【完結】ハーマイオニーと天才の魔法式 (藍多)
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〇登場人物紹介+設定等

投稿している本編までの登場人物の紹介や設定集です。メモみたいなものなんで変更することは多々あると思います。
投稿時点までのネタバレがあるので最新話まで読んでから見てください。
未完成なんで所々抜けたり本編と違っているかも。
暇なときに更新していきます。

2018年5月19日
本編完結したため追記。
今後も暇な時更新します。


 

 

 

 

〇主人公 レナード・テイラー 愛称レオ

外観は平均平凡で父親譲りの金髪

家族構成は父母と一人息子のレオの三人家族。祖父母は全員他界。

『眼』:魔力・魔法の流れ(式)が見ることで解析・模倣・応用が可能。

元ネタとしては「伝説の勇者の伝説」の『複写眼(アルファ・スティグマ)』 

魔力量は常人の十倍ほど(父親譲り)

功績(入学前):改良脱狼薬 ポリジュース薬改良(効果時間、味改良) 以上2点よりスネイプと旧知の仲。その他にホラス・スラグホーンとも旧知。

呪文の改良・効率化、服従の呪文の特定、吸魂鬼完全除去魔法(そのほかの魔法にも応用)

所属寮 一応レイブンクロー 研究したいため特別待遇により自室兼用研究室

装備 ①杖…自作 本編51話参照。杖の芯に自身の肉体を使用しているため魔力効率を高めている。

②指輪…ソロモンの指輪にちなんで10個

 

・反射…魔法の進行する向きを逆方向に変換する障壁を体の周りに発生させる。障壁に接触した魔法的な力の向きが真逆になる。物理的な力には無力。魔法で間接的に飛ばした物体等は防げない。

 

・吸収…これまたそのままの効果。放たれた魔法を吸収する。効果範囲は『反射』より小さい。なので装着者の近く以外の魔法には効果がない。吸収上限はあるがそれはあくまで個別の魔法の強さの吸収限界なので生徒レベルが武装解除や麻痺などの弱めの呪文をいくら放っても突破は無理。個人の力量を上げるか、悪霊の火や死の呪文などの上位魔法を使わないと突破できない。突破してもある程度は吸収されるので威力減衰効果もある。

 

・遮断…魔力を遮断する空間層を生成する。層の厚さは使用魔力で決定。この空間では魔力が急速消失していくため、範囲内の魔法は徐々に威力・速度が低下していく。装着者の使用魔法にも影響があるため使いどころが難しい。若干の物理的な壁にもなるが強い衝撃には耐えられない。最大の性能は精神に作用する効果の遮断。開心術や吸魂鬼の効果も遮断する。

 

・守護…物理保護がメイン機能。最低値でも拳銃程度なら防御可能。こちらも使用魔力量に比例して強くなる。守護の呪文と同等機能も搭載。この場合MAXまで魔力を使うとプロテゴ・マキシマになる。

 

・治癒…これも名前のまんまの効果。怪我の治癒、解毒、解呪を行う。治癒は自身の治癒力を高めるだけなので骨折ぐらいなら効果があるが、四肢欠損などには効果なし。解毒や解呪も限度があり強すぎる毒や呪いには効果が薄い。但し一度受けた毒・呪いはデータとして残るのでどんどん対抗できるようになる。

 

・貯蔵…吸収で防いだ魔法を貯蔵する。貯蔵の状態は魔法そのまま、あるいは魔力に還元して貯める。魔法はそのまま自分のものとして使うこともできるし、魔力は指輪の動力にも使用する。別に吸収で防いだ魔法以外でも自分でストックの貯蔵可能。

 

・増強…身体機能強化。使用魔力量に比例して強くなる。身体能力以外も五感も強化可能。単純なので魔力効率が良いという利点もある。

 

・聡明…思考速度の高速化。魔法の発動はイメージが重要であると本作では設定しているので、思考の高速化は魔法の発動速度に直結する。それ以外にも最適な行動や魔法の選択。『増強』で視力、反射神経を強化して『聡明』も使えば防御が無い場合の回避に使用できる。奥の手で分割思考をすることで同時に複数の魔法も発動可能。ただし負荷もかかる。

 

・制御

魔法の細かな制御ができるようになる。

地味だが他の全指輪の能力を最大限に引き出すには必須な指輪。

 

・蘇生

全指輪同時起動によって死亡時に肉体から分離する魂を指輪内に保存する機能。

新しい肉体に指輪を転移させることで即座に蘇生が可能。その後用済みの為別の指輪になる。

 

・改変

この世の物質、生物、事象、法則を改変することが可能。

制限として一日につき一度。大量の魔力を消費するためレオやアースキン以外は使用不可。大規模・精密・正確な改変ほど難易度と魔力消費が多くなる。なので世界中の物理法則をいっぺんに変えるとなると途方もない時間が必要。

チートに見えるかもしれないが、普通のハリー・ポッターの魔法でも限定的な物理法則の改変や物質の発生などやっているのでこれはそれを究極までに突き詰めた感じである。

レオとしてはあまり使いたくないものでもある。

理由は何でもできるからつまらないのである。

 

 

通常時は防御系の指輪のどれかを起動させている。指輪への魔力配分は状況によって使い分けている。

指輪を装備したら誰でも強くなれるわけでは無い。使いこなすにはそれなりに性能を熟知しなくてはならず、使用魔力も相当なものである。

アースキン譲りの魔力量があるレオだからできている。

 

五巻終盤に魂を不死鳥と同等に改造して不死の魂に。

それと同時に肉体を後述のクーと同等にすることで人外へと変異。

『眼』は魂由来の為従来通りに使用可能。

自身の進化に合わせて指輪の性能も底上げ。

 

キャラクター造形としては伝説の勇者の伝説のライナのやる気あり+ブリーチのマユリ様の狂気成分を薄めた感じで考えてました。

 

〇クー

単細胞生物+賢者の石+ドラゴン+バジリスク+ハーマイオニーDNA+魔法薬で作成した群体型人造魔法生物。

全体的に白い外見に緑の目。

レオのことは創造主として絶対の存在としている。

ハーマイオニーは自分と近しい存在として母と認識。

基本知りたがりで知識を得ることに快感を覚えている。

三形態存在しているが不定形なのであまり形に意味はない。やろうと思えばどんな姿にも変化可能。

形態変化しても記憶は引き継いでいるが形態によって性格が別物となるので別人格と言ってもいい。

形態ごとに体積が違う=細胞数が違うため群体で一つの意識を造っているクーには影響が出る。

・少女形態…10歳未満の少女型。天真爛漫で知りたがりの側面が強い。一人称、わたし レオ、ご主人 ハーマイオニー、ママと呼ぶ。

・メイド形態…15歳程度の少女型。奉仕するにはメイドが良いと間違った知識を得たのでこんなことに。一人称、わたくし レオ、レナード様 ハーマイオニー、お母様と呼ぶ。

・戦闘形態…大人の外見。ドラゴンとバジリスクの鱗から造った黒色の鎧を纏う。伸縮自在の髪や全身から触手を出して攻撃する。魔法、ドラゴンの炎、バジリスクの毒と目を使い、命の水で回復し、殺しきるには細胞の全てを防御と回復を突破して消すしかない。無理ゲーである。一人称、私 レオ、マスター ハーマイオニー、母上と呼ぶ。

他の生物や魔法薬などでバージョンアップ可能ではあるが現状だけでかなりのバランスブレイカー。

リミッター解除することで細胞分裂速度が急上昇し無尽蔵に分裂が可能。

その分裂体をそれぞれ戦闘形態やバジリスクやドラゴンとして攻撃することができる。

 

エピローグ後にテイラー家一人娘のロザリーにご執心。

 

 

〇ハーマイオニー・グレンジャー

主人公と入学前に友人になり、入学案内届後に魔法使いであると知る。入学前に主人公に魔法の手引きをされてその後も能力UP中。

レオがいたので原作三人組にはならないが別に仲が悪いわけでは無い。

バジリスクから助けられた後にレオへの恋心自覚。現在アタック中(テイラー家、グレンジャー家のバックアップあり)

それに伴い外見も出っ歯を治して、髪も整えるので美少女チェンジ。ファンクラブも作成されている。(本人たちは知らない)

三巻で娘までできてしまうがレオとは付き合っていない。周囲はそれを知ると驚愕する。

現在のレベルはホグワーツ教師に匹敵するほどまで強化されている。

四巻でとうとう恋人同士に。とはいえ、今までと何も変わることはない。

最終的にレオと同じ時を生きるため人外の身に。

エピローグでは一人娘も誕生する。いまだにイチャイチャな夫婦である。

最終的な強さはダンブルドア並み。但し不死性があるためレオ以外には負けない。

 

〇ホグワーツ生徒

・ハリー・ポッター

原作主人公。特に変更はなし

主人公は生き残った理由を知りたい→一目見て護りの魔法と確信

それ以降は特段興味なし。ハグリッドの一件以来敵視されるがジニーを救出したことでそこまで敵視されなくなった。

主人公の活躍のせいで原作出番がなくなった作者の被害者その一。

その後も活躍フラグは折られまくるがなんだかんだと生き残って幸せになった。

 

・ロン・ウィーズリー

面倒くさいグリフィンドール生代表。

主人公は特に眼中になし ロンの印象は頭でっかちのインテリ野郎→一方的なライバル視

ジニーを助けてくれたので一応は恩を感じている。素直に感謝できないが。

美少女化したハーマイオニーに一目惚れするが5分と持たず失恋。

今作での作者による被害者その二にして筆頭。

 

・ドラコ・マルフォイ

主人公からこちらも眼中になし。

ハーマイオニーへのー穢れた血発言で首が飛ぶ。

混血(穢れた血入り)のくせに→関わりたくない→逃げるフォイな感じで基本的に避けるように。

 

・その他生徒

基本的に名有キャラでもモブ。

レオの勉強会のおかげで参加してないスリザリン以外は全員レベルUPしている。

 

〇ホグワーツ教職員

・アルバス・ダンブルドア

腹黒爺 主人公は功績は素晴らしいと思っているがそれ以外の部分はあまり気にしてない。

ダンブルドアからはその能力と知識をハリーの役に立てると考え、自陣営に引き入れようとする、うまくいってるとは言えないが。

下手をすると闇の陣営になってしまうかと必要以上に警戒する場面も。

予言関係から極力邪魔はしない方針になっている。

 

・ミネルバ・マクゴナガル

厳しくも優しい良い先生、変身術について話が弾む

マクゴナガルからは非常に優秀な生徒だが癖が強いとの認識(寮対抗、規則に無頓着なため)

ダンブルドアが関心(警戒)を持ちすぎではないかと感じている。

 

・セブルス・スネイプ

主人公からは魔法薬学で話が合う貴重な人、技術と知識にはかなりのものであるとお互い好意的。

ハリーに対する態度は寮が違うため目にしていないため、何かあったのかな、といった感じ。

主人公の両親は先輩にあたり、また憎い眼鏡を吹き飛ばしていたので密かに尊敬してた。

スネイプからは若いのに素晴らしい知識を持っているし話も合うので、年の離れた弟または友人と密かに感じている。

 

・フィリウス・フリットウィック

呪文の開発について一緒に研究し互いにアドバイスしている。休日には一緒にお茶をする中。

孫のように思っている、寮内にいないため特に気にしている。

 

・ルビウス・ハグリッド

特に意識はしていないが、ドラゴン騒動の時に告発ホグワーツから追放。

現在アズカバンに投獄中。よってスクリュートなんて存在はいない。

投獄期間は5年なので巨人族へのアプローチに影響あるかも。

 

・シビル・トレローニー

自室にこもっているため面識はなし→授業内容がひどいので授業放棄する。

ダンブルドアの前で主人公に対する予言をしている。

この予言のせいでダンブルドアは主人公を警戒するようになる。

 

・マダム・ポンフリー

効果的な薬を考案しているためお気に入りの生徒。でも騒がしいなら問答無用で追い出すのは変わらず。保健室最強。

 

・アーガス・フィルチ

双子の協力者ではないかと危険視している(第六感で)。二年目の免除課題では泣いて止めてくれとまで言われてたのかも。

 

・ピーブス

今のところ出番なし。

研究室を荒らしたら実験体にされるor消滅すると本能で察知。決して近づかないようになる。

 

その他教員

特に変化なし

 

〇魔法族

・テイラー家

テイラー家は歴史だけは長い魔法使いの家系。マグルの血も拒否せず受け入れている。ゆえに純血主義からは嫌われている。

レオの父、アースキンから何かがおかしくなる。

 

・アースキン・テイラー

主人公の父親。愛が深い闇祓い副局長。

昔は息子に稽古をつけたがっていたが、これが原因で主人公が過剰な装備をすることになる。

魔力バカ、膨大な魔力にものを言わせ無詠唱で呪文マシンガン状態。主人公にも魔力量は遺伝した。

学生時代はレイブンクロー所属でいたずら仕掛け人の二つ上。脳筋と言われているが頭が悪いわけでは無い。

バカ四人組のターゲットになっていた後の妻を助けたことがきっかけで交際→ゴールイン。

ジェームズ達は嫌いじゃないがフェリスがターゲットになっていた場合、鬼の様に怒り吹き飛ばしていた。そのためいまだに恐れられている。

 

・フェリス・テイラー

主人公の母親。基本的におおらか、ポヤポヤしている。

家事全般は出来るがたまにとんでもない料理が錬成されることが有る。

息子とハーマイオニーの恋愛は全力応援中。

ハッフルパフ所属で夫と同学年。成績最下位でよくいじめられていたがバカ四人組にいたずらされていたところをアースキンに助けられて、強くなることを決心。

身体能力向上の魔法と武術を身に付け四人組を撃退する。その光景は今でも伝説として語られる。得た称号は史上最強のいじめられっ子。本人は不服だったが。

息子にもたまに武術や体の動かし方を教えていた。

 

 

・ウィーズリー家

アーサー…アースキンとは同僚の為親しい。基本的に好意的

モリー…息子の同級生、勉強ができるので爪の垢を煎じて飲めばいいのに(双子との仲は知らない)

ビル…本編未登場。接点は過去にあり。

チャーリー…接点なし

パーシー…自分より年下なのに勉強もできて勲章をもらっているため若干嫉妬。

双子…悪戯の発想(柔軟な思考)に好感、自分の実験成果の発揮に利用している、ギブアンドテイクの関係

ジニー…頭のいい上級生、ロンの話はほとんど聞いていない。助けてもらったことで感謝している。

 

 

〇闇陣営 基本的に原作同様

・ヴォルデモート

御辞儀様としては『眼』に興味があり、その力を自分のものにしたいと考えているが最悪殺してもよいとは考えている

現在復活待ち。

 

・ルシウス・マルフォイ

死喰い人時代にさんざんアースキンの恐怖を味わったためテイラー家には近づきたくもない。

だけど御辞儀が復活したらアースキンと敵対しなくちゃならない。

もし御辞儀が復活したらストレスが凄そう。

 

 

〇オリジナル呪文

随時更新していきます。

 

〇ちょっとしたメモ

・授業組み合わせ

変身術 個別

呪文学 グリフィンドールとハッフルパフ レイブンクローとスリザリン

魔法薬学 グリフィンドールとスリザリン レイブンクローとハッフルパフ

薬草学 グリフィンドールとハッフルパフ レイブンクローとスリザリン

闇の魔術に対する防衛術 個別

魔法史 グリフィンドールとレイブンクロー スリザリンとハッフルパフ

魔法生物飼育学 グリフィンドールとスリザリン レイブンクローとハッフルパフ

 

・強さ順位(暫定)

クー>完全装備レオ>校長≧御辞儀>アースキン>教師=上位死喰い人(ベラトリックスなど)=レオ≧ハーマイオニー>死喰い人=闇払い>セドリック>大人>一般的生徒な感じで。

裏設定ではクーを倒せる登場人物がいますがあり得ないIFのキャラですね。

 

こちらも随時更新していく予定。

 



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序章
1.魔法に魅せられて


初めまして。
色々なハリーポッターの二次創作を読んでいたら自分の妄想を書いてみたくなりました。
文章を書くのは初めてなので問題だらけですが、完走目指して少しずつでも進めていきたいです。

それではよろしくお願いします。


魔法。それは魔力、呪文を用いて様々な現象を引き起こす。

魔法界に暮らす魔法使いにとっては生活の一部、あって当たり前のものである。

幼いころから魔法に触れ、学び、使い、助けられ、時には傷つけ、傷つけられる。魔法使いにとっては魔法とはそのような便利な力であった。

 

しかし、レナード・テイラーにとってはその認識は違った。

物心ついたころからレナードの「眼」には魔法が色の付いた数式のように見えていた。

色や式の種類、組み合わせによってどのような効果が現れるのかを認識することができたのだ。

 

高度な魔法ほど複雑な式で構成され色鮮やかで美しかった。

レナードはその美しさに魅せられた。

 

「より美しい式を見たい! 造りたい!」

 

幼いころにそう思い立ってからは魔法や魔法薬などの研究に没頭する毎日であった。

両親は最初のうちは子供の遊びだろうと微笑ましく感じていたが、次から次へと呪文についての欠点や効果についての改善等を的確に指摘するようになってからは両親も息子の力は本物であると認識せざるを得なくなった。

 

「レオは必ず偉大な魔法使いになるわ。」

「そうだな。この子の才能は類を見ないものだろうな。親である俺たちはこの子が道を間違えないようしっかりと導いていこう。」

 

そして数年が経過するころにはレナード・テイラーの名は魔法界で知らぬ者がいないほどになっていた。様々な魔法薬の開発・改良、魔法の効率化、新魔法の開発、どの分野でもその「眼」を活用して今までの常識を覆すことをしてきたのである。

 

そんなレナードであるが、世間からの目などは意にも介さず、ただひたすらに「より美しい式」それのみを追求していただけであった。

 

 

 

1991年7月某日

イギリス ロンドン郊外にある一軒家

ただの一軒家に見えるそれはマグルのからは認識阻害された家であった。

一羽のフクロウが郵便受けに一つの封筒を届け飛び去って行った。それを女性が受け取り礼を言って家の中へ戻っていった。

女性、フェリス・テイラーは封筒の宛名とどこからのものかを確認すると目を輝かせた。

 

「レオ~ホグワーツから入学案内が届きましたよ。」

 

アースキン・テイラーがリビングで新聞を読みながら感慨深く呟いた。

 

「レオももうそんな歳かぁ。早いものだな。」

「あなた、レオはどこです?早く知らせたいのですけど。」

「まだ研究室に籠ってるんじゃないか?そろそろ朝食だし呼んでくるか。」

 

テイラー家の裏庭には寝泊まりするスペースがある程度の離れがあった。しかし、実際には空間拡張の魔法によって何十倍の広さを有したレナード・テイラーの研究室であった。アースキンは研究室内に入ると手をゆっくりと動かしながら、ブツブツと呟く息子に声をかけた。

 

「おはようレオ。朝食の時間だぞ。それから母さんが何か報告したくてウキウキしていたぞ。」

「おはようございます、父さん。ちょっと待ってください。」

 

父親の方を見ずに挨拶だけすまし、またブツブツと呟きだした。

数分後、一段落したのかレナードは体をほぐしながら父に聞いた。

 

「改めまして、おはようございます。母さんの報告は何でしょうね?」

「さあてね? ま、とりあえず朝食にするか。」

 

家族で食卓を囲みながらレオは母に先ほどの報告が何なのか尋ねた。

フェリスは嬉しそうに手紙を差し出した。

 

「ホグワーツの入学案内ですよ。おめでとう、レオ!ホグワーツはとても楽しい場所よ! レオが今以上に立派な魔法使いになれるような学校よ!」

 

フェリスはホグワーツが良い場所など色々話し出したがやがては学生時代の思い出話に移っていったため、男二人は聞き流していた。

 

「母さんも言っているがホグワーツは良いところだぞ。今までになかったことを多く経験できるだろう。学業に限って言えばもうレオは十分だろうけどそれ以外にも色んな事を学べると断言できるぞ。」

「そうですね。とりあえず各科目の教授たちは専門家なので新しい知識などを得る良い機会には違いないでしょうね。目標としては共同で研究をしたいですね。」

 

レオとしては授業の内容は特に興味はなかったがホグワーツの優れた教授たちと研究ができると考えれば、だんだん入学が待ち遠しくなっていくのを感じていた。

 

レナード・テイラーは今年で11歳。ホグワーツ魔法魔術学校入学することとなる。

物語はここから始める。

 

「ああ、どんな素敵な魔法が待っているだろう!」

 

 

 

一方そのころのハリー・ポッター

ダーズリー家と逃避行中

 




まずは、第一話でした。
主人公の名前はレナード(Leonard)で愛称はレオ(Leo)です。

まだ原作キャラ誰も登場していませんね。
次の話では登場予定です。

感想、指摘、何でも待ってます!(返信できるかわかりませんが)


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2.知り合いから友人へ

第2話です。

本作ヒロインのハーマイオニーとレオの出会いの話になります。
時系列はホグワーツの入学案内を受け取る少し前ぐらいを想定です。


レナード・テイラーの名は魔法界では有名であったが、彼には友人と呼べる人はいなかった。

高名な研究者、父の同僚の闇払い、魔法省の官僚、腕利きの癒者など様々な人と関わり合いこそあれども、それはあくまで研究を通じて知り合った間柄。

研究にかかりっきりであったレオには同年代の何も考えず遊び倒すような友人は皆無であった。

 

そんな孤独な研究の日々にレオとしては特に不満があるわけではなく、そもそも友人がいたこともないので孤独であるという認識さえ持っていなかった。

両親からの愛情は確かに感じていたのでこのままで良いと結論付ける。

 

そんなレオにも話し相手ぐらいは存在している。

 

レオの日常は魔法の研究が大部分だ。

だからと言って24時間連続で研究室に引きこもっているわけではない。

日課として、リフレッシュも兼ねた散歩と市内の図書館でのマグル文学の読書や学術書を読むことで魔法界以外の知識も学習していた。

時間にして1時間ほどではあったが、魔法のことを一時的に忘れることで新たな発想や行き詰った問題の対処法などが頭に浮かぶことも多く、いい気分転換である。

 

図書館を利用している人は毎日同じというわけではないのだが一人だけ行くたびに顔を合わせる少女がいた。

 

レオが来てから帰るまでずっと同じ場所で勉強をしているのだ。

おそらく学校が終わってすぐに来て閉館時間まで残っているのだろう。

 

あまり他人に興味を持たないレオも毎日のように目にすればさすがに顔を覚える。

そして、毎日勉強漬けの少女を見ているとどんな勉強をしているのか興味が出てくるのだった。

 

「やぁ、毎日来ているけどどんな勉強しているんだい?」

 

「こんにちは。あなたには関係のないことよ。」

 

そちらには興味がないといわんばかりのバッサリとした返答。

これがレナード・テイラーと少女、ハーマイオニー・グレンジャーの最初の会話であった。

 

「そうか。とりあえずそこの答えは間違っているよ。」

 

ハーマイオニーは問題を確認し、自分がミスをしていることに気付く。

ミスを指摘され顔を赤くしながらも、初対面でいきなりこんな対応のレオを睨みつけた。

 

第一印象は互いにひどいものであった。

 

それから、時折レオはハーマイオニーの勉強を観察しながらミスの指摘や効率化のアドバイスをして楽しむといった遊びをするようになる。

対するハーマイオニーはこのいけ好かないヤツに対抗するためより学業に打ち込み、メキメキと知識を向上させる。

 

1カ月も過ぎる頃には二人はこの関係が心地よいものに変化するとは夢にも思っていなかった。

 

 

 

1カ月後

「今日の課題は何だい? それと先週読んでいた本についての感想は?」

 

「学校の宿題は終わったから物理学について勉強していこうと思うの。先週の本は個人間の思想の違いについての本だったわ。」

 

「思想か、そういった分野については苦手だ。よくわからない。」

 

「そうでしょうね。あなたは何というか心が別の方向に向いている感じがするわ。でも私はなぜだかそういうあなたとのこの関係も嫌いじゃないわ。」

 

最初の出会いからは考えられないぐらい穏やかな気持ちで会話をすることができるのが、ハーマイオニーは不思議ではあった。

今では勉強について教えられても特に反感も感じてはいない。相手の知識のレベルが自分よりはるかに上であると認めざるを得ないからだ。

ハーマイオニーはこの1カ月で色々と、自分も変わったのかなと日に日に感じていた。

 

ふと、ハーマイオニーは気づく。

 

「そういえば、私たちお互いの名前も知らないじゃない。私はハーマイオニー・グレンジャー。改めてよろしく、そしていつかあなたを超えるわ!」

 

「あぁ、そういえばそうだった。別に名乗らなくても不都合はなかったしね。僕はレナード・テイラー。そのいつかを楽しみにしているよ。」

 

 

 

その後も二人の奇妙な関係は続いた。そんな中でちょっとした雑談をしていた時であった。

 

「ハーマイオニーはなぜここで勉強しているんだ?友達と遊んだりはしないのか?」

 

「聞きづらいことをストレートに聞いてくるのね……。はぁ、私は友人と呼べる人はいないわ。学校でも周りの人とは合わないし、勉強しているとからかわれたりもしたわ。そんな周囲の人に嫌気がさしたから静かなここで勉強することにしたの。そういうあなたは友達はいるの?」

 

「考えてみたら、僕もいないや。僕の知っている同年代の子供は君だけだな。」

 

「そうなのね。友達は欲しい?」

 

「どうだろう。友達がいたことないから何とも言えないな。」

 

二人の間に数秒の沈黙が流れる。

そして二人は同時に宣言した。

 

「僕と友達になってくれないか?」

「私と友達になってくれませんか?」

二人は驚き、顔を見合わせる。

お互いが何を言ったのか理解した二人は握手をして微笑んだ。

 

二人の関係はただの知り合いから友人へと変わった。

こうしてレオは人生初の友人ができたのであった。

 

 

 

その頃のハリー・ポッター

「逃げんなよ。このウスノロ眼鏡が!」

ダドリー軍団からのいじめから逃亡中。




第2話いかがでしたか。

ヒロインとしてハーマイオニーが登場しました。
原作ではロンと結ばれましたが、今作ではどうなることやら

ハーマイオニーはハリー達と親友になる前は友達がいないだろうなというのと
レオも自分の造ったキャラですが友達は作らなそうだなと感じていました。

ならいっそのこと二人を友達にしてしまえばいいんじゃね?
ということでこのような話になりました。

次回はハーマイオニーが魔法使いだと知ってからの話になります。


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3.魔法の世界へようこそ

3話です。

レオとハーマイオニーがお互いの素性を知ることになります。


レオがホグワーツの入学案内を受け取ってから数日が経過した。

普段通りに図書館で読書をしているとハーマイオニーが喜んでいるのか、悲しんでいるのか微妙な表情で話しかけてきた。

 

「レオ……、あのね、そのちょっと話があるの。」

 

「なんだい? あらたまって。どうかした?」

 

「そのね、私しばらくしたらここには来ることがなくなると思うの。えっとね、完全に来れなくなるわけじゃなくてクリスマスや夏休みぐらいしか機会がないの。」

 

レオはそれを聞いて少し寂しい気持ちになったが、別に二度と会えなくなるわけじゃないから問題ないと思っていると、自分もホグワーツに入学するとなればここには来る機会はほぼ失われる事を思いだした。

 

「奇遇だね。僕も今度から全寮制の学校に行くことになったから、ほとんど会えなくなると思うよ。」

 

「レオもなのね。私も全寮制の学校に行くことになるわ。それ自体は嬉しいんだけど、レオに会えなくなるのは辛いわ。」

 

「まぁ今生の別れではないし、次に会う時にはもっと力をつけて僕を見返すつもりでいればいいんじゃないかな。」

 

ハーマイオニーはその言葉で吹っ切れたのかやってやるわよといった顔になる。

レオはやる気に満ちたその顔のほうがハーマイオニーらしいなと笑った。

 

「やる気になって結構だ。ところでどんな学校に行くんだい? 君の力を伸ばしてくれる良い学校だと良いけどね。」

 

ハーマイオニーは少しの間考えた後、ハッキリと答えた。

 

「多分聞いたことがないと思うけど、ホグワーツって名前の学校なの。一般には知られてない学校だから調べてもわからないと思うわ。」

 

普段は冷静であまり驚いたりすることがないレオもさすがに耳を疑い、思わず聞き返してしまった。

 

「ホグワーツ!? あのホグワーツなのか? ハーマイオニー、君はマグルじゃなかったのか?」

 

ハーマイオニーはレオが驚いたことやホグワーツの名前を知っていることから彼が魔法使いであると気づく。

 

「レオも魔法使いなのね? マグル?の意味はまだ知らないけど、この前ホグワーツから入学案内の手紙が届いて自分が魔法使いであるって知ったの。レオも同じなのかしら?」

 

「いいや、僕は両親ともに魔法使いだよ。マグルっていうのは魔法を使えない人を指す言葉さ。そっか、ハーマイオニーも魔法使いなのかぁ。」

 

レオとしては自分の唯一の友人が同じ魔法使いであるのは想像以上に嬉しい事柄であると感じていた。一緒にいて心地よい相手でもマグルでは魔法関係の話題はできないからだ。これからはハーマイオニーとも魔法について色々語れるのは楽しいという確信があった。

 

「ハーマイオニー、さっき会う機会が減るといった話になったが僕もホグワーツに入学することになっているからむしろ会える時間は増えると思うよ。」

 

「本当!? 嬉しいわ!あのね、私自分が魔法使いであるって知ってとても嬉しいのだけれど同時にものすごく不安でもあるの。だから、レオに色々教えてほしいの。お願い!」

 

「もちろんOKだよ。とりあえずはホグワーツで必要なものを入手してからかな。入学の準備はどうするのかな?ホグワーツの教員の誰かが一緒に準備してくれるのかい?」

 

「副校長のマクゴナガル先生と一緒に明日教科書とか必要なものを買いに行くことになっているわ。朝の10時に家まで迎えに来てくださるわ。」

 

「それじゃあ、明日一緒に買い物について行っていいかな? 僕も必要なものは全部揃えていないから買う必要があるんだ。」

 

「断る理由なんかないわ! 知らない人よりはあなたに魔法についていろいろ教えてもらいたいわ。明日先生と合流してからこの図書館前で10時15分に待ち合わせでいいかしら。」

 

「大丈夫だよ。じゃあ、今日はこれで解散にしようか。明日必要なものをそろえて、明後日からは魔法について色々と勉強の開始だ。今まで魔法を知らなかったけれど君なら優れた魔法使いになれるだろう。」

 

「わかったわ!それじゃまた明日ね。」

 

「ああまた明日。それと、ようこそ魔法の世界へ。」

 

 

二人はそれぞれの家へ帰っていく。その足取りはとても軽いものだった。

別々の世界へ進むと思っていた友人が自分と同じ世界の住人であると知る。

そのことは別れによる寂しい思いを暖かい気持ちに変化させるには十分すぎた。

 

その日の夜はハーマイオニーは未知の世界への希望で胸をいっぱいにして、

レオは唯一の友人がどのように成長するのかを楽しみにしながら眠りについた。

 

 

 

 

その頃のハリー・ポッター

「僕が魔法使い?」

ハグリッドから自分の真実を知ることとなった。

 




認識が一致した3話となりました。

二人ともお互いに相手が魔法使いだとは思っていませんでした。
レオはマグルに対して偏見はなく、(むしろ魔法使いにない技術があると高評価)
ハーマイオニーはレオの能力が高いと認めているので、仮に魔法使いとマグルの関係であったとしても良好な関係を維持していたでしょう。

次回はダイアゴン横丁での買い物です。
原作キャラが少しずつ登場していきます。


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1章 研究対象は賢者の石
4.ダイアゴン横丁


4話です。

ダイアゴン横丁での買い物となります。


ミネルバ・マクゴナガルはその日はいつものエメラルド色のローブではなく、マグルの女性が着る服装で目的の家に向かっていた。今年入学するマグル生まれの少女の入学準備のために共にダイアゴン横丁に向かうためだ。

 

(マグル生まれの子に魔法について知らせると不安になるか、積極的に知りたがるかの二択ですが彼女は後者でしたね。初めて会った時に色々と聞かれましたが、ホグワーツに入学してからもその知識欲から良い魔女になってもらいたいものです。)

 

マクゴナガルは少女、ハーマイオニー・グレンジャーのこれからに期待しながら呼び鈴を押した。とたん玄関が開き笑顔のハーマイオニーが立っていた。どうやら待ちきれなくて、玄関前で待機していたようだ。

 

「おはようございます! マクゴナガル先生。今日はよろしくお願いします。」

 

「おはようございます、ミス・グレンジャー。準備はよろしいようですね。では出発しましょう。」

 

マクゴナガルはさっそく漏れ鍋まで付き添い姿現ししようとすると、ハーマイオニーが質問をしてきた。

 

「先生。今日はどんな場所へ行くのでしょうか?可能であれば友達と一緒に行きたいのですが……。」

 

「ミス・グレンジャー、今日は入学準備なので魔法使いの道具などが一通り揃う場所まで行きます。ダイアゴン横丁という名の場所です。マグルは入ることのできない場所なので諦めなさい。」

 

「友達は魔法使いの家系で今年ホグワーツ入学するって言っていました。一緒に入学用品を買いたいとのことでした。」

 

「それなら問題ありません。しかし驚きました、あなたはマグル生まれなのでてっきり友人はマグルであるとばかり……。」

 

「私もつい昨日、彼が魔法使いであると知ったばかりです。待ち合わせの場所まで少し歩きますが構いませんか?」

 

マクゴナガルは肯定し、ふたりは図書館へ向かった。

 

 

 

図書館前

 

二人が図書館に到着するとすでにレオが待っていた。

 

「おはよう、ハーマイオニー。隣の方がマクゴナガル教授ですね。初めまして、今年からホグワーツに入学することになっていますレナード・テイラーと申します。」

 

マクゴナガルはレオの名前を聞いた瞬間、衝撃を受けた。それだけレナード・テイラーの名前は魔法界では有名であったのだ。

 

「まさか、あのレナード・テイラーなのですか?確かに今年の入学名簿にありましたね……。まさかマグル生まれの子の友人としてあなたが現れるとは驚きです。」

 

ハーマイオニーは魔法界やレオの事情は知らなかったが、マクゴナガルの反応からレオが普通の子供ではないと悟った。

 

(やっぱり、レオはすごいのね!)

 

マクゴナガルは驚いたものの、すぐに今日の要件を思い出した。

 

「それでは、入学用品を買いに向かいましょう。二人は私に捕まってください、漏れ鍋まで付き添い姿現しをします。」

 

ハーマイオニーは聞きなれない単語について聞きたそうにしていた。知らないことを積極的に知ろうとするその姿勢をレオはとても好印象であった。

 

「漏れ鍋はロンドンにあるパブで魔法界の市場、ダイアゴン横丁の入り口になっている。認識阻害の魔法によってマグルには感知されないようになっているんだ。姿現しは簡単に言えば瞬間移動、マグルのSF風ではワープとかなのかな。付き添いだからマクゴナガル教授に連れてってもらうといった感じかな。今日は他にも色々聞きたいことが山ほど出てくると思うけど、遠慮なく僕に聞いていいよ。答えられる範囲なら答えるよ。」

 

「ありがとう、レオ!」

 

二人はマクゴナガルの腕を掴むと臍の奥が引っ張られる感覚とともに姿を消した。

次の瞬間には先ほどまでの場所ではなく漏れ鍋の前に立っていた。

ハーマイオニーは初めての姿現しに少し気分が悪くなったが、今しがた体験した魔法についての感動で酔ったことなど吹き飛んでしまった。

 

三人がパブに入ると店内はざわついていた。いつもはここまで騒がしくないはずである。

何かあったのかとマクゴナガルが店主のトムに尋ねると、トムは興奮しながら先ほど店に誰が来たかを話しだした。

 

「ハリー・ポッターです! あの『生き残った男の子』がいらしたんです! あぁ…あの英雄がやっと魔法界にもどられたんですねぇ……。」

 

マクゴナガルとレオは店内の様子に納得したが、ハーマイオニーは有名人が来たのかなぐらいの認識であった。

店を出て石のアーチをくぐりダイアゴン横丁に入る一行。

アーチの先はまさに魔法の世界。見たことなく、使い方も想像できないような魔法の道具の数々にハーマイオニーは目を輝かせる。

レオは自身の「眼」で見る様々な魔法にあふれるカラフルなダイアゴン横丁の景色がお気に入りなのだった。

 

まずは、魔法界唯一の銀行で換金と引き出しを行った一行は教科書や鍋などを購入していく。

購入した用品はレオが転送呪文で家まで送ったため荷物を抱えずに済むことができた。

ペットについては二人とも今は興味がないとのことで買うことは無かった。

 

次に「マダム・マルキンの洋装店」に向かったが、店の前には普通では考えられないような大男が立っており正直なところ店に入るにはかなり邪魔であった。

 

「ハグリッド、ドアの前に立たれると他の利用者が入れませよ。少しずれたらどうですか。」

 

「おお! これはマクゴナガル先生。こいつはすいませんですだ。よっと……今日は新入生の付き添いの買い物ですかい?」

 

マクゴナガルはハグリッドと話があるとのことで二人で制服の購入をすることとなった。

店内では二人の男子が話をしているようであったが、青白い顔をした方が先に終わったらしく出て行ったが、まだ採寸している方は何やら疲れた顔をしている。

特段興味がない二人は大人しく順番待ちとなった。

先にレオが採寸することとなり残った方の隣に立つ。

 

「ねぇ、君たちもホグワーツに入るの?」

 

「そうだよ。君もなのかい?よろしくね。」

 

「私もよ、よろしく。」

 

「あの……君たちの親は魔法使いそれともマグル?」

 

「なんでそんなこと聞くのかな?」

 

「さっきまでいたヤツが名門だとか両親が魔法使いじゃないとだめだとか色々言ってたからちょっと気になっちゃって……。」

 

「ああ、それは純血主義ってやつだ。古くからある血を重んじるって考え。僕はそういうのはどうでもいいと思っているよ。」

 

その言葉に少年の疲れた顔が少しはましになる。

その後もホグワーツに入学したらどうなるのかなど、他愛のない話をしていると少年は採寸が終わりローブや制服を受け取って店を出る。ドアの前にいた大男と一緒に行動していくようだ。

 

レオは今の少年が金色の薄いベールのような魔法をまとっていると気づいた。

おそらく何かしらの保護の呪文であろうがとても優しい色と構造をしていて美しかった。

次に会う機会があればもっと解析したかったなぁと残念に思った。

 

 

レオとハーマイオニーも買い物を済ませ店を出る。待っていたマクゴナガルと最後は杖を購入するために歩き出した。

 

「杖はオリバンダーの店で買うのが一番だと断言します。私もそこで自分の杖に出会いました。あなたたちも必ず自分に最適な杖が見つかるでしょう。」

 

『オリバンダーの店-紀元前382年創業 高級杖メーカー』と書かれた小さな店。

マクゴナガルが自信たっぷりに言うにはみすぼらしい店であると感じながらも二人は入っていく。

中は天井近くまで山のように積まれた杖の箱でいっぱいでただでさえ小さな店が余計に狭く錯覚させられた。

店内でしばらく待っていると店主のオリバンダー老人が現れた。

オリバンダーはまずはハーマイオニーに杖についての説明をし、一つ一つ相性について確認していく作業に移っていく。

ほどなくしてブドウにドラゴンの心臓の琴線の杖に決まったようだ。

 

「それでは、次はそちらの少年の杖を見繕いますかな。お名前は何と言いますかな?」

 

「レナード・テイラーと申します。僕は杖の購入はしません。自作の杖をすでに持っていますので。」

 

「なんと、あのレナードさんでしたか。まさか杖の制作についてもされているとは…。機会があれば杖の制作談義などしてみたいものです。」

 

「機会があれば是非。」

 

 

 

杖を手に入れて学校に必要なものは一通り揃えることができた二人。

 

「本日はお疲れ様でした。私は他にも用事があるので帰りはマグルの移動手段で帰るのがよろしいでしょう。あぁ、そうでした。二人ともこれをどうぞ。ホグワーツ行きの汽車のチケットになります。場所はミスター・テイラーならばわかるでしょう。それでは次はホグワーツで会うことを楽しみにしていますよ。」

 

そういうとマクゴナガルは姿をくらませ、残った二人は電車を利用して帰路につくのだった。

ハーマイオニーはホグワーツ特急のチケットを見てニコニコしている。よほど今日一日の体験が嬉しいようだ。

 

「レオ、九と四分の三番線ってどういうことかしら。今日の漏れ鍋みたいに隠しているの?」

 

「それは当日のお楽しみということで。とりあえず、明日からは約束通り一緒に勉強かな。ハーマイオニーの家や図書館でするわけにもいかないから僕の家でやろう。入学までにどこまでやれるか楽しみにしてるよ。ついて来れるかな?」

 

「望むところよ! 私の目標はあなたを超えることなんだから!」

 

ハーマイオニーの魔法界での最初の一日は興奮と希望の中終わろうとしていた。

レオは明日からどのようにしてハーマイオニーを鍛えるかを考え、成長した彼女の造る魔法がどのような美しさなのかを期待しているのだった。




本作では「」は実際に発声したセリフ、()は声に出してない心の声として使います。

レオが未成年なのに転送呪文を使っていますが、今までの研究成果から特例で魔法を使うことが認められてます。(臭いについてはレオは問題なく消すことができます。)

ハグリッドとマクゴナガルが話していたのは回収した賢者の石についてです。

レオがハリーと出会いましたが、額の稲妻型の傷が見えなかったためハリー・ポッターだと気づきませんでした。
ハリーの母の血の守りが守っていると「眼」で気づきましたが、さすがに初対面でじろじろ見るのは失礼だと思ってハッキリ解析はしませんでした。
レオとしてはハリーがなぜ死の呪文を受けて生きているかは気になってます。

次回はハーマイオニーに対してのレオの魔法講座の話になります。
私の個人的な魔法についての考えを使っていこうと思います。


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5.魔法講座開始

お気に入り登録が100件を超えていてびっくりしました。
これからもよろしくお願いします。

今回はレオによるハーマイオニーへの魔法講座です。
私の魔法に対しての考えが出てますが、どこかで似たようなの見たことあるなと思ったら、それはきっと色んな漫画や小説等に影響されたからだと思います。

生暖かい目でスルーするか、感想でこれのパクリじゃないか!とか言ってくれると助かります。


ハーマイオニー視点

 

ダイアゴン横丁で買い物をした翌日の朝

 

私、ハーマイオニー・グレンジャーは小走りで目的地に向かっている最中であった。

行先は勿論テイラー邸である。

今日から入学までレオにみっちりと魔法について教えてもらうのだ。

昨日の夜は初めて魔法界に行った興奮と今日からの勉強について色々考えていたら中々寝付くことができなかった。

 

私はレナード・テイラーのことを唯一の友人……いや親友であると思っている。

それと同時にいつか超えるべき目標であると決めていた。

 

初めて会ったときはいきなり口を出してきて失礼な人だと怒りを覚えたものだ。

しかし、決して間違ったことは言っていなかったため余計に悔しい思いもした。

何度かそんなやり取りをしているうちに相手が自分より頭の回転が速く、物事をより正しく認識する力があると認めざるを得なくなった。

同時に、以前のような怒りはなく純粋に尊敬する自分の心に困惑もしたが、決して不快な気持ちではないと断言できる。

彼に近づいて、並び立ち、追い越すことを目標に勉強にもっと力を入れた。

 

そして、自分が魔法使いであると知らされても、人として、魔法使いではない彼のことを超えるつもりではいた。

まぁ、彼も魔法使いであると知って、一緒に魔法使いの世界に行くことになったが…。

 

昨日、一緒にダイアゴン横丁に行ったがどうやら彼は魔法界でも有名で優れた人らしい。

対して自分は魔法については0からのスタートだ。

だからと言って諦めるつもりはない。

目標との差は大きくなってしまったけれど、逆に燃えるというものだ。

まずは、ホグワーツに行く前に少しでも勉強しておかなければ。

 

「なんにしても、今日からその一歩ね……。もらった地図によるとこの辺りのはずだけれど。」

 

私はテイラー邸への地図を鞄にしまうと、もう一つもらっていた道具を取り出す。

それは幾何学模様が描かれた青いコインであった。

 

「これを持っていると認識できるようになるって言ってたけど……。」

 

そうつぶやいた瞬間、コインが光を放ち次の瞬間には先ほどまでそこには無かったはずの家が建っていた。

驚いたが、とりあえず呼び鈴を鳴らしてみる。

すぐにドアが開き中から長い茶髪の女性が姿を現す。

 

「は~い。どちら様ですか~? んん? 女の子? レオぐらいの歳かしら。迷子かしら。お名前は? 何かご用ですか?」

 

「あの、初めまして!ハーマイオニー・グレンジャーといいます。今日はレオ…じゃなくてレナード君に呼ばれて来ました。レナード君はご在宅でしょうか?」

 

「まあまあまあ! レオのお友達なのね!? あぁ、どうしましょう! レオに友達が訪ねてくるなんて。というかレオに友達がいたなんて初耳だわ!」

 

女性、おそらくはレオの母親だろう、の予想外の驚き様に逆にこちらが面食らってしまった。

しばらく興奮したままだったが、こちらを放置しているのに気が付くと家の中に案内してくださった。

 

「ごめんなさいね。レオにお客様が訪ねてくるとは聞いていたのだけれど、まさか友達でしかも女の子だなんて夢にも思わなかったの。私はレオの母親のフェリス・テイラーよ。今レオを呼んできますからソファーに座ってゆっくりしていってね。」

 

そういってフェリスさんがリビングから出て行った後、家の中を見渡してみる。

魔法使いの家という割には特に変わったところは見つからなかった。いたって平凡な普通の家でちょっと拍子抜けしてしまう。

しばらく、観察をしていると、フェリスさんがレオを連れて戻ってきた。

 

「お待たせ~。そういえばどんな用事なの? 遊びに来てくれたの? ハーミーちゃんも今年からホグワーツ? 好きな食べ物は?」

 

「母さん。興奮しすぎですし、そんなにいっぺんに質問されても答えられませんよ。」

 

「だって、レオに友達がいてしかも家に遊びに来てくれるだもの! さらには女の子! 色々聞いてみたいのよ~!」

 

フェリスさんからの質問が続いていたが、レオに引っ張られて彼の研究所まで案内された。

室内は外から見るよりもはるかに広く、また先ほどまでのリビングとは大きく異っていた。見たことのない物体やフラスコに入った様々な色の薬品など、まさに魔法使いの研究室としか言い表せない。

 

「さて、ハーマイオニーはマグル出身ということで魔法がどんなものか全く知らないと考えていいのかな?」

 

肯定するしかない。つい一週間前までは自分が魔法が使えるとさえ思ってもみなかったのだ。

 

「それじゃあ、まずは魔法とは何であるかの説明かな。学校の勉強は基礎をしっかり固めてから取り組んでもいいと思う。」

 

「レオ、あなたを信じていないわけじゃないけれど不安だわ。学校の勉強についていける? 早く学校の勉強も取り組んだ方がいいんじゃないかしら?」

 

ホグワーツは魔法学校なのだ。当然魔法が中心で勉強も進むに決まっている。

魔法の存在が空想のものだと信じられてきた環境で生きてきたのだ。

勉強にはついていけるのか、魔法を扱えるのか、などなど。

最初は魔法使いと知って嬉しさと希望でいっぱいだったが、いざ勉強を教えてもらう段階で不安が徐々にわいてきた。

そんな私の心の内を気にもしない様子でレオは言う。

 

「君以外にもマグル出身はいるし、そういった人もホグワーツの入学から魔法を学んでも魔法使いの家に生まれた子供と大差ないのだから、気にする必要はないと思うよ。君は優秀だよ。あぁ、魔法が使えるとかそういったことではなく、頭の回転とか観察力、理解力とかかな。魔法を扱ううえでそれらは重要になってくるよ。とりあえず今日は基礎を教えて、君の能力に合わせてペースを上げよう。僕も色々と一から魔法を学びなおすことで何か違った発見があるかもしれないし、マグル視点からの魔法について知るのも面白そうだ。」

 

彼に優秀と言われるだけで胸の奥が暖かくなる。マグル出身が他にもいるとかそういった情報よりその一言で私の下へ向いていた気持ちのベクトルが真逆になるのだった。

 

「やる気になったようだね。じゃあ、勉強開始だ。僕は教師じゃないけど、魔法研究をしている。これから僕なりの考えで魔法について話していくよ。」

 

 

「ホグワーツでの科目も含めて魔法研究は大別して三つに分けられると僕は考えている。

一つ、呪文系。魔力と呪文を使ってあらゆる現象をもたらすもの。呪文学、変身術が該当する。

二つ、魔法生物系。魔力を秘めた動植物を扱うもの。薬草学、魔法生物飼育学、魔法薬学だね。

最後の三つ目は前の二つ以外のものになるかな。魔法史やマグル学は歴史や文化の分野だから魔力自体は使わないし、占い学なんかは魔力以外の才能がものをいう。それ以外にも魂や精神なんかを扱う分野の研究がここに属している。」

 

なるほど、と頷く。とりあえず呪文、不思議な生物、その他と記憶しておく。

 

「まずは、魔法がどういったものか説明してから呪文系を学んでいこう。魔法生物系は実物を扱って経験してみないことにはどうしようもないこともあるからね。三つ目の分野は後回しでも問題ないだろう。入学までの約一か月間は呪文の運用などを中心に取り組んでいこう。」

 

いよいよ本格的に講義開始のようだ。気を引き締めてしっかり脳に刻み付けていこう。

 

「魔力、これを体内で生成できるかどうかが魔法族とマグルを区別するたった一つの違いなんだ。

魔力の量や特徴は個人差があって生まれ持ったものだから変えることは困難だ。

量は魔法をどれだけ使えるかに関わる。マグル文化で例えると車のガソリンに当たるかな。量によって車の速さと走行距離が変わってくるように使える魔法の数と強さが変わる。

特徴は個人間での差はほとんどないが、得意な魔法分野に影響する。特異な魔力を持つがゆえにほとんどの分野でまともに魔法を使えないが、ある分野のみは誰にも負けない才能を発揮したりする人もいる。」

 

「呪文は魔力を魔法という現象に変換するための補助をするものだ。

大事なのは呪文を言う、知っているというよりは使いたい魔法がどのような結果をもたらすか、しっかりとイメージする必要がある。そのイメージによって魔力が魔法に変わる。イメージを確立するために呪文がある、なので熟練者ほど呪文を言わなくても魔法が使える。ただしイメージを強くできるため呪文を言った方が強い効果を発揮することができる。」

 

「イメージの確立つまり、魔法を取り扱うには精神が大事になってくる。

正常な精神状態であれば十全な魔法が使える。逆に疲弊した精神ではまともに魔法を使えないことさえある。不安、動揺、自信がない、恐慌状態、などなどこういった精神状態で無理に魔法を使うと成功しないだけでなく、最悪暴発して命を失うことにつながりかねない。」

 

「最後に杖。これは体内の魔力を効率的に外へと出すための経路の役割になっている。

芯に人より魔力に対して親和性のある生物の一部を使うことで魔力を外へ通しただの魔力を魔法という方向に誘導する。呪文と同じであくまで魔法を使うための補助道具。

しかし魔法使いはほぼ杖に頼り切っている。杖なしでも魔法を使うことは理論上不可能ではない。

だが、魔法が使える他の種族と比べて人は魔力を外に出す力が弱い。

杖なしで魔法行使するには使う魔法に対して高度な理解力が必要になってくる。

杖の役割はこんなところだが作成なんかになるとまた専門的な知識が必要だ。

ちなみに別に杖でなくとも他の道具で代用できるのならばどんな形のものでも魔法は使えるんだ。あまり普及はしていないけどね。」

 

魔力、呪文、イメージ、精神力、杖……。レオの言ったことをメモを取りながら頭の中で繰り返す。魔法を使う時の必要なものは分かった。だけど……。

 

「レオ、とりあえず魔法を使う最低限の要因は理解できたわ。だけど、やっぱりこの目で魔法を見て使ってみないことにはイメージがし難いわ。」

 

「まぁ、今言ったことは本当に魔法を使ううえでの最小構成要素だからね。ほとんどの人はいちいち魔力とか杖がとかあまり意識せずに杖を持って呪文を言うと魔法が使えるって認識がだろう。学校指定の教科書を見たけれど呪文と効果、杖の動きぐらいで魔力なんかの説明はほとんど無かったしね。しかし、本当に魔法で何かをするときには今説明したことを意識することで細かな制御やより複雑な応用も可能になる。魔法研究をしている僕としてはその辺をしっかり知っておくと必ず魔法使いとしての力は上達すると断言するよ。」

 

レオの言葉を聞いて何事も基礎の基礎が大事なのだと改めて感じた。

 

それからは簡単な魔法を使った講座が始まった。

まず、レオが手本を見せてから私がやってみる。ミスや改善点をそこで指摘される。

具体的なイメージや細かな発音や杖の動きを調整。何度か失敗してもレオがその都度適切なアドバイスをくれるので失敗の頻度はみるみる減っていった。

 

 

 

最初の一週間はものを動かすなどの簡単な魔法だけだった。

次の二週目は簡単な呪いと防御呪文。それに危険度の低い魔法生物を扱ったりもした。

三週目になると基本呪文の応用(強弱や範囲の指定など)。それと魔法薬を作って実際に効果を確認して一喜一憂したりした。

最後の四週目は今までの復習とホグワーツの予習だったが、三週目までで三~四年生の授業内容レベルに達してしまっていたので、もっと高度な魔法について少しだけふれることができた。

その他にも魔法使いたちの常識や歴史について簡単だが教えてもらった。

 

レオの話では私は理解力が予想以上らしくついつい予定より高度な内容になってしまったようだ。

だけど私を優秀だと言うレオはこちらから見るとさらに上の領域にいるようにしか思えなかった。

なんでも、レオは普通とは『眼』が異なっていて魔法の理解力が人とは違うらしい。

どんな『眼』なのか聞くと魔力や魔法を式や色として認識できるらしい。

 

なにはともあれホグワーツ入学までの一カ月で私も随分力と知識を得ることができた。

目標はまだまだ遠いけれど私ももっと勉強してすぐに追い越してやるんだから待ってなさい!

 

 

 

そのころのハリー・ポッター

物置部屋での日々。

 




今回はハーマイオニー視点での話にしてみました。
色んな形式の話に挑戦してみたいです。

テイラー邸はレオ開発の簡易忠誠の術で守られています。コインが守り人の代わりです。
簡易なので少し実力のある魔法使いにはバレてしまいますが。

チートのレオに魔法を教えられたので本作のハーマイオニーのレベルはかなり上昇しています。最終的にどこまでにするかは未定ですけど。

次回はホグワーツに到着するところまでの予定です。


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6. 九と四分の三番線からホグワーツへ

6話です。

今回は特にイベントもなく平和にホグワーツに出発です。


1991年9月1日 キングス・クロス駅

 

キングス・クロス駅にはマグルに秘匿されたホームがある。

九番線と十番線の間の柵の向こうの九と四分の三番線には今日はホグワーツ行きの紅の蒸気機関車が停まっており、多くの魔法使いの姿があった。

その中にはテイラー家とグレンジャー家の姿もあり、共にホグワーツに入学する子供がいることもあって会話を弾ませていた。

レオがハーマイオニーに魔法について教えるうちに家族ぐるみでの付き合いとなっているのであった。

 

「レオ君、娘のことよろしくお願いしますね。私たちは魔法については全くの無知ですし、この子も友達付き合いは苦手ですからねぇ……。」

 

「わかりました。僕も友達はハーマイオニーしかいませんのが、ホグワーツでの生活は七年間もありますし気長にやっていこうと思います。」

 

「心配無用です、グレンジャー婦人。父親の私より息子は優秀です。魔法についてならレオに任せておいてください! むしろ娘さんが友人になってくれたおかげでレオに初めての友人ができて私たちの方が大助かりですよ。」

 

談笑を続けていると出発の時間が近づいてきた。レオとハーマイオニーは空いていたコンパートメントに入り、それぞれの両親に出発の挨拶をするため窓から顔を出す。

 

「父さん、母さん。行ってまいります。」

「うむ。良い学生生活を送ってこい!」

「体に気を付けるのよ。友達作るのよ。手紙書いてね。ええとそれから……。とりあえず頑張って!」

 

「ママ! パパ! 行ってきます! クリスマスには戻るわ!」

「行ってらっしゃい。無理はしないようにね。」

「何かあったらレオ君に相談するんだよ。頑張りなさい。」

 

 

列車が走り出してからすぐに二人のいるコンパートメントの扉が叩かれる。

扉を開けると一人の少年が申し訳なさそうな顔をして立っていた。

どうやら他のコンパートメントに行く当てがないようだ。

 

「ごめんね……その……席空いてる? どこもいっぱいで……。」

「私は構わないわ。レオは?」

「別に問題ないよ。」

 

了承を得た少年はおずおずした感じで席に座る。

 

「僕はネビル・ロングボトム……。よろしく……。」

「私はハーマイオニー・グレンジャー。でこっちは」

「レナード・テイラーだ。よろしく。」

 

ネビルはレナード・テイラーの名を聞くと目を見開いて口をパクパクさせる。

レオが自己紹介すると大抵の魔法使いはこのような反応をする。

正直なところレオは少しうんざりしていた。

 

「レナード・テイラーって……、僕でも知ってるよ! 有名人だ! 若いって聞いてたけど、僕と同じくらいだなんて……。」

 

「ロングボトム君は今年入学か? だとしたら僕とハーマイオニーも同じだよ。」

 

「こんなすごい人が同学年だなんて……。どうしよう僕のダメなところが目立っちゃうよ……。」

 

「始まる前から卑屈になっちゃ、それこそダメになっちゃうわよ! うじうじしていないでしっかりしなさい。」

 

ハーマイオニーの励ましでは気持ちはあまり変わらなかったようで顔色は優れていなかった。

その後は車内移動販売でお菓子を買ったり、昼食を食べながら雑談をして過ごす三人。

話題はホグワーツに入ってからどこの寮に入りたいという話題に移る。

 

「二人はどの寮に入りたい? 私はグリフィンドールとレイブンクローで迷っているわ。」

 

「僕は正直どこでもいいかなって思ってる。どんな場所だろうと自分の思うように研究を続けるだけだよ。適正で言えばレイブンクローな気がするが。」

 

「僕は……。ばーちゃんがグリフィンドールに入れって言うんだけれど……、多分ハッフルパフだよ。最悪スリザリンじゃなければ良いかな。」

 

「ロングボトム君、ハッフルパフが劣等生でスリザリンが闇の魔法使い予備軍って認識を持っているならその考えは修正した方がいいよ。ハッフルパフも偉大な魔法使いを輩出しているし、スリザリンだからと言って全員が闇の魔法使いというわけじゃないから。ただ父さんの話では今のスリザリンはほとんど純血主義だからハーマイオニーみたいなマグル出身には居心地は悪そうだな。」

 

「そうね、できれば気分よく勉強したいから自分に合った寮に行きたいわ。どうやって所属寮を決めているのかしら? 何かテストをするのかしらね?」

 

テストという言葉はネビルを怖気づかせるには十分な力を持っていた。

 

「どうしよう……。いきなりテストなんて無理だよ、結果が出せなくて入学できないなんてなったらばーちゃんになんて言われるか分かんないよ。」

 

「心配しなくても大丈夫だと思うよ。それぞれに合った寮を決めるんだから難しいテストじゃなくて適性を測る何かをするんだろう。」

 

「そうよね、なんにしても楽しみだわ。」

 

その後、しばらくお互いについてやホグワーツについてのあれこれ色々と話し合った。

 

 

 

ホグワーツまでの道のりも半分は過ぎた頃、ネビルが声を上げた。

 

「あれ? トレバー! トレバーがいなくなっちゃった! どうしよう二人とも見なかった?」

 

「落ち着いて、ネビル。トレバーって何なの?」

 

「ペットのヒキガエルなんだ。すぐにどこかに行っちゃうんだよ。探さなきゃ。」

 

「私も手伝うわ。」

 

二人は出ていこうとするがレオは動こうとしない。

 

「レオは来ないの?」

 

「二人とも僕らは何だい? 魔法使いだろう。わざわざ外に出ていかなくとも魔法を使えば良いだろう。」

 

あっ、といった感じで二人は気づく。

 

「そうだった、魔法を使えば良かったんだわ。まだ魔法使いの感覚に慣れてないみたいね。」

 

「でも僕はペットを探す魔法なんて使えないよ。」

 

「ハーマイオニーだったらどんな魔法を使うのがいいと思う?」

 

「呼び寄せ呪文かしらね。やってみるわ。ネビル、トレバーの特徴を教えてくれないかしら。」

 

ハーマイオニーはヒキガエルの大きさ、色などを聞いて頭の中でイメージする。

姿を思い浮かべてから自分のもとへ来るイメージを構築していく。

 

「アクシオ!」

 

数秒の後、廊下の方からレオたちのいるコンパートメントに向けてヒキガエルが飛んでくる。

 

「トレバー!」

 

「やったわ。成功よ!」

 

ネビルはハーマイオニーに何度もお礼を言い、ハーマイオニーは今の魔法の結果に満足気味だった。

 

「ハーマイオニー、今の魔法は良かったよ。構成がしっかり組まれていた。」

 

「レオの教えが良かったからよ。」

 

その後は特に問題もなく時間が過ぎていく。

次第に空も暗くなってきたので、三人は男女ずつに分かれ制服に着替える。

その後三十分ほどでホグズミード駅に到着した。

荷物はそのままにしておくよう指示があったので三人はそのまま列車の外に出る。

 

駅のホームにはダイアゴン横丁でも見た大男が待っていた。

レオが『眼』を使って見ると通常の人と異なった魔力が全身を覆っていた。

おそらくは人ではない魔法生物との混血なのだろう。

 

「イッチ年生!イッチ年生はこっちだ!ついて来い!」

 

どうやら一年生はあの大男が案内するようだ。

 

「さあイッチ年生のみんなホグワーツが見えるぞ。この角を曲がったらだ。」

 

山道を抜けるとホグワーツが見えた。周りからは歓声が上がっていた。

 

次に四人ずつボートに乗って、湖を進む。

レオ、ハーマイオニー、ネビルのボートには人数が足りなかったのか三人しか乗らなかった。

ボートは蔦のカーテンをくぐり崖にある入り口に入っていく。

暗いトンネルの先の船着場に到着し、大きな扉の前まで案内される。

 

「よし、全員いるな?」

 

扉を三回ノックし、扉が開くとエメラルド色のローブを着たマクゴナガル教授が待っていた。

 

「マクゴナガル教授、イッチ年生のみなさんです。」

 

「ご苦労様、ハグリッド。ここからは私が預かりましょう。」

 

マクゴナガル教授に案内され玄関ホールを通って小さな部屋に通される。

 

(さてこれから組み分けだろうか。どんな結果になることやら。)

 




ハーマイオニーのレベルが上昇しているためトレバーがらみでハリー達に遭遇することなくホグワーツに到着となりました。

次回は組み分けです。
レオとハーマイオニーの寮はどうなるのかお楽しみに。


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7. 組み分け

通算UA1万越えとお気に入り登録が400を超えました。
ありがとうございます。

週1~2回程度の更新を目標としてます。
これからも頑張っていきますのでよろしくお願いします。

では7話どうぞ。


「ホグワーツ入学おめでとうございます。新入生の歓迎会がまもなく始まりますが、大広間の席に着く前に皆さんが入る寮を決めなくてはなりません。

寮は全部で四つあります。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、そしてスリザリン。どの寮も輝かしい歴史があり、偉大な魔法使いを輩出してきました。」

 

その後は得点、減点の説明と寮杯について説明があったが、レオは聞き流していた。

寮杯については興味もないし、罰則で時間を取られなければ減点されても問題にはならないと考えていた。

 

新入生たちは組み分けがどんなものかお互いに様々な憶測が飛び交う。

呪文を使うテストだの、ものすごく痛いだのと現実的ではない意見も多かった。

 

待っている間にゴーストたちが出てきて悲鳴を上げる生徒が出たがそれ以外に特に変化はなく、レオはあたりを見渡し城に施された様々な魔法を見ていた。

 

しばらくした後、マクゴナガルに呼ばれ、新入生は大広間に連れられて行く。

 

大広間は素晴らしい光景が広がっていた。

何千もの蝋燭が宙を浮き広間を照らす。

中央には大きなテーブルが四つ並んでおり金色の皿やゴブレットが置かれ、上級生が新入生たちを見ながら座っている。天井には本物の空のように見える魔法がかけられ、星々が大広間の上で輝いていた。

 

「『ホグワーツの歴史』に書かれていたけど実施に見てみないとこの素晴らしさは分からないわね。」

 

「そうだね。やはり魔法は実際に目にするのが一番だ。」

 

レオとハーマイオニーもこの魔法の美しさに目を奪われていた。

新入生たちが並んで待っているとマクゴナガルが椅子を置き、その上にかなり古くボロボロになっている帽子を置いた。

 

新入生たちは何が始まるのだろうと思っていると、次の瞬間に帽子が歌い始める。

 

『わたしはきれいじゃないけれど

人は見かけによらぬもの

私を凌ぐ賢い帽子

あるなら私は身を引こう

山高帽子は真っ黒だ

シルクハットはすらりと高い

私はホグワーツ組み分け帽子

私は彼らの上をいく

君の頭に隠れたものを

組み分け帽子はお見通し

かぶれば君に教えよう

君が行くべき寮の名を

 

グリフィンドールに行くならば

勇気ある者が住まう寮

勇猛果敢な騎士道で

他とは違うグリフィンドール

 

ハッフルパフに行くならば

君は正しく忠実で

忍耐強く真実で

苦労を苦労と思わない

 

古き賢きレイブンクロー

君に意欲があるならば

機知と学びの友人を

ここで必ず得るだろう

 

スリザリンではもしかして

君はまことの友を得る

どんな手段を使っても

目標遂げる狡猾さ

 

かぶってごらん! 恐れずに!

興奮せずに、お任せを!

君を私の手に委ね(私は手なんかないけれど)

だって私は考える帽子!』

 

歌が終わると、生徒と教員の全員が拍手をおくった。

組み分けの方法が帽子をかぶるだけだと知って周りからは安堵の声が聞こえてくる。

レオは組み分け帽子を凝視し、その魔法の構造を解析するのに集中していた。

 

「ABCの順番に名前を呼びます。帽子をかぶって椅子に座って組み分けを受けてください。」

 

「アボット・ハンナ!」

 

最初に金髪おさげの少女が呼ばれ帽子をかぶり座る。

一瞬の後帽子は彼女の寮を決定した。

 

「ハッフルパフ!」

 

その後も次々と名前が呼ばれ各寮に組み分けられていった。

 

「グレンジャー・ハーマイオニー!」

 

ハーマイオニーはレオに目配せをして、待ちきれないように帽子をかぶった。

帽子は決めるのに五分以上の時間をかけた、彼女の寮を決めかねているようだった。

 

「レイブン……、いやグリフィンドール!」

 

ハーマイオニーはグリフィンドールの机に拍手を持って向かい入れられる。

 

その後も組み分けは続いていく。

そしてとある少年の名前が呼ばれたとたん、先ほどまでの様々な声は一瞬で無くなり、大広間は静寂に包まれた。

 

「ポッター・ハリー!」

 

生き残った男の子がどんな人物なのか、そしてどの寮に決まるのか大広間のレオ以外の全員が注目していた。

 

「グリフィンドール!」

 

英雄の行き先はグリフィンドールとなった。グリフィンドールの机は爆発したような歓声に包まれ大騒ぎである。ポッターを取ったとはしゃいでいる双子が特に目立っていた。

レオはそんな周りに興味を持たず、帽子を凝視し続けていた。

 

(なんて複雑な構成なんだろう……。ホグワーツ創設期に造られたはずだから、千年近く……。魔法の構成だけでなく魔力の色も全然劣化していない、ホグワーツの創設者が作ったのだろうけど凄まじいな。)

 

「テイラー・レナード!」

 

分析しているうちにレオの番が回ってきた。

 

レオの名前が呼ばれるとハリーほどではないが大広間からの注目が集まる。

魔法研究の若き天才がまさか新入生にいたとは、どこの寮に所属するのか、こんなに若かったのか、等様々な好奇な目で見られながら帽子をかぶる。

 

(ふむ……。これはまた大層な資質を持った子だのう。今までに見なこともない体質でもある。)

 

(あなたも今までで見てきた魔法具の中で最も素晴らしいものだ。やはりホグワーツの創設者たちが造られたのですか?)

 

(いかにも。どうやらその『眼』にはお見通しのようだの。)

 

(すべてはまだ把握しきれていませんけどね。ところでどの寮なのでしょうか。)

 

(おお、そうだった。すまんの。うーむ、勇気も優しさも確かにある。だが魔法研究を第一にする傾向から他者を疎かにしてしまいそうだの。グリフィンドールとハッフルパフではない。手段を選ばないことからスリザリンでもよさそうだが、何よりその魔法に対しての理解しようとする欲望! それならば……。)

 

「レイブンクロー!」

 

拍手と歓声に包まれる大広間。その大多数がレイブンクローからのものであった。

 

その後も順調に組み分けは続けられ、最後の一人の組み分けも無事終了する。

校長のダンブルドアから簡単な挨拶があり、テーブルの上の大皿には多種多様な料理が現れていた。生徒たちはそれぞれ自由に食べ始める。

レオも近くにあった料理に手をつけていくが、流石は知識を求めるレイブンクローの生徒たち。新入生も上級生もレオについてだけでなく彼の研究への質問を多くぶつけてきた。

 

「僕はアンソニー・ゴールドスタイン。これから七年間よろしく!」

 

「私はパドマ・パチル! よろしくね。」

 

「僕はアール。四年生だ。何かホグワーツで分からないことがあったら遠慮なく聞いてくれ。ところで脱狼薬の更なる改良を研究していると聞いたんだが……。」

 

「私は守護霊薬について聞きたいわ!」

 

あちこち、レイブンクローの机からは質問が飛び交う。やがて最初にどの研究についての話をするのが有意義であるかの議論にシフトしていった。レオは結論が出るまでは話がこちらに振られないことにほっとしつつ、食事を楽しむことにした。

 

デザートも食べ、皆が食事に満足しだした頃にダンブルドアが立ち上がった。

 

「エヘン、皆よく食べ飲んだことじゃろう。レイブンクロー生たちは議論も白熱しているようじゃが、また後日に語り合う機会はあるじゃろう。」

 

結局、校長の最後の挨拶まで結論は出ず後日時間があるときにそれぞれ話をしようということに落ち着いたようだ。

その後は構内の森に入ってはいけない、廊下での魔法禁止、クィディッチについてのお知らせが続いた。

 

「最後に、とても痛い死に方をしたくない者は、今年は四階右側の廊下は入らないようにすることじゃ。」

 

この注意には多くの生徒たちが疑問を感じているようだ。

 

「では、寝る前に校歌を歌いましょう!」

 

校歌は各自が好きなメロディーで歌うため滅茶苦茶な歌になってしまった。最後にグリフィンドールの双子が歌い終える。

 

「音楽は何事にも勝る魔法じゃ。諸君! 就寝時間じゃ、駆け足!」

 

生徒たちは各々の寮に移動していく。レオは他の新入生たちとともに監督生についていこうとしたが、レイブンクロー寮監のフィリウス・フリットウィックと副校長のマクゴナガルに呼び止められた。

 

「ミスター・テイラー。少々お時間をよろしいですか。校長先生がお呼びになっています。ついてきなさい。」

 

入学早々何事なのだろうと、思いながらもマクゴナガルは有無を言わせないといった感じであるため、レオは周りに挨拶をして二人についていく。

 

(さて、いきなりなんでしょうか……。)

 




というわけで、レオはレイブンクローになりました。

ハーマイオニーは原作でもレイブンクロー適正があるとのことでしたが、本作ではレオの影響で最後まで帽子も(私も)悩みました。かなりの組み分け困難者になっています。
組み分けの順番がレオが先であったなら数秒でレイブンクローに決まっていました。

ダンブルドアからレオへの話とは何なのか
次回をお楽しみに。


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8. ダンブルドアからの依頼

二次創作は色々な話があっていいですよね。

では8話です。


マクゴナガルとフリットウィックに連れられてガーゴイルの石像の前まで進んでいく。

 

「タ〇ノコの里」

 

何やら海外の、おそらくは日本語であろう言葉をガーゴイルに向かって言うと、ピョンと飛びのいた。どうやら今のが合言葉のようだがどういった意味なのだろうか。

 

自動螺旋階段を昇って校長室の前に着く。

マクゴナガルがノックをすると中から入室の許可をもらう。

 

「校長、ミスター・テイラーを連れてきました。」

 

「おお、ご苦労じゃった、ミネルバ。さてレナード・テイラー君……、レオで良いかの?入学おめでとう。夜も更けてきたことじゃしさっそく本題に入ってしまおう。」

 

レオは頷いて了承を示す。

 

「入学式での注意で四階右の廊下は立ち入り禁止と言ったじゃろう。そこから先にあるものを隠し守ろうと計画しておるのだが、その計画の手伝いを君に頼もうかと思っておる。引き受けてくれないかのう? 無論ただでとは言わん、要望があれば出来る限り叶えよう。」

 

レオは少しの間、思案する。

 

「では、引き受ける前に守るべきあるものとは何でしょう、また何から守ろうとしているのですか? それを教えていただけるのであれば計画に協力します。」

 

「いいじゃろう、教えよう。」

 

「校長! よろしいのですか!?」

 

マクゴナガルとフリットウィックはこの計画を一生徒に教える、ましてや計画に加えることに疑問を感じていた。

 

「よいよい。レオ、君は閉心術は使えるかね? この計画は限られた者だけが知っているべきと考えておる。特に君が関与していると知られると拙い状況に陥るかもしれん。」

 

「閉心術ならば人並みにはできると思いますよ。現に校長先生からの開心術は防げています。」

 

「何も言わず開心術を仕掛けたことは許してほしい。だがそれだけこの案件は重要だということを理解してほしい。うむ……、確かに心が読めぬ。じゃが通常の閉心術による抵抗とは異なっておるの……。まるでこちらからの干渉が遮断されているようじゃ。どうやっているんじゃ?」

 

「詳しくは秘密です。自作の魔法具によるものとだけ言っておきます。」

 

「そうか。とりあえずは心を読まれる心配はなさそうであるから教えよう。守るべきものは『賢者の石』、相手は闇の帝王ヴォルデモートじゃ。」

 

予想以上のものと相手にレオも驚愕した。しかし良く考えれば納得の組み合わせである。

 

「なるほど、闇の帝王は賢者の石を使って復活するつもりですか。わかりました、協力いたします。」

 

「ありがとう。それで対価として何を望むのかね?」

 

レオは目を閉じて少し考えてみる。

新しい環境、欲しいもの、賢者の石、色々な考えが浮かんでくる。

十数秒ほど考えて結論を出した。

 

「まず一つ、僕が自由に使える研究スペースの用意をお願いします。所属はそのままレイブンクローで構いませんが、寮ではなく研究室での生活の許可をもらいたいです。」

 

「許可しよう。大広間の玄関ホールを挟んで反対側の大部屋を利用するが良いじゃろう。空間拡張呪文を使用してもよろしい。実を言うとじゃな、魔法省からも君の研究をできるだけ続けさせるようにできないかと要望があっての。君の提案はどこにとっても悪いことにはならない、存分に研究を続けるといい。わしもその成果を楽しみにしておるぞ。」

 

「ありがとうございます。次に二つ目、賢者の石を研究してもよろしいでしょうか?」

 

「それについては今ここで返答をすることはできん。賢者の石の本来の持ち主はニコラス・フラメルであるからの。彼と相談してみるとしよう。」

 

(やはりそう簡単には賢者の石については無理か……。)

 

「わかりました。それでは守りについて計画していきましょう。現在はどのような計画なのでしょうか?」

 

「守りはわしを含めてホグワーツの教師それぞれが独自の罠を構築しておる。森番のハグリッド、各寮監の四人、闇の魔術に対する防衛術のクィレル先生、そして最後に校長のわしじゃ。君にはそれぞれの罠についての更なる改良を頼みたい。これがそれぞれの罠の詳細のリストじゃ。改良点については情報漏洩対策としてわしのみが確認する。どのくらいの期間があれば完了できそうかね?」

 

レオはリストの項目を一つ一つ確認していく。

それぞれの防衛方法で各教師の専門の魔法や性格の特徴が現れていて興味深かった。

 

「そうですね……。案を考えるのに一週間ほど、校長先生と打ち合わせして最終案を決めて、その後に準備を始めるのでおおよそ一カ月程度でしょうか。」

 

「予想より速いのぅ。流石じゃな。では後日に詳細を決めるとしよう。場所はここで構わないかね、校長室の合言葉は定期的に変更するがしばらくはタ〇ノコの里のままにしよう。今日はもう遅い、また連絡するので良い案を期待しておるぞ。」

 

「ご期待に沿えるよう全力を尽くします。最後に一つ確認したいことがあります。」

 

「何かね?」

 

「手加減なし、全力で侵入者の排除。これで構いませんか?」

 

「問題ない。あらゆる手段を許可しよう。」

 

マクゴナガルとフリットウィックの二人は校長の予想外の過激な許可に少々疑問を感じた。

 

「ではフリットウィック先生。レオ君の新しい部屋まで案内してくだされ。寮内で生活はしないが、彼もレイブンクロー生には違いないのでよろしくお願いします。」

 

「分かりました校長。テイラー君、参りましょうか。着くまでに色々とお話していきましょう。」

 

「はい。それでは、ダンブルドア校長、マクゴナガル先生、おやすみなさい。」

 

「うむ、おやすみ。良い夢を。」

 

 

 

レオとフリットウィックの二人は夜のホグワーツを歩いていく。

周りには誰もおらず、時折ゴーストの姿が確認できるぐらいだ。

フリットウィックはレオに興味津々といった感じで話しかけてきた。

 

「レナード・テイラー君。君の研究については私も色々と聞いていますよ。論文や学会誌も読みました。今年入学と聞いて必ずレイブンクローに組み分けされると思って、楽しみにしていました。実際に組み分けされて非常に嬉しいですよ。ホグワーツでの生活やその他どんなことでも頼ってください。授業以外の時間は基本的に呪文学の教室の隣の自室にいることがほとんどです。紅茶ぐらいなら用意がありますぞ。」

 

「ありがとうございます、フリットウィック先生。時間があるときにお邪魔させてもらいます。迷惑でなければ共同で魔法研究などどうでしょうか。」

 

フリットウィックは小さな体で飛び跳ねて言う。

 

「非常に良いですな! 実は私も君の研究に触発されて若いころの情熱が再燃しているのですよ。」

 

その後も二人は研究をどうするかなど話し合いながら意気揚々と歩いていく。

それは目的地に到着するまで続いた。

 

「ああ、ここです。中には机と椅子、簡易ベッドがあるぐらいです。君の荷物はすでに運び込まれていると思います。校長が言った通り自由に研究設備の設置等、改装……いや改造してかまいません。もう日付も変わります。明日からすぐに授業が始まりますから、今日はもう寝るのがいいでしょう。」

 

「そうですね。改造は明日からにしましょう。おやすみなさい。」

 

「おやすみなさい。」

 

 

レオは自分の部屋になる場所に入る。

中はまさに空き部屋といった所だった。とりあえずベッドはあるので、簡単に体を魔法で清めた後、目覚まし魔法をセットして寝ることにした。

 

(いきなり、校長からの依頼、自分だけの研究室、先生との共同研究。初日にしては色々あったなぁ。)

 

そんな事を考えながら夢の世界に意識は持っていかれる。

こうしてレナード・テイラーのホグワーツ初日は終了した。




チョコ菓子ならどれでも好きだよ、オレは。(某紅い弓兵風に)

さて、レオへの校長からの依頼どうでしたか?

ハリポタ二次創作のオリ主の賢者の石での行動は
・ハリーと一緒に守る
・賢者の石について知らない、または興味がない
・賢者の石を奪おうとする
こんなところが多いかなと思います。今作では罠を設置する側にしてみました。

ダンブルドアがやけにレオに対して普通じゃない対応だと思いますが、理由はあります。

それでは次回をおたのしみに。


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9. 予言と危惧

感想・評価ありがとうございます。これからも頑張ります。

今回はちょっと短めです。
では9話どうぞ。


レナード・テイラーとフリットウィックの二人が校長室を出て行った後。

残されたマクゴナガルはダンブルドアに疑問をぶつけた。

 

「校長、なぜミスター・テイラーを賢者の石防衛計画に加担させたのです? 彼がいかに優秀な研究者とはいえまだ十一歳です。それにホグワーツに専用の研究室を用意させるなど、いくら魔法省からの依頼があったとはいえ前代未聞の処置です。これらには明確な理由があるのでしょうか?」

 

ダンブルドアは何かを考えて沈黙していたようだが、結論が出たのか話し始めた。

 

「ミネルバ……、わしは十年ほど前ある予言を聞いた。それは魔法界の、いや世界の命運を左右すると思われるほど重要なものだったと確信しておる。今からその時の記憶を見せようと思う。」

 

ダンブルドアは記憶を見ることのできる魔法具、憂いの篩を持ってきた。

頭に杖を当てその時の記憶を抜き出して憂いの篩に入れる。

マクゴナガルとダンブルドアは憂いの篩の中へ、記憶へと落ちていく。

 

 

周囲が鮮明になった後、マクゴナガルはそこがどこか確認した。

そこはホグワーツの大広間であった。

大広間にはダンブルドアと占い学の教師、シビル・トレローニーの二人だけの姿があった。

 

「トレローニー先生、久方ぶりのホグワーツはどうじゃ? 問題ないようならば次の学期から占い学の教師としてぜひよろしくお願いしますぞ。」

 

「もちろんです、ダンブルドア校長先生。あたくしには子供たちを導く必要がありますの。」

 

マクゴナガルはまさか、と思った。普段のトレローニーの授業や態度からはダンブルドアが彼女の予言を重要視するとはとても思えなかったのである。

マクゴナガルの隣に記憶ではないダンブルドアが立ちその疑問の答えを示した。

 

「ミネルバよ、確かに普段のシビル・トレローニーには予言の才能など感じられん。しかし彼女は魔法界にとって重要な予言をこの記憶の前にすでにわしに対して言っておる。だからこそわしは彼女を占い学の教師として雇い手元に置いておくことに決めたのじゃ。この記憶はその後にホグワーツで教職員についての連絡等をしていた時のものじゃ。」

 

マクゴナガルはダンブルドアの言葉に対して半信半疑であった。

その後の豹変したトレローニーの言葉を聞くまでは。

 

「魔法界を闇が覆うとき、賢きものと優しきものの二つの血を受け継ぎ、全ての魔を解く者が生まれる。その者、数多の認識を破壊し、世に変革をもたらすであろう。決して往く道を妨げてはならぬ。探求の道を阻むものは光であろうと闇であろうと全てが無に帰すこととなる。」

 

普段の霧の彼方から聞こえるような声ではない、荒々しく太い声。

マクゴナガルは確信した、これが真の予言であると。

トレローニーは予言が終わるとその時の記憶がないようでありまたダンブルドアとの会話に戻っていった。

 

 

二人は憂いの篩から戻ってきた。マクゴナガルは今の光景をどう受け止めていいかまだ判断が付かなかった。

 

「今のがわしが聞いたトレローニーの二つ目の予言じゃ。前に聞いた魔法界に重要な一つ目の予言はハリーとヴォルデモートについてじゃった。まさか教師としてホグワーツに来たその日にもうひとつ予言を聞くことになるとは思わんかったがの。」

 

「では、今の予言の者がミスター・テイラーだと考えているのですか?」

 

「そうだとわしは確信しておる。レナード・テイラーが生まれたときはヴォルデモートの全盛期、両親はレイブンクローとハッフルパフで母親はマグル出身で彼は混血じゃ。彼の『眼』と功績を考えるとそうとしか思えぬ。だからこそ彼をこちら側の力になってもらいなおかつ、彼の研究を妨げないように手を尽くすつもりじゃ。どの程度かはわからんが邪魔をすれば最悪全てが滅ぼされるのかもしれんからの。」

 

マクゴナガルは先ほどの予言は確かに信じさせるだけの力があるとは感じていた。

だが、ダンブルドアは必要以上にレナード・テイラーのことを警戒しすぎではないだろうか。

本当はまだ別に目的があるのではないかという疑問が心の奥に少しだけ残った。

 

「ミスター・テイラーについては予言で危惧することがあるというのは分かりました。ですが、私はあくまで彼のことを一生徒として扱います。こちらが正しく接していれば特に問題はないと考えます。」

 

「ああ、それでよい。だが彼が予言の人物でなくともその力と知識の影響はすでにかなりのものじゃ。彼を闇に堕ちないように最善を尽くすつもりじゃ。」

 

その後は、今後の学校についてや賢者の石について少し話し、マクゴナガルは自室に戻っていった。

 

 

 

誰もいない校長室でダンブルドアは考える。

予言、賢者の石、レナード・テイラー、ハリー・ポッター。

そして滅ぼすべき相手ヴォルデモート……トム・リドルのことを。

 

(あやつはまだ生きておる……。どんな手段なのかまだ確証はないが確実に。ハリーにはあやつを倒す者になってもらわなければならん。レナードにはその手助け……あわよくばこちら側の切り札になってもらいたいものだが……どうなることやら。)

 

最も優れた魔法使いと呼ばれたこの老人でさえ未来は読むことはできない。

だからこそより良い未来のためにあらゆる手を尽くすことを改めて決意するのであった。

 

(まずは、レナード・テイラーの力とその本質を見極めねばのう……。)




前回でダンブルドアのレオへの対応は予言が原因でした。

ダンブルドアは予言のせいで必要以上にレオのことを警戒し、またレオの希望はできるだけ叶える方針でいます。そして最終兵器として利用する気でいます。


それにしてもトレローニーのセリフがいまいちなってない感じがしますね。
予言難しい。


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10. 授業開始

ハリー・ポッターの二次創作なのにハリーが殆ど話していないことに気付くました。
ロンやフォイにいたっては一言もセリフがなかったかな?

こんな話ですが、楽しんでいただければ幸いです。

では10話どうぞ。


入学式の翌日。

レオが目覚まし魔法で目を覚ますと、普段とは別の部屋でまだ夢の中と錯覚しそうになるがすぐにここはホグワーツで、自分専用の部屋をもらったことを思い出した。

 

大広間が近いせいなのか、早めの朝食をとっている生徒たちもいるからなのか、すでにいい匂いがこちらの部屋まで届いていた。

軽くストレッチをしてから着替えと授業の準備をして朝食に向かう。

 

大広間には教職員たちはほぼ全員が揃っていたが、生徒の方はまだ少数でありゆっくりと朝食を楽しんでいた。

 

レオが大広間に入ると気づいた生徒たちがひそひそと何やら話し始める。

何事かと思って、聴覚強化をするとどうやらレオが特別措置で寮ではなく研究室での生活になることが噂されているようだ。

しかも尾ひれがついて中には明らかに嘘だとわかるようなものまである始末。

 

(まぁ、いいか。研究室をもらったのは事実だし、研究の邪魔にならなければ問題なし。)

 

そう思いレイブンクローの机で食べ始める。

イギリスの料理は自国民からも不味いと断言される。

ただし、朝食は別だ。ホグワーツの朝食はその中でもさらに別格においしいと言わざるを得ない味だった。

 

(そういえば、昨日の入学式の豪華なディナーもおいしかったな。ここの料理は誰が作っているんだろう? 機会があればお礼を言いたいな。リクエストもできたりするんだろうか?)

 

デザートを食べていると、ハーマイオニーが朝の挨拶をしてきた。

 

「おはよう、レオ! やっぱり、レイブンクローの所属になったわね。私もグリフィンドールと最後まで迷ったわ。けれど! これから寮杯をかけて勝負よ! どんどん点数を稼ぐわ! それから聞いたわよ、特別に自分の研究室での生活が認められたんですってね。時間があるときにお邪魔してもかまわないかしら?」

 

「おはよう、ハーマイオニー。朝から元気そうで何よりだ。僕の部屋の場所は玄関ホールを挟んで大広間の反対にあるよ。僕が中にいる時なら歓迎するよ。」

 

その後は授業について少し話してハーマイオニーはグリフィンドールの机に戻っていった。

 

 

 

ホグワーツでは入学式の次の日からさっそく授業が始まる。

新入生の最初の関門は授業の難しさや厳しい教師、大量の宿題ではない。

校舎という建物そのものが最初の敵だった。

複雑というだけではない、曜日によって位置が変わったり、一段消える階段、隠し部屋に隠し通路等々、まさに迷宮と言って差し支えないだろう。

 

上級生たちは新入生たちがあたふたとしているのを黙って見守るだけだ(中には笑ったり、助けたりする者もいるが)。

習うより慣れよ。まずはどんどん迷ってホグワーツを知るのが肝心なため、上級生たちは助けない。自分たちも通ってきた道だ、そして彼らもまた次の新人たちを見守るのだろう。

 

だが、今年の新入生で一人だけ教師でさえ目を疑う行動をする者がいた。

やはりというかレナード・テイラーだ。

レオは階段など使わずに、浮遊術を使用して目的の階まで移動している。

周りの生徒たちはあっけにとられポカンと口を開けるしかなかった。

施錠された扉や、行き先が変わる扉も片っ端から解除して進むレオ。

おかげでどの授業にも遅刻せず到着できたが、その姿を見て固まっていた生徒たちは自分も移動中ということを思い出して、全力で走ることになった。

 

 

 

レオたちレイブンクロー生の最初の授業は魔法史であった。

担当のビンズはゴーストであるからなのか単調に教科書を読むだけの非常につまらない授業だ。

レオは早急にこの授業に見切りをつけて罠改良案について考えを巡らせ始めた。

周りのレイブンクロー生にとっては別教科の予習時間になってしまっていた。

 

 

次は薬草学の授業だ。

温室での授業でハッフルパフ寮監のポモーナ・スプラウト教授の下で学ぶ。

最初の授業がいきなりつまらなかった反動か、皆生き生きとしている。

まずは、簡単な薬草の説明と温室内の見学となった。

 

 

一日目最後は闇の魔術に対する防衛術であった。

レオは正直この授業に期待していた。闇払いである父から色々と鍛えられていたため、自分の力がどこまでのものか確かめるにはちょうど良いと思っていた。

だが、その期待は裏切られることとなる。

教室に入るなり強烈なニンニク臭がする、担当のクィレルは終始おどおどしてしどろもどろであってまともに授業ができていない。

しかも最悪なことに『眼』には彼が『何か』に憑りつかれているのが見て取れた。

こんな教授ではダメだと、諦めて自習をすることにするレオだった。

 

 

一日目の授業の2/3がまともじゃなかったため、レオは家で研究を続けた方が良かったんじゃないかとさえ思い始めた。

しかし、その認識は次の日には改められることとなった。

 

 

二日目最初、変身術の授業。

教室に入るとマクゴナガルの姿はなく、トラ猫が教壇の上に座っていた。他の生徒たちは気づいていないが、レオは『眼』で猫がマクゴナガルだと読み取った。

 

(流石は変身術の教授だ。まさか動物もどきであったとは……。初めて見たがかなり複雑な式だ。)

 

猫がマクゴナガルの姿に戻り、授業が開始する。

 

「最初に警告しておきます。変身術はホグワーツで学ぶ魔法の中で最も複雑で危険なものの一つです。ふざけた態度で私の授業を受ける生徒は出て行ってもらいますし、二度とクラスには入れないと思ってください。」

 

授業は変身術の実演を見せ、理論を教えてからマッチ棒を針に変える課題をすることとなった。

レオは一発で変身させた後、マクゴナガルに提出した。

 

「流石ですね、ミスター・テイラー。レイブンクローに5点。」

 

「ありがとうございます。マクゴナガル先生は動物もどきなのですね。動物もどきの人とは初めて会いましたので色々と伺いたいのですが。」

 

「良いでしょう。あなたは初歩は問題ないようですし、動物もどきについて簡単に講義をしましょう。ただし、他の生徒から質問等あればそちらを優先します。」

 

マクゴナガルと話してみると彼女がいかに優秀であるかが理解できた。

授業が終わるころには二人して変身術の理論等に熱い議論を交わすほどになっていた。

授業終了十分前になって我に返るマクゴナガルとレオ。

 

「コホン。では皆さんの変身度合いを見て回ります。授業以外の時間で変身術のコツを知りたければミスター・テイラーに聞くとよいでしょう。」

 

他の生徒たちは完璧に近くできたものは極少数、ほとんどは色や形だけの変化のみで中には全く変えられない生徒もいた。

 

「今回の課題は初歩の初歩です。ですが全ての変身術の原理の基礎が詰まっています。完璧に成功させたものは学年でミスター・テイラーとミス・グレンジャーのみでした。ここにその二本がありますのでよく観察するとよいでしょう。」

 

(ハーマイオニーも成功させたか。僕の講義の成果が出ているようでなによりだ。)

 

 

次は呪文学だ。

フリットウィックは呪文を楽しく、そしてわかりやすく教えると評判を聞いていたが、その通りだった。レオは魔法を読み取れるがここまでわかりやすく教えることはできないと感じた。このように教えるには魔法に対する高い理解がなければ不可能だろう。

 

最初は簡単な杖先を光らす魔法の実習となった。先ほどの変身術の授業のせいか、レオが成功させた後は周りからアドバイスを求められることになってしまった。

 

「テイラー、どうやったら光るんだ? 全然光らないよ。」

「わたしは光るけど、点滅しちゃうんだけど。」

「僕は光が強すぎて……! 目が! 助けて!」

 

レオはフリットウィックと協力して一人一人に理論とイメージの仕方等を説明していく。

授業が終わるころには全員が同じように動かすことができるようになっていた。

 

「素晴らしい魔法の理解力でした、テイラー君。それに他の生徒にも教える手伝いまでありがとう。レイブンクローに10点あげましょう。みんなも成功させたので追加で10点です!」

 

教室内では皆が喜び、レオに対してはお礼の嵐だった。

 

 

本日最後の授業は魔法薬学。

場所は肌寒い地下牢だ。ガラス瓶が並べられ得体のしれない動植物がアルコール漬けにされていたり、鍋の中に様々な色の液体が煮えていた。

 

合同で受けるハッフルパフ生と着席して待っていると担当のスネイプが入ってきた。

出席を取り終えると演説を始める。

 

「この授業では、魔法薬調剤の微妙な科学と厳密な芸術を学ぶ。」

 

(相変わらずスネイプ先生はポエミーだ……。まぁ、魔法薬の知識は非常に素晴らしいので問題はないが。)

 

レオとスネイプは魔法薬学会で面識があり一緒の研究も行った仲であった。

スネイプは大演説を終えると魔法薬の理論の説明を始める。

初回は簡単なおできを治す薬の調合を行うようだ。二人組で別れるように指示があり、皆がレオとペアを組みたいらしくなかなかペアができない。

 

「二人組を作るのにいつまでかかるのだ! レイブンクロー1点減点。さてテイラーはすでに吾輩と同等かそれ以上の魔法薬学の知識と調合の実力がある。特例として吾輩の助手として授業を受けなさい。」

 

レイブンクロー生たちはしぶしぶペアを作っていく。

調合を開始してからはレオが材料の切り方、下準備、投入のタイミング等アドバイスをしていく。レオのアドバイスを受けたペアは問題なく薬の調合を終えることができた。

 

「時間だ。できたものは机の上に提出だ。」

 

スネイプは薬の評価を始める。皆最初の魔法薬であるため緊張しながらじっとしている。

 

「ふむ、テイラーのおかげかほとんどの薬が合格点に達しているな。レイブンクローとハッフルパフに1点ずつやろう。宿題として今回作った薬の原料と効果についてのレポートを羊皮紙1枚にまとめるように。テイラーは特別に免除。だが別に何かしらの魔法薬についてのレポートを提出だ、内容は問わん。」

 

レオ以外の生徒はスリザリン贔屓のスネイプが他寮に加点するなどありえないと聞いていたので驚愕していた。

 

 

 

今日の授業はどれも満足することができたレオは夕食を楽しんでいた。

食べ終わるころにタイミングを見計らったのか何人かの生徒たちが集まってきた。

 

「あの、テイラー君ちょっとお願いがあるんだけど、いいかな?」

 

「どうしましたか?」

 

「今日の授業で君は噂通りの人だと思い知ったよ。だけど僕たちも知識を求めるレイブンクロー生! いつまでも君に負けたくはない。なので少しでもいい、色々と教えてはくれないだろうか。」

 

周りの生徒はみな頷いている。

 

(どうしたものか……。休日は自分の魔法研究もしたいし……。だからと言って魔法に興味を持ったものを拒絶するのも嫌だな。)

 

「分かりました。僕も自分の研究は続けたいので、休みの金曜の午後だけ勉強会を開きましょう。二週間後の金曜までには部屋の準備をしておきますので、僕の研究室に集まってください。ただし、魔法を学びたい人は拒みませんので他寮の人も受け入れますのでその点は了承してください。」

 

「ありがとう! さっそく周りのみんなに宣伝してくるよ。」

 

(なんだか話が大きくなるような気がするが、とりあえず考えておかなければならないな。)

 

 

自室に戻るとさっそく研究室の準備に取り掛かる。

拡大呪文で十分なスペースを確保。次に必要なものを自宅の研究室から転移させ設置していく。

二時間ほどで殺風景な部屋は見慣れた魔法の研究室に変貌していた。

模様替えに満足したレオはいつも使っていたベッドで安らかな眠りについた。




授業が始まった10話でした。

レオの各授業への評価は以下のような感じです。
魔法史→予習時間
薬草学→知っていることも多いが、初めて知ることもある良い授業
防衛術→予習時間 ニンニクのせいで魔法史以下
変身術→マクゴナガルとの変身理論討論大会
呪文学→フリットウィックの教え方が面白くて、新しい魔法の発想が得られそう
魔法薬学→なぜか助手に

ちなみにスネイプ先生はレオのことを歳の離れた弟のように感じています。
本人は認めませんが、若干優しくなっています。
あと、この物語でもハリーいじめは健在です。



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11. 計画提出と心地よい休日

お気に入りが1000件を突破しました!
ありがとうございます。UAやお気に入りが増えるたびにニヤニヤしています。

それでは11話どうぞ。


ホグワーツに来てからの最初の休日。

レオはガーゴイル像の前に来ていた。

 

「タケノ〇の里」

 

合言葉を言うと像はどけ、螺旋階段を昇り扉にたどり着く。

扉を三回ノックしながら要件を言う。

 

「レナード・テイラーです。例の件で参りました。」

 

「おお、お入りなさい。」

 

中に入るとダンブルドアと前回はいなかった不死鳥の姿が目に入った。

 

「ダンブルドア校長は不死鳥を手懐けているのですか?」

 

「そうじゃ、もうかなりの付き合いになるかの。名をフォークスと言う。」

 

レオが『眼』を使って観察してみる。不死というだけあってその体には特別な魔法式が刻まれていると思ったが、特に変わったところはない。いたって普通の魔法生物の魔力しか読み取れなかった。

 

(肉体ではなく、魂が特別なのかな……?)

 

「では、さっそくじゃが君の改良案を拝見しようかの。」

 

「はい。これが改良の詳細です。」

 

ダンブルドアは羊皮紙の束を受け取り、じっくりと吟味していく。

初めは感心しているようだったが、どんどん読み進め次の羊皮紙に行くほどに渋い顔になっていった。

全て読み終えた後、大きく息を吐きだしてレオの目を真っすぐに見て言った。

 

「まずは率直な感想を述べよう。凄まじい計画じゃ、どの改良も未成年の魔法使いのものとは思えん出来じゃ。だがしかし、あまりにも容赦が無い。無慈悲なまでに侵入者を排除するようにできておる。わしでも何の対策もないままでは賢者の石のある部屋にたどり着く時には命がないじゃろう。そして一番の問題点はいくつか闇の魔法に類する技術が使われていることじゃ。これはどういうわけかな?」

 

レオはいまいちダンブルドアの言っていることが理解できなかった。

 

「ええと……。ダンブルドア校長、侵入者は闇の帝王を想定しているのですよね? そして排除する、つまりは殺害を目標と設定し全力で計画を作成しました。この前あらゆる手段を許可するとのことでしたのでこのようになりました。最後に闇の魔法に類する技術とはどれのことでしょう?」

 

ダンブルドアは戦慄した。ここに記された闇の魔法……しかも最悪の部類の魔法とほぼ同一な技術をそれだと知らずに理論から組み立てたというのか? にわかには信じられなかった。

 

「では闇の魔法についての知識からこれを作成したわけじゃないのかの?」

 

「闇の魔法についてはいくつか知っています。禁じられた呪文や悪霊の火、いくつかの呪いとかぐらいですけどダンブルドア校長がそこまで反応する魔法は使っていないと思います。」

 

(無意識にアレと同じものを造ろうとしていたとは、なんということじゃ……。やはり彼は闇に堕としてはならんの。)

 

「分かった。とりあえずこの案で計画を進めよう。改良は申し訳ないが明日の深夜から始めよう。理論はできているようだが他に必要なものはあるかの? それと万が一に生徒が侵入した際の安全対策は大丈夫じゃろうか?」

 

「では、いくつか魔法薬の材料の提供をお願いいたします。安全対策ですが第一と第二の罠で未成年対策を施す予定ですので安心してください。」

 

その後、細かな修正などを話し合って賢者の石防衛計画は完成となった。

さっそくレオは研究室で準備に取り掛かるとのことで戻っていった。

 

 

 

レオが出て行った後、一人きりの校長室でダンブルドアは考える。

 

(果たしてこれで良かったのだろうか……。レナード・テイラーの力を見るのとこちらの陣営に引き込むために計画に加担させたが、まさか闇の魔法を躊躇なく計画してくるとは……。彼自身それに対して何の疑問も持っていないのをどう捉えたらよいのか。あくまで魔法の研究だから、教師に頼まれたからなのか、それとも彼の心の奥底に闇があるのか……。いずれにしろしっかりと見極めねば。)

 

ダンブルドアは悩みがまだまだ続きそうだと直感で感じてため息をつくしかできなかった。

 

 

 

レオが研究室に戻るとドアの前にはハーマイオニーがいた。

本を読んでいるようだったがレオが戻ってくるのに気付くと笑顔になりレオに向かってきた。

 

「おはよう、レオ! 今日は休日だし研究室に来たわ。授業が始まってからはあまり話せてないから今日は一日ここで過ごすわ。」

 

「おはよう、ハーマイオニー。確かに同じ学校でも寮が違うとあまり話さなくなってしまうね。グリフィンドールとレイブンクローが合同なのは魔法史しかないしね。とりあえず中へどうぞ、歓迎するよ。」

 

ハーマイオニーを中に招き入れる、とりあえず紅茶とクッキーを用意する。

お互いに寮と研究室での生活や最初の週を終えてのホグワーツの授業について話が弾んだ。

 

「ホグワーツは素晴らしいわ! 授業は面白いし魔法はどれだけ学んでも奥が深くて楽しいわ。レオに勉強を見てもらったおかげで変身術や呪文学では点数を貰えたわ。ただ、魔法薬学のスネイプ先生はちょっとスリザリン贔屓が過ぎる気がするの……。ハリー・ポッターに対しては無茶な質問をするし、私が挙手しても相手にしてくれなかったわ。」

 

「スネイプ先生はちょっとグリフィンドールが嫌いだからね。ただ悪い人じゃないと思うし、魔法薬の腕前は確かだよ。点数を獲得するには完璧な魔法薬を作って認めさせるしかないかもね。」

 

「やってやるわ! そういえばレイブンクローはどんな感じなの?」

 

「寮で生活してないから何とも言えないが、皆授業はしっかり受けているし、金曜の午後にはここで勉強会をすることになったよ。他寮の生徒も参加できるようにするつもりだけど、ハーマイオニーは勿論参加かな?」

 

「もちろんよ! あぁ、レイブンクローいいなぁ……。グリフィンドールも悪くはないんだけれど落ち着きがなかったりして子供っぽい人が多いのよ。」

 

ハーマイオニーはしばらく不満や愚痴をこぼしていた。

 

 

「そういえば噂に聞いたんだけれどレオは空を飛べるのね? 皆が階段で迷っているのに飛んで移動していると聞いてビックリしたわ。私もちょっと迷って危うく授業に遅刻するところだったわ。上級生たちも飛行してないし難しい魔法なの? 私でも飛べるようになれるかしら?」

 

「んー、どうだろう。一応飛行魔法は僕オリジナルの構成で造っているけど、物を動かしたり、浮かせる魔法は山ほどあるしそれの組み合わせで造ったものだから他にも独自に飛べる人はいるんじゃないかな。結構コツがいるからすぐにはできないかもしれないけど、飛んでみたいかい?」

 

「もちろん! 魔法で空を飛ぶなんてまさにマグルの絵本の中みたいで素敵だわ。」

 

それからレオは計画のための準備で魔法薬の作成の取り掛かる。

ハーマイオニーはレオの作業を見たり宿題をしたりして時間を過ごす。

たまに会話もあるがほとんどお互いの作業に集中する二人。

それでもこのホグワーツに来てから一番心が安らぐ時間であると二人は感じていた。

ホグワーツに来る前の図書館での時間のようであり懐かしくもあった。

 

 

「さて、一段落したな。ハーマイオニーはどう?」

 

「私はもう宿題は終わったからレオの作業を観察していたわ。教科書や色々な本読んだけど、今作っている魔法薬は載ってなかったわ。レオのオリジナル?」

 

「そうだよ。どんな効果か原料から解るかな?」

 

「ちょっと待って、時間を頂戴。」

 

ハーマイオニーはうーんとうなりながら原料を見てレオの作業を思い出す。

数分の後、自信なさげだが答えが出たようだ。

 

「ちょっと自信ないけど……、知性に影響する薬かしら?」

 

レオは予想以上に近い回答に驚いた。

 

「すごいね、ハーマイオニー。結構高度な魔法薬なんだけれどかなり近い回答だ。正確には投薬した対象の知性・感情のレベルを人類相当まで引き上げる魔法薬だ。とりあえず、動物実験では成功しているからあとは量と効果の微調整かな。」

 

ハーマイオニーは自分の回答が褒められて嬉しそうにする。

日も暮れてきたので大広間に夕食を食べに行こうとする二人。

レオはふと気が付く。

 

「そうだ。ここは大広間のすぐそばなんだから料理を持ってくればここで食べられるね。」

 

「良いわねそれ。そうすればわざわざグリフィンドールとレイブンクローに分かれないで一緒に食べられるわ。」

 

二人は大広間から必要な分だけの料理とデザートを運んできて研究室の食事スペースでディナーを楽しんだ。ホグワーツに来てからこうして顔を合わせての食事は初めてだったので、いつもより楽しくそして美味しく感じられた。

これから休日は予定がなければここで自由に過ごして一緒にディナーをとることに自然と決まった。

 

デザートまで食べ終わり、まったりしている二人。穏やかな時間は早いもので就寝時間が近づいてきた。

 

「そろそろ寮に戻るわ。また色々と研究を見せてね。おやすみなさい、レオ。」

 

「おやすみ、ハーマイオニー。」

 

こうしてレオの心地よい休日は終わっていった。




ダンブルドアが不安視しているアレとは何でしょうか?
賢者の石防衛計画の詳細は侵入者が入るまでお楽しみに。
ただ一つ言えるのは石を狙う者はあの世行きです。

レオの魔法への認識は闇や悪など関係なしに高度であるか、美しいかなどを重視しています。
なのでアバダ・ケダブラも殺すことに特化してそれ以外の要素を排除した純粋な構成なのでレオとしては良い呪文という認識です。

次回はロンに初セリフがあります(予定)。


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12. 恐怖の飛行と真夜中の遭遇

前回の更新後に急にお気に入り登録やUAが増えてビビりました。
何が起こった!?

では12話どうぞ。


その日の朝の大広間は少々騒がしかった。

レオが話を聞いてみるとどうやら飛行訓練が始まるようだ。

レイブンクローはハッフルパフと合同だ。それはつまりグリフィンドールとスリザリンが合同で授業をすることを意味している。

レイブンクローとハッフルパフとしてはまた獅子と蛇のつまらない争いが起こるのかとため息をついた。

そんなことより箒で空を飛ぶことの方がよっぽど良い、大多数がそう思っていた。

 

実はレオは箒に乗ったことがない。クィディッチも見たこともないしルールすらも知らない。

今まで研究漬けの毎日で息抜きもハーマイオニーと出会った図書館ぐらいなものだった。

 

(箒か……。どんな感じなのかなぁ。まぁ僕は飛行魔法使えるし、あまり興味はないかな。)

 

その日の大広間は箒やクィディッチの話題で終始ざわめいていた。スリザリンの机では明らかな無知をさらしているのもいたが、少しは静かにできないのだろうか。

 

 

飛行訓練の当日。

すでにグリフィンドールとスリザリンの授業は終了した後だ。

案の定一悶着あったようで、どうやらハリー・ポッターとスリザリンのうるさかったヤツ、マルフォイというらしい、この二人がトラブルを起こしたとのこと。

それ以外にも箒のコントロールができなかったり、かなり悪い噂ばかり聞こえてくる。

 

レオは校庭に出て、レイブンクロー生とともに並んでいた。

いつも通りに見えるが、両親やハーマイオニーが見たら医務室に行った方が良いと言ってくるだろう。今、心の中は混乱と緊張でいっぱいだった。解る人には解る程度だがそれが顔に表れていた。

 

(ありえない。なんなんだ、この箒……。まともじゃない。どの箒も魔法式が穴だらけだ。こんなのじゃまともに飛べるのかもあやしい。前の授業で悪い話ばかりなのも当然だな。こんな箒でうまく飛べるのは、この穴を埋めるのに適切なコントロールを直感で行える人だけだぞ。)

 

通常は見えない魔法が見える為、レオはこの欠陥だらけの箒で飛ぶことにに恐怖を感じた。

 

「何をボヤボヤしているんですか。」

 

鷹の目のように鋭い目つきのマダム・フーチが生徒たちに指示を出す。

 

「皆箒のそばに立ちなさい。右手を箒の上に突き出して、上がれ! と言う。」

 

生徒たちは上げれと叫ぶがほとんどは少し動く程度で、中には全く動かない箒もある。

レオの箒も少し動いた程度であった。

 

(当然か。面倒だから浮遊呪文を使うか。)

 

周りが成功し始めるころ合いを見て無言呪文で手に箒を取る。

その後の飛行訓練でもとてもじゃないがこんな欠陥だらけの箒で飛ぶ気にはなれず、箒にまたがったまま飛行魔法でごまかして過ごすレオであった。

その日はホグワーツに来てから初めて経験した恐怖の一日であった。

 

 

その日の深夜もレオは賢者の石防衛の罠の改良を行っていた。

今日はフリットウィックの罠の改良を終わらせてしまおうと作業を急ぐ。

 

真夜中になっても作業を続けていると最初の部屋へ侵入者が現れたことを感知した。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

私、ハーマイオニー・グレンジャーは怒っていた。

今日は飛行訓練があり、初めて箒で空を飛ぶのだと楽しみにしていたのだが、またもスリザリンとくだらないトラブルがあった。しかも英雄と呼ばれたハリー・ポッターはこちらの注意も聞かず勝手な行動をとるし、周りの連中もそれを止めようとしないばかりか当然の行動としている。

もう少し考えて行動はできないのだろうか?

挙句の果てにハリー・ポッターとロナルド・ウィーズリーがスリザリンのマルフォイと夜中に決闘をするという規則を完全に無視した行動をしようとしている。これがバレればグリフィンドールからどのくらい減点されるかなど考えもしていないみたい。

必ず阻止しなければと、談話室で待っていると馬鹿二人が降りてきた。

馬鹿二人はいくら言っても論理立てて話しても聞く耳を持たない。

 

(なんて考え無しなのかしら! 少し考えればマルフォイの罠って解るはずなのに!)

 

談話室を出て最後の忠告をして戻ろうとしたが、肖像画の中に太った婦人がいなくなっていた。閉め出されてしまった……、最悪だわ。

中に入れなくなっていたネビルと合流してあの二人が更なる馬鹿をしないか監視することに決めた。

 

結局、私の予想が的中して決闘などなくマルフォイの罠であった。

そして現在、管理人のフィルチから逃げている最中というわけだ。

まったくもって今日は厄日だわ。

 

そう、この時はこの瞬間が最悪な時間だと思っていたのだった。

 

フィルチを振り切るため私たち四人はとりあえず、一番近くにある扉に入った。

そこがどこであるか、確認しなかった私たちは相当に焦っていたのだろう。

 

中に入ってフィルチが遠くに行くのを待った。

声が遠ざかるのを確認してすぐに出ていこうとするが扉は開かない、それどころか触れもしなくなっていた。

困惑している私たちの後ろから声が聞こえてくる。

 

「だれ?」「なに?」「しんにゅうしゃ?」

 

「きゃああああ!」

 

振り向いた私は叫ぶことしかできなかった。

そこには首が三つもある大きな犬……ケルベロスがいたのだった。

ハリーとロンは必死に逃げようと扉をどうにかしようとしている。

ネビルはどうやら気絶しているようだ。

 

「こども」「みせいねん」「せいと」

 

しばらくたってもケルベロスは襲ってこなかった。というか、さっきから喋ってないかしら?

意を決して話しかけてみることにする。

 

「あの……、人間の言葉がわかるの?」

 

「わかる」「はなせる」「すごい?」

 

どうやらコミュニケーションは取れるようだ。それにすぐにこちらをどうこうする敵意は感じない。

 

「私たちのこと襲わない? 外に出たいのだけれどどうすればいいのかしら?」

 

「おそわない」「でられない」「わからない」

 

ハリー達も落ち着いてきたようでケルベロスとのやり取りを見ている。

でもこのケルベロスは襲いはしないようだけれど出る方法を知っているわけではないようだ。

 

それからしばらくの間、扉をどうにかするために鍵を開ける呪文、アロホモーラを使ったりしていたが効果は表れなかった。ケルベロスはこちらに興味がないのか眠ってしまった。

 

「れんらく」「たいき」「くる」

 

ケルベロスが起床し話しかけてきた。誰かから連絡がきたということか? 来るって誰が?

 

外から扉が開かれた。やっと出られると喜んだが、次の瞬間には血の気が引いた。

マクゴナガル先生がものすごい怒りの形相で立っていたのだから。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

侵入者を感知したレオは即座に第一の部屋の様子を確認するため、魔法でケルベロスの視界と同期した。

 

(まだ罠の改良は完璧ではない……。このタイミングで侵入者ということは闇の帝王が僕が関わっていると知って早急に賢者の石の奪取に動いたのだろうか?)

 

ところが、ケルベロスの視界には闇の帝王ではなくハーマイオニーの姿が映っているではないか。他にもネビルとハリー・ポッターと誰か知らないが男子生徒がいる。

 

(なんでハーマイオニーが!? とりあえずケルベロスには未成年の臭いの区別をつくようにして襲わないようにしてあるから大丈夫だろうけど……。)

 

彼女らの前に出て扉を開けることもできるが、この計画にレナード・テイラーが関わっていると知られるのは問題だ。

ひとまずグリフィンドール寮監のマクゴナガルに連絡することにした。

 

プタビトランス(思考送信)

 

思考を送信する魔法でマクゴナガルにこのことを伝える。

 

((マクゴナガル先生。レナード・テイラーです。例の計画の作業中侵入者を感知。確認の結果、グリフィンドール生が四人、入り込んでいます。対応のほどよろしくお願いします。))

 

 

寝ようとしていたマクゴナガルはいきなり頭の中に声がしたと思ったら予想外の知らせに仰天した。すぐに着替えもせずに四階廊下に急いだ。

 

例の扉を開けるとポッター、ウィーズリー、ロングボトム、それになんとグレンジャーもいた。

 

「あなたたち……。自分たちが何をしているか分かっているのですか? 夜中に寮を抜け出す! おまけに立ち入り禁止の場所に入り込む! 規則を守る気はあるのですか! 一歩間違えば死んでいたのかもしれないのですよ。」

 

「でも……、先生、その僕たち……。」

 

「言い訳無用です、ミスター・ウィーズリー! グリフィンドール50点減点です。一人につき50点です。これに懲りたら今後このような真似はしないことです。いいですね!」

 

言い渡された四人はショックを受ける。特にハーマイオニーは泣き出してしまいそうだった。

レオにはハーマイオニーが何の理由もなしにこんな行動をするとは考えられなかったのでマクゴナガルに待ったをかける。

 

((マクゴナガル先生。テイラーです。守りの計画のためにも一応侵入の経緯を確認していただけませんか? それにハーマイオニーが無計画に侵入したとは思えません。))

 

マクゴナガルはレオの発言で少し冷静さを取り戻す。今までの授業での態度から確かにハーマイオニーがこんな校則違反をするとは考えにくかった。

 

「ミス・グレンジャー。どうしてこのような事態になったのか説明してみなさい。場合によっては減点についても考慮します。」

 

ハーマイオニーは部屋に侵入するまでの経緯を説明する。

ハリーとロンがマルフォイとの決闘に向かったこと、止めようとしたこと、太った婦人がいなくなったこと、ネビルと合流したことなど。

全てを聞いた後、マクゴナガルは大きなため息を吐いた。

 

「全く……、ポッター、ウィーズリー呆れました。ミス・グレンジャーの言う通り少し考えれば解るでしょうに。あなたたちは50点減点のままです。ミスター・ロングボトム、あなたはもう少ししっかりしなさい。ですが、この二人よりマシであるため25点減点にします。最後にミス・グレンジャー、あなたはこの二人に巻き込まれたようなものです。しかし、規則違反は規則違反。情状酌量して15点減点としましょう。」

 

レオはハーマイオニーを気の毒に思った。今回だけで140点の減点。真面目で点数を稼ぐことに真剣だった彼女には相当堪える大きさの減点だ。しかもほとんど巻き込まれたようなものだ。

四人はマクゴナガルに連れられて寮に戻っていく。気を取り直してさっさと今日の予定のところまで罠の魔法式の構築を完成させてしまおうと『眼』に力を集中させるレオであった。

 

(次に会う時のために、ハーマイオニーを元気づける方法を考えておこうかな。)




レオは箒の才能は有りません。一般生徒と同程度です。
ホグワーツの箒を原作より劣悪にしてみました。まともに飛べる箒がほとんどないです。

プタビトランス(思考送信)
オリジナル魔法。思考を送信するだけです。名前考えるの難しい……。
(( ))で思考を表してます。

ケルベロスは前回レオが作っていた魔法薬で人並みの知恵をつけて喋れるようにしました。頭のそれぞれで一言ずつ喋ってます。

そしてロン! やったね! 初セリフだよ。

では次回お楽しみに。


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13. ハロウィン

ハロウィンと言えばトロール。
さて今作ではトロールはどのような扱いなのか。

では13話どうぞ。


ハーマイオニー達が侵入した翌朝。

 

グリフィンドールから一気に140点も減点されたことで大広間はかなり荒れていた。

ハリー達は無謀な決闘をしようとしたとして周りからは非難されていた。

ハーマイオニーとネビルは事情を説明したのかそこまで扱いは悪くはないようだ。

スリザリンのマルフォイがポッターとウィーズリーがいかに間抜けかなどと大演説を始めるとさらに混沌とした状態になってしまった。

先程までハリーとロンを非難していたグリフィンドール生たちもその矛先をマルフォイとスリザリンに向けだしたのだ。

スリザリンを罵倒するグリフィンドール。

マルフォイを筆頭に煽るスリザリン。

どうしたらいいのかわからないハッフルパフ。

こんな場所で食事など取りたくないとため息をつくレイブンクロー。

最終的にマクゴナガルが一喝するまで、醜い罵りあいは続いた。

レオは早急に研究室にハーマイオニーと避難したため、ゆったりと食事を楽しむことができた。

 

「昨夜は災難だったね、ハーマイオニー。」

 

「全くよ。でももう少し上手いことどうにかしたかったわ。結局、私も減点されてしまったわけだし。なんにせよもうこれ以上の減点は許されないわ。」

 

今回の件でより一層、規則に対して厳しくしなければと心に誓うハーマイオニー。

 

 

 

それからは大きな変化もなく毎日が経過していく。

レイブンクローはレオに刺激されたのか例年より団結して学問に励んでいる。

いつもはお互いが勉強のライバルという感じで少しギスギスした雰囲気もあるのだが、今年はレナード・テイラーという高い能力を持った壁または目標がいる為、皆そこに向かって協調しているのだった。

金曜日の午後のレオの勉強会は今や上級生や他寮の生徒も来るようになっていたため、研究室の空間を拡張して専用の勉強スペースを作っていた。

勉強会と言ってもレオはほとんど教えることはせず、皆が協力して宿題や苦手の克服等に力を入れている。

レオは主に魔法を発動するアドバイスなどをしているだけだ。

だが『眼』で個人個人の魔法の癖や式の欠陥を見抜くことで適切なアドバイスになるため、皆の力量はどんどん上昇していった。

 

 

1991年10月31日

 

この日は朝からかぼちゃとお菓子の香りでホグワーツは満たされていた。

別にハロウィンだからとはいえやることは変わらない。いつもどおりに授業を受け、教授たちと議論したりして充実した一日であった。

 

大広間でかぼちゃだらけの夕食を食べていると、クィレルが大慌てで入ってきた。

皆が注目する中、息を切らせながら叫んだ。

 

「ト、トロールが……地下室に、お知らせしたくては……。」

 

その言葉を言った次の瞬間にはクィレルは崩れ落ちる。気絶してしまったようだ。

トロールと聞いて大広間は大混乱となってしまった。生徒はパニックを起こし滅茶苦茶な行動をとろうとする。

レオは捕まえれば実験材料に使えるかなと、他の生徒が思いもしないことを考えていた。

ダンブルドアが杖から爆音を出して、生徒たちを落ち着かせる。ひとまず各寮に戻って教師たちで対処するとのことだ。レオの研究室はすぐ近くな為、トロールとの遭遇はないと判断されたのか一人で戻っていった。

 

研究室に戻ると、扉の前でなんとハーマイオニーが座り込んでいた。

最悪の想像をしてしまい、急いで駆け寄る。ハーマイオニーはこちらに気付いたとたん、走ってきて更には抱き着いてきた。

 

「ハーマイオニー? どうしたんだ? ……うん、怪我はしてなさそうだ。」

 

「レオ……、レオ……。私、わたし……。」

 

抱き着いたまま泣き出してしまうハーマイオニー。

いつトロールと遭遇するかもしれないし、こんな状態のハーマイオニーを放っておくなどできるわけがない。ひとまず研究室の中に入って落ち着かせることにした。

泣き止まない彼女をソファーに座らせ、暖かいココアを差し出す。

 

「はい。まずはこれを飲んでゆっくりしようか。」

 

ハーマイオニーは少しずつココアを飲む。レオは黙ってハーマイオニーの反応を待っていた。

しばらくして、落ち着いたのか少しずつ話し始めた。

 

「レオ……。私ってお節介すぎなのかしら? レオは私のことどう思っているの? 迷惑だと感じていない?」

 

「僕は君のことを一番の親友だと思っているし、迷惑と感じたこともないよ。それに君がこれからどんなことをしてもそれは変わらないと思うよ。」

 

「ありがとう……。でも周りはそうは思っていないみたいなの。私が皆の為と思って行動しても……。今日、ロンに悪夢のようなヤツって言われたの。それだけじゃない! あいつに魔法を教えたレナード・テイラーってヤツはさらに勉強ができるってことはもっと性格も最低最悪に違いないって言ってたの! 悔しかった。私が悪く言われるだけじゃない、私のせいでレオも悪く言われたの! 悲しくて、悔しくて……。レオに会いたくなって気づいたら授業にも出ないでここの扉の前で座り込んでしまっていたわ。」

 

レオは目をパチクリさせた。ハーマイオニーの言葉が予想外であったのだ。

 

「僕のことを気遣ってくれたんだね、ありがとう。でも、気にしなくていいのに。ロンだか誰だか知らないけど、僕のことを知らない人にどう思われようともどうでもいいよ。いや、例えホグワーツ全て、魔法界の全てが僕のことをどういう風に見ていても関係ないよ。僕の研究する魔法の美しさはそんなものには全く影響されないからね。それにハーマイオニーが僕のことを正しく見ているならそれだけで十分だよ。」

 

ハーマイオニーはレオの言葉で少し心が軽くなった。

 

「それより、ハーマイオニーはどうしたいんだい?」

 

「私は……。私はレオのようにはなれない。どうしても周りのことは気にしてしまう性分なの。でも変わりたい、変わって周りともう少し打ち解けた関係を作りたいわ。」

 

「なら変わればいいんじゃないかな。ハーマイオニー、君は僕なんかよりずっとまともな人間だ。少し改善すればすぐに仲良くするぐらいはできるんじゃないかな。」

 

「そうね、そのとおりね。解ったわ、レオ。私やってみる、変わってみせる!」

 

少しは元気を取り戻せたハーマイオニーを見てレオも自然と笑顔になる。

もう一杯ココアを飲んでゆっくりしてからレオはグリフィンドール寮までハーマイオニーを連れていく。

 

 

「レオ、別に私一人でも戻れるわよ。もう大丈夫だから。」

 

「ああ、言ってなかったね。校舎にトロールが侵入したらしい。今生徒は各寮に避難して、先生たちで対処しているところだ。」

 

「トロール!? どうしてここに……、でも、もう先生たちがなんとかしてくれたから大丈夫のはずよね?」

 

「どうだろう。まぁ、トロールぐらいなら僕でも対処できる。ハーマイオニー、安心していいよ。守ってあげる。」

 

ハーマイオニーはその宣言で顔を赤くさせつつも、安心した。

しばらく、何事もなく進んでいく。グリフィンドール寮まで半分ほどのところで強烈な臭いが漂ってきた。

 

「何なのこの臭い……。まさか!」

 

「運が悪いことにそのまさかだろうね。ハーマイオニー、僕の後ろに。」

 

臭いが強烈になるにつれ、足音も聞こえてきた。曲がり角から姿を現したトロールは三メートルを超える巨体だった。

ハーマイオニーは息を呑む。まともに戦ったらすぐ自分などミンチにされてしまうだろう。

でも、ここにはレオがいる。それだけで叫びそうな自分を抑えることができる。

トロールがこちらに気付いた。即座に向かってくる。

 

フェルム(刃よ)ロタティネ(回転せよ)ヒートルト(加熱)。」

 

レオが呪文を呟くと魔力で造られた一メートルほどの刃が現れた。

その後の呪文を受け、刃は回転し温度を上昇させていく。離れた位置にいるハーマイオニーでさえその熱気が伝わるほどの温度になるころには赤く発光するまでになっていた。

 

フリペンド(撃て)。」

 

レオが刃に命じた次の瞬間には射出された刃がトロールの首を焼き切っていた。

宙を舞って落ちる頭、崩れ落ちる頭のない巨体。

トロールがこちらに気付いてからほんの数秒でトロールはその命を終えたのだった。

 

「すごい……。」

 

ハーマイオニーはレオのすごさを改めて思い知らされた。私もあの程度の困難独力で乗り越えるだけの力をつけようと決心した。

 

「ハーマイオニー!」

 

「無事!?」

 

後ろから男子生徒二人が走ってきた。おそらく寮にいなかったハーマイオニーを探してきたグリフィンドール生だろう。よく見ればハリー・ポッターとケルベロスの守りに侵入した誰かさんであった。

 

「ハリー、それにロン……。」

 

どうやら誰かさんはロンであるようだ。二人は死んでいるトロールに驚愕しているようだが、ハーマイオニーを見て謝ってきた。

 

「ごめん、ハーマイオニー。僕たち君にひどいこと言った。君は悪くないのに。」

 

「こちらの方こそごめんなさい。私の態度も悪かったし、これからは改めるわ。そしてありがとう。私のこと探しに来てくれたんでしょう?」

 

「ああ、うん、そうなんだけど。必要なかったかんじゃないかな。もうトロールは死んでるみたいだし。先生の誰かがやったのかな?」

 

「レオが倒したのよ。そうだロン、レオにも謝ってくれないかしら。」

 

ハーマイオニーの言葉を受けて目を見開くハリーとロン。

ロンはばつの悪そうな顔をして謝ってきた。

 

「君があの有名なレナード・テイラーなのかい? ごめん、直接じゃないけど君にもひどいこと言った。それにしても、おったまげー。君、勉強ができるだけじゃなく強いんだね。」

 

「別にいいよ。そういえば何度か顔は見てるけど初めましてだね。改めてレナード・テイラーだ。よろしくウィーズリー君。それとこうして話すのはダイアゴン横丁以来かな、ハリー・ポッター君。」

 

「そうだね、僕は君が有名って知らなかったよ。改めてよろしく。」

 

レオはダイアゴン横丁でも見た黄金のベールを解析を進める。

 

(やはり、守護の魔法か。しかも犠牲をもって発動するタイプ……。おそらく彼の両親が死んだときに庇ったのだろう。これが原因でヴォルデモートは消えたのか。)

 

そうして話しているとトロールが倒れた音を聞きつけたのかマクゴナガル、スネイプ、クィレルがやってきた。

クィレルはトロールの死体を見て腰を抜かしてしまった。スネイプはグリフィンドールの三人、特にハリーを睨んでいる。マクゴナガルは四人に詰め寄ってくる。

 

「あなたたちこれはどういうことですか。特にミスター・ポッターとミスター・ウィーズリー! また寮から抜け出して。それにこのトロールの死体、何があったのか正確に説明しなさい。」

 

レオがハーマイオニーのこと、トロールに遭遇したこと、二人について説明をする。

 

「そうでしたか。ポッターとウィーズリー、二人の行動は立派ですがミス・グレンジャーの行動の元を考えればあなたたちが原因です。よって減点も加点も無しです。ミス・グレンジャーも同様に特に処罰等はありません。最後にミスター・テイラー、トロールの対処および生徒を守ったことからレイブンクローに15点与えましょう。三人は私が寮まで送りますので、もう今日は休みなさい。」

 

マクゴナガルは三人を連れて寮に向かった。スネイプはトロールの死体の処理をしているようだ。魔法薬の材料に使われるだろう。

レオはハリーの守護を解析し終えたが、クィレルからも守護するようになっているのには疑問が残った。

 

(解析が不十分だったかな? クィレル先生も解析した方が良いかな。)

 

クィレルの方を向くと、目が合った。開心術を仕掛けているが遮断されて失敗したようだ。その目には恐怖と怒りが感じ取れた。

 

(何か憑りついているしそれが影響しているのか。……あぁ、なるほど。ヴォルデモートか、だからハリーの守護が作用しているのか。)

 

守護についての答えを得たのでクィレルを無視して研究室に戻るレオ。

 

このハロウィンの騒動からハーマイオニーは周りに受け入れられるようになった。

ハリーとロンとはそれなりに一緒に行動するようになったようだ。




マルフォイが余計なことをしなければ英雄とその親友は獅子寮の戦犯扱いでした。
無駄に煽らなければ良かったのですが、彼の性格では無理だったのでしょう。

レオの勉強会はダンブルドア軍団のように戦闘中心ではなく塾のような感じです。

ハーマイオニーは原作と違って頼れる人がいたのでトイレには籠りませんでした。

トロールさんは絶命となりました。二次創作での生存率はどの程度なんでしょうね?
ちなみに首ちょんぱのイメージは気円斬です。ただ熱を加えたことで切断面が焼かれて血が出ていません。トロールの血液がくさいためレオが気をつかいました。

ハリーの守護解析完了。これでハリーに対しての興味がほぼゼロになりました。

ハーマイオニーとハリー、ロンは原作ほど仲良くなっていません。あくまで普通に友人として接して勉強ができるので頼りにしている程度です。


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14. 開発と助言

今回の話である人物が嫌な奴に感じると思います。
この登場人物はこんなんじゃない! と思う方もいらっしゃると思いますが、
二次創作と言うことで勘弁してください。

では14話どうぞ。


ハロウィンの後からハーマイオニーは周囲に溶け込めるようになった。

今ではグリフィンドール生の勉強の面倒を見るようになっているようだ。

ハリーとロンとは友達になれたようで三人で行動することも増えている。

だが、ハーマイオニーにとっては一番の友人はレナード・テイラーであることは変わらず、休日はレオの研究室で過ごすのが当たり前になっていた。

 

11月になりクィディッチのシーズンが始まった。

最初の対戦カードはグリフィンドール対スリザリン。まさに因縁の対決からのスタートだ。

だが、そんな事にはまるで興味がないレオは今日も研究室で魔法研究三昧。

 

(さて、賢者の石の罠の改良は完了。あとはニコラス・フラメルから賢者の石の研究許可がもらえれば最高なんだけどなぁ……。)

 

そんな事を考えながら、テーブルに置いた十個の指輪を見つめる。

これらは普段はレオの全ての指に付けられているものだ。通常は認識阻害と透明化の複合でその存在を知る者は皆無である。

指輪にはそれぞれ異なる能力を持たせる予定である。

現在は十個の内、五個が完成済み。残りについても理論は完成しているため、順次作成していく方針だ。

問題がなければ一学年終了時には完成するはずだ。その後は必要に応じて改良を重ねていけばいいだろう。

 

(とりあえず、反射から造っていこうかな。)

 

指輪の一つを魔法陣の上に設置し、魔法式を刻み込んでいく。式は幾重にも層を重ねより複雑な文様を形成していく。全神経を集中させ、『眼』を使って極微細なミスもないように新しい魔法具に力を宿す。

 

 

 

ふと気付くとすでに夕方になっていた。魔法に熱中していると時間を忘れてしまう。

クィディッチは終了したのか廊下にはそれなりの人の気配がする。

一段落したため紅茶で飲んでリラックスしようと準備していると、ドアがノックされた。

 

「レオ、ハーマイオニーよ。入ってもいいかしら?」

 

「どうぞ、ちょうどよかった今紅茶の準備をしたところだよ。」

 

お邪魔しますと言ってハーマイオニーが入ってきた。その後ろにはハリーとロンが続いていた。

 

「お邪魔します。うわぁ、なんかすごい場所だね。」

 

「こりゃすごいや。何が何だかわからないけど、とりあえず凄そうだ。」

 

「いらっしゃい。どうしたんだい、ハーマイオニー。他の人と来るなんて初めてじゃないか。それとポッター君とウィーズリー君はあまり周りのものを触らない方が良いよ。」

 

色々と周りを見て触ろうとしていた二人に注意しておく。実際にはそこまで危険なものはここには無い。本当に危険なものはずっと奥で取り扱っている。

 

レオは紅茶とお菓子を食べながら、ハリーとロンが今日のクィディッチでの出来事について文句を言っているのを聞いていた。

内容を要約すると、ハリーの箒にスネイプが呪いを仕掛けたと考えているらしい。

 

(スネイプ先生レベルで呪いをかけたら今頃箒はバラバラだろう。仮にスネイプ先生が呪っていても他に保護魔法を使っていた人がいると考えるべき。クィレルにヴォルデモートが憑依していることも考慮すればクィレルが呪いをかけてスネイプ先生が対抗していたのだろう。普段の態度から誤解されているなぁ。)

 

「レオ、スネイプ先生は呪ってたと思う?」

 

「絶対そうだよ! だってスネイプだぜ!? ハリーへの態度を見れば100%犯人だよ!」

 

「僕もスネイプに間違いないと思う。」

 

「状況を見ていないから断言はできないな。仮にスネイプ先生が犯人だとしたら今頃ポッター君はベッドの上か、棺の中だろう。だから呪っていた人とは別に守っていた人もいると思う。どちらにしろ、推測しかできないな。」

 

(まぁ、ヴォルデモートのことは言わない方が良いだろうから、こんな回答しかできないな。)

 

ロンとハリーはレオがどう言おうがスネイプ=犯人で決めつけているようだ。

ハーマイオニーだけはその時の状況を思い出そうとしている。

 

「えーと、そうだ。レナードはニコラス・フラメルって知ってる?」

 

ロンのいきなりの発言に流石に驚いた。

 

「どうしてその人について知りたいんだ?」

 

三人は言いたくないようだったが、意を決してハーマイオニーが話し始める

 

「この前、グリフィンドールから大量に減点されたことがあったでしょ? あの時、私たち禁止された四階廊下に入っちゃったの。そこにはケルベロスがいたわ。今日ハグリッドとお茶してきたんだけどその時のことをロンが喋ってしまったの。そしたらケルベロスはハグリッドのペットでホグワーツで何かを秘密裏に守るためダンブルドア校長に貸したと漏らしたわ。その何かはニコラス・フラメルという人が関係しているとも言っていたわ。実はレオなら知ってるかと思って聞きに来たの。」

 

レオは必死に冷静を保とうとした。心の中ではハグリッドへの呆れとダンブルドアのへの疑念でいっぱいだった。

 

(ハグリッドは何を考えているんだ? 大事な機密情報を生徒にぺらぺらと喋るなんて……。ダンブルドアもなぜそんな人に情報を渡しているんだ?)

