コミュ障ヘタレと9人のアイドル ( まきパリ)
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浦の星女学院編
コミュ障ヘタレの新生活


はじめまして、まきパリです。
今回が初投稿なので作者の願望、駄文多めとなっております。
さらにこの回だけものすごく短いです。申し訳ございません。
暖かい目で見ていただければ幸いです。
コメントなどお待ちしてます。


 ここは静岡県にある内浦という所。

 

自分は今、海に落ちた二人の女の子を抱えて、砂浜に引き上げています。 

 

どうしてこうなった・・・・

 

 さかのぼること数時間前、共働きの両親が海外に赴任するということで、東京から内浦に引っ越すことになった自分は、親戚の高海家が経営する旅館「十千万」に住まわせてもらえることになり、そこに向かっている。

 

そこには従姉妹の高海千歌という女の子がいる。

 

彼女とは小さい頃からよく遊んでいた。

 

夏休みか冬休みになると、どちらかの家に泊まりに行く事もあった。

 

そんなこともあってか何かと仲がよく、本当の兄弟のように接していた。

 

話を戻そう。

 

今、自分はバスに乗って旅館に向かっている。

 

何度も旅館に行っているので何事もなく着くはずだった・・・

 

ふと歩きたくなって、目的の一つ前の停留所で降りた。

 

しばらく歩いていると、海辺の桟橋のほうで、二人の女の子らしき人影が見えた。

 

片方は顔はよく見えなかったが少し赤みがかった長い髪で、なぜかまだ寒いこの時期にスクール水着のような物を着ていた。

 

もう片方はそのスク水に抱きついているようだった。

 

状況が掴めずによく見ると、見慣れたオレンジ色の髪。

 

 

あれ?もしかして・・・          

 

「千歌!」

 

少し大きめの声で呼びかけると・・

 

「え!?瑠惟君?ってうわぁ!」

 

声に反応して力が抜けたのか二人とも海に落ちてしまった。

 

こんな時期に海に落ちたら危ないかもしれない!

 

自分は二人を助けるために服を着たまま、海に飛び込んだ。

 

 そして今に至る。

 

「二人とも大丈夫か?」

 

「えへへ~大丈夫だよ。」

 

千歌が渡したタオルでふきながら間の抜けた声で答える。

 

「あっ・・・ありがとうございます。」

 

スク水を着ていた女の子も申し訳なさそうに答える。

 

「何か温かい物を持ってくるよ。」

 

そう言って自分は自販機を探しに行った。 

 

しばらく自販機を探していた。ていうかさすが田舎だな。辺りに全然自販機ないな。

 

ミルクティーを二つとコーヒーを買って戻ってくると、二人とも仲良くなっているようだった。

 

女子のコミュ力すげーなんて思っていると

 

「あの・・・さっきはありがとうございました。」

 

スク水少女、いや今はYシャツを着ている女の子がお礼を言ってきた。

 

・・・こういうときなんて言うんだっけ?とりあえず何か言おう。

 

「おぅ・・まぁ・・なんだ・・気にすんな。」

 

恥ずかしい程のコミュ障丸出し。

 

「桜内さん。瑠惟君は女の子の前に出ると、恥ずかしくなって変な喋り方になるんだよ。」

 

おい!千歌、何言ってんだ。その通りだけど。

 

「そうなんだ。瑠惟君ってあなたの事?」

 

あ・・これ自己紹介するパターンだ。

 

「あぁ悪い。自己紹介がまだだったな。西王瑠惟。今年から高校二年生なんだ。」

 

無難にこんな感じでどうっすか?

 

「桜内梨子。私も今年高校二年生です。よろしくおねがいします。」

 

それにしても改めて見るとこの女子可愛いな。

 

なんて思っていると、千歌がすごく不機嫌そうな顔をしていた。

 

意味がわからん。

 

「よ・・よろしく。」

 

絶対キモ顔を彼女に晒しているなこれ。

 

「ふふっ・・面白い人。」

 

「!?」

 

何を言っているんだこの人は。初対面の人間に面白いなんて言うなよ。

 

「もう暗くなるし戻るか。行くぞ千歌。桜内さんも気をつけて。」

 

「梨子・・梨子でいいよ。」

 

何だと・・いきなり名前呼びとは・・・

 

自分にはハードルが高いぞ。

 

「またな・・・り・・梨子。」

 

「またね瑠惟君。」

 

照れていると千歌が腕を引っ張ってきた。

 

「もぉ~早く行くよ。」

 

「わかったわかった。」

 

また彼女と会えるだろうか?

 

会えたら嬉しいな。

 

淡い期待を胸に千歌と十千万に帰った。

 

 

 帰宅途中・・・

 

「改めて・・・ひっさしぶり~!」

 

「!?」

 

やめろ抱きつくんじゃあない千歌!柔らかい何かが当たってる!

 

「さっき桜内さんにデレデレしてたよね?」

 

なぜばれた?

 

「えっ?いや別に・・・」

 

「見てたもん!話すのは苦手なのにデレデレして・・」

 

仕方ないだろ!あんなに可愛い女子に話しかけられたんだぞ!自分以外の普通の男子も絶対ああなる!

 

そんな会話をしていると十千万に着いた。

 

「今日からお世話になります。」

 

「おぅゆっくりしていけよ。」

 

この人は高海美渡さん。千歌の姉で高海三姉妹の次女。

 

姉御肌なところがあって、面倒見がいい。

 

昔よく一緒になって千歌にいたずらをした。

 

そしてこっぴどく怒られた。・・・思い出しただけでも汗が出る。

 

「ひさしぶりねぇ~。また大きくなったんじゃない?」

 

こちらは高海志満さん。高海三姉妹の長女。

 

美都さんと違い、おっとりとしている。よく千歌の母と間違えられる。

 

「ゆっくりしていってね。瑠惟君。」

 

で、でた・・千歌ママ。この人は千歌よりも幼く見えるのに、三児の母であるという。普段は東京にいるのだが今日は自分の為にこちらに帰ってきてくれてたのだ。

 

それより本当に何歳なんだこの人?

 

「じゃあ、さきに晩ご飯にしましょう。」

 

「はい。そうですね。」

 

 

食卓にて・・・

 

「ねぇ瑠惟君。」 

 

「なんだ千歌?」

 

「瑠惟君はどこの学校に通うの?」

 

「あれ?言ってなかったけ?」

 

「たしか浦の星女学院だったかな。」

 

「えぇぇぇぇぇ!?」

 

「ほんとに!?そこ私の学校!女子校だよ!」

 

「あぁ本当だ。理事長が共学化の試験生として転入を許可してくれたぞ。なんでも近年入学者が減ってるからとか・・・。」

 

「奇跡だよ!」

 

いや、別に奇跡っていうほどすごいことじゃない・・・よね?

 

「ねぇ。スクールアイドルのマネージャーになってくれない?」

 

「・・・」

 

すいません。よく聞き取れませんでした

 

「何を言っているんだ?」

 

こうしてコミュ障ヘタレの新生活が始まるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




この度は読んでいただきありがとうございます。
初めてなので至らない点はたくさんありますが、頑張っていこうと思います。


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コミュ障ヘタレの決心と初登校

どうも皆さん。まきパリです。

まず第一話を見てくださった方々ありがとうございました。

第二話ですが前回よりも長めにしてみました。

毎度の事ながら駄文ですが、よろしくおねがいします。

では、どうぞ・・・・


食事を終えた自分は千歌にこれから住む部屋に案内されたのだが・・・

 

「なぜ千歌の部屋なんだ?」

 

「今お客さんが多くて、部屋が残ってないんだって。」

 

「だからって同じ部屋とは・・」

 

すると千歌が泣きそうな顔で

 

「いやだったかな?」

 

そんな顔をするんじゃない。まったく仕方ないな・・

 

「別にそういうわけではなくて、少し恥ずかしくてな・・・」

 

「そうなんだ・・えへへ照れちゃうな///」

 

「まぁとにかく、今日は色々あって疲れたし風呂に入るわ。」

 

「ねぇ。」

 

「なんだ?」

 

「昔みたいに一緒に入る?」

 

「いや、だ・・大丈夫だ。」

 

おい、このヘタレ野郎。そこは行こうかって言うところだぞ。

 

自分は少し後悔をしながら足早に風呂場に向かった。

 

全く何を考えているんだ(建前)。可愛いやつだなぁ(本音)。

 

ー風呂ー

 

「いやー本当にでかいなこの大浴場は。」

 

体を洗って風呂に入った自分は千歌の言っていたことを思い出した。

 

 

ーーーーーー

 

「スクールアイドルのマネージャーになってくれない?」

 

「何も聞かずに嫌と言うのはさすがにひどいから聞いてやる。」

 

「知らないの?スクールアイドル?」

 

「いや知っているが、なぜ自分がマネージャーなんだ?しかも男だぞ。それに他にもやってくれそうな友達がいるだろ。」

 

「ううん。瑠惟君がいいの。小さい頃から一緒にいた瑠惟君がいいの。・・・一番信頼してるから。」

 

信頼ね・・・。悪くない響きだけど・・・。

 

「それに男手が必要な時だってあるだろうし。」

 

あぁそういうことか。

 

「他に女子はいるのか?」

 

「今のところ私と曜ちゃんっていう子がいるんだけど、きっとすぐに仲良くなれる!」

 

曜・・・どこかで聞いたことが・・・

 

まぁ今はそんなことはいい。

 

別にマネージャーをやること自体は反対ではない。問題は・・・

 

「・・・言っとくけど自分は中途半端が嫌いだ。本気なんだな千歌?それに今回は続けられるのか?」

 

「うん。本気だよ。絶対にやり遂げるよ。」

 

あの千歌があんな本気でやりたいって言ってくるとは・・・。その言葉、そのやる気を信じよう。

 

「よし・・・。じゃあやるからにはスクールアイドルの頂点を目指すよな。」

 

そう言って自分は手を差し出した。

 

「うん!ありがとう!」

 

千歌は差し出した手を握ってくれた。

 

その手はとても柔らかく、とても力強かった。

 

「よろしくね!マネージャー!」ニコッ

 

その笑顔は太陽のように輝いていた。

 

これが我が従姉妹、高海千歌である。

 

 

ーーーーーー

 

「よし・・がんばりますか!」

 

そう言って立つと、突然視界が歪んだ。

 

しまった・・・少し入りすぎたか・・・

 

まもなく意識が遠退いていった。

 

 

 

 

「んん・・・」

 

「あ・・起きた。」

 

この声は千歌か?ていうか後頭部の辺りが柔らかいな。

 

目を開けるとそこは風呂ではなく千歌の部屋だった。

 

そして千歌が自分に膝枕をしていた。

 

「わ・・わるい千歌すぐ退く・・・」

 

「だめだめ。まだじっとしてなきゃ。」グイッ

 

そう言ってもな・・・まぁいいか。

 

「大丈夫?なかなか上がってこないからお姉ちゃんが心配して見に行ったら、のぼせてたんだよ。」

 

「そうか・・・美渡さんたちが運んでくれたのか?」

 

「そうだよ。あと体拭いて、服も着せてあげたよ。」

 

「ほんとだ。」

 

「ありがとう千歌。」

 

「何言ってるの。昔からずっとでしょ。」

 

「確かにな。昔から変わってないよな。」

 

嘘だ。昔はもっと輝いていたはずだ・・・

 

 

 

そして時間は過ぎていき、午後十一時ぐらい。

 

そういえば明日から学校に行くんだったな。

 

できればあまり千歌以外の女子とは関わりたくないな。

 

かといってボッチもいやだけど。

 

「千歌そろそろ寝るぞ・・って」

 

「あっ・・・」

 

どこで寝ればいいのだ?

 

千歌のベットは論外だ。

 

なら・・床だな。

 

「どうしたの?」

 

「いや、どこで寝ようかと。」

 

「じゃあ一緒に寝る?」

 

「は?」

 

「まて、さすがにダメだ。」

 

お前寝相悪いからやだ。

 

「え~いいじゃんべつに。」

 

「とにかく床に布団敷くからな。」

 

「千歌は自分のベッドで寝ろ。」

 

「は~い。」

 

「よし。じゃあ布団とってくるから先に寝とけ。」

 

「おやすみ千歌。」

 

「おやすみ瑠惟君。」

 

そして自分は部屋を出て、階段を降りていった。

 

ー千歌side inー

 

これから瑠惟君と暮らすのか・・・

 

昔から優しくて大好きな家族・・・

 

思い切ってマネージャーに誘ってみたけど、受けてくれてよかった。

 

『やるからにはスクールアイドルの頂点を目指すよな。』

 

「がんばらなきゃ」

 

そしていつかきっと言わなきゃ・・・

 

でも今日は色々あって疲れが・・・

 

私はそのまま眠ってしまった。

 

 

 

ー瑠惟side inー

 

 

 

翌朝、目が覚めると部屋に千歌は居なかった。

 

「遅刻したか?」

 

そう思って時計を見るも、まだ七時だった。

 

とにかく学校の準備をしないといけないので、オーダーメイド?らしき制服に着替えて食卓に向かった。

 

しかし、そこにも千歌は居なかった。

 

「おはようございます志満さん。」

 

「おはよう瑠惟君。朝ご飯出来てるわよ。」

 

「はい。ところで千歌はどこに?」

 

「確か少し前に『朝練行ってくる!』って学校行ったわよ。」

 

「そうでしたか。ありがとうございます。」

 

千歌のやつ、確かに本気なんだな。

 

朝食を終え学校に行こうとすると・・

 

「ワンッ!」

 

「おおっ!しいたけか久しぶりだな。」

 

この犬はしいたけ。でかくて、目が隠れているので、結構怖いが人懐っこくて可愛いやつだ。

 

「しいたけ良かったな。」

 

「美渡さんおはようございます。」

 

「おはよう。今から学校か?気をつけてな。」

 

「はい。行ってきます。」

 

そう言って旅館を後にした。

 

 

 

それにしても・・・・

 

「確かバスに乗って、どこで降りるんだっけ?」

 

千歌の奴、一人で行ったら道が分からないだろ。

 

後でしばいとくか。

 

困ったな~。どうしよう。

 

お?あれは浦の星の制服・・・

 

聞いた方がいいよな~。でも知らない女子だし。

 

頭の中でそんな葛藤をしていると・・・

 

「どうかなさいましたの?」

 

え?向こうから来た。しかも美人。

 

でもこの人どこかで・・・

 

「あなたその制服・・。もしかして今日から転入の試験生の方?」

 

「はい。そうですけど、道を・・・」

 

「分かってますわ。そういう事なら一緒に行きますわよ。」

 

こうして謎の美人と一緒に行くことになった。

 

 

 

バス下車後・・・

 

「先程はありがとうございました。西王瑠惟っていいます。」

 

「黒澤ダイヤ・・生徒会長を務めておりますわ。」

 

まじか・・この人生徒会長なのか。

 

確かにそれっぽい感じがする。

 

「よ・・よろしくお願いします。」

 

「唯一の男子生徒、くれぐれも変な行動を起こさないように。」

 

「わかりました。」

 

残念だったな。そんなことする勇気がありませーん。

 

「着きましたわ。ここが浦の星女学院。」

 

おお~でかいな。さすがは私立高校。

 

それより、さっきからすごく見られているな。

 

まぁ女子校に男子がいたらびっくりするよな。

 

「・・・聞いてますの?」

 

「あっハイ。」

 

「まったく・・では先に職員室に行ってくださる?場所は・・・」

 

「色々ありがとうございました。ではまた・・。」

 

 

Side ダイヤ

 

 

「なんなのですかあの方は。でも、どこかで会ったような・・・」

 

しかし男子の試験生を入れなければならない程とは。

 

それに昨日のスクールアイドルをやりたいと行ってきた子と少し似ていたような。

 

とにかく私は二年前のような事が起こらないようにしなければ。あと何とかこの学校を救う方法を・・・。

 

 

Side 瑠惟

 

 

 

ここが職員室か。よし・・入ろう。

 

「失礼します。今日から転入する西王瑠惟です。」

 

「おっ来たな。私が君のクラスの担任の緑山陽子。」

 

「クラスのみんなには話してあるが自己紹介はしてもらうぞ。」

 

くっ・・やはりきたか難関の自己紹介。

 

コミュ障にとっては拷問同然だ。

 

仕方ないわかってたことだ。

 

覚悟を決めよう。

 

そんなことを考えていると職員室のドアが開いた。

 

「失礼します。」

 

ん?この声昨日聞いたような・・・まさか!

 

後ろを振り向くとそこには昨日海に落ちて助けた・・

 

「え?瑠惟君なんでここに?」

 

「梨子!梨子も転入したのか?」

 

「『も』ってことは瑠惟君は・・」

 

「あぁ今日からここの生徒だ。」

 

「そう。うれしいなまた会えて。」

 

あれ?驚かないの?ここ女子校だよ?

 

「そうだな・・・うれしいよ。」

 

「お?なんだなんだ西王、お前の彼女か?」

 

「ち・・違いますよ。昨日会ったばかりですよ。」

 

なぜこの先生は茶化してくるんだ。グイグイ来られるのは苦手だな。

 

「ふーん。とにかく二人とも今日からクラスメイトだ。」

 

「よろしくね瑠惟君。」

 

「よろしくな梨子。」

 

コミュ障ヘタレの学校生活はどうやら平穏ではなさそうです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




どうでしたでしょうか?

楽しめていただけたのならうれしく思います。

この調子で頑張りますのでよろしくお願いします。


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コミュ障ヘタレと完璧少女

どうもまきパリです。
お待たせしました。第三話です。
また前回よりも長くしました。
今回も駄文、誤字、脱字多めですが、よろしくお願いします。
では、どうぞ!


職員室を後にし、自分、梨子、先生の三人は教室に向かっていた。

 

その途中で梨子が

 

「私少し緊張しているの。だって転校なんて初めてだし。」

 

「安心しろ。こっちのほうが梨子の数倍緊張している。自己紹介なんて・・・」

 

「??」

 

「よし着いたぞ。お前たちは私が呼んだら入ってきてくれ。」

 

「「はい」」

 

「お前ら席に着け。HRをはじめる前に転校生を紹介する。」

 

ざわざわ・・・・

 

「一人は昨日話した男子だ。私が想像してたよりずっとイケメンだぞ。」

 

キャーーー!!ヤッターーー!!

 

なんてことを言うんだ!期待値を上げるんじゃない!

 

「入っていいぞ~」

 

クソ!すごく行きづらいじゃねーか!

 

でも・・行くしかない。

 

教室に入ると女子の視線が自分に一気に集まった。

 

その中には千歌も・・ってあれ?千歌の隣にいる奴は・・

 

「今日から転入する西王瑠惟です。よろしくお願いします。」

 

キャー!カッコイイ-!

 

全くどこがかっこいいんだ、こんなコミュ障。

 

「もう一人は東京から越してきた子だ。仲良くしろよ。」

 

「入っていいぞ~」

 

たぶん千歌は驚くだろうな。

 

「東京から来ました。桜内梨子です。よろしくお願いします。」

 

「ああ~!!」

 

「あなたは!?」

 

「奇跡だよ!」

 

「スクールアイドルやりませんか?」

 

は?こいつはバカか。答えはもちろん。

 

「ごめんなさい。」

 

「えぇぇぇぇぇ!?」

 

当然だろ。

 

「二人はあそこの空いてる席を使ってくれ。ではHR終了。」

 

席に着くとたくさんの女子が来て質問責めにされた。

 

コミュ障だと気づかれないようにしなければ。

 

ある程度質問が落ち着いてくると・・・

 

「久しぶりだね瑠惟君。」

 

「渡辺じゃないか!なんでここに・・・」

 

「よかった~覚えてくれてたんだ。」

 

この子は渡辺曜。アッシュグレーの髪に引き締まった体、ボーイッシュだが意外と可愛いところがある。ちなみに水泳と高飛び込みの選手である。

 

「まぁな。あの日のことは忘れてないよ。」

 

「いや~びっくりしたよ。まさか瑠惟君が来るなんて。」

 

「こっちこそだよ。ところでまだ水泳やってるのか。」

 

「おかげさまでね。」

 

「そうか良かった。」

 

「ねぇ曜ちゃん、瑠惟君と知り合いなの?」

 

「まぁね。」

 

「おい千歌、お前なぜ置いて行ったんだ?おかげで迷うとこだったぞ。」

 

「ごめんごめん。朝練に遅れそうだったから。」

 

「ならいいよ。できれば今度からは起こしてくれ。」

 

「OK!まかせて!」

 

「ち・・千歌ちゃん、二人はどういう関係なの?」

 

「え?従姉妹だよ。」

 

えぇぇ~!っとクラス全員が驚いた。

 

「た・・確かに目の辺りとか似てるもんね。」

 

「まさか一緒に住んでたり・・」

 

「うん!部屋も同じだよね~。」

 

千歌め・・余計なことを。

 

イイナ~ ワタシモイケメントクラシタ~イ

 

ふと渡辺を見ると、うらやましそうな顔をしていた。

 

まさかあいつ千歌のことが・・

 

そしてあるクラスメイトが聞いた

 

「千歌ちゃんは西王君の事が好きなの?」

 

「え~と・・・」

 

聞きたいけど言ってほしくない。そう思っていたその時・・・

 

キーンコーンカーンコーン

 

良かったチャイムに救われた

 

しかし、これは後々面倒なことになりそうだ。

 

 

 

それから女子高での学校生活が始まった。

 

校内を少し見ていて思ったが意外と男の先生もいるんだな・・

 

そして何事もなく昼休みを迎え・・・

 

「千歌、スクールアイドルはお前と曜ちゃんって言ってたけど・・・」

 

「そうだよ!この子こそ!」

 

「ご紹介に預かりました!渡辺曜であります!」

 

千歌と渡辺がスクールアイドル・・・これも何かの運命なのだろうか・・・

 

「曜ちゃん、瑠惟君にはマネージャーをやってもらおうと思うけど、いいかな?」

 

「もちろん大歓迎であります!」

 

「一緒に頑張っていきまヨーソロー!」

 

「ヨ、ヨーソロー・・・。」

 

相変わらず不思議な女の子だ。

 

 

 

「瑠惟君、曜ちゃん、今から生徒会長の所に行こうと思う。」

 

生徒会長?あぁダイヤさんのことか。

 

「どうしてだ?」

 

「実は・・・・・・なんだよ。」

 

なるほど、まだ部として承認されてないとは。

 

「で・・説得しに行くと。」

 

正直あの人が認めてくれるとは思わないな。

 

でも・・・

 

「いいんじゃないか?行ってみるぐらいなら。」

 

「私もいいと思う。」

 

「よーしじゃあ行こう!」

 

 

 

ー生徒会室ー

 

「お断りします。」

 

「人は増えたじゃないですか!」

 

「大体、一人が三人になっただけじゃないですか。」

 

「あはは・・・」

 

「忘れたのですか。五人以上と行ったはずですわよ。」

 

「でも、ユーズも最初は少なくて大変だったんですよね?」

 

「知りませんか?第二回ラブライブ!優勝音乃木坂学院ユーズ。」

 

ユーズ?何のことを言っているんだ?

「それはもしかしてμ'sのことを言ってるのではありませんわよね?」

あ・・・(察し

 

絶対に地雷踏んだな

 

「あれってミューズって読むんですね。」

 

「言うに事欠いて名前を間違えるなんて!」

「μ'sは全スクールアイドルにとっての伝説・聖典・聖域・宇宙の源にまで匹敵しますわ。その名前を間違えるなんて!」

 

その後、千歌は何故かμ'sに関するクイズ(難問)を出されていた。

 

しかも、たまたまマイクのスイッチが入っていてそのやりとりは全校に放送されていた。

 

「とにかくスクールアイドル部は認めません!」

 

そう言われて三人は生徒会室を出ようとすると・・・

 

「ちょっとまってください。・・・瑠惟さん、あなたは残ってくださる?」

 

え?いったい何の用だ?

 

「二人とも先に行ってくれ」

 

「「うん」」

 

先に千歌と曜には生徒会室を出てもらった。

 

「それで・・・生徒会長どうしたんですか?まだ問題は起こしてないはずですけど。」

 

「なぜあなたは転校したばかりなのにあの子達を手伝うのですか?」

 

「千歌の本気に乗せられたんですよ。」

 

「どういうことですの?」

 

「千歌は・・・今まで何に対しても興味が無かったんです。そんなあいつが始めて本気でやりたいと言ってきたんですよ。応援しないわけにはいかないですよね。」

 

「・・・何より千歌の夢への道を一番近くで見て、支えたいと思ったんですよ。」

 

「そうですか・・・」

 

どうやら納得してくれたようだ。・・・良かった。

 

「千歌さんとはどういう関係で?」

 

「アイツとは従姉妹ですよ。もっとも家族みたいなものですけど。」

 

「どうりでよく似ていると思いましたわ。」

 

特に目はよく似てるって言われるな。

 

「ところで・・・あなたは以前私と会っていませんこと?」

 

この人と前に・・・?

 

俺と同じ違和感だと・・・

 

思い出せ・・・絶対にどこかで会っている。

 

それも大事な時にだ・・・

 

ここである出来事が頭に浮かんできた。

 

・・・そうか!思い出したぞ!この人は・・・

 

「東京・・・」

 

「え?」

 

「確かに会っています。二年前東京で行われたスクールアイドルのイベントで。自分は観客、あなたはスクールアイドル。確か・・・『Aquors』でしたっけ?」

 

「!!」

 

「やはりそうだったのですね。」

 

何かこれ以上は話が長くなりそうだな。・・・よし、逃げるか。

 

「あ!先生に呼ばれてたの忘れてた!生徒会長、失礼します。」

 

「ちょ、ちょっと!」

 

よし逃走成功。あの時の詳細は聞くべきではない。

 

何となくそんな気がした。

 

 

その後、午後の授業を終え、三人はバス停へと向かっていた

 

「瑠惟君、生徒会長と何話してたの?」

 

「ちょっと世間話をな。」

 

「ふーん。そっか。」

 

「それにしても・・・」

 

「なんでそこまでスクールアイドル部を認めないのかな?」

 

確かにそうだ。ただ部の設立条件を満たしていないだけならあそこまでキッパリと断らないだろう。しかもかなりのμ'sファンときた。

さらにあの人は二年前・・・

 

「あ!花丸ちゃんとルビィちゃん!」

 

「こんにちは。ルビィちゃんも。」

 

「こ・・こんにちは。」

 

そこに現れたのは二人の女の子。

 

一人は栗色の髪を長く伸ばし黄色の瞳をしている。なりよりアレがすごく大きいです。

 

もう一人は赤色の髪をツインにしている。そしてまるで小動物の様な仕草。

 

とにかく二人共可愛い。間違いなく美少女である。

 

「千歌さん、その人は?」

 

「紹介するね。私たちのマネージャーだよ!」

 

「えーと・・・その・・・千歌たちと同じ二年の西王瑠惟です。一応マネージャーです。よろしくお願いします。」

 

「一年生の国木田花丸です。それでこの子がが私と同じ一年の・・・ルビィちゃんがんばって。」

 

「く・・黒澤ルビィです。よ・・よろしくお願いします。」

 

なんだかすごく怖がられてるな。そんなに怖い顔してるかな?

 

「ルビィちゃんは男の人が苦手ずら。」

 

なるほど。なら仕方ないな。ていうか、

 

「ずら?」

 

「いや、なんでもないずら。」

 

方言か何かかな。面白い子だ。

 

それにしても・・・

 

どうしても胸に目がいってしまう。

 

いかんいかん、理性を保つんだ。

 

「ところで二人はスクールアイドルに興味ない?」

 

「花丸ちゃんは?」

 

「マルは図書委員の仕事があるずら・・いやあるし。」

 

「ルビィはお姉ちゃんが・・・」

 

「ルビィちゃんのお姉さんはダイヤさんずら。」

 

へ~あのダイヤさんの妹か。姉とはあんまり似てないな。髪の色とか特に。

 

「生徒会長はなんだか嫌いみたいだもんね。スクールアイドル。」

 

「まぁそんなに無理矢理誘ってもダメだろ。」

 

「今は曲作りを先に考えた方がいいかも。」

 

「何か変わるかもしれないし。」

 

「花丸ちゃんはどこで降りるの?」

 

「今日は沼津までノートを届けに行くところで。」

 

「花丸ちゃんは沼津の方に住んでるの?」

 

「いやマルは住んでないんですけど、実は入学式日に・・・・っていうことがあって、それっきり学校に来なくなったずら。」

 

そうなのか。大変だなその子も。まさか入学式デビュー失敗するなんて。

 

「あっ私と瑠惟君はここで降りるね。じゃあね~!」

 

「またな三人とも。」

 

 

 

二人で帰る途中・・・

 

「ん?あいつは・・」

 

「桜内さ~ん!」

 

隣にいたはずの千歌がいつの間にか梨子のところにいた。

 

そしてあいつはあろうことか梨子のスカートをめくり・・

 

っおい!なんでスカートめくりしてるんだ?

 

「また海に入ろうとしてる?」

 

わぉ・・意外っ!それは黒のレース!意外と派手なんだな。

 

いかんいかん。ガン見してはいかん。目をそらさなければ。

 

「してないです!」

 

「こんなところまで追いかけてきても、答えは変わらないわよ。」

 

「違う違う、通りかかっただけ。」

 

「そういえば海の音聞くことは出来た?」

 

「・・・・」

 

「じゃあ今度の日曜日空いてる?」

 

「どうして?」

 

「お昼にここに来てよ。海の音聞けるかもしれないから。」

 

「聞けたらスクールアイドルになれって言うんでしょ。」

 

「だったらうれしいけど、その前に聞いてほしいの。歌を。」

 

「梨子ちゃんスクールアイドルのこと全然知らないんでしょ?」

 

「だから知ってもらいたいの。ダメ?」

 

「もちろん瑠惟君もだからね。」

 

「へいへい。」

 

「あのね私ピアノやってるって話したでしょ。」

 

「小さい頃から続けてたんだけど、最近上達もしなくてやる気もでなくて。それで環境を変えてみようと海の音を聞きたくて。そして何かが変わるのかなって。」

 

「変わるよきっと。」

 

「たぶん変わるんじゃないか?」

 

「簡単に言わないでよ二人とも。」

 

「わかってるよ。でも、そんな気がする。」

 

「変な人ね。でも、スクールアイドルなんてやってる暇はないの。」

 

「なら、海の音だけでも聞きに行ったらどうだ?梨子。」

 

「スクールアイドルのことは置いといて。」

 

「ほんと変な人たち。」

 

 

 

その夜、自分に一通の電話がかかってきた。

 

この番号は誰だ?とりあえず出るか。

 

「はいもしもし。」

 

「瑠惟君だよね?」

 

「渡辺か。先に何故電話番号を知っている?」

 

「今日、千歌ちゃんに教えてもらったの。」

 

個人情報だだ漏れじゃないか。

 

まだ渡辺だから良かったものの。

 

「で、何の用だ?」

 

「いや、特に用とかはなくて、強いて言うなら今日あんまり話せなかったから・・・」

 

「そういえば、今日は忙しかったからな。」

 

「約、二年ぶりかな?」

 

「そうだね。まさか会えるとは思ってなかったんだ。」

 

何を隠そう渡辺とは以前会っているのである。

 

ーーーーーー

 

あれは自分が中学三年生の夏。まだ東京に住んでいた頃。

 

水泳部の友達が東京で開催される全国大会に出場するので見に来て欲しいとういことで会場に向かう途中だった。

 

電車に乗って行くつもりだったので、切符を買おうとすると、路線図の前であたふたしている女の子を見つけた。東京の駅ではよくある事なのでスルーしようとしたが・・・

 

よく見るとその子は水泳部と書かれたジャージを着ていた。

 

恐らく全国大会に出場する選手なのだろうと推測した。

 

このまま置いて行けば後味が悪くなりそうだったので、思い切って声を掛けた。

 

「あの〜何かお困りですか?」

 

声を掛けられた女の子は少しびっくりしたようだったがすぐ答えてくれた。

 

「ここってどうすれば行けますか?」

 

案の定推測した通りだった。

 

「そこなら今から行くので、一緒に行きませんか?」

 

するとその子は嬉しそうに

 

「はい!ありがとうございます!」

 

こうして一緒に会場に行くことになった。

 

その道中・・・

 

さっきまで元気だったその子が急に下を向いた。

 

「どうしたんですか?」

 

「私、今すごく不安なんです。地元の子は期待して送り出してくれたけど、自信が無いんです。もし本番で失敗したらどうしようとか、レースに負けてしまったらどうしようなんて考えてしまいます。」

 

強いスポーツ選手ほど責任意識が強く、プレッシャーも大きいと聞く。

 

こういう時は励ますべきなんだが

 

素人の自分に何が出来る?

今にも泣き出してしまいそうなこの子に何が出来る?

 

何事に置いても心の持ち方は大切だ。

 

このままじゃ恐らくこの子は言った通りのことになってしまうだろう。

 

今の自分にできること。それは・・・

 

「君は誰の為に泳いでるんだ?」

 

「へっ?」

 

「親?友達?違うだろ。自分自身のためだろ。水泳が好きだからだろ。」

 

「私自身のためにですか・・・」

 

「きっと君の友達は君に勝ってほしいと思っている。でもそれ以上に君の輝いている姿が見たい。君に全国という舞台で楽しんでほしいと思ってるんじゃないか?」

 

「もし君が不安そうな顔で泳いでいるのを見たら君の友達はどう思う?」

 

「それこそ期待を裏切ることになるんじゃないか?」

 

「・・・」

 

「だから君は目一杯楽しむ。誰もためでもなく、自分のために。」

 

「・・・はい。あなたの言う通りです。私、大切な事を忘れてました。全国大会だからとにかく勝たなきゃってずっと思ってました。でも違った。本当に大事なのは楽しむ事。あなたのおかげで思い出せました。」

 

「こっちも会ったばかりの人に知ったようなことを言ってすまなかった。」

 

「全然そんなことありません。大切なことを教えてくれてありがとうございました。」

 

「どういたしまして。じゃあレースがんばれよ。」

 

「あの・・名前を聞いてもいいですか?」

 

「西王瑠惟。君と同じ歳だし敬語じゃなくてもいいよ。」

 

「じゃあ・・・私は渡辺曜。もし良かったら私のレース観てくれないかな?」

 

そんな上目遣いで頼まれたら断れないだろう。

 

「わかった。観ておくよ。」

 

そう言うと、渡辺は自身いっぱいに会場に入っていった。

 

 

 

ー大会後ー

 

結果から言うと渡辺は負けてしまった。彼女は素晴らしい泳ぎをしたがそれでも負けた。自分もなぜだか悔しかった。

 

「瑠惟君!」

 

渡辺が走ってこっちに来た。どんな言葉をかけたら・・

 

「どうだったかな?」

 

「惜しかったな。でも凄かったよ!」

 

「私負けちゃった・・・。瑠惟君が私のこと励ましてが・・んばってって言ってくれたのに。」

 

彼女は泣いていた。相当悔しかったのだろう。

 

「渡辺。お前はよく頑張った、全力を出して楽しんだ。結果負けてしまったが、自分は渡辺が他の誰よりも輝いて見えた。他の誰よりも楽しそうだった。だから胸を張っていこうじゃないか。」

 

「もし悔しかったならその分だけ泣けばいい。その涙はきっと次の力になる。」

 

そう言って優しく彼女を抱き寄せた。我ながらものすごい度胸である。

 

抱きしめられた彼女は自分の胸で泣いた。人目を気にせず、涙が枯れるまで泣いた。

 

しばらくして泣き止むと二人共我に返ってすぐ離れた。

 

「す、すまん渡辺つい・・。」

 

「ううん。嬉しかったし心がポカポカした。」

 

「そうか・・・なら良かった。まぁとにかく今日はお疲れ様。じゃあ行くわ。」

 

そう言って、会場を出ようとすると

 

「瑠惟君!また会えるかな?」

 

「わからない。でも・・会えるといいな。」

 

「うん!今日はありがとう〜!」

 

彼女の顔はとても嬉しそうだった。

 

ーーーーーー

 

「あの時は本当にありがとう。」

 

「いえいえ。それほどでも。」

 

当時の自分は今では考えられないぐらい大胆だった。

 

結果、その大胆さが一人の女の子を救ったのだが。

 

「私、今日瑠惟君が教室に入ってきた時、びっくりしたんだ!絶対来るはずのない人がいた。でも本当にまた会えた!」

 

「あぁ。自分も渡辺がいるとは思わなかったよ。」

 

二年前に会った女の子。その子は従姉妹の親友だった。

 

神様の悪戯にはお手上げです。

 

「瑠惟君!頑張ろうねスクールアイドル!」

 

「もちろんだ。何かあったら相談しろよ。」

 

「うん!ありがとう!」

 

「ごめんね。夜遅くに。」

 

「そんなことないさ。おやすみ曜。」

 

「!?」

 

「おやすみ!瑠惟君!」

 

少しもどかしく思いながら電話を切った。

 

十千万に戻ると千歌が待っていてくれた。

 

「どこいってたの?」

 

「まぁちょっとな。」

 

「千歌、もう寝るぞ。」

 

「うん。」

 

明日は日曜日か・・・面倒臭いな

 

こうしてコミュ障ヘタレは昔の事を思い出し、懐かしむのであった。




先に、最後まで読んでくださりありがとうございました。
どうでしたか第三話?
気に入っていただけたでしょうか?
とにかく楽しんでいただけたのならうれしく思います。
さて次回ですが、アニメに合わせるために少し短くなるかもしれません。
申し訳ございません。
それでは次回また会いましょう。



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コミュ障ヘタレと桜色の希望

どうも、まきパリです。
前回言った通り今回は前より短めです。
毎度のことながら駄文、誤字、脱字多めですがよろしくお願いします。
ではどうぞ!


日曜日・・・今日は千歌たちと海の音を聞きに行く。

 

はっきり言って面倒くさい。しかし、行かないという選択肢はなく、準備をしなければと布団から起きると、珍しくまだ千歌が寝ていた。

 

「ほんとにこいつは幸せそうに寝てるな。」

 

このまま可愛い寝顔を見ていたいが、そろそろ起きないと約束の時間に遅れるかもしれないので起こすことにした。

 

「あの~千歌さん?そろそろ起きてくださーい。」

 

うむ。反応なしか。なら・・・

 

千歌の耳元に顔を近づけ・・・

 

「なんだかお腹が空いたな~。あっそうだ、冷蔵庫に置いてあった千歌のプリンでも食べようk」

 

「ダメ~!!」

 

千歌が飛び起きた。

 

「やっぱり狸寝入りじゃないか。」

 

「瑠惟君のヘタレさん。」

 

「ん?何か言ったか?」

 

「何でもない!早く準備するよ!」

 

「お・・おぅ。」

 

ー瑠惟sideoutー

 

ー千歌side inー

 

もぉ~なんで瑠惟君はいつもヘタレさんなの?

 

私はやっぱりただの従姉妹なのかな?

 

でも・・顔を近づけてきた時はちょっとドキドキしちゃった。

 

よ~し、いつか絶対に振り向かせてみせるからね!

 

ー千歌sideoutー

 

ー瑠惟side inー

 

 

千歌と集合場所に行くと、曜と梨子がすでに来てた。

 

「よーしみんな来たね。レッツゴー!」

 

そして四人は港から出港している連絡船に乗り、淡島というところに着いた。

 

ダイビングショップに着くと、店の中から一人の女の子が出てきた。

 

青い長く伸びた髪をポニーテールにし、モデルのようなスタイルの女の子。

 

ん?この人どこかで・・・

 

ダイヤさんの時と同じ感覚が蘇る。

 

・・・思い出した。この人もだ。二年前の・・・。

 

「君が千歌の従姉妹の瑠惟君ね。へぇ~いい男じゃん千歌。」

 

「千歌が君の事をいつも楽しそうに私に話すんだよ。」

 

千歌の奴、一体何を話した?

 

「もう!果南ちゃん!」

 

「ごめんごめん千歌。」

 

「で、あなたが音ノ木坂から転校した子だね。」

 

「千歌から聞いてるよ。」

 

「私は松浦果南。浦の星の三年生だけど、今は休学中。よろしくね。」

 

「西王瑠惟です。よろしくお願いします松浦先輩。」

 

「果南でいいよ。」

 

「か・・果南さん」

 

「桜内梨子です。よろしくお願いします。」

 

それから果南さんにシュノーケリングのやり方など色々教えてもらった。

 

「君は本当に入らなくていいの?」

 

「はい。自分の仕事はあくまでサポートなんで。」

 

「瑠惟君も行こーよ。」

 

「千歌、お前ら三人で行ってこい。お前たちなら求めているものが見つけられるはずだ。」

 

「えっと・・・梨子、ひとつ言っておこう。目に見えてるものからイメージすることが大切だぞ。つまり、見えないものを見るんだ。」

 

「見えないもの見る・・・。分かった。やってみる。」

 

「がんばれ。」

 

それと・・・

 

「曜、アイツらの手助けをしてやってくれ。」

 

「了解!では、海中に向かって全速前進ヨーソロー!」

 

そして三人は海に潜って行った。

 

自分と果南さんは船の上で談笑している。

 

「君は本当に面白いね。」

 

「そうですか?」

 

「そうだよ。でも、どうして梨子ちゃんにあんな事言ったの?」

 

「梨子の場合、慎重に考えすぎるから恐らく空回りしてしまうだろうなと思ったんです。だから少しヒントをあげようかと・・・」

 

「ふーん。で、君は三人の中の誰が好きなの?」

 

「は!?」つい吹き出してしまった。

 

「ちょっと、そんなに慌てなくても。」

 

三人、つまり千歌、曜、梨子のことか。

 

「確かに三人とも素敵な女の子ですけど、自分はあくまでマネージャーなのでそういう目線では見ていないですね。」

 

「そうなんだ。それにしてもあの子達、ずいぶん君を信頼しているみたいだね。」

 

千歌と曜はともかく梨子にはあまり信頼されてないと思う。

 

「そうだったら嬉しいですけどね。」

 

それよりあの事が気になるな。少し探りを入れてみるか。

 

「果南さんはやらないのですか?スクールアイドル。」

 

「私はそういうのはいいかな。興味ないし。」

 

少し顔が曇った気がした。もう少し切り込んでみるか。

 

「そうなんですか。ところで果南さんは三年生でしたよね?だったら黒澤ダイヤ先輩って知ってますか?生徒会長の。」

 

「知ってるけどなんで?」

 

「それが千歌達がスクールアイドル部を作りたいって言ったら、キッパリ断られちゃって。どうも何か隠してそうだなって。」

 

「ダイヤ・・・それはそうだよ。だって二年前・・・。」

 

「二年前に?」

 

「・・・・・・ううん。やっぱり何でもない。」

 

この反応はビンゴだ。やはりこの人は『Aquors』のメンバーだ。

 

「そうですか。ありがとうございます。」

 

その時、千歌達が船に戻ってきた。

 

「梨子、どうだった?聞こえたか?」

 

「ううん。やっぱり難しい。」

 

「確かに・・・・・・なんだか今日は少し暗いしな。」

 

「暗い・・・。ねぇもう一回いい?」

 

何か掴んだようだな。

 

そして千歌達はまた潜って行った。

 

しばらくして空が晴れてくると同時に千歌達が水面に上がってきた。

 

三人とも笑顔で笑い合っている。

 

聞こえたようだな。これで梨子は変わるだろう。

 

すると果南さんが驚いたように

 

「君、最初からこれを狙っていたの?」

 

「まぁ、部員を導くのもマネージャーの仕事ですから。」

 

「君は一体・・・」

 

「いずれ頂点に立つスクールアイドルのマネージャーですよ。」

 

ー瑠惟sideoutー

 

ー果南side inー

 

さっきの彼、一体何者なの?

 

明らかに千歌達の求めているものを分かっていた。

 

それに彼のさっきの質問、まるで昔の私を知ってるような。

 

それにダイヤの事も。もしかして二年前の事を?

 

いやいや、そんなはずない。あれを知っているのは私とダイヤと鞠莉とあそこにいた人・・・。まさか!彼は・・・

 

仮にそうだとしてもそんなに悪い人という感じはしなかった。

 

千歌達が信頼するぐらいの人だし。

 

とにかく私は彼から不思議なものを感じた。

 

ー果南sideoutー

 

ー瑠惟side inー

 

次の日

 

「え?嘘?」

 

「ホントに?」

 

「マジですか?」

 

上から千歌、曜、自分が驚きの声をあげる。

 

「もちろん。」

 

なんと梨子がスクールアイドルをやってくれると言ったのだ。

 

「ありがとう!」

 

喜んだ千歌が梨子に抱きついた。

 

「待って、勘違いしてない?」

 

そう言って梨子は千歌を引き剥がす。

 

「私は曲作りを手伝うって言ったのよ。スクールアイドルにはならない。」

 

なるほど。つまりは楽曲提供をしてくれるってことだな。

 

「えぇぇ!?」

 

落単の叫びをあげる千歌。

 

「そんな時間は無いの。」

 

「まぁ無理は言えないしな。手伝ってくれるだけでも感謝しよう。」

 

「じゃあさっそく詩を頂戴。」

 

歌詞か・・・そういえば何にも考えていなかったな。

 

「それじゃ皆で考えるか。」

 

「そうだね。」

 

自分の提案により4人は千歌の家に向かった。

 

 

 

 

意気揚々と歌詞作りを始めた自分達だったが・・・

 

「う〜ん。」

 

「やっぱり恋の歌は難しくないか?」

 

「そうだよ千歌ちゃん。別のにしようよ。」

 

「いやだ。μ'sのスノハレみたいなのを作るの。」

 

どうしても千歌はμ'sのSnow halationみたいな恋愛ソングを作りたいようだ。しかし歌詞を作ろうにも何を書けばいいのかさっぱり思い浮かばない。

 

「そうは言っても、恋愛経験なんて無いんだろ?」

 

自分は千歌に向かって質問する。

 

「えっと・・それは・・・」

 

「あるのか?」

 

「あるよ///」

 

マジで!?いやぁそれは知らなかったな・・・。

 

「曜はあるのか?」

 

「私も・・・あるかな。」

 

何ィィ〜!?

 

「じゃあ梨子も?」

 

「あると思う。」

 

こんな美少女に好かれる奴は爆ぜろ。

 

「でも、ということはμ'sがこの曲を作ってた時に誰か恋愛してたのかな?」

 

そんな訳ないだろ。そもそもこの曲は・・・

 

「調べてみるよ。」

 

「何でそんな話になるの。作詞でしょ。」

 

「千歌ちゃん、スクールアイドルに恋してるからね。」

 

なんだそれ。

 

「「「!!!」」」

 

自分、曜、梨子が顔を見合わせる。

 

「何?」

 

「今の話聞いてなかった?」

 

「スクールアイドルにドキドキする気持ちとか。大好きって感覚とか。」

 

「それなら書ける気しない?」

 

「うん!書ける!それなら書ける!」

 

さっきまで止まっていた千歌の手の動きが急に早くなったぞ。よっぽど好きなんだな。

 

「はい。」

 

「もう出来たの?」

 

「参考だよ。私、その曲みたいなの作りたいの。」

 

この曲は・・・

 

「ユメノトビラか。」

 

この曲はμ'sがラブライブ地区予選でUTX学園で歌った曲だ。

 

「私ねその曲を聞いてねμ'sみたいなスクールアイドルになりたいって本気で思ったの。」

 

「がんばって努力して力を合わせて奇跡を起こしていく。私でも出来るんじゃないかって、今の私から変われるんじゃないかって、そう思ったの。」

 

千歌の奴、スクールアイドルが本当に好きなんだな。

 

 

 

その夜・・・

自分と千歌が寝ようとすると、隣の家から音楽が聞こえてきた。

 

「千歌、何か聞こえないか?」

 

「うん。聞こえる。なんだろう?」

 

『夢の扉〜ずっと探し続けた。君と僕との繋がりを探してた〜。』

 

「この曲は・・・」

 

「「ユメノトビラだ!」」

 

ん?でもこの声は梨子のように聞こえるが。

 

「あれ?千歌ちゃん!?」

 

隣の家の窓が開き梨子が顔を覗かせた。

 

「梨子ちゃん!」

 

「それに瑠惟君!?」

 

「こんばんは。」

 

「そこ梨子ちゃんの部屋だったんだ。」

 

「そっか引っ越したばかりで全然気づかなくて。」

 

いや・・・普通気付くと思うが・・・まぁ細かいことは置いておこう。

 

「今のユメノトビラだよね!」

 

「梨子ちゃん歌ってたよね!」

 

それにしても彼女は綺麗な声をしてる。

 

「いや、それは・・」

 

「その歌私大好きなんだ!」

 

 

 

 

 

「千歌ちゃん、瑠惟君、私どうしたらいいんだろう・・・何やっても楽しくなくて、変われなくて。」

 

「梨子・・・」

 

「やってみない?スクールアイドル。」

 

「やってみたらどうだ?」

 

「ダメよ。このままピアノを諦める訳には。」

 

「スクールアイドルをやってさ笑顔になれたら、楽しくなったら、もう一度ピアノと向き合ってみればどうだ?」

 

「でも失礼だよ。3人はスクールアイドルを、本気でやろうとしているのに。」

 

「梨子ちゃんの力になれるなら私は嬉しい。みんなを笑顔にするのがスクールアイドルだもん。」

 

「千歌ちゃん・・・」

 

すると千歌はベランダの手すりによじ登った。

 

っておい千歌!何してんだ!そんなにところに身を乗り上げるな!

 

千歌は梨子の部屋に向かって手を伸ばしていた。

 

「千歌!危ないって!いやシャレにならんぞ!」

 

「大丈夫。瑠惟君が支えてくれるから。きっと・・・私と曜ちゃんと梨子ちゃんを。」

 

3人も支えるなんてさすがに・・・無理なんて言えないよな。

 

ははっ!千歌の奴、面白いじゃねーか。

 

「梨子!さぁ手を伸ばせ!」

 

「でも・・・」

 

「安心しろ!もしお前達が折れそうなら自分が支える!もしお前達が泣きそうなら自分が笑顔にしてやる!もし・・お前達が笑うなら一緒に笑ってやる!だから一緒に目指そう!スクールアイドルの頂点を!」

 

「瑠惟君・・・」

 

「でも、さすがに届かないよ。」

 

「待って、ダメ!」

 

諦めずに千歌は手を伸ばし続ける。

 

自分は千歌の下半身をガッチリと抑え落ちないように支えている。

 

 

 

 

梨子頑張れ。

 

 

 

 

あとはお前の気持ちだけだ。

 

 

 

 

 

梨子は精一杯手を伸ばすが僅かに届かない。

 

なので千歌がさらに身を前に出そうとするが・・・

 

「危ない!」

 

「あっ・・・」

 

「ととっ!」

 

千歌が落ちそうになった所を間一髪支える。

 

「瑠惟君!」

 

「そのまま伸ばせ!絶対に離さねーから!」

 

 

 

 

 

そして梨子と千歌の手が繋がった。

 

 

 

 

やるじゃん二人とも。

 

 

 

その後、千歌の部屋にて・・・

 

「さっきはありがとう。瑠惟君。」

 

「マネージャーだから部員を支える(物理的に)のは当たり前だろ?」

 

「これからもよろしくね!」

 

「あぁ。こちらこそ四人で一緒に頑張っていこうな。」

 

「明日も練習だからもう寝るぞ。」

 

「うん!おやすみ瑠惟君!」

 

「おやすみ千歌。」

 

明日から本格的に始動だな。

 

 

 

 

 

そういえばグループ名決めたっけ?

 

 

 

 

 

ー瑠惟sideoutー

 

ー梨子side inー

 

『もしお前達が折れそうなら自分が支える!もしお前達が泣きそうなら自分が笑顔にする!もしお前達が笑うなら一緒に笑ってやる!』

 

瑠惟君・・・かっこよかったな。

 

思えば、初めて会った時も少しドキドキしたっけ。

 

海に落ちた私を大きくて優しい手で抱きかかえてくれて、すごく温かかったな。

 

これは多分恋かな・・・

 

私・・・彼のことが好きなのかも・・・。

 

恐らく千歌ちゃんと曜ちゃんも。

 

いつか私に振り向いてくれるのかな?

 

ううん!待ってちゃダメ。私から行かなきゃ!

 

ということでこれからもよろしくねマネージャーさん♪

 

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございます。
次はファーストライブに入ろうと思いますが、恐らく今までで一番長くなると思います。自分もそれぐらい思い入れがある話なので。
ではまた次回お会いしましょう。


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コミュ障ヘタレとファーストライブ

どうも皆さん、まきパリです。

お待たせして申し訳ありません。

アニメを見返していたら遅くなりました。

今回も駄文ですがよろしくお願いします。

ではどうぞ・・


梨子がスクールアイドルの練習に参加し始めてから数日後のある朝。

 

現在ダンスの練習中である。

 

「「「ワンツースリーフォー。ワンツースリーフォー。ワンツースリーフォー。ワンツースリーフォー。」」」

 

「はいストップ。」

 

自分達は録画していた映像を確認する

 

「どう?」

 

「だいぶ良くなっている気はするけど。」

 

この数日間、彼女達の練習を見てきたが…

 

「形にはなってきてるが、まだ三人とも動きが硬い。」

 

「えぇ〜!?」

 

「確かにここの蹴りあげが弱いし、あとここも。」

 

「ほんとだ〜。」

 

「すごいね曜ちゃん!」

 

「すぐ気づくなんて。」

 

「高飛び込みやってたからフォームの確認は得意なんだ。」

 

こういう奴が一人でもいるとかなり助かる。

 

なんせマネージャーが役立たずだから。

 

「リズムは?」

 

「大体は揃っているが、千歌が少し遅れてるな。」

 

「私か〜!」

 

「とりあえず三人は体力作りと柔軟性をつけよう。」

 

「曜は大丈夫だと思うが、あとの二人は自分も手伝うよ。」

 

「よ〜し、じゃあ練習を・・・」

 

「ん?」

 

ブブブブ・・・

 

ヘリらしき飛行物体が結構近くを飛んでいた。

 

「何あれ?」

 

「多分・・・小原家のヘリじゃない?」

 

「何!?小原家だと!?」

 

「どうしたの瑠惟君?」

 

「いやまぁ小原家とは少し関わりがあってな。」

 

「小原家って?」

 

「淡島にあるホテルを経営してて、新しい理事長もそこの人らしいよ。」

 

「へぇ~。」

 

「何か近づいてない?」

 

「気のせいよ。」

 

いや、確かに近づいてきてるぞ。

 

「「「うわぁぁぁ!」」」

 

そのヘリは四人の頭上を通り、浜辺付近でホバリングしている。

 

「なになに?」

 

するとヘリの扉が開き・・・

 

 

 

 

 

「チャオ!」

 

 

 

 

 

中から金髪美女が顔を出した。

 

「久しぶりね!瑠惟!」

 

「お久しぶりです。鞠莉さん。」

 

この人は小原鞠莉。先程言っていた小原家のご令嬢で浦の星の新理事長。何より自分の転入を許可してくれた人である。

 

ちなみにこの人も二年前のAqoursの一人である。ことを先日果南さんと話してて思い出した。

 

「もうマリーでいいのに。そうそう、話があるから後で理事長室に来てね。」

 

話か・・・また何かが起こりそうだ。

 

 

 

ー理事長室ー

 

鞠莉さんから千歌達に理事長就任のことが伝えられた。

 

「え?新理事長?」

 

「Yes!でもあまり気にせず気軽にマリーって呼んでほしいの。」

 

「三年生謙理事長。カレー牛丼みたいなものね。」

 

「鞠莉さん。例えがよくわかりません。」

 

梨子、ナイスツッコミ!

 

 

 

 

「わからないに決まってます!」

 

 

 

 

 

 

「生徒会長?」

 

ダイヤさん居たのかよ。

 

「ダイヤ久しぶり!」

 

「ずいぶん大きくなって。」

 

鞠莉さんは生徒会長の後ろに回り込み慎ましやかなアレを揉んだ。

 

「だけど・・・胸も相変わらずね。」

 

「やかましい!・・・・・・ですわ。」

 

今、素が出たな。

 

「全く、一年の時にいなくなったと思えば、こんな時に戻ってくるなんて。一体どういうつもりですの?」

 

そうなのか?知らなかった・・・

 

「今日はいい天気よね!」

 

「人の話を聞かない所も相変わらずですのね。」

 

「ところで・・・本当に理事長になられたのですか?」

 

「もちろん。」

 

そう言って鞠莉さんは任命状を見せた。

 

生徒会長はそれを見ると『嘘・・・』と呟き任命状を返した。

 

「なぜあなたが理事長に?」

 

「まず、瑠惟の転入を許可するため、それと・・・この浦の星にスクールアイドルができたって聞いてね。」

 

「瑠惟さん。またあなたですの?」

 

「そうらしいですね。」

 

「本当にあなたという方は・・・」

 

生徒会長は厄介事が増えたかのように頭を抱えた。

 

「鞠莉さん。あの時は転入を許可していただきありがとうございました。」

 

「いいのいいの!なんたって可愛い瑠惟の頼みですもの。」

 

「二人は一体・・・」

 

梨子からそんな疑問が飛ぶ。

 

「こっちの親と鞠莉さんの親御さんが昔から仲が良くて、何回か鞠莉さんとは遊んでいたたんだよ。」

 

「えぇ。あの頃から瑠惟は可愛くて、まるで弟ができたみたいだったわ。それでスクールアイドルの件だけれど、ダイヤに邪魔されないように応援しに来たの。」

 

「ホントですか!」

 

「Yes このマリーが来たからには心配いりません。」

 

「デビューライブはアキバドゥームを用意してみたわ。」

 

そんなとこ用意してるわけないだろ。

 

「いきなりそんな・・・」

 

「奇跡だよ!」

 

「It’sジョーク!」

 

「ですよねー。」

 

「実際には・・・」

 

 

 

 

 

 

 

「ここで?」

 

鞠莉さんが用意した場所、それは体育館だった。

「はい。ここを満員に出来たら、人数に関わらず部として承認してあげますよ。」

 

「ほんと?」

 

「部費も使えマース。」

 

「もし満員に出来なかったら?」

 

「その時は解散してもらう他ありません。」

 

「そんな・・・」

 

「嫌なら断ってもらっても結構ですけど・・・どうします?」

 

「やります!」

 

千歌ならそう言うと思った。

 

「そうだね。やろう!」

 

「OK、行うということでいいのね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

鞠莉さんが去った後4人で体育館で話していた。

 

どこか違和感を感じる。だってスクールアイドル活動を補助するのが目的なら失敗すれば廃部が決定する課題なんて与えないはずだ・・・

 

「ちょっと待って。この学校の生徒って全部で何人?」

 

梨子が何かに気づいたようだ。

 

「え~と・・・!!」

 

・・・・・・なるほどそういうことか。彼女が言いたいことが分かった。

 

「どういうこと?」

 

千歌はまだ理解できていないようだ。

 

「わからないのか?」

 

「全校生徒が来ても恐らくここは・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「満員にならない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか鞠莉さん、それを分かってて・・・」

 

「多分そうだな。」

 

一体どういうつもりなんですか鞠莉さん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帰りのバスにて・・・

 

「どうしよ〜」

 

「でも、鞠莉さんの言いたいこと何となく分かるわ。」

 

「・・・俺達のポテンシャルを試しているのか。」

 

体育館を満員にするぐらい乗り越えなければ話にならないという事。

 

「やっと曲ができたばかりだよ。ダンスもまだまだだし。」

 

「じゃあ、諦める?」

 

「諦めない!」

 

「なんでそんな言い方するの?」

 

梨子が曜に耳打ちする。

 

「こう言ってあげたほうが千歌ちゃん燃えるから。」

 

まぁ、千歌の性格上やり方としては正しいかな。

 

「そうだ!」

 

千歌の奴何か思い付いたようだな。

 

どうせ碌でもないことだろうが・・・

 

 

 

場所は変わって千歌の家・・・

 

「お願い!いるでしょ従業員・・・」

 

姉の目の前で土下座をする千歌。

 

こいつ、姉を使うのか。しかも自分のプリン差し出してるし。

 

「何人くらい?」

 

「本社もいれると二百人くらいかな。」

 

「二百人・・・!」

 

魅力的な数字に目を輝かせる千歌。

 

まぁそれぐらい来たら満員にはなるだろうな。

 

「あのね。私達、来月の初めにスクールアイドルとしてライブを行うことにしたの。」

 

「スクールアイドル?あんたが?」

 

「でね、お姉ちゃんにも来てほしいかなって。会社の人二百人程誘って。」

 

「ホントは?」

 

「んん。満員にしないと学校の公認が貰えないの!!」

 

本音を言いやがった。

 

ん?美渡さんペンを取り出して何をするんだ?

 

「だからお願い!」

 

 

 

 

 

 

 

「何で上手くいかないの。」

 

千歌はあの後、美渡さんにおでこにバカチカと書かれていた。

 

「完璧な作戦だったはずなのに。」

 

「嘘つけ。穴だらけだったじゃないか。」

 

「お姉さんの気持ちもわかるけどねー。」

 

「え!?曜ちゃん、お姉ちゃん派?」

 

曜は現在ライブで使う衣装を作成している。

 

一人では大変なので自分も手伝っている。

 

「あれ?梨子ちゃんは?」

 

「さっき、お手洗い行くって言ってたよ。」

 

それにしても遅いな。

 

少し様子を見に行くか。

 

廊下に出ようと扉を開けるとそこには手すりと扉をに手と足をついている梨子がいた。

 

「何やってるんだ?」

 

このままじゃパンツが見えるぞ。まぁむしろ見せてもらっても大丈夫ですけど。

 

「それよりも人を集める方法でしょ。」

 

SASUKEみたいなポーズで千歌に意見を言う梨子。

 

「何か考えないとね。」

 

「町内放送で呼びかけたら?頼めば出来ると思うよ。」

 

それも一つの手だな。

 

「それに沼津の方にもスクールアイドルに興味のある人はいるんじゃないか?」

 

「そうだね。じゃあビラ配りをしよう!」

 

 

 

 

 

ということで翌日、みんなで沼津に来た。

 

「東京に比べると人は少ないけど、やっぱり都会ね。」

 

この時間・・・

 

「そろそろ学校帰りの学生が来る頃じゃないか?」

 

「よ~し、気合い入れて配ろう!」

 

さて、配り始めたのはいいが

 

千歌がビラを差し出すも、見事に無視されていく。

 

「意外と難しいわね。」

 

「こういうのは気持ちとタイミングだよ。見てて。」

 

そう言って曜は女子高生二人の前に行き、

 

「ライブのお知らせで~す。よろしくお願いします。」

 

「ライブ?」

 

「あなたが歌うの?」

 

「はい!来てください!」

 

「行ってみる?」

 

「ありがとうございます!」

 

「すごい・・・」

 

「私も!」

 

すると千歌は見るからに気弱そうな女子高生のところに行き、

 

ドンッ!

 

「ひっ!」

 

「ライブやります。是非。」

 

「で、でも・・」

 

「是非。」

 

「ど、どうも。」スタスタ

 

「勝った。」

 

「あほか。」ペシッ

 

「痛~い・・」

 

「勝負してどうするんだ。」

 

「次は梨子ちゃんだよ。」

 

「私?」

 

「当たり前でしょ。四人しか居ないんだから。」

 

「それは分かってるけど。」

 

ところで今自分は何をしてるかというと、

 

「お願いします。」

 

「これ、あなたも出るの?」

 

「いえいえ、彼女たちですよ。」

 

「そう。男一人なのに偉いね。」

 

「ありがとうございます。」

 

コミュ障に知らない女子高生に話しかけるなんて出来るわけがないので、買い物帰りの奥様方を中心に声をかけている。

 

いやいや決してサボってるわけじゃないぞ。

 

横をちらりと見ると、梨子がポスターに向かって話しかけていた。

 

「何してるんだ梨子?」

 

「練習よ練習。」

 

「まぁ頑張れ。」

 

それから順調にビラ配りは進んでいき、後もう少しという時・・

 

お?あいつらは・・

 

「花丸ちゃ~ん!ハイっ。」

 

千歌は花丸ちゃんと呼ばれる少女にビラを渡す。

 

「ライブ?」

 

「花丸ちゃんも来てね。」

 

「ライブやるんですか!?」

 

「絶対満員にしたいんだ。だから来てねルビィちゃん。」

 

「・・・・・」

 

「じゃあ私まだ配らないといけn」

 

「あの~!」

 

ルビィちゃんが呼び止める。

 

「グループ名はなんて言うんですか?」

 

「グループ名?」

 

あっ・・、あいつらに決めておけって言うの忘れてた。

 

 

 

ところ変わって海岸沿いの砂浜。

 

「まさか決めてないなんて。」

 

「すまん。気づいていたんだが言うの忘れてた。」

 

「とにかく早く決めなきゃ。」

 

「三人はどんな名前がいいんだ?」

 

「浦の星スクールガールズとか?」

 

「そのまんまじゃない。」

 

「じゃあ梨子ちゃんが決めてよ。」

 

「そうだね。東京で最先端の名前とか。」

 

梨子にプレッシャーをかけるんじゃない。

 

「え~と、じゃあみんな海で知り合ったからスリーマーメイドとか?」

 

「「「・・・・」」」

 

「待って!今のなし!」

 

「曜は何か無いか?」

 

「う~ん、制服少女隊!」ビシッ!

 

「ないかな。」

 

「瑠惟君は?」

 

「マネージャーが決めたらダメだろ。それにこういうのはリーダーが決めるべきじゃないか?」

 

「戻ってきた〜。うーん・・・どうしよ~。」

 

「ん?」

 

少し離れた場所に何か書かれているのを見つけた。

 

あれは・・・!!

 

「これなんて読むの?」

 

そこにはかつてのスクールアイドル、『Aqours』の文字が。

 

「もしかしてアクア?」

 

「水ってこと?」

 

「「「おぉ・・」」」

 

なぜこの名前がここに書いてあるんだ?

 

「なんか良くない?グループ名に。」

 

「これを?誰が書いたのかも分からないのに?」

 

そうだ。いったい誰が書いたんだ?

 

周りを見渡せど誰もいない。

 

「三人とも書いてないんだよな?」

 

「そうだけど・・・」

 

「だからいいんだよ!名前決めようとしてる時にこの名前に出会った・・・それってすごく大切なんじゃないかな。」

 

「そうだね。」

 

「このままじゃ決まらないし。」

 

「いいんじゃないか?」

 

これも何かの縁だろ。Aqoursの皆さん、ありがたく使わせてもらいます。

 

「じゃあ決定ね。この出会いに感謝して・・今から私たちは・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「浦の星女学院のスクールアイドル、Aqoursです!」」」

 

町内放送で町のみんなに名前を公表した。

 

「待って、私たちまだ学校から正式な承認もらってないんじゃ・・」

 

「じゃあ、非公認アイドルAqoursです!」

 

千葉県の梨の妖精みたいに言うな。

 

「今度の土曜の十四時から浦の星の体育館にて・・」

 

「非公認ていうのはちょっと・・」

 

「じゃあなんて言えばいいの~~!!」

 

ひどい放送事故を見た。

 

本当にこのままで大丈夫かな。

 

この先のことに少し不安に感じる自分だった。

 

 

 

 

それからのライブまでの期間はあっという間に過ぎた

 

ビラ配りでは曜が圧倒的人気で人を集めたり、集合写真なんかも撮っていた。

 

これならある程度の人数は来てくれそうだな。

 

他には、クラスメイトである『よしみ』『いつき』『むつ』がライブの手伝いをしてくれることになった。

 

ダンスも三人は最初とは見違える程上達している。

 

この頃は夜遅くまで十千万に残って歌やダンスの練習をしている。その成果が出てくれるといいな。

 

自分も作曲や衣装の手伝いを積極的にしている。

 

 

 

ー ライブ前夜 ー

 

今日も夜遅くまで練習をしていた。

 

もうこんな時間か。ライブに支障が出るといけないしな、帰らせるか。

 

「明日はライブだし、もうそろそろ終わりにしておけよ。」

 

「あともう少し。」

 

まだ続けようとする千歌。

 

「曜。バスの時間は大丈夫なのか?」

 

「あぁ~!・・・バス終わっちゃった。」

 

「瑠惟君、今私忙しくてトラック出せないから曜ちゃんを送ってあげて。」

 

志満さんにそう言われ曜を送ることになった。

 

「わかりました。」

 

「そこまでしなくても大丈夫だよ。」

 

しかし曜は申し訳なさそうに遠慮する。

 

「こんな時間に女子を一人帰らせるわけにはいかないからな。もし曜を一人で帰らせて何かあったら俺は一生後悔する。」

 

「じゃあ・・・お願い。」

 

強い口調で言うと曜も渋々だが賛成してくれた。

 

 

 

 

 

「よし、ここに乗るんだ。」

 

「え?」

 

「自転車?」

 

「こっちの方が早いしな。」

 

それに免許なんて持ってないし。

 

「しっかり捕まっておけよ。」

 

「うん。」

 

 

 

ー帰り道ー

 

曜は自転車の後ろで自分に掴まりながら電話をしてる。

 

恐らく親御さんだろうな。

 

「うん。うん。」

 

「大丈夫だったか?」

 

「いい加減にしなさいって怒られちゃった。」

 

「こんなに遅くなるまで、ほんとに夢中だよな。千歌の奴。」

 

「私もびっくりしたよ。あんなにのめり込んで。」

 

「あいつは昔から飽きっぽいから。」

 

しかし曜の返答は違った。

 

「そうじゃなくて中途半端が嫌いなんだと思う。」

 

「考えてみれば確かにそうかもな・・・マネージャーに誘われた時に『自分は中途半端が嫌いだ。』って言ったんだ。あいつならやってくれる。そう思ったからマネージャーを引き受けたんだ。・・・ところで明日は大丈夫か?」

 

「うん・・・少し緊張してるし、不安だけど多分大丈夫!」

 

「だってあんなに頑張ってきたし、何より瑠惟君が居てくれるから。」

 

「まぁ・・客席から見ておくよ。なんたってファン一号だしな。」

 

「瑠惟君・・・」

 

ここでようやく曜の家に着いた。

 

「おっ着いたぞ。」

 

「わざわざ送ってくれてありがとう。明日のライブ絶対に成功させようね。」

 

「もちろんだ。じゃあおやすみ。」

 

「おやすみ。」

 

それでは帰りますか。

 

空を見上げると月が雲でぼやけていた。

 

確か天気予報では明日は雨だったな。

 

何事もなく成功してくれるといいんだが・・・

 

 

 

ー翌日ー

 

起きて窓の外を見ると空は生憎の雨だった。

 

やっぱり降ったか。ライブまでには止んでくれるといいんだが。

 

「おい千歌、起きろ。早めに行ってリハーサルするんだろ?」

 

「そうだった!早く準備しなきゃ!」

 

良かった。千歌はいつも通りだな。

 

朝ご飯を食べ、準備も終えたので玄関に行くと、志満さん達が見送りに来てくれた。

 

「千歌そろそろ行くか。」

 

「うん。」

 

「頑張ってね二人とも。私たちも後で行くから。」

 

「「行ってきます。」」

 

 

 

ーライブ直前ー

 

三人は今衣装に着替えている最中だ。

 

一応自分も衣装作りを手伝ったので、早く見てみたいのである。

 

そろそろかな。

 

「三人とも入るぞ。」

 

「いいよ。」

 

「おぉ~。」

 

作っている最中は分からなかったが、実際に着ているところを見るとほんとによく出来ていると思う。

 

「やっぱりこの衣装って・・」

 

「そうだよ!μ’sの最初のライブの衣装だよ!」

 

ほんとに好きなんだな・・・

 

まだ少し時間があるな。

 

「三人とも、ちょっといいか?」

 

「どうしたの?」

 

「まず、今日までよく頑張ったな。三人とも見違えたよ。あの日千歌に誘われて今日まで色々あって楽しかったよ。」

 

「千歌、みんなを引っ張ってくれてありがとう。その元気でライブも頑張れよ。」

 

「うん!頑張る!」

 

「曜、ビラ配りや衣装とか作ってくれてありがとう。二年前の輝きを今日もう一度見せてくれ。」

 

「もちろん!しっかり見ててね!」

 

「梨子、今日ライブが出来るのは梨子が曲を作ってくれたおかげだ。梨子の想いみんなに届けてくれ。」

 

「ありがとう!私頑張るね!」

 

「そろそろ時間だ。じゃあ頑張れよ!下で見てるから。」

 

そして舞台裏を後にした。

 

 

 

「えっと、どうするんだっけ?」

 

「確かこうやって手を重ねて・・・」

 

「繋ごうか。」

 

「え?」

 

「互いに手を繋いで・・ね、暖かくて好き。」

 

「ほんとだ・・」

 

「人来るかな?」

 

「もし来てくれなかったら・・」

 

「じゃあここでやめる?」

 

「「「ふふふっ」」」

 

「・・・・」

 

「さぁ行こう!いま全力で輝こう!」

 

「「「Aqours Sunshine!」」」

 

 

 

 

幕が上がった。目の前に映るの体育館を埋め尽くす観客・・・

 

 

 

 

 

なんておとぎ話みたいにはいかなかった。ざっと数えても十人程度・・・

 

聞こえるのはわずかな拍手。

 

三人は驚いた表情を見せる。

 

彼女たちはこの光景を見てどう思うのだろうか。

 

少なくとも自分は悔しい。この状況で何も出来ない無力な自分に腹が立つ。

 

「クソッ!なんでこんな・・・」

 

自分は悔しさで彼女たちを見ることが出来ない。

 

どうすれば・・・

 

すると千歌が

 

「私たちはスクールアイドル・・・せーのっ」

 

「「「Aqoursです!」」」

 

三人とも・・・

 

そうだよな。あいつらがあきらめてないのに自分があきらめるのはおかしいよな。

 

何よりもあいつらを支えると誓ったのだから。

 

「私たちはその輝きと」

 

「あきらめない気持ちと」

 

「信じる力に憧れ、スクールアイドルを始めました。」

 

「目標はスクールアイドル、μ’sです!」

 

「聞いてください。」

 

Aqoursのファーストライブ。

 

曲は『ダイスキだったらダイジョウブ』

 

曲が始まった。

 

うん。練習よりもうまく出来てるな。

 

このままいってくれ・・

 

しかし、それは突然起こった。

 

「元気だよ。元気を出していくよー・・・」

 

ピー、ダンッ!ダンッ!!ダンッ!!!

 

この音は・・・恐らく近くに雷が落ちたのか。

 

が、問題はその後だった。

 

「!?」

 

どうしたんだ!?急に電気が消えて、音楽も出なくなったぞ。

 

恐らくさっきの雷でブレーカーが落ちたのか・・・

 

「千歌・・・」

 

三人は動揺を隠せない。

 

とにかく何か手を。

 

考えろ、考えるんだ。

 

「・・・・・」

 

俺は通学初日に生徒会長に学校を案内してもらったことを思い出す。

 

 

 

 

ハッ!

 

 

 

「そうだ!あそこにアレがあったはずだ!」

 

急いで行かなければ。

 

少しだけ耐えてくれ千歌・・・

 

 

 

 

 

 

向かったのは倉庫。

 

「よし着いたぞ。」

 

重い扉を開けるとそこには・・・

 

 

 

 

「ダイヤさん!?」

 

 

 

黒澤ダイヤ生徒会長が懐中電灯を持ちながら何かを運んでいた。

 

「瑠惟さん!?と、とにかくこれを運びますわよ!」

 

「はいっ!」

 

やっぱり生徒会長も同じことを考えていた。

 

探していた物とは・・・発電機だ。

 

目の前の彼女から倉庫には発電機等の設備が揃っていると聞いていた。

 

良かった覚えていて。

 

「よいしょと。」

 

これでいけるか?

 

「じゃあつけますわよ。」

 

間に合ってくれ・・・

 

 

 

 

ピカッ!

 

 

 

 

やったついたぞ!

 

自分は急いで体育館に戻ったそこには・・

 

「マジですか!?」

 

体育館を埋め尽くさんばかりの人が来ていた。

 

「バカチカ!あんた開始時間間違えたでしょ!」

 

美渡さんがステージの千歌に向かって叫ぶ。

 

あいつ開始時間間違えていたのかよ・・・

 

「ほんとだ。私バカチカだ・・」

 

「千歌!」

 

そう言ってうなずいた。

 

すると曲が再開した。

 

沸き上がる歓声。

 

そしてステージの三人。

 

眩しいな・・・あいつら。

 

「あれ・・?」

 

気づいたら自分は泣いていた。

 

彼女たちに感動していた。なにより嬉しかったのだろう。

 

曲が終わった。

 

「「「はぁ、はぁ、はぁ・・」」」

 

 

 

 

 

わぁぁぁぁぁ!!パチパチパチパチ!!

 

 

 

 

大成功。とまではいかないが十分人は集まってくれた。

 

良かったな三人とも。

 

 

 

 

 

ステージの千歌達がマイクを持つ。

 

「彼女たちは言いました。」

 

「スクールアイドルはこれからも広がっていく。」

 

「どこまでだって行ける。」

 

「どんな夢だって叶えられると。」

 

 

 

 

 

すると突然ダイヤさんがステージ前に足を進め・・・

 

 

 

 

「これは今までのスクールアイドルの努力と町の人たちの善意があっての成功ですわ。勘違いしないように。」

 

 

 

 

違う、とは否定出来ない。むしろ正論である。

 

 

 

 

 

「分かってます。」

 

「!」

 

「でも、見てるだけじゃ始まらないって。うまく言えないけど、今しかない瞬間だから。」

 

千歌・・・

 

「だから!」

 

「「「輝きたい!」」」

 

お疲れ様。三人とも。そしておめでとう・・・

 

 

 

 

 

 

ライブ終了後・・・

 

「お疲れみんな。素晴らしかったよ。」

 

「ありがとう!」

 

「途中はどうなるかと思ったけど、成功して良かったよ。」

 

「電気を復旧させてくれたのは瑠惟君とダイヤさんだよね?」

 

「!?」

 

「なんでそれを知っているんだ?」

 

「ステージから見えてたんだ。」

 

「電気が消えてすぐに走っていった二人を。」

 

「あのとき二人が動いてくれなかったら、あのまま終わってたかもしれない。心が折れたかもしれない。」

 

「でも、瑠惟君達が私たちを照らしてくれた。希望の光で。」

 

希望の光か・・・

 

「言っただろ?お前達を支えてやるって。」

 

「ほんと、頼りになるね。」

 

「瑠惟君!」

 

「なんだ?」

 

 

 

 

「「「ありがとうございました!」」」

 

 

 

 

 

 

「どういたしまして。」

 

それから・・・

 

「これからもよろしくな。」

 

 

 

 

「浦の星女学院、スクールアイドル『Aqours』。」

 

 

 

 

「よ~し、じゃあ私の家で打ち上げだ!」

 

「「「「イェ~イ!!」」」

 

こうしてAqoursのファーストライブは無事成功した。

 

しかし今日は始まりの第一歩である。

 

明日から本格的なスクールアイドル生活が始まる。

 

コミュ障ヘタレは期待に胸を躍らせるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まずは最後まで読んでいただきありがとうございます。

この話はサンシャイン!のなかでも好きな話なので書いていてとても楽しかったです。

さて、次回からは一年生組も書いていこうと思います。

ではまた次回・・・


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コミュ障ヘタレとアイドルに憧れた少女たち

どうも皆さんまきパリです。

遅くなってしまいすいません。

話がまとまらなくて、気づいたら時間が過ぎていました(笑)

今回はルビィちゃんと花丸ちゃんの話です。

アニメでは第四話になりますね。

毎度の事ながら駄文、誤字、脱字があるかもしれませんがよろしくお願いします。

ではどうぞ。


先日、無事にファーストライブを成功させたAqours。

 

途中アクシデントもあったが、それを乗り越えて体育館を満員にすることが出来た。

 

この事は今後のあいつらの自信にもつながるだろう。

 

とにかく鞠莉さんは約束通りスクールアイドル部を正式に承認してくれた。

 

ついでに部室ももらうことが出来たのだが・・・

 

「汚いな。」

 

「うわぁぁぁぁ。」

 

「片付けて使えって言ってたけど。」

 

部室はまるで倉庫のように物が散乱していた。

 

「とりあえず掃除を始めるか。」

 

「「そうだね。」」

 

「ねぇ、みんなこれってなんだろ?」

 

そう言って千歌が部室にあるホワイトボードを指した。

 

「何か書いてあるね。」

 

文字がかすれていてよく見えなかったが

 

「歌詞かな?」

 

「どうしてここに?」

 

「わからん。」

 

それにしても・・・

 

「本が多いな。」

 

「多分図書室の本じゃないかな。」

 

「そうか。なら掃除が終わったら返しに行くか。」

 

 

 

 

約二時間後、一通りの掃除を終えたので本を返しに行くことにした。

 

ガラガラッ

 

「こんにちは~。」

 

「失礼します。」

 

「あ、花丸ちゃん。」

 

そこには以前会った、花丸ちゃん。そして・・・

 

「と、ルビィちゃん。」

 

「ピギャアッ!」

 

ダイヤさんの妹、ルビィちゃんがいた。

 

「よく分かったね。」

 

「こ・・こんにちは。」ガクブル

 

あー・・・すごく怖がってるな。

 

確か男性が苦手なんだっけ。

 

少し離れるか。

 

「ちょっとトイレ行ってくる。」

 

ー瑠惟sideoutー

 

ールビィside inー

 

うぅ~どうしよ。瑠惟さん、ルビィが怖がってるのを見て気を悪くしたのかな?

 

「大丈夫だよルビィちゃん。瑠惟君はね恥ずかしがり屋さんだから、ルビィちゃんを見て緊張しちゃったんだよ。」

 

「千歌さん・・・」

 

「で、そんな可愛いルビィちゃんと花丸ちゃん、スクールアイドル部へようこそ!」

 

「ピギィ!」

 

「結成したし、部にもなったし絶対悪いようにはしませんよ・・・」

 

「二人が歌ったら絶対キラキラする!間違いない!」

 

「で、でも・・・」

 

「マルはそういうの苦手で・・・」

 

「る、ルビィも・・・」

 

ほんとはやってみたい。歌って踊ってみたい。

 

でも花丸ちゃんがそう言うなら・・・

 

「私たちそろそろ練習行くから。じゃあね。」

 

スクールアイドルか・・・お姉ちゃん、ルビィはスクールアイドルをやってもいいのかな?

 

 

ールビィsideoutー

 

ー瑠惟side inー

 

よしそろそろかな。

 

「千歌。」

 

「瑠惟君。花丸ちゃん達誘ってみたんだけど入ってくれなかったよ・・・」

 

知っている。

 

実はトイレには行っておらず、こっそりと様子を見ていたのである。

 

「まぁ仕方ないだろ。それより練習行くぞ。」

 

「は~い。」

 

先程の様子を見てて思ったのだが、あの二人、お互いが気を遣っていて、結果両方とも一歩目を踏み出せずにいる。

 

すこしお節介を焼きますか。

 

 

 

翌日の昼休み、自分は一年生の教室に行った。

 

理由は花丸ちゃんにある提案をするためだ。

 

ここか・・・

 

「あの・・・」

 

やったぜ。向こうから来てくれるとは。

 

「花丸ちゃん。こんにちは。」

 

「こんにちは瑠惟さん。どうしてここに?」

 

「ちょっと花丸ちゃんに提案があってな。」

 

「マルに提案?」

 

花丸ちゃんは不思議そうに首を傾げる。

 

「昨日の千歌の誘いを断ったって聞いたよ。」

 

「でも、ルビィちゃんも断った。」

 

「・・・・」

 

「恐らく花丸ちゃんはルビィちゃんにスクールアイドルをやって欲しいと思っている。でも、ルビィちゃんも花丸ちゃんに気を遣っている。」

 

「そこでだ、こういうのはどうだ?」

 

「・・・・・・」

 

「仮入部ですか?」

 

「そうだ。仮入部ならお試しって事で二人ともやりやすいだろ。」

 

「確かにそうですね。ありがとうございます。ルビィちゃんに聞いてみます。」

 

「おぅ。もし仮入部するなら部室で待ってるぞ。」

 

 

放課後・・・

 

「瑠惟君、まだ練習始めないの?」

 

「あと少し待ってろ。」

 

もうそろそろだと思うが、やっぱりダメだったか?

 

すると部室のドアが開いた。

 

「失礼します。」

 

おっ来たな。

 

「花丸ちゃんにルビィちゃん、どうしたの?」

 

「まさか・・入部してくれるの!?」

 

「実は・・・・」

 

「へぇ~仮入部しに来たんだね。」

 

「あの~できればこの事は生徒会長には内密に・・・」

 

「わかった。」

 

「じゃあとりあえず練習に参加してもらうのが一番ね。」

 

「じゃーん。」

 

梨子が取り出したのは練習のメニュー表。

 

「いろんなスクールアイドルのブログを見て、瑠惟君と相談しながら作ったの。」

 

メニュー表を見て曜が一言。

 

「曲作りは?」

 

そう、メニュー表に書いてあるのは主に基礎体力養成、ダンスレッスン、ボイストレーニングだ。

 

「それは別に時間を見つけるしかなくてな。これが限界だったんだ。」

 

ルビィちゃんは嬉しそうにメニュー表を見ている。

 

本物を見るのは初めてなのだろう。

 

「でも練習はどこでやるの?」

 

その言葉を待っていました!

 

「それなんだが、すでに確保してある。」

 

きっと喜ぶだろう。

 

「じゃあ練習場所に行きますか。」

 

そうして連れて行ったのは・・・・

 

「うわ~!屋上だ!すっご~い!」

 

そう屋上だ。あのμ’sも屋上で練習していたとのことなので、先生に使えないかと聞いたのだ。

 

まぁ、聞いたときにすごく不審がられたのはまた別のお話。

 

「屋上で練習できるなんて・・・」

 

「瑠惟君、ありがとう!」

 

「仕事をしただけだ。」

 

「とにかく練習始めるぞ。」

 

こうして一年生二人のスクールアイドル部の体験入部が始まった。

 

自分は練習が始まると、二人の動きを見ていた。

 

ルビィちゃんはスクールアイドルが好きなだけあってよく動けている。

 

さっき教えたばかりのダンスも難なく踊れていた。

 

一方、花丸ちゃんは運動が苦手と言っていたが見ている限りでは、そこまで悪くは無いと思う。

 

しっかりと練習にもついて行けている。

 

あと彼女に必要なのは・・・

 

練習も終盤にさしかかり、ようやく最後のメニューとなった。

 

「最後はここでやるよ!」

 

最後のメニュー、それは階段ダッシュだ。

 

一番下のこの場所から小さな祠のある頂上までダッシュで登っていく。

 

見れば分かるが、それなりの距離があって、普通に上るのもしんどい。

 

しかし、スクールアイドルは常に笑顔で何曲も踊り続けられる体力が必要なので、ここはその体力作りにはもってこいだ。

 

「これ一気に登ってるんですか?」

 

「いつも途中で休憩しちゃうけどね。」

 

以前、自分もここをダッシュで登ってみたが死にかけた。

 

見た目以上にきついのである。

 

千歌達は途中休みながらも登り切っているが、この二人は大丈夫なのだろうか?

 

「二人とも、しんどくなったら途中で休んでいいし無理はしないように。」

 

「自分も後ろに居るから何かあったら言ってくれ。」

 

「「はい。」」

 

「じゃあμ’s目指して、よーい・・・スタート!」

 

スタートと同時に二年生三人は猛スピードで階段を駆け上がっていく。

 

ルビィちゃん、花丸ちゃんも最初は三人について行っていたが、途中で花丸ちゃんが遅れ始めた。

 

それに気づいたルビィちゃんが花丸ちゃんのところまで戻ってきた。

 

「一緒に行こう!」

 

ルビィちゃんは小さなその手を差し出す。

 

しかし・・・

 

「ダメだよ。」

 

「え?」

 

膝に手を着いて肩で息をする花丸ちゃんは絞り出すように声を出した。

 

「ルビィちゃんは・・・走らなきゃ・・・」

 

俯きながらも彼女は言葉を紡いでいく。

 

「ルビィちゃんはもっと自分の気持ち大切にしなきゃ。」

 

ルビィちゃんは驚いたように彼女を見つめていた。

 

「自分に嘘ついて、無理に人に合わせても辛いだけだよ。」

 

と花丸ちゃんが言った時に彼女の表情が少し変わった気がした。

 

「だから前に進まなきゃ。ルビィちゃん一人でも大丈夫だから。」

 

友の背中を押してあげる彼女の優しさがそこにはあった。

 

それと同時に彼女の目的はスクールアイドルになることではなく、スクールアイドルになりたい友を助けることであったのだと気付いた。

 

「で、、でも。」

 

「さぁ。」

 

戸惑うルビィちゃんに彼女は「大丈夫」と微笑む。

 

「・・・・」

 

「うん!」

 

そうしてルビィちゃんは階段を駆け上がり、花丸ちゃんはゆっくりと下に降りていった。

 

後から登ってきた自分は花丸ちゃんと対面する。

 

ここからがマネージャーの仕事だ。

 

「花丸ちゃん、大丈夫か?」

 

「はい。大丈夫です。」

 

と言っている彼女に自分は持っていたドリンクを手渡す。

 

「なら良かった。ところでなんでルビィちゃんと一緒に行かなかったんだ?」

 

「マルはルビィちゃんにスクールアイドルになってほしかった。」

 

「でも」と言葉を挟み彼女は続ける。

 

「いつもマルのことを気にして自分のことは後回しにしちゃう・・・。」

 

「だからマルはルビィちゃんの背中を押してあげようと思ったんです。」

 

「・・・・」

 

素直に自分の気持ちを話してくれた彼女に俺は思ったことを言った。

 

「花丸ちゃんがさっきルビィちゃんに言ったこと。あれはルビィちゃんに向けて言った言葉だけど、自分は花丸ちゃん自身にも言った言葉だと思った。」

 

「え?」

 

自分の事を言われると思っていなかったのか驚いてこちらを見つめた。

 

「自分に嘘をついて、ルビィちゃんに合わせて本当に辛い思いをしてるのは花丸ちゃんだろ?花丸ちゃんだって本当はスクールアイドルをやってみたいんじゃないのか?」

 

「でも・・・マルはルビィちゃんみたいに可愛くないし、二年生の人たちみたいにダンスも出来ない。」

 

「だからマルにはスクールアイドルなんて・・・」

 

「無理だって言うのか?」

 

「!!」

 

「二年生の三人も最初はダンスもあんなに踊れなかったし、この階段にも苦戦していた。でもあいつらは変わろうとした。μ’sを見て、あんな風に輝きたいって。そして必死に足掻いて努力を重ねてファーストライブを成功させた。」

 

夕焼けのオレンジの光が向き合う二人を照らしている。

 

彼女は今日一番の真剣な表情で話を聞いている。

 

「ルビィちゃんはそんな三人を見て思ったんじゃないか?私もあんな風になりたいって。花丸ちゃんと一緒に変わりたいって。」

 

「マルと?」

 

「きっとルビィちゃんは花丸ちゃんの本当の気持ちに気付いてるはずだよ。」

 

「ルビィちゃんが・・・マルのことを・・・。」

 

「スクールアイドルになるのもならないのも花丸ちゃんの自由だ。でも、もう一度自分自身に本当の気持ちを聞いてみてもいいんじゃないか?」

 

「マル自身の気持ち・・・」

 

「自分はハッキリ言って人と関わることが苦手だ。」

 

今この瞬間もかなり緊張してるしな。

 

「それでも千歌たちの夢を支えたいと思った。だから自分なりに変わろうと努力している。今のルビィちゃんと似たようなものだよ。」

 

一通り言いたいことは言ったな・・・。

 

そろそろ上に行くか、みんなが待ってる。

 

「じゃあ、あいつらのところに行くよ。気をつけて帰れよ。」

 

「あの・・・!」

 

「ん?」

 

階段を登ろうとする自分を花丸ちゃんは今日一番大きな声で呼び止めた。

 

「マルは・・・私は変われますか?」

 

この子は変わろうとしている。新たな一歩を踏み出そうとしているんだ。

 

「変われるんじゃないか?変わりたい気持ちがあれば。」

 

「そうですか・・・ありがとうございました!」

 

花丸ちゃんなら大丈夫だ。君は君が思ってる以上に素晴らしい子だ。

 

皆のところに行くとルビィちゃんとどこから来たのかダイヤさんが話していた。

 

ルビィちゃん、今度は君が花丸ちゃんの背中を押してあげる番だよ。

 

 

 

翌日・・・

 

「よろしくお願いします。」

 

部室に訪れたルビィちゃんは入部届を提出してくれた。

 

「よろしくね。」

 

ということでルビィちゃんが正式にスクールアイドル部に入部しました。

 

「はい!がんばります!」

 

「そういえば国木田さんは?」

 

ずっと一緒にいた花丸ちゃんがこの場に居ないことが気になった梨子はルビィちゃんに聞いた。

 

「そのことなんだが、ルビィちゃん少しいいか?」

 

「??」

 

「きのう花丸ちゃんと話したんだが・・・・・・というわけだ。」

 

「やっぱりそうだったんですか・・・」

 

「そこでルビィちゃんに一つお願いしたい。」

 

「ルビィですか?」

 

「花丸ちゃんをスクールアイドルに誘ってくれないか?」

 

「はい!ルビィも花丸ちゃんとがいい!」

 

「よし。なら今から行くか。」

 

待ってろよ花丸ちゃん。

 

ー瑠惟sideoutー

 

ー花丸side inー

 

『花丸ちゃんと一緒に変わりたいって。』

 

『変われるんじゃないか?変わりたい気持ちがあれば。』

 

でも、もう夢は叶ったから・・・

 

「大丈夫。一人でも。」

 

バイバイ。スクールアイドル・・・

 

「ルビィね!」

 

「!?」

 

「ルビィちゃん?」

 

私が振り返るとそこには私の親友がいた。

 

「ルビィね、花丸ちゃんの事見てた!」

 

「ルビィに気を遣ってスクールアイドルやってるんじゃないかって。」

 

「ルビィの為に無理してるんじゃないかって、心配だったから。」

 

「・・・・」

 

「でも、練習の時も、屋上にいた時も、皆で話してる時も、花丸ちゃん嬉しそうだった。」

 

そうだったんだ。私、楽しかったんだ。

 

「それ見て思った。花丸ちゃんルビィと同じくらいスクールアイドルが好きなんだって!」

 

「マルが?まさか・・・」

 

「じゃあなんでその本ずっと読んでたの?」

 

それは私が何回も読んでいたスクールアイドルの雑誌だった。

 

「それは・・・」

 

「ルビィね、花丸ちゃんとスクールアイドルができたらってずっと思ってた。一緒に変われたらって。」

 

ルビィちゃん・・・

 

「ううん。それでもオラには無理ずら。体力ないし向いてないよ。」

 

「そこに写ってる凛ちゃんもね最初はスクールアイドルに向いてないってずっと思ってたんだよ。」

 

星空凛。彼女はμ’sのメンバーの一人だ。  

 

私は彼女に憧れていた。こんな風にになれたらって。

 

「でも好きだった。」

 

「!!」

 

そこには千歌さん達と瑠惟さんがいた。

 

「最初はそれでもいいと思うけど?」

 

私は・・・

 

「ルビィ、スクールアイドルがやりたい!花丸ちゃんと!」

 

「マルに出来るかな?」

 

「私だってそうだよ。」

 

「一番大切なのはできるかじゃない。」

 

「やりたいかどうかなんじゃないか?それに・・・何をやりたいかも大切だが、誰とやりたいかはもっと大切なことだと思う。ルビィちゃんは花丸ちゃんとスクールアイドルがやってみたい。そう言っていたよ。」

 

千歌さん。瑠惟さん・・・

 

「一緒に目指さないか?スクールアイドルの頂点。」

 

私がやりたいこと。そして誰とやりたいか。それは・・・

 

「はい!よろしくお願いします。!」

 

ー花丸sideoutー

 

ー瑠惟side inー

 

こうして花丸ちゃんが入部し、スクールアイドル部は六人となった。

 

「じゃあ、ラブライブにエントリーするか。」

 

ここから始まるんだな。

 

「「「「「「せ~の!」」」」」」

 

「4999位!?」

 

さすがに参加グループが多いな。

 

ていうか全国にスクールアイドルどれだけいるんだよ!

 

でも・・・

 

「上に5000組もスクールアイドルが居るってこと!?」

 

「いいじゃないか。そうでなくちゃ面白くないしな。」

 

「えぇ!?」

 

「さぁ!ランニング行くずら~!」

 

よし!皆で駆け上がろうじゃないか。頂上まで・・・

 

コミュ障ヘタレとAqoursはまた新たな一歩を踏み出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まず、最後まで読んでいただきありがとうございます。

どうでしたでしょうか?

一年生と主人公を結構絡ませたつもりですが、楽しんでいただけましたでしょうか?

次回はヨハネ回です!

ではまた次回・・・



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コミュ障ヘタレと普通になりたい堕天使

どうも皆さん。まきパリです。

投稿が遅れてしまい申し訳ありません。リアルのほうが最近忙しかったのでなかなか各時間が見つかりませんでした。改めてお詫びします。

あと今更なのですが「コミュ障ヘタレと9人のアイドル」をお気に入りにしてくださった方々ありがとうございます!皆様のおかげで私も楽しく書く事が出来ています。本当にありがとうございます。

毎度ながら駄文、誤字、脱字があるかもしれませんがよろしくお願いします。

ではどうぞ・・・



ルビィちゃんと花丸ちゃんが加入したAqours。

 

二人の加入によって人気もうなぎ登り!と思われたが・・・

 

「ランキング上がらないね。」

 

「昨日が4856位で今日が4768位・・・」

 

「まぁ落ちてはないけど。」

 

「そんな簡単に上がるものじゃないだろ。」

 

「そうだけど~。」

 

「ライブの歌は評判いいんですけど・・・」

 

「それにしても新加入の二人が可愛いってコメントが多かったな。」

 

「そうなんですか!」

 

「特に花丸ちゃんの人気がすごいんだよね。」

 

確かに花丸ちゃんとルビィちゃんの加入は大きかったな。これで注目が集まると嬉しいのだが。

 

「こ、これがパソコン!?知識の海につながってるインターネット!?」

 

そういえばこの子家がお寺で電化製品とかに触れる機会が少なかったんだっけ。

 

「触ってもいいですか?」

 

「もちろん。」

 

花丸ちゃんはパソコンの光るボタン、つまり電源ボタンが気になったのであろうか、なんのためらいもなく押した。

 

それを見ていた千歌達が慌てた様子でパソコンのデータが消えていないかを確認する。

 

「マル、何かいけないことした?」ガクガク

 

「ダイジョウブ。ダイジョウブ。」

 

この子にはパソコンを触らせたらダメだな。

 

花丸ちゃん以外全員の気持ちがシンクロした瞬間であった。

 

 

 

「さて、屋上に行きますか。」

 

ドンッ!

 

屋上に向かう廊下で女の子とぶつかった。

 

「きゃ!」

 

「ごめんなさい!大丈夫ですか?」

 

すぐにその子を起こしてあげる。制服からこの子は一年生だと分かった。

 

「心配ないわ。我が肉体はあくまで器よ。痛くもかゆくもないわ。」

 

「・・・・・」

 

この子はあれだ、中二病だ。実際に遭遇するとは思わなかった。

 

「何か言ってよ!」

 

「悪い、悪い。ぶつかって申し訳ない。」

 

「あなた、噂の転入生ね。よかったら私のリトルデーモンにならない?」

 

リトルデーモン?何のことだかさっぱり分からん。

 

「リトルデーモン?とやらにはなってもかまわないが君は誰だ?」

 

「特別に教えてあげるわ。私は堕天使ヨハネ。この地上に神々によって落とされてしまったの。」

 

「自分は西王瑠惟だ。君もしかして中二病だろ。」

 

「だから私はヨハn・・・」

 

「本当の名前は?」

 

「津島善子です。」

 

「よろしくな善子ちゃん。」

 

「善子言うな!」

 

「あっ瑠惟さんと善子ちゃん?」

 

花丸ちゃんがやって来た。

 

「げっ、ずら丸!」

 

「花丸ちゃんの知り合いか?」

 

「はい。幼稚園の時に一緒で。」

 

「善子ちゃん学校来たずらか。」

 

「たまたま近くを通りかかったから寄ってみたというか・・・」

 

ん?学校に来た?

 

「花丸ちゃん、もしかして前に言ってた不登校の子って。」

 

「善子ちゃんずら。」

 

「ちょっとずら丸言わないでよ!」

 

「ごめんごめん。」

 

この子も大変だな。

 

いかんいかん練習に行く途中だったな。

 

「そろそろ行こうか花丸ちゃん。」

 

「はいずら。」

 

「ちょっと~!!」

 

浦の星にまともな奴は居ないのか?

 

 

 

別の日・・・

 

部室に行くと先日の自称堕天使が来ていた。

 

「あっ善子ちゃん。」

 

「善子言うな!今日は先輩に会いに来たわけじゃないんだからね。」

 

「ところでなんでここに居るんだ?」

 

「実は・・・・・てことがあったずら。」

 

「なるほど・・・」

 

花丸ちゃんによれば、中二病を封印して普通の女子高生のように過ごす事が出来るように花丸ちゃんに協力してもらっていたらしいが、途中でボロが出て結局いつも通りに戻ったということらしい。

 

「とにかく私は普通の高校生になりたいの!何とかして!」

 

「はは・・・」もう無理だろ

 

「・・・いい」

 

「千歌、何か言ったか?」

 

「可愛い。」

 

ん?今可愛いと言ったのか?

 

そして千歌は思いついたように

 

「これだ!津島善子ちゃん!いや堕天使ヨハネちゃん!スクールアイドルやりませんか?」

 

善子ちゃんは・・・

 

「何??」

 

多分千歌以外の全員が思ってるぞ。

 

一体部長は何を考えているんだ?

 

 

 

千歌のアイデアで堕天使系スクールアイドルをやってみようということになったAqours。

 

只今、衣装の試着中であります。

 

「これで歌うの?これでダンスしたらさすがに見えるわ。」

 

ちなみにどんな衣装かというと黒と白を基調としたゴスロリ系?の衣装である。梨子が言ったとおりスカート丈がかなり短い。少しジャンプすれば見えてしまうだろう。こちらとしては見えてくれても構いませんが・・・

 

「瑠惟君、今いやらしいこと考えたでしょ。」

 

「何のことだい?千歌さん。」

 

クソッ何で分かったんだ!?

 

それにしても・・・

 

「いいのかな?本当に。」

 

見た感じ、新鮮で良いとは思うけどな。

 

「調べてたら堕天使アイドルって居なくて結構インパクトあると思うの。」

 

堕天使系スクールアイドルなんて誰も思いつかんだろ。別の意味でのインパクトはすごいだろうな。

 

「ステージ上で堕天使の魅力をみんなで思いっきり振りまくの!」

 

「堕天使の魅力・・・ダメダメ!そんなのどん引かれるに決まってるでしょ!」

 

「大丈夫!大丈夫!」

 

本当に大丈夫なのだろうか?

 

「みんなそろそろ時間だし解散するか。」

 

「そうだね。」

 

梨子、千歌と他の奴らの見送りに来た。

 

「じゃあ衣装よろしくね。」

 

「またな曜。」

 

「ヨーソロ-!」

 

「じゃあマル達も。」

 

「失礼します。」

 

「二人とも気をつけて帰れよ。」

 

「じゃあね~」

 

千歌はなんだか嬉しそうにしている。

 

「どうした千歌?何か良いことでもあったのか?」

 

「みんな色々個性があるんだな~って。」

 

そうだな。こいつらには一人一人違った輝きがある。

 

「私たちはやっぱり地味で普通だなって思ってた。」

 

「そんなこと思ってたの?」

 

Aqoursのどこを取っても普通なところが見つからないな。

 

「でもね、みんなと話して、少しずつ皆のことを知っていくうちに全然地味じゃないって思ったの。それぞれ特徴があって魅力的で・・・だから大丈夫じゃないかなって。」

 

「ふふっ。やっぱり二人そろって変な人ね。」

 

「自分もかよ。」

 

「初めて会ったときから思ってたけど。」

 

「褒めてるの?けなしてるの?わかんないよ~!」

 

「とにかく頑張ろうってこと。」

 

「地味で普通の皆が集まって何が出来るかだね!」

 

今はまだ分かっていないだろうが皆は素晴らしい何かがある。それに気づくのにはまだ少しかかりそうだな。

 

千歌と梨子、楽しそうに走って行く二人を見てそんなことを思った。

 

 

 

そしてヨハネちゃんが加入して堕天使系スクールアイドルとなったAqoursの紹介映像をネットに投稿したところ、かなりの評判で順位も900位台にまで上がった。

 

そして自信満々にダイヤさんと鞠莉さんに見せたのだが・・・

 

 

「・・・・・」

 

「あの・・・ダイヤさん?」

 

「こういうものは破廉恥と言うのですわ!」

 

それはもう激おこぷんぷん丸であった。

 

あのダイヤさんがそう簡単に褒めてくれるわけはなかったのだ。

 

まぁ破廉恥というかセクシーというか、今までとは違った格好をしているからな~。

 

とくにルビィちゃんは・・・なんというか・・・すごく可愛いです。妹にしたいです。はい。

 

「そもそも私がルビィにスクールアイドル活動を許可したのも節度を守って自分の意思でやりたいと言ったからです。こんな格好をさせて注目を浴びようなど・・・」

 

「ごめんなさい。お姉ちゃん・・・」

 

「とにかくキャラや個性が立ってないなどの理由でこういうことをするのはいただけないですわ。」

 

すると曜がすぐに

 

「でも一応順位は上がったし・・・」

 

そうだよ(便乗)

 

「そんなもの一瞬に決まってるでしょ。試しに今ランキングを見てみればいいですわ。」

 

ダイヤさんからパスされたパソコンを開くとそこには・・・

 

「!!」

 

昨日の900位台から1500位台まで落ちていたのだ。

 

「本気で目指すならどうすればいいか、もう一度考えることですね!」

 

全員が驚いてる中、ダイヤさんは総括した。

 

「はい・・・」

 

自分たちはただ目の前の順位を見て、落胆するしかなかった。

 

もう一度方向性を考える必要がありそうだ。

 

 

 

「失敗したな~。確かにダイヤさんの言うとおりだね。こんなことでμ’sになりたいなんて失礼だよね。」

 

別に悪くなかったと思うが、一体何がダメだったのだろう?

 

アイデアとしては良い線行ってる。結果、一時期ではあったものの順位が跳ね上がった。

 

う~ん分からん。何を言ったら良いか・・・

 

「千歌さんが悪いわけじゃないです。」

 

ルビィちゃんがフォローを入れる。

 

「そうよ・・・いけなかったのは堕天使。やっぱり高校生にもなって通じないよ。」

 

「善子ちゃん・・・」

 

「なんかスッキリした。明日から今度こそ普通の高校生になれそう。」

 

「じゃあスクールアイドルは?」

 

「やめとく。迷惑かけそうだし・・・。少しの間だけど堕天使に付き合ってくれてありがと。楽しかったよ。」

 

去って行くその背中からはどこか寂しさが感じられた。

 

あいつもあいつなりの形で輝きたかったんだろう。自分には何かがあると信じて。

 

「千歌達はこのままで良いのか?」

 

「え?」

 

「善子ちゃんに入って欲しいんだろ?」

 

「うん!」

 

「よし!じゃあみんなで明日スカウトに行きますか!」

 

 

 

翌日・・・

 

皆よりも少し早く善子ちゃんの家に来た。

 

ん?なんで家を知ってるかって?色々あったんだよ。

 

「お!いたいた。おはよう善子ちゃん。」

 

「!!」

 

「先輩、こんなところで何してるんですか?というかここ私の家・・・」

 

「まぁまぁ。少し話をしないか?」

 

「話?ですか・・」

 

「単刀直入に言おう。善子ちゃん、スクールアイドルにならないか?」

 

「・・・昨日も言いましたけど、皆に迷惑かけそうだし、何より堕天使なんて・・・」

 

「善子ちゃんはAqoursのファーストライブを見に来ていたよね?」

 

「なんでそれを知ってるんですか。」

 

「会場に似たような子がいたんだよ。ところで善子ちゃんはあの時のあいつらを見てどう思ったんだ?」

 

「・・・・・・」

 

「多分だけど、羨ましかったんじゃないかな。ステージの上で輝いてたあいつらが。だから千歌の最初の提案も受け入れてくれた。」

 

「確かに少し良いなとは思いました。でもやっぱりアイドルは・・・」

 

「少しは信じてみてもいいんじゃないか?あいつらのこと。あいつらならきっとどんな善子ちゃんでも受け入れてくれる。たとえそれが堕天使であっても。そしてきっと素晴らしい物を見せてくれる。そう確信したから曜も梨子もルビィちゃんも花丸ちゃんも入ってくれた。自分もマネージャーを引き受けた。」

 

「・・・少し考えてみます。ありがとうございました。」

 

「どういたしまして。じゃあ待ってるよ。」

 

さて、ここからはあいつらの出番だな。

 

「瑠惟君~!なんで先に行ったの~」

 

皆そろって準備は整ってるな。

 

「悪い千歌。少しやることがあってな。じゃあ千歌、後は頼んだ。」

 

「うん!まかせて!」

 

あとは千歌達が善子ちゃんの背中を押してあげるんだ。

 

「堕天使ヨハネちゃん。」

 

「「「「「スクールアイドルに入りませんか?」」」」」

 

「・・・・・」

 

「ううん。入ってください!Aqoursに!堕天使ヨハネとして。」

 

「昨日話したでしょ。もう・・・」

 

「良いんだよ!堕天使で!自分が好きならそれでいいんだよ!」

 

「ダメよ。」

 

そう言って善子ちゃんは駆けだした。

 

「待って!」

 

千歌達もすかさず後を追いかけた。

 

ー瑠惟sideoutー

 

ー善子side inー

 

「ハァハァハァハァ」

 

まだ追いかけてくるの?

