込んで叫ぶの止めてもらえねぇかなぁ!!」

 

 叫び出すアンリを、ロビンは必死で静かにしようとするのだった。




 エウリュアレとメルト、ラムダからチョコ貰ったので私のバレンタインイベントは延長戦に入ったのです。


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なんでマスターさんは起きないんですか!(吾に言われても困るのだが?)

「なんですか。なんなんですかあのマスター。起きて来ないんですけど!」

「おぉぅ、怒ってる。吾なんで怒ってるのか何となくわかるが落ち着いた方が良いと思うぞ、うむ。マスターは割と起きてくれぬからな。今はイベントだからな、その時に寝ているのだから起きるわけも無く。そのうち聖杯と共に帰ってくるとも」

「なんでまた平然と聖杯関連の問題に首を突っ込んでるんですか!」

 

 そう言って、机に突っ伏すカーマ。

 バラキーは綿あめを食べつつ、

 

「別に、起きてほしいとかそう言うのじゃないですけど、処理に困るので受け取ってもらいたいんですよねぇ、コレ。起きてくれませんかね? このままだと廃品なんですけど」

「ん。試作品が出たのは知っている。吾に寄越せ」

「マジですか。普通要求します?」

「うむ。食べたい」

「……いえ、まぁ、欲しいなら作りますけど。というか、気に入ったんですか? 最近食べているの、大体私が作ってません?」

「まぁ、美味いものを望むというのは自然であろう? 吾も秘蔵の菓子を食べさせてやろうではないか!」

「秘蔵? 貴女の秘蔵品とか、滅多に見てるものじゃないですよね。というか、今までで秘蔵品とか見た覚えないんですけど」

「吾の秘蔵品だし。秘蔵品とはそう何度も見ては面白みも無いだろう? それに、何度も食べていてはすぐ飽いてしまう。秘蔵品は滅多にないからこそ秘蔵品なのだ。食べるか?」

「えぇ、まぁ。私も作ってきますから、よろしくお願いしますよ」

「うむ。まぁ、先ほどマスターにいくらか持って行かれたのだが」

「は?」

 

 バラキーの言葉に、硬直するカーマ。

 言ったバラキーは首を傾げながら、

 

「うん? どうかしたか?」

「ど、どうかしたかも何も、マスターさん起きてたんですか!?」

「起きていたが。そもそも今チョコを貰いに走っているぞ?」

「嘘でしょなんで私の所に来ないんですかあのマスター! 正気ですか! このまま私の所に来ないで寝るつもりじゃないでしょうね!? ちょっと行ってきますから!!」

「うむ。吾も用意して待っておるぞ~」

 

 そう言って駆け出すカーマ。

 バラキーは見送りつつ、

 

「ん~……吾もアレ、食べられるだろうか……」

 

 そう考え、唸るバラキー。

 それと入れ替わるように入ってきたエウリュアレは、

 

「あら、バラキー」

「む。エウリュアレか。一人なのか?」

「えぇ。今日は譲ろうと思って。皆も彼にチョコを渡したいだろうし、いつまでも私が見張っているわけにはいかないじゃない?」

「う、む……なんというか、吾が言うのもどうかと思うが、すごい自信よな。吾驚き」

「当然でしょ? アイツはどうあれ私の所に戻ってくるのだし。まぁ、それはそれとして貰った分だけ悪戯をするのだけど」

「なるほど。そうやって悪戯をするのだな……吾も見習わねば」

「見習っても使いどころが無いでしょ」

 

 悩むバラキーに、エウリュアレは呆れたように言うのだった。




 なんだかんだ書いてる途中に女性陣からチョコを貰い続けてました。カーマはノータイムで上の選択肢を選びカーマのビーストっぽく見えて実際キアラより危なくない内容にびっくりしました。BADEND演出じゃないんですね?

 ともかく、カーマは可愛いのですね。本当にビーストかお前。実はただの体系変化可能の可愛い少女では? ビーストかお前(大事な事なので二度言う)


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スッゴい疲れたんですが(汝、いつも疲れてるな?)

「はぁ……スッゴい疲れたんですが」

「汝、いつも疲れてるな。で、これがとっておきだ」

 

 バラキーから渡されたとっておきの飴を頬張りつつ文句を言うカーマ。

 イチゴ、ソーダ、パイン、ハッカ、ウメしかないと言われたのが一番謎ではあったが、食べればパワーが出ると言われ、予想より遥かに柔らかい飴に困惑する。

 

「……なんですかこれ。めちゃくちゃ柔らかいんですけど」

「うむ。武蔵とやらから貰ってな。これを噛み締めポーズを取ればあら不思議。とても強くなれる……と言われたは良いものの、噛み締めるとわりと歯にベッタリとつく。でも美味しいのでとっておきというわけだ」

「……なるほど。まぁ、美味しいのは確かですし、そこはかとなくどこぞの神の恩恵がある気もしますけど……致命的に食べにくいですね。ハッカくださいハッカ。どこまでスーッとするのか試したいです」

「うむ。正直笑えないので試す覚悟はしっかりしておくべきだと吾思う」

 

 そう言いつつ、飴を渡すバラキー。

 カーマは特に警戒もせず口の中に放り込むと、

 

「っ!? っぁ、!? ゲホッゴホッっはぁ、ひぅ!? な、なんですかこれ! す、凄いんですけど! 死ぬ! もう口とか鼻とかじゃなくて、目まで来るんですけどっぁ!? 痛い痛い! なんでこうなるんですか!?」

「うむ。吾忠告したし、悪くないな。むしろイタズラ成功! くはは! 久し振りに成功したわ!」

「ふっ、ふざけてる場合じゃないっ、ですよ!? あ、あぁ~……ようやくなれてきましたけど、これ、死にますって……刺さりますって……空気に触れると痛いですもん……」

「まぁ、吾も倒れたし。一日部屋に引きこもったくらいだからな」

「なんて物を食べさせるんですか……!?」

「カーマなら大丈夫だろう?」

「どういう信用ですか……!?」

 

 ゴロゴロと転がっていたカーマはゆっくりと起き上がると、

 

「ですが、ふ、ふふふ……まぁ、負けませんけどね……!? ハッカ飴に負けるとか、ちょっとふざけすぎですし……!」

「いや、飴に本気になっている時点でどうだろうかと思うのだが」

「正気じゃないくらい痛いじゃないですかこれ! 英霊に通用するハッカ飴もどうかと思うんですが!」

「武蔵とやらも舐めたらしいが、イチゴしか食べてなかったとか。噛み締めやすくて強くなれるとかなんとか。吾も分かるのでたまに使う。特に頼光と打ち合うときとか、無いと死ぬ」

「え、生死かかってるじゃないですか。それ食べさせてよかったんですか……?」

「まぁ、無くなったら貰ってくるし……ハッカ飴は最近使いすぎて耐えてくるようになってきて吾ピンチ」

「……はい。バレンタインで作ったヤツの余りですよ。どうぞ」

「お。ようやくか! ……試作品でも十分にうまそうだな?」

「足りなかったので仕方ないじゃないですか。まぁ、足りないならおまけで作りますよ」

 

 そう言って、カーマは試作品をバラキーに差し出すのだった。




 なんでか知らないけどカーマが舞い降りてきたせいでバレンタインイベントどこかに吹き飛んだんですが。というか、パリピも式部さんもいないからマスター書けない不具合。厳しいなぁ……


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気付けばバレンタインも終わりか(イベントはまだやってますけどね?)

「……気付けばバレンタインも終わり、残っているのは未だバレンタインイベントの夢を見ているマスターだけ……儂らむちゃくちゃ暇なのでは?」

「普通に暇ですよ。ゲームでもしましょ」

 

 そう言って、大きく伸びをしてからノッブの隣に座るBB。

 ノッブはゲームの準備を手早くすると、

 

「何する?」

「あ~……刑部さんと孔明さん、イスカンダルさんとワルキューレ三人を呼んで大乱闘します?」

「お? 珍しく大人数じゃな。なんかあったか?」

「いえ、ノッブとだけだと変化がないので。人数多い方が楽しめそうじゃないですか」

「あ~……それもそうか。うむ、レクリエーションルームを借りてそこでやるとしよう。その方が楽だしな。菓子も飲み物もあるのが何よりも良い。という訳で移動じゃ」

「えぇ。行きましょう」

 

 そう言って、二人は工房を飛び出すのだった。

 

 

 * * *

 

 

「あ! 伯母上はっけ~ん! 何してんの?」

 

 廊下でバッタリ会うなりスタスタと近付いてくる茶々。

 ノッブはそれに気付くと、

 

「おぉ、茶々か! ちとレクリエーションルームで遊ぶかと思ってな。茶々も来るか?」

「ん~……見てるだけなら行く!」

「そうか。まぁ良い! 菓子もあるはずだからな。それ目的でも構わぬ!」

「うん! じゃあ後でアナスタシアとスカディ連れていくね~!」

「お~ぅ! ……いや待て。普通話の流れ的にチビッ子じゃろ。普通に大人じゃな?」

「ふっ、伯母上は甘々だね。それは外見だけで、中身は可愛い小さな女の子の方が多いんだから! 外見判断なんて伯母上はまだまだ二流!」

「な、なんじゃと……!? 儂でもそれは見抜けなんだ……」

 

 バタリと倒れるノッブ。

 BBは呆れたようにため息を吐き、

 

「いや、わりと大問題ですよそれ。外見判断出来ない方ではなく、中身子供の方が」

「伯母上と一緒にいる人に言われたくないね」

「ぐふっ……」

 

 反論できずに倒れるBB。

 意外と自覚があったのか、ダメージは大きかった。

 そんな二人を見てニヤリと笑った茶々は、

 

「それじゃまた後でね! すぐ行くから!」

 

 そう言って、走り去っていくのだった。

 

 

 * * *

 

 

「お、いつものゲーム民じゃ」

「誰がゲーム民ですかぁ。一ミリも否定できないですよ。えぇ、もちろん」

「いや、姫原稿の息抜きなんだけど! 今来たばっかりなんだけど!」

 

 そう言い切るガネーシャと、言い訳をする刑部姫。

 ノッブは呆れたようにため息を吐き、

 

「いや、別に責めてる訳じゃないんじゃが……むしろ遊びに来たからグッドタイミング。大乱闘しようと思うんじゃがやる?」

「良いんすか? 勝っちゃうっすよ?」

「あ、姫やる~。脳の休憩にいちば~ん」

「それは絶対無いです。というか、今日はお二人だけです?」

 

 レクリエーションルームを見渡し、二人しかないのを確認してから聞くBB。

 するとガネーシャは苦笑いをしながら、

 

「あ~、うん。他はマスターが寝てるから休憩してる。ソロゲー消化に走ってるってのが正しいかも」

「あぁ……まぁ、確かにやる時間無いですしね。仕方ありません。人数を集めようかと思いましたけど、諦めて五人でやりますか」

 

 BBがそう言い、それと同時に周囲を見渡す刑部姫。

 そして、刑部姫は首をかしげると、

 

「……四人しかいなくない?」

「何言ってるんですか。便利な緑茶さんを呼ぶんですよ」

「お主好きじゃよな~……突然の呼び出し」

「きっと喜んでますって。じゃ、ちょちょいのほいっ」

「どわぁ!?」

 

 BBが適当に指を振ると、突如として現れるロビン。

 困惑したように辺りを見渡し、BBを見つけると、

 

「お、おま、お前! また強制で呼び出しやがったな!?」

「はい。暇でしょう?」

「ふっざけんな確かに暇でしたけども! で、何やるってんだ!」

「ゲームです。いや、デスゲームとかではなく、普通の電子ゲーム」

「なんだよそれ……イアソンとアンリも呼びやがれ。あぁ、あとマンドリカルドも忘れるなよ」

「はぁ……珍しく要求してきますね? まぁ、増えるのは一向に構わないですけど。説得はしてくださいよ?」

「任せろ。その気にさせるのは得意なんだ」

「まぁ、それならいいですけど」

 

 そう言って、BBはロビンに言われた三人も、おまけのように召喚するのだった。




 便利なロビンさん。なんでも出来るのですね!(純粋無垢の無茶振り

 最近カーマ熱が暴走してるのでどこかの虚無期間でカーマ使って話を書いてみようかと……カーマの部屋とか、そんな感じのやつ。まぁ、まだ何も考えてないですけどね!


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お菓子作りも楽しくなってきたわ!(なんで私が講師なんです?)

「ふふっ。だんだんお菓子作りも楽しくなってきたわ!」

「はぁ……それはいいですけど、なんで私が講師なんですか。普通厨房メンバーじゃないんです?」

「バラキーにお勧めされたの。とってもお上手だって」

「……良からぬ噂をばらまいてますねあの鬼」

 

 調理のために身長を伸ばしたカーマは、そう呟いて完成したばかりのクッキーを一口で食べる。

 アビゲイルがそれを不安そうに見ているのに気付き、

 

「……まぁ、悪くないですよ。ちょうど良い焼き加減です」

「! 良かったわ、ちゃんと出来てたのね!」

「まぁ、焼けた瞬間に分かってたでしょう?」

「それはそれよ。食べて貰うまで実際にはわからないもの」

「そう、ですねぇ……作っていればなんとなく分かりますけど、今はまだ分からなくて普通ですね。一ヶ月もやってれば慣れますって」

「むぅ……やっぱり、練習は大事なのね。頑張らなきゃ」

「うむ。吾も応援してるぞ」

「どこからわいてきたんですか」

 

 どこからともなく現れ、断りもなく出来立てクッキーを食べているバラキーの頭を軽く小突くカーマ。

 バラキーは不満そうな顔をしながらクッキーを飲み込むと、

 

「何をする」

「勝手に食べないでください。貴女、何も考えずズバッと言うんですから」

「ふん。言葉を濁しては伝わるものも伝わらんだろう。故に今も素直に答えようではないか」

「そうですか……で、感想は?」

「うむ。大変美味だが、吾としてはもうちょっと甘くても良いのではないかと思った。生地の味が強い感じだな」

「貴女がひたすらに甘いのが好きなだけでしょうが」

「全く間違ってないな! 甘いの食べたい!」

「これ持って向こうで静かにしていてください!」

 

 そう言って、カーマは袋詰めされたクッキーを渡し、バラキーをテーブルに行かせる。

 それを見ていたアビゲイルは、少し羨ましそうに、

 

「カーマさん、なんだかお姉さんみたいで羨ましいわ。私もなれるかしら」

「はぁ? 何をバカなことを言って……いえ、自分のやってることを考えたら確かにそうですね……? でもまぁ、私みたいにならない方が良いと思いますけどね。人間なら」

「そういうものかしら」

「そういうものです。そのうち分かりますよ」

 

 そう言って、使った調理器具を洗っていくカーマ。

 アビゲイルも隣に立ってその手伝いをする。

 遠目から見ると、カーマが背の高い姿だと言うこともあり、年の離れた姉妹か従姉妹に見えないこともない。

 

「……まだ作ります?」

「ん~……これ以上は食べられそうにないわ」

「そうでもないですよ。あそこの鬼とか、わりとなんでも食べますし。失敗作でも渡しておけば静かです」

「あはは……でも、本当に大丈夫。また明日お願いしますね。カーマさん」

「……まぁ、暇だったら教えますよ」

 

 そう言って、カーマはアビゲイルから顔を隠すのだった。




 カーマのお料理教室。アビーをメインで書きたいなぁって思ったらカーマが主張してきたのでお料理教室。きっとカーマも料理上手(願望

 まぁ、あらゆるニーズに応える愛の女神ですし、こういう部分も完璧ですよね……? でも、アビーより目立ってるのなんなんです……?


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おはようエウリュアレ(良い夢は見れたかしら?)

「……おはよう?」

「あら、おはようマスター。良い夢は見れたかしら」

 

 そう言って、にっこりと微笑むエウリュアレ。

 膝枕をされているオオガミは苦笑いで、

 

「まぁ、パリピを感じたよね」

「なにそれ。どんなのよ」

「そんなのとしか言いようがないなぁ……」

 

 言いながら起き上がるオオガミ。

 エウリュアレは少し残念そうな顔をしつつ、

 

「まぁ、戻って来たならいいわ。なんだかんだずっと寝て……いえ、まぁ、チョコを回収しに起きてはいたけども」

「二人から貰うためだけでも起きる理由にはなると思うわけですよ。というか、それだけで十分じゃない?」

「……言ってて恥ずかしくないの?」

「ふっ……恥ずかしくて女神二柱を相手に出来るかぁ!」

「……冷静に聞くと腹立たしいわねそのセリフ」

 

 そう言って頬を膨らませるエウリュアレ。

 オオガミは首をかしげて自分の発言を思い出しつつ、

 

「……なんで女神二柱なんだろうなってこと?」

「えぇ、全くよ。普通はどっちかだけとか、そういうものじゃないかしら」

「そう言われてもなぁ……神様って難しいんだね」

「加護の重複とか、どうなのかしら」

「でも、メルトだけで三柱分だよ?」

「……そういえばそうだったわね。えぇ、そう考えたら些細な問題ね。気にしないで」

「そんなめちゃくちゃ不満そうな顔をしてるのに気にしないとか、そんな難しいことを言われても、ねぇ……?」

「なんで普段はスルーするくせにこういう時だけ突っ掛かってくるのよ」

 

 エウリュアレはそう言ってため息を吐き、オオガミを見る。

 不思議そうに首をかしげるオオガミに、エウリュアレはまた頭を抱えると、

 

「まぁ、もう私も気にしないって思ってるのだから良いのだけど……どうして聖杯組がことごとく神性持ちなの?」

「バラキーは魔性です」

「……そうね。でもほとんど神性よね」

「まぁ、うん。それは否定しない」

「なんでそんなに神性で固めたわけ?」

「特に理由はないけど……なんとなく?」

「なんとなくで神性を選んでいくの、流石よね」

「どういう意味さ」

「まぁ、そのままの意味としか」

 

 呆れたように言うエウリュアレに、オオガミは納得のいかない顔をするのだった。

 その時、メルトが小さな袋を片手に戻ってきて、

 

「あらマスター。お目覚め?」

「ついさっきね。何かあった?」

「いいえ、何にも? あぁ、でも、強いて言うなら、貴方が起きるまでずっとエウリュアレが貴方に膝枕をしていたってことくらいかしら」

 

 メルトに言われ、オオガミは反射的にエウリュアレを見るが、既に明後日の方を見て、顔が見えないようにしていた。

 それを見たオオガミ、再びメルトに視線を戻し、

 

「その話、詳しく」

「語らせるわけ無いでしょ!」

 

 即座にエウリュアレの矢が放たれるのだった。




 ようやく帰って来れたな……!! これでまたこの三人の絡みが書けるという事で。いやぁ、いい加減アイテム交換しなきゃなぁ……!


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マスターさん。食べてくださいな(アビーお手製クッキーですと?)

「はい、マスターさん。食べてくださいな」

「ありがとうアビー」

 

 そう言って、クッキーの入った袋を受け取るオオガミ。

 すると、隣にいたエウリュアレが手を伸ばし、

 

「私もいただこうかしら」

「ストップエウリュアレ」

 

 即座にオオガミに止められる。

 エウリュアレが不思議そうに首をかしげると、

 

「貰った本人より先に食べるのもどうかと思うよ?」

「……仕方無いわね。おとなしく待つわよ」

「あ、ごめんなさいエウリュアレさん。ちゃんとエウリュアレさんの分もあるの。早く渡さなくてごめんなさいね?」

「……謝る必要なんてないわ。というか、謝られると、まるで私がお菓子に目がないみたいじゃない」

「えっ」

「え?」

 

 オオガミの反応に、思わず首をかしげるエウリュアレ。

 アビゲイルは口を押さえて、私は何も言っていないと態度で表していた。

 

「いや、今までの態度を見ていて疑問に思わない方が無理無い?」

「あら、私はまだ何も言っていないのだけど」

「しまった誘導かっ」

「盛大な自爆よ。でも良いわ。特別に、私への奉仕で許してあげる」

「ふむ……で、何をすれば良いの?」

「久し振りにパフェ食べたいわね。チョコレートのやつ。最後に食べたの何時だったかしら」

「いやぁ、憶えてないね。でもなんとなく覚えてるから作ってこよう。クッキー食べ終わった後で良い?」

「構わないわ。私もいただくし。ありがとうねアビー」

「い、いいえ。どういたしまして。喜んでもらえたなら嬉しいわ」

 

 そう言って、エウリュアレはアビゲイルからクッキーを受け取ると、先にオオガミが食べるのを待ってから食べ始める。

 そして、先に食べたオオガミは、

 

「……うん! うまい! 流石アビーだ!」

「えへへ……! ありがとう、マスターさん」

「えぇ、本当に美味しいわ。でも……どこかで食べたのよねぇ……これ……」

 

 そう言って、考え始めるエウリュアレ。

 すると、アビゲイルは楽しそうな笑顔を浮かべながら、

 

「カーマさんがお手伝いしてくれたの! とっても助かったわ!」

 

 その一言を聞いて、硬直するエウリュアレ。

 そして、ゆっくりとアビゲイルの方へ顔を向けると、

 

「ねぇ、アビー? 作ってる途中で、カーマが何か混ぜ込まなかった?」

「えっと……『秘密の調味料です』と言って、何かを入れていたわ。中身は分からなかったのですけど、でも、美味しくなったからいいやって思って気にしなかったのだけど……ダメだったかしら……」

「いいえ、もう大丈夫よ。貴女は悪くないわ。でもごめんなさい。少し用事が出来てしまったの。少し席を外させてもらうわ」

「え、えぇ……行ってらっしゃい……?」

「えぇ、行ってきます」

 

 そう言って、食堂を出ていくエウリュアレ。

 扉が閉まる直前、弓を展開していた気がするが、気のせいだろうと二人は思うのだった。

 だが、オオガミは念のためと思い、

 

「アビー。他の誰かに配った?」

「いいえ? マスター達が最初よ?」

「よし。じゃあ残っているヤツ貰って良いかな。代わりに一緒に新しいのを作ろう」

「え……でも……」

「大丈夫。損はさせないよ」

「……まぁ、少し失敗してしまったのもあったから、新しく作れるなら……お願いしても良いかしら」

「請け負った。よし、どんどん作っていこう」

 

 そう言って、オオガミは厨房に向かうのだった。




 カーマのお料理教室がただで済むわけもなく。しかし、サーヴァントすら太らせられるアレ。着火材に便利なのですね……そして彼女なら何度でも流用する。確信できる。


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どっちが私でしょう!(定期的にやってるんですよ)

「ん。アナ、こんなところでどうしたの?」

「あ、マスター。その、姉様達がクイズをすると言って部屋の中で準備をしていて……マスターも参加されます?」

 

 廊下で立っていたアナに言われ、オオガミは少し考えると、

 

「飛び込みで良いの?」

「あ、それもそうですね……では、見ているだけでも。とは言っても、いつものだと思いますが……今回こそ見分けますっ」

「あぁ、クイズって、そういうことね」

 

 そう言って、頷くオオガミ。

 アナの気合いの入れようを見るに、おそらくこれまで一度も正解していないのだろう。

 そんなことを思っていると、扉が開き、

 

「「さぁアナ。どっちが私でしょう!」」

 

 そう言って、廊下に出てくる二人。

 どちらもステンノの服を来ていて、服装はヒントにならなくなってる。

 名前を呼んではダメだなと思ったオオガミは、右をA。左をBと呼ぼうと決め、アナに視線を向ける。

 

「え、えぇっと……う~ん……むむぅ……」

 

 必死に考えていた。

 オオガミは苦笑いをしつつ、とりあえず疑問に思ったことを聞いてみる。

 

「えっと、質問していい?」

「「答えに触れるものじゃなければ」」

 

 そう、同時に答える二人。

 オオガミは、対策済みか。と小さく呟き、質問を続ける。

 

「今回のこれって、何か賭けてたりするの?」

「「いいえ? いつものように、面白そうだからやってるの」」

「なるほどね。ありがとう。ちなみに俺の参加は?」

「「ダメよ。答えが分かってる人を入れても面白くないじゃない」」

「まぁ、そうだよね」

 

 そう言って、オオガミは壁に寄り掛かる。

 そして、たっぷり悩んだアナは、

 

「右がエウリュアレ姉様で、左がステンノ姉様です!」

「「本当にそれで良いのかしら」」

「……はい!」

 

 一瞬悩んでいたように見えたが、自分の決断を信じたアナ。

 そして、その答えに満足したのか、二人はアナに近付き、

 

「「残念でした!」」

「えっ、あっ、や、やめ、ふへっ、やめて、やめてくださいいぃ!!」

 

 制止の声も届かず、無情にもくすぐりの刑に処されるアナ。

 オオガミはそれを見て、とりあえず止めようはしない。

 そして、しばらく二人がくすぐった後、息も絶え絶えなアナを見て頬を引きつらせる。

 そんな惨状を作り出した二人はゆらりと立ち上がると、

 

「さてマスター。どうしてここにいるのか聞いても良いかしら」

「えぇ、全くの不思議ね。ちゃんと貴方が来ないタイミングだったはずなのだけど」

「マーリンが面白いものが見れるって」

「「あの夢魔擬き、余計なことをするわね」」

「あの、手加減してあげてね?」

「「えぇもちろん。楽にさせてあげないわ」」

「う~ん、手加減とは」

 

 黒い笑顔を浮かべる二人を、オオガミは見送ることしか出来ないのだった。




 外れるとくすぐられて、当てるとくすぐられた上でおやつをもらえる。どちらにせよくすぐられるので当てるしかないのです。是非もなし……

 なお、でっかいメドゥーサにも同じことをしている模様。ゴルゴーンは問答無用で逃亡するので未だにどっちでしょうチャレンジしていない模様。

 あ、オオガミ君がどの時点で気付いていたかはお察しです。


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あの女神様、面倒なんですよ(まぁ、吾も知るところではある)

「つまりですね。あの女神は面倒なんです」

「うむ。吾も知ってる。最初は優しかったのだが……いつからかあんな感じよな」

「……まるで想像できないんですけど」

 

 そう言って、カーマは頭に突き刺さってる矢を投げ捨て、椅子に座る。

 バラキーはマカロンを食べながら、

 

「まぁ、吾がここに来た時、最初から絡んできたしな。なんだかんだここに来てからしばらくはエウリュアレと一緒だったしな」

「へぇ……ふぅん……そうなんですか……まぁ、私には関係のない事ですけど」

「うむ。吾は変わらぬし、変わっても(なれ)に声をかけるがな」

「っ……別に、そんなことされても嬉しくないですしっ」

「うん? 別に、喜ばせようとは思っていないのだが……まぁよいか。カーマも食うか?」

「食べます、食べますよ、貰いますっ」

 

 そう言って、マカロンを受け取るカーマ。

 バラキーは未だ山のように積まれている自分の分を食べながら、

 

「それで、何を怒ってたのだ?」

「……アビゲイルさんを使ってクッキー爆弾をお見舞いしたら見事にばれて殴りかかられました。えぇ、はい。矢で何度も。ガッツが無ければ即死でしたね」

「恐ろしいなぁ……何故そこまで怒るのか分からぬが」

「まぁ、バラキーみたいに運動しないのが多いって事です。あと、女神は運動とかしないですからね。加護に体型維持を任せてるような奴等ですし。運動すればいいのにって感じです」

「ふむ。なるほどな? 確かに吾には関係の無さそうな話だ。うむ。殺されそう」

「えぇ、殺されますね。確実に。あの連中、プライドだけは高いので」

 

 そう言って、マカロンを摘まむカーマ。

 バラキーは立ち上がり、冷蔵庫の中から生クリームと絞り器を取り出して持ってくる。

 

「……良いんです?」

「まぁ、吾が赤い人に言われて作ったものだし。あれからしばらく自分で作った吾のものだからな。文句は言わせぬ。これをマカロンにかけるとうまいのだ」

「はぁ……? いえ、まぁいいんですけど。そんなに美味しいです?」

「うむ。まぁ一つかけてみると良い。と言っても、吾としてはこのふんわり感が良いのだが。クリームだけでも良い」

「それもうクリーム食べたいだけじゃないですか。まぁ、試しますけど」

 

 そう言って、カーマの差し出したマカロンに容赦なくクリームを盛っていくバラキー。

 どんどん盛られていくのでカーマも顔を青くする。

 

「ちょ、ちょっとバラキー!? ストップ! ストップですぅ!!」

「うははは!! これで良し! これでふわふわで甘いクリームを食べられるというわけだ!」

 

 バラキーが笑うのを横目に、カーマはもはやクリームが大半を占めるマカロンを食べるのだった。




 古戦場によりついに日付を跨いでしまった私……うごご、これは痛い……23時までの投稿を頑張りたいなぁ……!!


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よくこんなカロリー爆弾を作るわね(女神の神核貫通はどうかと思うのだけど)

「ふぅん……また、高カロリーなものを作ってるのね」

「全くよ。女神の神核を無効化して体型変化させてくるのはどうかと思うのだけど」

 

 そう言って、エウリュアレはオオガミに淹れさせたミルクティーを一口飲む。

 メルトは、オオガミがアビゲイルから回収したというクッキーを持ち上げつつ、

 

「でも、味は良いのよね?」

「……否定しないけど、認めたくはないわ」

「それ、もう認めてるんじゃなくて?」

「……認めないわ」

「そう……まぁ、それならそれで良いわ」

 

 そう言って、メルトはクッキーを食べる。

 

「うん、美味しいわね。今度作らせようかしら」

「正気? 体型維持の天敵みたいなものよ?」

「別に、私にはステージがあるもの。レッスンもあるのだから、多少なら問題の無い範囲……最悪スキルでどうとでもするわ」

「うわっ、それはズルいと思うのだけど」

「使えるものはなんでも使う。基本でしょ?」

 

 ふふん。と得意そうに笑うメルトと、恨めしそうに睨むエウリュアレ。

 

「というか、結局魔力過多で太るんだし、魔力を使えば痩せるんじゃないの?」

「……そう言えば、そうね。でもそれって結局戦闘に行き着かない?」

「そうでもないわ。遊んでいるだけでも運動になるもの。歌でも歌っていたら良いんじゃないの?」

「ん~……確かに、それもありかしら……」

「ユニヴァースの貴女たちは歌姫扱いみたいだし、良いんじゃないの? まぁ、それだけで痩せるとは言えないから、結局戦闘するのが一番早いんだけど」

「結局そこなのね。はぁ、素直に周回に行った方が早そうね」

「実際早いと思うわよ」

「ん~……まぁ、ある程度はしなきゃダメよね仕方ない。カーマのを食べたら行くことにしようかしら」

「それ、周回についてくる口実?」

 

 そうエウリュアレに問うのは、カップケーキを持って来たオオガミ。

 当然カーマ印ではなく、オオガミ印のもの。

 エウリュアレはそのカップケーキを取りながら、

 

「まぁ、口実ね。でも、そもそも周回してるときは大体後ろにいるじゃない」

「確かに。基本的にいてもらってるね」

「それが前に出るだけ。別に構わないでしょ?」

「急いでなければね。でも、ラムダメインじゃないかな」

「ぐぅ……ままならないわね」

「単体だと厳しいもの。まぁ、急いでないときは組み込まれるとは思うけど」

「まぁ、お手軽周回が楽すぎてそうなっちゃうのも仕方ないよなぁと」

「……最悪、メドゥーサ達を使うことにするわ」

「どう使うのか、まるで想像できないのだけど……?」

 

 メルトの疑問に、エウリュアレは不気味に笑うのだった。




 庇護の化身曰く、「太ってる姫様とか誰も救いたくないわよね。基本」とのこと。庇護されるのにも努力は必要なのですね……


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パリピ、怖いわ……(召喚されたら耐えられるでしょうか……)

「はぁっ、はぁっ、な、なんなのかしらあれは……! ぱ、パリピってなに!? 新種の怪物かしら!」

「なんというか、とても明るい方でしたね……出来れば召喚されて欲しくないのですが」

 

 青い顔をしながらプルプルと震えているエレシュキガルとアナ。

 その二人よりも深刻そうな顔をしている孔明に、マーリンは楽しそうな笑顔を浮かべながら近付き、

 

「いやぁ、向こうの君はとても楽しそうだったね。パリピ軍師君。回避を奢ってくれるだなんてとてもとても! マネージャー的動きは完璧だね。流石名軍師!」

「えぇいうるさい! アレが私だと!? キラキラが足りん等と、よくも言えたものだ! むしろキラキラしすぎだろう!? キラキラのアーチャーとはよく言ったものだな! まさに的確だ! しかも宝具を撃つ度テンションアップだと!? 恐怖以外の何者でもないのだが!?」

 

 そう言って、頭を抱えて叫ぶ孔明。

 その叫びを聞き、ニッコリと笑ってしまうのは、マーリン自身の性なのか。

 

「いや、これは失敬。君もやはりアレは堪えたみたいだ。まぁ、私もキッチリやられたけども。あのキラキラは中々の脅威だね」

「全くだ……何より宝具が意外過ぎて恐ろしい。一周回ってあの精神は見習いたいものがある」

「いやぁ、あのテンションは私みたいな覗き魔には厳しいね。作家ってあんなのだったかな?」

「書物と作家がイコールになるとは限らんからな。そういうこともある……が、アレはやはりイメージとあまりにかけ離れているだろう……っ!」

 

 そう言って、うずくまる孔明。

 そこにやって来たオオガミが、

 

「……マーリン、孔明先生いじめてたの?」

「風評被害だよ!?」

「パリピパワーにあてられた?」

「そうそうそんな感じ……改めて聞くと妙な感じだね。いや、事実なんだけどね?」

「陰には辛いものですし。というか、メインアタッカーの二人がダウンしてるんだけど」

「……アナまでやられるほどかい?」

 

 そう言って、エレシュキガルと抱き合って震えているアナに目を向けるマーリン。

 だが、アナの目が突如鋭くなり、

 

「マーリン。今すぐ出ていってください。出ないと刺します」

「おっと、逆鱗みたいだ。じゃあマスター。私はこの辺で」

「うん。お疲れ様~」

 

 そう言って、ささっと走って出ていくマーリン。

 それを見送ったオオガミは、エレシュキガル達の方に向き直り、

 

「とりあえず、食堂行く? えっと……い、行くのだわ」

「私も行きます……」

「あぁ、マスター。私も同行させてもらう……」

「完全に皆バテてるね……」

 

 そう言って、オオガミは三人を連れて食堂に向かうのだった。




 ラムダチャレンジには攻撃力が足りない……! くそぅ……!


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そろそろ周回の時間だね(いい加減バレンタイン脱却よ)

「ふぅ……それじゃ、そろそろ行こうか」

「えぇ、さっさと終わらせてティータイムにしましょ。いつまでもバレンタインに囚われていられないわ」

 

 そう言って、管制室に入って行くオオガミとラムダ。

 それを見ていたエレシュキガルは、隣にいるアナに、

 

「ね、ねぇ、アレは何しに行くのかしら……マスターの顔が何時になく真剣だったのだけど……」

「あぁ……アレはいつもの周回ですね。しかも、今回は期限ギリギリですから、やる気もいつも以上という事です。なんだかんだ、あの人も大忙しなので」

「食堂かマイルームで遊んでいるのがほとんどの気もするのだけど……」

「まぁ、表面上はずっと遊んでますし。なんというか、基本的に遊んでる人なんですよ。ボックス以外」

「そ、そうなの……? ん~……一年以上いてもさっぱり分からないのだわ……」

 

 そう言って、首を傾げつつ管制室を通り過ぎる二人。

 本日の目的は図書館だった。

 

「でも、なんでかしら。何時も編成が変わっていない気がするのだけど」

「一番安定しているというか、マスターがあれ以外の編成をほとんどできなくなっているというか。曰く、個人的に最高の周回パーティーとのことで。敵がセイバーじゃない限りあれでいいや、と。案の定大雑把なのがマスターらしいです」

「えぇ……とっても『らしい』のだわ……」

「えぇ。本当に、『らしい』です。真面目な時は真面目なんですけどね。基本はふざけてて大雑把なんですけど。最近だと高難易度を意地で三ターン攻略するときくらいしか本気でやってないと思います。後は同じ作業の繰り返しみたいなものですし」

「そ、そう……マスターも大変なのね」

 

 明かされるマスター事情に苦笑いするエレシュキガル。

 だが、彼女が何よりも気になったのは、

 

「ねぇ、アナ? どうして貴女はそこまでマスターに詳しいのかしら」

「……それは、ですねぇ……」

 

 途端に、言いづらそうに視線を泳がせるアナ。

 エレシュキガルは首を傾げながら、

 

「なにか、言いにくいことなのかしら」

「いえ、そういう訳じゃないんですが……そうですね。えぇ、はい。単純に、ずっと愚痴ってくる姉がいるので。自然と詳しくなるというかなんというか」

「姉……あぁ、エウリュアレのことね。確かに彼女、ずっとマスターといるし……そういうのに詳しくてもおかしくないわね。あれ、でも、ギリシアって、色恋沙汰で惨劇起こりまくる所よね……大丈夫なの?」

「まぁ、姉様が大丈夫ならそれでいいんですが……問題は、メルトさんの扱いを姉様がどう考えているかが気になるところなんですが……表面上仲がいいのがなおのこと怖いんです」

「あぁ……あるわね、そういう事。なんというか、考えると頭が痛くなりそうな案件ね」

「えぇ。全くです。こういうのは考えないで流れに身を任せるべきですから」

「それはそれで、どうなのかしら」

 

 そう言って、二人は図書館に入るのだった。




 古戦場終わり! 解散! FGOする!!(逃亡

 しかし、古戦場にやられて投稿が遅れたの許せない……おのれ古戦場……!(八つ当たり

 あ、お題箱すっかり忘れられてる気がするので再浮上させておきましたのでご自由にお使いくださいませ。


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居眠りしてた……(一体何をしているのだわ)

「……ん。んん……あぁ、寝てたのか」

 

 廊下から差し込む光以外が無い暗い休憩室で、ソファーの上で目を覚ますオオガミ。

 誰かが気付かずに電気を消したのかと思い、立ち上がろうとして、右腕が動かせないことに気付く。

 反射的に見ると、そこには腕を掴んで離してくれないエウリュアレがいた。

 

「……まぁ、うん。しばらくこのままでいいか」

 

 そう言って、ソファーに座りなおすオオガミ。

 暗い中で天井を見上げ、ぼーっとしていると、

 

「……こんな真っ暗な中、何をやっているのだわ」

 

 リリン。と響く鐘の音。

 オオガミが視線を更に上に向けると、逆さのエレシュキガル――――否、普通に心配している様子のエレシュキガルがいた。

 

「ん~……寝落ちして、目が覚めて、エウリュアレに腕を掴まれてるからそのままぼんやりって感じ。目覚めたばっかりでぼーっとしてるし」

「……普通に、夜遅いのだわ。部屋まで送りましょうか?」

「え、もしかして巡回?」

「えぇ、もう皆部屋に帰ったわ。というか、帰したの。夜中まで遊ぶのもいるけど、一応部屋に戻って行ってもらった方が良いし」

「あぁ、うん……なるほどね。仕方ない、エウリュアレもそろそろ起きただろうし、戻ります」

「……本当に寝起き?」

「本当に寝起きですが。というか、これだけ喋ってたら起きるから……」

 

 そう言って、エウリュアレを軽く揺するオオガミ。

 

「エウリュアレ。起きて。というか、起きてるでしょ」

「…………」

「……寝ているんじゃないの?」

「起きてる雰囲気あるし、確実に起きてるんだけど、狸寝入りで動きたくないだけだと思う」

「す、すごい自信ね……正直流石過ぎてちょっと怖いわ……」

「凄いね。一ミリも否定できないから泣ける。でもエウリュアレが起きてくれない。これは運んで行けって事でしょうか」

「いや、私に聞かれても困るのだわ……誰か呼んできましょうか?」

「それは大丈夫。筋力はあるので問題無し」

「そう……私も力には自信あるのだけど……」

「大丈夫。荷物運び的な意味じゃないから」

 

 そう言って、意地でも起きようとしないエウリュアレに掴まれた右腕を引き抜き、そのままエウリュアレをお姫様抱っこする。

 それを見ていたエレシュキガルは、

 

「なんというか、羨ましいのだわ……」

「……後でしようか?」

「えぇ!? いや、そんな、そういうのは嬉しいのだけど、その……お、お願いしたいのだわ……」

「うん、わかった。エウリュアレを運んだ後でね」

「あら、私を荷物扱いとか、生意気ね」

「起きてるなら落とすよ」

「おやすみマスター」

 

 突然目を覚ましたかと思えば、オオガミの一言で再び眠りに落ちるエウリュアレ。

 オオガミはエレシュキガルの方を見て、苦笑いをするのだった。




 寝起きののほほんとした感じを書こうとして、しかし想像とどこか違うこの……う~ん……

 あ、こんなのを書いて欲しいなどがあればお題箱にどうぞ。適当にぶん投げてください。


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日常
今更バビロニアのマテリアルだと?(突然の観賞会ということで)


「おい雑種。今更になってバビロニアのマテリアルを、事もあろうに(オレ)を除いて観賞しているとはどういう了見だ。えぇ? 申してみせよ」

 

 レクリエーションルームを丸々借りての上映会。

 そこに現れたギルガメッシュは不機嫌そうな顔をしてオオガミに言う。

 いつものようにエウリュアレを膝に乗せたままのオオガミは、顔だけギルガメッシュの方を向き、

 

「久し振りにエレシュキガルが召喚できそうだからなんとなく。昔を懐かしむ回的な。でもエルキドゥいるから呼べないなぁと思って」

「……それくらい、気にせぬわ」

 

 そう言って、オオガミの隣に座るギルガメッシュ。

 すると、反対側にいたメルトが顔を出し、

 

「ちょっと金ぴか。隣に座らないでもらえる? もっと向こうに行って、しっしっ」

「オオガミを間に挟んでいるだろうが。隣ではなかろう」

「はぁ? コイツは私の所有物なんだから、実質私の隣よ。分かったらあっちに行って。お似合いの切れる斧がいるじゃない」

「たわけ。今の我がヤツと話すことはない。話しかけられもせんだろうよ」

 

 そう言って、深く腰を下ろすギルガメッシュ。

 すると、エウリュアレは悪い笑顔を浮かべ、

 

「あら、ボッチ? もしかして貴方ボッチなの? うわ、可哀想。とっても可哀想ね。あれだけ大きく笑って見下しておきながらボッチ。人としての利点皆無じゃない」

「ふはは! 言うではないか、形なき島の女神よ。だがそれは同時に隣の無様な自称白鳥とやらも傷つけておるぞ。ふはは! 愉快愉快!」

「あら、残念ねギルガメッシュ王。いつまでも成長しないと思わないでちょうだい。最近はエウリュアレと出掛けることもあるの。貴方みたいにいつまでも成長しないと思わないで?」

「くっ、言うではないか。だが(オレ)には友など一人で十分と知れ。後は無数の臣下人民のみよ! 貴様ら神々が仲良しこよししている間に人は幾度も成長するものよ。故に(オレ)一人に関してのことなど些細なこと。言うのは癪だが、あえていうのならば些事と言うものよ。人の切り札は数と知略よ!」

「まぁ、そうね。ティアマト討伐も、それ故の事だし。でも一番大きいのは縁ではなくて? 見ている限り、オオガミの縁が主だと思うのだけど」

「ふっ。返す言葉もない。だが、ウルクが生き残っていたのは我の縁、我の知恵と知れ」

 

 そう言って、不敵に笑うギルガメッシュ。

 そんな彼に、メルトは、

 

「それはそれとしてさっさと向こうに行きなさいよ。そこはエレシュキガルの席なのだから」

「それを先に言わぬかたわけ!」

 

 そう言って、ギルガメッシュは場所を移動するのだった。




 撮ってたのを一気見して泣いたので。神ですよアレ。


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なるほど種火周回強化期間(クハハ男と倒れ伏せと?)

「ふっ、種火周回強化期間……か。それはつまり、あのクハハ男と共に倒れ伏せということか」

「ふんっ、共犯者の言うことだ。本気で酷使するつもりだろう。証拠に、イベントで連れ回されているパラケルススと孔明、ネロがあの様だ」

「巌窟王? 変な不安を覚えさせないでよ?」

 

 その声に反応し、反射的に巌窟王の後ろに隠れるスカディ。

 避けられた声の主であるオオガミは、困ったような顔をしながら、

 

「いつもの周回が倍になっただけじゃない?」

「共犯者よ。少しは加減をしろ。オレは構わんが、ただスキルを使うだけと言っても苦ではある。編成を切り替えるか、報酬を上げろ。余裕があれば雑編成でも良いだろう。どうせ次も縛りなどと言って制限をするのだろう?」

「おっと。的確な突っ込み。一ミリも否定できないじゃないですか。流石共犯者」

「後半に関しては誰もは察しているだろうがな。それで、どうする?」

「ん~……まぁ、余裕があったら雑編成で。ふざけててもなんとかなるでしょ、たぶん」

「暇そうにしているマーリンを連れ回すのも良いと思うがな」

「ふむ。カレスコ周回も考えるべきか……確かにマーリンも最近暇なのか悪だくみし始めたし、考えられないくらいに駆使するのも大事か……」

 

 そう言って、真剣な顔をして考えるオオガミ。

 巌窟王は深いため息を吐き、

 

「誰もそこまでしろと言っては無いがな。程々だ」

「うん。程々に動けなくなるまでね」

「ふむ。クハハ男。これは私の頭が悪いのか? 全く伝わっているように見えないのだが」

「クハハ男ではない。これは『伝わってはいるがそれはそれとして奴に恨みを晴らしておこう』という意味だ。つまりマーリンは自業自得という事だな」

「なるほど。とても分かりやすい解説だな。うむ。これからも解説が欲しい時には頼るとしよう」

「解説役ではない。勝手に頼るな」

「ふふっ、そうは言っても解説してくれるのだろう?」

「…………」

「巌窟王、そこで静かになると裏目だと思うよ?」

「……後は任せたぞ」

「あ、逃げた」

 

 先にシミュレーションルームに向かったのだろう巌窟王に、スカディは、

 

「存外、照れるのだな。もっと堅物かと思っていたのだが」

「スカディ様がアイスにドハマりしてるくらい意外ですよねぇ」

「……それは、あれか。私がアイスを食べているのは不自然という事か」

「いえ、そう言うわけではなく。とりあえず、周回終わったらチョコレートアイスでも食べます?」

「むっ。それはパフェか? エウリュアレにオススメされるが、一度も食べたことなくてな……気になるのだが……」

「なんてオススメを……まぁ、良いですけど。作るのもそんな苦じゃないですし」

「うむ。では楽しみにしていよう」

 

 そう言って、二人はシミュレーションルームに向かうのだった。




 雑周回、楽しいけど時間かかるのが問題ですよねぇ……特に種火周回強化期間とか、周回数凄いですし……


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何してるんですかそこで(スカディ様への献上品作り)

「……何してるんですかそこで」

「報酬作り。カーマも食べる?」

 

 厨房にて、カーマの隣でパフェを作っているオオガミ。

 カーマはオオガミの言葉に尚のこと不思議そうに、

 

「報酬って……私何もしてませんけど」

「ん~……まぁ、無償の愛を受けるという愛もあるのでは」

「……屁理屈ですね。というか、私を愛すって事ですか?」

「まぁ、そういうことで。で、食べるの?」

「貰えるなら貰っておきます。あぁ、それと、どう作るのかも見させて貰いますね。たまにバラキーに要求されて困るんです。毎度適当に作って出してるんですが、不満そうなのがなんとなく私的にイラッとポイントなので」

 

 そう言って、オオガミと同じくらいの身長に変化してオオガミの手元を覗き込むカーマ。

 その話を聞いていたオオガミは、苦笑しながら、

 

「カーマ、まるで親みたいだね。カルデアライフを堪能してるみたいで良かったよ」

「……はぁ? ちょっと待ってください今の会話のどこにそんな要素があったんですか。むしろ苦労しかないんですが?」

「まぁ、うちにはパールさんもアシュヴァッターマンもカルナもラーマも要るからね。片身狭いのはなんとなく分かるけど、でもバラキーとはうまくいってるんでしょ? ならよし。一人でもいれば良いじゃん?」

「はぁ? 何言ってるんですか。ちゃんとバラキー以外とも交流ありますから。これでも子供達には大人気なんですよ私。バカにしないでください」

「ガッツリお姉さんしてるじゃんね。エンジョイしまくりでは?」

「うぐふっ」

 

 オオガミの言葉のナイフが突き刺さるカーマ。

 最近特に問題も起こしていないという自覚があったため、ダメージは軽減されているものの突き付けられるとやはり心には刺さるもの。

 そういうこともあり落ち込んでいるカーマに、オオガミはさりげなく、

 

「あぁ、そうだ。カーマ。聖杯いる?」

「……本気で言ってます?」

 

 カーマの疑問に、ただ笑顔を浮かべて答えるオオガミ。

 それを見たカーマは深くため息を吐き、

 

「ステンノ神に渡すのでは?」

「まぁ、それが優先。でも、あと一個あればカーマの分として十分なくらいはある。どうする?」

「……ちなみに、NOと言った場合どうするつもりで?」

「『無償の愛を受けとるのも愛だよね。それとも愛してくれると言うのは嘘?』」

「なるほど。確かにそれは私に対して最大の一手ですね。誰の入れ知恵です?」

「形の無い島の厄介な女神様」

「本人が聞いたら激怒しそうな言い方ですね?」

「ごもっとも。聞かれてたら殺されてるね。それで? 貰ってくれるの?」

「えぇ、貴方の女神の提案に乗ってあげましょう。どういう経緯でそうなったのかなんて、聞いても面白くないですし。じゃあ、さっさとパフェの作り方を見せてください」

「了解。じゃ、再開するよ」

 

 そう言って、オオガミはパフェ作りを再開するのだった。




 なんとなくカーマを育成したい私。聖杯注ぎ込みたいのです……でも聖杯が一個足りないんだなぁ……イベントはよ……


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子イヌ、暇なの?(追い出されただけというかなんというか)

「やっほーエリちゃん」

「あ、子イヌ。どうしたの? 暇なの?」

 

 廊下でバッタリと会うオオガミとエリザベート。

 アイドル衣装ではなく普段着で、どこか気分良さげに歩いていた彼女はそのままオオガミの側まで移動する。

 

「暇というか、なんというか。厨房から追い出されて手持ち無沙汰なのは確かだけど」

「やっぱ暇なんじゃない。素直にそう言いなさい」

「ん~……呼ばれるまでは暇、的な?」

「誰に……?」

「謎のやる気を出してるエウリュアレにかな」

「今度は何をしたの? 子イヌが何もしてないのにやる気を出すとか絶対無いと思うのだけど」

「いや、特になにもしてないはず……強いて言えば、昨日カーマにパフェの作り方を教えていたくらいなんだけど」

「ふぅん……? まぁ、なんでかは分からないけど、たぶんそれが原因じゃないの?」

「やっぱり? でもどうしても、何故やったかが分からないわけです」

「ん~……(アタシ)にもサッパリ。それよりも、ねぇ子イヌ。久し振りにライブがしたいわ! だいぶ前から戦闘にも行かないし、やれることもそんなに残ってないから暇で暇で。だから、ね? 良いでしょ?」

 

 そう言って、元気そうに笑みを浮かべるエリザベート。

 オオガミは少し考えて、

 

「そう言えば、また冥界に行けるんだった気がするけど……エリちゃん、冥界で出会った相手全員に歌ってく感じでも良い?」

「ゲリラライブ……というよりは、普通にバトルかしら。でも全然良いわ。むしろ楽しみね!」

「メンバーはエリちゃんが決めて良いよ」

 

 そう言うと、今度はエリザベートが考え始め、

 

「ん~……ネロやノブナガを連れていくのも楽しそうだけど、でも子イヌが用意してくれてるから……ううぅぅ……」

「まぁ、行くのは明日だから、一日ゆっくり考えても良いよ?」

「だ、大丈夫! 今日中に決める……いや、今決めるわ! だからちょっと待って!?」

「廊下で待つのもどうかと思うけど……まぁ、待ってるよ」

 

 そう言って、廊下の端に寄るオオガミとエリザベート。

 

「ん~……でも、冥界……冥界よねぇ……ん~……うん。決めたわ。今回は(アタシ)たちのライブ。ということで、(アタシ)、勇者な(アタシ)、そしてメカエリ二体ね。ハロウィンな(アタシ)は未だに召喚されないもの。しょうがないわ」

「ん、了解。じゃあそのパーティーで冥界下りだね」

 

 そう言って、頷くオオガミ。

 だが、すぐに何かに気づいたように顔をしかめると、

 

「……またセイバーに弱いパーティーだな……?」

「……だ、大丈夫よ。セイバーなんて、早々出てこないもの! じゃあ、メンバー集めてくるわね!」

 

 そう言って、エリザベートは駆け出すのだった。




 冥界下りしてないなぁと思い、そういやエリちゃん運用してないなぁと思い、そしてエリちゃんのみで周回すると言うのを思い付き、保護者はカーミラさんですね。と結論付けます。完璧では……?


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冥界突撃訪問ライブ決行!(冥界破壊一直線だね)

「アッハハハ! コレが(アタシ)たちのライブよ!」

「完璧ね。勇者パワー全開……!」

「冥界でライブなんて、なんて冒涜的。でもそれが良いわ」

「静寂を打ち壊すデスロック……最高ね」

「震えるエレちゃんが目に浮かぶようだね……うん。可愛いな」

 

 そんなことを言いながら緩やかに冥界を下るオオガミ一行。

 もはや未曽有の災害レベルなのだが、現在の冥界の管理者は今頃涙目だろうな、とほくそ笑むオオガミ。

 すると、エリザベート(槍)が、

 

「でも子イヌ。本当にいくらでも歌っていいの?」

「良いの良いの。むしろ歌いまくってそこらじゅう破壊しながら降りよう。大幅リフォームできるし感謝感激されること間違いなしだよ」

「そ、そう? でも、そんなリフォームするほどの事なんて……し、してるかしら」

「現実を見なさい。これが惨状よエリザベート」

 

 そう言ってメカエリ初号機が指し示す先は、エリザベート達の号砲で破壊された冥界。

 エリザベートは苦い顔をしながら、

 

「これは、その、いや、(アタシ)じゃないわ。うん。みんなでやったもの。(アタシ)一人じゃないわ」

「だとしてもやり過ぎでは」

「まぁ、その、魅力的過ぎて壊れちゃうのも仕方ないわね。うんうん。(アタシ)だし、仕方ないわね!」

「仕方ないで済ませて良い問題だと思いませんが」

「要練習よ。壊さないように歌えるようになればいいってこと!」

「そう言う問題……ですね。はい。壊さないように用心してください」

「いや、今はその破壊性を求めてるんだけど」

「……そうでした。今は戦闘中でしたね。さぁ、もっと歌い破壊してください!」

「それを求められるのもなんか違うんだけど!?」

 

 そう言って涙目になるエリザベート。

 それを見ていた勇者エリちゃんは、

 

「なんというか、メカエリチャンの影響凄いわね。(アタシ)も気圧されそうなのだけど」

「まぁ、そう言う事もあるよね。うん」

「でも、(アタシ)もいつも通りでいいの? ライブしてるだけよ?」

「構わないよ。というか、それが一番。勇者パワー全開で見せてやって」

「まぁ、子イヌが言うなら、仕方ないわね。行くわよ二号! (アタシ)達のパワー、見せてあげるわ!」

「了解。エリザベートに従うのは不愉快ですが、それが今は一番です。さぁ、パイロット。私たちのライブを始めましょう」

「それじゃ、どんどん門を突破して行こうか!」

 

 そう言って、オオガミ一行は冥界を降りて行く。

 その中でただ一人、膝を抱えて震えているカーミラは、

 

「何かしら、これ。新手の拷問……? 恐ろしい事を考えるじゃない」

 

 そう言って、ぼんやりと暗い冥界の空を見上げているのだった。




 完全に言い訳できないくらいに書くのが遅くなってる私です。
 もう、冥界も三度目だしネタが無いんですよぅ……新キャラも召喚できないし詰みですよぅ……もうこれはひたすらに食堂で駄弁ってるカーマを出すしか……いや、食堂でひたすら駄弁ってるエウリュアレとメルトでもいいな……?


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凄い圧ですね(吾専用だからな!)

「……なんですかそれ」

 

 カーマの指差す『ソレ』は、もはや山と呼ぶのが相応しい肉の群れ。

 バラキーは楽しそうに笑いながら、

 

「これは、赤い人に言って作らせた、吾だけの特別な一品。鬼盛りドラゴンステーキよ! まぁ、実際はワイバーンの方が美味いからワイバーンステーキなのだが」

「ふぅん? てっきりドラゴンの方が美味しいのかと思ってました」

「あ~……食える量は多いのだが、サイズのせいで大味でなぁ……美味いには美味いのだが、なんというか……うむ。吾には合わぬ味だったということだ」

「そうですか……ちなみに、ワイバーンが一番だとして、ドラゴンはどこなんです?」

「ん~……ワイバーンのすぐ下辺りだな。そんな悪くない」

「普通に上質じゃないですか」

「これはなんというか、親鳥か雛鳥か。というくらいの違いだからなぁ……品種としては全く別物らしいのだが、吾としてはそんな感じだ。ドラゴンの方が少し硬い」

「あぁ、そういう感じなんですね……ところで、その親鳥雛鳥って、鶏の事ですか?」

「ん? うむ。マスター曰く、讃岐の辺り……今は香川となっているらしいが、ともかく、そこで有名なんだとか。吾も赤い人に作ってもらったのを食べたことしかないから分からぬ……レイシフトで行けるか?」

「趣味でレイシフトすると怒られますよ」

「……まぁ、風紀委員と争うまでの事ではないな」

 

 そう言って、山盛りのステーキを食べていくバラキー。

 それを見ていたカーマは、

 

「……一枚貰っても?」

「ん……取り皿がないが」

「それくらいは取ってきますよ」

 

 そう言って、自分の取り皿とナイフ、フォークを取ってくるカーマ。

 バラキーは特に気にした様子もなく一枚取ってカーマの皿に置くと、

 

「タレとかもあるが、わりとこのシンプルな状態で美味い。食べてみて無理そうなら使う、としたほうが良いと吾思うな」

「十分、匂いだけで美味しそうですよ。いただきます」

 

 そう言って、ワイバーンのステーキを一口食べるカーマ。

 

「……そう言えば、これ、どこのワイバーンですか?」

「オケアノス。マスターの海岸訓練の折りに襲ってきたワイバーンを叩き落として持って帰ってきた」

「な、なるほど……何気にバラキーって色んな所に行ってますよね……」

「まぁ、カルデアで寝ているだけの生活も飽きるからなぁ……適当について行くのが一番いい。その点、あやつは気付くとどこかに行っているからな。追いかけるだけで楽しめる」

「なるほど……今度私もそうしてみますか」

「うむ。それが良いと思うぞ」

 

 そう言って、二人はワイバーンステーキを食べ進めるのだった。




 結局この二人に行き着くんですね。いえ、そろそろオオガミ君帰ってきますけど。サボってたりシテナイデスヨ?

 えうえうとかメルトとかそろそろ出したい気分ですね……


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帰って来ないわね(遊んで長引いてるんじゃない?)

「……帰ってこないのだけど」

「長引いてるんじゃないの? 知らないけど。エリザベートメインの弾丸ゲリラライブとか、正気を疑うけど」

 

 冥界に出掛けたオオガミが帰って来ず、暇なエウリュアレとメルトは食堂の端で横並びで呆然としていた。

 

「そう言えば、今種火周回してるの?」

「してるわよ。巌窟王とスカディを連れて手早くね。貴女を連れていくと色々面倒なの。主にスキルが」

「別に、何も言ってないのだけど」

「顔に出てるわ。オオガミ並みに分かりやすいわよ」

「……それ、褒められてるの?」

「どちらかと言えばダメな方じゃない?」

「……彼、そんなに顔に出るかしら」

「えぇ。良いことに関しては。悪いことは全く出さないのにね」

 

 そう言って、自分で作った紅茶を飲んで渋い顔をするエウリュアレ。

 メルトは砂糖をエウリュアレに渡しながら、

 

「私、そんなに顔に出てる?」

「えぇ、オオガミ並みに」

「……さっきのと合わせたら全然顔に出てないってことにならないかしら」

「……まぁ、私からすると出てるってことかしら」

「観察力があるのね」

「むしろそれしかないというか。私は本来戦える女神じゃないもの。無理難題を押し付けて泣かせるのが私よ? 相手がどれくらい出来るかとか見抜かないと、もしクリアされたら大変だもの」

「ふぅん……大変なのね。戦えないって言うのは」

「どうあがいても守られるしかないもの。でも、下手に戦える力がある方が面倒の気もするけどね」

 

 そう言って、紅茶に砂糖を入れ、あらかじめ用意していたミルクを注ぎ、ミルクティーを作る。

 メルトはぼんやりとそれを眺めつつ、

 

「守られるだけなんて、想像したこともないけど……でも、そっちの方が辛そうね」

「あら、そうでもないわ。あいにくと、盾に困ったことはないの。いずれオオガミにも越えてもらわないといけないわね。今は三枚になった私たちのもっとも信頼する盾を」

「……クリアできたら、晴れて化け物じゃない」

「あら、嫌かしら」

「いいえ? 大いに結構。強いのは嫌いじゃないし、化け物って響きが良いわ。美女の隣にいるのは怪物って言うのも、ロマンでしょう?」

「ふふっ、そうね。白鳥と、それを羨む怪物。とっても映えるんじゃない?」

「良いわね、それ。いただくわ」

「何に使うのかしら」

「次のステージとか?」

「あら、それは楽しみね」

 

 そう言って、クスクスと笑い合う二人。

 

「まぁ、なんにせよ、今の危機を脱してからね」

「えぇ。第三回シュメル熱とか、誰得かしら」

「も、もうなんとでも言ってほしいのだわ……」

 

 巡回して、ヘロヘロになって帰ってきたエレシュキガルに、エウリュアレは出来立てのミルクティーを差し出すのだった。




 いやぁ、やることいっぱいで手が回らない! どうしようこれ! うははは! 明日には終わらせないとなぁ!

 えぇ、はい。存外やることいっぱいだなぁと思いました。頑張りますぅ……


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冥界、恐ろしい所ね……(至急パワーアップすることを要求します)

「はぁ、はぁ……冥界、恐ろしい所ね……あんなのまでいるなんて……」

「修練不足、スキル不足を感じました。パイロット。至急スキル上げを」

「しません。必須じゃないしね」

 

 オオガミに言われ、不満そうな顔をするメカエリ。

 すると、勇者エリちゃんが、

 

「不思議なのだけど、後半ほとんど私役に立ってないわよね……皆アーチャーなのだけど」

「前半ランサーいたし、半々じゃない? むしろそう言う問題ならメカエリチャンズの方が思ってそうだけど」

「えぇ、今すぐにでも貴方を八つ裂きにしたいところよパイロット。相性とか考えないのかしら。それともわざと? 正気を疑うのだけど」

「うはは。それ言われると言い返せないね。でもまぁ、ライブとしては良い方だったんじゃない?」

「そうね。ライブとしては大成功! 冥界の底、深淵の先にまで私の歌声は響いたわ!! パーフェクト! 怖いものなんてないわね!」

 

 そう言って、上機嫌で歩いて行くエリザベート。

 その後ろをついて行くオオガミは、

 

「さて、それじゃあ後はのんびり種火周回か……後少しでアスクレピオス先生とマリーをレベルマ出来るから、全部売却できるね」

「いつの間にか、大所帯になったし、育成されてない方が少なくなったわね。やるじゃない子イヌ」

「まぁね。育成は大事。ゲーティアと戦って身をもって知ったもん」

「気付くのが遅いって突っ込みはいる?」

「いらない。自覚してるし」

 

 そう言って、笑いあう二人。

 そのまま食堂に着くと、

 

「お、ようやく帰って来たか! 余は待ちくたびれたぞライバルよ! さぁ、冥界はどうだったか聞かせてもらおうか!」

「いいわよ! (アタシ)たちの冒険を聞きなさい! ブレイブな(アタシ)とチェイテ守護神メカエリチャンズの活躍も聞かせてあげるわ!」

「それは楽しみだ! さぁ、そこに座るといい!」

 

 そう言って、エリザベート達を座らせるネロ。

 それを見送ったオオガミが食堂の隅に視線を送ると、不機嫌そうなメルトとどこか楽しそうなエウリュアレが、

 

「ちょっとマスター。遅いんじゃないの? 待ちくたびれたわ。さっさとこっちに来てそこの茶菓子を食べさせなさい」

「あぁ、種火はやってるわよ。もうそろそろ、必要なくなりそうだけど」

「メルトが直接的に言ってくるなんて珍しいね。寂しかった?」

「言うじゃない。刺されたいの?」

「おっと。今日のお姫様は暴力的なようですね」

 

 ふざけたようにそう言い、二人の前の席に座ったオオガミは、皿の上に盛られている紅茶の香りのするクッキーをメルトに食べさせるのだった。




 結局ネルガルが強すぎて我らが最強の風紀委員ことエルキドゥが出撃しました。これは大惨事……ネルガル強いなぁ……


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明日からアイアイエー島ですか……(あぁ、例の敗北拳の)

「さて、明日からアイアイエー島らしいんですが……不穏な気配しかない」

「アイアイエー島……あぁ、敗北拳の。でも、貴方はそれより大事なことがあるでしょ」

 

 エウリュアレに言われ、棒状の焼き菓子を咥えながらぼんやりと考えるオオガミ。

 すると、隣にいたメルトが反対側を咥え、へし折って食べつつ、

 

「後一週間とちょっとね。日本では三倍返しなんでしょう? とても楽しみね。どんなお返しなのかしら。あれだけ贅を凝らしたんだもの。少しくらい楽しみにしても文句はないでしょ?」

「……婚姻届?」

「ふざけるのも大概にしなさい」

 

 はぁい。とやる気無さそうに言うオオガミ。

 だが、メルトの頬が少し赤くなっているのを見逃すエウリュアレではなかった。

 しかし、エウリュアレはそこには触れず、

 

「私には何をくれるのかしら」

「ん~……聖杯?」

「既に9個あるからこれ以上は要らないわ」

「だよねぇ……欲しいものはないの?」

 

 そう聞くオオガミに、二人はニッコリと笑い、

 

「あら、マスター?」

「私たちが何を望んでいるのか」

「「それを探すのが役目でしょ?」」

「う~ん、圧がスゴい」

 

 そう言って、咥えていた焼き菓子を食べ、

 

「まぁ、当日までに考えておくよ」

「えぇ、よろしく」

「物によってはお腹に膝、で済まないからね」

「はいはい。任せてよ。お菓子作りに関しては謎の自信があるんだから」

「知ってるわ。美味しいもの」

「毎度進化してるもの。楽しみにしてるわ」

 

 そう言って、楽しそうに微笑む二人。

 オオガミはそれを見て何かを思い付いた顔をすると、

 

「島だし、遊べないかな」

「この真冬に?」

「私は良いけど……凍えたいわけ?」

「なんで海で遊ぶのが前提なんですか女神様?」

「じゃああと何があるのよ」

 

 呆れたように言われ、考えるオオガミ。

 考えた末に出したのは、

 

「キャンプとか?」

「あら……生活力皆無二人を連れてキャンプ?」

「覚悟決まってるわね。設営、食事、寝床全て揃える覚悟があるのね」

「あらかじめ想定してたようなカウンターですね? 完全に怯えてるじゃん」

「バカ言わないでちょうだい。私はメルトと違って不器用じゃないわ。ひたすらにやりたくないの。わかる?」

「えぇそうよ。私はエウリュアレと違ってやりたくない訳じゃないわ。異常なまでに不器用なの。わかってる?」

「なんで半分良くて半分悪いのか……!」

「私はそういう女神だもの。わかっていて愛しているのでしょう?」

「不器用だからって置いていくつもり? じわじわ溶かすわよ?」

「くそぅ面倒くさいなこの二人! そういうところも好きですけどね!?」

 

 そんなことを言いつつ、アイアイエー島で何かが出来ないかと話し合うのだった。




 なんかサラッと甘いことしてねぇかコイツら……?
 そしてメルト、なんか暴走してない? 気のせい? 言動がおかしくなってる気がするよ……?

 とまぁ、なんにしてもアイアイエー島。オデュッセウスのガンダム感ヤバすぎるから欲しいんですが。キュケオーンと一緒に来てくれないですかね?


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これがアイアイエー島……(意外と悪いところじゃなさそうね)

「なるほどこれがアイアイエー島……」

「あら、案外きれいな所じゃない。悪くないわ」

「……そんなに寒くないのよね……」

 

 アイアイエー島の砂浜に来た三人は、それぞれの感想を呟く。

 すると、エウリュアレが靴を脱ぎスカートの裾を持って海に向かっていく。

 オオガミとメルトは顔を見合わせ首をかしげるも、そのまま見守る。

 

「ん~……遊べなくも、ないくらいの温度ね」

 

 そう呟いて戻ろうとしたとき、一際大きい波がエウリュアレを襲い転ばせ、その拍子に全身がずぶ濡れになる。

 一瞬の硬直の後に動き出したオオガミによって助けられたエウリュアレは、カタカタと震えながら、いつもの白よりも青くなった満面の笑みで、

 

「真冬よ」

「今すぐ焚き火しますね!?」

 

 そう言って、薪を集めに走っていくオオガミ。

 メルトはそれを見送ってからエウリュアレに近づくと、ラムダに変わり、

 

「ちょっと動かないで」

「えぇ、お願い」

 

 そう言ってエウリュアレの腕に触れ、体表に付いた塩水と同化して拭い去っていく。

 そして、あらかた取り終わったところで手を離し、

 

「突然どうしたのよ。入れないってわかってたでしょ?」

「来る前に、遊べたら~って言ってたじゃない。本当に無理なのかって思って。現実は今見た通りだけど」

「まぁ、そうよね。季節的にそんなものよね」

 

 少し残念そうに呟く二人。

 すると、遠くから声が聞こえてくる。

 

「はぁ……なんだって私までここに連れて来られなきゃならないんですか。ホワイトデーとか無関係も良い所じゃないです? 私今は女性だから貰う側なんですけど」

「うん? 吾、遊び放題だと聞いて来たのだが、これホワイトデーなのか? うぅむ、変な企画をするのだな、南蛮は……」

「いえ、発祥は貴女の国です」

「え、マジか。吾びっくりなのだが。人とは分からぬものだなぁ……」

「まぁ、どちらにせよ私には無関係な話……いえ、お返しを貰えるはずなんですけど。でもそれって愛されカウントで良いんでしょうか。愛する神として敗北……? いえ、貰うのも愛しポイントでしょうか……」

「……またなにやら小難しいことを考え始めたな……?」

 

 そう言いながらやって来たのは、カーマとバラキーの二人。

 そして四人の目が合い、剣呑な雰囲気が流れる。

 だが、その雰囲気も長くは続かず、全員が目を逸らした先には薪を抱えて戻ってきたオオガミが。

 

「……どういう状況?」

「吾が一番知りたい……」

 

 メンバー内で一番まともで、かつ、一番胃が弱いバラキーが苦しそうに手をあげるのだった。




 まぁ、メルト様ならこういう乾かし方も出来るでしょう。出来てください。むしろうちのメルトは出来るんですという強気の姿勢!

 あ、メイン編成は性別不詳だけを詰め込んだ高コストパーティーという頭のネジが外れてる編成なので。いやぁ、星五4人星四1人は高コスト過ぎてヤバみ……礼装入らない……


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ペンギンに襲撃されるんじゃが(誰が原因か丸分かりですね?)

「……のぅBB。確かに儂は乗り込もうと言った。言ったがな? 誰もペンギンに襲われたいとは言ってないんじゃよ」

「うふふ。やってくれるじゃないですかメルト……今晩は焼き鳥ですね!」

「……ペンギンは鳥で良いのか……? いや、分類的には鳥類か。うむ。鳥じゃな」

 

 潜水艦でアイアイエー島に向かうノッブとBB。

 何故かペンギンの大群に襲われているものの、BBとノッブが手掛けた船にヒビ一つ入らない。

 だが、騒音被害はひたすらに響いており、BBは笑顔のまま怒っていた。

 

「ふふふ……容赦なく倒させてもらいますよ……ノッブ! 浮上です! 全員かっさばいてあげますよ!」

「うむ~……なんか儂より短気ではるかに物騒なんじゃが」

「何か言いました?」

「うんにゃ。何も言っとらんよ。浮上じゃな。任せよ」

 

 そう言って、潜水艦を浮上させるノッブ。

 そして浮上したと同時、二人は引きつった顔になる。

 

「め、メルト……!」

「出待ちかぁ……儂もやるけど、やられたくないものじゃなぁ……」

 

 ペロリと舌なめずりをして楽しそうな、残虐な笑みを浮かべるラムダに、ノッブは降参の姿勢を。BBは門を開いて潜水艦の上に立ち迎撃の姿勢を取る。

 

「あらBB。貴女も来てたの?」

「えぇ、来てました。というか、知ってましたよね? 小癪にもペンギンをぶつけてきましたし」

「ペンギンじゃなくてリヴァイアサン。間違えないで」

「どう見てもペンギンですが」

「リヴァイアサンよ。次は蹴る」

「……まぁいいです。で、知ってましたよね?」

「いいえ? 近付いてきてたからとりあえず沈めようと思って。だって、邪魔をされたらかなわないもの。不確定要素はちゃんと始末しないとね?」

「ふふ……良い度胸してますね。誰に似たんでしょう?」

「マスターも似たようなことするしなぁ。儂、思い当たる要素しかないんじゃが」

 

 そう言って、潜水艦から出てくるノッブ。

 ラムダは微笑みながら、

 

「まぁ、ノッブは良いわ。というか、人手が足りないから必要。でもBBは厄介だからNGね。お帰り願うわ」

「あ、マジで? じゃあ儂先に行ってるわ。BBは強く生きるんじゃぞ~。ではな~」

「は? いやいやノッブ? なに真っ先に逃げてるんですか? え、懐柔されてるんです? ちょっとメルト! それズルくないですか!?」

「私の作戦じゃないもの。文句ならオオガミに直接言って」

「そうですか……じゃあ、そこを通してもらいますね!」

「それはお断りさせて貰うわ」

 

 そう言って、二人は激突するのだった。

 

 

 * * *

 

 

「メルト遅いね」

「……BBと相性悪いの忘れてるの? どうせ撃退してるんでしょ。ノッブがこっちに向かってるのは見えるもの」

「……バラキー。ちょっと止めてきて~」

「え、吾が行くのか……?」

 

 オオガミに言われ、バラキーは嫌そうな顔をしつつも向かうのだった。




 BBちゃんの扱いは未だに酷い……いえ、なんというか、こんな感じが一番な気がしている私がいるんですが……邪神様ですしねぇ……


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とりあえずテント設置という事で(後は食糧調達かしら)

「よっと……こんなもんで良いかな」

「あら、良いじゃない」

「薄いわね……大丈夫かしら」

「メルトはラムダになれば入れるでしょ」

「それ言う? まぁ、するけど」

 

 そう言って、ラムダに変わってテントの中に入っていく。

 エウリュアレはテントの外をしばらく眺めてから入っていき、オオガミは設置が終わったので浜辺まで出ていく。

 

「ふぅ……気付けば夕方だなぁ」

「おぅマスター。そっちも終わったんか」

「あぁ、ノッブ。おつかれ~」

 

 ひらひらと手を振りながらやってくるノッブに、オオガミも振り返す。

 ノッブは隣に立つと、

 

「いやぁ、テント良いなぁコレ。儂の時代に欲しかったんじゃけど。軽いし運びやすいし。ただまぁ、脆いのが問題か」

「周囲が見れないのも欠点じゃない?」

「むしろ出口が限られるからそっちの方が大変じゃし……」

「そこはほら、出口を増やすとか」

「そうするとなぁ……危険性が増すというか。うぅむ、難しいのぅ。結局雑魚寝が一番か」

「う~ん、やっぱりそれになるか」

「まぁ、是非も無いよね。キャンプを気軽に遊べるようになった時点で平和って事じゃな」

「まぁ、そう言う事だね」

 

 そう言って、水平線に沈む夕日を見ている二人。

 すると、

 

「あれ、センパイ何してるんです?」

「うん? いや、テント終わったし、次はご飯だなぁって。調達しに行こうか」

「ん。儂も行くか」

「仕方ないですねぇ……BBちゃんも手伝いますよ」

「よし。レッツゴー」

 

 そう言って、ヤドカリやワイバーンを探しに行く。

 

 

 * * *

 

 

「……吾、狩り過ぎたか」

「倒したら倒したモンスターに釣られて新たなモンスターが来るって感じでしたしねぇ……まぁ、持ちかえれば当分の食料になるでしょうし」

「ん~……これ、持ち帰るの大変なのだが」

「まぁ、余裕ですよ」

 

 そう言って、カーマと一緒に即席の台車に食料を積んでいくバラキー。

 すると、

 

「うわ、なんですかコレ」

「ん? この声は……げ、BBじゃないですか」

「え、貴女からも言われるんですか私。何したんですか私。理解できないんですけど」

 

 カーマに言われ、心外そうな顔をするBB。

 

「だって、似たような顔だから同じような扱いされること多いんですし、煙たがるのは必然じゃないですか? おかげで成人状態だと誤解されるんですからね? 許せないんですけど」

「知らないですよそんなこと……私は普通に過ごしてるだけですし」

「まぁ、分かりますけど……でも配慮してください」

「そっちこそ配慮してくださいよ。妹が暴れてるとかたまに言われるんですよ? 無関係も良い所です」

「こっちも姉が暴れてるとか言われるんですからね? 困るんですよ、本当に」

「いや、どっちもどっちじゃろ」

「「貴女は黙っててください!」」

「お、おぅ……分かった。なんかスマン」

 

 二人に言われ、ノッブは黙ってバラキーを手伝うのだった。




 完全にイベント無関係な事をしている私です。
 キュケオーン来てくれないからね! 是非も無いよね! 投稿遅れたのはごめんなさい!


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黒幕ですか?(そうかもしれないし、そうじゃないかもしれないわ)

「……黒幕ですか」

「開口一番にそれってどうなのかしら」

 

 そう言って、にっこりと笑うエウリュアレ。

 オオガミはため息を吐きつつ、

 

「いやまぁ、黒幕でも全然いいんだけど。敵対するなら容赦はしないですし」

「ふふっ、貴方らしいわね。冗談じゃなくて本気なのは去年のギル祭で証明されてるものね。全力だったもの」

「容赦とか一切無かったからね。一撃必殺3ターン狙いの全力だったし」

 

 そう言って、楽しそうに笑うエウリュアレ。

 オオガミも楽しそうに笑いながら、

 

「迷宮を作ってその様子を見てるとか、エウリュアレの大好きそうな事だよね。アステリオスと一緒とか、本当に楽しそうだね」

「えぇ、楽しいわ。貴方といるときとはまた違うのよね。迷宮の奥底で待っているとか、とっても楽しくない?」

「それは……最高そうだ。やりたいねそれ」

「ラスボス感高くて、貴方好きでしょ?」

「めっちゃ好き。最高じゃんね。やっていいの?」

「えぇ。アステリオスを連れて、今度一緒にしましょう」

「……変な企みしてるわね」

 

 そう言って、テントから出てくるラムダ。

 ペンギンパーカーの中でぬくぬくとしている小さいペンギンにオオガミは一瞬目を奪われるが、すぐにエウリュアレに視線を戻しつつ、

 

「まぁ、男の子のロマンだよね。ラスボス」

「人理修復の過程で何度も見たんじゃないの?」

「見るのとするのは違うじゃん……見ててめちゃくちゃ羨ましいんだから……」

「とんでもないこと考えながら人理修復してたのね」

「まぁ、倒すときは全力なのだけどね。敵に対して容赦ないわよ。本当に」

「なんだかんだ非情よね。道理でノッブ達と相性良いはずよ……ノッブ達もそういうの好きそうだもの」

「なるほど。だからノッブと話が合うのか……うん。じゃあ後でラスボスごっこだね」

「ノッブに関しては既にラスボスしてるわよね……色んなタイミングで」

「……そう言われるとそうだね?」

 

 そう言って、納得するオオガミ。

 すると、砂浜の方から、

 

「センパ~イ! お肉焼けましたよ~。バラキーがスゴい勢いで食べてるので早くしないと空になりますよ~」

「暴食鬼を自由にさせたの誰だぁ! カーマだなとりあえず取っておけぇ!」

「私のせいにするとか酷すぎじゃないです!? 今回何もしてないんですけど!?」

 

 ギャーギャーと言いながら砂浜に向かっていくオオガミを見て、エウリュアレは、

 

「まぁ、私がラスボスとは言い切れないけど。ふふっ、楽しみね」

「ラスボスっぽい風格でよく言うわ。でもまぁ、とりあえず私たちも食べに行きましょ」

 

 そう言って、エウリュアレとラムダも砂浜に向かうのだった。




 エウリュアレがハッキリ出てきたなぁ……でもこれは平和ですね。確信を持てる。アステリオス君はかわいいなぁ……!


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トラップ担当エウリュアレ(違和感皆無だね?)

「トラップ担当だったんだね」

「あら、それ以外あるのかしら。むしろトラップ係をすることが天職よね」

「そんな天職でいいんですか女神様」

「まぁ、貴方をトラップに引っかけるのも良いわよね。ふふっ、楽しみだわ」

「なるほど。それは嫌な予感しかしないね」

 

 そう言って、横に首を振るオオガミ。

 エウリュアレはイタズラな笑みを浮かべながら、

 

「まぁ、その時はメルトでも誘おうかしら」

「なるほど。それは確かに楽しそうだね?」

「……あのトラップを見て楽しそうとか言えるの、本当に強靭な精神よね。どういう思考回路してるのよ」

「まぁ、エウリュアレが即死級トラップを仕掛けてくるとは思わないし」

「あのレーザー見てなかったの?」

「あれくらいならまだ気合で生き残れる範囲……かな」

「見栄張らないの。それで死なれるとか、私も困るわよ」

「じゃあ、そういうトラップはやめてくれる?」

「それは何とも。でも、出来る限り善処してみるわね」

「やらない奴だよねソレ」

「もちろん」

 

 そう言って微笑むエウリュアレに、オオガミは困ったように笑う。

 すると、それを見ていたBBが食事の手を止めてポツリと、

 

「ずっと気になってるんですけど、なんであの二人、自分たちの世界に入り込むんですか」

「いやぁ、昔からあんな感じじゃろ……というか、なんでBBが反応するんじゃ……普通カーマじゃろ?」

「私はもう、そう言う人だろうなぁと思ってたので」

「吾も何度か言ってたしなぁ。今更気にしないし……巻き込まれたくはないなぁと吾思う」

「言いたい放題言われてるわね……」

 

 メルトは呟き、肉の刺さった串をプルプルと震わせながら何とか食べる。

 それを横目に見たオオガミが、メルトの手から串を取りつつメルトが食べやすいように持つ。

 すると、ノッブが苦笑いをしながら、

 

「いや、なんというか、いつも通りだな、マスター。奉仕精神旺盛というか。堕落の女神としてアレはどうじゃ?」

「いや、もう完全に手に負えないんですけど。アレはもう堕落させるの至難の業ですよ? アレはもう完全に奉仕するの大好き人間ですから、こっちが自堕落なくらいで良いくらい……あぁ、そう考えるといいコンビですね。メルトさんも、なんだかんだ奉仕させるの好きそうですし」

「なるほど……愛する女神って言うのもあながち嘘じゃないみたいですねぇ……」

「ちょっと、疑ってたんです?」

「まぁ、少しは。疑うのも仕事ですし。サーヴァント間でも秘密ごとって多いですしね」

 

 そう言って、食事を再開するBB。

 カーマは不満そうな顔をしつつも、特に何も言わないのだった。




 トラップ担当なエウリュアレ……でも割と致死性の高いトラップ満載……まぁ、冷静に考えたらあの姉妹の無理難題って元からこんな感じですよね……越えられないと話にならないのでは?


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そろそろ帰りますか(一泊二日キャンプだったわね)

「さて……もう帰りますか」

「すごいわね。本当に遊びに来ただけなのだけど」

「アイアイエー島でキャンプして帰るだけとか、普通誰も考えないわよ」

「参加してた人が言います?」

 

 そういって、帰り支度を始めるオオガミ達。

 とは言っても、準備の時と同じように、エウリュアレとメルトは見ているだけだった。

 

「そういえば、遭難者ってどうなったんです? 捜索隊がいましたけど」

「え、そうなの? じゃあ遭難者探さないとじゃん」

「あぁ、それなら心配無用じゃ。儂らのテントで寝ておる」

「……とことん変なのに絡まれるねノッブ」

 

 そんなことを言っていると、

 

「ほぅ? (オレ)を変なのと呼ぶかオオガミ。良い度胸だ」

「あ……王様でしたか……」

「今度は遭難? 飽きないわね。楽しい?」

「たわけ。自ら望んでいると思うなよ? 海辺で遊んでいたら気付くと知らぬ島。(オレ)と言えども流石に困惑するわ。だがしかし、貴様らに会えたのは不幸中の幸いと言うヤツよ」

「でも、王様が遭難したってことは、迎えに来てるのって、つまりそういうことでは?」

 

 そう言って、嫌そうな顔をするオオガミ。

 すると、カーマが焦った様子でオオガミの後ろに隠れ、それと同時に草を掻き分けて人が来る。

 

「おや、マスター? こんなところで何をしているんだい?」

「えっと、キャンプかな。そっちは王様の捜索であってる?」

「うん。ギルがいなくなったから探しに来たんだけど……ここにいたみたいだね」

「昨日合流したばかりだ。捜索と言うには遅いではないか」

「嫌だなぁギル。僕だって出せる程度の出力で向かったけど、静かな君を見つけるのは至難の技だ。昔のように暴れてくれていても構わないんだよ?」

(オレ)やお前は構わぬだろうが、島に被害が出るだろうが。生前であればそれもよいが。如何せん特異点だ。下手に暴れて悪化させては元も子もなかろう。故に遭難も許す」

「なるほどね? それは確かに。じゃあ、さっさと帰ろうか。そもそも何故ギルがこの特異点で遭難したかを聞き出さないと行けないからね」

「それならば仕方ない。では先に帰っているぞ」

「お疲れ様~」

 

 そう言って、エルキドゥに連れられてカルデアに帰るギルガメッシュ。

 オオガミはそれを見送ると、

 

「で、カーマはなんで隠れたの?」

「本能的に隠れてしまったと言うか……苦手なタイプですから……私に対する特効が尋常じゃないですし……わりと怖いですよ」

「まぁ、風紀委員長ですし……私たちの天敵ですから」

「そういう苦手じゃないんですけど……」

 

 そんな事を言いながらも、彼らは帰り支度を進めるのだった。




 久しぶりのエルキドゥ。風紀委員長は捜索隊も兼ねてるんですねぇ……

 そしてなんだかんだ一泊二日の小旅行なこのメンバーですよ。いえ、楽しいので良いんですが。


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だいぶ島で遊びましたね(キャンプしただけだけどね)

「ふぅ。ずいぶん長い間、島で遊んだ気がしますね」

「遊んだって言っても、そんなに何かしてた訳じゃないけどね。でもまぁ、屋内にいるよりは楽しめたでしょ」

「まぁ、楽しめたなら良いじゃない。そもそも何もなかったら屋内で話してるだけなんだし。気分転換は大事よ」

「儂キャンプファイアーしたかったなぁ……次回の課題にしておくか」

 

 そんな事を言いながらカルデアに帰ってきたオオガミ達。

 カーマは呆れたような顔をしながら隣のバラキーに、

 

「あの、極小特異点を解決しに行ったとは思えない反応ですよね。どうなんです?」

「どうと言っても、今も昔も変わらんし……吾、疲弊しきって帰ってきたのを見る方がレアだと思う……」

「強靭ですか。いえ狂人ですね。えぇわかりました。面白人間ですかそうですか。体力お化けですか?」

「肉体面ならかなりなものだと思うが……精神的なものはエウリュアレとメルトの恩恵だと思う。でも敵対したら容赦ないから何とも言えぬが……」

 

 バラキーの話を聞き、オオガミ両隣を見て、バラキーに再び視線を戻す。

 

「なるほど。補給があるなら確かに無敵ですね。次はあの二人を引き剥がすのが最優先……あれ、でも大奥の時には二人ともいませんでしたよね……おかしいですね……?」

「いや、カーマは何か勘違いしているようだが、マスターは一人でなければわりとどうにかするぞ……?」

「なんですかそれ! やっぱりサーヴァントが一騎でもいたら危険なんですね!? ずるくないですか!?」

「うむ……吾も羅生門で何度も討伐された……あの時の奴等の目は怖かった……吾を鬼とも人とも思ってない、なんというか、餌を目の前にした獣のようだった……」

「……人間の危険な部分が見えてきますね……」

 

 カーマはそう言って、ため息を吐く。

 バラキーは呆れたように笑いつつ、

 

「まぁ、あまり手を出さぬ方が得策ではある……が、吾もそのうち何かやり返したいと思ってはいる。毎度幼子のように扱われては流石にな……」

「そうですか……じゃあ、今度二人で何かしましょう。それで反撃ですね」

「うむ。甘くない菓子でも楽しそうだな!」

「辛いものとかですねぇ。練り込んでみますか。反応が楽しみですね」

「お二人とも、効かない可能性は考えないんですね……」

「……怖いなぁ……マスター」

「……怖いですねぇ……マスター」

 

 会話に入ってきたBBの言葉を聞いて、その言葉の意味を察したバラキーとカーマは、心の底から悲しそうなため息を吐くのだった。




 だんだんバラキーの口調が変わってきた気がするのでそろそろ色々見返さないと……


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ここに立つのも久しぶりかな(いろいろしてましたしね)

「なんだか、ここに立つのも久しぶりの気がする」

「遊んでましたし当然じゃないですか。まぁ、それでも貴方のお菓子を望んでいる声は大きいですが」

 

 厨房でそんな事を言いながらテキパキと準備をして行くオオガミとカーマ。

 そして、準備が終わると、

 

「それじゃ、作っていこうか」

「えぇ、お願いします」

 

 腕捲りをしながらオオガミはやる気を出すのだった。

 

 

 * * *

 

 

「むぅ……最近カーマがマスターといることが多くなっている気がするのだが」

「えぇ、全くね。私たちに構わずあそこで楽しそうにしているのは納得いかないわね」

「えぇ、本当に。痛い目に遭わせないといけないわね」

「……なんというか、マスターの気苦労が分かるわ」

 

 そう言って、ため息を吐くアビゲイル。

 オオガミとカーマが厨房に立っている理由は三人の要望なのだが、それはそれとして納得できないらしい。

 

「それで、何を作っているのかしら」

「普通にクッキーだと思うけど、どうかしら。違うかも」

「早めに出来る物と言っていたんだが、吾は何でもよい……なんでもうまいというのはそれはそれで選択に困るものだな……」

「まぁ、こっちから指定はしてないから、どれが出てきても何も言えないものね。楽しみに待ちなさい」

「何が出てくるか楽しみね。ふふっ、いつもは茨木さんとしか一緒に食べてないけれど、お二人とも一緒に食べられるなんて、新鮮ね」

「そうね。前は一緒に食べていたけど、最近はメルトと一緒だもの」

 

 エウリュアレの言葉を聞いて、首を傾げるバラキー。

 

「む……元々アビゲイルはエウリュアレに懐いていたのではなかったのか……?」

「最近は一緒に何かしていないから……でも、アンリとは話しているのよ?」

「むしろアンリと話してる方が危ない気がするわね……」

「ちょっと矢を刺してこようかしら」

「……話すと言っても、アビゲイルのそれは、触手で脅している、と言うのに近い気もするがな……それでもア奴は煽るが」

「……自殺願望?」

「絶対楽しんでるわよね」

 

 陰でとんでもない事を噂されているなど知る由も無いアンリ。

 実際はアビゲイルの触手パワーで気圧されているだけなのだが。

 

「でも、アンリはともかく、最近そんなに話してない方が増えてきてしまった気がするわ……どうしましょう……」

「悩まなくても良いと思うけど……私なんか、最近エウリュアレとオオガミ以外と喋る方が珍しいけど」

「それはそれでどうなのかしら……いえ、私もあまり言えないのだけど……」

「……吾、実はこの中で一番交流が広いのでは……?」

 

 ひっそりと恐ろしい真実に気付いてしまったバラキーは、静かにお茶を飲むのだった。




 書きながら、最近この二人厨房に立ってたよなぁ……と思う私。パフェ作ってたのっていつでしたっけ……

 しかし、このカルデアのいつものメンバー、さては交流範囲狭いな……?


