オリ主で振り返る平成仮面ライダー一期(統合版) (ぐにょり)
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序章

人は誰しも仮面を被りながら生きるもの。

使い古された言い回しではあるが、それだけに正鵠を射た言葉である。

 

人は仮面を被る。

それは自分を偽るため、転じて、本当の自分に出来ない事をする為に。

本心を隠し、周りに合わせる為。

本心を隠し、誰かの望む自分を演じる為。

本心を隠し、自分が願う理想の何かを真似る為。

 

仮面はその形を変えることはない。

仮面の下に何があろうとも、仮面は平等にそれを覆い隠し、望まれた形を見せ続ける。

仮面の下で涙を流そうとも。

仮面の下で恐怖に顔を歪めようとも。

 

誰しもがありのままに生きていける世界ではない。

理由はどうあれ、人は仮面を被り、時に仮面を付け替え、生きていくしか無い。

 

生きていたいと思うのであれば。

死にその身を委ねるのでなければ。

 

その素顔(本心)に仮面を被り。

偽りの自分を乗りこなし。

果て無き世界(儚き人生)踏破(全う)せよ。

 

―――――――――――――――――――

 

ざり、ざり、と、砂利と土、雑草の入り混じった獣道とも呼べない様な道を踏みしめる。

山や森の中というのは、季節にも寄るが大体の場合は人混みの喧騒とは異なる騒がしさがある。

獣の鳴き声や鳥の羽撃き、虫の声が、木々や山の起伏に反射して四方八方のどことも知れぬ方角から耳朶を打つ。

枝葉が風に揺られて擦れ合いざわめきとなり、木々によって遮られた薄暗さに不気味さを含ませる。

 

そして、その自然の作り出す音を押し退けて耳に居座る音が、自分自身の身体が出す音だ。

ヘッドホンやイヤホンなどで耳を塞いでいないのであれば、まず一番に聴覚を支配するのは自分の呼吸である。

或いは服の擦れる音か、背に負ったリュックサックの揺れる音か、地面を踏みしめる足音か。

立ち止まり、歩く度にチャプチャプと音を立てていたペットボトルをリュックのホルダーから引き抜き、蓋を空け、一口。

温まったスポーツドリンクが喉を潤し、普段なら甘過ぎるとも思う糖分が僅かに緊張を解す。

 

「はぁ」

 

一息。

緊張を解し、しかし、解しすぎてもいけないと気を引き締め直す。

当たりは付けてあるが、目的地は未だ遠く、この成熟していない身体で踏破するには難しい道のりだ。

やはり一人で行くには無理があるかもしれない。

だが、車で送ってもらえる様な道も無し。

それに、目的地で行う事を考えれば、誰かに付いてきて貰う、というのも問題がある。

無理がある、という程度であれば、無理をしてでも行かなければならないだろう。

幸いにして、無理を通せるだけのズルはできるのだから。

……本当に幸いかは知らないが。

 

「行こう」

 

どうしようもない自問自答で萎えそうになった心を奮い立たせる。

そも、こういう鬱蒼とした森の中に長居をしたいとは思わない。

森の中で警戒すべき対象が、熊などの野生動物だけではない事を知っているのだから。

可能な限り、いや、可能なのだから、急ごう。

心は重いが、足取りだけでも軽く。

先よりも僅かに小さくなった足音をBGMに、再び歩き出す。

 

―――――――――――――――――――

 

所謂、『二度目』というものなのだろう。

勿論、それが本当に二度目なのか、間に何回か覚えていない生を挟んでいるのかは知らないが。

少なくとも、俺の主観で言えば、それは二度目、二周目、と言っても過言ではない状況だった。

覚えがある社会で、似たような境遇の家庭に生まれ、まだしっかりと頭に収まっている知識を蓄え直している間に、それは確信に変わった。

 

物語の題材としては使い古されている。

いや、話として見れば、あまりにも平穏過ぎて、退屈ですらあるかもしれない。

それくらい、この人生での最初の数年はありふれたものだった。

誰しもが一度は妄想した事があるかもしれない、自己開発の真似事をした程度か。

獣とさして変わらぬ振る舞いしかできない時期を過ぎ、拙いながらも手足と指が人としての知恵ある振る舞いを許す様になった頃、幼児期特有の学習能力の高さを有効活用した程度か。

子供の振る舞いとして無理のない程度の行為だったが、今生の両親が酷く喜んでくれたのは印象に残っている。

 

家で世話をやかれながら本を読んだり、脳トレの真似事をしたり、幼稚園に通ったり。

幼児に混じっての生活は疲れる、などと言うつもりはない。

彼等の有様こそが本来あるべき姿であり、俺もまた年齢相応の振る舞いを学ぶ上では大きく参考にさせて貰えた。

年相応の振る舞い方もまた、両親の喜びに繋がるというのは理解出来る話だ。

育てて貰っている以上、彼等が安心して見ていられる子供であるべきだし、そうありたいと思う程度には子としての愛情というものがあるのだ。

 

焼き直しというには、順風満帆過ぎる滑り出し。

退屈ですらある学び直しを繰り返す中で、しかし、俺は一つの発見をした。

前回……前世? では、ついぞ見たことのない、体験した事のないもの。

 

『超能力』

 

テレビの心霊オカルト特集で面白おかしく取り沙汰され、規模の大きな書店の隅に並ぶ長寿オカルト雑誌の上では当たり前の様に登場し、その登場から現代に至るまで長く人々を魅了してきた力。

この世界ではありふれたものなのか、慎重を期して図書館などを駆使し(前回死亡時よりも前の時代である為にネットなどという便利なものはまだ普及していない。生まれ変わりとは時間に左右されないのかもしれない)調べた結果、その扱いが俺の知る社会でのそれとそう変わらないという事がわかった。

 

体験した、という言い方は持って回った言い方だったか。

ありていに言えば、俺は自分が超能力者であるという事実を理解してしまったのだ。

それが、曖昧な一回目の知識を元に行った幼児に対する脳力開発(定期的に流行る『脳を目覚めさせる』とかいうヤツだ)が原因なのか、持ち越された多くの知識が幼児の脳に何らかの影響を与えたのか、単純に遺伝なのか、全く関係のないスピリチュアルな理由なのか。

 

原因や理由はさておき、少なからず心が踊ったのは間違いない。

この力が成長過程で消えていくものなのかどうなのか(現状では『使えなくなる』予感は無いが、あてにはならないだろう)はさておき、自分に『まるで漫画!』とでも言いたくなるような力があるとわかったのだ。

それまで使いもせずに溜め込んでいたお小遣いの一部を握りしめ、近所のゲームセンターに遊びに行き、明らかに取らせる気のないクレーンゲームなどの景品を片端からゲットしていったのは言うまでもないだろう。

小市民的、と侮るなかれ、リスクの少ない超能力の活用法としてはそう悪くない選択肢だったと今でも思う。

これで馬券なり宝くじなどが買える年頃であれば、もう少し調子に乗っていたかもしれないが、当時の年齢を考えればこれでも冒険した方ではないか。

 

手を使わずに物を動かす念動力。

まるで予知でもしているかの様な超直感。

使い所の思いつかない小規模な発火能力。

 

昔に読んだ超能力バトル漫画の登場人物が調子に乗っていたのも解る。

実際、やろうと思えばそういった作品の真似事くらいは出来てしまう。

俺も、もしも調べ方を間違っていれば、そういう連中と同じ道を辿っていたかもしれない。

 

図書館で雑誌や新聞、古い文献まで漁ってこの世界と俺の知る世界との差異を調べている時、幾つかの名前や事件を見つける事さえ無かったのなら。

この世界の住人が、超能力の素養を持って生まれてくる可能性を秘めている理由に、辿り着かなければ……。

 

―――――――――――――――――――

 

「ここ、か」

 

立ち止まり、見上げた先には、やはりこれまでの道程と何一つ変わらない、草木の生い茂る山の斜面。

一見して何の変哲もない斜面。

だが、間違いない。

 

「むっ……」

 

周囲に人が居ないのを確認し、精神を集中。

僅かに体重の半分程を軽減していた念動力を強くし、緩やかに宙に浮かぶ。

高さ一メートル程、あくまでも念の為に。

次いで、斜面に植えられていた木々をゆっくりと土ごと引き抜き、左右に退けていく。

人が立ち寄る様な場所でもないが、木と土が大きく動く音は予想よりも遥かに大きく響く。

地鳴り様な音を立て、斜面の土と草木が履けていく。

 

「ああ」

 

あった。

見つけてしまった。

 

感動と言って良いのか。

引き継いだ知識と予想……予知、超直感を合わせて、半ば確信はあった。

言ってしまえば確認作業に過ぎない。

だというのに。

 

重厚な岩戸。

何かを祀っている訳ではないと一目で解る。

これは、封印だ。

忌まわしきものを、破壊する事すら躊躇われる異物を、ただ静かに眠らせる為だけの墓標なのだ。

 

手を触れる。

開ける事など一切想定していない、頑丈な蓋でしかない岩戸。

端に指を掛け、ゆっくりと、引き開ける。

岩が土を削ること暫し、その中身が晒された。

 

「墓標……ですら、ないな」

 

狭い空間には、どう折り畳んでも人の死体など入りそうにもない小さな石棺が一つ。

石棺にも、狭い石室の内側にも、びっしりと見覚えのある文字が刻まれている。

覚えがあるだけで、読める訳ではない。

だが、何を書いてあるかは知っている。

知った上で、俺はこれからその『警告』を無視しなければならない。

 

「なまんだぶ」

 

意味があるかは知らないが、一つ冥福を祈り、石棺の蓋に手を掛ける。

途端、脳裏に浮かぶ俺のものではないイメージ。

超能力によるものか、この石室に施されたものか、この石棺の中身が見せたものか。

それは戦士のイメージ。

鎧を纏った仮面の戦士。

その身体を甲殻に包んだ異形。

ほんの僅かな、数少ない戦いの記憶。

 

「申し訳ない」

 

これが、本来なら取り出されるべきでない事は、使われるべきでない事は、重々承知している。

使われるとしても、もっと志の高い、戦うに相応しい戦士が持つべきものであると知っている。

だが、本当に申し訳ない話ではあるのだが。

 

「俺も、もう一度死にたいとは思えないので」

 

石棺の中に収められていた、宝玉の嵌め込まれたベルト状の装飾品。

それを躊躇いなく取り出し、腰に巻き付ける。

反応しないのでは、という想像を否定する様に、くすんだ色のそれは一瞬にしてその姿を変えた。

幾何学模様と古代文字の記された銀のバックル、赤い宝玉、否、霊石『天飛(アマダム)』が石室の中を眩く照らし、酷い異物感と熱、痛み。

 

「あ、あああ、ひ、ひぃ」

 

痛い。

痛くて痛くて痛くて痛くて。

でも、ああ、でも、それでも。

これは、死ぬ類の痛みではないと解るから。

 

情けない声が出ても、涙と鼻水が溢れても、まるで気にならない。

解る、森のざわめきの中で自分の呼気と足音がまず耳を打つように。

肉と神経に食い込む何かが、腹の中を這いずり回っているのか解る。

このベルトは、この霊石は、俺を戦わせようとしている。

戦うための身体にしようとしている。

死ぬような戦いを、戦わずして死ぬかもしれない様な力を持たせて。

 

「ああ、ああ、あああああ、これで、これでようやく」

 

ようやく、最初の一歩だ。

涙に滲む視界が、持ち上げた手を映し出す。

金縁のある白い装甲に包まれた、黒い手。

金属鎧のようで、明らかに生物のそれだと解る異形の身体。

 

戦える(抗える)

 

曰く、容易く死ねない身体になるらしい。

曰く、末は戦うためだけの生物兵器かもしれぬ。

丁度いい。

それくらいで、ようやく、丁度いいのだ。

戦っても生き残れないかもしれない。

だが、無為に殺されるよりは、抗えるだけ余程いい。

人のままで死ぬ事が美しいのかもしれない。

だが、醜くとも生きていたいのだ。

殺されたくなんてないのだ。

今年に死にたくない。

来年に死にたくない。

その次の年も、その次の年も、その次の年も。

理不尽に、ヒーローが倒すべき脅威の恐ろしさを伝える為になんて、絶対に御免被る。

 

「……だから」

 

肉体の変異と共に強化された超感覚が、三つの微弱なエネルギー反応を捉える。

何らかの力により生きたまま封印された、恐るべき力を秘めた怪人達。

封印が解除されたが最後、今の俺ではまともに太刀打ちなどできよう筈もない恐ろしい存在だ。

リュックサックの中から、伸縮式の警棒を取り出す。

一振りし、短い警棒はイメージの通りに……いや、若干イメージとは異なる形で変形を果たした。

金と紫でなく、赤と金で彩られた片刃の剣。

遠からず『成る』のか。

でも、まだ考える必要はない。

 

「まずは、死ね」

 

僅かに動き出していた力の源。

腹の中から感じるそれと似た反応目掛けて、力を込めて、刃を三度突き刺した。

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

昔々、混沌から世界を作った神様が、自分の姿に似せて人間を作り出しました。

神様は次に、人と共にある仲間として自らの分身である天使達を元に獣を作り出しました。

けれど、人は自らを神の最も愛した子であると驕り、自分達よりも下等であるからと天使の子である獣を狩り、貪り始めてしまったのです。

天使達は自らの似姿である獣達を守り人を裁く為に戦争を始め、瞬く間に人はその数を減らしていきました。

それを哀れに思った火から生まれた天使は、人々との間に子供を作り、その子を人の力としました。

しかし、人との交わりという禁忌を犯してしまった火の天使は神の手により砕かれ、消えてしまったのです。

多くの天使達はそれを当然の事としましたが、ある天使は神の振る舞いに恐れを懐き、姿を変えて人々の中に隠れ潜み、その血と力を人の中に宿し、また、自らの力で神に立ち向かう為の戦士達を作り上げました。

結局、人と天使の戦いは、神の起こした嵐と洪水に流され、この時代の事は後の世から忘れられ、数ある神話の一つとされてしまいました。

 

時は流れ、地球という星には人間が溢れかえっていました。

けれど、その安寧は完全なものではありません。

火の天使と交わり生まれた力ある人々『ネフィリム』は力に呑まれ見境なく暴れ、罪あるもの『ギルス』と呼ばれるに至り──

火の天使は死に際に未来の人類に自らの力を分け与え、『アギト』という進化人類が生まれ──

神の振る舞いを恐れた天使の力を宿した人間は、やがて『グロンギ』と呼ばれる凶暴な種族へと進化し──

人類、ネフィリムと天使達の激しい戦いは世界を歪ませ『ミラーワールド』を作り出し──

人々の中に薄れながらも残り続けた天使の力はギルスとは異なる『オルフェノク』という異なる可能性を生み出し──

天使達の似姿である獣達の中から、天使に並ぶ領域まで進化した『アンデッド』が現れ、幾度となく地球の覇権を掛けて争い──

天使の力に目覚めながら、ただ野を行く獣の様に生きる事を続けた『魔化魍』は、自らを鍛え上げ人を守るために『鬼』へと至った戦士達と生きるために戦い続け──

神の目を盗み異なる星で生み落とされたとある天使の落とし子である『ワーム』は、しかし星の滅亡と共にその種子を宇宙へと解き放ち──

神や天使の力を自覚し、文明へと組み込む事で平行世界すら観測できるようになった未来人は、世界を自分達の居る可能性世界へ接続するため、過去改変能力者である『イマジン』を送り出し──

神に立ち向かう為に作られた戦士達はその目的を忘れ、自分達を『魔族』であると定義し──

 

時は西暦二千年一月。

人類は、終わりなき戦いへと脚を踏み出そうとしていた。

 

 

 




テオスさん渾身の玉突き事故
人類滅亡式ピタゴラスイッチは完遂されてしまうのか

☆オリ主
現代社会に生まれ変わって自己開発してたら超能力生えた
超能力の実在を調べ回ってたらスマートブレインやら何やら見覚えのある企業が実在してた
仮面ライダーという番組は存在しない
都市伝説的に『仮面の戦士』の噂とかは存在するらしい
城南大学も城南高校もある
森の中で巨大な化け物に襲われたけど変な人型のバケモンに助けられた的な都市伝説がちらほらある
紅音也とかいう天才ヴァイオリニストのイケメンクソ男が居たという特集本も見つけた
鑑の中に人が飲み込まれる系の都市伝説も多いなぁ

所で君、超能力が使えるんだってねえ
念動力に予知能力、発火能力? 凄いねぇ
まるで人間じゃないみたいだ! だって人間は超能力とか使えないものね!
まるで人間じゃないみたいだ!
だって!
人間は!
超能力なんて使えないものなんだもの!
そんなのは人間じゃないよね!

みたいな意志が存在しているのを確信してしまう
外伝登場のベルトの実在を確認して更に確信
ベルトは付けたが絶対東京なんて行かないマン
なお運命

生えてしまった超能力は引っ込められない
安全装置のないベルトを命綱に頑張る
原作が全て実写なので恐らくヒロインは居ない
でもヒロイン居たら殺されそうだから丁度いいのかもしれない


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1 隠棲、しかし

安全とはなんだろうか。

それは夢幻というには身近にあるようで、その実、今日から見た明日の様なものなのだと思う。

寝て起きて朝が来れば明日が来るだろう。

しかし、目覚めてしまえば、そこにあるのは明日ではなく新しい今日だ。

待っている時間が一番楽しいとは良く言ったもので、実際時が来て自らの手に収まってみれば、どうしても期待通りとは行かない。

隣の芝は青い、だが、その隣に住んでみればそのまた隣が青く見えるし、元いた場所すら青く見えるものだ。

 

安全とはなんだろうか。

……漠然とし過ぎているな。

もっと範囲を絞ろう。

この世界で安全な場所とは何処だろうか。

 

例えば人類の文明圏から離れた場所はどうだろう。

他人から被る害は、人の群れから離れる事で比較的簡単に避けることが出来る。

しかし、文明から離れたが故の一定以上の不便さはそのまま危険に繋がると考えていい。

密林地帯であれば虫を媒介にした未知の感染症。

寒冷地であれば、寒さはそのまま生命安全の危機に直結する。

砂漠地帯、問題外だ。乾燥、熱、夜には寒さも訪れる。

 

そして、自然が溢れているのなら、そこには魔化魍が居るかもしれない。

例えば、人類以外の未知の知的生命体、魔族が密かに根城にしているかもしれない。

或いは世界を作り出した神に類する存在は、秘境に逃れたとしても刺客を放ってくるかもしれない。

 

では、人類の文明圏に限るとしたら何処だろうか。

意外と、海外なんかは安全である可能性がある。

何しろ、情報を集めれば集めるほど、世界中で『仮面を付けた正義の味方』の噂話が実しやかに囁かれている。

……そう考えるのは素人だけだろう。

正義の味方が居るから安全、というのは論法としてありえない。

何しろ、世界中で正義の味方が目撃されているという事は、彼等が世を忍ぶ仮の姿で居られない時間が多く存在する、すなわち、倒すべき巨悪が世界中に存在しているという事になる。

しかもその組織に関して、俺は一切の知識を持たない。

知識がなく、対処のしようがないというのは一番厄介だ。

 

では、もっと身近に、今住んでいる国、すなわち日本の中で安全な場所というのは何処だろうか。

 

日本の、この世界の日本の中で、何処が安全地帯であるか。

…………。

ああ、何を馬鹿な。

スマートブレイン、鴻上ファウンデーション、ユグドラシルコーポレーションという、日本三大なにやってるかわかんない企業が存在している日本で。

恐らく魔化魍発生率ナンバーワンな日本で。

ファンガイアの王族が蔓延る日本で。

宇宙から人間を殺して立ち位置を乗っ取る異星起源種が落ちてくるかもしれない世界で。

 

「なんだぁ、お前」

 

こうして、道すがら、ちょっと人通りの少ないトンネルで、いきなり色素の無い人類の進化し損ないに、通りすがりに殺されそうになる世界で。

安全などと、誰が保証できるというのか。

 

―――――――――――――――――――

 

白い触手を心臓の前で握りしめた少年が目を細める。

まばらに電灯の灯ったトンネルの中、目に見える範囲には、白い、或いは白に近い灰色の怪物を除けば少年しか居ない。

監視カメラの類も無い事を確認し、手にした触手を乱暴に払いのける。

油断なく手を前に、手首を合わせ掌を相手に向けたまま、呟く。

 

「変身」

 

少年の腹部に、宝玉を嵌め込まれたベルトのバックルが浮かび上がり、唸るような異音と共にその姿が変貌する。

短い金の角、黒く固く靭やかな黒い肌、キチン質にも似た白い装甲。

見るものが見れば、その体躯すら大きく変化している事に気がついただろう。

肉体を変異させる神秘の霊石、アマダムの力が、その肉体を一時的に拡張しているのだ。

常人に異形の姿と怪物じみた筋力を与える超常の力、モーフィングパワーがあればこその変異。

 

「なんだ、お前もなのか?」

 

「はい。俺以外では初めて見ましたが」

 

戦意を解いた白い異形に、少年が変じた異形がゆっくりと歩み寄る。

なるほど、白い異形と、少年が変じた姿は確かに似ていなくもない。

黒い肌、金の飾りなど、細かな違いはあれど、彼が知る異形は自分達以外に存在しない。

元々一人として同じ形が居ないのだから、多少色が違う程度は誤差と考えたのだろう。

 

「ふうん、じゃあ、何で殺されそうになったかはわかんねえのか」

 

「はい、何か事情があるのであれば、お聞かせ頂ければ幸いです」

 

歩み寄る。

無手で、手を下ろして何気なく歩いてくる少年の姿に戦意を感じる事はできない。

いや、そもそも白い異形に、他人の戦意を感じ取る程の機微はない。

白い異形、オルフェノクにとって、力を振るう、人を殺すというのは戦いではなく、狩り、いや、作業でしかない。

 

「いいぜ、お仲間を増やせって話だからな。ちょっと時間がかかるけど、いいか?」

 

「はい、俺も、同じ様な体質の方とは、一度話をしてみたかったので」

 

相手が殺すべき相手、人間でない事を確認したからこそだろうか。

白い異形がその輪郭を崩し、人の姿へと変じる。

何処にでも居そうな、少しだけガラの悪い青年。

 

「ちょっと待ってな……、今、会社の方に」

 

懐から携帯電話を取り出し操作を始め、視線を少年から外す。

瞬間。

その首が跳ね飛ばされた(・・・・・・・・・・・)

宙を舞う青年の生首が最後に目にしたのは、装甲を赤く染めた異形が、片刃の剣を振り抜いた姿だった。

 

―――――――――――――――――――

 

ぼう、と、蒼白い炎を上げながら灰になる死体を見つめ、もう一度神経を研ぎ澄ませる。

超越感覚に、不自然な電波や音波などは引っかからないのを再度確認。

焼け焦げた遺留品を一纏めにし、手に触れる。

モーフィングパワーを流し込み、これを箒の様な形に変える。

遺留品から作り出した箒で灰を側溝に流し込み、箒も粉々に変化させ同じく流し込み、変身を解く。

完全犯罪成立だ。

一度死に、人で無くなったオルフェノクに殺人罪が適用されるかは知らないが。

 

「この手に限る」

 

オルフェノクに関してそれほど深い知識を持たない末端の兵隊からすれば、人間から変身する白っぽい異形は大体の場合彼等の同類、オルフェノクだ。

この様に、グローイングフォームに変身して、可能な限り困惑した様な演技で近寄れば、油断を誘う程度は訳のない話になる。

……という、仮説の通りに事を運べたのは運がいい。

こんな片田舎で人間狩りをさせられている様な下っ端だから通用した様なもので、一定以上の立場のオルフェノクには通用しないだろう。

 

が、オルフェノク自体はそれほど問題ではない。

遭遇率自体がそれほど高くない以上、危険性は魔化魍やそのブリーダーである童子と姫よりやや劣る。

危険性、被害の大きさ、避けられ無さ、という意味で言えば、やはり、今年から来年に掛けて開催される、古代種族によるゲームが最悪と言える。

……地球外生命体や不死身の起源種達もまた厄介ではあるのだが、そこは今気にしても仕方がない。

 

安全面で言えば、日本の片田舎というのはそう悪く無い。

下手にキャンプや登山や釣りに行かなければ自然の中のスローライフほど魔化魍に遭遇せず、都市部よりも人間の中に潜んで人間を襲う怪物と遭遇し難い。

都市部よりも人間同士の繋がりが強い田舎ならば、人が一人消えるというのは大事件になる。

人間を捕食するタイプや、人間になり変わるタイプ、人間を殺して同種を増やすタイプには住み難い。

 

住み難い筈、なのだが、今年ばかりは安全であるとは言い難い。

今最も危険な、ホットな人類の危機。

グロンギによるゲゲル。

それ自体は都心をメインに行われる筈なのだが。

一番、それこそ、その他一般グロンギを一纏めにしたよりも危険な存在が、その間に何処で何をしていたか、誰にも分からないのだ。

特に殺す必要がないであろうタイミングで、戯れに三万人を一夜に、いや、数時間の内に、或いは数十、十数、数分の内にも殺してみせた最悪の生物。

ン・ダグバ・ゼバ。

その動向が掴めない以上、この日本は須らく平等に、一瞬で地獄絵図へと変わりかねない危険地帯でしかない。

 

―――――――――――――――――――

 

現状維持がベターな選択だ。

何しろベストな場所なんて現時点では何処にも存在しない。

二千の技を持つ旅人さんに心をすり減らしながら頑張ってもらい、その果てにダグバを殺して貰う。

それを待つのがベスト。

引っ越しはせず、可能な限り神経を尖らせて危険な、具体的には魔石の気配を探りながら生活し、ダグバが気まぐれに田舎町を蹂躙しないように祈り、万が一近づいてきたら全力で逃げる。

 

可能であれば家族もどうにか連れて逃げたいけれど、説得して、というのは難しい。

いざとなれば変身して当身して無理矢理抱えて全力で逃げる程度か。

……現実的に考えれば、魔石ゲブロンが近づいてきているかを正確に把握出来るかはわからないし、逃げに徹した相手にダグバが何をするかもわからない。

更に言えば、追われれば逃げ切れない可能性だってある。

古代においてゴウラムに乗ったタイタンフォームに全員封印されたという経緯があるらしいが、現代においてはグロンギ側にも鉄の馬、バイクがあるし、何より極まったモーフィングパワーを持ったダグバに高速移動手段が無いなど考えられない。

 

などと、格好つけて色々と考えてはみたけれど。

 

「ごはんよー」

 

「はーい」

 

考え事のせいで途中で止まっていた宿題をそのままに、椅子から立ち上がる。

未だ未成年どころか義務教育すら終えていない俺にとって、引っ越す自由も何もなく、仮に安全と言いきれる場所があったとしてもどうにもならない。

できる事と言えば、時たま気配を感じる魔化魍や童子や姫が人里にむかったりしないように注意を引き、猛士の皆様に匿名で連絡を入れて現場に急行して貰うか、先日の様に人類に敵対的なオルフェノクを出会い次第不意打ちで始末する程度。

生まれ育ったこの地が東京でも長野でも無かった事だけは、宇宙創生神以外の何かしらの神に感謝してもいいかもしれない。

 

―――――――――――――――――――

 

「最近学校はどう?」

 

「んー、ふつう」

 

「彼女の一人くらい紹介してくれてもいいのよ?」

 

「紹介できるものなら俺もしたいなぁって思うよ」

 

母さんと二人での食卓は、それほど会話が盛り上がるという訳でもないが、気まずくなるほど静かという訳でもない。

一般的な同年代の男子と較べても反抗的ではないし、逆にマザコンと言われるほどべったりでもない。

意外かもしれないが、人間、ちょっと小さい頃から神童のような振る舞いをしても、親がある程度落ち着きのあるタイプであれば、ちゃんと子供として見て貰えるらしい。

成績に関しては問題なく適度な位置をキープできているので、護身の為に空手や剣道などを習いたいという希望もすんなりと通った。

……こうして、再び誰かの子供として庇護下に置かれて生活して思うのは、親の性格というのは生活環境に密接に関わってくるし、子供ではどうしようもない部分があるという事だ。

真っ当に自分を育てる事ができる環境に生まれ落ちたのは間違いなく幸運だろう。

 

「そういえば、父さんはまた遅くなるって?」

 

テーブルの空席に置かれた夕ご飯を見ながら聞いてみる。

飲み会か、それとも単純に仕事が長引いているのか、

今日は父さんが夕飯に居ない。

忙しく、時間が来たからそこで仕事を中断して直ぐ帰る、という真似ができないのは、それだけ父さんの仕事が世間にとって重要だ、という事だろう。

……いや、重要だろうがそうでなかろうが、この時代の仕事というのは定時ぴったりに帰れる事がそうないというのは、前の一生で身に沁みて理解しているつもりなのだが。

ようはあれだ、子の欲目、というやつだろう。

自慢の親だ。

危険はあるが安定しているという以上に、立派な仕事に就いているのだ、と、そう思いたい。

 

「あぁ……そうねぇ、何で遅くなるかは聞いてないけど……」

 

ご飯を食べる手を止めずに、でも、少しだけ心配そうにしている。

場合によっては荒事にもなる仕事だ。

しかもこの田舎町の土地柄を考えれば、野獣(先輩ではない)……熊などが現れたなら、その相手をしなければならない場合もあるらしい。

万が一の事を考えて、熊対策用のスプレーなどを実費で用意しているというけれど、危険である事は間違いないだろう。

 

「なんでも、東京の方に暫く出張に行く事になるかもとか、そんな話をしていたわねぇ」

 

仕事の引き継ぎでもしてるのかしらねぇ、と。

呑気な事を言う母さんの声が、耳から耳へ抜けていく。

 

「それ、何時の話? どういう仕事で行くみたいな話はしてた?」

 

「そこまでは聞いてないわよぉ。守秘義務があるもの」

 

「だよ、ね」

 

かろうじて、見た目に何の変化も出さずに済んだ、と、思う。

平静を装い、おかずを摘んで口の中に運ぶ。

美味しかった筈の夕ご飯は、粘土でも食べているかの様に、味を感じなくなっていた。

 

―――――――――――――――――――

 

大丈夫、といえば、まだ、大丈夫な筈だ。

恐らくだが、父さんの出張に合わせて家族全員で引っ越すという事はない。

どれだけの期間の出張になるかわからないし、家は新築一戸建ての夢のマイホーム。

父さんの性格からして、家を空けるのを勿体なく思うだろうし、俺の受験やら地元での交友関係も尊重してくれる、筈だ。

東京に行くのは父さんだけ。

 

……タイミングを考えれば間違いない。

基本的に他県への異動などが無い警察官である父さんが、よりにもよってこのタイミングで東京に出張となれば。

未確認生物対策班。

そこが父さんの暫くの職場になる。

そして、俺の記憶が確かならば、警察が標的にされる事はあっても、その身内がピンポイントで狙われる、という事態は無かった。

だから、俺と母さんは、俺は、まだ、安全。

 

「安全、そう、安全、な、筈」

 

代わりに。

間違いなく、父さんは安全ではない。

いや、これから暫くの間、父さんの職場の中……警察の中では、一等危険な仕事に着任することになる。

怪我くらいは覚悟するべきだろう。

最悪は死ぬことだって十分にありえる。

勿論、職務内容を考えれば、普段から怪我を覚悟しなければならない仕事ではあるのだけれど。

でも……でも、あんまりじゃあないだろうか。

 

あんまり、そう、あんまりだ。

父さんが、ではない。

父さんは警察という仕事に誇りを持っている。

市民の安全を守るという、極めて真っ当な意義を持つこの仕事は父さんにとって天職と言っていいかもしれない。

そこで齎される危険をもって父さんの運命を嘆くのは筋違いだろう。

 

勿論、母さんでもない。

母さんは父さんが警察である事を理解した上で結婚している。

勿論、殉職なんていう可能性はかなり低く見積もった上での婚姻だったのだろうけど、それなりに覚悟は出来ている筈だ。

 

あんまりだ、と、思うのは。

何故、そんな自己犠牲を省み無さそうな人が俺の親なのか、という事だ。

何故、そんな死にやすそうな人が俺の親なのか、という事だ。

何故、何故、何故!

何故!

俺は、彼等に可能な限り死んで欲しくないと思える程の情を持って育ってしまったのか!

俺が! 俺が何か悪いことをしたとでも言うのか?!

 

「落ち着け、落ち着け……」

 

激しても現状が変わる訳ではない。

理由も説明せずに、父さんに出張を断ってくれ、などとは言えない。

引き継ぎをしていると仮定して、既に出向は決定していると見ていい。

俺の身体を、変身能力を見せて説明するにしても限度がある。

異形の存在を示せたとして、ゲゲルの内容云々はソースを示す事ができない。

それにこの世界は自分が異形の肉体に変わったことを説明して受け入れてくれる人間ばかりという訳ではないし、仮に受け入れてくれたとして、それでも父さんが警官としての使命を果たすために東京に向かう可能性は十分ある。

 

順に、考えよう。

まず、間違いなくゲゲルは始まっている。

未確認出現のニュースは流れていた。

母さんは呑気だから気にしていなかったが……というか、現時点で謎の怪物が一年間に渡って人殺しのゲームを続けるなんて誰も考えようがないから仕方がないか。

ゲゲルは始まっている。

止めようもない。少なくとも、今の俺では。

 

……が、ゲゲルの被害を抑えるとか、妨害するとか、そういう全体の流れは無視していい。

俺の知らない人が何人死のうが知ったことではないし、そも気にしている余裕はない。

気にしてしまうとすれば、父さんと母さんくらいか。

友達は……、仮に、この1年の間にうっかり東京観光に行って死んでしまうのであれば、諦めるしか無い。

 

なら、やりようはある。

この1年に渡るゲゲルの中で。

警察が露骨に被害を受ける特定のゲゲルにのみ、どうにかして介入する。

危険は最小限に、死にそうになったなら、逃げる。

その上で、出来る限り、父さんが死ぬような事態は避ける。

知識にある分しか、手伝う事はできないだろうけれど。

 

「それも、できれば、の、話か」

 

やらねばならない、訳ではない。

できればやりたくない。

この田舎町に引き篭もっていたい。

同時に、できれば、父さんにも母さんにも死んで欲しくない。

そして、たぶん。

俺には、それができる。

それで、絶対にどうにかなる訳ではないけれど。

 

「やろう」

 

どうせ、最初から命懸けだ。

少しだけ、欲をかいてもいいだろう。

 

 

 

 

 





☆オルフェノク詐称騙し討マン
とある地方に出没するんだって、怖いね
メイン戦術は仲間のフリからの居合斬首
めっちゃ感覚研ぎ澄ましてちゃんと意識が自分から逸れてるか観察した上で斬るのに便利な超越感覚の赤(直前まで白)は正面戦闘なんて大嫌いマンにも好評
クウガ側としては変身ポーズとんないのでフルオートでグローイング
ただし性能はだいぶアギト
変身先の混ざり具合は展開によって調整入るかもしれない
アギト化が進むとポーズ無し変身でグローイングでなくグランドフォームになる可能性もあるので不意打ちは何時まで続けられるか
父親は警察
対策班って実際どんな範囲で人員集めてるんだったかはあやふやな記憶だより
でも今ヒーローズでやってる漫画で明らかに警察向きでない危険人物を招いてるから優秀で名前が売れてる人はとりあえず呼んでそうって事に
父親が警官で武道やってるから主人公に戦う才能とか学ぶ環境があるとか言い訳すれば直接戦闘力が多少あっても許されるかもしれないと思った。主人公を現場に引きずり出せる動機にもなるし
両親大事マンにしておけば殺した時に何らかの転換期にしやすいなーってワイトも思います

時系列あやふやなので指摘とかあると嬉しいです
度々作中時系列とか、特に序章のベルト取った時期とか修正入るかも
次はたぶん戦闘とか主人公以外の視点とか入れる事になるのでだいぶ先になるかも

次回、マッハ全開借りパクバイクトルネイダーで東京乗り入れマン。殺グロンギまたは殺グロンギ未遂事件をお楽しみに


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2 蒼嵐、振り下ろすは

時計を確認する。

時刻は昼の十二時二十五分。

日付はといえば二月五日。

日頃の生活態度と成績のお陰で、推薦を貰えたのは本当に幸運だったと思う。

体調不良で休むと言えば先生からは『しっかり休んでね』と本当に心配した風な声で労って貰えるし、母さんもずっと学業やら武道やらに勤しんでさほど子供らしく遊ぶ様を見ていなかったからか、ズル休みを見逃してくれた。

これで、本当に遊ぶために休んでいられたらな、と、少しだけ悲しくなる。

 

だが悲しいかな。

今の俺はとてもこの大都市東京で遊ぼうなんて気にはなれない。

 

あの墓所で感じた封印状態のそれとは比べ物にならないはっきりとした気配。

人の群れの中に武装状態のプレデターがのうのうと紛れているのがわかって、呑気に遊ぶ気分になれるだろうか。

俺はなれない。

首元に刃物を突きつけられているような、とまではいかないが、遠目に剥き身の刀を手に下げた目つきの危険な不審人物が居る程度には心が安らがない。

よくも、まぁ、東京の人達はこんなに平気そうな顔で生活していられるものだ。

 

……いや、俺が『こう』なのだから、未確認のニュースとは無関係にピリピリとした空気を感じている人も居るのかもしれない。

知る限りでも二人、恐らく天然で目覚めた人が居るはずなのだ。

それ以外に複数居たとしてもおかしくはないだろう。

既にオルフェノクは相当数居る。

世界が地続きであるなら、オルフェノクでなくアギトに目覚める人間が増えている可能性は高い。

そんな彼等が、謎の存在に殺害される前に、力に目覚めて絶望する事なく適応してくれる事を切に願う。

標的が多いほど、俺の危険度だって下がるのだから。

 

片耳にイヤホンを挿し、ラジオのニュースを確認しながら当て所なく歩く。

東京に来るまでに使ったバイク(ジャンクを集めてモーフィングパワーで無理やり形になるように組み直し、アギトの力でトルネイダーにした。ナンバープレートは偽物だ)は郊外の、監視カメラが殆ど無い場所を確認して停めてきた。

少し前に比べ、スタミナや筋力は驚くほどに強化されているので不便は無い。

伊達や酔狂で内蔵式のベルトを二本差ししていない。

増やせば増やすほど潜在的危険度が高くなるが、どうせ一本はそうそう外せないし、外したからといってこの世界のその他脅威が目こぼししてくれる訳ではない。

それはともかくとして。

 

「お腹すいた」

 

ぽぽぽぽぽぽ、ぽん、ぽん↑、ぽん↑↑。

そんな効果音が聞こえてきそうなくらい、自然に口から言葉が溢れた。

三段階で遠写になる程だ。

思えば、この時代での俺は前の人生での俺よりも数年だが年上だ。

このドラマが放送される頃は……いや、それを考えるのは、その時代まで生き延びれた時に改めて考えよう。

 

とても穏やかに食事ができるような都市ではないけれど、あれらの気配が、それ程無秩序に暴れだす訳ではない事も知っている。

気配が可能な限り遠くなるような場所まで移動して、適当な店に入ってご飯を食べてしまおう。

……現状、穏やかに食事ができる都市ではないとはいえ、東京、都会も都会、大都会だ。

できればオシャレかつ美味しくて値段も変に高くない、そんな都合の良い店に入れたらいいな。

 

―――――――――――――――――――

 

一つ、言い訳をするならば。

俺ははっきり言って東京の地理には詳しくない。

今の俺は生まれも育ちも地方都市でほぼ東京に足を踏み入れた事はないし、それは前の俺も似たようなものだ。

地方都市だってオシャレな店も美味しいお店も探せばあるし、欲しいものは大体通販の方が安い。

意図して東京に来る理由は無かった。

 

地下鉄は常時すごい混んでるという偏見(実際どうかは知らない)があるので、移動は完全に徒歩及びダッシュだ。

地図すら見ていない。

移動の指針はただ一つ、危険な不審者の気配……有り体に言って、人間体で待機している未確認生命体、グロンギの気配から遠ざかるように遠ざかるように。

本当にそれだけなのだ。

それだけなのに、こんなオシャレな佇まいの、美味しそうな香りを放つ洋食屋兼喫茶店に辿り着くなんて、凄く食運に恵まれているんじゃないかと思う。

……わざとじゃない。

というか、この店がこの辺、文京区にある事すら知らなかったのだ。

 

喫茶店ポレポレ。

店の前には……外国製かな? 見たことのない格好いいデザインのバイクがある。

何故か名前は知っている。トライチェイサー2000って言うんだって。

日本の警察で採用される予定らしい。

 

周囲を見回す。

監視カメラ、無し。

通行人の視線、無し。

店の窓からは見えない位置にあるらしい。

 

ちょっとしゃがんで。

靴紐を結び直すふりをして。

手袋つけて、エアバルブ外して。

懐から取り出したるちょっとした小道具で……。

 

立ち上がるとあら不思議。

かっこいいバイクのタイヤから不自然に空気が抜けている。

不思議な事もあるものだ。

もしもの事を考えて事前に練習しただけはある。

手袋と小道具は後で塵にしておこう。

 

いや、運がいい。

気分良くご飯が食べられそうだ。

 

―――――――――――――――――――

 

何事もなく、平和に昼食を終える事ができた。

店内で俳優のきたろうさん似のおじさんやオダギリ某似の青年を見かけた。

流石東京、有名人のそっくりさんも多い。

美味しいカレー定食を食した後、コーヒーにたっぷりのミルクと砂糖を入れて冷めるまでかき混ぜていると、外に掃除に出たオダギリ某似の店員さんが何やら叫んでいるのを耳にした。

どうやら店の前に停めていたバイクの空気が抜けているらしい。

パンクかどうかを確認するのにしばらく掛かるだろう。

災難な話だと思う。

ただ、空気を入れるだけで済むだろうと思うので安心してほしい。

 

と、こうしてオダギリ某似の店員改め五代雄介、この時代の正式なクウガの足止めが運良く完了したところで、今回の東京入りの目的を再確認しよう。

覚えている限りの情報が、この世界でも変わらないのであれば。

今日はとあるグロンギが活動を始める日付の筈だ。

それを狙う。

 

グロンギの名はズ・グジル・ギ。

ズ階級の水生生物系の戦士である。

 

彼、或いは彼女を狙う理由は幾つかある。

ズ階級であるという手頃さ。

水生生物系である以上、恐らくは地上で完全な力を発揮できる訳ではないだろうという推測。

ゲゲル開始が二月五日、クウガに仕留められるのが二月六日というスピード解決から、恐らくそれほど突出した能力を持っていないだろうという希望的観測。

開始日と終了日が土日という日程の良さ。

テレビ未放映、設定資料集で二行で倒されているというのは、逆にその時点のクウガで倒せた、新たなフォームチェンジが必要ないという事でもある。

 

勿論、今の俺が本来のクウガと同等の戦闘能力を持ってる訳ではない。

鍛えているが、それでも五代雄介のそれと比較して技術やメンタルに勝るという訳でもない。

だからこそ手頃な、現時点でどうにかできそうな相手を選んだ訳だ。

それに、少し鍛えた一般超能力者程度の戦闘技術であるという現状に何時迄も甘んじている訳にはいかない。

真正面からぶつかってどれだけ戦えるかを確認し、その上で更に鍛えなければならない。

その相手として、実はグロンギが恐ろしい程好条件である事に気が付いてしまったのだ。

 

オルフェノクのように、大企業がバックに居るわけでもない。

同じ理由でファンガイアも無し。

魔化魍のように現れる場所や確率がまちまちでもない。

対策がまだできていないワームは論外。

アンデッド、同上。

ミラーモンスター、耳鳴りと不意打ちに気をつける。

イマジン、頑張れ特異点。

 