 

「私ね、μ’sがどうして伝説を作れたのか、どうしてスクールアイドルがそこまで繋がってきたのか考えてみて分かったんだ。」

 

「もういい加減にして~!」

 

「ステージの上で自分の好きを迷わず見せることなんだよ。」

 

 

『羨ましかったんじゃないかな。ステージの上で輝いていたあいつらが。』

 

 

「お客さんにどう思われるかとか、人気がどうとかじゃない。自分が好きな姿を、輝いている姿を見せることなんだよ。だから善子ちゃんは捨てちゃダメなんだよ。自分が堕天使を好きな限り。」

 

 

『あいつらならきっとどんな姿の善子ちゃんでも受け入れてくれる。たとえそれが堕天使であっても。』

 

ここなら。Aqoursでなら・・・

 

私は堕天使のままでいい・・・

 

私が堕天使を好きな限り。

 

あの人達を信じてみてもいいわよね?

 

「いいの?変なこと言うわよ。」

 

「いいよ。」

 

この人達となら・・・

 

「時々儀式とかするかも。」

 

「その位我慢するわ。」

 

きっと・・・

 

「リトルデーモンになれって言うかも!」

 

「それは・・・でも、嫌だったら嫌だって言う!」

 

なれるかも・・・

 

「だから・・・」

 

私は差し伸べられた千歌さんの手を取った。

 

瑠惟さんの方を見ると彼はにっこりと笑っていた。

 

私やってみるわスクールアイドル。堕天使ヨハネとして。

 

ー善子sideoutー

 

ー瑠惟side inー

 

こうしてAqoursに新たなメンバーが加わった。

 

でも千歌たちはまだ知らなかった。

 

浦の星女学院がまさにかつての音ノ木坂のような状況になろうとしていたことを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まずは最後まで読んでくださりありがとうございます。

やっぱり善子は書くのが難しいです。(笑)

できるだけそれっぽくしてみましたがどうでしたでしょうか?

次は確か「夜空で夢を照らしたい」の話でしたよね。

なるべく早く書こうと思いますのでよろしくお願いします。

ではまた次回・・・



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コミュ障ヘタレとAqoursの想い

どうも皆さん。まきパリです。

この頃かなり暑くなってきましたね。私も外に出るのが嫌になってしまうくらいです。

それと新曲を初めて聴きましたが、神曲だと思いました(笑)

毎度ながら駄文、誤字、脱字があるかもしれませんがよろしくお願いします。

ではどうぞ。


善子ちゃんが新たに加わり、徐々にスクールアイドルとして成長していくAqours。

 

今日もいつも通りの学校生活を過ごしていたのだが・・・ 

 

ピーンポーンパーンポーン

 

「二年、西王瑠惟さん至急理事長室まで。繰り返します・・・」

 

鞠莉さんかな?一体どうしたのだろうか。

 

「瑠惟君、呼ばれたよ。」

 

「あぁ、行ってくるよ。」

 

鞠莉さんからの呼び出しとはただ事ではない気がするな。

 

コンコン

 

「失礼します。」

 

理事長室には鞠莉さんに加えダイヤさんもいた。

 

「Oh 瑠惟、急に呼び出してごめんね。」

 

「鞠莉さん、あのことは本当ですの?」

 

「何かあったんですか?」

 

「あなた達には私から直接話しておこうと思ってね。実は・・・この浦の星女学院は沼津の高校と統廃合するかもしれないの。」

 

「え!?それは本当ですか?つまりこの学校は廃校に・・・」

 

「今のところはね。でもまだ決定ではないの。私がまだ待って欲しいと強く言っているからね。」

 

「鞠莉さんが?」

 

「何のために私が理事長になったと思っているの。この学校は無くさない。」

 

「私にとってどこよりも大事な場所なの。」

 

鞠莉さんがそう言っているのもきっとダイヤさんや果南さんが大切だから。

 

何か出来ることはないのだろうか・・・

 

「方法はあるんですの?入学希望者はこの二年、どんどん減っているのですよ。」

 

確かに、三年生に比べて二年生や一年生はかなり少ないように感じる。いきなり数を急激に増やすのは難しいだろう。

 

「だからスクールアイドルが必要なの。あの時のことはまだ終わったとは思ってないわ。」

 

「私は私のやり方で廃校を阻止しますわ。」

 

そう言ってダイヤさんは理事長室を出て行った。

 

「瑠惟も気づいているんでしょ。私たちがAqoursだったこと。」

 

さすがは鞠莉さん。なんでもお見通しだな。

 

「はい。覚えていますよ。いつかまた見たいです。」

 

「瑠惟は本当に優しいのね。とにかくあの子達をよろしくね。応援してるわ。」

 

「あと、何かあったらいつでも相談に来なさい。待ってるから。」

 

「ありがとうございます。ではこれで・・・」

 

 

部室に行くと統廃合のことを話していた。

 

「瑠惟君!浦の星が無くなるかもだって!」

 

「さっき理事長から聞いた。どうやら本当らしいな。」

 

それにしても千歌の奴はなんで嬉しそうなんだ?自分の母校が無くなるかもしれないんだぞ。

 

「そうだよ!廃校ってことは学校のピンチだって事だよね!?」

 

「千歌ちゃん、心なしか嬉しそうに見えるけど。」

 

「だってあの音ノ木坂と一緒だよ!」

 

「そうは言うが、この学校つぶれるかもなんだぞ。それでもいいのか?」

 

「今、私たちはあのμ’sと一緒なんだよ!奇跡だよ!」

 

「お前はバカか。確かにμ’sは廃校の危機を救ったが、そう簡単にうまくいくとは思えないな。」

 

「それでも廃校の危機が学校に迫っていると分かった以上Aqoursは学校を救うために行動します!」

 

そうだな。全員異論は無いようだし、ここで動かなきゃスクールアイドルの名に恥じるな。

 

「それで千歌、具体的に何をするんだ?」

 

「・・・・え?」

 

どうやら何も考えてなかったようです。

 

 

 

「内浦のPVを撮る?」

 

「そう。東京と違って外の人はこの町の事知らないでしょ。だからこの町のいいところを伝えようと思って。」

 

「なるほど・・・いいんじゃないか?東京とはまた違った部分を伝えるのはいろんな人に興味をもってもらえそうだな。皆はどう思う?」

 

「私は良いと思うよ。面白そうだし。」

 

曜は賛成してくれた。

 

「私もいいと思うけど案外難しい物よこういうのって。」

 

そういえば善子ちゃんはネットで配信をしていたんだっけ。経験者は分かってるな。

 

「とにかくやってみようよ!μ’sもやってたみたいだし。」

 

 

 

 

千歌の提案で内浦のいいところを探してビデオに収めていったのだが・・・

 

「う~ん。いまいちピンと来ないな。」

 

当初は千歌も簡単だと思っていたのだが地元のアピールポイントを見つけるのは案外難しかったようだ。

 

今ここに居るのは自分、千歌、梨子の三人だ。他の皆はもうすでに帰ってしまった。

 

「意外と難しいんだな~。いいところを伝えるのって。」

 

千歌がふとため息を漏らす。

 

「住んでみないと分からない良さもたくさんあるし。」

 

「そうだな。自分もここで暮らし始めてからこの町が何となくだけどいいところだなって思い始めたんだ。」

 

「私もよ。千歌ちゃんや瑠惟君、Aqoursの皆に出会ってこの学校が好きになった。こんな毎日が楽しいと感じてる。」

 

「瑠惟君、梨子ちゃん・・・私ね、この学校が好きなんだ。もちろん瑠惟君や梨子ちゃん、Aqoursの皆、それにこの町の人も。だから無くなっちゃダメなんだ。」

 

「あれ?どうしたの瑠惟君?顔が赤いよ。」

 

「な、なんでもない///」

 

さっきの言葉、好きなんて言うから少しドキッとしたじゃないか。男子はすぐに勘違いするからやめてほしい。

 

「うふふっ。」

 

「なんで笑ってるんだ梨子。」

 

「やっぱり変な人達だなって思ったの。」

 

「なんだそれ・・・」

 

「まぁもうこんな時間だし、家に帰ろうか。」

 

「うん!私お腹空いたよ・・・」

 

「もうちょっと我慢しろ。じゃあな梨子。また明日。」

 

「ええ。さようなら。また明日ね。」

 

この先、まだまだ険しい道が続くだろうがあきらめるなよ千歌。その日は絶対に来るから。

 

 

 

翌日、ある程度仕上がったPVを鞠莉さんに見てもらったのだが、

 

鞠莉さん曰く、どうも自分たちはこの学校と町の良さが分かってないらしい。

 

その際、鞠莉さんにこの学校と町の良さを知りたいかと聞かれたが千歌は断った。

 

千歌は聞いちゃダメな気がする、自分たちで見つけることが大事なんだと言っていた。

 

全く、千歌らしいな。

 

それで自分は何をしているかというと現在理事長室で鞠莉さんの仕事の手伝いをしている。

 

「なんで鞠莉さんは千歌達にあんなことを言ったんですか?」

 

「あんなこともなにも思ったことを言っただけよ。それに瑠惟も気づいてるんでしょ。私がどうして欲しいかを。」

 

「まぁ何となくですけどね。多分鞠莉さんは町や学校のいいところはなにも観光スポットや景色だけじゃないって言いたかったんですよね?」

 

千歌達は本当に大事なところに気づいていない。でもそれを千歌達自身で気づけるなら・・・

 

「さすが瑠惟ね。ホントあなたは私好みのボーイね!」

 

「たまたまですよ。」

 

すると鞠莉さんは昔を思い出したかのようにつぶやいた。

 

「あの子達を導いてあげてね。私達みたいにならないように。」

 

「鞠莉さん・・・でも自分はあの時のAqoursがまたステージで踊ってくれるのを待っていますよ。今度は新しいメンバーも一緒でね。だから鞠莉さん達が帰ってこれるような場所を作っておきますから。」

 

「そうね!私も頑張ってダイヤ達を戻してみせるわ!」

 

鞠莉さん、あなたは本当に気づいているんですか?なぜあの時果南さん達が歌わなかったのかを。

 

 

十千万に帰るとAqoursの皆が集まっていた。

 

「みんな来ていたのか。」

 

「あっおかえり瑠惟君。結構時間かかったね。」

 

千歌が部屋から出てきた。

 

「あぁ、手伝うことが多くてな。それより他の皆は帰らなくていいのか?明日は朝早いぞ。」

 

「明日は何かあるの?」

 

梨子が訪ねてくる。

 

「え?知らないのか?明日は海開きだぞ。」

 

「へ~そうなんだ。私は今年引っ越してきたから初めてだな。瑠惟君はやったことあるの?」

 

「何回か千歌達と一緒にやったぞ。あれは起きるのが本当にしんどい。」

 

あ~誰か起こしてくれないかな~。

 

「瑠惟君、明日はちゃんと起きてね。浦の星の生徒は集合時間早いよ。」

 

「なんてこった。じゃあ千歌が起こしてくれ。」

 

「もうっ、しょうがないな~。」

 

ちゃんと起こしてくれる千歌さんマジ天使。

 

「じゃあみんなまた明日ね!」

 

自分も早く寝よう・・・・

 

 

 

翌日・・・

 

「おはよう千歌ちゃん、瑠惟君。」

 

「おはよう曜ちゃん。」

 

「おは曜。もうみんな来てるのか?」

 

「うん。町の人達も学校の人達も来てるよ。ほら!」

 

浜辺を見るとかなりたくさんの人が来ていた。

 

こんな朝早くからすごいな。さすがは内浦だな。

 

そう感心していると隣で

 

「こんなにたくさん人が居たんだ。」

 

いつの間にか来ていた梨子がそう言った。

 

梨子にとってこの海開きは初めてだから驚くだろうな。

 

そうしてゴミ拾いをやろうとすると・・・

 

「!!」

 

梨子が何か気づいたようだ。

 

「これなんじゃないかな。この町や学校のいいところって。」

 

求めていた答えに到達してくれたようだ。

 

「そうだ!」

 

千歌が突然駆けだした。みんなが不思議そうに千歌の方を向いた。そして・・・

 

「あの!みなさん!私たち浦の星女学院でスクールアイドルをやっているAqoursです!私たちは学校を残すために。生徒をここに集めるために。みなさんに協力してほしいことがあります!みんなの気持ちを形にする為に・・・」

 

千歌の提案したことそれは・・・

 

「ランタンを千個作って全部飛ばす!?」

 

正気なのかい?もし本当にやるんだったらかなり時間がかかるし、成功する保証はないだろう。

 

「そう!この町だから出来ること、この町の人達だから出来ること。私なりに考えたんだけどそれが一番いいんじゃないかなって思ったの!」

 

どうやら千歌は本気のようだな。それもそうか千歌は失敗したときのことなんて考えてないからな。絶対に成功させてやるって気持ちしか伝わってこないな。それならやってやろうじゃありませんか。誰も見たことがない最高のPVを作ろうじゃないか。

 

「みんなはどう思う?」

 

全員、その目はやる気に満ちていた。

 

「みんな賛成みたいだよ。千歌ちゃん。」

 

「うん!じゃあいくよ~!」

 

『Aqoursサンシャイン!』

 

こうしてAqoursの新たな試みが始まった。

 

ランタン作りは思った通り最初は苦戦していたが、途中学校の皆や志満さん達の協力もあり、予定よりもかなり早くランタンは全て完成した。

 

そして本番の時。

 

あとは成功するのを祈るのみか・・・

 

「せーのっ!」

 

頼む。成功してくれ。

 

「わぁ~!きれ~い!」

 

良かった。うまくいってくれたみたいだ。

 

並べられたランタンは見事に夜空へと飛んでいった。

 

「みんな、始めるぞ!Aqoursの想いをこのランタンと歌に乗せてみんなに届けよう!」

 

新たなメンバーが加わって初めての曲

 

『夢で夜空を照らしたい』

 

空に舞うランタン達はみんなの想いを乗せていってくれるだろう。

 

Aqoursならきっとこの想いを伝えられるよ。学校の皆や町の人、何よりこの場所がが大好きだって言う想いを。

 

追いかけていこう。そしていつか憧れのμ’sよりもすごい景色を見よう。

 

千歌達ならきっと誰よりもすごいことができると信じてるから・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まず最後まで読んでくださりありがとうございます。

どうでしたでしょうか?

アニメでも見ましたが、あのランタンはすごいと思いました。実際に見てみたいですね。

あと、『コミュ障ヘタレと9人のアイドル』の番外編も少しずつ書いているのでお楽しみに。

それではまた次回・・・





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コミュ障ヘタレ in Tokyo with Aqours

皆さん、こんにちは。まきパリです。

出来るだけ早く投稿しようとしていますが、遅くなることが多々ありました。

申し訳ございません。

さて、今回はついにAqoursが東京に行きます。

主人公がまさかの人と会うかも?

毎度ながら駄文、誤字、脱字があるかもしれませんがよろしくお願いします。

ではどうぞ・・・


学校の危機を知った千歌達はこの町のいいところを町の人達と協力してPVという形に収めることができ、本格的に学校を存続させる為の第一歩を踏み出した。

 

そして今日、千歌達にまたとないチャンスが訪れようとしていた。

 

蝉が鳴き出し衣替えの季節となった頃、今日もいつも通りAqoursは練習を始めようとしていた。

 

「何!?99位だと!?」

 

「はい。この前撮ったPVがかなり人気があって、評判になってるんです。」

 

どうやら先日撮影したPVのおかげでAqoursのランキングが99位上がったようだ。

 

「それって全国で5000以上いるスクールアイドルの中でだよね!?」

 

「それにランキング上昇率では1位なんです!」

 

まさかここまで早い段階で100位以内に来るとは思わなかった。

 

Aqoursの皆と喜びを分かち合っていると・・・

 

「あっ、メールが来ました。」

 

「誰からだろう?」

 

「え~と、『浦の星女学院 アイドル部 Aqoursのみなさん、東京スクールアイドルワールド運営委員会です。 このたび【東京スクールアイドルワールド】なるイベントを開催することになりました。 つきましては、昨今、注目されているスクールアイドルとしてご参加いただきたく、ご案内の連絡をお送りしました。』だそうです。」

 

「・・・・・」

 

え?今、東京って言ったよな?それにこのイベントは二年前の・・・

 

「「「「「「「東京だ~!」」」」」」」

 

つまりこれは東京で歌ってくださいって事だよな。

 

そこまで注目されているとは・・・

 

もしかしたら本当にいけるんじゃないか?スクールアイドルの頂点。

 

「すご~い!東京からだよ!私たち人気なんだよ!」

 

「あぁそうだな千歌。」

 

「東京に行けるズラか~。」

 

「やっと私の堕天使たる魅力が認められたようね。」

 

「千歌ちゃん、このイベントに出るよね?」

 

「もちろんだよ!曜ちゃん!あのμ’sがいた東京で歌えるんだよ!」

 

「そうね。こんなチャンス滅多にないわよね。」

 

そうだ。このチャンスを生かさない手はない。

 

「じゃあ早速準備だな。鞠莉さんに報告してくるよ。」

 

「よろしくね~。」

 

鞠莉さんはこれを聞いてどう思うのだろうか?

 

 

 

 

ー理事長室ー

 

「失礼します。」

 

「あら瑠惟じゃない。どうしたの?」

 

「実は・・・・」

 

大体のことを鞠莉さんに説明した。

 

「鞠莉さんはどう思いますか?」

 

「どうって言われても、断る理由がないわね。行ってきなさい。私たちが乗り越えられなかった壁を乗り越えてくれると期待しているわ。」

 

乗り越えられなかった壁か・・・

 

「ありがとうございます。では行ってきますね。」

 

そう言って部屋を出ようとするとダイヤさんが慌てた様子で入ってきた。

 

「どういうつもりですの鞠莉さん!」

 

「ダイヤ。そんなに慌ててどうしたの?」

 

「あの子達を今東京に行かせることがどういうことか分かってるんですの?」

 

ダイヤさんはやっぱりあの時のようになることを・・・

 

「ダイヤが本気で止めれば、諦めるかもしれないわよ。」

 

「さっきも瑠惟に言ったけど、私はあの子達が壁を乗り越えてくれることを期待しているわ。ダイヤもそう思ってるんじゃない?」

 

「もし出来なかったらどうなるかを十分知っているでしょ。取り返しがつかないことになるかもしれないと。瑠惟さんもあの日そこに居たのですから分かってますわよね?」

 

確かにもし失敗すればダイヤさんの言う通り取り返しがつかないことになる可能性がある。分かっている、そんなことはあの日から分かっている。でも自分は千歌達を、Aqoursを信じてるから。

 

「ダイヤさん、自分はAqoursの可能性を信じます。ここで背中を押してやらないとマネージャーとしての立場がないですよ。あいつらは本気なんです。学校を救おうと頑張ってる。何より約束したんです。いつかスクールアイドルの頂点になると。」

 

「全く、そこまで言うのなら私は止めませんわ。・・・瑠惟さん、ルビィ達をよろしくお願いしますね。何かあったときに彼女たちを助けられるのはあなたしかいないのですから。」

 

「はい。分かりました。では行ってきます。」

 

絶対に成功させてやるからな。あの日のようにはさせない。

 

 

 

出発当日・・・

 

「んっ・・・」

 

「瑠惟く~ん、朝だよ。ほら起きて。」

 

もう朝になったのか。

 

「おはよう千歌って、なんだその格好?」

 

「どう?似合うでしょ?」

 

どこから見ればその超絶ださい服装を似合うと言えるんですかね。

 

「見てて恥ずかしいから別のに着替えてこい。」

 

「え~。東京らしいと思ったのに・・・」

 

先行きがとても不安である。

 

集合場所の沼津の駅までは志満さんに送ってもらえたので集合時間には間に合ったな。

 

駅に着くとクラスの子達が見送りに来てくれていた。

 

「瑠惟君、千歌達をよろしくね。」

 

「わざわざ来てくれてありがとう。じゃあ行ってくるよ。」

 

「ハイこれ。」

 

「ありがとう。」

 

クラスメートから差し入れだ。

 

「それ食べて、浦女のすごいとこ見せてやってね!」

 

良い人達を友達に持ったな千歌。

 

さて行きますか。懐かしの東京に。

 

 

 

東京までのルートはある程度覚えていたので何事もなく着くことが出来たのだが・・・

 

「みんなはどこに行ったんだ?」

 

少し整理しよう。確か秋葉原についてトイレに行って戻ってきたらみんながいなくなっていた。多分色々なところに散らばっていったんだろうな。

 

とりあえず梨子に電話するか。

 

「瑠惟君、今どこに居るの!?」

 

良かった。繋がってくれた。

 

「駅のところだけど、他のみんなは?」

 

「それが、何人かはぐれちゃって、一応電話は繋がったから大丈夫だと思うけど。」

 

「そうか。じゃあ梨子はみんなと合流してくれ。こっちはあとでまた連絡するよ。」

 

「わかったわ。それじゃあまた後で。」

 

これで安心だな。

 

そうだな・・・穂むらでまんじゅうでも買っていこう。

 

もしかしたらあの人が居るかもしれないし。

 

 

ー穂むらー

 

よし、着いたぞ。会えるかな~。

 

「いらっしゃいませ!」

 

店に入ると懐かしい人が迎えてくれた。

 

「あれ!?瑠惟君だ!久しぶりだね。帰ってきてたんだね。」

 

「お久しぶりです。穗乃果さん。」

 

そう。この人こそあのμ’sのリーダーだった、高坂穗乃果さんである。

 

この辺りに住んでいた頃によく店に買いに来ていたので、仲良くなったのである。

 

穗乃果さんは現在家業である和菓子屋さんを継いでいる。

 

「今日はどうしたの?」

 

「ちょっと用事があってですね。」

 

「とにかく、ゆっくりしていってね!」

 

いつ見てもこの人からは温かいオーラがあふれ出している。

 

「穗乃果さん、少し時間ありますか?相談があって。」

 

「え~と、もう少し待っててね。後もう少しで休憩に入るから。」

 

「すいません。」

 

しばらくしてから穗乃果さんが出てきた。

 

「お待たせ。それで相談ってなに?」

 

この人は一体どんな思いでスクールアイドルを・・・

 

「穗乃果さんにとってμ’sって何ですか?」

 

「・・・・穗乃果はね最初、学校を救うためにスクールアイドルを始めたの。最初はうまくいくのもだと思ってた。でもファーストライブで現実を知った。それでも穗乃果はスクールアイドルを続けたいと思った。誰も見向きもしてくれないかもしれない。応援なんて全然もらえないかもしれない。でも一生懸命頑張って届けたかったの、あの時、あそこにいた穗乃果達の思いを。」

 

「最初は三人だったんですよね?」

 

「そうだよ。でもそこから段々とメンバーが増えてあの九人が集まった。今思えばあれは運命だったのかな。」

 

「そこから私たちは学校を救うため、ラブライブで優勝するために毎日頑張ったの。」

 

まるで今のAqoursみたいだな。

 

「途中でいろんな事があってμ’sが解散しそうになったときもあった。」

 

「そんなことがあったなんて・・・」

 

「でもみんなの気持ちは一つだったの。歌うのが好き、ダンスが好き、何よりみんなと一緒に居る時間が好きだった。諦めずにみんなと頑張った。そして最後にはラブライブで優勝できたの。」

 

「穗乃果にとってμ’sはね、穗乃果の人生を変えてくれた大切な物なんだ。μ’sがいたから学校を救えた。μ’sがいたからあの九人が出会った。μ’sがいたからやり遂げることが出来たんだ。」

 

「こんな感じかな。ごめんね。あまり参考になること言えなくて。」

 

「そんなことありませんよ。とても勉強になりました。ありがとうございました。」

 

さすがは穗乃果さんだ。言うこと全てが素晴らしい。

 

あっ、そういえば。

 

「穗乃果さん。『ほむまん』ありますか?」

 

「あるよ!毎度あり!」

 

このにおい懐かしいな。

 

「なんか色々ありがとうございました。では行きますね。」

 

「また来てね~。今度は他のメンバーも呼ぶから。」

 

「バイバ~イ!」

 

穗乃果さんの声を背に店を後にした。

 

 

 

その後千歌達と合流できたので神田明神に行こうということになった。

 

「ここだ。」

 

着いたようだな。

 

「これがμ’sがいつも練習していたっていう階段。」

 

μ’sのファンのルビィちゃんは嬉しいだろうな。

 

「登ってみない?」

 

千歌は楽しみにしてたからな。

 

「そうだな。登ろうぜみんなで。」

 

そう言うと千歌達がいっせいに登りだした。

 

「全く、元気な奴らだな。」

 

ここが穗乃果さん達の思い出の場所・・・

 

自分たちもとうとうこの場所に来たんだな・・・

 

上まで登るとそこにはAqoursの他に制服を着た二人組が居た。

 

「・・・・・」

 

なんだこいつらは、なんというかあのA-RISEにも似たこの雰囲気は。

 

「あなた達もしかしてAqoursの皆さんですか?」

 

もしかしてファンなのかな?

 

「どうして・・・」

 

「pv見ました。素晴らしかったです。」

 

「あ、ありがとうございます。」

 

なんか照れるな。こう他人から褒められると。

 

「もしかして・・・明日のイベントでいらしたんですか?」

 

まさかこの二人もイベントに?

 

「そうですか。楽しみにしてます。」

 

二人は去り際に自分の方に来た。

 

「瑠惟さんですよね?」

 

「!!」

 

なぜ、知っているんだ。

 

「そ、そうですけど。」

 

「そんなに緊張なさらなくても大丈夫ですよ。」

 

「あなたの噂は聞いてます。Aqoursに謎のマネージャーがいるって。」

 

は?確かにあまり公表してはいないが、噂になっているなんて。

 

「私たち明日のイベントに出演するんです。だから見ててくださいね。」

 

この二人もスクールアイドル?

 

「は、はい。」

 

「ではまた明日お会いしましょう。」

 

たくさんの謎を残し二人は神社から消えていった。

 

何だったんだあの二人は。

 

 

 

その後梨子が手配してくれていた旅館に帰った。さすがにみんなと同じ部屋に泊まるわけにはいかないので、部屋を別で用意してもらった。

 

「ほんとに同じ部屋じゃなくていいの?」

 

「大丈夫だ千歌。それにこれ以上人数が増えたら部屋も狭いだろ?」

 

「そうだけど・・・」

 

「とにかく明日は大事なイベントだから早く寝ること。」

 

「は~い。」

 

千歌は部屋に帰っていった。

 

さてそろそろ寝ようかな。

 

 

 

夜中にふと目が覚めた。

 

少し歩こうかな。

 

外に行こうと部屋を出ると廊下に人影が見えた。

 

あれは・・・

 

「梨子。」

 

「!!」

 

おっとびっくりさせたかな。

 

「瑠惟君?」

 

「ごめんな。廊下に一人でいたからつい。それでどうしたんだこんな時間に?」

 

「少し眠れなくてね。外の空気でも吸おうかなって。」

 

梨子・・・

 

「外でも歩かないか?」

 

「え?」

 

梨子と散歩をすることになった。

 

二人は旅館を出て神社の方へと歩いている。

 

すると梨子が口を開いた。

 

「さっきね千歌ちゃんに音ノ木坂に行ってみないか誘われたんだけど断っちゃって。」

 

「別に行っても良かったんじゃないか?」

 

「そうだよね。でも、まだ私はあそこに戻るべきじゃないって思ったの。東京から出て内浦に来て、新しい何かがつかめるんじゃないかって思ってたけど私はまだ何もしていない。」

 

「でも海の音は聞けたんじゃないのか?」

 

「あれは瑠惟君や千歌ちゃん達のおかげで聞けたから。私自身で何かを見つけないといけないの。」

 

「そんなに気負いしなくていいんじゃないか。確かに梨子はまだ何もつかめていないかもしれない。でも、スクールアイドルを続けたら、あいつらと一緒に頑張っているときっと何か見えてくると思うよ。」

 

「うん。なんか心が軽くなった気がする。ありがとね。さすがはマネージャーだね。」

 

「部員のメンタルケアも仕事だからな。」

 

話をしているうちに神社に着いた。

 

もちろんだが辺りには二人以外誰も居ない。

 

「じゃあ明日の成功を願って。」

 

「私も。」

 

みんな、明日は精一杯輝いてこい。

 

「じゃあ帰ろう。大事なライブもあるし。」

 

「そうだな。」

 

「私ねなぜか瑠惟君と居るとね安心するの。」

 

「///」

 

突然何を言い出すんですか梨子さん。

 

勘違いしちゃいますよ。

 

「ふふっ、照れてるの?可愛い。」

 

「・・・・」

 

「いつもありがとうね。私たちを支えてくれて。」

 

「そんなに特別なことはしていないよ。」

 

「瑠惟君は私たちの知らないところでも私たちのために動いてくれてるの知ってるんだよ。」

 

「明日、私たちのステージ見ててね。ううん見て欲しいの。私たちの成果を。」

 

「あぁ見せてくれ。」

 

「おっ旅館に着いたな。じゃあおやすみ梨子。」

 

「おやすみ瑠惟君。」

 

楽しみにしてるからな。

 

 

 

翌日・・・

 

ーイベント会場ー

 

千歌達は先に会場入りしているので今は一人である。

 

それにしても・・・

 

ここに来るのは二年ぶりだな。

 

あの日のようなことが起こらないだろうか・・・

 

いや、Aqoursなら大丈夫だ。信じよう彼女たちを。

 

そういえば関係者席ってどこなんだろ?

 

あの係員さんに聞いてみよう。

 

「あのすいません。関係者席ってどこですか?」

 

「ん?あなたマネージャーさんかなにか?」

 

「そうですけど。」

 

「あっ!思い出した。あなたAqoursのマネージャーさんだったね。」

 

「確か事前に立ち入り許可書を発行してもらっているはずなんですけど。」

 

「え~と、これね。」

 

「ありがとうございます。」

 

「関係者席はあっちだからね。あと会場のお客さんの投票で出場するスクールアイドルのランキングを決めることになったの。もちろんマネージャーには投票権は無いよ。」

 

「そ、そうですか。」

 

ランキングか・・・これがあいつらにプラスに作用するといいんだが。

 

 

 

イベント開始にはギリギリ間に合ったみたいなのでパンフレットを読んでいた。

 

Aqoursは二番目、前座といったところか。まぁこれは仕方ないだろう。

 

で、一番目は『Saint Snow』か。一体どんなグループなんだろう。

 

すると一番目のグループが出てきた。

 

しかし出てきたのは予期せぬ人物だった。

 

「え?」

 

自分は目を疑った。なぜなら『Saint Snow』のメンバーは昨日神社で会ったあの二人組だったのだ。

 

あの二人、イベントに出るとは言っていたがまさかこのグループだったとは。

 

そして二人の曲が始まった。

 

さぁ、お手並み拝見と行きますか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




まず最後まで読んでくださりありがとうございます。

今回、作者の勝手な判断であの人を登場させましたが、物語の進行上、差し支えは無いようにしましたのでご安心を。今度からいろんな場面で主人公とあのグループを絡ませていこうと思っております。

ではまた次回・・・

評価、感想等お待ちしております。


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コミュ障ヘタレと千歌のキモチ

まず、何も言わずに期間を空けてしまい申し訳ございません。
言い訳としては受験勉強が大変忙しくなり両立ができませんでした。
でも、一段落したのでぼちぼち続けていこうと思います。
というわけでよろしくお願いします。
番外編はもうすぐ投稿します。


前回のコミュ障ヘタレ。人気が出てきたAqoursたち。そんな時、東京のスクールアイドルのイベントの誘いがきた。しかし、そのイベントは2年前に瑠惟が見に行ったのと同じイベントであった。心配する瑠惟をよそに意気込むAqoursたち。そこで出会ったのは謎多きグループ『Saint Snow』彼女たちの実力とは・・・

 

Saint Snow ・・・ 正直少し疑っていたが、それは間違いだ。この子達は本物だ。

 

彼女たちのパフォーマンス、それは圧巻の一言だった。

 

他のグループもラブライブの上位グループなだけあって相当なものだった。

 

Aqoursも本来の実力以上を出せたが・・・

 

イベント終了後に運営さんから連絡があった。

 

運営「え~とマネージャーさん、これ今回の投票の結果ね。」

 

そういえば投票をするって言ってたな。どうなったんだろうか。

 

「ありがとうございます。」

 

「正直、渡すかどうか考えたけど出場するグループには渡すようにしてるから。じゃあお疲れ様で~す。」

 

渡すかどうかって、一体どういう意味なんだ?

 

「見てみようよ。」

 

「あ、あぁ。」

 

なんだろうこの感じ。なんとなく嫌な予感がする。

 

そう、2年前に感じたのと同じだ。

 

恐る恐る中身を確認する。

 

結果を見るとやはり上位には名の知れたスクールアイドル達がいた。

 

「Saint Snowは9位だったんだ。」

 

「あともう少しで入賞していたんだね。」

 

やはり彼女たちはすごい。パフォーマンス見てそう感じた。

 

「Aqoursはどこずら?」

 

「あっ・・・・」

 

そこには・・・・・・

 

「30位?」

 

「30組中で30位って・・・」

 

「ビリってこと!?」

 

『まぁでもよく頑張ったと思うよ。』と言うつもりだった。

 

得票数を見るまでは。

 

「得票数はどのくらい?」

 

「え~と。」

 

「!!」

 

得票数を見た千歌はその目を疑った。

 

なぜなら・・・

 

「0。」

 

「私たちに入れた人、一人もいなかったってこと?」

 

「千歌ちゃん・・・」

 

千歌はその場で何度も結果の書かれた紙を見返していた。

 

何かの間違いなんじゃないかって。

 

何度も何度も・・・

 

自分はただそんな彼女達を見ているだけしかできなかった。

 

自分にはこの間が何時間もの出来事のように感じられた。

 

そんな錯覚から引き戻したのはある一言だった。

 

「お疲れ様でした。」

 

そこにはSaint Snowがいた。

 

「Saint Snowさん。」

 

「素敵な歌でとても良いパフォーマンスだったと思いました。ただ、もしμ’sのようにラブライブを目指しているなら・・・諦めた方が良いかもしれません。」

 

「えっ・・・」

 

するともう一人の子が言ったのは・・・

 

「馬鹿にしないで。ラブライブは遊びじゃない!」

 

その目には涙が見えた。

 

 

 

『馬鹿にしないで。』か・・・

 

彼女達の言葉は沼津に帰る電車の中でもずっと頭に残っていた。

 

電車の中はとても女子高生がいるとは思えないぐらい落ち込んだ雰囲気に包まれていた。

 

何か言わなければ。

 

そう思って言いかけたとたんに千歌が言った。

 

「私は良かったと思うよ。」

 

「千歌ちゃん?」

 

「精一杯やったんだもん。努力して頑張って東京に呼ばれたんだよ。それだけですごいことだと思う。」

 

「だから胸を張っていいと思う。今の私たちの精一杯ができたんだから。」

 

千歌はそう言っているが明らかに様子がおかしい。いつのも千歌じゃない気がした。

 

同じ事を曜も察したのだろうか。彼女は千歌に聞いた。

 

「千歌ちゃんはくやしくないの?」

 

「え?」

 

「くやしくないの?」

 

「ちょっとは悔しいよ。でもみんなであのステージに立てたんだから。私はそれだけで満足だよ。」

 

その言葉を聞いたとたん、考えるよりも先に口が動いた。

 

「千歌、それは本気で言ってるのか!?もし本気でそんなことを言ってるなら・・・。」

 

そこまで言って我に返った。自分が何を言おうとしていたか。

 

それにみんなが驚いた顔でこっちを見ていた。

 

「すまない。取り乱した。忘れてくれ。」

 

自分は早く沼津に着くことを願った。一刻も早くこの空間から逃げたかった。

 

 

 

辺りの日が落ちた頃、自分たちはようやく駅に着いた。

 

改札を出ると学校の子達が出迎えてくれた。

 

みんな千歌達の方に集まりイベントの感想を聞いているようだ。

 

どことなく千歌達の顔が引きつっている。

 

あれだけ期待されていたからな。

 

今回の結果をどう伝えれば・・・

 

「おかえりなさい。」

 

この声は・・・

 

「お姉ちゃん。」

 

ダイヤさんがルビィちゃんを迎えに来たようだ。

 

その声はいつもの威厳のある声では無く、優しさに満ちた声だった。

 

ルビィちゃんはダイヤさんを見て安心したのか泣き崩れてしまった。

 

「よくがんばったわね。」

 

 

ダイヤさんによろしくって頼まれたのに、何をやっていたんだ自分は。

 

自分が不甲斐ないばかりにみんなに負担をかけてしまっていた。

 

絶対にあの日のようにさせないと誓ったじゃないか。

 

あぁいったいどうすれば・・・

 

するとダイヤさんが

 

「少し場所を変えましょう。」

 

ダイヤさんの一言で自分たちは駅を後にした。

 

 

東京であったことをダイヤさんに全部話した。

 

「得票ゼロですか。」

 

「やっぱりそういうことになってしまったのですね。」

 

「すいませんダイヤさん。自分のせいでこんな・・・」

 

「瑠惟君・・・」

 

「瑠惟さん、決してあなたのせいではありませんわ。だから顔をあげて。」

 

「Aqoursがダメだったというわけでもありませんわ。」

 

「スクールアイドルの数が増えすぎてしまったのですわ。」

 

確かに、第一回のラブライブに比べて去年エントリーした数は約10倍にまで増えている。

 

「ここまでスクールアイドルに人気が出たのは・・・」

 

「μ’sやA-RISEの影響ですか?」

 

「その通りです。それに伴い大会のレベルも上がっていった。」

 

「だからあなた達が誰にも支持されなかったのも、私達が歌えなかったのも仕方なかったのです。」

 

「歌えなかった?」

 

ダイヤさん。あの日のことを話すんですね。

 

「二年前、浦の星にはすでにスクールアイドルがいて学校のために動いていたんですわ。そうですよね瑠惟さん。」

 

「え?瑠惟君何か知ってるの?」

 

「少しだけな。」

 

ダイヤさんが話したのは二年前この浦の星にもスクールアイドルがいたこと。そのメンバーがダイヤさん、鞠莉さん、果南さんだったこと。二年前、東京で開催されたイベントで歌えなかったこと。そしてそのまま解散したこと。

 

二年前起こったことそれは大体自分の予想通りだったが一つ気になることがあった。

 

どうして果南さん達は歌えなかったんだ?

 

ダイヤさんは会場の空気に飲まれたといっていたがどこか引っかかる。

 

でも今はそんなことを考えている場合ではないな。

 

先に自分たちの問題をどうにかしないと。

 

このままではマズいことになるかもしれない。

 

とりあえず今日は夜遅いので解散ということにした。

 

 

家に帰った後すぐに寝ようと思ったが、どうしても眠れなかった。

 

すこし歩いてくるか・・・

 

まだ日も昇ってない浜辺は暗く寂しい気分になる。

 

すると海の方に向かって歩く人影が見えた。

 

あれは・・・千歌?

 

こんな時間にどうしたんだ?それに海に入っていったぞ。

「千歌!何してるんだ?こんな時間に。」

 

「え?瑠惟君?」

 

「『え?』じゃねーよ。こんな時間にこんなところいたら風邪ひくぞ。」

 

「うん。ありがとね。・・・私がしっかりしないとね。」

 

「ねぇ、瑠惟君は東京での私たちはどう見えたの?」

 

「どうって、今までで一番良かったと思うよ。」

 

「でもね、それでも私たちは『0』だったんだよ。」

 

千歌・・・

 

「あんなに練習したんだよ。頑張って曲も作ったんだよ。たくさん応援してくれてたんだよ。みんな頑張ってたんだよ。それなのに・・・0だったんだよ!悔しいじゃん!差がすごいあるとか、昔とは違うなんて関係ない!やっぱり私悔しいんだよ・・・」

 

「ちゃんと本当の気持ちが言えるんじゃねぇかよ。」

 

「え?」

 

「帰り道の千歌はどこかおかしいと思っていたんだ。おそらく他のみんなもそう思っていた。だから曜はあんなこと聞いたんだ。」

 

「でも、私が泣いたらみんな落ち込むでしょ。だから・・・」

 

全く、こいつはほんとに千歌なんだな。

 

「やっぱりバカ千歌だな。みんなは千歌の為にスクールアイドルをやってるわけないだろ。あいつら自身で決めたんだ。もちろん自分もそうだ。嘘だと思うなら後ろにいるあいつらを見てみろよ。」

 

「え?」

 

千歌が振り向くとそこにはAqoursが集結していた。

 

「だからさ、千歌は思ったことを口に出していいんだよ。それがリーダーだ。何か困ったことや悩みがあるならもう一人で抱え込まなくていいんだよ。メンバーがそばにいてくれる、もちろんマネージャーもいる。どうしても泣きたいなら泣いてもいいんだよ。自分が受け止めてやる。もちろんみんなもだ。そう約束したから。自分はAqoursといる時間が何よりも大好きで、大切なんだ。千歌もそう思うだろ。みんな気持ちは一つなんだよ。だから一緒に歩いていこう。」

 

「今から0を100にするのは無理だと思う。でも、もしかしたら1にすることは出来るかも。私も知りたいのそれが出来るかどうか。」

 

「梨子はこう言ってるぞ。」

 

「うん!そうだね!私、0からでもやるよ!1を目指して!」

 

『Step 0 to 1』か・・・ここから。0から始めていこう。

 

Aqoursなら、みんなならきっと輝けるよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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コミュ障ヘタレは未熟な彼女達の成長を夢見る

とりあえず早く2期の話が書きたくて仕方ありません。



前回のコミュ障ヘタレ。東京でのイベントで現実を知ったAqours。悔しさを見せない千歌に心配をよせる瑠惟たちは千歌から本当の気持ちを聞いて、0から1という新たな目標に向かって歩き始めた。

 

東京でのイベントから数日が過ぎたある日のこと、スクールアイドル部にある誘いが来る。

 

「沼津の花火大会で歌ってほしい?」

 

「あぁさっきメールで運営からオファーが来たんだ。」

 

「まぁ受けるか受けないかはそっちに任せるよ。一応まだ受けるとは言っていないから。」

 

「沼津の花火大会っていえばこの辺りで一番大きなお祭りでしょ?」

 

「でも今からじゃあんまり練習時間ありませんよね。」

 

確かにルビィちゃんの言う通りだ。中途半端なパフォーマンスでやるわけにもいかないし。

 

「梨子はどう思う?」

 

「・・・私は今は練習を優先した方がいいと思う。」

 

ここはリーダーに聞いたほうがいいな。

 

「千歌はどうしたいんだ?」

 

「うん!私は出たいかな。今の私たちの全力を見てもらう。それでダメだったらまた頑張る。それを繰り返すしかないんじゃないかな。」

 

「反対はないようだな。それじゃあやりますと返信してくるよ。」

 

「・・・・・・」

 

「どうしたの千歌ちゃん?」

 

「どうして果南ちゃんはスクールアイドル辞めちゃったんだろう。」

 

「そう言えば瑠惟君、2年前に見てたんだよね果南ちゃんたちを。」

 

「・・・・・・」

 

「何か知ってるんでしょ?」

 

さてどうするべきか。ここで話してしまってもいいのだろうか。いや、いつか言うべき時が来るはずだろう。だからここは・・・

 

「自分よりルビィちゃんのほうが知ってるんじゃないか?ダイヤさんと一緒にいるんだし。」

 

「ピギィ!?」

 

すまないルビィちゃん。後でアイスでも奢るよ。

 

 

 

どうやらルビィちゃんの話では果南さんたちがライブで失敗してから以来スクールアイドルの話はしていないらしい。しかし、ダイヤさんが鞠莉さんに『果南さんのことを逃げたなんて言わないで。』と言っていたらしい。

 

逃げたか・・・ 2年前になぜ歌えなかったのか、なぜスクールアイドルを辞めたのか、それについては大体の予想がつく。でも何でそこまでして隠す必要があるんだ?・・・・・・こればっかりは考えても仕方ないな。

 

それから果南さんについてもっと知るために朝のランニングに尾行しようということになった。ものすごく面倒臭いです。

 

 

ー 翌日 ー

 

「・・くん・・て」

 

「瑠惟君起きて!!」

 

「うーーん。千歌か。眠い、あと10分寝かせて。」

 

「ダメだよ!今日は果南ちゃんを見に行くんでしょ。」

 

そういえば今日だったな。仕方ないな。

 

「分かった分かった、今起きるよ。」

 

集合場所にはAqoursのみんなが既に来ていた。

 

ちなみに現在午前5時30分、曜たちはバスもないのにどうやって来たんだ?

 

果南さんは既にランニングを始めている。あの人は何時におきてるんだよ。

 

「毎日こんな朝早くから起きてるんですね。」

 

それよりも

 

「何も全員で来ることはなかっただろ。」

 

「でも、みんな来たいって言うし。」

 

「それよりも果南さんはどこまで走りに行ってるんだ?」

 

「えーと、私たちがいつも練習で走ってる道なんだよ。」

 

「あの道ずらか・・・。ということは今からあの道を登るずらか?」

 

「尾行するならそうなるな。」

 

「が、がんばルビィだよ!花丸ちゃん。」

 

スクールアイドルならこれくらい朝飯前になってもらわないと困るんだけどな。

 

「それにしても果南さんは速いな。」

 

ダイビングショップの家を手伝ってるだけあって相当体力もあるようだ。

 

「千歌もう帰ってもいいか?疲れてもう走れない。」

 

「もう少しだからがんばって・・・」

 

「毎日このスピードなんだ・・・。私たちより断然速い。」

 

「みんな・・・もうすぐ頂上だよ・・・。」

 

頂上に着くとそこではなんと果南さんが踊っていた。

 

「きれい・・・」

 

そうかこの人もスクールアイドルだったんだな。

 

そしてそれはどこか楽しそうだった。

 

やっぱりこの人はスクールアイドルを諦めきれないんだ・・・

 

するとどこからか鞠莉さんが現れた。

 

「復学届提出したのね。」

 

「・・・まぁね。」

 

「やっと逃げるのを諦めた?」

 

逃げるのを諦めた?どういうことなんだ?

 

「勘違いしないで。学校を休んでいたのは父さんのけががあったから。それに復学してもスクールアイドルはやらない。」

 

「私の知っている果南はどんな失敗をしても次に向かって笑顔で走り出していた。成功するまで諦めなかった。」

 

「私には関係ない。スクールアイドルなら千歌たちがいる。」

 

「またそうやって逃げるの?」

 

「・・・どうして戻ってきたの?私は戻ってきてほしくなかった。」

 

「果南!?・・・相変わらず果南はがんk」

 

「もうやめて。あなたの顔見たくないの。」

 

「まだあの時の事を引きずってるの?」

 

「・・・とにかく私は絶対にやらない。」

 

「・・・・・・」

 

そう言って果南さんは去っていった。

 

その顔はどこか悲しげだった。

 

果南さん、鞠莉さん、二人の間に一体何があったんですか。

 

そして果南さんは本当に鞠莉さんの事をそんな風に思っているんですか?

 

 

ー 翌日の学校 ー

 

「果南さんが学校に来る!?」

 

「うん。今日から登校するらしいの。」

 

「鞠莉さんは?」

 

「まだ分からないの。」

 

マジですかい。う~んできれば会いたくないな。あの人なんか苦手なんだよな。

 

すると上の階から何やら服のような物が落ちてきた。

 

「・・・制服ぅ!」

 

こともあろうに曜が落ちてくる制服を取るために飛ぼうとした。

 

「「ダメー!!」」

 

「っとあぶねぇ。」

 

落ちる寸前で曜の体をつかむことに成功した。

 

それと同時に・・・

 

『むにゅ』

 

「あ・・・」

 

この感触はもしかして・・・

 

「すまん!だ、大丈夫か曜?」

 

「う、うん。大丈夫だよ。ありがと///」

 

横の方から凄まじい殺気を感じたので恐る恐る振り向くと千歌と梨子が

 

「瑠惟君のスケベ。」

 

「変態ね。」

 

マジトーンでの罵倒はやめてください。傷ついちゃうからから。

 

「それにしてもこれってスクールアイドルの衣装?」

 

「三年生の教室から落ちてきたよ。」

 

「行ってみようよ。」

 

ということで四人で三年生の教室へと向かった。

 

 

 

教室に着くと何やらもめ事が起きているようだった。

 

「あっ、千歌さん。」

 

どうやらルビィちゃんたちも騒ぎを聞きつけてここに来たようだった。

 

「何かあったのか。」

 

「はい、理事長が果南さんを無理矢理スクールアイドルに勧誘してこうなったんです。」

 

なるほど。どうしてもスクールアイドルをやらせたい鞠莉さんと絶対にやりたくない果南さんとが衝突したんだな。

 

いや、もう少し時と場所を選んでくださいよ。結構な数のギャラリーが見てますよ。

 

これは止めに入ったほうがいいのだろうか?いや、でも介入して余計に面倒くさい事になったら嫌だな。

 

そんなことを考えていると

 

「私行ってくる。」

 

「おい千歌待て!」

 

自分の制止もむなしく千歌は教室の中へと入っていった。

 

二年生の千歌が急に教室に入ってきたので三年生の人たちも驚いている。

 

「いい加減に・・・しろ~~!!!」

 

突然のお説教にみんなは開いた口がふさがらない。

 

「もうっ!なんかよく分からない話をいつまでもずっとずっと、隠してないでちゃんと話しなさい!」

 

「千歌には関係な」

 

「あるよ!」

 

「ダイヤさんも鞠莉さんも三人そろって放課後部室に来てください。」

 

「いや、でもっ・・・」

 

「い・い・で・す・ね?」

 

「「「はい・・・」」」

 

千歌のやつ、三年生に向かって言い放ったぞ。

 

すごいとかじゃなくて、よくそんなことをしようと思ったな。

 

 

 

ー 放課後 ー

 

千歌の言いつけ通り三人とも。部室に来てくれた。

 

「何度も言うけど東京のイベントで歌えなかったの。」

 

「それはダイヤさんから聞いた。けど、それで諦める果南ちゃんじゃないでしょ?」

 

「そうそう千歌っちの言う通りよ。」

 

「何か事情があるんだよね?」

 

「・・・そんなものはないよ。私が歌えなかっただけ。」

 

果南さんはそう言うが、千歌が聞いた瞬間に果南さんの眉が少し動いたのを見逃さなかった。

 

やはり何か隠している。

 

「とにかく!私は嫌になったの。スクールアイドルは・・・絶対にやらない。」

 

そう言って果南さんは部室を出た。

 

すると梨子が

 

「瑠惟君とダイヤさん、何か知っていますよね?」

 

「「げっ・・」」

 

「瑠惟君は前に聞いたときにうやむやにしたし、ダイヤさんは変に果南さんの肩をもっていましたし。」

 

ダイヤさんの方を見ると何かを悟った顔をしていた。

 

「・・・分かりました。お話ししましょう。瑠惟さんもお願いします。」

 

ようやくこの時が来たか。

 

「はい。知っていることなら全部話します。」

 

「ここではあれですし、私の家でお話ししましょう。」

 

 

 

ー ダイヤさん宅 ー

 

「ではまず瑠惟さんからお願いします。」

 

「自分は二年前に友人に誘われて東京スクールアイドルのイベントに行きました。最初はスクールアイドルにあまり興味はありませんでした。ですが、そこで見たアイドルの人たちはみんな輝いて見えました。イベントも進んで果南さんたちがステージに出てきました。その時にある違和感を感じました。それが当たったのか果南さんたちはステージに立ち尽くすだけでした。ここからは自分の推測ですが果南さんはわざと歌わなかったんじゃないでしょうか?なぜなら果南さんは鞠莉さんを守るためだったから。あの時、鞠莉さんは足を痛めていたんだと思います。ステージに出てくるときに歩き方が足を痛めている人の歩き方だったんです。そこで果南さんはけがを悪化させないために歌わなかった。歌わなければダンスは始まりませんから。でも、なんでスクールアイドルを辞めたのかは分かりません。」

 

「・・・やはりあなたは分かっていたのですね。」

 

「ということは・・・」

 

「はい。瑠惟さんの言ったことは全て事実です。」

 

「果南・・・」

 

「あのまま続けていたら事故になるかもしれなかった。あなたが一番分かっていたはずですわよ。」

 

「でも、その後は?けがが治ったら続けても良かったのに。」

 

あぁそこが一番の疑問点だ。何もやめる必要までは無かったのでは。

 

「そうよ・・・花火大会に向けて新しい曲作って、ダンスも衣装も完璧にして・・・なのに・・・」

 

「心配していたのですわ。あなた留学や転校の話があるたびに全部断っていたのでしょう。」

 

「そんなの当たり前でしょ!!」

 

「果南さんは思っていたのですわ。このままでは自分たちのせいで鞠莉さんから未来の色んな可能性が奪われてしまうのではないかって。」

 

「まさか・・・それで・・・ッ!」

 

鞠莉さんが踵を返した。

 

「どこに行くんですの?」

 

「ぶん殴る!そんなこと一言も相談せずに!」

 

「お止めなさい。果南さんはずっとあなたのこと見てきたのですよ。立場も。気持ちも。そしてあなたの将来も。誰よりも考えている。」

 

そう言って鞠莉さんは駆けだした。

 

さて、マネージャーとして、過去を知る人間として彼女達の為に動こう。

 

「千歌、ちょっと行ってくる。」

 

「え?・・・うん頑張ってね。マネージャーさん。」

 

千歌は何をするのか理解してくれたようだ。

 

「瑠惟さん。果南さんたちをよろしくお願いします。あの子たちは不器用なんです。だから・・・」

 

「分かってますよ。じゃあ行ってきます。」

 

とりあえず鞠莉さんを追いかけよう。

 

 

 

ー瑠惟sideoutー

 

ー鞠莉side inー

 

気づいたら私は走り出していた。

 

雨の中傘も差さずにひたすら前に前に。

 

果南、そんなの私には分からないよ。

 

どうして言ってくれなかったの?

 

それでも私は気づいてあげられなかった。果南の想いに。

 

「あんっ!」バタッ!

 

私はたとえつまずいて倒れても行かなきゃいけないの。だから・・・

 

「鞠莉さん。はい。こんな雨の中傘も差さずにいたら風邪引きますよ。」

 

「え?」

 

そこには傘を持った瑠惟がいた。

 

「どうして・・・」

 

「今から果南さんとぶつかるんですよね。そんなびしょ濡れじゃ果南さんびっくりしますよ。」

 

「果南さんも鞠莉さんも不器用なんですよ。でも、お互いを想う気持ちは同じ。それって素晴らしい事じゃありませんか?自分ってコミュ障ヘタレなんで分かります。素直に気持ちを伝えるってほんとに難しい事だって。でも言わなければずっと分からないままだっていうことも分かってます。だから鞠莉さんも果南さんに本当の気持ちを伝えてください。そうすればきっと果南さんも答えてくれます。」

 

「瑠惟・・・」

 

全く、昔はあんなにちっちゃくて泣き虫だった瑠惟がいつの間にこんなヒーローみたいに成長したのかしら。彼にここまでされたらやるしかないわよね。

 

「ありがとう。それにしても瑠惟はずいぶん変わったね。」

 

みんな同じこと言うよな。そんなに変わったのかな?いや・・・

 

「変わったというより千歌たちに変えられたんですよ。」

 

「そうね。私もそう思うわ。じゃあ行ってくるね。」

 

「はい。頑張ってください。次はマネージャーとして会いますよ。」

 

見送る彼を背に私はまた走り出した。

 

 

 

ー鞠莉sideoutー

 

ー果南side inー

 

あの後、鞠莉から呼び出されたので学校に向かっていた。

 

鞠莉、私はなんであんなひどい事を言うことしかできないんだろ。

 

分かっていたのに、なんでなの・・・

 

ちょうど正門まで来たときに彼はいた。

 

「果南さん。」

 

「あなたは・・・瑠惟ね。どうしてあなたがここにいるの?」

 

「まぁまぁそれは置いておいて、鞠莉さんに呼び出されたんですよね?」

 

「なんで知っているの?」

 

「いや、多分こうなるだろって思ったんです。」

 

「自分さっきダイヤさんと一緒にみんなに二年前の真実を話したんです。あの時、鞠莉さんのけがを心配した果南さんが鞠莉さんを守るためにわざと歌わなかったって。」

 

やっぱり彼には分かっていたか。何となくそんな気はしてた。

 

「それで、これ以上私に言うことがあるの?」

 

「はい。あります。」

 

すると彼は頭を下げて

 

「お願いします。鞠莉さんと本気でぶつかって、気持ちを受け止めてあげてください。鞠莉さんは自分にとって姉のような人なんです。小さい頃から本当の家族のように愛してくれて、自分に浦ノ星での居場所を与えてくれた人なんです。あの人が居なかったらAqoursと出会うこともなかった。なにより自分はもうこれ以上彼女が悲しむ姿を、あなたが悲しむ姿も見たくないんです。勝手な事とは十分わかっています。でも、お願いします!」

 

突然のことにびっくりしたがすぐに正気に戻って

 

「頭を上げて。分かった。あなたの全力に私は全力で答えるわ。」

 

「では、鞠莉さんをお願いします。」

 

「うん!任せて!」

 

私は彼を後にし、学校に入った。

 

彼が千歌たちが好きになった人か・・・

 

千歌や鞠莉が羨ましいな/////

 

 

 

ー果南sideoutー

 

ー瑠惟side inー

 

よし。これであの二人はもう大丈夫だろう。

 

やることはやった。後は二人を信じるだけ・・・

 

「あなたも来ていましたのね。瑠惟さん。」

 

この声は・・・

 

「ダイヤさんもやっぱり心配だから見に来たんですよね?」

 

「いえ、私はもう確信していますの。もう大丈夫だと。」

 

「そうですか。三人は仲が良いんですね。」

 

「もちろんですわ。でも、今回はあなたに助けられたところが大きいですね。」

 

「いやいや。自分はただ仕事をしただけですよ。」

 

「本当に感謝していますわ。ありがとう。これから、あの二人を頼みましたわよ。あぁ見えて結構繊細なんですの。」

 

ホントにツンデレだなこの人は。

 

「なに言ってるんですか。三人も増えるんですよ。だよな?ルビィちゃん?」

 

背後からルビィちゃんの登場。もちろんダイヤさんは驚いている。

 

「ルビィ!?」

 

「親愛なるお姉ちゃん。ようこそAqoursへ。」

 

「全くあなた方は・・・分かりましたわ。じゃあ行きますわよ!」

 

「どういうことですか?」

 

「もちろん、花火大会に向けての練習ですわよ!十人で!」

 

果南さん、鞠莉さん、ダイヤさんを加えたAqoursは十人となった。

 

それからAqoursは花火大会に向けて練習を重ねた。

 

どうやら曲は以前果南さんたちが途中まで考えていたものを使うようだ。曲は彼女たちに任せたが、一応マネージャーなので衣装作りは手伝った。それにしてもルビィちゃんは和服系の衣装を作るのがうまいな。

 

 

 

ー 花火大会当日 ー

 

「みんなそろそろ本番だぞ。準備できたか?」

 

「うん!瑠惟君見て!どう?似合うかな?」

 

おぉ、なんというか今までにない感じがする。

 

「あぁ、みんな似合ってるぞ。・・・可愛い。」

 

「え?今、可愛いって/////」

 

「・・・・・・」

 

「はいはい。イチャイチャするのもここまでね。」

 

「イチャイチャしてないですよ。果南さん。」

 

「とにかくみんな行くよ!私たちの新しいステージ!」

 

「鞠莉、ダイヤ、今までで待たせてごめんね。」

 

「何言ってるの果南らしくないよ!」

「そうですわよ!今日は楽しみますわよ!」

 

新しくなったAqours。曲は『未熟Dreamer』

花火が打ち上がる夏の夜空の下で歌う彼女たちは綺麗で美しくなによりも輝いていた。

 

「あれ?」

 

気が付いたら自然と涙が出ていた。

 

それほどまでに彼女たちに感動していた。

 

あぁマネージャーをやっていて、彼女たちに会えて本当に良かった。

 

するとステージの方から

 

「ここでAqoursのマネージャーさんにもステージに来てもらいましょう。」

 

ん?マネージャーって誰だ?あっ自分だ。

 

今、ステージに来いって言ったような。

 

「それではご紹介します。Aqoursのマネージャーを務める、西王瑠惟さんです!」

 

いまいち状況が理解出来ていないままステージへと誘導された。

 

えぇ・・・めっちゃカメラ回ってますやん。

 

スタッフに連れられてステージに来たがどうすればいいんだ?

 

「では一言お願します。」

 

なんだ、そういう事か・・・

 

「まず、私たちにこのような機会を与えてくださり感謝します。Aqoursは新たに三人加えた総勢十人となりました。ここに来るまでにたくさんの壁にぶつかってきました。。でもそれ以上にたくさん楽しい事や嬉しい事もありました。それらは全部Aqoursと出会わなければ絶対に起こり得ませんでした。今こうしてここに立っていること、Aqoursのみんなと一緒にいること、これってすごいキセキなんだなって思います。それにAqoursには色んな個性のメンバーがいます。

 

ある子は輝くことを夢見た。

 

ある子は大切な親友と何かを成すことを夢見た。

 

ある子は地味な自分を変えることを夢見た。

 

ある子は憧れたアイドルになることを夢見た。

 

ある子は新しい自分になることを夢見た。

 

ある子は堕天使になることを夢見た。

 

ある子は失った時間を取り戻す事を夢見た。

 

ある子はかつての衝突を乗り越えて再びアイドルになることを夢見た。

 

ある子は昔のようにみんなと歌って踊ることを夢見た。

 

そして自分は・・・そんな彼女たちを支え、新たな景色を見ることを夢見た。

 

まだまだ未熟な彼女たちですが、いつかきっと素晴らしいことを成し遂げてくれる。自分は信じています。すいません、全然一言じゃありませんでしたね。とにかくこれからもAqoursをよろしくお願いします。」

 

やっちまった・・・。つい長々と話してしまった。めっちゃ静かだしどうしよこの空気。

 

すると・・・

 

パチパチパチパチパチパチ!

 

「あ、ありがとうございました!それではみなさんもう一度Aqoursに盛大な拍手を!」

 

パチパチパチパチパチパチ!

 

安堵して後ろを振り返るとAqoursのみんなが泣いていた。

 

え?何か変なことでも言ったかな?

 

すると千歌が

 

「せーのっ!」

 

「「「「「「「「「いつもありがとう!これからもよろしくお願いします!」」」」」」」」」

 

みんな・・・

 

「もちろんだ。こちらこそよろしく。」

 

ちなみに、この花火大会がテレビ放送されて、さらに新聞でも取り上げられてAqoursのメンバー以上にマネージャーが有名になったのはまた別のお話。

 

 

 

ー ライブ後 ー

 

「・・・ふふっ。」

 

「どうしたの果南ちゃん?」

 

「私たちのグループ名もAqoursだったんだよ。」

 

そう言えばそうでしたよね。

 

「これは偶然・・・?」

 

違うんだよなそれが。みんなまんまとはめられたんだよな。

 

「違いますよね?ダイヤさん。」

 

「さぁ?どうでしょうか?」

 

白々しいですね。それなら・・・

 

「ダイヤさんって本当にツンデレですよね。」

 

「じゃあ、あの時砂浜に『Aqours』って書いたのは・・・」

 

「ち、違いますわよ/////」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次は番外編です。


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コミュ障ヘタレと梨子の悩み

遅くなってしまいすいません。それにしてもアニメがもうすぐ終わってしまいますね。どんな結末になるのか気になりますが同時に終わってほしくない気持ちもありますね。
今回から本編に戻ります。


前回のコミュ障ヘタレ。お互いの想いを伝え過去の挫折を乗り越えて新たにAqoursに加わった果南、鞠莉、ダイヤ。こうして十人となったAqoursはラブライブに向けて特訓を始めた。

 

一学期も終了し、夏休み真っ盛りの浦の星女学院。そんなある日ダイヤさんから合宿をしようということで部室で会議中。

 

「これは私が独自のルートで入手したμ'sの合宿メニューですわ!私たちはこの合宿でこれをやろうとおもいますの!」

 

そう言って見せてきた合宿メニュー、確かにμ'sの内容と全く同じだ。以前、海未さんに見せられたので覚えている。

 

でもこれは女子高生がするメニューというよりは全国クラスの男子運動部がやるレベルだと思うが・・・。

 

そんな事も気にせずにダイヤさんは得意げに説明を続けていく。

 

でも夏休みって確か予定があったような・・・

 

すると曜が

 

「そ、そういえば千歌ちゃん、海の家の手伝いがあるって言ってなかったけ?」

 

「そうだった!私、自治会で出してる海の家の手伝いに行かなきゃ。」

 

あ!思い出したぞ。海の家を手伝ってくれって言われてたんだ。

 

「それ私もやらなきゃ。」

 

どうやら果南さんも頼まれていたようだ。

 

そうなると練習が出来ないな。

 

「うーん、じゃあ昼は全員で海の家を手伝って、涼しいモーニングとイブニングに練習するってのはどう?」

 

「でも、それでは練習時間が短くなってしまいますわ。」

 

「じゃあうちの旅館に泊まって合宿する?」

 

それならわざわざ学校に行く必要が無くなるな。

 

あれ?でも部屋って空いてたっけな?

 

確か、この時期は忙しいって美渡さんが愚痴ってたような・・・。

 

千歌は何か案があるのか?

 

「おい千歌、空き部屋なんてあったか?」

 

「無いよ。」

 

「オイオイ、じゃあみんなはどこで寝るんだ?」

 

「もちろん私たちの部屋で寝るんだよ。」

 

そうか。なるほど・・・。

 

ん?『私たち』?

 

「まさかそれって、こっちの部屋も使うのか?」

 

「当たり前だよ!私の部屋だけじゃみんな寝れないよ。」

 

知ってた。

 

不本意ながら合宿の予定が決まった。

 

「それでは明日の朝四時に海の家に集合で。」

 

いや、誰が来れるんだよそんな時間に。

 

ふと横を見るとどこか上の空の梨子が目に入った。

 

「梨子・・・聞いてるか?」

「え!?何?どうしたの?」

 

「明日からの予定の事だ。もしかして聞いてなかった?」

 

「ううん。大丈夫だよ。ちょっと考え事してただけだから。」

 

「・・・そうか。何かあれば誰かに相談しろよ。」

 

「ありがと。」

 

「じゃあまた明日な。遅れるなよ。」

 

「うふふっ、そんな千歌ちゃんじゃあるまいし。」

 

「それもそうだな。」

 

「さよなら。」

 

やっぱり様子が変だな。見たところ何か悩んでるように見えるが。

 

そう思いながら家路を急ぐのであった。

 

 

 

ー 合宿当日 ー

 

誰もいないと思うが一応朝四時に集合場所へ行ってみる(千歌は置いてきた)。案の定人がいない。と思いきや浜辺に立ち尽くす人影一つ。それはダイヤさんの冗談を間に受けて来た花丸ちゃんだった。

 

「花丸ちゃん。」

 

「瑠惟先輩!おはようございます。ところでみんなはまだずらか?」

 

「・・・・・・多分まだ来ないと思うから、旅館で待ってよう。」

 

「そうずらね。じゃあお邪魔するずら。」

 

結局全員集まったのは九時ぐらいでした。花丸ちゃん・・・

 

海の家の手伝いは午後からなので練習を始めるかと思いきや、みんなは海で遊んでいます。しかも全員服の下に水着を仕込んでいた。どうやら遊ぶ気満々だったようです。

 

自分は暑いのが苦手なのでAqoursが手伝う海の家と並んでいる別の海の家で涼んでいる。

 

だってこっちの海の家は・・・

 

「なんでこんなにボロいのですの?」

 

ダイヤさんのおっしゃる通り、隣の華やかさに比べてこちらは・・・趣があるかな?(笑)

 

それにしても眼福だな〜。

 

みんな水着がよく似合っていらっしゃる。

 

「あの・・・」

 

「はい?」

 

見知らぬ女性に声をかけられた。

 

「一人で来てるんですか?もし良かったら・・・これから一緒に遊びませんか?」

 

まさかの逆ナンでした。

 

「いや・・・でも・・・」

 

「瑠惟君!」

 

「うおっ、千歌か。どうしたんだ?」

 

「瑠惟君はこっちに来て!ほら行くよ!」

 

痛い痛いそんなに強く引っ張るなよ。

 

「あっ・・・彼女さんがいらしたんですね。ごめんなさい。」

 

そう言って女性は去っていった。

 

「千歌、そんなに怒ってるけど何かあったのか?」

 

「ふん!どうせ瑠惟君には分からないよー。」

 

「もしかして、彼女って言われた事が気に食わなかったのか?」

 

「それは別にいいの!」

 

「じゃあ何なんだよ?」

 

「・・・・・だって瑠惟君が女の人に声掛けられた時にデレデレしてたから・・・。」

 

え?そんなにデレてたかな?

 

「それは・・・男だから仕方ないな。」

 

「そうなんだ・・・。」

 

よく分からないな女子っていうのは。

 

「ところでさ・・・どうかな?」

 

「何が?」

 

「言わせないでよ!み、水着だよ・・・似合ってる?」

 

女子はそういうのが気になるんだな。、

 

「いいんじゃないか?千歌らしくて。」

 

「あ、ありがとう・・・。」

 

「なぁ、そろそろ時間だと思うんだが。」

 

「そうだね!みんな〜手伝い始めるよ!」

 

千歌の呼び声でAqoursが集まる。

 

「役割分担はどうするんだ?」

 

「私が決めますわ!」

 

ダイヤさんノリノリだな。

 

「千歌さんと梨子さんはこれを着てください!」

 

そう言って渡したのは・・・

 

「「これ何ですか?」」

 

「もちろんこの店のことが書いてる看板ですわ!」

 

正直に言うとかなりダサい。これで人が来てくれるとは思わないんだが。

 

「果南さんはチラシ配りを!」

 

「何で私なの?」

 

「果南さんはそのグラマラスボディで客を集めてくるのです!他の砂利共では話になりませんわ!」

 

怖い怖い、ダイヤさん鬼気迫りすぎだろ。

 

「鞠莉さん、曜さん、善子さんはキッチンを頼みますわ!」

 

「ヨーソロー!分かりました船長!」

 

「花丸さんとルビィは接客を!」

 

「マルにできるかな?」

 

「がんばルビィだよ!」

 

「私は皆さんのサポートに回りますわ!」

 

あれ?もしかして忘れられてる?

 

「ダイヤさん、自分は・・・。」

 

「あっ・・・、瑠惟さんもキッチンを。」

 

絶対に忘れてましたよね?

 

そんなこんなで役割が決まって、各自が仕事を始めた。

 

しばらくして思ったんだが・・・

 

「人が来ないな。」

 

「仕方ないよ。だって全部隣の店に持っていかれてるもん。」

 

すると曜がスマホを取り出して電話を始めた。

 

誰と話してるんだ?

 

「よし!これで大丈夫だよ!」

 

「何をしたんだ?」

 

「学校の友達に来てって頼んだらみんな来てくれるって。」

 

すごいなアイツらこんなクソ暑い中わざわざ来てくれるなんて。

 

曜の言った通り数十分後にはかなりの人が来てくれた。

 

まぁほとんどが知人だけどな。

 

それにしても・・・

 

「売上に偏りがないか?」

 

「「ギクッ!」」

 

どういう事かと言うと、キッチンには自分含め四人入って各自が考えたメニューを出しているのだが、売れているのが自分が作ったかき氷と曜の焼きそば?だけというのだ。ちなみに鞠莉さんと善子は何を作ったかと言うと、鞠莉さんが何か高級そうな食材をひたすらにぶち込んだ煮物で、善子は黒いたこ焼き?らしき物だ。両者とも見るからに不味そうである。

 

「まぁまぁ、二人共そのうち売れるよ!」

 

曜の励ましも虚しく、結局閉店まで全く売れなかった。

 

「じゃあ練習始めるか。」

 

ということで夕方から練習を始めたのだが、果南さんと曜以外が既にヘロヘロで走れていない。

 

「みんな、もう体力切れ?」

 

果南さんと曜が体力お化けなんだよ。

 

「仕方ないな・・・今日はもう終わりでいいか。」

 

それにしても今日の梨子は明らかに変だ。時折、立ち止まったりしていたし、少し心配だな・・・。後で聞いてみるか。

 

練習も終わり、風呂にも入って、今から晩ご飯なのだが・・・

 

「みんな聞いてくれ。」

 

「どうしたの?」

 

「美渡さんからの伝言で、今日余った食材を晩ご飯にしろ。との事だ。」

 

「で、その晩ご飯はコレだ。」

 

例のブツを取り出す。

 

「善子と鞠莉さんの考えたメニューだ。」

 

「「申し訳ございません!」」

 

「まぁ意外と美味しいってこともあるかもな。」

 

「「「「「「「「「「いただきます!」」」」」」」」」」

 

 

 

晩ご飯終わり、あとは寝るだけ。その晩ご飯は腹に来たけどな。二度と食べないでおこう。

 

梨子の件なんだが、みんなが起きていると言いづらいと思うので寝静まってからにしよう。

 

・・・・・・みんな寝たよな?

 

梨子には悪いけど起きてもらおう。

 

「おーい、梨子。起きてくれ。」

 

「・・・・・・」

 

起きないな。それなら。

 

「ビーチスケッチ・・・」

 

「桜内!」

 

やっと起きてくれた。

 

「どうしたの瑠惟君?」

 

「少し話さないか?」

 

ということで近くの浜辺に二人で来た。

 

「ねぇ、話って何?」

 

「今日の梨子の様子がおかしいと思ったんだ。前に梨子がスクールアイドルをやるかどうか迷ってた時と同じ顔をしていたんだ。」

 

「・・・・・・」

 

「もし、嫌じゃなければ話してくれないか?嫌なら無理に話さなくていいから。誰にだって人に言えない悩みとかあるだろうし。」

 

「・・・・・・」

 

やっぱり思い違いか?その方が嬉しいのだが。

 

「瑠惟君は何でもお見通しだね。実はね・・・・・・」

 

「なるほど。つまりラブライブの予備予選の日程とピアノのコンクールの日程が重なっていると。それは誰かに相談とかしたのか?」

 

「ううん。だってこれは私自身の問題だし自分で解決しなきゃって思って。」

 

「で、梨子はどうしたいんだ?」

 

「私は・・・ラブライブに出たい。みんなと過ごしてきて分かったんだ。Aqoursのみんなともっと一緒にいたい。だから私の今の目標は最高の歌を作ってラブライブの予選を突破する事。」

 

「そうか・・・。どうするかは梨子が決める事だからな。特に口出しはしないよ。悪かったなわざわざ起こして。」

 

「いいの。私もスッキリしたから。ありがとね。」

 

「気にすんなよ。それより、そろそろ出てきてもいいんじゃないか?千歌。」

 

「え!?何でわかったの!?」

 

「だって付いて来てるの見えてたし。」

 

「千歌、聞いてたんだろ?梨子の話。」

 

「ごめんね梨子ちゃん、盗み聞きするつもりは無かったんだけど出てくるタイミング逃しちゃって・・・。」

 

「千歌ちゃんはどう思う?」

 

「梨子ちゃんが出たいって言うならいいと思うよ。」

 

「そっか。じゃあ風邪引くといけないから戻ろう。」

 

そうして三人は部屋へと戻った。

 

この時、千歌がどこか悲しそうにしてたのは気のせいだろう。

 

二日目

 

昨日よりは客の入りは良くなったと思う。かき氷と焼きそばは売れ行きは相変わらず良いのだが、いかんせん例のブツを買おうとする勇者は現れなかった。

 

夕方の練習もみんな少しづつ慣れてきたのか、メニュー(自分が考え直したメニュー)をある程度こなせるようになった。

 

そしてやって来てしまった晩ご飯の時間。おい、売れ残った凶器は誰が食べるんだよ。

 

「曜、あいつらを上手くアレンジできないか?このままじゃ誰か倒れるぞ。」

 

「うーん、そうだね・・・あ!カレーにしてみようか!」

 

「もう何とか出来るならなんでもいい!頼む!」

 

「まかせて!」

 

曜クッキング中・・・

 

「できた!船乗りカレーwithシャイ煮と愉快な堕天使の涙たち。」

 

どれどれ・・・

 

「うまい!」

 

今日の晩ご飯は曜おかげで安心して食べることが出来た。本当に良かった・・・。

 

その日の夜、寝ていると千歌と梨子に突然起こされた。

 

「なんだよ・・・。寝かせてくれよ・・・。」

 

「いいから付いてきて。」

 

「ハイハイ。」

 

そして何故か浦の星女学院に連れて来られた。

 

こんな夜にどういうつもりだよ。ていうか何で学校空いてるの?セコムしてるの?

 

やって来たのは音楽室。

 

「そろそろ目的を話してもらおうか。千歌、梨子。」

 

「私は・・・千歌ちゃんに来てって言われたの。」

 

「私ねよく考えてみたら聞いたことなかったの梨子ちゃんの曲。」

 

確かに海の音を聞いてできた曲は一体どんな曲になったのだろうか?

 

「梨子ちゃんが悩んで一生懸命気持ち込めて作った曲でしょ。だからそれが聞きたくて。ここなら思いっきり弾けるし。」

 

「でも・・・。」

 

「お願い〜、少しだけでいいから。」

 

「自分も聞いてみたいな。梨子の曲。あの日三人で見た景色からどんな答えを出したのかが知りたい。」

 

「そんないい曲じゃないよ・・・。」

 

そう言って梨子は演奏を始めた。

 

梨子の奏でる音色は心に優しく広がり、暖かく、何より梨子を感じるものだった。

 

これがあの時の答えか・・・。

 

「どうだった?」

 

梨子が不安そうに尋ねる。

 

「すごくいい曲だね。梨子ちゃんがいっぱい詰まった・・・。」

 

「自分もいい曲だったと思う。全然変じゃない。素晴らしい曲だ。」

 

この曲を聞いて思った。やっぱり梨子には・・・。

 

「「梨子(ちゃん)」」

 

「ん?」

 

「「ピアノのコンクールに出てほしい。」」

 

「!!」

 

これが自分と千歌の答え。考える事は同じか・・・。

 

「昨日は梨子が決める事だって言ったくせにこんな事言うなんておかしいだろ?スクールアイドルやってほしいって言ったのに、Aqoursが大切って言ってくれたのに。」

 

「でもね・・・。」

 

「私が一緒じゃ嫌?」

 

「違うよ!そうじゃないよ!・・・私ね梨子ちゃんと約束した事思い出したの。スクールアイドルをやって梨子ちゃんの何かが変わって、梨子ちゃんがまた前向きにピアノに向き合えたらって・・・。」

 

「自分は梨子にはピアノを諦めないでほしい。スクールアイドルとして輝く梨子が見たい。でも梨子がもっと明るくピアノを弾いている姿も見たい。」

 

「瑠惟君・・・」

 

「無茶苦茶なのは分かってる。両立だってそんなに簡単じゃない。それでも梨子は大切な人だから・・・昨日みたいに一人で悩んでほしくない。千歌たちは絶対に予選を突破する。そう信じてるし、梨子にも信じてほしい。だから自信を持ってコンクールに出てほしい。全てをぶつけてきてほしい。桜内梨子という人間をあの曲に込めて。」

 

「私も梨子ちゃんを信じてるよ。瑠惟君たちと一緒に待ってるから。」

 

「・・・ホント変な人だね。」

 

「じゃあ・・・。」

 

「うん。私、行ってくるね自分の全てをぶつけるわ。みんなを信じて・・・。」

 

そうかなら良かったよ。

 

「そろそろ戻ろうか。まだ合宿は続くから少しでも休まないとな。

 

「「うん!」」

 

梨子はピアノのコンクールに出るという決心がついた。Aqoursは梨子を信じて、梨子はAqoursを信じてそれぞれの想いを胸に進んでいく。




クリスマスの話を書くかどうか迷い中です。


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コミュ障ヘタレは過去を背負い、今を進む

お久しぶりです。無事に受験も終わり、投稿を再開することができました。久々で拙い文がさらにひどくなっているかもしれませんがよろしくおねがいします。


前回のコミュ障ヘタレ。ラブライブ予備予選と東京でのピアノのコンクールの日程が同じで、どうするか悩んでいた梨子。最初はラブライブに出るつもりの梨子だったが千歌達の後押しでコンクールに出ることを決意したのであった。

 

合宿が終了し、梨子がAqoursにコンクールに出場することを話すとみんなは快く同意してくれた。

 

そして今日は梨子が東京に出発する日。みんなで駅まで見送りに来た。

 

瑠惟「じゃあこれが家までの地図と合鍵だ。父さんか母さんのどちらかが家にいると思うけど一応渡しておく。」

 

梨子「本当に色々とありがとう。」

 

梨子がコンクールまでの期間で練習の場所が必要という事で、自分の家にはピアノも置いてあるしちょうどいいと思ったので梨子に泊まってもらうことにした。母さんに相談したところ全く問題ないという事で了承も得た。その間、梨子一人では不便なので父さんか母さんに東京に帰ってきてもらうことにした。

 

千歌「梨子ちゃん!がんばってきてね!」

 

梨子「うん!千歌ちゃんもだよ!」

 

Aqoursのみんなに激励をもらった梨子。

 

瑠惟「梨子、いつも通りで落ち着いてな。」

 

梨子「合宿の時、あなたが私に声を掛けてくれなかったら、中途半端な気持ちで行っていたかもしれなかった。・・・ありがとう。」

 

瑠惟「感謝するのは帰ってきてからにしてくれよ。それに・・・」

 

千歌「次は絶対に九人で歌おう!」

 

瑠惟「梨子、そろそろ時間だ。・・・いってらっしゃい。」

 

梨子「いってきます!」

 

そうして梨子はホームへと向かった。

 

ダイヤ「では、私達は練習に行きますわよ。」

 

みんなが駅から出ていく中、千歌は梨子の向かった先を見つめて止まっていた。

 

瑠惟「千歌、練習行くぞ。」

 

千歌「うん・・・」

 

不安な気持ちは分かるが、それでも梨子を信じてこっちも頑張るしか無い。

 

そして学校に戻ってきて、練習を始めると思いきや・・・

 

瑠惟「あの〜ダイヤさん、これは一体?」

 

ダイヤ「だから言ってるではありませんか。今からプール掃除をしますの。」

 

どうやら生徒会はプール掃除を頼まれていたのだが、ダイヤさんはそんな事をすっかり忘れて日々練習をした結果、今に至る。

 

鞠莉「ダイヤってば素直に忘れていたから手伝ってって言えばいいのに。」

 

ダイヤ「わ、忘れていたわけではありませんわ!ただ人数が多い方が効率がいいと思っただけですわ。」

 

そんなこんなで始まったプール掃除。ほったらかしていただけあってプールの底は相当ヌルヌルしていた。その為、転んでいくメンバーが続出したが、みんなの協力もあってか意外と早く終わらせることが出来た。

 

千歌「じゃあそろそろ練習に・・・」

 

果南「ちょっと待って。」

 

ダイヤ「どうしたんですか果南さん?」

 

果南「せっかくだから今日はここで練習しない?」

 

果南さんの提案で今日の練習はプール(水は入っていない)ですることになった。

 

瑠惟「みんな、新曲のフォーメーションに移動してくれ。」

 

それぞれが位置につく。

 

瑠惟「じゃあ始めるぞ・・・あっ。」

 

曜「どうしたの?始めないの?」

 

瑠惟「始めたいのはやまやまなんだが・・・」

 

全員、大事なことを忘れていた。

 

瑠惟「梨子のポジションが空いてるの忘れてた。」

 

Aqoursのみんなも気付いたようだ。

 

果南「どうしようか・・・」

 

瑠惟「形を変えるかあるいは・・・」

 

千歌「誰かが梨子ちゃんの所に入る。」

 

となると誰が適任か・・・

 

ポジションが相対する千歌と息が合って、順応性のある人物は・・・

 

みんなの視線が一人に注がれる。

 

曜「え?私!?」

 

曜しかいないだろう。

 

ということで曜を梨子のポジションに変更して練習を再開した。

 

だが・・・

 

曜「ごめんね千歌ちゃん。私の動き出しが遅くて。」

 

千歌「ううん曜ちゃん。私もつい梨子ちゃんとやってた時のタイミングで動いちゃって。」

 

二人の動きが何度やってもうまくいかなかったのだ。

 

正直、曜ならいけると思ってたんだが。

 

次の日も二人は練習を重ねたが一度も成功しなかった。

 

練習後、一年生たちとコンビニに寄ったが、そこでも二人は駐車場で練習をしていた。

 

花丸「先輩、二人はまだ練習してるずら?」

 

瑠惟「そうだな。まだ一度も成功してないからな。」

 

善子「何かアドバイスとかないの?」

 

瑠惟「ダンスの専門家じゃないから分からん。」

 

ルビィ「珍しいですね。」

 

瑠惟「何が?」

 

花丸「だって先輩はいつも何か考えがあって、何でもお見通しな感じがするずら。」

 

瑠惟「そんな賢い人間じゃない。買い被りすぎだ。」

 

花丸「じゃあ・・・このまま見てるだけずら?」

 

その言い方は堪えるな・・・

 

瑠惟「まぁ善処するよ。」

 

花丸「期待してるずらよ。せ・ん・ぱ・い」

 

瑠惟「ハイハイ。」

 

二人の所へ向かった。

 

瑠惟「どうだ?上手くいきそうか?」

 

千歌「ううん。やっぱりタイミングが合わなくて。」

 

曜「・・・・・」

 

曜「・・・じゃあ千歌ちゃんは梨子ちゃんとやってた通りに動いてみて。今度は私が梨子ちゃんの動きを再現してみる。」

 

千歌「え?・・・分かった、やってみよう。」

 

曜の提案でもう一度チャレンジしてみると

 

「「できた!」」

 

なんと一発で成功した。

 

千歌「じゃあ本番もこれでいこう!」

 

確かに上手くいった。でも本当にこのやり方でいいのか?何かが違う気がする・・・

 

そんな事を思っていると千歌のスマホに着信が来た。

 

 

 

 

 

ー 瑠惟 sideout ー

 

ー 梨子 side in ー

 

東京に着いた私は彼から受け取った地図を頼りに歩いていくとそれらしき家を見つけた。

 

ここが瑠惟君の実家・・・。千歌ちゃん家ぐらい大きいかも。

 

私は家の合鍵を預かっていたが、それを使っていきなり入るのも失礼だと思ったのでインターホンを押した。

 

しばらくして出てきたのは・・・

 

梨子「え!?千歌ちゃん!?」

 

なんとそこには千歌ちゃんにそっくりな女性がいた。いや、正確には千歌ちゃんが大人っぽくなった感じの人だった。

 

???「どちら様でしょうか?」

 

梨子「はじめまして。今日からお世話になります、桜内梨子です。よろしくお願いします。」

 

???「桜内・・・あっ!あの子のお友達ね。待っていましたよ。さぁ中に入って。」

 

梨子「お邪魔します・・・」

 

家に入ってまず目に入ったのはショーケースに飾られたたくさんのトロフィーや賞状だった。

 

梨子「すごい・・・」

 

思わず声が漏れた。

 

そしてその中には写真も何枚か飾っていて、そこに写っていたのは・・・

 

梨子「あの・・・瑠惟君って何かスポーツをしていたんですか?」

 

???「これのことね。そうよ、あの子は昔バスケットボールをやっていたの。もうやめちゃったけどね。」

 

そうなんだ。彼、バスケをやっていたなんて一度も話したことなかったな。

 

???「ここがあなたの部屋よ。」

 

案内されたのは私一人では十分すぎるくらい大きな部屋だった。

 

梨子「こんな広いお部屋使ってもいいんですか?」

 

???「いいのよ。遠慮せずに使ってね。」

 

梨子「ありがとうございます。・・・ところでもしかして瑠惟君のお姉さんですか?」

 

???「え!?違う違う。私はあの子の母親よ。」

 

梨子「そうなんですか!?全然そうは見えませんでした。」

 

母「そんなこと言ってくれるなんて嬉しいわ。そうだ梨子ちゃん、お腹空いたでしょ?晩御飯できてるわよ。」

 

食卓へと向かうとたくさんの料理が用意されていた。

 

梨子「あの・・・私、こんなたくさん食べるのは・・・。」

 

母「大丈夫よ。夫がもうすぐ帰ってくるわ。」

 

瑠惟君のお父さんか・・・。どんな人なんだろう?

 

すると玄関の扉が開く音がした。

 

???「ただ今戻りました。」

 

母「あなた久しぶりね。可愛らしいお客さんが来てるわよ。」

 

???「そうでしたね。では挨拶を。」

 

そうして入ってきたのは背が高くて、がっちりとしていて、とても真面目そうな雰囲気のある男性だった。

 

父「はじめまして。あなたが桜内梨子さんですね。私は瑠惟の父親です。よろしくお願いします。」

 

その男性はしっかりと頭を下げて、礼儀正しく挨拶をした。

 

梨子「今日からしばらくお世話になります。桜内梨子です。よろしくお願いします。」

 

思わず私もお辞儀をした。

 

父「彼が言っていた通り、とても真面目でいい子ですね。彼が信頼するのも頷けます。」

 

母「 じゃあみんなで晩ご飯を食べましょう!」

 

「「「いただきます。」」」

 

食事は三人で色んなことを話したりしながらとても楽しく進んだ。

 

食後に先程の飾ってあったトロフィー達を見ていると彼のお母さんが話しかけてきた。

 

母「すごいでしょあの子。昔からバスケが大好きでね、誕生日に何が欲しいか聞くと毎年、新しいバスケットのシューズが欲しいって言ってたの。練習も人一倍頑張っててね、全国大会で優勝したこともあったのよ。」

 

梨子「そうだったんだ・・・。でもなんでやめちゃったんですか?」

 

その時、彼のお母さんが悲しそうな顔をした気がした。

 

私はすぐに後悔した。聞いてはいけないことを聞いてしまったと。

 

母「・・・あの子はね、昔はもっと元気で活発な子だったの。千歌ちゃんみたいにね。今のあの子ってば自分で『コミュ障ヘタレだ。』って言ってるでしょ?変な子よね?でもね、あの子は自分から『コミュ障ヘタレ』になったの。」

 

私はその言葉の意味が分からなかった。

 

梨子「どういうことですか?」

 

母「あれは中学三年生の夏の前ぐらいだったかな・・・。その日は全国大会の出場をかけた大事な試合がある日だったの。試合に出場していた彼はいつも通りの調子で得点を重ねていき、チームを勝利へと近づけていったわ。・・・でもね周りの子は彼の卓越した力を良くは思っていなかったみたいなの。一年生の頃からレギュラーメンバーで他の一年生とは頭ひとつ以上抜けていたからね。それでその子達は試合の休憩時間の間に彼のシューズに細工をしたの。そんな事を知らない彼はそのまま試合に出た。案の定、彼は試合中に大怪我をしたの。」

 

梨子「そんな・・・ひどい。」

 

母「試合はなんとか勝てたけど、彼は今後の試合に出られるような状態じゃなかった。後で怪我の原因がイタズラだと判明すると学校側はその子達を退学処分にしようとした。でも彼はそんな事しなくていいから、その子達にバスケを続けさせてあげてほしいと言ったの。彼は怒るどころかその子達を許してほしいとお願いしたの。」

 

あまりの衝撃に私は言葉が出なかった。

 

母「彼は周りに悲しむ姿は一切見せなかった。でも一人になると泣いていたの。もうバスケはできないって。それから彼はバスケットボールに一切触らなくなったの。それに心も閉ざした。あんなに明るかった彼が日に日に暗くなっていくのはとても見ていられなかった。一部の友達と千歌ちゃんとかが慰めてくれたおかげで良くはなったの。でも心のどこかで悲しみを抱えているのは間違いなかった。・・・そんなある日にね、彼の友達が彼をスクールアイドルのイベントに連れて行ってくれたの。」

 

それって果南さん達の・・・

 

母「家に帰ってくるとね、彼は久しぶりに笑顔を見せてくれたの。そして色んな人に元気をもらったって言ってたの。別の日には曜ちゃんっていう女の子と仲良くなったなんて事も言ってたの。」

 

私はいつも頼りになって何でもできる彼が過去に壮絶な経験をしていた事に驚いた。Aqoursを支えてくれている彼が人知れず悩んでいたことを。

 

母「でも、やっぱり内浦に行かせて良かったわ。」

 

梨子「え?」

 

母「話を聞く限り、あの子は元気にやってるみたいね。あなたみたいな美人な子達に囲まれて幸せだと思うわ。」

 

梨子「美人だなんて/////」

 

母「久しぶりに連絡が来たと思ったら、女の子を家に泊めてもいいかって聞かれて本当に驚いたわ。しかも声が真剣だったからおなおさらよ。」

 

私の為に・・・。

 

母「梨子ちゃん、あの子と仲良くしてくれてありがとうね。」

 

梨子「いえいえ。私も何度も彼に救われましたから。」

 

父「梨子さん、私から一ついいですか?」

 

梨子「うわぁ!」

 

いつの間にか彼のお父さんがいたのでビックリした。

 

母「あなた、いつからいたの?」

 

父「最初からいましたけど・・・」

 

母「そう。気づかなかったわ。」

 

梨子「それで・・・?」

 

父「はい。もしあの子が何か悩みを抱えているようだったら声を掛けてあげてください。あの子は他人に迷惑をかけまいと一人で抱えてしまう性格なんです。親としてあなたにこんな事を頼むのはおかしいと分かっています。でもあの子には皆さんが頼りなんです。」

 

そんな事言われなくても・・・

 

梨子「もちろんです。私達Aqoursが彼を支えます。彼が今まで私達を支えてくれたように。」

 

父「ありがとうございます。・・・話が長くなってしまいましたね。もうこんな時間ですし、そろそろ寝ましょうか。」

 

梨子「はい。」

 

次の日から私はピアノを使って調整を始めた。

 

瑠惟君の家族の人が私の為に静かにしてくださったのでとても集中することができた。

 

時間も忘れ、気がつけば夕方になっていた。

 

ここで私はある事を思い出す。

 

梨子「千歌ちゃんに連絡するの忘れてた!」

 

急いで千歌ちゃんに電話をかけた。

 

 

 

 

 

ー sideout 梨子 ー

 

ー side in 瑠惟 ー

 

千歌「もしもし梨子ちゃん、連絡遅いよ!どうせ忘れてたんでしょ?」

 

どうやら梨子からのようだ。

 

千歌「みんな、梨子ちゃんに何か話しておくことある?」

 

千歌の問いかけに一年生達が反応するが、結局三人とも話さなかった。

 

瑠惟「千歌、変わってくれ。」

 

千歌「分かった。」

 

千歌からスマホを受け取り、梨子と話す。

 

瑠惟「もしもし梨子。」

 

梨子「瑠惟君ね。昨日あなたの家に着いたの。」

 

瑠惟「そうか。家に誰かいたか?」

 

梨子「うん。あなたのお母さんとお父さんがいたよ。」

 

マジかよ。二人とも帰ってこれたのか。

 

瑠惟「変な親だろ?母さんはずっと喋ってるし、父さんはクソ真面目だし。」

 

梨子「二人ともとても良い人達だったよ。・・・瑠惟君、何か悩み事とかあったら相談してね。絶対だよ。」

 

瑠惟「どうした急にそんなこと言って。前に梨子に言った事そのままじゃないか。」

 

梨子「なんとなくだよ。」

 

本当に女子は分からん。

 

瑠惟「曜も梨子と話すか?」

 

曜「私は・・・」

 

曜はなぜかためらっていた。

 

どうしたんだ曜のやつ。

 

千歌のスマホの充電が無くなりかけていることに気づいた。

 

瑠惟「梨子、千歌のスマホの充電が無くなりそうだからもう切るぞ。」

 

梨子「うん、じゃあまたね。」

 

電話を切り、千歌に文句を言った。

 

ここで曜がいないことに気づいた。

 

瑠惟「曜はもう帰ったのか?」

 

千歌「あれ?ほんとだ。曜ちゃんがいなくなってる。」

 

それにしても、最後に曜が見せた表情がどこか悲しげだったのは気のせいだろうか・・・

 

ーsideoutー瑠惟

 

ーside inー曜

 

何やってるんだろ私・・・

 

なんであの時電話を取らなかったんだろう・・・

 

なんで何も言わずに帰ったんだろ・・・

 

違う。私はあの場から逃げたかったんだ。

 

千歌ちゃんが梨子ちゃんや瑠惟君と楽しそうにしゃべっているのを見てると、私はいらないのかなって思っちゃう。

 

Aqoursにとっての私って何?

 

考えれば考えるほど分からなくなる。

 

???「どうしたの曜?」

 

呼ばれて振り返ると・・・

 

曜「鞠莉ちゃん!?」

 

どうしてここに?

 

鞠莉「ちょっとお話ししない?」

 

曜「・・・うん。」

 

鞠莉ちゃんに連れられて喫茶店に来た。

 

曜「それで話って?」

 

鞠莉「今日の曜の様子が変だったから話したくなったの。」

 

曜「バレてたんだ・・・」

 

鞠莉「多分、他のみんなも気づいてるよ。」

 

曜「でも大丈夫だよ!ダンスもうまくいったし!」

 

鞠莉「曜、今ここでは本音を出していいところよ。千歌っちとかだと言いにくいでしょ?」

 

とうとう観念して私は話し始めた。

 

曜「・・・私ね昔からずっと千歌ちゃんと何かやりたいと思ってたの。そして気づいたら高校生になってた。だから千歌ちゃんが一緒にスクールアイドルやりたいって言ってくれたのは本当に嬉しかったの。でもすぐに瑠惟君や梨子ちゃんが来た。千歌ちゃんね瑠惟君といるとすごく楽しそうなの。私といるときよりも楽しそうに見えるの。梨子ちゃんも同じ。二人で曲作って、気づいたら他のみんなもいた。だから思ったの、千歌ちゃんは私と一緒じゃなくてもいいんじゃないかって・・・」

 

涙が出そうになるのを何度もこらえた。

 

鞠莉「どうしてそう決めつけるの?千歌っちが一言でもそんなこと言った?」

 

曜「言ってないけど、見てたら分かるよ。」

 

鞠莉「そうなんだ。私はちっともそうは見えないけどね。」

 

曜「どうしてそう言えるの?」

 

鞠莉「理由なんてないわ。私がそう思ったから。逆にそうじゃないってことは絶対にあり得ないわ。それとも曜と千歌っちはその程度の関係だったってこと?曜の話を聞く限りではそんなことはないと思うけど。」

 

そうなのかな・・・。私が勝手に思い込んでただけなのかな?

 

うん!絶対そうだ!私と千歌ちゃんはそんな安い関係じゃない!

 

曜「ありがとう鞠莉ちゃん。私の勘違いだったみたい。」

 

鞠莉「なら良かったわ。ところで曜・・・。」

 

曜「何?」

 

鞠莉「曜って今好きな人いる?」

 

曜「えぇぇぇ!?どうしたの急に!?」

 

あまりにも突然すぎてビックリしている。

 

鞠莉「なんとなく気になってね。それで実際どうなの?」

 

曜「それは・・・分からない。」

 

鞠莉「ふ~ん。そうなんだ・・・。てっきり瑠惟のことが好きなんだと思ってたわ。」

 

曜「る、瑠惟君!?別に私はそんな・・・。」

 

鞠莉「じゃあ・・・瑠惟と千歌っちが付き合ったりしても大丈夫なの?」

 

曜「え・・・。やっぱりあの二人はそんな関係だったんだ・・・」

 

そうだよね。見てたら分かるもん。あんなに仲が良いんだし、一緒に住んでるし、付き合っててもおかしくないよね。

 

でも、なんでだろう・・・この気持ちは何?なんで悲しいの?なんで泣きそうになるの?

 

鞠莉「まぁ例え話だけどね。」

 

曜「え?」

 

鞠莉「冗談よ、冗談。あの二人は何にもないわ。」

 

良かった。瑠惟君は付き合っていないんだね。

 

・・・『良かった』?なんで私はそう思ったの?

 

鞠莉「やっぱり曜は瑠惟が好きなんだね。」

 

そうなんだね。初めて彼に会って、助けてもらって、再開して・・・。モヤモヤが消えて、気づいた。私は彼が好きなんだ。恋してるんだ。

 

曜「うん・・・。私、瑠惟君が好き。そしてそれと同じぐらいにAqoursのみんなが好き。」

 

これが私のホントの気持ち。

 

鞠莉「じゃあ明日からまたがんばりましょ。本番までもう少しよ。」

 

曜「うん!今日はありがとう!また明日ね!」

 

こうして鞠莉ちゃんと別れ、家に帰った。

 

よし!絶対に成功させてやるぞ!

 

次の日

 

曜「おはよう!」

 

元気よく挨拶して部室に入ると既に他のみんなが来ているのが分かった。

 

千歌「曜ちゃんおはよう!見てこれ!」

 

そう言って千歌ちゃんが見せてきたのは・・・

 

曜「シュシュ?どうしたのこれ?買ったの?」

 

千歌「ううん、梨子ちゃんからだよ!」

 

曜「!!」

 

また梨子ちゃんだ・・・

 

昨日に取り除いたはずのあの感情が押し寄せてきた。

 

結局その日の練習は集中できず、何度もミスをした。

 

何かおかしいと思った瑠惟君が心配して休んでていいと言ってくれたが、それがまた私の心に刺さった。

 

見学していてもあのことが頭から離れず、ぼーっとしていた。

 

瑠惟「曜、大丈夫か?もしかして熱中症か?」

 

練習後、彼が私にそう声を掛けてくれた。

 

本当なら嬉しいはずなのに、この時は違った。

 

どうしてそんなに優しいの?私のことなんか・・・。

 

その瞬間、私の中で何かがはじけた。

 

曜「私のことはもう放っておいて!どうせ私なんていないほうがいいでしょ!」

 

瑠惟「え?」

 

気づいたら私は学校を飛び出していた。

 

とにかくここにはいたくなかった。

 

 

 

家に帰ってからも今日のことが頭の中でずっとループして再生されている。

 

あぁ・・・今度こそ絶対に嫌われちゃった。瑠惟君にも、千歌ちゃんにも。

 

なんであんなこと言ったんだろ・・・。

 

とにかく後悔しかなかった。

 

鞠莉ちゃん、ごめんね。

 

そんな時、私のスマホに着信が入った。

 

これは・・・

 

梨子ちゃんだ。なんでこんな時に・・・。

 

私は出るか迷ったが、結局出ることにした。

 

梨子「もしもし曜ちゃん?」

 

曜「どうしたの梨子ちゃん?」

 

梨子「聞いたよ。私の代わりにポジションに入ってくれたって。ごめんね。私のワガママのせいで。私の動きで会わせなくていいから、曜ちゃんなりの動きでやってね。」

 

梨子ちゃんの方が一人で不安なはずなのに、私の心配をしてくれるなんて・・・。

 

でも・・・

 

曜「もう無理だよ。」

 

梨子「え?」

 

曜「だって私、今日みんなにひどいことを・・・。」

 

絶対に怒られると思っていた。だが・・・

 

梨子「うん。知ってるよ。さっき千歌ちゃん達から相談があったんだ。曜ちゃん、聞いてね。千歌ちゃんね昔から何度も曜ちゃんの誘いを断り続けたことが申し訳なかったって、だからスクールアイドルは最後まで一緒にやり遂げたいって言ってたの。それに瑠惟君はあの時曜ちゃんと出会えて良かったって、こんな自分を頼ってくれて、涙を流してくれたことが嬉しかった。だから浦の星で曜ちゃんの恩返しをするんだって言ってたんだよ。私もね、曜ちゃんや千歌ちゃん達がいなかったら前に進むことはできなかったって思うの。だからみんなには感謝してるの。改めて言うね。ありがとう。」

 

三人がそんなに私のことを考えててくれたなんて・・・。

 

今まで私が考えてたことがバカみたいに思えた。

 

梨子「私は曜ちゃんなら大丈夫だと思う。だって千歌ちゃんとずっと一緒にいたんでしょ。私なんかよりもずっと長くね。だから大丈夫だよ。千歌ちゃんも瑠惟君も他のみんなも曜ちゃんのことは嫌いにならないよ。」

 

曜「ありがとう梨子ちゃん。明日みんなに謝るよ。」

 

梨子「うん。がんばって。じゃあね。」

 

電話を切って寝ようとすると、私のことを呼ぶ声が聞こえた気がした。

 

とうとう幻聴まで聞こえだしちゃった。早く寝て、休まなきゃ。

 

そうして寝ようとするが、まだ聞こえる。しかもさっきより大きな声で。

 

さすがにおかしいと思い外を見ると・・・

 

そこにはいるはずのない人物がいた。

 

曜「千歌ちゃん、瑠惟君!?なんでここに・・・」

 

千歌「えーっと・・・こんばんは?」

 

瑠惟「こんな夜遅くにすまんな。」

 

私は急いで階段を駆け下りて二人のところへ向かった。

 

曜「どうして・・・」

 

千歌「今日の曜ちゃんのことが気になったけど連絡が取れなかったから心配でつい・・・。それに美渡ねぇも志満ねぇも忙しいから車出せないって言うから自転車で来ちゃった。」

 

千歌ちゃんの家からここまで自転車で!?そんなに心配してくれてたんだ・・・。

 

瑠惟「お前は漕いでないだろ。自分の後ろに乗ってただけだったろうが。」

 

千歌「まぁそうだけど・・・」

 

瑠惟「曜、さっきは悪かった。何か気の触るようなことをしてしまったのなら謝る。ごめん。」

 

違うよ・・・悪いのは私なのに・・・。

 

千歌「曜ちゃん、どんなことがあっても私達は曜ちゃんの味方だからね。だから大丈夫だよ。安心していいんだよ。」

 

その瞬間、私は二人の胸に飛び込んだ。

 

曜「ごめんなさい瑠惟君!さっきはあんなこと言って!瑠惟君は何にも悪くないのに・・・」

 

瑠惟「もう気にしてねーよ。誰だって不安になることはあるよ。だからもう泣くな。せっかくの美人が台無しになっちまう。」

 

曜「ごめんなさい千歌ちゃん!千歌ちゃんにもひどいこと言って・・・」

 

千歌「大丈夫だよ。私は曜ちゃんがそんな子じゃないって知ってるから。」

 

あれからどのぐらい経ったのだろうか?いつの間にか涙は止まっていた。

 

その間も二人は優しく私のことを包んでてくれた。

 

 

 

ー sideout 曜 ー

 

ー side in 瑠惟 ー

 

次の日、曜はAqoursのみんなに昨日のことを謝り、練習にも熱が入るようになった。本番までに残された時間の中で千歌と曜は新しいステップを完成させた。二人にしかできない正真正銘オリジナルステップを。

 

本番当日

 

本番前に梨子に電話を掛けた。

 

瑠惟「もしもし梨子、あの・・・その・・・前は相談に乗ってくれてありがとな。おかげで何とかなったよ。」

 

梨子「も~何言ってるの。友達が困ってたら助けるのは当たり前だよ。私も嬉しかったよ。」

 

瑠惟「そうか・・・なぁ一つ聞いていいか?」

 

梨子「何?」

 

瑠惟「もしかして聞いたのか?昔あったこと。」

 

梨子「ごめんなさい。ついあなたのお母さんに聞いちゃって。」

 

全く・・・あの親は・・・。

 

瑠惟「別にいいんだ。隠してもしょうがないことだしな。」

 

梨子「あなたはどうしてあの人達を責めなかったの?怒らなかったの?大切なものを奪われたんだよ?」

 

瑠惟「確かにあの時は悔しかったし、悲しかった。でも自分が一番嫌だったのはそのことのせいであいつらからバスケを奪ってしまうことだったんだ。あいつらだって根っこは良い奴らなんだ。今ではこうして体は自由に動かせる。それで十分なんだ。それに今は一人じゃない。千歌や梨子、Aqoursのみんながそばにいてくれてる。そして一緒に前へと進める。これ以上に幸せなことなんてないな。」

 

梨子「ふふっ。瑠惟君らしいね。今日はお互いにがんばろうね。」

 

瑠惟「あぁ良い報告待ってるよ。」

 

梨子「それはこっちの台詞よ。一回戦落ちなんて聞きたくないからね。」

 

瑠惟「大丈夫だ。みんななら絶対に大丈夫。そう信じてるからな。」

 

梨子「なら安心ね。・・・そろそろ時間だわ。じゃあ切るね。」

 

瑠惟「またな。」

 

さて、こっちも行かないとな。

 

瑠惟「みんな、準備はできてるか?」

 

一同「もちろん!」

 

瑠惟「今日ここに梨子はいない。でも、あいつは別の場所でがんばっている。だから次は九人で歌うために絶対に勝とう!」

 

全員「Aqours Sunshine!」

 

どこにいても同じ明日を信じてる。

 

『想いよひとつになれ』

 

みんなならできる。絶対にやってくれる。

 

そう思いながら彼女達を舞台袖から見守った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




読み返すと無理矢理感がすごかった。


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コミュ障ヘタレとAqoursとμ's

中々アイデアが浮かばないし、大学も始まったので更新が遅くなってます。あと作者がAqoursのメンバーの設定を忘れていることがよくあると思います。もし、おかしな点があれば指摘してくださるとありがたいです。

概要欄にも書いてますが、μ'sとAqours自体は絡みません。


前回のコミュ障ヘタレ。梨子が抜けた状態で予備予選に臨むことになったAqours。千歌達との関係に悩み、衝突してしまった曜だが、鞠莉や梨子からみんなの気持ちを聞いて自分を見つめ直すことができた。

 

そして今は・・・

 

千歌「結果はまだ~?」

 

瑠惟「あ、あともう少しだからお、落ち着け。」

 

曜「瑠惟君が一番緊張してるじゃん。」

 

直接ステージに立ったわけではないのにこんなにドキドキするなんて・・・。子を見守る親の気持ちだ。

 

結果を聞きたいけど聞きたくない。

 

そんなことを思っているうちに運命の時が訪れた。

 

ルビィ「出ました!結果が出ました!」

 

千歌「瑠惟君先に見てよ。」

 

瑠惟「マジかよ。」

 

できれば最後が良かったのに・・・

 

え~っとAqoursのAは・・・

 

上から・・・イーズエクスプレス・・・

 

えっ?