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今日はホワイトデーね(たまには柄にもなく)

「エウリュアレ。今一人?」

「あらオオガミ。なぁに? 誰か探してるの?」

 

 廊下を走ってきたオオガミに、にっこりと微笑んで聞くエウリュアレ。

 オオガミは一瞬言葉を詰まらせるも、

 

「まぁ、そんなところ。エウリュアレは?」

「私は人を待っているの。誰かが私に用があると思って」

「つまり一人?」

「えぇ。それで、誰をお探しかしら?」

「あぁ、えっと、とりあえずメルトかな。どこにいるか知ってる?」

 

 そう問われたエウリュアレは笑みを凍らせてオオガミを見る。

 だが、冗談で言っているようには見えない。

 なので、目を逸らしながら、

 

「そう……ね。今は自分の部屋でフィギュアを見ていたはずよ。急いだら?」

「ありがとう。それじゃ、また後でね」

「えぇ、それじゃあね」

 

 そう言って、別れる二人。

 オオガミが走り去ったあと、エウリュアレはしばらく呆然とし、やがて宛もなく歩き出す。

 

 

 * * *

 

 

「ん? どうしたんじゃエウリュアレ」

「あれ、こっちに来てます? おかしいですね。私の予想では今日はセンパイの部屋にこもってるものかと」

 

 気付けば来ていたノッブとBBの工房。

 二人が不思議そうな顔をして聞いてくるので、エウリュアレも不思議そうに首をかしげ、

 

「なんでそんな予想になるわけ?」

「え、いや、センパイから何も言われてないんですか……?」

「何よ……さっき会ったけど、メルトの場所を聞かれただけだもの。何もなかったわよ?」

「「あちゃ~……」」

「謎が深まるのだけど……」

 

 そう言って、ため息を吐くエウリュアレ。

 ノッブとBBは顔を見合わせると、

 

「確認なんですけど、特に何も貰ってないんですよね?」

「貰ってないけど……え、何か貰ったの?」

「あ~……これは完全にセンパイが悪いですねぇ……」

「そうじゃなぁ……儂としてはマスターの部屋で待つのが一番の気がするんじゃよなぁ……」

「という訳で、ささっと向かってください。ここに留まってる場合じゃないですよ」

「えぇ……せっかく来たばっかりなのに……」

「ダメです。早く向かってください」

「うむ。マスターに会ったらガツンと言っておくんじゃなぁ」

「え、ちょ、どういうことよ……?」

 

 だが、疑問に返答はなく、工房から追い出されるエウリュアレ。

 追い出されたエウリュアレは頬を膨らませ、

 

「何よっ、もう! 良いわよ、戻るから!」

 

 そう言って、歩き出す。

 

 

 * * *

 

 

「あら、エウリュアレさん! ごきげんよう!」

「ごきげんようアビー。ふふっ、こんな挨拶するの、わりと久しぶりね」

 

 廊下でバッタリと会ったアビゲイルに挨拶をするエウリュアレ。

 

「えぇ、本当に。それで、どちらまで? マスターはさっき食堂にいたのだけど」

「部屋に帰るのよ。BBもノッブも私を追い返されたし」

「そうなの? なんでかしら……」

「さぁ? それで、機嫌が良いみたいだけど何かあったの?」

「あ、そうなの! エウリュアレさんももう貰ってると思うのだけど、マスターさんがホワイトデーのプレゼントだって言って送ってくれたの!」

「ふぅん……?」

 

 嬉しそうに言うアビゲイルと、一瞬で不機嫌になるエウリュアレ。

 それを感じたアビゲイルは咳払いを一つし、

 

「そ、そういえば、マスターさんが今エウリュアレさんを探しているって聞いたわ。お部屋で待っていた方がいいんじゃないかしら」

「まぁ、それもそうね。それじゃあね、アビー」

「え、えぇ。また会いましょう、エウリュアレさん」

 

 そう言って、スタスタと走り去っていくアビゲイル。

 エウリュアレはため息を吐くと、

 

「本当に私を探しているのかしら……」

 

 そんな事を呟いて、部屋に向かう。

 

 

 * * *

 

 

「結局、なんで部屋で待ってろって言われたのか分かんないわね」

 

 ベッドに寝転がり、ぼんやりと天井を見るエウリュアレ。

 すると、扉が開き、

 

「ここにいたのか……伝え忘れたからどうしようか考えてたんだけど」

 

 そう、暢気な声が聞こえてくる。

 エウリュアレは起き上がると、声の主を睨みつつ、

 

「遅いじゃない。探すつもりあったの?」

「あはは……一応全力で探してはいたよ。見つからなかったけど」

 

 そう言って、部屋に入ってきてベッドに腰かけるオオガミ。

 エウリュアレもその隣に座り直すと、

 

「で、私を後回しにした理由は?」

「そりゃもちろん、その後の時間を全部使えるじゃん?」

「……言うわね。気に入ったわ」

 

 そう言って、機嫌を良くする。

 オオガミは楽しそうに微笑むと、

 

「それじゃ、これをどうぞ」

「あら、てっきり無いものかと」

「冗談。用意してないわけないじゃん?」

 

 そう言いながら渡されたのは、瓶詰めのキャンディー。カラフルで少し歪なそれを見たエウリュアレは、

 

「……手作り?」

「もちろん。むしろそれ以外用意するとでも?」

「それは確かに。貴方はそういう人よね。それじゃあありがたく貰うわ」

 

 そう言って、エウリュアレはキャンディーを受け取ると、そのままオオガミの膝の上に頭を乗せ、

 

「それじゃ、しばらくこのままね」

「好きなだけどうぞ」

 

 そう言って、オオガミはエウリュアレの頭を撫でるのだった。




 たまにはこんなのも。甘い……かなぁ……?


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想像以上の構図ね(どうしてこうなったんですかね)

「……想像以上の構図ね」

「あはは……こっちもビックリだよ」

「あら、しばらくはここを譲る気はないわよ?」

 

 そう言って、オオガミの左腕を掴んで離さないエウリュアレ。

 昨日からこの調子で、誰が来てもどこにいても似たような反応だった。

 見かねたメルトは、食堂でそうしている二人に声をかけていた。

 

「はぁ……楽しい?」

「意外と。枕にするにはやっぱりちょっと硬いけど」

「そう。まぁ、楽しいなら良いわ。じゃ、好きに座らせて貰うわよ」

 

 そう言って、オオガミの右隣に座るメルト。

 呆然としているオオガミに、メルトはきょとんとした顔で、

 

「何? 顔に何か付いてる?」

「いや、そうじゃなく……座るんだね?」

「当然。じゃなきゃ誰が私にお菓子を食べさせるって言うの?」

「あ、はい……今日はミニマフィンですよメルト様」

「あら、美味しそうね。いただくわ」

 

 そう言って、差し出されたミニマフィンを食べるメルト。

 とても美味しそうに食べる彼女を見たオオガミは少し嬉しそうに笑う。

 すると、エウリュアレが、

 

「ちょっと。私にはないの?」

「えっ、エウリュアレも?」

「何よ。私はダメなわけ? メルトは良いのに」

「いや、そういう訳じゃないけど……良いんです? 威厳的に」

「既に手遅れよね……?」

「それを言われると言い返せないね……?」

 

 じゃあ仕方ないか。と言ってメルトと同じように食べさせる。

 しかし、いくら小型に作っているからと言っても一口で食べるのは如何なものかと思うオオガミだが、本人達は至極嬉しそうなので気にしないことにする。

 

「でもまぁ、ここまで甘えられて悪い気はしないよね」

「あら、てっきり嫌がってるのかと思ったのだけど」

「いやいや。確かに今までより近い気がするけど、まぁおおむねいつも通りだし。うん。幸せすぎて殺されそう」

「それはあるかも。メドゥーサ達に襲われるかもしれないわよ?」

「BBも来るかもしれないわ」

「BBはともかく、メドゥーサ達は手加減してくれなさそうだなぁ……」

「まぁ、今のうちに楽しみなさい」

「そうするよ。いつ女神様独占の罪で罰が下るかわからないしね」

「えぇ、堪能しておきなさい」

 

 そう言って、二人はオオガミに寄りかかる。

 

 

 * * *

 

 

「あれって儂らのせい?」

「いや、あれは元々の性質だと思いますよ……? 単純に距離が縮んだだけ……」

「元からああだったってことじゃな……?」

「殴りたい気持ち分かりますよね……」

「うむ……わかる……」

 

 離れたところから見ていた二人は、しみじみと頷くのだった。




 大体いつもこんな感じだからいつも通りでは? と我に帰った私です。いつものですね……?


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終了直前滑り込みですか(昨日残り時間が少ないことの気付いた)

「……なんですかあれ」

「カーマちゃんのスーパーパワーへの信頼」

「要らないですそういうの」

 

 机に突っ伏し、暗い雰囲気を醸し出すカーマ。

 そんな彼女を正面から見ているオオガミと、彼女の隣でクッキーを口にねじ込もうとしているバラキー。

 エウリュアレはマシュによって連れ去られたので、現在は行方不明となっている。

 

「いやぁ、それにしても、オデュッセウス怖かったね……未来を感じるパワーだった……」

「あれ、吾の知ってる木馬じゃない……なんというか、未来的なものを感じた……刑部姫の部屋で見たようなやつだ」

「うんうん。ちょっと乗ってみたいよね」

「馬がああなるのは吾も流石に想像出来なんだ……」

「ギリシャスゴいなぁ……」

「吾行きたくないなぁ……」

 

 そんな事を言っていると、口にねじ込まれたクッキーバリバリと食べながら、

 

「というかですね? マスターさんは事前情報で防御有利にされるの知ってたじゃないですか。その時エウリュアレさんを連れていくとか言ってましたよね。あれはどうしたんです?」

「今朝マシュに連れていかれたよ?」

「ギリシャの血筋ですね納得です!」

「……今さりげに色んな所を敵に回した気がするぞ吾」

「しーっだよ。本人が気付いてないんだからそっとしておくの」

「聞こえてますよでもギリシャ神話は大体そんな感じじゃないですか!?」

「うんうん。分かってると言いたくなるよね。それで爆散するんだけど」

「吾何も聞いてない……うむ。今のうちに退散する」

「逃がしませんよ!」

 

 クッキーを持って逃げようとするバラキーを捕まえ座らせつつ、カーマは続ける。

 

「そもそもなんですけど、何したら連れ去られるんですか?」

「日常生活に支障が出るレベル」

「危なっかしいですね? 何をされたんですか」

「流石にどこに行くのでもついてこられると怖い」

「……自然な反応ですよね。はい」

「ギリシャはロボットものだし愛憎劇が毎度起こってるしで個人的に行きたくない国上位だよ。衛星軌道レーザー兵器はトラウマだよ」

「私も嫌ですよそんなの。というか、その中だとゴルゴーンとか全然マシな部類じゃ……?」

「正直あのポセイドンをゴルゴーン三姉妹でボコらなかったの失敗だったなって思ってる。もう一回やらせて……?」

「ポセイドンに対する恨みが強いですね……」

「ゴルゴーン三姉妹の結末の10割はアイツのせい」

「なるほど。私がパールとシヴァに嫌がらせしたがるようなものですね。納得です」

「いや、汝のそれはまた別では……いや、なんでもない……」

 

 納得しているカーマとオオガミに突っ込みを入れようとしたバラキーだが、下手に口を出すと面倒そうだと気付き黙るのだった。




 最近グラブルにドハマりしてFGOが雑になってきた今日この頃。正直もうスキル上げしかやること残ってないので……まぁ、そういうこともありますって……

 ハンティングもAP消化くらいしかしないんですが……ボックスまで実質暇……


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危ないところだったわ(ここまで逃げてきたのね)

「ふぅ……危ないところだったわ」

「あらエウリュアレ。ここまで逃げてきたの?」

 

 そう言って、起き上がってベッドに腰かけるメルト。

 エウリュアレは椅子に座りつつメルトの方を向くと、

 

「なんとか逃げられたわ。マシュの動きも日に日に練度が上がってるわね」

「恐ろしいわね本当に。彼女、気付くと強くなってるわよね。性能じゃなく、技術や戦術的な意味で」

「まぁ、オオガミを捕まえるために創意工夫をしてるみたいだし……強くなるのも自然よね」

「むしろそれだけしないと捕まらない彼もどうかと思うのだけど」

「最終的には物量が正義よね」

「エルキドゥの鎖をその中に入れて良いのかは悩みどころだけども」

 

 パタパタと足を振りながら話すエウリュアレ。

 メルトは苦笑しつつも、

 

「でも、物量が驚異で助かるわ。まだ一般人だと思えるもの」

「神話の一般人に近いかもしれないわ。これだけの苦難を乗り越えてきたのだもの」

「そう言うと、一般人じゃないわね」

「鋼鉄の精神?」

「それだけじゃなくて。私たちがいるとはいえ、人類の命題を突破してるのよ? あといくつか戦うとは思うけど、それでもやっぱりおかしいわよね」

「女神口説こうとしてる男に普通な人がいたかしら」

「……それもそうね。口説かれる女神は癖が強いけど」

「あら、自覚あるのね」

「当然。むしろ無いの?」

 

 にっこりと微笑む二人。

 そんな状況の中、何も知らずにオオガミが入ってくる。

 

「ゴーレムとか三ターン厳しいんですけど……どうやって周回するかな……」

「そこの暇そうな女神を連れていけば?」

「またラムダ? いつになったら貴方の夏は終わるのかしら」

「うぐっ……いや、待ってメルト。まだ予定は未定。可能性はあっても確定じゃないわけです」

「あら、代案があって?」

「……無いですけども」

 

 そう言って、考え始めるオオガミ。

 エウリュアレはため息を吐きながら、

 

「どうせ『孔明が~』とか、『ネロが~』とか考えてるんでしょうけど、結局あの二人も好きで協力してるのだから、気にしなくて良いの。嫌なら本気で逃げるもの。そうしないのだから良いってことよ」

「あぁ、なるほど……」

「それ、誤解が生じるような……いえ、なんでもないわ。困るのは私じゃないもの」

「えぇ。だからほら、ラムダを連れていったら?」

「……そこに繋がるのね」

「ふむふむ……じゃあ考えるかな……」

「このマスターも単純ね……」

 

 エウリュアレの誘いに乗ったオオガミに、メルトはため息を吐くのだった。




 バーサーカーは周回が大変なんですよねぇ……ラムダを運用するならやっぱり孔明先生は外せないなぁ……


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今日はアーチャーですか(ラムダ一択だろうな)

「今日はアマゾネスですか」

 

 カーマがカルデア内連絡用のタブレットを片手に呟くと、目の前でハニートーストを食べていたバラキーが、

 

「弓手か……ラムダが出るな」

「まぁ、有利属性を出しますよね。普通」

「いや、マスターは相手が剣でなければ大体ラムダだからな……」

「あぁ、そういう……あれ、そう考えると編成メンバーもわかりやすいですね?」

「うむ。今は簡略化してパラケルススとネロだけと叫んでた。吾正直孔明よりもパラケルススの方が働いている気がするのだが……」

「事実だと思うんですが。実際最近孔明さん働いてないですよね」

「む。吾が見てないだけではなかったか」

 

 そう言って考えるバラキー。

 カーマはため息を吐くと、

 

「まぁ、マスターのレベルが上がったってことでいいんじゃないですか? 何も考えてないってわけじゃないのがわかりますし」

「うぅむ……吾、いつも通りの気がするのだが……なんだかんだラムダ、というよりはメルトを活かすために最大限考えているみたいな気が……吾が酒呑が暴れるのを前提で考えるような、そんな感じ」

「あぁ、『その人のための戦術』ってことですね。でもまぁ、それで十分じゃないですか? 戦えているんですし」

「まぁ、そうなのだが……なんだかんだ吾の活躍の機会はなかなか来ないというか……」

「来てますよ」

「む? いつだ?」

「今、私の料理の試作品を食べているところです」

「……それ、鬼らしくないと思うが」

「じゃあ要らないですか?」

「試作品をすべて平らげるのも鬼っぽいな吾そう思うなおかわり!」

 

 そう言って一気にハニートーストを平らげて皿をカーマに返すバラキー。

 カーマは苦笑いをしながら、

 

「試作品におかわりがあると思ってるあたり鬼ですね。厨房の人たちに怒られそうなんですが」

「吾鬼だし知らぬ。さぁ作れ!」

「はいはい。それくらいのわがままは全然許容範囲内です。じゃ、ちょっと待っててくださいね」

「うむ。楽しみにしてる!」

 

 グッと親指を立ててカーマを送りだすバラキー。

 すると、入れ替わるようにエウリュアレがやってきて、

 

「はぁ……やることないわよね」

「うむ。吾もそう思うが汝はマスターについていけばよかったのでは」

「最近付きまとってたから自重してるの。しつこいのもダメって、前例が言ってるから」

「その前例とやらに悪意のこもった意味があると思うのだが……深く突っ込まぬ方が良いな?」

「そうね。突っ込まない方が身のためかも」

「うむ。聞かぬ」

 

 そう言って、バラキーは素直にカーマを待つのだった。




 実際ラムダでごり押しするのが私です。ラムダは強いから無双してくれるのです……!


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本当に俺で良かったのか?(これから頑張って貰うのでオッケー)

「あの、マスター……本当に俺で良かったのか?」

「いいのいいの。むしろこれから頑張ってもらうよ」

 

 そう言って、グッと親指を立てるオオガミ。

 ジークはそれを見てもどこか落ち着かない様子で、

 

「だが、今まで何も出来ていなかったのに、突然入って何か言われないだろうか……」

「大丈夫。言われはしないよ。皆目が死んでるからね」

「そちらの方が危険のような気がするのだが……」

「うん。そんな気はする」

 

 頷くオオガミに、何とも言えない表情をするジーク。

 すると、背後から伸びてきた手がジークの肩を掴み、

 

「貴様も、ここに来たのか……うむ。余はまだ休めないのだな……」

「うわっ、あなたは……ネロ皇帝だったか。大丈夫なのか……?」

「ふふふ……余はまだ倒れぬ……というより、余はそれほど疲れてない。ブーケを投げすぎて投擲力が上がっただけで……むしろパラケルススが賢者の石を生成しすぎで死にそうになっていたが……」

「……本当か?」

「……本当かもしれない」

 

 そういえばパラケルススが倒れていた気がするな。と呟くオオガミに、ジークは頬を引きつらせる。

 

「まぁ、ジークはサポーターじゃなくてアタッカーだから大丈夫かな」

「む。そうだったか……であれば、余のすることはいつも通りで良いのだな?」

「むしろいつも通りじゃなくなると思ったんです?」

「いやまったく。女狐めと入れ替わるかと思ったが、そうでないのなら良い。パラケルススはともかく、余はまだまだ行けるからな」

「なるほど……アタッカーというものは、たまに聞くから理解はしているつもりだ。つまり、俺は宝具を撃ち続ければ良いのか」

「そうそう。それで、バフはあの二人だから。とりあえず三ターン回せば勝ち」

「なるほど……周回というのは奥が深いのだな……伝え聞いたものだけでは分からないものだな……」

 

 そう言って悶々と悩み始めるジークに、オオガミは苦笑いをしながら、

 

「まぁ、体感してみれば案外簡単でしょ。それじゃ、サクッと周回していこうか」

「あぁ、よろしく頼む」

「余のブーケトスの腕前をとくと見るが良い。投げすぎて少々腕が痛いがな!」

「それは流石に休んだ方がいいのでは……」

「何ら問題はない。余もわりと楽しんでいるし、何よりマスターの近くだからな。周回の時くらいほど話せるような機会は無いから、余は楽しい!」

「なるほど……つまり、マスターと話すために編成に残り続けていると……」

「いや、そういうわけではないのだが……だがまぁ、たまには戦いたいと思う日があったりするのは事実だな。うむ。余も高難易度やりたい!」

「機会があったらね。それじゃ行くよ~」

 

 そう言って、オオガミ達は周回に向かうのだった。




 素材もQPも余ってるしとりあえずぶちこんでおくかの精神でジーク君が周回メンバーに。これには聖処女様もにっこりですね。


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現状最強はラムダか(妄信的なものではないのか?)

「う~ん、いろいろ試したけど、結局ラムダが現状最強か……」

「妄信的な部分を感じるが、俺の気のせいだろうか……」

 

 選手交代と言うことでシミュレーションルームを出るオオガミとジーク。

 この数回でなんとなくオオガミのことがわかってきたジークは、何とも言えない顔で突っ込む。

 すると、オオガミは不思議そうな顔で、

 

「妄信的なところは今更じゃない?」

「そうか……そういえば色々なところからそのような話を聞いた気もする……ただの噂というわけじゃないということか」

「そういうこと。いや、納得いかないけども」

「難しいんだな……」

 

 そんなことを言いながら二人は食堂にやってくると、

 

「さて、メルトはいるかな」

「いなければ俺も探すが」

「いや、いる場所は大体わかるから大丈夫」

「そうか。なら、ここで解散ということか」

「うん。お疲れ様」

 

 そう言って、食堂を前にして別れる二人。

 ジークは倉庫に向かい、オオガミは食堂に入る。

 すると、中にいたノッブが、

 

「お、わりと久しぶりじゃなマスター」

「ノッブじゃん。地下生活に飽きたの?」

「いや、そこまで地下暮らしじゃないんじゃけど……まさか最近出てないだけでこんなこと言われるとは思わなかったんじゃが」

「でも最近地下暮らしなのは事実じゃん」

「工房が地下なだけじゃろ……そんな地下ってわけでも……いや、わりと地下か。結構階段多いし……」

「奥底にある闇の研究所的な。最後から二番目くらいのステージにありそう」

「……BBの部屋とかそれっぽいな……?」

「うん。何考えてるのかわかんないけどやるときは言ってね」

「うむ。とりあえずメルトはあっちじゃ」

「ありがと……また隅っこにいるじゃん」

「あそこは二人の指定席みたいになってきてるから、割と誰も座らん」

「いつの間にそんなことに……じゃ、とりあえず迎えに行ってきます」

「おぅ。いってら~」

 

 そう言って、ノッブと別れるオオガミ。

 そして、メルトとエウリュアレに近づいたオオガミは、

 

「今日は何をしてらっしゃるんですか女神様」

「あらマスター。(ステンノ)に残りの聖杯をつぎ込んでるのでしょう?」

「余った聖杯はカーマにつぎ込むのだし、そっちに声を掛けたら?」

「ちょっと待ってなんでそんな不機嫌なんですか」

 

 にっこりと微笑みながら言うエウリュアレとメルトに頬を引きつらせるオオガミ。

 

「別に不機嫌なんかじゃないわ。聖杯を使うのねって言っただけだもの。(ステンノ)には元から使えって私が行ってたのもあったし、それは当然かなって思うんだけど、どうしてカーマもなのかしら」

「バラキーのお菓子係のよしみで?」

「そう……まぁ、そういうならそれでいいわ。それで、今日は私に用かしら。またラムダになればいいの? どうせ周回のアタッカーでしょ?」

「おっしゃる通りで。うん、ハンティングが終わったら何かしますね……」

「そういうつもりではなかったけど、まぁ、楽しみにしてるわ。おいしいお菓子とかいいわよね」

「私は周回以外で出かける方が良いけど。でも、楽しみね。それじゃ、さっさと行って終わらせましょ」

 

 そう言ってメルトは立ち上がり、エウリュアレに手を振りつつオオガミを連れて食堂を出ていくのだった。




 実際宝具レベル的にラムダが最強という……お姉ちゃんのパワーがなぁ……という感じです


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おや、今日は私かい?(使えるアタッカーは多い方がいいから)

「おや、今日は私かい?」

「最近ラムダ一辺倒過ぎてダメになると思ったので幅を広げようかなって」

 

 パタン、と本を閉じて近付くロリンチ。

 すると、オオガミの後ろにいたラムダは少し不機嫌そうに、

 

「別に、私だけに任せて堕落してもいいのだけど?」

「堕落したら食べられそうですし。流石にそれは不味いから」

「あら、ドロドロに溶けていいのに」

「良くないって。とりあえず、今日はダ・ヴィンチちゃんです」

「そう……残念ね」

 

 そう言って、ラムダはメルトに戻ると、

 

「それじゃ、食堂にいても暇だし、エウリュアレと一緒に観戦しに行こうかしら」

「あれ、休まないの?」

「いいえ? キャットの弁当を持って周回見ながらピクニックってところかしらね。楽しそうでしょう?」

「周回の後ろでピクニックとか正気じゃないよね。とんでもないな快楽のアルターエゴ」

「これは私たちも対抗した方がいいのかな?」

「何に対する対抗かは聞かない方がいいかなダ・ヴィンチちゃん?」

 

 意外とノリノリなロリンチに頬を引きつらせるオオガミ。

 そして、ロリンチは、

 

「なに、向こうがピクニックをするというのならこちらはドライブさ。まぁ、途中何度か障害物を()くけどね?」

「それもう交通事故じゃないですかね?」

「大丈夫さ。頑丈な相手だからね。一回や二回や三周くらいは持ってくれるでしょ」

「なるほど確かにドライブだ。じゃあお弁当用意しなくちゃですね?」

「どのタイミングで食べればいいのか一切わからないけどね!」

 

 そんなことを言う二人を見て、メルトは不満そうに頬を膨らませると、

 

「何よ。私はもういいって訳? セイバー相手だからって勝てないと思わないでよ」

「いや、ボスはセイバーじゃないからラムダが負けるわけないじゃん。でもゴリ押しが過ぎるから流石にねって話」

「最近そんなに周回もしないし、そのくせ部屋には帰ってこないじゃない」

「待って。一日の半分近くは部屋にいると思うんだけど」

「えっ、トレーニングしてるのかい?」

「自室でしてますよ二人にちょっかい出されながら」

「聖杯が集まったらすぐ使うし」

「そこは言い訳出来ないね」

「なるほど聖杯が無いのはそう言うことなんだね?」

「最近カーマばっかりじゃない」

「厨房で一緒になることが多いだけじゃなくて!?」

「そもそも厨房で一緒になるのもそうそう無いと思うんだけどね? なんで君が厨房に立つんだい?」

「さっきからダ・ヴィンチちゃんめっちゃ突っ込んできますね!?」

「突っ込みどころしかないから仕方ないよね?」

 

 そう言われ、自分の言葉を考え直す二人。

 そして、メルトは崩れ落ちると、

 

「おかしいわ……発言がどう考えてもおかしい。私じゃないわよね……まさかこれがアルテミスのせい……?」

「なるほどアルテミスかぁ……大変だねメルトは」

「なんで他人事なのかしら……」

「嫌だと思ってないし」

「くっ、そういうところよ! いいわ、先に行ってなさい! すぐにエウリュアレを連れて戻るから!」

「あ、本当に来るんだね。一応待ってるよ~」

 

 そう言って、顔を真っ赤にして出ていったメルトにオオガミは手を振るのだった。




 6万くらいならラムダの射程圏内だったはず……行けるのでは……?
 とか思いましたけど、孔明使えば行けるのは確実で、でもそれやったらラムダ脳になっちゃうなと思ってロリンチちゃん出動。オダチェンしない方が楽なのは確実ですねぇ……


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女神様神々しいなぁ!(見惚れて惚れ直しなさい?)

「ひやっほう! これが女神様の真の輝きか!」

「ふふん。見直しなさい見惚れなさい惚れ直しなさい。私も(ステンノ)も今まで以上に輝くわ。まぁ、もう少し時間はかかるけど」

 

 そう言って、喜び暴れるオオガミに楽しそうな笑みを浮かべるエウリュアレ。

 しばらく暴れたオオガミは、

 

「いやぁ、もう感動ですね。これはもうアトランティス勝利確定。負けないね」

「ふふっ、不思議なことを言うわね。なんで当然のようにアトランティスなんて危険な場所に行かなきゃいけないのかしら?」

「うん……? 女神様は添えるだけで最強ですが……?」

「あら、分かってるじゃない。私が戦うわけないもの。戦うとしたら魅了できる単体の男くらいよ。当然ステンノとアナも一緒だけど」

「高難易度仕様だからね。エウリュアレは」

 

 オオガミの言葉に、うんうんとうなずくエウリュアレは、

 

「当然よ。私は守られる神だもの。もっと私を守りなさいよ。後ろで見てるから」

「安心して。女神様は船首で船を守る役目もあるからね」

「まぁびっくり。それ盾ってことじゃない。よくそんなことを思いつくわね。射られたいの?」

「いやまさか。エウリュアレ様は一番後ろで見守ってる役です」

「そうそう。それでいいの」

 

 さりげなくとんでもないことをしようとしていたオオガミに笑顔の恐怖を植え付けつつ、自分の要望を押し通すエウリュアレ。

 

「それで、これから何をするの?」

「うん? 25日までフリータイムだから普通にマナプリ集めに行かないと。わりと足りてないから大変」

「そう……まぁ、私は後ろにいるだけでいいし、楽だからいいのだけど」

「まぁ、エウリュアレはね。今はまだハンティングあるし、それでしばらくやる予定」

「ふぅん。じゃあ、しばらくドライブなのかしら」

「そうそう。スーパードライブタイム。なんだかんだ()いて終わりだし」

「昨日みたいにメルトも連れてドライブってのもいいわよね。三人でのんびりっていうのでもいいけど」

「う~ん……ありだね。今度余裕があったらそういうのもしようか」

「ノッブとかBBも連れてきてもいいけど」

「メルトとBBが戦争しそうだけどねぇ……」

「そういうことも、あるかもしれないわね」

「それに、なんだかんだ最近三人以上でいることが多いし、エウリュアレだけと出かけるっていうのもしたいよね」

「……考えて話してる?」

「まぁ、一応は」

 

 オオガミの言葉に、エウリュアレはしばらく考えるような素振りをし、

 

「やるときはちゃんと事前に言ってよ?」

「言わなかったときとかあったっけ?」

「……なかった気もするわね。うん。じゃあ、突然言わないでね」

「それはまぁ、当然」

 

 そう言って、オオガミはグッと親指を立てるのだった。




 モーション改修えっぐぅい……大好きぃ……なんでこんなにエウリュアレ様たちは神々しいんですか……?


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ハンティング終わりっ!(種火周回の再来ですね)

「ふぅ……ハンティング終わりっ」

「いつもの種火周回が帰ってくるってことよね」

「まぁ、そういうこと」

 

 そう言って、オオガミは食堂に戻ってくる。

 先に戻っていたメルトの隣に座ると、

 

「それで、種火ってことは私?」

「そうそう。ラムダ無双の時間というわけです」

「そう。じゃあ、いつも通り遠慮なく貫いてあげる」

「お願いね。行くときには声をかけるから」

「えぇ。今更セイバーで止まる私じゃないもの。いくらでも戦ってあげる」

「気が向く限り?」

「わかってるじゃない。機嫌を損ねないようにするのね」

 

 にっこりと笑うメルトに、オオガミも笑みを浮かべる。

 エウリュアレはそれを見て、

 

「種火周回とか、もうどれだけやったのよ。必要ないんじゃないの?」

「マナプリが無いから周回しなきゃいけないわけですよ。つまり種火周回」

「……面倒なのね。もっとサクッと集められればいいのに」

「そしたらやることが増えるから」

「……呪われてるんじゃない?」

「まぁ、マスターですし。でもまぁ、遊んでる時間もあるしいいんじゃない?」

「そうかしら……まぁ、楽しんでいるならいいけど。飽きたらちゃんと言いなさいよ」

「うん。その時はお願いね」

「えぇ。いえ、冷静に考えたらおかしいわね。なんで私が周回の指揮をしてるのかしら」

「知らないけど。でも命令してるときとっても楽しそうじゃない」

「それは、まぁね。誰かに命令とか楽しいじゃない? 貴女はもう自分の役目を知ってるから勝手にしてたけど、私は気にしないわ」

「どうも。私のやりたいようにしてくれるのはありがたいもの。それで、どうするの? 周回に行く?」

「行くけど、休憩してからね」

 

 そう言って、お茶を取りに行くオオガミ。

 メルトとエウリュアレは顔を見合わせ、

 

「正直、私がいなくても成立しない?」

「ほとんど日課の散歩くらいの感覚よ。余裕で終わるわ」

「そうよねぇ……はぁ。軍師がポンコツ化してるから仕方ないのだけど、まぁ、何とかなるでしょ」

「私としては、散歩についてくる人が多くても少なくても構わないのだけど。森の中を邪魔するのを蹴散らしながら歩くだけでいいんだもの」

「気楽そうね。私もそれくらいの気持ちでいようかしら」

「元からそうでしょ」

「ふふっ、知ってた?」

「知ってたわ」

 

 そう言って、ふふふ。と笑う二人。

 すると、メルトが思い出したような顔をすると、

 

「そういえば、私の知らないイベントが始まるって聞いたのだけど」

「あぁ……そういえば、あなたはまだ体験してなかったわよね……レイドバトルの闇だけど、わりと楽しいわよ? 最速で倒すイベント。スピードスターのスワンには最高の舞台でしょ?」

「いいわねそれ。それじゃ、楽しみにしていましょうか」

 

 そう言って、メルトは楽しそうな笑みを浮かべるのだった。




 レイドイベント……修羅再来ですねぇ……果たして今回は何バルバトスでしょうか……


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明日からイベントですか(吾らには関係ないがな)

「あ~……明日からイベントですかぁ……」

「吾らは関係ないな。大方メルトが走るだろうしな」

 

 そう言って、マカロンを食べるバラキー。

 カーマはジト目でそれを見て、マカロンを指差すと、

 

「それ、なんなんですか? 誰が作ったんです?」

「ん? マカロンだが……知らぬのか?」

「そういうわけじゃないです。どちらかというと誰が作ったかです」

「うん? 赤い人に作らせた」

「そうですか……これはちょっと、直談判ですね」

「何の話かまるで分からんが……吾も行くか?」

「いえ、ここにいてください。それじゃ、ちょっと行ってきますね」

「うむ。気をつけてな~」

 

 そう言って、カーマを見送るバラキー。

 見送られたカーマは、厨房に入っていきエミヤを見つけると、

 

「ちょっといいです?」

「ん? 何か用か?」

 

 話しかけられたエミヤは、持っていた調理器具を片付けつつ、カーマの話を聞く。

 

「えぇ、そうです。バラキーにマカロンを与えたって聞いたんですが、本当です?」

「あぁ、そうだが……君も食べたいというわけか」

「いえ、そうではなく。作り方を教えてもらってもいいですか?」

「――――……あ、あぁ、そうか。作り方か。構わないが、今すぐということか?」

「えぇ。夕食も終わりましたし、余裕があるでしょう?」

「ちょうど片付けも終わったところだ。いつでも出来るとも。では、講義と行こうか」

「えぇ。お願いしますね」

 

 そう言って、カーマはエミヤに料理を教わるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「あれ、一人ですか?」

「あぁ、アナか。カーマは何やら厨房の中に行ったな。マカロンに反応してたが、なんだろうな?」

 

 バラキーの対面に座り、話しかけるアナ。

 バラキーは聞かれたことに答えつつ、まだ山となって残っているマカロンを食べると、

 

「そうですか……まぁ、大体想像つきますけど、あまり苦労を掛けない方がよろしいかと」

「吾、別に何もしてないのだが……吾か? 吾のせいなのか? 珍しく赤い人に頼んだだけなのだが!?」

「そうですか……まぁ、大体想像通りですね。ダメ男を捕まえることに定評がありそうです」

「おぅ……吾、それ初めて聞いたのだが……」

「初めて言いましたし。というか、カーマさんと直で会った覚えないんですが……」

「会わずに噂だけで決めつけるのはどうかと思うのだが……」

「会ってもしょうもない人はいますので。でもまぁ、マスターが気に入っているので癖が強いのだけは想像できます。えぇ、はい。聞かれたら殺されそうですが」

「何を基準に気に入っているのかは少し気になるところなのだが……吾も入っているのか?」

「そうですね。まぁ、私も含まれてるみたいですけど」

「……なんというか、大変そうだな……」

 

 ため息を吐くアナに、バラキーはそういうのだった。




 正直バラキーはワンチャンバスター運用するかもしれないですねぇ……アタランテ最速行けるかぁ……?


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すさまじい速度じゃん(あっという間だったわね)

「うっはぁ……少し目を離した隙に全滅してる……」

「そうねぇ……なんだかんだ全然倒せてないし、すさまじい速度で消えていったのはビックリね」

 

 ミレニア城塞の高台から戦場を眺めつつ、呟くオオガミとエウリュアレ。

 エウリュアレはトゥリファスで買ったお菓子をつまみつつ、

 

「それにしても、一撃必殺とか普通になってきたわね」

「まぁ、皆強くなったしねぇ。まだ柔らかい方だったし、メルトが負けるわけない」

「まぁ、貴方ならそう言うわよね」

 

 そう言って、パクパクとお菓子を食べていくエウリュアレ。

 オオガミはそれを横目で見つつ、

 

「そういえば、どこかに二人で出かけるとか、そういう話してたよね」

「してたわね……今から?」

「いや、イベントでやることがなくなったあたりで」

「……いいわね、それ。楽しみにしてようかしら。でもまぁ、その前に倒しに行かないとね」

「そうだねぇ……まぁ、明日も張り切るかなぁ」

 

 オオガミはそう言って、軽く伸びをすると、

 

「それじゃ、明日に備えて休もうか」

「そうね。明日も早いもの」

 

 そう言って、屋内に戻るオオガミとエウリュアレ。

 すると、下にいたメルトが、

 

「明日も私?」

「午前は確実にね。まぁ、すぐ終わると思うけど」

「そう。じゃあ私も備えておこうかしら」

「うん。お願いね」

 

 メルトはそう言って、立ち去ろうとし、

 

「あぁ、そう言えば、上で話してたお出かけの話だけど、私は先に戻ってるから好きにしてなさい」

「そうなの? じゃあゆっくりできるか」

「そういう考え方どうなのかしら。普通ゆっくりする?」

「するわよ。というか、そのつもりだもの」

「……あなたがそっち側なのね。まぁ、それはそれでいいのだけど」

「まぁ、代わりに私の番でもそうしてもらうけど」

「それならまぁ、仕方ないわ。今回は貰うから」

「えぇ、どうぞ楽しんでちょうだい」

 

 そう言って、メルトは立ち去る。

 それを見送った二人は顔を見合わせ、

 

「さりげなく自分の番を要求していったわよ?」

「まぁ、元々その予定はあったし、いいかなって」

「……貴方、わりと雑よね。ちゃんと考えて動いた方が良いんじゃないの?」

「考えてたらあの聖杯の使い方にはならないと思う」

「……それを言われるとそうよね。難しいわね」

「本来戦えない人をエース扱いしてますしね」

「それ、本当に疑問よね。なんで私がエースなのかしら」

「女神様強いからねぇ」

 

 そんなことを話しながら、二人はミレニア城塞内で泊まれそうなところを探すのだった。




 驚異の2時間半全討伐。恐ろしいなぁマスターは……


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おいしい素材ないなぁ(それでも周回するんでしょ?)

「う~ん、あんまおいしい素材ないなぁ」

「それでも周回するんでしょ?」

「まぁ、今回は最低限で」

 

 そういって、平原を歩くオオガミとエウリュアレ。

 メルトはスカディを横目に、

 

「だ、そうよ? 今回は休みみたいね」

「それは、助かるな……私も町に行ってみたいのだが」

「なら、後で行くといいんじゃない? アビゲイルが暇そうにしていたから、一緒に連れて行くといいわ」

「むむ……しかし童を連れて行くのはいかがなものか……せめてもう一人ほしいところだが」

「なら、アナスタシアは? 普段一緒にいるんでしょ?」

「確かにそうだが……大丈夫だろうか」

「気にしないでしょ。むしろ一人でも行くのだろうから、一緒に行くのがいいと思うわ」

「むぅ、そのようなものか……?」

「そんなものよ」

 

 メルトはそういうと、奥にいる敵をぼんやりと見つめる。

 そして、オオガミの方を向くと、

 

「今日は早めに終わらせるわよ。私も色々見たいものがあるし」

「あれ、珍しいね。メルトが催促するとか」

「たまにはそういうのもいいでしょ。準備して。一瞬で終わらせるから」

 

 そう言ってメルトはにやりと笑い、オオガミは戦闘の準備を始めるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ま、余裕の勝利ね。私が負けるわけないじゃない」

「元よりメルトに負ける要素あった?」

「全くないけど、それを補強してるじゃない」

「なるほど否定できないね」

 

 城塞に戻り、そんなことを話す三人。

 既にスカディはアナスタシアとアビゲイルを連れて町に向かったので、一緒ではなかった。

 

「それにしても、バーサーカー相手ならエウリュアレでも良かったかな……?」

「面倒なことを言わないで。それで倒せるなら苦労しないでしょ」

「う~ん……まぁ、やるだけやってみるかな」

「えぇ……私やりたくないのだけど……」

「バーサーカーかセイバーくらいでしか戦わないんだから諦めて行きなさい」

「ちぇ。仕方ないわね。それじゃ、適当に相手するわ」

「うんうん。それじゃ、次行くときはよろしくね」

 

 そう言って、次回の編成を作るオオガミ。

 エウリュアレはため息を吐きつつ、城塞の中に隠されていたお菓子を開封する。

 そんなエウリュアレに、メルトは、

 

「……結構食べるわね」

「あら、そうかしら」

「見かける度にお菓子を食べてないかしら」

「ん~……おいしいものを探しているだけなのだけど。不思議ね?」

「見ているこっちが不思議なのだけど。おいしいものがあったら教えてちょうだい」

「それは構わないわよ」

 

 そんな風に、二人は時間まで話しているのだった。




 あんまりおいしい素材はないけどスパルタクスはエウリュアレでサクッと倒せるのがわかったのでお手軽周回しますね。NPチャージと自前バフと魔術礼装バフだけでいいとか優秀すぎるなエウリュアレ様は……


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メルトの出番も打ち止めかな?(エウリュアレの出番かしら)

「う~ん、そろそろメルトの出番も打ち止めかな?」

「今回のライダーを倒したらエウリュアレかしら」

「私、セイバーとバーサーカー以外は相手しないわよ」

 

 本日は森の中を散歩している三人。当然周回時間外なのでスカディは遊んでいる。

 しかし、戦闘範囲外とはいえ野生のエネミーはいるので、その都度始末している。

 

「そもそも、戦える幅は狭いのよ? 男性で、その上セイバーかバーサーカーじゃないと勝てないもの。編成に組み込むのは構わないけど、適材適所。大半はメルトに押し付けてちょうだい」

「とんでもないこと言うわね。でもまぁ、戦うのは嫌いではないし、いくらでもどうぞ? バフ要員じゃないから敵を倒せる爽快感は無限に手に入るもの。蹂躙は楽しいものね」

「あら、それは良かったわ。それじゃあ、これからもお願いするわね」

「えぇ。飽きるまでは引き受けてあげるわ」

「マスター置いてけぼりで話すの好きだよね二人とも」

「「えぇ、とっても」」

「くっ、笑顔が眩しいっ」

 

 二人の笑みに、返す言葉を失うオオガミ。

 そのイタズラな笑みを浮かべたまま、二人は、

 

「ねぇオオガミ? これで私はレイドに参加しなくて良いわよね?」

「それは別問題」

「ちぇ。やっぱりこれくらいじゃ効果がないのね」

「コイツほど魅了慣れしてる男がいるかしら」

「魅了に振り回されてる過去があるからね。任せておいて」

「私の唯一の利点を潰すとか、流石ねマスター」

「エウリュアレの利点は対男性絶対殺す女神ってところです」

「あら、自殺願望?」

「出来れば死にたくないね」

 

 ふふふ。あはは。と笑い合う二人。

 メルトはそんな二人を見つつ、

 

「飽きないわね貴方達」

「何度やっても何年やっても飽きないしやってると思うよ?」

「え、私そんなに一緒にいなきゃなの?」

「いつまでも一緒にバカなこと言ってたいね」

「私はいらない?」

「当然必要ですけど?」

「まぁ、浮気者ねマスター」

「かのゼウス様と比べたら全くって感じです」

「あれと張り合わないで」

「うわぉ。エウリュアレの目がマジだ」

「逆鱗よね。どう見ても」

 

 珍しくお怒りのエウリュアレ。オオガミは降参とばかりに手を上げ、メルトはニヤリと笑う。

 

「それで、お気持ちはいかがかしら、マスターさん?」

「ギリシャ思考で行きましょう女神様」

「仕方ないわね。まぁ、オリオンくらいで考えてあげる」

「一筋男じゃんね。というか、だいぶ無茶なこと言ってるよね」

「バカね。女神に好かれた時点で手遅れよ? 何度も難関を越えて貰わなきゃ。かのヘラクレスみたいに」

「確実に死にますよねそれ。筋力も知力も足りてないんですが」

「それはほら、これからよ」

「無茶苦茶な……」

「ついでに私の蹴りにも耐えられるようになっておいてね?」

「蹴るんですかメルト様?」

 

 恐ろしいことを言われるオオガミは頬を引きつらせ、エウリュアレとメルトはにっこりと笑うのだった。




 最近この三人を出すとドロドロし始めるという事に気付き危機感を感じるも止められない私。甘々な頃はどこに行ってしまったのかと思いつつ、どっちも独占欲高いだろうから自然なことだなと納得してしまった私は安心して死ぬのです……どっちも選べねぇ……


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落とすのは何度目かな(そんなに落とすものじゃないわよね)

「ん~……この空中庭園、落とすの何度目だっけ」

「落とすのは二度目。チョコレート農園をしたことが一回よ」

「チョコレート農園ってなによ……え、ここ農園だったの?」

 

 アビートラベルで空中庭園に降り立った三人は、レイドそっちのけで散歩をしていた。

 

「ん~……やっぱり防衛システムも敵もそれなりに強いけど、景色がいいんだよねぇ……これ、落とさないといけないのが残念なところだよね」

「散歩コースに気軽に組み込めるところではないし、落としたところで気にしないけど」

「むしろ積極的に落としましょう。高いところで見下ろす奴とか嫌いなのよね。始末するべきよね」

「うわぉ。殺意高いなぁ本当に」

 

 悪い笑顔を浮かべる二人に、オオガミは苦笑いをする。

 

「でもまぁ、高いところは嫌いじゃないわ。あの部屋乗っ取って女王様ごっことか楽しそうよね」

「いいわねそれ。やりたいわ」

「目的はいつも変わるね。まさか空中庭園乗っ取りをしたいとか、とんでもないよね。出来ないでしょ」

「まぁ、落ちている最中なら出来るんじゃないかしら。10秒くらいなら遊べるわ」

「圧倒的高速遊戯。正気を失ったような発想だよね」

「楽しんだ者勝ちよ。どれだけ早くてもその瞬間楽しめたら完璧なんだから」

「なるほどね。そりゃ単純明快。最高だね。で、従者は僕でしょ?」

「一人きりの女王様なんて、そんなむごいことをするの? 酷いわね、マスター」

「なんて悪質なマスターなのかしら。一人で遊べなんて酷いわ」

「誰もやらないとは言ってないけど、それにしても酷い言い様だね?」

 

 苦笑いをしているオオガミの反応すら楽しんでいる二人は、時々やってくるエネミーを叩き潰しつつ、空中庭園の端に向かい、

 

「ん~……景色がいいのは確かなのよね。動いてるし想像以上に速度早いから身を乗り出すと落ちそうで怖いけど」

「身を乗り出すとか死んじゃいません? 普通に怖いでしょこの高度」

「英霊がこの高さくらいで死ぬわけないじゃない。ただ、戻ってこれないのと全身が痛いだけで」

「最悪じゃん。落ちないでよ? エウリュアレ」

「落ちないわよ。押されたりとかしない限り」

「押せってこと?」

「道連れにするわよ?」

「ひっそりとケンカしないで?」

 

 不穏な気配の二人に頬を引きつらせるオオガミ。

 だが、二人はすぐににやりと笑うと、

 

「それじゃ、屋内に向かいましょ。女帝様から椅子を奪わないと」

「私たちの遊びのための犠牲になってもらわなきゃね」

「悪魔かこの二人……」

 

 頬を引きつらせ、オオガミはそう呟くのだった。




 なんだかんだいつも通りですねこれ。

 正直レイドに対するやる気全力低下中なんですよね……そんなに欲しい素材がないというか。戦力そろってるとこういうことがあるんですねぇ……骨と塵は集めなきゃですけども(白目


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玉座乗っ取りは簡単よね(すぐに湧くかもだけどね)

「冷静に考えたら、シャドウしかいないんだし、乗っ取るのは簡単よね」

「サクッと終わったし、しばらく遊べそうね」

「いやぁ、すぐまた湧くと思うんだけど」

「それまでは遊べるってことよ」

 

 強奪した玉座に座ってにやりと笑うエウリュアレに、オオガミは苦笑いをする。

 

「それで、何をするの?」

「ん~……そうねぇ……色々考えてたけど、実際ここに座ったら別にどうでもよくなっちゃった。こんな椅子に座っているより、貴方の隣に座ってる方が楽しいわ」

「最近素直にかわいいこと言ってくるよね」

 

 真顔でそんなことを言うオオガミに、エウリュアレは楽しそうな笑みを浮かべながら、

 

「あら、お嫌い?」

「嫌いじゃないけどらしくない」

「あら、失礼ね。自覚はあるけど。メルトはどうかしら」

「刺さってすぐ解けて浸み込んでくる猛毒みたいな甘え方される」

「ちょっとそれどういう意味よ」

 

 顔を赤くして文句を言うメルトに、エウリュアレは苦笑いをしながら、

 

「私相手に惚気るとか正気じゃないのだけど」

「メルトの前でもエウリュアレの惚気話をしてるからいい加減刺されるかな」

「射貫いてあげましょうか?」

「蹴り抜いてあげましょうか?」

「う~ん殺伐」

 

 オオガミは原因は自分にあるというのを自覚しながら、二人を鎮めようとする。

 

「結局、玉座奪って満足?」

「見下す奴がいないってだけで嬉しいわよね」

「下から見られるのは構わないけど、上から見るのは死刑よね」

「なんという反逆者精神……嫌いじゃないけど」

「あら、好きじゃないのかしら」

「行き過ぎると殺されちゃうので」

「立場はそれなりにわかってるみたいね。でも最近仕事放棄してないかしら。エウリュアレが指揮してるのをよく見るけど」

「それは種火周回じゃない?」

「だとしても、よ。士気を高めるのも貴方の仕事よ。ということで、サクッと周回しましょ?」

「ん~……じゃあ、行きますか。のんびりと」

 

 オオガミがそういうと、エウリュアレは玉座から降り、定位置のオオガミの隣に立ち、メルトはその反対に立つ。

 そこでふとオオガミは、

 

「これ、冷静に考えるととんでもない状況では……」

「今更過ぎない? 気付くの一年くらい遅いわよ」

「嬉しすぎて自覚してなかった感じだよこれは」

「酷いわねそれ。で、今はもう慣れちゃったって訳?」

「まさか。今も昔も嬉しいままですよ?」

「本当かしら?」

「怪しいわね」

「最近カーマにも気を取られているものね?」

「痛いところを突くね……」

「ふふっ、楽しいわね」

「えぇ、楽しいわね」

 

 そう言って、二人は笑うのだった。




 この二人というか、メルトの扱いがエウリュアレと似てきたせいで実質これがうちのエウリュアレ&ステンノ状態です。不思議だなぁ……


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空中庭園とか洒落てますね?(高くて良いわよね!)

「はぁ……なんですかここ。空中庭園とか洒落てますね」

「えぇ。とっても面白そうだわ!」

「なぜ吾もここにいるのか……吾は町で遊ぶ予定だったのだが……」

 

 アビゲイルによって空中庭園までやって来たカーマとバラキー。

 端から見える絶景に目を奪われるも、そのまま視線を下にやって怖くなったのか、アビゲイルとバラキーはすぐにカーマにしがみつく。

 

「はぁ……怖くなるなら見なければいいんです。なんで見るんですか」

「高いところにいると無意識に確認したくなるものよ……」

「わかっていても、なんとなく目に入ってしまうの……こんなに高いとは思わなかったわ……」

「そうですか……まぁ、いいですけど。で、いつまでしがみついてるんですか? 動けないんですけど」

「……吾別にこのままでもいい気がする」

「私もこのままがいいわ。怖いもの」

「……そう、ですか。いいですけど、邪魔しないでくださいよ」

「邪魔するつもりはない」

「お邪魔かしら」

「……別にくっついてるのは良いですけど、戦闘の時は離れてくださいよ」

「うむ。それは吾も戦う」

「私もお手伝いするわね!」

 

 そう言って、両腕をがっしりと掴んで離さないアビゲイルとバラキー。

 カーマは若干の不安と共に空中庭園を散歩する。

 

 

 * * *

 

 

「ん~……このミミクリーとかいう変な大きい石が邪魔ですねぇ……散歩の邪魔をするとか、中々やるじゃないですか」

「吾らは単体宝具しかおらんしなぁ……」

「バスター、バスター、バスターよ!」

「超脳筋じゃないですか!」

「実際強いであろう?」

「くっ……否定できませんけども!」

 

 そう言って、ミミクリーから生み出されたサーヴァントをぶっ飛ばすカーマ。

 

「正直相性が有利なバーサーカーで助かりますよ本当に。キャスターとかだったら目も当てられなかったです」

「そうだったら吾が代わりに戦っていたわけだが……まぁ、吾は誰でも良いのだが。あの石も軽く砕いてくる」

「お願いしますよ~……まぁ、あれ、聖杯に似た雰囲気ですけど……」

「それって砕けるのかしら」

「まぁ、どう取り繕ってもあれは魔力保有量が多い石ですし。砕いて持って帰った方が美味しいですよ」

 

 サーヴァントに反撃の隙を与えず叩き潰し、消滅を確認してからバラキーの援護に向かう。

 

「てこずってますか~?」

「そんなわけなかろう! 確実に仕留める!」

「そうですか。じゃあ、お任せしますね」

「私は普通に援護していいかしら」

「まぁ、邪魔にならない程度ならなんとかなるんじゃないですかね」

「じゃあ、お手伝いするわね」

 

 そう言って、アビゲイルはバラキーの援護に向かう。




 悪属性三人組。なんか気付いたら戦闘入れてましたけど、なんだかんだこの三人でもなんとかなるのでは……?



 Twitterを見ていてエイプリルフールに気付いた……うぅむ、どうしましょうかね……


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ミミクリーって壊しづらいわよね(とりあえず殴って壊すくらいだもの)

「ミミクリーってすごい壊しづらいわよね」

「どこが核なのかサッパリ。融かすのにも時間かかって面倒くさいわ。水で圧殺する方が早そうなのだけど」

「メルトはラムダとして戦ってるからいいとして、エウリュアレは何もしてないでしょ」

 

 空中庭園の最奥でミミクリーを相手にしながらそんな話をするオオガミ達。

 エウリュアレはどうでもいいかのようにため息を吐き、

 

「大体、相手が無機物なのに私が活躍出来るわけないじゃない」

「まぁ、そうだよね。無機物だもんね。今のところエウリュアレの魅了は男性にしか効かないけどそのうち無機物にも効くようになるはず……」

「無茶言わないで……」

「容赦なく無茶言っていくわよね……」

「まぁ、エウリュアレはもう完成してるし、大丈夫でしょ」

「どっちなのよ……」

「男性特効は確かに群を抜いているし、自然よね」

「余計なこと言わないで」

 

 メルトにそう言い、黙らせるエウリュアレ。

 オオガミが突然反応してきたりするので、一定以上はエウリュアレ自身で止めるようにしていた。

 そして、エウリュアレはオオガミの方を向き、

 

「それで、作戦は?」

「ま、いつも通りで」

「雑ねぇ……でも分かりやすくて結構。投げ出していいかしら」

「複数の時点で最適アタッカーでしょ。頑張りなさい」

「アーチャーとバーサーカーしか相手しないけど任せなさい」

 

 そう言って、メルトは休憩しているスカディと孔明に近付くのだった。

 

 

 * * *

 

 

「結構散策しましたけど、わりと行けてないところ多いですね」

「まぁ、あの石を避けているところが多いからな……壊せば楽なのだが……」

「でも、石は危ないもの……近付きたくないもの」

「はぁ……もう帰っていいです?」

「ダメよ。まだ探検が終わってないもの!」

「吾ももっと奥に進みたいのだが……如何せんあの石が邪魔だな……」

 

 そう言って、柱の影をミミクリーから隠れながら移動するカーマ達。

 

「まぁ、余裕ですね。進むだけなら倒す必要もないですし」

「吾も気にせぬが……アビゲイルはそれでよいか?」

「一人だと無理だもの……仕方ないわ。ゆっくり見たかったのだけど」

「……あぁもう、仕方ないですね! さっさと終わらせますよ!」

「よしきた任せろ。吾も全力で戦おう」

「えっ、いいの!?」

「良いんです。さっさと終わらせて散策した方が楽ですからね!」

 

 そう叫びながらカーマは呻く二人を引き連れ、道のど真ん中を我が物顔で占拠しているミミクリーを破壊するために走り出すのだった。




 最近外出できないから気分転換したいけど出来ないんですよねぇ……ネタどん詰まり……辛いなぁ……


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今日はエイプリルフールなんだって(そんなこと言ってもいつも通りじゃない)

「今日エイプリルフールなんだって」

「……なにか思い付く嘘とかあるの?」

「いや、全く無いけど」

 

 きょとんとした顔でエウリュアレの事を見るオオガミ。

 エウリュアレはため息を吐き、

 

「自分から話を振っておいてそれ?」

「だってほら、別段無理して嘘つく理由もないし」

「そうかしら……なんだかんだ言ってどうでもいい嘘を吐くんじゃないの?」

「いやいやまさか。そんな予定ないけど?」

「本当に?」

「本当だって。信用できない?」

「えぇ。全くできないわ」

「ひっどいなぁ……まぁいいけど。ところでメルトは?」

「今日は近づかれたくないって」

「一番ひどいのでは?」

「日ごろの行いじゃない?」

「日ごろの行いかぁ」

「……そうやって素直に認めるところは嫌いじゃないわ」

 

 ため息を吐き、空中庭園の外に出るオオガミとエウリュアレ。

 既に真っ暗な空は、月明かりだけが地上を照らしてた。

 

「ん~……真っ暗だね」

「ちょうどいいくらいよ。暗いところっていいわよね」

「妹が蛇っぽいからってそんなこと言わなくてもいいと思うんだけど」

「誰もメドゥーサに配慮した発言なんてしてないわよ。実際暗いほうが目が痛くないわ。アーチャーになって視力が良くなっちゃったから辛いのよ」

「なるほど。じゃあこれからサングラスでもかける? ラムダみたいに」

「それだと見難いじゃない」

「そういうもん?」

「そんなものよ。何より、私の可愛さが半減よ?」

「サングラスは可愛さもかっこよさも向上させる素敵アイテムだよ?」

「そうなの? じゃあつけてみようかしら」

「こんなこともあろうかと、準備済みなんですね」

 

 そう言って、当然のようにサングラスを取り出すオオガミ。

 

「貴方、私に対して服飾の準備が異様に良いわよね」

「ふふん。エウリュアレの可愛さを追求することに余念がないと思っていただこう」

「なんで本人より生き生きとしているのよ」

「ちなみにメルト用のアイテムも取り揃えてる」

「準備に余念なしってことね」

「そうそう。で、かけます?」

「いいわね。ちょうだい?」

「はいどうぞ」

 

 そう言って、エウリュアレにサングラスを渡すオオガミ。

 受け取ったエウリュアレはそのままかけると、

 

「どう? 可愛い?」

「可愛い可愛い。最高にキュートでクールだよ」

「ふふっ。そう? でも全く前が見えないから無理」

「だよね。真っ暗だからこっちからも見えないからね」

「……見えないのに褒めたわけ?」

「想像の中でも可愛いんだから実際に見ても可愛いでしょ」

「……最近変態性を隠さなくなってきたわね……誰に言われたの?」

「オリオン?」

「あの筋肉ダルマ、余計な事吹き込んだのね。今の状態でも嫌いじゃないけど、それはそれとして余計な事をしてくれたお礼はしないとよね」

「程々にね?」

「えぇ。ちょっと告げ口するだけよ。ふふっ、それが一番効果的なことは知っているもの」

「まぁ、うちには未召喚なんですけど」

「……直接手を下す方が早そうね」

「さらばオリオン……」

 

 オオガミはそう言って、オリオンの無事を祈るのだった。




 ついでに言えば今日で三周年。とはいっても何かあるわけではなく、いつも通りに進行しているこの感じ。手抜き間半端ないけどこんな感じの周年がこの作品らしいのです。でもデート会は手を抜かないで行きたい私です。頑張れ私ぃ。







 え? 0時に投稿してた? 気のせいじゃないですかね(逸らし目


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あらマスター。ごきげんよう(ミミクリーもいなくなったし平和だね)

「あ、メルト」

「あらマスター。日付が変わったから会いに来たのかしら」

「ん~……偶然だけど、そういうことにしておこう」

「余計なこと言わないの。面倒なことになるんだから」

 

 ミミクリーもいなくなり、平和になった空中庭園を歩いていたオオガミとエウリュアレ。

 廊下で偶然見かけたメルトはどこか嬉しそうだった。

 

「そういえば、なんで一日離れてたの?」

「下手な嘘を吐かれてイライラしたくないじゃない?」

「誰も嘘とか吐かないよ……」

「本当に?」

「うわっ、エウリュアレと同じ反応してくるんですけど。どんだけ信用されてないのさ」

「でも信頼はしてるわよ?」

「嘘を吐く事に対する信頼とか不名誉では?」

「そうね」

「否定しないわ」

「そこは嘘でも否定して……?」

 

 しくしくと泣きながら言うオオガミ。

 だが、エウリュアレとメルトは楽しそうに笑いながら、

 

「でもまぁ、完全な勇者とか今更欲しくないわ。面白くないもの」

「くっだらない嘘を言うのは今更気にしないもの。それに、多少の不名誉くらい背負うべきよ」

「メルトの言葉は矛盾では……?」

「昨日言われるのは癪なの。イベントだからってなんでも許されると思わないことね」

「つまりイベントに乗じてやると殺されると?」

「そういうことよ」

「難しいね」

「私のマスターになるってことはそういうことよ」

「つまりいつも通りか」

「そうなるわね」

 

 理不尽なことはいつも通りと納得するオオガミ。

 すると、エウリュアレが、

 

「……ねぇオオガミ? 今私たち以外にこの空中庭園にいるサーヴァントっていたっけ」

「敵とかはいそうだけど……ここは安全地帯だったはず」

「そう……じゃああれは味方かしら」

「あれ?」

 

 不思議そうに聞き返し、自分でも確認してみるオオガミ。

 すると、確かに遠くから走ってくる影が見える。

 

「――――あ、あれマスターよ!」

「本当ですか!? あ、本当ですねそれじゃあ行きますよ! これがモンスタートレインです!」

「それ刑部姫に言うと殴られるやつ」

「どうでもいい情報ですね!」

 

 そんな事を叫びながら走ってくるカーマとバラキーとアビゲイル。

 その後ろには大量のゴーレムに魔本。更にはドラゴンやデーモン等がいた。

 

「ヘルプミー!」

「帰れ人類悪!」

「通常アサシンなのでそこら辺間違えないでくださいよ!?」

「知るかそんな大群押し付けないで!!」

「いいから逃げるわよオオガミ!」

 

 そう叫び、走って来るカーマ達と、それから逃げるオオガミ達。

 カーマに背負われているアビゲイルが地道に削っているが、焼け石に水と言う勢いで、しばらくの間逃げ続けるのだった。




 当然のごとくレイドで交換素材が集まっていないのでフリークエスト周回。リンゴがないから周回も出来ないの辛いんですよねぇ……ぐむむ。


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拠点に帰還!(交換素材を集めなきゃね)

「よし、帰宅!」

「カルデアじゃないけどね」

「交換素材を集め終わるまでの拠点だから良いんじゃない?」

 

 そう言って、ミレニア城塞に帰ってくるオオガミ達。

 一緒に帰って来たカーマ達は瀕死の様子で、

 

「よ、余裕そうですね……」

「逃げるのは得意中の得意なので」

「速度特化の私が追い付かれるわけ無いじゃない」

「マスターに乗ってた私が追い付かれるわけ無いじゃない」

「メルトさんは納得ですけどエウリュアレさんは一切納得できないんですが」

 

 カーマはそう言って、未だにオオガミに背負われているエウリュアレに言う。

 すると、彼女は不思議そうな顔で、

 

「あら、楽をするのは基本じゃなくて?」

「サーヴァントがそれを言うんですか……」

「サーヴァント以前にか弱い女神よ?」

「自分でそれを言うんですか……」

「諦めてカーマさん。エウリュアレさんはこういう人なの」

「め、面倒な人ですね……」

「カーマも大概だと思うのだが……」

 

 ぼそりと呟くバラキーに、カーマは即座に頭を掴んで持ち上げる。

 

「ふふっ、バラキー? 誰が面倒ですって?」

「あ~……吾なんだかこれにも慣れてきた……が、それはそれとしてやはり痛い……」

「そうですか。それは大変ですね。で、誰が面倒ですって?」

「吾別にそんなこと言ってない……というか、汝はいつも気にせんだろうが……」

「別に貴女の前なら気にしないですけど、マスターの前でくらいちょっとカッコつけたいですよね」

「吾にそれは分からんなぁ……」

「もう黙っててください」

「うむ……」

 

 そう言って、手を離されて落ちるバラキー。

 オオガミはそれを見ながら、

 

「楽しそうだね?」

「楽しくないですよ。アビゲイルさんもなんか言ってやってください」

「えっ、私は楽しいのだけど……」

「あぁ……そう言えばここには騒がしいのが好きな人が多いんでしたね……」

「あら、違うわよ? 好きなだけじゃなくて、命かけてるの。マスターが」

「……マスターが?」

「えぇ、マスターが」

「……手遅れですね」

「手遅れよ?」

「……当然のような反応が返ってくるのおかしいですね?」

「これが平常運転よ?」

「嫌ですねそれ」

 

 そう言って、嫌そうな顔をするカーマ。

 すると、オオガミは、

 

「なんというか、遊んでいるけど鍛えてると言うか、そんな感じ」

「なるほど……? 面倒そうですね?」

「遊びながら鍛えるのが一番だよ。一歩間違えば刺されるけど」

「危なすぎるんですが……」

「でもいつもやってるわよ?」

「マスターへの負担スゴいですね……」

 

 カーマは呆れたように、オオガミ達を見るのだった。




 交換素材頑張んなきゃ……


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私引きこもる女神よね(ガチ勢を見ても言える?)

「で、しばらく色々見て回って気付いたわ。そもそも私引きこもる女神だから外出るのに向かないって」

「それにしては毎度マスターとお出掛けしていると思うのだけど」

引きこもりガチ勢(おっきーとガネーシャ)を前にしても言えるの?」

「あれは次元が違うもの」

 

 そう言って、目を逸らすエウリュアレ。

 ミレニア城塞の広間でオオガミの膝の上を占拠している彼女は、オオガミに寄りかかり、

 

「そもそも私は平穏に島暮らしをしてただけなのよ? 女神だから人間みたいに何かを食べなきゃいけない訳じゃないし。ポセイドンがメドゥーサにちょっかいかけなければ平和に過ごせたのに、理不尽なアテナの怒りを買ってひっそりと暮らしたら今度は自称勇者に追われるし。平穏な暮らしを邪魔されただけの被害者じゃない?」

「前にも聞いたなぁそれ」

「五回以上は聞いていると思うのだが」

「でも貴方は気にしないでしょ?」

「そうだけども」

「正直貴方はなんでも許すじゃない」

 

 そう言って、深いため息を吐くメルトに、エウリュアレは嬉しそうに笑いながら、

 

「ふふっ、もう堕ちてるもの」

「堕ちてなくても気にしないわよ。平常運転でしょ」

「誰に対してもこんな感じよね。違う反応する相手いるの?」

「私は見たこと無いけど」

「えっと、キアラさんにだけは別の反応だったわ」

「あれは一緒にされたくないわね」

「いや、違う反応っていっても、普通に勉強を教えてもらってるだけと言うか。変なことはないよ?」

「それが既におかしいと思うのだけど」

「アイツがそんな殊勝なことするわけ無いわ」

「でもおはぎを作るのはめちゃくちゃうまいからなぁ……おかげで料理レベル上がってるし」

「……ねぇ、この前大量に作ってたのって」

「練習の成果?」

「なるほど……まぁ、美味しかったからいいけど」

 

 そう言って、複雑そうな顔をするエウリュアレ。

 オオガミは首をかしげながら、

 

「なんだかんだ皆美味しそうに食べてるし良いんじゃないの? 危害も加えられてないし」

「大丈夫かしら……既に手遅れだったりしない?」

「エウリュアレはいつも確認してるでしょ」

「見えないところかもしれないし……」

「どこですかそれ」

「わかんないけど。なんか嫌なのよね、アイツ」

「合わないのかな……いや、誰も彼も合わなそうだけど」

「隔離されているのはそういうわけか……吾もあまり近付かなかったからな……」

「近付かなくていいです。私は絶対会いたくないので。というか、道理でマスターに近付きたくない時があったんですね。なんか嫌なんですけど」

「えぇ……理不尽……」

 

 そう言って、オオガミは複雑そうな顔をするのだった。




 引きこもりガチ勢……怖いなぁ……特にガネーシャさんが最強の引きこもりすぎて……


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間に合いそうかしら?(リンゴかじって行けば余裕)

「それで、マスター? 交換素材は終わりそうかしら」

「終わらせる。最悪リンゴかじって孔明先生とスカディ様に働いてもらおうか」

「大変ねぇあの二人も」

「大変にしているのこのマスターですよね」

「それ以上は深入りしない方がいいと吾思う」

「なんですか……バラキー、結構闇深そうなこと言いますよね……」

 

 そう言って、カーマは嫌そうな顔をしつつ、再び戻ってきた空中庭園を散策する。

 

「はぁ……何度来ても面倒ですね……よくこんな作りを考えられますよねほんと」

「うむ。敵も面倒だしな」

「カーマは変なところ気にするよね」

「変なところってなんですか。普通に突っ込みどころじゃないですか」

「……もしかして感覚がおかしくなった……?」

「今更でしょ」

「キャメロット辺りから建物が凄かったから……特にチェイテピラミッド姫路城でトドメね」

「あれが一番感覚崩壊させたよね」

「なんですかその……ちぇい……えぇ?」

「チェイテピラミッド姫路城。最強の違法建築」

「えぇ……凄い気になるんですけど」

 

 そう言うカーマに、オオガミとエウリュアレは顔を見合わせ、

 

「今も残ってるかな」

「確か刑部姫のこたつの中にあったんじゃないかしら」

「ん~……行ってみるか」

「今度ね。今は交換素材を集める方が先よ」

「じゃあ終わったら軽く見に行こうか」

「えぇ……行きたくないんですけど……」

 

 そう、全力で嫌そうな顔をするカーマに、エウリュアレはとってもいい笑顔を浮かべつつ、

 

「見るのは貴方なのになんで置いていくと思っているのかしら」

「あぁ、いえ……別に行ってもいいんですけど、ただ、そんなところに行って何をするかって感じなんですが」

「まぁ、面白い建造物を見に行くってことで」

「そうですか……まぁ良いですけど、正直面白い感想とか求められても応えられませんよ?」

「誰もそんなの求めてないって。むしろ素の反応を期待」

「い、嫌すぎる……というか、そんなにとんでもないんですか……」

「あれこそ真の違法建築って感じ」

「真も偽も無いですけど……やっぱ気になりますね……」

「……面倒ね。どちらにせよ帰ったら行くわよ」

「ハイハイ。行きますよ~」

 

 カーマはそう言って、ため息を吐く。

 メルトはバラキーに近付き、

 

「で、実際どんな感じなの?」

「あぁ……汝も知らぬのか……まぁ、吾もちょっとどうかと思うモノではあったな……」

「……ちょっと、覚悟はしておいた方がいいみたいね」

 

 メルトはそう言って、苦い顔をするのだった。




 なんで突然チェイテピラミッド姫路城の話題になったんでしょう……?


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明日はおでかけよ(二人きりなのね)

「ん~……どっちがいいかしら」

 

 ミレニア城塞の一室にて、そう呟きながらうんうんと唸りつつ考えるエウリュアレ。

 すると、その部屋にやって来たアビゲイルが、

 

「えっと、エウリュアレさん、どうかしたの?」

「あら、アビー。ちょうどいいところに来たわね」

 

 アビゲイルを認識するや否や、距離を詰め肩を掴んで逃がさないようにするエウリュアレ。

 その勢いに気圧されたアビゲイルは少し怯えながらも首をかしげ、

 

「そ、その……何をすればいいのかしら……」

「大丈夫。明日着ていく洋服の意見が欲しいだけだから変なことはないわ」

「そ、そのくらいならお手伝い出来そう……」

「えぇ。よろしくね」

 

 そう言って、微かに開いていた扉が完全に閉められるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「てな感じで、明日はエウリュアレとおでかけというわけです」

「……え、それ私に言うんです?」

「吾聞かないから任せたぞカーマ」

「え、バラキーにも見捨てられるんですか私」

「そういうこともある。さらばだ」

 

 そう言って、カーマを置いていくバラキー。

 置いていかれたカーマは呆然とし、仕方ないとばかりにオオガミに向き合う。

 

「それで、私にどうしろって言うんです?」

「ん~……カルデアに帰ってBBを呼んできてほしいんだよね。アビーはエウリュアレのお供だろうし」

「あぁ……だからBBなんですね……私アイツと仲悪いの知ってますよね」

「え、不仲の姉妹じゃないの?」

「殴り倒しますよ?」

「すいません」

「分かればいいです。で、呼べばいいんですね」

「うん。呼ぶだけでいいよ。あとはこっちでやるから」

 

 そう言うオオガミに、カーマは呆れたような顔をして、

 

「なんというか、よくそんな能天気な事出来ますよね。暇なんです?」

「暇と言うか、こういうことして気を紛らわさないとやってられないでしょ」

「……本音は?」

「エウリュアレに言われて断れるような男は死んだ方が良いと思う」

「目が本気じゃないですか……」

 

 呆れたようにカーマ頬を引きつらせ、オオガミはにっこりと笑う。

 

「さて、それじゃあこっちも準備があるからお願いね。一応アビーとBBを除いて明日は全員早朝帰宅なので」

「え、本気ですか……別に良いですけど、その二人は帰還用ですか」

「うん。帰れないと困るしね」

「そうですか……なるほどなるほど……良いですよ。じゃあそれでいきましょうか」

「……嫌な予感がするね?」

「気のせいです気にしないでください。それじゃ、明日はどうぞお楽しみくださいね」

 

 そう言って、カーマは立ち去るのだった。




 さてさて。エウリュアレデート編……まだ書き終わってないけど明日には書き終われるのか! 震えて書きます! よろしくぅ!



 あ、昨日のチェイテピラミッド姫路城を見てない反応をする二名はあれです。アビーの門式移動法で一瞬なので見てないと言う方向で。もしくは記憶喪失系で自己保管で。


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今日はあなたと(エウリュアレと一緒に)

『それじゃあ、トゥリファスの時計塔の下で待ち合わせましょう。出来るだけ早く来なさいよ?』

 

 エウリュアレがそう言って城塞を出たのがつい5分前のこと。

 一緒に出るのではなく待ち合わせをしたいという彼女の要望に応えたは良いものの、先に待たせるというのは悪手だったのではと思わなくもない。

 常日頃から無茶振りが大好きな彼女のことだ。私より先に着いていないとはどう言うことか。とか言われてしまう可能性もあった。

 

「ま、心配してもしょうがないか」

 

 ため息一つ。身に付けている肩掛け鞄には財布と通信機、そして一応作っておいたお弁当を入れておく。

 とはいえ町を散策するだけなら、適当な店で食べるので必要はない。

 それでも一応入れておくのは、やはり彼女の無茶振りへの対応だ。

 

「……時計塔までどれだけかかるかな」

 

 向こうはアビートラベルで一瞬で、こちらのBBトラベルは気まぐれだ。どこに落とされるか分かったものじゃないのが問題だろう。

 ならば、と心に決め、準備を済ませてBBを呼び出す。

 

 

 * * *

 

 

 本日は快晴なり。雲一つ無い青空は、迫る春を伝えてくるものの、空気だけは立派に冬のまま。むしろ春の風が冬の寒さを誇るので体感は気温より低いだろう。

 そんなトゥリファスの時計塔の下で、予想としては10分待っているであろうエウリュアレは、一体どんな顔をしているのか。

 予想の中で一番怖いのは無表情だが、大方満面の笑みで迎えてくれるだろう。無茶振りと共に。

 そんな彼女を見つけるために時計塔の下を見回っても、なにやら一ヶ所に人の壁が出来ているだけで、エウリュアレの姿はない。

 何かイベントでもあるのだろうかと考え、冷静になって集まっている人物を見る。

 

「……まさか」

 

 見る限り男性しかいない。そして口々に何かを話しているのだけは見ることができ、そして、そのほとんどがナンパ文句であることを察する。

 人垣に近付き、男性達の目を見て予想が的中したことに、何とも言えない複雑な気持ちになるも、

 

「今日一つ目の無茶振りですかねこれは」

 

 そう呟き、人垣を押し退けながら、中心の人物を助けに行く。

 当然のごとく、そこにいるのはエウリュアレ。

 だが、いつもの服装とは違い、クリーム色のセーターに、明るい茶色のロングスカート。黒いブーツを履いており、伊達メガネを掛けていつものカチューシャを付け、髪を降ろしていた。

 出ていく前に一度見たどころか、その準備を手伝っていたとはいえ、やはり可愛いことに変わりはなく、一瞬硬直する。

 すると、エウリュアレはこちらに気付きいたずらな笑みを浮かべると、

 

「ごめんなさい皆さん。私の彼がもう来てしまったみたい」

 

 そう言って腕を掴まれ、引き寄せられる。

 直後突き刺さる全方位の殺意に、自分でもわかるほど笑みが引きつっている。

 

「それじゃ行きましょ。エスコートはお願いね?」

「この状況でも笑顔でそう言えるエウリュアレ様は素敵ですね……!!」

 

 拳や足が飛んでくる前に人垣を割きながら、エウリュアレを連れてその場から逃げ出す。

 

 

 * * *

 

 

 しばらく逃げ続け、落ち着いたところで逃げる途中で抱えたエウリュアレをおろす。

 すると、彼女はとても満足そうな笑顔を浮かべながら、

 

「それで、愛しのマスターさんは私をどこに連れて行ってくれるのかしら」

「いとっ……わざとやってるでしょ」

「あら、事実を言っただけで責められるいわれはないわ? だって、これだけ親身になって尽くしてくれるのよ? ちょっとくらいご褒美をあげてもいいじゃない」

「……本当にエウリュアレ?」

「そ、その言い分はひどくないかしら。気が乗っただけなのに。もうやらない方が良いみたいね」

「ごめんごめん。どうもいつものエウリュアレから想像できなくて。でもそういうのも全然いいと思うし可愛いと思うよ」

「っ……貴方、わりとすぐそういうこと言うわよね……」

「そりゃ、言わないより言う方が何倍もいいでしょ」

「そうだけど……もういいわ。それより、どこに行くの?」

 

 パタパタと手で扇ぎながら聞いてくるエウリュアレ。

 

「そうだね……買い物に行くとかどう?」

「……ピクニックとか行くんじゃなかったかしら」

「結構散歩したような気もするけど」

「二人では無いじゃない?」

「ん……まぁ、そうだけども。じゃあ行こうか。レジャーシートだけ買わなきゃ」

「準備悪いわね」

「流石にカルデアから持ってくるわけにはいかないでしょ……遊びではないのだし」

「今までの活動からそんな言葉が出る方が驚きなのだけど」

「レジャー用品持ち込みはやばいでしょ……ルルハワみたいなバカンスじゃないんだから」

「……じゃあ、現地調達?」

「そ。だからエウリュアレが好きなものを買いに行こうか」

 

 そういうと、エウリュアレはどことなく嬉しそうな笑みを浮かべ、

 

「ふふっ、私もいつの間にか、懐柔されちゃってるわね」

「うん? どういうこと?」

「だって、そうかもしれないなって思って、用意しちゃったんだもの」

「……めちゃくちゃ楽しみにしてくれてたんだね?」

「あら、嫌だった?」

「いや? むしろ嬉しいですけど。それじゃ、行きますか」

「えぇ。行きましょう」

 

 そう言って、エウリュアレの手を引いて町の外へと向かう。

 

 

 * * *

 

 

「ここからでも、意外と町が見れるのね」

「見える……? 壁しかなくない……?」

「心の目で見る感じで」

「無茶苦茶だね。視力強化とかじゃなく?」

「……正直、壁でもいいじゃない。私は楽しいもの」

「……それは、確かに」

 

 そう言って、用意したサンドイッチを食べるエウリュアレ。

 自分もそれを食べつつ、遠くにある壁を眺める。

 

「それにしても、空がきれいだよね」

「どこまでも青い空よねぇ……」

「風も心地いいし、お昼寝には最適では?」

「そうねぇ……寝ちゃおうかしら」

「それで一日終わっちゃうよ?」

「……それは困るわね。貴方を独占できるのも制限時間付きだもの」

「……食べ終わったらお買い物ですかね」

「遊べそうなところもないもの。色々見て回って、のんびりお茶して帰りましょう」

「賛成。じゃ、どんなところ回ろうか」

 

 そう言って二人でトゥリファスの地図をのぞき込む。

 すると、エウリュアレが、

 

「ここね。ここのお菓子は見てみたかったの」

「お菓子魔神ですか。お菓子を追い求めてどこまでも行くというあの」

「何よそれ。適当に作ったでしょ」

「うん」

「でしょうね。で、ここに行っていいの?」

「そりゃ当然。行くに決まってるじゃん。エウリュアレの要望だし」

「要望がなければ行かなかったの?」

「うん? 最初から行く予定だったけど」

「……予定に組み込んでるじゃない……どうしてそんな面倒なことをするのかしら」

「だってほら、考えていたプランも大事だけど、喜ばせたい本人の意思を尊重する方が大事じゃない?」

「そうかもだけど……私としては貴方のプランを聞きたいわ」

「……じゃあ、散策しようか。トゥリファスの市街もそんなに見てなかったし。買い物とか、普通に行きたいしね」

「そう。じゃあ行きましょ。今日は貴方次第よ」

「……もう開幕のピクニックでだいぶ時間持っていかれてますが」

「それはそれよ」

 

 食べ終わった弁当をしまい、嬉しそうにほほ笑むエウリュアレ。

 それを見て熱くなる顔を背けながら、片づけを終える。

 

 

 * * *

 

 

「ん~……色々悩むわね」

「おいしいお菓子をお願いね」

「……全部買っていい?」

「まぁ、買えるとは思うけど……」

「じゃあ買っちゃいましょ」

「えぇ……まぁ、お土産だし是非もなしか」

 

 そう言って、お財布の中身を確認する。

 人理修復の給料は残っているので、割と散財しても許されるだろう。

 

「じゃあ、これとこれと、あとこれで」

「ハイハイ。じゃ、買いますよ~」

 

 選ばれたお菓子を持っていき、会計をする。

 その間もエウリュアレはしっかりと腕を掴み、離さないようにしていた。

 

「……なんでそんなピッチリとくっついてるわけ?」

「……なんだかカップルって感じがしないじゃない」

「あれ、カップルでいいんですか」

「あら、嫌なの?」

「……何を言っても殺される雰囲気」

「大丈夫よ。ここでの出来事は私たちだけの秘密だもの」

「……じゃあ、そういうことで」

「えぇ。後でBBの首は落としておくわ」

「うわ、殺伐」

「だって移動の時に使ってたのなら隠れてみてるだろうし」

「……まぁ、そんな気はするけど」

「じゃあ、始末しとくべきよね」

「死なないくらいでね」

「……メドゥーサがやってくれるわ。たぶん」

 

 雑だね。と答えながら、袋詰めをしてもらったお菓子を受け取る。

 そのまま店を出て次のところに向かう途中で、

 

「ねぇ、あれ」

「うん?」

 

 途中で見かけた小物店を指差すエウリュアレ。

 近づいてみると、そこにはキラキラと輝く装飾品。

 その中の一つのネックレスを見ていたエウリュアレは、

 

「……これ、ちょっと気になるのだけど」

「それは、ローズクォーツと呼ばれる石です。お手に取ってご覧ください」

 

 そう言って現れたのは黒髪の女性。

 にこやかに笑う彼女に言われるがまま、手に取って眺めるエウリュアレ。

 

「柔らかいバラ色のその石は、古くより愛と美を司ると言われております。特にお客様のようにお美しい方にはよくお似合いの石かと思われますが」

 

 そこまで聞いたエウリュアレは、難しそうな顔をした後、

 

「……アフロディーテの石なのよねぇ……」

「苦手?」

「そういうわけじゃないわ。別に、面識とかないもの」

「じゃあいいんじゃないの?」

「ん~……宝石の類は、毎度逸話が邪魔なのよね……」

「気にしなくてもいいんじゃないの?」

「気にしたくなくても気になっちゃうものなの。どうしたものかしら」

 

 そう言って悩むエウリュアレに、

 

「これ、おいくらですか?」

「そちらは――――ですね」

「じゃあ、購入させていただきます」

「そんなあっさり!?」

「承知いたしました。それでは中に入りまして少々お待ちください」

 

 そう言って、店の奥に入っていく店員。

 店の中に入っていくと、エウリュアレは慌てた様子で、

 

「ほ、本当に買うの? 正気なの?」

「だって、欲しいんでしょ? そもそも、人理修復の報酬は割と法外だから……これくらい使ってもそんな減らない……」

「どんな大金よ……逆に怖いのだけど」

「一般人なら普通に暮らしていけるレベルじゃない……?」

「確かに尋常じゃなさそうね……」

 

 そう言って納得するエウリュアレ。

 自分でも直視できないほどの額ではあるので、あまり触れないでいたが、今回ばかりは別だった。

 

「付けていく?」

「構わないけど……大丈夫? 後で何か言われないかしら……」

「可愛いんだし問題ないでしょ。というか、凄い人間っぽくなってきたね」

 

 そう言った途端、雷が落ちたかの如く硬直するエウリュアレ。

 

「……それ、私としては不味いんじゃないかしら」

「まぁ、可愛いだけで十分すぎるしいいんじゃない?」

「いえ、女神っぽくないっていうのがもう問題なの。だってそれ、もう女神じゃないってことじゃない」

「別に、エウリュアレが女神じゃなくなっても構わないけど」

「私にとっては大問題よ……! あぁもう、どうしましょう……全然気づかなかったわ……」

 

 そう言って慌てた様子のエウリュアレに、オオガミは首を傾げ、

 

「そもそも、ギリシャの神はすごい人間臭いのに、どうして今更気にしてるわけ?」

「……それもそうね?」

 

 なんで悩んでたのかしら。と我に返るエウリュアレ。

 そして、ネックレスを購入してすぐに付けると、

 

「ふふっ、どうかしら。似合ってる?」

「そりゃもう最高に。写真撮ってもいい?」

「後でね。行きましょ?」

「ん。じゃあ後で撮るね」

 

 そう言いながら店を出る。

 

 

 * * *

 

 

「気付いたらもう暗くなるのね」

「外食にする? ミレニア城塞に帰って作る?」

「ん~……どんなのを作ってくれるのかしら」

「どんなのを食べたい?」

「そうねぇ……シェフのおすすめコースで」

「了解。それじゃ、帰って作るとしましょうか」

 

 そう言いながら、嬉しそうなエウリュアレを横目に黄昏時の道を歩いて帰るのだった。



































 …………………?(思っていたのとなんか違う物が出来てしまって不思議そうな顔

 なんか砂糖足りなくねぇか……? くっ、力不足を感じる……! なんとなく退化している感じ……!! 悔しいなぁ……!
 でもまぁ、エウリュアレは終始彼女状態なんですよね……う~ん……これでどうして砂糖が足りないのか……不思議だぁ……


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今回は写真集だけですね(首は落とされたくないですから)

「あ~……今回は写真集だけですね」

「えぇ~? 動画撮れなかったか……お主が失敗するとかレアじゃな」

「いや、撮れたには撮れたんですが、流石に首は落とされたくないですから……」

「え、首落とされるんか……? 儂も狙われたりせんよな……?」

 

 BBの言葉に、顔を青くするノッブ。

 後ろで聞いていたカーマは呆れたようにため息を吐くと、

 

「それで、その写真集ってなんですか?」

「ん? あぁ、トゥリファスでのマスターとエウリュアレの記録じゃな。エウリュアレオンリーと、マスターオンリーと、ツーショット集の三つでな? 意外と売れるから毎度作ってる訳じゃ」

「……それ、バレたら殺されるんじゃないですか?」

「いや、わりと問題ない。エウリュアレはたまに怒るが、毎度マスターがなだめて買っていくから実質プラスじゃな」

「いいんですかそれ……」

「まぁ本人の許諾済みじゃし……」

「本人がいいならいいじゃないですか。どんどん売りましょう」

「ボロ儲けの機会じゃし」

「はぁ~……商魂逞しいですねぇ」

 

 そう言いながら、見本の一冊を手にとって見始めるカーマ。

 

「……これ、どうやって撮ったんです?」

「そりゃ、影からこっそりとですよ」

「盗撮ですか……感心しないですね」

「えぇ~? それお主が言うんか?」

「言いますけど……そもそも、盗撮写真の写真集って凄いですよね」

「そうは言うが、わりとカメラ目線じゃからな? 彼奴ら気付いてるぞ」

「なんですかそれ……おかしいじゃないですか確実に……」

「そうは言っても、事実そうだから何も言えんのだが……」

「面白いコンビですね……あ、本当にカメラ目線……」

「アビゲイルさんなんて、見られ過ぎたから泣いて帰ってきましたよ。先に帰らせましたし、その時に私の首を飛ばす話が出てきました」

「マスターはともかく、エウリュアレはやりそうよな……」

「言ってたのもエウリュアレさんですしねぇ……」

「う~ん……笑えないところじゃな」

「首がポーンですもんね……笑い事じゃないですけど笑っちゃいますねこれ。非戦闘員アーチャー怯えてるとか正気じゃないんですが」

 

 BBがそう言うと、ノッブは苦い顔をしながら、

 

「それ言ったら敗けじゃろ……最上位はエウリュアレになってるのは大体マスターのせいじゃし……」

「センパイには抗えないですしねぇ……多少影響を受けるとか、そう言うレベルじゃないですよこれ。エウリュアレさん上位世界とかわりととんでもないんですが」

「ま、儂は気にせんけどな」

「ノッブはそうでしょうけど……私としてはわりと障害が大きいというか……」

「何が辛いんです?」

「何かしたらすぐにセンパイに情報が渡るんですよ……」

「……報連相がしっかり出来てるんですね」

「そりゃまぁ、あの二人は夫婦扱いされること多いしな……下手なこと言うと殺そうとしてくる辺りそっくりじゃよ」

「あ、そこなんですね……」

「むしろそこ以外無いじゃろ。そう言う扱いとか、もはや平常運転だぞ彼奴ら。でなきゃ特異点に二人きりで残らんわ」

「会話とか、熟年の夫婦でしたよ? 観賞会します?」

「見たいですね。見ましょう」

「じゃあ流しますね~」

「……なんか忘れてる気がするんじゃけど、何だったかの?」

「忘れてるってことはどうでもいいことですよきっと」

 

 悩むノッブにBBはそう言いながら、今回のデートビデオを再生するのだった。




 さらばBB……


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オリュンポスですよ(さっさと終わらせましょ)

「さて……今日はメルトの誕生日ということでお祝いをしたい……んですけど、オリュンポスが来てしまったわけですよ」

「そうね……別に誕生日とか気にしないし、何より時代的に私はまだ生まれてないし、ついでに聞きたいのだけどそれ教えたのBBよね」

「BBだよ」

「ちょっと行ってくるわね」

 

 そう言って、部屋を出ていってしまうメルト。

 残されたオオガミはベッドに腰掛けながら、

 

「ん~……とりあえず作っておいたケーキを渡すとして、後は何があるかな」

「それで十分でしょ。むしろ、さっさと異聞帯を突破する方がゆっくり出来るじゃない。すぐに準備していきましょ」

「……それもそうか。それじゃ、全力ダッシュで行きますか」

「えぇ。その方がいいわ」

 

 そう言って、二人は部屋を出る。

 

 

 * * *

 

 

「はぁ、なるほど……そういうことですか」

「うむ。正直儂には再現不可能じゃな」

「神代の機械やばいですね……完全に強すぎるじゃないですか……」

「ギリシャやばいな……」

「これがギリシャの神なんですね……最先端……」

 

 アトランティスのログを見ながらそんなことを話すノッブとBB。

 そんな二人の後ろから、

 

「ねぇBB? 人の誕生日、勝手に教えていいと思ってるの?」

「あ、メルトですか。それ教えたの半年以上前ですよ?」

「マスター、変なこと覚えとるよな……」

「自分の好きな相手の誕生日忘れる人とかいます?」

「……なるほどのぅ」

「ちょっと、本人の知らないところで話し進めるのどうなの?」

「「よくあること」」

「おかしいでしょ……何考えてるの……」

「そんなもんじゃろ」

「私たちの通常運転ですよ? エウリュアレさんはセンパイの外堀埋めようとしてましたし」

「そんなことしてたの?」

「してたんです。今では彼氏彼女超えて夫婦とか噂されてるらしいですよ?」

「……聞いたことあるような気もするわね……私は特に言われてるような気はしないけど……」

「そりゃ、メルトの話はしてないですし」

「ふぅん……そういうこと。理由は分かったわ」

 

 うんうん。と頷くメルト。

 BBはそれを見て一息吐き、

 

「それはそれとして、勝手に誕生日を教えた罪は払ってもらうから」

「えぇ……私殺されるじゃないですか……」

「さらばBB。儂はちょっと外におるわ」

「ストレートに見捨てましたね!?」

「儂巻き込まれたくないし。じゃあなBB~」

「そんなぁ!?」

 

 そう言って、ノッブはその場を去っていく。

 残されたBBは顔を青くしながら、

 

「えっと、刑が軽くなる可能性は……?」

「安心して。皆無よ」

「そうですよね……」

 

 希望を失った目をしながら、BBは無意味な抵抗をするのだった。




 はい。誕生日中に書き終わる予定が超過しましたね。マジですか。オリュンポスに意識持ってかれちゃった……


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これがオリュンポスか……(マシュがかなり恐ろしくなっているのだけど)

「オリュンポス辛い……」

「私としては、マシュが恐ろしくなっているのだけど……彼女、最終的に最強じゃない……?」

「出力的にコイツとセットだしそんな問題ないんじゃないかしら」

「……それもそうね」

 

 ぶっ倒れているオオガミの隣で、そんな話をするエウリュアレとメルト。

 エウリュアレはつけているネックレスを弄りながら、

 

「それにしても、まさかアフロディーテがいるとは思わなかったわ。愛と美の神とか、ある意味天敵じゃない」

「貴女は愛を貰って美しいと思われる女神だものね。愛と美を変えられたら変質しちゃうもの」

「全くよ。さっさと始末するに越したことはないわ」

 

 エウリュアレがそう言うと、オオガミは起き上がりつつ、

 

「……倒しましたけどね」

「知ってるわ。最前線だもの」

「知ってるわ。補欠入りさせられたもの」

「……すいませんでした」

 

 下手な反論は身を滅ぼすのを既に何度か味わっているオオガミは、素直に謝る。

 すると、エウリュアレは呆れたようにため息を吐くと、

 

「別に勝てるなら構わないわよ……正直それほど恨みはないしね」

「ポセイドンは?」

「なんで私を呼ばなかったのか問い詰めるわね」

「すいませんでした……」

「今回は分かってて突っ込んだわね」

「そう言うことをするのよコイツ」

「でも、嫌いじゃないんでしょ?」

「何言ってるの。流石に怒るときは怒るわ」

「今回は?」

「許すわ」

「甘々じゃない……」

「トゥリファス以降こんな感じでちょっと調子狂うんだよね」

「そんな事言われても困るのだけど……」

「扱いきれない女神とか後々辛いわよ?」

「既に二人持て余してますけど」

「……だって」

「私を見ないでほしいのだけど」

 

 ニヤニヤと笑うエウリュアレに、苦い顔をするメルト。

 そして、二人はオオガミを見ると、

 

「そもそも、二人も抱え込んで不遜よね」

「女神に対する敬意とか無いわよね」

「メソポタミアの時からそうだったけど」

「わりと今更よね」

「誰が相手でも変わらないのは私達のマスターらしいわ」

「……意外と変えてるわよ?」

「……知らないのだけど」

「私も映像でしか知らないもの。私達がいないところではそんな事してるわよ」

「ふぅん。そう……」

「えぇ、そうらしいわ」

 

 そう言って、にっこりと笑うエウリュアレ。

 オオガミは頬を引きつらせながら、

 

「いや、いやいや……そんなところを怒られるのはめちゃくちゃ納得いかないんですけど……!」

「だってなんか、納得いかないじゃない?」

「くっ、くそぅ……!」

 

 そう言って、オオガミは壁際に追いやられるのだった。




 マシュがかっこよすぎて死にました。これが我らの後輩か……!