 

レオは迷った。賢者の石のことは秘密だ。だけれども自分がニコラス・フラメルについて知らないのも不自然ではないだろうか。とりあえず賢者の石は伏せて高名な錬金術師と言うか? いや、それだけの情報があればハーマイオニーならば簡単に賢者の石にたどり着く。さて、どうするか。

 

「もちろん知っているよ。けど、ただ教えるだけじゃ意味がない。何事もまずは自分が考えて調べることから始まる。僕に聞きに来たということはハグリッドは答えてくれなかったんだろう? なら僕も答えるわけにはいかないかな。でも調べることは止めないよ。」

 

これでは少し苦しいか? などど思っているとロンが怒り出した。

 

「レナード・テイラー! おまえは嫌な奴だな! 知っているのに教えないなんて。自分で調べるより知っている人に聞いた方が良いに決まっているじゃないか。それなのに自分だけ知っていて何も知らない僕たちのことを心の中で笑っているんだ! そうに違いない! ハリーの箒に呪いをかけたスネイプがケルベロスに対して文句を言っているのを僕たちは聞いたんだぞ。スネイプはその何かを盗もうとしているに違いない! だから知っているなら教えろよ! ああ、分かったぞ。実はお前もニコラス・フラメルのこと知らないんだろ? でも頭が良いって評判を崩されたくないから知っている振りをしているんだ。もういい! こんなやつ頼らなくたって僕たちだけでなんとかしよう。」

 

ロンは一気にまくしたてると、走って出て行ってしまった。ハリーは一言謝ってからロンの後を追って行ってしまった。

ハーマイオニーはロンの態度に怒り心頭のようだ。

 

「まったく! ロンったらどういう思考回路しているのかしら。レオに対して失礼だわ!」

 

当のレオはポカーンとしていた。

 

「レオ……? 大丈夫? あんな言葉で傷ついちゃだめよ。ロンには後で私がきつく言ってやるわ。」

 

「いや、別に問題ないけど、……人ってあそこまで思い込めるものなんだなって吃驚した。一方的に自分の考えを言って決めつける。すごいね。」

 

レオは皮肉でもなんでもなく感心していた。ああいった人間とは接したことがなかったため、他人はあそこまで違う存在なんだなと、人の思考はこの『眼』でも解析不能だと改めて思った。

 

「なんにしても、僕からは教えられないし、調べるのもお勧めしない。ハッキリ言うと深入りすると危険だよ。」

 

「忠告ありがとう。でも私は知識として知っておきたいわ。けれど知るだけにとどめておこうかしら。あの二人が暴走するのを止めるストッパーも必要だろうし。」

 

「じゃあ、あの二人については任せていいかい。よし、この話はこれで終了! そろそろいい時間だし、夕食にしようか。」

 

その後はいつも通りに二人で夕食を楽しんだ。その頃にはロンの言葉など頭の片隅にも存在しなくなっていた。

 




はい。ロンにはおかしなことを言わせてしまったと思います。

スネイプがハリーを呪う+ハグリッドが教えてくれない+レオも教えてくれない+優秀なレオへの嫉妬=怒り爆発! てな具合で感情のまま口に出してしまいました。

スネイプはハロウィンの時ケルベロスに噛まれはしませんでしたが、散々馬鹿にされたので愚痴を言っていました。それをハリーに聞かれてました。

では次回お楽しみに。


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15. クリスマス休暇

前回の話でのロンのセリフですが、共感された方が多く安心しました。
ロンは今後もあんな感じで進んでいきます。

では15話どうぞ。


十二月下旬になりすっかり冬である。吐く息も白くなり気温の低さを実感させた。

あれからロンはレオのことを敵視しているようだ。ハリーは特段そんなことは無いのだがロンと一緒にいるせいか会話することはない。

これらの情報はハーマイオニーからのものだが、レオとしては興味がない。

ハーマイオニーはすでにニコラス・フラメルと賢者の石について調べ終えている。賢者の石をホグワーツで守っているという事実から、この件が危険ということを理解したのかそれ以上は追求していないようだ。ハリーとロンはいまだに答えにたどり着いていないが、ハーマイオニーは教える気はないらしい。

 

「まったく、あの二人には呆れるわ。レオもハグリッドも止めろって言うのに聞きもしない。おまけにスネイプが犯人って決めつけているわ。確かにあやしいけれど他の可能性も考えられないのかしら?」

 

「まぁいいじゃないか、好きにさせておけば。生徒に出来ることなんて限られているし。それよりハーマイオニーはクリスマス休暇はどうするんだい? 僕は家に帰るよ。母さんがクリスマスパーティーは盛大にするんだって張り切っているんだ。ハーマイオニーやご家族も参加しないかって言ってるんだけどどうする?」

 

「是非参加したいわ! 実はパパとママは急な用事で休暇中は忙しくてほとんど家にいないみたいなの。それを聞いてホグワーツに残ることも考えてたけど、レオの家でパーティーがあるなら絶対戻るわ!」

 

「よし、決まりだな。母さんには連絡しておく。パーティーがもっと豪華になりそうだ。どうせだったら休暇中僕の家ですごさないか? 君がホグワーツでどれだけ実力をつけたのか見たいし、もっと魔法を教えてあげよう。」

 

「いいの!? 迷惑じゃなければお願いしたいわ。私の実力がどの程度になったか確認よろしくね、レオ先生?」

 

 

 

クリスマス休暇初日。

レオとハーマイオニーはホグワーツからキングス・クロス駅に向けての列車に乗っていた。

コンパートメントの中は二人だけであり、休暇中の予定を決めている最中であった。

 

「とりあえず真っ先に宿題を片付けてしまおう。その後はクリスマスパーティーを存分に楽しむ。残りの休暇はハーマイオニーのレベルアップと僕の指輪を完成させようかな。何か覚えたい魔法はあるかい?」

 

「そうね……。うん、やっぱり前にも言ったけど空を飛んでみたい! 他には何か攻撃呪文を覚えたいわ。トロールの件もあるし自分の身は自分で守りたいしね。」

 

「よし、飛行魔法と攻撃ね……。攻撃は色々応用が利く魔法を考えよう。それと追加で閉心術も教えておくよ。」

 

「閉心術?」

 

「心を読む、開心術の対になる魔法だ。これを覚えることで心を読まれないようになる。ハーマイオニーは例のものを知ってしまったから念のためにね。かなり高度な魔法だから多分習得は難しいだろうけど、知らないよりは確実に良いだろうしね。」

 

その後はキングス・クロス駅に着くまで二人は休暇中の詳細な予定や、クリスマスパーティーで何が催されるかなど話し合っていた。

キングス・クロス駅に着くとレオの母、フェリス・テイラーが待っていた。

 

「レオ、それにハーミーちゃんも! お帰りなさ~い。」

 

フェリスは二人をまとめて抱きしめる。レオは慣れていたがハーマイオニーは予想以上の腕力の強さに苦しそうに呻いた。

 

「母さん。ハーマイオニーが潰れてしまいますよ。」

 

「あらあら、ごめんなさいね。つい嬉しくなっちゃって。じゃあ、我が家へレッツゴー!」

 

久しぶりの我が子とガールフレンドが家に戻るのだ、フェリスのテンションは最高潮だった。レオたちは苦笑いしてフェリスの後に続いた。

テイラー邸に着いた二人は早速宿題を協力して終わらせる。レオはハーマイオニーに教えるプランの作成。ハーマイオニーはフェリスの手伝いをすることとなった。

 

 

クリスマス当日。

レオが目を覚ますといつもより多くのプレゼントが枕元にあった。

レイブンクロー生と勉強会に参加している他寮の生徒から合同で魔法薬の材料やお菓子の詰め合わせを貰った。

教授たちからはそれぞれの専攻分野の論文など一般にはプレゼントと言っていいのか悩むものだったがレオとしてはとても嬉しかった。

ダンブルドアからは色々な国のお菓子の詰め合わせだった。生徒のものとは内容がかぶっておらず見たこともないものばかりだったのでありがたく頂戴した。

 

リビングに行くとすでにハーマイオニーとフェリスがパーティーの準備をしていた。

 

「メリークリスマス。ハーマイオニー、母さん。」

 

「メリークリスマス! レオ!」

 

「メリークリスマス! はい、母さんとハーミーちゃんでの合作のプレゼントよ!」

 

ハーマイオニーとフェリスからのプレゼントは特大のクリスマスケーキと豪華な食事だった。

今日は朝から晩までパーティーが続くようだ。飽きないように料理も洋食、中華、アジア、日本、ファーストフード、等々見たこともないような料理まで並んでいた。

 

「ふっふっふ。母さんの力作よ! ハーミーちゃんにも色々手伝ってもらったのよ。魔法でいつでも出来立て状態になっているから好きな時に食べられるわ。」

 

「フェリスさんって料理上手なのね……。私ほとんど何もしてなかったんだけど……。」

 

「今年はハーマイオニーがいるからいつも以上に張り切ってるね。ああ、そうだ。はい、これ。ハーマイオニーへのクリスマスプレゼント。」

 

レオは一冊の本を手渡す。表紙にはタイトル等は何も書いていなかった。

 

「……? これなんの本?」

 

「これは僕が作った魔法や魔法薬を纏めた本だよ。まだ世間に発表していない魔法なんかも含まれているよ。ハーマイオニーだけに特別。本の中身は君にしか認識できないようになっている。」

 

「こんなすごいプレゼントもらってもいいの!?」

 

「もちろん。クリスマス休暇中や機会があればこれからはこれを教科書にしてレベルアップしていこう。」

 

ハーマイオニーはギュッと本を抱きしめる。

フェリスはその様子を見ながら口をとがらせて不満そうに呟いた。

 

「はぁ~……。我が子ながらロマンチックのかけらもないプレゼントねぇ……。ハーミーちゃんこんなのでいいの?」

 

ハーマイオニーははっきりと宣言した。

 

「はい! 最高のプレゼントです。」

 

「あぁ……。プレゼントじゃなくてね、レオでいいか聞いたんだけど……。もしかして自覚無しなのかな?」

 

レオもハーマイオニーも頭に疑問符を浮かべる。

 

(レオは当然として、ハーミーちゃんもまだ自分の気持ちに気付いていないのね。母としてはこんな息子にこれから出会いなんてきっとないのだから何としてもいい関係になってもらわなきゃ!)

 

フェリスは一人決意を固めるのだった。

 

 

夜には父、アースキンが帰宅してパーティーが本格的に始まった。

料理はほとんど絶品であったが、中には罰ゲームのような料理もあった。食べてしまったアースキン曰く、「金星人の食べるものだ」との事。

パーティは盛り上がり、話題はホグワーツでの生活に移っていく。

 

「レオ! 相変わらずレイブンクローはガリ勉か? あいつらいっつも同じ量なのに俺のこと脳筋だって言うんだぜ! フーンだ、今や俺は闇払い局の副局長だもんな。学年で一番の出世だ!」

 

「酔っているね、父さん。レイブンクローの皆は勉強熱心でとても良いと思うよ。それに父さんが脳筋なのは間違ってないよ。」

 

「そうよ~。あなたは学生時代から今でもずっとそうじゃない。」

 

ハーマイオニーはレイブンクロー生が脳筋と言われるのがイメージできなかった。

 

「父さんはね、魔力の量が常人の百倍から千倍あるなんて言われているほど魔力量が尋常じゃないんだ。その膨大な魔力にものを言わせて無言呪文をマグルのマシンガンのように連射するわ、難しい呪文も魔力で強引に成立させたりしているんだ。他のレイブンクロー生からしたら脳筋とも言いたくなるよ。」

 

「そうなのよ。学生のころから何でも魔力で解決。頭を使うより体力だ! 魔力は体からだ! なんて言っていたんだから。」

 

「ほいほい、そうですよ。脳筋ですよ。そういう母さんだって周りから史上最強のいじめられっ子だって言われてたじゃないか。」

 

「史上最強……? フェリスさんがですか?」

 

ハーマイオニーはアースキンの脳筋よりも、このおっとりしたフェリスが史上最強なんて言われている姿に無理があると感じた。

 

「おお、そうなんだぞ。母さんは子供のころからゆるくてな。成績も悪く……いや最下位だった。そんでもって俺らの在学中は悪戯仕掛け人ていう馬鹿どもがいてだな。よく母さんがターゲットにされていたんだ。実は母さんとのきっかけもそいつらから守ったのがきっかけなんだ。そんで、いつまでも守られるのは嫌だって言って魔法を覚えようとしたのはいいんだが、勉強ができなかった母さんは一つの結論に達した。」

 

「どんな結論だったんですか?」

 

「肉体は魔法に勝る。」

 

「……!? え!?」

 

ハーマイオニーは聞き間違いかと思って、レオの方を見た。レオは事実だと目で語っていた。

 

「極限まで肉体強化の魔法を極めてな、さらにはマグルの武術まで見様見真似で練習するようになった。気づいたら魔法は見切って躱す、目にもとまらぬスピードで接近する、防御などお構いなしに拳や足が飛んでくる。そんな素敵な女性に変身していた。悪戯仕掛け人の一人が平手打ちされてその場で回転した時には人生で一番驚いたな。だけど、悪戯仕掛け人も火が付いちゃってフェリスへのいじめに近い嫌がらせは続いたんだよな。まぁ、仕掛けるたびにボコボコになっていたが。周りから見たらいじめられている子が気づいたら相手を打ちのめしているように見えたからそういう二つ名がつけられたんじゃないかな。」

 

「あの人たち、ものすごーくしつこかったわ。最後は私とアースキンの二人で徹底的にお仕置きしたわ。そういうきっかけで私たちお付き合いが始まったの。」

 

それから両親は思い出話からののろけ話になってしまい。レオとハーマイオニーは勉強すると言って逃げ出した。

 

 

 

残りの休暇はハーマイオニーの特訓に費やした。

ホグワーツでも独自に勉強していたのか予想以上にレベルアップしていた彼女にレオは驚くと同時に満足感が得られた。教え子の成長は嬉しいものなのだ。

研究室内の魔法開発実験スペース。とにかく広く、そして練習用の人形があるだけの空間だ。

 

「じゃあ、最初に攻撃魔法を教えよう。『コルポリス(物理的)』だ。これは術者が認識している範囲で座標、方向、範囲を指定して力場を発生させる魔法だ。試しにやってみよう。」

 

レオは手を前に出す。前には的として人形が設置している。呪文を唱えると人形は吹っ飛ば

された。

 

「今のは手の先から、真っ直ぐに、手のひら範囲で吹き飛ぶ程度の力で使ってみた。これから応用を見せよう。」

 

二回目は人形は横に倒れた。三回目は上に浮く。四回目には人形が胴体から切断された。

 

「この魔法は応用が利く。二回目は力場の発生座標を人形の真横に設定して、力の範囲を広く弱くした。三回目は人形の足裏から浮く程度の力に。最後は効果範囲を薄く刃のようにして力を強くした。結果、人形は断ち切られた。」

 

ハーマイオニーは魔法の攻撃は呪文を言って相手を呪うことばかり想像していたから、かなり驚いた。

 

「この魔法の利点は目に見えないことだ。他の魔法は呪いが閃光などでこちらに飛んでくることが多い。そういうものは躱すことも可能だ。しかし『コルポリス(物理的)』は呪文を唱えてもどの方向から、どのくらいの範囲で、衝撃なのか、斬撃なのか相手には分からない。守りの魔法としても使える。広範囲で力を発生させれば爆発や落下物なんかも防ぐことができる。ただ、欠点として使いこなすにはかなりの練度が必要になる。魔法を使う前に座標等を設定していないと基本的に前に向かって衝撃波が発生するだけになってしまう。まぁ、最初はそれでも十分攻撃になるからどんどん使って慣れていこう。」

 

(簡単に言ってくれるわね……。でもすごい応用が利く呪文ね。流石だわ。)

 

 

ハーマイオニーは苦戦しながらもコルポリス(物理的)を少しずつ使い慣れていった。

飛行魔法は苦手なのか浮く程度になってしまったが、これも慣れが重要なのでそのうち自由に飛べるようになるだろう。

閉心術はレオに心を読まれるのが嫌だったのかあまり特訓はできなかった。最低限の心を読まれる感覚を感じ取ることで目を合わさないことを覚えたので上々だろう。

楽しい休みはあっという間に過ぎていった。

 

ホグワーツに戻る日。キングス・クロス駅。

 

「では、行ってきます。父さん、母さん。」

 

「行ってこい! もっと立派になってくるんだぞ。」

 

「体には気を付けるのよ。ハーミーちゃんも色々がんばってね!」

 

「休暇中は本当にありがとうございました。楽しかったです。」

 

列車の窓から別れの挨拶を済ませる。二人は休暇を終えて再び学び舎に戻っていった。




ハーマイオニー強化回でした。
勉強は五年生レベル、魔法戦闘は三~四年生レベルです。これからさらにレベルアップするかも。

フェリスとしてはハーマイオニーはすでに嫁扱い。
でも当の本人たちはいまだ自覚無し。特にレオは恋愛などどんなものかさえ分かっていない。

レオの両親についてはそのうち人物紹介みたいなので詳しく紹介したいですね。

悪戯仕掛け人はあの四人です。平手打ちで回転したのはジェームズです。
ピクルVSジャック・ハンマーの二回戦目の決着をイメージしてもらえばOKです。

では次回お楽しみに。


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16. ドラゴンと罪

前回の話の感想がレオの両親についてばかりでちょっとびっくり。

賢者の石編は後3話ぐらいですかね。

それでは16話どうぞ。


新学期。

 

それからは特に変わらない日常が続いた。

クィディッチでみんな(レオ除く)が盛り上がったり、宿題が大量に出たりしたが、賢者の石を盗もうとする輩は現れていない。

勉強会で生徒に魔法を教えたり、自分の研究をしたり、ハーマイオニーと一緒に休日を楽しんだりと充実した毎日が続いていた。

 

 

ある休日、ハーマイオニーがレオの研究室に駆けこんできた。

 

「レオ! 大変なの! ドラゴンが……。」

 

「うん、落ち着こうか、ハーマイオニー。深呼吸、深呼吸。」

 

落ち着いたハーマイオニーの話では図書館で珍しくハグリッドが本を探していたらしい。

しかもその本がドラゴンの飼育方法についてだった。いやな予感しかしなかったのでハリーとロンが小屋に誘われたのに便乗してついていくと予感は的中。ハグリッドはドラゴンの卵を孵化させようとしているようだ。

さらには卵を持っていたあやしいヤツにケルベロスを大人しくさせる方法を喋ってしまうというおまけつき。

 

「何がフラッフィーは音楽を聞かせると眠っちまう可愛いやつだ、よ! それにドラゴンを無許可で飼育するのは違法だって教えたのに昔からの夢だったとか言って聞いちゃいないわ! レオはどうしたらいいと思う? ダンブルドア校長先生に伝えた方が良いのかしら。」

 

レオはもうハグリッドに見切りをつけていた。ケルベロスの弱点は解消済みだし、賢者の石の守りは万全だが、不確定要素は排除するべきだ。完璧に見えるものでも綻ぶ可能性は必ず出てくるものだ。消えてもらった方が良いだろう。

 

「ダンブルドア校長はだめだ。どうせ擁護してなかったことにするだろう。ケルベロスのことを話したということはその相手は賢者の石を狙った者の可能性が高い。守っている意識の無いハグリッドにはアズカバンに入ってもらうとしよう。」

 

「アズカバン?」

 

「魔法使いにとっての刑務所のような場所だよ。処刑場も兼ねてはいるけどね。」

 

「じゃあ、ハグリッドは……。」

 

「ドラゴンの卵を所持しているぐらいじゃ死刑にはならないだろうけど、数年は出てこないだろう。とりあえず、僕の伝手で魔法省の魔法生物規制管理部に連絡をしておくよ。ドラゴンの方はそうだな……、研究対象として僕が確保しよう。血液や鱗、牙は貴重な材料にもなるし、うまく手懐けて育てれば材料の調達とドラゴンを使った研究が進められそうだ。」

 

「良かった……。ドラゴンは処分されたりはしないのね。いくら不法に所持した卵でもドラゴンには罪は無いものね。」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

俺は生き物が好きだ。特にでっかくて強いやつらが大好きだ。

昔からそうなんだ、もう魂に刻まれたもんだと思っとる。

ドラゴンなんかを飼って一緒に遊ぶことなんか何度夢に見たかわからねぇぐらいだ。

 

昔は色々あったが今はホグワーツで森番をして色んな生き物と触れ合えている。ダンブルドア先生には本当に感謝してもしきれねぇ。

だけど、やっぱりドラゴン飼ってみてぇなぁ……。

 

そんなことを思っているとドラゴンの卵を持って処分に困っている奴と会った。

賭けをして手に入れることができた俺は人生で最高にツイていた!

まぁ、その時色々話しちまったが、ダンブルドア先生のいるホグワーツなら大丈夫だろう。

 

今日は待ちに待った日だ。とうとう卵が孵化しそうなんだ!

ハリーとロンも呼んで一緒に記念すべき瞬間を見守っている。

卵の殻が割れて中から美しいドラゴンの赤ちゃんが出てきた。ノーバートって名前に決めていたんだ。手に乗せると噛んできたが、愛情表現だろう。なんてかわいいんだ。

 

一週間もするとノーバートはどんどん大きくなってきた。そろそろ小屋から出して空を飛び回らせてやりてぇな。ハリー達もきっとそう思っているに違いねぇ。ハリーとロンは毎日のように見に来てくれている。今日もロンが追いかけっこして遊んでくれている。

あぁ、毎日が幸せだな。

 

そんな幸福を噛みしめていると、小屋のドアがノックされた。急いでノーバートを隠そうとするが、ドアが開かれてしまった。

ドアの先には初めて会う男と生徒……、確かレナード・テイラーだったか? 二人が立っていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「失礼します。私は魔法省魔法生物規制管理部ドラゴンの研究および制御室所属、ウォルター・ハワードと申します。こちらでノルウェー・リッジバック種の不法飼育を行っているとの情報を受けて参りました。確認するまでもなく、情報に間違いはないようですね。……さて、あなたはアズカバン送りになるでしょう。もちろん裁判で弁護する機会は与えられますが、最低でも五年は覚悟した方がよろしいでしょう。」

 

「い、嫌だ! 俺は悪くねぇ! 好きな生き物と一緒にいて何が悪いってんだ!」

 

「あなた、許されざる呪文を使って、『使いたかったから使って何が悪い』と言う人を見たらどう思われますか? ただの狂人でしょう。私にはあなたがそのように見えています。何と言い訳しようとも犯罪は犯罪、ご同行をお願いしますよ。」

 

「ノーバートはどうするんだ!? まだ生まれたばかりで俺がいなけりゃ死んじまうぞ! 俺はこいつを一人ぼっちにするわけにはいかねぇ!」

 

「それについてはご安心を。こちらのレナード・テイラー氏が研究対象として引き取ってくださいますよ。もちろん魔法省の許可は取得済みです、当然ですね。それではテイラー氏、後はお任せします。」

 

ハグリッドは絶望した顔でウォルターに連れられて行く。

小屋の中にはレオと困惑したハリー、レオに敵意を向けるロンだけが残った。

レオは小屋の中を飛び回っているノーバートに失神呪文を当てる。子供とはいえ流石はドラゴン。動きが鈍りこそすれど、失神はしなかった。だが、その隙に用意してあった専用の首輪を装着する。途端に先ほどまでの暴れっぷりが嘘のように大人しくなり、レオの肩にとまった。

もう用はないと言わんばかりに小屋から立ち去ろうとするレオ。

そこにロンが罵声を飛ばしてきた。

 

「おい! レナード・テイラー! おまえ、ハグリッドを嵌めたな!? 自分がドラゴンの研究をしたいからハグリッドに罪をきせてアズカバン送りにしたんだ。ノーバートを返せよ!」

 

「ドラゴンの飼育には許可がいる。彼はその許可を持っていなかった。投獄は当然だと思うのだけど。僕はドラゴンを制御する術を持っているが、彼はどうなんだい? 仮にこのままドラゴンの飼育を続けていたら手に負えなくなって生徒に危険が及んでいただろう。そうなってからでは遅かったと思うよ。まぁ、ドラゴンの研究をしたかったのも否定はできないけどね。」

 

「うるさい! 手に負えなくなったら、ドラゴンキーパーのチャーリーに渡す予定だったんだ! 何も問題はなかったのにお前が余計なことをするからこんなことになったんだぞ!」

 

「罪を隠蔽する方が正しいと思っているんだね。まぁ、どうでもいいか。」

 

まだ、何か言ってくるロンを無視して小屋を出る。

ハリーが話しかけてきた。

 

「待ってくれ。ハグリッドってそんなに悪いことをしたの? アズカバンってそんなに酷い所なの?」

 

「ドラゴンは成長するのも速いし、熟練の魔法使いがチームを組んで討伐するような魔法生物だ。それに鱗や牙、その他色々な部位が危険な魔法薬の材料になりうる。そんな存在を許可のない人間が扱うのは問題だろう。アズカバンは……、そうだな簡単に言えば幸せがない地獄のような場所かな。」

 

ハリーはそれを聞いてハグリッドがそんな場所に贈られることになってしまった原因のレナードに嫌悪の感情を向ける。いくらハグリッドに問題があって、ドラゴンが危険でも彼は友人だった。その友人を自分の研究のために犠牲にしたのは許せなかった。もっと他に方法があったはずに違いない。

 

ハリーとロン、二人との関係性は最悪と言っていいものになったが、そんな事よりドラゴンを無事確保できた方がよっぽど重要だ。

小屋から研究室に向かいながら考える。

 

(さて、何から研究しようかな。強靭な鱗の利用方法、魔法薬への応用、色々あるな。)

 

「……ああ、そうだ。君に名前を付けないといけないね。いつまでもドラゴンじゃ呼びずらいしね。」

 

ノーバートと呼ばれていたがそんなことは頭の中からはすっかり消え去ってしまった。

自分にはネーミングセンスがないと知っていたため研究室に戻ったらハーマイオニーに名前を付けてもらおうと決めたレオだった。




ドラゴンとハグリッド退場回でした。

ドラゴンの騒動がないので森とユニコーンについて場面なし
ついでに減点もないし、マルフォイの出番もなし!

ハグリッドがいない影響はそれなりにあるし原作沿いのタグ外した方が良いかな……。

ドラゴンの名前はどうしよう……。
活動報告で名前募集します。気になる名前があれば採用します。

では次回お楽しみに!


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17. 迎撃準備

ドラゴンの名前について多くの案をありがとうございました。

billu003様のハリエットに決定しました。
X.i様のハーマイオニー(Hermione)の発音変えのヘルミオネと迷いましたが、
ハーマイオニーが名付け親になることから自分の名前からは付けないだろうということと
ハリエットがダーウィンがガラパゴス諸島から持ち帰ったメス亀からというのがマグル出身のハーマイオニーらしいと感じたのが決め手です。

今後機会があればハリエットの登場はあるかと思います。

では17話どうぞ。


次の日は朝から大騒ぎだった。

『ホグワーツの森番 ドラゴン違法所持!』

この大見出しが日刊預言者新聞の一面に大きく印刷されていた。

 

『ホグワーツ魔法魔術学校の森番である、ルビウス・ハグリッドがドラゴンの違法所持の現行犯で逮捕された。魔法省魔法生物規制管理部の担当者にインタビューを行ったところ、ノルウェー・リッジバック種の卵を入手し、孵化させたのち極秘で飼育していたという。連行する際も反省の色は見られず非常に重い処分になるだろうとの事。ドラゴンは情報提供をした魔法研究の若き天才レナード・テイラー氏が管理することが決まっている。ノルウェー・リッジバック種は~~』

 

その後もドラゴンがいかに危険かなど、ハグリッドを批判する記事が続いていた。

大広間には新聞を読んだ生徒の親族からのフクロウ便が山のように運ばれてくる。

我が子への心配、ハグリッドへの怒り、ホグワーツの安全管理についての抗議、ダンブルドアへの批判、レナード・テイラーへの感謝、等々様々な手紙が降ってくる。

レオも朝から寮、学年問わず多くの生徒から質問の嵐だ。

とりあえず知っていることを正直に話す。後はそのうち落ち着くのを待てばいいだろう。

 

 

 

ダンブルドアは悩んでいた。

自分の影響力を最大限活かせばハグリッドを無罪とまではいかないまでも、その罪をかなり軽くすることもできるだろう。

ハグリッドを森番に任命した責任問題を理由に理事であるルシウス・マルフォイなど、校長がわしであることを快く思っていない連中が攻撃してくるはずだ。

それぐらいならまだいい。大多数の理事はわしの味方に付くじゃろう。

問題はレナード・テイラーだ。彼がハグリッドを不要と決めたためこのような結果になった。

今回の件は彼が魔法省に連絡をしたからことが大きくなった。それが無ければハリー達がチャーリーに連絡して終わっていただろう。

このままハグリッドを庇わなければレナードへのわしの印象は悪くはならないだろう。

しかし、ハグリッドはハリーにとっても友人であるし、巨人との交渉にも使える大事な仲間じゃ。

 

(レナードとハリー。どちらを優先すべきかのぅ……。)

 

 

最終的にルビウス・ハグリッドはアズカバンに五年間の投獄となった。

ダンブルドアは擁護したようだが、ドラゴンを違法に所持していた事実は変わらないため刑期の短縮が限界だった。

この事件に多くの生徒はいつかそうなっていただろうといった感じで受け取っていた。

グリフィンドール生でさえそう感じている者が多かった。

ハリーとロンはレナード・テイラーが悪いのだと言い回っていたが、ほとんど相手にされておらず、こいつらは何を言っているんだと変人扱いだ。

逆にレナード・テイラーは早期にこの件を解決したことから生徒やその親からの感謝、さらには魔法省から表彰されることになってしまった。

 

 

 

その後はこれといった事件もなく進級試験が近づいてきた。

ハーマイオニーはレオのおかげで今更一年生の勉強など必要がないため余裕をもって過ごしていた。そのためグリフィンドール生から勉強を教えてほしいと泣きつかれていた。ハリーとロンはハーマイオニーのことをレナード・テイラーの仲間と思って距離を取っていたが、試験を前にしてそんなこと言っていられないので不満を持ちつつも教えてもらっている。

 

レナード・テイラーはもはや試験など不要という扱いなのか教師陣から試験の作成の手伝いをさせられていた。カンニングにならないのかと尋ねると、

 

「「「満点以上が確定しているのだから問題ない。」」」

 

と大多数の教授に口を揃えて言われる始末。結局当日は試験の代わりに特別レポートの作成へ変更されることになってしまった。

 

そんな試験も最終日、最後の試験が終わった。皆が試験から解放されてゆっくりしたり、遊び回っている。

レオはダンブルドアに呼ばれ校長室にいた。

 

「試験お疲れ様だったのレオ。と言ってもレポート作成じゃったな。どんなものか後でわしも拝見させてもらおう。さて、要件は賢者の石についてじゃ。今日、わしに魔法省から緊急の要件で来るよう要請があった。ほぼ間違いなく罠じゃろう。わしが不在の隙に賢者の石奪取に動くはずじゃ。そこで君には最大限の警戒をもってあたってほしい。」

 

「ヴォルデモートがクィレルに憑りついているのはご存知でしょうか?」

 

「ああ、知っておる。ヴォルデモートは力は失っているが知識は健在のはずじゃ。クィレルも優秀な魔法使いじゃ。十分に注意してほしい。わしも魔法省からすぐに戻る予定じゃ。うまくいけば挟み撃ちもできよう。」

 

ダンブルドアは魔法省へ、レオは賢者の石の最後の守りの部屋で待機することになった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

私、ハーマイオニー・グレンジャーはこの学校に賢者の石が隠させていることを知ってしまった。

あのような凄まじい力を秘めたものだ、きっと先生たちが守っているのだろう。

レオも何か知っているようだが関わっているのだろうか?

 

今日、ハリーとロンがマクゴナガル先生に賢者の石について話しているのを聞いてしまった。

二人は答えにたどり着いたようだが、そんな事よりダンブルドアがいない事実の方が重要だった。

ハグリッドの件から誰かがケルベロスの対処について知っているのだ。賢者の石を悪用すれば大変なことになるのは確実だろう。

ダンブルドアと同じくらいに頼りになるのはレオだ。知らせなくっちゃ!

研究室に着くとちょうどレオはどこかに向かうところだった。

 

「レオ! 例のもので話があるの。今、大丈夫かしら?」

 

「大丈夫だよ。もしかしてダンブルドア校長がいないってことかな? それなら問題ないよ。」

 

「どういうこと?」

 

「僕たちは、今日ダンブルドア校長が不在になることで賢者の石を狙う者が動き出すと確信している。それの対策も十分だ。明日にはこの件は決着すると思うよ。ここまで来たら隠す必要はないだろうから話すけど、賢者の石の守りには僕も関わっている。これからその守りに行ってくる。だから安心していいよ。」

 

やっぱりレオも関係者だったのね。それにレオもダンブルドアもわざと隙を見せている。

 

「解ったわ。……一つだけ、約束して。絶対に無事に帰ってきてね。そうじゃなかったら許さないんだから。」

 

「もちろんだ、約束しよう。」

 

私はレオのことを信じて護りに行くのを見送る。不安は少しはあるけど、信じよう。

私にとっての世界一の魔法使いはレナード・テイラーなのだから。

今日はすぐに寝てしまおう。そして朝速く起きてレオの帰りを待つんだ。

私はそう決めて寮の部屋へと戻ることにした。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

今夜だ。今夜に違いない。

 

あれから僕とロンはニコラス・フラメルのことを調べ続けた。ハーマイオニーは答えを知っても危険だからと教えてくれなかった。

だけど、僕たちは諦めなかった。蛙チョコカードに書いてあるのを思い出したのは運が良かった。

それから賢者の石についても知ったが、永遠の命や黄金など誰でも欲しいものだろう。

僕の箒に呪いをかけたスネイプがケルベロスについて悪態をついていたし、クィレルに対しても脅していた。怪しすぎる、こいつが狙っているに違いない!

ハグリッドがケルベロスの出し抜き方を漏らしていたのも知って、猶予が少なくなってきていると思ったが、今日は最悪だ。ダンブルドアがいないなんて! マクゴナガル先生に伝えても守りは問題ないって、相手にしてくれない。

スネイプみたいなやつが永遠の命を得たら何をするか分かりたくもない。絶対に阻止しなくては!

夜中に父さんの形見の透明マントを被ってロンと抜け出す。

ケルベロスがいる部屋の扉の前でロンに最後の確認をする。

 

「ロン、本当に来るのかい? 命の保証はないと思った方が良いよ?」

 

「持ちのロンさ! 僕たちだけがこのことを知っているんだから他に誰が行くんだい? それに親友の君が行くのに僕が行かないわけないだろう。」

 

その言葉を聞いて僕は最高の友達を持ったと改めて感じた。

 

「じゃあ、行くよ!」

 

扉を開けようと手を伸ばす。しかし触れる前に中から扉が開いた。

扉の先にはあのレナード・テイラーが立っていた。




ハグリッドは結局5年間の投獄になりました。
ダンブルドアがレオを優先した結果です。全力で保護すればアズカバン行きにはならないんじゃないですかね。森番復帰は不可能でしょうけど。

レオ試験不参加(一部)。魔法史とかは受けました。

クィレル、賢者の石目指してミッション(インポッシブル)スタート!
クィレルの運命はいかに! ついでにハリー、ロンは出番あるのか!?

次回は賢者の石で一番書きたかったとこです。
できれば明日には仕上げたいです。

では次回お楽しみに。


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18. 事件終結

さて、賢者の石を守る罠のお披露目です。
クィレル、御辞儀、ハリー達はどんな目に合うのか。

では18話どうぞ。


時はハリー達が侵入しようとする数時間遡る。

 

私、クィリナス・クィレルは主たる闇の帝王ヴォルデモート卿のために賢者の石を盗み出す準備を進めていた。呪いを回避するアイテム、解毒剤などを懐にしまう。

あの老いぼれのダンブルドアは今頃魔法省に向かっている頃だろう。

チャンスは今日しかない。それにユニコーンの血を口にしたこの体はもう限界が近かった。

 

最初の扉を開け中に入る。ケルベロスがこちらを確認すると凄まじい殺気を放ってくる。

すぐに魔法で勝手に奏でる竪琴を発動させる。あのバカな森番からの情報ならばすぐにでも眠るだろう。

だが、ケルベロスは全く速度を落とさず噛み殺そうと突っ込んできた。

何とか避けることができたが想定外の事態だ。

 

「殺せ!」

 

頭の後ろから主の命令が轟く。

 

アバダ・ケダブラ(息絶えよ)!」

 

緑の閃光は確実にケルベロスに命中した。この呪文は全ての生命を終わらす。次の扉に向かおうとしていると後ろから強い衝撃を受け吹き飛ばされた。床を転がり壁に突っ込んでいく。

防御用のアイテムのおかげでなんとか死ななかったが肋骨が何本か折れているようだ。

ケルベロスは健在だった。

 

「ころす!」「ころす!!」「ころす!!!」

 

「な、なぜ死なない!? 御主人様どうすれば……。」

 

「死の呪文を受け死なぬだと……。まさかダンブルドア……、分霊箱を使ったか!? いや違うな……、クィレル! 悪霊の火を使え!」

 

「は、はい!」

 

ケルベロスの猛攻を何とか凌ぎながら悪霊の火を当てる。全身が炎に包まれてケルベロスは息絶えた。当初の予定では無傷で魔法も使わず進むはずだったが何たる失態か。

 

 

次の部屋に降り立つ。中は暗くじめじめしていた。周りは悪魔の罠がそこら中に植えられている。

 

「くそ!」

 

悪態をついて光を杖から出す。しかしケルベロス同様通常とは違うのかこちらを絞め殺そうと蔓を伸ばしてくる。避けながら次の部屋を目指すが、何度か蔓に絡まれてしまった。そのたびに激痛が走る。何とか次の部屋に逃げるて絡まれた部分を見ると、大きく腫れあがり棘で刺された跡が大量にあった。

 

「なんだ……これは。悪魔の罠に棘など無かったはずだが……。」

 

だんだん意識が朦朧としてくる。なにがなんだか わ か ら な く なっ て き た 。

 

「解毒剤を飲め! 毒だ! 愚か者!」

 

あたまのうしろのこえにしたがってふところのくすりをのむ。

 

「はっ、私は何を……。」

 

どの解毒剤が効果があったかは不明だが何とか持ち直した。まだ体は怠いが何とか動ける。

辺りを見渡すと羽根のついた鍵がそこら中に飛んでいる。中央には箒があるためそれで取るのだろう。

 

「気をつけろ。おそらく正しい鍵を手にした瞬間に他の鍵が襲ってくるはずだ。」

 

御主人様のおかげで正解の鍵はすぐに見つかった。予想どおり鍵も襲ってきた。

だが、予想外のことも起きた。

 

「がぁあああああ! 腕がぁああああああああ!」

 

鍵を手にした腕に激痛が走った。離すわけにはいかないのでそのまま耐えて使う。

扉は開いたのに手から鍵が離れない!

 

「御主人様ぁあああああ! どうすればぁあああああああ!」

 

「切断しろ! 今すぐだ!」

 

「しかしぃいいいいい!」

 

「切らねば死ぬだけだぞ!」

 

左腕を肘上から切断する。止血もしないまま次の部屋に転がり込む。

息も絶え絶え起き上がると巨大なチェスの駒が一斉に襲い掛かってきた。

逃げまどいながら、止血を施す。持ってきていた回復薬とユニコーンの血を全部使って何とか動けるようにする。

 

コンフリンゴ(爆発せよ)! コンフリンゴ(爆発せよ)! コンフリンゴ(爆発せよ)!」

 

駒どもを爆破していく。しかし次の瞬間には駒はマグルの映像機器の逆再生のように元に戻る。

 

「キングを狙え! それが核だ!」

 

命令に従いキングを狙う。しかし他の駒に阻まれてなかなか成功しない。

逃げながら魔法をひたすら行使する。今までの毒や呪いも完全に取り除いていないので五感も徐々におかしくなってきた。

 

ボンバーダ・マキシマ(完全粉砕せよ)!」

 

三十分以上かけてようやくキングを粉砕する。

もうだめだ……。死んでしまう……。

 

「休むな! あの老いぼれがいつ戻るか解らんのだぞ!? さっさと先に進め!」

 

御主人様への恐怖から精神を削りながら先に進む。

そうだ……、この次は私が仕掛けた罠だ……。トロールが相手ならば何の問題もない……。

 

そんな希望もすぐに粉砕された。

中には確かにトロールがいた。しかしあんな全身を覆う鎧などなかったはずだ。

鎧はこちらに走ってくる。トロールならば私は命令することができる。たとえどんな魔法や魔法薬で操られていようとも問題はない。

そのはずだった……。

命令など聞かない鎧は手にした大剣を私に振り下ろす。躱す力などどこにも残っていなかった。

 

(あぁ……。躱せないな……。死んだ……。)

 

しかし次の瞬間私の体は剣を避けていた。それだけではない、自分の意志とは関係なく動いていた。

 

「クィレル、貴様の体俺様が使うぞ。代償として貴様の魂は削られていくが、問題はあるまい。偉大なるヴォルデモート卿の復活の礎になるのだから本望だろう。」

 

御主人様が何か言っている。解らない。ただ激痛と苦しみ、自分が薄れていく感覚しか感じられなかった。

 

「アバダ・ケダブラ! やはり死なぬか……。これはトロールの死体を鎧に施された魔法で動かしているな。なるほどクィレルの命令を受けつけぬわけだ。ならば!」

 

御主人様が私とは比べ物にならない魔法で切断や爆破など集中して大剣を持つ腕に当てる。その代償に私は消えていく。

何十発も魔法を当てられ腕が壊れ、離れた大剣で鎧を壁に縫い付ける。それと同時に私は体の主導権を取り戻していた。

 

「やはり、長時間は体を支配するには力が足りぬ……。クィレル急げ!」

 

言われるがまま次に行く。

小さな部屋に薬が複数置いてあった。

足を踏み入れた途端、前後左右全てから黒い炎が立ち上った。問題が提示される。どうやら先に進むには正解の薬を飲む必要があるようだ。

 

『10.9.8……』

 

時間制限付きらしい。徐々に炎が迫ってくるが、私はもはや何も考えられない。

 

「この程度の問など……この俺様を侮るな! 一番左だ! さっさと飲んで進め!」

 

飲む、進む。そして全身を焼かれる。体の中では薬が私を壊していく。

 

「なんだと!? おのれぇええ!」

 

叫び声も上げられないまま、体が勝手に進んでいく。

炎の抜けた先で倒れこむ。最後に見たのはこちらを冷静に観察している一人の子供だった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

予定通りに最後の部屋にたどり着いた段階で侵入者は死亡した。

最後の部屋に到着するまでの悪魔の罠の毒、鍵の呪い、毒薬、そして三度の戦闘での疲労と魔力消費。これらの組み合わせでどんな魔法使いでも確実に死亡する計算だった。

 

クィレルの死体から黒い靄が発生する。靄は次第に蛇顔を形成していく。

 

「お初にお目にかかります。闇の帝王ヴォルデモート卿。あなたとは色々と話をしてみたかったのですが……、時間切れですね。ダンブルドア校長がホグワーツに到着しました。逃げた方が賢明でしょう。」

 

「口惜しいが今回は諦めざるを得ないな。貴様、レナード・テイラーだったか。俺様を見逃すのか?」

 

「その状態のあなたを捕らえる準備はしていませんし、僕は賢者の石を守れとしか言われていません。次に会う時はゆっくりと話をしたいものです。」

 

「ふん。完全に復活した時に考えてやろう。俺様も貴様の『眼』には興味がある。」

 

そういうと黒い靄は壁をすり抜けてどこかに行ってしまった。

みぞの鏡を前に立つ。ダンブルドアは最後の仕掛けをレオにも伝えていなかった。

 

(さて、闇の帝王も去りましたし解析しますか。)

 

解析を始めた途端、鏡の中のレオが賢者の石をポケットに入れた。

 

(あれ? ……なるほど、使いたい者には手に入らないが、見つけたい者には手に入れられるのか。僕は使いたいんじゃなくて研究をしたいから大丈夫だったのか。)

 

とりあえず、ダンブルドアも戻ってきたし賢者の石を解析しながら戻ることにした。

 

(ハリー・ポッターがこちらを目指しているようだし鉢合わせになるな。)

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

扉の先にはあのレナード・テイラーが立っていた。

こちらを見ても眉一つ動かさないでいる。

 

「レナード・テイラー! なんでお前がここにいる!? まさかお前も賢者の石を狙っていたのか。そうか! スネイプの仲間なんだな!」

 

僕とロンは杖を取り出す。しかしあいつはこちらを見向きもせず手に持った石を凝視している。腹が立つ奴だ……石?

 

「まさか……、その石は!」

 

「ほっほっほ、そのまさかじゃよ。とりあえず落ち着いて杖をしまいなさい。」

 

後ろから偉大なる魔法使いの声がした。振り向くとダンブルドアが立っている、これで僕たちの勝ちだ!

 

「ダンブルドア校長! 戻られたんですね! こいつとスネイプが賢者の石を!」

 

「ああ、ハリーそれは誤解じゃよ。レオ、状況はどうじゃった?」

 

「はい。クィレルは死亡。ヴォルデモートはダンブルドア校長が戻られたことを知って逃走しました。霊体用の捕縛準備をしていなかったため取り逃がしました。みぞの鏡の前に立ったら賢者の石を入手してしまったため、こうして持ってきました。どうしましょうか?」

 

なんだ? こいつは何を言っているんだ? なんでクィレル先生が死んでヴォルデモートの名前が出てくる。スネイプは? それにダンブルドアはこのことを知っていたのか?

 

「ダンブルドア校長、いったいどういうことなんです!? ヴォルデモートがいたんですか? スネイプじゃないんですか?」

 

「いかにもそうじゃ。クィレル先生にヴォルデモートが憑りついておった。そして復活のために賢者の石を狙ったのじゃ。レナード君にはその守りの強化を頼んでいての。さぁ、もう夜も遅い。フィルチさんに見つからないように戻りなさい。レオはわしとともに校長室に行こう。」

 

僕とロンは何が何だかわからないまま寮に戻った。結局、何をするわけでもなく今日は終わった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

校長室。

 

「以上が事の顛末になります。賢者の石はお返しします。」

 

「うむ、ご苦労じゃった。それと賢者の石は君が持っていてよい。ニコラスからの許可は得た。夏休みにニコラス夫妻を訪ねてみなさい。向こうに旅立つ前に君と賢者の石について色々話してみたいそうじゃ。」

 

「ありがとうございます! さっそく研究室に戻って解析してもよろしいですか!?」

 

「もちろんじゃ。もうヴォルデモートも狙うことは無いじゃろうが、賢者の石については秘匿しておくように。明日にでも賢者の石は砕いたと発表しよう。賢者の石の防衛、本当によくやってくれた。わしもニコラスもそんな君だから賢者の石の研究を許可したんじゃ。」

 

「そうですか。では失礼します!」

 

レオはダンブルドアの話をほとんど聞かず速足で校長室を去っていった。

 

 

 

校長室でダンブルドアは一息つく。

 

(賢者の石がトムの手に渡ることは阻止できた。しかし、レナード・テイラーの力は想像以上じゃった。しかも闇に対して拒否感はない。ただ純粋に魔法を極めようとしているだけのようだ。ただそれ故に闇にも躊躇なく進むだろう。はたして賢者の石を渡したのは正しかったのか……。ハリーについても本当はヴォルデモートと対峙させて英雄への道を進ませたかったのじゃが、レナードの影響でほとんど今回の件に関わらなんだ。さて、これからどうしたものかのぉ……。)

 

闇の脅威は去った。しかしダンブルドアの苦悩は晴れることは無かった。

 




さて賢者の石の防衛完了です。

以下罠の詳細

〇ケルベロス
音楽の弱点は克服済み、知性UP。さらに分霊箱の要領で魂を首ごとに分割、疑似的な分霊箱状態。そのため下手な呪文は効果がなく、死の呪文でも死なない。御辞儀は分霊箱を使いこなしていたからすぐに見破って悪霊の火を使用した。体内で分割していたのみなので死亡した。レオは分霊箱を知らなかったが独自理論でこれを作成。ダンブルドアが危惧したのはこれのこと。

〇悪魔の罠
光の弱点は品種改良で克服。蔓に毒針を多数仕込んである。解毒剤で一時効果無くなるが体内で潜伏して気づかぬうちに手遅れになる。

〇鍵の部屋
全体的に鍵のスピードUP。正解の鍵は手に取ると呪い発動+離れなくなる。原作のダンブルドアが引っ掛かった指輪と同等の呪い。逃れるには切断しかないが呪いは体に残留。

〇チェス
白黒すべての駒が襲い掛かる。核のキングを破壊しなければ無限再生。

〇トロール
クィレルを考慮してトロールの死体利用。鎧のイメージはグラブルのコロッサス・マグナ。鎧はかなり頑丈だが無敵というほどではない。

〇薬の理論問題
問題はそこまで難しくないが時間制限10秒。しかし現れる薬は全て毒薬。
時間経過で焼かれるか、薬を飲んで死ぬかの二択。薬の効果は致死性の毒+悪魔の罠の毒と鍵の呪いの効果を爆発的に高めるもの。

〇みぞの鏡
レオが関与していないため原作同様。

これがレオの罠の改良でした。実際はもっと凶悪に出来るのですが、どうせなら全部の罠の性能を見てみたいということでギリギリ最後の部屋で死ぬように調整してあります。

ハリーとロンは一歩も部屋に入ることなく終了。原作主人公なのに……。

レオ、報酬に賢者の石ゲット! 引き換えにダンブルドアの苦悩が増大!

次回で賢者の石編は終了です。


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19. 一年が終わって

ようやく賢者の石編が終わりです。

では19話どうぞ。


賢者の石を手に入れたレオはそのまま寝ずに研究を開始した。

朝になると研究室の扉が勢いよく開かれハーマイオニーが飛び込んできた。

そのまま勢いに任せてレオに飛びつく、ハーマイオニー。

 

「レオ! 無事ね!? 怪我とか呪いとか大丈夫よね!?」

 

驚くレオの体を触って怪我がないか確かめていく。

問題が無いことを確認すると大きく息を吐きだした。

 

「良かった……。レオなら大丈夫だと信じていたけど、やっぱり心配せずにはいられなかったわ。お疲れ様、お帰りなさい、レオ。」

 

「ただいま、ハーマイオニー。心配かけてしまったね。無事賢者の石は守り切ったよ。もう脅威はないだろう。報酬として賢者の石の研究も許可されたよ。」

 

レオは手にしていた賢者の石を見せる。その美しさにハーマイオニーも目を輝かす。

 

「当分は賢者の石の解析に時間を費やすことになると思う。その間はハーマイオニーと勉強とかできなくなると思うけどいいかい?」

 

「わかったわ。その間、レオの研究でも見学したり、自分の魔法の勉強をしているわ。解析頑張ってねレオ!」

 

 

 

レオが賢者の石を闇の帝王ヴォルデモートから守って数日が経過した。

 

クィレルが行方不明になったことで様々な憶測が流れた。しかしダンブルドアが早々に真実を、クィレルが闇の帝王の手の者であり、ヴォルデモート復活のためにホグワーツに隠されていた賢者の石を狙い、そして死亡したことを公表した。その際、優秀な生徒に協力してもらっていたことも生徒たちには伝えられていた。名こそ明かされなかったがレナード・テイラーであることはバレバレであった。

 

そのレナード・テイラーは研究室から一歩もで出ずに賢者の石の研究に没頭していた。

 

(卑金属を黄金に変える部分は解析終了。……しかしどれだけ見ても飽きないな。究極なまでに編み込まれた式、無駄な部分が存在しない。永遠の命を得ることができる命の水の生成も命と言うものを肉体、魂ありとあらゆる視点から解き明かさないことには不可能だろう。それを簡単に成しうるこれはまさに賢者の石と言う名にふさわしい。)

 

その後もホグワーツ最終日まで研究は続けられた。研究を見にに来たハーマイオニーも邪魔してはだめだと感じ、声をかけずにその様子を見守っていた。真剣そのものな顔のレナード・テイラーを初めて見てレオの新たな面を知ることができ少し嬉しくなった。

 

 

 

今日は学年末パーティーが大広間で行われる。

大広間は青と銅で装飾されており、レイブンクローのシンボルである鷲が描かれた横断幕が目立っていた。

スリザリンの七年連続寮対抗杯獲得は阻止され、レイブンクローが優勝した。

レナード・テイラーに触発された生徒が多くいたこと、レオ自身も多くの得点を獲得したことがこの結果を導いた。

 

「また一年が過ぎた。」

 

ダンブルドアが演説台の上に立ち話し始める。

 

「さて、宴を始める前に寮対抗杯の表彰を行う。四位、グリフィンドール347点。三位、ハッフルパフ372点。二位スリザリン、522点。一位レイブンクロー638点」

 

レイブンクローから爆発したような歓声が上がる。スリザリンの連続寮杯獲得記録を止めたため、グリフィンドールとハッフルパフからも大きな拍手が鳴り響く。スリザリンだけはレイブンクロー、特にレナード・テイラーを睨みつけていた。

 

学年末パーティーが始まり、生徒たちは思い思いに食べ、話し大いに楽しんでいた。レオは賢者の石の解析をほぼ完了させていたため久々のまともな食事をじっくり味わっていた。そうしているといつの間にかレオの周りには多くの生徒が集まってきている。

 

「テイラー君! 本当にありがとう! 君のおかげで寮杯を獲得できた。まさか卒業するまでにこの感動を味わえるとは思っていなかった……。」

 

「レイブンクローに寮杯を奪われたのは悔しいけど、あのくそったれのスリザリンの寮杯獲得を阻止できただけでグリフィンドールにとっても君は英雄だ! ハッフルパフだってそう思っているに違いない!」

 

周りをよく見るとレイブンクロー生の下級生から上級生まで、勉強会に参加しているグリフィンドールとハッフルパフの生徒もいるではないか。

 

「よーし! この史上最強の研究バカを胴上げだ!!」

 

「「「おおー!!」」」

 

周りのテンションは最高潮になりいつの間にか胴上げされることが決まっていた。

レオは落ち着いて食事がしたかったため、目くらましの術とそばにいた生徒をレオに誤認させる魔法を施し身代わりにした。

身代わりの生徒が訳も分からず胴上げされているのを申し訳なく思いながら大広間から抜け出し研究室に戻る。途中にハーマイオニーに見つかり一緒に行くことになった。

 

「胴上げがそんなに嫌だった?」

 

「見られちゃってたか。まぁ、あのテンションにはちょっとね……。」

 

宴が終わるまで研究室で今年一年の出来事を振り返って静かに過ごした二人。宴も嫌いではないがやはりハーマイオニーと二人で静かにしている方が心地よいと感じる。

 

 

 

その後、今年度の成績の発表が張り出された。首位はハーマイオニーで700点満点中853点だった。レオは試験免除などそもそも順位に関係ない扱いであったが、生徒たちは一年だけの付き合いでレオがすでに殿堂入りしていると共通の認識を持っていた。

その他多くの生徒の成績も例年と比べて平均値が上昇していた。レナード・テイラー勉強会のおかげと多くの教師から賞賛を貰う結果となった。

 

「学年トップおめでとう、ハーマイオニー。ご褒美でもあげようかい?」

 

「レオの方が成績良いのに何言ってるのよ。まぁ、でも貰えるものなら貰いましょうか。夏休みも私に魔法を教えてくださらないかしら?」

 

「もちろん。でも最初の一週間はニコラス・フラメルの所で賢者の石について色々学んで来る予定だからその後になるかな。」

 

「わかったわ。その一週間で私も力を高めるんだから! ビックリさせてあげるわ!」

 

 

ホグワーツ最終日

 

キングス・クロス駅に向かう蒸気機関車に乗り込もうとしたレオとハーマイオニーは声をかけられた。

ハリー・ポッターとロナルド・ウィーズリーだった。ロンは嫌々とした態度を隠そうともしていないのでハリーが何か用があるのだろう。

 

「なんだい? 何か用?」

 

「レナード・テイラー。君に聞きたいことがあるんだ。」

 

レオはハリー・ポッターから何か聞かれるようなことがあったかなと考えたが何も思い浮かばなかった。

 

「あの夜。君が賢者の石を持って扉から出てきた時、ダンブルドアにヴォルデモートが逃げたって言っていただろ。あれはどういうことなんだ?」

 

「賢者の石については調べたようだね。ヴォルデモートはクィレルに寄生して賢者の石を狙っていた。僕はダンブルドア校長に依頼されてその防衛に手を貸していた。そしてあの日、阻止した。それだけだよ。」

 

「じゃあ、ヴォルデモートは生きているんだ……。父さん、母さんの仇が……。」

 

「ハリーも、テイラーもその名前を言うのをやめろよ!」

 

この中でヴォルデモートの名前で恐怖しているのはロンだけであった。ハリーはいまいちその名前に恐怖を感じられず、レオは直接話しても特に恐怖することなどないと思っていた。ハーマイオニーはマグル生まれであることとレオから恐怖する意味がないことを教えられていたのでただの犯罪者を必要以上に怖がる必要はないと結論付けていた。

 

「聞きたいことはそれだけかい? じゃあ、行こうハーマイオニー。」

 

「待ってくれ、もう一つだけ。あいつは戻ってくるのか?」

 

「さぁね。本人はその気のようだったし、賢者の石以外にも方法はあるしね。そのうち戻ってくるんじゃないかな。」

 

その言葉にハリーは何かを決意したようだった。ロンはそんなの信じられるかと言ってハリーを引っ張っていってしまった。

 

 

列車に揺られながらコンパートメントでハーマイオニーと一緒に過ごす。学校が終わって気が抜けたのかハーマイオニーは眠ってしまっていた。その寝顔を眺めながらレオはこの一年を回想する。

 

(組み分け、ダンブルドア校長からの依頼、授業、勉強会、教授たちとの討論や共同研究、ヴォルデモート、ハーマイオニーとの休日、そして何より賢者の石。この一年色々あったなぁ……。)

 

また次の学年も経験したことのない出来事が起こるのか、新しい研究対象が現れるのか、そんなことを考えながらレオも眠りについていった。

 

こうしてレナード・テイラーの一年目の学校生活は終了した。




寮杯はレイブンクローが獲得しました。
各寮の点数は全体的にレオの勉強会のおかげで上がっています。
グリフィンドールはハーマイオニーが頑張りましたが、最初の140点減点が痛すぎた。
校長特別贔屓点は流石に最初の部屋にも入れなかったのでなしです。


さて、次回からは秘密の部屋です。

次回予告!

賢者の石を闇の魔の手から無事守り切ったレナード・テイラー。
二年生になりハーマイオニーと共に勉学に励むレオ。

しかし! 次なる闇の刺客が襲い掛かる!!

甘いマスクで人を惑わすイケメン詐欺師!
邪悪なる魂を宿した悪魔の日記帳!
そして、毒蛇の王たるバジリスク!!

いずれも強大な相手、苦戦は必至だ!
はたしてレオはこいつらからハーマイオニーを守れるのか!?

次回、2章 秘密は暴かれるもの 

乞うご期待!



※本編の内容は次回予告とは異なる場合があります。御了承下さい。


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2章 秘密は暴かれるもの
20. 夏休み


今回から2章秘密の部屋編開始です。

では20話どうぞ。


夏休み。それは多くの学生にとって至福の時間だ。ホグワーツの生徒たちにとってもそれは変わらない。あるものは友人と遊びまくる。あるものはクィディッチの練習に夢中になる。ほとんどが宿題など忘れている中、宿題などさっさと終わらせて自主的に魔法の勉強に取り組んでいる学生などいるのだろうか?

 

ハーマイオニー・グレンジャーはその存在が疑わしい稀有な学生だった。

今日で夏休みに入って一週間。親友のレナード・テイラーが大錬金術師ニコラス・フラメルの元から帰ってくるのだ。今はレオの研究室で帰りを待っているところだ。

 

(この一週間、最初の一日で宿題は終わらせた。残り六日で飛行術はマスターしたし、コルポリス(物理的)もそこそこ使いこなせるようになってきた。あとは6~7年生用の教科書も一通り目を通した。ここまでやってもレオにはまだまだ遠いに違いないって確信して言える。差は広がっているかもしれない。けど、私も一歩ずつ進んでいる! これからも精進しなくっちゃ!)

 

もうすでに同学年ではレオ以外に勉強でハーマイオニーに勝てるものなどいるはずがない、いや上級生にも彼女以上の存在は数えるほどだ。それでもまだまだ目標ははるか先だ、その先を目指し続けなければ。ハーマイオニーは握った手を真上に挙げて気合を入れた。

 

その瞬間、音もなくレナード・テイラーが現れた。通常の姿現わしでは出現時にポンといった音が鳴る。レオは屋敷しもべ妖精の魔法を参考にその点を改良していた。

ハーマイオニーは手を真上に挙げた格好のまま顔を赤くして固まっていた。

 

(レオ!? いきなりなんてずるいわよ! 変な恰好見られちゃった……。)

 

コホンと咳払いをして仕切りなおす。

 

「お帰りなさいレオ。どうだった?」

 

「ただいま、ハーマイオニー。いやぁ……すごかったよ!! 賢者の石の創造の着想、開発経緯、精製方法、問題点。色々と教えてもらったし、二人で更なる課題や発展について毎日熱く語り合ったよ。とりあえず賢者の石を造るだけなら可能にはなった。だけどそれだけじゃ今までのものと変わらない! 僕はこれを更に発展させていくつもりだよ。」

 

「いい経験ができたみたいね。私もこの一週間で成長したわ! その成果見せてあげるわ。」

 

二人は魔法実験スペースに移動する。レオはハーマイオニーがどれだけ進歩したか期待していた。

 

ハーマイオニーが魔力を集中させる浮き上がる。その次には箒と同じくらい速度で縦横無尽に飛び回る。最初は暴走したのかと一瞬思ったが、様々なアクロバティックな挙動や急停止など繰り返す様子を見て完全に制御していることを確信した。それだけではないかなりの速度を出しているのに体には負荷はそれほどではなさそうだ。周りもしっかり認識して飛行している。

 

降りてきたハーマイオニーは的用の人形にコルポリス(物理的)を当てる。衝撃、刺突、斬撃、様々な攻撃を使いこなす。しまいには一つの呪文で別方向から力を加えることもできるようになっていた。教えてはいなかったが力を分割すれば同時に多方向に衝撃などを発生させることもできる。それを独学で気づくとは予想以上だ。

最後に上下から最大の力で押しつぶす。人形は力に耐えきれず圧壊する。

それをハーマイオニーは見て深く息を吐き終了を告げる。レオは惜しみない拍手をおくる。

 

「いやぁ、予想以上だ! 並大抵の努力ではこうまで上達しないよ。僕が教えていなかった使い方までマスターしているとは、流石だハーマイオニー!」

 

「ありがとう、レオ! 飛行術はフェリスさんに協力してもらって身体強化の魔法で制御したわ。私のアレンジで動体視力も強化してより確実にしたわ。コルポリス(物理的)も大分応用できるようになったわ。」

 

「いいね、やっぱり君は良い! 夏休みの残りは勉強だけじゃなくて戦闘訓練もしてみるかい? コルポリス(物理的)を使いこなしているんだ、他の呪文と併用すれば大抵の危機には立ち向かえるようになると思う。」

 

「そうね。魔法薬も書物だけじゃなく実際に作らないと覚えないし、それと同じで魔法を知っているだけじゃなく使ってみないとね。やってみるわ。」

 

少し休憩した後、レオは宿題を終わらす。

夕食をハーマイオニーと両親と楽しみ、これからの予定を立てていく。

二人で色々やりたいことを考えている時間も楽しいものだった。

 

 

1992年8月

夏休みも後半に入り、ホグワーツから二年生で使う教材のリストが届いた。

テイラー一家はハーマイオニーを連れてダイアゴン横丁に買い物に来ていた。

レオとハーマイオニーはリストを見て困惑していた。

 

「このロックハートって人の教科書多いな。というか誰なんだ?」

 

「レオも知らない人なの?」

 

「魔法研究の学会とかでは名前は見ないよ。父さんは知っていますか?」

 

首を横に振って答えるアースキン、心当たりはないようだ。代わりにフェリスが答える。

 

「何かイケメンの冒険家? そんなのみたい。学生時代の友達がキャーキャー言ってたわ。そのリストにある本は自分の活躍をまとめたものらしいわ。彼がいかに素晴らしい人物かを何時間も聞かされれてうんざりだわ。きっと新しい先生はそのロックハートのファンの魔女なんじゃないかしら。」

 

レオたちはふーんと興味なさげに答えるだけだった。

 

 

フローリシュ・アンド・ブロッツ書店に到着した一行は唖然としていた。もの凄い人だかりがいるのだ。例のロックハートのサイン会が行われているのが原因らしい。哀れにも買い物に来ていたハリー・ポッターが捕まり一緒に写真を撮られていた。

 

「あら、たしかにイケメンね。でも私のアースキンの方が絶対いい男よ。」

 

フェリスは自信満々に宣言した。アースキンは顔を赤くしつつも嬉しそうだ。

 

(顔は良いわね。でもそれだけだわ。)

 

ハーマイオニーも特に感想はそれだけだった。周りの女連中がなぜあそこまで熱狂しているのか理解できなかった。

ロックハートが大々的に今年の闇の魔術に対する防衛術の教師になると宣言する。

レオとハーマイオニーは不安しか感じることができなかった。

 

解放されたハリーが戻っていく。どうやらウィーズリー一家と行動を共にしているようだ。

ハーマイオニーが挨拶に行くので付いていくレオ。

 

「ハリー、ロン! 久しぶり。」

 

「ハーマイオニー。元気だった?」

 

「久しぶり! ……げっ! テイラーじゃないかよ。」

 

レオを見て嫌な顔をするロン。追い打ちで更なる嫌いな奴が現れる。

 

「有名人は書店に行くだけで大変だね、ポッター?」

 

ドラコ・マルフォイがこちらに近づきながら嫌みを言ってきた。

ウィーズリー家の女の子、ジニーというらしいが庇って更にウィーズリー家の父親とマルフォイの父親も現れて、口論からの殴り合いの喧嘩になってしまった。

 

「どうしよう、レオ。止めた方が良いかな?」

 

「あー……。離れよう。爆発しそうだ。」

 

レオはハーマイオニーの手を取って歩き出す。

壁際まで離れたとき怒声が爆発した。

 

「何をやっているんだ! この馬鹿どもが!!」

 

予想して音を遮断していたレオとハーマイオニー、フェリス以外は全員耳を押さえている。

一瞬にして書店内は静かになった。

 

「あ、アースキン……。い、いつから見ていたんだ?」

 

「そんなことはどうでもいいだろ。それよりアーサー・ウィーズリー! 大の大人が公衆の面前で殴り合いなどどうかしているぞ。それでも魔法省の一部門のトップか! もっとしっかりしろ!」

 

「いや……しかし、ルシウスが……。」

 

二人のやり取りを無視して逃げ出そうとしているルシウス・マルフォイを呼び止めるアースキン。

 

「相変わらず逃げるのだけはうまいな、ルシウス・マルフォイ。聖二十八一族なんだろ? もっと相応しい振舞いしたらどうだ? アズカバンなんかがお似合いだぞ。今からでも遅くない、ぶち込んでやろうか?」

 

ルシウスは憎らしそうにアースキンを見る。しかしアースキンに一睨みされると息子を連れてさっさと書店から立ち去ってしまった。

 

「さて、アーサー。この後飲みに行こうか。もちろん説教だ。じゃあ母さん、二人を頼むよ。」

 

「わかったわ。あんまりきつくしちゃダメよ?」

 

アーサーはアースキンに連行されて行った。

ウィーズリー兄弟とハリーはそれを見てるだけしかできなかった。ウィーズリー家の母、モリーはよろしくお願いしますと頭を下げていた。

 

「アースキンさんってすごいわね。一喝して黙らせちゃうし、あのマルフォイの父親もすぐ逃げちゃったわ。」

 

「父さんは怒ると怖いしね。マルフォイ家は死喰い人として活動していた時に父さんに何度も痛い目を合わされていたみたいだし、トラウマになっているんじゃないかな。」

 

書店での買い物以外では特にトラブルもなく買い物は終了した。

帰ってからロックハートの本を数冊読んでみたが、実際の魔法や魔法生物とは少し描写が異なっていたため、創作であるとの結論に至った。ただ、小説としての出来は良かったので本自体は楽しんで読むことができた。

 

(というか、こんな本を事実だとして出版している。詐欺師か……。ホグワーツでの授業で化けの皮がはがれるな。というかダンブルドア校長なら見抜いていそうなものだけど。)

 

とりあえず最初の授業で退場してもらうことが決定した。

翌日、ハーマイオニーにも本の感想を聞いたところ

 

「面白い内容だったわ。あの冒険をこなしているなら闇の魔術に対する防衛術の先生としては文句ないわ。……本の内容が事実だったらね。」

 

どうやらハーマイオニーも本の内容に疑問を抱いているようだ。

レオはホッとした。ハーマイオニーが顔が良いだけで騙されるような女性ではないことが分かって良かった。

 

夏休みの残りもレオは研究、ハーマイオニーは自分のレベルアップに費やした。

レオの十の指輪も完成し、調整も終了した。これで後は実戦形式でのデータ収集をすれば問題ないだろう。

あっという間に休みの残りは過ぎていく。とうとう明日は二年生の始まりだ。

 




夏休み……懐かしいですね。

ハーマイオニーのレベルはすでに並みの死喰い人と戦えるぐらいにはなりました。

ハーマイオニーは岩心には引っ掛かりませんでした。レオのおかげでレベルアップしてますし、嘘も見抜けました。

では次回お楽しみに。


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21. 再びのホグワーツ

さて、秘密の部屋は全部で何話になるかなぁ。

では21話どうぞ。


1992年9月1日 ホグワーツ特別特急

 

レオとハーマイオニーはお互いの両親に出発の挨拶を終え、すでに列車は進み始めていた。

コンパートメントにはレオとハーマイオニーの二人だけだ。

そこへドアがノックされる。ドアが開くと赤毛の少女が立っていた。

 

「ここ空いてる? 良かったら一緒で大丈夫かしら?」

 

「構わないよ。」

 

「ええ、大丈夫よ。」

 

了承を得た少女は席に着く。ハーマイオニーには彼女に見覚えがあった。

 

「あなた、ダイアゴン横丁でロンと一緒にいたわね。ロンの妹さんかしら? 私はハーマイオニー・グレンジャー。ロンやその他のウィーズリー兄弟と同じグリフィンドール寮で二年生よ。でこっちが」

 

「レナード・テイラー。レイブンクロー所属の二年生だ。」

 

「あなたたちがハーマイオニー・グレンジャーとレナード・テイラーなのね。私はウィーズリー家の末っ子で名前はジネブラ、ジニーって呼ばれてるわ。二人のことはロンから色々と聞かされてるの。ハーマイオニーは学年一の才女で、レナードは勉強ができるだけの嫌な奴だって。でも多分ロンが嫉妬してるだけだから気にしないでくれると助かるわ。」

 

「才女だなんて……レオの方がずっと上なのに。それにしてもロンったらまだそんなこと言っているのね。」

 

「別に彼がどう言おうと特に気にしてないから別にいいよ。」

 

「レナードは大人なのね。ロンも少しは見習ってほしいものよ。私、今年入学なんだけど組み分けとか寮のこととか色々聞きたいの。グリフィンドールに入れるといいんだけど。」

 

その後はホグワーツの生活など色々と話すこととなった。やはり入学前で緊張しているのか聞きたいことが多いみたいだ。車内販売でお菓子を買ったりフェリス特性弁当を食べたりして時間が過ぎていった。

 

昼食を食べ終わってしばらく経ったころ、コンパートメントのドアが開かれた。ドアの先には悪戯で有名なグリフィンドールのウィーズリー双子が立っていた。たしかフレッドとジョージだったか。

 

「ジニー探したぜ。まさか我がグリフィンドールの才女様とそのお師匠様とご一緒だったとはね。」

 

「俺はてっきり愛しのハリーとついでにロニー坊やと一緒だと思っていたよ。」

 

「ジョージ!」

 

ジニーは顔を真っ赤にして双子の片割れに怒鳴る。

 

(なるほどあちらがジョージか。でこちらがフレッド。)

 

「さて、初めましてかなレナード・テイラー殿。俺はフレッド。そして相方の」

 

「ジョージだ。よし噂の天才様に問題を出そう! 答えられるかな?」

 

双子はコンパートメントから出て行った。数秒後には戻ってきたが、顔はニヤニヤしていた。

 

「「さぁ、どっちがどっちでしょうか!?」」

 

レオは即座に答える。

 

「右がフレッドさんで左がジョージさん。」

 

双子はまさか答えられるとは思ってもみなかったようだ。

 

「「うぇっ!? 嘘だろ!? も、もう一回!」」

 

十数回ほど繰り返してもその全てでレオは即答で正解していった。

 

「なんでわかるんだ? ママでさえたまに間違えることあるのに……。」

 

「魔力の質とかは人それぞれで全く異なっているからですね。親子や兄弟でもそれは変わりません。なので一度覚えれば一目瞭然というわけです、フレッドさん。」

 

「あー、完敗だ。流石はレナード・テイラーってか。それと俺たちのことはフレッド、ジョージでいいよ。もう俺たちは友達だ! でも次は負けないぞ! ふふふ……。今年は廊下での不運な事故には十分注意した方が良いぜ! じゃあな!」

 

双子は不穏なことを言ってコンパートメントから出て行った。

 

「うちの双子がごめんなさい。たぶんレナードのこと気に入っちゃたと思うわ。今年は悪戯のターゲットにされること間違いなしね。」

 

「まぁ、彼らがどんな悪戯をするか興味はあるね。なにか参考に出来るなら御の字ぐらいに考えておくよ。」

 

「レオなら双子にも余裕で対処できるから大丈夫よ。それにしてもハリーとロンがどこにいるか双子も知らないみたいだったわね。どうしたのかしら?」

 

その後はレオに対して勉強会のメンバーが挨拶が来たり、双子がさっそく悪戯を仕掛けようとして監督生のパーシー・ウィーズリーに連行されていったり賑やかな雰囲気のまま列車は走っていった。レオはジニーの鞄から見たことない魔法の式が見えていたが、流石にプライベートなものもあるだろうから我慢して見なかったことにした。

そうこうしているうちにホグズミード駅に到着した。

 

「一年生はこちらです。ついてきなさい。」

 

ハグリッドがアズカバンに投獄されているため今年からは一年生の引率はマクゴナガル先生の役目のようだ。それに伴い険しい山道は舗装されていて随分と歩きやすくなっているようだ。

 

ジニーと別れてレオたちは馬車で移動することとなった。

 

「この馬車、馬がいないのね。魔法で動いているのかしら?」

 

「セストラルが引いてるね。セストラルは天馬の一種で死を認識した人間しか見ることができないんだ。珍しい種だからよく観察するとしよう。ハーマイオニーも見たいかい?」

 

「うーん……。ちょっと怖いけど見てみたいわ。でも死を認識なんてどうするの?」

 

「別に見る側がどうにかしなくてもセストラル自身に細工すれば問題ないよ。彼らの纏ってる認識阻害魔法が死の認識の有無で発動するかどうかなだけだからね。」

 

レオはセストラルに触れ、その認識阻害を解除する。途端にハーマイオニーの目にもセストラルの姿が確認することができるようになった。

黒毛で骨ばっている外見に翼がある。認識阻害が解除されても大人しく馬車を引いていることからよく躾されているようだ。馬車がホグワーツに到着するまでじっくりと観察を続けた。

 

 

組み分けの儀式は去年と同じように行われた。帽子の魔法は相変わらず全く衰えておらず美しい式を纏っている。ただ、帽子の歌は若干細部が違っていた。どうやら毎年少しずつ違っているようだ。

 

組み分けも終わり宴が始まる。レオも好きなように食べていると、そこかしらで噂が聞こえてくる。何でもハリー・ポッターとロン・ウィーズリーが空飛ぶ自動車で暴れ柳に突っ込んで到着したらしい。列車内で見ていないとの事だったが何とも派手な到着だ。おそらく列車に乗り遅れたせいだろうが、他に方法はなかったのだろうか?

スリザリンのテーブルではドラコ・マルフォイがポッターは退学だなどと騒いでまたグリフィンドールを馬鹿にしている。毎度毎度飽きもせずによくやると感心するほどだ。

 

宴が終わり校長の挨拶となる。今年は賢者の石もないため基本的な注意事項のみであった。

それと新しい闇の魔術に対する防衛術の教授の紹介もされた。

ギルデロイ・ロックハートが立ち上がり挨拶をする。ただそれだけで女子生徒の大半が黄色い歓声を上げるが、一部の女子生徒とほぼすべての男子生徒、それに教師陣の全員は白い目でさわやかに笑いながら自己紹介をするロックハートを見ていた。

 

レオは他の生徒とは別方向、自室兼研究室に足を向ける。数カ月ぶりに中に入るが今日も掃除したかのように清潔だった。おそらく屋敷しもべ妖精が掃除をしてくれたのだろう。ありがたいことだ。

また明日から授業が始まるが今年はどんな一年になるのだろうか。

そんなことを考えてベットで眠りについた。

 




レオはウィーズリー兄弟と仲良くなった!(ロン除く)
双子はオリジナル魔法具を作ったりとレオとも仲良くする要素が多いです。
ジニーはロンがしつこく悪口を言うので逆にロンが悪いんだなと思ってます。
パーシーは接点はないですが優等生で色々研究で有名なレオは好印象です。

トムの日記はジニーが鞄から出していたら下手したら秘密の部屋はここで終了になるとこでした。

ハグリッド投獄での影響が出ましたね。小さいですが。

では次回お楽しみに。


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22. ブロウクンハート

お気に入り数4000を超えました!
ありがたいことです。感想も必ずチェックしています。すごく励みになります。

では22話どうぞ。


始業式の次の日からさっそくの授業だ。

……なのだが皆が朝食を食べている大広間にやる気を削ぐ爆弾が投下される。

昨夜誰もしないような劇的な到着を果たしたロン・ウィーズリーへの吠えメールの到着だ。

ウィーズリー家の母親の馬鹿でかい怒号は食欲を無くすのには十分すぎる威力を持っていた。

レオは黙って吠え散らかしている吠えメールに近づく。

 

『昨夜ダンブルドアからの手紙が来て、お父様は恥ずかしさのあ「うるさいよ。」

 

レオは吠えメールを握り潰してしまう。通常ならば声の再生をしなかったり止めるとさらにひどい結果になるのだが『眼』で見てその部分を解除が可能なレオには関係なかった。

レオが吠えメールを止めたことで大広間からは感謝の拍手が鳴り響く。

吠えメールは止まったが、ロンにはマルフォイを中心にスリザリンからの嫌みが始まっていた。

母親の怒りであれスリザリンからの嫌みであれロンにとっては最悪な学期の始まりだった。

 

 

二年生になっても勤勉なレイブンクロー生たちは宿題もしっかりこなし、一年生の復習も十分のようだ。中にはレオに対して今年は負けないと宣言する生徒までいる。上級生たちが混ざっているのはどうなんだろうという疑問はもはや誰も感じてはいなかった。

変身術、魔法薬学、呪文学、薬草学、これらは去年より発展した授業内容であり、危険性と難易度は増したがその分今までになかったことを学べるため好評であった。

レオは相変わらず教授陣たちとの討論や共同研究を続けている。

魔法史はもはや何も言うまい。死んでも変わらない授業などはどうすれば変わるのだろうか。

 

 

さて、色んな意味でお待ちかねの闇の魔術に対する防衛術の時間がやってきた。レイブンクローは一番最後の授業日程だから、すでに初回の授業を終えた他寮の話は聞いているが、ロックハートファンの大多数の女生徒たちからはまともな意見を得られるはずがなかった。

レオは信頼できるハーマイオニーから聞いたがクィレルやビンズの方が万倍マシらしい。逆にレオはそこまでの授業はどこまでひどいのか興味が出てきてしまった。

 

教室はレオを除く全員が教科書であるロックハートの小説を机の上に積み重ねているのですごい光景になっていた。レオは当然持ってきていない、それどころかホグワーツにすら持ってきておらず家に置いてきている。ロックハートが自信満々に入ってきた。適当に生徒の本を取り上げて、表紙の写真と同時にウィンクをする。女子は喜ぶが男子は白い目だ。

 

「私だ。ギルデロイ・ロックハート。勲三等マーリン勲章、闇の力に対する防衛術連盟名誉会員、『週刊魔女』五回連続『チャーミング・スマイル賞』受賞。」

 

その後も延々と嘘か本当かもわからない、どうでもいい自慢話が続く。興味のない生徒からの視線に殺意が入り始めたころ唐突に小テストをすると宣言して、テスト用紙を配り始めた。

レオはテスト用紙を見て呆れるしかなかった。

 

(ここまでとは……。想像以上にひどい……。)

 

どの問題も、ロックハートの~、ロックハートが~など闇の魔術に対する防衛術に全く関係ないものだった。更に両面にびっしりと書いてあるためメモ代わりに使うこともできない完璧なまでに無駄なものであった。

 

テスト用紙を回収したロックハートはまだ誰も満点を取っていないことに不満があるようだが当然のことだとは思わないのだろうか。

 

「では、授業に入りましょうか。」

 

覆いのかかった籠を教卓の上に用意するロックハート。その顔はどこまでも得意げだ。

 

「気をつけなさい! 魔法界で最も穢れた生物との戦う方法を授ける! それが私の使命なのです!」

 

芝居がかった動作で覆いを取り払い中を見せる。中にはピクシーがいるだけだった。

何人かの生徒がどのような生き物か聞くが危険なものと答えるだけで対策方法などの回答はなかった。

 

「では諸君らの対処のお手並み拝見としましょう!」

 

いきなり籠の戸を開けピクシーを開放する。皆が魔法やそれ以外の方法で対処するが数が多く追いついていない。

 

フロクラント(凝集せよ)・ピクシー」

 

レオが魔法を発動させる。特定の対象を一か所に集めて押しつぶす魔法だ。

ピクシーはレオの手の先の一点に向けて集まっていく。最終的に醜い肉団子が出来上がる。

 

「さて、ピクシーの処理終了です、ロックハート先生。」

 

話しかけられビクッとしながらも爽やかな笑顔を絶やさない。ある意味すごい執念を感じる。

 

「あぁ、えーと……。お見事! 私ほどではないが素晴らしい魔法の力量をお持ちのようだ!」

 

「ありがとうございます。ではそんな素晴らしい先生ならば僕ごときの魔法の対処など容易いに違いないでしょう。」

 

「へ?」

 

コルポリス(物理的)インカーセラス(縛れ)。」

 

上から押しつぶした後、縄できつく縛り付ける。他の教師なら楽に対処できる速度と精度だったがこの無能には不可能だったようだ。

 

「な、何をするんです!? レイブンクロー50点減点!」

 

周りも相手がロックハートとは言えいきなりの攻撃に混乱している。ファンの女子生徒は悲鳴を上げてレオを睨んでくる。

 

「さて、やはりこの程度も対処できないのですね。面倒なのでさっさと終わらせますか。レジリメンス(開心)!」

 

開心術で心を読む。心の中は有名になりたいだの、下らない虚栄心で埋め尽くされていた。心の奥底の防壁の中に秘密にしていた部分が見つかる。ロックハートの本の内容の本当の当事者たちとのやり取り、そして忘却術で記憶を消し自分の手柄にする。その時に感じる幸福感、少しの罪悪感など。

レオはロックハートの心の全てを読み取った。心を読まれたことを感じたのかいつもの余裕のスマイルはすでに無くなり絶望した顔をしたロックハートが転がっていた。

 

「忘却術はかなりの才能を持っているのに使い方を間違えましたね。では詐欺師ギルデロイ・ロックハート、一緒に校長室まで行きましょうか。抵抗してもいいですけど無駄だと思いますよ。」

 

悪事を働いた時の記憶を抜き取って瓶に保存する。これで証拠は十分だろう。縛られたままのロックハートを浮遊させ、唖然としている生徒たちをそのままに教室から出ていく。授業中の為廊下では生徒に見られなかったのは幸運だった。もし生徒がいる中で進んでいたらこの無能がファンに助けを求めていただろう。

何の障害もなく校長室にたどり着く。

 

「カントリー・マ〇ム」

 

合言葉を言ってガーゴイル像の先の校長室に行く。扉をノックして入る。

 

「ダンブルドア校長先生。詐欺師を捕まえました。」

 

ダンブルドアは驚いた様子もなくこちらと縛られた詐欺師を見ている。

 

「おお、レオ。それにロックハート先生も。して、詐欺師とは誰のことじゃね?」

 

「その反応……。知っていましたね。ホグワーツで教師をさせて詐欺師であると証明するつもりだったのではないですか? 開心術と真実薬で一発でしょうに、回りくどいですね。」

 

「いやいや。君ならすぐに対処すると思っておったよ。さて、ロックハート先生。何か弁解することはありますかな?」

 

「ははは……。もういいです。縄を解いてくれませんか? 逃げも隠れもしませんよ。」

 

縄を緩める。途端に杖をレオに突きつけてきた。

 

「ははは! 先ほど君は忘却術の才能があると言っていましたね! その通り! 私はこれだけは絶対の自信がありますよ。ダンブルドアは無理でも君の記憶の全てを消し去ってしまいましょう!」

 

レオもダンブルドアもロックハートのことを見ているが、一切の危機感は感じているようには見えなかった。その反応はロックハートを逆上させるには十分だった。

 

「私をハンサムなだけの無能だと思うなよ! オブリビエイト(忘れよ)!」

 

レオに向かって閃光が走る! だがレオに当たる十数cm前でその閃光は進行方向を真逆に変える。レオが創造した指輪の一つ『反射』によるものだ。

 

「へ?」

 

間抜けな声を最後にギルデロイ・ロックハートはその記憶を永遠に失った。

何もない真っ白な記憶の状態で自分が誰であるか、そして言葉さえ忘れてしまったロックハートを見てレオは溜息をつく。

 

「ダンブルドア校長、どうしますか? これ。」

 

「そうじゃのぉ……。彼が忘却術を使った時の記憶は抜き取っているかね。よし、それならば十分に彼の罪は証明できるじゃろう。君に対しても忘却術を使用したのをこのわしが見ている。まぁ、この様子では一生聖マンゴにいることになるじゃろうな。」

 

「では後のことは任せてもよろしいですか?」

 

「うむ。こちらで処理しておこう。問題はまた闇の魔術に対する防衛術の先生がいなくなってしまったことじゃ。悪い噂が多いことから中々やりたがる人がおらんでな。スネイプ先生が希望しているが魔法薬との兼任は難しかろう……。」

 

しばらく考えていたが名案を思い付いた様子でレオの方を見てきた。

直感でこの後の展開が解ってしまった。

 

「そうじゃ! レナード・テイラー君! 君なら魔法への知識に実力どれをとっても教師に足る実力がある。一年だけでよい、引き受けてはくれんかの? 授業中は教師の権限も与えよう、寮の点数の増減も可能じゃ。もちろん断ってもいいができればお願いしたい。」

 

予想通りの提案が来た。さて、どうするか。

 

「校長先生。僕は教師の資格はないのですがよろしいのですか? それと教える内容は僕が自由に決めていいのですか?」

 

「大丈夫じゃ、問題ない。教師の資格がなくともわしの推薦があればホグワーツで教えることが認められている。それに君の思うように闇の魔術に対する防衛術を教えてくれればよい。ロックハートよりは確実に良いじゃろうから誰も文句はないじゃろう。」

 

「あー……。わかりました。引き受けましょう。授業内容が僕の実験の場になる可能性もありますが良いですね?」

 

「生徒に危険が及ばなければの。できるだけ事前の通知ぐらいはして欲しいがのぉ。それでは新任の闇の魔術に対する防衛術の担当、レナード・テイラー先生! よろしくお願いしますぞ!」




ギルデロイ・ロックハート退場!
原作は壊れた杖の暴発でああなりましたが、完全な自分の杖での忘却術が反射されたので原作よりひどいことになってます。

忘却術って使い方によってはかなりえげつない魔法だとおもんですよね。

レオの指輪紹介 その1
・反射:魔法の進行する向きを逆方向に変換する障壁を体の周りに発生させる。
    障壁に接触した魔法的な力の向きが真逆になる。物理的な力には無力。
    魔法で間接的に飛ばした物体等は防げない。

ロックハート後任にレナード・テイラー教授就任!
一年だけです。ずっとだとルーピンとか蛙婆出せませんしね。

では次回お楽しみに。


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23. 初教師の初授業

ハリポタ二次のオリ主が教師やるのは珍しいですかね。

では23話どうぞ。


その日の大広間は阿鼻叫喚の地獄絵図が広がっていた。

ある者はなぜあんなのに夢中になっていたのかと嘆き、

またある者は現実を直視できず死んだ目で虚空を眺め、

別の者は嘘だと言い、怒り狂う。震えた声で自分は嘘だと思ってたと虚勢を張る者もいた。

その者たちの共通点は女性ということぐらいだろうか。

 

ギルデロイ・ロックハートが今世紀最大の詐欺師であると世間に公表された結果だ。

怒りや恨みをぶつけようにも、ロックハートは最早死んだも同然である。

その思いの矛先は夢を砕いたアルバス・ダンブルドアとレナード・テイラーに向けられていた。

思いは呪いに変わり二人を襲うも、難なく防がれる。

そんな混沌としか表現できない大広間には全校生徒と全教師が集められていた。

ダンブルドアが立ち上がり話し始める。

 

「おほん。諸君、知っての通りギルデロイ・ロックハートの功績は全て噓じゃった。彼は他者の成した事を忘却術を使って自分の手柄にしておった。まぁ、顔が良いのとその執筆能力は本物じゃったろうが、多くの者が騙されておった。今は自身の放った忘却術で全てを忘れてしまっておる。」

 

改めて事実を突きつけられたロックハート信者には崩れ落ちる者もいた。

ロックハートのことをどうでもよく思っているほど理解不能な光景だった。

 

「さて、大事なのは騙された過去ではなく、これからの未来じゃ。また闇の魔術に対する防衛術の教師がいなくなってしまった。そこでわしはレイブンクロー所属のレナード・テイラー君を教師に推薦した。彼の実力は並みの魔法使いを凌駕しておるし、父親は闇払い局の副局長じゃ。これ以上の適任者はいないじゃろう。すでにレナード君からは了承を貰っておる。レナード君は授業は免除じゃ、今年一年だけ教師として生活してもらう。ではテイラー先生、挨拶をお願いしますぞ。」

 

「新たに闇の魔術に対する防衛術の教師に就任しました、レナード・テイラーです。よろしくお願いします。さて、こんな二年生のガキに教師なんか務まるか、教えられることなんかねぇ、と思われる方も多々いると思います。」

 

スリザリンを中心とした上級生、ハリーやロンなどは大声で文句を言っている。

逆にレイブンクロー生からはそのような声は皆無だったが。

 

「皆さんの文句はもっともでしょう。そこでそういった方たちのためにある制度を考えました。それはある条件をクリアすれば授業は免除、宿題も無し、試験も一定以上の成績を保証するものです。これは寮や学年関係なく誰でも平等に機会が設けられます。」

 

大広間が一気に騒々しくなる。レオの言った制度は勉強が嫌いな学生にとっては夢のようなものだ。次にレオの言う条件が何なのか皆注目する。

 

「条件とは、闇の魔術に対する防衛術の教師であるこの僕、レナード・テイラーに魔法で何かしらのダメージを与えることです。」

 

一瞬、静まったが次の瞬間にはスリザリンの上級生、グリフィンドールの双子などが呪いを放つ。四方八方からレオに向かってくる呪いの閃光はレオに命中する直前に雲散霧消した。

 

「話は最後まで聞いてください。レイブンクロー以外1点減点。教師なので減点することもできるので覚えておいてください。では詳細な説明をしましょう。この……そうですね、免除課題と呼びますか。これに挑戦するのには学年、寮等は問いません。また場所や時間は授業中でなくとも許可します。僕の研究室以外ならば問題ありません。食事中の大広間、移動中の廊下、授業中の教室内、いずれもいけると思った時に仕掛けてOKです。クリア条件は先ほど述べた通り魔法でダメージを与えること。どんな方法でも構いませんし、挑戦回数も制限しません。

僕は基本的に防御主体ですがもちろん反撃もしますので挑戦される人は最低失神は覚悟するように。僕はレイブンクロー所属ですがどの寮が相手でも手加減はしませんのであしからず。最後におまけでクリア時には寮に50点の加点とします。

更なる詳細なルールは掲示板に張り出しておきますので各自確認してください。以上。」

 

大広間はざわついている。授業が免除されるだけでなく50点も手に入る。挑戦回数も無限。これは挑戦するしかない! と寮学年問わず多くの生徒がやる気になっていた。

一方で本当に優秀な一握りの生徒たちはレナード・テイラーがいかに規格外か見抜いていた。先ほどの多数の呪文が消え去ったこともどうやったのかさえ分からない。このルールも余程クリアされる自信が無ければどの寮も点数稼ぎ放題だ。それが許可されたということはダンブルドアがレナード・テイラーの実力が高いと認めていると同義だ。まずは無謀な生徒が突撃してから情報を集めて挑んでも遅くはないだろうと、慎重に考えていた。

 

(さて、これだけ条件を揃えれば僕にどんどん魔法が飛んでくるだろう。それでこそ『指輪』のテストになる。)

 

この免除課題の本当の目的はレオの造った十の指輪の性能試験だ。生徒たちの授業免除や得点などはおまけで、指輪の効果や弱点などを見極めるためのものである。

 

(今年一年でどれだけテストができるか楽しみだなぁ。上級生やハーマイオニーには期待だな。)

 

 

 

次の日からレナード・テイラーが通る廊下は魔法の閃光で溢れかえるようになった。

しかし、レオは呪ってくる相手の方も見ずにいつものペースで移動している。レオに向かった呪いはレオの十数cm手前で急に方向転換して魔法を放った生徒に向かって跳ね返される。レオが去った後の廊下は様々な呪いの症状で倒れたり、呻いたりしている生徒で埋め尽くされていた。あまりにも医務室に運ばれる生徒が多かったためマダム・ポンフリーの怒りが炸裂した。以後廊下での呪文は武装解除と失神のみが許可された。

 

 

そんなこんなで少しは落ち着きを取り戻したホグワーツ。

今日は二年生の闇の魔術に対する防衛術の授業だ。相手はグリフィンドールとスリザリンの合同。

 

レオが教室に入るとすでに多くの生徒が杖を持って待ち構えていた。授業中に失神等されると迷惑なので反射は停止させて残りの防御機構のみを作動させる。

呪いはやはりレオに到達する前に消失していく。

 

「それじゃあ、出席を取ります。攻撃は続行してもかまいませんが返事はしてください。」

 

攻撃など無視して出席を取る。その姿から直接的な攻撃は流石に無駄だと理解させられ、教室は静かになった。

 

「はい。全員いますね。この闇の魔術に対する防衛術で皆さんに教えることは俗に言われる闇の魔術からの身の守り方、そこから発展させた戦い方です。高学年になるほど強力な防御と攻撃を教えますが、まず全学年共通しての基本的な考え方から教えようと思います。その後は必要性の高い呪文から教えていきます。個人のレベルに応じて順次ステップアップしていきましょう。ホグワーツに入学して一年は経過したので魔法の発動等は大丈夫だと思うのでそこは省きます。」

 

多くの生徒はロックハートの授業よりはマシだとわかり少しホッとした。それに戦い方を知るのはいいことだと感じもした。

 

「さて、まずは防衛の基本的な考え方から。もし自分に敵対的な魔法使いと遭遇したらどうしますか? 強さは自分より格上であると想定してください。それではフィネガン君。」

 

「えーと、知っている呪文を駆使して戦う?」

 

「はい、残念。フィネガン君は死亡しました。相手が余程なめていないならすぐに殺されてしまうでしょう。次、ザビニ君。」

 

「相手と交渉して命だけは助けてもらう、とか。」

 

「条件次第ではそれも通用しますが相手はこちらの命を狙うと考えてください。ではロングボトム君。」

 

「………ます。」

 

「もうちょっと大きな声で、どんな考えでも僕は笑いませよ。」

 

「逃げます……。」

 

この答えにスリザリンは笑い、グリフィンドールからはしっかりしろと言われてしまう。ネビルは自分の答えに恥ずかしがって俯いてしまった。

しかしレオとハーマイオニーだけがネビルを正当に評価した。

 

「皆さん、笑っていますがこれが正解です。勝てない相手にはそもそも戦わない。これが生き残る確率が最も高いのです。手練れの魔法使いほど呪文の速さなど段違いです。劣る者はそれに立ち向かおうとすると防御、攻撃など選択肢が多くなってしまい確実に先手を取られます。逃げる一点に絞れば少しは生存確率を上げることができます。勇敢なグリフィンドール生にはなかなか難しいかもしれませんが、逃げるのも勇気です。逃げられない、戦わなけらばならなくなってから戦闘については考えましょう。ロングボトム君には1点あげましょう。」

 

その後の講義は呪いの避け方、杖の動きの予測などを教えていった。

グリフィンドール生は逃げるなんて消極的な防御方法には不満を持っているようだ。

 

「ではちょっと実践してみますか、皆さん逃げることについてはまだ不満があるようですしね。ポッター君とロングボトム君、前へ。二人は僕と戦ってみましょう。ポッター君は逃げずに戦う。ロングボトム君は先ほどの講義内容を参考に逃げてみましょう。手加減はしますので心配はいりません。」

 

手加減宣言にハリーはカチンときた。逆にネビルはホッとする。

先にハリーが相手することになった。

 

「ではコインが落ちたら開始です。合図と同時に攻撃しますのでポッター君も防御なり攻撃なりしてください。」

 

コインが舞い、床に落ちる。

 

エクスペリアームス(武装解除)。」

 

ハリーの杖は成すすべなく取り上げられレオの手に渡る。

 

「では、次ロングボトム君。先ほどと同様の合図と同時に攻撃しますので逃げ回ってください。」

 

ネビルは怯えながらもレオの杖をしっかりと見ている。

再びコインが床に落ちる音が響く。

 

エクスペリアームス(武装解除)。」

 

ネビルは発音と同時に横に飛ぶ。すぐにレオは次の武装解除を唱えるが、ネビルは転がりながら移動して避ける。机の陰に隠れて起き上がりレオを確認してジグザグに走りながら距離を取る。

 

「はい、そこまで。どうでしたか? 僕が悪人ならば杖がないポッター君を殺すも、服従させるも、拷問して情報を手に入れるも、人質にするも自由です。対してロングボトム君は数秒ですが逃げることに成功しました。たった数秒ですがその間に仲間が助けるかもしれませんし、相手の都合から手間を考えて撤退するかもしれません。どちらにしろ生存率が高い方は言うまでもありませんね。では見事逃げ切ったロングボトム君に2点あげましょう。」

 

残り時間はあと十分ほどであった。

 

「残り少ないですね……。次の授業は基礎の呪文を教えます。残りの時間は免除課題に挑戦するもよし、他の授業の宿題をするもよし、寝ていてもかまいません。自由時間とします。」

 

そういうと同時に皆が一斉にレオに攻撃しだした。

終業のチャイムが鳴るまでレオはそこから一歩も動かなかったが誰もレオにダメージを負わせることはできなかった。

その光景をハーマイオニーは凝視してレオの能力をしっかりと分析していた。

 

(レオの防御は複数ある……。反射と無効化……、それ以外にもあるかもしれない。とりあえず挑戦するには情報が足りないわ。もっと見極めなきゃ。)

 

レオはハーマイオニーの見極めようとする視線に気づいていた。この免除課題をクリアするとしたらハーマイオニーだと思っている。自分の造った魔法具を彼女が超えることができるか楽しみだった。




レオには授業は無しで教師に専念してもらいました。

そして授業免除という餌で生徒を利用した性能評価実験。ひどい主人公もいたもんだ。

各学年の授業内容は以下のような感じ。
共通:基本的な防衛についての考え方。今回の話の内容、他
一年:魔法についての理論説明。魔法の発動方法等。以前ハーマイオニーに教えたこと
二年:武装解除、インペディメンタ(妨害せよ)等の簡単な呪文
三年:二年より呪文数が増えるがそこまで変化なし +体術(結構重要)
四年:三年までで習得した呪文を使った模擬戦実施
五年:OWLも考えた呪文習得 プロテゴ(護れ)は必須 模擬戦は団体戦も実施
六年:攻撃と防御の上位呪文を習得 レオオリジナルも場合によっては教える
七年:NEWTに向けて勉強 優秀者には独自に課題も

各生徒ごとに合わせて調整はする。例としてネビルは一年レベルから基礎をしっかりさせる。ハーマイオニーはすでに七年レベルといった具合に。

では次回お楽しみに。


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24. 穢れているのは

楽しみにしていた話が削除されたり、更新が全然ないと寂しいですよね。
本作を読んでいる皆様にはそんな気分にさせないよう頑張りますので
これからもよろしくお願いします。

では24話どうぞ。


レナード・テイラーが闇の魔術に対する防衛術の教師になって一週間が経過した。

ここ数日で廊下や大広間で無計画に攻撃する生徒は激減していた。

しかし、計画的にチームを組んで廊下で待ち伏せて奇襲するなど全く無くなったわけではなかった。

今のところレオにダメージを与えた生徒はいない。それどころかどんな防御をしているかさえ解明されてもいない。だがハーマイオニーを代表に優秀な生徒はそれぞれ対策を考え始めていた。

 

休日になり、レオは校長室に呼び出された。

 

「さて、レオ。闇の魔術に対する防衛術の教師を始めて一週間。どうじゃ? 問題ないかのぉ。」

 

「はい、今のところ大丈夫です。免除課題の方もまだ誰も成功者は現れていません。まぁ、上級生の実力者などは今は様子見に徹しているようですが。」

 

「ほっほっほ、そうかそうか。しかしの、その免除課題が問題でのぉ。校医のマダム・ポンフリーと用務員のフィルチさんから廊下での乱闘とそのあとの保健室のベッドが埋まってしまうことや廊下の清掃等で怒り心頭なのじゃ。早急に何か対策が求められる。何か良い案はあるかのぉ。」

 

免除課題を宣言してからの攻撃と返り討ちの繰り返しによってこのような苦情が出てしまうのではないかと薄々感じてはいた。代案は考えていたので提案する。

 

「そうですね、流石に時間や場所を指定しないのはやりすぎましたね。代案としては場所や日時を予め決めておいて、参加者を募集してイベントのような感じで行う方法ですかね。ちょうどクィディッチの競技場がありますしそこでなら広さ等は問題はないでしょう。月に一度ぐらい開催してクィディッチ同様観客席から観察可能にすることで生徒のレベルアップと対策を考えられるようにすればいいのではないかと。」

 

「うむ。イベントが増えることは良いことじゃ。よろしい許可しよう。」

 

「ありがとうございます。ではクィディッチ競技場の下見をしてもよろしいでしょうか? 実はまだクィディッチの試合を見たことが無いのですよ。」

 

「クィディッチには興味はないかの? あれはなかなか面白いスポーツじゃぞ。マグルのボウリングも負けてはいないとわしは思っているがの。競技場は特段立ち入り禁止はしていないはずじゃからいつでも大丈夫じゃ。ただ、クィディッチのチームが練習しているようなら邪魔はしないことじゃ。特に他寮が練習しているならあまり見るのも失礼じゃからの。」

 

 

校長室から出たレオは一旦研究室に戻る。休日なので当然ハーマイオニーが待っている。校長室での話をすると一緒に競技場に行きたいとの事なので共に向かった。

 

クィディッチ競技場ではグリフィンドールチームが練習を始めるところだったが、スリザリンチームがやって来て即座に一触即発の空気になる。レオとハーマイオニーはそんな事には気が付かず免除課題についてや授業について話しながら近づいていった。二人に最初に気付いたのはグリフィンドールの練習を見に来ていたロンであった。

 

「テイラー! まさかお前もスパイしに来たのか!? ハーマイオニーもグリフィンドールなんだからこんな奴と一緒にいるなよ!」

 

ロンのスパイ発言からハリーとキャプテンのオリバー・ウッドは顔をしかめる。対して女性陣と双子は軽く挨拶をする。女性陣はレオの勉強会の参加者なので顔見知りではあるのだった。

 

「スパイといっても……。僕はクィディッチのルールを知らないからどうしようもない気がするんだけどね。今日は闇の魔術に対する防衛術の授業のイベントでここを使うかもしれないからその下見に来ました。練習の邪魔になるようならまたの機会にします。」

 

そう言って競技場を去ろうとするとスリザリンの方から声が上がった。

 

「ははは! クィディッチのルールも知らないなんて優秀なレナード・テイラーともあろう者がものを知らないんだねぇ。勉強ができるだけで人生損しているよ。隣のマグル生まれの穢れた血にでも教えてもらえばいいんじゃないかな?」

 

スリザリンからは笑い声が沸き上がる。対してグリフィンドールからはハーマイオニーが穢れた血と言われ非難の声が爆発した。

 

「マルフォイ! よくもそんなことを!!」

 

ロンが中身の芯が露出してしまっている杖を使って発言の主、ドラコ・マルフォイに向けて呪いをかけようとする。

だが、呪いが発動するより先にマルフォイは吹っ飛んだ。

 

「ふぉおおおおおい!?」

 

競技場を舞うマルフォイ。両チームは唖然としてその光景を見た。

マルフォイが元居た場所の前には腕を振りぬいた体勢のハーマイオニーが立っていた。

 

「ぶへ!」

 

顔から落ちるマルフォイ。しかしダメージはそれほどでもないのかすぐ立ち上がり、ハーマイオニーを睨みつけ怒鳴り始める。

 

「この……! 穢れた血め! 純血たるこの僕を殴ったな! はっ、魔法も使わないなんてやっぱりマグル生まれは野蛮だな。どうせその頭の中もまともじゃないんだろ!」

 

対するハーマイオニーは冷めた目でわめくマルフォイを見ていた。

 

「私のことをどう言おうと別にいいけど、レオのことは馬鹿にしないでくれるかしら。レオはクィディッチについて知らなくてもそれを補って余るほどに素晴らしいんだから。あなたのような小さな人があれこれ言わないでちょうだい。」

 

「なんだと、この穢れた血! お前のようなヤツやテイラーみたいな半純血なんかが魔法界にいるのが理解できないよ。魔法使いは純血、なぁあああああああ!?」

 

マルフォイは言葉の途中で絶叫する。

マルフォイの頭が首から離れ落ちる。その光景にクィディッチの両チームは悲鳴を上げる。

 

「わぁああああああ!」

「きゃああああああ!」

 

皆が絶叫する中落ちたマルフォイの頭が叫ぶ。

 

「ああああああああ! 首が、くび! 死ぬ、死んじゃう! ……あれ? 痛くない!? なんで? どうなってるんだ!?」

 

その様子を見てまた混乱が広がる。誰もマルフォイの疑問に答えられない。ただ一人これを引き起こしたレナード・テイラーを除いては。

 

「ドラコ・マルフォイ、いい加減うるさいですよ。純血にこだわるのは結構ですが、こちらに干渉はしないでくれるとありがたい。それに親戚同士で子孫を作り続けた純血家系の方がよっぽど穢れていると思うんだけどね。あまりハーマイオニーのことを馬鹿にするともっとひどいことになりますよ。頭は明日になれば元に戻ります。食事も普通に取れますし、体も動かせますよ。じゃあ、ハーマイオニー行こうか。」

 

「待て! こんなことしてどうなるか分かっているのか!? 僕の父上は…ばっ!?」

 

今度はマルフォイの頭が縦に真っ二つになった。先ほどと同様に出血はなく痛みもないが喋ることはできなくなった。

 

「言い忘れていました。変に魔法で直そうとすると保護が消えて死にますよ。」

 

ドラコ・マルフォイは恐怖していた。喋ることができても直してくれなんて言葉、とてもじゃないが言えない。スリザリンのチームも同様の感情を持ったようだ。グリフィンドールは自業自得だと言ったがレオへの恐怖は少なからず感じている。普段と同様に接しているのは双子ぐらいなものだ。

 

競技場を後にし、研究室に戻って授業の計画や指輪の微調整をすることにした。

戻りながらハーマイオニーが礼を言う。

 

「レオ、私のために怒ってくれてありがとう。レオが怒ったの初めて見た気がする。ところでマルフォイの首はどうやったの?」

 

「首から上を空間置換で飛ばしたんだ。姿くらましを部分的に応用したような感じかな。そのままなら死んでしまうけど血管や神経を空間をまたいでそのまま繋いでいるからただ頭が別の場所にある状態になっている。ハーマイオニーこそ僕のために殴るなんてびっくりしたよ。でも嬉しかった、ありがとう。」

 

 

 

結局、色々あったせいで競技場の下見ができなかったため、後日改めて競技場を見て回った。

広さは申し分なく観客席からも十分に戦闘を見ることができるだろう。寮一つが全員でレオに挑んでも大丈夫なはずだ。

 

 

競技場の一件からスリザリン生は明らかにレオを避けるようになった。元から勉強会にも参加していないが、更に距離が離れたように感じる。去年の寮杯を奪取された原因であり、さらにこちらのことを躊躇なく攻撃もしてくる。スリザリン生にとっては悪夢のような存在だった。

ドラコ・マルフォイはレナード・テイラーがトラウマになってしまっていた。レオが視界に入るだけで全力疾走、闇の魔術に対する防衛術は一番後ろで小さくなっている。更には『穢れた血』という言葉は決して口にすることは無くなり、その言葉が聞こえるだけで言った者に対して怒鳴るようにまでなってしまった。

 

レオはその話を聞いて、これでこちらに面倒なのが関わらなくて済むとしか思わなかった。悪いのは完全に向こうなので哀れみなどは感じる必要もなかった。魔法を極めるには邪魔なものは必要ないのだ。




流石に廊下などでの戦闘の後処理で校医・用務員ブチ切れました。
今後は授業だけ戦闘可能です。

原作の決闘クラブの代わりにレオに挑戦する決闘大会開催予定。

吹き飛ぶマルフォイ、さらに首が落ちる。
穢れた血と言って色んな話でひどい目に合ってる気がしますが自業自得ですよね。

では次回お楽しみに。


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25. 開く秘密の部屋

ハリー達も活躍させたいなー。とは思っていますが、レオの行動とか考えると必然的に出番が減ってしまう。どうしたものか。

では25話どうぞ。


レナード・テイラーの闇の魔術に対する防衛術の評判は良好だ。

防衛の基本の後は学年ごとに必要な事だけを効率重視で教えているが、個々の得意不得意を見極めて苦手の改善や長所を伸ばす方針でもあるので今まで苦手だった生徒も確実に実力が伸びているためだ。

また、免除課題があるためほとんどの生徒が模擬戦などを行っており、ホグワーツ生徒全体の戦力が増強することにもなった。

ハリーやロン、スリザリン生は特にレオを敵視しているため、対抗心を糧に実力の伸びが顕著だ。

しかし誰も免除課題をクリアした者は現れず、時間は過ぎていった。

 

 

 

1992年10月31日

 

今年もハロウィンがやってきた。去年と同様ホグワーツ中にかぼちゃの匂いが充満している。ホグワーツに何かを仕掛ける者は今回は現れないだろうからゆっくり食事ができるだろうとレオは考えていた。

 

「「トリック・オア・トリート!」」

 

レオが廊下を移動しているとハロウィンの決まり文句が聞こえたので振り向く。そこにはグリフィンドールの悪戯双子がニヤニヤしながら立っていた。

 

「ふっふっふ。兄弟、どうやらレイブンクローの天才様はお菓子を持っていないと見える。」

 

「ああ、兄弟。では悪戯開始だ!」

 

双子はありったけの糞爆弾と臭い玉を大量に投げ始める。周りの生徒は悲鳴を上げて逃げ惑う。

レオは指輪の一つ『遮断』の効果範囲を広げ、糞と臭いが自分に来ないようにする。

爆弾が炸裂した後は廊下が一面ひどいことになっていた。レオは廊下を清める為魔法を発動しようとするが、その隙に双子は様々な花火をレオに向けて発射する。花火を見ると面白い仕掛けが施されているのに気付いたためあえて相手の思惑に乗って消失呪文を当てる。呪文が当たった花火は消えるどころか増殖していき最終的に七色の美しい花が咲いた。レオが花火を見ていると双子が近くまで来ており口に何か入れようとしてきた。

 

「お菓子がないならこっちからキャンディーをプレゼントだ!」

 

これにはどんな仕掛けがされているか興味を持ったレオはわざと口に入れられる。

口に入れた瞬間にキャンディーは溶け成分が体に広がる。途端レオの鼻からは鼻血が止まらなくなる。

 

(あの小さなキャンディーにこれだけの効果を持たせたのか。この二人魔法具の開発においてかなりの才能を持っているな。)

 

冷静に自分の状況を確認しているのを見て逆に双子がオロオロしだす。

 

「あれ? 大丈夫だよな? レオ、鼻血でてるぞ。おーい?」

 

「キャンディーのせいでぼーっとしてるんじゃいよな!? 意識あるよな!?」

 

指輪の内、『治癒』を発動させて体の中の異物を消去する。血はすぐに止まり、血だらけの体を廊下と共に綺麗な状態に戻す。

 

「面白かったです。他にも悪戯グッズの開発はしてるんですか? もしよければ見てみたいです。」

 

「……もしかしてわざと食べた? やっぱりそうか、あっさり過ぎると思ったんだよ。」

 

「悪戯グッズならまだまだ色々あるぜ。そうだ! レオも開発に協力してくれよ。天才様の力を借りればもっと面白くできるぞ。」

 

フレッドとジョージはこれ以上ない考えだと言わんばかりに協力を求めてきた。

レオはしばらく考える。

 

(確かに、この二人は面白い。魔法具の開発はひらめきも重要だ。少しぐらいなら手伝ってもいいかもしれないな。)

 

「少しなら良いですよ。金曜の午後の勉強会の後で時間がある時なら協力しましょう。」

 

「よっしゃ、流石は天才様だ話が分かるぜ。」

「でもいいのかい? 優等生。俺たちみたいな悪戯小僧と付き合うと評判落ちちゃうかもよ?」

 

「別に周りの評価などはどうでもいいです。開発した魔法具が面白そうだから、理由はそれだけで十分ですよ。それじゃあ、説教頑張ってください。」

 

そういうと目くらましの呪文を使い姿を消し立ち去る。残された二人も逃げようとするがフィルチとマクゴナガルがその前に立ちふさがっていた。後にはマクゴナガルの説教と二人の誠意のない謝罪の声だけが残された。

 

 

 

「トリック・オア・トリート!」

 

夕食はダンブルドアの掛け声から始まった。大広間はかぼちゃを中心とした御馳走でいっぱいであり皆が大いに楽しんだ。人気音楽グループの「骸骨舞踏団」まで招かれており、トロールが侵入するなどもなく最高の気分のままパーティーは終わった。

 

レオは自室の研究室に戻り指輪の調整を行っていると扉がノックされた。

応答するとフリットウィックであった。何でも校長からの呼び出しのようだ。

フリットウィックと共に校長室に入ると中にはダンブルドア校長、マクゴナガル、スネイプにハリーとロン、そして泣いているフィルチがいる。

 

「ダンブルドア校長、いったい何事でしょうか?」

 

「夜も遅くにすまん、レオ。早速じゃがこれを見てくれんか。」

 

ダンブルドアの指さす先には固まってピクリとも動かない猫が横たわっていた。一目で何かしらの呪いによるものだと解る。猫に近づき詳しく解析をする。今まで見たことないもので少々苦戦をしたが解析完了だ。

 

「どうじゃレオ、何か解ったかの? わしは石になっているのは解ったが、いったいどのような魔法を使ったかまでは解らなんだ。」

 

「確かに石になっていますね。どのような魔法を使ったかまでは生憎解りませんでした。僕も初めて見る構成式でしたけれどこれは不完全ですね、もし完全に作用していればこの猫はすでに死んでいたでしょう。何かしらの妨害や干渉があったかして不完全状態であるため石になるだけで済んだのでしょう。」

 

レオはそういって猫に手を触れ魔力を浸透させていく。一定の魔力が体に充満したとこで猫の体内に残る魔力を打ち消すように変換する。次の瞬間には猫はビクンとさせ動き出した。

 

「ミセス・ノリス!!」

 

フィルチがこちらに駆け寄る。猫も飼い主の元へ歩いていき抱きしめられる。

 

「ありがとう! 君は今まで見てきた生徒で最高だ!」

 

レオの手を取りぶんぶんと握手をしてくるフィルチ。

解放されたレオは校長に詳しく話を聞く。何でも物騒なメッセージの前にこの猫が石になって放置されておりそれを運悪くハリーとロンが遭遇したところに他の生徒たちが来て犯人扱いされてしまったようだ。

 

「秘密の部屋? 何ですかそれ?」

 

「秘密の部屋とは、ホグワーツ創設者の一人であるサラザール・スリザリンが作ったとされる伝説の部屋じゃ。スリザリンが他の創設者と決別した際にマグル生まれを排除する何かを残したとされている。実際のところその部屋が実在しているかも定かではない、何しろ千年ほど前のことじゃ。だが、このような事件が起こっておる以上スリザリンの継承者を名乗る何者かが確実にホグワーツにいる。全員十分に注意をすることじゃ。」

 

ダンブルドアが注意を促して解散となった。レオだけはこの場に残るように指示された。

全員が出て行った後、ダンブルドアが話し始める。

 

「残らせて申し訳ないの。君は秘密の部屋の何かが仕掛けた石化を解除してしまった。半純血であることもあるが、このままでは継承者のターゲットになるやもしれん。そこでわしが知っている情報を教えておこうと思う。……実は秘密の部屋が開かれたのは今回が初めてではない。五十年前にも開かれ一人の生徒が犠牲になった。当時在籍していたルビウス・ハグリッドがアクロマンチュラを秘密裏に飼育していたため犯人と疑われて退学となった。実際には違う、アクロマンチュラには事件のような殺し方は不可能じゃった。わしにも何が秘密の部屋にいたのかは確証がない。だがその時の継承者は確信しておる。……ヴォルデモートじゃ。当時はまだトム・リドルという名だったがそれでも心には闇があり人の道を外れ始めていた。今回の件にどのように関わっているかはわからん。だがあやつが今回も暗躍していると思っておる。」

 

「なるほど……。去年クィレルに寄生していた時の何かしらの仕掛けを施していたんでしょうか? それとも今年も何かしらの手段で潜入しているのか……。」

 

「それらの可能性もあるが断言することはできないのぉ。だが注意せねばならんじゃろう。今回は誰も死なせはしない。」

 

レオとしては犠牲者とかスリザリンの継承者が何を考えているか、ヴォルデモートが関わっているなどよりも秘密の部屋とその中に潜む何かのことを考えていた。

 

(猫を石にしていた式……、あれはただの魔法じゃない、いや魔法ではないかもしれない。初めて見る構成だった。不完全でさえあの完成度と美しさ……。素晴らしい。あれを再現するには人では難しいだろうな。)

 

レオは今年の目標を決めた。秘密の部屋を見つけること、そしてその中のモノを徹底的に解析することだ。

 

(そのためには死ぬわけにはいかないな。もう少し防御系の指輪の調整をしておこう。とりあえず不完全だけど解析できたんだからそれに対抗した防御を組み込んでおこう。)

 

頭の中で今後の予定を決めていく。闇の魔術に対する防衛術の授業、免除課題の大会、秘密の部屋の探索と調査、防御手段の構築等々、今年もやることが多くなりそうだ。




レナード・テイラー、ウィーズリーツインズの悪戯グッズ開発顧問に就任。

レオの指輪紹介 その2
・遮断
魔力を遮断する空間層を生成する。層の厚さは使用魔力で決定。
この空間では魔力が急速消失していくため、範囲内の魔法は徐々に威力・速度が低下していく。装着者の使用魔法にも影響があるため使いどころが難しい。
若干の物理的な壁にもなるが強い衝撃には耐えられない。
最大の性能は精神に作用する効果の遮断。以前ダンブルドアの開心術を防いだのはこれ

レオの指輪紹介 その3
・治癒
名前のまんまの効果。
怪我の治癒、解毒、解呪を行う。治癒は自身の治癒力を高めるだけなので骨折ぐらいなら効果があるが、四肢欠損などには効果なし。
解毒や解呪も限度があり強すぎる毒や呪いには効果が薄い。
但し一度受けた毒・呪いはデータとして残るのでどんどん対抗できるようになる。

石化解除。マンドレイクが不要になっちまったぜ。

では次回お楽しみに。


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26. 怪物の正体は

感想を読んでもうハリーやロンの出番はそこそこでいいかなって思うようになりました。
まぁ、出番が全く無くなるわけじゃないですけど原作のイベントが改変・消滅したりはしていくと思います。

では26話どうぞ。


閉鎖空間であるホグワーツでは噂の浸透性はとてつもなく速い。

翌朝にはフィルチの猫がハリー・ポッターとロン・ウィーズリーによって酷い目にあわされたという噂が全校中に広まっていた。特にロンは車の件の罰則でフィルチに厳しくされた逆恨みから妥当だろうと判断されていた。

秘密の部屋の継承者であるとの噂はほとんどなかったが二人から距離を取る生徒も少なくなかった。

 

猫の一件後の最初の二年生の闇の魔術に対する防衛術の授業。レオが出席を取ると即座に数人から秘密の部屋についての質問が飛んできた。こうなることも予想していたのであらかじめ授業内容は秘密の部屋への対策や危険な魔法生物への対処などを考えておいた。

 

「さて、皆が秘密の部屋について知りたいようなので僕が知っている情報を教えておきましょう。情報は共有していた方が良いものはありますからね。」

 

特に言ってはいけないと口止めされたわけではないので昨日のダンブルドアの話をする。

ホグワーツ創設者の話、スリザリンの離別、秘密の部屋、五十年前のこと、ハグリッドのこと、ヴォルデモートのことまで全て。ただ、ヴォルデモートの名前が出るたびに悲鳴が上がるのはどうにかならないのだろうか。

一気に新しい情報を得た生徒たちは様々な憶測を話し始める。現実を見ていない突飛なものから、よく考えて自分の意見を出しているものまで様々だ。

レオが手を叩いて場を静かにさせる。

 

「皆さん静かに。色々と話したいことは多いでしょうが、まだ授業中です。ですが、皆さん秘密の部屋についてどうしたらいいのかといったことで頭がいっぱいでしょう。よって授業内容は対秘密の部屋をテーマに進めていこうと思います。」

 

殆どの生徒はレオの授業内容には賛成のようだ。スリザリンからは不満そうな雰囲気を感じるが無視して進める。

 

「昨日の猫を分析したところ、秘密の部屋の怪物はおそらく生物を即死させる何らかの手段を持っています。ですが猫は石になっていただけでした。これは効果が不完全に働いた結果です。猫でさえ即死は防げることから魔法以外の手段でも防御が可能であると推測できます。今は解析中ですが次に何かしらの事件が起これば対策方法も確立できるでしょう。それまではどうすればいいのか? 魔法で防御する手段を身に付けるのか? まずは、防ぐ方法を考える前に襲われない状況にしましょう。おそらく標的はマグル生まれの者なのでマグル出身者は極力単独行動はしない、欲を言えば純血の人と一緒にいると良いでしょう。より狙われにくくなるはずです。」

 

マグル出身者は熱心に聞いている。逆に純血特にスリザリンは真面目に聞いておらずあくびまでしている。

 

「ではここからは秘密の部屋の怪物がなんであるか推理していきましょうか。マルフォイ君!」

 

急に名指しされたマルフォイはビクッとしてレオを見る。また何かされるのではないかと恐怖に震えている。

 

「マルフォイ君、君は純血でしかもかなりの地位がある、しかも代々スリザリンといつも言っているね。50年前のこととか今回のこととか何か聞いたことはないかな?」

 

「し、知らない……です。他の純血の家でもそんな話は聞いたことがない、です。」

 

「ふむ……。他の純血の人も何も知らないかな?」

 

純血の家系の生徒が首を横に振る。秘密の部屋はやはりスリザリンの継承者だけの秘密なのだろうか。

 

「では純血の生徒には課題を出します。ああ、これはやってこなくても別にいいですよ。課題内容は親や親族に対して秘密の部屋について尋ねて結果をまとめること。有益な情報があれば寮に加点します。まぁこれについてはあまり期待はしていません。その他の皆さんも何か有益な情報があればどんどん言ってください。そういった情報は多く共有した方が良いですからね。」

 

授業は終了し、それぞれの寮に帰っていく。グリフィンドールからはスリザリン、特にマルフォイは何かを隠していると思っているのかあからさまに敵視していた。

一人残ったハーマイオニーが寄ってくる。

 

「レオ、今回の騒動どうなっちゃうのかしら。私もマグル出身だし対策したいの。」

 

「はい、これ。」

 

レオは銀のネックレスを手渡す。いきなりのプレゼントにハーマイオニーは狼狽する。

 

「え、どうしたのレオ? いきなりこんな。」

 

「ハーマイオニーにだけ特別にプレゼントさ。ありったけの防御式を組み込んでいる。昨日の猫を解析した結果も反映されているから即死することはないと思う。贔屓だと思われるかもしれないけど、内緒だよ?」

 

「こんなすごいのを私に? 嬉しい……。着けてくれないかしら?」

 

「お安い御用さ。」

 

そういってレオはハーマイオニーの首にネックレスを着けていく。

 

(あれ? なんだか顔が熱い? なんでだろ? ただネックレスを着けてもらってるだけなのに。)

 

自分の変化に答えが出なかったが、きっとすごい魔法具を身近に感じて興奮しているのだろうと結論した。

 

「じゃあ、問題が解決するまでは身に着けておいて。怪物のこととか判明したらその都度バージョンアップしていくよ。」

 

ハーマイオニーは絶対外さないことを誓った。

 

 

 

その後は大きな出来事もなくクィディッチシーズンが幕を開けた。

レオは観戦にもいかず校舎内を探索している。もちろん秘密の部屋についての手がかりを探るためだ。扉という扉を片っ端から開けていく。そのどれもが秘密とは言えない中身だった。

 

(まぁ、そうだろうね。こんな簡単に見つかるなら既に秘密でも何でもないだろうしな。とりあえず校舎の何か所かに監視用の魔法具を設置しておくか。)

 

巧妙に存在を隠した映像を記録できる水晶玉を校舎に十数個ほど設置していく。安全のため、そして自分の研究のためだ。

 

(これで良し。あとはぶらぶらと散策してみますか。僕も半純血だし猫の件から上位目標だろうしな。)

 

歩いていてもゴーストぐらいしか遭遇はしなかった。

 

(どうせなら怪物が出ればいいんだけど……。あぁ、でも未知の相手じゃ何が起こるか分かんないしまだ早いかな。ん?)