 

Aqoursってア行だよな?ということは・・・

 

瑠惟「ハハッ・・・」

 

千歌「どうしたの瑠惟君?もしかして・・」

 

曜「あっ、それエントリー番号順だよ。」

 

瑠惟「あ、ホントだ。」

 

確かAqoursは後ろのほうだったから・・・

 

続きは・・・グリーンティーズ、ミーナーナ

 

Aqours、海音おとめ。

 

ん?Aqours・・・

 

瑠惟「やったぜ。」

 

千歌「あった~!予選突破だ!」

 

みんなが歓喜に沸く。

 

まぁひとまずは安心だな。良かった。

 

瑠惟「梨子に報告しなきゃな。」

 

梨子に電話を掛けようとすると梨子の方からこっちに掛けてきた。

 

梨子「予選突破おめでとう。」

 

瑠惟「そっちはどうだった?」

 

梨子「うん。ちゃんと弾けたよ。本当にありがとう。」

 

どうやら梨子は賞を貰ったようだ。

 

瑠惟「それは梨子自身が努力した結果だ。おめでとう。」

 

梨子「ありがとう。」

 

瑠惟「両親によろしくと言っておいてくれ。」

 

梨子「分かったわ。」

 

そう言って電話を切った。

 

果南「これなら学校説明会も人が来るんじゃないの?」

 

千歌「説明会?」

 

鞠莉「九月に行うことにしたの。」

 

ダイヤ「この予備予選で学校の名前も知れ渡ったはず。」

 

鞠莉「そして現時点での説明会の参加希望数は・・・0」

 

全員「えっ?」

 

あれ~丘people!?なんでこうなるの?

 

 

 

ということでこの状況をどうするか話し合うことにした。

 

千歌「ある程度人気はあるんだけどな~。」

 

瑠惟「人気があってもその学校に入りたいかはまた別の話だからな。」

 

曜「μ’sはこの時期には廃校を阻止してたんだっけ。そうだったよね瑠惟君?」

 

瑠惟「あぁ穗乃果さんたちはアクシデントもあったが存続を成功させたんだ。」

 

果南「よく知ってるね。瑠惟って何かとμ’sに詳しいよね。」

 

千歌「そうそう。まるで本人達から直接聞いてきたみたいだもん。」

 

あっ、そういえばみんなにはμ’sと交流があるって言ってなかったな・・・

 

瑠惟「それは・・・・と、友達から詳しく聞かされたんだよ・・・。」

 

そのことを言うとややこしくなりそうだし、何よりAqoursの成長に繋がらない気がする。

 

μ’sの後を追いかけるのも一つの道だ。でも、それじゃμ’sを超えるのは絶対に無理だ。

 

μ’sにはμ’sの道があり、AqoursにはAqoursの道がある。

 

できればそれは千歌達自身で気づいて欲しい。

 

千歌「ねぇ、明日東京に行ってみない?」

 

曜「どうして?次の予選までには時間はあるけど・・・。」

 

千歌「見つけたいの。μ’sとAqoursの違いを。どうして学校を救えたのか。それを実際に見て、私達がどう進むべきかをみんなで考えたいの。」

 

瑠惟「いいんじゃないか?『百聞は一見にしかず』っていうしな。」

 

千歌は分かっているんだな。あいつも成長したな・・・。最初は少し頼りなかったけど、今はしっかりリーダーしてるじゃないか。

 

千歌「でしょ!じゃあみんなに相談してみるね!」

 

そう言って千歌は家にダッシュで帰った。

 

瑠惟「それじゃあ帰るよ。」

 

曜「ちょっと待って!」

 

瑠惟「どうした曜?」

 

曜「少しいいかな?」

 

 

 

 

そうして曜と来たのは

 

瑠惟「あの~ここは・・・」

 

曜「うん。私の家だよ。」

 

いや、それは分かっているんだ。知りたいのはどうしてここなんだということだ。

 

曜「実はね、私のお母さんが瑠惟君に会いたいって言うから・・・」

 

は?どういうことだ?

 

曜「私のお母さんはAqoursのライブとかよく見に来てくれてるんだけど、いつもAqoursと一緒に瑠惟君がいるのを見てたから、あの子は誰なのって聞かれて、私がマネージャーだって言ったら直接会って話したいって言ったの。」

 

瑠惟「なるほど・・・。」

 

つまりは娘の近くにいる男が気になるってわけね。

 

そりゃそうだろ。なんせ女子校に男子がいるし、よりによってスクールアイドルのマネージャーやってるからな。

 

曜「ダメかな?」

 

瑠惟「分かったよ。」

 

そんな上目遣いで頼まれたら断れんだろ。

 

それにできるだけ理解は得ておきたいしな。面倒事は嫌いだからな。

 

曜「よし!行くよ!全速前進ヨーソロー!」

 

できれば優しいお母さんだといいな・・・。

 

そう思いながら渡辺家へとお邪魔するのであった。

 

曜「ただいま~!」

 

瑠惟「お邪魔します。」

 

???「おかえりなさい。あら、その方は・・・。」

 

曜「ママ、瑠惟君を連れてきたよ。話したかったんでしょ。」

 

曜ママ「瑠惟君ね!娘から話は聞いているわ。はじめまして、曜の母です。」

 

瑠惟「はじめまして。西王瑠惟です。よろしくお願いします。」

 

曜ママ「今日は来てくれてありがとうね。さぁ上がって上がって。」

 

良かった。曜ママは優しそうな人だな。

 

曜「ついて来て。私の部屋に行くから。」

 

いきなり曜の部屋に行くのか・・・。なんか緊張するな。

 

曜「適当なところに座っていいよ。」

 

ここが曜の部屋か・・・。なんというか予想通りきっちりと整頓されていて、曜らしい部屋だな。

 

曜「あ、あんまり見られると恥ずかしいかな/////」

 

瑠惟「すまん・・・つい。」

 

曜「ところでさっきの続きなんだけど瑠惟君は千歌ちゃんの案のことどう思う?」

 

瑠惟「さっきも言ったが、全面的に同意してるぞ。」

 

曜「そっか・・・やっぱり瑠惟君は千歌ちゃんのことを信頼してるんだね。」

 

瑠惟「まぁそうだな。これでも千歌とは付き合いが長いからな。」

 

なんだかんだ小さい頃から交流があったからな。年に数回会えるぐらいだったが、それでも千歌と一緒に時間は今でも覚えてる。

 

曜「じゃあ千歌ちゃんのこと好きなの?」

 

瑠惟「!?」

 

な、何を言っているんだ!?確か『好きなの?』って聞かれたよな?

 

瑠惟「それはどういう意味だ?」

 

曜「そのままの意味だけど?」

 

これはどう答えるべきなんだ?いや、そもそも自分は千歌のことをどう思っているんだ?

 

ただの従姉妹?クラスメート?家族?それとも・・・・。

 

瑠惟「好きか嫌いかで言うなら、好きだ。ただ、それは曜が千歌に対して抱く『好き』と同じだ。」

 

曜「・・・だよね!そうだと思った!」

 

瑠惟「じゃあどうして聞いたんだ?」

 

曜「それは・・・内緒だよ。」

 

瑠惟「なんだそれ。」

 

曜「今度はそっちが質問していいよ。」

 

ほう。ならこっちは・・・

 

瑠惟「曜は好きな人がいるのか?恋愛的な意味で。」

 

アイドルになんてこと聞いてんだと思った。まぁ答えは予想がつくが。

 

曜「・・・いるよ。」

 

そうそういないよな。・・・えっ?

 

今『いる』って言ったよな。

 

瑠惟「マジで?」

 

曜「マジで。」

 

なんか意外な答えが返ってきたな。

 

曜「誰か知りたい?」

 

確かにどんな人なのか気になる。でも・・・

 

瑠惟「やめとくわ。いつか・・・そう、ラブライブで優勝した時にでも教えてくれ。」

 

曜「分かった。じゃあ約束だよ。」

 

瑠惟「あぁ。」

 

これはラブライブで優勝しないといけないな。約束は破らない主義なんでな。

 

曜「じゃあ次はね・・・・・・」

 

曜と色んなことを話してる内に時間は夕暮れ時になっていた。

 

曜「もうこんな時間だね。じゃあ晩ご飯食べよっか。」

 

瑠惟「いやいや、家で千歌達が待ってるし、ここでごちそうになるのは迷惑だろ。」

 

曜「それなら大丈夫だよ。」

 

え?

 

曜「千歌ちゃんには私が連絡したし、それに今日ここに来たのはママと話すためでしょ。」

 

さっきトイレに行ったときに連絡していたのか。・・・仕方ない。

 

瑠惟「じゃあごちそうになります。」

 

曜「うん!良い返事だね!」

 

ということで半ば強引に夕食を頂くことになった。

 

三人「いただきます。」

 

曜ママ「さぁいっぱい食べてね!」

 

瑠惟「美味しいです!」

 

曜ママ「ありがと!いや~まさか曜が男の子を連れてくるなんてね~。」

 

曜「ま、ママが会いたいって言うからだよ////」

 

曜ママ「いつも曜の面倒見てくれてありがとうね。おかげでこの子は毎日楽しそうに今日あったことを話してくれるの。」

 

瑠惟「いえいえ、マネージャーの仕事ですから。」

 

曜ママ「特にあなたのことばっかり話すのよ。」

 

瑠惟「そうなんですか?」

 

曜「もぉ~ママは余計なこと言わなくていいの~。」

 

瑠惟「自分も曜やみんなのおかげで毎日が楽しいです。みんなで練習したり、帰りに寄り道をしたり、一緒に曲や衣装を作ったり、本番の後みんなで喜び合ったり、どの時間も自分にとっては大切な宝物なんです。だからラブライブで優勝して学校を存続させたい。Aqoursとずっと一緒にいたいんです。」

 

曜「瑠惟君・・・。」

 

曜ママ「あなたがマネージャーで本当に良かったわ。これからも曜をよろしくお願いします。」

 

瑠惟「はい。」

 

渡辺家での食事は時間を忘れるぐらい楽しく温かいものだった。

 

瑠惟「ではそろそろ帰ります。今日はありがとうございました。」

 

曜ママ「また遊びに来てね。いつでも歓迎よ。」

 

曜「じゃあ瑠惟君また明日ね。」

 

瑠惟「あぁ。誘ってくれてありがとな。楽しかったよ。」

 

曜「私も取っても楽しかったよ。バイバイ。」

 

そうして渡辺家を後にした。

 

ずいぶん遅くなったな。これは千歌に怒られるな。

 

家に帰ると扉の前で千歌が立っているのが見えた。

 

瑠惟「ただいま。遅くなってすまん。」

 

千歌「おかえり。どうだった?楽しかった?」

 

瑠惟「あぁ。なかなか楽しかったよ。」

 

家に帰ると待っていてくれる人がいる。

 

『ただいま』って言うと、『おかえり』と返ってくる。

 

他の人にとっては当たり前なことかもしれない。でも自分にとってはこれ以上の幸せはない。

 

千歌「なんで笑ってるの?」

 

瑠惟「さぁ、なんでだろうな?」

 

千歌は・・・高海千歌は何よりも大切な存在だ。

 

瑠惟「明日は早いからもう寝るぞ。」

 

千歌「うん。」

 

 

 

 

翌日

 

昨日の千歌の提案で東京に来た。

 

急な提案にもかかわらず、みんなの予定が合って良かった。

 

駅で梨子とも合流することができた。

 

曜「それでまずはどこに行くの?」

 

千歌「最初は神社だよ。」

 

梨子「前にも行かなかった?」

 

千歌「実はね、ある人に話を聞きたくて調べたの。そしたら会ってくれるって。」

 

花丸「ある人って誰ずら?」

 

千歌「それは会ってからのお楽しみだよ。でも話を聞くにはうってつけのすごい人だよ。」

 

東京の神社でμ’sの話を聞くのにうってつけの人・・・もしかして希さんか?

 

でもそうだとしたら千歌の奴どうやって連絡取ったんだ?

 

まぁあまり期待はしないでおこう。

 

黒澤姉妹もどうやら希さんと会えると思っているらしく色紙とペンを買いに行った。

 

神社に行ってみるとそこにいたのはもちろん希さんではなく、

 

聖良「お久しぶりです。」

 

理亞「・・・・・」

 

Saint Snowの二人だった。

 

なんとなくは予想してた。

 

でもこの二人北海道住まいなのによく来てくれたな。

 

そして落胆するあの姉妹。

 

聖良「ここではあれですし、場所を変えましょうか。」

 

そうして来たのはUTX学園。

 

この学校は第一回ラブライブ優勝グループのA-RISEの学校だ。

 

かつてμ’sもここでA-RISEに宣戦布告したそうだ。

 

瑠惟「今日はわざわざ自分たちのため時間を割いていただきありがとうございます。あと予備予選突破おめでとうございます。」

 

聖良「いえいえ、私達もちょうどあなたたちに会いたかったんです。特に瑠惟さん。あなたにね。」

 

は?どういうこと?なんでこの人が自分に?

 

聖良「まぁその話は後で。Aqoursの皆さんも予備予選突破おめでとうございます。お互い勝ち進んで、もし会えるとしたら決勝ですね。その時は私達が勝ちますけどね。」

 

おうおう、いきなりの挑発と勝利宣言ですか。

 

聖良「私達の原点はA-RISEです。A-RISEを見てスクールアイドルを始め、A-RISEと同じ道を歩いてきました。その中でμ’sとの違いなどは考えたことはあります。でも私達は勝つことが全てだと思っています。勝たなければA-RISEと同じ場所には立てない。同じ景色は見れない。だから私達は勝たなければならないんです。」

 

なんだ、そんなことか・・・

 

瑠惟「それで楽しいですか?」

 

自然と口が動いていた。

 

千歌「瑠惟君?」

 

聖良「それはどういう意味ですか?」

 

瑠惟「言葉通りですよ。ただ勝つことだけを見て、そこにあなた達の気持ちはあるんですか?」

 

聖良「もちろん楽しむことも大切だと思います。でもそれは『勝利』という前提があってのことです。」

 

瑠惟「じゃあ『アイドル』ってなんですか?勝つことが仕事なんですか?その考えならあなた達は絶対にラブライブで優勝できない。これだけは断言できる。」

 

理亞「あなたいい加減に・・・」

 

聖良「理亞。」

 

理亞「・・・・・」

 

瑠惟「自分の尊敬するアイドルが言ってました。『アイドルっていうのは笑顔を見せる仕事じゃない!笑顔にさせる仕事なの!』と。歌って踊っているアイドルが楽しんでなかったら、見ている人達に笑顔することはできない。勝つ為にアイドルやってる奴なんてどこにもいない。みんなは見ている人達のために、応援してくれる人達のために、何より自分のために歌っているんだ。」

 

聖良「そうですか・・・ならAqousはどこに進むんですか?」

 

千歌「私達はみんなと一緒に進みたい。メンバーのみんなと、応援してくれる人達と、私達を支えてくれる人達と、そして自分自身と。みんなでラブライブの優勝を目指します!」

 

千歌も言うようになったじゃないか。

 

聖良「みなさんらしいですね。私達は決勝で待ってますから。」

 

上等だ。絶対に決勝に行ってやる。そして・・・

 

聖良「瑠惟さん。」

 

瑠惟「はい。」

 

聖良「やはりあなたは素晴らしい人です。今年できたAqoursを支え、ここまで連れてきた。」

 

瑠惟「それはどうも。」

 

聖良「私達は考えたんです。Aqoursの強さの秘訣は何か。そして一つの結論に至りました。Aqoursはあなたが強さの秘訣だと。それであなたのことを調べさせてもらいました。西王瑠惟さん。あなたはかつてバスケットボール選手として無名の学校を全国大会で優勝させた。」

 

瑠惟・千歌・梨子「!!」

 

なんでそのことを知っている!?

 

聖良「でも、ある大会で負傷した後、表舞台から姿を消した。そして今はスクールアイドルのマネージャーとして、Aquorsを影から支えている。正直に言うと私達はあなたの力を認めています。そこで一つ・・・・」

 

なんだ、これ以上何を言うんだ。

 

 

 

 

 

 

聖良「Saint Snowのところに来ませんか?」

 

一瞬彼女の言ってることが分からなかった。

 

聖良「Saint Snowにはあなたの力が必要です。ラブライブで優勝するためにも。私達があなたの言う本当の『アイドル』になるためにも。」

 

Aqoursのみんなも突然の事で驚いている。

 

特に梨子は何が起こったのかすら分かっていないようだった。

 

でも返事は決まっている。

 

瑠惟「悪いが・・・」

 

千歌「ダメだよ!そんなの絶対にダメだよ!」

 

自分よりも先に千歌が答えた。

 

梨子「そうだよ!彼は私達を・・・Aqoursをスクールアイドルの頂点に連れて行ってくれると約束してくれたの!」

 

曜「瑠惟君がいないAquorsはAqoursじゃないの!」

 

ルビィ「ルビィの背中を押してくれた先輩は大切な人なんです!」

 

花丸「先輩は嘘をつかないずら。だからオラ達のそばにいてくれるずら!」

 

善子「我がリトルデーモンを奪おうとするとはいい度胸ね!」

 

果南「一度離れてしまった私達をもう一度繋げてくれた彼にまだ私達は何も返せていないの。だから絶対に渡さない!」

 

鞠莉「迷った時に手を差し伸べてくれる彼は私達に必要なの!」

 

ダイヤ「もう二度と大切な人は失いたくないんですの!」

 

みんなが必死に止めようとしてくれた。

 

こんなにも信頼されたら裏切れないよな。

 

瑠惟「光栄な話ですが、まだこいつらを優勝させる仕事が残っているのでそちらに行くことはできません。」

 

聖良「まぁ最初から答えは分かっていましたけどね。良かったですね。こんなにも愛されて。あなたはAquorsに必要な人です。」

 

試されていたということか。

 

すると聖良さん、理亞ちゃんがこっちに来て耳元で囁いた。

 

聖良「でも、私達はいつでもあなたを歓迎しますから。あと今度会う時は聖良って呼んでね。」

 

理亞「私は諦めないから兄様のこと。」

 

瑠惟「/////」

 

この二人は本当に苦手だ。

 

千歌「なんで照れてるの!」グイッ

 

千歌に引っ張られて正気に戻った。

 

聖良「そろそろ時間ですね。みなさん行きましょうか。」

 

確かにもうすぐだな。

 

千歌「どこに行くんですか?」

 

聖良「今年のラブライブ決勝の発表です。恒例になっているんです。」

 

ということで見に行った。

 

今年はどこだろうか?

 

瑠惟「やはりこの場所か。」

 

予想通りだった。

 

Aquors「秋葉ドーム・・・。」

 

μ'sが最後のライブで使った場所であり、彼女達の戦果。μ'sがいなければラブライブがここで開催されることは無かった。

 

みんなから緊張感が伝わってくる。

 

瑠惟「改めて決勝の舞台が分かったわけだが感想はどうだ?」

 

千歌「私ね、今すごくドキドキしてるの。本当にここで歌うのかって。でもねそれ以上に・・・」

 

Aqours「楽しそう!」

 

そうか・・・。

 

瑠惟「じゃあここで歌えるように努力しないとな。」

 

千歌「そうだね。じゃあ内浦に帰ろう。」

 

その時だった。

 

梨子「待って!」

 

千歌「どうしたの?」

 

梨子「音ノ木坂に行ってみない?前は行けなかったし。」

 

瑠惟「そうだな。最後にそこに行こうか。」

 

音ノ木坂に着く直前、自分にとっては見慣れた光景があった。

 

瑠惟「懐かしいな。この階段も。」

 

千歌「ここって、μ'sが練習に使っていた・・・。」

 

この場所でμ'sが歩んでいったんだ。スクールアイドルの頂点の道を。

 

穂乃果さん、今あなた達に憧れた九人がここを登ろうとしているんです。学校を救うために、夢を叶えるために。これも何かの縁ですかね。

 

階段を登りきると音ノ木坂が見えた。

 

全員が立ち止まり、それを見ている。

 

すると音ノ木坂の生徒が声を掛けてきた。

 

生徒「どうされたんですか?」

 

千歌「ちょっと見学を。」

 

生徒「もしかしてスクールアイドルの方ですか?」

 

千歌「はい。」

 

生徒「そうでしたか。見に来る人は多いですよ。μ'sの出身校ということで。でも、あの人達は何も残していきませんでした。本当に何も。ただあるのはμ'sが音ノ木坂を救って、ラブライブで優勝したという事実だけ。」

 

あの人達ならそうするだろうな。

 

それが分かったらなもうここにいる意味は無いな。

 

千歌「なんで何も残さなかったと思う?」

 

千歌がふと呟いた。

 

瑠惟「残す必要がなかったんじゃないか?・・・μ'sはスクールアイドル。そしてあの9人がいるからμ'sなんだ。誰かが抜けてしまえばそれはμ'sではない。この学校からμ'sの事は消えてしまったが、他に大切な物を残してくれた。それはスクールアイドルの力。スクールアイドルの素晴らしさ。あの人達はそれを証明してくれた。そして今年も秋葉ドームでラブライブが開催できるんだ。多分自分もμ'sと同じ立場ならそうするだろうな。」

 

千歌「やっぱり凄いんだねμ'sは。私達は本当に追いつけるのかな?」

 

瑠惟「それは無理だと思うな。」

 

全員「え?」

 

瑠惟「μ'sとAqoursは違う。もちろん他のグループもだ。スクールアイドルの数だけ道がある。同じ道なんてどこにも無いと思うな。」

 

千歌「そうだね。私もそう思う。」

 

ならもうここにいる意味は無いな。

 

瑠惟「じゃあ帰ろうか。」

 

千歌「うん。でも最後に。」

 

全員「ありがとうございました!」

 

 

 

 

内浦に戻ると日が沈みかけていた。

 

解散しようとすると千歌が言った。

 

千歌「みんな、私分かったんだ。私達は私達自身の道を進んでいかなきゃダメだって。μ'sでもA-RISEでもないAqoursだけの道を。そこにきっと私の探してる『輝き』があると思うの。」

 

曜「Aqoursの道って?」

 

千歌「自由に走ることだよ。全身全霊前に向かって真っ直ぐに。みんなと一緒に。そして私は『0』を『1』にしたい。あの時のままで終わりたくない。」

 

梨子「自由に走ってバラバラになったりしない?」

 

瑠惟「なら自分は走り続けるみんなを支えたい。誰かが転んだり、はぐれてしまいそうなら手を取って一緒に走りたい。」

 

果南「そうだね。私も2年前と同じ過ちを繰り返したくない。今度は最後までやり遂げたいの。」

 

千歌「私はできるって信じてる。一緒にいてくれる仲間と支えてくれる人がいるんだもん。」

 

今まで暗くて見えなかった道が一気に明るく晴れた気がした。

 

これでAqoursの進むべき道が決まったな。

 

何かを追いかけるんじゃなく自由に進む。みんなで一緒に。お互いを支え合いながら。それぞれの目的は違うかもしれない。でも目指す場所は同じだから・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今度Aqoursのライブに行きます。


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コミュ障ヘタレと9人のアイドル

1ヶ月以上も空いてしまいすいません。時間を作るのが難しいって大学生になって実感してます。
今回でアニメの1期が終わります。


前回のコミュ障ヘタレ。無事に予備予選を突破したAqours。しかし学校存続の目処が見えず、μ'sと自分たちの違いを探しに東京へ行った。そこでSaint Snowと再開し、各地を回ることで自分達の進むべき道を見つけたのであった。

 

ついにこの日が来た。ラブライブ予選本番。これを突破すれば秋葉ドームでの決勝。しかも浦の星に生徒を呼び込む最大のチャンスでもある。

 

千歌もその事を理解してるのか、朝から緊張感が漂っている。

 

おそらく他のメンバーも同じ状態だろう。

 

瑠惟「じゃあ先に行くぞ。みんなのこと頼んだぞ。」

 

千歌「うん・・・。」

 

自分はマネージャーという立場上、先に会場に行き、色々と準備しないといけない。

 

できることなら会場まで同行して少しでも緊張を減らしてあげたい。

 

少し心配しながらも家を出た。

 

予選は今までよりも大きな規模の会場で行われる。

 

決勝の秋葉ドームには及ばないが、それでも大きいことに違いはない。

 

会場に着くと、そこには・・・

 

聖良「おはようございます。」

 

理亞「おはよう。」

 

瑠惟「!!」

 

なんでSaint Snow がいるんだ?

 

まさか応援にでも来てくれたのか?

 

聖良「私達が今日来た目的はあなたが考えてる通りですよ。」

 

へえ〜、そうか・・・。

 

瑠惟「そうですか。わざわざありがとうございます。意外とAqoursの事を気に入ってるんですね。」

 

聖良「確かにそうかもしれません。実際、彼女達のことは認めていますし。でも彼女達はあくまでもライバル。敵を知ることは勝利において必要な事ですから。」

 

本当に素直じゃないな。

 

理亞「・・・私達は決勝で絶対に勝つ。だからこんなところで負けたら・・・。」

 

瑠惟「負けないように頑張りますよ。」

 

聖良「とにかく今日はあなた達の答えを見せてもらいます。Aqoursの道というものを。」

 

受けてやろうじゃないか。

 

瑠惟「じゃあ準備があるので行きますね。」

 

聖良「では頑張ってください。あなた達の健闘を祈ります。」

 

 

 

準備が終わる頃には他のスクールアイドル達が集まり始めていた。

 

みんなを迎えに行くか。

 

千歌に連絡を取り、Aqoursのところへ向かうとそこには・・・

 

瑠惟「なんで浦の星の生徒がこんなにいるんだ?。」

 

見る限りではほとんどの生徒がいるようだ。

 

生徒A「応援は私達に任せて!」

 

生徒B「今日は頑張ってね!」

 

生徒C「浦女の力を見せてやって!」

 

瑠惟「千歌、これは一体・・・。」

 

千歌「うん!みんなが応援に来てくれたの!私達の姿を近くで見たいって、一緒に頑張りたいって。」

 

梨子「愛されてるんだね私達・・・。応援してくれる人がたくさんいる。」

 

曜「これじゃあ負けられないね。」

 

瑠惟「浦女の生徒だけじゃないぞ。なんとSaint Snowの2人も来てくれたぞ。」

 

千歌「ほんとに!?聖良さんと理亞ちゃんも来てるの!?」

 

瑠惟「まぁ半分偵察みたいなものだけどな。」

 

千歌「そうなんだ。・・・じゃあそろそろ控え室に行ってくるね。」

 

瑠惟「待ってくれ。」

 

そう言って、行こうとした千歌の腕を掴んだ。

 

瑠惟「少し時間をくれ。次に会えるのはライブ後だからな・・・。」

 

Aqoursのみんなが聞く姿勢に入ったところでひとつ深呼吸した。

 

瑠惟「分かっていると思うけど、大事なのは楽しむこと。ライブ中は学校存続の事は考えなくていい。会場にいる人達にAquorsの輝きを見せてやるんだ。Aqoursにしかできないステージを。もし不安なら今までやってきた事を思い出してみて。みんなの努力はみんな自身がよく知ってるはずだ。絶対に大丈夫。」

 

瑠惟「さぁ行こうか。0を1にする時だ。」

 

千歌「瑠惟君、見ててね私達の最高のステージを!」

 

瑠惟「もちろん。」

 

離れていくその背中は最初の頃に比べてずっと頼もしく見えた。

 

みんなを見送った後、ある人と待ち合わせをしていたので観客席の方へと向かった。

 

この辺りにいるって言ってたんだけど・・・

 

「瑠惟。」

 

この声は・・・

 

瑠惟「母さん・・・。久しぶり。それに父さんも。」

 

母「あなたがどうしても来て欲しいって言うからね。」

 

父「元気そうでなによりです。」

 

瑠惟「忙しいのにごめん。まぁ今日は楽しんでってよ。」

 

母「実は・・・一緒に来たのはまだいるわよ。」

 

瑠惟「え?呼んだのは2人だったはずだけど?」

 

まさかあの人達も来てくれたのか?いや・・・そんなわけないよな。

 

でも母さんならやりかねないな。

 

穂乃果「おっはよー。それと久しぶり!」

 

ほんとに来たわ。

 

瑠惟「おはようございます。穂乃果さん。それに海未さん、ことりさん。」

 

海未「全く、あなたという人はどうして私達を誘ってくれないのですか。」

 

ことり「まぁまぁ海未ちゃん、きっと瑠惟君も恥ずかしかったんだよ。」

 

瑠惟「今日は3人だけですか?」

 

穂乃果「うーん、私達も昨日知ったからみんなを誘う時間がなかったの。」

 

海未「確かAqoursでしたか?あなたの学校のスクールアイドルは。」

 

瑠惟「はい。きっと驚きますよ。それと・・・」

 

ことり「それと?」

 

瑠惟「Aqoursはμ'sを超えてみせます。あいつらの憧れだった皆さんを超えるために憧れるのはもうやめました。μ'sがラブライブで優勝したようにAqoursも優勝します。それがみんなで決めたことなんです。自分はそんなみんなに捧げ、尽くすと決めた。そしてAqoursを頂点へと連れていきます。」

 

穂乃果「今日、ここに来て良かった。瑠惟君の言葉を聞けて。」

 

海未「瑠惟、変わりましたね。あの時とは別人みたいです。」

 

ことり「頑張って私達を超えてね。楽しみにしてるよ。」

 

やっぱりこの人達には頭が上がらないな。

 

ありがとうございます。

 

心の中でそう思った。

 

すると会場の照明が変わり、ついに予選が始まった。

 

Aqoursの出番はラスト。その他にもいくつかのグループが出場している。どのグループも聞いたことのあるスクールアイドルばかりだ。

この中で勝ち上がるのはかなり難しい・・・。

 

でも・・・

 

瑠惟「千歌達ならできるさ。」

 

 

 

 

 

(ここから第3者視点です。)

 

時は少し遡り、場所は控え室へ。

 

千歌達は瑠惟と別れた後、控え室で着替えを済ませ曲の最終チェックを行っていた。

 

みんなの中には緊張とワクワクが入り混じった感情があった。

 

千歌「よし。本番もこれでいこう。」

 

こう言う千歌だったが内心これで勝てるのかと思っていた。

 

千歌の心情を察したのか2年生の曜と梨子が声を掛けてくれた。

 

曜「千歌ちゃん、大丈夫?さっきから元気がないみたいだけど。」

 

梨子「きっと大丈夫だよ。あんなに練習したんだもん。私達ならできるよ。」

 

千歌「曜ちゃん、梨子ちゃん・・・ありがとね。・・・うん!そうだよね!大丈夫だよね!」

 

千歌はこの2人が友人で本当に良かったと思った。

 

曜「それに千歌ちゃんが大好きな瑠惟君も見てくれてるしね♪」ニヤニヤ

 

千歌「もぉ〜!そういう事言わないの!」

 

梨子「千歌ちゃん、照れてる〜。」

 

千歌「2人ともやめてよ〜!」

 

そこには先程の暗さはどこにもなく光り輝く太陽があった。

 

 

 

そしてこちらには1年生3人の姿があった。

 

花丸「丸たちは最後の方だったずらね。なんだかのっぽパン食べたくなってきたずら。」

 

善子「あんたは緊張感なさすぎなのよ。もう少し・・・」

 

ルビィ「花丸ちゃんも善子ちゃんもすごいね。ルビィはさっきからドキドキが止まらないの。」

 

花丸「うーん、だって緊張しても仕方ないずら。やることはやってきた。だから後はそれをステージで出すだけ。図書室にいたままじゃ絶対に見ることは無かった景色。丸は早くそれが見たいずら。Aqoursのみんなと。」

 

善子「・・・そうね。私もあんた達が誘ってくれなかったら学校にさえ来れてなかったかもしれない。先輩達から勇気を貰って、一緒に頑張ってここまで来れた。だから・・・その・・・ありがとね。」

 

ルビィ「ルビィも花丸ちゃんや先輩達から背中を押してもらった。それで大好きなスクールアイドルになることができた。お姉ちゃんもきっと同じ気持ちだと思う。ルビィはまだみんなと一緒にいたい!」

 

最初は頼りなかった3つの種は今では綺麗な花を咲かせようとしている。

 

どこまでも優しく、暖かい花を。

 

 

 

果南は自分がここにいることを夢にも思わなかった。

 

それはダイヤも鞠莉も同じである。

 

果南「鞠莉、ダイヤ、思い出さない?昔のこと。もしあの時辞めないで続けていたらどんな風になってたかな?」

 

あの時・・・かつてのAqoursが越えられなかった壁を10人で越えて、今日という日がある。

 

鞠莉「そんなことどうでもいいじゃない。」

 

鞠莉は果南の問いをばっさり切り捨てた。

 

ダイヤ「だって私たちには仲間がいて最高の今がある。それ以上何を望むですの?」

 

果南「うん。そうだよね。」

 

果南(またみんなと歌うことができるのはあなたのおかげだよ。瑠惟。本当にありがとう。そして・・・大好きだよ。)

 

鞠莉「果南どうしたの?そんなうれしそうな顔して。」

 

果南「なんでもない。ただ・・・私は幸せ者だなって。」

 

果南「さぁ!あの時置いてきたものをもう一度取り戻そう!」

 

かつて動きを止めた時計はある1人の青年によって再び動き出した。

 

今度はもう止まらない。永遠に。

 

 

 

千歌「みんな出番だよ!」

 

Aqours全員で円陣を組む。これも何回やっただろうか。

 

千歌「これからいろんなことがあると思う。楽しいことだけじゃなくてや辛いこともたくさんあると思う。。でも私はそれを楽しみたい!どんなこともみんなと一緒に乗り越えたい!ここにいるのは私達だけじゃない。瑠惟君や学校のみんな。内浦の人達がいる。みんなと一緒に輝きたい!」

 

 

 

瑠惟視点に戻ります。

 

Aqours以外のスクールアイドルの出番が終わり、ついにみんなの出番だ。

 

やはりと言うべきかどのグループもハイレベルで地区予選とは思えないぐらい完成度が高かった。

 

その証拠に穂乃果さんたちも度々感嘆の声を漏らしている。

 

穂乃果「次だね。」

 

海未「見させてもらいますね。あなたが信頼する彼女達を。」

 

ことり「瑠惟君、もっと前に行かなくていいの?」

 

自分たちがいるのは観客席ではなく観客席近くの通路である。

 

まぁμ'sが来ていると知られれば大会どころではなくなるので敢えて人が少ないところで見ている。

 

そうだな・・・近くで見守るのもマネージャーの務めだしな。

 

瑠惟「じゃあ前の方に行きます。」

 

そう言って観客席脇の階段を駆け下りた。

 

かなりステージに近くなったところでAqoursのみんなが出てきた。

 

ここで千歌と目が合う。

 

瑠惟(がんばれよ。ここで見てるからな。)

 

千歌(うん。私達の輝き、見ててね!)

 

そんなテレパシーみたいなのを感じた。

 

そしてAqoursのステージが始まった。

 

千歌「今日は皆さんに、伝えたいことがあります!」

 

え?どういうこと?予定ではあの曲から始まるはずだが・・・

 

千歌「それは私たちの学校のこと!街のことです!」

 

すると千歌はステージ中央に向かい走り出す。

 

千歌「Aqoursが生まれたのは、海が広がり、太陽が輝く、内浦という街です。」

 

何が起こってるのかよくわからないうちにミュージカル?みたいなものは進んでいく。

 

千歌「小さくて人もいないけど、海にはたくさんの魚がいて、みかんが一杯取れて・・・暖かな人であふれる街。」

 

暖かな人は家族のことだけじゃない。梨子や曜、しいたけや学校のみんな・・・。

 

そうだろ千歌?

 

千歌「その街にある小さな小さな学校。今ここにいるのが全校生徒。そこで私達はスクールアイドルを始めました。」

 

曜「アキバで見たμ’sのようになりたい!同じように輝きたい!スクールアイドルの頂点に立ちたい!でも・・・」

 

千歌・曜「作曲!?」

 

ダイヤ「そう。作曲ができなければラブライブには出られません!」

 

千歌「そんな時、マネージャーとして瑠惟君が入ってくれました!」

 

唐突に名前を出され目線がこちらに集まる。恥ずかしい。

 

穂乃果「へぇ~そうだったんだ。」

 

近くまで来ていた穂乃果さんがいたずらっぽく言った。

 

あまりこちらを見ないでほしい。あとツンツンするのもやめてください。

 

千歌「3人で曲を作ろうとするけどうまくいきません!」

 

曜「そして作曲のできる少女、梨子ちゃんが転校してきたのです。」

 

千歌「奇跡だよ!」

 

そういえば梨子が来てからずっと言ってたもんな『奇跡だよ!』って。

 

周りを見るとみんなが笑顔になっているのがわかる。

 

内浦の人だけじゃなく会場のみんなが。

 

千歌・曜「東京から来た梨子ちゃんは最初スクールアイドルに興味がなかった。東京で辛いことがあったから。でも・・・」

 

梨子「輝きたい!」

 

千歌「こうして私達は曲を完成させライブをすることができました。」

 

曜「そして・・・」

 

花丸「おら、運動苦手ずら・・・だし。」

 

ルビィ「スクールアイドル好きだけど、人見知りだから・・・」

 

善子「堕天使だけど・・・」

 

花丸・ルビィ・善子「それでも・・・そんな私達でもスクールアイドルになりたい!」

 

千歌「そうしてAqoursは7人になりました。」

 

曜「東京で初めてのイベント!」

 

梨子「気合十分で望んだ私達でしたが結果は・・・」

 

2年生「0でした。」

 

曜「初めての挫折。やめる?千歌ちゃん。」

 

千歌「ううん、やめない!だって悔しいじゃん!」

 

梨子「私達の目標が増えました。」

 

千歌「0から1へ!」

 

ここで3年生の登場。

 

果南「私はもうスクールアイドルをやらない。そう決めていました。でも・・・」

 

鞠莉「諦めたくない!もう一度歌いたい!」

 

ダイヤ「私達のそんな想いをAqoursのみんなが繋いでくれました。」

 

千歌「そしてAqoursは10人になった!」

 

曜「頑張ってラブライブ予備予選を突破した私達。でも・・・」

 

梨子「入学希望者は0人。」

 

花丸「私達は0と縁があるずら。」

 

ルビィ「たとえ0でも・・・諦めない!」

 

善子「あの日そう誓ったから!」

 

果南「私達は決めました。」

 

鞠莉「μ'sと同じ道を進むんじゃない!」

 

ダイヤ「私達の・・・Aqoursの道をみんなと一緒に進むことを!」

 

1年生「今を全力で楽しむ!」

 

3年生「輝くって楽しむことだから!」

 

2年生「あの日0だったものを1にするために!」

 

曜「そして今日・・・」

 

梨子「この舞台で・・・」

 

千歌「さぁ行くよ!・・・1!」

 

曜「2!」

 

梨子「3!」

 

花丸「4!」

 

ルビィ「5!」

 

善子「6!」

 

ダイヤ「7!」

 

果南「8!」

 

鞠莉「9!」

 

瑠惟「10!」

 

反射的に叫んでいた。

 

しかし次に聞こえてきたのは・・・

 

大勢「11!」

 

Aqours「!」

 

会場のみんながコールしてくれたのだ。

 

これがAqoursが目指すみんなで輝くことか・・・

 

こんな最高の舞台は他にないだろう。

 

良かったな。みんな・・・。Aqoursは愛されてる。愛されてるってことはどんなに歌が上手いとかどんなにダンスがすごいとかより難しい。

 

みんな楽しんでこい!

 

千歌「今、全力で輝こう!0から1へ!」

 

全員「Aqours!サンシャイン!」

 

この日のためにみんなで練習してきた曲。

 

瑠惟「『MIRAI TCIKET』か・・・」

 

穂乃果「いい曲だね。みんなの想いが伝わってくる。」

 

海未「私達とは違う・・・。でもなんだか心が暖かくなります。」

 

ことり「これがAqours・・・。私も応援したくなってきた。」

 

伝説のスクールアイドルを唸らせる小さな街の小さな学校の大きな心を持った9人の少女。

 

これだからマネージャーはやめられないな。

 

曲が大サビに入る直前千歌が叫んだ。

 

千歌「みんな一緒に輝こう!」

 

その言葉に反応したみんながステージ付近まで駆け出した。

 

これはもちろんルール違反だが、大事なのはそこじゃない。

 

みんなと輝くことがAqours。その輝きに魅せられた人達が集まるのも不自然ではない。

 

最初の頃の自分なら真っ先に止めていた。でも、今日の自分はそんなことはしなかった。

 

勝利主義のSaint Snow でさえも一緒に駆け出していたのだ。

 

つまりはAqoursは今を全力で輝いている。競走(ルール)にとらわれずただ真っ直ぐに。これが千歌達のやりたかったこと。

 

この瞬間は会場の人々は大会ということを忘れたかのように楽しんでいた。

 

 

 

 

 

結果から言うとAqoursは決勝には進めなかった。

 

理由はエントリーしてない人がステージに近づいてルール違反になったから。当たり前のことだ。

 

それでも今日の出来事はスクールアイドル界で大きな反響を呼んだ。

 

もしAqoursが決勝に出ていたら優勝の可能性もあったと。

 

大会の後、千歌に聞いた。

 

瑠惟「千歌、後悔してるか?」

 

千歌「確かに決勝には出場できなかった・・・。でもね私すっごく楽しかった!これがAqoursの道なんだって身体で感じた。だから後悔はないよ。瑠惟君はどう?」

 

瑠惟「正直に言うと決勝に行きたかった。でも、あんなに楽しそうな千歌達の姿を見れたからな。後悔なんてどこにもないな。」

 

千歌「ごめんね。私達が勝手なことしちゃって。」

 

瑠惟「何言ってんだ。あんなことできるのはAqoursぐらいだよ。他人と違うことができるのはすごいことだ。もっと誇りを持て。」

 

千歌「ありがとね。大会前に瑠惟君が話してくれたおかげで安心できたの。」

 

瑠惟「それくらいしかできないからな。そういうのはマネージャーの仕事だ。」

 

千歌「うん。お疲れ様。」

 

瑠惟「よくがんばったな。」

 

そう言って千歌の頭を撫でる。

 

千歌「もぉ〜くすぐったいよ。」

 

曜「何してるの2人とも。早く帰って打ち上げしよ!」

 

瑠惟・千歌「はーい。」

 

Aqoursのみんなに何か奢ってあげよう。

 

そんな事を考えながらみんなの待っているところに向かった。

 

 

 




次回から2期に入ります。番外編は余裕ができたら書きます。


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コミュ障ヘタレと割と笑えない危機

キャラの名前を間違えるという大失態をお許しください。


前回のコミュ障ヘタレ。ラブライブ予選決勝に進出したAqours。結果は惜しくも決勝大会出場とはならなかった。でもAqoursは確かな何かを掴むことができた。

 

今日から2学期が始まる。まぁもちろんだが最初は始業式をする。

 

それで現在体育館にいるのだが・・・

 

瑠惟「千歌のやつ遅くね?」

 

梨子「もしかしたらまだ寝てるのかも。」

 

曜「家を出る時はどうだったの?」

 

瑠惟「それが・・・」

 

 

ーーーー

 

瑠惟「千歌、そろそろ起きろ。さすがに遅れるぞ。」

 

千歌「し、しゅくだい〜zzz」

 

寝ぼけてんのか?

 

瑠惟「とりあえず制服置いとくから起きたらすぐに着替えて朝ごはん食べてダッシュで来いよ。」

 

千歌「ありがと〜zzz」

 

このままにしてたら絶対に起きないな。

 

うーん・・・

 

でも面倒臭いから放っておこう。多分、美渡さん辺りが起こしてくれるだろう。

 

ーーーー

 

瑠惟「っていう感じだ。」

 

曜「あーそうなんだ・・・千歌ちゃんらしいというか・・・あはは。」

 

そんな雑談をしている中でも理事長である鞠莉さんのお話は続いている。

 

それにしてもここの生徒はマジで少ないな。

 

ざっと見たところ70人ぐらいか。

 

1年生に至っては1クラスしかないからな。

 

入学希望者数は10人ぐらいにまで増えたらしいが100人まではまだ遠いな。

 

学校説明会も近づいてるしどうやって人数を増やそう・・・

 

あぁ~もう1回ラブライブがあればな~。

 

鞠莉「そして皆さん、なんとラブライブの開催が決まりました!決勝はアキバドーム!」

 

あったわ。

 

千歌「遅れました〜。」

 

ここで寝坊怪獣ちかちーの到着。寝癖が直ってないので急いで来たのだろう。

 

瑠惟「もう一度あるぞ。ラブライブ。」

 

千歌「えぇ~!?そうなの!?」

 

曜「どうする?」

 

聞くまでもない。

 

千歌「出よう!」

 

耳元で叫ぶんじゃない。そして声がでかい。みんなこっち見てるぞ。

 

瑠惟「・・・とにかく決まりだな。じゃあ詳しくは練習の時に話そう。」

 

放課後になり練習のためにみんなが屋上に集まる。

 

ずっと練習してきたこの屋上は今となってはAqours専用の場所と化している。

 

千歌「ラブライブのことなんだけど、予選はいつなの?」

 

瑠惟「えっーと確か・・・」

 

ダイヤ「その前にやることがあるのではなくて?」

 

曜「学校説明会ですか?」

 

ダイヤ「ブッb・・・その通りですわ。」

 

梨子「確か1ヶ月後でしたっけ?」

 

ダイヤ「えぇ。まずそこで人を集めるのです。そのためにライブをするのはどうでしょう?」

 

千歌「賛成!それならきっと入学希望者も増えるよ!」

 

瑠惟「でも、そんなに練習時間を確保できるのか?」

 

千歌「え?」

 

瑠惟「前は夏休みってこともあったし、日が暮れるのも遅かった。だけどこれからは学校もあるし、日が暮れるのも早くなる。それにバスの本数も減るんだろ?」

 

一同「・・・」

 

瑠惟「予備予選の準備をしながら説明会の準備をする。両方とも同じ曲にしないなら曲を作るのはもちろん練習もそうとうハードなものになるぞ。」

 

瑠惟「みんなを困らせたくてこんなことを言ってるわけじゃない。みんなを守ることが最優先なんだ。だから1度練習方法を考える必要がある。・・・例えば練習場所を別の場所にするとか。」

 

果南「じゃあ沼津の方で練習するのはどう?沼津ならこっち方面に来るバスもまだあるし、練習時間も確保できる。どう瑠惟?」

 

瑠惟「それなら大丈夫そうだと思う。」

 

果南「決まりだね。鞠莉もこれでいいよね?」

 

鞠莉「えっ?あっ・・・うん。いいと思うわ。」

 

ん?どうしたんだ鞠莉さん。なんだか様子が変だ。

 

瑠惟「とりあえず練習を始めよう。最初は・・・」

 

それからも鞠莉さんはどこか浮かない表情だった。

 

瑠惟「みんなお疲れ様。家に帰ったらしっかりストレッチしとくんだぞ。」

 

練習が終わりみんなが帰宅の準備をする中で鞠莉さんは1人理事長室に向かった。

 

千歌「瑠惟君、帰ろ〜。」

 

瑠惟「悪い、先に梨子達と帰っておいてくれ。」

 

何かを嫌な予感がする。

 

あまりこういうことはしたくないが鞠莉さんの後をつけた。

 

 

理事長室の扉の前に来ると中から鞠莉さんの声が聞こえた。

 

鞠莉「もう少し!もう少し待ってほしいの!」

 

誰かと話しているのか?

 

次に出てくる言葉は予想もしないことだった。

 

鞠莉「・・・もう決まったのね。統廃合。」

 

まさかもう正式に統廃合が決定したのか!?

 

???「盗み聞きとはあまり褒められたものではありませんね。」

 

後ろを振り向くと・・・

 

瑠惟「ダイヤさん!それに果南さん!」

 

果南「やっぱり瑠惟も鞠莉が心配で来たんだね。」

 

ダイヤ「とりあえず入りましょう。」

 

扉を開けると受話器を持った鞠莉さんが立っていた。

 

鞠莉「果南、ダイヤ、瑠惟・・・やっぱり3人にはお見通しだね・・・。」

 

果南「それでどうなったの?」

 

鞠莉「この学校の統廃合が正式に決定したわ。」

 

やはりか・・・いや、逆ににここまで延ばせていたことがすごい。

 

ダイヤ「どうにかならないのですか?」

 

鞠莉「無理よ・・・パパに頼んだけどこれ以上はできないって。」

 

瑠惟「つまり・・・もう何もできない。」

 

鞠莉「えぇ。説明会も中止。どうしようもないわ。」

 

果南「とにかく明日みんなにこの事を話そう。」

 

ダイヤ「もう外も暗くなってきてますわ。今日のところは帰りましょう。」

 

もやもやが残る中、4人は解散した。

 

家に帰る途中、初めて梨子と会った場所で千歌と梨子が一緒にいるのが見えた。

 

瑠惟「2人とも何してるんだ?」

 

千歌「あ!瑠惟君おかえり。」

 

梨子「今、千歌ちゃんとこの学校が好きだなって話してたの。」

 

瑠惟「・・・そうか。」

 

・・・もうこの学校が無くなるなんて言えない。

 

千歌「絶対に守ろうね。」

 

瑠惟「そ、そういえば新曲の方はどうなってるんだ?」

 

思わず話を逸らしてしまった。

 

梨子「イメージはできてるんだけど、千歌ちゃんがね・・・」

 

千歌「歌詞が思いつかない〜。」

 

瑠惟「できることなら手伝うけど・・・。」

 

千歌「ほんと!?」

 

瑠惟「あぁ、千歌達みたいに上手くはないけどアイデアぐらいなら・・・。」

 

梨子「千歌ちゃん手伝ってもらったら?」

 

千歌「うん!そうする!よーし、じゃあ早速帰って作詞だ〜!」

 

そう言って千歌は1人で帰ってしまった。

 

全く・・・

 

瑠惟「悪いな梨子、邪魔して。」

 

梨子「ううん、私もそろそろ帰ろうとしてたから。」

 

瑠惟「梨子と帰るなんて初めてじゃないか?」

 

梨子「言われてみれば・・・、いつもは千歌ちゃん達と3人だからね。」

 

たまにはこういうのもありだな。

 

梨子「私ここに引っ越してきて本当に良かったって思ってる。千歌ちゃんや瑠惟君、Aqoursのみんなと出会えたし、また楽しくピアノを弾くことができた。東京にいた頃はスクールアイドルなんて全くの無縁だったから、まさか本当になってるとは思わなかった。こんな毎日がずっと続けばいいのにな・・・。」

 

瑠惟「そうだな。自分も梨子に会えて良かった。梨子がいなければAqoursは結成できなかったし、今こうして楽しく過ごしてることはないだろう。ありがとな。」

 

梨子「珍しいねそんなこと言うなんて。」

 

瑠惟「え?」

 

梨子「瑠惟君はいつも何を考えているかよく分からないの。」

 

意外と辛辣だな。

 

梨子「でも、いつも私達のことを1番に考えてくれてる。それってすごいことだと思う。誰かの為に動くって言葉で言うのは簡単だけど、実際にやるのは難しいの。だからそれができるあなたは本当に素敵な人だと思う。」

 

以前、梨子に何か悩んでるなら相談してほしいと言われた。

 

それって今じゃないか?梨子を頼る時なんじゃないか?

 

・・・そうだよな。あのときの自分とは違う。今は信頼できる仲間がそばにいる。それを1番分かってるのは自分じゃないか。

 

瑠惟「梨子・・・大事な話がある。」

 

梨子は少し驚いたようだが、自分の真剣な表情を見てすぐに事情を察した。

 

梨子「うん。」

 

瑠惟「実は・・・浦の星女学院の統廃合が正式に決定した。明日、鞠莉さんから伝えられるだろう。」

 

梨子「!?」

 

驚くのも無理はない。

 

梨子「それって・・・」

 

瑠惟「廃校だ。」

 

梨子「・・・そうだったんだね。」

 

瑠惟「?」

 

梨子「瑠惟君の様子が学校にいた時と違って変だったから何かあったのかなって思ってたの。」

 

瑠惟「ごめん。すぐに言い出せなくて。」

 

梨子「ううん、いいの。むしろこうして話してくれたことが嬉しいの。」

 

梨子に理事長室で聞いたことを話した。

 

瑠惟「それで梨子はどう思う?」

 

梨子「何か方法があるならできるだけやりたいけど・・・私に相談してきたってことは・・・何も無いんだね。」

 

瑠惟「あぁ、現状何も思いつかない。」

 

梨子「明日、みんなで考えるしかないね。」

 

瑠惟「そうだな。」

 

結局、何も案が出なかった。

 

梨子「本当に無くなっちゃうのかなこの学校。」

 

瑠惟「そんなことはさせない。みんなの大切な場所は絶対に守る。」

 

梨子「もし無くなっちゃったら・・・瑠惟君は東京に帰るの?」

 

瑠惟「・・・・・・」

 

そうだ。浦の星が廃校になれば自分はどうなる?親はここに残ることを許してくれるだろう。でも・・・

 

瑠惟「東京に帰るかもしれない。」

 

梨子「そうなんだ・・・。」

 

瑠惟「自分はあくまで浦の星の共学化のためのテスト用員だ。学校が無くなればここにいる意味は無くなる。」

 

梨子「そんなことない!瑠惟君は大切な・・・私達の友達なの!仲間なの!テスト用員なんかじゃない!ちゃんとした浦の星の生徒なの!いる意味なんてどうでもいい!一緒にいて欲しい!それじゃダメなの!?」

 

そう訴える彼女の目には涙が浮かんでいた。

 

瑠惟「わ、悪い。そんな風に考えてくれてるなんて思わなくて。」

 

梨子「わ、私もごめんなさい。突然大声出して。」

 

持っていたハンカチを梨子に差し出す。

 

梨子「ありがとう。」

 

瑠惟「・・・」

 

梨子「・・・」

 

変な空気が漂い、お互いに気まずくなる。

 

瑠惟「帰ろか。」

 

梨子「うん。」

 

2人で並んで帰るがいつもより梨子との距離が近いような気がする。

 

気のせいにしておこう。

 

 

 

翌日、Aqoursは沼津にあるスタジオに来た。

 

なんでも曜のお父さんの知り合いの人が所有しているが、特に使っていないので貸してくれることになったらしい。

 

練習に入る直前、鞠莉さんから話があることでみんなを集めた。

 

鞠莉「みんな話があるの・・・。実は・・・浦の星の廃校が正式に決定したの。」

 

昨日話を聞いていたメンバー以外は驚きを隠せない。

 

鞠莉「浦の星は来年度の生徒募集をやめる。それに伴い説明会も中止。」

 

淡々と告げる鞠莉さんも悔しさを滲ませている。

 

千歌「そんなっ・・・。」

 

千歌は踵を返し、外に行こうとする。

 

すかさず千歌の手を掴む。

 

千歌「離して!」

 

瑠惟「どこに行く気だ?」

 

千歌「鞠莉ちゃんのお父さんのところ。私が説得して延ばしてもらう。」

 

瑠惟「鞠莉さんはそれを何度もやってきて、もう無理だからこうして話してるんだ。」

 

千歌「瑠惟君は悔しくないの!?嫌じゃないの!?」

 

瑠惟「悔しいよ!嫌だよ!当たり前だ!でも何もできないんだよ!だから余計に腹が立つんだよ!無力な自分に!」

 

つい感情を表に出してしまった。

 

千歌「だよね・・・。みんなも多分同じ気持ちだよね。」

 

瑠惟「今までAqoursがこうして活動を続けられたのは鞠莉さん達が見えない所で支えてくれたからだ。でも、もう限界なんだ。だから残された時間を・・・」

 

千歌「嫌だ・・・嫌だよ!」

 

曜「千歌ちゃん?」

 

千歌「私はまだ諦めたくないよ!」

 

そう言って千歌はどこかへ行ってしまった。

 

瑠惟「待てっ!千歌!」

 

とりあえず・・・

 

瑠惟「悪いが今日の練習は中止だ。鞠莉さんとダイヤさんは1年生のことをお願いします。梨子、曜、果南さん、一緒に千歌を追いかけてください。」

 

梨子・曜・果南「分かった。」

 

あいつは鞠莉さんのお父さんの場所は知らない。だから内浦の方に戻ったはずだ。・・・そう信じたい。

 

瑠惟「多分千歌は内浦に戻るつもりだと思います。」

 

梨子「どうやって?」

 

曜「この時間じゃまだバスは来ないから・・・」

 

果南「まさか走って!?」

 

瑠惟「恐らく・・・。」

 

沼津から内浦までは相当な距離がある。だからいずれ千歌は体力が切れるはずだ。

 

ここは自分より体力もあって速い果南さんに任せよう。

 

瑠惟「果南さん、先に行って千歌を止めてもらえますか?」

 

果南「任せて!」

 

そう返事をすると果南さんはとんでもないスピードで走っていった。

 

あとは・・・

 

瑠惟「曜、梨子大丈夫か?」

 

曜「私は大丈夫だけど・・・梨子ちゃんが・・・。」

 

梨子「私は・・・ハァ・・・大丈夫だから・・・先に行って・・・。」

 

曜「どうする?」

 

瑠惟「置いていくわけないだろ。」

 

少しスピードが落ちるが仕方ない・・・。

 

瑠惟「ちょっと我慢してくれよ。よっと。」

 

梨子をおんぶして走る。

 

梨子「ち、ちょっとな、何してるの!?」

 

瑠惟「梨子は軽いから別に負担にならないな。」

 

梨子「そういうことじゃなくて/////」

 

しばらく走って、昨日千歌達がいた桟橋の辺りで果南さんと千歌がいるのが見えた。

 

果南「おーい3人とも大丈夫?」

 

瑠惟「やっと追いついた・・・。」

 

梨子を降ろしてその場に座り込む。

 

千歌「みんな・・・どうして?」

 

瑠惟「あのな、いきなり飛び出して行ったら心配して追いかけるだろ?」

 

曜「みんな千歌ちゃんの気持ち分かるよ。私だって廃校にさせたくないよ。」

 

千歌「曜ちゃん・・・」

 

果南「私も何とかしたいよ・・・でも・・・。」

 

千歌「私だけは諦めないよ。何があっても・・・」

 

瑠惟「千歌、何を勘違いしてる?」

 

千歌「え?」

 

瑠惟「この中で誰か諦めたなんて言ったか?」

 

千歌「!!」

 

ダイヤ「そうですわよ!」

 

千歌「ダイヤさん!?どうしてここに・・・」

 

ダイヤ「私だけではありませんわ。」

 

花丸「マルも!」

 

ルビィ「ルビィも!」

 

善子「ヨハネも!」

 

鞠莉「マリーも!」

 

ダイヤ「誰一人として諦めておりませんわ。」

 

千歌「みんな・・・」

 

瑠惟「何もできないなら何ができるか考えればいい。」

 

梨子「それでも無理なら奇跡を起こせばいい。」

 

曜「奇跡は信じる者にしか訪れない。だったら信じようよ。奇跡を。」

 

瑠惟「今はただのピンチだ。終わったわけじゃない。」

 

梨子「やろうよ千歌ちゃん!」

 

瑠惟「この状況から学校を救うのはほぼ不可能に近いだろう。でも、諦めたらそこで終わりだ。」

 

それは千歌・・・お前が教えてくれたことだ。

 

瑠惟「だからさ・・・泣くなよ。」

 

千歌は明らかに泣いてるが痩せ我慢をしてみせる。

 

千歌「泣いてないもん!泣いてたまるか!」

 

瑠惟「どこまでもついて行くさ。だから千歌は安心して前を見てればいい。後ろはみんなが支えてくれる。」

 

千歌「うん!」

 

泣くか笑うかどっちかにしてくれよ(笑)

 

千歌「鞠莉ちゃんが頑張ってたのは分かる。でも私も、みんなもまだ何もしてない!無駄かもしれないけど・・・最後まで頑張りたい!足掻きたい!ほんの少しだけ見えた輝きを探したい!見つけたい!」

 

やっぱりAqoursは簡単には負けないよな。

 

絶対に救ってみせるさ。最後に見たいのはみんなの笑顔だから。

 

千歌「起こそう奇跡を!足掻こう精一杯!全身全霊、最後の最後までみんなで輝こう!」

 

ここからの道は恐らく辛く厳しいだろう。それでもAqoursなら大丈夫さ。根拠なんてない。ただ・・・Aqoursとずっと一緒にいたから分かるんだ。Aqoursなら奇跡を起こせるって!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




2期1話の絶望感は初めて見た時はすごかったですね。


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コミュ障ヘタレは意外と器用である

関西の皆さん、地震の方は大丈夫でしたでしょうか。僕も関西の方に住んでいて朝すごく揺れて怖かったです。まだ余震とかがあるかもしれないので気を付けたいですね。

ちなみに先日3rdライブに行かせてもらったのですが、とても楽しくて今でもあの時間を思い出します。最高の思い出になりました。そしてAqoursの皆さんが無事で本当に安心しました。


前回のコミュ障ヘタレ。2学期が始まり、説明会、ラブライブに向けて新たなスタートを切ろうとしたAqours。しかし廃校が正式に決まり困惑する千歌達。でも最後まで諦めないという意志で進みだしたのであった。

 

学校で緊急の全校集会があった。内容は廃校に関してのことだ。

 

生徒だけでなく先生達にも動揺が走っている。

 

教室に帰ってからも話題の中心はこのことだった。

 

クラスメイトA「廃校になっちゃったら私たちどうなるんだろ?」

 

クラスメイトB「統合された学校に行くのかな?」

 

クラスメイトA「離れ離れにならないかな?」

 

クラスメイトB「わかんない。でも・・・できれば無くなってほしくないな。」

 

そんな感じの話が周りから聞こえてくる。

 

ここで久しぶりの登場。担任の緑山先生。

 

緑山「さっきも理事長から話があったと思うがこの学校は沼津の学校と統合して廃校になる。先生も今日の朝聞いたので理解が追いついてない。でも一つだけ言えるのはみんなは残りの時間を大切にしろよ。」

 

残りの時間か・・・

 

とにかくあいつらのためにできるすべてのことをやろう。

 

 

 

放課後、練習前に鞠莉さんから話があるということで部室に集まった。

 

鞠莉「みんな集まってくれてありがとう。」

 

ダイヤ「話とはなんですの?」

 

鞠莉「昨日あの後パパにもう一度電話したわ。本当にどうにかできないかって。パパは人が少ないから学校を続けられないと言ったわ。だから私は人が増えれば大丈夫なのって聞いたわ。そしたら・・・100人。年末までに入学希望者が100人集まれば来年度の募集をすると言ったわ。」

 

全くこれは奇跡だな・・・

 

梨子「100人・・・今で10人なのに年末までに100人なんて・・・」

 

瑠惟「でも希望は見えた。」

 

千歌「できるかできないかじゃない。やるしかない!こうして可能性がある限り私は信じる!」

 

鞠莉「だから説明会もするわ。」

 

てことは・・・

 

瑠惟「ラブライブの予備予選っていつだっけ?」

 

ルビィ「確か来月のはじめ・・・説明会の1週間後だったと思います。場所は特設ステージを設けるみたいです。あと・・・」

 

ルビィ「曲は未発表のものに限ります。」

 

いやーこれがきついんだよ。

 

学生に曲を1から作らせるなんて鬼畜だな運営は。

 

瑠惟「それなら2つの曲を作って並行して練習する必要がある。」

 

ダイヤ「千歌さん、梨子さん、曜さん、大丈夫ですか?」

 

梨子「私はなんとかなると思うけど・・・。」

 

千歌「歌詞が思い浮かばないー。」

 

曜「私も少しきついかな。9人分を2回だし・・・。」

 

瑠惟「そうだな・・・。あまり負担をかけすぎるのも良くないな。」

 

自分も手伝うけど、これだけじゃ足りないな・・・

 

そういえば・・・

 

瑠惟「3年生のだけのAqoursって誰が曲や衣装を作ったりしてたんですか?」

 

鞠莉「曲は私と果南で衣装はダイヤよ。」

 

なるほど。これならいけるぞ。

 

瑠惟「じゃあ・・・二手に分かれよう。片方は説明会用の曲と衣装。もう片方はラブライブ用の曲と衣装。」

 

果南「いいね!賛成!」

 

梨子「どう二手に別れるの?」

 

千歌「それならやっぱり2年生組と1年・3年生組がいいと思う!」

 

ダイヤ「決まりですね。」

 

ということで二手に分かれて曲・衣装を作ることになった。

 

2年生組は説明会、1年・3年生組はラブライブを担当する。

 

自分は2年生なので本来は説明会担当なのだが・・・

 

千歌「瑠惟君はラブライブ担当ね。」

 

瑠惟「なんで?」

 

千歌「1年生と3年生をサポートしてほしいの。」

 

瑠惟「理由はよく分からんが必要ならやるよ。」

 

千歌「頼んだよー。」

 

こうして1年生・3年生とラブライブ用の曲と衣装を作ることになった。

 

花丸「なんで先輩がこっちにいるずら?」

 

瑠惟「まぁ色々あってな。」

 

ルビィ「まさか2年生の人と喧嘩しちゃったんですか?」

 

喧嘩なら昔からアホみたいにやってるけどな。

 

瑠惟「違う違う。とにかくこっちを手伝うからよろしく。」

 

 

 

善子「曲作りといってもまずは何から始めるの?」

 

ダイヤ「最初は曲のコンセプトから決めないといけませんわ。」

 

果南「それで私達はいつも思い浮かんだことをホワイトボードとかノートにまとめたりしてたよ。」

 

コンセプト・・・

 

瑠惟「みんなはどんな曲が作りたい?」

 

鞠莉「私は今までAqoursになかったロックな曲がいいわ!」

 

確かに今までのAqoursの曲は『友情』だったり『前に進む』といったテーマの曲が多かったので自然と曲調もそういう傾向に偏ってしまうことが多かったな。

 

瑠惟「はい。いい考えだと思います。」

 

花丸「まるは今まで通りのAqoursらしい曲がいいずら。」

 

まぁ妥当な選択だな。披露して大外れということはなくなるし。

 

果南「私は鞠莉の意見に賛成かな。新しいことに挑戦してみるのも面白いし。」

 

善子「私はずら丸に賛同するわ。今まで通りやるのが一番いいの。」

 

果南「Aqoursには新しい流れがいるの!今まで通りじゃダメ!」

 

善子「今のままでも十分だわ!新しいことをやるってことは失敗する可能性も大きいのよ!」

 

ダイヤ「2人とも落ち着いてください。」

 

果南・善子「ダイヤ(さん)は黙ってて!」

 

ダイヤ「ピギィィ!」

 

これは困ったな・・・。どちらの言い分も正しいので否定ができない。

 

それに両者意見を譲ろうとはしないし。

 

いや、そもそも1年生と3年生同士がこれまであまり積極的に関わってるのは少なかったな。いつもなら2年生が中心になって色々していた。

 

これは曲を作る以前の問題だな。

 

千歌が頼んだ理由が分かったよ。

 

それならまずは何をしようか・・・。

 

瑠惟「みんな!いったん曲作りは中断だ。」

 

果南「え?どういうこと?」

 

善子「曲作りのために集まってるんでしょ?」

 

瑠惟「まぁまぁ、今日は天気もいいし少し外に出て体を動かさないか?」

 

自分の提案にみんなは少し戸惑いながらも運動着に着替えてグラウンドに来てくれた。

 

瑠惟「みんなそろったな。じゃあいまからケイドロするぞ。」

 

全員「ケイドロ?」

 

瑠惟「簡単にルールを説明すると、まず警察組と泥棒組の二組に分かれる。泥棒組は警察が数を数えてる間に好きなところに逃げる。警察組は数え終わったら泥棒組を捕まえに行く。泥棒は警察にタッチされたら捕まったことになりあらかじめ設定された牢屋に入る。泥棒は捕まった仲間をタッチすることで助けることができる。警察は時間内に泥棒を全員牢屋に入れたら勝ちで、泥棒は一人でも逃げ切ったら勝ち。」

 

果南「へぇ面白そうじゃん。」

 

花丸「まるは走るのが遅いからすぐに捕まりそうずら。」

 

瑠惟「それなら大丈夫だ。今回は警察は自分だけだから。みんなは泥棒組だ。」

 

善子「それでいいの?そっちは不利じゃない?」

 

瑠惟「ヘーキヘーキ。あともしみんなが勝ったらアイス奢るよ。」

 

鞠莉「Wow!これは逃げ切らないとね!」

 

瑠惟「それじゃあ今から60秒数えるからその間に逃げて。範囲は・・・この学校内で。牢屋はグラウンドに線を引いておくからそこで。制限時間は30分で。じゃあいくぞー。1、2、3・・・」

 

数えだすと同時にみんなが校内へと逃げていった。

 

瑠惟「58,59,60.さてと行きますか。」

 

まずは・・・一年生のフロアを見てみるか

 

一年生の教室に入ると人の気配を感じた。

 

おそらくロッカーの中かな。

 

ゆっくりとロッカーの扉を開けるとそこには・・・

 

瑠惟「誰もいない?」

 

おかしいな確かに気配を感じたんだが。

 

ガタッ

 

ん?

 

今何かが動いたな。教卓の方からか。

 

少しずつ教卓に近づくと・・・

 

花丸「逃げるずら!」

 

教卓の下からものすごいスピードで花丸が飛び出して廊下の方へ逃げて行った。

 

瑠惟「待てごらぁぁぁ~!」

 

花丸「先輩顔がマジずら~!」

 

瑠惟「こちとらアイスがかかってるからな!」

 

運動が苦手とか言ってたくせに結構速いじゃないか。

 

しばらく追いかけっこが続きやがて花丸の体力がなくなりスピードが落ちてきた。

 

瑠惟「はいタッチ!」

 

花丸「捕まったずら~」

 

瑠惟「これでも一応バスケやってたからな。じゃあ牢屋に行くぞ。」

 

花丸を連れて廊下に向かう途中・・・

 

ルビィ「ピギィ!」タタッ

 

黒澤妹か・・・。ついでに捕まえておくか。

 

瑠惟「花丸!ちょっと失礼するぞ!」

 

そう言って花丸を抱きかかえる。いわゆるお姫様抱っこというやつだ。

 

花丸「先輩!何してるずら!?」

 

瑠惟「ちょっと我慢してくれよ。すぐにルビィを捕まえるから。」

 

全速力でルビィを追いかける。

 

瑠惟「待てぇぇぇぇ!」

 

ルビィ「ピギャアァァァァ!」

 

ダイヤ「どうしたのルビィ!?」

 

ダイヤさん!?ちょうどいい。二人まとめて捕まえる。

 

ルビィ「お姉ちゃん、逃げて!先輩が来てるよ!」

 

ダイヤ「え?瑠惟さん!?ピギャアァァ!」

 

花丸「先輩、まる・・・重くないずらか?」

 

瑠惟「そりゃ重いに決まってるだろ。人一人抱えてるんだぞ。」

 

バチッ!

 

瑠惟「痛っ!何すんだよ!」

 

花丸「ふんだ!先輩のバカ!」

 

瑠惟「えぇ~。まぁでも千歌よりは軽い。・・・と思う。」

 

花丸「そういうことじゃないずら~。」

 

ーーーーーーー

 

千歌「へっくしょん!」

 

曜「どうしたの千歌ちゃん?」

 

梨子「もしかして風邪?」

 

千歌「違う。でもなんかものすごく失礼なことを言われたような気がする。」

 

ーーーーーーー

 

数分の追跡の末2人とも捕まえることができた。

 

瑠惟「ハァ・・・ハァ・・・やっと捕まえたぞ。しぶとすぎるぞ。」

 

ダイヤ「それはこっちのセリフですわ。まったくいつまで追いかける気ですの。」

 

ルビィ「もう・・・ダメ・・・」

 

花丸「いつまでまるを抱いてるずら?」

 

瑠惟「すまんすまん。つい抱き心地がよくて。」

 

花丸「全く・・・そういうことさらっと言うのはずるいずら。」

 

瑠惟「何か言ったか?」

 

花丸「何でもないずら!」

 

3人を牢屋に入れたので後は・・・

 

瑠惟「果南さんと善子か。」

 

いるとしたら多分・・・

 

ーsideout 瑠惟ー

 

ーside in 果南ー

 

さっきダイヤの叫び声が聞こえたけど多分瑠惟に捕まってるよね。

 

恐らく花丸ちゃんとルビィちゃんも・・・

 

確か捕まった人は助けられるんだっけ。

 

そういえば鞠莉と善子ちゃんはどこにいるんだろ?

 

このままじゃいづれ捕まるし、とにかく私だけでも助けに行かなきゃ。

 

そしてグラウンドに向かおうとした時

 

ドンッ

 

善子「痛っ。」

 

果南「善子ちゃん!?まだ捕まってなかったんだね?」

 

善子「クックッ・・・このヨハネの力をもってすればこの身を暗黒と同化させることなど造作もないこと。」

 

果南「つまりずっと隠れてたんだね。」

 

善子「まぁそういうことね。」

 

ここで善子ちゃんと会えたのはラッキーね。1人よりも2人で行った方が救出できる確率はグンと上がる。

 

果南「善子ちゃん、今から2人で捕まった人を助けに行かない?」

 

善子「いいでしょう。ヨハネの力あなたに貸してあげましょう。」

 

果南「決まりね。」

 

ということで私と善子ちゃんの2人でみんなの救出に向かうことにした。

 

校舎の陰からグラウンドを覗くと案の定ダイヤにルビィちゃん、それに花丸ちゃんも捕まっていた。

 

それにしてもなんで花丸ちゃんの顔が赤くなってるんだろ?

 

肝心の瑠惟は・・・ここにはいないようね。多分私達を探しに行ってるんだろう。

 

今がチャンスね。

 

果南「善子ちゃん、せーので飛び出してみんなのところに行くよ。」

 

善子「御意。」

 

果南「じゃあ行くよ。せーのっ!」

 

私達は一斉に飛び出して牢屋の方へと走る。

 

みんなも私達に気づいて声をあげる。

 

ダイヤ「・・ろですわ!」

 

ん?

 

ダイヤは今なんて言ったの?

 

花丸「・しろずら!」

 

何かを伝えようとしてるの?

 

ルビィ「うしろ!」

 

後ろ?

 

振り向くとそこには・・・

 

瑠惟「おまたせ。」

 

果南「瑠惟!?」

 

善子「先輩!?」

 

瑠惟が今にも私達に追いつきそうなスピードで後ろから迫ってきていた。

 

やばい。これじゃあ追いつかれる。

 

何か手は・・・

 

善子「私が食い止めるわ。先に行って。」

 

果南「善子ちゃん・・・。うん!分かった!」

 

善子「頼んだわよ。」

 

善子ちゃんが食い止めてくれてる隙にみんなを助ける。それしかない。

 

私はスピードを上げる。

 

善子「さぁ堕天使ヨハネが相手よ。かかって・・・」

 

瑠惟「タッチ。」

 

善子「そんな・・・こんな簡単になんて・・・」

 

瑠惟「いや、タッチするだけだし。」

 

善子ちゃんが・・・

 

あともう少し・・・。お願い間に合って・・・。

 

よしっ!間に合っt

 

瑠惟「タッチ。」

 

果南「・・・あともう少しだったのにな。」

 

私は残念ながらみんなを救出する前に捕まってしまった。

 

ーsideout 果南ー

 

ーside in 瑠惟ー

 

これで全員捕まえたかな。残り時間も1分。勝ったなガハハハッ。

 

瑠惟「全員捕まえたから勝ちだな。」

 

鞠莉「最後に油断したわね。」

 

瑠惟「忘れてた!鞠莉さんを!」

 

鞠莉「はい。捕まってるみんなをタッチしたから全員OKね!」

 

やっちまったぜ。

 

結局全員に逃げられてタイムアップ。

 

約束通りみんなにアイスを奢った。

 

瑠惟「いや~鞠莉さんにはやられましたよ。」

 

鞠莉「私の方が1枚上手だったみたいね。」

 

果南「それにしてもどうして私達の場所が分かったの?」

 

善子「そうよ!果南の作戦は完璧だったはずよ!」

 

瑠惟「それなんだけど・・・2人とも結構大きい声で話してたからさ、聞こえてきて、それで2人の後ろからこっそりつけてたんだよね。」

 

果南「そうだったんだ・・・ハハッ。ハハハハハッ!」

 

善子「アハハハッ!」

 

果南「バレバレだったね善子ちゃん。」

 

善子「そうね。果南。」

 

とりあえず作戦は成功かな。

 

ぽつぽつ。

 

あっ。

 

ダイヤ「雨が降ってきましたわ。」

 

鞠莉「みんな校舎に入りましょ。」

 

突然の雨でみんな少し濡れてしまった。

 

果南「うわぁ~濡れちゃったね。」

 

ルビィ「さ、さむい。」

 

瑠惟「大丈夫かみんな?」

 

善子「えぇ、すこし濡れてしまったけど大丈夫よ。」

 

雨が降るなんて言ってなかったんだけどな~。

 

でもこのままじゃ風邪をひくかもしれないし・・・

 

瑠惟「ダイヤさん、この学校にシャワールームってありましたっけ?」

 

ダイヤ「もちろんありますけど・・・。」

 

瑠惟「それって使っても大丈夫ですか?」

 

ダイヤ「私は大丈夫だと思いますけど、理事長は・・・」

 

鞠莉「ノープロブレム!全然OKよ!」

 

瑠惟「じゃあ体が冷える前にみんなシャワーを浴びよう。」

 

みんながシャワーを浴びに行ってる間自分は部室を漁っていた。

 

何か曲作りの参考になるものがあるかもしれないかと思ったのだ。

 

部室の棚を探していると一冊のノートが目に入った。

 

表紙には『Aqours ダンスフォーメーション アイデアノート』と書かれていた。

 

これは旧Aqoursの時のものか?

 

ページをめくっていくといくつかのダンスのフォーメーションの案が書かれていた。

 

その中にはとても難しい内容のものもあった。

 

まさか2年前の果南さん達はこれをやろうとしていたのか?

 

だとしてもこれは到底薦めることはできない。

 

全員の負担が大きいのはもちろん、何よりこれじゃあセンターが怪我をする可能性がある。

 

とにかく何か別の案を・・・

 

果南「何してるの?」

 

ギクッ

 

慌てて読んでいたノートを元の場所に戻す。

 

瑠惟「いや、ちょっと曲作りの参考になるものがあるかなと思いまして・・・」

 

果南「そう・・・」

 

バレちゃったかな?

 

果南「たとえそのフォーメーションが最善だったとしても私は絶対にやらせないから。」

 

瑠惟「・・・・」

 

バレてました。

 

鞠莉「2人とも何やってるの?こっちにおいでよ!」

 

果南「うん、今行くから。」

 

瑠惟「今行きます。」

 

部室から出る直前、果南さんが小さな声で言った。

 

果南「このことは千歌には言わないで。・・・・お願い。」

 

瑠惟「はい。」

 

千歌は優しくて強い子だ。無茶だとわかっていても絶対にやろうとする。

 

それが誰かのためになるなら自分を犠牲にしてでも・・・

 

 

みんなは音楽室に集まっていた。

 

瑠惟「さて、みんなどんな曲を作ろうか?」

 

鞠莉「私はさっきも言ったけどロックがいいわ。」

 

花丸「まるは落ち着いた曲を・・・」

 

やっぱりさっきと変わらないか・・・

 

善子「別にいいんじゃない両方やっても。」

 

鞠莉「え?」

 

果南「みんなバラバラでもいいと思う。逆にその方が面白くない?」

 

花丸「え?」

 

ダイヤ「つまりテンポや音色は1つ1つ違うけど」

 

ルビィ「1つ1つが重なって、調和して」

 

瑠惟「1つの曲になっていく。」

 

鞠莉「それは私達も同じ。」

 

花丸「まる達だから作れる音がある。」

 

果南「さっきみんなで遊んでて思ったの。私達って1人1人得意なことも好きなものも全然違う。でも・・・」

 

善子「みんな大切な友達なんだって、みんなと一緒にいると楽しいんだって。」

 

瑠惟「だから作ってやろうぜ、千歌達の作った曲に負けないぐらいすごいのを!みんななら絶対にできる!」

 

花丸「先輩、なんだか千歌ちゃんみたいずら。」

 

瑠惟「まぁこれでもあいつとは従妹だからな。」

 

鞠莉「それじゃあ今日はここで合宿よ~!!」

 

こうして泊りがけで作業をしたので曲と衣装をなんとか完成させることができた。

 

いつもは千歌達と一緒にやっていたので今日みたいな感じは新鮮でまた違った楽しさがあった。

 

 

 

朝方、千歌から曲と衣装が完成したと連絡がきた。

 

急いで3人と合流した。

 

千歌「おはよう!」

 

瑠惟「おはよう。完成したぞ。すっごいのが。」

 

千歌「ほんとに~?」

 

瑠惟「あぁ、みんなのおかげでな。そっちはどうだ?」

 

千歌「できたよ。見えたんだ。今何を言いたいか、何を思っているのか。・・・私が私に問いかけていた答えが。」

 

瑠惟「そうか。なら期待してもいいんだな?」

 

千歌「もちろん!」

 

瑠惟「じゃあ練習しないとな!2曲分だから大変だぞ~。」

 

千歌「大丈夫!絶対に成功させてみせる!ラブライブも学校説明会も!」

 

実際、2曲をこの短期間で仕上げないといけないからちょっと厳しくしないとな。

 

みんなは頑張ってくれるからこっちも頑張らないと。

 

千歌「ありがとね。1年生と3年生を助けてくれて。」

 

瑠惟「いや、元々助ける必要なんてなかったのかもな。」

 

千歌「え?」

 

瑠惟「あいつらはこっちが何もしなくてもいずれ仲良くはなってたさ。それにこっちも結構楽しかったよ。」

 

千歌「素直じゃないねほんとに。」

 

瑠惟「それはお互い様だろ。」

 

千歌「そうだね。あのね・・・もし私に何かあったら私の代わりにみんなを引っ張ってあげてね。」

 

瑠惟「?」

 

最後に千歌が言った言葉の意味はよくわからなかった。

 

けれど意識は目の前に迫ったラブライブと説明会へと向いていたので特に気にしなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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コミュ障ヘタレは上げてから落とされる

更新を頑張って早くします!


前回のコミュ障ヘタレ。学校存続の最後の希望が見えたAqoursはラブライブ予備予選と学校説明会に向けて分かれて2曲作ることになった。そしてなんとか完成させることができたので本番に向けて練習を始めるのであった。

 

浦の星に来てから半年近く経った。

 

まさかこの学校が廃校の危機が迫っているとも知らなかったのでここに転入できた具体的な理由も未だによくわかっていない。

 

名目上は共学化の試運転だと聞いているがきっと理由は別にあるだろう。

 

説明会中止が発表された次の日、鞠莉さんのお父さんから電話がかかってきた。

 

珍しいな。向こうからかけてくることなんてあまりないのに。

 

瑠惟「お久しぶりです、小原さん。どうされたんですか?」

 

鞠莉パパ「久しぶりだね。いや、こんなことになってしまい申し訳ない。」

 

やはり浦の星の廃校のことか。ちょうどいい機会だから聞いてみよう。

 

瑠惟「確かに廃校になるのは残念ですけど、どうして自分の転入を許可してくれたのですか?多分廃校になるのはだいぶ前から決まっていたことだったんじゃないですか?」

 

少しの沈黙の後、ゆっくりと小原さんは答えた。

 

しかし帰ってきたのは思いもよらない答えだった。

 

鞠莉パパ「・・・やはり君はわかっていたか。確かに廃校の件はかなり前から決まっていたことでね、具体的には今の2年生が入学したあたりから話が出ていたんだよ。君を入れたのは・・・・君のお母さんと鞠莉からの頼みだったんだ。」

 

瑠惟「母さんと鞠莉さんが!?なんで・・・」

 

確かに鞠莉さんが理事長になったからここに転入できたのは分かってる。

 

でも最終な決定権は鞠莉さんではなく小原さんにあるはずだ。

 

いや、そもそも自分がここに来たのは千歌の家が近かったからで・・・

 

鞠莉パパ「君のお母さんの転勤が決まった時に頼まれてね。あの子を変えてあげてほしいと。あの子が幸せになれる環境に置いてあげてほしいと。最初私は断ろうとした。さすがにそれは難しいと。でも話を聞いていた鞠莉が私を必死に説得してくれて、私も最終的に折れたんだ。・・・君の過去に何があったかは知っている。だから君の力になりたかったのさ。わずかな時間でもいいから君に素敵な時間を過ごしてほしい。・・・これが私が君をこの学校に入れた理由だ。」

 

瑠惟「そうだったんですか。まさか自分のためだったなんて・・・」

 

やっぱり母さんは気にしていたんだな。何度も大丈夫って言ってたんだけどな。

 

知らないうちに母さんを苦しませてたのかもな。

 

それでも母さんと鞠莉さんには感謝しないとな。

 

こんな楽しい時間をくれたこと、Aqoursのみんなと一緒にいられること、浦の星のみんなといられることを。

 

だから絶対にこの学校を何とかする。廃校にはさせない。もっとみんなと一緒にいたい。

 

瑠惟「まだ・・・この学校を救うことはできますか?」

 

鞠莉パパ「無理・・・というわけではないが、ハッキリ言って可能性はほとんどないだろう。それでもやるのか君達は?」

 

瑠惟「0じゃないならやらない理由はないですね。決めたんですよみんなで『最後まで足掻く』って。」

 

鞠莉パパ「君は・・・変わったね。前よりも活き活きしてるのが電話越しでも伝わってくるよ。」

 

瑠惟「Aqoursのみんなが、ここにいるみんなが変えてくれたんですよ。」

 

鞠莉パパ「そうかもしれないな。私も鞠莉の大切な場所がなくなるのは嫌なんでね。できるだけ上の方を説得してみる。だから君達も頑張ってくれ。ではまた。」

 

瑠惟「ちょっと待ってください。」

 

鞠莉パパ「ん?どうしたんだい?」

 

瑠惟「もし・・・万が一この学校が廃校になったら・・・・・・・・・・・・させてください。」

 

自分の頼みを聞いた小原さんは少し驚いたようだったが、自分の意思を感じてくれたように答えた。

 

鞠莉パパ「私は構わないが君はそれでいいのかね?」

 

瑠惟「はい。これが自分なりの覚悟でありケジメです。」

 

鞠莉パパ「分かった・・・。その時はそうしておこう。」

 

瑠惟「ありがとうございます。では失礼します。」

 

鞠莉パパ「あぁ。娘を・・・Aqoursをよろしく頼む。君なら音ノ木坂学院のような奇跡を起こせると信じてる。」

 

瑠惟「・・・はい。」

 

浦の星の生徒の中には諦めた子がいるかもしれない。事実、自分も何度も諦めかけた。

 

でもその度にあの人達の言葉を思い出す。

 

『諦めちゃダメなんだ。その日が絶対来る。』

 

だから最後まで付き合うよ。

 

あと小原さんに頼んだことは多分Aqoursのみんなが聞いたら絶対に怒られるだろうな。

 

でもこれが浦の星への敬意であり感謝でもある。

 

もっとも、廃校にならないのが一番なのだが。

 

 

 

 

 

2曲が完成した後、鞠莉さんが父親から何か連絡を受けたそうでAqoursのみんなは昼休み理事長室に呼び出された。

 

鞠莉「急に呼び出してしまってごめんなさい。でもこれはみんなに先に伝えておかないといけないと思ったの。」

 

ダイヤ「それで何か問題が起きたんですの?」

 

鞠莉「実は・・・説明会の開催が一週間後になったの。」

 

一週間後ってことは・・・

 

瑠惟「それってまずくないですか?」

 

果南「どうして!?なんでこんな・・・」

 

鞠莉「学校側の都合でどうしてもその日じゃないと説明会をすることができなくなったの。」

 

鞠莉さんの言葉にみんな衝撃を隠せなかった。・・・ただ1人を除いて。

 

千歌「なんでそんなに慌てるの?一週間伸びたってことはもっといいパフォーマンスを見せられるんだよ。」

 

こいつ状況を分かってないのか?

 

瑠惟「千歌よく考えてみろ。」

 

千歌「え?」

 

曜「学校説明会はいつやる予定だった?」

 

千歌「えーと、ラブライブ予備予選のちょうど一週間前でしょ?」

 

梨子「ではその説明会が一週間延期になりました。予備予選と説明会はいつあるでしょうか?」

 

千歌「・・・・・あ~!」

 

ようやく気付いたみたいだな。

 

瑠惟「そう。予備予選と同じ日に説明会があるんだよ。」

 

千歌「え~~~~!?それってどうすればいいの!?」

 

瑠惟「何か手は無いのか・・・。」

 

ダイヤ「鞠莉さん、説明会の日程はどうにかならないのですか?」

 

鞠莉「無理よ。私もそれだけはやめてほしいと頼んだけど、どうしても無理だって。」

 

果南「これは何か方法がないか考えないといけないね。」

 

ダイヤ「もう昼休みも終わりそうですし、放課後にみんなで考えましょうか。」

 

瑠惟「そうですね。じゃあここは一回解散ということで。」

 

鞠莉「ごめんなさい。私の力がないばかりに・・・」

 

ダイヤ「鞠莉さんのせいではありませんわ。」

 

果南「だからそんなこと言わないで。」

 

なんで鞠莉さんが謝るんだ。

 

鞠莉さんだってみんなのために必死で動いてくれてるのに。

 

千歌「瑠惟君、教室に戻ろ。」

 

瑠惟「あぁ・・・。」

 

 

 

 

午後からの授業の内容は全く頭に入ってこなかった。

 

梨子「大丈夫?」

 

気が付くと目の前に梨子が立っていた。

 

瑠惟「えっ?みんなはどこ行ったんだ?」

 

教室を見ると自分と梨子の2人しか残っていなかった。

 

梨子「何言ってるの。もうホームルームも終わったからみんな帰ったよ。さぁ、部室に行こ。千歌ちゃんと曜ちゃん先に行ったよ。」

 

瑠惟「悪いな。」

 

どうやら終業のチャイムが鳴ったことにさえ気づかなかったようだ。

 

瑠惟「ずっと待っててくれたのか?」

 

梨子「うん。だって授業中ずっと様子が変だったもん。それに・・・なんだかあなたが離れて行きそうな気がしたの。」

 

瑠惟「まだみんなをトップに立たせる仕事が残ってるんだ。どこにも行かないさ。」多分・・・

 

梨子「前に言ったよね。『この学校がなくなったら東京に帰るかもしれない』って。」

 

瑠惟「確かに言ったな。」

 

梨子「本当に帰るの気なの?」

 

もう自分の中ではどうするか決まっている。でも・・・

 

瑠惟「今は言えない。」

 

すると梨子は半分あきらめたように、でもどこか笑って言った。

 

梨子「・・・分かった。あなたがそう言うなら何か考えてるってことよね。」

 

瑠惟「分かったこと言うようになったな。」

 

梨子「これでもあなたのこと見てるもん。」

 

瑠惟「もしかして好きなのか?」

 

梨子「好きだよ。」

 

瑠惟「!?」

 

梨子ルート来ました。自分幸せになります。

 

梨子「千歌ちゃんが瑠惟君のことを好きなのと同じくらい私も好きだよ。」

 

えーっと、なるほどね。

 

瑠惟「つまり脈なしかよ。喜んで損した。」

 

彼女いない歴=年齢の自分に春が来たと思ったのに・・・

 

梨子「どう?元気出た?」

 

瑠惟「もうバッチリだ!ありがとな。」

 

梨子「いえいえ。」

 

瑠惟「そろそろ部室に行かないと千歌に怒られるから行くか。」

 

梨子「うん!」

 

一緒に部室に向かってる時、梨子の顔が少し紅く染まっていたのは夕日のせいだと思った。

 

 

 

 

 

部室に行くと、みんなが集まって何かを見ていた。

 

瑠惟「遅れてごめん。今何してるんだ?」

 

千歌「もぉ~遅い!」

 

やっぱり怒られた。

 

瑠惟「悪い悪い。」

 

曜「今ねこの辺りの地図を見てたの。」

 

地図?どうして地図を見てるんだ?

 

ルビィ「この地図で予備予選の会場と学校の場所を見てたんですけど、幸いにもこの2つは移動できない距離ではないんです。」

 

瑠惟「そうか。予備予選が終わってから急いでこっちに来れば間に合うってことか。」

 

ダイヤ「しかしそれ可能にするにはある条件があります。」

 

瑠惟「ある条件?」

 

ダイヤ「それは予備予選での発表順が1番目であることですわ。」

 

梨子「絶対に1番目じゃないとダメなんですか?2番目とか3番目とかでも間に合うんじゃ・・・。」

 

ダイヤ「1番目でなければ会場近くから出ているバスに間に合いません。そのバスは本数も少なく、それを逃すと次に来るのは3時間後で、学校に着いた時には説明会が終わってしまっています。」

 

ということは・・・

 

瑠惟「明日行われる抽選会で1番目を引き当てる。」

 

ダイヤ「はい。それしかありません。」

 

予備予選に出場するグループは数十といる。その中で1番を引き当てるのは・・・

 

千歌「手があるならそれに賭けるしかないよ。とにかく私達は今できることをする。だから練習しよっ!」

 

さっきまで目に見えて暗かった空気が千歌の一言で変わった。

 

こういうところは千歌にしかできないあいつの長所だな。

 

瑠惟「そうだな。日が暮れるまで短いから早くやろうか。」

 

説明会と予備予選まで時間がない。

 

みんなの体力と気力を信じて少し厳しくやるしかない。

 

 

 

次の日、今日は放課後に予備予選の抽選会がある。

 

この抽選会でAqoursの運命が決まると言っても過言ではないので終始緊張していた。

 

しかも今日の朝に普段は見ることのないテレビの星座占いを見たのだが自分の生まれ月の星座は最下位だった。

 

他のメンバーに引いてもらおう。

 

そう思いながら抽選会場に向かった。

 

会場には予想通り多くの出場グループが来ていた。ざっと数えて20ちょっとあるな。

 

千歌「うえぇ~こんなに参加してるの~。」

 

曜「なんだか前回大会よりも多いような気がする。」

 

ダイヤ「とにかく私達は1番目を引かなければなりませんわ!」

 

ここで本題。

 

瑠惟「で、誰が引く?」

 

全員「・・・・・」

 

黙るなよ。

 

梨子「ここはやっぱりリーダーが・・・」

 

千歌「私!?別にいいけど・・・」

 

瑠惟「確か千歌も今日の占い最下位だったぞ。」

 

千歌「そうでした・・・。」

 

瑠惟「じゃあ善子が引いてみるか?」

 

もちろん本気で言ったわけではない。善子がどれだけアンラッキーな奴かはみんなよく知っている。この前なんかも新しく買った自転車が買ったその日にパンクしたって言ってたな。

 

善子「いいでしょう。私の力ここで出さずにいつ出そうか。」

 

え?

 

瑠惟「待て待て。今のは冗談で・・・」

 

ダイヤ「いいでしょう。ただし私にじゃんけんで勝てば引かせてあげましょう。」

 

ダイヤさんナイスだ。善子はじゃんけんとなるといつもチョキしかださない。これは勝ったも同然だ。

 

善子・ダイヤ「じゃんけん・・・・ポンッ!」

 

全員「!?」

 

今何が起こったんだ?なんで・・・善子が勝ってるんだ!?

 

ダイヤさんはチョキを読んでグーを出した。みんなも善子がチョキを出すと思った。

 

だが善子は違った!あいつはパーを出していた!

 

これにはダイヤさんもびっくり。

 

なぜか勝った善子本人も驚いている。

 

神が善子に引かせろと言っているようにしか思えない。

 

司会「次、Aqoursの代表者はこちらに来てください〜。」

 

ダイヤ「あなたに託しますわ。」

 

善子「任せなさい。」

 

頼むぞ善子。1番目、1番目だ・・・

 

善子(勝っちゃったけどどうしよう〜!私はチョキを出そうとしたのに誰かに触られてびっくりしてパーになっちゃった!うぅ・・・こういうので当たりとか引いたことないのに〜。)

 

善子がこちらに振り返る。

 

どうしたんだ?・・・あぁ緊張してるのか。

 

善子に向かってグッドサインを送る。

 

善子(めっちゃ期待されてる〜!・・・ここまで来たら引くしかない。)

 

善子がくじが入った箱の前に立つ。

 

自然と会場が静寂に包まれる。

 

善子「このヨハネに全ての悪魔の力を!今ここに真堕天使ヨハネを!」

 

会場「・・・・・・」

 

うちの中二病がすいません!だからそんな目で見ないであげて!

 

会場全体からの冷たい視線をよそに善子はくじを引いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




最後まで読んでいただきありがとうございました。


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コミュ障ヘタレはピンチの時に駆けつける。

遅くなってしまい申し訳ございません。言い訳をすると課題とレポートに追われる日々で中々時間が取れません。次回からはできるだけ早く投稿するようにします。


前回のコミュ障ヘタレ。ラブライブ予備予選と学校説明会が同じ日になってしまい困惑するAqours。抽選会で一番を引き当てる。これが残された道。そしてたった一つの希望を善子に託したのであった。

 

 

 

善子が引いた番号。Aqoursの運命を決める番号それは・・・

 

全員「あっ・・・」

 

善子「11番だ。」

 

確かに1番だけど。そっちじゃない。ここまでくると逆にすごいわ。

 

瑠惟「みんな、とりあえず学校に帰って作戦会議だ。」

 

お通夜みたいな空気が漂う中自分達は学校へと帰った。

 

 

 

 

善子「みんな、ごめんなさい・・・」

 

梨子「善子ちゃんが悪いってわけじゃないよ。」

 

くじ引きは運勝負なのでこればっかりはどうしようもない。

 

誰も責めることはできない。

 

果南「でも本気でどうするか考えないといけないよ。」

 

瑠惟「果南さんの言う通りだ。ラブライブ予備予選か学校説明会どちらかを諦めないといけないかもしれない。」

 

曜「そんな・・・。」

 

果南「千歌はどう思う?千歌がリーダーなんだから最終的には千歌が決めないと。」

 

千歌「・・・・私はやりたい。両方やりたい!どっちかを諦めるなんてできない。」

 

お前ならそう言うと思った。分かってるんだ。でも・・・

 

ダイヤ「それが難しいからこうして話合ってるのですよ。」

 

梨子「千歌ちゃん、やっぱりどっちかを決めないと。」

 

千歌「絶対にどうにかできるはずだよ!それにここまでやってきて簡単に諦められるの?」

 

瑠惟「おい、落ち着け。お前の言いたいことはみんな分かってる。でもな全てがうまくいくわけじゃない。それは千歌自身が1番よく理解してるはずだ。」

 

千歌「そうだけど、そうだけど・・・」

 

今日は話し合いができる感じではないな。

 

瑠惟「とりあえず今日は解散。明日どうするか絶対に決めよう。」

 

 

 

3人で一緒に帰っている途中も千歌はずっと何かを考え込んでいる様子だった。

 

梨子「千歌ちゃん、さっきからずっとあの感じだね・・・。」

 

瑠惟「少しきつく言い過ぎたかな?」

 

梨子「でもそれが現実だから仕方ないと思う。」

 

瑠惟「こんなこと言うのは変かもしれないけど、自分はマネージャーとして、ファンとしてAqoursには両方に出てほしい。」

 

梨子「私達も両方に出たい。このまま終わりたくない・・・。」

 

ここで『なんとかしてやる!』て言えないのがとても悔しくて情けなかった。

 

それからは3人とも無言のままだった。

 

 

 

家に帰るやいなや千歌はすぐに自室へと向かった。

 

自分はまだ何か可能性が残ってると信じて、地図を広げた。

 

改めて地図で予備予選の会場と学校の位置を確認した。

 

予備予選の会場から学校までの最短距離は大体15kmぐらいだが、この最短距離を行こうと思えば山を超えなければならない。

 

ライブ後のみんなが山中を走っていくのはとても現実的ではなかった。

 

やはり使うとなれば会場からバスに乗って学校まで行くルートだ。

 

でもこのルートはもう使えないことが確定している。

 

となると残っているのは・・・。

 

船に乗って川を通って海に出て学校の近くまで行くルートだけか。

 

このルートを使えば前2つのより早く着くことができるが・・・

 

肝心の船がない。

 

確か曜のお父さんが船乗りだって言ってたな。

 

スマホを取り出して曜に電話をかける。

 

瑠惟「もしもし曜。」

 

曜「どうしたの?何かあった?」

 

瑠惟「ちょっと聞きたいことがあってな。曜のお父さんって船乗りだったよな?」

 

曜「うん。そうだよ。」

 

瑠惟「良かった。今、地図を見てたんだがバスを使う以外のルートがあったんだ。それもAqoursが歌った後でも間に合うルートだ。」

 

曜「ホントに!?それはどこを通るの?」

 

瑠惟「陸がダメなら・・・そう!川だ!」

 

曜「なるほど!確かに川なら順番に関係なく学校に行けるね!」

 

瑠惟「あぁ。ここで本題なんだが・・・。曜のお父さんの船って借りられないかな?」

 

曜「それは・・・できないかな。パパは少し前までは内浦に居たんだけどもう船に乗って海に行っちゃったんだ。パパが帰ってくるのは今年の冬なんだ。ごめんね。力になれなくて。」

 

瑠惟「分かった。こっちも急にすまん。」

 

曜「別にいいよ。・・・やっぱりまだ諦めてないんだね。」

 

瑠惟「あいつを見てたら気が変わったんだ。」

 

曜「本当に千歌ちゃんのこと好きなんだね。」

 

瑠惟「大切な家族だからな。」

 

曜「いいなー。私も瑠惟君みたいに思ってくれる人がそばにいてほしーなー。」

 

瑠惟「曜なら絶対にいい人と出会えるよ。」

 

曜「ありがとう。」

 

曜(そういう事じゃないんだけどなー。やっぱり気づいてくれないか。)

 

瑠惟「別の方法がないか考えてみる。」

 

曜「うん。私も考えとくね。じゃあおやすみ。」

 

瑠惟「おやすみ。」

 

そうか。曜のところの力は借りられないか・・・

 

次に果南さんに電話をかけた。

 

あの人の家はダイビングショップをしているから船を持ってるはずだから多分貸してくれる・・・と思う。

 

瑠惟「あっ果南さん、突然かけてすいません。」

 

果南「別に私は大丈夫だけど、どうしたの?」

 

瑠惟「実は・・・・・・っていう感じなんですけど、果南さんのところの船を使うことってできますか?」

 

果南「・・・・ホントに2人って似た者同士だね。」

 

2人?似た者同士?

 

果南「さっき千歌も同じことを聞いてきたの。川から学校に行けるから船を使いたいって。」

 

あいつも考えることは同じだったとは。確かにだんだん似てきてるのかもな。

 

瑠惟「それでなんて答えたんですか?」

 

果南「私もできればそうしてあげたいけど、その日は仕事で使うからできないの。」

 

瑠惟「そうですか・・・。」

 

果南「どうしてもそのルートしか残ってないの?」

 

瑠惟「はい。現実的なのはそのぐらいですかね。」

 

果南「やっぱりどっちかを選ぶしかないのかも・・・」

 

瑠惟「・・・・・」

 

小原家の力を借りるのは無理だし、万事休すか・・・。

 

そう思いうつむいてしまう。

 

しかしあるものが目に入る。

 

これは・・・。

 

なるほど。この手があったか。これなら確実にみんなを連れていくことができる。

 

瑠惟「果南さん。」

 

果南「ん?」

 

瑠惟「予備予選まで練習の指揮を任せます。」

 

果南「えっ?どうしたの急に?」

 

瑠惟「あとみんなに伝言を・・・『必ず戻ってくるから、2曲とも完璧にしておくように。そして・・・2曲とも全員で歌え。』と。じゃあ果南さんしばらくの間よろしくお願いします。」

 

果南「ち、ちょっと!瑠惟待っt」

 

やることがはっきりした以上ぐずぐずしてられない。

 

すぐに出発しよう。

 

準備をして志満さん達に事情をを伝えた。

 

瑠惟「それじゃあ行ってきます。」

 

志満「気をつけてね。あと無理だけは絶対にダメよ。何かあったらすぐに連絡すること。いい?」

 

瑠惟「はい。」

 

志満「千歌ちゃんには言ったの?」

 

瑠惟「それが部屋にも行ったんですけど居なくて。」

 

志満「千歌ちゃんなら外に居るわよ。最近ずっと練習から帰って来たら外に行って何かしてるの。」

 

瑠惟「そうなんですか・・・。」

 

最後に千歌に言っておくか。

 

外に出て浜辺の方を見ると言った通り千歌が練習をしていた。

 

瑠惟「おーい。」

 

千歌「あっ、瑠惟君。ってどうしたのその荷物!?」

 

瑠惟「今日からしばらく用事があってな。練習のことは果南さんに任せたよ。」

 

千歌「えっ〜!?そんな突然すぎるよ。それに用事って何?」

 

瑠惟「千歌は気にしなくていい。そんなことより練習しっかりやっとけよ。」

 

千歌「気にしなくていいって言われても・・・。」

 

瑠惟「予備予選までには絶対に戻る。だから信じてくれ。」

 

千歌「・・・分かった。絶対に戻ってきてね!絶対に!」

 

瑠惟「あぁ約束だ。」

 

改めて千歌を見ると、ずっと練習をしていたのか服が砂だらけだった。

 

ここでさっき言われたことを思い出した。

 

『最近ずっと練習から帰って来たら外に行って何かしてるの。』

 

瑠惟「いつからここで練習してたんだ?学校では相当な量をやってるはずだろ?」

 

千歌「鞠莉ちゃんから廃校になるって言われた時から毎日だよ。」

 

瑠惟「!」

 

それって2学期が始まってからずっとだよな。

 

あれだけの練習を毎日しておいてその上ここでもやってたらいつ体が壊れてもおかしくないぞ。

 

瑠惟「今のお前はオーバーワークだ。頑張っているのは分かってる。でも休むのも大事だ。」

 

千歌「私はみんなみたいに歌やダンスも上手くないから少しでも多く練習しないといけない。自分でもやり過ぎてるのは自覚してる。でもこれぐらいしないとラブライブで優勝なんて絶対にできないし、学校だって救えない。だから・・・」

 

瑠惟「それで体を壊したら元も子もないだろ。とにかくきちんと休みを取ること。」

 

千歌「うん。分かった・・・。」

 

分かってくれたみたいだし、時間もいい頃だな。

 

瑠惟「じゃあそろそろ行くわ。頼むぜリーダー。」

 

千歌「行ってらっしゃい。」

 

瑠惟「行ってきます。」

 

こうして自分は内浦を後にした。

 

多分、戻ってこれるのは予備予選当日の朝になるかな?