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オリュンポス突破!(神破りこれにて終幕!)

「はぁ……くっそ強かった……」

「お疲れ様。今回は本当にね」

「えぇ。神殺しなんて、本当に良くできたわね。呆れるくらいに」

 

 そう言って、ベッドに倒れているオオガミに寄り添うエウリュアレとメルト。

 すると、

 

「お疲れ様ですセンパイ! こちら記録になりますけどご覧になります?」

「今から……? 流石に辛い……」

「じゃあ私達が見るわ」

「客観的に見てみたいわよね。撮影係お疲れ様BB。それじゃ休んでいいわよ」

「え、私も見ますけど……」

「寝てなさい」

「うっわぁ、理不尽。いや、良いんですけど。それじゃお疲れ様ですセンパイ。回復したらまた~」

「はいは~い。じゃあね~」

 

 そう言って、おとなしく去っていくBB。

 記憶媒体を受け取ったエウリュアレは、

 

「……そう言えば、誰がそれ起動させるの?」

「私が出来るわよ。何年一緒にいると思ってるの」

「それもそうね。一年くらいしかいない私と違って、色んな事を知ってるものね」

「えぇ、何年も振り回されたもの。流石に覚えたわ……」

「暇だったの?」

「暇だったわ。やることないもの」

「それで何を見てたのかしら」

「……コイツのタブレットに入ってる書籍?」

「……とんでもないことしてるのね」

「普通の書籍しかなかったけど」

「面白くないわね」

 

 やれやれ。と首を降る二人。

 オオガミはそんな二人に、

 

「いや、流石に覗かれるの分かってるのに入れられるわけ無いよね……」

「……ってことは、どこかにあるのかしら」

「探してみる?」

「そうね。今なら誰にも邪魔されそうにないし」

「そうね。守護者は寝てるもの」

「や、やめろぉー!」

 

 そう言って、悲鳴をあげるオオガミ。

 すると、部屋の扉が開き、

 

「ふっふっふ……甘いですねお二人とも」

「あら、マシュ。今回のMVPじゃない」

「実際神をほぼ一人で落としてるものね」

「ふふっ、やめてくださいお二人とも」

 

 そう言いながら入ってくるマシュ。

 オオガミは嫌な予感を感じながらもそれを見ていると、

 

「先輩はですね。そう言う本は誰かのところに隠しておくんですよ」

「ふむふむ……イアソン?」

「オリオンかも」

「後輩にして大先輩たるマシュよ。持ってないって発想はないんですか」

「あら、貴方が持っている可能性の方が面白いから却下ね」

「……二人もそこらじゅう歩き回ってるのに持ってるわけないと思うんですけど」

「持ってなくても探すってのが大事よね」

「凄い。全く話を聞いてくれない」

「聞いててなお探そうとしてるのだけどね?」

「という訳で、先輩の周囲のサーヴァントの部屋を探すしかないわけです」

「……最大の要因はきよひーが隠れてる可能性があるからなんだけども」

「という訳で、まずはイアソンさんの部屋から!」

「おっとこれは大惨事」

 

 妙なことに巻き込まれるイアソンの冥福を祈り、オオガミは静かに眠るのだった。




 実際マシュが殴り倒したのは笑いましたよ。むっちゃ強い……


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カーマにお届け物です(なんですか一体……)

「あ、カーマ」

「げっ……なんですか一体……」

 

 妙にいい笑顔を浮かべるオオガミに、苦い顔をするカーマ。

 すると、オオガミは持っていた箱をカーマに渡し、

 

「これ、約束のやつ」

「約束……? 何かしましたっけ」

「この前お菓子作ってるときのやつ。種火も余ってるし、注ぎ込めるから」

「この前、この前……あぁ、あれですか」

「そうそうそれそれ。いるでしょ?」

「え、あ、そうですけど……当然のごとく渡すの、どうかと思うんですが」

 

 そう言って、呆れたようにオオガミを見るカーマ。

 オオガミは首をかしげながら、

 

「いや、ちゃんと考えてのことだよ? 敵対されても容赦なく潰す手段はあるし」

「……本人を前にそう言うことを言えるの流石だと思うんですが、どこにそんな自信が?」

「カーマじゃ応えきれないから」

「あぁ……それもそうですね。じゃあ仕方ないです。おとなしく貰っておきますね」

「うん。ちゃんと持ってって」

 

 そう言って、諦めたように受け取るカーマ。

 オオガミは満足そうにすると、

 

「じゃ、メイン戦力として期待するね」

「は?」

 

 そう言って去っていくオオガミを呆然と見送るカーマ。

 入れ替わるようにやって来たバラキーは、

 

「なんだあれ……って、どうしたカーマ。そんな、鳩が豆鉄砲を受けたような顔をして……」

「……その例え、豆鉄砲がわかる人にしか伝わりませんよね」

「実際吾も分かってないしな」

「いやまぁ、それは良いんですけど……まぁ、貰ったものがモノなので……流石に考えますよ」

「うん……? あ、吾よりも多い……さてはカーマも100入りか……」

「あれ、そう言えばバラキーは貰ってないんですっけ」

「二つだな。足りてるかと言われればなんとも言えないが」

「まぁ、100のサーヴァントでも戦ってないのはいますしね……メイン戦力として期待するとか言われても、どうせ運用されないでしょう」

 

 カーマがそう言うと、バラキーは遠い目をしながら、

 

「なんだかんだふざけた編成が好きだからな……」

「天の邪鬼というか、強いなら使わないって言う精神がなんとなく見えるんですよね……」

「最大戦力ならほぼ負けぬしな……」

「……じゃあ私が使っても問題ないですね。パワーアップは嫌いじゃないですよ」

「くっ、吾より強いのが増えていく……!」

「肩身狭いでしょうけど頑張ってくださいねバラキー」

「なぜ吾の周りは吾より強いのか……!」

「……不思議なこともありますね?」

「いい加減抗議をするべきか……」

「鬼らしく奪うとか?」

「それだな!」

 

 そう言って、バラキーは走り出すのだった。




 ということでクソヤロウ秒殺のお礼に聖杯5つ捧げてカーマパワーを高めました。これでライダーも怖くないな……


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どういう状況だこれ(小さな喧嘩としか言えぬ)

「……呼び出されて来てみれば、どういう状況だこれ」

「ん。緑の人か……ふむ、大方マスター辺りが呼んだか」

「いや、まぁそうだけども……で、どういう状況?」

 

 そう言ってロビンが指差す先には、子供状態のカーマとアビゲイルが喧嘩をしていた。

 バラキーはメープルシロップとバターの乗った分厚いパンケーキを食べながら、

 

「いや、吾も詳しくは知らぬが来たときには既にこうなっていてな……曰く、分厚いパンケーキと薄いパンケーキのどっちがいいか、らしい」

「なるほど……それで喧嘩ってわけか」

「うむ。正直どちらもうまいのだが……気に食わんらしい」

「へぇ……それ、誰が作ったんだ?」

「ん。カーマだ……というか、吾らの中で作れるのはヤツはカーマしかおらぬわ」

「あ~……それもそうか。それで、どっちの方がうまい?」

「ん~……それぞれというか……カーマの技術が上がっているからなんとも……分厚い方が食べごたえがあるが、薄い方は甘さが直に感じるからな……う~ん、なんとも言えぬ」

「そうか……まぁ、そのうち収まるだろ」

「うむ。吾もそう思ってる」

 

 そう言いながら、モグモグと食べるバラキー。

 ロビンはぼんやりと喧嘩の様子を見ていると、不意に二人がこちらを見て、

 

「「で、どっちの方が美味しかった!?」」

「え、吾が決めるのか……?」

「みたいだぞ? ほれ、答えてやれ」

「ぐむむ……それは難しい問題なのだが……カーマの菓子はうまい、というのは……」

「ダメです」

「……だろうな。うむ。真面目に考えるか」

 

 そう言って、考え始めるバラキー。

 期待のこもった目で見てくる二人に対して、バラキーは、

 

「吾は赤い人が作った、なんと言ったか……すふれぱんけーきの方が好きだな」

「うわっ、第三の回答するとかとんでもねぇな」

 

 と、思わず口走るロビン。

 事実、言われた二人はポカンと口を開けて呆然としていた。

 すると、厨房の方からオオガミがやって来て、

 

「はいこれ。注文のスフレパンケーキ」

「うむ。やはりこのふわふわの見た目、感触がとても良い。口に含めばすぐさまとろけるのもまたよし。ということで、汝らも食え」

「畳み掛けるようなレビュー……そのまま差し出されて食わねぇヤツとかいねぇわな……」

「……一口だけですよ」

「えぇ、一口だけよ」

 

 そう言って、恐る恐るといったようにスフレパンケーキをすくう二人。

 そして一口含んだ瞬間に二人は目を見開き、

 

「新食感ですよこれは。革命です。どうやって作るんですかこれ!」

「パンケーキの概念が壊れるわ……! そんなっ……! こんなパンケーキって良いのかしら……!」

「……異世界チートものでこういうのよく見るよね」

「紫式部の図書館じゃねぇか」

 

 得意気なバラキーと二人の大袈裟な反応を見て、オオガミは呟き、ロビンは突っ込むのだった。




 後にカーマが教えてもらいに行くことは言うまでもないのだった……

 なんかこの三人、なんと言うか、なんなんでしょうね? 一番ほのぼのしてる気がする……


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今日は姉様と一緒じゃないんですね(最近二人は周回してる)

「あ、マスター。今日は姉様はいらっしゃらないですか?」

「いないよ? というか、帰ってきてからエウリュアレもメルトも周回に行ってくれてる」

「そうですか……仕方ないですね。じゃあ代わりに付き合ってください」

「え……あぁ、うん。良いけど」

 

 アナに言われ、特に考えず了承するオオガミ。

 そうしてついていった先には、椅子に座ってのんびりとしていたエレシュキガルとカーマ。

 

「あら、遅かったじゃない……って、ままま、マスター!? どうしてここにいるのだわ!?」

「暇そうにしてたので。姉様がいない間は安静にさせておけと言われていますから」

「ちょっと待ってアナ。それ初めて聞いたんだけど」

「マスターには言わないように言われてますから」

「今思いっきり言ってるんですが……いえ、私は気にしませんけど……」

 

 呆れたようにため息を吐くカーマと、顔を赤くして慌てふためくエレシュキガル。

 アナは首をかしげながら、

 

「はて。アビゲイルさんが見えないようですが……」

「あぁ、彼女ならすぐ来ますよ。頼んでたものを回収してもらいにいってただけですから」

「頼んでいたもの、ですか?」

 

 アナがそう言って首をかしげると、カーマの隣に門が開き、アビゲイルが出てくる。

 

「もう! カーマさんったら、こんなに熱いだなんて聞いてないわ!」

「いえ、オーブンに入れてたんですから熱いに決まってるでしょう? 何言ってるんですか」

「はっ、それもそうね……どうしてそう思わなかったのかしら」

 

 首をかしげながら、アビゲイルが机の上に置いたソレは、とても甘い香りを放つ美味しそうなアップルパイ。

 カーマの口振りからして、安心と信頼のカーマ製だと予想出来た。

 

「それで、アナさんは……いらっしゃるようだけど、どうしてマスターも?」

「暇そうでしたので」

「なら仕方ないわね」

「待ってアビー。どこに仕方ない要素があったの?」

 

 なぜか納得するアビゲイルに突っ込むオオガミ。

 すると、アビゲイルは不思議そうに、

 

「だって、エウリュアレさんに安静にしていなさいって言われたんでしょ?」

「何で広まってるの!?」

「だって、エウリュアレさんがみんなに言っているもの。暴れさせるなって」

「凄い人聞きの悪いこと言われてない?」

「だってマスター、それだけしないと休まないもの」

「うっわぁ、マスターがブラックだからブラック周回とか笑えますね。アップルパイ食べます?」

「あ、それはいただきます」

 

 そう言って、オオガミは席に着き、隣に座られたエレシュキガルは想定外の事態に顔を赤くしながらテキパキと食べる準備を進めるのだった。




 今更ですけどマナプリ足りねぇ……種火周回でも限度はあるんですよ……!


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ようやくいつもの定位置ね(そこがいつもの定位置でいいのか)

「ふぅ……なんだか、ようやくいつもの定位置って感じ」

「マスターの上を定位置にするとは流石女神様」

「ふふっ。でも嫌じゃないんでしょ?」

「ノーコメント」

 

 オオガミの膝の上に座り、嬉しそうに笑うエウリュアレ。

 もはや食堂での日常と化しているため誰も見向きもしない。

 

「今日はエウリュアレだけ?」

「メルトは用事があるからと言ってどこかに行ったわ」

「そう……まぁ、元気ならいいんだけど」

「元気よ。確実に」

「ならいいや。それで、今日は何を?」

「何をって、貴方が苦い顔をしながらタルトを睨んでいるんだもの。食べてあげようと思っただけよ」

 

 そう言って、エウリュアレが自分の前に引き寄せたのは、一輪の大きな花が咲いたかのように飾られているいちごのタルト。

 誰が作ったかと言われれば、何を隠そう我らが料理長ことエミヤだった。

 デザートだと言って置いていったのはいいが、あからさまにサイズが大きく、オオガミ一人で食べきれる量ではない。

 慌てて厨房を見れば何故か申し訳なさそうに見ているカーマがおり、定位置にいるバラキーの前にも同じようなタルトが複数置かれていることから、状況を察して何も言えなくなり、タルトを見ていた。

 そこに偶然来たエウリュアレが、さも当然のごとくオオガミの膝の上に座ったのがこれまでの顛末だった。

 

「それで、食べていいの?」

「構わないけど、食べれるの?」

「……少食の方が好みかしら」

「むしろいっぱい食べる方が好き」

「じゃあ食べられるわ」

「何で今好きか嫌いか聞かれたの? もしかして返答次第で食べられない可能性があったの?」

「うるさいわね、もういいでしょ。いただきます」

 

 そう言って、タルトを食べ始めるエウリュアレ。

 オオガミはその様子を見ながら、

 

「毎度思うけど、よくこんな細い体にこの量が入るよね」

「…………」

「あっ、いたっ、かかとが当たってる! 無言で蹴らないで!?」

「じゃあ喋ってれば良いのね」

「そう言うとんちではなく!」

「まぁいいわ。それで、セクハラマスターはなんでそんな興味深そうなのかしら」

「いや、セクハラマスターって……今まで気にしてこなかったじゃん……」

「乙女心は突然に芽生えるものよ」

「今までは乙女じゃなかったってこと?」

「あらマスター。ちょっとよく聞こえなかったわ? もう一度言ってくださる?」

「あ、ごめんなさい許してください」

「わかればいいの。で、あなたも食べるの?」

「ん~……一口だけ」

「仕方ないわね。ほら、あ~ん」

「あ~ん」

 

 そう言って、一瞬も躊躇することなく口を開け、エウリュアレに食べさせてもらうオオガミ。

 エウリュアレは再びタルトに向かいながら、

 

「……そう恥ずかしげもなく素直にされたら私も困るのだけど……」

「なんで自分が恥ずかしくなるのにやるのかなぁ……」

 

 そう言って、オオガミはため息を吐くのだった。




 マスターの膝の上はエウリュアレが占領した!

 まぁ、オオガミ君に羞恥攻撃を仕掛けると大体跳ね返ってきますよね不思議。


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吾今度はこれを食べたいのだが(私は専用料理人じゃないですよ)

「なぁなぁカーマ。吾今度はこれを食べたいのだが」

「突然ですね……で、次はなんですか? って、桃タルトですか……なんです? タルトにハマったんですか?」

 

 呆れたようにカーマが問うと、バラキーは真剣な顔で頷きつつ、

 

「まぁ、そんなところだ。あのサクサク感が堪らなくてな……」

「そうですか……で、なんで厨房の赤い弓兵ではなく渡しに頼むんですか」

「うん? 汝を一番信頼しているからだが?」

「……鬼って素面でそう言うことを言う種族でしたっけ」

「少なくとも吾はそうだな」

「そうですか……まぁ、バラキーだけと言うことにしておきます」

 

 そう言って、一つ咳払いをするカーマ。

 そして、真剣な顔に戻ると、

 

「で、桃のタルトですか。個数は?」

「昨日を考えて、20個程で」

「……失敗分まで計算に入れてますよね」

「昨日は1個に4回のペースで失敗だったからな……ただ、後半には収まっていたのだから、昨日の半分くらいを想定してる……が、無理だったらまたマスターに押し付けるしかないな……」

「実際はエウリュアレさんでしたけども。まぁいいです。それじゃ、作ってきますよ」

 

 そう言って、慣れた様子で厨房の中へと入っていくカーマ。

 そんな彼女と入れ替わるようにやって来たアビゲイルは、

 

「バラキー、どうしたの? 何かあったのかしら」

「ん。アビゲイルか……今日はカーマに桃のタルトを頼んでな……今始まったところではあるが」

「今からなの? 大変ね。カーマさんも」

「吾別に弱みを握っている訳でもないのだがな……」

「そうね……でもそれ、バラキー自体が弱みなのかもしれないわよ?」

「吾自信が弱み……? 全く訳がわからぬのだが……」

「ん~……なんて言ったら良いのかしら……難しいわね……」

 

 そう言って考えるアビゲイルを見て、首をかしげるバラキー。

 すると、厨房の方から声が聞こえ始め、振り向けばそこにはカーマだけでなく、エミヤとオオガミもいた。

 

「うん? いつの間にマスターは厨房に立っていた……?」

「さっきエウリュアレさんとメルトさんからいちごのタルトを作ってってお願いされてたから、たぶんそれでよ。エミヤさんはお料理についてならなんでも知っているもの! 聞けば丁寧に教えてくれるわ!」

「ふむ……それであの二人は共にいると言うことか……あの二人、戦場よりも厨房で一緒にいる印象が強いのだが……」

「実際、お二人とも厨房に立ってるものね。お菓子担当っていう噂は嘘じゃないかもしれないわ」

「吾その噂初めて聞いたのだが……」

 

 バラキーは苦い顔でそういい、アビゲイルは不思議そうな顔をしながら首をかしげるのだった。




 カーマはバラキーに対して甘々なお菓子職人見習い……オオガミ君はお察し。


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マイフレンド。元気?(元気っすよマスター)

「やっほーマイフレンド。元気?」

「あ、マスター。元気っすよ~……って、エウリュアレさんも一緒でしたかすんませんオレ向こうに行ってますね」

「行かせないよマイフレンド」

 

 そう言って、逃げ出そうとするマンドリカルドを捕まえるオオガミ。

 エウリュアレは呆れたようにため息を吐くと、

 

「捕まえる必要あった?」

「まぁ、歩いてるだけだしね。でも暇そうにしてたしちょうどいいかなって」

「あ、そういやマスター。さっきメイド服の人が探してましたよ。特訓とかなんとか」

「……よし。予定変更訓練しよう。マンドリカルド、相手になって」

「は、はぁ……でもオレなんかが教えられることとかありますかね」

「あるある。旅の最中の生活とかね。後は戦闘での立ち回りとか。まぁ、サーヴァントに殺す気で攻撃されたら何も出来ないけど」

 

 マンドリカルドはそれを聞いて嫌そうな顔をすると、

 

「それ、通常訓練って聞いたんすけど……」

「でも相手が変わると勝手も変わるものだし。例えば孔明先生とかなら軍略とかの全体的な扱い方。ロビンさん達狩人からは森の歩き方。で、マンドリカルドに聞きたいのは旅の注意点。やっぱり地域が変われば物の価値も風習も違うから、そう言うところも気にしないとじゃん? 大雑把なのがほとんどだけど」

「いや、今までもやって来たって聞いたんすけど、今さらオレの知識とか要ります? シャルルマーニュの騎士もいることだし、そっちに聞くべきじゃないっすかね」

「ふはは。もう聞いてるに決まってるじゃん」

「じゃあもう要らないんじゃ……」

「いやいや。ブラダマンテは戦力になるとしても、アストルフォは話通じないから。実質一人からしか聞けてないんだからマイフレンドは参加決定です」

「嘘だろマジかよ。アイツらが未来に行きすぎて話通じねぇとか想定外過ぎる」

 

 そう言って、頭を抱えるマンドリカルド。

 それを見たオオガミはニヤリと笑い、

 

「それに、今ならなんと売り切れ必至のマスター特製クッキーセットがついてきます」

「一気に通販っぽくなったんすけど」

「あれ、苦手だった? それじゃあモーニングセットとか?」

「いや、物の話じゃなくってっすね? 正直クッキーセットの方が嬉しいけど、そうじゃないんすよ」

「あらそう。じゃあ、何がいいわけ?」

「いや、そもそもっすね? マスターとサーヴァントなんですし、命令一つで飛んでいくって話っす」

 

 そう言うマンドリカルドに、オオガミは首をかしげ、

 

「親しき仲にも礼儀ありだぜマイフレンド。頼み事の報酬は必須でしょ。特に命に関わることだし。むしろ受け取ってくれないと困る。何よりも、マスターとサーヴァントじゃなくて、友達としてありたいしね?」

「……じゃあ、クッキーセットを一緒に食うってのでいいっすか」

「オッケーオッケーウェルカムだぜマイフレンド。そんじゃシミュレーションルームにレッツゴー!」

 

 そう言って、オオガミに続いて、シミュレーションルームに向かうのだった。




 唐突なマイフレンド。突然脳裏に閃くものだから即時採用頑張れマイフレンド!


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本を借りに来ましたよ~(あれ、寝てるんです?)

「マスター。本を借りに来ましたよ~……って、なんですか。寝てるんですか」

「そうよ。だから静かにして」

 

 エウリュアレに言われ、静かにするカーマ。

 エウリュアレに膝枕をされたまま寝ているオオガミを横目に、持っていた本を机に置きつつ、

 

「寝てるのを見るのってなんだか珍しいですね。大体起きてるので」

「そうね。起きるのは早いのに寝るのは遅いもの。不思議よね」

「不思議なのは貴女がこの部屋に寝泊まりしてる方なんですが。ベッドあからさまに特注品じゃないですか。この部屋だけおかしくないです?」

「まぁ、ある種の結界らしいから、当然よね。そこのドアと、あともう一ヶ所からしか出入りできないし」

「……ドア、一つしかないと思うんですが」

「秘密通路があるのよ。ほとんど使われないけど」

「普段使いの秘密の通路とか秘密である必要ないじゃないですか。緊急時に使うから秘密の通路なんです」

 

 やれやれ。と呆れたように首を振るカーマに、エウリュアレは微笑みながら、

 

「作った本人達もそれに気付いて使わなくなったわ。でもまぁ、逃走経路として作ってあるから、時々逃げてくるけど」

「なんですかそれ……というか、どこに繋がってるんですか」

「それはちょっと言えないわ。私はともかく、マスターが気に入っているのだもの」

「……そうですか。貴女も色々大変そうですね」

「いいえ、そっちこそ。バラキーのお世話を任せてしまってごめんなさいね。これからもよろしくお願いするわ」

 

 その言葉に、借りていく本を選んでいたカーマの手は止まり、

 

「バラキーと、何かあったんですか?」

「いいえ? 私は何も。ただ、バラキーがカルデアに来てから一緒にいたってだけよ。気付いたら離れてたし。代わりにアビーがついてきてたけど、最近は貴女と一緒でしょ? だから、お疲れ様」

「……そうですか。まぁ、それならそれでいいですけど」

「えぇ。気にしないでしょ? あぁでも、一つだけ」

 

 そう、真剣な眼差しで見てくるエウリュアレに、カーマは息を飲みつつ、

 

「バラキーは食べている間は何してもわりと怒らないから遊ぶならその時よ」

「なるほど食事中でしたかそれは盲点でした。次からそうします」

 

 そう言って、互いに親指を立てていい笑顔をする二人。

 そして、カーマが本を選んで出ていくのと入れ替わるように目を開けたオオガミは、

 

「カーマに変なこと教えないで」

「ふふっ、無駄な争いは起きないと思うけどね。なんだかんだバラキーも心を許しているし」

 

 そう言って微笑む彼女に、オオガミはため息を吐くのだった。




 バラキーはおもちゃ扱いされてる不思議……でもあまl、かわいいのでオッケーですね?


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昨日と逆だな?(そう言う日の方が多いと思う)

「マスター。入るぞ」

「はいは~い」

 

 そう言ってバラキーが部屋に入ると、エウリュアレがオオガミの膝を枕にして寝ている状況だった。

 それを理解すると同時にバラキーはため息を吐き、

 

「昨日は逆だったとカーマから聞いたのだが」

「何てこと話してるんだカーマは」

「吾が言うのもなんだが、結構話すぞ? 吾が食べている間暇なのかずっと喋っているからな」

「相当喋るね?」

「うむ。まぁ、汝も同じようなものだが」

 

 そう言って指差されたオオガミは、理解出来てないかのように首をかしげると、

 

「そんなに喋ってる?」

「うむ。かなり喋っているとも。それに感化されてか、周りが喋っているから分かりづらいだろうがな。メルトに限って言えば、汝のおらぬところでは滅多に喋ってないからな」

「いやいやまさか。そんなわけないでしょ」

「むぅ、疑うならそれでもよいが、BBの監視カメラの履歴を見てもよいと思うぞ? 本当に喋ってるのを見ないからな……」

「そんなにか。結構色々言われるんだけどな……不思議だね」

「不思議でもなんでもないと思うが……まぁ、汝がそう言うならそうなのだろうよ」

 

 そう言って、首を振るバラキー。

 すると、何かを思い出したようにバラキーは顔を上げ、

 

「そうだそうだ。吾は話をしに来たのではなく本を借りに来たのだった。最近ずっとカーマが読んでいてな。図書館にあると思ったら無くて、カーマに聞けばここだというではないか。というわけで借りていくぞ」

「ちゃんと返してね?」

「吾は約束くらい守る。下らぬことはせんわ」

 

 そう言って、カーマが借りていったシリーズから一冊借りていくバラキー。

 

「ではまたな」

「うん。ばいば~い」

 

 手を振ってバラキーを見送り、改めてエウリュアレを見るオオガミ。

 

「いや、それにしてもよく寝てるね……完全に熟睡してるじゃん……」

 

 そう呟いても、言葉は返ってこない。

 オオガミはため息を吐くと、扉の方を向くと、どこか呆れたような顔をしているメルトがそこに立っていた。

 

「……膝の上は無理だよ?」

「じゃあ左側を使わせてもらおうかしら」

 

 そう言って、オオガミの左隣に座って寄り掛かるメルト。

 完全に動けなくなったオオガミに、メルトはニヤリと笑いながら、

 

「どう? 幸せで動けないって状況は」

「何度目でも慣れないし幸せだよ?」

「……対処が慣れてるそれなのが気に入らないわね」

「緊張が一周回って冷静になった感じ」

「そう……まぁ、どうでもいいけど。飽きるまでこのままね」

「あ、マジすか」

 

 そう呟くオオガミの声を無視して、メルトはオオガミに更に体重をかけるのだった。




 メルトはなんというか、こう、寡黙なイメージ。どちらかと言えば寡黙というよりは興味がないってのが強いとは思うんですけども。


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無理なら無理って言えよマスター(これくらい持てなくて何がマスターか……)

「……あ~、マスター? 無理なら無理って言え? な?」

「ふっ……これくらい持てなくて何がマスターか……悪環境でも走れないと訓練の意味ないじゃんね」

「だからって女神さん背負って狩りをするのは辛いだろ?」

「荷物を持って戦闘になる可能性もあるから想定して訓練しなきゃでしょ」

 

 心配するロビンとテルにそう言うオオガミは、背中で目を輝かせているエウリュアレから目を逸らす。

 

「狩りの訓練とか、何の役に立つかと思っていたけど、結構楽しいのね」

「正直女神様の命中率舐めてたぜ……なんであの距離で当てられんのか分からねぇわ」

「精度も中々。これで戦闘系の女神さんじゃないって言うんだから恐ろしいな」

「ふふん。カルデアに来てからだけじゃ無くなったもの、そう言うこともあるわ」

「最初はイタズラ好きな子供みたいな女神様だったのに、聖杯貰いすぎておかしくなっちまってるんだよな……」

「ふ、ふはは……聖杯パワー最強じゃんね」

「お陰で楽しめるから私は気にしてないわ。私の根幹を揺るがしてる気がするけど」

「エウリュアレは守りたい可愛ささえ残ってれば問題ないから余裕じゃん。可愛いは正義」

「大分雑じゃねぇか」

 

 呆れたように言うロビンに、楽しそうに笑い返すオオガミ。

 すると、エウリュアレは何かを思い付いた顔をすると、

 

「あれやりたいわ。たき火! 夜営の準備の早さとかも訓練にならないかしら」

「すげぇな。この状況で我を通せる精神力が」

「まぁいいじゃないか。マスターも背負い疲れただろうしな。狩りもそこそこ出来て上々。夜営に移るのに問題はないだろうさ」

「そりゃそうかも知れねぇが……いや、そうだな。今日の狩りは終わりだ。休憩休憩。さっさと準備すんぞ~」

「了解ですロビン先生」

「茶化すのはやめろっての」

 

 そう言って、エウリュアレを置いてたき火の材料を探しにいく二人。残されたテルとエウリュアレは、

 

「なぁ女神さん。今のは気遣ってか? それともやりたくてか?」

「あらお爺さん、そう言うのを聞くのは野暮じゃないかしら。黙っておいた方がいいこともあるでしょ?」

「ま、それもそうだわな。一々言うことでもねぇ。しかしまぁ良く見てるもんだ。言われるまで気付けなかった」

「ふふっ、だって、彼は嘘が得意だもの。最も人間らしくて人間離れしてると思わない?」

「そう言うもんかね。でもまぁ、無理しないことを祈るさ。さて、それじゃあこっちでも下準備をしておくかね」

「今日は気分が良いから手伝ってあげるわ。何からすればいいのかしら」

 

 そう言って、エウリュアレは楽しそうな笑顔を浮かべながら手伝うのだった。




 エウリュアレ様抱えて森の中……私どっかで見たことあるんですけど。心当たりしかないなぁ……


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よぉマスター! 暇か!?(暇と言えば暇)

「よぉマスター! 暇か!?」

「モーさん。今日も元気だね? 今は暇だよ?」

 

 そう言って廊下で会ったのは、いつもの鎧ではなく霊衣の軽装を身にまとったモードレッド。

 やたら機嫌のいい彼女に一抹の不安を感じながらも素直にそう返すと、

 

「よっし、そんじゃあアメリカ行こうぜ! ドライブに最適って言うしよ!」

「あ~、速度制限無いとか良く聞くよね。広いし気分転換になるか」

「そうそう! んじゃ、さっさと行くぞ! メンバーは揃ってんだ」

「え、メンバー?」

 

 疑問を浮かべるオオガミを余所に、モードレッドは強引に連れていく。

 

 

 * * *

 

 

「で、このメンバーって訳なの? 人選誤ってない?」

「気にすんなって! ハハッ! とりあえず今は楽しけりゃそれでいいってんだ!」

 

 赤いオープンカーが荒野を爆走する。

 豪快に笑うのは、運転しているモードレッドに、助手席のアシュヴァッターマン。

 後ろで頬を引きつらせているオオガミは、隣で呆れた顔をしているシトナイの手を必死で掴んでいた。

 

「ハハハハハ!! これはいいぜ! 風になるって感じだぁ! 金時の野郎も言ってたが、風を感じるってのは悪くねぇ!」

「お! 話が分かるじゃねぇか! そうだよその感覚! 走って味わうのとはまた別なんだよ!」

「分かるぜオイ! こりゃオレも運転したくなるじゃねぇか!」

「そりゃ次回だな! 今回の運転手はオレ様だ!」

「「ヒャッホウ!!」」

 

 そう叫びながら、テンションがどこまでも上がっていく二人。

 後ろは後ろで、

 

「はぁ……これ、どこまで行くの?」

「飽きるまでじゃない? そろそろ慣れてきた……」

「あれ、手を離しちゃうの?」

「いつまでも掴まりっぱなしでいるわけにもいかないし、流石にね?」

「そう? 私は全然構わないけど。お姉ちゃんっぽくない?」

「おっと。ここにもお姉ちゃん願望持ちがいたか」

「イルカ聖女とは違うけど……強制兄弟生成パンチなんてしないから」

「そうだといいなぁ」

 

 そう言って、遠い目をするオオガミ。

 すると、前から、

 

「あ、そうだ。そういや来る前にエミヤから届けもんがあってよ。こっちで食えってさ」

「あ? これ開けりゃいいのか?」

「おぅ。配ってくれ。オレは運転してっから流石にな」

「安全運転大事だわな。ほれ、受け取れマスター」

「ほいっと。おぉ? 流石エミヤさん! これはいい仕事!」

 

 渡された紙袋から出てきたのは、紙に包まれた、どこか馴染みのある感触。

 オオガミが目を輝かせながら開くと、

 

「何? あ、ハンバーガーだ。美味しそう。私も貰って良いの?」

「良いぜ。ただ、一人一つだかんな。二つ食ったらあとで殺す」

「うわぉ物騒。食べ物の恨みは怖いので返すね」

 

 そう言って、一人一つ取ってから前に返すオオガミ。

 隣を見れば、既にハンバーガーにかぶりついているシトナイがいて、それに釣られるようにオオガミもかぶりつく。

 

「んっ! んまいっ! このふわふわなバンズの奥にあるジューシーで肉厚なパテがうまいだけじゃなくて、それを引き立てる酸味の強いケチャップと甘味のあるピクルス! それをトロリと溶けたチーズがまろやかに包み込んでトゲトゲしてないのが飽きを感じさせそうにない! しかも食感を際立たせるレタスの量も多すぎず少なすぎず、更に大きすぎず小さすぎずのちょうどいい塩梅。料理の神はここに君臨せり! この荒野の風景と合わさってうまさ二倍、いや三倍だよこれは!」

「テメェマスター! わざとやってんだろそれ!」

「そう言う食レポって、刺さるよね。特に美味しい匂いの中だと」

「食い終わったら交代するか?」

「あぁチクショウ! オレが食い終わるまで預けてやらぁ!」

 

 そう言いながら、苛立たしさを表すように、モードレッドは更に強くアクセルを踏むのだった。




 実際オープンカーとか乗ったことないんですけど、物食えるような環境じゃないと思うんですがどうなんでしょ。まぁうちではシトナイが頑張ってることにしますけど。風避け的な。

 しかし夜中にこのメシテロは許されない。自分に刺さる……


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やっほー姫ちゃん(新しい呼び方やめて!)

「やっほー姫ちゃん」

「久しぶりに来たと思ったら新しい呼び方してくるの何?」

「おっと。なんか機嫌悪いみたい?」

 

 むすっとしている刑部姫に、オオガミは持っていたクッキーを差し出しつつ、こたつに入る。

 刑部姫は受け取ったクッキーを食べながら、

 

「これ、始めて見るね。新作?」

「いや、練習。グラスクッキーはまだうまくできないね。形が歪だもん」

「なるほど。でもまぁ、きれいなんじゃない? 姫は好きだけどな~」

「正直綺麗に作るの難しいんだよ。エミヤは普通に出来るけど、あれは熟達の職人だよ」

「まーちゃんにそこまで言わせるの?」

「いや、師匠だし」

「……師匠いっぱいじゃん」

「うん。おっきーは同人誌の師匠だから」

「不名誉!!」

 

 そう言って、深いため息を吐く刑部姫。

 

「まーちゃんはさ、そうやってポンポン師匠増やしていいと思ってるわけ? 師匠泣いてるかもだよ?」

「う~ん、どうだろう。師匠って言っても、スカサハとかレオニダスみたいな熱血系は気にしない気がする」

「まぁ、あれは参考にならないし」

「知識面での先生はロリンチちゃんだし、むしろ他の人にもどんどん聞けって感じ」

「ふむふむ。で、芸術は?」

「北斎さんは見て学ぶって感じだからね。参考にならない」

「それはちょっとわかる。次元が違うよあの人は」

「うん。まぁ、そんな感じ」

 

 そう言うと、一瞬固まったあと今にも泣き出しそうな顔になって、

 

「ね、ねぇまーちゃん? 誰か大事な師匠を忘れてない? 大丈夫? 本当にまーちゃんの師匠はそれで全員?」

「うん? 当然じゃん。師匠はこれで大体全員。おっきーは師匠ってよりもフレンドじゃん?」

「……ねぇまーちゃん。そのすごい手慣れてる返しは何? さては誰か他の人にもしたでしょ」

「おっきーからの信頼無さすぎるんだけど。なして?」

「日頃の行いだと思うよまーちゃん。で、相手は誰かな? 返答次第で離すけど」

「これに関しては珍しくおっきー初ですけど!? 考えてはいたけどしてないから!」

「あ、そう」

 

 詰め寄っていた刑部姫は元の場所に戻り、またサクサクとクッキーを食べ始める。

 その顔はいつもよりどこか赤く、照れているかのようだった。

 

「……あ~、今日はこれで帰るね。なんだか嫌な予感がするから」

「うん、ばいば~い。エウリュアレさんによろしくね~」

「それ殺されるやつ……どうして試作品を私に持ってこなかったん、だっ……て……」

「ん~? まーちゃんどうし……あっ」

 

 刑部姫の部屋の出口。そこには満面の笑みで立っているエウリュアレの姿があり、その笑顔を向けられているオオガミだけでなく、刑部姫も動けずにいた。

 

「ねぇマスター? 私のおやつはどこかしら」

「えっとぉ~……今から作るとかどうですかね女神様。超特急で作りますけど」

「ふふっ。それは楽しみね。グラスクッキー、楽しみにしてるわ」

 

 あ、そこまでばれてるかー……と呟いたオオガミは、笑顔を浮かべたままのエウリュアレに連れていかれ、残された刑部姫は、

 

「あっぶな。近付かないでおこ……」

 

 そう言って、引きこもりレベルを上げるのだった。




 エウリュアレ様はなんでもお見通し……凄いなぁ……


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なんでこんなにのんきなのかしら(肝心なときは動いてるけどね)

「はぁ……どうしてこいつはこうものんきなのかしら」

「肝心なときはしっかり動いているからいいんじゃない? 何事にも休息は必要よ」

 

 そう言って、オオガミに抱き着きつつ不敵に笑うエウリュアレと、占領されてどこか不満そうなメルト。

 すると、オオガミが寝返りをうち、そのまま腕の中にスッポリ入ったエウリュアレを抱き締める。

 それを見ていたメルトは、足だけをラムダのようなトゲの無い形にし、背中をくっつけて寄り添う。

 

「ふふん。不器用だから抱きつけないって言ってもね、こういうことは出来るの。バカにしないでちょうだい」

「あら、誰もバカになんてしてないわ。というか、なんでそう言うのを本人が起きてるところでしないの」

「白鳥が弱味を見せていいと思ってるわけ?」

「……手遅れじゃない?」

「ちょ、そういうこと言う!?」

 

 もぞりと動くオオガミ。

 二人はとっさに口を押さえ、息を殺す。

 そして、オオガミが起きないのを確認してから、

 

「もう威厳なんてほとんど残ってないんだから素直にアルテミス並みのデレデレになっちゃえばいいのに」

「絶対イヤ。お断り。あんな四六時中ベタベタしてるようなのにはなりたくないわ。オケアノスで見たんでしょ? あれと一緒にしないでくれる? というか、あんなののエッセンスが入ってるとか想像したくないわ……」

「……既に影響受けまくってるのに」

「う、嘘でしょ……!? 信じないわ。あんなになってるなんて信じないわ……!!」

「信じなくてもいいけど、証拠映像はBBが持ってるから」

「今すぐ壊しにいきたい……けど、対サーヴァント用の結界が張られてるから出れないのよね……」

 

 そう言って、扉を睨むメルト。

 エウリュアレは呆れたようにため息を吐きながら、

 

「驚くことにアビーの門も防がれてるのよね。不思議だわ」

「ここ、夜だけは要塞染みてるわよね……どれだけ狙われるのよ……」

「まぁ、人理最後は伊達じゃないし。それに、こんなに可愛いマスターですもの。皆欲しがるに決まってるでしょ?」

「皆って……誰かしらね」

「少なくとも寝ているうちが一番危ないのだから仕方の無いことよ」

「でも、オオガミに何かあったら結界も解除されるんでしょ?」

「イベントには無力だもの。仕方ないわ」

 

 どんな強固な守りもイベントの前には無力。

 そう思い頷くメルトは、

 

「その一瞬で色々仕掛けてくるヤツいるわよね」

「あれは狂人だから気にしちゃダメよ」

 

 ストーカー及び予備軍を思い浮かべながら、メルトは遠い目をするのだった。




 ストーカー及び予備軍が恐ろしすぎるんですよねぇ……小型カメラのオンパレード……恐怖ですよこれは。


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今日はどのような御用で?(お話だけでもいいじゃない)

「あらマスター。今日はどのような御用でございましょうか」

「今日は話に来ただけ。ある意味ここが一番静かだしね」

 

 そう言うオオガミに、首をかしげるキアラ。

 その視線は部屋の角にある監視カメラを見て、再びオオガミに戻る。

 その意図を察したオオガミは、

 

「あぁ、監視員(BB)はしばらくは戻ってこないよ。食堂にいたからね」

「貴方様の付き人はどうしたのでしょう。勝手に因縁をつけられると言うのも、悪くはないのですが、些か面倒ですので」

「アナを盾にしたけどいつまで持つかって感じ。でもまぁ、ゆっくり出来ると思うよ」

「……用意周到ですね?」

「まぁ、それだけキアラさんに会わせたくないみたいだけど」

「不思議なものですね。なぜ私だけ?」

「最強の変態だし」

「一側面だけでお決めになるのも如何なものかと……いえ、SE.RA.PHでの顛末は周知のことでしょうし、仕方ないのでしょう……」

「でも同じビーストのカーマはフリーって言うのも不思議だよね」

 

 適当なところに座りつつ、話を続けるオオガミ。その際に、手に持っていた紙袋をキアラに差し出す。

 キアラはそれを受け取りつつ、

 

「確かに不思議ですね……脅威は感じないのでしょうか」

「まぁ、概念戦争するなら、既に実績作っちゃった相手には勝てないから……その点キアラさんは素で強いしね。驚異としてはやっぱりキアラさんの方が上だよね。宗教の教祖とか、頭が相当良くないと出来ないし」

「そこを魅力ではなく驚異と捉えるのは流石と言わざるを得ないですが、サーヴァントとなった今でもそう思っていらっしゃいますか?」

「いや全く」

「……そうはっきり言われるのも複雑ですね」

 

 そう言って、キアラは話を変えようと、渡された紙袋の中身を取り出す。

 

「あら、こちらは?」

「キアラさんへのお土産。この前もおはぎの作り方教えてくれたし、お礼ということで」

「まぁ、それは嬉しいです。大事にいただくとしましょう」

 

 そう言って、箱に詰められたおはぎを眺めるキアラ。

 オオガミはそれを見て微笑みつつ、

 

「お茶も淹れる? 練習もしたいし」

「そうですね……お願いいたします。マスターの腕が鈍っていないか確認させていただきます」

「おぉっと。これは手厳しい……じゃあ精一杯やらせてもらうよ」

「試験のつもりで挑んでくださいね」

「抜き打ちテストも真っ青だね。合格目指して頑張るぞっ」

 

 ふふっ、と笑いながら、キアラはお茶を準備するオオガミをのんびりと眺めるのだった。




 久しぶりのキアラさん。なんだかんだ一周回ってまとも枠のような気がしなくもない変態……この人が普通に歩ける日は来るのだろうか。


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なんでアイツ、厨房立ってんだ?(今更な質問過ぎるぞ)

「というわけで、今日はパン作りです」

「いいから教えてください」

「さっさと教えてください」

「当たり強いなこの生徒」

 

 ジト目で当然のような顔をして言ってくるカーマとアナに、頬を引きつらせるオオガミ。

 だが、この二人に教えることで、遠くで笑いながら手を振っている二人の食問題を軽減できるなら、それはやはりやるべき戦いなのだと腹をくくり、

 

「それじゃ、やっていくよ」

「「はい、よろしくお願いします」」

 

 そうして、料理の授業が始まる。

 

 

 * * *

 

 

「なんでアイツ、厨房立ってんだ?」

「おいおいイアソン。もしかしてマスターの料理のスキルが妙に高いっての知らねぇのか?」

「え、マジかよ。知らなかったわ。マンドリカルド。お前は?」

「あ、え、オレっすか。まぁ、知ってたっすけど……」

「え、マジで知らなかったのオレだけ? おいおいそんな常識あるか普通……」

 

 そう言って、奇妙なものを見るようにオオガミを眺めるイアソン。

 ロビンは不思議そうに首をかしげながら、

 

「言っとくけど、マスターが持ってくる菓子は大抵手作りだぜ? 知らないだけで結構食ってると思うんだが」

「そうだったのか……いや、通りでいくら探しても食堂には無いはずだ……手作りなら生産も限られてるからな……」

「いや、大半をあそこの女神が食ってるからだが」

 

 そう言って、離れたところにいるエウリュアレを指差すロビン。

 イアソンはそれをぼーっと見ながら、

 

「は? なんだそれ。女神だからってなんでもしていい訳じゃないだろ」

「例外はある。このカルデアのエウリュアレは普通に厄介だぞ」

「あ~、オレも気付いたら死にかけてたことありますね……マスター関連には敏感っすよ」

「な、なんだよ……目が笑ってないんだが……本気か? 本気で言ってるのか? あんなひ弱そうな女神に?」

「まぁ、姉妹揃えばヘラクレスを完封するくらいには」

「宝具当たったら即死って考えればいいんじゃないっすかね」

「……オレのヘラクレスが負けるわけ無いだろ何言ってんだお前ら」

「オタクはオケアノスでやられたのを覚えてないんすか」

「はぁ? 偶然勝っただけだろ。ヘラクレスが正面から戦えば負けるはずがない」

「いや確かにそうだろうが、実際殴り倒してたからなぁ……」

「いやいや、あんな貧弱な女神風情がヘラクレスに勝てるわけ無いだろ。少し考えればわかることだろ?」

「いやまぁ、聖杯組じゃなきゃそう言えるんだがな」

「聖杯9個っすよ」

「……いやまだヘラクレスが勝つわ。証明してやる」

「あ、おいバカっ!」

 

 そう言ってエウリュアレに向かっていったイアソンは、ものの数秒で言葉だけでボロボロにされて帰ってくるのだった。




 イアソン様……エウリュアレ相手に耳栓程度の装備もなしに挑んじゃダメですよ……魅惑の美声は伊達じゃないのだ……


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チケットが配られるらしいわね(誰にしようかねぇ)

「ねぇマスター? 今回もチケットが配られるらしいじゃない。どうするの?」

「ん~……どうしようか」

 

 休憩室のソファーで、膝の上を枕にして寝ているエウリュアレに聞かれ、オオガミは考える。

 

「今のところ、攻撃面はわりと事足りてるんだよね……」

「じゃあ、防御面? ジャンヌでも呼ぶのかしら」

「その予定。まぁ、しばらく悩むと思うけど」

「そうねぇ……でも、いつでも召喚できる25騎だもの。深く考える必要はないと思うけどね」

「ステンノ様を強要した女神と一緒だとは思えない発言。一体何が……?」

「……関わり無いのだし、適当でいいじゃない。興味ないもの」

「なるほど……真理だね」

 

 すると、眠そうにあくびをするエウリュアレ。

 それを見たオオガミは、

 

「眠そうだけど、何かあった?」

「別に、何があるというわけではないのだけど、こういうのんびりとしたのもいいと思って。貴方は?」

「いつでも受け付けてるよ? のんびり時間最高じゃんね」

「ふふっ、そう言うと思ったわ。いつものことだもの。えぇ、そうやって私に合わせてくれるところが」

「合わせてるというより、合っているって気分だけど。相手に影響されてる節はあると思うんだ。人間だし、そう言うこともある。だからまぁ、無理に合わせてるわけじゃないよ」

「そうなのね。てっきり合わせているのかと思ってたのだけど」

「そんなわけないって。楽しんでやってる方が多いし」

「そう……ありがとうオオガミ。そう言うところが好きよ。それじゃあおやすみなさい」

「うん。おやすみ」

 

 そう言って、目を閉じるエウリュアレ。

 反対に、オオガミの笑顔は凍り付き、段々と赤くなっていく。

 すると、突然背後から、

 

「ごきげんようマスター」

「~~~~~ッ!?」

 

 声になってない悲鳴をあげながら振り返るオオガミ。

 そこには楽しそうに微笑んでいるステンノがいた。

 

「あら、そんなに顔を赤くして、いかがなさいました? あら、あら。どんどん赤く。美味しそうなトマトのように真っ赤ですね」

「い、いやいや、なんでもないですよステンノ様。いや本当に、何にも」

「ふふっ、その慌てよう、まるで告白でもされたようですね?」

「へっ!?」

 

 オオガミの反応に、一瞬目を見開くステンノ。

 だが、すぐに元に戻ると、

 

「そう、ですか……残念。私の出る幕はないみたい。まさか(エウリュアレ)が落ちるだなんて。いいえ、もう手遅れだったのかもしれないわ。えぇ、えぇ。それでは、私はこれで。また今度お会いいたしましょう」

「え、あ、うん……また……」

 

 よく分からないまま去っていくステンノに、ようやく落ち着いてきたオオガミは手を振り、

 

「……これは、殺されるかもなぁ……」

 

 そう言って、呆然と天井を眺めるのだった。




 ???? なんでこんなことになってるん?

 特に特別なこともないですけど、なんでこんなことになってるん?

 ????? よくわかんないけど砂糖爆弾なんだよこれはたぶん。


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あの二人何かあったんですか(昨日なんかあったらしいがな)

「……なんですかあの二人。何かあったんですか」

「ん? あぁ、昨日ちっとあったらしい。まぁ、マスターが頑なに口を割らんから詳細はわからんが」

「そうですか……いつもより三割増しでくっついてますね」

 

 食堂でそう話すカーマとノッブの視線の先には、いつもよりベッタリとくっついているオオガミとエウリュアレ。

 ただでさえいつもくっついているのだが、今日はエウリュアレのテンションがいつもより高く感じて、圧倒的に目の毒だった。

 

「う~む、本当に何があったんじゃろ。BB知っとるか?」

「あ、私です? いえまぁ、知らないこともないですけど……言ったら聞いた相手含めて記憶を失うまで殴り続けるって脅されてますけど、それでも聞きます?」

「遠慮しときます」

「言ったら儂が撃ち抜くわ」

「そっちから聞いてきたのにどうして脅されてるんでしょ……」

「日頃の行いだろ。吾知らんけど」

 

 容赦なく言葉のナイフを突き立て、ティラミスを食べるバラキー。

 BBはそれを聞いてどこか悲しそうにしながら、

 

「私、そこまでのことしましたっけ……」

「ルルハワ事件」

「エンドレス同人誌生活」

「あれは満場一致で良イベントだったでしょう!?」

「ん。まぁ、儂も大活躍だったしそれは納得じゃな」

「吾も大活躍だったしな。何より暴れられた」

「私の中ではただの小旅行だったんですけど。何もなかったんですが」

「カーマさんはいませんでしたしねぇ……」

「なんですか。妙な含みがありましたよね今」

「そんなことないですよ。えぇ、全く」

 

 そう言って、ノッブに淹れてもらった緑茶を一口飲むBB。

 すると、カーマの隣にやって来たメルトが、

 

「あの二人の状況を説明すればBBを退去させられるって聞いたのだけど」

「は? そんなこと誰も言ってないですけど」

「言ってた」

「言ってましたね」

「言っとったぞ」

「薄情ものですね!?」

 

 秒速で売られたBBは半泣きで抗議する。だが、誰もそこには触れず、二人はメルトに目を向ける。

 

「あら、意外と興味あるのね。じゃあいいわ。教えてあげる」

「や、やめてくださいってば!」

「無視して続きを」

「聞く耳持たんでいいぞ」

「BBに辛辣だな……吾別に興味ないのだが……」

「バラキーしかまともなのがいないってどういうことですか……!」

 

 嘆くBBに、しかし止まらないメルト。

 

「簡単よ。昨日休憩室で、寝かけてたエウリュアレがオオガミに『好き』だとか言って、その後エウリュアレが起きてから距離を取ってたのに、その事を思い出したエウリュアレが開き直って今に至るわ。ちなみにオオガミは未だに飲み込めてなくて笑顔が凍ってるわ」

「はぁ~……そうですかぁ……それ面白くないヤツじゃないですか」

「む。この前告白されたんじゃなかったのか……? 名前呼ばれただけだったか……? ふむ。まぁ、冗談だと思ってた可能性はあるな……」

「残念です……こんな情報でBBさんがお亡くなりになるな――――」

 

 ヒュンッ、と風を切る音がして、次の瞬間には後ろに何かが刺さる音がする。

 そちらに視線を向けてみれば、不思議なことに壁に矢が刺さっていた。

 

「……狙われてます?」

「儂もだなぁ……未だかつて見たことがないレベルの怒り顔なんじゃが。無理。逃げるわ」

「あ、ノッブズルくないですか!?」

 

 そう言って逃げ出したノッブだったが、食堂唯一の出入り口の前で後頭部を射ぬかれ、動かなくなる。

 カーマは瞬時に子供のサイズになり当たりにくくし、BBは邪神の力を使って門を開こうとするが、

 

「あ、あれ……? 開けないんですが……?」

 

 そう呟きながら視線をエウリュアレに向けてみれば、そこには笑顔でこちらを見ているアビゲイル姿が。

 周囲に目を向けてみれば、不思議なことにメルトとバラキーを除いた自分達とアビゲイル、エウリュアレ以外に誰もいない。

 そう、オオガミすらもいなかった。

 

「さて、それじゃあ刑は執行ね。メルトとバラキーは許すけど、残りは始末するわ。一週間はベッドの上よ」

「うっわマジギレじゃないですか。そっちの土台とか聞いてないんですけど……!」

 

 そう言いながら、BBとカーマは必死でその場から逃げ出すのだった。




 突然のホラー。ちなみに、ノッブ、BB、カーマが異界送りにされたタイミングは矢が飛んできた辺り。食堂では三人とエウリュアレが突然寝てアビゲイルが消えてる感じで。

 困ったら邪神のせい。強制睡眠と夢を繋げるのは大好きですよたぶん。アビーの邪神レベル上がってんなぁ


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マスター! 伯母上知ってる?(昨日から目覚めてないよ)

「あ、マスターじゃん。伯母上知ってる?」

「ノッブなら今も夢の中だけど」

「なにそれこっわ。え、昨日からじゃん」

 

 廊下で神妙な顔をする茶々。

 その後ろからアナスタシアが、

 

「あら、珍しいわ。マスターが一人で歩いてるだなんて。槍でも降るのかしら」

「そうじゃん。よく見ればマスター一人とか、天変地異の前触れ!?」

「一人でいるだけでそこまで言う?」

「言う言う。だってエウリュアレかメルトのどっちかはいるじゃん!」

「たまに人は違うけど、でも大抵誰かと一緒じゃない」

「ふむ……そう言われると一ミリも否定できないね?」

 

 そう言って、首をかしげるオオガミ。

 茶々は呆れたような顔で、

 

「まったくマスターったら。いつまでもエウリュアレとメルトがいると思ってちゃダメ! 女心と秋の空! ちゃんと覚えておくんだよ!」

「あら茶々。それ、どういう意味なのかしら」

「女の子の心は秋の空みたいにすぐ変わるってこと! 女神様だからって永遠に変わらないとか無いんだからね!」

「……その言葉スッゴい心に刺さる。何気ない散歩が俺の心を傷付けた……」

「マスター弱すぎ! こんなんでこれから先大丈夫なわけ? 茶々スッゴい心配なんだけど。んもぅ、頼りないなぁ」

 

 崩れ落ちたオオガミを見ながら、腕を組んで不安そうな顔をする茶々。

 アナスタシアはオオガミの前にしゃがんで、どこからか取り出した木の枝でオオガミの頬を突っつきながら、

 

「秋の空というのがどれ程変わりやすいのかは知りませんけど、私は近くにいてくれるだけで十分だと思うわ。貴方は違うのかしら」

「……あぁ、そうだよね……女神様からしたら一時の気まぐれ。刹那の出来事に過ぎないのかもだけど、だからこそ一緒にいれるだけがありがたいって言うのもあるのか……うん。どうしてエウリュアレがベッタリくっついてきてるのか分かった気がする。それじゃあ部屋に帰るね! また後で!」

「頑張ってねマスター!」

「いってらっしゃい」

 

 そう言って走り去っていくオオガミを見送る二人は、

 

「……伯母上死んでたりしない? エウリュアレって、最近照れ隠しで殺しに来てるイメージだし、寝てるメンバーがそう言うのを根掘り葉掘り聞き出そうとするメンバーなんだけど」

「気になるところだけど、私の直感が関わっちゃいけないって言ってるの。マスターのセリフでいくつか気になってるのだけど、それを聞いた瞬間殺されそうなのよね……」

「茶々も止めとけって、茶々の中のゴーストがささやくの……」

 

 そう言って、二人は大きなため息を吐くのだった。




 裏でお菓子難民になっている鬼がいることを、このときは誰も知るよしはないのだった……


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最近また私に出番が回ってきた(オレも働きっぱなしだな)

「……最近、また私に出番が回って来たな……」

「オレも出るようになってきたな……」

 

 そう言って、遠い目をするスカディと巌窟王。

 すると、

 

「お邪魔しまーす!」

「む? あぁ、イルカの」

「その覚えられ方は心外なんですが、まぁ、ジャンヌです。よろしくお願いしますね」

「あぁ、よろしく頼む……と、どうした。怖い顔をしているぞ巌窟王」

「……なんでもない。気分が悪いので失礼する」

「そ、そうか……うむ。ゆっくりするといい」

 

 そう言って、やってきたジャンヌと入れ替わるように出て行く巌窟王。

 スカディはそれを不思議そうに見ながら、ジャンヌを座らせ、

 

「あそこまで嫌悪感を出しているのは珍しいのだが……」

「思い当たる節があるような無いような……」

「解消できるならするに越したことはないが……察するに、難しいのだろうな」

「えぇ、まぁ……何故か因縁をつけられていまして。向こうから一方的に拒絶されているのでどうすればいいのか……」

「ふむ……反りが合わないと言うやつか。難しいものだな……」

「はい。まぁ、偶然にも私と彼は同じ編成に入ることはないでしょうけど。少なくとも、肩を並べて戦うというのは無いかと」

「そうか……まぁよい。無理をするようなことでもないからな。ゆっくり分かり合えればそれでいい。分かり合えずとも、無意味な衝突を減らせればそれで」

「そうですね。無理に改善を迫ったところで拒絶されるでしょうし。ゆっくりと、一歩ずつです。ありがとうございます」

「礼など別に……いや、受け取っておこう。こういうのは受け取った方がいいとメイヴが言っていた。礼を受け取るのも礼儀とかなんとか……」

「そうなんですか? 意外です。ルルハワではそんな気配見せませんでしたから……一介の村娘よりも、女王の方が含蓄のある言葉を言えますね……敵いません」

 

 そう言って、スカディに差し出されたお茶を飲むジャンヌ。

 すると、スカディは不思議そうな顔で、

 

「そうは言うが、お前も歴史に名を残す英霊だろう。私のような本来とは違う異聞帯ではなく、汎人類史に名を残す。つまり、お前は言葉ではなく態度で示したと言うわけだ。その偉業を。だから、その、なんだ。メイヴと比較するものではないと思うぞ?」

「……その、なんというか、スカディ様は、可愛らしいお方なんですね」

「む。それはどういう意味だ。メイヴにもよく言われるが、それは誉めているのか?」

「えぇ、誉めています。喜んでいいものですよ」

「そうか……それならばまぁ、よい。あぁそうだ。こちらの菓子も食べてみるといい。意外とうまいぞ」

「ほほぅ。これは中々のものですね……いただきます」

 

 そんな話をしながら、周回の時を待つのだった。




 ということでジャンヌです! いやぁ、これでアンリミテッド無敵ワークスが出来る……毎ターン無敵したかったんですよ……最近貫通と強化解除で突破されるらしいですけど。


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酷い目に遭いましたよ(三日も目覚めぬしな?)

「はぁ……酷い目に遭いました」

「まさか三日も目覚めぬとは思わなんだ。おかげで菓子のストックも切れて……」

「え、本当ですかそれ。ストックしてたと思うんですけど」

 

 そう言って、盛大にため息を吐くカーマ。

 バラキーは神妙な顔で頷きつつ、

 

「吾にも不思議だが、何よりも不思議なのはストックの半分近くに例の高濃度魔力が入ってたことだな。吾でなかったら生活に支障が出ていたに違いない……」

「どうして全部食べちゃうんですか! イタズラ用のお菓子まで食べられてるとか思いませんよ普通!」

「厳重に鍵がかかっていたが、それはまぁ、宝具でちょちょいと。よくわからん効果は解除すれば安全というわけだ」

「強化解除の悪用ですねそれは……! なんでトラップに強化解除が効くのか突っ込みたいですけども!」

 

 そう言って、悲鳴をあげるカーマ。

 だが、バラキーはいたって真面目な顔で、

 

「とりあえず吾の分が欲しい」

「……最近苦情が来ているのでバラキーの分は無しです。というか、当分お菓子は無しです。流石に倉庫の限界です。リソースは無限じゃないので。それとも、バラキーが調達してきます? それならすぐに作れるようになると思いますけど」

「……菓子が、無い?」

「……えぇ、無いです」

「……まったく無いのか……?」

「食べ尽くされましたから」

「……マスターは作っているが……?」

「あれは少量なので。比率で言えば2:8。マスターが2です。むしろ8割も使ってるのに三日で食べ尽くされるのは納得いかないんですが。自重するか材料を採ってくるかしてくださいよ」

「……吾、お菓子難民か」

「私が作れないですしね?」

「……そうか……」

 

 そう言って、絶望に染まった顔でうつむくバラキー。

 カーマはそれを申し訳なさそうな顔で見ていると、

 

「よし。決めた。吾ちょっと材料を採ってくる。やはり狩りをするべきだと思うからな。うむ」

「……何故でしょう。めちゃくちゃ嫌な予感がするんですが。何をする気ですか」

「何をと言われてもな、大体はダヴィンチに聞けば分かるだろう。ただレイシフトをしたところで、持ち帰ることは出来ぬだろうしな」

「行動力だけはありますね……まぁ、そうしてくれた方が助かりますけど。レパートリーも増やしたいですし。お願いしましたよ」

「うむ、任せろ。吾がただ菓子を食っていただけだと思わぬことだな」

「えぇ、ちょっとだけ期待してますね」

「ククク。あまりの活躍に恐れおののくがいい!」

「そうですね。気をつけていってらっしゃい」

「うむ。いってくる!」

 

 そう言って、バラキーは元気に出ていくのだった。




 はたしてバラキーは無事に帰ってこれるのか。待て次回!


 あ、邪ンヌ爆死しました。もうやんねー。


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子守り状態ですか?(何故か離してくれないんだよね)

「……子守り状態ですか?」

「分かんないけど昨日からずっと離してくれない。トイレの時以外離れてくれない」

「そうですか……うん?」

 

 いつも通りの食堂で、厨房の中から違和感に声をあげるカーマ。

 その視線の先は、いつもとは違い食堂から厨房を覗き込んでいるオオガミと、彼にくっついて離れようとしない、何故か嬉しそうなエウリュアレ。

 

「……トイレの時以外一緒なんです?」

「うん。ちなみに逃亡を図ったら先回りされてた」

「え、こわ……全力じゃないですか」

「ちなみにこの話をすると腕の力が強くなって苦しくなる」

「……これはあれですか。愛の女神として試練与えた方がいいヤツですか」

「一時的に離す手段はないですか」

「私、死にたくないので。だって二人とも、透明化しても互いを見つけるじゃないですか」

「まぁ、何度かイタズラされたしね?」

「それで対応できるのもどうかと思いますが、今は保留します。なのでまぁ、既に私にどうにか出来るレベルを越えてるんです。今も射殺しそうな目で私の事睨んでますし。別段マスターを取るつもりはないので落ち着いてもらえます?」

 

 カーマがそう言うと、腕にこもっていた力が抜け、なんとなく先程よりは優しい目になるエウリュアレ。

 オオガミは苦笑いをしながら、

 

「とりあえず、今はこんな感じ。二人きりの時以外全く喋ってくれないのがめちゃくちゃ怖いんだけど、それ以上にお菓子が作れないのが痛手。なんで、例の高カロリー爆弾なお菓子じゃないなら作ってくれるとありがたい。ちなみに例の高カロリー爆弾なら八つ裂きにするって言ってた」

「全く洒落になってないんですけど。やるって言ったらやるじゃないですか確実に。今の精神状態絶対摩耗しきってますよね。正直以心伝心で理解できるだけで喋ってない説ありますけど」

「……それだと精神死にかけが二人ってことになるけどそれでもいいのかな?」

「……医務室へいくことをオススメします」

「うん。今のところ全員に同じこと言われてる」

「じゃあなんでこっち来たんですか……言っておきますけど、厨房には入れさせませんよ。それに、今日の私はお菓子じゃなくて普通に料理です」

 

 カーマそう言うと、オオガミは首をかしげながら、

 

「あれ、倉庫の中身無くなってる?」

「いいえ? ただ、私が使いすぎてるので、今はバラキーを使って補填しているところです。まぁ、私のお菓子を9割食べているのはバラキーですし」

「なるほど……今度同じことをしてみるか……」

「そっちは少数だから元々足りてるじゃないですか……そう言うことをして暴動が起こる方が嫌なのでやめてください」

「むぅ……じゃあ、エウリュアレが飽きたらまた作り始めるかな」

「えぇ、そうしてください」

 

 そう言って、カーマはオオガミを追い返すのだった。




 可愛く表現しているが、要するに爆発寸前の爆弾状態のエウリュアレである。

 何故こうなったか? ギリシャは愛が重い。つまりはそういう事だろう。たぶん。きっと。おそらく。


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そろそろ周りの目が辛い(目を潰せば解決ね?)

「ねぇエウリュアレ? そろそろ周りの目が辛いんだけど」

「それなら全員の目を潰せば解決ね。ナイス私」

「う~んこれは引きこもるしかねぇな?」

 

 オオガミがそう言って、マイルームにこもって数時間。

 未だに離れようとしないエウリュアレを見て、メルトはため息を吐きながら、

 

「飽きないわね。いつまで抱き着いてるのよ」

「いつまでもこのままでいいのだけど。むしろ離れる必要あるかしら」

「とんでもないわ。とんでもなく見せつけてくるわこの女神。ちょっとオオガミ。いつまで放っておくつもりよ」

 

 メルトがそういうと、オオガミは死んだ魚のような目で、

 

「ふっ……助けを呼んでもみんな顔を背けるからね……対処は終わってたみたい……」

「先手はもう打たれてたのね……」

「失礼ね。引き剥がそうとするサーヴァント一人一人に丁寧に矢を刺しただけじゃない。それで諦める方がダメなのよ」

「……キアラは試したの?」

「……あの人が引き剥がすのを手伝ってくれると思う? 積極的にくっつけてきたよ」

「なんでエウリュアレ側なのよ納得いかないわ」

 

 そわかそわか……と言っていそうな彼女を思い浮かべ、そのうち蹴り殺すと心に決めるメルト。

 だが、それを聞いていたエウリュアレが、

 

「キアラに関しては何にもしてないわよ。むしろ何故か一人で盛り上がってたのだけど、なんでかしらね。何か企んでいるようには見えなかったけど」

「絶対何か企んでるでしょ……でももうビーストになるつもりはないみたいだし、そんな危険じゃない気もするけど」

「甘いわ。あれでいてやるときはやるもの。でも二人をくっつけてアイツに得なんて……」

「うん。得なんて、マスターが緊急で出れないくらいじゃ……」

「……それ以外無いじゃない」

「そういえば部屋を出て自由に散策してみたいって言ってたし、是非もないね?」

 

 オオガミがそう言うと、メルトは冷ややかな目でオオガミを見ながら、

 

「是非もなくないわよ緊急事態よどう考えても。まさか行かないとか言い出さないわよね」

「言い出したかったし実際行きたくない。別に暴れてるわけじゃなし。被害者出たら行くよ……」

 

 そう言うと同時、マイルームに響き渡るアナウンス音。

 その後に続くのは聞きなれた声で、

 

「のろまなセンパイにお知らせしま~す! 現在キアラさんが部屋を出て自由にカルデア内を歩いてるので至急連れ戻してください。現在数名犠牲になってるのでわりと緊急ですよ~。それじゃBBちゃんはシェルターにこもるのでがんばってくださ~い」

 

 再びアナウンス音は響き、通信が終了する。

 それを聞いた三人は、

 

「……おとなしく捕獲にいきます」

「えぇ、それが懸命よ」

 

 そう言って、三人はキアラを部屋に戻しにいくのだった。




 キアラさんはどうして外に出るだけで騒ぎを起こすのか……それは誰にもわからんのですよ……


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完全無欠のカルデア家の野望(メルトは城内で寝てるらしい)

「殿様! 久しぶりだな!!」

「やっほー森くん。今回もカチコミ担当よろしくぅ」

 

 春日山城の一画で、緩い挨拶を交わす二人。

 すると、森は首をかしげながら、

 

「殿様。歩きにくいんならそいつ引き剥がすか?」

「いや、このままでいいよ。むしろこのままにしておいて」

「まぁ殿様がそれでいいなら良いがよ……で、次はどこ攻めるんだ?」

 

 そう言って、エウリュアレから視線をそらしてオオガミに向けると、

 

「そうだね……軍備も整ってきたし、帝都そろそろ行っておくかな?」

「おっし! んじゃあオレを操ってくれたお礼をしなきゃだな! ハハハハ!! やってやろうぜ殿様!」

「任せとけ! そんじゃ、ノッブたちを集めてレッツゴー!」

 

 オッシャー! と叫んでノッブたちを呼びに行く森。

 それを見送ったオオガミは、

 

「まさかここに来てもくっついてるとは思わなかったんだけど」

「あら、残念だけど、これも一つの戦略なの。だってほら、こうやってくっついている限り、無茶できないでしょ? もちろん必要なら躊躇い無くするだろうけど、不必要に危険なことをしようとは思わなくなるって言うのは今まで見てきて知っているわ」

「……正直めちゃくちゃ効果的だなって、本人のお墨付きだね」

「ありがとう。分かってもらったところで、私は離れないけど。こうやって触れていると、貴方の体調が良く分かるもの」

「触れているだけで体調管理までされるとか画期的では? とても嬉しいけど正直ホラー」

「あら、女神に抱き着かれているのに不満そうね。腕の一本でも失っておく?」

「やめてください死んでしまいます」

「よろしい。存分に崇め称えなさい。その働きの分だけ愛してあげる」

「じゃあもう一生分愛されてるねこれは」

「……一年減らしておくわね」

「……それは何年間の中から?」

「それは教えないわ」

 

 そんなことを言っていると、

 

「おや、お二人とも楽しそうで。城攻めの話はまた後日でしょうか?」

「おっと景虎さん。普通に今から行くよ。残りのメンバーは?」

 

 そう言って振り向くと、眠そうにあくびをしながら近づいてくるノッブ。

 

「ふあぁ~……マジで行くんか? 儂眠いんじゃけど」

「今昼間だよ戦国大名。カルデア家の野望のためにファイト」

「えぇ~……儂行きたくないんじゃけど」

「じゃあ残っても構わないですよ。ただ、功績は私がいただきますので、貴女は一生足軽ですね」

「よしさっさと制圧するぞマスター。そろそろBBの声も聞きたくなってきた頃じゃ。どこかで油売ってるはずの弱小人斬りサークル拾って終わらせるぞ」

「よしよし。それじゃ、行きますか」

 

 そう言って、慌てた様子で走ってくるマシュを捕まえて出陣するのだった。




 雑にメルトで周回する私。メルトは想像以上に雑に戦っても勝てるから優秀……これが最先端の英霊か……


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いつまでそうしてるのかしら(無期限無制限で飽きるまでよ)

「ふぅ……雑に編成するのは構わないんだけど、ねぇエウリュアレ? その気の抜ける感じの、やめてもらって良いかしら」

「あら、邪魔かしら」

 

 そう言って、不思議そうに首をかしげるエウリュアレは、現在オオガミの両腕を掴み、さもオオガミが抱き締めているかのようにしてオオガミを拘束していた。

 

「あのね、部屋の中でするのは構わないわ。誰も見ていないもの。でも、外でそれをするのはどうかと思うの」

「……いつも通りって言われるのだけど」

「だとしても、よ。何より、根本的にいつもより過剰でしょうが」

「むぅ……流石にメルトは誤魔化せないわね」

「待ってエウリュアレ。そもそも誰も誤魔化せてない」

「えぇそうよ。他のサーヴァントと一緒にしないで。私まで誤魔化せるわけないもの」

「さては聞こえてないなこれ。ノリノリだよこの二人」

 

 呆れるオオガミを無視しながら、エウリュアレは真剣な顔で考えつつ、

 

「このままじゃ私が過剰に接してるのがバレちゃうわね……」

「最初からバレてるしカーマとか一番最初に突っ込んでたでしょ」

「ふふっ、残念だけど、たった一つの手段を除いて対抗する術はないわ」

「いやもう手遅れなのだが?」

「そんな……一体どんな方法があるって言うの?」

「律儀に聞くけとなんとなく想像できるし出来るなら遠慮したい」

「そう、簡単なことよ。私にも抱きつかせなさい!」

「「な、なん(です)って!?」」

 

 驚く二人。何故かドヤ顔のメルト。

 オオガミはそこはかとなく想像がついていたが、何より想定外だったのはメルト自身が言ったことだった。

 

「メルトが自分からそんなこと言うとか……一体何があったんだ……」

「別になにもないわ。ただ、エウリュアレが随分と気に入っているようだから、楽しいのかと思って。今さら私一人くらい構わないんじゃない?」

「いや流石にこれ以上は重量オーbぐふっ」

 

 鋭く突き刺さるエウリュアレの肘。まるでハンマーのようにオオガミの腹部を打ち抜き、しかし両腕はしっかりと押さえることで苦悶の表情のままその場に立たせる悪魔のような女神の所業。

 そんなオオガミには目もくれず、エウリュアレは残念そうな笑顔を浮かべると、

 

「仕方ないわね。そんなことを言われたら断れないわ……」

「嘘だよね。昨日ノッブが同じ脅し方をしたら全力で脅し返してたよね。目の前でやってtごふっ」

 

 致命的な鈍い音が体内から聞こえたオオガミは、しかし根性だけでその場に立ち続ける。

 倒れれば誰よりも先にエウリュアレが何かをしてくると言う予感がするため、わりと必死だった。

 

「それじゃあ、そういうことで」

「えぇ、そういうことで」

 

 どうやら意見は取り入れられないようだ。と思うと同時に、メルトが消え、背後から衝撃が来る。

 多少よろけたもののなんとか踏みとどまり、そして、

 

「それじゃあ、しばらくよろしく」

「なんで揃いも揃ってこういうことしてくるんですかね」

 

 前後を取られ、オオガミの逃げ場はなくなるのだった。




 エウリュアレの暴走はついにメルトにも影響を及ぼす……大体エウリュアレが嫉妬心を煽るのがいけないという説もあるが、真相は謎に包まれている。


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確実に悪化してますね(留まるところを知らないね)

「……悪化してますね」

「うん。超悪化してる」

 

 呆れた顔で、くっついているエウリュアレとメルトにため息を吐くカーマ。

 もう見慣れてきている自分が嫌になってきているが、実際いつも通りなのでぐうの音も出ない。

 

「それで? 今日はどうしたんですか」

「特に用はないけど……まぁ、呼んだだけ。バラキーもいるし」

「……どっちかというと、バラキーの方に用があったわけですか」

「そうともいう。でもカーマを呼んでおくと大人しいので呼んだ」

「とても納得いかないんですけど。何ですか。イタズラすればいいんですか」

「イタズラはノーセンキュー。というより、エウリュアレとメルトが先制攻撃していく」

「理解できない説明をどうも。無敵ですかこの人」

「少なくとも女神バリアがあるうちは」

「そうですか……というか、貴方自身が一番順応してません?」

「むしろこれだけくっつかれて良く理性保ってると褒めてくれません?」

 

 既に半泣きのオオガミに、どこか同情を含んだ顔になるカーマ。

 だが、囲んでいる女神達の目が怖いため、咄嗟に目を逸らす。

 

「それで、私に用はないんですよね。バラキーの周回が終わったら帰っていいですか?」

「あぁいや、カーマはカーマで役目あるから。というか、カーマ自身も周回要員だよ」

「……本気で言ってるんですか」

「冗談で言う必要ある?」

 

 そう言われて、苦い顔になるカーマ。

 すると、エウリュアレが、

 

「どちらにしろ二人とも連れ回すのは確定してるんだから諦めなさい。大丈夫。後衛はピクニックだもの。お弁当におやつにレジャーシートは完備よ」

「いやその心配はしてないです。というかそんなことしないでください遊んでるんじゃないんですよ?」

「あら……最近みんなやってると思ったのだけど……」

「後衛ピクニックは基本では……?」

「周回の常識よね……?」

「えぇ……? そんな感じなんですか……?」

「大体そんな感じ」

「……このマスターにしてこのサーヴァント達あり、って感じですね。なんか納得しました」

 

 呆れたように首を振り、三人を見るカーマは、

 

「それじゃ、行くときに呼んでください。それまで適当にしてます」

「はいはい。また後でね~」

 

 そう言って、どこかに去っていく。

 残された三人は、

 

「……とりあえず見回り?」

「殿自ら見回りとかどうなってるのかしらね」

「まぁ、まずは足元からってことで」

「暗殺とかされないし大丈夫よ。たぶん」

「怪しいなぁ……!」

 

 そんなことを言いながら、場内を散策するのだった。




 ついに朝投稿してますよこいつ! ヤバイですね!!


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最近マスター達が構ってくれないわ(吾にどうしろと)

「むぅ……最近マスターさんもエウリュアレさんも構ってくれないわ」

 

 そう言って、頬を膨らませるアビゲイル。

 バラキーは串団子を食べながら、

 

「まぁ、それは仕方がないというかなんというか。吾としてはひたすらに面倒だと思うのだが、カーマ曰くあれも『愛』だそうだ。愛とは何か、等と聞いても、カーマにははぐらかされるからな。吾には預かり知らぬところよ」

「そう……じゃあカーマさんなら何か知ってるかしら」

「さてな。カーマは甘味を探しに行くと言ってどこかへ行ってしまったからな。どこにいるのかもさっぱりだ」

「そんな……じゃあ私はどうすればいいのかしら」

「何もせずともよいと思うが……」

 

 そう言って、バラキーがアビゲイルに視線を向けると、どこか暗い顔をしているのに気付く。

 

「――――そうだな。吾と一緒に茶屋巡りでもするか。マスターから貨幣は貰っているから、問題なかろう」

「意外とちゃんとしているのね。てっきり鬼らしく略奪とか言うのかと思ったわ」

「……それをしたら殺されかけてな……以来やってない。反省しないとか言ってる場合じゃない……吾、()()()()の恐ろしさを身をもって体感するとか思わなんだ……羅生門のトラウマが蘇る……」

「……良くわからないけど、とにかくとんでもないのはわかったわ。何をされたのか聞かない方が良さそうだもの」

「くはは。知らぬ方が良いこともある事を知ってるなら問題なかろう。うむ。様々な人間と接しているうちになんとなく吾も変化している気がするが、あえて気にするまでもないな。少なくとも今の吾は変わらぬし」

「そうね。今のままでいいと思うわ。バラキーが悪い人になったら、私、耐えられそうにないもの」

「……吾、別にいい人でもないと思うが」

「そうね。そのままのバラキーでいてほしいわ」

 

 そう言うアビゲイルに、何か不穏な気配を感じたバラキー。

 そして、ため息を吐くと、

 

「吾はなりたい吾になるだけだからな。うむ。小難しい話をしすぎて吾頭が痛くなってきた。何か食わねばだな。うむ。行くぞアビゲイル。吾と共にいざ新たなる甘味を求めて!」

「おー!」

 

 そう言って、元気良く二人は立ち上がり、美味しそうな店を探して歩くのだった。

 そんな二人を、少し離れたところから見ていたカーマは、

 

「……これ、同じことをしてますし、素直に一緒に行けば楽だったんじゃ……あぁいえ、でも、それだとサプライズにならない……いや待ってください。そもそもサプライズする必要なくないです……?」

 

 そう呟きながら、悶々と悩んでいるのだった。




 最近達観しつつあるバラキー。もっと見た目相応の事言って……?


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久しぶりの一人かな(儂来ちゃったわ)

「ふぅ……ようやく一人かな」

「む。そりゃすまなんだ。儂が来たから一人じゃないわな」

 

 見晴らしのいい天守で夜空を眺めているオオガミに声をかけるノッブ。

 オオガミは苦笑いをしながら、

 

「まぁ、ノッブなら大丈夫」

「それどういう意味……あぁいや、言わんでいい。そこまで儂も無粋じゃないからな」

「うん。じゃあ黙っておく。それで、ノッブは何の用?」

「ん~……まぁ、昼間買っておいた団子でも食おうと思ってな。ういろうは先に食ってしまったし」

「景色のいいところで食べようかって?」

「そうそれ。ここが一番見晴らしが良いからな。星見には最高じゃろ」

「分かる。それに、この時代は現代と違って人工の明かりが少ないからより一層明るく感じるよ」

「おぅ。そうじゃな。こんな綺麗な夜じゃし、流れ星とかあるかもな。てきとーな願い事でも考えておいてもええじゃろ」

「……てきとーな願い事ねぇ……」

 

 そう言って、ぼんやりと星を眺めるオオガミ。

 ノッブはため息を吐くと、真剣な顔になり、

 

「……何かあったか?」

「……いいや、なんにも」

「……そうか。ならこれでも食っておけ。気は紛れると思うぞ」

「じゃあもらう。うん。こしあんか」

「うむ。大層人気の甘味処でな、買うのも一苦労じゃった。途中バラキーやアビゲイル、カーマを見かけたが……うむ。カーマはなんか尾行してたな……あやつ気配遮断とか無いからわりと必死のようだったが」

「カーマは一人で甘味探しに旅に出たと思ってたんだけど、尾行とかしてたの……? 混ざればいいじゃん……」

「ま、そうなんじゃけどね。それで、そんなマスターに質問なんじゃけど」

「ん? 何?」

「いや、素朴なもんなんじゃけど、あの二人を離した気分はどんな感じか聞いておこうと思ってな」

「……気付いてたか」

 

そう言って、令呪が二画減っている手をヒラヒラと振りながら、ノッブに向き直る。

 

「まぁ、気分としては、体感3割くらい肩の荷が下りた感じ。後物理的に体が軽い」

「3割かぁ……儂の読み物よりも重かったな」

「抱きつかれているのは確かに嬉しいんだけどさ。流石に長い」

「目立ってたしなぁ……儂もあれは笑った。その後死にかけたけど」

「まさかあんなに目を覚まさないとは思わなかったけどね」

「儂一番最初に死んだんじゃけどねぇ。まさか再スタートするとは思わんじゃろ。夢は巡るよいつまでもってな。儂ビックリ。あれ実質特異点じゃったよ」

「そんな特異点行きたくないんだけど」

 

 そんなことを言って笑い合う二人。そして、

 

「で、どれくらいで帰ってくる?」

「明日の朝には帰ってくるんじゃないかな。それまでは自由」

「うはは。その後が目に浮かぶわ。死なんようにな?」

「殺されかけたら助けてね?」

「そのときはな。んじゃ、今日は遊び倒すとするか」

「こんな暗い夜に何をするってんですか」

「そりゃまぁ……寝るか」

「解散じゃんね。まぁいいけど。おやすみ~」

「おぅ。おやすみ。息抜きは適当にするんじゃぞ~」

 

 そう言って、二人は別れるのだった。




 オオガミ君、女神に張り付かれて何日経ってたんでしょ。大変だなぁ……


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お二人はいつまでいるんですか(気の向くままに)

「それで、お二人はいつまでいるんですか」

「ん~……どうしようかしらね」

「今は帰ってもそんなに喜ばれなさそうなんだもの」

 

 茶屋で大福を食べながらそう言うエウリュアレとメルトに、カーマは呆れた顔でため息を吐く。

 

「嫌われてる訳じゃないんですから戻ってもいいんじゃないですか?」

「嫌われてなくたって、令呪まで使われたら流石にすぐ戻る選択肢なんて無いわよ。もうちょっと遊んで帰るわ」

「私は別に、すぐ帰っても良いのだけど……どこにいるのか知らないのよね」

「そうですか……まぁいいですけど。それで、どうするんです? 食べ歩きにしても資金はあるんですか?」

「あら、私が持ってるに決まってるじゃない。マスターの資金は私のものだもの。むしろあっちの方が大変じゃないかしら」

「……今ごろ大騒ぎですよ確実に」

 

 カーマは今ごろ嘆いているだろうオオガミを想像して内心笑いつつ、

 

「それじゃあ、しばらくは食べ歩きで?」

「ふらふらとしながらそのうち帰るわ。その頃には向こうも探し始めるでしょ」

「随分と余裕ですね……」

「余裕もなにも、そうしないはずないもの。それに、私たちがいて休めないのなら、今のうちに休んでもらうだけよ」

「今のうちに取られるとか考えないんですね」

「……私以外の魅了が効かないのに心配する必要があって?」

「あ~……心配する要素皆無ですね。というか、魅了が効かないとか初めて聞いたんですけど……というかそれ、私のも効かないんじゃ……」

「試してみれば?」

「……今度そうします」

 

 余裕の表情の理由に納得したカーマは、空いた皿を片付けて貰いつつお茶を飲み、

 

「そういえば、どうしてバラキーじゃなくて私の方に来たんですか?」

「あぁ、それはあれよ。強制帰還させられないようにね」

「アビゲイルがやってくるからって言って、わざわざ隠れたくらいだもの。悪気はないと思うけど、今だと悪手ね」

「あぁなるほど。意外と御しきれてないんですね。てっきりエウリュアレさんならやっているものかと」

「手に終えなくなってきている部分はあるからなんとも言えないわ。でもまぁ、かわいいものよ?」

「……どうなっても一生言ってそうですね」

「エウリュアレにはゴルゴーンっていう前科があるから。実際に言うわ。死の間際くらいに」

「ちょっと。何ふざけたこと言ってるのよ」

「大体あってるじゃない」

「それはそれ、これはこれよ」

 

 そう言って、ワーキャーと言い合いになる二人。

 カーマは楽しそうに笑いながら、

 

「これはこれで楽しそうですね」

 

 と言って、眺めているのだった。




 急いで帰らない焦らし戦法。オオガミは不安になる。


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帰ってこないんですけど(何かあったのかもですね)

「意外な事に、帰って来ないんですけど」

「反省してるのかもしれんぞ?」

「愛想尽かしたんじゃないです?」

「地味にあり得そうなのやめてよ……」

 

 そう言って落ち込むオオガミ。

 ノッブは首を傾げながら、

 

「いや待て。BBお前何時からここにいる?」

「センパイが令呪を使ったあたりで来ましたよ?」

「儂が見てなかっただけか……」

「えぇ、まぁ。そもそもこの城には近付かなかったんですけどね」

「うん? 何故じゃ?」

「そうですね……正確には近付かなかったというよりも、近付くような用事がなかったっていうのが正しいんですけど、私、観光に来ただけなんですよねぇ。そしたら案の定森さんに見つかって斬りかかられたのでかるぅ~く反撃して連れてきて今って感じです」

「……要するにうっかり目立ったから逃げ込んできたと」

「納得したくないけどそう言うことですね」

「勝蔵はなぁ、そう言うとこあるからなぁ……まぁ、お主が不審者なのは同意じゃけどね」

「えぇ~……なんでですか。BBちゃん、至極マトモだと思うんですけど。不審者じゃないですよ」

「まぁ、一般人には見えないよね」

「溢れ出る不審者感」

「無慈悲……!」

 

 しくしくと泣くBB。

 だが、二人とも気にしている様子はなく、

 

「さて、森くんの様子でも見てくるかな」

「儂もついていくぞ」

「清々しいまでの無視ですね。逆に惚れ惚れします」

「逆ってなんだ逆って」

「そこは掘り下げないでください」

「面倒なのには関わらんのが吉じゃし、是非もないよね!」

「誰が面倒ですか失礼ですね」

「認めてるじゃん」

「しまった誘導尋問でした!」

 

 悔しそうにするBBに、オオガミはため息を吐くと、

 

「ねぇBB。エウリュアレ達の情報持ってない?」

「あれ、それ聞くんですか?」

「当初は聞くつもりなかったけど、気分が変わったの。で、知ってる?」

「まぁ、噂くらいは。帝都からここに向かって旅をしてる、偉い美人の女性二人組がいるってくらいですが。今どこら辺かまではさっぱり。でもまぁ、心配しなくてもそのうち帰ってくると思いますよ?」

「それならいいんだけどね……」

「まぁ、本人達は楽しんでるでしょうし、いいんじゃないですか? だっていつも通り財布はエウリュアレさんが持ってるんでしょ?」

「……えぇ、まぁ、はい。エウリュアレが持ったまま行っちゃったんで今自前資金は無一文ですね」

「ですよね。でもまぁ、ノッブの給料を天引きすれば豪遊し放題なので今から遊びに行きましょう」

「なるほど?」

「横暴すぎるじゃろそれは!!」

 

 そんなことを言いながら、三人は城を降りていくのだった。




 食べ歩きしてるとは露知らず。でもあの二人は絶対噂になりますって。


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喧嘩ってするのかしら(するに決まっているだろう?)