 

奇妙なものを見つける。蜘蛛が大小種類を問わず一斉に外に向かって出ていっているのである。通常ではない行動、これも何か今回の件に関係しているのだろうか。

 

(逃げる蜘蛛、スリザリンの怪物、スリザリンといえば蛇、通常出ない殺害方法、不完全石化。……バジリスクかな?)

 

現状あるヒントからとりあえず予想を立ててみる。後は実物を見るか次に誰か、どうせならば動物じゃなく人間が石になれば治して話を聞けるのだけれど、なかなか死なずに石にだけなるなんて幸運はないだろうと期待はしていなかった。

 

 

その夜。

レオの研究室の扉が叩かれた。ベッドの上から外の様子を魔法で確認してみる。今は平時より格段に防御機構が高められているのでそう簡単には侵入してこれないはずだが念のために研究室全機能を開放しておく。

扉を叩いていたのはマクゴナガルだった。

 

「ミスター・テイラー! 起きなさい! 緊急です! 一緒に来なさい。」

 

どうやら何事か、恐らくは秘密の部屋関連で何かあったようだ。

すぐに準備してマクゴナガルに連れられて医務室に到着する。医務室にはダンブルドア校長、マダム・ポンフリーがベッドの上に横たわる一人の生徒を見ていた。確か、グリフィンドールの新入生のコリン・クリービーだったはずだ。

 

「こんな夜遅くにすまん、レオ。生徒に犠牲者が出てしまった。不幸中の幸いだが石になっているだけで死んではおらん。前の猫の時と同様に回復させることはできるかの。」

 

「診せてください。……前回と同様ですね、不完全に作用しています。これならば問題ないでしょう。」

 

コリンの頭に手を置き猫と同様の手順で解呪していく。飛び起きるコリン。

 

「わぁあああああ! ……あれ? な、あー、え。あっ! ダンブルドア先生! 僕お見舞いで、蛇が、カメラを、そしたら……。」

 

「大丈夫じゃ、落ち着きなさい。ポピー、安らぎの水薬の用意を。」

 

安らぎの水薬を飲んで落ち着いたコリンは何があったのか話し始める。クィディッチの試合で怪我をしたハリー・ポッターのお見舞いの為に一人で夜に出歩くのは危険と知りながらも我慢できずに来てしまったこと。その途中で何かが這いずる音と自分のことを見ている気配を感じて持っていたカメラで捉えるためカメラを構えて振り返った。その先には巨大な蛇がこちらを見ていた。次の瞬間には体の自由が利かなくなり気づいたらベッドの上だったらしい。

マクゴナガルは溜息をつく。

 

「お見舞いをしたいのは分かりますが、時間を選びなさい。ミスター・テイラーがいたからこうして元に戻れたのです。一歩間違えば命を落としていたかもしれません。グリフィンドール30点減点です、これに懲りたら危険な真似はしないことを肝に銘じなさい。」

 

「はい……。ごめんなさい。テイラー先輩もありがとうございます。」

 

レオはコリンのカメラを解析中で話は聞いていなかった。カメラのフィルムはぐずぐずに溶解しておりレンズも粉々になっていた。だが猫やコリンの体に比べて残留している魔力は多く解析が進みそうだった。

 

「ふむ、大蛇か。やはりスリザリンの遺したものとみて間違いないじゃろう。レオ、正体は判明したかのう。」

 

「今までの証拠と大蛇ということを考えてバジリスクとみて間違いないかと。猫は状況を見ていないのでわかりませんが何かに反射した目を見て、クリービー君はカメラ越しに見たのでバジリスクの即死の魔眼を軽減できたのでしょう。」

 

「バジリスクか……。対策を講じねばならんな。レオも協力してくれんか。」

 

「解りました。秘密の部屋とバジリスクには興味がありますし喜んで協力します。」

 

(幸運にも石になった人と緩衝材になったカメラを解析できた。これで魔眼防御はどうにかなりそうだ。さてこれからどうしましょうかね。継承者の出方を待つか、こちらから何か行動をしていくか。)




純血の家系から情報を得ようとしたり調査したりしましたが結局はコリンとカメラの解析と証言でバジリスクであるとの結論に至りました。

ハーマイオニーにプレゼントしたネックレスはレオの指輪の防御に使われている魔法式(まだ紹介してないのも含む)と同じものが使われています。ただ、強度は指輪ほどじゃないので数回使用したら壊れてしまいます。

顔が熱くなるハーマイオニー。ちょっと自覚が出てきました。

ハリーは原作同様にドビーブラッジャーに腕を折られました。岩心がいないので骨抜きにはなりませんでしたが、大事を取って一日入院となりました。

では次回お楽しみに。


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27. 決闘大会 前編

タイトル通りの決闘大会です。原作の決闘クラブの代わりですかね。

レオのチートがこれでもかと発揮する予定です。
とりあえず前後編です。

では27話どうぞ。


秘密の部屋の怪物がついに生徒を襲う。

本当ならばその知らせはマグル生まれの生徒を恐怖させるものだった。

だが、犠牲者はすでに回復しており、怪物の正体もバジリスクであると判明している。

正体不明の怪物よりは正体が解っている分安心できる。更には見ただけで即死する魔眼の対策もレナード・テイラーが完成させている。魔眼防御の眼鏡を生徒と教師分を作成、配布は完了だ。

これを装着することで即死することなく体への重圧程度に抑えられるとの事。しかしそれ以外のバジリスクの脅威を防ぐわけでは無いので依然として警戒は必要だ。

それでも生徒たちにとっては十分心強いものでありこの功績からレイブンクローには50点が加点された。

 

それからはバジリスクによる被害は発生しなかった。継承者も警戒されている中では迂闊に行動できないのだろう。レオの仕掛けた監視水晶にも怪しい存在は確認されていない。一応平和な学校生活が続いていた。

 

 

11月の後半に入り以前ダンブルドアと計画した免除課題のイベントの開催が決まった。

毎月の初めに開催され、事前にチームまたは個人を登録してクィディッチ競技場でレナード・テイラーと戦う。登録順に戦闘をしていって課題の条件を満たすか、生徒が全員戦闘不能または降参、あるいは制限時間で終了となる。制限時間までにチームの一人でも戦闘不能にならなければ寮に50点は獲得できる。この知らせを受けた生徒は新しいイベントに盛り上がった。

今までのレオの力を見ている生徒たちは諦める者も出ているが上位の実力者たちが結束してエントリーするとの情報が出ると期待が高まっていった。最終的には個人では勝てないと結論したのかほぼ寮ごとの上級生チームが参加者となった。

 

 

12月最初の土曜日。

クィディッチ競技場にはホグワーツの全員が集合していた。

 

「さぁ、やってまいりました決闘大会! クィレルやロックハートとは比べ物にならないあのレナード・テイラーを打ち破れる勇者は現れるのか!? 実況はいつもおなじみリー・ジョーダンがお送りいたします。解説には呪文学のフリットウィック教授にお越しいただきました。よろしくお願いしまーす!」

 

「解説を担当するフリットウィックです。よろしくお願いしますぞ。」

 

「さぁ、エントリー順にチーム紹介といきましょう!

まずはみんなの人気者、四年生ながらハッフルパフの代表ハンサム、セドリック・ディゴリー率いるハッフルパフチーム! 

次は騎士道精神で立ち向かう我らがグリフィンドールチーム! 頑張ってくれよ! 

続いてクィディッチチームを中心に結成されたスリザリンチーム! なんと今回の中で最多の50人編成だ。まさに勝てばよかろうなのだ、の精神だな、スリザリン! 

最後の寮はレナード所属のレイブンクローだ! 自分の寮だからって手加減する相手じゃないぞ、気をつけろよー! 

更にグリフィンドールの悪戯仕掛け人! フレッド、ジョージのウィーズリーズの登場だ! いったいどんなトリッキーなプレイを魅せてくれるのか!? 

そして最後は何と一人でのエントリーだ! グリフィンドールの才女、天才レナード・テイラーの愛弟子、ハーマイオニー・グレンジャー!」

 

続々入場してくる選手たちに惜しみない拍手がおくられる。

対して競技場の反対側からレオが入場してくる。その足取りや顔からは特に緊張は見られずいつもと同じだった。

 

「ラスボスのレナード・テイラーも入場しました。フリットウィック先生、どうです? 各チームの注目しているところなどありますか?」

 

「そうですね……。ハッフルパフはディゴリー君の指揮能力でどうなるかが肝でしょう。グリフィンドールはバランスが良い生徒が多いですが絡め手には注意が必要でしょうな。スリザリンはかなりの大人数なので連携が取れなければすぐ瓦解してしまうでしょうからそうならないような立ち回りができるかにかかってます。レイブンクローは寮監の贔屓を除いても個々の戦闘力ではトップですね。その力がテイラー君の通じるかどうか見物です。ウィーズリーズはその抜群のコンビネーションで翻弄できるか楽しみです。グレンジャーさんは一対一のまさに実力勝負になります。彼女は二年生ながら相当な実力者ですので正直一番注目しています。」

 

「はい、ありがとうございます。では早速初戦ハッフルパフチーム準備お願いします。」

 

ハッフルパフとレオ以外は控室に戻っていく。後半のチームが有利にならないように控室からは試合の様子は確認できないようになっている。

チームリーダーのセドリックがレオに握手を求めてきた。紳士的と聞いていたがその通りの好青年らしい。

 

「よろしくお願いします。全力でいきますよ、テイラー君。」

 

「こちらこそよろしくお願いします。僕も全力で迎え撃ちます。」

 

全力とは言ったが十の指輪の全てを使うつもりはない。指輪の機能の最終テストのつもりだ。

レオとハッフルパフチームの二十人は15m離れた開始位置に立つ。準備完了だ。

 

「準備完了です! それではダンブルドア校長先生、開始の合図をお願いします!」

 

「うむ。全力をもって素晴らしい試合になることを祈っておるぞ。では……はじめい!」

 

ハッフルパフはセドリックの指示を受け相手の周りに扇状に散開する。呪文での同士討ちを避ける布陣だ。対してレオはその場から動かず相手の出方を見ている。

 

スモクスリン(煙幕よ)。」

 

半数が煙幕を張って見えなくする。残りの半数が魔法で鉄球を生成させる。

 

フリペンド(撃て)!」

 

一斉に鉄球がレオ目掛けて射出される。ゴキンと鉄球がぶつかる音が響き渡った。それでもチームの誰一人として仕留められたとは思っていない。集中力を切らせず煙幕をじっと見る。

次の瞬間、扇の端の選手に向かって煙幕の中から高速でレオが飛び出してきた。驚いたのか対応が遅い。

 

ステューピファイ(麻痺せよ)。」

 

早速一人脱落。だが嘆く余裕はない。飛び出したスピードのまま、人間とは思えないスピードでレオが扇に沿って次々と各個撃破していく。事前情報から通常呪文は反射か消失させられると知っていたが焦って呪文を使おうとする。しかしスピードについて行けず次々やられていく。四人目がやられた時にはパニックになりかけたが、セドリックの一喝で立て直す。セドリックを中心に集合して迎え撃つ布陣に態勢を整える。すでに半分やられたがまだ諦めてはいなかった。だが一か所に集まったのは失策だった。

 

コルポリス・エラージセクインティア(物理的・拡大持続)。」

 

レオの呪文で一斉に押しつぶされるセドリックたち。上の圧力にこちらも呪文で対抗するがその隙をつかれ一人また一人倒されていく。

最後にセドリックが残った。

 

「降参しますか?」

 

「まさか。最後まで戦うよ、勝ち目がなくともね。」

 

その姿はグリフィンドール生よりも勇気ある戦士に見えた。

セドリックは剣を生成し射出する。レオはそれを呪文で弾く。レオの周囲を回りながら次々呪文を打ち出しては反射される。追い打ちのレオの魔法と反射される呪文を躱しながら戦い続けるセドリック。会場の全員がその姿を目に焼き付けた。それも長くは続かずとうとう魔力と体力が尽きたのか膝をついてしまう。

 

「素晴らしかったですよ。今までの生徒では一番強かったです。ディゴリー先輩。」

 

「ははは……。でも君の足元にも及ばなかったけどね。」

 

「まぁ、僕の力は魔法具だよりの所もありますけどね。素の実力はここまでの差ではないと思いますよ。では終わりです。ステューピファイ(麻痺せよ)。」

 

「決着―! いやー最後のディゴリー選手は非常に熱い戦いを魅せてくれましたね。全員が惜しみない拍手を送っています。解説のフリットウィック先生、今の戦いはどうでしたか?」

 

「ハッフルパフは連携も取れていて非常にいいチームでした。ただ煙幕を張ったのは良いのですが自分たちも相手を見えなくなることを十分に理解していなかったのでしょう。テイラー君の逆襲でたやすく瓦解してしまいましたからね。その後の一か所に固まるのも悪手でした。ですが最後のディゴリー君は素晴らしかったです。私も熱くなってしまいましたよ。」

 

「ありがとうございます。さぁて次はグリフィンドールチームの入場だ!」

 

グリフィンドールはほぼ7年生の上位陣で構成された十四人のチームだ。どのような手段を取るのか楽しみにしたいところだ。

開始位置で互いを確認する。ダンブルドアの開始の号令が響く。

 

グリフィンドールは二人一組になって横一列に並ぶようにして戦闘するようだ。

組の片方が一斉に武装解除を放ってきた。当然反射されるがもう片方が防御する。その流れが絶え間なく続いていく。

グリフィンドールの大将が声を上げる。

 

「いくら優れた防御魔法でもいずれ限界が来る! 攻撃と防御にそれぞれ優秀な生徒でコンビを組んでいるぞ。反射の魔法、その次の防御、最後に君に魔法が届くまでこの攻撃は止むことがないと思え!」

 

反射される魔法は全て防がれる。攻撃も止むことがない。このままいけばいくらレオの魔法具の障壁でも限界は来る! ……そのはずだった。

レオは反射を停止させ別の指輪の防壁を展開する。反射がされなくなったことで防御を一つ突破したと判断したグリフィンドールチームは全員が攻撃に転じる。だがレオに命中する前に全ての魔法は消滅していく。それでも防御が削れていると信じて攻撃を続ける。

十分後、グリフィンドールの全員は肩で息をするほど疲労していた。だがレオは何一つ変わらぬ様子で立っている。大将は両手を上げて宣言する。

 

「降参だ! ちくしょう、どうなってんだ!?」

 

「確かに僕の防御が反射のみならその戦法で突破は可能でした。ただその対策として別の防御機構も構築しています。自分の造った物の弱点は知っているのが普通ですから。」

 

「くそっ、でその防御はどんなもんなんだ?」

 

「秘密です。それを解析、推理して乗り越えるのもこの免除課題に必要なものですので。」

 

 

「グリフィンドールチーム敗北! 残念ですが寮杯獲得のためまた挑んでもらいたいものです。フリットウィック先生、レナードの防御がどんなものか解りますか?」

 

「…………。」

 

「先生?」

 

「……あっ、申し訳ない。集中してたのもので。大体の予想は付きましたが確証はないですな。それに今、私が言ってしまったらヒントになってしまいますからね、言えません。」

 

「うーん、聞きたいとこですね。さて次はスリザリンの番だ! クィディッチ同様反則上等の試合でレナードを追い詰めるのか!?」

 

スリザリンはクィディッチチームを中心に結成されている。キャプテンのマーカス・フリントがレオに話しかける。

 

「いつまでもいい気でいられると思うなよ。俺たちがぶっ潰してやるぜ!」

 

 

三度戦闘開始の合図が競技場に響き渡った。

先手はスリザリンだ。下級生を中心とした明らかに捨て駒の生徒たちがレオに向かって突っ込んでいく。順番に呪文を放ち反射され倒されていく。

それ以外の上級生たちは箒を呼び寄せる。箒で空高く舞い上がり時間まで逃げ切る作戦のようだ。

 

「おおっと、スリザリンさっきの威勢はどうした!? 時間まで逃げ切るつもりだぞ! 対してレナード・テイラーどうする!?」

 

「はっはっは! 勝てなくても負けなければいいのだ! これで50点はもらったぜ!」

 

地上の生徒を全員片付けたレオは上空の二十名弱を見上げる。クィディッチの選手は当然として他の生徒も箒の扱いが上手い者を選抜していると見える。

試しに呪文で撃ち落とそうとするが箒より呪文が遅いため簡単に避けられる。

 

(飛行魔法で一人ずつ撃ち落としてもいいけど、時間内には厳しいかもしれないな……。あまり強い魔法を使うと死んじゃうしなぁ。うーん……。さっきのグリフィンドール戦での吸収ストックでいけるかな。)

 

レオは手を上にかざす。その様子は特に誰かを狙っているようには見えない。

 

パテンティストレジ(貯蔵解放)エクスペリアームス(武装解除)ステューピファイ(麻痺せよ)スタトゥスプルビアム(状態雨)

 

手から光球が放たれる。箒よりも上空に上がったそれは弾け、呪文の雨を降らせる。

先程までの戦闘で『吸収』の指輪で防いだ魔法を『貯蔵』の指輪に貯めていたのだ。

それを一斉に解放し雨のように降らせたのだ。

突然の呪文の雨に慌てふためいた生徒たちは次々に呪文に撃ち抜かれて落下していく。

あらかじめ地面をクッション状態にしていたので怪我はないが大多数が脱落だ。

残った生徒は四人。レオは飛行魔法を全力で使用する。ハーマイオニーでさえ箒に匹敵する速度で飛べるのだ。当然レオはそれ以上。最新のニンバス2001であろうと勝てる道理はなかった。全員が叩き落されるまで三分もかからなかった。

 

「最後の一人も叩き落されたー! これでスリザリンの敗北です。作戦は消極的でどうだったんだとは思いましたがなんだかんだ生存時間は最高のタイムでした。ではいったん休憩を挟んで後半戦を行います。まだまだ楽しませてくれるはずだから期待しておくように!」




決闘大会前編でした。

ホグワーツ全眼鏡化。これには磨〇 映一郎先生も満足していただけるはず。
クィディッチの描写が無いのでリー・ジョーダン初登場。
セドリックは4年生ながらすでに相当な実力者として設定しています。

レオの指輪紹介 その4
・吸収
これまたそのままの効果。
放たれた魔法を吸収する。効果範囲は『反射』より小さい。なので装着者の近く以外の魔法には効果がない。
吸収上限はあるがそれはあくまで個別の魔法の強さの吸収限界なので生徒レベルが武装解除や麻痺などの弱めの呪文をいくら放っても突破は無理。
個人の力量を上げるか、悪霊の火や死の呪文などの上位魔法を使わないと突破できない。
突破してもある程度は吸収されるので威力減衰効果もある。

レオの指輪紹介 その5
・貯蔵
吸収で防いだ魔法を貯蔵する。
貯蔵の状態は魔法そのまま、あるいは魔力に還元して貯める。
魔法はそのまま自分のものとして使うこともできるし、魔力は指輪の動力にも使用する。
別に吸収で防いだ魔法以外でも自分でストックの貯蔵可能。
今回のスリザリン戦のように解放して雨のように降らせたのは指輪の効果ではなくレオの実力。指輪はあくまで貯めるだけ。

次回はレイブンクロー、双子、そしてハーマイオニー戦。
お楽しみに。


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28. 決闘大会 後編

仕事をして、アイドルのプロデュースして、空の上で蛸を狩って、水着鯖とレースに監獄……。
充実した毎日だ。

では28話どうぞ。


「さぁ、後半戦の開始だ! レイブンクローチームの入場! レナード・テイラーに一番影響を受けているこのチームがどういった戦いをするのか見ものだぜ。」

 

レオの勉強会にも顔を出している生徒たちで編成されたチームだ。レオが記憶している限りでは相当に魔法の理解と発動に優れた人たちだったはずだ。

あちらはこちらの小さな動きまで見逃さないように集中している。

 

「試合開始!」

 

試合開始宣言と同時に二人が左右から突撃してくる。

片方は煙幕や光といった魔法でこちらの視界を妨害してくる。

もう一方は壁を作りだしたり、動きを封じる魔法を駆使する。

攻撃をしないことからこの二人は妨害、足止め役だろう。本命は残りの生徒たちか。

何を企んでいるか見てみたいが一応これも課題の一環なわけなので行動を起こす前に潰してしまおう。そう決めて周りの妨害を吹き飛ばす。

 

フィニート・インカンターテム(呪文よ追われ)エクスパルソ(爆破)。」

 

全ての妨害を跳ね除け、ついでに二人を失神させて本隊に向かって移動する。その一歩目を踏んだとたん足の裏から大爆発が起こった。

 

「なんという爆発だ! これには流石のテイラーもひとたまりもないか!? というか本気で殺す気じゃないだろうな!? 容赦ないぜレイブンクローチーム!」

 

実況はああいっているがレイブンクローは全員あれが足止めが精いっぱいだと確信している。

レナード・テイラーとはこの程度でどうにかなるほど小さな存在ではないのだ。

 

予想どうり無傷で歩みを進めるレオ。だが一歩進むごとに爆発、粘着物質での足止め、剣の雨、様々なトラップが発動する。妨害役の二人に注意が向いているうちに透明化した生徒でこれだけの罠を仕掛けたのだ。だがこれでも移動スピードを遅くするだけ、ダメージには至らない。だが時間を稼ぐことが目的なのだ。そういった意味では大成功である。

 

「よし……。皆、準備は完了したか。」

 

「ああ。間に合ったぞ。」

 

「了解! 皆集中しろ! これで決めるぞ!」

 

残りの全員が杖を一か所に向けて構える。向ける先は勿論レナード・テイラーだ。

 

「「「エクスペリアームス(武装解除)エミッシオ(解放)! テンプス(収束)!」」」」

 

あらかじめ前に進む力のみを除外して発動して留めておいた武装解除を解放させ、一点に集中させる。計十の武装解除の呪文は集まり一つの大きな光球となった。

 

「「「「追加! エクスペリアームス(武装解除)! さらに、アクセレイト(加速)!  食らえぇえええ!」」」」

 

追加され、合計二十発分の武装解除の巨大な閃光。それが加速まで付加されてレオに向かって進む。

トラップを抜け、透明化した生徒も倒したレオはその光景を美しく感じた。

 

(いい……。全ての武装解除が無駄なく重なっている。全ては僕を、僕の防御ごと貫くためだけに全員が同じイメージを持って魔法を使っている。相当な特訓をしたんだろう。このまま受ければ最終防御層まで到達するな……。その後で追撃を受けたらダメージは必死。ならば……。)

 

「『反射』、『遮断』右腕集中。『増強』発動。結合解除式付加。母さん直伝の拳で迎撃させてもらう!」

 

レオの腕には幾重にも防御、補助、攻撃の魔法が施され眩い青の光を放つ。

赤の閃光と青の腕がぶつかり合う。一瞬の攻防。だがそれを見ていた全ての人は二つの魔法がぶつかり合う幻想的な光景を目に焼き付けていた。

 

勝敗を分けたのはやはりレオの『眼』であった。武装解除を束ねている部分を解除する式を拳に纏わせていたのだ。一瞬での作成であったため不出来な魔法ではあったが、それでも赤の閃光を緩めるには十分だった。青の拳に砕かれた光球は元の武装解除に分かれて殴り返される。この攻撃に全てを賭けていたレイブンクロー代表は防御をすることもできず等しく吹き飛ばされた。

 

「試合終了~! まさかの魔法を殴り返しての決着となるとは誰が予想しただろうか!? しかし、今の光景はこれからのホグワーツの歴史に語られることになるでしょう! フリットウィック先生、レイブンクローチームはどうでしたか?」

 

「今日ほど、教師になって良かったと思った日はありません。生徒たちが自分で魔法を考え、創り出し、あんなに立派に戦った。私は彼らを誇りに思います。テイラー君ももちろん同じです。」

 

「確かに今までで一番レナード・テイラーを追い詰めた感じがしますね。さーて続いては皆さんお待ちかね! 悪戯ではこいつらの右に出る者はいない、ウィーズリーツインズ! フレッド、ジョージ・ウィーズリーだ! だが相手はあのレナード・テイラーだ、生半可な悪戯じゃ通用しないぞ!? それでも俺たちを楽しませることができるのは確信してるぞ!」

 

 

「「イエーイ!!」」

 

二人は箒に乗って入場してきた。レオとしては彼らは真面目にこちらにダメージを与えるのが目的ではなく、大勢の前で悪戯グッズの宣伝をすることが大事なのだろう。レオが協力したことで色々なグッズができている。試作品もまだまだ多いがレオに対して使用することで性能実験をするつもりだろう。この大会が終わったら評価レポートでも提出してみるか。

 

色が変わるたび色んな感触を体験できるカーペット。発動者が任意で消さない限り増え続ける花火。前後左右上下が反対に感じるようになるスプレー。ありとあらゆる臭いを混合し、更に同時にどの臭いかも認識できるようにした臭い玉EX、等々。

どの悪戯グッズも良くできたものだった。彼らならば新しい悪戯専門店を開業しても問題なくやっていけると確信できるほどに素晴らしいものだった。

一通りの商品の宣伝をしたところで箒から降りる双子。最後は真面目にレオに挑むようだ。

結果としてはダメージこそ与えられなかったが、双子ならではのコンビネーションで奮闘し会場を大いに盛り上げることに成功していた。

 

「さぁて、みんな悪戯グッズは楽しんだかー! 双子の作ったグッズは最終調整次第販売開始だ! 今のうちに予約急げよ! 長かった決闘大会も次で最後だ。トリを飾るのはマグル出身ながら他の追随を許さない、既に七年生をも上回るとも噂されるグリフィンドールの才女……、ハーマイオニー・グレンジャーだー! なんと誰とも組まず一人でレナード・テイラーに挑むぞ。レナード・テイラーとの関係はホグワーツ入学前からの付き合いで魔法を伝授されるなど師弟関係だ。今日師匠を超えることができるのか!?」

 

「彼女は座学、実技ともに非常に優秀です。魔法戦闘をしているところは見たことはないですが期待しています。一人で挑戦なのは自信があるからなのか、自分の実力を試したいのか、どちらにしろ今までの集団での戦いとは違ったものになるでしょうから楽しみです。」

 

ハーマイオニーは堂々とした足取りで競技場に入場してきた。その姿をレオは真っ直ぐ見つめている。視線が交差し、二人は笑う。

 

「レオ! いくわよ!」

 

「来い! ハーマイオニー!」

 

二人は礼をする。それと同時に最後の決闘の幕が上がる。

 

 

先に仕掛けたのはハーマイオニーだ。魔法の閃光をレオに向かって放つ。当然そのままでは反射されるだけだ。だが、反射の範囲に入る直前に閃光が急激にスピードを落とした。反射されるのは決闘前から解っていたのでその有効範囲を調べるために測定用の閃光を速さを調整して当てたのだ。ゆっくりハーマイオニーに向かって戻ってくる閃光。

 

(今ので反射の有効範囲を正確に把握できた。次は……。)

 

考えているとレオが攻撃を放ってきた。肉体強化魔法を使って躱しながら距離を取る。レオも同様に強化して迫っていく。レオの攻撃を避けながら魔法を放ったり、生成した槍などを射出して攻撃を続けるが全て防がれる。

 

(魔力で推進力を持たせて射出した攻撃は反射は抜けても、その次で止まる。魔力以外での攻撃はもう少し進んで弾かれる。ということは呪文反射、魔力を消す防壁、対物理防御で構成されていると仮定できる。だとすれば……。)

 

ハーマイオニーは立ち止まり、自身の前に巨大な岩壁を作り出す。レオは当然横から回り込もうとするがそこにも壁が出現する。レオの周りが全て壁で覆われた。レオが壁を破壊するより一瞬ハーマイオニーが速かった。

 

「砕けよ壁!」

 

ハーマイオニーの号令で全ての壁が砕けて重力によってレオ目掛けて降り注ぐ。ダメ押しで巨大な鉄柱を打ち込む。

 

(鉄柱の推進力は魔力で生成しているけどレオの防壁の外だ。これならば魔力を消すこともできない、そしてこの大質量は受けられない!)

 

崩れた岩山と突き刺さった鉄柱を見ながらもハーマイオニーは緊張を解かなかった。

 

(やって……ないはずよね。今のを高速移動で避けたか、防御で耐えたか、あるいは別の手段か……。)

 

ふと違和感を感じ下を見る。

 

(!? 地面が波打ってる!?)

 

とっさに横に飛ぶ。次の瞬間には彼女が立っていた地面の下から魔法が放たれた。続いてレオも姿を現す。当然のように無傷だ。

 

「ちょっと焦ったよ。今の攻撃から僕の防御についておおよその検討はついたのかな?」

 

「一応ね。これが終わったら採点してくれない? それより今の魔法は何? 見たことない魔法だったけど。」

 

「今のはまだ試作段階の魔法で正式名称は決めていないんだ。地面を水のように潜ることができる魔法さ。未完成で土しか対応していないし、潜っても息はできない、視界もない、声が出せないから無言呪文しかできない、魔法の効果が途中で切れたら生き埋め。まだまだ完成には程遠いよ。今の攻撃で何か気づいた点はあるかい?」

 

「呪文が出てくる前に地面が波打ってたかしらね。だから避けられたわ。」

 

「ふーむ……。やはり実戦で使わなければ解らないこともあるね。……さて話はここまでにしようか、次の手はあるかい?」

 

(どうしましょうかね……。おそらくレオの防御を突破するには大質量での攻撃か、防御を打ち破るだけの強力な魔法が必要になってくる。質量攻撃は一回やってるから次はないだろうし、こうなったらあれを使うしかないかな……。)

 

実際、ハーマイオニーの推測はほぼ正解だった。『反射』は物理を防げず、『吸収』と『遮断』の範囲外の魔力には効果がない。最後の物理保護を抜けるだけの攻撃を吸収と遮断の範囲外から魔力で打ち込む先ほどの鉄柱での攻撃など当たればダメージを与えられたはずだ。しかしレオも動くし、迎撃もする。次は同じ手段は通用しないのは明らかだった。

強力な魔法、極論から言えばアバダ・ケダブラ(息絶えよ)などそれぞれの防御を一つずつ殺して破壊できる。連続で放てば防御機構が再展開する前にレオに直撃するだろう。

 

ハーマイオニーはレオをしっかり見て決意を固めた。

 

「レオ! 信じてるわ、あなたなら防げるって!」

 

ハーマイオニーの杖に魔力が集中する。そして生み出されるは呪われた火、『悪霊の火』だ。

観客席はどよめき、教師たちも驚く。まさか二年生で悪霊の火を使う生徒が現れるとは思っても見なかった。

炎は獅子の形になりレオに向かって走る。ハーマイオニーは制御に全神経を集中しているのか相当な負荷が襲っていた。

 

「まずいな。このままだとハーマイオニーも危険だ。楽しかったけど終わりにしよう。」

 

レオは両手を突き出し魔力を集中させる。顕現するは黄金に輝く一対の巨大な腕。

レナード・テイラーのとっておきの一つ、『巨神の腕』だ。

十メートルは優に超える腕が炎の獅子を受け止める。獅子は腕に嚙みつくがびくともしない。逆に放り上げられ蚊でも潰すかのように両手で挟みつぶされて消滅した。

 

炎の消滅と同時にハーマイオニーが仰向けに倒れる。悪霊の火は制御が難しく消耗も激しい。これで試合は終了だろう。

レオはハーマイオニーに近づき手を差し出した。

 

「まさか悪霊の火まで使えるとは思わなかったよ。僕の予想以上に強くなっている。まだまだこれから君は成長できる。僕が保証しよう。」

 

「ありがとう、私もっと頑張るね。でもまずはこの課題を乗り越えなきゃね!」

 

レオの手を取って立ち上がりながら杖を体に直に押し付けハーマイオニーは言う。この決闘の敗北条件は戦闘不能またはギブアップ。まだハーマイオニーは負けていない! 悪霊の火を使って倒れて、試合終了と判断したレオが近づくのを狙ったのだ。

卑怯かもしれないがこうでもしなければレオに一矢報いることもできない。

 

(だけど、これで魔法防御を抜けてゼロ距離で魔法を放てる! この距離なら絶対に躱せない!)

 

エクスペリアームス(武装解除)!」

 

レオの胸で赤い閃光が炸裂した。

 

 

 

ハーマイオニー渾身の武装解除が放った光は眩しく競技場の皆が一瞬だが目をつぶるほどだった。誰もが目を開けた次の瞬間にはレナード・テイラーが破れている光景を想像した。

 

だが、現実の光景は想像とは別だった。ハーマイオニーは悔しさを顔を歪ませている。杖の先には誰もおらず、先ほどの武装解除は競技場の端に命中していた。

レナード・テイラーはなぜかハーマイオニーのすぐ後ろに立っている。

 

「いやいや、冷や汗をかいた。今のは正直ギリギリだった。だけどこれで本当に終わり。研究室で待ってるから目が覚めたら来てね。」

 

ハーマイオニーは声の方に振り向くがそれより先に失神の魔法が胸を貫く。

これで全試合終了だ。

 

「決まったー! ハーマイオニー・グレンジャー惜しくもレナード・テイラーには及びませんでした。しかしとても二年生同士での決闘とは思えない内容でした。正直びっくりしっぱなしで実況じゃなくて絶叫してただけになってたぜ、ゴメン! でも皆も俺の気持ちは分かってくれるよな!? そんだけスゲー内容だったぜ! フリットウィック先生はいまの試合どうでしたか?」

 

「テイラー君がもの凄いのは重々承知でしたが予想以上だったと言わざるを得ませんな。それよりも予想外なのはグレンジャーさんです! 大人の魔法使いでもあそこまでの戦闘をできる人はそうそういませんよ。まさか悪霊の火まで使えるとは。彼らはまだまだ若い、これからの魔法界をあのような若者がどのように変えていくのか非常に楽しみです。

最後に機会があれば私もテイラー君と決闘したいですな。若い時の決闘チャンピオンの血がうずいて仕方ありません!」

 

「おおっと! まさかのレナード・テイラーVSフィリウス・フリットウィックが実現か!? これからも俺たちのことを楽しませてくれそうだぜ! 第一回決闘大会はこれで終了だ! 次回は未定だが今日の戦いを見て参加したい奴はどんどん参加可能だ! 目指せ、打倒レナード・テイラー!」

 

この日の決闘大会はどの寮も等しく大いに盛り上がった。自分たちの寮は勿論、他の寮の試合も全然違う内容で飽きることが無かった。そしてこれに触発されて生徒全体が魔法戦闘の練習に力を入れる結果となった。




レナード・テイラー全戦全勝! まぁ、チート装備使ってますし当然か。

レイブンクロー生は一番レベルアップしています。今後も強化は続きます。

双子はほぼ宣伝目的。レオがバックに着いたので4巻の優勝賞金がなくてもいいくらいになってる。

ハーマイオニーはすでに教師や上位死喰い人レベルになりました。あとは経験を積むだけ。

『巨神の腕』……レオのとっておきの一つ。光で構成された巨大な腕。攻防一体の魔法。大抵の敵はこれで撲殺可能。色々設定あるがまたいずれ。

ヒロインであろうと容赦なし。相手への敬意があるからこそ失神させた。

強さはフル装備レオ>校長≧御辞儀>レオ父>教師=上位死喰い人(ベラトリックスなど)=レオ≧ハーマイオニー>死喰い人=闇払い>セドリック>大人>生徒な感じで。

レオの指輪紹介 その6
・増強
身体機能強化。使用魔力量に比例して強くなる。身体能力以外も五感も強化可能。
単純なので魔力効率が良いという利点もある。

レオの指輪紹介 その7
・守護
物理保護がメイン機能。最低値でも拳銃程度なら防御可能。こちらも使用魔力量に比例して強くなる。
決闘大会では使用していないがプロテゴとしても機能できる。この場合MAXまで魔力を使うとプロテゴ・マキシマになる。

レオの防御は反射→吸収→遮断→守護の四層になってる。
突破は一層ずつ強力な魔法で打ち破るか、最後の守護を物理で破るかの二択。

では次回お楽しみに。


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29. 焦り

ハリポタの二次創作は色々あって楽しい。
オリ主、転生、過去改変、等々。
オリ主でも所属寮で話が変わってくるしまだまだ飽きそうにない。

では29話どうぞ。


決闘大会の翌日。

ハーマイオニーはレオの研究室に訪れていた。

目的はレオの防御機構や最後の攻撃について色々聞きに来たのだ。

 

「来たわよ、レオ! さっそく色々聞かせてもらいましょうか。」

 

「よく来たね。まずは君の答えを聞こうかな。その次に答え合わせだ。」

 

ハーマイオニーは決闘から導き出したレオの防御についての考察を話していく。

予想よりかなり正解に近い答えにレオは驚く。

 

「防御の予想はこんなところね。最後の攻撃を避けたのは姿くらましだとしか思えないのよ。ホグワーツでは不可能だと言われているけど、何かしらの抜け道があるんじゃないかしら。どうなの?」

 

「それじゃあ、一から解説していこうか。僕の防御は四種類存在する。『反射』、『吸収』、『遮断』、『守護』の四つ。『反射』は魔法を跳ね返す、『吸収』は魔法を吸収してそのまま魔法を利用したり魔力に変換したりする、『遮断』は魔力を遮断して魔法の威力を削ぐ、『守護』は基本的にプロテゴ(護れ)と同様の効果。それぞれには弱点もある。『反射』と『吸収』は物理攻撃には無意味だし、効果上限もある。『遮断』は対精神作用がメインだから魔法と物理防御はそこまでじゃない。『守護』は普通の魔法のプロテゴ(護れ)と同様でそこまで差がない。この四つを同時展開することでアバダ・ケダブラ(息絶えよ)以外は僕に直接飛んでくるような魔法は大抵対処可能だ。けど決闘でハーマイオニーがやったように許容以上の物理攻撃を効果範囲外から打ち出すようなものにはこれだけじゃ防げなかったよ。それとダンブルドア校長のような強力な魔法使いだと学生の魔法のように何発も無防備で受けられないね。防御が破られて突破されてしまう。」

 

「なるほどね……。大体の予想は合ってたけれど、完璧には理解してなかったのね。対抗方法が解っても実行は難しそうね。レオの反撃なんかも考慮しなきゃいけないし。」

 

「まぁ、そうなるね。次の説明にいこうか。ハーマイオニーの予想どおり最後の回避は姿くらましだ。ホグワーツに一年もいるんだから姿くらましを防ぐ魔法を突破する方法なんて見つけられるよ。最後の君の攻撃はタイミング的に完璧だった、そのままじゃ直撃だった。そこで指輪の一つ、『聡明』を使わざるを得なかったよ。これの効果は高速思考だ。魔法は頭で使うものだからそれを高速化することで瞬時に発動できるようになる。これを使ったからギリギリ姿くらましが間に合った。本当にギリギリだったんだよ。」

 

「あの時は決まった! って思ったんだけどね。それに実戦だったらその後のことを考えるとレオには余裕があっただろうし、まだまだ勝てないわね。」

 

「落ち込むことはないよ。君は僕を除けばおそらくホグワーツで一番の生徒だ。教授たちとも戦う力は持っているし、発想や機転も申し分ない。大抵の脅威には立ち向かえるんじゃないかな。」

 

「そういわれると嬉しいけど、まだまだ満足はできないの。もっと精進しなくっちゃ!」

 

実際に戦ってみてレオとの距離を改めて感じたハーマイオニーだったが心は折れていない。これからも多くの分野で力を伸ばすであろうことを確信できる顔つきをしていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ジニー・ウィーズリーは焦っていた。

この焦りがどこから来るものかも解らないがとにかく焦っていた。

 

いつからこんな風であったのだろうか?

 

ホグワーツに入学して兄たちと同じグリフィンドールに入れた。それだけではない憧れのハリー・ポッターとも同じ寮だ!

それからは授業や宿題と忙しかったが充実した日々だった。普通の友達ももちろんできたが、私だけの秘密の友達ができた。家族の誰かからこっそりもらった書き込んだら返事をくれる魔法の日記と毎日話をした。

誰も知らない私だけの友達、しかも彼は物知りでユーモアもあって話していて飽きることが無かった。私は日記の中のトム・リドルに夢中になって夜遅くまで書き込む日々が続いて、居眠りすることが多くなっちゃったけど止めることができなかった。

 

フィルチの猫が石にされて秘密の部屋が開かれたとちょっと騒ぎになった。

その頃からだ、焦りを感じるようになったのは。それだけじゃない、授業中だけじゃなく廊下を歩いているときも意識が消えることもある。

マダム・ポンフリーに元気が出る魔法薬を処方してもらったけど効果はあまりなかった。

トムはただの過労だと言っているのでそうなのだろう。

 

猫の次は同じグリフィンドール生のコリンが石にされてしまった。

けれど生徒なのに防衛術の先生もやってるレナードが直してくれたみたい。コリンや先生たちの話から秘密の部屋の怪物はバジリスクという蛇だそうだ。その目を見ただけで死に至るという恐ろしい存在だ。

でもレナードが生徒全員に魔眼防御用の眼鏡を配布したからみんなそこまで危機感は感じていない。移動中も一人にならないようにしているから継承者も迂闊には動けないんだろう。

 

それなのに私だけは言いようのない危機感を感じていた。

 

それから日に日に焦りが増して意識がなくなる時間も増加していった。

さらに書くことが無いのにトムの日記に書くことがどんどん増えていった。

トムはレナードのことをすごく気にしているみたいだった。どんな小さなことでも知りたがるし交友関係なんかも聞くようになっていた。トムがレナードのことばかり聞いてくるからなのか気づいたら授業も彼の行動を全て観察して、上級生にも彼がどんな人物なのかどんな魔法を使うのか調査をするようになっていた。

 

なんでこんなことをしているんだろう?

 

レオとハーマイオニーが一番仲が良いと知ってからはハーマイオニーにも注目することが増えた。どうしてか解らないけどレオには敵意を向けている気がする。ハーマイオニーにも何かしてしまいそうな自分がいる。

 

私はどうなってしまっているのだろう?

 

決闘大会を見た。どのチームもすごかったが、ハーマイオニーは一番だった。

でもそれを連戦しながら打ち破るレナードはもはやどう表現していいか解らなかった。

あいつは危険だ。なぜかそんな思いが私を支配していた。

 

その夜、決闘大会についてトムに日記に書き込んでいく。私の記憶はそこで途切れた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

この僕、トム・リドルが秘密の部屋を開いてから50年経過した。

馬鹿な小娘を騙して魂を手に入れて力を増し、ついに再びサラザール・スリザリンの意思を実行する機会を得ることができた。

だが、穢れた血を殺し損ねたばかりか石化も解除され、怪物がバジリスクであることも露見してしまった。

レナード・テイラー。生徒なのに非常に優秀で闇の魔術に対する防衛術の教師として教えている。今までも様々な魔法や魔法薬を発表している天才だ。噂では奴の持つ『眼』が特別らしい。まさかバジリスクの石化を解除するほどの力を持っているとは想定外だった。

おまけに即死の魔眼を防ぐ魔法具まで作り出してしまうとは。マグル生まれの穢れた血を一掃する前にあいつを排除しなければならないようだ。

 

ジニーを使って調査したところレナード・テイラーは穢れた血のハーマイオニー・グレンジャーという小娘と仲が良いことが判明した。これは使えそうだ、いざという時には利用してやろう。

 

レナード・テイラーに挑む決闘大会が開催されるようだ。相手の力量を調べるには絶好の機会だ。弱点などが判明すれば万歳だ。

結果としてはレナード・テイラーの力は解った。それはいいのだが、……想定外だ。想定より段違いに強い。全盛期の僕、ヴォルデモート卿なら問題ないだろうが、今の記憶に過ぎない僕じゃ厳しいだろう。バジリスクをけしかけても確実に屠れるとは限らない。

 

ならば……。あの小娘を使うしかないか……。この体を使って呼び出してバジリスクを使って秘密の部屋まで攫う。魔眼防止の魔法具は即死は防げるが動きは鈍るからその後丸呑みにして秘密の部屋に招待だ。人質として存分に使ってやろう。散々僕の邪魔をしたんだ。じっくりいたぶって動けなくして目の前で大切な生まれそこないの穢れた血を殺してやろう。

ふふふ、今からレナード・テイラーの苦痛と恐怖で歪む顔が楽しみだ。




ジニーとトムの回想でお送りしました。

トムとしては石化解除できるレオが最優先排除対象です。
正直ダンブルドアより厄介ですからね。最初はバジリスクか自らの手でなんて思ってましたが決闘大会を見てビビってしまいました。

レオの指輪紹介 その8
・聡明
思考速度の高速化。
魔法の発動はイメージが重要であると本作では設定しているので、思考の高速化は魔法の発動速度に直結します。それ以外にも最適な行動や魔法の選択。『増強』で視力、反射神経を強化して『聡明』も使えば防御が無い場合の回避に使用できる。
奥の手で分割思考をすることで同時に複数の魔法も発動可能。ただし負荷もかかる。

では次回お楽しみに。


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30. 蛇の王の願い

この話が秘密に部屋編で一番書きたかった話です。

では30話どうぞ。


「ハーマイオニー……。」

 

授業が終わり図書館で本を読んでいたら声をかけられた。声の主を見るとジニーだった。最近はちょっと疲れているのか調子が悪そうだ。

 

「どうしたの? 何かあった?」

 

「あのね、優秀なハーマイオニーに折り入って頼みたいことがあるの。誰にも聞かれたくない話なの。三階の女子トイレ、嘆きのマートルのトイレがあるでしょ? そこなら誰も来ないと思うから夕食後、消灯までのちょっとの時間でいいから一人で来てほしいの。お願い!」

 

それだけ言ってジニーは走り去ってしまった。

話って何だろうか? いくらレオから魔眼防御の眼鏡を貰っているからといって一人では危険だし、最近の様子を考えると無視するわけにもいかないよね。とりあえず行って話だけでも聞かなくちゃ。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

夕食後、寮の門限まであと十分の時間に三階の女子トイレに到着した。しかしジニーの姿はなく、おまけにマートルの気配も感じられない。

不審に思っていると凄まじい気配がトイレの奥から溢れ出した。何か巨大なモノが這い出てくるような、不気味な感じだ。

 

(ここは……マズいわ! 急いで逃げなきゃ!)

 

トイレから飛び出し走り出した瞬間、トイレから巨大な蛇の頭が出てきた。蛇はこちらを見る。つい後ろを振り向いてしまったので目が合ってしまった。その瞬間、ネックレスから嫌な音がした。走りながら確認するとひびが入ってる。おそらく後1~2回しか耐えられないだろう。肉体強化を施して全速力で離脱準備に入る。

 

ステューピファイ(麻痺せよ)。」

 

肉体強化がかかるわずかな隙をついて失神呪文が飛んでくる。とっさに横に転がって躱すがバジリスクに追いつかれてしまった。

どこからかシューシューと声のような何かが聞こえてくる。バジリスクはその音に反応してこちらを丸呑みしようと大きく口を開けた。反撃しようと杖を構えるが正確に武装解除が杖を弾き飛ばしてしまった。

丸腰の私は恐怖で思わず目を閉じて助けを呼んだ。

 

「助けて……。レオ!」

 

「もちろん。」

 

「え……?」

 

バジリスクに吞み込まれる感触はなく、代わりに優しく抱き上げられているのを感じる。

目を開けるとバジリスクは遠くに、そしてすぐ上には最も優れた魔法使いの姿があった。

 

「大丈夫かい、ハーマイオニー。ちょっと待っててすぐ終わらせてくるから。」

 

「レオ! どうしてここに?」

 

「そのネックレスが破損すると僕に知らせが来る仕掛けが施してあったのさ。間に合って良かった。防御陣を創るからそこから出ないように。」

 

立たせた私の周りに薄い膜のようなものが囲んでいく。レオはバジリスクに向かって歩いていく。

 

「レオ! 死なないでね! まだまだあなたと一緒にいたいんだから! 絶対戻ってきてね!」

 

レオは笑顔で手を振りながら向かって行ってしまう。

私は祈ることしかできない。ならば彼の無事を祈り続けよう。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

バジリスクと対峙するレオ。その『眼』に映るバジリスクの美しさに思わずため息が出る。

 

「初めましてスリザリンの遺した怪物、バジリスク。ああ……。それにしても、なんて……。なんて美しいんだ! 君の体、鱗一枚一枚に施されている天然の対魔法。一目見るだけで致死成分の塊だと解る牙の毒。そしてその目! 良い、すごく良い! 最高だ!」

 

そうしている間にもバジリスクの目を見ていることで防御用の指輪に負荷がかかっている。

落ち着いておかなければ。

 

「ふぅ。うん、落ち着こう。さて君には実験材料になってもらおうか。そのためには出来るだけ無傷で死んでもらいたいが……、うんアバダ・ケダブラ(息絶えよ)も効きにくそうだ。どうしたものか。」

 

どうやって仕留めようか考えているとバジリスクが噛み殺そうと口を開けて迫ってきた。

『増強』を全開にして躱し続ける。試しに麻痺を当てるがまるで効いていない。

しばらく攻撃を繰り出していたがバジリスクが止まり互いに様子見に入った。

レオは無傷で殺す策を思いついた。

 

グラビトン(重力場生成)。10倍!」

 

急にバジリスクにかかる重力が増加した。動きが鈍ったところに四方八方から鎖が巻き付いていく。

 

「さて、ドラゴンを捕縛する用の鎖を改良したその鎖には行動阻害がびっしり付加されている。それでも君を押さえているのは数分が限界だろう。その間に終わらせようか。」

 

バジリスクはもがきそのたびに鎖は少しずつ壊れていく。レオの予測通り2分ほどで鎖はすべて破壊され突撃してきた。だが。

 

「一歩遅かったね。じゃあ、さようなら。」

 

突撃するバジリスクの目前に鏡が現れた。ただの鏡ではない。バジリスクの即死の魔眼の効果を100%反射し、対魔眼の防御もすり抜けるように調整された特別製だ。

バジリスクは鏡に映る己の姿を見つめる。次の瞬間には死の運命がやってくるだろう。

 

それでもバジリスク胸中には鏡を創り出した小さな魔法使いへの感謝しかなかった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

思えば生まれてから千年近く時が過ぎた。

我が主、サラザール・スリザリンの命でこの地下深くでほとんどの時を過ごした。

主は我に使命を与えた。

 

「バジリスクよ。私はここを去る。だがもしもここを、ホグワーツを、そして魔法界をマグルが滅ぼそうとするならばその全ての力をもってマグルと戦うのだ。その時は私の継承者が現れるであろう。願わくばそのような未来が永遠に来なければ良いのだが。」

 

千年前はマグルによって魔法使いは捕えられ、殺されるのが日常的に起こっていた。

ホグワーツを創った四人の賢者たちはここをそのようなことから守るための場、特に魔力を制御できない子供の為の教育施設として創った。

だが、主は他の三人と決別した。主は純血のみを受け入れるべきだと主張した。

 

「マグルの血が入った子供を受け入れれば無用な争いが起こる! まずは純血の魔法使いのみを受け入れるべきだ。マグル生まれや混血を受け入れるには今の世では厳しい。魔女狩りがなくなった平和な世界になってからにしなければ、下手をすれば魔法使いは全滅してしまうぞ!」

 

主は他の魔法使いよりもマグルの力を正しく認識し、そして恐れていた。

マグル生まれや混血も同じ魔法使いではある。だが、その親族のマグルに魔法使いの存在が発覚してマグル生まれを含む全ての魔法使いが死ぬことが怖かったのだ。本心では全ての子供を受け入れたかったのだ。だがより安全のために、より多くの命が助かるために純血のみを保護するしかなかった。

他の三人との議論は長く続いた。だが最終的には主はホグワーツを去ることになった。主はマグルから魔法使いを守るための旅に出るらしい。我にマグルからここを守る使命を残して永遠にホグワーツ戻ることはなかった。

 

 

それから千年近く経過したが我が戦うことは無かった。それでよい。我が不要とはそれすなわち世が平和である証拠だ。

だがある時、この部屋が開かれた。

主の継承者を名乗るあの小僧はあろうことかマグル生まれや混血を全てホグワーツから全て消すなどと言った!

冗談ではない! こいつは主の考えなど何も理解していない。マグルが攻めてきたわけでもないのに、平和な今の世界でなぜ純血以外を受け入れないのか!

我はこんな阿呆の言葉には従いたくはなかった。だが、この体が主の血を引く蛇語使いからの命令には逆らえないようになっていた。

そのせいで一人の子供を殺してしまった。

後悔した。絶望した。主からの使命は魔法使いを殺すことではない! 

我はこの命を使って愚か者からの命令を拒絶した。反動で寿命は大幅に減り動くこともできなくなったが、これで良い。ヴォルデモートと名乗る小僧は我が命令を聞かなくなると出ていった。残りの寿命は百年もないだろうし、次に命令されたら抵抗するだけの力は残っていない。

次にここに誰かが来る前に我の命が消えていることだけを願おう。

 

願いと言えば主が我に願いがあるか聞いたことがあったな。主の望みが全てと言ったら「自分の為の願いを考えておけ。」と言われたな。残りの命で叶えられる願いなどあるのだろうか。

 

 

数十年後、再び部屋が開かれてしまった。

今度は抵抗することもできず、また子供を我が魔眼で見てしまった。幸運にも死なすことは無かったがこんな幸運は二度もないだろう。

またくそったれな命令で子供を襲ってしまう。だが、守護者が現れた。

その守護者は強かった。我の目が効果がないばかりか全力での攻撃もかすりもしなかった。この者ならば我を殺してくれるに違いない!

体が重くなり縛り付けられる。振りほどいて突撃した先に鏡が現れた。

 

鏡を見る。我の姿が映った鏡を見る。

初めてだ。初めて我は己の姿をしっかりと認識した。

 

あぁ、気付かなかった。我の願いは自らの姿を見ることだったのか。

この全ての生命を絶命させる目のせいで我は今まで自分の姿をハッキリと見たことが無かった。水面を見ても我だけ霞がかったぼやけた姿が映るのみだった。

鏡には我の鱗、牙、目全てがはっきりと映っている。我はこんな姿をしていたのか……。

刹那の後には絶命する我が身。だがそれまでのわずかの間、しっかりと魂に我の姿を、この蛇の王の全てを刻み込もう。

 

最期に我の心の奥底にあった願いを叶え、継承者に操られた我を殺してくれた小さな魔法使いに最大の感謝を。




狙撃手トム・リドル。相手が最も嫌がるタイミングで正確に魔法でサポートしてました。なお、レオの登場と同時に全力で逃げ出しました。

本作のサラザール・スリザリンと純血主義
スリザリンはマグル生まれも混血も等しく魔法使いであると考えていました。
純血の魔法使いはマグル生まれたちを導く存在で誇りを持つべきだと主張してましたが時とともにその考えはねじ曲がって伝えられてしまいました。
本当は全ての子供を受け入れたかったが、危険性は少しでも排除したかった。
決別した時も残った三人に惜しまれ、スリザリン自身もホグワーツに危険が及んだら戻るつもりでした。

バジリスクは対マグル用の防衛装置。
御辞儀は真逆の思想であったが、スリザリンの末裔なのでバジリスクは逆らえずマートルを殺害。
これによって全力で抵抗したので50年前は犠牲者が他に出なかったという設定。ダンブルドアの監視もあるため御辞儀も諦めた。
バジリスクの魔眼は自身には効かない。鏡や水面を見ても正確に己の姿を認識できなくなる防御がかかっていたため。レオはそれを解除して魔眼を反射して絶命させた。

では次回お楽しみに。


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31. 暴かれる部屋

気が付いたらお気に入り登録数が5000近くて驚きました。
これからも頑張りますのでよろしくお願いします。

では31話どうぞ。


自身の魔眼でその長い一生を終えた蛇の王バジリスク。

レオは素早くバジリスクの死体を縮小し、懐から出した保存液で満たされた瓶に入れる。

 

「これでよし! 後は秘密の部屋と継承者だけか。」

 

とりあえずはすぐに攻撃されることは無かったが油断は禁物だ。それにハーマイオニーも防御陣を張っているとはいえいつまでも一人にするわけにはいかない。

怪我もしているかもしれないし大事を取って医務室へ行くのがベストだろう。

 

 

ハーマイオニーの所まで戻り防御陣を解除すると同時にハーマイオニーが泣きながら抱き着いてきた。

 

「レオ……! レオ!! よかった……、生きてる。本当に良かった……。」

 

レオの無事な姿を見て安堵したのかへなへなと座り込んでしまった。

 

「はは、腰が抜けちゃった……。でも本当によかった。怪我はないの?」

 

「うん、無傷だね。ハーマイオニーこそ怪我はないかい? とりあえず疲れているだろうし医務室に行こうか。よっと。」

 

ハーマイオニーを抱き上げる、いわゆるお姫様抱っこの形だ。

 

「レ、レオ!? 大丈夫よ、ちょっと休めば歩けるわよ!?」

 

「うん? 善は急げっていうしこのままでも別に問題ないだろう? ハーマイオニーは軽いし負担にもならないよ。」

 

そのままハーマイオニーを抱き上げたまま歩き始める。

ハーマイオニーは顔を真っ赤にしてされるがままだ。

 

(恥ずかしい……。顔から火が出るってこういうことなのかしら? ……待って。なんで恥ずかしいのかしら。ただ単に抱き上げられているだけなのに。え? ちょっと待って…………まさか、私レオのことが?)

 

今、初めてハーマイオニー・グレンジャーは自らの気持ちを、レナード・テイラーへの好意を自覚した。

自覚した途端、先ほどまでと比較にならないくらい顔が熱く赤くなるのが分かった。

流石にその様子もレオも気づいてぎょっとした。

 

「ハーマイオニー!? 大丈夫? なんか顔がすっごく赤いんだけど! もしかして何かしら呪いが……、いやその様子はない。とりあえず医務室に急ぐよ。」

 

「だ、大丈夫よ、レオ! 大丈夫だからあまりこっちを見ないで……!」

 

医務室に到着する。すでに消灯時間になっているが事情を話しハーマイオニーをマダム・ポンフリーに任せる。症状の原因が分からないのでマダム・ポンフリーに聞いてみたが、マダムはハーマイオニーの様子を見てため息を吐きながらレオに言った。

 

「思っていたより鈍感ですね。あなたがいたら彼女は良くならないからとりあえずは出てってください。心配は無用です。年頃の乙女に特有のものですから。」

 

ぴしゃりと扉を閉められ追い出されてしまった。

とりあえずはバジリスクを退治したことをダンブルドアに報告に向かうことにした。

 

 

 

翌日のホグワーツは歓喜に包まれた。

スリザリンが遺した秘密の部屋の怪物であるバジリスクが退治されたのだから無理もない。

マグル出身者は安堵し、それ以外も喜びにあふれている。

討伐者であるレナード・テイラーはホグワーツ特別功労賞が授与され、レイブンクローには100点が加点されることになり二年連続寮杯の獲得は確実であった。

 

だが、ほとんどの生徒は忘れていた。バジリスクはいなくなったがそれを操っていた黒幕、スリザリンの継承者の存在を。

 

その日の夕方にグリフィンドールのジニー・ウィーズリーが継承者によって秘密の部屋へ連れ去られた。

生徒たちは寮からの出入りを禁止され、教師たちは対応に追われている。

レオは手に入れたバジリスクについて色々と調べていた。

夜になっても飽きることなく調査を続けていたが、研究室の扉を乱暴に叩かれる音で中断せざるを得なくなった。

若干不機嫌になりながら扉の前を確認するとハリー・ポッターとロン・ウィーズリーだった。

研究室内に招くことなくマグルのインターフォンのように扉から声を飛ばして会話する。

 

「何の用? 生徒は出入り禁止だと思ったけど。」

 

「ジニーが連れ去られたんだ! 助けたいんだ、協力してくれ!」

 

「本当はお前に頼るのは嫌だけど、強いし頭も良い。秘密の部屋についても何か情報を掴んでいると思ったんだ。」

 

「何か知ってるなら教えてくれ! 速くしないと、ジニーが……僕の妹が殺されてしまう!」

 

「ちょっと待って。今バジリスクのこと調べてるんだ。もう少しで解りそうなんだ。」

 

その言葉に、これから殺されるかもしれないジニーより死んだ怪物のバジリスクの方を優先する物言いに二人は激昂した。

 

「なんだと! お前は何を言ってるんだ!? もういい! 僕たちだけで何とかするぞ! 行こうハリー!」

 

「ああ、やっぱりテイラーに頼ったのは間違いだった。一刻も猶予がない、急ごう。」

 

二人は夜のホグワーツを走っていってしまった。

研究室内でレオは相変わらず話を聞かない人たちだと独り言を言う。

レオが今調べているのはバジリスクの脳内に残った情報だ。教師たちからの依頼もありバジリスクから秘密の部屋への情報を入手できるか試していたのだ。

数分後、脳内情報の解析が終了する。すぐに今も秘密の部屋を探している教師たちに念話を送り職員室に集合させる。

 

 

教師が全員集合した職員室で解析結果を説明する。

 

「脳内に残った記憶からバジリスクはホグワーツのいたるところに張り巡らされた配管の中を移動していたことが分かりました。出口は複数あるようですが読み取れたのは最後に出てきたところ、ハーマイオニーが襲われた嘆きのマートルがいる女子トイレのようです。

校長、マートルが50年前の被害者なのではないですか?」

 

「そうじゃ、マートル・エリザベス・ウォーレンこそが唯一の被害者じゃった。

よし、秘密の部屋の入り口も判明した! さらわれた生徒の救出に向かおうぞ。マクゴナガル先生、スネイプ先生とわしが行こう。残った先生方は見回りと警戒をお願いします。レオも同行してもらっても良いか?」

 

「校長! いくら彼が強くともまだ子供、生徒であるのですよ!? 私は断固反対します!」

 

「大丈夫ですよ、マクゴナガル先生。自分の身ぐらいは守れます。それにこの『眼』が何かの役に立つかもしれませんし。」

 

(それに秘密の部屋を見てみたいし、継承者が何者かも知っておきたいしね。)

 

マクゴナガルは少しでも危険が及ぶようならすぐに逃げることを条件に同行することに渋々許した。

教師とレオはマートルのトイレに到着する。ハーマイオニーが言っていたようにマートルの気配はない。中に入るとゴーストであるマートルが恐怖にひきつった顔で宙で固まっていた。おそらくバジリスクの魔眼を見たのだろう。ゴーストにはこのような影響が出るのかと調べたかったが、我慢して先を急ぐことにした。

小さく蛇の彫刻がなされた蛇口がある手洗い台。いかにもスリザリンだなと全員が思った。

スリザリンの継承者、恐らくは蛇語使いでなければ開けることができないのだろうけれどそこに入り口があるのが解っているのなら他の手段もある。

 

エクスパルソ(爆破)。」

 

トイレの一角が爆破され地下深くに続く大きな穴が現れた。この下に継承者が待ち構えている秘密の部屋があるのだろう。

 

「吾輩が先に降ります。安全であれば合図を送りますので校長たちはその後に続いてください。」

 

先陣を切ってスネイプ先生が降りていった。数分後に守護霊が穴を昇ってきた。どうやらすぐに継承者がいるというわけでは無いようだ。

 

「では次はわしが行こう。マクゴナガル先生、レオの順で後に続いてくだされ。」

 

次々に降りていき、最後にレオが穴に入る。

 

(さてさて、秘密の部屋はどんなのかな。さっさと片付けてバジリスクの研究を続けたいなぁ。)

 

 

レオが降りて行った後、二人の生徒がこっそりトイレに入ってきた。




恋心を自覚するハーマイオニー。レオは恋とかそっちには鈍感で役立たずです。
さぁ、これからハーマイオニーの戦いが始まる!

バジリスクはひとまずそのまま保存液に入れて解析中。すぐに解体したら戻せないですし。
秘密の部屋の入り口は複数ある設定にしました。
これでスリザリンが女子トイレに入口を設置した変態扱いされないはず。
今作の設定的にもバジリスクの出番=マグルとの戦争の想定なので入口が一か所じゃ不便だと思ったのでこうなりました。

最後の二人は誰なんだー(棒)

では次回お楽しみに。


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32. 騒動終結

さて秘密の部屋編もあとわずかになりました。
次で終わりかな。

では32話どうぞ。


穴の終着点は暗い石のトンネルのようであった。

全員で明かりをつけて進んでいく。

どこに継承者が潜んでいるか分からないので周りを警戒しながらゆっくり進んでいく。

 

「うわっ!」

「いって!」

 

少し進んだところで何者かが穴から落ちてきた。

マクゴナガルが代表として偵察する。すぐに怒声が聞こえてきた。

 

「あなたたちいったい何を考えているんですか! 寮から出るのは禁止と言ったはずです! しかもこんなところまで来てしまうとは……。ウィーズリー、妹が心配なのは解りますがあなたが来たところでどうにもなりません。今すぐ戻りますよ!」

 

「でも! ジニーが! 僕の妹がさらわれたんだ! 大人しく待っているなんてできない!」

 

「先生! 僕たちも何かできることがあるはずです。手伝わせてください!」

 

レオと他の先生も戻ってくる。二人を見るなりスネイプは嫌な顔を隠そうしない。

 

「校長。即刻この二人を寮に戻すべきだと吾輩は思いますがね。それと罰則も与えるべきでしょう。この非常時に正確な判断もできないようですし、足手まといにしかなりませんな。」

 

「いや、二人とも連れて行こう。ここに残すなら誰かを守りとして残さねばならん。連れ帰るにしても戻っていたら時間がかかってしまう。どちらにしても戦力の分断に時間の無駄になる。ならば連れていくのがよいじゃろう。ウィーズリー君も妹のことが心配じゃろうし、彼らも立派な生徒じゃ。何か役に立ってくれるじゃろう。ここで話している時間も惜しい、すぐに出発しよう。」

 

「校長先生。時間をかけずにこの二人を戻せばいいんですね?」

 

「え?」

「何するんだ!?」

 

レオがハリーとロンの肩をつかんで付き添い姿くらましをする。

グリフィンドールの談話室に姿現わしをする。二人は何か言ってくるが監督生を見つけ事情を話す。

 

「パーシー・ウィーズリーさん。現在校長先生たちと秘密の部屋に突入しました。ですが、この二人が後を追ってきたので寮まで連れてきました。では校長先生たちの所に戻ります。暴走しないように監視お願いします。」

 

突然の情報に驚くパーシー。だが今言うことは一つだ。

 

「分かった。ただお願いだ、ジニーを……僕たちの妹を助けてください……!」

 

返事をせずに姿くらましをする。ジニー・ウィーズリーが今どうなっているかは解らないのだ。絶対に助けるなんて言うことはできない。

再び地下深くに戻ったレオ。なぜかダンブルドアは苦い表情に見える。

 

「二人をグリフィンドールの寮に戻しました。ウィーズリー君の兄で監督生のパーシー・ウィーズリーに任せたのでまたこちらに来ることは無いでしょう。」

 

「あ、ああそれでよい。」

 

ホグワーツではできないはずの姿くらましをしたのはやはり驚きだが気を取り直して進む一行。

途中にバジリスクの抜け殻があったりしたが特に妨害などなかった。しばらく進むと壁が現れた。壁には二匹の蛇が絡み合っている彫刻が施されており、上のトイレの蛇口同様いかにもスリザリンといった感じである。

 

壁を爆破して先を進む。壁の先は蛇の彫刻が施された柱がいくつも立っている細長い部屋であった。奥には巨大な石像が立っておりその足元にはジニー・ウィーズリーが横たわっていた。

 

「ミス・ウィーズリー!」

 

マクゴナガルが駆け寄る。レオたちも警戒しながら近づいていく。

 

「まだ息はあるようじゃの。しかしこれは……。」

 

「一刻も早く戻って治療しなければなりませんな。」

 

今回の第一目標はジニー・ウィーズリーの救出だ。それが達成したのならば早々に戻るのが賢明だ。だがそういうわけにもいかないようだ。

 

「レオ、どう思う? わしは彼女の魂が殆ど残っていないように思うのじゃが。」

 

「アルバス、どういうことですか?」

 

「ミネルバよ、このまま彼女を連れ帰ったところで回復はせんじゃろうし、確実な死が待っていよう。ここで継承者をどうにかする必要があるようじゃ。」

 

「ダンブルドア先生。ジニーから魔力的な繋がりが伸びています。この繋がりから彼女は魂を吸われていますね。その先はそこの柱の裏です。」

 

レオが指さした柱を全員が見る。その柱の裏から一人の少年が姿を現す。輪郭がぼやけて若干透けている。

 

「トム……。やはりお主じゃったか。」

 

「トム……? まさかトム・リドル、闇の帝王ですか!?」

 

マクゴナガルたちは驚く。いったいどういう方法を使っているか不明だが50年前の継承者そのものが現れた。

 

「よく来ましたね、ダンブルドア校長と連れの先生方、そしてレナード・テイラー……!」

 

まだ顔が崩れる前のハンサムな顔が怒りに歪む。

 

「トムよ。お主がどんな手段でこの場にいるのかはわしにも正確には理解しておらん。だがお主は過去の者じゃ。今を生きる者たちを、わしの大切な生徒たちをこれ以上危険にさらすわけにはいかん!」

 

ダンブルドアの杖から閃光が走る。だがそれはトム・リドルの体を素通りして後ろの柱を砕いただけであった。

 

「ははは! 流石に50年も時が過ぎて衰えたか!? この僕に魔法は効かない! 僕は記憶でしかないからね。そこに転がっている小娘を騙して魂を頂戴してこの姿を得たがまだ不完全だ。ゆえに魔法も受け付けない!」

 

「なんと……。どのような魔法……まさか。」

 

「はっ、可哀そうな老いぼれに教えてやるよ。僕は再び秘密の部屋を開くために当時の日記に自らの記憶を封印したんだ。いつの日かホグワーツからマグルの穢れた血を一掃するためにね。そこの血を裏切る者が僕の日記に書き込んでそこから魂を喰らい、僕の一部を入れて操ったのさ! まさかスリザリンの対極のグリフィンドールに継承者がいるとは思わなかっただろう?」

 

秘密の部屋に馬鹿にしたようなトム・リドルの笑い声がこだまする。

その様子を教師は悔しそうに見るが、レオだけは真剣に見つめていた。

 

「さて、全員杖を捨ててもらおうか。そこの小娘の命が惜しければ命令に従うことだ。悔しいがそのレナード・テイラーのせいで僕の計画はめちゃくちゃだ、逃げるしかなさそうだ。だが未来の僕、ヴォルデモート卿と合流し必ずや戻ってくるぞ!」

 

「ああ、トム。この無知な老いぼれに記憶を封じたことや今回の騒動の件を長々と説明してくれてありがとう。レオ、どうじゃ?」

 

「解析完了です。本体を潰せばジニーへ魂も戻るでしょう。『巨神の腕』!」

 

黄金に輝く腕が両手を合わせトムに突っ込んでいく。

 

「まっ、やっ、止め、ぐがぁぐるおああおあおおおおおおぉぉぉ…………。」

 

トム・リドルは持っていた日記と共に光に飲まれて消滅した。

 

「ダンブルドア校長、当たらないと確信しながらわざと魔法を使ったり、驚いたふりをしましたよね?」

 

「さて、何のことやら。傲慢で愚かなあやつが勝手にぺらぺら喋っただけじゃろう。じゃがそれで解析時間が作れたのなら問題なしじゃ。あとで解析の結果を詳しく知りたいの。」

 

「分かりました。そろそろ目が覚めるかな?」

 

継承者の日記が消滅したことでジニーの顔色も元に戻り、心拍や呼吸も正常になった。

 

「う、う~ん。あれ? ここは……。わっ!」

 

「ミス・ウィーズリー!」

 

目を覚ましたジニーをマクゴナガルが力いっぱい抱きしめる。ダンブルドアがその様子を笑顔で見守る。スネイプも僅かだがホッとしているようにレオは感じた。

 

「ミネルバよ、そのぐらいにせんとせっかく助かったのに窒息死してしまうぞ。」

 

「そ、そうですね。ミス・ウィーズリー、体は大丈夫ですか? どこか痛かったり気分が悪かったりしませんか?」

 

ジニーはようやく自分が今いる場所、どのような状態であったのか理解したようだ。みるみる顔が青くなって、泣き出してしまった。

 

「せ、先生。私、私が継承者でした! わたしなんてことを……! トムは、トムはどこに!?」

 

「大丈夫じゃ。もうトムは消えたし、誰も死んでおらん。君に非はない、全てはトム、ヴォルデモートのせいじゃ。君より優れた大人の魔法使いでさえもトムは容易く操った。誰も君を責めはしないし、もしそんな輩がいたらわしが許さん。」

 

偉大なダンブルドアの言葉で少しは落ち着いたのかジニーの涙は止まった。

 

「それではジニー・ウィーズリーも無事取り戻した! 継承者も消え去った! 戻るとしよう! レオ姿くらましじゃ、行き先は校長室で頼む。ウィーズリー夫妻もそこにいるはずじゃ。あと後でホグワーツでのやり方教えてくれんかの。」

 

「了解しました。皆さん僕の肩をつかんでください。」

 

全員がつかんだのを確認した次の瞬間、校長室に姿現しした。

音もない突然の出現にウィーズリー夫妻は驚愕した。だがそれ以上に命はないとも覚悟していた娘が生きて現れた方が数十倍の衝撃だった。

 

「ジニー!」

 

両親に抱きしめられ、ジニーもまた抱きしめ返す。親子は泣きながら喜び合った。

 

「ダンブルドア、ああダンブルドア! やはりあなたは最高の魔法使いです! 娘を助けていただいてありがとうございます!」

 

「いいや、わしは大したことはしておらんよ。秘密の部屋の入り口を見つけたのも、継承者を倒したのもそこにいるレナード・テイラー君じゃ。」

 

「君がジニーを助けてくれたのか? テイラーってことはまさかアースキンの息子かい? 流石だなぁ。」

 

「誰の子だろうと私たちの娘の命の恩人よ!」

 

そう言ってレオもウィーズリー夫人が抱きしめてきた。

しばらくジニーともども抱きしめられていたがジニーの体を休めるためにウィーズリー一家は医務室へ向かった。マクゴナガルはジニーの兄たちへ無事を知らせに行ったようだ。

 

解放されたレオは中途半端になっていたバジリスクの解析の為、研究室に戻る。

こうしてホグワーツを騒がせた秘密の部屋の騒動は終結した。




ダンブルドア「ハリー来た! よっしゃ連れて行くぞい!」→「なん……じゃと……!?」

原作主人公ハリー・ポッター今年もラスボス戦出番なし!
今後もこんな感じになってしまう気がするが、もう諦めました。
ダンブルドアとしてはハリーの経験値として連れて行きたかったが強制退場でした。
ちなみに後で減点+罰則のコンボをくらいました。

若御辞儀、丁寧に説明。ダンブルドアがわざとわからんふりをしたので調子に乗りました。まだまだ若いということでしょう。

レオ分霊箱解析完了。効果や破壊手段もバッチシです。

では次回お楽しみに。


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33. 二年目が終わって

秘密の部屋編終了です!
大体一巻辺り2カ月ペースですかね。更新速度は落とさずに行きたいですね。

では33話どうぞ。


バジリスクが死に継承者も滅んだ。

この知らせは全校中に即座に広まり、夜中にもかかわらず大広間でお祝いのパーティーが開催されどの寮も朝までお祭り騒ぎが続いた。今日ばかりはいつもは厳しいマクゴナガルも大目に見て一緒に祝っていた。

 

ウィーズリー兄弟たちはレオに対して終始感謝し続けていた。普段はレオに対して突っかかってくるロンでさえ素直に感謝をしていた。

ジニーが医務室から戻ってきてパーティーに加わった。すぐにレナードを見つけ駆け寄ってくる。

 

「レナード! 本当にありがとう。あなたは命の恩人、いくら感謝しても足りないわ。もし何か困ったことが有ったら何でも言って! 絶対に手助けするわ! ……まぁ、あなたが困ってることで私が力になれるとは思えないけどね。」

 

やってきたウィーズリー双子にジニーがもみくちゃにされる。レオにも飛び火してきそうなので研究室に避難する。騒ぎが起こるといつも研究室に逃げている気がするが、自室が一番落ち着くのだから仕方がない。なんだかんだで色々あって疲れたので今日は寝ることにした。

 

 

次の日から平和で普段と変わらない日々が戻ってきた。

授業があり、宿題があり、休日があり、クィディッチもある。寮の点数に一喜一憂する、そんな当たり前の日常が流れていった。

闇の魔術に対する防衛術の免除課題は決闘大会でのハーマイオニーとの決闘内容からほぼ全ての生徒が諦めてしまっていた。今ではたまにある双子から決闘という名の悪戯商品紹介の場としてしか認識されていなくなってしまった。ハーマイオニーも今は勝てないと判断して自分の力を高めるのに集中している。

 

ハーマイオニーといえば一連の騒動が終結した後から少し様子が変であった。妙にレオをちらちら見たり、レオが話しかけたら答えに詰まったりするのだ。一週間ほどで元に戻ったのでレオとしてはそこまで気にはならなかったが。

それよりもレオは免除課題に挑むものがいなくなったのでいつもの勉強会や双子の悪戯グッズの開発を全てキャンセルしてまでバジリスクの研究に没頭中だ。魔眼や毒の解析など興味は尽きることは無い。

 

 

期末テストも無事終了。ほとんどの生徒は闇の魔術に対する防衛術の成績は格段に伸びる結果であった。魔法の使い方の講義もしたので変身術や呪文学にも良い影響が出ており、レナード・テイラーに今年一年だけでなくこれからも教師を続けてほしいという要望が後を絶たなかった。

 

 

終業式の前日。

レオはダンブルドアに呼び出されて校長室に来ている。

 

「レオよ、聞かせて欲しい。継承者、過去のヴォルデモートが日記に記憶を封じた魔法はどのようなものであったのか。もし、わしの考えている通りならば今後の対策を考えねばならん。」

 

「あのトム・リドルは記憶と言っていましたが、日記には魂の一部が封じられていましたね。僕が昨年にケルベロスに施した魔法と似ていました。おそらく自分の肉体の外に魂を封じることで死に対する保険になるのではないでしょうか。魂の身の存在であるからジニーの魂を喰らうことで力をつけたのでしょう。」

 

「やはりか……。レオ、おそらくその魔法は闇の魔法の極致、分霊箱(ホークラックス)じゃろう。君の推察通り魂を物質に封じることで疑似的な不死をもたらす魔法じゃ。ただし魂を裂くのに人を殺す必要がある、しかも魂を裂いた影響は肉体にも現れる。」

 

「ふむ……。なるほど、だから去年見たヴォルデモートはあんなだったんですね。でも魂を一回裂いた程度であそこまでになるのでしょうか?」

 

「いや、あやつは複数の分霊箱を造っていると考えている。正確な数はまだ推測の域を出ないがの。……レオ、いずれヴォルデモートは復活するじゃろう。その時には力を貸してはくれんか?」

 

「僕にとって不利益にならなければ。そろそろ学年末パーティーの時間です。それでは。」

 

 

一人残されたダンブルドアは考える。分霊箱がどのようなものなのか、その総数はいくつなのかを。そしてレナード・テイラー……。あの力は凄まじい、今後も成長を続けるだろう。仮に敵対した場合、止めることは容易ではないだろう。最悪なのはヴォルデモートと手を組むことだ。昨年に闇の帝王もレオの力には興味を持ったに違いない。何が何でもこちらの陣営に引き込まねば。そして、ハリー・ポッター……。推測が正しければハリーは……。

これからも気を抜けないだろう。

 

 

学年末パーティー会場は今年も青と銅、鷲の紋章で飾られていた。

レナード・テイラーが秘密の部屋についてほとんど解決してしまったのでレイブンクローがダントツでトップであった。もはやどの寮も今年は無理だろうと諦めて二位争いをしている状態だった。二位はハッフルパフ、三位はグリフィンドール、四位はスリザリンだったが二位から四位は僅差であり最後まで熾烈な争いだった。

 

今日でレナード・テイラーの闇の魔術に対する防衛術の教師としての生活は終わる。

最後にスピーチを頼まれたので壇上に立つ。

 

「えー、皆さん、食べて飲んで話して楽しんでいますか? こんな話より食事とかの方が楽しいでしょうから手短にします。僕にとっても教師は初めてでとてもいい経験になりました。来年度からは新しい教師が来ますが、僕が教えたことを覚えておいてください。いつか自分と大切なものを守るための力になるはずです。僕は一生徒に戻りますが、忙しくなければ研究室に見学に来てもらってもかまいませんし、勉強会も続けますのでこれからもよろしくお願いします。一年間ありがとうございました。」

 

大広間の全員から拍手がおくられる。こうしてレナード・テイラーの教師生活は無事終了した。

 

 

ホグワーツから戻る列車。コンパートメントはレオとハーマイオニーの二人だけだ。レオはバジリスクやその他色々な分析結果をまとめている。ハーマイオニーはレオの顔をぼーっと見たり空を眺めている。時折、生徒たちが挨拶に来るが、中には夏休みの間に家庭教師をして欲しいなんて言い出す生徒までいたがレオも夏休みは研究の予定が入っているので断った。

ハーマイオニーはふと気になってレオに尋ねてみた。

 

「レオは来年からの授業は何を選択するの?」

 

「うーん……。魔法生物飼育学と占い学かな。ハーマイオニーは決めてるの?」

 

「まだ迷っているの。できれば全教科受講したいってマクゴナガル先生に相談したんだけど、時間的に無理だから特別な魔法具を使う必要があるみたい。使用の許可を取るだけでもかなり厳しいみたいなの。レオはどうしたらいいと思う? なにかアドバイスが欲しいわ。」

 

「特別な魔法具……。逆転時計(タイムターナー)かなぁ。なんにせよ全部はおすすめしないね。マグル学はハーマイオニーには不要だろうし、占い学は合わないだろう。数占い学、魔法生物飼育学、古代ルーン文字学の三つでいいんじゃないかな。それなら時間も余裕があるはずだから大丈夫だろう。」

 

「そうね、マグル学は大丈夫よね。私、レオに追いつきたくて、あなたに見て欲しくて焦ってたのかもしれない。うん、決めた。その三つにするわ。」

 

レオとしては全部受講することで逆転時計(タイムターナー)を実際に見てみたい気持ちもあったがハーマイオニーに無理をさせてまでする必要はないだろうと考えた。魔法省に研究の為と頼めば貸してもらうことも可能だろう。

 

 

もうすぐキングス・クロス駅に到着という時にハーマイオニーがレオに宣言した。

 

「レオ、私目標ができたわ。」

 

「どんなの? 新しい魔法とか?」

 

「いいえ、魔法は関係ないの。でも絶対に叶える、そう決めたわ!」

 

「まぁ、どんな目標でもハーマイオニーなら大丈夫じゃないかな。目標が達成したら僕にも教えてくれ。」

 

(私の目標はレオ、あなたを振り向かすことなのよ。人の心には鈍感なあなた相手だと苦労しそうだけど、もう決めた。絶対あなたと未来を歩くんだから。)

 

キングス・クロス駅に到着する。レオとハーマイオニーが降りると家族が待っていた。

 

「二人ともお疲れ様。今年はなんか大変だったみたいね。無事に帰ってきて何よりだわ。」

 

「レオ、教師はやってみてどうだったんだ? 決闘大会とかやったって聞いたが久しぶりに俺とも決闘しないか?」

 

父、アースキンの誘いはハッキリと断った。勝負が長引くことは確実だからだ。

 

「レオ君、娘を守ってくれたそうだね。父親として心から感謝する。ありがとう。」

 

「ハーミーにとってはレオ君は教師でさらには白馬に乗った王子様ってところかしらねぇ。」

 

「もう! ママ何言ってるのよ!」

 

顔を真っ赤にして母の口を押えるハーマイオニー。その反応に両夫妻はハーマイオニーの変化を確信して心の中で拳を握った。

 

(後はレオをその気にするだけ!)

 

(ハーミーの女としての魅力を引き出させるようにしなくっちゃ!)

 

母親たちは二人をくっつけるための意見交換会の開催を決定した。

二人は両親とともにそれぞれの家に帰る。

ハーマイオニーは帰り道、両親に告白した。

 

「パパ、ママ……。私ね、好きな人ができたの。」

 

「知ってるわ。レオ君でしょ。」

 

「彼なら安心して任せられる。花嫁姿が楽しみだ。」

 

ハーマイオニーが顔を真っ赤にしている時、レオは来年度はどんな学校生活になるか考えていた。

 

(一年目は賢者の石、二年目は秘密の部屋……。三年目も何か起こるのかな?)

 

こうしてレナード・テイラーの二年目は終了した。




ロンさんの手首が超回転! ジニーを助けたので態度がかなり良くなりました。ロンはシスコンですかねぇ。

原作より速く騒動が解決したため平和なホグワーツにすぐ戻りました。もちろん試験もあり。

二年目の原作との相違点は結構ありますね。
・ハリーが蛇語使いと認識しない
・アラゴグ関連無し ついでにハグリッドの冤罪関連もなし
・ルシウス・マルフォイは理事のまま ドビーについてもマルフォイ家のしもべのまま
・グリフィンドール剣がバジリスクの毒吸収してない
今後に影響してきそうなのはこんなとこですかね。

ハーマイオニーの変化を確信する両親たち。特に母親たちはかなり喜んでます。
そしてすでに家族公認。知らぬはレオだけ。

最後に本作タイトルについて活動報告でアンケート取ってます。よろしければお願いします。

次回予告!

一生徒に戻ったレナード・テイラー。また研究三昧の日常が戻ってくる。

だが、そんな日常も最悪の監獄より脱獄した凶悪犯によって崩れ去る!?

猫、犬、鼠、人狼に吸魂鬼。三年目は魔法生物だらけか!?

レオ「じゃあ、僕もペットを飼おうかな、いや創るか。」

ハー子「囚人とかどうでもいいから。レオとホグズミードでデートしたい。」

次回、3章 囚人には興味がない

こうご期待!

※本編の内容は次回予告とは異なる場合があります。御了承下さい。
でも新キャラのペットは出ます。


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3章 囚人には興味がない
34. 脱獄囚より一人の少女


今回から原作のアズカバンの囚人に相当する3章 囚人には興味がない スタートです!

それから活動報告でのタイトルについてのアンケートですが
ハリー0票、ハーマイオニー15票、その他2票でした。
一応、まだ変えませんがおそらくタイトルのハリー・ポッターがハーマイオニーに変わると思います。

では34話どうぞ。


1993年の夏休みはテイラー家にとって多忙な休みとなっていた。

闇の帝王の配下であり、大量殺人犯のシリウス・ブラックがアズカバンより脱獄したからだ。

闇払い局の副局長であるアースキン・テイラーは休みなく毎日朝早くから夜遅くまで対応に追われている。レナード・テイラーも魔法省からしつこくシリウス・ブラックの捜索のために魔法や魔法具の開発を依頼されていた。レオとしてはシリウス・ブラックに興味を持てなかったので協力はしていなかったが、あまりにしつこいため捕縛用の魔法具だけ開発して、捜索は難しいと嘘をついて関わらないことにした。

 

今日は久しぶりに一家全員が揃っての夕食になった。

 

「ああ~……。やっぱり我が家が一番だ~。愛すべき家族とくつろげる空間……。ここに帰ってくるために仕事をしてる……。一秒でも早くあのバカを捕まえなきゃな。」

 

「あなた、まだシリウス・ブラックは見つからないの?」

 

「そうなんだよ。どうやってアズカバンから脱獄したのかさえ不明だ。杖は処分されてたし何かしらの魔法を使った痕跡もない。レオはこれについてどう考えてる?」

 

「うーん……。実際に現場を見ないことには何とも言えないかな。そんな事より久しぶりの全員一緒での食事なんだからめんどくさいことは考えないようにしようよ。」

 

今日の夕食はフェリスが張り切って作ったので必要以上に豪勢だった。まるでパーティーでも開くかのようだ。

 

「そういえばレオ、ハーミーちゃんはどうしてるの? しばらく遊びに来てくれてないけど。」

 

「ハーマイオニーはフランスに家族旅行に行ってるよ。僕には毎日のようにふくろう便が来てるね。旅行の感想や魔法について色々とやりとりしてるよ。夏休み最終日には戻ってくるからダイアゴン横丁で買い物するつもり。」

 

「そうなのねぇ。どう変わっているかちょっと楽しみだわ。」

 

 

1993年8月31日。夏休み最終日。

ダイアゴン横丁で久しぶりにレオと会ったハーマイオニー・グレンジャーは変貌していた。

彼女を知っている人物は思わず夢かと思って頬をつねるだろう。

ボサボサだった髪は真っ直ぐになり、出っ歯も矯正して普通になっている。

ただそれだけでハーマイオニー・グレンジャーは劇的に変わった。男子だったら十人中八人ぐらいは振り向くような魅力的な少女に変身していた。

 

「しばらくぶりね、レオ! その……どうかしら? ちょっと髪とかいじってみたんだけど……。変じゃないかしら?」

 

「いや、正直びっくりした。髪とか変えるだけで印象って変わるものなんだね。うん、綺麗だ。前も別に変だとは思ってなかったけど今の方がいいんじゃないかな。その髪は魔法薬を使った?」

 

ストレートに綺麗だと言われるとは思っていなかったのか顔を真っ赤にしながら返答するハーマイオニー。その様子を両家の親たちはニヤニヤしながら見守っている。

 

「あ、ありがと……。こ、この髪はスリーク・イージーの直毛薬を使ってるの。でもかなり面倒だから毎日するにはちょっとね。」

 

「それだったら僕が魔法薬を調合しようか? 一度使えば好きに髪型を変えられるような薬を造れば一回で済むし、元の髪型にも戻せるよ。」

 

「そんな、私のためにいいの?」

 

「ちょっと早い誕生日プレゼントだと思っていいよ。誕生日にも別にプレゼントはするしね。さて今日の買い物をさっさと済ませちゃおうか。」

 

歩き出した二人の後ろを歩く親達はその様子を見ながら話している。

 

「いやー、あんなに綺麗になるものなのだな。レオのヤツちょっと羨ましいぞ。」

 

「あなた、後で話がありますからね。それはさておき、ハーミーちゃんすごいわね! というかレオが素直に綺麗って言うなんてそれだけで一歩前進よ!」

 

「親バカかもしれんが我が娘ながら美しいと思う。ちょっと嫁にやりたくなくなってきた……。」

 

「諦めてくださいよ、パパ。ハーミーがああするまでの相手ですからね。今年はガンガン攻めて落すのよ、ハーミー!」

 

二人の関係について一番盛り上がっているのは親たちなのは確実であった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

僕、ロナルド・ウィーズリーは気分が良かった。

いや、僕だけじゃない。家族全員が幸せだ。この夏休みはガリオンくじが当たって家族でエジプト旅行に行けたし、今日は新しい杖まで買ってもらえた。おこずかいも通常ではありえないくらいもらって今もダイアゴン横丁でフローリアン・フォーテスキュー・アイスクリームパーラーで三段重ねのアイスを食べて幸せだ。

隣で親友のハリー・ポッターも同じようにアイスを食べていると何かに気付いたみたいだ。

 

「あれ、テイラーじゃないかな? 新学期の買い物かな。」

 

その名を聞いて複雑な気持ちになる。

あいつは魔法が上手くて勉強もでき、さらには強い。でも嫌みでこっちのことを考えていないヤツなんだ。ハグリッドのこともあってとことん嫌いだ。

それでも、秘密の部屋の一件でジニーを助けてくれたことも事実だ。僕はどう接していいか分からなくなっている。ハリーもきっと同じ気持ちだろう。

ハリーの方を見ると口をあんぐりと開けて固まっている。アイスが溶けて手にこぼれているが気づいてもいないみたいだ。

 

「どうしたんだ、ハリー? スネイプが笑顔でタップダンスでも踊ってたのかい?」

 

「ロン……。あれ……。」

 

テイラーの方を指さしたまま再び固まるハリー。僕もそちらを見る。

その光景を見た瞬間、頭に呪いでもかけられたような衝撃が走った。

テイラーの横を歩いていたのは僕が今まで見たこともないほどにかわいい女の子だった。

 

僕は生まれて初めて恋に落ちた。これが一目惚れってやつなのかな?

 

同時にテイラーのヤツに対して対抗心が沸き上がった。

魔法が上手くてその上、あんなかわいいガールフレンドがいるなんて!

いやいや、待て待て、待つんだロナルド・ビリウス・ウィーズリー。落ち着くんだ。

まだあの子があいつの彼女と決まったわけじゃない。あいつだって決してハンサムなわけじゃないし、背は僕の方が高い! ……よし!

 

「すっごい変化だね……。ちょっ、ロン!?」

 

ハリーの声を無視してあの子に近づく。とりあえず、テイラーの知り合いだってことで声をかけよう。

 

「やっ、やぁ。久しぶりだねテイラー。げ、元気?」

 

「ああ、こんにちはウィーズリー君。元気だよ。」

 

「あら、ロンじゃない。久しぶり、あなたも新学期の買い物?」

 

え? この声?

 

「ハ、ハーマイオニー……? え、なんで?」

 

「そうだけど、もしかしてこの髪のせいで気が付かなかったの? 確かに前のボサボサ髪とは大違いだけど、失礼よ! 女性を髪でしか認識してなかったのかしら。行きましょうレオ!」

 

「そう怒らない。それだけ君が変わったってことだろう。ウィーズリー君、またホグワーツで会おう。」

 

立ち去っていく二人。

え? あのかわいい子はハーマイオニーで? ボサボサは? 出っ歯は? あれ?

ハーマイオニーは誰の目にもテイラーのことが好きだとわかる。気が付いていないのはテイラーぐらいだ。

てことは? 僕の初恋は? え? あれ?

 

ポンと肩を叩かれる。ハリーだった。親友の顔には同情の色しかなかった。

 

がくりと膝をつく。僕の初恋は5分もしないで終わった。

 

「マーリンの髭!! ちくしょう、やっぱりお前なんか嫌いだテイラー!」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

レオとハーマイオニーは魔法動物ペットショップにいる。教科書などの他の買い物はすでに済ませて、最後にハーマイオニーがペットを飼いたいらしくて見て回っている。

 

「レオは何が良いと思う?」

 

「うーん……。ゴメン、そういうのは全然役立てそうにない。とりあえず直感に従えばいいんじゃないかな。」

 

「直感ね……。」

 

店内をぐるりと見る。その中で一匹の猫と目が合った。赤毛の巨体でがに股、潰れたような顔のインパクトのある猫だった。それでもこの猫だ、と直感がハーマイオニーに告げた。

 

「すいません。この子をお願いします。」

 

ハーマイオニーが指さした猫を見て店員は仰天した。

 

「お嬢さん、この……こういっちゃなんだがあまりかわいくない万年売れ残りのこいつを希望してるのかい? もっとかわいい、お嬢さんにお似合いの猫もたくさんいますぜ?」

 

「いいんです。この子に決めました。」

 

「それならいいんだが。後で別の猫に変えてくれって泣きついても知らんですぜ。」

 

ハーマイオニーがクルックシャンクスと命名した猫を抱えてペットショップから出る。これで買い物は終了だ。

 

「ハーマイオニー。この子、体に魔力がある。多分ニーズルか何かの血を引いてるね。いいペットだと思うよ。」

 

「本当!? この子を見た時、びびっと来たのよ。ニーズルってことは頭がいいのかしら。

これからよろしくねクルックシャンクス。」

 

夏休み最終日は終わり、明日からはホグワーツでの日々が再び始まる。




シリウス脱獄。もしレオが興味持ってしまったら即終了でした。

ハーマイオニー変身! 原作だとダンスパーティーの時でしたが時期が大分早くなりました。

ロン失恋。ついでにレオに対しての態度が元に戻る。いやもっと悪くなったかも。
レオに突っかかってついでにハーマイオニーにいいとこ見せようとして失敗しそう。

クルックシャンクス登場。アズカバンの囚人ぐらいしかまともな出番がないから頑張れ!

では次回お楽しみに。


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35. 逆鱗

タイトルを変更しました!
これからは「ハーマイオニーと天才の魔法式」となります。
どうぞよろしくお願いいたします。

では35話どうぞ。


1993年9月1日。キングス・クロス駅。

 

九と四分の三番線は例年通りホグワーツに向かう子供たちとその親でいっぱいだった。

ただ少し違うのは辺りを警戒する魔法使いの姿がちらほら見かけることだ。

恐らくはアズカバンを脱獄したシリウス・ブラックを警戒しての対応なのだろう。

 

レオとハーマイオニーの今年の見送りはフェリスただ一人だった。アースキンとハーマイオニーの両親は仕事で忙しく来ることができなかった。

 

「行ってらっしゃい、レオ。ハーミーちゃんもね。もしシリウス・ブラックが出てきたらぶっ飛ばしちゃいなさい!」

 

「出てこないのが一番良いよ。それでは行ってきます。」

 

フェリスはハーマイオニーを呼び止める。

 

「レナードのことも頑張ってね。大丈夫よ、あなたが一番息子のことを想ってるわ。そ・れ・と、一回お義母さんって呼んでみて♡」

 

「お、お義母さま……。」

 

「うん! 満足。それじゃあ、恋に勉強に青春を楽しんでね!」

 

多くの子供たちがコンパートメントの窓から出発の挨拶をしながらホグワーツに向けて列車は走り出す。

フェリスはクリスマスに二人が戻ってきた時どんな感じになっているか今から楽しみだった。

 

 

コンパートメント内ではレオとハーマイオニーが三年生からの新しい授業について話している。時折レオやハーマイオニーに挨拶に来る生徒もいるがほぼ全てハーマイオニーを見て固まってしまう。

そんなやり取りを何度かして流石にハーマイオニーも機嫌が悪くなってきた。

 

「まったく! みんな私のことどう見てたのかしら。ちょっと髪の毛をいじって、歯を矯正しただけなのに。」

 

「まぁまぁ。外見が変わろうともハーマイオニーはハーマイオニーだよ。周りのことは気にしなくてもいいんじゃないかな。」

 

「それもそうね。レオがしっかり私のことを見てくれればそれでいいわ。そういえば今年の授業でレオは占い学を選択したみたいだけど、私はやめた方が良いって言ってたけど占い学はどんなものなの?」

 

「占い学は理論や公式、そういったものが通用しないものなんだ。そういうものだからハーマイオニーには不向きだと思ったんだ。未来を感じ、見通す。そういう才能や感性が重要になってくる。魔法省の神秘部には予言が保管されているみたいだけど僕もちゃんとした予言者には会ったことが無いね。占い学を選択したのもダンブルドア校長が占い学の教授に選んだ人だから才能が有る人だろうからこの『眼』で見てみたかったからなんだ。」

 

「そうなのね。予言って100%確実に的中するものなのかしら?」

 

「どうだろうね。僕はあくまでその時点でより可能性の高い未来を感じ取って伝えてるのが予言だと考えているよ。その予言を与えられた人がその言葉に影響されることで更に可能性が高まって最終的に的中する。または予言を信じなかったり回避しようとした結果が結局は予言の内容になる。どっちにしても予言者は全ての可能性を読んで未来を予言してるんじゃないかな。そういう意味じゃ予言は未来の可能性を狭めていると言えるのかもしれないな。まぁ、僕も専門外だから憶測でしかないけどね。」

 

 

二人で談笑を続けていると列車の速度が低下してきた。まだホグワーツに到着するにはまだ時間があるはずである。

 

「どうしたのかしら? まだホグワーツに着かないはずよね?」

 

「何かトラブルかな。待っていればアナウンスなり発車するなりするんじゃないかな。」

 

数分しても何も反応はなく周りのコンパートメントも騒がしくなってきた。

だが次の瞬間、周囲が急に静かになった。レオは何も感じていないがハーマイオニーは恐怖で体が震えていた。

 

「ハーマイオニー!? 大丈夫か、どうした!?」

 

「レ、レオ……。急に寒くなってなんだかわけもわからず怖いの……。」

 

「何かしらの精神的な作用……、恐怖、吸魂鬼(ディメンター)か! 『遮断』範囲拡大!」

 

レオが『遮断』の範囲をコンパートメント全体に拡大する。これでこれ以上ハーマイオニーに影響はないはずだ。

 

「ごめん、ハーマイオニー。僕は常に防御しているから気付くのに遅れた。大丈夫?」

 

「ありがとうレオ……。後ろ!」

 

レオが振り向くと吸魂鬼の一体がコンパートメントの扉を開けて侵入しようとしているところだった。ボロボロのマントにカサカサの肌。見るの者に嫌悪感を抱かせる存在がそこにはいた。

 

エクスペクト・パトローナム・バレル(守護霊銃よあれ)。」

 

レオが呪文を唱えると白銀の銃が手に現れた。

 

「三秒以内に失せろ。さもなくば消滅させる。」

 

吸魂鬼には言葉は通じていないのか立ち去る気配はなくコンパートメント内に入ろうとする。次の瞬間には銀色の弾丸がその胸を貫いた。

胸に空いた穴から光を放出し、その体を光の粒子に変えて霧散する吸魂鬼。

レオは鞄から純白の液体が入ったフラスコを取り出す。

 

「ハーマイオニー、これを飲んで、幸福薬だ。落ち着いて、ゆっくりでいいよ。」

 

『遮断』で吸魂鬼の影響はなくなったが、心と体は冷えたままだ。レオに言われるがままフラスコから幸福薬を飲んでいく。味はものすごく甘く飲みにくかったが、飲み込んだ途端体の不調は消えていった。

 

「よし。それじゃあ、僕は奴らを殲滅してくる。今の薬を飲んだからしばらくは吸魂鬼(ディメンター)も君に手出しはできないはずだ。」

 

「待って!」

 

コンパートメントから出ていこうとするレオの腕を掴んで引き留める。

 

「いかないで、レオ。一人にしないで……。」

 

幸福薬で確かに心身ともに問題はなくなった。だからと言って一人は嫌だった。彼とは離れたくなかった。

レオは大きく息を吸って吐いた。

 

「ごめん、ハーマイオニー。こんな状態の君を放置して出ていくなんて冷静じゃなかった。もう一人にしようとしないよ。」

 

そう言って手を握るレオ。

彼が近くにいる、それだけで安心できる。安心感と薬の効果か眠気が襲ってきた。

 

「少しでも眠った方が良いよ。回復には睡眠が一番だ。」

 

「ありがとう、レオ……。少し眠るわね。」

 

そう言ってハーマイオニーはレオの肩に頭をのせて眠ってしまった。

次に起きたときにその様子を見ていたウィーズリー双子にからかわれることになってしまった。

 

 

吸魂鬼(ディメンター)の騒動があったが、それ以外は問題なくホグワーツに到着できた。

組み分けも無事終了し、皆が食事を待ち構えていたがその前にダンブルドアからの注意事項があるらしい。

 

「新入生は入学おめでとう! そして二年生以上は新学期おめでとう! さて皆にいくつかお知らせがある。大事な事じゃからお腹いっぱいで眠くなる前に済ませてしまおう。」

 

「ホグワーツ特急で調査、これをわしは許可した覚えがないのじゃがの、皆も知っているように魔法省の要請によりホグワーツでは現在吸魂鬼(ディメンター)を受け入れておる。吸魂鬼(ディメンター)は学校の入り口を固めておる。あやつらは決して話が通じる相手ではないぞ。透明マントも意味がないからむやみに近づかないことじゃ。」

 

続いて新しい教授が紹介された。魔法生物飼育学のウィルヘルミーナ・グラブリー=プランクと闇の魔術に対する防衛術のリーマス・ルーピンの二人だった。

プランクと比べるとルーピンへの注目が集まっていた。ツギハギだらけのローブ、痩せこけて青白く、白髪がある髪。こんなのが闇の魔術に対する防衛術の教師で大丈夫か? そういった反応をする生徒が多い。

そんな考えを吹き飛ばす衝撃的な爆弾発言がダンブルドアの口から発せられた。

 

「一つ補足を入れよう。ルーピン先生は狼人間じゃ。だが」

 

そこまで言って大広間から悲鳴が上がる。ダンブルドアは落ち着くまでゆっくり待った。

静かになるまで10分ほど経過し、続きを話していく。

 

「続けよう。まず、ルーピン先生は安心できる人じゃ。それに今は改良型脱狼薬が存在している。これがある限り満月の夜でも狼人間が変化することは無くなった。それでも狼人間に対する世間の風当たりは依然強い。だからこそこれからの魔法界を作っていく諸君らにはそういった偏見を無くしてもらいたいのじゃ。まずはルーピン先生の授業を受けてはくれんかの。彼が立派な人であることが分かるじゃろう。ではルーピン先生、挨拶をお願いします。」

 

「やぁ、みんな。こんにちは。ダンブルドア校長が言ったように僕は狼人間だ。だけどここ数年僕は狼に変化したことは無い。もし万が一、狼に変化してしまったらホグワーツを去ることを約束しよう。これはダンブルドア校長や理事たちも了承している。全力をもって闇の魔術に対する防衛術を楽しく勉強できるよう頑張るのでよろしくお願いします。」

 

そう言って頭を下げる。拍手はほとんど無かった。

その後はプランクの挨拶があったがほとんどの生徒は聞く余裕はなかった。

だが、そうであっても腹は減る。御馳走が出現したからには生徒たちは食べる以外の選択は無くなり、先ほどまでの気持ちも幾分か解消されるのだった。

 

宴も終わり生徒たちはそれぞれの寮に行く。レオも久々の研究室に入る。やはりここは落ち着く。他の生徒も寮に戻るとこのような感覚なのだろうかと考える。

レナード・テイラーの三年目のホグワーツ生活が始まった。




タイトルから消失したハリー・ポッター、原作同様失神しております。

予言については本作では一番可能性の高い未来を伝えているので、必ずしもそうなるとは限りません。同じ預言者がした予言では後の方がより精度が高くなる設定です。
レオはハリーの後に生まれているのでハリー関連の予言は大分狂うことになります。

・レオが使った守護霊の呪文
守護霊は姿が変わるし、対吸魂鬼ぐらいにしか使えないなら武器の形の方がいいんじゃないか? ということで銃に改造。人には効果はないが吸魂鬼は一撃必滅。実は他の使い方もあるがそれはそのうちに。

・幸福薬
純白の滅茶苦茶甘い粘度のある液体。イメージは練乳。
飲むと吸魂鬼の影響を即座に回復+耐性付与。更に守護霊の呪文の成功率UP。
何もない時に飲みすぎると多幸感が強すぎて中毒症状が出る。

・怒るレオ
ハーマイオニーが害されたためいつもより冷静さがなくなる。
もしハーマイオニーが止めてなかったら吸魂鬼は全滅してた。


・新教師
魔法生物飼育学は原作のハグリッドの代理だったプランクを採用。
闇の魔術に対する防衛術はルーピン。
レオが脱狼薬を改良したので満月でも変身することが無くなったので狼人間への世間の目も大分良くはなっている。だがまだまだ偏見は強い。
校長としてはこれから先もそれではお辞儀復活時に狼人間を戦力として使われるので、できるだけ偏見を無くしたいのであえて狼人間は大丈夫だとアピールするためカミングアウト。

では次回お楽しみに。


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36. 新たなる授業

ハリー・ポッター原作なのにハリーはモブ同然。
ハグリッドは逮捕されるし、賢者の石の罠は鬼畜だし、オリ主が教師するしで、
自分で書いててとんでもない話になってるなと思った。
でもこれからもそんな話が続くんだと諦めた。

では36話どうぞ。


始業式の翌日から例年通り授業が始まる。レオは今年から選んだ魔法生物飼育学、占い学がはじまるのが楽しみだった。

初日はその二つはなく変身術、呪文学、魔法史だった。一年ぶりの授業であったが、問題なく終わった。やはり魔法史は研究のまとめをするにかぎる。

翌日はプランク教授の魔法生物飼育学を受講することとなる。周りから良い評判を聞いていたが、実際に授業を聞くと評判が正しいと分かる。まず、魔法生物とは何か、飼育方法や危険性、有用性などをしっかりと教えることから始まった。プランク教授曰く、

 

「知識なくして実戦なし! この授業では座学もしっかりやります。魔法生物と触れ合えて楽しそうなんて気持ちでいる生徒はいつか怪我をします。まずは魔法生物について正しい知識を身に付けてからです。そうすれば高学年になればユニコーンにも触れることができるようになるでしょう。」

 

それからは簡単な魔法生物をプランクが連れてきて生徒に見せた後、実際にも生徒にも取り扱わせる。しっかりと注意点を教えていたため問題なく授業は終わった。魔法生物飼育学は人気の授業の一つとなるまでそう時間はかからなかった。

 

 

対して、占い学の評価は低かった。

レオが初めて占い学の授業に出るとその評価も納得するしかないものだった。

まず、場所が悪い。北塔の一番上にあり移動するのもめんどくさい。教室内はシェリー酒の匂いが充満しているので適切とはとても言えない。だが、担当の教師に比べればこんなことは些細なものであった。

占い学の担当のシビル・トレローニーは瘦せていて大きな眼鏡をかけたトンボのように見える女性だ。

 

「占い学へようこそ。あたくしがシビル・トレローニーです。騒がしい俗世におられるみなさんとはあまり会う機会はありませんでしたね。あたくしの心眼は俗世にいると曇ってしまいますの。」

 

教室内の生徒たちを見渡しながら、霧の彼方から聞こえてくるような声で話を続ける。

 

「占い学は魔法学問の中で最も難解なものですわ。初めにハッキリさせておきましょう。未来を見通す才が無いものには、教えることはほとんどありませんのよ。書物ではある程度のことしか教えられませんの……。」

 

その後はお茶の葉を読むことになるのだが、レオとしてはがっかりの内容だった。トレローニーは確かに普通と違う魔力が体内にあるのが視える。だが、生徒たちの未来を予言している時にその力を全く使っていない。そのくせ本心から自分が才能が有ると思っている。おそらく彼女が力を使う時は本人でも気づかない時に何かしらの条件が必要なのだろうが、それを見ることができるのがいつになるかは分からない。

トレローニーがレオに死の予言をしてくる。レオは聞き返す。

 

「死とは具体的にどのような原因で起こるのでしょうか? 病気、事故、誰かに殺される。それとも別の何か? 未来が分かっているのなら対策をしますので教えてもらえないでしょうか?」

 

「未来とはあやふやで曖昧で不透明なものですわ。ゆえにあたくしはあなたが死する運命であるとしか告げれませんの。」

 

そうはいっているが特別な予言をしているようには視えなかった。

レオは占い学、というよりはシビル・トレローニーに見切りをつけた。今後は占い学の授業に出ることは無いだろう。無駄な時間を過ごすよりは研究をした方が良いに決まっている。

 

 

翌日には闇の魔術に対する防衛術の授業だ。昨年は教師として授業を行っていたレオとしては生徒として授業に出るのが何だか新鮮であった。

リーマス・ルーピンが狼人間であることはホグワーツから保護者にすでに連絡が行っているためダンブルドアとホグワーツに対して非難も来ていたが、世論的には徐々に人狼への差別がなくなってきているのと、ルーピンが何か問題を起こした場合はルーピンの解雇とダンブルドアの校長職を辞職することで一応は収まっている状況だ。

教室内に入るとルーピンはまだ教室には来ていなかった。今のところルーピンに問題があったなどと言う話は聞こえてこない。むしろ良い評判が多いほどだ。生徒たちが教科書などを準備しているとルーピンが入ってくる。

 

「おはよう、みんな。教科書は必要ないから鞄にしまってしまおうか。 他の寮から聞いているかもしれないけど、今日はいきなりだけど実習をしよう。杖だけあれば大丈夫だよ。」

 

狼人間の先生といきなりの実習、かなりの生徒たちが不安を覚えているようだ。

案内されたのは職員室だ。中に入ると篩箪笥が置かれているが、時折ガタガタと揺れている。不安を覚えた生徒が質問をするとルーピンは落ち着いて返答した。

 

「大丈夫、心配ないよ。中にはまね妖怪のボガートがいるだけだ。」

 

それからルーピンはボガート説明をし、問題を出していった。

 

「これからみんなにはボガートと対峙してもらう。一人ずつだ。複数人で相手するとボガートが何に変身すればいいか混乱しておかしな結果になってしまうからね。ボガートを退散させるのは簡単だけど精神力が必要になる。退治させる呪文はこうだ、私に続いて言ってみようリディクラス(ばかばかしい)。」

 

生徒はルーピンの言った呪文を繰り返す。

 

「うんうん、とっても上手だ。だけどね、本当に必要になるのは呪文じゃなくて笑いなんだ。さっきの呪文だけじゃ意味がない。君たちがボガートの相手をすると一番怖いものに変化するだろう。リディクラス(ばかばかしい)を唱える時にその怖いものを滑稽だと思えるものに変化させるようにイメージしながら唱えるんだ。そうすればその通りボガートが変化するはずさ。ちょっと時間をとるからみんな怖いものとそれをどうおかしくさせるかイメージするんだ。そしたら順番にやってみよう。」

 

生徒たちは各々考え始める。レオも考えるがいまいち怖いものがイメージできなかった。順番になれば自然と変わるからその時に対処すればいいかと結論した。

それから順番に一人ずつボガートの相手をしていった。巨人、蛇、死体、得体の知れない何か等々色んなものに変化していくボガート。レオの順番になり前に出る。

ボガートは形を変化させよとぐにょぐにょ蠢いていたが、最終的に五十センチほどの正体不明の球体になり動きを停止した。皆がアレがレナード・テイラーが恐怖する存在なのかと疑問に思っていた。

レオだけはこの結果の原因が分かった。

 

「なるほど、『遮断』でこちらの思考を読めなかったのか。だからこれがボガートの真の姿なのかな。」

 

レオが球体を掴もうとすると飛んで逃げてしまった。

 

「すいません、ルーピン先生。逃げられてしまいました。」

 

「あー……、うん。貴重なものを見れたし問題ないよ。さて、そろそろ授業も終わりだ。次回までに今回の感想とボガートについてレポートを作成するように。では解散!」

 

魔法生物を使った実習は生徒たちの心をうまくつかめたようでルーピンに対しての印象も良くなったようだ。

 

「レナード君はちょっと残ってくれるかい? 少し話があるんだ。」

 

呼び止められたレオはルーピンに連れられて彼の私室に案内された。

中に入った途端ルーピンはレオに頭を下げてきた。

 

「ずっとお礼が言いたかった……! ありがとう! 君の発明した改良型脱狼薬のおかげで僕は、僕たち狼人間はあんな思いをせずに済んでいる。感謝してもしきれない!」

 

「顔を上げてください。別にお礼を言われるために開発したわけじゃないですし、あの薬はまだ未完成です。」

 

それでも顔を上げず感謝を続けるルーピン。ついには何でも言うことを聞くなんて言葉まで出てきた。

 

「はぁ……。そこまで言うなら一つ研究に協力してもらいましょうか。」

 

「君の助けになるなら何でもやるよ! 何をすればいい!?」

 

「ちょうど協力的な狼人間がいるので改良型脱狼薬を更に発展させましょう。ルーピン先生、人に戻りたいですか?」

 

その言葉に絶句するルーピン。しばらくしてようやく言葉を発した。

 

「……そ、そんなことが可能なのかい……? もちろん人間には戻りたい! こんな化物なんて嫌だ……。」

 

「では、研究に協力してもらえるということでよろしいですね。と言っても血液なんかのサンプル提供だけしていただければいいんですけどね。」

 

「もちろんだ! 死なない程度になら持って行ってくれ! 完成までどのくらいかかると考えているのかい? 5年、それとも10年?」

 

「できれば、今年中ですかね。まぁ、他に優先することができたら後回しになりますが良いですか?」

 

「そんなに早くできるものなのか……? わ、分かった。もちろんこちらとしては異議は無いよ。」

 

研究室に戻って脱狼薬を改良した時の資料を引っ張り出す。今から五年ほど前に作ったものだから今見直すと色々と不出来なものだ。

今年のレナード・テイラーの目標が一つ決まった。脱狼薬を完全なものにすることだ。




ハグリッドがいないだけで魔法生物飼育学がとっても平和。

占い学はトレローニーが最初からトランス状態になってたらレオの見方も変わったでしょうね。

逃げたボガートは怖がらせなかった悔しさから進化しました。
現在はマグルの研究者を怖がらせる生活をしていて満足してます。
研究者からは「おおこわいこわい。」と言われてる。
ごめんなさい、嘘です。

ルーピンはレオに対してかなり信奉してます。
レオとダンブルドアどっちに味方する? と問われたら迷わずレオを選ぶぐらいには。

脱狼薬→変身するが理性は残る。
改良型脱狼薬→理性もそのまま人の姿でいられる。
その先の薬→狼人間から人間に完全に戻る……予定。

では次回お楽しみに。



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37. ペット

みなさんはホグワーツに連れて行くペットは何が良いですか?
私は猫です。というか選択肢が少なすぎな気がする。

では37話どうぞ。


10月の最初の休日。いつものようにレオの研究室に来ていたハーマイオニーは荒れていた。

 

「まったく! ロンったら話を聞かないんだから!」

 

「落ち着きなよ、ハーマイオニー。どうしたんだい?」

 

ハーマイオニーが言うにはクルックシャンクスがロンのペットのネズミのスキャバーズを執拗に狙っているらしく、それが原因で新学期になってから喧嘩が頻繁に起こるらしい。

それだけでなくなぜかレオについての不満や暴言、さらにはハーマイオニーにグリフィンドールなのだからレオに近づくなとまで言っているらしい。

そして今日、とうとうスキャバーズが行方不明になってクルックシャンクスが食べたと断定したロンが魔法を使って攻撃しようとしたため、ハーマイオニーが逆にロンを吹き飛ばして減点されてしまったらしい。

 

「確かにクルックシャンクスがスキャバーズを狙ってたのは悪いと思ってるのよ。でもこの子は賢いんだから何か理由があるはずよ! それに食べたって決めつけて呪ってくるなんて本当に最低だわ! 減点されてしまったけど後悔はしてないわ!」

 

「ふむ……。クルックシャンクスが他のネズミを狙ってたことはあったかい?」

 

「んー……。多分ないと思う。でもどうして?」

 

「クルックシャンクスはニーズルの血が入ってるからスキャバーズから何かを感じ取ったのかもしれない。それが何であるかは直接視ないことには分からないけどね。」

 

(それにしても、たかだかネズミや猫一匹に大騒ぎだなぁ。ハーマイオニーにいたっては減点しても後悔無しとまで……。)

 

「ハーマイオニー、ペットってそんなに良いもの?」

 

「そうねぇ……。万人全てがそういうわけじゃないだろうけどいると色々と良いわね。愛情を与えれば懐いてくれるし、魔法には無い癒しをくれるのよ。この子の場合は賢いからたまに探してた羽ペンなんかを見つけてくれたりね。いっそレオも何かペットを飼ってみたら?」

 

「確かに飼ってみなければそういうのは解らないものだね。でもホグワーツで許可されているのはフクロウに猫、ネズミ、蛙……。どれもしっくりこないな。……そうだ。魔法研究という名目で何か創ろう。」

 

「それ大丈夫なの? 確か新しい魔法生物の創造は法律で禁止されていたと思ったけど。」

 

「有用な魔法生物という名目で魔法省に許可を取っておくさ。まぁ、許可が得られなかったら諦めるよ。せっかく魔法省とは色々と仲良くやっているしね。というわけでハーマイオニー、血もしくは髪の毛でもいいや、ちょっと貰ってもいい?」

 

「えっと……。何に使うのかしら?」

 

「ん? ペットを創るのに人間の一部を使おうかなって。自分の一部を使ってもいいんだけどそれじゃあなんだかペットじゃない気がしてね。ハーマイオニーが嫌なら誰かから適当に貰ってくるよ。」

 

ハーマイオニーは久しぶりにちょっと頭のねじが外れたレオの行動を見た気がする。でもそういうところも今では好意的に感じる。それに自分の一部がレオのペットに使われるのも悪くない気持ちだ。他の人間が利用されるくらいなら自分の一部の方がよっぽどいい。

 

(私も大分おかしくなってる気がする……。でも別に嫌じゃないし好きなんだからしょうがないよね。)

 

ハーマイオニーは髪の毛を一本抜いてレオに渡す。

この一本が後々あんな影響を及ぼすとはハーマイオニー、そしてレオは想像していなかった。

 

 

数日後。

レオは一メートルほどの水晶でできた培養槽の前にいる。

魔法省とホグワーツから新魔法生物の創造の許可は得ることができた。魔法省には「家庭で簡単に飼えてなおかつ闇の魔法からも守る役立つ生物の創造」という名目で許可を取った。

培養槽の中はレオが造った賢者の石から得た命の水で満たされている。そこに去年手に入れたバジリスクと一年の時のハグリッドが持ち込んだドラゴンから造った合成単細胞を投入する。

ちなみにハリエットと名付けられたドラゴンは今ではかなり大きくなっている。最初はレオ特製の首輪で大人しくさせていたが、今では首輪がなくとも誰が主人か解るようになったのか簡単な命令には従うようになった。校長の許可を取ってたまに禁じられた森の上空を飛ばして運動させたりもしている。これもペットと言えるかもしれないが、レオの目的はすでにペットを飼うというより新しい生物の創造になっていた。

 

命の水に入った細胞は増殖を始める。そこへハーマイオニーから提供してもらった髪と賢者の石を守っていたケルベロスに使った知性を上げる魔法薬の改良品も合わせて加える。この改良品は知性を上げるだけでなくあらかじめ特定の情報や命令を生物に組み込ませるためのものだ。薬が強すぎるため普通の魔法生物には使えないが命の水の効果とドラゴン、バジリスクの生命力ならば問題ないだろう。そして仕上げに賢者の石の極小結晶を添加する。

後はこの培養槽の中でどのように育つか楽しみにしていよう。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

レオがペットを創ると言って数日が経過した。

私が研究室を訪れる。もうすでにレオからの許可を得なくても自動で研究室に入る許可を得ているので、どんな時でも自由に出入りしている。今日も特に用事があるわけでは無いがレオに会いたいという気持ちだけでここに来ている。

 

「レオは……いないのね。残念。帰ってくる前に紅茶でも用意して待ってましょうか。」

 

お茶の準備を進めていると一緒に連れて来ていたクルックシャンクスが何かを見つけたのかニャーと鳴き始めた。

 

「どうしたの? 何かいた?」

 

クルックシャンクスのそばに行くとそれはいた。

半透明で単眼のサッカーボールほどの大きさの生物? だった。見たこともないものだったが形状はいつか図鑑で見たアメフラシの様な感じだ。プルプル動きながらクルックシャンクスを見つめている。クルックシャンクスも見つめ返しているが警戒している様子はないから危険なものではないのだろうか。仮に危険なものだったらとっくに研究室から排除されているはずだ。とりあえずクルックシャンクスは抱えて避難させておこう。

謎生物はこちらに気付くとクゥクゥと鳴きながらゆっくり近づいてきた。

思ったよりも気持ち悪いとかいう感情はなく、愛らしく感じている。

とりあえず、言葉は通じるか解らないが話しかけてみる。

 

「こんにちは。あなたはだぁれ? どこから来たの?」

 

「クゥ? マー? マー!」

 

なんだか赤ちゃんを相手にしているみたいだ。手で触れてみると人肌ぐらいの温度でプルプルした質感、でもべたつくことは無かった。この子がレオが創造しようとしていたペットなのだろうか。触ったり持ち上げたり色々としていると何となくだが喜んでいるのが分かる。

 

「ママ! ママ!」

 

「え? ママ?」

 

(相当懐かれてしまったみたいね……。というか喋れるのね。)

 

そうしているとレオが帰ってきた。私とこの子を見つけると少し驚いたみたいだ。

 

「クー。こっちに来なさい。」

 

その言葉でクーと呼ばれたこの子が形状を蛇のように細長く変えてレオの腕に絡みついた。

 

「まったく、好奇心旺盛だな。とりあえず培養槽内に戻ろう。外は楽しかったかい? ハーマイオニーちょっと待ってて。」

 

しばらくしてレオが奥の部屋から戻ってくる。

二人で紅茶を飲みながらさっきの生き物について話している。

 

「驚かせちゃったかな。さっきのが僕が造った魔法生物、名前はクー。クゥクゥって鳴いたからっていう単純な理由で付けた。まだ成長途中の幼体だね。でも好奇心旺盛でたまに培養槽を飛び出して研究室内を見て回っているんだ。」

 

「レオが造るペットだからもっとすごいのを想像していてけどちょっと予想外だったわ。あの子喋れるの? あと私のことをママって呼んでたけど。」

 

「うん。喋れるしうまく成長すれば僕の手伝いをできるぐらいにはなる予定、魔法も使えるはずだ。ハーマイオニーのことをママって呼んだのは初めて会った僕以外の人間だから刷り込みと、以前提供してもらった髪が影響してるのかもね。」

 

「なるほどね。あの子は私の分身みたいな感じなのね。最終的にどんな感じの生物になるのかしら。」

 

「姿かたちは自由自在だからクーが気に入った形になるんじゃないかな。僕の予想では一週間ほどで培養槽から出して成長できるようになると思うよ。」

 

その後はいつものように魔法について話したりして時間を過ごしていった。

その一週間後あんなことになるなんて私もレオも想像していなかった。




ペット創造回でした。

スキャバーズ(ピーター)逃亡。
原作より早い。クルックシャンクスに捕まる→レオに発見→終了の為、必死に逃げてます。
ロンがレオについてまで不満なんか言っているのは失恋からまだ立ち直っていないため。喧嘩後はいつも自己嫌悪している。徐々には立ち直って精神的にも成長中。


新キャラのクーについて解説
ドラゴンとバジリスクの特性を付加した単細胞魔法生物に人間の遺伝子を組み込んで創造。
群体型生物で姿形は自由自在。現状はまだ赤ん坊。知性向上剤と命の水で成長は早い。
体液は命の水:竜の血:バジリスクの血=2:1:1の割合。体中に極小賢者の石を内蔵。
成長に従い解説を入れていく予定です。

では次回お楽しみに。


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38. 隠し子騒動

三連休なんでちょっと早めに投稿。

では38話どうぞ。


10月第二週。

 

レナード・テイラーの研究室は奥に行くほど危険で貴重なものが保管されている。

研究室の奥から二番目の部屋。

ここではレオが造った新たな魔法生物のクーは順調に育っていた。今の大きさはすでに7~8歳程度の子供並みに育っている。

 

「それじゃあ、クー。僕は授業に行ってくるから。明日にも体が安定してそこから自由に出られると思うからもう少しの辛抱だね。」

 

レオが研究室を出ていく。クーは培養槽の中を漂いながら考える。

 

(お外はどんなのかなぁ? 知識は知ってるけど見たことない……。見たいなぁ。出ちゃおうかな。ご主人は許してくれるよね? うん、行こう!)

 

外への好奇心に逆らえなかったクーは培養槽を飛び出す。半透明の体を取り込んである人間の遺伝子を参考にして姿を変える。魔法で子供用のローブを作って着て研究室の外へ飛び出した。

 

「しゅっぱ~つ!」

 

ホグワーツ内は研究室内では見たことのないものばかりでワクワクしっぱなしのクー。

ゴーストを見たり動く階段や絵画を眺めたりしながら校舎中を歩き回った。見るものすべてが新鮮であった。

だが無計画に歩き回った結果、迷子になるのは必然であった。

 

「どうしよ? ご主人はどこだろ? でもご主人に見つかったら怒られるかも……。お腹もすいた。」

 

現在授業の真っ最中なので廊下には生徒や教師の姿は見えない。あてもなく歩いているとなんだか安心させる匂いを感じた。とりあえず直感でその匂いの元に行くことに決めた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

私はホグワーツ魔法魔術学校、グリフィンドール所属三年生。ハーマイオニー・ジーン・グレンジャー。現在14歳。今は変身術の授業を受けているところ。いつものように担当のマクゴナガル先生の言葉を一言一句聞き漏らさないように集中していた。そんな何も変わらない同じような授業中だった。

それがいきなりの乱入者によって混沌としたものに変わるとはその時の私には予想などできなかった。

 

「ここかな?」

 

教室の扉が開けられ誰かが入ってくる。マクゴナガル先生もみんなも一斉にそちらを見る。

そこに立っていたのは真っ白な少女だった。純白のローブに白銀の髪、肌もかなり色白だ。目だけは緑であり白の中でかなり異質な感じであった。

全員が頭に疑問符を浮かべている。

 

(((誰だ? あの子?)))