 

それまでAqoursは見てあげられないけど。

 

まぁあいつらなら心配はいらないだろう。

 

 

 

ー sideout 瑠惟 ー

 

ここから第3者視点になります。

 

瑠惟が突然出ていった翌日、学校でもこのことはすぐに広まった。

 

曜「どこかに行ったって本当なの!?」

 

梨子「昨日までそんなこと一言も言ってなかったのに。」

 

千歌「大丈夫。絶対に戻って来るって約束してくれたから。」

 

千歌はそう言いつつも実際に彼がどこで何をしているのかは知らなかった。

 

 

1年生の間でも彼のことは噂になっていた。

 

ルビィ「先輩どこに行っちゃたんだろう?まさかルビィ達が嫌いになって出ていったのかな?」

 

花丸「あの人に限ってそれは無いずら。多分食べ歩きでもしてるずらよ。」

 

善子「それはアンタがしたいことでしょ。・・・それにしても本当に突然ね。何か陰謀を感じるわ。」

 

花丸「陰謀・・・もしかしてSaint Snowのところに行ったとか。」

 

ルビィ「た、確かに前に2人にスカウトされてた!」

 

善子「これからは敵・・・ということね。」

 

3人はSaint Snowのマネージャーとしての彼を想像したが・・・

 

1年生「似合わない(ずら)。」

 

 

1番に瑠惟の出発を知った果南はダイヤと鞠莉に昨日のことを伝えた。

 

果南「それでどう思う?」

 

ダイヤ「確かに彼の意図はよく分かりませんけど・・・」

 

鞠莉「2曲とも歌えってことは何か策があるってことよね。」

 

果南「多分そうだと思う。練習メニューは送られてきたから問題ないんだけど・・・。」

 

ダイヤ「精神的にみんなが耐えられるかどうかですね。」

 

鞠莉「そうね。彼はマネージャーとしてAqoursを支えてくれてる以上に私達の精神的支柱でもあるわ。」

 

果南「彼に何度救われたか・・・。私達からすれば後輩だけど、どこか兄のような存在みたいだった。だからこうしていなくなると改めて存在のありがたみを感じる。」

 

果南は今まで彼に頼り過ぎていたことを自覚した。

 

ダイヤ「果南さん、しっかりしてください。こういう時こそ私達3年生が下級生を引っ張るべきですわ!」

 

鞠莉「That's right!ダイヤの言う通りね!」

 

果南「うん!きっと彼も私達ならできるって期待してるから任せてくれたよね!」

 

 

練習前に果南は昨日のことをみんなに話した。

 

梨子「やっぱりどこかに行ったのね。」

 

ルビィ「先輩、大丈夫かな?」

 

果南「あと瑠惟から伝言を預かってるの。」

 

千歌「伝言?」

 

果南「うん。『必ず戻ってくるから、2曲とも完璧に。そして・・・2曲とも全員で歌え。』」

 

曜「2曲とも歌うってことは何か方法があったのかな?」

 

果南「恐らく何か考えがあって出ていったんだと思う。しかも私達が確実に2曲とも歌うのが可能だってこと。」

 

花丸「本当に私達歌えるのかな?」

 

千歌「私は信じる。だって瑠惟君だよ?きっと何とかしてくれる。今までもそうだったもん。だから今度も大丈夫。」

 

梨子「千歌ちゃん・・・。」

 

千歌「瑠惟君が私達のために頑張ってるくれるなら、私達にできるのはたくさん練習して、本番でその成果を見せてあげることなんじゃないかな?」

 

ダイヤ「千歌さんの言う通りですわ!みんなで彼を驚かせられるように頑張りましょう!」

 

果南「ということで予備予選まで練習は私が指揮をとるね。」

 

花丸「良かったずら。果南ちゃん優しいから練習もきっと・・・」

 

果南「ちなみに瑠惟から練習メニューを預かってるよ。かなりハードなやつだから覚悟してね。」

 

花丸「ずら〜〜!」

 

こうして約2週間、マネージャー不在の中Aqoursは2曲を練習していった。それは今までより身体的、精神的に辛いものであったが3年生や千歌を中心にメンバー同士が支え合い、なんとか乗り越えることができた。

 

 

 

そして迎えた本番当日。

 

予備予選の会場に着いたAqoursは自分たちの出番が来るのを待っていた。

 

今日は学校説明会もあるのでいつも応援に来てくれる裏の星の生徒はみんな学校にいるため、今日のライブはほとんどアウェーと言っても過言ではない。

 

そんなこともあってかAqoursは会場の空気にのまれそうになっていた。

 

さらに痛いことに

 

千歌「まだ来ないね・・・」

 

瑠惟がまだ会場に来てないのだ。

 

梨子「朝には帰ってくるって言ってたのに、どうしたんだろ?」

 

曜「もしかして何か事故に巻き込まれたのかも?」

 

千歌「そんなわけないじゃん。・・・多分。」

 

梨子「でもさっきから電話も繋がらないし。」

 

曜「どうする?」

 

千歌「とにかく今はライブに集中しよう。今日はいつもより応援も少ないし頑張らなきゃ。」

 

スタッフ「Aqoursのみなさん。スタンバイお願いします。」

 

不安を残したままAqoursはステージへと向かった。

 

 

ステージに上ったAqoursが一番最初に感じたのは圧倒的プレッシャーだった。

 

もし失敗すれば予備予選で敗退。さらにこの後にある学校説明会でのライブにも影響する。

 

すなわちこのライブに学校存続がかかっているも同然なのだ。

 

加えてマネージャーの不在。いつもと違う景色。周りには他のグループの応援ばかり。

 

不安と緊張が重なりメンバーの心は折れる寸前だった。

 

千歌「わ、わたしたちは・・・浦の星スクールアイドルの・・・あ、Aqoursです。」

 

かつてないほどの緊張でうまく言葉が出ない。

 

千歌(何にこれ?こんなに広かったけこの会場?知ってる人もほとんどいない・・・。いつも一番前で見てくれてる瑠惟君もいない。私、どうすれば・・・。)

 

会場の誰もがもうダメだと思ったその時だった。

 

 

???「それでもお前はAqoursのリーダーか!高海千歌!」

 

 

千歌「えっ?」

 

声がする方を見るとそこにいたのは・・・

 

千歌「瑠惟君!」

 

ーside in 瑠惟ー

 

急いで来てみたと思えば・・・何やってるんだあいつら。

 

瑠惟「お前らスクールアイドルなんだろ!?だったらなんでそんな泣きそうな顔をしてるんだ!」

 

千歌「だって・・・」

 

瑠惟「前に言っただろ。スクールアイドルは笑顔を届けるのが仕事だって。たとえこの会場に応援に来てくれてる人がいなくたって、どこかにAqoursを信じてくれてる人たちがいる。Aqoursの歌を聴いて勇気をもらったり笑顔になる人もいる。学校のこととかラブライブ優勝とか今はそんなこと考えなくていい。どこかでAqoursを応援してくれる人のため、何よりお前ら自身のために歌え!」

 

千歌「うん!」

 

よし。これでいつものみんなになったかな。

 

この2週間ここを離れていたけど、いい顔になったじゃないか。

 

さぁ、努力の成果を見せてもらおう。

 

予備予選では1年生+3年生+瑠惟が作った『MY舞☆TONIGHT』を披露することになっていた。

 

この曲は1年生と3年生それぞれの個性を詰め込んだ曲だ。

 

Aqoursらしい前向きな歌詞がありながら、和とロックを組み合わせた今までにない曲調になっている。

 

ちなみにセンターは曲作りの際にみんなをまとめていてくれたダイヤさんとルビィの黒澤姉妹のダブルセンターだ。

 

この2人は衣装づくりもやってくれて、ダイヤさんにしては珍しく、少し大胆な衣装にしたいというルビィの意見を了承してくれたのだ。まぁ本人もまんざらでもなかったけど。

 

 

 

ライブを通して完璧というほどではなかったが、それでもあの短い期間でここまでできたのは素直に褒めたい。

 

会場の人達もすっかりAqoursに引き込まれていて、曲が終わると大きな拍手が送られた。

 

これなら予備予選は突破できただろう。

 

さて・・・ここからが仕事だ。

 

出番が終わったAqoursにすぐに荷物を持って集合するように伝えた。

 

数分後全員の集合が完了した。

 

瑠惟「みんなお疲れ。ライブも良かったし、ゆっくり休んで・・・と言いたいところだが、今からすぐに出発して学校に行く。」

 

果南「それでどうやって行くの?そもそもこの2週間何してたの?」

 

瑠惟「はい。果南さんに最初言った通り川を通ります。」

 

曜「えっ?でも私のところも果南ちゃんのところも船は出せないのに・・・」

 

ところがどっこい。船はちゃんとあるのさ。

 

瑠惟「とりあえずこの近くの川の船着き場に行くからついてきて。」

 

みんなと船着き場に行くと・・・

 

全員「え~~~~!?なんで!?」

 

そこにはどこから調達したのか船があった。

 

千歌「これどうしたの!?」

 

瑠惟「よくぞ聞いてくれた。今回の作戦名付けて・・・・『船がないなら借りればいいじゃない作戦!』だ。」

 

果南「こんな船どうやって借りたの?」

 

瑠惟「東京でバイトした。日雇いで高日給のやつを。この2週間毎日。それで費用を集めてギリギリ借りれたんだ。」

 

梨子「どうしてそこまでして・・・」

 

瑠惟「自分にできるのはこれぐらいだし、何よりみんなには何かを選ぶことで何かを諦めないでほしい。」

 

千歌「本当に・・・本当にありがとう!」

 

瑠惟「ではでは予備予選会場から浦の星までの間のささやかなクルージングをお楽しみください。」

こうして船に乗って学校へと向かった。

 

ちなみに操縦しているのは自分だけど、いつ免許取ったんだとかは気にしたら負けです。

 

 

 

Aqoursが学校に着いた頃、学校説明会は終盤だった。

 

みんなは船内で説明会用の曲の衣装に着替えていたのですぐにライブを始めることができた。

 

今回歌う曲は『君の心は輝いているかい?』。

 

2年生の3人が学校説明会のために作ってくれた曲だ。

 

そういえばこの曲が完成したとき千歌が言ってたな。

 

千歌「何か見えたんだ。今何を言いたいか、何を考えているか。私が私に問いかけていた答えが。」

 

それ以上は言わなかった。でもあいつらが探している答えが何なのかなんとなくだが分かる。

 

 

君の心は輝いているかい?

 

 

もちろん・・・

 

 

『YES!』と答えるさ。

 

 

ライブも無事に終了し、学校説明会も程なくして終わった。

 

ステージから降りてくるみんなに労いの言葉をかける。

 

それは最後に千歌のところに行った時だった。

 

瑠惟「お疲れ様。なかなかいい出来だっt・・・」

 

バタッ!

 

千歌が倒れた。

 

瑠惟「おい!大丈夫か!誰か救急車を呼んでくれ!」

 

曜「千歌ちゃん!?」

 

梨子「千歌ちゃん!千歌ちゃん!そんな・・・!」

 

いくら声をかけても千歌は目を覚まさなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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コミュ障ヘタレやめます

4か月以上もほったらかしにして申し訳ございませんでした。色々事情があって中々手を付けることができず気づいたらこんなに時間が経ってました。久しぶりで色々おかしいところがありますが大目に見てください。よろしくお願いします。ちなみに今回はラブライブ要素が少ないです。主人公メインの話となってます。


前回のコミュ障ヘタレ。予備予選と説明会2つのライブを瑠惟の働きによって成功させることができたAqours。しかしライブ終了後に千歌が倒れてしまう。

 

静かな病院の廊下でみんなと待っている。

 

頼むから無事でいてくれ・・・。

 

すると扉が開き、中から医者らしき人物が出てきた。

 

医者「もう大丈夫だよ。」

 

全員「ホントですか!?」

 

医者「うん。詳しい事は中で話すから入ってきて。」

 

9人全員で入るのもあれなので代表して自分が行くことになった。

 

病室に入ると真っ先に千歌が寝ている姿が目に入る。

 

医者「彼女は今眠っているだけだから。」

 

瑠惟「それでどうして倒れたんですか?」

 

医者「簡単に言うと疲労だね。かなり前から相当溜め込んでいたみたいでどうやらライブ後に緊張から解放されて一気にそれが来たみたいだね。特に異常は見られないからしばらく安静にしていたらまたいつも通りの生活ができるよ。」

 

瑠惟「そうですか。ありがとうございます。」

 

やはりオーバーワークを続けてしまっていたか。

 

瑠惟「・・・・・・。」

 

あの時もっと強く言っておくべきだったな。

 

とりあえず外で待っているみんなに伝えよう。

 

廊下に出ようとすると誰かに腕をつかまれた。

 

瑠惟「千歌?目が覚めたのか?」

 

千歌「・・・・行かないで。」

 

そう言うと千歌は再び眠った。

 

どうやら寝ぼけているようだった。

 

瑠惟「ごめん千歌、無理をさせて、心配かけて・・・。お前が倒れたのは自分の責任だ・・・。本当にごめん。」

 

謝罪の言葉と共に涙も流れてしまう。

 

その時だった。

 

千歌「そんなことないよ。だから泣かないで。」

 

千歌が本当に目を覚ましたのだ。

 

瑠惟「千歌!大丈夫か?」

 

千歌「うん。・・・私こそごめんね。みんなで喜んでる時に倒れちゃって。あの時の忠告を無視しちゃって。」

 

瑠惟「気にするな。無事ならそれでいい。今みんなを呼んでくるから。」

 

瑠惟「みんな!千歌が目覚め・・・」

 

「千歌ちゃん!」

 

言い切る前にみんな突撃していった。よっぽど心配だったんだな。

 

みんなは病室に入るとすぐさま千歌に駆け寄り、抱きついたり、泣いたりしていた。

 

その後には千歌の家族が来て、千歌に『無茶をしすぎだ』と怒っていた。

 

とにかく無事でよかった。

 

あとは結果を待つだけか・・・

 

予備予選に説明会。どちらもうまくいった・・・・と思いたい。

 

瑠惟「鞠莉さん、入学希望者の方はどうなってますか?」

 

鞠莉「うーん、今のところ変化はないわ。でも、明日ぐらいに人数は増えてると思うわ。」

 

予備予選も結果発表は明日だし・・・。

 

今日のところはみんなを休ませよう。あれだけハードなスケジュールをこなしたからな相当疲れているだろう。

 

瑠惟「外も暗くなってきたし、みんなそろそろ解散しよう。明日また学校に集合で。」

 

 

 

みんなと別れた後、自分はまだ回復しきっていない千歌をおんぶして家に向かっていた。

 

千歌「ねぇ瑠惟君。なんだか昔みたいじゃない?2人で遊んだ後、私が疲れたって言っていつもおんぶしてもらってたよね。」

 

瑠惟「そうだな。毎年夏になると2人で遊びに行って、いつも帰るのが遅くて千歌のお母さんに怒られてたな。」

 

ほんとに時が過ぎるのは早いな。この前まであんなに小さかったのに気づいたらこんなに大きく成長して・・・

 

千歌「確か予備予選の結果発表って明日だよね?」

 

瑠惟「うん。」

 

千歌「もしAqoursが予備予選を突破したら・・・。」

 

瑠惟「突破したら?」

 

千歌「みんなで東京に行きたい!」

 

瑠惟「東京か・・・それはまたどうして?」

 

千歌「なんだか急に行きたくなったの。前はなんだかドタバタしてちゃんと観光できなかったし。」

 

瑠惟「いいんじゃないか。・・・まぁどっちみち東京には行くつもりだったし。」

 

千歌「え?」

 

瑠惟「実は・・・。今度東京で開催されるストリートバスケの大会でAqoursに歌ってほしいとオファーがあったんだ。」

 

千歌「東京で歌えるの!?」

 

瑠惟「あぁ。みんなには明日言うつもりだったけど千歌には先に言っておこうと思ってな。」

 

千歌「やったー!・・・あっ。」

 

千歌は何かを察したかのようにこちらを見てきた。

 

瑠惟「・・・あのことなら大丈夫。久しぶりにバスケを見るのもいいかなって思ったから。だから心配すんな。」

 

千歌「瑠惟君がそう言うなら・・・。でも、無理だけはしないでね。」

 

瑠惟「こっちのセリフだっての。とにかく今日は疲れたから早く帰って寝よう。明日は学校だし。」

 

千歌「え~。行きたくない~。ゴロゴロしたい~。」

 

瑠惟「もうすぐ中間テストなのに随分と余裕だな。確か、次のテストで赤点が一つでもあったら小遣い減らすって、千歌の母さんが言ってたような・・・。」

 

千歌「やっぱり行く!」

 

瑠惟「当たり前だ。・・・さぁもうすぐ家に着くぞ。」

 

千歌「お腹すいたー。今日の晩御飯は・・・。」

 

さっきまで過労で眠っていたのがウソみたいだな。

 

まぁひとまず休憩ってことで明日の結果発表を待ちますか。

 

後ろで食べたいものを言い続けている甘えん坊を背に家路を急いで帰った。

 

 

 

翌日、授業を終えたAqoursは部室に集まって予備予選の結果発表を見ていた。

 

正直な感想、予備予選くらいは突破していると思うんだけどな。

 

結果を確認すると予想通り予備予選を突破していた。

 

Aqoursのみんなは喜ぶというよりもどこかほっとした表情をしていた。

 

果南「とりあえず突破だね。」

 

ダイヤ「それで鞠莉さん、入学希望者の方は・・・。」

 

鞠莉「えぇ、昨日は変化はなかったけど、今日希望者が増えて合計で50人ぐらいになったわ。」

 

千歌「あと50人・・・。」

 

梨子「この調子でいけば年内までに100人に行きそうね。」

 

ルビィ「これで安心ですね。」

 

ルビィちゃんの言いたいことは分かるがそううまくいく保証はないんだ。

 

瑠惟「水を差すようで悪いがそういうわけにもいかないぞ。」

 

善子「何が言いたいの?」

 

瑠惟「確かに今回の予備予選や学校説明会の甲斐もあってここまで増えたけど、この時期になると受験校を本格的に決定する子が多くいる。だから次の予選がある11月この時点で志望校を決めている子が大半なんだ。」

 

花丸「それじゃあ、チャンスはほとんど残ってないってことずら?」

 

瑠惟「そんなことはない。でも少ないのは事実だ。」

 

曜「そんな・・・。」

 

瑠惟「ということで県外からの希望者を増やそうってことで、イベントの出演依頼をいただいてきました。」

 

梨子「ほんとに!?」

 

瑠惟「あぁ。なんと東京で歌うことができます!」

 

果南「やるじゃん!で、どんなイベントで歌うの?」

 

瑠惟「えっと・・・東京で開催されるストリートバスケの大会でステージを披露して・・・」

 

ここまで言ったところで急に周りが静かになった。

 

昨日の千歌同様にみんなが心配そうな目でこちらを見る。

 

そういえばSaint Snowが過去のことを勝手に暴露してたっけ。

 

瑠惟「みんなが思っているようなことはないから安心してほしい。何よりこのイベントは自分が過去を乗り越えるためでもあるんだ。だからみんなは何も気にせずに歌ってほしい。」

 

そう言うとみんなの表情が元に戻った。

 

ダイヤ「あなたがそこまで言うのなら私達はあなたを信じましょう。いつも助けてもらっているのですから今回は私達があなたを助けます。大切な仲間であり、友達のためですから。」

 

瑠惟「ダイヤさん、みんな・・・。」

 

この学校に来て本当に良かった。自分にはもったいないくらいの仲間に出会えた。

 

ダイヤ「そうと決まれば練習ですわ!みなさん行きますわよ!」

 

こうして東京でのイベントの向けてAqoursは猛練習をするのであった。

 

 

 

そしてイベント当日、Aqoursは会場の楽屋で出番を待っていた。

 

曜「さっき外が見えたけど、たくさんの人がいたね。みんな選手なのかな?」

 

瑠惟「おそらくな。何人かテレビで見たことのある選手もいたしハイレベルな試合が見れそうだな。」

 

花丸「先輩は試合に出ないずら?」

 

瑠惟「・・・・まぁブランクもあるし、何より自分一人だから・・・。」

 

いや、本当は違うだろ。もう一度ボールに触りたい、もう一度コートに立ってみたい。もう一度あいつにバスケしてる姿を見せたい。

 

でも・・・心のどこかで恐怖が残っている。もしまた怪我をしてバスケ以外もできなくなったら・・・。

 

そんな時だった。

 

「失礼します。」

 

誰かが楽屋をノックして入ってきた。

 

「こちらに瑠惟さんっていらっしゃいますか?」

 

名前を呼ばれて少し驚いた。

 

瑠惟「はい。自分ですけど・・・ってお前は!」

 

そこには思いもよらない人物がいた。

 

「お久しぶりです先輩。二年ぶりですね。」

 

瑠惟「輝《てる》!なんでこんなところに!?」

 

こいつは尾浦 輝《おうら てる》。中学時代同じバスケ部で後輩であり引退後の主将をしていたやつだ。同期以外では珍しく自分と仲が良く後輩の中でも最も信頼していた人物だ。ちなみに主将に推薦したのは自分だ。

 

高校進学後もバスケを続けているとは聞いていたがまさかこんなところで会うとは。

 

輝「俺、今日の大会に出場するために来たんですけど、Aqoursの方たちが出演するって聞いて、もしかしたら先輩もいるんじゃないかって思って来ました。」

 

瑠惟「なんでAqoursのマネージャーをしてるって知ってたんだ?」

 

輝「はい。実は俺スクールアイドルが好きでその中でもAqoursの大ファンで、前にテレビで見たときに先輩がAqoursのマネージャーとしてテレビに出ていたのでそれで知りました。」

 

瑠惟「なるほどAqoursのファンか・・・ちなみに推しは誰なんだ?今ならサインとかもらえるかもしれないぞ。」

 

そう言うと輝は少し照れながら答えた。

 

輝「えっと・・・は、花丸さん推しなんです///」

 

花丸「えっ?マルずら?」

 

輝「はい、初めて見たときからずっといいなって思ってました。」

 

なんか告白みたいだな。

 

花丸「マルのこと応援してくれてうれしいずら。」

 

輝「もしよかったらさ、サインとか貰えませんか?」

 

花丸「もちろん。喜んでずら。」

 

という感じで輝は憧れの花丸ちゃんにサインをもらうことができた。良かったな。

 

輝「一生大事にします!ありがとうございました!」

 

花丸「こちらこそありがとうずら。」

 

瑠惟「そういえば輝、何か用事があったんじゃのか?」

 

すると輝は急に真剣な面持ちになった。

 

輝「はい。単刀直入に言います。先輩・・・もう一度バスケやりませんか?今日この場所で。」

 

全員「!?」

 

なるほど、だからわざわざ楽屋まで来たのか。

 

でも・・・

 

瑠惟「悪いな。自分はもうバスケをやらないって決めたから。その誘いには乗れない。」

 

輝「そうですか・・・。やっぱり無理ですよね。あんなことがあったんですから。すいません変なこと言って。じゃあ俺は行き」

 

千歌「待って!」

 

瑠惟「千歌?」

 

千歌「瑠惟君、嘘を付いちゃダメだよ!」

 

瑠惟「そんな嘘なんて・・・」

 

千歌「本当はバスケやりたいんでしょ!?・・・私知ってるよ。毎日練習の後に体育館で一人バスケットゴールをさみしそうに眺めてること。」

 

瑠惟「・・・・」

 

千歌「毎晩昔にチームの人達と撮った写真を見てること。他にもいっぱいある。口ではしなくてもいいって言ってるけど、本当はしたいと思ってる。家族だもん。それくらい分かるよ。」

 

やっぱり千歌には分かっていたか。

 

千歌「私は今の瑠惟君が好き。少し臆病でヘタレな性格で周りを第一に考えてくれる瑠惟君が好き。でもね、昔のようにバスケをして笑って、楽しそうに私に試合のこととかを話してくれる瑠惟君の方がもっと好きだよ。だからこれは私のお願い・・・ううん、わがまま。瑠惟君にもう一度バスケをしてほしい。私にバスケしているところを見せてほしい。」

 

 

 

・・・・いつからだったかな?バスケをすることを諦めていたのは。

 

・・・・いつからだったかな?千歌にバスケの話をしなくなったのは。

 

あの時大怪我をしてから自分の中で何かが変わった気がした。

 

以前よりも自分を外に出さず、他人におびえていた。

 

この先ずっとこのままでいる気がしていた。・・・・そう。あいつにスクールアイドルに誘われるまでは。

 

Aqoursのみんなの変わっていく姿をずっと近くで見てきた。

 

みんな自分の弱さに向き合ってそれでも逃げずに前に進んできた。

 

自分はどうだろうか?

 

みんなに色々アドバイスなんかをしてきたが、思えば自分は何も変わっていなかった。自分と向き合おうとしていなかった。

 

そして今日のイベントのことを聞いた時に思った。変われるんじゃないかって。でも、いざとなるとやっぱり逃げようとした。

 

そんな時に千歌の声で目が覚めた。

 

真っ暗な道を独りで走っていると光が見えた。輝きが見えた。

 

あいつらの呼ぶ声。こっちだよという声。

 

さぁ今度はオレが変わる番だ。

 

瑠惟「・・・何年俺が誰かさんのわがままを聞いてきたと思ってる。何度でも聞いてやる。それから・・・ありがとう。俺もそんなお前が好きだ。」

 

千歌「瑠惟君!」

 

輝「先輩!それじゃあ・・・」

 

瑠惟「あぁ。久しぶりにやるか!バスケ!」

 

俺の言葉を聞いてさっきまで心配そうな顔をしていたAqoursのみんなも笑顔になった。

 

瑠惟「なら、服とバッシュを取りに行ってくる。」

 

輝「先輩!それならここにありますよ!」

 

そう言って輝は実家に置いてあるはずのバッシュと服をカバンから取り出した。

 

瑠惟「なんで輝が持ってるんだ?」

 

輝「ここに来る前に先輩の家に行って先輩のお母さんに言って取ってもらいました。先輩とバスケがしたいですって言って。」

 

またあの母親が一枚かんでたのか。でも今回は感謝だな。ありがとう母さん。

 

瑠惟「よし。じゃあ行ってくる。千歌、みんなを頼んだぞ。」

 

千歌「うん。瑠惟君も頑張ってね。楽しみにしてるから。」

 

そうしてみんなのいる楽屋を後にした。

 

 

 

Aqoursのステージが終わった後、俺達は出番までウォーミングアップをしていた。

 

久しぶりにボールに触るとなんだか現役時代に戻った気がした。

 

ドリブルやシュートの感覚も鈍っていない。

 

あとはスタミナだがあいつらと毎日走りこんでいたおかげでそこまで落ちてはいない。

 

輝も見た感じ中学時代よりも格段にレベルアップしているようだ。

 

ほかのチームメイトも輝と同じくレベルの高い人達だった。

 

彼らに自己紹介をして話しているとどうやら輝と同じ学校のバスケ部のようだった。

 

彼ら曰く輝がいつも俺のことを話していたのである程度俺のことを知っていたらしい。

 

そんなこんなで出番がきた。相手は見た感じ同じ高校生のようだ。

 

さて久しぶりに暴れてきますか!

 

ーside out 瑠惟ー

 

ーside in 千歌ー

 

この日をどれだけ待ったんだろう。

 

諦めかけていた。もう二度と見れないかもって。

 

ステージを終えた私達は急いで観客席へと向かった。

 

適当な席に着くと私はまだかまだかと彼の登場を待ちわびた。

 

想像するだけで思わず笑みがこぼれてしまう。

 

梨子「嬉しそうだね千歌ちゃん。」

 

千歌「だってずっと待ってたんだもん!」

 

曜「私は瑠惟君のプレーは見たことないけど、どうなの千歌ちゃん?」

 

千歌「瑠惟君はねすっごく上手なんだよ!」

 

楽しみで言葉が幼稚になってしまう。でも、実際に彼はそれほどの選手なのだ。

 

そして待望の瞬間が来た。

 

ユニフォームを来た彼のチームが入場してきた。

 

すると観客席から色んな声が聞こえた。

 

「えっ!?あいつってAqoursのマネージャーだよな?まさかバスケもできるのか?」

 

「バカか知らないのかよ?あの人は全中出場経験のある選手なんだぜ!まさかここで再び見れるとは思わなかった。おい、あいつのプレーよく見とけよ。」

 

観客の声を聞いたAqoursのみんなは驚いていた。

 

果南「瑠惟ってすごい人気なんだね。正直ここまでとは思わなかった。」

 

ダイヤ「私達のマネージャーですもの。これぐらい当然ですわ。」

 

鞠莉「そう言うダイヤも嬉しそうね!」

 

ダイヤ「そ、そんなことありませんわ。」

 

彼のことなのに何だか私まで誇らしくなってしまう。

 

それから少しして彼の復帰戦が始まった。

 

ーside out千歌ー

 

 

試合が始まると瑠惟はジャンプボールに競り勝った味方からパスを受けてそのままガラ空きの相手ゴールへ迫っていく。

 

瑠惟(復帰戦一発目のシュートはやっぱり・・・)

 

彼はゴール直前で大きく踏み切り高くジャンプした。

 

瑠惟「オラァ!!」

 

彼の強烈なダンクで先制点を奪取。そしてその光景を見た観客は歓声をあげた。

 

「スゲェ!いきなりダンクだ!」

 

「なんてジャンプ力なんだ!」

 

輝「流石です先輩!全然衰えてないっすね!」

 

瑠惟「当たり前だ。もっとパス寄こしてくれ。せっかくの復帰戦だから暴れさせてもらう。」

 

輝「元よりそのつもりですよ!」

 

彼のダンクを目の当たりにしたAqoursは驚きで言葉が出なかった。

 

千歌(すごいよ・・・。やっぱり瑠惟君はこうでなくっちゃ!)

 

梨子「彼の身長でダンクなんて・・・。」

 

花丸「先輩って確か170cm後半ぐらいの身長だったずら?」

 

ルビィ「ピギィ!」

 

その後も彼は味方のサポートを受けどんどん得点を重ねていった。

 

第1クォーターが終了して得点は33-4と相手を圧倒していた。

 

瑠惟「約30点差か・・・。」

 

輝「先輩、めちゃくちゃ飛ばしてますけどスタミナ大丈夫ですか?」

 

確かにこのままのペースでいくと後半もたないかもな・・・。

 

瑠惟「じゃあ第2クォーターは俺がPGやる。お前らが攻めてくれ。」

 

輝「マジすか!先輩がPGやってくれるんすか。久しぶりにアレ見れるんすか!」

 

瑠惟「しょうがない奴だな。なら久しぶりにアレやるか。」

 

第2クォーターに入り瑠惟のチームは攻め手をガラッと変え、体力の温存に重点を注いだ。

 

さっきと違ってあまり攻めない瑠惟を千歌以外のAqoursは疑問に思った。

 

曜「あれ?瑠惟君どうしたんだろ?急に慎重になったみたいだけど。」

 

ダイヤ「確かに。先程のように攻めてくるのかと思っていましたわ。」

 

そんな彼女たちの疑問に千歌は答える。

 

千歌「瑠惟君が一番得意なのはあのポジションなんだよ!」

 

果南「そうなの?」

 

千歌「うん!よく見てて・・・。」

 

ボールをゆっくりと運んで来た彼を止めようと相手選手が迫ってきた。

 

「行かせるか!」

 

瑠惟(おっ。中々良いディフェンスするじゃん。でも・・・)

 

右側から抜こうした彼に相手が反応しようとする。

 

瑠惟(引っかかったな。)

 

彼は相手が反応した瞬間にクロスオーバーで逆に切り返す。

 

※クロスオーバー・・・ボールを左右に素早く切り返すドリブル

 

「なっ!?」

 

するとその切り返しで相手はバランスを崩してその場で倒れてしまう。

 

彼のプレーで観客から驚きの声が出る。

 

瑠惟(久々で成功するか怪しかったけどうまくいったな。)

 

相手を抜くと彼はシュートを打った。

 

しかし彼の放ったシュートはゴールを狙ったシュートではなく・・・

 

輝「ナイスパスっす先輩!」

 

輝へのアリウープだったのだ。

 

※空中でパスを受けて着地せずにそのままダンクするプレー

 

パスを受けた輝は豪快なダンクを叩き込んだ。

 

「うおぉぉ!アリウープだ!」

 

「あいつら本当に高校生かよ!?」

 

瑠惟(これだよこれ!この感覚!)

 

さっきの一連のプレーでどうなっていたか素人の彼女達には理解できなかった。

 

梨子「今何が起こったの?」

 

ダイヤ「相手選手が転んだように見えましたが・・・」

 

千歌「違うよ。瑠惟君がやったんだよ。」

 

千歌の言っている意味が他のみんなにはよく分からなかった。

 

曜「え!?それって反則じゃないの?」

 

千歌「ううん。瑠惟君が相手が転ぶように仕向けたんだよ。」

 

果南「そんなことできるの?」

 

千歌「普通なら狙ってできることじゃないけど、彼の眼があればそれが可能なの。」

 

梨子「眼?」

 

千歌「彼は相手の体の細かい動きを見て今までの経験とで相手の次のプレーをかなり正確な制度で予測してるの。」

 

千歌(前に瑠惟君はこれを『えんぺらーあい』って言ってたっけ?う~ん、今でも何のことかよく分からないよ。瑠惟君ってたまに善子ちゃんみたいなこと言うからな~)

 

善子「つまり・・・相手の未来が見えてるってことね。」

 

千歌「ちょっと違うけど、まぁそんな感じかな。」

 

梨子「何かの漫画で見たことある気がする。」

 

千歌「梨子ちゃん、それ以上は・・・。」

 

梨子「そ、そうね。」

 

Aqoursは改めて彼のすごさを実感した。

 

そして彼とチームの勢いは止まらないまま試合が進んでいき、第4クォーター残り数秒。

 

相手のパスをカットした味方からラストパスを受け取った彼は素早いドリブルでスリーポイントラインまで進み、シュート体勢に入る。

 

「3、2、1・・・」

 

そして彼はこの試合最後のスリーポイントシュートを放つ。

 

シュートを打った彼はまるでゴールに入ったことを確信しているかのように右手を人差し指と共に高く挙げていた。

 

瑠惟(0から1へ・・・。これが俺の1だ!)

 

試合終了のブザーと同時に彼のシュートはネットを揺らした。

 

千歌(やっと帰ってきたね・・・おかえり。)

 

そんな彼女は目からあふれ出たものをを袖で拭った。

 

こうして彼の復帰戦は見事なブザービーターで幕を閉じたのであった。

 

 

ーside in瑠惟ー

 

試合終了後に輝が俺に言った。

 

輝「先輩、お疲れさまでした。やっぱり先輩はすごいっす。」

 

瑠惟「そんなことねーよ。お前らのおかげでこんなに気持ちよくプレーできたんだ。ありがとな。」

 

輝「俺も先輩とおんなじコートに立てて良かったです!」

 

瑠惟「それはこっちも同じだ。」

 

すると一人の男が話しかけてきた。

 

「君が瑠惟君かね?」

 

瑠惟「はい。そうですけど・・・あなたは?」

 

「自己紹介がまだだったね。すまない。私はさっき君とプレーしていたチームメートの高校のバスケ部の監督だ。」

 

瑠惟「そうなのか輝?」

 

輝は何も言わずにうなずいた。

 

「率直に言おう。君にうちの学校に来て、チームでプレーしてほしい。」

 

なるほどスカウトってわけね。

 

とてもうれしい話だが・・・

 

瑠惟「申し訳ありませんがお断りさせていただきます。俺にはまだやることが残ってるんです。」

 

「そうか・・・。残念だ。まぁ気が変わったら連絡をしてきなさい。私達はいつでも君を歓迎しよう。」

 

そうして男は去っていった。

 

輝「断ってよかったんですか?自分で言うのもなんですけどうちのチーム結構強いんですよ。」

 

瑠惟「悪いな。生憎今の俺は浦の星女学院スクールアイドルAqoursのマネージャー。俺の仕事はあいつらをてっぺんに連れていくこと。だから今の俺にはできない相談だな。」

 

輝「そうですよね。先輩ならそういうと思いました。頑張ってください!応援してますから!」

 

瑠惟「おう。ありがとな。」

 

 

 

輝と別れた俺は控室に向かった。

 

控室のドアを開けると・・・

 

やっぱりみんなが待っててくれた。

 

千歌「お疲れさま!そしておかえりなさい!」

 

瑠惟「ただいま。」

 

梨子「すごかったね!私びっくりしちゃった!」

 

曜「私もまるで別人を見てるみたいだった!」

 

瑠惟「そうか。見ててくれたんだな。ありがとう。」

 

果南「流石だね。まさかダンクできるなんてね。」

 

鞠莉「Very coolだったね!」

 

ダイヤ「あなたの姿、とても誇らしかったですわよ。」

 

瑠惟「そんなに褒められるとなんか照れますね。」

 

ルビィ「す、すごいです!ルビィあんなの見たことなかったです!」

 

花丸「マルも先輩みたいにおっきくなりたいずら。」

 

善子「クックック。未来を見通す魔眼。・・・かっこいい!」

 

瑠惟「あのこと話したのかよ・・・。」

 

千歌「嬉しくてつい・・・。」

 

あの眼のこと別に俺が自分で言ったわけじゃなくて他の奴が勝手に言ってただけなんだよなぁ。

 

でも、調子に乗って『エンペラーアイ』とか千歌に言ってたっけ。

 

瑠惟「まぁ今日俺がバスケをできたのは千歌はもちろんみんなのおかげだ。ありがとう。」

 

千歌の方を見ると彼女の目が少し赤く腫れているようだった。

 

瑠惟「もしかして泣いてたのか?」

 

千歌「別に泣いてなんかないもん!」

 

瑠惟「はいはい。そういうことにしておきますよ。」

 

そんなこんなで俺は一つ前に進むことができた。

 

次は地区予選。勝てば決勝。そして学校の運命が決まる。

 

明日からまたマネージャーとしての日常が始まる。

 

 




次からは普通の話に戻ります。


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決勝を目指して

4thライブ東京ドームで見て感動しました!WATER BLUE NEW WORLD→キセキヒカルは泣きそうになりましたね。まだまだ止まらないAqoursの活躍が楽しみです!・・・・・・花丸ちゃんを1位にしたい!


前回のコミュ障ヘタレ。

 

予備予選を突破したAqoursのもとに東京でのイベントの誘いがきて、瑠惟は自分を変える機会だと思い参加することを決意するが、当日になるとまたしても避けようとした。しかし、千歌達や後輩の後押しもあって彼は自分と向き合い、0から1に変わることができたのであった。

 

東京でのイベントが無事終了して、俺達は次の地区予選に向けて動きだそうとしていた。

 

俺達は地区予選のルール変更について話していた。

 

ルビィ「次の地区予選は今までみたいな会場の人達の投票だけでなく、ネット中継で見てくれた人も投票できるみたいですね。」

 

曜「ということは学校の生徒数が他のところより少ない私達は・・・」

 

瑠惟「不利・・・というわけでもないぞ。」

 

ダイヤ「それはどういうことですの?私は曜さんが言っているように生徒数が多い方が自然と票も伸びると思いますが。」

 

瑠惟「それは予備予選までの話だ。今回はネットでの投票がある。つまり全国から票が集まるから完全な実力勝負だ。それに生徒数が多いからって全員が自分のスクールアイドルに投票するとは限らないだろ?」

 

梨子「確かにそう言われると少し安心かな。」

 

果南「でも完全な実力勝負ってことは相当なパフォーマンスをしないと勝てないってこと。特に私達は他の学校のスクールアイドルと比べると結成してから日も浅いし、Aqoursは高校に入ってから歌やダンスを始めた子が多いから・・・。」

 

千歌「じゃあ私達は他のスクールアイドルよりもたくさん練習すればいいじゃん。」

 

果南「千歌・・・。」

 

千歌「確かに私達は歌やダンスがそこまで上手でもないし、特別な何かを持っているわけでもない。でも・・・」

 

瑠惟「でも?」

 

千歌「私達は10人もいる!1人や2人でできないことも10人ならきっとできる!」

 

瑠惟「そうだな。10人もいるんだったらお互いに支え合えるしな。」

 

曜「私達みたいな大人数グループはほとんどないし、私達だからこそできることがあるかもしれないね。」

 

瑠惟「ならまずはいろんなことができるようになるために『たくさん練習』だな。」

 

花丸「ライブ後だからやさしいのがいいずら~。」

 

 

練習が終わり帰り支度をしていると鞠莉さん達三年生から理事長室に来てほしいと言われた。

 

やはり入学希望者のことだろうか?

 

瑠惟「失礼します。」

 

理事長室には鞠莉さん、果南さん、ダイヤさんがいた。

 

鞠莉「練習終わりにごめんね。ちょっと見てほしいものがあって。」

 

そう言って鞠莉さんが見せてきたのは・・・

 

瑠惟「これはお父さんからのメールですか?」

 

鞠莉「えぇ。それでここに書いてあることなんだけど・・・」

 

『鞠莉、すまない。入学希望者の受付は年内までと言っていたが。どうにも事情が変わってしまい期限が今月末までになってしまった。もう少し待ってくれるように頼んだのだがこれが限界だった。私が至らないばかりに本当にすまない。』

 

これはこれは・・・ちょいとヤバいですね。

 

瑠惟「つまり今月以内・・・あと約三週間、地区予選の日までに100人集めろってことですか。」

 

ダイヤ「今日現在入学希望者は57人。あと43人集めなければなりませんわ。」

 

果南「やっぱり次の地区予選が勝負ってことね。」

 

瑠惟「少なくとも予選をトップで通過。これぐらいしないと人は集まりませんね。でもそんなパフォーマンスはどうやったら・・・」

 

あっ。一つ心当たりがある。リスクが伴うがもしかしたら予選をトップで通過できるパフォーマンスが。

 

あのノートに書かれてるフォーメーションなら。

 

瑠惟「果南さん、アレをやりましょう。というかやるしかないです。」

 

俺の言っていることを理解した果南さんはすぐに言い返した。

 

果南「前にも言ったよね?絶対にやらせないって。」

 

そう言った果南さんの顔は今まで見たどんな顔よりも怖かった。

 

しかしここでひるんではだめだ。

 

瑠惟「じゃあ果南さんは他に何かあるんですか?地区予選をトップで通過して入学希望者を100人まで増やせるようなやつが。」

 

果南「・・・」

 

ダイヤ「瑠惟さんそのような言い方は・・・。」

 

瑠惟「ダイヤさんだってそう思ってるんじゃないですか?アレをやるしかないって。」

 

ダイヤ「確かにそう思っていますが・・・。」

 

鞠莉「私もダイヤと同じよ。」

 

果南「ダイヤ、鞠莉・・・。」

 

彼女はしばらく考えた後に言った。

 

果南「少し考えさせて。」

 

そう言って彼女は理事長室を出て行った。

 

瑠惟「やっぱりダメですかね?」

 

ダイヤ「いいえ、あなたの言う通りその方法以外ないと私達もそう考えていました。」

 

鞠莉「果南は後悔してるの。アレを考えてしまったこと。私にやらせてしまったこと。そして私が怪我をしたこと。」

 

やっぱりあの時のフォーメーションか。

 

瑠惟「俺、後で果南さんの所に行って説得します。」

 

ダイヤ「待ってください。」

 

瑠惟「なんで止めるんですか?」

 

ダイヤ「違いますわ。」

 

鞠莉「私達も一緒に説得するの。あの頑固者は3人で説得しに行かないと折れないわ。」

 

瑠惟「ダイヤさん、鞠莉さんお願いします。」

 

 

 

 

その夜俺達3人は淡島にある果南さんの家に行った。

 

果南さんはテラスで例のフォーメーションが書かれたノートを見ていた。

 

どこか悲しそうに・・・。

 

しかし俺達が来たことに気が付くとその表情は無くなった。

 

瑠惟「答えを教えてください。」

 

数秒の沈黙の後に彼女は口を開いた。

 

果南「やっぱり私の答えは変わらない。絶対にダメ。それしか方法がないとしてもね。」

 

そう言うと思っていた。

 

瑠惟「それでも俺はやらせます。センターである千歌を信じます。だからそのノートを渡してください。」

 

果南「絶対に渡さない。また誰かが傷つくぐらいならこんなもの・・・」

 

すると彼女はノートを海に投げようとした。

 

それに気付いた俺はいち早く反応して彼女の腕を掴む。

 

果南「離して!こんなもの捨てたほうがマシなの!」

 

暴れる彼女の腕を離した。

 

果南「えっ?」

 

思っていた反応と違っていたらしく彼女は困惑する。

 

そして俺はゆっくり卑屈っぽく話しはじめる。

 

瑠惟「なら捨てたらいいじゃないですか。そのノート。」

 

ダイヤ・鞠莉「瑠惟(さん)?」

 

瑠惟「別にどうするかは自由ですけど、それを捨てるってことはダイヤさん、鞠莉さんとの思い出を捨てるのと一緒ですよ。自分たちのやってきたことを否定するってことですよ。」

 

果南「・・・」

 

瑠惟「どうしたんですか?捨てないなら代わりに俺が捨てますよ。」

 

そう言ってノートを取ろうとすると

 

果南「・・・わけない。」

 

瑠惟「なんて言ったんですか?」

 

果南「そんなことできるわけないじゃん!」

 

そのまま彼女は続ける。

 

果南「この3人での思い出なんて捨てられないよ。大切な親友との思い出だよ。3人で頑張って考えて、何回も練習して・・・。このノートには私達の想いがたくさん詰まってる。だから捨てるなんてできないよ・・・。」

 

泣いている彼女に俺は言う。

 

瑠惟「誰も果南さんのせいで鞠莉さんが怪我をしたなんて思っていませんよ。怪我なんてする時はしちゃうもんですよ。ですよね鞠莉さん?」

 

鞠莉「えぇ。あの時は少しunluckyなだけだったから。果南は何も悪くないわ。」

 

果南「鞠莉・・・。でも私はできなかったこれを千歌に押し付けたくない。」

 

ダイヤ「ぶっぶーですわ!・・・果南さん、私達はこれをできなかったから押し付けるのではありません。次の可能性を千歌さん達に託すのです。私達の想いと共に。」

 

果南「ダイヤ・・・。」

 

瑠惟「俺だって決して安全だとは言いきれません。でもできることは全部やりたいんです。最後まで足掻きたいんです。あいつらならきっとできると思います。だから果南さん・・・」

 

果南「もし・・・もし、少しでも危ないと私が判断したら、ラブライブを棄権してでも辞めさせるから。」

 

瑠惟「ってことは。」

 

果南「うん。このノートを千歌達に託す。私達3人の想いも一緒にね。」

 

瑠惟「ありがとうございます!」

 

果南「でも・・・流石に先輩に対してあの言い方はないね。」

 

Oh・・・

 

瑠惟「あれは何と言うか果南さんをその気にさせるために言ったというか・・・」

 

果南「ちょっとこっちに来なさい。先輩への口の利き方を教えてあげるから。」

 

瑠惟「待って!助けてください!ダイヤさん!鞠莉さん!」

 

ダイヤ「私たちはちょっと用事が」

 

鞠莉「あったかも?」

 

瑠惟「行かないで~!」

 

この後滅茶苦茶説教された。

 

 

 

次の日からAqoursは新フォーメーションの練習を始めた。

 

瑠惟「じゃあ今から練習を始めるが・・・千歌と花丸、2人は別メニューだ。」

 

千歌・花丸「えっ?」

 

瑠惟「さっきも説明したが今から練習する新曲のダンスは今までのどんな曲よりも体力と筋力が必要になると考えている。特に千歌はセンターで踊る以上みんなよりも激しいし、しんどい。」

 

千歌「私はセンターだから別メニューなのは分かるけど、なんで花丸ちゃんも?」

 

花丸「そうずら。」

 

瑠惟「えーっと花丸ちゃんはスタミナ面は特に問題ないがそれよりも筋力が不足してると思ったからだ。腕立ても一回できるか怪しいだろ?」

 

花丸「・・・確かに合ってるずら。」

 

瑠惟「理解してもらえたところで練習を始めようと思う。そっちは三年生の方に任せますのでお願いします。じゃあ俺たちは移動するぞ。」

 

ということで3人は体育館に移動した。

 

瑠惟「千歌はしっかりと準備運動をしておいてくれ。それで花丸ちゃんだが・・・これを使ってくれ。」

 

花丸「これは・・・ボールずら?」

 

瑠惟「そうバスケットボールだ。小学生用の小さいサイズのやつ。それを使って俺が言うメニューをやってもらう。最初はボールに慣れてもらうために俺とキャッチボールな。」

 

彼女とのキャッチボールが始まったわけだが

 

花丸「こんな距離届かないずら~。」

 

大体5メートルくらい離れて片手で投げても届かないよな。

 

瑠惟「違う違う。片手じゃなくて両手で投げてみてくれ。」

 

花丸「両手で投げるってどうやるずら?」

 

瑠惟「言い方が悪かった。両手で押し出すようにしてみてくれ。今からやってみるから。」

 

そう言ってバスケのパスの要領でボールを彼女に放つ。

 

瑠惟「こんな感じでやってみて。」

 

花丸「押し出すように・・・えいっ!」

 

彼女のボールは見事にバウンドせずに直接俺の手元に届いた。

 

花丸「届いたずら!」

 

瑠惟「やるじゃん。」

 

片手だけで投げようとすれば利き手の方に力が集中してしまい偏った筋肉がついてしまうと思った。だからあえて距離を離して両手で投げさせた。バランスのいい筋肉をつけるために。

 

それからしばらくの間2人のキャッチボールもといパス練習は続いた。

 

彼女から少し疲れが見え始めたところで休憩を取らせた。

 

瑠惟「どうだ千歌。準備の方は?」

 

千歌「ばっちりだよ!」

 

瑠惟「よし。じゃあ今から俺が今回の曲で一番難しいところをやる。とりあえずどんな感じか見ておいてくれ。」

 

そして俺はノートに書いてあったロンダート→バク転をやって見せた。

 

何回かやってみて思ったが正直男でもマスターするのは簡単ではないと感じていた。

 

それを見ていた千歌は・・・

 

千歌「今のを私がやるの?」

 

瑠惟「嫌なら無理にやれとは言わないが・・・」

 

千歌「ううん!やりたい!」

 

瑠惟「お前ならそう言うと思ってた。」

 

千歌「簡単にできることじゃないのは分かってる。でもこれができたら絶対に輝ける!予選も突破して学校も救える!だから私絶対にできるようになって見せる。」

 

瑠惟「俺の特訓は厳しいぞ。それでもやるか?」

 

千歌「やるに決まってる。やらなきゃダメなの。」

 

瑠惟「なら俺は確実にお前がバク転ができるようにさせる。」

 

ここから俺と千歌と花丸ちゃんの猛特訓が始まった。

 

 

 

それから時間が過ぎていき地区予選2日前。

 

厳しい特訓の成果は花丸ちゃんには目に見えて出た。

 

数週間前までは腕立てなんてろくにできなかった彼女だが今では

 

花丸「15.16.17・18・・19・・・20。できたずら!」

 

瑠惟「やったじゃないか!目標の20回達成だ!」

 

花丸「先輩のおかげずら!」

 

瑠惟「そんなことない。花丸ちゃんの努力の結果だよ。」

 

花丸「毎日マルの為に時間を割いてくれて一緒にいてくれたからここまでできたずら!だからこれはマルと先輩、2人の努力の結果ずら!」

 

瑠惟「嬉しいこと言ってくれるねー。じゃあそういうことにしておくよ。」

 

と、こんな感じで花丸ちゃんの方は心配がなくなった。

 

しかし一番重要な千歌の方は・・・

 

千歌「だぁー!また失敗した!なんで!?」

 

瑠惟「おい落ち着け。焦ると余計にできなくなるぞ。」

 

千歌「でも、あと2日しかないんだよ!このままじゃ決勝にも行けないし、学校を救うのも無理!とにかく形だけでもやらなきゃ!」

 

今のコイツは何かがおかしい。いつもの千歌ではない。

 

本当に困った。教えられる事は全て教えた。基礎を徹底的にやらせ、体にかかる負担が少なくなるようにさせてきた。

 

現に惜しい場面は何度もあった。

 

でもあともう一歩が届かないのだ。

 

そんな千歌を見ていた果南さんが言った。

 

果南「千歌、明日までにバク転が成功できなかったら、フォーメーションを変える。もしできないまま本番で万が一のことがあったら私は一生後悔する。だからこれは脅しなんかじゃない。あなたを守るためなの。」

 

彼女の言うことは至極当然だ。

 

自分ができないということは張本人である千歌が一番よく分かってる。

 

そしてそれは側で教えてきた俺も同じであった。できなければ惜しいも惜しくも関係ない。どっちにしろできないのだから。

 

だから千歌は何も言うことができない。

 

ここに来て初めて諦めの気持ちが湧き始めていた。

 

万事休すか・・・。

 

 

 

しかしある1人の言葉が俺達を動かした。

 

花丸「私は千歌ちゃんならできると思うずら。今までどんな状況でも奇跡を起こして何とかしてきた。だから今回もきっとできるようになるって信じてるずら。それに瑠惟先輩が絶対にできるようにさせるって言ってた。マルはAqoursに入ってから一度も先輩の言葉を疑ったことはない。マルは先輩の言葉を信じて頑張ったから腕立てをできるようになったずら。果南ちゃんも他のみんなも先輩を・・・千歌ちゃんを信じてほしい。」

 

千歌「花丸ちゃん・・・」

 

瑠惟「ずら丸・・・」

 

花丸「ずら丸って言うなずら。」

 

果南「・・・分かった。期限云々の話は無しにする。でも、本当に本番でやらせるかの判断は瑠惟に任せる。私はあなたの言葉を信じる。」

 

瑠惟「任せてください。絶対に成功させます。」

 

さて、、こうなってしまっては仕方ない。荒療治をするしかない。

 

瑠惟「千歌。」

 

千歌「ん?」

 

瑠惟「自分でも分かっていると思うが、もしバク転が成功できないならラブライブ決勝なんて夢のまた夢だ。それに学校も救えない。つまりだな今のお前に両方とも達成するなんてことは絶対に無理だ。」

 

千歌「え?」

 

さっきの話の流れからこんな言葉が出るはずがない。

 

そう思っていたAqoursは俺の言葉に困惑する。

 

瑠惟「だから一回全部忘れろ。ラブライブ決勝も学校の事も。今のお前を縛りつけているのは決勝に行かなきゃいけないという義務感。学校を救わなきゃいけないというプレッシャー。これに囚われている以上力を発揮することなんてできん。・・・まぁ元はと言えば俺の責任でもあるからな。だから・・・」

 

俺は千歌から数メートル離れたところで座り込む。

 

瑠惟「ロンダート→バク転で俺を飛び越えろ。」

 

千歌「えっ!?何言ってるの!?ダメだよ!もし私が失敗したら・・・」

 

瑠惟「あぁ。俺にぶつかって両方とも怪我をするだろうな。」

 

千歌「そんなことできない!危ないよ!」

 

瑠惟「確かに危ないかもしれない。でも俺はお前を信じる。絶対に成功するって。だからお前も信じてくれ。俺の教えた事は間違いじゃないって。高海千歌の努力は無駄じゃないって。」

 

これは賭けだ。わざと千歌を追い込むことであいつの力が発揮されることに賭けている。だが下手をすれば大怪我をする可能性もある。

 

でもまぁ千歌なら大丈夫だろ。俺が信じなくて誰がお前を信じるんだよ。

 

千歌は無言で頷いた。

 

それはあいつが俺を信じたというサインでもある。

 

千歌「じゃあいくよ!」

 

俺は目を閉じる。

 

だんだんと足音が近づいてくる。

 

失敗したら・・・なんて俺は考えなかった。

 

ここでやってくれるのが真のリーダーだって。果南さん達3年生が夢を託した奴だって。

 

 

 

 

地区予選当日、会場は前回のラブライブでAqoursが敗退した場所。

 

Aqoursにとって因縁の場所だ。

 

会場には予選開始の30分前だというのに多くの人で埋め尽くされていた。

 

俺はあえてAqoursの控え室には行かなかった。

 

会場入りして別れる時に言いたいことは全部言ったからな。

 

瑠惟『今のみんななら絶対できる。自分達を信じろ。みんなのやってきたことは無駄じゃないって証明してこい。・・・それと千歌。このステージでは決勝も学校のことも何も考えなくていい。だから・・・思う存分楽しんでこい!』

 

できることは全てやってきた。後は見守るのが俺の仕事だ。

 

っとそれよりも席を探さなければ。このままじゃ座れない。

 

一席だけ空いてる所があったので急いでそこに座る。

 

なんとか座れたけど・・・本当に人が多いな。

 

それだけ注目されているってことか。

 

すると隣から声を掛けられた。

 

「お久しぶりですね。」

 

声のほうに向くと見知れた顔があった。

 

瑠惟「Saint Snowさん!?」

 

何でここに?確かもうすぐ予選だったような・・・

 

聖良「招待しておいてその顔ですか・・・。」

 

え?まさかあいつら俺に黙って招待していたのか?

 

瑠惟「お久しぶりです。聖良さん、理亞ちゃん。」

 

理亞「久しぶりね。兄様。」

 

瑠惟「兄様ってAqoursの前では絶対に言うなよ。面倒臭いことになるから。」

 

聖良「ところで何かあったんですか?前と雰囲気が違うような・・・」

 

瑠惟「まぁ色々あったんです。Saint Snowの2人にも感謝してます。」

 

聖良「私達何かしましたっけ?」

 

人の過去暴露しておいて忘れてるのかよ。

 

瑠惟「とにかく今の俺は前までの俺とは違いますよ。もちろんそれはあいつらも一緒ですけど。」

 

聖良「なるほど・・・そういうことですか。」

 

何がなるほどなんだよ。まぁ分かってくれてるならそれでいいか。

 

理亞「兄様、今度は私達の予選も見に来てね。」

 

瑠惟「確か出身は北海道だよね。俺、寒いのやだなー。」

 

理亞「来ないとみんなの前で『兄様』って言うわよ。」

 

瑠惟「是非行かせていただきます。」

 

聖良「あなたもずいぶん理亞に気に入られてますね。」

 

瑠惟「そうですかね?遊ばれてる気しかしないんですけど。」

 

聖良「あの子は人見知りで滅多に自分から話しかけたりすることは無いんですよ。それに『兄様』なんて呼ばれてるのがいい証拠ですよ。」

 

瑠惟「それでも人前では極力言わないでほしいですね。色々とアレですし。」

 

聖良「いいじゃないですか。妹が増えたみたいで。」

 

瑠惟「ただでさえこっちには千歌っていう妹みたいな奴がいるのでこれ以上は勘弁ですね。」

 

聖良「それもそうですね。」

 

前よりもこの2人とは話しやすくなった気がする。

 

口調は厳しい時もあるが、こういう時は普通に話してくれるので俺としてもありがたい。

 

理亞「せっかく見に来てあげたんだから変なパフォーマンスを見せないでほしいわ。」

 

聖良「前よりも成長してるって期待してますよ。」

 

おっ。言ってくれるね。

 

瑠惟「あいつらは成長しましたよ。特にリーダーは。なんせ俺が付きっきりで特訓させましたから。今日は来て良かったって思わせてみせます。」

 

聖良「あなたがそこまで言うなら私達も楽しみです。」

 

それから少しして地区予選が始まった。

 

Aqoursはくじの結果、順番が最後になったのでそれまで他のグループのパフォーマンスを見ていた。

 

こうして他のグループを見ていると思う。

 

前回のラブライブよりも明らかにレベルが上がっている。

 

流石は予備予選を勝ち抜いていただけはある。

 

Saint Snowの2人もレベルの高さに感心していた。

 

Aqours以外の全てのグループが終わり、残すはあいつらのみ。

 

注目度が高いのか始まる前から歓声が会場に響いていた。

 

聖良「とうとうですね。」

 

瑠惟「・・・。」

 

聖良「もしかして緊張してますか?」

 

瑠惟「してないって言ったら嘘になりますね。ラブライブ決勝と学校存続が掛かってますからね。そりゃ緊張しますよ。」

 

聖良「背負ってるものが他とは違う・・・。」

 

瑠惟「でも、俺はここに来る前にあいつらに言いました。『とにかく楽しめ』って。だから大丈夫ですよ。」

 

そしてAqoursのパフォーマンスが始まった。

 

今回踊る曲は『MIRACLE WAVE』。

 

あいつらがAqoursらしさとは何かを考えた結果生まれたのがこの曲。

 

そして3年生達の想いをのせた曲でもある。

 

曲が始まり、みんなが今までとは違う激しくダイナミックなダンスをしていく。

 

当初不安だった花丸ちゃんも付いていくどころか自分のものにできている。

 

そして一番の見せ場が来た。

 

サビ前の千歌のロンダート→バク転。これが成功できれば観客の心を掴むことは間違いない。

 

 

 

 

その瞬間が来た。

 

瑠惟「見せてやれAqoursの力を!」

 

千歌は2日前に俺を飛び越えたように一連の動きを成功させることができた!

 

瑠惟「よっしゃあ!」

 

思わず叫んでしまう。

 

会場のボルテージも最高潮だった。

 

まさかスクールアイドルがバク転をするとは誰も予想できないよな。

 

驚嘆の声が周りから聞こえる。

 

そして聖良さん、理亞ちゃんも・・・

 

聖良「・・・すごい。言葉が出ません。」

 

理亞「こんなの今まで見たことない・・・。」

 

曲が終わると会場から惜しみない拍手が送られ、彼女達はステージ上で喜びあっていた。

 

千歌は自分が本番で成功させたということを実感し、果南さん達3年生は涙を流していた。

 

瑠惟「千歌ぁ!」

 

千歌に聞こえるように本気で叫んだ。

 

千歌「瑠惟君!私やったよ!できたよ!」

 

瑠惟「やったな!俺も嬉しくて泣きそうだぞ!」

 

こうして喜んでいる間に会場とネットでの決勝進出者の投票が始まった。

 

さっきまで喜んでいたみんなが真剣な顔をする。

 

周りを見れば祈っている人や進出を確信している人もいた。

 

俺は祈らない。決勝進出してるって信じてるから。

 

数分後結果発表が始まった。

 

まず1位から順に呼ばれるらしい。

 

つまりここで呼ばれなきゃ学校存続は絶望的。

 

運命の瞬間・・・

 

「地区予選1位を発表します。」

 

「ラブライブ静岡予選1位は・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「浦の星女学院スクールアイドルAqours!」

 

 

 

 

 

千歌「え?1位?私達が?」

 

曜「やったね千歌ちゃん!私達決勝に行けるんだよ!」

 

梨子「アキバドームで歌えるんだよ!」

 

花丸「本当にマル達がやったの?」

 

ルビィ「ラブライブ決勝・・・」

 

善子「魔都東京でラグナロクが繰り広げられるのね。」

 

各々が決勝進出を喜んでいる中、3年生達は・・・

 

果南「2年間本当に長かった・・・。やっと行けるんだね私達。」

 

ダイヤ「全てのスクールアイドルの憧れアキバドームに。」

 

鞠莉「これも千歌っち達のおかげだね。果南。」

 

果南「うん。本当にすごいよ千歌達は。」

 

鞠莉「あれ?泣いてるの?」

 

果南「そう言う鞠莉だって泣い・・てるじゃん・・・。」

 

ダイヤ「果南さん、鞠莉さん・・・」

 

良かったですね。俺も果南さん達の気持ちが伝わってきます。

 

一度挫折して諦めかけた夢。

 

それがもう一度叶おうとしてる。

 

こんなに嬉しいことはないだろう。

 

聖良「彼女達の所に行かなくていいんですか?」

 

瑠惟「俺は後で行きますから今はここで見てます。ステージに立ってたあいつら自身が一番嬉しいですから。」

 

聖良「私達はAqoursのパフォーマンスを見て感動しました。彼女達は今までの彼女達とは違う。紛れもなく今大会トップクラスの実力を持ったスクールアイドルです。私達も負けてられません。絶対にあなた達と同じ舞台に立ちます。だから待っててください。」

 

瑠惟「こっちも楽しみにしてます。」

 

理亞「私達は負けない。絶対に勝つ。そして兄様に来てもらうから。」

 

瑠惟「がんばれよ。応援してる。」

 

そう言って理亞ちゃんの頭を撫でてあげる。

 

理亞ちゃんは少し顔を紅くしている。

 

理亞「ありがと。」

 

可愛い奴め。

 

 

 

 

Saint Snowと別れた後、Aqoursの控え室に行った。

 

瑠惟「決勝進出おめでとう。」

 

千歌「瑠惟君!私、私ね・・・」

 

泣きそうになっている千歌を優しく抱きしめる。

 

瑠惟「よくがんばったな千歌。お疲れ様。」

 

千歌「う、ん・・・」

 

瑠惟「間違ってなかったろ?千歌達の努力は。」

 

千歌「・・・瑠惟君の教えてくれたことも間違いじゃなかったね。」

 

瑠惟「ありがとう。」

 

瑠惟「みんなもよくがんばった!」

 

果南「瑠惟、ありがとね。・・・あの時、瑠惟が私に言ってくれなかったらこうはならなかった。本当にありがとう。」

 

瑠惟「・・・迷って不安なメンバーの背中を押してあげる。俺はマネージャーの仕事をしたまでですよ。」

 

果南「やっぱり瑠惟がマネージャーで良かった。」

 

瑠惟「最高の褒め言葉ですね。」

 

山は一つ乗り越えた。

 

瑠惟「・・・後は入学希望者がどうなっているかですね。」

 

千歌「みんなで学校に戻ろう。」

 

入学希望者が100人を超えることを信じてAqoursは学校へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そろそろ番外編を挟もうかなー。


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廃校と新たな目標

えーと、最近虹ヶ咲にはまりまして投稿が遅くなりました。申し訳ございません。そしてたくさんの誤字の指摘ありがとうございます。本当に感謝しております。話は変わりますがいつかμ’sメインの話も書きたいなと思っています。余裕ができたらやろうかなと思います。


前回のコミュ障ヘタレ。様々な衝突や葛藤がありながらも難しいパフォーマンスを成功させ、予選1位でラブライブ決勝にコマを進めることができたAqours。そして入学希望者を確認しに学校に戻ったのであった。

 

入学希望者の締切まであと4時間弱、現在の数はというと・・・

 

鞠莉「92人ね。」

 

瑠惟「あと8人か・・・。」

 

千歌「いけるよね?大丈夫だよね?」

 

曜「ネットに上がっている私達のさっきの予選の動画も再生数がどんどん増えてるし、きっと大丈夫だよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしそんな曜の言葉も虚しく、この先人数が増えることはなかった・・・。

 

今はちょうど日付が変わって午前0時、浦の星の生徒募集のホームページは消えていた。

 

俺達は学校を守ることができなかったのだ。

 

千歌「嘘・・・だよね?私達学校を救えなかったの?浦の星は無くなっちゃうの?」

 

梨子「千歌ちゃん・・・」

 

瑠惟「俺、鞠莉さんのお父さんと話します。」

 

ダイヤ「待ってください。・・・もう廃校は決定しました。今更何を言っても・・・。」

 

瑠惟「無駄かもしれません。でも・・・でも!」

 

そして俺はケータイを取り出して鞠莉さんのお父さんに電話をかけた。

 

向こうは早朝だから繋がらないかもしれないけど・・・。

 

鞠莉父「はい。」

 

繋がった!

 

瑠惟「もしもし、僕です。こんな朝早くにすいません。」

 

鞠莉父「あぁ分かっている。浦の星のことだろう。」

 

瑠惟「はい。」

 

鞠莉父「私もできるだけ引き伸ばしてもらったんだ。でも、もう廃校は決定した。簡単な話だよ。この町には人は集まらなかった。」

 

瑠惟「でも、あの希望者数は女子だけの数ですよね?」

 

鞠莉父「・・・希望者は男子も含めてあの人数だよ。」

 

瑠惟「そんな・・・。」

 

鞠莉父「そう落ち込まないでくれ。君達が悪いわけじゃない。むしろ君達は良くやってくれた。廃校寸前のこの学校をラブライブ決勝まで連れて行ってくれたのだから。」

 

瑠惟「じゃあもう本当にこの学校は・・・」

 

鞠莉父「悲しいが廃校になってしまう。・・・だから残りの時間をみんなと大切に過ごしなさい。」

 

瑠惟「廃校になってもみんなは同じ学校に行けるんですよね?」

 

鞠莉父「もちろんだよ。だが君は本当にいいのかい?前に約束した通りにして?」

 

瑠惟「はい。大丈夫です。俺なりのケジメですから。」

 

鞠莉父「そうか・・・。なら君の言う通りに手配しておくよ。」

 

瑠惟「ありがとうございます。では失礼します。」

 

話を終えた俺はみんなを見て、首を横に振った。

 

瑠惟「すまん、ダメだったわ。」

 

明るく言ってみるが、こうでもしないと平常心を保てそうにない。

 

それはここにいる全員同じで、誰も何も言おうとしない。

 

瑠惟「・・・今日は遅いし、帰るか。」

 

千歌「・・・うん。」

 

瑠惟「この時間じゃバスも無いし、沼津組は俺達の所に泊めるよ。他のみんなは気をつけてな。」

 

解散した後、千歌は曜、善子を連れて部屋に戻った。

 

 

 

 

俺は少し外の空気を吸いたくて近くの浜辺に来ている。

 

前に千歌、梨子、曜の3人でグループ名を考えた場所だ。

 

懐かしいな・・・。

 

ふと空を見上げるとそこにはきれいな星空が見えた。

 

改めて実感する。学校が無くなってしまうのだと。

 

今年浦の星に来た俺は千歌達2年生、果南さん達3年生ほど思い出があるわけじゃない。

 

でも・・・

 

みんなと同じく大切な場所であることは間違いない。

 

Aqoursや学校のみんなと一緒に過ごした時間は本当に楽しかった。

 

もっとあそこにいたい、もっとたくさんの思い出を作りたい。

 

そう思えるからこそ悔しい。

 

学校を救えなかったことが、あいつらの思い出を守れなかったことが。

 

瑠惟「クソッ!」

 

誰もいない浜辺に声が響く。

 

そんな時だった。

 

「あの・・・。」

 

この声は・・・

 

後ろを振り向くとそこには。

 

瑠惟「善子。」

 

善子「先輩・・・。」

 

瑠惟「どうした、こんなところで?」

 

善子「それはこっちのセリフよ。いつまでたっても帰ってこないし、夜中にこんなところにいたら風邪ひくわよ。はいこれ。」

 

どうやら毛布を持ってきてくれたみたいだ。

 

瑠惟「ありがとさん。」

 

彼女は毛布を渡すとそのまま俺の隣に座った。

 

瑠惟「眠れないのか?」

 

善子「うん。」

 

瑠惟「・・・ごめんな。学校守れなくて。」

 

善子「なんで謝るのよ。」

 

瑠惟「だって・・・あれだけみんななら学校を救えるって言って、練習も厳しくしたのに、結局学校は廃校になったし俺は何もできなかったから。」

 

善子「それ本気で言ってるの?」

 

瑠惟「え?」

 

善子「私は先輩がいなかったらここまでできなかったと思ってるの。Aqoursができたのは先輩のおかげだし、私がスクールアイドルになろうと思ったのは先輩が背中を押してくれたから。」

 

瑠惟「善子・・・」

 

善子「毎日私達の練習を見てくれるし、曲作りや衣装づくりも手伝ってる。私達が落ち込んだ時は励ましてくれるし、ライブが成功すれば一緒に喜んでくれる。練習後にはたまにアイスとか買ってくれたり、テスト前には勉強を見てくれた。他人のことを第一に考えて、たまに無茶なこともする。そんな先輩がいてくれたからここまでこれたの。私はそんな先輩に感謝してるし、他のみんなもきっと同じだと思う。だから・・・何もできなかったなんて言わないでよ。」

 

あぁダメだ。善子の言葉を聞いてると涙が出てくる。

 

情けないな。後輩の前で泣くなんて・・・。

 

瑠惟「少しみっともない姿を見せるが許してくれ。」

 

善子「泣きたいときは泣いて。私が受け止めるから。」

 

そして彼女は優しく俺を包み込む。

 

瑠惟「ありがとう・・・。」

 

俺は彼女の腕の中で泣いた。涙が枯れるまで泣いた。

 

 

 

しばらくして落ち着いてきた。

 

考えるとさっきまで俺は後輩の女の子に抱きついて泣いていたんだよな。

 

急に恥ずかしさがこみ上げてきた。

 

そしてすぐに善子から離れる。

 

善子「あら?もういいの?」

 

瑠惟「あぁ、だいぶ落ち着いたからな。ありがとう。」

 

善子「子供みたいに泣いてる先輩、なかなか可愛かったわよ。」

 

やめてくれ〜!

 

瑠惟「ま、まぁ今日はもう寝よう。話はまた明日に。」

 

そう言って帰ろうとすると善子に腕を掴まれた。

 

瑠惟「ん?どうした?」

 

善子「先輩は・・・次の学校はどうするの?」

 

瑠惟「・・・」

 

善子「私達と同じ学校に通うの?それとも・・・」

 

遅かれ早かれいずれ言うことだ。ここで言ってもいいだろう。

 

瑠惟「俺は東京に帰る。」

 

善子「やっぱりそうなのね。」

 

瑠惟「気づいてたのか。」

 

善子「なんとなくね。多分、みんなも気づいてると思うわ。」

 

瑠惟「止めないのか?」

 

善子「本当は止めたいわ。2年生の3人が悲しむし、多分ルビィとずら丸も。」

 

なんでルビィちゃんや花丸ちゃんが悲しむんだ?

 

まぁいいか。

 

善子「私も先輩には行ってほしくない。・・・大切な人だから/////」

 

瑠惟「最後の方、何て言ったんだ?」

 

善子「なんでもない!」

 

瑠惟「そんなに怒るなよ。」

 

善子「でも先輩が決めたことだから。それが正しいと思う。だからたまには会いに来てよね。」

 

瑠惟「言われなくても毎週のように行ってやるよ。」

 

善子「それはさすがに・・・。」

 

瑠惟「俺も放送楽しみにしてるからな。実はここ最近の楽しみなんだ。」

 

善子「えっ!?まさか私の放送見てるの?」

 

瑠惟「当たり前だろ。なんせヨハネ様のリトルデーモン第一号だからな。」

 

善子「あ、当たり前よ!リトルデーモンなら私のことは常にチェックしておかないとね!」

 

瑠惟「全くどうにも俺の後輩は可愛い奴ばっかりだな。」

 

そう言ってヨハネ様の頭をナデナデする。

 

善子「あっ。」

 

どうやらヨハネ様はお気に召してくれたようだ。

 

瑠惟「善子と話せて良かった。ありがとう。」

 

善子「・・・どういたしまして。」

 

 

 

 

次の日学校に行くと臨時集会があって、そこで鞠莉さんから生徒にこの学校の廃校の決定及び、次年度から沼津の学校との統合が伝えられた。

 

みんなに話をしている時の鞠莉さんはどこか申し訳なさそうだった。

 

教室では廃校の話題はもちろんだがAqoursのラブライブ決勝進出のことで盛り上がっていた。

 

クラスメイトから祝福や激励の言葉をもらった。

 

「ラブライブ決勝がんばってね!私達も応援に行くから!」

 

千歌「・・・ありがとう。うん。がんばるね。」

 

千歌の様子がおかしいことに周りも不思議に思う。

 

梨子「やっぱりまだ廃校のこと引きずってるのかな?」

 

曜「仕方ないよ。千歌ちゃんこの学校大好きだから。」

 

瑠惟「練習前にみんなで話そうか。ラブライブのこと。そして・・・これからのこと。」

 

 

 

放課後、沼津のスタジオに行く前にミーティングをすると言ってみんなに屋上に集まってもらった。

 

瑠惟「急に呼び出して悪いな。でも、俺達Aqoursは決めなきゃならない。ここからどうするのか。」

 

千歌「え?何言ってるの?次はラブライブ決勝だよ?」

 

瑠惟「千歌・・・今は話を聞いてくれ。」

 

千歌「・・・うん。」

 

瑠惟「Aqoursは今までラブライブの優勝と学校存続を目標にやってきた。・・・だが学校存続は達成できなかった。」

 

みんなの表情が暗くなる。

 

だがそのまま俺は続ける。

 

瑠惟「今日一日考えてみたんだ。・・・俺達はこのままラブライブ決勝に出て最大のパフォーマンスを出して、優勝できるのかと。」

 

瑠惟「今日のみんなの様子を見かけたんだけど、やっぱりまだ気持ちの整理ができていないと思った。もちろん俺も含めて。」

 

瑠惟「だからみんなにも考えてほしい。このままラブライブ決勝に出るべきか。それとも浦の星での残りの時間をみんなと大切に過ごすか。」

 

すると・・・

 

「私達はラブライブの決勝に出てほしい!」

 

誰かが叫ぶ声が聞こえた。

 

声のする方を見ると・・・

 

千歌「みんな!」

 

なんと中庭に浦の星の生徒が集まっていた。

 

「私達はAqoursなら優勝できるって信じてる!」

 

千歌「でも、ラブライブで優勝しても・・・廃校に・・・。」

 

 

 

「だったら残してよ!ラブライブの歴史に浦の星の名前を!」

 

 

 

Aqours「!!」

 

そうか・・・たとえ学校が救えなくても・・・。

 

ラブライブに俺達の学校を残すことはできる!

 

俺はみんなに聞いた。

 

瑠惟「みんなの答えは決まったか?」

 

いや・・・みんなの顔を見れば分かる。

 

瑠惟「そうだよな。聞くまでもないな。・・・千歌やめるか?」

 

千歌「ううん!やめるわけないじゃん!私達はラブライブ決勝に出る!相手が誰でも関係ない!ぶっちぎりで優勝してこの浦の星女学院とAqoursの名前をラブライブの歴史に残す!」

 

瑠惟「そうと決まればすぐに練習だな。」

 

全員「おぉー!!」

 

その後のAqoursの練習はみんな気合いが入っていて雰囲気も良かった。

 

 

 

練習が終わりみんながクールダウンしてる様子を見ていてふと思った。

 

次で最後か・・・。

 

ラブライブ決勝が終われば卒業式があってそれが終わったら俺は東京に帰る。

 

こうして練習を見てあげられるのもそんなに多くないんだな。

 

なんとしてもみんなを優勝させてあげたい。

 

・・・でもその前にみんなにちゃんと言わないとな。

 

瑠惟「みんな大事な話がある。聞いてほしい。」

 

善子「先輩・・・」

 

善子は俺が何を言おうとしてるのか察したらしい。

 

瑠惟「気づいている人もいると思うが、俺は来年みんなとは同じ学校には通わない。東京に帰る。」

 

千歌「え・・・?」

 

やはり何人かは分かっていたみたいだな。

 

瑠惟「来年もAqoursが続くかは分からないがラブライブ決勝が俺にとってラストステージになるかもな。」

 

梨子「やっぱり東京に帰るのね。」

 

瑠惟「悪いな。相談もせずに勝手に決めちゃって。」

 

花丸「先輩・・・本当にいなくなっちゃうずら?」

 

瑠惟「ごめんな。最後まで一緒にいれなくて。」

 

しかし次の言葉は予想していなかった。

 

花丸「マルは・・・マルは嫌ずら!もっと先輩と一緒にいたいずら!」

 

ルビィ「花丸ちゃん・・・。」

 

花丸「先輩はマルの大切な人ずら!マルを・・・私を図書室からこんなにキラキラした世界に連れてきてくれた先輩は私の恩人、まだ何も返せてないのにどこかに行かないでほしいずら!また『ずら丸』って言ってもいいから、だから一緒に・・・」

 

こんなに感情を表に出した花丸ちゃんを見るのは初めてだ。

 

それだけ考えてくれてたんだな。

 

瑠惟「俺のために泣いてくれるなんてこれ以上に嬉しいことはない。それに俺はAqoursのみんなからたくさんの大切なものを貰った。だから恩返しだなんて思わないでほしい。・・・でも強いて言うなら、決勝でみんなの全てを見せてほしい。Aqoursの全てを・・・。そして優勝してくれたら十分だよ。それなら俺も花丸ちゃん達も悔いはないだろ?」

 

花丸「じゃあ・・・マル達が優勝したら先輩のお願いを一つ聞くずら。」

 

瑠惟「そうしたいならそれでもいいけど・・・。」

 

花丸「じゃあ考えておいてずら。」

 

瑠惟「みんなもそれでいいかな?」

 

みんな頷いてくれた。

 

だが・・・

 

千歌「私は・・・よくない。」

 

瑠惟「何が良くないんだ?」

 

千歌「なんで・・・なんで学校を変える必要があるの?一緒の学校に行っちゃダメなの!?」

 

瑠惟「俺だって、できることなら一緒の学校に行きたい!でもそれじゃダメなんだよ・・・。」

 

千歌「分からない、私には分からないよ!」

 

そう言って千歌はスタジオを出て行ってしまった。

 

果南「追いかけなくていいの?」

 

瑠惟「・・・」

 

鞠莉「瑠惟!」

 

瑠惟「行ったところでどうなるんですか!千歌はあぁ見えて人一倍責任感が強くて優しい子なんです!だから学校を救えなかったのも自分の責任だって思ってるはずなんです!・・・情けないことに俺はあいつに何て言ったらいいのか分からない。それに俺と離れたくないのも分かります。でも、今回はそうはいかないんです。」

 

鞠莉「私と果南を仲直りさせてくれた時、あなたは私に言ったわ。『素直に気持ちを伝えるのって難しい。でも伝えなきゃ分からないこともある。』って。私はあの言葉に救われた。そして今こうして果南達とスクールアイドルができてるの。あなたと千歌っちも私達と同じで不器用なのよ。千歌っちは色んなことがありすぎて心の整理ができてないだけ。だからあなたが千歌っちを支えてあげて。きっとお互いに話し合えば上手くいくはずよ。だってあなたはマネージャーである以前に家族だから。」

 

瑠惟「まさか前に鞠莉さんに言ったことが返ってくるとは思いませんでした。・・・俺、あいつを探してきます。それで思ってること全部言います。」

 

鞠莉「Good luck!」

 

そして俺は千歌のあとを追いかけた。

 

 

 

ハァ・・・ハァ・・・ハァ

 

瑠惟「どこに行ったんだよ?」

 

しばらくこの辺りを探すがまだ見つからないどこにいるんだ?ケータイも繋がらないし。

 

だがここからそう遠くには行ってないはずだ。

 

だとしたら・・・

 

そして俺は沼津にある水門に来た。

 

ここは中に入れて上に行くことができる。そこからの景色、特に夜景は中々の見物だ。

 

昔、沼津で千歌とはぐれた時、あいつをここで見つけたのを今でも覚えている。

 

だから多分今回も・・・

 

水門に入って上に行くと予想通り千歌はいた。

 

瑠惟「千歌!」

 

千歌「やっぱり来てくれた。・・・ううん、来るって信じてた。」

 

瑠惟「俺も千歌ならここに来るって思ってたぞ。」

 

千歌「本当は分かってたんだ。廃校になったら瑠惟君とは別々の学校に行かなくちゃいけないって。」

 

仮にも統合先が共学だったら俺も一緒に行くことができたかもしれない。

 

でも、おそらく向こうの学校も女子高だろうな。

 

浦の星の生徒のみんなは男である俺を温かく歓迎してくれた。まぁ鞠莉さんや千歌がいてくれたおかげかもしれないけどな。

 

しかし統合先でも同じようにいくかといえば・・・答えは否。

 

千歌達だけでなく浦の星から来た生徒にも迷惑がかかる可能性が高い。

 

瑠惟「俺の言いたいこと分かるよな?」

 

千歌「うん。・・・ごめんね、私のせいで卒業まで一緒にいれなくて。私のせいで・・・」

 

誰のせい?いや、誰のせいでもない。廃校はなるべくしてなった。

 

別にAqoursの努力が無駄だったということじゃない。

 

事実あともう少しで廃校は阻止できていた。それに俺たちが何もしなければここまで廃校を引き延ばすことはできなかった。

 

それなら・・・

 

瑠惟「まさか学校が廃校になった責任は全部自分にあるって言いたいのか?」

 

千歌「だって私が・・・」

 

瑠惟「やっぱりいつまでたってもお前はバカ千歌だな。」

 

千歌「バカ千歌?」

 

瑠惟「ひとつ言っておくけど、浦の星にいる子は誰も廃校になったのは千歌のせいだなんて思ってない。むしろ俺の責任だ。だから私のせいでこうなったとかネガティブなことは考えなくていい。そういうのは俺の仕事だ。ただでさえ少ない俺の仕事を取るんじゃない。千歌達は前だけ見てればいい。そしてみんなを引っ張る。それがリーダーであるお前の仕事だ。」

 

すると千歌は笑った。

 

千歌「もしかして慰めようとしてくれたの?だとしたら全然慰めになってなかったよ。」

 

瑠惟「うるせぇ。」

 

千歌「・・・でもなんか元気がでてきたかも。ありがと。」

 

そんな笑顔で言われるとなんかこう恥ずかしくなる。

 

瑠惟「それは良かった////」

 

千歌「Aqoursのみんなで話したことがあるの。私達が瑠惟君にしてあげられることってなんだろうって。」

 

瑠惟「さっきも花丸ちゃんに言ったけどお前らがステージで全力で歌って踊ってる姿を見せててくれるだけで満足だっての。それ以外には・・・」

 

千歌「あるんでしょ?」

 

一つ頭に浮かんだことがある。

 

瑠惟「まぁないこともないかな。」

 

千歌「言ってみてよ。」

 

瑠惟「でもこれは・・・」

 

完全に俺のワガママなんだよなぁ。

 

千歌「いいからいいから。」

 

瑠惟「まぁ言うだけならいいか。・・・知ってると思うがラブライブ決勝で優勝したグループにはアンコールでもう一曲歌えるのは知ってるよな?」

 

千歌「うん。μ’sはそこで『僕らは今の中で』を歌ったんだよね。」

 

瑠惟「そうだ。で、ここからが俺のワガママだ。もしAqoursも優勝すればその機会があるわけだが・・・」

 

千歌「もしかして・・・」

 

どうやら分かったようだな。

 

瑠惟「アンコールで歌う曲を俺が作ってもいいかな?」

 

これを聞いた千歌はどこか嬉しそうな顔をしていた。

 

千歌「それ・・・すっごくいい!私、瑠惟君の作った曲を歌いたい!踊りたい!アキバドームで!」

 

瑠惟「あくまで俺のワガママだから。千歌がよくても他のみんながどう言うか・・・」

 

曜「私達も賛成だよ!」

 

えっ!?

 

後ろを見るとさっきまでスタジオにいたはずのみんなが来ていた。

 

瑠惟「曜、みんな!?なんでここにいるって」

 

善子「私にかかれば一人の人間を探し出すなど容易いことよ。」

 

瑠惟「ほんとは?」

 

花丸「じーぴーえす?機能を使ってみつけたずら。」

 

イマノジダイハベンリダナー

 

まぁいいや。それより

 

瑠惟「みんな本当にいいのか?俺なんかが大事なアンコールの曲を作っても?」

 

梨子「私はいいと思う。瑠惟君ならきっと素敵な曲を作ってくれそうだから。」

 

ルビィ「先輩の曲、ルビィも歌いたい!」

 

果南「アンコール用の曲ってことは優勝させてくれるってことだもんね。」

 

ダイヤ「期待してますわよ!ラブライブ史に残るような素晴らしい曲を!」

 

鞠莉「私達の曲を作ることを承認シマース。」

 

全員のOKもらっちゃったよ。

 

これはやるしかないですね。

 

瑠惟「期待しとけよ。会場のみんな・・・いや、スクールアイドルファンみんなが驚くようなすっげー曲作ってやるから!だから絶対に優勝してくれよ!」

 

千歌「当たり前じゃん!絶対に優勝して瑠惟君の曲をみんなで歌う!そしてラブライブに学校を残す!これが私達の新しい目標!」

 

色々あったけどいい感じでまとまってくれてよかった。

 

さてさて今年も残すところ一ヶ月ちょっと。

 

みんなの決勝進出祝いにちょうどいいものをプレゼントしましょうか。

 

瑠惟「突然なんだがみんな」

 

Aqours「??」

 

 

 

 

瑠惟「北海道に行こうか。」

 

 

 

Aqours「えぇ~~!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次は番外編を書きます。


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Go to 北海道!

あけましておめでとうございます!(2月) 言いたいことはたくさんありますが今年もコミュ障ヘタレをよろしくお願いします!


前回のコミュ障ヘタレ。学校存続のために最後まで努力したAqoursだったが、惜しくも入学希望者が目標の100人に集まることはなく、これからの道を悩んだ。しかしラブライブを諦めかけていた時に浦の星の生徒達からの言葉を聞いて、新たな目標を持つことができた。

 

 

 

瑠惟「提案しておいてなんだが・・・やっぱり帰っていい?」

 

千歌「ダメだよ!瑠惟君が行こうって言ったからみんな来たんだよ!」

 

瑠惟「しかしな・・・やっぱりここの寒さは尋常じゃないわ。」

 

梨子「何言ってるの?そんなの当たり前じゃない。だってここは・・・」

 

 

 

ー北海道だよ。

 

 

 

その通り。梨子の言った通り俺達は今北海道の函館にいるのだ。

 

俺もここに来るとは思ってなかったよ。

 

あのメールが来るまでは。

 

ーーーーーー

 

予備予選が終わり俺達が急いで学校に向かっている時に俺のスマホにあるメールが来た。

 

差出人は・・・ラブライブ運営委員会!?

 

どれどれ・・・

 

『浦の星女学院スクールアイドルAqoursの皆様、地区予選突破及びラブライブ決勝進出おめでとうございます。本日は皆様のご活躍を讃え、ラブライブ北海道予選にゲストとしてご招待するために本メールを送らせていただきました。もし行かれるのでしたら〜〜。』

 

へぇ〜北海道か・・・あっちはまだ予選が終わってなかったのか。

 

ていうか北海道ってSaint Snowがいるとこじゃん。

 

あの二人なら予選突破は間違いない。つまり決勝で争うことになるな。

 

う〜ん・・・

 

まぁ・・・今回はみんなもがんばったし、偵察と観光を兼ねた旅行ってことで行ってもいいかな。

 

後日みんなと相談して全員行けるとのことで俺は運営委員会に行きますと返信した。

 

ーーーーーー

 

瑠惟「・・・えっとこの後の予定だけどとりあえず今からラブライブの予選がある会場に行くぞ。ホテルにはそれが終わった後に行く。」

 

九人「はぁ~い。」

 

てなわけで会場について俺達はまず出演者の控室に向かった。

 

コンコン

 

千歌「失礼します。」

 

中に入ると出番を控えてるグループが何組がいて、ここにいるはずのないAqoursが入ってきたことに驚いていた。

 

聖良「あら?Aqoursのみなさん、どうしてここに?」

 

千歌「おはようございます。聖良さんに理亞ちゃん。今日来たのは予選に招待されて・・・」

 

聖良「そうだったんですか。静岡からわざわざありがとうございます。・・・それとラブライブ決勝進出おめでとうございます。」

 

理亞「・・・」

 

千歌「ありがとうございます。聖良さん達も予選がんばってください。」

 

聖良「えぇ私達もあなた達に負けないくらいのステージで決勝進出を勝ち取ります。」

 

やっぱり本番前だからか二人とも緊張しているのが何となく伝わる。

 

特に理亞ちゃんは・・・

 

千歌「じゃあ私達は観客席に行きます。」

 

そう言って千歌達は控室を出ていった。

 

俺もそろそろ・・・

 

聖良「せっかく会いに来てくれたのにあなたは何も言ってくれないのですか?」

 

瑠惟「・・・」

 

多分俺の事だろうな。無視するのも良くないし・・・はぁ・・・仕方ない。

 

瑠惟「いや、二人ともいい感じで話してましたし、本番前だから・・・」

 

聖良「それだとしても無視されるのはちょっと傷つきますね。」

 

瑠惟「あ~なんかすいません。・・・まぁがんばってくださいってさっき聞きましたよね。じゃあ・・・聖良さん、理亞ちゃん、一足先に待ってますからラブライブの決勝で。」

 

聖良「・・・大丈夫ですよ。私達もすぐにそっちに行きますから。・・・ほら、理亞もあいさつしなさい。」

 

理亞「・・・」

 

聖良「理亞!」

 

瑠惟「まぁまぁ俺は大丈夫ですから。今は集中させてあげてください。」

 

ここで喧嘩なんてやめてください。周りの俺への視線がきついから!

 

しかし俺が理亞ちゃんの方を見ると、彼女は震える手をぎゅっと握ってまるでプレッシャーから耐えるように固まっていた。

 

この時、何故かは分からないが俺の頭の中に嫌な予感がよぎった。

 

瑠惟「聖良さん、ちょっと理亞ちゃんと二人で話してもいいですか?」

 

・・・俺が敵に塩を送ろうとするなんて珍しいが、今はどうしてもやらないといけない気がした。

 

聖良さんに了解を得て、彼女に少し席を外してもらった。

 

瑠惟「理亞ちゃん。」

 

理亞「・・・」

 

優しく声を掛けるが返事がない。

 

瑠惟「お姉ちゃんと何かあったのか?」

 

彼女は何も言わずただ頷いた。

 

やはり聖良さんと何かしたんだな。

 

瑠惟「何があったかは聞かないでおくよ。でも何か言いたいことがあるなら聞くぞ。」

 

理亞「・・・姉様はこれが最後のラブライブなの。それなのに私、姉様と喧嘩しちゃって・・・。まだ仲直りできてない。」

 

瑠惟「今すぐに仲直りは・・・できないな。もう本番が始まるし。それに理亞ちゃんも今は言いにくいだろ?」

 

理亞「・・・うん。」

 

瑠惟「それは仕方ない。でも今は切り替えてほしい。多分今の理亞ちゃんの状態のままじゃステージで失敗すると思う。」

 

理亞「・・・分かってる。」

 

瑠惟「とにかくリラックスしていつもどおり踊ればいいよ。・・・もしステージで何かあっても慌てないで落ち着くこと。それでステージが終わったらきちんと仲直りすること。分かった?」

 

理亞「うん。」

 

瑠惟「よし、なら大丈夫だ。応援してるぞ。」

 

そう言って前みたいに彼女の頭を撫でてあげる。

 

理亞「兄様・・・ありがとう////」

 

本人も満更でもなさそうだ。

 

俺は控え室を出て、聖良さんに礼を伝えた。

 

瑠惟「それと・・・・・・やっぱりなんでもないです。」

 

聖良「?」

 

これ以上とやかく言うのは逆効果な気がした。彼女達も何だかんだで決勝を経験してるから特に心配はないと思った。

 

その後は千歌達と合流して予選を眺めながら決勝のことを考えていた。

 

曲を作りたいとは言ったけど・・・どんなテーマにしようか?

 

やっぱりAqoursがテーマの方がいいのか。

 

それとも決勝の舞台に相応しいような曲か・・・

 

・・・まぁそのうち思いつくだろ。

 

それに決勝で勝たなきゃ話にならない。

 

今は他のグループのを見て研究しよう。

 

俺は再びステージに意識を向ける。

 

瑠惟「次は・・・Saint Snowか。」

 

果南「あの二人なら特に問題なく決勝に行きそうだね。」

 

彼女達は前回大会で入賞しているし、今大会でも優勝候補の一つとして注目されている。

 

観客の期待が高まっていくのが伝わってくる。

 

「さて次は今大会の優勝候補!函館聖泉女子高等学院スクールアイドル・・・Saint Snow!」

 

キャー!

 

そしてそんなたくさんの期待と共に曲が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・しかしそれらはいとも簡単に消えてしまった。

 

理亞ちゃんが曲の途中で転倒してしまったのだ。

 

その後二人はは何とか持ち直したものの、決勝進出は絶望的になった。

 

彼女が転倒した瞬間会場の空気が凍ったように静かになったあの光景はずっと頭に残っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結果から言うとSaint Snowは第3位で決勝進出を決めた。

 

しかしSaint Snow自身はどうしても納得がいっていない様子だった。

 

特に理亞ちゃんは・・・

 

少し厳しいことを言うとSaint Snowが決勝進出できたのは他にそれほど秀でたグループがいなかっただけだ。

 

それは彼女達がよく分かっていたことなので尚更公開が残ったステージだっただろう。

 

俺達は予選終了後に楽屋に行ったがそこにSaint Snowの姿は無かった。

 

楽屋にいた子から聞いたが二人はこの後の決勝進出者の壮行会には行かないとだけ伝えて帰ってしまったらしい。

 

その時の二人はお互いに口をきいていなかったそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺達は今日の所はホテルに帰って休むことにした。

 

ホテルでの部屋は運営側の計らいで千歌・梨子・曜の三人部屋、一年生組の三人部屋、三年生組の三人部屋と俺の一人部屋となった。

 

部屋に入るなりベッドに寝転がって天井を見ながらさっきのことを振り返った。

 

Saint Snowがあんな初歩的なミスをしたのか・・・

 

優勝候補といえどやっぱり根は普通の女の子なんだよな。

 

それにさっき聞いた二人の様子から仲直りは・・・できてないよなもちろん。

 

俺も二人には世話になったしどうにかしてやりたいけど・・・いかんせん連絡が取れない。

 

・・・少し歩くか。

 

コートを羽織りマフラーを首に巻いた俺はどこに行くわけでもなく一人夜の函館に出た。

 

瑠惟「寒っ。」

 

やっぱり夜は昼よりも冷えるな。

 

さて・・・外に出たはいいがどこに行こうか。

 

ここで俺は今日見た光景を思い出す。

 

・・・確か聖良さん達の学校って函館聖泉女子高等学院だったよな。

 

場所を調べるとここからそんなに離れてないことが分かった。

 

ということで丘を登ってやって来ました函館聖泉女子高等学院。

 

ほぉ~ここか~ええやん。

 

校舎も大きくて綺麗で見るからにお嬢様学校って感じだな。

 

周りを見渡すがさすがに時間も遅いので誰もいない。

 

ん?

 

誰か下の方から走ってきてる?

 

暗くてよく分からない。

 

その人影が街灯の下に来るとようやくはっきりと見えた。

 

あれは・・・

 

瑠惟「よぉ理亞ちゃん。」

 

理亞「えっ!?兄様がなんでここに・・・」

 

彼女の格好を見るとどうやらランニングの途中みたいだった。

 

瑠惟「ちょっと聖地巡礼しようと思ってな。」

 

理亞「聖地巡礼って・・・。あの子達はどうしたの?」

 

あの子達?Aqoursのことかな?

 

瑠惟「あいつらならホテルで休んでるよ。長旅で疲れたみたいだし。」

 

理亞「そう・・・。ねぇ今日あった予選なんだけど・・・」

 

瑠惟「言いたいことは分かるがここじゃ寒いしちょっと場所を変えないか?奢るからさ。」

 

理亞「・・・」

 

俺は理亞ちゃんと近くのカフェに入った。

 

瑠惟「はい。お待たせ。コーヒーで良かったかな?」

 

理亞「・・・ありがとう。」

 

瑠惟「とりあえず決勝進出おめでとう・・・って言っても素直に喜べないみたいだな。」

 

理亞「私達はトップで予選を突破するつもりだった。・・・でも私のせいで決勝にすら行けなくなるかもしれなかった。」

 

瑠惟「それでも決勝には行けるんだし・・・」

 

理亞「予選を突破できたのはあの時兄様の言葉を思い出してすぐに切り替えることができたから。」

 

瑠惟「確かにあのままだったら間違いなく予選敗退してただろうな。」

 

理亞「それに本当は予選が終わった後に姉様と話し合って仲直りしようと思ってたんだけど・・・」

 

瑠惟「まぁそれは仕方ない。・・・でもそれをそのままにして決勝に臨んだら絶対に勝てない。それこそ取り返しのつかないことになる。」

 

理亞「分かってる。分かってるけど・・・」

 

瑠惟「まぁそんなに焦らなくてもいいんじゃないか?決勝まで時間はあるし。」

 

理亞「うん。」

 

瑠惟「じゃあこの話は終わり。で、俺から理亞ちゃんに聞きたいことがあるんだけど・・・」

 

理亞「兄様が私に?」

 

瑠惟「実は・・・」

 

 

 

理亞「へぇ・・・曲を作ろうとしてるけどいまいちイメージが湧かないのね。というか仮にも相手に優勝したことを前提の話をするなんていい度胸ね兄様。」

 

瑠惟「ま、まぁ・・・それは置いておて。理亞ちゃんから見てAqoursはどう見える?」

 

理亞「どう見えるか・・・そうね・・・何だか『青』って感じがするわね。名前が水に由来してるからかもしれないけど。」

 

言われてみれば確かにAqoursに「青」はしっくりくる。

 

瑠惟「なるほど・・・。」

 

理亞「・・・なるほどじゃないわよ。Aqoursのことなんて兄様が一番分かってるはずよ。他人に聞くものじゃないわ。」

 

瑠惟「へぇ〜」ニヤニヤ

 

理亞「な、なに笑ってんのよ!」

 

瑠惟「ごめんごめん。でも、なんだかんだいって理亞ちゃんもAqoursのこと見てくれてたんだなって。」

 

理亞「べ、別に私は・・・あくまで敵を知るために調べてただけなんだからね!」

 

瑠惟「そういうことにしておきますよ。・・・ってもうこんな時間か。」

 

時計を見るともうすぐ22時になりかけていた。

 

瑠惟「そろそろ帰ろうか。送ってくよ。」

 

ここから理亞ちゃんの家まではそれほど遠くなく、5分もしない内に着いた。

 

暗くてハッキリとは見えないが『くじら汁』と書かれた旗がうっすら見える。

 

瑠惟「理亞ちゃんの家は何かの料理店なのか?」

 

理亞「そうよ。この店は将来私と姉様で継いで一緒に暮らしていくの。それより、わざわざ送ってくれなくてもよかったのに・・・。」

 

瑠惟「誘ったのは俺の方だし。これぐらいさせてくれ。」

 

理亞「コーヒー・・・」

 

瑠惟「ん?」

 

理亞「コーヒーありがと。あと送ってくれたのも・・・。」

 

瑠惟「!」

 

瑠惟「・・・理亞ちゃんも俺なんかの話に付き合ってくれてありがとう。」

 

理亞「私も楽しかったから・・・じゃあね兄様!」

 

彼女が玄関に急いで入ったのを見届けてから俺はゆっくりホテルへと戻った。

 

心なしか顔が紅くなってた気がする。

 

「暖かいな・・・。」

 

 

 

 

次の日はみんなで函館観光なのでこのクソ寒い中外に連れ出されていた。

 

しかも・・・

 

瑠惟「重い・・・。」

 

みんなの買ったお土産を持たされている。いわゆる荷物係というやつだ。

 

千歌「瑠惟君、男の子でしょ!そんなんじゃ甘いよ。」

 

梨子「千歌ちゃん、さすがに全部ってのは可哀想というか・・・。」

 

千歌「大丈夫大丈夫。平気だから。」

 

あのさぁ・・・

 

と、こんな感じで振り回されること数時間、みんなが温かいものを食べたいということで途中で見つけた店で休憩することになった。

 

見たところ甘味処のようだ。

 

千歌「瑠惟君も早く〜!」

 

そんなこと言われてもお前らのお土産どもが文字通りお荷物なんだよ。

 

店の扉の前まで来たところであることに気づく。

 

くじら汁・・・。

 

あれ?なんかこれに見覚えがあるようなないような・・・。

 

まぁそんなことよりも寒くて凍えそうなので早く入ろう。

 

扉を開けて出迎えてくれた人を見て俺は思い出した。

 

聖良「いらっしゃいませ。まさかあなたからこんな所にまで会いに来てくれるなんて嬉しいですね。」

 

瑠惟「ハハッ。もしかしたら俺たち運命の赤い糸なんかで繋がってるのかもしれませんね。」

 

あぁ・・・ここ昨日来た理亞ちゃんの家だ。

 

聖良「あら・・・その荷物は・・・。」

 

瑠惟「あいつらはどうやらマネージャーのことを荷物持ちか何かと勘違いしてるみたいでして。」

 

聖良「ふふっ。そう言いながらもちゃんと持ってあげてるのですね。さぁ中へどうぞ。他のみなさんも待ってますよ。」

 

彼女に案内されて中に入ってちょうど空いていたルビィちゃんの隣の席に腰を下ろした。

 

もう無理。疲れた。

 

ルビィ「先輩、大丈夫ですか?」

 

そんな俺の様子を見てルビィちゃんが心配してくれた。

 

瑠惟「ホテルの温泉に入りたい〜。」

 

ルビィ「ルビィ達の荷物も持ってもらってすいません。」

 

瑠惟「そんなこと気にしなくていいよ。ここに来たのはみんなに楽しんでもらうためだし、そのためならこれくらいやるよ。」

 

ルビィ「ありがとうございます!」

 

聖良さんが作ってくれたお汁粉やくじら汁は本当に美味しかった。

 

全員が食べ終わり出る準備をしていた時

 

聖良「理亞、悪いけど器運ぶの手伝ってちょうだい。」

 

そう言うと店の裏から理亞ちゃんが出てきた。

 

理亞「だからさっきも言ったけど今日はしんどいから店は手伝わないって・・・え?な、なんで兄様とAqoursがここにいるの?まさか・・・」

 

理亞ちゃんがお前が連れてきたのかと言わんばかりに俺を睨む。

 

それを見た俺は「違う違う俺は何も言ってない」と首を横に振った。

 

千歌「いやぁなんか歩いてたら偶然というかなんと言うかここに着いて・・・」

 

理亞「ふぅん。それで何?もしかして3位で決勝進出の私達をバカにしに来たの?1位のAqoursさん。」

 

聖良「理亞!」

 

彼女の煽りともとれる言葉に聖良さんが怒りを見せた。

 

理亞「だってこうなったのは私の・・・私のせいで!」

 

そう言って理亞ちゃんは店の奥に行ってしまった。

 

千歌「じ、じゃあ私達はこれで・・・」

 

千歌達は空気を察したようですぐに出ようとした。

 

聖良「すいません。変なところ見せてしまって。」

 

千歌「いえ・・・」

 

聖良「大丈夫ですよ。私は昨日のことはもう気にしてませんから。」

 

千歌「そうですか・・・」

 

こうして俺達はモヤモヤを抱えたまま店を出た。

 

ルビィ「・・・・・」

 

ん?店を出た時から何か考え込んでいるように見える。

 

気になった俺は声をかけた。

 

瑠惟「どうしたんだルビィちゃん?」

 

ルビィ「・・・・理亞ちゃん。」

 

やっぱり気になるんだな。理亞ちゃんのことが。同じ姉を持つスクールアイドルとして。

 

 

 

 

 

ホテルに戻り自分の部屋に入ると昨日と同じようにベッドに転がった。

 

今日の晩御飯は各自で自由に食べることになっていたのだが、どうにも何かを食べる気にはなれなかった。

 

どうしてあぁなっちゃうのかな・・・。あれじゃあ二人とも仲直りしにくくなるじゃん。

 

・・・わからん。

 

どうすべきか一人で悩んでいると部屋のドアがノックされた。

 

瑠惟「はい?」

 

ドアを開けると梨子がいた。

 

瑠惟「おぉ梨子か。入っていいぞ。」

 

梨子「お邪魔します。」

 

別にそんなに改まらなくてもいいのに。

 

瑠惟「それで・・・どうしたんだ?」

 

梨子「その・・・一つ聞きたいんだけど・・・瑠惟君まだ晩御飯食べてないよね?」

 

瑠惟「お、おぅ・・・食べてないけど。」

 

すると梨子は呆れたように言った

 

梨子「はぁ・・・やっぱりね。ちゃんと食べなきゃダメだよ。」

 

瑠惟「とは言ってもな・・・何か食べる気になれないんだ。」

 

梨子「じゃあ・・・これ食べる?」

 

そう言って梨子が出したのは・・・

 

瑠惟「サンドイッチ?」

 

梨子「さっきここのキッチンを借りて作ったの。これならそんなに重くないし瑠惟君でも食べれるかなって。」

 

その言い方だと俺が食べないのを分かってたみたいなんですけど。

 

瑠惟「そうだな。さすがに何も食べないっていうのも良くないし・・・ありがたく頂くよ。」

 

梨子が作ってくれたサンドイッチは優しい味がして食欲がない俺でも完食することができた。

 

やはりとは思ったけどやっぱりたまごサンドなんだな。

 

瑠惟「ごちそうさま。美味かったよ。ありがとう。」

 

梨子「そんな・・・全然いいよ。」

 

瑠惟「そうか・・・」

 

梨子「うん・・・」

 

「「・・・」」

 

特に話すことも無く二人の間に無言タイムができる。

 

「「あの・・・」」

 

二人同時に声が出る。

 

瑠惟「そっちからどうぞ。」

 

梨子「うん。」

 

梨子「・・・昨日のSaint Snowのライブと店でのことなんだけど・・・私、二人の様子がちょっと変だったかなって思って、瑠惟君はどう?」

 

どうやら梨子も考えることは同じだったようだ。

 

瑠惟「俺もそう思った。やっぱり引きずってるなって。」

 

梨子「引きずってるってどういうこと?」

 

瑠惟「実は・・・」

 

俺は梨子に理亞ちゃんと聖良さんが喧嘩をしていたことを話した。

 

梨子「そうだったんだ・・・。だからそのことを考えたままパフォーマンスをして・・・」

 

瑠惟「そういったことを全部くるめてラブライブなんだ。昔に理亞ちゃんが言った通りラブライブは遊びじゃない。厳しい世界だ。」

 

梨子「そうだね。一つのミスで全てが台無しになっちゃう時もあるからね。」

 

一つのミスか・・・その点で言えばSaint Snowはよく立て直すことができたな。

 

梨子「私には兄弟とかいなかったから喧嘩とかは無かったけどやっぱりそういうのって抱えちゃうものなのかな?」

 

瑠惟「まぁ俺も一人っ子だけど、昔は千歌や鞠莉さんと喧嘩するとその時は怒ってるんだけど後になってやらなきゃよかったって後悔した。」

 

梨子「ふふっ。なぜかその光景が簡単に想像できちゃう。」

 

瑠惟「鞠莉さんは謝ればすぐに仲直りできたけど、千歌の場合は中々許してくれなかったな〜。あぁ見えて結構頑固な奴だから。」

 

梨子「いいな〜そういうの。私にも兄弟か兄弟みたいに仲がいい友達が欲しかったな。」

 

瑠惟「そんなこと言うなんて意外だな。ちなみに兄弟だったら上か下かどっちが欲しかった?」

 

梨子「うーん・・・私は弟かお兄ちゃんが欲しかったかな。ほら私ってずっと女子校で男の子と接したことがほとんどなかったから。・・・瑠惟君はどっち?」

 

瑠惟「俺は兄か姉だな。」

 

梨子「意外。てっきり弟か妹って言うと思ってた。」

 

瑠惟「どうしてだ?」

 

梨子「だって瑠惟君って面倒見が良くて世話を焼くのが好きそうだから。」

 

瑠惟「そんなふうに思われてたのか・・・。梨子達にはそう見えるかもだが実は結構面倒くさがりで、どっちかと言うと世話をしてほしい人間だぞ。だから上がいたら色々やってくれそうかなって。」

 

梨子「へぇ〜そうなんだね。じゃあ・・・」

 

今の話で好奇心が湧いたのかさらにこんなことを聞いてきた。

 

梨子「Aqoursのメンバーだったら誰をお姉ちゃんにしたい?」

 

瑠惟「ダイヤさん。」

 

梨子「即答だね・・・。でも確かにダイヤさんって『The お姉ちゃん』って感じがあるよね。」

 

瑠惟「そうそう。それにダイヤさんって普段は厳しくてちょっと近寄りづらいけど、実は優しくて誰よりも家族想いなんだ。だから時々妹のルビィちゃんが羨ましく思う。」

 

梨子「そうだね。そう言われるとお姉ちゃんも悪くないかな。・・・・・・あっ。ルビィちゃんで思い出した。実はさっき瑠惟君の部屋に来る時にねルビィちゃんらしき人が一人でホテルから出ていくのを見たの。もう夜で周りも暗いし、もしあれがルビィちゃんだったら少し心配で・・・。」

 

瑠惟「それは本当か?」

 

こんな時間にルビィちゃんが一人で知らない街をうろつくとは思えないが・・・

 

俺はすぐに1年生が泊まってる部屋に向かい善子と花丸ちゃんに事情を聞いた。

 

瑠惟「行きたいとこがあるだと?」

 

花丸「すぐに戻ってくるって言ってたから大丈夫だと思うずらよ。」

 

善子「そうそう。先輩は心配しすぎよ。」

 

いや、ここが沼津とかならこんなに心配しない。初めて来た北海道だから心配なんだよ。

 

瑠惟「そうは言ってもな・・・」

 

善子「そんなに気になるなら追ったら?まだそんなに遠くには行ってないと思うから。」

 

そうだな・・・二人の言うことを聞く限り大丈夫だと思うが万が一何かあったら洒落にならないから追ったほうがいいな。

 

瑠惟「あぁ。そうするよ。ありがとな二人とも。」

 

ルビィちゃんの行った方向が分からないのでホテルのフロントに聞いてみることにした。

 

瑠惟「すいません。さっきここを赤い髪の女の子が通りませんでしたか?」

 

「はい。その方ならここを真っ直ぐ歩いて行かれましたよ。」

 

瑠惟「そうですか。ありがとうございます。」

 

「あっお客様。」

 

瑠惟「はい?」

 

「今夜はこれからさらに雪が多く降って冷えますのでよろしければ傘をお貸ししましょうか?」

 

瑠惟「ではお言葉に甘えてお借りします。」

 

傘を受け取った俺は急いでルビィちゃんの行った方向に走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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2つの小さな決心

しばらく走っていると探していた赤いツインテールが目に入った。

 

「ルビィちゃ・・・」

 

そう声を掛けようとしてやめた。なぜなら・・・

 

「こんな所に呼び出してどういうつもり?」

 

ルビィ「ご、ごめんなさい理亞ちゃん。いや、理亞さん・・・」

 

そこにはルビィちゃんだけじゃなく理亞ちゃんもいたのだ。

 

俺は思わず物陰に身を隠してしまう。いやでも別に隠れる必要は無いような・・・

 

それより今理亞ちゃんは呼び出されたと言っていたが、まさかルビィちゃんが自分から彼女と会いたいと呼び出したのだろうか?