対して、グロンギは一般にも警察にも認知されている。

ズ集団のうちは警察の銃弾も目に当たれば効果があり、何より警察に目撃させれば無線を聞いたクウガが駆けつけてくる。

リカバリが効きやすいのである。

……まぁ、今はクウガがしばらく駆けつけられないだろうが、それは仕方がない。

俺よりも先に接敵して倒されては練習にならない。

それで被害者が増えるとしても、諦めよう。

元から、警察が事件を確認してからクウガが駆けつけるという形式上、最初の被害者は助からないのだ。

 

「すいません、お会計お願いします」

 

何食わぬ顔で、支払いを済ませて店を出る。

空振った時の事を考えて、頑張って無数にある気配から弱そうなのもピックアップしておこう。

 

―――――――――――――――――――

 

基本的に、グロンギの出現を知るには死人の情報を頼るのがいい。

目撃者を大量に出しながらゲゲルを行うタイプなら避難情報が聞ければ大体の場所がわかる。

不自然な連続殺人事件なんかがあればそれも怪しいが、そういうのはラジオでは聞けないので除外していい。

今回当たりをつけているのは、船の事故だ。

撮影の関係で海中での戦闘などはほぼ無かったが、水生生物型であれば、船を沈没させれば手っ取り早く人数を稼ぐ事ができるから狙い目だろう。

活動開始から撃破までに一日掛かっているということは、恐らく一件目の事件がグロンギの仕業であると判明し、二件目の標的になりそうな所を狙って撃破したという可能性が高い。

 

此方には正式なクウガにも警察にも無いアドバンテージがある。

アギトの力なのか何なのか、魔石ゲブロンの気配がなんとなくわかるのだ。

大まかな場所ならわかるので、水辺に近い位置にある気配をピックアップして注目しておけば……。

 

―――――――――――――――――――

 

「見つけた」

 

遠目に沈みゆくフェリーを確認しながら、物陰に隠れた少年が両手を広げる。

いつの間にか現れていたベルト。

これこそが古代人リントが作り上げた戦闘用強化装具アークル。

 

「変身」

 

つぶやくと共に、腰に据えた左手で静かにレフトコンバーターを押し込む。

薄っすらと別の像が重なったアークルの中で、霊石アマダムが活性化、バックル中央に収められたモーフィンクリスタルが緑色の光を帯びる。

体内に収められたアマダムから伸びた強化神経から未知のエネルギーが肉体に送り込まれ、身体能力は飛躍的に向上し、肉体の表面には強固な外殻をも形成する。

柔軟かつ強固な強化皮膚ブラックスキン。

昆虫の甲殻に似た構造の各部装甲、ブロッカー。

その他諸々、人間の肉体には有り得ぬ強化器官が形成され、左肩にのみ形成されたショルダーブロッカーが特徴的な緑色の戦士が姿を現す。

クウガ・ペガサスフォーム。

 

変身が完了すると同時、戦士の五感を常人では処理仕切れない程の大量の情報が流れ込む。

紫外線、赤外線、電磁波、超音波すら捉える超感覚を持って遠く離れた敵を射抜く狙撃手としての能力を備えているのがこのペガサスフォームだ。

常人では数十秒で脳がパンクして気絶するこの形態を、しかし超越精神、青の力が押さえ込む。

全ての情報を受け入れる必要はない。

標的が何処に居るか、それは既に感覚が捉えている。

 

手に握られているのは、簡素な作りの小さな弓矢。

お土産屋で売られているような小さな弓矢に、手首のコントロールリングからモーフィングパワーが流れ込みボウガン状の武器、ペガサスボウガンへと変質させる。

 

弓を引くように後部グリップを引き絞り、離すと同時に引き金を引く。

連続して放たれた封印エネルギーの矢は、海中に潜みその場を離れようとしていた異形の体を掠めていった。

 

少年にとってもこのやり方はある種の賭けであった。

自分を狙うクウガの攻撃に対して、グロンギがどの様な反応を示すかは、週に一度三十分を一年分と参考資料数冊分程度の知識しかない。

闘争本能に忠実であれば向かってくるだろう。

だが、グロンギにも人間……リントと同じく個性がある。

ゴ階級の戦士ともなれば人間社会について学び読書やギャンブル、芸術などを趣味とする者も居れば、リントの少女に成り代わりアイドルとして活動する者も居れば、政治家として国のトップに近い位置に辿り着く個体すら居るのだ。

攻撃を受けたのならば、ゲゲルの完遂を優先して逃げに徹するタイプも間違いなく存在する。

中にはゲゲルを始める前に時間切れで自爆してしまう個体すら存在するのだから、見ず知らずのグロンギが攻撃に対してどう対処するかなど、予測が付く訳もない。

 

「……よし」

 

海中の異形が自分に向けて高速で移動してくるのを確認し、再びレフトコンバーターを横から叩く。

すると、アークルに重なっていた像の中心部が青く輝き、ぼやけた棒状の何かが現れる。

未だ完全には覚醒していない進化の力、風を司る力。

蜃気楼の様なそれを掴み、躊躇いなく引き抜く。

引き抜いた手のコントロールリングから流れ込むモーフィングパワーを依代に実体を得たそれは、青と金で構成された刃の畳まれた斧槍。

 

獲物に合わせるように少年の姿も変わっていた。

全身の装甲は青く、ショルダーブロッカーのある左腕だけがやや肥大化した姿は、流水ならぬ嵐の斧槍にて敵を薙ぎ払う人類の進化系。

 

五秒程の時間をかけて姿を変えた少年の、いや、異形の戦士の前に、水面を波立たせながら勢い良くもう一匹の異形が姿を現す。

腰布、手首足首と肩から胸元までを覆う装飾品を除けば何も身に着けていない。

一目で人間のそれとは異なると理解できる、暗い薄灰色の肌。

しなやかに、しかし異様に発達した筋肉に覆われたその体は、よく見れば人間の女性に似たラインを持っている。

だが、その首から上を見れば、それが決して人間で無い事が理解できるだろう。

大きく張り出した額と鼻、分厚いゴムの様な黒い皮膚、埋没するような小さな瞳。

頭部を上下に割る様な幅の広い口。

まるでクジラを人型に押し込め、古代の装飾品を纏わせたかの如き異形。

彼女こそ、現ゲゲルのプレイヤー、ズ・グジル・ギだ。

 

「バレダラベゾギデブセスバ、クウガ!」

 

非常に表情の読み難いクジラの顔から、明確な怒りの感情を滲ませた叫びが放たれる。

それに対し、青の戦士は斧槍を持たない手を顎に当て首を傾げ、次いで鼻で笑った。

 

「ゴセパゴグザ。バレデロジョギジョグバ、ジャボゾベサダダバサバ」

 

で、あってるかな。

グジルに聞こえない程度の声量で呟いた戦士に、

 

「ズザベダブヂゾ、ゴラゲパボソグ!」

 

グジルは拳を握り怒りに任せて踊りかかった。

 

―――――――――――――――――――

 

奴隷或いは労働者階級のべ階級を除けば、戦士としては最下級であるズ階級の戦士は、魔石ゲブロンによって変異した肉体的特徴をそのまま武器として扱う場合が多い。

蜘蛛の異形と化したなら蜘蛛の糸を扱うし、飛蝗であれば跳躍能力を駆使する。

最低限の変異しか熟していないズ階級はまず、変異した肉体を操る事にのみ重きを置くからだ。

人間的特徴、武器を扱う様になるには、変異した肉体ではなく、肉体を変異させている魔石の力に適応する必要がある。

 

青の戦士に殴りかかったグジル。

彼女の強みを一言で言うのであれば、それは『重さ』だろう。

海中生物の中で最大と言っても過言ではないクジラの体長は、彼女の肉体にそれ相応の変化を与えている。

それは水中における自由度を除けば、過度に圧縮された筋肉にこそ顕著に現れていた。

水中でその巨体を自由に泳がせる為の筋力、それは逞しい筋量に、更にその見た目すら凌駕する実際の力として振るわれる。

 

つい数分前に沈んだフェリー、その乗客たちの遺体こそがその証拠となる。

爪すら無く、ただ人が殴るのと同じように殴られた被害者達の肉体は、中身を皮膚の下に収めておく事すら許されず、砲で撃たれたかの様に『破裂』させられているのだ。

クジラの尾びれが海面を叩く様な、或いはその尾びれの一撃を拳に集約したかの様な一撃は、人間を水風船の如く容易く破壊する。

 

幸いであったのは、逆に彼女が古代でのものを含むこれまでのゲゲルにおいて、獲物を狩るという点で然程苦労した事が無いという事だろう。

ただ近づき、殴る、蹴る。

ただそれだけで彼女のゲゲルは完了する。

船を狙った理由にしても、海上であれば無駄な邪魔が入らずゆっくりゲゲルを行えると思ったからに過ぎない。

最初から持ち合わせていた力だけで事足りていた彼女に、技術を磨く理由は無い。

 

「っ」

 

折りたたまれたままの斧槍で砲撃の如き拳を受け流す。

見えない程の速さでもなく、格闘家のそれと比べて効率的な殴り方をしている訳でもない。

だからこそ初見で受け流す事ができた。

だが、受け流してみて初めて分かるその拳の重さに思わず息を飲む。

受けるべきではない攻撃だ、少なくとも、今の姿では。

拳を受け流した動きの延長で、グジルの背を突いて距離を離す。

 

対してグジルの思考は単純なものだ。

避けられた。なら、当てるまで殴るだけ。

斧槍で背を押され姿勢を崩されながら、力づくで体を捻り振り返り、地面を這うような高さから拳を振り上げる。

狙いは顎、当たればクウガと言えども無事では済まない。

本人はそういった狙いすらなく、どこでも良いから当てる、程度のもの。

無理な姿勢から放たれた拳は、それでも直撃すればクウガのブロッカーを砕く程の威力を備えている。

 

対して青の戦士は半歩下がりながら振り上げられた拳を追うように斧槍を振り上げ、振るわれた拳の勢いを増して重心を崩し、がら空きになった脇腹に前蹴りを叩き込む。

距離が開き、次のグジルの一撃が即座に届かないだろう事を確認し、青の戦士は斧槍を振るう。

グジルではなく虚空に向け振るわれた斧槍はその柄を伸ばし、斧状に畳まれた刃を展開。

倍近くまで伸びた両刃の斧槍。

ごう、と、渦巻く風を纏う双刃の槍こそがこの武器の真の姿。

嵐の鉾槍ストームハルバード。

 

グジルが青の戦士を睨みつけたまま、じり、じり、と歩きながら間合いを計り。

青の戦士は風を纏う鉾槍を腰だめに構え、鏡合わせのように間合いを取っている。

 

先に動いたのはグジルであった。

無手と長物の差による不利を理解していない訳ではない。

だが、グジルはこれまでのゲゲルにおいて逃げた事がない。

また、長物を持ち、それでいて自分を傷付ける事ができる程の力を持った相手と戦った事もほぼ無かった。

リーチによる差も、獲物ごと相手を打ち砕いてしまえば無いも同然。

 

そう考えるに足るだけの力も実際に持ち合わせていた。

ズ集団の中ではナンバー2の実力を備えているのが、このズ・グジル・ギなのだ。

鍛え上げた技術でなく、ただ得た力を振るうだけで手に入れた地位。

それは即ち才能の差であり、魔石ゲブロンへの適正の差でもあった。

長じればメ、果てはゴにすら届く程の成長も得られたかもしれない。

 

殴れば勝てる。

当てれば勝てる。

それがグジルのゲゲル。

力への圧倒的な自負。

それを胸に、グジルはその過剰な脚力に任せ……、『地面』を蹴った。

 

「ヌッ」

 

舗装されたタイルが蹴り砕かれ、青の戦士目掛けて蹴り飛ばされる。

塊のままの石材と砕けた砂が青の戦士を僅かに怯ませた。

一番の脅威だと感じた鉾槍は塊のまま飛んできた石材をはたき落とす為に使われ塞がっている。

視界も遮り、グジルのダッシュに一瞬反応が遅れた。

 

力への自負はある。

殴るだけで勝てるという自負もある。

だが、だが、『クウガ』が相手であれば、それは全て覆される。

それを理解していない訳ではなかった。

故に、現代にもクウガが存在すると聞いた時点から虚を突く為の手段も多少は考えていた。

考え、実際に相対したのであれば使わない理由は無い。

 

僅かな距離を走り抜け、その鳩尾目掛けて拳を振り抜く。

届く、勝った。

勝ったのだ。

かつての時代に封印された雪辱を果たした。

クウガが居ないのであれば、ゲゲルはクリアしたも同然。

もはやズ・グジル・ギではない。

私はメ・グジル・ギになるのだ!

 

勝利を確信したが故か、現実を認識するのが遅れる。

拳を振り抜いた。

ならばいつもの様に、肉がはじけ飛ぶ感触がある筈だ。

不意まで打っての会心の一撃であったが故に拳に感触すら残らない威力が乗った訳でもない。

 

彼女が過ちに気付いたのは、その背を貫く冷たい衝撃を受けてから。

裸で吹雪の中に立ち尽くす様な寒気、次いで感じるのは熱にも似た激痛だ。

ズ・グジル・ギは、その背を袈裟懸けにばっさりと斬り付けられていた。

 

何故、という疑問がグジルの思考を埋め尽くす。

だが、実際に起きたことは単純だ。

グジルが勝利を確信した瞬間、迎撃する事が叶わないと理解した青の戦士は、その場から跳躍。

空中で身を捻り、グジルの背後に回り込み、落下しながらその背を斬り付けたのだ。

 

鉾槍による一撃はグジルの背を深々と切り裂き、その傷は肋骨や背骨すら半ば断ち切っていた。

常人ならば致命傷、しかし、クウガと同じく魔石ゲブロンから全身へと新たな神経組織が形成されているグロンギにとって、脊椎の損傷は一時的には甚大な被害になり得てもそれが死や後遺症に繋がる事はそう無い。

通常の肉体の損傷に対するのと同じ様に、僅かな時間で修復を終えてしまうだろう。

 

だが、修復が完了するまでの僅かな時間、確実に隙が生まれる。

その隙は、こと戦闘においては致命的。

 

ばきん、と、自らの腹部が発する異音にグジルが目を向ける。

異音の主は腰に巻かれた、魔石ゲブロンを内蔵した強化装具ゲドルード。

変身能力を含むあらゆる異能を制御、ゲゲルの進行にも使われるそれが、腹部から飛び出た黄金の刃によって貫かれ、真っ二つに割れていた。

 

「ゴンバ、ダババ、パダギパ『メ』ビ、『メ・グジル・ギ』ビ……」

 

再生能力を失い、なまじ強化された生命力のお陰で死ぬことも無く、ゲゲルを完了させる事が不可能になった絶望に喘ぐグジル。

人間体と怪人体が点滅するように入れ替わりながら、痛みと絶望に呻くグジルが、背後からの衝撃に地面に倒れ伏す。

 

「ヂガグ、ボンバボパ、パダギパ、ゲゲルゾ、クウガゾ、パダギパ……」

 

纏まりのない、譫言の様な独白。

ごぼり、と、口から血が溢れ出す。

貫かれた腹部から血を流しながら、グジルは、古代人の少女は地面を掻く様にもがき、ずりずりと地面を這う。

顔を上げ、震える手を海へと伸ばす。

 

その最後の前進が、止まった。

青の戦士が、グジルの背を踏み、逆手に鉾槍を構えて、大上段に構えている。

刃の先は、背に空いたままの傷の奥、心臓。

逆光が青の戦士を照らし、影に覆われた顔の中、ぼんやりと輝く巨大な赤い複眼はまっすぐにグジルを見下ろしている。

 

「ギベ」

 

冷たい。

突き立てられた凶器の感触を感じながら、グジルの意識は閉ざされた。

 

―――――――――――――――――――

 

封印エネルギーを叩き込まなかったからか、ゲドルードを真っ先に破壊したからか、ズ・グジル・ギの死体は爆発するでもなくその場に残された。

ゴ集団のゲドルードの自爆かライジングの力かは知らないが、後半は撃破時の爆発にも気を使っていた筈だ。

クウガの力でなければ倒せないのではないか、と、そんな不安もあったが、今後グロンギを殺す際には此方の力で殺した方が都合がいいかもしれない。

 

「……」

 

残されたグジルの死体を見下ろす。

ゲドルードかゲブロンを破壊された状態で瀕死であった為か、その肉体は斑に人間に戻りかけたまま事切れている。

 

肌の白い、白髪の年若い少女。

衣服は、ところどころしか戻っていないからわからないが、レインコートに、水着、だろうか。

水生生物モデルだからといって、そこまで水に寄らなくとも、とは思う。

或いは、ゲゲルとは無関係に、水辺が好きだったりしたのだろうか。

酒を楽しむ文化はあったらしい。

ゲゲルの無い時は泳いで遊ぶ程度の文化もあったかもしれない。

現代に蘇って、舗装された水辺を見てどう思っただろうか。

或いは、現代の知識を仕入れる中でプールにも行っていたかもしれない。

勿論、そんな事を今更確認する事はできないし、確認したところで意味はない。

 

彼女は死んだ。

俺に殺されて死んだ。

俺が殺したのだ。

だから、そんなものに意味はない。

死人の趣味嗜好など、想像を巡らせてなんとするのか。

しかもよりにもよって、自分が殺した相手だ。

悪趣味にも程がある。

 

「……そうだ」

 

死体の傷口に手を差し入れ、内部を探る。

まだ温かさの残る内蔵を掻き分け、それを抉り出す。

小さな、見たことのない鉱石。

グロンギの気配はこれから感じる。

弱々しいを通り越して、この距離でなければ反応を探る事すらできない。

恐らく、これが魔石ゲブロン。

何かに使えるかもしれない。

余裕があれば、追々回収していこう。

……そう何度も、回収したいとは思わないが。

 

「帰ろうか」

 

遠巻きに視線を感じる。

素早く殺せたので警察はまだ来ていないけれど、間違いなくあの中の誰かが通報している事だろう。

追われると困るので、一度海の中にでも隠れて、ちょっと距離を置いて人気の少ない場所から上がって、フレイムフォームで服を乾かして……。

 

そこまで考えて、ふと、ズ・グジル・ギの死体に振り返る。

口からは血が溢れ、目からも鼻からも体液がこぼれた後があった。

事切れたグジルの表情は、なんと表現していいのかわからない。

絶望? いや、錯乱していたのか、笑みにも怒りにも見える。

 

「……」

 

しゃがんで、瞼だけ閉じておく。

まだ変身は解いていない、指紋が残ったりはしないだろう。

見た目、これがグロンギの死体である事はわかる筈だ。

研究の為、最終的には切り刻まれる事になるだろう。

だから、だけど、せめて。

 

「……いや」

 

考えるだけ、無駄だ。

オルフェノクと違って死体が残るものだから、思考が変な方向に向いてしまった。

これから、何度だって、何度だって、何年も何年も繰り返す『作業』には、無用な思考だ。

 

帰ろう。

グロンギの力はわかった。

パワータイプだったろうから、全てがこうではないだろうけど。

真正面からでも、戦えない訳ではない。

戦っている最中は、不思議と頭も冴える。

アマダムの力か、アギトの力か。

そのどちらかは分からないけれど。

 

戦える。

なら、戦おう。

戦って、戦って、戦って。

殺して、殺して、殺して。

生きよう。

 

 

 




☆クウガだかアギトだかわからんマン
アマダムから神経伸びてその内こんな悩みとはおさらばできるだろう、くらいの想定で今は我慢して戦ってる
でもそこまで行ったら究極の闇になっちゃわないかなっていう疑問はひとまずおいとく、生きてくためだからね、仕方ないね
戦闘中は無我の境地的なあれも発動してるヤバいやつ
今回は警察の被害が大きいグロンギではなくそのグロンギとまともに正面戦闘できるかの確認に来た
死体が残ってちょっぴりビビる
やっぱり死体の残らないオルフェノクは殺しても心が傷みにくくて良い種族ですね! 褒美として滅んでいいですよ!
よく考えると序章最後にクウガ本編開始直前みたいな日付入れたけど、こいつがベルト取りに行った時期であるとは言ってないからそこから一年くらい前に取りに行った事にしてもいいかもしれない、そういう事にしよう
クウガの変身を起点に未覚醒のアギトの力も引き出せる
ちな変身ポーズは五代さんが戦意を引き出すために考案したものらしいから別に無くてもどうとでもなるみたいな話があるのでそちらを採用している

☆ベルトさん
ずしゅーん、ぎゅぃーん、ぎゅいぎゅいぎゅいぎゅい、 (`・ω・´)シャキーン!
平成初期特有の無口なベルトさん
効果音凄くかっこいいので本編見るかベルト買おう
出典は小説版仮面ライダークウガ
本編終了の十三年後をメインライターである荒川稔久先生が直々に描いた実質正式アフターストーリー
かわいいおっさんと化した一条さん
長期間人間社会に潜み続けた場合のグロンギのヤバさ
それをある意味上回る人間のヤバさとか愚かさ
十三年前のダグバとの最終決戦後の隠された真実
再び巻き起こる、しかし恐ろしく巧妙化したゲゲル
そして、十三年の年を経て現れる未確認生命体、第二号……
名作です! ちょっとアフターとしては賛否わかれるけど読んで損は一切無いので買うべき
ベルトそのものとしては、原作で使われていたアークルが作られる前のテスト機であり、諸々の安全装置が付いておらず、装着者の心持ち次第で容易くアルティメットフォームに切り替わってしまう危険なベルトである
東京タワーにモーフィングパワーを流し込んで広域殲滅兵器にしたりできるやべーやつ
実情知っててこんなもん巻いて戦おうとか考えるのはちょっとおかしいけど、おかしい真似をしないと死ぬので巻いた。もう逃げられんぞ★

☆ズ・グジル・ギ
原作本編未登場
設定本で名前とゲゲル開始日と終了日とタトゥー、そしてマイティーキックで殺されたことだけが明かされている
資料集に乗ってる組織図らしきものから一応ズ集団の序列二番目ではないかと目されているが、実際どうかは不明、ここでは一応序列二位ということで
男か女かも不明、なのでこの作品では女、ヒロインにするつもりほぼない戦って死ぬキャラだからゆるしてゆるして
死に際が一見してリョナだけどこれ戦いだから一切不純なあれは無い
人間体は黒ビキニに黒いレインコートかなにかを羽織った色白白髪の少女
どっかで見たことあるって?
口の付いたでかい尻尾は無いし、グロンギを裏切ったべ集団の気になる男の子も居ないし、俊敏体ではなく剛力体寄りの性能だからセーフ。グジ×ガデいいよね……
書いててちょっとだけ生かしておいてどうにかヒロインにしたかった気もするけど、主人公からすれば生かしておく理由も方法も無いし、仕方ないので全力で死に際をノリノリで描写しときました
ビキニでずりずり匍匐前進してるのはたぶんライダー特有の男の子へのサービスシーンではないだろうか、みえそでみえない血まみれ美少女の胸元、歪め性癖
最終スコアは多分二桁くらい
よっしゃゲゲル開始や! とかやった直後、運悪く黒塗りのブラストペガサスにぶつかってしまう(黒塗りではない)
水遊びというか泳ぐのというか水の中が好き
笑うと可愛かった

☆翻訳
グロンギ語翻訳機による直訳だから誤訳とかあっても許してクレメンス

「バレダラベゾギデブセスバ、クウガ!(舐めた真似をしてくれるな、クウガ!)」

「ゴセパゴグザ。バレデロジョギジョグバ、ジャボゾベサダダバサバ(それはそうだ、舐めても良いような、雑魚を狙ったからな)」

「ズザベダブヂゾ、ゴラゲパボソグ!(ふざけた口を、お前は殺す!)」

「ゴンバ、ダババ、パダギパ『メ』ビ、『メ・グジル・ギ』ビ……(そんな、馬鹿な、わたしは『メ』に、『メ・グジル・ギ』に……)」

「ヂガグ、ボンバボパ、パダギパ、ゲゲルゾ、クウガゾ、パダギパ……(ちがう、こんなのは、わたしは、ゲゲルを、クウガを、わたしは……)」

「ギベ(死ね)」

煽り耐性0からの即オチ2コマレベルの急転直下、美少女顔を晒しながらかすれた声で譫言言ったりしてる方がグロンギです
煽ってるのと死にかけの美少女片足で踏んで槍向けて殺害宣言してるのが主人公です


次回、短時間とは言え派手に暴れたので警察による捜査が入る描写とかしたい
ぱっと見、二号四号系列の何かが戦ってた様に見えるだろうからね
次の話投稿したらこの話のケツにクウガっぽい予告とかも入れたい
今回も前回の話のケツに予告入れたいけどセリフ少なすぎて入れらんないの悲しい
でゅるらーん、でーでー、でーでー、でーでーでーでーででー、づーでー、づーでー、づーでーでーでーででー……みたいな予告BGM流しながら読める感じのやつ
全部擬音にしようと思ったけど記憶より長くて断念

たぶん各ライダーを五話か六話くらいで終わらせればエタらずに一期終わらせられるんじゃないかという見通しで行きます


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3 疑惑、かき乱されて

仕方がない事だ。

何しろ俺は前も今もほぼ平成日本の育ち、多少武道の経験を齧っていようが、人の死ぬ場面を見て狼狽えずに冷静に必要な行動だけを取るというのは難しい。

腹にアマダム抱えて、火のエルの力の欠片を抱えて、これから十年? 二十年?

恐ろしい話ではあるが、まだ戦いは始まったばかり、しかも俺の実戦経験ときたら恐ろしく乏しい。

時折出会すオルフェノクを無知な同種を装って不意打ちするか、運悪く道路脇の森の中に魔化魍や童子や姫を見つけて、力技で蹴散らして一時的に人に害を与えられないように散り散りの穢に戻してやるくらいのもの。

戦う為、狩猟の為に自分たちの肉体を、そして種族としての生き方そのものすら作り変えたような連中との戦いを同じに考えてはいけない。

 

正確に言えば、グロンギの戦闘能力や学習能力が恐ろしいという訳ではない。

いや、後の小説版を考えれば、その学習能力の高さは恐ろしいのだけど、それは今は別に問題にならないので気にしないでもいい。

俺も、ベルトを付けてから妙に勉強が捗るし、物覚えが良くなっている。

最終的に行き着く場所が同じなら、別のアドバンテージがある分こちらの方が有利ですらある。

 

問題となるのは、殺した後だ。

その他の脅威と比べて、グロンギは殺した後に残る被害が大きい。

ズやメですらクウガの封印エネルギーを叩き込んだ上で封印失敗すると結構な爆発が起こるし、ゴともなれば周辺一帯に被害が出る程だ。

逆に、クウガの封印エネルギーを叩き込まずに殺した場合、奴らは普通に死体を残す。

これは割りと珍しい。

どうやっても死んだら確実に爆発して消えるもの、灰になるもの、そもそも死なない、ガラスの様に砕け散る、などなど、大体の脅威は生々しい痕跡を残さずに消え失せる。

 

しかも、死に方によっては人間の姿を曝け出して死ぬ場合があるようで。

これが、割りと精神をすり減らす。

相手はどう考えても和解不能な狩猟民族、しかも狩猟対象は人間であり、狩猟の理由は食べるためですらなく、言ってしまえば宗教儀式の様なものだ。

現代日本では仮に彼等を捕縛して裁判にかけることができたとして、捕縛し続けておくだけの技術が存在しない。

有り体に言えば殺すしか道がない相手だ。

だというのに、死に際には人間の様に足掻き、苦しみ、人間と同じような死に顔を晒す。

 

最悪だ。気分が悪くなる。

まるで俺が情け容赦のない殺人鬼のようではないか。

いや、彼等から見ればそうなのかもしれないが、それが嫌なら殺人ゲームとかやめてほしい。

ああいう殺し方をした俺にも問題があると言えばある。

極論、爆発の被害で周辺が焼け野原になったとしても、俺自身にはそれほどダメージは入らないのだから、気にせず封印エネルギーを叩き込んでしまえばいいのだ。

が、身バレする可能性は決して低くないので、バレた時に罪に問われる様な派手な周辺被害を出すのはやはり問題がある。

 

殺すのは難しくない。

殺した後に気分を悪くしないのは難しい。

被害を出さず気分良く殺すのはもっと難しい。

 

ベルト、アークルを巻いて、腹の中にアマダムを抱えて、もう暫くの時間が立つ。

いい加減、アークルから伸びた神経が脳に達してくれてもいいのではないだろうか。

それとも、昔に聞いた最終的にグロンギと同じ戦うためだけの生物兵器になる、という話が間違いだったのだろうか。

 

あながちありえないとも言い切れないだろう。

容易くアルティメットフォームになれてしまうこのベルトの持ち主ですら、そうなる予感を感じたなら即座に自分諸共敵を封印する判断を下せたのだ。

聖なる泉が枯れ果てない限り、戦い続けるだけで頭グロンギにはならない様な最低限の安全装置くらいは搭載している可能性だってある。

 

或いは火のエルの力の欠片が原因か。

無限の進化を可能とするアギトの力が、アマダムが齎す肉体の変質を捻じ曲げている可能性だって無くは無い。

オルタリングだけを自力で発生させられないのが、単純に目覚め方が足りないのか、それともアマダムに干渉する為に力を使っているからなのかは、神ならぬ俺には判別することはできない。

 

理由はどうあれ、俺はまだ死に際に人間の顔を見せてくるという精神攻撃に対する防御手段を持っていない。

俺の心は困った事にまだ正常に、殺した相手の無残な死に顔に対して罪悪感を覚えてしまう。

オルフェノクの連中の様に、人間体の時に首を飛ばしても数秒で燃え始めてはっきりと表情を観察する前に灰になってくれる都合のいい相手ではない以上、自力でどうにかするしかない。

 

……という訳で、一つの案がある。

封印エネルギーを叩き込まず、なおかつ腹を割いてゲブロンを取り出す段階になっても、然程罪悪感を感じずに済むだろうと思われる戦法だ。

できれば、実際に罪悪感を軽減できるかどうかを試したい。

次の土曜日、二月の十九日、学校が終わったら、急いで東京に向かおう。

 

―――――――――――――――――――

 

二千年二月二十四日、木曜日、警視庁。

薄暗い合同捜査本部にて、長野県警捜査一課から出向してきている一条薫警部補は、一本の映像記録を繰り返し見つめていた。

逆光を背負い、九郎ヶ岳遺跡の発掘チームを襲う、未確認生命体第0号の姿。

薄暗い遺跡の中、苛立ちから当たり散らす様に発掘チームをゆっくりと殺害する様子は凄惨だが、光源の位置の関係から、被害者も加害者もはっきりとその姿を確認する事はできない。

 

『クウガァ……』

 

怯える発掘チームの声の中、はっきりと響く0号のこの言葉を除けば……。

 

「また0号のビデオか」

 

明かりも付けられていない合同捜査本部に、一人の男が入ってくる。

杉田守道警部補、対未確認案件における現場のリーダーとも言える男だ。

 

「原点に立ち返れば、何かが見えるかと思って……」

 

勿論、そう簡単に何かの手がかりが見つかるわけもない。

だが、何もせずにいられる様な事件でもない。

焦り、とはまた違う、義務感、使命感にも似た感情か。

 

「捜査本部が組まれて、三週間で七匹。その内俺達がやったのはたったの一匹。しかも、内一匹は行方不明。何時迄も四号におんぶにだっこじゃ、不味いよなぁ……」

 

疲れを含んだ言葉と共に、長机の上に新聞が数部広げられる。

一面はどれも未確認関連の記事だ。

『未確認生命体死亡』

『第十三号の死亡を確認』

『第四号を現場で目撃』

それらの記事を見て、狼狽えるように視線を逸し、第0号の映像を停止する一条。

 

そう、未確認の仕業と推測される殺人事件を除外した上で、はっきりと姿が確認された七号から十三号までは、その全てが撃破を確認された訳ではない。

内一体は、民間からの目撃証言と証拠資料として回収した数枚の写真から確認したのみ。

警察が確認できた物的証拠は、被害を受けたと思しきフェリーと被害者の死体、尋常ではない力で砕かれたタイルに、夥しい量の血痕。

これだけならまだいい、四号が完全に始末したというのであれば、それ以上の被害者は増えない。

 

だが、そうではない。

四号と交戦した、とされている未確認の内一体は、トドメを刺された上でなお立ち上がり、その姿を消しているのだ。

そして、一条は四号……四号に『変身』する男、五代雄介本人に確認を行っている。

四号と逃亡した未確認が交戦した二月五日、午後二時半の時点で、五代雄介は現場に向かっていない。

いや、トライチェイサー2000に搭載された警察無線を聞いて初めて『自分が新しい未確認と交戦した』という情報を耳にしたのだという。

となれば、この四号というのは、四号によく似た別の未確認の一体であり、いわばこれは未確認同士の仲間割れとでも言うべき案件なのだろうが……。

 

(似すぎている……)

 

一条の視線の先にある、新聞の一部。

 

『凶悪! 四号の本性か』

 

ゴシップ紙の様な見出しに映し出された、四号にとても良く似た姿の未確認。

記事の内容は、確認するまでもない。

現場検証にも当然立ち会い、一条もその有様を確認している。

 

未確認生命体十二号B。

警官隊の前で突如として自爆して見せた十二号Aとまるで瓜二つな姿の、現時点では同一個体と思われている未確認だ。

鼠のそれと似た身体的特徴を持つその未確認は、数名の一般市民を殺害した時点で、現場を包囲していた警察が呼んだ応援よりも早く駆けつけた四号に呆気なく撃退されたのだという。

だが、十二号Bは四号にトドメを刺された後も爆発する事無く倒れ伏した。

そして、十二号Bの死体に対し、四号は……。

これまでの未確認とも、そして当然四号、五代雄介とも異なる異常な振る舞いを見せたその個体に、一条は苦々しく眉を顰めた。

 

―――――――――――――――――――

 

同日、文京区内、喫茶ポレポレ。

時刻は八時三十六分。

仕事前に朝食を食べに来る客がはけ、客の居ない店舗の中で、一人の青年がジャケットと針と糸を手に黙々と縫い物をしていた。

ふと、青年の手が止まる。

手に持っていたジャケットには、古代種族リントの文明で戦士『クウガ』を現す古代文字が金糸で刺繍されていた。

それを窓から差し込む光に当て、一瞬嬉しそうに微笑み、しかし、直ぐにその表情を悲しげに歪めた。

 

「おうどうした、湿気た顔で……なんだそりゃ」

 

「おやっさん……なにって、クウガだよ、クウガのマーク」

 

声をかけられた青年、五代雄介は笑顔でおやっさんと呼ばれる中年の男、喫茶ポレポレのマスターに向き直り、刺繍を見せつける。

 

「くうが? くうが美子なら知ってるけどな、鼻の横に大きなほくろがあってよ」

 

「そうじゃなくて……」

 

と、笑顔で説明しようとした雄介の笑顔が曇る。

視線はマスターの読んでいた新聞のとある記事。

それに気付いたマスターは新聞を折りたたみ、雄介の頭を軽く叩いた。

 

「あいてっ」

 

「おまえ、そんなボケッとした顔で仕事する気か? ん?」

 

「おやっさん……」

 

「そういう時はな、外の美味しい空気でも掃除しながら吸って、気分を入れ替えてだな」

 

「ありがとうおやっさん! ちょっと桜子さんとこ行ってくる!」

 

にっ、と、快活に笑って見せた後、刺繍を終えたジャケットを羽織り外へと駆け出していく。

 

「おっ、ちょい雄介、雄介! 店の手伝い!」

 

―――――――――――――――――――

 

同日、城南大学、考古学研究室。

時刻は九時四十八分。

 

院生である沢渡桜子は、警察から頼まれていた古代文字の解読結果を、友人である五代雄介に教授していた。

事前に雄介に教えていたクウガのマーク、その表音文字での表記に始まり、この古代文字を使用していた種族、その種族を獲物として危害を加えてきた種族の名前まで。

解読はかなり進行していると言っていい。

だが、それでも全ての文字を解読し終えたという訳でもない。

 

「……二人目、とか、そういう文章は今のところ見つけられてないの」

 

「そっか」

 

「ごめんね」

 

「ううん、全然! もっと全体的に進めないといけないのに、無理言っちゃったのは俺なんだから!」

 

「いいよ。一条さんが居るんだから、どうせ警察からもその内聞かれただろうしね」

 

雄介が桜子の会いに来たのは、何もクウガのマークの刺繍を見せに来ただけではない。

勿論それもあると言えばあるが、雄介は四日前から、桜子にある調べ物を頼んでいた。

二人目の戦士、二人目のクウガの記述だ。

雄介は、自分ではない四号の話を耳にした時からその存在を疑い、四日前の事件からどうしても知りたくて仕方が無かった。

 

警察が無線で応援を呼ぶよりも早く現場に駆けつけられたのは何故なのか。

何故あんな戦い方をしたのか。

そもそも、自分と同じ姿を持つそいつが、自分と同じくクウガなのか。

 

「でも、この碑文からは見つからないんじゃない? リントの戦士じゃなくて、見た目が似てるだけの未確認……グロンギかもしれないし」

 

二人目の戦士が、人間の味方が居る、というのは、いささか都合のいい妄想のようにも桜子には思えた。

これまでの未確認との戦いで二度しかその姿を表さず、警察との接触を可能な限り避けて行動している様に見えるそいつは、少なくとも雄介と同種の人間ではないと思えた。

悪く言っている訳ではない。

仮に雄介と同じように古代のベルトを身に纏い変身するのだとして、正体が露見した場合のトラブルを避けようとするのは、逆に普通のことだ。

そうでなくても、桜子が新聞から得た乏しい情報から、その戦士の戦い方は異端に思えた。

 

情報規制の為に正確な状況は報道されてはいないが、その戦士に倒された未確認は、雄介が倒したそれと異なり死体を残す。

そして、その死体は見るも無残な程に破壊されてるのだという。

 

それは雄介とて承知している。

一条からある程度の事情を教えられている雄介は、桜子以上に謎の戦士の戦い方の残虐性に心を痛めていた。

変身を半ば解除された状態で背中を踏みつけ心臓を槍で突き刺し、挙句に内蔵をかき混ぜられた七号。

そして、十二号に至っては更に不可解な事に、トドメを指す直前に『顔面を焼き潰した』のだという。

世界中を旅した中で、少なからず人々の争いも見てきた雄介でさえ眉を顰める様な痛々しい殺し方。

とても、平和な日本で暮らす人間がするような戦い方には思えない。

 

「でも、たぶん、俺達と同じだと思う。だって一回目は日曜日、二回目は土曜日の深夜だよ?」

 

「それだけ?」

 

「それだけじゃなくて」

 

七号との戦いを、遠くからカメラを使って野次馬していた目撃者の証言によれば。

四号と思しき戦士は、七号の腹部から何かを取り出した後、変身が解けた七号の顔に手を翳していたらしい。

黒いフードを被った七号の人間体の顔は、角度の関係で写真に収める事はできなかったというが。

まるでドラマで見た、死体の瞼を閉じる様な仕草にも見えた、という。

勿論、大きく距離を取った上でカメラの望遠レンズを使って見たものだし、瞼を閉じられたかどうかは、後に七号が徐に立ち上がり、海にその身を投げ、その後も死体が上がっていない事から確認のしようも無い。

だけど、

 

「信じたいじゃない。きっと、悪いヤツじゃないって」

 

クウガとは違うかもしれない。

でも、少なくとも二回目の十二号Bとの戦いでは、殺されそうになった警察官を無言で庇い助けもしたという。

残酷な振る舞いにも、死体を傷付ける行為にも、何か理由があるかもしれない。

少なくとも、人間に危害を加えようとするまでは、信じてみたい。

五代雄介という男は、希望を信じようと、そう思うことのできる男だった。

 

―――――――――――――――――――

 

結果として、俺の思いつきは想像通りの効果を発揮した。

人間体に戻って、人間の死体の顔を晒されるのは実に精神に来るものがある。

結局、変身後と変身前の姿である事に代わりはなく、謎の石の力で肉体を変異させた古代人……人間を殺している事に代わりはないのだけど、見た目の問題というのは心理的な影響力が高い。

人間を殺したと思うか、謎の怪人を殺したと思うかで、心に掛かる負荷は大きく変わるのだ。

 

死ぬと火葬せずとも灰になるような生き物は人間ではないと思えるし、そもそも生まれから人間でない連中とか、死に際に現実感が無い連中はストレス無く殺せる。

であれば、グロンギの連中もまた、人間の姿を晒そうとしても晒せなくさせてしまえばいい。

 

未確認生命体十二号B、ズ・ネズモ・ダ。

彼(人間体はまともに確認していないけれど、ボディラインと装飾の類から恐らく男だろう)が、ズ・グジル・ギと較べて力が圧倒的に弱く、恐ろしく早いという訳でも無く、戦いの巧者という訳でもない、とても戦いやすい相手であったのも幸運だった。

基本的に超再生能力を持つグロンギ相手には持久戦で徐々にダメージを蓄積させて戦うという選択肢はない。

故に、特定部位を破壊し、その破損状態を保ったまま殺害しようと思えばかなり手間が掛かる。

練習台としては実に都合が良かった。

 

基本はストーム、トドメにフレイムが基本になるか。

トリニティフォームが使えるようになれば、その状態で武器を一本づつ生成して戦う事でスムーズに事が運べるとは思うのだが、それは今後の練習次第だろう。

クウガには属性攻撃の様なものがないからグロンギの耐熱性が分からなかった。

が、少なくともズ階級のグロンギであれば、顔面にフレイムセイバーが突き刺さるし、その状態で思い切り気合を入れて火を出せば、頭を灰にする事はできなくても、消し炭同然にできる事も確認した。

直後にセイバーを引き抜いてゲドルードを切断、腹を割いてゲブロンを引き抜いたので、頭部を焼く事で殺害することができるかは分からなかったが、どうせズの耐久力で試した所で余り意味はない。

 

変身後の状態で焼いておけば、変身が解除されたとしても焼けた頭部はそのままなのは確認できたのだ。

ストレス無くグロンギを始末するには、どうにかして顔面を跡形もなく焼いておく、というのが、現状での最適解だろう。

 

ぴぴぴぴ、と、セットしておいたタイマーが鳴る。

時刻は夜八時半。

この空き地から家まで歩いて十分くらい。

だが、歩く速度を遅めに取ると考えれば、この時間がギリギリだろう。

進学が決まったとはいえ、まだ消化試合の様な授業もある。

重量バランスをストームハルバードに似せた木製の棒を袋に入れ、鍛錬を終える。

その内、フレイムセイバーに重量バランスを似せた木刀も使って一刀一槍の訓練もするべきなのか……。

何の鍛錬もせずにアギトやクウガの力を万全に使いこなせれば省ける努力だが、体を動かすのは気分転換にもなるから嫌いではない。

鍛錬は、嫌いではない、のだが。

 

「……はぁ」

 

空を仰ぎ、溜息を吐く。

周りに碌に街頭がないからか、光の粒をぶち撒けたような星空が広がっている。

二月も終わる時期だというのに未だに息は白いが、雪は殆ど積もっていない。

視線を下ろす。

 

「────」

 

雪も無い、星明かりにだけ照らされた、森の中の小さな広場。

その中に、黒い、或いは白い妖精が居た。

丈の長い、足元まであるような黒いダッフルコートに身を包んだ、『蒼白い肌に、くすんだ白い髪』の少女。

闇夜にぼうっと栄える色彩の体色をした少女は、切り株に座ったまま、薪の隙間から覗く火にも似た赤い瞳を、じぃっ、と、此方に向けている。

怒りでも、喜びでも、悲しみでも、楽しみでもない。

ただ、目の前に居るから見ている。そんな眼差し。

 