 

その疑問ももっともだった。他の寮の下の学年だから見たことが無いとかそういう話ではない。明らかに幼すぎる容姿だ。まだ10歳にも満たないであろう。

 

「あなたはどなたですか? 誰かに連れてきてもらって迷子にでもなりましたか? 名前は? 保護者は誰ですか?」

 

マクゴナガル先生はやさしく白い少女の相手をしている。白い子は質問には答えず、教室内を見渡している。

 

(あ、目が合った。)

 

目が合った途端、少女の顔が喜びに変わった。私を指さして驚愕の言葉を放った。

 

「ママ!」

 

「「「ママ!?」」」

 

みんなが私を一斉に見る。私は放たれた言葉の衝撃から混乱してどうしていいか分からず固まってしまった。少女はそんなことお構いなしに私に近づいてきて抱き着いてくる。混乱はますますひどくなる。

 

「グ、グレンジャー! その子はあなたの子なのですか!? 相手は誰です!? いえ、そもそもその年で子供など……! ダメ、ダメですよ、グレンジャー!」

 

マクゴナガル先生もかなり混乱している。その様子を見て私は少しずつ平静を取り戻していった。自分より取り乱した人を見ると落ち着くというのは本当のようだ。

 

「あなたは誰なの? 名前はなんていうの?」

 

「ママ、わたしだよ。クーだよ。えっとね、探検してたら迷子になっちゃって……。ママの匂いがしたからここにきたの。」

 

「クー? えっと、まさかレオの?」

 

あの小さなプルプルの半透明な謎生物がこの子? にわかには信じられなかったが、ここは魔法学校で造ったのはあのレナード・テイラーなのだ。何が起こってももはや驚かないと思ったが、レオは私の想像をいつも容易く超えてくるなぁ……。

呑気にそんなことを思っていると、レオの名を出したのがまずかったのか、周りは更に混乱していく。

 

「今、レオって言った? やっぱり相手はレナード・テイラーなのね!」

「キャー! 二人ともおめでとう! 式はいつになるの?」

「後で色々と詳細を。後々の参考にするわ。」

「その前に相手探しじゃないの?」

 

「くそっ! やっぱりテイラーかよ。」

「というか子供だとして大きすぎないか?」

「どうせ魔法や魔法薬じゃないか? 何でもありだろあいつ。」

「ロンがショックで気絶した!」

 

女子も男子も言いたい放題だ。何人か無視できない発言もあるが気にしたら負けだろう。レオの魔法云々については否定できない……。

マクゴナガル先生も混乱しっぱなしだし、どうしよう……。でもこれ以上は何も起こらないよね?

そんな私の淡い希望も次に教室に入ってきた人物を見た瞬間、木端微塵に吹き飛んだ。

 

「授業中失礼します。こちらに見知らぬ生き物が乱入してきませんでしたか?」

 

私の想い人、レナード・テイラーの登場です。

教室内はますますヒートアップ。マクゴナガル先生はレオに詰め寄って何か見当違いな説教を始めるし、逃げたくなってきた。

 

「ご主人!」

 

私に抱き着いていたクーちゃんがレオを見つけると背中からドラゴンのような翼を出してレオに飛んで行った。私を含めたレオ以外の全員がそれを呆然と見ている。あれだけ騒がしかったのが嘘のように静まり返っている。

 

「ご主人! お腹すいた! ごはんまだ?」

 

「クー、勝手に出歩くなんてダメじゃないか。培養槽に感知魔法を設置しておいて良かった。それにしても、もう人型になれるなんて予想以上の成長だな。とりあえず、研究室に戻るよ。ご飯は説教の後でね。」

 

そう言って二人は教室を出ていこうとする。

 

「「「「ちょっと待った!!!」」」」

 

教室内の全員から待ったがかけられた。いくら何でも説明なしは無理だった。

それからレオによるクーちゃんの説明が始まった。

と言っても細かい魔法生物や魔法薬の理論、レオ独自の魔法、更には賢者の石まで出てくるのでとてもじゃないが理解が追いつかなかった。

 

「ミスター・テイラー。申し訳ありませんが、簡単に事実だけ教えてください。この子供は何なのですか?」

 

「僕が造った新しい魔法生物です。」

 

「それがなぜミス・グレンジャーのことをママと呼んだのです。」

 

「ハーマイオニーに素材として髪を提供してもらったのでその影響かと思われます。」

 

「そうですか。はぁ~……。今日は疲れました……。この子が勝手に授業中に入ってきたのでその分の監督責任としてレイブンクロー5点減点です。今日は授業にならないでしょう。授業内容をレポートとしてまとめて提出すること。以上です!」

 

レオとクーちゃんは研究室に戻っていった。なんか周りから視線を感じる。

 

「相変わらずテイラーはぶっ飛んでるな。子育て頑張れよ、ママ!」

「未来の旦那との子供の練習にはいいんじゃない?」

 

みんながふざけてこんなこと言ってくる。

ま、まぁ確かにレオとは恋人になって……、ゆくゆくは結婚も……。

子供も欲しいし、そう思えばクーちゃんも私のDNAが入ってるんだから私の子供よね?

……よし!

 

「私、頑張るわ! クーちゃんを立派に育ててみせる!」

 

みんなからまさか本気にするとは……って雰囲気を感じるが気にしない。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

それからのレナード・テイラーのそばには白い少女、クーが付いていくようになった。皆がレナード・テイラーが造った魔法生物に興味津々であった。

たまに一人でいるクーを見かけた生徒はその様子を微笑ましく観察したり、弟や妹がいる生徒たちは一緒に遊んで可愛がるようになった。

一気にホグワーツのアイドル的な存在にまでなってしまったクーであった。

 

クーも色んな人や物を見て、触って、食べて、経験を積むことで順調に成長していった。

レオももちろん愛情をもって接しているがやはり多くのことを経験させるためクーのやりたいようにさせている。

そしてやはり近しい存在なのかハーマイオニーのことをママと呼んで一番懐いていた。その様子から14歳にしてすっかりママ扱いに慣れてしまったハーマイオニーなのだった。




ハーマイオニーはママになりました。
レオのことは創造主として認識≠パパです。

クーは性別は無いんですがハーマイオニーの髪の影響で少女型となりました。
まだまだ成長途中なのでこれからどんどん性能が明らかになります。今は体の形を変えたりドラゴンの翼を出したり簡単な魔法を使えるぐらいです。
そのうち登場人物紹介みたいの作って詳細や裏設定を明かすかも?

では次回お楽しみに。


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39. ホグズミードデート

お気に入り登録数が投稿時点で5700、UAは40万超えてました!
どのくらいなのかと調べたらお気に入り数原作ハリー・ポッターでトップ5に入っているだと……?
これはエタることは許されませんな。

では39話どうぞ。


10月も後半に入った。

ホグズミード村はイギリスで唯一の魔法使いしかいない村だ。

三年生以上は保護者の許可を得れば休日にホグズミードに行くことができるようになる。

もちろんレオとハーマイオニーも許可は得ている。

 

今日のホグズミードには二人で一緒にお出かけだ。俗に言うデートというやつではあるがレオとしてはハーマイオニーに誘われたから出かけるぐらいの感覚であった。

対してハーマイオニーは必死で落ち着こうとしていた。

 

(落ち着くのよ、ハーマイオニー・グレンジャー。いつも通り、いつも通り。一緒にホグズミードを回っていろんな店に入ってショッピングをしたり、食べたりするだけじゃない。今までもダイアゴン横丁やマグルの町でやってきたじゃないの! ……デートって意識するだけでこんなに違うものなのね。)

 

そろそろ時間だ。寮からレオの研究室に向かう。

 

「ママだ!」

 

その途中でクーと遭遇する。この頃は前より成長しているからなのか落ち着いているように感じる。

 

「おはよう、クーちゃん。どこ行くの?」

 

「図書館! 本をいっぱい読んでご主人の助けになれるように成長するんだ!」

 

ハーマイオニーの遺伝子が入っているせいなのか随分と知識に貪欲に成長している気がする。クーと別れて改めて研究室に向かう。一歩進むごとにハーマイオニーの心臓の鼓動も比例して速くなってきた。

 

「おはようレオ! 今日は絶好のデート日和ね!」

 

扉を開けると同時に挨拶&デート宣言。もちろんデートだなんて言うつもりはなかった。テンパったせいでつい思っていたことが口から出てしまった。

 

「おはよう、ハーマイオニー。じゃあ、さっそくデートに出かけるとしようか。」

 

レオは気にした様子もなくデートという言葉を使ってくる。ハーマイオニーとしてはその様子が少し気に入らない。

 

(もうちょっと何か感じて欲しいわね。ま、レオらしいと言えばそうなんだけど。)

 

気を取り直してホグズミードへ出発することにした。

 

ホグズミードに到着した二人はまずは一通り歩いてみることにした。

人気のパブ三本の箒、悪戯専門店ゾンコ、お菓子の店ハニーデュークス、ダービッシュ・アンド・バングズ魔法用具店、等々。

最初ということでとりあえずハニーデュークスで色々なお菓子を買うことにした。

 

「おお、マグル製のお菓子まであるのか。魔法界のお菓子は奇抜なのが多く面白いけれど、純粋な美味しさではマグルの方が洗練されていると感じるね。マグル出身のハーマイオニーとしてはやっぱり魔法界のお菓子は変に見えたのかな。」

 

「そうね。動くし、変な味がしたりとんでもない効果が出たりで最初は驚いたわ。どっちのお菓子にもいいとこがあっていいんじゃないかしら。」

 

二人でおすすめのお菓子やクーへのお土産を購入して次の店に向かった。

ホグズミードは小さめな村だったが今日はホグワーツ生が多くいるため混雑していた。人込みから抜け出した二人は人気だと聞いたパブ、三本の箒で休憩することにした。

席に着くと店主のマダム・ロスメルタが注文を取りに来た。

 

「あら、初めて見る顔ってことは新しい三年生ね。何にする? おすすめはバタービールよ。」

 

「では、バタービール二本お願いします。」

 

注文を取るとすぐバタービールが運ばれてきた。乾杯をして口に含む。ビールという名ではあるがそれは見た目だけで甘く体の芯から温まるものだった。

 

「うん、おいしいね。気に入ったよバタービール。」

 

「私も! 寒い時にはこれが欲しくなっちゃいそうね。」

 

その後も話が弾む。いつものように二人は魔法のことから他愛のない話、今日の夕食の予想等々会話を楽しむ。

 

「場所が変わってもこうやっているだけで満足だね。どう、リラックスできたかな?」

 

「……うん、そうね。なんか出発前にデートって言っちゃったせいで変に緊張しちゃってたみたい。私、別にデートでも何でもいいみたいね、あなたが一緒なら。これからも一緒に出掛けてくれるかしら。」

 

「もちろん。……ああ、重要な案件がなければっていう前提があるけどね。」

 

「もう。そこは『何をおいても君を優先するよ』ぐらい言ってもいいのよ?」

 

二人は笑い合い会話を続ける。

それを見ていたホグワーツ生の反応は様々だ。

 

「信じられるか? あいつらあれで付き合ってないんだぜ?」

「なら俺にもチャンスが……!」

「ないない。」

「いつ付き合い始めるか賭けるか?」

「正直、テイラーの予想ができん。あいつなんであんなかわいい子と一緒で平然としてるんだ?」

「マダム・パディフットの店に行けよ……!」

「このバタービール甘いんだけど。あ、いつもか。」

「残念だったわね。今出したのは砂糖抜きよ!」

「なん……だと……!?」

 

三本の箒は今日も盛況である。

 

門限までの残り時間は三本の箒ですごした。これから卒業までの間にゆっくり残りの店は見て回ることにしたのだ。

 

「今日は楽しかったわ。これからどうする? 夕食にする? それともいったん研究室に戻るの?」

 

「うーん、いったん戻ろうかな。クーも一人だろうしお腹すいてるだろうから一緒に食べようかな。」

 

研究室の扉を開ける。そこには

 

「お帰りなさいませ、レナード様、お母様。」

 

メイド服を着た白い少女が立っていた。

ハーマイオニーは反射的に扉を閉めてしまった。

 

「レオ? 今の誰?」

 

「え? クーだよ。今日は成長したなぁ。」

 

「いやいや! 成長って度合いを完全に超越してると思うのだけど!」

 

「そうかな? 僕の想定ではあり得ることだと思っていたけどね。」

 

改めて扉を開ける。やはりメイドとしか形容しようがない存在がそこには立っていた。

身長から推定するに大体レオやハーマイオニーと同年代の少女に見える。だが、特徴的な緑の目や白い髪は小さいクーのままである。付け加えて言うならばとびっきりの美人である。

 

「ただいま、クー。今日は大きくなったね。」

 

「ただいま……。ねぇ、あなた本当にクーちゃんなの?」

 

「はい。わたくしはレナード様に造られたクーです。証拠をお見せしましょう。」

 

そういうとメイドは服ごと姿をグニョグニョと変形させる。形が整うといつものように白いローブを着た小さなクーに変わっていた。

 

「はい! 変身完了! ママ、ビックリした?」

 

唖然とするハーマイオニーをよそにレオはその様子を観察する。

 

「なるほど。記憶は継続、しかし人格のようなものは形態によって異なるって感じかな。体積が大きいほど細胞数が増加するからその分知能レベルも上昇するといったところか。クー、もう一度さっきの姿に戻れるかい?」

 

「了解、ご主人!」

 

再び姿をメイドにするクー。自身のペットの成長に満足気味なレオだったが一つ疑問がある。

 

「そういえばなんでそんな格好なんだい?」

 

「よくぞ聞いてくれました! わたくしは偉大なるレナード様に造られた新しい生物です。その役目はレナード様の役に立つこと。ゆえに小さいわたくしは学びました。今日も図書室で色々な本を読みました。屋敷しもべ妖精のことやマグルの貴族に仕える者たち。そこである結論に達したのです。主人に尽くすならばメイドが最適であると! 急ぎ研究室に戻ったわたくしは自身の体の大きさが適していないことに気が付きました。適切な体にならなければと思ったらこのように変化しておりました。」

 

「ふむふむ……。意識が体に影響したか。それならば仕込んでいた術式が発現するには条件が厳しいかもな。うん、とりあえずは今まで通り過ごしてくれ。何かあればこちらから命令を出すよ。さて、ハーマイオニーいつまで驚いているんだい? 夕食に行こうよ。」

 

「そ、そうね。クー……さん? ああ、なんて呼べばいいのかしら。」

 

「今まで通りクーちゃんでも構いませんし、お母様のご自由にどうぞお呼びください。」

 

「んー……。じゃあ、レオと同じでクーって呼ばせてもらうね。小っちゃい時にはクーちゃん呼びにするわ。」

 

 

今日はハロウィンであるので大広間では盛大なパーティーが開かれている。だが今年はかぼちゃ尽くしのパーティーの料理よりも一人の少女に注目が集まっていた。

人間離れした容姿に真っ白な姿。しかもメイド姿なのだから当然だ。そんな存在を横に座らせて平然と食事しているレナード・テイラーに生徒、特に男子が詰め寄った。

 

「おい、テイラー! その子は一体何なんだ!?」

「君にはグレンジャーさんがいるだろう! 良くないなぁそういうのは。」

「ずりぃぞ。俺にも出会いをくれ。」

「(モテない)男子の敵め! ゆ”る”さ”ん”!」

 

「皆様、落ち着いてください。レナード様のお食事の邪魔になります。」

 

「そうだよ。落ち着いて。この子はクーだよ。」

 

「「「「クーちゃん!??」」」」

 

「そう。自己進化してこんな風になった。」

 

「な、なぁレナード、いやレナード君。彼女、クーさんは君が造ったんだよな? だったらもう一人造ることもできるよな?」

 

「あ! てめぇ自分だけだなんて卑怯だぞ!」

 

「そうだそうだ! 俺たちだって……はっ!」

 

男子たちは気づいてしまった。女子たちからの絶対零度の視線を。クーはすでにハーマイオニーを中心とした女生徒たちによって避難させられている。

 

「サイテー。」

 

その一言で男子たちは撃沈した。短い言葉には様々な呪詛より強烈な力が宿っていた。だからモテないんだと言葉と視線から感じさせられた。

レオとしては自分の造った生物が美しいと言われるのは嬉しいので満足だった。

 

ハーマイオニーとのデートやメイドクーの誕生などあったが楽しい休日であった。




書いている自分もこの二人まだ付き合っていないのかと疑問に感じました。

ハーマイオニーはデートでドキドキしてましたが、レオは平常運転です。

クーは成長してメイドになりました。おそらく誰かが余計な事を吹き込んだんでしょう。(双子かな)
成長したクーはかなりの美人設定です。フラーと同格ですかね。
記憶は変身前後で維持してますが感性とかその辺が体格で変わってくる感じですね。
クーはもう一段回変化予定です。

ちょこちょこライダーネタを入れてみました。

では次回お楽しみに。


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40. 襲撃に初観戦さらには乱入

構想ではそろそろアズカバンの囚人も半分ぐらいですかね。
ハグリッドがいない影響でバックビークの件が無いことや
ハーマイオニーが逆転時計を使ってないので話が速く進みそう。

それでは40話どうぞ。


ハロウィンパーティーも終わり各々生徒たちは寮に帰っていく。

女性陣によって男子から引き離されていたクーもレオの元へ戻ってくる。

研究室に戻ったレオは就寝前にクーの状態を細かく調べておくことにした。

皮膚に触れたり、魔法を使って分析を進める。

 

「うんうん。細胞の状態には変化なし。基本的には小さい時と同じかな。クー、ちょっと体を変化させてみてくれ。」

 

「かしこまりました。」

 

クーは腕を伸縮させたり髪の毛を自在に動かす、腕の本数を増やすなどを繰り返す。

 

「次。魔法を使用。細胞にインプットさせたものを難易度が低いものから順に。」

 

浮遊、武装解除、麻痺、炎、移動、等々。ほぼ一通りの魔法は問題なく使用可能のようだ。その強度は並みの魔法使いを軽く凌駕している。これもドラゴンやバジリスクの因子による強大な魔力がなせるものだろう。精度についても創造時に組み込んだ改良知性向上剤が問題なく機能しているようで良好な結果だ。

 

「最後、ドラゴンの翼や鱗、バジリスクの目の再現。」

 

翼は以前から生成していたので問題なかったが、鱗は強度不足であり並みの魔法ならば防げるが強力なものには無意味だろう。バジリスクの目にいたっては再現ができなかった。

 

「申し訳ありません……。細胞のスペックを完全に発揮することができませんでした。」

 

「問題ないよ。成長や能力向上速度は想定よりも速いぐらいだからね。今日はこのくらいにしよう。進化したことで負荷は掛かっているだろうから今日は久しぶりに培養槽で寝ようか。」

 

「一緒には寝てはくれないのですか……?」

 

「駄目。それに大きくなったんだから僕のベットには潜り込まれると流石に狭い。」

 

「それでは寝るときだけ小さくなります!」

 

体を小さな状態にしてくっついてくる。ハーマイオニーの言う通り愛情をもって世話をすれば懐くのは本当のようだ。

そんな会話をしていると校舎内に魔法で連絡が流れ始めた。

 

『生徒たちは至急大広間に集まるように! 引率は寮監がします。監督生は談話室に生徒を集めて点呼をしてください。詳細な説明は大広間に集まってから校長が話します。』

 

「いったい何事かな? とりあえず行くよ。」

 

「はーい。」

 

研究室は大広間のすぐそばのためレオとクーは一番乗りだった。

大広間に入ると数人の教師が周囲を警戒していた。

ダンブルドア校長に何があったのかを聞く。

 

「グリフィンドール寮の入口の太った婦人の肖像画がシリウス・ブラックによって切り裂かれておった。今もこの校舎内にシリウス・ブラックが潜伏している可能性もある。生徒の安全のため全員をここに集めて守護するつもりじゃ。」

 

それを聞いたレオは正直なところ、『何だそんな事か。』という感想しか出てこなかった。凶悪な殺人犯であろうとも昨年のバジリスクより恐ろしいものであるとも思えなかった。

 

「研究室に戻ってもいいですか? 正直ここより防衛能力は格段に上だと思うのですけど。」

 

「そうじゃな。レオの研究室なら逆にシリウス・ブラックが捕まる可能性の方が高そうじゃ。戻ってよろしい。」

 

レオとクーは研究室に戻る。ほとんどの生徒は恐怖で眠れぬ夜を過ごしたが、レオだけはいつも通りにぐっすりと眠ることができた。

 

 

翌日から数日間は学校中ではシリウス・ブラックの話題だらけであった。どうやって侵入したのか、目的は何なのか、ホグワーツは安全なのか、話題は尽きることが無かった。昨年ほどではないが教師たちも警戒態勢になっており特にハリー・ポッターに対して警護しているように感じられた。シリウス・ブラックの狙いはハリー・ポッターであると誰もが気づいていた。

レオとしてはホグワーツに侵入できるシリウス・ブラックに多少の興味は出てきたが、手段としてはいくらでも考えられたので脱狼薬の改良やクーの成長の方がよっぽど重要だった。

 

シリウス・ブラックは見つからないままだったが、第一回のクィディッチの試合が近づくにつれ生徒たちの関心はそちらに移っていった。

クィディッチ試合当日は最悪の天候であった。

レオとクーは土砂降りの雨の中観客席で試合を見ている。クー(小)がクィディッチを見てみたいと言い出したのだ。どうも小さい状態ではサイズ相応に子供っぽいのだ。レオもクィディッチを見たことが無かったのでちょうどいいかなと観戦することにした。レオの周辺は魔法で作った雨風を防ぐ透明な天蓋を張っているのでぬれずに済んでいる。競技場全体を覆うこともできるが疲れるのでレオの周囲のみだ。その範囲に入りたいがためにレイブンクロー生たちでちょっとした争いになっていた。争いと言ってもレイブンクロー生らしく知識を競う平和なものだったが。

試合が始まるとクーは最初のうちは競技場内を箒で動き回る選手たちを見て目を輝かせていたが次第につまらなそうにしだした。

 

「ご主人。なんでいつまでもあの金色のちっこいの見つけられないの? アレ捕まえたら勝ちなんでしょ?」

 

クーの目にはスニッチが見えているようだ。見えているスニッチを選手たちがいつまでも無視しているように見えるなら確かにそれならつまらなくもなるだろう。

だが、レオはそれ以上にこのクィディッチに興味を持てないでいた。

 

「みんなは金色のスニッチが見えてないんだろうね。僕としてはこのルールの良さが理解できないな。スニッチなんて最初に見たらどこにどのタイミングで飛ぶか分かっちゃうから、僕にはクィディッチは向かないね。」

 

試合は一進一退であったがレオとクーはもう帰ろうとしていた。

その瞬間、競技場の歓声や怒号、それに実況までもが一瞬で消えた。何事か辺りを見渡すと100体を超える吸魂鬼(ディメンター)が競技場に集まっていた。

 

「ご主人。なにあれ、気持ち悪い。」

 

「クーには影響なしか。人ではないし高い魔力もあるからなのかな。クー、あれは吸魂鬼(ディメンター)というものだ。帰ったら詳しく教えよう。その前に邪魔者は消えてもらおう。」

 

エクスペクト・パトローナム・ボム(守護霊爆弾)。」

 

守護霊の爆弾を造り出し上空に放り投げる。爆弾は爆発すると白い光を吸魂鬼(ディメンター)に浴びせる。至近距離にいた吸魂鬼(ディメンター)は消滅し、生き残った吸魂鬼(ディメンター)たちは退散していく。

競技場を見るとグリフィンドールのシーカー、ハリー・ポッターが箒から落ちるところであった。ダンブルドアが助けたが試合はハッフルパフのシーカー、セドリック・ディゴリーがスニッチを掴んだことで勝利していた。セドリックは試合のやり直しのため抗議していたがそれは認められないようだった。

 

レオとクーは競技場から戻ろうとしたがレイブンクローのクィディッチチームに呼び止められる。

 

「テイラー、待って! さっきスニッチ簡単に見つけられるみたいに言ってたの聞こえたけど、本当なの!? もしそうならチームに入ってくれないかしら?」

 

チームのシーカーのチョウ・チャンが興奮した様子で話しかけてくる。

 

「嫌です。僕の『眼』で開始前のスニッチを見ればどのタイミングでどのように飛ぶか解ります。でもチームには参加したくありません。練習に時間を取られたりするのは嫌ですし、クィディッチの良さも理解できませんでした。それに開始数秒なんかで試合が終了するようなもの楽しいと言えますか?」

 

レオが『眼』を活用してシーカーをすればスニッチの位置が丸わかりになる。そうなれば必然的に試合は即終了だ。そんなものプレイヤーも観客も楽しいわけがなかった。

 

「あー……。確かにそれは嫌だわ。分かったわ。私たちの力で勝ってみせるね。」

 

クィディッチチームと別れて今度こそ研究室に戻る。

クーが不思議そうに聞いてきた。

 

「ご主人。なんであの人たちはあんなのに楽しそうにしてるの?」

 

「人が何を楽しむかは人それぞれ、千差万別だからね。僕は魔法研究が好きだけど中には勉強が大嫌いな人もいるしね。そういったこともどんどん学んでいこうね。まぁ、僕もそういう方面はダメだからハーマイオニーに頼った方が良いかもね。」

 

「分かった!」

 

レオとクーのクィディッチ初観戦は終了した。




クーは不定形なので腕を伸ばしたり増やすなど造作もないのである。
今は細胞のスペック使いこなせてないが完璧になったらどうなるかはお楽しみに。

クーはよくレオのベッドに入り込んで寝てます。イメージは猫。
流石に大きい状態じゃ狭いので却下。美少女でも自分が造ったペットにはテレも欲情もないレオなのであった。

レオ、クィディッチ初観戦。結果はやはりというか興味なし!
4巻のワールドカップどうしようかな……。

レオの箒の才能はハリーの足元にも及びません。フォイにすら余裕で負けます。
ですが、スニッチを見つけるだけなら開始前に『眼』見て終了。もし開始前に見てなくても空中に走るスニッチの魔法式の残滓から読み取ってキャッチ。
試合即終了なのでとてもつまらないものになります。

守護霊は銃の次は爆弾に。レオの改造次第で大体の物には変わります。

では次回お楽しみに。



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41. 三人でお出かけ

先の話を考えているのが楽しい。
とりあえず炎のゴブレットはほぼほぼ構想は出来ましたね。

これが完結したらどんなのを書こうかなと遠い未来のことも妄想したりしてますね。
ハリポタの東方とのクロスや百合百合な物語が頭に浮かんでます。

では41話どうぞ。


クリスマス休暇の直前。

本日は二度目のホグズミードへの外出許可日だ。

今回はレオとハーマイオニーだけでなくクーも同行している。

 

「お母様、本当にわたくしがご一緒してもよろしかったのでしょうか? レナード様と二人っきりの方が……。」

 

「遠慮しなくていいのよ。クーは外に興味があるでしょ。私はクーと一緒で楽しいし、もちろんレオもそう思っているはずよ。」

 

「僕もクーがいることに何の不満もないね。外の刺激はクーに良い影響があるはずさ。さぁ、行こうか。」

 

ホグズミードに到着した一行。クーは初めて見るホグワーツの外に興味津々といった感じだ。少し歩くたびに店を見ては目を輝かせ、どんな店なのか聞いてくる。

二人はそれを微笑ましく見守っていた。

 

「次の店は……、あっ、申し訳ありません。はしゃぎ過ぎですよね……。わたくしはレナード様の為に存在しているというのに、自分ばかり楽しんで。これではメイド失格です!」

 

「クーがどんなことをしようとも僕としては有益なデータが得られるから問題ないけどね。クーは自分がしたいことすればいいよ。」

 

「ありがとうございます。ですが、わたくしは細胞の一片、魂の全てにいたるまでレナード・テイラー様のものです。今後はもっと気を引き締めなければ!」

 

成長してメイドをするようになってからのクーは若干レオの対する忠誠心が暴走することがあるがとりあえずは放置している。小さいクーは天真爛漫、メイドクーはレナード至上主義。これから先、成長を続けたらどうなるかちょっと楽しみにしているレオであった。

 

一通り見て回ったので昼食にすることにした。前回も訪れたマダム・ロスメルタの三本の箒に決まった。

 

「いらっしゃい。あら、今回は彼女だけじゃなくて美人のメイドさんまで連れているのね。両手に花なんて案外やるじゃない。」

 

「こっちのメイドは僕が造った魔法生物で人間じゃないですけどね。まぁ、造った我ながら美しく育っていると思いますね。」

 

自分の造った魔法生物をメイドにして美しいなんていう趣味だと勘違いし、レオに若干引きながらもテーブル席に案内するマダム。注文はとりあえずバタービールに決まった。バタービールを頼むのはここ、三本の箒では当たり前なのか昼食のメニューを考えていたらすぐに持ってきてくれた。

 

「「「乾杯!」」」

 

ジョッキがぶつかるコンッという良い音が響く。レオとハーマイオニーは久々の、クーにとっては初めての味を堪能する。

 

「クー、どう? おいしいかしら? クーちゃんの状態のほうが好みの味だったりするかな。」

 

「甘くておいしいです! 小さなわたくしも絶対好きになりますね。」

 

その後に運ばれてきた料理もホグワーツの料理に負けず劣らず美味であった。三本の箒がバタービールだけで人気ではないと分からせるに十分な味付けだった。

 

「本当においしいですね。もっと料理について学ばなければ!」

 

「クーは料理の勉強中なのね。私も少しずつ練習してレパートリーを増やしているのよ。今度一緒に何か作らない?」

 

「是非ご一緒したいです、お母様!」

 

「じゃあ、僕も一緒に良いかな?」

 

「レオって料理できるの!?」

 

「ご存じなかったのですね。恥ずかしながらメイドであるわたくしは主であるレナード様より料理については劣っております。何でも『魔法薬と基本は同じで分量と手順がしっかりしてればできる。』とのことです。」

 

ハーマイオニーは驚愕の表情でレオを見る。魔法や勉強以外でレオに負けていると知ってショックを受けている。

 

「流石にレシピを知らないものやオリジナル料理は無理だよ。魔法薬だったらできるんだけどね。」

 

それからは好みの味やどんな料理が好きなのかで話が盛り上がった。

しばらくすると、店内に新しい集団が入ってきた。その集団を目にしたハーマイオニーは驚いた。

 

「魔法大臣のコーネリウス・ファッジだわ。マクゴナガル先生とフリットウィック先生まで。」

 

レオはファッジとは研究成果の発表や闇祓いの副局長である父、アースキンからの繋がりで何度か面識がある。かといって特別興味を引くような人物では無かったのであまり印象には残ってない。逆にファッジの方は素晴らしい発明をするレオのことを気に入っていて、魔法省がいかにレナード・テイラーに協力して新しいものを生み出しているかというアピールをしている。ゆえに魔法省はレオに対しては非常に寛容で甘いのだ。

 

「大臣、どうしてこんな田舎に? やはりシリウス・ブラックの件ですか?」

 

マダムが大臣に尋ねている。やはりホグワーツにシリウス・ブラックが現れたのに恐怖しているようだ。

 

「ああ、そのことについてホグワーツと色々と話してきたんだ。ん? おお! そこにいるのはレナード君じゃないか!」

 

レオを見つけると先ほどまでの憂鬱そうな顔から一転笑顔になって近づいてきた。

 

「いやいや、レナード君はこんなかわいいガールフレンドがいたんだね。君、名前は?」

 

「初めまして、大臣。ハーマイオニー・グレンジャーと申します。」

 

「大臣、彼女は我がグリフィンドールでも特に優秀な生徒だと思っております。」

 

マクゴナガルは自分の寮やその生徒に対してはなんだかんだかなり優しいのだ。

ハーマイオニーはいきなり褒められてちょっと面食らった。

 

「ほう! マクゴナガル先生がそこまで言うとは! かなり名のある家の子なんだろうね。」

 

「彼女はマグル出身ですよ。優秀かどうかにはそんな事些細な事ですけどね。」

 

「おおっとこれは失礼。それではそちらの真っ白なメイドガールは何だい?」

 

「以前に魔法生物規制管理部に申請した新しい魔法生物です。名はクー。今は成長途中なので詳細なデータはもう少し後になるかと思います。クー、挨拶。」

 

「はじめまして、コーネリウス・ファッジ魔法大臣。わたくしがレナード様によって創造された魔法生物です。クーとお呼びください。」

 

ファッジは目を見開いて驚く。申請された内容はそこまで詳しく読んでなかったが人型だとは思いもしていなかった。

 

「ああ、よろしく。それでだ、レナード君。シリウス・ブラック逮捕に対して何か開発とかしてないかな?」

 

「いえ、何も。今はクーと脱狼薬の改良が限界です。」

 

勿論嘘だが。ファッジは当てが外れて落胆している。

その後はファッジ達は別のテーブルでマダムを交えて飲み会を始めた。会話の内容はシリウス・ブラックや魔法省に対する批判の愚痴、ブラックがいかに凶悪な犯罪者であるかの話になった。

ブラックの話題は次第に昔、まだ学生だった頃の話に移っていった。マクゴナガルとフリットウィックは昔のことを思い出して語り始めた。シリウス・ブラックはハリー・ポッターの父、ジェームズ・ポッターと無二の親友で悪戯の常習犯。しかし成績も優秀で将来が非常に楽しみであったらしい。話を続けていくうちにファッジがシリウス・ブラックの最悪の所業があると話し始めた。教師たちは止めたが酔った勢いとストレスからかファッジは止まらなかった。

どうやら大量殺人の前にハリー・ポッターの両親のことを裏切り闇の帝王に売り渡していたらしい。そしてその裏切りを許せなかったピーター・ペティグリューが追って逆にマグルもろとも殺されたとのこと。

レオとしてはシリウス・ブラックの過去や裏切りなど興味がなくほぼほぼ聞き流していた。クーも同様だったが、ハーマイオニーだけは人並みにショックと怒りを覚えていた。

 

大臣たちの話でハーマイオニーの気分が悪くなったがそれ以外はホグズミードを楽しんだ。

昼食後も色々と見て回ってそのたびにクーが楽しそうにするので連れてきて正解だったと二人は満足している。

ふと、クーは気づいた。

 

「レナード様、あちらにあるボロボロの屋敷はなんでしょう? 人が住んでる様子もないですし、お店というわけでもないでしょうし……。」

 

興味のないことには本当に役に立たないレオに変わって情報は何でも知りたがるハーマイオニーが答える。ホグズミード村の店や場所はあらかじめ把握済みなのだ。

 

「あれは叫びの屋敷ね。何の気配もないのに満月の晩だけ不気味な叫び声が聞こえてくるらしいわ。だから気味悪がって誰も近づかないらしいのよ。中に何かいたりするのかしら?」

 

「ふーん……。クー、行ってみるかい?」

 

「そうですねぇ……。何事も経験らしいですし、なぜあのボロ屋敷が今でも残っているのかは気になります。何か危険なものがいるのならばレナード様の為にも排除しておきます!」

 

叫びの屋敷の前に立つ三人。こんなとこには誰も住みたくはないだろうといった外見だ。

 

「さてと、探査調査。」

 

屋敷の中の構造と生物の有無を魔法で調べるレオ。何もないと思っていたが小さな虫やネズミと思われる小さな生命以外に二階に大きな存在がいる。

 

「ん~? 何かいるね。大きめの動物かな? いや、人間もありえるか。」

 

「わたくしは今のところ人間の匂いは感知していません。嗅いだことの無い匂いを感じます。」

 

「どうする、レオ?」

 

「ここまで来たんだし、入ってみようか。門限までの少しの時間を使うには丁度いいんじゃないかな。」

 

三人はボロボロになっている扉から中に入っていく。

中には予想外のものが潜んでいるとも知らずに。




ホグズミードで子連れデート回。

知らない人からすれば魔法生物にメイドの恰好させてるレオはかなりやばい人ですよね。

料理ができるレオ。ただしレシピのまましか作れないし、別に味も普通である。

ハリポタ無能の代名詞ファッジ登場。この人なんで大臣になれたんだろ?
名家の出身なのかな?

叫びの屋敷に突入する三人。どうなる黒犬おじさん!

では次回お楽しみに。


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42. 真実との遭遇

お気に入り6000突破!
いやぁ、ありがたいです。

これからも私の妄想物語に付き合っていただけたらありがたいです。

では42話どうぞ。


ボロボロの叫びの屋敷に入るレオ、ハーマイオニー、クー。外観と同じように中も酷い有様だった。

 

「探知された反応は二階だったな。階段は……、あっちか。」

 

三人は二階に上がり目的の部屋まで到着する。

 

「さーて、何がいるかな?」

 

扉を開けて中を見渡す。やはりボロボロの室内にはベッドがあるだけであった。そしてその上に大きな黒い犬が寝ていた。

 

「なんだ、野良犬じゃない。どこから入り込んだのかしら?」

 

「これが犬ですか! 撫でても大丈夫でしょうか。」

 

クーは初めて見る犬に興味津々で近づいていく。黒犬は気配を感じて起きてこちらを見る。最初は驚いた様子だったがクーに撫でられると大人しくなった。

レオだけは黒犬を見て不可解な感じがしたのでよく『眼』を使って観察することにした。

解析結果、黒犬はただの犬では無かった。

 

「クー。離れて。それは犬じゃない、動物もどき(アニメーガス)だ。」

 

レオのその発言を聞いた黒犬はいきなりレオとハーマイオニーの方に飛びかかってきた。

レオはハーマイオニーの前に出て防御をする。だがそのレオの前にクーが飛び込んできた。黒犬の牙がクーの腕に食い込む。腕からは体液が流れ出て床に滴り落ちる。

 

「クー!」

 

ハーマイオニーが叫び声を上げる。だが当のクーは顔を無表情にして口調も冷たく自らの腕を噛んでいる黒犬を見ていた。

 

「我が創造主、レナード・テイラーへの攻撃を確認。腕部損傷軽微。敵対生物と認定。防衛機能プロテクト解除。排除開始。」

 

機械的に言葉を発するクー。次の瞬間、体は一回り大きくなり大人のような体格に、メイド服から黒い鱗で覆われた鎧のような姿に変わる。髪も伸び、背中には翼が生える。

黒犬の牙は今まで食い込んでいた皮膚から弾かれる。その硬度は金属などより硬くとてもじゃないが破壊できるとは思えなかった。

黒犬は飛びのきこちらの様子を窺っている。だがクーは待ってはくれなかった。髪が刃のようになり襲い掛かかる。躱しきれずに前足を深く切り裂かれる黒犬。犬の姿のままでは殺されると判断したのか人間の姿に戻る。その姿に流石のレオもすこし驚いた。

 

「おお、なんとシリウス・ブラックとはね。」

 

ブラックはどこからか手に入れていた杖を使ってクーに魔法を放つ。こんな状況であるし相手は得体の知れない生物(バケモノ)である、手加減などしたらこちらの命がない。

 

ステューピファイ(麻痺せよ)!」

 

全力の魔法がクーの胸に直撃した。避けられるか防がれるかと予想していたので少し驚愕する。

 

(良し! 残り二人を気絶させて一刻も速く逃げなくては……! あいつを殺すまで捕まるわけにはいかない!)

 

思考しながら杖を残りの二人にむけようとした瞬間、杖を持った右腕が肘先から吹き飛んでいた。

 

「うぎっ! ぐぅううう!」

 

激痛にその場にしゃがみ込む。それが彼の命を救った。ちょうど首のあったところをクーの刃状に変化させた髪が通過したのだ。

 

「精度不足。要修正。ですがこれで終わりです。」

 

シリウス・ブラックは自身の魔法の力量はそれなりだと自負していた。その自分の全力の魔法が直撃したのにこの化物は全く効いていない。腕の激痛と相手への恐怖から一瞬動きが遅かった。クーに首を掴まれ壁に叩きつけられる。

 

「がっ!」

 

「消し炭になりなさい。」

 

化物の口が開き奥から炎が見える。仮に万全の状態で杖を持っていてもその炎は人を焼くのに十分な威力があることを瞬時に悟った。

死にたくない! それだけのために全力で抵抗する。だが化物の拘束からは逃れることは叶わず次の瞬間には炭素の塊になる運命だった。

 

「待て、クー。」

 

その運命は一人の少年の言葉であっけなくなくなった。

クーはその命令に何の疑問も抱くことなく攻撃を中止する。

 

「クー。とりあえず、腕を止血しろ。拘束もだ。さて、どうしたものか。とりあえずダンブルドア校長に連絡を入れておくか。」

 

「ま、待ってくれ。話を聞いてくれ!」

 

クーの髪で体をぐるぐる巻きにされながらシリウス・ブラックが叫ぶ。

 

「どうぞ。話すだけなら自由です。」

 

シリウス・ブラックは話し始める。自分はポッター夫妻の秘密の守り人では無かったこと、ピーター・ペティグリューに代えていたこと、その後にピーターが裏切ったことでポッター夫妻を死なせたこと、ピーターを追い詰めたが逃げられたこと、ピーターはネズミの動物もどき(アニメーガス)で現在はロン・ウィーズリーのペットとしてホグワーツにいること、そしてそのネズミを殺すため動物もどき(アニメーガス)であることを利用してアズカバンから脱獄したことを。

全てを聞き終えたレオは一応の辻褄は合っていると感じた。だが、信用するかは別問題だ。

 

「信じられないだろうが真実だ。なんなら真実薬を飲んでもいい。」

 

そこまで言うなら真実なのかもしれないがそれを判断するのは正直めんどくさい。ダンブルドア校長に丸投げしてしまおうと決めた。

念話をダンブルドア校長に送る。

 

((ダンブルドア校長。ホグズミードの叫びの屋敷でシリウス・ブラックを発見、拘束しました。ですが、シリウス・ブラックは自分は裏切り者ではなくピーター・ペティグリューが裏切り者だと言っています。その辺の判断をするために真実薬をもって一人で隠れて来ていただきたいです。))

 

数分待つとダンブルドア校長が叫びの屋敷に駆け込んできた。

 

「レオ、それにハーマイオニーも。無事かの? さて、シリウス。レオから聞いたが本当かね?」

 

「ダンブルドア先生……。俺はピーターを殺すためにここにいる。決して他の目的ではない!」

 

「それならばここに真実薬がある。これを飲んだうえでそれを見極めさせてもらおう。」

 

シリウス・ブラックは抵抗することなく真実薬を飲む。その後に話す真実は先ほどのものと寸分違わぬものだった。

 

「さてどうしたものかの……。シリウスが無罪だとしても肝心のピーターが今どこにおるのやら。」

 

「クルックシャンクスが賢かったのが痛手ですね。おそらくスキャバーズが動物もどき(アニメーガス)であると見抜いて執拗に攻撃していたのではないでしょうか。」

 

「クルックシャンクスを知っているのか? あの子にはここで会ってな、信用されるまで時間がかかったがヤツを連れてくるように頼んだんだ。」

 

「クルックシャンクスは私のペットよ。あの子があんなにしつこかったのはあなたのせいだったのね。そのせいで友達と喧嘩になっちゃたのよ。」

 

「それは申し訳ない。だが、私にはそうするぐらいしかしか手が無くてね。」

 

「とりあえずシリウスはここに匿うことにするかの。ピーターについてはこちらで何とかしよう。それまで絶対にここを離れるでないぞ。下手をすればピーターに逃げられるだけではなく吸魂鬼(ディメンター)のキスが待っておるじゃろう。」

 

「そうさせてもらいますよ。動こうにもこの怪我じゃしばらくは安静にしてなきゃな。」

 

そう言って無い右手を上にあげる。応急処置をしたのでとりあえずは大丈夫だがいくら魔法でも切断された腕の接合には時間がかかる。

実のところ、クーの体内の命の水を使えば簡単に治すことも可能だ。クーの刃が鋭く上手いこと切断されていたので腕をくっつけて命の水と少しの魔法で完治できるのだ。

レオもクーも襲い掛かってきた相手なので治す気はないのだが。

 

叫びの屋敷にレオとダンブルドアで監視と進入禁止を兼ねた結解を設置する。

今回の件は他言無用とし、ピーター・ペティグリューをどう捕らえるか話し合うこととなった。

 

 

校長室にはダンブルドア、レオ、ハーマイオニー、そしてメイド状態に戻ったクーがいる。そこへルーピンが入ってきた。

 

「ダンブルドア校長、お待たせしました。それに、レナード君とグレンジャーさんにクーさんまで。いったいどうしたんですか?」

 

「ルーピン先生、落ち着いて話を聞いて欲しい。……先ほど叫びの屋敷でシリウス・ブラックを捕らえた。そこで彼から真実を聞いた。シリウスはポッター夫妻を裏切ってはおらん。真に罪に問われるべきはピーター・ペティグリューじゃ。」

 

ダンブルドアはシリウスから聞かされた真実を話していく。ルーピンはシリウスを疑っていた後悔とピーターへの怒りで震えている。

 

「ここからが問題なんじゃが、わしは君がピーターやシリウスが動物もどき(アニメーガス)であることを知っていたと考えておる。そこでなんじゃが、ネズミのピーターが潜伏するとしたらどうすると思うかね。ヤツを見つけるために少しでもヒントが欲しい。」

 

「ははは……。やはり知ってたのですね。それならいいものがあります。これを。」

 

そう言って何も書かれていない羊皮紙を広げてみせる。ハーマイオニーとクーは分かっていないが、ダンブルドアは何かに気付き、レオはその中に構築された式の複雑さに驚いた。

 

「忍びの地図というもので私、シリウス、ジェームズ、そしてピーターの四人で学生時代にいたずら目的で作成したものです。『われ、ここに誓う。われ、よからぬことをたくらむ者なり』……この通りホグワーツの地図になっています。それだけではなく人の位置と名前を示すことができます。」

 

「ほほぉ。これはすごいの。これがあったから君らはあれだけやんちゃできたのであろうな。」

 

「これは素晴らしいですね。これを造るには並大抵の技術じゃ無理ですね。」

 

忍びの地図の魔法の複雑さに思わず見入るレオ。ホグワーツ中を探すとピーター・ペティグリューの名が見つかった。

 

「さて、行くかの。善は急げじゃ。」

 

ダンブルドア、ルーピンそしてレオの三人でピーターを捕獲に向かう。

結果、当然のように捕らえられたネズミと一緒に三人は戻ってきた。

あとはこのネズミからも証言を得て魔法省を納得させるための準備をするだけだ。

 




クー戦闘形態に進化。この状態のスペックは次回紹介しますが基本チートです。
賢者の石を埋め込んだドラゴン+バジリスク+魔法使い+αって感じですからね。

あっさり捕まるシリウス。レオがクーを止めたのは犯罪者でもクーに殺しはさせたくなかったからですね。まぁ、作者の都合でシリウスを殺したくなかったのもありますが。

ついでにもっとあっさり捕まるピーター。
ルーピンがハリーから忍びの地図を没収してたのが運が無かった。
原作ではもう少し後の出来事でしたが今回のホグズミードでのハリー(+ロン)の行動が三本の箒にレオがいる→別の場所に→マルフォイにちょっかい出す→スネイプ待ち伏せ→ルーピンによる没収てな感じでルーピンの手元にちょうど忍びの地図がありました。

忍びの地図ってかなりのチートアイテムですよね。

それでは次回お楽しみに。


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43. 新薬完成

少しずつ書いてきて数カ月。
これでもまだ三巻の終盤。
まだまだ先は長いけれど完結まで頑張ります。

それでは43話どうぞ。


魔法界に衝撃が走った。

魔法省から緊急の発表があった。その内容に魔法界全土が驚愕した。

アズカバンより脱獄した大量殺人犯のシリウス・ブラックが本当は無罪であったというのだ。

真犯人は殺されていたと思われていたピーター・ペティグリューである。

ポッター夫妻を裏切り闇の帝王に売り渡していたのもペティグリューであり、シリウス・ブラックはそれを知ってペティグリューを追い詰めたが逃げられ、裏切りと大量殺人の濡れ衣を着せられていたのだ。

真実がどのように明らかになったのか、その詳細は発表されなかったがシリウス・ブラックがホグワーツに侵入していたことから偉大な魔法使いのアルバス・ダンブルドアによるものだと世間では認識されていた。

逃亡していたピーター・ペティグリューも無事捕まりアズカバンへの終身刑が決まった。

これで晴れてシリウス・ブラックは自由の身となり多額の補償金が魔法省から支払われることとなった。

 

 

シリウス・ブラック無罪の衝撃の次の日。またもや世間を驚かせることが起きた。

アズカバンへ投獄されたピーター・ペティグリューが脱走し行方をくらませたのだ。

これには世間から魔法省、特に大臣のコーネリウス・ファッジへの責任問題になったがファッジは大臣を続けることとなった。

 

 

そんな世間の騒ぎなど関係ないとばかりにレナード・テイラーはここ数日脱狼薬の改良に取り組んでいた。ルーピンの助力もあって狼人間の詳しい分析ができたので以前の脱狼薬とはもはや別物になっている。後は最終調整をしてルーピンでテストの予定だ。

 

「ふぅ。こんなところかな。」

 

一段落したので休憩にすることにした。ソファーに座ると即座に紅茶が準備される。メイドの姿をしたクーによるものだ。

 

「ありがとう、クー。」

 

紅茶の香りと味を楽しむ。クーの腕前は日々進歩している。料理やその他の事、魔法薬の作成の手伝いまでどの分野でも成長中だ。レオが目指していた自分の作業を手伝えるペットという部分はすでに合格だ。

 

「クー。紅茶を飲み終わったら、魔法訓練場に行くよ。クーの能力が今どんな感じなのか見ておきたい。」

 

「かしこまりました。」

 

魔法訓練場。ここは新しい魔法の実験などに使う場所で空間拡張によって広げられた広大な場所でありなおかつ高耐久性を持っている。

 

「クー。戦闘形態に変化。」

 

「了解しました。」

 

クーの体が一回り大きくなる。メイド服も黒々とした鎧に変化する。その状態を隅々まで『眼』で観察し、実際に触れたりしていく。

その後は性能テストの実施だ。テストの結果、判明したのは鎧はドラゴンとバジリスクの鱗が形態変化したものであり耐久性はそれらを上回っている。アバダケダブラ(息絶えよ)でも数発ぐらいでは突破はできないだろう。仮にダメージを与えても体液の命の水で少しの欠損なら即復元。そもそも単細胞生物が群体をもって一つの形を構成しているのだから完全に滅ぼすには幾兆の細胞を全て破壊するしかない。

体の変化も今までの比ではない。ドラゴンの翼による高速飛行。硬質化させた伸縮自在の髪による斬撃。体のいたる所からから変幻自在の触手を出し、触手の先端からは魔法、ドラゴンの炎、バジリスクの毒が出すことができる。更にはバジリスクの目にまで変化可能だ。

……正直造り出したレオでさえまともに戦えば指輪全開、魔法薬によるドーピングをしても勝てるか分からないような存在になってしまっている。レオとしてはこの結果には満足しているのだが。

 

「うん、素晴らしい……。クー。僕の最高傑作だ。何か欲しいものはあるかい? 何でも言ってごらん。」

 

「ありがとうございます、マスター。……その、お願いが一つあります。」

 

自身を落ち着かせるように深呼吸をするクー。

 

「抱きしめて、頭を撫でてください!」

 

思っていたようなお願いでは無かったので驚くレオ。

 

「そんなんでいいのかい? もっと、こう欲しいものとかない? というかなんでそれ?」

 

「そのですね……、今まで褒めてもらったりは有ったのですが、そういった行為は無くてですね。今までに不満があるわけでは無いのですが、そういうものにちょっと憧れていました。犬とか猫は撫でられていると聞いたのでペットである私もそうしてもらいたいなと。」

 

(ふむ……。少女型になっているせいなのかな、よく分からないが望むならやってあげるとしよう。)

 

抱きしめて頭を撫でる。ついでにもう少し褒めてあげる。

 

「クー。君はよくやってくれているよ。これからもよろしく頼むよ。」

 

クーは幸せそうな顔をしながら心の中でもう一度誓った。この方に命の限り、細胞全てを使って尽くすと。立ちふさがる障害は全て排除すると。

 

 

 

シリウス・ブラックやピーター・ペティグリューの一件で世間が騒がれてから数日が経過した。世間はすでに騒動のことなど忘れてクリスマスムードだ。

ホグワーツもクリスマス休暇に入っている。ホグワーツに残っている生徒は極僅かだ。その中にレナード・テイラーの姿もあった。

レオの研究室には人が集められていた。レオとハーマイオニー、クーの他にはダンブルドア、スネイプ、シリウス・ブラックに本日の主役ともいうべきリーマス・ルーピンだ。

 

「脱狼薬の更なる改良品が完成しました。これからルーピン先生で最終テストをします。効果の証人としてダンブルドア校長とスネイプ先生にも来ていただきました。」

 

「配合のリストを見せたまえ。」

 

スネイプはルーピンがどうなろうとどうでもよかったが、一人の魔法薬研究者として新しい魔法薬の内容は知りたかったのだ。

手渡されたリストを確認していく。ダンブルドアやシリウス、ルーピンも覗き込んでくるが無視して内容を確認していく。使われている材料を読み進めていくにつれリストを見ていた全員が険しい顔になる。読み終えたスネイプはレオに疑問をぶつける。

 

「テイラー。これは何かね? 我輩にはこれがただの強力な毒薬としか思えないのだが。」

 

「わしも同意見じゃ。これではルーピン先生が死んでしまうのぉ。ユニコーンの血まで入っておるし仮に生きられてもそれは死んだほうがましな状態じゃ。」

 

「そうですね。これは強力な毒薬でもあります。これを使ってルーピン先生の中の狼だけを殺します。この薬はそのままではただの毒薬以外の何物でもないのですがそこに狼人間の血を入れることで、血の持ち主の人間の部分以外を殺す成分に変化します。ユニコーンの血の生かす部分を人にそれ以外の呪いの部分と毒を狼に作用させる。結果、狼人間の狼だけが殺され人の部分だけが生き残り人間になります。僕はこの薬を『殺狼薬』と名付けました。」

 

予想外の効果の薬であった。今までの脱狼薬や改良脱狼薬は理性を残したり、狼に変化するのを抑制するだけだった。今回の改良はその抑制を恒久的なものにするものだとばかり思っていたのだが、まさか完全に狼を除去させるものだとは思いもしなかった。

 

「では、ルーピン先生。この中に血を入れてください。」

 

ルーピンに手渡されたフラスコには真っ黒な液体が入っていた。そこに自らの血を一滴入れる。血が混入してもその色は黒く変化はなかった。

レナード・テイラーのことは信じているルーピンも流石に躊躇してしまう。

 

「あ、言い忘れてましたけど飲んだ後は最初すごく苦しいと思います。そのうち平気になるはずですけど。」

 

いざ飲もうとした瞬間、いらない追加情報が出てきた。迷っていても先には進めないと覚悟を決めて飲む。

 

「ぐ、おあああおおおおお!」

 

薬を飲んだとたん苦しみだすルーピン。うずくまる体は次第に次第に毛深くなり牙も伸び始める。その姿は完全に狼に変化してしまった。

レオ、ハーマイオニー、クー以外は失敗したと思ってしまうのも無理はないだろう。

狼になったルーピンをダンブルドアたちが警戒しているとルーピンの体から煙が立ち込める。その次の瞬間にはルーピンは炎に包まれる。

 

「ルーピン! レナード・テイラー、これは一体どういうことだ!? どうにかしろ!」

 

怒りに任せてレオを怒鳴るシリウス・ブラック。だがそれを止めたのはルーピンであった。

 

「大丈夫だ、シリウス。最初は苦しかったが今はとても気分がいい。体の中から汚いものが抜けていくのが分かる……。今、確実に浄化されている……。」

 

炎に焼かれているというのにルーピンはとても穏やかな気分だった。炎が消えたときには先ほどまでの毛も牙もない人間としてのリーマス・ルーピンだけがそこに立っていた。

 

「気分はいかがですか?」

 

「最高だ。こんなに清々しいのは初めてだ。私は人間だ……、人間なんだ!」

 

その様子に満足するレオ。ルーピンは感動で放心状態になりブラックは喜んで友を抱きしめる。

この瞬間、レナード・テイラーがまた一つ常識を覆したのだった。

 

クリスマス休暇の残り時間を使ってリーマス・ルーピンの体は聖マンゴ魔法疾患傷害病院で徹底的に調査された。結果、彼は唯の人間であることが証明された。

年が明ける前に殺狼薬は公表された。

世間の反応はシリウス・ブラックの件と同等以上の衝撃的なるのも必然だ。もちろん狼人間たちの喜びようは他の比ではなく凄まじいものだった。

魔法省が把握してない者も含め、名乗り出た狼人間になってしまった人間は無償で殺狼薬が与えられ、狼人間という存在は魔法界からほぼ消え去る。

この功績を讃えられレナード・テイラーには勲一等マーリン勲章がおくられることとなった。

1993年は魔法界にとって色んな事が起きた年となった。




シリウスの無罪証明とピーター逮捕はダンブルドアに丸投げしたので描写カット。

ピーター脱獄。ファッジが無能なのでシリウスと同様に動物もどきなのを失念していた。
ピーターはネズミの状態で海を渡り切れるかどうかは賭けだったが、途中力尽きて人間状態でマグルの漁船に救助されて無事でした。

クーは正直どうやったら倒せるんだ状態。アバダケダブラが直撃しても細胞が一個死ぬだけなので正直無意味。どうすりゃいいんだよこれ……。
クーが撫でて欲しいって言ったのは犬などが構ってほしいっていうのと同じ感じ。今まではハーマイオニーがいるところでは我慢してた。恋愛感情等は無いです。

脱狼薬あらため殺狼薬完成。強力な毒薬でもあるので武器としても使用可能です。

これで三巻のイベントは終了ですかね。あとは三年目の終わりと閑話一つ挟んで炎のゴブレット編です。

それでは次回お楽しみに。


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44. 三年目が終わって

今回でアズカバンの囚人編終了です。
巻が進むごとに話数が少なくなる……。
まぁ、三巻はハグリッド不在でバックビークの件が無いし、逆転時計もないしで
是非もないよね!

あとこの話と同時に登場人物紹介・メモも投稿しているので気になったら見てください。そっちは随時情報更新していこうかと思います。ネタバレがあるので最新話まで見てから読んでください。

では44話どうぞ。


シリウス・ブラックの脱獄と真実。

ピーター・ペティグリューの逃亡。

レナード・テイラーによる殺狼薬の発明。

この1993年での出来事は魔法界を大きく騒がせた。

だが年が明けてからは大きな出来事もなく平和な日々が始まる。

それはホグワーツでも同様であり、生徒も教師も皆変わらぬ日々を過ごしていた。

 

殺狼薬の接種後、リーマス・ルーピンは満月の夜に狼になることを恐れなくて済むことからなのか、今までの服装なども一新して見違えるようになる。授業もより一層生徒たちを思って取り組むようになり仮に狼人間であったとしても生徒に慕われるような立派な教師になっていた。

 

宿題に忙殺され、クィディッチの試合で白熱して、グリフィンドールとスリザリンがいがみ合い、ホグズミードに行き、スネイプに減点され、ウィーズリーの双子が騒ぎを起こし、マクゴナガルが怒る。そんな平和なホグワーツが最終日まで続いていた。

 

学年末パーティーが今年も盛大で生徒たちは料理を楽しんでいる。大広間は真紅と黄金で彩られ、獅子のシンボルがそこらかしこに飾られている。今年の寮杯を獲得したのはグリフィンドールだ。クィディッチでの圧倒的大差での優勝の勢いのまま寮杯の獲得まで至ったのだ。これに大きく貢献したのはチームの要、シーカーのハリー・ポッターだ。なんでも名付け親のシリウス・ブラックから現在の最高峰の箒『炎の雷(ファイアボルト)』をプレゼントされたらしい。最高峰とうたわれる性能は凄まじく、またそれを乗りこなすハリーもすごいセンスなのだろう。

試合など全く見ていない、ついでに寮杯にも興味がないレナード・テイラーにとってはどうでもよいことなのだが。

 

闇の魔術に対する防衛術の教師は来年もリーマス・ルーピンが担当することになりここ数年間続いていた負の連鎖は断ち切られることとなった。その知らせをダンブルドアが言った時には生徒たちは喜んでいたが、闇の魔術に対する防衛術の教師を切望しているスネイプがルーピンのことをもの凄い顔で睨んでいたのだが触らぬ神に祟りなしということで皆無視していた。

 

今年もレオを除けばハーマイオニーが受講教科ではトップの成績であった。レイブンクローの生徒以外はもうレオとハーマイオニーは別枠でいいんじゃないかなとあきらめの境地である。

 

そんなこんなで三年目も終了しホグワーツからキングス・クロス駅に向かう列車の中。

今回はレオとハーマイオニーの二人だけでなくクーもコンパートメントにいる。両親たちにはクーのことを知らせてはいるがクリスマス休暇に戻らなかったこともあって会わせるのは初めてだ。

クーは初めて乗る列車に興味津々の様子だ。今は小さい状態の為に落ち着きなく窓の外を見たりしている。外の風景が少し変わるだけでも驚いて興奮してはしゃいでいる。

 

「ご主人。今日はご主人の両親やママの両親に会えるの? ん? ママの両親ってことはおじいちゃんとおばあちゃん?」

 

「クーちゃん。ちょっとそれは言わない方が良いかも。」

 

「娘がいきなりママって呼ばれてたら流石に怒られるかなぁ……。」

 

その後もクーが興奮し、ハーマイオニーが相手をして、レオがそれを眺めるという感じでキングス・クロス駅への旅路は続いく。

 

数時間後。キングス・クロス駅に到着する。

 

「お帰り、レオ。それにハーミーちゃんも。そしてこの子がクーちゃんね!」

 

「クーです! ご主人のお母さま、お父さま。よろしくお願いします。」

 

「ほー……。これがその魔法生物か。ファッジ大臣はメイドって言ってたが随分違うな。」

 

「メイドになる方が良い?」

 

そういうとクーはグニャグニャと変形してメイドの姿に変化する。その様子にレオの両親もハーマイオニーの両親も目を丸くする。

 

「魔法っていうのは何でもありなのねぇ。」

 

「我が娘もそんな世界にいると思うと遠くに行ってしまった気がするなぁ……。」

 

その後、九と四分の三番線内に併設されたカフェで両家は学校での出来事や夏休みはどうするのかを話していく。夏休みには大きなイベントがあるとアースキンが話し出す。

 

「この夏はビックイベントがあるぞ! なんとクィディッチのワールドカップだ。この国で開催されるのは随分と久しぶりになる。警備も兼ねて俺は行くことになるが、家族もどうかってことでここにチケットが二枚ある! どうだ? レオとハーマイオニーの二人で行ってみないか?」

 

「父さん、悪いけどクィディッチには興味がないから遠慮させてもらうよ。」

 

「ごめんなさい。レオが行かないなら私もご遠慮します。」

 

息子とガールフレンドの予想外の反応にショックを受けるアースキン。せっかく息子たちのデートにとコネを使って手に入れたのが無駄になってしまった。

 

「はいはい。落ち込まないの。それじゃ、私が行くことにするわ。もう一枚どうしましょう。クーちゃん来る?」

 

「わたくしもレナード様とおか、んん! ハーマイオニー様が行かないのであればあまり気が進みませんね。」

 

ハーマイオニーの両親も一応誘ってみるがクィディッチを知らないし、一人だけではということで断られた。

 

「んん~そうね。じゃあ、誰か友達を誘ってみるわ。」

 

その後はいつものように夏休みの計画を立てるレオとハーマイオニー。今年は旅行や用事もないのでほぼ毎日テイラー邸で魔法の勉強などに時間を費やすことになりそうだ。

両家は別れを済ませたのち、グレンジャー一家は自動車で家に帰り、テイラー一家は煙突ネットワークを使って家に戻る。

 

「ただいま。クー、ここが僕らの家さ。クーもこれからは僕らの家族なんだから遠慮しないでいいんだよ。」

 

「そうよそうよ! ねぇねぇ、さっき小さい姿から今みたいにメイドさんになってたけど姿って色々変えられるの? 服は!?」

 

いきなりのフェリスのテンションに若干引きながらクーが答える。

 

「は、はい。このメイド服はわたくしの体を作り変えているだけなので形だけならばどのような外見にも変化は出来るはずです。」

 

「ふふ、いいことを聞いたわ。クーちゃん! 明日からハーミーちゃんと一緒にファッションショーよ! ハーミーちゃんにも連絡してくるわ!」

 

バタバタと今から出ていくフェリスを呆然と見ているクー。

それを見ていたアースキンが説明してくれる。レオはすでに学校の宿題の片づけを開始していた。

 

「あー、なんだ。レオはさ魔法ばかりで服とかには興味がないし、フェリスも女の子も欲しかったんだよな。それでクーが来たから娘として見てるのかもな。できれば付き合ってほしいな。」

 

「レナード様、いかがいたしましょう。」

 

「とりあえず、母さんが満足するまで頑張れ。嫌だったらそう言っていいから。」

 

次の日からハーマイオニーを交えて女性たちのクーの着せ替えショーが開催された。

その様子を見ながら今年の夏休みは騒がしくなると確信したレオだった。

来年は静かな年になればいいなぁと思ったがおそらくそれはないであろうと直感が告げていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

アルバニアのとある森の中。

そこには見るも哀れな姿に成り果てた存在がいた。

全盛期は闇の帝王として魔法界全ての魔法使いに恐れられ暴虐の限りを尽くした存在であるとはその姿を見て誰も思うまい。

闇の帝王は待っていた、復活の機会を。帝王は信じていた、必ず時は来ると。

 

そこに一匹のネズミが現れた。ネズミは姿を人に変える。

その瞬間、闇の帝王は時が来たことを理解した。

再び魔法界を闇に染める時が来たのだと。




平和なホグワーツで三年生は終了です。

クィディッチワールドカップはレオたちは不参加です。
代わりにアースキンが頑張ってくれます。

次回はちょっとした閑話を入れて四巻に突入です。

次回予告!

クィディッチワールドカップで起こる騒動。

開催される三大魔法学校対抗試合。

選ばれる四人目の選手。

暗躍する死喰い人。

4章 三大魔法学校対抗試合は研究発表会

ハリー「四人目! つまり僕の出番! そうだよね!?」
作者「未定だ!(本当は決まっている)」


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幕間. シリウス・ブラックの就職

今回はレオもハーマイオニーも出てこないちょっとした幕間の話です。
時期は4年生前の夏休み直前ぐらいですかね。

それではどうぞ。


最悪の大量殺人犯。裏切り者。アズカバンの脱獄者。

そんな風に言われていたシリウス・ブラックも今や自由の身。

現在はロンドン市のグリモールド・プレイス十二番地にあるブラック家の屋敷で屋敷しもべ妖精のクリーチャーと一緒に住んでいる。

と言ってもクリーチャーは嫌々シリウスに従っているのは誰の目にも明らかだった。

シリウスもこのしもべ妖精のことは昔から嫌いだ。純血主義に染まったブラック家に心から従っているこいつを見るだけでだけで吐き気がする。

しかしシリウスを除いてブラック家の血は絶えてしまっているし、この広い屋敷ではしもべ妖精の一匹でもいないとやっていけない。

本当はこんな家には戻りたくもなかったが、他に行く場所もない。

ダンブルドアが禁じなければ今すぐにでも親友の忘れ形見のハリー・ポッターを名付け親として引き取ってどこかで暮らしていきたいと思っている。

 

だが、今はそんな叶わない願いよりも現実を見なければと考えていた。

シリウス・ブラックは現在魔法省の受付前にいた。

目的は就職活動だ。

冤罪による投獄に対する補償金とブラック家の無駄に蓄えている財産を考えれば一生遊んで暮らすだけの資産は余裕である。だからと言って何もせずに遊んで時間を費やすことなどはしない。

別に大人だから仕事をしなくては、なんて考えではない。

目的はアズカバンを脱獄した時から何も変わっていない。

裏切り者のピーター・ペティグリューへの復讐だ。

親友を裏切り、自分を貶めた憎きピーター。あいつのことを考えると今でも憎しみで暴れだしたくなってしまう。

だが、奴が今どこにいるかは分からない。だからこそ闇の魔法使いどもの情報が集まりそうな闇祓いに就職することにしたのだ。

ダンブルドアはいつか闇の帝王が復活すると確信していた。ピーターもおそらくそちら側につくだろう。もしかしたらどこかにいる闇の帝王を探しているかもしれない。

今度は失敗しない。闇祓いの情報と権利を使って必ずあいつに罪の重さを教えてやる。そしてジェームズとリリーにいい知らせを持っていってやるんだ。

 

闇祓いの試験は筆記と実技の二種類だった。必要な知識と能力をみるものらしいが、シリウスにとっては簡単なものだった。どちらも即戦力になるほどの出来栄えで試験官も驚いていた。試験後即座に合格が言い渡された。

 

 

「合格おめでとう。それにしても数カ月前はまさか君とこうして同じ職場で働くことになるとは夢にも思っていなかったぞ。」

 

白髪交じりだがライオンのような印象を受ける闇祓い局局長のルーファス・スクリムジョールが言う。

シリウスもまさかこのようなことになるとは考えられなかった。人生何があるか分からないものだ。

 

「確かにな。前にあったのはアズカバンにぶち込まれる時だったけかな? これからよろしくお願いしますよ。ルーファス・スクリムジョール局長。」

 

「ああ。さて、合格してすぐなんだがもう一つテストを受けてもらおう。なに、君の実力を見極めるものだ。私の部下の一人と決闘をしてもらうだけだ。」

 

「いいだろう。受けて立ってやる。」

 

二人は闇祓い局にある決闘場まで行く。扉を開けながらシリウスはスクリムジョールに尋ねる。

 

「相手は誰なんだ? 言っておくが私はそこそこ強いぞ? 相手が泣いちゃうかもな。」

 

「そうか。なら手加減はしないぞ。」

 

決闘場の中には一人の男が待っていた。

その男を視界に収めたシリウス・ブラックは決闘にどうやって勝つことより逃げる方法、もしくはどうにかして怪我を少なくすることに考えが変わった。

 

「おいおい……。マジかよ。まさか相手って……。」

 

「そうだ。闇祓い最強の男。副局長のアースキン・テイラーだ。まぁ、なんだ。頑張れ。」

 

そう言って足早に決闘場を去るスクリムジョール。

シリウスも一緒に出ていこうとするが扉が固く閉ざされてしまった。

 

「逃げるのは無しだ。さぁ、さっさと決闘始めようか。」

 

「いやいや、待て待て! なんであんたなんだよ!」

 

シリウスの戦意はすでにゼロだった。学生時代に嫌というほどアレの出鱈目さは味わっている。

悪戯仕掛け人として馬鹿をやっていたがフェリスをターゲットにしたのは最大の失敗だったと言わざるを得ない。それをきっかけにフェリスに吹き飛ばされ、アースキンの人外の力でなぎ倒されたりした。

正直まともじゃないし、勝てる気もしない。アレに勝てる存在なんて二人しか思い浮かばない。

 

「なんで俺かって? そんなん副局長だし。それに局長より強いしな。」

 

「じゃあ何であんたがトップじゃないんだよ!?」

 

「いや、俺に上に立てるようなカリスマ性みたいのないし、局長は仕事が多そうだから家に帰れなさそうだからな。」

 

「家と言えば家族はどうなんだ? やっぱり今でもフェリスとは仲いい感じか?」

 

「おおそうだぞ。今でも、いや今の方が愛してるって言えるね。」

 

(よし! 決闘から意識がそれたぞ。このままうやむやにして逃げよう!)

 

そんなシリウスの計画とも言えないずさんな企みはスクリムジョールの声ですぐに終了する。

 

『聞こえるか二人とも。一応はこれもシリウス・ブラックの実力を測るテストだからな。すぐに始めてくれ。時間は10分間だ。』

 

「おっと。いつまでも話してるのもダメだな。んじゃいくぜ?」

 

戦闘態勢に入ったアースキンを見て覚悟を決めるシリウス。

スクリムジョールから決闘開始の合図が入る。

合図と同時にシリウスは横に走り出しながらプロテゴ(盾の呪文)を展開する。

逃げるシリウスに向かってアースキンは杖を構える。

その瞬間、杖からマグルの機関銃のようにエクスペリアームス(武装解除)ステューピファイ(麻痺せよ)が連続で打ち出される。

 

アースキン・テイラーの保有魔力量は異常だった。テイラー家はそこそこ歴史が長い家系であるが純血主義ではないのでマグルの血も受け入れている一族である。

特段優れた家系であるわけでもないのだが、アースキンの魔力量は常人とは比較にならなかった。研究者が調べた結果は測定不能、推測では常人の数百倍から千倍はあってもおかしくはないとの事であった。

その異常な魔力量から普通に魔法を使っては何もかも効果が高くなりすぎてしまうのでコントロールに非常に苦労している。下手に失神呪文でも誰かに当てたらアバダケダブラと同じ結果になってしまう。

そこでアースキンが編み出した解決策は無言呪文を使うことである。

無言呪文もイメージがしっかりして発動すれば呪文を発言して使うのと同等の効果は発揮できる。

だが、普通は効果が著しく落ちる。そこに目をつけたアースキンは無言呪文を通常呪文として使うことにした。

そして無言であるからこその利点は相手にどんな呪文であるか悟られない、心で呪文を思うだけで発動することである。口に出すより思った方が速い。

結果、膨大な魔力で通常の、いやそれ以上の威力の魔法が無言かつ高速で連続して使うという意味が分からないことになった。

 

「うぉおおおおおおおお!」

 

叫びながら逃げまくるシリウス。呪文が絶えることなく殺到する。魔法による盾などその数に圧倒され粉砕される。こちらの攻撃は無言の盾に阻まれる。

 

(ちくしょう! 学生時代より手が付けられなくなってやがる! あと何分だ!?)

 

アースキンは感心した。正直自分より強い存在はダンブルドアとあの人だけだと思っている。相手が死喰い人だろうとも十数人ならば勝てるだろう。そんな自分と決闘してまだ呪文を当てることさえできていないばかりか反撃までしてくる。

 

(アズカバンにいたというのにその強さは変わってないようだな。あと三分か……。)

 

結局最後までシリウスは逃げ切った。互いに無傷ではあるが一方は息も絶え絶え床に転がっている。もう一方は余裕の表情。勝敗は誰の目にも明らかだろう。

 

「お疲れ。そしてようこそ闇祓い局へ。」

 

「こ、こちらこそ……、よろしく……。」

 

こうして一応は無事に就職することができたシリウス・ブラックであった。

屋敷に戻るなりクリーチャーの嫌みも気づかず泥のように眠る。

その日の夢は学生時代にアースキンとフェリスに叩きのめされるという悪夢であった。




シリウス無事に就職。

シリウスは長い間アズカバンでピーターへの憎悪をもって過ごしていたためちょっと
心が壊れてます。ピーター(ついでにハリー)関係の事柄では暴走してしまいます。それ以外だと優秀なんですけどね。

この物語の主人公のレナード・テイラーはかなりのチートキャラとして書いてますが、
父親のアースキンもまたタイプは違いますがぶっ壊れなキャラです。

次の話から炎のゴブレット編スタートです。
それでは次回お楽しみに。


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4章 三大魔法学校対抗試合は研究発表会
45. クィディッチワールドカップ


今回から四巻、炎のゴブレット編に突入です!

この章は原作でも色々ありましたね。
この物語ではどうなっていくのかお楽しみください。

それでは45話どうぞ。


クィディッチは魔法界では説明不要の人気スポーツだ。

そのワールドカップがイギリスで久々の開催となるのだから皆熱狂して観戦チケットを求めた。

チケットがあるのに観に来ないような奴は頭がおかしいとクィディッチファンならば叫ぶだろう。

その頭がおかしい少数派のレナード・テイラーは親友のハーマイオニー・グレンジャーと自ら創り出した娘に等しいクーと自宅の研究室にいる。

宿題などとうに片付け今はそれぞれ研究したりして過ごしている。

 

「そういえば今日はワールドカップの決勝戦なのよね。レオとクーは興味ないみたいだけどアースキンさんとフェリスさんは会場にいるのよね。」

 

「そうだね。今頃母さんは楽しんでるんじゃないかな。父さんは警備の仕事があるから試合を見れるかは分からないみたいだけどね。」

 

夕食の時間になり全員で協力して夕食を作り食べる。今日もハーマイオニーはテイラー邸に泊っていく予定だ。ハーマイオニー専用の部屋まで存在しておりもはや家族同然の扱いである。ハーマイオニーの両親もそれについては賛成しており、後はレオとハーマイオニーが付き合えば挙式を上げる勢いである。

 

夕食後のまったりとした時間。リビングにいきなりレオの母のフェリス・テイラーが姿現しをしてきた。

その様子から何かあったとし悟ったレオは母に駆け寄る。

 

「母さん! 大丈夫? 何かあった?」

 

「大丈夫よ、レオ。ただクィディッチの会場が襲撃されたわ。多分死喰い人(デス・イーター)だと思う。」

 

死喰い人(デス・イーター)。それは闇の帝王ヴォルデモートの全盛期にその下で暴虐の限りを尽くした集団だ。マグル風に言えばテロリストが近いだろうか。本人たちに言わせれば革命家みたいなものなのかもしれないが。

 

「今、アースキンや他の闇祓い達が対処しているわ。多分大丈夫だと思う。」

 

「まぁ、父さんがいるなら多分大丈夫かな。念のために応援に行った方が良いかな?」

 

「そんなことしなくていいのよ。子供はそんな危険なことに首を挟まないの。あなたがいくら強くてもそれを守るのは私たち親、そして大人の役目なんだから。」

 

フェリスは息子を抱きしめる。後は夫が無事に帰ってくることを祈るだけだ。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

クィディッチワールドカップ会場は怒声と悲鳴があふれ、様々な呪文が縦横無尽に飛び交っていた。

死喰い人(デス・イーター)がマグルの人々を面白半分に宙に浮かべて観客たちに攻撃を仕掛けていたのだ。

だが、そこに一人の男が立ちふさがった。

 

「なんだあいつ? 正義感から俺らを止めるつもりか?」

「はっ! 命知らずの大馬鹿野郎だな。マグルと同じように吊るしてやろう。」

 

死喰い人(デス・イーター)の前方にいたうちの一人が何かに気付いて猛ダッシュで後ろの方に走っていった。

 

「何なんだフォイの野郎? 臆病風にでも吹かれたか?」

 

気にせず歩を進める死喰い人(デス・イーター)

最初は死喰い人(デス・イーター)もその男を他の観客同様痛めつけてやろうとしていた。だが先頭に立っていた死喰い人(デス・イーター)の一人がその男が誰であるか気付いて悲鳴を上げた。

 

「ほぁああああ!? アースキン・テイラーだっぁああああああ!?」

「おいおいおい……。嘘だろ、マジかよ、冗談だろ!?」

「もうだめだぁ……。おしまいだぁ……。勝てるわけがない……。」

 

死喰い人(デス・イーター)がざわめく。アースキンが一歩を歩いただけで恐怖にかられ逃げ出し始めた。

闇の帝王の全盛期、闇祓いやダンブルドア率いる不死鳥の騎士団とは数えきれないほどの戦いがあった。その中で最も多く死喰い人をなぎ倒したのはアースキン・テイラーであった。

死喰い人(デス・イーター)にとってはアースキン・テイラーはダンブルドア以上に恐怖の対象であったのだ。

先程までの威勢はどこへやら。まだアースキンは呪文どころか言葉すら発していない。ただ歩いて近づいただけだ。それなのに蜘蛛の子を散らすがごとく、魔法使いであることを忘れてしまったように走って逃げだす始末。

杖を構えるアースキン。そして杖から呪文を繰り出そうとしたその瞬間。闇夜に口から蛇を出した髑髏が浮かび上がっていた。

死喰い人(デス・イーター)も含めた全員がその光景を見た。

闇の印、それは闇の帝王ヴォルデモートの象徴である。それが現れたということはこんな腑抜けた死喰い人(デス・イーター)ではなく真に忠誠を誓った奴がいるということ。もしかしたら闇の帝王本人なのかもしれない。周囲は先ほどまでとは比べられないほどのパニックになった。

アースキンは騒ぎを起こした連中を放置して闇の印の下に急いで向かう。

逃げていた死喰い人(デス・イーター)はこのチャンスを逃すまいと姿くらましで退散していった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

深夜、日付も変わるころになってようやくアースキンは我が家に戻ってきた。

 

「ただいま! あ~疲れた……。」

 

「あなた! 無事だったのね。良かったぁ。」

 

「お帰りなさい父さん。怪我はない?」

 

出迎えてくれた愛しい妻と息子を抱きしめる。

その後軽い食事をしながら状況を説明した。魔法省としては無用な混乱を避けるため情報を規制したいだろうが、どうせ明日には日刊預言者新聞が大々的に報じるだろう。

闇の印を作り出したのは屋敷しもべ妖精でしかも驚くべきことにバーテミウス・クラウチのしもべ妖精だった。おまけに杖の持ち主はハリー・ポッターであったらしい。その後は色々とあったがとりあえずしもべ妖精の悪戯ということになったようだ。だがアースキンはその結論を欠片も信じてはいなかった。

 

「しもべ妖精が闇の印を作る? しかもクラウチのしもべがか? ありえんだろう。俺は何か裏で起こってるんじゃないかと直感したね。フェリス、レオ。これから何か起こるかもしれない。十分に気を付けてくれ。特にレオ、今年のホグワーツではあるイベントがある。それに乗じて何か死喰い人が、もしくは帝王本人が仕掛けてくるかもしれない。」

 

「イベント?」

 

「詳しいことはダンブルドアから初日に説明があるはずだ。まぁ、多分大丈夫だと思うが……。用心に越したことは無い。」

 

歴戦の闇祓いは己の勘を信じていた。今年、もしくは来年から荒れそうだと。

 

 

次の日の日刊預言者新聞には大々的にクィディッチワールドカップ会場での騒動が報じられた。ずさんな警備、死喰い人(デス・イーター)の残党の存在、闇の印、人々は恐怖した。

 

そんな中レオはハーマイオニーと共にダイアゴン横丁で学校の準備のための買い物をしているが、そこかしらで様々な噂が飛び交っている。

死喰い人(デス・イーター)が何か企んでいる、闇の帝王が復活する、ダンブルドアがなんとかしてくれる、魔法省は役立たず、アズカバンから集団脱走が起こる、闇の魔法生物が侵攻してくる、等々。

 

「どこもかしこも噂ばかりね。ひどいものは妄想と変わりないんじゃないかしら。」

 

「魔法界はマグルの世界と比べると情報網なんかではかなり遅れているからね。噂が突然変異することなんかよくあるんじゃないかな。」

 

噂など気にもしないで買い物を続けるレオとハーマイオニー。買い物とはいえ四年生用の教科書ぐらいで他に必要なものは無かったのだが。

 

「さて、こんなものかな。」

 

「そうね。そういえばドレスローブが必要って案内に書いてあったけど何かあるのかしら?」

 

「父さんが今年のホグワーツで何かイベントがあるって言ってたからそれ関係かな。多分母さんが用意していると思う。ハーマイオニーの分も用意してたりしてね。」

 

「あ~……。ありえそうね。何着も作ってあって着せ替え人形にされそうだわ。」

 

買い物が終わった後もぶらぶらとウィンドウショッピングをしたり、フローリアン・フォーテスキュー・アイスクリームパーラーでアイスを食べたりしながら過ごした。

レオにとってはいつものハーマイオニーとの日常だが、ハーマイオニーにとってはデートである。今日はクーもフェリスの手伝いで家にいるのでここにはいない。いつもレオの研究室に入り浸っているがなんだかんだクーがいたりフェリスがいたりして二人きりは久しぶりな気がする。

 

「そういえばハーマイオニーと二人きりっていうのも久しぶりだね。クーや他の誰かが一緒でもいいけどやっぱり君と二人でいるのが一番落ち着く気がするね。」

 

「私もいまそれ考えてたわ。なんか最初に会った図書館を思い出すわね。」

 

家に帰ればクーや家族がいる。数日後にはホグワーツでの日々が再開される。

そう考えればハーマイオニーとの二人でいる時間は今では結構貴重と考えられる。

ならばこの時間を楽しまなくてはとレオは感じていた。

ハーマイオニーも同じ気持ちであった。

その後は日が暮れて家に戻るまで穏やかな二人だけの時間を楽しんだ。




サブタイトルがクィディッチワールドカップなのに描写がない……。
まぁ、主人公がいないんでしょうがないよね。

アースキン無双始まる前に終了。
アースキンとしても目の前の雑魚より闇の印を出すような危険物の方を処理するべきとして向かいました。
そして、アースキンにいち早く気づいて逃げた奴。最近蜂の名前になったフォイさんですね。

そして久々にレオとハーミーの二人っきりでのデート。
今年は進展させますよ!

では次回お楽しみに。


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46. 告知

最近ハリポタオリ主大戦みたいな夢を見た。
色んなオリ主がいるホグワーツが舞台ですごくカオスだった。
まぁただの夢でしたが。

それでは46話どうぞ。


1994年9月1日 キングス・クロス駅 九と四分の三番線。

今年もホグワーツ行きの赤い蒸気機関車が出発の時を待っている。

生徒たちは続々と列車に乗り込み両親たちと別れの挨拶をしている。

レオとハーマイオニーもそれは同じである。

出発時刻となり列車が動き出す。親たちの多くは遠くに見えなくなる列車を見ながら自分たちもこうやって見送られていたんだなと感じていた。

 

「今年は何もないと良いんだけど……。」

 

保護者の集団の中の誰かがそう呟いた。その呟きが聞こえた者たちは誰もが同様な思いを抱いた。

三年前は教師の一人が死喰い人(デス・イーター)でホグワーツにある何かを狙っていたという噂がある。実際にトロールが侵入していたり、その教師が失踪したりだの噂の信憑性は高かった。おまけに森番がドラゴンの卵を違法に所持していたことまであった。

一昨年は秘密の部屋が開かれて怪物であるバジリスクによる被害がでていた。幸いにも死者はでなかったが、それも紙一重の奇跡だろう。

そして去年は殺人犯と思われていたシリウス・ブラックが侵入して吸魂鬼が我が物顔でホグワーツにいたらしい。結局はシリウス・ブラックは無実で危険は無かったのだが。

ここ数年立て続けにホグワーツでは色んな事が起こりすぎている。

子を持つ親として何事もなく平和な学生生活をおくって欲しいと誰もが願っていた。

その願いが叶わないだろうとは薄々感じていたのだが。

 

 

キングス・クロス駅からホグズミード駅までは去年のように吸魂鬼が乱入するようなこともなく無事に到着した。

だが、天候は最悪だ。雨も風も猛烈でありホグワーツに着くまでにびしょ濡れになるのは当たり前だった。そんな周りを見ながら自分とハーマイオニー、クーを雨風遮断膜で覆いながら見ているレオは既存の傘に魔法を付与して完璧に雨を防げて風で壊れないようにしたらいい商品になるのかな、なんて考えていた。

 

新入生たちを待っている間に上級生や先生たちが魔法を使って生徒たちの服を乾かしている。組み分け前には全員が問題なくテーブルに着いた。

組み分けも無事終了。ダンブルドアの号令で宴が始まる。

相変わらずホグワーツの料理は、自国民でさえ不味いと思っているイギリスの中でトップクラスの味付けだ。これを食べるのが楽しみでホグワーツに在籍している生徒もいるのではないかと言われているほどだ。

 

楽しい食事も終わり、ダンブルドアが話し始めた。

 

「皆よく食べ、よく飲んだことじゃろう。さていくつか知らせる事柄がある。」

 

持ち込み禁止の品、禁じられた森への立ち入り禁止、これらは毎年のことだ。

だが次にダンブルドアの口から出た言葉はほとんどの生徒に衝撃を与えた。

 

「さて、これから伝える内容は皆にとって辛いかもしれん。今年のクィディッチ大会は取りやめることとなった。」

 

大広間にどよめきが上がる。中には叫んで立ち上がる生徒もいる。前年卒業したグリフィンドールのオリバー・ウッドがいなくてよかったとグリフィンドールの生徒は誰もが思った。

生徒たちが静かになってからダンブルドアは続きを話し出す。

 

「なぜクィディッチが取りやめるのか? その答えを示そう。10月から今学期の終わりまであるイベントが続くからじゃ。クィディッチにも劣らぬほど皆が楽しむであろうとわしは確信しておる。」

 

ダンブルドアは一旦ためを作ってみせた。

 

「今年、ホグワーツで、三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)を開催する!」

「ご冗談でしょう!」

 

グリフィンドールの双子の片割れ、フレッドの声が響く。大広間は爆笑につつまれる。

ダンブルドアが詳しい説明を始める。

 

「その昔はボーバトン、ダームストラング、ホグワーツで共催して五年ごとに持ち回りで行っておった。だが、悲しいことに夥しい死者が出てしまい中止になってしまっていた。だが、それぞれの学校の校長と魔法省の魔法ゲーム・スポーツ部と協力して今年、数世紀ぶりに再開されることが決まった。」

 

「立候補するぞ!」

 

どの寮からも代表への立候補の声が上がる。声を出さなかった者も自分が代表になって活躍する姿を思い浮かべている。だがダンブルドアの次の一言は彼らに衝撃を与えた。

 

「今大会からは、参加選手に年齢制限を設ける。成人、つまり17歳になっておらん生徒は立候補は出来ないのじゃ。」

 

この宣言には大ブーイングが巻き起こった。特にギリギリ成人になっていない者は納得がいっていないようだ。

ダンブルドアはそれを無視して説明を続ける。今までの競技では死傷者が多数出てしまったことから成人してないような未熟な魔法使いでは課題をこなすだけの実力が無いことから今回のような制限が付けられたようだ。

ダンブルドアの話が終わり各寮に戻る生徒。寮への道中話題はどうやったら未成年でも出場できるか、誰がどの寮から出場するのか、他校はどんななのか等々、三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)の話題しかなかった。

 

自室兼研究室に戻るレオとクー。明日からまた授業が始まるので今日はもう寝てしまおうとしていた。

 

「レナード様は三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)には興味はないのでしょうか? ダンブルドア校長の発言では未成年でも実力があるならば問題ないように聞こえましたが。」

 

「うーん……。今のところはちょっとぐらい興味があるかな。昔はどんな内容だったのか調べてから考えてもいいんじゃないかな。対抗試合より他校の生徒と交流できる方が興味があるね。」

 

レオは名誉や栄光には興味がない。賞金がどのくらいなのか知らないが研究の成果によってレオ個人の資産は相当なものになっている。それよりは試合を自作の魔法具や魔法の試験運用目的にした方が良いぐらいの気持ちであった。

 

 

新学期が始まってから最初の休日。

レオとハーマイオニーは図書室で三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)の過去の情報を調べていた。

他の生徒も調べているかと思ったが、皆でどんなものかを話したり代表の予想を立てているだけでそういった生徒は本当に参加したい極少数だった。

図書室についてはレオよりハーマイオニーの方が詳しいので本を探すのは彼女にお任せしておいた。数分もすると何冊もの本を抱えたハーマイオニーが戻ってきた。

二人で並んで過去の課題内容を確認していく。

 

「どれどれ……。『凶暴な魔法生物の討伐』、『超難関な魔法薬の解毒剤を作って自身の毒を解毒』、『超距離の罠満載の道を走破』」

 

「こっちは、『当時の他校校長と決闘』、『過酷な環境下で一週間サバイバル』、『出場選手同士での乱闘』……色々ひどいものばかりね。」

 

過去の課題内容は他にもひどいものばかりであった。本を読み進めるにつれ更にとんでもないものが出てくる。正直頭がイカレているとしか思えない出場選手を殺す内容になっていた。原因は各学校が自分の学校で開催時に自校の代表選手が有利になるような課題を決めており、それがエスカレートして開催校が入れ替わるごとにどんどん凶悪になっていって誰もまともにクリアさせる気が無いようなものになってしまったようだ。

 

「でもちょっと面白そうかもね。そういったものを僕の造った物で切り抜けられるのか試してみたいな。」

 

「レオ、出場するの? 能力的には絶対大丈夫だと思うけど。」

 

「代表の選出方法次第かなぁ。僕が名乗り出ても未成年だからその場で却下される可能性の方が高いだろうな。でも、もし魔法的な何かで選出するのなら突破は可能だろうね。ハーマイオニーはどうするの? 君なら実力は十分だろう?」

 

「私はパス。名誉や賞金が興味がないと言えば噓になるけど命まで賭けるのはちょっとね。特にこんな過去の課題を知っちゃう後だとね。」

 

「そっか。まぁ僕も自分の研究の成果確認だけで危険だと思ったら即リタイアするね。」

 

それからは研究室に戻って課題内容を予想したり、いつものように魔法やその他の事を時間いっぱい話し込んだ。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ダンブルドアは三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)の開催自体は楽しみにしていた。

過去と違って安全対策には自信がある。

だが、それでも不安要素がある。レナード・テイラーだ。

今回の代表選手選定方法を考えるに彼が立候補したら選ばれてしまう確率が高いだろう。

無理やりにでも止めるべきなのだろうか、いやトレローニーの予言から敵対は破滅を意味するかもしれない。闇の帝王が復活する前にレナード・テイラーの不興を買うのは避けなければならない。もしこちらを見限って敵対するならまだしもヴォルデモートと手を組まれでもしたらおしまいだ。

一生徒のことをこんな風に考えている自分は教育者としては落第だろう。だが魔法界のことを考えるならば少しの油断もしてはならない。

 

「とりあえず、代表選手選定の時になって彼がどう動いてもいいように準備だけはしておこうかのぉ……。」

 

レナードが入ってきてから毎年のように問題が起こる。そしてその問題は大抵彼が関わってどうにかしてしまっている。今年は対抗試合に関わらないように祈るダンブルドアだった。




現状ではレオはそこまで対抗試合に興味は持ってないです。
でも少しは興味があるということでもあります。

過去の課題内容は捏造です。
死傷者が多数出るなら殺す気ありありの内容なんでしょうね。

レオが参加可能な年齢ならここまで校長は悩まなくて済んだでしょうね。

それでは次回お楽しみに。


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47. 許されざる呪文

炎のゴブレットは闇の帝王が復活する大事な章ですよね。

この物語では帝王は無事に復活できるのでしょうかね。

それでは47話どうぞ。


魔法学校であるホグワーツで学ぶ科目は様々だ。

魔法使いに必須の呪文を学ぶ呪文学。

生活に身近なものから危険で凄まじい効果をもたらす薬を学ぶ魔法薬学。

正確な理論を理解していないと難しいが無限の可能性がある変身術。

こちらもまた魔法使いの生活に欠かせない薬草学。

他にも魔法生物飼育学や占い学、数占いにマグル学など多岐にわたる。

その中でも特に魔法使いとしての力量が問われるものが闇の魔術に対する防衛術だ。

それはホグワーツの授業でも必須の科目であり、呪われた科目とも言われていた。

ここ数年間は毎年のように担当の教師が変わっていたのだ。

だが昨年赴任した元狼人間のリーマス・ルーピンはその呪いを跳ね除けた。

今年も闇の魔術に対する防衛術を担当して生徒たちに人気の教師としてホグワーツにいる。

現在、ルーピンはレイブンクロー生への授業の真っ最中だ。

 

「さぁ、授業を始めよう。去年は闇の魔法生物に対しての対処方法を中心に進めていたけど、今年は呪文による防衛を覚えていこう。と言っても一昨年のレナード君の授業で呪文については色々教わっていると思うからその発展になる感じかな。」

 

レイブンクロー生はほとんどの生徒がレオの勉強会に参加しているのと持ち前の学習意欲から他の寮と比較して平均実力が高くなっている。今年の授業でもその実力が伸びるのは確実だろう。

 

「クィディッチワールドカップの一件から分かるようにまだまだ闇の魔法使いは存在している。そういった相手から身を守れるように鍛えていこうと思う。最初の授業ではまず、最も警戒するべき許されざる呪文について学ぼう。」

 

許されざる呪文。

それは服従の呪文(インペリオ)磔の呪文(クルーシオ)、そして最悪の死の呪文(アバダ・ケダブラ)の三つだ。

ルーピンは苦い顔をして解説をする。

 

服従の呪文(インペリオ)。これはかけられた相手を完全に操る呪文だ。闇の帝王の全盛期にはこれでみんなが疑心暗鬼になった。まぁ、今ではレナード君が開発した服従の判別できる呪文と解除魔法薬があるからそこまで脅威ではないね。それでも一旦かけられたら自力で破るには相当な精神力が必要だ。

次に磔の呪文(クルーシオ)。これはこの世で最悪の苦痛を与える呪文だ。どんな屈強な肉体を持っていようとも優れた魔法使いであろうとも耐えることができない。どんな拷問も不要になってしまうほどの苦痛を与えるんだ。

最後、死の呪文(アバダ・ケダブラ)。これは問答無用で死に至らしめることができる。防ぐ呪文はないから当たらないようにするしかない。これが当たって生きていたのはハリー・ポッターだけだ。」

 

説明を聞いていた生徒たちは恐怖していた。しかしレオだけは違っていた。

服従の呪文(インペリオ)は精神系の魔法なので『遮断』で完全に防げる。

磔の呪文(クルーシオ)も所詮は魔法に違いないので『反射』、『吸収』、『遮断』、『守護』の四つの防御機構で防げる。

死の呪文(アバダ・ケダブラ)だけは防御機構もそれぞれ一発しか耐えられないだろうから連続して使ってきたらやがて死んでしまうだろう。それでも今研究しているものやクーが盾になれば無効化できる。

死の呪文(アバダ・ケダブラ)以外にレオが脅威に感じる呪文がある。

使い手は多く存在しているが皆それほど強力な呪文ではないと思っているものだ。

それは忘却術である。

汎用性が高く、使い方ひとつで恐るべきものに変容するのである。

呼吸などを忘却させて拷問に使う、人格を忘却させて自分に都合のいい記憶を埋め込んで操り人形にする、といった方法で磔や服従ほどの難易度ではないにもかかわらず代用することができる。その他にも魔法の使い方や視覚や聴覚を忘却させて無力化、全てを忘却させて死人同然にするなどの芸当も可能なのだ。

これも当たらなければ問題はないのだが何事も絶対ではない。磔や服従は耐えたり抵抗は可能なのだが、忘却呪文は当たってしまったらその時点で詰む。気づいていない者が多いがそれほど危険だとレオは思っている。

 

許されざる呪文は流石に授業では説明だけで実際に使用したりはしなかった。

当然である。魔法省もその使用は同じ人に対しては固く禁じているし、これらを好んで使うことはそれだけで闇の魔法使いだ。

それだけでなくこれらは難易度も高いのである。

その辺の生徒が呪文を知っていても使いこなすことは容易ではない。

 

「さて、許されざる呪文についてはこんなところだね。聞いていて気分が良い話では無かったと思うけど知っているのと知らないのでは天と地の差だ。この差があることで君たちは自分や愛する者を守る確率がぐんと上がったんだ。では残りの時間で今年のスケジュールを説明していこうか!」

 

ルーピンは学ぶ呪文を黒板に書き記していく。その内容を見るにより実戦的に役立つ選出だった。この一年しっかり学べばそれだけで最低限の防衛技術は備わるだろう。

 

「ああそうだ。レイブンクローの授業だけでいいんだが、レナード君には手伝ってもらうことになるかもしれない。正直なところ君は非常に優秀だしね。他の先生の話や二年前の授業の内容から生徒ごとの魔法の癖の矯正ができるみたいだから今回もお願いしたい。」

 

「分かりました。」

 

「ありがとう。よし残りの時間で私とレナード君で模擬戦をしてみよう。」

 

その発言で教室内はざわめいた。

 

(おいおいおい。ルーピン先生知らないのか?)

(相手はあのレナード・テイラーよ!?)

(ああ……今年も闇の魔術に対する防衛術の先生は交代か……。)

(いや! ルーピン先生ならやってくれる! 多分、きっと、恐らく、万が一……無理だな。)

 

「せ、先生! もちろん手加減ありの簡単な模擬戦なんですよね?」

 

「もちろんさ! いくら彼が優秀だからって手加減するよ。教師が生徒を傷つけちゃ大問題だ。」

 

教室内の生徒は誰もが思った。『違う。そうじゃない!』と。

ルーピンは二年前のレナードが大暴れしたのを知らなかったのだ。ただ単に優秀な研究者としての面しか知らなかった。彼の父親があのアースキンであることは聞いていたがあの人ほど規格外の存在であるとは夢にも思っていなかったのである。

 

「それじゃあ、模擬戦を開始しよう。レナード君は準備はいいかい?」

 

「問題ないです。いつでもどうぞ。」

 

ルーピンはジェームズやシリウスほどではないが自分はそこそこ優秀であると自信があった。その力を使って人生最大の恩人の力になりたいと思っていた。彼が少しでも力をつけてくれればもしもの時にも生き残れるだろうと。彼は魔法界に必要不可欠な存在だ、守護(まも)らなければと。

 

結論を言えば、レナード・テイラーにルーピンの力はまるで必要では無かった。

決闘は一方的な展開になった。ルーピンの放つ魔法は全て無効化される。レオの魔法は強力で防御で精一杯、しかも明らかに手加減されている。

その様子を当然のように見ている生徒たちからルーピンは悟った。自分が間違っていたことを。

 

「はぁはぁはぁ……。参った! 僕が間違っていたよ! 本当に君はとんでもないな!」

 

圧倒的な力の差を見せられたルーピンはそれでも折れなかった。恩人は強大な存在だ。だからと言って無敵ではないだろう。確かに自分は彼より弱いが、それでも彼を守れないわけでは無い。もっと力をつけて少しでも役に立てるようにしなければ。いざとなればこの命を使って盾にでもなる覚悟はすでにできている。

 

「ははは! 私もまだまだだな! これから先も勉強に鍛錬にやることは多そうだ! 私もこれから頑張っていくから、皆も一緒に頑張ろう!」

 

レイブンクローの生徒たちはルーピンの姿勢に刺激され改めてはるか高みの目標を目指すことを決めた。




ムーディがいなくても許されざる呪文についての講義ぐらいはすると思ったのでこの話を入れました。

服従の呪文はレオのおかげで判別&解除可能な為前ほどの脅威ではなくなっている。
それでも即座に解除というわけでは無いから厄介な存在。

忘却術に関してはかなり恐ろしい呪文だと思ったのでこう書きました。
実際にはどこまで器用に忘却できるかは分かりませんけどね。
ロックハートも鍛えていれば対人戦においては強者だったと思っています。

ルーピンは狼人間から戻してもらった恩義からすでに命を捨ててでもレナードの味方になる覚悟です。

それでは次回お楽しみに。


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48. ボーバトンとダームストラング

他校が到着すると登場人物が増えますね。

今回はちょっとラブコメっぽいかも?

それでは48話どうぞ。


10月も終わりに近づいている。

三大魔法学校対抗試合のために今日の夜にはボーバトンとダームストラングが到着する予定だ。

朝から屋敷しもべ妖精がパーティの準備をしているのか美味しそうな香りが漂っていた。

生徒たちも他校の生徒たちがどのような感じなのか話し合っている。

夜になると両学校を迎え入れるため生徒たちは城の前へと集合させられていた。

マクゴナガルが整列させているが皆興奮しているのかなかなかうまくいっていないようだ。

 

そうしてしばらく待っているとボーバトンが先に到着した。

その方法はとても派手なものであった。

12頭もの巨大な天馬が大きな館ほどに思えるほどのサイズの馬車を引いて空を駆けてホグワーツに向かってきたのだ。

地響きを立てて到着した馬車からはかつて森番をしていたハグリッドと同等の大きさの女性が出てきた。

ボーバトンの校長であるオリンペ・マクシームである。

 

「遠い所からようこそホグワーツへ。マダム・マクシーム。」

 

「ダンブリードール、おかわりーあーりませんか?」

 

校長同士挨拶をしていると馬車からボーバトンの学生が姿を現した。

海外の学生に興味津々で見ていた生徒のほとんどは一人の少女に目を奪われていた。

人とは思えぬような美貌に他者を引き付けるオーラの様なものを纏った少女であった。

男子は勿論、中には女性とまでもがその虜になってしまっている。

ボーバトン一行は早く温まりたいと校舎内に案内されていった。多くの男子生徒がその様子を見えなくなるまで見つめていた。

 

次のダームストラングはどんな方法でやって来るのか待ち構えていると、湖の中から巨大な帆船が浮上してきた。

ボーバトンといい、ダームストラングといい普通の方法で移動してこなかったのは魔法学校としての力を示したかったのか、それとも単に彼らにとってはこれが普通であるのかは判別がつかなかった。

帆船からはイゴール・カルカロフ校長が生徒を連れて降りてきた。

 

「ダンブルドア! やあやあしばらくだね。元気かね?」

 

「もちろん元気じゃよ。カルカロフ校長。」

 

ダームストラングの生徒を見ていた生徒の誰かが大声を上げた。

 

「ビクトール・クラムだ!?」

 

その男の登場はクィディッチ好きに衝撃をもたらした。

世界最高のシーカーとして知られている名選手だ。

あちらこちらからサイン貰えないかな、とかいろいろな声が聞こえてくる。

ダームストラングが到着したので全ての生徒と教師は大広間に移動し始める。

 

 

大広間にはホグワーツ、ボーバトン、ダームストラングの生徒が集まっている。

ボーバトンはレイブンクロー、ダームストラングはスリザリンのテーブルに座っている。

ビクトール・クラムという有名人を自分たちの所に引き込めたスリザリン生達は得意げな顔でグリフィンドールのテーブルを見て、それに反応したグリフィンドール生達が睨み返すといういつもの光景が広がっていた。

 

三校を代表してダンブルドアが立ち上がって挨拶を始めた。

 

「こんばんは、紳士淑女、そしてゴーストの皆さん。客人の皆さんホグワーツへの来校を心から歓迎いたしますぞ。本校での滞在が快適かつ楽しいものとなることを願っております。

三大魔法学校対抗試合は宴の後に正式開始が宣言される。それまではどうか食事を楽しむとしましょう!」

 

次の瞬間にはいつものように目の前の全ての皿が料理で満たされた。

いつも以上に豪華で多種多様な料理の数々から対抗試合に力を入れているのが分かるというものだ。

海外からの客人を招いているからかイギリス料理では見られない料理も多々ある。

 

レオも普段食べられない海外の料理を食べることができて満足げだ。

普段は比較的静かに食事をしているレイブンクロー生もボーバトン生がいるせいか少し騒がしい。

他の生徒を見てみると男子の多くが例の美少女を見つめている。

そして女子がその様子に溜息をついている。

美少女はフラー・デラクールという名前らしい、席を変えながら色々な男子に話しかけている。

そうしていると話していた生徒たちがレオの方を指さしている。フラーはレオの方に近づいて話しかけてきた。

 

「こんーばんわ。あなーたが、レナード・タイラーでーすか?」

 

『こんばんは。そうですね、ぼくがレナード・テイラーです。』

 

フランス訛りの英語で話し難そうだったので用意していた翻訳魔法を使って話す。

これで向こうにはフランス語で聞こえているはずだ。

フランス語が通じると分かるとフラーもフランス語で会話を始めた。

 

『あら、フランス語ができるのね。この寮で一番優秀な人があなただって聞いたけど嘘じゃないみたいね。』

 

『フランス語が話せるわけでは無いですね。翻訳魔法で言語の認識を調整している感じです。』

 

『すごいじゃない。その魔法私にも教えてちょうだい。』

 

レオは隣に控えていたクーから箱を受け取り、フラーに渡す。

 

『これをどうぞ。中に翻訳魔法を付与した指輪が20個ほどあります。ボーバトン生が何人来るかわからなかったので個数が足りているか解りませんが、それを着ければフランス語を話していても僕たちには英語で認識されます。後でダームストラング生にも渡す予定です。』

 

早速指輪をはめてみるフラー。先ほどまで通じていなかったフランス語で他の生徒たちに話しかけている。レオの方に戻ってきたその顔を見るに満足する結果の様だ。

 

「あなた本当に優秀なようね。私、あなたのことが気に入ったわ。これから競技の間なんかにホグワーツの中を案内してちょうだい。」

 

その発言に周りの男子たちが羨ましそうにレオを見ている。

 

「お断りします。」

 

続くレオの言動にフラーと男子が固まる。レオも異文化交流はしたいとは思っているがホグワーツの案内をするほどではないと判断した。

硬直から復帰したフラーは深呼吸して、祖母譲りのヴィーラの魅力を全開にして再度問う。

周りはフラーのオーラに当てられて求婚するような勢いになっている。中には女性までフラーに熱い視線を向けている。

 

「聞こえなかったのかしらね? 私にホグワーツの案内をしてちょうだい。」

 

「聞こえていましたよ。お断りします。それとその魅了は僕には効かないので無駄ですよ。」

 

フラーはショックを受けていた。ヴィーラの魅了に耐性がある人間はいる。精神力が高かったり心から愛する人がいる人間には弾かれてしまう。

それでもフラーは魅了など無くてもこの自身の美貌だけで少年から老人まで数多の男を虜にしてきた。ゆえにフラーは美しさに対しては絶大な自信を持っていた。

恋人がいるのか? それともゲイなのか? そうだ、そうに違いない!

 

「あなた、恋人がいるの? もしかしてゲイだったり?」

 

「いきなり失礼ですね。どっちもノーです。」

 

フラーへの追い打ちが炸裂した。恋人もいないゲイですらない男が虜にならない。

つまりこの男はフラーの美しさなど無価値であると言っているようなものだ。

そう感じたフラーの心には衝撃こそあれ、それほど怒りなどの不快な気持ちは無かった。

 

(そう……、いままで会った男はみんな私に対して美しいだの、綺麗だのしか言ってこなかった。こんな対応をされたのは初めてだわ。対抗試合のために来たけど、ふふ、面白くなってきた!)

 

「レナード・テイラー! 決めたわ! あなたに私のことを美しいって言わせてやるわ!」

 

「美しい。」

 

「心が入ってないわよ!? いいわ、絶対にあなたのこと魅了してやるんだから!」

 

そう大声で宣言して元の席に戻っていった。その声は大広間中に聞こえており、多くの男子にレオは睨まれているが気にせず食事を楽しんでいる。

 

ちなみに隣にいるクーはフラー・デラクールのことをハーマイオニー()からレナードを奪おうとする敵であると認定していた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

私がいつものようにレオのことを見ていたらいきなりボーバトンの同性から見ても超絶美少女認定せざるを得ない女が近づいてきた。何か話した後に箱を渡して……。

 

(指輪!? いったいどうゆうことなの!?)

 

指輪をつけて満足そうなあの女のことを睨みつける。近くでネビル他数人が「ひぃぇ……。」なんて言っているが無視だ。

その後も何事か話していると大広間全体に何かが広がる。次の瞬間にはほとんどの男子たちがあの女に愛を叫び始めた。ハリーなんか走って向かいそうな勢いだ。ロンは思ったより反応してないのがちょっと意外だ。あ、ジニーがハリーのことすごい表情で見てる。怖い。

 

「レナード・テイラー! 決めたわ! あなたに私のことを美しいって言わせてやるわ!」

「心が入ってないわよ!? いいわ、絶対にあなたのこと魅了してやるんだから!」

 

どうやらレオにはあの女のことが魅力的に感じなかったようだ。

 

(良かった。ま、まぁほとんど心配してなかったけどね。レオがあんな綺麗なだけの女に惑わされるような人じゃないって知ってたし!)

 

でもとりあえず宴の後にどんな会話をしていたのかだけでも聞くことは絶対にすることに決めた。

 




ボーバトンとダームストラングが到着。

翻訳魔法はフラーやクラムの口調が面倒なんで作りました。
レオならこのぐらいは余裕でしょうし。
原作だと魔法界が閉鎖的だから翻訳魔法が無いんですかね。

フラーのキャラが原作と大分違うかな?
フラーの魅力は指輪の『遮断』で防いでますが、それが無くてもフラーに魅了されることは無い気がしますね。

ハーマイオニーの嫉妬。
今までレオの周りに女がいなかったのでこういった感情は初めてです。

魅了されなかったロン。
未だにハーマイオニーに惚れたままでいるので原作と比べて抵抗値が上がってます。

それでは次回お楽しみに。


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49. 炎のゴブレット

日間ランキング見ているとたまにランクインしているようです。
急にUAが増えるのはそういう時なのかな。

それでは49話どうぞ。


色々あったが美味しかった食事も終わり、皿が空になる。

それと同時に二人の男が入ってきた。

ダンブルドアが二人を紹介する。一人は魔法省、国際魔法協力部のバーテミウス・クラウチ・シニア。もう一人は魔法ゲーム・スポーツ部のルード・バグマンである。

この二人が三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)の開催を復活させるのに尽力したようだ。運営だけでなく審判も担当するとの事。

 

「それでは、フィルチさん。箱をここへ。」

 

管理人のフィルチは宝石がちりばめられた木箱を掲げてダンブルドアの前まで持ってきた。

ダンブルドアが杖で木箱を叩くと蓋が開かれる。

中には大きな粗削りの木のゴブレットが入っていた。そのゴブレットの縁からは溢れんばかりの青白い炎が踊っている。

 

「皆も知っての通り、試合で競い合うのは各校から選ばれた三名の代表選手じゃ。選手は様々な課題をこなしていくことになる。求められるのは魔法の扱いだけではない。勇気、知識、洞察力、危険への対処能力など様々な能力が必要になってくる。それらを兼ね備えた最も適性がある者を公正に選出するのが、この炎のゴブレットじゃ。」

 

大広間の全員が炎のゴブレットに注目する。レオも『眼』を使って解析している。

 

「代表に名乗りを上げる者は羊皮紙に名前、所属校を記載して24時間以内にこのゴブレットの中に入れることじゃ。明日のハロウィーンの夜に各校の中で最もふさわしい三名の名前を返すであろう。ゴブレットは玄関ホールに置かれる予定じゃ。」

 

ゴブレットに羊皮紙を入れるだけならばチャンスはあると判断した出場資格がない未成年の生徒たちは浮かれていた。

だが、ダンブルドアの次の言葉を聞いて苦々しい顔になる。

 

「なお未成年、17歳に満たない者がゴブレットに名前を入れぬように各校の校長がそれぞれ妨害を設置することになっておる。魔法省の二人や先生方にも協力してもらっている。成人しているならば問題なく通るが未成年は突破しようとすれば弾かれるじゃろう。17歳以上の誰かを操って入れたりなどの対策もしているから小細工は通用せんぞ。万が一これを突破できる生徒がいたら実力があると認められ名乗りを上げる権利があるとみなしてゴブレットに名前を入れることができる。そういった意味では最初の課題とも言えるかもしれんの。まぁ、名前を入れても確実に代表になるとは言えんがの。」

 

当初の予定に比べて格段に未成年対策を増やした。もちろんレナード・テイラー対策だ。

 

(これでどうにかなればいいんじゃがのぉ……。)

 

そう思いながらレオのことを見た。やる気になっているその姿を見て、ダンブルドアは己の失策を悟ってしまった。

各校長たちの妨害魔法がレオのやる気を刺激してしまっていた。元からそれなりには課題に興味はあったが、各校の校長が施す妨害をいかに破ろうかといった考えになってしまっていた。

 

(明らかにダンブルドア校長はこちらを意識していた。つまり僕に対してはより強力な効果が発揮するのだろう。ふふ……わくわくするね。)

 

宴が解散しホグワーツの生徒たちは寮へ、ボーバトンとダームストラングの生徒たちはそれぞれの馬車と帆船に戻っていった。

レオも研究室に戻ってどんな妨害があってどうやって炎のゴブレットに選ばれるようになるか考えながら眠りに落ちた。

 

 

次の日。ハロウィン当日であるから例年のごとくかぼちゃの匂いが充満しているホグワーツ。

玄関ホールには炎のゴブレットが設置され、17歳以上の生徒たちが次々と羊皮紙を投げ込んでいた。だがその様子を見ているのは同じ17歳以上や教師たちだけ。

未成年の姿はホールには一人も見られない、いやホールだけでなくその周囲にも全くいない。

 

これの原因は勿論、未成年への妨害によるものだ。今現在のホグワーツはマダム・マクシームとフリットウィックによる結界が覆っている。

その結界の効果は未成年は三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)のことを思い出せなくなる、その情報を認識できなくなる、仮に思い出せても立候補する気力がなくなる、玄関ホールを認識できなくなる、等々……。十数項目にもなる精神干渉だ。その結果、年齢に達していない生徒は通常と同じ日常を過ごしている。

 

この精神干渉を強い意志や防御で突破し、玄関ホールに到達した生徒を待ち受けるのはカルカロフとスネイプ、スプラウトによる妨害だ。

玄関ホールに未成年が立ち入る瞬間にホールが別の場所に変わる。

そこには三人が用意した数々の罠が設置された迷宮が待っている。もちろん生徒の安全を考慮して傷を負わせるようなものはないが、徹底的に嫌がらせと時間がかかるものだけで構成されている。

例えば、くしゃみと鼻水が止まらなくなってまともに思考もできなくなるほどの花粉症を引き起こす魔法植物、摩擦を限りなくゼロにした坂の上にある扉からしか出れない部屋、即座に眠りに落ちて24時間は絶対に起きない魔法薬が散布された部屋などである。

 

そこを超えると玄関ホールにたどり着くが最後にはダンブルドアによる年齢線が待っている。

これは未成年は超えることができないという単純なものだがこれを突破するには今世紀最高の魔法使いといわれるアルバス・ダンブルドアの力量を凌がなくてはならない。

ダメ押しに年齢線の向こうにはマクゴナガルによる炎のゴブレットと見分けがつかないほど精巧な偽物が合わせて百個ほど並んでいる。無論未成年にしか見えないのだが。

 

さて、この過剰ともいえる未成年対策。

これを用意するにあたってダンブルドア、およびホグワーツ教師陣はマダム・マクシームとカルカロフ及び魔法省を説得するに言ったのはたった一言。

 

「あのレナード・テイラーが立候補してしまう恐れがある。」

 

レナード・テイラーの名は他国にもその優れた研究成果によって知れ渡っており、ホグワーツの優勝の可能性を減らそうと両校長は協力的になった。魔法省としてもせっかくの試合は盛り上げたいので賛成した。

 

 

期限まではあと一時間足らず、その後はハロウィーンパーティーが始まる。つまりは一時間ほど後には代表選手が決まっている。今のところ未成年が玄関ホール付近に近づいた様子はない。

このまま何事もなく時間が過ぎて欲しいと、ダンブルドアは祈った。

そして誰も未成年が羊皮紙を入れぬまま期限が過ぎた。

 

 

パーティーの開始と同時に結界が解除されたことで未成年たちも三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)を思い出した。皆口々に今まで忘れていたことを話して悔しがっている。

ハロウィーンパーティーを皆楽しんでいたがそれよりも誰が代表に選ばれるのかに注目が集まっていた。

皿の上の料理もきれいさっぱり無くなり、ダンブルドアが立ち上がって話し始める。

 

「さて、炎のゴブレットが代表選手の選考を終えたようじゃ。名前が呼ばれた者は隣の部屋に入るように。そこで最初の課題についての説明がされるじゃろう。」

 

ダンブルドアの杖の一振りで大広間中の蝋燭の炎が消え、ゴブレットの炎だけが輝いている。生徒も教師も皆ゴブレットに注目している。

ゴブレットは赤く燃え上がり焦げた羊皮紙を吐き出す。

それをダンブルドアが掴み取り、読み上げた。

 

「ダームストラングの代表選手は……ビクトール・クラム!」

 

大広間が歓声と拍手で溢れる。クラムは堂々とした足取りで隣の小部屋に入っていった。

 

またも炎が赤く変わり、新たな羊皮紙が現れる。

 

「ボーバトンの代表選手は……フラー・デラクール!」

 

フラーが立ち上がり、わざとらしいくらいに優雅に歩いて出ていった。

 

三度炎が赤くなる。三枚目の羊皮紙が出てきた。

 

「ホグワーツの代表選手は……セドリック・ディゴリー!」

 

ホグワーツの生徒、特にハッフルパフから腕が壊れそうなほどの拍手が鳴らされる。歓声は最早絶叫でありすでに優勝したかのような騒ぎだ。

 

代表たちが隣の部屋に消えたのを確認するとダンブルドアが再び話し出す。

 

「これで三人の代表選手が決まった。選ばれなかった者も……」

 

その瞬間、炎のゴブレットの炎が赤く変わり、四枚目の羊皮紙を吐き出した。

生徒も、教師も、魔法省の役人も、マダム・マクシームもカルカロフも、ダンブルドアでさえ驚いた表情をしている。

平静でいるのは一人の少年とそのペットのみ。

ダンブルドアは震える手でそれを掴み、読み上げた。

 

「レナード・テイラー……。」




「……どういうこと? 四人目は原作主人公の僕じゃないの? いやおかしいだろ! オリ主ものだってセドリックの代わりで僕が四人目が普通だろ!?」

「そうだそうだ! これでは我が君が復活できんではないか!」

「俺様、旅に出る。」

「我が君!?」

というわけでレオが四人目です。ハリー? 知らんな。
ハリーも選ばれない方が全体的に平和な学校生活でハッピーでしょう。
レオがどうやって過剰な妨害を突破したかは次回に。

それでは次回お楽しみに。


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50. 四人目

50話でーす!
と言ってもまだまだ先は長いですが。
原作ハリポタで完結したのって検索したらハーメルンだと16作品しかなかった。
目指せ17作品目!

それでは50話どうぞ。


「レナード・テイラー……。」

 

予定通り名前を呼ばれたレオは歩いて隣の部屋に向かう。

その様子を大広間の全員が無言で見つめていた。だが、やがてざわめき始めた。

そのざわめきもホグワーツと他校では種類が違ったのだが。

ホグワーツの生徒は「ああ、やっぱりか。」といった諦めたような感じがするのに対して、ボーバトンとダームストラングはホグワーツが不正をして四人目を選ばせたのだという怒りの視線を四人目のレナード・テイラーに向けている。

 

レオが小部屋に入ると先に選ばれていた三人が不思議そうな顔をしてこちらを見てくる。

三人を代表してセドリックが尋ねてきた。

 

「レナード? どうしたんだい?」

 

フラーがあっ、という声を出してレオに近づいてきた。

 

「もしかして今更私の魅力に気が付いて追って来ちゃったのね! 良いわ! それが当然だものね!」

 

レオは無視することにした。

 

「ヴぉく、この人知ってます。レナド・テイラです。」

 

英語が苦手なのか若干変な感じになっているクラムが話しかけてきた。

クラムにもフラーの物と同様の翻訳用魔法が付加された指輪を渡した。

 

「おお、これはすごい。君たちの言っていることが英語として聞こえるのにはっきりと理解できる。噂通りすごい天才の様だ。で、その天才がなぜここに? 試合に関係あるのかな?」

 

レオが言う前にバグマンを先頭に、困惑した様子の三校長と教師、そして怒りに顔を歪めたクラウチが入ってきた。

 

「みんな、すごいぞ! ご紹介しよう。四人目の代表選手、レナード・テイラー君だ。」

 

それを聞いたセドリックは納得半分、絶望半分のような顔になった。

フラーは「それはジョークでしょ?」と呟く。

クラムは何も言わなかったが、わずかに驚いた表情になっていた。

 

「もちろんジョークでも嘘でもないぞ。たった今レナードの名前が炎のゴブレットから出てきたんだ!」

 

「ダンブリードール! これーはどういうこーとですか!?」

 

威圧的にダンブルドアに詰め寄るマクシーム。カルカロフも同調する。

 

「私もマダム・マクシームと同意見だ。説明してもらおうか。」

 

「わしもこれは予想外じゃ……。わしが設置した年齢線を未成年は誰も超えておらんし、他の妨害も破られた様子はない。それはお二方もお分かりじゃろう。」

 

マクシームもカルカロフもそれを言われると黙るしかなかった。

ダンブルドアの年齢線だけで未成年を寄せ付け無くしているのならばホグワーツが有利になるように細工をしただろうと言えた。だが二人も万全の状態で未成年対策を施していた。

それが破られたのだからダンブルドアと同じく予想外の出来事なのだ。

だからと言ってホグワーツから二人も代表選手が選ばれるというのは納得がいかない。

 

「未成年対策がどうなっていたかなどはこの際問題ではない。ダンブルドア、開催校は代表選手が二人というルールでもあったのかね? だとしたらそんなルールを知らない私は相当に頭がどうかしてしまっているようだ。」

 

『まったく、偉大な魔法使が聞いて呆れる。』

 

カルカロフもマクシームも怒りが収まる様子はない。

 

そんな中、バグマンだけは楽しそうにしながら言った。

 

「しかし! 炎のゴブレットからテイラー君の名前が出た。そして炎のゴブレットの炎は消えてしまっている。これでこの四人の代表たちは競技で戦う義務が発生した。これはゴブレットによる魔法契約だ。誰にも解除できないからどうあってもレナード君も含めて試合は進行するしかなくなったわけだ。」

 

「納得できるか!!!」

 

今まで黙っていたクラウチの怒声が響いた。

 

「バ、バーティ……?」

 

「今まで、どれだけ苦労したと思っている!? どれだけの障害があり私が神経をすり減らしながらこの為に力を尽くしたか知るまい! それがこんな、こんなガキに! 天才だか何だか知らんがこんなガキに私の、私の……。ええい! 代表選手の選考はやり直しだ!