「そういえばバラキー。マスターとエウリュアレさん達って喧嘩するのかしら」

「……いや、するが」

 

 不思議そうに聞くアビゲイルに、平然と返すバラキー。

 だが、アビゲイルはさらに不思議そうな顔になると、

 

「でも、見た覚えがないのだけど」

「喧嘩するときはわりと分かりやすい。エウリュアレはいつもの余裕が微塵もなくなっているし、マスターは生気のない顔をしているからな」

「まぁ。極端なのね」

「うむ。ただまぁ、最近は隠すのがうまくなって、分かるかは怪しいところだな」

「そう……じゃあ、今はどうなのかしら」

「それ吾も知ら……ん?」

 

 質問してくるアビゲイルの顔を見ると、遠くを見て指差していた。

 その先にいるのはエウリュアレとメルトで、何かを話しているようだった。

 

「むむ。マスターと一緒じゃない……?」

「えぇ。あの状態だったのに自分達からマスターの近くを離れるとは思わないのだけど……」

「ふむ……あぁ、それで『喧嘩をするのか』に繋がるわけか」

「そう。だって見たことないもの」

「そうだな……吾から見れば喧嘩ではないと思うのだが……聞いてみれば解決か」

「それは面白くないと思うの。ちょっと考えましょ?」

「……吾別に興味ないのだが……」

「なんで来たかを考えるゲームよ。勝てば……そうね。お団子三つでどうかしら」

「勝負なら受けざるを得ないな……吾も団子三つだな。よし。では考えるとしよう」

 

 そう言って、二人はエウリュアレ達を視界に留めながら考える。

 

「まず、吾らが最後に見たときは離れそうになかったな」

「えぇ。ベッタリだったもの。あれで離れるわけないわ」

「だが、今は二人でいると」

「そうね……って、あれ? カーマさんも一緒?」

「む? 本当だ。一緒だな……むぅ?」

 

 人影の中から出てきたカーマは、エウリュアレとメルトに向かって、ため息を吐きつつ何かを言っていた。だが、二人は首をかしげながら何かを言い、それを聞いたカーマが更に肩を落とす。

 

「……『食べ歩くのと帰るのどっちが優先なんですか』『食べ歩きに決まってるでしょ?』だな。吾の読み的に」

「え、バラキーそんなことできたの? ビックリだわ……」

「読唇術というやつよ。奇襲をするときには使える手段でな。遠くの人間の口の動きを読んで話を合わせるなど容易いことよ。まぁ、酒呑は何も考えず蹂躙するのだが……」

「……バラキーも大変なのね」

「酒呑がいたのだから問題ない。吾が失敗しても酒呑は解決してくれるからな。うむ。酒呑すごい」

「そう……私にはバラキーの方がすごいように感じるけど、今はいいわ。それで、お二人は食べ歩きをしているのね?」

「うむ。それに、帰るつもりでもいるらしい。カーマがそれをいっているということは、おそらく意図的ではないと見るな」

「ということは、敵の罠かしら?」

「吾は令呪だと思うが……どうなのだろうな」

「どちらにせよ、今は帰っている最中ということかしら」

 

 確認するようにアビゲイルが聞く。

 バラキーはそれに対してニヤリと笑いながら、

 

「うむ。ということで、吾は『令呪で飛ばされ帰っている最中』と見た。アビゲイルは?」

「私は、『敵に引き剥がされてとりあえずお城に戻る最中』だと思うわ。それじゃあ聞きに行ってみましょう!」

「うむ。おっだんごおっだんごたっのしっみだ~♪」

「もう勝ったつもりでいるの?」

 

 そんなことを言いながら、二人はエウリュアレ達のもとへ駆け出すのだった。




 どこかで喧嘩したことがあるような無いような。覚えてないくらい昔の事かもしれない……

 でもまぁ、あの二人は喧嘩して離れた直後くらいからめちゃくちゃ動揺してそう。


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帰ってくるって?(食べ歩きに飽きたらだそうです)

「帰ってくるって?」

「えぇはい。さっきアビゲイルさんから手紙が来まして、食べ歩きに飽きたら帰ってくるそうです」

 

 BBの報告を聞き、大きくため息を吐くオオガミ。

 ノッブはそれを見て、

 

「なんだかんだ心配なんじゃな」

「いや、確かに自分が追い出したけど、根本的に誰であろうと心配なものは心配だよ。例え大丈夫だって思っててもさ」

「まぁ、信頼するのと心配しないことに関連性はないからな。まぁ、安心できたならいいじゃろ。で、まじん戦線はどう攻めるんじゃ?」

「手近なところからちぎっては投げちぎっては投げで行こう」

「雑じゃな」

「嫌いじゃないですよそう言うの。雑に制圧される方はたまったものじゃないですけど、正直戦いは数ですし。いくらサーヴァントが一騎当千と言っても、私たちもサーヴァントですし問題なしです」

「儂雑にやるにしても入念に準備したいんじゃけど」

「まぁ、まずは相手を見てからかな」

 

 そう言って、オオガミはBBに視線を送ると、BBが地図を広げる。

 ノッブはそれを不思議そうに見て、

 

「なぁマスター。BBの立場ってどうなっとるんじゃ」

「兵士ユニットB」

「儂らと同列じゃね? 家老は何しとるんじゃ」

「マシュ・家老・キリエライトは石が溶けて消えたショックで寝込んでる」

「……十割貴様のせいなんじゃが」

「全く否定できない」

 

 そういって頷くオオガミに、ノッブは頭を抱える。

 だが、そんなノッブには目もくれず、オオガミは地図を眺めると、

 

「現在地が春日山城で、一番近いのが?」

「ん~……他勢力も考えたら小田原周辺を先に潰しておくべきじゃろ。面倒じゃし。協力されたら目も当てられんからな」

「魔王城付近はちょっと放置しても良いかなって感じですね。ローマ帝国とか、尖りすぎてて怖いです。」

「うん。こっちも触れたくない。でも厄介だから早めに潰しておこう」

「ローマは完成すると凶悪だから早めに潰すに限る。異議なし」

「じゃあ、小田原からローマに向かい、七尾城に寄ってここに帰ってくる感じでいいですかね」

「長旅だなぁ……」

「兵の疲弊の方が早いじゃろ……」

「少数精鋭ですか?」

「儂らが行ってさくっと片付けるのが一番だと思うんじゃが」

「……それもそうですね。それじゃあさっさと始末して帰りましょ。私おしるこが食べたいです」

「それ良いな。儂も作って貰うか」

「成果次第で考えようか」

「よし。全力でやるか~」

「BBちゃんの素晴らしさに震えてくださいねセンパイ」

 

 そう言って、やる気の二人と一緒に突撃するのだった。




 我らが技術部が負けるわけないんですよ! 頑張れ技術部!!


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帰るつもりあります?(私の足で帰るとは言ってないわ)

「……帰るつもりあります?」

「何言ってるの。確かに帰るって言ったけど、私から動くわけないでしょ」

「そうなの? てっきり春日山城に戻るのかと思ってたのだけど」

「体力無いから却下よ。目指すは日光よ。温泉卵でも食べながらのんびり待つの」

 

 そう言って、意気揚々と歩くエウリュアレ。

 カーマはそれを見ながら、隣のバラキーに、

 

「日光って、温泉あるんですか?」

「吾の時でもあった……と聞いたな。風の噂でしかないが。湯治に行く者もいたというのだから、おそらくあると思う」

「そうですか……じゃあ温泉はあるんですね。時代が違うとかならないんですね?」

「日光など吾も行ったこと無いから知らぬ……生まれは越後だし、ほとんどは大江山で暮らしていたからな……」

「そうなんですか……じゃあ東の方ではただのバラキーなんですね」

「その通常じゃない吾がいるような言い方はやめろ。吾、バーサーカーとランサーしかないからな?」

「有能バラキーを見るのはもう少しあとみたいですね」

「吾実はバカにされてる……?」

 

 いやまさか。と呟きつつも、真剣な顔で悩むバラキー。

 カーマはそれをスルーして、

 

「アビゲイルさん。マスターから返事来ました?」

「来たわ。小田原周辺を制圧しがてら探すって」

「周辺って……日光はかなり遠いと思うんですけど」

「サーヴァントならスパッと行けるわ」

「他の兵はどうするんですか……」

「……確かに。サーヴァントだけなら問題ないけど、マスターを守るためには大事よね……じゃあ、時間かかっても仕方ないわ」

「……一応日光にいるとだけ伝えておいてください」

「えぇ。言っておくわね」

 

 そう言って、門の向こうから紙とペンを出して、書き始めるアビゲイル。

 器用だなぁ。と見ながら歩いていると、

 

「そういえばカーマ。現代には温泉まんじゅうっていうのがあるらしいんだけど、今もあるかしら」

「知らないですよ。というか、今の時代とマスターの時代の温泉まんじゅうの味はかなり違うと思うんですが」

「……それもそうね。じゃあ、期待少なめで行きましょうか」

「期待が低いほど旨かったときは格別だからな。分かる。吾にも分かる」

「えぇ……いえ、まぁ、楽しいならそれでいいんですけど……」

 

 そう言って肩を落とすカーマに、メルトは、

 

「保護者役も大変そうね」

「……代わります?」

「絶対にイヤ」

「ふふっ……力強い拒否をどうも。殴っていいですか?」

「オオガミにツケで」

「分かりました。合流したらマスターを一発殴っておきますね」

 

 容赦のない理不尽がオオガミに降りかかるのだった。




 バラキーの出生は諸説ありますけどとりあえず越後で。マテリアルに出生があったら教えてくださると幸いです。


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温泉はいいわね(マスターはどうしようかしら)

「ふぅ……温泉いいわね。またどこかにあったら来ようかしら」

「いいわね。でもオオガミはどうしましょうか……」

「置いてきても大丈夫でしょ」

「珍しくエウリュアレさんが雑ですね」

 

 そんなことを話していると、バラキーが何かに気付く。

 

「ん。そろそろか?」

「え? あぁ、そうみたいね。来たみたい」

「なんか二人で通じあってるように見えますけど、おおよそあれですね。マスターが来たって感じですか」

「そういうこと。まったく、温泉から出たばっかりなのに」

「でも距離あるんでしょ?」

「残念だけど、BBの範囲内。私よりもバラキーの方が先に反応したもの」

「流石エウリュアレさん。ご名答です!」

 

 そう言って、当然のように門から現れるBBとオオガミ。

 エウリュアレは他に出てこないことを確認して、

 

「あら、ノッブ達は?」

「とりあえず軍の指揮をノッブに任せてきたから、放置。無理そうなら助けに行く感じで」

「そう。お疲れ様」

「うん。ありがとう」

 

 そう言って、一拍。

 そして、先程までの顔とはまるで違う満面の笑みを浮かべながら、着ている浴衣をアピールしつつ、

 

「どうかしら。似合っていると思うのだけど」

「最っ高。これ以上無いほどに良し。それと、髪型がポニーテールになってるけど、自分でしたの?」

「いいえ? カーマにしてもらったわ。最初は結ばずに流していたのだけど、温泉卵を食べるときにね。『そのままだと食べにくそうだから』って言ってやってくれたわ。流石バラキーの保護者」

「エウリュアレ? 子供扱いされてるけど怒らないの?」

「面倒なことをやってもらえるなら気にしないもの」

「あぁうん。そうだったね。忘れてた」

 

 もはや慣れてしまったエウリュアレの態度に、オオガミは苦笑いをしながら答える。

 エウリュアレは嬉しそうな笑みを浮かべつつ、

 

「それで、私たちを引き離した気持ちはいかが?」

「うん。密着のし過ぎは逆に良くないね」

「えぇ。それに関しては私とメルトも同意するわ」

「本気で無理。どうしてあの時大丈夫だったのかまるで分からないわ。正気を失ってたんじゃない?」

「エウリュアレさんはともかく、メルトさんまで同じくくっついてたのはビックリだったわ」

「吾は別に気にならなかったが……」

「バラキーはどういう状況でも気にしないじゃないですか……」

「バラキーは最近お菓子の事しか考えてませんしね」

「甘いものはよい。いくらでも食える……」

「そういうことを言っているんじゃないと思うのだけど……」

 

 わりとオオガミ達に興味がないバラキーは、他の三人に言われても首をかしげるだけなのだった。




 温泉に入ってるシーンは無情にもカット。でも風呂上がりって、なんというか、その……いえ、何でもないです。


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わりと終わっとらんが(よゆーよゆーすぐ終わるさ)

「さて。そろそろ時間がなくなってきたがどうするマスター。わりと終わっとらんぞ」

「大丈夫大丈夫。いざとなったらリンゴかじるし、高難易度はエウリュアレが令呪三画で秒殺する」

「あら、私は休みかしら」

「メルトは……予備アタッカーかな?」

 

 そう言うオオガミに、メルトは少し不満そうな顔をすると、

 

「最近出番がないと思うのだけど」

「まぁ確かに。メルトは強いから入れたいんだけどね。でも急いでいるときだけだから」

「じゃあ急いでいないわけ?」

「まぁね。それに、メルトはラムダの方で頑張ってもらってるし」

「……それはそれ、これはこれじゃない。こっちの霊基で戦いたいときもあるのだから」

「う~ん、それじゃあ余裕があったらメルトで速攻もしてみようか」

「えぇ、そうしなさい。圧倒的速度で融かしてあげる」

「それは楽しみだ」

 

 そう言って、楽しそうに笑うメルトに笑い返すオオガミ。

 そして、呆れた顔で見ていたノッブを見ると、

 

「それじゃ、魔王城に向かう準備をして。さくっと終わらせに行こう」

「そうじゃな。遊んどるエウリュアレに声をかけてくるか……彼奴に言えばあとは勝手に広まるじゃろ」

「何そのエウリュアレ中心論」

「何もなにも、ただの事実じゃし……」

「大体話の広まる中心はエウリュアレよ? いつものメンバーは」

「そう? カーマもわりと中心に近いと思ってたけど」

 

 首をかしげるオオガミに、ノッブは不思議そうな顔で、

 

「儂ら自由組はそもそも三分割じゃな。マスター派、技術部、バラキー派で出来てるんじゃよ」

「あれ、バラキー派閥生まれてますけど」

「うむ。技術部も一応別枠じゃからな」

「そこはまぁうん。で、カーマは?」

「もちろんバラキー派閥じゃよ?」

「なるほど? じゃあ、主に話の発生源で広める広告塔としてエウリュアレなわけだ」

「そうそう。何気にマスターに近いレベルで広告塔な訳で、特にこういう場面においてはエウリュアレの方が役に立つわけじゃ」 「おかしいね? なんで特異点での方が無視されるのかな?」

「まぁ、アビーがよく懐いているもの。引きずり出して聞かせるのよね」

「アビーそんなことしてたの?」

「風評被害もいいところだと思うわ!」

「うわでた」

 

 噂をすれば影……否、コズミックホラー系幼女アビゲイル。

 当然のごとく門からするりと現れ、両手を腰に当てドヤ顔で、

 

「もうエウリュアレさんには伝えてきたからすぐ帰ってくるわ!」

「マジか。ノッブなんかよりよっぽど優秀だね。アビーは昇格です」

「わーい!」

「横暴じゃろ今のは~……それ許されるか~?」

 

 だが、ノッブの嘆きは見事にスルーされ、すぐに集まったエウリュアレ達を連れて魔王城に向かうのだった。




 令呪使えばエウリュアレが秒殺してくれるって!! 安心できるなぁ!!


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帰ってきたけど、実感ないわね(ほとんど意識の外だったしね?)

「帰ってきたけど、なんだかここにいた記憶もおぼろげね」

「くっつく方に気を取られてたんじゃない? 離れまいと抵抗してたし」

「だからここが落ち着くのね」

 

 そう言って、オオガミの右腕に抱きつくエウリュアレ。

 もはやオオガミは怒ることもせず、ただため息を吐く。

 そして、左後ろでそわそわしているメルトを見て、

 

「メルトは?」

「……そんなくっつくなんて出来ないわ。でもまぁ、どうしてもというのなら」

「じゃあどうしても。来てくれないかな?」

「……しょうがないわね」

 

 そう言って、エウリュアレと同じように左腕を占領するメルト。

 その様子を遠くから見ていたアビゲイルは、

 

「お二人とも凄いわ……なんだか見ているこちらが恥ずかしいくらいだもの」

「そうですねぇ。確かに凄いです。でも憧れというよりは呆れですよこれは。凄いバカップルです。締め上げていいですか」

「あれバカップルでええんか? 儂いい加減修羅場になると思うんじゃけど」

「お二人とも、聞こえてたら殺されるんじゃないかしら」

 

 呆れ顔で言う二人に、アビゲイルは苦笑いをしながらそう言うと、ノッブとBBはため息を吐き、

 

「儂全くわからんのじゃけど、なんであやつらはバカップルを否定したがるんじゃ?」

「バカってところだと思うのだけど」

「だとしてもカップルであることは納得してほしかったんじゃが……全力の否定で儂も変な笑いが出たわ」

「それは……どう思ってるのかしらね。カップルじゃないならなんなのかしら」

 

 そう言って、ああでもないこうでもないと悩んでいると、

 

「……何してるんですか三人とも。完全に不審者ですけど」

「む? カーマか」

「ちょうど良かったです。あそこに先輩たちがいるんですけど、あれって本人たち、どういう関係性だと思ってるんでしょ」

「……また面倒なことを聞いてきますね」

 

 聞いてくるBBに、深いため息を吐くカーマは、やがて観念したように顔を上げ、

 

「自称友人らしいですけど、どう見てもそれ以上なんですよね……」

「本人達としては友人なんですね……恐ろしく面倒くさいですね? もう友人の域を抜け出してることにいつ気付くんでしょうか……」

「一生気付かんだろ。いや、気付いてはいるけど区分分け出来てないとかか……? エウリュアレは既にオオガミに好意をぶつけてるしな……うぅむ、どれだけ考えてもあやつらが面倒と言う結論しかでないんじゃけど」

「実際ほとんどそうですし。それじゃあ私はきんつばの研究をするのでこれで」

 

 そう言って、カーマ悩むノッブ達を置いてさっさとその場を立ち去るのだった。




 このままずるずるとどこまで行くのか。どこかで決着をつけなきゃだなぁと思いつつも踏ん切りがつかない微妙な感じ。う~んどうしよう。


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明日はカルデアに帰還か(あっという間でしたね)

「ふぬ。明日にはカルデアに帰還か……」

「ですねぇ。なんだかんだマスターさんの周りがドタバタして落ち着いただけのイベントでした」

 

 魔王城の天守の手すりに頬杖をつきながら城下を見下ろすカーマと、食べ終わった団子の竹串を加えてぼんやりと空を見るバラキー。

 

「ん。まぁ、吾は甘いものが喰えたから良いのだが。汝は?」

「そうですねぇ。きんつばの作り方も知れましたし、和菓子にも挑戦ってところですか」

「和菓子……うむ。よい響きだ……」

 

 そう言って頷くバラキーに、カーマは苦笑いをしつつ、

 

「帰ったらとりあえず試してみると言うことで。材料も持って帰った方が賢明ですかね」

「そうよな……帰ってもある気はするが、持って帰っても問題はないと思う」

「それじゃ、持って帰ると言うことで。材料を買ってこないとですか……」

「略奪、というのもありよな……」

「確実にマスターさんが気付いて止めに来るじゃないですか。それで持ち帰りも出来なくて終わりとか、そう言うやつですよ」

「む。それは確かに困るな……仕方ない。買うのが一番か……」

 

 うんうんと悩むバラキーに、カーマは頷きつつ、

 

「まぁ、消費量がエグいので、少量持って帰って自家栽培ですね」

「吾、また(くわ)を持つのか……」

「美味しいお菓子のためなので諦めてください」

「こういうのは吾の仕事じゃないだろうに……」

 

 そう言って、遠い目をするバラキー。

 すると、天守に上がって来る音が聞こえ、二人が振り向くと、

 

「ういろう買ってきましたよ~……って、あれ? なんで私がいるんですか……?」

「うむ。BBが変装してきてな。それはともかく吾のういろうを寄越せ」

「図々しいですね。ちょっと働いてもいいんですよ?」

 

 天守に上がってきたカーマを見て、隣のカーマを指差しつつ言うバラキー。

 すると、隣にいたカーマは、瞬く間に姿をBBに変え、不思議そうな顔で、

 

「あれ、どこでバレました?」

「ん? 最初からだが。だから一度もカーマと呼ばなかったと思うが」

「ついでに聞きますけど、なんで分かったんですか」

「うっ、カーマも聞くか……普通に匂いが違うから分かる。カーマは炎の匂いがするからな」

「奇しくも燃えたせいで分かるの、屈辱なんですけど。他のはないんですか」

「えっ、吾これ責められるのか? だって分かるのに理由なんてそれくらいしかないと思うのだが……あぁ、あと、カーマより危機回避がうまい」

「このういろうは没収ですね」

「えっ、そ、それは聞いてない! 吾聞かれて答えただけだぞ!?」

「これはバラキーの自業自得ですね……」

「納得いかぬ!」

 

 そう叫びういろうを奪い取ろうとするも、的確にカーマが避け、手に入れられないのだった。




 BBは無貌の神だしいけるのではと思い実行。実際出来そうだけど、劣化していると言うことで。

 あと、危機回避は普通に経験の差。問題児は伊達じゃないのです。


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カルデアの方が安心よな(長期旅行のしすぎは良くないですって)

「カルデアの方が落ち着くな……」

「見慣れた場所で使い慣れた場所ですしねぇ。やっぱ長期旅行は良くないですって」

「特異点を旅行扱いか」

 

 ノッブとBBの会話に突っ込むオオガミ。

 その隣にはいつもいるはずのエウリュアレの姿もメルトの姿もなく、二人は首をかしげる。

 

「あれ、センパイ。エウリュアレさんたちはどうしたんです?」

「あぁ、うん。お土産配ってくるって。一緒に行こうとしたらここで待ってろって言われてね。ちょうど暇してる」

「ほぅ……土産ねぇ……およそ相手は想像できるが、まぁ、放置しておくべきじゃな」

「そうだよね。詮索しない方が身のためだよね」

「うむ。どちらかと言うとエウリュアレ達が死ぬ」

「うん?」

 

 首をかしげるオオガミに、しかし力強く頷くBB。

 ノッブはオオガミの反応を見て首を振りつつ、

 

「本気で分かってないなら才能じゃが……流石にそれはないじゃろ。状況くらい理解していると思うが」

「そりゃ、あそこまでストレートにぶつけられたらね。正直そこまでのことをした自覚もあるし、大変困っているところではある」

「そう言われても儂らの出来る範囲じゃないしな。お主が自力でどうにかする問題じゃろ?」

「まぁ、そうだけどさ……」

「ま、悩んだらまた相談しに来ればよい。聞くだけなら聞いてやる。話すだけでも整理は着くしな」

「……うん、そうする」

 

 そう言って、会話が止まる。

 するとBBが、

 

「センパイ、お菓子作らないんです? カーマさんは和菓子研究始めましたけど」

「う~ん……どうしようか。特にエウリュアレ達からの要望はないんだよね。それに、すぐ作れるようなのも無いから二人が戻ってくるまでに終わるかわかんないし」

「そう言うところは律儀ですよねぇ……」

「いや、こやつの場合中心が二人なだけじゃろ。面倒なやつめ」

「褒め言葉として受け取っておこう」

「どこが褒められてると思ったんですか……」

「エウリュアレとメルト想いってところ」

「あからさまな問題点じゃろ」

「問題児ですねぇ」

「いいじゃん別に……」

「悪いとは言わんがな」

「えぇ。わりと病的です」

「酷い言われよう……」

 

 ため息を吐き、机に突っ伏すオオガミ。

 そこに、

 

「オオガミはいる?」

 

 そう言って入ってくるエウリュアレとメルト。

 BBはすぐに手を振りながら、

 

「いますよ~。どうぞ持ってってください」

「えっ、扱いひどくない?」

「面倒ごとになるよりは素直に差し出すべきじゃろ。本人も嫌がっとらんし」

「まぁいいけどさ……」

「いえ、普通に私たちが行くからいいわよ……」

 

 そう言って、オオガミの正面に二人は座るのだった。




 寝落ちした……寝落ちしてしまった……


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試作品ですが(珍しいな?)

「どうぞ。試作品ですけど」

「……これは?」

 

 カーマから差し出されたものに、首をかしげるバラキー。

 カーマは対面に座りつつ、

 

「煎餅を作ってみたんですけど、意外と難しいもので。焼き加減が難しいですね」

「ふむ……あむっ……むぅ、確かにこれは……」

「なんかベタついてるんですよね。水分が抜けきってないと言うか。かといってこれ以上焼くとダメになっちゃいそうで」

「そうだな……分厚すぎると言うのもあるかもしれん。後は火力が強すぎるか……」

「分かってます。えぇ、はい。でもまぁ、今日はここまでで。チャレンジは疲れますね」

 

 そう言って、机に突っ伏すカーマ。

 バラキーは生焼けだったり焦げていたりする煎餅を食べながら、

 

「……思ったのだが、ここまで出来ているのを見るに、あと数回で出来るのでは?」

「……その変な観察力なんなんですか」

「いや、これだけ食ってれば吾でなくとも気付く……」

「そうですか? まぁ、試作品なんて基本バラキーにしか渡してませんしね……」

「お陰でカーマの上達は分かる。もうそろそろうまく出来ると思うが……」

「……明日には美味しいお煎餅食べさせてあげます」

「うむ。楽しみだ」

 

 そう言って、もさもさと食べ続けるバラキー。

 カーマはそれを見て、

 

「あの、無理に食べる必要ないですからね?」

「無理にではないな……そんなに悪いものでもない」

「それならいいですけど……無理はしないでくださいよ」

「そこまで悪食じゃないわ! 食いたくないものなど食うか!」

「バラキーなんでも食べそうじゃないですか……」

「流石に好き嫌いくらいはある……」

「そうなんです? てっきりなんでも食べるのかと」

「吾甘いものが好きだからな? 苦いのはあまり好かぬ」

「でも焦げた煎餅は苦いと思うんですが」

「カーマのだからな……吾は食うぞ?」

「無理してるじゃないですか……」

 

 そう言って、自分も食べ始めるカーマ。しかし、

 

「……やっぱり美味しくないですね」

「焦げてないものは吾の炎でなんとかなるんだがなぁ……」

「あっ、ずるいですそれ。出来るなら早く言ってくださいよ」

「吾が全部食べるつもりだったのだが」

「私が作ったんですし私も食べますよ……」

「無理に食わなくてもよいのだが」

「自分のミスを他人だけに処理させてたまりますか」

「……そうか」

 

 そう言って苦い顔をしながら食べるカーマを見て、なんとも言えない気持ちになるバラキー。

 

「まぁ、次は大丈夫だろう? カーマは器用だからな」

「……もう、仕方ないですね。頑張りますよ」

 

 バラキーに言われ、カーマは少し嬉しそうに笑うのだった。




 カーマだって失敗するんです。是非もなし。










 昨日に引き続き……はて。そういえばなぜ一日一話投稿しているのか……?

 とりあえず、今日もう一話書けるように頑張りますね。


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和菓子がそう簡単に作れるわけないんだよ(一朝一夕のものではないからな)

「……和菓子がそう簡単に作れるわけないんだよ」

「当然だな。あれは幾度も失敗し研鑽の果てに手に入れた技術だ。一朝一夕で真似できるようなものではない。理解した上での挑戦だろう?」

「……そう言いながら作られると複雑な気持ちなんだけど」

 

 オオガミが形の整っていない和菓子をひとつ作っている間に、二つ三つと作っていくエミヤ。

 その技術が秀でていることを知ってはいたが、まさかここまでとはオオガミすら思っていなかった。

 

「あいにく、自己研鑽は続けているのでな。料理のレパートリーだけでなく菓子のレパートリーも着々と増えている」

「万能じゃん。もうエミヤだけでよくない?」

「バカを言うな。私だけでは手が回らん。それに、幅広くカバーできると言うのは、特化しているものに比べて品質が落ちる。結局一番うまいのは極めたものだろう」

「飛び抜けた一は確かにいいんだけどね。その他大勢もバカに出来ないものはあると思うよ。特にエミヤのそれはもう一種のスキルでは?」

「クラス料理人か? ふっ。それはそれで面白そうだな」

「料理大会するって?」

「言ってない。何より私が勝てるわけないだろう」

「レパートリー最大全方位カバーできる男が何言ってるんですか。1位は取れずともほとんどで2位は取れるでしょ。それとも1位以外興味ないとか?」

「そう言う意味ではないが……まぁ、考えていくとしよう」

 

 そう言って、照れ臭そうに頷くエミヤ。

 だが、言っているオオガミ自身はそれを見ている余裕などなく、

 

「ねぇ、これどうすればいいの?」

「……作り直しだな」

「そんなぁ……」

 

 悲しみに暮れるオオガミに、そっと材料を渡すのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ふふっ。これ、全部私たちのための失敗作よ」

「とてつもなく嬉しそうじゃない。いえ、気持ちは分かるけど」

 

 そう言う二人の前には、山積みにされた和菓子の失敗作。練りきりがほとんどなので、形さえ見なければ食べられないものではなかった。

 

「それにしても、和菓子って食べるのが目的と言うよりも、見るのが目的って感じよね」

「如何に綺麗に見せるかってことだもの。だから形を変えやすいねりきりなのでしょう?」

「別にきんつばでいいと思うのだけど」

「そっちはサクッと作ってたじゃない」

「今度は羊羮から自作するんだって」

「留まるところを知らないわね……」

 

 常に成長期ですと言わんがばかりのオオガミに、もはや見慣れてしまった二人。

 そして、エウリュアレは抹茶を用意して、

 

「それじゃ、いただこうかしら」

 

 そう言って、食べ始めるのだった。




 実際あの繊細さは凄いと思う……テレビで見ても、繊細且つ早いので練習量が尋常じゃないんだろうなぁと。




 なんだかんだ行けるじゃないか……エウリュアレ様に助けられたな……


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私が失敗したままでいられるとは思わないことです!(これでこそカーマよな)

「ふふん。私が失敗したままでいられるとは思わないことです。次からは余裕ですね」

「本当に完成したな」

「うそ……カーマ才能の塊では……」

 

 ドヤ顔で完成した醤油煎餅をバラキーに差し出すカーマ。

 それを横から見ていたオオガミは震えながらそう言う。

 

「……マスターさんはどれくらいかかったんです?」

「一週間」

「ハッ! こっちは二日です! もっと褒め称えてください!」

「流石カーマ! お菓子の天才! パティシエール!」

「あっははは! いいですねこれ! 気分がいいです!」

「……カーマ。騙されてる気がするから言っておくが、その男、一週間であらかたの煎餅は作れるようになってるからな」

 

 バラキーのその一言で、椅子の上に立って喜んでいたカーマは椅子に座り直し、暗い雰囲気をまといながら、

オオガミの方を向き、

 

「……何ですか。私が舞い上がるのを見て楽しかったですか」

「根暗スイッチ入ってるんですけど!」

「今回は汝が悪い」

 

 そう言って、受け取った煎餅をバリバリと食べるバラキー。

 カーマはそれを横目で見ながら、

 

「バラキーはマスターさんの煎餅を食べたことがあるんです?」

「ん。まぁな。だがこやつのはエウリュアレを前提に作ってる。その点汝は吾に合わせた味付けだからな。吾はカーマの方が好きだぞ」

「っ、そうですか。それは良かったです」

「うむ。だからマスター。汝はカーマにざらめ煎餅の作り方を教えろ。吾ざらめ煎餅も食べたい」

 

 バラキーにそう言われたオオガミは、不敵な笑みを浮かべながら、

 

「堂々としたわがままだねバラキー。カーマが了承してくれるかな?」

「いいですよ。お願いしますねマスターさん」

「おっとこっちは即答か。エウリュアレに対する自分を見ているようで複雑な気持ちだなこれは」

「バカなこと言ってないで早くお願いします」

「辛辣だなぁこの女神様は」

 

 そう言いながらカーマに連れられていくオオガミを見て、バラキーは、

 

「……辛辣とは言うが、エウリュアレやメルトとそこまで変わらぬだろうに」

「全くです。あれでエウリュアレさんとメルトをそこまで特別扱いしてないって言うんだから、特別扱いしたらどうなるのか見物ですよね」

「……BB楽しそうだな」

「えぇもちろん。これ以上ない娯楽です!」

「……そうか。吾は別に興味ないのだが」

「えぇ? そんなことないですって。一緒に見守りましょうよ」

「おいBB。バラキーにあまりちょっかいかけるでないわ」

 

 そう言って、どこからともなく現れた小悪魔後輩を名乗る不審邪神AIと、遅れてやってきたノッブを見て、バラキーは深いため息を吐くのだった。




 これがカーマ……カーマは努力家だなぁ……なんで努力家なんだ? お前怠惰の化身では……?


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ご機嫌みたいだね(そう見えるかしら)

「……ご機嫌だね?」

「あら、そう見える?」

 

 ふふふ。と笑うエウリュアレ。

 オオガミはお風呂上がりでまだ少し水気を含んでいるエウリュアレの髪を梳かしながら、

 

「かなりご機嫌みたいだね。何かあった?」

「いいえ。これといったことは特になにもないわ? でもそうね。強いて言うなら、貴方がいるってことくらいかしら」

「……そう言うことをサラッと言うんだからエウリュアレは恐ろしいよね」

「同じくらいこっちが恥ずかしくなるようなことを言ってくるじゃない。これでおあいこよ」

「エウリュアレが恥ずかしがってるのなんか滅多に見ないんだけど」

「見せられるわけないでしょ。当然じゃない」

「そんな顔にされるこっちの身も考えてほしい」

「あら、嫌だった?」

「まさか。恥ずかしくなるくらいに嬉しいだけ。いくらでも聞けるし何度でも言わせたいことだってあるよ」

「……貴方も大概恥ずかしいことを言うわよね」

「そりゃまぁ、エウリュアレ様直伝ですし。向けられてるんだから返す方も相応じゃないとじゃん?」

「どこからそんな知識を……」

「それは守秘義務です」

 

 そう言って、にっこりと笑うオオガミ。

 エウリュアレからは見えてはいないが、長年一緒だからか、そんな顔をしているのだろうなというのを感じつつ、

 

「今日は三つ編みで」

「解いたときにウェーブがかっちゃうから嫌なんじゃなかった?」

「今日はそう言う気分なの。それに、そうなったとしても直してくれるのがいるしね?」

「……まぁいいけど」

 

 そう言って、髪を編み始めるオオガミ。

 

「……ねぇエウリュアレ? これ、アナと同じになるけど大丈夫?」

「えぇ。構わないわ。むしろそのつもりだもの」

「そう? じゃあそのつもりでやるか」

 

 そう言って、手際よく編むオオガミ。

 エウリュアレはそれを感じながら、

 

「ねぇオオガミ? もしかしなくとも、アナの三つ編みをよくやってるでしょ」

「……目が怖いですよエウリュアレ様」

「聞いているのだけど」

「……まぁ、手持ち無沙汰でエウリュアレがいないときにたまにね」

「ふぅん。そうなの……別に構わないけど、楽しいかしら」

「まぁ、最終的にはここに活かされてるからね」

「じゃあ許すわ」

「許す判定大分雑だね」

「だって、貴方はなんだかんだ言っても最終的に私のところに来るもの」

「凄い。否定できないね」

「ふふっ、そうでしょ?」

 

 そう言って笑う二人。

 すると、部屋の扉が開き、一目でお風呂上がりだとわかるメルトが入ってきて、

 

「楽しそうね。私の髪も梳かしてもらえるかしら」

 

 そう言って、オオガミの隣に座るのだった。




 気付いたらめっちゃ甘くなってる……不思議だなぁ……


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メルトの髪はサラサラだよね(あら、当然じゃない)

「……メルトはお風呂上がりでも髪の毛サラサラだよね」

「そりゃ、ドレインすれば簡単だもの。本来なら入らなくても清潔だけど、入った方が気持ち的にいいじゃない」

「確かに。気持ちは大事だね」

 

 そう言って、特に絡まってもいない絹のように滑らかな触り心地のメルトの髪に櫛を通すオオガミ。

 昨日と違ってエウリュアレより早く戻ってきたメルトを不思議に思うも、特には何もせず、ただ頼まれたままに髪を梳いていた。

 

「なんというか、メルトの髪を梳かすのは珍しいよね」

「頼むようなことでもないもの。でも、エウリュアレのを見ていると、やっぱり誰かにお願いする方がいいように思えて。まぁ、リボンはいつも結んでもらってるけど」

「リボンを結ぶのと髪を梳かすのは別物だし。でもまぁ、こうやって触る度に思うけど、やっぱり髪質ってそれぞれ違うものだね」

「あら、今さらね」

 

 櫛を置き、髪の毛を一つに束ねていくオオガミ。

 メルトはそれに気付きつつもあえて触れることはなく、

 

「それで、私の髪はどう思ったの?」

「うん。触り心地は良いなって。細くて柔らかい髪だから、大切にしたい髪だね。それに、髪が光に当たって輝いているのも好きだよ」

「……で、比較したのは?」

「エウリュアレ。メルトと同じできれいな髪なんだけど、少しザラザラしてる。潮風に当たるような場所だったし仕方ないかなとは思うし、手入れをすれば良くなってきているからあれはあれで。ただ、やっぱりメルトよりは太いかな」

「……だいぶ変態じみてきたわね」

「ちょっと自覚してる」

「そのうち髪を触らせただけで誰かわかりそうね」

「エウリュアレとメルトしかわかんないから勝負にならないって」

「むしろ複数人の中から私たちを見つけるとか」

「それなら簡単そうだ」

「難易度が極端ね……私たちが絡むと異様に強いのなんでかしら」

「そりゃまぁ、言えないやつです」

「……よくそんな言葉が出てくるわね」

「真面目に答えるなら、過ごした時間と触れてきた時間が段違いだよ」

「……改めて言われるとだいぶ恥ずかしいセリフね私を殺す気?」

「愛で人が殺せるのを実践しろと。死因は悶絶?」

「恥ずかしさで殺しに来ないでほしいのだけど。貴方なら本気でやりそう……」

 

 そういっている間にオオガミはメルトの髪を団子状にまとめて髪止めなどで雪だるまのように装飾していた。

 すると、エウリュアレがお風呂から帰って来て、

 

「オオガミ。私もお願い……ふっ、ふふふ……なにその髪型……遊ばれてるじゃない……」

「え、待って待ってなにされたの!? 鏡を寄越しなさい!」

「それはちょっと出来ない相談かなぁ」

 

そう言って顔を背けるオオガミに、メルトは襟を掴んで前後に揺するのだった。




 独断と偏見の塊で出来ている二人の髪質。これは奥が深そうな問題だ……


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なんでこんなに絡まってるんですか!(吾は気にしないがな!)

「あ~もう! どうしてこんなに絡まってるんですか!!」

「知らぬわ! 吾はこの程度気にはしない!」

「気にしてください!!」

 

 そう言ってバラキーの髪を梳かすカーマと、必死で抵抗するバラキー。

 櫛を通す度に引っ掛かり、たまに枝や砂利が出てくるのは、流石のカーマも驚きのあまり硬直するほどだった。

 

「まったく、お風呂入る前に色々落とさなきゃいけないとか初めてですよ! どこでこんなにしてくるんですか!」

「いつも通りにしていただけなのだが!?」

「珍しいくらいの大暴れですよ! どこ行ってきたんですか!」

「久しぶりに散歩でもしようと思って未開の森の中を走り回っていただけだが……」

「散歩というにはレベル高くないですか……正気を失ってますよ……」

「吾を他のサーヴァントと同じにするな。吾は鬼ぞ。そう言うことだってする」

「……そうですか」

「うむ。そうだ」

 

 そう言ってドヤ顔をするバラキーに、カーマは呆れた目を向けながら、

 

「じゃあ、おやつはしばらく作りません」

「殺生な!?」

 

 容赦のないお菓子禁止に大ダメージを受けるバラキー。

 カーマはそれを見てにっこりと笑いながら、

 

「嫌だったら大人しくしていてください」

「うむ。吾は逆らわんぞ……髪が引っ張られて痛くても、まぁ、我慢できないわけではないしな……!」

「偉いですよ~。しっかり我慢できていたら新作スイーツあげますからね」

「本当か!? くふふ……それは楽しみだな」

「えぇ。ついでにお風呂にも入ってくださいよ。汚れたままで食べさせませんからね」

「むぅ……なんというか、カーマにはこう、従わなくてはいけないような気がするのだが……なぜだ……?」

「知らないですよ。むしろそう言われるの、かなり心外なんですけど」

「なんとなく思っているだけだからな……まぁ、おそらく菓子をくれるからだろう。うむ。そう言うことにしておこう」

「そうしておいてください……これ結構絡まってますね」

 

 櫛だと引っ掛かりすぎるので、手櫛で邪魔なものを取り除いていくカーマ。

 バラキーは全力で頭が動かないようにしながら、

 

「まぁ、何度か転んだしな」

「なんですかそれ。転ぶ要素あります?」

「戦闘シミュレートだからな。転んだというより転ばされたというべきか」

「なるほど。それは確かに色々絡まりますね」

「うむ。正直無傷で勝てなかったのは悔しいがな」

「そう言うこともありますって。今度は私も行きますね」

「そうだな。次も怒られるのは嫌だからな。頼んだ」

「えぇ、誘ってくださいね」

 

 バラキーはそう言って楽しそうに笑い、カーマは呆れたように苦笑するのだった。




 お風呂上がりお風呂上がりと来てバラキーは入る前に落とされる。そしてもはやお母さんと化しているカーマ……カーマは苦労人だなぁ。



 もう寝落ちしたらしょうがないんでマイペース貫きますよ。


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なんでノッブは髪がきれいなんですか(別に何もしとらんけどな?)

「なんでノッブってそんな無駄に髪がきれいなんです? いや、普通に肌もきれいなんですけど。凄い不思議なんですが」

「……とりあえず、お主が儂をどう思っているかは分かるな」

 

 そう言って、ノッブはBBに髪を梳かしてもらいつつ、

 

「単純に、手入れしてるだけじゃよ。BBと変わらん」

「私よりきれいな気がしてイヤなんですけど」

「それは、あれだ。隣の芝は青く見えるというやつ。結局自分以外の方が羨ましく見えるわけじゃな。儂からすれば、BBの方がよく手入れされてるしな。たまに寝不足で儂と一緒にボサボサじゃけど」

「あれは本気で良くないです。やはり寝不足は天敵……どうにかしないとですね」

「ま、楽しいから止められないんじゃけどね!」

「そういう元も子もないのはやめましょうよ……」

 

 そう言いながら、ノッブの髪を三つ編みにしていくBB。

 ノッブはそれを感じ、

 

「おいBB。何しとるんじゃ」

「三つ編みです三つ編み。ノッブなら似合うかなって」

「おぅ儂も結んでやろう。一本結びで良いな」

「……意外と似合うかもですね?」

「ポジティブじゃのぅ……」

「ふふん。三つ編みメガネで大人しさをアピールするだけでカルデア大混乱間違いなしです!」

「喧嘩か買うぞ?」

「私の一本結びが終わってからでお願いしますね」

「千切るぞこやつぅ」

 

 そんなことを言いながらもしっかりと三つ編みを完成させ、伊達メガネをノッブに装備されるBB。

 

「……意外と美少女らしさを隠しきれてないのでむしろプラスかもしれませんね」

「褒めとるのか? それとも大人しくしてろってことか?」

「むむっ、ノッブの野蛮さによって見た目以上の存在感を放って中々いい感じに……あ、怒る前に一本結びをお願いしますね?」

「……怒る気にもならんわ。ほれ、後ろを向け」

「流石信じてましたよノッブ!」

「別に儂は首から上だけでもいいんじゃけどな」

「あ、すいませ~ん」

 

 そう言って、大人しくノッブに背を向けるBB。

 ノッブはBBの髪を結びながら、

 

「……やはり儂よりも手入れされとるな」

「まぁ、霊体のままのサーヴァントなら気にしないんですけど、カルデアでは半受肉ですしね。手入れしないと綻ぶのは必然なんで、流石に手入れしますよ」

「ふむ。なるほどな……儂そんな気にせんしなぁ」

「実際ノッブは私がやってるから一緒にやってるだけですしね。まぁ、いい実験台だとは思ってます」

「最低限あればそれで良いと思うしのぅ……」

「乙女的には必須ですよ。いざというときに……いえ、いざというときじゃなくとも恥ずかしいので」

「あ~……まぁ、そうじゃな。ま、BBと同じことをしておれば大丈夫じゃろ。ほい完成」

「まぁ、一本にまとめて縛るだけですし難しくないですよね」

「それな。儂がやる必要あった?」

「いえ全く。単にやってほしかっただけなので」

「ん。まぁ、それならそれでよいか。で、何するんじゃ?」

「このまま食堂です。特に何も変わらないでしょうけど」

「ま、楽しむのはそのくらいでええか」

 

 そう言って、二人は工房を出るのだった。




 4日連続で髪の話してる……この話題意外と続くな……?


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ボードゲームかぁ(なんかどこかで見たような気がするんだよね)

「ボードゲームねぇ……」

「正直タイトルから真っ先に連想したのはジュマ◯ジを思い出したよね」

「特に最初がすごろくだったものね」

 

 うんうん。と頷くオオガミとエウリュアレ。

 だが、メルトは不満そうな顔で、

 

「ボードゲームって苦手なのよね」

「……手を使うから?」

「そ。頭を使うって言うのは全く気にならないのだけど、手を使うものは不向きなの。まぁ、補助がいるなら出来ないこともないけど、それはやっぱり違うじゃない」

「まぁ、分かる。手助けされないと出来ないとか、不満だよね」

「えぇ、そう。ダンスゲームなら良いのだけど」

「ダンス系なら得意だよね。まぁ、専門はバレエだけど」

「ラスベガスで見せたように、フィギュアスケートも出来るわ。今度は二人で滑りましょうか」

「いいの?」

「ダメよ。譲らないから」

 

 そう言って、オオガミの右腕を抱きしめ、メルトに対抗心剥き出しの目を向けるエウリュアレ。

 メルトはそれに面を食らったように目をパチクリさせると、

 

「珍しいわね。そこまで我を出すの」

「つい最近もあったよ」

「……それもそうね。なに? 精神も見た目相応になってしまったのかしら」

「それはあり得るかもしれない」

「バカなこと言わないでほしいのだけど」

 

 そういう彼女の目はいつもの呆れたような目をしていた。が、一向に腕は離そうとしない。

 それを見て、メルトはため息を吐くと、

 

「トゥリファスの時に譲ったのは、後で私もしてもらうためなのだけど、そこは理解していたのかしら」

「えぇ、分かってるわ。でも私だってスケートをしてみたいわ。二人だけなんてズルいと思わない?」

「え、そっち?」

「……しょうがないわね。それじゃ、三人でしましょうか。二人は練習だけど」

「それなら構わないわ。楽しみね」

「自由すぎるなこの女神」

「自由の化身よね」

「あら、そうなるようにしたのはオオガミよ?」

「う~ん自覚しかない」

 

 昔はもっと大人しかった気もするよね。と言うオオガミに、エウリュアレはドヤ顔で、

 

「つまり今の私になったのは大体こいつのせいよ」

「そう……面倒にしてくれたじゃないの」

「正直誰がエウリュアレがこうなるだなんて思えるだろうか。昔はめちゃくちゃツンツンしてたんですよ。それが今やデレデレ。まさしく本来のツンデレ形と言えます。このデレデレ具合に若干の恐怖を覚えつつも全く嫌じゃないのはエウリュアレだからでしょうか。いやまぁそんな気もしてきた」

「なんか連鎖的にこっちもダメになってるんだけど……というか、本当にそんな時期があったの? あったようには全く見えないんだけど」

「昔は容赦なく矢を射たれたけど、今はそんなこと滅多にしてこないし。時間の流れとは恐ろしいものです」

「……昔の貴女を見てみたいわね」

「記録は誰かがとってるんじゃない? 帰ったら探してみて?」

「そうするわ。さ、さっさと進みましょ」

 

 そう言って、三人は新たなゲームを求めて歩き出すのだった。




 サイコロ二つで最初の面をクリアしたときに首をかしげた私。こんなもんなのか……?

 人狼だけはちょっと納得いかない……なんというか……なんなんでしょうね……


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恐竜バーサーカー欲しいじゃないですか(石の貯蔵庫空っぽね)

「さて。カッコいい恐竜バーサーカーを呼ぼうとしたわけです」

「……女性ね」

「そこは触れないでほしいな」

「……第2以降は人ね」

「そうだね第三は明らかに人外だよね」

 

 そう言いながら、既に使い果たした石の貯蔵庫に背を向けて言うオオガミ。

 エウリュアレとメルトは呆れたようにため息をつき、

 

「久しぶりに激昂するマシュを見れるかしら」

「家老の後は過労? 可哀想じゃないかしら」

「元凶はハッキリしているから殴り放題なのは事実ね」

「物騒なことを言うじゃん二人とも」

「あら、そうかしら。至っていつも通りじゃない?」

「そうね。召喚して種火も素材も使ったのに肝心の本人はカルデア送りだもの。誰が相手をしているのかしらね」

「……マシュよりもバラキーでは……?」

「……あり得るわね」

「むしろそれ以外無い気もしてきたわ」

 

 うんうん。と頷き、今も必死で対応しているだろうバラキーを思い、オオガミを見て、

 

「それじゃ、マシュに見つかるまでの間に遊びましょう?」

「最後の思い出かもしれないからちゃんと刻んでおきなさい」

「え、なに? ミンチにでもされるの? マジで? 今素直に死を選ばれたのか?」

 

 そう言って、青い顔をしているオオガミの両腕を引くエウリュアレとメルト。

 

「……でも、何をしようかしら」

「そうねぇ……普通に町を見て回るのでもいい気がするわ」

「何があるのか見ないで出てきちゃったしね。もう一度じっくり色々見てみたいわ」

「そうだね。ダイス集めて行こうか」

「そうね。ダイス集めから始まるのはちょっと面倒だけど」

「ダイス集め自体はそんな難しくないからさっさとやりましょ」

「サクッと周回して町巡り。遊べるうちに遊ぶ方針で全力ダッシュしていこうか」

 

 そう言って、三人はアキハバラまで戻るのだった。

 

 

 * * *

 

 

「しかしまぁ、人狼は意外と楽しそうでしたねノッブ」

「こういうのは儂苦手なんじゃよねぇ……茶々はうまいんじゃがな」

「坂本さんはどうなんです?」

「口が達者すぎるが隣がポンコツだから怖くない」

「あ~……一人だったら怖い人ってことですか」

「ま、付き竜おるから怖くはないんじゃがな」

 

 そう言いながら、あちらこちらと見て回るノッブとBB。

 人狼地域を散策しながら、

 

「しっかし物々しい雰囲気じゃなぁ……いやまぁ、人狼としては最高のステージなんじゃが」

「でも噛まれただけで即トークンなのは納得いかないですけどね」

「精神異常になってたし是非もないよねっ」

「ゲームにのめり込みすぎは良くないですしね~」

「……AIが言うと意味深じゃな」

「なんですかそれ……」

 

 そんなことを話ながら、細かいところまで作り込みがされている舞台に目を輝かせながら散策を続けるのだった。




 違うんだマシュ。礼装もほしかっただけなんだ……重ねる理由がなくても礼装のために回してしまうのは性なんだ……許してくれマシュ……


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流石に吾も驚いた(驚かない人とかいますか?)

「…………」

「…………」

 

 食堂にて、開いた口が塞がらないというのを文字通り体現しているバラキーとカーマの横を通りすぎるのは、ティラノサウルス。

 あまりの事態に思わず食べようとしていたクッキーを落とすくらいに動揺していたバラキーだったが、すぐさま立ち上がり、

 

「おい! 汝は何者だ!」

「■■■□□■■■?」

 

 口を開いても、出てきたのはうなり声のようなもの。

 それを間近で聞いたバラキーは、しかし、

 

「……うむ。全くわからん。汝、再臨とかで人形になれぬのか?」

「■■■……」

 

 そう唸ったかと思えば、ティラノサウルスを中心に炎が吹き荒れ、炎が消えると同時にそこには女性が立っていた。

 

「ふむ……これでよいか。して、そなたは?」

「吾を知らぬと? 吾こそは大江山の首魁、茨木童子なるぞ。汝が何者かは知らぬが、しかし鬼の気を感じる……」

「茨木童子……? 酒呑童子と共に都を騒がせたというあの茨木童子と?」

「なにやら吾を知っているようだが、吾は汝のことなど知らぬぞ。名乗れ」

 

 バラキーが名乗ると、彼女は一瞬目を見開き、

 

「そうか……ここには身共の他にも鬼がおるのか……では、名乗らせてもらう。身共は信濃戸隠の鬼女紅葉(きじょこうよう)と申す」

「ほぅ……鬼女紅葉とな。ふむふむ。しかし汝のその反応。どうやら都に良い思い出はなさそうだな」

「……あまり、都の話は好かぬ」

「……まぁ、深入りするようなことでもない。して、汝はバーサーカーか?」

「そうだが……何かあると?」

「うむ。ここでのルールなどの説明だな。もちろん聞かずともよいが、その末路は悲惨なものだ。ルールの穴を突くにはルールを知らねばならない。知恵あるものならば意味は分かると思うが、どうだ?」

 

 それを聞いた紅葉は、少し考えると、

 

「……なるほど。いわゆる教育係というものか。まぁよい。そなたが裏切らぬ限り聞くものとしよう」

「くはは! 裏切りにも怒りをもつとは実に良い。実に吾好みよ。カーマ! シミュレーションルームに行くぞ!」

「え、面倒なんですけど……」

「……エウリュアレに報告するが良いな?」

「……あ~、急にシミュレーションルームに行きたくなりましたね~。行きましょうバラキー。いつもに設定で良いですか」

「敵は要らぬからな~」

「はいは~い」

 

 そう言って、食堂を急ぎ足で出ていくカーマ。そしてバラキーは紅葉に向き直ると、

 

「ではついてこい。ここだと話せぬこともあるからな」

「よろしくお頼み申す」

「……汝、もしかしなくとも都で暮らしていたか」

「……その話も、あちらでするというのでどうじゃ」

「くはは。うむ。それで良い。ではいざ行かん!」

 

 そう言って、二人はシミュレーションルームに向かうのだった。




 インパクト強すぎて即狙いにいきましたよ。個人的にはボイジャーより優先度高かったです。まぁ、性能的には微妙なんですけども。


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負ける要素なかったね(マスターとしての経験差よ)

「……負ける要素なかったね」

「貴方、自分が何年マスターやっているのか自覚あるかしら……」

 

 余裕で圧勝したオオガミに、呆れたため息を吐くエウリュアレ。

 メルトがそれを聞いて、

 

「で、何年してるの?」

「三年以上よ。それがぽっと出のマスターなんかに負けるわけ無いじゃない」

「三年って言っても、みんなが助けてくれた方が多いしねぇ……複雑な気分」

「自分の指揮で生き残ってる方が多いんだから誇りなさいな。立派にマスターしてるわよ」

「……いつにないべた褒め。正直ちょっと泣きそう」

「今日は優しいのね」

「いつも優しいでしょ?」

 

 そう言ってドヤ顔をするエウリュアレ。

 メルトとオオガミは苦笑しながら、

 

「それにしても、第三ゲームができなかったのは残念だったね」

「本当にね。どんなゲームなのか気になったのに」

「ま、帰ってからやるのもいいわね。どれも楽しそうだもの」

「人狼とか得意分野じゃない?」

「あらメルト。それはお互いさまではなくて?」

「否定できないわね。帰ったらやりましょ?」

「一方的に食われそうだなぁ……」

 

 ふふふ。と笑う二人に、オオガミは諦めたように笑う。

 

「それにしても、まだダイス集めないといけないのよねぇ」

「まぁ、交換素材を集める過程で回るんだし、まだ気にしなくて大丈夫じゃない?」

「最終日ちょっと前くらいに焦って走るのが目に浮かぶわね」

「不吉なこと言うじゃん……」

「今までずっとそうだったじゃない……」

「否定できないね……」

「そういうのを考えると残念よね……」

 

 実際、今回も遅くなるのではないだろうかという予感はあった。

 それを察しているエウリュアレは、

 

「まぁ、リンゴを最低限にしておくのは良いわね。どうせボックスの時に使い果たすのだし」

「貯蓄大事……まぁ、驚くほどの速度で消えるけど」

「使わないときはとことん使わないのに使うときはすぐに消えるのよね」

「本当にすぐなくなるから困りものだよ」

「まぁ、秋の次がクリスマスだしね。正直種火も余ってるからボックスを周回する意味もない気がするけど」

「あれはこう、自分との戦い的なところがあるから」

「そうねぇ……毎度更新しているもの……まぁ、流石にラムダ連打は笑ったけど」

「私を運用するのは良いんだけど、相手くらい選ばない?」

「勝てるなら戦うしかないでしょ。メルトに負けはないんだよ」

「負けがないなら必ず勝つんじゃない……それメルトに休みはないんじゃないの?」

「周回できるかによるけどね。大体メルト優先」

「セイバー以外は大体連れ回されるものね……いえ、構わないけど」

 

 そんな事を言いながら、三人は次の場所を目指す。




 初期礼装がやっぱり強いんだなぁ……一対一なら高確率で勝ってくれるので好き。


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すごろくはサクサクだったね(私たちが投げてる訳じゃないしね)

「ふぅ……すごろくはサクサクだったね」

「今さらだけど、ガッポリーはガッポリー。すごろくはすごろくなのね…てっきり同じものだと思っちゃってたわ」

「しっかり見ないとやっぱりダメね。勘違いはものによっては面倒ごとに発展するもの」

 

 そう言って、すごろくが終わってただの山となった舞台を上がっていくオオガミ達。

 ひたすらに暗く不気味なだけなのだが、オオガミはなぜか満足そうだった。

 

「まぁ、ガッポリーは帰ってからちゃんとルール見よう。うん。そして面白そうならやろう」

「そうね。流石にルールを知らないでやってたのは納得いかないし」

「クリアできたって言ってもやっぱり微妙だよね。ちゃんとルールを理解した上でやりたいのは分かる」

「実際、なんで終わったかも分かってないのよね。サイコロが無くなったからかしら」

「一周もしてなかったものね。それくらいしか思いつかないけど」

「う~ん、やっぱりルールを見ないと何とも。そもそもどうすれば勝ち? あれは負けたのか……?」

 

 そう言って、真剣に考えるオオガミ。

 だが、エウリュアレは楽しそうに笑いながら、

 

「難しいわね。まぁ、私としては進めればそれで良いのだけど」

「ルールは、戻れば見れるかもしれないけど。でも面倒よね」

「いや、まぁ、行かなきゃなんだけどさ……まだトークンの回収終わってないからわりと必須」

「大変ね……まぁ、私たちも付き合うのだけど」

「それは、とてもありがたいけど」

「えぇ。だからほら、サボって良いかしら」

「メイン戦力が何言ってるの」

「私は戦力外だから見守ってるだけよ」

「お気楽ね二人とも」

 

 そう言って、ため息を吐くメルト。

 

「それで? ここの山の奴等を殲滅すれば良いの?」

「そうそう。ダイスをたっぷり落としてくれるだろうし」

「それじゃ、さっさと始末して帰りましょ。私、カップケーキが食べたいわ」

「メルトは食べさせてもらいたいだけでしょ」

「まぁね。でも、悪くはないでしょ?」

「うん。焼くのもオレってことを除けばね」

「そうなの? でも、私に食べさせるという栄誉の犠牲と思って割りきってちょうだい。えぇ。誇って食べさせてよ」

「そうだね。それじゃ、それに見合うほどの力があるって証明してもらおうかな。栄誉を人に授けるだけの力ってのをね」

「あら、今日の貴方はあの赤い弓兵のような言い回しなのね。蹴り殺しても良いかしら」

「それはあっちにお願いするよ」

 

 そう言って、オオガミは立ちふさがるように現れた猿達を指差す。

 メルトはラムダに霊基を変えながら、

 

「いいわ。とっとと片付けましょう」

 

 そう言って、不敵に笑う。




 ガッポリーすごろくは違う。らしいけど、正直やったこと無いからどう違うのかさっぱり……とりあえず調べなきゃ……



 はてさて。既に一日一羽は崩れ去ったのでこれからはマイペースを貫きますよぅ!


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何か聞きたいことはある?(一つだけ気になってるのが)

「じゃ、何か聞きたいことはある?」

 

 新人のエリセを連れて、カルデアを一周したオオガミ。

 エリセは少しためらってから、

 

「じゃあ、一つ。いつもそんな感じなの?」

「……大体こんな感じ」

 

 はぁ。とため息を吐くエリセ。

 オオガミは左右を確保しているエウリュアレとメルトを見て苦笑しながら、

 

「これはまぁ、日頃の行いってことで」

「そうなんだ……正直、私としてはどうなのかなって思うんだけど」

「まぁ、本人達の意思のもとなので。これはセーフじゃないですかね」

「どうだろう。本当にそうかは聞かないとわからないかな」

「……だそうですけど、どうするんですかお二人とも」

 

 聞かれた二人は、互いに顔を見合わせ、

 

「そうねぇ……とっても答えづらい質問だもの」

「そうねぇ……護衛って訳じゃないもの」

「どう答えれば良いかしら」

「何か答えはあるかしら」

 

 そう言って、にやにやと笑う二人。

 オオガミはそれを見て頬を引きつらせながら、

 

「こんな風にからかいからかわれる関係ってことでどうですか」

「状況的に正解だけど気持ち的にはバツ。でもその顔が見れたから及第点ね」

「その本気で焦ってる顔だけは評価するけどそれ以外がダメね。でも楽しめたから良いわ。これが答えて良いかしら?」

「とても納得しがたいですけど、まぁ、アナタ方がそれで良いのなら良いのだけど……」

「じゃあ良いってことで」

「及第点なのに元気よね」

「きっとそれに満点の解答をしたら誰かに殺されるからね」

「残念。まぁいいわ。それで、エリセと言ったかしら。貴女はどう見えるの?」

 

 そう言って、微笑むエウリュアレ。

 聞かれたエリセは真剣な顔で悩み、

 

「そう、ですね……女性サーヴァントを侍らせて喜んでいるようにしか見えないです」

「凄い的確に突いてくるね」

「どうかしら。どちらかというと私たちの世話を一人でしているのよ?」

「……むしろこっちが逃げられると困るわね」

「「…………」」

「今さら取り繕おうとしなくて良いから。別に逃げないし逃げる理由もないから!」

 

 いつもより多めに密着しようとしてくる二人を引き剥がしながら言うオオガミ。

 それを見てエリセは笑いつつ、

 

「やっぱりキミには人を寄せ付ける何かがあるのかもね」

「えぇそうね。だからこんな大所帯なんだもの」

「嘆きの声をあげてるのは何人かいるけどね」

「おっと今その話するんですかメルト様」

「……生き残ったら貴方だけのステージを見せてあげるわね」

「そういう物で釣るのはよくないと思います!」

 

 なにやら黒い笑顔を浮かべているエリセを見て、オオガミはその場を逃げ去るのだった。




 過労死組は是非もないから……許して……許して……


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お菓子作りが得意なの?(作りすぎて特技の領域だね)

「キミ、お菓子作りが得意なの?」

「まぁ、成り行きでね。今だともはや特技の域だけど」

 

 そう言って、いつものようにクッキーを作るオオガミ。

 エリセはそれを見ながら、

 

「頻繁に作ってるの?」

「いや、主に要望があったときだけだよ」

「要望? 誰に?」

「主にエウリュアレかな。他には……バラキーくらい?」

「バラキー?」

「あぁ、伝わらないか。茨木童子。大江山の鬼だよ」

「……そんなフレンドリーに呼んでも大丈夫なの? 殺されない?」

「少なくともうちだとお菓子をあげとけば大人しいから。はい。お守り」

「……お菓子をお守りって言う人初めて見た」

 

 オオガミからクッキーの入った袋を受け取りつつ、苦笑いするエリセ。

 すると、

 

「む。汝、また菓子を焼いているのか」

「飽きないですねぇ。またエウリュアレさんのわがままで?」

「今日は新人さんが来た記念かな。フォーチュンクッキーとか面白そうだから作ってみたけど、試作品だから占いは無し。薄くて空間があるクッキーだよ」

「……それ、もうフォーチュンクッキーではないのでは?」

「名推理だね。代わりにこっちのロシアン饅頭をあげよう。七つのうちの一つが死ぬほど辛いやつね。当たりを食べたあとしばらく何を食べても痛いとしか感じなかったお墨付きだよ」

「もはや味覚破壊兵器ではないか! これを食えと!?」

「当たりは激ウマなので安心してください。厨房組が腕によりをかけた最高級品だよ」

「……対価としては十分か……だが、エウリュアレや信長達と食べるにしても一つ余るが?」

「それはこのエリセを連れていってくれないかな?」

「む。汝も新規か……吾はよろず屋ではないのだが」

「うん? 何かあったの?」

 

 何かを言いたそうにしているバラキーに、オオガミが首をかしげて聞くと、

 

「……先程紅葉(こうよう)と話してきたばかりというだけで、問題はないのだが……最近新規サーヴァントが来ると吾に押し付けてないか?」

「いや、流石にそんなつもりはないけど……まぁ、紅葉さんに関してはバラキーの方がいいんじゃないかとは思った」

「ふん。奴は吾よりも人間に近い性質よ。都に住んでいたと言うくらいだからな……裏切りの果ての鬼。人が産み出した闇と言うものよ。吾とは異なる鬼だからな。言わずとも知っていた」

「そうなんだ……カーマから見てもそんな感じ?」

「まぁ、バラキーとは微妙に噛み合ってたり噛み合ってなかったりですねぇ。まぁ、精神年齢はバラキーより遥か上に感じられましたが」

「カーマ。それは吾が幼いと……?」

「ほらそうやって怒るところ。もうちょっと冷静な態度をとってくれると良いんですけどね。ほら、食べるんでしょ。そこでボーッとしているエリセさんも。あそこにエウリュアレさん達がいるんですからさっさと行きますよ」

「あっ、おい置いておくな!」

「えっ、あ、あの、待ってください!」

 

 そう言って、カーマを追いかける二人。

 オオガミは自分を睨んでくる女神の視線を感じながら、それでもお菓子作りを止めないのだった。




 エリセちゃんの性格が掴めないの……これであってるのか……?


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当たりを引いたのは(まぁ、是非もないことじゃよ)

「当たりを引いたのはBBだったと」

「うむ。まぁ、エウリュアレは分かってたのか、終始面白そうにBBを見ておったがな」

「……匂いは誤魔化したと思うんだけどなぁ……?」

 

 そう言って考えるオオガミ。

 それは、つい数分前にBBが、『覚えていてくださいねセンパイ』と涙目で言って走り去っていった後だった。

 ノッブは呆れた顔で、

 

「まぁマスターの事じゃし、エウリュアレに分かりやすいように作っていなかったのは分かってるがな……どうなっとるんじゃ? 儂も全くわからんから割りと緊張感あったんじゃけど」

「ノッブが分からないのにエウリュアレが見抜くって言うのもどうかと思うんだけど。メルトはどうだったの?」

「残りで良いと言って最後の一つをエウリュアレに食わせてもらってたわ。おそらくわかってなかったと思うが」

「なるほど。ちなみに全員の味の感想は?」

 

 オオガミがそう聞くと、ノッブは少し考える素振りをして、

 

「儂的には最高の味じゃった。が、お主が作ったものではないなとだけ。BBはぶっ殺すと。エウリュアレは微笑んどっただけじゃし、メルトは眉をしかめとったな。バラキーはいつも通りうまいとだけ。カーマは真剣に考えとったな……まさか作る算段?」

「カーマならやりかねないね……問題のエリセは?」

「驚いた顔をしてたな。また食べたいとも。でもあれ、中々用意できるもんでもないじゃろ」

「いや、甘い方なら意外と簡単だよ。作成者曰く、そんなに手間はかかってないらしいので」

「ほぅ。それなら儂も食いたいな……」

「意外と大人気だ。でもまぁ、作るのは簡単だけど、コストはかかるやつらしいから。要するに素材の味で殴った料理ってことだよ」

「……腕によりをかけたとは一体」

 

 ノッブがため息を吐きながらそう言う。

 オオガミは苦笑しながら、

 

「最高級品をそれだけで使ってもパンチが強いだけだからね。適材適所。最初の一回が一番難易度高いってやつだよ」

「ふむ……そういうことか。まあ、それなら仕方あるまい。それで? 何を取ってくれば良い」

「あれ、ノッブ自ら出動で?」

「そりゃ、隣人が瀕死になってたら流石の儂も手を下すわ。どうしようもないものなら是非もないが、対処できるならしておく事に損はないじゃろ」

「まぁ、それもそうか。それじゃ、必要なものを聞いてくるよ。って言っても、そんな難易度高くないと思うけどね」

「えぇ~、それ、お使い系クエストなら地味に面倒なやつじゃろ」

 

 そう言って、ノッブはオオガミを見送るのだった。




 復讐の旅に出たBBちゃん。果たして復讐は成就するのか。必ずやかの邪智暴虐のオオガミを辛さで悶えさせんと飛び出したは良いが、どこに向かい何をすればいいのか全くわからないと言うことに気づき素直に帰るBBちゃん。頑張れBBちゃん、それ行けBBちゃん。復習の未来はどっちだ!


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吾、無理しなくてもいいと思うなぁ(もうこれは戦いなんですよ)

「カーマ……その、なんだ。無理はしなくてもいいからな?」

「良いですかバラキー。これはもう挑戦なんです。面倒だからで済ませていい案件じゃないです。貴女にとって私が美味しいお菓子を作ってくれるという想いを持っている時点でそれよりうまいお菓子って言うのは攻略対象なんです。なので試作品は食べてもらいますからね」

「いや流石の吾も引くほど多いのだが……」

 

 容赦のない饅頭の群れ。事の発端はと言えば、いつものバラキーのわがままであったのだが、既にカーマの意地に変わっていた。

 

「……吾、別にカーマの饅頭が悪いとは言ってないと思うのだが……」

「悪い悪くないじゃないんです。あのときの饅頭より美味しいか美味しくないかなんです。いいですか? 全方位の愛に対応するってことは、全方位に精通していないといけないんです。ですから、出来ないってことがある時点で愛の女神として敗北なんです! 私はダウナーな感じで全てをそつなくこなしたいんです。だるだる~っとした雰囲気全開でやりたいんです。だってそっちの方がカッコいいじゃないですか!」

「いや全くわからんが。というか、もはや吾関係ないのでは?」

「例え無限大の私の可能性があってもそれを即座に発揮できないのならそれはやはり愛の神として敗北感が強いんですよわかります!? 確かに私は働きたくない愛の女神ですけど、それはそれとしてやれることはやっておくべきですしたまにこういうことをしないと自分の意義を忘れるので真剣にやってるんですよ! 例え面倒でもしなくちゃいけないことなんで!」

 

 怒濤の勢いでそう言うカーマの言葉を聞いて、バラキーは、

 

「……で、結局饅頭は作るのか?」

「当然じゃないですか。ここでやめたらお菓子作りの私が泣きますよ」

「汝は一体何と戦っているんだ……?」

「私自身です!」

「……流石に吾もそれはどうしようもない……」

「バラキーは食べるだけでいいので。えぇ、全部食べるだけで大丈夫ですから」

 

 そう言って、ドンッ! と言う重々しい音と共に置かれた皿の上には、若干見上げるほどの饅頭の山。

 いつぞやのタルトを思い出したバラキーは、ほんのりと青くなった顔でカーマを見ながら、

 

「……吾の胃には余るものだと思うのだが……助っ人は呼んでも良いのか?」

「マスター達ならいいですよ。マスターいるでしょうし」

「わかった。吾ちょっと呼んでくる」

「えぇ、早く戻ってきてくださいね」

 

 そう言って、バラキーは急いでオオガミを探しに行くのだった。




 お菓子ガチ勢カーマちゃん。珍しく愛の女神要素フルバーストでお菓子作り。しかし厨房組とのレベル差は計り知れないのだった……


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ここでラスベガスですか(ガチャ石なんかありゃしねぇ!)

「……ガッポリー、ギリギリで終わったんですよ」

「そうね。必死だったものね」

 

 燦々(さんさん)(きら)めく太陽と、光を反射する構想建築物。

 

「……高難易度も全力で終わらせたんですよ」

「そうね。令呪を使いそうな勢いだったものね」

 

 オーブンの中かと思うほどに熱い風と日差しを受けながら、オオガミは眼前に広がるカジノの群れを見ながら、

 

「……ここでラスベガスですか」

「えぇ。石が枯渇した貴方にはピッタリでしょ?」

「死ぬほど後悔してる」

 

 誰だよ石を使ったやつは。と嘆くオオガミに、エウリュアレはにっこりと笑いながら、

 

「復刻を諦めて今年の夏イベントを待てばいいじゃない」

「……エウリュアレ達の中の誰かがピックアップされてない限り別に……」

「そう言いながら毎度引くでしょ」

「新規イベントはしょうがないじゃん」

 

 そう言って目を逸らすオオガミ。

 エウリュアレは苦笑いをしながら、

 

「それで、マシュは?」

「もう菩薩の微笑みでしたね。次はないぞって意味で」

「……ラムダに使えるの?」

「それは許可してくれた。でもまぁ、少ないのは自業自得ですよって言われたのは反省点」

「言われるようなことをしないようにすればいいのに」

「ガチャが回せと叫ぶので」

「まぁ、いつもなら復刻はあまり回さないものね。しょうがないわ。救いがあるとしたら、最後の方に30個もらえるくらいじゃない?」

「ふっ、今回で絆レベルを上げればいいだけの事だよ。それにフリークエストも残ってるからね」

 

 そう言って、不屈の笑みを浮かべるオオガミ。

 エウリュアレは呆れた顔で、

 

「まぁ、楽しめてるならいいわ。それに、メルトとの約束もあるんでしょ。今回は私が先に帰るからね」

「……なんで予定を把握されてるんですかね」

「あら、貴方の事に関しては他の追随を許すつもりはないもの。なにより、メルトが楽しみにしていたんだから。トゥリファスの時の借りは返しておくに限るわ」

「……ありがと」

「感謝されることなんかないわ。だってほら、それまではカジノを楽しむ私たちについてきてもらうもの」

「……ファラオカジノに小細工無しで入る女神に?」

「それを言ったらメルトはカジノ経営をしているのだけど」

「う~ん、ノーコメントで」

 

 そう言って、目を逸らすオオガミ。

 エウリュアレは楽しそうに笑いながら、

 

「ほら、QPを集めないとでしょ。大丈夫。サクッと終わるわ」

「……エウリュアレに言われたなら仕方ない。サクッと終わらせよう。ところでメルトは?」

「先にホテルに戻ってるって」

「連れ戻しにいくよ」

 

 そう言って、二人はホテルに向かうのだった。




 へー、ほー、ふーん……やるじゃん……何も出来ないんだが??

 唯一の救いは残り18日でログインボーナスということ。一発で決めなきゃ……


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誰だろうとラムダの前には皆同じ(セイバーは蹴り砕くもの)

「久しぶりね。相手がセイバーだろうとメインアタッカーなのは」

「そりゃね。攻撃力250%とか、相手がセイバーなのに優位を取ってるのと変わんないし、優位を取れてるならメルトに敗北はないから」

「あら、分かってるじゃない」

 

 そう言って、不敵に微笑むラムダ。

 オオガミも嬉しそうな笑みを浮かべながら、

 

「実際、セイバー相手でも余裕じゃない?」

「えぇ、そうね。これならどこでだって舞えるかも」

「ラムダが最高に輝けるイベントだからね。目にものを見せよう」

「そうね。誰も地上になんて帰さないもの。このラスベガスはどこだろうと私のステージ。何よりも、貴方がいてくれるなら絶対に負けないわ」

 

 そう言ってオオガミにピッタリとくっついたラムダは、しかしなにかに気づいたように顔を上げると、

 

「早く水天宮に来なさいよ? でないと私のステージ見れないじゃない」

「任せて。とりあえず出来るだけ早く向かうよ」

「一体何度ステージを開いたら来るのかしらね。待っているから早くしなさいよ」

「もちろん。でないと出来ないこともいっぱいあるしね」

「えぇ。だから、さっさとQPカウンターを終わらせて進みましょう? まだ刑部姫までしか終わっていないじゃない」

「任せて。QP礼装はあるからそれなりに速度で向かうよ」

「それ遅いやつじゃない」

「リンゴは会議の結果NGらしいので」

「……最終日に焦るのが目に浮かぶようね」

「分かる。でもまぁ、礼装あるしある程度は少なく済むでしょ。たぶん」

「不安しか感じない言い回しね」

 

 そう言って、呆れた顔でため息を吐くラムダ。

 オオガミは苦笑いをしながら、

 

「まぁ、とにもかくにも、出来るだけ早く向かうのに嘘はないよ」

「えぇ。励みなさい」

 

 そう笑いながら離れるラムダ。

 だが、その顔は何かに気付くと同時に嫌そうな顔になり、

 

「まって。貴方が来るってことは、つまりまた私の計画が御破算になるってことじゃない。最悪だわ。汚点を増やされるじゃない」

「なに。壊されることも想定済みとばかりの涼やかな顔をしてれば良いんだよ。通じるだろうし」

「そう言う問題じゃないの。御破算にされるってだけでもう嫌。誰だって計画を台無しにされたら怒るわよ」

「……まぁ、そう言うこともあるよね」

「あってたまりますか。詰めが甘いのはBBだけで十分よ。私まで同じにされたくないわ」

「……いつも通りじゃない?」

「蹴られたいのかしら」

「ごめんなさい許してくださいラムダ様」

「仕方ないわね。許してほしいのならすぐに水天宮に来なさい。今度こそ勝つから」

「ラムダをラムダで打ち破っていいですか」

「絶対に辞めて」

 

 そう、頬を膨らませながらラムダは言うのだった。




 これが天下の250%特攻ラムダだぁ!! 大体倒せる!!


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情け無さすぎます(カジノ恐ろしい……)

「ふぐっ……うぅっ……」

「情けない……情けないです……誰にも見られたくない……」

「……貴女達、何してるのよ……」

 

 しくしくと泣いているバラキーと、顔を隠して誰にも見られまいとしているカーマ。

 その二人に話しかけたシトナイに、

 

「聞かないでください……」

「カジノで全て没収された……」

「ちょ、バラキー言わないでくださいそんなこと!!」

「……え、なに、カジノで大負けしたってわけ?」

「うむ……吾もカーマも、最初は勝っていたがだんだんと負けて、意地になったら全部持ってかれた」

「典型的な転落……でも、なんでカーマも? 貴女、こういうところではマトモだったと思うのだけど」

「……バラキーの仇討ちに向かって返り討ちと言うやつです」

「……何も言える事はないわ……」

 

 呆れを通り越して、いっそ哀れに見えてきたシトナイは、

 

「はぁ……どこかごはんが美味しいお店を知らないかしら。出来れば案内してほしいのだけど」

「うむ……構わぬ……が、少しQPを取ってくる……」

「あれ、残ってるの?」

「まぁ、手持ちのを全て溶かしただけなので……預け入れてたものにも手を出しかけてましたけど」

「流石に吾は貯蓄までは使わんわ……カジノよりもうまいもの。吾にとってそれは変わらぬし、カーマにも食わせて覚えてもらうからな」

 

 そう言って、QPを取りに行くバラキー。

 

「……面倒そうな関係ね」

「これでも中々、居心地はいいんですよ。料理作ってるだけでいいですし」

 

 そう言うカーマに、シトナイは首をかしげながら、

 

「料理、得意なの?」

「まぁ、それなりってところです。流石に職人ほどではないですが、一般的な家庭料理の部類でならある程度は再現できますよ。と言っても、バラキーが要望しない限りしませんけど」

「ふぅん……仲良いのね」

「まぁ、なんだかんだ召喚されてからほとんど一緒にいますしね。貴女も何かあるんじゃないんです?」

「……霊基の記憶に、彼女との出会いがあったのかも知れないわね。今の私には預かり知らぬところではあるのだけど」

「そうですか。で、今の貴女からしてバラキーはどうなんです?」

「ん~……かわいい妹みたいよね」

「……分かってるじゃないですか」

 

 そう言って二人が笑っていると、帰って来たバラキーが神妙な顔で、

 

「むぅ……吾がいないうちに何か面白いことでもあったか?」

「いいえ? そんなのないですよ」

「えぇ。何にもないわ」

 

 首をかしげるバラキーに、二人は楽しそうに笑うのだった。




 バラキーが没収されたくらいで破滅するわけ……いやうちのバラキーならあり得るな?


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水天宮、一年ぶりね(時が経つのも早いもので)

「水天宮、一年ぶりね」

「メダル一枚100万QPらしいよ?」

「ふぅん……それで900枚あるわけね」

「かごで出てきたもんね」

 

 そう言って、メダルが入ったかごを見て、ため息を吐くオオガミ。

 それとは逆に、数枚しかない紫色のメダルを取り出し、

 

「経験値は、そんな無いみたいだけど」

「そうね……たぶん割合なんだと思うわよ。とりあえず、少しくらいは遊べるわね」

「メルトのステージが始まるまでなら十分じゃない?」

「えぇ。午後から始まりで、今はお昼時。もう食べたのだし、後はショーまでの時間を潰すだけだもの」

 

 そう言って、数枚のメダルを持ってスロットに座るエウリュアレ。

 オオガミは後ろからそれを見ながら、

 

「……勝てそう?」

「バカ言わないで。当然でしょ」

「流石エウリュアレ。これは破産しないね」

「別に、気にしないでしょ」

「まぁそうだけど」

 

 そう言うオオガミに、エウリュアレは少し視線を向け、

 

「そう言えば、ラムダのピックアップ始まったんでしょ?」

「……まぁ、成果は得られなかったけどね」

「この前溶かしてたし仕方ないと思うけど」

「否定できないね」

「でしょ? だからほら、これあげるわ」

 

 そう言って差し出す30個の聖晶石。

 受け取ったオオガミはキョトンとした顔で、

 

「……いいの?」

「いいに決まってるでしょ。別に、私の絆レベルが上がったからって私に使う必要はないんだし」

「……ありがとう。それじゃ、ショーが終わったら召喚に行ってみるよ」

「えぇ。そうしてちょうだい」

 

 そう言って、ジャラジャラとメダルを入れていくエウリュアレ。

 反対に、入れた倍以上にメダルを排出しているスロットを見て、帰るときにはQPが増えていそうな予感がした。

 

「それで、足りなかったときのあてはあるの?」

「あるよ。まだ色々とやってないクエストがあるし」

「そう。それならいいのだけど。どうせ私の石からは出ないもの」

「……まぁ、エウリュアレは来てくれるね」

「そう言うのはいいの。だからほら、集める準備だけしておきなさいよ」

「うん。任せて、全力疾走だ」

「えぇ、期待してるわ。イベントも忘れないようにね」

「当然。リンゴに制限なんて設けないで最初からクライマックスだよ」

「メルト関連はいつもでしょ」

「そりゃ、メルトのためですし。全力にもなるってものです」

「……ま、私たちにもそれくらいの熱量だし、許すわ。それじゃ、そろそろショーが始まるから移動しましょ」

 

 エウリュアレはそう言って話を切りあげ、オオガミにメダルを回収させてからステージに向かうのだった。




 何の成果も、得られませんでしたァァァ!
 エウリュアレ様にはお詫びの夢火! これで上限13だぁ!


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完全無欠最強スタァへの道は険しい(またいつか挑戦ね)

「あぁぁ……完全無欠最強のスタァにしたかったのに……うぐぅ……」

「そうねぇ……ファイブカード」

「あら、また勝ったのね」

「えぇ。地道に稼ぐのはオオガミに任せるわ」

 

 そう言いながら、頃合いを見てゲームを移動するエウリュアレ達。

 オオガミは未だにラムダの宝具を重ねられず嘆いているが、二人はそしらぬ顔をしていた。

 

「そう言えば、わりと真剣に稼いでいるようだけど、何かあるのかしら」

「ん……そうね。何もないってわけではないのだけど……えぇ、こう答えましょうか。今はまだ語るべき時ではない」

「……あの性悪探偵の真似?」

「似てたかしら」

「二度とやらない方がいいと思うわ」

「そこまで言われるほどかしら……」

 

 そう言いながらルーレットを選ぶと、ディーラーがすぐ入れ替わり、

 

「貴婦人がた。私と一勝負如何かな?」

「キャー! ランスロット様!」

「えぇ、えぇ! こちらこそよろしくお願いしますわ!」

 

 そう言って、黄色い歓声があがる。

 だが、エウリュアレとメルトは、出てきたランスロットに対し、

 

「稼ぎすぎて警戒されたかしら」

「そうねぇ……視線が明らかにこっちに向いているもの。ターゲットされてるわ」

「そう……仕方ない。普通に潰すしかないわ」

「セイバーだから対魔力持ちよ。魅了は効かないんじゃないかしら」

「そうね。でも、それ以上にセイバーで男性よ。どうにでも出来るわ」

「物理的突破は好きだけど、ここでするのは違うんじゃないかしら」

「まぁ見てなさい。余裕で勝ってくるわ」

 

 そう言って、ランスロットに向かっていくエウリュアレ。

 それを見送ったラムダは、入れ替わるようにやって来たオオガミに、

 

「止めなくていいの?」

「……言っておくけど、今日のエウリュアレ、不正しかしてないからね?」

「え……?」

 

 そう言って首をかしげるラムダ。

 オオガミはため息を吐いて、

 

「男性ディーラーを相手にするのを前提として、うさんくささの化身たるマーリンや、ロビン、新シンから教わったイカサマテクニックを全部使ってるから」

「……そんなに不正ができたのかしら」

「そりゃね。だって、仕掛けるためにアビーまで使ってるから」

「全力もいいところじゃない。だから真剣なわけね」

「まぁ、理由はそれだけじゃない気もするけど」

「……明らかに何か目的がありそうな気がするものね」

「まぁ、なんだかんだ現状一番資金があるんだけどね。エウリュアレ。普段使わないから貯まってく一方なんだよね」

「……なんであなたが資金を知ってるのよ」

「丸投げされてるから。使う予定はないとか言ってさ」

「そう……それならあれだけ稼ぐ理由もない気がするのだけど……」

 

 そう言って不思議そうな顔をするラムダに、オオガミは苦笑するのだった。




 結局イベント中に全然投稿できなかった……
 まだもう少し書けない時期が続くかもですが、失踪しないですよ! 予定はないですよ!


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バニ上も馴染んでくれたかな(イカサマ集団相手にカードゲームなのね)

「……バニ上も馴染んでくれたみたいだね」

「休憩室の一角をカードゲームで占領するくらいにはね」

「エウリュアレは挑まないの?」

「理由がないもの」

 

 そう言って、オオガミに淹れさせた紅茶を一口飲むエウリュアレ。

 だが、オオガミは不思議そうな顔で、

 

「じゃあカジノキャメロットの時は理由があったわけ?」

「当然でしょ。でなきゃあんな不利な戦いはしないわ」

「まぁ、そうだよね」

 

 そう言って、ラスベガス土産のチョコレートを食べるオオガミ。

 するとどこからともなくアビゲイルが現れ、オオガミの脇腹にえぐるような頭突きを叩き込みながら、

 

「マスターマスター! 聞いてくださいな!」

「ごふっ! ど、どうしたのアビー……」

「えぇ、えぇ! 先程私、ノブナガさんとBBさんの工房へ行ったら、悪だくみをしているような声が聞こえたの! あれは絶対に何かをするつもりなんだわ!」

「……いつもの事じゃないの?」

「いいえマスター。あれはいつもより3倍はすごい悪だくみよ。私には分かるわ!」

「……確かにそれは不安要素だね」

「マスターもそう思うでしょう!? だからマスター、調査にいきましょ!」

「え、今日はあのイカサマ集団のタネを明かすつもりだったんだけど」

「イカサマと工房どっちが大事なの!?」

「イカサマテクニック」

「そんなにハッキリ!?」

 

 悲しそうに嘆くアビゲイルに、オオガミは苦笑しながら、

 

「そもそも、あの二人は悪だくみの1割も実行してないし、実行しても9割失敗してるから問題ないって」

「そうかしら……エウリュアレさんはどう思う?」

「簡単よアビー。失敗でも成功でも楽しいことに代わりはないから放っておけばいいの。大騒ぎの方が楽しいに決まってるでしょ?」

「なるほど! 流石エウリュアレさんね!」

「えぇ。だから一緒に見ていましょ」

「分かったわ!」

「え、分かっちゃうの? マジで?」

 

 エウリュアレの言葉に対して素直に受け入れるアビゲイルを見て困惑するオオガミ。

 エウリュアレの言動がメドゥーサと違うのは、妹分と実妹の差なのだろうか。

 そんなことを考えていると、

 

「マスター、ここにいましたか」

「あれ、アナ? どうかしたの?」

「えぇ。先程マシュさんに会いまして、マスターを呼んでくるように、と。その時ラムダさんもいましたので、関係あるんじゃないかと」

「……そのうち行くよ」

「はい。そう言ったときは、力ずくで連れてくるようにと言われているので」

「……ここは逃げさせてもらうね!」

「逃がしません!」

 

 そう言って、マシュの威光のもとで迫り来るアナから、オオガミは全力で逃げるのだった。




 いやぁははは。まさかスタァから貰った石30個をライネス師匠に使うわけぇ……いやあるんですけども。

 しかしバニ上、使う機会が無さそうなんですよねぇ……


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今度は何をしたのだ汝は(いつも通りですよたぶん)

「……今度は何をしたのだ汝は……」

「今回はライネス師匠を呼ぼうとしただけなんだよ……」

「だからってラムダさんから貰った石を消費するのはどうなんです? というか、私も渡したはすなんですけど」

 

 もはや見慣れてしまった、廊下に吊られているオオガミ。

 今回は蹴られた跡もあるので、マシュだけではなく、ラムダも加担していることは分かっていた。

 とはいえ、当然のような顔で吊られているオオガミに、流石のバラキーとカーマも苦笑いになる。

 

「それで、どうだったのだ? うまくいったか?」

「ふっ、バラキー。わかってて聞くとは流石は鬼。もちろん召喚できてるわけないじゃないか」

「うむ、知ってた。吾に声もかかってないし、エウリュアレも暇そうだったからな……そして汝がおとなしく吊られている時点で反省していると言うわけだな」

「バラキー、最近そういうの考えるの得意になってきたよね」

「吾もとから得意だが?」

「バラキー。嘘は良くないですよ」

「嘘じゃないわ! 吾は大江山の首魁ぞ!?」

 

 そう言って怒るバラキー。

 オオガミとカーマは顔を見合せると、

 

「まぁ、それを言われると納得」

「ですねぇ。なんだかんだ優秀ですから」

「なんだかんだとはなんだ。吾普通に優秀だろうが。まぁ、酒呑には遠く及ばないがな」

「そうですか……酒呑とかいうのには会ったことないので分かりませんけど、まぁ、バラキーがそれだけいうならそういうことにしておきましょう」

「うむ。酒呑はすごいからな。会えばわかる。酒呑はすごいのだ」

「う~ん、バラキーは酒呑の話になるとこうなるよね」

「そうですね……えぇ、はい。そうなんですけど」

 

 そう言って、カーマはオオガミを見ると、

 

「よく逆さに吊られてるのに平気な顔をしてますね」

「まぁね。頑丈だから」

「そうですか……助けは要ります?」

「降ろしてくれるの?」

「えぇ。ちょうど教えてほしいのがあって。フロランタンなんですけど、分かります?」

「そんなのでいいなら。これもバラキー用?」

「いえ、これはまた別ですね……最近イタズラらしい事をしていないのでいい加減何かしようかなと」

「なるほどね……ちょっと楽しみ」

「イタズラが一ミリも自分に向かないと思っているのが不服ですけど……まぁいいです。降ろしますね」

 

 そう言って、弓矢を取り出して紐を射って切るカーマ。

 流れるように頭から落ちたオオガミは、自力でロープから脱出して首をおさえつつ、

 

「……変にひねったかも」

「そうですか。じゃあ、アスクレピオスさんに見てもらってサクッと治しましょう」

「……カーマも対応が慣れてきたね」

「一応一年以上いますからね?」

「それもそうか」

 

 オオガミはそう言って納得し、カーマに連れられて医務室に向かうのだった。




 珍しく人間アピールするオオガミ君。人間だったなぁコイツ。

 しかし石が全く貯まらない。不思議だなぁ……


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異世界カルデア探訪記

 本日はTwitterでLINE風SSを書かれている向日 葵様とのコラボ回です! これは後編なので、先に下のリンク先の向日 葵様のコラボ回前編の方を見ていただけると分かりやすいのではないかと思います!
第一話
第二話
第三話
第四話

 それではお楽しみください!