「『ジル』、行くぞ」

 

此方の呼びかけに、平静な視線を向けたままこくりと頷く。

ぐ、と、足に力を入れて立ち上がり、ひょこ、ひょこ、と、覚束ない足取りで近づいてくる。

互いに手が届く、という距離に達し、少女は、此方にタオルとコートを渡してきた。

 

「うん……ありがとう」

 

「────」

 

戸惑いながらも礼を言うと少女は、す、と目を細め、闇夜に浮かぶ様な白い顔に、薄っすらと笑みを浮かべた。

可愛い。

彼女の出自を知らなければ、素直にそう思えただろう。

 

受け取ったタオルで汗を拭き、コートを羽織る。

すると、少女の白い手がコートの袖を掴む。

指先でつまむのでなく、手全体を使って思い切り掴んでいる。

だがその握力は驚くほど弱く、振り払うまでもなく、少し俺が大きく腕を振っただけでするりと袖を離してしまうだろう。

 

仮に、仮に彼女の遅すぎる足に合わせず歩いたなら、彼女は家までの道のりの三分の一程で力尽き、そのまま倒れ込む可能性すらある。

杖代わりになってやらねば、今の彼女は長距離を歩き抜く事すら難しいのだ。

故に、鍛錬を切り上げる時間は早めに取るし、歩く速度はかなり抑えなければならない。

 

何故か。

これが仮に何かの喜劇であり、俺の思考がモノローグかなにかであれば、懸命なる観客の諸君はそう思うだろう。

内、何人かは『だろうな』などと、訳知り顔で嫌らしいニヤけ面を晒しているかもしれない。

 

だが、この世は舞台ではなく、俺の人生の、少なくともこの時間。

何故と問うのは俺であるし、だろうなと、この始末に諦めの感情を抱くのも、やはり俺しか居ないのだ。

因果応報。

だが、死んでしまえば、浮世の咎には囚われないのか。

それとも、死してなお許されぬからこそなのか。

 

ああ、神よ。

来年には超能力者狩りを、そして人間狩りを始めるようなのではない、居るかどうかもわからない真っ当な善なる神よ。

もう少し、こう……、手心とか、ありませんか。

少し、ほんの少しで構わないので。

生きていきやすい人生を、お願いしたいのですが。

 

 

 

 




☆顔面にフレイムセイバー突き刺して頭の中から炎で焼き潰して動かなくなった死体のベルトを腹部毎切断して内蔵掻き分けて魔石えぐり取るマン
戦闘直後は炎を吹き出す剣を片手に下げ、血塗れの手に持った謎の石をしげしげと見つめてなんか頷いてるとかどう考えてもお近づきになりたくないですやんか
精神的負荷を極力抑え、なおかつ再利用可能な可能性のある謎の力を備えた不思議アイテムを回収し、なおかつ周辺の建物一般人警察官の方々への被害を最小限に抑える為の戦法である
中の人は猟奇殺人犯かもしれないなどと言ってはいけない
自分への甘えと保身と周囲への配慮を絶妙なバランスで両立した現時点で恐らく最良の戦法なのだ
助けられた警察官も居るみたいだけどこの戦い見ただけで印象はマイナスに振り切れるのでは?
諦めて爆発を許容するか、封印した上でトドメを指す為に封印の練習をするかすれば幸せになれるかもしれない
そもそもゲブロンとか集めてどないするねんお前……使いみち色々ありそうだけど
そんなこんなで天罰として謎のアルビノ系ヒロインが生えた
現在ゲブロン所持数二個

☆マナーモード嫌いマン
五代雄介と協力関係になった後、科捜研の人に「彼女できた?」とか言われる人
グムン君撃破直後の五代と背中を預けて座り合うところはちょっと擁護できないレベルで狙ってるとしか思えない
フェリーの乗客はグジルこと七号の鰭撃ちパンチで破裂したけど、この人はくらってもぐぅっ、って唸った後にすぐ銃を構えて応戦できる疑惑がある
実はオルフェノクとかアギトとかグロンギとか鬼とは違う方向に進化した人類なのでは?
偽四号に対する印象は悪い
当然のことじゃないですかね

☆二千の技を持つ笑顔が素敵な旅人
クウガのマークの刺繍うますぎない? たぶんあれも二千の技の一つ
五代さんキャンプ飯とか凄く上手に作りそう
世界中旅してるんだから一度や二度は魔化魍とか海外組織の怪人と出くわしてそうだなって思う
でも海外に別のライダーが居たとして、彼等は彼等で戦ってるのを知ってるから、苦しいのも悲しいのもこらえて今日も拳を振るい、みんなに笑顔を向けるのでした
そんな笑顔を曇らせた顔面焼いて内蔵抉るマンとかいうのが現れたらしい
しかも姿は四号に似せてるとか……ユグドラシル絶対許さねぇ!(冤罪)
因みにグロンギを一年殺し続けてきた事が深い心の傷となり、その後十年以上放浪の旅を続けても心の傷は癒えない模様、詳しくは小説を読もう
そんな人の笑顔を曇らせたとか、ユグドラシル絶対許さねぇ!(誤認逮捕)

☆謎のヒロイン
この世界、人間なら誰でも死亡時に一回だけ引ける蘇生ガチャがあるんだけど……回してかない?
元ネタのキャラの画像を久しぶりに検索してみたら、この子目の当たりに青い炎みたいのがあったなぁって思ってこうなった
罪の証は死ねば忘れられるが、生きて隣に居ればそうそう忘れられない
立ち位置的に準備さえ整えればいつでも殺せるし場合によっては聖なる泉の底の栓を抜く係にもなれる
逆に延命処置もあるっちゃある
諸々の説明は次回やるって昔は毎回言ってた記憶がある
次回やる
やるとは言ってない
いややる
ヤッテヤルデス
でも本編時間すすめるのが優先な


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4 罪科、問われず

「ごちそうさまでした」

 

「はい、お粗末さまでした」

 

両の手を合わせ、食事とそれを作ってくれた母への感謝を定形で現す。

世界に平和が訪れ無さそうだろうと、一年以内に一夜にして三万人が死ぬ大災害があろうと、来年にはテオス某とかいうンより遥かに危険な糞による蠍座の人間に幻覚を見せて殺すというルールのゲゲルが始まろうと、生きている以上、腹は減るのだ。

緊張のしすぎで味がわからなくなる、なんて話をよく耳にするが、最近はこの世界の驚異を想定して得たストレスで食事が楽しめないなんて事も、ストレスでゲーゲーしてしまう事も無くなった。

人間の顔で死なれると嫌、というのは今でも変わらないが、グロンギの頭を焼いた帰りに、東京と実家の中間地点くらいの都市でちょっとおやつ代わりに焼き肉食べ放題を食べていくのも平気になった。

 

もしかすれば、これこそ脳に神経を到達させたアマダムの齎す変化という可能性もあるのではないか。

事実がどうあれ良い徴候である。

辛いことも面倒な事も確実に何処かで向き合わなければならない以上、楽しめる場面では楽しんだほうが心の健康によろしい。

食事は心のオアシスだ。

再来年にでもなったら温泉にでも行ってみるのもいいかもしれない。

 

「……、っ」

 

無言、というより、体の動きに合わせて出る呼気の音が耳に入り、食後の満腹感に過剰に精神を任せる事で逸していた意識が、隣の席に向いてしまう。

かちゃ、かちゃ、と、慣れない、というよりも、単純に動作が意識に追いつかないのであろう、不器用そうな音が聞こえる。

視線をチラリと向ける。

俺の席の隣、少し前まで来客用にと用意されていた予備の椅子に座って、白い頭と白い顔、意味のない英単語が羅列された黒いパーカーを着た少女が、白い手で拳を握るようにして持ったスプーンで、ハヤシライスを相手に四苦八苦している。

無言で、スプーンが握りしめられた手を取り、指を一本一本ほぐす様に解き、正しいスプーンの握り方に治す。

五指で握ると確かに普通よりも力は入るが、スプーンを持ってご飯を掬うくらいであれば、食べやすい正しい握り方の方が適している。

……分からなかった、というよりは、自分一人ではそこまで複雑な動きができなかったのだろう。

 

「悪い、気が利かなかった」

 

「──」

 

ふるふる、と、少女が小さく首を振った。

ふわりと癖のある髪を揺らめかせながら顔をこっちに向け、口をぱくぱくと動かす。

あ、い、あ、お、う。

ありがとう、だろうか。

 

「ん、どういたしまして……、ちょっとそのまま」

 

口の周りがハヤシライスのルーで汚れているので、テーブルの上に置いてあるティッシュで拭いてやる。

 

「これでよし」

 

「────!」

 

に、と、歯をむき出しにした、快活そうな笑みを向けてくる。

無邪気な笑みだ。

たぶん、邪気は無いのだろう。

邪気がない、というのは、敵意がないのとも、害意がないのとも、殺意がないのとも違うのだが。

 

「あら、あら、本当に懐かれてるわね」

 

「母さん、犬猫じゃないんだから……」

 

少なくとも、現時点で彼女の知識量と知性は犬猫よりはましな筈だ。

或いは、俺のそれを遥かに上回っている可能性だってある。

少なくとも、医師の診断を誤魔化す手段は幾つか思い当たる節がある。

彼女がその知識を得ていないという証拠は何処にもないのだ。

……悪魔の証明ではあるのだけど。

 

―――――――――――――――――――

 

犬猫ではない、とは言ったが、現在の彼女はまるで犬猫の様な気軽さと手軽さでこの家に引き取られた。

父さんが警察官であり、母さんは父さんとの結婚を期に前の職を退職したのだというが、何かしらの法律に関わる仕事に就いていたのかもしれない。

俺が戸惑い、どのように言いくるめて彼女を家で預かる……というか、引き取るのを止めさせるか考えている間に、諸々の手続きは済んでしまっていた。

手早いにも程がある。

 

遡ること数日前、具体的に言えば、俺がズ・ネズモ・ダを使って新しい戦い方を試しに東京に向かっていた日の話だ。

買い物に出ていた母さんが家に帰ると、襤褸同然の服を纏った彼女が、家の玄関先でぶっ倒れていたらしい。

薄汚れ、酷く衰弱しているのを見て取った母さんは一度家に彼女を担ぎ込み、休ませようとしたらしい。

何故警察に通報しなかったのか……。警察官の家族が何故警察に通報するべき場面で警察に通報しなかったのか……。

いや、通報は後でしたらしいのだけれど、そういうのは普通はどこかしらの施設に預けられるのではないか。

 

だが、そうはならなかった。

背中にある大きく鋭い刃物で切り裂かれ、貫かれ、挙げ句まともに縫合もされないまま放置されたと思しき傷。

お腹側にも創傷はあり、恐ろしいことに背中から突き刺されて貫通したものである可能性すらあるらしい。

人相特徴は捜索願の出ている行方不明者のどれとも一致しない。

髪の色、肌の色から日本人ではないようだが、顔立ちは明らかに日本人のそれ。

挙句の果てに、何らかのショックが影響なのか、彼女は声が出せず、自分が何者であるかもわからないのだという。

 

嘘くさい。

本当か?

声を出さない、記憶がない、というのは、そうであるフリが比較的容易な筈だ……。

だが、医師はそう判断した。

俺も同行したので間違いない。

あの医者はヤブかもしれない。

今後はあの病院の利用は避ける方向で行きたいものだ。

 

つまり彼女の現状をまとめると。

大きな負傷に対してまともな治療を受けさせて貰えない生活環境だった可能性が高く。

失声症に掛かるほどの精神的負荷を掛けられ。

服も肌も髪もボロボロになるほど長期間放浪したにも関わらず、保護者は捜索願を出していない。

 

……うん、これは犯罪だね、間違いない。

家族の元で生活していたのだとしても、この様な状態にしてしまう家族の家に預けたままにはできないだろう。

仮に家族が名乗り出たとしても、この少女は保護施設に預けられ、家族にはそれ相応の指導が下される筈だ。

家族による虐待が法で裁かれないのは、偏にその現状が家の中だけで完結し、外に漏れにくいからだ。

一度警察に保護され、肉体に残された虐待の跡などが見つかってしまえば、行政はそれなりに温情のある処置を被害者に行ってくれるし、親には相応の沙汰が下る。

いろいろと批判される事は多いが、この国の法は正常に作動すれば弱者をそれなりに手厚く保護してくれる。

 

保護してくれる、筈なのだが、何故か家に引き取られる事になった。

見た目から明らかに未成年ではあると思われるのだが、不思議な事だ。

だが、実は家で引き取る事になったのにも理由がある。

 

身元不明、捜索願無し、記憶無し、声出ない。

これらの証明は、全て、俺の目の前で行われた。

何故か、と言えば。

……彼女は、俺を経由しなければ、まともに他の人間と接する事をしないからだ。

正確に言えば、母さん経由でも多少の受け答えはできるのだが、何故か俺の言葉にはきっちりと反応を返す。

他人を警戒している、というわけではなく、どうも、俺に対して執着があるらしい。

怖い。

 

怖いが、何故怖いのかという理由を口にする事ができない。

結果的に、このままどこかしらの施設に預けてもまともな社会生活を送れないだろうと結論付けられた。

担当してくれた行政の方々も、父さんと母さんの下であれば、と、この家で一時的に引き取る事を承諾して下さった。クソみたいにありがたい話だと思う。

あと、母さんの行政とか警察からの信頼感が半端ないのだけど、なんなのか。

 

……ただ、単純に彼女が施設ではまともに生活できないから家で引き取った、というだけではなく。

やはり、同情もあるのだろう。

医師の診断によれば、背中の傷が原因なのか、まるで全身の神経や筋肉を引き裂かれて放置されたかの如き後遺症が残っているらしい。

現状、立って歩けているのも奇跡なのではないか、という程の身体能力しかないらしい。

単純な筋肉の衰弱とは異なり、指先の細かい動きにも支障があり、リハビリを重ねても完全に元に戻るか不明な状態であるらしい。

更に、背中から腹部までを貫通したと思しき傷は内蔵にも傷を残しており、一部は正常に機能しなくなっているのだとか。

無論、それで人生の全てが損なわれる、という訳ではないが……。

女性であれば、同情を覚えるのは仕方のない事だろう。

 

もう止めてくれ。

わかったから。

かわいそうだし、俺に懐いてる風だから、家で引き取ってあげたいってのは凄くわかるから。

懐かれてる風だし、無理のない程度に面倒を見てあげてってのも受け入れるから。

今までひどい目にあってたみたいだから、せめて家では暖かい家族として接してあげてとか、もう、わかったよ、わかったよ、もう!

こんな酷い怪我をさせるなんてどんな悪党が、とか、いや、わかるよ!

大丈夫だから!

酷い奴だよね!

わかるわかる!

俺も頑張って世話するよ!

 

そんな訳で、彼女は家で預かる事になった。

名前は、幾つか普通の名を候補として呼んでみたのだがどれも反応せず、俺がいやいやながらに彼女の耳にだけ聞こえる様に口にした、反応しそうな名前に見事に反応したので、その名を縮めて『ジル』と名付けた。

父さんが東京への出向から帰ってきたら、もしかしたら養子縁組の手続きとかもするかもしれないのだという。

愛のない家族から虐待を受けていたか、何処かで犯罪者に監禁されていたか。

そんなひどい目に合っていた少女は、晴れて何の不幸もない一般家庭に引き取られたのでした。

そして俺にはアルビノの超美少女な義理の妹ができる。

わー、うれちい、泣いちゃいそう。

めでたしめでたしだぞクソが、可及的速やかに静かに誰にも悟られずひっそりと寿命とかで死ね。

 

……勿論、そんな訳はない。

彼女の家庭環境は知らないが、少なくとも虐待を受けて反撃しないような大人しい性格ではないだろうし、仮に一方的に彼女を虐待し傷付ける事ができたとしても、その傷は残る事はないだろう。

彼女の背に傷が残っているのは虐待された後放置されたからではなく、彼女の肉体の損傷を治す機能を有していた超常の力を持っていた石を抉り出したからだ。

目的も虐待ではなく殺害を目指したものだし、事実として彼女は絶命した。

 

全身に重度の後遺症が残っているのは、全身に張り巡らされ、そして脳にまで達した人間には無い器官から延びた神経が無理矢理に根本から引きちぎられたからだろう。

魔石ゲブロンが霊石アマダムと同じ力を持っていると考えれば、全身を作り変え、作り変えられた肉体を管理しているゲブロンは装着者にとって第二の脳であり心臓であり脊髄のようなものですらある。

アルティメットフォームのクウガが恐らく傷ついたベルトに神経断裂弾を喰らえば絶命する程のダメージを受けるように、グロンギもゲドルード内部のゲブロンを引き抜かれれば絶命するのだろう。

それこそ、全身の神経や筋肉をズタズタに引き裂かれる様にして、だ。

 

そう、彼女は、死人で、既に遺骸であるべき人間なのだ。

名を、ズ・グジル・ギ。

ゲゲルの参加者の一人であり、ゲゲルを完遂できなかった、ありふれた脱落者の一人。

俺が殺した筈の相手だ。

 

そう、殺した。

背を斬り付け、一瞬の硬直の隙を突いてゲドルードを破壊し、変身が維持できなくなった所を蹴り倒し、這いつくばって逃げようとした所を背を踏み地面に縫い付け、背後から心臓を槍で貫いて、完膚なきまでに殺した。

……殺した後に、死体を放置して、帰ってしまったのだ。

死体は完全に破壊すべきだった。

人の顔を見るとストレスが云々などという、俺の精神面での問題などではなく、極めて危機的な理由で、だ。

首を、首を切り離す程度の手間を足すだけだったのだ。

 

この世界では、死亡した人間は須らく、一度だけ蘇りのチャンスが与えられている。

病気で死のうが、餓死しようが、怪我で死のうが、平等に。

勿論、誰かに殺されたとしても。

人であるのであれば、必ず、可能性がある。

そして、グロンギも、条件は俺達と変わらない。

ゲドルードを巻き、体内にゲブロンを埋め込む事で変身能力を得ただけの人間なのだ。

忘れていた、という訳ではない。

考慮の外だった。

考慮して然るべきだったのだ。

ただ、俺が迂闊だった。

それだけの話だ。

 

幸いなのは、『彼女が家に引き取られた事』だ。

不幸なのも、『彼女が家に引き取られた事』だ。

 

現状、彼女の肉体は正常ではない。

一度死に、蘇生したとしても、生前の怪我が完治する訳ではない。

こればかりは情報がそれほど多くないので詳しくは不明だが、少なくとも生前の負傷の後遺症を残したままのオルフェノクは存在するし、逆に死亡の原因となった病や怪我は治っている筈なのだ。

死亡から蘇生までのタイムラグの間に作られた傷がどうなるか、というのも不明だし、恐らく個体によってまちまちなのだろう。

或いは、ゲブロンが引き抜かれた後にも残滓程度に肉体の再生能力が残っていた為、古めの傷である背中と腹部の傷は塞がっていたのかもしれない。

 

ともかく、今の彼女は、とてもゲゲルができる程の力を持っていない。

記憶の混濁、記憶喪失? が本当であるとすれば、そんな心配をする必要はないのだが。

怪我の後遺症か、オルフェノクが持つ人間体でも発揮する事ができる恐るべき身体能力も見られない。

勿論、これも演技である可能性があるが、電気刺激などを駆使してしまえば筋力の確認というのは実は誤魔化しにくい。

外部から筋肉の反応を確認する事は難しくなく、神経の障害を考慮して医師もその診察を行った。

その上で筋力が恐ろしく低いと断じたのだ、これは信じても問題ないだろう。

 

まず幸いなのは、彼女が俺の認識の外で自由にされなかった事だろう。

下手に記憶を取り戻し、ゲゲルを再開する、なんて考えられたなら大変な事だ。

人間の姿ではああでも、オルフェノクへの変身能力を万が一自覚すれば、それを駆使してゲゲルを再開しかねない。

なにか怪しい行動を起こせば、直ぐにでも対処する事ができる。

 

不幸なのは、彼女が家に常駐している事か。

母さんも常に家に居るわけではないが、少なからず俺が居ないけれど母さんが居る、という時間はある。

……現状の彼女の体力では、母さんを殺す事すら難しいだろう。

だが、やはりオルフェノクとしての変身能力を自覚してしまえば、殺すのはそう難しい事で無くなってしまう。

幸い、母さんが今の仕事、パートから帰ってくるのは夕方だし、仕事は週に五日入れている。

月から金であれば、学校が終わり次第急いで家に帰れば、そういう時間は減らせる。

 

不幸中の幸いは、恐らく、彼女が記憶喪失である、という点はかなりの確率で真実だろうという事。

同じくらい幸いなのは、間違いなく彼女の……ズ・グジル・ギのゲゲルはタイムオーバーである事。

我ながらファインプレーだと思うのは、彼女は俺にゲブロンを奪われている、という事だ。

 

夜の鍛錬に、母さんと二人きりにさせない為にリハビリと称して連れ出した後、俺は彼女に変身後の姿を見せてみた。

彼女は俺が姿を変じさせてみた事に驚きこそすれ、それに対して憎悪や怒り、恐怖といった感情を抱いているようには見えなかった。

更に、グロンギ語を駆使して散々にゲゲル失敗や見事に俺に負けた事実などを論って煽ってみたのだが、心当たりがないからかそもグロンギ語自体を忘れているのか、不思議そうに首をかしげるばかり。

煽られたなら『ふざけんな殺すぞ死ね(攻撃)』とばかりに即座に報復に出るグロンギロジックからは考えられない反応は、俺の拙い煽りに砲撃の様なパンチで即レスを返してくれた生前の彼女の反応とはかけ離れたものだ。

記憶があれば、間違いなく取れない反応だろう。

 

ゲゲルのタイムアップに関しては、間違いなく過ぎていると考えていい。

ズのゲゲルは言わば予選。

数を熟す事も重要になっている為、目標人数は少なめで時間制限も短めだ。

ゲゲル開始が五日、発見時が十九日で、二週間も経過している。

少なくとも、即座にゲゲルを再開して殺し始めるという事は不可能だし意味もない。

 

そして、グロンギにとってゲゲルは神聖なものである。

ゲゲルの遂行のために他のプレイヤーに助けを求めるのは重大な違反行為であり粛清の対象となるし、そうなればゲゲル参加の資格を奪われ、石は回収される。

これは、ゲゲルの進行を管理しているラ・バルバ・デの発言だ。

この発言をした際に粛清されたプレイヤーはゲドルードを引き剥がされ、ゲブロンを回収されている。

この事から、恐らくゲブロンというよりも、外装にして変身機能を管理するゲドルードの方こそが、参加権でもあるのだろう。

 

そして、現在のズ・グジル・ギにはベルトが存在しない。

俺が壊したからだ。

つまり、彼女の生存がバルバに伝わったとして、ゲゲルを再開できる可能性は極めて低い。

ベルトを修復するのは職人であるヌにしか行えず、その職人も現在はン・ダグバ・ゼバのベルトの修理に掛り切りな筈だ。

そうでなくても、ゲゲルに失敗したズのベルトを改めて修復してゲゲルに復帰させるかは微妙なところ。

 

本来、ゲゲルの失敗は即座に死を意味する。

ベルトが壊れて死ななかったからといって、コンテニューが許されるようなものではないのだ。

ゲゲルとは、ゲゲルであって、ゲームでない。

美しい575であり、これがグロンギにとっての真実だろう。

 

危険は少ない。

俺が監視を続ける限りは、という前提はあるが。

そして、それも永遠に死ぬまで続けなければならない訳ではない。

一度死に、オルフェノクとして蘇生した以上、彼女の寿命はそう長いものではない。

長く見積もっても十年。

これからリハビリを続けてどれだけ結果が伴わなく、延々介助と監視の日々が続くのだとしても、十年もすれば、彼女は灰になって死ぬ。

僅かな労力だ。

少なくとも、彼女をオルフェノクにした時の命がけのそれと比べれば、遥かに精神的、肉体的負担は少ない。

 

今直ぐに殺して、俺や母さんに何らかの疑いの目が向けられたり、母さんが悲しんだりするのに比べれば、よほど気が楽な作業だと断言できる。

十年も経てば、彼女は見た目完全に大人になるし、ふらっと何処かに失踪したとしても悲しみは少なくなる筈だ。

元を正せば俺の迂闊が招いた結果なのだから、喜んでこの負担は背負わせてもらおう。

 

―――――――――――――――――――

 

そういう訳で、母さんと俺の二人暮らしと化していた我が家に、居候にして恐るべき義妹候補にしていざとなれば抹殺対象となるジルが加わり、しばしの月日が流れた。

幸いにして推薦入試にて地元の公立高校の合格が確定していた俺は、残りの中学校生活を思う存分満喫した。

そして授業が終われば数少ない友人からの遊びの誘いをそれとなく断って家に全力ダッシュを行い、即座にジルの監視及び介助を始める。

 

高校での勉強内容を予習(復習)したりする時も、部屋にジルを居させておく。

勉強の合間に、現代での一般常識が無い(記憶喪失のせいだと思われている)彼女に、リントの常識、倫理観、道徳心などをレクチャーしていく。

文字の読み聞かせなどから始まる基本が早々に完了したのは、彼女の脳がやはりグロンギとしての学習能力を残しているからか。

労力が少なくて済むのは良いが、根幹の倫理観にグロンギの気風が残っていたなら危険かもしれない。

現時点で、スポンジが水を吸うように素直に学習しているが、危険と言えば危険だろう。

 

映画、ドラマ、アニメ、漫画、小説、漫画などなど、情操教育に使えそうなものも、逐一チェックしながら見せ、それに対する反応を観察していく。

彼女はなにもない時はぼうっと呆けたような顔で居る事も多いのだが、楽しければ、面白ければ笑い、喜び、悲しい時に涙を見せ、恐ろしげなものには恐怖を現し、理不尽には怒りを見せた。

子供のように素直に感情を表現する様は、まるで普通の人間と変わらないようにも思える。

だが、それらの感情の殆どはグロンギも持っているのだ。

悲しみの感情を示したグロンギを俺はついぞ見たことはないが、その感情を持っていないとは言い切れないだろう。

 

グロンギにも個性があり、ものの好みがあり、ギャンブルや文学を楽しむタイプすら存在する。

感情を素直に現す、というのは、グロンギではない事の証拠足り得ない。

危険かどうかは、やはり逐一監視して、その都度判断するしかない。

 

時折、俺の監視の視線に対して視線を返し、にぃ、と笑みを浮かべる事がある。

その笑みが『上手くリントのマネができてるだろう』という意味でないとは、誰にも断言できないのだ。

やはり、監視は必須だ。

猛士の皆様にどうにかお願いして、ディスクアニマルの使い方だけでも習得させては貰えないだろうか。

監視以外にも、ディスクアニマルの可愛らしさは情操教育にも役立つ筈だ。

記憶が本当に消えていた場合でも、きっとプラスになる。

 

―――――――――――――――――――

 

そんな日々を過ごし、とうとう俺は中学を卒業した。

三年の月日を過ごした校舎に別れを告げ、母さんに正門の前で記念写真を撮ってもらう。

一枚撮った後、何故かジルも一緒に写真を撮った。

写真に写して見る事でなにかわかる事もあるかもしれないし、別に減るものでもないので共に写真を撮る。

見た目の感想としては、白い肌に白い髪に、黒い礼服はコントラストがキレイだな、という程度か。

母さんに感想を求められたので口にしたら、白に少しだけ赤が指していた。

まだリハビリの成果もクソもない時期だ。卒業式の人混みで疲れて熱が出たのかもしれない。

体調を崩して意識を失い、悪夢の中で過去の記憶の断片を垣間見られても困るので、早々に家に帰るべきか?

そう思っていると、同じクラスの友人、更に顔見知り程度の連中にまで、ジルの事で質問攻めに合った。

 

まぁ、わかる。

いきなり卒業式に漫画の登場人物もかくやというアルビノ美少女が現れたら、それは思春期の少年少女であれば何らかの反応を示してしまうだろう。

当然、やましいことも無いので、怪我の跡とか虐待されてた疑惑とか、そういう好奇や同情の視線を集めそうな話題は避けて説明する。

身寄りのない子であり、ちょっとした縁があって家で引き取った事。

何故か懐かれているので、不自由がない様に俺が生活の諸々を手伝っている事

そのうち家族になるかもしれないこと。

 

数少ない友人達は、驚愕の表情で俺の説明を受け入れ、何故かいくらかの軽い罵声を浴びせてきた後、祝福の言葉を掛けてきた。

情緒不安定なのかもしれない。可哀想に。

そして、卒業式の後に俺の事を校舎裏に呼び出していた、ちょっとだけ名前を貸して稀に助っ人で顔を出して指導したりしていた剣道部の後輩の女子は、涙ながらに別れの言葉をくれて走り去っていった。

校舎裏への呼び出しはもう良いらしい。

お礼参りかと思って密かに用意しておいた伸縮式警棒は不要になったが、なんだったのだろうか。

涙の理由とか呼び出しの理由とかを確認する為にちょっと呼び止めようとしたら、まぁまぁ仲のいい友人に『今はそっとしておいてやれこのクソが』と言われた。

何だよ人をクソ扱いするとかこのクソが。猫のうんこ踏め。

 

高校進学で別れたり別れなかったりする友人達としばし騒ぎながら、中学生活を、そして、最近の激動と言って過言でない日々を振り返る。

 

二度目の人生イージーモードだな、などという甘い夢から覚めたり。

この世界が地獄である事を再確認しつつ試作アークルを巻いたり。

日常に潜むオルフェノクとかいう元人間の害獣をどうにかこうにか始末したり。

魔化魍を頑張って散らして猛士に匿名で通報して、遠間から音撃ライブの生演奏を聞いてちょっと嬉しかったり。

グロンギを殺しに行って新聞に載ったり。

殺し損ねた相手の面倒を見ることになったり。

 

いろいろと、普通の人生では経験したくない事も経験できない事もたくさんあったが、それを差し引いても、良い中学生活だった。

これから、何処まで行けるのか、何時まで生き残れるかはわからない。

だけど、この三年間は、間違いなく俺の人生の中で輝かしい時間だったのだと断言できる。

願わくば、高校での三年間も、負けないような素晴らしい時間を得られます様に……。

 

「──」

 

くい、と、手を掴まれた。

ジルが手を掴み、母さんが回してくれた迎えの車に引っ張って行こうとしている。

白く、冷たく、頼りない力で引かれる手。

その手が、少しだけ、似ていると思った。

未来は白紙で、先行きは凍えるように寒く、先に進める保証は無いに等しい頼りない道行きで。

そして、何時か、絶対に消えてなくなる。

 

何処かで、確実に途絶える。

先にあるのは、一度だけ体験した、絶対に忘れることのできない結末。

死。

絶対の無。

約束された、唯一平等な結末。

 

一度だけ、もう一度だけ校舎を振り返る。

徐々に解散していく友人達に手を振り一度の別れを告げて。

頼りない力で引っ張ってくる手に逆らわず、歩き出した。

 

 

 




☆今回は別に最終回じゃない今後十年くらいのヒロイン介助生活を余裕で覚悟してるマン
オルフェノクの寿命考えれば最後まで監視するくらい楽勝楽勝
ここから十年だとディケイドだから無事そこまで生きてもおのれディケイドみたいになる
そもそも寿命死見届けとか展開盛り上がらないから間違いなく無いけど作中で普通に人生送ってる主人公君は物事を道理で考えるのでそこら辺には思い当たらないのだ、タァーッ!(嘲笑)
殺したのは自分だし蘇生を許してしまったのも自分だし後遺症残したのも自分なので責任は取るし、石が無くなってグロンギとしては無力化したけどグロンギの種族的思考法にオルフェノクのパワーが合わさると大変危険なので監視もする
夏目ちゃんが警察に0号調査せんと死ぬで、ワイが。とか脅しかける話は当然スルー、行く意味無いので
中日にあった日曜にゲゲルしてる連中は今回スルー、監視があるからね
今後は同伴させる可能性があるけど、連れてくのも危険ちゃ危険、どうしよう、解決法が思い浮かばなかったらこのSSは爆発する
マシントルネイダーにタンデムは危険なので背もたれ増設された絶妙にダサいマシントルネイダーが爆誕する可能性、あります
因みに今回蘇生阻止戦法を試す為にイカを焼きに行く予定だったが、ヒロインの説明が長くなったので今回は卒業式回
生き残りに必死だから人間関係への気配りは最低限な!

☆薄幸の虚弱ヒロインジルちゃん
元ズ・グジル・ギにしてゲゲル脱落記憶喪失虚弱系ヒロイン
記憶喪失かどうかは不明
記憶を取り戻すかは秘密
たぶんクウガ編は乗り越えられる
空の器とかスプーンは辛うじて持てるけど、中身の入ったカレー皿とかは持ち上げられない
手を握ったり閉じたりはできるけど、手指を複雑に動かす事はできない
一人で歩こうとすると割とコケる
あと風邪とかもひきやすい
弱体化の理由はあれ、デモンパラサイトの長期間共生生物に寄生されてた悪魔憑きが能力失うと後遺症出るのと同じ感じと思ってもらえれば
着替えは主人公が手伝うし、お風呂も主人公が手伝うし、食事も主人公が手伝う
めっちゃ主人公に懐く
なんか心臓ぶっ刺されて死んだけど生き返った
この世界特有の現象やで工藤、わかるか工藤、殺人事件やけど無効事件やで工藤
でも主人公の家の前に正確に辿り着けた理由はここまで一切説明してないんやで工藤


今回は原作絡まない説明回でした
残念でした
次はイカを焼きにジルちゃんと手を繋いで電車で東京に遊びにいくよ
ふたりはとってもなかよしなんだね
因みにゲゲルに参加してないグロンギは結構全国に潜伏してるっぽいので集めようと思えばゲブロンはもっとたくさん手に入ります

次回

「必要な事です」
「誰もが、泣きながら戦えるわけじゃないんですよ」
「一つだけ、知っておいてもらいたい事が、あります」


【助言、それだけを】


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5 助言、それだけを

春休みだ。

春休みなのである。

 

世にオルフェノクやファンガイアを始めとする人間以外の魔族が蔓延り、時折思い出したように自然を満喫するキャンパー達が魔化魍に貪り食われ、恐らく密かにミラーモンスター達が人間を食らい、ワームが着実に人間と入れ替わり続けている。

挙げ句、今年は古代種族であるグロンギが復活して人間狩りのゲゲルを始め、自分はまだゲゲル参加券を持っていると思いこんでいるズ未満の一般グロンギが全国のあちこちに潜伏し、ふとしたタイミングでン・ダグバ・ゼバが手慰みの様にそれらを整理したりしている。

スマートブレイン(焼きたい)は新商品の人間でもオルフェノク(燃やす)でも音楽を楽しめるラジカセ(怪しい)を始めとしたまぁまぁ出来の良い家電製品(これも怪しい)を発売し、鴻上ファウンデーションは世界中で遺跡(粉々に粉砕したい)の発掘(人員焼きたい)を行っていたりする。

 

世界の危機というのは人間を基準にした言い方だから、将来的に人類から区別されそうな身の上からは不適切かもしれないが、端的に言えば人類社会の危機はすぐそこまで迫っている。

迫っているどころか、もう半ば平和な時代は終わりを告げていると言っていい。

なにかできる力があるならやらなければならないだろう。

俺はやりたくない、やりたくない、やりたくない、やりたくない、誰か他の人がやってくれるならやってほしい、やりたくないの、やりたくない。

 

しかし、やりたくないけどやるしかないからおれはきょうもやるのだ。

 

だから今日も今日とて近場の山の麓に女声の男と男声の女とでかい動く壁があったので、童子と姫をボウガンで遠距離から射殺してから動く壁は砕いて猛士に匿名で通報しておいた。

前にやった時に比べて、少ない手順で通報まで持っていけたのは、俺の日頃の鍛錬のお陰ではないだろうか。

誰か褒めてくれないだろうか。

誰かに素性ばらして事情話すとか絶対やだしバレたら可能な限り口封じをするつもりだけど。

 

思うのは、魔化魍を人力で砕くのは酷く体力を消耗するという事。

少なくともこれまでまともに相手にしたズのグロンギ二体との戦いとは比べるべくもない運動量だ。

だが良いところもある。

あからさまに化物なので、倒しても肉体的な疲労が残る程度で精神的には一切負担がない。

むしろ地域清掃のボランティア活動を終えた後の様な爽やかさすらある。

やはり殺しても気兼ねしない種族はいい。発生しなければもっといいが。

 

しかし、ジルのリハビリと称して、母さんから遠ざける為のお散歩の途中だったので、戦闘をジルが目撃してしまう事になったが、不可抗力ではないだろうか。

狙撃ポイントに置いていたのに、でかい動く壁を何度も殴ったり斬ったりして細かく割っている最中、狙撃ポイントからずうっと視線が突き刺さり続けていたのは危険な徴候なのではないかと思う。

すわ、戦いの雰囲気にあてられてグロンギとしての本能が呼び起こされたり、生存本能がオルフェノクとしての真の姿を顕にさせたりするのではないか。

と、そんな警戒心を抱きながら狙撃ポイントに戻った俺は、飛び跳ねて喜びそのまま転けそうになるジルに迎えられた。

転けそうになるのを慌てて駆け寄り支えると、声の出ない口で何事かを連呼している。

 

口の形は、う・お・い。

黒い、ではあるまい。まだ黒くないのだし。

すごい、か、つよい、か。

見たままの感想といったところだけど、これ以外のなにか致命的な意味合いの言葉だったりしたら、と思うと、素直に受け取れない。

そも、人間からクウガだかアギトだかの異形に変じて戦う事に恐怖も戸惑いも無い、という点がもう怪しい。

一般常識含む記憶がないからか?

それとも、それがグロンギにとっては当たり前の事だからか?