こいつをホグワーツを追い出して再選考を実施するべきだ!」

 

「しかしのぉ、先ほどバグマン氏が言ったように魔法契約は絶対じゃ。もうやり直しは出来ん。納得できるかどうかではない、やるしかないのじゃ。マダム・マクシームもカルカロフ校長も良いかね?」

 

他校の校長たちは納得してはいないが無理に魔法契約を解除しようとしてお気に入りの生徒にどのような悪影響が出るか未知数なのだ。再選考するよりこのまま正々堂々と戦うことに決めた。

クラウチはレオに隠しもしない殺意を向けていたが、何も言わず出て行ってしまった。

 

「さて、レオよ。参加するのは良いが、どうやってゴブレットに名前を入れたのかね?」

 

「ゴブレットに直接羊皮紙を転送して入れました。結界や妨害、年齢線を超えることもできましたが打ち破るのに手間がかかりそうだったので。羊皮紙に色々と魔法を組み込んで炎のゴブレットに干渉して存在しない四校目の選手として僕を登録しました。ついでに同じ方法で五人目がでないように四校だけであるように固定しました。だからホグワーツの本当の代表はセドリックですよ。」

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

時は十数時間前。

その日、レオが起床すると校舎内全体に精神作用を及ぼす結界が張られているのに気が付いた。研究室の防御機構と『遮断』の指輪でレオには影響がない。

 

(昨日言ってた未成年対策か。羊皮紙を入れる前に色々と調べてみるか。)

 

二年前のバジリスク対策で設置したまま放置していた監視用の水晶玉があったのを思い出して起動させた。

 

「よし、問題なし。どれどれ……。結界以外には大広間での罠と年齢線か。んん? この年齢線……、僕だけに対してかなり厳しくなっているな。色々と面倒だな。直接入れるのはやめにしよう。解除できるけど時間がかかりそうだ。」

 

その結果、羊皮紙にありったけの魔法式を付与して転移投入することにした。

他の生徒が入れるタイミングを見計らって同時にばれないように入れた。

 

(あとはうまくいったかどうかは発表時に分かるか。さて、どうなるかな。)

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

小部屋の中の全員が驚いている。レオとしてはどの罠も突破できるけれどその分時間は消費されることが嫌であったのでこうしただけだ。姿現しの魔法があるのに羊皮紙を転送するだけでそこまで驚かれる事なのかと感じていた。

 

驚きから回復したバグマンが第一の課題の説明を始めた。

 

「ふむふむ、流石はレナード・テイラーといった常人には真似できない方法だね。さて、バーティが帰ってしまったので私の方から選手の皆さんに課題の説明をしましょう。

最初の課題は君たちの勇気を試すものだ。未知の脅威に杖の一本だけで立ち向かいどうやって乗り越えるのか、それが課題だ。試合は11月24日。全校生徒の前で行われる。これ以上のことは明かせない、試合当日のお楽しみということだ。以上! 解散でよろしいかな?」

 

それ以上は特に何もなく解散となった。

 

「レナード! 勝つのは私よ。負けてから私の魅力と実力を思い知りなさい。」

 

フラーは部屋を出る前にレオにそう宣言して馬車に戻っていった。セドリックとクラムもいるのだが完全に無視していた。

 

「僕も負けるつもりはない。互いに全力を尽くそう。」

 

クラムは堂々とした様子でそう言った。クィディッチのプロであるからなのか正々堂々としたスポーツマンといった印象である。

 

「レナード、二年前は完敗だったけど今回は負けるつもりはないよ。だから手加減無用だ。こっちも全力で行くから君も全力で来てくれ。」

 

セドリックはこちらが不正で代表になったというのに怒りもないようだ。

こういう精神性もゴブレットに選ばれた要因の一つなのだろうか。

 

最後にレオが小部屋から出て研究室に戻る。

戻りながらレオはクラウチのことを思い出していた。

 

(バーテミウス・クラウチ……。しっかり視てなかったけど何か変だったな。ズレている、そんな感じだった。魂をどうにかする魔法の影響だろうな。まぁ、機会はまだあるしその時に調べればいいか。)

 

あまり知っている人でもないし、どんなものかは推測できる、死ぬようなものでもないのでそこまで急がなくてもいいと判断した。

 

もしここでレオがクラウチについてその場で調べていれば、歴史は大きく変わっていたであろう。




未成年対策を全て魔法でやってしまったのが校長たちのミスですね。
魔法である時点でレナードには無意味なものになっています。
ちなみにゴブレットの魔法契約ならレオは解除可能です。
この方法によってハリーが選ばれる可能性はゼロでした。

さてクラウチJrの暗躍はどうなるのでしょうね。

どうでもいいのですが酔っぱらって書いているとスムーズに書き進められますね。

それでは次回お楽しみに。

11/5 クラウチに対してのレオの反応を修正しました。


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51. 杖調べ

長いハリー・ポッターの物語もそろそろ半分近くまで来ましたかね。
これからも長いですが頑張ります。

それでは51話どうぞ。


対抗試合の代表が決まった翌日。

 

正式にレナード・テイラーが代表選手に選ばれたことが告知された。

それに対してボーバトンとダームストラングの生徒たちは不服そうにして、レナードのことを睨んでいた。

もっとも代表のフラーとクラムはそんなことは無く、あくまで強敵であるという認識であった。

ホグワーツではレオに対する態度は二つに分かれていた。

まずはハッフルパフを中心としたレオに批判的な反応をする者たち。

今まであまり注目を集める機会が無かったハッフルパフからセドリック・ディゴリーという魔法の技量、性格、顔、その他諸々全てに非の打ち所がない男が選ばれたのだ。

不正に代表になったレナード・テイラーなど認められるはずがないのだ。

もう一方はレナード・テイラーだから仕方がないと諦めた者たち。

今世紀最高の魔法使いであるホグワーツ校長のアルバス・ダンブルドアを筆頭に他校の校長、寮監、魔法省の役人が仕掛けた妨害を無視して選ばれるように仕組むような規格外に対してどうしろというのだ。セドリックには悪いが勝てる光景が見える気がしない。

もう諦めてレナード・テイラーが課題をどうやってクリアしていくのかを楽しんだ方がいいとう結論に達している段階だ。

この二つは批判3、諦め7といった割合だ。そしてこの二つに共通するのは誰もレオのことを応援しているわけでは無いということだ。

本当に応援している生徒は唯一人、ハーマイオニー・グレンジャーだけであった。

 

 

レオの研究室ではいつものようにハーマイオニーがくつろいでいる。

 

「レオが出場するのは驚かなかったけど、四人目としてだとは予想外だったわ。何はともあれ応援するわ。不正が許せないなんて言ってる人がいるけど、付け入る隙がある時点でダメな気がするのよね。考えればいくらでもレオが立候補できないような方法はあったと思うし。」

 

ダンブルドアや他の者たちも妨害方法は魔法でしか行わなかった。それ以前に選出方法も魔法具である炎のゴブレットなのである。あらゆる魔法を解析し理解できる『眼』を持ったレナード・テイラーには無意味であったのだ。校長や教師からの推薦のような方法であればレオが入り込むこともなかったであろう。

 

「まぁ、魔法使いは魔法が万能であると信じているからね。魔法は未だ発展途上の穴だらけのものだ。マグルの科学技術の方が余程洗練されているよ。だからこそ僕は魔法の研究が好きなんだけれどね。」

 

「ああ、そう言われるとそうかも。私もだんだん魔法界の方が常識になってきちゃってるわね。……それはそうとレオ? ボーバトンの代表のあの綺麗な子とは何話してたの?」

 

「? 何話したかな……? ああ、そうだ。ボーバトン生用の翻訳魔法を付与した指輪を渡したっけ。あとは……、なんか魅了魔法をやたらと出してたな。多分、彼女の親族にヴィーラがいるんじゃないかな。それぐらいだと思うけど、なんでそんな事を?」

 

「ねぇ、あの娘のことどう思った? 綺麗だなって思ったりした?」

 

「特に何も感じなかったかな。フランス人はこんななのかな程度だと思う。どうして?」

 

「べ、別に何となくよ! そっか、そうよね。レオだもんね。」

 

「?」

 

レオがフラーのことをどうとも思っていないことに安心のハーマイオニー。

逆によく分かっていないレオ。

そしてその二人を見て関係性の進展のための良い刺激になっていることだけをフラーに感謝しているクーであった。

 

 

数日が経過した。

直接危害を加えるような嫌がらせなどはないがレオに対しての敵対的な行動が大きくなってきた。

『セドリック・ディゴリーを応援しよう!』というような会話がハッフルパフ生からはレオに聞こえるように大声で発せられる。

レオはそんなことを気にせず普段通りに過ごしている。

その様子が更にハッフルパフ生からの反感をかっているがそれすらも気付くわけがない。

 

闇の魔術に対する防衛術の授業中に用務員のフィルチがレオのことを呼び出した。

どうやら日刊預言者新聞用に代表選手の写真を撮るらしい。

呼び出された部屋には各校長にレオを睨むクラウチとバグマンにクラム、フラー、セドリック達代表選手と見覚えのない女が一人、そしてオリバンダーがいた。

 

「おお来たね! これから代表選手たちの杖調べをするよ。調べてくれるのは魔法界一と言っても良い杖職人、オリバンダー老だ。」

 

オリバンダーによる杖調べが始まる。

 

「さて、拝見させてもらいましょうか。ミス・フラーは……24センチ、しなりにくい。紫檀に芯は……おおこれは……。」

 

「尊敬するおばあ様の髪の毛です。おばあ様はヴィーラなんです。」

 

「なるほどなるほど。私が作る杖にはないが良いものだ。」

 

次はクラムの番だ。

 

「クマシデにドラゴンの心臓の琴線。26センチでかなり頑丈。ふむ……かなりの太さじゃな。」

 

セドリックに移る。

 

「おおこれはわしの作品じゃな。トネリコにユニコーンの尾、30センチよくしなる。うむ手入れも良くされているようじゃ。」

 

満足そうな顔のオリバンダー。最後にレオの番が来た。

 

「お久しぶりですな、テイラーさん。今日はあなたが作ったという杖を見られるというので楽しみにしておりました。それでは拝見しましょう。」

 

レオは杖を差し出す。

 

「どれどれ……。25センチ、持ちやすい。ふーむ、材質は桜のようだ。そして芯材は……。おお、まさかこのようなものを使うとは!」

 

(流石はオリバンダーさんだ。普通は見ただけじゃ気付けないものだけど。)

 

「テイラーさん。この杖の芯材はあなた自身の体の一部ですね。」

 

「正解です。正確には僕の腕の骨の一部を摘出加工したものです。僕の一部であるので僕の魔力をよく通すことができます。」

 

「なるほどのぉ。人間は芯材の使う魔法生物と比べて魔力は通しにくい。だが自身の一部を使うことでその魔力を通す抵抗は少なく、効率も良くなるということじゃな。まさにこの杖はあなたの為だけのものじゃ。こんな発想は今までになかった。いや、新しい発見もあったし長生きするものじゃな。」

 

杖調べは無事終了。その後に写真を撮って解散となった。

レオも戻ろうとしたら部屋にいた女性に呼び止められた。趣味の悪い恰好をした人だった。

 

「ちょっといいざんすか? わたくし、リータ・スキーター。記者をやっているざんす。他の選手にもしたしあなたにもインタビューをしてよろしいかしら?」

 

「短い時間でいいのなら。」

 

「もちろん! 時間なんか取らせないざんすよ。」

 

立ち話なんだから二人分の椅子を出して座る。

スキーターは自動速記羽ペンQQQを使って色んな事を早口で聞いてきた。

どうして出場を決めたのか、どうやってダンブルドアたちを出し抜いたのか、課題への意気込みは、他の代表選手をどう思っているのか、等々。

レオは適当に答えていたが、羽ペンがスキーターが思うような面白い記事を書いている。

内容を見てみると、

『若き天才全てを敵に回す! 最早魔法界に知らぬものがいないと言っても過言ではない天才魔法使いのレナード・テイラーが三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)に出場する。彼は未成年であるにもかかわらずその才能を使ってダンブルドアすら出し抜いたのだ。なぜ彼は出場を決めたのか? 彼によると自分の力を世に更に知らしめるための様だ。他の選手については眼中になく見下した目で見ていた…………』

こんな内容が延々と続き、レオのことを才能があるが傲慢で他者を見下すような人物として三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)すらも自分の才能を広める手段としか見ていないといった内容だ。

 

「このぐらいで良いざんしょ! 良い記事になるのを楽しみにして待っててちょうだい。」

 

「その内容を少し見ましたが読者はそういうのが好きなんですか? よく分からないですね。」

 

「読者とは真実よりも面白いものを求めているものざんす。止めても今回の記事はこういう方向で行くざんす。もし邪魔するようならもっと過激な記事を書くことになると言っておくざんす!」

 

「いえ、別に興味がないので。ああ、そうだ一つ質問してもいいですか?」

 

「何ざんす?」

 

「虫になる感覚ってどんな感じですか?」

 

その言葉にスキーターは固まる。

リータ・スキーターは未登録の動物もどき(アニメーガス)でコガネムシに変身できる、それを利用して今まで記事を作ってきたのだ。

 

「どどど、どういう意味ざんす……?」

 

「あなた動物もどき(アニメーガス)でしょう? 今までに会った動物もどき(アニメーガス)はみんな哺乳類だから昆虫になれる人はあなたが初めてだったんで、何か違うのかなと気になって。昆虫であってますよね?」

 

(なんで、どうして!? まさか、魔法を理解する『眼』というのはデマじゃなくて本当なの? こんなのとは関わらないにかぎる!)

 

「失礼するざんす!」

 

この後、リータ・スキーターはレナード・テイラーの記事も無難なものにして一切かかわらないようにした。

この判断は正解であったと言わざるを得ない。

もしレオを中傷するような記事を書いていた場合にはハーマイオニー、クー、レオの両親によって記者生命が終わりを告げていただろう。

 

リータ・スキーターが大人しくなったおかげで波乱もなく第一課題の日が近づいてきた。

 




原作でのハリーへの批判と同じようなことは起こってますね。
フォイは怖がってやってませんけど。

杖については以前魔法の補助具という説明をしてたかと思います。
ある魔法の威力を100とすると、杖なしの呪文では10、訓練しても70程度の力しか発揮しない。
杖なしで完全に力を出すには完璧にその魔法を理解しなければならない。
杖を使えば能力が上がって上限値120の威力になる。芯材に使ってる魔法生物が人より魔力を通しやすいからである。
しかし杖の持ち主と芯材の相性もある。普通は杖に選ばれたのなら問題ないレベルではあるが杖と魔法使いは異なる存在なので100%完璧に性能は発揮できていない。
なので抵抗がかかってどうやっても最大値で魔法を行使できない。
レオは芯材に自分自身を使うことで上限は上がってないが抵抗を無くすことで最大値での魔法を使える杖を造った。
簡単なイメージはこんな感じ あくまで私の妄想です。
杖なし呪文=10
杖なし呪文(熟練)=70
完全理解杖なし=100
杖あり=120×抵抗減衰30%=84
杖あり(他人の杖)=120×抵抗減衰50%=60
レオ杖=100×抵抗減衰0=100
これら以外に呪文精度や理解度、保有魔力、無言呪文等あるので計算式は複雑になる。
ちなみにニワトコの杖は杖に認められるとこうなる
ニワトコの杖=200×抵抗減衰0=200 チートだな。

スキーターの記事には興味なかったが虫の動物もどきには興味があったレオ。
唯の興味であったが脅されたと感じたスキーターであった。

それでは次回お楽しみに。


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52. 第一課題

ハリー・ポッターのオリ主ものだと恋愛関係はどんなのが多いのかな?
ハリーとくっつく、ロンやフォイとくっつく、誰ともそういう関係にならない
オリキャラ同士とか。まぁ色々あると思います。

何が言いたいかというと。
ハーマイオニーのヒロインの話が増えると良いな! 百合でもいいぞ!

それでは52話どうぞ。


杖調べから数週間。

レナード・テイラーという特大のネタがあるにもかかわらずリータ・スキーターは大人しい記事しか書いていない。そのおかげでレオは平和な学生生活を送っていた。

スキーターがどんな記事を書いていたとしても揺らぐことは無かったであろうが。

 

第一課題まで後一週間ほどのある夜。

課題の準備として特別なことはしていないレオ。強いて言えばどの装備も念入りに整備しているぐらいであるが、それもいつも通りである。。今日もいつものようにメンテナンスをしているところだ。

クーはメイド状態で研究室の資料整理を行っているが、何かに気が付いたようにその手が止まる。そして禁じられた森の方向に顔を向けて首をかしげる。

 

「レナード様。……何か禁じられた森にいます。おそらくは、ドラゴンではないかと。」

 

「森にドラゴン? ああ、そろそろ第一課題だしそのためかな。そうなると課題内容はドラゴンの討伐ってところか。それにしてもよく気が付いたね。」

 

「何となく気配を感じました。集中すればかすかに臭いを感じます。私の中のドラゴンがそう感じさせるのでしょう。」

 

「ドラゴンの縄張り意識のようなものか、それとも別の何か……。まぁ、そっちは後でいいか。……ドラゴンか。ハリエットがいるから素材や研究には問題ないけど、さてどうするかな。」

 

しばらく考え込むレオ。一つの結論を出した。

 

「よし。捕獲の方向で行こう。クー準備を手伝ってくれ。」

 

「かしこまりました。」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

11月24日。

三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)の第一の課題が始まろうとしていた。

代表選手の集合場所であるテントには四人の選手が待機している。

フラーは青ざめた顔で緊張しており、クラムは渋い顔をして腕組みして立っている。

セドリックはせわしなくテント内をうろうろしながら呪文を口に出したりしている。

レオだけはいつもと変わらないように見える。今はカバンから取り出したお菓子で糖分補給中だ。ちなみにハーマイオニーとクーによる合作である。

バグマンが入ってきて課題の説明を開始した。

 

「全員集合しているね。では説明の前に諸君にはこれからこの袋に入っている模型を引いてもらう。さぁ、レディファーストだ。」

 

フラー、クラム、セドリックの順番で模型を引く。レオが引こうとしたら止められた。

 

「おおっと、テイラー君はちょっと待ってくれ。さて今引いた模型のモデルになっている生物、まぁドラゴンだが、それが君たちが戦う相手だ。ああ、安心してくれ! 戦うと言っても討伐する必要はない。ドラゴンが守っている金の卵を取ることが課題のクリア条件だ。模型に付いている数字が課題の順番だ。」

 

トップバッターはセドリック、スェーデン・ショート・スナウト種。

フラーは2番、ウェールズ・グリーン種。

クラムが3番、チャイニーズ・ファイアボール種。

 

「僕はどうするんですか?」

 

「テイラー君は代表だが不正な四人目ということでマダムマクシームやカルカロフ、バーティからの要望でペナルティーだ。こちらの方でドラゴンを選ばせてもらった。順番は最後、ドラゴンの種類も直前まで秘密だ。いいかい?」

 

「まぁ、本来は存在しない四人目としてここにいるわけですしね。問題ありません。」

 

「よし、それじゃあ一番手のミスター・ディゴリー! ホイッスルが鳴ったら競技場に出て来てくれたまえ。私は司会もするので行かなくてはならないんだ。諸君の健闘を祈る!」

 

笑いながらバグマンは出ていった。

レオを除いた三人はドラゴンの討伐が課題ではないと知って少し安心しているようだ。

レオは最後であるのでそれまでゆっくりしておこうと椅子に座って本を読み始めた。

 

「随分余裕そうね。流石は天才、レナード・テイラーってとこかしら。必勝法でもあるの?」

 

フラーが話しかけてきた。必勝法という言葉にセドリックもクラムも反応してこちらを窺っている。

 

「まぁ、相手がドラゴンでもバジリスクの方が強力な気がするから特段緊張する必要はないかな。必勝法はあるとだけ言っておくよ。」

 

「あるのね……。教えてくださいなんてみっともない真似はしないわ。私は私の方法でドラゴンを攻略する。そしてあなたのこともね。この対抗試合が終わるまでにはあなたに私の美しさを叩きこんであげる!」

 

ホイッスルが鳴る。セドリックは気合を入れてテントから出ていった。

歓声に悲鳴、ドラゴンの咆哮。そしてしばらく時間が経過して歓声とともにセドリックが戻ってきた。

疲れ切った様子ではあるし擦り傷や服が焦げたり小さなやけどはあるが大きな怪我はないようだ。

 

しばらくして準備が整ったのかフラーの番になった。

フラーもセドリックと比べるとやや時間がかかっていたが無事戻ってきた。

 

クラムの出番だ。テントから出ると今日一番の歓声が聞こえてきた。流石はクィディッチのトッププレイヤーというところか。

クラムは今までで最短の時間で戻ってきたがその顔は満足していないようだった。

 

そしてとうとうレオの出番がやってきた。

合図のホイッスルと同時にテントから出ると同時にバグマンの実況が聞こえてくる。

 

『さぁラストはこの人! 魔法界にその名を知らぬものはいないであろう天才研究家! 未成年ながらも全てを出し抜いて今この場に立っています! レナード・テイラーだぁあああ!』

 

レオは前を向いて自分の相手を見る。

メタルグレイの鱗に30メートル近い全長。ウクライナ・アイアンベリー種だ。

だが、その大きさが平均的な個体より大きい。おそらくレオ用に強力な個体を用意したのだろう。

 

『テイラー選手が挑むのはウクライナ・アイアンベリー種! しかも普通じゃない特別な奴だ! 過去最大級の大きさと凶暴性、こいつを捕らえて連れてくるのに普段の三倍のドラゴンキーパーと闇祓いにダンブルドアにまで手伝ってもらいました!』

 

なにやらすごいドラゴンの様だ。観客たちは不安そうな顔でレオとドラゴンを見ている。

普段通りなのはハーマイオニーとクーだけだ。いやダンブルドアはレオがどうやってドラゴンを制するのか観察するような目付きだった。

ウクライナ・アイアンベリー種はレオのことを油断なく睨んでいる。強者であるドラゴンはこの小さな人間が自分の脅威になることを感じていた。

 

『試合開始!』

 

「鎖よ! 竜を縛れ!」

 

試合開始宣言と同時にレオが宙に手を上げて叫ぶ。

空中から数十もの巨大な鎖が現れドラゴンに向かって殺到する。

ドラゴンもその脅威を察知して躱そうと空中に飛びあがるが、数が数だけに全てを躱すことは不可能であった。

体に絡まる鎖の数が増えるにつれ、ドラゴンの力が封じられていく。

その巨体から生まれる怪力によっていくつかの鎖は引きちぎられるが、壊れた鎖はその輪の一つ一つが分解してドラゴンの皮膚に付着してその体力と魔力を封じていく。

試合開始して数分後にはドラゴンは空中を飛ぶことすら自力でできなくなるほどになっていた。今やほとんど鎖で吊るされている有様だ。

だが、ドラゴンは強者たる誇りからか最後の攻撃に出た。

持てる全ての力をもって眼下にいる強敵に炎を放った。

対するレオは自分の研究室から空間転移魔法をもって一つの魔法具を呼び出した。

見た目は手のひら大の透明のガラス玉だ。

自分の体をはるかに上回る大きさの炎がレオに迫る。その炎に触れれば火傷では済まないだろう。良くて黒ずみ死体、悪ければ骨も残らず焼失、どちらにしても死亡確定だ。

その炎に向かってレオはガラス玉を投げる。炎とガラス玉がぶつかる直前ガラス玉が弾ける。そして炎を吸収しながらガラス玉が復元し、レオの手に戻ってくる。

ガラス玉の内部には赤く輝くドラゴンの炎が衰えることなく封じられていた。

 

「仕上げだ。扉よ開け!」

 

空中に扉が現れる。何の変哲もない金属製の扉だ。だがその大きさが異常だった。100メートルを優に超える大きさであり、出現したことで会場では騒ぎが起こっている。

最後の抵抗で鎖に噛みついているドラゴンを鎖ごと扉の中の先の見えない闇に引き込んでいく。

そうしてドラゴンが見えなくなり扉が閉まると役目を終えた扉は消失する。それと同時にレオは金の卵を手にしていた。

 

『し、試合終了―! テイラー選手、最短時間で卵をゲットしました! しかも無傷でドラゴンは……ドラゴンはどうなったんだ!? まぁ考えないようにしましょう。さて審査員の点数はいかに!?』

 

マクシーム……9点

カルカロフ……6点

ダンブルドア……10点

バグマン……10点

クラウチ……7点

 

点数が表示され、試合結果に呆然としていた観客たちの歓声が爆発した。

 

『合計42点! クラム選手を上回ってトップだー! 第一課題はこれにて終了です! 次の第二課題は2月24日だ。それまで楽しみに待ちましょう!』

 

歓声の中テントに戻る。他の代表三人も拍手をもって迎えてくれた。

 

「流石はレナードだね。自信を無くしそうだよ。」

 

セドリックが笑いながら話しかけてくる。そう言ってはいるが目は諦めているようには見えない。

 

「正直、君のこと侮っていた。これからは君が一番手強い敵だと認識して挑むとしよう。」

 

クラムはこちらを真剣に見つめながら宣言した。

それから二人からあの鎖や扉、ガラス玉はなんだと質問をされた。普通であれば自分の手は見せないであろう、まして二人とは戦うライバルであるのだ。だが、それ以前にレナード・テイラーは研究者だ。自分の研究成果に興味を持ってもらえるなら喜んで紹介するというものだ。

 

二人に色々と発明品を説明していると、フラーが話しかけてきた。

 

「レナード……。あなた、良いわ。すごくいい。今まで色んな男を見てきたけど、私の美しさに魅了されなかった男はいなかった。でもあなたは逆。私、あなたの試合を見て、魅せられたわ。端的に言って惚れたわ! そして燃える展開ね! 改めて宣言するわ! この対抗試合が終わるまでにあなたのこと私の虜にする!」

 

いきなりの告白。レオは平然としているがセドリックとクラムは驚いている。

そんな空気をぶち壊すように、バグマンがテントに入ってくる。

 

「全員お疲れさま! さぁて、第二の課題は2月24日、十分に長い休みがある。しかし! 時間があるといえども諸君らにはやるべきことがある。」

 

バグマンは金の卵を指さして言った。

 

「蝶番が見えるね? その金の卵は開くようになっている。その中に第二課題のヒントが入っている。それを解くことが次の課題までにやることさ。それでは四人とも疲れただろう。……あー、テイラー君は違うかな? 何はともあれゆっくり休むように、解散!」

 

バグマンはテントを去っていく。残された代表選手も戻ろうとするがレオだけは金の卵を割っていた。途端にひどい叫び声のようなものがテント中に広がる。セドリックは耳をふさいでいるが防ぎきれていない。レオにも何であるかは分からなかったのですぐに閉じた。

しかし、フラーとクラムはこの騒音が何であるかを聞き取れたようだ。

 

「なんで二人は耳をふさいでいたのかしら? 第二課題の内容説明みたいだったけど?」

 

「僕にもそう聞こえたが。」

 

それを聞いて翻訳魔法を金の卵に施し、再度開く。

 

探しにおいで 声を頼りに

地上じゃ歌は 歌えない

探しながらも 考えよう

われらが捕らえし 大切なもの

探す時間は 1時間

取り返すべし 大切なもの

1時間のその後は――もはや望みはありえない

遅すぎたなら そのものは もはや 二度とは戻らない

 

どうやら何かしらの人間以外の言語だったようだ。この翻訳魔法が人間以外の言語に通用するとは想定外であったが嬉しい発見であった。

第二課題までにこの金の卵の謎を解く必要があったようだが全員これでその必要がなくなってしまった。

 

「これっていいのかしら?」

 

「いいんじゃないか。条件はこれで全員平等だ。第二課題は負けないぞ。」

 

そう言ってそれぞれ次の課題の対策の為、戻っていくのだった。

 

「さてと……僕も戻りますか。捕縛したドラゴンの処置もしなくてはならないし。」

 

こうして第一課題は終了したのであった。




レオ以外は原作通りの展開に点数。

レオには特別製のドラゴンが選ばれました。そんなわけでゲットだぜ!
ガラス玉はどんな炎でも封じる魔法具。
悪霊の火でも封じることができるし、封じた炎は攻撃として開放することは可能。
ただし使用回数は一回限り。改良余地大いに有り。

鎖は前にバジリスクに使用したものの改良発展型。

フラーは惚れたと言っていますが、本当に心から惚れたというわけでは無く
自分の魅力が通じなくて興味を持てる人間だからという面が強いです。

金の卵問題解決。これも翻訳魔法のおかげだぜ。

それでは次回お楽しみに。


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53. 誘い

お気に入り登録が7000越え!
総合評価が10000ptを超えました!
こんなに評価していただいて嬉しいです。

それでは53話どうぞ。


第一課題を終了したレオは研究室に戻って来ていた。

扉を開けるとハーマイオニーとクーが出迎えてくれる。

 

「お帰りなさい、レオ。疲れてない? 紅茶ならすぐに用意できるわよ。」

 

「お帰りなさいませ、レナード様。捕縛したドラゴンは暴れていたため、わたくしが大人しくさせました。」

 

「ただいま。紅茶はいただこうか。クーえらいぞ。」

 

紅茶で一服した後、扉を使って研究室内に作った格納空間に入れたドラゴンの様子を見ることにした。

 

 

ドラゴンは鎖で雁字搦めにされていたが、大人しくしているようだ。頭部は鱗がはがれ血が流れている。

 

「あの頭の傷はクーがやった?」

 

「お恥ずかしながら……。あまりにも抵抗するものでしたので一発お見舞いしました。」

 

とりあえずドラゴンに知性向上剤を投与して会話をすることにした。

 

「聞こえるかな? いま君に投与した魔法薬のおかげで僕の言葉が理解できているはずだ。」

 

「……聞こえている。我は貴様に敗れた……。もう抵抗もしない、焼くなり煮るなり好きにするがいい……。」

 

「話が早くて助かる。単刀直入に言おうか。君には僕の実験体になってもらう。君は何か希望はあるかい?」

 

「…………あった。我は種族の中では最強であった。それだけではない、いずれはこの世界で最強の存在になりたいという願望はあった。……今は敗れ無様をさらしているがな。」

 

「ふむふむ、最強の存在ね……。よし選択肢だ。意識を消されて生体兵器になるか。僕に従って最強の生物になるか。まぁ、どっちにしても改造させてもらうことには変わりはないんだけどね。」

 

「……その改造とやらを受ければ我は強くなるのか?」

 

「今よりは別次元の強さになることは保証しよう。」

 

「……良いだろう。これから貴様を我が主として認めよう。だが心せよ、隙があれば貴様の命を奪うと。最強の存在になったら真っ先に貴様を狙うと!」

 

「ははは。いいよ。もっとも安全対策は何重にもするからね。それを破って僕の命を狙えるなら僕の対策不十分ってことだから、恨むこともできないよ。」

 

こうしてその場の思いつきでレナード・テイラーのドラゴン改造計画がスタートした。

 

 

第一課題が終了して数週間。

今年のクリスマスでは三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)が開催されているのでダンスパーティーが開催されることになっている。今年の持ち物にドレスローブが指定されていた理由が判明した。

生徒たちは誰をパートナーに誘うかで色めきだっていた。

代表選手も例外ではない。むしろ代表選手は真っ先に踊るため必ずパートナーが必要になるので大変になっている。

 

セドリックは人気者であるため寮、学年問わず誘われている。もっとも心に決めた人がいたのかすぐにセドリックにアタックする女子はいなくなっていたが。

クラムもクィディッチの人気プレイヤーであるので連日のように誘われていた。

それより凄まじいのはフラーであった。5メートル歩くたびにダンスパーティーのお誘いを受けており流石にまいっているようだ。

さて、レナード・テイラーといえば。

 

「レナード様は誰からも誘われてはいないのですか?」

 

「そうだね。興味ないから不参加で良いかなって考えているよ。」

 

「駄目です! 絶対に参加してください! お誘いは必ず来ますから! いえ、来なかったらレナード様から誰か誘うべきなのです!」

 

「う、うん。分かったよ。」

 

クーの予想外の反対に思わず頷いてしまうレオであった。

ホグワーツ生はレオとハーマイオニーの仲を知っている、というよりは付き合っていると認識しているためレオを誘うという選択肢はないのであった。

もっともそれはハーマイオニーにも言えることではあった。ハーマイオニーにアタックしたのはグリフィンドールの赤毛のそばかすの男子他数名だけであった。

結果は言うまでもないが。

 

(ああ、お母様。早くしないとわたくしをパートナーにするなんて言い出しかねませんよ。ファイトです!)

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ハーマイオニー・グレンジャーは悩んでいた。

もちろんクリスマスパーティーについてである。

何人かにパートナーのお誘いはあったが全て断っている。

一緒に踊りたいのは唯一人、想い人であるレナード・テイラーだけであるのだ。

できればレオの方から誘ってほしい。けれど関心がないことには本当に見向きもしないレオであるからそれも期待できない。

 

(でも……もしかしたら……。いや、私から誘うべきかしら? 誘ったらOKしてくれる?

きっと大丈夫なはず、それとも面倒くさくなって断られちゃうかも?)

 

そんな感じで誘うことができていなかった。今も図書室で本を読んでいるが、一行も頭に内容が入ってこない。

休日にもかかわらず朝からずっと悩み中である。

日が暮れる頃になってようやく誘う決心がついて図書室から出ていくハーマイオニー。

 

そしてその様子を見ている男子が一人……。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「まったく冗談じゃないわ。」

 

フラー・デラクールは迷っていた。

そうここはホグワーツ、新入生なら確実に迷ってしまう迷宮がごとし構造なのであった。

ダンスパーティーに誘ってくるしつこい男子から逃げていたらいつの間にか帰り方が分からなくなっていたのだ。相変わらず男どもはうようよと湧いてきては誘ってくる。それを無視して当てもなく歩き続けている。

 

(まったく、私がこんな目にあっているのもレナードのせいよ。私が惚れた男ならさっさと助けに来なさいよ!)

 

何という無茶ぶりだろうか。だがその願いが天に届いたのか前方にレナードの姿が見える。

 

(ふふふ。やはり私たちは引き合うのね。ついでよ、ダンスパーティーに誘ってあげるわ。今までは周りが邪魔だったから今がその時ね。)

 

フラーはレオに近づいていった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ビクトール・クラムはクィディッチバカであった。

学業よりクィディッチ。休みもクィディッチ。読む本もクィディッチ関係。

幼い時より箒にしか興味を示さず、おこずかいも全てクィディッチに捧げていた。

ガールフレンドはいたことは無いし、箒が嫁であった。家族もクラム家の血筋はビクトールの代で途絶えることになると嘆いている。

そんなクラムはクィディッチ以外でも優れた魔法使いであった。ダームストラングに入学してからはクィディッチだけでなくどの教科でも優秀な成績をたたき出し、校長のカルカロフのお気に入りになっていた。

優秀な成績であればクィディッチに集中しても文句を言われることが少ないからやっていただけというのが真相である。

今回の三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)もカルカロフに言われて渋々来たというのが本当のところなのだ。だが、選ばれたからには全力で戦うのみ。

しかし長らく愛箒に乗っていないストレスで最近はイライラしている。ダンスパーティーの誘いを受けているが正直ピンとくる女の子には出会えていない。

今日は一人で静かに過ごしたいと思って図書室でクィディッチの本でも読もうと決めた。

 

そこでビクトール・クラムは天使を見た。

 

茶色いストレートの髪。知性を感じさせる瞳。色々と描写することはできるだろうが、美しいものは美しいと表現するのが最適だろう。

クラムは生まれて初めての衝撃に戸惑った。女の子がこれほどまでに輝いて見えるとは思ったこともなかった。彼女は何か悩んでいるようだったが、そんな表情ですら美しい。

クラムは行動の早い男だった。億劫だったダンスパーティーの相手は彼女に決めた。彼女が図書室から出ていくのが見えたので急いでその後を追った。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

レオは研究室から出てハーマイオニーを探していた。

クーがあまりにもダンスパーティーのパートナーを見つけるようにしつこく言うため、気分転換に外に出ていたのだ。

そしてダンスパーティーのパートナーを考えてみるとハーマイオニーしか浮かばなかったためだ。

 

(誰でもいいと思っていたけど、いざ考えてみるとハーマイオニー以外はしっくりこないな。見つけたら誘うとしよう。)

 

ハーマイオニーならおそらく図書室にいるだろう。そう思って向かっているとちょうど前からハーマイオニーが歩いてきているのが見えた。

ハーマイオニーもこちらに気付いた。なんか決心したようにこちらに進んできた。

 

「やぁ、ハーマイオニー。」

 

「レオ! えーと、ちょっといいかしら?」

 

ハーマイオニーが何か言おうとした時、双方の後ろから言葉が聞こえてきた。

 

「レナード! 私と一緒にダンスパーティーで踊るわよ!」

 

「そこの美しいお嬢さん。僕のパートナーになってくれませんか?」

 

「「えっ?」」

 

レオとハーマイオニーの声が重なる。

フラーとクラムは多少驚いていたが、すぐに目当ての相手だけを見ていた。

 

(えっと、どういうこと? レオを誘う決心がついたと思ったら、フラーがレオを誘ってクラムが私を誘っている? どうすればいいの!?)

 

ハーマイオニーは混乱している! だけれども混乱はすぐに治まることになる。

 

「ごめん。誘いは断らせてもらうよ。ハーマイオニー。僕と踊ってくれませんか?」

 

ハーマイオニーが聞きたかった言葉。それを脳が認識した途端、思考がクリアになった。

ハーマイオニーはクラムの方に向いた。

 

「誘いはありがたいですけど、ごめんなさい。」

 

そして改めてレオの方に向き直る。

 

「喜んで。ちゃんとリードしてね、レオ?」

 

パートナーが決まってホッとしているレオと嬉しそうなハーマイオニー。

納得した顔をしたフラーと悔しそうなクラムを残して二人は研究室に戻っていった。

 

 

残された二人。

フラーが話し始めた。

 

「私の魅了が通じないわけね。あの二人どう見ても相思相愛よ。あーあ、私バカみたいね。

でそっちのクィディッチプレイヤーさんも失恋かしら?」

 

「……まぁ、そうなるね。さっき生まれて初めて箒より女性に惹かれたけど……。悔しいけどあの顔を見たらね。この悔しさは試合で勝って晴らすとしよう。」

 

「ふふん。同意見だわ。でも私諦めてないわよ? 少しでも隙があるならアタックし続けるわ。」

 

「経験がない僕が言うのもなんだが……、無理じゃないか?」

 

「うるさい!」

 

その後、この二人も何とかパートナーを決めることができた。




捕獲したドラゴンの魔改造計画スタート!
どこまでぶっ飛んだ改造をしようかな。

レオのダンスパーティのパートナーは勿論ハーマイオニーでございます。
レオは無自覚ながらもハーマイオニーを選びました。

そして恋敗れるフラーとクラム。
すまんな、プロット段階から決定していたことだ。

ちなみにセドリックは原作通りのお相手です。

それでは次回お楽しみに。


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54. クリスマスダンスパーティー

皆さんにもハリー・ポッターで好きなキャラは一人はいるはず。
私は男ならネビル、女の子はルーナが好きです。

それでは54話どうぞ。


12月25日。イエス・キリストの誕生日、いわゆるクリスマスというやつである。

いつもはこんなにクリスマス当日にホグワーツに人はいない。

殆どの生徒は実家に帰って家族と過ごしているからだ。

だが今年はダンスパーティーがあるからか多くの生徒が残っている。

どこか浮かれた空気が漂うホグワーツであっても我関せずといつも通り研究室で魔法や薬を扱っているレオ。クーはグリフィンドール寮でハーマイオニーの準備の手伝いをしているので現在不在である。

 

 

そして夜。ドレスローブに身を包んだレオは研究室の前でハーマイオニーを待っている。

しばらくするとハーマイオニーがクーを伴ってやってきた。

 

「こんばんは、レオ。どうかしら……?」

 

「こんばんは。綺麗だよ、ハーマイオニー。」

 

レオは感じたことをストレートに伝えた。そう口から出るほどにはハーマイオニーは綺麗であったのだ。髪をシニョンにして、ドレスを着ている、それだけで美しかった。

二人の後ろでクーは親指をグッと立てて満足げだ。

ちなみに二人のドレスローブはレオの母、フェリスの手作りである。

顔を赤くするハーマイオニーに右手を差し出して腕を組んで大広間に向かって歩き出した。

 

ダンスパーティーは想っていたよりは楽しむことができた。

音楽に合わせて優雅にダンスをする。事前にダンスの動きを魔法で再現していたので無駄なく踊ることができた。代表選手が踊った後は他の生徒たちも踊りだす。

一旦踊りを中断したレオとハーマイオニーはテーブルについて食事をすることにした。

ところがテーブルの上の金の皿には何も乗っていない。

 

「これどうするのかしら? メニューはあるけど。」

 

「ローストビーフ。こんな感じで言った料理が出てくるみたいだね。」

 

そうやってしばらく料理を楽しんだ。

デザートを何にするか考えていると、ホールの方が騒がしくなった。

見てみると白の美しいドレスを着た白い髪の美女と黒のタキシードを着たこれまた美しい男装の女性が高度に踊っているではないか。

周りの皆は気が付いていないが、それを見てレオは少し驚いた。

 

「何をやっているんだクーは。しかも分裂して自分自身で踊るとはね。」

 

「あー……。それはね、クーは多分レオと踊りたかったのよ。でも私に遠慮したんだと思う。他の男の人は嫌、でもダンスパーティーで踊りたかった。だからあんなことになってるんじゃないかしら。」

 

「そっか……。寂しがらせちゃったかな。クー! こっちにおいで。」

 

踊ってるクーを呼び寄せる。

踊りを止めてこちらに来たクーを見て周りがざわついている。

 

「今、クーって呼んだよな? じゃあ、やっぱりあの白い美女はクーちゃん? メイドバージョンじゃないから分からなかった……。」

 

「だったらあっちの男装美女は誰よ? そっちの趣味じゃないけど目覚めそうになったわ。」

 

レオに向かってくる間に二人分だったクーは変形合体して一人のメイド姿になった。

それを見て会場は更なる混乱していたが無視するレオ。

 

「お呼びですかレナード様。」

 

「うん。踊ろうか。」

 

クーは目を見開いてレオ、そしてハーマイオニーを見る。

 

「クー、遠慮しなくていいのよ。あなたは私の娘同然なんだから。楽しみましょうよ。」

 

「分かりました、お母様。しばしレナード様をお借りします。……お母様のお相手も私がいたしましょう。」

 

再び分裂して白のドレスと黒のタキシードに増える。

レオとハーマイオニーはそれぞれの手を取って踊り楽しんだ。

 

 

パーティーもそろそろ終わるという頃合い。

レオとハーマイオニーはホールから抜け出して校舎の周りを歩いている。

ハーマイオニーが人混みに疲れたと言って誘ったのだ。

周りにはクーさえいない。静かでそして星が輝いているだけだ。

 

「今日は楽しかったわ。ダンスも料理もすごくよかった。」

 

「僕も思っていたより楽しめたよ。」

 

「確かに楽しかった。でもね、レオ。私は多分……ううん、絶対あなたと一緒だったから、それだけで楽しめたんだわ。」

 

「僕もそうだよ。君とじゃなければそもそもダンスパーティーに参加してないんじゃないかな?」

 

しばらく無言で歩き続ける二人。ハーマイオニーがレオの目を見て話しかけてくる。

 

「あのね……。私、あなたに伝えたいことがあるの。聞いてくれる?」

 

レオは黙って先を促す。

ハーマイオニーは深呼吸をしてからハッキリと言った。

 

「私、ハーマイオニー・ジーン・グレンジャーはレナード・テイラーのことが好きです。

愛しています。私とお付き合いしてください。」

 

震えながらもハッキリと真剣に愛の告白をレオに放った。

それを聞いたレオは不思議と驚きがなかった。

彼女の気持ちも、自分の気持ちも確信した。それでも言わねばならないことがある。

 

「ハーマイオニー。僕は正直、変人だ。研究バカだ。魔法ばかり考えているようなヤツだ。君より魔法を優先することも多々あるだろう。そんな狂っているようなヤツをそれでも愛するというのかい?」

 

「そうよ。あなたが好き。それだけはどんな魔法でも変わらない私の気持ち。」

 

「君は僕に負けず劣らず狂っているね。」

 

「その通りよ。そして私を狂わせたのはあなたよ。だから責任を取ってちょうだい。」

 

「僕も正直に言おう。家族以外は他の人間のことはあまり関心が無かった僕が君のことは大切に思うようになっていた。この気持ちについて君に告白されるまで考えたことは無かった。そうだね……、僕は君のことが好きなんだろう。愛しているよ、ハーマイオニー。」

 

抱き着いてくるハーマイオニーを抱きしめ返す。

満天の星空の下、二人の顔が近づき唇が重なるのであった。

 

 

今日はハーマイオニーは寮には帰らなかった。減点があるかもしれないがそんなこと知ったことか。クーも気を利かせて禁じられた森へ散歩に出かけると出て行ってしまった。

ハーマイオニーはレオの腕を抱いて寄りかかっている。幸せは時間が経つほどに減るどころか増えていく一方だ。

 

「そういえば、ハーマイオニーはいつから僕のことが好きだったんだい?」

 

「んー……。多分、ホグワーツに入る前から好きだったんだと思う。でもハッキリそうだって意識したのはバジリスクから助けられてからかしら。それから色々と距離を縮めようと頑張ったんだけどね、誰かさんは鈍感でちっとも意識してくれない。私だけがドキドキ、もやもやしっぱなしよ。」

 

「そうだったのか。ゴメン。まぁ、何というか、今更距離も縮めようがないほどに近かったんじゃないかな。」

 

「そうかもしれないわね。それと知ってた? 私たちホグワーツの中じゃすでにカップルだって思われてたらしいのよ。」

 

「知らなかった……。何というかそう見えてたってことなのか?」

 

「私は知ってたけどね。ま、これで事実になったけれどね。」

 

そう言ってレオに抱き着く。レオの胸に顔をうずめて幸せを堪能している。

 

「ふふ。ハーマイオニー、何だか甘えん坊になったね。」

 

「そうよ。だから全力で甘やかしなさい。」

 

その後も場所をベットに移しても、イチャイチャと砂糖を錬成する空間を作り出していた。

レオはそっち方面には興味がないし、ハーマイオニーも節度は守るためそれ以上には発展しないまま同じベッドで幸せに眠りについた。

 

……仮にクーがいたらお母様のヘタレ! と活を入れていたであろう。

 

 

次の日。

クリスマスというイベントもあってかホグワーツには何組かのカップルが誕生したり、素敵な聖夜を過ごしたりしていたようだ。

寮に朝帰りをしたハーマイオニーは同室の生徒たちについにレオと結ばれたと報告したが、

 

「ワー、オメデトー。」

「それって今までと何が違うの?」

「子供ができてから報告したら? あ、ゴメン。もう娘がいたわね。」

 

何というか今までの二人の関係がすでにカップルを通り越して娘がいる夫婦のように思われていたため今更感しかないのであった。

一週間もすればとうとうレナード、ハーマイオニーが付き合いだしたという情報は学校中に広まっていたが、大抵の感想は

 

「知ってた。というかまだだったのか。」

 

というものであった。




ついにレオとハーマイオニーが結ばれました。

と言っても今までとそんなに関係性が変わるわけでは無いですね。
せいぜい、空間の甘さが増す程度かな。

それでは次回お楽しみに。


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55. 第二課題

いつ以来ハリーやロンのことを書いてないのだろうか。
ここまでハリー達がでない物語も珍しいかな。

それでは55話どうぞ。


月日は流れ、年も明けた。

年末年始はホグワーツで過ごしたレオとハーマイオニー。

最早ハーマイオニーもレオの研究室で寝泊まりするようになっていた。

最初のころはマクゴナガルも注意していたが、相手がレナード・テイラーと成績最優秀であるハーマイオニーであり、二人の両親の許可も得たので特例として認めることになった。

本当のところはレナードを制御する手段としてハーマイオニーが有効であると考えたダンブルドアがより二人が親密になるように許可を出していたのが真相だ。

 

そしてとうとう第二課題の日がやってきた。

代表選手たちは湖のそばの待機場所に集合している。

観客たちも特製の観客席に詰めかけてすでに満員だ。

 

金の卵の謎は第一課題終了後すでに全員が解決済み。後に詳しく調べれば水中人(マーピープル)の言葉であると分かり、大切なものを水中から時間内に取り戻す手段を準備するだけであった。

レオ以外の代表選手も準備は万全の様であり自信に満ちているが分かる。

その姿は今から水の中に入るために水着姿である。

まだ気温も低いため寒いが代表に選ばれた誇りからか堂々としている。

 

セドリックは顔だけでなく体つきもしっかりとしている。

クラムはスポーツマンらしく鍛えられた肉体を見せつけている。

フラーは魅了全開で水着姿を惜しげもなくさらしている。

実況のバグマンもそれに同調して今やちょっとしたショーになっている。

バグマンがクラウチによって止められるまでそれは続けられることになった。

ちなみにレオはいつもと同じ服装でとても水に入る格好ではない。

 

『さぁ、観客の男たちよ十分に堪能したか!? あー……。バーティ杖をしまっておくれ。

それでは気を取り直して。紳士淑女の皆さんお待たせいたしました。選手の準備が完了しましたので第二課題開始いたします。テイラー選手以外は私のホイッスルと同時に湖から大切なものを取り戻してもらいます。テイラー選手は5分間遅れてスタートです。

では、3・2・1———』

 

ピーッというホイッスルと同時に三人は一斉に湖に飛び込んだ。

セドリックとフラーは泡頭呪文で頭に空気の保持する方法を選択したようだ。

クラムは変身に失敗して不完全なサメに変わっているが水中を泳ぐには問題なく効果的である。

 

その様子を眺めながらレオは考えていた。

 

(そういえば、大切なものって何だろうか? 研究室の中の物は特に無くなっていなかったし、実家にある何かなのかな?)

 

そうこうしているうちに5分が経過した。

 

『さぁ、5分経過! テイラー選手はどうやって追いつくのか!? 注目が集まります。おーっと? 飛び込む気配がないぞ!』

 

レオは湖に指を入れ探査魔法を発動させた。

 

(えーと……。水魔、水中人(マーピープル)、おおこれが大イカか。んん? セドリックたち以外に人間がいる? ハーマイオニー? 大切なものって人もありなのか。)

 

大切な恋人を人質にされた怒りはあるが、まずは救出が優先だ。

探査魔法の終了させると同時にハーマイオニーがいる場所の直上の水面まで姿現わしをする。

コルポリス(物理的)で人質が縛られている柱を中心に円柱状に水を分離させる。

その円柱を降下してハーマイオニーを縛るロープを切り離す。人質たちは『眼』で視たところ酸素供給、耐寒などの魔法で保護されているので問題ないようだ。

ハーマイオニー以外はそのままにして水上に上昇する。水も元通りに戻しておく。

ハーマイオニーの濡れた体を魔法で乾かしながらお姫様抱っこで飛行魔法で湖岸に戻る。その途中で愛しい彼女が目を覚ました。

 

「ううん……。ここは……? ああ、レオだ。おはよう。」

 

まだ昏睡させていた魔法が解除されきっていないのかトロンとした表情を向けてくる。

 

「おはようハーマイオニー。気分はどう?」

 

「ん~……。なんだか、フワフワする。夢……? レオにお姫様抱っこされて湖の上を飛んでるわ。」

 

そう言ってギュッとレオに抱き着いてくる。その様子を見ている観客たちは「俺たち試合を見に来たはずなのになんでバカップルのいちゃつく様子を見せられてんだ……?」と思っていた。

水中の様子も魔法で映し出されているので意識を切り替えて、トップ確定のレオではなくセドリックたちの奮闘ぶりを観戦することにした。

 

湖岸に到着するころにはハーマイオニーも覚醒し寝ぼけてたとはいえ人前であんなに甘えた様子を映されて赤面していた。

ホグワーツ生にとっては今更感がすごいのである。付き合う前から仲の良さを見せつけられ、付き合いだしてからはより甘い空気を作り出しているのだ。本人たちはその自覚はないだろうが傍から見ていると完全に夫婦同然のカップルであった。

 

しばらく待っているとフラーが湖から出てきた。どうやら怪我をしているようでひどく取り乱している。

 

「ああ、ガブリエル……ガブリエル! どうすれば、戻らなきゃ!」

 

マダムマクシームが必死に止めようとしているが再度湖に飛び込んで助けられなかった人質を助けに行こうとしている。

先程ハーマイオニーを助けた時に施されている魔法を視たが時間は一時間以上持続するように設定されていた。金の卵の歌の一時間とはあくまで試合の時間であり本当に大切なものを失うようなことは運営側としてもする気はないのだろう。

少し考えれば解ることだが気が動転しているフラーは気が付いていない。

 

「それにしても運営も魔法で保護してるとはいえ人を水中に沈めるなんて何を考えているんだか。」

 

「一応、沈められる方の私たちには事前に許可を得てたわよ。断ってたら何か物品とかが代わりに沈められていたみたい。私としては囚われのお姫様を王子様が助け出すみたいで少しワクワクしたわ。」

 

「ハーマイオニーがそう言うなら良いんだけどね。」

 

 

そうしているうちに次の選手が水から姿を現した。

不完全なサメ状態のクラムだ。人質であろうスリザリンの女生徒も一緒である。時間制限内ギリギリではあったが見事課題をクリアしてみせた。

 

その数分後。セドリックが水面から顔を出した。泳いで湖岸まで来ようとしているが、二人分の人質を連れているため思うように進めていない。そう、セドリックは自分の人質だけでなくフラーの人質も連れて戻ってきたのだ。

 

「ガブリエル!」

 

マダムマクシームの制止も振り切って妹のガブリエルに駆け寄るフラー。

無事を確かめセドリックに涙を流しながらお礼を言っている。

代表全員が戻りフラーが落ち着いたところで採点になった。

 

『レディース&ジェントルメン! お待たせいたしました! 審査が終了いたしました! 50点満点で各代表選手の得点を発表していきます!

最初はテイラー選手。5分間のハンデも無いに等しい速さ! なんと制限時間は50分も残っていました。湖に入ることなく人質を助け出したのもすごい! 結果、47点!』

 

会場は拍手に包まれるが何というかやる気がない拍手であった。

感じとしてはワースゴイネーと棒読みで感想を言われているようだ。

 

『続いてミス・デラクール。泡頭呪文は完璧でしたが、水魔に襲われ残念ながら途中リタイア。よって25点です。』

 

フラーは当然の結果として受け取っている。

 

『次に戻ってきたビクトール・クラム選手! 変身術は不完全でしたが水中での活動には有効であることは変わりません。制限時間内かつ二番目ということで40点!』

 

クラムファンとダームストラング生から歓声が沸き起こる。

 

『最後! セドリック・ディゴリー選手! 泡頭呪文も問題なし、人質と共に無事帰還しましたが制限時間の一時間をオーバーしてしまいました。しかし水中人(マーピープル)の長の話ではクラム選手とほぼ同時に人質の元に到着したようですがフラー選手が水魔に襲われているところを目撃していたらしく人質が時間内に助けられないと判断したようです。そのため二人分の人質を運んだため時間がかかったわけです。審査員たちで協議した結果、この行いは非常に道徳的であると結論を出しました。よって45点をディゴリー選手に送りたいと思います!』

 

会場全体、ホグワーツだけでなくボーバトンやダームストラングの生徒たちもセドリックの行為が素晴らしいと認めているようだ。

セドリックとしては当然といった感じなのだろうが、そういった態度も彼への好感につながるのだろう。男女問わず人気があるのもうなずけるというものだ。

 

「ああいう人だから嫌いになる人がいないのよね。グリフィンドールにも彼のこと好きだって言っている女の子は多いのよ。」

 

「へー。ハーマイオニーも彼みたいなのはかっこよく見えるのかい?」

 

「そうね。確かにかっこいいんでしょうね。でも私がそばにいたいって思うのはあなただけよ。」

 

「それは光栄だね。僕も君以外が隣にいるのは想像できないかな。」

 

『さぁ、次はいよいよ最終課題! 6月24日に開始だ。それではみなさん、ごきげんよう!』

 

「さて課題も終わったし帰ろうか。夕食なんだろう?」

 

「気分的にはあったかいスープが飲みたいわ。」

 

残念ながらスープは無かったので屋敷しもべ妖精に頼んで作ってもらうことにした。

ハーマイオニーはホグワーツで初めてしもべ妖精を見たようだがその働きぶりに感心していた。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

(……第二課題も終わった。最後の課題でどのような結果であれレナード・テイラーが全員の目を奪うような活躍をしてくれれば良いのだが……。)

 

とある屋敷の部屋で一人、死喰い人が己の、いや主の計画の成功を祈っていた。




第二課題でした。

今回もレオにペナルティーがありましたが、何の問題もなかった。
実は水中人や大イカも事前にすごい魔法使いと聞いていて妨害しようと張り切っていたんですが水中にも入らなかったよ。

ハーマイオニーが人質にされて若干怒ってるレオですが、施されていた魔法とハーマイオニーが乗り気だったから運営側への制裁はなくなりました。
ダンブルドアもこのくらいなら予言の内容には当たらないと判断しましたが
ちょっとビビってました。

セドリックとフラーの人質は原作同様。
クラムは箒マニアなスリザリン女子。これから先登場予定もないキャラです。

何気にハーマイオニーがしもべ妖精を見てなかったし、レオに影響されたから例の活動はないですね。

それでは次回お楽しみに。


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56. 第三課題

とうとう最後の課題です。
過去の三大魔法学校対抗試合の内容を妄想して書きましたけど、実際どんな内容だったんだろうか。そもそも死人が出るようなもんを開催する方が間違ってるよな。

それでは56話どうぞ。


とある屋敷。

その一室にそれはいた。

大きさは赤ん坊ほどである。しかしその顔は決して赤ん坊のようにかわいらしい存在ではなかった。頭髪は無く、肌は青白い。鼻は無理やり切り込んだように潰れ、瞳も人ではないことを表すように赤い。全体的に蛇のような印象を与える存在であった。

それが言葉を発する。

 

「儀式の準備は順調であろうな?」

 

ベッドの上にいるその小さく醜い存在からの言葉で平伏している男は震えながらも答えた。

 

「も、もちろんでございます。必要な材料の確保、場所、魔法薬の作成完了いたしました。呪文も完璧でございます。後は血さえあれば……。」

 

「血以外は出来て当然のものだ。聞いたのはそういうことではない。お前自身のことだ。その身を捧げる覚悟はできているのかと聞いたのだ。」

 

男はより一層震える。計画している儀式には必要不可欠なものが三つある。そのうち一つは自身の肉体なのだ。

 

(嫌だ、痛いのは嫌だ。ここで逃げたい。ネズミになってもいいから生きていたい。でも……、ここで逃げたら確実に殺される……!)

 

「も、もちろんでございます……。この身を捧げる覚悟はできております。」

 

「ならばよい。しばし眠る。お前はいつもの薬を用意しておけ。」

 

深々と礼をして部屋から男が出ていく。

醜いそれは自身の復活の計画とその先を考えながら眠りに落ちていく。

 

(あのようなネズミの如き屑に頼らねばならんとは、忌々しい。だがそれもあとわずか。予想外のことがあったがそれでもまだ問題ないだろう。むしろほとんどの人間の目は奴に注目するはずだ。ダンブルドアでさえ奴を見る目は普通ではなかったからな。復活の儀式には奴もいるだろうが、ほぼ妨害はないとみて間違いはあるまい。奴は儀式に興味は持ってもその邪魔はしないはず。後は忠実なあいつがポッターの小僧を連れてきさえすれば……。その後は再び……。)

 

その存在は自身の復活もその後の支配も疑うことなどなかった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

第三課題当日。

 

レオがいつもと変わらない朝食を食べているとフリットウィックが声をかけてきた。

 

「テイラー君。代表選手のご家族が招待されてきています。こちらにおいでなさい。」

 

案内されて部屋に入ると父アースキンと母フェリスが待っていた。

他の代表選手たちもそれぞれ家族と久しぶりの会話を楽しんだり激励を貰っている。

 

「おお、来たなレオ。派手にやってるみたいだな。このままもっと驚かせるようなことをしてもいいぞ。俺が許す!」

 

「あなた、あまりそんなこと言わないの。それよりも……、何か報告することはな~い?

ほら、ハーミーちゃんとはどうなったとか!」

 

嬉しそうに聞いてくるフェリス。とっくの昔にハーマイオニーの両親経由で二人の仲は知っているのだが、息子の口から改めて聞きたいのだ。

 

「ああ、そのことですか。知ってるみたいですけど改めて、ハーマイオニーと恋人になりました。」

 

「へ~ふ~ん。そうなのね。で、どっちから告白したの? どこまでイッたの? というかハーミーちゃんはどこ!?」

 

「フェリス、落ち着け。母さんがこんなだが二人のことは応援してるぞ。もちろん俺もだ。結婚も賛成だが……、責任は取るようにな。」

 

「はい。ハーマイオニーのご両親にも挨拶に行った方が良いかな?」

 

「ハーミーちゃんの家族も結婚までOKよ。むしろ二人の仲を見てたら恋人になるのも遅いぐらいよ。私たちはずっともやもやしてたのよ。今学年が終わったらみんなでお祝いしましょう。」

 

「ハーマイオニーにも伝えておくきますよ。優勝賞金で盛大にパーティーができるね。」

 

「おいおい、もう勝った気か。でもそれでこそ我が息子だ。」

 

「聞き捨てならんな、アースキン。」

 

レオの優勝宣言と父親の当然といった態度にセドリックの父親のエイモス・ディゴリーがアースキンに近づいて来た。

 

「君の息子は大層優秀で素晴らしいみたいだが、勝つのは我が子セドリックだ。」

 

隣にいるセドリックは止めて欲しそうにしているがエイモスの息子自慢は続いている。相当に親バカの様だ。

アースキンもそれを知っているのか適当に聞き流して対応している。

 

その後は代表選手同士や家族で団欒して時間が過ぎていった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ホグワーツ内にあるクィディッチ競技場。

毎年各寮のチームが熱戦を繰り広げている場所だ。

それが今や人の何倍の高さの生垣による迷路に変貌している。

それを見れば一目瞭然、第三課題の内容は迷路だ

第一、第二課題の点数の高い順に迷路に入り、様々な障害を乗り越えて優勝杯を手にしたものが勝者となる。

代表選手たちはすでに競技場に到着しており迷路の入口で開始の時を待っていた。

観客もすでに満員である。全員が最後の勝負を楽しみにしていた。

 

『紳士、淑女の皆さん! 三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)最後の戦いがいよいよ始まります!』

 

バグマンの宣言で会場の熱気は最高潮に達した。

 

『これから代表選手たちにはこの巨大な迷路に隠された優勝杯を探してもらいます。最初に優勝杯を手に入れた者が優勝です。今までの課題での獲得点数順に迷路に入ってもらいます。さぁ、一番手は89点! イレギュラーな代表、レナード・テイラーだ!』

 

レオが一歩前に出て迷路に近づく。

その姿はいつもの制服姿だが一点だけ違っていた。

制服の上に漆黒のマントを羽織っているのだ。レオは迷路の入口に進みながらマントに声をかける。

 

「行くよ、クー。問題ないかな?」

 

「神経接続、魔力接続、衣服及びマントへの偽装、全て問題ありません。」

 

マントからクーの声が返ってくる。と言っても周りには聞こえず、レオの脳内に直接送られる声であった。

 

迷路に入る。途端に入口が生垣に覆われる。探知魔法を発動するが当然のように妨害されている。突破することも可能ではあったが、今回は別の方法で迷路攻略をすることにした。

 

「さて、やってみるとしようか。」

 

レオと二位のクラムとの点差は9点、1点につき20秒の差がある、つまりは3分の猶予がある。それまでに事を済ませよう。

 

「『制御発動』。『貯蔵』解放。結合開始。」

 

指輪によって今までに吸収したものと自ら貯めたものが次々と解放されていく。

エクスペリアームス(武装解除)ステューピファイ(麻痺)インセンディオ(燃焼)インペディメンタ(妨害)エクソパルソ(爆破)エバネスコ(消滅)コンフリンゴ(爆発)デフィンド(引き裂き)コルポリス(物理的)レダクト(粉砕)、それ以外にも電撃、分解などに防御無効や再生阻害、呪い無効など様々な魔法が解放されていく。それぞれの魔法は一つだけでなく一種類につき数十にもなる。

解放された魔法はそのまま放たれることなくレオの前方5メートル先で一つに交わり大きな光の球体になっていく。

 

「よしよし。最後に仕上げとして移動キー(ポートキー)を無効にしておかないと。」

 

魔法式をいじって移動キー(ポートキー)には効果が発揮しないように微調整をする。

光球はすでに3メートルほどなっている。その中には様々な効果を併せ持つ魔法が高密度で圧縮されている。

 

「クー、地面にアンカーを打って体を固定。衝撃に備えてくれ。」

 

「了解です、マスター。」

 

マントが伸び分裂して杭に変形する。それを地面に突き刺してレオの体を固定する。

ズボンからも同様に杭が伸びて固定を補助する。

 

「合成魔法……。えーと、殲滅魔法(インタリトム)でいいか、前方解放!」

 

光球の前方から極光が溢れ出す。太さ10メートル以上の巨大な極光の光線が突き進む。

進路上にある生垣、罠、様々な魔法生物はその極光に飲まれていく。

燃やされ、切り裂かれ、砕かれ、分解され、その微小な一片までも消滅し完全に消え去っていく。

迷路の先端まで到達したところで放出を停止させた。後に残るのは無残にも真ん中を貫かれた迷路の残骸であった。

想像してほしい。紙の上に鉛筆で書かれた複雑な迷路があるとする。その迷路の半分ほどの大きさの消しゴムで紙の上から下まで一直線になぞって迷路を消してしまう。後に残ったものはもはや迷路とは言えないだろう。

 

観客も実況も代表選手も誰もかれもレオの所業に声を出せなかった。

レオが入って一分と経たずに巨大な光が迷路を破壊してしまったのだ。

そんなことを気にせず自身の魔法の効果に満足気なレオ。

しかし次の瞬間、珍しく焦りだす。

 

プロテゴ・マキシマ(最大の守り)!、全方向・多重展開!」

 

迷路の残骸の前後左右に上をレオの全力のプロテゴ・マキシマ(最大の守り)が六重に展開される。

驚く観客たちと教師にレオの声が響く。

 

『防御系の魔法を使える全員は念のため身を守ってください。先生方は観客席の周りと迷路の周りに全力で結界をお願いします。多分爆発します。』

 

それを聞いた全員はできる者はプロテゴ(盾の呪文)を発動。教師たちも全力で迷路からの衝撃に備える。

 

「クー!」

 

「了解!」

 

レオと体で繋がっているクーには言葉を発せずともその考えが解った。

レオの衣服を鎧に変え、全身を隙間なく覆う。更に細胞を増殖分離させ光球の周りに覆うように硬化させた。

 

次の瞬間に光球が爆発した。

光球を覆っていたクーの肉壁は破壊される。だがそれでも威力の大半を削ぐことができた。

そのおかげで迷路は完全に消滅したがレオが張った多重のプロテゴ・マキシマ(最大の守り)を突破することなく誰にも被害がでることはなかった。

光球の目の前にいたレオもクーの鎧、指輪の守り、自身の魔法で無傷だ。

 

今、迷路のあった場所に存在するのはレオと優勝杯だけだ。誰も何も言えずにその光景を見ている。それを無視してレオは歩き出す。

 

「クー、大丈夫か?」

 

「はい。細胞のいくらかは消滅しましたが、既に再生済みです。」

 

「良かった。それにしても久しぶりに失敗したなぁ。制御が甘かったか、数が多かったか、それとも呪文の組み合わせに問題があったのか。」

 

ブツブツと今回の失敗の原因を一人で考えながら優勝杯に向かって歩ていく。

集中しているせいで優勝杯の移動キー(ポートキー)としての行き先が変更されているのに気付かなかった。

そして、優勝杯を手にすると同時にレナード・テイラーの姿は消え去ってしまった。

 




第三課題でした。

レオ全力装備です。
指輪の他にクーを形態変化させて装備しています。この状態ではほぼ無敵ですね。

久々の指輪紹介その9
・制御
魔法の細かな制御ができるようになる。
地味だが他の全指輪の能力を最大限に引き出すには必須な指輪。
全力で戦うには必ずこの指輪で制御して戦闘する。今回も殲滅魔法を作るのに使用。

・殲滅魔法
今回レオが作りだした魔法。
イメージはメドローアや仮面ライダーカブトのマキシマムハイパーサイクロン。
当たったら消滅、死ぬ。防ぐ手段は攻撃力以上の再生をするしかない。効果対象は設定可能。合成する魔法の数を減らして小規模にすることも可能。

珍しく実験失敗。
たまには失敗することもあります。
プロテゴ・マキシマの多重展開は結界師の結界の多重展開のイメージ。

レオは失敗の反省で考えてたため移動キーの変更に気が付きませんでした。

それでは次回お楽しみに。


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57. 帝王の復活

もう一月もすれば2018年。
来年の今頃は何を書いているかな。
この物語は完結しているはずだけど、どうなっているやら。

それでは57話どうぞ。


レオが優勝杯を手にした瞬間に移動キー(ポートキー)での転移を感じる。

だが転移先がおかしかった。

本来ならば迷路の入口に転移して優勝したことをアピールするはずであったのだ。

だが、レオが今立っている場所は暗い墓地の真ん中。

異常事態を感じて指輪の防御機構を全開、『聡明』も発動してどんなことにも対処できるようにしておく。

 

「クー、対抗試合の一環かもしれないけど警戒を怠らないように。」

 

「了解しました。……後方に人間がいます。」

 

振り向くと同時にエクスペリアームス(武装解除)が飛んでくる。

特別強力なわけでもないが、念のため躱す。それと同時にクーがコートから触手を伸ばしてその相手の腕を切り飛ばす。

倒れた相手を確認するために近づく。相手は男だったが知らない人物だ。明らかに正気では無い顔でうずくまっている。よくよく見ると魂にズレがあるように感じる。

 

「確かクラウチもこんな感じだったような……。」

 

「そいつはバーテミウス・クラウチだ。魂を息子と入れ替えて心は壊して服従させているがな。今、クラウチの中身は俺様の部下のクラウチ・ジュニアだ。」

 

墓場の奥から声が聞こえてきた。

そちらを見ると去年逃走したピーター・ペティグリューが醜い赤ん坊ほどの生物を抱えて歩いてきた。それを『眼』を使ってみて何であるか理解した。

 

「お久しぶりです。闇の帝王ヴォルデモート卿。ここに僕を連れてきたのはあなたの計らいですか?」

 

「そうだ。前に会った時、復活したら話そうと言っておいたはずだ。今日! 俺様は復活する!」

 

「どうやってです? 賢者の石なら渡すつもりはないですよ?」

 

「今に分かる。しばし待っておれ。忠実なしもべが最後の材料を持ってやって来る。」

 

レオはペティグリューが大鍋と魔法薬の準備をしているのを観察しながら考察する。

 

(墓場……死体。魔法薬は肉体を分解するもの。なるほどなるほど、最後の材料は誰かな?)

 

儀式の大よその見当がついた。しばらくして移動キー(ポートキー)によって現れたのはバーテミウス・クラウチの姿をしたクラウチ・ジュニアとハリー・ポッターであった。

 

「お待たせいたしました、我が君。ポッターを連れて参りました。」

 

ハリーは抵抗しているが縛られて動けない。

 

「クラウチ! これはどういうことだ!? なんで、ピーターがここにいる!? それに消えたテイラーまで!」

 

「黙れ! 貴様はこれから我が君復活の材料になってもらう!」

 

ハリーは墓石の一つに縛り付けられながら台座の上に置かれている醜い生物、ヴォルデモートを見た。

 

「ヴォルデモート……! クラウチ、ピーター! やめろ! クソっ、テイラー見てないで何とかしろ! お前ならこんな奴らどうにかできるだろう!?」

 

「無駄だ。こやつは俺様のことを恐れていない。何より今から行う儀式の方が興味があるだろう。」

 

ヴォルデモートは笑う。事実、レオはハリーのことなど眼中になく復活の儀式に興味津々であった。

 

「ご、ご主人様。準備が整いました。」

 

「始めろ。」

 

クラウチ・ジュニアが見守り、レオが観察する中儀式が始まった。

 

大鍋にヴォルデモートが入れられる。

 

「父親の骨、知らぬ間に与えられん。父親は息子を蘇らせん!」

 

トム・リドルと書かれた墓石が割れ、その下から出てきた骨が細かく砕かれながら鍋の中に投入されていく。

魔法薬は鮮やかな青色に変化する。

 

「しもべの肉、喜んで差し出されん。しもべはご主人様を蘇らせん。」

 

クラウチ・ジュニアがペティグリューの右腕を切り落とし鍋に放り込む。

鍋の中身は青から燃えるような赤色へと変わった。

 

「敵の血、力ずくで奪われん。汝は敵を蘇らせん。」

 

クラウチ・ジュニアがハリーの腕を切り付ける。

流れ出した血が鍋の中に注がれる。

 

「あっ……。」

 

レオは何かに気付いたが、儀式はすでに終わってしまっている。鍋の中身は目も眩むような白色に変わりその中から人が立ち上がる。

 

その人物は骸骨のようにやせ細り、背が高かった。そして顔は赤ん坊の姿と同じように崩れた醜い、人とは思えぬような顔であった。

今ここに、史上最悪の闇の魔法使い、ヴォルデモート卿が復活した。

 

 

ヴォルデモートは自身の体を隅々まで見渡しながら己の肉体があることの喜びをかみしめていた。一分ほどそうしていただろうか。

 

「ローブを着せろ。」

 

クラウチがローブを着せていく。壊れ物でも扱うように丁寧で慎重な手つきだ。

そして用意してあった杖を愛おしそうに手にする。

 

「腕を出せ、ピーター・ペティグリュー。」

 

ペティグリューはその言葉に材料に使った腕を治療してもらえるのだと思ったのだろう。先の無い右腕を差し出すがヴォルデモートは左腕を掴んで入れ墨、闇の印を確認した。

 

「戻っているな。全員が気が付いているはずだ。……何人戻ってくるのか、真に忠誠を誓っているのかがはっきりするだろう。」

 

ヴォルデモートは指を入れ墨に押し当てる。

瞬間、赤から黒に色が変わる。その様子をレオは観察している。

 

(へー。よくできているな。あれなら誰にも悟られず発信ができる。参考にさせてもらおう。)

 

しばらく後にヴォルデモートを中心に次々に姿現しで死喰い人(デスイーター)が現れた。

死喰い人(デスイーター)達は恐る恐る主人たる闇の帝王に近づき、跪いてローブの裾にキスをする。

 

「よく来た、我が下僕どもよ。今どんな気分だ? 貴様らは五体満足で何不自由なく過ごしていたわけだ。なぜ誰も主を助けようとは思わなかった?」

 

その言葉に誰も何も言えなかった。

しばらくヴォルデモートによる罵倒や磔の呪文による制裁が続けられることになった。

 

「さて、俺様の復活の儀に客人を招いている。誰もが知る英雄、ハリー・ポッターと若き研究家、レナード・テイラーだ。」

 

死喰い人(デスイーター)達が縛られているハリーとヴォルデモートを観察しているレオに注目した。

 

「テイラーについては後でじっくり話すとしよう。まずは……ポッター!」

 

ハリーへと磔の呪文が炸裂する。

絶叫を上げ泣きわめくハリー。

 

「はははははは! この小僧がこの闇の帝王より強かったなど誰が信じられる!? ただの何も出来ぬガキではないか!」

 

ハリーを縛っていた縄を解き、自由にさせる。ハリーは磔の呪文によって苦しそうに地面に横たわっている。

 

「さぁ、目の前に両親の仇がいるぞ、ハリー・ポッター。今の俺様は気分が良い。一対一で戦ってやろう。決闘のやり方は知っておろうな? さっさと立たんか!」

 

ハリーを無理やり立たせるヴォルデモート。

 

「さぁ、お辞儀をするのだ。決闘とは礼儀を守る必要がある。お辞儀をするのだ、ポッター!」

 

無理やりハリーの腰を折ってお辞儀の体勢にする。

両者が対峙して杖を構える。死喰い人(デスイーター)は主の勝利を確信しながら、レオはどうでもよさそうにそれを見ている。

 

アバダケダブラ(息絶えよ)!」

エクスペリアームズ(武装解除)!」

 

緑と赤の閃光が空中で衝突する。ヴォルデモートの圧勝と思われたそれは空中で拮抗した。

その普通ではありえない現象にレオの目が開かれる。

 

(あれは……杖の共鳴か? あり得ないことじゃないけど初めて見る。今日は運がいいな。)

 

 

その後、ハリーの閃光が押し切りヴォルデモートの杖から死者の幻影が出てくるなど不可思議な現象は続いた。

死者がヴォルデモートを阻むことでハリーはレオを連れてきた優勝杯を使って逃げ出すことに成功する。今頃はホグワーツでダンブルドアによって保護されているだろう。

 

「おのれおのれおのれ! ……まぁ、良い。いずれ殺す、必ずだ! さて。」

 

今の現象を分析していたレオに向き直る闇の帝王。

 

「待たせてしまったようだな。」

 

「いえいえ。色々と面白いものを視させてもらって満足です。」

 

「満足したなら良い。さて単刀直入に言おう。俺様の仲間になれ。」

 

ヴォルデモートからの直球な誘い。

この誘いの結果が魔法界の未来を左右することになる。

 




ヴォルデモート復活!

ジュニアはレオが迷路爆破した後に処理をすると言って抜け出して
目くらましの術と透明マントを使ってハリーに近づいて拉致しました。
第三課題でレオが予想以上に派手な事をしたから成功したようなもんです。
レオなら何かしらやらかすと予想してその隙に拉致する計画でしたけど
正直ガバガバで、よくこんな方法で復活できると思ってたなお辞儀。
最悪ハリーが来なかったら別の人間で復活するつもりではいた模様。

オリ主が代表選手に選ばれて墓地まで転移させられても大体ハリーと一緒に縛られてる気がする。
しかし、今作のオリ主、レオは復活の儀式を見たいという理由で妨害もしない。
何というか、色々とあり得ん行動ばっかしてるやつだな。

お辞儀様からのお誘い
さてどうなるかな。 

没案で復活の儀式の最中に大鍋に細工してお辞儀がレオの下僕になるルートもありました。その場合次回で最終回でした。

それでは次回お楽しみに。


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58. 闇の誘惑

この話が物語の分岐点になります。
さて、レオはどんな選択をするのか。

それでは58話どうぞ。


「レナード・テイラーよ。この闇の帝王ヴォルデモート卿の為に力を使うが良い。」

 

いきなりの勧誘に少し驚くレオ。

だが、レオ以上に死喰い人(デスイーター)にとっての衝撃が大きかった。

 

「我が君!? なぜこのような子供を!」

「こいつの父親はあのアースキン・テイラーです。危険です!」

「いくら優れていようとも純血でない者など!」

 

「黙れ。」

 

ヴォルデモートの一声で騒々しかった声は一切なくなる。

 

「腰抜けの貴様らの何倍もの価値がこいつにはある。

魔法を極めるためには非情になれる精神性、今までにない魔法や魔法薬を作り出す創造性、優れた魔法の手腕、そして何より魔法を読み解く『眼』。

どれをとっても素晴らしい。あのような老いぼれ(ダンブルドア)のところで腐らせるには惜しい。

どうだ、レナード・テイラーよ。俺様の元で思う存分研究をしてみたくはないか?

どんなに倫理から外れようと咎めはせん。闇の魔法であるからと忌避もせん。

お前も今の環境ではいずれ限界がこよう。こちらに来ればそんなものは存在しない、どうだ? 悪い話ではないだろう。」

 

レオは考える。確かに悪い条件ではない。今の環境では学べないことも多くあるだろう。

だが、そんな短絡的な考えで闇の帝王の陣営に与したらどのようになるだろうか。

まずは、話をよく聞いて吟味しなければ。

 

「確かに魅力的ですね。こちらからも質問してもよろしいですか?」

 

「構わん。」

 

「ありがとうございます。まず一つ、あなたは僕に何を求めますか? 二つ、あなたは最終的に何が目的ですか? 三つ、僕が断った場合どうしますか?」

 

とりあえず疑問に思った事を聞いてみた。さてどのような返事が返ってくるか。

 

「順番に答えてやろう。お前に求めるものは優れた魔法や魔法薬の開発、俺様の目的のために多くのことをしてもらいたい。そして俺様の最終目的は全ての支配だ。優れた魔法使いが劣ったマグルを支配する。優秀なものが支配するのは当然の摂理だ。最後に逆らった場合……。拷問、洗脳、その『眼』を抉り出して我が物とする。まぁ、最終的には殺す。俺様に逆らう者は全員が死の恐怖を味わうことになるだろう。」

 

闇の帝王ヴォルデモートの最終目標は世界征服。魔法使いによる世界の統治だ。

それを聞いたレオはいかにも帝王と呼ばれる存在の目的だなと思った。

 

「僕は自分の研究を最優先にしたいのであなたの要望は後回しになることもありますよ。」

 

「それならばお前が興味を引くような要求を考えるまでだ。さぁ、どうする?」

 

(魅力的な提案ではある。闇の陣営が負けたら洗脳されたとでも言って逃げればいいか。……それともう一つ聞かなくては。)

 

レオの頭に最愛の恋人(ハーマイオニー)の顔が浮かぶ

 

「支配した後はマグルはどうなりますか? 具体的な統治方法やマグル生まれの処遇は?」

 

「まずは、イギリス魔法界を統一してからマグルのトップを全員服従の呪文で傀儡とする。そうすれば平民どもは意のままだろう。他の国の魔法界も順次支配していく。マグルは家畜や奴隷だ。マグル生まれはそうだな、マグルよりは少し上等な労働力といった扱いだな。」

 

ヴォルデモートは自分が支配している光景を思い描いて優越感に浸っている。必ずそうなると信じているようだが、そうは上手くいかないだろう。マグルも他国も侮りすぎだと言わざるを得ない。

 

それにマグル生まれの扱い、つまりはハーマイオニーを、最愛の恋人をくだらない存在であると認識していることが分かった。それだけでレナード・テイラーが味方することはあり得ない。

以前までのレオであればより良い研究ができるとあっては闇の陣営に躊躇なく参加しただろう。

しかし、ハーマイオニーの存在がそれを変えた。告白されたとき魔法を優先すると言ったが、その場面になったらハーマイオニーの方が大切になっていることに気が付いた。

 

愛は時に全てを上回るのだ。

 

「色々聞かせてもらったが、断る。」

 

「ほう。意外だな、より素晴らしい魔法の研究ができるのだぞ?」

 

「今の研究環境に限界があることなど理解しているし、改善策など構築済みだ。それにいずれは負けるような場所には興味ないな。」

 

今の発言には流石に怒りがこみ上げてきたヴォルデモート。

冷静に声を出そうとしているが隠しきれない怒気が溢れてきている。それだけで周りの死喰い人(デスイーター)達が怯えている。

 

「この闇の帝王が敗れるだと? 天才魔法使いの貴様は何をもってそう断言する。」

 

「箱と血。」

 

「箱……まさか、なぜそれを! それと血とは何だ!?」

 

「敵に答える必要があるか?」

 

二年前のトム・リドルの日記からヴォルデモートは不死になるために分霊箱(ホークラックス)を造っている。おそらくは複数。ダンブルドアが調査をしているだろうからいずれは体に残った魂の残りかすのみになるだろう。

それから復活時にハリー・ポッターの血を使ったせいで血の守りがそのままヴォルデモートに宿っている。あんな状態ではハリー・ポッターを殺せないだろう。

 

「それじゃあどうしようかな。……面倒だし帰ろうかな。」

 

「このまま逃がすと思うか? なめられたものだ。」

 

ヴォルデモートは死喰い人(デスイーター)達にレオを捕らえるように指示を出す。

主の期待に応えるため、自分たちより価値があると思われている生意気なガキを制裁するため、そして憎きアースキン・テイラーの息子を痛めつけることができるというだけでたぎってくる。

仮面で顔は隠れているがニヤニヤと嘲笑っているのが分かる。そんな顔がすぐに出来なくなるとも知らず。

 

先頭の一人が姿が消えた。

その場には血と肉でできた水たまりが広がっている。

そして次々と見えない力に押しつぶされて肉塊と血の海が広がり続ける。

その光景に固まっていた仮面の男の数人の首が音もなく落ちる。

 

次々と仲間たちが屍と成り果てていく様を見て混乱する死喰い人(デスイーター)

こんなことをする人間は、敵対している存在はレナード・テイラーしかいない。

だが、レオは杖を構えてすらいない。ただ見ているだけだ。だがそれだけで見られた人間が潰れていく。首が切り落とされた奴らは見向きもされていない。

 

恐慌状態に陥った生き残りたちは一斉にレオに向けて呪文を放つ。

ステューピファイ(麻痺せよ)エクスペリアームス(武装解除)クルーシオ(苦しめ)インペリオ(服従せよ)、十数もの呪文の閃光がレオに向けて殺到する。

だが、レオのマントが伸びほとんどの呪文を弾き飛ばしてしまった。

それでも防ぎきれなかった数発の呪文もレオに当たることなく反射されて死喰い人(デスイーター)に命中する。

 

死喰い人(デスイーター)がレオを取り囲んで2分も経過しないうちに1/3ほどは死に、残りも戦意を喪失している。これがアズカバンに収監されているようなヴォルデモートへの狂信的な忠誠を持つ配下であればまだ戦う気概は残っていただろう。

だが、言い逃れや賄賂で平穏な生活に戻っていたような奴らは心が折れてしまっていた。

 

「化物……。」

 

誰かが呟いた。

そうだ、こんなの化物だ。顔色一つ変えず作業をするように人を殺していく。魔法も通じない。まだ、父親のアースキン・テイラーの方がマシだ。アレは規格外なだけで魔法使いには違いない。だが、ここにいるこのガキが得体の知れない存在に思えてならなかった。

 

「やはり、貴様らではこいつの相手は無理であったか。下がれ。無能な貴様らでも貴重な資源だ。これ以上数が減ったら後々の計画を修正せねばならん。俺様が直々に始末をしてやろう。」

 

ヴォルデモートがレオの前に立つ。同時に他の死喰い人(デスイーター)同様に押しつぶすための力が降りかかる。

しかし、流石は闇の帝王。不可視の力を頭上に展開した盾の呪文で防ぎ、斬撃を素早い姿くらましで避ける。

姿を現した帝王は墓地中の墓石を浮遊させレオに向けて高速で突撃させた。

レオは周囲に無数に呪文を展開してこれを撃ち落とす。

ヴォルデモートもこんなものではレオに傷一つ与えられないと知っていた。

だが僅かでも隙ができた。その隙をついてレオの真後ろに姿現しをして死の呪文を放つ。

 

アバダ・ケダブラ(息絶えよ)!」

 

ヴォルデモートは勝利を確信した。ハリー・ポッターの時とは違い、誰かが犠牲になって守護しているわけではない。反対呪文も存在しないこの魔法は必殺なのだ。

だが、その常識もレナード・テイラーには無意味であった。振り向いたレオの胸に直撃したのに何の効果も発揮していないように平然と立っている。

胸のあたりを確認するように触っているが何のダメージも無さげだ。

 

「ははは、流石はクーだ。最強の闇の魔法使いの死の呪文も防ぐことができるか。」

 

「おのれぇ……!」

 

闇の帝王は馬鹿ではない。このまま何の対策もせずに目の前の脅威に挑んだら敗北する可能性が高いことなど理解していた。自分だけなら戦えるかもしれないが下僕どもは残らず殺されるだろう。

怒りに顔を歪ませ、プライドが粉砕されても最後に勝つための方法を選んだ。

 

「全員、姿くらましで撤退だ! レナード・テイラー! せいぜいその命を大切にしておけ。いずれ必ず殺す!」

 

闇の帝王と生き残った死喰い人(デスイーター)達が姿を消した。残ったのは多くの死体とレオだけであった。

 

「ちょっと面倒なことになったかも。これなら復活を妨害しても良かったかな。ああ、そうすると復活の儀式が見れなかったしなぁ。世の中ままならないってことかな。」

 

「これからどういたします、マスター?」

 

「別にどうもしない。向こうが攻撃してきたら殲滅。何もしてこないなら研究しながらいつものように過ごそう。」

 

死体の処理は魔法省か復活を悟られたくない闇の陣営がどうにかすると判断して姿くらましでホグワーツに戻った。




レオはお辞儀と敵対する方を選びました。

ハーマイオニー存在しなかったら、レオを攻略していなかったら、お辞儀の勝利が確定していました。やはりヒロインの存在は大きかった!

虐殺される死喰い人(モブ)。パパフォイは逃げることに成功しました。
押しつぶしたのは全力のコルポリス(物理的)です。不可視の頭上攻撃は不意打ちとしては十分に効果的。イメージはGNATZのZガン。首を落としたのはクー(触手)。
手加減していないので容赦ないです。

逃げるお辞儀。
死の呪文はクーの細胞を一つ殺しただけで全体に効果はありません。クーは細胞一つ一つが生きていてアバダ・ケダブラは殺せる命は一つという設定。
このままではお辞儀は勝てません。さてこれからどうするのか……。
書いてる私にも勝てる未来が見えん。頑張れ!

それでは次回お楽しみに。


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59. 不死鳥の誘い

別の物語を書きたいと思うことがありますが
まずはこの物語を完結させねば!

それでは59話どうぞ。


レオが姿現しでホグワーツの競技場に到着する。

競技場や観客席は混乱と恐怖が支配していた。

レオが迷路を破壊しただけでなく、その場から優勝杯とともに消えたと思ったら次はハリー・ポッターが傷を負って優勝杯と共に現れた。更に追い打ちで闇の帝王が復活したと叫んだことでパニックになっていたのだ。

そんなことを知らず戻ってきたレオは周りの人間を何事かという感じで見ていた。

殆どの人間はレオの存在など気が付いておらず三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)の進行もストップしているようなので研究室に帰ることにした。

 

「お待ちなさい!」

 

そこへ声がかかる。声の主はマクゴナガルだった。

 

「ミスター・テイラー! 無事だったのですね! あなたが消えてからポッターが戻って例のあの人が復活したと言い、この場は非常に混乱しています。ポッターがその場にあなたもいたと言うのです。今、ポッターは校長室でダンブルドア校長と話しています。あなたも来なさい。あなたには説明の義務があります。」

 

有無を言わせぬといった感じでレオを校長室へ連れて行くマクゴナガル。

 

「ベル〇―スオリジナル。」

 

いつもの様にお菓子の合言葉でガーゴイル像が退き校長室に入る。

中にはダンブルドア、ハリー、そしてスネイプがいた。

ハリーはレオの姿を確認すると走って殴りかかろうとしてくる。

クーがマントから戦闘形態に変形してハリーの腕を取り骨を外し拘束した。

 

「ぎぃっ! クソっ! 何をするんだ、離せ! そいつが何をしたか……いや何もしなかったせいであいつが復活してしまったんだぞ!」

 

「黙れ。それ以上マスターに害をなすつもりなら殺す。」

 

「二人とも落ち着きなさい。ハリーあまり動くと傷に障る。レオも彼女を抑えてくれんかのぉ。」

 

とりあえずクーを下がらせるが、ハリーはレオを睨み続けている。

 

「テイラー! なんで儀式を止めなかった! そのせいであいつが蘇ってしまったんだぞ!」

 

「止めても良かったけど、多分君が死んでた可能性が高いよ。それにあそこで妨害してもいずれは復活していただろうし、それなら君の血で復活した方が後々の為には良かったと言えるね。」

 

「訳の分からないことを言って誤魔化そうとするな! どうせ儀式が見たかっただけだろう!?」

 

「ハリー、落ち着きなさい。レオの言ったように邪魔をすれば君は死んでいたかもしれん。レオ、確認するがあやつはハリーの血を取り込んだのじゃな?」

 

「ええ、間抜けですね。」

 

「ああ、愚かじゃ。さて、ハリーから今夜の出来事については聞いた。確認のためレオにも話を聞いておきたい。優勝杯と共に姿を消してからどこに行って、どのようなことがあったのかを。」

 

レオは起こったことを全て隠さず話した。ヴォルデモートが復活したこと、その目的が何であるか。闇の陣営に誘われたこと、そして決別と死喰い人(デスイーター)を殺害したことも。

 

「最後に向こうが撤退したのでホグワーツに戻ってきました。研究室に戻ってもいいでしょうか?」

 

レオの何でもないように話す様子を見て全員が不気味に感じていた。

ダンブルドアはこのまま帰すわけにはいかないと思った。何が何でもこちらの味方につける必要がある。それに人を殺めたことに何も感じていないのはダメだ。そこだけでも正さねば。

 

「レオよ。君ほどの力があれば殺さずに無力化することもできたじゃろう。悪人だからといって殺すことはいいことではない。」

 

「殺さずに無力化もできましたけど、こちらの命を狙う輩を生かしておいたら面倒です。死は最高の無力化ではないでしょうか? アズカバンにでも入れますか? 多数の大人が未成年を殺そうとしてたんですよ、正当防衛だと思いますけど。」

 

「アズカバンは無理じゃろうな。おそらく魔法省は」

 

そこまで言った瞬間、校長室の扉が勢いよく開かれた。

入ってきたのは魔法大臣のコーネリウス・ファッジ、そしてハリーを心配してやってきたシリウス・ブラック、そしてレオの父、アースキン・テイラーだった。

 

「ダンブルドア! これはどういうことだ!? バーテミウス・クラウチがハリーを連れ去った? 戻ってきたハリーは怪我をしていて、例のあの人が蘇ったなんて叫ぶ! いったい何がどうなっているんだ!?」

 

「落ち着くのじゃ、コーネリウス。全て事実じゃ。ヴォルデモートは復活した。これからお主はやらねばならんことが多くある。」

 

「おいおいおい、冗談はやめてくれ。嘘だろう? ばかばかしい。そんな子供の戯言を信じるのかい?」

 

「嘘ではない。それにハリーだけでなくレナード・テイラーもその場に居合わせて復活を目撃している。」

 

ファッジはダンブルドアの視線の先にいたレオを見る。

 

「本当ですよ。何なら復活の儀式の詳細や必要な魔法薬を教えましょう。」

 

ファッジは見るからに狼狽している。ここにいる全員が頭のイカれた狂人に見えて仕方がなかった。

 

「そんな……ありえない、ありえない、ありえない!」

 

狼狽するファッジにスネイプが左腕に刻まれた闇の印を見せつける。

 

「大臣、これが何であるか説明は不要でしょう。ハッキリ言いましょう。あの人は帰ってきた。」

 

「ファッジよ。至急アズカバンを吸魂鬼(ディメンター)から解放するのじゃ。吸魂鬼(ディメンター)はすぐにでもコントロールができなくなるじゃろう。それと巨人への使者を送る必要もある。」

 

「はぁ!?」

 

ファッジのダンブルドアを見る目が変わった。明らかに敵として見る目をしている。

 

「そうか、そうなんだな! お前たちは私を貶めたいのだな! 認めんぞ。お前たちは間違っている! 偉大な魔法使いもとうとう歳で頭がおかしくなった! 英雄気取りの小僧も老人にいいように使われている! 優れた研究者などと称賛されているが所詮は子供! どうせ自分の研究の失敗でイカれてしまったんだ!」

 

そうわめき散らしてファッジは帰ろうとした。そこへ声がかけられる。

 

「ファッジ。」

 

その瞬間、ファッジは動けなくなった。

ダンブルドアやその配下の教師ども、それにポッターやテイラーの小僧どもが何を言っても無視して帰るつもりだった。

だがその声を聴いた瞬間、止まるしかなくなった。その声にはそれだけの力があった。

その声の主は怒りで自身の力が制御できていない。漏れ出す魔力だけで周囲に影響が出ている。部屋にあった魔法具がいたるところで壊れ始めている。

声の主、アースキン・テイラーはファッジに近づき話しかける。

それだけでファッジは息ができなくなりそうだった。

 

「ファッジ。今俺の息子になんて言った? イカれてるだ? レオの言ったことが信じられんと、そういうわけなんだな。」

 

ファッジは口をパクパクとするだけで声が出ない。

 

「父さん抑えて。僕は気にしてないから。」

 

息子の声で魔力を抑える。

校長室全体に圧し掛かっていた重圧が消えファッジは捨て台詞を言いながら走って逃げていった。

 

「アースキン・テイラー! お前は、クビだ! わ、私は帰ってやることが山のようにある。失礼する!」

 

そのあまりに情けない姿に全員がため息をつく。

気を取り直してダンブルドアが先ほどの話の続きをしだす。

 

「今見た通り、魔法省はダメじゃろう。アズカバンもすぐに機能しなくなる。レナード・テイラー君、君には不死鳥の騎士団に入って欲しい。」

 

「不死鳥の騎士団? 何ですかそれ?」

 

「以前に猛威を振るっていたヴォルデモートに対抗するために設立された組織じゃ。

再び闇に立ち向かうために結成する必要がある。君にはぜひそのメンバーになってもらいたい。

その力、知恵、どれをとっても十分すぎる資格がある。どうか、この老い先短い老人の頼みを聞いてくれんかの。」

 

「僕にメリットがありますか? 正直縛られて自由がなくなる気がします。」

 

「わしに出来ることならどんな要望でも聞こう。任務も君が必ず必要になるものでなければ無理強いはしない。これでどうじゃ?」

 

「……なぜ、そこまでして僕を不死鳥の騎士団に入れたいのですか? 僕が入ることで不協和音が生じる可能性は高いと思います。」

 

「…………分かった。本心を言おう。君と敵対したくない、それだけじゃ。

君という特大の不確定要素をできるだけ自分の陣営に置いておきたい。ヴォルデモートと敵対している時に君とも敵対したら確実に負ける。ヴォルデモートと敵対してくれれば最高じゃが、こちらに牙をむけないでくれるだけで良いのじゃ。だからわしは君の機嫌を損なうようなことはしたくないし、要望もできる限り叶えようと思う。これが嘘偽りないわしの考えじゃ。」

 

ダンブルドアの言葉は真実であった。ヴォルデモートでさえ強大な敵であるのにそれ以上の脅威と敵対などしたくない。予言のことなど無くともそれが嘘偽りのない本心であった。

だが、ダンブルドアのあまりのレオへの下手な態度に納得していない者もいた。

ハリー・ポッターやマクゴナガルがそうであった。

 

「ダンブルドア先生! なんでこんな奴の力を借りなくちゃいけないんですか! こいつはきっと僕たちが死にそうになってる時でも平然として裏切ります!」

 

「校長。わたくしもテイラーの騎士団入りには反対です。確実に問題が起きます。」

 

ダンブルドアとマクゴナガル、ハリーやシリウスなどが話しているのを聞きながらレオはどうしようか考えていた。そこへ声がかけられる。

 

「レオ。好きにすればいい。俺はお前がどんなことをしても受け入れるし、許す。もちろん叱る時は叱るけどな。それが親ってもんだ。」

 

「ありがとう、父さん。でも、入るにしても何かしら惹かれるものが欲しいな。」

 

その時校長室のある存在が目に入った。決まりだ。

 

「ダンブルドア校長、騎士団に入ります。ただし名目だけで自由に行動させてもらいます。それと後で頼みたいことがあります。」

 

「ありがとう、レオ。今日は疲れたじゃろうから戻りなさい。詳しくは明日話そう。これから忙しくなる。ハリーは医務室へ。マダム・ポンフリーが待っておる。」

 

レオは研究室に戻っていった。その際、他の先生たちや観戦に来ていたウィーズリー家の人とすれ違った。

ルーピンはレオの無事な姿を見るとドン引きするほど涙を流して喜んでいた。

校長室ではこれからダンブルドアを中心に色々と対策を練っていくのだろう。

興味はないが。

 

研究室の前でハーマイオニーが待っていた。

 

「お帰りなさい。それと優勝おめでとう。」

 

「ただいま、ありがとう。」

 

ハーマイオニーは何も聞いてこなかった。レオに対して絶対の信頼を寄せているからだ。

レオはそれを感じ取って闇の帝王の誘いを断ったのは間違いではなかったことを再認識した。

それに、色々あって誰からも優勝については祝ってもらえなかったが、ハーマイオニーに一言おめでとうと言われただけで十分だった。

明日になってから何があったかは話すとして今日はゆっくり眠ることにした。




レオ帰還。会場はハリーの叫びで大混乱。

クーに骨を外されれるハリー。原作主人公なのにこんな扱いですまん。

儀式を妨害したらハリーは死ななくても酷い目に合ってた可能性は高いですよね。
それにハリーの血を使わない方が後々お辞儀にとってはいいはずだし、結果的にはあのまま復活でOKだったはず。ダンブルドアもそう認識しているし。

ファッジの拒絶。あそこで連携してたらもっと被害は無かったろうに。

アースキンの怒り。レオが抑えてなかったらファッジは五体満足でなかったかも。

ダンブルドア「何でもしますから!」
ハリーからはダンブルドアが裏切り者と思ってるレオに対して低姿勢過ぎて幻滅気味。

レオ一応騎士団入り。ほとんど形だけ。
対価には何を貰うのだろうか。

ヒロイン(ハーマイオニー)は静かに待って「お帰り」とだけ言う。
それだけで十分なんですよ。

それでは次回お楽しみに。


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60. 四年目が終わって

今回で4巻炎のゴブレット編終了です!
前にどっかでほとんどの二次創作は炎のゴブレットの前でエタるって見た気がするからとりあえずそれは乗り越えられました。

それでは60話どうぞ。


三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)終了から学年最終日までの間にホグワーツでは様々な噂が絶え間なく広がっていった。

魔法省からは何の声明もなく日刊預言者新聞も何の記事も書いていない。

ハリー・ポッターの言葉を教師たちは誰も否定はしなかった。ただ、ダンブルドアから発表があるとだけ伝えられていた。

 

レオについては本人が何も言わなかったのでそこまで噂にはなっていなかった。

だがハリーやロンは顔を見るたびに怒りと憎悪で顔を歪ませている。

その他の生徒は第三課題での迷路爆破によってレオの力を恐れているのかあまり近寄らなくなっている。

変わらず接しているのはウィーズリーの双子にジニー、セドリックぐらいである。ハーマイオニーについては言うまでもない。

 

レオの研究室にフレッドとジョージが尋ねて来ていた。悪戯グッズの開発状況を説明するためだ。開発はレオの助力でどんどん進み後は店の土地と店舗を確保すれば今すぐにも開店できるほどになっていた。

資金についてはレオが面白そうだからという理由で投資している。今までの研究成果から資金はあるのだ。

説明も一段落して双子がすまなそうにして言った。

 

「レオ、ロニー坊やとハリーのことは気にするな。あいつらがガキなだけさ。」

「そうだとも。俺たちは君が素晴らしいって知ってるさ! 悪戯グッズの開発を手伝ってくださる天才様を誰が嫌いになれようか!」

 

「専門店も開店できるぐらいには開発しましたからね。ただ今後は防衛グッズの方が儲かるかもしれませんね。」

 

「やっぱりあの人の件か?」

「どうせだったらマグルが使っても魔法を防げるようなの作っちゃおうぜ!」

 

「ふむ……。マグルやスクイブでも魔法発動できる魔法具……。それも面白そうかな。」

 

三人は商品開発について色々な構想を練り始めた。

 

 

そして学年末パーティーになった。

ボーバトンとダームストラング生たちも参加している。しかしダームストラング校長のイゴール・カルカロフは姿は見えない。元死喰い人(デスイーター)であった彼はヴォルデモートの復活を知り恐れをなして逃げ出したようだ。

 

ちなみに三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)の優勝者はレナード・テイラーであったが、迷路の破壊による魔法生物やその他の損害等により優勝賞金はないことにされた。十中八九魔法省からの嫌がらせであろう。

 

パーティーを皆楽しんでいる。今日が終われば他校とは会う機会が激減するだろう。

この半年間で友となった者たちが大勢いた。別れを感じないように大いに楽しんでいる。

 

「レナード! いつでも私のところに来てもいいのよ!」

「姉さんは寂しがり屋なので気が向いたら遊びに来てください。」

「ちょっと! ガブリエル!」

 

ボーバトンの代表のフラー・デラクールとその妹のガブリエルがレオの対面に座っている。

結局、ホグワーツにもダームストラングにもフラーに認められるような男はレオ以外にはいなかった。そのレオも最愛の彼女がいる。なんでもすでに両親公認だとか。

 

「まったく、私みたいないい女じゃなくて別の女を選ぶなんてね。後で後悔しても遅いわよ。」

 

「いい女……?」

 

「な・ん・で! そこで疑問形なのかしら!?」

 

「いや、僕にとってはハーマイオニーが最高の人だからね。」

 

周りの生徒たちはハイハイとため息をつく。

 

 

そんな楽しい時間にも終わりは来る。

デザートも食べ終え、テーブルの上の大皿もきれいさっぱり無くなった。

ダンブルドアが立ち上がる。全員が何を言うのか注目している。

 

「皆よく食べたじゃろう。だが、聞きたいのはこんな話ではないことを承知しておる。

……端的に事実だけ述べよう。ヴォルデモート卿は復活した。」

 

その名前を聞いた瞬間、大広間は恐怖につつまれた。悲鳴を上げる生徒も少なくない。

ダンブルドアは生徒たちが平静を取り戻すまで待ってから続きを話し出す。

 

「魔法省はこのことをわしが話すのを望んではおらぬ。魔法省はヴォルデモートの復活を認めぬであろう。だがこれは事実じゃ。これから先は困難なことが多く待っておるじゃろう。だからこそ皆には真実を知って欲しいのじゃ。」

 

その後もダンブルドアの話は続く。団結の必要性、仲間を信頼しなければ勝てないといった感じだ。ハリー・ポッターの勇気を褒めていたようだが、レオにとっては興味がないので聞き流していた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

レナード・テイラー四年目のホグワーツも終わる。

今年も色々なことがあった。三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)に、ハーマイオニーと恋仲になる、闇の帝王が復活する。てんこ盛りな一年だった。

 

ボーバトンの生徒が天馬の馬車で帰っていく。最後までフラー・デラクールはホグワーツの男たちを魅了して帰っていった。本当に魅了したかった男には最後までその魅了は通用しなかった。

 

ダームストラング生たちが帆船に乗り込んでいく。

ビクトール・クラムが最後の挨拶としてレオとハーマイオニーに近づいてきた。

 

「ホグワーツに来てよかったよ。レナード、いつかまた会おう。その天使のような彼女を不幸にしたら全速力の箒で突撃するからな。」

 

「言われるまでもないです。」

 

最後に握手をして帆船に向かっていった。帆船が水中に消え、二つの魔法学校はホグワーツから去った。

 

 

紅の蒸気機関車がキングス・クロス駅に向かって走る。

コンパートメントの一室にはレオ、ハーマイオニー、クーの三人がいる。

ハーマイオニーは日刊預言者新聞を読みながら呆れている。

 

「やっぱりどこにもヴォルデモートの復活についての記事はないわ。それとダンブルドアやハリーのことを中傷するような記事ばかりね。」

 

「僕のことは何もないのかな?」

 

「レオについては何も書いてないわね。ファッジも怖がってたりしてるのかしら?」

 

実際のところはレオの功績が大きすぎるので下手にレオの事を批判したりすると世間からの魔法省、つまりは大臣であるファッジへの不信感が増す可能性が高いので表立った行動ができていないのだ。今はレオに対しての情報を集めているのだろう。

 

「まぁ魔法省についてはどうでもいいか。夏休みはどうする?」

 

「今年もレオの家で過ごしたいわ。ママとパパには了承済みよ。」

 

「あー……、そういえばハーマイオニーの両親にちゃんと報告しなくては。僕たちが付き合っているって知ってるらしいけどはっきりと僕の口から言わないといけないよな。」

 

「今日はキングス・クロス駅に来てるはずよ。大丈夫、二人とも嬉しそうだったし。」

 

少し不安そうなレオを見て珍しいと思いつつその姿も愛おしく感じているハーマイオニー。それだけ自分に対しては真剣になってくれている証拠だろう。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

キングス・クロス駅 九と四分の三番線。

そのホームに降り立った三人は両家の両親の姿を見つけた。

無事に帰ってきたことを伝えた後、レオはハーマイオニーの両親と向き合った。

 

「お義父さん、お義母さん。報告しなければならないことがあります。」

 

「なんだね?」

 

「ハーマイオニーさんとお付き合いさせてもらっています。」

 

「うむ、知っている。君なら娘を任せられる。何より娘が幸せそうにしているのを何年も見てきた。娘の事をよろしく頼む。」

 

「はい!」

 

娘さんをくださいと言った感じになってしまっている。

レオは気にしてないがもうすでに両親たちは結婚すること前提で動いている。

母親たちがレオとハーマイオニーに近づいて聞いてきた。

 

「プロポーズはされた?」

「式はいつにするつもり? 流石に学校卒業してからの方が良いと思うわよ。」

 

「え? ええ!? ちょっとママ! フェリスさんも!」

 

「何か話が大きくなってませんか? 僕たち付き合っているという報告だけだったんですけど……。」

 

「娘と結婚するのは嫌かね?」

「レオ、男なら責任を取れって言っただろ。俺たち誰も反対してないぜ。」

 

「嫌ではないですけど流石にこの流れではちょっと。」

 

「む、確かに親がいるとこではダメだな。まだ若いしプロポーズは早いか。だがレナード君、私たち親、全員が君たちの将来について何も反対してないとだけ覚えておいて欲しい。」

 

こうしてレナード・テイラーとハーマイオニー・グレンジャーのカップルは両親公認の仲になった。ついでに結婚許可も獲得。

 

 

闇の帝王が復活して魔法界、いやマグルの世界にも闇は広がっていくだろう。

それでもレオとハーマイオニーにはそんなの関係ないとばかりの幸せがあった。

レナード・テイラーの四年目は魔法より大切な人ができるという人生で最も素晴らしい年であった。




四巻終了! セドリックも死なず平和に終わりましたね。(死喰い人は除く)

レオはかなり怖がられることになりました。
まぁあれだけの爆発を起こして爆心地にいて無傷じゃしょうがないか。

優勝賞金は没収。
ですがフレッジョの悪戯専門店はレオの開発協力と資金援助で問題なし。


次回予告!

ホグワーツに襲来する魔法省の魔の手!

いまだかつてないほどの脅威(醜さ)に多くの生徒たちがその目を覆う!

さらに裏では闇の帝王が暗躍する。

ターゲットはハリー・ポッターではなくレナード・テイラーだ。

闇の帝王はレナード・テイラーを打ち破れるのか!?

次回 5章 不死鳥を超えて

それでは次回お楽しみに。


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5章 不死鳥を超えて
61. 騎士団本部へ


今回から5巻の不死鳥の騎士団に相当する章が開始です。

物語も終盤に入りました。このままの投稿ペースを維持して頑張ります。

それでは61話どうぞ。


闇の帝王ヴォルデモートが復活した。

大多数の人間はそんな事(悪夢)信じてはいない、いや信じたくないのだ。

それはイギリス魔法界のトップである魔法大臣のコーネリウス・ファッジとて変わらなかった。そのため魔法省はダンブルドアやハリー・ポッターの言葉を全て妄言として扱った。

魔法省の圧力がかかった日刊預言者新聞では毎日のように二人に対しての批判的な記事で埋め尽くされている。

 

それでも

闇は徐々に日常を侵食している。

よく注意すれば気が付くことができたかもしれない。

それでも人々は闇を見なかった。見たくなかった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

テイラー邸では世間の反応など無関係な様子で日常が流れていた。

父、アースキンは魔法省を解雇されたが実際はそれを快く思っていない闇祓い局局長のルーファス・スクリムジョールによって魔法省には出勤しない形態での仕事を任されていた。

スクリムジョールはヴォルデモートの復活は事実だと確信していたので不死鳥の騎士団とは別に戦力増強と情報収集を進めている。いずれは崩壊するであろう魔法省を纏めるための計画が水面下で着実に進行中だ。

 

母、フェリスはいつもの様に家事をして息子や未来の娘とお茶をしたり、帰ってきた旦那の疲れを癒したりと平和に過ごしている。ヴォルデモートの復活は知ってはいるが何も心配はしていない。旦那と息子がそばにいるそれだけで不安になることなど何もないのだ。

 

息子、レナードは研究室に引きこもっている。

一応は不死鳥の騎士団に所属する形になっているが現状特に任務はない。面倒でなければやっても良いかなぐらいではあるし、レオの力を借りなければどうしようもなければ極力連絡はないとの事であった。メンバーが誰であるかさえ知らない。

それに対して不満はないのでいつもの様に研究三昧である。

 

そして、未来の嫁ことハーマイオニー・グレンジャーは最早テイラー邸で暮らしている。

数年前から用意されていた自室で寝起きして、フェリスの元で花嫁修業中である。

ハーマイオニーの両親はレオ特製の防御魔法具が守っており住んでいる家も忠誠の術による守護が張ってある。

仮に闇の帝王が直々に襲ってきても即座に害をなすことは難しいだろう。魔法具の力は危険を防ぐだけでなく緊急時にはテイラー邸まで転移する魔法まで施されている。

このおかげでハーマイオニーは安心してレオの家で過ごしている。

 

 

夏休みも半分ほど過ぎたある日。

今日は家族全員が揃って午後のティータイムを楽しんでいた。

そこへ一羽のフクロウが手紙をやって来て手紙を落とした。

レオ宛であり、中を確認するとダンブルドアからであった。

 

「騎士団からの連絡か。……どうやら騎士団メンバーに僕のことを紹介したいらしい。グリモールド・プレイスに来れば本部が分かると……。今日なら大丈夫そうだからちょっと行ってくる。ハーマイオニーも来る?」

 

「そうね。せっかくだし行ってみたいわね。」

 

「気を付けてね。何かあったら逃げるのよ。」

 

「ダンブルドアに伝えてくれ。闇祓い局、というかスクリムジョールは現在情報収集中だ。時が来ればファッジは終わる。」

 

「分かった。」

 

クーも入れて三人は姿くらましでグリモールド・プレイスに移動した。レオの教えでハーマイオニーもこの夏にはマスターしたのである。未成年の臭いについても問題なく誤魔化している。

グリモールド・プレイスに姿を現す三人。ハーマイオニーとクーは周りを見渡してもそれらしきものは見つけられなかった。

レオだけが忠誠の術で守られた騎士団の本部を見つけていた。

 

「こっちだね。二人とも着いてきて。」

 

二人の手を取って十二番地に進んでいく。

一歩でも踏み入れてしまえばあとは効果が発揮しないので二人にも建物を認識することができるようになった。

庭にはダンブルドアが待っていた。

 

「よく来てくれた。早速だが君のことを騎士団に紹介しようと思う。グレンジャーさんとクーさんは別室で待っておるといい。」

 

「お断りします。私はレオのそばを離れるつもりはありません。情報漏洩を恐れているなら問題ありません。閉心術はマスターしましたし、レオが聞いたことなら私も知っておきたいです。」

 

「……確かに完璧な閉心術じゃ。よろしい一緒に来なさい。」

 

ダンブルドアの後に続いて屋敷に踏み入る。

屋敷はよく掃除されていたが内装や家具は蛇が目立つ。おそらくスリザリン出身の一族の屋敷なのだろう。

廊下を進み大きめの部屋に入る。

中では会議が開かれていたのか話し合っていたが、四人が入ってくると中断してこちらに視線を向けた。

部屋にはマクゴナガル、スネイプ、ルーピンら教師たちにウィーズリー夫妻がいた。他にも数名がいるが知った顔は多くなかった。

 

「知っているものが多いだろうが皆に紹介しよう。レナード・テイラー君じゃ。彼も不死鳥の騎士団の一員になってもらった。これからは情報については共有していこうと思う。

そしてこちらはガールフレンドのハーマイオニー・グレンジャーさんとレナード君が創造した魔法生物のクーさんじゃ。彼女たちも力は十分にあるとわしは考えている。」

 

「ダンブルドア、私は反対です。いくら優れた能力があってもこの子たちは未成年、子供です!」

 

モリー・ウィーズリーが反対する。それに追従して禿げ頭の男が言葉を発する。

 

「私も反対だ。そちらのお嬢さん方については力のほどもわからない。納得できるものを見せて欲しい。」

 

「うむ。彼らを知らぬ人間にとってはもっともな意見じゃな。そうだのぉ……。こういえば良いかの? レナード君とクーさんはわしより強い。グレンジャーさんは騎士団で言えばシリウス、死喰い人(デスイーター)だとレストレンジあたりといい勝負ができるほどだと思っておる。」

 

史上最高の魔法使いが本人より強いという発言。レオを知らない者にとっては嘘にしか聞こえなかった。ハーマイオニーについてもただの学生が帝王の右腕とも言われるベラトリックス・レストレンジと同等とはどうしても思えない。クーについては……よくわからない。

 

「ダンブルドアよ。言葉ならどうとでもなる。実力を見なければ解らんこともあるだろう。力を見せるのが一番早い。」

 

義眼の男、通称マッド・アイ・ムーディがはっきり言う。

それに続いてピンクの髪の女性も疑問を表す。

 

「テイラーってことは鬼の副局長の息子さんだよね? 魔法研究についてはすごいって聞いてるけど戦いとかはどうなのかは知らないんだよなぁ。あ、自己紹介してなかったね。私、ニンファドーラ・トンクス! トンクスって呼んでね!」

 

場の流れはレオたちが力を見せるような感じになりつつある。

ダンブルドアが三人に聞いてきた。

 

「三人ともどうしたいかの。騎士団の任務は危険を伴う。彼らもお主らのことを心配してああ言っていることは理解してほしい。」

 

「ムーディさんが言うように実力を見せれば良いのでは? 不満がある人と僕たちが決闘でもすればそれで済むでしょう。それにお互いの実力を知らないといざという時に問題でしょうしね。ハーマイオニーとクーもそれで大丈夫?」

 

「私は平気よ。ホグワーツ生以外と決闘するのは初めてだけど自分の実力を測るのにちょうどいい機会でもあるわ。」

 

「わたくしはレナード様に反対することなどありえません。」

 

 

庭に移動して反対しているメンバーと決闘をすることとなった。マクゴナガルたちホグワーツの教師たちはそれを止めようとしたが一度実力を見なければ理解できないと考え止めた。

 

レオの相手はマッド・アイ・ムーディ。

ハーマイオニーはトンクス。

クーは禿げ頭の男、キングズリー・シャックルボルトというらしい、に決まった。

 

初戦ハーマイオニー対トンクス。

お互いに呪文を放ち、それを躱し、盾の呪文(プロテゴ)で防ぐ。お手本のような戦い方だったが、最初は様子見していたハーマイオニーが身体能力向上と飛行魔法を駆使して翻弄しだすと一方的になり5分もしないうちにトンクスの杖は宙を舞っていた。

 

「あーやられたー! というか箒も無しで空を飛ぶって何それ!? 移動も速いし最近の子はそうなの!?」

 

「いえ、レオに教えてもらった魔法です。トンクスさんも学生とは比較にならないくらい強かったです。」

 

「ちぇー。最初は手加減してた人に言われたくないわよ。あーあ、私これでも将来期待されてた闇祓いなんだけどなぁ。自信無くすわー。」

 

 

続いてクー対キングズリー

クーは鎧姿の戦闘形態になるがその場から一歩も動かなかった。

キングズリーは最初こそ困惑するもすぐに切り替えて攻撃を始める。

だがそのどれもがクーに命中するも効果はなし。

数が十数発を超えたころにクーが動き始める。だがそれを視認できたものは一人もいなかった。キングズリーはクーが消えたと思ったら喉元に刃が付きつけられている状況だった。

降参の意思を示すように両手を上げる。クーも一礼してメイド姿に戻ってレオの横に立つ。

 

「その子は一体何なんだい? 呪文は聞かないし、最後のは何をされたかも分からなかった。」

 

「ドラゴンとバジリスクと人間に単細胞生物と賢者の石を組み合わせた魔法生物です。」

 

レオが簡単に説明するが余計混乱するだけであった。

 

最終試合 レオ対マッド・アイ・ムーディ。

 

「行くぞ、小僧!」

 

ムーディが失神呪文(ステューピファイ)を放つ。その強さは並みの魔法使いとは比べ物にならなかった。

しかしそれはレオの『反射』によって跳ね返される。

普通の相手であればそれで試合終了だ。だが、相手は歴戦の闇祓い。

魔法の義眼でレオの周囲に何層もの防壁が張られていると知っていたムーディは横にステップして躱す。

 

「何かしらの防御をしているとは分かっていたが、まさか跳ね返すとはの……。ならば!」

 

ムーディはいきなり悪霊の火を放った。周りは流石にやりすぎだと思ったが、戦闘になってから展開した防御機構を見たムーディはそうは思わなかった。

戦闘が始まってからわずかの時間で歴戦の戦士は目の前の子供が恐ろしい化物だと理解した。

 

(強いとは思っていたが予想をはるかに上回っておる。ダンブルドアの言うことは正しい。ここでその力を見極めなくてはならん!)

 

全力の悪霊の火がレオを襲う。普通の呪文ではこれを防ぐことは困難だ。

だがその呪われた炎を極光が吹き飛ばした。

三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)第三課題でレオが放った殲滅魔法(インタリトム)の簡易版だ。

射程や大きさは小さいがそれでも悪霊の火ならば消し飛ばすには十分だ。威力を抑えた結果連射性や速度は上昇するといったメリットもある。当然暴発については改善済みだ。

 

「防御だけじゃなく攻撃規格外か……。ふん。降参だ! このままやったらわしが死んでしまう。確かにダンブルドアの言うようにわしらの手に負える存在じゃないようだ。」

 

三人の力を確認した騎士団はこの力が闇の陣営に渡らなくてよかったと心の底から安堵した。




騎士団員へ力を示した回でした。

世間ではダンブルドアへの不信感だったりお辞儀が復活したかもしれないという
疑心暗鬼で暗い感じになっていますが、レオの周りはいつも通り。

本作スクリムジョールは有能です。部下のアースキンに戦闘を任せられるからそれ以外の仕事に集中できるのが大きい。

ハーマイオニーの実力はトンクスには勝てるがムーディには勝てないぐらいですね。
ムーディは参加には反対していないけど実力は知っておきたいので決闘しました。

それでは次回お楽しみに。


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62. 裁判やら監督生やら

気に入った小説ほどなぜかエタる気がする。
なぜだろうか?

何はともあれ62話どうぞ。


実力を示したレオたち三人は現在不死鳥の騎士団の会議に参加している。

積極的に任務に参加することはないとはいえ情報は必要だ。

レオ自身が闇の帝王のターゲットにされている可能性は高いからだ。

現在の騎士団の活動は主に情報収集とハリー・ポッターの護衛。その他は信頼できる仲間を集めることや巨人族や残っている狼人間に対しての説得などである。

 

「さて、今のところレオの力が必要なことはないじゃろう。それではわしは一度ホグワーツに戻る。各々任務をよろしくお願いする。」

 

レオたちもテイラー邸に戻ろうとするとムーディに呼び止められた。

 

「小僧。お主の使う防御、呪文を跳ね返したり防いだりする壁のようなものは魔法で発生させておるのか?」

 

「いいえ、魔法具を使っています。」

 

「そうか。その魔法具の量産はできるか? できるならば騎士団全員分が欲しいな。それがあれば生存率はかなり上がるだろう。」

 

「作るだけなら時間があれば可能ですけど使うとなると厳しいでしょうね。」

 

「扱いが難しいのか? それとも何か制限でもあるのか?」

 

「いえ、誰でも使えますよ。ただ魔法具一つをまともに運用するだけでもかなりの魔力が必要になります。僕は父譲りの多めの魔力があるので問題ありませんが平均的な魔法使いでは一つをまともに使うと攻撃か防御どちらかになってしまいますね。それなら自身で盾の呪文を使った方が効率が良いはずです。」

 

「うーむ。やはりそう簡単にはいかんか。トンクス! こっちに来い!」

 

ルーピンと話していたトンクスはビクッとしてムーディを見る。

その顔はこれから先の事を予想してすごく嫌そうにしていた。ゆっくりと出口の方に向かっている。

 

「えーと……。何かなマッド・アイ? 大した用事じゃないなら私は任務に行くね!」

 

「逃げるな。これから任務の空き時間にはわしが鍛えてやる。」

 

「うぇええええ!? なんでよ!」

 

「学生に負けるようじゃまだまだだ。実戦だったら死ぬぞ。任務までまだ少し時間があるな。行くぞ!」

 

「いーやー! 助けてリーマスー!」

 

ズルズルとムーディに引きずられて出ていくトンクス。

残されたのはルーピンとレオたち三人だ。

 

「さて私もそろそろ任務に行かなくては。君たちには言っておかなくちゃね。私は今年はホグワーツに行けないんだ。過激派の人間に戻っていない狼人間の説得するのが任務でね。闇の魔術に対する防衛術は今年は別の人間が担当することになる。」

 

ハーマイオニーはそれにショックを受けていた。

ルーピンの授業はとても評判がよくハーマイオニーも好きな授業だったのだ。

 

「ルーピン先生の後任は誰になるんですか? 私としては先生が今までで一番の先生でした。」

 

「ははは、それはありがたい。でも彼氏のレオの方が良いんじゃないかな? ま、真面目に言うと後任はまだ決まっていないが恐らく魔法省から何かしらの圧力があると思う。私としては教師を続けたかったのだけどね。」

 

そう言って任務に出発するルーピン。

騎士団が誰もいなくなった部屋に入って来る者たちがいた。

全員が赤毛である。ウィーズリー兄弟たちだ。

 

「よっ! 久しぶり。」

「相変わらず一緒にいるな。」

 

真っ先に挨拶するのはフレッドとジョージ。続いてジニーが入ってきて挨拶する。

その後に初めて見る顔が二人ほど追加された。

 

「おお、君が噂のレナード・テイラー君か。俺はチャーリー。ウィーズリー家次男でドラゴンキーパーをしている。」

 

「僕は長男のビルだ。君の考案した侵入妨害用の罠はすごいね。グリンゴッツでも君の話はよく聞くよ。」

 

上二人の兄と握手をする。ロンとパーシーがいなかったがロンは部屋から出てこず、パーシーにいたっては魔法省に勤めて家族とは袂を別ったらしい。

しばらくお茶会を楽しんでから帰宅した。双子の商品開発は順調の様だった。この感じであれば半年ほどで量産も可能であろう。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

それからしばらくしてハリー・ポッターが魔法省で裁判にかけられるという情報が騎士団とアースキンから聞かされた。どうやら吸魂鬼(ディメンター)に対して守護霊の呪文を使ったことを咎められるようだ。

 

「とうとう魔法省は吸魂鬼(ディメンター)の制御ができなくなったようだ。魔法省に帝王の魔の手が入り込んでるのではないかとスクリムジョールが危惧してたよ。」

 

アースキンは魔法省の腐敗ぶりを改めて見せられて憤慨している。

騎士団はハリーをグリモールド・プレイスに護送することにしたらしい。

その程度ならレオの力を借りずとも問題ないと判断されたのか特に救援要請はなかった。

 

その後、無事護送と裁判は終了しハリー・ポッターの無罪が確定したらしい。

ただ、双子からの手紙にはハリーが荒れて大変だったと愚痴が書かれていた。

どうも一人だけ状況を知らないでいたのが不満だったようだ。

それからは特に事件や任務はなく夏休みは平和に過ぎていった。

 

 

1995年9月1日 キングス・クロス駅 九と四分の三番線。

 

ホグワーツ行きの蒸気機関車に乗り込むレオたち三人。

両親たちとの別れの挨拶の最後にアースキンからの忠告があった。

 

「レオ、今年は魔法省から監査の名目もあって一人特大の厄介者が派遣されるらしい。一応注意しておけ。」

 

「分かりました。多分、ハリー・ポッターやダンブルドアが攻撃対象になるでしょうね。」

 

面倒な年になりそうだなと思いと共に列車は発進していった。

 

コンパートメント内でハーマイオニー、クーと三人で魔法についての意見交換をする。

自分以外の意見があると研究について構想が広がる。

レオ、ハーマイオニー、クーの三人は魔法使い、マグル生まれ、人外という異なった視点を持っているので一つの魔法について話し合うだけで面白いのだ。

そうしているうちに昼食の頃合いにすぐなってしまった。楽しい時間は過ぎるのが速いのだ。

 

「今日は私がお弁当を作ってみたわ。どうぞ召し上がれ。」

 

「ありがとうハーマイオニー。早速いただくとしよう。」

 

フェリスの指導の元ハーマイオニーの料理の腕はかなり上達している。

元来の呑み込みの早さもあってすぐにフェリスを上回るだろう。

 

「うん。おいしいよ。何というか食べていてホッとする感じがする。」

 

「おいしいです! やはり愛は最強の調味料ですね!」

 

「ふふ。ありがとう。ホッとするってことはフェリスさんの味、つまりレオにとって一番なじみがある、安心できる味だからじゃないかしら。私の料理もレオにとってそう思ってもらえるなら良かった。」

 

三人で食事を楽しんでいる。だがその空気をぶち壊すように扉が開かれた。

扉の先に立っていたのはグラッブとゴイルを連れたドラコ・マルフォイだった。

レオ達は無視してクーが扉を閉じようとする。

 

「ちょっ、ちょっと待て! テイラーに話があってきたんだ! おい、無視するな、僕は監督生だぞ!」

 

あまりにしつこいのでしぶしぶ扉を開けてマルフォイの話を聞くことにした。

 

「まったく、ペットの躾が行き届いてないな。」

 

「さっさと話してください。躾がなってないわたくしは今にも襲い掛かってしまいますよ?」

 

「ふぉっ!? ……んん。テイラーまずは伝言だ。“今からでも遅くはない。こちらにつけば悪いようにはしない。” ……僕からは聞きたいことがある。どちらが勝つんだ?」

 

「あれだけ殺すとか言っていたのに随分と弱気な帝王ですね。まぁ、いいか。質問の答えは闇の帝王が負けます。どこまで野望が実現するか、征服できるか、それは解りませんが、いずれは破滅するでしょうね。」

 

それを聞いたマルフォイは思いつめた顔になった。

 

「……そうか。僕たちに未来はないのか?」

 

「さぁ? 少なくとも死喰い人(デスイーター)には未来はないと思いますよ。」

 

マルフォイは扉を閉めて立ち去っていった。

父親が死喰い人(デスイーター)でマルフォイ自身にも何かあったのかもしれないが、興味はないことだ。

 

 

マルフォイが去ってすぐに勢いよく扉が開かれた。

そこには敵を見るような目をしたロナルド・ウィーズリーがいた。

 

「マルフォイの奴が何か話していると思ったら……。テイラー! お前やっぱりあの人の方に味方しているんだな!」

 

あまりにも意味不明な発言に流石のレオも理解が追いつかなかった。

ロンが何やら喚いているのを無視してハーマイオニーに聞いてみた。

 

「ハリーやロンはあなたの事を敵視しているからそれでマルフォイと話しててあちらに味方してると思い込んだんじゃないかしら? この人たちって一度認識したら改めもしないから。」

 

「なるほど。」

 

「おい! 無視するなよ! いいか!? ホグワーツで何か企んでいるなら僕が罰則を与えてやる。監督生には権限があるんだ。ハーマイオニーもこんな奴と付き合うなんておかしいよ。目を覚ますんだ!」

 

それを言った瞬間、ロンは吹き飛んで廊下に転がることになった。

やったのは勿論ハーマイオニーである。

 

「不愉快だわ。あんなことを言う人と同じ寮だと思うと恥ずかしいわ。」

 

「それにしてもマルフォイといい、ウィーズリーといい監督生は自慢したくなるのかな。」

 

「マルフォイは金やコネでどうにかなりそうだけど、ロンはどうして選ばれたのかしら? 選定基準がいまいち不明ね。」

 

「まぁ、どうでもいいことか。これ以上不快にならないようにこのコンパートメントに結界を張っておこう。」

 

騒音遮断、認識不能の結界を張ってこれ以上邪魔が入らないようにしてホグワーツまでの残りの旅を楽しむことにした。

 

誰も認識できなくなったコンパートメントの前で倒れていたロンを発見したのは双子の兄だった。弟を起こすと、なんであいつと、僕は間違っていない、とブツブツと言いながら自分のコンパートメントに戻っていった。

その様子に双子は肩をすくめるだけだった。




レオたちはウィーズリー家とロン、パーシー意外とは仲が良いです。
上二人の兄とは初対面ですけどビルとはグリンゴッツの金庫破り用の呪いを設置した関係で一応繋がりがありました。

もしハリーがレオと仲が良かったら臭い隠しの魔法具とか渡されて裁判すら起こらなかったですね。

マルフォイ一家はテイラー家と敵対したくない。けれどお辞儀を裏切れない。
という葛藤で現在揺れています。さてどちらに転ぶやら。

ハーマイオニーは原作と違って監督生になっていません。
両親公認とはいえ彼氏の部屋で過ごしているんじゃ当然かな。
グリフィンドールの女子はラベンダーあたりの名有りの女子が選ばれたと思ってください。それ以外の寮は原作同様です。

それでは次回お楽しみに。


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63. 未知の生物

さぁ、カエル婆の登場だ!

奴はどんな運命になるのか予想してみてください。

それでは63話どうぞ。


レナード・テイラー五年目のホグワーツは衝撃から始まった。

周りの生徒からの興味の視線、組み分け帽子が警告し結束を促すといったいつもと違った組み分けの儀式。ダンブルドアのいつもの話においしい料理。

そんなものは、あの存在の前には霞んでしまう事柄だった。

 

教職員が座るテーブルにレオが今まで見たことが無い生物が存在していたのだ。

見た目は蛙と人間の中間、まさにカエル人間といった感じだ。だが『眼』で見た魔力の感じでは人間そのもの。

教職員のテーブルにいるということは知性がある存在なのだろうか。

 

(新種の魔法生物? それとも人工的に造られた何かだろうか? 魔法や魔法薬の失敗だったら視れば解るはずだけどそれもない……。どういうことだ……?)

 

レオは『眼』で視ても理解できない初めてのことに頭がオーバーヒートしそうになっていた。

……実際はただ単純にカエルのような姿の唯の人間であるというのが真相なのだ。

 

食事も終わりダンブルドアからの注意事項が伝えられていると例のカエル人間が声を発した。

 

「エヘンエヘン。」

 

ダンブルドアも無視ができなかったのかそのカエルに発言を許した。

 

「皆さん、初めまして。闇の魔術に対する防衛術を教えるために魔法省から参りました。ドローレス・アンブリッジと申します。」

 

(喋った!?)