「とりあえず、二人とも退いてくれるとありがたいんだけど……」

 

 そう言って、正面にいる朱色の髪をした少女を見ながら、上に乗っているエウリュアレとラムダにお願いをする。

 

 

 * * *

 

 

 事の発端は数時間前の事。

 マイルームに通信が来て、ロリンチちゃんにバイタルがおかしいと言われたときに、メルトが違うメルトに変わっていたことが始まりだった。

 

 とりあえずロリンチちゃんと勝手について来たノッブをマイルームに連れて戻ると、知らないメルトはどこかに行こうとしていたようで、話している間も心ここにあらずといった様子だった。

 そしてバイタルのおかしい点を聞いているときにメルトは流体になって消え、探して見つけたと同時に食堂に向かって駆け出した。

 

 追っている途中で、これまた知らないリップが向かってきて、BBからの伝言があるという。

 そこでマスターという言葉を聞いて、即座にこの現象の犯人を二人に絞る。

 

 そして、向かった先の食堂にいたのは、今目の前にいる朱色の髪をした少女。なにやら歌を歌っているようなのだが、その光景はまるで固有結界のようで、海底を想起するようなものだった。

 

 そして突如としてBBが現れ、今に至る。

 

 

 * * *

 

 

「全く。情けないわね、この程度でへばるなんて」

「私まで潰されているのは遺憾なのだけど」

「あら、それはごめんなさいね」

 

 そう言って、素直に退くエウリュアレ。続いてラムダも起き上がり、解放されたオオガミも立ち上がる。

 

「さてと……まずは挨拶かな。俺はオオガミ。よろしく」

「私はアオイ。よろしくね。それにしても、私と違ってずいぶんと落ち着いてるね」

「まぁ、こういうことは少なくはないし、何よりもエウリュアレとメルト……いや、ラムダがいるからね」

 

 そう言って、朱色の髪の少女改め、アオイの隣にいるメルトに一瞬だけ視線を向ける。

 同時に背後から二つの殺気を感じて振り向くが、エウリュアレもラムダも、いつにないくらいいい笑顔をしていた。

 

「どうかした?」

「あ、あぁ、いや、何でもない。それより、そっちのBBがさっき鬼ごっこをしているメンバーを召集してた気がするんだけど……」

 

 そう言うと同時に、複数の足音が聞こえ、即座にオオガミは壁際まで距離を取る。

 直後部屋に入ってきたのは、マルタ、楊貴妃、マシュ、そしてエルキドゥの四人。

 だが、その全員がこちらに驚いているようですぐさま臨戦態勢になる。

 しかし、アオイが四人の前に出て、

 

「ちょ、ストップストップ! 敵じゃないから!」

「そ、そうなんですか? てっきり侵入者かと……」

「まぁ、カルデアの中に侵入されてると言えば確かにそうなんだけど」

「よし。とりあえず拘束しようか」

「ダメ! ダメだからねエルキドゥ!」

 

 そう言って必死に止めようとしているアオイを見ながら、オオガミは、

 

「抵抗したいけどここには神性しかいなくて詰みですね」

「ふふっ。残念ねオオガミ。あなたの旅路、ここで終わりみたいよ?」

「そんな理不尽許すわけないわ。それに、拘束されなければいいんだもの」

「あの鎖、流体化しても無駄だと思うのだけど」

「……さよならオオガミ」

「ラムダまで諦めたら本気で詰みじゃんね!」

 

 何かを察したような顔で見てくる二人に、半泣きになるオオガミ。

 そして、諦めたように両手を上げると、

 

「はい、降伏。拘束でも何でもいいけど、せめてそこのBBの話を聞いてからでも遅くはないと思うな」

 

 そう言って、エルキドゥの拘束を甘んじて受けるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「というわけなんです」

「ふむ。つまり、彼らは被害者なわけか」

「そういうことになりますね。ですので、皆さんには出来るだけ無傷で水着の私を捕まえて欲しいと言いますか、最悪放っておいてくれて構わないです。お願いしますね」

「ま、しょうがないわね。抵抗が激しいから無傷って訳にはいかないし、今回は逃がしてあげるわ」

「僕も、調節は得意じゃないからね。うっかり絞めすぎると良くないだろうし」

「私は水着のBBを燃やしたいから、ダメかな……ごめんなさいご主人様。お役に立てなくて」

「いやいや、燃やさないでいてくれるだけでありがたいし……マシュは?」

 

 解散していく水着BB討伐隊の中で、マシュだけが残ったことを不思議に思い、聞くアオイ。

 すると、マシュは若干不機嫌そうな顔で、

 

「水着BBさんよりも、こちらの方々の方が気になるので。何よりも、先輩に何かあったらと考えると、一応一緒にいた方がいいかな、と思いまして。並行世界のカルデアの方々と言われても、実際は不審者に変わりはないですから」

「あ、うん。そうだよね……」

 

 そう言って、現状を理解するアオイ。

 オオガミはと言えば、エウリュアレと何かを話しているようだった。

 

「ともかく、あの三人がこっちに来たのも私たちが向こうに行ったのも水着BBが主犯だから。それまではカルデアを案内するとか、そういう感じで。良い?」

「はい、センパイはそれでお願いします。その間に私は水着の私を捕まえてきますね。メルトも来ます?」

「まさか。行くわけないでしょ? むしろマシュを連れていった方がいいんじゃないのかしら」

「要らないですよ。一人でも出来ますし」

「じゃあさっさと行きなさい。こっちにいる時間が長ければ長いほど、互いにとって良くないでしょう?」

「まぁ、何が起こるかわかりませんし。何より、強制的に連れてきているから向こうはレイシフトじゃないですから」

 

 そう言うBBに、アオイたち三人は首をかしげると、

 

「それって、普段のレイシフトみたいに存在証明がされてないから、このままだと消滅しちゃうってこと?」

「そうですね。一応こっちで存在証明を行っているんですが、いつ消滅するかも分からないので早くしたいところです。まったく……中途半端な物を運用しないで欲しいです」

「あはは……とにかく、水着BBを捕まえるまで一緒にいればいいんだよね?」

「はい。よろしくお願いしますね」

 

 そう言って、にこやかに笑うBB。

 アオイはため息を吐くと、

 

「それじゃ、カルデア内を案内していくとしようか」

「案内って言っても、そんなに変わらないでしょ」

「並行世界のカルデアと違うところ……どこでしょうか……」

 

 そんなことを話しながら、オオガミたちに声をかける。

 

 

 * * *

 

 

「カラオケルームかぁ……この発想はなかったなぁ……」

 

 デカデカと主張するカラオケルームに、少し目を輝かせるオオガミ。

 それを見てアオイは、

 

「中も見ていく?」

「見る見る。って言っても、歌わないんだけどね」

「えっ、そうなの? 一応部屋代取られるよ?」

「QPは余ってるからそれくらいは。一時間一億QPとかだったらやめるけど」

「流石にそこまで法外じゃないよ……たぶん」

 

 そう言いながら部屋を取ろうとして、

 

「とりあえず大部屋を……ってあれ、全部埋まってるじゃん……四人部屋は空いているみたいだけど、どうしようか」

「う~ん、内装を見たいだけだからなぁ……デザインとか参考にしたいし」

「何の参考?」

「そりゃ、帰ってからこういうの作りたいし。というか、作らせる」

「作らせるって……そんなこと出来るの?」

「まぁね。こっちのBBとノッブは領域外の超科学物体を作るから。魔力駆動式だから純科学じゃないって言ってるけど、どうだか……でもまぁ、イメージ的にはヘルタースケルターみたいなやつだし、出来ないこともないのかな……」

「なんだか専門的な話になってきたかな……?」

「いやいや。そんなこと無いって。聞いてる感じ、そっちの水着BBとそんな変わらないんじゃない? 話を聞いていた感じ、アオイが来た原因みたいだし」

「そう、なのかなぁ……どうなんだろうね」

「うん。まぁ、こっちはそんなに物騒なものを作っては……作って……」

 

 だんだんと声が小さくなっていくオオガミに、首をかしげるアオイ。

 そして、オオガミは若干遠い目をしながら、

 

「ワープホール装置とか作ってた気がするなぁ……」

「それどう考えても超物騒案件じゃないの?」

「運用される前にBB自身がゲートを作れるようになったから封印されているはず……されていて欲しい……」

「希望的観測だ……」

「まぁ、そう言うこともあるってことで。うん。こっちの方が物騒かもしれない」

 

 そう言っていると、二人の間にするりと割って入ったエウリュアレが、にっこりと微笑みながら、

 

「ねぇ二人とも? 入るのか入らないのか早めに決めて欲しいのだけど」

「ごめんなさいエウリュアレ様さっさと入ろうそうしよう」

「メンバーはどうするつもりなのかしら」

「俺とアオイは確定だけど、メルトとラムダを一緒にするのはどうかと思うんだけどどうしますか」

「じゃあ私と向こうのメルトが外。他が中よ。行ってらっしゃい?」

「ということでよろしく」

「え、あ、うん、わかった」

 

 怒涛の勢いに、何がなにやら分からないまま了承するアオイ。

 分けられたメルトは不満そうだったが、エウリュアレは微笑みながら、

 

「まぁ、あなたからすれば私と一緒というのは嫌でしょうけど、こちらのマスターは、歌わないと言ったからには本当に歌わないでしょうし、さっきの調子からして部屋の時間全部使って話し合いしているもの。絶対退屈よ?」

「別に、私は構わないのだけど。そっちの私は大丈夫なのかしら」

「別に、聞いているだけでも苦じゃない子だから。それに、私があなたと話したいの。ダメかしら」

「……マシュ。護衛は任せたわよ」

「はい! お任せください!」

 

 そう言って、メルトとエウリュアレを置いて四人は部屋に向かうのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ふむふむ。これはいい感じの部屋だ……」

 

 およそありふれているであろうカラオケルームの一室。

 だが、オオガミは珍しそうに、もしくは懐かしそうに部屋を隅々まで見ていた。

 その様子を見て、アオイは首をかしげながら、

 

「いい感じって、デザインが? それとも機能が?」

「どちらかというとデザイン。まぁ、普通のカラオケルームって言われたら確かにそうなんだけど、所々魔術が仕込まれていたりしてるんだろうし、監視カメラが見えないって言うのも流石だよね」

「監視カメラ?」

「うん。まぁ、正確には防犯カメラとか言った方がいいんだろうけど。目的はまぁ、色々あるんだろうけどね。これ以上暴くのは面白味に欠けると思うし、ここらへんで考察はやめておくとしよう」

「すごい気になるんだけど……その防犯カメラってどこにあるの?」

「それはちょっと言えないかなぁ……見つけたのはラムダだし」

「ふん。ただ単にBBの視線を感じるって言っただけでそこまでわかるなら別に聞かなくても分かったでしょうに」

「そんなこと無いと思うけどなぁ……こっちは感知が出来るほど魔術に長けている訳じゃないし」

「……そう言うことにしておくわ」

 

 そう言って、顔を背けるラムダ。

 オオガミは苦笑しながら、

 

「とにかく、悪いものではないと思うから教えるつもりはないよ」

「残念。聞き出せたら良かったんだけどね」

「まぁ、逆の立場だったら意地でも吐かせるけども」

「こっわ。何されるわけ?」

「そりゃもちろん、サクふわクロワッサンにカリカリのベーコンを添えてね」

「そんな、ゴッフ所長みたいなことをするんだね?」

「熱々コッテリカルボナーラの方がお好み?」

「あ~~、どっちも食べたい!」

「でも残念なことに俺が作れるのはおかし限定なんだよね。難しいやつじゃなければ大概は作れるよ」

「それはあれかな? 作ってくれる感じのやつかな?」

「機会があったらね。まぁ、作ったとして食べられるかは別だけど」

「競争率が高いの?」

「作って一時間も経たずに消えるくらいには」

「大人気じゃん……そんなに美味しいの?」

「どうなんだろうね。個人的にはエミヤに負けてる気がするんだけど……どちらかというと珍しさの方が勝ってるのかもしれない」

「それもそっか。マスターがお菓子を作るとか普通無いもんね」

「それを言ったら英霊に家事をさせているわけですけども」

「この話題はこれ以上踏み込まない方が得策だね?」

「とんでもないことをやらせている事実に気づいちゃうからね」

 

 そう言って笑う二人に、マシュとラムダはため息を吐く。

 すると、オオガミは思い出したように、

 

「そういえばさ、マシュと仲はいいの?」

「ん? 見ての通りバッチリだよ。っていうか、そっちは違うわけ?」

「どうなんだろうね。最近殴る威力が上がってきてるし。これは信頼かな……?」

「待って。殴られてるって何? マシュに何があったの?」

「ん~……ガチャをしてるくらい? まぁ、石を貯めようとしないでサクッと使うのが悪いって言うのは自覚しているんだけども」

「ふむふむ……つまりそれって石を貯めようとしないで使うことに怒ってるってこと?」

「そういうこと。なんだかんだ優しい理由だし、嫌われてはないと思うんだけど」

「……誰がどう見ても嫌われてないよ」

「やっぱり?」

「うんうん。むしろ好かれてるって。というか、よく愛想着かされないよね」

「本当にね。殴ってくれている間ならまだ引き返せるかもしれない」

「そうねぇ……最近はあなたが死なないギリギリのラインを探しているみたいだけど、大丈夫なんじゃないかしら」

「う~ん、どうやら詰んでいたみたいだ」

「ご臨終ですね……」

 

 なむなむ。と手を合わせるアオイに、オオガミは頬をひきつらせるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「あら、案外早いのね」

「はい。捕まえるだけなら問題ないですし。それに、恥はさっさと取っ払うに限りますし」

 

 カラオケルームの前でそう言うBBに、エウリュアレは頷きながら、

 

「それもそうね。じゃあメルト。楽しかったわ、また話しましょうね」

「出来ればもうこれっきりにして欲しいのだけど」

 

 微笑むエウリュアレに、嫌そうな顔をするメルト。

 そんな三人のもとに、オオガミとアオイたちが戻ってくる。

 

「あれ、もう終わり?」

「この部屋だけで終わりかぁ……いや、収穫はあったけども」

「そうですね。これ以上の存在証明は疲れますし」

「そっかぁ……まぁ、仕方ないか」

 

 アッサリと探索を諦めるオオガミに、アオイは首をかしげると、

 

「てっきりごねるかと思ってたんだけど。意外だね?」

「まぁ、良くも悪くも万能移動法の使い手がいるし」

「万能移動法……先輩。何故か私知っている気がするんですが」

「なんとなく嫌な予感がするよね」

「私たちが知っているものかしらね……」

 

 オオガミの言葉にどことなく苦い顔をする三人だったが、BBは困ったような顔で、

 

「ちゃんと帰れるやつですか? それならそれでいいですけど、そうするとこれ、どう処理しましょうか……」

「これって……なにそれ」

 

 BBに差し出されたのは、サッカーボール程の大きさの、薄い藍色の物体が二つ。。

 どちらにもいくつかの入力項目と不穏なBマークのボタンが付いており、怪しさは特大レベルだった。

 

「これはですね、【何処でもレイシフト君】です。って言っても、欠陥品なのでそんなに使えないので注意してください」

「それBBが作ってたわけ?」

「まぁ、そんなところです。それで、まぁ、これを使って帰ってもらう予定だったんですけど、使わなそうなんであげちゃいます。要らないですし」

「すごいね、あからさまな危険物を記念品みたいに渡すの。今度こっちに来る機会があったらこっちからも危険物を渡しておくよ」

「そう言うのは受け取り拒否だよ」

「残念。まぁ、こっちは受け取り可なので。ありがたく貰っておくね。それじゃ、帰るとしようかな。アビー?」

 

 すると、突如としてオオガミの隣に門が開き、そこからアビゲイルが飛び出してくる。

 

「ようやく繋がったわ! お待たせマスター! エウリュアレさん! それにメルトさ……あれ、二人いる?」

「えぇ、まぁ、そうなるわね」

「ふふっ、アビーにはどっちが私たちのメルトか分かるかしら」

「エウリュアレ、どうしてそんな試すようなことを……」

「だってその方が楽しいでしょ?」

「いや全く分からないけども。この爆弾抱えてる状態だと洒落にならないんですけど」

「それはあなたが勝手に受け取ったんでしょ」

「ごもっともです」

 

 そう言って、少し落ち込むオオガミと、楽しそうに笑うエウリュアレ。

 そんな中ずっとメルトとラムダを見比べていたアビゲイルは、

 

「こっちが私たちのメルトさんね!」

「あら、もう見つかったの?」

「置いて帰られても困るのだけど」

「置いていかれる可能性は考えなかったわね……」

 

 しっかりとラムダの手を引いて戻ってきたアビゲイルの頭を撫でるエウリュアレ。

 ラムダはため息を吐き、アビゲイルに門を開かせると、

 

「それなりに楽しめたわ、もう会わないかもしれないけど。じゃあね」

「あれ、もうお別れの場面なの? 私来たばかりなのだけど……」

「またそのうち行く機会があったら今度は最初から呼ぶわ。それじゃあ、私も戻るわね。じゃあ、またいつか会いましょう?」

 

 そう言って、ラムダとエウリュアレは先に戻る。

 一足遅れてオオガミが、

 

「貰ったこれ、改良して返すかもしれないから覚悟しておいてね」

「なんで自分で爆弾って言っておいて返そうとするんですか!」

「でも改良して貰ったら向こうに行き放題ってことじゃ?」

「それ私が大変なんですが!」

「あはは。冗談冗談」

「本当にやりかねないのだけど……」

「先輩。その時は是非私も!」

 

 そう言って話す四人を見て、オオガミは、

 

「それじゃ、また会えると信じて。じゃあね」

「今度は遊びに来るわね!」

 

 そう言って、オオガミとアビゲイルは帰っていくのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ほ~……コレがその【何処でもレイシフト君】ねぇ……なるほど。確かにこれは面白いのぅ」

「複製できるの?」

「う~む、複製なら3日くらいかのぅ……と言っても、量産は出来んが。BB。お主としてはどう見る」

 

 帰ってきて早々【何処でもレイシフト君】を渡され、目を輝かせながら分析するノッブ。

 BBも同じく目を輝かせながら、

 

「これたぶんカルデアスシステムだけを組み込んでいるんで、このサイズにすると耐久力が足りないから単発しか出来ないってことだろうと思うんですよ。でもハードを補強すればいいので、ここで秦で手に入れた装甲とかを使えば軽減できるのと、以前作ろうとしてた門の技術を組み込めば門を使っての移動というのに切り替えられて消費コストも削減が狙えるはずです!」

「よし、取りかかるか!」

「任せてください一週間で完成させますとも!」

 

 そう言って、二人は張り切るのだった。




 ふ、ふふふ……この【何処でもレイシフト君】、使い道多いけどそれはまた何処かのコラボ回で使うんだ……あるか分かんないですけど。

 しかしまぁ、コラボやって改めてアビートラベル万能過ぎると気付きましたね……やはり神話生物は強すぎる……
 それに、コラボもそこまで大変ではないと思ったのも気付けたことの一つですね。カルデアってわりと自由に出来る……

 向日 葵様! 今回は楽しいコラボをありがとうございました! いつか機会があればまたよろしくお願い致します!


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久しぶりの再会を喜んでもいいのだぞ我が弟子(タイミングが悪いです師匠)

「ふふっ、久しぶりの再会だ。もっと喜んでくれてもいいんだぞ? 我が弟子」

「おっと師匠。厄介な時に来ましたね」

 

 そう言うオオガミに、ライネスは不思議そうに首をかしげてオオガミの手元を覗き込む。

 すると、オオガミの奥にいたBBが顔を上げ、

 

「あぁ、誰かと思えばライネスさんですか。知らない声だったので誰かと思いました」

「おや、誰かと思えばAIを名乗る問題児か。確か名前をBBと呼ぶんだったかな? 君の話はメルトリリスからよく聞いているとも」

「おや? どうしましょうセンパイ。自称センパイの師匠を名乗る方にいじめられているのですが」

「メルトが関わってるなら手を出せないから。バイバイBB」

「見捨てるのが早いですね! 即断即決はいいかもしれませんけどBBちゃんを守る方向に向いて欲しかったなぁって思います!」

「それはない」

「無慈悲!」

 

 手に持っていた【何処でもレイシフト君】を横に置いてそんな掛け合いをしていると、ライネスが不満そうに、

 

「ずいぶんと仲が良いじゃないか。それはあれか? 見せ付けているのか? それなら私にも考えがあるぞ」

「おっと? センパイセンパイ。この人かつてない程短気です。具体的に言うとふざけてる場合じゃないくらいにBBちゃんピンチです」

「うん。研究はノッブが引き継ぐから安心して」

「安心できる要素はコレが無事ってくらいしかないんですが! BBちゃんの無事を祈ってはくれないんですか!!」

「無事に冥界にたどり着けますように」

「エレシュキガルさんに拾って貰えと!?」

「安心したまえ。殺しはしないさ。我が弟子に近付くと死ぬほど頭が痛くなるとかどうだ? 中々の妙案だと思うのだが」

 

 得意気に語るライネスに、BBは涙目で、

 

()()()()ですか!! もうそれ通りがかっただけとかで被害被るやつじゃないですか!?」

「もちろんだとも。まぁ、問題があるとすれば弟子は優しすぎて近付くくらいか?」

「近付きすぎると頭が爆発する機能とか付いてたら優しさによる死というとんでもない結果が生まれそうですね。遠慮します!」

「なに、遠慮は要らないさ。私たちは同じマスターと契約したサーヴァント。戦友と言い換えてもいいからね。だから遠慮せずに受け取りたまえ」

「邪悪な笑みを浮かべてますねこの人! エウリュアレさんの3倍ヤバいんですけど!」

「あらBB。私のどこがヤバいのかしら」

「あっ、さよならセンパイ。あとはノッブに任せました」

 

 肩をエウリュアレに掴まれたBBは、悟りを開いた僧侶のような微笑みを浮かべ、後を託す。

 そしてエウリュアレとライネスに連れていかれたBBを見送ると、

 

「だってさ、ノッブ」

「儂だけで出来る範囲、結構限られてるんじゃけど……あれはどうしようもない。儂も助けられぬわ。知らんうちに出てきたライネスとやらも開幕恐ろしいことをしていって、儂キャパオーバーなんじゃけど」

「サクッと再現するんでしょ」

「……システムを見てたやつが今しがた連れていかれたんじゃけど」

「……早く帰ってくるのを祈るしかないね」

「う~む、神頼み」

 

 そう言って、二人はため息を吐くのだった。




 初登場でとんでもない存在感出していったぞあの師匠。ここまで類を見ないくらいのヤバさだったんですけど。誰が師匠をあんな風に……恐ろしいことだ……


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三度目ともなれば実質実家(さっさと終わらせて帰るわよ)

「さて、三度目のSE.RA.PHだね。でも今回は余裕でしょ」

「はいはいそーですね。アルターエゴ相手ですもんね私が出るのは自然ですよ。えぇそうですとも」

「ふふっ……大体全部私が倒しているのだし、私の功績じゃない? なんでここまで来てリヴァイアサンパーカーなのかは置いておくとして」

 

 不満そうなカーマとラムダを連れてSE.RA.PHに降り立つオオガミ。

 もはや見慣れたと言ってもいいくらいの場所ではあるが、メルトとの出会いの場であることを考えればそこまで悪いものではなく、

 

「……よし。サクッとボスをボコボコにして帰ろう」

「ボスの正体を隠す必要もないでしょ」

「気持ち的にね」

 

 チリチリと存在を削られていく感覚に、サクッと倒して帰りたいという気持ちが強くなる。

 それを察したラムダは、

 

「それじゃ、安全地帯に一回寄りましょう。疲れて倒れられても迷惑だもの」

「まぁ、こまめな休憩は大事だしね」

「あれ、てっきり一直線で向かうのかと思ったんですけど」

「急がば回れってやつよ。何より、BBだもの。素直に行かせてくれるわけ無いじゃない」

「あ~……それもそうですね。確かに回り道をする方が賢明そうです」

 

 ため息を吐いて、素直に従うカーマ。

 それを見てオオガミは、

 

「カーマもずいぶんと慣れてきたみたいだね?」

「伊達にバラキーといるわけじゃないので。嫌でも情報は入ってくるんです」

「ふぅん……バラキーと、ねぇ」

「あなたの場合はバラキーがいるから情報を仕入れてるんでしょ」

「なんでそうなるんですか! 他意はないですよ!!」

 

 顔を赤くして言うカーマに、オオガミとメルトはニヤニヤと笑いながら、

 

「なんだかんだ保護者よね、あなたって」

「カーマは堕落させるためって言いながらもさりげなくフォローを入れてくれるからねぇ。優しさ満点のお姉さんって感じ」

「子供扱いしてますよね。確実にしてますよね! 要望通りお姉さんらしく接すれば満足ですか!」

「見てるとほんわかするから良いのであってされたいわけじゃないから」

「しているのを見てるのとやられるのは別物だから」

「何なんですかこの二人! 帰ってもいいですか!」

「帰ってもエウリュアレに捕まるんじゃない?」

「八方塞がり……! でもバラキーがいるからいくらかマシな気もします……!」

「なんだかんだバラキーにべったりだよね」

「ずっといるものね」

「何を言ってもこうなるんですけど! 手詰まりなんですが!」

「ふっふっふ……諦めておもちゃになるのだ」

「可愛がってあげるから覚悟しなさい」

「おにー! あくまー! じんるいあくー!」

「鏡に向かって言った方がいいと思うよ」

 

 半泣きで言うカーマに、オオガミは冷静に突っ込むのだった。




 明日にはCCC終わるんだなぁと思いつつ全然終わってなくて焦り気味な私です。駆け抜けろぉ!


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全く。弟子には困ったものだよ(そうね。困ったものよね)

「全く。私が来てからと言うもの、我が弟子は常に連れ回すのだが。困ったものだ。そう思うだろう?」

「あ~……そうね。困ったものよね」

「全くですよね~。センパイったらすぐに手を出しますもん」

 

 上機嫌で言うライネスに、エウリュアレとBBは目を逸らしながら答える。

 連れ回しの真相は悲しいことに孔明代用周回要員なのだが、本人が満足そうなのだし構わないか。と気持ちを切り替える二人。

 

「それで、件のオオガミはまだ帰ってこないわけ?」

「イベント終わりましたし帰ってきますよ。とは言っても、今度は大奥に行くんですが」

「ほぅ、大奥か。興味はあるが、記録によればとんでもないところらしいが、実際どうなんだい?」

「さぁ。私たちは取り込まれてましたし真相を知っているカーマは口を割りませんし。他の方々も口を割りませんし。センパイの証言しか無いから真偽の確かめようがないんですよ」

「それはまた奇妙な……うん? 取り込まれていた?」

「えぇはい。それはもうきれいに。大奥構築の建材にされていたとかなんとか」

「ほほぅサーヴァントが建材に! 魔力の塊だから分解して変換できると言うわけか! それは中々凝った仕掛けだな!」

「一回分解されるという感覚は貴重な体験でしたけどねぇ。二度目は要らないです」

「でもイベントで来るのだろう?」

「そうなんですよね……はぁ。対策考えてないんですけど」

「おや、もう完成しているものだと思っていたのだが」

「そんなわけ無いですよ。魔力に変換されてしまうんですから、完全無効化なんて出来ませんし、それでも強引にするのなら、変換式に介入してエネミーとして生成されるとかですかね」

「なるほど。素直に諦めた方が賢明だな」

「そういうことです」

 

 そう言って、納得する二人。

 それを聞いていたエウリュアレは、

 

「まぁ、もうイベントは始まっているのだけどね」

「「……はしごしましたね(たんだな)! センパイ(我が弟子)!!」」

 

 既に一部サーヴァントの存在がカルデア内で確認できないことを確認し、今更になってドタバタとし始める二人。

 だが、エウリュアレは呆れたような顔で、

 

「今更何をしても仕方ないのだし、諦めなさいな」

「正直イヤです! 私だけでも残りますからね!」

「弟子がいるのに勝手に消えてたまるか! 私も意地でも残るからな!!」

「……だいぶ問題発言よね。この自称師匠」

 

 完全に暴走しているライネスにため息を吐き、エウリュアレはBBを見ると、

 

「相手はカーマなのだし、お菓子でも用意しておいたらいいんじゃない?」

「なるほどそれですね!」

「すぐに用意してやるとも!」

 

 そう言ってお菓子を求めてどこかに向かった二人を、エウリュアレは見送るのだった。




 プロテアまでたどり着けずCCC終了……私は大奥へと旅立つのだった……

 カーマに八つ当たりしなきゃ……


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大奥に来るのも久しぶりだね(素材たっぶり美味しいイベント)

「大奥……あぁ、懐かしゅうございますね……」

「一年半ぶりかな? 素材美味しいから進まないとね」

「なぜでしょう……それで前回も痛い目にあった気がするのですが……」

 

 嬉しそうなキアラと、青い顔をしているパールヴァティー。

 オオガミは微塵も不安を感じていない顔で、

 

「徳川化とかあった気がするけど上から叩き潰せば問題ないよね!」

「……この、戦略も何もないの、本当にスゴいですよね」

「そうですね……実際、小難しいことを考えず倒せるのなら、それに越したことはないのですが……それで勝てるのでしょうか」

「まぁ、最悪別の手段で倒せばいいから。うん。こだわらなければ勝てるはずだから」

「最近、慢心していると聞いたんですけど、大丈夫なんですか? 時間内にたどり着けます?」

「あぁっ、パールヴァティーからの疑惑の目がっ、心の刺さるっ!」

「ただでさえもここは広い大奥。まだ二層ですし、奥はまだまだ深そうです……急ぎましょうマスター。手遅れになるやもしれません」

「そ、そうだね……」

 

 そう言って、三人は進む。

 その後ろから、

 

「……おかしいです。大奥に捕まったのにまだ取り込まれないんですけど。なんですかこれ。私も合流しろってことですか」

 

 イヤそうな顔をしながらも、オオガミ達を失わないようについていくカーマ。

 しかし、

 

「というかですね……あのマスター、わざと行き止まりに向かってませんか? おかしいですよね。正規ルート行ったと思えば逆走するし。そのせいで隠れるのも大変……いや待ってください。なんで隠れなきゃなんですか。堂々出ていけばいいだけのこと……そうですそのはずです。さっさと合流しましょう」

 

 そう呟きながら出ていこうとした直後、話し声が聞こえてすぐに隠れるカーマ。

 そして、三人が通りすぎたのを確認してからホッとため息を吐き――――

 

「いやホッとしてる場合じゃないから! ホッとする場面じゃないから! 合流するんだから!」

 

 柱に頭突きをして冷静になれと自分に暗示をかけるカーマ。

 なんとか落ち着いたのか、ゆっくり顔を上げると、

 

「ふ、ふふふ……別に、合流する必要なんて無いじゃないですか……どうせ最奥に来るんですし、私もサクッと最奥まで進んで待っていればいいんです。簡単な話じゃないですか。どうせ回り道しかしないですし」

「う~ん、それをされると方向が分からなくなるからやめてほしいんだけど」

「へっ? きゃっ!」

 

 振り返った目の前にいたオオガミに驚き、後ろに逃げようとして思いっきり後頭部を柱に打ち付けるカーマ。

 その一部始終を見ていたオオガミは、

 

「大丈夫? 息してる?」

「後頭部をぶつけたので早退します……」

「回復礼装があるから残念な事にそれは通じないんです」

「くっ、これが人類悪すら連れ回す指定暴力団体ですか……」

「まぁ、人類悪とか関係無くカーマはカーマだし。それにほら、少なくともバラキーが戻ってくるまでは協力してくれるだろうし」

「おかしいですね……そこでバラキーの名前が出てくるのは納得いかないんですけど」

「でも協力してくれるでしょ?」

「……仕方ないですね。今回だけですよ」

 

 そう言って、しぶしぶといった様子でカーマはオオガミの手を取るのだった。




 カーマちゃん、ビースト界最弱でキアラにマウント取るためにカルデア襲撃とか知って震えた……何してんだよカーマちゃん……そんなんだからポンコツとか駄女神とか泣き顔が似合うサーヴァントとか言われるんだよ……

 ところでスゴい勢いで桜サーヴァント復刻してますけど、ここから周年でまた増えるとか言いませんよね。もう石も資金も無いんだが!!


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はじめまして!(どうやら過労死枠のようだな)

「ははは。種火周回はスカディ、高難易度は孔明君でバランスが取れているじゃないか。休憩はしっかり取るんだよ」

「お前に言われたくはない。バスター寄りだから滅多に呼ばれないと余裕の表情を浮かべるな」

「もちろんそういうのは無いとは言えないけど――――」

 

 そう言って、孔明で遊んでいたマーリンだったが、何かを察したのか立ち上がって杖を取り出すと、

 

「おっと。どうやらイヤな予感がするから退散させてもらうよ。また後で会おう」

「私としては当分見たくないがな」

「連れないなぁ。それじゃあまた」

 

 そう言って、マーリンが花となって消えるのとほぼ同時に開く扉。

 そこには、孔明からすればあまり見たくはない、記憶よりも幼い少女の姿があった。

 

「お、お邪魔しま~す! マスターに言われて来ました、キャスターアルトリアです!」

「あ、あぁ……よろしく頼む。しかし、マスターに言われて、か。もしかしなくても、周回メンバーか」

「あ、はい。よく分かりませんが、マスターはそう言ってからここで過ごすようにと。寝室はまた別らしいんですが、普段はここにいて欲しいんだとか」

「なるほどな……ちなみに、寝室はもう案内されたのか?」

「場所だけは聞いたんですが、さっぱりで……あ、あなたのお名前を聞き忘れてました!」

 

 そう慌てたように言うアルキャスに、孔明は、

 

「ロード・エルメロイ二世もとい、諸葛孔明だ。疑似サーヴァントというものでね。呼び名としては孔明で構わない」

「えっとぉ~……孔明さん、ですよね! はい! バッチリです! マスターが案内人として教えてくれた人ですね!」

「ほぅ? なるほど。そういうことか……仕方あるまい、案内はさせてもらうさ」

 

 そう言うと孔明は部屋を出て、その後ろにアルキャスが続く。

 

「部屋番号は?」

「あ、こちらです!」

「ふむ……なるほど。まぁそこが妥当か」

 

 そう呟いて納得する孔明にアルキャスは首をかしげるも、どんどん進む孔明を必死になって追う。

 そして、二人は部屋の前に着くと、

 

「誰かいるか。開けてくれ」

「は~い! 今日の茶々はお留守番なのです……って、顔こわ!」

 

 部屋から出て孔明の顔を見るなり驚いて一歩下がる茶々。

 だが、孔明は怒りそうになるのを抑えながら、

 

「今日からここで寝泊まりするらしい。元々四人部屋だったろう」

「おぉ? 入居者とは新しい……ここは氷炎地獄と名高いお部屋なんだけど! まさか孔明が!?」

「違う。こっちだ」

「キャスターアルトリアです! これからよろしくお願いします!」

「これまたべっぴんさんだね。ようこそ氷と炎と過労死のお部屋に! 夏でも涼しくて嬉しい茶々です! よろしくね!」

「よろしくお願いします! ところで、過労死ってなんですか……?」

「それは――――ちょっと待って。ねぇ孔明。この子がこの部屋なのってもしかしてそういうことなの?」

「……おそらく」

「そっかー……うん。じゃああれだね。言わぬが花ってやつだね!」

「えっえっ、なんですか? スッゴい気になるし不安なんですけど!」

 

 悲しそうな顔で顔を伏せる二人に、アルキャスは混乱するのだった。




 めっちゃ期間空いてしまった……大奥から帰ってきたカーマの話とか書いてたけど書ききれなくて投げてしまった……

 アルキャス強すぎてヤバイ……まぁ、ラムダ運用には工夫が必要ですけど、基本ジーク君だと礼装要らないの強い。


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気持ち悪いくらいに上機嫌ですね(当然そうなるに決まってるよね!)

「……気持ち悪いくらいに上機嫌ですねセンパイ……」

「そりゃあね! エウリュアレの動きが格段に良くなったし今までよりもなおのこと神々しく見えるしそれ故に昔みたいに射たれる立場になった瞬間にあの機動力とイカれた軌道をする矢をどうやって回避するかとかもう考えるだけで頭が痛いからとりあえずここまで逃げてきたわけだよ」

「すっごい怒涛の説明で儂の腹筋破壊する気か?」

 

 さっきよりも引いているBBと、爆笑しているノッブ。

 オオガミは目を輝かせながら目が死んでいるという矛盾する二つの要素を兼ね備えており、嬉しいのと絶望とがぶつかり合っているんだろうなとBBは思う。

 

「それで、件のエウリュアレさんは?」

「今はこやつを捜索中」

「よし。素直に引き渡しましょう」

「待って待ってなんでノッブがそれを知っててBBはそれを実行しようとしてるの!? おかしくない!?」

 

 引っ張り出そうとしているBBに対し、必死で抵抗するオオガミ。

 ノッブはそれを呆れた顔で見ながら、

 

「マスター。残念なことなんじゃが、儂らは食堂組には勝てんくてな……腹が減っては戦は出来ぬ。サーヴァントであっても、昔からの癖である食は大切なんじゃ。そして、その差し押さえ権限を何故かエウリュアレが持ってる。つまり、そういうことじゃよ」

「くっ、コレが女神の手口か……!」

「ちなみに一昨日マスターが石を使いまくったのをマシュにチクったのもエウリュアレじゃよ」

「衝撃の事実なんだけど!?」

「まぁ、面白半分でやってるだろうし、いつも通りと言えばそうなんじゃけどね~。んじゃ、さっさとエウリュアレに売るか」

「や、やめろぉ! って英霊としての筋力まで使ってくるのは流石にズルくないかな! 卑怯じゃないかな!」

「うむ。戦国時代的に言えば、負けた方が悪いということで」

 

 そう言って、容赦なくオオガミを工房から連れ出し、廊下に投げ捨てる二人。

 オオガミはすぐに立ち上がると、

 

「それじゃ、エウリュアレのところに行ってきますか」

「……やっぱお主、直視できなくて逃げてきただけじゃろ」

「照れ隠しで逃げ込む場所じゃないですよここは。エウリュアレさん、マイルームですねてますよ」

「探してるんじゃなかったの?」

「そりゃ長年付き添ったマスターがイメチェンした瞬間に逃げ出したらすねますよ。というか、死にますよ。メンタルが」

「……謝り倒すだけじゃ許してくれそうにないね」

「とりあえず行け。行ったら何をすればいいのか分かるじゃろうて」

「うん。行ってくる」

 

 そう言って、オオガミは走り出し、二人は見送るのだった。




 書き終わった瞬間に、オオガミ君、とりあえず磔刑だな。と思った私です。

 実際モーション改正ボイス増量マイルームボイスも増量で心臓止まるかと思いましたね。最高だなFGO!


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おいマスター聞いたか?(紅ちゃん先生参戦のお知らせ?)

「おいマスター。聞いたか? 最近食堂に恐ろしいメンバーが追加されたってやつ」

「いやまったく。レベルが上がったって話は聞くけどそんなことある?」

 

 何かに怯えている様子のイアソン。

 聞いているオオガミは、エウリュアレへの献上品であるクッキーを作っていた。

 

「昨日以蔵が捕まってな……戻って来はしたんだが、バイブレーションかってくらいの振動で震えてて、ちょっと気になったんだよ」

「ふぅん? あぁ、そう言えば、昨日紅ちゃんから夜中に食堂に侵入した不届きものを捕まえて説教したって話を聞いたね」

「……誰だ紅ちゃんって」

「三日前に来てくれたじゃん……」

「……あぁ、そういやなんかいたな。ちっこいやつが」

「うん。その小さくてかわいいのは紅ちゃん。イアソンも斬られる覚悟をしておいてね」

「イヤだよなんで斬られなきゃなんだよ?」

「日頃の行いかなぁ」

 

 そう言うオオガミに、言い返せずに黙るイアソン。

 すると、食堂の奥から紅閻魔が出てきて、

 

「ここではマスターも料理をするのでちか?」

「あ、紅ちゃん。別に料理ってほどじゃないけど、趣味のお菓子作りだよ食べていく?」

「いいのでちか? それは、誰かに作ったものだと思ったのでちが」

「まぁ、大量に作るし、一、二枚無くなったところで問題ないよ。それに、いつもはバラキーやカーマにもあげてるし」

「ちゅちゅん。では、遠慮なくいただくでち」

「どうぞ。イアソンもね」

「……毒とか入ってないよな」

「エウリュアレに渡すやつに毒入れたら殺されるどころの騒ぎじゃないよ」

「……そりゃそうか。んじゃ遠慮なく」

 

 そう言って、クッキーを取って食べる二人。

 その間にオオガミは二つ目のクッキー達をオーブンに入れ、焼き始める。

 

「うん。いつも通りうまいな」

「本当でち……予想以上なのでちが、普段からやっているのなら納得でちね。でも焼く時間はもうちょっと短めにすると、いい口当たりになると思うのでち」

「ん。じゃあそれも作るかな……紅ちゃんも食べ――――あぁ、ごめん。そもそも味が分からないから食べても食感だけか……」

「ちゅちゅん。そこは考えなくてもいいのでち。食べずとも楽しみはあるのでち」

「それならいいんだけど……」

「そうだぞマスター。余計なことを考える暇があるんならオーブンの中でも覗いておけ」

「あ、そっか。紅ちゃん直伝の時間で焼かなきゃだ」

 

 そう言って、オーブンに向かうオオガミ。

 紅閻魔はイアソン近づくと、

 

「おまえ様は細かいところまで見えているのでちね」

「ま、いいことはねぇがな。ちなみにアイツは見えていてもフォローが分からないとか、そういうパターン」

「そ、そうなのでちね……」

 

 そう言って、二人はオオガミの様子を見守るのだった。




 ついに念願の紅ちゃん先生。実装したときからでちでち言わせたかったけどいざ言わせてみると扱いづらくてビックリ。さ行が全部変換されるから出来るだけ使わないようにしないと行けない縛りでかくない……?


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キャンプと言えばカレー(斬っても斬れない関係だな)

「キャンプと言えばカレー。寸胴鍋のカレーに飯ごうで炊いたご飯は最高だよね。どう思うエミヤ師匠」

 

 そう言って、隣にいるエミヤを見るオオガミ。

 エミヤはオオガミをチラリと見ると、

 

「……料理の弟子を取った覚えはないが、そうだな。私としては得難い経験だと言える。だがもちろん、それはやってもらうのではなく、自らの手でやることによってその良さが増す。つまるところ、自分で料理をすることで思い出を作ることができ、なおかつ料理の苦労を知ることで料理人への感謝も湧く、というのが私の思うところだ。そしてカレー。煮込み料理として最も簡単で、かつ世界各国で親しまれている料理という点もあり、喜ばれる方が多いであろう料理であることから、カレーというものはとても優秀な料理だ。さぁマスター。料理を始めるとしようか」

「怒涛の勢いで自らの手で作ることの良さを語って自分で作るのか……いや、うん、手伝います」

 

 言いながらだんだんと目を輝かせ、最終的に自分で作り出すエミヤに若干呆れながらも、オオガミは手伝うのだった。

 

 

 * * *

 

 

「それにしても、違和感があるのよね……」

「違和感? 何かあったかしら」

 

 オオガミから離れたところで、エウリュアレとメルトは湖を見ながら話していた。

 

「なんて言えばいいのかしら……オオガミ自身に違和感もあるし、周りもどことなくおかしい雰囲気があるというか……昨日のオオカミ退治の時からあるのだけど、説明が難しいわ」

「そう……まぁ、私も感じているところはあったけど、確信を持てないところがあるのよね」

「えぇ。もう少しで分かりそうなのだけど……でも、そうね。一番の違和感は、マシュがオオガミと行動していないってことね」

「そう? 私はいつもアイツを殴って縛ってるイメージしかないけど」

「まぁ、それはそうなのだけど……でも、本来は絶対に離れないし、不可抗力で離れることはあっても自分からは絶対に離れなかったもの」

「……それを言われると、確かに不自然ね。まるで真逆の行動じゃない」

「そう、反転してるの……あぁ、なるほど。反転してるのね」

「あら、何か気付いたのかしら」

 

 何かに気付いて立ち上がったエウリュアレを見て、メルトは首をかしげる。

 

「そうね。さっきまでの違和感の正体が分かったわ。えぇ、反転よ反転。オオガミの口調の違和感もそれで説明できるわ」

「……今は正常みたいだけど」

「……条件を探りましょう。別段私が解決するわけじゃないけど、ただ真相を聞くだけというのも面白くないじゃない?」

「それもそうね。じゃあ、行きましょうか。お腹も空いたもの」

 

 そう言って、二人はオオガミ達のもとへ戻るのだった。




 わりとホラー強めでビビりつつもそれを上回るアンキア成分とイリヤとエミヤの掛け合いと未だ登場しない一番ヤバイ子に心臓鷲掴みにされてる私です。

 石はないので今年の夏はもう終わりだ……


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呪いのビデオに恐怖のホテルね(嫌なものばかりね)

「はぁ……呪いのビデオに夢の中の恐怖のホテルなんて、普通に怖いわね。まぁ、カルデアで見た覚えがあるような内容なのだけど……」

「あら、元があるってこと?」

「ん~……たぶんね。でもまぁ、ホラーという点しか共通点が無いし、問題も、アビーと連絡がつかないから帰れないってことくらいかしら」

「……一番の問題よねそれ」

 

 そんなことを話しながら、エウリュアレとメルトはマンションの屋上を目指して階段をのぼる。

 気分転換代わりに歩いているのだが、既にエウリュアレは若干飽きていた。

 

「それで、帰れないから解決待ちというところかしら」

「えぇ。だからただ待ってるんじゃなくて、考察しながら待っていようかと思って。だって、忙しそうじゃない」

「……そう。まぁ、忙しそうというのは否定しないけど」

「……何か言いたそうね」

「いいえ、別に? 気にしないで考察を続けましょう」

 

 そう言って、話を進めさせるメルト。

 エウリュアレはそれを不思議に思いつつも、話を戻す。

 

「そもそも、この特異点も異質よね。だって、まっとうな違和感なんてホラー現象くらいじゃない。スプラッター、和製ホラー、サイコホラー。原因だって、人間、怨念、人間よ。まぁ、スプラッターは怪物称してもいいのかもしれないけど。突破方法も、シナリオ崩壊、正攻法、正攻法。あぁいえ待って。最後だけは分からないわ。ともかく、純粋に殴り倒したらしいし、問題はないはずね」

「まぁ、そういうことにしておくわ。それで、次はどんなホラーかしら」

「……次はポルターガイストとか?」

「洋物ホラーで見るやつね。でもそれって解決できる?」

「どうだったかしら。そんなに見てないし」

「まぁ普通そうよね。あんまり見ていたいものじゃないし」

「えぇ。一緒に見る相手もいないもの」

「マスターを誘えばいいじゃない」

「彼、ホラー苦手よ?」

「……まぁ、倒せるのと倒せないのは扱いが別よね」

「えぇ。倒せないのは無理――――っと、着いたわ」

 

 そう言って、ようやく屋上にたどり着く二人。

 入れないように掛けられていた鍵はメルトが融かして見なかったことにする。

 そうして入り込んだマンションは、

 

「あら、想像以上に良い景色ね」

「そうねぇ……夕方までここにいようかしら」

「それは流石にダメよ。考察をするなら、マスターを見ていなきゃならないもの」

「それもそうね。でも、もう少しいましょう。すぐ降りるのは流石に勿体無いもの」

「えぇ、そうね。それじゃ、休憩しましょう」

 

 そう言って、二人は座り込んでマンションから湖を見るのだった。




 普通に怖いのヤバイ。ヤバイけど、それはそれとして水着アビーが門を使いこなしてる! これセイレムの後の経験を積んだアビーでは???


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そろそろ終わりそうね(だいぶ揃ってきたものね)

「ゾンビに洋館……そして反対の同じ存在。なんだか分からないけど楽しくなってきたわね」

「そうねぇ……まぁ、夜になると殺人鬼もゾンビも幽霊も湧いてくるみたいだけど」

 

 洋館から出てきた二人は、湖を目指してのんびりと歩く。

 何だかんだと言いながらオオガミ達と同じように襲撃されていたが、メルトが大半を蹴り潰し、エウリュアレが撃ち漏らしを処理することで切り抜けていた。

 

「どうせ夜は立てこもるから良いでしょ。それより、戦いすぎて一人にならないでよ?」

「当然。今回はあなたの護衛みたいなものだもの。マスターには殺生院がついているもの。万が一なんてことが起こりでもしたらもう一度海の藻屑に変えてあげるわ」

「そうね。その時は私も一緒にやろうかしら」

「えぇ、そうしましょう。一人でも多い方が色々出来るものね」

 

 物騒なことを言う二人。

 しかし、言葉とは裏腹に、キアラ自体が実力者であることは認めているのだった。

 

「それで、この後どうするの? アビーは向こうだし、オオガミに接触するつもりもないんでしょ?」

「えぇ。これまで通り離れたところから見守るだけよ。もちろん、怪奇現象にも対処してね」

「そう。まぁ、好きにしてもらって構わないけど」

 

 そう言いながら、湖に出た二人。

 エウリュアレは水を覗き込むと、

 

「見てきた感じ、あのよく分からないデカい人形は第三の黒幕の手がかりになると思うのよね……あの見た目、中華系の気がしない?」

「そうね……対照的な地形や施設が陰と陽。正しい方と間違った方を意味するのなら、確かに太極図のような作りよね」

「えぇ。しかも、キレイに分断してたし、互いが見えないようになっていたわ」

「正確には違うわ。見に行こうとも思わなかった。離れていると言うのもあるだろうけどね」

「まぁ、そうね。対岸を目指そうと思わなかったもの。これも作戦通りなら、中々優秀よね」

「えぇ。と言っても、手が足りていないから見に行かなかった可能性もあるんだけど」

「霧が濃いって言うのもあるんじゃない? 見えないのに行く気も起きないでしょ」

「ん~……それもそうね……って、あれ? コテージに帰ってきたみたい」

「本当ね。逃げ帰ってきたみたいだけど、黒幕を見つけたってところかしら」

「でしょうね。時間的にも、一週間近く経ってるし。それじゃ、私たちも遊びに行こうかしら。死なない程度に、殺されない程度にね」

「……まぁ、死なないし殺させないわ」

 

 そう言って、二人はオオガミ達に気付かれないようにコテージの中を覗き込むのだった。




 徐福ちゃんはいつ実装ですか! ピックアップ4とか出てきたら死にますよ!! ピックアップするならイケメン童話作家も一緒に来てくださいお願いします!!


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後は遊ぶだけのサマーキャンプ!(存分に楽しむわ)

「怪奇現象も終わって、ホラーな夏は終わり。楽しいキャンプはこれからってことね」

「あと一週間くらいかな。のんびり楽しもう!」

「えぇ。それじゃあ湖に行くわよオオガミ」

 

 そう言って、オオガミの手を引いて湖に向かうエウリュアレとラムダ。

 そんな三人をコテージから見ていたカーマは、

 

「なんで湖なんですかね。海はどこ行ったんですか」

「うむ。実は二年に一度くらいは海じゃないという突っ込みをいれても良いかカーマ」

 

 バラキーに言われたカーマは首をかしげながら、

 

「……なんですかそれ。つまり二回しか海行ったこと無いんですか」

「海自体は何回かあるぜ。でも夏でってのは二回くらいだな」

「おぉ、緑の人。ごちそうは持ってきただろうな」

「ほいよ。串焼き」

「うむ。この豪快さ。これが良い。皿に盛られたのも良いが、こちらの方がしっかり食べた気になるからな!」

 

 そう言って、ロビンから串焼きを受け取りかぶりつくバラキー。

 カーマはそれを見ながら同じように串焼きを受け取ると、

 

「これは、あの赤い弓兵が?」

「あ~……もう色で判断するのも難しくなってきたが、そうだな。エミヤの作ったやつだ。あそこで焼いてるだろ?」

「そうですか……どうせ美味しいですし。同じように作ってもどうも劣化品なんですよねぇ」

「ま、やってることは表面的なものだけじゃないってことだろ。どうせなら教えてもらえば良いじゃねぇか。オレは遠慮するけども」

「私もイヤですよ。料理がうまい私という概念を引っ張り出すだけで勝てるはずだったんですけどねぇ……美味しいだけじゃ物足りないらしいので。全く、バラキーには手を焼かされます」

 

 そう言って肩をすくめるカーマに、ロビンは苦笑いをしながら、

 

「いつも楽しそうで何よりだ」

「は? なんですかバカにしてるんですか宇宙の塵にしますよ」

「なにその脅し怖いんだけど消し炭ってレベルじゃないんだが」

 

 今にもロビンを殺しそうな目をしているカーマ。

 それを知ってか知らずかバラキーは二人の間に入ると、

 

「カーマ。吾焼きましゅまろ食べたい」

「そんな突然言われても……しょうがないですね。準備してきます」

「うむ。よろしく頼む~」

 

 そう言って、串焼きを食べながら去っていくカーマを見送るバラキー。

 ロビンはそれを見て、

 

「なんか、手慣れてるな……」

「吾だって動くときは動く。別に人理とやらがどうなろうが気にしないし、カーマが知らぬ誰を焼こうと気にしないが、緑の人を焼くのは、その、なんだ。もったいない。カーマから菓子を貰うのも良いが、たまには緑の人から貰いたいときもある。うむ。これも気まぐれ。それじゃ吾は焼きましゅまろを食べてくる。さらばだ」

 

 そう言い残し、カーマを追っていくバラキー。

 見送ったロビンは、

 

「英霊は成長しないって言うけど、アイツを見てるとそうとは思えないね全く。そのうちお礼の菓子でも持っていくとしますか」

 

 そう言って、誰もいなくなったコテージからみんなを見ているのだった。




 気付いたら一週間以上空いてるんですけど。

 これから調子を戻すために感覚をだんだん短くしながら投稿していかなきゃな。そう思いながら楽しいサマーキャンプ計画を練っています!


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結局水着は着れなかったわ(来年こそは取りに行かせるわよ)

「むぅ、結局水着は着れなかったわ」

「本当にね。まぁ、私も水着は持っていないから泳げたりはしないのですけど」

「そうねぇ……泳げるのなら、適当にプールでも作ろうかと思ったけど」

「湖から帰ってきたばかりでまだ遊ぶのか……」

 

 マイルームのベッドの端に座りながら残念そうにしているアビゲイル達と、そのベッドで横になっているオオガミ。

 最後の最後まで粘ったのだから許されてほしいと思うオオガミだが、エウリュアレとラムダは楽しそうな笑みを浮かべ、

 

「残念。えぇ、本当に残念ね。全く、悲しい限りだわ」

「結局アビーはまだ泳げないだなんて」

「うぅっ、ら、来年こそは確実に手に入れるから……」

「それならとっても嬉しいのだけど……でも、エウリュアレさんもメルトさんも勘違いしているみたいなのだけど、水着の私は別の私よ? だってみんながキャンプをしている間、ずっとエレシュキガルさんと待っていたもの」

 

 そう言って、他の三人が硬直しているのを見て首をかしげるアビゲイル。

 そして、エウリュアレとラムダはオオガミの方を向くと、

 

「つまり、私のかわいいアビーには水着を着せられないってこと?」

「いつからエウリュアレのアビーになったのかは話し合う必要があるけど扱い的には北斎さんが良い例だと思うよ。うん。あと増殖するアルトリアさん」

「私は自由に変更できるけど別の存在だから変えられないわよねどうするつもり?」

「そこに万能のルーンがありましてね」

「「それよ」」

 

 二人は息ピッタリにそう言うと、アビゲイルに向き直り、

 

「来年水着さえ手に入れればどうにでもなるわね」

「えぇ。それで良いわ。オオガミには張り切ってもらいましょう」

「あ、あの、なんだかエウリュアレさんもメルトさんも怖いのだけど……」

「なんか、エウリュアレはともかくとしても、メルトまでこうなるとは思わなかった。これが夏の魔力か……」

 

 なんだかんだとアビゲイルを可愛がっていたエウリュアレと同じくらい盛り上がっているラムダを見て不思議に思うオオガミ。

 だが、突如としてエウリュアレは立ち上がると、

 

「そういえば、アビーのことを先輩って呼んでいたのがいたわよね」

「え、せ、先輩? そんな風に私呼ばれてたの……?」

「いたわね。呼び出すの?」

「まさか。水着のアビーの話を聞くの。だって私たち、なんだかんだ水着のアビーと話してないじゃない」

「それもそうね。聞き出しましょうか」

「それじゃ、行ってくるわ」

「え、あ、いってらっしゃい」

「怒涛の勢いで出ていったよ」

 

 部屋を瞬く間に飛び出していったエウリュアレとラムダに呆然とする二人。

 すると、アビゲイルは困ったような様子で、

 

「えっと、その、マスターは水着の私をどう思ったのかしら……」

「ん~……そうだね。いつもより大人ぶっているアビーだね。可愛かったよ?」

「そう……あぁ、ダメね私ったら。水着の私に嫉妬しちゃいそうだわ」

「大丈夫大丈夫。少なくとも、召喚されるまでは今のアビーが唯一だからね。それに、今なら誰もいないから独占できるよ?」

「もう、マスターったら……私、悪い子になっちゃいそう」

 

 そう言って、オオガミの隣に寝転がるアビゲイル。

 

「今だけ。今だけ、こうしていても良いかしら……」

「うん。おやすみ、アビゲイル」

 

 その声を聞いて、アビゲイルは目を閉じるのだった。




 おかしい……キャンプ中の話が全然無いんだが!! 楽しく遊んでいたの、カーマとバラキーだけなんだが!!
 でもあの三人が遊ばないわけ無いので来年の宿題ですねこれは。

 ちなみになんですけど、一応セリフで通常アビーと水着アビーは別扱いらしいのでそこはこの作品でも分けようかと。つまり夢のダブルアビー……これは最強の予感しかしない!


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神殺しより面倒そうな事件じゃったな(正直どっちもどっちな難易度です)

「死を収集して不死殺しのぅ……なんか神殺しより面倒そうじゃな」

「2200年ずっと研究とか正気じゃないですって。というか、よく持ちましたね。そんなに長く」

 

 そう言いながら、仮面の模倣品を組み立てるノッブ。

 それを見ているBBは、

 

「えっと、一応聞いておくんですけど、それ何に使うんです?」

「ん? あぁ、前にマスターが不老不死の薬を貰っておったからなぁ。うっかり飲んだときにでも渡そうかと」

「そんな回りくどい方法じゃなくて無効化した方が手っ取り早くないです?」

「それもそうなんじゃけど~……始皇帝、ど~も苦手なんじゃよねぇ……儂と同じで徹底的に解明しないと満足できないやつだと思うんじゃけど、書物を焼くのだけは好きになれん。奴は知を広めるんじゃなく、狭める方に傾いてるからな。その点は儂と真逆よな」

「それ単純にノッブが底無しの知識欲の権化ってだけですよね。いや、まぁ、付き合ってる私も私ですけど」

「うむ。助かるからありがたい……が、正直死の収集とかやってられないから代案だな。不死殺しと言えばなんじゃろ。アナの使ってるハルパー?」

 

 形だけは完成させた不死殺しの仮面のレプリカを横に置き、どうしたものかと考えるノッブ。

 BBはため息を吐きながら、

 

「まぁ、そこら辺ですよね。どのみち死の祝福と言いますか、神々の武器って感じですけど。死の属性の人たちに協力をあおぐとか?」

「いやもうあそこら辺は直接手を下すじゃろ……そう考えたら要らん気がしてきたな。コレクションとして倉庫に入れておくか」

「またゴミじゃないですか! この前片付けたばっかりですよ!!」

「うはは! また片付ければよいし、足りぬなら拡張よ! どうせ拡張のリソースは儂ら自身で賄うしな!」

 

 笑いながら言うノッブに頭を抱えるBB。

 しかし、何かを思い付いたのかすぐに顔を上げると、

 

「それもそうですね。言いたいことはわかりましたので、しばらくあそこで自転車こいでてくださいね。電力不足なので」

「魔力不足じゃなく電力不足なの世知辛い……てか、ここ電力を魔力変換してるんだった気がするんじゃけど」

「電力が限界ギリギリなんですって。少なくともこの工房は自家発電だけなんですから。この暑い中でクーラーが切れても知りませんよ?」

「それは流石に辛い。はぁ、是非も無し。クーラーの電力程度は自力で稼ぐしかあるまい」

 

 深いため息を吐き、作っていたものを適当に倉庫へ投げ込みつつ、ノッブは古典的な自転車発電機を回すのだった。




 何気に日本に不死の概念を持った存在っていなくない? とか思った私です。日本神話にいたっけな……かぐや姫の不死の霊薬くらいしか思い付かないんですけど……

 まぁ、ぐだ君が不死の霊薬を飲むはずも無し。むしろ富士山の火口に投げ込みますね。うんうん。


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いつも通り。いつも通りよ(違和感しかないと思うよ)

「……今日はずいぶん、べったりじゃんね」

「そうかしら。いつも通りじゃない?」

 

 オオガミの膝の上で寄りかかっているエウリュアレ。さらに言えば、オオガミの両腕を掴んで自分を抱き締めさせるようにしている。

 しかも、いつもの毎晩ではなく、食堂でのことだった。

 

「たまにはこういう日があっても良いじゃない」

「そう言う問題かなぁ」

「そんなものよ」

 

 そう言って微笑みながら、エウリュアレはテーブルの上にあったかりんとうまんじゅうを一口食べ、

 

「あら、サクサクのおまんじゅうね。不思議だわ」

「意外と癖になる味で好きだよ。エウリュアレは?」

「ん。食感が想像と違うけど、これも良いわね。美味しいわ」

「それならよかった」

「あの、それ私も食べて良いんです?」

 

 その声を聞いて、正面を見る二人。

 そこには不機嫌そうな顔をしたカーマがおり、かりんとうまんじゅうを指差していた。

 

「いつからいたの?」

「最初からですよ! というか、そっちが呼び出したんでしょう!?」

「そういえばそうだったような気もするわね。ふふっ、ごめんなさいね?」

「絶対わざとですよね……だって椅子になってるマスターがそういう顔してますもんね!」

「オオガミ?」

「いえそんな顔してるわけ無いじゃないですか。ただ単純に、最近バラキーが甘いもの食べ続けてるけど虫歯になったらどうしようとかそういうこと考えてただけだから」

「本当は?」

「前より抱き心地良くなった?」

「太ったってこと? ねぇ、どういう意味かしら」

 

 サーヴァントとしての力を使って腕を抱き締めるエウリュアレ。

 しかしオオガミは涼しい顔で、

 

「可愛らしくなったなって」

「……当然じゃない。愛される女神だもの」

「なんですか。もしかして見せつけるために呼んだんですか」

「まぁ、半分そうね。でも、逆かしら」

「はぁ。逆?」

「えぇ。見せつけられたから仕返しをしてるの。何十通りのあま~いシミュレーションは心地よかったかしら。休ませてくれるのはありがたかったのだけど、手段は戦争ものよ? だから、一応ね。宣言しておこうかなと思って」

 

 そう言って、エウリュアレは目を細めると、

 

「オオガミは譲るつもりはないわ。愛することしか知らない神に負けるつもりなんか無いもの」

「……愛される女神に言われるのは釈然としませんね。私は与えるもので、あなたは与えられるもののはずなのに。でも良いですよ。最後に堕落させるのはこの私ですから」

 

 そう言って、二人の間に暗雲が漂い始め、その中心であるはずのオオガミは、遠い目をしながら、次のおやつを考えるのだった。




 カーマの幕間を見て、書くしかないなって思って書いたら今さらになって不穏ですよこの二人。でもうちのカーマにはバラキーというマスコットがいるので実際争うかは謎。たぶん争う。


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周回も楽なものね(回数が多いですよ……!)

「ふん。思ったより歯応えがないわね」

「そりゃそうだろうさ。バフは盛れるだけ盛っているんだし。まぁ、それでも撃ち漏らしがある辺り、足りないようだけどね」

「ま、まだ足りないんですか……もうあとは宝具くらいしかないですよ……いや、宝具も出せませんけど……」

 

 周回をしながら話すラムダとライネス。

 キャストリアは今にも死にそうな顔をしているが、しっかりと立っているところから、孔明ほどの重症ではない。

 

「それにしても、敵が誰でも君を選ぶのはひいきとも言えるが、一番疲れるポジションじゃないかな?」

「あら、そんなことは全く無いわ。あくまでもセイバーじゃないときだけだもの。えぇ。基本はね」

「……セイバーが相手でもゴリ押していたときがあった気がするが、私の勘違いかな?」

「倒せればいいのよ倒せれば。結局周回するところはアサシンな訳だし」

「確かにそれはそうだが……いや、そうだね。周回できれば良いのだし、些細な問題だ。どんどん行こうじゃないか」

「分かってるじゃない。ほら、さっさと行くわよ」

「え、ちょ、休憩しましょうよぅ……」

 

 そう嘆くキャストリアの声は、ラムダとライネスに届くことはなく、後ろで見ているオオガミはキャストリアの視線に気付くと、

 

「帰ってきたらお菓子パーティーね」

「任せてください。こんな簡単な魔術でいいならいくらでも力を貸しますよ」

 

 突如としてカッコいい顔になり、周回に向かっていくキャストリア。

 やはりお菓子の力は偉大か。と呟いているオオガミに、

 

「当然、そのパーティーに私は呼ばれるわよね?」

「……後で部屋でするのじゃダメ?」

「あら、二人きり?」

「そのつもりだけど、メルトも呼ぶ?」

「……お任せするわ」

「任された」

 

 そう言って、にっこりと笑うオオガミ。

 エウリュアレは周回組の方に顔を向けながら、

 

「それにしても、よくメルトだけで突破するわね」

「まぁ、聖杯をあげている中で唯一周回適正あるし、使えるときは使いたいよね」

「……そうね。でも、ラムダが働きっぱなし(私が一番じゃなくなる)っていうのも可哀想だ(ムカつく)から、私も編成に入れなさい?」

「……コスト的に無理かな」

「反抗的になってきたわね」

「わがままを聞けるときと聞けないときがあるから。今回は難しいけど、余裕があったらするよ」

「そう。まぁ、嫌なら嫌でいいのだけど。じゃあ出番があるまではアビーといるわね」

「わかった。出番が来たら呼ぶね」

 

 そう言って、エウリュアレはアビゲイルを呼んでどこかへ行くのだった。




 箱イベだぁ。そんなことを思いながら全部ラムダで周回しているラムダ狂人。ちゃんと6積み出来る辺りラムダ強すぎる。これが最強のアルターエゴか……

 聖杯戦線は楽しいけど余裕がないとちょっと面倒。というか、箱イベと相性悪いと思います。さすがだな。箱を掘らせまいと必死だ……


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聖杯戦線なんて私だけで十分ね(クラス制限で私も?)

「聖杯戦線なんて、私だけで十分じゃない」

「編成制限で私を引っ張り出すの納得行かないんですけど。というか、キャスターを倒させるとか無茶振りしないでくださいよ」

「ランサーにだってセイバーは倒せるんだし、アサシンにキャスターが倒せない道理はないでしょ」

 

 そう言うオオガミに、カーマはあり得ないものを見たかのような顔をして、

 

「うっわ、無茶苦茶言うじゃないですかこの人。相性管理くらいしてくださいって。いえ、求められるのなら倒しますけど」

「どちらにしても倒すのだし関係ないじゃない。面倒とか言ってないで蹴り潰せばいいのよ」

「……なんですか。脳ミソバーサーカーしかいないんですか。わざわざ辛いルートを選ぶ必要ないと思うんですが! なんで一人だけなんですかせめてもう一人欲しかったんですが!」

 

 そう抗議するカーマに、ラムダは涼しい顔で、

 

「聖杯戦争を再現するならむしろ単独は正しいでしょうに。それに、勝てれば何の問題もないわ。それが蹂躙か辛勝かは置いておくけどね」

「キャスター三連戦の聖杯戦争とか地獄以外の何者でもないですが!?」

「まぁ、袋叩きにしなかったこっちも悪いかなとは思ったよね。でもコストを考えるくらいならやっぱ単騎で突撃する方がカッコいいし、何より二人なら出来るって思ったからね」

「……良くも悪くも信頼されてるってことよ」

「私はそんな信頼要らないですしむしろ戦線を傍観していたかったんですが!!」

「見るどころか当事者になれたね」

「当事者になりたくなかったんですって!!」

「でも楽しめたんでしょ?」

「……まぁ、得難い経験ではありましたけど……」

 

 諦めたようにため息を吐くカーマ。

 オオガミは笑みを浮かべながら、

 

「ならいい経験ということで。次回もあるみたいだし、その時も呼ぶね」

「あの、呼ばなくていいんですが。私、バラキーと一緒に兵糧の味を見て回る大事な仕事があるんですけど」

「なんでそんなことを……」

「バラキーが食べたいって言い出したときに用意できるようにですが。別に、マスターさんのリクエストを作ってあげるのは構いませんが、何か食べたいのがあるんです?」

「ん~……今はないかな。でも、カーマはお菓子作りが本領じゃないの?」

「バカなこと言わないでください。大体全部出来ますよ。まぁ、人並みの域を出ないので、一定以上の味を出すとかならしばらく練習しないとですけど」

「なるほど。家庭料理って感じなのね。それはそれでいいよね……」

「はぁ。でも、マスターさんとしては作る方が楽しいんでしょう? 取り囲んでいる二人もそう言う性格ですし」

「まぁね。作るのも好きなのは確かだよ。でも、作ってもらうのも好きだから安心して」

「……何に安心すればいいのかさっぱりですけど。まぁいいです。聖杯戦線も終わりましたし、帰ってもいいですよね」

「うん。お疲れ様」

「はい。お疲れ様でした。それじゃ、何かあったら呼んでください。気が向いたら行きます」

 

 そう言って去っていくカーマ。

 見送った二人は、

 

「それじゃ、エウリュアレのところに行きますか」

「えぇ。さすがにすこし疲れたわ」

 

 そう言いながらエウリュアレを探しに行くのだった。




 3回目くらいからラムダ縛りで突破して、5回目がランサー使えなくて渋々カーマでキャスターを殴り潰すという戦いでしたね……ラムダ無双で楽しい戦いだった。やっぱラムダは最強なんだよなぁ!


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100箱も辛くなくなったわね(戦力も大分強くなったからね)

「気付いたら100箱も苦じゃなくなってきたね」

「そうねぇ……でも、ここまで戦力が揃ってくると、開ける理由もなくなってくるのだけど」

 

 観戦室でのんびりとしているエウリュアレとオオガミ。

 現在は将軍や王のサーヴァント同士で聖杯戦線のシミュレーションをして遊んでおり、どっちが勝つかの賭け事も盛んになっていた。

 

「正直、QPが足りないかなぁと思わなくもないけど、頑張ろうと思えばどうにでもなっちゃう範囲だし、対して困ってもいないんだよね……」

「なんだかんだわりと無茶は通せるものね。そうすると、あとはモチベーションなのだけど……」

「まぁ、新たに育成できる人が来たときのための貯蓄とか、マナプリズムの在庫を増やすとかしかないんだけどね」

「全員のスキルを上げるとかどうかしら。手駒は多い方がいいじゃない?」

「……まぁ、選択肢が多いに越したことはないよね。今回みたいに、ラムダやカーマでゴリ押せるとは限らないし」

「そうよ。まぁ、怠けて負けるというのも、それはそれとして私好みではあるのだけど。堕落の英雄……えぇ、いいわ。とってもいい響きね」

 

 そう言って笑うエウリュアレ。

 それを見てオオガミは少し考える素振りを見せ、

 

「でも、必要になってから強化の方がリソース不足にならないんじゃない?」

「そういうのは知らないわ。だって私は女神であって軍師じゃないもの。でも、聖杯を捧げたりしなければしばらくは持つと思うのだけど?」

「……それもそうだね。じゃあ、とりあえず上げられるだけ上げてみるかな。っていっても、先に素材が尽きそうだけど」

「いつもQPより先に素材が尽きるものね。まぁ、仕方の無いことではあるのだけど……貝殻とか、たくさん必要だもの」

「本当にね。しかも、本格的に集められるのとか、夏しかないし」

「しかも大体一緒にもらえるアイテムがしょっぱいのよね」

「そうそう。序盤のクエストに出てくると特にね。まぁいいんだけどさ……」

 

 そう言ってオオガミはため息を吐くが、エウリュアレはにっこりと微笑んだまま、

 

「いい加減、メドゥーサのスキル上げをしましょう?」

「……そういえば終わってなかったのか」

「えぇ。最大とは言わないわ。出来るだけ最大までね?」

「くっ、エウリュアレのお願いに逆らえる人類などいない……!」

「お願いってそんな効力あったかしら」

「正直命令よりもお願いの方が圧あるよね」

「ふぅん……じゃあ、お願いね?」

「悪用する気満々じゃん」

 

 満面の笑みで言うエウリュアレに、オオガミは苦笑いをするのだった。




 正直育成がある程度終わってると種火を売却してメロンゼリーを量産することになって交換がスムーズになる特典付きなの嬉しいんですけど、売却が面倒になってくる……そんなボックスでした。116箱ちょいくらいかぁ。


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今回のぐだぐだは突然の高床式倉庫だね(数を増やすんじゃなくて縦に伸ばすのは想像できなかったわ)

「いい天気だねぇ」

「そうね。眺めもいいもの」

「二人とも、高いところが好きなのかしら」

 

 邪馬台国に生まれてしまった狂気の10階建て高床式倉庫の屋根の上に寝転んでいるオオガミとエウリュアレ。

 アビゲイルは少し離れたところに座って二人の様子を見ていた。

 

「別に好きというわけじゃないんだけど」

「嫌いじゃないし、遠くが見えるっていいじゃない?」

「……なんというか、二人で一人って感じだわ。とっても仲良しで、互いの事を見なくても理解できている感じとか」

「そんなに?」

「今更よ」

 

 アビゲイルの言葉に、不思議そうに聞き返すオオガミと、何度も言われてきたとばかりに切り捨てるエウリュアレ。

 

「なんだかんだずっといるもの。言わなくてもわかるし、理解してくれる。だからこそ、メドゥーサとはまた別の特別な存在なのよ」

「ふぅん……なんだか羨ましいわ。とっても信頼されているみたいで」

「ふふっ。いいでしょう?」

 

 アビゲイルが頬を膨らまして羨ましそうにする。

 それに対して不敵に笑うエウリュアレの後ろで、オオガミは顔を赤くしながら悶えていた。

 すると、

 

「むっ。ここには誰もおらんだろうと思ってきたが……先客がいたか」

「え、あ、ノッブか」

「おぅなんじゃその反応。内容によっては問い詰めるが、今は良い。とりあえずここに身を潜めたいんじゃけど」

「よし。向こう行こう。ここにいたら心が持たない」

「あらオオガミ。逃がすと思って?」

「……はい」

 

 おそらく信勝から逃げてきたのであろうノッブと一緒にこの場を離れようとするが、満面の笑みを浮かべるエウリュアレに気圧され、渋々と持ち上げた腰を下ろす。

 ノッブも近くに腰を下ろすと、

 

「なんじゃ、またいつも通りいちゃついてたんか。二人も侍らせていい身分よな」

「残念だけど、パワーバランス的にエウリュアレがトップだから逆らえないわけです」

「まぁ令呪使わんからな。全く、信頼しているというか、不用心というか。とはいえ、拘束しないからこそ従うものもいるわけだから一概には言えないわけじゃが……」

「エウリュアレへの過度な肩入れはやめろって?」

「……出来るとは思わんしエウリュアレ自身が抑止になっているから問題はないが、暴走したら止めるのはオオガミ。貴様じゃぞ」

「その時はまぁ、令呪でもなんでも使うけど。それに、エウリュアレに限らず、出来る限りみんなの要望には応えてると思うけど」

「うむ。儂と同じになれとは言わぬし言えんからな。だが、無理そうなときはいつでも頼るといい。もちろん、儂も頼るがな」

「……今日は真面目だね」

「ぐだぐだ時空よ。シリアスしないで」

「儂これで怒られるのは理不尽だと思うんじゃが!」

 

 そう言って騒いでいると、屋根の縁からにゅっと手が伸び、

 

「姉上の声は聞こえた気がするんですが! ってなんだ。お前か……おい、姉上がどこに行ったのか知らないか。今ここにいた気がしたんだが」

「あぁ、闇の新選組の屯所に向かってたよ」

「そうか。入れ違いになったりしたら困るが……姉上に会ったら僕も屯所に向かったと伝えてくれ。それじゃあな」

 

 そう言って去っていく信勝。

 とっさにオオガミの後ろに隠れたノッブは、

 

「いや危なかった。危なかったんだが、お主の後ろに隠れたせいでエウリュアレの視線が痛いんじゃが。なにこれ。儂死ぬ?」

「……強く生きて欲しいな」

「う~んぶん投げおったな!」

 

 そう言って青い顔をするノッブは満面の笑みを浮かべているエウリュアレに肩を捕まれて青を越えて白い顔になっていくのだった。




 う~んぐだぐだ。でもぐだぐだしてない方はめっちゃカッコいいシナリオで良かったしそのあとのぐだぐだが一段と輝いたのでヨシ!

 カッツも最高だったけど斎藤さんも引けたから出したかった……いや、彼ならまだ出番はあるはず……!


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ハロウィンすっ飛ばしてクリスマスかぁ(ハロウィンは復活しなさそうね)

「もうクリスマスなのね」

「10月なんだけど。今年もハロウィンは爆散かな?」

「イベントが来なくてもお菓子の準備はしておいてください。子供たちにイタズラされても知りませんからね」

 

 そう言いながら、厨房でお菓子を大量生産しているカーマ。

 サンタアイランドから目を逸らしているオオガミは、一緒にお菓子を作りながら、こちらの様子を覗いているメルトに、

 

「そういえばエウリュアレは?」

「知らないわ。去年に引き続きハロウィンが無くなったからすねてるんじゃない?」

「そんな事ある?」

「ちゃんとしたお題目のもとイタズラが出来るイベントだもの。嫌いなわけ無いじゃない」

「あ~……確かに、そういう側面もあって好きって言ってた気はするけど、すねるかな。むしろ堂々と文句言いそうだけど」

「じゃあ仮装してるとか」

「なるほどそれだね。うんうん」

 

 そう言って、オーブンからマシュの盾に似たクッキーを取り出す。

 カーマはそれを見て、

 

「なんですかその技術。無駄にキレイなんですけど」

「まぁ、練習してたからね。エウリュアレにメドゥーサみたいなクッキーを作れって言われたときに」

「むちゃくちゃですね……顔型ですか」

「もちろんそんな型は無いから、おっきーにデフォルメ顔を書いてもらって、型をエミヤに作ってもらって何度か試作して完成させたけど」

「その努力を別の方向に活かすとかは無いんですか」

「そもそもが息抜きだよ」

「どう考えても息抜きじゃないんですけど」

「そいつ、基本断らないお人好しだもの。無理に休ませるより簡単なお願いをした方が休むわ」

「そうでした。この人自体がずれてるんでした」

「酷い言われよう」

 

 オオガミは悲しそうにそう言うが、若干自覚があるため言い返しはしない。

 それを見てメルトは楽しそうに笑うと、

 

「別に悪いわけじゃないわよ。スタァにSPは必須だし、付いていてくれないと困るもの。でもそれはそれ。無理をしないのが大事よ。マスターはあなたしかいないんだから」

「……今日は優しいメルトだね」

「あら、刺して欲しいのかしら。私はそれでもいいのだけど」

「う~ん、そういうわけじゃないんだけど……そうだね。言い換えるなら、そういう側面も見れて嬉しいって感じかな」

「……そういう言葉、サラッと出てくるわよね」

「やはり本音に勝るものはないと思いまして」

「いつか絶対に刺されるわよ」

「むしろここで刺すのもありかもですね」

「う~ん物騒すぎる」

 

 とはいえ、下手に嘘を吐くと襲いかかってくるのが約一名いることは全員知っているところなので、安全のためにどちらの危険を取るべきかと悩むメルトとカーマ。

 

「まぁ、男女関係なくこういうこと言う人ですし、気にする必要はなさそうですね」

「えぇ、気にするだけ無駄よね。さぁオオガミ。早くそのクッキーを寄越しなさい」

「はいはい。スタァ様の仰せのままに」

 

 そう言って、オオガミは出来立てのクッキーを持ってメルトのもとへ向かうのだった。




 なんだかんだエウリュアレもステンノもこういうイベント事は好きそうなイメージ。うちの子だけかもだけど。


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トリック・オア・トリート!(ハロウィンは私たちの中にあるってことで)

「トリック・オア・トリート」

「……狙ってきたね」

 

 廊下でにっこりと微笑むエウリュアレと、ちょうど空になった菓子袋を持っているオオガミ。

 残りの菓子袋を持って魔女服を着て一緒にいたはずのメルトが消えていることから、計画的犯行であることがわかった。

 

「それで、その綺麗な仮装は何の仮装?」

 

 そう言うオオガミの視線の先には、ブラウスにフリルが付いた黒いスカート。その上から裏が赤い黒のマントをしていた。

 

「今年はヴァンパイアね。これなら吸血をしても不思議じゃないでしょ?」

「なるほど……なるほど? 誰から血を吸うんですかね」

「それはもちろんメドゥーサよ。それ以外に誰がいるって言うのかしら」

 

 そう言って、マントをヒラヒラとさせながら妖艶に微笑むエウリュアレ。

 オオガミはそれを見て苦笑いして目をそらす。

 すると、エウリュアレは楽しそうに笑い、

 

「まぁ良いわ。追及しないであげる。それで、お菓子はもう配り終えたのかしら」

「え、うん……途中バラキーとカーマに袋をまるごと奪われたりしたけど、一応終わったかな。余ったのはみんなで分け合おうかと思ってたけど」

「そう。ちゃんとアステリオスも来たかしら」

「もちろん。エウリュアレが用意してくれたって言って元気に走ってきたよ」

「そう、なら良かったわ。その調子でもっと交流を広めていって欲しいものね」

「正直アステリオスの扱いは、みんな大きい子供みたいな扱いをしているけどね」

「実際子供だもの。えぇ、可愛くて、素直な子だわ」

「うん。びっくりするくらいにね」

 

 オオガミはそう言い、菓子袋をしまう。

 エウリュアレはオオガミに近付き手を取ると、

 

「それじゃあ、部屋に帰りましょ?」

「うん……メルトは?」

「BBとリップに用があるんですって」

「なるほど。じゃあ先に戻ってても大丈夫そうだね。うんうん。菓子袋ごといなくなったのはそういうことか」

「えぇ。配り疲れたでしょうし、部屋でゆっくり休むのもいいじゃない?」

「ん。まぁ、それもそうだね。それじゃあ行こうか」

 

 そう言って、二人はオオガミの部屋に戻る。

 そして、オオガミがベッドの上に座ると、その膝の上にエウリュアレも座り、

 

「ふぅ……なんだか疲れちゃったわ」

「まぁ、見えないところで色々やってたんだろうし、お疲れ様」

「えぇ。本当、色々頑張ったわ。この瞬間のために」

「え?」

 

 思わず聞き返すオオガミ。

 エウリュアレは思いっきり後ろに倒れるように力を入れ、油断していたオオガミは抵抗する暇もなくそのまま倒される。

 そしてエウリュアレはすぐに体を反転させオオガミに馬乗りの状態になると、

 

「さぁオオガミ。思い出して? 私が最初に行った言葉を」

「……あ」

「ふふっ。気付いたみたいだからもう一回言ってあげる」

 

 そう言って、エウリュアレはオオガミの耳元に顔を近付け、

 

「トリック・オア・トリート」

「……なるほど。してやられたわけだね……お菓子が無いことの確認とフェイクの会話かぁ……流石にこれには完敗」

「えぇ、お菓子はないわよね。知ってるわ。だから、イタズラしかないわね」

 

 そう言って目を輝かせて笑うエウリュアレ。

 オオガミは一体何をされるのかと不安そうにエウリュアレを見つめ、

 

「今日の私は吸血鬼。だからね、オオガミ。イタズラは、私があなたを食べるわ」

「あっはは……イタズラの範疇じゃないよね……!!」

「大丈夫。一生残る傷にはならないはずよ」

「めっちゃ不安しかないんだけど!!」

「ふふっ、それじゃ、いただきます」

 

 そう言ってエウリュアレは口を大きく開き、青い顔をしているオオガミの首筋をめがけ顔を近付け――――




 やっぱりエウリュアレがヒロイン枠だよね。と思ってしまったのと同時にやらずにはいられなかった。思い付いてしまったのが全ての原因……

 果たしてこの先今までと同じ雰囲気でいれるのか。うっかりメルトがエウリュアレに刺されちゃったりしないのか。溶岩遊泳部との争いが突如始まらないか等と言った不安点は残っておりますが、やっぱエウリュアレが一番なんだ……


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箱開け分は揃ったね(周回お疲れ様でした!)

「よし。箱開け分は揃ったかな」

「お疲れ様です!」

 

 一仕事を終えカルデアに帰還し、挨拶をするキャストリア。

 その時、彼女はふとオオガミに違和感を覚え、

 

「あれ……なんですかね。なんか昨日と違う気がするんですが……」

「えっ、いや、何にもないと思うけど……?」

「ん~……なんでしょう。昨日はハロウィンでお菓子を配ってただけだったはず……その時は特に違和感はなかったんですけど……」

「それ以上考えない方がいいと思うなぁ!」

「あ、わかりました! 昨日と違って首元が見えないんです……ね……?」

 

 ポン、と肩に置かれた手。

 振り向くと、先ほどまで一緒に周回をしていたエウリュアレが、にっこりと微笑んでいた。

 

「え、なんですか? 待ってくださいすごい怖いんですけど! なんで静かなんですか! 怖い怖い怖い! マスターも見てないで助けて欲しいです!」

「ごめんキャストリア。残念だけど、助けられないんだ……きっとあと何人か追加で連れていかれると思うよ」

「そ、そんなぁ……!」

 

 そして、エウリュアレに連れていかれるキャストリア。

 オオガミがそれを見送ると、入れ替わるようにアビゲイルが現れ、

 

「マスター、なんだか大変なことになってるって聞いたのだけど」

「あぁ、アビーか……まぁ、大変なことと言えば大変なことかな……」

 

 オオガミはそう言うと、食堂に向かいつつ、

 

「エウリュアレが今朝からあまりしゃべってくれなくて。怒ってるわけじゃなくて、どっちかっていうと落ち込んでる感じ」

「そう……」

 

 アビゲイルはそう言うと、オオガミの首元を見て、

 

「ここが原因だと思うのだけど」

「……やっぱり?」

 

 そう言って、首元を押さえるオオガミ。

 アビゲイルは首をかしげながら、

 

「結局、何があったの? 私、マスターが怪我をしたって言うのしか知らないのだけど」

「別に、大怪我とかじゃないから大丈夫だよ。それに、アスクレピオスもナイチンゲールも何も言わないでしょ」

「確かにそうだけど……」

「あの医療バーサーカーな二人が言わないってことは大丈夫ってことだよ」

「そうかしら……なんだか違う気がするのだけど……」

「まぁ、アスクレピオスはともかくとしても、ナイチンゲールが反応してないのは信頼してもいいんじゃないかな。気付いてないってこともないだろうし」

 

 そんなことを話していると、食堂の前にたどり着く。

 オオガミは扉を開けつつ、

 

「まぁ、エウリュアレにあそこまでされるとは思わなかったけど」

「え、エウリュアレさんが関わってたの?」

「……やぶへびだったか」

 

 目を輝かせているだろうアビゲイルの気配を感じ、オオガミは頭を抱えるのだった。




 はたしてエウリュアレの胸中にあるのは羞恥か照れ隠しか。連れ去られたキャストリアの安否は如何に……そして、真相に一歩近付いてしまったアビゲイルは、エウリュアレの逆鱗に触れず無事のまま過ごせるのか。
 さぁオオガミよ。その首元を見せるのだ!

 次回、オオガミ死す!
 レイシフトスタンバイ!


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私は悪い子だったわ(気にしない気にしない)

「むぅ……今回の私は悪い子だったわ」

「そうだね」

「そうよ。悪い子だったの。だからこうなってるのはおかしいと思うわ」

「そうかな?」

 

 抗議するアビゲイルを膝の上に乗せて頭を撫でるオオガミ。

 抗議しているアビゲイルは不満そうにしつつも頭を撫でられて嬉しそうにしていた。

 

「でもほら、気にしてないしいいんじゃない? なに、悪い夢のようなものだよ」

「でもでも、置いていかれて寂しいからって、あんな姿になっちゃって……」

「それで言うならお栄さんはもっととんでもないことをしているわけだけど。あっちはあっちで特に罰はないよ? それに、アビーを罰するならそれ以上のことをしている人たちも罰しなきゃ不公平だからお栄さんも罰しなきゃだね」

「そ、それは……」

「まぁ、特に思い付きもしないから何かしろって言われても困るんだけどね。それでもって言われるなら、このままおとなしく撫でられているんだな。ふははは」

「変態みたいなこと言わないでちょうだい」

 

 突然現れた第三者の声と同時に何かがオオガミの顔面に飛び付く。

 その勢いを止めることが出来ず倒れたオオガミは、顔に引っ付く何かを引き剥がすと、

 

「ぺんぎ……リヴァイアサン?」

「全く。少し目を離すとこれよ。エウリュアレの躾はどうなってるのかしら」

「とんでもないことをさらっと言うね。俺の管理はエウリュアレ持ちだったのか」

「あら、今更な話じゃない」

 

 そう言って、きょとんと首をかしげるラムダ。

 オオガミは起き上がり、顔面に張り付いていた子リヴァイアサンをアビーに持たせると、

 

「エウリュアレに管理されてるつもりはなかったんだけど」

「あら、エウリュアレにあなたのことを聞けば大抵答えてくれるから、てっきり管理されてるのかと」

「管理されてないよ。というか、エウリュアレは管理するような性格じゃないでしょ」

「まぁ、気まぐれにペットを飼ったら二、三日遊んで飽きて忘れそうよね」

「そういうこと。それに、今日は昼に食堂で別れてから会ってないしね」

「そうなの? で、どこにいるわけ?」

「アナとメドゥーサとゴルゴーンを捕まえてステンノと一緒に遊びに出掛けたよ」

「あなたも大概よね」

「マスターはエウリュアレさんのことはなんでも知っている気がするわ」

「そこまでじゃないよ」

「……この二人のそこまでじゃないって言葉ほど信用できないことはないわね」

 

 ラムダにバッサリと言われ、しかし否定が出来ないオオガミ。

 アビゲイルは嬉しそうに笑うと、

 

「謙遜する必要はないのよ? だってマスターは私たちのことについていっぱい知ってくれているもの。エウリュアレさんやメルトさんだけでなく、私のこともしっかりと。これってすごいことだと思うわ!」

 

 そういうアビゲイルに、オオガミは苦笑すると、

 

「よし。三人で食堂に行ってお菓子でも食べようか」

「わぁい!」

「唐突ね。まぁ、時間はあるからいいのだけど」

 

 そう言って、三人は部屋を出るのだった。




 のんびりしすぎて高難易度間に合わなそうだなって思いつつそれでものんびり周回している私です。

 いい話だったのでゴッホを引きたかったけど私の運命力がそれを許さなかったのでサヨナラだ……


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虚数の旅は楽しかったのかしら(正気を失うように楽しかったよ)

「虚数の海は楽しかったかしら」

「新鮮な旅だったよ」

 

 いつものようにマイルームで、定位置だと言わんがばかりの表情をしながらオオガミの膝の上を陣取るエウリュアレは、返答を聞くと同時にオオガミに満面の笑みを向け、その脇腹に容赦のない肘鉄を突き刺す。

 

「ふ、ふふふ……この程度、致命傷でしかないよ」

「寝てないで起きなさい」

 

 あまりのダメージに横になろうとするも、エウリュアレの無慈悲な一言で泣きながら起き上がる。

 エウリュアレはため息をつくと、

 

「別に、拘束しようなんて思ってないわよ。だってあなたがひどい目に遭って大変な思いをする話を聞きたいもの。でもどうせならあなたが無様にやられてる姿を目に焼き付けたいわ」

「スゴいね。一切自分の欲を隠そうとしないところが好きだよ」

「えぇ、ありがとう。お礼にどんな冒険だったか語る権利をあげるわ」

「別に権利は要らないんだけど」

「そう。じゃあ義務ね」

「女神様らしい横暴さだね。嫌いじゃないよ」

「……悪い意味で順応されてるわね。面白くないわ」

「まぁ、エウリュアレとは付き合いも長いし。それに、昨日から機嫌悪いみたいだから。帰ってきてくれないくらいだし」

 

 オオガミがそう言うと、エウリュアレはなにかに気付いたように笑い、

 

「あら、てっきり気にしてないものかと思ったけど、そう。そんな反応をしてくれるのね」

「当然。いつもいるものだと思ってるし」

「期待するのはいいけど、そもそも置いていかれたのは私なのだから、そういう仕返しをしても許されると思うの」

「ぐうの音も出ない。そりゃ怒って出ていくよね。うん」

「えぇ。だから今日は私以外はこの部屋に来れないようにしておいたわ」

「どうしようやることが極端だよこの女神様! ギリシャの男性神がよくやるやつだよ!」

「残念だけど、突発的に行動する彼らとは違って、あなたが出掛けてからずっと練っていたのだから簡単に破られないわ」

「どうしよう桁外れに用意周到だよ……!」

 

 エウリュアレは立ち上がり、オオガミの方を向くと、

 

「退屈なのはいやだもの。せいぜい私が飽きないように頑張りなさい。マスター?」

「いつだって最大限の努力をしてるよ」

「知ってるわ。だからここにいるんだもの」

 

 エウリュアレはそう言うと、オオガミの隣に座り、膝の上に頭を乗せる。

 突然膝枕を強制されたオオガミは、苦笑いをしながらもエウリュアレの頭を撫で、

 

「もしかして、撫で回されてたアビーに嫉妬してたとか?」

「ふふっ。次同じ事を言ったら動けなくなるまで血を吸ってあげるわね」

「不用意な一言でまた一つ寿命を縮めてしまった……」

 

 オオガミはそう呟くと、エウリュアレが満足するまで頭を撫で続けるのだった。




 エウリュアレは、嫉妬深いといいなって、ちょっと思う……

 でもうちのエウリュアレはメルトやアビーに甘過ぎるので嫉妬オーラはそんなに出ない……たぶん。


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綱の気配がするのだが!(確かに召喚したね)

「汝ぇぇ!! 綱の気配がするぞ!! 召喚したなぁぁぁ!?」

 

 そう言って飛びかかってくるバラキーを、オオガミは正面から受け止めると、

 

「確かに召喚したけども。でもバラキーの腕は斬らせないよ」

「そういうことではないわ! ヤツがいて、吾がいる。それはつまり、殺し合うしかないと言うことだ! それで、ヤツはどこだ!? 今ならば種火も再臨もしておらぬだろう!?」

「いや、確かにそうだけども。倒すチャンスではあるけど、倒させはしないよ?」

「ぐぬぬ……汝は一度言うと中々曲げぬからな……仕方ない。諦めるとしよう。だがとにかく一度は会う。会って吾の方が先輩なのだから言うことを聞けと言う。くくく……召喚が遅かったことを恨むのだな綱ぁ!」

 

 そう言って笑うバラキー。

 だが、オオガミは少し考えると、

 

「向こうは会うつもりは無さそうだったけど」

「知るか! 吾が会うと言っているのだ。ヤツの意思は関係ない。汝だって月に一度キアラの元に行っているではないか!」

「まぁ、あの人はセラピーの腕だけは確かだしね。性格には難があるけど、性根は子供だから」

「今さらっとスゴいことを言ってないか? 吾たまに汝が怖いのだが」

「鬼が怖がるものじゃないでしょ」

「その肝の座り方がわりと尋常じゃないのだが……汝、本当にただのマスターか……?」

「一度人理救ってるけどね。ただのマスターかどうかについては議論の余地があるかもしれない」

「難しいのだな。マスターというのも」

 

 バラキーはそう言って頷くと、ハッと我に返った顔になり、

 

「それで、綱はどこだ?」

「う~ん、逃げ切れないかぁ」

 

 そう言って、ため息を吐くオオガミ。

 そして、覚悟を決めた目をすると、

 

「よし。じゃあ一緒に行こうか」

「うむ。それでよい。では行こ、おぉ?」

 

 意気揚々と進もうとするバラキーの手を握るオオガミ。

 それに驚いたバラキーは、一歩、二歩と後退し、

 

「ど、どうした汝……いきなりは驚くが……」

「いや、バラキーが綱さんを見つけても飛び掛からないようにね」

「せんわ! 吾そこまで短気ではないぞ!?」

「バラキーは頭領だしね。流石って感じ」

「……バカにしておるな?」

「してないしてない。バラキーはすごいなぁって思ってるだけ」

「……褒められるのは悪くない……悪くないが、やはりバカにしているだろう」

「してないってば……って、あれ?」

 

 何やら話し声が聞こえ、首をかしげるオオガミ。

 バラキーもそれに気づいたようで、聞き耳を立てると、

 

「……これ、カーマと綱ではないか?」

「ふむ。予想はバラキーと一致……さてさて実際は……」

 

 そう言って覗き込むと、そこには予想通りカーマと渡辺綱がいた。

 とは言っても、仲良く世間話をしていると言うわけではなく、カーマが綱に文句を言っているように見えた。

 だがしかし、それを見たバラキーは、オオガミの手を引っ張りつつ、

 

「綱! ここで会ったが最後! 死ぬがよい!」

「え、ちょ、バラキー!?」

「だから襲撃させないってば」

 

 綱に飛び掛かろうとしたバラキーの手を引き、すかさずガンドを叩きつけてスタンさせるオオガミ。

 飛び上がった直後に引っ張られたのもあり、オオガミの方へ落ちていき、受け止められる。

 

「ふぅ。これで一安心かな。それで、二人は何をしてるの?」

「なんですかその決断力。ガンドを撃つまでの動作に一切のためらいがなかったんですけど」

「日々劇薬と一緒にいるのは伊達じゃないんだよ。ためらってたら食べられるからね。全方位の意味で」

「どうりで難攻不落な訳です……いえ、まぁ、エウリュアレさんとメルトさんには落とされてますけど」

「何を言ってるんですか。今も昔も、不味いなってくらいに落とされたのはエウリュアレだけだよ」

「ストレートに惚気ないでください。というか、それメルトさんに殺されません?」

「メルトはこっちが最初から落ちてたのでノーカウント」

「なるほど順序の問題ですか……というか、エウリュアレさんへの入れ込みは後天的なものだったんですね」

「まぁね。っと、綱さんをこれ以上放置するのはダメだね」

「いや、俺の事は気にしなくていい。むしろ、そのまま茨木を抱いているのはかなり危ないと思うのだが」

 

 そう言って、綱はバラキーのことを指差す。

 オオガミは一瞬不思議そうな顔をするが、すぐに綱の言っている意味に気付き、

 

「あぁいや、危なくはないよ。少なくとも、ここではそんなに暴れたりしないから。まぁ、今目の前で飛び掛かろうとしてたけども」

「そうか……いや、それならいい。ただ、もし主に危害が加わるのであれば、俺は斬らねばならないだけだからな」

「じゃあその心配はないね。とりあえず、頼光さんのところまで案内しようか。カーマはどうする?」

「私はバラキーを連れていきますよ。というか、どうして連れてきたんですか。せっかく私が引き離そうとしてたのに」

「ん~……連れてきたと言うより、ついてきたから。どのみち何かするようならこうするつもりだったしね。最初からおとなしくしてるとは思ってなかったし」

 

 そう言って、カーマにバラキーを預けるオオガミ。

 カーマは受け取りつつ、

 

「それじゃ、頼光さんは向こうにいましたので。バラキーに近付けさせないでくださいよ」

「はいはい。任せといて」

 

 カーマはオオガミの言葉を聞いてから、立ち去るのだった。

 

「……それじゃ、行こうか」

「あぁ。よろしく頼む」

 

 そうして、二人は歩き出すのだった。




 5.5章読み終わってから地道に書いてたら3日経ってた……いやぁ、うちのバラキーとカーマは平常運転だなぁ。

 そして綱さんのバラキーへのボイスがわりと豊富でワクワクしちゃう……あ、リンボは召喚できませんでした。カタパルトには乗せられなかったよ……


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誰なんですかあなた(余の名は伊吹童子よ)

 カツカツカツ……と貧乏ゆすりをするカーマ。

 その視線の先にいるのは、怯えるバラキーを抱きしめ弄ぶ伊吹童子がいた。

 その様子をじっと見ていたカーマだったが、やがて痺れを切らし、

 

「誰なんですかあなた。無駄に尊大な神気を垂れ流してますけど」

「うん? 余を知らぬのか……まぁよい。今は召喚されたばかりで機嫌も良い。特別に名乗ってやるとしよう」

 

 伊吹はバラキーを手放し、その隣に座ると、

 

「余は伊吹童子と呼ばれている。存分に敬い、畏れるがいい」

「はぁ。伊吹童子ですか……あぁ、そう言えばマスターからそんな話を聞きましたね……聞いていた容姿とはほとんど合致しませんけど」

「……ふ、ふふ、ふふふ……それはあれか。余が小さいと。そう言っているわけだな?」

「あら、そう聞こえました? まぁ確かに小さいですけど、でも他意はないですよ。どうせまだ再臨してないだけでしょうし」

「むぅ……確かにマスターは、今準備していると言っていたが……準備が必要なものなのか?」

 

 唇を尖らせてそう言う伊吹を見て、一瞬バラキーと同じ気配を感じるカーマ。

 だが、カーマはその気配を振り払うと。

 

「準備と言っても、マスターの場合は倉庫整理ですよ。宝物庫に適当に投げ込んで、いざ必要になったら一番下に埋もれてたとか、そういう類いのものです。どうせすぐ持ってきますよ」

「あ~……確かに倉の整理は面倒だものな……貢ぎ物とか、食料でなければ適当に投げ込んでるし」

「そういうことです。まぁ、今頃あなたを探してさまよっているかもですけど」

「むむ、それは一大事だ。背丈はともかく、あの脆弱な外つ国の神にやられたのには納得がいかぬ。相性などと言われてもそもそもの格が違う。負けるのは不自然すぎないか?」

 

 そう言って愚痴る伊吹。

 だが、聞いていたカーマは、この伊吹童子を負かしたであろう女神を思い浮かべ、

 

「……まぁ、あの女神(ヒト)においては、このカルデアにいる限り勝ち目はないと思いますよ……」

「ぬ……それは受け入れがたい……やはり霊基の強度が足りていないだけなのでは。仕方あるまい。余の方から行って強化して貰うしかないな! 去らばだ!」

 

 そう言って、去っていく伊吹童子。

 カーマはそれを見送った後、バラキーに視線を向け、

 

「ほら、行きましたよ」

「……吾、もう部屋に帰る……」

「あぁもう、好きなお菓子作ってあげますから、そんな情けない顔をしないでください。鬼としての矜持とかが崩れかけてますよ!」

「あれはもう逆らえない……エウリュアレの比ではないのだが……」

「……いえ、まぁ、そのエウリュアレさんはあの人を一度倒してるみたいなんですけどね……?」

「吾もう無理……」

 

 バラキーはそう言って、身の危険を脱した安心感で、机に突っ伏すのだった。




 尊大系おこちゃまのように見えて一気に親戚のお姉さんになり、そして最後に神となって来た三段階変化の伊吹童子さん。普段をどれにしようか考え中です。バラキーと絡ませるなら第一再臨かなぁ……


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イイコだけのクリスマスだと思わないことですね!(悪い子にもプレゼント配られてないか?)