 

俺は二人の会話に耳を傾ける。

 

ルビィ「あのね・・・け、決勝進出おめでとう。」

 

理亞「はぁ・・・こんな夜遅くにどうしたのかと思えばまさかそれを言うためだけに呼んだの?」

 

ルビィ「それは・・・その・・・違うというか・・・。」

 

理亞「もぉ!ハッキリ言いなさいよ!」

 

ルビィ「ピギィ!え、えっと・・・昨日と今日の理亞さんの様子がなんだか変だったから気になっちゃって・・・。」

 

どうやらルビィちゃんも異変に気付いていたようだ。というよりルビィちゃんだからこそ気付けたのかもな。

 

その事を言われた理亞ちゃんは呆れたように答えた。

 

理亞「なるほどね・・・。兄様だけじゃなくてあなたにまでも気付かれていたとは。我ながら情けないわ。」

 

ルビィ「もしかして・・・聖良さんと何かあったの?」

 

理亞「あなたに話す必要は無いでしょ。」

 

ルビィ「そ、そうだけど・・・。」

 

それでもルビィちゃんはめげずに言う。

 

ルビィ「確かに私達は決勝を戦う敵同士かもしれないけど・・・私達は同じスクールアイドルの仲間だから・・・何か力になれないかって思ったの。」

 

理亞「・・・」

 

理亞ちゃんも納得したのだろうか、何も言い返さなかった。

 

そしてしばらくして理亞ちゃんが何かを決心したかのように話し始めた。

 

理亞「絶対に他の人に言わないでよね。」

 

ルビィ「うん。」

 

理亞「私ね姉様と喧嘩したの。昨日の予選の少し前ぐらいから。」

 

ルビィ「どうして?だってあんなに仲が良くて、それでいてスクールアイドルをやってたら・・・」

 

理亞「姉様に言われたの。この大会が終わったらあなたはSaint Snowを続けなさいって。だけど・・・」

 

聖良さんもダイヤさん達と同じ3年生でこの大会が最後。

 

理亞「私は・・・私はまだ姉様とスクールアイドルをやりたい・・・。やっと一緒にできたのに、たった一年で終わりだなんて・・・。あと一度のステージで終わってしまうなんて。」

 

ルビィ「・・・」

 

しばらく二人の間に沈黙が流れる。

 

理亞「どう?あなたにはどうすることも出来ないって分かったでしょ?だから早く帰っ」

 

ルビィ「ううん!そんなことないよ!次で最後じゃないよ!」

 

理亞「は?あなた何言ってるの?」

 

ルビィ「だから次で最後じゃない!」

 

理亞「・・・いい加減にしてよ!あなただって分かってるんでしょ!あなたのお姉さんの黒澤ダイヤも私の姉様も次の決勝で最後なの!デタラメなこと言って変に希望持たせないで!」

 

彼女は苛立ちを隠せず、ついには怒鳴ってしまった。

 

ルビィ「分かってるよ。お姉ちゃんと一緒にスクールアイドルが出来るのはあとちょっとなんだって。だから・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ルビィ達と一緒にライブをしてみませんか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ファ!?

 

理亞「!?」

 

俺も理亞ちゃんも予想外の展開に驚きを隠せない。

 

理亞「そ、それってつまりAqoursとSaint Snowの合同ライブってこと?」

 

ルビィ「うん!ラブライブ決勝の前に私達で最高のライブ作りたい!お姉ちゃんや聖良さんに最高の思い出をプレゼントしたい!ルビィ達だけでもできるんだって見せてあげたい!」

 

理亞ちゃんは少し考えた。

 

多分、彼女自身も何か思うことがあったのだろう。聖良さんとSaint Snowを続けたい。しかし、始まるってことは終わりがあるっていうこと。それでも残された時間の中で少しでも多く大好きな姉と一緒にステージで輝きたいと。

 

だから・・・彼女の答えは決まっている。

 

理亞「・・・やる。」

 

ルビィ「え?」

 

理亞「私もまだ姉様とステージに立ちたい!このまま決勝を向かえたくない!」

 

ルビィ「理亞さん・・・。」

 

理亞「さん付けしなくていいから・・・。」

 

ルビィ「!」

 

ルビィ「一緒に頑張ろうね!理亞ちゃん!」

 

理亞「もちろん!やるからには一切妥協はしないわよ!ルビィ!」

 

という感じでこの寒空の下で二つの小さな光が大きく輝こうと動き始めたのだ。

 

そしてそんな二人の様子をこっそり見ていた俺はというと・・・

 

「ちょっと君。ここで何してるのかな?」

 

瑠惟「え?あの・・・これはその・・・。」

 

不審者と間違われて警察の方から職質されていました。

 

 

翌日、本来なら俺達は午後からの便で静岡に帰る予定の日だったのだが・・・

 

ルビィちゃんから話があると呼び出され一年生が泊まっている部屋に来ていた。

 

部屋ではルビィちゃんだけでなく花丸ちゃんや善子もいた。

 

ルビィ「せ、先輩・・・そ、相談があります・・・」

 

大体何を言いたいのかは見当がついてる。

 

瑠惟「あぁ分かってる。具体的には分からないけど何かをやろうとしてるんだろ?」

 

ルビィ「はい・・・。だから・・・」

 

花丸「マル達がまだ北海道に残れるように6人を納得させてほしいずら。」

 

ん?

 

瑠惟「6人?Aqours全員じゃなくて?」

 

ルビィ「これは・・・ルビィ達自身でやりたいから・・・。」

 

一年生だけでか・・・なんだか色々と不安なんだけど大丈夫かな?

 

瑠惟「まぁ、少し心配だが3人もいるから何とかなるだろ。じゃあがんばれよ。」

 

善子「何言ってるのよ。先輩も残るのよ。」

 

えぇ〜!?

 

瑠惟「一年生だけでやるんだろ!?俺は要らないだろ?」

 

ルビィ「それは・・・」

 

瑠惟「それに泊まる場所とかどうするんだ?」

 

花丸「詳しいことは今から決めに行くずら!」

 

善子「ていうことで移動するわよ!」

 

という感じで半ば無理やり連れ出され、たどり着いたのは一昨日に理亞ちゃんと来た喫茶店だった。

 

俺達4人が喫茶店に入るとルビィちゃんが店内を見渡し「あっ居た。」と言ってとある人物がいる席に案内された。

 

「やっと来たのね。遅いじゃ・・・」

 

瑠惟「よぉ。理亞ちゃん。」

 

花丸「こんにちは。」

 

善子「ヨハネ降臨よ。」

 

理亞「・・・ちょっと待って。兄様がいるのは分かるわ。でも後の2人は?」

 

花丸「えっとマルは国木田花丸ずら・・・です。」

 

理亞「あなた達のことは知ってるわ。私が言いたいのはなんでここにいるのかっていうことよ。」

 

ルビィ「花丸ちゃんもヨハネちゃんもルビィが話したら私たちの計画に協力してくれるって。」

 

そう言うと理亞ちゃんはバツの悪そうな顔で

 

理亞「私、みんなでワイワイとか苦手だし。」

 

花丸「それを言ったらマルも善子ちゃんも特にこのコミュ障ヘタレの先輩だって・・・」

 

おい、さらっと人をディスるんじゃありません。

 

理亞「へぇ・・・そうなんだ・・・。」

 

瑠惟「ルビィちゃんからある程度のことは聞いたんだけど・・・具体的に何をするんだ?」

 

昨日こっそり聞いておいて白々しい人間である。

 

理亞「私たち曲を作って一緒に踊りたいの。」

 

ルビィ「私達は1歩前に進まなくちゃいけないって思ったんです。お姉ちゃん達や聖良さんに私たちだけでもできるってところを見せなくちゃダメだって。」

 

確かに一年生は基本的には作曲とかにはあまり関わってこなかった。言い方を変えれば二年生や三年生におんぶにだっこの状態だった。だからこの機会に自分たちが成長した姿を上級生に見せて安心してもらおうっていうことだな。

 

瑠惟「だったら尚更俺がいる意味がよく分からないんだけど。」

 

ルビィ「先輩にはルビィ達の姿を一番近くで見ててほしいんです!先輩も安心してAqoursをルビィ達に託せるように!」

 

どうやらおんぶにだっこではなかったみたいだな。一年生もあいつらの姿を見てきたんだもんな。

 

瑠惟「そういうことなら喜んで残るよ。」

 

理亞「でも兄様達はこのまま残っても大丈夫なの?」

 

と彼女が聞いた瞬間に俺のスマホに千歌から着信が入った。

 

瑠惟「おぅ。どうした?」

 

千歌「『どうした?』じゃないよ!もうすぐ帰る時間だよ!どこで何してるの!」

 

瑠惟「えっと・・・」

 

ヤバいって。すっかり忘れてた。

 

ルビィ「先輩?」

 

千歌「ん?今の声は・・・ルビィちゃん達もいるの?」

 

瑠惟「あぁ。」

 

千歌「だったら4人共早く荷物をまとめて空港に来なさい!」

 

と千歌に怒られて電話が切れてしまった。

 

理亞「本当に大丈夫なの?」

 

花丸「大丈夫ずら!先輩がうまく説得してくれるはずずら!」

 

ルビィ「よろしくお願いします・・・。」

 

瑠惟「何とかやってみよう。」

 

空港へ向かう道中、俺は必死に言い訳を考えた。

 

空港ロビーには額に青筋が浮かびそうなくらい怒った二年生、三年生が俺達を待ち構えていた。

 

瑠惟「誠に申し訳ございませんでした!」

 

一年生「ございませんでした!」

 

見よ!この見事な土下座を!

 

千歌「はぐれて帰ってこないかもって本当に心配してたんだよ!」

 

梨子「まぁまぁ千歌ちゃん、こうして間に合ったんだし。」

 

怒り心頭の千歌を梨子がなだめる。

 

千歌「・・・そうだね。じゃあ静岡に帰るよ。」

 

許された!

 

花丸(先輩、言うなら今ずら!)

 

花丸ちゃんにここだと言わんばかりに背中を押される。

 

瑠惟「あのさ・・・ちょっといいかな?」

 

千歌「ん?」

 

瑠惟「実は・・・一年生がもっと北海道を観光したいって言っててさ、だから俺が面倒見るからもう少し滞在してもいいか?」

 

千歌「はい?」

 

瑠惟「ほら今は冬休みだし、せっかくここまで来たんだから・・・」

 

千歌「さっき迷ったばっかでその次がここに残ると?」

 

やばいやばいまた怒り始めたぞ。

 

梨子「私は別に大丈夫だと思うけど。ホテルとか飛行機はどうするの?」

 

瑠惟「とりあえず俺が全部立て替えておくから大丈夫。」

 

これはしばらく財布が軽くなるな。

 

千歌「むむむ・・・」

 

瑠惟「ほんの数日で戻るから。」

 

千歌「むむ・・・」

 

瑠惟「ちゃんと練習もさせるから。」

 

千歌「む・・・」

 

瑠惟「千歌へのお土産、欲しいもの買ってきてやるから。」

 

千歌「いいよ!」

 

いいんかい!

 

ダイヤ「ち、ちょっと待ってください。本当に大丈夫ですの?」

 

とダイヤさんは不安そうな目で俺達を見る。

 

今回ここに残る上で一番説得しにくいのがこの人なんだよなぁ。

 

さて・・・どうするべきか。

 

仕方ないここは先輩の土下座で・・・

 

ルビィ「ワガママ言ってごめんねお姉ちゃん。ルビィ達、数日で戻るから。それにこっちでも先輩にと一緒に練習するから・・・。」

 

ダイヤさんはしばらく考えた後、少し照れた様子でこう言った。

 

ダイヤ「ま、まぁ一年生だけならともかく瑠惟さんが一緒なら何も心配はありませんね。」

 

一年生だけならともかくか・・・

 

そんなこんなで何とかみんなを説得することに成功した。

 

で、6人は予定通り静岡に帰ったわけだが・・・

 

瑠惟「さっきはああ言ったけど、マジで止まる場所どうするよ?」

 

ルビィ「それなら大丈夫です!」

 

瑠惟「え?ほんとに!?」

 

スマホで格安ホテルと検索していた手を止めルビィちゃんの方を向いた。

 

ルビィ「えっと・・・さっき理亞ちゃんからメールが来て、ここに滞在するなら家に来ないかって。」

 

瑠惟「ということは・・・」

 

善子「Saint Snowの根城に」

 

花丸「レッツゴーずら!」

 

 

 

俺達四人は理亞ちゃんの家にお邪魔することになった。

 

ここ最近何度も来ている気がする。そんなこと思いながらお店兼住居の玄関扉を開けると理亞ちゃんと聖良さんが出迎えてくれた。

 

瑠惟「しばらくお世話になります。」

 

理亞「べ、別にわざわざ泊まれる場所を空けたんじゃないからね、偶然私の部屋に余裕があっただけなんだから。」

 

聖良「今日は泊まりに来てくださりありがとうございます。私も理亞も皆さんを歓迎します。どうぞ函館を楽しんでください。」

 

この感じだと聖良さんには計画がバレていないようだ。

 

四人「お邪魔します。」

 

理亞「あなた達三人は私の部屋ね。兄様は・・・」

 

すると腕をグイッと引っ張られた。

 

聖良「瑠惟さんは私の部屋ですよ♪」

 

瑠惟「え?いや、俺は一人でも大丈夫ですけど。」

 

瑠惟(ちょっと理亞ちゃん。どういうことだよ。)

 

と彼女に視線を送る。

 

理亞(ごめんなさい。これだけは姉様が譲ってくれなかったの。家に泊める条件で。)

 

と言っている気がした。

 

聖良「私の部屋はこっちですよ。」

 

まぁホテル代が浮くと考えたらこれくらい安いよな。俺は観念して彼女について行った。

 

 

 

聖良「さぁどうぞ。遠慮せずに中に入ってください。」

 

言う通り中に入ると部屋全体が目に入った。

 

おぉ・・・聖良さんの部屋はなんというか・・・

 

瑠惟「普通ですね。」

 

聖良「それはどういう意味ですか?」

 

瑠惟「いや、もっと部屋が女の子してるのかと思ってたんですけど、実際にはこう落ち着いた感じで俺好みというか。」

 

聖良「褒め言葉として受け取っておきますね。」

 

そう言う彼女の顔はどこか嬉しそうだった。

 

聖良「温かいお茶を持ってきますので少し待っててくださいね。」

 

そして彼女は部屋を出ていった。

 

一人になった俺は部屋を見渡した。

 

シングルベッドに勉強机に・・・ん?あれは・・・

 

机の上に置いてあるスノードームに目がいった。

 

遠目からでも分かるくらいそれは綺麗に輝いていた。

 

思わず俺は立ち上がってそのスノードームを手に取ってしまう。

 

スノードームの中には雪の結晶と思しきものがあった。少し振るとまるで本物の雪が降ってきたみたいにキラキラと輝いていた。

 

すげぇ・・・(小並感)

 

聖良「それは私と理亞が昔スクールアイドルになろうって決めた日に二人でおそろいのを買ったんです。」

 

振り返るといつの間にか聖良さんがお茶を持って戻ってきていた。

 

俺は慌ててスノードームを元の位置に戻した。

 

瑠惟「すいません。勝手に触ったりして。」

 

すぐに謝ると聖良さんは怒る様子もなく『大丈夫ですよ。』と言ってくれた。

 

聖良「そしてスクールアイドルになるって決めたその瞬間から雪の結晶を私たちSaint Snowのシンボルにしようって。」

 

瑠惟「いい話ですね。」

 

聖良「ありがとうございます。」

 

瑠惟「正直に言うと少し羨ましいです。そうゆう風に信頼し合える兄弟姉妹がいること。」

 

聖良「そういえばあなたは一人っ子でしたね。」

 

瑠惟「はい。だから聖良さんみたいな姉がいたらなーって思っちゃいました。」

 

俺の言葉を聞いて聖良さんが少し表情が暗くなった。

 

聖良「・・・私はあなたが思っているような素敵な姉ではありません。」

 

瑠惟「どうしてですか?」

 

聖良「私は理亞に身体的、精神的に負担を掛けていたみたいです。。スクールアイドルになってから・・・いや、もしかしたらそれ以前から。」

 

俺は何を言っているのかよく分からなかった。

 

聖良「あなたはスクールアイドルといえばどのグループを思い浮かべますか?」

 

唐突にそんな質問がとんできて少し考えたが俺はこう答えた。

 

瑠惟「俺はμ’sですかね。やっぱり今のスクールアイドルがあるのもあの人たちがあってこそですから。」

 

聖良「そうですよね。多分他の人もあなたと同じような答えだと思います。でも、私にとってのスクールアイドルはA‐RISEだったんです。」

 

A‐RISE・・・第一回ラブライブの優勝グループ。今となってはμ’sの陰に隠れがちだが、真の意味でスクールアイドルというものを広めたのは彼女達だ。

 

聖良「私はA‐RISEの3人の姿に憧れました。テレビで初めて三人を見た時、私の中で何かが変わったような気がしたんです。それで私もスクールアイドルになって彼女達みたいな歌を歌って踊りたいと。」

 

ここまで聞いて俺はある疑問が浮かんだ。

 

瑠惟「それのどこが理亞ちゃんの負担に?」

 

聖良「・・・確かに今の私の言葉じゃ足りませんでしたね。そうですね・・・恐らく私は理亞に私の理想を押し付けていたんです。」

 

俺は何も言わずに聖良さんを見つめる。

 

聖良「理亞は私のことを本当に尊敬してくれて愛してくれましたから、自分の気持ちを押し殺していたのかもしれません。あの子は優しい子ですから。」

 

瑠惟「もしかして・・・理亞ちゃんは」

 

聖良「はい。あなたの考えている通りです。理亞はA‐RISEではなくμ'sに憧れていたんです。A‐RISEのような他を寄せつけない絶対的な強さではなく、μ'sのようなみんなで一緒にステージを創り上げていく。そんな温かさを。」

 

正直、聖良さんからこの話を聞くまではこんな考えは絶対に浮かばなかっただろう。だって理亞ちゃんはてっきりA‐RISEを・・・

 

聖良「私はその事に気づいてませんでした。そして私は高校に進学して本格的にスクールアイドルを始めました。私はただただ三人の背中を追いかけました。理亞もそんな私の姿を見てきました。理亞が高校生になって二人でSaint Snowを結成して・・・そんな時でした。理亞が私にある動画を見せてきました。」

 

そう言うと聖良さんはパソコンを起動してある動画を見せてくれた。

 

瑠惟「これって・・・」

 

そこに映っていたのは・・・俺達Aqoursだった。

 

聖良「はい。あなた達が一番最初に投稿したPVです。」

 

Aqoursにまだ三年生が入っていない時に内浦の人達と協力して作ったやつだ。なんでこれを?

 

聖良「私達はこのPVでAqoursの存在を知りました。初めて聞いて私はただ良い歌を歌うなとしか思っていませんでした。でも・・・」

 

聖良「あの子は・・・理亞は違いました。このPVを何度も何度も繰り返し見ていました。私は聞きました。どうして何度も見るのかと。そしたら理亞はただ今後の強敵になりそうだから観察していると言いました。でも、そう言うあの子はとても楽しそうでした。」

 

恐らく理亞ちゃんは俺達と自分の理想を重ねて見てしまっていたんだな。

 

聖良「私は悩みました。このまま理亞にスクールアイドルを続けさせるか、それとも・・・」

 

とそこまで言いかけたところで俺はもう耐えられなかった。

 

瑠惟「だぁー!!こんな辛気臭い話はやめましょうよ!」

 

聖良「瑠惟さん・・・。・・・そうですね!せっかくあなた達が私達のところに来てくれたんですからね!」

 

瑠惟「それに・・・理亞ちゃんはそんなこと思ってないですよ。あの子を見てると分かります。Saint Snowとしてステージに立ってる理亞ちゃんは輝いてるって。本当に楽しそうだなって。だから聖良さんはSaint Snowのリーダーとして、鹿角理亞の姉としてあの子を引っ張ってあげてください。きっとその内彼女自身のスクールアイドルの形を自分で見つけると思いますから。」

 

聖良「・・・何故あなたがAqoursのマネージャー足り得るのかが分かった気がします。そういうところに彼女達は救われてきたんですね。」

 

ん?一体何の事だ?

 

頭に疑問符を浮かべている俺を見て聖良さんは微笑んだ。

 

聖良「あなた自身が気づいてなくても周りの人はあなたの良さを分かっているはずです。私も気づいちゃいましたから。」ニコッ

 

そう言った彼女に少しドキドキしたのは内緒だ。

 

聖良「今日は久しぶりにこんな大勢で食卓を囲めるんです。腕によりをかけて料理を作りましょう!さぁ瑠惟さんも手伝ってくださいね。」

 

瑠惟「了解っす。」

 

足どり軽く部屋を出ていく彼女を追って俺も部屋を出て行ったのであった。

 

 

 

 

 



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Saint Aqours Snow

今回恋愛要素が少しあります。


鹿角姉妹と俺達4人は食事を終えた後、1年生は理亞ちゃんの部屋に、俺は聖良さんとキッチンで片付けをしていた。

 

聖良「すいません。客人のあなたに手伝わせてしまって。」

 

瑠惟「いいんですよ。こっちだって泊めてもらうのでこれくらいだったらガンガンこき使ってください。それに聖良さんの作ったご飯美味しかったです!」

 

聖良「そう言われると作ったかいがありますね。ありがとうございます。」

 

それからしばらく洗い物をしていると聖良さんがふとこんなことを呟いた。

 

 

 

 

 

聖良「こうして2人で並んで洗い物をしていると何だか私たち夫婦みたいですね。」

 

 

 

 

一瞬俺の手の動きが止まる。

 

彼女からすれば何気なく放った一言なのかもしれない。だがその言葉が頭から離れない。

 

ちらっと横を見ると聖良さんも心なしか顔が紅くなっているように見えた。

 

聖良「えっと・・・今のはそ、そういう意味じゃなくてですね、ただこういう意味なんです/////」

 

どういう意味なんですか?

 

それに自分で言って恥ずかしいなら言わないでくださいよ。

 

そして気付けば手に何も持ってなかったので慌ててまだ洗ってない茶碗を洗おうと伸ばした俺の手と同じくそれを洗おうとしていた聖良さんの手が触れ合った。

 

聖良「あっ・・・。」

 

瑠惟「おっと。すいません。」

 

聖良「い、いえ・・・大丈夫ですよ/////」

 

瑠惟「・・・」

 

聖良「・・・」

 

ただ手が当たっただけ・・・それだけだ・・・。

 

だが言葉で言い表せない気持ちが俺の心を埋め尽くしていった。

 

何だろうこの気持ち・・・俺に・・・俺に教えてくれー!

 

とある歌の歌詞が頭に浮かんでくるくらい気持ちが変だった。

 

 

それから俺と聖良さんは言葉を交わさなかった。

 

お互い恥ずかしくて、気まずいくてなにも言えなかったのだ。

 

そしてこの数分は俺達以外の周りの時が止まったかのようにも思えた。

 

聞こえるのはただ蛇口から水が流れる音だけ。

 

聖良「私は・・・瑠惟さんのこと・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花丸「なーにイチャイチャしてるずら。」

 

後ろから空のコップをお盆に乗せた花丸ちゃんが呆れた声で言った。

 

彼女の声で俺の時間は動き出す。

 

瑠惟「おぅ。ずらまる。」

 

花丸「先輩、またずらまるって言ったずら。」

 

聖良「は、花丸さん。ど、どうしたんですか?」

 

彼女にしては珍しく取り乱している。

 

花丸「みんなの飲んでいたお茶が無くなったから取りに来たずら。それにしても・・・聖良さん顔が真っ赤ずらよ。」

 

聖良「えぇ!?そ、そうなんですか!?恥ずかしい・・・」

 

と彼女が顔を伏せてしまったところで俺は花丸ちゃんに耳打ちをする。聖良さんには聞かせられない話だからだ。

 

瑠惟「曲作りは順調か?」

 

花丸「まだ骨組みもできてないけど、歌いたい事はまとまったずら。」

 

瑠惟「そうか。頑張れよ!」

 

花丸「・・・ありがとうずら。先輩もあんまりふらふらしないでほしいずら。」

 

ふらふら?

 

瑠惟「いや、俺はいつも通りだぞ。ふらふらなんて・・・」

 

花丸「先輩は・・・花言葉とか知ってますか?」

 

唐突だな・・・そう思いながらも一応答える。

 

瑠惟「いや、そういった雑学には疎くてな。」

 

すると彼女はいたずらっぽく笑った。

 

花丸「へぇ・・・じゃあ・・・今のマルは

 

 

 

 

 

 

 

 

『黄色い薔薇』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ずらね。」

 

彼女の言った言葉の意味に気付いたのはもう少し後になる俺だった。

 

瑠惟「そういえば聖良さん、さっきなんて言おうとしたんですか?『俺の事が・・・』」

 

聖良「あぁぁ〜!なんでもありません!忘れてください!」

 

 

 

 

次の日、俺は一足先に静岡に帰った千歌と電話をしていた。

 

千歌「そっちはどう?」

 

瑠惟「まぁぼちぼちかな。」

 

適当な返事で濁す。いやまぁよく分かんないからそうなるんだけどね。

 

千歌「・・・本当は観光のために残ったんじゃないんだよね。」

 

俺の意思が伝わっていたようだ。

 

瑠惟「・・・まぁお前なら分かってると思ってた。」

 

千歌「ここに残りたいって言ってきた時ね、瑠惟君の目がそうだった。いつも私達のために何かをしようとしてる目だった。」

 

瑠惟「そうか・・・。」

 

千歌「何をやろうとしてるかは分からないけどがんばってね。」

 

瑠惟「がんばるのは俺じゃない。あの3人だから・・・。」

 

千歌「それでも何か私たちで協力できることがあったらなんでも言ってね。」

 

瑠惟「ん?今なんでもするって・・・」

 

千歌「言ってません。・・・じゃあもうすぐ練習だから切るね。」

 

瑠惟「おう。じゃあな。」

 

そう言って電話を切ると俺は借りた机の上でノートを広げる。

 

そこには色んなフレーズが書かれていた。これはAqoursがいつも使っている作詞ノートだ。たまにページの隅に梨子が怒ったような顔が書いてあるが、恐らく千歌の仕業だろう。

 

そして1番新しいページには少しだけ歌詞が書かれている。まぁ俺が書いたものなんですけどね。

 

理亞ちゃんにもらったヒントを参考にしながら少しずつ曲を作っていく。

 

まだまだ時間はかかりそうだ。

 

 

 

あれからどれくらい経ったのだろう。窓の方を見れば空が暗くなり始めていた。

 

どうやら1年生達は結構進んでいるらしい。下の階からにぎやかな声が聞こえる。

 

すると部屋の扉が空いて聖良さんが入ってきた。

 

瑠惟「お疲れ様です。店の方はもういいんですか?」

 

エプロン姿が良く似合う彼女にそう声を掛ける。

 

聖良「えぇ。店の方はもう閉めました。そ、それでなんですけど・・・あなたにお願いがありまして・・・。」

 

瑠惟「なんですか?」

 

聖良「今日の晩御飯と明日の買い出しに行きたいんですが、少し荷物が多くなりそうで・・・理亞たちも何だか忙しそうですし・・・もし良かったらなんですけど・・・瑠惟さんに買い物に着いていただけたらな・・・なんて/////」

 

やたらともじもじしているのが気になるが、まぁそれぐらいなら全然OKだ。

 

瑠惟「いいですよ。俺も手伝います。」

 

聖良「ホントですか!?あ、ありがとうございます!」

 

普段なら結構高圧的な聖良さんだが、こうして一緒にいるとギャップがあって◎。

 

ということで俺と聖良さんは家から少し歩いた所にあるスーパーに行くことになった。

 

が玄関で靴を履いたところで忘れ物に気づいた。

 

瑠惟「あっ・・・手袋を置いてきてしまった。ちょっと取りに行ってきます。」

 

俺は仕方なく履いたばかりの靴の紐を解こうとする

 

聖良「確かにこの寒さで手袋無しはキツイですね。じゃあ私はここで待って・・・( ゚∀ ゚)ハッ!」

 

最後まで言いかける直前で彼女は何かを思いついたかのように目を見開いた。

 

聖良「瑠惟さん。手袋を取りに行く必要はありませんよ。」

 

瑠惟「えっ?でも今、無かったらキツイって。」

 

聖良「だったらこうすればいいんです!」

 

と聖良さんは急に俺の手を繋いできた。

 

瑠惟「な、何してるんですか!?」

 

いやもう本当に何してるのこの人!

 

聖良「これだったら寒くないですよね。」

 

瑠惟「そうですけど・・・恥ずかしいっす/////。」

 

こんなの傍から見ればカップルに見えてもおかしくない。

 

聖良「いいですか、あなたが私たちの家にいる間は家族も同然なんです。だから瑠惟さんは今私の弟ということなのです。」

 

めちゃくちゃだ。支離滅裂もいいところだよ。

 

だが何も言い返せぬ。だってそんな上目遣いで見られたら断れないですよ。

 

聖良「私・・・家族は父以外男性はいませんし、学校もずっと女子校だったのでこうして歳が近い瑠惟さんと一緒にいると何だか本当の弟ができたみたいで嬉しいんです。」

 

瑠惟「・・・」

 

聖良「以前あなたに私たちのマネージャーになってほしいと頼んだ時も多分Aqoursの皆さんが羨ましかったんだと思います。血は繋がってないけど本当の家族のように見える皆さんの姿が。」

 

瑠惟「別に・・・血が繋がっていても、そうでなくても俺はAqoursのみんなや理亞ちゃん、もちろん聖良さんも大切な人なんです。だから・・・俺は聖良さんの弟ですよ。静岡に帰った後も。」

 

聖良「それなら・・・」

 

瑠惟「それなら?」

 

 

 

 

聖良「聖良お姉ちゃんって呼んでくださいね!」

 

瑠惟「却下で。」

 

聖良「えぇ〜!?なんでですか〜!」

 

俺がお姉ちゃんと呼ぶのはダイヤさんだけだ!!なんて言えないので黙秘権を行使する。

 

結局俺たちは手を繋いだまま買い物をし、そのまま家に帰った。

 

 

 

時間は少し遡り、場所も理亞の部屋へと移る。

 

一日中作詞をしていた1年生の4人だが流石に疲れが溜まり、休憩を取ろうとしていた。

 

理亞「私、何かつまめるもの持ってくるわ。」

 

そう言って理亞が廊下に出て見たのは玄関を出ようとしている姉の聖良と兄様と慕う瑠惟であった。

 

どうやら2人は理亞のことには気づいていなかった。

 

理亞(姉様と兄様・・・今から買い物に行くのかな?)

 

が彼女はあることに気付いた。

 

聖良が顔を真っ赤にして瑠惟の手を引いていたのだ。

 

そして彼女は瑠惟に何かを言っているようだ。

 

理亞は耳をすまして聞き取ろうとした。

 

理亞(うーん、上手く聞き取れないわ・・・。)

 

が彼女は諦めずに続けると・・・

 

聖良「私・・・・・・・・・こうして瑠惟さんといると・・・・・・嬉しいんです/////」

 

理亞「!?」

 

そして続けて瑠惟の声も聞き取れた。

 

瑠惟「・・・・・・もちろん聖良さんも大切な人なんです。だから静岡に帰った後も・・・・・・」

 

理亞「!!??」

 

彼女はこう思った。姉と彼はそういう関係になっていたのだと。

 

理亞(姉様ったらいつの間に!それに兄様も!漫画でしか見た事なかったけど・・・こんなことが本当にあるなんて・・・。)

 

彼女は急いで部屋に戻った。

 

バンッ!と勢いよくドアを開けるとそれに驚いた3人が理亞の方を見る

 

ルビィ「ど、どうしたの理亞ちゃん!?」

 

理亞「みんな大変よ!姉様と兄様が!」

 

善子「兄様?あんたのお兄さんがいたの?」

 

理亞「そうじゃないの!と、とにかく一緒に来て!」

 

と言うと理亞は半ば無理やり3人を外に連れ出した。

 

 

 

ルビィ「理亞ちゃん、どこに行くの?」

 

何故か急に外に出ろと言われた3人は何が何だか分からないまま理亞について行った。

 

しばらくして4人は近くのスーパーに着いた。

 

理亞「・・・あっ!いたわ!」

 

そう言って理亞はどこかを指さした。その先にいたのは・・・

 

「「「あっ!」」」

 

ルビィ「あれは!」

 

善子「聖良さんと我がリトルデーモン!!」

 

花丸「一緒に手を繋いでるずら!」

 

3人は驚いた。だが花丸だけは嫌な予感が当たったと言うべきか、どこか浮かない顔をしていた。

 

花丸「やっぱり先輩はマルから離れて・・・」

 

ルビィ「ん?花丸ちゃん何か言った?」

 

花丸「ううん。なんでもないずらよ。」

 

一瞬、親友が物憂げな顔をしたように見えたが本人が否定したので、彼女は特には気にしなかった。

 

ルビィ「それにしても聖良さんと先輩は・・・もう・・・つ、付き合ってるのかな?」

 

理亞「そうよ!私聞いたの!姉様が『一緒にいると嬉しい』って。それに兄様も『聖良さんも大切な人』だって!」

 

ルビィ、善子、花丸の3人は自分達が恋してるとまではいかないだろうが、大切に想っている彼を聖良に取られたと思い少し嫉妬に似た感情が浮き出たが、本心ではあの2人がお似合いだということも薄々感じ始めていた。

 

それは・・・瑠惟の心から嬉しそうなあの笑顔を見てしまったからだ。

 

ずっと彼を見てきた3人だから、彼の過去を知っている3人だから・・・彼には幸せになってほしいと。そして彼の隣にいるべきなのは自分達じゃないと・・・

 

ルビィ「理亞ちゃん、帰ろう。」

 

理亞「えっでも・・・」

 

ルビィはゆっくりと首を横に振った。

 

彼女の言わんとしてることを察したのだろう、理亞は何も言わずに3人を連れて帰った。

 

 

 

 

 

あれから数日が過ぎた。

 

1年生の方は曲が完成したらしく、さっき振り付きで見せてもらった。

 

完成度の方はかなり高く、正直これをラブライブで披露できないのが惜しまれる。

 

そして1年生からのお願いでこれを静岡にいるメンバーと聖良さんに教えてほしいと頼まれた。是非AqoursとSaint Snowとで歌いたいとのことだ。

 

もちろん快く引き受けて千歌達と連絡をとった。ダイヤさんが泣きそうな声で喜んでいたのでサプライズ?としては成功だろう。

 

 

そして聖良さんの方は・・・

 

 

瑠惟「聖良さん、これを見てください。」

 

聖良「これは・・・」

 

1年生が一丸となって作った曲を撮って動画として見せている。

 

彼女は終始黙って動画を見ていた。

 

最後まで見終わりスマホを返してもらう時に気付いた。

 

 

聖良さんの頬に雫が落ちていたのを。

 

 

そして彼女は目元を拭きながら言った。

 

聖良「瑠惟・・・あなたには感謝してもしきれませんね。」

 

瑠惟「何度も言ってますけど、俺は何もしてません。がんばったのはあの4人。俺はただ・・・見守ってただけです。」

 

今回の旅で分かった。あいつらには・・・Aqoursにはもう俺がいなくても大丈夫だって。

 

別に悲しんでいるわけではなく、むしろ成長していく姿が見れて嬉しかった。

 

瑠惟「聖良さん、俺に感謝してるなら見せてください。この曲が真に完成した姿を。11人が織り成す輝きを。」

 

聖良「そこまで言われたらやるしかないですね。いいでしょう見せてあげましょう最高のステージを!」

 

 

 

 

 

 

 

そしてライブ当日、久々にAqoursのみんなが揃った。

 

なお北海道までの旅費は鞠莉さんがポケットマネーでなんとかしてくれた。太っ腹ァ!

 

数日ぶりにみんなと顔を合わせる。

 

俺のところに真っ先に来たのはもちろんアイツだ。

 

千歌「久しぶり!」

 

瑠惟「おぅ。久々だな。」

 

千歌「・・・・・・えっへん。何か言うことないの?」

 

はい?俺なんかやらかしたかなぁ。

 

瑠惟「おい、曜。千歌のやつどうしたんだ?怒ってるのか?」

 

隣にいた曜に助けを求める。

 

曜「う〜ん・・・そういうのじゃないかな・・・でも、何か気づくことない?千歌に。」

 

そう言われ千歌をよく観察する。

 

あっ!分かったぞ!

 

 

 

 

 

瑠惟「千歌お前・・・太った?」

 

 

 

 

瞬間強烈なパンチが飛んできた。

 

 

瑠惟「お前何すんだよ!」

 

千歌「太ってなんかないもん!・・・・・・たぶん。」

 

まぁ冗談だけどな。そろそろ茶化すのはやめよう。

 

 

 

瑠惟「髪切ったの・・・似合ってるぞ。」

 

 

 

千歌「ありがとう/////」

 

全く可愛いやつだ。

 

 

 

 

瑠惟「よし。みんな揃ったな。では俺達合わせて『Saint Aqours Snow』今夜限りのステージ全力で楽しんでいこう!」

 

全員「おぉー!!」

 

 

 

 

今日のライブはここ函館で行われるクリスマスイベントの企画のひとつで一般からの持ち込み企画を採用してくれるとのことなので応募したら見事に採用された。なのでステージ等はラブライブに負けず劣らずの立派なものだ。

 

司会「さて次はえーと・・・Saint Aqours Snowのライブです!では・・・どうぞ!」

 

 

 

 

1年生の力で完成させたこの曲『Awaken the power』

 

結局全体で振り合わせできたのは数時間だけだが、それでもAqoursとSaint Snow というラブライブ優勝候補が1つになっただけあってそのパフォーマンスは圧巻の一言だった。

 

そしてなによりメンバーみんなが本当に楽しそうだった。

 

 

そして曲が終わり、観客席からは拍手の嵐が巻き起こる。

 

それを見てメンバーは喜び合っていた。そして俺も舞台袖でガッツポーズをしていた。よっしゃ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・で、ここからが本当のサプライズ。

 

俺は司会の人にあらかじめ伝えておいた合図を送る。

 

司会「Saint Aqours Snowの皆さん素晴らしいステージをありがとうございました!・・・そしてここでメンバーの方からお話があるそうです。ではお願いします。」

 

 

司会がそう言うと理亞ちゃん、ルビィちゃん、善子、花丸の4人が前に出てメンバーの方を振り返った。

 

4人はポケットから手紙を取り出し、そして・・・

 

理亞「Aqoursの皆さんそして姉様、今日は私たちと一緒に歌って下さりありがとうございました。

 

・・・私はラブライブ予備予選の時に姉様と喧嘩をしました。私はその事をライブで失敗してからようやく後悔しました。でも一番悲しんでいたのは姉様でした。

予備予選の後、姉様は1人泣いていた。ミスしたのは私なのに・・・」

 

聖良「理亞・・・」

 

理亞「私は心配されていたのだと思います。もうすぐ姉様は卒業してSaint Snowは私1人になってしまう。

 

私は今までスクールアイドル活動については全部姉様が敷いてくれたレールの上を一緒に進んでもらっていただけ・・・。だから姉様は心配だった・・・私が1人になるとどうなってしまうのか。

 

そんな姉様に見せたかった・・・私はこんなに成長したんだと。ラブライブ決勝が終わった後も私は私自身のスクールアイドル道を突き進むんだと。

 

今日のライブは本当に楽しかった・・・そして今まで姉様がどれだけ大変なことを1人でやっていたのかを理解した。

姉様・・・ありがとう。そして・・・これからもよろしくね!」

 

 

聖良さんは理亞ちゃんの元に駆け寄り彼女を抱きしめた。

 

 

聖良「私もごめんなさい・・・理亞にプレッシャーばかりかけてしまって。私の理想をあなたに押し付けてしまって・・・。ごめんなさい・・・。」

 

 

理亞「そんなことない!」

 

 

聖良「!」

 

 

理亞「プレッシャーとか姉様の理想とか関係ない!私は姉様と一緒のSaint Snowが大好き!私の理想はこのSaint Snowなの!」

 

 

聖良「・・・良かった。私は・・・その言葉を聞けたことが何より嬉しいです。・・・ありがとう。」

 

 

あーヤバい。ある程度内容を知ってはいたがこうして聞くと自分のことじゃあないのに涙が出そうになる。

 

 

理亞「私からは以上です。次は・・・ルビィ。」

 

 

 

ルビィ「私は今日のライブを理亞ちゃんと企画しました。そして花丸ちゃんや善子ちゃんも一緒にやりたいって手伝ってくれました。

 

このライブはAqoursの2年生、3年生にいつも頼りっぱなしだった1年生の私達でも自分たちの力でライブを完成させることができるって伝えたかった。じゃないとお姉ちゃんや果南ちゃん、鞠莉ちゃんが安心して卒業できないから。不安を残して行ってしまうから。

 

でもこうして理亞ちゃん達と一緒にライブを成功させることができました!ありがとう理亞ちゃん!」

 

理亞「ルビィ・・・ありがとう。」

 

ルビィ「そして親愛なるお姉ちゃん。」

 

ダイヤ「!」

 

ルビィ「ルビィはこうしてお姉ちゃんと一緒にスクールアイドルができて本当に嬉しい。

 

毎日遅くまで練習して一緒に帰って・・・大会に出たり合宿をしたり・・・そしてみんなとがんばってラブライブ決勝に進出することができた。お姉ちゃんと一緒に出来るのもあともう少しだね。

 

・・・でも本当はもっとお姉ちゃんと一緒にスクールアイドルをやりたい。もっとたくさんの曲を歌いたい!憧れのお姉ちゃんと一緒に!

 

 

だけど気付いたの・・・それはルビィのワガママだって。いつまでもお姉ちゃんの背中を追いかけていたら、お姉ちゃんはずっとルビィのことを心配するだろうって。

 

だから・・・ルビィは変わるね。

ルビィは・・・お姉ちゃんよりもすごいスクールアイドルになってみせる!憧れのお姉ちゃんを超えてみせるって!Aqoursのみんなと一緒に!

 

 

だからお姉ちゃん・・・もう・・・泣かないで・・・。」

 

 

ダイヤさんは泣いていた。でもそれは悲しみの涙ではなくきっと・・・

 

 

ダイヤ「私はずっとルビィのことが心配でした。北海道に残ると言った時もそうでした。あの時は瑠惟さんがいるから大丈夫だと。

 

でも・・・ルビィはちゃんと成長していたのですね。今日一緒に歌ってみて分かりました。

 

ルビィ・・・大きくなりましたわね。それに一段と美人になりました。

 

あなたのような素敵な妹がいること私は誇りに思いますわ。

 

そして・・・今日私たち3年生に素晴らしい時間をありがとうございました。」

 

 

 

もうこれを聞いて泣くなと言われる方が無理です。だってステージのみんなと司会者の人ですら泣いてるんだもん。

 

 

 

花丸「では私たちからは・・・」

 

 

善子「この数日間私たちを支えてくれた人に手紙を送ります。」

 

 

花丸・善子「「瑠惟先輩。」」

 

え?

 

俺に手紙?てっきりAqoursのみんな宛てかと・・・

 

 

花丸「この数日間、マルたちを見守ってくれてありがとうございました。」

 

 

善子「そして私達の計画に協力してくれてありがとうございました。」

 

 

花丸「マルたちが先輩に残ってもらいたかったのは先輩に一番近くで私たち1年生の姿を見てほしかったからです。

だって・・・私たちのことを一番心配していたのは3年生じゃなくて・・・瑠惟先輩だったから。」

 

 

・・・やっぱり気づかれてたよな。

 

 

善子「3年生と同じく春にはこの学校を去ってしまう先輩には安心して次の場所へと行ってほしかったの。先輩はバカでコミュ障ヘタレでその癖女の子に鼻の下を伸ばけど・・・誰よりも優しい先輩に私たち1年生・・・いや、Aqoursは支えられてきました。

 

そんな先輩にAqoursを代表して私と花丸が感謝を伝えます。」

 

 

「「ありがとうございました!!」」

 

 

「「そして・・・ラブライブ決勝、絶対に勝ちましょう!」」

 

 

もう涙でぐちゃぐちゃだった俺だけど涙が止まらなかった。

 

 

ありがとよ・・・1年生・・・。

 

 

ラブライブ決勝・・・絶対に勝って優勝したい!

 

 

そう心に誓う俺なのであった。




今回で北海道編は終わりです。

次回は・・・未定です。


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それぞれの道

先日の北海道でのライブを終えた俺達は久しぶりに沼津の地を踏んだ。

 

 

瑠惟「帰って来れた!」

 

ルビィ「北海道楽しかったね!」

 

花丸「そうずらね!・・・でもまさか先輩が聖良さんと付き合ってなかったのがびっくりずら。」

 

瑠惟「げっ!その話は・・・」

 

ーーーーーーーー

 

 

あれはライブが終わって次の日の飛行機に乗る直前だった。

 

 

聖良「次は春に・・・ラブライブ決勝で会いましょう。」

 

千歌「はい!Saint Snowの2人に負けないくらい練習してきます!」

 

理亞「ルビィ、また一緒に歌おうね。」

 

ルビィ「うん!」

 

聖良「では皆さん、さようなら」

 

花丸「ちょっと待ってほしいずら!」

 

ルビィ「花丸ちゃん?」

 

花丸「聖良さんにひとつ聞きたいことがあるずら。」

 

聖良「私にですか?」

 

 

 

 

 

 

 

花丸「聖良さんは瑠惟先輩と・・・その・・・お、お付き合いしてるずら?」

 

瑠惟「!?」

 

千歌「!?」

 

曜「!?」

 

梨子「!?」

 

・・・えっと一体なんでそんなことに?

 

千歌「ちょっと瑠惟君!どういうこと!?」

 

瑠惟「いや、どういうことも何も俺は誰とも付き合って・・・」

 

聖良「バレてしまっては仕方ありませんね。そうです。実は私たち・・・清らかな交際を・・・」

 

瑠惟「してないですよね。」

 

聖良「確かに・・・今は違いますね。い ま は。」

 

瑠惟「変なこと言わないでください。じゃあこの話は終わr」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花丸「でもマルたちは見たずらよ。先輩と聖良さんがスーパーで手を繋いで買い物してたのを。それに・・・イチャイチャしながら洗い物もしてたずら。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瑠惟「」

 

 

 

 

 

 

 

千歌「る・い・く・ん?」ゴゴゴゴゴ・・・

 

 

 

 

 

梨子「どういうことか・・・」ゴゴゴゴゴ・・・

 

 

 

 

 

曜「説明してもらえるよね♪」ゴゴゴゴゴ・・・

 

 

 

 

 

3人とも声は優しいが目が笑っていない。

 

 

 

 

この後めちゃくちゃ怒られた。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

瑠惟「その話はやめてくれ・・・」

 

花丸「でもマルはそれで良かったずら♪」

 

元はと言えば花丸ちゃんがポロッと漏らさなければこんなことには・・・

 

あっそういえば。

 

瑠惟「花丸ちゃん。俺さあの時言ってた『黄色の薔薇』がよく分からなくて、あの後調べたんだけど・・・」

 

花丸「あっあっ/////そ、それは・・・」

 

花丸(先輩にマルがどう思ってるのかバレたら・・・あぁ・・・調子にのって言わなければ・・・)

 

瑠惟「花丸ちゃん・・・俺のこと・・・」

 

花丸(もう・・・どうにもなれずら!)

 

瑠惟「信頼してくれてるんだな!」

花丸「好きです!」

 

ん?

 

花丸「え?」

 

花丸ちゃん、何か言ったような・・・被って聞こえなかったけど。

 

瑠惟「えっと、さっきなんて言ったの?」

 

すると急に花丸ちゃんが「先輩のバカ!!」と怒鳴ってきた。

 

えぇ・・・(困惑)

 

 

花丸「早く練習に行くずらよ!」

 

彼女に手を引かれスタジオに向かった。

 

瑠惟「顔赤いけど大丈夫?」

 

花丸「夕日のせいずら!」

 

まだ昼前なんだけど。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日の練習を終えた俺と千歌と梨子はバスにゆられて内浦に帰っていた。

 

冬は日が落ちるのが早いせいか周りは既に真っ暗。

 

千歌と梨子は二人席で肩を寄せあって夢を見ていた。

 

俺はカバンから歌詞ノートを取り出す。

 

パラパラとページをめくり最新のページを開く。そこには北海道滞在中に完成させた歌詞が書かれていた。

 

とりあえず歌詞と曲はなんとか完成した。

 

あとは衣装・・・。だけど衣装作りはこれまで手伝いぐらいしたやったことがなかったので一から作るのは初めてだ。

 

曜やルビィちゃんも決勝で使う衣装の準備で忙しいし、なによりこれ以上負担を増やすわけにはいかない。

 

仮にラブライブで優勝したとしてアンコールでこの曲を披露することになって衣装が同じままというのも味気ないよなぁ。

 

Aqoursのみんなは衣装は同じでもいいって言ってたけど・・・

 

どこかに暇・・・じゃなかった時間の空いている人はいないもんかねぇ。

 

プルルル

 

おっと着信だ。誰からだ?

 

えっと・・・むっちゃんからだ。どうしたんだ?

 

瑠惟「はい。西王です。」

 

むつ「もしもし瑠惟君。私だよ。分かるよね?」

 

瑠惟「むつだよな?」

 

むつ「良かった。久しぶりの登場だからね。忘れてないか心配だったよ。」

 

瑠惟「それでなんかあったのか?」

 

むつ「そういうわけじゃないんだけど・・・北海道でのライブどうだった?千歌に聞こうと電話したら全然出なくて・・・あと私たち応援に行けなくてごめんね。」

 

まさか・・・北海道まで来ようとしていたのか?もう同じ学校の生徒だけじゃなくてもはやメンバーの一人みたいだ。

 

瑠惟「謝らなくてもいい。その気持ちだけで十分嬉しいよ。そうだな・・・ライブは大成功だったよ。」

 

むつ「ホントに!?良かったぁ!あぁー私も行きたかったなぁ。」

 

瑠惟「今度の決勝は大丈夫なのか?東京であるけど。」

 

むつ「え?それ本気で言ってるの?行くに決まってんじゃん!だって決勝だよ!内浦のみんなも絶対に行くって言ってたよ!」

 

電話越しからでもすごく熱意が伝わってきた。全く無駄なことを聞いちゃったな。

 

瑠惟「ありがとな。きっとあいつらも喜ぶよ。」

 

むつ「私たちにできることがあったら言ってね!なんでも手伝うから・・・。」

 

ん?今なんでも手伝うって・・・

 

瑠惟「じゃあさ俺から頼みがあるんだけど・・・」

 

むつ「なになに?」

 

瑠惟「俺達はラブライブで優勝するつもりで歌う。そして優勝したらアンコールがあるんだけど、そこでAqoursに着てもらう衣装を作るのに協力してほしい。できれば多人数いるほうが嬉しいが・・・」

 

むつ「もちろん喜んで協力するよ!みんなにも聞いてみるけど多分みんなもやりたいって言うと思う。」

 

瑠惟「あっ・・・それとこの衣装のことはAqoursのみんなには内緒で本番で初披露したいんだ。」

 

むつ「了解!サプライズってわけね。Aqoursの喜ぶ顔が楽しみだね!」

 

瑠惟「ということでよろしくな。じゃあまた学校で。」

 

 

 

 

気が付くともう降りる停留所まですぐだった。

 

瑠惟「千歌、梨子二人とも起きろ。着いたぞ。」

 

千歌「ふぇ?」

 

梨子「わっ!ホントだ!早く降りなくちゃ!」

 

梨子と別れて、寝ぼけている千歌を引っ張りなんとか家に着いた俺は部屋に行こうとするが・・・

 

志満「瑠惟君、あなたに手紙が届いてるわよ。」

 

と渡されたのはA 4サイズの茶色の封筒。

 

宛名のところには・・・春から通う予定の学校の名前。

 

中には恐らく編入するにあたって必要な物とか提出書類の類が入っているのだろう。

 

こうして見ると別れがもうすぐそこなのだと実感してしまう。

 

千歌「それ何?」

 

隣から千歌が顔を覗かせる。

 

瑠惟「新しい学校の書類。千歌にも少し前に届いただろ?」

 

千歌「えっ?そうなの?」

 

瑠惟「お前・・・ちゃんと目を通しておけってお父さんに言われてただろ?」

 

千歌「忘れてた。」

 

瑠惟「全く・・・こうして一緒にいれるのもあと少しなんだから、しっかりしてくれよ。」

 

 

千歌「そっか・・・もう・・・そんな時期なんだね。」

 

瑠惟「ん?どうした?」

 

千歌「ううん。1年って案外早いなって思ったの。それも今年に限って。」

 

瑠惟「そう感じるのは充実してたって思ってる証拠なんじゃないか。」

 

千歌「確かにそうだね。こんなことならもっと早くからスクールアイドル始めたかったなぁ。」

 

瑠惟「何言ってんだ。千歌には来年もあるじゃないか。・・・受験もあるけど。」

 

千歌「うわぁぁ勉強したくなーい。」

 

瑠惟「そう言ってもなぁ。」

 

千歌「あっそういえば。3年生の3人って卒業した後はどうするのかな?」

 

瑠惟「お前、聞いてなかったのかよ・・・。」

 

千歌「す、すいません・・・。」

 

瑠惟「確か・・・」

 

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

またまた時は遡り・・・北海道での合同ライブに向けての練習後。

 

果南「みんなちょっといいかな?」

 

千歌「どうしたの?」

 

果南「うん。私たちは今年で卒業でしょ。だからみんなには私たちの進路について話しておこうと思って。」

 

瑠惟「あれ?先輩達は受験しないんですか?」

 

ダイヤ「私はそのつもりだったのですが・・・幸運にも志望校への推薦が決まりましたの。」

 

梨子「ダイヤさんは静岡の大学に進学するんですか?」

 

ダイヤ「いいえ春から私は東京の大学に通いますの。」

 

へぇ。ということはここを出て下宿するのかな?

 

花丸「東京の大学・・・未来ずらぁ!」

 

 

瑠惟「鞠莉さんはどうするんですか?」

 

鞠莉「私は卒業したらイタリアへ戻ってそこにある学校に通うわ。」

 

瑠惟「新しい学校の理事をやるって話ありませんでしたか?」

 

鞠莉「あぁ。あれね。それは断ったの。本当はやってもよかったんだけど、私もそろそろやりたいことを見つけなきゃって思ったの。」

 

 

鞠莉「その点、果南はもう決まってるのよね。Future Dreamが。」

 

果南「まぁそうかな。私は家のダイビングショップを継ぎたいから海外で免許とか取るつもりなんだ。」

 

じゃあ3人とも卒業したら沼津から居なくなるのか。

 

曜「みんな別々の道に行っちゃうんだね・・・なんか寂しくなっちゃうね。」

 

 

鞠莉「大丈夫!ノープロブレム!だって離れていてもこの空は繋がってるから!それにきっとまた会える!でしょ?果南、ダイヤ。」

 

果南「鞠莉の言う通りだね。」

 

ダイヤ「えぇ。珍しく鞠莉さんが正しいことを言ってますわね。」

 

鞠莉「珍しくってどういう意味なの!マリーはいつも正しいのに!」

 

ダイヤ「ということで瑠惟さん、これからもよろしくお願い致しますわ。」

 

『これから』ってなんで?

 

だって・・・ダイヤさんは東京の大学に

 

まさか・・・

 

瑠惟「ちなみにダイヤさんは何ていう大学に行くんですか?」

 

ダイヤ「〜大学というところに通いますわ。」

 

いや、そんなはずは・・・

 

瑠惟「もしかして下宿先って寮ですか?」

 

ダイヤ「いえ、それだとお金の負担が大きくなってしまうので知り合いのお宅でお世話になることになりました。」

 

知り合いってまさか・・・

 

瑠惟「もしかして俺の実家ですか?」

 

ダイヤ「はい。だから言ったではありませんか。『これからもよろしくお願い致します』と。」

 

瑠惟「えぇ〜!?」

 

確かに実家はその大学に近いけど!

 

ていうかいつの間にそんなに話が進んでたの!?

 

ダイヤ「そうなのですわ。進学先が決まったのはよいですが、肝心の住む場所が中々見つからず、あったとしても東京の一等地とかで家賃などもとても4年間払えるものではありませんでしたの。」

 

果南「で、ダイヤから相談を受けた私たちが何とかならないかなって思ってたら・・・」

 

鞠莉「そういえば瑠惟の実家が東京にあるって思い出して。ダメもとであなたのお母さんに連絡をとったら、困ってるなら是非家に来てちょうだいって。」

 

またあの母親なのか

 

瑠惟「ダイヤさんのご両親はそれで納得してくれたんですか?」

 

ダイヤ「はい。せっかくだからお世話になりなさいとのことです。」

 

瑠惟「俺も春からそこに戻るんですけどそれは大丈夫なんですか?」

 

ダイヤ「大丈夫もなにも問題ありませんわ。それにこちらは泊めていただく身ですから。」

 

瑠惟「いやでも、俺も一応男で年頃の男女がひとつ屋根の下は・・・」

 

ダイヤ「あら?もしかして破廉恥なことをお考えになってますの?」

 

瑠惟「そ、そそ、そんなことありませんよ!!」

 

誰もあんなことやこんなことやムフフなことを考えてるわけないじゃないですか!

 

ダイヤ「安心してください。この黒澤ダイヤ、節度はわきまえているつもりですわ。」

 

瑠惟「だからそうではなくて。」

 

ダイヤ「それとも・・・あなたが私を襲うおつもりですの?」

 

鞠莉「わぁぁぁお!ダイヤってば大胆!」

 

花丸「襲うってどういう意味ずら?」

 

瑠惟「もう滅茶苦茶だよ・・・。」

 

 

 

ーーーーーーーーー

 

瑠惟「というわけだ。」

 

千歌「最後の方のあのくだりいる?」

 

瑠惟「いる(鋼の意志)」

 

 

 

千歌「果南ちゃんも鞠莉ちゃんもダイヤちゃんも離れ離れになっちゃうんだね・・・。」

 

瑠惟「まぁそういうことになるな。」

 

千歌「寂しくないのかな?」

 

瑠惟「うーむ・・・俺にはよくわからん。」

 

千歌「私は寂しいかな。もし瑠惟君や曜ちゃん、梨子ちゃんにAqoursのみんなと会えなくなったら。」

 

瑠惟「出会いがあるってことは同時に別れもある。仕方ないことないことだ。」

 

千歌「分かってる・・・」

 

瑠惟「それに今生の別れっていうわけでもないだろ?また会えるさ。会いたいって気持ちがあれば。」

 

千歌「じゃあ瑠惟君もまた会いに来てくれる?」

 

瑠惟「なんだ?そんなに会いに来てほしいのか?」

 

千歌「当たり前じゃん。だって・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「好きだから。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瑠惟「そうか。俺も好きだぞ。」

 

千歌「さらっと告白を流さないでよ!」

 

瑠惟「流してないない。ちゃんと俺も好きって言っただろ?」

 

本当に可愛い子だ。やっぱり千歌は妹属性が似合うな・・・

 

千歌「はぁ・・・さっきの結構本気の告白なんだったけどなぁ。」

 

瑠惟「まぁまぁ千歌は身近に男子がいないからそう思ってるだけだって。沼津の学校に通い始めたら多分イケメンな男子と会えるぞ。多分千歌は可愛いからすぐに・・・」

 

 

 

千歌「じゃあ・・・もし数年後にまた瑠惟君と会ってそれでもまだ瑠惟君のことが好きだったら・・・今度は私の告白受け取ってくれますか?」

 

 

瑠惟「まぁそんなことはないと思うが、もしその時千歌が俺のことを想ってくれてるなら・・・お前の告白ちゃんと受け止める。約束だ。」

 

千歌「うん。約束だね。」

 

俺と千歌は何年ぶりかの指切りをやった。まだ小さかった時とは違って千歌の手はとても小さく、そしてとても暖かく感じた。

 

 



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最後の日

またまたほったらかしてました。すいません。



あれからしばらく時間が経って本日浦の星での最後の授業が終わろうとしていた。

 

教師「では今学期最後の授業はここで終わりたいと思います。皆さん次の学校でも頑張ってくださいね。」

 

その後のホームルームも担任から色々言われたが特段話すことでもないだろう。

 

放課後、俺達4人はいつものようにバスで沼津市内へと向かっていた。

 

千歌「なんかあっさり終わっちゃったね。最後の授業。」

 

梨子「その割には誰かさんは途中でスヤスヤと寝息を立ててたわよ。」

 

曜「でも別に私たちは次3年生だし、本当の最後っていうわけでもないよね。」

 

瑠惟「・・・」

 

千歌「どうしたの?さっきから黙ってるけど。」

 

瑠惟「いや・・・まぁ色々思うことがあってな。」

 

1年もこの学校には通えなかったけど、いざ廃校ってなると何だかんだ寂しくなる。

 

瑠惟「色々あったなぁ・・・」

 

そんな言葉が口から出てしまう。

 

梨子「そうね。思えば私達が初めて会ったのは千歌ちゃん家の近くのあの海だったね。」

 

千歌「うん。今でもちゃんと覚えてる。」

 

曜「そういえば私達その話ちゃんと聞いてなかったよ。きっかけは何だったの?」

 

曜がそう聞くと千歌と梨子は恥ずかしさからか少し赤くなってしまう。

 

瑠惟「2人とも仲良く海に落ちたんだよ。」

 

代わりに俺が言ってやった。

 

曜「えぇーー!?」

 

梨子「うぅ・・・」

 

千歌「で、私達瑠惟君に担がれたんだよね。あの時は寒かった・・・。」

 

瑠惟「梨子が軽くて助かったよ。千歌の奴はどれだけおも・・・」

 

千歌「重くないもん!・・・たぶん。」

 

梨子「千歌ちゃんから聞いた話なんだけど、曜ちゃんって瑠惟君がここに来る前から知り合いだったの?」

 

曜「私が水泳の大会で東京に行って道に迷ってたら瑠惟君が会場まで一緒に行ってくれたんだ。」

 

瑠惟「あの時の曜には感謝してもしきれない。なんせちょうど気が滅入ってた時期だったからな。元気とか勇気とか優しさとか色んなものを貰った・・・。まぁ・・・その・・・ありがとよ。」

 

曜「えへへ・・・どういたしまして。」

 

あぁ〜何でこんなにもこそばゆい感じなんだ。自分でも顔が赤くなってるのが分かるし。

 

梨子「こう考えると案外世界って狭いのかもね。」

 

千歌「私は違うと思うな。」

 

「え?」という声と共に3人は千歌の方を見る。

 

千歌「私ね思うんだ。こうして4人が出会えたこと。Aqoursの10人が集まったこと。それって全部運命なんじゃないかなって。私がμ'sと出会って、曜ちゃんとスクールアイドルを始めて、瑠惟君や梨子ちゃんが転校してきて・・・それから6人も仲間が増え・・・そして今ラブライブの決勝までたどり着いた。こんなことただの偶然なんかじゃないよ!」

 

瑠惟「決勝まで来たんだったらもちろん優勝してくれるよな?」

 

千歌「当たり前だよ!私、瑠惟君と最初に約束したこと絶対に果たすから!」

 

瑠惟「!」

 

あいつちゃんと覚えてたのか・・・。

 

俺と千歌との約束・・・。

 

俺がマネージャーを引き受ける時、中途半端な気持ちでやってほしくないからと俺が言ったこと。

 

 

 

 

『ラブライブの頂点に連れて行ってくれ』

 

 

 

あの時は千歌の本気を確かめるために少し無謀なことを言ったが、蓋を開けてみるとその目標まであと少し。

 

千歌「あの時から私、1日もこの約束を忘れたことはないの。辛かったり挫折しそうになった時も何回もあった・・・。でも、その度にこの言葉を思い出して、また頑張ろう!って思えた。それくらいこの約束は私にとって大切なの。」

 

瑠惟「決勝・・・期待してるぞ。」

 

ただ一言そう呟いた。

 

梨子「それにあなたの作った歌、アンコールステージで歌いたいの。」

 

曜「完成したものを聞いた時から、Aqoursのみんなずっとそう思ってたんだ!」

 

思えば歌を作るのも思った以上に大変だった・・・

 

本当に梨子はすげーよ。

 

曲作りっていったら、あの人にも世話になったなぁ・・・

 

 

 

俺は曲が完成した時に真っ先に披露したのはAqoursでもSaint Snowでもなかった。

 

あれは曲が完成してすぐ後のこと

 

俺は単身東京に向かった。

 

あの人に会うためだ。

 

と着いたのは千歌の旅館よりも大きい立派な家の前。

 

インターホンを押し、しばらくしてからその大きな扉が開いた。

 

「はぁ・・・やっと来たのね。」

 

瑠惟「これでも頑張った方なんですよねー。おはようございます。・・・・・・真姫さん。」

 

真姫「おはよう。さぁ中に入って。」

 

そう。俺が会いに行ったのはμ'sのツンデレお嬢様こと西木野真姫さんである。

 

ピアノが置いてある彼女の部屋に着くなり、すぐに本題にはいった。

 

真姫「じゃあ早速聴かせてもらうわね。」

 

俺は曲が入ったスマホとイヤホンを渡した。

 

真姫「先に聞いておくけど自信はどうなの?」

 

瑠惟「真姫さんのところに来たってことはそういうことですよ。」

 

真姫「・・・全く、昔の可愛さはどこにいったのかしら。」

 

彼女はスマホを操作して音楽を再生する。

 

イヤホンをしているため部屋は静けさに包まれている。

 

この時間が妙に緊張する。

 

真姫さんはいい意味でも悪い意味でも正直なのでダメならバッサリ切り捨てしまう。それが怖い。

 

だが曲を聴いている彼女は時折頷いたり、俺の方をチラチラと見てくる。

 

そして曲が終わったのか、真姫さんはイヤホンを外してスマホを置いた。

 

真姫「ひとつ聞いていい?」

 

無言で頷く。

 

真姫「これあなた一人で作ったの?」

 

瑠惟「いいえ、これは俺が一人で完成させた曲なんかじゃありません。」

 

瑠惟「Aqoursのみんなはもちろん学校のみんな、街の人達、俺たちのライバル・・・みんなが協力してくれました。俺はみんなとの思い出や想いを曲という形にしただけ。だからこの曲はAqoursとAqoursに関わった全ての人達との曲です!」

 

そう言うと真姫さんは「なるほど・・・」と呟きこう言った。

 

真姫「・・・良い曲だわ。歌詞からメッセージがどんどん伝わってくる。」

 

あっ、ちなみに録音した時歌ったのは俺です。

 

真姫「何より・・・これを歌うであろうAqoursの子達の笑顔が見えるわ。」

 

瑠惟「ありがとうございます。」

 

真姫「悔しいけどこんな曲私1人でも作れるか分からないわ。本当に何でもできちゃうのね。」

 

瑠惟「いえいえ、真姫さんのお力添えのおかげですよ。」

 

真姫「私はポイントをアドバイスしただけ。実際に作り上げたのはあなたなんだから。」

 

瑠惟「とにかく良かったです。真姫さんに聴いてもらえて。」

 

真姫「私も聴いてよかったわ。それに・・・決めたわ!」

 

瑠惟「何をですか?」

 

真姫「私も見に行くわ!ラブライブ決勝に!μ'sのみんなと一緒に。」

 

瑠惟「えぇ〜!?ホントですか?」

 

真姫「えぇ。見てみたくなったわ。あなたとAqoursのステージを。そしてこの曲が真に完成した姿を。」

 

この面倒くさがりで有名な真姫さんがわざわざ来てくれるなんて!これは当日に槍でも降るんじゃないか?

 

 

真姫「とにかくお疲れ様。もうすぐお昼ね・・・。ねぇ、良かったら昼ごはん食べていく?」

 

瑠惟「え?マジすか?真姫さんの手作り料理が食べられるんですか?」

 

真姫「別に・・・瑠惟が来るから練習してたとかじゃ無いんだからね!たまたまよ!」

 

やったーー!!

 

ということで俺は料理ができるまでリビングでくつろいでいる。

 

と、ここでインターホンが鳴った。

 

真姫「瑠惟、代わりに出てくれない?」

 

瑠惟「分かりました。」

 

なんだろ?宅急便かな?そんなことを思いながら扉まで来ると何やら外から騒がしい声が聞こえる。

 

恐る恐る扉を開けるとそこにいたのは・・・

 

 

 

 

 

 

「やっほー!」

 

「あっほんとに真姫ちゃんの家に来てるね!」

 

「人様の家の前で騒ぎすぎです!」

 

なんで・・・ここに。

 

瑠惟「穂乃果さん、ことりさん、海未さん・・・それにμ'sの皆さんも!」

 

 

西木野家にμ's集合です。

 

 

真姫「みんな来るの遅いわよ。」

 

ポカンとしている俺の後ろから真姫さんが呆れた声で言った。

 

絵里「ごめんなさい。にこが着ていく服決めるのに時間がかかって。」

 

にこ「あぁー!!絵里!ぬわぁんで言うの!」

 

希「まぁまぁ、それだけ瑠惟君に会うのに気合い入れてたってことやん。」

 

瑠惟「絵里さん、にこさん、希さん。どうして・・・」

 

希「真姫ちゃんから瑠惟君が東京に来てるから会いに来たら?って連絡が来て。じゃあみんなで行くことになったんよ。」

 

真姫さん・・・あなたは・・・

 

真姫「別にいいじゃない。あなた全然顔出さないんだし。意外とみんな気にかけてるのよ。」

 

絵里「少し見ない間にまた大きくなったわね。元気そうで良かった。」

 

にこ「ちょっと!瑠惟!」

 

瑠惟「はい。」

 

にこ「私を見て何か言うことないの?」

 

そう言ってにこさんは全身を見せるように手を大きく広げる。

 

ん〜・・・あっ。

 

瑠惟「もしかして・・・太りました?」

 

にこ「はぁ〜!?どこをどう見たら私が太ったように見えるのよ!」

 

そんなことを言うのでお腹の辺りをつまんでやった。

 

にこ「これは・・・・・・はい。最近グルメロケが多く食べすぎました。」

 

瑠惟「なんて嘘ですよ。にこさんは可愛いですよ。特に今日は一段と。」

 

にこ「そ、そう?ありがとう・・・。あんたにしてはやけに素直に言うじゃない。」

 

瑠惟「それだけ会えて嬉しいってことですよ。」

 

にこ「/////」

 

「あっ!にこちゃん照れてるにゃー!」

 

にこ「別に照れてなんかないわよ!凛!」

 

瑠惟「凛さん。相変わらず元気ですね。それに・・・髪も結構伸びてきましたね。似合ってますよ。」

 

凛「ありがとにゃ!」

 

大学生にもなって「にゃ」はどうかと思うが、可愛いから大丈夫だろう。

 

花陽「クンクン・・・はっ!この匂いは!真姫ちゃん何か作ってるの!?」

 

真姫「まぁね。」

 

その時μ'sに衝撃が走る。

 

「「「真姫(ちゃん)が料理!?」」」

 

真姫「なんでそんなに驚くのよ!」

 

 

 

そんなこんなでμ'sの皆さんと昼食を取ることに。

 

メニューは真姫さん特製ナポリタンにトマトリゾット、唐揚げにトンカツ・・・って数えられないくらい沢山あるな。

 

それに・・・厚焼き玉子だ!!(主の大好物)

 

真姫「それ、好きでしょ?ことりから聞いたの。」

 

ことりさんの方を見るとニッコリ微笑んでいる。

 

じゃあもしかして真姫さんが料理を教わったのは・・・

 

既に食べ始めている俺以外の人は「美味しい」と感想を漏らしながら食べている。

 

俺も大好物の厚焼き玉子からいただこう。

 

箸で一切れ掴むと真姫さんがじっとこちらを見た。

 

瑠惟「あの・・・そんなに見られると食べにくいというか・・・」

 

真姫「私はいいから早く食べてよ。」

 

瑠惟「じ、じゃあいただきます。」

 

口に入れると俺は目を見開いた。

 

瑠惟「美味しい!」

 

口の中に広がる甘みと僅かな出汁の味。ふわふわ過ぎない確かな感触の焼き加減。全てが絶妙なバランスで合わさっている。

 

しかもこの味・・・

 

ことり「良かったね真姫ちゃん!」

 

真姫「ありがとうことり。ふぅ。良かった。」

 

そんな俺を見ていた穂乃果さんも続いて厚焼き玉子を頬張った。

 

穂乃果「これ!ことりちゃんが作る時の味だ!」

 

真姫「ちょっと穂乃果。それは瑠惟のだから・・・。」

 

瑠惟「俺は大丈夫ですよ。それに真姫さんこれ本当に美味しいです!」

 

にこ「あの真姫がねぇ。誰かのために手料理を練習するなんて、よっぽど彼のことが好きなのね〜。」

 

真姫「にこ!」

 

俺はことりさんに聞いた。

 

瑠惟「真姫さんに料理を教えたんですか?」

 

ことり「うん。瑠惟君が作曲頑張ってるから私も瑠惟君のために頑張りたいって。」

 

俺は感動したよ。

 

瑠惟「真姫さん!!」

 

思わず真姫さんに抱きついた。

 

真姫「ち、ちょっと!な、何してるのよ/////」

 

瑠惟「俺嬉しくて。真姫さんが俺のために料理を練習してたなんて・・・。ありがとうございます!」

 

真姫「だ、だから別に瑠惟の為なんかじゃ・・・もう、しょうがないわね。今日だけよ。甘えるのは。」

 

そう言って真姫さんは俺の頭を優しく撫でてくれた。

 

 

 

 

 

 

 

あ〜美味かったなぁ真姫さんの料理。

 

そんなことを思い出しているといつの間にか沼津に着いていた。

 

今日の練習はフォーメーションの確認と各自気になるパートの修正と簡単なものだ。

 

練習中みんなが色んなことを聞いてくれる。

 

 

 

千歌「瑠惟君、ここってこういう風に動いた方がいいかな?」

 

瑠惟「いや、千歌だったらこっちの方がいいんじゃないか?」

 

千歌「うん!確かにそうだね!ありがと!」

 

 

あぁ・・・

 

 

梨子「こんな感じでどうかな?」

 

瑠惟「うーん・・・俺が梨子ならもうちょっと優しい感じでやるかな?」

 

梨子「なるほど・・・。」

 

 

そうか・・・

 

 

曜「船長!私はしっかりできているでしょうか!」

 

瑠惟「おう!曜はバッチリだ!その明るさでOK!」

 

曜「了解であります!」

 

 

こうして

 

 

ルビィ「先輩・・・ルビィちゃんとできるか不安です。」

 

瑠惟「心配すんなよ。ルビィちゃんならできる!Saint Snow時もできただろ?」

 

ルビィ「はい!ルビィ頑張ります!」

 

 

教えてやれるのは

 

 

花丸「先輩!今日も腕立て付き合うずら!」

 

瑠惟「じゃあ今日は30回な。」

 

花丸「ずらぁ〜!」

 

 

一緒に練習できるのは

 

 

善子「私の新衣装作り手伝いなさいよ!」

 

瑠惟「えぇ〜。めんどくせー。」

 

善子「あぁー!今面倒くさいって言ったわね!」

 

 

こんなやりとりも

 

 

果南「瑠惟ー。ここのフォーメーションなんだけど・・・」

 

瑠惟「あぁーここはセンターの人を中心に・・・」

 

果南「流石っ!頼りになるね!」

 

 

今日で

 

 

鞠莉「Hey!そこのboy!この後マリーとお茶しない?」

 

瑠惟「誘うならもうちょっと今風にしてくださいよ。」

 

鞠莉「Oh!Sorry.」

 

 

最後・・・

 

 

ダイヤ「瑠惟さん、大会当日の段取りですが・・・」

 

瑠惟「それなら俺が後でグループに送っておきます。」

 

ダイヤ「まぁ。それはありがとうございますわ。」

 

 

もうできないんだな・・・

 

 

 

そう思うと俺は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

笑いが止まらなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな俺を見てAqoursのみんなが寄ってくる。

 

千歌「え?どうしたの?」

 

瑠惟「ハッハッハ!」

 

瑠惟「全くいい1年だった!みんなもそう思わないか?」

 

突然意見を求められ困惑するAqours。それでもみんな何も言わず首を縦に振った。

 

瑠惟「俺良かったって思ってる。沼津に来て、浦の星に編入して、Aqoursのみんなと出会って、Saint Snowに出会って、・・・またバスケができるようになって・・・・・・ラブライブ決勝に進出して・・・・・・・・・それでもみんなの場所を守れなくて・・・・・・・・・・・・こうやって最後の練習を迎えて・・・」

 

さっきまで笑っていた俺の声は少しずつ滴り落ちる涙に変わっていた。

 

瑠惟「わがままだってことは俺が一番分かってる。でも言わなきゃ俺がどうにかなりそうなんだ。だから今から言うことは俺の独り言だ。どうか流してくれ。」

 

 

 

 

 

瑠惟「俺・・・Aqoursのみんなのこと大好きだよ。

 

だから・・・・・・もっと一緒にいたい。・・・離れたくない。

 

みんなでもっと練習したい。

 

みんなでどこかに遊びに行ったり、他のスクールアイドルを見に行きたい。

 

一緒に努力したい。一緒に何か大きなことを成し遂げたい。

 

一緒に泣いたり笑ったり、喜んだり喧嘩したり・・・

 

 

 

 

 

また1人になるのは嫌なんだ・・・」

 

もう自分でも何を言ったか分からないくらい言いたいことを言った。

 

すると何かが俺を優しく包み込んだ。

 

 

 

千歌「ちゃんと本当の気持ち言えたね。」

 

 

 

瑠惟「!」

 

これはいつか俺が千歌に向けて言った言葉だ。

 

 

 

千歌「私達も瑠惟君のこと大好きだよ。」

 

 

 

梨子「確かに今日が最後の練習で、明日には東京に出発だけど。」

 

 

 

曜「明後日はラブライブ決勝があって・・・。」

 

 

 

花丸「その後はみんな離れ離れになっちゃうかもしれないずら。」

 

 

 

ルビィ「ルビィも先輩達と一緒にいたい!でも・・・」

 

 

 

善子「私達みんな前に進まなくちゃダメなんだって。」

 

 

 

果南「それを私達に教えてくれたのは他でもない瑠惟だよ。」

 

 

 

鞠莉「でも離れても私達は一人なんかじゃないよ。」

 

 

 

ダイヤ「だってこの空は繋がっていますから。きっとまた会えますわ。」

 

 

 

千歌「うん!だから東京に行った後でもみんなで会おうよ!

私みんなで行きたいところたくさんあるんだ!・・・・・・だからみんなで一緒に前に進もうよ。」

 

やっぱり俺はバカだな。こんな当たり前のこと忘れて泣いてたんだから。

 

瑠惟「独り言・・・聞かれてたか。」

 

千歌「まるで聞いてくれって言ってるみたいだったよ。」

 

 

 

みんなが前を向いて進んでるのに俺だけ思い出で立ち止まるのはおかしいよな。

 

 

 

 

 

 

眩しい世界で呼ぶ声が聞こえた。

 

 

 

 

 

Aqoursのみんなの声が。

 

 

 

 

 

 

あの光の向こうへ一緒に!

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回から決勝です。


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WATER BLUE NEW WORLD(前編)

決勝編は長くなるので分けます。

感想及びリクエストありがとうございます!

そうですね。決勝編が終わればリクエストに応えた話を書くかもです。


全国5000以上もいるスクールアイドル。

 

その内のひと握りの実力を持ったスクールアイドルによる頂点を決める大会。

 

ラブライブ

 

スクールアイドルの甲子園と言うべきそれに結成1年にも満たない小さな田舎のスクールアイドル・・・Aqoursが決勝へと駒を進めたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

瑠惟「ここが・・・」

 

千歌「アキバドーム!」

 

明日ラブライブ決勝が行われる東京に前日入りした俺達は決戦の舞台の下見にアキバドームへと足を運んだ。

 

梨子「本当にここで歌えるの・・・」

 

曜「なんだか夢みたい!」

 

会場の大きさは言わずもがな、予選の会場の何倍もある。

 

そして明日この会場は満員になるだろう。

 

Aqoursのみんなはというと会場の規模に驚いているが、気負いしている様子はどこにもなかった。

 

いや・・・むしろ・・・

 

ルビィ「すごいね!ルビィ達ここで歌えるんだよ!」

 

花丸「おらワクワクしてきたずら!」

 

善子「クックック・・・この会場の全員リトルデーモンに・・・」

 

瑠惟「楽しみか?」

 

千歌「うん!だってアキバドームだよ!私達の歌をたくさんの人に届けられるんだよ!」

 

良かった。これなら明日いい形でステージに臨めそうだな。

 

瑠惟「じゃあ今日は明日に向けてゆっくり休んでくれ。それで」

 

ここで千歌が割って入ってきた。

 

千歌「明日のことなんだけど・・・本当は朝にミーティングだったけど、昼前に集合して朝はみんな自由行動にしない?」

 

瑠惟「その心は?」

 

千歌「うん。みんな決勝ってことで色々思うことがあるとおもうんだ。だから各自気持ちの整理をするために自由行動にしたいなって。」

 

瑠惟「・・・なるほど。その予定でも特に差支えがないなら。俺は構わない。みんなはどうだ?」

 

全員頷いたのでこれはOKだろう。

 

瑠惟「分かった。じゃあ明日は11時まで自由行動。そこからアキバドームに直接集合で。遅れないように。」

 

Aqoursのみんなはホテルへと帰った。俺はもちろん実家へと向かった。

 

 

ーーーーーーーー

 

Side 千歌

 

瑠惟君と別れた後、私達は予約していたホテルに向かった。

 

私達は9人と多いので大広間をひとつ貸し切っている。

 

部屋につくなりみんな荷物を置いて、予め敷いてあった布団にダイブした。

 

千歌「やっぱり内浦から東京に来るのは疲れるね。」

 

曜「あ〜とりあえずお風呂に入りたいなぁ。」

 

梨子「そうね。晩御飯の時間まで少しあるし大丈夫ね。」

 

曜「じゃあお風呂に向かって全速前進ヨーソロー!」

 

 

 

結局9人全員でホテルの大浴場に行った。

 

幸運なことにこの時間帯のお客さんは少ないようで私達の貸切状態だった。

 

果南「いよいよ明日か・・・」

 

果南ちゃんは家の旅館よりも大きな湯船に浸かると上を見上げてそう言った。

 

ダイヤ「ここまで・・・本当に長かったですね。本当に。」

 

鞠莉「明日が私達3年生のラストステージ!楽しみたいね!」

 

ラストステージ・・・その言葉が重く私にのしかかる。

 

明日は瑠惟君のラストステージでもあるんだよね。

 

梨子「どうしたの?千歌ちゃん。」

 

千歌「私ね思うんだ。もしあの時瑠惟君がマネージャーを引き受けてくれなかったらここまで来れなかったかもって。それだけ支えてもらってたんだなって。」

 

梨子「そうね・・・。私もたくさん救われた。また楽しくピアノを弾いたりできるのも彼や千歌ちゃん達のおかげだし。」

 

そうだ・・・いつだって瑠惟君に助けてもらって、辛いことも嬉しいことも一緒に感じて共有してくれた。私達のためになることだったら何でもやってくれた。それがどれだけしんどいことでも。

 

じゃあ私達にできることって何だろう?瑠惟君は恩返しだなんて思うなって言ってたけど、それじゃあ私達の気が収まらない。ラブライブで優勝する・・・確かにこれも大事なことだ。約束したことでもあるし。でも・・・本当に彼が喜ぶことって何だろう?

 

果南「何か考え事?」

 

私の様子を気にして果南ちゃんが声を掛けてくれた。

 

千歌「私達が瑠惟君に何ができるのかなって。」

 

果南「う〜ん・・・それって考えるものなのかな?」

 

千歌「え?」

 

 

 

果南「前に言ってたじゃん。『みんなの全てをステージで出してほしい』ってそれって全力でスクールアイドルを楽しむ私達の姿が見たいってことなんじゃない?

 

今までマネージャーをやってきた彼にとって嬉しいことって私達がステージで輝く姿を見るってことだよ。

 

ダンスも歌も全然できなかった頃から一緒に頑張ってきた私達の・・・過ごしてきた時間の全てを見てきた彼にとってそれが1番なんだよ。

 

何も特別なことは要らない。違う?」

 

はっとさせられた。私は何か形あるもので瑠惟君を喜ばせることを考えていた。でも果南ちゃんの言葉を聞いて気付いた。そうじゃないんだって。瑠惟君にとって一番の贈り物は私達自身なんだって。

 

千歌「ありがとう果南ちゃん!」

 

果南「どういたしまして。」

 

そして私はみんなに言った。

 

千歌「みんな!聞いてほしいの!・・・・・・明日のステージ私達はもちろん優勝を目指す。でもそれ以上にあの大舞台でパフォーマンスできること。ステージでの一分一秒を全力で楽しみたい!そして瑠惟君に見てもらうの。私達はこんなに成長したぞって!これが私達Aqoursなんだって!」

 

私の言葉をみんな最後まで黙って聞いてくれた。

 

善子「なーに言ってるのよ。」

 

 

 

 

善子「そんなこと当たり前でしょ。もとより私も同じ気持ちよ。」

 

花丸「そうずら!先輩をびっくりさせるくらい頑張るずら!」

 

ルビィ「ルビィもがんばルビィするもん!」

 

鞠莉「もちろん!私もそうさせてもらいマース!」

 

ダイヤ「黒澤家には手を抜くという言葉はありませんので。」

 

果南「ね?言ったでしょ。考えなくてもいいって。みんな千歌と同じ気持ちなんだよ。」

 

そうだね・・・本当に考えなくても良かったんだね。みんな何が大切なのかちゃんと分かってたんだ。

 

千歌「じゃあみんな明日に備えてちょっとだけ復習しよっか!」

 

「「「おぉー!!」」」

 

瑠惟君・・・あなたの最後のステージ絶対最高のものにしてみせるから!

 

 

 

ーーーーーーー

 

 

 

 

Side in 瑠惟

 

Aqoursと別れた俺は実家に戻って夕食をとっていた。

 

偶然にも母さんと父さんが日本に戻ってきていて、明日の決勝も見に来てくれるらしい。

 

さらに今日は家に客人が来ていると母さんに言われたのだが・・・

 

瑠惟「今度はあなたですか・・・」

 

「あらあら。いいじゃない。あなたのお母さんあなたが帰ってくるって聞いたんだから。」

 

母「まぁ瑠惟、せっかく来てくれたんだからね。」

 

瑠惟「そうだね・・・。

 

お久しぶりです。ことりさんのお母さん。

 

いや・・・音ノ木坂学院理事長兼校長ですか。」

 

ことりママ「もぉ、そんな堅苦しい呼び方はやめてちょうだい。あなたもママって読んでいのよ♪」

 

母「ちょっと、この子は私の息子よ。」

 

ことりママ「冗談よ冗談。全く昔からジョークが通じないんだから。」

 

母「はぁ・・・。ことりちゃんがあなたの娘っていうのが信じられないくらいだわ。」

 

とまぁ二人は大学時代からの旧友らしく、こうやって家に来ることが多い。

俺がμ'sと交友関係があるのもこの人がきっかけでもあるのだ。

 

久しぶりの家族団欒を楽しみつつ話題は学校の話となった。

 

ことりママ「浦の星の事は残念だったわね。私も小原さんと協力してできるだけ動いたんだけど・・・力及ばずっていう感じだったわ。ごめんなさい。」

 

いつも明るい彼女しては珍しく本当に悲しんでいる様子が伝わってきて、何だかこちらも申し訳なく思ってしまう。

 

瑠惟「謝らないでください。むしろお二人には感謝してます。Aqoursが学校存続のために活動できたのもお二人の尽力のおかげですし、何よりあいつらと出会えたことが一番嬉しいんです。」

 

そして俺は立ち上がり彼女に感謝の意味で頭を下げた。

 

瑠惟「ここまで学校を支えてくださりありがとうございました。」

 

彼女もここまでされるとは思っていなかったのかどこか驚いた様子である。

 

ことりママ「やっぱりあなた達の息子って感じがするわね。本当に誰に似たのかしらね。・・・瑠惟君、よく頑張ったわね。」

 

そう言って彼女は自分の子供をあやすように頭を撫でてくれた。

 

最近よく誰かに頭を撫でられているが・・・まぁ悪い気持ちはしないな。

 

ことりママ「これくらいはいいわよね?」

 

母「優しい私は寛大ですからね。息子が褒められるのは私としても嬉しいので。」

 

どこか母さんは嬉しそうだった。

 

 

ことりママ「それで次の学校はどうするの?やっぱりみんなと同じところに行くの?」

 

瑠惟「いや、俺は東京の学校に通います。それがあいつらのためだから。それに・・・俺も前に進もうと思いました。」

 

瑠惟「もう一回やってみようと思います。・・・バスケ。」

 

それを聞いたことりママは目を見開いた。

 

彼女も俺の過去を知る数少ない人物の一人だ。だからこそまた始めると言ったことに驚いたのだろう。

 

ことりママ「そう・・・良かったわね。あなたをここまで変えたAqoursの皆さんに一度会ってみたくなっちゃった。」

 

瑠惟「だったら明日のラブライブ見に来てくださいよ。ことりさんも来ますし。」

 

ことりママ「そうね・・・明日は仕事だけど、ひと段落ついたら見に行ってみようかしら。」

 

瑠惟「俺達の出番は最後なんでゆっくり来てもらっても大丈夫ですよ。」

 

ことりママ「分かったわ。」

 

瑠惟「じゃあ俺は明日に備えて風呂に入って休みます。今日は来てくれてありがとうございました。」

 

ことりママ「あら?もう行っちゃうの?もっとお話したーい。」

 

この人が言うとことりさんに言われてるみたいでソワソワするのでやめてほしい。本当に大学生の子持ちかよ。

 

母「お話なら私と旦那がしてあげるわよ。」

 

ことりママ「えー瑠惟君がいいのにー。・・・あっそうだわ。瑠惟君、一緒にお風呂に入りましょ。昔よくやってたし。」

 

あんた何言ってんだよ。この発言バレたら娘と旦那に殺されますよ!

 

瑠惟「冗談はその若さと美しさだけにしてください。じゃあおやすみです。」

 

最後に彼女は言った。

 

 

 

 

ことりママ「瑠惟。悔いのないようにね。」

 

 

 

 

大丈夫ですよ。・・・後悔は沼津の海に捨ててきましたから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その夜、布団に入り窓から見える夜空を眺めているとスマホが鳴った。

 

瑠惟「よぉ・・・どうした輝。」

 

それは中学時代の後輩、いつか俺のバスケの復帰のきっかけを作ってくれた奴だった。

 

輝「こんな時間にすいません。明日に大事な大会があるのに。」

 

瑠惟「あぁ構わない。ちょうど誰かと話したかったんだ。」

 

輝「明日会えるか分からないので言いますね。俺応援してますから!先輩たちAqoursを!頑張ってください!」

 

瑠惟「ありがとう。その言葉Aqoursのみんなに伝えておくよ。・・・・・・あぁそうだ。ちょうどいいから言っておくよ。俺なこの春から東京だから。それでまたバスケやるよ。」

 

輝「えっ!?それって俺の学校に来るってことですか?」

 

瑠惟「まぁそういうことになるかな。」

 

輝「やった!先輩とまたプレーできるんですね!俺感激です!」

 

瑠惟「じゃあそういうことだからよろしくな。」

 

輝「はい!俺強くなって待ってますから!」

 

瑠惟「おやすみ。」

 

そうか・・・あいつも見に来てくれるんだな。

 

これは優勝しないとカッコが付かないか。

 

よし!明日は絶対に優勝するぞ!

 

そして俺はいつの間にか夢の世界へと落ちていったのだった。

 

 

 

 

 

 

翌日、懐かしい母さんの朝食の匂いで目が覚めた。

 

外を見れば快晴だった。いい天気だ。

 

ダイニングに行くと既にテーブルには朝食が並べられ父さんは食べ始めていた。

 

瑠惟「おはよう。」

 

父「おはようございます。」

 

母「おはよう。どう?よく眠れた?」

 

瑠惟「まぁね。あの後ことりさんのお母さんはいつ帰った?」

 

母「そうそう。あの子日付が変わってもずっと飲んでて娘に彼氏ができないとか、仕事が面倒くさいとか、どれだけ付き合わされたか。」

 

と言いつつも母さんは楽しかったようだ。俺にはそんなふうに聞こえた。

 

母「今日はいつ出発するの?」

 

瑠惟「昼前に集合だけど、ちょっと外を見て回るよ。」

 

母「そう。私達はいつぐらいに出れば間に合うのかしら?」

 

瑠惟「うーん・・・まぁ夕方ぐらいかな。出番最後だし。」

 

母「分かったわ。あなた聞いてた?夕方ぐらいだって。」

 

父「分かりました。」

 

朝食を食べ終わり、俺は荷物を持って家を出た。

 

出発する時に母にこんなことを言われた。

 

母「いい?あなた達にとって優勝するってことは大切かもしれない。

 

 

でもそれ以上に大切なのはあなた達自身よ。

 

 

観客とか大会とかそんなことは二の次。

 

 

あなたの顔を見れば分かる。

 

 

どれだけ努力してきたのか、どれだけみんなとの時間を大切にしてきたか。

 

 

だからマネージャーとしてのあなたの最後の仕事はステージに向かうみんなを『いってらっしゃい』と送り出し、ステージのみんなを見守って、帰ってきたみんなを『おかえり』と迎えてあげること。

 

 

まぁ、あなたなら分かってることだと思うけど、それを忘れちゃダメよ。

 

 

さぁ、いってらっしゃい。気をつけてね。」

 

全くその通りだな。さすが母さん。

 

瑠惟「・・・母さん。」

 

母「何よ?」

 

 

 

 

瑠惟「『輝き』ってなんだと思う?千歌がずっと探してるんだ。」

 

 

 

 

 

母「知らないわよ。」

 

そりゃそうだ。

 

しかし母は続けた。

 

 

 

母「私に聞くまでもないんじゃない?

 

それは千歌ちゃんのそばでずっと一緒だったあなたがよく分かってるはずよ。

 

千歌ちゃんと一緒に夢を追いかけていたあなたの心が、身体がその答えを知ってる。違う?」

 

それを聞けてよかった。

 

瑠惟「ありがとう母さん。じゃあ行ってくる。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



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WATER BLUE NEW WORLD(中編)

また終わらなかったよ・・・
そして投稿ペースが異常なくらい上がってますね。
とりあえず決勝編はこんな感じで駆け抜けたいと思います。


さてと・・・家を出たのはいいが、どこに行こうかな?

 

そうだな、まずは今日の勝利を祈願しに神田明神に行こう。

 

 

 

神社に着くと見慣れた人物がそこにいた。

 

瑠惟「おはようございます。ダイヤさん。ルビィちゃん。」

 

ダイヤ「あら、瑠惟さんおはようございます。」

 

ルビィ「おはようございます。」

 

瑠惟「二人で御参りですか?」

 

ダイヤ「えぇ。今日の大会のことをですね。」

 

ルビィ「先輩もですか?」

 

瑠惟「 あぁ。二人と同じ。良かったら一緒にどうですか?」

 

ダイヤ「えぇ、そうさせてもらいますわ。」

 

ということで三人で勝利祈願することに。

 

 

神社の奥の方に行こうとした時、あるものが目に入った。

 

瑠惟「これって・・・」

 

それは絵馬をかける所でそこで目に見たのは大量のスクールアイドルへの応援絵馬だった。

 

ダイヤ「ここは聖地ですから、たくさんのスクールアイドル及びファンがここで祈願していきましたわ。」

 

それにしてもこんなにあるんだな・・・

 

絵馬には一度は聞いたことのあるスクールアイドルの名前がたくさんありその中には・・・

 

ルビィ「Saint Snowさんのもあるね。」

 

瑠惟「それだけじゃない。ほらこれ。」

 

俺が示したのは・・・

 

ルビィ「あっ!Aqoursの絵馬だ!それもこんなにたくさん!」

 

数だけ見れば他のグループのよりも多かった。

 

ダイヤ「それだけ応援してくれているということですわ。」

 

瑠惟「そうですね。こう見ると何か嬉しいですね。応援してくれる人がいるって。」

 

そして俺達は一人ずつ賽銭を入れてお祈りをした。

 

俺は奮発して500円玉を捧げた。

 

手を合わせて目を閉じる。

 

 

 

あいつらが・・・Aqoursのみんながステージを全力で楽しめるように。

そしてAqoursの想いが歌を聴きてくれる人に伝わりますように。

最後に・・・Aqoursが優勝できますように。

 

 

 

 

 

次に俺は秋葉原のスクールアイドルショップに向かった。

 

店に入るとラブライブの人気を思わせるくらいたくさんの人が店内にいた。

 

その中で既視感のある二人を見つけた。

 

瑠惟「二人はここに来てたんだな。・・・花丸ちゃんに善子。」

 

花丸「あっ先輩。おはようずら。」

 

善子「あら奇遇ね。あなたもここに来ていたのね。」

 

二人を見るとその手にはAqoursのグッズが握られていた。

 

瑠惟「やっぱり自分たちのグッズって気になるんだな。何買ったんだ?」

 

そう言って彼女達の持っていた袋をもらい中を見る。

 

花丸(あっ・・・その中には・・・。まずいずら!)

 

善子(あぁー!!その袋はダメなの!!)

 

中を見て絶句する。

 

一応二人に聞いてみる。

 

瑠惟「・・・これは何だ?」

 

そう言って取り出したのはAqoursのメンバーが印刷されたクリアファイルの束。

 

いや、それ自体に問題は無い。問題なのは・・・

 

 

 

瑠惟「何で俺のグッズ持ってんの?」

 

これ以前みんなで東京に来た時も言ったよなぁ!

 

それは何故か俺が印刷されたクリアファイル。

 

前はバッジだっけど今度はクリアファイルかよ!

 

何で俺がグッズ化されるの?関係ないじゃん!男だよ!?俺、歌も踊りも全くやってないよねぇ?しかも発売の話なんて一切なかったし!

 

花丸「い、いやこれは・・・」

 

善子「たまたまよ。たまたま。」

 

瑠惟「これどこにあった?」

 

そして二人が指さした方へ向かうと・・・

 

Aqoursの特設コーナー。その中に様々な俺のグッズがあった。

 

バッジやクリアファイルはもちろんマグカップにキーホルダー、いつ使うか分からないデカい団扇や俺の名前入りのタオル、果てにはサイリウムなど多数取り揃えられていた。

 

これじゃあまるでさらし者じゃあないか!

 

しかも商品そばのテロップには『好評につき再入荷!』と大きく書かれていた。

 

何で好評なんだよ・・・。

 

二人に買った理由を聞いてみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

花丸「先輩と離れるから・・・何か形になるものが欲しかったずら/////」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

善子「私だって寂しいのよ・・・それくらい分かってちょうだいよ/////」

 

 

 

 

 

 

 

 

自分涙いいっすか?

 

いい後輩を持てて先輩は幸せです。

 

俺は財布を取り出し一万円札を渡してこう言った。

 

 

瑠惟「好きなだけ買ってきなさい。」

 

 

 

 

 

次に俺が向かったのは音ノ木坂学院。

 

その校門に二人はいた。

 

瑠惟「今日はAqoursのみんなによく会うなぁ。」

 

鞠莉「Good morning!瑠惟!」

 

果南「おはよう。君も音ノ木坂学院に来たんだね。」

 

ここに来た理由は無い。何となく・・・でも気づいたらここに来てた。

 

瑠惟「鞠莉さんと果南さんはどうしてここに?」

 

果南「私ねμ'sに憧れてたんだ。あんまり言ったことないけど。」

 

確かに初耳である。

 

そういえば果南さん達がスクールアイドルを始めたのは本当に学校存続のためだけだったのか?

 

もしμ'sに憧れてたなら・・・

 

瑠惟「果南さんがスクールアイドルを始めたのってもしかして・・・」

 

果南「うん。君の推理通り、私もμ'sみたいになりたかった。あんな風にステージで歌って、踊って・・・誰かを笑顔にする。私がそうだったように。鞠莉やダイヤはそんな私の夢を応援してくれた。」

 

果南「だからここは私にとっての憧れの場所。最後にここだけは見ておきたかったんだ。」

 

鞠莉「私は果南がどうしてもって言うから付いてきてあげたのデース。」

 

果南「瑠惟・・・私の夢を叶えてくれてありがとね。」

 

瑠惟「そう言われると嬉しいですけど、その言葉は優勝してから聞きたいですね。」

 

果南「うん。分かった。」

 

鞠莉「私もあなた達と過ごしたこの一年間きっと忘れない。

μ'sの人達はここに何も残さなかった。でも私はあの浦の星に日本一のスクールアイドルがいたってことをラブライブの歴史に残したい。これが私の理事長としての・・・そしてあの学校が大好きな私の本当の気持ち。」

 

この大会が終わって卒業式を迎えれば三年生は離れ離れに。ダイヤさんは一緒だから大丈夫だけど、この二人とは・・・

 

そう思った俺はこう言った。

 

 

 

瑠惟「あの・・・俺と写真撮ってくれませんか?」

 

果南「いいね!鞠莉も撮るでしょ?」

 

鞠莉「Of course!」

 

よし。あとはどう撮るかだが・・・

 

俺は近くを通りがかっていて音ノ木坂の生徒に写真を撮ってくれるように声を掛けた。

 

 

 

 

 

果南「・・・見て鞠莉。」

 

鞠莉「うん。彼も成長したね。」

 

果南「少し前だったら他人の女の子に声を掛けるなんて絶対にできなかったのに。」

 

鞠莉「なんて言うんだろ・・・この気持ち。まるで瑠惟の姉になった気分。」

 

果南「私もそんな感じ・・・。

 

だから・・・・・・寂しくなるね。」

 

鞠莉「もう果南ったらまだ泣くには早いよ。」

 

果南「そう言う鞠莉だって・・・泣いてるよ。」

 

鞠莉「・・・・・・ホントだ。」

 

 

 

 

 

俺は撮影を快く引き受けてくれた子を連れてくると何故か二人が泣いていた。

 

瑠惟「だ、大丈夫ですか?」

 

え?何で?どういうことなの?