 

その後、休憩を何度かはさみながら歩いていると、俺の袖に掴まりニコニコと先導されて歩いていたジルが、自分から自販機に近寄り始めた。

補給用のスポーツドリンクは持っていたのだが、味が好みではなかったのだろうか。

母さんから渡されていたお小遣いを使い、なにやらドリンクを買ったジルは、それを俺に手渡し、またもや何かを発言しようと口を動かしていた。

 

『えあいああ、おおうい』

 

袖をくいくいと掴まれ姿勢を低くするように催促された挙げ句、頭を撫でられた。

指も不器用にしか動かないからか、子供がそうする様な不器用な動き。

 

『えあい、えあい』

 

……そういう唇の動きをしている、というだけで、実際に言葉に、音になっているわけではない。

無いが、グロンギ特有のリントにない文化にまつわる言葉でないのなら、何が言いたいのかは、まぁ、なんとなく予測が付く。

天を仰……ごうとすると、頭を撫でているジルがコケてしまいかねないので、瞑目する。

頭を撫でる動きは拙いけれど、細い指が髪に触れる感触は心地よい。

次の瞬間にはオルフェノクとしての真の姿を取り戻し首を折りに来ないか、そう思えば体は緊張しっぱなしだし、思いすごしであるというのなら、それはそれで罪悪感が沸かないという事もない。

頭を撫でられているが、精神的にはまるで逆剥けを繰り返し逆さになぞられる様な……。

 

──世間や世界がどうだろうが、今は春休みだ。

4月になれば高校生活が始まり、新しい人間関係に悩みながら、時に学校を休んででも東京におもむき、グロンギと戦いを繰り広げたりしなければならない訳で。

もう少し、安心して受け入れられる癒やしは、無いものだろうか。

なにせ、春休みなのだし……。

 

―――――――――――――――――――

 

春休みだからと言って、休みを享受する人間全てに等しく癒やしが約束されている訳ではない。

元グロンギの少女を監視しながら、リハビリ散歩コースを歩き、時に道端の土手でふきのとうを採取したり、スタミナ配分や移動距離を調節しそこねて力尽きた時には背に負うて帰ったり……。

癒やしとストレスのどちらをも絶妙なバランスで摂取し続ける生活を送りながら、ふと思い出す。

 

春休み、世間は出会いと別れの季節だなんだと浮かれる中、今年は少しだけ特別な季節。

そう、グロンギのゲゲル参加条件の引き上げである。

ズ集団はこれ以降、ゲゲルへの参加を許されない。

ズ集団の筆頭であるズ・ザイン・ダであっても、後はゲゲルへの挑戦を許されず、明言こそされないものの整理を待つだけの身になるのだ。

本来ならべ集団のゲゲルが予定されていた、などという話もある事を考えれば、今回のゲゲルはかなりの強行軍なのかもしれない。

 

何が言いたいか、と言えば。

メ集団の強さや如何に、という一点に尽きる。

 

別に、もっと強いやつと戦いてぇ! みたいな頭グロンギな話ではない。

これ以降のゲゲルを、俺は止める事ができるのか、という話だ。

勿論、俺は全てのグロンギを倒す、ゲゲルも止めて被害者も減らす、なんていう殊勝な考えを持っている訳ではない。

無いが、東京、というか、対策本部には恐らく父さんが居る。

父さんが矢面に立たされている以上、可能であれば死なないようにしたい、とも思っている。

 

そして、父さんが死なないように、という事は、警察に被害の出るゲゲルには介入し、プレイヤーを倒す、ないし、プレイヤーが警察へ攻撃を加えるのを阻止しなければならない。

父さんだけを庇うという方向性なら身の危険は少なくできるかもしれないが、そうなると身バレの危険性が付き纏い始める。

個人個人の警察官の善性を信じることができたとして、この世界の警察という組織全体の善性を信じるのは難しい。

少なくとも、警察の一部はオルフェノクに対して人権を意識していない類の行動を取れてしまう事は証明されているのだ。

人体改造……いやさ、オルフェノク改造という狂気が、クウガにしてアギトなどというマッド向けの玩具の様なこの体に向けられない保証は一切無い。

 

ズ集団の一部には、俺の力は、俺の戦いは通用した。

だが、メはどうだ。

始まりの段階が全て平等だったとは思えない。

メ集団だからと言ってゲゲルや戦いの経験が豊富であるとは限らない。

だが、少なくとも単純な戦闘能力において、メ集団のそれはズ集団のそれを大きく上回っているのは間違いない。

 

剣術、槍術、格闘術。

クウガの力、アギトの力。

 

俺の積み重ねた力と、手に入れた力。

それは、メのグロンギを倒すに十分か否か。

……試さなければならない。

苦しい思いをしようが、痛い思いをしようが。

望む結果を出せないのであれば、それは無力である事と、何もしなかった事と、何も変わりはしないのだから。

 

―――――――――――――――――――

 

そんな訳で、東京である。

幸いにして自宅近辺の駅から何駅か離れた大きめの街からは新幹線が出ていたり、或いは高速バスが出ていたりするので、バイク移動が不可能であっても移動にそれ程不便はない。

バイク移動はいざという時の逃走用であり、学校のある日に駅を利用して補導されたりするのを防いだり、ともすれば轢き逃げアタックを敢行しダメージを稼ぐためである。

 

移動の資金は……ある。

数字を当てる系の宝くじを度々当てていたりするので、まぁまぁ金はある。

免許が取れる年齢になったら取って、バイクも自費で購入する事になるかもしれない。

最悪、将来は公権力から逃げ回りながら生活する未来だってありえるのだから、蓄えを作っておくに越したことはないので、余り散財はしたくないのだが、こういう出費は仕方ない。

が、それはそれとして、電車賃は出た。

理由はジル。

ちょっと見聞を広げたり記憶を呼び覚ます手がかり探しに、などの理由でジルを同行させると告げたが為に、母さんが渡してくれたのだ。

因みに、そんな理由が無くても子供の移動費くらいは出してくれるそうだ。

 

良い親を持ったと思う。頑張ろう。

ついでに、東京に行っている父さんに愛妻弁当を届けてくれと言われた。

子供に対して父さんへの愛妻弁当云々を口に出せる辺り、母さんは実はかなり豪胆だと思う。

……繊細な人間は行き倒れのズタボロアルビノ少女とか拾わないか。

流石俺の親だ。

来年も、頑張ろう。

 

「ジル、逸れるなよ」

 

こくり、と、ジルが頷く。

黒いパーカーのフードを改めて目深に被せ、可能な限り顔を隠す。

如何に他人に対して無関心な人が多い東京とはいえ、頭の天辺からつま先まで体色が白い美少女など、珍しがって興味を引いてくれと言っている様なものだ。

そうでなくても、東京は現在のグロンギ達の拠点である。

家に置いてくるよりはいいと思ったが、現地で活動中のグロンギとの対面は記憶を呼び起こす鍵になりかねない。

基本的には俺が超感覚でゲブロンの反応を避けて移動する事になるが、イレギュラーはいつだって存在し得るのだ。

はぐれないように、或いは、記憶を取り戻した瞬間に逃げ出したりしないように、袖を掴ませるのではなく、手を掴む。

顔を上げ、見渡す先は大都会東京。

 

「さ、先ずは……観光だ!」

 

「!」

 

それはそれとして、人生にはいつだって癒やしが必要なのである。

平等に癒やしが与えられないのなら、自分から癒やされに行くバイタリティが必要なのだ。

 

―――――――――――――――――――

 

軽くはしゃいで、服を見て回ったり、事前に朝の全国区向けニュースで得た地方暮らしでは一切役に立たない話題のお店の情報を元に美味しいお店で食べ歩きをしたり、ちょっとゲーセンに立ち寄ってみたりしていたら、何故か警察に補導されてしまった。

何故なのか。

黒いフードを目深に被った少女とその手を引く男、という事で、ちょっとどうしたの君ら、くらいの感覚で声を掛けられてしまった。

 

そんな、俺達は警察のお世話になるような風貌では……うん……まあ、怪しいといえば怪しい。

グロンギとかが活動している時期なのだし、警戒を密にするのは大事だと思う。

別にグロンギのゲゲルだけの話ではなく、便乗犯の類を警戒するのは良い事だ。

童顔でも老け顔でもない顔つきと身分証のお蔭で誘拐の類ではないと直ぐに理解してくれたのだし、それは特に問題ない。

 

流れで何故か保護者として父さんが呼び出されたのは良い誤算なのか悪い誤算なのか。

母さんの愛妻弁当を手渡し、電話でしか伝わっていなかった養子にするかもしれないジルの顔見せも済ませる事ができた。

遊び終わって父さんに電話して、仕事終わりに東京に借りたアパートに帰るか職場に泊まりかどうかを確認して移動して、という工程を省けたのは少なくとも良い誤算だろう。

 

鍛錬とアマダムの力で最近やたら向上している腕力からすれば重さは特に問題ないのだが、母さんの愛の重さだけはずっしりと感じられる、運動会のお弁当もかくやという大型の五段重箱は体積的にかさばっていけなかったのだ。

もしかしたらあのお巡りさん、片手に重箱を下げ、片手にジルの手を引いている俺の事を気遣って声を掛けてくれた可能性すらあるのかもしれない事を今更ながらに思い至る。

絶対に警察という組織は信じられないが、警察官個人個人のこういう善性はとても暖かくて、東京に来て良かった、と、少しだけ感じられる。

 

明日の仕事(とつ……と、言いかけて言い直した。突入作戦、と言いたかったのかもしれない)の為に今日も泊まり込みであるため、一緒にアパートには帰れないと言われた為、鍵だけ借りてジルと共に父さんが過ごしているアパートへ。

稀に帰っているだけなのか、ゴミ屋敷という程散らかってもいなければ、整理整頓が行き届いているとは言い難い、ちょっとだけ汚い、でも生活感はそれほど無い部屋。

 

俺とジルが寝るスペースを確保するために掃除していると、書きかけの遺言書のようなものを発見する。

衝動的に破り捨てたくなったが、これもまた必要なものであり、父さんの覚悟の形であり、家族への愛の現れとも言えなくもないのかもしれない。

だが、そんな形で残されても悲しいだけだ。

 

「ジル、明日、もしかしたら知らない人に声を掛けられるかもしれないけど、付いていったら駄目だからな」

 

「──」

 

対面で座布団に座ったパジャマ姿のジルがこくり、と頷く。

眠くて船を漕いでいる訳ではないと思うが、もう一度言い含める。

 

「なんだか覚えがあるな、って思っても駄目だぞ」

 

「──」

 

こくこく、と、頷く。

そして顔を上げ、キラキラとした瞳で此方を見つめ、手に持ったVHSビデオテープを掲げる。

タイトルは『海中絶景世界』。

レンタルではない。

この時代のビデオはそれなりの値段がする。

何気ない元グロンギの物欲が稲造君を俺の財布からベントしていった。

それなりの値段をしたのだが、店頭で流されていたこのビデオの映像を目にし、その場から一向に動こうとしなかったので、購入して後で見ればいいだろうと説得したのだ。

 

「遅くまでは駄目だぞ。日付が変わるまでな」

 

明日も早い。

こいつが眠るまで目が離せない以上、そう夜更かしされても困る。

万全の状態で、試しの戦いに挑まなければならない。

いそいそとテープをビデオデッキに挿入するジルの楽しげな横顔を見ながら、余り夜更かしできないようにと、アパートに来るまでに買っておいた牛乳を温めに台所に向かった。

 

―――――――――――――――――――

 

三月十八日、午前十時十五分。

東京都台東区、隅田川沿いにて。

二体の異形が相対していた。

 

人型にイカの特徴を塗り込めた様な怪人、メ・ギイガ・ギ。

人型にクワガタの特徴を被せた様な、未確認生命体四号ことクウガに酷似した姿の怪人。

 

クウガに似た戦士の背後には、逃げていく女子高生が二人。

ギイガと戦士の間には、砕け散った蒼と金の鉾槍。

 

「ラダジャラゾギデブセダバ、クウガ」

 

砕けた槍は、ギイガの吐き出した爆発性のある体液を受け止め、女子高生の身代わりに砕け散った。

ゲゲルの初めの獲物を守られた事に、いや、狩りを邪魔された事に、ギイガは怒りを顕にする。

今すぐにこの場を離れ、別の標的を探すのは難しくない。

ギイガのゲゲルに設定されたルールは時間制限と人数だけ。

ここで取り逃がした獲物に固執する意味も、クウガの相手をするメリットもない。

 

だが、クウガに因縁を持たないグロンギは存在しない。

眼の前に敵として、ゲゲルの妨害者として現れたのであれば、グロンギの闘争本能はゲゲルよりもクウガとの戦いを優先するのが自然だ。

そして、ギイガはその自然なグロンギとしての考え方に逆らうほど特殊な思考形態を持ち合わせては居ない。

まして、目の前に居るクウガは以前戦ったクウガよりも、今までゲゲルを妨害してきたクウガより、よほど好戦的に見える。

仕草一つ一つが、戦いを誘うもの。

 

「はっ」

 

無手の青い戦士が、顎を逸し、見下すようにして鼻で笑う。

 

「未だにリントの言葉もしゃべれないようなメの雑兵のゲゲルだろう? 妨害が無くても成功なぞするものかよ」

 

青い戦士はベルト側面のレフトコンバーターを押し込み、同時に右側面にうっすらと見えるスイッチを叩く。

ばち、と、僅かな放電と共にベルトが熱を持ち、互いに想定していない形態変化が干渉し合う。

丸みを帯びた頭部、僅かに細長い頭部がノイズの如くチラつきながら重なり合い、全身の装甲が、筋骨格が変容する。

瞬発力よりも粘り強さを重視した肉体、軽さよりも強度を重視した紫と鋼色の鎧。

だが、発達した右腕に、右腕を振るうに必要な筋肉は更に強化され、限定的な瞬発力も兼ね備える。

赤い装甲に包まれた右腕は異様なまでの熱気を放ち、周囲の気温すら高めていた。

 

アークル中央のモーフィングクリスタルに重なる影から、炎に似た荒々しいオーラが吹き荒れる。

握る、というよりも、引き抜く、という意志により掴まれたオーラは、モーフィングパワーを受け取る事で一つの形を得る。

反りのある刀身に、金と赤で装飾された柄と鍔を持つ長剣。

燃え盛る炎の刃、フレイムセイバー。

それを赤と金の装甲に包まれた肥大化した右肩に担ぎ、手のひらを上に向けた左手でギイガに手招きをする。

 

「怖くないなら、掛かってきな」

 

返答は、言葉でなく行動でのみ示される。

言葉より攻撃が早く出るグロンギの中で、とりわけギイガはその傾向が強い。

闘争本能が強く堪えが効きにくい、という訳ではない。

そこらは平均的なグロンギと変わらない程度でしかないが、ギイガの場合は口は喋るだけ、食べるだけの器官ではない。

口吻から吹き出された体液は何らかの物質に触れると爆発する性質を持ち、彼が嘲り、侮り、挑発などに反射的に返すものとしては手足を使ったものよりも余程早く、感情に直結していた。

直撃すればクウガのショルダーブロッカーすら焼き焦がし変形させ、内部にダメージを与える程の爆発力を誇る。

 

反射的に放たれた体液は、無意識に命中しやすい的に、胴体部分に向けて放たれる。

体液の爆発力は驚異的なものであり、ゲゲルで使う場合にも急所を狙う必要すら無く、胴体の何処かに当てさえすればカウントを一つ稼ぐ事ができる。

相手がクウガだったとしてもそれは変わらない。

弾力と強度を併せ持つクウガのブロッカー、装甲ですら、彼は焼き焦がす事ができるのだ。

 

だが、例外が存在する。

紫の鎧を纏うクウガは、その装甲の堅牢さを増しており、生中な攻撃が通用しない。

それを忘れていたのか、それとも、以前のクウガとの戦いでは、当てる事すらできなかったのか。

紫の鎧に赤い腕の戦士は、一歩一歩近づきながら、発射された体液を真っ向から受け続ける。

衝撃を逃がす構造すら含まれているのか、爆発の衝撃で仰け反る事すらしない。

 

体液の一撃が頭部に向けられた。

これを、まるで予測していたかの様に、戦士は剣を掲げて受ける。

なるほど、と、ギイガは内心でほくそ笑む。

防ぐ事無く受けていたのに、剣で受け止めた。

つまり、頭部であれば攻撃は通る。

いや、或いは装甲の無い手足のどこかでも、ダメージは通るかもしれない。

 

そう考え、次弾を発射するために息を吸い、再び体液を飛ばそうとした瞬間。

口の中に、剣が突き刺さっていた。

何が、と、その思考が浮かぶよりも早く、ギイガの頭部が内側から(・・・・)弾け飛んだ。

 

ギイガが怪人態時に吐き出す体液は、物質に触れる事で激しく爆発を起こすが、当然体内では爆発する事はない。

自らの体内の毒で死ぬ毒虫が居ない様に、ギイガの体液を発射する機構は体液が化学反応を起こすのを阻害する物質で覆われており、体内で爆発する事はありえない。

 

だからこそ、戦士はギイガが体液を発射する瞬間を超越感覚で察知し、折れたフレイムセイバーをモーフィングパワーで紫の直剣に仕立て直して投げつけた。

発射される直前の体液は口内で刀身と反応を起こし、見事に爆発を起こしたのだ。

それが狙ったものか、それとも防ぐつもりで投げたものが偶然突き刺さったものかはわからない。

だが、結果だけは残った。

頭部を失ったギイガの死体が、ゆっくりと後ろに向けて倒れ込む。

 

どす、と、ただ人間一人が倒れるのと変わらない音を立て、ギイガの死体が転がされる。

顔面は無い、頭部毎消えた。

ゆっくりと歩み寄っていた戦士から、紫の装甲が消える。

 

倒れ込んだ死体に座り込むその手には、赤金の短剣。

戦士はそれを、まるで獣を解体するが如く躊躇いのない手付きで死体の腹部に突き刺し、ベルトのバックルを真っ二つに破壊。

破片を海に投げ捨て、ベルトの下の腹部を刃で切り開く。

じゅう、と、肉が焼ける匂いと共にその腹部の肉が焼き切られ、こつり、と、硬い音を立てる。

刃が引き抜かれ、切り裂かれた腹部に戦士の手が差し入れられ、内部を僅かに弄り、硬い音の主を掴み、引きずり出す。

 

ぞる、と、音を立て、獣の体毛にも似た無数の神経を引き摺りながら、それは現れた。

血に塗れた、肉塊に包まれた石。

これこそ、グロンギをグロンギたらしめる恐るべき秘宝。

魔石ゲブロンである。

 

―――――――――――――――――――

 

やはり、と言うか、ズのゲブロンとはだいぶん様子が違う。

宿主が生きていた時程ではないが、ズから引き抜いた後のものとは気配の濃さが段違いだ。

魔石周りの神経の強固さもまるで別物。

ゲゲルを終えた後、込められたエネルギーがゲブロンのリミッターを外している、という事だろうか。

この様子では、ゴは倒せたとしてもゲブロンを引きずり出すのに一手間必要かもしれない。

 

メの強さに関しては、それ程確信が持てなかった。

メ・ギイガ・ギの爆発する体液は、ゲゲル向きではあるかもしれないが、余りにも応用性に乏しく、戦う力を鍛えているようにも、使い方に工夫を施しているようにも見えなかった。

元のクウガ戦でもタイタンの鎧にダメージが与えられないのを確認した後も延々同じことを繰り返していた筈だ。

爆発が通じなかった、という経験自体が無いからかもしれないが、それでも脳機能まで優秀なグロンギとは思えない。

メの中でも、手に入れた特殊能力に慢心して創意工夫や自己強化を怠った個体だったのか。

こいつを殺せたからといって、メに俺の力が通用する、と考えるのは早計だろう。

 

ゲブロンも可能であればもう少し回収しておきたい。

できれば、メの中でももう少し戦いに、狩りではなく闘争に力を入れている様な個体のものを……。

 

「いてっ」

 

強めのデコピンくらいの衝撃が側頭部に。

見れば、一足早く駆けつけたらしいお巡りさんが拳銃を此方に向けている。

仕事熱心だな、と思う反面、少しばかり迂闊だったと反省。

近づいてきているのはわかっていたけれど、考え事に没頭しすぎて無視してしまっていた。

これが神経断裂弾だったら……。

いや、でも、アギトの力があるから、どうなるのだろうか。

系統としてはアンノウンとそう変わらないだろうから、通用しない可能性だってある。

実験はしたくないけど興味深い。

俺の代わりに気軽に神経断裂弾を食らってくれる気さくで美人で此方の苦労を事情を語らずとも察してくれたりする優しい一般アギトのお姉さんとかが居ればなぁ。

 

ぺし、ぺし、と、繰り返し撃たれる度にどんどん威力が減っている風にも感じる。

ともあれ、警察に通報されてしまっているのであれば、長居は無用だ。

座っていたギイガの体から、短めのフレイムセイバーで首を切り落とす。

ここまで炭化していれば復活の可能性も低いだろうけれど、予防措置は取っておくに越したことはない。

そして、仕事熱心で正義感と勇気に溢れた東京の警察官さんに向けて、投げつける。

 

「うわぁぁぁ!!」

 

剛速球、という程でなく、ノック練習の時のトスくらいで投げられたギイガの頭部を、お巡りさんは慌てて避ける。

そして、銃撃が止んだ瞬間に、青に切り替えて、その場から離脱。

みるみる内に離れていくギイガの死体とお巡りさん。

東京はやりやすい。

監視カメラこそ多いけれど、高層建築が多く、ビルの上を跳んで逃げれば追跡は容易な事ではない。

なるほど、グロンギの連中もゲゲルの舞台に選ぶ訳だ。

 

さて、目的の半分くらいは達成できたのだし、人気のない場所に落ち着いて改めてゲブロンからキレイに神経を削いで、できれば手も洗いたい。

郊外の寂れた公園とか、無理なら……。

 

いや、何か近づいてくる。

ゲブロンの気配……じゃない。

もっと身近な……。

 

「待て!」

 

後ろ(・・)から声が聞こえる。

冗談じゃない、今地上何メートルだと思ってるんだ。

そして、この聞き覚えのある声。

ちらり、と、振り返る。

予想と、そして記憶にある声の主と相違無い。

だけど、できればまだ接触はしたくなかった相手。

 

「クウガ……!」

 

バイクを持ってくれば良かったとはっきり後悔する。

モーフィングパワーで無理やりスライダー形態にすれば空路で逃げられたかもしれない。

だが、こうなれば逃走は難しい。

ならば、少しだけ、予定を前倒しにしておこう。

 

―――――――――――――――――――

 

午前十時四十二分。

昨年の隕石直撃を受け、未だ一部が廃墟のまま放置された渋谷区を望むとある高層ビルの屋上で、二人の青い戦士が向かい合っていた。

 

戦意は、互いに無いのだろう。

無言のままに戦士を見つめるクウガ。

視線を無視するように、渋谷廃墟へと視線を向ける、よく似た姿の青い戦士。

ふと、クウガの姿がかすみ、その姿を人間のそれへと変じさせた。

現れたのは、現代において戦士クウガの力を引き継いだ、黒髪の好青年。

二千の技を持つ男、五代雄介。

 

「なんで」

 

問う。

距離は離れている。

だが、声の届かない距離ではない。

戦士が、或いはクウガが、どちらかが害意を持っているのであれば、生身を晒すには致命的な距離だ。

 

だが、雄介は変身を解いてみせた。

確信があった、という訳ではない。

一目見て、それがグロンギとは違う、と、そう思えた。

見た目がクウガと同じ、という事ではない。

纏う空気、というのだろうか。

旅を続ける中で得た、人を見る目。

少なくともその戦士が、誰彼構わず殺す様な人間ではない、と、そう思えた。

根拠にするには、余りにも弱すぎる、願いの様な思い。

 

「なんで、あんな殺し方をするんだ」

 

沈黙。

青の戦士は数秒の間を置き、視線を渋谷から外す。

青い瞳、クウガのそれと比べて、幾分か小さくも見える結晶質の瞳が、雄介を貫く。

何かしらの感情が込められている訳でもない。

無機質、とも言える視線。

グロンギのそれとは、確かに違うのだろう。

 

「必要なことです」

 

冷淡な、いや、平坦な声。

冷酷というより、無感情な、或いは、感情を押し殺した様な響。

だが、雄介はその声に込められた感情よりも、その声の青々しさに、僅かに残るあどけなさに戸惑う。

背丈は、まるで自分の変身した姿と変わらない。

だが、その声は、まるで、子供のそれだ。

 

「必要? なんで、君みたいな子が」

 

「一身上の都合により。……姿をお見せする事は、できませんが」

 

感情を押し殺した様な平坦な口調。

しかし、その声には、抑えても抑えきれない感情が載せられている事に気づけない雄介ではない。

申し訳無さそうな、そして、自分への、尊敬、だろうか。

 

「うん、……わかるよ」

 

雄介は警察に対して、いや、誰に対しても自分がクウガである、という事実を隠していない。

お前は四号なのか、と問われれば、躊躇うこと無く自分がクウガだと答えるだろう。

だが、それを自分以外の誰かに強要する事は無い。

誰かを信じる心は大事だ。

それは、誰かを信じるのは難しいからでもある。

そして、生きていく上で、疑う事、隠す事は、『必要な事』なのだ。

自分の命を守る、という上で、決して間違いではない、一つの選択。

 

顔を見た訳ではない。

事情を聞く事も、恐らくは難しいのだろう。

そういう人間は、世界に幾らでも居る。

それは日本でも変わらない。

まして、グロンギとクウガは、普通の人にとっては似たようなものなのだ。

 

「一緒に、戦えるかな」

 

それでも、事情を話せなくても、共に戦えない、という事はない筈だ。

いつか見た、クウガではない、グロンギでもない仮面の戦士達がそうであった様に。

彼等の素性を知らなくても、力を合わせる事ができたように。

 

「…………誰もが」

 

「うん」

 

「誰もが、泣きながらでも戦える訳じゃないんですよ」

 

「そう、だね」

 

沈黙が流れる。

痛い所を突かれた。

妹にも、友達にも心配された事だ。

だけど、彼の言葉には酷く実感が籠もっていて、確信的な言い方だった。

無理をしているのを知っているのだと言われたようで、どきりともした。

少しだけ、安心し、同じくらいに悲しくなった。

 

彼は、戦う事の悲しさを知っている。

血も涙もない戦闘兵器ではない。

だけど、その悲しさを知りながら、彼は彼の事情で戦わなければならない。

誰かに吐き出したくても、吐き出す事ができないのだろう。

そして、自分にも、その悩みを解決する事はできない。

それは当然の話で、だからこそ、悲しい。

 

「一つだけ、知っておいて貰いたい事が、あります」

 

「何?」

 

「ン・ダグバ・ゼバ……第0号と戦うのであれば、凄まじき戦士にならなければなりません。それ以外で戦えば、死にます」

 

「ダグバ、凄まじき戦士……、まって、君はなんでそんな事を」

 

「それと」

 

しゅ、と、青い戦士が雄介に何かを投げ渡す。

反射的にそれを掴み取り、手のひらを広げる。

 

「ハッピーバースデー」

 

「えっ、わ!」

 

閃光。

投げ渡された何かが破裂し、激しい光と音で雄介の視界を塗りつぶし──

 

「……彼は、一体」

 

視界が戻った時には、青い戦士は跡形もなく姿を消していた。

 

 

 

 

 




☆グロンギに対しては高圧的だけど尊敬できる相手には普通に敬意を持ってお手製スタングレネードを誕生日プレゼントとして贈呈するマン
モーフィングパワーを駆使することで無限にスタングレネードを生成できるアンリミテッドスタングレネードワークスの使い手
母親が出かけてる時に自室で実験して暴発して一人でムスカっていた頃もあったけど今では手のひらの上で爆発させても怪我をさせず的確に目と耳を潰せる
電車で恐らく二時間くらい揺られて東京へ
道中ジルの世話を焼いたりする姿は仲のいい兄弟にしか見えないとかどうとか
現時点では春休みだからジルを連れていけたけど、もう一度ちゃんとメのグロンギと戦うのであれば、入学したばかりの学校をぶっちして平日に東京に突撃するしかなくなる
どうする新一年生! どうなる最終出席日数!
因みに魔化魍とか童子とか姫はこの時点では自然発生するものしか居ない為、頻度としてはそう多くなく、規模も小さい為撃退だけならそう難しくはない
最近では重箱とジルを両手に下げた状態でも東京観光ができる程度には図太くなってきた
アマダムさんが頑張って神経節をうんしょうんしょと脳みそ目掛けて伸ばしてくれているお陰である
あまだむさんがんばえー
アマダム「おう、任せとき!」
なおアマダムは喋らないし主人公のアマダムは忠告すらしてくれない
悲しみを乗り越えて、行け、ガンダム!
ガンダムではないし、作中地の文でクウガとも呼ばれていない

☆ただの東京満喫要介護ヒロイン
危ういヒロインみたいな宣伝打っておいて今回やってることは東京観光だけである
変身して戦う主人公を恐れない?
純粋な子供は異形へ変身する主人公を見ても恐れず笑顔でありがとうって言って心を癒やしてくれるのはASHRの兄貴が証明してくれただろ、いい加減にしろ!
なお、古代の時代にも魔化魍やファンガイアなどが存在し、それを撃退したグロンギの上位戦士達は群れの中でも英雄として褒め称えられた、みたいな設定があったりするのではないか、という疑いは勿論ある
勿論あるけどそれでヒロインを疑うなんてナンセンスだろ!
パジャマはポップな絵柄のクジラの小さい絵が散りばめられた可愛らしいものを着用
昼間はフード付きパーカーにショートパンツを上下黒で揃えて、黒のタイツも添える黒ずくめコーデ
隙間から覗く白い肌がアクセントになってるし、なんかこう、主人公との絆を高めた後にプレゼント・イベントとかで更にワンポイントつけると何らかの別離イベントとかで使えそうだけどそんなバッドエンドにはならないといいなと思いながら書いてるから別に大丈夫だと思いますよ
ホットミルクをちびちび飲みながら深海の美麗な光景を移した映像を見ていたら一時間もしない内に寝落ちしてしまった
因みに戦闘中は父親のアパートで留守番という安牌
一人で外出歩いてたらバラのタトゥーをきざんだ怪しい女性と遭遇する危険性とかがあるからね、仕方ないね

☆bな人
話してみたら残虐超人の正体が明らかに思春期の少年くらいの声で悲しい人
謎の人と話してみたら余計に謎が増えるわラスボスの話を事前知識無しでされるはもう散々
でも世界中で今日も戦う仮面の戦士達の事を思えばなんのその
精神的ダメージは蓄積している
生身旅人時代に謎の仮面の戦士達に力を貸したりした感じの経歴が生えた

☆口から爆発物吐く人
ちゃんとしてないメのグロンギ
距離が離れると爆発物嘔吐しかしないからワンパターン
もっとちゃんと戦ってほら
でもゲブロンに罪はないので回収された

☆善良な東京の一般おまわりさん
困っている人を見れば放っておけないし、市民の敵が相手なら命を賭して戦えるぞ!
謎の子供二人を保護した次の日、謎の残虐四号からグロンギの炭化した生首を投げつけられる
頑張れ公務員、負けるな公務員!
クウガの一般警察官ってG5ユニットくらいなら普通にみんな適正ありそうなくらい勇者揃いだよね

☆アギトフレイムフォーム
アギトの基本フォームの一つ
フレイムアームズは七千度の熱を一瞬にして作り出す
バーニングナックルは炎を司る奇跡の拳、生み出した炎を自在に操る
なんだこの化物……メくらいまでなら多分余裕で燃やし殺せる
どうりで苦戦しない訳だよこいつ、アギトやべえな捕獲して研究しなきゃ(アギト警察並の感想)
でも多分警視総監が止めるから大丈夫な気がする


今回思ったけど、話数にして五話もつかって置きながらまだ原作で言う10話前後までしか来てないというスローペースはたぶん不味い
だから多分次は梅雨くらいまで話が飛ぶ
なぜかと言えばその頃まで休みの日にゲゲルが行われないからなのだ
そして次回こそ完全ノープラン
頑張るけど頑張れなかったならこのSSは爆発する
ザインさん?
今更パワータイプのズ集団とか、その……ね?


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6 超常、よりにもよって

未確認生命体、第二十二号。

外見的特徴は二号及び四号(同一個体である事が確認されている為以下四号と称す)に極めて酷似しており、先日まで同個体の別形態と思われていたが、四号と同時に目撃され、更に四号本人からの証言により、正式に別個体として認定された。

 

出没を確認できた回数は僅か三回。

内七号は民間からの証言と提供された写真のみ。

十三号B及び二十一号との交戦は駆けつけた警察官により正式に確認。

四号と同じく、人間を対象とした殺人を行わず、同種であると思われる他の未確認生命体を標的として活動していると予測される。

槍、剣などで常に武装し、殺害した未確認の遺体を破壊し、体内より何かを回収する習性が確認されている。

 

四号によって殺害された他の未確認とは異なり、二十二号により殺害された未確認の遺体は二十二号の手によって破壊された部位を除き、爆発する事無く残されている。

執拗さすら感じさせる殺害した未確認の遺体に対する破壊行為はこの現象が原因と見られる。

また、二十二号が残す未確認の遺体はその破損状況とは関係なく、一定の割合でその肉体を通常の人間のそれと似た組成へと変化させている。

この現象が二十二号の特殊な習性と何らかの関わりがあるかは、現在調査中。

 

また、二十一号との交戦後に駆けつけた所轄の三廻巡査により銃撃を受けるも、同巡査に対する攻撃的な行動は起こさず、体色を青く変えた後にその場から離脱。

人間を殺人対象としていないのか、あるいは未確認を殺人対象としているだけなのかは不明。

四号の前例を元に接触を測る、捕獲する、などの案が一部より提案されたが、他の未確認生命体との交戦時に見られる残忍な振る舞いによるものからか、その意見は保留。

 

なお、二十二号が初めて目撃された際に交戦した七号に関してはそれ以降の目撃証言も見られず、同個体が起こした大量殺人と類似する事件はこれ以降発見されていない。

二十二号との交戦により身体に幾らかの損傷はあると思われるが、未確認生命体全てに共通すると見られる再生能力を考えれば、その後に死亡している確率は極めて低いと推測される為、今後も調査は継続とする。

 

―――――――――――――――――――

 

他の未確認とは異なる特殊な個体。

四号程に人類側として扱われず、即射殺という程でもない。

偏に四号からの証言を確認したとある刑事からの進言があればこそ。

仮に四号が協力的である、という事実が受け入れられていなければ、こうはならなかっただろう。

或いは、これからの行動如何によっては四号と同じ扱いもあり得るかもしれない。

勿論、そうなる可能性は極めて低いが。

 

二十二号の背景を僅かなりとも推測できる四号……五代雄介。

又聞きの情報ながら二十二号が民間人……しかも未成年である可能性を示され頭を痛める一条。

二十二号が次に現れた場合の対処を、目撃証言などから思案する対策本部。

 

そんな彼等の頭痛を他所に、二十二号が再び姿を現したのは、奇しくも前回とほぼ同じ、約一ヶ月の間を置いての事だった。

 

―――――――――――――――――――

 

一月は平和という幻想と共に行ってしまい。

二月は未確認との戦いを恐れて逃げていき。

三月は五代さんの悲しそうな表情を見て無言で去っていった。

 

どんな形であろうと時は経つし、訪れる未来は待ってはくれない。

満を持してやってきた四月は俺にとってそれほど悪くないと思える季節であった。

春の穏やかな日差しはそれだけで心と身体を癒やしてくれる。

春眠暁を覚えず。

朝の目覚めと共にカーテンから透けて照らしてくる日差しですら心地よい。

 

抜け出すのに気合の必要なお布団。

瞼を開けると、薄明かりに照らされて透ける様な白い毛……そして白い寝顔。

すぅすぅと穏やかな甘い香りの寝息を立てる元狩猟民族(狩猟対象は人間)の少女、ジルの美しい(かんばせ)に、良い意味でも悪い意味でも心臓がリアルに止まりそうになる。

来客用から専用の高級羽毛布団(分厚いマットレス付き)に寝床を変えたジルが眠るのを確認してから眠った筈なのだが、どうやら夜中に一度目を覚ましたらしい。

 

『無防備な寝姿を晒して……クックック! 今の貴様の生殺与奪権は私が握っている(オルフェノクに変身して武器生成して刃をひたひたと俺の顔に当てる)』

『だが、私のゲゲルを止めて命まで奪った相手、ただでは殺さん』

『極上の恐怖を与えてやる……!(変身を解除して布団に潜り込む)』

『目が覚めた時、お前は自分を殺せるかもしれない相手が寝床に潜り込んでいたという異常事態に恐怖する事にな( ˘ω˘)スヤァ』

 

みたいな出来事が夜中にあったのか。

それとも単純に寝ぼけて布団に潜り込んできたのか。

アギト特有の怪人が活動を開始するとなんとなくわかる直感に一縷ののぞみを賭けて同じ部屋での監視を行っているが、それがオルフェノクに通用する可能性は低いのかもしれない。

そうでない場合、普通のアルビノ虚弱記憶喪失失声症美少女が布団に潜り込んでくるというのも、道徳的にあまり良くない。

流石に寝ずの番をする訳にはいかないが、監視カメラの一つも部屋の中に付けておくべきだろうか。

癖のある白髪を少し撫で付けると、擽ったそうに身を捩る。

これで、なんの不安要素も無いただの少女であったならな。

そんな益体もない事を考えた。

 

と、そんなハプニングがあったりする、絶妙に心が安らぎ切れない家での出来事はともかく、新しい学校生活もそれなりに充実している。

中学時代と異なり、ジルの監視もあるために部活動を入る事も助っ人に行く事も出来ないが、クラスメイトの中にもそれなりに友達ができた。

中学から同じクラスに居た友人も居るには居るが、それ以外でもスムーズに友好的関係を結べたのは僥倖だと思う。

 

放課後の時間は殆ど自由にならないので帰り道に一緒に遊んだりはできないが、学校で気兼ねなく無駄話ができる相手というのは貴重だ。

ただ、ちょっとした問題がある。

 

「じゃーなセバス、気いつけて急いで慌てずに帰れよ」

 

「セバス君、また明日。ジルちゃんによろしくね」

 

「ん、また明日ね。あとせめて名字で呼んで」

 

あだ名、ニックネームである。

俺は両親ともに日本人であり、三世紀を生きたキリスト教の聖人でもないし、F1ドライバーでも音楽の父でもなければラリードライバーでもなければ十七世紀のエクソシストでも妖艶なイケメン執事でもなんでもない。

勿論名前がセバスチャンなんて事もそれに似た音の響という訳でもない。

入学前、ジルのリハビリの為に連れ歩いている時の様子がそれなりの範囲で見られていたらしく、それが原因であるらしい。

その時のジルに対する甲斐甲斐しい世話焼きがまるで執事のようであり、執事と言えばセバスチャンであるという安直な理由から付けられてしまったようだ。

 

甲斐甲斐しく世話を焼いた、というのは語弊がある。

あいつが不発弾である可能性を考慮すれば、俺は常に爆発の危険性を減らすために慎重に取り扱っているだけだし、実は爆発の危険性など欠片もないただの要介護美少女であるとすれば、必要な手伝いをしていただけではないか。

ちょっと情操教育も兼ねて映画を見に行く為、バスに乗る時に手を貸したり、降りる時も手を引きながらコケた時に受け止められる位置で先導するのは当然必要な事だ。

帰りに喫茶店でちょっとしたデザートを食べる際に、パンケーキを切り分けてやったのだって手が上手く動かないのを考慮すればある程度は仕方がないし、口元のクリームをナプキンで拭いてやるのもTPOを考えれば不自然ではない。

遠出ではしゃいで疲れて眠ってしまったのを背負って帰るのだって、連れ帰る以外の選択肢が無いなら当然のものだ。

時折慈しむような顔で背に追う少女の顔を見ていた、なんてのは、見ている側に何らかのバイアスが掛かっていたに過ぎないと主張させてもらいたい。

 

……まぁ、思春期特有の何か騒げるネタがあったら騒ぎたい、みたいなノリから生まれた与太話に過ぎないので、それほど気にはしてない。

人の噂も七十五日、梅雨に入る頃にはこんなしょうもない話も忘れられ、恥ずかしいあだ名も廃れている事だろう。

そして、そんなちょっとした羞恥プレイ染みた話を抜きにすれば、今の所二度目の高校生活は順調に進んでいる。

終わればダッシュで家に帰らなければならないのは変わらないが、それでも学校生活が俺の中で癒やしになっているのは間違いない。

 

俺が正式に二十二号……四号とは別の個体であると発表されてから、恐ろしい勢いでマスコミから謎の残虐怪人として扱われたりした事もあったけれど、それもいい加減薄れてきている。

一月も間を置けば、続報がなければ、世間というのはあっという間に冷めていくもの。

世間の見解も遠からず、なんか四号と比べてヤバイやつだけど、未確認同士で殺し合ってくれるだけなら別にいいかなー、くらいで収まってくれるだろう。

まさに順風満帆、桜もきれいで風暖かく、四月はやはり生き物に優しい季節だなと再確認できる。

 

そんな四月も終盤に差し掛かった今日この頃。

学校をぶっちして東京に向かわなければならない日がやってきたのであった。

メ・ガドラ・ダ。

警官隊と交戦し、それなりの被害を与える、強敵だ。

待ちに待った……訳ではないが、この日を想定して諸々の戦闘行動を取ってきたのだから、どうしようもない話ではあるのだけれど。

死ぬかもしれない戦いをしに行くため、楽しい学校生活を一日捨てなければならない。

これを、俺はまだ悲しいと思えてしまうのだ。

 

―――――――――――――――――――

 

四月十九日、午後三時七分、豊島区内、池袋。

スナック「樹」、トガシ、など、未だ電気を通されていない古めかしい電飾看板のある路地裏に、一人の女と、虎に似た姿の怪人が居た。

 

「ギブグジバンゼ、バギングギギドビ、ボゾグ」

 

虎の姿の怪人は自らの顎を撫で付けながら、目の前の女、黒いドレスに身を包み、額にバラのタトゥーを刻んだ女に宣言する。

バラのタトゥーの女は冷淡な、品定めをするような視線を向けた後、数珠状の装飾品──ゲゲルの標的をカウントする為の装具、グゼパを手渡す。

 

「六時間で、七十二人だな」

 

確認するように告げ、女は爪のような装飾のついた腕輪、ゲゲルリングを怪人……グロンギの戦士、メ・ガドラ・ダのベルト、ゲドルードに突き立てた。

注入されるのは時限式の封印エネルギー。

これが注入されたが最後、時間内に宣言した通りのゲゲルを完遂しなければ、このエネルギーが起動し、プレイヤーは爆発して死亡する。

ガドラは腕にグゼパを装着し、返事を返すことすらせず振り返り歩き出す。

 

六時間で七十二人。

彼にとってみれば容易いと言っても問題ない程度の制限ではあるが、ゲリザギバスゲゲルでもない通常のゲゲルであれば妥当な数字だ。

だが、この時代のリントは自分たちには遠く及ばないながらも、戦う力と意思を備えているらしい。

ゲゲルを進める中で、リントの戦士は当然集まってくる。

彼等を狩れば、いや、彼等と戦えば、自分はもっと強くなるだろう。

そして、この時代のクウガもまた、彼にとってはゲゲルの標的の一人であり、自らを高めることのできる相手だった。

 

負ける事は考えない。

グロンギであれば当然の思考であり、そう考えても不遜でない程にガドラは優れた戦士でもあった。

ルールの複雑なゲリザギバスゲゲルに備える為だけでなく、戦士として強さを鍛えるためにあえてグロンギ特有の再生能力を封印し、戦いで負った傷を残している。

それは言ってみれば彼なりの信仰の形でもあった。

傷は戦いの証、戦いを乗り越えた証、自らを傷付ける事ができる程の戦士を殺し乗り越えた証。

この時代で、今度こそゲゲルを完遂させゴに、そしてゲリザギバスゲゲルを乗り越え、必ずンへと至る。

 

遥か高みを目指し、戦いを積み上げる。

積んだ死体の数が、刻まれた傷の数が、彼を強くする。

 

そんな彼だからこそ、その攻撃を察知する事ができたのか。

何の予兆も気配も無く、しかし、ガドラは咄嗟にその場から飛び退いた。

炸裂音。

一瞬前までガドラが居た場所に、封印エネルギーの矢が突き刺さり、アスファルトの地面を砕いて消える。

 

ガドラが矢の跳んできた方角、上を確認する。

雑居ビルの間の狭い空を背景に眼前に迫る金の刃。

身を反らし、しかし僅かにその刃は胸元を切り裂いた。

金の刃の正体は青い柄を持つ鉾槍。

獲物が鉾槍である事を確認しきるよりも早く、音もなく着地した襲撃者は返す刃で斬りかかる。

 

背後には壁、隙間は通れる程狭くなく、右にはバラのタトゥーの女が下に居る階段。

トッ、と、軽さすら感じる音だけを残し、ガドラは迷わず上へ飛んだ。

虎のそれに似た能力を備えるガドラに、ビルを一息の飛び越える程の力は無い。

だが、ビルの窓や配管などを足場に駆け上がる事は容易い。

両脇のビルの壁と壁を交互に蹴り、屋上へと駆け上がる。

 

逃げではない。

リーチのある鉾槍を持った襲撃者を相手に、狭い路地裏で戦うのは不利に過ぎる。

戦い、殺し、乗り越えるという事は、何も正面から殺す事ばかりが重要なのではない。

乗り越えるために、自分に有利な状況を作り出すのもまた知恵という強さなのだ。

 

そんな言い訳を考える事すらせず、襲撃者の姿を確認する。

金の二本角、巨大なクリスタル状の複眼、黒い肌に青い装甲。

 

「クウガァッ!」

 

怒り?