「ふふふ……あっちもこっちもクリスマス。でもサンタはイイコにしか来ないので、当然私には来ませんとも。ちゃんとヴリトラにも助力しましたからね」

「……吾、カーマのそのよく分からぬ意地の張り方はどうかと思う」

「うるさいですねこれでも食べててください!」

 

 そう言って、マカロンをバラキーの口に叩き込むカーマ。

 バラキーはそれをもさもさと食べつつ、なにか仕出かそうとしているカーマを観察する。

 

「良いですかバラキー。この世にはイイコ用のサンタとは別に、悪い子用のサンタもいるんです」

「ん。それは聞いたことがある。でも吾一回も会ったこと無いが」

「当然です。今までいませんでしたからね。そう、つまり今年から私がなれば良いんですよ!」

「……ブラックサンタカーマか。ふむ、楽しそうだな?」

「そうでしょうそうでしょう! ふっふっふ……今日のために要らない塵や石、魔獣の内臓とかを用意したんですからね! カルデア悪い子集団に目にものを見せてくれますよ!」

「吾わかった。これ悪行のつもりで善行してしまうやつだな。うむ。面白そうだしついていくとするか」

 

 いつの間にか黒いサンタ服を着て大きな白い袋を持ったカーマが走っていくのを、バラキーは楽しそうな笑みを浮かべながら追いかけるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「で、今年は?」

「BBとノッブに仕事を奪われたので。今年はおとなしく寝てろってさ」

 

 寝る支度を済ませ、ベッドに入りつつ、先に入っていたエウリュアレの質問に答える。

 すると、エウリュアレは目を細めて、

 

「ふぅん……クリスマスに、寝てろって?」

「そういうこと。といっても、いつも通りじゃない?」

「……そうとは限らないと思うけど」

 

 エウリュアレはそう言うと、オオガミの首に両手を回し、引き寄せる。

 寝る前ということもあり、温かな間接照明の淡いオレンジ色の光に照らされたエウリュアレは、いつもの何倍もの妖艶さを放っており、オオガミは特に抵抗もせずにエウリュアレの行為をそのまま受け入れ――――

 

「ちょぉぉっと待ったぁ!!」

 

 大きな声とともに開かれる扉。

 反射的にオオガミが振り向くよりも早く、そして速く投てきされた枕元の目覚まし時計が闖入者(ちんにゅうしゃ)の頭にぶつかる。

 

「え、ちょ、エウリュアレ!?」

「なによ。せっかく作った雰囲気を台無しにされたこっちの気持ちにもなってほしいのだけど」

「その気持ちはわかるけども。それで、今のは声からしてカーマ?」

 

 そう言ってオオガミが振り向くと、目覚まし時計の衝撃から目覚めたカーマが起き上がる瞬間だった。

 

「いったたた……なんなんですかエウリュアレさんのその投てき。反射で投げたにしては殺意高くありません?」

「出てくるのが悪いのよ。それで、何の用かしら」

 

 そう言って、普段の何倍もの殺意のこもった視線を向けられるカーマ。

 だが、カーマは飄々とした態度で、

 

「もちろん嫌がらせです。メルトさんを送りつけるのも考えましたが、普通に一緒に混ざりそうなのでこっちにしました。メリーバッドクリスマス!」

 

 そう言って黒いプレゼントボックスを投げ付けるカーマ。

 オオガミがそれを受け取ったのを確認すると、

 

「今回のイベントとは無関係ですので! それでは!」

 

 それだけ言うと、カーマはその場を立ち去り、扉も閉まる。

 残された二人はというと、

 

「……興が削がれちゃったわ。もう寝ましょう」

「そうだね。それじゃあおやすみ」

 

 不機嫌になってしまったエウリュアレの頭を撫でつつ、オオガミは寝るのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ふ、ふふふ。まぁざっとこんなものですよ」

「最初からクライマックスというヤツだったな。最初以上の見せ場など作れそうにないが」

「痛いところを突きますね……まぁ、あのタイミングしかあの部屋は突撃できなかったので。それじゃ、次もいきますよ~!」

 

 そう言って、カーマは突き進むのだった。




 メルトは同じ部屋で寝たり寝なかったりします。えぇ、はい。エウリュアレは常に同じ部屋の同じベッドです。

 個人的にはカーマが楽しそうで何よりなイベントでしたね。またイタズラを考えていてほしい……


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並行世界に遊びに行こうか(今度はこっちからね)

 今回は向日 葵様とのコラボです!

 今回はこちらが先なのであとがきにリンクを張りたいと思います!
 コラボが苦手な方は読み飛ばしてください! 全然大丈夫という方はこのままどうぞ!


「それで、何の用?」

 

 BBに呼び出され、いつもの工房に入るオオガミ。

 今日はメルトが不在で、エウリュアレだけが一緒にいた。

 BBはそんな二人を見ると、

 

「よく来てくれました。実はですね? この前センパイが行ったって言うカルデアから持ち帰った、『何処でもレイシフト君』なんですけど、ようやく中身が分かったので報告をと思いまして」

「……今?」

「えぇ。ちょうどいいタイミングなので」

 

 そう言って、半年ほど前に、並行世界のカルデアからもらってきた『何処でもレイシフト君』を卓上に置くBB。

 オオガミは不思議そうな顔で、

 

「今、大晦日越えて一月一日なわけですけども」

「はい! だって今から寝るところでしょう? じゃあ工房で過ごしても問題ないじゃないですか!」

「え、なに、初夢なの? 初夢を並行世界のカルデアにしろってことなの?」

「えぇ! 実質連続年越しですよセンパイ!」

「どこにもワクワクしないけどなぁ! 一年で一回の年越しを連続なんてどうかと思うなぁ!!」

「まぁまぁ。大丈夫、全部夢ですから。一度あったでしょう? 虚数の夢。あれみたいなものですって」

「正夢になるやつじゃん……!」

「そんなところです。あ、もちろんエウリュアレさんもセットでいいですよ! 旅は道連れ! 一緒の夢を見てより親密になろうってことで!」

 

 そう言うBBに、黙って聞いていたエウリュアレが、

 

「最初から連れていかせるつもりだったじゃない……そもそも、今メルトがいないのはあなたが原因でしょ。大方、リップに何かを吹き込んで拘束させているのでしょうけど。分かるわよ。だって、向こうにもメルトがいるもの。あまり会わせたくないんでしょ?」

「正解ですエウリュアレさん。だってほら、自分と同じ存在がいるなんてそんなドッペルゲンガー現象、わりと耐えられるものでもないですし。まぁ、月の天才AIであるBBちゃんには関係のない話ですけどね!」

「でしょうね。それで? なんで今なのよ」

「それはもちろん、これが2020年の12月31日の10時にレイシフトする仕組みだからですね。別に未来へのレイシフトでもよかったんですけど、どうせなら初夢にしてやれと思いまして」

 

 そう悪びれるでもなく、むしろ誇らしげに言うBBに、オオガミは、

 

「ふぅん……それで、仕組みを知ったのはいつの事?」

「これを貰った当日ですね」

「つまりここまで温めていたと」

「そういうことです」

「当初言ってた改良は?」

「センパイのレムレムレイシフトを応用した、何時でもレイシフト君に改良したところですね! 指定した人物も巻き込めますよ!」

「最低最悪のトラップじゃん」

「まぁ、欠点はセンパイがいないと発動しないことくらいですかね?」

「なるほど逃げられないわけね」

「いいじゃない、いつものことでしょ。それが意図的に起こるだけの事よ」

「心構えは出来るからってことか……まぁ、エウリュアレがいるなら大丈夫でしょ」

「楽観的ね……別にいいけど。二人旅も悪くないわ」

「スゴい好意的に見たね」

「だって危険なところじゃないって言うのは確定しているでしょ?」

「……まぁ、エウリュアレがいればなんとかなる範囲ではある、かな?」

「でしょ。だからほら、さっさと寝なさい。夢を見るのは早い方がいいわ。だってその方が起きた後の楽しみも多くなるもの」

「なるほどね。じゃ、BB。こっちの準備はいいけど、そっちの準備は大丈夫?」

 

 そう聞くオオガミに、BBは少し考え、

 

「あぁ、そうですそうです。一応これを首から下げておいてください」

「……銀の鍵?」

 

 オオガミは呟き、手渡されたものを見る。

 それは銀の鍵をつけたネックレスで、アクセサリーとして普通に売っていそうなものだった。

 

「これをつけておくだけでいいの?」

「はい。簡単に言えば、それが基準点になりますからね。アンカーというか、ビーコンというか。ともかく、それがあれば帰還は楽になりますので。失くさないようにしてくださいよ?」

「……ちなみに、失くすと?」

「帰還できない、という訳じゃないんですけど、ちょっと時間がかかりますね。回収に派遣する人がセンパイを見つけるのに時間がかかるので」

「よかった。帰れないとかじゃないのね」

「はい。ですから、最初から楽になるって言ってるじゃないですか」

「なるほどね……あ、ついでに聞いておきたいんだけど、追加召喚って出来るの?」

 

 オオガミの質問に、BBは不思議そうに首をかしげながら、

 

「追加召喚ですか……まぁ出来ないこともないですけど、その場合はその鍵を経由してですね。それでも、エウリュアレさんを除いて2騎までです」

「意外と召喚できるね?」

「まぁ、向こうもカルデアですからね。基本的に制限はないと思うんですが、予防策みたいなものです。大人数を召喚して酷いことになったら目も当てられないので」

「なるほど……困ったらメルトとカーマを呼ぶかな」

「メルトですか?」

「うん。だってほら、同一存在を見たときには相手が霞に見えるらしいし。それに、前回連れていってたしね」

「まぁ、大丈夫ならいいんですけど……メルトはあくまでも緊急ですからね」

「わかったよ。じゃあ、これで聞くことは聞いたかな」

 

 そう言うと、オオガミはその場で横になり、

 

「それじゃ、レムレムレイシフトよろしく~」

「はいは~い! エウリュアレさんも一緒にいてくださいね~」

「えぇ。任せたわよ」

 

 そう言って二人は目を閉じ、BBは何処でもレイシフト君を起動させるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「……あぁ、自室じゃないね」

 

 目を覚ますと、見覚えのあるマイルームで、しかし雰囲気や置いてあるものが違っていた。

 同じように隣で目を覚ましたエウリュアレは、

 

「うまく出来てたみたいね。ネックレスは大丈夫?」

「大丈夫。周りに誰かいるかな」

「まぁ、制作者本人はいるんじゃないかしら」

 

 壁の一点を一瞬睨んだエウリュアレを見て、オオガミは納得すると、

 

「それじゃ、下手に動かない方が良さそうだね」

「でもここのマスターって女性よね。男性がいたら殺されるんじゃない?」

「なるほど正論。これは死んだかもしれないね」

「大丈夫です! そう簡単に殺させたりはさせませんので!」

 

 そう言って、どこからともなく現れるBB。

 だが、いつもとは雰囲気が違うので、こちら側のBBではないのだろうと予想できた。

 

「おやおや、警戒されてるみたいですけど、そんな必要ないですよ。むしろよく来てくださいました!」

「まぁ、こっちのBBから、この時間に呼ばれたって言うのを聞いたからね。面白そうだから行くしかないでしょ」

「危険なことに首を突っ込みたい性分だもの。だから来たのだけど」

「なるほどなるほど。実に愚かで勇気があっていいですね! でも普通に考えて貰い物を素直に受け取るのはどうかと思いますよ」

「それはそっちのマスターにも言えることじゃないのかしら」

「ごもっともです。っと、世間話をしてる場合ではないですね。今回呼んだのにはちゃんと理由があってですね?」

「大晦日だもんね。そりゃなにか企画があるよね」

「はい。今年で三回目になるイベントですね」

 

 BBはそこで言葉を区切り、どこからともなくタブレットを取り出すと、

 

「大晦日の紅白歌合戦! ということで、こちらが準備中の会場ですね。機材の最終チェックをしてるところです」

「なるほど……それを見せるために呼んだって、訳じゃなさそうだね」

「えぇもちろん。参加して貰おうと思いまして。練習スペースも設けさせていただきましたよ」

「う~ん、至れり尽くせり。どうするエウリュアレ」

「演奏しないわよ」

「エウリュアレはボーカルでしょ」

「えぇ。演奏は任せたわ」

「まぁ、そうなるよね。とりあえず、その練習スペースって言うのを見たいな」

「はい。それでは二名様ご案内です!」

 

 そう言って、マイルームから二人を連れ出し、外側から赤いリボンのついた長い鍵を鍵穴に差し込みひねると、

 

「ここが練習スペースですね」

「え、今マイルームだったような……」

 

 BBの言葉に首をかしげるが、開かれた扉の先を見て言葉を失う。

 そこには様々な楽器が置かれている広いスペースで、確かに練習するには最適の場所だった。

 導かれるように一歩二歩と部屋に入った二人は、

 

「なるほどこれはロマン溢れる入り方だ……」

「これはこっちでも作って貰うしかないわね。あぁでも、アビーがいるから要らないって言うことなのかしら……」

「部屋よりも入り方の方が褒められてるの、複雑ですね……」

「しょうがないよ。心に響くものだったんだから」

「中の物よりも魅力的だったんだもの」

 

 ハッキリと言われ、若干悲しそうにするBB。

 そんな彼女を置いてオオガミは楽器を見つつ、

 

「でもまぁ、演奏できるのもそんな無いしねぇ……カルデアに来てから楽器に触れる機会も何度かあったし教わりもしたけど、それでも素人よりはまぁ出来るって程度らしいし。あんまり期待しないでよ?」

「そうねぇ……とは言っても、二人じゃ味気無いもの。カーマを呼ぶとかどうかしら」

「あ~、カーマかぁ。増えて貰って演奏して貰うとか?」

「一人でオーケストラ出来そうだもの。良い案じゃない?」

「全人類対応型の愛だし、音楽に精通してる可能性もあるからね。いけるねこれは」

 

 そんな事を話すオオガミ達。

 すると、BBが、

 

「練習するのは良いですけど、時間はそんなにありませんからね?」

「任せて。どうにか間に合わせるから」

「一応カーマが来なかったとき用のも用意しておきましょう」

「それ召喚できないやつじゃん……!」

「BBの予想なんて信用も信頼もしてるわけ無いでしょ」

「さらっととんでもないことを言いますね……」

「自分のやった所業をかえりみてから言ってほしい言葉よね」

「そっちの私は一体何をしたんですか……」

 

 BBはそう言うと、ため息を吐く。

 そして、改めて顔を上げると、

 

「とにかく、時間になったら呼びに来ますので!」

「はいは~い。そっちも頑張ってね~」

「あなたのマスターに負けないくらいの歌を用意して上げるわ。魅惑の美声がただのスキルじゃないことを証明してあげる」

「それは楽しみですね……それではまた後で!」

 

 そう言って部屋を出るBB。

 すると、

 

「あ、BB」

「あ、センパイ。どうかしました?」

 

 BBに聞き返され、困ったような顔をしながら、オレンジ色の髪をした少女――――アオイは言う。

 

「えっと、ダ・ヴィンチちゃんが、前みたいに一瞬だけバイタルが二倍になったって言ってて。なにか知ってる?」

「あ~、それはですね、後のお楽しみと言うことで! 今年のステージも楽しみにしてますよ!」

 

 BBはそう言うと、アオイを押しながらどこかへ立ち去るのだった。




 次はこちらです!

 第一話
 第二話
 第三話


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もう大晦日かぁ(意外と早いわよね)

 時間は少し戻り、大晦日。

 

「今年はどうするの?」

「イベントは異聞帯攻略で準備進まなかったからなぁ……」

 

 そう言いながら食堂に向かうオオガミとエウリュアレ。

 重そうな段ボールを持っているオオガミは、残念そうにため息をつきながら、

 

「とりあえず、今年も宴してそばを食べてって感じじゃない?」

「それでその箱って訳?」

「まぁ、宴なら食材が多いに越したことはないしね」

「むしろ残しそうなくらいが良いわ。でも、バラキーが勢いよく食べすぎて去年みたいに喉に詰まらせなければ良いのだけど」

「それは去年と同じでカーマが助けるでしょ」

「ふふっ、それもそうね」

 

 そう言って、上機嫌に笑うエウリュアレ。

 それにつられてオオガミも笑いつつ、食堂の扉を開ける。

 

「あ、ようやく食材が来ましたよ~」

「すまぬなご主人。本来はキャットの仕事なのに頼んでしまって」

「いいよいいよ。そのぶん美味しい料理を頼むよキャット」

「任せろ! 腕によりをかけて最高の料理をたらふく食わせてやろう!」

「楽しみにしてるよ。エミヤさん、ここに食材は置いて良いかな」

「あぁ、そこで良い。ありがとうマスター」

 

 エミヤに了承をもらい段ボールを置いたオオガミは、一息吐くと、

 

「どういたしまして。手伝うことはある?」

「あぁ、それならカーマの方を手伝ってやってくれ。てこずっているようだからな」

「はぁ? 余計なお世話ですぅー! この程度余裕ですよ! 一人で出来ますから!」

「二人の方が早いでしょ。無理して一人でする必要もないでしょ」

「ぐぬぬ……仕方ないですね。手伝わせてあげますよ。光栄に思ってくださいね!」

「な~にを言ってるんでちか。カーマよりもご主人の方が料理が上手でち。まぁどんぐりの背比べみたいなものでちが」

「それほとんど差はないってことですよね!」

「あっはは……手厳しいね。流石ヘルズキッチン。いつか挑みたいけどね」

「ご主人にはまだ荷が重いからやめておくべきだワン! 最低限の事はキャットでも教えられるからそっちにしておくのだな!」

「やっぱりワイバーンを一人で倒せるくらいじゃないと辛いのかな……まぁ、今はキャットに教わるとしようかな」

「うむ! でもそれはまた今度だな。今日は大忙しだから教えている余裕はないのでな!」

「うん。頑張ってねキャット」

 

 そう言って、オオガミはカーマの手伝いを始める。

 その様子を見ていたエウリュアレは、

 

「いつの間にか、厨房も大所帯になったわね……」

「一年で色々変わるもんすね~。4年前とは比べ物にならねぇわ」

「そうね。なんだかんだ4年。人理が焼却されて今度は凍結されて。全く、飽きないわね」

「あんたが言うと嫌な意味にしか聞こえねぇな」

「素直に受け取ってくれて良いのだけど。そこまでひねくれてないわ」

「そりゃ、マスターと絡んで、というか、聖杯をもらった辺りからまるで性格違うじゃねぇか」

「そうかしら。そんな変わらなくない?」

「まるで違うね。でもまぁ、今の方がいいような気もするけどな」

「……まぁ、参考程度に受け取っておくわ」

 

 エウリュアレはロビンにそう言うと、厨房に一番近い席に座り、

 

「美味しい料理を楽しみに待ちましょ」

「……ま、女神様に誘われたら断るわけには行かないわな」

 

 エウリュアレの対面に座り、ロビンは楽しそうに料理をしているオオガミを見るのだった。




 なんだかんだコラボしたりしたのに更新の少ない一年だったなぁと思いつつ、オオガミチームよりもカーマ&バラキーに肩入れした一年だったような気がしますね。

 でもまぁ、エウリュアレは最強の立ち位置から揺るぎませんね!!

 それではよいお年を!


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今年も良い一年でありますように(大人数で良い一年を目指そうか)

「「「明けましておめでとう!!」」」

 

 サーヴァント達の大きな声で、年が明けたことを実感する。

 食堂は、酒を片手に騒ぐもの。それを静めようとするもの。静かにそばを食べたり他の料理に手を伸ばすなど、三者三様十人十色英霊それぞれのもので、一年経つ毎に様変わりする年越しに、オオガミは笑みを浮かべる。

 

「満足そうね」

「もちろん。だってこんな大人数だよ? 嬉しくないわけ無いでしょ」

「そうね。私には少し騒がしすぎるかもしれないけど、でも、こういうのも良いわ」

「うん。見てるだけでも楽しいよね」

「えぇ。だからオオガミ。隣で寂しそうにしているリヴァイアサンに構ってあげなさい?」

「余計なお世話。いつまでも頼りきりな私じゃ……くっ、うぅっ……無いわ、よ……ぅ!」

 

 そう言いながら、必死の顔で箸を使いなんとかそばを食べようとするラムダ。

 四苦八苦しながらようやく持ち上がったそばに一瞬目を輝かせるも、直後ちゅるんと箸の上を滑りラムダに降りかかる温かい汁。

 直撃したラムダは勢いよく上体を反ると、何もなかったかのようにしっかり座って箸を置くと、

 

「早く私に食べさせなさいな」

「その一瞬で切り替えるのすごいと思うよ。はい、あーん」

「あなたの切り替えの早さも中々のものだと思うのだけど」

 

 流れるようにラムダにそばを食べさせるオオガミに、苦笑いをするエウリュアレ。

 彼女からすれば見慣れた光景ではあるし、たまに自分もわがままを言って食べさせてもらっているのであまり強くは言えないのだった。

 

「エウリュアレは天ぷら食べる?」

「魚が良いわ。サクサクでふわふわな食感が好きなの」

「揚げたては最高だもんね。ふわふわの白身魚はいくらでも食べられそうだしね」

「えぇ。ありがと」

 

 オオガミに取ってもらい、黙々と天ぷらを食べるエウリュアレ。

 そんな三人を遠巻きから見ていたカーマは、

 

「あの三人仲良すぎじゃないですか? どうなってるんですか」

「いつも通りであろう? 吾はもう気にならぬが、汝は愛の神として気になるのか?」

「別に、今はボイコット中ですし? そもそも既に与えられないような相手を相手するような私じゃないですから」

「……愛を妨害するのは愛の神としてのボイコットじゃないのか?」

「……妨害するのも、愛の試練って名前の愛になっちゃうのでボイコットにならないんですよねぇ。仕事しちゃうことになるので。というか、クリスマスのイベントがそのまま答えですよ」

「あぁ、ヴリトラとやらの計画か……あれは確かに試練というものだったが、あれも愛に含まれるのか……難しいな。愛」

「難しいんですよ。愛」

 

 そう言いながら、そばを食べる二人。

 すると、カーマが、

 

「あ、そう言えばバラキー、栗きんとん食べたいんですっけ」

「うむ! あれは甘くて美味しいからな。食えるだけ食いたい。おせちの楽しみよな!」

「そうですか……それじゃあ厨房に行きますか。そこで食べててくださいね」

「戻ってきたばかりでもう行くのか?」

「色々あるんですよ」

「そうか……カーマの栗きんとん楽しみにしているぞ!」

「えぇ。それじゃ、また後で会いましょうね」

 

 そう言って、カーマは厨房に向かうのだった。




 明けましておめでとうございます!

 ギリギリ書ききったけど書きたいことを全部詰め込めなかった感。悔しい……!


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とんでもない初夢だった気がする(それよりもおせちを食べましょうよ)

「うあ~……なんかすごい夢を見てた気がする」

「私も見た気がするわ。とても楽しかったような気がするのだけど」

 

 寝ぼけたまま食堂に入るオオガミと、なにかを思い出せそうで思い出せないエウリュアレ。

 しかし、二人は目の前に並ぶ料理に、一気に意識が覚醒する。

 

「おせちだやったー! 年に一回くらいしか食べる機会はないからね。昨日張り切って作ったし、楽しみだね」

「もう食べて良いのかしら。でも人がいないのよね」

「もしかして正月特異点……? おせちが閉塞空間に閉じ込められて触れられないとか?」

「そんなことしたら犯人を針山にするわ」

「キレッキレだね。流石に冗談だよ」

 

 そんなことを話していると、後ろから、

 

「おや、もう起きてきたのか。夜遅くまで遊んでいたからてっきり昼頃に起きてくると踏んでいたのだが……」

「エミヤさん。このおせちはまだ食べない方がいい感じ?」

「いや、食べていい。もとより、起きた者から順に食べていいつもりで置いてある。元々この大人数だ。この程度で足りるとは思っていないが、食材はある。追加で作るのも問題はないからな。ただ、栗きんとんだけは異常にストックされている。カーマがせっせと作っていたからなのだろうが、あれを全て茨木童子が食えるとも思わん。出来れば処理をして欲しいところだな」

「う、うん……まぁ、甘いのは小さい子達が食べるだろうし、余ったら貰おうかな。というかカーマ、年越した後に厨房で何をしてたのかと思えば、ずっと栗きんとん作ってたのか」

「なんだかんだカーマってバラキーのことを溺愛してるわよね」

「本人は否定するんだけどね。それじゃあ、食べてるよ。ありがとうね。エミヤさん」

 

 そう言って、二人は隣り合って席に座り、おせちを食べ始める。

 すると、二人を皮切りに集まり始めるサーヴァント達。

 

「あら、もう起きてきてたのね」

「一番乗りじゃなかった……頑張って早起きしたんだけどなぁ」

「別にいいじゃない、二番でも。どうせオオガミがいないと食べられないんだし」

「それはメルトの話でしょ! 私は食べられるもん!」

「おぅおぅ入り口でたむろせずに進め。儂らが通れんわ」

「茶々のおせちの邪魔をするなら森くんに薙ぎ払って貰っちゃうよ!」

「お、良いのか?」

「いや退くわよ。私たちだって食べたいもの」

 

 そう言いながら入ってくるメルトとリップに、ノッブ達。

 それに続くように入ってきたカーマとバラキーは、

 

「ってことがありまして、予定よりちょっと少なくなっちゃいました」

「むむむ……それは許せぬ……吾の栗きんとんを減らすための計略か? しかしそれならば吾はカーマの栗きんとんを食い尽くさねばならんな!」

「えぇ。しっかりと取り置きしてますよ」

「うむう……む? いやこれはおかしくないか。重箱一杯とかを想像していたが、どう見ても入って泳げるレベルではないか?」

「そんなにないですって。冷蔵庫は埋まりましたけど」

「……食いきれるか……?」

 

 カーマの用意したという栗きんとんに、いつになく真剣な顔になるバラキー。

 だんだんと騒がしくなる食堂に、エウリュアレは微笑みながら、

 

「ほら、メルトが子犬のように待ってるわよ」

「待ってないわよ。あれから成長したんだもの」

「あら、期待しないで見ていようかしらね」

「ふふん。見て驚かないでよ」

 

 そう言って、メルトはエミヤから受け取った雑煮の餅を箸で持ち上げようとし――――べちゃりと音を立てて跳ねる汁。

 直撃したメルトは死んだ魚のような目で箸を置き、

 

「まぁ、スタァが誰かに食べさせて貰うのは何の問題もない行為よね。オオガミ。食べさせなさい」

「いやどう考えても不自然――――あっ、痛っ、ごめっ、分かったから!」

「分かればいいの。ほら、食べさせなさいな」

 

 そう言って、自分の失敗を見なかったことにしたメルトと、苦笑いしながら食べさせるオオガミを見て、エウリュアレは一人動けなくなるほど笑っているのだった。




 今年の目標は書くことを辞めない。ですね。永遠オオガミ組とカーマバラキーを書いていたい……そんな気持ちでございます。他のキャラもレギュラー化したいけどね!


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あけおめキアラさん(お久しぶりですマスター)

「あら、マスター。明けましておめでとうございます。今年もカルデアのサーヴァントの一人としてよろしくお願いいたします」

「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします」

 

 いつの間にか畳に変えられ、こたつまで完備されているキアラの部屋にやって来たオオガミ。

 いつもと変わらぬ笑顔にオオガミの気も緩む。

 

「それで、なにかございましたか? 三ヶ日も終わり、そろそろ通常運転に戻る頃合いですが」

「いや、挨拶くらいはしておかないとと思って。BBが目を離した隙に脱走するかなって思ってたんだけどね」

「まさか。私は今の生活がそこまで悪くはないと思っていますので、脱走する理由もそれほどありません」

「そう言って貰えるとありがたいけど。まぁ、水着の時は張り切ってたもんね」

「マスター。それはそれ、これはこれでございます。やはり夏というものはかくも恐ろしいもので、気を付けてはいたのですが……お恥ずかしながらあのようになってしまいました」

「別に気にしてないよ。楽しんでて何よりって気分だったしね。楽しめないよりは全然いいと思うよ?」

「まぁ。やはり懐が大きいですね。私は己の修行不足を恥じるばかりです」

 

 そう言って、目を伏せるキアラ。

 オオガミは苦笑しながら、

 

「正直カーマが普通に出歩いてるんだしキアラさんもいいと思うんだけど、ビースト化してなくてもキアラさんは脅威だからって言って許可されないんだよね」

「その理屈で行くと、彼女は脅威じゃないように聞こえますね」

「まぁ実際子供のいたずら程度の事しかしないしね。そう言うところも含めて、キアラさんとは真逆の存在だよね」

「あなた様が言うのであればそこに間違いはないのでしょうね。悲しいことに私と彼女は相容れぬ身。合えば争いになることは必然。ですので、カルデア内では会わぬように私はここにいるのです」

「本音は?」

「あの子が怯えるようにここに近づかないのが面白くて……時々魔力だけ飛ばして遊んでいるので楽しいです」

「たまに子供みたいなことするよね」

「お嫌いですか?」

「ビックリするほど親近感湧くね」

「それでしたら嬉しいです」

 

 キアラはそう言って微笑み、ふとなにかに気付いたように顔を上げると、

 

「そうです。あなた様が来る少し前に、預かりものをしていたのでした。ここでは感じたことの無い気配でしたが、悪いものではなさそうでしたので、少しお話をしていたのですが、なにやら事情がある様子。わけを話していただくと、マスターへお届け物があるというではないですか。ですので、私が代わりに預かり渡しておくと申し伝えましたところ、こちらに」

「つまり問い質したら荷物を置いて消えたと」

「おや、そのように聞こえてしまいますか。私はただ、危険物だったらと思い預かっただけなのですが」

「結果は?」

「よく分からぬものと手紙ですね。箱を空けたら勝手に動くようなものではないでしょうし、そのままお渡ししても良いだろうと判断しました」

「まぁ即死じゃなきゃ大丈夫か。部屋に帰ってから開けてみるよ」

「えぇ。それではごきげんよう」

「うん。今度はお茶菓子でも持ってくるよ」

 

 そう言って、オオガミは部屋を出ていくのだった。




 キアラさんはね。すごいんだよ。なんかね、すごい書きやすいんだ……でも私が仏教に詳しくないので誓願が全く分からないのが悔しいところ。


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甘い雰囲気になってきましたね(ちょこがたくさん食べられるな!)

「あ~……なんだか嫌な空気だなぁって思ったら、バレンタインが近いんですか……」

「うむ。吾は好きだがな! ちょこがたくさん食べられる故に!」

「バラキーのその素直さ、嫌いじゃないですよ」

 

 そう言って、何も分かっていなさそうなバラキーを見てため息を吐くカーマ。

 バラキーは不思議そうに首をかしげ、

 

「嬉しそうではないな……どうした? もしかしてあれか? ちょこが嫌いなのか?」

「あぁいえ、チョコは別に嫌いじゃないです。ただまぁ、この時期は空気そのものが苦手というか。まぁバラキーには関係の無いことですけど」

「空気……空気かぁ……うむ、吾には分からぬことだな。ただまぁ、この時期はマスターへの贈り物が流行る頃だから、苦手というのは分かる。なんとなく皆目が怖いのだ……」

「……わかってるじゃないですか」

 

 そんなことを言っていると、厨房から何かを持って駆け出していくオオガミ。

 それを見たバラキーは、

 

「今度はなんだ……吾の知らぬことが起こってるのか……?」

「まぁ、普段仲が悪い人が一緒にいますからねぇ……異変と言えばそうなんですけど、駆け出していったのは別の理由だと思うんですよねぇ」

「む。何かあったか?」

「えぇ。今年はスーパーロックオンチョコレートとかいう、危なっかしい名前のチョコレートがあるらしいので。とは言っても、あのマスターなら、もう決まっているようなものですけどね」

「あ~……うむ。わかる、わかるぞ。でも吾はラムダの方だと思うなぁ」

 

 そう言って頷くバラキー。

 カーマはため息を吐くと、

 

「どっちも同じ考えなら賭けになりませんよ……効率面を考えても、普通に行くでしょうね。彼の中で彼女はスタァで偶像ですから。ま、エウリュアレさんも負けず劣らずですが、あっちは逆に自分に渡そうとしたら突っぱねそうですね」

「うむ。大方、戦力的に見てラムダに渡すべきだろうと言いながらな」

「……ビックリするくらい言いそうですし、でも満更でもない顔で受け取りますよね」

「まぁ今回はいつものものだと思うがな」

「それには同意ですけど。ただまぁ、一つだけあるとしたら、男性用のは誰に渡すんですかね」

「……そっちの方が面白いことになりそうだな」

 

 バラキーはそう言うと、楽しそうな笑みを浮かべる。

 カーマもちょっとした好奇心に火が点き、目を輝かせると、

 

「それじゃ、後を追いますか」

「これは大冒険の予感がするな!」

 

 そう言って二人は食堂を飛び出し、オオガミを追いかけるのだった。




 カレンさんは来てくれたけどまだ私の中で固まってないので保留。あと鬼一師匠ももう少し保留なのです……

 ちなみにスーパーロックオンチョコレートは当然ラムダです。理由は、そう言えば他のチョコはまだ貰ってませんって選択肢があったなって思い出して、見に行くために一番最初に渡しに行く、でした。


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スーパーロックオンチョコレートですって(良かったじゃないの)

「ふふん。まぁ、当然よね」

「言いたいことは分かるけど、その顔を見ているとちょっとだけイタズラしたくなっちゃうからやめて欲しいのだけど」

 

 オオガミのマイルームにて、上機嫌なラムダと、笑顔の裏の暗い感情が隠しきれていないエウリュアレ。

 その原因は、やはりオオガミが持ってきたスーパーロックオンチョコレートにあった。

 

「別に、戦力的にも優先度的にもあなたが優先されそうなことくらい分かってたけど、そこまで露骨になるかしら」

「そんな露骨に喜んでないわよ……というか、どうしてあなたはここにいるのよ。チョコ作りは?」

「今固めてるの。やれることがない状態よ」

「そう……それなら仕方ないわね」

「えぇ。渡す相手も昨日から姿が見えないしね」

 

 その言葉に、一瞬ピクリと反応するラムダ。

 しかし、すぐになんでもないかのように首をかしげると、

 

「不思議ね。昨日このチョコを渡したあと、部屋に帰ったはずなのだけど」

「あら、昨日はほとんどこの部屋にいたのだけど、夜には一回も帰ってこなかったわ。不思議ね?」

 

 うふふあははと笑う二人。

 そこへ、

 

「エウリュアレさん! マスターさんが厨房にいたのだけど!!」

「「えっ!?」」

 

 部屋に入りながらそういうアビゲイルに、二人とも困惑の声を上げる。

 そして顔を見合わせると、

 

「逃げられてるじゃない」

「別に、逃げられるのは、想定内よ……そのあと何も言わずに厨房に向かうのは、ちょっと想定外だったけど」

「動揺してるじゃない……」

「うっ……そういう時もあるわよ……それで? どうするのよ」

「それはもちろん、14日まで何も。向こうもそのつもりでしょうし。むしろ、あなたが早く貰いすぎなくらいじゃないかしら」

「……喜んでいいのか悩むわね。嬉しいけれど、当日じゃないという複雑な気持ち……これ、一回返してもう一回貰えないかしら」

「とんでもないわがままを言うのね」

「あなたにだけは言われたくないわ」

 

 ラムダはため息を吐くと、諦めたような顔で、

 

「まぁ、今年は特効が付く特別なチョコ、なんて言ったら、急いで渡すしかないものね。そういうのは早ければ早いほどいいもの。仕方ないと思って、貰っておくのも割り切りましょう」

「要らないなら貰うわよ?」

「バカなことを言わないで。スタァがファンからの贈り物を無下にするなんて事があると思って?」

「部屋に山積みにされてたわよね」

「えぇ。基本的に飾るものだもの。時々変なものが混ざっていて、捨てるのもあるけど」

「あるわよねー、変な貢ぎ物。まぁ、私の時とはまた別なのでしょうけど」

「あら、マスターからはそういうのは無かったの?」

「あいにく、お菓子以外は基本的に受け付けてないの。あとはまぁ、労働?」

「ふぅん。荷物整理とか?」

「まぁ、近いわね。面白そうな漫画を持ってくるとか、そういうのが多いけど」

「それ漫画を献上してるんじゃないの?」

「片付けまでしてくれるもの。荷物整理の労働じゃない?」

「それを換算していいのかは少し悩むところだけど」

 

 そんな事を言いながら雑談を続ける二人に、アビゲイルは、

 

「もしかして、私、忘れられているのかしら……」

 

 そう呟いて、少し考えたあと、食堂に向かうのだった。




 いやぁ、まさかラムダに誰からも貰ってない報告をするとあんなことになるなんて思いませんでした……でもまぁオオガミくんだし普通に帰ってくるよね。うんうん。


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意外と早かったわね(出来るだけ早く来たからね)

「あら、早かったわね」

「まぁ、当日最速って決めてたし」

 

 当然よね。と言って笑うエウリュアレに、オオガミは隣に座りつつやや強張った笑みを浮かべる。

 凍てつきそうなほどの海風が吹くここは、カタチの無い島。

 その海辺で一人ポツンと海を眺めていたエウリュアレに、オオガミはなぜか不安を感じていた。

 

「ねぇエウリュアレ」

「なにかしら」

「なにか考え事でもしてる?」

「……特にはないわね。それと、こうやって海を見てるのは、そういう気分だったからよ」

「そう?」

「そうよ。だからほら、そんな不安そうな顔をしないで」

 

 エウリュアレはそう言って、オオガミの頬に触れる。

 オオガミはその手に自分の手を重ねながら、

 

「……もしかして、怒ってる?」

「……さぁ、どうかしらね」

 

 ふふっ、と笑い、楽しそうにオオガミの頬をむにむにと揉んで遊ぶエウリュアレ。

 しばらくそのままにしていたオオガミだったが、不意にエウリュアレが手を止め、

 

「手を放してもらえる?」

「ん、わかった」

 

 そう言ってオオガミが手を放すと。エウリュアレは立ち上がり、

 

「それじゃ、帰りましょうか」

「……本当に来ただけなんだね」

「もちろん。ここまでチョコを持ってくるような私じゃないわ」

 

 エウリュアレはそういうと、オオガミの通信機を使って帰還要請をする。

 そして立ち上がると、大きく背伸びをして、

 

「帰れるまで、散歩でもしましょうか」

「すぐ呼ばれると思うけどね」

 

 

 * * *

 

 

「本当にすぐ帰ってきちゃったわね」

「まぁ、ほとんど準備は終わってたんだろうしね」

「確かに、言われてから準備したんじゃ不測の事態で死んじゃうかもしれないものね」

「うん、そうだね。今はビター・サーヴァントとかがカルデア内を徘徊してる最中だからね」

「どうしてそんな状況で私のところにチョコをもらいに来てるのかしらね」

 

 エウリュアレはそう言いながらオオガミの部屋に入ると、棚の奥に手を突っ込み、

 

「はい、これ」

「そこには何もなかったと思うんだけど、どこに隠してたの」

「あら、棚の裏に隠しスペースがあるのだけど、知らなかったの?」

「当然のように言ってくるのやめてもらっていいですか。というか、盗聴器とかはなかったの?」

「あったから黒ひげの部屋に投げ込んでおいたわ」

「どうしてくろひー……まぁ良いけども……」

「今頃壊されてると思うわ。仕掛けた本人が見つかってるのかもしれないけど」

「まぁ、こういう仕掛けをするのはBBくらいかな……」

 

 いつの間にか私生活を覗き見されていたのかという恐怖に震えるが、エウリュアレは気にしていなさそうな顔で、

 

「どうかしらね。他にも何人かいそうではあるけど、それほど興味はないわ」

「うん、まぁ、ありがとね。そういうよくわからない謎の脅威から守ってくれて」

「別に、構わないわ。あなたに何かあったら困るのは、こっちだもの」

「うん。チョコもありがとう。これで今年もまだやっていけそうだ」

「……無茶はしてほしくはないわ」

 

 そう言ってオオガミにチョコを渡すのだった。




 普通にバレンタイン当日に間に合わなかった……もうだめかもしれない……

 しかし、もはやエウリュアレのヒロイン力は手の付けようがないレベルまで来ましたね……まぁ、書こうと思うたびに私の中のエウリュアレ像がそっち方面に傾いていってるからなんですけども……ずっとデレデレしてるなこの女神。


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霊衣って一体……(私にもさっぱり)

「霊衣ってさ、どうやって作られてるんだろうね」

「……魔力、かしら。わからないけど、でも水着も似たようなものだし、霊基を弄っているのかもしれないわ」

「サーヴァントの服は、ただの服と違って鎧みたいなものだもんね……まぁいっか」

 

 エウリュアレの髪を乾かしながら、オオガミはぼんやりと言う。

 湯上がりの湿り気のある髪が、乾かされてサラサラになっていくのを感じていると、エウリュアレが、

 

「そういえば、天草のレベルを上げてないみたいだけどどうしたのかしら。いつもはすぐに上げるのに、後から来たガラテアの方が先に終わるなんて」

「ん~……まぁ、言うなれば気分じゃないってことで。正直天草には苦い思い出しかないというかなんというか。でも夏までには終わるよ」

「そう。まぁ、あの男はあのままでもいいのかもしれないけれど」

「本人は気にしなさそうだけど、一応育ててはおくよ」

 

 オオガミがそういうと、エウリュアレは笑みを浮かべ、

 

「それにしても、残念だったわね、アキバ」

「はは……最低限の100階は行ったんだけどね。もったいないことをした」

「まぁ、聖杯以上に貴重ってものもないし、いいんじゃない? 十分だと思うわ」

「エウリュアレがそれでいいならいいけど……」

「私は文句言わないわよ。というより、今回は戦ってないもの。お店を見て回って帰っただけよ?」

「確かに。今回は一緒じゃなかったね」

「えぇ。同じように暇そうにしてるメルトとアナを連れて一緒にいたわ」

「なるほど……すれ違ってたのかな」

「そんなところじゃないかしら。なに? 会えなくて残念だったかしら」

「まぁ、相手を出来ないなら会ってもしょうがない気はするけど、それでも会えないのはちょっとね」

「ふふっ、甘えん坊かしら。でも良いわ、ちゃんとついてくるのよ」

「もちろん。撒けると思わないでよ」

 

 サラサラになったエウリュアレの髪に手ぐしを通し、指が引っ掛からない事を確かめてから、三つ編みにしていくオオガミ。

 すると、エウリュアレが、

 

「あら、今日は三つ編みなのね。何かあったのかしら」

「別に、なんとなく、波打ってるエウリュアレの髪を見たいなって思っただけだよ」

「ストレートは嫌い?」

「まさか。明日もかわいいエウリュアレを見たいなっていう一心でやってるだけだよ」

「ふふっ、言うようになったじゃない。いいわ、許してあげる。存分に可愛くしなさい」

「仰せのままに」

 

 そう言って、嬉しそうに笑うエウリュアレの髪を、オオガミは編んでいくのだった




 危ない今日も忘れるところだった。

 意外と書けなくなるものだなぁ、と思いながら、でもいつも通りの二人を書けたんじゃないかと。どうやら私の中の二人は相も変わらずのままだったようで。
 明日は書いたまま置かれてたカーマかなぁ?


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何をしているんですか(かわいいを求めて)

 昨日、今日はカーマだと言ったな……あれは嘘だ。


「……何してるんですか」

 

 信じられないものを見ていると言わんがばかりの顔のアナの視線の先には、横向きでベッドの上になってタブレットを操作しているオオガミと、その腕の中で丸くなって寝ているエウリュアレの姿があった。

 そんなアナの視線に目もくれず、タブレットを弄っていたオオガミは、

 

「かわいいの追求」

「か、かわいいの追求? 何をしてるんですか一体」

「基本的にエウリュアレの髪型とか、あと服とか。霊衣も楽しみだけど、戦闘用じゃない私服も欲しいよねって」

「……なるほど?」

「もちろん、エウリュアレ以外のも考えてはいるけど。みんな常に鎧じゃ疲れるでしょ」

「まぁそれは……でも、姉様が前提なんですね」

「当然。まぁ、マスターとしてじゃなく、個人的なものだけどね」

「別に、それでいいと思います。姉様が喜んでいるのならそれで」

 

 そう言って、近くにあった椅子に座るアナ。

 アナは手近にあった本を手に取りつつ、

 

「これ、姉様の読んでたやつですか?」

「うん。出しっぱなしなのは大体エウリュアレの。何冊か出始めたら片付けてるけど、今日は一冊だったし良いかなって」

「そうですか……本当に、姉様に尽くしてますね」

「まぁ、月並みではあるけど」

「月並みどころか過剰な気もしなくもないですが。でも姉様が相手ならこれくらい普通ですね。たぶん」

 

 歯切れの悪い言葉に、オオガミは若干不安そうな声で、

 

「自分の姉の事なのにその態度で大丈夫?」

「私にとって普通でもマスターからするとどうなのか考えると、少し不安になりますね。もしかしたら足りてないかも」

「これ以上に何をしろと……まぁ、色々と考えてみるか」

「えぇ。マスターならきっと大丈夫です。安心してください。黄泉の国でも楽しく暮らせそうなのは確かです」

「死ぬの前提かな?」

 

 そこでようやくオオガミはタブレットを置き、

 

「それで、何かあったの? 誰かに呼ばれてる?」

「あぁ、そうでした。アビーが、お菓子を作ったようなので、伝えてあげようかと」

「話は聞かせてもらったわ、行きましょうオオガミ」

「いきなり起きるしめちゃくちゃ元気だね?」

 

 目を輝かせながら起き上がったエウリュアレに、思わずオオガミはツッコミを入れる。

 だが、エウリュアレはそんな視線を微塵も気にせずにオオガミの手を引いて起こすと、

 

「早くしないと無くなってしまうかもしれないわ。アナも、ぼーっとしてないで一緒に行くわよ」

「え、あ、はい」

 

 そう言って、三人は食堂に向かうのだった。




 気力が続いたし続きに近くなったので連日エウリュアレ。

 いや、会話してる相手、アナだよね……? 妙だな……


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美味しいクッキーね(お気に召したようで何よりだわ!)

「美味しいわよ」

「ふふっ、お気に召したようでよかったわ」

 

 アビゲイルから渡されたクッキーを食べ、満足そうに言うエウリュアレと、嬉しそうに笑うアビゲイル。

 そんな二人を横目に、オオガミはクッキーをラムダの口に運びながら、

 

「メルトの感想は?」

「……しっかり美味しいわよ。今回は変なものは入ってないみたいだし」

「別に毒味をさせようってわけじゃないんだから、そんな目をされても……」

「いつそんな目をしたってのよ。私はいたって普通なのだけど」

「さっきから何回か指を噛まれそうになってるけどね」

「それはそうよ。ぼんやりしてる方が悪いわ」

「そんな理不尽な……」

 

 いつ指を噛まれるかと戦々恐々としているオオガミに、ラムダは嗜虐的な笑みを浮かべながら、

 

「まぁ、必死に避けるのを見ているのは楽しいのだけどね」

「はは……そのうち本当に噛まれそうだな……」

 

 乾いた笑い声を出しながら、自分でもクッキーを食べるオオガミ。

 すると、向かいから視線を感じ振り向くと、そこには不安そうな顔をするアビゲイルがいた。

 

「マスター、その、お口に合ったかしら」

「ん。うん、美味しいよ。さすがアビーだ」

「っ、え、えへへ……とっても嬉しいわ! あ、そうだ、マスターのために特別なお菓子も用意したの!」

 

 次の瞬間、オオガミたちの脳裏を駆けめぐる今までのアビゲイルの料理たち。

 今までの事を考えると、アビゲイルの今の言葉は、ひまわりのような笑顔で背筋が凍るような一撃だった。

 そんなことは露知らず、アビゲイルは上機嫌で厨房に向かっていく。

 それを見送ったオオガミは、

 

「ちょ、どうするのさ! 宇宙恐怖的な何かが出てくるかもなんだけど!」

「知らないわよ諦めて食べて爆発しなさい」

「危険物質! 爆発物なの!?」

「知らないわよ諦めて食べて狂っておけば良いわ」

「発狂不可避だね安全は一切ないっていう信頼スゴいけどそれでいいのか二人とも! 普段のお姉さん面はどうした!?」

「「無理だとわかってるものは無理」」

「う~ん潔い諦めの姿勢!」

 

 もはや平常運転と言わんがばかりの二人に、オオガミは両手で顔を覆う。

 そんなオオガミに、エウリュアレは優しい笑顔を浮かべながら、

 

「骨は拾ってあげるわ」

「命に別状はないんだよね!?」

「食べたらわかるわ」

「それ手遅れってやつじゃ……?」

 

 オオガミの問いに、ただただ微笑むエウリュアレ。

 

「だ、大丈夫……まだただの美味しいお菓子の可能性はあるから……!」

「マスター! これ、タコ煎餅って名前のお菓子だそうよ! 頑張って作ったから、食べてくださいね!」

 

 正気度が削れそうな気配を漂わせた煎餅を持ってきたアビゲイルに、オオガミは静かに死を覚悟するのだった。




 なぜかとても需要を感じたのでアビーの宇宙恐怖的お菓子回。

 私の中でこの手のネタは一名にしか刺さってないのはわかるんだ……! でも手癖のように書いてしまうんだ……!


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誰のマカロンなのだ……(少なくとも私じゃないですね)

「うぅむ……」

「……どうしたんですかバラキー。珍しく考え込んで」

 

 食堂の一角で、大量のマカロンを持って考え込んでいるバラキーに、声をかけるカーマ。

 バラキーは顔をあげると、

 

「うむ……このマカロンなのだが、誰が作ったかわからぬのだ」

「はぁ。どうせ赤い弓兵じゃないんですか?」

「本人が違うと言っていたから違うのだろう……その反応からして汝も違うようだし、ともすれば、一体誰がこんなことをする……?」

「それは――――いえ、別に考える必要もないと思いますが。貢ぎ物だと考えればいいんじゃないですか?」

「おぉ、なるほど! ならば吾が食べることに何の問題もないな!」

「私はそれ以上に、あなたが食べていいかをずっと悩んでるのが驚きです。いつもなら何も考えないでパクパク食べてるでしょうに」

「なんというか、なにか不安な予感がしてな……」

 

 そう言いながら、カーマは周囲を見回し、改めてバラキーに向き直ると、

 

「それではこれで。またあとで会いましょう」

「うむ。菓子を楽しみにしてるからな!」

 

 そう言って、カーマはその場を立ち去るのだった。

 

 

 * * *

 

 

「で、なんで私のところに来たのか。聞かせてもらっても良いかな?」

 

 不機嫌そうにエミヤのところへと来たカーマに、エミヤは聞く。

 

「さっきバラキーがマカロンを食べ始めたとき、やけに満足そうでしたので」

「あぁ、そういうことか……いやしかし、よく表情を見ているな」

「人心掌握には必須項目ですから。それで、誰が作ったんですかあれは」

 

 ムッとした表情で詰め寄るカーマに、エミヤは苦笑しつつ、

 

「あれは渡辺綱が作ったものだ。私も多少手は貸したが」

「なるほど……くっ、やはりあそこで始末しておくべきでしたか……」

「ふっ、そんなに敵意をむき出しにする必要も無いだろう。何より、君の方が先に始めている。そのアドバンテージを無駄にさえしなければいいだけさ」

「……なに上から目線で語ってるんですか。刺しますよ?」

「おや、助言のつもりだったが、余計だったかな?」

「えぇ、余計です。そもそも私は別に勝負なんてしてませんし、バラキーも食べられればそれでいいんでしょうし。私は気にしてないので」

「とてもそうには見えないが、そういうことにしておくとしよう。それで、君はどうする?」

 

 エミヤの問いに、カーマは少し考え、

 

「……今日はバタークッキーにします」

「わかった、材料は用意しよう。君は料理の準備をしたまえ」

 

 そう言って厨房の奥へと入っていくエミヤ。

 カーマは少し気合いの入った目で料理の準備を進めるのだった。




 カーマカーマ言ってたらカーマ書きたくなっちゃったのでいつものカーマバラキー。

 この二人はこの二人で書きやすいのでやっぱり好き。


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猫になれ、カーマ!(どこに頭を打ち付けたんですか)

「ねぇカーマ」

「なんです?」

 

 オオガミは、マイルームに珍しく遊びに来て漫画を読んでいるカーマに声をかけると、

 

「猫になれたりしない?」

「どこに頭を打ち付けたんですか」

 

 バカを悪化させた原因はなんだと言いたげなカーマの表情に、オオガミは至極真面目そうな顔で、

 

「カルデアは動物が少ないと思うんだよ」

「……猫なら、フォウがいるじゃないですか」

「フォウはまた別だと思うんだよ。正直そんな猫だとは思ってないんだよね」

「そうですか……で、猫にこだわる理由は?」

「気分だから」

「理由が雑!」

 

 呆れたようにため息を吐くカーマ。

 

「……猫耳持ってエウリュアレさんのところに行った方が賢明じゃないです?」

「何言ってるの。そんなことしたら串刺しで針山だよ」

「どうして一番好感度の高いエウリュアレさんがダメ出しすると思ってるのに私はやってくれると思われてるのか聞いても良いですか?」

「そりゃ、カーマが愛の神様だからね。堕落させるためなら大体やってくれるでしょ」

「……ボイコット宣言してる女神に言う言葉じゃないですね」

「それは正しい愛の神様活動でしょ。それに、ここ最近綱さんにお菓子係取られて寂しそうにしてたし」

「なっ、だっ、だれが寂しそうにしてたんですか! 私はいつも通りですけど!」

「うん。いつもバラキーを取られると遊びに来るもんね?」

「言いたい放題言ってくれるじゃないですか……そういうあなただって、今日はエウリュアレさんもメルトリリスさんもいなくて寂しそうにしてるじゃないですか!」

「そうだけど? だからカーマに声をかけてるわけで」

「あっさりと開き直りますね!? この男、恥とかないんですか!?」

「エウリュアレといると大抵の事は見透かされるから今さら取り繕ったところで意味がないからね」

「最悪なひねくれ方をしましたね」

 

 ある意味無敵の人ですか。と呟き、カーマは少し考えると、

 

「それで、猫になれるかって質問なんですけど」

「あ、話が戻ったね?」

「えぇ。結論から言いますと、猫にはなれません。今の私の力じゃ骨格レベルでの変化とかは出来ませんし。あくまでも成長段階の変更とか、辛うじて性転換くらいじゃないですか?」

「そっか~……じゃあ諦めるしかないか」

「そうです。諦めて猫耳持ってエウリュアレさんのところに行ってください」

「しょうがないなぁ」

 

 そう言って物置を漁り始めるオオガミを一瞬だけ見たあと、漫画に視線を戻すカーマ。

 しばらくすると漁っていた音が止まり、どうしたのかと顔を上げたと同時に頭に何かをつけられる。

 

「……ニャーマ」

「……それが言いたかっただけとか言いませんよね?」

 

 ひどく満足げに言うオオガミに、カーマは満面の笑みを浮かべて聞くのだった。




 猫耳カーマ見たいよね。という欲望だけで3月くらいに書いて、出す機会を失っていたニャーマ。

 今日は書けなかったので間に合わせの身代わりなのです。


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それ飲んでみてもいいかしら(後悔すると思うよ?)

「ねぇオオガミ。それ飲んでみてもいいかしら」

「えっ、やめた方がいいと思うよ……?」

 

 食堂にて、興味津々といった様子のエウリュアレの視線の先には、先ほど巌窟王に淹れてもらったコーヒーがあった。

 いつもなら砂糖やミルクを入れてもらっているが、今日に限ってはブラックで飲んでいた。

 

「いいじゃない別に。毒を飲んでる訳じゃないのだし」

「そうだけど……まぁ、そんなに飲んでみたいならいいか……はい」

 

 諦めたようにコーヒーを差し出すオオガミ。

 エウリュアレは目を輝かせながらそれを飲むと、

 

「っ~~~~!」

「あぁほら、だから言ったのに……」

 

 顔をしかめ、不機嫌そうな顔になるエウリュアレ。

 オオガミは苦笑いをしながらエウリュアレからコーヒーを返してもらうと、

 

「それで、どうだった?」

「……よくこんなのを飲めるわね」

「あはは……まぁ、カルデアに来るまで……というか、巌窟王に淹れてもらうようになるまではそもそも飲まなかったんだけどね。苦いし」

「えぇ全く。私はもう飲まないかも」

「ん~……それは判断が早すぎるというか……よし、ちょっと待ってて」

 

 オオガミはそういうと、厨房に向かい、エミヤからミルクを受けとると、コーヒーに入れてかき混ぜ、

 

「まぁ、これを入れたのを飲んでからでも遅くはないと思うよ」

「……そこまで言うのなら、飲んであげなくもないわ」

 

 そう言って、渋々といった様子でオオガミからカフェオレを受け取るエウリュアレ。

 そして、おそるおそるそれを口に運び、

 

「……美味しいわね」

「それはよかった」

 

 これで巌窟王の名誉も保たれる。と呟くオオガミに、エウリュアレは、

 

「ミルクを入れるだけでずいぶん変わるのね」

「うん。と言っても、そこはコーヒーを淹れる側の腕だと思うから。豆の目利きも含めてね」

「ふぅん……意外とやるのね。あのストーカー」

「そこまでストーカーしてないって」

「夢の中に居座ってるとか中々じゃないかしら」

「それに関してはアビーも似たようなものだけど」

「……アビーとあれが同じわけ無いでしょ」

「あ、うん……そうだね……」

 

 今の間はなんだろうか。という突っ込みを入れるには、少し勇気が足りないオオガミ。

 突っ込んだ瞬間に矢で針山の如く刺されるような気がしたからというだけだが、エウリュアレの目を見ると、意外とやってきそうだった。

 

「まぁ、とりあえず、それを飲み終わったら行こうか」

「えぇ、楽しみね。宇宙アイドルは伊達じゃないって見せてあげなきゃ」

「流石ユニバース女神アイドル。でもエウリュアレはそれとは別でしょ」

「私の称号に違いはないわ。さ、行くわよ」

 

 エウリュアレはそう言って、空になったコーヒーカップを押し付け、立ち上がるのだった。




 危ない忘れるところだった。

 これからは平日更新で行きたいな……と思う所存です。土日祝日は休憩だぁ!


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空中都市スゴいなぁ(似たような所には行ったけどね)

「空中都市ってスゴいなぁって一瞬思ったけど、わりと遭遇してるよねって気付いた」

「そうね。でもここまでの規模じゃないし、そもそもそれはアガルタとバレンタインの空中庭園の話じゃない。今回のとは全くの別でしょ」

 

 確かに。と答え、イスに座ってぼんやりと虚空を眺めるオオガミ。

 そんなオオガミの膝の上に座ったエウリュアレは、

 

「それよりも、早くポイントを集めないとじゃないの? 私の衣装、届いてないのだけど」

「……よし、散歩するか」

「話を聞いていたのかわからないわね……ダメよ。座ったばかりだもの」

「……それならしょうがないか」

 

 オオガミはそういうとエウリュアレを抱き寄せ、髪の毛に顔を埋める。

 

「それ、たまにするけど、楽しい?」

「……楽しいというより安心するというかなんというか」

「そう……なんだかマーキングされてるみたいね」

「実は酷い絵面なのでは」

「完全に変態よ変態。私以外にやったらダメよ」

「いや~……それはちょっと保証できないかもしれない。メルトに誘惑されたら負けるかも……」

「……まぁ、メルトなら許すわ。でもそれ以外はダメ。絶対よ」

「もちろん」

 

 そう言って、また強く抱き締めるオオガミ。

 エウリュアレは嬉しいような怒っているような複雑な顔でおとなしく抱き締められていた。

 

「……なんだか、暑くなってきちゃった」

「そう? 肌寒いくらいだと思うけど」

「誰のせいだと思ってるのよ! ほら、散歩に行くんでしょう? さっさと立ちなさい!」

「さっきまで妨害してたのに……」

「気分が変わったの。わかるでしょ、そういうの」

「まぁね。エウリュアレの事だし、わからないわけはないよ」

「っ、これだけ怒らせておいてそんな言葉よく出てくるわね……!」

「だってエウリュアレのは照れ隠しだし」

「~~~っ! あーもー、それ以上は本当に怒るんだから!」

「オーケーわかった。これ以上はないです。行きましょう散歩。たまには外をのんびり歩きたいからね」

 

 そう言って両手を上げエウリュアレを解放するオオガミ。

 エウリュアレはすぐに立ち上がると、

 

「全く、たまにそうなるんだから……」

「あはは。まぁ否定できないけども」

「はぁ……ほら、行きましょ」

 

 そう言って手を差し出してくるエウリュアレ。

 オオガミはその手を取り、離さないように握り直しながら、

 

「それじゃ、のんびり行く感じで」

「野良アイドルに襲われないようにしなきゃね」

「こっちには宇宙規模のアイドルがいるから余裕でしょ」

 

 そんなことを言いながら、二人は家を出るのだった。




 なんか、うん。いつも通りですね。この夫婦感。

 エウリュアレの霊衣まだかぁ……?


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本拠地の移転。大いにアリだ(広い方がいいものね)

「うん。本拠地の移転。大いにアリだ」

「もとから、あの部屋に入れる人数ギリギリだったもの。当然よね」

 

 オオガミとエウリュアレのやり取りに、キッチンから戻ってきたキャットが、

 

「キャットはどちらでも構わぬがな。狭い方が心理的距離も物理的距離によってぎゅぎゅっと縮まろう」

「いやそれが原因で消えかけてたのが一人いたから」

 

 そういうオオガミの視線の先には、もはや形容できない顔で倒れているクレーンがいた。

 キャットはそれを見て呆れたような顔で、

 

「流石のキャットも、あの鶴には狩猟本能が疼かぬ。むしろ自分から狩られに来そうな勢いなのだな。そういう手合いはオリジナルに任せよう」

「玉藻もこれは受け取り拒否でしょ……あぁいや、でも、一応紅先生の関係者か……」

「ふむ。ならば帰ってからの処遇は終わった後だな。キャットは次のトレーニングがある故行かせてもらうぞご主人」

「一緒に行くけどね?」

「良いのか? ご主人は忙しそうに見えたが」

「特に何かしてた訳じゃないし、今の最優先はAxXxSだから」

「ふむ……あいわかった。では一緒に行くとしよう」

 

 キャットはそういうと、軽く身だしなみを整え、

 

「ところでエウリュアレはどうする? キャットは一緒でも構わぬが」

「そうね……今日はやめておくわ。ちょっとやりたいこともあるし」

「何かあった?」

「一緒に行けるところとそうじゃないところがあるの。やられたりはしないだろうから安心しなさいな」

「まぁエウリュアレがやられるとか微塵も思ってないけどさ……うん。いってらっしゃい」

「えぇ、いってきます」

 

 そう言って、オオガミはキャットと一緒にトレーニング場へ。エウリュアレは一人でどこかへ向かうのだった。

 

 

 * * *

 

 

「で、レッスンを見た感想は?」

「前回よりも動きのキレが良くなってるね」

「歌はどうかしら」

「完璧としか言えないでしょ」

「ならよし」

 

 上機嫌でそういうメイヴ。

 オオガミは釣られて笑みを浮かべながら、

 

「メイヴから見て、えっちゃんは?」

「いいわ。とてもいい。私たちを打ち負かしたのはまぐれなんかじゃないもの」

「……素直に認められるのがメイヴのいいところだよね」

「あら、いいものを認めないほど盲目じゃないわ。いいものはいいと言った上で、その更に先を目指す。その方がいいに決まってるでしょ?」

「確かに。比べるものがないならそこに価値があるのか怪しいものだしね」

「えぇ。私はただ勝者になりたい訳じゃないもの」

 

 そう言って不敵に笑うメイヴ。

 そんな顔を見て、オオガミは何かに納得したように頷き、

 

「これは確かに、狂気の軍隊が生まれるわけだ」

「なぁに? もしかして見惚れちゃった?」

「ちょっとだけいいかなって思った」

「ふぅん……? まぁ今日はそれくらいで勘弁してあげましょう。じゃ、私は戻るわね」

 

 メイヴはそういうと、レッスンに戻っていくのだった。




 ふふ……エウリュアレの霊衣はまだか……?


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これが……尊死……(危ないのが増えたわね)

「はぁ~……マジ無理エウリュアレ尊い死ぬぅ~……」

「清楚で荘厳な雰囲気の中に一瞬垣間見える幼さとその直後の妖艶な微笑みでキュン死するぅ~……」

「限界なのが二人に増えたわね……」

 

 エウリュアレの新しい霊衣を見るなり、瀕死になっているオオガミとクレーン。

 エウリュアレは、また新しい悪影響を受けているオオガミにため息を吐きながら、

 

「今日は妙に距離があるわね」

「だって今日のエウリュアレは普段の3倍増しの神々しさだから……」

「それ理由になるのかしら。というか、そういう理由で離れるならこの服別にいらないわね……」

「その服を捨てるなんてもったいない!」

「じゃあこっちに来なさいな。あ、クレーン、あなたはダメよ」

「いえいえ女神(アイドル)に近づくなどおそれ多くましてや公式の場ではないプライベートでそれを望むなど出来るはずもありません遠くから見守らせていただきます」

 

 息継ぎもなくするすると出てくる言葉と流れるように離れていくクレーンに、エウリュアレは、

 

「……黒髭よりはマシ……かしら」

「迷惑度はくろひーの圧勝だから」

「やっぱり何度か消さないとじゃないかしら。あの海賊」

「でも最近は転売ヤー絶殺マンだから見逃してる」

「……役に立つときと立たないときが両極端なのね」

 

 まぁくろひーだしね、と笑うオオガミ。

 エウリュアレは呆れたような顔をしながら、

 

「なんというか、アイドルをやってからまた変なのが増えた気がするわ。どう思う? オオガミ」

「とりあえずその変なのを全滅させればいい?」

「時々物騒になるわよね……正直、ラムダにやってるようにボディーガードをしてくれるだけでいいのだけど」

「……なんというか、メルトはスキャンダルになりそうな事をしてくるんだけど、エウリュアレは一発アウト退場ものの事をしてきそう」

「それ酷い偏見だと思うのだけど」

 

 頬を膨らませ、むすっとした態度をとるエウリュアレ。

 オオガミはそれを見て苦笑しながら、

 

「でも少なくとも今の私生活は見せられないよね」

「目撃者は誰一人としていないわ。この世には」

「一番物騒なのでは」

 

 つまり目撃者は人知れず消されているということですか。というオオガミの視線を、笑顔で誤魔化すエウリュアレ。

 

「ま、まぁいいや。うん。そういう被害はまだ耳に入ってきてないし、嘘の可能性もあるしね」

「目撃者も、さっきクレーンがいたもの。確かに嘘かもしれないわね」

「やっぱ不安しかないなぁ……!」

 

 そう言って頭を抱えるオオガミ。

 エウリュアレはそれを見て楽しそうな笑みを浮かべるのだった。




 クレーンさん存在が強すぎて扱いに困る……いやほんと困る……パワーが強すぎるんだ……


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なるほどアイドルですか(ヤケドすると思うのだが)

「ふむふむ。アイドルですか。なるほど。アイドル……良いですね」

「……まさか、汝もステージに立つと……?」

 

 悪い顔で笑っているカーマを見て、不安そうな顔をするバラキー。

 だが、カーマは自信に満ちた表情で、

 

「安心してくださいバラキー。何と言っても私は休業中とはいえ愛の神ですから、人を愛すことには長けてるんです。歌って踊るくらいわけないですよ」

「えぇ~……吾絶対泣いて帰ってくると思うのだが……」

「むっ、わかりました。じゃあ私が泣いて帰ってくるようなことがあれば、一週間はバラキーの好きなお菓子を作ってあげますよ。まぁ、もちろん? 泣いて帰ってくるなんて無いんですけど。ちゃんと成功したらバラキーにも歌って踊ってもらいますから」

「構わぬが……しかし、まずは何からするつもりだ?」

「……ノープランでした」

 

 どうしましょうか……と考えるカーマと、どこか遠い目をするバラキー。

 

「……とりあえず、路上ライブとか、してみたらいいと吾は思うが」

「ぐぬぬ……私のこの溢れんばかりのアイドルパワーを使えばライブハウスでも一網打尽ですよ。余裕です余裕」

「やめた方がいいと思うが……まぁ、吾は見守る」

「えぇ、そうしてください。それじゃあマスターに会場を押さえてもらいましょう!」

 

 その自信はどこから来るのかと思いつつ、好きにさせようと、諦めの気持ちで見守るバラキー。

 そしてカーマは、意気揚々とオオガミのところに向かうのだった。

 

 

 * * *

 

 

「まだアイドルのハードルは高かったみたいです」

「うん。まぁ吾知ってた」

 

 半泣きで帰って来たカーマを見て、うんうんと頷くバラキー。

 その反応にカーマは不服そうに、

 

「おかしいじゃないですか。エウリュアレさんと私の対応がまるで違うんですけど。私前座ですか。そうですか。わかりました、わかりましたよ。私はおうちでゆっくりお菓子作っているので終わったら呼んでください」

「うむ……吾としては嬉しいが、なんだか複雑だな……ちなみに吾この後出演予定があるのだが、見ていくか?」

「なんで私よりバラキーの方が順応してるんですか!!」

「酒呑がいるのに吾がいないわけが無いであろう? 酒呑が楽しんでいるのだ。吾もやらねばなるまい」

「くっ、さすがにそこに対抗はできませんね……」

 

 そう言って唸っていたカーマだが、諦めたように脱力すると、

 

「まぁ、帰るのはバラキーのを見てからでも遅くないですね。それに時代的にはほぼ現代。ちょっとスイーツ巡りをしても許されるはずですし、観光しますか」

「む。それは吾も行く。置いていくなよ?」

「はいはい。それじゃあ今のうちに行くところでも決めておきますか」

 

 そう言って切り替えたカーマは、ノリノリで店を探すのだった。




 カーマは絶対ポンコツ晒してくれると思うんだ……あと、酒呑いるからバラキーもいるよねそりゃあね。さすがだなバラキー。


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ライブは体力の消耗が大きすぎる(スタァのステージとは別物よ)

「ライブは体力の消耗が大きすぎる」

「メルトのステージと違って、座って見ているのとは違うもの」

 

 ベッドにうつぶせで倒れながら呟くオオガミに、エウリュアレはベッドに腰掛けながら言う。

 その会話を聞いていたシャワー上がりのラムダが、

 

「私もステージに上がったし、更に言えばほとんど全員私が沈めたのだけど」

「アイドル時空でもスタァが最強というのは証明されたね」

「あんなキラキラしてる男性アイドルユニットと二度と戦いたくないわ」

「そもそも5人中3人セイバーで全員ゲージ持ちよ。どう考えてもラムダが頑張るものじゃないでしょ」

「……実は怒られてる?」

「「叱ってる」」

「……ごめんなさい」

 

 美しい土下座をするオオガミに、本当に反省しているのかといううろんな目を向ける二人。

 そんな視線に耐えられなくなったオオガミは顔を上げ、

 

「あの、そのですね……高難易度にメルトを連れていったのは別にいやがらせとかではなく単純に高難易度で輝くメルトを見たいなぁと思ったと言いますか、敵がセイバーでも一人くらいだったら余裕でしょとか思っていたと言いますか……」

「3人だったけど」

「いえあのその、それに関しては本当に想定外と言いますか、出てきた瞬間に焦りましたよ。イケメンキラキラ霊衣持ちセイバーが三人もゲージ持ちでいるんですもん普通に震えました。でもワンチャン行けるでしょ。余裕余裕って思っちゃったんですよ。だってスタァでラムダなメルト様は最強なので」

「……良いわ、続けて」

「ありがとうございます。それでですね、頑張って行ってみるかって思って、令呪使わないでほとんど倒しちゃったじゃないですか。それで悪魔が囁いたんですよ。『今ならラムダでゴリ押せるぞ』『令呪3画でスタァが輝くぞ』って。そしたらあれですね。気付いたら令呪が光ってたと言いますか。そういうあれです」

 

 必死に語るオオガミに、二人は頷き、

 

「で、メルト。判定は?」

「ギルティ」

「必死の弁明は役に立たない……!」

 

 間髪入れずに言い渡された結論に、オオガミは涙を流す。

 それを見て二人は楽しそうな笑みを浮かべると、

 

「それじゃあオオガミ? BBを呼びなさい」

「……えっと、何故でしょう」

「あら、理由を聞く権利があると思って?」

「そこまで権利が剥奪されてるのか……!」

 

 そっかぁ……と悲しそうに呟きながら、オオガミはベッドの下からボタンを取り出して押すと、

 

「は~い! 呼ばれて飛び出てBBちゃん、ここにさんじょ~! ……って、あれ? センパイ。なんだか嫌な予感がするんですがBBちゃんの気のせいですか? なんとな~く、メルトとエウリュアレさんの目が怖いんですが……!」

「さぁ……? でもBBに用があるみたいだし、聞いてあげてね。令呪も使っておく?」

「いえそこまでは遠慮しておきます……というか、そんな気軽に使わないでください……」

 

 一体何をされるのかと不安そうなBBに、エウリュアレは微笑みながら、

 

「じゃあBB。あなたはこっち。それじゃあオオガミ。ちょっと出掛けてくるわね」

「うん、行ってらっしゃい」

 

 そう言って、ラムダと共にBBを連れ出していくエウリュアレ。

 一体どこで何をするつもりなのかと思いながら、オオガミはライブで疲れきった体を癒すため、横になるのだった。




 ラムダが強すぎて一人でセイバー二人にキャスターも倒すしで震えたと言いますか……やり直すのも面倒だなと思って素直に令呪。余裕のクリアです。これがラムダぱぅわー。令呪のゴリ押しともいう。


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かなり多芸よね(趣味人に囲まれてるからね)

「たまに思うけど、あなた、かなり多芸よね」

「まぁ、サーヴァントの趣味に釣られて気付いたらって感じだけど。おかげでやりたいことは無限に増えるよね」

 

 厨房で鹿肉の下処理をしながらそう言うオオガミに、エウリュアレは笑みを浮かべながら、

 

「ねぇ、今度は何を作るの?」

「干し肉。時々ロビンが呟くから作ってみようかなって。自然乾燥と燻製の二種類の予定」

「それ、私ももらえるかしら」

「初挑戦だから硬いかもよ?」

「それだったらアナにでもあげるわ。それで良いでしょ?」

「アナも大変だな……」

 

 苦笑いでオオガミは言い、エウリュアレは楽しそうに笑う。

 そして、下処理を終え、調味液を作り始めた辺りで、

 

「どうだマスター。作業は順調か?」

「エミヤ。順調だけど、一応確認してもらっても良いかな。解体はしても調理はあまりしなかったから出来てるかは不安かな」

「わかった、見るとしよう」

 

 そう言ってオオガミから肉を受け取り、厨房の奥に行くエミヤ。

 すると、どこかから現れたカーマがオオガミの手元を覗き込みながら、

 

「あれ、今日はお菓子じゃないんですか?」

「今日は干し肉の準備。濃いめと薄め、自然乾燥と燻製を作るつもり」

「それは……また面倒なことをしてますね」

 

 本気で面倒そうな顔をするカーマに、オオガミは楽しそうに笑いながら、

 

「本業じゃなくて趣味だから、それくらい手の込んだ料理でもそれほど苦じゃないんだよ」

「そんなものですか……」

「そんなものだよ。カーマだって、たまに豪勢なお菓子を作って満足してしばらく休むでしょ。で、連続で作るときは簡単なものにする。そう言う感じだよ」

「あぁそういう……まぁ、今の私は一週間ずっと豪勢なお菓子を作るんですが」

 

 やれやれ。と言いたげな顔で冷蔵庫を開け、何かを取り出すカーマ。

 その手にはイチゴがふんだんに使われたホールケーキがあった。

 しかも、生クリームではなくイチゴクリームを使っているので、その贅沢さは言うまでもない。

 そのケーキを前にしたエウリュアレは、

 

「それ、あなたが作ったの?」

「えぇ、まぁ、一応。バラキーの要望を聞いて、収穫して、クリームも作って、スポンジも焼いて……正直なことを言えば、なんでこんなことをやってるんだろうって感じですが、これでバラキーが満足するなら良いかと……なんですかその顔」

 

 カーマが顔を上げると、目頭を押さえるオオガミと、驚いたように少し目を見開いているエウリュアレがいた。

 

「ちょっと感動しちゃって……」

「何にですか。返答次第で蹴りますよ。というかなんと答えても蹴りますよ」

「理不尽!」

「本当、バラキーに甘いわよね」

「甘々コンビにそれを言われたらおしまいです。訂正してください」

「あら、甘々コンビですって」

「今はもう否定できる要素がないね」

「前からありませんよ……はぁ……二人に巻き込まれたら命がいくつあっても足りませんので、さっさとこれをバラキーに渡してきます。それでは」

「はいはい。じゃあね」

「私もバラキーに交渉して貰おうかしら」

「絶対渡しませんよ」

 

 そう言いながら去っていくカーマとエウリュアレ。

 そして、入れ違いになるように戻ってきたエミヤが、

 

「先ほどまでの騒がしさが嘘のようだな」

「女性陣はお肉よりもデザートって感じです」

「なるほど。では、こちらはこちらで豪勢なものでも作ろうか」

「豪勢なお肉ってことですかエミヤ料理長!」

「ふっ、それは出来てからのお楽しみさ」

 

 そう言って、持ってきた鹿肉をオオガミに渡し、エミヤはまた厨房の奥へと去っていくのだった。




 バラキー優先のカーマ。バラキーのために全力を注げる辺りバラカマ。これ一生書いてるかもしれん。

 ちなみにこの鹿はオオガミくんがロビンとウィリアムさんと一緒に狩りに出掛けた時の戦利品。ワイバーンよりも苦労をしていたりする。


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逃がしはせぬぞ、甲賀の(拙者、死ぬのでござろうか)

「フ、フフ……これは、うまいな。お前もそうは思わぬか」

「え、あ、は、はい……そうでござるな……」

「フフフ……愉快、愉快。このワイバーンなるものも、酒の肴としてとても良い……フフフ、フ」

「それは、良かったでござる」

 

 そう言って、黙々と料理を食べる千代女。

 だが、どうしても横に座っている伊吹童子に緊張してしまい、料理の味などさっぱりわからなかった。

 

「時に、甲賀の」

「ひゃい! な、なんでございましょう?」

「そう緊張せずとも良い。ただ、マスターは、あまり見かけぬが、息災か?」

「それは――――当然でござる。親方様に何かあればすぐに知らせが来るはず」

「ふむ、そういうものか」

 

 そう言って、伊吹がまた一口日本酒を口に含んだ瞬間、

 

「マスターが倒れてた!」

「医療班! 至急マスターの確保!」

「現場はどこですか!」

「新しい病気かもしれん。俺も行こう」

「今度は何が原因じゃ?」

「どうせエウリュアレさんに血を抜かれ過ぎたとかですよ」

「お菓子の作りすぎて過労とかどうですか姉上」

「うはは! どっちもありそう! しかもどっちもエウリュアレ関係じゃな! ハハハ!」

「でも今エウリュアレはアナと一緒にシミュレーションルームよ」

「……野次馬をしに行くか」

「僕も行きます!」

 

 急に慌ただしくなる食堂。

 その様子を見ながら伊吹は、

 

「あれは、一大事ではないのか」

「お、親方様ならきっと大丈夫でござろう……」

「ふむ、そういうものか……人の子はわからぬな……」

「拙者も、もう自分がわかりませぬ……」

 

 見たいような、聞きたくないような、何とも言えない気持ちの千代女。

 伊吹はその様子を見て、

 

「ふむ……ならば、見に行くとするか。だが、余には人の子の見分けは付かぬ。匂いが混ざればなおのこと。故に、甲賀の。見分けろ」

「は、はぁ……わかり申した。ですが、見分けが付かぬのなら今すぐでなくとも良いのでは……」

「ほぅ、余に物申すと。フフ、だが良い。此度は余にも理由がある。用があるのはマスターの方ではなく、女の方だが」

「女の……あぁ、エウリュアレ殿でござるな。それなら――――」

「ちょっと、バカなヤツが倒れたって聞いたんだけど!」

「ちょうどあそこに」

 

 オオガミが倒れたという噂をどこからか聞き付けたらしいエウリュアレ。

 その姿を見るなり、まるで瞬間移動をしたかのようにエウリュアレの前に移動する伊吹。

 それに対してエウリュアレは不遜な態度で、

 

「何の用かしら」

「まぁ、そう睨むな。余は、ただ問いたいことがあるだけだ」

 

 そう言われたエウリュアレは、首をかしげながら、

 

「あなたに対して私が教えられることなんてあるのかしら」

「名前を覚えていない故、伝えるのもままならぬのでな。あの時共にいたもので、覚えている匂いはお前のものだけだった」

「あの時……? どの時かしら。最初に会った時は小さかったし……」

「食べ物だ。甘いものだったのだが、それしか覚えてない。だから、名を知りたい」

「食べ物……食べ物……あ、あぁ。チーズタルトね。あれはカーマがもしかしたら隠し持ってるかしら……どちらにせよ、今すぐには用意できないのだけど良いかしら」

「構わぬ。楽しみにしている」

「えぇ。用意しておくわ」

 

 そう言うと、エウリュアレは医務室に向かっていくのだった。

 それを見送り、元の席に戻ってきた伊吹は、

 

「ふむ。ちーずたると、というのか」

「チーズタルト……それをお探しで?」

「そうだ。あの味、中々良いものであった」

 

 そう言って、少し嬉しそうに笑う伊吹を見て、釣られたように千代女も笑みを浮かべるのだった。




 伊吹童子を書きたくて、悩んだ末に犠牲となった千代女ちゃん。しかしその性能を活かせず案の定エウリュアレの恐ろしさが悪化しただけだった。


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なんで倒れたのかしら(バラキーの保護者がね)

「それで、なんで倒れてたの?」

「バラキーにお菓子をあげつつさりげなく聖杯を渡そうとしたら突然現れたカーマがみぞおちに一撃蹴りを入れてバラキーを連れて去っていった」

「要するに打撲の痛みで呻いてただけだ。実に面白味がない健康体。動けるようになったのだからさっさと部屋に帰って安静にしてろ」

 

 心底つまらなそうに言うアスクレピオス。

 そうして医務室を追い出されたオオガミ達は、部屋に向かっていた。

 

「彼、信頼できる腕だけど、マスター相手にも容赦ないのね」

「ああいう対応をするってことはまだ大丈夫だなっていう安心になるけどね」

「あの対応じゃなくなる前に私が怒るわ」

「それは、勘弁願いたいね」

 

 苦笑するオオガミに、エウリュアレはため息を吐き、話題を変える。

 

「それにしても、聖杯なんてまた突然ね」

「一応言っておくけど、バラキーには既に聖杯二つ渡してるからね? むしろまだ5個渡していないのかって感じなんだけど」

「そういえば、そうだったような気もするわね」

「ステンノ姉様の聖杯が無かったのが原因なんだけど、今はその心配はもう無いし、使い時だと思ったんだけどね。ボディーガードが予想以上に強かった……」

「よくわからないけど、バラキーに強くなられると困るのかしらね」

「いや、あれは単純にお菓子を渡してたのが気に食わなかっただけなんじゃないかな……」

 

 私以外がバラキーに菓子を渡すなど許さん。と言わんがばかりの鋭い眼光を思い出し、身震いをするオオガミ。

 その反応を見たエウリュアレは、

 

「あなたのその顔を見れば、あの子がどれだけ必死だったかが目に浮かぶようね」

「半泣きだったね。うん。そう言えばバラキーのために一週間必死でお菓子を作ってるんだって言ってたの忘れてたよ」

「あぁ……それは確かに、あなたが悪いわ。来週にしておくべきだったわね」

「いや……カーマのはしばらく続くと思うけどな……あれはそういう雰囲気だったよ」

「……一時期のあなたみたいな感じかしら」

「うんそんな感じ……あんな感じだったのか」

「まぁ、作らせていたのは私だったのだけど、聞いてる限りそんな感じよ」

「一回はまるとしばらく習慣みたいになるからね……しょうがないというか。気付いたら厨房に立ってるからね」

「自覚あるじゃない」

 

 ハハハ、と笑うオオガミにエウリュアレは釣られて笑みを浮かべつつ、

 

「まぁ、エミヤに嫉妬して攻撃を仕掛けたりはしてなかったから、その分だけはマシなのかしらね」

「そんなことを考えるよりも作るのに必死だったし、何より楽しんでたからね」

「気付けばバリエーションも豊富になってるし、技術もどんどん上がっていくし。訓練をしたりイベントに巻き込まれたり世界を救ったりしている間のどこにそんな余裕があるのかしらね」

「そりゃ、余裕がないなら作るしかないってことで」

「無茶してるって訳ね。全く……」

 

 そう言って、エウリュアレはなにかを思い出したような顔をし、

 

「そうだ。チーズタルトを作ってほしいのだけど」

「今から?」

「今からじゃなくても良いけど……出来るだけ早めにお願いしたいわ」

「ん~……わかった。早めに作っておくよ」

「よろしくね」

 

 そう言いながら、二人は自室に入っていくのだった。




 バラキーにお菓子を渡そうとするとカーマが飛んで来るという噂があるという……

 バラキーに聖杯を入れて100にするかは今とても悩んでいるので保留中案件。


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そろそろキャメロットに進軍しようか(ずいぶんと遅いわね)

「よし、そろそろキャメロットに進軍しようか」

「ようやく?」

「今回もずいぶん遅いようだけど、大丈夫なの?」

「余裕余裕。今回はメルト単騎じゃないからね」

「そう……まぁ、いくら私が強くても何度も戦わされたら疲れるもの」

 

 そう言って、ほっとしたように息を吐くラムダ。

 そんなラムダにオオガミは、

 

「まぁ基本は一掃して貰うけどね!」

「援軍ってなんなのかしらね!」

 

 ラムダの叫びに呼応するように、どこからともなく現れた子どもペンギンがオオガミの腹部に勢いよく頭突きする。

 

 

 * * *

 

 

「というわけで、あそこのグランドクソ野郎の首を取れば勝利です」

「既に二回殴られた後みたいな顔色なんですけど」

「これがパワハラの末路なのね」

「エウリュアレがそれを言うのか」

 

 エウリュアレとカーマが言うように、ラムダに余計なことを言って青い顔をしているオオガミ。

 もはや倒れそうな雰囲気だが、それを許さないのは原因の一端でもある小さなペンギン達だった。

 エウリュアレはオオガミから距離を取りつつ、

 

「ふふ。遠目から見る分には可愛いわね」

「はぁ。別に触っても怒られないんじゃないですか?」

「まぁ、怒らないと思うわ」

「じゃあ普通に触らせて貰えばぁっ!?」

 

 ペンギンに不用意に近付いて撫でようとしたカーマは、直後強烈な頭突きを顔面にお見舞いされ後ろに倒れ込む。

 そして、何が起こったか分からないような顔で放心していたカーマは、ハッと我に返ると、

 

「なんですか今の! 結構痛いんですけど! ってか殴ってくるんですか!?」

「それは当然でしょ。そもそもそれはメルトのペンギン……いえ、リヴァイアサンよ。触らせてくれるわけ無いじゃない」

「くっ、嫉妬の象徴ってことですか……え、いや、それなら触らせてくれてもいいのでは」

「気を許してない相手に野生動物が触らせてくれると思う?」

「……飼い主と同じくらい人に慣れてませんね」

「背中に膝!」

「いたっ、いたい!」

 

 背後から蹴られ、飛ばされた先で更にペンギンの追撃を受けるカーマ。

 もはやオオガミと同じくらい瀕死になったカーマはゴロゴロと転がりながら、

 

「ぺ、ペンギンの攻撃力を舐めてました……」

「私もさっきつつかれそうになったもの。意外と攻撃的よ」

「エウリュアレさんまで攻撃するんですか……命知らずですね……」

「全員返り討ちで転がされていたわよ」

「……やっぱり強くないですか」

「心外よ。私はただ優しく撫でただけだわ」

「……本当ですか?」

「……3羽ほど持っていかれたわ」

 

 心底悔しそうに言うラムダに、カーマは何も言えず、ただ呆れたような視線をエウリュアレに向ける。

 そんな視線を受けたエウリュアレは黙って微笑み、オオガミの方を見ると、

 

「さっさとマーリンを倒してバカンス行きましょ」

「湖よ湖。当然スワンボートはあるのよね」

「レジャー施設じゃないよあそこ……普通にコテージがあるだけの場所だからね」

「……なんだか気の抜けた戦いですねぇ」

 

 そんなことを言いながら、4人は出陣するのだった。




 キャメロットにはまだ二回しか行ってないしなんなら復刻イベントを開いてすらいない私です。急がなきゃ……!