 

果南「大丈夫。さっ撮ろっか。」

 

鞠莉「ほら瑠惟こっちだよ。」

 

彼女に手を引かれ二人の間に入る。

 

そしてスマホのレンズがこちらに向けられる。

 

「ではいきますよー。ハイ!チーズ!」

 

 

 

 

 

 

音ノ木坂学院を後にした俺は集合時間よりも少し早く着くようにアキバドームに向かっていた。

 

その途中・・・

 

またまた見慣れた人物三人がそこにいた。

 

しかし今回は少し違う。

 

見たところ厄介な男達に絡まれているようだった。

 

「ちょっとやめてください!」

 

「いいじゃないの〜。俺達とイイコトしようぜ。」

 

「もしかしてこいつらスクールアイドルじゃあねぇのか?」

 

「へぇ〜益々気に入った。兄貴に知らせるか。」

 

急いで俺はその場に割り込んだ。

 

 

 

瑠惟「部員に何か用ですか?」

 

「「「瑠惟君!」」」

 

瑠惟「大丈夫か?千歌、曜、梨子。」

 

「おいおいなんだお前?こいつらは今から兄貴のとこに連れてくんだよ。」

 

そう言って男は千歌の腕を掴んだ。

 

千歌「嫌!やめて!」

 

すぐさま俺は男の腕を振りほどいた。

 

 

 

瑠惟「おい、マッポ(警察)の世話になりたくなきゃとっとと失せろ。」

 

 

 

ーーーーーーー

 

Side 千歌

 

曜ちゃん、梨子ちゃんと私はアキバドームに向かう途中に変な男の人達に声を掛けられ、しつこく迫られていた。

 

そんな時に彼が・・・瑠惟君が助けに来てくれた。

 

しかしある男の人が私の腕を無理矢理つかんで連れていこうとした。

 

千歌「嫌!やめて!」

 

私は必死に抵抗した。

 

しかし私の力では振り切れない。

 

けど瑠惟君が振りほどいてくれた。

 

「おい、マッポの世話になりたくなきゃとっとと失せろ。」

 

その時の彼は見たことがないくらい怖かった。

 

あれは本当に瑠惟君なの?

 

瑠惟君は基本的に温厚な性格で怒る時もあるけれど、その中には彼なりの優しさが感じられた。

 

でも今、目の前にいる瑠惟君からはそういった優しさは感じられない。むしろ・・・

 

 

 

『怒り』

 

 

 

そんな感情が見て取れる。

 

彼の言葉を聞いた男の人達は一瞬たじろいだがそれでもなお私達のことを諦めようとはしていなかった。

 

「てめぇ舐めてんじゃあねぇぞ!!」

 

私達三人はあまりの怖さで怯えてしまう。

 

瑠惟「もう一度だけ言う。消えろ。」

 

さっきよりも低く冷たい声で彼は言った。

 

「その戯言を言えねぇようにしてやる!」

 

そう言って男は瑠惟君に殴りかかってきた。

 

「「「危ない!」」」

 

瑠惟君は受け身の体勢だけをとっている。

 

拳が当たる直前・・・

 

「何やってんだ?」

 

声の方を見ると瑠惟君よりも背が高く顔に傷がある男の人が路地裏から出てきたのだ。

 

すると男は殴りかかった拳を下ろし男に頭を下げた。

 

「お疲れ様です!兄貴!」

 

この人が・・・

 

兄貴と呼ばれるその人は瑠惟君を見て目を見開いた。

 

「あんたは・・・」

 

瑠惟「ん?誰?」

 

そう発した彼からはさっきまでの雰囲気は消え、いつも通りの彼に戻っていた。

 

彼の言葉を聞いた男は少し落胆したように見えた。

 

「そうか・・・やっぱ覚えてねぇよな。」

 

バッ!

 

すると男は突然土下座をしたのだ。

 

「あの時はすまなかった!許してもらえるとは思ってねぇ。だが、あんたに直接言いたかった!」

 

突然の出来事に瑠惟君も私達も理解が追いつかなかった。

 

瑠惟「ちょっと何のことか分からないんだけど。あ、頭を上げて。」

 

男は立ち上がりこう言った。

 

「俺は中学時代のあんたのチームメイト・・・そしてあんたを怪我させる計画の首謀者だ。」

 

瑠惟「!!」

 

私達は驚いた。

 

瑠惟「そうか・・・あぁ思い出したよ。ふっ、あん時から随分と変わったな。昔はもっと好青年に見えたんだけど。」

 

「思い出してくれたか。・・・本当に悪かった。」

 

彼はニッコリと笑ってこう言った。

 

瑠惟「大丈夫。もう気にしてないし、脚だってほらこんな風に飛んだり、走ったりできるから。」

 

その場で跳ねたり走ったりする彼が少し可愛く見えた。

 

「それで何があったんだ?」

 

瑠惟君は事情を説明した。

 

そしたらその男は血相を変えて取り巻きにこう言った。

 

「おい!テメェら!」

 

「「「ヒィ!」」」

 

「何度も言ったよなぁ?夢を追いかける奴の邪魔はすんじゃあねぇってよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それを聞いて私の中で感情が弾けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

千歌「なんで・・・」

 

梨子「千歌ちゃん?」

 

 

 

 

千歌「何であなたが言うの!瑠惟君の夢を邪魔して壊したあなたが!」

 

「・・・」

 

瑠惟「おい、千歌。」

 

 

 

千歌「私は彼がバスケをしてる姿を見るのが本当に好きだった。

 

 

 

 

 

夏休みや冬休みに内浦に来た時に試合の話をしてくれるのが・・・

 

 

 

 

 

一緒にバスケをしてくれる時間が・・・大好きで本当に楽しかった。

 

 

 

 

 

でもね、そんな瑠惟君がある日から全くバスケの話をしなくなった!

 

 

 

 

 

ボールにも触らなくなった!

 

 

 

 

 

そして何より・・・前みたいに笑ってくれなくなった・・・。

 

 

 

 

 

あなたに分かる!?私の気持ちが!

 

 

 

 

 

あなたに分かる?大好きなものを理不尽に奪われた彼の気持ちが!」

 

 

顔は涙でぐちゃぐちゃ。スクールアイドルらしからぬ顔をしていた。

 

でもそれでもなお私の『怒り』は収まらなかった。

 

 

 

「・・・そうだ。俺もあんたを失って初めてその大切さに気づいた。

 

あんたがいなくなってからチームは変わった。

 

練習中も試合中も誰も笑わなくなった。

 

誰も進んで声を出そうとしなかった。

 

聞こえるのは機械的に発せられる応援歌と気持ちのこもってないアドバイスばかり。

 

シュートを決めても誰も喜ばず、ディフェンスで相手を止めても無反応。

 

試合に勝っても負けても何も感じなかった・・・

 

誰がこれを部活動だといえるのか。

 

あんたを怪我させた俺達は後悔した。

 

こんなことしなきゃ良かったって。前みたいに楽しいバスケがしたいって。

 

あんたが憎かった。

 

一年生からスタメンで試合に出て、チームを全国大会優勝に導いて・・・何よりいつも楽しそうにバスケしていたあんたが・・・憎くて

 

・・・・・・・・・羨ましかった。

 

だから少し困らせてやろうと思った。

 

ほんのちょっと。

 

試合中に転べばいいかなって。

 

だが現実は違った。

 

あんたは試合中に大怪我をし、全国大会を前に引退せざるを得なくなった。

 

俺達のやった事が学校にバレると俺は退部・・・いや退学まで覚悟した。

 

だがあんたは・・・あんたはこともあろうに俺達を許せと泣いて頼んで俺達を責めずに言ったのは・・・

 

 

 

 

『俺のせいですまんな。』

 

 

 

何でなんだよ!俺は・・・到底許されないことをした!なのにあんたは逆に俺たちに謝った。

 

それが分からなかった。

 

この数年それだけが心のどこかで引っかかっていた。

 

それから俺はこの様だ・・・

 

非行に走り、舎弟まで作り誰かを傷つけることであんたのことを忘れようとしていた。

 

だけど、俺は・・・何かに打ち込んでる奴や夢を追いかける奴を見るとあんたを思い出すようになった。

 

そして俺はそんな奴らに手を出すことができなくなった。

 

だから俺達の理念は夢を追いかける奴の邪魔はしねぇことだ。

 

俺が胸張って言えたもんじゃないがこれだけは守ってきた。

 

だがさっきはこいつらが迷惑を掛けたな。本当に悪かった。」

 

瑠惟「あんたが来てくれなかったら危うく殴られるところだったよ。」

 

彼は笑いながらそう言った。

 

(何が危うくだよ。兄貴に止められて気づいたがお前はカウンターの準備をしてやがった・・・あのまま殴ってたら逆に俺がやられてた。人が良さそうな顔して黒い人間だぜ。)

 

だが私の気持ちは収まらない。

 

千歌「・・・だったら最初から人を傷つけないでよ・・・。なんで瑠惟君なの?瑠惟君が何かした?瑠惟君は優しいから言わないだけ。だけど私はあなたを絶対に許さないから。」

 

「すまねぇ・・・本当に悪かった。許してくれとは言わない。ただお前の気が済むまで好きなだけ何でもしてくれ。」

 

それを聞いて私はとっさに手が男の顔を捉えようとしていた。

 

だが・・・

 

 

 

 

 

 

瑠惟「千歌。」

 

彼の声ですんでのところで手が止まった。

 

 

 

 

 

 

瑠惟「もういい・・・。お前も言いたいことはたくさん言っただろ?」

 

そして彼は私の手をとってこう続けた。

 

 

 

 

 

瑠惟「お前のこの手は誰かを傷つけるためにあるんじゃない。

 

 

 

 

この手は千歌の目指す未来や夢を掴むためにある。

 

 

 

 

違うか?」

 

千歌「・・・瑠惟君の言う通り。」

 

瑠惟「俺が何で怒らないか、何であいつらを責めないか分かるか?」

 

千歌「・・・」

 

私は無言で首を横に振った。

 

瑠惟「梨子には前にも言ったけど・・・確かにあいつらに誰かの夢を奪っていい権利なんてどこにも無いよ。

 

だけどそれは俺も同じこと。

 

何かされたって俺があいつらからバスケを奪っていい理由にはならない。

 

甘い奴だって思うかもしれないが、これが俺なんだ。

 

あいつらを責めたところで俺の足が治るわけじゃない。だから俺はあの時前を向くべきだったんだ。今の俺にできるのは何だろうって。

 

でも、現実はそうはいかず俺は心を閉ざした。どうしても誰かを信じるのが怖かった。

 

でもそんな俺に千歌や梨子、曜に花丸、ルビィ、善子、ダイヤ、果南、鞠莉は笑顔を向けてくれた。

 

誰かを信じることの大切さ、夢を追うことの楽しさを教えてくれた。

 

だから俺はまたバスケをやろうって思うことができたし、みんなとラブライブの夢を追いかけたいと思った。

 

不謹慎かもしれないが足を怪我したおかげでみんなに会えた。

 

これもまた運命なんだって思えた。

 

それに怒りとか憎しみってどうしてもパフォーマンスに影響するんだ。

 

彼の話でもよく分かっただろ?

 

だからそんな気持ちでラブライブに臨んでほしくない。

 

千歌には涙じゃなくて笑顔が一番似合ってるから。

 

ほら・・・笑ってくれよ。」

 

彼は私の口元をクイッと上げて笑顔を作ってくれた。

 

瑠惟「うん、やっぱりその方がいい。・・・綺麗になったな千歌。」

 

え?ちょっとな、何?急にそんなこと言われたら・・・

 

曜「千歌ちゃん、大丈夫?顔赤いよ。」

 

千歌「な、何でもないから!ほらもう行くよ!」

 

瑠惟「よっしゃじゃあ夢を掴みに行くか。」

 

「あの・・・俺は・・・」

 

 

 

瑠惟「おう、もう気にしてないから。それよりちゃんと学校行けよ。・・・・・・それで、またバスケやろうな。」

 

 

「・・・・・・分かった。それと俺も見に行っていいのか?ラブライブとやらに。」

 

瑠惟「・・・ダメって言う理由なんてないよ。お前も見に来ればわかる。スクールアイドルのすごさとか夢を追う少女達の輝きを。」

 

男はその場で泣き崩れた。

 

そんな彼らを背に私達はアキバドームへと足を進めるのであった。

 

 

 

 

ーーーーーーー

 

Side 瑠惟

 

アキバドームに着くと間もなくAqours全員が集合した。

 

瑠惟「みんな・・・準備はできてるか?」

 

そう言って一人一人の顔を見る。

 

瑠惟「うん。大丈夫そうだな。じゃあここからみんなは控え室、俺は会場のどこか・・・まぁ関係者席辺りでぶらぶらしてるから何かあったら連絡をくれよ。

 

今日は特別なことは何も言わない。

 

みんな自分が何をすべきか分かってるはずだから。

 

だから俺からはこれだけ・・・

 

 

 

 

 

 

みんな!楽しんでこいよ!

 

 

 

 

 

 

以上!次会うのは本番直前!舞台裏でまた会おう!」

 

 

 

 

 




これ後編で終わるかなぁ?


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WATER BLUE NEW WORLD (後編)

※この話にはAqoursの曲の歌詞が出てきます。

投稿するときにちゃんと識別コードを入力したから大丈夫・・・だと思います。

そしてとにかく文字数が多いです(余裕の1万字越え)

キリのいいところまで終わることができたので、楽しんで読んでいただけると嬉しく思います。


俺は一人関係者席の辺りをさまよっていた。

 

決勝は既に半分くらいのグループがステージを終え、会場の盛り上がりも中々のものだった。

 

関係者席にいるのは基本的に運営の人間、歴代ラブライブのファイナリスト達や芸能事務所のプロデューサーなどがほとんどだ。

 

なので出場者の俺がいるのは少し不自然だが、男である以上下手に控室に入れないので運営なりの気遣いなのだろう。

 

そしてそこには約束通りあの人たちがいた。

 

瑠惟「おはようございます。ちゃんと来てくれたんですね。」

 

真姫「私が行くって言ったんだから当たり前でしょ。」

 

穂乃果「やっほー!いやぁこの会場も久しぶりだねぇ。」

 

ことり「最後にここに来たのはファイナルライブ以来だね。」

 

そう、ラブライブの決勝はμ’sの人達の尽力により毎年ここアキバドームで開催されるのだが、実は彼女たちがこうしてゲストとして来ることは一度もなく、運営側も突然のことにびっくりしていたらしい。

 

瑠惟「今年のラブライブはどうですか?にこさん、花陽さん。」

 

この二人は直接見に来なくてもなんやかんやで大会は毎年チェックしていると言っていた。

 

にこ「そうね、近年ラブライブは参加グループの増加もあってかレベルがどんどん高くなってるわ。それに加えて今大会は・・・」

 

花陽「今までのどの年よりも完成度が高く、本業のアイドルと比べても何ら遜色はありません。」

 

この二人が言うのなら間違いないだろう。

 

瑠惟「・・・でも今年は俺達Aqoursが優勝しますから。」

 

 

 

 

 

 

「あら、ずいぶんと自信があるようね。」

 

 

 

 

 

声の主の方を振り向く。

 

おいおい・・・今日はオールスター感謝祭かよ。

 

思わず笑いが出るくらいヤバいサプライズゲストが来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はじめまして。私は綺羅ツバサ。」

 

 

 

 

「はじめまして。統堂英玲奈だ。よろしく。」

 

 

 

 

「そして私が優木あんじゅ。よろしくね~。」

 

 

 

 

 

 

彼女らこそ言わずと知れた第一回ラブライブの優勝グループであり、μ'sの最高の好敵手・・・

 

A-RISE

 

正直これは予想外だわ。

 

そして俺以上に驚いていたのがμ’sの方々。

 

穂乃果「A-RISEさんが何でここに!?」

 

花陽「あ、あ、A-RISEが・・・」

 

ツバサ「そうね・・・何となく来てみたくなったの。今年は面白くなりそうだから。それにしても・・・君はそのAqoursというグループを相当信頼してるようね。」

 

そう言ってツバサさんは俺の目の前に来た。

 

綺麗な人だなぁ・・・」

 

ツバサ「え?君今なんて・・・」

 

あぁぁぁぁつい声に出てしまったぁ!!

 

恐る恐る目線をずらすと、ことりさんがニッコリ笑顔で俺を見ていた。

 

やべぇよ・・・

 

瑠惟「ま、まぁAqoursは俺が育てましたから。」

 

ツバサ「へぇ、君はマネージャーかしら?」

 

瑠惟「そうですね。・・・とにかくあいつらのステージ楽しみにしててください。きっと驚きますから。」

 

ツバサ「分かった。Aqoursね・・・ところで君の名前は?」

 

瑠惟「これは失礼しました。はじめまして。西王瑠惟といいます。よろしくお願いします。」

 

英玲奈「さっきから気になっていたんだが君と彼女たちの関係は?見たところすごく親しいようだが・・・」

 

あんじゅ「もしかして誰かの彼氏さんかしら?」

 

あんじゅさんの発言に反応した人が一部いたが気にしたら負けである。

 

瑠惟「・・・良き先輩であり、優しい姉達といったところですかね。」

 

穂乃果「だったら穂乃果は何番目のお姉ちゃんなの!?」

 

絵里「私がもちろん一番上よね!」

 

凛「瑠惟君が凛の弟だにゃー!」

 

ことり「ことりはお姉ちゃんじゃなくて・・・分かってるよね?」

 

あぁー!口々に騒がしい!!

 

ツバサ「な、なるほど。君は随分愛されてるようね。」

 

瑠惟「ほんとに・・・前世で一体どんな徳を積んだんですかね。」

 

 

 

ツバサ「君が・・・男の子がここにいるのは少し驚いた。私は今まで色んなスクールアイドルを見てきて、その中でも男子マネージャーもそれなりの数がいたわ。でもそれらのグループは決勝はおろか予選で姿を消していくのがほとんどだった。なぜだかわかる?」

 

 

男子がいることによって起こる問題それは・・・

 

 

瑠惟「グループ内恋愛による内部崩壊ですか?。」

 

 

ツバサ「ここまできてるだけあってよく分かってるじゃない。・・・そう、恋愛が悪いとは言わないけど、やっぱりどうしてもそれがきっかけでメンバー同士の仲がこじれてしまう。・・・君のグループは何人いるの?」

 

瑠惟「男は俺一人であと9人の女子ですね。」

 

ツバサ「随分と大所帯ね。ここまでしっかりとしたグループが保ててるのはあなたの理性が人並み以上なのか他のメンバーがあなたに対してそういった感情を持ってないかね。」

 

瑠惟「残念ながら後者ですよ。みんなにはいつか俺なんかよりも良い男性と出会ってほしいですから。」

 

自虐的な笑いと共にそんな言葉が出た。

 

英玲奈「そうか?私には他人の幸せを願える君は十分立派な男性に見えるが。」

 

瑠惟「俺はもうみんなからたくさんの幸せを貰いましたから・・・。今度はみんなが幸せになる番です。Aqoursのみんなと一緒に笑ってられる日常・・・これ以上俺は何もいりません。それが今一番の幸せです。」

 

あんじゅ「・・・私君のことが気に入っちゃった。」

 

英玲奈「あんじゅがそこまで言うのは珍しいな。だが、確かに私も君のことが気になる。」

 

ツバサ「あなたは・・・素敵な目をしている。特にその子達のことについて話している時がね。ねぇ・・・もしよかったら・・・・・・・・・いえ何でもないわ。今は言うべきじゃないわね。」

 

なになに?そこまで言われたらめっちゃ気になるんですけど。

 

ツバサ「じゃあ私達はこの辺りであなた達の勇姿見せてもらうわ。」

 

そう言って三人はμ'sの隣の空いている席に座った。

 

俺はその場を後にしようとする・・・すると・・・

 

ツバサ「ねぇ。」

 

彼女に呼び止められた。

 

 

 

ツバサ「あなたにとってこのラブライブとは何?」

 

 

 

 

瑠惟「俺にとってラブライブは・・・」

 

 

 

 

俺にとってのラブライブ。それは・・・

 

 

 

 

 

 

 

瑠惟「終着点であり、新たな旅立ちへの第一歩です。」

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女に背を向けたままそう答え、反応も見ずにその場を去った。

 

 

ラブライブ決勝も残すところ後2グループ。

 

次に歌うのは・・・Saint Snow

 

俺は舞台裏でAqoursと合流し、好敵手と挨拶を交わしていた。

 

瑠惟「いよいよですね。聖良さん、理亞ちゃん。」

 

聖良「えぇ。お互いに頑張りましょうね。」

 

理亞「あの時は兄様に助けられて今私はこの決勝の舞台に立てる・・・でも・・・いや、だからこそ今日は兄様達に・・・Aqoursに勝ちたい!」

 

聖良「理亞に言いたいことを言われてしまいましたね。

 

私達は今日のために努力を積み重ねてきました。

 

今日という日を優勝という形で終えるために・・・

 

何よりこのステージを楽しむために私達は全力で歌います!

 

私と理亞の一年間、そしてあなた達から教わったこと・・・このステージで形にします!

 

 

 

 

見ててください・・・私達・・・Saint Snowのステージを!」

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女達のパフォーマンスはこれまで出たどのグループよりも圧倒的で力強く、彼女達の勝ちたいという意志と何よりステージを楽しむという気持ちが目でも耳でも心でも感じられた。

 

 

 

パフォーマンスを終えた彼女達はどこか嬉しそうで悲しそうで・・・

 

 

 

ステージのライトに照らされたその雫が彼女達の想いを物語っていた。

 

 

 

 

 

 

 

そして・・・遂に訪れる。

 

 

 

この時が・・・

 

 

 

司会「今大会ラストを飾るのは静岡から現れた超新星!

 

 

浦の星女学院スクールアイドル・・・Aqours!」

 

 

ワァァァァァ!!!

 

 

会場に歓声や拍手が響き渡る。

 

 

瑠惟「みんな時間だ。」

 

 

全員で円になる。

 

 

俺はポケットに入れていた一枚のA4用紙を取り出す。

 

 

千歌「それって・・・」

 

 

その紙はかつて東京のスクールアイドルのイベントでライブをし、俺達に厳しい現実を突きつけた得票数0と書かれた人気投票の結果用紙だ。

 

 

瑠惟「みんなこれで現実を知って・・・スクールアイドルを諦めかけて・・・それでも結果を受け入れて0から1を目標に前に進んできた。これには世話になったな・・・。だけど・・・」

 

 

ビリビリ

 

 

俺は紙を破り捨てた。

 

 

瑠惟「もう要らないよな。

 

 

・・・ありがとう。ここまで俺達を見ててくれて。」

 

 

外が静かになったところで俺は話し始める。

 

 

瑠惟「さぁ!みんながAqoursを待ってる!

 

 

・・・・・・最後のナンバーコールいくぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

千歌「1!」

 

 

 

 

曜「2!」

 

 

 

 

梨子「3!」

 

 

 

 

花丸「4!」

 

 

 

 

ルビィ「5!」

 

 

 

 

善子「6!」

 

 

 

 

ダイヤ「7!」

 

 

 

 

果南「8!」

 

 

 

 

鞠莉「9!」

 

 

 

 

瑠惟「10!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー 11! ーー

 

 

 

会場にいる11人目のみんなから声が聞こえた。

 

 

 

瑠惟・千歌「「0から1へ! 1からその先へ!」」

 

 

 

 

全員「Aqours!・・・サーンシャイーン!」

 

 

 

 

 

 

 

瑠惟「みんな・・・いってらっしゃい。」

 

 

 

 

 

9人「いってきます!!」

 

 

 

 

 

 

 

曲が始まる前に急いで俺は関係者席へと戻った。

 

 

 

そしてイントロが流れ出す・・・

 

 

 

 

 

俺達がこの日のために作った集大成とも言える曲。

 

 

 

 

 

みんなに届け・・・

 

 

 

 

 

 

 

『WATER BLUE NEW WORLD』

 

 

 

 

 

 

『イマはイマで昨日と違うよ・・・』

 

 

『明日への途中じゃなく イマはイマだね』

 

 

『この瞬間のことが重なっては消えてく・・・』

 

 

『ココロに刻むんだWATER BLUE』

 

 

 

今まで色々あったよな・・・

 

最初はマネージャーの仕事も全然慣れなくて

 

女の子に声を掛けるのも一苦労

 

 

 

『悔やみたくなかった気持ちの先に』

 

 

『広がった世界を泳いで来たのさ』

 

 

『「あきらめない!」言うだけでは叶わない』

 

 

『「動け!」動けば変わるんだと知ったよ』

 

 

 

ファーストライブもアクシデントの中よく成功させたよ。

 

一年生の三人も自分を変えたいと勇気を出して入ってくれた。

 

でも、初めての東京では現実を思い知って・・・

 

 

 

『ずっとここにいたいと思ってるけど』

 

 

『きっと旅立ってくって分かってるんだよ』

 

 

『だからこの時を楽しくしたい』

 

 

『最高のトキメキを胸に焼きつけたいから』

 

 

 

 

離れ離れだった三年生がまた1つになって。

 

10人でここまで走ってきた。

 

さぁみんな・・・今こそ『輝く』時だ!

 

 

 

 

『MY NEW WORLD』

 

 

『新しい場所 探す時が来たよ』

 

 

『次の輝きへと海を渡ろう』

 

 

 

学校は最後まで足掻いたけど守れなくて・・・

 

それでも浦の星のみんなは俺達の背中を押してくれた。

 

そして今ここに10人で立ってる!

 

 

 

『夢が見たい想いは いつでも僕達を』

 

 

『つないでくれるから笑って行こう』

 

 

『イマを重ね そしてミライへ向かおう!』

 

 

 

俺は忘れない・・・

 

 

 

サイリウムの光で海のように青く染った会場のこの景色を・・・

 

 

 

まるで光の海のようなそれを・・・

 

 

 

 

 

 

曲が終わり会場に沈黙が走る・・・

 

 

 

少しの沈黙の後

 

 

 

 

 

パチパチパチパチパチパチ!!

 

 

ワァァァァァァ!!

 

 

今日一番の歓声が会場に響いた。

 

 

座っていた人達もみんな立ち上がりステージのAqoursに拍手を送る。

 

 

鳴りやまない拍手の嵐は俺達を包み込んだ。

 

 

瑠惟「みんな・・・本当に最高だな。」

 

 

 

穂乃果「すごい・・・。これがAqours。まだ私手の震えが止まらない。」

 

 

ツバサ「・・・こんなステージ見たことない。まさに彼女達と会場が一つになったと言うべきね。」

 

 

 

この二人の言葉みんなにも聞かせてやりたいよ。

 

あのμ'sとA‐RISEのリーダーが絶賛してたってな。

 

 

 

瑠惟「えぇ本当にすごいですよね。今まで一緒に練習してた俺でもびっくりしてます。」

 

 

お疲れ様。みんな本当に成長したな。

 

 

 

 

 

 

Aqoursのステージが終わってしばらく後、会場の興奮が冷めない中、司会の人がステージ中央に来て、いよいよ結果発表が始まろうとしていた。

 

出場した全グループがメインステージに集まる。

 

 

司会「さぁ〜先程会場とネットでの集計が終わりました!

 

今年のラブライブの頂点に立つのは一体どのグループか!

 

それでは早速結果発表に参りましょう!

 

まずは第3位から!

 

第3位は・・・・・・・・・」

 

 

ドラムロールの音と共にライトが点滅する。

 

少し間が空いて第3位が発表された。

 

 

 

司会「第3位・・・東京都立下北沢高校スクールアイドル部!迫真レディーズ!」

 

 

ワァァァ!!

 

 

ライトに照らされたグループの女の子達がお互いを抱き合って喜んでいる。

 

 

 

司会「続いて第2位を発表します!

 

ラブライブ準優勝の栄冠に輝いた第2位は・・・・・・」

 

 

ドクンドクンと自分の心臓の音が静かな会場に響いている気がした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

司会「第2位・・・函館聖泉女子高等学院スクールアイドル部・・・Saint Snow!」

 

 

 

 

ワァァァァァァ!!

 

 

 

2位はSaint Snow。

 

 

 

理亞「姉様!」

 

聖良「理亞!」

 

2人はその場で抱き合い涙した。

 

 

理亞「・・・私達やったのね。準優勝できたんだね。」

 

 

聖良「えぇ。本当にやりましたよ。」

 

 

理亞「勝つことってこんなにも嬉しいんだね。姉様。」

 

 

聖良「私も嬉しいです。こうして理亞と準優勝できたことが。」

 

 

聖良「私と一緒に踊ってくれて・・・最高の一年をくれて本当に・・・本当にありがとう。」

 

 

理亞「私も姉様と一年間頑張ってきて本当に良かった!喧嘩もしたけど、それ以上に姉様と踊っている時間が何より楽しかった。ありがとう。」

 

 

聖良「・・・やめてください。こん・・・な・・・人前で・・・ない、泣いてしまいますよ・・・。」

 

 

 

健闘した2人の美しい姉妹愛に会場からは惜しみない拍手が送られた。

 

 

おめでとうございます。聖良さん、理亞ちゃん。

 

 

 

 

 

 

司会「会場の皆さんお待たせしました!これよりラブライブ優勝グループを発表します!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

司会「歴代ラブライブの中でも類を見ない程ハイレベルな今大会を制したグループは!

 

 

 

 

 

 

 

今大会最も会場を湧かせたグループは!

 

 

 

 

 

 

 

 

ラブライブ優勝の栄冠に輝いたのは・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

浦の星女学院スクールアイドル部 Aqours!!」

 

 

 

 

 

ワァァァァァァワァァァ!!!

 

 

 

え?

 

 

 

今何て言ったんだ・・・

 

 

 

頭が真っ白になる。

 

 

 

隣にいた千歌が俺に何か言っているが耳に入らない。

 

 

 

 

横を見れば千歌以外のみんなが何が起こったのか分からず立ち尽くしている。

 

 

 

「優勝おめでとう!!!」

 

 

 

遠くから声が聞こえる。

 

 

声の方を見ると浦の星のみんなや内浦のみんなが俺たちに向かって叫んでいた。

 

 

だんだんと思考が回るようになってきた。

 

 

優・・・勝?

 

 

あぁ・・・あぁ・・・

 

 

優勝。

 

 

瑠惟「優勝!」

 

 

そうか・・・俺達は・・・

 

 

瑠惟「優勝したんだ!!!!」

 

 

思わず叫ぶとAqoursのみんなも事実を認識した。

 

 

瑠惟「みんな!俺達はやったぞー!!!」

 

 

するとAqoursのみんなが俺に向かって飛び込んできた。

 

 

Aqours「やったー!!!」

 

 

瑠惟「うわっ!」

 

 

俺は支えきれずにみんなのクッションとなる形でステージに倒れ込んでしまう。

 

 

飛び込んできたみんなは喜びを分かち合いながら感動で涙を流していた。

 

 

瑠惟「ははっ。泣くか笑うかのどっちかにしてくれよ。」

 

 

千歌「だって・・・だって・・・」

 

 

梨子「・・・私達優勝したんだね・・・嬉しい。」

 

 

曜「夢じゃないんだよね!本当にできたんだね!」

 

 

花丸「・・・先輩!マル・・・マル・・・」

 

 

ルビィ「ラブライブで優勝!・・・ピギィ!!」

 

 

善子「ふっ。このヨハネの・・・み、魅力が・・・みんなに・・・」

 

 

ダイヤ「ついにやりましたのね・・・。ラブライブ優勝・・・。本当に・・・」

 

 

果南「・・・まさか・・・本当にやっちゃうとはね。うん・・・優勝か・・・」

 

 

鞠莉「これこそシャイニー!!・・・やったんだね。私達。」

 

 

倒れたみんなを起こしてあげる。

 

 

 

 

 

 

 

 

瑠惟「みんな・・・おかえり」

 

 

 

9人「ただいま!」

 

 

 

 

 

 

 

 

司会の人も微笑ましそうにこちらを見ている。

 

 

司会「見事優勝されたAqoursの皆様何か一言どうぞ。」

 

 

そう言ってマイクを渡される。

 

 

こういうのはリーダーのやることだと思いマイクをそのまま千歌に渡した。

 

 

千歌「えっ?私?」

 

 

周りのみんなもウンウンと頷く。

 

 

千歌「うーん・・・何か言うこと・・・」

 

 

見るからに困っているので小さな声で耳打ちする。

 

 

瑠惟「千歌の今の気持ちを言ったらいいんだよ。」

 

 

千歌「私の今の気持ち・・・うん!分かった!」

 

 

 

千歌「皆さん!私達は浦の星女学院スクールアイドルのAqoursです!私達は・・・学校を救うため・・・『輝き』を見つけるためにラブライブの優勝を目指しました。

 

 

最初は何からやっていいのか分からず、ただがむしゃらに走っていました。

 

 

でも最初は4人だったメンバーがどんどん増えていくうちに私達は目指すべき道が何なのかハッキリと分かりました。

 

 

それは私達だけの道を進むこと。

 

 

憧れていたμ'sさんを追いかけることじゃない。

 

 

みんなと手を取り合って走っていくことが大切なんだなって。

 

 

これまでたくさんのことがありました。

 

 

辛かったこと・・・メンバー同士で喧嘩したこと・・・意見がぶつかったこと・・・

 

 

でもそれ以上にみんなで一緒にいる時間は本当に楽しかったです!

 

 

練習中に変なことで笑ったり・・・

 

 

学校帰りのコンビニでみんなでアイスを食べたり・・・

 

 

ライブが上手くいってみんなで喜びあって・・・

 

 

 

それでも・・・私達の学校は守れませんでした。

 

 

ラブライブの決勝に出場するかも迷いました。

 

 

そんな時・・・浦の星女学院のみんなが私の背中を優しく押してくれました。

 

 

だから私達はこの学校名前をここに・・・ラブライブの歴史に残すために!

 

 

そして今日・・・みんなと優勝することができました。

 

 

学校のみんなとの約束を果たせました。

 

 

そしてマネージャーの彼との約束も守ることができました。

 

 

『俺をラブライブの頂点へ連れて行ってくれ。』

 

 

この言葉に・・・そして周りのみんなに何度も支えられました。

 

 

だからこの場で感謝を伝えます。

 

 

みんな・・・ここまで一緒に走ってくれてありがとう!

 

 

そしてAqoursのみんな!

 

 

本当に・・・本当に・・・ありがとう・・・。」

 

 

 

パチパチパチパチパチパチ

 

 

千歌のスピーチに暖かい拍手が送られた。

 

 

司会「はい!Aqoursの皆さんありがとうございました!さて!皆さん早速ですがここで優勝グループによるアンコールステージへ参りたいと思います!・・・ではAqoursの皆さん準備をお願いします!」

 

 

Aqours「はい!」

 

おっ来たか。

 

Aqoursのみんなが行ったのを確認してから司会の人からマイクを借りに行った。

 

瑠惟「あ、すいません。マイク借りますね。」

 

司会「どうぞどうぞ。」

 

瑠惟「はーい。あっどうもAqoursのマネージャーの西王です。えっと・・・浦の星女学院被服隊の皆様、衣装を持って更衣室へお願いします。」

 

 

そうアナウンスすると観客席にいた浦女の何人かが衣装が入ったケースを持って急いで舞台下にある更衣室へと向かっていった。

 

 

さて俺は舞台裏に移動するか。

 

 

そうして戻ろうとすると誰かに腕を引かれた。

 

 

聖良「瑠惟さん、優勝おめでとうございます。」

 

理亞「おめでとう兄様。」

 

Saint Snowの2人が祝福の言葉を送ってくれた。

 

瑠惟「お二人も準優勝おめでとうございます。」

 

聖良「ありがとうございます。あなた達に負けてしまったのは悔しいですが、それでも全力でやった結果です。悔いは何もありません。」

 

理亞「あー!悔しい!・・・でも楽しかった!」

 

瑠惟「Saint Snowのステージ本当にすごかったです。」

 

聖良「またまた、Aqoursのステージの方が素晴らしいものでしたよ。舞台袖で見ていた私達も感動しました。」

 

瑠惟「いや〜そう言われると嬉しいですね。」

 

理亞「兄様達のアンコールステージ・・・楽しみにしてるから。兄様の作った曲を歌うんでしょ。下手なことしたら許さないからね!」

 

聖良「さぁ行ってあげてください。皆さんが待ってますよ。」

 

 

 

 

 

 

 

舞台裏に行くと新衣装に着替えたみんなが待っていた。

 

瑠惟「おぉ・・・みんな似合ってますなー。」

 

むつ「へへっ!どうよお兄さん!」

 

よしみ「これが浦の星被服隊の力よ!」

 

いつき「うんうん!みんな可愛い!」

 

Aqoursのみんなには衣装のことは全く伝えていなかったのでみんなびっくりしている。

 

千歌「この衣装・・・」

 

瑠惟「浦の星女学院みんなで協力して作ったんだ。俺の曲をAqoursに浦の星女学院のみんなの想いと一緒に歌ってほしいって。」

 

曜「すっごく素敵だね!それに可愛い!」

 

瑠惟「その衣装の胸についてるリボン。それだけは俺がみんなの分作ったんだ。俺の想いも一緒に連れてってくれるように。」

 

Aqoursのみんなは胸に手を当て目を閉じた。

 

千歌「うん!分かった!私達浦の星のみんなと一緒に歌うよ!」

 

瑠惟「OK!じゃあいってこい!今から・・・ラブライブ決勝戦エクストラステージの時間だ!」

 

ちょっとだけ格好つけて言ってみる。

 

少し恥ずかしいがこれくらいセーフだよな。

 

ステージへ走っていくAqoursの背中を見送る。

 

そして俺は先程と同じく関係者席へとダッシュで戻るのだった。

 

 

 

 

 

 

 

俺がAqoursに関わった全ての人と一緒に完成させたこの曲。

 

まさにアンコールステージにふさわしい曲のタイトルは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『青空Jumping Heart』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曲が始まり会場のボルテージが一気に最高まで上がる。

 

ステージの一分一秒全ての時間会場のみんなが一つになったように声を出し、楽しんだ。

 

隣にいるμ'sやA‐RISEの人達もまるで昔に戻ったみたいにはしゃいでいた。

 

そして俺はステージで踊っているみんなの楽しそうな顔を見て俺まで笑顔になり隣の姉達と一緒にサイリウムを振っていた。

 

あの時間はこれまであったことを全て忘れさせるくらい楽しかった。

 

 

 

瑠惟「これが俺の答えです。」

 

隣にいたμ's、A‐RISEにそう告げる。

 

真姫「・・・確かに見せてもらったわ。これがこの曲の真の姿。ただAqoursが歌うだけじゃない。見ている人全てが笑顔になる。メンバーと観客この二つがあってはじめてこの曲は完成したと言えるわ。」

 

ツバサ「あなたは本当にただのマネージャー?とても一般の男子高生がここまでできるなんて・・・」

 

 

瑠惟「確かに・・・どこにでもいるただのマネージャーじゃありませんね。そう俺は・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瑠惟「コミュ障ヘタレなマネージャーですよ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンコールステージが終わりAqoursがステージから退場しようとする。

 

しかし・・・

 

 

 

ール

 

 

 

コール

 

 

 

アンコール

 

 

 

アンコール!!

 

 

 

アンコール!!!!

 

 

 

 

 

まさかのダブルアンコール。

 

会場の声を聞いた、にこさんが驚いている。

 

にこ「歴代ラブライブの中でもアンコールステージの後にアンコールが起こることは無かった・・・。それだけAqoursは会場の人達の心を掴んだと言うの!?」

 

え?でもどうするの?歌える曲なんて・・・学校説明会の曲とかしか・・・

 

ステージの方を見ると千歌がいけると言わんばかりに親指を立てていた。

 

ついでに司会の方を見るとこちらも千歌と同じようなサインをしていた。

 

 

司会「会場のリクエストにお応えしてAqoursの皆様がもう一曲だけ披露してくれまーす!!」

 

 

ワァァァァァァ!!

 

 

するとAqoursは一列に並び千歌が司会の人からマイクを借りた。

 

 

 

 

 

 

千歌「今から披露する曲は・・・私達の大切な仲間に送る曲です。」

 

 

 

 

 

曜「その人はステージに立つことは無かったけど。」

 

 

 

 

 

梨子「それでも一番近くで私達のことを見守ってくれました。」

 

 

 

 

花丸「いつだって私達のことを第一に考えてくれて。」

 

 

 

ルビィ「できることは何でもやってくれました。」

 

 

 

善子「時には怒られたりしたけれど。」

 

 

 

ダイヤ「私達は彼の優しさに暖かさに支えられました。」

 

 

 

果南「彼と過ごした時間は私達の宝物です。」

 

 

 

鞠莉「そんな彼に私達の気持ちを送ります。」

 

 

 

千歌「会場のどこかにいる私達の大切なマネージャー・・・瑠惟君へ聞いてください・・・

 

 

 

 

 

『Thank you, FRIENDS!!』」

 

 

 

 

え・・・あいつら俺に歌を・・・

 

 

千歌の言葉が終わると同時に曲が始まる。

 

 

聞いたことのないメロディが耳に入ってくる。

 

 

俺はAqoursのみんなが曲を作っていたなんて知らなかった。

 

 

もちろん千歌もそんな素振りは一切見せなかった。

 

 

開いた口が塞がらず、ステージをぼーっと見つめていた。

 

 

 

 

 

 

『そう、いまだから(そういま僕ら)』

 

 

『わかるのかも(わかってきたよホントに)』

 

 

『ステキなこと(ステキすぎて)』

 

 

『まるで夢の中泳いできた魚さ』

 

 

 

 

あいつら決勝に向けて忙しかったのに

 

俺がいないところでバレないように・・・

 

あーもう・・・なんで・・・なんで・・・

 

 

 

 

 

『どんな時でも(どんな時にだって)』

 

 

『感じていたよ(感じていたんだ君がいると)』

 

 

『だからいつも(そしてここまで)』

 

 

『負けないでやってこれた』

 

 

 

 

決めてたのに・・・

 

今日だけは・・・今日だけは・・・

 

泣かないって決めたのに・・・

 

 

 

 

『熱い想いしかない 君に届けられるのは』

 

 

『よーし! 声の限り』

 

 

『よーし!呼んでみるよ』

 

 

『こたえてくれるかい?』

 

 

 

 

どうして涙が溢れてくるんだ・・・

 

 

 

 

『'Thank you, FRIENDS』

 

 

『会えてよかったな 会えてよかったな』

 

 

『最高の絆』

 

 

『人生には時々びっくりなプレゼントがあるみたいだ』

 

 

 

 

 

どうしてみんなとの思い出が・・・

 

 

 

 

 

『ねぇ会えてよかったな 会えてよかったな』

 

 

『これはなんの奇跡だろう?』

 

 

『消えないでって呟きながら もっと先へ飛び出すんだ』

 

 

 

俺は涙を袖で拭き関係者席を飛び出し、ステージの近くまで走り出した。

 

 

 

 

『もう、過ぎた日は(もう遠くなって)』

 

 

『帰らないけど(懐かしく思うよ)』

 

 

『僕らのミライ(一緒にはじめよう)』

 

 

『何度もはじまるんだね』

 

 

 

 

前に進む俺を観客の誰も、警備員でさえ止めようとはしなかった。

 

むしろ・・・

 

ー がんばれ! ー

 

メロディの中に交じってそんな声が聞こえる。

 

 

 

 

『いっぱい叫んだって 足りない君へのキモチは』

 

 

『よーし!声の限り』

 

 

『よーし!呼んでみるよ』

 

 

『こたえてくれるよね?』

 

 

 

 

あぁこたえてやる!

 

俺も言いたいことがもっとあるんだ!

 

お前らだけに言わせてたまるか!

 

 

 

 

『Thank you, FRIENDS』

 

 

『大好きだよってさ 大好きだよってさ』

 

 

『伝えたかった!』

 

 

『こんな景色が見たい きっと君も同じ夢見てたんだね』

 

 

 

 

俺はステージのちょうど正面に着いた。

 

「千歌!梨子!曜!」

 

「花丸!ルビィ!善子!」

 

「ダイヤ!果南!鞠莉!」

 

ステージに向かって叫ぶ。

 

 

 

 

『ねぇ大好きだよってさ 大好きだよってさ』

 

 

『ループしたいよ 歌いたいよ!』

 

 

『君からも言ってほしいからね さぁみんなで声を出してよ』

 

 

 

 

「俺もみんなのことが・・・

 

 

大好きだよ!何度でも言ってやる!

 

 

俺はAqoursが・・・浦の星のみんなが・・・

 

 

大好きだ!」

 

 

俺の言葉が聞こえたAqours全員の目に涙が浮かんだ。

 

それでもステージの最中。

 

彼女達は必死にこらえて歌い続ける

 

 

 

 

千歌『叶った願いはいくつある?』

 

 

曜『これからも叶えようよ』

 

 

梨子『生まれてくるトキメキの数は・・・』

 

 

花丸『あぁ数え切れない』

 

 

ルビィ『海風に』

 

 

善子『誘われて』

 

 

ダイヤ『ココロには』

 

 

果南『何が立って・・・立って・・・』

 

 

鞠莉『どこへどこへ向かえばいいの?』

 

 

『みんなと探そうか!』

 

 

 

 

「みんなと過ごしたこの一年本当に楽しかった!」

 

 

 

 

『Thank you, MY FRIENDS』

 

 

『ETERNAL FRIENDS』

 

 

『永遠って言葉が出てきたよ不思議と』

 

 

 

 

 

「俺は東京に行って前みたいに毎日会えなくなる。でも!俺の心の中にはいつもみんなが・・・この9人がいるんだ!」

 

 

 

 

 

『Thank you, FRIENDS』

 

 

『会えてよかったな 会えてよかったな』

 

 

『最高の絆』

 

 

『人生には時々びっくりなプレゼントがあるみたいだ』

 

 

『ねぇ会えてよかったな 会えてよかったな』

 

 

『これはなんの奇跡だろう?』

 

 

『消えないでって呟きながら もっと先へ飛び出すんだ』

 

 

 

 

「みんなから教えて貰ったことを胸に俺は前に進み続ける!それで、また会った時に笑いながらこの1年間のことを語り合おう!だからみんなもそれぞれのミライに向かって俺と一緒に走ろう!」

 

 

 

 

『大好きなんだ』

 

 

『君と歌うよ』

 

 

『永遠って言いたくなって』

 

 

『大好きな君とずっと』

 

 

『楽しいことしていたいから』

 

 

『ずっと・・・』

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな・・・俺を・・・愛してくれてありがとう。」

 

 

 

 

 

曲が終わり、静かになった会場に感謝の言葉が涙と共に消えていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




やっとAqoursが優勝するところまで書くことができました。

アニメでも決勝の話は涙無しでは見れませんね。



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次のミライへ・・・

ここにきてまさかのヒロイン判明!?

この伏線を覚えている読者の方がいましたら僕はその行動に敬意を表す!




観客や他の出場グループが出ていった後の誰もいない静かな会場。

 

俺達10人はステージの上から会場を見渡していた。

 

瑠惟「終わったな・・・」

 

千歌「終わっちゃったね。」

 

瑠惟「いやぁまさかサプライズで歌を披露されるとはな。」

 

千歌「えへへ。びっくりしたでしょ。」

 

瑠惟「まぁびっくりというか・・・」

 

曜「感動して泣いてたもんね。」

 

瑠惟「えぇ?なんで分かったんだ?」

 

梨子「何でも何も瑠惟君たらステージに一目散に走ってきて泣きながら叫んでたじゃない。」

 

瑠惟「あんな歌を聞かされたら誰だって泣くよ。なぁずら丸?」

 

花丸「マルに振らないでほしいずら。・・・でも嬉しかった。『こたえてくれて』。」

 

善子「はぁ・・・先輩は男でしょ。だったらメソメソしてたらダメじゃない。」

 

瑠惟「す、すいません・・・。」

 

ルビィ「まぁまぁ善子ちゃん。瑠惟先輩も喜んでくれたから。」

 

ダイヤ「全くあんな暗い会場を走っては危ないですわよ。」

 

果南「でもそんな瑠惟も可愛かったよ。」

 

鞠莉「果南の言う通りデース!私も嬉しかったよ。」

 

 

 

 

 

 

「素敵なグループだね。瑠惟君。」

 

 

 

 

9人「!?」

 

 

 

誰もいないはずの会場・・・俺達の後ろにいたのは・・・

 

 

 

瑠惟「穂乃果さん!」

 

9人「『穂乃果さん』!?」

 

穂乃果「やっほー!」

 

千歌「なんでここに・・・み、μ'sの高坂穂乃果さんが?」

 

俺以外のみんなが驚いている。それもそのはず目の前にいるのは全スクールアイドルの頂点にして憧れ。世間にスクールアイドルブームを巻き起こしたあのμ'sその人達だから。

 

そして特に驚いているのが2人・・・

 

ルビィ「ほ、穂乃果さんに海未さん、ことりさんに凛さんに・・・花陽さん!」

 

ダイヤ「西木野真姫さん、矢澤にこさんに東條希さん。そして・・・絢瀬絵里さん!!」

 

 

 

穂乃果「あなたがAqoursのリーダーだね。高海千歌ちゃん。」

 

彼女が千歌の前に行き、そう言った。

 

千歌「は、はい。リーダーの高海です。」

 

穂乃果「・・・うん!確かに優勝グループのリーダーって感じがするね。」

 

千歌「ありがとうございます・・・。でも何でここに・・・。」

 

穂乃果「うーん・・・真姫ちゃんに言われたってのもあるけど、やっぱりこの目で直接見てみたかったの、瑠惟君からずっと聞いていたAqoursの集大成を。」

 

瑠惟「実はこの人達夏の予選も見に来てたぞ。」

 

千歌「えぇ〜!?」

 

ダイヤ「瑠惟さんはμ'sの方々とどういう関係ですの?」

 

そういえば千歌達にはμ'sのこと言ってなかったもんな。

 

瑠惟「昔からの知り合いですよね。」

 

μ'sの皆さんが頷く。

 

そしてAqoursの中でいくつかの疑問点が一本の線で繋がった。

 

なぜ彼があたかも見てきたかのようにμ'sのことに詳しいのか。

 

なぜ彼がスクールアイドルの指導に長けていたのか。

 

なぜ彼が音ノ木坂学院を見て『懐かしい』と呟いていたのか。

 

それらは全部彼がμ'sと繋がりがあることで説明がつく。

 

Aqoursは改めて目の前にいる男子が特別な存在であるのだと気付いた。

 

果南「本当に君って色々すごいんだね。」

 

絵里「静岡に行って本当に良かったわね。瑠惟。」

 

にこ「全くよ。一時はどうなるかと思ったわ。」

 

にこさんの言葉にAqoursが疑問を投げかける。

 

海未「あなた達も彼から過去に何があったかは聞いていたと思います。恥ずかしい話ですが私達は彼の近くにいながら何もしてあげられませんでした。」

 

瑠惟「ちょっと待ってください!海未さん達はあの後俺のことを必死に励ましてくれたじゃありませんか!」

 

海未「それでもあなたは良くなるどころか日に日に病んでいき、ついには私達を気遣って偽りの笑顔をさせてしまいました。」

 

確かに・・・彼女の言う通りだ。否定はしない。だけどμ'sの皆さんがいてくれなかったら俺は本当に心が折れていたかもしれない。

 

真姫「でも、あなたは東京から離れた後こうして変わった。曲作りの時だって私に協力を求めて、必死に彼女達のために動いていた。」

 

ことり「夏だって私達が見に来た時に言ってたよね。『μ'sを超えて優勝する。』って。あの時のあなたは一年前とは別人みたいだった。」

 

穂乃果「そして今日のステージ・・・Aqoursの集大成の曲。そして瑠惟君が作ったあの曲。

 

2つともすごかったよ。

 

Aqoursの想い確かに私達に・・・会場のみんなに届いていた。

 

なにより最後の曲は正直に言うと穂乃果達もウルっと来ちゃったんだ。

 

私達がかつてあなた達と同じように頑張っていたんだってことを思い出して。

 

瑠惟君があんなに涙を流していたのは・・・あんなに自分の気持ちを叫んでいたのは見た事が無かった。

 

それだけあなた達と素敵な思い出があったってことだよね。

 

Aqoursは本当に瑠惟君を変えてくれたんだね・・・。

 

だから私達μ'sからAqoursの皆さんに。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

μ's「瑠惟君と一緒にいてくれてありがとう!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

μ'sと別れて会場を出た後俺達はホテルに戻り打ち上げをした。

 

泊まっているホテルからのお祝いで色々と準備をしてくれたようだ。

 

瑠惟「よっし、みんなコップは持ってるよな。

 

じゃあ浦の星女学院スクールアイドルAqoursのラブライブ優勝を祝して・・・」

 

 

全員「かんぱーい!!」

 

 

 

10人だけの小さな打ち上げ。

 

それでも俺達は今日のことを喜び、たまに感極まって涙したり・・・。

 

優勝という事実を大いに噛み締めたのであった。

 

そんな打ち上げの中俺はあることを思い出した。

 

そして曜を呼び出す。

 

 

曜「どうしたの?」

 

瑠惟「約束。」

 

曜「約束?」

 

瑠惟「ほら。前に曜の家に行った時にした。」

 

その瞬間、曜は顔が真っ赤になり俺に背を向けてしまった。

 

瑠惟「大丈夫か?」

 

曜「う、うん・・・。あのね・・・ここで言うのは恥ずかしいから部屋の外でもいいかな?」

 

瑠惟「おう。構わないぞ。」

 

 

 

 

そして俺と曜は打ち上げ会場の外に出た。

 

やっと聞けるんだな。曜の心を射止めた羨まし・・・ゲフンゲフン、素敵な男のことが。

 

会場の外で向き合う2人。

 

聞こえるのは会場からの楽しそうな声。

 

曜(あぁもう・・・なんで覚えてるの・・・でも今言わなきゃ絶対に後悔する!)

 

曜「ねぇ瑠惟君、私達が初めて会ったのはあの夏の日だよね。」

 

瑠惟「あぁ。今でもよく覚えてる。」

 

曜「初めての場所ですごく不安だった私に優しく声を掛けてくれた時、とっても安心したし嬉しかった。」

 

曜「あの日からもう会えないかもって思ってたら・・・2年生の最初にあなたは来てくれた。

 

教室に入ってきたあなたを人目見た時に瑠惟君だってすぐに分かった。

 

あなたが千歌ちゃんの従兄弟だっていうことも初めて知った。

 

それからスクールアイドルとマネージャーの関係で一緒に過ごしてきた。

 

あなたはいつも優しく、暖かく私達Aqoursの傍でいつも見守ってくれた。

 

人数が増えても一人一人のことをちゃんと見てくれて、思い詰めた時には寄り添って一緒に悩んでくれた。

 

そんなあなたをずっと見てきた。大きくて優しいあなたの背中を見てきた。

 

私は・・・ううん私達みんなあなたがライブで成功して喜んでくれるのが本当に嬉しかった。

 

でも、たまに千歌ちゃんや梨子ちゃんと仲良くしているあなたを見るとモヤモヤする時があったんだ。

 

それである人に言われて気づいたんだ。

 

 

 

私・・・恋してるんだって。好きな人がいるんだって。

 

 

 

そして思った。いつまでも見てるだけじゃダメだって。チャンスはいつまでもあるわけじゃないって。

 

だから・・・今伝えたい。大切な人に私の気持ちを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は・・・あなたの笑顔を誰よりも一番近くで見たい。

 

 

 

 

私は・・・あなたの悲しみを誰よりも一番近くで分かりたい。

 

 

 

 

私は・・・誰よりも近く、誰よりも長くあなたと一緒にいたい。

 

 

 

 

西王瑠惟君・・・ずっと前からあなたのことが好きでした。」

 

 

 

曜の好きな人・・・まさかの俺。

 

真剣な彼女の顔を見れば『冗談だよな』なんて口が裂けても言えない。

 

勇気を出して告白してきた彼女にいい加減な気持ちで返事はできない。

 

だったら・・・

 

瑠惟「ありがとう。曜のその気持ち嬉しいよ。まさか告白されるとは思っていなかった。」

 

 

 

 

 

 

瑠惟「俺も曜のことが好きだ。曜みたいな子が彼女になったらきっと毎日が楽しいし、もっと一緒に過ごせる時間も増えると思う。」

 

 

 

 

 

曜「だったら・・・」

 

 

 

 

 

瑠惟「でも!今は違うんだ・・・。俺達はこの先離れ離れになる。それは曜も分かっているはずだ。」

 

彼女は無言で頷く。

 

瑠惟「どうしても会える時間も少なくなるし、連絡だって頻繁に取れるとは限らない。

 

それに俺はバスケ、曜はスクールアイドル活動。

 

俺は大丈夫だが、曜は違う。

 

ラブライブ優勝グループになったからこそメンバーの一人に恋人がいるなんて知れ渡ったら確実に曜だけでなくAqours全体に迷惑がかかる。

 

俺もできるなら曜と付き合ってみたい。その気持ちは本当だ。

 

でもこの時期に付き合ってスケジュールが合わせられなかったり会うために無理したりして、やるべきことが疎かになったら本末転倒だ。

 

お互いのことを考えて、今は付き合わないという選択を取るのが正しいと思う。

 

 

だから俺は・・・曜と付き合うことはできない。ごめん。」

 

曜は『うん』と小さく呟き、続けてこう言った

 

曜「瑠惟君の言う通りだね。

 

やっぱりまだ早かったかな・・・

 

でも・・・『ごめん』って言われるのって・・・こんなに辛いんだね・・・」

 

瑠惟「!」

 

彼女は泣いていた。

 

静かな空間に彼女の声だけが聞こえる。

 

俺は『やっぱり付き合おう。』と言いかけるが唇を思いっきり噛み無理矢理言葉を抑える。

 

口の中に血の味が広がっていくのが分かる。

 

曜「私が瑠惟君と付き合うのは難しいかなって・・・何となく・・・分かってた。

 

でも、もしかしたらいけるかもって思う自分もいた。

 

・・・だから現実を聞いて余計に辛くなって涙が出てきちゃった。

 

ごめんねこんなところ見せちゃって。」

 

瑠惟「俺もこういうやり方でしか言ってやれなかった。すまない。」

 

曜「ううん。瑠惟君は悪くないよ。

 

それに私も言いたいことを言ってなんか胸の中がスッキリした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも・・・最後にあなたとの特別な思い出が欲しい・・・。あなたが好きだったっていう証明が。」

 

 

 

 

 

 

そう言って曜は目を閉じた。

 

 

 

俺もそこまで馬鹿ではない。彼女が何を求めているのかは理解できる。

 

 

 

俺は曜に近づく。

 

 

 

 

彼女は俺が近づいたのが分かると少し背伸びをし、少しだけ口を尖らせる。

 

 

 

 

俺は震える彼女の肩に手を置きゆっくりと顔を近づけ目を閉じる。

 

 

 

そして2人の口は少しずつ近づき・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チュッ

 

 

 

 

 

 

 

 

それはキスというにはあまりにも短く、だがとても優しく彼女の唇に触れた。

 

その出来事は2人とって一瞬のようであり、永遠のようでもあった。

 

俺達は目を開けてお互いを見つめた。

 

曜の顔が真っ赤になっている。恐らく俺も同じだな。

 

瑠惟「こんなことしかできない俺を許してくれ。」

 

曜「ううん、とっても嬉しい。」

 

瑠惟「この先はもしいつか俺達が恋人になれたら・・・」

 

曜「・・・うん。私・・・瑠惟君の恋人になれるようにがんばるから。」

 

瑠惟「千歌にも言ったが曜はもっと色んな人に会って自分の全てを捧げてもいいと言える男性を見つけてほしい。

 

・・・色んな人を見てそれでも俺と一緒にいたいと思ってくれるなら待ってる。」

 

曜「やっぱり千歌ちゃんにも告白されたんだね。」

 

瑠惟「どこまで本気なのかは分からないがな。」

 

曜「じゃあ私は千歌ちゃんとライバルだね。」

 

瑠惟「あいつにもいい男ができてほしいんだけどなぁ。」

 

曜「瑠惟君。」

 

瑠惟「ん?」

 

曜「素敵な思い出をありがとう!」

 

全く・・・本当に俺には勿体くらい可愛い女の子だよ。

 

 

 

 

打ち上げ会場に戻るとどこかみんなの様子がおかしい。

 

みんな顔が紅く、そわそわしている。

 

近くにいた善子に聞いてみる。

 

瑠惟「何かあったのか?」

 

善子「えっと・・・それは・・・。」

 

そう言って善子は曜と俺を交互に見る。

 

まさか・・・

 

瑠惟「もしかして聞いてたのか?」

 

善子は何も言わない。

 

つまりはYesってことか。

 

善子1人だけが聞いているはずはない。恐らく全員・・・

 

曜は再び顔を紅くする。

 

そんな中千歌が口を開く。

 

千歌「2人だけいなくなったから気になって外を見て見たら・・・ね。」

 

曜「ち、ちなみに・・・どこから聞かれてたの?」

 

千歌「『ねぇ瑠惟君、私達が初めて会ったのは・・・』のところから・・・」

 

全部じゃねぇか!

 

曜は恥ずかしさのあまり顔を伏せてしまった。

 

梨子「別に盗み聞きするつもりは無かったんだけど・・・千歌ちゃんがどうしてもって止まらなくて最後まで・・・」

 

『最後まで』ってことは・・・

 

瑠惟「も、もしかして俺と曜が・・・」

 

果南「見ちゃったんだよね。」

 

鞠莉「曜と瑠惟があんなことするからダイヤったら・・・」

 

ダイヤ「全くああいうのは破廉恥というのですわ!」

 

花丸「先輩は本当に曜ちゃんと付き合う気はないずらね!?」

 

なんか花丸がグイグイ来るので思わず後ずさりしてしまう。

 

瑠惟「い、今はだけどな・・・」

 

花丸「・・・だったらマルにもまだ・・・」

 

ん?今花丸ちゃん何て言ったんだ?

 

ルビィ「でも曜ちゃん、すっごく可愛かったね。」

 

おい、ルビィちゃんその追い打ちは・・・

 

曜「あぁ〜もうみんなの顔見れないよ〜!」

 

 

 

 

 

 

打ち上げが始まってからだいぶ時間が過ぎ、曜も少しずつ落ち着いてきた。

 

今なら・・・。

 

 

瑠惟「みんな。俺との約束を覚えてるか?」

 

千歌「うん!覚えてるよ!」

 

花丸「何でも一つ言うことを聞くずらね。」

 

瑠惟「あぁ。それのことだ。俺からのお願いはマネージャーとしての俺・・・そして西王瑠惟としての俺と約束してほしいってことだ。」

 

瑠惟「まずはAqoursマネージャーとしての俺から・・・。

 

もし3年生や俺達が抜けた後にAqoursを続けるなら、これだけは忘れないでほしい。

 

 

 

 

1つ目に『スクールアイドル活動を全力で楽しむこと。』

 

当たり前だが楽しくないスクールアイドル活動はもはやスクールアイドル活動ではないぞ。

 

ステージの一人一人の笑顔があってこそ見ている人は笑顔になれるってもんだ。

 

それにみんなの笑顔は他のどのスクールアイドルにも負けないくらい可愛いって一番近くで見てきた俺が保証してやる。

 

 

 

2つ目に『常に感謝を忘れないこと。』

 

俺達がここまで自由にスクールアイドル活動ができたのは顧問の先生やクラスのみんな、地元の人達の支えがあってこそだ。

 

それにラブライブだって運営の人や応援に来てくれる人がいるから成り立っている。

 

当たり前があるのはそれを裏で支える人達がいるから。

 

もし新しくマネージャーを引き受けてくれる子がいるならその子にも感謝を忘れないようにな。

 

 

 

 

最後に『無理をしないこと。』

 

スクールアイドル活動をするうえで一番やってはいけないのはオーバーワーク・・・自分の健康状態を無視して練習に励むことだ。

 

そんな状態で練習しても身につかないし、何よりみんなの身体が危険になるのは俺が練習を見てきたうえで最も気をつけてきたことだ。

 

そこはリーダーやマネージャーと相談して上手くやってくれよな。」

 

どうやらみんな分かってくれたようだな。

 

 

 

瑠惟「じゃあ次に俺個人からの約束・・・というよりはお願いかな。

 

みんなにはこれから人生を歩んでいく中でいろんな経験をして欲しい。

 

スクールアイドル活動はもちろんその一つに含まれるけど、それ以上に新しい学校の友達と一緒に遊びに行ったり、来る受験に向けてしっかりと勉強もしてほしいし、他には好きな人を見つけて恋愛だってしてほしい。

 

その経験の一つ一つがみんなを大きく成長させてくれるって俺は信じてる。

 

みんなが思っている以上に世界って広いんだぞ。

 

俺なんかが言えたもんじゃないがこの世界には知らないことや楽しいこと、もちろん辛いこともたくさんある。

 

だから・・・みんなには挑戦を続けてほしい!

 

新しいことをやってみるのは不安かもしれない、でもその挑戦がみんなにとって将来の宝物になるかもな。

 

さぁ俺のお願いはこれくらいだ。聞いてくれてありがとうな。」

 

でも、最後にあいつに聞こう。

 

瑠惟「千歌、見つけられたか?『輝き』ってやつを。」

 

 

 

 

千歌「うん!私分かったんだ。私が探していた『輝き』。私達の『輝き』。足掻いて足掻いて・・・やっと分かったんだ!

 

私一人じゃ輝けなかったんだよ。

 

みんなと一緒にいるから私達一人一人は輝ける!

 

一緒に笑ったり泣いたり、ケンカしたりその一つ一つ全てが輝いていたんだよ!

 

だからね・・・『輝き』っていうのは・・・Aqoursそのものなんだよ!

 

一人だと本当に見えないくらいの小さな輝き。

 

それが10人分も集まってAqoursという輝きを生み出すんだよ!

 

決勝でのあの光の海を見て気づいたんだ。

 

私達は今最高に輝いてるって!

 

これが私の『輝き』。どうかな?」

 

瑠惟「今の答えを聞いて確信した。千歌にマネージャーに誘ってもらえてよかったって。あぁそれが千歌の・・・俺達だけの『輝き』だ!」

 

 

みんなの顔を見るとどこか一皮むけたように希望や自信に満ち溢れた顔をしていた。

 

うん。これならもう何も言う必要は無いかな。

 

 

瑠惟「じゃあ最後にもう一度乾杯で締めようか。」

 

 

 

 

 

瑠惟「俺達のミライに!」

 

9人「ミライに!」

 

全員「乾杯!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これでコミュ障ヘタレのマネージャーとしての話はお終い。

 

俺達10人はそれぞれのミライに向かって歩き始めたのだった。

 




展開に賛否両論あると思いますが、これが一番綺麗な形でおわれると思いました。

一応これにて本編は一区切りとさせていただきます(終わるとは言っていない。)

ここまでご愛読してくださった読者の皆様、そして応援してくれた皆様には感謝の気持ちでいっぱいです。

ありがとうございました。

次は番外編になります。

乞うご期待ください。


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コミュ障ヘタレ OVER THE RAINBOW (1)

皆さんお久しぶりです。
「コミュ障ヘタレと9にんのアイドル」劇場版編に突入です。
合計で何話になるかは未定ですが恐らく完結するまでにそれなりの時間を要すると思いますので、今まで通りゆっくりと話を書いていきたいと思います。

それではコミュ障ヘタレとAqoursの新たな物語をお楽しみください。

*とんでもない打ち間違いがあったので訂正しました。


 ラブライブ決勝から数日後、浦の星女学院では卒業式も盛大に行われ俺達Aqoursはそれぞれの道へと進んだ。

 

 

 果南さんはダイビングのインストラクターの免許を取得するために海外へ。

 

 

 鞠莉さんはイタリアの大学に進学。

 

 

 ダイヤさんは東京の大学へ俺の実家から通うことに。

 

 

 1年生、2年生の6人は新たな学校でAqoursとしての活動を続ける。

 

 

 そして俺は……もう一度バスケと向き合うために。

 

 

 

 

 

 

 

 

 これはそんな俺達が新たな道に進む少し前の話だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 東京の実家に戻った俺は一緒に住むことになったダイヤさんの荷物の整理を手伝っていた。

 

 と言っても彼女は必要最小限の物しか持ってきていなかったので俺が手伝うことは彼女の部屋に荷物を運んでダンボールを開けることくらいだった。

 

 ダイヤ「これくらいで大丈夫ですわ。瑠惟さんありがとうございました」

 

 瑠惟「俺なんてほとんど何もしてませんよ」

 

 ダイヤ「……そういえば新しい学校の制服は届いてますの?」

 

 瑠惟「はい。俺達がここに着く前に両親が受け取ってくれてたみたいです」

 

 まぁあの2人は荷物一式を受け取ったら、すぐに海外に戻ってしまったからな。

 

 ダイヤ「少し着ているところを見てみてもよろしいですか?」

 

 瑠惟「いいですよ」

 

 新しい制服は俺の部屋のクローゼットにアイロンをかけた状態で掛かっていた。

 

 袖を通してみるとサイズもピッタリで着心地もかなり良かった。

 

 

 瑠惟「どうですか?」

 

 ダイヤ「はい。良く似合っていますわ。ですが……」

 

 微笑んでそう言ってくれた彼女は俺も目の前に立ち……

 

 ダイヤ「ネクタイはきちんと締めなければカッコ悪いですわよ」

 

 あまり上手く結べなかったネクタイをしっかりと整えてくれた。

 

 ダイヤ「これで大丈夫ですわ」

 

 瑠惟「ありがとうございます」

 

 ダイヤさんは部屋に掛けてある時計をちらりと見る。

 

 ダイヤ「夕食まで時間がありますし、新しい学校を見に行ってきてはどうですか?」

 

 確かに学校自体はパンフレットで見ていたが、実際に訪れたことは無かったな……

 

 瑠惟「そうですね。じゃあ少し見に行ってきます」

 

 ダイヤ「お気をつけて」

 

 

 

 

 

 

 俺が3年から編入することになった学校は家から電車で40分ぐらいと少し遠目だが浦の星のような坂が無いだけマシな方だと思う。

 

 どうやら数年前に新しく出来た新設校でありながら部活動に力を入れており、いくつかの部は全国大会に出る程だ。

 

 もちろんバスケ部も例外ではない。新設校ながらも昨年全国大会初出場を果たしたその実力は歴史のある強豪校と比べても何ら遜色はなかった。

 

 俺の後輩もバスケ部に所属してして、以前そこの監督にスカウトされたがスクールアイドルを理由に断ってしまい、どうしようか考えた時に鞠莉さんのお父さんが援助してくださり、再び俺を受け入れてくれることになった。

 

 そんな俺が春から通う学校の名前は……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──── 虹ヶ咲学園 ────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 校門の前に着くと部活終わりであろう生徒達が楽しそうに話しながら出ていく姿が見えた。

 

 浦の星女学院とは違い男子生徒の姿を見るのがとても新鮮だった。

 

 春休みでそこまで人が多い訳では無いが、千歌達が見ればびっくりするくらいの生徒が部活動に励んでいた。

 

 校舎も新設校なだけあって綺麗でボロ……伝統のある浦の星や音ノ木坂とはまた違った良さがあった。

 

 校内をウロウロしているとあるものを見つけた。

 

 

 

『スクールアイドル同好会』

 

 

 

 やっぱりここにもあるんだな。『部』ではなく『同好会』なのが何となく気になるが、もしかして俺達の時みたいに人数がいないとか? 

 

 

 ここで俺は立ち去ろうとするが、魔が差してドアノブに手を掛けてしまった。

 

 

 ガチャ

 

 

 開いてんじゃーん。

 

 中に入ると女子生徒が箒を持って掃除をしていた。

 

 

 

 

「あれ?もしかして見学の方ですか?」

 

 

 

 

 そう言って彼女は掃除の手を止め俺の元まで来てくれた。

 

 瑠惟「えぇ、そんな感じです」

 

そう答えるとどこか怪訝そうな目で俺を見てきた。

 

「・・・・・・見ない顔ですね。あなた本当にうちの生徒ですか?」

 

 瑠惟「今はまだですね。実は今年から編入することになった生徒なんです」

 

「へぇ・・・そうなんですか。でもどうしてここに?」

 

 瑠惟「学校を下見してたら『スクールアイドル同好会』の札を見つけて気になって立ち寄ったんです」

 

「もしかしてスクールアイドル好きなんですか?」

 

 瑠惟「まぁ、スクールアイドルとは少し縁があって」

 

「へぇ……。あっ私『優木せつ菜』っていいます」

 

 瑠惟「俺は西王瑠惟です」

 

 俺の名前を聞くと彼女は首を傾げた。

 

 せつ菜「『西王瑠惟』、あなたの名前……どこかで聞いたことがあるような……」

 

 俺は部屋に掛けられた時計を見るともうすぐ帰る時間だということに気づいた。

 

 瑠惟「おっともうこんな時間か。優木さん、俺そろそろ帰りますね」

 

 そう言うと俺は部屋を出て行った。

 

 

 

 

 

side せつ菜

 

私は不思議な来客が出て行った後、急いでタブレットを起動して彼の名前を調べた。

 

そして調べた結果やはり私の予想通り彼はすごい人物であることが確認できた。

 

 せつ菜「なるほど・・・やはりあの人は・・・。これは勧誘のしがいがありそうですね」

 

西王瑠惟さん・・・今年のラブライブ優勝グループAqoursのマネージャー。彼はきっと私のスクールアイドル活動に必要な人物となるでしょう。

 

 

 

 

 

 

 

 

side 瑠惟

 

 家に帰るとダイヤさんがエプロン姿で俺を出迎えてくれた。

 

 ダイヤ「おかえりなさい。どうでしたか? 新しい学校は?」

 

 瑠惟「ただいまです。そうですね、見ただけですけどとても良かったです」

 

 ダイヤ「それでは夕食にしましょうか」

 

 

 

 

 夕食をすませるとダイヤさんが俺に一通の手紙を渡してきた。

 

 瑠惟「これどうしたんですか?」

 

 ダイヤ「あなたが外に出ている時に速達で届いたのですわ。もちろん中身は見ていませんが、差出人が……」

 

 彼女から手紙を受け取り差出人を確認する。

 

 

 これは……鞠莉さんのお母さんからだ。

 

 

 小原家とは昔から交流があるがその中でも鞠莉さんのお母さんだけとはあまり会ったことがない。

 

 恐らく最後に会ったのは中学入学前……

 

 そんな人がなぜ手紙を? 

 

 封を開け、中を確認するとそこには衝撃的な内容が書かれていた。

 

イタズラにしてはあまりに笑えない。

 

 目を見開いて驚いた俺を見てたダイヤさんがどうしたのかと聞いてきた。

 

 ダイヤ「瑠惟さん、手紙には一体何が……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瑠惟「いや、何でもないですよ。両親は元気だとかそういうことが書いてありました」

 

 

 

 それを聞いてダイヤさんは少し安心したようだ。

 

 ダイヤ「全く……心配させないでください」

 

 瑠惟「あはは……すいません。ちょっとびっくりして。…………確かダイヤさんは明後日から果南さんと鞠莉さんと卒業旅行でしたよね」

 

 ダイヤ「はい。そうですわ」

 

 瑠惟「楽しんできてくださいね」

 

 ダイヤ「あの二人でなら嫌でも楽しくなってしまいますわ」

 

 瑠惟「違いないですね」

 

 ダイヤ「そういえば曜さんとは上手くいっていますか?」

 

 彼女はニヤニヤしながらそんなことを聞いてくる。

 

ラブライブ決勝の後、あんなことがあったが曜とは別に付き合ったわけではない。

 

強いて言うなら・・・

 

 ただの友達から少し進展したくらい……かな。

 

ダイヤ「曜さんは繊細ですから、どうか大切にしてあげてくださいね。」

 

そう言って彼女は自室に戻っていった。

 

リビングに1人ぽつんと座る俺・・・

 

聞こえるのはテレビから流れるニュースと外を走る車の音だけ。

『はぁ』っとため息をついて頭を抱えた。

 

心がどうしようもなく痛んでいたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺はダイヤさんに嘘をついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 速達で届いた手紙の内容がただの世間話なわけがない。

 

 

 

 

 

 この一通の手紙が後に大きな波乱を生み出す。

 

 

 

 

 

 俺はまだそんなことを知る由はなかった。

 

 

 

 

 

 

ダイヤさん達3年生が卒業旅行でイタリアへと旅立ってから数日。

 

俺はというとホームアローンを満喫していたわけではなく、とある場所でとある人物に会っていた。

 

 

 

 

瑠惟「お久しぶりですね」

 

「ハーイ。ワザワザコンナトコロマデアリガトウゴザイマース」

 

片言な日本語でそう返したその人物に少しイライラしていた。

 

瑠惟「呼び出した理由は分かってます。だからそんな話し方はやめてくれませんか?・・・・・・鞠莉のお母さん」

 

 

 

 

鞠莉ママ「あら?前に会った時はもう少し可愛げがあったのだけれど」

 

普通に喋れるんかい!

 

瑠惟「そちらもあんなバカげた内容の手紙を寄越すほど歳をとったようには見えませんけど」

 

俺の言葉で額に青筋が浮かぶ彼女を見て傍に控えていた使用人の顔から血の気が引いていく。

 

鞠莉ママ「『バカげた』とは一体どのことでしょう?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瑠惟「・・・鞠莉さんが結婚するってどういうことですか!」

 

 

バンッ!

 

 

俺は目の前のテーブルを思い切り叩き、上にあった紅茶の入ったティーカップがガタガタと音を鳴らし揺れた。

 

鞠莉ママ「瑠惟ったら鼻息がベリーハードですよ。それにここはホテル小原の一室ですからもう少し静かにしてください」

 

先日届いた手紙は鞠莉さんの結婚を知らせるものだった。

 

その件で俺は目の前の女性に東京からここ淡島まで呼び出されていたのだ。

瑠惟「あんな手紙送られて『はいそうですか。』と落ち着けますか?」

 

鞠莉ママ「あなたには悪いですけどこれはもう決定したことなのです」

 

決定したって・・・なんでそんなさらっと言えるんだよ。

 

瑠惟「相手はどんな人なんですか?」

 

鞠莉ママ「昔から小原家と交流がある家のご子息です」

 

政略結婚というやつか・・・ていうか

 

瑠惟「待ってください!鞠莉さん本人は何て言ってるんですか!?」

 

鞠莉ママ「あの子の意思は関係ありません。」

 

瑠惟「あなたの娘さんの人生を決める大事な選択ですよ!鞠莉さんの気持ちは関係ないって・・・それ本気で言ってるんですか?」

鞠莉ママ「あなたがなんと言おうとこれは決まったことです。ですが・・・それよりも今日あなたに来てもらったのはもう一つあります。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鞠莉ママ「卒業旅行に行ったっきり鞠莉と連絡が取れなくなりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瑠惟「へ?」

 

 

ちょっと何言ってるか分からないっす。

 

 

瑠惟「待ってください。鞠莉さんは今イタリアに・・・」

 

鞠莉ママ「えぇ。それは私も分かっています。でもあの子が旅立った翌日から電話をいくらかけても一切繋がりませんでした」

 

瑠惟「とりあえず俺が掛けてみます」

 

そう言って俺はスマホを取りだし鞠莉さんを呼び出すが・・・

 

瑠惟「繋がらない・・・」

 

鞠莉ママ「はい。私も何度も掛けているのですがこの通りです」

 

彼女はお手上げと言わんばかりに両手を上げた。

 

俺は何か方法がないかと考える。

 

 

瑠惟「・・・・・・」

 

 

あっ!ダイヤさんと果南さんに電話すればいいのか!

 

瑠惟「俺、鞠莉さんと一緒に旅行しているダイヤさんと果南さんに電話してみます」

 

すると鞠莉のお母さんは不機嫌そうな様子で俺に言った。

 

鞠莉ママ「また『ハグゥ』と『デスワ』なのですか!」

 

瑠惟「?」

 

ハグゥ?デスワ?一体なんのことだ?

 

疑問はとりあえず置いておいて2人に掛けてみるが電話には出なかった。

 

こうなってくると俺は嫌な予感が頭をよぎった。

 

瑠惟「鞠莉のお母さん。もしかしたら・・・3人は何か事件に巻き込まれたのかもしれません。急いで探さないと」

 

俺の心配をよそに彼女はこう返した。

 

鞠莉ママ「その心配はありません」

 

何を言っているんだこの人は!

 

瑠惟「何かあってからじゃ手遅れなんですよ!」

 

鞠莉ママ「もしそうなら私もとっくに捜索しています。ですが今回は何故連絡が取れないのかは大体見当がついています。」

 

瑠惟「だったら・・・」

 

鞠莉ママ「理由は分かっていてもあなたの言う通り何かあれば大変です。ですから探してきてほしいのです。あの子達を」

 

瑠惟「はい?何で俺なんですか?」

 

鞠莉ママ「理由は色々ありますが・・・あなた1人で探せとは言いません」

 

瑠惟「じゃあ一体誰が探すんですか?」

 

鞠莉ママ「あなたもよく知っている子達にお願いしようかと思っています。恐らくその子達は私の依頼を受けてくれると思います。だからあなたはその子達と協力してください」

 

大体事情は理解したが、いかんせん今から何をすればいいのやら・・・。

 

瑠惟「と、とにかく俺はどうすれば?」

 

鞠莉ママ「今から鞠莉の捜索をお願いしに行きましょう。目的の子達は沼津の海岸にいるらしいので」

 

沼津の海岸?もしかして協力を求める人っていうのは・・・

鞠莉ママ「あなたは先に行っててください。私は後から追いつきますから。」

 

瑠惟「沼津の海岸ですよね。分かりました。」

 

ということでホテル小原の人に目的の場所まで送ってもらった。

 

 

 

 

海岸に着いた俺は辺りを見回す。

 

俺が良く知ってる人って誰なんだ?

 

そう思いながら歩いていると少し向こうで何かが聞こえた。

 

これは・・・Aqoursの曲?

 

まさか・・・鞠莉さんのお母さんが言ってた人達って!

 

俺が曲が聞こえる方に走るとそこにいたのは・・・

 

やっぱりAqoursだ!

 

それにSaint Snowもいるじゃないか!一体どうして・・・

 

あとAqoursと一緒にいるあの女の子は誰だ?

 

俺は彼女たちにバレないくらいの距離まで近づき物陰から様子を伺った。

 

 

 

 

ー Side 千歌 ー

 

浦の星の最後の卒業式が終わり、私たちは新しい道へ進み出した。

 

Aqoursの方は3年生や瑠惟君に続けてほしいと言われ、また私たちも続けていきたいと思っていた。

 

でも、いざ今までAqoursの活動を支えていた3年生や瑠惟君の4人がいなくなると何だか・・・・・・

 

そんな時に私たちは統合先の学校で生徒会長をやっている曜ちゃんの従姉妹の渡辺月ちゃんから浦の星の生徒が向こうの生徒の保護者にあまりよく思われてないことを知った。

 

月ちゃん曰く、統合先の学校は部活動が盛んで全国大会に出場する部も珍しくなく、そんなところに私たち浦の星の生徒が来たら部の空気が緩んだりして支障が出るんじゃないかって保護者たちから声が挙がったらしい。それで今のところ浦の星の生徒は分校で離れて授業を受けることになった。

 

私たちはそんなことないって言ったけどそれだけでは保護者たちは信じてくれないらしい。

 

だから向こうの学校でラブライブで優勝したAqoursがパフォーマンスを披露したんだけど・・・

 

 

 

 

結果から言うと今までみたいなキラキラしたパフォーマンスはできなかった。いつもは3年生と一緒に9人でステージに立って、どこかで瑠惟君が見てくれてるっていう安心感があったんだけど、いざ6人でステージに立つと私たちは言葉にできない不安を感じちゃって・・・

 

月ちゃんからはやっぱり分校で様子を見たいって言われた。

 

それから私たちは偶然こっちに来てたSaint Snowさんに今の『私たち』を見てもらうことになった。

 

 

 

 

 

曲が終わり私たち6人は目の前に座る2人の総評を待った。

 

聖良「なるほど・・・今のあなたたちのパフォーマンスは大体分かりました」

 

千歌「・・・どうでしたか?」

 

聖良「そうですね・・・ラブライブ決勝の時のあなたたちのパフォーマンスを100点とすると・・・今のあなたたちは良くて40点といったところです」

 

花丸「半分もないずらぁ!?」

 

聖良「正直に言わせてもらうと今のあなたたちのパフォーマンスにはどこか気持ちが入っていないと思いました。

・・・ですがそれ以上にAqoursから抜けた4人の力が大きかったとも感じました。果南さんの圧倒的ダンス力に鞠莉さんの美しい歌声、ダイヤさんのバランスの取れたパフォーマンス。そしてAqoursの精神的支柱であった瑠惟さんのマネジメント力。

それだけこの4人はAqoursにとって重要な存在であったと言えますね」

 

理亞「今まであの4人に頼りすぎてたんじゃないの?」

 

 

 

全員「!」

2人の言葉にはっとさせられた。

 

理亞「その様子だと図星みたいね」

 

本当はすぐにでも理亞ちゃんの言葉を否定したいけど・・・

 

みんなが俯いている様子の通り私たちは彼女に言い返すことができなかった。

 

それは果南ちゃん、鞠莉ちゃん、ダイヤちゃん、そして瑠惟君に頼りすぎていたということを肯定するものだった。

 

そんな時だった・・・

 

ルビィ「でもルビィ達は一体どうすれば・・・」

 

隣に立っていたルビィちゃんからそんな言葉がポロリと漏れた。

 

それを聞いた理亞ちゃんは・・・

 

 

 

 

 

理亞「どうすればって・・・人に聞いたって分かることじゃないでしょ!・・・・・・姉様達はもうスクールアイドルじゃないの!」

 

 

 

 

そう言って彼女はどこかへ行ってしまった。

 

 

聖良さんはそんな理亞ちゃんを追いかけることなく私たちに話した。

 

聖良「実は理亞もあなた達と同じようにスクールアイドルを続けようとしていたんですけど・・・。どうやら新しく一緒にやろうって言ってくれた子達と上手くいっていないみたいで。」

 

そうだったんだ・・・。

 

理亞ちゃんも私たちと同じように悩んでいたんだ・・・。

 

一人で頑張っていたんだ・・・。

 

それなのに私たちは・・・。

聖良さんの話を聞いたルビィちゃんは理亞ちゃんを追いかけようとするが、「その必要はありません」と止められた。

 

聖良「今は理亞もあなた達Aqoursも色んなことに悩んでしまう時期だと思うんです。新体制で始めるというのはそういうものなんですよ。だから・・・」

 

彼女がそこまで言ったところで何かが近づいてくる音が聞こえた。

 

聖良さんもそれに気づいたようで話をやめて音の正体を探った。

 

この音は・・・

 

海岸にいる私達に近づく音の正体は・・・!

 

 

 

いつか見たホテル小原の自家用ヘリだった・・・。

 

もしかしてあの中に鞠莉ちゃんが・・・!

 

ヘリの扉が開き中から顔を覗かせたのはなんと・・・

 

「ハロー!Daughterがいつもお世話になってます!マリーのMotherです!!」

 

鞠莉ちゃんのお母さんだった。

 

 

 

 

 

side 瑠惟

 

Aqoursのパフォーマンスを陰から見て俺は思った。

 

あいつら一体どうしたんだ?

 

いや、なんだろうこの感覚・・・ただ一つ言えるのは今のAqoursを見てもラブライブ決勝の時のような輝きを感じなかった。

 

同じくパフォーマンスを見ていたSaint Snowの二人もどこか釈然としない様子だった。

 

『どうしたんだ?』と目の前で言いたい・・・。でも出るタイミングが見つからないんだよなぁ。

 

 そう思ってる間にもSaint Snowの二人は厳しい意見を六人に伝えている。

 

 しかもなんか俺がめっちゃ褒められてるんですけど。まぁ嬉しいからいいか。

 

 すると突然理亞ちゃんが大きな声を出してこっちの方向に走ってきた。

 

 彼女とすれ違った瞬間に分かった。

 

 その目には涙が浮かんでいた。

 

 それに気が付いた俺はすぐに追いかけようとしたが足が止まった。

 

 おいおい・・・随分と派手な登場ではありませんかねぇ?

 

 大量の砂を巻き上げながらカタコトの日本語で挨拶をする鞠莉ママがヘリから顔を覗かせていた。

 

 

 

 

 

 




毎話これぐらいの長さになると思うので次話の投稿までしばしお待ちください。


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コミュ障ヘタレ OVER THE RAINBOW (2)

劇場編第二弾です。今回はイタリア出発までを書きました。

あと鞠莉ちゃんのお母さんの呼び方をどうしようか迷ってます。

名前を付けるか、鞠莉ママでいくのか・・・。今回は「鞠莉ママ」で表記していますが要望があれば名前を付けるかもしれません。


 鞠莉のお母さんがヘリから降りてAqoursのみんなに挨拶をする。

 

 鞠莉ママ「それでは改めまして……いつも娘がお世話になっております。小原鞠莉の母です」

 

 みんなに向かってぺこりと一礼をし、ちらりと隠れている俺の方を見た。

 

 鞠莉ママ「こんなところで立ち話をするのもなんですから、淡島の方へ行きましょうか。そちらの方々もどうぞ」

 

 彼女は聖良さんと謎の少女にもそう言った。

 

 恐らく俺もついていかなきゃいけないな。

 

 そう思いながら俺はみんなの後を追った。

 

 

 

 場所は変わってホテル小原のホール会場。時々イベントが開催されるくらい広い場所だ。

 

 俺は会場の端でバレないように身を潜めている。いや、なんで隠れてるんだろうか? 別に出てきても良くない? 

 

 Aqoursのみんなは最前列の座席に座り、他の人もその近くに座っていた。

 

 鞠莉ママの話では『鞠莉さんたち三年生と連絡が取れなくなったこと』、『彼女たちがイタリアに卒業旅行に行ったこと』を伝えた。もちろん結婚の話は一切していない。

 

 彼女がある程度話し終わったところで千歌から質問が出た。

 

 千歌「あの~私たちはどうすれば……」

 

 それを聞くと待っていましたと言わんばかりに鞠莉ママの口角が上がった。

 

 鞠莉ママ「はい、皆さんにはあの子たちを探すのを手伝ってほしいのデ~ス!」

 

 ざわざわと驚きの声が溢れた。

 

 鞠莉ママ「もちろんただでとは言いません。皆さんの旅費はこちらでお出しいたしますし、見つけていただけたらそれなりのお礼もさせていただきマ~ス」

 

 おぉとみんなが盛り上がる中、ふと冷静になった梨子がこう言った。

 

 梨子「でも私たち6人だけでイタリアを探すのは大変かも……」

 

 それを聞き逃さなかった鞠莉ママはこう答えた。

 

 鞠莉ママ「安心してください。みなさんの他にも捜索に協力してくれる人物がいます」

 

 Aqoursのみんなは考えるが誰なのか見当がつかない。

 

 鞠莉ママ「それではご紹介します。みなさんもよく知っているあの方です。……前に来てください」

 

 するとさっきまで明るかった会場が暗くなり、通路だけがうっすらと光を放った。

 

 演出の一環なのだろう。さすがは小原家だと思いながら俺は席を立ちゆっくりと前に出た。

 

 俺が一番前までたどり着くと会場が再び明るくなりその姿がみんなの視界に入った。

 

 

 

 

 瑠惟「久しぶり。元気でやってるか?」

 

 

 

 みんなの顔が驚きの色に染まり、少しの間誰も声を出せなかった。

 

 そんな中で声を上げでたのはあの子だった。

 

 曜「瑠惟君……どうしてここに?」

 

 その目には涙が浮かび、声もどこか震えていた。

 

 瑠惟「まぁなんだ……俺もこの人に三年生の捜索を頼まれたんだ」

 

 徐々にみんなの頭の処理が追いつき、やがて俺の方へみんなが駆け寄ってきた。

 

 梨子「おかえりなさい。まさかここで会えるなんてね」

 

 花丸「先輩~! 会いたかったずら!」

 

 みんな笑顔で再会の喜びを言葉にする。

 

 もう少しこうしていたいが、Aqoursだけでなくこの人たちにも挨拶しないとな。

 

 瑠惟「お久しぶりです。聖良さん、理亞ちゃん」

 

 そう言うと二人は笑顔を見せてくれた。

 

 あとは……

 

 瑠惟「えっと……はじめまして、Aqoursの元マネージャーの西王瑠惟といいます」

 

 先程から気になっていた少女に自己紹介をした。

 

 するとその子は……

 

「あっ! 君が瑠惟君だね! はじめまして! 私は渡辺月です!」

 

 渡辺……えっ? まさか曜の兄弟? でも曜は一人っ子だったような。

 

 曜「月ちゃんは私の従妹なんだよ」

 

 なるほどね。

 

 月「君のことは曜ちゃんからよく聞いてるよ! いつも優しくて憧れてるって。それでもう付き合ってるの? まさかもうキスはしちゃったとか?」

 

 えぇ……何この子。すんごくプライベートなこと聞いてくるんだけど。

 

 曜「ち、ちょっと月ちゃん! 変なこと言わないでよ///」

 

 月「私のことは気軽に月って呼んでね! よろしく!」

 

 瑠惟「よろしく……」

 

 差し出されたその手を困惑しながらも俺は握った。

 

 鞠莉ママ「それではみなさん協力してくれるということでいいですね?」

 

 瑠惟「はい」

 

 即答した俺だったが、Aqoursの面々はどこか決断を出せずにいる。

 

 そんな雰囲気を変えたのは彼女の言葉だった。

 

 聖良「行ってみてはどうでしょうか?」

 

 千歌「聖良さん……」

 

 聖良「今の皆さんに必要なのは三年生のいなくなったAqoursをどうしたいか決めることだと思います。このまま続けていくのか、それとも……。どちらにせよ三年生や瑠惟さんと話してみることで何かが見えてくるのではないでしょうか。だから私は行くことを勧めます。それに瑠惟さんがいればどこに行っても何とかなりそうな気がしますし」

 

 彼女の言葉に俺は続けた。

 

 瑠惟「実はさっきみんなが踊ってるところを見せてもらったんだが、正直に感想を言うと俺は心配になった。なんだろ……うまく言葉にできないけど、みんなの心に不安が見えたんだ。三年生の三人がいなくなって戸惑う気持ちと何かに焦っている気持ちが遠くから見ている俺にも伝わった。だからさイタリアに行って俺たちみんなで話そうぜ。不安なことややりたいこと、Aqoursみんなの気持ちをさ」

 

 少しの静寂が流れ目の前の少女たちはお互いに顔を見合わせて頷いた。

 

 千歌「分かった! みんなで行こう! イタリアに! そして鞠莉ちゃんたち三年生に会いに行こう!」

 

 瑠惟「そういうことです。俺たちイタリアに行きます」

 

 鞠莉ママ「それはとても助かりマス」

 

 そう喜ぶ彼女は不気味なくらい明るい笑顔を浮かべていた。

 

 その表情を見て俺は何とも言えない違和感を感じた。

 

 

 

 

 イタリアへの出発が決まると俺は準備のために一度東京の実家へ帰ることにした。

 

 帰る際にSaint Snowの二人も東京に行くと言ったので折角だから一緒に戻ることになった。

 

 帰りの電車で並んだ俺達は久しぶりの再会で思い出話に花が咲いた。

 

 ふと気づくと理亞ちゃんがスゥスゥと寝息を立てているのに気が付いた。

 

 どうやら疲れて眠ってしまったようだ。

 

 するとおもむろに聖良さんがこう言ったのだ。

 

 聖良「実は理亞のスクールアイドル活動が上手くいっていないみたいです」

 

 瑠惟「はい、さっきAqoursのみんなと話しているのが聞こえたので何となく理解してます」

 

 彼女は再度理亞ちゃんが寝ているのを確認すると話を続けた。

 

 聖良「私は理亞のスクールアイドル活動を心から応援していますし、できることがあるならどんなことでも協力するつもりです。ですが、今の理亞を見ていると本当にあの学校が彼女に合っているのかと私は疑問に思います」

 

 瑠惟「それはどういう意味ですか?」

 

 聖良「理亞のスクールアイドルに対する情熱は私以上といっても過言ではありません。ですが逆にその情熱があの子を孤独にさせてるのではないかと思うんです」

 

 彼女の言う通りだ。理亞ちゃんは本気でスクールアイドル活動に励み、誰よりも本気でラブライブ優勝を目指している。準優勝なんかで満足する子じゃないっていうのは別グループである俺でも分かる。だから彼女の周りにはそんな本気についてこれる子が少ないのではないか。そう思ってしまうのもしかたない。

 

 すると聖良さんは隣に座る俺に寄りかかってきた。

 

 え? どうしたの? 

 

 戸惑う俺に彼女は弱々しく答えた。

 

 聖良「すいません。私……理亞の状況を分かっていながら何もできないうえに誰にも相談できなくて……。あの子の姉なのに……私悔しくて……」

 

 泣きそうになって震える彼女の肩を優しく抱き寄せた。

 

 瑠惟「聖良さんの気持ち分かります。ですが今は理亞ちゃんを信じましょう。Aqoursのみんなが変わろうとしているのと同じように理亞ちゃん自身も変化を起こそうと必死で動いてるんです。温かく彼女を見守って、本当に困っているなら一緒に乗り越えてあげましょう。何かあれば俺も協力しますから。だから今は……」

 

 聖良「そうですね……。今は理亞を見守るのが姉としてできる一番のことだと思います。ありがとうございます。ですが……」

 

 

 ん? 

 

 

 聖良「やっぱりあなたはずるいです。そういう優しくて温かいところ……」

 

 紅く染まった頬を隠すように俯いて彼女はそう呟いた。

 

 瑠惟「あの……俺は別に……」

 

 この人可愛すぎでしょ。平然を装いながらも内心は結構ドキドキしている。

 

 聖良「もし私に何かあったら……」

 

 そして彼女は顔を上げ俺の耳元で……

 

 

 

 

 

 

 

「責任取ってくださいよ///」

 

 

 

 

 

 

 そこから東京に着くまでのことはよく覚えていない。

 

 気付いたら俺たちは電車から降りていて目の前には顔を赤らめた聖良さんと未だに眠そうな理亞ちゃんが立っていた。

 

 あれからのことを聞いたが聖良さんは「忘れてください……」というばかりで何も教えてくれなかった。

 

 まぁいっか。

 

 聖良「それでは私たちはこれで失礼します。今日はありがとうございました」

 

 理亞「ありがとね兄様。また会いましょ」

 

 瑠惟「こちらこそ久しぶりに話ができて楽しかったです」

 

 聖良「イタリアでも頑張ってください。応援してますから」

 

 瑠惟「はい、頑張ります。では……」

 

 

 

 

 家に帰った俺は早速荷造りを始めた。出発は2日後だったので早く準備を始めたかったのだ。

 

 だがそれと同時にある疑問が頭が離れなかった。

 

 あの時の鞠莉ママの何かを企んでいるような不気味な笑顔。それに何故俺にだけ結婚を知らせる手紙が届いたんだ? 

 

 いくら家族ぐるみで仲が良いといっても娘の結婚の報を身内でもない俺に知らせる必要がある? 鞠莉ママは俺の両親が海外に出ていることは知っているからあの手紙は間違いなく俺宛だ。

 

 俺はあの手紙を見返すことにした。

 

 引き出しから手紙を出して再度中身を読む。

 

 手紙の本文にはこう書かれていた。

 

『小原家長女の小原鞠莉はこの度縁があり入籍する運びとなりましたことを報告させていただきます』

 

 何度もこの文章を読み返したが特におかしな点はなかった。

 

 だがこの手紙は何かがおかしい。

 

 そう思い視線を手紙の端の方にやるとあることが書かれており、俺はこれが違和感の正体であることに気付いた。

 

 

 

 まさか……そんな……鞠莉さんは……

 

 

 

 

 

 

 

 翌日俺は虹ヶ咲学園に来ていた。

 

 理由は簡単。生徒手帳用の写真撮影や編入生の健康診断を行うためだ。

 

 といっても今年の編入生は俺と留学生・転校生の女子二人の計三人らしいので時間はかからなかった。

 

 それにしても他の編入生の女子は個性的だったな。一人は外国人でめっちゃスタイルが良くて、もう一人はなんか枕を持ってて眠そうだったし。

 

 用事も終わったので帰ろうとしたが、ふと以前ここに来た時のことを思い出して俺はまたスクールアイドル同好会の部室へと立ち寄った。

 

 ドアの前に立ち三回ノックをすると中から返事が聞こえたので「失礼します」と言いながらドアを開けた。

 

 部室には前と同じく優木さんがいて俺を見ると「あなたは……」と少し驚いていた。

 

 せつ菜「西王瑠惟さんでしたね。本日はどうされたんですか?」

 

 瑠惟「今日は健康診断とかあってこちらに来ていたので……」

 

 せつ菜「そういえば今日は編入生の健康診断の日でしたね。立ち話もなんですからどうぞ座ってください。今お茶でも出しますから」

 

 彼女に案内されるままに俺は適当な席に着いた。

 

 しばらくして彼女がティーセットを持ってくると俺は気になっていたことを聞いた。

 

 瑠惟「この同好会って優木さんの他に誰かいるんですか?」

 

 そう聞くと彼女は少しばつが悪そうな顔で答えてくれた。

 

 せつ菜「恥ずかしい話ですが私以外は……」

 

 おっと今のは聞いちゃいけないやつだったか。

 

 瑠惟「すいません。変なこと聞いちゃって」

 

 せつ菜「いえいえ大丈夫ですよ。それに今年はきっと色んな方が入部してくれそうな気がするんです」

 

 俺に目配せしながら語る優木さん。どうかがんばってください。

 

 せつ菜「ところで話は変わるんですが、西王さんはAqoursというスクールアイドルをご存じですか?」

 

 おぉもしかしてこの子Aqoursのファンなのか。

 

 瑠惟「はい、大ファンなんですよ。優木さんも好きなんですか?」

 

 せつ菜「もちろんですよ。日本中のスクールアイドルにとってAqoursは憧れです。でも私はAqoursのマネージャーさんのファンでもあるんですよ」

 

 え? それ俺じゃね? 目の前にいるんだけど。

 

 瑠惟「はぁ……」

 

 せつ菜「私もAqoursを見て思ったんですよ。あんな素敵なマネージャーさんがいてくれたらなぁって」

 

 この子本気で言ってる? いや、気づいてないのか? 

 

 せつ菜「そのマネージャーさんの名前……西王瑠惟っていうんですよ。もしかしなくてもこの方って今私の目の前にいるあなたですよね」

 

 やっぱり気付いてるじゃん。

 

 瑠惟「まぁそうなりますね。・・・では改めて。この度浦の星女学院から来ました。Aqoursの元マネージャーの西王瑠惟です」

 

 そう言うと優木さんは納得したように首を縦に振った。

 

 せつ菜「やはりそうでしたか。以前あなたと会った後に調べてそうかなと思っていました。それにしてもどうしてこの学校に?」

 

 瑠惟「実は浦の星は統廃合になって俺は実家のある東京の学校に通うことになったんです」

 

 ラブライブ優勝校が統廃合したという嘘のようなことを聞いて驚く優木さん。

 

 せつ菜「浦の星が統廃合!? ではAqoursは解散したのですか?」

 

 瑠惟「いや、Aqoursは別の学校で続けてくれると思う」

 

 俺の返答に優木さんは首を傾げた。

 

 せつ菜「なんだか含みのある言い方ですね」

 

 瑠惟「Aqoursは俺や三年生が抜けて六人になったんだがどうも新体制になってから上手くいっていないみたいで、今度元メンバーを含めた10人で話し合いをする予定なんです。これからどうしていくのか」

 

 せつ菜「私は……Aqoursの皆さんには活動を続けてほしいです。ラブライブや動画でAqoursを見るたびに私は元気づけられ勇気をもらいました。たとえ人数が変わってもAqoursはAqoursのままなんです。三年生の方が引退されたからといってゼロにはなりません。積み上げてきた一つ一つがAqoursを形作っていると思います。それは西王さんも分かってると思います。あ……すいません、部外者の私がこんなことを言ってしまって」

 

 俺は優木さんの言葉に聞き入ってしまっていた。

 

 瑠惟「優木さんの言う通りだと思います。Aqoursは俺達がいなくなってもAqoursであり続ける。それは俺があいつらと過ごした一年で身をもって学んできました。それに優木さんは部外者なんかじゃありません」

 

せつ菜「え?」

 

 瑠惟「俺たちAqoursにとって優木さんを含めたファンの人たちもAqoursなんです。11人目のメンバーであり、その繋がりは決して切れるものではない。ファンの人たちがいるから俺たちは頑張ってこれたし、たくさん支えてもらった。だから部外者だなんて言わないでほしいです。大切な仲間ですから。」

 

せつ菜「なるほど・・・Aqoursがラブライブで優勝できた理由は曲とパフォーマンスだけじゃないっていうのがあなたの言葉を聞いて理解しました。」

 

瑠惟「それはどうも。」

 

すると優木さんは少し考える動作をして俺にこう言った。

 

せつ菜「あなたがこの学校に来たのもスクールアイドル同好会にたどり着いたのも何かの縁です。西王瑠惟さん、スクールアイドル同好会に入って私のマネージャーになってくれませんか?」

 

まさかの勧誘でした。ていうかこの流れSaint Snowの時にも体験したような・・・。

 

まぁでも・・・答えは決まってる。

 

瑠惟「優木さん、悪いけどその提案は受け取れないです。この学校には自分の夢を叶えにきたんです。」

 

申し出を断ると彼女は肩を落としたがすぐに戻った。

 

せつ菜「夢ですか・・・?」

 

瑠惟「実はマネージャーになる前はバスケをやってたんですけど、とある理由で離れてしまったんです。でもその後スクールアイドルのマネージャーになってみんなと一緒に夢を追いかけていくうちに自分の夢にもう一度向き合おうと決めたんです。だから俺はマネージャーにはなれません。・・・・・・ですがスクールアイドル同好会には入部します。やっぱりスクールアイドルは俺の一部ですから。それに優木さんを見てるとまた奇跡が起きるんじゃないかってそんな気がします。」

 

せつ菜「そうですか・・・マネージャーになれないのは残念ですが、入部してくれるのは嬉しいです!ありがとうございます!」

 

瑠惟「ではこれからよろしくお願いします」

 

 彼女の前に俺は手を差し出す。

 

 せつ菜「はい!こちらこそよろしくお願いします!」

 

 俺たちは固い握手を交わし入部を誓うのだった。

 

 それからしばらくここで時間を過ごし、頃合いもいいので部室を後にしようと席を立つと・・・

 

 せつ菜「あ、そうだ。西王さん、帰る前に良ければ連絡先を交換しませんか?」

 

 俺はその申し出を快く受け取り彼女と連絡先を交換した。

 

 せつ菜「何かあればいつでも連絡してください!それと・・・がんばってくださいAqoursのこと」

 

 瑠惟「ありがとうございます。ではこれで失礼します」

 

 彼女の見送りを受けて俺は部室と学校を後にした。

 

 

 

 

 

 そしてイタリア出発当日、俺は東京の空港で千歌たちと合流した。

 

 イタリアへは千歌たちに加え先日会った曜の従妹の月も一緒に行くことになった。

 

 なんでも彼女は幼いころにイタリアに住んでいたらしく、現地の案内をしてくれるそうだ。これは心強い。

 

 俺たちが乗る便の搭乗ゲートが開き、みんなが飛行機に乗り込む。

 

 みんなの一番後ろにいる俺はチケットと共に別の紙を持っている。

 

 そう、鞠莉さんの結婚について書かれた例の手紙だ。

 

 必要になるかと思い家から一緒に持ってきたのだ。

 

 目を閉じて手紙がくしゃくしゃにならない程度に強く握る。

 

 

 ・・・鞠莉さん、ダイヤさん、果南さん、絶対に探し出して見せますから待っててください。

 

 

 千歌「瑠惟君、何してるの?早く行くよ。」

 

 中々こちらに来ない俺に気付いた千歌が俺に呼び掛けた。

 

 瑠惟「あぁ、すぐに行く。」

 

 さぁ、楽しい楽しい旅の始まりだ。

 

 




劇場版編のくせに虹学メンバーを出していますが、この話は虹ヶ咲学園編が始まる前の話という立ち位置なのでお許しください。


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番外編
コミュ障ヘタレの休めない休日 前編


お待たせしました。今回の番外編ですが、前編後編に分けています。
番外編ということで内容がメチャクチャです。許してね。
一応時系列は『コミュ障ヘタレは未熟な彼女たちの成長を夢見る』の後の話となっています。
あくまで番外編なので本編に影響しない程度に繋げています。



皆さんは女性が家に来てくれたら嬉しいですか?それも女子高生が。

 

普通はうれしいですよね!