 

人語を話す魔法生物はいるがカエルの要素を持った生物では未確認のはずであった。やはり新種であるのかと疑念を強くするレオ。

 

「ホグワーツに戻ってきて可愛い皆さんに教えることができて幸せですわ。これから仲良くするよう頑張りますわ!」

 

そう言って大広間全体を見渡すアンブリッジ。

その目はハリー、ハーマイオニー、そしてレオをに対してはより強い視線を向けていた。

アンブリッジの話も終わり、ダンブルドアからの注意事項の連絡の後解散となった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

五年生からはO.W.L試験、通称ふくろう試験というものがある。

学期末に二週間をかけて実施され、将来の仕事に影響する重要な試験だ。これに一定の成績を修めた生徒だけが六年生からのNEWTレベルの授業に進む事ができる。

多くの五年生は先の事を考えておらずどの授業が楽か、担当の教師が、などを考えている。

 

「将来の仕事か。とりあえず魔法の研究ができればいいかな。ハーマイオニーはどんな仕事をしたいの?」

 

「魔法薬の研究をやってみたいわね。でも最終的な就職先は決めてるつもりよ?」

 

「そっか。僕は君なら即採用だよ。僕といつまでも一緒にいてくれるかい?」

 

「そのつもりよ。永久にあなたに就職することになるのね。」

 

授業が開始する朝。大広間では新入生は初めての授業に心を躍らせ、五年生はふくろう試験について悩み、七年生はイモリ試験を恨んでいた。

そこにいきなりプロポーズまがいの会話だ。

本人たちはいつも通りだが、周りはそうはいかない。

 

「おいおいおい、聞いたか兄弟。なんか知らんが天才たちがプロポーズしておられるぞ!」

「聞いたぞ兄弟。そういうことは人がいないとこでやるべきだと言いたい!」

 

ウィーズリー双子が茶化してくるがレオもハーマイオニーも慣れている。

そこにジニーがため息をつきながら話しかけてくる。

 

「はぁ……。ハーマイオニーが羨ましいわ。私も誰かいい人が見つからないかしら。」

 

「いつどんな時にそういう相手が見つかるかは運命次第かもね。私も、もしあの時レオと出会っていなかったらどうなっていたのかしらね。」

 

「んー想像できないな。まぁ今が幸せならそれでいいんじゃないかな。」

 

そうして恨めしそうな視線すら消滅させそうな幸せなオーラをまき散らしている二人から逃げるようにどんどん生徒たちがいなくなっていった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

今年初の闇の魔術に対する防衛術の授業の時間がやってきた。

レオはいくら『眼』で見てもドローレス・アンブリッジの正体が解らなかったので直接

本人(?)に聞くことにした。

さて、その授業内容だが去年までのルーピンの授業とは天と地の差だった。

実技は一切なし、ただ単純に教科書を読むにだけなのだ。

これには多くの生徒が不満そうにしている。

ヴォルデモートの復活の真偽はともかく、身を護るための術を学ぶはずの教科で魔法に不慣れな一年生ならともかく、五年生にもなって一切の実技がないというのは間違っている。

だがアンブリッジは生徒からの非難の視線も声も無視している。

そしてアンブリッジは気持ち悪くなるような視線をレナード・テイラーに向けている。

 

単調でつまらない授業ほど長く感じるものだ。

やっと授業が終わり解放された生徒たちは一秒でも早くあの存在から離れるために教室から出ていった。

 

「レナード・テイラー君、ちょっとよろしいかしら?」

 

最後に残っていたレオにアンブリッジが声をかける。自信に溢れ断られることなど想像していないようだ。レオとしてもありがたい申し出だ。元より残ってこの存在が何であるか調べるつもりではあったのだ。

 

「はい、何でしょうか?」

 

「有名なあなたと少しお話したいの。紅茶でも飲みながらどうかしら?」

 

レオは了承してアンブリッジの部屋に足を踏み入れる。

部屋はピンクに染まっていた。全ての家具、果ては壁までピンク一色なのだ。

 

(うわぁ……。)

 

魔法研究で色々な現象や様々な物を見てきたレオもここまでの光景は見たことが無かった。

 

「私の部屋へようこそ。歓迎しますわ。」

 

ピンクのソファーに座ってピンクのティーカップで紅茶を飲む。

紅茶がピンクでないのがこんなに嬉しいことだとは思わなかった。

一口飲む。思いのほか美味しかった。

 

「飲んだわね。さて、あなたには色々と聞きたいことがあるの。ファッジはあなたには関わるなといったけど所詮は子供。ダンブルドアの目的や仲間について教えてちょうだい?」

 

「ダンブルドア校長の目的ですか……。あの人は隠し事だらけで何が目的なのやら。今のところ打倒ヴォルデモートじゃないですかね。」

 

「具体的には? それとあなたは今何を研究しているの?」

 

「研究内容は極秘ですよ。共同研究をするというなら話は別ですけどそんなつもりはないですしね。」

 

「……紅茶、もう一杯いかが? 最高級の葉なの。遠慮しないで。」

 

実際おいしいのでもう一杯飲んだ。それを見て笑みを浮かべるアンブリッジにレオが言う。

 

「真実薬は隠し味には向きませんよ。基本的に無味無臭ですし。それに入れすぎです。あまり入れると欲しい情報だけでなく際限なくどうでもいいことまで話し続けてしまうことになりますからね。」

 

「し、真実薬? 何のことかしら?」

 

「紅茶に入ってましたよ。僕から研究内容聞き出そうとしたみたいですけど無駄です。僕には効きませんよ。」

 

レオの指輪の一つ『治癒』には魔法薬に対しても効果を発揮する。新種の毒薬ならば解毒に時間がかかるかもしれないが既存の魔法薬であれば真実薬であろうとも即座に無毒なものになる。

 

「言いがかりは止めなさい。レイブンクロー10点減点。もういいわ、帰りなさい。」

 

「最後に一つ良いですか。あなたはなんていう生物ですか?」

 

「は? 何を言ってるのかしら? 私は人間よ。」

 

「人間? カエル系の魔法生物ではなく? ただ単にカエルに似ているだけ……?」

 

「誰がカエルですって!? 無礼な態度にレイブンクローから20点減点! 出ていきなさい!」

 

追い出されるレオ。まさかの結果に驚いている。

 

(予想外だ。まさか魔法関係なしにあんなにカエルに似た人間が存在するとは……。人体の奇跡だな。それにしても真実薬まで使うとは魔法省も余裕ないのかな。)

 

実際にはレオに真実薬まで使ったのはアンブリッジの独断であった。レオの事を過小評価しすぎていたのだ。

魔法省、ファッジとしては極力レオには干渉しないようにするつもりではいたのだ。

今回の件を報告したアンブリッジには減給が言い渡された。




レオをここまで混乱させるとはアンブリッジの実力(カエル顔)は侮れませんね。

ファッジはダンブルドアの方を片付けてからレオの対処をしたかったのですが
舐めてたアンブリッジが独断で行動しました。

さてカエル婆はこれで諦めるかな?

それでは次回お楽しみに。


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64. 秘密活動

忘年会にクリスマス、それが終わればあっという間に年越し。
今年もあとわずか。
正月中はできる限り書き溜めておきたいですね。

それでは64話どうぞ。


ハーマイオニーは怒っていた。

その矛先は魔法省から来たドローレス・アンブリッジである。

明らかに魔法省からの差し金と分かり切った生徒に対しての学ばせるつもりなど無い授業内容。

更には魔法省がホグワーツに干渉するために新たな役職を作り出していた。

それがホグワーツ高等尋問官である。簡単に言えばホグワーツの教師に対して停職や解雇をする権利をもつ役職だ。もちろん選ばれたのはアンブリッジである。

他にもハリー・ポッターに対しての過剰な罰則などがあるがそれらは大したことではない。

あのクソガエルは愛しい恋人(レオ)に毒を盛ったのだ!

その事実だけで許すことなどできるはずがなかった。

 

「まあまあ。落ち着いてハーマイオニー。僕は何ともないわけだしルーピン先生以外の闇の魔術に対する防衛術の教師でまともなのはいなかったし。高等尋問官だって僕にとってはどうでもいいものだしね。」

 

「でも!」

 

興奮するハーマイオニーをソファーに座らせて横に座り宥めるように頭を抱く。

 

「落ち着いて。僕は怒っている君よりいつもの方が好きだよ。」

 

そう言われてしまっては怒りを鎮めるしかないハーマイオニー。

 

「レオずるい……。」

 

しばらくそうしていると研究室に来客があった。

クーに対応させると少し困惑した状態で戻ってきた。

 

「レナード様。生徒の方たちがお見えです。」

 

「誰? フレッドやジョージかな。」

 

「いえ、それがかなりの大人数がいらしてます。ざっと見たところ今まで勉強会に参加していた生徒にスリザリンの生徒までいます。」

 

「何かしらね? どうするの?」

 

「とりあえずは中に入れようか。クー、奥の実験スペースを拡張しておいて。」

 

「かしこまりました。」

 

 

研究室の奥、実験をするためのスペースは空間拡張の魔法が施されている。

今は大広間ほどの大きさになっている。そこに入ってきたのはレイブンクローを中心とした週末に開催されていた勉強会の参加メンバーやロンを除いたウィーズリー兄弟やその他の生徒たちだった。スリザリンも少数ながら見える。

集まった生徒の代表してセドリック・ディゴリーがレオに用件を伝える。

 

「レオ。僕たちを鍛えて欲しいんだ。」

 

彼らが言うにはアンブリッジのやり方では身を守れないと考えたらしい。

そこで三年前に防衛術を教えていたレオに教師役として白羽の矢が立ったのだ。

 

「それに僕たちは例のあの人が復活した可能性が高いと思っている。ハリーがあれだけ言っているし、魔法省や日刊預言者新聞のやり方を見ても真実を隠そうとしている気がしてね。君にも聞いておきたい。あの人は復活しているのは本当かい?」

 

「本当です。ハリー・ポッターの言うように目の前で復活を見ましたからね。」

 

その発言に対して恐怖が広がるが、何人かは覚悟を決めたような顔になった。

 

「それを聞いてますます今のままじゃだめだと確信したよ。レオ、僕たちは力が欲しい。自分だけじゃない、大切な人たちを守れるだけの力が!」

 

その力強い言葉に集まった全員が頷く。

 

「スリザリンの方たちはどうなんですか。わたくしとしてはレナード様への危険が少しでも減らすためにはご遠慮したいのですが。」

 

クーの遠慮のない発言にその場にいた全員の視線がスリザリン生に向かう。一緒に来たと言ってもやはり信用していない部分があるようだ。

 

「……俺たちは純血じゃない。」

「スリザリンだからって純血主義が全てじゃないわ。」

「寮の皆に、特に純血の一族にばれるのが怖くて黙っているし、純血だって偽っている人だって多いのさ。僕だって母方の祖父がマグル生まれさ。」

 

「このまま闇の帝王が支配する世になったら俺たちは逆に生きにくくなるのさ。」

「それに、あーなんだ、その、テイラーに勝てる未来が見えないというか……。」

「それだったらそっちについた方が生き残れそうじゃない。それがここにいる理由よ。本当はもう少し参加したい人はいるだろうけど。決心がついてここに来たのは10人にも満たない私たちだけだけど、スリザリン全体の半分ぐらいはテイラー君につくべきか迷ってるわ。」

 

その発言にほとんどの者が納得した。

闇の帝王を直接見たものはいないが、レオが第三課題で使った魔法で吹き飛ばされそうだ。

それにレオが戦闘をしているところは何度か目撃しているが全力を出している様には見えないのだ。

 

「分かりました。今年は土曜日の午前の勉強会は戦い方を教えていきましょう。次の土曜日までに詳しい内容を決めておきます。それまでに参加するメンバーのリストの作成をお願いします。後は要望があれば何か考えて来てください。」

 

この日はこれで解散となった。

 

「やっぱりあのガマガエルにはみんな不満しかなかったのね。」

 

「そうだろうね。さて、色々と考えておこうかな。どうせなら授業ではできなかったことをやってみたいしね。」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

次の土曜日。

レオの研究室に集まったのは相当な人数になっていた。

レイブンクローはほぼ全員、136人。ハッフルパフとグリフィンドールは半分ほどだろうか合計139人。

スリザリンは流石に数は少ないがそれでも30人ほどはいる。

合計300人を超える数がレオの研究室に集まっている。全校生徒の半分以上だ。

これには流石のレオにとっても少し予想外だった。

 

「すごいなこれは。」

 

「それだけレオの事を認めてくれているってことよ。」

 

全員がレオの事を見ている。これからのことを期待している目付きだ。

 

「さてと。ここに集まったということは力が欲しいということでしょう。予想以上に人数がいるので全員に細かく教えることはできないと思いますが、今の闇の魔術に対する防衛術よりはましだとは思います。

これだけの人数なので実力に応じてクラスを分けます。

まずは、僕が教えていなかった三年生以下の生徒には基本的な魔法の使い方と戦い方を教えます。

次に四年生以上はエクスペリアームス(武装解除)ステューピファイ(失神呪文)プロテゴ(盾の呪文)をマスターしてもらいます。

これらを使える人たちは僕が鑑定して各々に合った呪文を極める段階に進みましょう。

最後にそれ以上になったら僕がより役立つ魔法を教えていきます。

先に三年生以下に魔法の心得を教えますので、四年生以上は先ほどの三つの魔法を使えるように自習してください。使える人は使えない人に教えてもらえると助かります。」

 

三年生以下は喜んでいるが四年生以上は不満そうだ。

何人かはすごい魔法を教えてもらえると思っていたのかあからさまな文句を言っている。

 

エクスペリアームス(武装解除)なんて今更使えるようになってどうするんだよ。そんなのだったら俺だってできるよ。」

 

その発言に同意するような声が次々と上がる。レオは溜息をつく。

 

「分かりました。ならエクスペリアームス(武装解除)がどのようなものか先に教えておきましょう。先ほどの文句を言った方、前に。それと四年生以上でエクスペリアームス(武装解除)を使えない人も誰か前にお願いします。」

 

文句の主、スリザリン生の六年生が前に進み出る。それと使えない代表としてネビルが恥ずかしそうに前に出てきた。

 

「さて先輩、僕にエクスペリアームス(武装解除)を使ってみてください。ああ、心配無用です。反射したり防いだりはしませんから。」

 

「分かった。いくぞ、エクスペリアームス(武装解除)!」

 

赤の閃光がレオの持つ杖を弾いた。それを見てどうだ! と自慢げな顔をする上級生にレオが採点する。

 

「30点ですね。ではネビル、彼にエクスペリアームス(武装解除)を使いましょうか。」

 

「で、でも僕まだちゃんと使えないよ……。」

 

「大丈夫。僕が教えたでしょう。魔法を使うのはイメージが重要です。杖を相手に向けしっかりと呪文を言う、そうしたら杖先から呪文が発射する。命中したら彼の杖が宙を舞う。

それをしっかりイメージするんです。そしてその杖は君の元に飛んでくる。さぁ、イメージしましょうか。」

 

ネビルはレオの発言をしっかり聞いて繰り返し呟く。深呼吸して落ち着かせ準備ができた。

 

エクスペリアームス(武装解除)!」

 

ネビルの放った武装解除は杖を弾き飛ばした。それだけでなくネビルの元に杖が飛んできた。

 

「はい、よくできました。50点。このように自分の手元に飛ばして奪い取ることもできる。先輩のようにただ放つだけならすぐにできる。」

 

「で、でも! それぐらいなら俺だってすぐできるようになる! ロングボトムができるようになったんだから!」

 

「ええ、このぐらいならちょっと練習すればできるでしょう。でもこれでも50点です。さて先輩杖をどうぞ。今からあなたへ100点のエクスペリアームス(武装解除)をぶつけます。」

 

「え、ちょ、ちょっとまっ」

 

エクスペリアームス(武装解除)!」

 

レオの放った閃光は見えない速度で相手に突っ込んだ。

それは杖を弾くだけでなく持ち手自身をも吹き飛ばした。

後方5メートルほどにきりもみ回転しながら吹き飛ぶさまを皆が見ていた。着地点をクッションにしていたが気絶している。

 

「はい、このように同じ魔法でも使い方ひとつで強力に変化します。発動速度、呪文の飛行速度、効果の向上に無言呪文。大したことの無い魔法と侮っている相手ほど効果を発揮できるでしょう。」

 

レオの実力を目にしたことの無い一年生は目を輝かせている。

レオの事を知っている者も改めてそのすさまじさを感じている。

 

「それでは授業を開始しましょうか。」

 

ここにレナード・テイラーによるホグワーツ生強化活動が開始した。

後の世にホグワーツ最強の世代と言われる時代の始まりであった。

 




というわけで、レナード・テイラー先生による授業が開始しました。
名称は特にありません。ついでに勉強会という名目で堂々と隠しもしてないです。

ダンブルドア軍団? そんなものはない。
ハリーやロン? もちろん参加してないです。足手まといが加速する……。

スリザリン生も全員が純血主義やお辞儀の配下ではないだろうし
レオの力を見ているから反抗するのが出てくるだろうと考えて参加してもらいました。

ちなみに本作ではホグワーツの人数は寮一つにつき一学年が男女20人程度で
20人×7年×4寮=560人程度で考えてます。
原作は1000人ぐらいだったはずですけどそこまで多い描写が少ないのでこうしました。

これからどんどん生徒のレベルがアップしていきます!
お辞儀のホグワーツ攻略難易度が上がるな。

それでは次回お楽しみに。


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65. 許されないこと

今年も終わりですね。
来年はどんな年になることやら。
とりあえずはこの物語は完結させたいです。

それでは65話どうぞ。


レオによる訓練は毎週行われていた。

もちろんアンブリッジは警戒して様子を聞き出そうとしていたが、皆ただの勉強会だと言い張っていた。レオの研究室に入り込もうとしてみたり、力づくで扉を破ろうと試みてはいたが悉く失敗に終わっていた。

 

参加している生徒の実力は確実に上がっている。

三年生までの低学年は基本的な魔法理論を理解し、簡単な魔法ならば確実に発動させることができるようになった。同時に教えている闇の魔法使いと相対した時の心得から逃げる方法なども教えている。これならば簡単な呪いで妨害して逃げることも可能だろう。

 

四年生以上は予想外に苦戦していた。

エクスペリアームス(武装解除)ステューピファイ(失神)プロテゴ()、これら三つを全て使える生徒の数が少ないのも原因だがなかなかマスターするのには時間がかかっている。

特にプロテゴ(盾の呪文)は普通の呪いを飛ばすようなものではないのでイメージが固まらないのかマスターしている生徒は極僅かだ。

ちなみにレオの言うマスターするという条件はこうである。

エクスペリアームス(武装解除)……杖を狙いの場所に弾き飛ばすと同時に相手を最低骨折させるレベルで吹き飛ばす。

ステューピファイ(失神)……どのような体勢からでも命中させる精度と身体強化なしには躱せない速度、かつ命中した相手が一時間は失神している。

プロテゴ(盾の呪文)……五分間盾の維持。平均的武装解除五発以上防ぐ。前方以外への展開。

 

これらをすべてクリアすれば晴れて次のステップに進むことができる。

現状では七年生の半分程度しかこの段階には進んでいない。

だが、そこに進んだ者たちはレオによって己に合った魔法を教えられ高度な魔法を使えるように精進している。

 

「フレッドとジョージは物に魔法的要素を付加する才能が有る。悪戯グッズの開発と一緒だね。それを悪戯ではなくより攻撃もしくは防御をするような方向で開発すれば戦力としては十分だろう。魔法で戦うより魔法具で戦った方が確実に有効打を狙えるはずだ。」

 

その他にも魔法の発動が速い者にはより速くするアドバイス。

連続で魔法を発動できる生徒にはより多く、プロテゴ(盾の呪文)が得意ならば何よりも強固に、バランスが良いならばより多くの魔法を使いこなせるように、といった感じでアドバイスを続けた。

 

そして自らの長所を伸ばして極めたと判断した人物は今のところ唯一人。

ハッフルパフの監督生にして主席。皆の人気者、セドリック・ディゴリーだ。

昨年の三大魔法学校対抗試合(トライウィザードトーナメント)の代表に選ばれるだけあって少し教えるだけで三つの呪文はマスターした。そして彼の得意分野は意外なことに何もなかった。

得意分野など無く全ての分野に等しく才能を秘めていたのだ。

なるべくしてホグワーツの代表となったが分かるというものだった。

 

「はぁー……はぁー……。」

 

そんな才能あふれるセドリックは現在ボロ雑巾のようになって転がっている。

相手をしていたのはハーマイオニーであるが彼女も疲弊して床に座り込んでいる。

 

「流石ね、セドリック。もう何戦かしたら負けちゃうかもね。」

 

「……ふぅ。まだまだだよ。そういう君だって日に日に強くなってるじゃないか。」

 

セドリックもハーマイオニー同様にレオのオリジナル魔法を伝授され加速的に力を伸ばしている。レオとハーマイオニーを除けばセドリックに勝てる生徒は存在しなくなってしまった。今はハーマイオニーが勝っているがそのうち追い越す勢いである。

 

そして二人の決闘を見ていた他の生徒たちにはいい刺激になっていた。

レオの様にはるか高み、真似できないような力ではない。

常識の範囲内の二人には努力すれば手が届くと思わせるぐらいの力なのだ。

二人は普通の魔法使いの完成形と言ってもいいほどだった。

 

そんな二人を相手にしてもなお圧倒的なのがレナード・テイラーではあるのだが。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

十二月になった。秘密の活動は続いている。

生徒の実力は開始当初とは比較にならないものになった。上位の者ならば死喰い人(デスイーター)と戦っても互角に渡り合えるだろう。

ウィーズリー双子は防御グッズの作成技術が素晴らしいことになっている。

回数制限があるがプロテゴ(盾の呪文)と同等の効果があるアクセサリーを量産している。活動に参加しているメンバーは常にこれを付けているため魔法で傷つくことはそうそうないだろう。

セドリックはハーマイオニーと同等のレベルまで達して彼女と二人で日々力を高め合っている。

だが、彼らをも上回る速度で力を付けているのがネビル・ロングボトムだ。

魔法とは魔力をイメージで形作るものだ。ゆえに意識に変化があるだけで発揮する力も変わってくる。ここまでの急成長の理由はハッキリしている。

アズカバンから死喰い人(デスイーター)が大量に脱獄したからだ。その中にはネビルにとって因縁の相手がいるらしいのだ。

脱獄が新聞に載ったその日にレオはネビルからより一層の教えを頼まれた。

今やエクスペリアームス(武装解除)ステューピファイ(失神)プロテゴ(盾の呪文)はマスターをして、得意分野であるプロテゴ(盾の呪文)を重点的に強化している。

落ちこぼれだと侮っていたネビルの急成長に感化され周りも意識を改める結果になった。

 

ちなみにアズカバンからの脱走でファッジ政権への不信感が高まりスクリムジョールの準備が進んだとアースキンから教えられた。

ダンブルドアからは死喰い人(デスイーター)と同時にハグリッドも脱獄したことを聞かされた。死喰い人(デスイーター)と戦いになったらしく重傷を負っていたが今は秘密裏に保護されて傷を癒している。そのうち巨人族の説得役にするらしい

 

脱獄以外は大きな事件もなくあってもせいぜいアンブリッジが他の教師の授業を査察した程度であった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

その日、レオは校長室に研究のために訪れていた。

予定以上に研究が進んで気分よく研究室に戻ろうとしていたところ後ろから抱き着かれた。

そばにいたクーが何もしなかったということならば相手はハーマイオニーであろう。

 

「ハーマイオニー? 今日は大胆だね。」

 

後ろを振り返って彼女を見る。その目に飛び込んできた光景に覚えた感情は……怒りだった。

 

トロンとした明らかに発情した蕩けた表情。

廊下には人がいるのにいつも以上に積極的に抱き着いてくる。

その口からは今すぐ研究室に帰って愛して欲しいなどと言う言葉が出てくる。

だが、そんなことは重要ではない。

 

服従させられていた。その上媚薬を盛られているようだ。

 

ステューピファイ(失神せよ)!」

 

これ以上こんな姿を誰かに見せるわけにはいかないので失神させ研究室に姿くらましで移動した。

インペリオ(服従の呪文)を解呪する魔法薬を投与しベッドに寝かせる。

三十分ほどで目を覚ました。

 

「ここは……? そうだ、私!」

 

勢いよくベッドから飛び起きようとするハーマイオニーを止めるレオ。

ここがどこでレオがそばにいると知ったハーマイオニーは泣き出してしまった。

 

「ごめんなさい、レオ! 私、わたし……。」

 

「大丈夫、大丈夫だよ。君は悪くない。僕の方こそゴメン。もっと上質な防御魔法具を持たせておくべきだった。」

 

しばらくして泣き止んだハーマイオニーから何が有ったのか聞いた。

 

「図書館の帰り道にいきなりインペリオ(服従の呪文)が飛んできたの。一発はレオの魔法具で防いだんだけど何発も同時に飛んできて躱しきれなかったわ。相手はスリザリン生を率いたアンブリッジだった。そして媚薬を飲まされて……レオに色仕掛けをして情報を引き出すように命令されたわ。ああ、レオ。本当にごめんなさい!」

 

「僕は気にしてないよ。今日はもう寝ると良い。インペリオ(服従の呪文)は解呪したけど体には負担が残ってるはずだ。ゆっくり寝て今日のことは気にしないようにね。」

 

ハーマイオニーが眠りに落ちるまで手を繋いであげる。

やはり精神的にかなり疲れていたのかすぐに眠ってしまった。

 

寝室から出たレオはクーに命令を出す。

 

「クー。あの薬を持ってきてくれ。くれぐれも慎重にね。」

 

「アレをですか……!? 畏まりました。」

 

保管庫の最奥。

ここにはレオでさえ軽々しく扱えないモノが保管されていた。

クーが今にも爆発する爆弾を扱う手つきでそれを持ってきた。

だが、クーの手の上には何もあるようには見えない。

 

「さて、もうすぐクリスマスだ。ドローレス・アンブリッジには一足早いクリスマスプレゼントをお送りしようか。」

 




レオの特訓教室でみんな実力向上!
特にセドリックがヤバい。流石はホグワーツ代表。死んでなかったらそれだけで闇陣営側の勝率が下がるほどですな。

原作より大量脱獄が早まりました。それだけお辞儀も危機感があるということでしょう。
そしてネビルも同時に急速レベルアップ。ネビルは実力自体相当なんでしょうけど自信がないせいで発揮できないだけです。
ついでにハグリッドが久々に出番がありそう。

そしてついにやらかしたドローレス・アンブリッジ。
彼女の運命やいかに!?

それでは次回お楽しみ。
皆様良いお年を!


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66. 

新年明けましておめでとうございます。
今年も「ハーマイオニーと天才の魔法式」をよろしくお願いいたします。

新年一発目、お年玉は蛙婆ことドローレス・アンブリッジの末路でございます。
ちなみにサブタイトルはネタバレになると思ったのであとがきで明かします。

それでは66話どうぞ。


ピンク一色の部屋。

ドローレス・アンブリッジの部屋である。こんな部屋、他にあるはずもない。

今は午前二時、誰もが夢の中にいるであろう時刻。

ドローレス・アンブリッジも例外ではなくピンクのベッドの上でピンクの枕にカエル頭をのせて眠っている。

その額に一滴の見えない液体が落とされた。

だが、音もなく、当たった感触もないそれに気付くことはなかった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

朝の眩しい日光で目が覚めた。

私、ドローレス・アンブリッジの朝は優雅に紅茶をいれることから始まる。

今日もやることは多い。ホグワーツの改革、ダンブルドアの調査、そしてレナード・テイラーから情報を引き出すこと。

昨日はレナード・テイラーの恋人である、あの生意気なグレンジャーを服従させることに成功した。本来は許されないことだが私は魔法省の高官でホグワーツ高等尋問官でもある。そして相手は何かを企んでいる一味なのだ。許されて当然の行為だ。

 

「さてと、恋人にならぺらぺらと色々と喋ってくれたでしょうね。今日はとても良い日になりそうだわ。大臣への報告書を作るのも楽しみだわね。」

 

これで大臣からの受けも良くなるだろう。ダンブルドアに対する決定的な何かを見つければ即刻追い出して私がホグワーツの校長に、そしていずれは魔法大臣になることも夢じゃない。

気分よく部屋を出て大広間での朝食に向かう。

廊下で生徒とすれ違うが誰も私のことなど見ていなかった。

いかに嫌われている存在であろうとも見向きもされないということはないだろう。

スリザリン生なら取り入るために挨拶ぐらいはするはずだ。

だが、気分が良かった私は特に気にしなかった。

 

(その時の私は何も気が付いていなかったのだ。この日が地獄の始まりであったことなど。)

 

朝食後、さっそく授業があるので教室に向かった。

一限目はグリフィンドールの五年生だ。要注意生徒のハリー・ポッターがいる。それに昨日服従させたハーマイオニー・グレンジャーもいる。気を引き締めていかなければ。

 

「おはようございます。さぁ今日も楽しく授業をしましょう!」

 

教室にはすでに生徒たちが揃っていた。

だが入ってきた私を誰も見向きもしない。それだけならいつもと同じだ。私のことを羨んで見たくもないのだろう。

だが、今日は何かが違っていた。教室内の誰一人として私が入ってきたことを認識していない、そんな感じなのだ。

 

「皆さん! おしゃべりは止めなさい! 授業を始めます!」

 

大声で叫んでも誰も私の事を見ない、声を聞こうともしない。

だんだんイライラが募っていると前の方の席に着いている生徒の会話が聞こえてきた。

 

「そういえば今日は自習なのか?」

「そうなんじゃないか? 先生……えー……とにかく先生が来ないってことはそうだろう。」

 

私が目の前に居るというのにこのふざけた反応!

 

「不真面目な態度でグリフィンドール10点減点! 一人につきです!」

 

大量の減点、それにもかかわらず教室内は何も変化が無かった。

私は杖から爆音と光を出して無理やりにでもこちらを向かせた。

流石にこれらは無視できなかったのか生徒たちは急に私の事を見た。

 

「あれ……? あー、先生? いつの間にそこに?」

「あの人が先生なの? ……誰だっけ?」

 

そんな声がまだ聞こえてくる。私は無視して教科書の続きを読むように指示を出した。

時間いっぱいまで教科書を読ませたがいつもは反論してくるグレンジャーはおらず、ポッターも大人しい。授業終了のチャイムと同時に生徒たちは続々と教室を出ていくが挨拶をする生徒は皆無だった。非常に腹立たしい。

 

不愉快な授業が終わって大広間に行くと各寮の点数を示す砂時計が目に入った。

先程大量に減点したのでグリフィンドールのルビーはほとんど残っていないはずだ。

それを見てグリフィンドールが落ち込み、スリザリンが喜んでいるはずだ。

そのはずだった……。

ルビーの数は朝と大差はなく誰も何も気にしていない。

恐らくマクゴナガルが対抗してグリフィンドールに大量に得点をやったのだろう。

あの女は私が学生のころからそうだ。公正に、平等に、なんて言ってはいるが結局はグリフィンドールが一番でスリザリンのことが嫌いなのだ。

そんなことを考えているとちょうどマクゴナガルがやってきた。

 

「マクゴナガル先生! ちょっとよろしいですか!」

 

だが、マクゴナガルは私を無視してそのまま歩いて行ってしまった。

流石はグリフィンドール。生徒も生徒なら寮監も同じだ。

 

「無視しないでくださる!? 高等尋問官の権限であなたをホグワーツから追い出すこともできるのですよ!」

 

肩をつかんで止めた。流石に無視できなかったのかこちらに振り向いた。

 

「誰ですか? 急に肩をつかむなど止めなさい。」

 

「マクゴナガル先生! あなたには言いたいことが 「どちら様ですか?」 は?」

 

「生徒の保護者ですか? 生憎今は授業が控えていますので用件があるのでしたら後ほどでよろしいでしょうか。」

 

「な、何を言って! 私はドローレス・アンブリッジ! 闇の魔術に対する防衛術の教師にしてホグワーツ高等尋問官です!」

 

「……ああ。そうでしたっけ……? そうでした。いけませんね歳でしょうか。」

 

それだけ言ってマクゴナガルは興味を無くしたように去って行った。本人が言うように歳で痴呆を発症したようだ。これは早急にホグワーツを去ってもらう必要がありそうね。

 

(この時、私はまだ楽観視していた。いつもの様にグリフィンドールからの嫌がらせ、歳の婆の痴呆。そう決めつけていた。

だけど……次の授業で決定的に何かがおかしいことに気が付いた。)

 

 

次の授業は私の出身寮でもあるかわいいスリザリン生達の授業だ。

さっきの無礼なグリフィンドールとは違っていい子しかいない。

 

「さぁ、皆さん授業を始めましょう。」

 

教室に入ると、そこには午前のグリフィンドールと同じ光景が広がっていた。

誰も私を見ない。誰も私を認識しない。

 

「全員! こちらを見なさい! 授業を始めますよ!」

 

大声で叫んでも誰も反応をしない。いやただ一人、一番前に座っていた女生徒がこちらを見た。

私はその娘を見た。見てしまった。

こちらを見る瞳には私は映っていなかった。瞳に写される光景に私の姿だけが無かったのだ。

 

「じ、自習にします! 教科書を読んでおきなさい!」

 

私は怖くなって逃げだした。何かがおかしくなっている。だが、その何かが分からない。

どうしようもない恐怖に襲われ自室に戻ってすぐベッドにもぐりこんで眠った。

次の朝起きれば何もかも元通りになると信じて。

 

 

翌朝。

目覚めは最悪。気分が悪く朝の冷え込みすら感じられないほどだった。

目を覚ますための紅茶も味を感じなかった。

それでも体はエネルギーを欲するため大広間へ朝食に向かった。

大広間までの廊下は生徒もいるが、昨日と同じで誰も私のことを見向きもしない。

 

教員テーブルで朝食を食べる。

学生のころからホグワーツの料理は美味しくてついついおかわりをしてしまうほどだった。

けれど、この日の朝食はおかしかった。

味がしない。

見た目も香りも完璧なのに味だけがしないのだ。

周りを見ても不満を持っているようには見えない。

私だけなのだろうか? これも嫌がらせなのだろうか。

いくら空腹でも何の味もしない料理など、食べるだけで拷問だ。

仕方がないので厨房で直接料理を作ってもらうとしよう。

 

厨房には多くの屋敷しもべ妖精が充実した様子で仕事をしていた。

屋敷しもべは便利だ。そして魔法使いには絶対服従する。仮にホグワーツ全体が私に対して嫌がらせをしているのだとしてもしもべ妖精ならばこちらを無視したり味のない料理を出すことはないだろう。

忙しいのか私が入ってきても仕事の手が止まる気配はない。

 

「ちょっと。どのしもべでもいいけど、料理を作ってちょうだい!」

 

普通だったら一秒もせずにこちらをもてなしを始める。

だが、一向にこちらに何かをする気配がない。

 

「しもべ! 命令よ! 私においしい朝食を持ってきなさい!」

 

なおも無視される。

我慢の限界を超えた私は近くにいたしもべ妖精に魔法を放った。

しかし、杖からは火花一つ飛び出すことなく何も起こらなかった。

そう、まるでスクイブが魔法を使おうとしているかのように。

 

「う、嘘よ。そんな……。私は魔法使い! ステューピファイ(麻痺せよ)! エクスペリアームス(武装解除)! アクシオ(来い)! ウィンガーディアム・レヴィオーサ(浮遊せよ)! なんで!? なんで何も起きないの!?」

 

ここでようやく私はこの異常事態が深刻で何かが私の身に起きていると確信した。

私は何か呪い、もしくは魔法薬などで何かされたのだ!

厨房から医務室まで全速力で駆ける。

医務室のドアを壊れんばかりの勢いで開けて、驚いた様子のマダム・ポンフリーに助けを求める。

 

「助けて! 私、呪われている! お願いなんとかして!」

 

私を無視して扉を閉めようとしているポンフリーの肩をつかんで気付かせようとする。

だが、私の手はポンフリーの体をすり抜けてしまった。

まるで、ゴーストの様に。そこに存在しないかのように。

 

「あ、ああああああ! いや、嫌! いやぁあああああああああああああああ!」

 

恐怖でどうにかなりそうだった。どうやってか自室に戻っていた私はベッドにで毛布に包まりながら必死に正気を保とうとした。

 

翌朝。

どうやら眠ってしまっていたようだ。気が付くと正午を過ぎていた。

今日も授業があるはずなのだが、誰も呼びになど来なかったらしい。

 

「私はどうなるの? 死ぬの? そんなのいや……。」

 

呆然としていると部屋の何者かがいることに気が付いた。

 

「だ、誰!? 誰でもいいから助けて!」

 

そこにいたのはレナード・テイラーだった。魔法省にとっての敵でも何でもよかった。

 

「ああ、テイラー! テイラー君、いやレナード・テイラー様! 助けて下さい! お願いします! 何でもします!」

 

『まだ、消えていませんね? アンブリッジ先生。まぁ、予想では残り時間は一週間ほどになります。ゆっくりじっくりと絶望と恐怖を味わってください。』

 

「え?」

 

テイラーは今、何と言った? まさか……。

 

『さて、今あなたが見ている僕はあらかじめ記録していた映像です。他の人と同様に僕もすでにあなたの事を認識できなくなっているでしょう。

あなたにはある魔法薬を投与しました。僕が開発した中で最も恐ろしいものです。

その名は『存在希薄薬』。これに触れるとその存在がどんどんと薄まっていきます。

最初は周りから注目されなくなる。次第に認識されにくくなり、記憶からも消えていきます。

自身の五感でさえ不感となり始め、やがてどんな方法でも感知されなくなる段階になります。

その段階に至るとすでに体内の魔力も薄まり魔法も使えなくなり始めるでしょう。ここまで進行してしまったらすでに手遅れ。そして薄まった存在は他者への干渉も行えなくなります。今はこの段階であると言えます。

この段階まで進行したらこの部屋に今見ている僕の映像が流れる仕掛けです。自分がどのような状態か理解できましたか?』

 

どんなに絶望的な状態か理解できた! だから助けて! 怖いの、こうしている間にも徐々に自分が薄まっていく!

 

『さて。では次の段階は何でしょうか? 次は、体が徐々に崩壊していきます。指先、足先からゆっくりと。ああ、安心してください。痛みはありませんし、血もでません。ただゆっくりと消えていくだけです。そして体の消失に比例して記憶もまたゆっくりと消えていきます。体が半分も消える頃には精神も自我も薄れていき最後には魂さえ残らず消え去ります。存在濃度が薄まるにつれ進行速度もゆっくりになるのでじっくりと人類初の現象を体験してください。残り一週間ほどはありますが存在が薄まるので飲まず食わずでも死にませんし、あなたという存在への干渉が難しいので自殺も困難でしょう。

なぜ、こんな目に合っているか疑問ですか?』

 

そうだ! なぜ私がこんな目に! 何も悪いことなどしていないのに!

 

「あなたは僕の恋人(ハーマイオニー)に危害を加えた。理由はそれだけで十分です。ではさようなら。」

 

「ま、待って! 止めて! あ、ああああああ!」

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

一日経過。

指が消え去った。杖を持つこともできなくなった。すでに魔法を使うことさえできないがそれでもショックだった。杖は私が魔法使いである証なのだから。

 

 

二日経過。

膝まで消えた。これでベッドから動くことさえできなくなった。テイラーの言ったように空腹も乾きも感じない。部屋の中は何の色彩が無く、無臭の空間に成り果ててしまった。

 

 

三日経過。

四肢が消えた。私は芋虫同然だ。五感もほとんどが薄れている。

何も見えない、聞こえない、臭いも感触もない。

 

 

四日経過。

腹まで消えた。内臓が零れている。

……なんで! どうして! なんで死なないの!? いっそ殺してよ! 五感がないのに体が消えていくのだけは分かる! 痛くないけどはっきりわかるの! 怖い、怖くてたまらない。自分という存在が無に近づいている。薄まって何もかも無くなっていく。

いやだ、嫌だ、イヤだ。

…………なにがいやなんだっけ?

 

 

五日経過。

私はアンブリッジ。私の名前はドローレス・アンブリッジ。ドレーロス。アンドリッジ。

違う! ドローレス・アンブリッジ! 私は! わたし……? そう、私はアンブリッジ。

考えるのを止めるな! ドローレス! 見失ったら消える! 何が? アレが! あれは何? 名前! ドロレ。 私のなまえ。 きえる。 ドローレス・アンブリッジ!

 

 

六日経過。

わからない。こわい。しらない。わたし。きえる。こわい。うすい。ひろがる。こわい。

たすけて。なんで。せまい。ちいさい。ひろい。こまかい。こわい。どうして。

あ……。こ……。

 

 

七日経過。

脳だけになっていた私。

何もかも曖昧になっていた私はなぜか己を認識していた。

最後に残った自我のかけらが蝋燭の火が最後に燃え盛るかの様に最後の輝きを放つのだろうか。

怖い。消えたくない。ああ……。どうしてこうなってしまったんだろうか。

何が悪かったのだろうか。

私の人生は何だったのだろうか……。

怖い。何もない。私は、私のしたことが全て消えていく。

いやだ、いやだ、怖い。

死んでも誰かが覚えている。家族、恋人、敵、他人。誰かは覚えている。

でも私のことは誰も覚えていない。いやいやいやいや、いやだ。怖い。

 

 

ああ、また何もかも薄れていく。

きえる うすまる ひろがる ちいさくなる なくなる こわい ない

 

 

でも最後まで消滅への恐怖だけは無くなってはくれなかった。




66. 消滅

はい、ドローレス・アンブリッジには消えてもらいました。
魂さえ残らず消えたのでゴーストにもなれず生まれ変わることもあり得ません。
逆転時計を使おうにもそもそも誰も覚えていないのでそんなこともしません。

元ネタというか参考にしたのは灼眼のシャナのトーチと、とある博士の末路です。

色んな二次創作でひどい目にあっているアンブリッジ。
怪我したり、失脚したり、殺されたりしていますが
この末路はそれ以上を目指して作りました。

レナード・テイラーを怒らせるとこうなります。

ちなみにお辞儀も一発で消滅できますけど、そうそう使えない危険物なので使用しません。
保管もレオ特製の魔力で出来た容器でしています。
徐々に魔法薬そのものが消えていっているのでそのうち魔法薬の存在・記録すら消滅して再現不可能になります。
その前に使われたアンブリッジは幸運でしたね。

それでは次回お楽しみ。


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67. 聖マンゴ魔法疾患傷害病院

前回投稿からの感想数がすごかったですね。
特に何もない平凡な授業だけだったはずなのに……?
一体何が起きたのやら。

それでは67話どうぞ。


「今日は皆にお知らせがある。長らく不在だった闇の魔術に対する防衛術の教師が決まった。三年前と同じくレナード・テイラー君に特別に担当してもらう許可が魔法省から得られた。皆しっかりテイラー君から学ぶとよいじゃろう。」

 

朝食時に大広間に集められた生徒にダンブルドアからレオがまたもや教師に任命されたことを知らされた。

今学期が始まってからずっと教師が不在だった闇の魔術に対する防衛術。

ダンブルドアはレオを教師に推薦していたのだが、魔法省が難色を示したためここまで時間がかかってしまった。

教師不在に不安を覚えた生徒たちがすでにレオに師事を仰いで週一回特別授業を開催してもらっているが、それが普段の授業でも学べることになると知って喜んでいる生徒が多い。

スリザリンでもレオの勉強会に参加できなかった生徒もいるがこれで確実に学べると歓迎している者も少なからずいる。

 

 

クリスマス休暇を目前に控えたある日。

レオはダンブルドアからの頼みでクーを引き連れて聖マンゴ魔法疾患傷害病院に訪れていた。

どうやらウィーズリー家の大黒柱、アーサー・ウィーズリーが任務中に蛇に襲われたらしい。

命は助かったようだがしばらくは入院することになってしまっていた。騎士団は人手不足であるのですぐにでも回復して欲しいとの事だ。

アーサーとレオの父アースキンは元同僚でありそれなりに仲が良かったようなのでダンブルドアからの依頼を受けることにした。

 

聖マンゴ魔法疾患傷害病院はマグルには隠されるようにして存在している。

改装中のデパートに偽装されておりマグルの街中にありながら気づかれることがない。

レオとクーが受付で要件を伝えると近くを通りかかった癒者(ヒーラー)がこちらに気が付いた。

 

「レ、レナード・テイラー!?」

 

その言葉を聞いた癒者(ヒーラー)や職員が一斉にレオを見た。

ざわざわと一層うるさくなった受付前でアーサー・ウィーズリーの病室の確認をしていると院長らしき高齢の癒者(ヒーラー)がレオに近づいてきた。

 

「レナード・テイラーさんですね。お会いできて光栄です。あなたが開発した数々の治療薬のおかげで多くの患者が助かっています。これからもあなたの研究成果、大いに期待しています。」

 

そういうと握手を求めてきた。

その後も多くの癒者(ヒーラー)や患者に握手を求められアーサーの病室に着くのに大分時間を有してしまった。

 

病室の前にはマッド・アイ・ムーディとトンクスが待っていた。

 

「来たか。本人だろうな?」

 

「真実薬でも飲みましょうか?」

 

「どうせ効かないのだろう? 一応確認しただけだ。そんな防護魔法を纏っているのがお主以外にいてたまるか。」

 

病室の中に入るとウィーズリー家とハリー・ポッターがいた。

真っ先に反応したのはハリーとロンだった。

 

「テイラー! 何しに来た!?」

「パパを実験動物にでもするつもりか!? 出ていけ!」

 

レオが何か言う前にフレッドとジョージ、それにジニーが二人に文句を言う。

 

「ロン、ハリー。お前たちいい加減にしたらどうだ?」

「なんでいつまでもレオの事をそんな風に言うんだ。ダンブルドアだって認めてるすげぇ奴だぜ。」

「おまけに俺たちの悪戯グッズ開発の手伝いだってしてくれる。」

「ああ、それが普通の天才とは違うとこだな。」

 

「はぁ……。二人とも呆れるわ。ロンとレオ交換できないかしら。」

 

ハリーは言い返そうとしたがモリーに病室だから静かにするように言われ黙る。

ロンはジニーの言葉にショックを受けて口をパクパクするだけだ。

 

「それで、レオ君もお見舞いかしら。ありがとう。アーサーは眠ってしまったけど、起きたら伝えておきますね。」

 

「いいえ。ダンブルドア校長からの依頼で治療のために来ました。」

 

「本当なの? でも、癒者(ヒーラー)の話だと体内の毒が抜けるまで相当時間が必要みたいだけど。」

 

「ママ。レオなら大丈夫だよ。」

「そうそう。レオなら何とかしちゃう。これホグワーツ生なら常識だぜ。」

「レオ。パパをお願いします。」

 

レオとクーは寝ているアーサーに近づく。腕、肩、足、数か所に包帯が巻かれ血が絶えず滲んできている。

腕の包帯を外し傷を確認する。大型の生物に噛まれたのが一目で分かる。数センチにわたる穴がそこにはあった。

 

「クー、傷口から体内の毒を抽出してくれ。その毒の成分を僕に教えてくれれば僕が解毒する。」

 

「了解しました。」

 

クーが傷口に触れる。体内に微小に展開した触手で毒の成分を取り出す。

同時にレオの体内に体を融合させ毒の成分の詳細を伝える。

その情報を元に指輪の一つ『治癒』を使って解毒の方法を解読する。

 

「よし。結構複雑な毒だったけどどうにかなったな。」

 

アーサーに触れ『治癒』の力を共有する。結果として体内の毒は瞬時に無効化された。

 

「仕上げだ。クー、傷口を癒してくれ。」

 

クーの髪が伸びて傷口に触れる。髪先からは極微量の命の水が生成され細胞を復元していく。髪が離れる頃には傷一つない健康そのものの体がそこにはあった。

 

「うー……。うん? なんか妙に体が軽いぞ。」

 

毒と傷が消えたアーサーは目を覚ました。

 

「アーサー!」

「「「パパ!」」」

 

モリーと息子、娘は父に抱き着いた。皆涙を浮かべている。もちろん嬉し涙だ。

 

「おおっと。これはいったいどうしたことだ? 体は痛くないし不快でもない。むしろ力が湧いてくるようだ。」

 

「あなた、大丈夫なの? 傷は、血は?」

 

「……平気みたいだ。誰が治してくれたんだ?」

 

「レオだよ、パパ!」

「流石だぜ、レオ!」

 

「レオ? おお、君が治してくれたのか。ありがとう。やはりダンブルドアの言うようにすごいね。戦闘技術だけじゃなく治療までできるとはね。」

 

「これもダンブルドア校長からの依頼でしたしね。それに父さんと親しいようでしたし。退院したら一杯行こうぜ、と父さんから伝言預かってました。」

 

「任務だろうと何だろうと感謝の気持ちは変わらないよ。もう一度、ありがとう。この恩は忘れないよ。」

 

その後もウィーズリー家からお礼の嵐だった。ロンも放心状態から復帰して一応礼を言ってきた。

病室でうるさくしているのを咎めに来た癒者(ヒーラー)が入ってくるまでそれは続いた。

 

「ここは病院ですよ! うるさくするなら帰ってくだ……さ……い?」

 

勢いよく入ってきた癒者(ヒーラー)だったがアーサーの様子を見るなり止まってしまった。

 

「え、あれ、え? なんで? 最低でも一カ月はベッドから動けるような状態じゃなかったのに。ん? 君はッ!?」

 

レオの事を認識した途端、疑問は解消したようだ。

 

「これは面倒なことになりそうだ。それではホグワーツに帰りますので、何かあれば僕のところまで連絡下さい。おそらく問題はないでしょうが念のため。クー掴まって。」

 

レオとクーは姿くらましで逃げた。

 

「ああ!? いない! 治療が必要な患者はまだまだいるのに。次に彼が来たらどうにかしてとどまらせておかなくては……!」

 

レオが一日聖マンゴ魔法疾患傷害病院に居れば大抵の患者はその日のうちに退院だ。

癒者(ヒーラー)としては仕事がなくなってしまうが、そんな事より患者に治療が必要にならなくなる方がよっぽど良い。その日の院内ではレナード・テイラーの手で治療をしてもらう方法を検討する会議が長時間開かれることになった。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ホグワーツの研究室に戻ってきたレオとクー。

ハーマイオニーが出迎えてくれる。

 

「お帰りなさいレオ、クー。アーサーさんはどうだった?」

 

「ただいま、ハーマイオニー。問題ないよ、もう退院できるだろう。」

 

その後はクリスマス休暇の予定について話し合った。ハーマイオニーの両親の為の防護魔法を改良するためにも一度戻ることに決めた。

今年は両家全員が揃ってクリスマスパーティーが開催されることになりそうだ。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ダンブルドアは考えていた。

アーサー・ウィーズリーが魔法省で蛇に襲われた。

恐らくヴォルデモートの愛蛇のナギニだろう。

それならば別におかしなことはない。あやつはまずはターゲットとしてハリーを選んだと考えられる。自身とハリーに関連する予言を手に入れるため魔法省の神秘部に入る必要があったということだ。

だが、問題なのはその現場をハリーが目撃していたということだ。

しかも蛇の目線でだ。

 

(……やはり、ハリーにはトムとの繋がりがある。トムもすぐにそれに気が付くじゃろう。このままではハリーを通じてこちらの情報が洩れる恐れがある。それだけではない。最悪ハリーが乗っ取られ操られることも想定できる。何とかしなくては。)

 

対策としてスネイプに閉心術の特別授業をしてもらうことにした。

スネイプは一流の開心・閉心術師だ。多少手荒な方法になるだろうがこれもハリーの為だ。

 

(それに懸念は他にもある。レナード・テイラーは言うに及ばず。スリザリン生も何やら動きがある。ドラコ・マルフォイが頻繁に手紙を出している。さてこれから一波乱ありそうじゃ。)

 

ダンブルドアはちらりと部屋にいる長年のパートナーのフォークスを見る。

不死鳥。死を超越した存在。死して蘇る。死喰い人(デスイーター)に対して不死鳥の騎士団と名付けたのは死に勝つためだ。

だが、今は不死鳥がここにいることで起こりえることへの懸念がある。

 

(レナード・テイラーが騎士団に参加する条件としてフォークス、不死鳥の研究をしたいと言った。最初は興味深い研究対象として見ていると思ったが……。どうするつもりなのじゃ……?)

 

ヴォルデモートにレナード・テイラー、分霊箱に死喰い人(デスイーター)や不死鳥の騎士団の作戦。そしてハリー・ポッターの未来。

百歳を超えたというのにまだまだ死ねないとため息をつく偉大な魔法使いであった。




アーサー襲撃からの即退院でした。
レオがいたら呪いは解除できるしクーは傷ならすぐに治せる。
聖マンゴ要らずですな。

アーサー襲撃からハリーが分霊箱だとダンブルドア確信。
対策としてはレオを使おうとも考えたけど頼りすぎると後が怖いと考えなおした。
ダンブルドアは完全にはレオの事を信用していません。

それでは次回お楽しみに。


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68. 過去

自分が好き勝手に書く話ほど書いているスピードが増す気がする。
だけどそれが読者が求めている話とは別かもしれない。
悩ましいですな。

それでは68話どうぞ。


年も明けホグワーツでは平和に時間が流れている。

レオによる闇の魔術に対する防衛術は好評で生徒の実力は格段に上昇していった。

中にはレオに反抗的な一部の生徒やスリザリン生などは授業に反抗的な態度であった。

レオ自身もそういう生徒にはそこまで熱心に教えることはしなかった。

 

そんなホグワーツとは異なり世間では吸魂鬼(ディメンター)が街中で目撃されたり、何度かアズカバンからの脱獄があったり、行方不明者が例年より増大したりと段々と闇の勢力が増していることを実感し始めていた。

魔法省は必死にそれらを隠蔽したり情報操作をしているが、もはや焼け石に水な状態だった。

スクリムジョールによる政権交代も秒読み段階だ。このままいけば夏前にはファッジ政権は終焉を迎えることになるだろう。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

イースター休暇も終わったある日。

レオは珍しくスネイプから呼び出しをされた。

魔法薬について久々に議論ができるかと少しワクワクしたが、どうやら騎士団がらみの案件らしい。

案内されてスネイプの自室に入るとそこにはハリー・ポッターがいた。

 

「本日の閉心術の授業はテイラーに手伝ってもらう。我輩は任務で少し出る。最初にこの特別授業について説明するので、その後はテイラーに教わるが良い。」

 

ハリーは嫌悪感を隠そうともせずレオとスネイプを睨んでいる。

 

「テイラー、闇の帝王への情報漏洩を防ぐためポッターの閉心術の習得は必須だ。今から我輩がポッターに開心術を仕掛ける。ポッターに何が足りないか教えてやるが良い。」

 

そう言うとスネイプはハリーに開心術を発動する。スネイプの技量を考えるとかなり手加減をしているのが丸わかりだ。この程度だったら開心術をかけられている方はすぐに気付くだろうし対処をしようともするだろう。

だが、ハリー・ポッターは成すがままに心を開いている。目線を逸らすことさえしないという有様だ。

 

「テイラー。ポッターの出来はどうだ? この閉心術の授業はすでにそれなりの回数を行っているが、ポッターはこの程度だ。このレベルの魔法使いを教えるには我輩では力不足だ。なにせこのような無防備な魔法使いなど見たこともない。」

 

ハリーは顔を真っ赤にしながらスネイプに食って掛かる。

 

「それじゃあ、そのテイラー先生は勿論完璧に出来るでしょうね。何せ天才様だからな。」

 

「当然だろう。開心(レジリメンス)!」

 

事前予告なしにいきなりの手加減なしの開心術。指輪で防ごうとも思ったが、それだとハリーは納得しないと考え自力で防ぐ。それもただ防ぐだけでなくあえて心の一部を読ませる。もちろんその心から読める情報はデタラメだらけのものだ。

 

「なるほど……。閉心術でも使い方によってはこのようなこともできるのか。あえて嘘の情報を流し相手を混乱させるとはな。流石だ、テイラー。レイブンクローに5点やろう。」

 

「それを看破できるスネイプ先生も相当な使い手ですよ。開心術、閉心術に限定するならばダンブルドア校長より上ではないですか?」

 

「ふ。それは買い被りというものだ。さて、我輩は一時間程度離れるがそれまでポッターはテイラーの教えをしっかりと学ぶが良い。」

 

それだけ言うとすぐに部屋から出て行ってしまった。

 

「それでは開心術、閉心術がどのようなものであるかの講義から始めましょうか。」

 

簡単な原理と対処法を教えるがハリーは敵対心からか一向に話をまともに聞かない。

一応は目を逸らすことだけは覚えたので進歩していないわけでは無いのだが、それでもヴォルデモートを前にその程度の抵抗は無意味に等しいだろう。

 

「うまくいかないな。ポッター君、いい加減僕に対して余計な感情は無くした方が良いと思うよ。閉心術は心を落ち着いた状態の方がより強固な壁を作れるからね。」

 

「やっている! そっちこそもっとまともな教え方はないのか? スネイプと一緒で僕に開心術を仕掛けるだけじゃないか。スネイプほど嫌な態度じゃないし、一応はアドバイスがあるけど全然成功しないぞ。」

 

「閉心術は自らの心に防壁を作るものだから、誰かが開心術使ってその状態から防御方法を自分なりに構築するのが一番なんだけどね。スネイプ先生の方法も強引だけど何も間違っていないと思う。」

 

「ああ、そうかい。おまえも閉心術をできないのは僕のせいだと言うんだな。」

 

「実際、閉心術は言葉で伝えても後は己自身でどうにかする必要があるからね。……そうなるとまずは心の平穏を維持する方法から学んだ方が良いのかな。君は精神の浮き沈みが激しそうだから何が有っても平常心を保つことから覚えよう。そうすれば必然的に心の防壁を作りやすくなるはずだ。」

 

ハリーは話は聞いても冷静になれるとは思えなかった。

相変わらず嫌悪や怒りを込めた目線を向けている。開心術を使わなくても分かってしまうほどはっきりとだ。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

セブルス・スネイプ、レナード・テイラー。どちらも嫌いな人間だ。スネイプはいつも目の敵にしてくるし、何もしてなくてもこちらの事を嫌ってくる。

テイラーはハグリッドがアズカバン送りになる原因になった。それ以上にヴォルデモート復活を防がなかった最悪の奴だ。

 

(クソッ! なんでこんな奴らに教わらなくちゃならないんだ。ダンブルドアもこいつらに任せないで直接教えてくれればいいのに。ヴォルデモートが復活したってのに魔法省はそれを認めない、世の中僕は嘘つき呼ばわり。それなのにテイラーは皆に認められて頼られている。なんでだ!? こいつはヴォルデモート復活の一因だぞ! それに騎士団にダンブルドアは入れる! 僕には何にも知らせてくれなかったのに!)

 

イライラする。こいつ(テイラー)を見ていると殺したくなってくる。

こいつさえいなければ、こいつが悪い。いなければ全てが上手くいった。

そうだ、こいつが悪い。仲間に引き入れているダンブルドアも悪い、憎い。いなくなればいい。そうすれば……。

 

(あ、あれ? 何だこれ……。何でダンブルドアまで? 僕は?)

 

思考が変になっていた。まるで自分じゃないかのようだ。

気が付くとテイラーが僕の事を凝視していた。まるで実験動物を観察するような眼だ。でも分かる。僕を見ていない。

その眼に恐怖を覚えて思わず目を逸らしてしまう。

ふと目に入った物があった。憂いの篩だった。前に校長室に有ったものだ。

何でここにあるのか疑問に思って近づいて中を見た。

中には銀白色の物質が漂っている。それが一瞬、僕の顔、いやアレは……!

 

(父さん! 今、一瞬だけど父さんの顔が見えた! この記憶には父さんが関連しているのか!)

 

そう確信したら中に何の躊躇いもなく突っ込んでいた。

そんなことをしなければ良いと後で死ぬほど後悔することになるとは知らず。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ハリー・ポッターの雰囲気がいきなりおかしくなった。何だろうと思っていると何かがハリー・ポッターの体と繋がっている。

『眼』を使うと明らかに別の魂が干渉しているのが視える。

 

(極小だけど体の中に別の魂があるな。それを利用して外部から干渉している。……ああ、ヴォルデモートか。ポッターが赤ん坊の時に魂の一部が引っ付いたか。本体が復活した影響で活性化でもしたのかな。)

 

干渉は短時間だったのですぐにハリーは正気を取り戻した。しかし閉心術を習得しなければどんどんヴォルデモートの魂に侵食されていくだろう。

 

(取り除くか。いや、魂の浸食を観察するのもいいかも。……ダンブルドアは気づいているか。だからこその閉心術の授業なんだろう。いざとなったらどうにかするんだろうな。それまでは静観するか。)

 

そうして考えているとハリー・ポッターの姿が消える。その場には憂いの篩があった。

どうやら記憶の中へ入っていったようだ。

連れ戻すためにレオもその中へ入っていった。

 

 

記憶の中ではハリーに似た男がニヤニヤと嫌な笑い顔で若い頃のスネイプと見える男を逆さづりしてズボンをずり落しているところだった。ハリー似のそばにはスネイプと同じように若い頃のシリウス・ブラックが笑っており、少し離れたところにはリーマス・ルーピンとピーター・ペティグリューもいる。

そしてその光景をハリーが信じられないモノを見る目で立ち尽くしていた。

レオがハリーに近づくと動揺し始めた。

 

「テ、テイラー。こ、これは違う何かの間違いだ。父さんがあんな、あんなはずじゃ……。」

 

ハリーの父、ジェームズ・ポッターを中心にしたグリフィンドールの一団が惨めな恰好をしたスネイプを嘲笑っている。見ていて気持ちが良い光景とはとても思えなかった。

 

『はははは! 良い格好だなスニベルス! 自慢の闇の魔法はどうしたんだい? ああ、そうだ僕が口を開けないようにしたんだっけ。ははははは!』

 

『おいおい、プロングス。いくら何でもスニベルスが可哀そうだろう。さっきの呪いで傷もついてるし医務室まで連れてってやろうぜ。もちろんこのままでな!』

 

『流石はパッドフットだ。そうだ! どうせだったら全裸にした方が傷の具合も診やすくて良いんじゃないか。』

 

その発言にグリフィンドールから笑い声が上がる。ルーピンはとりあえず同調して笑っている感じだが、ペティグリューは嫌悪の表情を浮かべている。

スネイプは悔し涙を浮かべ必死に魔法から逃れようとしている。

 

『ポッター!!』

 

そこへ怒号が轟いた。

現れたのは若き日のアースキン・テイラーだった。

 

『ポッター、またお前か。いい加減その振る舞いはどうにかできないのか。』

 

『いやだなぁテイラー先輩。そこのスニベルス君が僕に攻撃してきたのが悪いんですよ。それに闇の魔法を使ってましたしね。』

 

『そうだとしてもやりすぎだ。降ろしてやれ。』

 

『はいはい。ほーら!』

 

ジェームズはわざと勢いをつけてスネイプを降ろした。

それをフェリス・テイラー、当時はエリソン姓だった、が急いで動いてキャッチした。

それを面白くなさそうに舌打ちするジェームズとシリウス。

 

『はは、惨め極まったなスニベルス! ハッフルパフの最下位のエリソンに助けられるとは闇の魔法使いになんてなれないんじゃないか?』

 

フェリスはそんなジェームズの言葉など気にせずスネイプを助け起こした。

だが、アースキンはいい加減我慢の限界が来ていた。

 

『いい加減にしとけよ、糞メガネが。』

 

『あ? いい加減にするのはそっちでしょう? いいか。そこにいるセブルス・スネイプは一年の頃から闇の魔法にどっぷりだったんだ。どう考えても将来は闇の魔法使いだ。そんな奴を攻撃して何が悪い? 庇ってどうする? 知性を重んじるレイブンクローとは思えない行動だな。ああ、そうか脳みそ筋肉で出来てるんでしたっけ?』

 

『本気でそう思ってるの?』

 

フェリスの言葉にシリウスが返した。

 

『当然だろ。闇の魔法は悪だ。だったらそいつは悪人さ。こいつだけじゃない。スリザリンの連中は闇の魔法使い予備軍だ。今の内からアズカバンにでもぶち込んでおけばいいんじゃないかな。そうすればホグワーツは平和になって皆喜ぶだろう。』

 

『グリフィンドールもスリザリンと大差ないわね。あなた達も人間としては闇の魔法使いと同じくらい最低よ。』

 

『……今までは手加減してたが、本気でその性根を叩きのめす必要があるみたいだな。』

 

『アースキン、私も手伝う。あの眼鏡叩き割ってやるわ。』

 

『そっちこそ覚悟しろ。今までの僕たちだと思うなよ。いくぞ皆!』

 

ジェームズの言葉に周りにいたグリフィンドール生が一斉に杖を構える。

ルーピンは少し離れた位置でそれを見ており、ピーターはアースキンが来た時にはすでに逃げていた。

 

『実を言うと、本命はあんただ。スニベルスはおまけ。スニベルスを庇うあんたも闇の魔法使い候補だと僕らには思えるんだよ。それに邪魔なんだよ、お前。僕らが何かするたびに邪魔をしやがって!』

 

周りのグリフィンドール生はジェームズとシリウスの言葉に誘導されてアースキンのことを闇の魔法使いになると思い込んでいる。グリフィンドール特有の正義感が暴走した結果がこれだ。

 

『正義感も結構だが、俺は一度も闇の魔法使いを肯定したことが無いぞ。スネイプも悪い。だが、お前らの弱い者いじめを見るのが耐えられんだけだ。』

 

『言ってろよ! 吹っ飛べ!』

 

そう言ったジェームズが吹き飛んだ。

フェリスの全力身体強化の拳が鼻を砕き、眼鏡をひしゃげさせ顔面に突き刺さった結果だ。

司令塔のジェームズがいなくなったことで混乱したグリフィンドール生は無計画にアースキンに魔法を放つが、全て防がれる。

 

その光景を呆れながら見るレオと絶望を通り越して無表情で見ているハリーのそばに大人になったスネイプが現れた。

その表情は憤怒で真っ赤になっていた。

二人は記憶から引っ張られて憂いの篩から戻された。

最後に見えたのはグリフィンドール生が一人一人吹き飛ばされるという地獄絵図だった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

スネイプの部屋に戻ってきた三人。

 

「出ていけ……。出ていくんだ!!」

 

ハリーはいつもの反抗的な態度もなく静かに出ていった。

レオも流石に見たものがまずいと思ったので謝罪をして出ていった。




ホグワーツは平和ですが世間では着実に闇の勢力の影響が増しています。

スネイプの閉心術授業の手伝い。
ハリー(ついでにロン)はもうちょっと冷静になれよと突っ込みたくなりますよね。
まぁ年齢を考えれば妥当なのかな。

お辞儀に乗っ取られかけるハリー。
原作と比べて負の感情が大きいから影響も大きくなってますね。
目の前には憎きレオもいますから当然かな。

勝手に記憶に入るハリー。
お辞儀の影響で心が弱い中で父親の影が見えたのでついつい入ってしまった。
待っていたのは理想像とはかけ離れた父親でしたけどね。

過去の父親達。
ジェームズとシリウスはフェリスへの悪戯を妨害したり、スネイプを庇うアースキンを鬱陶しく思っていた。けれどいつも返り討ち。
今回は人数集めて袋叩きだ! → やっぱり勝てなかったよ……。
ちなみにジェームズとシリウスの悪戯はウィーズリー双子の悪戯と比べて悪質。
双子は皆を笑顔にするが、ジェームズ達は自分が笑いたいために悪戯していた。

スネイプはジェームズ達をボコボコにするアースキン達を見て更に力(闇の魔術)を欲するようになる。スネイプが死喰い人になった一因がアースキンにもあるのであった。

アースキンはスネイプのことを庇うというよりは弱い者いじめが嫌いなだけ。
仮に他の生徒がやられていても同じように行動していた。

この後はボコボコにされたジェームズ達と一緒に仲良くマクゴナガルに長時間説教されてました。これ以降はジェームズ達も少しは大人しくなっていきました。

それでは次回お楽しみ。


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69. 魔法省へ

この物語で一番不憫なのは誰なのだろうか。
原作と比べて活躍しないハリー。
それ以上に出番がない、かつ本来の嫁のハーマイオニーを取られるロン。
難易度アルティメットモードになっているお辞儀。

逆にハッピーになってるのはルーピンやシリウスでしょうね。

どれをとってもレオのせいだな。


「どうしたものか……。」

 

レナード・テイラーは悩んでいた。現在研究しているモノの理論が完成し、実験も成功。

後少しというところなのだが、それを起動するには条件としてはかなり厳しいと言わざるを得ない。

 

(学生じゃあまず無理。騎士団はできるだろうけどダンブルドアを筆頭に絶対に許可しないだろうしなぁ。いっそ死喰い人(デスイーター)のところにでも乗り込むかな。それでもまだ不安だな。ヴォルデモートと対面できる機会でもあれば最高なんだけどなぁ。)

 

考えてもしょうがないのでとりあえずはその他の調整と準備だけでも完璧にしておくことにした。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

とうとうふくろう試験が始まった。

試験期間は二週間に及ぶ。

五年生は必死になって試験に取り組んでいる。

余裕なのはハーマイオニー・グレンジャーぐらいである。

しかし平年と比べると必死さの度合いは低いと言っていいだろう。

レナード・テイラーの闇の魔術に対する防衛術の授業はただ単に防衛術を教えるだけではなくそれぞれの個性を伸ばす方向での授業でもあり、魔法の基礎にも重きを置いている。

生徒によっては変身術、呪文学、魔法薬学の能力も向上している。

そのため防衛術以外のふくろう試験についても生徒はある程度余裕をもって挑めるのである。

ちなみにレナード・テイラーはふくろう試験は受けていない。

普通であればふくろう試験の結果をもって更に高難易度のイモリ試験に進むかの可否を決めるのである。さらにイモリ試験の結果が就職に影響してくる。

そういう意味ではふくろう試験は最初の就職試験であるとも言える。

その点、レナード・テイラーは就職先に困っていない。

まだ五年生でありながら既に引く手数多なのである。

魔法改善研究所、魔法薬協会、闇祓い、グリンゴッツ侵入者対策部門、魔法生物保護の会、聖マンゴ魔法疾患傷害病院……他にも数多くの団体・協会・部門がレナード・テイラーという特別な才能を求めている。今までの功績からふくろう試験どころかイモリ試験すら超越したと証明されているので試験など無視して今すぐにでもホグワーツから自らの手元に置いておきたいのである。それに今更ふくろう試験などに時間を費やされて研究が遅れるのも時間の損失であるためふくろう試験の免除がホグワーツに求められ、教師陣もそれを認め、ダンブルドア校長も当然のように許可を出したのだ。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「最終調整終了。あとは変換と転送だけなんだけどなぁ。」

 

研究室でレオは目の前のカプセルを前にして悩んでいた。

カプセル内の培養液にはあるモノが浮いている。

これが完成することでレナード・テイラーの夢は一歩前進する。

今まで多くの発明をしてきた。

幸福薬、殺狼薬、守護霊の呪文の改良、服従の呪文の特定と解除、賢者の石の発展改良、クーという魔法生物、殲滅魔法……他にも多くの魔法や魔法薬を作り出してきた。

それでもレオは満足していなかった。この世にはまだまだ未知は多く魔法は万能には程遠い。マグルの科学技術の方が進歩していることの方が多いほどだ。

レナード・テイラーの夢は魔法を極めること。それには途方もない時間が必要になってくる。

賢者の石を創造したニコラス・フラメルは数百年の時を生きてきた。だが、賢者の石がもたらす命の水は不老不死を与えるが、それも限定的だ。命の水を摂取しなければその命を保てない不完全と言っていい存在だ。

体内に賢者の石を取り込んでいるクーでさえ不老であり不滅には限りなく近いが完全な生命体であるとは言えない。

だが、レオのこの研究は更にその先を行くだろう。

不老不死を求めた闇の帝王の分霊箱(ホークラックス)など比較にもならないほどのモノをレオは創り上げた。

分霊箱(ホークラックス)の様に魂を分割するなどといったことなど無い。デメリットもない。

 

「起動条件はどうしようかなぁ……。何か良いきっかけがあればなぁ……。ダンブルドアに騎士団の任務に参加できるように掛け合ってみようかな。」

 

とりあえずは現状で出来ることはない。

全て調整終了だ。後は起動条件さえ整えば万事OKだ。

レオは息抜きに研究室を出て散歩でもすることにした。

 

(そういえばハーマイオニーと出会ったのも息抜きの散歩の図書館でだったな。今日も何かいい出会いでもあると良いな。)

 

そう懐かしんでいると前から誰かが走ってきた。

ハリー・ポッターだった。試験中のはずだが焦った様子で全力でどこかに向かおうとしている。

 

「どうしたんだい? 今は試験中だろう?」

 

「どけ! テイラー! 今はお前と喋っている暇は……。そうだ! お前も騎士団の端くれだったな。シリウスがヴォルデモートに捕まった! 助けに行かなくちゃ! スネイプにも伝えたけどこれっぽっちも信じてくれない。ダンブルドアもちょうど任務でいないとか言うし! こうなったら僕だけでもシリウスを助けに行くんだ! 止めるなよ!」

 

ペトリフィカス・トタルス(石になれ)。」

 

正気とはとても思えなかったので動きを止めた。失神させなかったのは意識を奪ってしまえば心を覗くことができなくなるからだ。

 

「どれどれ。」

 

相変わらず閉心術に対して無防備なハリーの心は容易に読み取ることができた。

どうやらヴォルデモートにシリウス・ブラックが魔法省の神秘部で拷問されている幻覚を刷り込まれたらしい。

魂で繋がっているヴォルデモートの思考を読み取ろうともしたが流石に無理だった。

断片的な情報では神秘部で死喰い人(デスイーター)が待ち構えている程度しか分からなかった。

親同然らしいシリウス・ブラックを餌に使えばハリーを誘い出すなど簡単だろう。

実際レオと遭遇しなければ箒でも使って飛び出していただろう。

 

(それにしてもなんで神秘部? ポッターを殺すだけならそこでなくてもホグズミードにでも呼べ出せば余裕だろうに。神秘部……。何かポッターを利用したのかな? とりあえずダンブルドアに連絡するか。)

 

ダンブルドアに念話をして石にしたままのハリーを浮かせて校長室に向かった。

校長室に到着するころにはダンブルドアは戻っていた。

 

「レオ、詳細を聞こう。何があったのじゃ?」

 

「ハリー・ポッターがヴォルデモートに利用されて神秘部に誘い出されていました。ヴォルデモートはハリー・ポッターとの繋がりを利用する方法を確立したみたいですね。閉心術も習得していないようなので悪化すれば完全に操られることになりかねませんよ。」

 

「そうか。ようハリーを止めてくれた。ヴォルデモートとの繋がりについては後で詳しく聞こう。わしの予想が正しいか確認したい。だが今は神秘部の件が先じゃな。」

 

「神秘部では死喰い人(デスイーター)が待ち構えているようです。ハリー・ポッターに何かをさせたかったのかとは思いますが心当たりは有りますか?」

 

「おそらく予言にじゃろうな。ハリーとあやつに関する予言が保管されておる。あやつが知る予言は不完全なものじゃ。だから完全に予言を知ってハリーに対して有利に運ぼうと考えたのじゃろう。」

 

「なるほど。どうします?」

 

「これは好機じゃ。できるだけ戦力を集めて奴らを叩く。」

 

ダンブルドアはすぐに騎士団の本部に連絡を入れる。

すぐにシリウスやルーピンなどを含めた精鋭が編成された。

 

「では、僕はハリー・ポッターに変身して囮となりましょう。背格好から考えれば僕が適任かと。」

 

ダンブルドアは違和感を覚えた。レナード・テイラーがここまで積極的に任務に参加するとは思えなかった。

だが、今はその違和感よりは死喰い人(デスイーター)に対抗する方が優先だ。場所が魔法省内であることから上手くすれば魔法省もヴォルデモートの復活を認めざるを得ない状況になるだろう。

 

ポリジュース薬を使ってハリーの姿になったレオとダンブルドアが校長室から出る。

扉の先にはスネイプとドラコ・マルフォイが立っていた。

 

「校長、今回の件でドラコから話があるようです。」

 

「ふむ。マルフォイ君、言っておくれ。君が家族を闇から連れ戻そうとしていたことは知っておる。」

 

ドラコは泣きながらダンブルドアに話し始めた。

 

「ダンブルドア……。父上を助けて下さい……! 父上は死ぬ気です! 僕と母上を助けるために他の死喰い人(デスイーター)を道連れにするおつもりなんです!」

 

ドラコ・マルフォイが語るには今回の神秘部の罠にはかなりの死喰い人(デスイーター)が参加しているしい。どうやらハリー・ポッターが誘い出されるのをレオやダンブルドアが止めて騎士団が来ることも想定の範囲内の様だ。それを打ち取るために十分な戦力を投入するつもりらしい。

その場でルシウス・マルフォイは闇の帝王を裏切る同士と共に死喰い人(デスイーター)側を攻撃する。

もちろん多勢に無勢、すぐにやられてしまうだろう。だが、その結果をもって残った家族だけでも騎士団側へ逃がすことの許しを得たいとの事だ。

 

『私たちは罪がある。今更それはどうにもならない。だが、息子には、子供たちには未来がある。私たちのような罪人にはなって欲しくなどないのだ。私たちが同じ罪を持った者たちを道連れにすることで子供たちの安全を約束して欲しい。』

 

ドラコから手渡された手紙には子の幸せを願う父親の心がこもっていた。

 

「ドラコ・マルフォイ君、約束しよう。この言葉に嘘偽りが無ければ必ず君の父上とその仲間を助けると。」

 

感謝するドラコ・マルフォイを残しダンブルドアを先頭にマクゴナガル、フリットウィック、スネイプ、そしてハリー・ポッターの姿をしたレオが続く。服に擬態したクーも一緒である。

目指すは魔法省神秘部。

待ち受けるのは闇の罠。騎士団は覚悟を決めて進んでいった。

そんな中、レナード・テイラーだけは目的が違っていた。

 

(ヴォルデモートが来なかったら帰ろう。……上手くいったらハーマイオニーが心配するかな。でも伝言も残してあるし大丈夫だろう。)




レオの研究は何であるか予想してみてください。
ヒントは今までの話にも出ています。

レオを求める各機関は適当に名前つけました。
こんなのがあるだろうぐらいの感じですね。


ハリーとレオが遭遇したのは偶然でも主人公補正でもないです。
ハリーは無意識ですが、お辞儀に操られてレオと出会って魔法省まで連れてくるように仕向けました。レオにとっても願っても無かったのですけどね。

裏切るマルフォイ家。
その他にもいくつかの家が裏切ってます。
今回の作戦で特攻して裏切りが嘘ではないと証明して子供たちだけでも保護してもらうつもりです。
裏切った理由は元々の忠誠心が低いのとレオの圧倒的な力を見てたからですね。
実際お辞儀がレオを殺せない場面を見てますから。

次回は魔法省、一体どんな卑劣で最悪な罠が待っているのだろうか。

それでは次回お楽しみに。


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70. 死

不死鳥の騎士団編も残り少しです。
あと3話ぐらいかな。
90話ぐらいで完結だろうか。

それでは70話どうぞ。


ロンドンに降り立つハリー・ポッター。中身はレナード・テイラーである。

不死鳥の騎士団のメンバーは目くらましの呪文と透明マントを使って姿を隠している。

騎士団が来ることも敵は想定しているとしてもハリー・ポッターが誘い込まれたという形で魔法省に駆け付けたことにしたのだ。

騎士団の他には連絡を受けた闇祓いが騎士団と死喰い人(デスイーター)の戦いが始まったころに突入する手はずにもなっている。

 

外来用の赤い電話ボックスから地下八階のエントランスホールに入る。

普段であれば職員の姿が必ずはあるはずなのだが誰一人として姿はなかった。

地下九階の神秘部に足を踏み入れるレオ。何度か共同研究のために訪れたことがあるため迷わず予言の間に到着した。いっそ清々しいほどに罠であると主張するほどに嫌な空気が場に充満していた。

予言が保存されているガラス玉の中にハリー・ポッターとヴォルデモートの名が記されたものを見つける。本来であれば予言に関係した者しか取り出せないはずだが、そんな対策は『眼』で解析をしたので関係ない。

手に取った瞬間、奥からルシウス・マルフォイを先頭に大勢の死喰い人(デスイーター)が現れた。

 

「どうも、ルシウス・マルフォイ。」

 

「ハリー・ポッター。その予言をこちらに渡してもらおう。」

 

ルシウスがそう言った途端、レオが何か行動する前に前方にいた死喰い人(デスイーター)の一団が後方の仲間に攻撃を加え始めた。

 

「今じゃ!」

 

ダンブルドアの合図で姿を消していた騎士団も戦闘に参加しだす。

殆どの騎士団はルシウス・マルフォイの裏切りなど100%嘘だとは思っていた。

だが、必死の形相で仲間を攻撃、それも許されざる呪文や殺傷力が高い呪文を使っているところを見てしまっては裏切りが本当だと判断せざるを得なくなった。

裏切り者と騎士団を足しても数で言えば死喰い人(デスイーター)の方がまだまだ多かった。

だが質で言えば圧倒的に騎士団が勝っていた。更には数の優位さえ覆された。

戦闘が開始してからスクリムジョール率いる闇祓いも参戦したのだ。

 

ものの数分で壁際まで追い詰められた死喰い人(デスイーター)。人数は十人にも満たない。

騎士団や闇祓いは傷ついてはいるが重傷者は一人もいない。

死ぬ気だった裏切りの一団も誰一人欠けていない。

もはや勝敗は決した。誰もが勝ちを確信していた。

だがダンブルドアだけは違和感を感じていた。

 

(おかしい……。あっけなさすぎる。だが、ルシウス・マルフォイが裏切ったことも本心からの様だ。)

 

「さぁ、諦めろ。なに、殺しはしない。お前たちは貴重な情報源だ。」

 

スクリムジョールが残った死喰い人(デスイーター)に投降を呼びかける。

 

「くくくく。はははははっはっははあああはははは!」

 

先頭にいた一人が狂ったように笑いだす。

仮面を外してその顔を露にする。

 

「な!? お前は誰だ!?」

 

ルシウス・マルフォイや裏切った死喰い人(デスイーター)が驚く。

彼らはその死喰い人(デスイーター)を見たことが無かったのだ。

ルシウス・マルフォイと言えども死喰い人(デスイーター)全員を把握しているわけでは無い。だが今回の様に重要な作戦に参加するようなメンバーを見たことも無いということはあり得なかった。

 

「誰でもいいだろう。ははっはははは! ここまで上手くいくとは俺様も予想外だ!」

 

「まさか……! お主、トムか!?」

 

「その通りだ、ダンブルドア。そこにいる裏切り者達以外の下僕どもは全員拉致して魂を壊した後に操り人形にしたマグル生まれどもだ。今は魔法を使って俺様の声を届けている。それにしても……失望したぞ、ルシウス。まさか裏切るとはな。」

 

「我が君、いやヴォルデモート! 私は私の愛する者のために行動したまでだ!」

 

「はっ! 愛! くだらん! まぁいい、今回の作戦で裏切り者が誰かはっきりした。

では、諸共死ねぇ!」

 

「いかん! 全員逃げるんじゃ!」

 

瞬間、神秘部がある地下九階が炎と衝撃に包まれた。それだけではないエントランスホールのある地下八階も爆発し、地下九階に向けて瓦礫が降り注ぐ。真上から降り注ぐ瓦礫の重みに耐えきれず神秘部は最下層まで崩落していった。

破壊は神秘部の研究資料、道具、予言、部屋、扉、壁、その全てを吹き飛ばした。

それには誰一人として生かして返さないという凄まじい殺意が込められていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

瓦礫しかない最下層に闇の帝王ヴォルデモートが降り立つ。

側近も誰も連れていない唯一人だ。これは油断からではない。慢心はとうに捨て去った。

この程度の破壊では騎士団や闇祓いの雑魚は殺せても老いぼれやあの小僧は殺せないだろう。

 

「ダンブルドア、テイラー。出て来い。これでお前らが死んだとは思っていない。怪我の一つでもしてくれれば御の字といったところだ。」

 

瓦礫の一部が吹き飛ぶ。現れたのは今世紀最高の魔法使いアルバス・ダンブルドアだ。

あの一瞬で自分と周囲数人を防護する魔法を作り出しこの破壊を生き残ったのだ。

だが周りの数人、マクゴナガル、スネイプ、スクリムジョール以外の姿は見えない。

 

「トム……! よくも……!」

 

「ははは! 良い顔だ、ダンブルドア! 怒りと後悔に染まった顔だ。この瓦礫の下には何人分の死体があるかな? まだ生き残っている愚か者はいるかな?」

 

笑うヴォルデモート。

だがその笑みもすぐに消える。

瓦礫が盛り上がりそこから巨大な蛇が出現した。蛇はすぐに小さくなりレナード・テイラーとその従者のクーがその場に現れた。

 

「やはり傷一つないか……。まぁいい想定内だ。」

 

「クー。研究室に先に帰っておいて。」

 

「畏まりました。」

 

姿くらましでクーが消える。

 

「いやいや、まさかあなたがあのような手段を使うとは思いませんでしたよ。あの爆発……マグルの爆弾ですね? しかも魔法と組み合わせてましたね。」

 

「そうだ。そうだとも! この俺様が! この闇の帝王ヴォルデモート卿ともあろうものが! 薄汚い低俗で愚かなマグルの武器を頼ったのだ! だが、あの裏切り者どもを始末するのにこれ以上相応しい手段はあるまい。見下していたマグルの武器で死ぬのだ! これ以上の無い屈辱的な最期だろう。しかし……しかしだ! 俺様にこのような手段を取らせた罪は大きいぞ! レナード・テイラー!」

 

「え? 何がです?」

 

「俺様にこのような下劣で最悪な方法を選択させたのは貴様の存在だ。

……告白しよう。俺様は貴様を恐れた。ゆえに何が何でも排除しようと決めた。耐えがたいマグルの武器に頼るのも貴様の存在があるからだ! だが! それも今夜限りだ! 貴様はここで殺す!」

 

ヴォルデモートは杖を構える。レオも一歩前に出て戦闘態勢を取る。

レオは内心笑顔を隠すのに必死だった。ヴォルデモートと一騎打ち、これ以上の無い最高の条件だ。誰にも邪魔はさせない。

ダンブルドアが止めようとするだろうからその前に決着を着けなくては。

 

「死ねぇ! ネセス・アバダケダブラ・コルスカス!」

 

ヴォルデモートは死の呪文をレオに向ける。

唯の死の呪文では無かった。閃光の色も緑と黒の斑模様でありより禍々しい雰囲気となっていた。

『眼』で解析したレオは横にステップして躱す。

 

「なるほど。死の呪文に防御無効、貫通、速度上昇などの強化を施したみたいですね。その呪文なら遮蔽物や僕の防御方法でも関係なく貫いて殺せそうだ。」

 

「闇の帝王は日々進化していると知れ。さて自慢の防御もこれでは意味がないな。諦めるなら一思いに殺してやるぞ?」

 

「まさか。ただで死ぬ気などありませんよ。」

 

「誰もが死にたくはないだろう。だが……死ぬときはいつも突然だ。」

 

レオを後ろから緑の閃光が貫く。

ヴォルデモートの開発したネセス・アバダケダブラ・コルスカスにはもう一つ効果があった。

それは追尾効果。躱した対象の背後から強襲する能力だ。

レナード・テイラーはその場に倒れピクリとも動かなくなった。

そして闇の帝王の高笑いだけがその場に響き渡っていた。

 

 

ダンブルドアは混乱していた。

あり得ないモノを見た。

レナード・テイラーが死の呪文に貫かれた。

それすなわちレナード・テイラーが死んだことを意味する。

嘘だと思いたかった。あれより強い存在などいないと信じていた。

予言が真実ならば滅びるのはヴォルデモートではないのか!?

つまり予言は確実ではない? ヴォルデモートは予言を覆す存在?

ヴォルデモートがこちらを見る。

恐怖を覚えた。レナード・テイラーにもずっと恐怖を感じていた。だがそれを葬ったあやつにはそれ以上の恐怖を感じた。

 

(このままではまずい……! 瓦礫の下には生き残りがいるかもしれん。ここでやりあうのは得策とは言えぬ。一旦引くしか……!)

 

逃げる隙を伺っているとヴォルデモートから提案があった。

 

「ダンブルドアよ、俺様はここで引く。先ほどの呪文は予想以上に消耗が激しくてな。ここで貴様と戦うには少々分が悪い。今日は裏切り者の排除と最大の障害のレナード・テイラーの殺害という最大の目的は達成できたので良しとしよう。次に会った時が貴様らの最期だ。」

 

闇の帝王は勝ち誇ったまま姿くらましで消え去った。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

魔法省の崩落で駆け付けた職員と共にダンブルドアたちは瓦礫の中から生存者を掘り起こした。

生き残ったのはとっさに盾の呪文(プロテゴ)を使えた数人だけ。それでも無傷ではなく酷い有様だった。

騎士団の生き残りはシリウス・ブラック、リーマス・ルーピン、マッド・アイ・ムーディ。

それ以外の騎士団員、キングズリー・シャックルボルト、アーサー・ウィーズリー、ヘスチア・ジョーンズ、ディーダラス・ディグル、エルファイアス・ドージ、他にも多くの団員が死亡。

死喰い人(デスイーター)の裏切り者はルシウス・マルフォイだけしか生き残らなかった。そのルシウス・マルフォイだが両手と片目が欠損しておりギリギリ生き残ったといった感じである。操られていた者たちは体内に爆弾が仕掛けられていたため肉片しか残っていなかった。

闇祓いの生き残りはルーファス・スクリムジョール他二名のみ。

壊滅と言ってもいいほどの結果になった。

 

 

そして、レナード・テイラーも死んだ。

多くの者が悲しみ、怒り、恐怖し、混乱していた。

だからこそ誰もレオの指から指輪がなくなっていることなど気にもしなかった。




「ははははは! レナード・テイラーを葬った! 勝った!
次回からはこの俺様が魔法界を、世界を支配する物語に変わる!
タイトルはもう一度変更しないとならないなぁ! ははははは!」

お辞儀、慢心・油断・驕り、その他一切を捨てて全力。
レオの存在があったためどうすれば殺せるかひたすら考える。
魔法→感知、対抗される→魔法以外ならばいけるか?→マグルの兵器といった感じ。
裏切り者を下等なマグルの武器で殺すのは制裁の意味も込めてる。
ついでにマグルについても徹底的に調査したのでマグルと戦争になった場合の勝率もUP
レオのせいで騎士団の難易度も急上昇した。

肝心のレオにはノーダメージだったがお辞儀としても想定の範囲内。
あくまでマグルの武器攻撃は効いたら御の字ぐらい。
殺すためにはあらゆる手段を試すことにしていた。

ネセス・アバダケダブラ・コルスカス
お辞儀切り札。 必ず殺して滅ぼす、的な意味。
物理防御・魔法防御貫通、速度上昇、追尾機能追加。
欠点は燃費がヤバいこと。お辞儀でも2発が限界。
但し確実に2人は殺せることも意味している。

今回の件で大勢死んだ。しかも死喰い人の名有キャラはほぼ無傷
次回までに原作キャラ死亡タグ追加するか。

レナード・テイラー死亡。この物語はどうなってしまうのか。
さて次回から「ヴォルデモートと純血の世界」が始まりません。

それでは次回お楽しみに!


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71. 再誕

前話で主人公であるレナード・テイラーが死亡してしまった。
これからの話はどうなってしまうのか?

それでは71話どうぞ。


魔法省の崩壊から一週間が経過した。

僕が目を覚ました時には全てが終わっていた。

僕のせいで……。

僕がヴォルデモートの罠に気付けていたら、閉心術をしっかり覚えていたら……。

魔法省はついにヴォルデモートの復活を認めた。

だけどもその代償は大きかった。

大勢の闇祓いが死に、不死鳥の騎士団員の多くが犠牲になった。

優しくてまるで父親の様だったアーサーおじさんも死んだ。

ロンやジニーたちの泣いた顔が今でも頭から離れない。

シリウスやルーピン先生は生きているけど酷いことになっていた。

シリウスはもう僕の顔を見ることができない。

ルーピン先生は歩くことができない。

 

どうしてこんなことに……。

 

今、僕たちホグワーツの生徒は大広間に集められている。

先生やゴーストまで全員がいる。

ここにいないのはハーマイオニーともう一人。

レナード・テイラーがここにはいない。

正確には体だけがある。

もの言わぬ死体だけが棺に納められている。

 

魔法省がヴォルデモートの復活を認めたことより。

騎士団や闇祓いが大勢死んだことより。

レナード・テイラーが殺されたということがホグワーツ生にとっては衝撃だった。

最初は誰も信じなかった。信じられなかった。

どんな魔法でも使いこなす、新しい魔法や魔法薬を開発する、熟練の魔法使いが束になっても敵わない、競技場を吹き飛ばす、ダンブルドアでされ勝てないと言う。

そんな奴が殺された。

テイラーは嫌な奴だった。それでも実力は誰もが認めるしかないほど凄まじかった。

それが殺された。

 

これも僕のせいだ。

 

生徒は皆悲しんだ。多くの者が泣いていた。スリザリン生でさえ涙を流していた。

でも恋人のハーマイオニーは何も変わっていなかった。

ダンブルドアからテイラーの死が伝えられても『レオは死んでいない。』と言って普段通りに生活していた。誰かがテイラーは死んだ、もう帰ってこない、と言っても

『レオが死ぬわけないじゃない。私以外誰もレオの事を理解していないのね。』

と言った。

それ以来誰もハーマイオニーに話しかけていない。

そんなハーマイオニーを見て皆が心が壊れてしまったのだと思った。

 

これも僕のせいだ。

 

大広間に集まった全員が沈痛な面持ちでいるとダンブルドアが話し始めた。

 

「諸君、レナード・テイラーは向こうに旅立ってしまった。彼を失うことはホグワーツ、いや魔法界にとって変えの効かないほどの損失じゃろう。皆、悲しいじゃろうが彼は悲しむのは望んではおらんとわしは思っている。最後に祈りを捧げよう。」

 

その時だった。大広間の扉が開かれた。そこにはハーマイオニーとテイラーのペットと……レナード・テイラーが立っていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

時は一週間前に遡る。

ハーマイオニー・グレンジャーはふくろう試験を終え研究室に戻ってきた。

しかし、レオやクーの姿は見えず研究室内にはフラスコ内の液が振られる音や魔法薬が煮える音ぐらいしか聞こえてこなかった。

 

「どこ行ったのかしら?」

 

ソファーに座ってふくろう試験の自己採点を行っているとテーブルを挟んだ前にレオが現れた。正確には魔法で記録した映像が映し出された。

 

「レオ? 違うわね、魔法での投影ってところかしら。」

 

『ハーマイオニー、聞こえてるかな? とりあえず用件だけ伝えるよ。僕はこれから不死鳥の騎士団と共に魔法省に行く。多分死喰い人(デスイーター)の罠が待ってるけど、それは問題ない。

闇の帝王が出てこなければすぐに帰る。

でも闇の帝王が現れたら僕は一回死んでくるよ。』

 

「死ぬ? 何言ってるのよレオ。」

 

『何言ってんだこいつ、みたいな反応してるとは思うけど僕の研究成果を起動するには一回死ぬ必要があってね。ただ単に死ぬんじゃだめで死の呪文(アバダケダブラ)で死ぬのが最高だからヴォルデモートに殺されてくるよ。安心してくれ、生き返るから問題ないよ。計画通りなら先にクーが帰ってるはずだからクーに詳細は聞いておいて。』

 

そこで映像が途切れた。

我が恋人ながら頭のネジが全部吹っ飛んでるなと改めて思った。

だが仮にも死ぬと言っているのにレオが一言、問題ないと言っただけで平常心な自分も大分イカレてきているとは思った。

とりあえずふくろう試験の自己採点の続きに戻った。

 

しばらくしてクーが姿現しで戻ってきた。

 

「お母様、レナード様からのメッセージは受け取りましたか?」

 

「ええ。クーが戻ってきたってことは上手くいったのかしら?」

 

「はい。こちらに、ご案内します。」

 

クーに連れられて研究室の最奥に向かう。

そこには人一人が入れるだけの透明な容器があった。

中にはレオがいた。全裸に指輪だけをしているという何とも言えない姿だが、傷などは見えない。

 

「レオ? 生きてるの?」

 

「レナード様は現在こちらの肉体に魂を転移させたようです。魂の再構成・調整に一週間ほどかかるとの事です。それまでは目を覚ましませんが肉体は健康そのものです。」

 

「それで一回死ぬ必要があるっていう研究は何なのかしら? 肉体を別に移すだけならそこまでしなくてもレオならできそうだけど。」

 

「詳細はわたくしも教えていただいておりません。目が覚めたらサプライズとして教えるとだけ言われております。」

 

「ん~……。レオからの課題ってところかしらね。一週間でどんな研究か推察してみましょうか。」

 

一週間の間に世間では色々なことが起こっていた。

魔法省が崩壊したり、ヴォルデモートの復活を認めたり、コーネリウス・ファッジからルーファス・スクリムジョールに魔法大臣が交代したり、多くの死傷者が出たりなどなど。

ホグワーツではレオが死んだことで恐怖や混乱が広がっていた。

ハーマイオニーにも心配するように声をかけられていたがレオが生き返ると正直に言っても誰も信じようとはしない。それどころか頭がおかしくなったように扱われてしまったのでそれからは適当にはぐらかしていた。

 

そうして一週間が経過した。

カプセル内の溶液が排出され、レオの新たな肉体が出てくる。

レオが目を覚まして最初に視たのは最愛のハーマイオニーの姿だった。

 

「おはよう、ハーマイオニー。」

 

「おはよう。調子はどう?」

 

体を動かして調子を確かめる。次に魔法で自分の服を取り出して着る。

色々と魔法も使ってみたり、周りを見渡す。

 

「魔法を使うのは問題ないね。前の体よりは効率が良いぐらいだ。『眼』の方も問題ない。

ただ体の方は違和感があるね。体に蓄積した経験というのがあるのか何となくぎこちない感じだ。」

 

「それでこんな事をした理由って何かしら? 私の予想では不滅を目標にしてるとは思うんだけど具体的な方法は分からなかったわ。」

 

「うん正解。目標はそれだね。どうやったかは後でね。とりあえず先に済ませることを終わらせよう。クー、いるかい?」

 

「ここに。成功おめでとうございます。用件は何でしょうか?」

 

「前の肉体はどこかな? もう埋葬されてしまったかな?」

 

「いえ、まだでございます。世の中色々ありましたのでレナード様の葬儀は今日、ホグワーツの大広間で執り行われる予定です。」

 

「そうか。だったら体の方に用があるから取ってこよう。」

 

レオはハーマイオニーとクーを連れて大広間に歩き出した。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

大広間にいる全員が何も言えずそれを見ていた。

ダンブルドアでさえ信じられないモノを見るように見つめていた。

それを無視して大広間を歩いていくレオ。

手厚く埋葬されている己の過去の肉体を取り出す。

そこでやっと動くことができたダンブルドアから声がかかった。

 

「お主は誰じゃ?」

 

「僕はレナード・テイラーですよ。」

 

「そんなはずは……。彼は死んだ。わしもこの目ではっきりと見た。いったい何者なのじゃ!」

 

その言葉を無視して自分の死体を分解して新しい肉体と合一させる。

 

「うん。これで良し。大分今の体に馴染んだ。」

 

気が付くと周りを教師たちが杖を構えて囲んでいた。

皆レオの事を得体の知れないバケモノを見ているかのようだ。

 

「ミス・グレンジャーこっちに来なさい! 危険です!」

「何者であろうと死からは蘇れない。貴様は何者だ?」

 

「杖を降ろしてください。僕は正真正銘のレナード・テイラー本人ですよ。」

「そうですよ。レオに失礼ですから止めてください。」

「レナード様に害するようならわたくしも黙ってはいられませんよ。」

 

「だったら詳しく証明と説明して欲しいものじゃ。何がどうなっているのかを。」

 

「証明か……。難しいですね。先にどうやってこうしてここに立っているかを説明してもよろしいですか。」

 

全員が頷く。生徒たちも知りたがっているようだ。

 

「では説明しましょう。まず最初に僕の目標は魔法の全てを理解すること。それには膨大な時間が必要でした。賢者の石や分霊箱(ホークラックス)では不十分だった。そこである生き物に目をつけました。それは不死鳥です。不死鳥は死んでも灰の中から蘇る。それを模倣することにしました。

あらかじめ蘇生した後の肉体を作っておいて自身が死んだときに魂を不死鳥と同じように再構成して次の肉体に転移するように仕込んでおきました。そのためには一度死の呪文(アバダケダブラ)で死ぬのが最適だったのでヴォルデモートを利用させてもらいました。

これで僕は不死です。この肉体が滅んでも魂は不滅です。次の肉体を作って蘇ることができます。そもそも今の肉体を滅ぼすことさえ難しいでしょう。この肉体はクーを参考に改良発展させたものです。ドラゴンやバジリスク、それ以外にも数多くの魔法生物を組み合わせて賢者の石を組み込んだ特別製。

これで死の呪文(アバダケダブラ)でさえ効果を十分に発揮できませんし、細胞の一片さえ残っていれば不滅の魂がその一片から再生します。仮に全ての細胞が消されたとしても魂は不滅なので一から新しい肉体を作り出すことも可能です。これで無限に研究を続けられます。」

 

誰もが絶句していた。つまりはレナード・テイラーは不滅の存在になってしまっているということだ。

 

「レオが不老不死になったのなら私が先に死んじゃうじゃない。」

 

ハーマイオニーは不満だった。レオの望みが叶うのは良いが、いずれは自分との別れが待っているということだ。そんなのは御免だ。

 

「研究データは十分あるからハーマイオニーが望むなら永遠に僕といっしょに一緒も可能だよ。どうする?」

 

「そんなの言うまでもないじゃない。あなたとなら永遠も苦じゃないわ。」

 

「当然わたくしもお供いたします。」

 

「二人ともありがとう。さて今回の件についての詳細は話しましたけど、どうやったら僕がレナード・テイラーであると証明できますかね?」

 

「……いや良い。お主が本物か偽物かなど些細な問題になってしまった。つまりはわしらには、いや何者であろうとお主を滅ぼせないということじゃろう。そんな存在とは敵対しないのが一番と言える。ゆえにお主がたとえ偽物であろうともレナード・テイラーとして扱うしか選択肢がないということじゃ。」

 

「そうですか。まぁ、不老不滅になっても僕は今までと何も変わりません。魔法の研究を続けますし、闇の魔術に対する防衛術の教師も辞めません。先生方も今まで通り僕の事を一生徒として扱ってください。」

 

それでもうここには用がないのかハーマイオニーとクーを連れて大広間から出て行ってしまった。

誰も何も言えない。レオの言ったことがあまりに現実離れしていたので誰もその事実を処理しきれていなかった。

大広間の時間が動き出したのはしばらくしてからだった。




レナード・テイラー復活!!
当然のように蘇りました。
というか、前回の感想で誰も心配していなかった。主人公なのに……。

指輪紹介その10
・蘇生
全指輪同時起動によって死亡時に肉体から分離する魂を指輪内に保存する機能。
今回は用意していた新しい肉体に指輪を転移させることで即座に蘇りました。

レオは一時的に肉体から解き放たれた魂を不死鳥と同等の存在に加工することで不滅の魂に己を改造しました。章タイトルの通り不死鳥を超えました。
更に新しい肉体としてクーのバージョンアップ版を用意していました。
これでレオを殺すことは限りなく不可能に近くなりました。
隕石にも耐えられますね。

ハーマイオニーも当然のように共に永遠を望みました。
そのうち彼女も人外の存在になるでしょうね。

それでは次回お楽しみ。


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72. 五年目が終わって

ちょっと遅くなってしまって申し訳ないです。

雪だったり、会社でインフルエンザやウィルス性胃腸炎が流行ったりと大変でした。

5章も今回で終了です。

それでは72話どうぞ。


「……もう一度言え、セブルス。どうやら俺様は耳がおかしくなってしまったようだ。

レナード・テイラーが生きているなど……。なぜそんな言葉が出てくる?」

 

忠実なしもべのレストレンジの家の一室。

アルバス・ダンブルドアのスパイをしているセブルス・スネイプからの報告は到底信じられるものではなかった。だが、心を覗いても嘘を言っているわけではない。セブルス自身も現実として受け入れていないかのようだった。

 

「我が君。確かにレナード・テイラーは生きています。しかもより強力になって蘇りました。」

 

「詳しく話せ。どんな些細な情報であろうとも一つ残らず話せ。」

 

その後のスネイプの言葉はまるで異国の言葉の様だった。

頭が認識しようとしない。

それでもそれが事実なのだ。

 

「つまりだ……。レナード・テイラーは生きていると。それどころか不死で強力な体を手に入れた? さらには俺様をそのために利用しただと!!」

 

怒りのあまりスネイプを殺しそうになる。しかしこいつはホグワーツをスパイするために必要だ。

 

「ホグワーツに戻れ。レナード・テイラーについての情報を入手しろ。どんな些細な情報でも構わん。」

 

「仰せのままに。」

 

スネイプが部屋から出ていく。

 

(俺様の計画は現段階では順調だ。騎士団や闇祓いの多くは葬った。下僕どもの中の不穏分子も排除した。魔法省の陥落も目前である。闇の生物たちの多くが俺様の元に集いつつある。

……だが、それでもレナード・テイラーが生きているだけで全てが無駄になる。)

 

闇の帝王は一人、夜が明けるまでレナード・テイラーを殺すための策を考え続けることになった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ホグワーツ内、レナード・テイラー研究室 実験スペース

今ここにはレオとハーマイオニー、クーのみがいる。

これから行うのはレオの新たな体の性能テストだ。

 

「さて、理論上ではどの程度可能であるかの予測はできているけれど、やはり実際に試してみないことには分からないことがあるからね。とりあえず色々と試していこう。」

 

体の性能テストということで指輪は全て外している。指輪も今の体に合わせて再調整する予定である。

 

「クー。僕を攻撃してくれ。僕は防御に徹しながら見極めることにするよ。手加減無用だから全力で、殺す気でやってくれ。どうせ死なないし。」

 

「畏まりました。全力でいきます!」

 

そう言うと瞬時にクーは戦闘形態に変形する。長く伸びた髪があらゆるものを切断する刃に変わりレオを襲う。通常の目ではその動きを追うことは不可能だが、人外のモノになったレオにはその動きを確実に捉えていた。

だが、レオはその刃を躱さなかった。結果としてレオは真っ二つになる……はずだった。

 

「!? これは……。」

 

クーは戸惑いながらも刃の数を二桁に増やしてレオをバラバラにすべく切り刻んだ。

だが、レオは何事もなかったかのように平然とその場に立っている。

 

(防御しているわけではない。幻覚でもない。確かに体を切り裂いた感触があった。いったい……?)

 

「驚いているね。僕もだよ。ちょっと予想以上だな。クーの刃は確かに僕を切った。でも刃が通り抜けた次の瞬間、ゼロにも等しい極短時間に体が再生してくっついただけさ。多くの魔法生物の治癒力、賢者の石がもたらす命の水、更には不死鳥の涙の相乗効果だね。まさかここまでとはね。」

 

「なるほど。でしたら次はこれです!」

 

クーの体から触手が伸びる。先端が肥大し、ドラゴンの顔を形成する。数にして10を超えるドラゴンの顎からブレスが放射される。

レオはそれも避けることなく受ける。体の表面はわずかに炭化するがそれもすぐに再生する。炎が途切れるとそこには火傷一つないレオがいるのみだ。

 

「さぁ、どんどんいこうか。」

 

その後もあらゆる手段を用いてもレオに致命傷を与えることはできなかった。

どんな魔法、物理攻撃、魔法薬も無意味であった。

その次はレオの魔法行使への影響の調査へ移った。

ドラゴンなどの膨大な魔力量に命の水を魔力変換する炉心を体内に保有しているのでほぼ無尽蔵に魔法を使える、更には父アースキンと同じような原理で普通の魔法も非常に強力になった。アースキンと異なる点ではより精密なコントロールをレオができるため今までと同じようにも魔法が使えることだろう。

 

「ふむ……。指輪の耐久度は相当高くしないといけないな。」

 

今までと違いどの指輪もレオと直接接続する構造、体と一体化させることで高強度にして今のレオの魔力にも耐えるだけのものに作り替えることになった。

更には基本的な機能はそのままにそれぞれを更に強化した。

今まであればここまでに能力を使いこなすには魔力が足りなかったが、ほぼ底なしの魔力を手に入れたのであればその心配もない。

『反射』はヴォルデモートの死の呪文でさえも跳ね返す。

『吸収』は魔法だけでなく魔法生物由来の魔力がある攻撃も吸収。

『遮断』はあらゆる魔力現象から遮断する。

『守護』はより強固に。

『治癒』は今の体の再生速度を限界以上に高める。

『貯蔵』は上限が向上し、あらゆる魔法をほぼ無尽蔵に貯蔵する。

『増強』は身体機能の限界を突破させる。

『聡明』は思考の高速化のリミッターを取り外す。脳への影響も今の体なら問題ない。

『制御』は魔法や指輪だけでなく複雑な体の細胞の一片までも制御する。

『蘇生』は不要になったため新たに作り直す予定である。

 

「あとはハーマイオニーの方の準備だけかな。時間がかかるからそれまでに心の準備をしておいてね。」

 

「大丈夫よ。レオになら殺されても良いわ。」

 

「もし失敗して死んでも生き返らせるからね。」

 

お互いに微笑み合いながら談笑しているが、その内容が物騒極まりない。

それでも二人にとってはそれが普通なのだ。

 

その後はいつもと同じように年度末まで研究をするという生活をしていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

学年末パーティーになれば幾分か暗い雰囲気も落ち着いてきた。

それでも例年と比べると遥かに暗い。それも致し方がないと言うほかないのである。

魔法省はほぼ機能しておらず、毎日のように日刊預言者新聞には死者や行方不明者が出ていると報じられる。生徒の親族もその中に多く含まれていた。

死喰い人(デスイーター)が親族にいるスリザリンの生徒がだからと言って明るいといえばそれも違う。

レナード・テイラーという化物が身近にいていつ自分たちに襲い掛かってくるのかと恐怖していた。

レオとしてはそんな気は全くないとはいえそんな事を知らないスリザリン生は恐怖するしかない。

スリザリン生以外もかなりの生徒がレオを怖がっていた。

死んだと思ったら、蘇る。更にはヒトではなくなっているのである。

それを当然のように受け入れるハーマイオニーも異質なものに見える。

もはや二人は別の世界の住人の様だった。ダンブルドアや教師たちもレオとどう接するべきか測りかねているようだった。

結局はレオ、ハーマイオニー、クーだけがいつもと同じようにパーティーの料理を楽しんでいた。

 

 

一年が終わり生徒たちは蒸気機関車に乗ってキングス・クロス駅に向かっている。

レオ、ハーマイオニー、クーの三人だけのコンパートメントにロンを除いたウィーズリー兄弟たちが訪れていた。

 

「よぉレオ。ちょっといいか?」

「色々聞きたいことがあってな。」

 

「良いですよ。」

 

フレッド、ジョージ、ジニーが中に入って座る。しばらく黙っていたがフレッドが聞いてきた。

 

「なぁ……。パパは最期どんなだったんだ? 皆俺たちには教えてくれないんだ。でも、俺たち知りたいんだ。」

 

三人とも真剣な顔をしてレオを見つめている。

 

「そうですね……。アーサーさんは最後まで死喰い人(デスイーター)と戦っていました。他の方と同じように罠にかかって亡くなりましたけど、最後まで最前線にいましたよ。」

 

「……そっか。そうだよな。パパは騎士団の一員で、俺たち全員の自慢の父親だもんな。

うん、決めた。いや、前から決めてたけど改めて決心したよ。」

「俺たちダイアゴン横丁で悪戯用品専門店を始めるんだ。」

「ママは止めろって言うんだ。でも、俺たちは皆を笑わせたいんだ。」

「ホグワーツだって今は滅茶苦茶暗いだろ? だからこそ今は笑いが必要なんだ。」

「パパが命を懸けて護ろうとしていた世界が暗くちゃきっと嫌だろうしさ。」

「レオもダイアゴン横丁に来たら寄ってくれよな。」

 

双子は吹っ切れたようだった。これならば暗い世の中を笑顔にするぐらいならやってみせるだろう。

次にジニーが話し始めた。

 

「レオ、私を鍛えてちょうだい。私、闇祓いを目指すわ。パパや死んでいった皆の代わりに皆を、世界を守りたいの。そのためには力が欲しい。」

 

「来年度も教師を続けないかと言われているからそれでいいなら教えるよ。」

 

「それだけじゃダメ。もっと強くなりたいの。」

 

「んー……。それなら希望者を募って特別授業でもやろうか。メンバーが集まったら研究室にでも来てくれればいいよ。」

 

「ありがとう! あ、ママには内緒にして! 絶対反対するだろうから。」

 

その後はキングス・クロス駅に着くまで色々と話した。

三人はレオが人外になった事なんて気にしていないのかいつもと同じようだった。

 

 

キングス・クロス駅 九と四分の三番線

 

レオ達三人をアースキンとフェリスが出迎える。

再会した途端アースキンの拳骨がレオの頭に直撃した。もちろん手加減なしである。

レオも覚悟はしていなので防御はしていない。

 

「心配させるんじゃない! 手紙で死ぬって書いてあった時にはどうかしたんじゃないかと思ったぞ! その後はスクリムジョールがやってきた時も大変だったぞ。謝ってくるあいつに生きてるって言ったらしばらく休むように心配されたぞ。」

 

フェリスがレオを抱きしめる。体を全部を触り無事を確かめる。

 

「レオ、本当に大丈夫なのよね? 痛くないの?」

 

「父さん、母さん。心配させて申し訳ありませんでした。でも大丈夫です。」

 

「それならいいんだけど。ハーミーちゃん、こんな息子でゴメンね。心配したよね?」

 

「いえ、大丈夫です。こういうところも含めて好きになったのですから。それより私の両親はやはり家からは出てこれなかったのですか?」

 

「ああ、グレンジャー夫妻は俺たちの家で待っていてもらっている。ここ最近の情勢を考えたら外を出るのは厳しいだろうな。レオの彼女の親族というだけで連中に狙われるとスクリムジョールは考えている。俺も同感だ。まぁ、俺が守ってるし、レオの施した保護もあるからそう簡単には手を出さないだろう。」

 

「ハーミーちゃんと早く会いたいだろうしさっさと帰りましょうか。」

 

レオ達は夕食は何を食べたいなどいつもと変わらない会話をしながらテイラー邸へと帰っていく。

その様子は世間の暗さとは無縁の幸福な空気が満ちていた。

 

レナード・テイラーの五年目のホグワーツ生活はこうして終わった。




お辞儀はスネイプがいたから平静を保っていましたけど内心では滅茶苦茶焦ってます。
それでもまだ諦めていないからすごいですよね。

レオの肉体はヤバいレベルです。
不死鳥の涙も体に循環して治癒力を高めるようにしてます。
切った先から瞬時に回復のイメージはバーニングゴジラですね。
指輪もレベルアップ。 と言っても基本性能は変わらず上限の底上げって感じです。
『蘇生』は不要になったため新たな指輪を検討中。

世間的には闇の勢力の方が優勢という認識です。
実際、闇祓いや騎士団の大部分が戦死しているため間違ってないです。

双子の悪戯用品専門店は対抗試合の賞金がない分小規模になってます。
ただ、レオのおかげで店を開くだけのお金はありました。
ちなみに原作と違ってちゃんとホグワーツを卒業してます。

レオは両親にもハーマイオニーと同じように死んで蘇ると連絡してました。
それでも心配させたので拳骨を貰いました。

次回予告!

世界が闇に包まれる。
闇の帝王の魔の手は日に日に広がっていく。

魔法省も、闇祓いも、不死鳥の騎士団もその闇を払うだけの力はもはやない。

このままでは世界は闇に覆われてしまうのか!?

レナード・テイラーはどうするのか!?

レオ「別に研究を続けるだけですよ?」

第六章 更なる先へ

それでは次回お楽しみ。


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6章 更なる先へ
73. 闇の侵攻


今回から6章スタートです!

お辞儀はどう頑張るのか?
ハリー・ポッターやダンブルドアはどう行動するのか?
そしてレナード・テイラーは?

それでは6章 更なる先へ
73話どうぞ。


イギリス首相官邸

イギリスのトップである首相は執務室で頭を抱えていた。処理しなければならない書類が山のようにあるがほとんど作業が進まない。

 

(いったいどうすれば良いと言うのだ……。)

 

魔法。魔法使い。

科学技術が発達した現代ではそんな存在はおとぎ話やファンタジーの中だけの空想の存在だ。

 

そのはずだった。

 

事実、首相はその座に着くまでそんなモノが現実に存在しているなど欠片も信じていなかった。

だが、前任の首相から代々首相のみに伝えられているという事実がそれを覆した。

 

魔法は存在している。

 

魔法使いは普通の人々から隠れながら暮らしているということだ。

一度だけ、魔法使いのトップと会ったが普通はお互いのトップが入れ替わるたびに面会する程度でその繋がりはないも同然だった。

しかしトップが交代し、ルーファス・スクリムジョールになってからは異常だ。

最近は二週間に一回のペースでこちらを訪問してくる。

しかも来るたびに悪い知らせしか持ってこないのだ。

イギリスで多発している行方不明と原因不明の死亡事例、建造物の破壊、等々……。

それらはある魔法使いの一派が引き起こしているというのだ。

状況を察するに魔法政府側はかなり劣勢の様である。こちらで対抗はできないかと聞いたが無理の一言だ。

負の出来事が蔓延しているせいか、人々の不安が高まり政府への批判も相次いでいる。

支持率も下がり続け、他の政治家からも無能扱いだ。

酒の量も増えるし、抜け毛も枕にびっしりだ!

 

(どうしろってんだ! なんでこっちまで問題が来るんだよ! 魔法使い同士勝手にやってろよ!)

 

机に突っ伏して恨み言を言う。

結局書類は全然進まないまま時間だけが過ぎていった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

闇の帝王復活。魔法省が破壊される。

魔法省からの報せは魔法界に恐怖と混乱をもたらした。

戦況がどのようになっているかなどの詳しい情報は発表されていないが、それでも悪い噂は飛び交っている。

ダンブルドアを中心とした例のあの人に対抗する組織は既に壊滅している。

闇祓いはほとんどが死亡し、辞めていく者が続出している。

闇の魔法生物の多くが例のあの人の配下になった。

吸魂鬼(ディメンター)は既に魔法省ではなく例のあの人に制御されている。

等々、他にもキリがないほど噂は聞こえてくる。そしてその大半が事実なのだ。

 

例のあの人が戻って来てから凄惨な事件が多発している。

一家がまとめて惨殺される、出かけたままの親、兄弟、子供が帰ってこない、普通ではいるはずがない魔法生物に襲われる、そういった事件が頻発しているのである。

その被害者は決まってマグル生まれやその血が入った者たちだった。

人々は口々に自分は純血だと偽り、マグル生まれを忌避し近づかないようになっていった。

もはやイギリスにはマグル生まれの安息の地がないと悟って国外に脱出する者も後を絶たない。

しかし海外に脱出した後の彼らがどうなったのかは誰も知らない……。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

不死鳥の騎士団。

それは闇の帝王に対抗するためアルバス・ダンブルドアが中心になって結成した組織だ。

前回の大戦時には多くの死喰い人(デスイーター)が不死鳥の騎士団の手によって捕らえられ、光の象徴として不死鳥の騎士団は存在していた。

しかしその力強さは今では見る影もない。

多くの団員が死んだ。生き残った者もまともに戦える状態のものはすくない。

現在は同じく残り少ない闇祓いと合同組織を編成して闇の勢力に対処しているが戦況は芳しくない。

数の上で圧倒的な差をつけられているためあらゆる点で後れを取っているのだ。

更には死喰い人(デスイーター)のアジトを発見・強襲してもマグル式の罠を仕掛けられていたりして負傷者が続出している。苦労して捕らえたとしても何の罪の無いマグル生まれを操り人形にしているだけということも一度や二度ではない。

仮に偽物ではない死喰い人(デスイーター)を捕まえたとしても拘束する場所がないのだ。

アズカバンは既にその機能が停止している。

吸魂鬼(ディメンター)はコントロールを失い、囚人たちは脱獄し放題だ。

そして死喰い人(デスイーター)の闇の印を目印に捕らえられた場所に死喰い人(デスイーター)が襲い掛かってくるのだ。

魔法省の一件もあり人々は恐怖して抗う気力が徐々に失われつつある。

家柄の良い者などは闇の誘惑に負けて帝王の軍門に下る始末だ。

ダンブルドアやスクリムジョールが全力で対応しているが劣勢を覆すにはもっと大きな力が必要だ。

そう……全ての闇を吹き飛ばせる大きな力が。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

世間の暗い雰囲気などとは無縁のような場所がある。

ロンドン郊外にあるテイラー邸だ。

ありとあらゆる害あるモノから守られたその場所を闇の手先見つけることはできず、仮に見つけたとしても返り討ちになるだけである。

 

「それじゃあ、行ってくる。今日は大きな仕事はないから夕飯までには帰って来る。」

 

「はい、行ってらっしゃい。気を付けてね。」

 

テイラー家の家長、アースキン・テイラーが仕事に向かう。

ルーファス・スクリムジョールが魔法大臣になったことにより闇祓いとして復職したのである。今ではスクリムジョールの代わりに闇祓い局の局長に就任している。

アースキンとしてはトップに立つより前線で働きたいと考えているので不満であるが、そうも言ってられないのが現状である。

 

「さてと、今日は午後からダイアゴン横丁に買い物ね。お昼ご飯を食べたら出発するけどレオとハーミーちゃん、クーちゃんは何か食べたいものある?」

 

「僕は魚かな。」

「私もレオと同じものをお願いします。」

「もちろんわたくしも。」

 

居間でホグワーツに必要なもののリストを見ていたレオとハーマイオニーが答える。

当然のようにハーマイオニーはテイラー邸で生活している。

ハーマイオニーの両親は現在イギリス国内にはいない。

闇の勢力に狙われているレオ、その彼女の両親ともなれば人質の価値は十分すぎるほどだ。

以前からありったけの防護を施していたが、それが破られればただのマグルが魔法使いに太刀打ちできる可能性は限りなく0だ。

なので少しでも危険から遠ざけるためにイギリスからは脱出していただいた。

現在はフランスで生活している。更に強化した防護とフランスの魔法省に研究協力するという条件で護衛も付けている。もちろん異変があれば即座にレオ達に知らせが届くのでよほどのことが無い限りは守り切れるだろう。

愛しい娘と離れるのは辛いが自分たちが娘や未来の息子に迷惑をかけるなら仕方がないとしてフランスへと渡っていった。

 

「さてとホグワーツのリストは特に変わったことはなさそうだね。」

 

「そうね。来年度の授業はどうなるのかしら? フリットウィック先生が騎士団の任務で負傷しているし誰か代わりの先生が来るのかしらね。」

 

「ダンブルドアからは僕に代わりを務めて欲しいってことなんだ。闇の魔術に対する防衛術はまた別の人を雇うらしい。まぁ、呪文学を教えるのも面白そうだ。防衛術の様に攻撃や防御だけじゃない色々な魔法を教えることができるからね。」

 

「例えばどんなの?」

 

「それは授業まで秘密。午後ダイアゴン横丁に行ったらフレッドとジョージの悪戯用品専門店にも顔を出してみようか。実を言うと結構楽しみなんだ。」

 

「私も楽しみにしてるのよ。あの二人はレオとはまた別のタイプの天才だから、想像がつかないようなものを売ってると思うのよ。」

 

その後もクーとフェリスを交えてダイアゴン横丁での予定を立てていく。

ここだけは闇の帝王の闇さえ影響がない平和な日常が流れていた。




世間的にはお辞儀の勢力が優勢です。
実際に騎士団と闇祓いには多数の死者、対して死喰い人はほぼ損害ゼロ。

そしてお辞儀もレオ対策として色んな事を試行錯誤中です。
死者だけでなく行方不明者が多いのはそのせいです。

対してテイラー家+ハーマイオニーは平和です。
お辞儀としても今のまま戦いを挑めば負けると確信してるので特に何もしていないです。

それでは次回お楽しみ。


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74. ダイアゴン横丁での再会

ハリポタの二次創作は本当にいろいろだなと改めて思った。

オリ主がいることでハリーや仲間がレベルアップもダウンもする。
オリ主の寮がどこかでも違ってくる。
クロスオーバーもまた良いものである。

まぁ、なんだ。
まだまだハリポタ二次創作は続けていこうと思った。

ちなみに次回作は二つほど考えてます。気が早いですけどね。

それでは74話どうぞ。


レオ、ハーマイオニー、クー、フェリスはダイアゴン横丁に足を踏み入れた。

そこは去年までのダイアゴン横丁とは様変わりしていた。

多くの店が閉店しており、営業していたとしても商品が少なかったり、店員が生気が無かったりと酷い有様の店も少なくない。

 

「活気が無いわねぇ。せっかくみんなでお出かけなのに。」

 

「仕方ありませんよ。連日嫌になる話ばかりですしね。」

 

「とりあえずグリンゴッツでお金を引き出してこよう。その後は必要なものを揃えてウィーズリー双子の悪戯用品専門店だね。」

 

一行はグリンゴッツに向かう。

グリンゴッツは他の店に比べると全く変わったようには見えない。

グリンゴッツで働く小鬼たちにとってはどちらの陣営が勝とうが勝った方と取引するだけだと考えているのである。

 

テイラー家の金庫から必要な分だけ金貨を引き出して戻ってきた。

ちなみにテイラー家はそれなりの歴史がある家ではあるがそこまで裕福では無かった。

だが、アースキンとレナードの功績によって今現在では聖28一族にも負けないほどの資産が保管されているのである。ここ数年では殺狼薬のおかげで更に増加中である。

グリンゴッツから出ようとしたところで声をかけられた。

 

「レナード!」

 

声の方を向くと絶世の美女が立っていた。

髪は腰まであるシルバーブロンド、深い青色の瞳。数年前より美しさに磨きがかかったフラー・デラクールだった。

 

「久しぶりね! どう相変わらずかしら? ハーマイオニーも元気? そちらのマダムはレナードのお母さまかしらね。初めましてフラー・デラクールと申します。」

 

「久しぶりですね。どうしてここに?」

「久しぶり。相変わらず綺麗ね。」

「初めまして。レナードの母のフェリス・テイラーです。」

 

レオは特に何も変わりなく挨拶、ハーマイオニーは若干警戒しながらの挨拶だった。

フェリスはそんな様子を興味深そうに見ている。

 

「私、グリンゴッツ(ここ)で働いているの。レナードがいるイギリスで働いてみたかったし、フランスの魔法省からの依頼でイギリスの情勢の調査も兼ねてるんだけどね。まぁ、そんなことはどうでもいいわ! 二人は今でもラブラブかしら?」

 

「そうだね。」

「そうよ!」

 

「んー残念ね。彼女に飽きたらいつでも歓迎するわよ?」

 

「今のところそのつもりはないね。それはこれからも変わらないだろうから期待しない方が良いよ。」

 

レオはハーマイオニーを抱き寄せながら堂々と宣言する。

本人としては当然の行動だったが、やられたハーマイオニーには不意打ちであった。

 

「相変わらずねー。はぁ……。言ってみただけよ。あれだけを見せつけられて別れることになってたらぶん殴ってやったわ。それはそうとなんか死んで色々あって人間じゃなくなったって噂だけど本当?」

 

「本当だよ。この体は人間じゃなくなったね。色々と便利になったし予定通りでもあるね。」

 

「そうなのね。まぁ、周りは人間じゃないってだけで色々と変わった目で見てくるかもね。

私もヴィーラの血が流れてるから、それでちょっとあったけどあなたなら大丈夫でしょうね。」

 

その後、しばらく雑談をしていると見知った人がやってきた。

 

「ちょっといいかいフラー。あれ? レオにハーマイオニーじゃないか。」

 

「こんにちは、ビル。そう言えばグリンゴッツ勤務でしたね。」

 

「そうそう。それはそうと君たちとフラーが知り合いとは知らなかったよ。フラー、そろそろ仕事に戻ろうか。その後はデートでもどうだい?」

 

「お断りします! 二人とも聞いてよ! この人、事あるごとに付き合おうだとか、デートしようとかしつこいのよ!」

 

「仕方がないだろう。美しい君に惚れてしまったのだから、後は全力でアプローチするだけさ。」

 

二人は仕事に戻っていった。戻る最中もビルが積極的にフラーにアプローチしているが完全に無視されていた。

外見だけを見れば美男美女でお似合いではあった。

 

 

教科書や教材を買い終えてテイラー邸に転送する。

これで残すは本日のメイン、ウィーズリー双子の悪戯用品専門店だ。

ダイアゴン横丁の一角にあるそこだけは周りと違って活気に満ちていた。

小さな子供にホグワーツ生、更には大人の姿まで確認できる。

店内では悪戯グッズを試すスペースも設けられていてそこは混沌としか言いようのないことになっている。

だけれど、店内の誰もが笑っている。

レオ達が店内に入るとこちらに気が付いた双子が文字通り飛んできた。

 

「ようこそ! 悪戯用品専門店、ウィーズリーウィーズリー・ウィザード・ウィーズへ!」

「レオ、ハーマイオニー! よく来てくれたな! 特別に割引してやるぜ! じっくり見てってくれよ!」

 

店内には様々なグッズがある。

ウンのない人キャンディ、伸び耳、噛みつきフリスビー、パンチ望遠鏡、叫びヨーヨー。

これらはフレッドとジョージが独自に開発したものだ。

蛸チョコ、永久パラシュート、流されるトイレ、ハチャメチャな目、などのフレッドとジョージが考案して開発をレオが協力した商品も人気の様だった。

そんな商品の中で誰もが購入している商品群があった。

それは護身グッズとして造られたアクセサリーだった。

アクセサリー一つにつき防げる魔法に限界はあるが死の呪文(アバダケダブラ)や悪霊の火などといった最上級の呪文以外であれば一発ならば確実に防げるとあって大人気であった。

 

「生産が追い付かないほど注文が来てるんだぜ。」

「最近だと魔法省のお偉いさんや闇祓いに騎士団からも注文が来るようになったんだ。」

「正直、悪戯用品よりこっちの方が売れていてちょっともやもやするぜ。」

「でもこのご時世じゃ仕方がないかな。」

 

しばらく見て回ったレオは開発に関わっていなかったいくつかの悪戯用品を購入した。

悪戯に使うつもりはなくあくまでどういう物なのか解析しようというのだ。

 

「それではこれで帰るよ。次に来れるとしたらクリスマスかな。」

 

「色々あって面白かったわ。ただ今年のホグワーツはこれらを使っての悪戯が流行ると思うとちょっと複雑ね。」

 

「まぁまぁ、優等生のハーマイオニー様。大目に見てくれよ。」

「そうそう俺たちが造ったこいつらでホグワーツや皆が笑顔になるなら良いじゃないか。」

「……今、魔法界は暗い、俺たちの様に家族を亡くして悲しい人がいっぱいだ。」

「でも、だからこそ笑わなくっちゃいけないって思うんだよ。」

 

暗い雰囲気になりかけるが双子はとびっきりの笑顔を見せる。

 

「「ご購入ありがとうございました! そいつらを使ってみんなを笑わせたのなら次回以降サービス! ぜひまたのご来店をお待ちしております!」」

 

レオもハーマイオニーも笑ってウィーズリーウィーズリー・ウィザード・ウィーズを後にした。

 

 

レオ達四人がフローリアン・フォーテスキュー・アイスクリームパーラーでアイスを食べているとまたもや知った顔に遭遇した。

 

「あれトンクスじゃないかしら? 誰か知らない子を連れているけど親戚かしらね。」

 

レオがそちらを見る。『眼』で視たところ見た目と中身が違っていた。

 

「まぁ、親戚ってのも間違ってないね。あれはドラコ・マルフォイだ。ポリジュース薬での変身だろう。」

 

トンクスがこちらに気が付いてやってきた。変身したドラコ・マルフォイも付いてくる。

 

「やっほー。元気? 私は現在、一応任務中かな。この子のホグワーツの準備に必要なものを買ってたところ。あ、多分分かってると思うけど、この子はドラコ・マルフォイね。」

 

ドラコはぺこりと頭を下げるだけだった。

 

「買い物だけなら本人は必要ないのでは?」

 

「あー、まぁそうなんだけどね。マルフォイ一家は裏切り者ってことであの人から狙われていてね、ほとんど外には出れてないの。流石に可哀そうだなーって思ったから変身させて気分転換に外に連れ出したの。一応この子とは親戚だしね。」

 

買い物がまだということで二人は買い物に戻っていった。

レオ達も今日はもうダイアゴン横丁に用事はないのでテイラー邸に戻ることにした。

ホグワーツの準備も終え、レナード・テイラーの六年目のホグワーツが始まろうとしていた。




ダイアゴン横丁での一日でした。

小鬼たちは人間たちのいざこざは無視です。ただ被害がでるようなら勝てる方に与します。

フラー・デラクール再登場。
レオの影響でビルとは付き合っていません。頑張れビル!