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激戦の後のホラーですよ(お疲れ様です、お兄さん)

「はぁ……羊のお兄さんを意気揚々と蹴散らして、いざキャンプだと張り切ってレイシフトしたら、これだもんなぁ……」

「湖が冷たくて気持ちいいんですよお兄さん」

「入水自殺をご所望ですかイリヤさん」

「そんな事微塵も言ってないですよお兄さん」

 

 やさぐれるオオガミと並んで遠い目をするイリヤ。

 キャメロットでの激戦を終え、意気揚々とサマーキャンプに乗り込み、早々にエウリュアレとメルトの二人とはぐれたオオガミは、去年の戦いを思い出して特異点解決直前まで合流できないということに気づいたのだった。

 イリヤは単純に、コテージを散策した疲れでそうなっているだけだった。

 

「はぁ……みんな一緒にキャッキャウフフなキャンプライフを送るつもりだったのになぁ……」

「実はお兄さん、一番楽しみにしてたんじゃ……」

「ふふ……去年もそんな感じだったし、今さらな感じがあるよね……」

「なんだか深い闇が見えるよぉ……」

『なんだかんだ言っても、マスターもお年頃ですしね~。そうなっても仕方ないんじゃないですか?』

「魔法少女ステッキとしての役目を放棄したホースに言われるなんて……」

『場の空気に合わせてトランスフォーム出来るステッキですよ! この貴重さがわかりませんかね!』

「確かに最近の魔法少女は千差万別の変身アイテム……むしろ普段の持ち歩きに適していない変身アイテムを考えるとルビーは優秀な部類か……?」

『そうでしょうそうでしょう。もっと褒めて良いんですよ!』

「あまり調子に乗らない!」

『あばばば! やめてくださいイリヤさん! め、目が回るぅぅ~!!』

 

 ホースになっているルビーをブンブンと振り回し、暴走を止めようとするイリヤ。

 オオガミはそれを見て、

 

「あ、そうだ。水切りで遊ぼうか」

「水切りって、水の上を石が跳ねて飛んでいく……?」

「そう、その水切り。ただ、ここら辺に飛ぶ石があるかはわからないから、見つからなかったら最悪エミヤさんに頼もうか」

「は~い! 頑張って探すぞ~!」

『どういうのが良いかイリヤさん知ってます?』

「で、出来るだけ平たいやつでしょ。知ってるもん!」

 

 そんなことを言いながら、イリヤは歩いていってしまう。

 それと入れ替わるようにやって来たエミヤが、

 

「水切りとは、また妙なチョイスだな」

「いや、水切り楽しいでしょ。ただの石がただ横回転させて投げるだけで水の上を跳ねるんだよ? 科学的に考えたら普通かもしれないけど、身近な魔法でしょ」

「ずいぶんと筋肉寄りの魔法だがな。私も時間があったら見に行くとしよう」

「参加するなら石を持参してくださいよ」

「もちろんだとも。私の水切りテクを見せようじゃないか」

 

 そう言って去っていくエミヤを見て、思わずオオガミは、

 

「お、大人げない戦いをするつもりだ……」

 

 と呟くのだった。




 去年も同じ分断をしている気がするけど、復刻だし状況も再現ってことで。

 ちなみに聖杯戦線はカーマとメルトとラムダでゴリ押しました。やっぱ聖杯戦線性能はカーマが光ってるなぁって思いながら殲滅しましたね。
 ラムダを使ってたの許さないからなマーリン……!


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嫌な呪いですよね(分断も面倒だものね)

「このうっとおしい呪いもなんですけど、それ以上にこの分断が許せないんですけど。バラキーはちゃんと三食食べてるんですよね」

「はいはい。あなたの過保護は分かったから落ち着いて作ってちょうだい。こっちも困ってるんだから」

 

 そう言いながら、マシュと一緒に料理を乗せる皿を用意しているエウリュアレ。

 既に何度か夜を越え、慣れてきてはいるが、だんだんとカーマが不機嫌になっていっていた。

 

「全く……私に薪を割らせるなんて良いご身分ね」

「それくらいしか出来ないんだからおとなしくしていてください」

「噛み付かないの。争ったら負けるんだから」

「負けませんけど! 私だってちゃんと強いんですからね!?」

 

 そう言って怒るカーマを見て、エウリュアレは心底悪い笑みを浮かべつつ、

 

「じゃあ、負けたらどうするの?」

「仕方ないのでご飯を豪勢にしちゃいます。具体的に言うと一品増やしますよ」

「決まり。任せなさいエウリュアレ。今夜の食事はいつもより豪華よ」

「メルトが負けたら一つだけお願いを聞いてあげても良いわ」

 

 エウリュアレの言葉に、カーマは一瞬目を丸くし、すぐにニヤリと笑うと、

 

「……本当ですね?」

「えぇ。誓っても良いわよ?」

「なるほど。それじゃあ軽く捻ってあげますよ!」

「ふふっ、薪割りとは比べ物にならないくらいのストレス解消になりそうね……!」

 

 そう言って、湖の方へと行ってしまう二人。

 カーマがちゃんと火の始末をしていったことを確認したエウリュアレは、マシュのところへ向かい、

 

「ごめんなさいねマシュ。今日のご飯は少し遅れそうだわ」

「そんな気はしていたので大丈夫です。楽しそうに焚き付けていたじゃないですか」

「ふふっ、だってしょうがないじゃない。バラキーに会えなくてあんなに不機嫌そうにしてるのよ? そこをいじらないなんて出来ないわ」

「エウリュアレさんらしいです」

 

 そう言って、苦笑するマシュ。すると、

 

「マシュ~、お腹空いた~」

「あぁ、先輩。申し訳ないのですが、昼食にはもう少し時間がかかりそうです」

「えぇ~……あぁ、もしかして湖の方で争ってたのってそれ?」

「そうよ。だからおとなしく待っていなさい」

「は~い」

 

 そう言って、自分の席に座るマスター。

 エウリュアレはそれを見てため息を吐きながらその場を離れ、

 

「アナも連れてくるべきだったかしら。でも分断されてるなら意味ないものね……」

 

 どうしたものかしら。と呟きながら、カーマとメルトの戦いの様子を見に行くのだった。




 バラキーに会えないと目に見えて機嫌が悪くなるカーマ。もはや過保護とは別の何かのような気も……


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そろそろ厳しいかもしれない(頑張ってお兄さん!)

「そろそろ厳しいかもしれない」

「頑張ってお兄さん!」

「そんな軟弱で良いのか? 呆れられても知らぬぞ」

「頑張れ~。リリィも応援してますよ~」

「ぬぐぅぅ……!」

 

 イリヤ、バラキー、殺生院リリィの三人からの声援を受けつつ、彼女たちの乗っている荷車を引くオオガミ。

 その荷車には山菜だけでなく、解体されたワイバーンや魔猪などの肉も乗っており、あからさまに一人で引くような荷物の量ではなかった。

 

「くっ……全然、進まない……!」

「このままだと日が暮れるなぁ……」

「や、やっぱり私たちも手伝った方がいいんじゃ……」

「確かに手伝った方が早いかもですけど、言うほど進んでない訳じゃないですし、このままでも良い気がしますよ?」

「でも……やっぱり大変そうだし……」

「そんなもの、泣きついてきてから考えれば良いのだ。それに、この程度なら運べるほどに鍛えていたと思うが」

「なんだかんだコテージは見えてますからねぇ。あともう少しですよ~」

 

 心配するイリヤと、対して興味がなさそうなバラキーとリリィ。

 そんな話を聞きながらも、重い足取りでコテージに進んでいくオオガミ。

 すると、コテージの方から虞美人がやってきて、

 

「ちょっと後輩。さっさと運びなさいよ。さっきから視界の端にいられて邪魔なんだけど」

「せ、先輩、わりと無茶苦茶言いますよね……」

「うるっさいわねぇ……いいから早く運びなさい。それとも手伝わなきゃいけないわけ?」

「先輩にそんなことさせられるわけ無いので頑張らせていただきます!」

「そ。じゃ、終わるまで見てるから」

「えっ」

 

 そう言ってコテージに帰っていく虞美人に、頬を引きつらせるオオガミ。

 それを見ていたイリヤ達は、

 

「どうしてお兄さんは手伝って貰わなかったんだろう……?」

「色々あるんですよきっと。プライドとか、そう言う感じのが」

「いや、吾はわかる。今のマスターの気持ちはあれだ。吾がカーマになにか手伝うことはないかを聞いたときと同じだ。手伝われるとちょっと迷惑とか、そう言う類いのやつ」

「ねぇいったい何をしたの? 何をしたらそう思われちゃうの……!?」

 

 いったいバラキーが何をしたのか。その答えがイリヤの記憶の片隅からこちらを覗いているような気がするが、嘘であってほしいと思いながら聞く。

 だがバラキーは顔を逸らしたまま頑なに答えようとしないので、イリヤの顔も青くなっていく。

 そこにリリィが、

 

「まぁまぁ。良いじゃないですか、何があったとしても。彼女は害を加えようとしたのではないのです。ですから、気にしないことも大切ですよ?」

「スッゴい気になるけどね……」

「わざとではないのだ……わざとでは……」

 

 いったい何があったのか。その真相を荷車の上で探っている間にも、オオガミは亀のような速度でコテージに向かって進むのだった。




 ぐっちゃん先輩は秒で飽きて雑に運びそうだよね。という偏見。

 ちなみにオオガミくんが一人で頑張ってるのは意地です。なんとなくかっこいいところを見せようとして引くに引けなくなったゆえの意地です。しかもバラキーがいるのでなおさら引けないため必死です。


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もう離れたくはないな(だからってこれはどうなのかしら)

「今年の夏は離ればなれにならないことを祈っていきたいとおもいます」

「うわっ、想像していた以上に酷い状況なのだけど」

 

 二度と離さないと言いたげな顔で、エウリュアレを人形のように抱いているオオガミを見て、思わず声が出てしまうラムダ。

 その隣で同じようにカーマにバラキーが捕まっているのを見て、更に顔を引きつらせる。

 

「意外と落ち着くわねこれ」

「吾は足が着かぬから気持ち悪いのだが……」

「もう少しこのままいさせてくれれば何か作ります」

「……仕方ないな。吾は気にせんぞ」

「すごい手のひら返し。こっちは何か無いのかしら」

 

 足をパタパタと揺らしながら聞くエウリュアレに、オオガミはエウリュアレの髪に顔を埋めつつ、

 

「考え中。思い付いたらで良いですかね」

「別に、まだ二週間あるのだし、それまでに思い付いてくれれば良いわ」

「正直、思い付く全てが平常運転と変わらないから特別感無いんだよね……」

「特別感に関しては既にここまで弱ってるあなたってだけで十分なくらいなのだけど?」

「おや。エウリュアレに対しては弱ってることがプラスに働くみたいなんだけど」

 

 不思議だね? と言いながらも離すつもりが一切無いオオガミ。

 本当に弱っているのか怪しいところではあるが、エウリュアレが言っているのでそうなのだろうと納得したラムダは、

 

「で、私の席はどこかしら」

「えっ」

「あら、私は仲間はずれかしら。酷いわね」

「いや、そう言うつもりはないけど……」

 

 何が起こったのかを聞きたそうな視線を送ってくるオオガミに、エウリュアレは首を横に振って答える。

 それを見て、どうしたものかと考えたオオガミは、ベンチに座り、右膝の上にエウリュアレを乗せると、

 

「ど、どうぞお座りください」

「なんでちょっと怯え気味なのよ」

 

 不満そうなラムダ。だが、それだけ言うと素直にオオガミの左側に座り、寄りかかる。

 

「まぁ、及第点にしてあげましょう。次はもっと怯えないで話しなさい」

「うん……次からはもっと素直に甘えてくれると嬉しいけどね」

「……突くわよ」

「まだ死ぬような痛みは早いと思うんだ」

「じゃあ余計なことは言わないことね。つい意地悪をしたくなっちゃうじゃない」

「どう思いますか解説のエウリュアレさん」

「そうね。実況のオオガミがバカなことを言わなければ健康に帰れたかもしれないわね」

「ちょっと待って死ぬの?」

 

 不穏な空気を漂わせてくるエウリュアレに、頬を引きつらせるオオガミ。左を見れば、それはそれは嗜虐的な笑みを浮かべるラムダがいた。

 そんな三人から離れたところから、バラキーを抱いたままのカーマが、

 

「それじゃあ先にコテージに入ってますからね~」

「この状況で放置ですか! あっ、ちょ、や、やめぇ~!」

 

 オオガミの悲鳴を聞き流しながら、カーマはコテージに入っていくのだった。



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夢じゃないよね(バカなこと言わないの)

「……よし。夢じゃないね」

「いつもより早起きで良いけど、私以外にやったら殺されるわよ」

 

 目を覚ますなり、エウリュアレの髪を手ぐしで梳かすオオガミに、呆れたような顔をするエウリュアレ。

 そして、オオガミの手を払い除けて背を向けたエウリュアレは、そのままオオガミにすり寄り、腕のなかにすっぽりと収まる。

 

「これで夢だとかは言わないでしょ。まだ日の昇り始めだし、起きる気になれないからこのままいなさい」

「……まぁ、エウリュアレがそう言うなら……」

 

 当然のように寝直すエウリュアレに苦笑しながら、オオガミも二度寝をしようと目を閉じる。

 

 

 * * *

 

 

「いやぁ、あそこから寝れるわけないよね」

「なんだか辛そうね。エウリュアレに何かされたのかしら」

「何かされたというか、むしろ何もされなかったというか」

 

 そう言いながら、寝ているエウリュアレを背負ってリビングに降りるオオガミと、呆れたような顔をするラムダ。

 既に朝食は出ており、イリヤ達が元気に食べていた。

 そして、降りてきたオオガミに気付いたエミヤは、

 

「おはようマスター。今日は遅い起床だな」

「おはようエミヤさん。エウリュアレが起きてくれないし、腕を掴んで離してくれなくて」

「どうやら、今も離してくれないようだがな」

「まぁ、今日は甘えてくる日ってことで。激レアなのでもう少しこのままで良いかな」

 

 そう言うオオガミに、エミヤは少し考えるような素振りをして、

 

「ふむ……なら、軽くつまめるものが良いか。サンドイッチで良いかな?」

「ありがとう、それでお願いするよ」

「私の分もお願いするわ」

「三人分だな。どうせなら外で食べるのも良いと思うが、どうする?」

 

 エミヤの提案に、オオガミは少し考え、

 

「そうだね。湖でも見ながら食べようかな」

「承知した。では出来次第届けよう」

「何から何までありがとう」

「なに、休めるときには休むべきだ。幸い、まだのんびりしていられるからな」

 

 そう言って、キッチンに向かうエミヤ。

 オオガミはそれを見送ると、コテージを出て湖に向かって歩きだす。

 

「あの弓兵も暇ね。霊衣が変わったら人も変わったというか」

「元からあんな感じだった気もするけどね。守護者的なのもあって、少し固かったのかもだけど」

「落差がスゴいわ。同じ人物とは思えないくらいに」

「それで言うならメルトだって、本来の時と水着の時で違うでしょ。いや、そんな変わらない?」

「変わるわよ。神性のバランスもガッツリ変わってるわよ。なに? サラスヴァティもリヴァイアサンも変わらないと言いたいのかしら。お腹に膝がお好きなのかしら」

 

 頬を膨らませつつ言うラムダに、オオガミは頬を引きつらせながら、

 

「お腹に膝は二日くらい青あざになるのでおやめください」

「分かれば良いの。でも、私とアイツは同じようなものじゃないわよ。決して違うわ」

「でもまぁ、人格の根幹は変わってないから、エミヤさんも似たようなものだと思うんだけど」

「……もう何を言っても平行線な気がしてきたわ」

「まぁ、どっちも夏の魔物の産物だからね」

「もうそれで良いわ……」

 

 そう言ってため息を吐いたラムダは、ふとオオガミに背負われているエウリュアレを見ると、

 

「……これ、本当に寝てるのかしら」

「答えは定かじゃないけど、とりあえず首を絞める力は強くなったよ」

「ほぼ答えじゃない……まぁ、自分で歩くつもりはなさそうだし、そのままで問題ないわね」

「エミヤにも言った通り、今日は甘えてくる激レアな日なので」

「はいはいそうね。週一以上のペースである激レアな日ね」

 

 そう言って、ラムダはオオガミの肩に軽く頭突きをするのだった。




 いいなぁ……楽しそうだなぁ……とか、書きながら思ってしまう。コロナ許せないわ……


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ここが今の寝所ですね(面倒なのが来たわね)

「ふむ。ここがマスターの寝所ですか……悪くはありません」

「……また厄介なのを召喚したのね」

 

 部屋に入ってきたモルガンを見て、嫌そうな顔をするエウリュアレ。

 そして二人の目が合うと、モルガンは心底不思議そうな顔で、

 

「なぜ私以外の者が夫の部屋に?」

「こちらからすればあなたの方が異分子なのだけど」

 

 隠しきれないほどの怒りのオーラを放ちながら微笑むエウリュアレ。

 だが、変わらず首をかしげるモルガンを見て、エウリュアレはため息を吐くと、

 

「あいにく、ここはマスターの部屋で、私の部屋なの。別に清姫のように自分が妻だと名乗るのは止めるつもりはないけどここは譲らないわよ?」

「あなたが譲ろうと譲らなかろうとマスターは私のモノ。それは覆らない事実ですので」

「……話は平行線みたいね」

「そのようです」

 

 その言葉を聞いて、エウリュアレは立ち上がり、

 

「サーヴァントらしく意地を張るしかないわね」

「あまり部屋を汚したくはないですが」

 

 そう言って、二人は激突した。

 

 

 * * *

 

 

「なぁカーマ。なにやらマスターの部屋の方から嫌な予感がするのだが」

「あの部屋からここまでかなりあるはずですし、ここまで被害が及ぶとは到底思わないんですが」

「それはそうなのだが……どうも胸騒ぎがしてな……」

「心配しすぎですよ全く……」

 

 そう言って、カーマお手製のカップケーキを食べるバラキー。

 美味しそうに食べるバラキーの顔を見ていたカーマは、ふと思い出したように、

 

「そう言えば、さっきマスターは私の夫だとかなんとか言ってたサーヴァントがいましたね。なにやらマスターの部屋を探してたみたいなので教えましたけど……」

「……マスターは帰ってないし、今はあの部屋にエウリュアレ一人だった気がするのだが……」

「そう言えば最近独占欲強めですよねあの人」

「吾、嫌な予感がするのだが」

「まぁ相手はバーサーカーですしアビーさんを呼んで戦ってるんじゃないですか?」

「巻き込まれたくはないなぁ……」

 

 そう言って、いつもより気持ち早めにカップケーキを食べるバラキー。

 カーマはそれを見て苦笑しつつ、

 

「まぁ、エウリュアレさんが負けてるの、見たこと無いですけどね」

「マスター関連だと妙に強いからな……吾も何回かやられたし、心配はしてないが……」

「終わってみたらマスターの部屋がぐっちゃぐちゃになってたりしそうですよね」

「それの片付けをさせられるところまで想像できるのが嫌なところなのだが……」

 

 そう言っていると、食堂の扉が開き、ボロボロになったエウリュアレが入ってくる。

 

「カーマ、バラキー。メドゥーサを見なかったかしら」

「あ、本当にやりあったんですね」

「パールヴァティーのところに何人か行っていたぞ」

「ありがと。それとカーマ。私にもそのカップケーキを取っておいてくれると嬉しいわ」

「はいはい。新しく作っておきますよ」

 

 そう言って去っていくエウリュアレ。

 そして食堂の扉が閉まると、

 

「エウリュアレさんって守られる女神じゃなかったんですかね」

「範囲攻撃の余波でああなっただけだと吾思うけどなぁ」

「基本はアビーさんが戦ってって感じですか」

 

 なるほど。と呟きながら、カーマはカップケーキを作るため、仕方なさそうに立ち上がるのだった。




 モルガンさんのTwitterでの噂を聞いて欲しくなりその結果がこれです。モルガンヤバいよ……心揺れ動くよ……(なお不動の女神


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連日押し掛けるなんて嫌われるわよ(その程度で嫌われるなどとは思わないので)

「……連日押し掛けてくるなんて、暇なのかしら」

 

 何度叩きのめされても、翌日には元気よく戻ってくるモルガンに、半ば呆れ、少しは負けても良いかと思い始めたエウリュアレ。

 だが、モルガンはまるで今までの戦いは前哨戦とでも言いたげな涼しい表情で、

 

「害虫駆除は夫の居ぬ間に、というやつです。えぇ。あなたを駆除した後は速やかに私以外のバーサーカーも送還しますので」

「負けられない理由がまたひとつ増えたわね」

 

 アステリオス(バーサーカー)の送還だけはさせられないエウリュアレは、徹底的に潰すという覚悟を決め、立ち上がる。

 

 

 * * *

 

 

「そう言えばBB。あのモルガンとやらに会ったか?」

「もちろんですけど、何かありました?」

 

 よく分からないアイテム(ガラクタ)の山から顔を覗かせるBB。

 同じようによく分からない発明品(危険物)に囲まれているノッブは、ノウムカルデア内の監視カメラ映像が映されているタブレットを見つつ、

 

「初日以降ずっとエウリュアレと戦っとるんじゃけど、タフすぎると思わんか?」

「もう一週間近くですよね。タスネスで賞とか贈ります? 作りましょうか?」

「うむ。それはいいと思うんじゃが……そこじゃなくての? あやつ、エウリュアレに勝った暁にはバーサーカーを全員座に返すとか言っとるんじゃよね。つまり儂も入っとるんじゃよ」

「…………?」

 

 ノッブはアーチャーですよね? と言いたげなBBの視線を受けるも、ノッブはさらに不思議そうな顔で、

 

「儂が水着を着たらバーサーカー。つまりアーチャーでもバーサーカー。魔王になったらアヴェンジャーでアーチャーなバーサーカー。つまり儂バーサーカー」

「この会話の成立がしない感じはバーサーカーですね。殴り倒されたいですか?」

「な、なんじゃ……まだ片付けをしないことを怒ってるのか……?」

「現在進行形で汚れたままなんですよ。変に片付けたら片付けたで、爆発で済むならいいですけど、最悪特異点生まれるじゃないですか……いい加減適当に片付けられないんで入らないものはリップの中にでも捨てちゃいましょ」

「そういうことするからお主嫌われるんじゃぞ?」

「まっとうなセリフは部屋を片付けてからにしてください」

 

 そう言って、危険度の高いモノから片付けていくBB。

 ノッブはため息を吐くと、

 

「ま、モルガンに関しては、バラキーを人質にされたカーマがキレたからすぐに終息するじゃろ」

「うちの手を出しちゃいけないツートップを相手にしてるんですか……」

「いつかのときに作った拘束具とか、取りに来るかもしれんし探しておくかぁ……」

 

 ノッブは立ち上がると、おぼろ気な記憶を頼りに探し始めるのだった。




 バーサーカーの強制送還でぶちギレるうちの二大問題神。メルトはまともな部類なのであくまでも強いだけ。

 しかしモルガン。すっごいお城ってなんだろう。超見てみたい。やっぱすっごいお城だし、チェイテピラミッド姫路城くらいのインパクトは大事だよね。100階建かな。200階建かもしれないので楽しみですよね。


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まだ妖精郷なのかしら(いつ帰ってくるのかしらね)

「オオガミはまだ妖精郷なのかしら?」

「向こうとこちらの時間は違うもの。しょうがないわ」

「だからと言ってやたら危険なサーヴァントを召喚するのはやめて欲しいんですけど……」

 

 ため息を吐きながら、カーマお手製の水ようかんを食べるエウリュアレ。

 その隣で、スプーンに悪戦苦闘していたラムダは、今はアビゲイルに食べさせてもらっていた。

 カーマは自分の分の水ようかんをさりげなくバラキーに一つ渡しつつ、 

 

「偽ガウェインさんはともかく、偽トリスタンさんは危険だと思うんですよ。噛み付いてきますよ。物理的に」

「吸血してくるってことかしら?」

「ここにも噛み付くのがいるんだし問題ないと思うのだけど」

「ちょっと、こっちを見ながら言わないで」

「客観的な事実だもの。オオガミのベッドのシーツに不自然な赤い点があるのは今に始まったことじゃないもの」

「マスターの左腕、歯形ばかりだものね」

「うわっ、やることがえげつないですねエウリュアレさん」

「誰一人として私の名前を言っていないのに私だと決めつけるのはなんでかしらね、カーマ?」

 

 エウリュアレはそう言うと、湯呑みを持って緑茶を一口飲み、にっこりと笑う。

 対するカーマは助けを求めるように必死で左右を見渡すが、誰も彼もが視線を合わせようとしない。

 

「あ、あ~……まぁ、スキル的にやれそうなのはエウリュアレさんしかいないかな~、と思いまして」

「そうね。状況的にもスキル的にも私しかいないわね」

「えぇ、そうです。なので思わずそう言ってしまったのもしょうがないと思うんですよ」

「まぁ、それもそうね」

 

 エウリュアレはそう言うと、少し遠い目をしつつ、

 

「でもあの傷、9割はアビーなのよ」

「何してるんですかこの問題児」

 

 全員の視線が向けられると同時に顔を背けるアビゲイル。

 その態度が何よりも雄弁に事実だと語っているので、カーマは呆れた顔で、

 

「あれ、あのままエウリュアレさん想定で話してたら殺されてたんじゃ……」

「殺しはしないわ。あの厄介なバーサーカーと一緒に閉じ込めるだけだもの」

「嫌ですよ……似てるんですもん、私と彼女。こう、支配しようとする感じとか、本当に最悪です」

「独占欲の塊と独占欲の塊を合わせたら当然喧嘩するものね。大変ね」

「……マスターさんの周りは独占欲の塊しかいませんけどね。()()()()()が趣味なんでしょうし、とやかくは言いませんけど」

 

 お茶菓子の追加持ってきますね。と言って、カーマは席を立つのだった。




 後半始まるまで放置ですか。イベントは無い感じですか、そうですか……このままだとオオガミくん帰ってこないしイベントもないからわりと地獄なんですが。

 オオガミくん周り、独占欲の塊しかいない説。はて、考えてみれば独占欲の塊しかいないな……? 統一感無いと思ってたけどあったね……?


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戦い方を変えましょう(どうあがいても無駄よ)

「戦い方を変えます。どうすれば認めますか」

「あなたが何をしようと認めないから部屋に帰っていて欲しいわ」

 

 無惨に破壊された拘束具を握り締めながらオオガミの部屋に来たモルガンに、帰れと言うエウリュアレ。

 しかし彼女はまともに会話が出来ているようで出来ていない事で有名なバーサーカー。

 当然の権利とでも言いたげに部屋に入り玉座を展開したモルガン。

 エウリュアレはそれを嫌そうな顔で見た後、仕方なさそうに起き上がり、

 

「ここ、半分は私の部屋なのだけど」

「わかりました。ではこの部屋は渡しますので夫は貰っていきます」

「残念だけどそれは出来ない相談ね。オオガミも私のモノだもの」

「マスター、という意味であるのならば共有のものですが、私は個人としての彼を望んでいるのです」

「残念。あなたの言っている、個人の意味で、私のモノなの。譲らないし譲れるものではないわ。お気に入りは手離せないもの」

「そうですか……会話の余地はないようですね」

 

 そう言って立ち上がるモルガン。

 エウリュアレは残念そうに肩を竦めながら、

 

「会話が成り立つとは思っていなかったもの。いい加減その思い込み一直線の考えは改めた方がいいと思うわ」

「我が夫はそれでもいいと言っていましたので」

「それは……確かに、言いそうね。やっぱり帰ってきたら一度締め上げるべきかしら」

「その役目も私が担いましょう。ですので安心して退いてください」

「……やっぱり不快だわ。駄妹のように優しくなんてしてあげない。ペガサスに繋いで引きずってあげる」

「今日は負ける気がしませんね。穴の底に落としてあげます」

 

 そう言って、もはや何度目かわからない激突をするのだった。

 

 

 * * *

 

 

「あの二人、死ぬほど仲が悪いわよね」

「アビゲイルも、呼ばれていってしまったからな……」

 

 さくらんぼタルトを食べながら言うバラキー。

 同じようにアビゲイルにさくらんぼタルトを食べさせてもらっていたラムダは、彼女がいなくなる数秒前に空になった自分の皿を、恐る恐る持ち上げたり下ろしたりしていた。

 そんな二人を他所に、カーマはアビゲイルのいたところを見つつ、

 

「彼女の胃袋はまだ掴めそうにないですね……こちら側に引き込めば悪事を働くとき楽になると思うんですが」

「ちゃっかり引き入れようとしてるわね……」

「アビゲイルは言えば付き合いそうではあるがな」

「まぁ、タルトは完食していますし、不満はないんですけど……エウリュアレさんの一言に負けるのは釈然としませんね……」

 

 そう言って少し悔しそうなカーマに、ラムダとバラキーは顔を見合わせ、苦笑いをするのだった。




 一周回って仲が良いのではないかと思ってきた。でもそろそろ苦しいのでオオガミくんはよ帰ってきて……


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お祭りの始まりよ(また唐突な祭りですよね)

「ってことで、お祭りよ」

 

 いつものように食堂で、いつものメンバーを集めたエウリュアレはそう言う。

 それを聞いたラムダは少し不機嫌そうに、

 

「祭り……祭りねぇ……あの暴君の名前を使っているのだからどうせろくでもないものでしょう?」

「さぁ? でも祭りですし、バラキーが好きそうなものですが……」

「吾……参加したくないなぁ……」

「開催が決まってからこんな調子です」

 

 いつもとはまるで違うバラキーの反応に、カーマは肩をすくめる。

 

「それで、結局どういう祭りなんですか?」

「超高難易度付きのボックスイベントよ。周回組が瀕死になるやつ」

「あぁ、そういう……」

 

 カーマは頷くと、視線をラムダに向け、

 

「これそっち向きの案件じゃないですか?」

「えぇ。なんだったらバラキーは戦わないわね」

「じゃあなんで嫌がってるんですか……」

「今年は綱がいる……うっかり鉢合わせでもしようものなら困るからな……前は頼光にやられた……」

「あぁ、そういう……でもまぁ、私もいますし、大丈夫ですよ。出店を見て回るのも楽しそうです」

「まぁ、一人より二人の方が先に見つけやすくもなる……か。うむ。ならば吾も行く。出店は気になっていたからな」

 

 そう言って、嬉しそうな雰囲気を出すバラキーに、カーマは微笑み、エウリュアレに視線を向けると、

 

「で、妖精郷に行った人は?」

「帰ってくるわよ。だから今、アビーに迎えに行って貰ってるの」

「あぁ、それでいなかったんですね。てっきり反抗期なのかと思ってました」

「本人が聞いたら噛み付いてくるわよ」

「手足を火で防御してれば噛み付かれないでしょう?」

「お腹に噛み付かれるわよ」

「……なんだか見てきたような顔をしますね……」

「まぁ、オオガミは噛まれてたから。最近構って貰えないからそうしてるんじゃないかって思うんだけど」

「実はマスターさん、めちゃくちゃ頑丈ですよね」

「頑丈というより、受けるのがうまいというか、ダメなのはしっかりかわしているというか。まぁ、構ってほしいだけだから強く噛んでないもの。歯形もそんな残ってないし」

「あ、残ってはいるんですね」

「もちろん。アビーが楽しそうだったから医務室に行かせなかったわ」

「悪い子を助長させる悪い女神ですね……」

「人類悪な女神に言われるなんて光栄ね。特殊編成の周回メンバーに選出されるように頼んであげるわね」

「実質最高権力者に脅されてるんですけど……!」

 

 嘆くように言うカーマ。

 だが、周りからの視線は、分かっていたことだろう? と言いたげなものだった。

 そして、エウリュアレは立ち上がると、

 

「それじゃ行きましょ。今回は特に周回がメインだし、メルトは逃げられなさそうね」

「えぇ。高難易度も連れていかれるだろうし、気楽に行くわ」

 

 そう言って、エウリュアレたちは、既にオオガミがいるであろう特異点に向かうのだった。




 突然始まったネロ祭。神がかったボックスの中身にマスター達は震え上がり、すぐさま闘争心を燃やす。地獄の釜は開かれ、花びら最高率を任されたサーヴァントは泣くであろう……

 ネロ祭、100箱走れれば良いなぁ……!!


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偉い上機嫌ね(久しぶりの箱だからね)

「ふんふんふ~ん」

「偉い上機嫌ね。100箱は行けそうかしら」

「ふっふっふ。頑張らないとヤバいよ」

 

 しゃがんで花びらを数えていたオオガミに、後ろから抱き付き顔を覗かせるエウリュアレ。

 オオガミは立ち上がりつつ、器用にエウリュアレを前に移動させ背中に手を添えて支えると、

 

「エウリュアレもずいぶん上機嫌みたいだけど」

「えぇ、だって久しぶりに戦ったもの。まぁ、戦いというよりは蹂躙の方が近いかもだけど」

「確かに、あれは蹂躙だったけども。しかも昔よりも格段に強くなっているというか……無傷の完勝だったね」

「まぁ、その道中はダメージを受けちゃったけど、誤差の範囲よ」

「十分すぎるくらいだから気にすることでもないでしょ。じゃ、女神様。少し時間に余裕はありますし、売店の見回りはいかがでしょうか?」

「……ふふっ、いいわ。付き合ってあげる。今年は何が売っているかしらね」

 

 エウリュアレはそういうと、オオガミから少し離れ、手を伸ばす。

 オオガミはその手を取ると、売店に向かうのだった。

 

 

 * * *

 

 

「また性懲りもなく店を出しているわけね」

「これでも需要はあるのよ。毎度どこからともなく現れて買っていってくださる方がいるのだもの」

「そう……で、今回は何を作ってるのかしら」

「たこせんサンド!」

 

 そう言って、満面の笑みで差し出してくるアビゲイル。

 オオガミはそれを怖々受け取りつつ、中身を見る。

 中には見ただけで出来立て熱々とわかるたこ焼きを、出所不明のタコ(?)を使っているタコせんべいで挟んでいるという、原材料さえ考えなければ普通に美味しそうな料理だった。

 

「……見た目は普通だね」

「その見た目は普通に騙されて何度倒れたか覚えているのかしら?」

「……マーリンにでも与えておくか」

「人の料理をそんな劇薬みたいに……!」

 

 そう言って、悲しそうにするアビゲイル。

 だが、エウリュアレは呆れた顔で、

 

「普通の食材なら文句はないけれど、あなたのタコ料理は色々と喧嘩になるからダメなの。普通の食材なら食べるわ」

「えぇ、そういうと思って、普通の食材でも作ってみたわ。でもいつもの方が美味しいから!」

「その絶対的自信はどこから来るのかしら……別に良いのだけど……」

 

 頬を膨らませているアビゲイルからたこせんサンドを受け取ったエウリュアレ。

 そのまま一口食べ、しっかりと味わい――――

 

「……美味しいわね」

「えぇ、そうでしょうそうでしょう! 試行錯誤したんですもの! ちゃんと美味しいように、美味しくなるように!」

「そうね。しっかり美味しいわ。普通のも用意したのが本当に偉いわ。だからオオガミ。それは食べてね」

「劇薬と判断した上で食べろと?」

 

 何を言っているんだとオオガミは表情で語るが、対するエウリュアレは笑顔の圧力でそれを黙らせる。

 手元のたこせんサンドを見ると、どこか笑っているような雰囲気がして、オオガミの顔は引き吊る。

 そして、二人に見守られ、観念して一口食べる。

 

「…………オオガミが動かなくなったのだけど」

「大丈夫よエウリュアレさん。マスターは今、宇宙を垣間見ているの。あぁ、宇宙(ソラ)の彼方まで……!」

「本当に食べて良いものなのよね!?」

 

 満面の笑みのアビゲイルを見て、少し顔を青くするエウリュアレ。

 その時、オオガミはゆっくりを顔を上げ、

 

「……死ぬかと思った」

「劇薬じゃない」

「劇薬じゃないわよ!」

「大丈夫……宇宙が見えて息が止まっただけ……」

「死にかけてるわ……!」

「むぅ……エウリュアレさんが頑なに毒扱いしてくるわ……!」

「まぁ、ただ意識が飛びそうになるだけだし危険性はそんなに……あるけども、美味しいことに代わりは……ないよ。うん」

 

 だんだんと沈んでいくテンション。しかし、すぐに顔を上げると、

 

「アビー。ちょっとお使いを頼みたいんだけど」

「何かしら。マスターのお願いだもの。なんでも……は、無理だけど、出来る範囲でやるわ!」

「うん。じゃあ、このお菓子の詰め合わせを持って、向こうのカルデアのマスターに渡してきて」

 

 そう言って、おしゃれな箱をアビゲイルに渡すオオガミ。

 アビゲイルは首をかしげ、

 

「向こうって……この前も迷い込んでいたところかしら」

「うん、そこ。色々見て回れるようにQPもあげるね。バレなければそれを販売しても良いんじゃないかな……まぁ、そこはアビーに任せるけど。他に質問は?」

「本人に渡した方がいいのかしら。それとも、向こうのメルトさんでも良いの?」

「ん~……本人の方がいいかなぁ。ネロ祭が終わるまで見つけられなかったら誰かに渡して帰ってきてね」

「わかったわ! じゃあ、行ってくるわね!」

「うん。行ってらっしゃい」

 

 そう言って、アビゲイルは門を潜っていってしまう。

 見送ったオオガミは、

 

「よし。それじゃあ見回り行こうか」

「大丈夫かしら。迷惑かけない?」

「まぁ、混沌のたこせんサンドがどうなるかだね。それ以外は心配してないよ」

「そう……まぁ、それならいいけど。ね、エミヤの出店に行きましょ。美味しいのを食べたいわ」

「おっけ。じゃあ行こうか」

 

 そう言って、二人は見回りを再開するのだった。




 楽しいなぁこの二人。やはり二人揃って最強。

 アビーのお届け物は彼方の彼女へ。貰った思い出を倍にして返さなきゃ行けないので今年の夏は熱くなる……


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やっぱステーキと言えば(肉焼きサーヴァントじゃねぇからな?)

「やっぱベオウルフさんのところのドラゴンステーキは一級品だよね」

「シンプルに美味しいもの。素材の味を引き出せてるわ」

 

 そう言って、満足そうに屋台のカットステーキを食べるオオガミとエウリュアレ。

 そんな二人に、ベオウルフは、

 

「戦力じゃなくて料理を褒めるのは何か違うんじゃねぇか……? 仮にもバーサーカーだぞ?」

「いやいや、適材適所。美味しいものを作れる人に美味しいものを作って貰うだけで全体的なやる気アップに繋がるんだよ。ことドラゴンステーキはベオウルフさんの特筆すべき特技の一つだからね」

「どう考えてもドラゴンステーキを焼くのが売りってのは締まらねぇだろ。バーサーカーとしては落第ってもんじゃねぇな」

「彫刻が売りのバーサーカーはいますが」

「あれはまた別だっての。俺は料理に命を捧げた系のバーサーカーじゃねぇからな?」

「確かに。バーサーカーって深いんだね」

「シンプルにあんたの扱い方が間違ってるんじゃねぇかと思ってきたんだが」

 

 それは一理あるね。と頷きながら、最後の一切れをエウリュアレに差し出すオオガミ。

 エウリュアレがそれを食べるのを確認してから、

 

「次は竹串を用意しておくから串焼きとかどう?」

「話聞いてたか?」

 

 次の屋台の話をするな。と言いながら、ベオウルフは水の入った紙コップを差し出しながら、ゴミを寄越せと手を差し出す。

 オオガミはそれを受けとり、ゴミを渡しつつ、

 

「来月末くらいに、お祭りでも開こうかと思っててさ。食べながら歩けるのが良いかなって思ってるんだけど」

「おいおい、始めて聞いたぞそれ。つか、例年通り夏は忙しいんじゃねぇのか?」

「まぁ、イベントが終わったら開くって感じで。花火大会をしたくてさ。だから、屋台とかあると大満足なわけで」

「花火大会ねぇ……ま、協力をしてくれってんなら、断る理由もねぇ。俺の方で声をかけられそうなのにもかけておく」

「うん、よろしく。それじゃ、見回りしてくるね」

「おぅ。気を付けろよ」

 

 そう言って、屋台を立ち去る。

 

 

 * * *

 

 

「やぁジーク。楽しんでる?」

 

 エウリュアレを屋台に並ばせ、一人でゴミを捨てに行く途中で、偶然見かけたジークに声をかけると、彼は振り返りつつ、

 

「ん、マスターか。もちろん楽しんでる。カルデアに来てしばらくだが、今でも新鮮な驚きがあるよ」

 

 そう言って微笑むジーク。

 だが、その手にあったのは、禍々しいたこせんサンドだった。

 

「……ジーク? それ、大丈夫なの?」

「ん? 別に、問題はない。少し不思議な味だが、食えないものではないからな。マスターは苦手か?」

「いや、苦手とかそういう問題じゃないけど……思わぬ収穫があったね」

「? いまいち状況が飲み込めていないのだが……」

「あぁうん、こっちの話。でもジークにはそのうち色々手伝って貰おうかな……」

「あぁ、任せてくれ。最近は倉庫整理もなかったからな。今回の周回も息抜きになった。ただ、俺を支えてくれていた彼女は、ぐったりしていたようだが……」

「それはまぁ、しょうがないとしか言いようがないけど。とにかく、ジークの新しい仕事は、お祭りが終わって、妖精郷から帰ったら説明するね!」

「わかった。マスターも頑張ってくれ。俺はもう少し屋台を巡っていく」

「うん。じゃあねジーク」

 

 そう言って、ジークと別れるオオガミ。

 そして、ゴミを捨ててから急いでエウリュアレの元へと戻るのだった。




 ベオウルフのドラゴンステーキは極上なので。やはりワイルド界最強なので……!

 とりあえず100箱終わったので高難易度挑んでいるけど果たして倒しきれるのか……


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まだ帰ってこないのだけど(たまにはそんな時もあるわ)

「……おかしいわね。さくっと修復して帰ってくると思ったんだけど」

「モルガンも、なんだか静かになってるものね」

 

 食堂でソフトクッキーを食べながら、不機嫌そうに話すエウリュアレとラムダ。

 最近は新たに召喚されたサーヴァント達の襲撃がめっきり無くなり、エウリュアレは暇をもてあましていた。

 

「はぁ……向こうで何かあったのかしら」

「これだけ長期間いないのは珍しいもの。何かあったに違いない……のだけど、ついていってる訳ではないから待つ以外無いのも問題ね」

「全くよ。モルガンもだけど、他にも厄介なのが来てたし……一度部屋を空けて出ていったら三人が争ってて部屋が炎上してたのは、もう笑うしかなかったわ……」

「もしかしなくてもオオガミの部屋が一番危険地帯じゃないかしら。本人不在なのに」

「むしろ本人不在だから、よ。いるならそれなりに平和になるんだもの。さっさと帰ってこないかしら」

「ふぅん……ちゃんと歯止めにはなってるのね。そういうの、あなたがしてると思ってた」

「私はなんにもしてないわ。オオガミが頑張ってる後ろでベッドに寝転がってるだけよ」

「ある意味牽制してるわね……」

 

 誰がいようと同じことをしているのが想像できたラムダは、その妄想を払いつつ、

 

「そういえば、アビーがどこかに行ってるって聞いたけど」

「本当よ。だから私がここにいるんじゃない」

「あぁ、そうだったのね。てっきり部屋を守るためとか、そういうのを想像してたわ」

「ん~……まぁ、それもあるけど、計画が一番の理由かしらね」

「計画?」

 

 不思議そうに首をかしげるラムダに、エウリュアレは紅茶を飲みつつ、

 

「そ、計画。と言っても、そんな大層なものでもないわ。夏祭りがしたいって言い出しただけ。今年の夏はちょっと豪華に行こうってね」

「ふぅん……夏祭りね……」

「えぇ。クレーンは大喜びで浴衣を作り始めたわ。まぁ、霊衣ではないから、無茶なことをすれば破けるらしいけど」

「普通の素材で作ってるのね。どこにそんな素材があったのかしら」

「いつもの技術部が動いてるもの。大抵のものはあるし、無いなら無いで採ってくるわよ。そういうところだもの。あそこは」

「……私、あまりあそこに近付きたくないからどうなってるのかさっぱりなのよね」

「あまり知らない方がいいこともあるわ。大抵ろくでもないものを作ってるところだもの。でも、あなたの場合はBBがいるからなんでしょうけど」

「いえ、普通に足の踏み場もないから近付きたくないだけよ?」

「……片付けた端から汚れていくものね、あそこ」

 

 エウリュアレはそう言って納得し、空になったソフトクッキーの皿を持って、おかわりを要求しに行くのだった。




 戴冠式は明日……はたして私は生き残れるのか……無事に帰ってきてくれ~……!


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ながくくるしいたたかいだった(今日くらいは優しくしてあげるわ)

※ 真名バレ注意!


「っはぁ~………疲れた~……」

「お疲れ様。今日くらいは優しくしてあげるわ」

 

 そう言って、自分の膝を枕にしているオオガミの頭を撫でる。

 優しく、優しく、割れ物を扱うように優しく頭を撫でつつ、

 

「今回はどんなところだった?」

「ん~……綺麗なところではあったよ」

「そう。それなら私も行ってみたかったわ」

「シミュレーションルームで疑似再現は出来るだろうし、後で行ってみるのも良いかな」

「それは楽しみね。でも、また今度ね。あなたが元気になったら行きましょう」

 

 そう言って、笑みを浮かべる。

 チラリと向けられたオオガミの視線を感じつつ、

 

「それから、あなたがいない間に何人もの召喚があったのだけど。モルガン、バーゲスト、バーヴァン・シー、メリュジーヌ。モルガンとメリュジーヌに限っては、聖杯が使われていたのだけど、知っているかしら?」

「うぐっ、いやその、それは、なんと言いますか……」

「えぇ、言ってみなさい? どうしてかしら」

 

 私がそう言うと、ふらふらと視線が泳ぎ出す。

 その様子に思わず笑いそうになるが、すぐに心を落ち着かせてオオガミの返事を待つ。

 

「あ~……その~……入れました。聖杯。気付いたら、湯水のように……」

「別に、怒ってるわけじゃないの。理由を聞いただけよ? でもそうね。反省しているのなら、おとなしく撫でられていなさい?」

「……はい」

 

 そうして、しばらくされるがままだったオオガミ。

 だが、意を決したようにゆっくりと起き上がる。

 私は少し悲しそうな顔をしながら、

 

「あら、私の膝枕は嫌いだったかしら」

「嫌いなわけではなく、驚きと言うか……うん、そうですね。驚きが強いです。ステンノ様」

「ふふっ、残念。疲れきっていたようだから、今なら騙せると思ったのだけど」

 

 そう言って、エウリュアレよりもちょっぴり刺激的な笑顔を浮かべるステンノ。

 オオガミはため息を吐き、

 

「騙して何をするつもりだったんですか」

「それは――――気分次第かしらね」

「なるほど……?」

 

 エウリュアレとは違う、妖艶な笑みを浮かべるステンノ。

 それを見たオオガミは、何とも言えない顔をしつつ、

 

「それで、目的は達成されました?」

「そうね……どこで気付いていたかだけ教えて貰っても良いかしら」

「……膝枕に頭を乗せた時くらいですね……」

「帰ってきてすぐではなく?」

「まぁ、疲れていたので。普通に気付かなかったですよ」

「本当に疲れていたのね。じゃあもう少し休んでいきなさい。あなたの部屋に帰るのはその後で。あそこは今とっても危ないもの」

「え、なんですかそれ。めちゃくちゃ不安なんですが」

「一日くらいで変わりはしないわ。瞬きほどですもの」

 

 そう言って、ステンノは強引にオオガミをベッドに寝かしつけるのだった。




 エウリュアレ様不在のレア回。

 2部6章の傷を癒さねば……なんだか感情がどっか行ってしまったみたいなんだ……


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良いご身分ね?(不本意ですが!)

※ 真名バレ注意


「……ずいぶんなご身分ね。マスター?」

「不本意だし助けて欲しいのだけど」

 

 そういうオオガミは、右腕をモルガンに、左腕をメリュジーヌに拘束され、背後からバーゲストに捕らえられていた。

 エウリュアレは呆れた顔で、

 

「あなたがいない間、三人とも、毎度時間差で部屋を襲撃してきて大変だったのだけど」

「えっ、なにそれ」

「人聞きの悪い言い方はやめてください。私は夫と私の部屋を奪還しようとしていただけです」

「私は別に、襲撃をしようとしたわけではなく、どんな部屋なのかを見に行っただけで……」

「僕も部屋を見に行っていただけで、襲撃なんてしてないよ。最も、彼女には敵対行動に見えてしまったみたいだけど」

「三人とも私を見るなり攻撃してきたのだけど。映像も残っているから見る?」

「いや、それはいいよ。というか、部屋は大丈夫? 無事?」

 

 話を聞いている限り悲惨な状況ではないのかと不安そうなオオガミに、エウリュアレは目を逸らしながら、

 

「荒れる度にBBとノッブが修復してたわよ……」

「何か仕込まれてるってことじゃないかなそれは……」

「知らないわよそれは。流石にそこまで気に出来るほど余裕はなかったわ。不審者を追い返すのに精一杯だったもの」

 

 そう言うと、エウリュアレは不審者三人に目を向ける。

 その視線を受けた三人は、オオガミの後ろに隠れるように動く。最も、バーゲストが大きすぎて弾かれるので、素振りだけだったが。

 

「私、この女だけは好きになれそうにありません」

「そう? なんだかんだ仲良くなれそうだけど」

「我が夫よ。どこをどう見たらそのような結論になるのですか」

「いや、何となく思っただけなんだけど……仲良くしたくはないんですか?」

「……夫が、仲良くしろと言うのなら……善処します」

「じゃあお願いします」

「っ……わ、かりました」

 

 苦虫を噛み潰したような顔で答えるモルガン。

 エウリュアレはそれを見て一瞬嫌そうな顔をするも、

 

「別に、もうモルガンは良いわよ。ここにいる限り、そんな脅威じゃないもの。問題はそっち! どうしてまたランサーを増やしてるのかしら!」

「正直ランサーは僕以外要らないんじゃないかな! 大丈夫! 僕一人で全員倒せるよ!」

「……どうしてランサーはこんなにも多いんだろうね?」

 

 妙に片寄ってるよね。と心底不思議そうに言うオオガミ。

 エウリュアレは呆れたような顔をすると、

 

「で、その物騒なのはなんなのよ……」

「あぁ、そう言えば、ちゃんと名乗ってなかったね」

 

 メリュジーヌはそう言うと、オオガミから少し離れ、

 

「僕は妖精騎士ランスロット。真名はメリュジーヌ。よろしくね、カミサマ?」

「挨拶ありがとう。私はエウリュアレ。無力、非力、愛玩の女神だから、精いっぱい守ってちょうだいね? 最強の騎士様?」

「マスターどうしよう。彼女、虚言癖があるみたいだ。無力で非力な愛玩の女神を名乗っているよ?」

「まぁ、男性の思い描く偶像ではあるから間違ってはないかもしれない。ただまぁ、玩具はこっちになって、ここの彼女は無力で非力どころかむちゃくちゃに強いけど」

「あら、玩具希望かしら? 良いわよ叶えても」

「遠慮しときます。というか、両腕が痛いくらいに殺気立たれてるので止めていただけないでしょうか」

「ふふっ、ガウェインのあなたはなにもしないのね」

「わ、私はその……あまり積極的になりすぎないようにしているといいますか……色々堪えているのです。ですので、獣性を抑えるためにも、これからもガウェインと呼んでいただければ……」

「そう……まぁ、うちにはあの太陽の騎士はいないから、混ざることはないわね。それじゃあ、モルガンとメリュジーヌ? いい加減私のオオガミから離れて貰おうかしら」

「拒否します」

「断るよ」

「う~ん腕が引きちぎられそう……!」

 

 笑顔のままどんどん顔が青くなっていくオオガミを見て、エウリュアレは仕方なさそうに、

 

「じゃあ、シミュレーションルームに案内するわね」

 

 そう言って、パンパン、と手を二度叩く。

 直後現れた、アビーの触手とはまた違う赤と黒の触手が、モルガンとメリュジーヌを捕らえ、オオガミから引き剥がしてどこかへ連れ去る。

 

「それじゃあオオガミ。行ってくるわね」

「行ってらっしゃい。無茶しすぎないでね」

 

 そう言って、シミュレーションルームに向かうエウリュアレ。

 残されたオオガミとバーゲストは、

 

「食堂で待ってようか」

「いいですね。ここの食事は見たこと無いものも多く、私も色々と学べているので助かります」

「いつか厨房に立ってそうだね?」

 

 そんなこと話ながら、食堂に向かうのだった。




 エウリュアレは本来戦えないほど弱いサーヴァントなんだよ……本来は……まぁ、我が家クオリティが本来の枠に収まるわけ無いんだけどね!

 メリュジーヌだけ、本気でどうして恋人扱いしてくるのかわからん……記憶改竄されるし……謎しかないんですけど……


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ちゃんとお使いできたわ!(事件は起こしてない?)

「マスターおかえりなさい! お使いちゃんとしてきたわ!」

「うぉ、ビックリした……お疲れ様アビー。ただいま」

 

 正面から飛び付いてきたアビゲイルを抱き留めて、勢いを殺すためにその場でくるくると何度か回るオオガミ。

 そして、ゆっくりアビゲイルを降ろすと、

 

「あれ、アビー、ちょっと軽くなった?」

「えぇ、向こうで私のたこせんサンドが大好評だったわ!」

「あぁ、それで……触手、減ってない?」

「再生はしてるけど、強度は足りてないわ。まだ魔力が足りてないの」

「そっか~……あぁ、だから昨日はアビーじゃなくてBBの触手だったのか」

「? どうかしたのかしら?」

「いや、なんでもないよ。それより、今日はどうしたの?」

 

 昨日の出来事を振り払いつつ、アビゲイルに聞くオオガミ。

 聞かれたアビゲイルは、首をかしげながら、

 

「ん~……特に何かある、というわけではなかったのだけど……あ、そうだ! マスター。私、お祭りの時にお店を出したいのだけど!」

「え、出店を……?」

「えぇ! あっちの私にお料理を教えてるときに色々とやってみたくなってしまって! 良いかしら!」

「いいけど……触手が入っていない料理も作ってよ?」

「えぇ、えぇ! もちろんだわ! 初見殺しも楽しいけれど、油断させてからの一撃も楽しいものね!」

「絶対なにかを間違えてるよね……!」

 

 とは言いつつも、今度はどんな劇物料理を作るのか、わりと楽しみにしているオオガミ。

 そこでふと思い出したことを聞く。

 

「そう言えば、たこせんサンドを食べても平気なサーヴァントが何人かいたよね」

「えぇ。同じフォーリナーの方々や、ジークさん、怖い方のジル・ド・レェさんたちには効かなかったわ」

「待って。美味しそうに食べてたとかではなく、効かなかったっていう感想はどうなの?」

「だって平気かどうかを聞かれたんですもの。でも、美味しそうに食べてるかどうかで言えば、皆さん最初は美味しそうにしているのよ? 触手を食べた途端倒れてしまうだけで」

「どうしてそこで触手を入れてしまうのか」

「だって大好評の部分ですもの。除くわけにはいかないわ」

 

 そう言って、誇らしげに胸を張るアビゲイル。

 オオガミは何がそこまで彼女を駆り立てるのかと首をかしげるも、通常のタコやイカとは違う旨味成分でもあるのだろうと、思考放棄した。

 

「まぁ、それはそれとして、出店を開くならエミヤに申請を出さないとだ。別に必須ってわけじゃないけど、調理器具とかの貸し出しをして貰えるからね。設備も用意してくれるから使わない手はないよ」

「今まではなかったと思うのだけど?」

「今回から新しくそういうのも作ろうかって話になってね。エルキドゥに走り回って貰うのも申し訳ないし」

「そう……じゃあ、私もしっかり書くわね! でもマスター。わからないところもあるかもしれないから、一緒に来てくれないかしら」

「まぁ、それくらいなら。じゃあ行こうか」

 

 そう言って、二人はエミヤを探しに行くのだった。




 アビーのお使いについてはそのうち。でも今年の夏イベは9月なんだよなぁ……どうしようかなぁ……


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頼みごとがあるんだけど(お断りします)

「やぁカーマ」

「うげっ、マスターさん……なに企んでるんですか……」

「信頼してくれてるみたいで何よりだよ?」

 

 露骨に嫌そうな顔をするカーマに、苦笑いで返すオオガミ。

 だが、カーマはため息を吐くと、

 

「まぁなんとなくわかりますよ。夏祭りの話でしょう? 私にも出店をしろって言うんでしょう?」

「いや、カーマはなにも言わなくても参加してくれると思ってるけど」

「どういう意味ですかそれ!」

 

 頬を膨らませ、抗議するカーマ。

 オオガミは不思議そうに首をかしげつつ、

 

「だって、バラキーが祭りに来るのに、カーマが出店を出さないなんて事無いでしょ?」

「……まぁ、否定はしませんが」

「うん。だから最初から申請してる」

「本人に何の連絡も来てないんですが? まったく……私がやらないって言ったらどうするつもりだったんですか」

 

 そう言って、心底呆れた顔で問うカーマに、オオガミは、

 

「そりゃもちろん、バラキーを盾にしてでもやらせるつもりだったけど」

「人の心を妖精国に置いてきたんですか……?」

 

 予想よりも遥かに凶悪な案が出てきて、困惑するカーマ。

 だが、オオガミはにっこりと笑みを浮かべると、

 

「冗談だよ。だってほら、する前にこっちがやられるし」

「……そういうことにしておきましょうか。それで? 夏祭りに参加するように説得に来たんじゃないのなら、何か用事があったんじゃないんですか。名前を呼びながら挨拶をするときは基本そうですし」

「え、そんな癖あったんだ……自覚全然無いんだけど」

「いいですよ知らなくて。そもそも、エウリュアレさんに言われただけですし。あの方、本当にマスターさんの事に関して以上に詳しいですね」

「それだけ長い付き合いだってことだけど、それは喜んで良いのか……?」

「これは別に弱点ってわけじゃないですし問題ないと思うんですが」

 

 カーマに言われ、それもそうか。と納得するオオガミ。

 そして、彼は綺麗な包装紙に包まれた菓子折りを取り出すと、

 

「これを届けてほしいんだけど」

「……自分で行けば良いんじゃないですか?」

「気軽に行ける場所でもないからね……でもまぁ、カーマなら単独顕現でどうにかなるんじゃないかなって」

「あ~……そういうことですか。まぁ、縁はありますし、行けなくはないですけど……それを持っていけば良いんですか?」

「うん。本当はアビーに頼もうかと思ったんだけど、エウリュアレが離さないから。代わりに行って貰えないかな?」

「……お祭りで出す料理の試作を手伝ってくださいね」

「その程度ならいくらでも。こっちにとっても得しかないからね」

 

 オオガミが言うと、カーマはため息を吐き、

 

「じゃ、行ってきますね」

「行ってらっしゃい」

 

 そう言って、オオガミはカーマが去っていくのを見送るのだった。




 夏イベは9月になってしまったのなんでなの……なんでなの……


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どうして私の部屋にいるんだよ(部屋が吹き飛んだから仕方ないよ)

「おい、どうして私の部屋にいるんだよ」

「自室がまた吹き飛んでしまったので」

「理由になってねぇっての」

 

 部屋のすみに隠れるように潜んでいたオオガミを引きずり出すバーヴァン・シー。

 

「んで? 今日は誰に追われてるのバゲ子? ランスロット? まさかお母様とは言わないわよね?」

「その三人とエウリュアレとメルトとBB」

「6人に追われてるとか何したらそうなるの……?」

「わからない……でも、目を覚ましたら部屋が燃えてた……」

「それ巻き込まれたらアタシの部屋も燃えるんじゃ……?」

「コレクションごと大炎上だと思うよ」

「最悪じゃねぇか!」

 

 勝ったとでも言いたげなオオガミの表情に、バーヴァン・シーは怒った顔で叫ぶ。

 だが、すぐに何かに気付いたような顔をすると、

 

「これ部屋の外に投げ出したら良いだけじゃん! あっ、こら! おい! ベッドを掴むな! 抵抗するなって!」

「い、いやだ! もうここくらいしか隠れる場所無いから!! 後はもうだいたいエウリュアレが探しに来るから!!」

「おとなしく見つかって捕まってれば良いだけでしょうが! 誰も危害は加えないっての!」

「モルガンたちとエウリュアレが死ぬほど仲悪いから! というか、部屋燃えてたから被害甚大だよ!」

「いいじゃんか部屋が燃えるくらい……いや、部屋が燃えるのは問題だわ……部屋が直るまでの間、どこで寝泊まりするわけ?」

 

 手を止め、聞いてくるバーヴァン・シーに、オオガミは少し考え、

 

「……かわいいかわいいバーヴァン・シーさん。どうか一晩泊めていただけませんか?」

「まぁ、冗談がお上手なのね。ダメに決まってんだろ」

「ダメかー」

 

 そう残念そうに言うオオガミ。

 バーヴァン・シーは、それを見てオオガミを引っ張っていた手を離すと、

 

「まぁいいや。匿うつもりはないけど、見つかるまではいれば? ただし、見つかったらすぐに投げ出すから」

「ありがとう。十分すぎるくらいだよ」

「えぇ、存分に感謝しなさい」

 

 そう言って、ベッドに腰を掛けるバーヴァン・シー。

 オオガミは地面に座りながら、

 

「そう言えば、君に聞きたいことがあったんだけど」

「あん? なんだよ」

「モルガンが俺を夫って呼んできてるの、君としてはどう思ってるの?」

「……絶対にお父様なんて呼ばないから」

「別に呼ばれたいわけではないからそれで良いんだけど……」

「まぁ、好きか嫌いかで言えば嫌いだけど、お母様が決めたことだもの。反対する理由もないわ。もっとも、害があるなら排除しなきゃだけど」

「危害を加えるつもりはないけど……まぁ、気にしてないならそれで良いや」

「そ。じゃあおとなしくしてて」

 

 バーヴァン・シーはそう言うと、ベッドで横になるのだった。




 バーヴァン・シーはかわいいんだよ……


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部屋を燃やさないでください(出来るだけ善処してみます)

「モルガンさん。どうか部屋は燃やさないでください」

「善処します。もっとも、そこの女神がいなければそんなことにはならないのですが」

「いい加減しつこいわね……あそこは私の部屋なの。勝手に入って勝手に怒るのは話が違うでしょう」

「うん。エウリュアレの部屋でもあるけど、俺の部屋でもあるのを覚えててくれると嬉しいなって」

 

 炎上し続ける部屋を飛び出し、静かに泣きながら食堂に向かうオオガミと、彼を挟むようにして喧嘩をするエウリュアレとモルガン。

 もしかしたら喧嘩するほど仲が良いというパターンなのではと期待を持ってはいるが、毎朝部屋が炎上している現状、その可能性は限りなく低いのではと考えていた。

 

「はぁ……お菓子で懐柔出来ないからなぁ……バラキーもカーマも、そこでおとなしくなってくれたわけだけど、効かないよねぇ……」

「聞き捨てなりませんね。お菓子とはなんですか。その口ぶりからして特別製のようですが」

「い、いや、そんな大層なものじゃな」

「あなたは知らないわよね。オオガミは色々とお菓子を作ってくれるの。でも残念ね、部屋を焼くような人にお菓子を出してくれるほどお人好しじゃないもの」

「いや誰もそこまでは」

「そ、そんな……い、急いで部屋を修復してきましょう。大丈夫です。まだ覚えていますので!」

「それは嬉しいけどそうじゃないかなぁ」

 

 オオガミが言葉を挟む暇もなく、走っていってしまうモルガン。

 その様子を見てエウリュアレは、

 

「切り札は無駄にさせないから」

「人の料理を切り札にしないで」

 

 責任が重いよ。と嘆くオオガミに、エウリュアレはにっこり笑いながら、

 

「久しぶりにあれを食べたいのだけど」

 

 

 * * *

 

 

「な、なんですかこれは……!」

 

 目を見開き、驚愕の表情で固まるモルガン。

 その隣で同じものを前にしているエウリュアレが、

 

「これがオオガミの特製メロンパフェ。滅多に食べられないんだから」

 

 座っているモルガンと同じくらいの高さのメロンパフェを見て、どこから攻めれば良いのかと悩んでいるモルガンを見てエウリュアレは楽しそうに微笑む。

 オオガミはモルガンの正面に座りつつ、

 

「まぁ、滅多に食べられない原因は、昔作りすぎたから目をつけられただけなんだけども。たまに訓練の名目で畑を手伝わされるよ」

「どこで作ってるのよ」

「閻魔亭の裏」

「そんなところに定期的に行かないでほしいのだけど……」

 

 平然に地獄に行っているというオオガミに、困ったような顔をするエウリュアレ。

 その顔を見て、オオガミは苦笑しながら、

 

「まぁ、食べて喜んでくれればそれで十分だから」

「それはそれでしょ。もうちょっとマシな場所を探しなさいな」

 

 そう言いつつ、パフェを食べ始めるエウリュアレ。

 モルガンは横からその様子を見て真似るように食べ始めた。

 オオガミはその様子を見ながら、嬉しそうに笑うのだった。




 よし。モルガンさんはこれで沈静化してくれるはず。沈静化してください。

 実際のカルデアは知らないが私のカルデアは甘味が頂点。甘味に勝てる英霊など、味覚がないか甘いのが苦手な相手しかいないのだ。


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いややっぱおかしいだろ(そんなにおかしいかな?)

「……いややっぱおかしいだろ」

「? どうしたの?」

 

 シミュレーションルームに向かいながら悪態を吐くバーヴァン・シー。

 その前を歩いていたジャックは、振り返りながら首をかしげる。

 その無邪気な様子にバーヴァン・シーはより嫌そうな顔をするが、それを気にせずジャックは隣りまで戻ってくる。

 

「なんで私が面倒見なきゃ行けないわけ?」

「うん? わたしたちはあなたをお部屋から連れ出してって頼まれたんだよ?」

「あん? 誰がそんなの頼んだんだよ」

「おかあさん!」

 

 ジャックの返答に、バーヴァン・シーは首をかしげて考え、

 

「それは……親子揃ってサーヴァントってわけ?」

「ううん。おかあさんはサーヴァントじゃないよ。あなたもおかあさんに呼ばれてきたんでしょ?」

「……マスターのことか」

「うん。おかあさん(マスター)!」

「……自分のことをおかあさんって呼ばせてるのキモすぎだろ」

 

 ジャックのマスターの呼び方に若干寒気を感じたバーヴァン・シー。

 だが、ジャックは不思議そうな顔をしながら、

 

「でもおかあさんとモルガンが結婚したらあなたにとってもおかあさんはおかあさんになるでしょ?」

「いやそれを言うならお父様……待て。私は認めないからな? あとお母様を呼び捨てにするんじゃねぇ!」

「じゃあモルガンはなんて呼べば良いの?」

「そりゃ、様付けだ。決まってんだろ」

「でもおかあさんは様付けしないよ?」

「マスターよりお母様の方が偉いからな」

「ふぅん。変なの~」

 

 ジャックはそう言って笑いながら小走りで前に出る。

 バーヴァン・シーは呆れた顔でその後ろをついていきながら、

 

「そういや、あいつを親みたいに呼んでるやつって他にもいるのか?」

「ん~? おかあさんをおかあさんって呼んでるのはいないけど、おかあさんのおねえちゃんといもうととおかあさんのおかあさんはいるよ?」

「……全員狂人だろ」

「おかあさんのおかあさんはバーサーカーだけど、おかあさんのおねえちゃんは聖女サマだよ?」

「……良くないものにでも取り憑かれてるの?」

「しらな~い!」

 

 そう言いながら、たどり着いたシミュレーションルームの扉を開き、入っていくジャック。

 バーヴァン・シーも遅れて入ると、

 

「へぇ? 悪くはないじゃない」

「でしょ? おかあさんが心配するからあんまり来れないけど、ちょっとだけ好きなんだ」

 

 そこは新宿。その再現ではあれど、夜と感じさせない強い光に、彼女たちは笑みを浮かべる。

 

「ここはグロスター並みに発展してるんだろうし、ちょっと見て回るか。一緒に行くんだろ?」

「うん。ここに連れてきたのは、あなたならそう言ってくれると思ったからだもん」

「お上品でいさせたいってか。ま、私までそれに従うつもりはないけど、でも、これは二人の秘密な。そっちの方が盛り上がるでしょ?」

「うん! 余計なことを言うお口は縫い合わせちゃうよ! それでもダメなら解体だー!」

「アッハハ! いいわねそれ! えぇ、余計なことを言ったら解体ね! バラしてあげるわ!」

 

 そう言いながら、二人は夜の新宿を探索しに行くのだった。




 モルガンには娘がいますけど、オオガミくんにも娘はいるんですよ……! と、書き殴ってからこれどちらも残虐娘では。と気付く今日この頃。

 最低最悪で最高の羽虫ことオベロンくんはいつ来てくれるのですか。お迎えしたら連れ回してやるからな絶対。


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護衛の一人もいないんですね(たまには一人が良い時もあるので)

※ 本日は向日 葵様とのコラボです!

 マスター同士が出てきたりはしない裏方回みたいなものです!












「あらあら、こちらのマスターさんは、護衛の一人も着けずにずいぶんと無警戒なんですね?」

「……お客様かな。どちらさま?」

 

 人通りが少ない区画の廊下のすみに座ってのんびりしていたオオガミ。

 そんな彼に声をかけた人物は、廊下の奥から営業スマイルを携えてひょっこりと現れる。

 

「コヤンスカヤ?」

「えぇ、みなさまご存知NFFサービス代表のタマモヴィッチ・コヤンスカヤでございます。とはいっても、本日は商談ではありませんが」

「そう? 売りたいものじゃなくて買いたいものがあるんじゃないの? こちらのって言ってたってことは、アオイのところから来たんでしょ?」

 

 オオガミが言うと、コヤンスカヤは驚いたように一瞬目を見開くが、すぐに営業スマイルに戻ると、

 

「おや、これまたどうしてその名前が?」

「そりゃ、うちにはいないし、うちとパスが繋がっててやってきそうなのはアオイの所からだけだし。どう? 当たった?」

「まぁ当たってはいますが……なんと言いますか、想像よりも暗くないですか?」

「あぁ、うん。周りに誰もいなかったから気を抜いてただけ。でも不思議な組み合わせだね。君一人で来るのはちょっと考えてたけど、ナーサリーと一緒なんだ」

「あら、もしかしてなにもかもお見通しと言うやつでしょうか」

「まさか。だって言い出したのはエウリュアレだし。それで、何をしに来たの?」

 

 右手を腰にあて、少し気だるげに聞くオオガミ。

 事前情報と違う様子に少し違和感を覚えるも、

 

「そうですね。どうやら急かしているようですので、手短に。こちらのマスターがそろそろ誕生日のようでして、メッセージ的なものをいただけないかなと思い参上した次第で。いかがです?」

「……それだけ?」

「……こちらに気軽に来れるようにしたいのですが、よろしいでしょうか?」

 

 コヤンスカヤの提案に、オオガミは考え込むと、

 

「あんまり気軽に来られても困るけど、いいよ。気軽に来れるようにってのは具体的にどうしたら良いかってのはわからないけど、誕生日メッセージならいくらでも。お菓子もつけちゃうよ」

「お菓子ですか。それはそれで興味ありますね……ですが、それはまた今度と言うことで。こちらのマスターに内緒で来ていますのでバレないうちに帰りたいですし」

「わかった。じゃあサクッと収録しちゃおうか」

「えぇ、お願いします」

 

 そう言って、コヤンスカヤが取り出したボイスレコーダーにオオガミは話し始めるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ふぅ、こんなものでいい?」

「えぇ、十分です。内容はともかく、取ってきたことが重要ですからね」

「毎度誕生日プレゼントをプレゼントのインパクトだけで乗り越えてるからメッセージが下手で悪かったね」

「いえいえ。案外質素で普通の方が受けが良いので、逆に嬉しいかぎりです」

 

 そう言って満足そうに頷くコヤンスカヤに、そう? と返すオオガミ。

 

「で、アンカーはどうするの?」

「あぁ、それは、こちらを持っていていただければ」

 

 そう言って、コヤンスカヤはオオガミにピンク色のクレヨンを渡してくる。

 受け取ったオオガミは首をかしげつつ、

 

「持ってるだけで良いの?」

「えぇ、どこかにおいておいても構いません。ただ、捨てられると少し困りますので、そこだけ気にしておいていただければ」

「うん、わかった。というか、ナーサリーは全然喋らないね」

「一応監視役らしいので、静かに見守っていようとか、そのような感じではないかと。まぁ、本人しかわからないのですが」

 

 未だ沈黙を貫くナーサリーに、不思議そうに首をかしげるコヤンスカヤとオオガミ。

 とはいえ、あまり深く突っ込むべきではないかなと思ったオオガミは、

 

「これでそっちの用事は済んだかな?」

「えぇ、コンプリートです。このまま帰ろうかと思っていますが、まだ何かありますか?」

「あぁ、いや、前に夏祭りをしようって話を持ちかけたんだけど、準備は進んでるかなって思って。話とか出てた?」

「はぁ、夏祭りですか? ……いえ、少なくとも私がここに来るまでの間には聞いていませんね」

「そっか……まぁ、余裕があったら来てみてってだけだから。伝わってるかだけ確認が取れればよかったんだけど、分からないか……うん。とりあえず可能性だけは考えておくかな。ありがとう」

「いえ、なにも情報が渡せず申し訳ないかぎりです。次がいつになるかは分かりませんが、その時は別の有益な情報を持って来るようにいたします」

「気にしなくて良いよ。まぁ、くれるならもらっておくけど」

 

 そう言って笑うオオガミは、コヤンスカヤの事前に聞いていた情報と一致した。

 先程のはなんだったのだろうかと考えるも、彼女はすぐに笑顔を取り繕うと、

 

「それではこれで。いずれ縁があれば、NFFサービスをどうかご贔屓に」

 

 そう言って、帰っていくコヤンスカヤをオオガミは見送るのだった。




 前半のオオガミくんはコヤンスカヤを死ぬほど警戒してるだけの一般オオガミくんなので。何かに乗っ取られているわけではないので……!


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いつの間にか仲良くなってるよね(全然仲良くない)

「いつの間にか仲が良くなってるよね」

「「全然仲良くない」」

 

 そう言って、互いを睨んでいるのは、ラムダとメリュジーヌ。

 その二人に挟まれているオオガミは、若干遠い目をしながら、

 

「そもそも、二人はなんで争ってるわけ?」

「簡単なことよ。この小さいのが、私の方が速くて強いとか言い出すんだもの。痛い目を見せてあげるわ」

「事実なのだから仕方ない。私は最強。覆らない事実だからね」

「ふんっ、なんとでも言いなさい。でも、私は既にあなたに勝ってるから」

「あれはまぐれだから。今なら負けないし」

「良いわ、受けて立つわよ。でもまた私が勝つから」

「うんうん。仲が良いのはわかったから力は抜いてくれないかな。折れちゃうよ」

 

 オオガミに言われ、咄嗟にオオガミから少し離れるメリュジーヌ。

 

「ご、ごめんマスター。思わず力が入ってしまった……」

「折れてないから大丈夫」

 

 謝るメリュジーヌだが、軽く許すオオガミ。

 だが、それを聞いていたラムダは、離れるどころか顔を寄せ、

 

「一ミリも苦しそうな顔しないじゃない。痩せ我慢も大概にして。素直な表情をしなさい? でないとつまらないじゃない」

「はいはい。でもそもそもメルトは寄り掛かるだけだからそんな痛くないよ。挟まれてるとつぶれそうになるけど」

「力を入れているつもりはないから、全くわからないわ。顔に出しなさい顔に。でないと本当にいつか潰すわ」

「努力するよ。っと、いや、それを話したいんじゃないんだよ」

 

 オオガミがそう言うと、ラムダは少し離れ、メリュジーヌは元の位置に戻る。

 

「明後日に夏祭りをやろうと思ってるんだけど、二人には警備を頼みたいんだよね」

「……私たちは監視で、遊んでるのを見てろってこと?」

「いや、何かあったら見に行く程度でいいんだけど。メリュジーヌもメルトも、向いてると思うんだよね」

「うん、警備か。もちろん受けるよ。私は妖精国でも同じようなことをしていたからね」

「私は空なんて飛べないけど。人混みをすり抜けるのはあまり得意じゃないわ」

「あぁ、メルトには、リヴァイアサンを放ってもらおうと思って」

「……監視の目を広くするって話ね」

「そう言うこと」

 

 オオガミの提案に、ラムダはリヴァイアサンを呼び出して抱き上げ、

 

「別に、出来ないわけではないけど、この子たち単体はそんなに役に立たないわよ? 三匹で連携して、ようやくあの無駄にでかいニワトリ一匹に辛勝ってところだもの」

「数は何匹まで?」

「30くらいかしら。ラスベガスの時はもう少し行けたけど、今は無理ね」

「ん~……まぁ、それだけいれば抑止力にはなるよ。かわいいは正義だし、リヴァイアサンを見ればみんな笑顔になるでしょ」

 

 そんなことを話していると、メリュジーヌが、

 

「ね、ねぇ……その、リヴァイアサンという生き物、少し触らせてもらえないかな……?」

 

 と、恐る恐ると言った様子で聞いてきた。

 オオガミはすぐにラムダを見ると、彼女はとてもいい笑みを浮かべ、

 

「イヤ」

「えっ……そ、そんな! どうして!?」

「あら、いい表情をするわね。でもイヤなものはイヤよ。リヴァイアサンは私のようなもの。海と空は相容れないの。交わらないから」

「でも昔ペンギンは空を飛んだって説があるよね」

「私のリヴァイアサンは飛ばないわ。跳びはするけど」

「ぐっ、くぅ……これがカルデアのやり口なんだね……!」

「変な誤解をされてるんだけど」

「海は私の支配下だし、彷徨海も海上だから私の支配下みたいなものね。空の最強さんにはお帰りいただこうかしら」

「なんて恐ろしいんだ……! でも私も伊達に最強を名乗ってるわけじゃない。マスターもそのかわいい生き物も必ず手に入れてみせるから!」

「じゃあ私のリヴァイアサンより役に立つことね。あぁ、でも、数を多く展開すると、全てを見れるわけじゃないからその子達がどうなっているかわからなくなってしまうかもしれないわね」

「そ、そうなの……? あっ、任せて! ちゃんと空から会場を見守ると約束しよう!」

 

 そう言ってやる気を出すメリュジーヌに、ラムダは笑みを浮かべつつ、

 

「これで、時間は作れそうね」

「一緒に回る?」

「いいえ? 残念だけど、今回はリップの先約があるの。会場で会うことがあれば挨拶ぐらいはしてあげるけど、それ以外はキャンセルよ」

「……ケンカはダメだよ?」

「ケンカなんてしてないわ。相手をしないと拗ねられるくらいよ」

「水天宮の時もそんな感じだったよね。まぁ、仲がいいならそれでいいや」

 

 そんな話をしながら、三人はシミュレーションルームに向かうのだった。




 海の最強と空の最強は争い会う関係なんだよ! という偏見を特大に盛り込みつつ、リヴァイアサンを前には空の最強も崩れ落ちるのよ……かわいいからね。リヴァイアサン。


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明日は夏祭りか(とても楽しみね)

「夏祭り、ついに明日かぁ……」

「えぇ、楽しみね。でも、一緒に回れるの?」

 

 同じベッドで横になりながらそんな話をする二人。

 ネロ祭から準備を始めた企画ではあるが、提案者が遊び回れるのかと不安そうにするエウリュアレ。

 

「それは問題なし。何かあったら連絡は来るけど、実際に運営してるのはノッブとBBだから。遊び回ってても問題はないと思う」

「そう……それなら良いのだけど」

「うん。それと、祭り自体はお昼くらいから開場だけど、どうする? すぐに行く?」

「そうね……開場から一時間くらい遅れて行っても良いんじゃないかしら。早めに行ってすぐ見終わったら花火まで暇だもの」

「それは、確かに。まぁ、のんびりしようか」

「別に、あなただけ先に行ってても良いのだけど」

「いや、エウリュアレがいない間にまわるのは気が引けると言うか。メルトにも、リップと行くからついてこないでって言われちゃったし」

「モルガンとかもいるじゃない」

「一緒にいたら不機嫌になるのによく言うよ」

「なってない。えぇ、なってないわ。行けば良いじゃない」

「……もしかして、先に行かせたいの?」

「…………」

 

 黙ってしまったエウリュアレに、オオガミは少し考えると、

 

「会場はサマキャンの時の場所にしてるから。コテージは休憩所として開放してるから、そこに13時集合。それで良い?」

「……いいわ。ただし、ちゃんと待ってなさいよ。私を待たせるなんて許さないんだから」

「はいはい。もちろん女神様を待たせるなんて恐ろしい真似はしませんよ」

「えぇ、それでいいわ」

 

 そう言って、嬉しそうに笑うエウリュアレを見て、釣られて笑みを浮かべるオオガミ。

 

「ん~……とすると、朝の時点で分かれてた方がいいかな? 開場してから分かれるって言うのも、なんか変だし」

「設営を手伝ってもいいんじゃないの? あなた、提案者なのだし」

「まぁ、警備という点ではそれでもいいかもしれない……うん。BBも苦労しそうなメンバーだし、手伝いに行こうかな」

「時間を忘れて集合場所に来ない、なんて事は無しよ。したら殺すわ」

「うん。任せて、時間は守るよ」

「人数は増えていそうね」

「二人きりの方がいいでしょ」

「アビーくらいは許すわ」

「出店やってるから買いに行こうね」

「……食べられるものならいいけど」

 

 何故かゲテモノを作ろうとするアビゲイルに、不思議な気持ちでいっぱいのエウリュアレとオオガミ。

 だが、今回はちゃんと普通の料理も作ると本人が言っていたので、きっと大丈夫だろうと祈る。

 

「……まぁ、不安なこともあるけど、大丈夫だよ、きっと」

「そうね。BBとノッブなら、万が一でも何とかしてくれるわ」

「そうそう。じゃ、明日のために今日は休むとしようか」

「えぇ、そうね。おやすみなさい」

「うん、おやすみ」

 

 オオガミはそう言って、部屋の明かりを消すのだった。




 わくわく……わくわく……そう、夏祭りなのです。頑張るぞぉ~!


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とんでもなくいい天気!(いやなくらいの天気ですよね)

 本日第一話


「どこまでも広い青空、山の向こうの積乱雲、蝉の声! 夏って感じだね!」

 

 サマキャンのときに訪れた蓬莱の地で、背伸びをするオオガミ。

 すると、

 

「今日ほど水着を持っていてよかったと思った日はないですね。ペレの権能がなくても真っ黒になっちゃいそうです」

「儂らの頃より暑くね? これ本当に日本の夏? 鎧とか着てらんないんじゃけど」

 

 バスターと大きく書かれたTシャツを着てうちわを扇ぐノッブと、チアリーダー服を着て同じようにうちわを扇ぐBB。

 時折山を抜けて吹き抜ける風が涼しいが、その風がなければ今すぐにでも倒れそうな暑さだった。

 

「これ、開始お昼からですよねぇ……どうしますぅ? このままだと暑くて倒れますよぉ~……?」

「ん~……何か画期的なアイテムはないの?」

「儂ら冷却魔術とかからっきしじゃからなぁ……あ~、風は涼しいから、扇風機用意するか……BB。倉庫の奥に昔ライブ用に作った送風機あるじゃろ。あれ持ってきてくれんか」

「あ~……ホコリ被ってそうですし、一回点検しないとですねぇ……昨日のうちに準備しておくべきでした。こんな暑いとか想定してなかった自分を悔やみます……」

 

 そう言いながら、門を生成して工房へ帰っていくBB。

 ノッブは汗をぬぐいながら、

 

「そういえば、今回の夏祭りに申請してる出店。見ない名前もあったんじゃけど、マスター知っとる?」

「あぁ、うん。知ってる。一応お客さんではあるけど、扱いは普通の出店と同じでいいよ。最低値はアビーで」

「それ即退場ものなんじゃけど。でも一度も退場させてないから最低値がそこになるのは是非も無しかぁ……」

 

 失敗したなぁ……と呻くノッブだったが、すぐに首を左右に振り、

 

「まぁ問題ない。どちらにせよ、あれを可とするのなら大抵はアリじゃな。よくわからん怪しい店も、一応許容範囲というわけか。いやはや、寛大を通り越して無防備というか……それも嫌いじゃないけどね!」

「死傷者無しなら問題無し。その流れでなんだけど、警備はどうなってるの?」

「ん? いつも通りのエルキドゥに、新人のメリュジーヌと、メルトがペンギンを派遣してくれたくらいじゃな。メリュジーヌは――――」

「僕を呼んだかな、マスター」

「話題が出ただけで飛んでくるの、アビーを感じたね」

 

 どこからともなく爆音爆速で現れたメリュジーヌに、思わず顔が引き吊るオオガミ。

 だが、話題の本人は少し不服そうに、

 

「仕事中はメリュジーヌじゃなくてランスロットがいいな。確かにここにはランスロット卿がいるけれど、僕もランスロット卿としての仮面を被った方がいいこともある。それを君はよく知っているだろう?」

「確かに。でも、紛らわしいかな……」

「いや大丈夫じゃろ。あの不倫騎士、振る舞い雑じゃし、警備には向かん。気付いたらいないのがデフォルトなところあるからな。それよりも、あの騎士の名前を授けられるとか拷問じゃよね」

「ノッブ。一応ちゃんと強いよあの人は。普段死ぬほどダメダメだけどね」

「普段ダメならダメじゃろ~」

「……ランスロットはメリュジーヌのものってことで。あっちはダメダメお父さんにしておくか」

「なんだかランスロットって名乗るのをためらいそうになるんだけど……」

 

 複雑そうな顔をするメリュジーヌに、オオガミは苦笑しつつ、

 

「まぁ、今日はメリュジーヌじゃなくてランスロットって呼べばいいんだよね。そもそもダメダメお父さんの方には滅多に会わないし、問題ないよ」

「マスター避けられてるんか?」

「いや、単純に会わないだけだと思うんだけどね……?」

「まぁカルデアはそれなりに広いからそう言うこともあるかのぅ……?」

 

 う~ん? と考えるノッブ。

 すると、メリュジーヌが、

 

「じゃあ、僕は見回りに行ってくるよ」

「うん。祭りが始まったら、出店を遊び歩きながらでもいいからね」

「嬉しい提案だけど、それはまだ先になりそうかな。それじゃあ行ってくるね」

「うん。行ってらっしゃい」

 

 そう言って、大空に飛び立つメリュジーヌ。

 既に点のようになっているメリュジーヌを見上げていたオオガミは、ノッブに視線を移すと、

 

「準備としては、どうにかなりそう?」

「12時までには余裕で間に合うじゃろ。暇なら手伝ってくれてもエエんじゃよ。儂らのやつ」

「13時には予定あるからね?」

「いやさすがにそこまではかからんと思うよ?」

 

 そんなことを話しながら、オオガミはノッブの後をついていくのだった。




 このあと帰って来たBBと送風機をめぐる戦いが起こるが、それはまた別の話……


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無事合流かな(さぁ、遊びに行きましょ)

 本日二本目!


 12時から始まり、現在13時。

 開場からまだ一時間ほどだが、既に休憩所のコテージは大盛況だった。

 その様子を、部屋の真ん中付近にある椅子に座りながら眺めていたオオガミは、

 

「はぁ……想像の倍は混んでるね……これみんな夜まで持つのかな……早めに設定しすぎたか……」

 

 そう言って、失敗したかもしれないと悩むオオガミに、

 

「別に、一回帰ってもいいんじゃないの?」

 

 と、背後から声がかかる。

 振り向くと、そこには浴衣を着たエウリュアレが立っていた。

 藍白色にアサガオの柄のきれいな浴衣で、手には同じ絵柄の扇子を持ち、座っているオオガミに、若干不満そうな顔をしていた。

 

「……とても似合ってるいい浴衣だね」

「ありがと。でも、こんなに暑いとは思わなかったわ。もっと遅めでもよかったかもね」

「そんな気はするね。意外と難しいね、時間判断」

「まぁ、ここに来るまでにバラキーとすれ違ったけど、あれは楽しんでそうだったわ」

「そっか……じゃあ、こっちも色々見ていこうか。それなりに広いから、全部回れるかは運次第だけど」

「売り切れてたらちょっとイヤね」

 

 そう言いながら、オオガミはエウリュアレの手を取って、コテージを出る。

 

「まずは……どこに行こうか」

「暑いから冷たいものがいいわ。なにかないかしら」

「じゃあ、まずはあそこかな」

 

 オオガミはそう言うと、人混みの中をどんどん進んでいく。

 エウリュアレもはぐれないようにオオガミに出来るだけくっついて、強く手を握る。

 

「んもう、まだこんなに日が高いのに、なんだってこんな混むのよ」

「まぁ、異国の行事はなんだって気になるものだし。早めに行って楽しもうって人は多いんじゃないかな?」

「これ、夜の方が空いてたかもしれないわね」

「それはないでしょ。夜は花火があるから、そっちの方が混むよ」

「むぅ……あんまり好きじゃないわ。こういう混雑」

「アステリオスならそんな感じなかったのかもだけどね……彼ほど頑丈じゃないからなぁ」

「いいのよ、別に。あなたにそれは求めてないもの。それより、はぐれないでよ。私じゃ見つけられないわ」

「うん。そろそろ目的地だからもう少しだけ我慢してね」

「えぇ、大丈夫よ」

 

 そう言って、オオガミの腕をしっかりと掴むエウリュアレ。

 オオガミは強く手を握り返しながら目的地に向かい、

 

「ん、マスターか。その様子だと、無事合流できたみたいだな」

「あ、ジーク……あれ? ここ、アナスタシアの店じゃなかった?」

「その通りなんだが、前を通りかかったときに店番を任されてしまったんだ。俺もやってみたかったのもあったから引き受けたのだが、一気に混み始めて少し驚いている。氷はまだあるが、いつなくなるかわからないな……」

「あ~……うん。お疲れ様。交代は出来ないけど、アナスタシアを見かけたら声をかけておくよ」

「あぁ、よろしく頼む。ところで、何を食べる? ドライフルーツのかき氷は売り切れているから、他ので頼む」

「流れるように商売に入ったね」

 

 オオガミはそう言って、メニューに目を向ける。

 小中大のかき氷に、イチゴ、メロン、レモン、ブルーハワイのシロップがあって練乳がかけ放題となっていて、どれにしようか考えながら、隣のエウリュアレに目を向ける。

 

「エウリュアレは何がいい?」

「……ブルーハワイって何味よ」

「それは永遠の謎。というか、アナスタシアも適当に導入したんじゃないの?」

「俺も食べてみたが、分からなかった。ただ美味しいのは確かだから安心してくれ」

「ふぅん……じゃあ小さいサイズでイチゴ」

「俺は普通サイズのメロンで」

「わかった。少し待っていてくれ」

 

 そう言って、氷を取り出し削り始めるジーク。

 オオガミたちはそれを見ながら、

 

「それにしても、ドライフルーツはどうやって作ってたんだろ……」

「元々、食糧の保存期間を伸ばそうと言う話でそういう案があったらしく、彼女が作ってみたいと言うので決行されたらしい。今のところ急速な冷凍は彼女の専売特許だから、自由に使っていいらしい」

「へぇ……ジークは色々知ってるね」

「倉庫番だからな。そういう話はよく入ってくるんだ」

「なるほど……」

 

 厨房組じゃないんだね。と言って納得していると、ジークが完成したかき氷を差し出し、

 

「小さいのと普通ので、合計500QPだ」

「オッケー。はい、500QP」

 

 オオガミはそう言って、かき氷を受け取ってからQPを手渡す。

 受け取ったジークは、ちゃんとあることを確認して、

 

「あぁ、ピッタリだ。練乳はそこにあるから、好きなだけかけていってくれ。ただ、一本丸々使うのはちょっと困る。ストックはあるけど」

「え……一本丸々使うなんてことある?」

「あぁ……茨木童子が使っていた。あれは驚いたな……アナスタシアがすごい顔をしていた……」

「何それちょっと見たかったな……」

 

 そんなことを話していると、隣から、

 

「村正! あれ食べよう!」

「かき氷ぃ? お前さん、よく食うなぁ……いや、いいけどよ? (オレ)よかお前さんの方がQP持ってるだろ」

「それはそれだよ村正! 枯渇させるからな村正ぁ!」

「なんだなんだ、(オレ)の財布に恨みでもあんのか?」

 

 そう言いながら、キャストリアと村正がやってきた。

 そして、オオガミたちと目が合うと、

 

「あ、オオガミ!」

「キャストリアに村正。楽しんでる?」

「うん! 結構楽しんでるよ!」

「こういうのも乙なもんだ。珍しいもんもあるし、たまにはこういうのもいいな」

「それならよかった。こっちも準備した甲斐があったよ」

「あぁ。ただ、次は店をやってみてぇな。色々と作りたくなっちまった」

「村正はいつもそんな感じだよね。私はお客さんでいいかな」

 

 そう言って苦笑するキャストリアに、村正は、

 

「まぁいいじゃねぇか。とりあえずかき氷食うぞ。味選べ」

「わっ、分かったから頭撫でるな!」

「ハハハ、じゃあこっちはもう行くね」

「バイバイオオガミ! またあとで!」

 

 そう言って、オオガミはエウリュアレを連れて移動するのだった。



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食べられそうな料理だね(いつも食べられるものよ)

 本日三話目!