 

でも、九人の面倒くさい女子高生が来たらどうでしょうか?

 

例えば・・・部屋を荒らしたり、勝手に冷蔵庫の物を漁ったり・・・

 

うぅ・・・考えただけで思いやられます。

 

でも・・・

 

みんな可愛いから良いんですけどね!

 

事の発端はある会話から始まる。

 

「すまない。もう一回言ってくれ。」

 

「だから、瑠惟君の家に行きたいの!」

 

時は夏休み、Aqoursは日々練習に励み、明後日からしばらく休みにしようということになった。休みというのは本来休むためにあるのだがそんな常識が通じないのが千歌たちである。

 

「それは分かってるが、Aquors全員でか?」

 

「そうだよ!ねぇーいーでしょー。」

 

「無理。九人も入んねーよ。」

 

「そこを何とか・・・。」

 

「ていうか何で家に来る必要がある?」

 

「だって東京行けるし、ホテルとかに泊まったらお金かかるからいっぱい遊べなくなるし。」

 

「・・・・・・」

 

「船長!私も行ってみたいであります!」

 

千歌と曜、お前ら前々から企んでたな?

 

「私も気になる。」

 

「梨子はいいぞ。」

 

「え?何で梨子ちゃんだけなの!!」

 

「だって静かだし。千歌たちみたいに荒らさないし。」

 

梨子ちゃんならいつでも来てくれてもいいんだよ。

 

むしろ来てください。

 

「まるたちも先輩の家に行きたいずら。そしておいしい物をいっぱい食べさせてもらうずら!」

 

「ル、ルビィも・・・」

 

「このヨハネが我がリトルデーモンの居城に降臨してあげるわ。」

 

「善子は来なくていいぞ。」

 

「善子じゃなくてヨハネ!」

 

あ〜もうめちゃくちゃだよ。

 

「マリーも行きたいなー。」

 

「あなたは昔に何回も来てるでしょ。」

 

「私はみなさんが行くのなら心配なのでついて行きますわ。」

 

「ダイヤさんも行きたいんでしょ?」

 

「そ、そんなことはありませんわ!/////」

 

すると後ろから柔らかい衝撃が来た。

 

「な、なんですか果南さん。離してください。」

 

「瑠惟が行っていいよって言うまでハグする。」

 

これはもう仕方ないな・・・

 

「分かりましたよ。いいですよみなさん来ても。」

 

「「「「「「「「「やったーー!」」」」」」」」」

 

とりあえず家の掃除とベッドの下に隠している男子なら誰でも一つはあるであろう秘蔵コレクションをどこかに移さなければ。千歌と曜の奴は絶対に部屋を漁る(確信)。もし見つかれば・・・静岡に帰れないだろう。

 

ということなので家に帰った後、すぐに志満さんたちに事情を説明して、その日の内に実家に帰った。

 

 

 

ー 東京 ー

 

久しぶりに帰ったな・・・

 

もちろん家には誰もいない。はずだった・・・

 

家に明かりがついていたので珍しく母さんか父さんが帰っているのだろうと思った。しかも何か作っている匂いがするので誰か料理でもしているのかと思った。でも両親には帰ることは言ってないんだよな。

 

「ただいま〜」一応言ってみる

 

「あら、おかえりなさい。」

 

ん?この懐かしい声は・・・

 

「ことりさんのお母さんですか?」

 

「久しぶりね瑠惟。」

 

この人は元μ'sのメンバー南ことりの母である。年齢不詳。

 

「なんで、人の家にいるんですか・・・」

 

「あら折角、疲れているだろうと思って晩御飯を作りに来てあげたのにその言い草はないんじゃない?」

 

「あなたに帰るとは言った覚えがないんですが・・・」

 

「それなら鞠莉ちゃんのお父さんから連絡をいただいたわ。『娘の大切な瑠惟君が今日実家に帰るので何か作ってやって欲しい』って。」

 

「そう言えば、浦の星女学院と音ノ木坂女学院って姉妹校でしたね。どうりで。」

 

「あなたがいるってことはもしかして・・・」

 

「えぇ、ことりもいるわよ。」

 

「デスヨネー。」

 

「ことりならリビングにいるわよ。」

 

「ご飯はもう少しでできるから待っててね。」

 

リビングに入るとそこには言った通り彼女がいた。

 

「あ!瑠惟君、おかえり〜。久しぶりね。」

 

あぁ脳がとろける〜。

 

いかんいかん、冷静になるんだ。

 

「お久しぶりです。ことりさん。」

 

「大きくなったね。今、高校二年生だっけ?」

 

「はい。おかげさまで。」

 

「今日は瑠惟君が東京に帰ってくるって聞いて急いで帰ってきちゃった。ホントは穂乃果ちゃんたちも一緒に来るつもりだったけどみんな急な事で予定が合わなくて・・・でも、ことりがいれば十分だよね?」

 

「いや、あの人たちは連れて来なくていいですよ。酔っ払ったら本当に面倒くさいので。」

 

そう、ことりさんは少々のヤンデレ要素を含んでいる。変に刺激してしまうとほんとに怖い事になる。それでも優しくて素敵な人なので一緒にいても嫌にならない。

 

「あなたたちご飯が出来たわよ。」

 

「「は〜い。」」

 

 

 

「「「いただきます。」」」

 

この人の料理を食べるのは何年ぶりだろう?

 

「うまい!」

 

「そう言ってもらえると嬉しいわ。」

 

「浦の星女学院での生活はどう?うまくいってる?」

 

「えぇ。なんだかんだ毎日楽しく暮らしてますよ。」

 

「瑠惟君、女子校に共学試験生として入ったんだよね?彼女とかはいるの?」

 

「いやいや、いませんよ。見ての通りモテる男ではありませんから。」

 

「え?そうなの?鞠莉ちゃんのお父さんからはスクールアイドル部のマネージャーになってハーレムを築いているって聞いたけど・・・」

 

この人は余計な事を・・・。敢えてその話題は避けてたのに。

 

「瑠惟君」

やべぇ。ことりさんヤンデレモード入っちゃった。

 

「それ本当なの?」

 

「す、スクールアイドル部のマネージャーは事実ですけど、ハーレムは築いていませんよ。」

 

「そう。なら良かった。瑠惟君はことりだけの人なんだから♡」

 

本当にそう思ってるなら振り上げているフォークを下ろしてください(切実)。

 

「と、とにかくちゃんとやってますよ。だから安心してください。」

 

それから三人で楽しく過ごした。

 

途中、ことりママが失言したりして命の危機は感じたが・・・

 

「今日はありがとうございました。良かったらまた来てください。今度はμ'sのみなさんも一緒に。」

 

「うん!ことりも楽しかったよ!じゃあねおやすみ!」

 

「瑠惟、頑張りなさいよ。いろんな意味で。」

 

「はいはい。分かりましたよ。」

 

「では、おやすみなさい。」

 

たまにはこういう過ごし方も悪くないな。

 

今日はもう寝て、明日部屋の片づけをしよう。

 

 

 

ー 翌朝 ー

 

やっぱり自分のベッドで寝るのは気持ちいいな。

 

まだ時間も早いがお片付けといきますか。

 

というか、ことりさんたちはどこで家の鍵を手に入れたんだ?

 

この分だと家族に関わった人間はみんな持ってそうだな。何それ怖い・・・

 

家の中も妙に片付いてるし。

 

まぁ考えても仕方ないか。

 

とりあえず片付けを続けよう。

 

片付けをしている内に昼になった。

 

今頃みんなは練習中かな。

 

自分は部屋を片付けるという名目で休んでいる。

 

こんなに落ち着いた日はいつぶりだろうか。

 

お腹もすいてきたしそろそろ昼ご飯にしよう。

 

そうだな・・・ラーメンでも食べに行こうかな。

 

 

 

ということでやって来ました『ラーメン〇朗』

 

ここに来るのも久しぶりだな。

 

「いらっしゃい!1名様で?」

 

「はい。あ、カウンターで大丈夫です。」

 

席に座り、買った食券を渡す。

 

「小の麺固めで。」

 

「少々お待ちください!」

 

懐かしいな。ここには頻繁に連れていってもらったな・・・

 

あの人たちは元気にしてるかな?

 

そんなことを思っていると・・・

 

「あ~!瑠惟君だにゃ!」

 

「え!ほんと!?」

 

「見間違いでしょ凛。」

 

この口調に、この返しは・・・

 

もしかして本当に来ちゃった!?

 

「凛さん!花陽さん!それに真姫さん!?」

 

「久しぶりだにゃ~!」

 

「お久しぶりですね。それよりまだ猫キャラだったんですか?」

 

「猫キャラ言うな!」

 

この人はμ’sのメンバーの一人、星空凛さん。

 

「瑠惟君久しぶりだね・・・」

 

「そうですね。花陽さん。また会えて嬉しいです。」

 

「ありがとう・・・」

 

こちらもμ’sのメンバー小泉花陽さん。

 

「瑠惟、ひ、久しぶりね。」

 

「真姫さん、今日も綺麗ですね。」

 

「もう、イミワカンナイ////」

 

こちらもμ’sのメンバー西木野真姫さん。

 

こうも続けて知り合いに会う事ってあるんだな。

 

いや~世間は狭い。

 

「やっぱり三人はいつでも一緒なんですね。」

 

そう、この人たちに会うときは大体三人一緒である。

 

「そ、そんなわけ無いでしょ。今日はたまたま凛に誘われただけよ。」

 

あ〜このツンデレも久しぶりだな〜。

 

「真姫ちゃん、赤くなってるにゃー。」

 

「もう!凛!」

 

「瑠惟君、東京に帰ってきてたんだね。」

 

「はい。昨日に帰ってきました。友人がどうしても家に来たいって言うもんですから。」

 

「そういえば瑠惟君は今、静岡に住んでるんだよね?一人暮らし?」

 

「いえいえ、親戚の旅館に手伝いをしながら住まわせてもらってます。」

 

「ことりちゃんが瑠惟君は女子校に入ったって言ってたにゃ~。」

 

待ってください、その言い方じゃとんでもない変態じゃないですか。

 

「瑠惟ってそんな男だったのね・・・」

 

ほら、真姫さんが変な勘違いをしてしまったよ。

 

「凛さん、言葉が足りてないですよ。自分は共学化の試験生として転入したんですよ。」

 

「確かにそうだったにゃ~。」

 

「確か入ったのは浦の星女学院だったよね?瑠惟君はその学校のスクールアイドルって知ってるかな?確か・・・Aqoursだったかな?」

 

さすが花陽さん。スクールアイドルには詳しいな。

 

「えぇ一応、そこでマネージャーをやってますから。」

 

「ほんと!?じゃああの花火大会で会場中を感動させたコメントをした有名なマネージャーって・・」

 

マジであれ放送されてたのかよ。どうりで花火大会の後からやたら声をかけられたりなぜかサインまで求められたのか。

 

「多分、自分の事です・・・」

 

「瑠惟君!すごいです!私最近Aqoursに注目してるんです!ほら!」

 

そう言って花陽さんが鞄から取り出して見せてきたのはスクールアイドルの雑誌だった。

 

そこに載っていたのは・・・

 

「あ、Aqoursじゃないですか!」

 

あいつらそういえばなんか取材がどうこう言ってたな・・・

 

え?自分?一応受けたけど・・・

 

「この雑誌のAqoursのマネージャーの紹介は・・・」

 

『期待の新星Aqoursを束ねる謎多きマネージャー』

 

はい。これだけです。ていうか誰だよこれ編集した奴。

 

「と、とにかく向こうでも頑張ってますよ。」

 

「そう・・・じゃあ瑠惟頑張ってね。」

 

「ありがとうございます。」

 

「私たちはもう行くね。あ、そうだ、穗乃果や絵里たちにも顔見せなさいよ。特に絵里は心配してたんだから。」

 

「分かりました。ではまたどこかで・・・」

 

そうだな、ラーメン食べたら、絵里さんの家にでも行ってくるか。

 

「ごちそうさまでした。」

 

 

 

ところで勘の良い皆さんなら気になっているでしょう。

 

なぜこんなにもμ’sに知り合いがいるんだと。

 

まぁ番外編だからね。多少はね。

 

実を言うと、東京に住んでいたときに母さんがことりママと仲が良かったのでμ’sの人たちと接する機会が多かったんです。

 

それ以上にあの人たちは自分の家をカフェのような場所と勘違いしておられたのか何かある度に集まっていたんです。

 

だったらみんなが鍵を持っていてもおかしくないな。ははは・・・

 

あの人たち、自分がいない間に勝手に家にで入りしていたのか・・・

 

 

 

確かここだったかな?絵里さんのマンションは。

 

部屋番号忘れたな・・・どうしよう帰ろうかな。

 

「あれ?瑠惟君ですか?」

 

もしかして・・・

 

「あ、亜里沙さん!?」

 

「はい。久しぶりだね。」

 

なんという幸運。ここで絵里さんの妹の亜里沙さんに会えるとは。

 

「あの実は・・・絵里さんが心配してると聞いて来たんですけど。部屋番号忘れちゃって・・・。」

 

「そうそう!お姉ちゃんずっと瑠惟君に会いたいって言ってて。今は出掛けてるけどもうすぐ帰って来るから一緒に部屋で待ってよう。」

 

「ありがとうございます。では、お邪魔します。」

 

「そんなに固くならなくてもいいよ。」

 

「コーヒーと紅茶どっちがいい?」

 

「紅茶でお願いします。」

 

やっぱり亜里沙さんは優しいな・・・

 

「瑠惟君、いつ帰ってきたの?」

 

「昨日の夜に帰ってきました。」

 

「へぇ〜そうなんだ。ねぇねぇ彼女さんとかいるの?」

 

「それが案の定いないんですよ。」

 

「意外、てっきりモテモテだと思ってたのに。」

 

「じゃあ私が彼女さんになるのはどう?」ニヤニヤ

 

亜里沙さんはいつもこうしてからかってくるのだ。

 

「それは・・・」

 

「ダメよ亜里沙!」

 

この声は・・・帰ってきたのか。

 

「あ!お姉ちゃん。おかえり。」

 

「お久しぶりです絵里さん。それに・・・希さん、にこさん。」

 

「久しぶりー!瑠惟!会いたかったわ!だって東京を出てから一回も連絡くれないから心配で・・・」

 

この人はμ'sの絢瀬絵里さん。なぜかいつも心配してくれる。酔っ払った時の悪絡みはμ'sの中ではトップクラス。

 

「えりちは心配しすぎなんよ。久しぶりやね瑠惟君。」

 

こちらもμ'sの東條希さん。この人の考えている事だけはいつも読めない。

 

「瑠惟、スーパーアイドルにこちゃんだよー!」

 

この人は・・・まぁいっか。

 

「ちょっと!私も紹介しなさいよ!」

 

はいはい。この人はμ'sの矢澤にこさん。現在現役のアイドルらしい。

 

「みなさん今日はお揃いで。」

 

「うん。えりちに家に来ないかって誘われて、そしたら瑠惟君がいたからビックリ。」

 

「私は分かってわ。何となく瑠惟が家に来ている気がしてたわ。」

 

絶対に嘘でしょ。

 

「にこは別にあんたに会いたかったわけじゃないんだからね。」

 

「はいはい。そうですか。」

 

「なんか私の扱いひどくない!?」

 

だってこの人だけは年上って感じがしないし。

 

「それにしても亜里沙。さっきの話は聞き捨てならないわね。私が瑠惟の彼女に相応しいのよ。」

 

「・・・・・・」

 

全員言葉を失っている。

 

なんでこの人がこんなに好意を寄せているかというと、多分自分のことを弟のような存在だと思ってくれてるからだと思う。

 

「はいはい。えりちのコントは置いといて、瑠惟君今、スクールアイドルのマネージャーやってるんやろ?」

 

「なんでそれを?」

 

「カードがうちにそう告げたんや!」

 

「本当は?」

 

「前にテレビで見たんよ。どこかの祭りの花火大会でコメントしてたの。」

 

「いやーそれにしても瑠惟君があんなに可愛い女の子たちに囲まれてたなんてびっくりしたで。」

 

「「希!それはホントなの!?」」

 

なんでにこさんまで食いついてるんですか?

 

「希さんの言ってることは真実ですよ。確かに自分は今、スクールアイドルのマネージャーをやってます。」

 

「そうなのね・・・」

 

「あんた頑張りなさいよ。マネージャーをやるんだったらしっかりと見ていてあげなさいよ。」

 

「そして、いつかにこ達を、μ'sを超えてみなさい!」

 

「はい!頑張ります!」

 

「では、そろそろ帰りますね。まだやることがあるので。」

 

「え〜。もう少しいてもいいのに。」

 

「すいません。明日、友人が来るのでそれの準備を。」

 

「また会いに来てね。瑠惟。私はいつでも待ってるわ。」

 

「はいはい。ではさようなら。」

 

次は・・・ほむらかな。

 

 

 

やって来ました。ほむら。

 

最後に来たのはAqoursのイベントで来た時だったな。

 

ガララッ

 

「こんにちわ。」

 

「いらっしゃいませ!って瑠惟君!?」

 

「どうも、お久しぶりです。」

 

「久しぶり・・・って前にもこんなやりとりしたね。」

 

「そうですね。あの時はありがとうございました。おかげさまで助かりました。」

 

「うん。なら良かった。・・・そうだ!穗乃果の部屋で待ってて。海未ちゃんも雪穂もいるよ。」

 

よかった。これで全員に挨拶できる。

 

「はい。ありがとうございます。では、お邪魔します・・・」

 

店の奥の階段を上り二階へと行く。

 

どの部屋だったかな?

 

扉の隙間から明かりが漏れている部屋が目に入る。

 

お!ここか。ではでは。

 

「失礼し・・・」

 

「ラブアローシュート!バンッ!」

 

「・・・・・」

 

どうやら部屋を間違えたようです。

 

すると隣の部屋の明かりが漏れていることに気づいた。

 

「失礼し・・・」

 

「もうちょっと・・・。もうちょっと大きければ、お姉ちゃんみたいに・・・。」

 

また部屋を間違えたようです。

 

そして一番奥の部屋に入ろうとすると。

 

ドンッ!!

 

「「見(まし)た!?」」

 

「いえいえ、誰もラブアローシュート(笑)撃ってた人や、胸を寄せようとしてた人なんて見てませんよ。」

 

「「覚悟はできてる?」」

 

「我が生涯に一片の悔い無し。」

 

千歌たちすまない。コミュ障ヘタレの物語は今日で終わりだ・・・

 

番外編が最終回なんて・・・

 

次の瞬間、腹部に強い衝撃を感じてそのまま意識を手放した。

 

瑠惟君!まだ終わるには早いよ!

 

ん?

 

目が覚めると木目の天井が目に入る。

 

あれ?生きてる?

 

「ここは・・・?」

 

「あ、気づいた?ここは穗乃果の部屋だよ。なんかすごい音がして見に行ったら顔を赤くした海未ちゃんと雪穂がいて、そばで瑠惟君が倒れてたんだよ。びっくりしたんだから。」

 

「申し訳ありません瑠惟。恥ずかしいところを見られてしまって、つい・・・」

 

「大丈夫ですよ海未さん。こう見えて結構鍛えてますから。」

 

この人はμ’sの園田海未さん。一見するとTHE大和撫子っていう感じだが、お酒を飲むとあら不思議、仕事の愚痴を言うし、急に脱ぎ出すのでかなり厄介。その時の記憶が無いのもタチが悪い。

 

「私もごめんね。あんなとこ見られたから・・・」

 

この人は高坂雪穂さん。穗乃果さんの妹で元スクールアイドル。穗乃果さんと同じく穂むらを継いでいる。昔は勉強を見てもらったり、面倒見てくれたりで、かなりお世話になった。

 

「それにしても帰ってきてたんだね。」

 

「夏休みですし、友達も来たいと言うので、それでμ’sのみなさんに挨拶をして回ってるんです。」

 

「穗乃果、心配してたんだよ~。全然電話もしてくれないし、何かあったのかなってずっと不安だったの。」

 

「すいません。毎日忙しくて。」

 

「わ、私は瑠惟なら大丈夫だと言ったんですよ。それなのに穗乃果は・・・」

 

「海未ちゃんだって穗乃果に『瑠惟に会いたいです~。』って泣きついてきたじゃん!」

 

「ほ、穗乃果!それは言わない約束ですよ!////」

 

「やっぱり海未さんは優しいですね。」

 

「当然ですよ!でも、今度からは定期的に連絡するように!」

 

「はい。分かりました。」

 

「瑠惟君、スクールアイドルのみんなとはどうなの?」

 

「スクールアイドル?何のことですか?」

 

あっそうだ、この人はAqoursのマネージャーやってる事知らないんだった。

 

「え?知らないの海未ちゃん!?瑠惟君はスクールアイドルのマネージャーやってるんだよ!それにテレビにも出てたんだよ!」

 

「へぇー・・・そうですか。」

 

「私たちには連絡もせずに女子校で破廉恥なことをしていたと?」

 

「い、いや確かにマネージャーですが、破廉恥な事は一切・・・」

 

これまでの事が頭に浮かんだ。

 

あ、傍から見れば十分破廉恥に見えるかも。

 

「していたのですね?」

 

「多分・・・」

 

「あなたという人は・・・」

 

「すいません。」

 

「分かってますよ。あなたはメンバーの事を第一に考えているですよね。」

 

海未さん・・・

 

「でも、あんまり無理をしないようにしてくださいね。」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

それから昔の事を話したり、今の生活の事を話したりした。

 

とても暖かい時間を過ごした。

 

おっともうこんな時間だ。

 

「あの、そろそろ帰ろうかと・・・」

 

「あっ!待って瑠惟君。」

 

そう言うと穂乃果さんは下に降りて行った。

 

どうしたんだろう?

 

「はいこれ。穂乃果特製のほむまんだよ!これお友達とみんなで食べてね!」

 

「ありがとうございます。ではまた。」

 

それから家に帰り、昨日残ったご飯を食べて、部屋の最終チェックをして寝た。

 

明日は千歌たちが来るな。

 

騒がしくなりそうだな。




とりあえずμ'sを出したかったのでこうなりました。
後編はAqoursがメインです。
期末テストで遅くなるかもしれませんができるだけ早く投稿します。


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コミュ障ヘタレの休めない休日 後編

お待たせしました。後編ですが、かなり長文です。書きたいことを書いてたらこんなに長くなってしまいました。今回もツッコミどころが満載ですが、お許しください。


前回のコミュ障ヘタレ。瑠惟の家に行きたいと言ったAqoursたちの為に一足早く家に帰った瑠惟。そこで懐かしの人達との再開を果たした。そして今日彼女たちが襲来する。

 

ー 約束当日 ー

 

千歌たちを迎えに行く為に秋葉原の駅へと向かった。

 

そろそろ時間だな。

 

千歌たちが遅刻したら何か奢ってもらおう。

 

そんな期待を良い意味で裏切って、みんな時間通りに着いた。

 

「おはよー!瑠惟君!」

 

朝から元気な奴だな。

 

「それで今日はどうするんだ?」

 

「とりあえずみんなの荷物を置いてから東京を回ろうかなって。」

 

「分かった。じゃあ家に向かうか。みんな揃ってるか?」

 

「うん!大丈夫だよ!」

 

一応数えるか・・・

 

えーと、千歌・曜・梨子・ルビィちゃん・善子・鞠莉さん・ダイヤさん・果南さん。よし!八人いるな!

 

あれ?八人?そう言えば花丸ちゃんがいないぞ。

 

「ルビィちゃん。花丸ちゃんと一緒じゃないのか?」

 

「え!?ホントだ花丸ちゃんがいない!さっきまで横にいたのに。」

 

これはアレですね。迷子ですね。

 

「ちょっと探してくるからみんなはここで待っててくれ。」

 

「お、お願いします。」

 

花丸ちゃんを探しに駅の中へと入った。

 

多分・・・お土産でも見てるんだろうな。

 

駅に併設されているお土産屋に行くと案の定、試食を食い荒らしている花丸ちゃんがいた。

 

「美味しいずら!やっぱり東京の食べ物は最高ずら!」

 

「あの・・・お客様、それ以上は・・・」

 

店員さんも困っちゃってるよ。

 

「花丸ちゃん!」

 

「あれ?瑠惟さんずら?ここで何してるずら?」

 

「それはこっちのセリフだよ。」

 

「みんな外で待ってるから早く行くよ。」

 

「そう言えば・・・ルビィちゃんたちがいないずら。」

 

「とにかくもう行くよ。」

 

「待って、待ってずら!もっと食べたいずら!」

 

無理やり連れ出すのも悪いし、仕方ない。

 

「どれが欲しいんだ?買ってやるから。」

 

すると花丸ちゃんが今まで見たことのないぐらいの笑顔をしていた。

 

「ホントずら!?じゃあ・・・」

 

待て待て何をしているんだ花丸ちゃん。

 

それ以上はダメ・・・やめて〜!

 

 

 

「あ!花丸ちゃん!どこ行ってたの?それにその袋は何?沢山あるけど。」

 

「これは瑠惟先輩が買ってくれたずら!」

 

「いや、限度ってものがあるだろ!」

 

自分はてっきり一個か二個ぐらいしか買わないと思っていたが、花丸ちゃんはなんとディスプレイにあったやつを全種類欲しいと言ったのだ。店にも迷惑かけたし何より花丸ちゃんが嬉しそうだったから全部買っちゃった。おかげで財布が軽くなったよ・・・。

 

「今回だけだからな。」

 

「ありがとうずら!」

 

これでみんな揃ったな。

 

「じゃあ行こうか。ここからあんまり遠くないから歩いて行くよ。」

 

 

 

ー 自宅 ー

 

「ここが瑠惟君の家なの?なんと言うか・・・大きいね。」

 

千歌と鞠莉さん以外は意外という感じで驚いている。

 

まぁ普通よりは大きいと思うが・・・

 

「瑠惟君、九人も入らないって言ってなかった?」

 

そういえばそんなこと言ったな、

 

「あー嘘ついた。だって入れるって言ったら来たいって言うから・・・」

 

千歌がここに来たのも久しぶりだな。

 

「千歌が最後に来たのはいつだったかな?」

 

「えーと、去年の夏休みだよ!」

 

もう一年も経ったのか、確かに色々ありすぎて時間が早く感じたな。

 

「では、どうぞ。」

 

「「「「「「「「「お邪魔しま〜す。」」」」」」」」」

 

「とりあえずみんなはリビングで寝て欲しい。別々でもいいなら個室もあるけど・・・」

 

「みんな一緒がいい!もちろん瑠惟君もだよ!」

 

「は?」

 

「いやいや、自分の部屋があるからそこで寝るよ。」

 

「ダメだよ!瑠惟君もAqoursのメンバーなんだから一緒に寝るのは当たり前だよ!」

 

これは何を言っても聞かないやつだな。

 

「分かった、分かった。だけど自分の部屋には入るなよ。」

 

「へぇー、瑠惟君の部屋があるんだ・・・」

 

おい、曜なんだその目は。何を企んでる。

 

「果南ちゃん、善子ちゃん!瑠惟君を抑えておいて!」

 

「「了解!」」

 

ガシッ

 

曜の掛け声で果南さんと善子がホールドを掛けてきた。

 

「う、動かん・・・」

 

どんだけ力あるんだよこの二人。ビクともせん。

 

「千歌ちゃん、瑠惟君の部屋はどこ?」

 

「えーと、二階の突き当りの部屋だよ!」

 

待て、やめろ〜!

 

そうしてみんなは二階へと走って行った。

 

やべぇよやべぇよ。

 

「離すんだ!二人とも!」

 

「ダ〜メ。」

 

「さぁ私たちと一緒に行くよ。」

 

そうして部屋に連行されると、案の定Aqoursのみんなが部屋を漁っていた。

 

「うーん、無いなー。」

 

一体何を探しているんだ?

 

「ねぇ瑠惟君。」

 

「なんだ梨子。」

 

「瑠惟君のエッチな本はどこにあるの?」

 

「・・・そんなの無いよ(汗)」

 

「嘘よ。だって千歌ちゃんに持ってるって聞いたの。」

 

なんで千歌がそれを知っている?

 

「どこなの?」

 

怖い怖い、梨子さんマジで怖い。

 

すると・・・

 

「ピギャァァ!」

 

「どうしたのルビィちゃん!?」

 

「こ、これ・・・」

 

なんとそれは隠したはずの例のブツでした。

 

終わった・・・

 

みんなは恐る恐るそれのページをめくっていく。

 

そして梨子が、

 

「る、瑠惟君はやっぱり大きいほうがいいの?/////」

 

なんてこと言うんですか梨子さん。

 

そして鞠莉さん、果南さん、千歌、曜、花丸ちゃんはなんでそんなに勝ち誇った顔をしてるんだ?

 

「・・・・・・」

 

「と、とりあえず昼ごはんにしようか?」

 

「「「「「「「「「うん・・・」」」」」」」」」

 

 

「さて、昼ごはんだけど材料を買うのを忘れたから買いに行かなければならない。」

 

「十人分だと多いから何人かに一緒に来てほしい。」

 

「じゃあみんなで行こうよ!」

 

千歌の提案でAqours全員で近くの商店街に行くことになった。

 

「今日の昼ごはんは無難にカレーを作ろうと思ってる。だから今からチーム分けをするのでみんなにはそれぞれ別の材料を買ってきて欲しい。」

 

「まず、一年生組は野菜を頼む。」

 

「「「はい。」」」

 

「三年生の皆さんは肉とカレーのルーをお願いします。」

 

「「「はーい。」」」

 

「最後に二年生組は一緒に来てほしい。」

 

「「「うん。」」」

 

「じゃあ三十分後にここに集合で。」

 

こうして三チームに分かれて買いものをした。

 

 

 

ー 約三十分後 ー

 

「みんなちゃんと帰ってきてるな。じゃあ家に戻ろう。」

 

自宅のキッチンにて

 

「あの・・・」

 

「一年生たちよ、なんで野菜に加えて大量のお菓子があるんだい?」

 

「そ、それは花丸ちゃんが・・・」

 

やっぱりお前か。

 

「おい善子、明らかにこれはお前が買ったよな?」

 

それは大量のタバスコと唐辛子だった。

 

「それは我が眷属を召喚するための生贄たち。だから・・・」

 

「二人とも昼飯抜きな。」

 

「「えぇ〜!?」」

 

そして・・・

 

「あの・・・三年生の皆さん、確かに肉を買ってきて欲しいとは言いましたけど・・・」

 

なんで明らかに高そうなお肉があるんですか?これって和牛ってやつだよね?ていうか商店街にこんなお肉売ってる店あったけ?

 

「よく気付いたわね瑠惟!それはマリーが頼んでヘリで持ってきてもらったのよ!」

 

「・・・・・・」

 

「私たちは普通に買いましょうと言ったんですが、鞠莉さんがどうしてもって・・・」

 

「まぁまぁここは鞠莉の好意に甘えなよ。」

 

「あ、ありがとうございます。じゃあみんなで作ろうか。」

 

途中危なっかしい所(善子がカレーの鍋にありったけのタバスコたちを投入しようとしたが阻止した)もあったが無事にカレーが完成した。

 

こっちもアレを用意してるんだよ。

 

「「「「「「「「「「いただきます!」」」」」」」」」」

 

うん。やっぱりカレーは美味いな。

 

「美味しい!」

 

「みんなで食べると美味しいね。」

 

「あぁそうだな。」

 

それよりも肉が柔らけぇぇぇ!

 

小原家すげぇぇ!この肉、三十分で用意できるなんて!

 

賑やかな会話に包まれながら食事は進んだ。

 

「ごちそうさまでした。」

 

「そう言えば瑠惟たちは何を買いに行ったの?」

 

「よくぞ聞いてくれました。果南さん。」

 

「千歌、梨子、曜、キッチン行くぞ。」

 

「「「うん!」」」

 

二年生組で準備したのは・・・

 

「「「「じゃーん!」」」」

 

デザートの時間だよ。

 

「すごーい!ケーキずら!」

 

「これ、瑠惟たちで作ったの?」

 

「私たちは瑠惟君の指示通り動いただけだよ。大体は瑠惟君が作ったの。」

 

「だから途中でどこか行ってたんだね。」

 

「とりあえず食べましょう。」

 

「「「「「「「「「美味しい!」」」」」」」」」

 

「何これ!これほんとに作ったの!?」

 

「ありがとうございます。」

 

「さすが我がリトルデーモン。」

 

「美味しいねお姉ちゃん!」

 

「そうですわねルビィ。」

 

「瑠惟先輩、料理できたずらか?」

 

「まぁ、ちょっとね。」

 

実はμ'sのことりさんのお菓子の制作に付き合わされている内に上達したなんて言えないよな。

 

とにかく喜んでくれて良かった。

 

やっぱり女子はスイーツが好きなんだな・・・

 

また今度作ってやるか。

 

 

「とりあえず外に出たが、みんなどこに行く気なんだ?」

 

「まずはね・・・秋葉原!」

 

まぁここから近いし妥当だな。

 

「じゃあ行くか。みんなはぐれるなよ。特に花丸ちゃん。」

 

「なんでオラずら?」

 

真っ先に迷子になったからだよ!

 

ということで秋葉原のスクールアイドル専門ショップに来た。

 

店の中には名だたるスクールアイドルのサインが飾られていたり、そこでしか売っていないグッズも沢山あった。ちなみにμ'sは今でも一番人気らしい。

 

「お?これってAqoursのグッズじゃね?」

 

そこにはAqoursのメンバーの缶バッジやタオル、Tシャツが売られていた。

 

「ホント!?どれどれ?」

 

「すごーい!私たちだよ!」

 

「これ瑠惟君だよね?」

 

は?

 

何かの見間違いだろうと思い、一応確認すると・・・

 

「なんでグッズ化してるんだよ。」

 

いつから自分はスクールアイドルになったんだ・・・。

 

すると奥から店員さんであろう人が来て、

 

「もしかして・・・Aqoursのみなさんですか?」

 

「はい、そうですけど。」

 

「やった!ここでAqoursのみなさんに会えるなんてラッキーだ。あ、すいません。私この店の店長なんですが、良かったらサインを飾らしてもらっても構いませんか?」

 

お!まさかの向こうからですか。

 

「はい!もちろんです!」

 

Aqoursのみんなが一人一人サインを書いていく。全員書き終わると、

 

「よろしければ、マネージャーさんも頂いてもいいですか?」

 

「え?いや、構いませんけど・・・どうしてですか?自分アイドルじゃありませんよ。」

 

「実はですね、最近Aqoursのグッズが売れるようになってきたんですが、お客様からAqoursのマネージャーのグッズは無いのかと聞かれまして・・・それも多数。」

 

自分男だよ。どこに需要があるんだよ。

 

いや、嬉しいよ。Aqoursの人気が出て。でもマネージャーは関係ないでしょ。

 

なんだかんだあって、店を後にしようとすると、

 

「あの・・・Aqoursさんですよね?」

 

見知らぬ女子高生たちが声をかけてきた。

 

「良かったら写真撮ってくれませんか?できればマネージャーさんも一緒で。」

 

「え?・・・ひゃい。」

 

ここでコミュ障ヘタレが発動。我ながら情けない・・・

 

こんな感じで声をかけてきた人が何人かいた。

 

「良かったね千歌ちゃん!私たち人気者だよ!」

 

「うん!私も嬉しい!」

 

確かにファンの人に直接会って応援してもらえると本人たちは嬉しいよな。

 

「次はどこに行くんだ?」

 

「次は・・・メイド喫茶!」

 

秋葉原に来たらメイド喫茶には行ってみたいよな。

 

ということで来ました、メイド喫茶。

 

ちなみにここは昔、秋葉原で伝説となったミナリンスキーさんというメイドさんが働いていたところらしい。

 

扉を開けて中に入ると・・・

 

「おかえりなさいませご主人様!」

 

おぉ・・・

 

「当店では呼び方をご指定できますがどうなさいますか?」

 

めっちゃグイグイくるなここのメイドさんたち。

 

それに呼び方なんてなんでもいいよ!

 

「じ、じゃあ・・・お任せで。」

 

「はい!では『お兄ちゃん』と呼ばせていただきますね!」

 

お兄ちゃんですか・・・

 

ていうかあんた絶対年上でしょ。

 

「私は永遠の十七歳ですよ!」

 

怖っ!なんで考えてる事が分かるんだよ!

 

「瑠惟先輩・・・」

 

「どうしたルビィちゃん?」

 

「ルビィも・・・『お兄ちゃん』って呼んだ方がいいですか?」

 

グハッ!『こうかはばつぐんだ!』

 

「ぜひお願いします。」

 

「瑠惟さん。」

 

この声はダイヤさん!

 

絶対怒ってるよ・・・

 

「すいません!」

 

「どうして謝るのですか?」

 

「そ、それは・・・」

 

「そんなことより私も『お兄ちゃん』とお呼びしましょうか?」

 

「・・・・・・」

 

「さすがにそれは・・・キツいっす。」

 

「どういう事ですの!」

 

そんなやりとりをしているとメイドさんが来て

 

「良かったらみなさんメイド服を着てみますか?」

 

何!?ナイスだメイドさん!

 

「私着たい!」

 

そんなこんなで結局みんなが着てみることになった。

 

着替えを待っている間にメイドさんにある事を聞いた。

 

「あの・・・ここで昔働いていたミナリンスキーさんってどんな人だったんですか?」

 

「ミナリンスキーさんはここでバイトを始められてすぐに人気に火がついて秋葉原では知らない人がいないくらい有名になったんですよ。特にあのとろけるような声とふわふわした雰囲気が人気で・・・」

 

とろけるような声にふわふわした雰囲気?

 

ミナリンスキーさんは、ことりさんみたいな人だったんだろう。

 

「良かったら写真見られますか?」

 

「はい!是非!」

 

メイドさんが持ってきた写真を見て驚いた。

 

「この人ですか?」

 

「はい!そうですよ!可愛い方でしょ?」

 

なんと言うか・・・ミナリンスキーさんって、ことりさんだったんですね。

 

また今度本人に聞いてみよう。

 

そうしている内にみんなの着替えが終わったみたいだ。

 

一番に出てきたのは千歌、曜、梨子だった。

 

「じゃーん!どう瑠惟君?」

 

「おー、なかなか様になってるぞ。」

 

「そこは『可愛いよ!』って言うところだよ!」

 

「カワイー、カワイー。」

 

「これだからコミュ障ヘタレは・・・」

 

おい、それは関係ないだろ。

 

次に出てきたのはルビィちゃん、花丸ちゃん、善子だった。

 

「せ、先輩。ルビィはどうですか?変じゃないですか?」

 

ヤバいです。今日のルビィちゃんは確実に殺しに来ている。

 

「うん。似合ってるよルビィちゃん。」

 

「やった!先輩に褒められた!」

 

ルビィちゃんはだいぶ男の人に慣れてきたな。

 

最初の頃なんてずっと怖がられたもんな。

 

「この服、胸の辺りが苦しいずら。」

 

oh......花丸ちゃんの服は明らかに胸部のサイズが合っていない。

 

とにかくありがとうございます。

 

「先輩、そんなに見ないでほしいずら/////」

 

イカンイカン、つい目線がいってしまった。

 

「「「瑠惟君。」」」

 

あっ・・・

 

恐る恐る振り向くと二年生組がゴミを見るような目でこちらを見ていた。

 

だから本当にその目はヤバいから。女の子がするような目じゃないよ。

 

「ふふっ、これが新しい闇の衣。」

 

「善子はなんか・・・いつも通りだな。」

 

「なんでよ!」

 

「だって、いつも同じようなやつ着てるだろ。」

 

最後に来たのは三年生・・・。あれ?ダイヤさんは?

 

「ダイヤ、恥ずかしがってないで出てきなよ。」

 

「無理ですわ!こんな姿を殿方に見られるなんて、まして瑠惟さんに見られるのは・・・」

 

「もうっ、ダイヤってば急にシャイガールになって。」

 

すると果南さんと鞠莉さんが無理やりダイヤさんを連れてきた。

 

「ほら似合ってませんことでしょ!だから・・・」

 

「似合ってますよ。ダイヤさん。本物のメイドさんみたいです。」

 

「そ、そうですか/////」ホクロさわさわ

 

「私も一回着てみたかったんだよね。どう?」

 

果南さんはスタイルがいいから何でも似合うな。

 

「あ、ありがと/////」

 

あれ?心の声漏れてた?

 

「私はどう?シャイニーしてるでしょ?」

 

シャイニーしてるってなんだよ。でも・・・

 

「はい。とても似合ってますよ。」

 

「よろしい。完璧な答えね!」

 

さすがはアイドル。みんなよく似合っている。

 

「あの・・・よろしければお客様もどうですか?」

 

え?自分が?

 

「もしかしてメイド服ですか?」

 

「いえいえ、当店は店長の趣味で執事服もあるんですよ。」

 

「でも、自分は・・・」

 

「着てみてよ!瑠惟君。」

 

千歌がそう言うなら・・・

 

ー 数分後 ー

 

「どんな感じだ?」

 

「すごく・・・かっこいい!」

 

は?かっこいい?

 

どこがだよ。しかも思ったより窮屈だし早く脱ぎたい。

 

「もういいだろ。着替えてくる。」

 

「待って!みんなで写真撮ろうよ!」

 

「・・・分かった。」

 

「では、みなさんいきますよ。ハイ、チーズ!」

 

また今度新しい写真立て買いに行くか。

 

外に出ると日が沈みかけていた。

 

「みんな、今日はもう帰って、明日また別のところに行こう。」

 

「そうだね。お腹も空いてきたし。」

 

今日の晩ごはんは・・・

 

そんなことを考えながら十人で家に帰った。

 

 

 

「ただいま〜って瑠惟君!見て!」

 

「どうしたんだ?え?」

 

家に帰ると驚いたことに晩ごはんが用意されていた。しかも豪勢なやつが。

 

「一体誰が・・・」

 

ん?これは手紙?どれどれ・・・

 

『瑠惟君へ

今日はお疲れ様。瑠惟君たちが秋葉原を歩いてたのを見たよ。お友達が来るって言ってたけどまさか全員女の子とは・・・。大変そうだったけど、何より瑠惟君が楽しそうだったのでこっちも嬉しくなったよ。あんなに楽しそうな瑠惟君は見たことなかったよ。良かったね。いい友達ができて。おそらくクタクタになって帰って来るであろう瑠惟君たちの為に私たちが晩ごはんを準備しました!驚いてくれたかな?冷蔵のプリン勝手に食べたけど許してね♡ところであんなに高級なお肉どこで手に入れたの?調理するのが怖かったよ。とにかく、今日一日がんばったね。これ食べて元気出してファイトだよ!

μ's一同より P.S 今夜は漢になるのよ!by賢い可愛いエリーチカ』

 

ありがとうございます。μ'sのみなさん。また今度何か作りますよ。

 

「ねぇー瑠惟君、それ誰から?」

 

「・・・大切な人たちからだな。」

 

「え!?誰!?大切な人たちって誰〜!?」

 

「とにかく食べよう。まだ暖かい内に。」

 

「「「「「「「「「「いただきます!」」」」」」」」」」

 

μ'sのみなさんが作ってくれた料理はとても美味しくて何より温かかった。

 

「もうお腹いっぱいだ〜。」

 

「すごく美味しかったずら〜。」

 

「じゃあ、風呂に入って寝るか・・・。」

 

「何を勘違いしてるの!」

 

は?

 

「まだAqoursの一日は終了していないよ!」

 

「えーと、つまり?」

 

「肝試しに行こー!」

 

ということで近所でとあるウワサがあることで有名な廃校に来た。

 

「で、ルールはどうするんだ?」

 

「うーん、瑠惟君、この学校のウワサってどんなの?」

 

「確か・・・本校舎の四階にある音楽室で夜中にピアノを弾くと・・・他の楽器たちがセッションしてくれる。」

 

「何そのノリのいいお化けたちは・・・」

 

これはあんまり怖くないよな。

 

「他には・・・旧校舎の女子トイレの奥から三番目のトイレをノックすると・・・」

 

「花子さんが来るずらか?」

 

「いや、女子トイレ内の全てのトイレの水が流れる。」

 

「え・・・何それ。」

 

どういう仕組みなのかは分からん。

 

「最後に、日付が変わる瞬間に本校舎三階にある大鏡を見ると・・・」

 

「どうせ、またおかしなやつですわ。」

 

「鏡を見た人の好きな人が映る。」

 

Aqours全員の表情が変わった。

 

「じゃあ、手分けしてウワサを調べに行こ!」

 

そして話し合いの結果、二年生組(自分を除く)が音楽室のウワサ、一年生組がトイレのウワサ、三年生組が鏡のウワサを調べることになった。

 

「瑠惟君はどうするの?」

 

どうしようか・・・

 

「色んな所を見て回るよ。そっちの方が楽しそうだし。」

 

こうしてAqoursの肝試し大会が始まった。

 

ー 瑠惟 side out ー

ー 千歌 side in ー

 

「結構暗いね。」

 

「そうだね。それにしても瑠惟君ついて来なかったな〜。」

 

ホントに。なんで一緒に来てくれないの!

 

せっかくチャンスだと思ったのに・・・

 

それに多分、曜ちゃんも梨子ちゃんも瑠惟君のことを・・・

 

「この階段から四階に行くのね。」

 

「よし!全速前進〜ヨーソロー!」

 

「あ!待って曜ちゃん!」

 

曜ちゃんはいつでも元気だな・・・

 

瑠惟君は曜ちゃんみたいにスタイル良くて、何でもできる子が好きなのかな・・・

 

「着いた・・・」

 

「ここね・・・。」

 

扉の前に立っただけなのに、中から何か禍々しいモノを感じた。

 

「二人とも開けるよ。」

 

ギィー

 

部屋を見ると、荒れて物が散らかってる中に明らかに一つだけ綺麗なピアノがあった。

 

「千歌ちゃん、あのウワサ本当だと思う?」

 

「どうだろう、私にはよく分からないな。」

 

「じゃあ、今から弾くよ。」

 

梨子ちゃんが手を鍵盤の上に置き演奏を始めた。

 

曲は『ユメノトビラ』だ。

 

「・・・・・・」

 

「何も起きないね。」

 

「やっぱりただのウワサか・・・」

 

「とりあえず最後まで演奏するね。」

 

三人共もう何も起こらないと思ってた。

 

しかし、曲がサビに入ると・・・

 

ん?

 

「曜ちゃん、何か聞こえない?ピアノの音じゃない何か。」

 

「あ!聞こえた!」

 

それからどんどん音が増えていった。

 

周りの様子に変化はない。音だけが聞こえてくる。

 

すごく不思議な心地がした。

 

曜ちゃんも梨子ちゃんも楽しそうだった。

 

曲が終わると同時に他の音も消えた。

 

「すごかったね!あのウワサはホントだったんだ!」

 

「早く瑠惟君に報告しよう!」

 

音楽室を出ようとした時、私は確かに聞いた

 

『タノシカッタヨ』

 

ー 千歌 side out ー

 

ー 花丸 side in ー

 

「善子ちゃんもっと速く歩くずら。」

 

「なによ!別に怖がってるわけじゃないんだからね!」

 

「うぅ・・・ルビィ暗いところは苦手。」

 

マルたちはウワサの旧校舎のトイレに向かってるずら。

 

善子ちゃんもルビィちゃんも恐がりで全然進まないずら。

 

え?マルですか?マルはお寺で何回も体験して慣れたずら。

 

「二人とも着いたずらよ。」

 

「いかにも何が出そうな雰囲気ね。」

 

「恐いよ・・・」

 

「行くずらよ。」

 

確か奥から三番目・・・。

 

「ここね。」

 

「誰がノックするずら?」

 

「・・・・・・」

 

じゃんけんの結果、善子ちゃんがノックすることになったずら。

 

「ところで瑠惟先輩は何してるずら?」

 

「うーん、色んなとこに行くって言ってたけど、どこにいるんだろ?」

 

「知らないわよ!あんな人!」

 

「善子ちゃん、先輩を誰かに取られるかもってヤキモチ焼いてるずら?」

 

「そ、そんなわけないでしょ!/////」

 

ルビィちゃんも善子ちゃんも多分先輩のことが好きずら。

 

マルは・・・

 

「じゃあノックするわよ。アンタたち絶対に逃げないでね!絶対よ!」

 

善子ちゃん、それは『振り』っていうやつずら。パソコンで見たずら。

 

コンコン

 

「・・・・・・」

 

何も起こらないずら。やっぱりただのウワサずらね。

 

しかし、その瞬間・・・

 

トイレの水が一斉に流れ出したずら!

 

「ピギャァァァァ!」

 

「キャーーーー!」

 

二人とも逃げたずら。

 

「二人とも待つずら。」

 

でもその時マルは見ました、ノックしたドアが開いて人影が出てくるのを。

 

ー 花丸 side out ー

 

ー ダイヤ side in ー

 

「まだ着きませんの?」

 

「うーん、あともう少しかな?」

 

「ダイヤはビビりね。」

 

「うるさいですわ!」

 

こう言いますが、鞠莉さんはあながち間違っていませんわ。実は私、昔から暗いところは少々苦手で・・・。

 

「それにしても瑠惟は何してるんだろ?」

 

「あの人の事ですから、どうせ私たちを驚かせる準備でもしているんですわ。」

 

「確かに瑠惟ならやりそうだね。」

 

『鏡を見た人の好きな人が映る』

 

本当なのでしょうか?もし本当だとしたら・・・。

 

「あ!ダイヤ、また瑠惟の事考えてたね!悪いけど彼はマリーの未来の旦那さんなんだからね!」

 

「ち、違いますわ!それに旦那さんってあなた彼の事をそんな目で見てたんですの!?」

 

「そうよ、何か変?」

 

「変も何も私たちは高校生ですよ!そんなの破廉恥ですわ!」

 

そんな会話をしているうちに目的地に着いた。

 

「ここだね。」

 

それにしても大きい鏡ですこと。私たち三人が余裕で入りますの。

 

「果南、What Time?」

 

果南さんは出発直前に瑠惟さんに借りた時計で時間を確認する。

 

「あと一分だよ。」

 

その時、鏡に人影が通り過ぎました。

 

今のは・・・瑠惟さん?

 

振り向くと彼はいませんでした。

 

「果南さん、鞠莉さん、今の見ました?」

 

「うん。瑠惟でしょ。きっとフラフラするって言ってたから、ここを通ったんじゃない?」

 

「そうですわね。ところであと何秒ですか?」

 

「あと10秒だよ。」

 

10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0

 

三人は鏡を見る。しかし映っているのは三人だけ。

 

「やっぱりただのウワサでしたのね。帰りましょう。」

 

その時、果南さんの電話が鳴った。

 

「もしもし瑠惟?うん、うん、え〜!なんでそんな大事なこと忘れるの!?もぉ〜分かった。今から戻るね。・・・ねぇ、ところでさっき私たちの近くを通った?・・・え!?ホント!?うん、うん、じゃあね。」

 

「彼は何と?」

 

「えーと、実は私が借りた時計なんだけど一分遅れてたんだって。」

 

え?一分遅れてた・・・。

 

「それで、瑠惟にさっき私たちの近くを通ったか聞いたら、瑠惟はこの校舎には入ってないって・・・。」

 

「じゃあ、さっき私たちが見たのは・・・」

 

分かった事が二つありますの。

 

一つは、あのウワサは本当だったということ。

 

もう一つは、私たちは瑠惟さんの事を・・・

 

ー ダイヤ side out ー

 

ー 瑠惟 side in ー

 

肝試しを始めて三十分後、全員帰ってきた。

 

「みんなおかえり。ウワサは本当だった?」

 

すると全員がこちらに詰め寄り、ウワサは本当だったとか、おばけが出たとか報告してきた。

 

「楽しかったならよかったよ。」

 

え?自分はどこにいたか?

 

実は・・・暑かったから近くのコンビニで立ち読みしてました。

 

「じゃあ、お風呂に入って寝ようか。」

 

ー 自宅 ー

 

幸いな事に家のお風呂は両親が風呂好きなのもあって、広さは九人なら普通に入るくらい大きい。

 

「瑠惟君、ホントに私たちが先でいいの?」

 

「先に入ってくれ。その間に布団を敷いておくから。」

 

「うん、分かった。じゃあお先に。」

 

千歌たちが入ってる間に全員分の布団を敷き終えて、今はくつろいでいる。

 

お風呂の方からはみんなの楽しそうな声が聞こえる。

 

いや〜、まさかここまで女性と話せるようになるとは。

 

昔の自分からすれば考えられない話だな。

 

ふと視線を下ろすとあるものに気付いた。

 

これは・・・千歌のパジャマだ。

 

なんで着替えを持たずにお風呂に行くんだアイツは。

 

今ならみんなお風呂に入ってるし、持って行ってやるか。

 

とりあえず、服を脱衣場の中に入れればOKだ。

 

ドアを開けて服を入れるだけ。

 

よし、今だ。

 

ガラララッ ×2

 

「え?」

 

「あ・・・」

 

ドアを開けて目に入ったのは、ちょうどお風呂から出た瞬間であろう一糸まとわぬAqoursのみなさん。

 

「瑠惟君。」

 

「はい。」

 

「何か言うことはある?」

 

アレ?なんかこのセリフ昨日にも・・・

 

「千歌、お前成長したな!」b

 

次の瞬間意識が飛んだ。

 

それからの事はよく覚えていない。

 

ただ覚えてるのは・・・

 

Aqoursのみんなってスタイルいいよね!

 

後から聞いた話では、果南さんたち三年生が自分の状況を見て千歌の服を届けに来ただけだとみんなに説明して、誤解を解いてくれたそうだ。三年生のみなさんマジ女神。

 

ー 翌日 ー

 

「今日って何時の電車で沼津に帰るんだっけ?」

 

「確か午後五時のやつだったんだと思う。」

 

「それで今日はどこに行くんだ?」

 

「マル、お土産が欲しいずら。」

「あんた・・・、昨日あれほど買ったのにまだ買うの?」

 

「美味しいものはいくらあっても困らないずら。」

 

「じゃあ・・・遊園地にでも行くか?」

 

ということでやって来ました。

 

見たところお客さんはそれほど多くないようだ。

 

「私、最初はアレがいい!」

 

そう言って千歌が指さしたのはジェットコースターだ。

 

ジェットコースターなんていつ以来だろう。

 

隣を見ると明らかに様子がおかしい人が一人。

 

「じ、じゃあ私はここで待ってるね。」

 

「梨子ちゃんも一緒に乗ろうよ!」

 

「もしかして・・・梨子はジェットコースターが苦手なのか?」

 

「・・・はい。」

 

ここに一人で置いていくのも心配だし・・・

 

「自分も梨子と残るよ。」

 

「え!?瑠惟君は行ってきてよ。私は一人で大丈夫だから。」

 

「いや、でも・・・」

 

「じゃあ・・・私の隣に居てくれる?」

 

「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」

 

「梨子ちゃん、それって・・・」

 

「そ、そういう意味じゃないの!/////」

 

「一緒にジェットコースターに乗って欲しいって事なの!」

 

「そんな事でいいなら。じゃあ一緒に乗ろうか。」

 

「うん・・・。」

 

少しだけ並んでジェットコースターに乗った。

 

現在、最高地点まで上昇している最中。

 

「ねぇ瑠惟君。」

 

「なんだ?」

 

「もし、嫌じゃなければなんだけど・・・手を握ってもいいかな?やっぱり私怖くて・・・。」

 

「もちろんいいぞ。ほい。」

 

「ありがとう。」ギュ

 

梨子の手はとても小さくて柔らかかった。強く握ってしまえば壊れそうなぐらいに。

 

最高地点に到達して下に落ちる直前、不安のせいだろうか梨子の手を握る力が強くなった。こちらもそっと握り返してあげた。

 

すると梨子がこちらを向き、

 

「やっぱり私あなたの事が・・・」

 

気が付けばジェットコースターは終わっていた。

 

梨子はあの時何を言ったのだろうか?

 

「あ〜!瑠惟君と梨子ちゃん、なんで手を繋いでるの!?」

 

千歌に言われて始めて梨子とずっと手を繋いでいたことに気付いた。

 

「すまん梨子。」

 

「ううん。こちらこそありがとう。あなたのおかげで安心できた。」

 

少し名残惜しいが手を離す。

 

「リリーは大胆ね。」

 

「梨子ちゃんいいな〜。私も手を繋ぎたいな〜。」

 

「ほれ。」

 

「え?」

 

「手を繋ぎたいんだろ?曜。」

 

「うん!」

 

結局順番に手を繋ぐことになりました。

 

それからみんなでたくさん遊んだ。

 

しかし時間というものはいつまでも待ってくれないものだ。

 

もうこんな時間か・・・。

 

「みんな、そろそろ駅に向かおう。時間だ。」

 

「あ〜あ〜。楽しい時間はあっという間だな〜。」

 

「また来ればいいだろ?」

 

「ってことはまた来ていいの?」

 

「まぁたまにはいいかもな。」

 

帰りの電車ではみんな遊び疲れたのかぐっすり眠っている。

 

もちろん千歌も隣でこちらに身を預けて眠っている。

 

寝顔だけはホントに可愛いのにな。

 

そう思い千歌の頬を指でつついてみる。

 

プニプニしていて柔らかいな。

 

あー、そういえば昔も同じようにしてたな・・・

 

やがて千歌が起きてきた。

 

「ん〜なに〜?ツンツンしないで〜。」

 

「なぁ千歌。」

 

「どうしたの?」

 

「楽しかったか?この二日間。」

 

「うん!もちろんだよ!私ね、ここにいるみんなと過ごす時間が大好きだって感じたんだ!瑠惟君とこうして一緒にいる時間も大好きだよ!・・・だから絶対に学校を救いたい!また来年もこうしてみんなと過ごしたいから。」

 

「そうか。・・・・・・自分は昔から過ごしてきた人間が限られてた。でも・・・千歌が、Aqoursのみんなが新しい繋がりを作ってくれた。そして一緒に泣いたり、笑ったり、喧嘩したり、頑張ったりすることが出来た。内浦で生活し始めてから変わることが出来た。一歩も二歩も前に進むことが出来た。みんな千歌やAqoursのおかげだ。改めて言うよ。いつもそばに居てくれてありがとう。これからもよろしく。」

 

「やっぱり私、瑠惟君が大好き!」

 

まぁ家族としてだろうな。千歌の大好きはそんなニュアンスだろう。

 

千歌には妹みたいな存在でいてほしいな。

 

それにしても・・・

 

「おい千歌。何か忘れてないか?」

 

「え?何?」

 

「いや、東京から帰ったら夏休みの宿題全部するって志満さんと約束してたよな?」

 

「忘れてた〜!瑠惟君手伝って!(泣)」

 

「はいはい。分かったよ。」

 

明日からいつもの日常に戻る。練習まではもう少し休みがあるが、とにかく疲れたな。まぁ休みのくせにずっと動いてたからな〜。でも、こんなに楽しかったのは久々だったな。あいつらまた来年も来てくれるかな?

 

コミュ障ヘタレのちょっと変わった休日は内浦の日が沈むと共に幕を閉じた。




ラブライブ!サンシャイン!!2期の9話を見てからSaint Snowの印象が変わりましたね。予選落ちざまぁとか思ってたんですが、9話で泣かせに来ましたね。Aqoursとのコラボは良かったと思います。

次回から本編に戻ります。番外編は気まぐれに書きます。


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コミュ障ヘタレはクリスマスに本気を出す

結局クリスマスの話を書くことにしました。作者が三日程度で考えたのでクオリティは察してください。あと例に漏れず長文です。


クリスマス・・・その日はイエス・キリストの誕生を祝う日とされている。でも日本ではどちらかと言うとパーティーをしたり、各々で楽しむ日という感じであろう。もちろん内浦もそんなクリスマスムードに染まっている。

 

それはクリスマスが近づいてきたある日のことだった。

 

「ねぇねぇ瑠惟君、早くクリスマスにならないかな!」

 

「千歌、さっきからそれしか言ってないじゃないか。」

 

「だって、今年はAqoursのみんなと過ごす初めてのクリスマスだよ!」

 

「それもそうだな。」

 

今年のクリスマスは鞠莉さんの提案でみんなでクリスマスパーティーをやろうということになったのだ。鞠莉さん曰く普通のパーティーじゃつまらないので船上でパーティーをやるそうだ。

 

「明日、プレゼント交換用のプレゼントを買いに行こうよ!」

 

千歌の言った通り、パーティーではAqoursのみんなでプレゼント交換会をやることになっている。しかもただのプレゼント交換ではない。それは誰にプレゼントを渡すか事前にクジで決めたのだ。つまり誰にプレゼントをあげるかは分かっているが、誰から貰うかは当日のお楽しみというわけだ。ちなみに自分があげるのは・・・ここで言うのは止めておくよ。

 

「分かった。明日、沼津の方に行こうか。」

 

「やったぁ!明日はデートだ!」

 

「おいおい、あくまで目的は買い物だからな。」

 

「分かってるよ〜。」

 

ホントに分かってるんだか・・・。

 

「ところで千歌。」

 

「ん?何?」

 

「プレゼントを買いに行くのはいいんだが、小遣いは残ってるのか?」

 

「あ・・・」

 

ビンゴだ。どうやら千歌には貯金という習慣は無いらしい。

 

「私お小遣い前借りしてくる〜!」

 

そう言って千歌は部屋を出ていった。

 

その直後電話が掛かってきた。

 

相手は・・・梨子?

 

「どうしたんだ梨子?」

 

「えっと突然ごめんね。あの・・・明日って何か予定とかあるかな?」

 

「すまない。明日は先約があって・・・。」

 

「・・・そうなんだ。うん、分かった。じゃあまたパーティーで会いましょ。」

 

「あぁ、こっちもごめんな。」

 

「気にしないで。突然誘ったのは私だし。じゃあね。」

 

なんか梨子には悪いことしたな。

 

プレゼントか・・・。一人だけに渡すのもいいが日頃の感謝もあるしな・・・。何かサプライズできれば・・・。あっ!いいこと思いついたぞ。

 

そしてある人物に電話を掛ける。

 

「もしもし、・・・さん。こんな時間にすいません。ちょっと頼み事があるんですけど。・・・・・・ありがとうございます。ではお願いします。」

 

電話を終えると千歌が戻ってきた。

 

「前借りできたか?」

 

「できたけど・・・。」

 

「どうしたんだ?」

 

「志満ねぇに今日中に冬休みの宿題できたらあげるって言われて・・・。」

 

「そうか。じゃあ頑張れよ。」

 

「えぇ〜!?そこは『手伝ってやるよ。キリッ』って言うところだよ!」

 

「何で千歌の宿題を手伝わなきゃならないんだ。こっちはとっくに宿題終わらせたし早く寝たいんだよ。」

 

「お願い〜。瑠惟君が手伝ってくれないと終わらないから助けて〜。手伝ってくれたらなんでもするから。」

 

そんな手に乗るかよ・・・ん?

 

「千歌・・・今なんでもするって言ったよな?」

 

「え?そうだけど・・・。まさか私にあんな事やこんな事を・・・。」

 

「バカか。誰が従姉妹に欲情するんだよ。とにかくその条件で契約成立だ。」

 

「じゃあ手伝ってくれるの?」

 

「もちろんだ。そうと決まれば今からやるぞ。覚悟するんだな。」

 

「イエッサー!」

 

そこから千歌が溜め込んだ宿題をやり続けた。

 

数時間後・・・

 

「終わったー!」

 

「疲れた・・・。どれだけやってなかったんだよ。」

 

千歌はそこまで勉強が得意ではないが、要領が良く、根性もあるのでやり方を教えるとスラスラと問題を解いていった。

 

「とにかくありがとう!よーし、志満ねぇに見せてくるよ!」

 

「じゃあこっちはもう寝るわ。おやすみ。」

 

朦朧とする意識のままベッドに向かいそのまま眠りに落ちた。

 

翌日・・・

 

「着いたー!」

 

千歌と二人で沼津に来た。休日ということもあり通行量は少し多い。

 

「じゃああそこに行くよ!」

 

千歌に連れて来られたのは沼津にあるショッピングモール。この辺りじゃかなり規模があり、ここに来れば大抵の物は揃う。

 

「ところで何を買うか決めたのか?」

 

「それを言ったら面白くないでしょ。当日のお楽しみだよ。」

 

「そうか。じゃあ一時間後にここに集合でいいか?」

 

「うーん・・・折角二人で来たけど・・・何を買ってるか見られるのも嫌だし・・・分かった。じゃあ一時間後にここに集合ね。」

 

「分かった。絶対に時間を守れよ。あと何かあったらすぐに連絡をしろよ。」

 

「ハイハイ、瑠惟君は心配しすぎだよ。大丈夫だから。」

 

こんな事を言っているが千歌は出掛ける度に迷子になっている。

 

「じゃあまた後で。」

 

こうして別れてプレゼントを探すことになった。

 

さて・・・何にしようかな。

 

しばらくモール内を歩いていると見慣れた人物が目に入る。

 

あれは・・・果南さん、鞠莉さん、ダイヤさん?

 

三人でプレゼントを買いに来たんだろうか?

 

すると果南さんがこちらに気付いた。

 

「あっ、瑠惟じゃん。やっほー。」

 

「どうもです。」

 

続いてあとの二人もこちらに気付く。

 

「瑠惟さん?あなたも来ていらしたですのね。」

 

「Hello 瑠惟。」

 

「もしかして一人で来たの?」

 

果南さんが哀れなものを見る目でこちらを見る。

 

「いやいや、こんな所に一人で来たら虚しくてすぐに帰りますよ。千歌と来たんですけど、プレゼントを買うところを見られたくないということで別々で行動しているんです。」

 

「ふーん、そうなんだ。ねぇ瑠惟は誰にあげるの?」

 

「言うわけないじゃないですか。当日のお楽しみですよ。」

 

「そうだね。」

 

「そちらもプレゼントを買いに来たんですか?」

 

「うん、最初は一人で来ようと思ったんだけど・・・。」

 

「ダイヤがね、一緒に来てほしいってCryしてきたの。」

 

「嘘をおっしゃい!私は決して・・・さ、寂しかったわけではありませんことよ!」

 

ホントに分かりやすい人だ。

 

「そういう事にしておきますよ。ところで鞠莉さん、今日買う予定のプレゼントを鞠莉さんのところで置いて貰っても構いませんか?」

 

「Of course もちろん良いわよ。そんなに沢山買う予定なの?」

 

「まぁちょっと色々ありましてね。それでみなさんはどんなプレゼントだったら嬉しいですか?」

 

三人は悩む素振りも見せずに答える。

 

「「「その人の心がこもっているのならどんなプレゼントでも叶わないよ(ですわ)。」」」

 

「そうなんですか。でも強いて言うなら?」

 

「私はイルカのぬいぐるみとかがいいな。」

 

果南さんが答える。

 

「私はね・・・何か形に残る思い出が欲しいかな。」

 

鞠莉さんが答える。

 

「私は・・・μ'sのグッズが欲しいですわ。」

 

「果南さんと鞠莉さんは意外ですね。ダイヤさんは予想通りですけど。」

 

「そんなこと聞いてどうするの?まさか私たちにくれるの?」

 

「気になったので聞いただけですよ。・・・じゃあそろそろ行きますね。」

 

「じゃあまたね。」

 

三人と別れまたモール内を歩く。目当ての物が中々見つからないので少し焦っている。

 

するとまたしても見覚えのある姿が見えた。

 

Aqoursの一年生組の三人である。

 

「先輩?こんなところで何してるずら?」

 

「え?花丸ちゃん、瑠惟先輩がいるの?・・・あっ本当だ。こんにちは先輩。」

 

「よくぞ私の元に来てくれたわね。我がリトルデーモン。」

 

「三人ともこんにちは。やっぱりプレゼントを買いに来たの?」

 

「そうずら。先輩もずらか?」

 

「そうだよ。」

 

「ルビィたちは善子ちゃんに誘われて来たんです。」

 

「我が眷属たちの力を利用させてもらうわ。」

 

「善子ちゃん、プレゼント選ぶのが不安だからマルたちに手伝ってほしかったずらね。」

 

「そ、そんなわけないでしょ!」

 

まぁ善子が一人で選んだらそっち系統の物になるからな。

 

「三人はどんな物が欲しいの?」

 

「マルは・・・とにかく本があればいいずらね。」

 

「ルビィは・・・μ's・・・小泉花陽ちゃんのグッズが欲しいです。」

 

「私は・・・邪気を放つ闇の衣ね。」

 

「ハイハイ、新しいコートだろ。」

 

三人とも予想通りだな。

 

「貰えたらいいな三人とも。」

 

「先輩は何が欲しいずら?」

 

確かにそんな事考えたことなかったな・・・

 

欲しいものか・・・

 

「自分は・・・・・・が欲しいな。」

 

「先輩らしいずらね。」

 

「そうか?まぁ他に欲しい物が無いんだよな。」

 

「先輩も貰えるといいずらね。」

 

もうこんな時間か・・・

 

「じゃあそろそろ行くわ。約束があるからな。」

 

そうして三人と別れた。

 

時刻は集合時間の十分前、未だに見つかっていない。

 

後で一人で探すか・・・。

 

とりあえず今は千歌と合流しよう。

 

集合場所に着いたが案の定、千歌はまだ来ていない。

 

何やってるんだあいつは。

 

しばらく待っていると

 

「瑠惟君!ごめんねー!」

 

千歌がようやく来た。

 

「おい、何遅れてるんだよ・・・って梨子?そして曜?」

 

そこには何故か千歌と一緒に梨子と曜がいた。

 

「え?瑠惟君・・・。昨日言ってた先約って千歌ちゃんの事だったんだね。」

 

「・・・・・・」

 

何か雰囲気ヤバくない?

 

「ワタシ オナカヘッタナー。ミンナ、ナニカタベニイコーヨー。」

 

すごくわざとらしいが曜がフォローを入れてくれた。

 

「・・・そうね。ちょうどお昼だし二人も一緒にどう?」

 

「ごめんな梨子、今日は千歌と二人で出掛けるって約束したんだ。」

 

「そう・・・。あなた本当に千歌ちゃんが大切なのね。」

 

「当たり前じゃないか。」

 

「じゃあ私たちは行くね。ほら行くよ梨子ちゃん。」

 

「ごめんね邪魔をしちゃって。」

 

「ちょっと待ってくれ二人とも。」

 

「「どうしたの?」」

 

「二人はクリスマスプレゼントに何を貰ったら嬉しい?」

 

「私は・・・新しい裁縫道具かな。最近忙しくて新調できてないしね。」

 

曜が答える。

 

「私は・・・可愛い小物とかが欲しいかな。」

 

「どうしてそんな事聞くの?」

 

「いや・・・女子の好みがイマイチよく分からなくて、色んな人に聞いて参考にしてるんだ。」

 

「でも・・・あなたが心を込めて贈れば、それ自体がどんな物でも、貰った人には最高のプレゼントになると思うわ。」

 

「そうだよな・・・。二人ともありがとう。」

 

「いいのよ。それより・・・今度は私とデートしてよね。」

 

「あぁ、もちろんだ。」

 

そういえば最近、梨子に構ってやれなかったな。

 

「千歌ちゃん、瑠惟君、また明日ね!」

 

「梨子ちゃん、曜ちゃん、バイバイ!」

 

二人と別れ、千歌と二人になった。

 

「それで・・・瑠惟君は目的の物は買えたの?見たところ何も買ってないみたいだけど。」

 

「実は・・・まだ買えてないんだ。」

 

「えぇ〜!?瑠惟君何してたの!?」

 

「色々あったんだよ。だから後で買いに行こうと思う。どの店に行くかは決めてあるから。」

 

「うん。瑠惟君の事だから何か考えてるんだよね。じゃあ私は帰・・・」

 

「もう帰るのか?まだ昼だぞ。」

 

「え?だって瑠惟君一人で買い物に行くんでしょ?」

 

「確かにそうだが、せっかく千歌と二人で来たからもう少し遊んで行こうかと・・・」

 

「うん!私ももう少し一緒にいたい!」

 

誘ってくれた子を放り出すのはさすがのコミュ障ヘタレでもやらないよ。

 

それから二人でたくさん遊んだ。かつてお互いがまだ小さかった頃のようにはしゃいだ。あの時は千歌は怖がりで自分がいつも手を引っ張っていたな。今となっては逆転したけど。千歌がみんなを引っ張ってる。

 

気づけば夕方になっていた。

 

「もうこんな時間だ。じゃあ私は先に帰るね。美渡ねぇたちには私が言っておくから瑠惟君はゆっくり選んできていいよ。」

 

「悪いな千歌。一人で帰らせてしまって。あっそうだ、千歌はクリスマスプレゼントに何を貰ったら嬉しい?」

 

「私はもういいの。だって少し早めのクリスマスプレゼントを瑠惟君から貰ったから。」

 

「え?何か千歌にあげたか?」

 

「コミュ障でヘタレさんには分からないよ。気が向いたら答えを言ってあげるね。」

 

「そうか。じゃあ楽しみにしておくよ。」

 

「じゃあね。あんまり遅くなりすぎないようにね。」

 

「分かってるよ。」

 

こうしてとうとう一人になった。

 

さてさて、目的の店に行きますか。

 

あまり時間が残ってないので全速力で店を回った。

 

目的の品を買い、鞠莉さんの家にそれらを送ってもらう手続きを済ませたので家に帰ろうとすると電話が掛かってきた。

 

「はい。用意できたんですね。ありがとうございます。じゃあ今から言う住所にそれを送ってください。住所は・・・・・・です。お願いします。ではまた。」

 

用事は全て済んだし帰ろうか。

 

いよいよ明日か・・・みんな喜んでくれるといいな。

 

 

 

パーティー当日(12月25日)

 

「おい、千歌起きろ。いつまで寝てるんだ。」

 

「むにゃむにゃ、え〜もう朝〜?寒いからもう少し寝させて。」

 

どれだけだらしない格好で寝てるんだよ。パジャマも半分脱げてるし、そりゃ寒いのは当然だろ。仕方ない・・・

 

「そういえば下の階に志満さん達からのプレゼントがあったような・・・。しかも早い者勝ちだったような・・・。」

 

そう言うと千歌が飛び起きた。起きたのはいいんだが・・・

 

「なんで千歌は下がパンツだけなんだ?」

 

「え?」

 

千歌は慌てて確認する。そして自身のあられもない姿に気付く。

 

次の瞬間、旅館中に少女の悲鳴と人が倒れる音が響き渡った。

 

ラブコメの神様はクリスマスでも仕事してるんですね(怒)

 

 

 

「もぉ〜ごめんってば。だから機嫌直してよ。」

 

「無抵抗の人間に暴力なんて・・・。それにしても殴ること無かっただろ。」

 

「ごめん、ごめん。ところで瑠惟君プレゼントは?持ってきてないみたいだけど。」

 

「鞠莉さんのところに置いてもらってるんだ。」

 

「そんなに大きいプレゼントなの?」

 

「大きいというか・・・多いというか・・・。見てからのお楽しみだ。」

 

集合場所の港に近づいてくると大きな客船が見えた。

 

「こんな所にもあんな客船が来るんだな。」

 

「私、こんなに大きいの初めて見たよ。」

 

集合場所に着いたが二人以外は誰もいない。

 

おかしいな。集合時間ぴったりなんだが。

 

すると先程の客船から誰かが降りてきた。

 

「メリークリスマス!千歌っち、瑠惟。」

 

「「鞠莉さん(ちゃん)!?」」

 

「あともう少しで遅刻だよ。さぁ中に入って。」

 

「もしかして、今日のパーティーって・・・。」

 

「YES!この小原家自慢の船が会場よ!」

 

マジですか・・・。ていうかデカすぎる。小原家のちからってすげー!

 

鞠莉さんに続いて船の中に入っていく。

 

中に入るとそこにはAqoursのみんなが既に来ていた。

 

「これで全員揃ったわね。じゃあ今日のパーティーについて説明するね。今日はこの船がこの辺りの海を航海しながらパーティーをするわ。会場はこの先にあるメインホールね。それに伴いみんなにはドレスアップしてもらうわ。」

 

「でも私たち替えの服なんて持ってないよ。」

 

「No problem. みんなが着る服はこちらで用意させてもらってるから好きなのを選んでね。」

 

本格的すぎるだろ。クリスマスパーティーだぞ。

 

「じゃあガールズは私についてきてね。瑠惟はパパが案内してくれるわ。」

 

「分かりまし・・・『パパ』?」

 

鞠莉パパ来てるの?ホントなの?

 

「久しぶりだね瑠惟君。」

 

マジで来てたー。

 

「お久しぶりです。本日は・・・」

 

「そんなに畏まらなくていい。いつも通りでいてくれ。」

 

「デフォルトでこんな感じですけどね。」

 

この人は鞠莉さんのお父さん。超多忙なこの人は家族にさえも滅多に姿を見せない。見た目はちょっとそっち系の人と勘違いしそうなぐらい怖いが話してみると気さくで、とても社交性のある人だ。

 

「珍しいですね。内浦に来るなんて。」

 

「クリスマスぐらいは休んでもバチは当たらないだろう?それに可愛い娘の頼みだ。できるだけ尽力するのが親の務めだ。」

 

「違いないですね。」

 

「私の知らない間に娘にこんなにもたくさんの友人ができていたとは・・・。鞠莉も変わったな。それに君が高校を卒業さえしてくれればいつでも鞠莉と結婚してもらってもいいんだがね。」

 

「自分より素敵な男性は山ほどいますよ。」

 

「私は鞠莉が認めた男しか小原家として迎え入れるつもりは無いな。」

 

こんな風に会えば必ず結婚話を持ち込んでくる。この人なりのジョークだろう。

 

話してる間に更衣室に着いた。

 

「ここで着替えてくれたまえ。衣装は中にある。メイド達が着替えを手伝ってくれるから心配しなくていい。じゃあ私は先にメインホールに向かうよ。」

 

用意されていたのは黒を基調としたタキシードだった。メイドさん達のおかげで難なく着ることができた。

 

「では瑠惟様こちらへ。」

 

案内されメインホールに入ってまず目に入ったのは高い天井から吊られた見たことないくらい大きなシャンデリア、そしてクリスマスツリーだった。周りにはたくさんの料理が並べられていて使用人さんがたくさんいた。

 

「すげぇ・・・」

 

「もうすぐAqoursの皆様がお見えになります。」

 

メイドさんがそう言うと自分が入ってきた方とは反対側の扉が開いてAqoursのみんなが入って来た。

 

「綺麗だ・・・」

 

自然と言葉が漏れた。Aqoursのみんなはそれぞれのイメージカラーに合わせたドレスを着ている。まるで全員が一国の王女のようだった。

 

Aqoursはこちらを『どうだ』と言わんばかりのドヤ顔で見てきた。

 

これは何か言わないといけないのか?

 

「え〜と・・・みんな似合ってるよ。」

 

「もうちょっと言葉が欲しいけどおまけで及第点ね。」

 

許された!

 

「じゃあみんな今日はたくさん楽しんでいってね。デリシャスな料理もあるしね!じゃあ行くわよ!せーのっ!」

 

『メリークリスマス!』

 

パーティーは料理を食べたり、みんなでゲームをしたり、おしゃべりしたりして順調に進んでいった。

 

すると鞠莉さんが

 

「みんな〜!Let's Dance!」

 

ダンス?

 

「あの・・・鞠莉さん、ダンスって?」

 

「あら?私言ってなかったかしら?・・・まぁいいわ。今からワルツを踊るよ〜!」

 

「ねぇ瑠惟君、『ワルツ』って何?」

 

「説明しよう!『ワルツ』とは19世紀にヨーロッパで流行った舞踊で、ドイツ語で『回転する』という意味を持つように、カップルが手を取り合って抱擁し旋回しながら一方向に円を描くように踊るんだ。有名なものとしては『白鳥の湖』や『くるみ割り人形』とかがあるな。」

 

「へぇ〜、すごいね。よく知ってるね。」

 

「いや、今調べたんだ。」

 

「私の感心を返してよ!」

 

すると果南さんが

 

「みんなワルツって踊れるの?」

 

「もちろん!一般常識ってやつでしょ!」

 

まぁ鞠莉さんは育ちも良いし踊れるだろう。

 

「本でなら見たことありますけど・・・実践には至っていませんわ。」

 

確かにダイヤさんの家風ではワルツは踊らないだろうな。

 

しかし意外なことに他のみんなは学校の授業や修学旅行でやったことがあるから踊れると言っている。

 

「私はできないよ。」

 

「千歌ちゃん授業があった日、学校休んでたからね・・・。仕方ないね。」

 

「瑠惟君はできるの?」

 

「まぁ一応・・・。」

 

親にみっちり叩き込まれたなんて言えないよな。

 

「じゃあマリーと瑠惟で見本を見せるから、踊れない人は踊れる人とペアになってね。」

 

「みんな準備OKね?じゃあ始めるわ。いくよ瑠惟。」

 

「はい。」

 

おぉ・・・久しぶりにやったが案外踊れるもんだな。ていうか鞠莉さん上手いな。

 

「ざっとこんな感じね。みんなはどう?できそう?」

 

「なんとか形にはなりそうですわ。」

 

「私もできるかも。」

 

「OK。じゃあ本番といきましょうか。時間は長くとるから色んな人と踊ってね。」

 

まずは誰と組もうかな・・・あ!

 

「Shall we dance?ダイヤさん。」

 

「わ、私でよろしいのですか?あまり上手くは・・・。」

 

「大丈夫ですよ。自分がリードしますから。」

 

「ではよろしくお願いしますわ。」

 

ダンスの体制に入ろうとダイヤさんの腰に手を回す。ダイヤさんて結構華奢なんだな。

 

「破廉恥ですわ。こんなの/////」

 

曲が始まるとダイヤさんを優しくリードした。

 

「あの・・・ダイヤさん。」

 

「何ですの?」

 

「顔を上げてもらわないと危ないですよ。」

 

「わ、分かりましたわ/////」

 

ダイヤさんの顔は紅く染まっていた。

 

「あまり見つめないでくださいませ。ドキドキしてしまいますわ/////」

 

何この可愛い生き物。

 

曲が一段落したのでダイヤさんと別れようとすると

 

「私、上手く出来ていましたか?」

 

「はい、上手に踊れていましたよ。」

 

「ありがとうございますわ。よろしければまた別の機会にでも。」

 

「もちろんですよ。」

 

それからAqoursのみんなと踊って・・・

 

「Shall we dance?千歌。」

 

「うん!一緒に踊ろう!」

 

ダンスの体制に入ると、なぜか千歌がこちらの体をぺたぺたと触ってくる。

 

「何してるんだ?」

 

「瑠惟君て意外とガッチリしてるね。」

 

「当たり前だろ。いつも目の前のおてんばなお姫様の無理難題をこなしてきたからな。」

 

「ひどーい!瑠惟君だって私に自分で宿題やれって言うじゃん!」

 

それは普通だろ・・・

 

「ハイハイ。悪うございました。」

 

そんなやりとりをしてる内に曲が始まった。

 

「いくぞ千歌。」

 

「うん!」

 

千歌はさっきまで初心者だったのが嘘用に上達していた。

 

しかし無理をして体勢が崩れてしまった。とっさに千歌を抱き抱える。

 

「大丈夫か?あんまり無理すんなよ。」

 

「うん、ありがとう/////」

 

千歌を抱き抱えた状態のまま曲が完全に終了した。

 

会場中の視線がこちらに集まる。

 

ダイターン!ハレンチですわ!すごいずら・・・。といった声が聞こえる。

 

とりあえず千歌を離す。

 

う〜ん気まずい。

 

「そういえばプレゼント交換はまだずら?」

 

ナイスだ花丸ちゃん!

 

「そろそろ時間だし、始めましょうか。」

 

こっちはコスチュームチェンジの時間だ。

 

「鞠莉さん、アレはどこに置いてありますか?」

 

「更衣室にプレゼントと一緒に置いてあるけど・・・本当にアレを着るの?」

 

「もちろんですよ。こういう時ぐらいカッコつけさせてくださいよ。」

 

「そう・・・。なら頑張ってね!」

 

足早に更衣室に向かった。

 

別の衣装に着替えて会場に戻ると既にプレゼント交換が始まっていた。

 

「あっ!瑠惟君が来たって・・・なんでサンタの格好してるの?」

 

「ほーほっほ、メリークリスマス!私はサンタさんだよ!」

 

この瞬間Aqoursは思った『こいつは何をしてるんだ』と。

 

ただ二人を除いて。

 

「お姉ちゃん!サンタさんが来てくれたよ!」

 

「すごいですわ!本当に来て下さるなんて!」

 

黒澤家には純粋な子がいるんだな・・・。

 

「この一年間、良い子だった君たちにはプレゼントをあげよう!」

 

「まずは果南ちゃん、君にはこの大きなイルカのぬいぐるみをあげよう。」

 

「これって・・・私が欲しいって言ってたやつだ。・・・ありがとうサ・ン・タさん♪」

 

「次に鞠莉ちゃん、君にはこれを。」

 

鞠莉さんに渡したのは・・・

 

「これは・・・アルバム?」

 

「中を見てごらん。」

 

鞠莉さんがページをめくるとそこには今まで撮ってきたAqoursの写真がたくさん入ってた。

 

「Wonderful!Thanks! サンタさん!」

 

「次に花丸ちゃん、君にはこれを。」

 

「瑠惟先輩、何してるずら?」

 

「瑠惟とは誰のことかな?私は正真正銘のサンタクロースさ!」

 

花丸ちゃんに渡したのは

 

「すごいずら!マルが読みたかったシリーズの全巻セットずら!」

 

「嬉しいかね?」

 

「ありがとうございますずら!サンタさん!」

 

「次は善子ちゃん。」

 

「ヨハネ!」

 

「君にはこれを。」

 

善子ちゃんに渡したのは

 

「こ、これって闇の衣・・・」

 

いやただのコートだよ。

 

「ふっ、感謝しておくわ。あなたもリトルデーモンにしてあげるわ。」

 

「次は曜ちゃん、君にはこれを」

 

「これって新しい裁縫道具だ。サンタさんありがとう!大切にするね!・・・後でその衣装私にも着させてね!」

 

「次にダイヤちゃんにルビィちゃん、君たちにはこれを・・・」

 

二人に渡したのは・・・

 

「み、μ'sのさ、サインですわ!!」

 

「すごい!すごい!これ本物なの!?」

 

「あぁもちろんさ。」

 

先日、電話をかけた相手はμ'sの穂乃果さんだったのだ。彼女に頼んでμ's全員のサインを書いてもらったのだ。しかもそこには『ダイヤちゃん、ルビィちゃんへ』というメッセージのおまけつき。

 

「家宝にしますわ!」

 

「「サンタさん、ありがとうございます!」」

 

「次は梨子ちゃん、君にはこれを。」

 

梨子に渡したのは・・・

 

「バレッタ?」

 

「君に似合うと思ってな。」

 

「ふふっ、サンタさんもちゃんと見てくれてるんだね。ありがとう瑠惟君。」

 

だから瑠惟じゃないよ。

 

「最後に・・・千歌。」

 

千歌だけにはいつもの姿で渡そう。

 

「自分が引いたくじに書いてあったのは千歌の名前だったんだ。」

 

「うん、知ってたよ。だって瑠惟君隠し事するのが下手くそだからすぐに分かったよ。」

 

バレてたか・・・。できるだけ悟られないようにしていたんだがな。

 

「なぁあの時の約束覚えてるか?忘れたとは言わせんぞ。」

 

「覚えてるよ。『何でもする』でしょ?」

 

「なら話は早いな。千歌、目をつぶってくれ。」

 

「うん。」

 

千歌はゆっくりと目を閉じる。

 

そして自分は千歌の顔に少しずつ近づき・・・

 

 

 

 

 

 

マフラーを首に巻いてあげた。

 

「これって・・・」

 

「千歌は冬になってから寒いってずっと言ってたからな。だからこれを使って少しでも暖かくなってほしくてな。嫌だったか?」

 

「嬉しいよ!こんな素敵なプレゼント、本当に嬉しい!・・・やっぱり私たちは似たもの同士だね。」

 

「どういうことだ?」

 

「実はね私が引いたくじには瑠惟君の名前が書いてあったの。だから私もプレゼントがあるんだ。」

 

そう言って千歌が出したのは・・・

 

「確かに似たもの同士かもな。」

 

マフラーだった。

 

その瞬間何だかおかしくなって二人とも笑い出した。

 

「ありがとう千歌。大切に使うよ。」

 

こうして特別なクリスマスパーティーは幕を閉じた。

 

後日談

 

ある日千歌に聞かれた。

 

「ねぇ瑠惟君、なんでサンタの格好にしたの?」

 

「何だかプレゼントを渡すのが恥ずかしくてな。だからサンタの姿を借りて渡そうと思ったんだ。その方がクリスマスらしいだろ。」

 

「じゃあ何で最後私に渡す時には普通の格好になったの?」

 

「千歌は自分にとって特別な存在なんだ。だから恥ずかしさも無かったし、何となくいつもの姿で渡したくなったんだ。」

 

「やっぱり瑠惟君は変な人だね。」

 

「余計なお世話だ。・・・そういえばさ、千歌が言った『早めのクリスマスプレゼント』ってなんだったんだ?」

 

「覚えてたんだね・・・私がスクールアイドルを始めてから瑠惟君と二人で出掛けたりすることが無くなっちゃったの。瑠惟君はみんなに優しいから何となく寂しくなっちゃって。だからあの時梨子ちゃんと曜ちゃんが来て、少し怖かったんだ。また取られちゃうって。でも瑠惟君は私の為にわざわざ梨子ちゃんの誘いを断ってくれたよね。嬉しかったの。それに私と一緒にいたいって言ってくれたのもとても嬉しかった。だからその時間は私にとってのクリスマスプレゼントだったの。」

 

千歌がそんな事を思ってたなんて気付かなかった。

 

「何言ってるんだよ。バカ千歌。」

 

「何回でも遊びに連れてってやるよ。千歌がもう嫌だって言うぐらいな。こんな可愛いやつを誰が放っておくんだよ。」

 

「言ったね。その言葉よく覚えておいてね!瑠惟君がそう言うなら色んな所に連れてってもらうんだから!」

 

クリスマスの空気にあてられて無理をしすぎたと思ったコミュ障ヘタレなのであった。




番外編続きですいません。書きたいことがありすぎてペースが追いつかないです。最後の方は作者が力尽きかけていたので文がかなりガバガバでした。ところで話は変わりますが、今週でサンシャインが最終回ですね。前にも言いましたが終わってほしくないです!!


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コミュ障ヘタレと体育祭 前半の部

お待たせしました。久しぶりの番外編です。ちょっと季節外れの内容ですが許してください。あと例に漏れず長いので前編と後編二つに分けております。


季節は秋、紅葉も色づいて美味しい食べ物をたくさん食べてしまう頃ですが、この時期浦の星ではある行事が開かれようとしていた。

 

瑠惟「体育祭?」

 

千歌「うん。浦の星では毎年この時期に体育祭をやってるんだよ。」

 

花丸「た、体育祭・・・マルはあんまりいい思い出がないずら。」

 

まぁ体育祭ってのは基本的に運動が得意だろうと苦手だろうと関係なく競技に出なくちゃいけないからな。花丸ちゃんみたいに運動が苦手な子は少し可哀想だよ。

 

瑠惟「でも、人数が少ないからクラス対抗ってわけじゃないよな?」

 

曜「うん、去年は赤組・白組に分かれてやったんだよ。」

 

じゃあ今年もそうなりそうだな。

 

梨子「それで、どんな競技があるの?」

 

果南「確か・・・徒競走、騎馬戦、パン食い競走、借り人レース、紅白対抗リレーにあと部活動対抗リレーだね。」

 

へぇー結構本格的にやるんだな。女子校で騎馬戦は意外だな。というか男の俺は出場できるのか?いや、まぁ一応ここの生徒なんだから一つぐらいは出れると思いたい。

 

ダイヤ「果南さん、アレを忘れてますわよ。」

 

果南「アレって?」

 

ダイヤ「体育祭の目玉、フォークダンスですわ!」

 

果南「あぁそれね、ていうか目玉種目だったの?」

 

ダイヤ「いいえ、今回から目玉種目になるのですわ。だって・・・」

 

そう言ってダイヤさんがチラチラこちらを見てくる。

 

みんなもそれを見て何かを理解したかのように『あぁ〜』と声が出る。

 

何を理解したかは分からないがまぁいい。

 

瑠惟「まだ組が分からないから何に出るとかは決められないけど、部活動対抗リレーは出場するのか?」

 

千歌「えっ?私に聞いてるの?」

 

瑠惟「いや、リーダーに聞かないで誰に聞くんだよ。」

 

千歌「えへへ、そうだよね。うーん・・・」

 

果南「せっかくだし出てもいいんじゃない?」

 

3年生はこれが最後の体育祭だからな、少しでも多く思い出を作りたいんだろう。

 

千歌「分かった。出よう!」

 

そうなると今度は誰が走るかだが・・・

 

瑠惟「ダイヤさん、部活動対抗リレーって何人で走るんですか?」

 

ダイヤ「確か1つの部活から5人まで出場できて、1人グランド半周、つまり100m。5人で500m走ることになってますわ。」

 

瑠惟「それって勝ったら何か貰えるんですか?」

 

ダイヤ「・・・特にはありませんわ。」

 

少し間があったのが気になるが、それほど勝ちにこだわる必要は無いな。

 

千歌「5人か〜。うーん・・・出たい人いる?」

 

千歌がそう聞くと4人の手が挙がった。

 

手を挙げたのは曜、鞠莉さん、果南さん、そして意外だったのがルビィちゃんだった。

 

3人が出たいというのは分かる。運動神経の良さはAqoursの中でもかなり高い方だから。

 

だが、ルビィちゃんはどうしてかよく分からなかった。運動ができるかと言われれば、できないこともないが運動部に入っている子と比べるとそうでもないからだ。

 

魔が差した俺はついルビィちゃんに理由を聞いてしまった。

 

ルビィ「ルビィは今までやったことがないことに挑戦したいと思いました。・・・だから今回、リレーに出てルビィ自身の成長に繋げたいと思ったからです。・・・これじゃあダメですか?」

 

可愛すぎでしょ。

 

瑠惟「ルビィちゃん、俺の妹になってください。」

 

ルビィ「えっ?」

 

バシッ!

 

瑠惟「痛っ!」

 

千歌「何、意味わかんないこと言ってるの!」

 

瑠惟「いや、ルビィちゃんが可愛くてつい。」

 

ごめんよルビィちゃん。さっき出来心で理由を聞いた俺を許してほしい。

 

ダイヤ「ルビィ!あなたは・・・こんなにもたくましく成長して・・・私はとても嬉しく思います!」

 

ルビィ「お姉ちゃん・・・。」

 

てことでリレーメンバーが4人決まった。

 

あとはもう1人をどうするかだが・・・。

 

何かみんなの視線がこっちに集まってる気がするんだけど。

 

瑠惟「言っとくが俺は出ないぞ。」

 

千歌「え〜なんで?出たら絶対に勝てるじゃん。」

 

瑠惟「いや、それだからだよ。こう言っちゃなんだが俺が出たらぶっちぎりで勝ってしまうぞ。そもそもここは女子校。俺というイレギュラーが体育祭に参加してるだけでもアレなのに、リレーなんかに出てみろ。空気が大変なことになるぞ。」

 

果南「私達は別になんとも思わないけどね。」

 

それはいつも一緒にいるからでしょうが。

 

みんなが良くても他の人はダメなんだよ。

 

瑠惟「とにかく俺は出ませんからね。」

 

周りから落胆の声が上がるがそんなことは関係ない。

 

曜「そうは言ってもあと1人出ないとね。」

 

梨子「わ、私は走るの得意じゃないし・・・」

 

いつも練習で走り込みしてませんでしたっけ?

 

花丸「マルも同じずら・・・」

 

まぁ花丸ちゃんは仕方ないか。

 

善子「だ、堕天使の力は人間には強すぎるから勘弁してあげるわ。」

 

あんたが1番走り回ってるイメージがあるんだが。

 

ダイヤ「私は生徒会長ですから走るわけには・・・」

 

もうちょっとマシな言い訳はなかったんですか?

 

瑠惟「となると残りは・・・」

 

千歌「え?私?」

 

瑠惟「はい、じゃあ頑張って。」

 

千歌「待って待って待って。本当に私が出るの?」

 

瑠惟「まぁリーダーだし、アンカーって意味では一番適任なんじゃないか?」

 

千歌「うーーー、分かった。私も走る。」

 

ということで無事リレーメンバーが決まった。順番は5人が話し合った結果

 

ルビィ→曜→鞠莉さん→果南さん→千歌 という感じになった。

 

ていうか俺って今回出番あるのかな?

 

別に欲しいってわけじゃないけど一応主人公だし・・・ちょっとだけ期待しておくか。

 

 

 

それから日が経って体育祭当日となった。

 

千歌「赤組のみんな~!今日は白組に勝てるよう頑張ろう!」

 

曜「いつもは仲間だけど・・・今日は負けないからね千歌ちゃん!」

 

瑠惟「なんかいい感じに分かれたな。」

 

結局組み分けは

 

赤組に千歌、ルビィちゃん、ダイヤさん、鞠莉さん、果南さん。

 

白組に俺、曜、梨子、善子、花丸ちゃん。というふうになった。

 

ちなみに俺はハンデ付きで参加させてもらえることになった。

 

瑠惟「今日は千歌のお母さんも来てくれてるんだよな?」

 

千歌「うん!お母さんに体育祭の話したら見に行きたいって言ってたから、今日だけ東京から戻ってきてくれたの。」

 

瑠惟「おぉ。それは良かったな。」

 

俺も両親に今日のことを伝えたんだが生憎仕事が忙しく、どちらも日本には帰ってこれないらしい。

 

でも両親が言うには代わりに見に来てくれた人がいるらしいのだが・・・。

 

「生徒の皆さん、まもなく開会式が始まります。グラウンドに集まってください。」

 

おっともうそんな時間か。早く行かなきゃ。

 

 

 

ダイヤ「宣誓。私達浦の星女学院の生徒一同は正々堂々とスポーツマンシップにのっとり、全力で・・・今日を楽しむことを誓います!生徒代表黒澤ダイヤ。」

 

パチパチパチパチ。

 

ダイヤさんからのテンプレに近い宣誓が終わったところで鞠莉さんが出てくる。

 

鞠莉「これより第~回浦の星女学院体育祭を開催します!みんな、ダイヤの言った通り今日は楽しんでいきましょ~!シャイニー!」

 

ここから俺たちの熾烈な?戦いが始まろうとしていた。

 

 

 

開会式が終わり最初の競技は100m徒競走。

 

Aqoursからは善子とダイヤさんが出場するようだ。

 

花丸「善子ちゃん頑張るずら。」

 

善子「私にかかれば人間程度のスピードを超えることなど容易いこと。だから堕天使ヨハネが少し遊んであげるわ。」

 

瑠惟「1位じゃなかったら罰ゲームな。」

 

善子「な、なんでよ!」

 

瑠惟「ヨハネ様なら1位になるくらい簡単だと思ったんだけどなー。どうやら俺の思い違いだったみたいだわ。」

 

善子「・・・いいでしょう!リトルデーモンがそこまで言うのなら人間共を蹴散らしてあげるわ!」

 

瑠惟「あと・・・勝ったら好きな物買ってやる。チョコでも苺でもなんでもいいぞ。」

 

善子「ん?今なんでもするって言ったわね。」

 

瑠惟「おい、『する』とは言って・・・」

 

その時ちょうど招集がかかったみたいで彼女はルンルン気分で走って行った。

 

少し想定外だがやる気を引き出せたので良しとしよう。

 

悪いな千歌、白組は全力で勝ちに行かせてもらうからな。

 

ーダイヤside inー

 

私、走るのはあまり得意じゃありませんが、種目決めのじゃんけんに負けてしまった以上、全力で走るしかありませんわ。

 

しかしそれ以上に問題なのは同じレースに善子さんがいることですわ。

 

ただ善子さんと一緒に走るのには何も問題はありませんが、問題なのは同じ白組に瑠惟さんがいること。

 

彼はきっと姑息な手を使って善子さんをパワーアップさせてきますわ。

 

Aqoursの中でもそれなりの運動神経を持つ善子さんを強くさせられたら、私に勝ち目はありませんわ。

 

瑠惟(今なんか誰かに悪口を言われた気が・・・)

 

それでも生徒会長として、黒澤家長女としてそう簡単に勝ちを譲る気はありませんわ!

 

私にも作戦がありますから・・・

 

ー瑠惟side inー

 

もうすぐ善子とダイヤさんのレースが始まるが・・・

 

ダイヤさん絶対に何か企んでるだろうな。

 

さっきから顔がニヤニヤしているのが遠目でも分かる。

 

一体何をしようとしているんだ?

 

そんなことを考えてると彼女達の出番が来た。

 

善子とダイヤさんの他に2人が、合計4人が横一列に並ぶ。

 

「位置について、よーい・・・」

 

その時だった。ダイヤさんが善子に何かを言ったように見えた。

 

「ドン!」

 

一斉に走り始めるが、善子は周りより明らかに遅れている。

 

どうやらスタートダッシュに失敗したみたいだ。

 

そんな善子をよそにダイヤさんは他の2人を追い抜き50mを超えた。

 

このままダイヤさんの一人勝ちになるとみんなが思っていた時、あいつが迫っていた。

 

善子「堕天使ヨハネを怒らせたこと後悔させてあげる!」

 

物凄い速さで追い上げた善子がダイヤさんを抜かそうとしていた。

 

ダイヤ「私だって負けませんわ!いつもいつも周りからポンコツ扱いされ挙句の果てには『生徒会長(笑)』と言われて・・・」

 

ダイヤさん・・・ごめんなさい。それ広めたの俺なんです。

 

ダイヤ「だから今回だけは負けませんわ!」

 

二人は横に並んでゴールに近づき、そのまま同時にゴールテープを切った。

 

 

かに思われたが・・・

 

「1着は赤組、黒澤ダイヤ!」

 

赤組から歓声があがる。

 

どうやら少しの差で負けてしまったようだ。

 

ダイヤ「私が1位・・・?」

 

善子「今回はあなたに勝ちを譲ってあげるわ。流石ね生徒会長。」

 

ダイヤ「善子さん・・・」

 

ルビィ「お姉ちゃん!おめでとう!」

 

ダイヤ「私が勝てたのは私一人の力じゃありませんわ。みなさんがいてくれたからですわ。」

 

俺からも祝福の声をかける。

 

瑠惟「おめでとうございます。ダイヤさん。」

 

ダイヤ「あなたに一泡吹かせようと私なりに頑張りましたの。」

 

瑠惟「いやーまさかダイヤさんがあそこまで速いとは思ってませんでした。」

 

確かにダイヤさんが速かったのは紛れもない事実だ。でも善子がスタートをミスったあの瞬間ダイヤさんは確実に何か仕掛けた。いったい何が起こったんだ?

 

気になった俺は善子に直接聞いてみた。

 

瑠惟「善子。」

 

善子「ギクッ!」

 

瑠惟「いや、別に負けたから怒りに来たわけじゃない。単純に気になったんだ。スタート直前に何があったのか。」

 

善子「誰にも言わないって約束して。」

 

瑠惟「言わない言わない(多分)。」

 

善子「実はスタート直前にダイヤさんが話しかけてきたの。」

 

瑠惟「ほうほう。」

 

善子「そこであの人に・・・昨日やった配信で私が言った痛い言葉をそのまま私に言われたの。」

 

なんだそんなことかよ。てっきり脅されたとか、靴にコッペパン突っ込まれたのかと思ったわ。ていうか自分で痛いって言うなよ。なんか悲しくなってくるから。

 

善子「あぁ~!なんだそんなことかよって顔したわね!」

 

瑠惟「いや、だってみんなの前でも同じようなこと自分から言ってるじゃん。今更何を・・・」

 

善子「そ、そうかもしれないけど私はびっくりしたの!それで遅れちゃって・・・。」

 

瑠惟「まぁ気にすんな。点差はそこまで開いてないし、何より次のパン食い競争、こちらには秘密兵器がいるから。」

 

それにしてもダイヤさんも善子の配信見てるんだな。そこが負けたことよりも意外だわ。

 

徒競走の結果は善子が惜しくもダイヤさんに敗れたが他の白組の奮闘もあり、

 

赤組100点・白組90点

 

とそこまで点差は開かなかった。

 

 

 

次の種目はパン食い競争。

 

Aqoursからは鞠莉さんと花丸ちゃんが出場する。

 

ここで少し時は遡る。

 

ーーーーーーーー

 

体育祭の数日前

 

瑠惟「花丸ちゃんは何の種目に出るんだ?」

 

花丸「マルはパン食い競争に出るずら!パンが食べられるなんて楽しみずら~!」

 

瑠惟「じゃあ結構自信があったりする?」

 

花丸「自身はあるずら。でもどんなパンが食べられるか聞いたら普通のパンでのっぽパンじゃなかったずら。そこだけが残念ずら。」

 

瑠惟「その言い方だとのっぽパンなら絶対に勝てるってことだよな?」

 

花丸「そうずら!」

 

ここで俺はあることを思いついた。

 

花丸「先輩、悪い顔してるずら。この顔をする時は大体何か企んでるずら。」

 

瑠惟「花丸ちゃん体育祭当日楽しみにしておけ。びっくりさせてやるから」

 

そして俺はある場所へ向かった。

 

ーーーーーーーー

 

瑠惟「花丸ちゃん、このレース絶対勝てるから。」

 

花丸「先輩あの後何かしたずら?」

 

瑠惟「まぁちょっと実行委員会の方にお邪魔させてもらっただけだから。」

 

花丸「・・・怪しいずら。」

 

瑠惟「そんなことより勝ったら善子みたいに好きな物買ってやるから頑張れ!」

 

花丸「ほんとずら!?なんでもいいずら?」

 

瑠惟「俺の財布が許す限りだがな。」

 

花丸「やったずら!」

 

花丸ちゃんは食べたいものをいくつも言いながら招集場所に向かった。

 

赤組よそちらはうちの秘密兵器ずらまるの強さを思い知るだろう。

 

ー鞠莉side inー

 

今回のレース相手が相手だけに油断は絶対にできないわ。

 

私の相手は花丸。

 

Aqoursの中では運動はできる方じゃないけど、今回はそれは関係ない。

 

もしリレーや徒競走みたいに走るだけの種目なら私もこんなに彼女を警戒してないわ。

 

なんせこれはパン食い競争。

 

ルールはいたって簡単。

 

スタートの合図と同時にスタートし、50mほど走った後吊るされているパンを手を使わずに取る。そしてパンを食べてからゴールする。

 

この勝負・・・最初の50mでどれだけ差を空けられるかにかかっているわ。

 

花丸はパンを食べるのは女のことは思えない速さで食べることができるけど、走るのは速くないし、何より身長がそこまで高くないわ。

 

いくらパンを食べるのが速くてもパンが取れなければ意味がないわ。

 

ふふっこの勝負もらったわ。

 

果南「鞠莉、頑張ってね。応援してるから。」

 

千歌「鞠莉ちゃん、気を付けてね。相手は花丸ちゃんだから。それに・・・瑠惟君が絶対に勝つって言ってたから。」

 

鞠莉「NO problem 心配ないわ。相手が誰でも私は勝つから。」

 

たとえ瑠惟に何か考えがあったとしても私は勝つわ。

 

ー瑠惟side inー

 

スタート位置に花丸ちゃん、鞠莉さんを含めて4人が並ぶ。

 

ここで花丸ちゃんはあることに気づく。

 

花丸「の・・・」

 

鞠莉さん「花丸?」

 

花丸「のっぽパンずらー!!」

 

なんと当初普通の市販のパンでパン食い競走をやるはずだったのに吊るされているパンはなんと全てのっぽパンだったのだ。

 

全部俺の作戦なんですけどね。

 

あの時、花丸ちゃんと別れた後に俺は体育祭実行委員会の部屋に向かい、色々脅し・・・ゲフンゲフン・・・助言してパン食い競走用のパンをのっぽパンに変えてもらったのだ。

 

どうだ。これが俺からのサプライズだ。

 

俺の『のっぽパン作戦』によって花丸ちゃんのやる気がぐぐーんと上がった。

 

さぁ鞠莉さん、こうなった彼女に勝つのは少々難儀ですよ。

 

そしてレースが始まる。

 

「位置について、よーい・・・ドン!」

 

4人が一斉にスタートする。

 

鞠莉さんは最初からエンジン全開で走っている。

 

一方花丸ちゃんのいつも練習で走るよりも速く走っている。

 

おそらく鞠莉さんは最初の50mで突き放してそのまま逃げ切る作戦を考えていたんだろうけど、うちの花丸にはそんな作戦通用しませんよ。

 

鞠莉(なんてスピードなの。私が勝っているとはいえ安心できるほど差が開いていない。・・・でも、花丸のあの身長じゃパンには届かない!)