いや、それは歓喜の声。

乗り越えるべき敵が強大であればあるほど、ガドラは強くなる事ができる。

常のゲゲルであれば望むべくもない強大な障害であるクウガは、ガドラにとって歓迎すべき敵、いや、対戦相手であった。

自分はリントを狩る、そして、クウガはリントを多く殺されるよりも先に自分を狩る。

互いに勝利条件が決まっている、一種の試合のようなもの。

それが命を賭けているものであったとして、いや、命を賭けているからこそ成り立つ好敵手の様な存在。

喜ばないはずがない。

 

「チッ」

 

舌打ち。

ビルの上に降り立ったガドラに向けられたのは、苛立ちの込められたそれであった。

 

「だから畜生は嫌いなんだ。当たるだろ、さっきのは」

 

苛立たしげに、ベルトの右側面を叩く青い戦士。

空気に解けるように左肩の金と青の装甲が消え、鉾槍が消える。

代わりにとでも言う様に、右肩に先よりも大きな金と赤の装甲が展開され、右腕が僅かに肥大化すると共に赤い装甲に包まれた。

青の装甲に身を包んだ軽装の戦士。

唯一赤い装甲を纏った右腕は、戦士の感情をフィードバックする様に高熱を帯び、陽炎を揺らめかせている。

アークルの中央、モーフィングクリスタルから熱気を帯びたオーラが吹き上がり、それに青の戦士が右手を向け──ガドラが懐に飛び込んだ。

 

その動きは彼の知るクウガのそれとは異なるものではあったが、彼の直感はそれが戦士が武器を取る為の動作である事を告げていた。

当然、素直に武器を取らせる理由はない。

武器を構えるその瞬間、起こりの動作の瞬間こそが攻め時である。

 

瞬間。

ガドラの体は炎に包まれた。

 

武器を取る為の動きではあった。

だが、それが真では無かった。

戦士の右腕前腕、金の装甲、フレイムアームズ。

ベルトに向けられていた手は、いや、ガドラが飛び込んだ懐の前に構えられたその装甲は、一瞬にして摂氏七千度の熱量を発生させる。

戦士はただ、飛び込んできたガドラに向けて発生させた七千度の熱を叩き込んだに過ぎない。

 

全身を焼く炎の熱量は、ガドラがこれまでの人生でその身に感じたどんな熱よりも激しく身を焦がす。

未知のダメージに怯み、その突撃の勢いが殺され、次の瞬間にはガドラの視界は空を、背は激しい衝撃を得ていた。

戦士は突撃の速度が弱まったガドラの腕を赤い装甲で包まれた右腕で掴み、勢いを利用して投げ飛ばしたのだ。

 

「おっと、取れちゃった」

 

戦士は、右の手の中に黒い塊を握っていた。

それは炭化したガドラの手首から先。

見せつけるようにしてそれを握り潰しながら、左手がアークルから吹き出す炎のオーラを引き抜く。

引き抜かれ、実体を得た赤金の柄を持つ剣を両手で構え直し、正眼に構え、誘うように、その剣先を揺らす。

熱気を帯びた刃を向けられ、全身を黒く焦がし右手を無くしたガドラが距離を取る。

 

「来ないのか?」

 

挑発。

それに対しガドラは一瞬で……背後に飛んだ。

全力の跳躍。

ビルからビルへ、とはいかずとも、ガドラは背の低い雑居ビルの屋上から大通りへと舞い降りた。

突然空から降ってきた怪人に、恐怖よりもまず驚きに身を固めた周囲の人間に、残っていた片腕を無造作に振るう。

軌道上にあった一人の首が飛び、その先に居た哀れな被害者の頭を掴み、

 

「いやぁぁぁぁ!!!」

 

投げつける。

恐るべき膂力によって投げつけられた先には、剣を振り下ろしながら跳んできた赤い腕の戦士。

戦士がそのまま剣を下ろせば、投げつけられた被害者共々ガドラは真っ二つに切り裂かれて終わる。

だが、そうはならない。

 

「っ! クッソァァッ!」

 

戦士の手の中の剣が実体を失い、投げつけられた被害者を受け止め、そのまま着地。

眼の前に迫る圧を感じ、受け止めた被害者を横に放り投げ捨てた瞬間。

 

「ご」

 

頭部に衝撃。

無防備にガドラの前に着地した戦士は、避けることも防ぐ事も出来ずにその頭部に全力で振り抜かれた蹴りを受け入れ吹き飛ぶ。

振り抜いたままの姿勢で、ガドラの口元がにやりと釣り上がる。

 

「ゴバゲギザ」

 

まるで虎、獣の如き力を振るうとはいえ、ガドラはグロンギだ。

突撃するだけが脳ではなく、まして、ガドラは狩りよりも戦いを重視する。

人間をただ標的としてでなく、敵としてカウントする事ができるからこそ取れる戦術はある。

相手が逃げ惑うだけの動く的でなく考える敵対者だからこそ。

大概のリントは、敵でない同族を殺す事に躊躇いを覚える。

リントにとって、リントは生きた壁、生きた盾となる。

勿論、ガドラはそのどちらをも普段は使わないが、必要であり、なおかつ手元にそれがあるのであれば、使わない理由はない。

卑怯と呼ばれる筋合いは無い。

生き残る、戦い抜く、勝ち残る為には、周りにあるものを、幾らでも利用して、勝利を掴む。

それこそが、戦う事、乗り越えるという事なのだ。

 

ゆっくりと、余裕の足取りでガドラが倒れた戦士に歩み寄る。

渾身の一撃だった。

しばしまともに動く事はできまい。

あとはトドメをさしてしまえば、残りの時間で悠々とゲゲルを完遂できる。

右手を失ってしまったのは痛いが、それでもなお、この強敵を乗り越える事ができた。

得た傷も、そして力も大きい。

高揚感すらあった。

 

そして、再び立ち上がらんとする戦士を見た瞬間、それは限界を越えた。

まだ、まだ自分と戦うつもりなのか。

なんという事か、この獲物は、この戦士は、どれだけ自分を高めてくれるつもりなのか。

喜びの余りついに絶頂にすら到達しようとしていたガドラ。

だが、それは自らの首と、そして、心臓を掴まれる感触によって中断された。

 

「────」

 

幽鬼の如く、ゆらりと立ち上がる戦士。

その様相は、先までのそれとは一変している。

青い装甲に包まれた体は金と黒の装甲に包まれ、胸の中央には縦長のクリスタルがはめ込まれている。

僅かに細長くなった頭部は、鍬形虫のそれというよりも、もっと他の……。

 

「ガッ……」

 

首の締め付けが一段と強くなり、逃れる為に動かした足が空を掻く。

見えない手によって、宙吊りにされている。

眼の前の金黒の戦士の、変形した二本角が、がしゃりと、重い金属音と共に展開し、六本に。

逃れようと必死で藻掻くガドラの眼の前で、戦士の足元に巨大な輝く紋章が浮かび上がる。

それはリント文字における戦士クウガのそれに似て、しかし、確実に異なる神秘の、神威の紋章。

少なくとも、彼の知識の中に同じ文様は存在しない。

だが、

 

「ッ、ダ……」

 

収束し、戦士の体に飲み込まれていく紋章は、彼に一つの存在を想起させた。

 

「ダ……グ、バ」

 

紋章を吸い込んだ戦士が、開いた両手をゆらりとガドラに向け、握りしめる。

彼の体の中で、何か致命的な物が弾け飛び、ガドラの意識は永遠に途切れる。

ぐしゃ、と、音を立てて、ガドラの生首が地面に落ちた。

 

しん、と、静まり返る。

短時間の交戦ではあったが、現在は未確認への警戒を強めている警察が、民間人の避難を済ませ、続々と包囲を始めていた。

だが、包囲した警察ですら、呆然と眺めているしかない。

 

異様。

 

二十を超える数の未確認生命体を相手にしてきた警察ですら、いや、そんな警察だからこそ、その、戦いと呼べるかすら怪しい、処刑とすら呼べるそのガドラの最後に息を呑んだ。

今までの未確認生命体の殺しとは、何もかもが違う。

異常な生命体である未確認生命体とは異なる異常、異端。

超常の力により作られた死体も、その力を振るったと思わしき二十二号らしき怪人も、脳の許容範囲を越えた存在に見えた。

 

「アギトだよ馬鹿野郎」

 

聞こえるかどうか。

誰に言うでもない独り言の様に、掠れた声で吐き捨てられたその言葉に、耳の良い幾人かの警官達がビクリと身を竦める。

無意識の内にその場の警官隊が銃口を向ける中、青い戦士はガドラの首から下の死体に歩み寄り、そのベルトを無造作に毟り取り、片足を掴み持ち上げ──

悠々とその場から跳び去り、逃走した。

 

 

 

 

 




☆普段は甲斐甲斐しい世話焼きお義兄ちゃんだけど戦闘ともなれば正直引くタイプの戦士だけど今回はちょっと一線超えちゃった誤認ダグバ思わず自己紹介アギトマン
勿論ンでもダグバでもゼバでもないので安心してほしい、ゼットンは私が倒しておいた
嘘ではない、嘘ではない(山吹色のお菓子ススーッ)
と、嘘をつかない善良なファイヤーヘッド氏も言っている今作主人公
日常生活でリア充してる風でもストレス溜まってるんじゃいかってのは戦闘書いててちょっと思う、書いてると勝手に残虐ファイトを始めてる困ったちゃんでもある
でもこいつ一応この十年を駆け抜けるからそれまで死ぬこと無いから安心やで工藤
なんやて服部!
じゃあこのなんやて言ってるのは誰なんや工藤!
パン屋か工藤!
パン屋ならええわ、ほなな!
目覚めかけた本能が目覚めきれてないので進化が行き詰まってたが、メ集団きっての武闘派に脳味噌クリティカルストライク食らって配線繋がった勢いで妄想心音した
アギトに目覚めたら超能力って大抵消えるんじゃないの、みたいな意見はあるだろうけど、作中で登場したアギトの数が少ないのでそこらは個人差がある扱いになった
いざという時は主人公には予知で株取引とか投資とかしながら自由時間の多い仕事をしてもらう為である
アギトへの風評被害が恐らくこの一年で凄い勢いで積み重なるけど来年のアギト組は頑張ってね!
残虐ファイトしないでいればあのアギトとは違うタイプなのか……?みたいに信用を積み重ねたりできるかもよ!
あしはらさんはがんばってね……
このSSは平成仮面ライダー一期をオリ主と共に振り返る事を目的として書かれているが、基本思いつきを書きなぐるだけの超即興SSなので後先の事は考えてはいけない
来年の事を話すと響鬼さんとかが笑うぞ!
そしてこいつの戦闘映像を見ると五代さんは曇る
民間人を思わず守っちゃうとこからなんか善良さを多めに見積もっちゃうからな!
別に守るつもりが無くても、罪もない一般人は法令的に斬っちゃいかんし悪評立つから切れないってのはあると思う
戦闘映像があるかって話は、クウガ時空の新聞に載ってるクウガとグロンギどものすげぇベストショットの数々を見る限り、遠目で映像取ってるやつくらいは居ると思う
だってグロンギがいい感じにポーズ取ってる写真とかあるんだぜあの世界の新聞
警察ともども練度高すぎじゃないすかね

☆超能力開発キック!
あだ名はメ・ガドラ・ダ
なんか卑の意思を持つ孤高の戦士みたいな感じに
フィジカルモンスターで二時間半ほどぶっ通しでマイティフォームと戦ったりできたけど相手も卑劣なのでそこらは生かされなかった
全体的にこんがり焼かれた上に首ぶち心臓妄想心音された挙げ句ベルトちぎられた挙げ句持ち帰られた今週の被害者A
ゲゲルスタート時を出待ちされ襲撃を受け、最終スコア1となった彼の最後は、腹部を裂かれて中身を引きずり出された死体を高所から最寄りの交番の前に叩き落とされるという悲惨なもの

☆薔薇のタトゥーの女
「なんやあのクウガ……クウガ? クウガ……?」
もしかしたらリントはとっくにグロンギと等しくなっているかもしれないという可能性を垣間見せられた女
小説版で再登場するというネタバレをしてやろう
実はTV版では殺しそこねてるんやで
でも小説版で明らかに老化の徴候が見られないんだよね
だいじょぶ? 主人公ちゃんと寿命で死ねる?
全ては謎なのだ
この話原作では黒いドレスに赤いもふもふを首に巻いてるけど名前調べるのが面倒くさいので各自首に赤いでっかい毛虫みたいのだるっと下げてるのをイメージしといてほしい

☆今回寝姿のみ
なんや人型の白猫かなんかか
こんな可愛い白猫属性虚弱ヒロインと添い寝してえけどな俺もなー
話の前面出なけりゃ厄ネタ持ちヒロインもこんなもん
というかグロンギと戦ってるだけでも厄いのに並行してこいつが厄イベント発生させても作者は処理できんのでこうなる
後に専用イベント発動するといいなって思ってるからそこまでは普通の不発弾ちゃん
主人公のイメージ映像は後の平成シリーズのギャグパート的なものなのかもしれないけど主人公は本気で驚異に思ってる
因みに儚い死に際とか敵対してからの救いのない死に際を予想されがちながら特に死に際の構想はない
絶対物語的には途中で死んで主人公の心に傷跡とか残すほうが美味しいんだろうけど、実はうっかり思いついた延命ギミックがばりばり働いてるので、よっぽど美味しい死亡タイミングが無い限り高確率で生き残って正ヒロインになると思う
長く書いてると愛着湧いちゃって殺しにくくなるだろうし、そういう意味ではヒロイン化せずに死んでたほうが美味しかったまであるレベル
勿論後の話の予定もなにもないので生きるも死ぬも話の流れ次第なのだ


梅雨(四月半ば)
梅雨って何時だよ四月じゃねーよばーか!
でも超能力育成キックのゲゲルで結構警官隊に被害でるんやもん……
あと資料集読んでると結構グロンギって種族被りが居るってわかってちょっと面白い
やっぱ血縁とかだと似た怪人になるんかねこれ
次のお話は、たぶん唯一のゲゲル成功者か振り向くなの人
ガドラだけ倒してメは終了、次からゴな!
ってのは間違いなく不安に襲われるだろうからね
出席日数は想定より犠牲にならなさそう、よかったね


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7 炎刀、力を測り

今更ですが、この作品も含めて、多くの誤字指摘には多大な感謝を


五月二十三日、火曜日。

大田区、セントラルタワー。

未確認生命体第三十二号の犯行予告と思しき情報を元に現場に駆けつけた未確認生命体合同捜査本部の面々は、奇妙な遺体を発見した。

それは三十二号の予告通りに殺害された被害者のものなのか。

いや、そんな事はありえないだろう。

 

濃い緑と暗い薄茶の体色のそれは、所々不自然に、まるで写真を印刷したかの様に色を変えている。

怪物……いや、未確認生命体の、首なし死体。

今はそれだけしか見つけられないが、確実に、首から上もその場の何処かに落ちているのだろう。

肉の焼ける匂い、或いは、人間の焼ける匂い。

奇妙に鼻につくその匂いが、何処からか漂い、駆け付けた刑事達の鼻の奥へとこべりつく。

 

「見ろ」

 

うつ伏せに倒れていた、人間体に戻りかけた状態で死んでいる三十二号。

近寄って見れば、その凄惨な有様がわかる。

夥しい血痕、周囲には内臓の一部が打ち捨てられている。

練度の高い警察官ばかりが集められているからか吐き出す者は居ないが、通常の未確認の死体とはわけが違う。

 

「こいつは……」

 

状態を確認する為に仰向けにされた三十二号の死体。

ベルト状の装飾品は破壊され、その腹部は鋭利かつ高熱を帯びた刃で十字に焼き切られ、内部に収められていた内蔵が半ば引き摺り出されているのがわかる。

四号に殺害された未確認生命体は須らく爆発し、この様な形で遺体を残すものは一部例外を除けば存在しなかった。

だが、彼等は知っている。

この惨状を作り出せる存在を。

 

「二十二号か……」

 

未確認生命体第二十二号。

四号と同じく人を殺さない個体。

しかし、その正体は謎に包まれている。

人間の味方なのか。

未確認の敵なのか。

どんな思惑で動いているのか。

 

再び、一月の時を経て活動を再開したと思われる二十二号。

しかし、今回その姿を目撃した者は、存在しない。

 

―――――――――――――――――――

 

「二十二号は未確認側の事情を、いや、彼等の装飾品がどの様な役目を持っているかを理解している可能性が非常に高い、と」

 

『ええ、爆発研究室の分析でもこれまでのヤツは腹部を中心に爆破してるって出てたのよ。二十二号は他の未確認を倒す時、絶対に腹部の装飾品を破壊してたでしょう?』

 

「なるほど」

 

二十二号によって撃破、いや、殺害された未確認が残す遺体は非常に損壊が激しい。

行方の知れない七号を除けば、顔を焼かれ、腹部を裂かれ、内臓の一部を引き摺り出されている。

これまで警察が確認できた中で、という前提での話にはなるが、先日の二十五号の様な殺し方はイレギュラーなのだろう。

だが、それでも後に周辺の交番に遺棄された二十五号の首から下の死体もまた、腹部を裂かれていた。

顔を焼く、首を切り落として置き去りにする、という行為の理由は不明だが、少なくとも腹部を裂く理由の一つはそれと見てもいいのかもしれない。

 

『じゃあなんで爆発させないようにしているのか、なんてのはわかんないけど』

 

「そうですね。……」

 

『どうしたの?』

 

「ああ、いえ。……本人に確かめる事ができれば、と」

 

『そうねぇ、でも、五代くんみたいな人は未確認じゃなくても珍しいもの』

 

「ははは。……では、引き続き、よろしくお願いします」

 

『うん、根を詰めすぎない様にね』

 

通話を切る。

榎田からの情報は、そう遠からず正規のルートで合同捜査本部にも回される事だろう。

それによって二十二号がどの様な扱いを受けるかは分からないが、その行いに何らかの意味があり、ある程度の知性や知識を持つ事は広く知られる事になる。

最も、それで二十二号にとって有利な結論に向かう可能性は高くない。

 

『あのクウガ、あれを見れば分かる。リントは既に我らと等しい。いや、リントと我らに違いなど無かったのか、それとも、戻っただけか』

 

B1号の言葉が頭を過る。

一方的に告げられた、いや、自分に向けられた訳でもない、恐らくは独り言に近い言葉。

『あのクウガ』というのが二十二号を指しているのであれば、少なくとも二十二号が未確認の側の存在でない事はわかる。

 

少なくとも、即時射殺という事はない。

四号──五代という前例があり、そしてなにより、確認されている限り二十二号による市民への被害は一切無い。

二十五号との交戦時に現場に居合わせた一部警官達からは、二十二号を擁護する声も少なからず上がっている。

少なくとも、捕縛すべきだ、という意見よりは尊重されているのが現状だ。

 

「まったく……」

 

五代の様に、とは行かないだろうが。

せめて、二十二号の側から意思疎通を図ってきてくれれば。

そんな、愚にもつかない思いつきが浮かぶ程には、一条薫は頭を悩ませていた。

 

―――――――――――――――――――

 

「不味いよなぁ……いや、これくらいならいいのかなぁ……」

 

白んだ湯気を暖色系の照明が照らす浴室の中で誰にともなく独りごちる。

 

「?」

 

なになにー、とでも言いたげに首を傾げるジルのシャンプー塗れの頭を、誤魔化す様にごしごしと髪を掻き混ぜるように洗う。

イヤイヤをするように、しかし何処か楽しげに身を捩らせるジルに答えるでも無く思うのは、高校に入学してからの生活だ。

 

欠席一回。

現状、この程度で済んではいるけれど、今後の事を考えればこの一回も軽視できない。

勿論、このサボりは止むに止まれぬ事情があってこそ。

ガドラもガルメも、共に警官に大量の被害を出す描写が存在したグロンギだ。

そのままゲゲルの続行を許していれば、父さんを害していた可能性は非常に高い。

だからこそガドラはゲゲル開始直後に、ガルメは警察に被害が出る直前に仕留めた。

 

ガドラの時は失敗してしまったが、今回のガルメは比較的簡単に始末する事ができた。

どれくらいの強さの敵に対して戦えるか、という指標としてはガルメは下の下の下、メタさえ貼れればズの上位とどっこいどっこいな戦闘力しか無かったが、素直に始末できたので一切文句はない。

そもそも死角から不意をついてブラストペガサスで狙われて避けられるガドラが異常だったのだが

 

そんな異常な野性の無いガルメとの戦いは、授業を終えた後、家に帰らずトルネイダーで東京までの最短距離を真っ直ぐ突っ切って行く事で間に合わせる事ができた。

理屈の上では可能だとわかっていたが、実際に夕飯までに家に帰ってこれたのはガルメが姿を消せるだけの雑魚で居てくれたお陰だ。

だが、トルネイダーをモーフィングパワーでグッと伸ばして飛ばしたお蔭で、ジルを載せていく事はできなかった。

父さんが被害を受ける可能性を下げる為とはいえ、母さんが狙われる可能性を上げたのでは意味がない。

 

「流すぞ」

 

こくりと頷いたジルの頭の泡を、わしわしと揉みほぐすようにしながらシャワーで洗い流す。

シャンプーの泡が流れるのをじっと待っているジル。

その背に残された、肩口から斜めに脇腹辺りまで伸びる大きな傷跡が、お湯で暖められて赤みを帯び、その存在感を大きくしている。

触っても、本人は別に痛がらないのだけれど、体を洗うタオルでごしごしと擦るのは躊躇われる。

刺激の強い成分の入った石鹸も避けるべきだろう。

諸々を考慮した結果、無添加石鹸を泡立ちネットで泡だて、それを手に盛って、撫ぜるように洗うのがベストという事になった。

調べた結果、このやり方でも皮脂や汚れの類はちゃんと落ちるし、結果として肌にも良いのだという。

 

傷痕とその周辺は撫でるように柔らかく。

洗い方がくすぐったいのか、笑い声にならない短い息が連続し、それでも洗う手と泡から逃げる事をしない。

もう結構な回数洗っているし、最初の頃に繰り返し説明したからか、多少擽ったかろうが逃げること無く洗われている。

従順、とは違うか。

自分が出来ないことをしてもらっている、という理解があるらしい。

 

記憶喪失になったからか、元からそうなのか、ジルの性格はなんというか、素朴だ。

穏やか、という意味でなく、飾り気がないというか……。

疑いを持つ事があまりない。

教えられた事は素直に吸収する。

獣の様な、というか、説明が難しい。

 

勿論、彼女が穏やかな気質を持つだとか、他人に対して安全である、という意味ではまったくない。

巨大で強い獣が細かい変化に対して無頓着であるのと同じなのではないか、とも思う。

故に、必要でないから余計な事をしない、というだけで、したくない、というのとは別だろう。

だから、少なくとも他のグロンギのゲゲルが行われている間は、そして参加資格でもあるゲドルードを付け直さない限りは、無駄に人を殺したりはしないのではないか。

 

或いは、極端に自分を苛立たせる相手には怒りや殺意を向ける事もあるかもしれないが、少なくとも母さんはジルに対してそう思われる様な行為はしない筈だ。

母さんの中で、ジルは何処かで後遺症が残るほどの虐待を受けていた少女なのだ。そのような無体をする理由が無い。

だから、家で母さんと一緒に居たとしても、ジルはそうそう危害を加えない。

そもそも、どちらかといえばジルは家でも俺の部屋に居る割合が多く、母さんの居る居間に常駐するという事はほぼ無い。

だから、短い時間であれば、家をあけても問題ない筈だ。

 

「……絆されてるよな」

 

これだ。

ジルは、間違いなく手近な場所では野良・或いはスマブレ子飼いのオルフェノクよりも潜在的な危険性が高い。

だというのに、俺はジルに対してかなり警戒を解こうとしてしまっている。

まだ、同じ屋根の下で暮らし始めて三ヶ月程度でしかないというのに。

 

問題だ。

俺はこんなにチョロかったのだろうか。

頭の性能は明らかに向上しているのに、こういう精神的な、感情面では何故か未だに甘っちょろいまま変われずに居る。

一体何処のどいつだったか、アークルを付けて戦い続けると、何時か戦うためだけの生物兵器になる、なんて話をしたのは。

まぁ、あの説明は別にアークルの碑文を読んだ上での説明ではない。

そもそも最終的にかなり解読された碑文にその類の注意書きが無かったのだから、少なくともアークルにはその手の安全装置が搭載されていた、と取るべきなのかもしれない。

騙された、とは言えないだろう。

精神的な負荷を取り除く機能が無かったとしても、自分の身を守る為の力として見れば十分過ぎる程の性能を発揮してくれているのだから。

 

「よし、じゃあ、風呂に入るぞ」

 

頭の天辺からつま先まで隈なく石鹸を使って柔らかめのマッサージするように洗い終え、シャワーで流して泡を落としたジルに声をかける。

ぼう、と、焦点の緩んだ瞳をして呆けていたジルは、俺の言葉にワンテンポ遅れてリラックスしきった顔でにへらと笑いながら頷く。

なすがままなされるがまま、警戒心の欠片もなく介助を受け入れる姿。

こういう姿を普段から見せられているのが、警戒心を緩めさせられる理由なのか。

 

一見して危険ではない危険物、というものの危険性は頭では十分に理解しているつもりなのだけれど、実感に落とし込むには少し難しい。

接して、監視して、得られる実感はどうしてもただの記憶喪失の虚弱少女にしか見えないというものでしかない。

隠す、演技する、というのは、基本的にそういうものだとわかっているというのに、だ。

 

湯船の中で膝の上に載せたジルを、落ちないように両手でホールド。

水の中を自由に揺蕩う感覚は海の感覚を、ひいてはあのあからさまにクジラモチーフと見て取れる変身体の感覚を思い出させる危険性があるし、そうでなくても湯船の中で座位を保てなくなり溺れる可能性もある。

この風呂は何故か俺が生まれる前からやけに広いが、体の不自由な人が入る事を考慮した作りではない。

……きっと、父さんも母さんも大きい風呂が好きなのだろう。

別の理由が出てきたらいたたまれないので、本人たちには聞いていないが。

背もたれに寄りかかる様に体重を掛けてくるジルを強すぎない力で抱えながら、天を仰ぐ。

見えるのはたっぷりの湯気と風呂場の少しだけ高い天井。

 

……安心を求める為には、どうしても危険を冒さざるを得ない。

メのちゃんと戦うグロンギで戦闘力を測りはしたものの、そのメによるゲゲルもそろそろ終わり。

次なるステージへと進む事になる。

──ゲリザギバスゲゲル。

最上位、チャンピオンとも呼べるンを除く事実上のグロンギのトップランカー達による、ンへの挑戦権を得るための、そして、ンとなった後に究極の闇を齎すための戦い。

ここまで来ると、どのゴがゲリザギバスゲゲルを成功させてンへの挑戦権を得てもおかしくない。

恐らくは誰も彼も、昇格の為のゲゲルを二度クリアしてきた歴戦の狩人、あるいは、歴戦の戦士。

その力は、メのそれと比べてどれほど差があるのかもはっきりしないのだ。

力の差は、強固さの差は、再生力の差は、戦闘経験、直感は。

俺はゴの強さとその強さの根拠となる戦歴を何一つ知らない

 

手に入れた安心の為のデータは瞬く間に古くなり、しかし不要だったかと言えばそうでもない。

ズとの戦いで得た感覚はメとの戦いに生きた。

魔化魍との殺人アスレチックでパルクールするような比べるべきでない戦いとも、オルフェノクへの不意打ちとも違う、同じ程度の力、同じ程度のサイズ感で戦う感覚は確実に今に繋がっている。

今の俺とグロンギとの戦いを始める前の俺とでは、アギトの力をほぼ完全にものにしたという点を無視しても確実に今の俺の方が強い。

強さを得ているという事は、それだけ生存率の高さが上がっていると行っても過言ではない。一概にそう言えないのだとしてもそういう一面がある事は間違いない。

 

しかし、それでも、時間の流れる速さに、状況の進む早さに、時折置いていかれそうになる様な気がして、憂鬱になる。

唯でさえ、平和に生きていくには問題は多すぎる世界であるというのに。

……ゴ集団に最も近い、と思われるメのゲゲルは、大体一ヶ月後。

どういう武器を使うかも知っているし、どう使って戦うかも知っている。

ゴの力を推測する為の指標としては、そう悪くない相手だが。

 

「もっと……」

 

もっと、強くならなければならない。

アギトの力は、戦いを明確に有利に運んでくれるだろう。

剣術も、槍術も、格闘術だって、今の時代、調べようと思えば教材は幾らでも手に入る。

だが、それはどこまで通用するのか。

もっと、明確にこれだ、と、自信を持って言える様な技術があれば。

……一つだけ、心当たりがあった。

だけど、今直ぐにその心当たりに手を付ける事はできない。

命の危機への対処だとしても、そのために人生そのものを疎かにしてしまえば元も子もない。

強くなって、何も恐れる事も無く、死の恐怖に怯える事もなく、不足のない人生を送るのだ。

 

―――――――――――――――――――

 

がん、がん、がん。

金属を叩く音が、漣の音を塗りつぶす様に大きく響く。

六月二十二日、中央区晴海船着き場、時刻は昼を回ってすぐ、十二時八分。

頭をすっぽりと目深に被ったフードで覆い隠した怪しげなコート姿の男が、船着き場の赤い鉄柱のオブジェにもたれ掛かり、手に持った石で叩いて音を立てていた。

 

明らかな不審人物の姿に、ちょうどデートに来ていたキャリーバッグを持った一組のカップルはそれを避けるように歩く。

正面、ターミナル展望台から階段を降りてくる女は、不審人物になど目もくれず、歩いてくるカップルへと近づいていく。

手には大きな鎌。

不審に思われないのはカップルが互いしか見えていないからか、ここが東京だからか、或いは晴海だからか。

 

大鎌を手にした女は、堂々とした足取りでカップルとすれ違う様な軌道で近づいていき。

大鎌を構える。

すれ違う一瞬、女は姿を変える。

蟷螂に似た特徴を備えた、女のグロンギ。

メ・ガリマ・バ。

ゲリザギバスゲゲルを目前にした、通常のゲゲルの最後のプレイヤー。

自らに課したルールは、電車に乗り合わせて匂いを移した相手のみで、18時間で288人を殺すというもの。

カップルは、二人共にその電車に乗り合わせていた。

 

ガリマが大鎌を振り上げたその瞬間、顔面に石が当たる。

メ集団最強のガリマですら怯む程の速度で投げられた石は粉々に砕け散り、炸裂音にカップルが振り返り、凶器を構えた怪人の姿に怯えながら走り去っていった。

怒りに染まった赤い瞳でガリマが石の飛んできた方向を見れば、そこには季節外れのボロ布の様なコートで全身を覆い隠した不審な男。

 

「お姉さん、ちょっと遊んでってよ」

 

ごう、と、男の身を包むコートが燃え上がり、その姿が顕になる。

金の二本角、赤い複眼、黒い肌、胸部中央にプレートの嵌め込まれた赤い装甲の戦士。

その腹部の装飾品、アークルを覆い隠す様にはっきりと実像を結んだオルタリングから、黒と金の柄が現れ、引き抜かれる。

黒と金の柄、青い宝玉の嵌め込まれた金と赤の鍔、赤い文字状の装飾が刻まれた銀の刀身。

フレイムセイバーを肩に担ぐように構え、腰を落とす。

 

「ゲリザギバスゲゲルの予習がしたいんだ」

 

「クウガ」

 

眼の前に突如現れたクウガに、ガリマは自分の口角が無意識の内に上がるのを感じていた。

メの中では、自分ほどでもないにせよ優れた戦闘力を持っていた事で知られるガドラ。

直接的な戦う力こそ優れていなかったが、この時代では唯一ゲゲルを成功させメへと昇格を果たしたガルメ。

そのどちらをも奇襲を掛けて殺した、もう一人のクウガ。

 

無言のままガリマが駆ける。

速い。

僅かに残像が残る程の加速は蟷螂の狩りに似ていなくもない。

振るう武器が、ゲリザギバスゲゲルのルールに合わせて新調した使い慣れない獲物であるにも関わらず、その太刀筋には迷いの欠片もない。

振り下ろされる大鎌に合わせるようにフレイムセイバーを振り下ろし、その刃と刃を真正面からぶつけ合う。

火華が散り、ぎゃりぎゃりと音を立てながら合わせたままの互いの刃を振り抜く。

膂力にそれほどの差は無い。

技量が出るようなぶつかり合いでもない。

だが獲物の差は如実だ。

 

一合打ち合ったのみで、ガリマの大鎌は刃こぼれを起こしていた。

天使の力で生み出された剣と、超常の技術を持つとはいえ通常の金属で打たれた大鎌の差だろう。

このまま打ち合えば何時か獲物ごとガリマが切り裂かれるのは自明である。

このまま打ち合うのであれば。

 

「……なるほど」

 

刃こぼれを起こした大鎌は、ガリマが一振りすると忽ちに元通りの姿へと変わっていた。

モーフィングパワーにより、刃こぼれを修復したのだ。

メでしかないガリマには、小型の装飾品や手近な棒きれなどから武器を作り出す事はできない。

だが、モーフィングパワーは魔石ゲブロンが、ゲドルードが齎す基本的な力だ。

体を組み替える事が可能であるのだから、体以外を組み替える事もできる。

 

ズは強化された肉体を振り回し。

メは変化した肉体の特徴を凶器として扱い。

ゴは強化された肉体も変化した体の特徴も十全に振るえるからこそ、新たに武器を操るようになる。

 

ゴを目前にしたメであるガリマにとって、それは難しくとも出来なくはない技術だった。

 

猛然と大鎌を振り回すガリマ。

その一撃一撃がまともに受ければ戦士の身を包む装甲越しにダメージを与える程の威力を備えている。

赤い戦士は大鎌を剣で受け流し、避け、時に真正面から斬り付け、防ぐ。

互いに振るう刃が空を斬り、時に周囲に聳え立つ赤い鉄柱のオブジェを切り落とし、しかし、決着は付かない。

 

ゲゲルプレイヤーとして考えれば明らかに時間のロス、意味のある行為ではない。

だが、武人気質であり、ゲゲルに質の高さを求めるガリマにとってみれば、多くのプレイヤーを屠ってきたクウガは、最初に現れた方も、後に増えた方も、どちらもゲゲルのカウントを増やす為に是非とも狩りたい獲物であった。

それは、ただ数だけを殺して辿り着くゴの領域よりもより素晴らしいものであろうという思いが確かにあった。

狩人としてのガリマはハンティングトロフィーとして、武人としてのガリマは力の証明として、この勝負を心底から欲していた。

 

無為な刃の打ち合いの中、ガリマが咄嗟にその場から飛び退く。

次いで、一瞬ガリマが居た辺りのタイルがその表面を緩ませ、ぐつぐつと煮立ち始めた。

一足一刀分の距離の先、赤の戦士が紫の鎧を纏い、構えた赤金の曲刀が紫の直剣へと姿を変える。

ガリマにとって、いや、恐らくは多くのグロンギにとって因縁のある紫の戦士、タイタンフォーム。

刃が伸び、大きく振り下ろす為の大上段に構えられたタイタンソード。

 

それに対し、ガリマは腰溜めに、自らの身体で大鎌の刃を隠すような構え。

奇しくも居合に似たその構えは、威力こそ劣れど初速において優れ、振り下ろされるタイタンソードよりも早く届く。

姿勢は低く、狙うは紫と銀の鎧の隙間、黒い肌。

そこであれば、刃が通る。

根拠はない。

だが、確信に近い自信はあった。

 

遠くから汽笛の音が聞こえ、動き出す。

紫の戦士が振り下ろす動作を始めたのを確認したガリマは思考よりも早く、体に刻まれた本能のままに、這う様な低さで走り出した。

紫の戦士は生半な刃では傷一つ付かない鎧を身に着けているが、それ故にその動きは比較的鈍重だ。

自分の刃を後ろに動いて避ける事も、振り下ろした刃で受けることも難しい。

そう考えたガリマの肩に、タイタンソードの切っ先が『突き刺さった』

早すぎる。

そして、軽すぎるその刃を疑問に思えば、突き刺さった肩からエネルギーが注入され、封印の紋章が浮かび上がる。

だが、軽い。

まるで白のクウガのキックの如き軽さ。

見れば、紫の戦士の手には剣は無く、振り下ろされる半ばで手を開かれていた。

 

なるほど、と、内心で紫の戦士の割り切りの早さに感嘆し、しかし、嗤う。

この程度のエネルギーであれば……。

 

しかし、それこそが致命的な隙となる。

紫の戦士は左手でレフトコンバーターを押し込みながら、右手でオルタリングから二本目のフレイムセイバーを引き抜く。

封印エネルギーを霧散させんとしているガリマは動くことが出来ない。

 

さもありなん。

この時代のクウガはアークルの正式な使い方を知らぬが故にグロンギを爆発させてはいるが、アークルの生み出す封印エネルギーは本来、ゲブロンの力によって変じたグロンギを文字通り『封印』するための力。

何をする事もなく霧散させる程の力が無いのであれば、封印に対して抵抗している間は拘束されているも同然なのだ。

 

フレイムセイバーの鍔が展開し、黄金の六本角に。

前腕フレイムアームズから発生した七千度の熱がその刀身に移され、陽炎を帯びる。

ガリマが封印エネルギーから逃れるよりも早く振り下ろされた刃は、その脳天を叩き割る。

熱したナイフでバターを斬るように割られた頭部は焼けただれ、内部の油を燃料に激しく燃え上がった。

そして一歩踏み出したアギトの手により刃を押し込まれる。

鋭さよりも最早込められた熱量で焼き切られ、腹部の辺りでゲドルードを切り裂きながら引き抜かれた。

 

脳天から腹部までを切り裂かれ、唐竹割り寸前にまで持っていかれたガリマの死体。

ゆらゆらと倒れる事無く不安定に立ち続けるその死体の腹部に赤い戦士の手が潜り込み、もう片方の手で死体が押された。

スローモーションの様にゆっくりと後ろに倒れるガリマの死体。

その腹部から、無数の神経を生やした血塗れの瘤の様な物が引き抜かれる。

瘤から肉体に繋がった神経で倒れる寸前で止まった死体を、足で抑えて地面に倒す赤の戦士。

ぶち、ぶち、と、音を立てて千切れていく神経。

瘤……神経に包まれたゲブロンを失った肉体は緩やかにその肉体を元の人間のそれに戻し、怪物と人間で作ったモザイクの死体だけが残される。

 

赤い戦士はしばし手の中の瘤をフレイムセイバーの根本で削り、瘤の中から石、ゲブロンが見えてきた辺りで満足気に頷いた。

 

 

 

 




☆もうメも雑魚程度なら戦闘シーンカットしてお風呂シーン入れるマン
ここは日曜朝8時ではないのでお風呂シーンもある。読者サービスではなく純粋におフロシーンが書きたかっただけなので勘違いしてはいけない
初めにジルは自分がお風呂に入れると言った後母親にすごい顔で見られ、数ヶ月経っても何の間違いも起きていないのを確認し、それはそれで変なものを見る顔で見られ、もしかして女に興味がないのかと疑われて個室のベッドの下や屋根裏を探られる
なお母親に女の趣味がバレるという結果だけが残った
女の形の不発弾を洗って勃起する様な特殊な趣味はないけれど、最近これはただの無垢な子供なんじゃないか、くらいには絆されてしまっているみたい
全裸の女の子をお風呂の中で全裸で膝の上に乗せた状態であいにーどもあぱわーとか考えるのはそれはそれでどうなんだろうかとちょっと思う
だってもうクウガ原作で言えば折り返し地点を過ぎちゃってるから仕方ないね
大体月一で学校をサボる
親に連絡が行っていないのだろうか、行ってたら指導されそうっちゃされそうだけど、たぶん普段の授業に対する態度は普通に良いのでそれほど疑いは掛けられてない
世界の秘密を知るまでは普通に将来のために自己開発していたので文武両道
文武両道なだけでたった一人が戦いを続けられる世界かは不明
後のアギト編とか響鬼編とかでどうにか理解者を増やせればいいかもしれない
何気に素晴らしき青空の会とか良いと思うんですがどうですかね
なお所属すると人間関係の描写が面倒なので多分そういうのは無くなる
無難なのは猛士に入って弟子入りするなりグロンギ脳を生かして開発を手伝うなどしてディスクアニマルの扱いを覚える事である
今回ガリマ姐さんを開きにしそこねたせいで五代さんがライジングに目覚める切っ掛けとかスルーしちゃったけどそこらへんのフォローは多分次回冒頭とかでやる
たぶん次回か次次回に修行編があった事をほのめかすか修行シーンを挟んだりするかもしれない
なお、一期を振り返るとか言ってる割に二期の要素がちょいちょい見えたりその関係で昭和勢の影が見えたりするけど、そこらへんの設定はうさぎみたいにふわふわしてるので気にしちゃいけないぴょん
ガリマさんの戦闘力に関して特にコメントが無いのは大体予想の範疇だから
赤の戦士×赤の戦士はフレイムフォームの鈍重さを改善しつつバランスを取れる万能型
なおアギト完全覚醒により、フォームは組み合わせタイプから重ね着タイプになり装甲値が強化された
生き残り重点なので可動と機動力を損なわない装甲の強化は
カメレオン型?
居たね、今は居ない

☆警察側
Qまた二十二号か……みたいな事言ってるけどそんなに二十二号活動してないよね?
A悪印象は記憶に残りやすい
でもベルト割いてる理由くらいは理解されてきた、さすが榎田さん、家庭を犠牲にして仕事に勤しんでるだけのことはあるぜー!
もうちょっと家庭を顧みても良いかもしれない
一条さんはもういっそ五代くらい体当たりで来てくれれば、みたいに思ってる
でもどうせ五代みたいに意思曲げない系なんだろうな、という予感があるので頭が痛い
そんな一条さん、今回ガリマさんが開きにされてる裏で桜子さんとティータイムしてたりしたのだ
お食事とかじゃなくて良かった……食後に見る半人間の焼斬殺死体は胃に来るからね
五代さんが倒したグロンギの死に方、残された死体、そして腹部から何かを引き抜かれたグロンギの死体と材料が揃ってる
……ふと思うんだけど、大量のグロンギの死体がダグバの手によって作られて警察側に引き取られるよね
つまり魔石ゲブロンとゲドルードが警察の手に渡る訳で
そんな警察が翌年にはアギト捕獲だとかアンノウン保護だとか言い出して、更に数年後にはオルフェノクを改造したりするので……
リントは本当の意味でグロンギと等しくなるのかもしれない

☆薔薇の人
「なんやあれオモロイなぁ、絶対ウチラの側やろあれ。やっぱリントも侮れんね!」
くらいの意図で言った(意訳)
この人のクウガに対するスタンスが絶妙に謎で動かしにくい感はある
プロトクウガとの戦いの場所を最初の屈辱の丘とか言ってるのでリントに負けるの悔しいって気持ちも無いではないのかもしれない
戻った云々は設定の謎にかまけてイコン画の時代の話をしている感じ
神の横暴を恐れた天使に力を与えられ洪水以前の凶暴性と傲慢さを強化したグロンギと、争いを忌避し文化からすら消し去ったリント、みたいな
誰か読者の中にラ集団所属の一般グロンギの方居たら実際クウガとかどんな気分で見てるか教えていただけると嬉しいです

☆カメレオンの人
特に見どころ無く死んだ
何が悪いってフレイムフォームが悪いしこいつの体質も悪い
ちょっとした閃光弾くらいモーフィングパワーが無くても余裕なのに、相手はモーフィングパワーを持った超感覚持ちのアギト兼クウガだった
しめしめ見えてないぞ……とかやってたら舌を切られて閃光玉投げられて首はねられて腹裂かれて死んだのだ
でも被害者はちょっと出してるし、前回のゲゲルも合わせれば結構殺してる
殺し合いでなく狩りをするのがゲゲルなので基本的にはこっちが正しいプレイスタイル

☆振り向くな!
犠牲者0人
封印エネルギーをある意味正しい使い方で使われて死んだ
凄く強い、という設定はあるけれど、元からこの人メとゴの違いを見せたり五代さんをパワーアップさせたりする様な位置にいるので……
でも最初の犠牲者の首がズレる描写がトラウマった人は多いのではないかなと思う

☆最早ただの平和の象徴みたいなやつ
主人公が絆されて来ているので不発弾描写が無い
このままだとただの平和な置物なので、アギト編では少し盛り返す
それまではただのヒロイン
TDNはヒロインだった……?
因みに漠然と背が低い、ちょっと細め、という以外は身体的特徴がそれほど描写されてないし、ゲブロンもゲドルードも無いので無事に連載が続けば多少デザインは変わるかもしれない
オルフェノク関連の設定やらアギト関連の設定をレッツらカキマゼール!とこねこねした結果、不発弾グロンギヒロインと純粋ヒロインをベストマッチできる未来が見えてきた
頑張れ書いてる人、頑張れ書いてる人、お前はできる、お前はできる……(自己暗示)
できなかったらただのヒロインで進めるのでご了承ください
TDNはヒロインだった……?(無限ループ)

次は多分夏休みか夏休み明け
実時間ではなく作中時間で
ちょっとクウガと関係ない場所行くかも
今作はあくまでライダー系でまとめるから多少の寄り道は許してね
それと資料集とかで事件の時系列追ってるとゴがヤバイ
翼を引きちぎっても二時間くらいで完全再生するとかなんだこの生き物
しかも翼の質量分ドカ食いした描写とかも無い辺りかなりゲブロンの力で補える臭い
化物かよ……なおクウガ期の後の大量のゲブロンの行方
等しくなっちゃう~↑
こういう伏線が拾われずに適当に捨てられてもめげないのがスコッパーの必須スキルなのだ


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8 情報、広がり深まり

人類の敵か味方か、謎の未確認生命体二十二号の秘密に迫る!