 今回は向日 葵様とのコラボ要素があります!

























 夕暮れ時のそろそろ18時になる頃。オオガミとエウリュアレは、アビゲイルの店の前にいた。

 白い半そでのシャツに藍色のエプロン。頭にはタオルを巻いて髪の毛が入らないようにしているアビゲイルを見て、昔屋台でこんな格好のいかついお兄さんがいたなぁ、などと思いながら、

 

「アビー、本当に食べられそうな料理やってるね」

「約束は守るわ。でも、ちゃんと特別な焼きそばもあるわ!」

「……特別なのは売れてる?」

「……20は売れたわ」

「内訳を知りたいけど怖いから聞きたくないな……」

 

 海鮮とソースがジュージューと焼ける音と匂いに、ぐぅ、と悲鳴を上げるお腹。

 

「……特別な焼きそば、食べますか?」

「普通の焼きそばで」

「むぅ……意外と好評よ? 食べた人には」

「正気を保ったまま食べられるなら美味しいんだろうけどね。アビーの料理の腕もかなり上がってるし」

「褒めたって、マスターは最近食べてくれないもの。悲しいわ?」

「食べられるもので作ってるなら食べるよっていってるでしょ。普通の焼きそば二つね」

「おまけで特別な焼きそばは?」

「いらないよ」

「むぅ……残念。でも、食べてもらえるなら作るわ。ちょっと待っててね」

 

 そう言って、出来立ての焼きそばをパックに詰め、輪ゴムで蓋を閉じて割りばしと一緒に差し出す。

 

「800QPよ」

「ありがと。800QPね」

「受け取ったわ。エウリュアレさんも、感想聞かせてね?」

「えぇ、ちゃんと帰ったら感想を聞かせるわ。特別な方は食べてあげられないけど。ごめんなさいね?」

「いいえ、大丈夫よエウリュアレさん! 特別な焼きそばは、ジークさんがおいしいって言ってくれたもの! それだけで十分よ!」

「そう、それならよかったわ」

 

 そう言って、ふふっ、と笑みを浮かべるエウリュアレ。

 

「じゃ、頑張ってね」

「えぇ。今回もいっぱい売って、美味しいっていっぱい言ってもらうわ!」

 

 オオガミはそう言って、手を振りながらアビゲイルの焼きそば屋を後にする。

 そして、人混みから離れた湖畔近くまで移動すると、

 

「ふぅ……なんだかんだアビーのところも売れてるみたいでよかったよ」

「いつもは怖いもの見たさの客しかいないのにね。普通の客も入っているようで安心したわ」

「うん、良かった良かった。楽しそうにしてるのが一番だよね」

「そうね。アビーもだけど、結構遊べて楽しかったわね」

「まだ終わりじゃないけどね?」

「えぇ、時間にしたらまだ半分くらいかしらね?」

「まぁ、そんな感じかなぁ。って言っても、もう5時間も遊んだからなぁ……」

「金魚すくいでずっと子どもサーヴァントと争ってたものね。ジャックには勝てなかったけど」

「ジャックには無理。あれは勝てないって……店主の龍馬さんも困ってたし……」

「そうね。あのままなら金魚が一匹も無くなる勢いだったもの」

 

 そう言って、器に入りきれず逃げ出す金魚が大量発生していたのを思い出しながら、エウリュアレは言う。

 オオガミも一緒に思い出しながら苦笑するが、

 

「まぁ、おかげで簡単なのかなって思った人たちが集まって惨敗してたから、いい感じなのかな?」

「結局誰も持って帰らなかったもの。でも、意外と以蔵がうまかったのよね……」

 

 こんなの簡単だろう? と言いたげな顔でどんどんすくいあげていっていた以蔵。

 思い出しても、どうしてあそこまでいいドヤ顔ができるのか不思議だったが、目の前でジャックがどんどん積み上げていくのを見て顔を青くさせていく様子は、隣で見ていたエウリュアレにはかなり面白いものだったらしい。

 

「あれは傑作だったわ。どんな気持ちだったのかしらね。あれは」

「すごい泣きそうな顔だったよね。そのあと同じことをやろうとして財布の中身空っぽになってたのは流石に可哀想だったかなって思ってる」

「暇になってあそこにいたんだろうし、いいんじゃないかしら。これ以上下手に出歩く方が被害が大きいでしょうに」

「まぁ、確かに」

 

 そう言って、笑うオオガミ。

 すると、エウリュアレが、

 

「それにしても、召喚した覚えのないサーヴァントが何人か紛れてたわよね。出店もやってたし」

「ん、あぁ……あれは――――」

 

 答えようとした直後、嫌な予感が全身を駆け巡り、とっさに上を向くオオガミ。

 そこには聞きなれたローディング音を流しながら浮かぶ謎の球体。半透明のそれは、ローディングが終わると同時、

 

『レディースアーンドジェントルメン!!』

 

 会場に響くその声はとても聞き覚えのある声で、そして、今は裏方作業で忙しいはずの人物。

 

『始まりましたね夏祭り! 屋台に引かれて入りびたり花火を待つのも構いませんがぁ? どうせなら派手にやろうということで!! センパイに内緒でサーヴァントを集めました!!』

 

 映像のない声だけの状態ではあるが、言っている本人――――BBはおそらくとっても良い笑顔をしているであろうことは想像に難くない。

 

『あ、屋台が増えているなと思ったそこのあなた方は正常ですよ? 安心してください!! そして――――』

 

 直後、湖に見逃せないほど大きな何かが落ちてくる。

 あまりにも突然現れたそれは、水着のネロが宝具時に顕現させる黄金劇場にそっくりだった。だが、着水したにもかかわらず波一つ起こさず、まるで最初からそこにあったかのような違和感があった。

 そして、

 

『これから始まるはサーヴァントによる歌の祭典! カルデアの全サーヴァントから厳選された声のツワモノ達がこの夏を震わせます! さぁ、四方から刺されそうなそこのセンパイも! ようやっとリア充っぽい事をし始めたセンパイも! このイベントを楽しんでいってください!!』

 

 一息で言い切った後、息を吸う音と、一拍。

 

『出張版BBチャンネル夏の特別回! 題して、【Fate/Dimension(ディメンション) Call(コール) Order】スタートです!!』

 

 その声とともに、パン、パン! という発砲音と白煙が宙に花を咲かせる。

 そんな開会宣言を聞き、オオガミは、

 

「正直聞いてないよね。こんなことになるなんて」

「ふふっ、そんな嬉しそうな顔をしてるんだもの。想定外なのはわかるわ」

「そんなわかりやすい顔してる……?」

「えぇ、してるわ。それじゃ、見に行きましょうか」

 

 そう言って、エウリュアレはオオガミの腕を抱きしめるようにして見やすそうな位置を探して引っ張っていくのだった。




 夕暮れから始まるライブ。こちら詳細は向日 葵様の方で。

 次は21時の花火本番……ま、間に合え……!!


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いいライブだったね(ずっと言ってるわね)

 本日4話目!


 すっかり日も暮れ、ライブも終わって少しした頃。

 

「ふぅ……いいライブだった」

「あなたずっとそれを言ってない?」

「いいものはいいからね。で、次はどうしようか」

「カーマのところに寄ってから花火が見やすそうな位置に移動するんでしょ。時間がないんだからさっさと行きましょ」

 

 そう言って、オオガミを急かすエウリュアレ。

 急かされたオオガミはエウリュアレを抱き寄せると、人の隙間を縫うように駆け抜け、目的地に到着する。

 

「あぁ、マスターさん。巡回ですか?」

「いや、そういうわけじゃないけど。繁盛してる?」

 

 そこは果実飴を売っていて、高校生ほどの身長に変化しているカーマが暇そうにしていた。

 

「えぇ、それはもう大盛況で。バラキーはさっきまでいたんですけど、フランクフルトとアメリカンドッグと綿あめを買ってくるとかで」

「どういうチョイス?」

「さぁ。おなかが空いたんだと思いますよ? 最初にここに来た時も、タコスにおにぎり、ケーキにアイスとかいう、統一感まるでない状態でしたし。それで、何か買うんですか?」

 

 暇そうにアメを弄っているカーマに、オオガミは、

 

「飴細工とかやってるって聞いたんだけど」

「あ~、それですか~……あれは気分が良かったから作ってただけなんですけどね。作ってもいいですけど、周りの店と比べて頭一つ抜けて高いですよ?」

「問題ないよ。お願いしていいかな」

「はいはい。じゃあちょっと待っててくださいね」

 

 そう言って完成しているイチゴ飴を手に取ると、慣れた手つきで飴の形を変えていく。

 

「慣れてるけど、練習したの?」

「まぁ、こういうのは喜びそうな人が多いですからね。覚えておいて損はないと思って練習しました。こうして小遣い稼ぎにはなってますし、面倒なことを除けばそんなに悪くはないですね」

「なるほど……で、今は何を作ってるの?」

「ん~……まぁ、こんな感じで。イチゴに体を巻き付けてる蛇ってところですかね。エウリュアレさんは蛇寄りですし」

「私をイメージしてって事?」

「まぁ、そんなところです。さっきメルトさんにはブドウ飴でペンギンでしたし」

 

 そう言いながら、完成したイチゴ飴をエウリュアレに渡す。

 オオガミはそれを見ながら、

 

「イメージで作ってるのか……でもそれ、コーティングしてる分じゃ足りなくない?」

「えぇ。でも、材料は有り余ってますから。飴よりも果実のほうが先に無くなりそうです」

「なるほど……俺のは?」

「ん~……何がいいです?」

 

 聞かれたオオガミは、少し考え、

 

「ブドウ飴で同じ蛇をお願い」

「そうですか。じゃあさっさと作るので、6000QP用意しておいてください」

「おぉ、本当に高いね」

「えぇ。簡単にできるとは言っても、それなりに手間はありますから。気軽に注文されるのは嫌なので高めに設定してますよ。正直、もっと高くてもいいかと思いましたけど」

「まぁ、確かに。カーマの作るのはハズレがないからね」

「褒めても何も出ませんが。ほら、出来ましたよ。お望みのペアキャンディーです」

「なんでそういうことを言うのかな?」

 

 渡しながらニヤリと笑うカーマに、頬を引き吊らせながら聞くオオガミ。

 だが、否定できるところは何もないので、QPを渡しつつ飴を受け取る。

 

「それで、このあとはどうするんです? ステージはBBが撤去してましたけど、花火は通常ですよね?」

「うん。その予定。ノッブもBBも一生懸命準備してたからね。アシュヴァッターマンとバーゲストも手伝ってたから、十分だと思う」

「そうですか。どこで見るんです?」

「湖かなぁ。マンションまで行くと遠いしね。間に合わない」

「なるほど。じゃあバラキーが帰ってきたらマンションに行くとします。分体は置いておくので店は大丈夫ですから」

「わかった。急ぎすぎてドジらないようにね?」

「えぇ、そちらも、油断して足下を掬われないように」

 

 そう言って、二人はカーマの店を離れる。入れ違いにバラキーがやってきていたが、何を話しているかまではわからないのだった。

 

 

 * * *

 

「ふぅ……混んできたね」

「ライブもあったけど、こっちが一番の目玉だもの。見逃したら悔やみ続けることになるんじゃないかしら」

「そこまでのものかな……?」

「タイミングよ。そういうのは大事だもの」

 

 エウリュアレに言われ、そういうものかと納得しつつ、周囲を見渡す。

 すると、ラムダがリップと並んで空を見上げている姿を見つけた。

 向こうが気付いている様子はないので、そのまま視線を湖に向けると、ちょうど湖の中心付近に浮かんでいる船から、ノッブとBBが手を振っていた。

 

「ねぇエウリュアレ。あそこ、ノッブとBB、こっちに向かって手を振ってない?」

「振ってるわね……目があったのだけど。振り返してあげればいいんじゃない?」

「それもそうか」

 

 そう言って、素直に手を振り返すオオガミ。

 エウリュアレは苦笑しつつ、

 

「冗談だったのだけど、まぁいいわ。それで、花火が終わったらどうするの?」

「コテージで。今回招待した人が、きっとそこにいるはずだから」

「そう。じゃあ、それも楽しみにしておくわね」

 

 エウリュアレがそう言うと同時。

 ドンッ!! と鈍い音が鳴り、ヒュルヒュルヒュル~………と風を切りながら上がっていく火の玉。

 そして……

 

ドオォォン!!!

 

 爆音を響かせながら、空に大輪の花が咲くのだった。




 これで今日は打ち止め。コラボらしいことを欠片もしてない一大事ですが、まだあるので……!


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お隣さんと手持ち花火(お隣さんが広義的すぎるわ)

※ 今回は向日 葵様とのコラボです!

 コラボが苦手な方は読み飛ばしてください! 全然大丈夫という方はこのままどうぞ!


 日付も変わった頃。

 出店は残らず撤収していて、花火があった痕跡の残る星空の下、オオガミとエウリュアレ。さらに、並行世界のマスターであるアオイと浅上、メルトの5人が集まって花火をしていた。

 

「あの、これは何でしょう?」

 

 そう言ってネズミ花火を手に取り不思議そうに聞く浅上に、オオガミは

 

「ふっふふふ……その花火はこの中で一番危険なわけですよ」

「ゴクリ……」

 

 そう言って、悪い顔をしながらネズミ花火を受け取るオオガミ。

 それに対し、アオイは目を輝かせながら息をのむ。

 だが、エウリュアレと浅上は少し嫌そうな顔で、

 

「ちょっと、安全なのはなかったわけ?」

「マスター君が怪我をするようなのはダメですからね」

「基本大丈夫……うん。大丈夫。それに、これはこれで見てて楽しいからね」

 

 そう言ってオオガミは少し離れた位置でネズミ花火に火をつけ、その場に投げる。

 直後、シュワワアアァァ!! と火花をまき散らしながら回転し始める。

 その勢いにエウリュアレは近くにいたメルトの後ろに隠れ、

 

「悪くはないわね。あからさまに危険そうなことを除けば!」

「今日は珍しく臆病気味だね? それにほら、もう落ち着くよ」

 

 オオガミがそう言うと、ネズミ花火の勢いが収まり、煙を立てて静かになる。

 それを見てエウリュアレがメルトの後ろから出てきたと同時、パンッ!! と炸裂音を立てて爆ぜるネズミ花火。

 それにオオガミ以外はビクッ! として目を丸くしてるので、オオガミはクックと笑いながら、

 

「まぁ、悪くはないと思うんだ?」

「えぇ、最高ね? あなたに火を付けたらもっときれいに回るかしら」

「う~んこれは怒ってる。どうして?」

「オオガミ君はもう少し自分のことを顧みたほうがいいと思うよ?」

 

 何故かご立腹なエウリュアレに、首をかしげるオオガミと、苦笑いでアドバイスをするアオイ。

 言われたオオガミは少し考え、

 

「とりあえずネズミ花火消化しなきゃ」

「あ、私もやりたい!」

「ほんっとうに私の話を聞いてないわね?」

 

 何も聞いていなかったとばかりにネズミ花火に火をつけ始めるオオガミとアオイ。

 エウリュアレはそれを見て、同じようにネズミ花火をいくつか持つと、

 

「オオガミ? 追いかけられるのはお好きかしら」

「……花火に追われるのは嫌かなぁ!」

 

 満面の笑みでオオガミに火のついたネズミ花火を投げ始めるエウリュアレ。

 当然、オオガミとアオイが投げていたものもあるので、四方八方にネズミ花火が散らばっている中を逃げ惑うオオガミ。

 アオイはといえば、同じようにネズミ花火に囲まれて、浅上やメルトに視線を向けても、同じようにネズミ花火に阻まれている姿が見えるだけで、逃げ場などないのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ふぅ……ひどい目に遭った……」

「ネズミ花火がいっぱいあるのはかなりきれいだったけど、不規則に動くからこっちも下手に動けないの、やられたよね……破裂音も結構強かったし。なんでオオガミ君はあんな軽快に動けるの?」

「長年の逃げ感」

「普通に生活してる上では一生聞かなそうな言葉だね」

「ねぇ、オオガミ? 説教されてるのわかってる?」

 

 何事もなかったかのようにアオイと話していたオオガミだが、現在正座をさせられてエウリュアレと浅上の説教を受けているところだった。

 

「なに、これくらいで怪我をするような体じゃないので!」

「怪我を怪我と認識しないことを怪我をしない体とは言わないから。わかってるの?」

「まぁ、怪我そのものよりも、怪我をした後の医療班のほうが何倍も怖いよね」

「怖がるところを間違えてるんだけど」

「あなたのところのマスター、大丈夫? 恐怖とか感じてなさそうなのだけど」

「反省しないからもう諦めてるわよ……言うだけ言うけど。マシュに言われてもそんなに改めないんだもの。困っちゃうわ」

 

 はぁ。とため息を吐いて、オオガミを立たせるエウリュアレ。

 

「怪我はないわね」

「もちろん。ちゃんと下手に動かなければ危ない位置に投げたからね。誰も怪我はないはずだよ」

「あなたのを聞いてるのだけど」

「まぁ、逃げることだけが取り柄だからね。無傷だよ」

「そう、それならいいけど。ほら、次の花火行きましょ」

「うん。といっても、最後なわけだけど」

 

 そう言ってオオガミが取り出したのは線香花火。

 彼は全員にそれを配りつつ、

 

「ま、これを持ったらやることは一つでしょ」

「誰が最初に落とすかって事ね」

「そういうこと」

「風情とか、そういうのは考えないわよね。えぇ、想定はしてたけど」

「線香花火バトルも風情だと思うんだよ。個人的には最高に楽しいし、一番集中して見ていられるよね」

「気持ちは分かる」

「集中力が足らないだけではなくて?」

「あまりにも正論。心が痛いよエウリュアレ」

「甘んじて受けなさい。後早く火。私は普通に花火したいんだから」

「あ、ごめんなさい」

 

 エウリュアレの問答無用の圧に、おとなしく従うオオガミ。

 それを見ていたメルトが、

 

「ビックリするくらい従順ね。弱みでも握っているの?」

「私自体が弱みなんだもの。大抵の無茶は通るわ。こっちのメルトも、同じようなものだけど」

「……そう。そんな関係もあるのね」

「なんだかエウリュアレ様、凄い頼りがいある感じするね?」

「あら、それならいいのだけど。でもオオガミのことを制御できないのは悔やまれるわね」

「自分のマスターを制御するっていうのも、不思議な話ね」

「えぇ。でも、おかげで退屈はしないわ」

 

 そう言って笑うエウリュアレ。

 アオイたちはそれを見てつられて笑顔になったところに、オオガミが戻ってくる。

 

「あれ、どうかしたの?」

「いいえ? なんでもないわ。さ、線香花火をしましょう」

 

 そう言って、エウリュアレは線香花火に火をつける。

 

 

 * * *

 

 

 パチパチ、パチパチ……とか弱くキレイな火花を散らしていた火の玉が、ポトリ、と地に落ちる。

 

「私の勝ち!」

「くっそぉ……! 後二秒持てば勝てた……!!」

「最速で落としたくせによく言うわ」

「付けた瞬間くらいに落ちましたよね」

「弱いとかそういうレベルじゃなかったものね」

「ボッコボコに言うじゃん……!!」

 

 最速で落としたオオガミに全員は呆れた視線を向ける。

 だが、オオガミはすぐに気を取り直すと、

 

「勝者には報酬があるんですよ」

「何それ。初耳なのだけど」

「エウリュアレ様も知らないの?」

「全く。いつの間に用意したのかしらね?」

 

 そう言っていると、オオガミはどこからか小瓶を取り出す。

 中にはいろんな色の球体が入っているのだけは見える。

 

「それは?」

「飴がぎっしり入ってる小瓶。大体30個ほどかな。一日一個計算で一か月分。一日一瓶のレアものだからね。これが商品です」

「毎度貴重なお菓子をくれる気がするんだけど……どうしてそんなレアものばかりなの?」

 

 不思議そうに聞いてくるアオイに対し、オオガミは少し考えると、

 

「まぁ、自家製だからとしか言いようがないかな。今のところ、3割くらいしかまともに完成しないから、失敗作は袋詰め訳あり品として別にあるよ」

「な、なるほど……今日はその貴重な飴がもらえたって事……?」

「この前作り始めたばかりだから貴重なだけで、二か月後にはもっと出てるわよ」

「あ、そういうことね」

 

 エウリュアレの言葉を聞いて、ようやく納得して受け取るアオイ。

 それを確認すると、オオガミは花火に使っていた火を消し、

 

「今日はいい記念になったよ」

「こっちこそ。最高の誕生日になったよ!」

「それならよかった。それじゃあ……最後にこれを」

 

 キィン! ときれいな音を立てて飛んでくるものをとっさに掴むアオイ。

 それはコインのようだが、何かまではしっかりわからなかった。

 

「これは?」

「ん~、まぁ、平たく言うと縁かな。楔でもいいけど。それ自体は何の変哲もないラスベガスで手に入れたコインだけど、わかる人には優秀なパスになるはずだから」

 

 オオガミの説明に、首をかしげるアオイ。

 エウリュアレはその間にオオガミの隣に移動すると、

 

「今日はお疲れ様。三人とも楽しんでくれたなら幸いよ」

「もうそろそろお別れの時間みたいだからね」

 

 オオガミがそう言うと、アオイたちがキラキラと光り始める。

 それは見覚えのあるもので、レイシフトの前兆だった。

 

「こっちこそありがとう!! いい思い出がたくさん出来たよ!!」

「次に会う時までにアビーさんに教育、お願いしますね」

「花火、割と楽しかったわ。次も楽しみにしてるわね」

 

 手を振るアオイに、同じように手を振り返すオオガミ。

 エウリュアレも手を振りながら、

 

「私も楽しかったわ。次もあったら楽しみましょうね」

「いつでもお呼ばれされるからね」

「うん。それじゃ、またいつか!」

 

 そう言って、三人は消える。

 オオガミはそれを見送ると、

 

「よし。まずは資金集めだね。今回のお祭りと妖精騎士集団で資金の底が尽きたからね」

「そうね。その前にノッブとBBと合流して掃除よ。ペンギンに埋もれてるっていうメリュジーヌも回収しなきゃなんだから」

 

 そんなことを話しながら、二人は後片付けに向かうのだった。




 花火感出てるかな……出てるかな……?


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マスター自らが厨房に立つのか(趣味の範囲でね)

「マスター自ら厨房に立つんだ」

「趣味の範疇だけどね」

 

 つまらなそうに言うオベロンに、オオガミは楽しそうに笑って答える。

 殊更につまらなそうな顔をするオベロンは、

 

「て言うかさ、なんであのクラス相性ガン無視女神は君の部屋に入り浸ってるわけ? 追い出さないの?」

「なんで? 追い出す理由無いよ?」

「……魅了でも食らってるのか?」

「まさか。もし食らってたとしても、それはそれで構わないけど」

「悠長だなぁ……乗っ取られるかもしれないぜ?」

「まぁ、エウリュアレが3割くらい負担してるから、実質乗っ取られてるのかもしれない」

「お前よくそれでマスター面出来るな」

「最近は妖精騎士と争ってるから仕事が帰ってきたんだけどね。オベロンも争いに混ざる?」

「ハッ、誰が好き好んで面倒なものに首を突っ込むのさ。平穏が一番。一生休憩してるよ俺は」

 

 そう言って、机に突っ伏すオベロン。

 そんな彼に、オオガミは一口サイズに切り揃えたメロンを出しつつ、

 

「しばらくは無理強いしないよ。スキルが育つまではね」

「運用宣言やめてくれない? 夜に虫放つよ?」

「エウリュアレに磔にされるよ?」

「なんでそこで怒るのが女神の方なんだよ……おかしくないか? 寝るときまで一緒とか聞いてないんだけど」

「基本いつも一緒だからなんとも言えないね。今日みたいに一緒にいない方が異常扱いされるから」

「えぇ……どうなってんの……」

「ま、うちの女神様はかわいいからね。そんなときもあるよ」

「説明が一気に雑になったな」

 

 メロンを食べて満足そうな顔をするオオガミに、呆れたような目をするオベロン。

 そして、同じようにメロンをつまみつつ、

 

「俺の記憶だとさ、モルガンに夫扱いされてなかったか?」

「それはそれ。俺の最優先事項はエウリュアレなわけで、その地位は未だ揺らぐことがないわけだ」

「ふぅん……面倒なことになってるんだな」

「そう? こっちは割と楽しんでるんだけど」

「どう考えても面倒くさい。人間関係全部考えてたら吐きそうだ」

「まぁ、複雑な関係ではある。神様多いからね、カルデア」

「主従関係でお前が優位に立ってるの珍しいだろ絶対」

「体感半分以上はこっちが負けてる気がする」

「濃すぎるんだよ、全体的に。ってことで俺は部屋でのんびりしてていいよな」

「そもそも連れ出してすらいないんだけど。勝手に出てきたのはそっちじゃんか」

「あ~、そうだったっけか。まぁいい。とにかく、お前の部屋には近寄らないからな。巻き込まれて焼かれるのはカンベンだ」

「わかる。俺も部屋が焼かれるのは苦しいからしばらくオベロンの部屋に泊まるかな」

「お前何を聞いてたわけ?」

 

 空になった器を片付けながら言うオオガミに、オベロンはあり得ないものを見るかのような目を向ける。

 だが、オオガミは気に留めた様子もなくオベロンの前に戻ってくると、

 

「じゃあ、そういうことで。一週間くらいよろしくね」

「そういうところが嫌いだよ!」

 

 苦虫を噛み潰したような顔で、オベロンは言うのだった。




 オベロン……スキル育成が終わらない私の罪を許しておくれ……レベル100二人とスキルマでもうQPが尽きてしまったんだ……許したまえ、許したまえ、我の罪を許したまえ……


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聞いてほしいのだけど(一体なにが起こったのさ)

「オオガミ。聞いてほしいのだけど」

「え、メルトが……? 何があったの。天変地異?」

 

 厨房でいつものようにお菓子を作っていたオオガミに声をかけるラムダ。

 その様子があまりにも珍しく、思わず言葉が出ていた。

 

「あなたが私をどう思ってるかについては後で話すことにするけど、今はそこじゃないの」

「あ、うん。覚悟しておく」

「えぇ。泣いても許さないわ。で、本題なのだけど」

 

 そう言って、少し深刻そうな顔をすると、

 

「私のリヴァイアサンがメリュジーヌのところから帰ってこないの」

「喧嘩したのかと思ったら誘拐事件だった」

 

 作業を続けながら聞いていたオオガミは、その手を止めて真剣に聞く。

 

「で、いつから帰ってきてないの?」

「夏祭りから。確かに三体くらい愛でてもいいと促したけど、そのまま持ち帰るとは思わなかったわ。あの駄竜、どうしてくれようかしら」

「なるほど。それでここ最近メリュジーヌを見ないわけだ」

「あら、あなたのところに来てると思って来たのだけど、無駄足だったみたいね。仕方ないわ。こうなったら直接部屋に乗り込んで取り返すしかなさそうね」

「ちなみに話し合いの余地は?」

「無いわ。私のリヴァイアサンは安くないもの」

「まぁ、それもそうだよね。けど意外だな……連れ去るくらいには気に入ってるのか……」

 

 オオガミはそう言うと、作っているお菓子を冷蔵庫に入れ、軽く片付けてから、

 

「よし。エミヤさ~ん! ちょっといってくる~!」

 

 そう言って、厨房を出てラムダと一緒にメリュジーヌの部屋に向かうのだった。

 

 

 * * *

 

 

「あ、マスターだ~」

「うん。このドラゴン、ダメになってる」

「これだとどっちが誘拐したのかわからないわね」

 

 メリュジーヌの部屋に入ると、そこには三体のリヴァイアサンに囲まれ、だらけきった顔で倒れているメリュジーヌの姿があった。

 部屋は簡素なもので、ベッドと、異様に大きい冷蔵庫が置いてあるだけだった。

 

「……ねぇメリュジーヌ。この冷蔵庫は?」

「この子達の食料を保管しておくのに必要だったから。ちゃんと自力で調達したとも。最強だからね」

 

 メリュジーヌの発言に、そこは最強関係あるのか? と言いたげな目を向けるオオガミとラムダ。

 

「それで、君はどうしてここに? もしかして、私に会いに来てくれたの?」

「まぁ、そんなところ。メルトのリヴァイアサンが帰ってこないって聞いてね」

「あ~……もしかして、もう返さなきゃ?」

「とっくに期限切れよ! そもそも持ち帰り禁止だから!」

「残念。また貸してね」

「気が向いたらね!」

 

 そう言って、リヴァイアサンを回収するラムダ。

 すると、一体だけメリュジーヌにくっついて離れようとしない。

 ラムダがいくら引っ張ろうとも、必死でしがみついている姿に、オオガミは苦笑しながら、

 

「メルト。全員回収しなきゃダメ?」

「……まぁ、回している魔力は少ないし、エサをもらえるならある程度は自力で存在確立出来てるだろうから問題はないわね……あぁもう、いいわよ。譲ってあげる。でもその子だけだから!」

「い、いいのかい!?」

「回収できないんだから、いいもなにもないわよ……」

 

 拗ねたように言うラムダに、メリュジーヌは満面の笑みで、

 

「ありがとう! 大切にするとも。約束しよう!」

「いいわよ別に。こっちが諦めたんだもの。好きにしなさい」

 

 そう言って、部屋を出ていくラムダ。

 オオガミは彼女を追おうとして一瞬視線を向けるも、すぐにメリュジーヌに戻し、

 

「無理しない程度に可愛がってあげてね。何かあったら言ってほしい。出来るだけ力になるよ」

「ありがとうマスター。私はあまり世話をする、というのは得意じゃないから、色々よろしくね」

「うん。それじゃ、またあとで」

 

 そう言って、オオガミはラムダの後を追うのだった。




 空界最強のアルビオンと言えど、海界最強のリヴァイアサンには勝てないと言うわけだよ……


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ちょっと遠出をしませんか(珍しいお誘いだね)

「意外と、二人きりでのんびり星を見る経験って少ないんだよね」

 

 もくもく山の頂上でビニールシートの上で横になりながら、そう呟くオオガミ。

 隣で同じように横になっていたカーマは、

 

「あら、そうなんです? とはいっても、エウリュアレさんとは見てるんでしょうけど」

「はは、言われると思った。実際のところ、エウリュアレはあんまり乗り気じゃないんだよね。こういう企画」

「意外ですね。マスターさんがいるならついてくると思ってるんですけど」

「内容によるところが多いよ。それでも8割くらいはついてきてくれるけど」

「天体観測はその2割に入ってるってことですか……」

「そういうこと。ちなみに天体観測に誘うと私を見てればいいでしょってドヤ顔される」

「私が星なんだからそれで満足しなさいってことですか? メンタル強すぎるでしょうあの人……」

「まぁ、じゃあそれでいいか~ってなっちゃう俺も俺」

「お似合いのバカップルですよ。挟まる隙間無いですねぇ……」

 

 あ~やだやだ。と言いながら、しかし言葉とは逆にオオガミとの距離を縮めるカーマ。

 

「まぁ、そんなバカップルでも、今はマスターさん一人きり。何もかも忘れるほどに愛してあげますよ」

「それはまた今度ね。珍しくカーマがお願いしてきたんだし、今回は甘える方でもいいでしょ?」

「……なんなんですか、全く……いつもと違うから調子狂いますね……」

「今年は珍しくエウリュアレがいないし。そのせいかもしれないね」

 

 オオガミがそう言うと、カーマは少し不機嫌そうに頬を膨らませ、

 

「……マスターさん。お願い、聞いてくれるんですよね?」

「まぁ、無理の無い範囲で」

「それじゃあ、今日はエウリュアレさんの話しは禁止で」

「……見つかったら八つ裂きにされそうなお願いだね……まぁ、カーマがそうしてほしいならそれで」

「えぇ、それでお願いします。今日くらいは、独占したいですから」

 

 そう言って、オオガミの腕に自分の腕を絡ませ、体を近づけるカーマ。

 その行動にオオガミは若干冷や汗を流しながら、

 

「一応、襲うつもりなら全力で抵抗するからね」

「襲いませんよ。今日は甘える方でいいと行ったのはマスターさんでしょ。まぁ、私は別に襲われたとしても抵抗はしませんが」

「襲わないけどなんだか腹が立つのでバラキーにしているようになで回してやる」

「やめてくださいあれ元通りに戻すの時間かかるんですから!」

「ちなみに今のところ、やる度に腕を噛まれてる」

「なんで懲りないんですか……」

 

 ため息を吐いて呆れた目を向けるカーマ。

 

「……ちなみに、参考程度なんですが、エウリュアレさんにやったときはどうだったんですか?」

「一切抵抗しないよ、お菓子を食べてるときでもね。でも、その後満面の笑みで櫛を渡してくるよ」

「慣れきってますね……完全に生活の一部になってますよ」

「まぁ、整えるのはいつもやってることだからね。たまに遊び心を加えて髪型を変えてるときもある」

「そうですか……いいことを聞きました。明日はマスターさんにやってもらいましょうか」

「……あんまり触れていいものでもないでしょ」

「私が許可してるんだからいいに決まってるじゃないですか。ふふっ、今から明日が楽しみですね」

「今からでもいいけど?」

「イヤです。寝転がってるんですよ? やってもらったのにすぐにぐしゃぐしゃになるのは最悪ですから。明日の朝にやってもらった方が断然いいに決まってるじゃないですか」

「正論だ。じゃ、明日までに何か考えておこうかな」

「えぇ、そうしてください。私のことで頭をいっぱいにしながら、この満点の星空の下で暢気に寝ちゃっていいんですよ」

「じゃ、そうしよう。おやすみカーマ」

「えぇ、おやすみなさい。マスターさん」

 

 そう言って、心地よい夜風に当たりながら、オオガミは目を閉じるのだった。




 夏のデレデレカーマに心を打たれ生まれた最強のカーマ。圧倒的ヒロイン力だった……コルデーとアナスタシアは引けてないよ……?


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お宝探しなら僕の出番だろう?(もうそろそろ帰るけど)

「やぁマスター! お宝探しなのに僕を呼ばないのはどういう了見かな? どう考えても最適だろうに!」

「何に買収されてきたんだオベロン」

 

 キラキラな王様スタイルでやってきたオベロンに、心底嫌そうな顔をするオオガミ。

 だが、彼は気にした素振りもなく、

 

「レイシフト適性とやらも適当なことをするよね! 僕がいればブランカによる高い機動力、どこにでも入れる便利なサイズに変わって偵察が出来るのに! どうして誘ってくれなかったのかな!」

「誘ったら二つ返事でイヤって言ったんでしょうが」

「そうだっけ? 僕ちょっと覚えてないな。気のせいじゃない?」

「それにもうそろそろ帰るところだし、役立つところなんて……あったわ」

「お、なんだい? 聞かせてくれたまえよマスター」

 

 興味津々といった様子でオオガミに近付くオベロン。

 その眼前に、オオガミ宝箱を持っていき、

 

「オベロン魔術でこの箱を開けたいんだけどご教授願える?」

「ぶっ殺すぞクソマスター」

 

 一瞬で最終再臨に変貌したオベロンからの氷点下の眼差しを受けるオオガミ。

 だが、その視線をなんでもないかのように受け流しながら、

 

「今のところキャストリアと箱開け勝負をして500戦500連敗という戦績。これは鍵開け熟練度が低いんだなと思って練習を繰り返してたけど、やはりここは本家大本のオベロンから教わるのが一番かなって」

「他にも鍵開けが得意そうなのがいるだろうが。どうしてオレなんだ」

「そりゃ、みんな魔術で開けるか筋肉で開けるからかな」

「なんだ? キャスターとバーサーカーしかいないのかここは」

「そんなイカれた集団いる?」

「お前たちのことだっての」

 

 はぁ。と大きくため息を吐くオベロン。

 だが、オオガミはニコニコと笑みを浮かべながら、

 

「とりあえず、鍵開け教えて?」

「オベロン魔術のオブラートすら捨てやがったなクソマスター。今度チャンバラ勝負だ。ボッコボコにしてやる」

「お爺ちゃんに竹光作ってもらえて上機嫌だったわけか」

 

 オオガミがそう言うと、若干ムッとした顔をしつつ宝箱を奪うように持っていくオベロン。

 そして、どこからともなくヘアピンを取り出すと、

 

「一度しかやらん。見て覚えろ」

「動画撮ってもいい?」

「撮ったら魔術って言い張れないだろうが」

「難しいんだね、オベロン魔術って」

「オレが覚えるのにどれだけ時間をかけたか……そしてアイツがどれだけの早さで飲み込んだと思ってんだ……泣けるぞ。才能の差に」

「あぁ……うん、なんかごめん」

「うるさい謝るな虫酸が走る!」

 

 そう悪態を吐きながらも、オベロンは懇切丁寧にオベロン魔術の解説をしてくれるのだった。




 オベロン魔術は頑張れば習得できると思うんだオオガミ君……!


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ハッピーバースデー!(今年は平和な誕生日だよ)

「お、やっと起きたか」

「……朝から不機嫌だね、オベロン」

 

 寝ているオオガミの顔を不機嫌そうに見ていたオベロン。

 オオガミはそれに苦笑いをしつつ、

 

「……エウリュアレは?」

「さぁね。オレが来たときにはお前一人だったよ」

「なるほど……今年は何もイベントがない誕生日だから何が来るのか戦々恐々としているわけだけど……」

「そ。オレには関係ないから良いけど、部屋を出るなら注意しなよ? 今日のルールは部屋を出たら、らしいから」

「ごめん待って。今日のルールってなに? 知らないワードなんだけど」

 

 さらっと出てきた不穏なワードに思わず聞き返すオオガミ。

 すると、オベロンは生き生きとした顔で、

 

「え、ルール知らないの? 守らなくちゃいけないお約束ってやつだぜ? 誰しもそれに縛られてるだろ?」

「そういう意味じゃないよ焼くぞ」

「毎日部屋が燃えてるからっておまけ感覚で焼かないでくれる?羽根が燃えちゃうじゃん」

「次見たときには治るから問題ないでしょ」

「妖精王として譲れないところな訳だが。そういうのわからないかなぁ」

「そういうのは羽根が煌びやかなときにして。今のドス黒い状態で言われてもなにも響かないからね?」

「ちっ、細かいな……つか、さっさと部屋出ろよ。そうすれば面白くなるのにさ」

「絶対ろくな目に遭わないじゃん……なんで誕生日にそんなことになるわけ……?」

「いいじゃんか。祝福だぜ? 素直に受けておけよマスター。そういうの好きだろ?」

 

 オベロンはそう言って、オオガミをベッドから引きずり出す。

 引きずり出されたオオガミは、特に抵抗することはなく、そのまま身支度を始める。

 

「ま、外に出なきゃエウリュアレにお祝いされないし、出なきゃいけないのは確かなんだけどね。オベロンは?」

「いかなーい。オレはここで寝てるわ。帰ってきたら起こして」

「はいはい。じゃ、行ってきますよ~」

 

 そう言って、部屋を出るオオガミ。

 直後、空気が爆ぜた音を聞いたオベロンは、ベッドに寝転がって耳を塞ぐのだった。

 

 

 * * *

 

 

「想像の半分くらいの被害ね」

「血を吐いてることは想定内ってことですか女神様」

 

 メリュジーヌの突撃を受けたためか、膝を震わせ、口から血を流しているという、既に瀕死の様相のオオガミ。

 ちなみに、突撃した本人はといえば、バーゲストに捕まり連れ去られていった。

 

「それで、なにか食べられるくらいには元気?」

「うん。これくらいなら何の問題もないよ」

 

 怪我を感じさせないオオガミの表情に、エウリュアレは呆れたようにため息をつきながら、

 

「その怪我を『これくらい』で済ませるのはどうかと思うけど、まぁいいわ。カーマ、お願い」

「は~い……って、うっわ。なんですかその大怪我。マスターとしてどうなんですか」

「リヴァイアサンたちに支えさせてあげるわ。さっさと座りなさい」

 

 驚くカーマに、すぐさまリヴァイアサンを送り、支えさせるラムダ。

 オオガミは助けを借りながら席に座り、その前にケーキが置かれる。

 

「それにしても、朝からケーキとか凄いよね」

「だってあなた、早くしないと食べられなくなってるじゃない。まだ料理は来るし、食べ歩きにも行くじゃない。なら朝からケーキでも良いでしょう?」

「……まぁ、そういう日があっても良いよね」

 

 そう言うオオガミの右側にエウリュアレは座り、左側にはラムダが。そして、カーマが正面に座ると、

 

「ハッピーバースデー、オオガミ。今年もありがとう。来年もよろしくね?」

「……ありがとう、エウリュアレ」

 

 そう言ってエウリュアレの頭を撫でるオオガミ。

 それを見たカーマとラムダからブーイングが起こるも、オオガミは楽しそうに笑いながらケーキを食べ始めるのだった。




 珍しくイベントのない誕生日。ハロウィンが復活するという予報はありましたけど。今年のエリちゃんはJAPANエリちゃんだよ……!


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ハロウィンカムバックだよ(丸一ヶ月ハロウィンかしらね)

「つまり今年のハロウィンはカムバックスペシャルできっと期間もスペシャルなんだよ」

「ハロウィン31日目ってわけね」

「目前のクリスマスだね」

「おいとち狂った話をするなら出てってくれ」

 

 楽しそうに話すオオガミとエウリュアレに、若干青い顔をしながら文句を言うオベロン。

 すると、エウリュアレが至極不思議そうな顔で、

 

「ねぇ、ここ私の部屋なのだけど、どうして虫がいるのかしら」

「よぉし表出ろ! 奈落での決着を着けてやる!」

「オベロンがエウリュアレに叶うはずないでしょ諦めて。ガンド!」

「不意打ちやめろ!」

 

 既に沸点が振りきれてるらしいオベロンに、自然な流れでガンドを撃つオオガミだったが、そこはオベロン。巨大なダンゴムシを呼び出して盾にすることで逃げ延びる。

 ちなみに、当然ながらここはオオガミの部屋で、オベロンの部屋ではない。

 

「まったく。ハロウィンは良いものだよ? エリちゃん増えるし。最古参の一角だからね? もっと敬って?」

「全英霊に宣戦布告してるのに敬うわけないじゃない。むしろハロウィンを乗っ取りに来るわよ」

「そんなオベロンにはエリちゃんライブの特等席を用意してあげよう」

「おい待て何も言葉を発してないのに地獄への道を秒で舗装するんじゃない! というか、なんで誰も止めないんだよ!」

「諦めの姿勢は大事だよオベロン。純粋な好意は時として残虐なんだ……」

 

 オオガミの、もう何度も地獄を見てきたと言わんがばかりの儚げな表情に、思わずオベロンは後ずさりをしながら、

 

「くっ、それに反論できる術をオレは持たない……! これが汎人類史か……おぞましいにもほどがあるだろう……!」

「あれは汎人類史というよりもエリザ粒子史だね。ところでハロウィンの回想に鬼ランドがないのはなんで? ペンライト振っておにきゅあ~! って叫ぶ世界線は?」

「剪定されたわ。黒ひげの首ごと」

「あ~……黒ひげの首と一緒なら仕方ない。夏は活躍してたね船長」

「したっぱとしてね」

「コイツら話が右へ左へとぶっ飛んでいくんだが……実はこっちの声、聞こえているようで聞こえてないんじゃないか?」

「ふふっ、振り回されるの好きだろう? オベロンは」

「振り回されるを越えて四肢を引き裂かれる気分だよ。情報量が多すぎる……!」

 

 あまりにも過剰な情報量。しかも、嘘がほとんどないことが、なおさらオベロンの困惑を加速させていた。

 

「でもさ、オベロンも一回くらいはエリちゃんの歌を聞いても良いと思うんだよ。意外と気に入るかもしれないよ?」

「気分が悪くなったら奈落に落とすけど良いの?」

「まぁ、その気力が残ってたら相手をするよ」

「聞いても無傷なのって、基本いないものね」

「厄介なことこの上ないな……」

 

 オベロンがそう悪態を吐くと、オオガミとエウリュアレはにっこりと笑いながら、

 

「まぁ、オベロンが参加するつもりがあるにしろないにしろ」

「答えを無視してつれていくから安心しなさい?」

「は? ちょ、本気かよふざけんなオレは帰るぞ……!?」

 

 オオガミとエウリュアレに腕を掴まれたオベロンは、ひきつった顔をしながらエリザベートの所へと引きずられていくのだった。




 ハロウィンが帰ってきた……! さぁ、宴だぁー!


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また愉快な姿になったのね(この踊りで反省を促してみせるよ)

「また愉快な姿になってるわね」

「これでも動くのに支障はないんだよね。移動速度が段違いだけど」

 

 そう言って、ベッドの上でぴょんぴょんと跳ねるカボチャ人形の姿になっているオオガミ。

 その姿に頬が緩みかけるのを必死で抑えているエウリュアレは、

 

「そ、それで、肉体の方はどうしたの……?」

「モルガンが持っていったよ。時が来れば戻します。的なことを言って」

「一大事じゃないの。よくそんな落ち着いていられるわね……」

「うん。ここに帰ってくるまでの間にメリュジーヌとメルトとアビーに出会って同じことを伝えたら取り戻してくれるって。肉体が崩壊してなければいいね」

「地獄みたいな争いが発生してるわね……」

「実際警報が鳴ってエルキドゥも出てるみたいだしね。これはこっぴどく怒られるぞ~?」

 

 くねくねと反省を促しそうな踊りをしつつ、楽しそうに言うオオガミ。

 エウリュアレはその動きに堪えられなくなったエウリュアレは、ふふっ、と笑いながら、

 

「他人事みたいに言うけど、自分の事よねそれ」

「もちろん。ただ、新エリちゃんお披露目会でカルデア中練り歩きゲリラライブするつもりだったのだけど、この分では延期になるね……」

「無期限延期で。むしろ中止しなさい」

「いくらエウリュアレの願いでも、エリちゃんライブは止められないよ。と言っても、今回はミュージカルだからそんな被害無いと思うんだけどね。聞いてて被害は無かったし」

「年々耐性を付けてほぼほぼ聞かなくなってる人の被害がなかったは信用できないのよ。わかってる?」

「ふっ、返す言葉もないね。ちなみに特異点では誰もダメージを受けてなかったかな……!」

「観測者が他にいないから信頼がないのが問題ね……」

「永遠通信が切断されてたしね」

 

 カメラでも持っていけばよかったかな。とダヴィンチちゃんへの要望を呟くオオガミ。

 それを聞いたエウリュアレは、少し嫌そうな顔で、

 

「ハロウィンで良い話を聞いた覚えがないのだけど」

「そう? 毎年エリちゃんのライブを聞けて満足だけどね。まぁ、最近は全然聞けてなかったんだけど」

「そうね……珍しいくらいに大人しかったわ。嵐の前の静けさだったわけだけどね」

「ミュージカルを考えてたからね。しょうがないよ。うん。ところでこの王子様っぽい礼装、どうかな。似合ってる?」

 

 そう言って、自分の服がよく見えるように、ポーズを取ったり、ターンをしたりするオオガミ。

 エウリュアレは不思議そうに首をかしげながら、

 

「今の状態でってこと? 最高に似合っているわよ。悪い魔女に人形にされた哀れな王子さまって感じが特に良いわ。抱き上げても?」

「もちろん。人形状態だとカッコいいじゃなくてかわいいに全振りしてると思うんだ。これなら人気ランキングかわいさ部門準優勝も狙えるね」

「そこは優勝じゃないのね」

 

 オオガミを抱き締めるように持ち上げるエウリュアレ。

 エウリュアレの問いにオオガミは手をパタパタと動かしながら、

 

「まぁ、かわいさ部門優勝はエウリュアレだからね。勝てるわけもなく」

「ふふっ、わかってるじゃない。ところで、メルトのリヴァイアサンはどう思ってるの?」

「……強敵過ぎるね。でも同率二位は狙えるよ。たぶん。あっちはキレッキレなダンスは踊れないからね。これは勝った」

「でも向こうは歩くだけで大歓声だから、やっぱり負けるんじゃないかしら」

「勝利を信じてくれないんですか女神様!」

「事実はねじ曲げられないのよオオガミ。だって私もリヴァイアサンに票を入れるもの」

「そ、そんな……!」

 

 ショックのあまり、くてん。と折れ曲がるオオガミ。

 そんな動きを見て、意外と柔軟に動くのね。と呟きながら、エウリュアレはオオガミを机の上に置く。

 

「それで、いつ戻るの?」

「あれ、もう飽きた?」

「いいえ? でも、夜眠るのには寒いから、そろそろ戻ってくれないと困るの」

「体内にカイロを入れてみる?」

「それも良いけど、足りないわ。だからほら、早く戻りなさい」

「……ちょっとモルガンさんのところに行ってくるね」

「ちゃんと取り返してくるのよ」

 

 オオガミはエウリュアレに地面に降ろしてもらい、手を振りながら部屋を出ていくのだった。




 反省を促すダンスで相手のMPを削って魔術を解くんだ……!(不思議な踊り

 しかしあのダンス、めちゃくちゃ印象に残るダンスなんですよね……
 カボチャ頭本人の出番は、うん。って感じですけど。ハサウェイ前編だけじゃ何もわかんないね。


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ひたすらエウリュアレを愛でていたい(一生向かない仕事だね)

「あ~……女神様(エウリュアレ)をひたすら愛でるだけの仕事に就きたい……」

「ハハッ、最高のギャグだね。君には一生向かない仕事だ」

「めちゃくちゃ嬉しそうに言うじゃん……」

 

 ニュー坂本龍馬探偵事務所の片隅で、お茶を飲みつつ維新まんじゅうを食べるオオガミ。

 少し離れていたところで話していたオベロンは、オオガミのまんじゅうを見て、

 

「そういえば、その維新まんじゅうって、何が面白いわけ? 味? 食感?」

「あ~……なんだろうね……普通に美味しいまんじゅうなんだけどね……もう存在が面白いのかもしれない」

「へぇ……一つくれよ」

「取りに来た方が面白いかもよ?」

「面倒なだけだろ。さっさとよこせよ」

「え~? 面倒臭い~」

「投げるだけだろうが」

「……しょうがないな~……」

 

 そう言いながらオオガミはまんじゅうの包装を剥がすと、

 

「ほらオベロン。口開けて?」

「投げ入れるってのかクソマスター。正気か?」

「いくよ~? せーの、」

 

 そう言って投げられたまんじゅうは、高く飛び、

 当然の権利のようにオオガミの口の中に落ちていった。

 

「――――は?」

「うん。やっぱ美味しいね!」

 

 目の前で起こった出来事に理解が追い付いてないオベロン。

 だが、気付くと同時にオオガミの頭を鷲掴みにして持ち上げつつ、

 

「悪趣味だねぇ~マスター?」

「撮れ高の良い画でしたね!」

「余裕がありすぎるのも良くないと思うよ僕は。頭割ってみる?」

「やぁ~、それは遠慮したいなぁぁぁああ!!」

 

 ギリギリと骨の軋む音が響き、悲鳴を上げるオオガミ。

 だが、その悲鳴に対して不満そうな顔をすると、

 

「なんつーか、不死身かってくらい頑丈だね君」

「医療班には本気で怒られてますよいつものことだけど! ついでに手を放してくれませんか! 維新まんじゅうあげますので……!!」

「命乞いにまんじゅうってどうなの? まぁいいけどさ」

 

 そう言って、差し出されたまんじゅうを受け取り、元の席に座る。

 解放されたオオガミは頭を抱えながら、

 

「と、とりあえず、探偵業務、続けようか……」

「オレはパス。アルトリア連れて行くんだろ? あいつも大変だね、君みたいのに捕まって」

「本当にね。まぁ、オベロンはうちだとあんまり相性よくないから、基本後衛待機だからね。ごめんね前線に出せなくて」

「いや別に行きたくないんだけど……みんなが頑張ってる間、オレはゆっくり休ませてもらうさ」

「はいはい。掃除しておいてね」

「気が向いたらな~」

 

 そう言って、オオガミは事務所を出ていくのだった。




 今回のイベントめっちゃ報酬おいしいですね……???


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本当に二人で一人みたいなものですね(最近はずっとオベロンがいたけどね)

「ずいぶんと今さらですけど、この二人の間に入るとか無謀の極みですよねぇ……」

「BBは今どこに喧嘩を売りに行ったの?」

 

 オオガミの部屋に突然やってきて二人の姿を見るなり、呆れたような顔で言うBBに、思わずオオガミは疑問を投げる。

 だが、BBは答えることはなく、近くの椅子に座ると、

 

「めったに離れないですし、離れたとしてもお互いの事しか考えてないんですよね、この人たち。全く、カーマはずいぶんと貧乏くじを引いたものですね」

「君たちそんなに仲良かったっけ」

 

 寝転がったエウリュアレの頭を膝の上に乗せたまま、オオガミは首をかしげる。

 BBはだらけきっているエウリュアレを見つつ、

 

「時々やってきては調理器具をリクエストしていきますよ。うちは何でも屋じゃないって伝えておいてくださ~い」

「家電一式作ってそうだね?」

「……こっちはジョーク(みたいなヤバイ)アイテムを作る専門なんですけどね。最近は冷蔵庫にオーブン、ミキサー、魔力式カセットコンロの開発と、もはや庶民の味方です。でもまぁ、その技術も役に立てられなくはないので結果オーライと言いますか」

「なんだか静かだなって思ったらそんなことをしてたのか……」

 

 今度何か作ってもらおうかな。と呟くオオガミに、やめてくださいよ。と嫌そうな顔で返すBB。

 すると、今まで静かにしていたエウリュアレが、

 

「で、何の用? 家電まで作製してるので買いに来て欲しいなんて話じゃないでしょう? まぁそれだけでも私は構わないけれど」

「エウリュアレさん、なんだか不機嫌ですね……」

「まぁ、最近ずっとオベロンがいたからね」

「……あぁ、なるほど。そういうことですか」

「えぇそういうこと。あってるからこっちに来なさい?」

「イヤですよ殺されたくないです~。暴力は反対です!」

「暴力なんて振るわないわ。オベロンのように閉じ込めるだけよ?」

「……ちなみに彼はどこに?」

「とっても性能の良い冷蔵庫の中」

「それ私たちの作った奴ですよね!?」

 

 まさか自作の冷蔵庫が牢獄のように使われているなどとはつゆほども思っていなかったBBの、悲鳴のような突っ込み。

 だが、エウリュアレは悪びれる様子もなく、

 

「まだカーマが物を詰め込む前だったから出来たことね。タイミングがよかったわ」

「新品になんて物を詰め込んでくれたんですか……!」

「残念だけど、無理矢理詰め込んだせいであれはもう使えないと思うから買い取ってきたわ。直しておいてね?」

「ここぞとばかりに女神らしいことを言ってくるじゃないですか……というか、カーマ用にもまた作らなきゃ行けないってことですか……?」

「えぇ、頑張ってね?」

 

 そう言ってにっこりと微笑むエウリュアレに、BBは深いため息を吐くと、

 

「なんで愚痴を吐きに来たら面倒なことが増えるんですか……」

「間が悪かったとしか……」

「次はあの虫が来なくなって三日目くらいに来るのね」

「えぇ……そんな運任せな……」

「正直そんな変わらないから気軽に来てよ。オベロンが邪魔かもだけど」

「そ、それはそれで面倒ですね……まぁ、また気が向いたら来ます。それで、冷蔵庫は?」

「アビーがそっちの倉庫に送り込んでおいてくれたわ」

「そうですか……じゃあ、サクッと直しておきますね。配達先はここでも?」

「えぇ。ちょうど欲しかったから嬉しい限りね。あ、中身は捨てておいて?」

「ナーサリーのところにでも預けておいてくれる?」

「ハイハイ。分かりましたよ。じゃ、また今度来ますね」

 

 そう言って、吐かれたような様子でBBは部屋を出ていくのだった。




 クリスマスが……来る……!


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最悪の状態なんですけど(いつになく不機嫌だね?)

「……最悪です」

「いつになく不機嫌だね、カーマ」

 

 食料保管庫の前で不機嫌そうな顔をするカーマに、オオガミは声をかける。

 カーマは振り返りながら、

 

「あのスカディとかいう女神、一回海に沈めてあげます」

「そんなレベル……?」

「当たり前じゃないですか。どのエネミーからどの食材が出るのか分からないんです。欲しい食材を落とすエネミーを探すのがどれだけ手間か……これ、お菓子を全く作れないんです!」

「あぁ……バラキー用のね」

 

 オオガミがそう言うと、カーマは深いため息を吐き、

 

「最近は同じ周回メンバーのよしみでキャスターのアルトリアさんのも作っているので、今までの倍くらい必要なんです……ただ、彼女が食べるというより、隣のバラキーが対抗するように食べるので、普段よりも食べるようになっちゃったんです」

「それは大変……というか、バラキーを止めるのが一番では」

「いえ、バラキーのはあれで良いんです。堕落の一途ですから」

「あぁ、そう……甘やかしすぎないでよ?」

「さぁ? 私は愛の神ですし、加減できないかもです」

「そんなにボイコット感無いよね。バラキー第一な感じが特に」

「別に、男女の仲を取り持つとか、そう言うのではないので。マスターさんも、そこは履き違えないように。エウリュアレさんとの仲が悪くなっても知りませんから」

「それは頼らない……というか、頼ったら殺される。もちろん自力で何とかしますとも。それで、食材を取りに行くの?」

 

 話を変えようと、カーマのやろうとしていたであろう事を聞いてみるオオガミ。

 すると、カーマは思い出したような顔をし、

 

「あぁ、そうです。ドライフルーツ。あれが欲しかったんですよね。シュトレンを作っているときに見えたので、あれをクッキーに練り込めないかなって思いまして。自作も考えましたけど、あれは面倒なので、あるなら貰っていこうかと」

「なるほどね……じゃあ取りに行こうか。他に必要なものは?」

「こうなる前に移動させてたストックがあるので、今のところは大丈夫です」

「わかった。じゃあ、行く?」

 

 そう聞くと、カーマは目を逸らしながら、

 

「……あそこ、寒いんですよね……」

「……魔王モードなら暖かいんじゃないの?」

「水着ですよ? 布面積見てください。炎でどうにかなるレベルではないんです。確かにあれは熱いですけど、近い部分だけで、吹雪の中でも問題ない訳じゃないです。常人なら凍り付いてます。私も泣きます」

「キャストリアはそれなりに暖かそうだもんね~」

「はっ倒しますよ?」

「マスターを殴って暖を取ろうとするだなんて……!」

「暖かい魔術礼装があるんでしょう? 暖かそうなのをくれても良いんですよ?」

「そもそも通常でも薄着な自分をどうにかしたら良いんじゃ無いかな……!」

「……一理ありますね」

 

 カーマはそう言うと、振り上げていた手を下ろし、

 

「じゃあ、暖かそうな魔術礼装を貸してください」

「もう追い剥ぎでしょそれは!」

 

 そう文句を言いながらも、オオガミは念のために持っていたカルデアの制服を渡す。

 カーマはそれを受けとると、

 

「……まぁ、今のよりはマシですね。次はカイロとかを要求しましょうか」

「まさかそのまま持って帰る気でいらっしゃる?」

「まぁ、周回の報酬ということで。少なくともこのイベント期間中は借りますね」

「良いけどさ……奪われないでよ?」

「奪われるなんて、そんな――――あぁ、いや、あり得そうですね」

 

 カーマはそう言うと、手に入れた制服を見て、

 

「まぁ、奪われたら言いますね」

「手遅れな感じが否めないね?」

 

 対策するつもり無いでしょ。というオオガミの小言を無視しながら、カーマは制服を着るのだった。




 食料保管庫に被害が出るとうちのカーマは不機嫌になる……バラキーのお世話に支障が出るからね。しょうがないですよね。


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メリクリだー!(あいにく帰れなさそうだけどね)

「いやっほーう! メリクリー!」

「あの巨神、男じゃなかったわね」

「やめてよそんなクリスマス気分を台無しにする勢いの視線」

 

 エウリュアレの冷たい視線に、先ほどまでのテンションが嘘だったかのようにおとなしく座るオオガミ。

 そんなオオガミにエウリュアレは寄りかかりつつ、

 

「今年はこのままカルデアに帰れそうにないわねぇ~……」

「いや、BBを呼び出して普通に帰るよ……?」

「流石に暴君が過ぎると思うのだけど。あぁでも、そうね。今日はお勤めがあるものね。カルデアのマスターとしてではないやつが」

「いやまぁ、行く必要があるかと言われたらたぶん無いけど。でも、やる機会があるならやりたいよね」

「毎年余裕があったらやってるくせに、よく言うわ」

「まぁ、今年はサクッと済ませてくるよ」

「去年もそういっていたわね。期待しないでのんびり待ってるわ」

 

 エウリュアレはそういうと、軽く伸びをして、

 

「私はここで待っていればいいのかしら」

「うん。エウリュアレかマシュを起点に帰ってくるからね。寝ててもいいよ?」

「……別に、寝る必要はないのだけどね。でもまぁ、寝ていろというのなら、寝ているわ」

「無理強いはしないけどね。それに、まだいるから」

「あら、もう行くのかと思ってたわ」

「少し、明日の計画をね。ささやかなパーティーをするためにも早めにつぶさなきゃだから」

「それはまぁ、そうね。まぁ、明日私が活躍できるとは思わないけど。というか、今日も男性特攻ついてなかったから特に活躍はしてないのだけど」

「二撃必殺でよく言うよ。まぁ、男性特攻入ってないのに気付いたのはレイド終わってからなんだけどさ」

「明日からはもっと考えてね。たぶん性別特攻は全部効かないから」

「うん。とりあえず全力で叩き潰すよ」

「できるだけ一撃にしてくれよ~? アタッカーは無傷でもサポーターはボロボロだからな?」

 

 突如割り込んできた声に、オオガミは少し不機嫌そうに目を向ける。

 視線の先には、同じく不機嫌そうな顔をしているオベロンがいた。

 

「善処してるって。明日はきっと一撃だよ」

「だといいんだけどね。女神サマも言ってやってよ。たまに殴られてたじゃん」

「そうね。どうしてオベロンはアーツを引けないのかしらね。使えないわ」

「おいおいこっちに飛び火すんのかよ」

 

 ヤブヘビか。と悪態を吐くオベロン。

 だがオオガミは、

 

「まぁ、オベロンはともかくとして、キャストリアが被害にあうのはちょっとね。オベロンはともかくとして」

「オイなんで二回言った」

「そうね。オベロンはともかく、あの子が巻き込まれるのはかわいそうだものね。オベロンはともかく」

「……やっぱ似た者同士か。いやだねまったく」

「まぁ、オベロンは殺しても死なないから」

「不死身みたいなものだものね。アンリと同じ理不尽を受ける気がするわ」

「やめろその不幸筆頭だよねみたいな視線!」

 

 にっこりと笑うオオガミとエウリュアレに、オベロンは悲鳴に近い抗議の声を上げるのだった。




 なんだかパワー低いなぁ……バフ盛れてないのかなぁ……と思ってたらコイツ男じゃないと言う事実。
気付いたのは決着戦の時と言う、なんとも残念なことをしていた……まぁ、特攻無くても二撃必殺ならいい感じ。明日も二撃必殺目指していかなきゃ……!


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エウリュアレさんお一人ですか?(ツングースカの報酬でね)

※本日はもはや恒例となりつつある年末コラボということで向日 葵様とのコラボ要素が若干あります。ご注意ください。


















「おや、エウリュアレさん一人だけです?」

「あらBB。残念だけど、オオガミはメリュジーヌと出掛けてるわよ」

 

 オオガミの部屋で一人ベッドに寝ているエウリュアレ。

 BBは言われたことに納得すると、

 

「まぁ、聞いた話では大活躍だったらしいですから、そういうこともありますか」

「えぇ。報酬に何が欲しいかを聞かれて即答したもの。離れたところで聞いていたモルガンが、それはもうすごい顔をしてたわ」

「あぁ、その光景が目に浮かびますねぇ……ちなみに、同じく大活躍してたらしいキャストリアさんとオベロンさんは?」

「二人とも休暇を申請して、キャストリアは却下されてたわ」

「エグいことしますね……」

「えぇ。私も指摘したわよ? そしたら、彼女は休憩も仕事だって。今は食堂でデザート三昧よ」

「……なんだか面倒なことしてますね」

「本当にね。今は種火周回に彼女はいらないから、しばらくは休憩よ」

「素直じゃないですねホント」

 

 そう言って笑うBBに、エウリュアレは呆れたような目を向ける。

 そして、意を決したように立ち上がると、

 

「で、何の用で来たのかしら」

「あ~……お客さんが、来てるんですよねぇ……」

「……私が対処すればいいのかしら」

「ん~……出来ればセンパイに対処して欲しいですけど、まぁエウリュアレさんなら大丈夫ですかね」

「誰が来てるのよ」

「いつものところから来た人たちですね」

 

 

 * * *

 

 

「どうも。お世話になっております~」

「まぁ! マスターさんではなくアリスのようにかわいらしい女神様がやってきたわ!」

 

 ノッブたちの工房の一室で優雅に紅茶を飲んでいるコヤンスカヤとナーサリー。

 いつものところ、とBBが言っていたことから、エウリュアレは大体の流れを想像する。

 

「今日は大晦日のことかしら」

「おや、もしかしてご存じでした?」

「いいえ? 何にも知らないわ。でも、去年はあったもの。今年もあると思うじゃない?」

「ふむ。そういわれるとそうですね」

「えぇ。でも、あなたたちが来るということは今年は歌えないのかしらね」

 

 椅子に座りながらそう聞くエウリュアレ。

 コヤンスカヤは微笑みながら、

 

「歌いたかったのですか?」

「少しだけね。ちょっとは練習したのよ? 使う機会はまだないのだけど」

「そうですか……それは残念です。こちらも少々立て込んでまして、大変申し訳ないのですが招待ができなくなっておりまして。ですので、またの機会によろしくお願いいたします」

「まぁ、そっちにも事情はあるでしょうし、構わないのだけど。それで、どういう用事なのかしら」

「はい。では、ご説明させていただきますね」

 

 彼女はそういうと、資料を出しながら説明を始めるのだった。




 メリュ子は最強なので! 最強なので!!!!


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突撃しないでメリュジーヌ!(僕にも止まれない時はあるんだよマスター!)

※昨日に引き続き向日 葵様とのコラボです。ご注意ください。
 今年はそんなにコラボ要素強くないかも……?

















「メリュジーヌ。ステイ。飛び出さないで?」

「でもアイツは討伐対象でしょ? 狩らなきゃ……」

「いやあれは別。別だから。ほら、あっちでリヴァイアサンを可愛がってていいから」

 

 休憩室にて、今にも飛び出そうとするメリュジーヌを抱え上げ、遠巻きにこちらを見ていたラムダに引き渡すオオガミ。

 ラムダは呆れたようにため息を吐き、何羽かのペンギン――――もとい、リヴァイアサンを呼び出してメリュジーヌを拘束する。

 メリュジーヌが落ち着いたのを確認すると、今の一連の騒動に目もくれず、エウリュアレと話しているコヤンスカヤに目を向ける。

 

「それで、今年は中止?」

「う~ん、この話をせずとも伝わっているかのような感じが、とてつもなく気持ち悪くて最高にイヤですが、えぇはい。お答えいたします。今年は中止ではなく映像だけを、とのことで。こちら側の問題で招待できないことを残念に思います」

「なるほど。まぁ、事情があるならしょうがない。というか、当然のように招待されるだろうと思ってる方がおかしいのか」

「ゲストライブも立て続けにしてしまえばありがたみがないもの。こういうのは時々でいいってことよ」

「何か違うような気がするけどね……?」

 

 一人満足げに言うエウリュアレに苦笑いを返しつつ、オオガミはどこからともなく皿に乗せられたクッキーを取り出すと、机の上に置く。

 エウリュアレは躊躇なくそれを食べつつ、

 

「で、どうやって見るかは聞いたかしら」

「ごめんエウリュアレ。エウリュアレは説明を受けたかもしれないけど、こっちは今ここに来て会ったばっかりなんだよね。口頭説明だけ?」

「資料とかあったわ。工房に置いてきたけど」

「う~ん自由! BB持ってきて!」

 

 そういうオオガミに、怪訝そうな視線を向けるコヤンスカヤ。

 今部屋にいるのはオオガミにエウリュアレ、コヤンスカヤと隣に座っているナーサリーに、離れたところでこちらを見ているラムダとメリュジーヌだけ。

 すると、オオガミの背後に門が開き、ぬるりとBBが現れる。

 

「なんで私がいるのが前提なんですか。センパイはもうちょっと自力でどうにかしてください」

「ここまでずっと他力本願みたいな戦いだったし今さらかなって。資料ありがとね」

「はいはい。あ、ちなみに、こっちか向こうへのアクセスも出来ませんので。飛び入り参加は絶対不可能なのでそこのところわかってくださいね」

「オッケー。いや、招待されてないなら行くつもりもないけどね」

「行けたら本気で行くつもりだったでしょうに……」

「あはは。いやまさか」

 

 そう言ってはぐらかすオオガミに、BBはため息を吐き、

 

「アビーさんでも無理でしたからね」

「死ぬほど信用無いじゃん……!」

 

 オオガミの嘆きの声を聞きつつ、BBは門の中へと帰っていくのだった。

 それを見送ったオオガミは、改めてコヤンスカヤに向き直ると、

 

「さて、それじゃあどうやって見ればいいのかな。説明してもらえる?」

「えぇ、承りましたわ」

 

 コヤンスカヤは笑顔でそう答えながら、オオガミの隣でナーサリーと共にクッキーを食べているエウリュアレをチラリと見て、昨日の説明は何だったのだろうかと思うのだった。




 最近フリーダムに磨きがかかっているうちの女神様。


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ボーダーの中からこんにちは!(退去にならなくて良かったわ)

※今回ももちろん向日 葵様とのコラボ要素があります! あんまりコラボって感じがしないかもですが一応ご注意ください!













「ふふっ、ボーダーの中からこんにちは! 強制退去無くて助かった!」

「見ること叶わず帰されるかと思ったわ」

「今いるのは最低限ですけどね……」

 

 ストーム・ボーダーの空間拡張を施されたオオガミの部屋の中で、コヤンスカヤが持ってきた特大のモニターを設置していた。

 

「というか、これサイズの割に軽いんですよね……」

「空っぽじゃもん……魔術かなんかで動くんじゃろ、知らんけど」

「……害はないと思ってはいますけど、爆発でもしたらどうしますかね……」

「被害に遭うのは儂らだけじゃろ。マスター回りは無駄に防御力高いしな!」

「笑い事じゃ無いんですけどね~……まぁ、よく炎上してましたし、誤差ですか」

「流石に部屋を爆破されたら泣くよ普通に」

 

 じゃあ爆発してもいいか。みたいに話す二人に突っ込みをいれるオオガミ。

 膝の上のエウリュアレは楽しそうに微笑みながら、

 

「まぁ、本当に爆発したら直すのはあなたたちなのだけどね?」

「うげぇ~……儂もう土木作業はいやなんじゃけど~……」

「ちょちょいのちょいで終わる作業なんですけどね。ここに来なくちゃ行けないので面倒なんですよねぇ……」

「まぁ。じゃあもっと気軽に荒らしていいのね!」

「最悪すぎるんじゃが。つか、今までどこにいたんじゃ貴様」

 

 設置が終わり一段落したところに、ふわりと現れるアビゲイル。

 すると、オオガミの隣にもアビゲイルが現れ、

 

「全然反省してないのだけど! あなたは何をしていたのかしら!」

「あら、あっちのアビゲイル? 残念だけどこっちのアビーは反省した上で次は怒られないように慎重にダミーを重ねてくるか、むしろ怒られる方に振り切るかのどっちかなのでもうどうしようもないですね」

「最悪だわ……全くもって最悪だわ……!」

「えへへ……そんなに褒められても何も出来ないわ!」

「誰も褒めてないのだけど!」

 

 悲鳴を上げる向こうのアビゲイルと、照れたように笑うこちらのアビゲイル。

 もはやどちらがどちらかわからない見た目だが、こちらのアビゲイルが驚くほどに悪ガキ妹ムーブをしているので見分けがつきやすくなっていた。

 

「はぁ……アビー。こっちに座って静かにしてて」

「は~い。あなたも座ったら?」

「……本当に自由ね」

 

 そう言いながら、少し離れたところに向こうのアビゲイルが。オオガミの左隣にこちらのアビゲイルが座る。

 すると、モニターの電源が突然入る。

 

『は~い。ここからはカルデア紅白歌合戦後半の部が始まりますよ~!』

 

 半年に一度くらい聞いている声。

 もう始まっているのかと思いながら、ここにいるメンバーに軽く目を配り、それぞれが気楽な位置に移動してもらい、しっかり聞こうと意識を向けるのだった。




 まだ! まだ今年! 良いお年を!!


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新年始まったね!(なんだか嫌な気配がするよマスター)

※お察しの通り今回も向日葵様との弱コラボ要素があります! ご注意ください!












「ふふっ……紅白よかったね。うん、よかった……!」

「途中で何人か消えたけどね。見なさい。ナーサリーしかいないわ」

「ロリンチちゃんにも怒られたしね……」

 

 おせち料理をつまみつつ、エウリュアレはオオガミを横目で見る。

 彼は今、顔だけでなく肌の見える至るところに墨で落書きをされていた。

 紅白が終わったあとに寝落ちしてしまい、数時間後の起き抜けで子供サーヴァントたちの遊びに引きずり回された結果が今だった。

 

「でも、よくどちらがこっちのナーサリーか当てられたわね。気付かないと思ったのだけど」

「まぁ、そういう違いを見る目はあると思ってるので」

「……直感でしょ」

「みんなのスパルタ勉強のおかげだよ」

「ふぅん……」

 

 エウリュアレはつまらなそうにそう言うと、栗きんとんをパクパクと食べる。

 すると、メリュジーヌがやってきて、

 

「マスター。なんだかとても嫌な気配があるのだけど。変なのを呼び出したりしてないよね?」

「……隔離してるので襲撃はやめよう」

「そう……君がそういうのならやめるよ。でも、いざとなったらすぐに呼んで。30秒で片付けるから」

「あぁ、うん。期待してる」

 

 メリュジーヌは微笑んで、その場を後にした。

 それを見送ったオオガミは頬を引きつらせながら、

 

「闇のコヤンスカヤとか、どう説明しろっての?」

「向こうから来る光も説明出来てないのだからどうにも出来ないわよ。それで? ナーサリーどうやって帰すつもり?」

「……向こうからの迎え待ち。モニターも持って帰ってもらわなきゃだし、そもそもサーヴァントを置いていくなんて所業、流石に許されないでしょ。迎えに来るって」

「なるほどね。じゃあ気にせずに遊んでいていいのね?」

「まぁ、危険な遊びじゃなければ。例えばアビーのロシアンたこ焼きとか」

「あれも酷かったわね。余計なことを教えた本人は自爆してたからいいけど」

「イアソン……アイツはいいやつだった。アビーのたこ焼きの恐ろしさを知らなかっただけで、いいやつだったんだ……」

「オイ勝手に殺すな」

 

 横からオオガミの頭を押さえつけるように手を置いてきたイアソン。

 オオガミは少し驚いたような顔をしながら、

 

「あれ、回想じゃないのに出てきたね」

「発狂しただけだっつの。死んでねぇわ」

「いや、だから、社会的に死んだじゃん。よく顔を出せるくらいに回復したねって」

「当たり前よ。このオレサマを誰と心得る? アルゴー船の船長だぜ? この程度の傷で寝込んでられるかっての!」

「すげぇタフネス。見習いたいわ」

「おぅ。もっと尊敬しろ! でもオレみたいにはなれないがな! なにせお前にはヘラクレスがいない!」

「最強かわいい女神様と最強無敵かっこいいかわいいドラゴンと無敵最強アルティメットかっこいいかわいいペンギンがいるオレに叶うと思うなよチンピラA!」

「おい一気に陳腐化させるな! ていうか、そっちもそんなに変わらねぇだろうが!」

「ふふっ、イアソンだけなら女神様が出るまでもない。クソ虫が相手してくれる!」

「オレを巻き込むなよクソマスター」

 

 後方から頭を捕まれて青い顔になるオオガミ。

 それを見たイアソンは、とてもいい笑顔で、

 

「それじゃオレはこれで。じゃあなマスター」

「あっ、逃げるなぁ!」

 

 脱兎のごとく逃げ出したイアソンを、オオガミはただ眺めるしか出来ず、後ろのお怒り虫をどうするか、必死に考えるのだった。

 

 

 * * *

 

 

「ふふふっ! なんだかとっても楽しかったわ! こっちのマスターさんのことも知ることが出来たし、お料理のお味も微妙に違うことを知れたし! これは帰ってみんなに教えなきゃだわ!」

「教えるのは構わないのだけど、無理して来なくても良いのよ?」

 

 楽しそうにしているナーサリーに、いつの間にか隣に立っているエウリュアレが声をかける。

 驚いた顔をしながらエウリュアレを見たナーサリーは、

 

「あら、私が無理をしているの? 楽しいのは本当よ?」

「そこは疑ってないわ。でも、ここはあくまでもあなたの知っている場所ではないでしょう? 知っているけど知らないところ。しかも一人きり。迎えはそろそろ来るのでしょうけど、知らないうちに気を張って疲れちゃってるわ」

「そうかしら。そうかもしれないわ。あなたは本当に違うのね。私のところのあなたととても違うわ。誰よりもはっきりと。こっちのあなたはアリスのようなのに、あなたはまるでチェシャ猫ね」

「ふふっ、そうかしら。そうかもね。でもそれでいいわ……っと、お迎えかしら」

 

 エウリュアレがそう言って視線をナーサリーの後ろに向ける。

 そこにはアビゲイルがキョロキョロと見回している姿があり、こちらを見留めるなり、歩いてくる。

 それに応えるように歩き出そうとしたナーサリーの手をつかんだエウリュアレ。

 

「なにかしら? 煙のような女神様」

「お土産よ。オオガミは今手が空いていないから。おせち料理と、お年玉。お年玉はあなたのマスターにあげてちょうだいね?」

「……わかったわ!」

 

 そう言うと、ナーサリーはエウリュアレからお土産を受け取り、アビゲイルの元へと走っていくのだった。




 明けましておめでとうございます! 今年もよろしくお願いします!

 今回のコラボはコラボっぽさほとんど皆無でしたけど、これでよかったんだろうか……大体いつも通りのうちのカルデアだったなぁ……


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久しぶりだね。我が弟子(最近全然見ませんでしたからね)

「それにしても、我が弟子。久方ぶりだね?」

「お久しぶりです師匠。最近全然見ませんでしたね」

 

 霧煙るロンドンの中、観光気分で歩くライネスとオオガミ。

 ライネスはオオガミにため息を吐きつつ、

 

「最近私を見ない、とは言うがね。私が君を見る機会はかなりあったよ? まぁ、見る度に違う女性に捕まっているのだが」

「エウリュアレと一緒のがほとんどのはずですけど……?」

「あぁそうだとも。それ以外にもいるから言っているんだけどね! 大変遺憾だ! こんなかわいい師匠には目もくれずいいご身分だよ、全く!」

「怒るところそこで良いんですか師匠。でも僕は健全な弟子なのでエウリュアレ以外には特に何もしません」

「君は本当に素直だね。そのうち刺されるよ?」

 

 そう悪態を吐くライネス。

 オオガミは苦笑しながら、

 

「まぁ、刺されるくらいなら比較的マシな方だと思いますけどね」

「当たり所によっては即死なんだけどね?」

「えぇ。音速の突進は流石に一瞬死にましたね」

「誰がやったのか想像は着くが、それだけ死にかけても笑ってるのは如何なものか……」

「最近は肉体すらも不要になってますよ。ハロウィンパワーはスゴいと思いませんか?」

「そうだな。きっとそれを観測している奴らは気が気じゃないだろうけどね? 君、静かに狂っているね」

「それは褒めてるってことです?」

「魔術師じみてきている、という意味では褒めているのかな。一般人ではなくなってるのはいささか悲しいことではあるが」

「それって……いや、なんでもないです。で、師匠。次の観光どこ行きます?」

 

 ライネスに言おうとした言葉を止めて、話を変えるオオガミ。

 楽しそうな笑みを張り付けた彼を見て、ライネスはため息を吐きながら、

 

「特異点修復を観光扱いするのは中々の胆力だよね。実際何度も修羅場を潜り抜けたからなんだとは思うが。クエストがまだ残ってるんだ。そっちを先の片付けようじゃないか」

「流石師匠。観光第一じゃないんですね」

「君は私をなんだと思っているんだ……」

「いつものメンバーは完全に観光なので。師匠は真面目で安心というかなんと言うか。いい感じです」

「なんだろう。どことなく敗北感を感じる言い回しだね?」

「師匠はそんな振り回すキャラじゃないから安心って意味なので。待って師匠、そんな嬉しそうな笑みを浮かべないで! その笑みは知ってる! その笑顔をしてるのはもれなく酷いことを企んでる奴らだけですから!」

「いい勘をしているね我が弟子。その冴え渡る勘のご褒美に存分に連れ回してあげようじゃないか! トリムマウ!」

「嬉しいけど嬉しくないなぁチクショウ!」

 

 そう言って、オオガミはトリムマウに捕縛され、ライネスにロンドン中を連れ回されるのだった。




 ライネス師匠、手に入れてから全然使ってないから……それもこれもキャストリアが強すぎるから……最強過ぎる……

 あ、正月で光と闇を手に入れたので最近はメリュジーヌが全てを破壊してます。バスター最強っ!


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厨房に立てなくなる時期なんだよ(いや全然興味ないけど)

「聞いてくれオベロン。この時期はしばらく厨房に立てなくなるんだ」

「……サーヴァント相手に菓子を作らなくて良くなったじゃん。問題あるわけ? あと重い。どけよ」

 

 当然のようにベッドを占領するオベロンに寄りかかっているオオガミ。

 その顔は悲壮感たっぷりだが、オベロンはそんなこと関係なく邪魔そうに押し返していた。

 

「問題あるんだよ。見ればわかるように、この時期はエウリュアレもいなくなるわけです」

「……お前、ホントキモいね。そういうところ、どうかと思うんだけど」

「ちなみにキャストリアも一緒らしいよ」

「いや知らないけど。それオレに関係ないでしょ」

「仲良く料理してるのを見に行きたいかなと思って」

「……別に。興味ないし」

「へぇ……そっか」

 

 壁の方を向くように寝返りを打つオベロン。

 オオガミは楽しそうに笑みを浮かべつつ、

 

「とりあえず、女性陣が厨房に集まってるから、暇そうな男性陣誘って遊ぼうか」

「そ。行ってくれば?」

「いやいや、オベロンも行くんだぜ?」

「はぁ? 行かないけど? なんで行くのが前提みたいに言ってるんだ?」

「そりゃ、行くって言ってるんだからついてくるでしょ」

「クソみたいな言い分やめろ。行くわけ無いだろ。あのクソ女神と一緒にするなよ?」

「いや別に、一緒にしてないけど……エウリュアレなら何も言わなくても一緒に来るどころか先行して歩くから比較対象にすらならないよ?」

「そういう意味じゃないが、それはそれでどうなんだ……」

「実はエウリュアレも妖精眼をもってるのかもしれないね」

「マスター特化なだけだっての。やれやれ重症だね。医務室に行くかい?」

「やめとく。その話をすると命を狙われるからね。オベロンも知ってるでしょ?」

「医務室とは名ばかりの処刑台だねあそこは」

 

 そう言って、盛大にため息を吐くオベロン。

 オオガミは苦笑いをしながら、

 

「そこまでは言わないけどね。で、オベロン。やりたいことある?」

「……寝る」

「いやいや、遊ぼうよオベロン。スピードスターの力見せつけようぜ?」

「それ、ブランカが速いだけでオレ自身はそんな速くもないんだよね。というか、ここに来てから一回も妖精王として戦ったこと無くない?」

「愛され上手な終末装置だからね。それに、なんだか妖精王姿は見たくなくて」

「……まぁ、このままでいいなら、それで構わないけどね」

 

 オベロンはそう言うと、仕方なさそうに立ち上がり、

 

「イアソンのところに行くんだろ? はやく行くぞマスター」

「え、急に行く気になるじゃん……ってはやいはやい! スピードスターはやいって!」

 

 スタスタと早歩きで行くオベロンを、オオガミは追いかけるのだった。




 もうすぐバレンタイン……今年は誰が実装されるのか……!

 アーケードでメルトが出て、行きたい気持ちはあるもののあの手のゲームは後ろが怖くなるので行けないジレンマ。家庭機を出してくれても良いのよ……?


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今年はあっさりだね(最速以外のものが必要?)

「はい。これ」

 

 日付が変わると同時、エウリュアレはそう言いながら箱を手渡してくる。

 ベッドに座ってたオオガミは、何が入っているか、見るまでもないそれを受け取りつつ、

 

「今年はなんだかあっさりしてるね」

「そう? 誰よりも早く渡しているのだけど」

 

 そう言って、当然のようにオオガミの膝の上に座り、体重をかけてくるエウリュアレ。

 その重みを感じながら、オオガミは天を仰ぎ、

 

「サラッとデレてくるじゃん……」

「嫌いかしら?」

「そんなことないのを一番知ってるのにそういうこと言うよね」

「当然じゃない。こういう態度が好きなのも知ってるのよ?」

「……もうすでに一生勝てない気がしてきた」

「ふふっ。一生勝たせる気なんてないもの」

 

 そう言って不敵に笑うエウリュアレ。

 オオガミはその笑顔に言葉を詰まらせていると、

 

「さて、これでメルトになんていうのかしらね。もうもらったって言うのかしら。それともまだもらってないって言うのかしら?」

「……ははっ、かわいいことしてくれるね?」

「押しかけ妻や記憶捏造ドラゴンよりはマシじゃないかしら?」

「そこと比べるのはどうかと思うけどね」

 

 オオガミはそういうと、エウリュアレを抱きしめたまま横になる。

 引き倒されたエウリュアレは、楽しそうな笑みを浮かべながらその場で体を反転させてオオガミに抱き着くと、

 

「刺されても知らないわよ?」

「刺されたくらいで死ねるとは思わないけどね」

「あら、そういうつもりではなかったのだけど」

「音速タックルを定期的に受けるようになっちゃったからね。もうなんか、たいていの物理攻撃には耐性があると思うよ?」

「肉体的な耐久性はもう何も心配していないのだけど。でも、死なないにしても動けなくなってしまうのは困るわ。代わりに誰が私のおやつを作るというのかしら」

「……生きている間はその係は誰にも譲りたくはないね」

「ふふっ。じゃあ厨房に立てるようにしなさいね。刺されてる暇なんて無いんだから」

「そうだね。死んでる暇もないや」

 

 オオガミの右側に転がり落ちつつ、そのまま右腕を枕にするエウリュアレ。

 そんな彼女の頭を撫でつつ、オオガミは、

 

「今年のバレンタインも意識を手放したくなるくらいの重量なんだろうなぁ」

「当然だけど、今年も食べるのは手伝ったりしないから。他人への貢物を食べるなんてこと、私にはできないわ」

「……正直手伝ってほしいくらいだけどね」

「ダメ。今年も苦しんでる姿を見せてね?」

「本当にいい趣味してるよね」

 

 オオガミはそういいながら、一度起き上がってちゃんとベッドに寝る。

 エウリュアレも一緒に移動して右腕を再び枕にしつつ、

 

「じゃあ、おやすみエウリュアレ」

「えぇ、おやすみ」

 

 そういうと、二人は目を閉じるのだった。




 デレデレエウリュアレ。これ以上の言葉は蛇足なのです……


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お返しの意味とかそんなに大きな事じゃないと思うんだ(相手によりけりだと思いますけどね?)

「結局お返しの意味とかあんまり関係ないと思うんだよね」

「……あ~、マスター? それどういうつもりで言ってるつもりで?」

 

 ロビンはそう問いながら、若干青い顔をしているオオガミに聞く。

 その問いに対して、オオガミは不思議そうな顔で、

 

「相手に向けて文句ないくらいの全力でお返しするなら関係ないって意味だけど」

「あぁうんそうだな。その気概なら文句無いわ。で、女神様には何を送ったんで?」

「ありったけのお菓子」

「そんな無邪気な顔で恐ろしいことを……」

 

 ロビンはそう呟き、文字通り山のようなお菓子を渡されたのであろうエウリュアレを思い浮かべ、変な笑みを浮かべる。

 

「今回新規の妖精国メンバーにも?」

「もちろん。まぁ、一部からはとんでもなく重いものを貰ってるのでお返しに悩んだけども」

「へぇ。何をお返ししたんで?」

「聖杯」

「は?」

 

 呆然とするロビンに、オオガミは苦笑しながら、

 

「まぁ、実際は聖杯を模した焼き菓子なんだけど」

「それでも大概でしょうよ……」

「ロビンさんも食べる? 試作品の群れがあるよ?」

「……群れ?」

「まぁ、聖杯だからね。魔力も込めちゃったりしているわけです。動くよ」

「なんでそんな余計なことをするんですかねオタクはぁ!」

 

 どこからともなく取り出した聖杯型のお菓子に、全力で警戒するロビン。

 そしてクッキーはフワフワと浮かび始める。

 

「まぁ、浮くくらいしかしないから害はないんだけどね」

「それはそれで超常現象ですけどね? 誰が食べるんだそんなの」

「自称恋人ドラゴンはバリバリ食べてたよ?」

「あ~、聖杯食べてみたいっていってたなそういや。つか、本物の聖杯も持ってるだろうに」

「それはそれ。これはこれだよ。ちなみにメルトにはあんまり受けてなかった」

「それ渡したんですかい?」

「まぁ、これはおまけだけどね。本命は快く受け取って貰ったので」

「はぁ……そっちはそっちで気になるが……まぁいいか。味はどうなんで?」

「美味しくなるように作りましたとも。素材は一級品だよ?」

「あ~、オタクの製菓技術は疑ってはないんだがな。流石にちょっとためらうな……浮いてるし」

 

 そう言って、浮いている聖杯もどきを一つ手に取るロビン。

 オオガミも同じように手に取りつつ、

 

「まぁ、死にはしないよ」

「こんなんで死んだら死にきれないんだがな……」

 

 そう言いながら聖杯もどきをかじるロビン。

 その目は大きく開かれ、

 

「う、うまい……! 本当に試作品か……?」

「そりゃまぁ、残してる試作品は魔力が馴染まなかっただけだからね。味は何の問題もないよ」

「むしろなんで魔力を練り込もうとしたのか……ちょっとオレには難解すぎて無理だな」

「まぁ、それもこれも全部メリュジーヌのせいというか。ドラゴンハートに応えられるのとか無くってね。自分自身も、もう渡す予定があるので使えないしで、思い付いたのがこれってわけ」

「なるほど……それで聖杯もどきをってわけか」

「うん。まぁ、無事大成功だったから良いんだけど、試作品が山のようになってね……後で男性陣に押し付けようかと」

 

 オオガミはそう言いながら立ち上がり、

 

「とりあえず手近なオベロン辺りにでも渡してくるかな」

「……ホント、仲良いんだか悪いんだかわからんね。妖精王とマスターは」

「本気で嫌われてるわけでもないと思うから。喧嘩友達って感じ?」

「へぇ……まぁ、アンタがそう言うならそうなのかもな……嫌そうな顔をしてるのが目に浮かぶが」

 

 そう言って、二人は笑いあうのだった。




 ホワイトデーイベント全然やってない……毎日ログインしてガチャしてるだけだよ頑張らなきゃ……


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