 

スポーツの世界ではこんな言葉をよく聞く。

 

メンタル持ち方次第で人の能力は大きく変わると。

 

俺もバスケをしていたからそれは自分でよく分かっている。

 

だから俺は下手な小細工はせずにただみんなのやる気を上げた。

 

そして今の花丸ちゃんなら・・・

 

二人がほぼ同時にパンが吊るされている所に着くと鞠莉さんはジャンプして口でパンを取ろうとするが中々上手くいかずパンが取れずにいた。

 

鞠莉さんの身長でここまで苦戦しているから花丸ちゃんにはもっと難しいと俺以外の人は思っているが、

 

花丸「いただきま〜す!」

 

ピョン!

 

なんと花丸ちゃんは一発でパンを口で取ることができた。

 

鞠莉「!?」

 

そして花丸ちゃんはムシャムシャとハムスターのようにのっぽパンを食べて圧倒的な差をつけて1位でゴールした。

 

花丸「パンは飲み物ずら。」

 

その異様な光景にみんな驚きを隠せない。

 

30秒ぐらいしてから鞠莉さんがゴールし、それからあとの二人もゴールできた。

 

鞠莉「まさか花丸に負けるとは思わなかったわ。Congratulation!」

 

花丸「のっぽパン美味しかったずら!」

 

ほんとにのっぽパンが好きなんだな。あの大きいのっぽパンを一瞬で食べ尽くすとは恐るべし国木田花丸。

 

瑠惟「お疲れ様。1位おめでとう。」

 

花丸「先輩、先輩聞いてずら!パン食いのパンがのっぽパンに変わってたずら!オラ嬉しいずら!」

 

瑠惟「そ、それは良かったな・・・。」

 

花丸「さっきの約束・・・」

 

瑠惟「おう。何が欲しいんだ?」

 

花丸「・・・のっぽパンずら!」

 

えぇ・・・(困惑)

 

これには流石の俺でも引いた。

 

お前まだ食う気なのか・・・。

 

瑠惟「た、体育祭が終わったら買いに行くか。」

 

もう箱で買ってあげようかな。

 

花丸ちゃんの活躍もあって俺たち白組は逆転することができた。

 

現在の得点

 

赤組200点 白組220点

 

 

 

えーと次は確か借り人競争だったな。

 

名前から察するに多分お題に合ったモノじゃなくて人を連れてくる競技だよな。

 

Aqoursからは梨子と千歌が出るんだっけ。

 

瑠惟「梨子」

 

梨子(私は何て言われるんだろう?)

 

瑠惟「特に言うこと無し。まぁ頑張れ。」

 

梨子「えぇ~~!?それだけ!?」

 

瑠惟「だってこの種目に関しちゃもう運が勝負のカギだし・・・。」

 

梨子「そうじゃなくて、善子ちゃんや花丸ちゃんに言ったアレはないの?」

 

アレ?もしかして・・・

 

瑠惟「梨子も罰ゲームやりたいのか?」

 

梨子「そっちじゃない!ほら・・・もし1位なったらのやつ!」

 

瑠惟「あぁ。好きな物買ってやるってやつね。」

 

梨子「そうそれ!」

 

瑠惟「別に・・・いいけどよ・・・」

 

梨子「露骨に嫌がられると結構傷つくんだけど。」

 

瑠惟「いやぁさっき花丸ちゃんが勝ったじゃん。」

 

梨子「そうね。あれはすごかったわ。」

 

瑠惟「で花丸ちゃんの欲しいものがのっぽパンでさ。」

 

梨子「あの子まだ食べる気なのね・・・。でもそれだけなら安上がりじゃない。」

 

瑠惟「何を勘違いしてるんだ。花丸ちゃんの要求はのっぽパン全種類5本ずつだぞ。」

 

梨子「」

 

瑠惟「これじゃあしばらく学食はお預けだな。」

 

梨子「大丈夫、私はお金のかかるやつじゃないから。」

 

瑠惟「それならいいぞ。」

 

梨子「やった!じゃあ私頑張ってくるからしっかり見ててね。」

 

瑠惟「はいはい。」

 

ー千歌side inー

 

梨子ちゃんと瑠惟君楽しそうだな~。

 

二人が会話している様子を見て思わずそう感じてしまう。

 

果南「なになにもしかして梨子ちゃんに嫉妬してるの~?」

 

果南ちゃんがニヤニヤしながら私に話しかけてくる。

 

鞠莉「嫉妬ファイヤー!!」

 

千歌「もうっ!そんなんじゃないってば!そんなんじゃ・・・」

 

何この変な気持ち?うぅ~モヤモヤする。

 

・・・こうなったら梨子ちゃんに勝って瑠惟君をぎゃふんと言わせてやるんだから!

 

そして招集場所に行こうとしたときにある人に呼び止められた。

 

瑠惟「やぁ。」

 

千歌「瑠惟君?どうしたの?」

 

瑠惟「お前さては俺に嫉妬してたな~。」

 

千歌「は?」

 

瑠惟「話してる時にやけに視線を感じたからな。俺に梨子を取られるんじゃないかって思ってたんだろ?」

 

本当に・・・この人は・・・

 

千歌「バカ瑠惟。」

 

瑠惟「おい!今バカって言ったな。」

 

千歌「言ってません~。」

 

瑠惟「バカ千歌にバカと言われるとは・・・おい梨子!」

 

梨子「えっ?」

 

瑠惟「この勝負絶対に勝てよ!勝ったらなんでもしてやるから!」

 

梨子「う、うん。とにかく頑張るわ。」

 

千歌「もう・・・。私と話してたのに・・・。」

 

本当にバカでニブイ人なんだから・・・。

 

ー梨子side inー

 

直前になって勝てるか不安になってきたわ。

 

勝ったら何でもしてくれるって言ってたけど・・・

 

本当に何でもいいのかな/////

 

・・・壁クイ、壁ドン、顎クイ。

 

私ったらなんてこと考えてるの!

 

何でもか・・・

 

自分でも顔がニヤけてるのが分かる。

 

そんなことを考えてると私達の番が来た。

 

隣には千歌ちゃんがいる。

 

何かすごく気合が入ってるように見えるな。

 

私も負けないようにしなきゃ。

 

「位置について。よーい・・・ドン!」

 

スタートの合図出るとみんなが一斉に走り出す。

 

私は少し遅れてしまい、お題の紙が書いてある所には最後に着いてしまった。

 

最後に来たので私には選択肢がなく仕方なく残った紙を拾いお題を確認する。

 

梨子「なっ・・・」

 

そこに書いてあったのは・・・

 

『あなたの好きな人(恋愛的な意味で)』

 

何よコレ!もう突っ込みどころが多すぎて訳が分からないわ!

 

まず『好きな人』って、ここ女子校よ!何考えてるのよ!

 

それに『恋愛的な意味で』ってコレ、狙ってるとしか思えないわ!

 

もう誰を連れてくるか指定されてるようなものじゃない!

 

まぁ今は怒っても仕方ないわ・・・。

 

急いで彼の所へ行きましょう。

 

えーとどこにいるのかしら?

 

瑠惟「頑張れー梨子。」

 

梨子「!」

 

私はダッシュで彼のいる所に行く。

 

瑠惟「ん?どうしたんだ?早くしないと・・・」

 

梨子「だから来たのよ。瑠惟君行くわよ。」

 

瑠惟「えっ?マジで?」

 

梨子「マジよ。」

 

もぅはやく来てよ!みんなの視線が集まって恥ずかしいから!

 

瑠惟「よし、じゃあ行くか。」

 

そう言うと彼は突然

 

梨子「ちょ、ちょっと何してるの!?」

 

私をお姫様抱っこしたのだ。

 

瑠惟「こうしたら1位でゴールできるから。」

 

梨子「そうかもしれないけど!」

 

私の顔がドンドン熱を帯びて赤くなっていく。

 

瑠惟「顔が赤いけど大丈夫か?」

 

梨子「だ、大丈夫だから早く!」

 

瑠惟「ちゃんとつかまっておけよ。」

 

私は彼の首に腕をまわす。

 

こんな形で私の夢が叶うなんて思いもしなかった。

 

でも・・・やっぱり恥ずかしい。

 

黄色い歓声が周りから聞こえる。

 

彼は私を抱えたまま猛スピードでダッシュし、そのまま1位でゴールテープを切った。

 

私は紙を判定員に見せる。

 

判定員は私と彼を見ると少しニヤッと笑って『OK』と言った。

 

こうして私達は1位になったのだ。

 

瑠惟「梨子、お題は何だったんだ?」

 

「私の好きな人よ。」なんて言えるわけないじゃない!

 

梨子「えっと・・・そう!『男の人』だったのよ。」

 

自分でも苦しい嘘をつく。

 

しかし・・・

 

瑠惟「なるほど。それなら納得だ。男の人なんて生徒の家族の人か先生か俺ぐらいしかいないもんな。」

 

良かった。信じてもらえた。

 

「意気地無し。」とどこからか聞こえた気がした。

 

余計なお世話よ。

 

ー瑠惟side inー

 

梨子が無事に1位でゴールしたが、他のレースで赤組が奮闘したので結果的に赤組に逆転されてしまった。

 

ここで午前の部が終わり、やっと昼休憩に入った。

 

それにしてもどうして梨子はあんなに顔が赤くなってたんだろうな?

 

今日は暑いってわけじゃないし、うーん・・・分かんねぇ。

 

とりあえず飯だ飯。今日って誰が弁当作ってくれたんだろう。

 

そんなことを考えながら俺はAqoursのみんなが待っている所に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




後編もなるべく早く投稿します。お楽しみに。


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コミュ障ヘタレと体育祭 後半の部

予想以上にボリュームが増えたため後半がガバガバです。お許しください!


体育祭もちょうど半分を終え、現在は昼休み。

 

Aqoursの元へ行こうとした俺はある人物に呼び出され、人気のない校舎裏まで来ている。

 

瑠惟「こんな所に呼び出してどういうつもりですか?」

 

「ことりさん。」

 

両親が来れない代わりに呼んだ人とは南ことりさんだったのだ。

 

ことり「もぉ、せっかく見に来てお弁当まで作ってきてあげたのにそんなこと言っちゃダメ♪」

 

瑠惟「そうですね。すいません。今日は楽しんでいってください。あとお弁当ありがとうございます。」

 

ことり「どういたしまして。」

 

正直、今日ほど来てほしくないと思った日はない。

 

なぜなら・・・

 

ことり「それより・・・さっきのアレは何かな?」

 

瑠惟「あ、アレって何のことですかね?」

 

ことり「とぼけないで。」

 

身の危険を感じてきたのでおふざけはやめておこう。

 

瑠惟「・・・借り人レースでお姫様抱っこしたことですよね。あれは勝つための作戦だったので。」

 

ことり「じゃあ他意はないってこと?」

 

瑠惟「・・・・・・そうです。」

 

ことり「ふぅん。それならいいよ♪」

 

ことり(それにしてはさっきの女の子、瑠惟君にお姫様抱っこされてる時、まんざらでもなさそうだったけど。)

 

時計を見ると昼休みが少なくなってきていたので退散しよう。

 

瑠惟「そろそろ行きますね。また体育祭が終わってから会いましょう。」

 

ことり「後半も頑張ってね!応援してるよ!」

 

ほんとにさっきと同一人物かよ。

 

瑠惟「ありがとうございます。あっ・・・周りにことりさんが来てるってバレないようにしてくださいね。多分パニックになって、俺が面倒なことになりそうなんで。」

 

主にAqoursから色々問い詰められそうだから。

 

ことり「大丈夫、大丈夫。こうして帽子とサングラスもあるし。」

 

そう言って彼女はいつもかぶっているお気に入りの帽子を見せてくる。

 

瑠惟「じゃあまた。」

 

ことり「行ってらっしゃい。」

 

瑠惟「行ってきます。」

 

・・・怖かった。あの人のヤンデレモードを相手にすると寿命が縮む。

 

 

 

やっとみんなの所へ行けたところで貰った弁当箱を取り出して開けようとすると

 

千歌「ねぇねぇ、それ瑠惟君が作ったの?」

 

瑠惟「えっと・・・」

 

さて、ここでなんと答えるのが正解なのだろう・・・。

 

①μ'sのことりさんに作ってもらったんだ。

 

・・・これは絶対にダメだ。色々と不味いことになりそうな気がする。

 

②自分で作ってきたぞ。

 

・・・うん、一番無難だ。今日は千歌よりも早起きしたし、信じてもらえるだろう。

 

③志満さんに作ってもらったんだ。

 

・・・これは微妙だな。今日の千歌の弁当は志満さんが作ってから弁当の中身にあまりの差があったら怪しまれる。というか直接聞かれたら終わる。

 

ならここは・・・

 

瑠惟「今日の朝に自分で作ったぞ。」

 

千歌「すごいね!自分のお弁当作るなんて!ねぇどんなお弁当か見せて!」

 

瑠惟「あぁいいぞ。」

 

パカッ

 

千歌「わぁすごい!唐揚げに卵焼き、ウインナーにブロッコリー。瑠惟君の好物がいっぱいだね。」

 

瑠惟「ま、まぁな。せっかくだから自分の好きなものをな。」

 

えーとご飯には・・・これはふりかけがかかってるな。ご丁寧に文字になってるし。

 

え〜と・・・『noh a∧ol I』

 

ん?どういう意味だ。

 

千歌「これ向きが反対じゃない?」

 

そう言われ反対にしてみると・・・

 

瑠惟「・・・」

 

千歌「・・・」

 

ふりかけで書いた謎の記号。逆さまにすれば・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『I love you』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

気付いた時はどうするの?

 

冷たい目で見てくるの〜?

 

千歌「・・・本当に自分で作ったの?」

 

瑠惟「・・・作ってないです。」

 

この後、俺は全力で千歌に言い訳をしたが信じてもらえたかは分からない。

 

 

 

昼休みも終わり体育祭も後半戦が始まる。

 

そして次の種目は生徒全員参加の騎馬戦だ。

 

全員参加ということで俺も出場するのだが俺はあるハンデを言い渡された。

 

瑠惟「俺の騎馬は俺と騎手の女の子二人でやるんですか?」

 

実行委員「そうね。まぁあなたも男の子だし女の子一人くらいあなた自身で支えてね。」

 

軽薄そうなその人は俺にそう言い残してさっさと行ってしまった。

 

つまり俺は騎手の子を一人で背負うってことだよな。

 

・・・今度は本当にことりさんに殺られるかもしれない。

 

白組の子にハンデの内容について話した。

 

梨子「えっと・・・じゃあ誰が瑠惟君の上に乗るか決める?」

 

曜「そうだね・・・。」

 

花丸・善子「「・・・」」

 

梨子「ちょっと瑠惟君以外のみんなこっちに来て。」

 

俺以外の四人が少し離れたところに行ってこそこそと何かを話している。

 

ま、まさか!?

 

梨子「私、瑠惟君の上とか嫌なんだけど。さっきも急にお姫様抱っこされてホントに嫌だった。」

 

曜「私もそれだけは嫌。千歌ちゃんの上ならまだしも、彼の上はちょっと・・・」

 

花丸「オラも嫌ずらよ。きっとどさくさに紛れてセクハラするずら。」

 

善子「さすがの堕天使もアレは無理。」

 

的なことを言ってるのかもしれない!

 

・・・ごめんよ、俺なんかと一緒で。

 

しばらくして四人がこっちに戻ってきた。

 

瑠惟「き、決まりましたか?」

 

四人「話し合いの結果・・・」

 

曜「わ、私が瑠惟君と組むことになったの・・・よ、よろしくね。」

 

曜がすごくもじもじしながら言った。心なしか顔も少し赤く見える。

 

そうか・・・そんなに組むのが嫌だったのか。すまん曜、今回だけ我慢してくれ。

 

曜(瑠惟君と一緒なんて嬉しくてどうにかなりそう!喜んでるの顔に出てないよね?)

 

梨子「二人とも頑張ってね!」

 

花丸「先輩は白組のエースずら。敵を蹂躙するずら!」

 

善子「ずら丸、あんたそんなキャラだったかしら・・・。」

 

曜「うん・・・がんばるね。」

 

瑠惟「まぁできるだけやってみる。」

 

ちなみに梨子、花丸ちゃん、善子は三人で騎馬を組むことになった。

 

 

 

ー果南side inー

 

次は騎馬戦か・・・

 

白組で一番脅威なのはやはり彼ね。

 

さて、どうしようか・・・

 

ダイヤ「果南さん、どうやって彼を倒しましょうか?」

 

ダイヤもおんなじこと考えてたみたいね。

 

果南「・・・彼は最後に倒そう。」

 

ルビィ「本当ですか!?」

 

千歌「それで大丈夫なの!?」

 

果南「確かに他の白組を倒している間は彼に好き勝手やられるかもしれない。でも・・・一対一の状況じゃあの眼を持っている彼には絶対勝てない。」

 

いくらハンデがあるからと言って私達は油断しない。なぜなら彼の力をこの目で見ていたから。

 

鞠莉「そうね・・・。だから私達は確実に二騎以上で彼と戦わないといけないってことね。」

 

果南「鞠莉の言う通り。私達はできるだけ早く彼以外を倒さないと赤組の騎馬もどんどん減っていくからね。だから私達の作戦は・・・・・・という感じで行く。」

 

千歌「うん。それが一番安全で勝てる確率が高いね。」

 

ダイヤ「私は賛成ですわ。」

 

鞠莉「私もよ。」

 

ルビィ「ルビィも。」

 

果南「了解。じゃあ私は赤組のみんなに作戦の内容を伝えてくるね。」

 

瑠惟、この勝負絶対に負けないからね。

 

 

 

ー瑠惟side inー

 

生徒全員の招集がかけられ赤組と白組がそれぞれ騎馬を組んでいく。

 

曜「じゃあ瑠惟君乗るね。」

 

瑠惟「おぅ。」

 

俺が曜を肩車する。

 

曜「どう?重くない?」

 

瑠惟「大丈夫だ。思ったよりも重くないぞ。」

 

曜「その言い方じゃあもっと重いと思ってたの?」

 

瑠惟「いや、曜って結構シュッとしてるけど筋肉質だろ?」

 

曜「まぁ筋トレとか結構してるから・・・。」

 

瑠惟「筋肉って結構重いって聞くから曜もそれなりにあるのかもって思ってたけど、全然そんなことなかったな。今曜の足を持ってて思ったけど、こう・・・無駄な脂肪がないというか。千歌にも見習ってほしいよ。」

 

曜「ほ、褒められてるのかな?」

 

瑠惟「あぁ褒めてるぞ。曜って結構スタイルいいし可愛いからモデルとかやっててもおかしくないよな。」

 

曜「可愛い!?私が!?」

 

瑠惟「可愛いと思うぞ。今だから言えるけど、初めて曜に会った時は結構ドキドキして緊張してたんだ。」

 

曜「・・・」

 

瑠惟「ん?曜?」

 

曜(瑠惟君、私のこと可愛いって思ってくれてたんだ・・・。それにドキドキしてたって。)

 

曜「騎馬戦絶対に勝とうね!」

 

瑠惟「あ、あぁ。勝とうな。」

 

なんか曜の奴急に気合入ったな。

 

 

 

「ではこれより組対抗騎馬戦を始めます。騎手のみなさんは帽子をかぶってください。」

 

騎手全員が帽子を深くかぶって準備が完了する。

 

「位置についてよーい・・・始め!」

 

スタートの合図と同時に俺は直線上にいる赤組の騎馬を狙いに行こうとしたが・・・

 

曜「!!」

 

瑠惟「これはいったい・・・?」

 

なんと赤組の全ての騎馬が俺と逆サイドの騎馬を狙いに行ったのだ。

 

隣にいた騎馬の騎手の花丸ちゃんも驚いている。

 

花丸「先輩これはどういうことずら?」

 

瑠惟「おそらく向こうの作戦だ。」

 

果南さんなら何か仕掛けてくると思ったがまさかこれほどとは・・・

 

瑠惟「向こうの狙いは恐らく俺だ。」

 

梨子「でも赤組は瑠惟君を全く狙ってないけど。」

 

瑠惟「多分赤組は先に俺以外の騎馬を倒してから最後に残った俺を数的有利な状態で倒しに来るだろう。」

 

そっちがそう来るなら・・・

 

瑠惟「思う存分暴れさせてもらうぜ。いけるか曜?」

 

曜「了解であります船長!」

 

瑠惟「それと花丸ちゃん達に頼みがある。」

 

三人に作戦を伝えた。

 

花丸「わかったずら。善子ちゃんいけるずら?」

 

善子「堕天使に任せなさい。さっきの屈辱ここで晴らさせてもらうわ。」

 

瑠惟「じゃあ頼んだぞ。」

 

向こうの作戦に意表を突かれたがここから反撃開始だ。

 

俺と逆サイドの騎馬は赤組の数の暴力に苦戦していたが、俺達は他の騎馬に集中している赤組の騎手から帽子をことごとく奪っていく。

 

しかし俺が特に騎馬が多いところに近づくと赤組は一斉に俺から逃げるように別の所に移動した。

 

このやり取りを何回かしているうちに両組の騎馬の数は減っていった。

 

俺は逃げ遅れた騎馬を重点的に狙い順調に数を減らし、赤組は多少の犠牲を度外視して白組の騎馬を減らしていた。

 

そう言えばまだAqours勢を見てないな・・・

 

ん?あれは・・・

 

瑠惟「曜、ルビィちゃんの騎馬だ。ここで倒しておこう。」

 

曜「そうだね。」

 

向こうもこちらに気づいたようでお互いに向かい合う。

 

ルビィ「瑠惟さんに、曜さん。ルビィ達は負けません。」

 

ダイヤ「そうですわよ!私達がここであなたを倒します!」

 

鞠莉「大人しくやられなさーい。」

 

ルビィちゃんの騎馬は下に鞠莉さんとダイヤさんがいるのか・・・。

 

ダイヤさんはともかく鞠莉さんが厄介だな。

 

だが・・・

 

瑠惟「機動力ならこっちが上だ!」

 

ダッ!

 

俺は地面を蹴り、一気に騎馬との距離を詰める。

 

ルビィちゃんの騎馬は避けようとするが・・・無駄だ。

 

悪いな三人とも・・・眼を使わせてもらう。

 

騎馬は右に避けるがそれよりも一瞬早く俺がそこに先回りした。

 

ルビィ(・・・何で先輩が先にそこに!?)

 

そして移動してきた騎馬に合わせて曜が帽子を取った。

 

ルビィ「やられちゃった。」

 

ダイヤ「流石ですわね。私達はここで終わりですが・・・」

 

鞠莉「千歌っちと果南が絶対に倒してくれるわ。」

 

瑠惟「そうなることを期待しておきます。」

 

クソっ。やっぱり眼を使うと神経すり減るわ。それに・・・

 

瑠惟「ハァハァ・・・」

 

曜「瑠惟君、大丈夫?」

 

瑠惟「問題ない。」

 

そう言いながらも俺は肩で息をするぐらい体力を使っていた。

 

そして周りを見渡せば俺の騎馬と千歌が騎手の騎馬と果南さんが騎手の騎馬しか残っていないように見えた。

 

千歌「作戦うまくいったね。」

 

果南「できればもう少し騎馬を残したかったけど、これでも十分ね。」

 

果南(でもなんだろうこの違和感。何か忘れているような・・・。まぁ彼を倒せば全てが終わるから今はいい。)

 

赤白両組が見守る中、俺と千歌と果南さんの騎馬が向かい合う。

 

瑠惟「残りは俺しかいないですがもう勝ったつもりですか?」

 

果南「この一対二の状況じゃいくら瑠惟でも勝てないよ。」

 

瑠惟「確かに普通じゃ勝つのは難しいかもしれない。でも俺は違いますよ。」

 

千歌「分かってるよ。瑠惟君はあの眼を持ってるからね。」

 

果南「でもその眼は一対一でしか使えない。でしょ?」

 

瑠惟「クッ・・・」

 

やはりバレてたか、この眼の弱点が。

 

果南「それに私達の作戦は最後に瑠惟を叩くだけが目的じゃない。」

 

瑠惟「!?」

 

千歌「だいぶ疲れているみたいだね?あんなに走り回って。」

 

瑠惟「なるほどね。そっちの真の狙いは俺の体力をできるだけ削ること。だから俺がそっちに近づく度に全員で移動したのか。俺を走らせるために。」

 

果南「流石だね。そこまで見抜くとは。でも私達には嬉しい誤算があったの。」

 

曜「私を瑠惟君が一人で担いでいることだね・・・。」

 

果南「瑠惟には何かしらのハンデがあると思ってたけどまさか一人で騎手を支えないといけないとは思わなかった。それによってさらにあなたは体力を奪われた。おそらくだけどもう立つのがやっとなんじゃないの?」

 

曜「ごめんなさい・・・私のせいで・・・。」

 

瑠惟「お前のせいじゃない。むしろ曜が騎手をしてくれたからこの状況まで持ち込めた。ありがとよ。」

 

むしろ俺にとってこの状況はありがたい。

 

果南さん、千歌、人間が一番弱点を見せるのはどんな時だと思いますかね?

 

それは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

勝利を確信した時だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瑠惟「作戦がうまくいったのは赤組だけじゃないですよ。」

 

果南「どういうこと?」

 

千歌「まさか!?果南ちゃん気をつけ・・・」

 

何かに気づいた千歌が果南さんに警告しようとする。

 

でも、気づいた時にはもう遅いぞ!

 

俺は叫ぶ。

 

瑠惟「今だ!梨子、花丸ちゃん、善子!」

 

花丸「ずら~!」

 

三人が急に現れ果南さんと千歌の後ろから二人の帽子を取った。

 

その瞬間グラウンドにアナウンスが響いた。

 

「そこまで!赤組全滅により白組の勝利!」

 

ワァァァ!!

 

二人は何が起こったのか分からずに呆然としている。

 

果南「一体何が起こったの・・・。」

 

瑠惟「まぁ簡単に言えば囮作戦ですかね。」

 

千歌「囮?」

 

瑠惟「果南さん達が作戦を立てるなら俺を中心とした作戦を立てるだろうと思ったんですよ。なぜなら俺を一番警戒してるから。だからその作戦を利用しようと考えました。俺に意識を集中させるように。」

 

試合が始まって赤組が動いたのを見て俺は花丸ちゃん達にこう告げた。

 

『俺が合図するまで何もしないでほしい。というか隠れるなり逃げるなりしてほしい。おそらく最後に残るのは千歌の騎馬と果南さんの騎馬だろう。できるだけ二人の意識から花丸ちゃん達を外すから俺が合図したら二人の後ろから帽子を狙ってくれ。』

 

千歌「でも、私達花丸ちゃんの騎馬なんて見えなかった・・・あっ!」

 

そうだ。敢えて見えないようにしてもらったんだよ。

 

花丸「オラ達は本当に何もしなかったずら。やったことといえば騎馬を何回も崩しただけずら。」

 

この騎馬戦のルールでは騎馬は崩れれば何度でも組み直してもよいということになっている。組み直してる間は相手に狙われるけどな。

 

でも、花丸ちゃんが騎手ってことは・・・

 

果南「花丸の周りに梨子や善子が立てば騎馬に乗っている私達からは見えない。」

 

瑠惟「その通りです。あとできるだけ目線を逸らすために俺は何度も赤組の騎馬を追いかけました。」

 

果南(私達の作戦では瑠惟が来たら離れるというものだった。でも、それをするには常に彼を意識して位置を確認しないといけない。白組を追い詰めていたと思っていたのに、結果的にそれが自分たちを追い詰めることになっていた。花丸達のことを完全に忘れていた。いや、忘れるようにされていた。まさか・・・作戦通り動かされていたのが私達だったなんて。)

 

千歌「疲れている様子を見せたのも私達の意識を誘導するためだったの!?」

 

瑠惟「いや、疲れていたのは本当だ。直ぐに二人がかりで来られたら危なかった。ここまで追い詰められたのは想定外だったよ。」

 

二人と無駄話をしたのもできるだけ時間を稼いで油断を誘うためだ。

 

果南「・・・これはまんまとやられたね。」

 

千歌「うーん、今回は勝てると思ったんだけどなー。」

 

これでもAqoursのことは一番近くで見てきたつもりだからな。考えてることはある程度予想できる。

 

でも・・・今は白組のみんなを褒めてあげよう。

 

瑠惟「お疲れ曜。中々いい動きだったよ。」

 

曜「そうかな・・・。なんか照れちゃうな////」

 

ホントのこと言うと曜が上じゃなかったら勝つ見込みは低かったかもな。

 

あれだけ赤組を倒してくれなきゃこれだけ目立たなかったから。

 

瑠惟「梨子、花丸ちゃん、善子もお疲れさん。最後はマジでかっこよかった。」

 

梨子「当然よ。なんたって私たち三人だからね!」

 

花丸「もっと褒めてもいいずらよ!」

 

善子「べ、別に先輩のために動いたんじゃないからね!勝つためだからね!」

 

こうして騎馬戦に勝利した白組は赤組と同点にすることができた。

 

現在の得点

 

赤組・490点

 

白組・490点

 

 

 

さてさて次の種目は組対抗リレーで得点が入る最後の競技。つまりこれで勝敗が決まるのだが・・・

 

瑠惟「俺走るの?」

 

梨子「えぇ。走るわよ。」

 

瑠惟「『走るわよ』じゃなくてさ。なんで俺が走らないといけないの?しかもアンカーで。本来のアンカーの人いたよね?」

 

曜「いたんだけど・・・その人さっきの騎馬戦で足痛めちゃって。」

 

花丸「で、その人が代わりに先輩に走ってほしいって。」

 

瑠惟「待て待て。赤組は俺が走ってもいいって言ったのか?」

 

善子「それなら大丈夫よ。向こうのアンカーの果南さんがみんなに聞いて了承をもらったんだって。しかもハンデなしで。」

 

梨子「観念して走りなさい♪」

 

ぐぬぬ・・・反論ができない。

 

まぁ許可が出たのなら大丈夫か。それに折角ご指名をもらったし。

 

瑠惟「しょうがねぇなぁ。じゃあ俺が走ってやるか。」

 

四人「やったー!!」

 

ということで俺が白組のアンカーを務めることになりました。

 

「それではただいまより組対抗リレーを始めます。選手のみなさんは集合してください。」

 

瑠惟「じゃあ行ってくるよ。」

 

四人から『がんばって』と言ってもらい、招集場所に行こうとすると

 

「あ、あの・・・」

 

見知らぬ女の子から話しかけられた。

 

この子は・・・一年生か?

 

「私、先輩のこと応援してます!がんばってください!」

 

いきなりのことに少し驚く。

 

瑠惟「あ、ありがとう。がんばります。じゃあ。」

 

「あっ・・・」

 

さっきの子、まだ何か言いたげだったな。悪いことしたかもな。

 

招集場所に着くと俺は他のリレーメンバーの子に挨拶した。

 

全員にすごく期待されてて正直辛い。体力も完全に回復しきってないんだよなぁ。

 

すると赤組のアンカーの果南さんが話しかけてきた。

 

果南「また戦えるね。」

 

瑠惟「ほんと勘弁してくださいよ。それよりハンデ無くてよかったんですか?」

 

果南「もちろん。私は本気の瑠惟と勝負がしたかったからね。」

 

瑠惟「お手柔らかにお願いしますね。」

 

果南「私は全力で勝ちに行くよ。そうね・・・もし私が勝ったらなんでも言うこと聞いてもらうから。」

 

なんで白組の子にしか言ってないことを知ってるんだ?

 

瑠惟「もしかして白組の奴から聞きました?」

 

果南「うん。こうしたら瑠惟は本気出してくれるって花丸が言ってたんだ。」

 

ずら丸ぅ!!!!余計なことを!

 

負ける気は毛頭ないから別に大丈夫だけどな。

 

瑠惟「こっちも想いのバトンを託されたんでね、負けるつもりはないですよ。」

 

果南「いいねぇ。そう来なくっちゃ面白くないね。」

 

そういえば本気で走るのは久しぶりだな。それもAqours相手に。

 

「位置について・・・よーい・・・」

 

パンッ!

 

気が付くとリレーが始まっていた。

 

「がんばれー!」

 

「ファイト!!」

 

グラウンドに両組の応援が響き渡る。

 

第一走者は両方ともほぼ同時に走り、ほとんど差がない状態で第二走者へとバトンが渡った。

 

続く第二走者で若干だが差が開き始め、白組がリードした状態で第三走者に繋ぐ。

 

このリレーに出ている子は仮にも組の代表もとい最高戦力として走っているのでそのスピードは男子と比べても何ら遜色なく感じる。

 

それにしても本当に早いな。現役時代にも速い選手はたくさん見てきたが単純に走るだけならあいつらといい勝負するんじゃないのか。

 

第三走者で赤組との差をさらに空けることができ、かなりのリードを保ったまま第四走者にバトンがきた。

 

そろそろスタート位置に・・・

 

そう思って歩き始めた時だった。

 

ズシャァァ!!

 

白組の第四走者がつまづいてバトンを落としてしまったのだ。

 

驚愕する白組。

 

落としてしまった子もすぐにバトンを拾い走り出すが後ろから来ていた赤組に追い越されてしまった。

 

周りからより大きな声で『がんばれ!』と聞こえるが、その子が俺の元に来る頃には既に赤組のバトンはアンカーの果南さんに渡り、走り出していた。

 

バトンを受け取る直前にその子を見ると目に涙を浮かべていた。

 

「ごめんなさい・・・。」と共に俺にバトンが渡る。

 

まぁそう泣くんじゃない。

 

瑠惟「よく頑張った。」

 

そう彼女に言って俺は飛び出した。

 

果南さんとの距離は大体6、7メートルくらいか・・・。

 

疲れてるだろうけどもうちょっと頑張ってくれよ俺の足。

 

バトンを強く握り直し、さらにスピードをあげる。

 

花丸「先輩!まだいけるずら!」

 

善子「もっと速く・・・神速を超えなさい!」

 

意外とみんなの応援って聞こえるもんだな。

 

ライブやってる時のAqoursもこんなふうに聞こえてるのかな・・・。

 

残り約50m。果南さんとの距離はかなり縮まってあともう少しで追いつける。

 

ここで果南さんが後ろをちらっと見て俺との距離を確認した瞬間、ラストスパートといわんばかりにスピードを上げてきた。

 

マジですか。ここにきてパワーアップですか。

 

仕方ない・・・

 

その気持ちに全力で向き合いますよ!

 

俺は自分が出せる限界までスピードを上げた。

 

そしてゴールテープ直前で果南さんに追いつき・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そのまま二人同時にゴールした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハァハァハァハァ。

 

足を止めたとたん疲れがドッと押し寄せてきた。

 

頭がふらふらして視界が霞む。

 

ヤベッ、このままじゃ倒れ・・・

 

ガシッ。

 

その瞬間誰かが俺を支えてくれた。

 

瑠惟「ハァハァ・・・ありがとうございます・・・果南さん」

 

果南「ちょっと走り込みが足りてないんじゃない?」

 

なんで息一つ切れてないんだこのひとは。

 

果南「あれくらいでへばるようじゃまだまだだね。」

 

瑠惟「ごもっともですよ。それでリレーはどうなりましたか?」

 

果南「私と瑠惟がゴールしたのがほぼ同時でいま審判の人達が話し合ってる。」

 

瑠惟「果南さん的にはどう思いますか?」

 

果南「私は負けてはいないけど・・・勝ったかも分からないんだよね。」

 

瑠惟「俺もそう思いますよ。」

 

ここで審判の人が出てきてこう言った。

 

「ただいまのリレーですが両者とも同時にゴールしたため、この勝負・・・引き分け!」

 

瑠惟「ですって。」

 

果南「う~ん、やっぱり勝てないか・・・。」

 

瑠惟「いやいや、果南さんも速かったですよ。俺も本気を出して追いつくのがやっとでしたから。」」

 

果南「私もまさか追いついてくるとは思わなかった。」

 

そんな話をしていると白組のリレーメンバーがこっちに来た。その中にはもちろん第四走者のあの子も。

 

「お疲れ様。君~なかなかやるね。」

 

瑠惟「それほどでもないですよ。先輩たちには負けます。」

 

よく見ると第四走者の彼女は俺の隣のクラスの子だと気づいた。

 

「私がバトンを落としたから・・・ごめんなさい。」

 

瑠惟「いやいや別に謝らなくても。誰だってミスすることはあるし、今回はたまたま君がそうなっちゃっただけ。それに今日は何よりも楽しむ日ですよね?みなさん。」

 

「その通り。ダイヤちゃんも言ってたしね。」

 

瑠惟「君はすごい。あの状況で最後まで走って俺にバトンを渡してくれた。普通なら諦めてもおかしくない。よく頑張ったね。お疲れ様。」

 

「瑠惟君・・・。」

 

ん?

 

瑠惟「あれ?俺の名前知ってるの?」

 

「この学校で唯一の男子だよ。知らない方がおかしいよ。それに・・・」

 

「私はAqoursのファンだから。がんばってね!応援してる!」

 

 

 

引き分けという結果でリレーが終わり次は部活動対抗リレー・・・の前に結果発表だ。

 

赤組、白組が整列し集計を待っている。

 

梨子「結果はどうかな?勝てたかな?」

 

曜「リレーが引き分けだったからね。それ以前の点数で勝負が決まってるかも。」

 

花丸「先輩のっぽパン~。」

 

善子「終わりまで待ちなさいよ。」

 

瑠惟「とりあえず今はこれで我慢してくれ。」

 

そう言って食いしん坊に購買で買ったパンを渡す。

 

自由すぎるこいつら・・・

 

すると実行委員が前に出てきた。

 

いよいよか。

 

「それでは結果を発表します。赤組の得点・・・600点!」

 

ワァァァァ!!

 

「白組の得点・・・」

 

なんだこの変な感じ?

 

『リレーが引き分けだったからね。それ以前の点数で勝負が決まってるかも。』

 

あっ・・・まさか・・・そんなことがありえるのか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「600点!よって優勝は赤組、白組となります!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ワァァァァ!!

 

やっぱりか。そりゃそうだな。騎馬戦終了時点で同点だったし。

 

梨子「同点!?」

 

曜「まさか本当に同点になるなんて。」

 

まぁこういうこともあるか。さぁ次は・・・

 

「両組の代表は前に来てください。優勝旗の授与をします。」

 

曜「瑠惟君出番だよ。」

 

は?

 

瑠惟「俺は代表じゃないぞ。」

 

梨子「往生際が悪いわよ。」

 

いやいやだって代表は俺とアンカーを交代した人じゃ・・・。

 

「今日のMVPは君だからね。君に行ってほしい。」

 

そこには例の人がいた。

 

瑠惟「俺なんかが行っても行っていいんですか。それに3年生はこれで最後の・・・」

 

「できれば私も行きたいけどね・・・騎馬戦で痛めた足がちょっとね。」

 

瑠惟「・・・じゃあ一緒に行きましょう。俺が支えるんで。」

 

「えっ?ちょ、ほんとに!?」

 

戸惑う先輩を連れて俺は前に出る。

 

梨子「瑠惟君らしいね。」

 

曜「そうだね。いつもの瑠惟君だね。」

 

花丸「やっぱり先輩はずるいずら。」

 

善子「もしかして妬いてるのあんた?」

 

花丸「そ、そんなことない!」

 

善子「動揺しすぎて方言が抜けてるわよ。」

 

先輩を連れてきた俺は実行委員に言う。

 

瑠惟「代表って二人でも構いませんよね」

 

「え、えぇ大丈夫ですけど。」

 

赤組の代表は予想通り果南さんか。

 

果南「やっぱり瑠惟はおもしろいね。」

 

瑠惟「こんなにつまんない人間他にいませんよ。」

 

「それでは赤組、白組の健闘を称えこの優勝旗を両組に授与します!」

 

瑠惟「先輩、受けっとってください。」

 

「・・・うん。ありがとう。」

 

「果南のところのマネージャーは最高だね。」

 

果南「なんたって私達Aqoursの誇りだからね。」

 

そう話す二人は最高の笑顔をしていた。

 

 

 

赤組と白組の白熱した戦いも引き分けという形で幕を閉じ、いよいよ部活動対抗リレーの時間が来た。

 

千歌「次はやっとAqoursのみんなでリレーだね!頑張ってね!」

 

瑠惟「頑張ってじゃねぇよ。おめぇも頑張るんだよ!」

 

千歌「えへへ。そうでした。」

 

大丈夫かよアンカーがこれで・・・。推薦したの俺だけど。

 

瑠惟「そういえば相手の部活は何でしたっけ?」

 

ダイヤ「えーとですね・・・非常に言いにくいですが・・・」

 

どうしたんだ?

 

ダイヤ「バレー部にバスケ部あとは・・・」

 

あとは?

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「陸上部です・・・。」

 

 

 

 

 

 

 

こりゃダメだな。

 

果南「それは中々に厳しいね。」

 

千歌「そんなにヤバい相手なの?」

 

あぁこいつは知らないのか。それなら仕方ない。

 

梨子「さっき部活動対抗リレーあったでしょ。見ててどうだった?」

 

千歌「瑠惟君も果南ちゃんも他の人もすっごく速かった!」

 

曜「実はね・・・あのリレーメンバー瑠惟君と果南ちゃん以外全員陸上部なの。」

 

千歌「へっ?」

 

そりゃそうなるわ。浦の星の中でも走りのスペシャリストと競わないといけないからな。

 

千歌「それってヤバくない?」

 

瑠惟「控えめに言ってマジでヤバイ。」

 

千歌「勝てるの?私達?」

 

瑠惟「何言ってんだよ。勝てるの?じゃなくて勝つんだよ!」

 

曜「そうは言っても・・・」

 

瑠惟「おいおい。何のために毎日走り込みして練習してると思ってるんだ?」

 

花丸「ラブライブのためずら。」

 

瑠惟「」

 

的確なツッコミありがとう。

 

瑠惟「と、とにかくだ。みんなは自分の力を信じなさすぎだ。今のみんなならいい勝負できると思うぞ。俺が保証する。」

 

鞠莉「そこまで言われたらね・・・」

 

果南「やるしかないね!」

 

ルビィ「ルビィ・・・頑張ります!」

 

曜「千歌ちゃん、や・め・る?」

 

千歌「やめない!絶対に勝ーつ!」

 

こいつらチョロすぎて心配だわ。

 

「あ、あの・・・」

 

ん?この声は・・・さっきの!

 

瑠惟「君は確か〜ちゃんだったけ。」

 

「覚えててくれたんですね。ありがとうございます。」

 

花丸・ルビィ「〜ちゃん?どうしたの(ずら)?」

 

「花丸ちゃんにルビィちゃん。ちょっと伝えたいことがあってね。」

 

瑠惟「伝えたいこと?」

 

「さっきのリレーカッコよかったです!本当に先輩はすごいです!」

 

瑠惟「ありがとう。そんなに褒めても何も出ないぞ/////」

 

「実は私・・・Aqoursのファンでいつも応援してます!」

 

千歌「私達のファンなんだ!嬉しいな〜。」

 

「それでずっとAqoursとそのマネージャーである先輩を見てきました。それでですね・・・あの・・・Aqoursのみなさんがいる前で言うのもアレですけど・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私、先輩のことがずっと好きでした!私と付き合ってください!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瑠惟「ファ!?」

 

Aqours「えぇ〜〜〜!!?」

 

い、今俺は告白されたのか!?

 

千歌「ちょ、ちょっと待って。本気なの!?」

 

「はい・・・初めて見た時からずっと・・・。」

 

梨子「や、やめておきなさい!こ、こんな男。付き合ったってロクなことないわよ!」

 

おい、ひどい言われようだな。

 

曜「そ、そうだよ(便乗)!せ、セクハラとかしてくるし!」

 

何を言っているんだ。そんなこと一度もした覚えがな・・・・・・あるかも。

 

花丸「た、確かに先輩はカッコよくて優しくて頼りになるずら!で、でも付き合うのはダメずらー!」

 

地味に褒めてくれる花丸ちゃん・・・あいつら(二年生)と違って優しい(泣)

 

ルビィ「ルビィも・・・そ、それは嫌かな。」

 

善子「リトルデーモンを取っちゃダメなの!」

 

果南「わ、私は別にいいけど・・・」

 

鞠莉「案外瑠惟も隅に置けないね〜。」

 

ダイヤ「そんな不純異性交遊・・・ぶっぶーですわ!」

 

みんな理由がめちゃくちゃだなおい。

 

「先輩はどうですか・・・?」

 

瑠惟「俺?う〜ん・・・」

 

好きって言ってくれるけどほとんど初対面の子だし・・・

 

瑠惟「今は恋愛とかは興味ないというかあんまり分からん・・・」

 

「・・・そうですか。でも、私は諦められません!なので・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Aqoursのみなさんが部活動対抗リレーで1位を取ったら私は諦めます。もし負けたら・・・あとは分かりますね。」

 

 

 

 

 

 

千歌「・・・その勝負受けてたーつ!!絶対に1位を取るから!みんな行くよ!!」

 

おぉ〜!!

 

みんなからはかつてないほどやる気を感じる。

 

そんなに俺に先を越されるのが嫌なんだな。

 

リレーメンバーは鬼気迫る表情で走って行った。

 

それからの4人は人が変わったようにすごかった。

 

何がすごかったかって言うとスタートからゴールまで1位で一度もそのトップを他の部活に譲ることなく独走していた。

 

可哀想なことに一緒に参加していた運動部、特に陸上部は完全にプライドをへし折られたようでリレーが終わるとみんな泣いていた。

 

そんな陸上部と対照にAqoursはリレーを終えると感情を爆発させて喜んでいた。

 

「はぁ・・・1位取っちゃいましたね。約束通り私は先輩のことを諦めます。」

 

彼女はどこか安心したかのように言った。

 

瑠惟「本当にそれで良かったのか?」

 

「・・・さっきのみなさんを見て確信しました。先輩の隣にいるべきなのは私じゃないって。」

 

そう言う彼女の見つめる先にはまだ喜び合っているAqoursのみんな。

 

瑠惟「まぁ・・・付き合うとかはできないけど、友達なら全然いいぞ。」

 

「本当に先輩はずるいですね。変なところで優しいから。」

 

花丸ちゃんと同じことを言われた。

 

俺はそんなに他人に優しくできる人間ではない。

 

「・・・でもそこが先輩のいいところだと思います。」

 

なんか調子狂うな。

 

瑠惟「じゃあこれからもよろしく。友達として。」

 

「はい。友達としてですね♪」

 

 

 

こうしてリレーも意外な形で終わり残すプログラムは・・・

 

瑠惟「フォークダンスってなんだっけ?」

 

千歌「タイムタイムだよ。」

 

タイムを要求してどうする。

 

曜「千歌ちゃん、それを言うならマイムマイムでしょ。」

 

千歌「あっ・・・。やっちゃった♪」

 

ウゼェ・・・。

 

果南「あとは・・・あれだ!オクラホマミキサーだっけ。」

 

ダイヤ「それですわ。なぜあれを女子校でやろうと思ったのでしょうか。」

 

オクラホマミキサーって確かペアになって踊って交代していくやつだよな。記憶が曖昧で説明が雑すぎるなこれ。

 

瑠惟「でも、俺はちょっと恥ずかしいですよ。女子と踊るって。」

 

それに嫌がられたら結構傷つくし。

 

鞠莉「あれ?でもあなた前に番外編でダイヤと千歌っちと一緒に踊ってなかった?確か・・・『Shall we dance?』って言ってたような。」

 

アァァァァ!!やめてくれ!俺の黒歴史を掘り出すな〜!

 

瑠惟「番外編とか言っちゃダメです!」

 

そんな感じに頭がゴチャゴチャしたまま俺はフォークダンスをするのであった・・・。

 

 

 

フォークダンス終了後・・・

 

瑠惟「やっと・・・やっと終わった。」

 

なんで浦の星の子はこんなに元気なんだ。

 

俺はヘトヘトだってのにお構い無しにダンスしやがる。

 

特にAqoursのみんなは今日一番の気合いかってぐらいダンスしてたな。

 

しかも俺がAqoursの誰かとペアになる度に周りの子はニヤニヤしだすし。

 

まぁそんなことはいい。とにかく長い長い一日が終わったんだ。

 

・・・でも何か忘れているような気がする。

 

花丸「先輩。もちろん約束覚えてるずら?」

 

瑠惟「あっハイ。のっぽパンですよね?」

 

花丸「分かってるなら早く行くずら〜!」

 

とここで終わりになれば良かったけど現実は甘くない、自分でまいた種はちゃんと処理しなければならん。

 

梨子「瑠惟君。」

 

瑠惟「・・・分かってるって。さぁ何をしてほしい?今なら大抵の事は聞いてやるぞ。」

 

梨子「そんなに変なことじゃないよ。・・・ただ目をつぶってほしいの。」

 

瑠惟「そんなことでいいのか?」

 

梨子「はやくはやく。」

 

瑠惟「ん。」

 

俺は目をつぶる。

 

瑠惟「ほら。これでい」

 

それは突然だった。

 

 

 

 

 

 

 

チュ

 

 

 

 

 

 

 

俺の頬に柔らかい何かが当たった。

 

びっくりして俺は目を開けてしまう。

 

瑠惟「り、梨子お前何を・・・」

 

梨子「さっきのは今日頑張ったご褒美だよ♪」

 

そう言う梨子の顔は紅く染っていた。おそらく夕陽のせいだろう。

 

これで本当に俺の一日は終わった。

 

この後、花丸ちゃんによって俺の財布が軽くなるのと、ことりさんに半殺しにされるのはまた別のお話。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次から本編に戻ります


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スクールアイドルでも・・・バスケがしたいです!ACT1

この話ではAqours全員がバスケ経験者という設定です。

本編のパラレルワールドみたいな感じで捉えてもらえると助かります。

バスケ要素が強い話となります、できるだけ補足説明はしますがルールをあまり知らない人には少々難しい話かもしれないです。

そして相変わらず主人公が暴れます。


ラブライブに向けて今日も練習に励むAqoursの10人。

 

そんな俺たちに今日もどこからか非日常の始まりを告げるメールが届く。

 

ピロン

 

Aqours専用のパソコンにメールが来たことを確認し、俺はすぐにメールを開く。

 

えっと・・・なになに・・・

 

瑠惟「!?」

 

な、なんだこれは?

 

千歌「瑠惟君、どうしたの?」

 

俺の様子が気になった千歌が声を掛ける。

 

瑠惟「まぁなんだ・・・仕事の依頼がまた来ました。」

 

千歌「やったぁ!それで今度はどこから?」

 

瑠惟「スクールアイドル運営委員会と日本バスケットボール協会からです。」

 

絶対に関わることのなかろうこの二つの団体。なぜこんなことに・・・。

 

果南「それでメールにはなんて?」

 

瑠惟「えっと・・・要約すると、日本のバスケの競技人口の増加のためにスクールアイドルにバスケの良さをアピールしてほしく、

 

それに伴い・・・Aqoursに現役高校生とエキシビジョンマッチをしてほしいとのことです。」

 

果南「ふーん・・・いいじゃん。」

 

え?

 

千歌「よっし頑張るぞ!」

 

ええ?

 

瑠惟「待ってくれ、なんでそんなにすぐ納得できるんだ。ほら、色々とツッコミたくなるだろ?なぁ梨子?」

 

梨子「別にいいんじゃないかしら。私達全員経験者だし。」

 

ツッコミ役が仕事をしてくれない。

 

曜「それに瑠惟君だっているし!」

 

まぁ文面にはAqoursと書かれているわけで俺が出ても反則にはならないわけだが・・・

 

瑠惟「じゃあ・・・とりあえずOKと返事しておくぞ。」

 

彼女達の順応性の高さを思い知らされた俺なのであった。

 

 

 

 

 

翌日スクールアイドル運営委員会達から折り返しのメールが来た。

 

内容としては詳しい日程や当日の流れ、その他細かい点などが書かれていた。

 

それで肝心な俺達の対戦相手は・・・

 

 

 

 

 

東京都男女混合高校生選抜チーム

 

 

 

 

つまり・・・

 

 

 

瑠惟「東京の最高戦力じゃねぇーか!」

 

運営俺らに勝たせる気なくて草

 

もうちょっとさぁ・・・最近流行りの忖度とかしてくれないのかね?

 

善子「相手に不足なしね・・・。」

 

不足なしって・・・お前らより余裕で強いからな。

 

千歌「今回の相手そんなに強いの?」

 

瑠惟「分かりやすく言うとμ'sとA‐RISEが1つになったくらい豪華なメンバーってことだな。」

 

ダイヤ「確かにこれは下馬評では私達の敗北が濃厚ですわね。」

 

花丸「でも先輩は何か考えがあるずら。」

 

瑠惟「いや、全く何も考えていません。」

 

それでも確かなのは・・・

 

瑠惟「負けるつもりもこれっぽっちもないんだよなぁ。」

 

不敵な笑みを浮かべる俺なのであった。

 

瑠惟「みんな明日から俺特製の特別メニューやるぞ。まぁみんなが選抜チームに勝ちたいならだけど・・・」

 

千歌「やるからには絶対に勝ちたいよね!」

 

瑠惟「よし来た。じゃあ明日から頑張るぞー!」

 

ー おぉー!!! ー

 

 

 

 

 

 

 

 

ということで翌日、俺達はいつもの練習を返上して試合に向けていつもの屋上とは違い体育館での特別メニューを開始した。

 

瑠惟「練習は基本的にポジション別でやってもらって最後に5対5の試合形式の練習をやるつもりだ。それでみんなのポジションだが・・・」

 

 

まずはPG(ポイントガード)は・・・

 

 

俺と梨子。

 

 

*PG・・・コート上の監督とも呼ばれ、ゲーム全体の試合運びを担う重要なポジション。

 

 

 

 

次にSG(シューティングガード)は・・・

 

 

花丸とダイヤさん。

 

 

*SG・・・主に外からのシュートで得点を狙い、ドリブルで中に切り込んだりもする。PGの補助もこなす。

 

 

 

 

それからSF(スモールフォワード)は・・・

 

 

千歌とルビィちゃん。

 

 

*SF・・・中からも外からも攻めることができるオールラウンダー。いわゆるスコアラーと呼ばれる選手はこのポジションであることが多い。

 

 

 

そしてPF(パワーフォワード)は・・・

 

 

善子と鞠莉さん。

 

 

*PF・・・フィジカルが強く、パワーのあるプレーができ、リバウンド争いにも参加できる。中距離のシュートが打てて、パスもさばけると完璧。

 

 

 

 

最後にC(センター)だが・・・

 

 

曜と果南さん。

 

 

*C・・・PGと同じくらい重要なポジション。ゴール下での体を張ったプレーを得意とし、オフェンスではフィニッシャー。ディフェンスではゴールの最後の砦となる。

 

 

 

 

 

 

瑠惟「じゃあ今から練習メニューを説明する。

 

まず花丸とダイヤさんは昔の感覚を思い出してほしいので、ひたすらシュート練習。その後はまた説明します。」

 

花丸「了解ずら!」

 

ダイヤ「承知しましたわ。」

 

 

 

瑠惟「次に千歌とルビィはボールを2つ使ってのドリブル練習。それが終わったら、スリーポイントエリア内でのシュート練習、そしてスリーポイントエリア外からのシュート練習、そして2人で1on1。詳しいことは紙に書いてあるからそれを読んでくれ。」

 

 

千歌「OK!」

 

ルビィ「が、がんばります・・・。」

 

 

 

 

瑠惟「善子と鞠莉さんは曜と果南さんと一緒に2on2をやってほしい。ただしエリアはスリーポイントラインより内側でお願いします。それが終わったら2人はパス→ミドルシュートをひたすら練習してください。」

 

 

善子「この程度造作もないことよ。」

 

鞠莉「レッツゴー!」

 

 

 

瑠惟「曜と果南さんは先程のメニューが終わったら花丸ちゃんとダイヤさんに合流してリバウンドの練習をしてください。シュートはその2人が打ってくれます。」

 

 

曜「了解であります!」

 

果南「うん。分かった。」

 

 

 

梨子「私は・・・何をすれば・・・。」

 

瑠惟「梨子にはひたすら俺と1on1をしてもらう。その中で教えられることは全て教えるつもりだ。正直かなりしんどいと思うが大丈夫か?」

 

梨子「大丈夫!私がんばるから!」

 

瑠惟「それでは各自練習開始!」

 

 

それから俺達は試合の当日まで必死に練習した。まるで中学時代のように走り、声を出し、ボールを追いかけた。それにしても久しぶりのフットワークは本当にしんどかったぞ。あれが嫌で何度も部活を休もうとしたし・・・・・・やっぱりバスケって楽しいよな。それもAqoursのみんなとできて。今度の試合絶対に勝ってやるぞ!

 

 

 

 

そしてやってきた試合当日。

 

俺達は新幹線で東京に向かい(交通費は向こう持ち)会場となる体育館へとやってきた。

 

この体育館は全国大会でも使用されるほど大きな体育館で、コートから見る観客席の眺めは圧巻の一言だ。

 

 

ちなみに本日試合をするのは俺達だけでなく他のスクールアイドルも現役チームと試合をしているらしい。二次創作の番外編だから許されるが、現実でやればバッシングは確実だぞ本当に。

 

 

スクールアイドルがバスケの試合をするとあって観客席にはただのオタクはもちろん普通のバスケファンもたくさんいる。

 

 

そういえばさっきツイッターで多くの人が試合の結果予想をしていたのだがダイヤさんの言う通り、ほとんどの人は現役高校生の圧勝だと予想していた。・・・・・・ほとんどはね。

 

 

試合開始数分前・・・

 

俺達はベンチで着々と準備を進め、試合の作戦会議をしていた。

 

瑠惟「・・・・・・ということで作戦は以上。じゃあスターティングメンバーを言うぞ。梨子、千歌、花丸、鞠莉さん、果南さんで。・・・メンバーはどんどん変えてくから体力温存は考えなくていいぞ。」

 

 

10人で円陣を組む。

 

 

瑠惟「今日の試合だけど、普通に考えたら現役でやってる方が勝つよな。

 

それはみんなも分かってると思う。

 

でも残念ながら今日の相手が悪かった。

 

なんせ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここにいるメンバーは全員中学時代、全国大会出場経験者だからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さぁ行こうか。どっちが本当に強いのかを証明しに!」

 

 

 

 

 

瑠惟・千歌「Aqours!」

 

全員「サンシャイン!」

 

 

 

 

 

 

*ここから三人称視点となります。ーーーー

 

 

試合は10分×4クォーター制

 

タイムアウトは前半2回、後半2回の計4回

 

延長戦は無し

 

 

両チームスターティングメンバー

 

【⠀チームAqours 】

 

4番 高海千歌 157cm SF

 

6番 桜内梨子 160cm PG

 

7番 国木田花丸 152cm SG

 

11番 松浦果南 162cm C

 

12番 小原鞠莉 163cm PF

 

(ベンチ)

 

5番 渡辺曜 157cm C

 

8番 黒澤ルビィ 154cm SF

 

9番 津島善子 156cm PF

 

10番 黒澤ダイヤ 162cm SG

 

13番 西王瑠惟 179cm PG

 

 

【 チーム 東京選抜⠀】

 

4番 田所浩二 (男)170cm PG

 

5番 高木美穂 (女)158cm SF

 

6番 鈴谷晋作 (男) 185cm C

 

7番 原田麗奈 (女) 155cm SG

 

8番 古坂杏 (女) 160cmSG

 

 

 

両チームがコートの真ん中で向かい合う。

 

 

 

その前にAqoursの5人は全員で審判のところに挨拶に行った。

 

そして5人ともしっかりと審判の手を両手で握り、目を見て『よろしくお願いします。』と言った。

 

再び全員が整列すると審判は試合開始の宣言をした。

 

 

審判「それではこれより、Aqours 対 東京選抜との試合を始めます!両チーム礼!」

 

 

 

「「よろしくお願いします!!」」

 

 

 

ジャンプボールは果南と向こうの6番の選手が争うことに。

 

 

「身長差すごいな〜。」

 

「あぁだいたい20cmぐらいあるぜありゃ。」

 

観客はそう声を漏らす。

 

それもそのはず果南は162cm対する相手は185cm。

 

その差なんと23cmである。

 

 

鈴谷「先に言っておく、この勝負君たちに勝ち目はない。スクールアイドルかなんだか知らないが、現役の俺達には絶対に勝てない。」

 

 

6番の鈴谷が向かい合う果南に向かってそう言った。

 

 

果南「・・・勝負は何でもやってみなくちゃ分からないと思うけどなぁ。」

 

 

鈴谷「その余裕すぐにへし折ってやる。」

 

 

会場にいる誰もがジャンプボールを制するのは東京選抜チームだと思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

だが・・・この男は違った。

 

 

 

 

 

 

 

 

瑠惟「絶対に勝てない?・・・馬鹿野郎。この世には絶対なんてどこにもないぞ。そんな考えじゃあ・・・痛い目見るぞ。」

 

 

 

 

審判がボールを真上に放り投げる。

 

 

 

瑠惟「さぁティップオフ(試合開始)だ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ボールが最高到達点に達する瞬間に両者跳躍した。

 

 

最初にボールに触れるのは誰もが6番の男だと確信した。

 

 

だが・・・

 

 

 

バシッ!

 

 

 

 

鈴谷「!?」

 

 

 

 

果南「ごめんね。私って結構バスケが得意なんだ。」

 

 

 

なんとジャンプボールを制したのは果南の方だった。

 

 

 

予想だにしない結果で相手チームと観客がざわつく。

 

 

 

「なんで果南ちゃんが取れるんだ!?」

 

会場のファンの1人が驚きを隠せずに口に出る。

 

「いやぁまぐれだろ?」

 

隣にいたファンがそう返す。

 

誰もが何が起こっているのかが分かっていなかった。

 

しかし対峙した鈴谷には分かった。彼女が一体何をしたのかが。

 

鈴谷(なんて女子だ・・・俺と同時に飛んだのに先にボールに触れる高さまで到達しやがった。本当にあいつがただのスクールアイドルなのかよ。)

 

 

果南が弾いたボールを梨子がキープしそのまま前に放り投げた。

 

梨子「花丸ちゃん!」

 

梨子のパスを花丸が受け取りドリブルでスリーポイントエリア近くまで進む。

 

ここで相手選手が追いつき、速攻に備えディフェンスを整えようとする。

 

 

 

 

 

 

しかし・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瑠惟「甘い。千歌の父さんが作る和菓子並みに甘い。

 

・・・花丸をフリーにするのはね。」

 

 

 

 

 

花丸「先制点もらうずら。」

 

 

なんと花丸はその場でシュートモーションに入る。

 

 

相手は花丸が何をやっているのかが分からず呆然と見ていた。

 

 

彼女はそのままシュートを打ち・・・

 

 

 

 

シュバッ

 

 

 

 

 

綺麗なスリーポイントシュートを決めたのだった。

 

 

 

 

3 - 0

 

 

 

 

先制点を奪取したのは観客の予想とは反しAqoursの方だった。

 

梨子「花丸ちゃん!ナイスシュート!」

 

花丸「梨子ちゃんもいいパスずら!」

 

2人はハイタッチを交わす。

 

 

 

 

今のプレーを見ていた東京選抜の監督は驚愕の表情を浮かべていた。

 

 

「なんて少女だ。試合の最初の大事な速攻の場面で迷わずにスリーを打つとは・・・しかもそれを決めてくる技術。それにジャンプボールを制したあの少女も・・・これは相手チームに対する評価を少し改めねばならんな。」

 

 

瑠惟「監督さんが驚くのも無理はない。

 

なんせあの場面だったら誰だって味方を待って数的有利を取ってから攻めるのが当たり前だからな。

 

しかもシュートを外せば確実にリバウンドは取られていた。

 

だが花丸にはそんなこと関係ない・・・」

 

 

 

 

バシッ!

 

 

 

田所「ファ!?」

 

今のプレーで動揺した4番の田所がパスミスをしてターンオーバーを許してしまった。

 

*ターンオーバー・・・オフェンスのミスで攻守が入れ替わること。

 

こぼれ球を保持した千歌がドリブルでゴール近くまで侵入する。

 

が、ここで5番の高木が自陣まで戻り千歌の前に立ちふさがる。

 

高木「ここで5点目を取られるわけにはいかないわ!」

 

相手が来ると千歌はボールを外に流した。

 

千歌「1つ間違ってるよ・・・」

 

高木(なんで・・・そこにあなたがいるのよ!?)

 

サイドに展開していた花丸にボールが渡る。

 

そしてそのままモーションに入り・・・

 

 

 

 

 

 

 

スパッ

 

 

 

 

 

 

 

 

花丸「正しくは6点目ずら。」

 

 

 

ゴールネットをくぐる綺麗な音が会場に響いた。

 

 

 

6 - 0

 

 

 

コートで花丸のプレーを見ていた同じSGの原田は目を見開いた。

 

 

原田「思い出したわ!」

 

古坂「どうしたの?」

 

原田「聞いたことがあるの静岡にスリーポイントの達人がいるって。

 

 

その凶悪な成功率の高さと裏腹にまるで文学少女のような清楚さを持つその様子から彼女はこう呼ばれていたわ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雷蝶(らいちょう)・・・・・・国木田花丸」

 

 

 

 

 

試合が開始してから1分も経たないうちに6点も失点した東京選抜はとりあえず一本を返そうと田所はボールを鈴谷に回した。

 

鈴谷は持ち前のパワーで果南をゴール下まで押し込みターンをしてシュートを放った。

 

果南はブロックに飛ぶが僅かに届かずゴールを許してしまった。

 

 

 

 

6 ‐ 2

 

 

 

鈴谷「もう油断はしない!全力で倒させてもらう!」

 

 

果南「おもしろいね。そうこなくっちゃ!」

 

 

 

続いてのAqoursのオフェンス、相手チームは花丸を最警戒し彼女に原田と小坂のダブルチームでディフェンスをしてきた。

 

瑠惟(あんなシュート見せられたらそうせざるを得ないよな。でも・・・)

 

ダブルチームによってマークがついていない鞠莉に梨子からパスが送られた。

 

フリースローライン辺りでボールを持った鞠莉はシュートを放つ

 

鞠莉「追加点GET!」

 

 

 

 

鈴谷「甘い!」

 

 

 

バチィ!!

 

 

 

鞠莉「What!?」

 

 

鞠莉のシュートは鈴谷によりブロックされてしまった。

 

そしてボールを田所が拾い速攻を仕掛けてきた。

 

 

梨子「みんな戻って!」

 

彼女は田所をマークするが彼も全国レベルの選手。あっさりと彼女を抜きそのままゴールに迫る。

 

田所はレイアップの体勢に入り跳躍する。

 

 

 

 

 

果南「させないよ!」

 

 

追いついた果南が田所の後ろからブロックを試みた。だが・・・

 

 

田所「いきますよ~」

 

田所はそのままボールを宙に放った。

 

果南「これは・・・シュートじゃない!」

 

そう、田所は空中にでシュートからパスに切り替えたのだ。

 

そしてそのパスを受け取ったのは・・・

 

 

 

鈴谷「田所、いいパスだ。フンッ!」

 

 

バキィィ!

 

鈴谷はボースハンドダンクでボールをリングに叩き込んだ。

 

 

 

ウォォォォォ!!!!

 

 

「ダンクきたぁ!!」

 

 

彼のダンクで会場が盛り上がる。

 

 

 

6 - 4

 

 

 

 

さっきまで涼しい顔していた瑠惟がベンチで少し焦っていた。

 

 

瑠惟(あいつ強くね!?なにあのダンク!?ゴールまだ揺れてるんだけど!しかも向こうの4番も相当できる!これは何か手を打つべきか・・・)

 

 

彼がタイムアウトを取ろうか迷っていると

 

 

 

千歌「瑠惟君!」

 

 

千歌が瑠惟の名前を叫び、首を横に振った。

 

 

瑠惟(なるほど・・・自分たちで何とかするってことかよ。)

 

 

瑠惟(分かった。とりあえずここはお前に任せる・・・キャプテン!)

 

 

 

2点差まで詰められたAqoursだったがコート上のメンバーは誰も焦っておらず、むしろその表情は冷静そのものだった。

 

 

ここでAqoursが仕掛ける。

 

 

梨子がボールを千歌にパスすると千歌以外の全員が彼女と逆サイドに移動した。

 

 

「これは・・・アイソレーション。なるほどあのオレンジ色の髪の子がエースというわけか・・・。」

 

 

*アイソレーション・・・特定の選手がスペースを使いやすくなるように他の選手が逆サイドに移動すること。

 

 

千歌のマークに付くのは5番の高木。彼女は千歌の出方をしっかりと見ようとしている。

 

 

 

まず動いたのは千歌だった。彼女はシュートモーションに入る。

 

 

だが・・・

 

 

高木(明らかに動きがぎこちない・・・これはフェイクね。)

 

 

予想通り千歌のそれはフェイクで次に千歌は高木の右からドライブを仕掛ける。

 

 

高木(こっちが本命ね!バレバレなのよ!そんな下手くそなフェイクじゃあ全国レベルは抜けない!もらった!)

 

 

高木の手が千歌のボールを捉えようとする。

 

 

しかし・・・

 

 

その手は空を切る。

 

千歌はボールを取りに行って体が右に寄った高木の左側からドライブで抜き去った。

 

 

高木(これは・・・2段フェイク!あんなにシュートがぎこちなかったのは2回目のフェイクに引っかかりやすくするための布石!)

 

 

千歌はそのままゴール下まで行き鈴谷と対峙する。

 

 

鈴谷「誰が来ようと同じこと!止めるのみ!」

 

 

千歌「ここは絶対に落とせないの・・・だから決めさせてもらうよ!」

 

 

ボールを持った千歌はレイアップの体勢に入る。

 

対する鈴谷もそれを見てから両手を上げ跳躍する。

 

その体格差約30cm!

 

鈴谷もこれは止めたと確信した

 

 

 

・・・が現実は違った。

 

 

 

千歌の放ったシュートはフワッと高いループで鈴谷の手の上を軽々通り越しそのままゴールに収まった。

 

鈴谷(何!?俺の上を通り越しただと!)

 

 

「あの4番、鈴谷のブロックを簡単にかわしたぞ!」

 

「なんだ今のシュート!」

 

 

 

 

瑠惟「全く・・・本当にあいつはすげーな。久しぶりに見せてもらったぜ。お前のスクープシュート!」

 

*スクープシュート・・・一般に背の低い選手が背の高い選手のブロックをかわすためのシュート。レイアップのフォームと同じだが通常よりも高いループで放たれる。別名『ハイループレイアップ』

 

 

千歌「高いだけじゃ止められないよ。」

 

鈴谷「なるほど。おまえは確か中学時代・・・『静岡の星』と呼ばれていたな。高海千歌。おもしろい。そうでなきゃ倒しがいがない!」

 

 

 

 

その後も両チーム一進一退の攻防を繰り広げ、第1クォーター残り2分。

 

 

 

20 ー 18

 

 

 

Aqoursが2点をリードする展開となっていた。

 

瑠惟(・・・確かに点は取れている。だが思った以上に点差が離れていない。)

 

彼は当初前半から全力で点を取りにいっての逃げ切りを理想としていたが、試合を見ているうちにその考えが甘かったと実感し始めていた。

 

 

Aqoursの攻撃、ダブルチームが付いている花丸に鞠莉がスクリーンを掛けて彼女のフリーのチャンスを生み出す。

 

*スクリーン・・・味方が動きやすくするためにある選手が壁をつくり相手選手の進行を妨げるプレー。

 

一瞬のチャンスを見逃さなかった梨子は花丸がフリーになった瞬間にパスを出し、見事ボールが花丸の手に渡る。

 

花丸がシュートモーションに入るとマークの選手が追いついてブロックのために跳躍する。

 

 

 

しかし花丸はシュートせずにボールを下におろしパスを出した。

 

 

パスの相手は・・・

 

 

 

 

 

 

 

鞠莉「ナイスパス!」

 

 

先程スクリーンで花丸をサポートした鞠莉がノーマークになっていたのだ。

 

鞠莉はドリブルでゴール下へ突っ込んだ。

 

しかし先程と同じく鈴谷のヘルプが鞠莉に迫る。

 

 

鞠莉「・・・こんな感じよね。」

 

 

彼女は巧みなドリブルでギリギリまで鈴谷を引き付けた後、ノールックビハインドパスで逆サイドの果南にパスを出した。

 

*ノールックビハインドパス・・・背面からボールを通してパスをするが、それをパスの相手を見ずに行うこと。

 

 

鈴谷(この12番なんてハンドリングしてやがる。ボールの動きが全く分からない!)

 

 

鞠莉「ちゃんと決めてよね果南。」

 

 

果南「はいはい。」

 

 

果南はノーマークで悠々とシュートを打ち追加点を決めた。

 

 

22 - 18

 

 

瑠惟(鞠莉さん絶好調じゃん。いや〜いつ見てもあのボールさばきは真似できないと思わされるよ。)

 

 

ディフェンスでも鞠莉は相手チームの脅威となっていた。

 

鞠莉にマークされている古坂は彼女の振り切れそうで振り切れないいやらしいディフェンスにイライラし、体力を着々と消耗させられていた。

 

古坂(この子私が振り切ろうとしたらマークを強めてくるし、かといって仕掛けようとしなければ隙を作って行けるかもって思わせてくる。事実この8分間私はほとんどのボールを持ててない。もぅ!イライラする!)

 

 

何とかボールを貰おうと古坂は強引に鞠莉のマークを振り切りパスを要求する。

 

 

古坂「ちょうだい!」

 

 

ボールを持っていた高木はそれに反応してパスを出した。

 

 

古坂(よし!もらった!)

 

 

そう彼女が確信したのも束の間・・・

 

 

 

バチィィ!

 

 

古坂「しまった!」

 

 

鞠莉が一瞬で間合いを詰めボールをスティールしたのだ。

 

 

ボールを拾った鞠莉はそのままドリブルでぐんぐん進んでいく。

 

 

しかし彼女のスピードは全国レベルと比べれば速い方ではなく高木と原田が追いつき、彼女の前に出た。

 

 

 

高木・原田「「行かせない!」」

 

 

 

鞠莉「行っちゃうよ!」

 

 

ダムダムダムダム

 

 

鞠莉はボールを前後左右に行き来させ相手を翻弄する。

 

 

その不規則で予測不能なドリブルに次第に相手が付いてこれなくなる。

 

 

鞠莉「ここね!」

 

 

2人が完全にボールに反応できなくなった瞬間に鞠莉は2人を抜き去りゴールへと迫る。

 

 

田所「止めますよ〜。」

 

 

田所が何とか追い付くが・・・

 

 

田所「!?」

 

 

ヒュッ

 

 

鞠莉はゴールに背を向けて、そのままままボールを後ろに放り・・・

 

 

ガガッ!

 

 

ボールはリングに数度当たりそのままネットに吸い込まれた。

 

 

ワァァァ!!

 

 

「今あの子ゴールを見てなかったぞ!」

 

「なんであれが入る!?」

 

 

瑠惟「さすが鞠莉さん!

 

 

相手を子供のように手玉にとり予測不能のプレーで誰も止められない。今の彼女の姿は正しく・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

変幻自在の奇術師(トリックスター)

 

 

 

 

 

 

第1クォーター残り20秒。

 

Aqoursが最後の攻撃を仕掛ける。

 

しかし相手チームもこれ以上点を取らせないために各々マークを強めてきた。

 

梨子はパスをさばきたかったが誰もフリーになっておらず少し焦っていた。

 

梨子(パスが出せない。どうすれば・・・)

 

ここで彼女に一瞬の隙が生まれる。

 

全国レベルの田所がそれを見逃すはずも無かった。

 

 

バチィ!

 

 

梨子「あっ!」

 

 

瑠惟「まずい!戻れ!ここを取られたら流れが切れる!」

 

 

Aqoursはターンオーバーを許してしまい、全員が急いで自陣に戻ろうとするが先頭を走る田所に追いつけたのは梨子だけだった。

 

 

梨子(絶対に止めなきゃ!)

 

 

彼女は全神経を目の前の相手に集中させる。

 

 

田所は右にクロスオーバーを仕掛けた。

 

 

梨子もそれに反応し右に出ようとする。

 

 

 

 

 

が、ここでAqoursは東京選抜のキャプテンの男の実力の一端を見ることになる。

 

 

田所「・・・」

 

 

 

 

田所は梨子が自分のドリブルに反応し、右に来たその瞬間に今度は左に切り返した。

 

梨子「!」

 

重心が右に乗っている梨子は左に行こうとするが体がついてこれずにその場で尻もちをついてしまう。

 

その光景を見たAqoursは全員驚愕の表情を浮かべた。

 

なぜなら・・・

 

 

 

 

 

瑠惟「!?」

 

 

千歌「今のはアンクルブレイク!」

 

*アンクルブレイク・・・高いドリブル技術を持ったプレイヤーが相手の足に重心が乗った瞬間に逆に切り返すことで相手を転ばせるプレー。狙ってできる選手はほとんどいない。

 

田所はそのままシュートを決め、それと同時に第1クォーター終了のブザーが鳴った。

 

 

24 - 20

 

 

両チームがベンチに戻るがその表情はどちらも明るいとは言えない。

 

瑠惟「とりあえずみんなお疲れ。何とかリードして終われたから少しは安心。だが・・・」

 

梨子「向こうの4番の最後のプレー・・・あれってもしかして・・・」

 

彼は頷く。

 

瑠惟「間違いない。最後の梨子へのスティール。そしてあの場面でアンクルブレイク・・・恐らくあいつも俺と同じタイプの選手だ。」

 

果南「じゃあ彼も眼を持ってるってこと?」

 

瑠惟「そう考えていいだろう。・・・なんてこった。東京にあんなプレイヤーがいたなんて。」

 

瑠惟(中学時代でも眼を持ってたのは俺だけだった・・・じゃあ高校に入って才能に目覚めたというのか!?)

 

瑠惟「とにかく今はできることをやろう。まず最優先なのは向こうの6番を止めること。これ以上調子に乗らせるとまずい。そして4番は・・・なんとかやってみる。メンバーは全員交代で。ゆっくり休んでくれ。」

 

果南「でもどうやって止めるの?あの男の子結構強いよ。」

 

マッチアップしていた果南がタオルで汗を拭きながらそう言った。

 

瑠惟「大丈夫だ。手はある。6番には少し大人しくなってもらおうか。」

 

 

一方東京選抜も同じくAqoursの予想外の実力に驚きを隠せなかった。

 

「彼女達がここまでやるとはね・・・まさかリードされて終わるとは思ってもみなかった。全く衰えというものを感じさせないプレイヤー達だ。」

 

監督の言葉に鈴谷は疑問の声をあげた。

 

鈴谷「衰えてないってどういうことですか?あいつらはスクールアイドルじゃ・・・」

 

「知らない者のために言っておくが、向こうのベンチにいるメンバーは全員バスケ経験者でそれも全国大会に出場するほどの猛者だ。特に13番の彼・・・もしかしたら今の東京のどの選手よりも実力があるかもしれん。もし彼女達を格下などと思っていれば足元をすくわれるぞ。気を引き締めてかかれ。」

 

田所「第2クォーターはどうしますか?」

 

「そうだな・・・恐らくだが向こうのメンバーは一度全員引っ込めてくるだろう。いくらバスケの実力が衰えてないとは言っても、体力は現役よりは無い。だからこちらは最初は様子見で行こう。だが・・・あの男には注意するように。」

 

東京選抜のメンバーは試合前Aqoursのことを侮っていたのでベンチメンバーは連れて来ず5人だけで試合に臨んでいた。なので下手に作戦を出して体力を使わせることは極力避けたかった。だが・・・

 

(それにしても向こうの7番と12番にはしてやられた。

 

こちらがリードされているのは7番のスリーポイントによるものが大きい。

 

そして7番へのダブルチームと12番のディフェンスにより女性陣の体力の消耗が予想よりもひどい。

 

こんな子達がバスケットから離れているとは・・・見れば見るほどウチに欲しくなる選手ばかりだ。)

 

 

 

ブザーが鳴り第2クォーターの始まりを告げ、両チームがコートに入る。

 

ここでも第1クォーターと同じくAqoursメンバー五人が審判に挨拶をしに行った。

 

観客及び、東京選抜は彼らの行動を礼儀を重んじる行動だと思っているだけだったが、後にそれが東京選抜を苦しめることになる。

 

東京選抜の予想通りAqoursは5人とも交代しておりその中には最も警戒すべきあの男もいた。

 

田所と鈴谷は中学時代の瑠惟を知っている。かつて自分達を負かし、全国を制したそのプレーを。怪我をしてバスケから離れていたことも。だからこそ完治したのにも関わらずその才能を無駄にしていることに怒りを覚えている。

 

鈴谷は瑠惟に話し掛ける。

 

鈴谷「俺達のことを覚えているか?西王瑠惟。」

 

瑠惟は少し考えた後首を横に振った。

 

瑠惟「正直に言うと覚えていない。悪いな。」

 

鈴谷「そうか・・・まぁそれはどうでもいい。・・・どうしてお前はこんなところでくすぶっている。

 

お前はちゃんとしたチームでその才能を生かすべきじゃないのか?

 

スクールアイドルなんてアイドルの真似事をするその女子達のために自分を犠牲にするなんてバカバカしいと思わないのか?」

 

それまでニコニコしていた瑠惟は最後の彼の言葉に反応した。

 

瑠惟「『真似事』、『犠牲』、『バカバカしい』?」

 

鈴谷「!」

 

鈴谷は彼から恐ろしい何かが出るのを感じた。

 

瑠惟「別に俺やAqoursの事をどう思おうが人の勝手だから気にしない。だが・・・努力してる人間を否定するようなことを言うのは許さない。」

 

バチバチしてる二人の間に田所が入り仲裁する。

 

田所「そこまでにしてやってください。こいつは思ったことを正直に言っちゃうんですよ。」

 

瑠惟は両者を一瞥すると何も言わずにポジションについた。

 

瑠惟(あくまで内容は否定しないんだな。)

 

 

このクォーター最初の攻撃は東京選抜。

 

しかしマークについたAqoursにボールを持った田所及び4人が驚いた。

 

田所(鈴谷に8番(ルビィ)がマークだと!?)

 

先程も鈴谷には同じポジションの果南がマークしていてその身長差は20cmもあったが、今回はSFのルビィが彼をマークしており、その身長差は31cm。これには百戦錬磨の東京選抜の監督も目の前の光景を疑った。

 

鈴谷自身も目の前にいる小さな少女が本当に自分をマークすることを半ば夢のように思っており、それと同時にAqoursが自分を舐めているのだと怒りも感じていた。

 

鈴谷「悪いことは言わない。怪我をする前にマークを変えろ。」

 

ルビィに向かって彼は言う。

 

しかし目の前の少女は怯えた様子もなく彼に言い返す。

 

ルビィ「ルビィ達は本気です!全力であなたを止めます!」

 

鈴谷「どうなっても知らんぞ。」

 

そう言って彼は楽々とポジション取りをする。

 

鈴谷(これはいないも同然の力だな。)

 

田所は妙な違和感を覚えつつガラ空きの鈴谷にパスを通す。

 

 

 

 

 

 

 

 

瑠惟「どれだけ小さくて弱そうでも、そこに立ってるだけで脅威になることだってあるんだぜ。」

 

 

 

 

 

 

 

ボールを受け取った鈴谷はゴールを狙うためにターンをする。

 

 

その時・・・

 

 

ダンッ!

 

 

鈴谷が何かにぶつかる衝撃を感じるがそのままシュート体勢に入る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピピッー!

 

 

 

 

 

 

 

審判「オフェンスチャージング!白6番!」

 

 

会場が静まり返る。

 

 

鈴谷は目の前を見下ろすとそこには・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「いたた・・・もう少し優しくしてください。」

 

 

 

 

 

 

 

 

鈴谷「小癪なことを・・・。」

 

 

なんとコートに尻もちを着いたルビィがいたのだ。

 

ここでようやく東京選抜は彼女達の狙いに気付いた。

 

「なるほど・・・8番を利用して鈴谷からファールを狙う作戦か。」

 

田所「案外強かな真似しますねぇ。」

 

田所は瑠惟に皮肉っぽく言う。

 

瑠惟「言っただろ?立ってるだけで脅威だって。」

 

田所「確かにこれは止められない。だけど鈴谷にパスを出さなければいいことだろ。」

 

彼の対策に瑠惟は呆れたように返す。

 

瑠惟「・・・分かってないな。この作戦の本当の意味が。そうだな・・・ひとつ言っておこう。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瑠惟「何もしなければ6番はこのクォーターもう点を取れない。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京選抜の攻撃が失敗し、今度はAqoursの反撃。

 

ボールを持った瑠惟はハーフコートを超えるとマークの田所と対峙する。

 

中学時代の彼を知っている田所は彼の眼を最も警戒していた。

 

 

 

 

 

しかし・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

ダムッ!

 

田所「!?」

 

彼のドリブルに反応した田所は気が付いたらその場で尻もちを着いていた。

 

ペイントエリアに侵入した瑠惟に鈴谷がヘルプに来る。

 

*ペイントエリア・・・制限区域とも呼ばれる。ゴール下のエリアからフリースローライン周辺の場所を指す。

 

スピードにのった瑠惟は跳躍し、それに合わせて鈴谷も高く飛んだ。

 

ダンクに来たと思った鈴谷はボールに手を伸ばすが、こうなることを予想していたかのように瑠惟はボールを逆の手に持ち替えた。

 

鈴谷(しまった!)

 

そう後悔した鈴谷だが時すでに遅し。

 

飛んでしまったため勢いを止められない鈴谷はそのまま瑠惟に接触してしまった。

 

 

 

 

ピピッー!

 

 

 

審判の笛の音を聞いた瑠惟は持ち替えたボールをゴールに向かって放った。

 

 

シュッ!

 

 

ボールは危なげなくリングをくぐり審判から鈴谷のファールが告げられた。

 

 

審判「プッシング!白6番!バスケットカウント!」

 

 

ワァァァァァ!

 

 

「すげぇ!バスケットカウントだ!」

 

「ということは・・・2点に加え、1本フリースローだ。」

 

 

 

 

瑠惟「ねぇどんな気持ち?自分より小さい奴にいいようにされるってどんな気持ち?」

 

鈴谷「貴様ァ!」

 

 

 

 

瑠惟は与えられたフリースローをしっかりと決めた。

 

 

 

 

27 - 20

 

 

 

 

ベンチで彼のプレーを見ていた千歌達は驚いた。

 

千歌「今の瑠惟君、眼を使ったけど前見た時より・・・なんというか・・・よりキレが増していたような。」

 

梨子「相手の動きがもっと正確に分かるようになったってこと?」

 

千歌「そうなのかなぁ。上手く説明できない。でも・・・」

 

果南「確実に彼は強くなってるね。」

 

千歌「さすがエンペラー・・・

じゃなかった・・・王の眼光(キングサイト)だね。」

 

梨子「あれ?名前変わったの?」

 

千歌「いやぁ前の名前だと某赤髪の男の子に怒られるからってやめたんだって。」

 

梨子「彼も大変ね・・・」

 

 

 

 

 

 

点差を7点に空けられた東京選抜。一刻も早く点差を縮めようと素早く攻めるが・・・

 

田所(パスコースが1つしかない・・・)

 

Aqoursの作戦は鈴谷にボールを持たせることなのでそれ以外の選手には厳しくマークが付いており田所はパスを出せなかった。

 

この作戦の攻略としては田所が瑠惟を抜いて2対1で攻めるか鈴谷にアリウープをさせることだが、それを分かっている瑠惟は田所を抜かせないようにディフェンスをし、高いパスは身長差があるので何もせずとも封じているのだ。

 

そして敢えて下からのパスコースを空けて鈴谷へのバウンドパスを誘っている。

 

田所は仕方なく鈴谷にパスを出す。

 

 

再び始まる鈴谷VSルビィ、鈴谷は先程のように失敗を避けるようにターンせずドリブルをしながらかつルビィを押し倒さない程度の力でゴール下に押し込む。

 

 

 

 

 

バチィ!

 

 

 

 

何者かが彼の手からボールを叩き落とす。

 

その正体は・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

ルビィ「善子ちゃん!」

 

瑠惟「ナイス!善子!」

 

善子「だからヨハネよ!」

 

なんと善子が飛び出し鈴谷からボールを奪ったのだ。

 

鈴谷はルビィに注意を向けすぎたことで善子が来ていたことに気付かなかった。

 

ボールを持った善子は前方にロングパスをした。

 

前に走り込んでいた瑠惟はボールを受け取ると無人のゴールに迫る。

 

しかし田所も瑠惟が走ると同時に走ったので何とか彼に追いつくことができた。

 

田所(絶対に入れさせない!)

 

田所は眼を使い瑠惟の動きを読み取る。

 

田所「ここだ!」

 

 

 

 

 

バチィ!

 

 

 

 

瑠惟(クソっ!やられた!)

 

彼の手にあったボールはカットされ飛んでいく。

 

 

 

 

パシッ

 

 

 

瑠惟「!」

 

しかし後ろから走ってきたルビィがこぼれ球を拾いシュートを放った。

 

彼女のシュートは見事に決まり点差は9点へと広がった。

 

 

 

ルビィ「この試合・・・絶対に勝ちます!」

 

 

 

 

彼女は遅れて自陣に到着した鈴谷に力強く言い放った。

 

 

 

 

 

続く・・・




キャラ設定

・花丸
異名・・・雷蝶
得意プレー・・・スリーポイントシュート
・鞠莉
異名・・・変幻自在の奇術師
得意プレー・・・ノールックパス、ドリブル
・千歌
異名・・・静岡の星
得意プレー・・・スクープシュート
・瑠惟
異名・・・堕ちた王
得意プレー・・・アンクルブレイク


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スクールアイドルでも・・・バスケがしたいです!ACT2

大変遅くなりました。
私の自己満足話の続きでございます。
前話を読んでない方は前話から読むことを推奨します。



圧倒的なプレーでコートを支配する瑠惟と思わぬ伏兵ルビィによる活躍で9点差まで空けられた東京選抜の監督はたまらずタイムアウトを取った。

 

ベンチに戻る選手の顔色に疲労が少し見えると監督はすぐには作戦を言わずに選手をベンチに座らせた。

 

「とりあえず水分補給と疲労回復につとめながら話を聞いてくれたまえ。」

 

高木「監督、8番と13番はどうやって止めたら・・・。」

 

彼女の問いに監督は眉間に皺を寄せる。

 

「13番にはダブルチームで対処したいが、その作戦はお前達の体力がどこまで持つかにかかっている。できるか?」

 

田所と高木の二人を見て監督が言った。

 

それを見た二人は首を縦に振った。

 

「分かった。13番にはそれでいこう。問題は8番だが・・・彼女は君の弱点をしっかりと理解しているね。鈴谷君。」

 

鈴谷「・・・はい。悔しいですが8番は俺の弱点を分かってあのディフェンスをしています。」

 

「あの小さい体格からは想像もできない強かなプレー・・・。まるで『小悪魔(リトルデーモン)』のようだね。」

 

東京選抜の監督にそう言わせるほどルビィは驚異となっていた。

 

「それに8番を止めると言ったが、彼女自身ディフェンス時には特段動きを見せていない。鈴谷君がゴールに向かってターンをする際に当たりに行って上手く転んでいるだけだ。言い方を変えれば鈴谷君を止めているのは審判だ。」

 

古坂「どういうことですか?」

 

「つまりは8番は・・・いや相手チームは審判を味方につけたということだ。その要因たり得るものはあった。1つ目は戦力差。君たちも分かっている通り試合前は東京選抜とスクールアイドルじゃ天と地ほど力の差があると思っていただろ?」

 

原田「なんでそれが原因に?」

 

「日本人はね・・・ジャイアントキリングって言うのが大好きなのさ。弱い者が力を合わせて強き者を倒す。これは今の私達の状況にも言えるとは思えないかい?審判だって機械ではない。頭では公平にジャッジしていても無意識の内に相手チームの方に肩入れしてしまっているということだよ。」

 

高木「そんなの・・・卑怯じゃ」

 

そんな高木の言葉に鈴谷が反応した。

 

鈴谷「卑怯ではない。彼女たちは自分たちが利用できるこの環境を上手く利用しただけだ。何も反則などはしていない。」

 

「彼の言う通りだよ。そしてもう1つだが・・・そうだな・・・田所、第1・2クォーターが始まる前に相手チームが何をしていたか覚えているか?」

 

田所は記憶を探り先程の出来事を思い出す。

 

田所「そう言えば・・・試合に出るメンバー全員で審判に挨拶に行っていましたね。」

 

「あぁ。普通は第1クォーターが始まる前にチームを代表してキャプテンが行くのが当たり前になっているが彼女達は全員で、それもきちんと握手をしていた。これにより審判は相手チームにいい心象を持ってしまったので彼女達に有利なジャッジをしてしまっても不思議なことではない。これには相手チームで指示を出している13番を敵ながら褒めたいところだ。」

 

「とにかく向こうの狙いは鈴谷君だ。だから鈴谷君はしばらく味方のサポートに徹するように。」

 

鈴谷「はい。」

 

不本意ながらも鈴谷はチームのためだと思い監督の決断を受けいれた。

 

 

 

 

 

一方Aqoursベンチでは東京選抜ほど暗い雰囲気ではなかった。

 

瑠惟「よくやったルビィ!」

 

ルビィ「あ、ありがとうございます!」

 

会場の誰もこの小さな少女がコートで一番大きな選手を無力化するとは思わなかっただろう。

 

しかし瑠惟はルビィの力を信じ、一切の迷いなく彼女を鈴谷のマークに付けた。

 

ベンチで攻防を見ていた花丸が疑問を口にした。

 

花丸「でもなんで6番はわざわざルビィちゃんと勝負するずら?ファールが怖いならルビィちゃんから離れてシュートを打てばいいのに・・・」

 

瑠惟「花丸、あいつはルビィちゃんと勝負するしかないんだよ。なぜなら・・・」

 

果南「あの子ミドルシュートが苦手みたいだね。」

 

先程までマッチアップしていた果南がそう言った。

 

瑠惟「果南の言う通りだ。第1クォーターの間ずっと6番を観察していたがゴールした以外のシュートは打たなかったし、ジャンプ力のある果南さんに対してもゴール下まで持ち込んで勝負していたから、きっと外は打てないかもと思っていたが、まさかここまで作戦がハマるとは予想外だった。」

 

そして瑠惟は次の作戦を伝える。

 

瑠惟「恐らく相手は俺とルビィに何かしらの対策をしてくるから、攻め方を変えよう。そうだな・・・俺以外の4人中心で攻めよう。お願いしますよ、曜、善子、ルビィ、ダイヤさん。」

 

 

 

 

 

タイムアウトが終了し、東京選抜ボールで試合再開。

 

 

 

鈴谷は指示通りに中でポジションは取らず、外に開いていた。

 

これによりペイントエリアには誰もおらず、5人全員が外に展開している。

 

こうなってくるとオフェンスは1 on 1でデイフェンスを抜いてしまえば絶好のシュートチャンスとなる。

 

ボールを持った田所もそれは分かっているようで、右サイドにいた古坂にパスを出した。

 

パスを受けた彼女は目の前にいるダイヤに仕掛ける。

 

まず彼女はシュートフェイクでダイヤの重心を浮かすと、ドリブルで左から突破した。

 

ダイヤ(全国レベルだけあって一つ一つの動きが洗練されていますわ!)

 

そのまま古坂はゴールに近づくがヘルプに来た曜に進路を阻まれてしまった。

 

しかし古坂は動揺することなく空いた原田にパスを出しゴールを沈めた。

 

久しぶりに東京選抜に点が入りコートの選手たちは少し安堵した。

 

 

続いてのAqoursの攻撃、瑠惟は田所に近づかれる前に善子にパスを出し、善子はドリブルで中に切り込んだ。

 

善子を止めようと原田と鈴谷がヘルプに来るが、善子は落ち着いてパスをダイヤに出した。

 

 

 

ダイヤ「先程はやられてしまいましたから、お返しをしないといけませんわね。」

 

古坂「できるものならやってみなさい!」

 

ダイヤ「では・・・」

 

ダイヤは右にドライブを仕掛けたが、古坂はそれに反応し先回りする。

 

だが・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古坂「あれ?なんでそこにいるのよ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

右からダイヤが仕掛けてきたように見えた古坂だが実際には元の場所から一歩も動いておらずダイヤはその場でシュートを放った。

 

彼女のシュートは音も無くリングをくぐり、観客でさえも得点が入ったことを一瞬理解できなかった。

 

 

「あの人のシュート超綺麗だったな!」

 

「いや、その前のフェイクも本物に見えたぜ。」

 

「あぁ、だって7番が反応できてなかったもんな。」

 

 

観客がそんな感想を言い合う。

 

 

瑠惟「今日は調子いいみたいですね。」

 

ダイヤ「何をおっしゃってますの?今日()ですわよ。」

 

2人はバチッとハイタッチをした。

 

 

リスタートした田所が古坂に声をかける

 

田所「ドンマイ。次がんばりましょー。」

 

古坂「えぇ。」

 

そう答える彼女だが内心今の出来事に驚きを隠せなかった。

 

古坂(あの10番・・・フェイクも見事だったけど、それ以上に何なのよあのシュートは・・・。動きが滑らかすぎて反応できなかった。いや・・・あまりにも美しくて見惚れてしまった。)

 

彼女の視線はコートを優雅に駆けるダイヤに奪われるのであった。

 

その姿はダイヤの異名のような『紅き踊り子』だった。

 

 

その後、東京選抜は田所の眼を使ったチームプレイで着実に点差をを縮めていった。

 

 

残り時間5分

 

40 ‐ 35

 

 

そして5点をリードするAqoursのオフェンス時、曜にボールが渡りドリブルで中に切り込む。

 

瑠惟「曜、そろそろお前の力を見せてやってくれ。」

 

曜「OK!ゴールに向かって全速前進ヨーソロー!」

 

マークに付いてる原田はゴール下で曜の前に立ちふさがり大きく両手を広げた。

 

原田「悪いけど、そう好き勝手にはやらせないわ。」

 

曜「カントクの指令だからやらせてもらうね♪」

 

そして曜は強く踏み込み跳躍する。

 

原田「!?」

 

彼女は驚いた。なぜなら・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バキィィィ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

身長が160cmもない曜が目の前で跳躍してそのままボールをリングに叩き込んだからだ。

 

これには観客も言葉が出なかった。

 

田所「なんで・・・5番がダンクを・・・」

 

自分より身長が低い彼女がダンクを決めたという事実を受け入れられないかのように田所が呟いた。

 

瑠惟「確かに女子でなおかつあの身長でダンクをするなんて考えられないよな。

 

だけどあいつはジャンプ力だけで言ったら俺よりも全然高いし、それは水泳や高跳びで鍛えられた彼女の圧倒的身体能力がダンクという芸当をも可能にさせるんだ。

 

まぁこっちのCは2人ともフィジカルはそこら辺の男子よりも強いし。

 

ちなみにあいつは中学時代その跳躍から『蒼鳥(ブルーバード)』って呼ばれてたらしい。

 

とどのつまり、女子だからってあんまり舐めてかからないことだな。」

 

 

 

 

 

田所(向こうのチームはなんて化け物揃いなんだ。5番がのあの高さに加え、鈴谷が封じられている以上、中から攻めるのは難しいか。・・・なら!)

 

彼はフェイクで瑠惟を揺さぶった後、古坂にパスを出した。

 

 

古坂「中がダメなら外から攻めるのみよ!」

 

彼女はボールを貰い即座にシュートを放った。

 

ダイヤ(これは!速い!)

 

ダイヤはブロックに飛ぶが間に合わずスリーポイントを許してしまった。

 

 

 

花丸「今のシュート、あれを止めるのは難しいずら。」

 

千歌「え?なんで?」

 

花丸「7番はボールを貰う少し前に既に足だけはモーションに入っていてボールが手に来ればそのままシュートできる体勢になっていたずら。ダイヤさんは反応できただけでもすごいずら。」

 

梨子「でもそれならあらかじめブロックに飛んでおけば・・・」

 

花丸「それは逆効果ずら。もし先にブロックに飛べばそのシュートは防げるかもしれないけど、あくまでもシュートモーションに入っているのは足だけ。相手はこっちの動きを見てから選択肢を変えることができるずら。」

 

千歌「さすがは東京選抜だね・・・。どうするの瑠惟君・・・。」

 

 

 

 

その後も東京選抜は古坂と原田のスリーポイントで得点を量産し、ついにAqoursは逆転を許してしまった。

 

 

 

瑠惟は得点板をちらりと見ると顔をしかめた。

 

瑠惟(『44 - 50』。・・・6点差。こうなったのは俺の判断ミスだ。相手は仮にも東京最強。外が脅威にならないはずは無かったのに。それに俺へのダブルチームも中々厄介でどうしたら・・・。)

 

悩む彼の元にダイヤと他3人が駆け寄ってきた。

 

ダイヤ「あなたらしくありませんわよ。」

 

瑠惟「でも・・・この状況どうすればいいか・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

ダイヤ「私達の目標は勝つことではありません。

 

 

 

楽しむことです。勝敗はその次。

 

 

 

今の瑠惟さんを見ているととても楽しんでいるようには見えませんわ。」

 

 

 

 

瑠惟「楽しむこと・・・」

 

ダイヤ「はい。第2クォーター残り時間の約2分半、あなたの思うようにプレーしてみてください。私達は全力でフォローしますわ。」

 

瑠惟「みんなはそれでいいのか?」

 

曜、善子、ルビィの3人は彼の問いに頷いた。

 

瑠惟「・・・分かりました!みんな残り時間、俺を支えてくれ!」

 

 

 

 

迷いが無くなった瑠惟はダブルチームに対して先程のように引くのではなく、むしろかかってこいと言わんばかりの気迫で勝負を仕掛けに行った。

 

そんな彼の動きを見た田所は驚いた。

 

田所(こいつ・・・さっきよりも動きが良くなってるそれもあの眼に頼った動きではなく・・・)

 

強引にダブルチームを突破した瑠惟だが田所によって後ろからボールをはたかれてしまいボールがコートの外に出てしまった。

 

瑠惟「クソー!やられた!!」

 

悔しさのあまり彼はそう叫んだ。しかし彼の表情にはどこか楽しさが感じられた。

 

Aqoursボールで試合が再開し再び瑠惟にボールが渡った。

 

彼はもう一度ダブルチームに勝負を仕掛けようとする。

 

高木「何度やっても無駄よ。1人ならまだしも2人でなら絶対にあなたを止められる。」

 

そんな彼女の言葉を聞いた瑠惟は笑いながらこう答えた。

 

瑠惟「無駄なことはないさ。人生は挑戦の連続。偉い人が言ってたぜ。諦めたらそこで試合終了だって。だから俺は何度でも挑む!」

 

そして彼はドリブルを仕掛けるが上手くいかずターンオーバーを許してしまった。

 

ボールを拾った高木がドリブルでゴールに迫るが・・・

 

 

 

 

 

 

 

バチィ!!

 

 

 

 

高木「なっ!?」

 

 

 

善子「手元がお留守よ。それでは私から点は取れないわ。」

 

いち早く戻った善子が高木の後ろからボールをカットしたのだ。

 

ボールをカットされた高木はそんな彼女のプレーを体験して思い出した。

 

高木「気配を感じさせないそのバックチップ。あなた・・・静岡で有名なディフェンスの達人ね。たしか『宵闇(よいやみ)』って言われてたっけ。」

 

善子「あら、私のこと知ってくれてるのね。」

 

 

 

そして善子は保持したボールを瑠惟に渡した。

 

 

瑠惟「みんなすまない・・・。」

 

 

彼はターンオーバーを許してしまったことを4人に謝る。

 

しかし・・・

 

曜「今のは惜しかったね!でも次はきっと抜けるよ!」

 

善子「全く・・・もっと全力で挑みなさいよ。あなたならいけるわ。」

 

ルビィ「先輩、がんばルビィですぅ!!」

 

彼女たちは彼のミスを責めることなく励ました。

 

ダイヤ「今は好きなようにやってください。大丈夫ですわ。フォローは私たち4人がいたしますから。」

 

瑠惟「みんな・・・ありがとう。」

 

 

第2クォーターも残り時間があと約20秒となりAqoursは前半戦最後の攻撃を仕掛けようとしていた。

 

ボールを運んだ瑠惟はダブルチームと相対する。

 

瑠惟(今の俺じゃあこの2人を抜くのは正直難しい。だが・・・)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瑠惟(この攻撃だけは絶対に成功させる!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

瑠惟は軽く深呼吸すると田所の方にトップスピードでドリブルを仕掛けた。

 

それは今までのどのドリブルよりも格段に早いものだった。

 

田所(なんてスピード出してやがる!でも俺には眼がある!)

 

田所は瑠惟に追いつきその進路を阻んだ。

 

その瞬間、瑠惟はイタズラが成功した子供のように口角を上げた。

 

瑠惟(あぁ・・・分かってたさお前なら俺に追いつけるって。でも・・・)

 

 

 

 

瑠惟(追いつけるのが1人だけじゃダブルチームの意味はないんだよ!)

 

 

 

 

 

田所は何かに気がついたように一瞬横に視線を向けた。

 

田所(まさか!あいつの狙いはこれか!)

 

彼の目に映ったのは何が起こったのか分からずにその場で構える高木と二人の間を突破する瑠惟の姿だった。

 

瑠惟のドリブルのスピードは全国でも止められるのは片手で数えるほとしかいないくらい速く、たとえ田所がその眼を使って反応したとしても瑠惟のクロスオーバーを止めるには高木との協力が不可欠だ。

しかし高木はあまりにも速い攻撃に反応することができず、実質的に田所と瑠惟の1on1になってしまっていたのだ。

 

間を突破されてようやく何が起こったのか理解した高木を背に瑠惟はゴール下へとドリブルをしていく。

 

しかし立ちはだかるのは東京選抜の壁である鈴谷。

 

彼は高さで瑠惟をねじ伏せようと両手を上げブロックの姿勢に入る。

 

瑠惟(高さ勝負か!おもしれぇ!受けて立つぜ!)

 

鈴谷との真っ向勝負を望んだ瑠惟はボールを手に持ち跳躍する。

 

ダンクの姿勢に入った彼はとても170cm代の選手の高さとは思えないぐらい高く跳んでいた。

 

だが鈴谷も彼と同じくらい高く跳躍していた。

 

 

 

 

鈴谷(東京選抜を舐めるなぁ!!)

 

 

 

瑠惟(絶対に決めてやる!!)

 

 

 

 

千歌「いけぇー!!!瑠惟君!!」

 

 

 

鈴谷「うぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

瑠惟「うぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

 

 

意地と意地がぶつかる空中戦を制したのは・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バキィ!!!

 

 

 

 

 

 

 

瑠惟「いよっしゃぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

 

Aqoursのマネージャー、西王瑠惟であった。

 

 

ここで第2クォーター終了を告げるブザーが会場に響いた。

 

観客は先程の強烈なダンクに最高に盛り上がっていた。

 

「13番が6番をぶっ飛ばしてダンク決めちまった!!」

 

「あぁこれだよ!これ!俺達が見たかったのは!」

 

Aqoursも観客と同様に瑠惟のプレーに歓喜していた。

 

千歌「すごいよ瑠惟君!!」

 

瑠惟「ありがとう千歌。俺もまだ信じられねぇ。本当に決めたなんて。」

 

ダイヤ「残り時間をあなたに託して正解でしたわね。」

 

瑠惟「ダイヤさんに、他のみんなも俺を信じてくれてありがとう。」

 

途中まで東京選抜に流れが来ていたが彼の最後のプレーでその流れはAqoursに傾いた。

 

両チームベンチに戻り10分間のハーフタイムを挟んだ。

 

ハーフタイム中も会場はまるで試合中かのような熱狂に包まれていた。

 

前半戦も終わり残るは20分。ここからさらに白熱する後半戦が始まろうとしていた。

 




キャラ設定

・曜
異名・・・蒼鳥
得意プレー・・・ダンク

・ルビィ
異名・・・小悪魔
得意プレー・・・ファールをもらうこと

・善子
異名・・・宵闇
得意プレー・・・スティール

・ダイヤ
異名・・・紅き踊り子
得意プレー・・・フェイク、スリーポイントシュート


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