……などという見出しの記事がそれなりに見られ初めたのは、二十二号が明確に四号と区別され始めた証拠と言えるだろう。

警察からの公式発表だけでなく、四号と似てはいるものの、明らかに別個体と分かる姿が確認されたのも大きい。

未確認生命体二十六号(メ・ガドラ・ダ)との交戦時、二十六号を殺害──いや、処刑した際に変じた姿は、遠間から撮影していたマスコミの写真により世間に知れ渡る事となり、包囲していた警察が迂闊にも家族に漏らしてしまった事により、二十二号が発した言葉すら水面下で広がっていた。

確かなソースは無く、噂としてだけ広がる、二十二号を示す言葉。

 

『アギト』

 

四号に似た姿を持つ、しかし、明らかに四号とは異なる理屈で動いているであろう二十二号がゴシップの対象にされない筈もない。

マスコミが、未だインターネット上の掲示板から情報を持ってくる事をよしとしない時代において、その名はただ水面下で、アングラな場面でゆっくりと広まっていった。

曰く、未確認生命体の処刑人、曰く、同じ種族だが異なる部族からの狩場を奪う為に送られてきた刺客、曰く、四号を解析して軍が作り上げた生体兵器。

その実体は不確かなまま、誰が訂正できるでもない場所で、静かにその存在感を増していく『アギト』の噂。

残虐性への恐れ、しかし、未だ市民を殺害した事が無いという事実がそれを薄れさせ、代わりにとでも言うように湧き出てくる好奇心が、密かにその登場を期待させ……。

 

しかし、その期待を裏切るように二十二号──『アギト』は、梅雨が明け、夏が到来する頃になっても、姿を表さない。

これまで、何らかのルールに基づいて活動しているのかと疑われる程一定の期間を置いて未確認生命体の惨殺死体を作り出していた二十二号。

一部の自称識者の間では実しやかに死亡説が囁かれ始め、新たな情報が生まれないが故に、忘れ去られる事は無くとも、警察関係者を除けば、多くの人々の間では意識の外に置かれ始めた。

そんな中、二十二号が活動を休止している理由を知る者が、僅かながらに存在していた。

……事は、三十七号(メ・ガリマ・バ)の死体が、中央区晴海の船着き場近くに遺棄されていたのを、通報を受けた警察が駆け付けて確認した、その日の夜に遡る。

 

―――――――――――――――――――

 

拝啓。

 

梅雨の中休み、夏の到来を感じさせる強い日差しに、雨に濡れた新緑がひときわ濃く感じられる今日このごろ、四号様は如何お過ごしでしょうか。

この度、戦闘時に手足の痺れ、新たな力の萌芽を感じ初めておられるという事で、一筆啓上申し上げます。

グロンギの頭領とも言えるン・ダグバ・ゼバ氏との戦いにおいて、凄まじき戦士の力が必要である事は先日お伝えした通りです。

しかしながら、凄まじき戦士の力は扱いが難しく、青空の如く清らかな心などを含む諸々の極まった精神的な適性が無い限り、使いこなすことは容易ではありません。

 

しかし、本来想定されていない仕様ではありますが、アークル装着者へ雷、或いは生命を脅かすレベルの強力な電気エネルギーを加える事により、限定的にその力を引き出す事が可能なのです。

四号様の肉体におかれましては、先日に仮死状態を経験した際に医療行為の一環として電気ショックを受けることにより、僅かながら力の解放が行われようとされております。

年明けから始まったグロンギによるゲゲルもズやメによる通常のゲゲルを終え、ゴにムセギジャジャを移したゲリザギバスゲゲルが開始される時期にさしかかりました。

強力になっていくグロンギの戦士と戦う事を思えば、先んじて戦力の増強を測り、また、後々のン・ダグバ・ゼバ氏との決戦へ向け、凄まじき戦士の力の一端に触れておく事は必須であると愚考する次第です。

 

末筆ながら、お身体に気を付け、前座であるゴ集団のグロンギになど敗北なされませぬよう、ご自愛と健闘をお祈り申し上げます。

 

敬具

 

平成十二年六月二十二日

 

未確認生命体二十二号より

 

2000の技を持つ男、五代雄介様

 

 

追伸

ゴ集団上位及びン・ダグバ・ゼバ氏との戦いに備え、修行期間を取らせていただく事になりました。

ゲリザギバスゲゲルのムセギジャジャへの対応は、これまで通り四号様及び警察の方々へお願い申し上げます。

また、ゴ集団をクウガの力で倒す際、これまでのものよりも激しい爆発が見込まれますので、お気をつけください。

 

―――――――――――――――――――

 

「なんだこれは……」

 

手渡された既成品と思しき封筒に慎ましく収められた便箋の中身を読んだ一条は、有り体に言って困惑していた。

丁寧な文体、乱れのない文字はまるでパソコンから印刷したかのようで、しかし、文章の内容そのものははっきりと常軌を逸したものだ。

本人が配って歩いている名刺でも見なければ知る由もない肩書、そもそも名乗ってもいない筈の雄介のフルネームはまだいい。

しかし、警察関係者の中でも一部しか知らない、雄介の一時的な仮死状態や、ベルトに込められた機能への詳しすぎる知識、当然のように説明すらない、恐らくは未確認の使う言語と思しき専門用語、そして未確認の内情への異様な詳しさ。

いたずらと一笑に付すには濃厚過ぎる程に秘匿された情報が多く記され過ぎている。

 

「さっき、ポレポレに戻ったら、俺宛にって届けられてたみたいで」

 

少し興奮気味に語る雄介の顔には喜色が浮かんでいる。

言葉を交わしたのは一度切り、それ以降は未確認と交戦したらしいという情報を聞くだけで変身後の姿で顔を合わせる事すらしなかった。

しかし、雄介の中では二十二号もまた自分と同じく何らからの理由から戦いに身を投じた仲であり、その幼さから少なからず心配もしていたが、ある種の仲間意識も感じていたのだ。

 

戦う理由は語ってくれなかった。

しかし、理由は語れない、という事はそれとなく語ってくれた。

ふんわりとした忠告だけを投げつけて消えた相手が、こうしてきちんと……説明不足な部分こそあれ、しっかりとしたアドバイスやなにやを、形に残る方法で伝えてくれたのだ。

 

共に戦えるかはわからない。

だけど、彼は人の身を案じる事もできるし、こうして人に頼る事もできるのだ。

 

「君宛にか……」

 

対して、一条は頭痛すら感じていた。

これが二十二号の差し出した手紙であるというのなら、できれば対策本部で情報を共有するべきだろう。

具体的に対策が取れる情報ではないが、明らかに今後の未確認の動向を示す手掛かりにもなっている。

鵜呑みにするべきではないのだろうが、奇妙な程に確信的な文面は、参考程度にはできる。

だが、それが問題だった。

これが、ただの二十二号の妄想であるのであれば良い。

だが、この文面が正しければ?

 

使われている単語は明らかに未確認が使う言語を日本語で記したもの。

説明こそ無いが、このゲゲルというのが、連中の行う連続殺人である事は明白だ。

ゲリザギバスゲゲル、ムセギジャジャ、ズ・メ・ゴ、そして、ン・ダグバ・ゼバ。

仮に、仮に二十二号が何らかの理由で雄介と同じくベルトを装着して戦う力を得たのだとすれば、説明が付かない。

逆に、『二十二号が未確認の側』であると仮定すれば、それなりに納得できてしまうのだ。

彼等の内情や言語に精通している理由が。

それは決して、二十二号にとっても、警察にとっても、そして五代雄介にとっても良い結果は招かない。

それを、二十二号は理解しているのだろうか。

だとすれば、何故、疑われるような真似をしてまで手紙を認めたのか。

 

封筒を閉じていた、恐らく自作であろうシールを見つめる。

以前、二十二号が『アギト』であると名乗った際に、現場の多くの警察官が目撃したという、足元に広がった謎の紋章。

……まさか、それほど深く考えずに、適当なタイミングだからと、必要な情報を渡した、という事は。

無い、とは言い切れない。

自分の情報を隠さない、無警戒過ぎる男を一人知っているが故に。

 

「あとこれ、一条さん宛のも」

 

「俺に?」

 

同じシールで閉じられた一回り小さい封筒。

鑑識に回すべきか、と一瞬思い、回すなら五代のものを回すべきのが適切で、回すかどうかも一度考えるべきだろうと思いながら、封を開ける。

小さな封筒から出てきたのは、折り畳まれてすらいない、小さな便箋一枚。

 

『未確認の居る現場に向かう時は、携帯電話はマナーモードにしておいた方がいいですよ』

 

―――――――――――――――――――

 

メの中で最強、というだけあってそれなりの力はあったと思う。

実際、封印エネルギーだけで倒そうと思えば、それなりに苦戦したかもしれない。

俺が勝てたのは、偏に彼女が剣を使う、というか、凶器を使って戦う事にあまり慣れていなかったという点に尽きるだろう。

それはモーフィングパワーで即席の武器を用意できるかできないかの話ではなく、武器に対する意識の持ち方だ。

 

後の世に出てくる機械式のライダーシステムなどと違い、アマダムやゲブロン由来の武器というのは即席の使い捨てが基本になる。

それが剣だろうと槍だろうと、投擲武器として扱う事は常に想定しておくべきだし、あえて武器を破壊する事で虚を突く攻撃も可能となるのだ。

武器の扱いに関しては高いグロンギの学習能力で直ぐに一端の使い方はマスターできるが、相手を害する為の技術、守りを抜く為の技術、殺すための諸々の技術は、武器の振り方や綺麗な斬り方を覚えるだけでは身につかない。

 

そういう意味で言えば、グロンギの中で純粋に『戦闘技術』を磨いているというのは少数派と言えるだろう。

そこが俺にとっての付け入る隙となるのだが、これも果たして何処まで通用するか。

俺が習っている、というか、習得している技術は一般的な武術の枠を超える事はない。

別段古流武術とかでも無い、本屋で買えるような槍や剣の扱いの指導書を参考にしている為、例えば戦闘に対する直感が鋭いとか、戦闘技術のラーニングが素早い相手などには早々に通用しなくなる可能性が高い。

可能であれば、もっとこう、現代のスポーツ化された一般的な武術ではない戦闘技術を学びたいところではある。

学習されるよりも早く、相手を殺せるような技術が欲しい。

試合で勝つとか、相手を無力化する、とかでない、殺すことだけを考えているような物騒なものであればなお良い。

 

……一つだけ心当たりがある。

あるが、それは今直ぐどうにかなるものでもないし、更に言えば、スケジュールに余裕がある。

ここから暫く、警察に深刻な人的被害が出るゲゲルは行われないのだ。

だから、心当たりを頼りに行くのは夏休みで自由時間が多く取れる様になるのを待ち、今は遠方に出向かずともできる自己改造を行っていくべきだろう。

 

ライジングである。

ラ・イ・ジ・ン・グ(メカっぽい発音)、ではない。

ライジングフォームである。

もっと言えば、アメイジングフォームである。

 

アルティメットフォームの前の段階……というより、一部機能だけを使用できるお試し版の様なものではあるが、その強化は劇的だ。

アギトの力が便利すぎて忘れがちだが、クウガのライジングフォームも内実を考えればかなりの強化なのだ。

キック力、パンチ力、共に通常形態の数倍。

この数倍、というのが、ライジング含むリント非公認派生フォームのキモとなる。

 

何故数倍なのか。

それはこれが本来想定された形態でなく、凄まじき戦士の力が漏れ出した姿に過ぎないからなのだ。

 

似た現象で言えば、先日のガリマとの戦いで見られたモーフィングパワーによる武器の修復がそれに当たるのだろう。

回収したゲブロンを利用しての簡単な実験で得られたデータからも裏付けは取れたが、グロンギの用いるベルト、ゲドルードにも、アークルと似たようなセーフティーが備わっている。

それは安全装置という訳でなく、恐らくは特定の条件を得ることで次のゲゲルに相応しい肉体を得るためのロックの様なものなのだろうが、これはゲブロンが肉体に強く馴染む事により多少緩ませる事ができる。

後少しでゴに上がれる程の位置に居たガリマのゲドルードは、同じ時期の五代さんのベルトと似た半開放状態であった可能性が非常に高い。

 

中枢器官、コア、主動力とも言えるゲブロンしか手に入れていないので詳しくは解析できていない。

だが、ゲドルードが憎らしい程人間の肉体、生物の肉体を考えて作られたものである事は明白である。

何故か。

人間の肉体からえぐり出されたゲブロンが、それほど時を置かずにほぼ停止していると言っても良い休眠状態に入った事からもわかるだろう。

 

ゲブロンは、そして恐らくアークルも、生物の中を流れる微弱な生体電流を始動キーにして活動状態に入る。

これは取り出された状態のゲブロンに少しずつ電気を流す、小動物の肉体を切開してゲブロンを入れるなどの実験で確認できた。

そして、全身に張り巡らされた神経もそれを補助する役割を果たしているのだろう。

 

封印エネルギーは、リントとグロンギのどちらも利用するエネルギーだ。

文化面でまるで別物の種族と化してしまったこの二種に共通するもの、と言えば。

そう、ベルトの核となる魔石と霊石だ。

単純な電気エネルギーとは異なるものの、この封印エネルギーというのは、明らかに雷と同質のエネルギーだと考えていい。

 

そして、ゲドルードとアークルは、魔石と霊石が肉体に齎す変化を抑えるための制御装置だ。

これは、ゲブロンを移植されて数時間の内にちょっとしたズのグロンギ程度の化物にまで変化し、最終的には激しい放電と共に消し炭になった実験用マウスを見れば明らかである。

魔石、霊石の齎す本来の速度で行われる肉体の変化は、通常の生物の肉体では耐えきれない。

だからこそ、ゲドルードはゲゲルで肉体を慣らしながら段階的に肉体を変化させるタイプの機能を備える。

ゲゲル失敗者が爆破されるのは、制御不能の怪物が生み出されないため、という目的もあったのかもしれない。

 

そして、その最終目的は、ゲブロンが齎す肉体の強化……いや、生命体としての進化を完全に成し遂げた存在を生み出す事だろう。

ゲリザギバスゲゲルを乗り越えたムセギジャジャが、前チャンプであるンと戦う事になるのも、また必要な事なのだ。

恐らく、ザギバスゲゲルを乗り越えた先のンという称号。

これは到達点ではない。

ゲブロンが齎す力の限界がどれほどのものであるかは不明だが、やもすればンに到達してからが本当の始まりである可能性すらある。

強い敵と戦うのも、弱い獲物を殺すのも楽しい、という精神性は、進化を進めるために延々肉体をゲブロン慣らす為に効率が良い訳だ。

 

こうして考えると、グロンギという種族がゲブロンを手に入れて利用した、のではなく。

ゲブロンを利用する為に、グロンギという種族が『デザインされた』可能性が非常に高い。

その下手人が誰か……、は、多分来年辺りかち合う事になると思われるので、今考える必要は無いだろう。

 

対して、そんなゲドルードを参考に作り出されたと思われるアークルは設計思想が違う。

進化がどうだ、とか、そんな事は一切考えられていない。

段階的にアマダムの力を開放する、という思想すら無いのだろう。

あるのは一枚限りのセーフティ。

ンと対等に戦う事を想定したアルティメットと、それ以下を封印する為のその他フォーム。

徐々にアマダムから神経が伸び続ける構造も納得だ。

ゲドルードがズ・メ・ゴという段階で分けている魔石からの侵食を、単純に遅延させるだけの構造でしかない。

 

アークルは『人生の中で戦い続ける』という事を考慮していないのだ。

製造時点で存在した全てのグロンギを封印するまで戦い続ける事のみを考慮している。

一枚限りのアルティメットへのセーフティが精神的な決断にのみ委ねられ、正式版で追加された機能が凄まじき戦士のイメージを与えて警告するだけ、というのも頷ける。

いざとなれば凄まじき戦士の力を開放しンと刺し違え、そして、急速に変化させられた装着者は耐えきれずに滅ぶ、という事だ。

変化したらお前がンと同じ存在になる、ではなく、それを使えばンほど頑丈でないお前は耐えきれずに死ぬぞ、くらいの警告なのだろう。

それ以上がある、という事を想定していない。

何しろそういうものである、と知らないのだ。

 

ライジングフォームの使用が肉体に強い負荷を与えるのもこの辺りが原因だろう。

恐らく、アークルを付けた直後の五代さんに違法改造スタンガンを押し当ててライジングを即発動させて頑張ってもらう計画を発動していたなら、変化に耐えきれずに見るも無残な死体だけが残るか、心を完全に失ったモンスターが生まれていた可能性が高い。

彼がライジングフォームをライジングフォームとして扱えたのは、それなりの期間変身して戦い続け、徐々に肉体を慣らしていたからこそなのだ。

 

……顧みて、俺がライジング化に耐えられるか、という所に話は戻ってくる。

はっきり言う。

恐ろしく分が良いとは言わないが、適合できる可能性は限りなく高い。

五代さん程にグロンギと戦ってきた訳ではないが、アークルの力で変身して戦ってきた期間だけで言えばかなりアドバンテージがある。

大体が不意打ちだったり巨大戦だったりしたけれど、肉体を慣らす、という面で見れば不足はない筈だ。

更に言えば、アギトの力も間違いなく良い方向に働く。

そう信じる事にする。

なにしろ、出来なければ負けて死ぬ。

なら信じてやってみるのが一番だろう。

 

どうせ、最終的には凄まじき戦士にならなければいけないのだ。

言ってしまえば、これまでのグロンギとの戦いと同じだ。

勝てるイメージはあるが別に命の保証はない。

今までやってきた事を、もう一度繰り返すのみ。

 

家庭用電源から得られる電力では足りない。

発電施設に忍び込んで、というのは言うまでもなく犯罪であるし、唯でさえ悪い警察や世間様からの印象がより悪くなること請け合いだ。

勿論、家でも段階的に感電していくつもりだが、限界までセーフティを緩める為には少しばかり時間が掛かりすぎる。

 

だが、難しくない解決法がある。

この世の神は俺の敵かもしれない。

だが、この世界は、地球は、自然は。

大きな視点で見れば、間違いなく俺の味方なのだ。

 

「雨、か」

 

窓の外を見る。

どんよりと曇った空から降る雨粒が、窓の外に見える景色を霞ませていた。

季節は梅雨。

暫くすれば本州上に前線が留まる期間が増えて。

空に紫色の稲光が幾度となく迸る光景を見る事ができるようになるだろう。

 

「?」

 

「なんでもないよ」

 

足元に座って本を読んでいた白い頭を撫でる。

目を閉じて受け入れるこいつは、決行日には連れて行くべきかどうか……。

雷雨の中に連れ出していくのは、リハビリを理由にしても難しいかもしれない。

うっかりこいつが雷に打たれて死んだりしたら……。

いや、死ぬ分には問題はないのだが、世間様の目もある。

オルフェノクは死体が残らないのも問題だ。

疑いの目を向けられ、身体検査など受けようものなら、それでもうアウトなのだ。

アークルとアマダムはこの点だけはどうにも不便でならない。

そうなれば、俺が付いている間に死なれる訳にはいかないだろう。

別に、こいつに死んでほしくない、という訳ではないのだが。

できれば、自然に寿命で死ぬのを待つのが一番穏便だろう。

 

「雨、好きか?」

 

「……?」

 

少し戸惑った後、こくりと頷く。

お風呂もシャワーも普通に好きなようだし、そもそも水に濡れる、水に触れるのが好きなのかもしれない。

リハビリを兼ねた散歩はほぼ日課になっている。

適当なタイミングでいい感じの合羽と長靴かサンダルでもプレゼントすれば、自分から散歩に出たがるかもしれない。

ジルが自分から主張し、俺が付きそうから、と言えば、母さんも否とは言わないだろう。

雷が発生しやすくなる日に出かける事に関しても、早めに戻るから、と言えば、なんとかなるか。

ならなければ、ガリマの時と同じく、布切れでも被って正体隠して発電所に忍び込むしかないが……。

その時は、その時だ。

 

 

 

 




☆グロンギ脳と原作知識が合わさって原作と原作の間に本来無かった繋がり見えてきたけど、最終的に問題になるのは来年だから一先ず置いておくし五代さんと一条さんに手紙も置いておくマン
事情に詳しすぎる点に関しては正体バレをそもそも想定していないし、いざ説明が必要となったらベルトを付けた際に前の使用者の記憶が流れ込んできた系の言い訳で押し通ろうとか考えてるん
そもそもここでライジング出来ずに五代さんが死んだら大惨事なのである程度のリスクを抱えるのはしょうがないのだ
あとなんか報道でプレデター扱いされてたからちょっと知性をアピールしたかった疑い
でも普段の行いと文面に激しい乖離があるとか精神病みたいで怖いんじゃないかなって思ったけど、日本人の七十パーは精神病って言うし、この時点の主人公は精神が健康である方がおかしいから別にいいかなって
警察の被害が少ないゲゲルとかは実際どうでもいいので自然にスルー
そんな暇あるならゴ対策の自己強化に回します
梅雨の終わりの時期ってホント雷雨多いよねってとこからパワーアップイベントに派生
豪雨の中、山頂で煙を上げて放電しながら高笑いするシーンとか付け加えようと思ったけどそれは後で
動物実験で使ったゲブロンは即座に回収
人体実験なんて贅沢な真似ができるのは大企業か警察くらいだからね、しょうがないね
あと、頭脳が強化されても設備がないとそれほど実験はできないのだ
学校にゲブロン持ち込むのも……ねぇ?

☆手紙
手紙って聞くと歌って戦うデースちゃんを思い出す
あれ、転生先バレ直前までは動画とかで普通にお前……消えるのか、みたいな悲しみのコメントで溢れてたのになぁ……
それはともかく、便箋は大量生産品、ただし文字はモーフィングパワーの応用で書いたものなので筆跡はばれない
怪我した動物の傷を治せるんだから紙を変色させたままにする程度は簡単やろ、というガバガバ解釈から生まれた
オリジナルシールも同様、今後はこの形式で意思疎通すればいいのかもしれないけれどそれは作者が覚えていたらなのだ

☆魔石ゲブロン、霊石アマダム、ゲドルード、アークル
■のエル「うちの神こわ……ちょっと人間使って対抗策作ろ」
■のエル「じゃじゃーん! 隕石に見せかけたワイの力―! これで兵隊量産や!」
■のエル「え……なにこれ人間モロ……神の映し身やろ?」
■のエル「はーつっかえ、この程度の進化もできんとか生きるの止めたら?」
グロンギの技術者か何か「できらぁ!」
ゲブロン「まず進化させます、次に進化させます、更に進化させます」
ゲドルード「恋愛も進化も積み重ねが大事なんやな」
リントの技術者か何か「グロンギ封印できるで! 長生きはできんぞ!」
アマダム「頑張ればンと戦えるけどグズグズになって死ぬんやで」
アークル「させへん! クウガ!長生きできる肉体や! 最終的にどうなるか知らんけど長生きできる体や! どうなるかわからんがとにかく受け取れー!」
こんなん
なんでグロンギ周りにエルが関わるんだって話は序章で書いてるのでそこ参照のこと
勿論主人公の妄想の如き推測だけど大体こんな感じになってると思っておけばいいと思います

☆大天使四号の中の人
大天使って言ったけどこの作中世界観だとクウガやグロンギ連中が天使ってのはシャレにならないって事になった
でも五代さんは一人で追い詰められてる子が誰かに頼れる事を喜べる真の大天使なのだ
だからこれから十年二十年と海外行っても人類のために拳を振るい続けてね♥

☆イ・チジョ・ウ
世にも珍しいイ集団のリント
後の世ではイ・サカシンクロ・ウなどが登場するが、総じて何らかの強いこだわりを持つ
でも正直社会人になってから携帯とか常にマナーモードにしてる気がするって人は多いと思う
手紙を提出するべきかどうかはこの人の胸先三寸なのだ

☆ヒロイン(断言)
描写の関係上いっつも主人公にひっついてるくらいの距離感に居る
共依存……胃連結……うっ、頭が
そういった特殊性癖向けのシチュには絶対ならないという点だけは保証する
飢餓と疫病とその他諸々の猟奇殺人の神とかにも誓おう
でもそれくらいいっつも主人公と一緒に居る
でも一人で家に居る期間もそれなりにあるという点を忘れてはいけないのだ
連れ歩く中でゲブロンに対する実験も目撃してるやで
物覚えも良いので将来は良いお嫁さんになれ、なれ
幸せにおなり……だ……

次は夏休みと言ったな、あれは嘘だ
いや、嘘というのが嘘だ、それも嘘だ
あと残虐プレイシーンが無くて本当にすまない……
きっとこのSSに残虐シーンを求めている人はそれなりに居ると思う
でも諸々書いてたら戦闘シーン書くには半端な量になったので一端投稿します
あと振り返るとか言っておいて変な独自設定挟んで申し訳ない
でもこういう設定のこじつけは書いてる方は凄く楽しいのでいいかなって思います
いや申し訳ない気持ちはあるけど別に変えるのはめんどいとかではなく
しかし次は亀ですよ亀
真珠インプラントはよく聞きますけど鎖と鉄球とはロックな話だと思いませんかみなさん
なんで亀かっていえばギリギリ夏休みの終わりくらいだからかなって
次回冒頭で前のあとがきで話したクウガどころか平成シリーズとあんまり関係ない場所行くけど、今度こそゴ集団との接近遭遇になると思われます


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9 強化、果てを見据えて

この世の全ては科学で説明する事ができる。

いい言葉だ。

この言葉が俺が生きている現時点で真実であったのなら、なお良い言葉だったろうと思う。

 

完全に嘘と言い難いのがまた心憎い。

科学で説明できない事は多くある。

そも、説明出来ない事が無いのであれば、既にこの世界で科学という学術は研究されていないだろう。

未知があるから科学がある。

 

だから、運良く人類が滅びずにこの世の謎を解き明かし続け、その研究成果を纏め続ける事ができたとして、最終的にすべての謎が解き明かされ説明できるような時代が来るかもしれない。

それは人類の黄昏、老年期の終わりという時期の事を指すのだろう。

全ての未知が既知に差し替えられた世界で、人類の知的好奇心は緩やかに壊死し、ゆっくりと崩壊を始める。

所謂種族的寿命というものだ。それが穏やかな最後である事を心から祈っている。

 

だがそんな時代は遥か遠く、今の世界は未知で溢れかえっている。

超能力、天使、神、妖怪、鬼。

現時点で説明の付かないこれらは、少なくともこの世界においては確実に存在する世界の構成要素の一つである。

 

宇宙は神という闇から産み落とされ、人も獣も神や天使なる超常の存在にデザインされ、野に放たれた獣はやがて妖怪になり、人もまた紆余曲折の中で鬼に至り……。

時はまさに世紀末……世紀末? あ、今年世紀末だ、凄い。

 

人類に敵対的な種族が惑星大直列が如く複数ほぼ同時に活動的になるこのイカれた時代にのこのこようこそようこしてしまったのが俺。

そんな俺は、やや頭脳派寄りの文武両道のエリートルートから外れ、外敵から身を護るために十年二十年戦い続けられるタフボーイ(超再生能力)へと生まれ変わったのだ。

正気にて生存はならないので一部正気と人の目に触れない部分の倫理観は一旦捨ててある。

そして澱んだ街角で出会うのはグロンギのムセギジャジャなので殺す。

あとオルフェノクとも出会うので殺す。

ファンガイアとは出会ったことがないな……でもどうせ襲ってくるので殺す事になると思う。

あの渋谷を見るに間違いなくワームが居るので、本性を表し次第迅速に殺せるようにしなければならないだろう。

 

殺伐とした世の中に穏やかで幸せな人生を望む俺はとても悲しんでいる。

平和を乱すやつとか全員死ねばいいのでもう殺すしかない。

ちゃんと和平を結べるなら殺さなくても良いが、人を食べる種族が人間と和平を結べる未来というのは多くの奇跡の積み重ねの先にしか存在しないのだ。

ワームに至ってはネイティブ含めれば滅ぼすのは至難の業だというのに危険度はピカイチで高い。

 

つまり端的に言って、今必要なのは身を護る技術と外敵を確実に殺す技術。

実はこの二つの技術が表裏一体だというのだから技術というのは面白い。

医術の心得を持つ者が、人が死ぬ条件に詳しいのと同じ事だ。

身を守る技術を持つという事は、殺されてしまう条件を知り防ぐため、攻めの技術を知る、という事に繋がる。

相手を殺す技術を持つという事は、身を護る術をくぐり抜けて命を奪う為、守りの技術を知る、という事に繋がる。

どちらかを知る事が、最終的にはどちらにも通じるという事に繋がるのだ。

勿論、簡単な護身術であればまた別の話になるのだが、それは今必要な話ではないので置いておこう。

 

気、という技術がある、らしい。

まるで漫画!

……などと笑い飛ばせる程、この世が一般的な常識だけで測れない世界である事は間違いない。

クウガの力、霊石アマダムの作用や、アギトの力、超能力のその先にある進化の力を、証拠を見せずに人に説明すれば笑い飛ばされてしまうだろう。

例えば妖怪──魔化魍の存在が知れ渡っていないのは、猛士や鬼の皆さんの健闘もあるだろうが、政府が隠蔽に一枚噛んでいるのも理由の一つなのではないだろうか。

鍛えた鬼が生み出す清めの音でしか消すことが出来ず、一定期間を置いて自然発生する人食いの巨大な化け物が存在するなどと言われれば、それはもう世間は混乱する事請け合いだ。

 

知られていない、というのには、何らかの理由がある。

数十年前に遡ると時折発見できる謎の集団失踪やスポーツ選手、科学者の行方不明事件。

それらがテレビの未解決事件特集などですら取り上げられず、都市伝説的にアングラでのみ語られているのと同じ事だ。

十一年前、そして十年前に幾つもの都市が瓦礫になる程の震災が起きたと言われているのも似たようなものか。行方不明者には勿論著名な科学者などが多い。

……いざとなれば四国は完全に安全である可能性もあるが、現状俺が四国に訪れた時点で謎の黒い戦士に太陽数個分のエネルギーを流し込まれて死にかねないので、最後の中の最後の手段になるだろう。

閑話休題。

 

だが、この気という謎の生体エネルギー及びその運用法が知られていない理由は割と単純なものだろう。

わかりにくいのだ。

或いは、気の齎す作用がある程度科学で説明できてしまうのも問題がある。

それは物理法則や人体工学に基づいた作用である、と、解明されたのだと言われてしまえば、深く追求する者は少なくなる。

それは未知ではなく既知であるのだから、改めて確認する必要はない。

 

丹田で気を練るのだ、とか。

全身に気を巡らせて身体を強固なものにするのだ、とか。

気を整えて感情を平静に保つ、とか。

知らず知らず、無意識の内に一般人すら運用しているそれを、未知のエネルギーであると思う者は少ない。

 

だが、それが身近な、無意識の内に使われるものであったとしても、より先鋭的に鍛え上げる技術があるとすればどうか。

その証明は、実在が確認できた時点でなされたと言っても良い。

この世界で、自然あふれる土地に居を構える道場は須らく強者の集う場所なのだ。

そうでなければ魔化魍のおやつ箱にしかならない。

 

日本国、青森県は八甲田山の奥深く。

一般人が足を運ぶトレッキングコースから大きく外れた奥深くに、その場所は存在する。

周囲の木々と一体化するように建てられた寺院。

実際、何を祀っているのかよく分からないそこでは、日々、何のために体を鍛えているかわかったものではない、見るからにカタギではない人々が、現代日本の文明から隔絶した過酷な修行生活を行っている。

時代錯誤ですらある、求道者達の集まる場所。

赤心寺。

 

俺はそこに、背負子に乗せ背負紐で固定したジルを伴い、徒歩で訪れ。

夏休みの半分くらいを掛けて、格闘術を始めとした戦闘術全般を、二週間くらいでざっくりと学ぶ事になる。

 

―――――――――――――――――――

 

門前では、舐めてんのかコラ、みたいな扱いを受けた。

ちょっと体の不自由な女の子の世話をしながら、何年も掛けて受ける修行を二週間くらいで大まかな部分を受けさせてほしいと言っただけなのに、短気な話だ。

だが、最終的に滞在を許して貰えたので良しとする。

誠心誠意の説得でここの技を学びたいという事を納得して貰えたのは実に文明的で良い事だと思う。

哺乳類は痛みに弱い、これは常識。

現代文明から離れてもそれは変わらない真実である。

いや、現代文明とか法の庇護下に居ないからこそ取れた手段であると考えれば、この場所ならではの解決法だった。

あわや僧兵の皆さんご協力の下で行われる実践乱取り式学習法になるか、という場面で事を収めてくれた師範には頭が上がらない。

 

さて、では二週間でどれほどの成果が出たか、と言えば、いまいち分からない。

梅雨時期に山頂で雷を浴びた時程の劇的な変化が無かった事は確かだが、何も変わらなかったか、と言えば、それもまた違うと言える。

イマイチ分からない理由としては、その場に居た修行僧の方々が尽く人間だったのが悪い。

練習は出来ても殺すつもりで打てないというのはやはりどうにも煮え切らない。

拳が巻藁を砕く、抜き手が鉄を貫く。

まるで意味がない。

人より壊し易いものを壊したとて、人の上位互換であるグロンギの戦士にどれほど通じると言えるだろうか。

必要なのは、威力ではない。威力は既にあるのだ。

 

「……あ、母さん? 今下山したとこ、そんで駅ね。……うん、勿論ジルも一緒だよ。……大丈夫だって、みんないい人たちだったから」

 

ジルを連れて二週間の旅行という事で貸し与えられた携帯電話で母さんに連絡を取る。

夏休みの宿題は大体終わらせてあるが、だからといって夏休み中ずっとジルを連れたまま旅を続けるのも学生としては問題があるだろう。

主に移動は公共機関頼りだ。

 

せっかくの修行の旅だというのに、移動は快適な空調の施された新幹線、そして新幹線が停まる駅までの移動は、ゆったりと景色を楽しむことのできる鈍行電車に限るのだ。

力を求めての旅だというのに、これではまるでただの旅行ではないか。

まぁ修行の旅とは言っていないので、ただの旅行と思われるのは好都合ではあるのだが。

 

「あ、こら、ぽろぽろ零すな。落ち着いて食べろ」

 

乗り込んだ新幹線の中、高速で真横に流れていく景色を眺めながら、大きく膨らんだ頬袋を変形させながら駅弁を咀嚼するジル。

数ヶ月のリハビリで手先も多少はまともに動き始めたのだが、家のテーブルについて専用の食器を利用しない限りはまだまだ危うい。

エプロンは流石に周囲の目を引くので、せめて服を汚さない様にナプキンを胸にかけ、膝にもとりあえず手持ちのハンカチなどを引いてやる。

 

しかし、人の話を聞いているのかいないのか、ジルは此方の持つ弁当のおかずにもキラキラとした目を向けるばかり。

せめて落ち着いて食べさせる為におかずを幾つか分けてやると、ジルも覚束ない手付きで自分の弁当からおかずを此方によこそうとしてくる。

ぷるぷると震える箸が突き刺さったつぶ貝を、落ちるよりも先に弁当を寄せる事でキャッチ。

それを見て、ご飯粒のついた顔で、に、と歯をむき出しに笑い、口をぱくぱくと動かす。

 

『おいいいお』

 

「そうか」

 

頷く。

ジルは再び弁当に顔を落とし、新たに増えたヤリイカの姿煮に箸をざくりと突き刺し、口に運ぶ。

もぐもぐと咀嚼、咀嚼中は口を開かないので勿論もぐもぐともくちゃくちゃとも音はしない。

野蛮人染みた食べ方はもしかしたら古代グロンギ時代の食事シーンを思い出しかねないので、マナーはしっかりと教えてある。

しっかりとよく噛んで飲み込み、再び笑みを浮かべながら、喋るように口を動かす。

 

『おっいおおいいい』

 

「そりゃあよかった」

 

『あいあおう』

 

「どういたしまして。帰ったら、軍資金出してくれた母さんにもいってやりな」

 

今度はこくりと頷く。

母さんへの心象を良くしておくのも重要な要素の一つだ。

殺そうと思わないでいてくれればそれだけで危険性は下がる。

 

そういえば、赤心寺での修行期間中、俺がジルの食事を手伝う場面で修行僧の方々が茶化したりせずに事情を聞いて納得してくれたのは少しだけ意外だった。

見るからにカタギでなく、世捨て人の如く山の奥の寺に籠もって武術の修行をするような偏屈そうな連中なのだから、肉体が不自由な人間を見たらどんなリアクションをするにしても、もう少し粗暴な感じだと思ったのだが。

修行僧の方々にも、修行僧の方々なりの人生があり、ああいう場所に籠もるようになったのだろう。

人は見た目が十割と言うが、その言葉のとおりに見た目の破戒僧っぽさから適当な偏見を押し付けた浅はかさには反省し切りだ。

 

ああいう人達には死んでほしくない、という気持ちもあるにはあるのだが、ああいう修行をしているのだからもしもの時は自分で対処できるだろう。

良いことだ。

善良かつ無力な市民の皆様に至っては、税金を払いこの国の国民である限り、警察や自衛隊などの防衛戦力が守ってくださるだろう。

とても良い事だ。

安心して自分の身を守る事に専念できる。

 

基本的に、大半のグロンギは恐ろしく頑丈な肉体と非常識なまでの高速再生能力を備えている。

だから警察などで使用されている拳銃などの小質量兵器では破壊できない。

だが、例えばの話だが、戦車の砲撃などが直撃すれば少なくともメ集団くらいまでのグロンギなら死ぬのではないか、と、俺の感覚は告げている。

単純な話、首から上を一撃で吹き飛ばす事ができれば奴らは死ぬし、何らかの特殊なバリアを張っている訳でもないので通常兵器は適切なものであれば十分通用するのだ。

 

つまり、一瞬で絶命させる事が可能な火力を叩き込めば普通の生き物と同じく殺せる。

防御をすり抜け、避けた先を見越す。

そして、生命活動が不可能な肉体状況にできるだけの攻撃を叩き込む。

その技術が重要なのである。

こればかりは、書物からの学習や手近な武術経験者からの軽い指導などでは手に入らなかった。

 

戦闘に対する意識が低く、一方的な狩猟者感覚が抜けていないズ集団やメ集団とは異なり、ゴ集団は少なからず同格の相手との戦闘を意識している筈だ。

ゲリザギバスゲゲルの先、ザギバスゲゲルでは勝ち残ったムセギジャジャはダグバと戦わなければならないのだから。

それに加え、ゴ集団にまで至った連中の肉体は戦闘生命体として完成されつつあり、単純な頑強さ、再生能力に至るまでメまでのグロンギとは比べ物にならない。

単純な腕力にほぼ無制限に武器を作り出す事が可能な為、反撃にも気を配る必要がある。

 

当然、モーフィングパワーによって作り出した武器への習熟度も目を見張るものがあるだろう。

大体のゴ集団が武器を一種か二種程度に絞っているのも、その武器への習熟を高める為だ。

生半な技術では、ンという高みに至ったムセギジャジャには届かない。

俺の諸々の仮説が正しければ、仮にゲリザギバスゲゲルをクリアしたムセギジャジャがダグバと戦うとすれば、それはほぼクウガアルティメットフォームとダグバの戦いと似たものになる筈だ。

 

互いの能力を封じあって、或いは封じ合う事を想定しての、肉弾距離での極めて原始的な戦い。

武器を生成しても、相手も同じく武器を生成してくる。

武器の差による優劣はない。

だが、扱う者の技量に関して、ゲブロンもアマダムも下駄を履かせる事はできない。

勿論、意識を飛ばさない、挫けないなどの根性も必要だろう。

更に言えばラッキーヒットによるゲブロン損壊による死亡もあるだろう。

だが、積み重ねた技術は裏切らない。

脳味噌に針入れて殺すなんて同格以上には絶対通用しない下策を取るのはザギバスゲゲルの趣旨を無視した阿呆のやること。

そういう阿呆を除けば、ゴ集団は戦闘技術をグロンギ特有の学習能力で高め続けている強者の集まり……の、筈である。

 

何故断言できないか、と、言えば。

ゴ集団が現状の俺とほぼ同じ状況にあると思われるからだ。

同格の相手との真っ向勝負の為の技術を磨くというのであれば、組手の様な練習がどうしても必要になってくる。

だがゴ集団の数は少なく、なおかつ全員がただ一人の勝者を目指すライバルでもある。

手の内を見せる事になるし、下手をすれば他者にゲゲルの助力を得ているという判定をもらってしまうかもしれない。

結果として、知識としての戦闘技術を高める事はできるが、同格相手の実戦経験を積めていない戦士が生み出される。

やもすれば、この他者に頼らず自分を高めるという性質もまた、滅多に同格の者と戦う事のないンに必要な素質なのかもしれない。

 

だから、とても珍しい事に。

俺が大一番に備えて蓄えた技術や新たに得た力をゴ集団に対して試すというのは。

俺にとっても相手にとっても利点のある、まさにwin-winの戦いになるのだろう。

 

俺も相手も蓄えた技術を同格相手に振るうまたとない機会を得られる。

しかも、勝てば相手を殺して自分の目標に更に近づく事ができる。

良い事だ。

勿論、勝つのは俺で死ぬのは相手だ。

実際どうなるにせよ、そう考えずに戦う馬鹿は居ない。

もっとも……。

 

「八戸小唄寿司は帰ってから、母さんと一緒に食べよう」

 

ジルは勿論、と言わんばかりにこくこくと頷く。

試しの前に、一度家に帰って、少しだけでも学生らしい夏休みを満喫しておこう。

似たような事情の相手と戦うにしても、心の底からグロンギと同じになってやる理由はないのだから。

 

―――――――――――――――――――

 

八月二十一日、月曜日。

十時二十七分、墨田区内のとある一角が血で染め上げられていた。

空から降り注ぐ鉄球が、一つ、また一つと的確に通行人を粉砕していく。

偶然に手足の先に当たりでもしない限り、即死は免れない。

今や穏やかな昼前の広場は、いびつに体を潰された死体と、その死体が圧力に耐えきれずに穴という穴から零した内容物が辺り一面に広がる地獄絵図へと変わってしまっている。

恐怖に逃げ惑う人々をビルの上から見下ろすのは、ゲリザギバスゲゲルの進行役、ラ・ドルド・グ。

ゴ集団の上位にすら匹敵する力を持ち、公正にゲゲルの審判を行うドルドは、手に持った算盤状の器具、バグンダダを使い、一つ、また一つと死者の数を数えていく。

 

「五十四の内、命中は、二十」

 

ドルドが空を、いや、高層ビルの上に視線を向ける。

人間体においてもコンドル特有の高い視力と注意力を持つドルドには、その姿が見えていた。

ゴ・ガメゴ・レ。

ルーレットで指定した区域に五十四の鉄球を投げ込み標的を圧死させるというルールに基づいて行われるゲゲルのムセギジャジャだ。

鉄球の命中率は高く無い。

勿論、腕力と遠心力を持って投げられる鉄球の威力は人一人を即死させるには十分な威力を持つが、その速度はそう常識を外れて速い訳ではない。

距離がある程度あり、運良く自分の方向に迫ってくる鉄球を見ることができれば、避けることも不可能ではないだろう。

単純に、気づかない内に避けてしまうという事も無いではない。

だが、ガメゴとてゴ集団のグロンギ、そういう事を考えてゲゲルの内容を吟味してきた。

運の要素、ギャンブルの要素の強いゲゲルではあるが、運の要素を極力少なくするだけの修練も行っていた。

命中率の低下の原因は、別にある。

 

視線が別の高層ビルの上に向かう。

鉄球を投げるガメゴと同じ様に、ビルの端に立ち、弓にも銃にも見える武具を構える戦士が一人。

グロンギ、ではない。

その姿はクウガのそれに似ているが、奇妙な点がある。

シルエットは、遠距離狙撃を得意とする緑のクウガとほぼ同じだ。

だが、そのカラーリングは緑ではない。

薄暗い赤。

金で縁取られた赤黒い装甲に包まれた戦士が、黒ずんだペガサスボウガンを構えている。

 

別々のビルの屋上に佇むガメゴと戦士が、互いの獲物を手にしたまま無言で見つめ合う。

ゴにまで上り詰めたグロンギにとって、モチーフとなった生物や強化の方向性に関係なく、遠く離れた場所に居る相手の細かな挙動を把握するのは容易い。

狙撃に重点を置く緑の戦士と同じ武器を使いながら、しかし、ペガサスボウガンの銃口はガメゴに向いたまま、変身を解く気配も白くなる気配も無い。

ガメゴのゲゲルのルール上、ここから更にリント目掛けて鉄球を投げる事はできない。

だが、鉄球の元となる鎖の付いた鉄球のアクセサリーは、ゲリザギバスゲゲルを二度三度と繰り返しても切れる事がない程にストックしてある。

そして、それは相対する戦士にとっても同じ事なのだろう。

 