双子の悪戯用品専門店。
防護グッズが人気なのは仕方がないとしても複雑な二人。
ウンのない人キャンディ、伸び耳、噛みつきフリスビー、パンチ望遠鏡、叫びヨーヨーは原作等に出てきた商品。
その他のレオが関連した商品の効果は以下の通り。
蛸チョコ……そのまんまタコ型のチョコ。ぬめりや吸盤の吸着も再現。味はチョコ。
永久パラシュート……これを装着してパラシュートを開くと一定時間(1時間)上空から落ちる幻覚を見る。現実での経過時間は数秒なため実害はない。
流されるトイレ……便座をこのグッズと入れ替えると流した本人も流される。流された人には保護がかかるので清潔は保たれる。下水まで到達すると巻き戻ってトイレから排出される。
ハチャメチャな目……目薬タイプ。目につけると眼玉がぐるぐるランダムに動き回る。

トンクスとマルフォイ。
マルフォイ家はお辞儀を裏切ったので狙われている。
現在は容易には外に出られないためほとんど騎士団管理の建物で缶詰。
トンクスはそれを不憫に思って連れ出した。もちろん許可は得ている。

それでは次回お楽しみ。


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75. ホラス・スラグホーン

これを書いている時点でもうすぐ通算UA100万! マジかよ……。
ここまでこれたのも皆さんのおかげです。ありがとうございます!

それでは75話どうぞ。


キングス・クロス駅 九と四分の三番線

例年通りホグワーツ行きの赤い蒸気機関車が出発の時を待っている。

乗り込んだ生徒たちと保護者との別れの挨拶がいたるところで行われているがいつもと違って悲壮感が漂っていた。

まるで子供たちの旅立つ先があの世であるかの様である。

 

保護者達は愛する我が子が自分の元を離れてしまうことを恐れている。

ホグワーツがいかに安全な場所であると言っても、ダンブルドアが今世紀最高の魔法使いで例のあの人が唯一恐れた人物であろうとも、優れた魔法使いである教師が大勢いるとしても、不安が消え去ることが無い。

例のあの人の影響はますます増している。それにダンブルドアがあの人と敵対しているならばそんな人物がいるホグワーツが狙われるのは必然、安全であると言えるのだろうか? そんな風に思えてならない。

 

対して送り出される新入生以外の子供たちは全く逆の事を思っていた。

ホグワーツはイギリス一、いや世界一安全な場所であると確信しているのである。

身の安全を心配するのはむしろホグワーツにいない親たちの方であると本気で思っていた。

子供たちはなぜホグワーツが安全であると信じ切っているのだろうか? 

ダンブルドアがいるから? 教師たちが優秀? 城の頑強な守り? どれも違う。

 

レナード・テイラーがいるからである。

 

大人たちもレナード・テイラーを知っている。

だが、認識としてはすごい魔法研究家ぐらいのものだ。

直接その目で見て、感じている子供たちにとってはレナード・テイラーという存在がどのようなものか理解しているのである。

あの人も恐ろしい存在ではあるが、あくまで闇の魔法使い、人間なのだ。理解の範疇にいる存在なのである。

 

対してレナード・テイラーは最早理解不能の存在、人外の何かなのだ。あれには誰も敵わない。

そんな存在がいるホグワーツに死喰い人(デスイーター)や闇の魔法生物が攻め込んできたとしても恐れる心配はないとホグワーツ生は知っているのである。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

そんなある意味闇の帝王ヴォルデモート以上に恐れられているレナード・テイラーはというと。

恋人(未来の嫁)、ハーマイオニー・グレンジャーと最高傑作()のクーと一緒にコンパートメントでくつろいでいた。

レナード・テイラーを知らない人間がパッと見ただけでは平凡なこの男子生徒がそのような恐ろしい存在だとは到底思えないだろう。

今もコンパートメントでの過ごし方など他の生徒と大差ない平凡なものだった。

恋人と談笑して、昼食を食べて、読書をする、ただそれだけである。

 

ホグワーツまでの旅路も半分を過ぎたころ、レオたちのコンパートメントの扉が開かれた。

そこにはレオたちと同学年レイブンクロー監督生のパドマ・パチルがいた。

 

「こんにちは、レナード。ハーマイオニーにクーも。」

 

「こんにちは。どうしました?」

 

「えーと……。あなたの事を呼んでいる人がいてね。これ招待状。大丈夫だったら来てもらってもいいかしら? あ、ハーマイオニーとクーも一緒でも良いみたいよ。」

 

「相手は誰だろう? ああ、スラグホーンさんか。」

 

「その人、新しい教師らしいわ。監督生だからって伝書梟代わりに選ばれたってわけ。それじゃあ見回りに戻るわ。またね。」

 

パドマは用件が済んだらすぐに出て行ってしまった。やはり少しレオの事を怖がっているかのような対応だ。

レオ本人やハーマイオニーとクーはそんな事気にも留めずに招待状を見ている。

 

「スラグホーンって凄腕の魔法薬師だっけ? 確かレオも面識があるのよね。」

 

「ホグワーツ入学前に一緒に何度か魔法薬について研究したことがあるね。ホグワーツに入学してからも殺狼薬を創った時とか何度か手紙でやり取りをしてる。新任の教師ってことは今年の魔法薬学の教師かな。スネイプ先生はどうするんだろうか。まぁ、いいか。それで、どうする?」

 

「せっかくの招待だから行ってみたら?」

 

「よし。行ってみようか。」

 

三人はスラグホーンの待つ先頭車両に向かった。

前二つの車両は監督生と主席、乗務員専用の車両になっている。

先頭車両のコンパートメントは普通のコンパートメントと比較してかなり広かった。

物理的にも当然広いが、魔法によって空間が拡張されている。

スラグホーンのいるコンパートメントの中は小規模なパーティーのような感じであった。

レオ達が扉を開けると中にいる全員が注目した。どうやら最後の到着だったようで中にはすでに十数人ほどの生徒がいる。

各寮の監督生、成績優秀な生徒、聖28一族に属する生徒、ハリー・ポッターなどだ。

中に入ると奥で座っていたスラグホーンが立ち上がって熱烈に歓迎してきた。

 

「ほっほう! レオ! 待っていたよ、よく来てくれた! さぁ、中に。」

 

どうやらスラグホーンにとって今回の主賓はレオのようだ。

 

「よしよし。これで招待した生徒は全員揃ったな。おほん! 改めて自己紹介しよう。ホラス・E・F・スラグホーンだ。今年からホグワーツで魔法薬学を皆に教えることになった。

ここにいる君たちは優秀だと聞いているよ。私はそんな君たちと仲良くなりたいのさ。

さぁ、紅茶もお菓子もたっぷり用意した。ホグワーツまでの短い時間だけど楽しくお茶会といこう。」

 

スラグホーンの話が終わり、皆紅茶を飲んだり、お菓子を食べたり、近況を話し合ったりと好き行動をとり始めた。

スラグホーンは生徒一人一人を巡って話をしている。生徒によって簡単な挨拶だったり、すぐ興味なさそうにしたり、熱烈な興味を持った視線を送ったりと様々だった。

そして最後にレオたちの元にやってきた。

 

「レオ! 久しぶりだね! 直に会うのは七年ぶりかな? いやまた君と一緒に魔法薬に携われるなんて最高じゃないか。長生きはするものだな。」

 

「お久しぶりですスラグホーンさん、それとも先生とお呼びした方が良いですかね?」

 

「気軽にホラスでも構わんよ。そしてこちらが君の恋人のハーマイオニー・グレンジャーさんかな?」

 

「初めましてスラグホーン先生。レオの恋人のハーマイオニー・グレンジャーです。」

 

「君も非常に優秀だと聞いているよ! 私はそういった子が大好きだ。さぞや名のある魔法使いの血が流れているんだろう。」

 

「スラグホーン先生、ハーマイオニーはマグル生まれですよ。」

 

「なんと! いや、失礼。まさかマグル生まれとは思わなかったんでな。私が前にもホグワーツで教師をしていた時もそういった生徒はいたが非常に稀だったのでね。」

 

「魔法使いの力量にマグル生まれかどうかはそこまで重要ではないですよ。まぁ、親族に魔法使いがいる方がもともとの魔力量への影響はありますけど、大昔の最初の魔法使いもマグルからの突然変異でしょうからマグル生まれかどうかよりは本人の資質と努力などが重要でしょうね。」

 

「すまんすまん。グレンジャーさん、マグル生まれでも歓迎するよ。さて、二人の後ろで控えているメイドガールが、レオの最高傑作の魔法生物なのかね?」

 

「お初にお目にかかります。レナード様が創り出した魔法生物、名をクーと申します。」

 

スラグホーンは興味深そうに観察している。レオとクーに許可を取って触って調べ始めもした。クーの構成する要素や能力を聞いて驚愕と共に上機嫌にもなった。

 

「いやいや、凄まじいな。やはり君は天才などという言葉では言い表せないほどすごい!

噂では君自身も既に体を作り変えたと聞いたが、真かね?」

 

「はい。永遠に魔法を研究するには人の肉体では限界がありましたので。」

 

「うんうん。ホグワーツに戻る決心をしてよかった! ダンブルドアに頼まれたんだが、君がいるというのが最大の決め手だったんだ。それじゃあ、楽しんでいってくれ。」

 

その後はまたスラグホーンは生徒たちとの交流に戻っていった。といっても一週目で目をつけた生徒ばかりではあったが。

 

スラグホーンと入れ替わってハリー・ポッターとロン・ウィーズリーがレオ達に近づいてきた。

 

「テイラー、聞きたいことがある。」

 

「何です?」

 

「僕たちはヴォルデモートに勝てるのか? どうなんだ?」

 

「さぁ? どっちも勝つ可能性はあるのでは?」

 

「おい! どっちなんだよ!」

 

「正直、興味がないってのが本音ですね。ただヴォルデモートがこちらを害するのであれば容赦はしませんよ。」

 

聞きたいことはそれしかなかったのかすぐにレオ達から離れていく二人。

もうすぐホグワーツに到着するとアナウンスがありパーティーも終了する。

 

レナード・テイラーの六年目のホグワーツ生活が始まろうとしている。




いつもの様に列車でホグワーツへ。

保護者はホグワーツに子供を行かせたくないけど子供たちは絶対に行きたい。
認識の差は大きいですね。
ちなみに今回ちょっと登場したパドマは原作では家に連れ戻されてましたけどその可能性はなくなりましたね。

スラグホーン登場。
気に入った生徒をコレクション感覚で愛でる人。もちろんレオが最もお気に入り。
過去に一緒に研究してレオの事をどういった存在か理解しているので人外化も受け入れた。
ホグワーツに戻る理由としてはレオがいることが大きい。

それでは次回お楽しみ。


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76. 呪われた腕

100万UA突破! ありがとうございます!

それはそうとしてもうすぐバレンタインですね。
番外編としてそういったイベントの話を書くのも面白そうだなと思います。
まぁ、本編終了してから書く感じになるかなと。

それでは76話どうぞ。


赤い蒸気機関車はホグズミード駅に到着した。

新入生以外は例年通りにセストラルが引く馬車でホグワーツに向かう。

この夏休みで人の死を見た生徒が多いのかそこかしらでセストラルに驚く声が聞こえてくる。

大広間で新入生の組み分けの儀式を待っている間、レオは今年の研究テーマについて考えていた。

 

(肉体及び魂の不死化は完了。今年はどうしようかな……。アレの強化はほぼ完了したし、近いうちに性能実験をしなくちゃ。力を解放したくてたまらないって感じだしな。

後は……そうだなぁ……、時間や世界、運命、宇宙、色々あるけどどうしようかな。)

 

レオの頭の中で色んなテーマが浮かんでは消えていると、大広間の扉が開きマクゴナガルに連れられて新入生が入ってきた。

人数は例年と比較すると若干少なく感じた。やはり親たちがホグワーツへ行くことを拒んだのだろうか。

 

組み分け帽子は今年も団結を呼び掛けることをしたが、それ以外は特筆することも無く無事に組み分けの儀式は終了した。

ダンブルドアが立ち上がって話し始める。

 

「さて、全員が料理を待ちくたびれているとわしは確信している。さぁ、思いっきりかっ込もう!」

 

その言葉と同時にテーブルの上の全ての更に料理が出現した。

レオの周りの生徒もそれぞれ好きな料理を自分のところに取り分けるがレオはダンブルドアを見ていた。

 

(あの右腕……強力な呪いだ。保護魔法を施した包帯で拡散を防いでいるけどこのままでは後一年も命はないだろうな。ダンブルドアの力でもああなったってことは相手はヴォルデモートかな? まぁ、いいや。僕も食べよう。)

 

 

生徒全員が料理を楽しみ、デザートも満足するまで食べ終えた。

皿の上が綺麗になくなりダンブルドアが再び立ち上がって話し始めた。

 

「皆思う存分食べたことじゃろう。新入生の諸君も楽しんでくれたのなら幸いじゃ。さっさとベッドに入って夢の世界に旅立ちたいとは思うが、その前にこの老人の話をいくつか聞いて欲しい。まず初めに禁じられた森には生徒は立ち入り禁止じゃ。三年生以上にはホグズミード村へ行くことが許可される。それと、管理人のフィルチさんから耳が痛くなるほど伝えるように言われたのじゃが、ウィーズリー・ウィザード・ウィーズという悪戯用品専門店で購入したグッズは防護品以外は校内への持ち込みは禁止じゃ。」

 

フレッドとジョージの悪戯用品専門店は既にホグワーツにまでその名が届いているようだ。

ダンブルドアはああ言ってはいるが恐らくほとんどの生徒が既に持ち込んでいるだろう。

 

「各寮のクィディッチチームへの入団は寮監へ届けること。そして最後に今年度は新しい先生をお迎えしている。紹介しよう、ホラス・スラグホーン先生じゃ。」

 

ダンブルドアの紹介でスラグホーンが立ち上がる。

生徒たちは興味深そうに見ている。

 

「皆、初めまして。ホラス・E・F・スラグホーンというものだ。以前ホグワーツで魔法薬学を教えてはいたが随分前に引退していたのだが、ダンブルドア校長の熱烈な勧誘と新しい優秀な世代と共に学ぶことの誘惑には勝てなかった。今年度から魔法薬学の神髄を教えていくから楽しみにしておいてくれ。」

 

スラグホーンは笑顔で着席する。

生徒たちは拍手をするが困惑顔だ。

魔法薬学と言えばスネイプが担当していたはずだ。

それが変わるということはスネイプが厄介払いされたのか?

でも相変わらずスネイプは他の教師と一緒に教員テーブルにいる。

ざわついている大広間で三度ダンブルドアが話し始めた。

 

「さて、皆の疑問に答えるとしよう。今年度からスネイプ先生には闇の魔術に対する防衛術を担当してもらうことになった。そして呪文学のフリットウィック先生なのじゃが色々あって怪我をなさっての。ああ、心配無用じゃ、怪我はすでに回復しておる。だが、そろそろ歳ということで代わりの者を推薦してもらったのじゃ。皆もよーく知っておる人物じゃ。

……今年の呪文学の教師にはレナード・テイラー君が務めることになった。」

 

大広間のざわつきはさらに増大する。

レナード・テイラーが教師をするのは別に構わない。むしろ今までの防衛術とは違い呪文学で学ぶ魔法はその種類が多く、レナード・テイラーのオリジナル魔法を学べる可能性もあってレイブンクロー生を中心に勉強熱心な生徒にとっては大歓迎である。

しかし、闇の魔術に対する防衛術の教師がよりにもよってスネイプだとは誰が予想していただろうか。

確かにスネイプは卓越した魔法の技術を持っているかもしれない。多くの闇の魔術を知っているのかもしれない。

それでも今までの授業が酷いものであったので闇の魔術に対する防衛術も同様なものになることは分かり切っていた。

ハリーやロンを代表とするグリフィンドールはスネイプへ嫌悪の感情を隠そうともしていない。ハッフルパフやレイブンクローもいい顔をするはずがない。

 

「さぁ、連絡すべきことは終わった。ふかふかのベッドが皆を待っておるじゃろう。監督生の指示に従って各寮に戻るように。それでは良い夢を。」

 

それぞれの寮へ監督生が引率していく。

レオ達も研究室へ戻ろうとしたところダンブルドアたちに呼び止められた。

そうして生徒と教師がいなくなった大広間にはダンブルドアに、レオとハーマイオニーにクーだけが残る。

 

「レオ、残ってくれてありがとう。わしが現在どういった状態か当然分かっておるじゃろう。」

 

「ええ。処置をしなければ余命一年あるかどうかでしょうね。」

 

レオはハッキリと告げる。

ダンブルドアは当然知っているので冷静であったが、ハーマイオニーは驚く。

 

「その通りじゃ。だが、今わしが死ぬわけにはいかない。闇の力は日々強大になっておる。このままではヴォルデモートを打ち破る力が育つ前に潰されてしまうだろう。

……わしはもうなりふり構わないことに決めた。レオ、お願いがある。この呪いを解いてはくれんか。もちろん無償ではない、世に平穏が戻ってからでなら何でもしよう。」

 

レオは考える。ダンブルドアから得られるものは何であるかを。

しばらく考えたが結局はいつも通りだった。

 

「では二つほど……まず、僕の研究の邪魔をしないこと。次にダンブルドア校長の知っている知識・情報の全てを教えてください。魔法、呪文、魔法薬、魔法生物、魔法具、その他全てを闇とか関係なく隠さず提供してください。まぁ、自由に研究させてくださいということですね。」

 

「分かった。魔法界の闇が払われたならわしの全てを教えよう。」

 

「契約成立ですね。それではさっそく治してしまいましょう。呪いはどういう経緯で受けたのですか?」

 

「ある品を手にとってのう。今思えば迂闊で愚かな行為じゃった。」

 

「それはまだありますね? 見せてください。」

 

ダンブルドアは懐から壊れた指輪と黒い石を取り出した。

 

「それは……。交信用の魔法具? でも、いや、先は……? ……まさか!」

 

「気が付いたようじゃな。この石がはめ込まれていた指輪はゴーント家に代々伝わっていた物じゃ。ヴォルデモートはスリザリンの血筋であるゴーント家の物と言ことからこの指輪を分霊箱(ホークラックス)にしていた。それを破壊するときにこの石の誘惑に負けてつい指に嵌めてしもうた。その結果このありさまじゃ。」

 

包帯の一部を取り皮膚を見せる。黒くまるで焼け焦げたかのような皮膚がそこにはあった。

 

「そんなことはどうでもいいです。それよりその石は死者、あの世との通信するための魔法具だ。それはいったい何です?」

 

「これは死の秘宝の一つ、『蘇りの石』じゃ。君の言った通り死者を呼び出して会話することができる。ヴォルデモートはこれについては知らなかったのじゃろう。だから指輪自体を分霊箱にしたと考えられる。」

 

「死の秘宝……。おとぎ話ではなく実在したということですか。先ほどの条件に一つ追加です。それも研究対象にします。」

 

「良いじゃろう。わしが持っていても意味がないものじゃ。」

 

レオは『蘇りの石』を受け取る。新学期が始まってすぐにこんなものを手に入れられるとは運が良い。

 

「それでは気を取り直して治しましょう。指輪に残っている残滓は解析しました。ダンブルドア校長、腕の包帯を取ってください。切断します。」

 

ダンブルドアは腕の包帯を取る。同時に呪いが体への浸食を進めるがその前にレオが腕を切り飛ばす。ダンブルドアへは同時に麻酔も施したので痛みはないはずだ。

切り落とした腕が無残に崩れ去り、その残骸から呪いが具現化する。黒い霧となってダンブルドアの体に再度侵入しようとするがダンブルドアの前に立ったレオに阻まれる。

呪いはターゲットをレオに変更して襲い掛かる。何の抵抗もなくレオは呪いを受け入れる。

 

「ふむ……。体組織の劣化と体力の減衰、単純強力だけど内容はその分結構シンプルだな。憑りついた相手の魔力で死ぬまで呪いが続く点は面白い。さて解析したし用済みだ。」

 

ダンブルドアを苦しめていた呪いも不死の身体と魂を持つレオには無意味であった。

『眼』で解析し、すぐに解呪されてしまう。

 

「終わりました。腕については後日、改めて創っておきます。それではおやすみなさい。」

 

呪いについてはすでに興味がなくし、蘇りの石や他の事へ興味が移っているレオ。

ハーマイオニーとクーを連れて自分の研究室へと帰っていった。

 

「ありがとう、レオ。おやすみ。」

 

今世紀最高の魔法使いと言われている自分が死を待つばかりだった呪いがああも簡単に無効化される。ダンブルドアは改めてレナード・テイラーの恐ろしさを実感した。

同時に何が何でも、どんなことをしても機嫌を損ねないことを固く誓った。




スラグホーンは魔法薬、スネイプが闇の魔術に対する防衛術と原作通り。
呪文学がフリットウィックからレオに変更。
騎士団の任務で負傷したのと高齢を理由に交代、それとフリットウィックもレオの教える呪文学に興味があったのが理由です。
レイブンクローの寮監はダンブルドアが代理としています。

ダンブルドア、手段を選ばなくなる。
現状は闇の勢力に対して劣勢が続いているのでここで死ぬわけにはいかないのでレオに頼んで延命しました。対価は蘇りの石。
今回は自身だけを治療しましたが他の騎士団員を治すことをしなかったのはあまりいっぺんに頼みごとをして機嫌を損ねることをダンブルドアが恐れたためです。
普通に頼めば感知してくれたのですけどダンブルドアが慎重になりすぎた。

レオ、死の秘宝の一つをゲット。
死後の世界との通信……つまり死後をレオが認識することになります。

それでは次回お楽しみ。


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77. それぞれの授業

最近ハーマイオニーとの話をあまり書いてない気がする。
どこかで無理やりねじ込むか……?
いや、さっさとお辞儀を滅ぼして7年目は平和なイチャイチャ学園生活にするか!

まぁ、プロット段階で6年目から本格的に闇の勢力が勢いずくから必然的にシリアス成分が増すことになるんですけどね。

それでは77話どうぞ。



始業式の次の日。

さっそく授業が始まる。

レオ達六年生からはN.E.W.T試験、通称イモリ試験に向けての授業が始まる。

この授業には昨年のO.W.L試験に合格が必須条件だ。

そのため必然的に授業を受けられる生徒数が減るためほとんどの授業が全寮合同で行われるのである。

レナード・テイラーによる強化によって生徒たちの学力は上昇しているため平年よりは人数が多くなっているがそれでも合同で行うことには変わりはなかった。

 

厳しくも確実に実力が付くマクゴナガルの変身術。

実習も多く注意点も分かりやすく説明するスプラウトの薬草学。

相変わらず何を言っているか意味不明な占い学。

安全完備、美しいものから珍しいものまで幅広く学べる魔法生物学。

その他のマグル学、古代ルーン文字、数占い、といったいつもの授業が生徒たちを待っている。

しかし、今年は担当者が新しくなった授業が三つもある

ホラス・スラグホーンが担当する魔法薬学。

セブルス・スネイプの長年の望みが叶い、ついに教えることになった闇の魔術に対する防衛術。

そして、レナード・テイラーによる呪文学。

このうち魔法薬学と呪文学について、生徒は何も心配していない。

 

昨年までの魔法薬学はスネイプによる理不尽が凝縮されたような授業であった。

ネビルを代表とするスネイプに恐怖や苦手意識を持っている生徒とハリーなどのスネイプに目をつけられている生徒などは酷いものだった。だからこそスラグホーンに代わることでスネイプより悪くなることは想像できないのだった。

 

呪文学は長いことフィリウス・フリットウィックが担当しており、スネイプと違って授業は面白く不満に思っている生徒は皆無であったのだが、レナード・テイラーが教えることでどんな授業に変貌するのかとワクワクしている生徒が大多数だ。

 

対して闇の魔術に対する防衛術は始まる前から期待は絶無であった。

闇の魔術に対する防衛術。

これはその名の通り闇の魔術から身を護る術を学ぶ教科である。

闇の魔術に敵対することから長い間呪われた科目と言われ、多くの教師が交代することになっていた。

闇の帝王が寄生していたクィレル・クィリナス。

他人の功績を横取りしていた無能な詐欺師、ギルデロイ・ロックハート。

狼人間から解放されたリーマス・ルーピン。

あらゆる魔法を統べる人外の領域に達したレナード・テイラー。

そして今年からは元死喰い人(デスイーター)で闇の魔術を深く知るセブルス・スネイプ。

昨年までのレナード・テイラーの授業が好評だったためこの授業を好きになった生徒が多かった。それに今の闇の脅威が身近になった魔法界では力を特に入れる必要がある授業である。

それなのにスネイプに交代とはどういったことなのか? スネイプがまともにスリザリン以外を教えるのか? まともに力を得られるのか?

生徒はダンブルドアの判断に疑問に思っていた。

 

そんな生徒の様々な思いとは関係なく授業が始まろうとしている。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

まずは魔法薬学の授業。

レオとハーマイオニーが教室に入ると既にスラグホーンが生徒たちを待っていた。

レオやハーマイオニー、ハリー・ポッターなどを熱烈に歓迎していた。

 

「さーて、皆、授業を始めようか。道具一式と教科書を準備しておくれ。」

 

「先生、僕たち教科書を持っていません。N.E.W.Tの授業が取れるとは思っていなかったので……。」

 

ハリーが正直に話す。隣にいるロンも頷いている。スリザリン生以外には何人かそういった生徒たちがいるようだ。

 

「ああ、そうだったね。マクゴナガル先生から聞いているよ。なーに心配は無用だよ、ハリー。」

 

スネイプは『優』以外の生徒は教えないとハッキリと言っていた。

だが、担当が変わったことでそれ以外の生徒も希望するならば授業を受けられることになったのだ。

スラグホーンはそれを考慮して貸し出し用の道具と教科書をしっかり準備していた。

 

「さぁさぁさぁ、授業開始だ。こいつらを見てごらん。」

 

スラグホーンの前にはいくつかの鍋やフラスコが並んでいる。

水のように澄んだ色、真っ黒なもの、無色透明、薄いピンク、粘度のある乳白色、そして黄金、様々な液体が並んでいる。

 

「ここにあるのは全て強力な魔法薬だ。N.E.W.T試験をクリアすれば皆もこういう魔法薬を作れるようになる。さて、これらが何か分かる子はいるかな? ああ、もちろんレオ以外でだよ。」

 

レオが答えられるのは当然としてその他の生徒に答えを求めるスラグホーン。

挙手をしたのはハーマイオニー唯一人であった。

 

「水のように澄んだ色の液体は生ける屍の水薬、強力な眠り薬です。

真っ黒な泥のようなものはポリジュース薬、他者に変身することができます。

しかしこれは精製が不十分で途中段階です。

無色透明の液体は真実薬、最高の自白剤です。

薄いピンクは愛の妙薬、惚れ薬です。色から察するに大分効果は薄めですね。

粘度のある乳白色は幸福薬、飲むと幸せな気分になり、吸魂鬼の影響を防げます。

最後に黄金液体、フェリックス・フェリシス。別名幸運の液体。この中では最も複雑な魔法薬です。」

 

「素晴らしい! まさか全てを答える生徒がいるとは! いやはや恐れ入った! レオが恋人にするだけはあるということだ。グリフィンドールに20点あげよう。」

 

スラグホーンはハーマイオニーの予想以上の能力にすっかり上機嫌になった。

 

「これらはミス・グレンジャーが説明した通りのものだ。もっと詳しく知りたい、魔法薬を極めたい者はそのうち私が主催するクラブへご招待しよう。さて、これらの内好きな魔法薬を今日の授業の褒美としよう。とは言ってもフェリックス・フェリシス以外に選択肢はないだろうがね。」

 

教室にいたレオとハーマイオニーを除く生徒が目を輝かせた。

幸運というものは誰もが欲しがるものだろう。生徒たちはスラグホーンの言葉を一言一句聞き逃さないように集中している。

 

「さぁ、上級魔法薬の10ページを開いて『生ける屍の水薬』の項目を読んでみようか。残り時間でこの魔法薬を最も完璧に仕上げた者にこの幸運の液体を与えよう! 始め!」

 

生徒たちは一斉に鍋に向かって魔法薬の作成に取り掛かった。

N.E.W.T試験ともなると魔法薬の難易度も格段に上昇する。

殆どの生徒は悪戦苦闘し、作業も思うように進んでいない。

それでも丁寧に確実に教科書通りに作っていけばしっかりと完成できるようになっている。

今の生徒が使っている「上級魔法薬」には大幅な改訂があったのだ。

数年前にレオとスラグホーンが共同で研究を行った結果、多くの魔法薬、特に難易度の高いものはその作り方に革新が起こった。

そのため今の教科書は前ほど難しい作業が減っている。それでも難易度が高いことには違いがないが。

 

(さてさて……。うんうん。こっちの子は良い出来だ。ああ、あの子はダメだな。ハリーはどうだ? ほっほう! 古い教科書なのによくやっている。まさか自身で工夫を編み出したのか? 確実に母親の才能を受け継いでいる。)

 

スラグホーンは生徒たちの鍋を見て評価していく。時には注意やアドバイスをすることも忘れない。

そして最後にレオとハーマイオニーのそばにやってきた。

ハーマイオニーはすでに魔法薬を仕上げてあった。

 

「素晴らしい! まさかこの短時間に仕上げてしまうとは! 紛れもなく今日の勝利者は君だ、ミス・グレンジャー!」

 

日々レオと一緒に研究をしているハーマイオニーにとっては教科書の情報でさえもはや過去の情報なのだ。

ハーマイオニーの出来に最高の気分なスラグホーンは隣にいるレオの鍋を見た。

さぞ素晴らしいものが完成していると思ったが、予想に反して鍋は空だった。

代わりに各材料に何やら魔法を使っているようだ。

 

「おや? レオ、もしや今更こんな魔法薬など作る必要がないということかい?」

 

「いえ、少し研究中の魔法がありますのでそれで作ってみようかと。」

 

レオが最後の材料に魔法を施す。スラグホーンもそれをまじまじと見つめている。

 

イクスミセント(抽出・調合せよ)。」

 

魔法薬の材料が浮き上がり、必要な成分だけが抽出され空中で混ざり合う。

そうして出来上がったものが瓶の中に入りあっという間に魔法薬が完成した。

 

「うーん……。一応できているけど、まだまだだな。改良の余地ありだ。」

 

「今のは何だい? まさか魔法だけで魔法薬を作ったのかね?」

 

「まだ未完成なので完成したらお教えします。」

 

「そうか、楽しみにしているよ!」

 

その後、続々と魔法薬を完成させる生徒が現れるが完成度は圧倒的にハーマイオニーが上であった。フェリックス・フェリシスはハーマイオニーが手にすることになったが今までのスネイプの授業と比べて楽しいものだったのは言うまでもない。

 

 

次に闇の魔術に対する防衛術

生徒を前にしたスネイプは上機嫌だった。念願の防衛術を教えることがそれだけ嬉しいのだ。

 

「闇の魔術、これほど強力無比にして恐ろしいものはない。死、磔、服従は言うに及ばず、悪霊の火や他にも様々なものがある。まさに変幻自在にして狡猾な悪魔のような存在だ。我輩の使命はそんなモノから身を守れる術を諸君らに授けることだ。」

 

スネイプの演説はそれ以降も五分ほど続いた。それだけ闇の魔術に対して語りたいことがあったのだろう。闇の魔術が脅威だということは伝わるが褒めている部分も多分にあった。

 

「さて、ここにいる諸君らは非常に優秀なのだろう。なにせN.E.W.T試験を受ける資格があるのだからな。そんな君たちには簡単だろうが、これから学ぶのは無言呪文だ。」

 

昨年度のレオの授業でも取り扱ったものだが、かなりの上級者しか成功していない。

一通りの説明の後、各自が無言呪文を発動させようと必死になる。

成功したのはレオやハーマイオニーなどほんの一握り。

 

「我輩は非常に失望した。まさか、ここまでできるものが少ないとは。成功しなかった者は無言呪文について羊皮紙二枚分のレポートを次回までに提出だ。」

 

結局、魔法薬学から変わってもスネイプはスネイプであった。

今回もグリフィンドールから減点し、スリザリンに加点するというおなじみの光景であった。

 

 

最後の呪文学。

今年からの授業ではこの呪文学を生徒たちは一番楽しみにしていた。

レナード・テイラーはどんな魔法を教えるのか? 見たことも無いようなものなのか?

何かまたやらかすのか? 等々様々な事を考えていた。

教室にいる全員の視線を受けながらレオが話し始める。

 

「まず初めに、皆さんに質問があります。何を学びたいですか?」

 

いきなりの質問にしばし間があったが、何人かが答える。

 

「こっちでも防衛術を教えてください!」

「役立つもの!」

「助けになるものが良いわ!」

 

「ふむふむ……。実を言うと今の魔法界の現状を考えて防衛術とは違った観点から身を守るのに役立つ魔法を教えて欲しいとダンブルドア校長に頼まれいます。皆さんの要望とも合致しているのでその方向で授業は進めましょう。とりあえずこれらについて学んでいきましょう。」

 

レオは黒板に学ぶリストを書いていく。

・通信魔法……初期:個人間、最終目標:広範囲複数人同時

・索敵魔法……初期:数メートル四方、最終目標:ホグワーツ全域、敵味方判別可能

・治癒魔法……初期:簡単な傷の治癒、最終目標:骨折、重度の火傷、内臓損傷レベルの治癒

・身体強化魔法……初期:単純な強化、最終目標:身体機能+五感強化、繊細なコントロール

・魔力操作……適正者のみ指導

・目くらましの術……習得必須

・姿くらまし、姿現し……習得必須、早期習得者にはホグワーツ内での使用や発動速度強化

・飛行魔法……身体強化魔法をある程度習得後

・開心術、閉心術……習得必須

 

「ざっとこんなところですね。これらは日常でも非日常でも役立つ魔法なので覚えておいて損はないはずです。今日は僕がどのような魔法なのかを実践します。その後は各自の適正から判断して習得の順序を決めていきます。それと宿題として、どれか一つで良いのでレポートを作成するように。」

 

レオが選んだ魔法は相手を攻撃したり防御するような魔法だけではない。

しかし、これを知っているのと知らないのでは行動の選択肢に大きな差があるだろう。

ちなみにハーマイオニーは既に全て習得済みである。

生徒たちは闇の魔術に対する防衛術の反動でかなりやる気になっている。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

初日の授業も終わり自室兼研究室に戻るレオとハーマイオニー。

 

「お疲れ様。今年もよろしくね、レオ先生。」

 

「ハーマイオニーもお疲れ様。今年度の授業はどうだったかな?」

 

「闇の魔術に対する防衛術以外は良かったわよ。スネイプはもう少し教え方を変えれば良い先生なんだけどね。

スラグホーン先生は流石に教えるのが上手い印象だったわ。レオは言うまでもなく最高よ。」

 

「ありがとう。そう言えばフェリックス・フェリシスはどうするの?」

 

「んー……。別に使うつもりは今のところはないわ。」

 

「どうして?」

 

「だって……、レオと一緒だからよ。授業でも、食事でも、研究室でゆったりしている時も、ずっとあなたと一緒。それだけで私は幸せよ。それなのに幸運の液体を飲んだら幸せ過ぎてどうにかなってしまうんじゃないかしら?」

 

「僕もだよ。魔法を研究している時も幸福だけど、やっぱり君といる時間は何にも代えられないものだ。」

 

その後もしばらくじっくりと二人だけの時間を楽しんだ。

こうしてホグワーツでの六年目の生活がスタートした。

 

 




スラグホーンの魔法薬学
餌で生徒のやる気を出したりしっかりと指導したりと良い先生だと思ってます。
レオとスラグホーンの共同研究で高難易度の魔法薬の難易度低下してます。
ポリジュース薬が精製途中というのは原作では黒っぽい泥の様なものに身体の一部を入れていましたけどレオが改良して泥を精製することで味の問題はクリアしてます。

スラグホーンが貸し出した教科書も改訂されているもの。
但し、ハリーに貸したのだけ原作同様プリンスの物。なので改訂前。
これはスラグホーンが前の教科書でどこまでハリーがやれるか見たかったため。
結果としてプリンスのおかげで魔法薬を作れたのでリリーの才能を受け継いでると勘違いされました。ちなみにレオ、スラグホーン改訂>プリンス手順です。

スネイプの防衛術
原作と大差なし。しかしスネイプは内心生徒たちの力量の高さに驚いてました。

レオの呪文学
攻撃や防御以外の役立つ呪文を教えることになりました。レオオリジナルも有。
非常時の今だから防衛術としての側面もありますけど、そうでなくても役立つものなのでお辞儀が復活していなくてもあまり教えることは変わらなかったでしょう。

それでは次回お楽しみ。


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78. 帝王の分霊箱

つい先日はバレンタインデーでしたね。

私もたくさんのチョコを貰いました。(現実とは言っていない)

それでは78話どうぞ。


新学期が始まって数週間が経過した。

ホグワーツは平和そのものである。

レオも『蘇りの石』を研究したり、ハーマイオニーの不死鳥化の準備を進めたりと色々な事を同時に行っていた。

そんなある日、レオの元にダンブルドアから連絡が来た。内容は今後のヴォルデモートについて話し合いたいことがあるので次の土曜日に校長室に来て欲しいとの事だった。

 

土曜日は午前中にジニーを中心とした本格的に戦い方を学びたい者が特別授業を受けるためレオの研究室に訪れている。レオも自身の研究成果を教えたり、新しい魔法を試したりと有意義に時間を使っていた。

そして午後、レオはガーゴイル像の前に立って合言葉を言う。

 

「白い〇人」

 

ガーゴイル像が退き、螺旋階段を昇る。

ドアをノックして了承を得てから校長室へと足を踏み入れる。

中には新しい腕もすっかり馴染んだアルバス・ダンブルドアと不死鳥化に欠かせない要素を分析できた不死鳥のフォークス、そしてハリー・ポッターがいた。

 

「よく来てくれたレオ。新しい腕も問題ない、むしろ魔法の精度が上がったようじゃよ。早速じゃがヴォルデモートについての現状と今後について……」

 

「ダンブルドア校長! なんでテイラーもいるんですか!?」

 

「ハリー、今のままでは我々が不利じゃ。彼の力は必ずや必要になって来る。これから話すことには必要不可欠だとわしは考えている。」

 

「でも……。」

 

「邪魔なら帰りましょうか?」

 

「いや、残って欲しい。さて、まずレオはこの記憶を見て欲しい。」

 

ダンブルドアは杖を頭に当て、白銀色の記憶を取り出し憂いの篩に入れる。

そこで再生された記憶を追体験していく。

 

記憶は占い学の教師シビル・トレローニーを面接した時のものだった。

面接も終わりダンブルドアが帰ろうとした時トレローニーが突如として豹変した。

そして今までにないぐらいの力を込めて予言を口にした。

予言を要約するとヴォルデモートを倒す子供が生まれる。

その子にヴォルデモート自身が印を残す。

そしてどちらかしか生き残れない。というものだった。

 

記憶から戻って来るレオ。

ダンブルドアが何かを考えている様子のレオに聞いてくる。

 

「レオ、これが魔法省で保管されていたヴォルデモートに関する予言じゃ。何か気になることはあるかの?」

 

「正直予言の内容は興味ないです。それより、トレローニー先生がああなる条件とか予言の精度は気になりますね。」

 

「トレローニー先生がいつどこであの様になるのかは分からん。わしは時間、場所、予言を告げる相手、そういった条件が全て揃った時だけ力を発揮すると考えている。精度については何とも言えん。だが、わしはこれが限りなく正しいと、ハリーがヴォルデモートに対する切札になりえると思っておる。」

 

「なるほど。是非ともその状態のトレローニー先生と会ってみたいですね。予言については僕はあまり信じていません。あくまで可能性が最も高いものを告げていると思います。その予言を知った者の行動で変わる可能性もあると。まぁ、その変化した行動の結果が予言と一致するのかもしれませんけどね。正直未来のことは知りたくありません。現在の選択肢が狭められて面白くなくなります。」

 

「そうかもしれんのぉ……。だが今はその未来を明るいものにするために君の力を貸してほしい。もちろん対価は用意している、死の秘宝をもう一つ提供しよう。」

 

「受けましょう。」

 

即決であった。『蘇りの石』と同等レベルの魔法具であれば当然の反応だ。

 

「ありがとう。レオはもう知っていると思うが、あやつは分霊箱(ホークラックス)によって不死に近い状態じゃ。完全に滅ぼすには全ての分霊箱(ホークラックス)を破壊する必要がある。」

 

分霊箱(ホークラックス)? ダンブルドア先生、何ですかそれは?」

 

「闇の魔法でも忌むべきものじゃ。己の魂を切り裂き他のモノに封じる。そうすることで本体が死んでも封じられた魂によってこの世に留めることができる。」

 

「それじゃああいつは今のままだと殺せない? 分霊箱(ホークラックス)はどんなものなんですか? どこにあるんですか?」

 

「ある程度の予想はしているが、断言はできん。今までに確認されたのは過去の自分の日記とヤツの血筋の宝の指輪じゃ。レオとハリーはあやつがどんなものを分霊箱(ホークラックス)にしたと思うかの?」

 

「分かりませんね。そういったことを考えるのは苦手ですので。誰にも見つからないようにするならその辺の石ころを分霊箱(ホークラックス)にして海溝にでも放ればいいんではないかと。」

 

「あいつがそんなことするわけないだろ! 僕は何か特別なものを選んでいると思います。由緒ある自分にふさわしいとかいう物じゃないですか? どこにでもあるものを使うとは到底思えません。」

 

「そうじゃろうな。そこで二人にはホラスからあやつと分霊箱(ホークラックス)に関する記憶を貰ってきて欲しい。どうやらホラスはあやつから色々と聞かれたようなのじゃが、それを責められると思ったのかわしには明かそうとはしなくての。ホラスに気に入られている二人なら正確な情報を貰ってこれるじゃろう。その情報を得ればわしの推測は確信となる。」

 

そこで今回の話は終了となりハリーだけ先に戻ることになった。

 

「レオ、ここからの話はまだハリーには秘密じゃ。先ほどは断言できんとは言ったが、ヴォルデモートの分霊箱(ホークラックス)はほぼ判明していると言っても良い。ホラスの記憶はその裏付けということじゃな。」

 

「どんなものなんですか?」

 

「予想している数は六つ。そして自身と合わせて七つにしたと考えられる。

既に壊したトム・リドルの日記とゴーント家の指輪。

サラザール・スリザリンのロケット。

ヘルガ・ハッフルパフの遺産のカップ。

ロウェナ・レイブンクローの髪飾り。

そしてトムが唯一心を開いているであろうペットのナギニじゃろう。

これからハリーにはトム・リドルとしての過去や分霊箱(ホークラックス)をどのようにして選んだかを教えていこうとは思っているがレオは興味はないじゃろう?」

 

「そうですね。それと気が付いてますよね? ハリー・ポッターにもヴォルデモートの魂が入り込んでます。」

 

「そうじゃろうな。あの夜、意図せず作ってしまったのであろう。レオ、君の『眼』で視た感じではどうなのじゃ? 取り除くことは可能なのか?」

 

「視たところ魂の残りかすのような欠片しか存在していないので可能でしょう。これ以上放置するとヴォルデモートからの干渉によってハリー・ポッターの魂を喰らってトム・リドルの日記と同じように成長していく可能性もあります。」

 

「それは危険じゃな。早急に対処しなければ。レオ、死の秘宝の最後の一つの在処を教えるのと引き換えに除去を頼んでも良いか?」

 

「分かりました。方法は考えておくので時期が来たら呼んでください。それでは最初に言っていた死の秘宝の一つを貰ってもよろしいですか?」

 

「これがそうじゃ。」

 

ダンブルドアは机からひとつの杖を出す。

レオの『眼』で視るそれは今まで見てきたどの杖よりも、レオが作った杖よりも強力な杖であった。

 

「死の秘宝の一つ、『ニワトコの杖』じゃ。死の杖や宿命の杖とも呼ばれる非常に強力な杖でもある。今まで数多くの魔法使いの手を渡ってきたがその全てが命を落としておる。不要な忠告かもしれんが気を付けて欲しい。」

 

レオが『ニワトコの杖』を受け取る。持った瞬間、杖の忠誠心がレオに向けられるのを感じた。

 

「ふむ……。38センチ、杖芯にはセストラスの尻尾の毛、杖の材質はその名の通りニワトコ……。一度アバダケダブラを受けたから分かるんですけど、似た気配は感じます。それに忠誠心が他の杖とは全くの別物ですね、そして強力だ。持ち主の技量に関係なく理論値以上に発揮される力、魔力効率も凄まじいし、抵抗はほぼゼロに等しい。ここまでくると杖の究極の完成形だな。これは研究の対象としては素晴らしい。」

 

 

校長室から自身の研究室に戻る間もレオは上機嫌だった。

『蘇りの石』、『ニワトコの杖』。レナード・テイラーは二つの死の秘宝を手に入れた。

残る一つも手に入れれば死を制すると言われるが既に死を超越したと言っても過言ではないレナード・テイラーにはそんなことは興味がなくただ単にすごい魔法具を研究できることを喜んでいた。

それに二つの死の秘宝を視て魔法にはまだまだ発展、進化できることが多いと再確認できたことも上機嫌の理由だ。

レオも杖を作ったが『ニワトコの杖』と比べるとまだまだと言わざるを得ない。

そう、レオはまだまだ自分の研究が未完成でこれからもやりがいがあると確信したのだ。

こんなの上機嫌にならないわけがない。

不死化したことによって得た永い生。研究することはまだまだ尽きそうにない。




分霊箱説明回
ダンブルドアはなんで原作でもハリーに対してすら秘密主義ですよね。最初から全部説明すればいいのに。

予言についてはレオは重要視していません。それよりトレローニー先生の方に興味がでました。

お辞儀が何を分霊箱にしたかの推測ではレオよりハリーが当たりですね。
実際に運用するならレオの考えの方が良いとは思いますけど。

蘇りの石に次いでニワトコの杖ゲット。これで後は透明マントだけだ。
というか透明マントはこの物語ではまだ登場してなかったかな?
初登場がレオに奪われるなんてことになりかねない。
そんでもって死の秘宝を手に入れて更なる研究意欲に火が付くレオ。
ちなみに忠誠心が簡単に移ったのも理由があります。

それでは次回お楽しみ。


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79. スラグ・クラブ

ハリー・ポッターの二次のオリ主にはチートキャラもいっぱいいる。
それが全部勢ぞろいしたらカオスなホグワーツが出来上がるだろうなと思った。

そういえば感想数が1000を超えていました!
基本的に感想には全部返信するつもりです。

それでは79話どうぞ。


ホラス・スラグホーンにはある不思議な才能が有った。

それは他人が特定の分野で何かしらの才能や成功する力を秘めているかどうかが分かるというものだ。そのことに気が付いたのはホグワーツを卒業してからだった。

その後はその才能を活かして未来ある若者を導こうと教師になることを決意した。

初めのうちは活躍する者を育てることに喜びを感じていた。

皆で更なる高みを目指す目的で才能ある者たちの集まりがスラグホーンを中心に形成されていった。

しかし、成功した教え子たちからの感謝や見返り、そしてあらゆる分野への有用な人脈が形成されるにつれてスラグホーンは段々と変わっていった。

いつしか導くことよりも成功した力のある者たちと一緒にいることが好きになっていた。

そういう者たちに自分が影響を与えていると感じることが楽しいと思うようになっていったのだ。

スラグホーンを中心とした集まり、通称スラグ・クラブはスラグホーンのお気に入り、将来のための有用な人材との人脈の為の場になっていった。

 

ホグワーツに再び教師として戻ってきたスラグホーンは当然のように有能な子、魅力ある子、人脈のある子などに目をつけていった。そして新学期が始まって一カ月ほどして品定めが終わったのかスラグ・クラブを開催が決まった。

 

土曜の夜。

スラグホーンに招待された生徒たちがスラグ・クラブの会場で開始を待っていた。

生徒はそれなりの数がいる。このクラブは聖二十八一族のような名家の子供も多く参加しているためコネを作るために参加している生徒もいるのである。

生徒はどの寮からも差別なく参加している。

『生き残った男の子』、『選ばれし者』などと呼ばれている、ハリー・ポッター。

聖二十八一族の一つロングボトム家、成績も上々のネビル・ロングボトム。

同じく聖二十八一族、ウィーズリー家の紅一点、ジニー・ウィーズリー。

有名人の知り合いが多い最上級生、コーマック・マクラーゲン。

母親が美人で金持ちな、ブレーズ・ザビニ。

祖父の代からスラグホーンの教え子である、マーカス・ベルビィ。

聖二十八一族、闇を裏切ったマルフォイ家、ドラコ・マルフォイ。

全科目学年トップ、ホグワーツ史上最高の才女、ハーマイオニー・グレンジャー。

そして説明不要のレナード・テイラー。

その他にもたくさんだ。

お気に入りの生徒の集まりを見て満足そうなスラグホーンが開始を宣言する。

 

「みんな! 今日はよく集まってくれた! おいしい料理もお菓子もたっぷりある。楽しんでいってくれ!」

 

クラブが始まり生徒たちは思い思いに楽しんでいる。

生徒同士の交流も盛んに行われる。普段は犬猿の仲のグリフィンドールとスリザリンも例外ではない。理由は簡単である。ここに招かれているスリザリン生は闇の陣営と縁を切ると宣言した生徒だけなのだ。親がどう思っているかはともかく子供たちが全員闇の魔法使いになりたいわけではないのだ。レナード・テイラーの力を知っているならなおさらである。

それゆえにホグワーツ内では徐々にスリザリンでも闇に反対すると声に出す生徒が増えだし、他の寮とも交流する生徒が増え始めているのだ。

それでも何人かのグリフィンドール生は未だに疑っていることから寮間の溝は深いと感じさせる。

 

交流のなかで多くの生徒を集める中心となる人物が幾人か存在している。

昨年度は魔法省に嘘つき呼ばわりされても真実を叫び続けた、生き残った男の子ハリー・ポッター。例のあの人に対する力を有していると噂されており注目の的になっているようだ。

 

帝王を裏切った純血一族の一人息子、ドラコ・マルフォイ。

ここにいる闇陣営に敵対しているスリザリン生からは一目置かれているのだ。由緒ある一族の為、マナー等も完璧であり仲間には優しい。重傷を負った父親の為にあらゆる力を欲してどんどん力をつけているのも好印象を与えることになっている。

 

ジニー・ウィーズリー。

年齢を重ねるにつれ美しく成長しており、密かにファンクラブができるにまでなった。

それでいて皆をまとめてレナード・テイラーの特別授業(戦闘訓練)を開催させるきっかけを作るなど行動力もあり、父の遺志を継いで皆を守る闇祓いを目指すなど優等生でもある。

この機にお近づきになりたい男子が周りに集まっているがジニーとしては現在は特定の男子と付き合うつもりはないようだ。

 

最後にレナード・テイラーとハーマイオニー・グレンジャー

人の身ではなくなったことから距離を取られていたが、呪文学の授業や特別授業を通じて人でなくても今までと何も変わらないということで元通り頼りになる教師扱いである。

ハーマイオニーも優秀で美しく多くのファンがいるのである。

とは言え、二人が恋人同士であるのはもはや周知の事実。あくまでファン止まりである。

現在も隣同士で座って傍目から見てもいちゃついているようにしか見えない。

 

「お、これ美味しい。前に言ってたパイナップルの砂糖漬けか。スラグホーン先生が好物にするのも解るね。」

 

「本当? 一口ちょうだい。」

 

「はい。」

 

「あー……、うん。美味しい!」

 

こうして周りに人がいると言うのに自然とあーんなどとやってのけるのだ。

パイナップルの砂糖漬けより甘い空気に当てられて胸焼けする生徒が出始めている。

 

「ほっほう! 噂に違わぬ熱々ぶりだ! 楽しんでいるかね二人とも。」

 

スラグホーンが二人に話しかけてくる。ハーマイオニーもレオに次いで彼のお気に入りの生徒になっている。

 

「ええ、楽しんでます。たまには研究から離れてゆっくりするのも必要ですし良い息抜きになってます。」

 

「お招きいただきありがとうございます。他の寮とも交流できて楽しいです。」

 

「そいつは良かった。二人ともクラブ以外でも私を訪ねてくれてもいいんだよ? いつでも大歓迎さ!」

 

その後も色んな生徒と話をした。

ジニーを中心とした特別授業のメンバーと魔法運用について語ったり、ジニーがハーマイオニーとレオとの出会いから付き合うまでの出来事を話して女子たちに羨まれていたり、ドラコ・マルフォイが治癒魔法のコツを教えて欲しいと言って来たりした。

 

 

楽しかったクラブも終わり、生徒たちが各々の寮に帰っていく。

その中でレオとハーマイオニー、それとハリーは最後まで残っている。

もちろんダンブルドアからの依頼をこなすためだ。

 

「さてさて、君たちも早く帰りなさい。睡眠も大切だよ?」

 

「先生! 教えて欲しいことがあるんです!」

 

「何かね、ハリー? 私に答えられることなら何でも答えよう。」

 

「あの……。あいつ、ヴォルデモートに対抗するのに必要なんです。分霊箱(ホークラックス)についてなんです。ご存知でしょう?」

 

分霊箱(ホークラックス)とハリーの口から出た瞬間、それまでの笑顔が凍り付いた。

そして油断ならない相手を見る目付きでハリーを見る。もちろん心は固く閉ざしてしまった。

 

「……ダンブルドアだな。知らん、知らんぞ。渡した記憶が全てだ。さぁ、帰りなさい、帰るんだ! レオとハーマイオニーもだ!」

 

「でも、先生!」

 

「スラグホーン先生。先生は何か間違った認識をしているみたいですね。」

 

「……いったい何をかね?」

 

分霊箱(ホークラックス)は闇の魔法と言われています。確かに技量が低ければ魂を分割するのに殺人行為が必要です。だからと言って知識として知っていることを恥じる必要はありませんし、それを誰かに教えたとしても何が問題なのでしょう? 闇の魔法も他と同じ魔法です、違いはありません。使う人間がどのような人間かの違いだけで魔法は魔法、綺麗か複雑か優れているかだけなのです。」

 

魔法界の大抵の人間が闇の魔法というだけで忌避反応を示す。レオにとっては魔法の価値は優れているか、美しいかどうかしか関係がない。ゆえに分霊箱(ホークラックス)は優れた魔法という分類で拒絶することなどありえなかったのだ。

 

「だ、だが……私のせいであの人は……。そのせいで人が死んだのかもしれんのだ。」

 

「スラグホーンさんがヴォルデモートが分霊箱(ホークラックス)を知るきっかけになったかもしれませんけれど、それであなたが悪人というわけではないでしょう。それに分霊箱(ホークラックス)を知っている僕は悪人ですか? ダンブルドアだって知っているでしょう。」

 

「…………レオはあの人に分霊箱(ホークラックス)について話した私を軽蔑するかね?」

 

「そんなことはあり得ませんね。あなたはヴォルデモートではない、ホラス・スラグホーンです。あなたの記憶がヴォルデモートに対抗するのに必要としている人がいる、その人に恩を売るぐらいの方がここで悩むよりあなたらしいと思いますよ。」

 

「そうだな、過去を悔いるよりは未来のために行動した方が気持ち良いしな。ダンブルドアに恩を売って給料アップでもしてもらおう!」

 

スラグホーンは杖を頭に当て銀色の靄を取り出して瓶にしまう。

それをレオに渡す。

 

「レオ、もう一度聞かせてくれ。私は悪くないのか……? こんな小心者の私を見損なったりしないでおくれ。」

 

「改めて言います。あなたは何も悪くない。あなたは優れた魔法使いです。」

 

「スラグホーン先生、私も先生は素晴らしい教師だと確信してます。私たちだけじゃなく多くの生徒たちがそう思っているはずですよ。」

 

レオとハーマイオニー二人の真っ直ぐな評価。それを聞いて心のしこりが取れたのか険しかった顔も元に戻る。

レオはハリーの記憶を渡す。ハリーはスラグホーンに礼を言ってすぐに校長室に向かっていった。

レオとハーマイオニーも研究室に戻る。

帰るとクーが出迎えてくれた。

 

「お帰りなさいませレナード様、お母様。お帰り早々で申し訳ありませんが、お伝えすることがあります。」

 

「ただいま。何かあった?」

 

「はい。アレがまた暴れました。拘束と説得にも限度があるかと。」

 

「そっか。それじゃあ、性能テストといこうか。」

 

「また何かやるつもりなのねレオ。今度は何かしら?」

 

「とりあえずダンブルドアから情報を得てからになるかな。」

 

レナード・テイラーの研究によってまた一つ世界への影響が現れるまで後、数日。




スラグホーンは悪人ではないけど完全な善人でもないとても現実の人間に近くて好感を持ってます。

スラグ・クラブは今ではスラグホーンの人脈の為の場ですが、
昔はもっと違ったのかと思ってこういう設定にしました。

クラブに参加したのは成績優秀者、闇に与しない名家、人脈がある者、スラグホーンの直感による選出といった感じですかね。ちなみにレオはスラグホーンが見た中でかつてないほどの逸材として出会った時からお気に入りです。

治癒魔法を勉強するフォイ。将来の夢は癒者になってます。

分霊箱に関する記憶ゲット。
レオは分霊箱は高度な魔法として悪い感情は持っていません。
そもそも魔法に悪いものはないと考えています。
ちなみにレオの技量なら殺人をしなくても魂の分割はできます。
とはいってもレオは既に人を殺してますけどね。

さてアレとは何でしょうね?

それでは次回お楽しみ。


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80. 絶滅

投降するにあたって苦労しているのがサブタイトルを考えることですね。
本文を書くのは自由に思うままを書いているのでそこまで苦労しないんですけど
投降するときにサブタイトルで悩みます。
今回は物騒なサブタイトルになってしまいました。

今回は久々にある人物が登場します!

それでは80話どうぞ。


新学期が始まって数カ月、もうすぐクリスマス休暇が始まろうとしていた。

手に入れた記憶からヴォルデモートが作成した分霊箱(ホークラックス)の数は本体を入れて七つであることはほぼ確定したと言って良いだろうということだった。

現在、レオはハリー・ポッターと共に校長室にいる。

 

「ホラスの記憶からヴォルデモートは六つの分霊箱(ホークラックス)を作り出しているだろう。そのうち二つは破壊済み、残りは四つ。ハリーには記憶を見せたが、その内容からほぼ間違いなくホグワーツ創設者由来の品が多くを占めるじゃろう。隠されている場所は現在捜索中じゃ。……そしてあやつも想定していなかった分霊箱(ホークラックス)がある。」

 

「もう一つ? それはいったい……。」

 

「君自身じゃ、ハリー。」

 

「僕……? それはどういうことですか!?」

 

「君の運命を決めたあの夜、肉体を失ったヴォルデモートの魂の一部が君の体に入り込んだのじゃ。以前、アーサー・ウィーズリーをあやつの蛇が襲った時に君はその蛇の中から見たと言っていた。その蛇、ナギニが最後の分霊箱(ホークラックス)であるとわしは考えている。そして君の中のヴォルデモートの魂が干渉した結果その光景を見せたのじゃろう。つまり君はヴォルデモートも知らない分霊箱(ホークラックス)なのじゃ。レオの『眼』もそれを証明しておる。」

 

「僕の中にあいつの魂が……? それじゃあ、僕は死ななくてはいけない……?」

 

「もちろんそんなことはならない。そのために今日はレオを呼んだのじゃ。レオよ、よろしく頼む。」

 

「分かりました。それじゃあポッター君、抵抗しないように。」

 

「何をするん……!?」

 

レオが魔法を発動するとハリーは拘束され動けなくなる。

レオはハリーの心臓近くに手を触れる。その手が服、皮膚を通過して体内に侵入していく。

表情を変えることもできないハリーは視線だけで精一杯の抵抗をするがレオは構わず何かを探るように腕を動かしている。

 

「これかな? よっと。」

 

引き抜いた手には小さな黒い何かが握られていた。レオは少しの間それを観察していたが興味を無くしたのか跡形もなく消滅させてしまった。

 

「処置完了しました。これでハリー・ポッターは分霊箱(ホークラックス)ではなくなりヴォルデモートとの繋がりも完全に断ち切られました。」

 

魔法が解除されたハリーは自身の中から何かがなくなったことを感じていた。

 

「ようやってくれたレオ。ハリーよ、これで君が死ぬ必要はなくなった。後は残りの分霊箱(ホークラックス)を破壊し、本体を殺すことで完全に滅ぼすことができる。その時こそ君が必要になるじゃろう。」

 

「僕がですか……? テイラーじゃなくて?」

 

「予言が正しければの。さて、今日の特別授業はこれで終わりじゃ。」

 

ハリーとレオは校長室から出ていく。

その直前にレオは動きを止めた。

 

「ダンブルドア校長、一つ尋ねたいことがあります。」

 

「何かね?」

 

「闇の勢力に与している敵対的な魔法生物は何ですか? できれば規模と状況を教えてください。それを今回のハリー・ポッターの処置の対価としてもらいます。」

 

「それでよいのか? もっと別なものを要求されると思っておった。

……今現在判明している闇の陣営に協力している魔法生物は主に三つ、吸魂鬼(ディメンター)、狼人間、巨人族。その他にもトロール、ドラゴンも戦力として用いるじゃろう。未確定情報じゃがアクロマンチュラ、グリフィン、コカトリス、マンティコアもいるという話がある。」

 

「その中で居場所が分かっているのはありますか?」

 

吸魂鬼(ディメンター)は既にアズカバンを放棄しておりイギリス各地で目撃されておる。アズカバンは最早闇の拠点と言って良いじゃろう。

狼人間やその他も各地にいて一定の場所にはいない。巨人族の住処である山奥で死喰い人(デスイーター)が多く目撃されていることから今のところは協力しているが本格的には侵攻してこないと予想している。ハグリッドを説得のために派遣はしているが望み薄じゃろう。」

 

「ふむ……巨人族ね、まぁちょうどいいかな。情報ありがとうございます。それでは失礼しました。」

 

ダンブルドアは出ていくレオを見て確信した。何かが起こると。

 

(魔法生物で実験でもするのか……? 巨人族に何をするつもりじゃ?)

 

レナード・テイラーの行動を予想しても無駄と分かっているが、それでもせいぜいが実験体にする程度だと思っていた。

まさか、既にあのようなことが行われ、そしてああなってしまうとは予想外過ぎた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

一週間後のホグワーツ校長室。

アルバス・ダンブルドアの前には三メートル近い巨体の男がいる。

元ホグワーツの森番のルビウス・ハグリッドである。

五年前にドラゴンの不法所持の罪で逮捕、アズカバンに投獄されていたが昨年の死喰い人(デスイーター)大量脱獄と共に脱獄していたのだ。傷も癒え巨人族の説得に向かっていた。半巨人である自分にしかできない任務ということもあり出発前は覇気に満ちていた。

それが今の姿はどうだ。

床に足を抱きしめるようにしながら座り、手で顔を隠すように覆っている。

呼吸は何かに見つからないようにするためかのように殺している。

ハグリッドを知る人が今の状態を見ても本人だとは判断できないほどの有様だった。

任務から帰還して二、三日は騎士団の自室から出てこないほどだった。

今日ようやくダンブルドアの元で任務について話すことができるようになった。

 

「それでハグリッドや、何があったのじゃ。巨人族との交渉はどうなったのか、君をそこまで恐怖させる何かがあったのか、全てを教えて欲しい。」

 

ダンブルドアは優しく言う。

だが、それを聞いたハグリッドはまるで死刑宣告を受けたかのように震えだした。

震えを抑えようと体を強く抱くがそれでも震えは止まらないばかりか増す一方。歯もガチガチと音をたて、目は見開かれとてもじゃないが尋常ではない。

ダンブルドアは急いで安らぎの水薬を飲ませる。少しは効果があったのか震えは止まった。

それでもなかなか話そうとはしなかった。

ダンブルドアは根気よく待ち続けた。

一時間ほどしてポツリとハグリッドが呟いた。

 

「…………地獄を、見たんです……。アレは……。ダメだ。」

 

「何じゃと……?」

 

聞き返すとハグリッドは立ち上がり一気に早口で喋りだした。

 

「地獄です、悪魔です! アレは……あいつはいちゃいけないモノだ! あんなのはダメだ。怖い怖い怖い! 巨人族は滅んじまった! 男も女も子供も全部! ダンブルドア先生、もうダメだ! 殺される滅ぼされる! 俺は今まで生き物っていうのは皆好きだった、ドラゴンだって皆危険だって言うけど愛らしい奴らだって思ってた! 間違いだった! 恐ろしい! あのでかいのが全部殺しちまった、全部、全部! 先生、助けてくだせえ! あいつと目が合っちまった。あいつは俺のこと見てた。このままじゃ、このままじゃ俺も死ぬのか? どうすれば……。もう嫌だ、生き物は嫌だ……。怖い。ああ、あああああ……。」

 

頭を抱えてうずくまるハグリッド。

ダンブルドアは驚くがすぐにハグリッドを眠らせて任務から今までの記憶を抜き取る。

このままではハグリッドの精神がもたないと判断したのと正確な情報を知っておく必要があるためだ。

 

 

マダム・ポンフリーにハグリッドを頼んだ後、憂いの篩でハグリッドの記憶を確認する。

記憶の中に降り立ったダンブルドア。

ハグリッドは山を登っているところであった。これから巨人族の集落に向かうのだろう。

しばらく進むと遠くに十メートルほどの巨大な人影が見え始めた。それと同時に普通のサイズの人間の姿も見える。

手渡されていた遠見の魔法具で様子を確認する。

 

死喰い人(デスイーター)……!』

 

普通の人間はローブに仮面をかぶっていた。どう見ても死喰い人(デスイーター)である。

ハグリッドは別ルートを進み集落を高所から見下ろす場所を見つけ様子を観察することにした。ダンブルドアから死喰い人(デスイーター)がいる場合下手に接触せず様子を窺うことを厳命されていたのである。

そこでハグリッドが見たのは想像とはかけ離れた状況だった。

 

『ありゃあ一体なんだ!? どうなってんだ!?』

 

確かにそこは巨人族の集落であった。

数はおよそ百ほどだろうか、見えるのは成人した雄だけであった。

だがそれは明らかに普通では無かった。

通常の巨人族を超えた三十メートルはあろう巨体の者、腕が複数ある者、獣のような体毛や爬虫類の鱗を持つ者、翼がある者、目が体中にある者、そんな異形とも呼べる存在が溢れているのである。

巨人とはその名の通り巨大な人であるはずだ。あんな化物の様なモノでは決してない。

ハグリッドと記憶を見ているダンブルドアは混乱しながらも集落の観察を続ける。

 

そこで更なる違和感を覚えた。

巨人族は好戦的で仲間同士での殺し合いも日常茶飯事のはずだ。

それなのに食事等はするがそれ以外は大人しいのだ。目は虚ろで意識というものが感じられない、まるで何かに洗脳されているかのように。他にはひときわ大きな建造物がある。そこは死喰い人(デスイーター)が頻繁に出入りしており恐らく奴らの拠点なのであろう。更には巨人の女子供が一人もいないのだ。

何もかもが異常で気味が悪い。だが何の成果も出さずに帰るわけにはいかなかった。

 

ハグリッドは集落から死喰い人(デスイーター)が単独になるのを待った。

運良くすぐに一人になった男を見つけることができた。

魔法を使う暇も与えず一撃で気絶させ拉致に成功した。

 

『おい! 起きろ!』

 

『ん、ここは……? あっ!? な、なんだてめぇ! クソが! 制御担当のやつさぼりやがったな!』

 

『教えろ! ここで何をやっとるんだ、あの巨人たちは何なんだ!』

 

『はぁ? ……お前、ここの巨人じゃねぇな。よく見りゃ小さいし……ああ、思い出したホグワーツの森番をしていたハグリッドだったか? 騎士団の任務とやらか、ご苦労なこった! 誰が話すか!』

 

ハグリッドは無理やり真実薬を飲ませる。すぐさま男は巨人族の集落の秘密を話し始めた。

 

『ここは我々の実験施設だ。素晴らしき我が君は巨人族の戦力と生命力に利用価値があるとお考えになった。馬鹿な巨人族に力を与えると言って騙すのは簡単な事だった。

あいつらは今や我々の命令を聞く戦闘人形さ。多くの魔法生物や魔法薬による改造をしている。かなりの数が死んだが成果が出ている。我が君もお喜びになられている!

それに減ったのは増やせばよい。雌は子供を生産するためだけの家畜だ。生まれた子供はすぐに調整してより強力に、より従順に、より多くの子を産むように! 寿命はかなり短くなったがどうせ使い捨ての道具だ。我が君が世を統べたら廃棄処分になる予定のモノだ。この戦力をもって一気に魔法界を支配することができる!』

 

その後も聞いてもいないのに男はぺらぺらとおぞましい研究内容を話し続ける。

止めろと言っても真実薬を飲ませ過ぎた影響で聞きたくもない言葉が口から溢れ続ける。

 

『こ、この外道が! お前たちは人間じゃねぇ! 巨人族を、命を何だと思っているんだ! 今すぐ止めろ!』

 

『人間ではないのはお前だろう? 野蛮で下賤な巨人如きが我が君の力になれる、光栄に思うべきだ。純血の魔法使い以外は全て穢れた存在! 我々優れた者に支配されるべきなのだ!』

 

ここまで価値観が違うのか、価値観が違うとこんな事を平然と人間はやってしまうのかと、ハグリッドは恐怖した。

男を再び気絶させ急いで山を下りようとする。このまま男は情報源として連れて行く

今のままでは交渉など論外だ、それどころかあの狂気の産物がイギリス魔法界に押し寄せてくる。

 

『急いでダンブルドア先生にお知らせしねぇと……!』

 

ハグリッドはこの巨人の集落が狂気に侵された地獄の如き場所だと思っていた。

事実としてまともな精神ではこんなことはできないだろう。

人間ではないとはいえ大きさ以外はほぼ人間の形をした生物を弄り異形へと変え、モルモットの様に扱う。

鬼畜の所業だった。死喰い人(デスイーター)とて人間だ、だがここで作業をしているのは全員がヴォルデモートによって精神のタガが外されたか狂信的なヴォルデモートの信者のどちらかである。

ここ(地獄)には良心など既に欠片も残っていなかった。

 

 

そして、その地獄に……それすら吹き飛ばす悪魔が降り立った。

 

 

それは突然だった。

巨人たちの住居を吹き飛ばすほどの突風が吹き荒れた。

集落のある山では考えられないほどのものだ。当然敵襲を考え死喰い人(デスイーター)達は警戒態勢に移行する。巨人たちも覚醒し敵の襲撃に備える。

 

だがそんなものは無意味であった。

 

空から巨大な何かが降りてくる。

それはドラゴンであった。少なくともそう見える生物であった。

普通のドラゴンであっても脅威になるが、それでも単体であれば強化・改造された巨人にとってそれは当てはまらない。

だがそれは違う。大きさは優に五十メートルを超える。全身を覆う漆黒の()。禍々しき角。太く力強い四肢。巨体を飛翔させる翼。

 

死喰い人(デスイーター)達はそれを見た瞬間、逃げ出していた。

魔法で姿くらましすることも忘れ、巨人族の制御も放棄し、逃げたら帝王によって罰せられることも頭から消え去り、ただただ本能に従って全力で走った。細胞の一つ一つから、魂の奥底から逃げろと命令が発せられた。

 

降り立ったドラゴンはそんなちっぽけな人間には見向きもせず制御が解除されて襲い掛かって来る異形の巨人たちを見ていた。

 

『来い。』

 

巨人が殴り掛かる、獣のような俊敏な動きで噛みつく、翼で飛翔して爪で切り裂く。毒液を浴びせる。

ドラゴンは防御もせずただ立っていた。その鱗に傷がつくことなくこの世の頂点に立つかの如く。

巨人の剛腕も、爪も、牙も、毒も、何もかも無意味であった。

 

『……この程度か。はぁ……。期待外れだ。』

 

ドラゴンが動き始めてからは一方的な殺戮になった。

無造作に腕を振るう。 巨人が臓物をまき散らしながら飛び散る。

爪で切り裂く。 巨人が輪切りにされる。

角から電撃が迸る。 巨人が黒焦げになって絶命する。

黒い炎が口から放たれる。 巨人が蒸発する。

 

百もいた巨人たちは数分の内に全滅した。

最後に上空に飛びあがり全身から放つ黒色の光線で集落そのものを吹き飛ばしてしまった。

残ったのは数キロにわたる何もかも破壊されたクレーターだった。

 

 

ハグリッドはその殺戮を見ていた。

半分が魔法生物の血が流れている彼は普通の人間よりも恐怖を感じていた。

逃げなければならないのに恐怖で足が動かない。

ただ震えてクレーターの中央に降り立つドラゴン(悪魔)を見ているしかできなかった。

そうしていると目が合った。五キロ以上は離れているのにそう確信した。ドラゴンがこちらに気が付いた。

逃げようと思うが恐怖で動くことができない。次の瞬間にはドラゴンは目の前に現れていた。

 

『生き残りか。小さいな。』

 

次の瞬間、ドラゴンの顔の横に何かが姿を現した。

それは子供だった。少なくともそう見えるものだった。

 

『主よ。これではつまらん。』

 

『はぁ……。いくつか残しておいてくれって言ったよね。絶滅したら研究できないじゃないか。』

 

『脆弱なあれらが悪い。それより生き残りならそこにいるぞ。』

 

『ん? ああ、ハグリッド……だったけかな? 半巨人だから対象外だ。それにこちら側の存在だから無視していいよ。』

 

その子供がこちらを見てくる。魂までも見透かされるような眼で見てくる。

ドラゴンに主と言われるそれを到底人間とは認めることができなかった。

ドラゴンもだがその子供にも得体の知れない恐怖を覚えた。

 

『主よ。我は強くなった。ならば今一度挑戦の時だと思うのだが。』

 

『えー……。めんどくさいなぁ。でも約束だしね。さぁ、どうぞ。』

 

ドラゴンがちっぽけな子供に向かって先ほどまでとはけた違いの殺気を放つ。

 

それで気絶したハグリッドは気が付いたら山の麓にいた。山奥からは轟音が響いてくる。

そこから先はどうやってイギリスまで、騎士団の元にまで帰ってきたのか分からなかった。

ただ、その時感じた恐怖だけは鮮明に覚えていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

憂いの篩から戻ってきたダンブルドアは顔面を蒼白にしていた。

直接見たわけではなく、他人の記憶を通してみただけであるが、それでもあのドラゴンが到底人の手で制御できる存在ではないのは明白だった。

闇の勢力の巨人族の改造も脅威だが、あのドラゴンはその比ではない。

それにその主、ハグリッドは覚えていないようだが、間違いなくレナード・テイラーだ。

いつの間にあんなものを作り出していたかは知らないがやはり敵対だけは何としても避けねばならないと強く強く心に誓った。




ハリー分霊箱解除。

闇に与している魔法生物は原作より種類は増してます。
狼人間は人間に戻りたくない野蛮な奴ばかりです。

巨人族絶滅しちまったぜ!
ハグリッドの弟のグロウプはハグリッドが到着する前に死亡しています。
なのでハグリッドは弟がいたことを知りません。そういう意味では幸運だったのかな。
ハグリッドは人間ではない部分があるので普通の人よりドラゴンとレオに恐怖を覚えました。

お辞儀は対レナード・テイラーとして色んな策を考えてます。
色んな魔法や魔法薬を研究・開発したり、魔法生物で実験したりと色々やってます。
巨人の改造もその一つでした。仮にそのまま戦力として投入されていたらホグワーツはすぐに陥落したことでしょう。

巨人族がどんな目にあったかは想像にお任せします。
イメージはアン〇レラ社とかそんな感じですかね。

ちなみに死喰い人達は最後の光線で吹き飛ばされたので全滅。唯一の生き残りもハグリッドが捕えたのでお辞儀側はなんで巨人が滅んだのか把握してません。

今回登場したドラゴンは対抗試合でレオが捕獲したドラゴンを改造したものです。
見た目とか性能は次回詳しく書く予定です。

それでは次回お楽しみ。


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81. 探索

ハリー・ポッターは原作が完結していますが
二次創作で完結しているのは極少数ですよね。
今作もその一つとなれるよう頑張っていきます。
残りは後少し!

それでは81話どうぞ。


三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)でレオが捕獲して改造したドラゴン。

それは神話に登場する黒いドラゴンで、魔法の神でもあったジルニトラと名付けられた。

作られた神話のドラゴンというのもあってピッタリだとレオ個人としては満足している。改造自体は随分前に終了しており最近は力を解放したいと訴えていたのだが、ちょうどよく巨人族の話を聞けたので試運転として仕向けることにした。

闇の陣営に協力する巨人族に損害を与え、ジルニトラは力を使え、レオは巨人族をモルモットに出来ると一石三鳥のつもりだった。しかし、巨人族は全滅、不満足だったジルニトラはレオに襲い掛かってくる始末であった。

この気性の荒さのせいで以前ペットにしていたドラゴンのハリエットが怖がってしまったので野生に返すことになってしまった。

結局はレオに再び挑むもジルニトラは敗れた。身体のスペックで言えばレオを上回っているのだが、知識の差でそれを補ったレオが勝ちを得たのだ。

ジルニトラは最強の身体を極めると言って魔法で作った異空間で修行している最中だ。まるでマグルのコミックの様だなとレオは思った。力を得たら再び襲い掛かって来るのにその余裕は崩れることはない。

 

そんなこんなでクリスマス休暇になった。

いつもの様に家族でパーティー。つまりは特に変わったことはない平和な時間だった。ただ一つ気になったのはアースキン曰く最近は死喰い人(デスイーター)による破壊活動や殺人は急激に減少し、死喰い人(デスイーター)と闇の魔法生物の目撃情報もほとんどなくなったようだ。

不気味なほど静かでこれが嵐の前の静けさではないかと嫌な感じだと言う。

魔法省でも活動が少なくなっているこの機に少しでも体制を立て直すようにしているが

どこまでやれるかは分からないとの事だった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

休暇も終わり1997年になった。

レオは呪文学を教え、死の秘宝を研究し、ハーマイオニーの最終調整をし、たまに他の授業を受け、土曜には特別授業(戦闘訓練)を教えるという休暇前と変わらない日々を送っていた。

ダンブルドアからの依頼もなく、スラグ・クラブも変わらず開かれている。

 

そんなある休日。研究の合間の息抜きに湖の周りでハーマイオニーとデートを楽しんでいた。

そこへ一人の男子生徒が近づいてくる。

スリザリン生の七年生、アーノルド・トラバースだった。

 

せっかくの二人きりでのデートを邪魔された不機嫌になるハーマイオニーと、スリザリン生しかも純血主義の生徒が近づいてくるので興味深そうに見ているレオ。

トラバースはレオの目の前で立ち止まる。その顔は青く悲壮感が漂っている。

 

「や、やぁ! テイラー君! デ、デデデートだったかな? 邪魔しちゃ悪いし……死んでくれ!」

 

いきなり刃物でレオの腹部を刺そうとする。普通であればここでレオは出血による死が待っているだろう。目の前で恋人が殺されたハーマイオニーも泣き叫び、怒りのあまりトラバースに襲い掛かるかもしれない。

だがレオもハーマイオニーも常識はすでに彼方に置いてきてしまっていた。

その程度の害は魔法や魔法具で防ぐこともせず皮膚を硬質化させて防ぐ。

 

「は、ははは……。そりゃそうだよな……。ちくしょう! できるわけねーだろ! なぁテイラー、お前どうすりゃ死ぬんだよ? 俺はどうすれば良いんだよ!?」

 

泣き崩れるトラバース。何がどうなっているか分からないのでとりあえず開心術で心を覗く。

どうやらトラバースの両親は死喰い人(デスイーター)の様だが何かしらの失敗で帝王に罰せられることになった。それを防ぐためトラバースはレオの命を奪うことで免除を願い出たらしい。

 

「なるほどね。トラバース先輩、つまりあなたは両親の為に僕の命を狙ったということですね。でも生憎ですが僕はそう簡単には死なないのです。これから校長室に行きましょうか。ああ、安心してください、真実薬を飲んでできるだけ情報をくれればいいだけです。後はダンブルドア校長が処分を決めてくれるでしょう。」

 

「レオ、その前に一発ぐらいお見舞いしてあげるわ。」

 

ハーマイオニーの鉄拳を受けてトラバースの意識が吹き飛ぶ。

その後は魔法で拘束して校長室に向かう。

真実薬と開心術で得られた情報ではヴォルデモートが何かしらの大きな計画を立て、ターゲットがホグワーツだという程度の情報しか得られなかった。

念のため研究室の防衛を強化することを決めたレオ。

トラバースをダンブルドアに任せた後は研究室に戻った。

デートの時間を潰されたのでいつもより甘えてくるハーマイオニーとたっぷりと甘い時間を楽しんだ。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

学年末試験が近づいてきた六月。

ダンブルドアに呼び出されたレオ。

 

「急に呼び出して済まない。分霊箱(ホークラックス)の在処が分かった。レオにはわしとハリーに同行して助けて欲しいのじゃ。もちろん対価は用意しておる、以前に言った最後の死の秘宝の在処を教えよう。」

 

「行きます。闇の帝王が分霊箱(ホークラックス)を守るために施した防護魔法についても興味がありますしね。それで最後の死の秘宝……透明マントでしたっけ? ハリー・ポッターが持っているそれですか?」

 

「そうじゃ。ハリーよ、君の透明マントをレオに見せてやって欲しい。」

 

ハリーが渋々レオに自慢の透明マントを見せる。それを目を輝かせて観察するレオ。

 

(通常の透明マントと違い半永久的に持続する効果、高い魔法耐性。これも素晴らしい魔法具だ。)

 

「ありがとう。そうだ、ポッター君。何か願い事はあるかな? その透明マントをくれるのであれば僕に可能な限りで何でも実行しよう。それを手放してでも叶えたい望みができたなら相談して欲しい。」

 

「お断りだ! これは父さんの形見だ! 誰がお前の研究材料にさせるもんか!」

 

「そうか、残念だ。だけど気が変わったらいつでも言ってくれて構わないよ。」

 

夜になって出発することになった。

ダンブルドアとレオがいなくなるため万が一を考え騎士団員をホグワーツに集めることになったようだ。

レオもハーマイオニーに研究室から出ないようにとを言っておき、クーにはホグワーツの防衛を任せた。一応ジニー達特別授業(戦闘訓練)を受けている生徒にも情報を共有させておいた。

 

「レオ、気を付けてね。大丈夫だろうけどこの世には絶対はないってレオも言ってたしね。」

「行ってらっしゃいませ、レナード様。お母様と研究室の防衛はお任せください。」

 

ハーマイオニーのキスとクーの敬礼を受けて探索に向けて出発した。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

レオ達三人がたどり着いたのは海辺の洞窟だった。

ヴォルデモートの幼少期に過ごしていた孤児院が近くにありここを選んだ何かしらの要因があるとかなんとかダンブルドアが話していたがレオは聞き流していた。

洞窟を進んでいくとレオの『眼』に魔法が施されている場所が見えた。

ダンブルドアもそれに気が付き足を止める。

 

「ここじゃな。……生き血を使わなければ先には進めそうになさそうじゃな。」

 

「その様ですね。」

 

レオは自身の爪で腕を切りつけて血を岩壁に付着させる。すると岩壁は幻の様に消失して奥に続く道が出現した。

 

「さぁて、お次は何かな?」

 

レオはワクワクしながら奥に進んでいく。一歩目を踏み出した時には既に傷は跡形もなくなっていた。

更に奥に進むと黒い湖が見えてきた。湖の中央には緑色に光る何かがあり、湖には亡者が大量に漂っている。

 

「この小舟を使ってしかあそこにはたどり着けないようじゃの。それ以外の手段ではこの亡者たちが襲い掛かってくると考えて間違いないじゃろう。」

 

「でも先生、この小舟に乗っても大丈夫なのでしょうか? これにも罠があるのでは?」

 

「大丈夫じゃよハリー。仮にヴォルデモートが自らの元に分霊箱(ホークラックス)を戻す際にはその方法が必要になって来る。つまりは安全な方法は用意されているというわけじゃ。」

 

フロクラント(凝集せよ)・亡者」

 

レオはそんな二人のやり取りを無視して魔法を発動させる。

湖の全ての亡者がレオの手のひらに向かって飛び込んでくる。そうして限界を超えて超重力で押しつぶされて唯の肉の塊が出来上がった。それを跡形もなく燃やし尽くしてしまう。

 

「これで脅威の一つは排除しました。じっくり観察するには邪魔になりそうでしたしね。」

 

亡者がいなくなった湖を小舟で移動する三人。緑色に光る場所には小島があった。その中央には石の台座があり、その上に水盆が置かれている。

水盆には燐光を発するエメラルド色の液体で満たされている。

 

「これは……ふむふむ。」

 

ダンブルドアが色々と試している横で観察を続ける。

二人はこの液体を飲むことが除去する条件と結論を出した。

レオは時間をかければ消失することもできるがどうせだったら液体の効果を体験したいと思っていた。

ダンブルドアが飲もうとしてハリーに止められている。

そこでレオが自分が飲むことを提案する。

 

「僕の肉体なら大抵の魔法薬は無効化できます。それに死ぬことも無いでしょう。」

 

「……すまない。」

 

「謝る必要はないですよ。僕が飲みたいだけですから。それでは、いただきます。」

 

水盆の上に手をかざすとカップが出現する。それですくって一口飲む。

魔法薬に対する耐性を敢えて低下させて効果を体験する。味は特に感じなかったが、急に目の前が暗転する。

 

暗闇の中で悪夢の世界が無数に展開されている。魔法がない、魔法を使えない、ハーマイオニーがいない、ハーマイオニーが死ぬ、どれをとっても発狂してもおかしくないほどのものを無限に見せる悪夢の魔法薬だった。

だが、レナード・テイラーはそれを突破する。

 

(僕の恐れるのはこういう感じのものなのか。……飽きた。)

 

レオの『眼』には目の前の光景が幻であると見破ることができた。

どんな悪夢でも嘘であると知っているのなら恐れる必要などないのである。

強化された指輪、『聡明』を使って悪夢を見ている部分の意識だけ分割・隔離をする。

意識を現実に戻して残りの液体を飲み干す。

空の水盆の底にはロケットがあった。

 

「んん? ダンブルドア校長、これ分霊箱(ホークラックス)ではないですよ?」

 

「何じゃと!? 確かに違う。サラザール・スリザリンのロケットではない。メモ? R・A・B……? この者に破壊されていると信じるには情報が足りんのぉ。レオ、ハリー無駄足になってしまったが、それでも半歩は進んだじゃろう。今日はホグワーツに帰るとしよう。」

 

「先生、R・A・Bに心当たりはあるんですか?」

 

「まだ何とも言えんの。ハリー、これからも分霊箱(ホークラックス)を破壊するのに同行してもらうことになるだろう。今回はレオがいたから無事じゃったが、次回もレオがいるとは限らん。気を引き締めてゆこうかの。」

 

「あ、ダンブルドア校長。ホグワーツが襲撃されているようです。」

 

レオの突然の発言に目を見開くアルバス・ダンブルドアとハリー・ポッターであった。




ドラゴンのスペック!
名前 ジルニトラ 神話のドラゴンを調べてたら黒かったり、魔法の神だったり、捏造だったりと合っていると思ったので命名。
爪と牙:分解魔法を纏っているので触れた瞬間分子レベルで分解する。
鱗:強固な鎧。普通のドラゴンの何倍もの強度と魔法抵抗値がある。
炎:何もかも焼き尽くす黒炎を放つ。
角:電撃を発生させる。攻撃力はそこまでではないが(比較的)速度が速い。
体内には賢者の石も内蔵しており命の水を魔力に変換する炉も完備。
全魔力を破壊のエネルギーとして放出することもできる。
さらに魔法の使用も可能。でも本竜が使いたがらない。
その他にもチートスペックが勢ぞろい!

番外編でレオVSジルニトラの戦いを書くかも? 内容はハリー・ポッターとかけ離れたチートバトルになってしまうので本編では除外しました。
広域殲滅力ではジルニトラが最強ですけど万能性ではクーが、不死性ではレオに軍配が上がります。ジルニトラが真面目に魔法を学んで努力すればレオに勝てるようになるはず。(殺せるわけではない)

アーノルド・トラバース
適当に考えたオリキャラ。トラバース家は原作でも聖28一族です。
レオを襲撃したのもお辞儀の計画の内です。

分霊箱探索
トラップもレオにとっては無意味でしたね。

ホグワーツ襲撃
詳細は次回ですね。

それでは次回お楽しみ。


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82. 強襲

ハリポタ原作の七年生の時はハリーがホグワーツを離れている。
つまり二次創作では七年生は自由に書けるということだ!
……それはそれで難しいですね。

それでは82話どうぞ。


時刻は二十三時三十分。

レオ、ダンブルドア、ハリーが分霊箱(ホークラックス)の探索に向かって三十分ほど経過していた。

アルバス・ダンブルドアという不死鳥の騎士団トップとホグワーツ最強の戦力であるレナード・テイラーの二名が不在ということで教師たちや防衛のために派遣されていた騎士団員たちは緊張していた。

レオ不在を知らされていたジニー・ウィーズリーを筆頭にした特別授業(戦闘訓練)を受けている生徒たちも眠れずに寮の中で緊張した面持ちでいた。

 

ビー! ビー! ビー!

 

突然だった。ホグワーツ中に警報が鳴り響く。ホグワーツ襲撃を予想していたレオによる警告魔法である。これが鳴り響いたということはホグワーツの敷地内に侵入する者が現れたということだ。

教師と騎士団員が警戒しながら表に出る。

校門には続々と仮面とマントをつけた死喰い人(デスイーター)達が入って来る。

まさか真正面から攻め込んでくるとは完全に予想外であった。

死喰い人(デスイーター)の一団は真っ直ぐ校舎に向かって走り始めた。その数およそ三十。

さらに死喰い人(デスイーター)達は数を増やし続けている。

対してホグワーツ側の人員はおよそ十数人。

 

「止めろ!」

 

誰かが叫んだ。走って来る死喰い人(デスイーター)達に向けてステューピファイ(麻痺)エクスペリアームス(武装解除)を放つ。

それを死喰い人(デスイーター)達は誰一人として回避をしなかった。

当然、閃光が命中する。しかしエクスペリアームス(武装解除)で吹き飛ばされてもすぐに起き上がりまた走り始める。ステューピファイ(麻痺)にいたってはよろける程度で失神することはなかった。

不気味に走り続けるだけの死喰い人(デスイーター)、魔法を放つことも無くただ真っ直ぐに校舎目掛けて走って来る。

妨害しようにも数で押し切られ、魔法も速度を鈍らせる程度、結果としてそのうちの一人が校舎にたどり着いてしまった。

全速力のまま校舎の壁に激突する。

次の瞬間、その男が破裂して猛烈な炎が体から噴き出る。見る見るうちに炎が侵食していく。

近くにいた騎士団員が消火を試みるが、炎の勢いは全く衰えない。

 

「悪霊の火だと!? まさかこいつら全員が!?」

 

騎士団員が味方全員にこのことを伝える。何としてでも通すわけにはいかない。

あの人数、全員が悪霊の火を体内に秘めているのならホグワーツを全焼させてもおつりがくる。

 

セクタム・センプラ(切り裂け)!」

 

スネイプが放った魔法が死喰い人(デスイーター)の足を切断する。倒れるが這ってでも前に進もうとしているが移動速度は格段に落ちた。

 

ステューピファイ(麻痺)エクスペリアームス(武装解除)は無駄の様だ。各自足を狙え!」

 

切断や衝撃で死喰い人(デスイーター)達の足を使い物にならないようにしていくホグワーツ側。

それでも数の差で少しずつ校舎への攻撃を許してしまう。

 

「先生! 私たちも戦います!」

 

教師たちが奮戦している場にジニー・ウィーズリーとその仲間たちが現れた。

 

「ミス・ウィーズリー!? 何をしているのです!? 速く寮に戻りなさい! これは命令です!」

 

「嫌です! ここは私たち、皆のホグワーツです。このままじゃあそれが無くなってしまいます。私たちだって戦えます! お願いします!」

 

「そうです! ここで逃げたら魔法界はお終いです!」

「私たちも覚悟を決めました!」

「ハッフルパフ生だってやれるところを見せつけてやるぜ!」

「闇の魔法使いなんか怖くねぇ! ぶっ飛ばしてやる!」

 

「あなた達……。いいでしょう! ただし私たちには従ってもらいます! それと! 自分の命を最優先にしなさい!」

 

「「「はい!」」」

 

生徒たちは教師や騎士団の元に少人数のグループになって配置についた。

生徒の加勢によってどうにか侵攻を押しとどめることはできたがそれでも死喰い人(デスイーター)は次から次へとやって来る。いつ終わるか分からない攻撃、もし突破してきたら焼き尽くされる恐怖、圧倒的人数差、それらによるプレッシャー。実戦経験がない生徒たちは次第に疲弊し徐々に押され始める。

 

「くそぉ!」

「このままじゃあ……!」

 

魔法が追い付かずジニー・ウィーズリーに死喰い人(デスイーター)が迫る。

思わず目をつぶってしまう。だが来るはずの衝撃と灼熱はなかった。

代わりに優しく抱きしめられるのを感じる。

 

「大丈夫ですか?」

 

「あ……クーさん……?」

 

「はい。あまりにうるさいので加勢に来ました。」

 

城の近くに迫っていた死喰い人(デスイーター)達はバラバラになってる。その肉片からは悪霊の火が立ち上っている。

 

「どうやら殺せばその時点で引火するみたいですね。さっさと処分してお母様が安眠できるようにしなければ。」

 

クーは相変わらず一直線に向かってくる死喰い人(デスイーター)達に歩を進める。

メイド服から漆黒の鎧装束に、髪は伸び鋭い刃に、全身の細胞を活性化させ走り出した。

死喰い人(デスイーター)達はクーがすれ違うたびに細切れにされる。そのたびに悪霊の火がクーを焼き尽くそうと襲い掛かる。しかし燃やされながらもクーはスピードを緩めることなく次々に愚かな侵入者たちを切り裂いていく。

 

「すごい……。」

 

誰かが呟いた。普段はメイドとしてレオやハーマイオニーの後ろで控えていることが多くこうして戦闘をしている場面を見たことがある人間はほとんどいないのだ。

クーが死喰い人(デスイーター)を相手にしだしてからホグワーツ側は延焼部の本格的な消火作業に入った。

下手に魔法で攻撃してはかえってクーの邪魔になると判断したのだ。

クーが敵を撃退している限りホグワーツにダメージを与えることはない。

それは闇の陣営も理解しているだろうが相変わらず次から次へと校門からわらわらと湧いてくる。

 

「いいかげん面倒だ。」

 

クーはそう言って分裂した。そのうち一方が巨大な蛇のようになり校門に向けて突撃しようとする。

その瞬間だった。

校舎の上に闇の印が打ち上げられた。

 

それが合図だったのか、一直線に進んでいた敵はピタリと立ち止まって今までとは逆方向に走って逃げていった。

 

「何だ……? まぁいいか。ふぅ、これでお母様も安心してレナード様を出迎えることができますね。」

 

クーはメイド姿に戻って研究室で母と主人の帰りを待つことにした。

今回の襲撃でホグワーツの少なくない面積が燃やされたが、教職員、騎士団員、それに生徒たちの活躍、何よりクーがいたからこそ人的被害はゼロであった。

 

その後クーからの連絡を受けたレオとダンブルドア、ハリーが帰還する。

レオはさっさと研究室に戻ってしまったがダンブルドアは校長室で今回の襲撃の目的、敵戦力の分析を他の騎士団員と共に行っていた。

 

「校長、我輩はこの死喰い人(デスイーター)達に見覚えがありませんな。おそらく魔法省の一件と同じようにマグル生まれやマグルを特攻として使ったのでしょう。しかも、今度はマグル製の爆弾などではなく悪霊の火。これはかなり厄介ですな。我輩はこれから闇の帝王の元で情報収集をしてまいります。」

 

「頼む。わしはこの襲撃は陽動ではないかと考えておる。裏に何かしら本当の目的があるはずじゃ。それに狙ったようにわしとレオがいない時に襲撃があったことも問題じゃ。スパイ、もしくはこちらの動きを把握する術を持っていると考えて良い。」

 

「ダンブルドア校長、私たちは引き続き校舎内の警戒を続けます。」

 

スネイプは闇の帝王の元にスパイをしに、マクゴナガルとスプラウトが見回りに校長室を出ていった。

 

(……何が狙いだったのか。ホグワーツにある何か? 特攻を陽動として姿をくらませて侵入したと仮定してどこにどんな目的があったのか? これはセブルスからの情報を待つ必要がある。現状は侵入者対策とR・A・Bが持ち去った分霊箱(ホークラックス)の行方じゃな。……分霊箱(ホークラックス)、まさか!?)

 

ダンブルドアは一つの可能性に行き当たった。トム・リドル、ヴォルデモートはホグワーツに強い執着を持っていた。闇の魔術に対する防衛術の教師を志望したり、分霊箱(ホークラックス)の多くを四人の創設者由来の品を選んだことからも分かる。

つまりこのホグワーツに分霊箱(ホークラックス)が隠してあった可能性は高い!

この騒動でそれが持ち去られたとしたら?

推測に過ぎないが可能性は高いとダンブルドアは判断した。

 

(レオに協力してもらったにもかかわらず目的は達成できず、しかもホグワーツが襲われてしまった。これはまずいのぉ。)

 

アルバス・ダンブルドアとレナード・テイラーがいるとにもかかわらずホグワーツが襲撃されるこのことは魔法界に大きな衝撃をもたらすであろう。

 

そんなことは関心がないレナード・テイラーは愛する恋人と一緒に安眠しているのであった。




ホグワーツ襲撃される。
警報はあくまで外からの侵入者対策としての魔法です。
原作と違ってフォイやその他が手引きしていないので真正面から襲撃。

今回の死喰い人はマグルやマグル生まれを利用して人間悪霊の火爆弾として特攻させました。
クーがいなかったらホグワーツは燃やし尽くされてました。

クーが動き始めてからレオに襲われていると通信が入りました。

真正面からの襲撃は陽動。本当の目的は次回明らかに。
なんだかんだでダンブルドアは生き残ってますね。

それでは次回お楽しみ。


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83. 六年目が終わって

今回で六年目も終わりです。
次回からはついに最終章!
そろそろ終わりが見えてきました。

今のところの予定では本編が完結した後、番外編を書こうと思ってます。
番外編で書こうかなと考えている内容を活動報告に書いておきます。
希望があればそこでコメントしていただけたら参考にします。

それと活動報告でも書きましたが今後の更新は日曜日の午前0時が基本になります。

それでは83話どうぞ。



闇の陣営の拠点の一つ、聖二十八一族所有の屋敷。

その一室にいる闇の帝王ヴォルデモートは上機嫌だった。

目の前にはホグワーツから持ち出された望みの二品が献上されている。

一つは己以外でこの世で最も大切なもの、いやすでに己自身であると言える分霊箱(ホークラックス)である。

器になったのはロウェナ・レイブンクローの遺品の髪飾りだ。

レイブンクローの寮のシンボルたる鷲と信条が刻まれており、頭にのせるだけでその者の知性を引き上げることができるまさにホグワーツ創設者にふさわしい品だ。

更にスリザリン最後の末裔、闇の帝王ヴォルデモートの魂を宿すことでこれ以上のない素晴らしいものに昇華した。

 

もう一つは、これからの戦略に必要なものだった。

今回の襲撃の最優先の目的は髪飾り(分霊箱)の回収だったのでこれを手に入れることができれば幸運程度に考えていた。ゆえに今回の作戦の実行者には褒美を与えることにした。

 

「ベラトリックス・レストレンジ、ピーター・ペティグリュー。よくやった褒美をやろう。望むものはあるか?」

 

ベラトリックスは歓喜で打ち震えながら、ピーターは恐怖で震えながら答える。

 

「ああ、我が君! 私は御身に仕える、それこそが至上の喜び! それ以上を望むことなどありえません!」

 

「わ、我が君……。私の望みはちっぽけなものです。死にたくありません……。それだけです。」

 

二人を下げさせヴォルデモートは目を閉じこれから先の事を考えた。

今回の作戦は上手くいった。

ホグワーツ内にいる下僕の子供たちを利用してレナード・テイラーの行動予測を立てる。

そしてネズミの動物もどき(アニメーガス)であるピーター・ペティグリューを密かに潜入させる。

過去にもホグワーツにいたピーターであるがその際もレナード・テイラーに発見されていなかった。もしネズミの動物もどき(アニメーガス)をあの研究最優先の存在が見つけていたら何かしらの行動を起こしていたはずだ。つまりネズミを目撃していないことが考えられる。

その情報から闇の帝王はレナード・テイラーの『眼』の欠点を見抜いた。

あの『眼』も万能ではない。確かにあらゆる魔法事象を見抜き、解析するのは脅威だ。

しかしあくまで魔法に対してのみ、他の視力、視野範囲などは通常の眼球と同様なのだろう。

つまりただ単に物理的な壁などで隠してしまえばその向こう側に何がいるかは分からないのだ。

これによってピーターはレナード・テイラーに気付かれることなくホグワーツの配管や物影に潜んで情報収集と工作を行っていった。他にも小型の生物に変身できる動物もどき(アニメーガス)を増やすことも考えたが、動物としての慣れや習得時間の関係でピーター一人でことをなした。

そして今日。レナード・テイラーとダンブルドアが離れたとの知らせを受けてホグワーツに忠実な爆弾人形になったマグルどもを突撃させ、その隙にピーターとベラトリックス率いる別動隊がホグワーツに侵入。望みの物を手に入れたということだ。

だが、今回の方法はもう通用しないだろう。

 

(おそらく洞窟のサラザール・スリザリンのロケットは破壊されているだろう。ハッフルパフのカップは今はグリンゴッツに保管したままでよい。指輪には強力な呪いがあるが安心はできない、すぐに回収する。ナギニには可能な限りの強化と保護をしておくとしよう。)

 

分霊箱(ホークラックス)についての今後を考える。どれだけしても安心とは言えないが、見えない場所に置いておくよりは手元にあった方が良いと結論付けた。

 

(巨人族の集落の全滅は痛手だった。手元に残った巨人の戦力は極僅か。だがコレがあれば戦力は十分だろう。後は魔法省を陥落させるのが先だな。)

 

今現在の闇の勢力の力をもってすれば魔法省、ホグワーツ、ダンブルドアだけであれば十分に勝てると踏んでいた。だが、レナード・テイラーだけは別だ。そのための切り札が必要になって来る。何としてでも計画を進めなければと、計画の詳細を夜が明けるまで考え続けていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

死喰い人(デスイーター)の襲撃後、ホグワーツは校舎、敷地の大規模な改修を行った。

迎撃装置、校舎内の監視魔法、至る所にある魔法探知機、などなど。

レナード・テイラーによる協力もあってこれまで以上に難攻不落の要塞と化した。

レナード・テイラーは対価として何も要求してこなかった。

彼にとってもホグワーツは長年過ごした場所であるので愛着があったのだ。

更にホグワーツに施す防衛機構について色々と試したいことがあるとかなり乗り気であった。自分が不在の時に狙われたことや何かしらの目的が達成されるなど完全に裏をかかれれる形になったことから何かしらの見落としがあると考え、とことん対策をするつもりでいた。

レナード・テイラーがホグワーツを改造することを知った生徒たちは安心感と興奮とそしてちょっぴりの恐怖を覚えることになった。

だが、生徒の保護者達はいかに守りを強化しようとも襲撃された事実がある以上はホグワーツとて安全とは言えないと感じるのも仕方がないことだ。そのため何人かの生徒たちが家に連れ戻されたり、来年度に来れなくなるということになってしまっていた。

 

 

そんなこんなで学年末試験も終わり六年目のホグワーツが終わろうとしている。

学年トップの成績は相変わらずハーマイオニーだ。その他に特筆すべきことはドラコ・マルフォイの急激な成績の伸びだ。もともと優秀な方ではあったがやはり目的があると違うということなのかどの分野でも力をつけているのだ。別の学年で言えばジニー・ウィーズリーがトップになっていた。これもドラコ同様に目的、闇祓いを希望するのが大きいだろう。

 

学年末パーティーが大広間で行われる。飾りつけは真紅と黄金、そして獅子だ。

今年はグリフィンドールが寮杯を獲得したのだ。

理由としては色々ある、ジニーを代表とするレナード・テイラー特別授業の参加者が一番多い寮であること、スリザリンとの確執が薄れつつあるため衝突による減点が減ったなどだ。対して最下位はスリザリンだった。少なくない生徒が闇の陣営に参加しているためそもそもホグワーツにいる数が減っているのも要因になっている。

パーティーではグリフィンドール生がジニーを中心にはしゃいでいる。

この一年で寮間の溝が大分埋まったためどの寮も悔しい気持ちはあれど来年こそはといった感じるのみでこの場では純粋にグリフィンドールを讃えていた。

 

「また一年が過ぎた!」

 

デザートも存分に食べ、宴も終わりダンブルドアが話し始める。

 

「今年も色々とあった。わしの不手際で皆には怖い思いをさせてしまったことじゃろう。それを心からお詫びする。だが、この辛い時期も長くは続かないじゃろう。必ずや魔法界に平和な日々が戻る、そのために持てる力の全てを費やすことを約束しよう。それに皆の力もこの老いぼれに貸してほしい! 今こそ力を合わせるときじゃ!」

 

ダンブルドアの声に賛同する者たちが続々と現れる。

 

「そうだ! ここは俺たちみんなの家だ! 俺たちが守るんだ!」

「そうよ! 寮なんか関係ないみんなと一緒に戦わなくっちゃ!」

 

最後には大広間に集まったほぼ全員が一致団結して平和のために力を尽くすことを誓っていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ホグワーツから蒸気機関車で戻る日。

ハーマイオニー・グレンジャーは愛する恋人、レナード・テイラーの前に立っていた。

 

「さて、ハーマイオニー心の準備はいいかい? これから一度死ぬけど大丈夫?」

 

「今更ね。私はあなたになら殺されても良いと思っているわ。それに失敗しても生き返らせてくれるんでしょう?」

 

「まず失敗なんかしないよ。もし死んだらどんなことをしても生き返らすよ。」

 

「なら良いわ。さぁ、どうぞ。」

 

「うん。アバダ・ケダブラ(息絶えよ)。」

 

死の呪文(アバダ・ケダブラ)の緑の閃光がハーマイオニーに命中する。抜き出た魂はすぐに変質し不死鳥と同等のものになる。そして用意していた新たな器に入り込む。さらに残された肉体も新たな肉体と合一させる。

レオは外部から細かな調整を施していく。これで時間をかけずに魂が体に馴染んだ状態になるはずだ。

新たな肉体を得たハーマイオニーはすぐに目を覚ました。

 

「おはよう、レオ。」

 

「おはよう、ハーマイオニー。気分はどう?」

 

「んーと、特に違和感わないわね。これで成功? 私はあなたとずっと一緒にいられるの?」

 

「そうだね。お互いが嫌になるまで一緒だよ。ハーマイオニー、結婚しよう。僕は永遠に君と一緒が良い。」

 

「私もよ、愛しています。永遠にあなたのそばに居させてください。」

 

ここにニコラス・フラメル夫妻以上の不滅の存在となった夫婦が誕生した。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ホグワーツ特急に乗り込む生徒たち。

レオ達はいつもの様に三人でコンパートメントに入る。

新しい肉体には馴染んだがやはり精神的な疲れは残ってしまったハーマイオニーの為に魔法でコンパートメントの存在を隠す。

 

「レオ、キングス・クロス駅に着くまで眠るわ。その間ずっと抱きしめてくれないかしら?」

 

「お安い御用だね。」

 

最愛の嫁を優しく抱きしながら窓からの景色を眺める。

ホグワーツでの生活も残すは一年。

卒業したらどうするか、就職? 研究? 何にしてもやりたいことを続けようと思った。

 

(それにはヴォルデモートが邪魔になるかなぁ……。もう利用価値はないかな?)

 

そんなことを考えながら家族が待っている場所に戻っていった。

こうしてレナード・テイラーの六年目のホグワーツは無事に終わった。




闇陣営のホグワーツ襲撃の本当の目的は分霊箱の奪取でした。
そういえばレオが万能すぎるからか必要の部屋が出てきてない気がする……。
ちなみに別動隊が侵入した方法は屋敷しもべ妖精による姿現しです。
お辞儀ももはや手段は選んでいません。
もう一つの目的はそのうち明らかになります。

レオの『眼』の弱点は魔法以外は通常の目と同じということです。
透視できるわけでもなく視力が特別優れているわけでもないし動体視力も常人並み。
但しこれらの欠点は魔法を使えば解消はできます。
それでも日常で常に魔法を使った状態ではないのでピーターの事は気づきませんでした。

ホグワーツ魔改造計画始動。
最終決戦でその機能を存分に発揮する予定です。

スリザリン生との和解が進んでいるのでホグワーツ側はかなり団結しています。
まだ一部のグリフィンドール生はいまいち馴染んでいませんが。

ハーマイオニー不死鳥化。
レオと違って外部からレオが調整しているのですぐに目を覚ましました。
ついでにおそろいの人外になったのでレオから永遠に一緒に居たいとプロポーズ。
結婚式は成人してからになりますかね。

レオとしてはそろそろお辞儀様は用済みかなと。逃げてお辞儀!


次回予告!

崩壊する魔法省!

勢いを増す闇の力!

ホグワーツに集う正義の者!

強大なるレナード・テイラー!

ホグワーツで巻き起こる最終決戦!

死、魂、世界。

ヴォルデモートが世界を取るか、正義が勝つのか!?

そしてレナード・テイラーは!?

次回 最終章! 宝はいつもすぐそばに

それでは次回お楽しみ。

※本編の内容は次回予告とは異なる場合があります。御了承下さい。




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最終章 宝はいつもすぐそばに
84. 陥落


今話から最終章となります。

原作ではハリー達がホグワーツを離れて冒険をしていましたけど、
この物語では全く異なる展開になると思います。
予定では後10話ぐらいで完結かな?

それでは84話どうぞ。


1997年。

この年はイギリス魔法界、いや世界にとって重大な年になった。

 

 

季節は夏、八月の中旬。学生たちにとっては夏休みの真っ最中だ。

友達とクィディッチなどで遊んだり、ダイアゴン横丁でウィーズリー・ウィザード・ウィーズで悪戯用品を買い込んだり、少数ではあろうが宿題をしたりなどそれぞれ思い思いに夏休みを満喫するだろう。

だが、それは平和な世の中であったらの話だ。

 

今現在の魔法界はそんな楽しい出来事は極少数である。

ただでさえ闇の勢力による被害は増す一方であったのに、魔法界で最も安全と言われていたホグワーツにまでその魔の手が襲い掛かっていたのである。

仕事などでの必要最低限の移動、信頼している人間とのみ交流する。それが今のイギリス魔法界では当たり前になってしまった。ダイアゴン横丁で買い物するのも難しいほどに治安は悪化している。

 

魔法省も現状を打開するために必死になって行動している。

今日も真夏の暑い中、魔法省内では人々がせわしなく動いている。

職員の仕事は多岐にわたる。

闇祓い局を中心とした魔法執行部が主に闇の勢力との戦いの中心である。

魔法事故惨事部も魔法界、マグル問わず様々な事件・事故を処理するのに手が足りていない。おかげでイギリスのマグルの政治や経済にまで徐々に影響が出始めている。

魔法生物規制管理部でも混乱が続く。連日通常ではありえない場所や規模で目撃・襲撃が発生する魔法生物に対処するためほとんど魔法省内におらずイギリス中を飛び回っている。

国際魔法協力部は有能な部長であったバーテミウス・クラウチが抜けた穴を埋めることができず、他国との外交が順調とは言えない状況だ。闇の勢力が力をつけるにつれて他国は距離を取り始めている。

魔法運輸部とて忙しさに例外はない。煙突ネットワークの不正な利用、移動キーの感知、そういった地味な作業から敵の動向を探れるように日々努力を怠らない。

これらとは逆に魔法ゲーム・スポーツ部は最早機能していない。この非常時には遊戯を楽しむ暇など無く仕事はほぼ無意味となっていた。

そして神秘部だけは存在していたフロアが崩壊したにもかかわらずいつもと同じく何をしているのか全く分からないままであった。

 

これらの多岐にわたる仕事を統括するのが魔法大臣だ。

現大臣、ルーファス・スクリムジョールは大臣室で次から次へと舞い込む部下からの連絡に指示を飛ばす。

 

「アイルは至急ロンドンに向かってくれ。闇祓い局にはこちらから連絡を入れておく。エイモスはトレント川へ調査に向かうように。フランスとドイツから返事が来ていない? すぐにふくろう便で催促しろ!」

 

かれこれ丸二日は寝ていない。魔法薬でどうにか体力を維持しているが流石に顔には疲労が滲み始めている。

 

「くそっ! しばし休息する! お前たちも少し休め、大臣命令だ!」

 

部下たちにそう言って椅子の上でしばらく目を閉じる。

 

(問題が山積みだ。どうにかしなければならん。ダンブルドアたちも後手に回っているのが現状だ……。どうしたものか……。)

 

その時、魔法省全体が揺れた。

それだけならば神秘部で何かやらかした可能性もあった。

だが、悲鳴と怒号、それに破壊音。これだけ揃えばどんな無能も何が起こったのか気が付かないわけがない。

 

「て、敵襲です!」

 

部下の一人が慌てて報告してくる。

油断なく杖を構えながら状況を確認するスクリムジョール。

 

「そんなことは分かっている! 詳細に報告しろ! 敵の人数、魔法生物の有無、被害状況だ!」

 

「ものすごい数の死喰い人(デスイーター)が一斉に最下層から押し寄せてきました! 100近い数です! 既にアースキンさんが最前線で戦闘を開始! こちらの被害状況は不明!」

 

最下層からとは言うがこのフロアからも爆音が聞こえてくる。おそらく多方向から同時に襲撃してきたのだろう。規模などを考えるにこのままでは最悪全滅する。

そう直感的に判断したスクリムジョールは闇祓いを除く職員に撤退命令を出す。

姿くらましや煙突ネットワークで次々に魔法省から逃げる職員たち。

スクリムジョールはトップとして、元闇祓い局長として最後まで残るつもりだった。

そこへ最前線で戦っているはずのアースキン・テイラーから通信魔法が届く。

 

『おい、スクリムジョール! お前残ろうとしてるな!? さっさと逃げろ! 流石に俺でもこの数はきつい!』

 

『何を言っている! トップがそう簡単に逃げられるか!』

 

『馬鹿野郎! お前が死んだら本当に魔法省はお終いだ!』

 

アースキンの指摘は事実だ。ここでトップを失えば拠点と統率を失った魔法省は真に崩壊する。

 

『しかし……!』

 

『いいから行け! 上のフロアは全部ぶっ壊してアトリウムから脱出しろ。俺が下の敵は抑えておくから全員行け! 大丈夫だ、死ぬつもりはねぇよ。』

 

通信はそれで途切れた。

闇祓い最強の男を信じてスクリムジョールは逃げることを決めた。

だが、これは死を恐れての逃亡ではない。明日を、未来を守るための行動だと、自分に言い聞かせながら必死に逃げた。

 

 

数十分後。最下層。

魔法省よりさらに地下を掘って進撃してきた死喰い人(デスイーター)とアースキンの激戦は続いていた。

マシンガンの様に放たれる攻撃、どんな攻撃も容易く防ぐ魔法防壁。

それをもってアースキンは大群相手に孤軍奮闘していた。

だが、上からの侵入者たちが増援として現れた。つまり上には既に敵しかいないのだろう。

逃げられた者以外は全員殺されたか洗脳されたか。どちらにしろ魔法省に残っているのはアースキン唯一人だろう。

 

「おいおい、こいつら何人いるんだか……。まぁ、これで俺が最後だな。よっしゃ!」

 

アースキンは気合を入れた。誰も味方がいないのであればそれはつまり、何も気にしなくてよいということである!

 

エクスペリアームス(武装解除)!」

 

アースキン・テイラーは十年以上ぶりに呪文を口に出した。

発動するのは学生でも使える基礎的な攻撃呪文。

だが放たれるは巨大な赤の光線である。

アースキンの常識外の魔力であればただの武装解除も凶悪な兵器に変貌する。

死喰い人(デスイーター)達は次から次へと吹き飛ばされ、粉砕されていく。

戦力として投入される魔法生物とて例外ではない。

 

だが、いかに膨大な魔力があろうとも無限というわけではない。

いつ終わるとも知れない絶え間ない攻撃、減り続ける体力と精神力。

徐々にではあるが追い詰められていくのは必然だった。

それでも最後まで戦い続けると決めたアースキンは強かった。

 

「退け。」

 

体を凍えさせるような恐ろしい声が戦場に響いた。

死喰い人(デスイーター)の攻撃が止み、道を作るように人の壁が割れた。

そこには闇の帝王、ヴォルデモートが立っていた。

 

「これはこれは……。気持ち悪い禿げ頭の登場とは!」

 

「アースキン・テイラーよ。大人しくしてもらおうか。できれば殺したくはない。貴様はレナード・テイラーに対する人質になってもらう。」

 

それを聞いた瞬間、アースキンは決意した。刺し違えてもこのくそ蛇野郎は殺すと。

 

エクスペリアームス(武装解除)!」

 

プロテゴ・マキシマ(最大の守り)!」

 

アースキンの全力の魔法は闇の帝王の防御の呪文に阻まれる。

アースキンは確かに魔力量は異常だ。だが決して技量が高いわけではない。

ヴォルデモートの卓越した技量と魔法への理解が魔力量の差を埋めたのだ。

それ以外にも要因はある。

 

「ちっ。流石に難しいか。」

 

「諦めろ。貴様は強いが俺様には勝てない。ただの人間がこの闇の帝王に勝てるはずがないのだ。」

 

「確かにこの状況じゃ勝てそうにないな……。だからと言って諦めるのもないな。」

 

一対一であれば勝機が無いわけではない。だが、疲弊し大人数に囲まれている現状では勝つ確率はゼロだ。

 

(こりゃ駄目かな……。あーあ、孫の顔を見たかったぜ。最期に出来るだけ嫌がらせしてやるか!)

 

アースキンが魔力を集中させる。ヴォルデモートも流石に警戒するがアースキンの狙いはヴォルデモートでは無かった。

ニヤリと笑うアースキンを見て直感的にやろうとしていることを悟る帝王。

 

「奴を止めろ! アバダ」

 

「遅ぇ! ボンバーダ・マキシマ(完全粉砕せよ)!!」

 

魔法省が消滅した。

 

アースキンの全魔力を込めた爆破呪文。

魔法省は地上まで全ての階層が吹き飛んだ。死喰い人(デスイーター)達も多くが消し飛び、生き残りも浅くない傷を負っている。ヴォルデモートとて無傷ではない。

 

「やってくれたな、アースキン・テイラー。だが、まぁいい。最低限の目標は達成した。」

 

生き残った下僕に指示を出す帝王。その時には既にその体に傷は一つもなかった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アースキン・テイラーは自分のベッドで目を覚ました。

自分は死んだ。自分諸共全てを爆破しようとしたのだ。手加減なしの爆破魔法。

それならば自分も死んでいるはずだ。

 

「天国の内装というのは自分の家と同じなのか?」

 

体には傷一つなく魔力不足以外は健康そのもの。天国というのは気が利いているようだ。

遺した妻や息子は気になるが上手くやるだろう。

今は疲れたのでもうひと眠りしよう。

そうしようとしたら扉が開かれた。

そこには最愛の妻、フェリス・テイラーが立っていた。

自分が目を覚ましていることに気が付いたら、弾丸のごとく飛びついてきた。

 

「ごぁ!?」

 

「アースキン! ああ、アースキン! 大丈夫!? 痛くない!? ああ、神様ありがとう! 死んでしまうかと思った!」

 

「が、ごほ! 落ち着け! というか、俺は生きてるのか?」

 

「そうよ!」

 

「なんで?」

 

「レオがあらかじめ守ってくれるようにしてたのよ。ほらペンダントつけておいてって。」

 

「あー……。そういえば。」

 

そこへレオとハーマイオニーがやってきた。

 

「父さん、大丈夫?」

 

「おお! どうやら生きているらしい! いやぁ、流石に死んだかと思った!」

 

「保護・転移用の魔法具が上手く発動してよかった。」

 

レオがアースキンに持たせたのは緊急脱出用の魔法具だった。発動条件が厳しい代わりにどんな妨害もすり抜けて確実に脱出できる仕様だ。通常の魔法具ではアースキンの多すぎる魔力によって誤作動をする恐れがあったのでアースキンの生命の危機や魔力が著しく減少した場合に発動する仕組みであった。

全身に酷い火傷を負っていたがかろうじて生きていたアースキンは治療によって何とか助かった。

その後はアースキンから状況を聞いた。

魔法省の陥落などはどうでもいいが、愛する家族を傷つけられて黙っていられるほど精神が人間から変わってはいないレオは本格的に闇の勢力の殲滅を決意した。

 

魔法省は陥落した。

それは闇の陣営が崩壊する序曲に過ぎなかった。




魔法省陥落しました。
お辞儀の目的は政府を乗っ取る、アースキンを人質にする、それともう一つ……。
原作と違ってスクリムジョールは逃げ延びました。アースキンがいなければ最期まで戦っていたでしょうね。

アースキンの全力。
多くの死喰い人がやられましたけど、その多くが洗脳・改造をした使い捨てなのでそこまで闇の陣営にダメージはありません。

レオ殲滅を決意。
これにてお辞儀たちは終了ですね。後はどうなるか……。


それと次回作の構想を活動報告に書いておきました。
興味があったらどうぞ。

それでは次回お楽しみ。


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85. 掃除

他の方のハリー・ポッター二次創作を読んでいると本当にいろいろだなと思う。
ハリーの扱いもスリザリンオリ主だと嫌な奴に感じることもあるし
グリフィンドールオリ主だといい仲間だとも感じる。
中にはハリーが全くでないまま完結した作品もあったりもする。
今作のハリーの扱いは出番が殆ど削られるという悲惨な部類ですかね。

それでは85話どうぞ。


魔法省が陥落した。

多くの職員が死亡し、生き残った者も洗脳され、魔法省の全てが闇の勢力に乗っ取られた。

新たに選ばれた魔法大臣は闇の帝王ヴォルデモートその人である。

力によって強引にその座に就いたことを隠そうともしない。こうして闇の帝王はイギリス魔法界に君臨することになった。

日刊預言者新聞やその他のあらゆる手段を用いてヴォルデモートはイギリス魔法族に問いを投げかけた。

 

服従か、死か。

 

先の戦争でその力を知っている者、魔法省が陥落したことで諦めた者、どっちつかずであった純血の者、権力の甘い蜜を求める者。そう言った者たちが首を垂れて闇の帝王の軍門に下って行った。その数はイギリス魔法界の住人の大部分であった。

ヴォルデモートが魔法大臣に就任した後、純血を尊びマグル生まれやマグル生まれの権利を認めないような数々の無茶苦茶な法が制定されていった。

純血は存在するだけで尊い。マグル生まれやマグルは穢れている。

職の階級も聖二十八一族、純血、半純血、混血、マグル生まれの順に大きく差がある。

純血からのマグル生まれへの魔法行使は大した理由が無くても認められる。

逆にマグル生まれはよほどのことが無い限り魔法行使が大きく制限される。

更には純血を傷つけたとなれば、裁判など無くその場で吸魂鬼(ディメンター)からのキスが執行される。

それ以外帝王とその一派は国外への侵攻をするために、そして何より最後に残った抵抗勢力であるホグワーツを完全に潰すため戦力の拡張を進めていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

闇に対抗する最後の砦、ホグワーツ魔法魔術学校。

ホグワーツ創設者の古の魔法、数々の防御魔法、更にはレナード・テイラーによって要塞と化したこの城には容易には闇の帝王も手が出せない状況になっている。

そこにはアルバス・ダンブルドアを中心に結成された不死鳥の騎士団とルーファス・スクリムジョール率いる魔法省の生き残りからなるレジスタンスが結成されていた。

 

ホグワーツの教師たちはまずは生徒たちの安全を最優先とした。

今の魔法界には純血と呼べる魔法使いは極僅かだ。ほとんどの魔法使いにはマグルやマグル生まれの血がその体に流れている。

未来を創る子供たちも同様である。

闇の魔法使いは何も考え無しにその子供を傷つけ殺すであろう。

子供を導く教師として、大人としてそのようなことを見過ごすことなど断じてできなかった。

魔法省陥落の報せと同時にダンブルドアはホグワーツを生徒たちや子供たちの避難場所とすること、生徒たちとその家族を迎え入れるように指示した。

だが、魔法省を完全に掌握された状態ではそれも難航した。

煙突ネットワークは監視されている。ふくろう便も安全とは言えない。

ホグワーツ特急の利用も場所が完全に把握されているため使用不可能だ。

移動キーや姿くらましで少しずつ地道に集めるしか手段が無かった。それも感知されてしまえば追撃部隊がやって来る。

更に、帝王を恐れて隠れたり国外に逃亡したりする一家も少なくなかった。

そんな一家が数で勝る闇の勢力に見つかって投獄されることも珍しくなくなっている。

 

それでも教師たちの必死の努力によって生徒の六割とその親族、そしてそれ以外にも多くの者たちをホグワーツに助け出すことには成功した。

ホグワーツの卒業生や在学生、その家族。それに闇に抗い、最後まで正義を信じる者たち。まさに正しき心の持ち主がホグワーツに集っていった。

諦めない、ここでどんなことがあっても最後まで戦う。そう言った気持ちに溢れていた。

 

だが、そこにはレナード・テイラーとハーマイオニー・グレンジャーの姿はなかった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ランプが一つだけある薄暗い部屋。

そこには男が一人椅子に縛り付けられていた。

杖は取り上げられ、魔法薬で体の自由は効かない。

男は死喰い人(デスイーター)だった。

聖二十八一族ほどではないがそれなりに歴史もあり裕福な一族の出だ。

今日も適当にマグル生まれを痛めつけて気分よく家に帰る途中だった。

それが気が付いたらこれだ。

メイド姿に声をかけられたのが最後の記憶であった。

 

「目が覚めたか。知っていることを全部話してもらおう。」

 

誰かが話しかけてくる。男は抵抗しようとするがその口からは次から次へと情報が漏れだしてくる。

主であるヴォルデモートの事、仲間の事、拠点、これからの計画、何もかもだ。

 

「んー……。いまいち情報が足りないな。まぁ、良いか。後は呼び寄せる餌として活躍してもらおう。」

 

得体の知れない恐怖が体を駆け巡る。必死で拘束から逃げようとするがどうすることもできない。

左腕の闇の印に焼けるような痛みが走った。闇の帝王が死喰い人(自分たち)を招集するときに感じる痛みだ。それを最後に男はこの世から消え去った。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

青年は上機嫌だった。

ついに憧れの闇の帝王の真なる忠臣の証、闇の印を授かったのだ。

青年は純血こそが最も優れた存在だと疑っていなかった。

幼いころから親族からそういい聞かされてきたし、実際ホグワーツに入学してみて初めて見たマグル生まれの魔法について無知な様子を見てそれは確信に変わった。

青年が卒業した年、闇の帝王が復活した。

両親は狂信的に闇の帝王を崇拝する死喰い人(デスイーター)だった。脱獄してきた両親から、お前も立派にあの方に仕えるように頑張るんだぞ、と言われて続けてきた。

そして今日、長年の夢は叶った。

左腕の闇の印を見ていると笑みを隠すことができそうになかった。

逆に周りの魔法使いたちはそれを見て恐れおののいている。

 

(最高の気分だ! ん?)