黒ずんだペガサスボウガンから、稲妻を纏うエネルギーの塊が打ち出される。

狙うはガメゴの頭部。

だが、当然それはガメゴにも見えている。

首を捻り避ける。

狙いが正確であればあるほど、避けるのに必要な動作は少なくなる。

然程敏捷ではないガメゴでも避けるのは難しくなくない。

 

続けざまにもう一発。

避けた先に放たれたそれを鉄球を盾に防ぐ。

更にもう一撃。

二撃目を防いだガメゴの背、甲羅との隙間に直撃。

だが、威力は然程でもないのか、封印の印は一瞬だけ光を放ち、ガメゴが体に力を入れると霧散した。

霧散した瞬間にもう一撃、腹部に直撃。

これも間を置かずに消え去る。

更に一撃、足に。

消える。

 

更に一撃、肩に。

消える……よりも早く反対の肩に。

重なる封印エネルギーに体が硬直する。

 

続けざまに二撃。

硬直した腕を射抜かれ鉄球を取り落とす。

 

二撃、胸骨の中ほどに重ねる様に。

金属製の装飾品が破壊され、肺から空気を無理矢理に押し出され、怯む。

 

三、四。

合計七発が鳩尾に、脇腹に、首に、肩に、下腹に。

押し出される様に後退。

 

三射。

両目とその間が射抜かれた。

目が一瞬だけ潰れ、封印の霧散と共に再生する。

 

致命傷ではない。

封印エネルギーはベルトに達するどころか、数秒と持たずに消えていく。

ダメージが蓄積する訳でもない。

だが、続けざまに放たれた封印エネルギーによる乱れ打ちに、ガメゴの意識が一瞬霞んだ。

 

ガメゴの視界が霞み、意識が薄れ、体が倦怠感に包まれたのは、僅か十秒にも満たない時間だろう。

しかし、重い体と鈍った感覚の中で、ガメゴは高速で何かが飛来し背後に着地するのを確認した。

生存本能、火事場の馬鹿力とでも言うべきか、或いは宿主の危機に対してゲブロンが活性化したのか、ガメゴの肉体は肉体の負荷や疲労を無視し、無意識の内に即座に背後に向けて拳を放つ。

 

「外れ」

 

視界に写ったのは、金縁に限りなく暗い青の装甲を纏った戦士。

振り抜かれた拳よりも更に先、地面を削るようにしながら、体色と同じ配色の棍を振り上げる姿。

顎を掬うように打たれ、ゴ・ガメゴ・レの二百六十八キロの体が宙に浮く。

次いで脇腹を打たれる衝撃。

浮遊感は数秒、硬い地面が砕け散りながらガメゴを迎え入れる。

 

遅れて着地した戦士は、またも姿を変えていた。

肥大化した赤と青の両腕。

胸部中央に据えられたプレートは帯電し、赤熱すらしている。

だが、その全身の装甲は全ての色が暗く、艶のない黒の奥にその色を沈めている。

赤い複眼の光は薄く、まるで暗い洞穴の奥に据えられた松明の如く。

 

青い左腕に棍を下げ、赤い右腕をガメゴに向ける。

ぐつぐつと自分の体内が煮立つ(・・・)感覚に、ガメゴが転がるようにしてその場を退く。

ガメゴが墜落し砕けた地面は次の瞬間、まるで溶岩の様にドロドロと赤熱し溶解して爆ぜた。

ガメゴが半ば固定された口を大きく開き、べちゃりと赤と黒の混ざった肉塊を吐き捨てる。

高熱で死んだ内臓の一部だ。

しかし、内臓が一部欠損した程度ではゴのグロンギは戦いを止めない。

最低限の機能だけを残して復旧、即座に暗い色の戦士に突撃する。

 

超重量級のガメゴの突撃はそれだけで驚異となるほどの威力を誇る。

だが当然、ゴとそれに比肩する戦士の戦いにおいて決定打となる事はない。

ガメゴにとって頑強な体を生かした体当たりは、言わば戦闘を仕切り直す為のワンクッションでしかない。

強度、破壊力共に優れる、モーフィングパワーで作り出した鉄球とその操作法こそがガメゴにとっての武器となる。

 

姿勢の低い体当たり、足を狙うような軌道のそれを、戦士はガメゴの背を飛び越え避ける。

そしてガメゴは突撃の勢いのままに距離を取り、装飾品を一つ外して再び鎖鉄球を作り出す。

対し、戦士は再び棍を槍の如く中段に構える。

 

ガメゴが鎖を長く持ち、鉄球を回転させ始める。

遠心力を加えられた鉄球は速度を上げる毎に威力を増し、見るものへ与える精神的威圧感も高い。

単純な攻撃。

攻撃のパターンこそ少ないものの、×の軌道で振り回される事である程度軌道を読みづらくもしており、更に回転中であっても鎖の長さを調節する事により打点をずらす事により命中精度は高い。

また、鉄球が当たらずとも、ガメゴの腕力にも鉄球の重量にも耐えきる頑強な鎖が絡みつけば、その後の戦闘で大きなアドバンテージとなる。

 

振り下ろす。

空振り、しかし、即座に次の一撃が軌道をずらしながら戦士を襲う。

回転させたままの鉄球は、その攻撃の回転速度……連撃の速度にも優れる。

これが常人や生半可なグロンギのものであれば、例えば地面や壁などにぶつかる事で減速するだろう。

だが、この鉄球を回すのはゴ集団のゴ・ガメゴ・レ。

随一と言わずとも力に特化したガメゴの鉄球を阻む事はそうできるものではない。

 

振り下ろす、振り回す。

コンクリートの柱が、アスファルトの路面が砕け散り、ついに鉄球が、いや、鎖が槍に絡みつく。

鎖によって振り回される鉄球を防ごうと思うなら、高速の円軌道を描く鉄球こそを狙わなければならない。

万が一鎖を自らの獲物で防ごうものならば、忽ちに絡みつき、絡んだ獲物を中心に鉄球は新たな回転を始め、獲物をへし折り、最悪の場合は防いだはずの鉄球で頭を割られてしまう。

獲物を手放す事で逃れる事ができるが、その判断を一瞬でも迷えば、獲物を軸に回転する鉄球に重心を崩され無防備にもなりかねない。

 

果たして、鎖に棍を絡め取られた戦士は。

手放すでもなく、こらえるでもなく。

勢いよく棍を振り下ろした。

だが、その振り下ろしにガメゴの肉体を傷付ける程の勢いは無い。

鉄球の生み出す遠心力を無理矢理に振り切って振り下ろしにそれほどの威力は望めないのだ。

苦し紛れの一撃にニヤリと口元を歪めるガメゴ。

肩口で難なく棍の一撃を受け止め……。

 

棍の先端から、鎖が伸びた。

モーフィングパワーによってその形を変じたのか、それとも内部に最初から生成されていたのか。

それは棍を振るう戦士にしか分からない事だ。

だが、鉄球を振り切った姿勢のガメゴの体を雁字搦めにするように、長い金属の鎖が巻き付いているという事実だけは確かだ。

腕を封じたか、いや、ガメゴの腕力であれば、拘束にもならない。

だが、体に巻き付いた鎖は、ガメゴの体に、服飾品に収められた予備の鉄球を形作る為のアクセサリーの上に的確に絡みついている。

ガメゴは果たしてそれに気付いたか、いや、武器だけがゴの戦いではない。

だが、だが。

相対する戦士は既に、赤い右腕に短刀を握りしめ突き出している。

 

ぞぶ。

小さな目を貫き、短刀がガメゴの頭の中に侵入する。

思考を司る部位が刃で傷つき、高熱で焼かれ、意識が飛ぶ。

ゴ集団の肉体は、既にある程度一般的な生物の範疇を超越している。

脳細胞を焼かれたとて、ある程度無事な部分があれば再生が可能となる。

だが。

再生するまでの時間は、こと戦闘において致命的な隙となる。

 

「赤心少林拳……」

 

赤黒い戦士は武器を手放した両手で華の様な型を取り、

 

「桜花」

 

刃の如き抜き手で、ガメゴの首を跳ねた。

魔石ゲブロンが如何に宿主の脳細胞すら再生できるとしても、それは神経が繋がっていればこそ。

或いは、進化の果て、ンか、或いはその先にまで至ればどうかは分からないが。

少なくとも、ゴ集団のグロンギは、首を刎ねられて生きていられる程には、生物を超越できていない。

 

赤黒い戦士が、ガメゴの首無し死体へと歩み寄る。

首を刎ねられる勢いで倒れた死体からベルト状の装飾品、ゲドルードを剥ぎ取り、しげしげと眺めた後、名残惜しそうにそれを拳で砕く。

じうじう、じうじうと、高熱を帯びたナイフで腹部を切り裂く。

遠巻きに向けられる視線も、遠くに聞こえるシャッター音も、迫るサイレンの音も気にせずに作業を続ける。

丁寧に腹部が切り抜かれたガメゴの死体を置き去りにし、手にひき肉の塊の様な肉塊を下げたまま、戦士は何事も無かったかの様に、その場から跳躍を繰り返し、音もなく高層ビルを飛び移りながら姿を消した。

 

未確認生命体二十二号。

約二ヶ月の時を経て、人々は再びその姿を目にする事になる。

 

 

 

 





☆押し寿司もいいけど亀鍋もそのうち試してみたいと戦った後に思うマン
山奥にひっそりと佇む寺に秘伝の拳法を習いにいったりする。行動力けっこうある方じゃないかなと思う
なお背中の背負子に年若い娘を乗せてやってきたミドルティーンの少年を目にした半世捨て人の武道家の方々の内心を述べよ(配点・物理説得)
よりにもよって山で雷に打たれてパワーアップするシーンも寺に籠もっての修行シーンも描写せずに省略してしまう非道な男
でも妹の為にナプキンとかは常に用意してる。生理用品じゃないよ
じゃあなんで握りやすい普段遣いの専用スプーンとか持ってこなかったのかというのは、たぶんそういうガバの辺りに人間性が残ってる証拠
雷によるリミッター解除は予想以上に成功した
成功した……うん、成功した
現状最強フォームはアメイジングトリニティとかそんなん
熱波放射はアマダムの影響で火力が上がってる。どっちかって言えば電子レンジっぽくなってないかというのは色々あるのだ
ペガサスボウガン連射とか時間無制限は無茶じゃないか、と思われるだろうが、ライジングペガサスではなく通常のペガサスボウガンなので特に問題はないと思われる
グロンギ焼くの大好き。というか炎操作が便利過ぎる疑い
あと東京タワー武器にできるなら武器生成に決まった形なんて無いだろ、という思いつきで試行錯誤の末、雷に打たれてからどうにかなった
拘束武器とかも大好き。とにかく相手を不利にして自分を有利にしたい
世間の目の色も世間体も、自分の目の色も体色もそれほど気にしないのが健康に長生きする秘訣になればいいなと思ってる
パワーアップしすぎ、と思うかもしれないけど、あと二、三戦もすれば閣下とかダグバと戦う事になると考えれば丁度よいとすら言える
くすんだ赤い体色の戦士の必殺技を使った手だけが鮮やかな赤に染まる感じがベストな最新のモードなのだ

☆亀さん
人間体でのスタイルが凄くオシャレ、探偵物語かな?
ゴ集団のファッションは完全に現代に適応してるよね。閣下はあれでいいから気にすんな!
結構強いけどゴメンな、パワーアップ形態お披露目回みたいなもんなんだ
鎖鉄球とかいう趣味武器に見えて、戦い方は割と堅実なように見える
ゴ集団はなんだかんだ言ってダグバとの戦いを大半の連中が考えてるのだ
バイク? 脳針? 知らん

☆修行中も面倒見られてるどこでもいっしょ系ヒロイン
赤心寺はお風呂も混浴なのでお風呂の世話もばっちり
因みに修行風景はばっちり見学してるから安心してくれ
主人公以外に反応薄いのは継続だけど、赤心寺の師範にはなんかちょっとまともに反応したりした
ちょっとだけリハビリの成果が見られる

☆赤心寺
仮面ライダースピリッツに登場
テレビ原作のスーパー1が修行したのとは少し違うらしい
詳しくは仮面ライダースピリッツの新の方を読むとなんか分かる
体の弱い妹を守るために力を求めてる、的な解釈がなされてなんだかんだ修行は付けてくれた
たぶん魔化魍とかの関係で猛士とかとはつながりがある


だいぶ残り話数も少なくなってきたクウガ編
警察の被害が多いのには介入する、という縛りのハズが、後を見据えれば見据えるほどそういう訳にもいかなくなってしまいましたね
あと赤金での爆発力が知られるイベントが消えたのは痛いかもしれない
どうしようね、流石に知らずジャラジを殺すのに使って警官隊に被害が出る展開にはしないけど、というか事前に警告いれといたし五代さんならちゃんと考慮してくれると思うからいいよね
次はどいつかなぁ……ラス二戦は閣下とザギバスゲゲルで確定なんですが、難しいものです
思いつき次第書きますので気長にお待ち下さい


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10 拷魔、力だけでは

色々とあったが、夏休みは概ね平穏に終わったと言って良いのではないだろうか。

合間合間に地元の魔化魍が何故か二度三度と湧いてしまったり、赤心寺での修行中にも地元で見るものとは違う魔化魍が二度三度と現れたりもしたが、もうこうなってしまえば日常の一部と割り切れなくもない。

オルフェノクとの遭遇率もまぁまぁ低め。

夏休みの間に戦ったグロンギと言えばガメゴだけなので、これはもう相対的に平和と断言できてしまいそうでもある。

 

夏休み後半、赤心寺から帰った後に学友たちとそれなりに交友を深められたのも大きいと思う。

どうしてもジルを同行させる事になるので不便と言えば不便なのだが、なんやかや見目が良く、現代日本の文化形態や常識の類を予め教え込んでいた事もあって、反応の鈍さ薄さもちょっと重めの不思議ちゃんくらいで済んだのが大きい。

まぁまぁ好かれたけれど、凄く好かれる訳でもないというポジションも大きいだろう。

 

これで変に男子に好かれすぎたりすると、その男子の事を好きな女子が『何よ、あんな無愛想な子……そうだ、ちょっと身の程をわきまえさせてやるわフフフッ!』みたいな死亡フラグを立てて、それが切っ掛けでジルがオルフェノクの力を目覚めさせかねない。

嫉妬で他人に嫌がらせじみたちょっかいを掛けるようなアホの命はどうでも良いが、人が一人居なくなるというのはこのご時世には目立ちすぎるし、オルフェノクとしての、或いは元グロンギとしての本能の様なものが目覚めてしまっては面倒極まりない。

だが、どうやら俺の心配は杞憂だったようで、皆健全に学生らしい青春感溢れる人間関係を築いている様でとても安心した。

 

また、女子向け水着コーナーでばったり鉢合わせ、話の流れでジルの首元まで覆う面積の広い水着に関して相談に乗ってくれた同クラスの子の存在などを考えるに、俺はまたしてもクラスメイトに恵まれてしまったらしい。

未だ海で遊ぶには足回りの筋力と体幹に不安があり、更に自由に泳がせてグロンギ時代の記憶が蘇る危険性があるジルに、浜辺でできる遊びなどを教えて付き合ってくれた辺り、本当に良い人だと思う。

クラスメイト数名で海に遊びに来たのだから、海で泳いだりして遊びたかっただろうに……。

ジルがオルフェノクの力に目覚めたり、グロンギ族としての狩猟本能に目覚めた場合に真っ先に獲物になる位置に置いておくにはかなり申し訳ない気分になる。

こと戦いの場面を除外して考えれば、俺は恵まれた人生を送っていると断言できる。

そういう親切心に対し、何らかの形で報いることができないのは申し訳ない。

余裕が出来た時にまだ友人関係が続いていたのなら精神的にお返しできればなと思う。

 

……本当は、グロンギなんかとは戦う予定は無かったのだから、単純にオルフェノクと魔化魍くらいしか相手にしてなかった去年とか、父さんが何故か東京に出向になる前から考えれば平和もクソもないのだけど。

だが、結果的に見れば、グロンギとの戦いはプラスに働いたと言っても良いだろう。

例えば、ジル……グジルとの戦いでは、人間起源の生物は怪人枠であったとしてもオルフェノク化する危険性が高いという事実を知ることが出来た。

それ以外のグロンギとの戦いは、後々の不意打ち暗殺ができない、真正面から戦わなければならない相手との戦いを思えば、後腐れのない練習相手として優秀だったと思う。

 

来年、通常のクウガのスペックを軽く凌駕するアギトが戦うマラーク……アンノウンやエルなどと戦う事を考えれば、雷を浴びて安全装置を緩くしたのも、赤心寺で修行をしたのも決して無駄ではない。

全ては生き残るための努力であり、それは無遅刻無早退無欠席により内申点を上げることよりも遥かに重要な事だ。

まぁ……、試しに購入してみた諸々の赤本が自分でも引くレベルでスラスラ解けてしまったので、推薦狙いに走る意味はほぼ無いと言っても良いので、そこはもう良い。

 

しいてデメリットを挙げるとすればジルの存在だろうが……、これは俺の落ち度から生まれたものだ。

仮に、仮に本当に完全に記憶を失っていて、通常の記憶のないオルフェノク程度の危険性しか無いのだとするのなら、ジル自身に罪はない筈だ。

比較的短い寿命が尽きるまで世話をする程度、命がけの戦いに比べればなんという事もない。

 

危険性を度外視すれば、見目も悪くない、可愛らしい妹が出来た様なものだろう。

何の確証もない今、危険性があるという事を忘れるなんていうのは論外ではあるのだが、常に俺が先手を取って首の骨を折る事ができる位置に居れば、多少は。

だがそうすると、記憶のない無垢な少女を常に確殺できる立ち位置を意識しながら介護しつつ生活しないといけないので、それはそれでストレスが発生するのだが……これは殺し損ねた俺が悪い。

謹んで責任を取って面倒を見る所存だ。

今の内から俺が面倒を見ておけば、大学にでも行って一人暮らしを始めた時に連れて行く言い訳も立つだろう。

父さん母さんから引き離して遠くに置いておく事ができれば、俺も一先ずは安心できる。

 

そんな訳で、多少の問題は発生したが、ここまでの戦いと日常生活はそれなりに順調に進んでいると言っていい。

ガメゴを先手を打って殺した事で、五代さんが赤金……ライジングマイティの生み出す爆発の威力を知れないのではないか、と思いもしたが、その後に無事ゴ・ジイノ・ダを相手に赤金キックをやらかして確認してくれたようだ。

マスコミさんの命がけの撮影と、撮影に掛かるリスクに比例する様に高速で回転を繰り返す掌は俺も新聞で確認できた。

マスコミに対して、一つ二つ思うところがないと言えば嘘になる。

五代さんは良くやっている。

彼が心を鉋で削るようにしながら戦った結果が、今の被害の少なさなのだ。

ちょっとばかり広範囲に爆発が起きたからといって直ぐに掌を返さず、俺……二十二号を相手にする時の、仏像の掌の如く安定感がある報道を心がけてほしい。

叩くなら俺を叩け、そして危険性を鑑みてG3的な強化服を量産して全国にくまなく配備して細やかなアップデートを忘れない感じでいろ。

そしたら俺も普通に通り魔オルフェノクや魔化魍とかの相手だけに留めるから。

 

そして、問題なのはここからだ。

いや、これまでも問題ではあったのだが……。

今年、グロンギと戦う上で、決して避けては通れない戦いが二つある。

ゴ・ガドル・バとン・ダグバ・ゼバ。

この二人だけは、どうしても被害を出す前に止めなければならない。

……究極的に言えば、どちらも無視して構わない。

だが、俺の脳は未だに家族の危機に見て見ぬふりを決め込める様な構造には至れていないらしい。

不思議なものだ……と思ったが、初代……プロトでない正式なアークルを付けて戦った初代クウガは確か、妹の為に戦士として戦う決断をしたのだったか。

これはもしや安全装置的な働きで家族愛までは消えないようにされている可能性があるか。

勿論、装着者ではなく、装着者を送り出すリントにとっての安全装置なのだろうが。

裏切ること無く、逃げること無く、クウガをグロンギと戦わせようと思うなら、積んでいて当然の機能なのかもしれない。

 

兎にも角にも、この二人だ。

ガドルは警察官狙い、ダグバに至っては恐らく認識範囲内の人間に対して一切の区別なし。

東京で未確認と戦っているであろう父さんが殺されるとすればこの二人のどちらかの手による可能性がとても高い。

だから、これまでの連中の様に、どうせなら一番気が緩んでいるであろう開始直後を狙おうだとか、明らかに何処に居るか分かってるからそこを狙おうだとか、帰宅時間とかも考慮して殺そうとか、そういう平和な理由ではなく。

ゲゲルが始まる前に殺さなければならない。

 

だが、ゲゲルのスタート時などを狙うのはもう何度かやってしまっている。

不意を打つのは難しい。

勿論、不意打てる部分では不意打っていくつもりだが、ほぼ正面からの戦闘になるのは予想に難くない。

では、今の俺はゴ集団トップと、そしてグロンギのトップである凄まじき戦士と正面戦闘ができるのか、という話になる。

 

一先ずダグバは置いておく。

こいつに関しては初手アルティメットで掛かるしかないし、次に東京に行った時にでも五代さんに連絡手段を教えてもらい、ダブルアルティメットで挟んで殺すのが理想だからだ。

ガドルに関しては……できれば、正面から戦うべきだろう。

アルティメットで挟んで殺す予定とはいえ、実際二対一になった時のダグバの挙動は一切予測がつかない。

曲がりなりにも、あちらはアークルが齎す肉体変化の最終形態であるアルティメットと同格の進化を遂げて、それなりに時間が立っている筈。

五代さんと雪山でタイマンした時には見せなかった奥の手くらいはあるかもしれない。

正面戦闘で、ダグバに次ぐ力を持っているガドルと戦い慣れておくに越したことはない。

 

慣れておくに越したことはないのだが。

果たして、ガメゴと比べてガドルの実力や如何に、という疑問が浮かぶ。

できれば、ガドルよりちょっと劣るくらいの相手で慣らしたい。

ついでに、それまでに別のゴ集団の力も確認しておきたい。

ゴ集団の力のサンプルがガメゴだけ、というのは、少しばかり心もとなさ過ぎる。

 

バダーが死んだのは新聞で確認した。

日付としては、ジャラジがゲゲルを始める頃合いだと思う。

正確な開始時期までは覚えていないが、少なくとも九月十五日には被害者が出ていた。

つまりそれ以前にゲゲルを開始して、学生の脳内に針を仕込んでいた筈だ。

発覚まで四日ほど掛かるから、合間にある日曜日に行けば余裕を持って観察ができる。

 

……無いな。

傲慢かもしれないが、ジャラジの脅威度は低い。

やもすればガリマの方が高いんじゃないか……というのは言い過ぎにしても、少なくともガメゴよりも強いとは絶対に思えない。

タイタンフォームを貫けないメイン武器、さして高くない身体能力、瞬間移動の能力を持っている疑惑があるが、クウガとの戦いで使っていなかった事から見ても実戦に耐えうる能力ではないだろう。

 

……の、割には、ジャラジには余裕があるように見えた。

ダグバと戦わない、ザギバスゲゲルに進まないという選択を取る可能性があるにしても、自分よりも明らかに強い他のゴ集団を殺害しているクウガが妨害に来る事を考えないのだろうか。

はっきり言って、広い場所でクウガに見つかった時点で詰みを覚悟するレベルだろう。

出会い頭に距離があればペガサスで射殺せるし、近ければマイティで殴り殺せる。

実際、最初の接近遭遇はともかく、子どもたちの死を確認した後の戦闘では、距離を詰められて正面戦闘になった時点でジャラジは怒り狂った五代さんに滅多打ちにされて殺された筈だ。

近寄られる事を想定していない……遠距離からなら格上を喰う自信がある?

投げ針にそんな威力はない。

だが、食らった五代さんは異様に痛がっていた。

ライジングを使える程度に侵食が進んでいるなら、痛みに対する感じ方はそこまでネガティブなものではなく、あの程度の刺さり方なら戦闘に支障は出ないと思うが……。

 

毒?

刺さった針が返しで固定されて内部で鋭く伸びていく?

霊石から伸びる神経に干渉している?

 

本来の使い方ではない?

そういえば、呼吸器系も強化されてはいるが、それでも呼吸が完全に不要になるという訳ではない。

もっと、空気中の塵レベルまで小さいものから針を作れるなら、内蔵破壊はワンチャンあるか。

吸い込む……いや、血液の流れに乗せて脳まで到達させて、針とかじゃない、もっと一撃で頭蓋を内側から完全破壊するような変化ができる?

それなら五代さんも殺せる筈だ。

ゴの時は出来ないのか、それもとクウガを驚異と見なしていない?

警告だけして一度見逃している。

初見殺しの技か?

だからクウガに使えない。

余裕はポーズという可能性もある。

 

「……確認すべきか」

 

「何を?」

 

呟くように口にした言葉に疑問で返す声。

気付けば眼の前の席に、夏休みの間に多少仲良くなったと思われるクラスメイトの一人が。

席順は隣の席なのだが、今が昼休みで前の席の人が何処かに行っている為、前の席に座っているのだろう。

椅子の背もたれに組んだ腕を乗せて首を傾げている。

 

「ああ……ちょっと、今日の授業でちょっと解りにくいとこがあったからさ。先生に聞きに行くかなって」

 

「へえー、どのへん? 教えてあげよっか」

 

「ありがとう、助かる」

 

「いいよいいよ。優等生のセバス君に教えられるなんて、ちょっと優越感浸れるからね」

 

「そのあだ名定着してんの?」

 

「何? 名前で呼んでって?」

 

にんまりと笑うクラスメイトに肩をすくめて返す。

チェシャ猫の様な笑みだが悪意はないように思える。

悪意があったとしても、一般的な学生が抱く悪意、害意からくる行動なら割とどうとでもできるので可愛らしいものだ。

彼女が仮にオルフェノクだとか人間社会に紛れ込んだファンガイアだとか、或いは元の彼女に擬態したワームだったりしたら話は別なのだが。

それはその時になって考えるしかない。

なので、今は学校という場所に相応しい、穏やかな時間だ。

適当に言い訳に使えそうな教科書を取り出し、開く。

 

「ここかな」

 

「ああ、ここはね……」

 

上の空では流石に失礼なので、楽しそうなご教授をしっかりと聞きながら、昼休みを贅沢に使う。

……調べに行くかと言えば微妙なところではあるのだが、一つだけ言える事がある。

例え、どんな強力な秘策を用意していたとしても、披露せずに抱え落ちしてしまえば無いも同然だ。

出し惜しみする時点で一発ネタ同然である可能性が高いジャラジの隠し玉を態々探りに行くのは止め。

隠し玉を万が一食らって死んでしまってはお話にならないし、出させないように戦うならジャラジと戦う旨味はない。

それに、ジャラジとの戦いで五代さんが凄まじき戦士の参考映像を確認できるのは大きい。

凄まじき戦士にならないといけないとは言ったが、碑文の不十分な説明とライジング系列の力だけではどういった形態で、どうなればいいのかも把握しにくいだろう。

リント公式制作の凄まじき戦士のプレビュー用映像に触れれば、五代さんもなんとなく凄まじき戦士への至り方を理解できるようになる筈だ。

それを邪魔するのはいけない。

 

やはり、ガドル前の最終確認はゴ集団三強の二人から選ぶべきだろう。

ここからザギバスゲゲルまでに行われるゲゲルは、ほぼ全て土日に合わせて行われる。

ゴ・ジャーザ・ギか、或いはゴ・バベル・ダか。

この辺りになると、露骨にダグバに対する戦法が見え隠れしてくる。

ジャーザはスピード、バベルはタンク。

最終的にダグバと戦う場面ではほぼ同じ程度のスペックになる事を見越して、ダグバに勝る一芸を作って戦うつもりなのだろう。

ガドルに関してはまさしく正面から持てる全てをぶつけに行くと見える。

どれも参考にできそうだ。

 

大穴で言えば三強前のゴ・ザザル・バの、体液が強酸というのは肉弾戦に持ち込んだ時かなり有利になるのでいいと思うのだが、そうそう参考にできる戦法ではない。

ガドルやダグバのリハーサルとしては少しタイプが異なりすぎるだろう。

……まぁ、ちょっとだけ見てみたかった、という思いはあるのだが。

変身後ではなく、人間体の方を。

なにしろザザルの人間体、

 

「可愛いしなぁ……」

 

ちょっとガラが悪いというか、古めのヤンキー女みたいな服飾センスだけど。

そこはほら、グロンギってどんなに取り繕っても蛮族だし、あるがままではあるのかな、と。

 

「……ん、ん? 何か言った?」

 

ちょっとだけ口から漏れた言葉に、何故かクラスメイトの人が少し驚いたような顔で反応する。

 

「いや、勉強教えてもらったから、なんかお返しでもした方がいいかなって。大判焼きとかでいい? 商店街の」

 

内容物も、あんこ、クリーム、チョコ、ジャム、ハンバーグ、チーズハンバーグ、タコ、焼そばとバリエーション豊かなこの付近の学生御用達のお店なので、まぁまぁご満足いただけると思う。

あの商店街は反対方向に帰る人でもなければ大体寄り道できる位置にあるので帰宅ついでに寄れるのも良いと思う。

ジルもこれを食べてる間はかなりおとなしくなるので重宝する。

更に奢った分スタンプカードも埋まるのでちょっとだけ還元されるのが良い。

 

「い、いいって別にぃ。ジルちゃんのお世話で大変でしょ? 早く帰ってあげないと」

 

「そう? まぁ、そのうち何か返すよ。精神的に」

 

実際、何処かでお返しをしなければこの人への借りは大きくなる一方だ。

夏休みも明けたというのに、まだジルの水着を探すのを手伝ってくれた事へのお返しもまともにできていないのだから、どこかしらでどうにかしたい。

 

「だから、気にしなくていいのに……」

 

呆れるように笑いながら頰を掻くクラスメイトの人。

グロンギに匹敵する脳機能を獲得した俺が分析するに、この人はめっちゃいい人だ。

聖人君子かもしれない。

そういう人から死ぬ世界なので頑張ってほしい。

この人が安全に暮らせるよう神に祈って……神に祈るのは駄目な世界なんだった。

 

運を天に任せるとたぶんクソみたいな結果しかでない。

やはり自助努力こそが自らの身を助ける。

だから頑張れクラスメイトの人。

頑張れとか言うと上から目線みたいなので言わないけれど。

死ぬなよ……俺は自分の事で精一杯だからなんかあっても助けにはいけないだろうけど。

神や仏が居なくても仮面ライダーとかはそれなりに居るらしいから。

ここには居ないけどな。

 

それに、仮面ライダーだって万能ではない。

ザザルのゲゲルの時、同時に活動していたズ・ゴオマ・グ。

ダグバのベルトの欠片を使って強化されたコレが、警官隊を虐殺するのを防ぐことは出来なかった。

五代さんは凄い人だ。

ライダーをやってる人達は大体そうだ。

だけど、必ず限界はある。

補填しなければならない。

俺の目的にも合致する以上、それをやるのもやぶさかではないのだ。

 

―――――――――――――――――――

 

九月二十七日、水曜日。

千葉県、流山市内の河川敷。

夕暮れ時に差し掛かろうという午後四時。

 

「弱いな」

 

小さく呟かれた言葉は、不思議とその場に集まる警官全ての耳に届いた。

困惑、憐憫、納得。

幾らかの感情が薄く込められた言葉を発するのは、黒い戦士。

両腕の肥大化した『黒い』戦士──二十二号が、片腕で子供程の大きさの何かを持ち上げながら口にしたのは、誰に告げるでもない独り言だったのだろう。

持ち上げられた何か、肉塊……いや、手足を失い、首を握りつぶされた未確認生命体三号が、二十二号の言葉に反応するように蠢く。

力任せに引き千切られた手足の根本の肉が、まるで腐肉から大量の虫が湧き出すように盛り上がり、じわじわと再生を始めようとしている。

恐るべきはその再生能力か。

 

二十二号が三号を持ち上げていない手を掲げる。

僅かな放電と共にその指先が鉤爪の如く変化し、三号の腹部へと突き立てられた。

そのまま、砂を掻いて掘り起こすように、腹部の肉を掻き混ぜていく二十二号。

喉を潰され、叫ぶことの出来ない三号が吐き出す血に濁った呼気は苦痛からか怒りからか。

 

しばし続いた肉を掻き混ぜる音は、二十二号が三号の腹部から何か、金色の欠片を引き抜くと同時に止まる。

それは腹の肉を文字通りに掻き毟る音だけでなく、三号の手足の付け根の再生が突如として止まったせいでもあった。

二十二号は三号を持ち上げ、赤い剥き出しの断面をじっくり確認し、大きく、その場の誰にでも聞こえる程の大きな溜息を吐く。

 

「所詮はズか」

 

ごきん、と、硬い何かを圧し折る音。

二十二号は三号の首から手を放し、もはや僅かに痙攣するだけの三号の肉体をその場に落とす。

最早胴体と皮でしか繋がっていない三号の白髪の生えた頭部を踏み、潰す。

骨が砕けるというよりも、風船が破裂するような音を立てて弾け飛んだ頭部の内容物が辺り一面に散らばった。

 

ばちゃばちゃ、と、二十二号が足に付いた三号の破片を水たまりで洗い落とす様を、警官隊はただ見ているしかできない。

危機は去った。

去った筈なのだ。

通行人五名を殺害した三号は、早々に現れた二十二号によってその場からこの河川敷まで引きずり降ろされ、瞬く間に制圧……撃破された。

 

初めて二十二号がその姿を表してから半年以上。

それまで、二十二号はその苛烈な振る舞いからは想像もできない程に、市民にも警察にも被害を出していない。

警官に銃で打たれても反撃すらせず、時には他の未確認から守りすらしていた。

戦いに巻き込まれた市民を、自らの身を投げうって守った場面は、多くの市民にも警官隊にも目撃されている。

一部には四号と同じく扱うべきではないか、という意見すらあった。

だが、二十二号の扱いは変わっていない。

射殺対象ではない、捕縛対象でもない。

それは扱いかねているからか、味方であると判断できる程の材料がないからか。

 

違う(・・)

 

その姿を、その戦いを直に見れば、理解してしまう。

あれは、自分たちとは、違うものだ、と。

敵ではないのだとして、味方と言うには、余りにも異質だと。

そう拒絶してしまう。

そう思い込もうとしてしまう。

二十二号の中に、二十二号の振る舞いの中に、見つけてしまいそうになるからだ。

自分達の中にある、二十二号のそれと同じ凶暴性を。

狩猟者の遺伝子を揺さぶられるが故に、違うのだと思いたがってしまう。

違う筈だ。

この振る舞いを、自分達と同じものがする筈がない、と。

 

足を流し終わった二十二号が、胴体だけになった三号の遺体を、むんずと掴み上げ、歩き出す。

包囲を行っていた警官隊は銃を構え直し、二十二号が歩いた分だけ距離を取る。

二十二号が足を止めれば警官隊も足を止める。

しばし考え込むように静止していた二十二号は、おもむろに三号の死体を、ドアの開け放たれたパトカーの中に放り込んだ。

 

「あげます」

 

低く、籠もるような声でそう告げた二十二号は、向けられる銃口と視線の一切を無視するように、その場から飛び去った。

 

―――――――――――――――――――

 

薄暗い線路下の歩道に、白いドレスに身を包んだ、額に白い薔薇のタトゥーの刻まれた女が居た。

バラのタトゥーの女。

警察にはB-1号と呼ばれる、ゲゲルを管理、運営するグロンギの一人、ラ・バルバ・デ

その隣では、地面に座り込み、何かの断片を丹念に布で磨き上げ続けている男。

 

バルバは何を待つでなく、何かの確信がある訳でもなかった。

ただ、こうしてザザルのゲゲルの結果を待っているだけにしか過ぎない。

しかし、妙な予感があった。

導かれる様に手を掲げる。

その手の中に一つの欠片が飛び込んできた。

金色の金属片。

彼女達が、グロンギが探し求めていた、ザギバスゲゲルを完全な形で遂行するのに無くてはならない器物の一欠片だ。

 

「……やはり、今度のクウガは面白いな」

 

「お前らには負けるよ」

 

眼の前には、ボロ布の様な衣服で全身を覆い隠した男が一人。

フードを被り、口元まで半ば隠したその姿は一見すれば浮浪者のそれだ。

だが、この距離なら特別な視力が無くともわかるだろう。

暗い、暗い闇の中に灯る、消えかけの篝火の如き揺らめく輝きを宿した巨大な複眼。

未確認生命体二十二号。

明らかに、リントよりも自分達に近いクウガ。

この時代を象徴する様な、或いは、先祖返りでも起こした様な、生粋の戦士。

 

「参加するのか」

 

「いいや。だが、お前らのルールには合わせる」

 

くる、と、振り返り歩き出す二十二号。

その先には、軍服の厳しい男、長髪をバンダナで纏めた男、ビジネススーツにメガネの女。

何を言うでもなく、道を譲り、様々な感情の籠もった視線を二十二号に向ける。

 

「楽しみにしている」

 

すれ違いざまに、軍服の男が視線も合わせる事無く告げた。

二十二号はそれに答える事無くすれ違い、

 

「ダグバによろしく」

 

一言だけ残して、その場から、急ぐこと無く歩き去った。

 

 

 

 





☆グロンギ三強の皆さんが見えなくなった辺りでダッシュして郊外に停めたバイクまでたどり着いたらカモフラ襤褸切れ燃やしてマシントルネイダー飛ばして家に帰るマン
高々度を飛べばばれない説を信じて……!
青春を謳歌しようぜ! とか思ってるけど青春に対する認知度とかはくっそポンコツになってる疑惑。最終的に青春は桜花されるかもしれない
文武両道でまぁまぁ人当たりも良くて義理の妹を介護する関係で女性にもそれなりに優しいという優良物件なんで多少はね?
という言い訳を抜きにして考えると、たぶんこの話書く直前にスピーシーズドメインの最新刊買っちゃったから青春させたかった
でも生存戦略―!してる最中なのでそういった方面には脳のリソースは一切割いてない
何時まで生存戦略の方にリソース裂くかって言えば……カブトが終わるくらいかなぁ……ファンガイアははっきり言ってクウガ編終わった時点のスペックでどうにでもなる。数に限りもあるし
所々息の抜きどころみたいな年もあるけどワームと魔化魍とオルフェノクは基本無限湧きみたいなものなので完全に平和には浸れないので日常面では色々と抜けてるとこもある
言わば思春期を殺した少年……お前(達の種族)を殺す(根絶やす)(デデドン!)
平和主義とか慎重論とかを取ってるつもり
でも脳が変質している中で誰に相談するでもなく脳内でのみ計画を練っているので思考や思想の歪みに気づくことは難しいのだ
やっぱり協力者とか大事だよね……居ないけど
居ないからこうなるってんですよ
一応ベルトの欠片を渡したのには理由が無いでもない、次の話で語るかな?
語り忘れたら感想で『なんでベルトの欠片をグロンギ側に渡しちゃったんだよ!』みたいに書いてくれれば理由そっちで書くのでお願いします
次話出る前に聞かれるとたぶん答えられないわにゃん
ついでに男なので黒に染まった
アルティメットはまだだけどアメイジングだから安心してほしい
たぶん火とか風のリソースも腕力に回った特殊形態

☆ズ・ゴオマ・グ
チートでステだけ強化したクソPS非ムセギジャジャ
漫画版でマゾヒスト描写があったけど、虐げられて喜ぶじゃなくて本気で屈辱とかが蓄積していったからこそダグバのベルトの欠片を盗んでまで猫駆除しようと思ったんじゃないかなって思う
だから頑張ってくすねたベルトの欠片で究極体になったよ!
でも肉体の使い方はズのそれで、飛行能力を活かすでもなくチートで湧いたパワーに酔いしれるような戦い方を好むよ!
戦果は一般人数名だよ!
達磨になったよ!
頭も潰されたよ!
神経断裂弾作成の為に警察の方々にプレゼントされたよ!
でもベルトもゲブロンも所詮ズのものなので回収はされなかったよ!
良かったねゴオマちゃん、モツ抜きされなかった初の獲物だよ!
獲物とすら認識されてなかったのが功を奏したね!
ベルトやその欠片に再生能力がどれだけ依存するか、みたいな実験に使われた

☆パトカー
ゴオマくんの血塗れ死体を後部座席に押し込まれた
乗ってきた人はすげー迷惑

☆ザザルさん
人間体が可愛い
あとおっぱい
そしておしり
体液が強酸性って、身体能力とか超能力がダグバと同等になるならザギバスゲゲル勝ち上がりワンチャンあり得たよね
警官隊への被害は少ないタイプの人なので標的にはならなかった

☆薔薇の人
「おっ、最後の欠片ありがとナス!」
「今からでもゲゲルしてかへん?」
くらいの内容しか口にしてない
潜伏グロンギの事を考えるとこいつとゲゲルリングは絶対に殺害して破壊しないといけない

☆ゴ集団最強三人衆
OL(はー面倒そうな相手。こいつらのどっちかと戦って死ねばいいのに)
バンダナ(面白い……ゲゲルで相まみえるのが楽しみだ)
閣下「君のプレイ、イエスだね!」
一人だけ社交的に声をかけた閣下は見事に無視されてしまう
二十二号は本当に礼儀がなってない、やっぱユグドラシル最低だな!

☆ヒロイン(画面端にワイプでのみ登場)
大判焼き、回転焼きなどと言われるおやつを食べる回想しかない
手づかみで食べられる上にボロボロ食べかすがこぼれない食べ物は手先が不器用な人にはありがたいんじゃないかなって思う
クウガ編最終回まわりで見せ場があるからちょっと待ってね

☆学生生活
潜伏オルフェノク、潜伏ワーム、潜伏ファンガイアなどの存在を思えば完全に油断できる場所でもない
時期的にジャーザやバベルは文化祭とかそういう行事に被るけどどうなんだろ
そもそも主人公ジルの監視のために家に直帰だけど準備とか手伝えるんかね
頑張ってジルが学校まで迎えに来て、それを叱る主人公、まぁまぁせっかく迎えに来てくれたんだからさ、みたいになるクラスメイト、みたいな構図にすればいいのか
学校でなんか覚醒してゲゲルとか虐殺を始める分にはいいので主人公も許容しそう

☆クラスメイトの人
話題の優秀な変な男子が女子水着売り場で真剣に水着探してるので声かけたら、なんやかや妹さんの体の事とかも聞いてしまいちょっと入れ込んでしまった
海に遊びに行く時もその流れで妹さんの面倒をその男子と見たりするんだけど、妹さんを見る時とかに時折見せる少し影のある表情とかにちょっとトゥンクしてしまい
ぼうっとしている姿を夏休み明けに見つけて声をかけて勉強を教えていたらなんか可愛いとかぽつりと言われてトゥンクしたり……
恋愛フラグとかそういう面倒なのはやらないって言ったでしょ!( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン
なんか主人公の親しい人が死ぬ系のイベントを思いついた時用に出された生贄
青春謳歌してんなーって感じの話を書く時に出したり適当なエネミーに桜花されたりする
そういうの思いつかなければぬるっとフェードアウトします
ヒロイン昇格は無い
ただの純粋なオリキャラになっちゃうし、なんか適当な要素突っ込んで原作絡みのキャラにするにしてもジルだけで事足りるし、声が出るキャラは口調とかセリフ考えるのが面倒くさいし、喉潰すとかしてもジルと被るし
思いつきで出したのでタイミングが悪い
もうちょい早ければ親戚とか遠くにいる友人が未確認に殺されたとかで意気消沈して主人公の意識改革とかできた可能性もあるが今のコヤツは死亡イベント用の肉人形よゲッゲッゲ
或いはモブな

☆ジャラジ
逆にあんだけ余裕なら何かしら隠し玉を持っていると考えたほうが自然な気もする
だが所詮抱え落ちするしか無かった隠し玉なので出番はない
アルティメットフォーム公式PVの視聴チケットとして消費された
針をモーフィングパワーで小さくして脳に入れる、モーフィングパワー切れで脳内で大きくなって殺す、というゲゲルであった為、主人公が正義感溢れるタイプだったら殺された生徒のみなさんを助ける目はそれなり以上にあった
でもそんな用事でなぁ、メリットがなぁ、知らん連中だし
決めた! 頑張れ五代さんで今日はお休み! 閉廷!
という感じでスルー
平和的に爆殺されました、めでたしめでたし!
ここにライダーは居ない(純然たる事実)



こんだけ目撃されてるんだから、次の閣下戦の前のリハは、撮影された映像を警察とか五代さんが見ている、みたいなシチュもいいかなって思うんですけどどうですか
どうですかと聞きつつ思いついたもの、筆がノッた展開しか書けないから何かを還元したりはできないのだ、悲しい
別にどこかの誰かの心の青空を曇らせたり泉を濁らせたりしたい訳じゃないんだから勘違いしないでよね!
次はたぶんOLか閣下
思いつき次第なので気長にお待ち下されば白い服のトップムセギジャジャも思わず笑顔になります
気長に待ってダグバくんをもっと笑顔にしよう!