 

急に闇の印がうずきだした。

 

(まさか!? この俺に闇の帝王から直々に招集が!?)

 

青年は何の疑問もなく闇の印に導かれるまま姿をくらました。

その後青年を見た者は誰一人としていない。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

「我が君、また消息不明者がでました。把握しているだけで今回で二十七人目です。」

 

ヴォルデモートは新設された魔法省、大臣室でセブルス・スネイプからの報告を聞いていた。

 

「ダンブルドアはこの件については感知しておりません。今はホグワーツに多くの者を保護することに全力の様です。おそらくは」

 

「十中八九、レナード・テイラーの仕業だろう。これ以上駒を減らされるのはまずい。早急に対策を考えねば。」

 

「我が君! 確認したいことがあります!」

 

ベラトリックス・レストレンジが急ぎ足で大臣室に入って来る。

 

「どうしたベラ? 許す、話せ。」

 

「はい! 闇の印を使っての招集はかけておりませんでしょうか? アントニン・ドロホフが我が君からの招集と言って姿くらましをしたとの事です。」

 

「いや、そうか……。ベラ、下僕どもに至急通達しろ! 闇の印による召集を感じ取っても決して姿くらましをするなと! セブルス、お前は逆にわざと呼び出しに答えるようにしておけ。」

 

ベラトリックスはお辞儀をするとすぐに部屋を飛び出していった。

スネイプも頭を下げ退室する。

すると見計らったかのようにスネイプの闇の印がうずくのを感じた。

すぐに招集されている場所に姿現わしをする。

姿を現した場所は研究室の様だった。以前ホグワーツで訪れたレナード・テイラーの研究室と同じような印象だ。

 

「お待ちしておりました、スネイプ教授。」

 

メイド服の魔法生物のクーが出迎えてきた。帝王の予想通りレナード・テイラーが闇の印を使って死喰い人(デスイーター)達を捕らえでもしていたようだ。

 

クーに部屋に案内される。そこにはレナード・テイラーとハーマイオニー・グレンジャーがいた。

 

「お久しぶりです、スネイプ先生。早速ですが協力していただけませんか?」

 

「我輩に出来ることならばな。」

 

スネイプとレオはお互いに持っている情報を共有した。

やはりと言うか行方知らずになっていた死喰い人(デスイーター)はレオによって情報を抜かれ葬られていたらしい。闇の印に干渉して一人ずつ呼び出して捕らえていたようだ。

あらかた情報を得てからわざとドロホフが間違った招集で姿をくらましたと分かるようにしたようだ。これで闇の印を使った招集には疑心暗鬼が付きまとうだろう。

 

「さて、あらかた情報は手に入れたし細かい掃除はすみました。スネイプ先生にはまた後日協力してもらうことになると思います。」

 

まるでごみを捨てるかのように人を殺す不死の怪物を見てセブルス・スネイプはこいつが敵でなくて本当に良かった、と感じていた。。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

1997年9月1日 キングス・クロス駅 九と四分の三番線

毎年ホグワーツに向かう子供とその親でいっぱいのここも今年は誰もいない。

ホグワーツは最後の砦となり、既に子供たちの大半がホグワーツにいる。

赤い蒸気機関車も動く気配はなく静かである。

 

そんな中、レナード・テイラー、ハーマイオニー・グレンジャー、そしてクーの三人だけがその場にいた。

 

「誰もいないわね。当然だけどね。」

 

「まぁ、そうだろうね。それに死喰い人(デスイーター)もいないとはね。」

 

「それでどうするのですか、レナード様? 列車は動かないようですけど。」

 

「とりあえず来てみただけだからね。ゆっくりとレールの上を飛んで行こうかな。」

 

レオが魔法具を取り出す。

ミニチュアの部屋だった。レオが魔法を解除すると普通の部屋のサイズまで大きくなる。

 

「さぁ、どうぞ。」

 

三人が入る。中はソファーや椅子、暖炉がある普通の部屋だった。

お菓子や紅茶も用意されている。

 

「それでは、ホグワーツに向けて出発!」

 

レオの号令で部屋ごと浮き上がりレールに沿って飛び始めた。

 

「これでゆったり旅気分だね。のんびりと楽しむとしよう。」

 

「そうね。私もレオとクーとのんびりしていきたいわ。姿くらましとかじゃつまらないもの。」

 

三人は空中旅行を楽しんでホグワーツに向かっていった。




お辞儀魔法大臣に就任。
色々と純血万歳!な無茶苦茶な法令を制定していく。
でも民衆は恐怖からそれに反対もできない。

ホグワーツに騎士団と魔法省の生き残りが集まりレジスタンス結成
生徒たちとその家族やその他の多くも助け出していく。
それでも限度があるので犠牲者はかなりの数になっている。

レオは適当に捕らえた死喰い人から情報を入手。
後は闇の印を用いたお辞儀の招集手段を利用して一人ずつ拉致して情報を手に入れていた。ある程度の情報を手に入れたらわざとばらして容易に利用できないようにした。
お辞儀側が把握している以外にも多くが葬られていた。
レオの感覚としては小さなごみを捨てる掃除感覚。

誰もいない九と四分の三番線。
とりあえず期の初めはここからかなと来てみたはいいけど無人。
常人とは最早言えない三人は世間の情勢など関係なくゆったりとホグワーツへ。

それでは次回お楽しみ。


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86. 戦前の嵐

この物語は私の妄想の産物ですけど
文章として書いていない、私の脳内にあるだけの部分も多々あります。
そういった部分も書きたいけどその能力がないからもどかしい。

それでは86話どうぞ。



北海の真ん中にある孤島。

そこには罪を犯した魔法使いを閉じ込めておく監獄が存在していた。

その名をアズカバン。

吸魂鬼(ディメンター)によって幸福を根こそぎ吸い取られるそこはまさに地獄である。

 

だが、それは過去の話。

最早通常の監獄としての機能は既になく、闇の帝王ヴォルデモートを中心とする闇の勢力の最大の拠点となっている。

島は荒れ狂う海に囲まれた天然の要塞、そこにホグワーツに劣らぬ防御魔法が施されたアズカバンは容易に正義が踏み入ることができない領域だ。看守であった吸魂鬼(ディメンター)はイギリスの各地に配置され数を減らし、本来は囚人であるはずの死喰い人(デスイーター)が自由に闊歩している。

 

現在のアズカバンの機能は主に三つ

一つは死喰い人(デスイーター)達の居住施設。

下っ端の死喰い人(デスイーター)ですらない者から古株の歴戦の魔法使いまで相当数の魔法使いがここで生活している。居住空間だけでなく娯楽施設なども設置されストレスを感じることなく暮らすことができるようになっている。

 

二つ目はマグルやマグル生まれを閉じ込めておく監獄。本来とは逆に罪の無いものが監獄に捕らえられている。しかも、ただ単に捕らえられているだけではない。

些細なことから痛めつけられ、拷問され、犯され、そして無残に殺されることなど魔法省が陥落してからの約一カ月で両手の指では数えられないほど起こっている。死んだ者たちは埋葬されることも無く魔法生物たちの餌となる。

 

最後は実験施設。人間の体内に悪霊の火を埋め込んだ爆弾などはここで生み出された技術だ。

捕らえられているマグルやマグル生まれを実験材料として利用してより強力な魔法や魔法薬の開発を行っている。それ以外にも魔法生物の強化改造や新造などの研究もしている。

 

人を人とも思わない所業が平然と行われているここはまさに地獄そのもの。

それも当然、純血主義にとって人とはすなわち自分たちのことを言う。それ以外の穢れた血はゴミなのだ。

半純血などの闇の陣営に屈した者たちも自分たちにその矛先が向かないように必死である。

今日も孤島には罪なき者たちの嘆きが広がっている。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ホグワーツ魔法魔術学校。

世界有数の魔法学校にしてイギリス魔法界最後の砦。

校長であるアルバス・ダンブルドアの方針で子供たちには出来るだけ平時と同じように学ぶことができるようにと授業は変わらず行っている。

だが、不死鳥の騎士団員でもある教員は任務で不在になることが多く思うように授業ができない有様。授業内容も身を守ることを中心としたものになっている。

更には魔法省の生き残りや逃げ延びてきた者たちの居住区画の為、クィディッチ競技場が割り当てられることになってしまってもいた。空間拡張の魔法もあるのだがそれも限界がある。

授業は思うようにならない、クィディッチはできない、逃げてきたものが増える、恐怖から逃げようとする者も出てくる。それだけでなく毎日のように嫌な情報が舞い込んでくる。

ストレスで体調を崩す生徒も少なくない。

そんな中で、この逆境をどうにかしようとする生徒も大勢いた。

レナード・テイラーによって鍛えられたジニー・ウィーズリーを筆頭にした特別授業に出ていた生徒たちである。最早並みの闇祓いレベルの力を得た生徒たちは教師たちに自分も戦うと連日申し立てていた。

子を心配する親や、生徒想いであるマクゴナガルは当然反対した。

 

「ミス・ウィーズリー! 何度も言いますが危険です。それにあなたたちは未成年なのですよ!」

 

「でも先生、私たちだって今がどんな状況か理解しています! そのうちホグワーツ(ここ)にも敵が来ます! ここが絶対安全っていう保証はあるんですか!?」

 

「そ、それは……。」

 

マクゴナガルは言い淀んだ。今の戦況はとてもじゃないが良いとは言えない。

魔法省が陥落したことでイギリス魔法界は既に闇の帝王に乗っ取られたも同然だ。

大半の民衆が諦め屈している。ダンブルドアを信じていないわけではないが、ここでの抵抗もいつまで続けられるか不安になって来る。

 

「私たちは黙ってやられるなんて嫌です。戦います!」

 

マクゴナガルは集まった生徒たちの目を見た。

皆、覚悟を決めた目をしていた。

 

「……分かりました。ただし! 敵がここを襲ってきた時にそれを防衛する、それ以外は認めません。私たちの任務の手伝いなどは無用です。いいですね!」

 

「「「はい!」」」

 

集まっていた生徒たちが一斉に返事をする。

そこへメイドを引き連れた一人の生徒がやってきた。

ホグワーツでは知らぬ人がいない、ここが今でも攻め込まれていない最大の要因ともいえる、レナード・テイラーである。

 

「みんなここにいましたか。戦う意志を持った皆さんにささやかながらプレゼントです。」

 

そう言ってレオはクーが持っていた箱を見せる。箱の中には大量の指輪やネックレスなどのアクセサリーが入っていた。

 

「これらは防御のための魔法具です。生徒だけでなく騎士団の分もあります。効果については様々ですが、とりあえずどれも一度なら死の呪文(アバダ・ケダブラ)も防げる仕様になっています。」

 

生徒も騎士団員も予想外の贈り物に最初は驚いたが、その後は喜んでそれを受け取った。

レオとしてはこれ以上ヴォルデモートの好きにさせるつもりはなかったので、できる限りの被害は減らそうと考えての事だ。

 

「マクゴナガル先生。スネイプ先生はどこですか?」

 

「スネイプ先生ならば数時間後に任務から戻られるはずです。それにしてもミスターテイラー、こんな大量の魔法具を本当に良かったのですか? いえ、ありがたいのですが……。」

 

「ああ、大丈夫ですよ。対価とか必要ないですよ。僕としてもここには愛着がありますし、できれば死人は少ない方が良いですから。それにそろそろ世間がこんな状況では不便ですし、何よりアレは滅ぼすと決めました。それでは、戻りますのでスネイプ先生が戻られましたら研究室の方へ来るように連絡お願いします。」

 

 

数時間後、セブルス・スネイプはレナード・テイラーの研究室を訪れていた。

今日も死喰い人(デスイーター)や闇の帝王と会ってスパイ活動をしてきたところだ。

魔法省を乗っ取り、イギリスを事実上支配しているが未だにホグワーツに攻め入ることすらできていないためホグワーツをスパイしているという役割のスネイプに様々な負担がかかっているのであった。

体力も精神も日々削られている。ホグワーツで憎たらしい糞メガネの餓鬼と会うのとどちらがいいかなどといったどうでもいい比較をついついしてしまうほど疲れていた。

ホグワーツに戻ってきたら、次はレナード・テイラーからの呼び出しだ。

教師を呼びつけるとは何事だ! と言いたくもあるが、全てにおいて自分を上回る存在であるし、ダンブルドアからも逆らうなときつく厳命されている。

 

(嫌な予感しかしない……。)

 

思わずため息をつくとメイドのクーが紅茶を淹れてくれていた。

 

「お疲れの様ですね。こちらをどうぞ、疲労回復用の魔法薬入りの紅茶です。美味しいですよ。」

 

スネイプは一口飲む。すると今までの疲労が嘘のように消え去っていくのを感じた。

 

「さて、スネイプ先生。ヴォルデモートの配下としてスパイ活動は順調ですか? 僕が知っている情報だと死喰い人(デスイーター)が一番集まっている拠点は元アズカバンのはずです。それを踏まえて先生にお願いがあります。」

 

「何かね? できれば楽な仕事だとよいのだが。」

 

レオは手のひらサイズの宝石を差し出した。それは虹色に輝いており多量の魔力を秘めているようだった。

 

「これをお渡しします。これはそうですね……目印ですかね。これをアズカバンに持って行って欲しいのです。それとこれを持って行ったときに出来るだけ多くの死喰い人(デスイーター)を集めてください。あ、ヴォルデモートは除外で。集める理由としては『レナード・テイラーの魔法具を手に入れた』とでも言えばいいのでは? この魔法具には説得力を高める効果もあるので集める助けになるでしょう。この作戦後にはおそらくスパイ活動は難しくなるでしょうからこちら側と相談してから決行日を決めてください。」

 

死喰い人(デスイーター)を集めてアズカバンに持って行くだけでよいのかね? その後はどうなるのだ?」

 

「被害者の救出と敵の殲滅を行います。それを持って設定の場所で念じれば発動するようになっています。この場合はアズカバンですね。その後は…………」

 

魔法具の効果とその後を聞いて、レナード・テイラーの本気が伺えた。

そして同時にスパイとしての活動は終わるのだと確信した。

ダンブルドアやスクリムジョールらと相談して作戦の決行日は一週間後に決まった。

この作戦後には最終決戦が始まる予定だ。

それまでに多くの死喰い人(デスイーター)が集まるようにスネイプは奔走することになった。

 

一週間後。

 

アズカバンには常駐しているもの以外にも多くの死喰い人(デスイーター)が集まっていた。

闇の帝王も信頼するホグワーツにスパイとして潜入しているセブルス・スネイプが最大の障害たるレナード・テイラー製の魔法具を入手したとの事であった。

闇の帝王にもその報せは届いている。

その魔法具の効果内容は単純に魔法使いの魔力や魔法精度などを強化するものであるとの事。その強化度合いは凄まじく、ホグワーツの結界を超えて姿現しや強力な魔法の連続使用も簡単になると言う。そのため多くの死喰い人(デスイーター)がその効果を受けようと集まっていた。

闇の帝王自身はまずは下僕で効果を確かめてからの予定の為ここにはいない。

 

百を優に超える死喰い人(デスイーター)全員の注目を集めながらスネイプは七色に光る宝石を取り出す。

死喰い人(デスイーター)達がその輝きに目を奪われている中、スネイプは魔力を込めそれを起動させる。

その瞬間、宝石の光は増大し目を開けられないほどになる。

その光が収まった時にはスネイプの姿はどこにもなかった。

 

そして、集まった死喰い人(デスイーター)達は自らの運命を知ることになった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ホグワーツの校庭。

あらかじめ場所を開けていた所にスネイプと囚われていた被害者たちが姿を現した。

待機していた癒者やマダム・ポンフリーたちが傷や呪いを癒していく。

任務が終わってホッとしているスネイプにレオが労いに来た。

 

「お疲れ様です。首尾はどうでしたか?」

 

「思っていたより人数が集まっていた。それだけレナード・テイラーの名は効果があるようだな。」

 

「それは良かった。では最後の仕上げといきますか。」

 

レオは上空高く飛び、全力の魔力を込めて魔法を発動させる。

数年前に競技場の巨大な迷路を吹き飛ばした殲滅魔法(インタリトム)の更なる強化版だ。

それを何度も発動させ更に重ね合わせるだけでなく圧縮させてゆく。

手のひら大の光の玉が出来上がる。その中には恐ろしいほどの破壊の魔力が満ちている。

 

破滅の光(エグゼティム)

 

それを更なる上に向けて射出する。大気圏を超え、宇宙に達したそれは目印に向けて真っ直ぐに落ちていった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

アズカバンには恐怖、混乱、絶望、諦め、その他様々な負の感情で溢れていた。

セブルス・スネイプが発動した魔法具の効果によるものだ。

魔法使いの強化などと言うのは勿論嘘である。真の効果は全くの別物。

 

一つ、発動者が闇の魔法使いと認識した人間を除いて指定した場所に転移させる。

二つ、魔法具を中心にアズカバンのある孤島周辺海域に物理移動・魔法転移阻害の結界を張る。

三つ、これから先に起きることを瞬時に周りの人間に理解させる。

ついでに宝石にはレオの指輪と同程度の防御機構も備えているためそう簡単には破壊は不可能である。

 

これらの効果によってアズカバンには死喰い人(デスイーター)だけが取り残された。

これから先の未来……つまりは天からの裁きの光が落ちてくることを認識させられるというおまけ付きだ。

 

逃れられぬ死の運命に直面した死喰い人(デスイーター)達の行動は様々だった。

逃げられないと理解していても必死に逃げようとする者。

自暴自棄になって無差別に攻撃する者。

愛する家族と抱きしめ合っている者たち。

自殺をする者。

今までの罪を懺悔し許しを乞う者。

最後まで闇の帝王への賛辞を叫ぶ者。

欲望のままに飲み、喰い、犯す者。

精神崩壊する者。

 

そんな死喰い人(デスイーター)達の行動など無意味だと断じるがごとく、天からの贈り物は島とその周囲ごと無に帰したのであった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

闇の帝王、名前を言ってはいけないあの人、死の飛翔、永世魔法大臣、他にも多数の二つ名がある史上最悪の闇の魔法使いヴォルデモート。

青白い死人のような肌。髪一つない頭に、削ぎ落したかのような鼻。目はヒトではないと主張するように真っ赤である。

そんなヴォルデモートは怒り狂っていた。その怒りにふれ彼の周りには傷ついた死喰い人(デスイーター)が転がっている。中には屍になっているものも少なくない。

普段から機嫌を損ねれば部下に八つ当たりするのは当たり前ではあった。

だがそれも以前までの事。復活してからは最大の障害(レナード・テイラー)を排除するために貴重な駒を悪戯に消費するのを良しとせず、できるだけ自制することを覚えるようになっていた。

そんな帝王がここまで怒り狂っているのには三つ原因があった。

 

一つ、最大の拠点であるアズカバンが消滅したからである。

戦闘要員の死喰い人(デスイーター)や魔法生物がいるだけでなく、研究施設も揃った重要な拠点であった。ここが落とされたのはかなりの痛手である。だが、戦力で言えば他にも拠点や切札はあるので致命的とは言えない。屈辱と怒りを覚えるが敵の事を考えればまだ想定内だ。これだけならここまで怒り狂わない。

 

二つ、セブルス・スネイプの離反。

ヴォルデモートが最も嫌うことの一つに裏切りがある。

その境遇から共感し、信頼もしていたスネイプの裏切りはかなりの衝撃だった。

今までのホグワーツの情報がどこまで本当であったのか、それを確認する術も今はない。

こちらの情報も多くが敵にわたっているはずだ。

アズカバンの消滅にもスネイプが関与している。

最早、許すことなどありえない。確実に殺す。

だが、これも乱心させるほどの怒りをもたらさないはずだ。

 

最後、三つ。これが最大の要因である。ここまで馬鹿にされたのは生まれて初めてだ。

部屋の机には一つの手紙が置いてあった。八つ裂きにしようとしたが生半可な魔法は防いでしまう防護が施されているのでそれも叶わなかった。

手紙の内容はこのようなものだった。

 

『闇の帝王 トム・マールヴォロ・リドル様

そろそろ秋も終わり、冬が近づくことで肌寒くなってくる時期ですね。

さて、そろそろ十分人生を堪能したと言っても良い頃合いでしょう。

11月末日、ホグワーツにてトム・リドル様をあちらに送る会を開催しようと思い連絡をいたした次第でございます。

既にあなた様の魂の一部がホグワーツでお待ちになっております。

ただ、一人で旅立つのは心細いとは思いますので

配下の死喰い人(デスイーター)並びに魔法生物全員の参加をお待ちしております。

 

当日の催し物として新作の魔法、魔法薬、魔法具の発表を予定しておりますので、

全能力を持って楽しんでいただければ幸いです。

 

レナード・テイラーより

 

追伸 この内容は全世界の魔法省に通達しておりますので欠席される場合はお手数ですが各国の魔法大臣まで連絡をお願いいたします。』

 

この手紙を分かりやすく書くと、

 

十分生きたからそろそろ死ね。

ホグワーツで待っている。

分霊箱(ホークラックス)は既に確保した。

一人では怖いなら全員でかかってこい。

新しい魔法の実験をするから全力で来い。

逃げるならどうぞ、但し全世界が逃げたことを知ることになるぞ。

 

こんな感じだろうか。

明らかに馬鹿にした言い回し、数は不明だが分霊箱(ホークラックス)も確保され、しかも実験感覚でこちらの勢力全部を滅ぼすことに疑いを持っていない。

屈辱だった。完全に舐められている。だが、ここで怒りのまま突撃しても容易にやられる。

安らぎの水薬を飲んで怒りを抑える。闇の帝王に逃走はない。

今は十月の半ばだ。後一月半の間に決戦の準備を整えなければ。

下僕たちに決戦の準備を進めさせる。それと同時にヴォルデモート自身も切札の強化を決意する。

 

(あと少し……。レナード・テイラーよ、貴様は俺様を殺すつもりのようだが逆だ。次に俺様と出会った時が貴様の最期だ。)

 

時間は有限である。だが、闇の帝王は焦ることなく作業を進める。自身の敗北など微塵も疑うことなく、宿敵の敗北とその先の優れた魔法族が世界を支配する世界を夢見ていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

レオはホグワーツ校長室でダンブルドア、マクゴナガル、スネイプ、スクリムジョールと共に最悪の監獄の最期の光景を見ていた。

アズカバンの近くで待機していたクーから連絡があり島ごと消滅したことを確認した。

レオ以外は敵とは言え、人が恐怖によって見せる痛ましい光景に顔をしかめていた。

 

「よし、成功。予定ではこれからヴォルデモートへの連絡が行くことになっています。騎士団と闇祓いで決めた決戦の日時はおよそ一カ月半後の11月30日です。」

 

「勝算はあるのだろうな?」

 

スクリムジョールは再確認をしてきた。戦いとは何があるか分からない。少しでも勝算が高い方法を取りたいと思うのは当たり前のことだ。

 

「敵をちまちま潰していっても時間がかかるし面倒なので、こちらに誘い込んで一気に殲滅した方が手っ取り早いと考えました。ここ(ホグワーツ)は戦場になりますけど防衛機構と僕が相手をします。皆さんは生徒や非戦闘員を守ってください。勝算はまぁ、大丈夫でしょう。」

 

レナード・テイラーは大したことが無いように敵を殲滅すると宣言した。

困惑した雰囲気の中、ダンブルドアが代表として質問をする。

 

「決戦当日は本当にわしらは何もしないで良いのか? わしらに出来ることは何もないのか?」

 

「当日は僕、クーで真正面から迎え撃ちます。ダンブルドア校長たちには城の防御と当日までに情報伝達等をお願いします。」

 

「わしらの力は戦闘には不要なのかの?」

 

「当日は僕も全力で敵を滅ぼすつもりです。なので巻き込まない保証はできません。ダンブルドア校長や父さんレベルの実力がないと殺してしまうかもしれません。それに……。」

 

「それに、何じゃね?」

 

「できれば僕の力だけでやりたいです。敵は父さんを傷つけたわけですし、僕がやりたいのですよ。」

 

その言葉でレナード・テイラーが怒っているのを感じた。

それに今までもとんでもない力を見せてきたが、全力で戦っているとは思えなかった。

そんなのが全力で戦う。恐ろしくて想像したくもない。

 

「分かった……。お主に全てを任せよう。わしらはレナード・テイラーを信じてこの城を護るとしよう。」

 

「それでは当日まで色々と準備しますので、生徒や避難民への情報伝達と当日までに城での配置等よろしくお願いします。」

 

話は終わったとでもいうようにレオは出ていった。残された者たちはダンブルドアの元これからについて話し始めた。

 

次の日にはホグワーツ敷地内にいる全ての元に最終決戦が行われると通達があった。

嘆き、怯え、恐怖、そういった負の感情が次々と出てくる。

だが、それに負けないほどに敵と戦うと言う強い意志もあった。

しかし、闇祓いや実力のある生徒たちに課されたのは城の防衛だけであった。

納得がいくはずもなくダンブルドアやスクリムジョールに詰め寄る。

返答は唯一つ、「レナード・テイラーに殺されたくなければ下がっているように」それだけであった。

闇祓いも生徒たちもすぐに指示に従った。彼らはその実力を知っているのだ。

 

決戦までにホグワーツは大幅に拡張され中に全生徒、避難民を収容できるまでになっていた。同時にレオによる防衛機能もさらに追加されていた。

 

そして時間はあっという間に過ぎ去り、世界の運命を決める日がやってきた。




アズカバン消滅!

アズカバンは色々と地獄になってました。
それももう終わりましたけどね。

ホグワーツはダンブルドアが校長のままなので今までと同じように授業をしています。
ただ、なかなか思うようには行っていませんが。
レオがジニーや騎士団に防護の魔法具を渡したのは生存率を上げる=お辞儀への嫌がらせになるからです。

スネイプ先生スパイ活動から解放。
スネイプ先生に渡した宝石の効果は以下のようなもの
・目標へ誘導するためのビーコン
・説得率上昇の魔法
・発動時に味方を救出
・発動時に敵を閉じ込める
・発動時に敵へ死を認識させる
ついでに生半可な攻撃では壊せません

破滅の光は4章で迷路を吹き飛ばした魔法の上位版です。
島ぐらいなら余裕で吹き飛ばす魔法です。

お辞儀への挑発
手紙には読んだ人物を苛立たせる魔法が仕込んであったのでこんな感じに。
レオは普通に文章を書いただけです。苛立たせる参考に双子やフォイが協力してます。

最終決戦は11月末。

それでは次回お楽しみ。


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87. 戦争

ついに最終決戦開始!

強大なる敵に仲間を率いて戦いを挑む!
敵は最強の眼! 万能の僕! 不死身の身体と魂! すべて揃った最悪の存在!
帝王ヴォルデモートはこれを打ち破ることができるのか!?

……どっちがラスボスだよ。

それでは87話どうぞ。


運命の日 1997年11月30日

 

ホグワーツにいる魔法使いたちは全員が緊張していた。

戦う力がない子供や年寄りなどは幾重にも重ねられた防御陣の奥で震えている。

戦えると判断されたホグワーツの生徒達や大人たちは非戦闘員を護るため杖を握りしめている。

不死鳥の騎士団員と闇祓いの生き残りたちは要塞と化した校舎の周りに立ち命に代えても死守するつもりでいた。

 

ホグワーツ城はレオとダンブルドア合作の防御が施されている。

ホグワーツの敷地もまたレオ特製の三桁を超える魔法障壁で覆われていた。

いかなる魔法生物の転移、あらゆる魔法を反射・吸収・遮断・防御し、そして物理的にも突破は困難である魔法障壁が百を超えるほど展開されていた。

ただ一つの入口を除いて。

ホグワーツ城の真正面の一区画のみ障壁が存在しない。

明らかに敵を誘い込む罠である。だが、ここを攻めるにはその穴を突くしか方法がないのもまた事実。誰もがそこから今にも敵が突撃してくるのではないかと息を呑んでいた。

 

「それじゃあ、行ってらっしゃい。」

 

「ああ、行ってくるよ。」

 

レオはハグをするつもりで近づいたが、やんわりとハーマイオニーに止められた。

 

「それは帰って来てからね。頑張るのよ。」

 

「分かった。頑張ったらご褒美でも貰おうかな。」

 

ハーマイオニーは空間ごと隔離した最も安全な研究室で留守番だ。

他の全員の緊張や恐怖とは無縁なレオとクーの二人は校舎から離れたところに立って敵を待ち受ける。

 

「レナード様、現在19時を過ぎました。今のところ障壁への攻撃及び敵影は確認されていません。」

 

「報告ありがとう。さて、日も沈んで暗くなってきた。そろそろかな?」

 

 

それからおよそ十数分後、完全に日が沈んだ頃合いにホグワーツ城前方から闇そのものとも思える黒い波が押し寄せてきた。

その正体は数百を超える吸魂鬼(ディメンター)の集まりである。

防御障壁のおかげで吸魂鬼(ディメンター)の影響はないとは言え、その姿を見たホグワーツ城の人間の心には多大な恐怖が襲いかかっていた。

障壁の穴を覆いつくすように、まるで誰も決して逃がさないように黒い大きな壁が出来上がった。

 

そして次はその黒い壁をかき分けるように大量の亡者が侵入、一直線に城に向かってきた。

 

「すごい数だな。せっかくだし防衛装置を使うとしよう。」

 

レオが合図を送ると城にいる者たちの魔力を使用して防衛装置が作動する。

塔の最上部より殲滅魔法(インタリトム)が放たれ亡者の群れを一掃した。

回数制限こそあるがこの装置一つで大抵の敵は撃退してしまうだろう。

だが、敵もこの戦いに全てを賭けたのだろう。

撃っても撃っても敵は次から次へと湧いてくる。とうとう打ち止めになってしまった。

 

防衛装置が停止したことによって次の敵が進撃してきた。

巨人の集落より運び出されて難を逃れていた正真正銘最後の巨人族。大きさは30mを超え狂気の研究成果を詰め込んだ特別製、それが10体ほど。

空中には様々な種のドラゴンが舞っている。これらも薬と改造によって通常とは比べ物にならない存在に変貌している。

頭・前足が鷲、胴体と後ろ足がライオンのグリフィンや頭は人間、胴体はライオン、尾は即死の毒針を持つサソリ、ほとんどの呪文を弾く皮膚を持ったマンティコアまでいる。

それ以外にもマグルの兵器で武装したトロールや大蛇が次から次へと湧き水のように吸魂鬼(ディメンター)の壁から現れる。

その全てがホグワーツを、抵抗勢力を滅ぼすための戦力ではない。たった一人の存在を殺すためだけに進軍していた。

 

「壮観だな。クー、リミッターを解除する。命令はあれらの全滅。」

 

「了解しました。」

 

レオはクーの体の中に手を入れる。

そして体の中にあったクーの細胞の上限を抑制していた魔法式を解除した。

体の中にあった枷がなくなったクーは飛んだ。

迫りくる魔法生物の大群の真ん中に着地すると同時にその体は液状化して広がった。

見る見るうちにその液体は広がりホグワーツの敷地全てを覆いつくした。

液体は漆黒、まるでこの世全ての色を混ぜて作ったような黒だ。

 

地面が真っ黒になろうと、足にそれが付着しようと構わず進軍を続ける魔法生物。

目標はレナード・テイラー。それ以外は何も知らない、分からない。ただ魂に刻まれた(レナード・テイラー)を殺す、邪魔者を殺す、その命令だけが彼らの存在理由。それだけが生きる証。そう作り変えられていた。

 

そしてクー(レオの最高傑作)はその絶対命令を破壊する。その力は既に解き放たれている。

黒い地面から無数にドラゴンやバジリスク、戦闘装束のクーが出現する。

複数の生物が混じりあったような姿のおぞましい存在までも現れる。

黒い液体そのものも鋭利な刃を持った触手や様々な武器に代わり攻撃を開始した。

 

「「「すべてはレナード・テイラー様のために!」」」

 

ドラゴン同士が呪われた炎で応戦し合う。蛇が絡み合い食い合う。

黒の鎧の戦士に切り刻まれるトロール。巨人を攻撃しながら踏みつぶされる無数のクー。

毒針が刺さり、首を断たれ、食いちぎられ、焼かれる。

そんな魔法生物同士の地獄のような戦い、戦争が始まった。

 

まともな感性なら絶句するような戦いにレオは見惚れていた。

 

(すごい……。魔法生物の鮮やかな色が舞っている。ここまで派手なのは二度とみられないかもしれないな。)

 

もう少しこの光景を見ていたいと思っていたが本日の主賓が現れては対応するしかない。

魔法生物同士の戦いなど全く興味がないようにレナード・テイラーのみを見据えて闇の帝王がゆっくりと、悠然と向かってきた。部下を一人も連れておらずたった一人だ。

 

「こんばんは、闇の帝王ヴォルデモート卿。やり残したことはないですか?」

 

「こんばんは、我が最大の障害、レナード・テイラーよ。貴様はやり残したことでいっぱいであろう?」

 

「当然です。まだまだ魔法の研究は途中も途中。ゴールは遥か彼方、いやゴールなど無いのかもしれませんね。」

 

「そうかもしれん。だが、貴様はそのゴールにはたどり着けん。ここで! 今日! この世から消え去るのだからな!」

 

ヴォルデモートはレオの目を見てしっかりとお辞儀をした。

レオもそれに応え、お辞儀をする。

体を起こした時、魔法界の命運を決める戦いが真に始まった。

 

ステューピファイ・マギ・マキシマ(魔法よ止まれ)!」

 

ヴォルデモートは麻痺の呪文を放つ。通常であれば必勝必殺の死の呪文(アバダ・ケダブラ)を使う。

だが、レナード・テイラーにはそれは無意味だ。だからこそ行動を阻害する目的で麻痺を仕掛けた。

 

「肉体ではなく魔法そのものを麻痺させる呪文ですか! 良いですね!」

 

レオは余裕でそれを避ける。今のレオにとって普通の魔法は脅威足りえない。

数多の防御式が防ぐだけでなく肉体そのものも無敵の鎧なのだ。

だが、避けた。それは闇の帝王の魔法が、その防御自体を無効化させる魔法だったからだ。

お互いに魔法を放ち、避ける。一進一退の攻防が続く。

レオが高速で動いてもヴォルデモートも長年の戦闘センスによってそれを避ける。

だが、おかしい。いかに優れた魔法使いで戦闘になれているとはいえ人外のレオの攻撃をこうも避けれるものなのか?

お互い一旦動きを止める。

 

「闇の帝王、あなたも肉体を改造していますね?」

 

「無論だ。人の身でなくなった貴様に勝つには俺様も人を超越しなければならない。だが、俺様の力はこんなものじゃないぞ!」

 

帝王の目が緑色に輝く。それを見た瞬間、レオの全身に重圧がかかる。

 

「隙ありだ! ステューピファイ・マギ・マキシマ(魔法よ止まれ)!」

 

隙のできたレオに魔法が直撃する。

続く攻撃を転移で避け、体勢を立て直す。

 

「いやいや! ビックリしました! まさか、バジリスクの眼とは!」

 

「流石にこれでは死なんか……。だが、これで貴様の防御魔法の一つは潰したぞ! あといくつだ? 回復までにどの程度かかる?」

 

「さて? まぁ、良いでしょう。他には何がありますか? 出し惜しみせずどんどん使ってください。どうせ今日でお終いなんですから。」

 

「ほざけ!」

 

その後も帝王と異常存在(レナード・テイラー)の史上最高の一騎打ちは続く。

最初は互角、いや帝王が勢いに乗って勝負の主導権を握っていた。

だが、力を見せるにつれ、それを解析・対応され徐々に追い詰められ始めた。

ボロボロになりながらも衰えることの無い覇気を見せる闇の帝王。

 

ディフェンド・ラティオ(空間断裂)!」

 

しかし、とうとう力及ばず、空間ごと胴体から真っ二つになって崩れ落ちる。

その戦いを見守っていたホグワーツにいる全員が歓声を上げた。

 

「がぐぅ! おのれ……。くそっ!」

 

腹から上下真っ二つにされて内臓がこぼれながらも未だ衰えることの無い殺意をレオに向かって放ち続ける帝王。分霊箱(ホークラックス)による不死と肉体改造もあって到底止まる気配がない。

ただ、レオはそれをつまらなそうに見つめる。

 

「それでおしまいですか? それではそろそろお終いにしましょう。」

 

「……やはり、勝てぬか。ああ……そうだ。認めよう、貴様は強い。俺様とて一人では勝てぬ、一人ではなっ!」

 

「「「ステューピファイ・マギ・マキシマ(魔法よ止まれ)!」」」

 

四方八方からレオに向かって魔法が襲い掛かる。

それを肉体強化と全力の身体機能向上魔法で避けるレオ。

体勢を整えたレオが見たのは仮面をつけた集団、死喰い人(デスイーター)だった。

しかし、レオの『眼』にはそれは異なって見えていた。

 

「すごい! ここまでやるとは予想外です! 良い、今日は最高だ!」

 

仮面の集団は一斉に顔を露にする。全員が等しく同じ顔をしていた。

整った顔、漆黒の髪、年齢は50~60ほどの男であった。

 

「トム!? いや、まさか!? そんなはずは!」

 

戦いを見守っていたダンブルドアは驚愕した。その男たちの顔に見覚えがあったのだ。

かつての教え子、今は最悪の闇の魔法使いヴォルデモートと成り果てたトム・リドル。

それがそのまま歳をとったかの様な外見なのだ。分霊箱(ホークラックス)で魂が切り刻まれたことによる醜い容姿になる前のトム・リドルの現在の姿を思わせる姿がそこにはあった。

 

「「「第二ラウンドだ。これからは私たちが貴様の相手をしよう。」」」

 

真っ二つになった闇の帝王に代わり男たちが続きを宣言する。

 

「もちろん。それにしても、分霊箱(ホークラックス)からの更なる発展かな? 他人を乗っ取り自分を増殖させる。魂のかけらに宿る僅かな自己から己を再構成……並外れた精神だ。流石は帝王ですね。」

 

そう、この男たちも正真正銘、闇の帝王その人なのだ。

分霊箱(ホークラックス)の要領で他人に魂の一欠けらを埋め込みその人間の魂を喰らい増殖した存在がこれらだ。

その数は十を超える、いや次から次へと現れる。

 

「「「いくぞ!」」」

 

「ははははは! もっと見せてください!」

 

己を増殖させた帝王と人外の存在になった天才の戦いは次なる局面に移っていく。




ホグワーツ城はめちゃくちゃ固く防御されてます。
具体的にはレオの指輪の超絶アップ版。城内部の人間の魔力で作動しています。

ハーマイオニーがいるのは更に安全なところです。
流石に不死になったからと言って戦争に参加させるつもりはレオにはないです。

吸魂鬼と亡者は使い捨ての尖兵のつもりです。
こちらを攻撃する防御装置を見越して最初に突撃させました。
殲滅魔法は連続使用回数が決まってますが高威力です。最初の突撃にドラゴンとか使ってたらお辞儀陣営は大損害でした。

クー、リミッター解除。
これで際限なく増える細胞を使って分身、ドラゴンバジリスクの召喚、様々な攻撃ができるようになりました。イメージはアー〇ードの死の河。

大惨事魔法生物大戦開幕。あくまで背景扱いですけどね。

お辞儀強化。
魔法生物や人体実験の成果を自身の身体にも反映させてます。
バジリスクの目は髪飾りを回収した際に秘密の部屋からバジリスクの抜け殻を回収してそこから再現しました。
お辞儀のレオ打倒の手段はこんな感じ
防御魔法を無効化→体を再生不能まで破壊→封印→無効化完了
肉体を完全に破壊できれば魂を封印
レオの肉体スペックを把握しきれていないので殺すより無効化を優先に考えてます。

お辞儀敗北。
肉体スペックはまだまだレオが上。しかし……

増えるお辞儀。
リドルの日記が魂を喰らって力をつけていたのでできるかなと。
捕らえたマグル生まれやマグルの精神を破壊し魂の一欠けらを植え込む。
魂を喰らって人一人分の力を手に入れ肉体改造→お辞儀完成!

次回、数多のお辞儀VSレオ!

それでは次回お楽しみ。


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88. 無数と唯一

2017年5月2日にこの物語を初投稿しました。
そろそろ一周年か……。
出来れば一周年記念で最終話を投稿したかったけど無理そうだ。

それでは88話どうぞ。


常軌を逸した戦場がそこにはあった。

そこは数時間前までは唯の魔法学校の敷地であったはずなのだ。

それが今や数多の魔法生物の血と死骸、戦いによる破壊痕がそこら中に広がっている。

湖は血と毒で濁り残骸が浮かび、森は燃え続けて獣たちが逃げまどっている。

未だに各所で魔法生物の雄叫び、断末魔がこだましている。

 

その光景よりもありえない凄まじい光景がホグワーツ城のすぐ近くで繰り広げられていた。

まったく同じ顔、体格の男たちとひとりの少年が戦っている。

全盛期以上の力を持った複数の闇の帝王ヴォルデモートがレナード・テイラーに迫る。

同一魂を持ったそれらは乱れないコンビネーションでレナード・テイラーを打倒しよう全力を持って戦っている。その体は分霊箱(ホークラックス)同然の魔法特性を獲得しており、半端な魔法は無効にし、改造によって強力な膂力と回復力を有している。

一人でも強大な存在が抜群の連携で襲い掛かって来る。史上最強の魔法使いと言われたアルバス・ダンブルドアでさえ、全盛期ならいざ知らず年老いた今ならば敗北は確実だろう。

 

だが、レナード・テイラーはそれと対等に戦っている。

高速移動で迫る帝王を叩き落しながら、同等の速度で回避する。

逃げ場のないほどの密度で迫る魔法を真正面から打ち破る。

マグルのマシンガンの銃弾よりも多くの魔法をたった一人で瞬時に発動する。

確かにヴォルデモートは史上最強の闇の魔法使いだ。しかし魔法使いなのだ。

対してレナード・テイラーはそもそも魔法使いとしての常識から逸脱している。

 

数多の魔法生物の特徴を組み込んだ体。

究極の癒し、命そのものと言える賢者の石から生み出される命の水が何物にも犯されない体にし無限の魔力に変換する。

強力無比な魔法具をいくつもその身に装備する。

決して滅ぶことの無い魂。

こんな存在が魔法使いと言えるであろうか?

コレは最早そんなものではない。

 

ヴォルデモートたちもそれは分かり切っている。戦っている自分たちが誰よりも理解している。それでも負ける気も、死ぬ気も微塵もない。

既に十を超える数の帝王が、地面に横たわっている。

個の力では勝てないことは知っている。ならば、こちらも全てをぶつけるだけ!

倒されるより多く、多く、多く! 己の全てを使って戦わなければ勝機はない!

倒される速度を増加する速度が上回る。

 

「はは、流石に数が多すぎて追いつかなくなってきたな。それならばこれはどうかな?」

 

一瞬のうちにレオを中心に30メートルほどの空間の空気が変わった。

即座に危険を感知した帝王たちは離脱するが、人数が多すぎて一部がその空間の中に取り残された。

 

「こ れ は … … ! ?」

「な ん だ ? 」

 

その空間にいる自分たちの動きや言葉がとてつもなく遅くなっていた。

範囲外からの攻撃もその範囲に入るとのろのろとしか進まなくなった。

まるで、そうまるで時間がおかしくなったかのようだ。

 

「正解。あなたたちの予想どうりこの空間内では時間の流れが通常より遅い。ここで通常通り動けるのは僕だけ。さて少し数を減らしますか。」

 

そうレオが言うと効果範囲内の帝王は一人ずつ壊されていった。

 

「おのれ……!」

 

「さて、どんどん新作魔法の実戦テストだ。最高の夢(スマ・ソムニウム)。」

 

レオが放つ閃光が命中した帝王の一人は地面に崩れ落ちる。

その顔は幸せでだらしなくなっており、涙と涎でぐちゃぐちゃだった。

 

「次。状態超過(プブル・エクセス)。」

 

次の魔法が放たれる。帝王たちも愚鈍ではないのでもちろん回避行動をとる。

追尾してくる魔法も盾の呪文(プロテゴ)で防ぐが三人がやられた。

三人はまともな死体さえ残らなかった。ドロドロの液体や気体となって蒸発してしまった。

だが、そんな死体など気にする余裕はない。防御を破り体を破壊し、僅かでも隙をついて動きを止めて、永遠に復活できぬよう封じるのだ。

そのためには犠牲など惜しむ必要もないし、我が身が死のうとも誰か一人だけでもが生き残れば良いのだ。

 

「「「おおおおおおおおお!!!」」」

 

帝王の咆哮がホグワーツに響き渡る。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

数十分後。

敵性魔法生物勢力も僅かとなっていた。

命の水を持った単細胞生物の群体であるクーはほとんど不死だ。ゆえに大量のそして改造された魔法生物であろうと殺されることはない。殺傷能力などで上回れようとその点だけで相手に勝ち目はないのだ。

クーは残った魔法生物の駆逐をしながら帝王とレナード・テイラーの戦いを見守っていた。

 

ヴォルデモートのほとんどが死体となって散乱していた。

無傷、バラバラ、液体状、欠片もない、焦げている、様々な同一人物の死体が転がっている。

残るは僅か5人。追加の帝王も現れずその命も底が見えた。

 

「そろそろ終わりですかね。もう新しい魔法はありませんか?」

 

そう言いつつ一人を葬る。

帝王は返事をしない。代わりににやりと笑う。

 

「もちろんあるぞ。これだけやっても勝てないとは予想していたが、ここまでの差とは想定以上だ。」

 

三人が全力で最大の守り(プロテゴ・マキシマ)を展開し残り一人を護る。

切札を発動するには十秒程度時間が必要だ。その時間を稼ぐために魂を削る勢いで盾を創り出す。

レオはそれを邪魔する気はなかった。魂の分裂と複製、その次はどんな魔法を魅せてくれるのか。魔法界、世界を賭けた頂上決戦だと言うのにレナード・テイラーにとっては魔法が最優先する事柄なのだ。

 

「我は我、己は己の中に。我が全ては眼前の敵を打ち滅ぼすために!」

 

全神経を集中して呪文を一言一句魂を込めて吐き出す。

 

「全ての我が魂よ、ここに!」

 

その言葉を最後に護っていた三人が倒れ伏す。

そしてその体から薄く光る何かが抜け出し呪文を唱えた最後の帝王に入り込む。

それだけではない、そこら中に散らばった百を超える死体、その全てから同じように何かが飛び出し帝王に吸い込まれていった。

 

「魂か……。」

 

それらは魂だった。他人の魂を喰らい肥大した魂が一つの肉体に入っていく。

一つ、一つ、魂が注入されるごとにヴォルデモートの存在感、魔力、何もかもが増大していくのをホグワーツにいる全員が感じていた。

全ての魂を取り込んだ時そこにはまさに、帝王と呼ぶにふさわしい存在が立っていた。

 

「待たせたな。」

 

「なるほどなるほど。魂を束ねて力を高めるとは。同じ魂が複数あるあなたならではの方ほ

 

言葉を最後まで発することなくレオはホグワーツ城の壁まで吹き飛ばされていた。

四層ある指輪の防御は突破され、確実に肉体へのダメージを与えられていた。

 

来い(アクシオ) レナード・テイラー」

 

城壁に埋まったレオを引き戻して更なる追撃を与える帝王。

吹き飛ばし、切り刻み、爆破して地面に叩きつける。

出来上がったクレーターに追撃の悪霊の火を放つ。

 

「どうだ? 聞こえているか? 数多の魂を束ね、その全てを貴様を殺すためだけに使っている。魔法は魔力を形に変えて発動する、基本だ。その魔法を発動するのに一番大切なのは何かなど今更貴様に語る必要もあるまい。呪文? 杖? 確かに重要だ。だが、最も大事なのは精神だ! 今俺様が使った秘術は魂を一つにするだけではない。この俺様の全てを集めた膨大な魔力! その全てを貴様を滅ぼすためだけにしか使えぬように俺様自身を作り替えたのだ! この強力な力を貴様にしか使えぬがそんなことは些細な事! おかげでこの制御するのも難しいであろう途方もない魔力を貴様を殺すだけには十全に使いこなすことができる! このまま燃え尽きるがいい!」

 

炎は更に熱量を上げ勢いを増す。

全ての細胞をその再生速度を上回るほどに、魂の一片までも燃やし尽くすように魔力を込め続ける。

その光景をこの世の終わりの様にホグワーツにいる全員が見ていた。

 

炎が猛る穴の底では人外が焼け焦げながらも笑みを浮かべていた。




最終決戦パート2

クーと魔法生物の戦いはほぼ終了。
結局クーを殺しきる手段がない限り殺傷力や破壊力で上回っていようがいずれは負けることは必然。

無数のお辞儀VSレオ
戦況としてはほぼ互角。ただし、お辞儀が無限残機であった場合である。
複製を作るのにも時間や生贄が必要なので残機は有限。
徐々に数が減っていくことによって徐々にレオが優勢に。

時間をゆっくりにしたのは逆転時計を分析した副産物。
欠点は展開時間をそれほど長くできない。
最高の夢:北〇有情拳をもっとヤバくした感じ。アへ顔のお辞儀……誰得。
状態超過:物質の三態を瞬時に変える魔法。魔法薬の作成に役立つ呪文として創ったけど人体への影響も興味があって実験してみた。

お辞儀の切札
肉体が破壊されてもそれぞれの肉体が分霊箱と同じ働きをしていたのでその辺にはお辞儀の複製魂が存在していた。分割した魂はそれぞれが他人の魂を吸収して成長しているのでそれを一つの肉体にまとめた結果相当な総量になっていました。
結果として全能力が魂分(百倍ぐらい)に上昇。
更に、レナード・テイラーを殺すためだけに十全以上に力を発揮するようにしている。
魔法の全てがレオに対して特別補正が入る感じですね。
ハリポタ世界の魔法は特定の対象だけに効果が発揮する魔法があるのでそれを究極まで突き詰めた感じ。

お辞儀VSレオは最終ラウンドへ
それでは次回お楽しみ。


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89. 葬送

予定では今回を入れて後4話で本編終了になります。
その後は番外編を気が向いたときに書いたりします。

次回作も色々考えて妄想しまくってます。

それでは89話どうぞ。


闇の帝王ヴォルデモートによる悪霊の火は勢いと熱を増し続けていた。

近づくだけで焼け死ぬほどの熱量がクレーターの中から発している。

帝王はそれを油断なく睨みつけている。

 

しかし、何の予兆もなく穴の中から光が溢れ呪われた炎は吹き飛ばされた。

レナード・テイラーが地獄の穴から飛び出してくる。

体は焼け焦げた状態だが数秒で傷一つない体に復元されていた。更には体をクーの戦闘形態と同様に鎧状にして防御を固めていた。

 

「ふふ……はは、あははははははは!」

 

レナード・テイラーは大声を上げて笑っていた。

子供が面白い何かを見た時の様に心の底から楽しそうに笑っているのだ。

 

「ははははは! いやぁ、すごい! やはりあなたは凄い! 正直ここまで凄いとは思わなかった! これからも、もっともっと色々な魔法を創り出すんだと想像するだけで嬉しくなってくる! また次に僕と戦う時に新しい魔法を魅せてくれると期待してここであなたを見逃したくなってくるほどだ! でも、これ以上親しい人が傷つくのは嫌だしなぁ……。うん、とりあえず行動不能にしてから考えます。」

 

帝王はその言葉にも怒りもなく精神は安定したままの状態だ。

無数の魂が結合するには精神も強くあらねばならない。この程度の言葉ではもはや怒ることも無いほどの強靭な精神になっているのだ。

無言で麻痺・衝撃・斬撃の複合呪文を放つ。その速度はマグルの拳銃の銃弾の速度などと比べものにならない程だった。

 

「巨神の腕」

 

それをレオは容易く防ぐ。クレーターから出た時にクーと同様に肉体に施されていたリミッターは解除されている。反射神経と動体視力も先ほどまでとは桁違いだ。

召喚された光輝く巨腕は帝王の呪文を握り潰す。

 

「続いて、巨神招来。」

 

レオの周囲から光が発生し形を成していく。先ほどの巨腕、大地を踏みしめる太い脚、厚い胸板、全てを見下す頭部。

光の巨神がその場に顕現していた。

巨人族では発し得ない神々しい雰囲気、全てを粉砕する魔力を込められた四肢、いかなる攻撃をも防ぐであろう胴体。それらによって守られたレオの声が巨神からこだまする。

 

「さぁ行きますよ!」

 

巨神の腕が消える。正確には目に見えない速度で振るわれただけだ。

帝王は躱しきれなかったが多重に展開した最大の守り(プロテゴ・マキシマ)で衝撃の相殺を試みる。

それでも完全に防ぐことは敵わず、着弾した先の赤く濁った湖に巨大な水柱が発生するほどの勢いで吹き飛ばされてしまった。

 

戦いを見守る生徒たちから歓声が上がるが、それを否定するかのように水柱が水面に落ちきる前に炎の蛇によって蒸発させられた。

炎の蛇の頭上に立つ帝王は無傷。無数の束ねられた魂の力は肉体の回復速度をも向上させていた。

 

「行け。」

 

帝王の命で黒い壁となっていた吸魂鬼(ディメンター)の群れが光の巨神に殺到する。

甘いお菓子に群がる蟻の様に巨神を取り囲む。

無数の闇が光を食い尽くさんとするが、闇はすぐに晴れた。

既に太陽は沈み、闇が支配している時間にも関わらず眼が眩むほどの光が広がっている。

その光によって吸魂鬼(ディメンター)たちは残らず霧散した。

 

しかしそんな結果は闇の帝王にとっては予想の範疇である。僅かでも敵の動きを遅らせるだけで十分に効果がある。レナード・テイラーとヴォルデモートの間ではその僅かな時間が大きな意味を持つ。

 

「劫火の鎖」

 

悪霊の火を上回る呪いと熱量を持った炎の鎖が巨神を雁字搦めに捕らえる。

炎の鎖が爆発し天まで昇る炎の柱となる。

 

「フリペンド・マキシマ・ヴェロテ・インタフェク! 最大最速をもって穿て!」

 

帝王は追撃の手を緩めることはしない。

最高速度で十発以上打ち込まれたのはマグルの大量破壊兵器のミサイルだ。

唯のミサイルではない。魔法的な強化を施され、高速・高強度・爆破魔法を搭載したマグルの兵器以上の存在になっている。

炎の柱に次々に命中、大爆発を引き起こす。

ホグワーツ城に施された防御魔法も爆圧でかなりの数が損壊してしまう。

 

爆煙が晴れる。そこには微塵も変化がない巨神が確固たる存在感をもって立っていた。

 

「おおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

帝王は吠え、突撃する。

ミサイルの雨、ありとあらゆる攻撃魔法、思いつく限りの手段を持って最大の敵を滅ぼすため前だけを見て突き進む。

レオはその全てを受け止める。強力無比な巨神とて無敵ではない。帝王は攻撃の度に能力を見極め、確実に効果を上げ始めていた。

 

巨神の腕が吹き飛ぶ。

帝王が空高く打ち上げられる。

嵐を纏って帝王が一直線に(巨神)を貫き破壊する。

再度顕現した巨神と炎の巨蛇が激突する。

お互い一歩も引かない戦いは数時間にわたって繰り広げられた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

空が白むころ合いになりようやく決着が付こうとしていた。

戦いの余波で既に森は消え去り、湖は泥だけが残っている。

競技場は跡形もなくなり、ホグズミード村は最早残骸しか残らない。

ホグワーツ城は形こそ残っているが防御魔法壁はほぼ機能していない。

内部で守護をしていた魔法使いたちも防御魔法の維持で魔力をほぼ消費していた。

それでも疲労など無視して戦いの結末を目に焼き付けようとしていた。

 

二つの人影。

片方は自然体のまま立っている。

もう一つは膝を地面について肩で大きく息をしている。

 

前者はレナード・テイラー。

後者は闇の帝王ヴォルデモート。

 

「はっ。力及ばずか……。」

 

「そうですね。では……。」

 

「これだけは使いたくなかったが仕方がない。とっておきをくれてやる。」

 

「まだ何かあるのですか? どうぞ見せてください。」

 

レナード・テイラーの悪癖は魔法第一に考えていることだ。

帝王の最後の切り札。それを回避することはレオには容易いことであった。

だが、その悪癖が致命的な油断につながった。

 

「この帝王を侮りすぎだ! もう終わりだ!」

 

帝王を中心に変わった。

見える景色も色も、聞こえる音も、感じる感触も、魔力も何もかもが変わらない。

ただ一点。そこにある生が死に変わってしまったと感じられた。

 

「これは……!?」

 

レオは驚愕しながら目を見開いて解析をしようとする。

しかし何も見えない。今まで見てきた魔法の構造を何一つ読み取れることができなくなっていた。

レオの真後ろに何かが現れる。目には見えない、音もない匂いもない。だが確実に何かがあった。

 

「不滅の魂であろうとそのまま死後の世界に逝ってしまえば戻ってこれないだろう! このままこの世から弾き飛ばしてくれる!」

 

ヴォルデモートが発動した魔法は強制的に対象をこの世からあの世へと送り出すものだ。

それが生きていようが死んでいようがどのような状態であろうともその魂をこの世からはじき出すものだ。

もちろん使うにも限定的な条件がいくつもある。

一つ、対象に出来るのは一回につき一人だけ。レナード・テイラーのみ使えればそれでよい。

二つ、対象の周囲に死が溢れていること。これは周りの大量の魔法生物の死骸で問題がない。

三つ、生贄として数百の魂が必要になって来る。帝王は自身の中の魂のほとんどをレナード・テイラーを葬るために使うことを決めた。

この魔法は敵の真後ろに死後の世界への扉を創り出し、その周囲の空間ごと死の世界に変えてしまうものだ。これを破れるのは死の世界からこの世に戻る方法を持つ者だけだ。そんなものはいるはずがない。いるとすればそれは死を超越し彼岸から戻ってこれるものだけだ。

そしてこの魔法が発動してしまえば生贄の魂が扉をくぐって死後の世界に逝くのと同時に対象の魂も死後の世界に強制的に連れて行ってしまう。

これは魔法省を手に入れた時に神秘部にあった死の世界とつながるアーチを応用した魔法である。アーチの存在を知った帝王はこれを手に入れるためだけに魔法省を手に入れたのだ。

 

「お、おおおお!? 馬鹿な!?」

 

周囲の魔法生物の死骸と帝王の身体から魂がレオの後ろの見えない扉に向かって次々と進んでいく。それに伴ってレオも意識を保てなくなってきた。徐々に肉体から魂が剥がされているためだ。

 

「くそ! この! なんで見えない!? 嫌だ! 死にたくない! ハーマイオニー! クー! 助けてくれ! なんで助けに来ない!? 僕は、レナード・テイラーだぞ!?

何で……? 違う、ちがうちがう! どうして!? なんでだ! なんでこんな! 僕は違う! ああああああ嫌だぁあああ……。」

 

最後の魂が扉を通過すると同時にレナード・テイラーの身体から全てが抜け出た。

残された身体には何も残っていない。

 

体内の魂を人一人分を除き全て使ったため元の醜い容姿に戻ってしまった帝王。

だが、それでも、勝った。

数多の魔法生物も。

マグルやマグル生まれの穢れた血を自分へと変換する嫌悪感も。

配下の下僕のほぼ全てを切り捨てて己の糧としたことも。

そしてその全てを費やしたことも。

己が宿敵のレナード・テイラーを葬ることに比べたら些細なことだ。

 

「やった……! 俺様が勝った……! これでこの世界は……! 全てが俺様のものに!」

 

ピクリとも動かないレナード・テイラーの肉体を見て歓喜を爆発させるヴォルデモート。

逆にホグワーツ城にいる全ての魔法使いはかつてない絶望を味わっていた。

 

そして……戦いは終わった。




帝王勝利! 悪の魔王レナード・テイラーは死んだ!


最期に醜態を晒しながら死んだレナード・テイラー。
なぜか助けに来なかったハーマイオニーとクー。

さてどうなってしまうのか?

それでは次回お楽しみ。


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90. 終局

前回主人公のレオが死んだのに感想欄で誰一人心配してなかった。
なぜだ!?

まぁ、それは置いといて。
この物語「ハーマイオニーと天才の魔法式」は今日、5月6日に完結させる予定です。
0時に90話、12時に91話、18時に92話を投稿する予定です。
まぁ、予定は未定なのでその通りにならないかもしれませんが……。

それでは90話どうぞ。


太陽が昇る。

朝日を背に闇の帝王ヴォルデモートは両手を広げ、歓喜に震えていた。

達成感、幸福感、ここから始まる輝かしい未来。

確信していた。運命は自分を選んだ。世界はこのヴォルデモート卿に支配されるためにあると。

 

その光景を見ていたホグワーツ城の全魔法使いは絶望に沈んでいた。

朝を迎えたというのに真っ暗闇の中に突き落とされたかのようなかつてない絶望的な光景が目の前に広がっていた。

レナード・テイラーが、最強の魔法使いが、不死で無敵だと思っていたレナード・テイラーがピクリとも動かず地面に転がっている。

今まで信じていた全てが崩れ去ってしまったような現実だった。

 

「こ、殺される……。もう終わりだ……。」

 

誰かがそう呟いた。生徒の誰かだったのか、大人であったのか、それとも不死鳥の騎士団員であろうか。誰がそれを発しても結果は同じだっただろう。皆が同じことを思っていたのだから。

 

「に、逃げなきゃ!」

「あああああ! 嫌だ嫌だ!」

「死にたくない!」

「助けて下さい! 私は、いや私の一族はあなた様に永遠の忠誠を誓います!」

「退け! 邪魔だ! ここから逃げるんだよぉ!」

「落ち着け! 敵はたった一人だ! 皆で戦うぞ!」

「勝てるわけねぇだろ! 俺は死ぬのは御免だ!」

 

城の中はまさに混沌としていた。

半数が命乞いをして服従を誓っている。残りは逃げようとしたり、行動をとることもできずに立ちすくんでいる。戦う意志を持った者は一割にも満たないであろう。

その様子をしばらく楽しんだ後、帝王は城に向かって宣言した。

 

ソノーラス(響け)! ホグワーツにいる全魔法使いと穢れた血に告げる。慈悲深い俺様は貴様らに選択をさせてやろう。マグル生まれとアルバス・ダンブルドア、ルーファス・スクリムジョール、不死鳥の騎士団の全てを差し出せば純血と混血の魔法使いならば命は取らぬと約束しよう。

一時間やる。それまでに俺様の目の前にそいつらの死体を持ってこい。

それができなければ……全員がここに転がっているこいつのようになる。」

 

ヴォルデモートはレナード・テイラーの死体を踏みつけ、高笑いをする。

 

「は、はははは! はーはっはっはっ!」

 

 

 

 

「やめてくださいよ。せっかく魂だけが抜けた貴重な検体なんですから。」

 

 

 

声が消えた。その場にはただ風の音があるだけで誰も声を発することができなかった。

ホグワーツの全員はつい数秒前まで見ていた絶対的な恐怖の対象であったヴォルデモートなど目に入らなくなっていた。

ヴォルデモートは全身に掻く冷や汗を止めることができなかった。息をするのも忘れ、全身に鳥肌が立ち、自分の後ろから聞こえてきた声からは恐ろしい光景しか想像することしかできない。

 

(あり得ない……あり得ない! 奴は死んだ! 踏みつけている魂の抜け殻が確かにある! 幻聴だ! 認めたくないが奴の事を俺様がそれだけ恐れていたということだ。そうに違いない! だから死体を踏みつけたからそんな言葉が聞こえてきたのだ! 後ろには何もない、何も!)

 

意を決して振り向く。

そこには絶望(レナード・テイラー)が立っていた。

傍らには全ての魔法生物を片付けて元のメイド姿に戻ったクーが控えている。

目から取り込んだ情報を脳が認識を拒んだのか、先ほどまで一秒でも隙があったら死ぬような戦いを繰り広げていたはずのヴォルデモートは十秒以上動きを止めてしまった。

そして、ようやく目の前の光景を正しく認識した時……帝王の膝は地面についていた。

 

「なぜだ……。なぜ、貴様はそこにいる? なにが、どうなっている?」

 

「ああ、簡単な話ですよ。先ほどまで戦っていたソレ、僕じゃありません。あなたと似たことをしたのですよ。複製した肉体に他人の魔法に細工をして疑似的に僕の魂として入れて記憶とかも操作し、レナード・テイラーであると行動させていただけです。おかげでソレとあなたとの戦いもじっくり観察することができました。色々と面白いものを観察することができました。ありがとうございます。」

 

笑顔で笑いかけてくる目の前の絶望(レナード・テイラー)を見て寒気がした。

自分はこいつを排除すれば世界を支配するなど容易いと、こいつが最後の障害だと信じて全力で、それこそ魂を賭けて戦った。

だが……こいつはそうではなかった。闇の帝王ヴォルデモート卿だろうが何だろうがどうでもいいのだろう。自分などちょっと使える魔法薬と大差ない扱いなのであろう。

ヴォルデモートの両目から涙が流れていた。あまりの怒りと悔しさ、絶望から長年機能をしていなかったはずの涙が溢れて止まらない。

苦労と時間をかけた魔法生物の改造。

醜い穢れたマグル生まれに、サラザール・スリザリンの血を引く尊い自らの魂を注入するというおぞましい行為。

不眠不休でこいつを殺すためだけに創り出した多くの魔法や作戦。

そして己自身の全てを賭けた死闘。

魂のほぼ全てを使ったあの世への強制昇天魔法。

その全てが……ただの茶番であったと宣言された。

魂は最早、ほんの一欠けらしか残っていない。分霊箱(ホークラックス)も残っていない。先ほどの強制昇天魔法は使うことは不可能だ。

そもそも目の前に居るこいつが本物である確証もない。

 

もう、終わりだ。

 

「…………殺せ。貴様の勝ちだ……。いや、そもそも勝負にすらなっていなかったのか。」

 

完全なる敗北宣言だった。レオはその言葉を聞いて悩んでいた。

 

「うーん……。どうしようかな。殺すのは簡単だけど、もったいない気もする。でも生かしておくのもリスクがあるしなぁ。……あなたはどうあっても死にたい? 僕の研究に利用するためのみを価値として生きていきたいですか? 選んでください。」

 

「貴様の利になることなど断じてやらん! 敗者は死あるのみ!」

 

「そうですか。……まぁ、いつかは死ぬでしょう。」

 

レオが帝王に手を向ける。その手にある指輪のうち一つが光り輝く。

 

『僕、レナード・テイラーの目の前に居る存在、闇の帝王ヴォルデモート卿。本名、トム・マールヴォロ・リドル。1926年12月31日生まれ。これの体内の魔力を対象に発動。全魔力を消失させ唯の非魔法族(マグル)に変質させる。』

 

指輪が輝きヴォルデモートに光を浴びせる。

その光を浴びたヴォルデモートの体内から何かが消え去った。魂を分割した時よりも決定的な何かがなくなってしまったのを感じた。

 

(な、何が? 何なんだこれは!?)

 

「テイラー! 貴様何をした!? 俺様にいったい何を!?」

 

「ああ、あなたの中の魔力、魔法使いとしての才能を全て消去しました。これであなたはマグルです。スクイブですらない、完全な非魔法族(マグル)と同質の存在になりました。」

 

「何だと……? この俺様がマグル!? ば、馬鹿な……。そんな馬鹿なこと出来るはずが!」

 

「今使った指輪は『改変』。魔力を使いあらゆる物質・生物・事象・法則を好きなように変えることができます。まぁ、色々と条件なんかもありますけどね。それに凄いことをしているように感じるかもしれませんが、これも普通の魔法を発展させただけですよ。」

 

レオの言葉を否定しようとする。だが、先ほどまで感じていた魔法の感覚、それを全く感じることができなくなっていた。魔法を発動しようとしても初歩の物を動かすような魔法さえ使うことができない。

 

「さらに追加しましょう。クー、体内に賢者の石を埋め込んでくれ。」

 

「了解いたしました。」

 

クーから触手が伸びヴォルデモートの体内に侵入してくる。

そしてその体のいたる所に極小の賢者の石を植え込んでいく。

これでヴォルデモートは体を完全に破壊されない限り死ぬことはなくなった。

ほぼ永久に魔法を使えぬ肉体として生きていくのだ。

忌み嫌っていた存在と同じモノに変えられてしまった、更にはそれが永劫にわたって続く絶望で周りが見えなくなったかつての帝王は元凶に向かって走り出した。

ただがむしゃらに攻撃を加えること、この体では殴りつけることしか頭には無かった。

だが、悲し事に唯のマグルが最強の魔法使いに出来ることは何もなく、一瞬で気絶させられて拘束されるという結末であった。

 

「じゃあ、後は不死鳥の騎士団や魔法省の人に任せて研究室に戻るとしようか。」

 

レオは魂の抜けた先ほどまでの影武者を研究室に転送して自身もクーを連れて転移した。

 

残されたのは数多の帝王の死体と魔法生物の残骸、戦闘の破壊痕。

そして絶望が張り付いた顔をして倒れているマグルとなった哀れな帝王だけであった。

 

ホグワーツにいる魔法使いたちはしばらく何も行動ができなかった。

だが、次第に状況を理解して喜びを爆発させた。

 

ここに戦争が終結した。




はい、皆さんの予想通り生きていました。
さっきまでのレオは影武者でした。
肉体面はレオと同等のスペック。
魔法技量に関してもレオの記憶を植え込んでるので相当なものです。
但し、『眼』に関してはレオ本人の魂と密接に関係していたため再現できなかったので
影武者と視界をリンクさせて影武者本人も気が付かないようにしていました。
お辞儀の強制昇天魔法の際に良く解析しようとリンクを切ったため見えなくなりました。
魂は捕らえた死喰い人を利用してました。
感想でも言われてましたが、87話でハーマイオニーがレオのハグを拒否したのは影武者だったからです。

お辞儀が勝った時ホグワーツが絶望していますが、実はお辞儀はかなり消耗しているので全員でかかれば打倒することは可能でした。
それをしたら即座にお辞儀は逃げて、魂の量産をしていたでしょうけどね。
その発想が出ないぐらいの絶望がホグワーツに襲い掛かっていたということです。
ちなみにお辞儀はこの時点でハリー・ポッターの存在が頭から消えてました。なので差し出すリストに名前が出てません。

・指輪紹介 『改変』
この世の物質、生物、事象、法則を改変することが可能。
制限として一日につき一度。大量の魔力を消費するためレオやアースキン以外は使用不可。大規模・精密・正確な改変ほど難易度と魔力消費が多くなる。なので世界中の物理法則をいっぺんに変えるとなると途方もない時間が必要。
チートに見えるかもしれないが、普通のハリー・ポッターの魔法でも限定的な物理法則の改変や物質の発生などやっているのでこれはそれを究極までに突き詰めた感じである。
レオとしてはあまり使いたくないものでもある。
理由は何でもできるからつまらないのである。

お辞儀マグルになる。
お辞儀として何が屈辱か考えた結果、マグルとして永劫の時を生きることかなと思ってこのような感じになりました。
これでヴォルデモート卿としては死んだことになりますね。

次回は戦後の魔法界についてですね。
それでは次回お楽しみに。


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91. 歓喜

完結まで今回入れて後2話!

GWの時間がある時に書いてました。
基本仕事以外は引きこもりだし、唯一の親友も遠くにいるから
飯食うぐらいでどこも出かけてない。

まぁ、そんなことはどうでもいいですね!

それでは91話どうぞ。


1998年1月。

ホグワーツでの最終決戦から早くも一カ月以上が経過していた。

戦争は終わった。

魔法界の闇は晴れたのだ。

闇の帝王ヴォルデモートはレナード・テイラーに敗れ全魔力を失った。

帝王の配下であった死喰い人(デスイーター)や与していた純血主義者たちもその多くが死亡または捕らえられた。

未だ混乱が続くイギリス魔法界だが、それでも徐々に平和が戻ってきたという実感が浸透してきている。

 

 

魔法省は再びルーファス・スクリムジョールが魔法大臣として就任して魔法界の立て直しに奔走している。

敵も味方も大勢死人が出た結果、どこもかしこも人材不足に資金不足だ。

さらには強大で恐ろしい帝王が相手だったとはいえ、恐怖に屈して帝王の味方になっていた者も少なくないので人間関係もかなり悪化している。

服従されていた職員が徐々に回復して戻って来ているとはいえまだまだ正常に稼働するには何もかもが足りていないのだ。唯一のプラス要素は純血主義者たちの数が減ったことで混血やマグル生まれが働きやすい環境になったことだけである。

そもそも死喰い人(デスイーター)を筆頭とした純血主義者たちは大部分が聖28一族、つまりは金持ちの貴族であるのだ。平和時の魔法省への援助の額も膨大なものであった。

それが現在はほぼ無くなってしまっている。海外の魔法政府の援助もあるが期待できるものではない。

それでもコツコツと確実に立て直しているところに多額の援助と人材が投入された。

闇を裏切ったマルフォイ家当主、ルシウス・マルフォイからの支援であった。

蓄えていた財のほとんどを使い、更に海外まで及んでいた人脈を利用してイギリス魔法界の復興に尽力したのだった。

ルシウス・マルフォイ曰く、

 

「これから先のマルフォイ家のための投資にすぎん。息子やその子たちのためのな。」

 

闇の勢力を裏切っていたとはいえ信用されていなかったがこれをきっかけに大分信用されるようになっていった。

ルシウス個人以外にマルフォイ家そのものへ感謝する者たちも多く出るようになった。

この投資をきっかけにイギリス魔法界は加速度的に復興していくことになる。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

最終決戦の場となったホグワーツの復興も進んでいる。

ホグワーツ城自体にはダメージが無かったが周りの禁じられた森や湖、更にはホグズミード村は壊滅。

生徒たちが楽しみにしているクィディッチも競技場が消滅したため開催することはしばらくはできない。

それでも授業は従来と変わらず行われているし、生徒たちに笑顔が戻り、些細なことで喧嘩すると言った普通の子供たちの生活が戻っていった。

校長のアルバス・ダンブルドアはほとんどホグワーツにいない。魔法大臣と共にイギリス中や海外までも飛び回りイギリス魔法界のための活動をしている。

 

不死鳥の騎士団は現在は解散となりそれぞれの生活に戻っている。

とはいえ、それぞれが独自にイギリス魔法界のために動いてはいる。

メンバーであったホグワーツ教師たちも復興の手伝いはしているが基本的には生徒を優先し授業をすることを選んでいる。これから先の未来は子供たちのものであるのでそれが最優先であるという考えなのだ。

マクゴナガルが厳しく、スネイプが嫌みを言い、トレローニーに呆れる。そんな今までと変わりないホグワーツの姿が戻って来ていた。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

そんな魔法界の立て直しと並行してある議論が頻繁に行われていた。

この戦争を引き起こした張本人、闇の帝王ヴォルデモートに対する処遇についてであった。

大多数の意見は殺すべきだ! というものである。

だがそれに匹敵する数の殺すだけでは不十分、もっと苦しめるべきだ! と言う意見もあった。

そもそも現在のヴォルデモートは魔法の才能こそ失われているが肉体は徹底的に改造され、更には体内に埋め込まれた賢者の石で強制的に不老不死にさせられているため生半可な手段じゃ殺すことができない。

殺せる力量があると考えられているアルバス・ダンブルドアは処刑には反対の姿勢であり、レナード・テイラーにいたっては興味がないのか特に何もするつもりがないのだ。

ヴォルデモートの処遇については裁判の形をとることなく魔法省の幹部や国外の魔法界のありとあらゆる者たちの意見、議論などを数カ月行いようやく結論が出た。

 

 

新設ウィゼンガモット法廷。

現在ここで形だけの裁判が行われている。

被告はトム・マールヴォロ・リドル、自称ヴォルデモート卿。

弁護人はなし、裁判官も完全にトム・リドルの敵である。

まさに形だけの裁判、処刑の結論を言い渡すだけのものであった。

判決を聞くのは少数の魔法族だけである。魔力を失ったとは言えいまだにヴォルデモートが恐れられている証拠であろう。

 

「被告トム・マールヴォロ・リドルに判決を言い渡す。

新たに造られた特別監獄での終身刑! 更に被告並びにその配下、通称死喰い人(デスイーター)からの被害を被ったものに限り、望むならばトム・マールヴォロ・リドルに対して殺害以外どのような行為も認める! 監獄の場所は極寒の大地、南極! トム・マールヴォロ・リドル、何か言うことはあるか?」

 

魔力を持たないマグルと同等の存在に対して過剰ともいえる拘束をされたトム・リドル。

一切答えることなく、目を閉じたままであった。

 

「これで閉廷だ! 連れていけ! 二度と安息が訪れることが無いようにしろ!」

 

闇の帝王と恐れられたトム・マールヴォロ・リドルは未来永劫、それこそ地球が滅ぶまでの長い時を極寒の監獄に閉じ込められることになった。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ホグワーツでの期末の試験も終了し、学期末となった。

この頃になると死喰い人(デスイーター)の残党も多くが捕えられ暗い話題はほぼ無くなり魔法界にかつての活気が戻って来ていた。

 

レナード・テイラーとハーマイオニー・グレンジャーの両名は今年で卒業する。

レオはこの魔法界を救った英雄として感謝され、同時に畏怖もされていた。

そんな事にはあまり関心がないがそれでも人生の内半分近くを過ごしたホグワーツと別れるのには少し寂しい気持ちを抱いていた。

 

「これでここ(ホグワーツ)ともお別れか。」

 

「そうね。でも私もクーもあなたと一緒よ。それこそ永遠にね。」

 

「はい! 創造主のレナード様が滅ばぬ限りわたくしはお仕えするのみです。」

 

「うん、改めてよろしくね。」

 

その後の学年末パーティーは戦争が終結したこともあって一際盛大に行われた。

いつもの御馳走に加え各国の料理に珍味。デザートに至るまでありとあらゆる料理が用意されていた。

生徒たちは宴を楽しんだ。生徒だけでなく卒業生であるウィーズリー双子やその他色んな人たちが乱入して日時が変わり朝日が昇るまでそれは続いていた。

 

レオとハーマイオニーにクーはいつもの様に途中で抜け出して研究室での最後の時間を過ごしていた。

 

「このホグワーツの七年で色々あったなぁ……。」

 

「そうね。正直に言えば私たちがこういう関係になるとは思ってもみなかったし、娘ができるとも思ってみなかったわ。」

 

「わたくしは最初の二年は生まれてもいなかったのですよね。」

 

「うん、本当に色々あった。でも楽しかったし良かったよ心から言えるよ。」

 

最後は三人で一緒のベッドで良い夢を見られるように魔法をかけて寝た。

こうしてレナード・テイラーとハーマイオニー・グレンジャーのホグワーツでの生活は無事終了した。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

その後、レナード・テイラーは特定の職に就くことなく様々な研究機関や魔法省の技術顧問といった感じで新たな魔法を提供したり、共に研究したりしながら賃金を得ていた。

ハーマイオニー・グレンジャーは就職することなく花嫁修業を続けた。

そして一年後。

 

 

ロンドンにある教会。

そこには新郎新婦の家族と友人の魔法族だけが集まっていた。

新郎はレナード・テイラー。新婦は勿論ハーマイオニー・グレンジャー、いやハーマイオニー・テイラーになろうとしていた。

 

「レナード・テイラーとハーマイオニー・グレンジャーは今結ばれようとしています。この結婚に異議のある者は名乗り出るように。異議がなければ、今後何も言ってはなりません。」

 

神父が厳かに告げる。

ここにいる誰も何も言うことなくその様子を見守っている。

 

「汝、レナード・テイラーはハーマイオニー・グレンジャーを健やかなる時も病に伏せる時も、富める時も貧しい時も、どのような時も敬い、なぐさめ、助け、変わることなく愛することを永遠に、その命が尽きるまで誓いますか?」

 

「誓います。」

 

レオは当然として宣言した。

 

「汝、ハーマイオニー・グレンジャーはレナード・テイラーを健やかなる時も病に伏せる時も、富める時も貧しい時も、どのような時も敬い、なぐさめ、助け、変わることなく愛することを永遠に、その命が尽きるまで誓いますか?」

 

「誓います。」

 

ハーマイオニーも当たり前として宣言する。

 

「……されば、ここに2人を夫婦となす。誓いのキスを。」

 

二人の顔が近づき永遠の愛を誓うキスを交わす。

集まっていた全員が祝福の拍手を送る。

こうして二人は正式な夫婦となった。

 

「これで私はあなたのもの、あなたは私のものね。」

 

「そうなるね。永年に君は僕の最高の宝物だよ。」




戦後処理回でした。

大多数の死喰い人はお辞儀の魂の生贄にされていたので死んでいます。
生き残っているのはベラトリックスなど少人数だけです。

魔法省は生き残りと服従から回復した職員で再スタート。
でも死喰い人≒聖28一族=貴族が殆ど死んだので色々と大変なことに。
他にも人間関係でギスギスしたり。
そこでルシウスが見かねて財産のほとんどを投資。
息子やその子孫のためとしていますが、罪滅ぼしの意識も多分にありますね。

ホグワーツも正常に戻ってます。
ただ、ダンブルドアだけは復興のために忙しくて大変。

お辞儀、宇宙より遠い場所へ
未来永劫、または地球が滅びるまで氷の世界で誰もいない牢獄で生きることに。
お辞儀や死喰い人の被害者で審査を通った者だけが面会及び殺害以外の全てを認められています。
その内番外編でお辞儀のその後を書くのもありかも。

レオ、ハーマイオニー ホグワーツ卒業、就職そして結婚。
レオは魔法について研究を発表するだけの簡単な仕事。
でもそこから凄い利益が出るので稼ぎは良好。
神父のセリフは結婚式とかよく分からないのでこんな感じかな、と書きました。
間違ってたら、まぁこういう感じということでお願いします。

レオにとって最優先は魔法、その研究でした。
それがいつの間にかハーマイオニーの存在が大きくなっていき、
今では何物にも代えられない最高の宝となっていました。

次回、最終回 エピローグ!
それでは次回お楽しみに!


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エピローグ

今回で本編完結となります。

2017年5月2日に初投稿してようやくここまで来ることができました。
出来ればピッタリ一年で最終話を投稿したかったですけどなかなかうまくいきませんでした。

それではエピローグどうぞ。


2016年9月1日 キングス・クロス駅 九と四分の三番線。

イギリス魔法界を揺るがした戦争から早くも二十年近い年月が経過していた。

例年通り、この日はホグワーツ魔法魔術学校に向けて多くの子供たちが旅立つ日である。

長年過ごした我が家同然のホグワーツに帰る上級生。

まだそこまで自分の家であるとは思えていない下級生。

そしてホグワーツへの期待と不安を抱いている新入生。

 

その新入生の中にその子はいた。

金色の癖のある髪の毛を持った少女。その目はあたりを見渡しては興味深そうに観察している。

その後ろに付いている白い髪のメイド姿の少女が声をかける。

 

「お嬢様、そろそろ出発の時刻になります。」

 

「分かった! お父様とお母様に挨拶してくる!」

 

そう言って両親のもとに駆け寄っていった。

 

「お父様! お母様! ロザリー・テイラー、行ってまいります!」

 

少女の両親は非常に若々しい、いや若すぎる。未成年と言えるほどだ。

そしてそんな二人を周りは遠巻きに見ている。

父、レナードと母、ハーマイオニーは愛娘に優しく言う。

 

「ロザリー、自由に色んな事を学んできなさい。何かあったらすぐクーや僕らに連絡するようにね。」

 

「頑張るのよ。戻ってきた時の成長を楽しみにしているわ。」

 

最後に最愛の両親にキスをしてロザリーは蒸気機関車に飛び乗る。

コンパートメントの確保と荷物の積み込みはクーが既に完了していた。

蒸気機関車が出発する。生徒たちは窓から顔を出したり手を振ったりして家族との別れの挨拶をする。もちろんロザリーも例外でない。

 

「体調に気を付けるのよ! 手紙すぐにでも出すわ!」

「頑張りなさい。クー、ロザリーをよろしく頼むよ。」

 

「お任せください! お嬢様の安全は全身全霊でお守りします!」

「行ってきまーす!」

 

 

蒸気機関車はどんどんスピードを増し、キングス・クロス駅はすぐに見えなくなった。

コンパートメント内はロザリーとクーの二人だけであった。

 

「お姉さま、荷物ありがとう! これからホグワーツでもよろしくね!」

 

「はい。これから7年間お世話させてもらいます。」

 

クーは身体機能をフル活動させ体内の(命の水)が全身から漏れないように気を張っていた。

 

(ああ……。お嬢様は年々、可憐にお美しくなられますね。そんな崇高な存在のお世話をできるなんてなんて名誉! レナード様、お母様、わたくしやり遂げて見せます!)

 

クーが密かに決心しているとコンパートメントの扉がノックされた。

許可を出すと青白い顔でプラチナブロンドの男子が一人入ってきた。

そして騎士が姫にするかのように跪いた。

 

「お久しぶりです、ロザリー様。それにクー様も。スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ、今年からホグワーツで共に勉学を励むことができると思うととても嬉しいです。」

 

「あー……久しぶりね、スコーピウス。何度も言うけど、様つけるの止めてくれない? わたしは別にあなたに何もした覚えはないわよ。」

 

「とんでもない! あなたの父上のレナード・テイラー様はぼ……私の母上の命の恩人です! ならば敬意をもって接するのが貴族というものです! 微力であり、不要ではあるでしょうが、私はあなたの力になりたいのです!」

 

スコーピウスとしては精いっぱい貴族としての振舞いを恩人の家族にしているのだろうが、何となく威厳が足りないし、事実としてそれ以外のロザリー個人に向けての感情もあるのだろう。

ロザリーとしては友人として普通に接して欲しいのだが、なかなか直りそうにない。

クーはそんな二人のやり取りを見てほっこりしていた。

 

そんなコンパートメントに新たな来客が現れた。

 

「やぁやぁ! こんにちは! 僕はジェームズ・シリウス・ポッター! 今年からホグワーツに入学する新入生、よろしく! 全部のコンパートメントに挨拶回り中なのさ。」

 

「え、ええ。よろしくね。」

「ポッター? ああ、あのポッターの息子か。」

 

いきなりの登場に少し引き気味のロザリーと若干嫌な顔をするスコーピウス。

クーは興味ないのか見向きもしていない。

乱入者のジェームズはコンパートメント内を見渡してロザリーに目を向けるとその目を輝かせた。

 

「君、可愛いね。うん、僕は君が気に入った!」

 

「いきなり来て何を言っているんだこいつ。」

 

「うん? 君、失礼だな。育ちがなってないな。」

 

「マルフォイ家を馬鹿にするな!」

 

「マルフォイ家? ああ、スリザリンしかいない闇の魔法使いの一族か。元だっけ? こんな奴と一緒にいることないよ。僕と一緒のコンパートメントに行こうぜ。君とは是非とももっとお近づきになりたいよ。もちろんそちらの美人のお姉さんも。」

 

「結構よ。あなたのような人はお断り。」

 

「つれないねぇ。僕のパパはクィディッチの名プレイヤーで生き残った男の子、ハリー・ポッターだぜ。」

 

「あっそ。それなら私のお父様はレナード・テイラーよ。」

 

それを聞いた瞬間、ジェームズの顔から色が消えた。

 

「それともう一つ。私と近づきたいのならお父様から認められなきゃいけないわね。」

 

「は……はは。じ、上等じゃないか! これからホグワーツで大活躍して君にも君のお父さんにも僕が凄いって認めさせてやるよ!」

 

そのまま逃げるようにコンパートメントから出て行ってしまった。

ロザリーはその様子を見ながらこれからのホグワーツ生活も色々起こりそうだなと直感したが、そういうことも含めて楽しみが待っているのだと確信していた。

 

新たな生徒を乗せ蒸気機関車はどんどん進んでいった。

その先には日々に刺激こそ満載ではあるが、闇の魔法など微塵もないホグワーツが待っている。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

娘を見送ったレオとハーマイオニーはかつての学友と食事をしたりしてから自宅に戻って来ていた。

ウィーズリー双子やネビル、ルーナやそれ以外にも何人かと久しぶりに会うのは新鮮だった。友人たちは誰もかれも家庭を持ちホグワーツに通う子供がいるようである。これから娘のロザリーも一緒だからと仲良くしてもらえるようにお願いもしてきた。

 

「ロザリーは上手くやれるかしら? 友達は出来るかしら? 悪い虫は付かないかしら? いざこうして家から出ていてしまうと途端に不安になってしまうものね。」

 

「クーも付いているし大丈夫だろう。それにフレッド達の子供たちとも仲良くできるだろうし、僕は心配よりロザリーがこれからどんな風に成長するのか楽しみだな。」

 

ロザリーもクーも家におらず久しぶり、それこそ十年以上ぶりに二人っきりである。

何だか人数が二人分減っただけなのに空間拡張魔法で十倍にも家が広くなったかのような感じがする。

だけれどもハーマイオニーは娘の目があったため少し我慢していたが存分に愛する人に甘えることができる、なんてことも思っていた。

 

「ねぇ、レオ。久しぶりに思いっきり甘えていいかしら?」

 

「僕が断ったことあったかな? ……うん。何回かあったかもしれない。」

 

「えい!」

 

ハーマイオニーはレオに思いっきり抱き着く。

体温、臭い、感触、味。それらをたっぷりと堪能した。

 

「これからロザリーが卒業するまでの七年の間は毎日抱き着くわ。」

 

「ははは。これじゃあ魔法の研究は一時ストップかな?」

 

「いいの?」

 

「別に構わないさ。僕たちの時間は長い。それこそ宇宙が消滅でもしない限りはそうそう消えやしないさ。それにね。」

 

「それに?」

 

「恋人になった時に、魔法ばかり考えているようなヤツだ。君より魔法を優先することも多々あるだろう、なんて言ったと思う。でも今じゃ魔法と同じぐらいにハーマイオニー()の事が好きになっているのさ。だから魔法より優先するのも当然さ。」

 

二人は窓の外に青く輝く地球を背景に抱き合う。

 

「「愛してる。」」

 

レナード・テイラーとハーマイオニー・テイラー。

二人はこれから先、未来永劫、尽きることない永遠の生を愛する人の隣で歩むことを改めて誓った。

 

魔法は、世界は未だ解けることない未知が数多くある。

その全てを解明するなんてできないかもしれない。

それでも愛する人となら何も退屈することなど無いとレナード・テイラーは確信していた。

二人の行く先は果てしないが、きっと希望や愛が広がっている世界が待っているのだろう。




これにて本編完結です!
ここまで読んでいただきまして本当にありがとうございます!
これを書いている時点で、総UA120万以上、お気に入り数も7千越え!
正直ここまでになるとは思っていませんでした。
よくてお気に入り100ぐらいかなとか。
それに何度かランキング入りしたりと何もかも予想以上でした。
ハーメルンで完結したハリポタ原作作品も現時点で18作品と少なくこの作品が数少ない完結作品になったのもちょっと誇らしいです。

最初は自分の中で妄想しているだけでしたが、色んな作品を読んでとりあえず妄想を吐き出してみようと考えて書き出したのが一年前。
週1~2回のペースで投稿を続けてそれが完結までこれたのも読んでくださった皆様のおかげです。
自分として書きたかったのはオリ主そのものとハーマイオニーと結ばれるということ以外だと、
1巻:オリ主が賢者の石の罠をグレードアップ
2巻:バジリスクの過去と設定
3巻:オリジナル魔法生物
4巻:競技場爆破
こんなところは書こうかなとは思ってました。


以下各キャラクターのその後など。

・レナード・テイラー
現在魔法研究のため月に在住。
妻ハーマイオニーとは相変わらず愛し合っている。
愛娘のロザリーも溺愛。
魔法研究で様々な改革をして歴史に名を刻んでいる。
これからも変わらず愛する家族と生きていくだろう。

・ハーマイオニー・テイラー(旧姓グレンジャー)
愛する夫を支え続ける。
魔法研究の手伝いや育児その他色々と助けている。
人外の身体なので夫と共に外見は若々しい、というか未成年。
でもやろうと思えば大人モードも可能。

・クー
変わらずメイドをしている。
お嬢様を愛でるのが最近の趣味。
ロザリーにお姉さまと呼ばれて全身の細胞が暴走するのを抑えるのがきつく成っている。

・ロザリー・テイラー
レオとハーマイオニーの一人娘。グリフィンドール所属。
肉体的には人間である。
しかし基本的に高い魔力と治癒力はある。全身をレオ特製の魔法具で過保護すぎるほど守られている。なのでダンブルドアですら傷つけられない。
人外になるか、人間として生を全うするかはロザリーに決めてもらうつもりでいる。
『眼』など遺伝はしていないが聡明ではある。
恋人にするなら父(レオ)より強い男が良いと言う。無理ゲーである。

・ジルニトラ(レオ改造ドラゴン)
修行した後再度レオに挑戦→敗北→修行→挑戦……。
このサイクルを繰り返している。でも本人(竜)的には満足している。
この戦いの余波が大きいことが月に移住している要因になっている。

・アースキン・テイラー、フェリス・テイラー
存命。アースキンは全快し闇祓い局の局長に復帰。鬼の局長として頑張ってる。
フェリスはそんな夫を支えている。

・ハーマイオニーの両親
存命。孫娘のロザリーを溺愛している。
娘が肉体的に成長していないのはちょっと複雑。でも幸せなら良いかなとも。

・ハリー・ポッター
ホグワーツ卒業後はクィディッチのプロ選手になる。人気選手である。
大人になって大分精神的に成長して立派になる。
その後チームメイトと結婚して一児の父に。
息子がかつてスネイプの記憶で見た父親のようになりそうで胃が痛い。
原作と違う運命だが本人としては幸せな人生である。

・ジェームズ・シリウス・ポッター
ハリーの一人息子。祖父と父の名付け親から名前を貰った。
原作とは生まれた年が違うためロザリーと同学年。グリフィンドール所属
プレイボーイで父親を尊敬している。
ロザリーの事でスコーピウスとライバル関係に。

・ロン・ウィーズリー
父やパーシーのコネを利用して父と同じ偽の防衛呪文ならびに保護器具の発見ならびに没収局に所属。父と同じ仕事をして役立つことをしたいと思っている。
現在マグルの女性と交際中。

〇ウィーズリー家
・モリーは相変わらず力強い母親として一家を支えている。

・ビルはフラーへのアタックがようやく効果を発揮したところ。でもまだ結婚はしていない。

・チャーリーは独身。ドラゴンが恋人。ジルニトラを一度見て感涙している。

・パーシーは大臣補佐として順調に出世中。その内は大臣とも言われている。

・フレッドはアンジェリーナ・ジョンソンと結婚。一児を設ける。
・ジョージはケイティ・ベルと結婚。子供はいない
 四人揃って悪戯用品専門店を繁盛させている。

・ジニーは闇祓いに就職。独身。局長のアースキンの元で日々修業中。次期局長とも言われている。

〇マルフォイ家
・ルシウスは身体は完治することもできたが罪としてそのままにしている。
今は聖28一族筆頭として魔法界の未来のために残る命を使っている。

・ドラコは癒者になり多くの患者のために奮闘。その際アステリア・グリーングラスと知り合い恋人、後に結婚した。
アステリアの呪いは様々な方法を使うが解除できず最終的にレオを頼る。
呪いが解けた後はドラコ以降のマルフォイ家はテイラー家に忠誠を誓うようになる。

・アステリア・マルフォイ(旧姓グリーングラス)
原作同様「血の呪い」が発現するもレオによってあっさり解除。存命している。

・スコーピウス・ヒュペリオン・マルフォイ
ドラコの一人息子。スリザリン所属
母親を助けた縁でテイラー家と親交がある。
ロザリー・テイラーに貴族として忠誠を誓うが内心では恋心がある。
それ関係でジェームズ・シリウス・ポッターとライバルになる予定。

・ネビル・ロングボトム
レオの特別教室で自信と実力をつけた彼はどんどんと成長していった。
最終的には原作同様薬草学の教師となる。スネイプ先生は苦手だがちゃんと接することができるようになった。

・セドリック・ディゴリー
チョウ・チャンと結ばれる。
クィディッチの選手として活躍。ハリーとは良きライバル。

・ホグワーツの他の学生は特に変化なし

〇ホグワーツの教師、職員
・アルバス・ダンブルドア
エピローグ後もホグワーツの校長を続けている。
レオの娘が入学することでまたストレスが襲い掛かって来るのではないかと戦々恐々。
そろそろ寿命なので後継者を探さねばとも思っている。

・ミネルバ・マクゴナガル
相変わらず副校長でグリフィンドール寮監。変身術担当。

・フィリウス・フリットウィック
闇の脅威が去って傷も癒えたため復職。呪文学を担当。

・ポモーナ・スプラウト
変わらずハッフルパフの寮監。現在はネビルと二人で薬草学を教えているが
近いうちに引退しようかと思っている。

・セブルス・スネイプ
スリザリン寮監で闇の魔術に対する防衛術担当。
愛するリリーの仇であるヴォルデモートにリリーの命日に鉄拳をお見舞いしている。
そしてリリーへの思いは自分の中だけの秘密として生涯誰にも喋らない。
独身を貫く予定。
グリフィンドールいびり、スリザリン贔屓は変わっていない。

・ホラス・スラグホーン
魔法薬学担当。
スラグクラブで得たコネクションを活かして魔法界の立て直しに貢献していた。
相変わらずスラグクラブは開催している。ロザリーのことも気に入ることだろう。

・シビル・トレローニー
相変わらず役に立たない占い学
ハリーとヴォルデモートの予言が外れ、後にされたレオに関する予言のみ的中したことからダンブルドアとしても予言についてどう対処すればいいか頭を悩ませている。

・アーガス・フィルチ、ポピー・ポンフリー、イルマ・ピンス
相変わらず規則・医務室・図書室の鬼として君臨。

・ルビウス・ハグリッド
再生された森の森番をしている。
ジルニトラの記憶は抜き取られたため動物好きはそのまま。
だけど、ドラゴンだけは苦手になった。
魔法生物飼育学の教師ではない。


〇不死鳥の騎士団
生き残りは各自平和に暮らしている。
ムーディは高齢だが相変わらず元気に疑心暗鬼である。

・シリウス・ブラック
身体は回復したが、独身のまま。
親友の孫に滅茶苦茶甘い。ブラック家の金庫の鍵を渡そうとしたこともある。

・リーマス・ルーピン
身体が回復した後、原作同様トンクスと結婚して子供もできた。
狼人間ではなくなっているので何の憂いもなく子作りできたのであろう。


〇魔法省
純血主義者たちが減ったため色々とマグル生まれや混血に対して良い流れになっている。

・ルーファス・スクリムジョール
現在も魔法大臣。後任にそろそろ譲りたいが有能であるため残って欲しいと言われている。


〇闇の魔法使い、死喰い人
・ヴォルデモート
南極にて投獄中。これからも変わることはないだろう。
一年に一回スネイプが殴りに来る以外はたまにダンブルドアが来て様子を見ている。
それ以外は誰も来ないので徐々に人々から忘れられてきている。
スネイプとダンブルドアが死んだら本当に孤独で永遠の氷獄にいることになる。

・ベラトリックス・レストレンジ
原作同様御辞儀の子を妊娠、出産。ベラトリックスとその子がその後騒動を起こそうとするが、それはまた別の話。

・ピーター・ペティグリュー
実はひっそりと生き残っていた。
ネズミとしてその生涯を終えることになるだろう。


こんなところですかね。
ここまで良く書き続けることができたと自分でも驚いています。
これで本編は完結ですが、番外編としてその後やIF、他のキャラの視点なんかを書いていけたらとは思っています。
リクエストとかあったら活動報告へお願いします。参考にします。

次回作も決めましたので詳しくは活動報告の方で書きます。

それではここまで本当にありがとうございました!


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番外編
EX.1 転生者から見たレナード・テイラー


今日はエイプリルフールということでどうでもいい番外編を
今日中に一本書いてしまおうと思って書きました!

エイプリルフールなので本編には全く関係ないお話です。
本編には転生者など存在しません。

かなり適当に好き勝手書いているので変な部分もあるでしょうけど
気にしないでもらえると助かります。

それではEX.1どうぞ!


〇賢者の石編

唐突で悪いが俺は転生者だ!

神様が事故で間違って殺してしまったから転生させてやると言うテンプレ転生者だ。

転生先はファンタジー小説の傑作、ハリー・ポッターの世界だ。

神様が言うには厳密には小説の世界とは違っているらしいが、それでも好きだった小説の中に入れるのは大歓迎だぜ。

特典として膨大な魔力量をゲットしたし、これからハリーと一緒に魔法生活を楽しんでいくつもりだ。

転生する直前に神様が言った、『……まぁ、無理だと思うが頑張れよ……。』と言う言葉が耳に残ったが気にしない気にしない!

 

 

転生してから十年ほど過ぎた。俺が転生したのは普通の魔法族の家系だった。

純血というわけでもなく、特に裕福というわけでもない普通の家であった。

両親は暖かくて優しい最高の人たちだった。

そんな中で俺は高い魔力を活かして魔法の勉強をしまくった。転生前は決して勉強が好きではなかったが、魔法を学ぶのはゲームをしているようで本当に楽しかった。おかげでそこそこの実力は手に入れたのではないかと思っている。少なくともロックハートよりはマシなはずだ。

そんな俺にとうとうホグワーツからの入学案内が届いた。

これで俺も原作に関わることができる!

 

それからダイアゴン横丁で買い物をしてグリンゴッツやマダム・マルキン、オリバンダーの店で感動しながら必要なものを揃えていった。残念ながら、ハリーやフォイフォイには遭遇することはできなかった。

 

両親に見送られて九と四分の三番線からホグワーツへ出発!

ハーマイオニーとネビルのトレバー探しのイベントも遭遇することなく、本当に何もなくホグワーツに到着してしまった。

その後はハグリッドの巨体にビビったり、ホグワーツの美しさに感動したりと楽しく進んでいった。

そしてとうとう組み分けの儀式! できれば主人公であるハリーと一緒のグリフィンドールが良いけど、最悪スリザリンじゃなければどこでもいいかな。

 

『〇〇〇・〇〇〇〇〇!』

 

お、俺の番だ。さて組み分け帽子さん、頼むぜ?

 

『ふーむ……。勇気と優しさがある。グリフィンドールかハッフルパフが良いかの。お主はどちらが良いと思う? 君が決めた寮が最善なのだろう。』

 

『グリフィンドールで!』

 

『よろしい、ならば……』 「グリフィンドール!」

 

やった! これでハリーと関われる機会が格段に増えたぜ!

できれば仲良し三人組と一緒に行動できるようになればいいんだけどね。

先輩たちに歓迎されながらグリフィンドールの席に着く。

おお! フレッドとジョージはマジで見分けができねぇ!

 

俺の順番はかなり早い方だったので次はハーマイオニーだ。

可愛いなぁ……。ロンには悪いけど隙があったら彼女にしてぇ……。

ん……? かなり長いこと組み分けしているな。しかもレイブンクローって言いかけてた。でも最終的には原作と同じようにグリフィンドールになった。

ハリーも原作同様グリフィンドールだ。喜びでグリフィンドールが爆発しそうだ。

その後も次々と組み分けが進んでいく。フォイフォイも原作と同じくスリザリンだった。

他の名前が分かる生徒は原作と相違ない結果だな。

 

「テイラー・レナード!」

 

聞いたことの無い名が呼ばれると大広間がざわつき始めた。

周りの先輩に聞いてみるとどうやら魔法研究で有名な奴らしい。

原作にそんな奴いたっけ?

そいつはレイブンクローに組み分けされた。レイブンクローとハッフルパフは原作でも目立たなかったしガリ勉のレイブンクローならそんな奴がいても別に変じゃないと思った。

 

……そう、その時はそんな風にしか思わなかったのだ。

 

その後の組み分けも問題なく進んでいった。ロンもグリフィンドールになって安心だ。

ダンブルドアの話の後、美味しい料理を楽しんだ。

寮に案内されて部屋割りを確認すると原作でも見たことない名前の生徒と同室になった。

どうせだったらハリー達と一緒の部屋が良かったが贅沢も言ってられないだろう。

 

今年はホグワーツに賢者の石がある。

イベントも盛りだくさんだ。飛行訓練、トロール侵入、クィディッチ、ドラゴン騒動、森でのお辞儀遭遇、罠を突破する。どこまで関われるか分からないが死なない範囲で楽しもうと思ってる。

何はともあれ、明日からは授業だ! 楽しみだ!

 

動く階段などの迷宮の様なホグワーツに悪戦苦闘しながらも授業を受ける。

何か誰かが空中を飛んだとか騒がしかったが、ホグワーツ七不思議かな? それともお辞儀様でも現れたか? それに寮以外で生活している生徒がいるとかなんとか。

 

薬草学、呪文学や変身術ではなかなかの出来栄えを披露できたと思う。

魔法史は睡眠時間だし、頭半分お辞儀のニンニククィレルはどうにかして欲しい。

早くルーピン先生の授業にならんかな。

気になったのはハーマイオニーがどの授業でもあっという間に完璧にこなすことだけど傍から見るとこんなにすごかったのか……。

 

そしてお気に入りキャラのスネイプ先生の魔法薬学の時間がやってきた。

それにしてもグリフィンドールとスリザリンの対立は実際に体験してみるとすげぇな。

まぁ、俺もスリザリンは嫌いだしこのままで良いけどね。

お、スネイプ先生のハリーいじめが始まった。ここを読んだ時にはあんな最期になるとは予想できなかったなぁ。

その後は実習になったが、なんと! ハーマイオニーとペアを組むことになった!

 

……ハー子さんや、作業が速すぎませんかね? 結構自身があったのにほとんど彼女一人で作業しているも同然だ。かき混ぜるぐらいしかやってない気がする……。

ま、まぁ接点もできたし良しとしよう。うん。

 

 

それからは出来るだけ寮内で友達を増やしていった。

ネビル、ディーン、シェーマス、それにロンやハリーとも友達になれた。

ハーマイオニーとも友達になりたいけど女子部屋には男子は入れないし、休日はどっかに行ってるんだよな。ロンやハリーなんかはハーマイオニーを嫌ってるみたいだし、ハロウィントロールまで三人組結成はやっぱり無理かな。

 

 

今日は飛行訓練の日だ。空を飛ぶのは気持ちが良いんだよな。

原作通りにネビルが墜落してハリーとフォイが飛んでマクゴナガルに連行されていった。

この後は何だっけ? ああそうだ! 夜中にフォイの罠でケルベロスと遭遇する羽目になるんだっけ。よし、俺も一緒に行こう。

 

案の定、フォイの罠でハリー、ロン、俺とハーマイオニーと巻き込まれたネビルはフィルチから逃げている。んで、例の扉に侵入!

ケルベロスでけぇええええええ!

やべぇさっさと逃げるぞ。

あれ、扉が開かない! 「アルホモーラ(開け)!」 ダメじゃん! 転生人生終了かよ!

……襲ってこないな。ハーマイオニーが話しかけてるし、ケルベロスも話してる!

なにこれ!? 原作と全然違う!

扉が開いた! さっさと逃げるぞ!

 

目の前には鬼の寮監(マクゴナガル)が立っていた。

 

ハーマイオニーが事情を説明するが、それでも200点近い大量の得点が引かれてしまった。

次の日には俺たちはグリフィンドールから滅茶苦茶恨まれてしまった。

それでもフォイの馬鹿のおかげでどうにか矛先がスリザリンに向かって何とかなった。

 

それから時間は流れてとうとうハロウィン。

ロンが原作同様にハーマイオニーの悪口を言って彼女を泣かせてしまった。

これは流石にロンが悪いな。まぁ、これがあったからトロール襲撃と合わせて仲が良くなったから人の関係は不思議なもんだな。

ハロウィンの宴を楽しんでいるとニンニク野郎が飛び込んでくる。すげぇ演技力だ。

よし、これからハリーとロンと一緒にハーマイオニーを助けに行きますか!

 

……あれ? 女子トイレに誰もいないぞ? なにこれ、転生者がいることによるバタフライエフェクトか!?

三人で必死に探しているとドスンとでかい音がする。

音のした方に向かうと新しい顔を貰えなかったアンパンマン状態のトロールが転がっていた。

近くにはハーマイオニーと……だれ?

 

どうやらハーマイオニーは彼、レナード・テイラーと幼馴染であるらしい。

そんでそのレナード・テイラー君は勉強トップの有名人だ。

組み分けの時にちょっと気になったけどこんな奴やっぱり原作にはいなかったぞ?

と、とりあえず原作仲良し三人組となったし、俺もその中に入れたしOKだよな。……な!

 

その後はクィディッチやらスネイプ疑惑やらニコラス・フラメルの話題とか色々とあった。

ニコラス・フラメルと賢者の石については原作知識のおかげで本来より速くハリー達は知ることになったけど、特に影響はなさそうだ。

それよりハーマイオニーは俺たち三人よりあのテイラーと仲が良いみたいだけど、大丈夫だろうか? 原作から離れていってないか?

クリスマス休暇は家に帰った。ホグワーツに残っても良かったけど、やっぱり家族は大事だしね。

 

新学期になった。ハグリッドのドラゴン騒動が始まってしまった。原作を読んでいるのと実体験するのは別物だと思い知らされる。早くチャーリーに渡したくなってくる。

そんなことを思っていたらなんとハグリッドが違法ドラゴン所持でアズカバン行きに!

おいおいおいおいおい! 最低五年とか、どうすんだよ!? 五年後とか『謎のプリンス』になっちまうぞ!

俺たちが抗議してもどうしようもなくハグリッドは連行されていった。

そしてノーバードはレナード・テイラーが連れて行こうとしている。

またこいつだ。こいつがいると『ハリー・ポッター』が壊れちまう。そう直感的に悟った。

 

「おい、テイラー! どういうつもりなんだ!」

 

「? 何でしょうか? ……あなた面白いですね。」

 

ゾクッとした。何か魂まで解剖されている気分だった。あの『眼』を見たらそう感じてしまった。その後は何も言うことができなかった。

 

ハグリッド逮捕の後は森に罰則に行くことも無く、期末試験がある程度で平和だった。

そして試験が終わったらいよいよ『賢者の石』編のラストイベントだぜ!

ハーマイオニーは一緒には来てくれなかったので俺が彼女の代役になるしかないが、何とかなるだろう。

いざ、ケルベロスがいる部屋に突入!

 

……その前に俺たちの冒険は終わってしまった。

 

またまたレナード・テイラーだった。

最初からダンブルドアと一緒に何やら計画していたらしい。

俺たちは何もせずに寮のベッドに戻るしかなかった……。

結局、寮杯はレイブンクローが持って行ってしまった。最初の方の大幅減点のせいで俺たちグリフィンドールは最下位だった……。

どうしてこうなった……。

 

 

 

〇秘密の部屋編

今年こそは主人公であるハリー・ポッターが活躍して俺はその仲間として一緒に冒険するんだ! ハーマイオニーをこちらに戻ってくるように何か考えないとなぁ……。

このままじゃ、俺がハーマイオニーポジションの三人組だよ。俺、男だぞ?

 

順調にホグワーツ特急から組み分け儀式も終わって寮に戻ってきた。

ハリー達は原作と同じく空飛ぶ違法運転で事故ったみたいだ。

次の日から授業が始まったが、ロックハートが予想以上にうざかった。

ハリーのそばにいるせいか遭遇率が高い。女はなんでこんなのが良いのかわからん。

 

そのうざいロックハートが原作より圧倒的速さで退場となった。

秘密の部屋すらまだ開いてすらいないぞ!

……そうまたもやレナード・テイラー様である。

実はあいつも原作知識や特典を持った転生者じゃねーの?

そんでもって生徒が教師をやると言う前代未聞の事態。もうどうすりゃいいのよ。

バジリスクがあいつを石にすれば全部OKじゃね?

まぁ、授業内容はロックハートと比べもようがないほど良かったのだけどね。

でも免除課題とか、余裕で防ぐテイラーとかどうなってんだよほんと。

 

原作の決闘クラブとは違い決闘大会が開催した。

レナード・テイラー無双開始である。

 

なぁにこれぇ

 

……あいつをどうにかするとか無理じゃね? 明らかにおかしい。チートだチート!

ハーマイオニーもチートだったでござる……。ほんとこの世界『ハリー・ポッター』なの?

そのチート様はバジリスクも退治してしまいましたとさ。

トムinジニーも焦っただろうな。

 

その後の秘密の部屋での戦いも強制退去+戦力外通知でした。

ジニーが助かったので良し、うん。人命最優先である、うん。

……今年も俺たち何もしてないよ。

更にはハーマイオニーが明らかにテイラーに恋する乙女の顔をしていた。

何度目か解らんが、どうすんのコレ?

 

 

〇アズカバンの囚人編

シリウスおじさんが脱獄したぞっと。

さて、俺は無実だと知っているしスキャバーズがペティグリューとも知っている。

でも下手に手を出すと逃げられるしどうしたらいいのやら。

まぁ、なるようになるだろう。今年は最後の方の冒険以外は何があったかなぁ……。

吸魂鬼(ディメンター)とバックビーク、ホグズミード村ぐらいか?

そもそも原作との差がどんどん広がっているのに原作知識が役に立つのか?

……不安しかねぇぞ。

 

悪い予感は的中するもので、今年も最初から色々とおかしい。

ルーピン先生が人狼ってカミングアウトしてやがる。

ハグリッドがいないからヒッポグリフは影も形もない。

なんかテイラーがまたやらかしやがった。新しい魔法生物を造ったとか、何なのソレ。

おまけに守護霊の呪文が爆弾とか意味不明。

そんでもって気が付いたらシリウスは無罪確定、殺狼薬とか言うので人狼は人間になった。

今年は本当に何もしないまま終わってしまった。

 

〇炎のゴブレット編

クィディッチワールドカップ開催!

本来だったらハーマイオニーが誘われているんだろうけど、代わりに俺が誘われた。

喜んでいいのか原作との乖離(かいり)を悲しむべきなのか……。

原作と違ってきてはいるがそれでも同じことは起こるようで、闇の魔法使いの襲撃はあった。俺は膨大な魔力を持ってはいるが流石に多人数をいっぺんに相手するほど強くはないので逃げるにかぎる。

あ、ハリー達とはぐれちまった。

ん? 死喰い人(デスイーター)たち……なんか闇の印が打ちあがる前に逃げてないか?

 

ホグワーツの新学期が始まった。

三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)は開催されるようだ。

でも、ルーピン先生が引き続き防衛術の先生だしムーディに変身したクラウチ・ジュニアがいないしどうするんだろ?

 

結局、四人目は毎度おなじみテイラーになった。

今年もどうやら傍観する一年になりそうです、ハイ。

ハーマイオニーはテイラーと恋人になった模様。

もうどうにでもなれ、ちくしょう!

あ、お辞儀は無事復活したみたいです。

そんなとこだけ原作と同じにすんなよ! どうせだったらお辞儀も復活しない事件が何も起きないホグワーツ生活をさせろよ! クソがッ!

 

 

〇不死鳥の騎士団編

不死鳥の騎士団が始まったけど、俺は騎士団の任務について何も知らない。

本当は本部がある所に行きたかったし、ロンや双子とかに誘われたけど両親に反対されてしまった。両親はダンブルドアを信じているけど、危険な場所には行って欲しくないようだ。

当然とは言え本格的に物語からはじき出された感じがしてすごい疎外感だ。

 

ホグワーツに戻ってきた。そして後悔した。

予想以上にアンブリッジはヤバい。アレ本当に人類なのか?

そんでもって無能大臣からの命令なのか授業は役立たずすぎる。

さっさと消えないかなぁ……。

ちなみに原作のダンブルドア軍団は欠片も存在しない。

代わりのレナード・テイラーの特別授業が開催されている。

ハリーとロンが嫌がるので俺も参加していないけどかなりの数が参加するようだ。

 

アンブリッジが消えた。本当に跡形もなく、記憶からも。

なぜ俺だけが覚えているか不可解だが、ダンブルドアやテイラーからも記憶が消えてるし最初から存在しないかの様な扱いだ。

覚えているのは俺が転生者だからなのか?

俺だけが狂ったのか、次に消えるのは俺ではないのかとしばらく恐怖で眠れなくなった。

 

アーサーおじさんが怪我したりもしたけど、ふくろう試験でそれどころじゃない。

とりあえず全科目でいい手応えを感じて終わることができた。

一安心していると、とんでもないニュースが飛び込んできた。

騎士団が半壊、魔法省も大規模な破壊、闇の帝王復活を認める、そしてレナード・テイラーの死亡。

原作を粉砕してきたレナード・テイラーが死んだことでこれからは元の『ハリー・ポッター』に戻る! ロンが傷心のハーマイオニーを慰めればまだ軌道修正できるはず!

 

 

そんな風に考えてた時期が俺にもありました……。

 

 

レナード・テイラー復活! しかも不滅の存在とか、お辞儀が泣くぞ!

もう、諦めるしかないかな……。

 

 

〇謎のプリンス編

俺はもう諦めた。

一モブキャラとして死なないように、人並みの幸せが得られるように頑張ることにした。

とりあえずハリーとロンとは仲良し三人組ではいるつもりだ。それにやっぱり原作を台無しにしたテイラーは嫌いだし。

とは言え今年も何もなしに進行するんだろうなぁ……。

ハリーはダンブルドアとの授業を受けているみたいだけど俺やロンは関係ないし……。

ホグワーツが襲撃されたけど全部テイラーのペットが撃退したし、ダンブルドアもなんか知らんが生きてる。

うん、生きてるって素晴らしい。

 

 

〇死の秘宝編

お辞儀が魔法省を陥落させて魔法大臣になった。

俺は家族と一緒にホグワーツに避難することができた。

俺に出来ることはもうないのだろうか? 分霊箱(ホークラックス)探索の旅も発生してないし、完全に原作が死んだ。原作知識が使えないから未来も分からない。正直かなり怖い。

 

結局は全部レナード・テイラーが解決してしまった。

 

その後、普通に就職して恋人ができて、結婚して、子供もいる普通に幸せな家庭をゲットした。

転生したからと言って大活躍の大冒険ができるわけじゃない。

それでもこうして幸せなんだから文句はない。

 

……そのはずなのに何とももどかしい感じを残したまま残りの人生を過ごすんだろうな。

はぁ……どうしてこうなった。




以上、番外編でした。

転生者は特に名前を考えていません。
特典は膨大な魔力 これで呪文は使い放題
なおアースキンの下位互換の模様。

レオの『眼』には転生者の魂が普通ではないのでいつか分析したいとは思っていた。
ついでに例の消滅を感知できたのは原作知識で蛙婆を知っていた部分は消せなかった影響です。流石にレオの薬もそこまでは無理だったということで。

ハリー達と仲良くする=出番がどんどん減る
なので章が進むにつれ書くことが無くなっていってしまった。

とりあえず書きたいこと書いただけなのでかなり適当かつ無茶苦茶になってしまった。


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EX.2 魔王ルート

お久しぶりです。
今回はちょっとずつ書いていた番外編となります。
基本的に番外編は本編とは無関係な別の世界の話となります。

分岐条件は以下にようになります。
1.ハーマイオニーと入学前に出会わない
2.入学後誰とも親しい仲、恋人にならない
三大魔法学校対抗試合後から分岐

それではEX.2どうぞ。


三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)の最後の課題。

それをクリアしたレナード・テイラーはとある墓地に転移させられていた。

そこにはかつて魔法界を震撼させた闇の帝王ヴォルデモート……その成れの果てが待っていた。

そして、帝王の宿敵のハリー・ポッターの血を利用して闇の帝王は蘇ることとなる。

ハリー・ポッターに逃げられた後、帝王(ヴォルデモート)はレオに向かって提案をしてきた。

 

「レナード・テイラーよ。この闇の帝王ヴォルデモート卿の為に力を使うが良い。」

 

周りに集まっていた死喰い人(デスイーター)達は反発するがヴォルデモートの一声で静まり返った。

レナード・テイラーは考える。この提案を受け入れることへのメリットとデメリットについて。

 

「いくつか聞かせてください。まず一つ、あなたは僕に何を求めますか? 二つ、あなたは最終的に何が目的ですか? 三つ、僕が断った場合どうしますか?」

 

「順番に答えてやろう。お前に求めるものは優れた魔法や魔法薬の開発、俺様の目的のために多くのことをしてもらいたい。そして俺様の最終目的は全ての支配だ。優れた魔法使いが劣ったマグルを支配する。優秀なものが支配するのは当然の摂理だ。最後に逆らった場合……。拷問、洗脳、その『眼』を抉り出して我が物とする。まぁ、最終的には殺す。俺様に逆らう者は全員が死の恐怖を味わうことになるだろう。」

 

とりあえず聞いたが、正直ヴォルデモートの目的にそこまで興味はない。

 

「僕は自分の研究を最優先にしたいのであなたの要望は後回しになることもありますよ。」

 

「それならばお前が興味を引くような要求を考えるまでだ。さぁ、どうする?」

 

しばし考える。そして魔法界の運命を決める結論を出した。

 

「良いでしょう。あなたに協力します。但し、僕の家族に危害を加えないという条件付きですがね。」

 

「良かろう。貴様の家族には手を出さんと約束しよう。」

 

ここに史上最悪の同盟が結成された。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ホグワーツは大混乱だった。

レナード・テイラーが巨大な迷路を爆散しただけでなく優勝杯と共に姿を消した。

これだけならばまだよかった。

その後に迷路の残骸に突如として現れたのは生き残った男の子ハリー・ポッターであった。

傷だらけで疲弊した彼はそれでもはっきりと告げた。

喧噪の中で告げられた名は全ての魔法族の耳にハッキリと聞こえた。

 

闇の帝王。名前を言ってはいけないあの人。史上最悪の闇の魔法使い。

ヴォルデモートが戻ってきたと。

 

最初は聞き間違いかと思ったが、ハリーは何度も聞きたくもない名前(ヴォルデモート)を口から発し続けている。駆け寄ってきたダンブルドアにもハッキリとそれを告げていた。

その鬼気迫るハリーと真剣に聞き入るダンブルドアの様子から徐々に真実ではないかという思いが膨れ上がっていった。

誰かがデタラメを言うなと言えば、他の誰かが反論する。

連鎖的に会場中に混乱は広がり続けていった。

 

だがその混乱もすぐに消えた。

それを上回る恐怖が現れたためだ。

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

ハリーを連れて校長室に戻って来ていたダンブルドアは事の顛末をハリーから聞いていた。

ヴォルデモートの復活、復活にハリーの血を使ったこと、その場に集った死喰い人(デスイーター)、そしてその場にいたレナード・テイラー。

ヴォルデモートがハリーの血を利用して蘇ったことはこちらにとって非常に有利になる結果となったが、それ以上にレナード・テイラーをヴォルデモートが利用しようとしていることの方が重要になってくる。

どちらに転ぶかは半々だが、あちら側に与することになった場合……予言が正しければこちら側が滅ぼされるのは必至だ。

レナード・テイラーが闇の提案を飲むにしろ、断るにしろ一度はホグワーツに戻ってくるはず。その際に何としてでもこちらの陣営に協力するように説得せねば。

そんなことをダンブルドアは考えこれからの計画を必死に練っていた。

その考えが何もかも甘く、手遅れであるとも知らずに。

 

 

悲鳴が聞こえてきた。

ダンブルドアとハリーは窓際に走り外を見た。

そこから見える景色は……まさに地獄だった。

 

ホグワーツの敷地の上空を無数のドラゴンが舞っている。

毒蛇の王(バジリスク)の瞳が次々に生徒や観客たちを殺していく。

鎧姿の魔法生物が次々と魔法使いたちに刃を突き立てる。

魔法使いたちも魔法を使って抵抗するがそれらは意にも介さず進撃してくる。

炎に焼かれ、死の魔眼で絶命し、切り裂かれる。

しかもここはホグワーツ。本来であれば姿くらましで逃げることもできるだろうが、敵からの侵入を防ぐための防衛機能が仇となりに守りであったそれによって命を落としている。

魔法も効かない強大な存在によって次々と殺されていく魔法使いたち。

マクゴナガルが、ルード・バクマンが、生徒たちが、老若男女問わず無造作に殺されていく。

 

その光景を見たダンブルドアは悟った。全てが終わったと。

これはレナード・テイラーの仕業であると。テイラーは闇の帝王と手を組みこちらにとって最悪の敵になってしまったと。

 

「ハリー、逃げるのじゃ。」

 

「そんな!? ダンブルドア先生! 戦わないんですか!? このまま皆を見捨てて逃げるのですか!?」

 

「そうじゃ! このままここにいては必ず殺される。一度逃げて態勢を整えなければ勝機はない。」

 

戸惑い、反発するハリーを無理やりにでも連れて逃げる。何としてでもこの窮地を脱しなければ魔法界に、世界に未来はない。

世界最高の魔法使いと言われた男は後ろから響く悲鳴と絶叫を無視しながら恥も何もかも捨てて逃げ出した。

テイラーの道を阻むものは全て滅びるという予言が間違っていたと、そう思いながら。

 

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殺戮から数十分後。

いまだにドラゴンやその他の魔法生物はホグワーツ中でその目を光らせている。

生き残った僅かな魔法使いたちは競技場に集められていた。

彼らは聖28一族や純血の魔法使い、その他に優秀、世間への影響が強い魔法使いたちであった。

恐怖に震える彼らの前に二つの存在が姿を現す。

 

一つはそれを知っている者ならば恐怖するべき存在。

髪が抜け落ちた頭部。削ぎ落された鼻。人を捨てた証拠の赤い瞳。

人間とは思えぬ形相の闇の帝王ヴォルデモートその人だ。

もう一つはホグワーツ生徒ならば見知った顔、いや三大魔法学校対抗試合(トライウィザード・トーナメント)を観戦に来ていたならば忘れられない存在、レナード・テイラーであった。

 

「アルバス・ダンブルドアは逃げたようです。どうしますか?」

 

「すぐに探させろ。この状況を覆すことは簡単では無かろうが……、必ず殺さねばならん。

さて、ここに残った貴様らは純血または優れた魔法使いたちだ。光栄に思え、貴様らはこれから俺様が支配する世界で生きる権利が与えられたのだ!」

 

 

その後はあっという間に世界が変わっていった。

イギリス魔法省はすぐに陥落した。無能なコーネリウス・ファッジではどうすることもできずに何もかもが支配されるしかなかった。

僅かに生き残った闇祓いやヴォルデモートに抵抗する勢力がアルバス・ダンブルドアの元に集い闇の帝王の支配に抗おうと活動を続けたが……全てが無意味であった。

圧倒的な差で全てが押しつぶされることになった。

 

 

イギリス魔法界を完全に支配した闇の帝王は次々に他国の魔法界に侵攻していった。

ヨーロッパ各国、中東、アジア、アフリカ、アメリカ、日本……。

そして世界中の魔法界をその支配下に置くことに成功した。

成功の最大の要因はレナード・テイラーが協力したことであることは間違いない。

どのような魔法も無意味、圧倒的物量、不死、それらを兼ね備えた軍団など敵対者にとっては悪夢以外の何物でもなかった。

 

その後は時間をかけてマグルの世界をも支配していき、徐々にゆっくりと世界の常識さえも歪め、地球の頂点にヴォルデモートが君臨することになった。

純血の魔法使いは賢者の石や様々な方法で無限の時を生きることを許され、魔法使いの血を持った者たちだけがまともな人間として扱われる。そしてマグル生まれやマグルは奴隷として純血たちの為にその命を捧げる。そんな歪で壊れた社会が形成されていった。

そんな世の中であるにもかかわらずヴォルデモートの治世は何一つ揺らぐことなく続いていった。

 

 

地球帝王ヴォルデモートの誕生とその統治が続く陰にはレナード・テイラーの力が必要不可欠な要素であった。

どんな外敵も排除する、不都合も圧倒的な理不尽でどうにかしてしまう。そんなまさに何でもありの神の如き力をヴォルデモートに与え続けていた。

ヴォルデモートも最初は便利な道具、有用な人材程度にしか認識していなかった。

……だが、世界を統一した後になってそのあまりに強大な力を邪魔に思うようになった。

 

(このままではいずれ俺様の世界までも破壊しかねない。これ以上は不要だな。殺すか。)

 

その力で反乱されることを恐れたヴォルデモートはレナード・テイラーの抹殺を企てる。

しかし、全ては遅すぎた。

その時にはレナード・テイラーは不滅の化物に変貌していた。

強大にして不滅、万能無敵の存在に成ってしまっていた。

レナード・テイラーの情報を集めるにつれそのあり得なさを把握したヴォルデモートは諦めた。

いつか何かの拍子に世界丸ごと滅ぼされる可能性は無視できない。

それでも現状では世界全てが自分のものになっている。

それを台無しにしてまでレナード・テイラーと敵対する必要はないと判断したのだ。

これからも敵対せず奴が不満を覚えないように、満足させることを最優先にしなければならない、何が何でも逆らってはいけないと決めた。

その屈辱が未来永劫続くとしても。

 

 

世界はヴォルデモートの理想の世界、純血の魔法使いが頂点に立ちマグルを支配する世界へと変わった。全てが彼の思うがままになった。

たった一つの例外、レナード・テイラーを除いて。

これからもヴォルデモートの望んだ世界は続いていくだろう。

レナード・テイラーに見限られない限り。




本編でハーマイオニーがレオのそばにいなければこんな結末もあり得たというIFでした。

分岐前はレオとハーマイオニーが関わる場面以外は基本的に本編と同じように進行しています。

基本的にレオは魔法第一なので恋人であるハーマイオニーがいなければ容易にお辞儀と手を組む可能性がありました。

競技場に現れたドラゴンやバジリスクなどはクーの細胞から造った分身体です。

結果として敵対者=ダンブルドア陣営となったので予言通りに滅ぼされました。
原作での主要人物もほとんどが死亡。

レオの両親は善側の人物なのでレオと敵対する道を選びましたが、レオに説得という名の洗脳されて一応は生きています。ひどい。

レオは反則的な万能なので難しい政治やマグルの支配などどうとでもしてしまう力があります。なのでレオが力を貸している限り、お辞儀の世界支配は揺るぎようがありません。

お辞儀もそのことは承知ですが、その理不尽な力が自分に向く前に消してしまおうと思ったのですが、既に時遅し。
本編同様の化物になったレオに戦う前に屈したお辞儀は現状維持という妥協を選びました。

この世界はレオが宇宙に旅立つようなことが無い限り続いていくでしょう。

それではまた番外編があればお会いしましょう。


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