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11 希望、朗々と唱え

 

「戦うためだけの、生物兵器、か」

 

関東医大病院の休憩室にて、一条はぽつりと呟いた。

科警研から回されてきた資料は、意見を求める為に法医学士である椿秀一の元にも届けられていた。

手足を引き千切られ、頭部を粉々に粉砕された未確認生命体第三号の遺体。

そこから手に入った情報は、かつて五代雄介の肉体を検査した時に椿が得た推測をはっきりと裏付けるものだった。

腹部の異物から全身に強く張り巡らされた神経。

頭部を損失しているが為に首までしか完全に見ることは出来ないが、伸びた新たな神経は脳を包み込まんばかりに首目掛けて敷き詰められていた。

代謝、痛覚、全てを戦うために最適な肉体へと変貌させるため、中枢である脳と腹部の神経瘤……謎の鉱石はほぼ直結されていたのだろう。

 

予想通りの結果だ。

実際、最近の五代の肉体もこの三号の肉体と似たような状況にあった。

だが。

 

「こいつでもこんだけ進行しているんだ。それを、虫でも潰す様に殺せるなんて、どんな状態になっているのか、わかったもんじゃないな」

 

三号の遺体を作り出した張本人、未確認生命体二十二号。

警察による包囲と避難指示のお蔭で、現場の様子を撮影できたものは今の所現れていない。

だが、通報を受けて駆け付けた所轄の刑事から、その時の状況は証言が取れている。

 

戦いとすら呼べなかった。

傍から見ても捉えきれない三号の攻撃。

だが、三号が腕を振るったかと思えば、次の瞬間には二十二号によって腕をねじりあげられ、そのまま鳥の手羽でも千切る様に気安くねじ切られた。

現場で行われたのは、ほぼそれだけ。

腕が二度ねじ切られ、膝が踏み抜かれ、姿勢を崩した三号の、残った腿を引き抜き。

地面に芋虫のように転がり、未確認が使う未知の言語で何事かを叫ぶ三号の首を掴み、持ち上げ、喉を握り潰した。

 

『静かに』

 

怒りや憎しみ、或いは、悦びや楽しみ。

そういった感情が乗っているようではない、しかし、無感情ではない声。

なんでもない、日常の一場面で、それなりに気心の知れた相手に軽く注意するような、なんでもない一言。

そうとしか聞こえない声と、実際に行われた行為のギャップは、包囲していた警官隊の多くの印象に残ったのだろう。

 

「桜子さんからは?」

 

「……聖なる泉枯れ果てし時、凄まじき戦士雷の如く出で、太陽は闇に葬られん」

 

「何?」

 

「つまり、戦うだけの生物兵器になったなら、戦士の目は黒くなるそうだ」

 

「それは……」

 

椿が黙り込む。

勿論、目の色一つで判断するのは早計だ。

抽象的な表現が多く、解釈の違いでどうとでも意味が変わる可能性もある。

だが、二十二号の腹の中に入っているものが未確認や五代のそれと同じであったのなら、時間と共に、あるいは戦いと共に、その体は凄絶な変化を遂げていく筈だ。

二十二号が戦っている場面を、そして被害者である他の未確認の死体を残した回数は少ない。

一見して、これだけでは二十二号が五代よりも先に凄まじき戦士になる事はないように思える。

だが、そうではない。

一条も、椿も、桜子も、五代も。

誰一人として、二十二号が『何時から二十二号なのか』を知らないのだ。

 

今は異なるものの、かつての腹部の装飾品は見かけ上は五代のそれと同じものだった。

だが、九郎ヶ岳遺跡で見つかったベルト状の装飾品は一つだけ。

何処で見つけたのか、何時見つけたのか、何時それを装着し、五代と同じ体になったのか。

 

―――――――――――――――――――

 

「少しだけ、話を聞いてみたいな、って、そう思う事もあるんです」

 

城南大学の研究室にて、桜子がふと漏らした。

グロンギや四号……クウガの力に関する謎を解明しよう、と、榎田が纏めた資料を手に話をしている最中の事だ。

グロンギとクウガには同じ力が備わっており、精査した碑文の内容が、第0号とクウガが極めて近しい存在である可能性が浮かんできた。

そして、それを知った上で、二十二号は五代が凄まじき戦士になるように助言をしている。

 

「未確認、グロンギの事も知りすぎてるし、何か他の遺跡のことを知っているとしたら」

 

「そうね、安全に凄まじき戦士になる方法を知っている、なんて事も、……んー、無い、事もないのかな?」

 

難しい顔で首を捻る榎田。

希望的観測である事は口にするまでもなく桜子も理解しているだろう。

だが、実践派である榎田からすれば、五代の変身する四号と比べて何のデータも無いのだ。

そういう可能性があるかもしれない、と言われれば、無い事もないのではないか、としか言えない。

 

傍から聞いている一条からしても、全く無いとは思っていなかった。

現に、二十二号は明らかに凄まじき戦士に近づきながら、未だ持って未確認以外に被害を及ぼしていない。

先日に三号を惨殺した時ですら、三号に襲われている市民を庇った上で、三号を橋の下に引きずり下ろしたという話も聞いていた。

二十二号からすれば場所を選ぶ必要すら無い三号を相手に。

碑文にあった、聖なる泉が枯れ果てた戦士の振る舞いではないだろう。

 

「そう、ですね。そういう可能性だって……」

 

さて、では、その可能性を聞いていた五代がどうかと言えば。

無理矢理に笑おうとして、しかし、拭いきれない不安に襲われていた。

憎しみで戦おうとして、自分には凄まじき戦士の姿が見えた。

引きずり込まれるような、自分の憎しみを燃料にさらなる憎しみを燃やす様な、悍ましい感覚。

誰かを思いやる気持ち、優しさ、そういうものが酷く遠くに離れていく感覚。

あれを、制御する事ができるのだろうか。

ふと、かつて貰った手紙の一文を思い出す。

 

『凄まじき戦士の力は扱いが難しく、青空の如く清らかな心などを含む諸々の極まった精神的な適性が無い限り、使いこなすことは容易ではありません』

 

どうとでも取れる言葉だ。

精神的な適性があれば完璧に使いこなせるのか。

容易ではないだけで、使いこなすことも不可能ではないのか。

少なくとも、完全に使いこなせる方法がある、などと、手紙には一言も書いていなかった。

 

理屈を知ってしまえば、凄まじき戦士にならないという自信はあった。

大丈夫、と、言えるだけの自信もあった。

だが、二十二号は、0号を指すのであろうン・ダグバ・ゼバと戦うには凄まじき戦士にならなければならないという。

 

……彼は、憎しみのままに戦っているのだろうか。

 

ザザルを倒した後に、三号の出現場所に向かった五代は、確かに見たのだ。

屠殺場の様に血溜まり残る現場、あちこちに散らばる三号の破片を覆うチョークの円。

パトカーに詰め込まれた、まるで家畜を屠殺したかの様に無機的に解体された三号の遺体。

あれが、憎しみから行われた行為でないと言えるのか。

 

「もう一度、話せれば、いいんですけどね」

 

五代雄介は、何一つ知らないのだ。

どんな思いで戦っているか。

それどころか、顔も、名前も。

二十二号、と、無機質な名前でだけ呼ばれる彼の事を。

 

大丈夫、と、気休めでも口に出す事が難しい。

満足を示すサムズアップを作る事も。

 

―――――――――――――――――――

 

時折思うのは、人間の一生というのは、人間の社会、人間の文明を味わい尽くすには短すぎる、という事だ。

今も記憶に残っている始めてから終わるまでの人生一回分。

特筆するべき点もない、それなりに平凡で穏やかな人生だったからかもしれないが、だからこそ俺には特定分野に深い造詣がある訳ではない。

多少の趣味はあったが、それも忙しい日々の合間の余暇で楽しめる範囲のものでしか無かった。

何が言いたいか、と言えば。

 

……あまり、オシャレな店での買い物には慣れていないのだ。

ジルの手を引いて、ブランド物に身を包んだオシャレ都会人達の列に並んでまでおシャンテイな菓子類を買う事に、少しだけ恥ずかしさを感じる程度には慣れていない。

最低限のTPOには逆らわない程度に身だしなみは整えてはいるが、都会人共に比べれば俺のオシャレ度等低辺だー低辺だーと言われても仕方がない。

 

別に、そういう店を一切利用しなかったという訳ではないが、利用するにしてもその時点では既に通販がかなり発達していたので、態々店に出向くことも無かった。

話題のお店のお菓子一つ買うのだって、ネットを経由して操作一つで家まで届けてくれるのだから素晴らしい。

昔は良かった……ではなく、未来は良かった。

 

「開けるのはアパートに着いてからだからな」

 

ジルはこくこくと頷き、しかし視線は手に下げた紙袋にチラチラと吸い寄せられている。

早く予備の鍵を預かっている父さんのアパートにたどり着かないと、適当なベンチかなにかに腰を下ろして食べ始めかねない。

と、思っていたのだが、視線に込められたのは食欲ではないらしい。

何か言いたいのか、と思い、視線を向けると、それを意識してか口をぱくぱくと動かした。

 

『あえおおいあえ?』

 

勿論、声は出ていないので疑問符が付くかどうかは不明だが、首を傾げているのだから問いなのだろう。

なるほど、確かに、俺は昼食を終えた後に一緒に食べる用、母さんへのお土産用、父さんが帰ってきた時に食べれる様にアパートの冷蔵庫に入れておく用の他に、ちょっとした焼き菓子を買った。

他はデフォルトの包装なのに、この一つだけはプレゼント用のラッピングまで施して貰って、だ。

 

「あれだよ、クラスメイトの人に。お礼をまだしてなかったからな」

 

それこそ、宣言した通りの商店街の大判焼きとかでも良かったのだが、今回東京にまで来たという事で、先日朝のニュースで話に上がっていた有名店に立ち寄ってみたのだ。

俺自身、ここのケーキに対しては並々ならぬ関心を抱いていたので、物の序でのつもりだったのだが……。

 

『あうあいいお?』

 

「買う分には良いんだが、店員さんがな……」

 

プレゼント用のラッピングを、という一言がいけなかったのかもしれないが、どうにも店員からも背後の列からも生暖かい視線を感じてしまっていけなかった。

やはり店舗販売は悪い文明だと思う。

早く発達しろAmazon。

そしてアマゾンは発達するなというか生まれるな。

生まれたら製造初期段階で焼きに行く所存だ。

製造者とそれを雇う企業とその施設と製造の為の資料も残らず。

 

「さて」

 

時計を確認する。

今回の練習相手であるゴ・ジャーザ・ギ。

実は一対一で戦おうと思うと中々に難しい。

まず、最初のゲゲルの現場は飛行機の中。

落ちた先には五代さんが待ち構えている。

ここが狙い目かもしれないが、白くなって地面に転がる五代さんを気にしながら戦うのは面倒だ。

次のゲゲルでは船に行くのだけれど、ここでも即座に五代さんに追いつかれている。

面倒を嫌う、という割に、犯行予告をネットに書き込むなどという無駄をする辺り、面倒面倒と言いつつ遊びの要素を多く入れているせいだ。

後の時代じゃ放送できないぞ、変に叩かれたりして。

 

もう少し、面倒を避ける事ができるルールは無かったのだろうか。

連中が自縄自縛で難易度を上げるのは勝手なのだが、それで俺まで難易度が上がるのは望ましくない。

そういう難易度の高さを乗り越える技能は、これ以降のグロンギ相手の二戦では一切役に立たないし、今後十年二十年の中でもそうそう使いそうにない。

 

『あああうお』

 

じぃ、と、視線の質が変わる。

戦いに対する興奮といった感情は見受けられない。

確認する様な視線。

……徹底的に叩き込んだ現代日本の一般的に模範的と思われる倫理感からすれば、疑問を覚えても仕方がない。

必要かどうか、と言えば、必ずしも必要とは言えないだろう。

放っておけば、五代さんがこの一年を乗り越えさせてくれる可能性はある。

可能性はあるが……。

確実ではない。

五代雄介が……仮面ライダークウガが勝つ、という結末は、確実に訪れるとは言い難いのだ。

あの最終決戦を知るからこそ、確実に、ン・ダグバ・ゼバを殺せる手段を取らなければならない。

 

「必要な事だからな」

 

『あんおあえい』

 

「生きるために」

 

そう。

俺は生きていたい。

死にたくない。

死なないために。

殺さなくてはならない。

 

難しく考える事はない。

準備は整えている。

そのための多くの確認があって。

今も、その確認をしに行くのだ。

 

不安はある。

だが、それは、今日に対する不安ではない。

だから、今日は余裕を持って、ただ確認しに行くのだ。

殺すための手段を。

 

―――――――――――――――――――

 

十月八日、日曜日。

十一時を少しだけ過ぎたこの時間。

東京都江東区は豊洲埠頭に一台のバイクが滑り込む。

ビートチェイサー2000。

警察が未確認生命体四号の為に密かに開発した、四号専用車両だ。

 

搭乗者は未確認生命体四号こと、五代雄介。

警察からの情報提供を受け、海中を移動中の四十五号の予想上陸地点へと駆け付けた五代は、その場に見覚えのある先客を見つけた。

手にくすんだ黒色に染まったボウガン状の武器を携え、遠くの海を眺める黒い戦士。

色彩と細部の形状の変化、ベルトのバックル部分を除けば、四号と驚くほど瓜二つな姿を持つそれの名は、未確認生命体二十二号。

消えかけの松明の如き僅かな輝きを灯した、吸い込まれるような、山中に偶然見つけた(うろ)のような暗い瞳の戦士。

 

「お久しぶりです」

 

振り返りもせずに告げられる声に、暗さは無い。

相も変わらぬ、年若い少年のものにしか聞こえない声。

気負った風ではないが、せいぜいが久しぶりに会う親戚にする程度の硬さしか無い、気負いの無い挨拶。

手に下げた武器、視線の先が海中をやってくる四十五号とするならば、場違いとも言える声色に一抹の不安を覚えながら、五代は自らもポーズを取り、その体を未確認生命体第四号、戦士クウガのそれに変える。

 

「……」

 

銃を構え、海中を警戒するクウガは、すぐ側で同じ様に海中から来るであろう四十五号を待ち構える二十二号に声を掛けあぐねていた。

それは戦闘を前にしての緊張であり、また、二十二号の集中を削ぐ事への遠慮であり……。

結局のところ、ただ未確認との戦いの前に偶然出会うだけでは、聞きたい事を聴くような時間が無いというのが現実だった。

それは、これまでの全ての未確認が話し合いの余地もなく戦うしか無かったのと変わらない。

顔を合わせる切っ掛けが未確認との戦いを通しての偶然の接触しか無い以上、二十二号が人類に敵対的かどうかとは余り関係が無い。

 

「ああ、そういえば、これは……御前試合か」

 

一歩、二歩と、後退る様に海から徐々に距離を取る二十二号が低い声で呟く。

その呟きに疑問の声を上げるよりも早く、クウガの背筋が泡立つ。

背骨の中に氷柱を差し込まれるような寒気。

見ているのは海中、海の向こうから来る筈の四十五号を警戒している筈なのに、否応なく全感覚の端に、見えていない筈の人影が。

全身を白でコーディネイトした青年の姿。

口元には朗らかな笑み。

だが、顔が見えない。

いや、見えていないのだから見えないのは当たり前の筈だ。

だが……。

 

「──」

 

自らの息の音すら邪魔だと言わんばかりに、限界まで息を潜めたまま、クウガの姿は緑を金で縁取る弓兵へと変じる。

既に警察への通報から時間が経過している。

四十五号が海から出てくるのも時間の問題だ。

だというのに。

 

「う……」

 

鋭敏化した五感の全てが、目の前の海ではなく、白い少年の姿を捉え続けている。

いや、向けられる視線が、向けられる感情が、クウガの五感に白い少年の姿を幻視させ続けているのだ。

期待、恨み、好奇、興奮。

陳腐な言葉で例えるなら悪意のない殺意とでも言うべきか。

矛盾する感情を孕んでいるようで、その実酷く純粋な思いの込められた気配。

それが、意識的にではなく、本能から警戒を向けてしまう。

 

「あ」

 

いつの間にか五代よりも後ろにまで下がっていた二十二号の間の抜けた声。

その声に我に返るのと、海中から飛び出してきた銛が五代の左肩に突き刺さるのは同時だった。

恐るべき速度で持って海中から投擲された銛がクウガの左肩を貫き、そのまま十数メートル後ろの鉄柱へと貼り付けにされてしまう。

 

「そこか」

 

貼り付けにされたクウガに目もくれず、二十二号がボウガンの引き金を絞る。

数発纏めて打ち出される圧縮された空気弾が銛の飛び出してきた辺りへと突き刺さり──海面が爆発した。

七千度の熱量を込められた(・・・・・・・・・・・・)圧縮空気弾が、着弾した付近の海水を一瞬で蒸発せしめたのだ。

そして、熱され沸騰する海中で慌ててその場から離脱しようとする未確認生命体四十五号、ゴ・ジャーザ・ギ目掛け、周囲の海水ごと煮殺そうと続けざまに圧縮高熱空気弾が放たれていく。

ジャーザとしては、クウガとも二十二号とも戦うメリットはない。

既に戦い方を、ダグバ戦、ザギバスゲゲルを想定した戦法とそれに相応しい体を構築済みのジャーザにとって、この段階で無駄に力のある存在と戦うのはただ消耗するだけでしかなく、得られるものがないのだ。

だが、少なくとも、このまま煮えたぎる海中を逃げるのは難しいだろう。

忌々しい事だが、ここで二十二号の追跡を振り切るには、二十二号を殺してしまうしかないのだ。

 

一方、埠頭からジャーザへ向けて一方的に攻撃していた二十二号もまた舌打ちをしていた。

ジャーザの領域である海への逃走が無駄であると思わせ上陸させるために海を熱し続けていたが、それにも限界が迫りつつあった。

二十二号の手元の黒ずんだペガサスボウガンは既に融解寸前にまで熱を溜め込んでおり、フレイムフォーム特有の耐熱性能すら持つトリニティフォームの性能で持ち続ける事ができたとしても、既に新たな空気弾を発射するのは不可能。

ペガサスボウガンはフレイムフォームの操る高熱に耐えられる様な構造にはなっていないのだ。

 

ジャーザが飛沫を上げ海面から飛び出すのと、二十二号がクウガの取り落とした拳銃を拾い上げようと飛び込むように後退するのは同時。

海面から飛び出したジャーザの手には新たな銛が構えられ、今まさに無防備に背中を晒している二十二号へと投擲される。

ジャーザの強みを挙げるとすれば、それは粘りのある筋力だろう。

海中からの投擲ですら、地上に居るクウガを十数メートル吹き飛ばして鉄柱に貼り付けにするほどの威力を出す事ができるのは、海中を泳ぐ上で最適化された筋力と、その筋力を存分に生かした特殊な投擲法だ。

理論上、ジャーザはどんな姿勢、どんな場所からの投擲でも、ゴ集団相当の力量を持つ相手の装甲を貫き吹き飛ばす……つまり、地面から離して動きの自由を奪う攻撃が可能なのだ。

飛行能力と近接戦闘能力を併せ持つ戦士はグロンギの中でも希少だ。

宙に浮き、碌な回避も出来ない相手であれば、二射目を外す様な真似はしない。

これぞゴ・ジャーザ・ギ必勝の策。

 

だが、今狙われているのは背後を向けているだけ(・・)の、ゴ集団上位相当の戦士、二十二号。

角を縮め装甲を白くしたクウガの手元に転がる拳銃へと手を伸ばしながら、融解し始めた手元のペガサスボウガンを勢いよく後ろへと振り回す。

手元が人間にぶつかればそのまま粉砕する程の勢いで振り抜かれ、硬度を下げた赤熱するベガサスボウガンだったものが伸展、先に分銅の付いた鎖へと変化する。

モーフィングパワーでも排しきれない熱量で未だ赤熱した鎖は迫る銛に絡みつき、軌道を逸らされる。

 

宙空で振り向いた二十二号と落下中のジャーザの視線が絡み合う。

ジャーザが再び装飾品を変じさせた銛を投擲するのと、二十二号がオルタリングから引き抜く勢いのままに炎剣を投擲するのは同時。

互いの獲物の切っ先が激突、爆散。

 

二十二号目掛け駆けるジャーザ。

ジャーザを視線で捉えながら、二十二号が白いままのクウガを、近づいてくる警察車両目掛けて低く蹴り飛ばす。

僅かにジャーザの視線が低空を滑空する白いクウガを追いかけ、やめる。

リントは仲間意識が強い。

白くなったクウガを狙えば、リントの戦士であればそれを庇い隙ができる可能性もある。

実力が拮抗していればしているほど一瞬の隙が大きなアドバンテージになる。

だからこそ、白いクウガを狙うなどという、無駄な事(・・・・)はしない。

相手に隙を作ろうとして自分が隙を晒していたのでは意味がない。

 

「ぐ、ぅ」

 

走りながら、ジャーザが体を変じさせる。

海中を自在に泳ぎ回る俊敏体を基本とし、それをザギバスゲゲルでも通そうとしていたジャーザにとって、もう一つの姿、剛力体への変身は苦痛を伴う程度には慣れていない。

だが、今相手にしている黒い方のクウガ……二十二号の膂力は銛を逸らされた時に察している。

この近距離では銛の投擲も隙が多く多用できない以上、この形態で戦うしかないのだ。

俊敏体が生み出す勢いのままに剛力体の力で掴みかかる。

 

「がっ……!」

 

ぎちぎちと首が締め上げられ、二十二号の口から息が詰まる音が漏れる。

ジャーザは片手で首を掴み、もう片方の手で装飾品を引き千切り剣を生み出す。

狙うは装甲に覆われていない脇腹。

いやさ、全てのグロンギの戦士の証にして弱点であるベルト。

ここを貫かれて無事な戦士は居ない。

 

「ギベ!」

 

勢いよく突き出されるジャーザの剣。

狙うはバックルの中心のクリスタル部分。

 

「てめえが死ね」

 

絞り出すような声。

剣の切っ先は、バックルから、オルタリングから生えてきた剣の柄に遮られていた。

止められた剣の切っ先を二十二号が握り込むと、剣先が柄に、ジャーザの握る柄が剣先へとすり替わる。

モーフィングパワーによる武器の乗っ取り。

これは、モーフィングパワーへの理解と熟練の差があればこそ可能な芸当。

最終的な戦術を決めて無駄を省いたジャーザと、戦うための、殺すための力を止まること無く磨き続けてきた二十二号の差。

 

二十二号が奪い取った剣を、そのまま体重を掛けて押し込むようにジャーザの腹部に突き刺す。

ず、と、重い音を立てて腹部を切り裂き内部へ侵入する剣先。

しかし傷は問題にもならない。

だが、突き刺さる剣の周囲に浮かんだ封印の紋章がジャーザの動きを僅かに鈍らせる。

一呼吸、一歩後ろに逃げることができたかできないかという僅かな時間。

 

二十二号はもう一本の手でオルタリングから生えた柄を引き抜き、ジャーザの足を斬りつける。

切り落とす事は出来ない、距離が、間合いが悪く、そして剛力体のジャーザの肉体の頑健さがそれを許さない。

だが腿の半ば以上、骨まで切断された足がもつれ、バランスを崩したジャーザの頭に勢いよく二十二号が頭突きを食らわせ、ジャーザは青空を仰ぐように倒れ込んだ。

 

倒れ込んだジャーザの口に炎剣が振り下ろされ突き刺さり、地面に縫い付けられる。

炎剣の鍔が展開し、六本に展開。

同時に、鳩尾を踏み抜くばかりの勢いで踏みつけた二十二号の頭部クロスホーンも同じく展開し、六本角を見せつける。

この現場を上空から見る者が居れば、倒れ込むジャーザの背後、踏みつける二十二号の足を中心に輝く六本角の紋章が広がり、再び二十二号の脚部へと収束していく姿を見ることができただろう。

 

死ね(ギベ)

 

頭部を中心に爆炎が吹き上がり、踏みつけられた腹部はプレス機にでも掛けられたかのように一瞬で圧縮され、破裂。

後に残るのは、首のない鳩尾から上、臍から下だけになったジャーザの死体。

二十二号はジャーザに掴まれた首を摩りながら、頭部のあったところから引き抜いた剣をベルトに突き立て、破壊。

しゃがみ込み、下半身の断面へと手を伸ばし……。

 

「待て!」

 

「……」

 

銃を突きつけ静止の声をかける一条へとゆっくりと顔を向け、そのままジャーザの下腹部へと手を伸ばした。

諸々の、人間のそれとあまり変わらない臓物を赤熱する手で掻き分け、何かを探す様に弄る二十二号。

血と臓物と内容物の焦げる臭いと、眼の前で繰り広げられている光景に眉を顰める一条が再び口を開く。

 

「お前の……君の目的は何だ!」

 

「目的、ですか」

 

人の内臓を掻き混ぜながら出すべきではない、将来の目的を聞かれた学生の様な軽く悩む声。

一条もまた、二十二号の行いにある程度の理解があった。

頭部を潰す、何かを、恐らくは未確認や五代の持つ力の源となる何かを抉り出し持ち去る。

そういった理由の分からない行為を除けば、二十二号が巻き込まれた市民への対応は、それなりに理性と社会道徳のある人間の振る舞いだからだ。

だが、それだけだ。

少なくとも、二十二号の振る舞いの全てを肯定はできない。

殺し方が特殊なのは、周囲への被害を減らす意味もあるのだろう。

それは分かる。

だが、二十二号の殺し方は数を重ねる毎に常軌を逸したものへと変わりつつある。

異質だ。

理解できる部分があるだけに。

何故、という疑問が余りにも強くまとわりつく。

 

「平和に、生きること」

 

「何?」

 

しゃがみ込んでいた二十二号が、腹部から焦げた肉塊に包まれた何かを引きずり出し、立ち上がりながら天に掲げた。

手の中の何かを太陽に透かす様に、天を仰ぐように、トロフィーを天に見せつけるようにしながら。

手を伝い、血が体に溢れる事も厭わず。

ぽたり、ぽたりと伝う赤い液に顔を濡らしながら。

 

「命の危機に怯えず、隣人を疑う事無く、穏やかで平穏な生を過ごす事」

 

「なら、何故」

 

「必要な事だからです。全てが」

 

穏やかですらある声。

一条は、この様な声で話す人間を知っている。

或いは熱心な宗教家。

或いは熱狂的な思想犯。

一般的には理解できない、曲がらない何かを心の中に備えてしまった人間のそれ。

 

「後、二体。それでゲリザギバスゲゲルは終わり、究極の闇を齎すもの……ダグバが姿を表します」

 

「……それを伝えて、どうする」

 

「五代さんへとお伝え下さい。凄まじき戦士の力が必要な時が来ると。そして、あなた方も、できる限りの用意を」

 

ひょう、と、二十二号がその場から跳び去り、高層ビルを飛び移りながら遠ざかっていく。

遠ざかるその後姿を、一条は苦々しい表情で見送った。

 

 

 

 

 




☆この後ヒロインを伴って昼飯を食べに行くマン
焼き肉か築地行くか迷いに迷ったりした
グロンギは嫌いだし東京に住むのは絶対やだけどいろんなお店があるので、殺した後や前に時間の余裕があると少し嬉しくなって散財してしまう
株やら数字系のクジやらで金はあるねん金は、平和は無いけど
殺し方が常軌を逸してるとか言われるけど普通に殺せるなら普通に殺しているので殺し方に問題があるのは全部強化され続けるグロンギが悪いので一切反省はしない
地味に一年以上度々モーフィングパワーを使ってランダムポップオルフェノクを始末していたりしたのでモーフィングパワーの扱いは達者
なんやかや帰りに東京観光をする間に色々お土産が増えてしまう
さして親しくない女子へのプレゼントは消え物、できれば気軽に食べれる既成品のお菓子がいいけど、ちょっとしたストラップくらいなら別にいいかなー、とか思ったりする
自覚は薄いけど、最近は戦いで生まれるストレスも少なくなってきたよ!
きっと神様がくれたご褒美なんやなって……

☆ヒロインちゃん
だいたいお出かけの時はいっつも主人公に手を引かれてるあたりにあざとさがある
記憶回りがどうなってるかは不明だけど、非グロンギでも自分から戦いに向かい続ける姿を見れば少なからず疑問に思うぞ
疑問に思うと共に心配したりすれば立派なリントのヒロインだ!
なお
ちな、水着を選んでくれたり浜辺での遊びを教えて付き合ってくれたクラスメイトの人にも多少反応したりする
こう……リハビリの成果が、なあ、出たんじゃあねぇかなぁって、そう思うしょ……?

☆五代さん
白いトップムセギジャジャの視線を気にしすぎて二十二号がゆっくりと水面から離れていることにもそんなに気を裂けなかった
公式PVを見たお蔭で凄まじき戦士の実態を知って、ダグバを相手にどうするか迷っていたりするけど、そういう迷いがニチアサのヒーローには必要なのだ

☆OLさん
掲示板での犯行予告とか今やったらBPOとかがギャーギャーうるさくなる感じのゲゲルを遂行しようとした
因みに海が煮られていなければその場を逃れてゲゲル完遂を目指したし、ぜったいそっちの方が勝率はあった
予告ゲゲルはいいけど一軒一軒終わる毎に新たに予告した方が成功率は上がったのでは……?
ベルト狙いも計算に入れるガチ勢
なおベルト狙いは対策済みだったのでそこが隙になって殺された
ベルト狙いじゃなくて首を刎ねるなりなんなり狙った方が勝率は高かった疑い
巨乳メガネOLとか盛り沢山なのにすげぇ纏まってる欲張りセット、なおただのコスプレ

☆一条さん
眼の前で五代さんが蹴り飛ばされてきたのも、戦いに巻き込まない為なんだろうなと前向きに解釈して受け入れたりできるけど、それでもお前のやり口あんまりじゃない?
とか思って話してみたらもうだいぶヤバイヤツになりつつあるんじゃないかという疑いを深めてしまった
警察も着々と用意は進めている
何時迄もガヤでは終わらないのがクウガ警察なのだ

☆貴賓席の白い人
現場主義なので立ち見でも気にせず楽しく観戦してしまえるのだ
序盤で退場してしまった五代さんの為にテコ入れ企画を考えたりもする有能
そのへんは多分次の次の話で



どんなに伸ばしても後三話くらいかなクウガ編
エピローグとかも換算したらどうなるか知らんけど
アギト編はクウガ編ほど戦わない可能性があるけど許してね
このSSは平成仮面ライダーオリ主残酷絵巻ではなく平成一期を振り返ったりするのが目的な気がするのでそういう事もあるある
どうにかこいつ東京に行かせらんないかなぁ……

次回、VS閣下



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12 激闘、無情にも

時折、ふと忘れがちになってしまうのだが、俺は世間一般で言う高校生に分類される。

決してグロンギの処刑人でもなければグロンギの敵対種族のハンターでもないしプレデターでも無ければ未確認生命体四号を元に開発された軍の生物兵器という訳でもない。

どれだけ危険な力を所持していようが、どれだけグロンギやオルフェノクを相手に殺人行為を繰り返そうが、少なくとも身バレしない限り、俺はこの日本国におけるいたいけな守られるべき一市民にして一男子高校生に過ぎない。

 

だから、この世界の危険性を知ってからの生活一つ見てみても、意外な程に日常生活の割合は大きい。

当然だろう。

朝起きて、少し早起きして健康体操よろしく拳法の型の練習をしようと、走り込みをしようと、大体八時間程は学校に拘束されて一般的高等教育を受ける以上、最低でも一日の三分の一は学生としての活動を行う事になる。

そして、この一日の三分の一という数値は、通常の時間割を熟す上でのものだ。

 

学校で行われるのは学業だけではない。

どういった意味を持って行うかは学校ごとに違うかもしれないが、学校では各種学業にそれほど関わりのないイベントも行われる。

例えば合唱コンクールだとか、例えば球技大会だとか、例えば体育祭だとか。

そして、その中でも最も難儀なのが、文化祭である。

二番目に難儀なのは合唱コンクールだったが、これは意外と皆やる気がそれ程無かったので練習に時間を取られる事は無かった。

だが、文化祭となるとそうは行かない。

 

学校側としてはそれ程重要視しないイベントではあるのだろうが、逆に学生側からすると奇妙な程にワクワクしてしまったりするものだ。

俺もワクワクしたりしたかった。

いや、諸々の事情を抜きにすれば学園祭に限らず祭りの雰囲気は好きなのだが、こればかりはタイミングが悪い。

別に、時期的に文化祭本番に参加できない、という訳ではない。

文化祭の時期にはゴ・バベル・ダがゲゲルを行う予定があるが、このゲゲルは池袋地下街で行われ、基本的に犠牲になるのは一般人のみ、時間を鑑みてもその時間帯に父さんが偶然その場に居合わせて殺される可能性は非常に低い。

それ以外の被害で言えば五代さんが焼く前のパイ生地よろしくピケされてしまう程度のもの、そんなものは戦闘している最中にでも治るのでカウントはしない。

 

そして、バベルの戦い方は極めてシンプルなもので、戦う上での参考にはならない。

頑健であり怪力である。

それを極めたタンク戦法は、予めどれほど頑強でどれほどの怪力を持っているかを知っていれば如何様にでも対処できる。

彼の想定するザギバスゲゲルは極めて単純なものだ。

五代さんが行う対ダグバと、展開はそう変わらないだろう。

特殊能力を全て封じ合い、殴り合う。

なので、ダグバの攻撃に耐えられる強い体と、ダグバの再生能力を上回り殺害できる強い攻撃力を用意したのだ。

頑健四つクリティカル戦法とでも言うべきか。

悪くない賭けだと思う。

悪くない程度の確率の賭けに命をベッドできるかは疑問だが。

 

が、そもそもこの戦い、ダグバが単純に立ち止まっての殴り合いをしてくれる事を前提としているのが不味い。

そもそもザギバスゲゲルに行く前に、特殊能力封じもできない状態でそれなりに変幻自在な戦法を持つクウガと戦う事はあまり想定していないのだ。

勿論、それは頑健さと力の強さに対する強烈な自負があればこそだと思われるが。

 

ともかく、バベルのゲゲルにはノータッチなので、本番には問題なく関われる。

が、本番に向けての準備にこそ問題があった。

放課後、クラス全員で残って文化祭の準備を行わなければならないのだ。

つまり、早く帰れない。

運が悪ければ、家にジルと母さんが二人きり、という状況が長時間生まれてしまうのだ。

これは不味い。

 

最近、なんとなぁく絆されてきてしまっている様な気もするが、それでもジルに危険性が無いと決まった訳ではない。

唐突にグロンギとしての記憶や狩猟本能や凶暴性を取り戻す可能性を無視するのは間抜けが過ぎるし、凶暴性が無いとしてもオルフェノクとしての力の発現が本人の意思に関係なく周囲に危害を加えてしまうものである可能性だって十分にある。

だから、クラスメイトから反感を買うのを覚悟で、ジルの介助を理由に文化祭の準備を早めに切り上げて帰るべきか、と、そう思っていたのだが。

ジルが、学校に来るようになったのだ。

 

勿論、学校に通うようになった、という話ではない。

法律的には通わなければならない年齢である可能性もあるのだが、母さんが役所の人とあれこれ話し合いをしている間にそれはお流れになった。

不思議な話だ。

 

それはともかく、文化祭の出し物が決まり、準備のための居残りが始まったその日に、ジルが学校まで歩いてやってきたのだ。

クラスメイトに謝り倒して早めに帰ろうとして、校門を通り過ぎた辺りでジルがちょこんと座り込んでいたのを見た時は口から心臓が飛び出るところだった。飛び出ても死なないが。

確かに、順調に体力も付いてきたというか、復活してきた今のジルならば、休みながらであればギリギリ学校まで来れないでもない。

それに、一応家の鍵の予備の場所も教えてはあった。

だが、まさか自主的に学校に来るとは思いもしなかったのだから驚くのも仕方がない。

 

結局、学校まで来るのにスタミナを使い果たしたジルを休ませる為にもその日は文化祭の準備を手伝う事になった。

が、問題はその後だ。

ジルは何故か、次の日も学校までやって来たのである。

理由を問い質せば、どうにも、学園祭の準備を気兼ねなくして貰うため、という事、のようで。

自分を家に放置できないから早く帰らないといけないなら、自分が学校で大人しく待っていれば大丈夫だろう、という事らしい。

短い単語の羅列、しかも読唇術を使って読み取ったものだが、間違いはないだろう。

 

そしてこの話(勿論ジルはまだ声が出ないので読唇術を使ったものだが)を脇で聞いていたクラスメイト数名が、なんだかこう、美談の様に感じてしまったようで。

結局、文化祭までの間であれば、ジルにクラスで見学できるように、学校側に提案してしまった。

流石に断るだろう、と思っていたのだが……母さんが、少し学校側と電話をしたら、話が通ってしまったのだ。

 

……確かに、家に一人で置いておくのも母さんが危険だから危ない。

だけど、こう、スムーズに話が通り過ぎではないだろうか。

母さんはただの主婦の筈だ。

何故ここまで話の通りが良いのだろうか。

この世界で権力がある家は碌な事にならない気がするのでとても気になるのだが。

素晴らしき青空の会とかそういう金持ち方面と関わりがあるのか。

家の中は既に隅々まで調べてあるのだけど、俺の探索術よりも母さんの隠蔽術の方が優れていたのか。

疑問は尽きない。

 

疑問は尽きないが、これで文化祭に関する問題はほぼ解決した。

無論、ジルが学校に歩いてくるという事で、途中で力尽きて『もっと体が頑丈なら』とか、『歩くの疲れる、空を飛べればいいのに』みたいな具合にオルフェノク化の切っ掛けが生える危険性があるので、手放しにはできなかった。

だが、そこは俺が放課後少しばかり全力ダッシュで学校に来る途中のジルを迎えに行く事で解決。

放課後の教室の隅っこでクラスメイト達にちょくちょくちょっかいを掛けられながらもジルは大人しくしており、うまい具合に監視と学校行事の手伝いを両立する事ができたのは幸運だろう。

ちょくちょくトイレに行ったりもしていたが、少なくとも学内で誰かが死んだ、消えたという話は今の所出ていないので、恐らく問題は起きていない、筈だ。

出ていても、俺が知らんヤツで、表沙汰になっていないなら問題はない。

 

結局、学園祭の準備は滞りなく完了した。

クラス会議では演劇とお化け屋敷のどちらにするか、かなりの接戦だったのだが、未確認を題材にしたヒーローショーは今の御時世いくらなんでも不謹慎過ぎる、という事で、お化け屋敷に決定。

未練がましくお化けに混ざって新聞に乗っていた写真を元に未確認人形とか作って吊り下げられていたのは良いのだろうか。

あと未確認の生首の口の中にロウソクを入れてランタンの様に手に下げている二十二号の人形作ったヤツの顔は覚えた。

後日ジュースを奢ってやろう。

作るのにかなりの労力を費やしただろうから、ユンケル黄帝液を一リットル一気飲みさせてあげようと思う。遠慮はさせない。

 

まぁ、何はともあれ。

 

「無事に終わって良かった」

 

閉会式も終わり、通常の下校時刻を少し過ぎた辺りで、教室の片付けなども含めて全て完了。

後は遊び疲れて保健室のベッドを借りて休んでいるジルを回収して帰るだけ。

 

「あ、セバス君も今帰り?」

 

というところで、後ろ手にカバンを下げたクラスメイトの人が声を掛けてきた。

勿論、唯のクラスメイトの人ではない。

ジルの水着を見繕ってくれたり勉強を教えてくれたりする人。

つまり、人の良いクラスメイトの人だ。

 

「ああ、そっちは……集まって打ち上げだっけ?」

 

クラスの中でも特にやることもなく暇な……コミュ力の強い連中は、これから帰り道のファミレスで打ち上げを行うとか行わないとかいう話だったか。

これが後夜祭とかがある系の文化祭だったなら、キャンプファイヤーを遠目に青春を謳歌したりするのだろうが、それが無い為の自主的な青春活動だろう。

輝かしいと思う。

全校生徒の中に何%オルフェノクやワームが混じっているかを考えて、その謎の打ち上げがどれくらいの危険度かをちょっとだけ計算してしまう俺とは比べ物にならないほど輝いているのではないだろうか。

これ、ワームファミレス……!(メインテーマAメロをバックに) みたいな展開にならない事を遠く自宅から祈っている。

オルフェノクが居合わせて唐突に店内皆殺しにしたりもしないようにも神以外のなにかに祈っている。

俺も誘われはしたのだが、ゴ・ガドル・バ戦へ向けての調整を進めないといけないからパスした。

疲れて寝ちゃっているジルを伴って行くわけにもいかないし。

 

「いやー、私も参加したかったんだけどさ。ちょっと用事があるから参加できないんだよね」

 

はにかむように笑いながら後頭部を掻くクラスメイトの人。

この人はジルとそれなりに会話が可能なレベルでコミュ力強者なので、少し意外に感じる。

ああでも、コミュ力があるのと何時も誰かとつるんでいるかどうかってのは関係があまり無いのか。

実際、打ち上げに行くのはクラスの三分の一か四分の一くらいみたいだし、そういう事もあるのだろう。

事情は人それぞれにある。

 

「そっか、まぁ、そろそろ期末もあるしなぁ」

 

「う……やなこと思い出させないでよ」

 

隣に並び歩くクラスメイトの人がうめき声と共に眉を顰める。

 

「別に成績悪くないよね?」

 

「別に勉強が好きって訳でもないんだって、わかるでしょ」

 

「わからんでもない」

 

二学期期末試験。

これがまた絶妙なタイミングで行われる。

そう、ガドルのゲゲルが行われる日の前日までが期末試験の実施日なのだ。

別に、期末試験の為に特別勉強時間を増やさなければならない、という訳でもないし、期末試験を終えた次の日は休日になるので、出席日数を考えると都合が良くはあるのだが。

……ガドル戦の前は、じっくりと仕上げを行いたかった。

ゲゲルの開始時刻を考えると、前日の夜にもそれほど遅くまでは鍛錬ができない。

寝不足からの集中力の欠如で殺されました、なんて、実際この体がどれほどの疲労で能力を低下させるかは判明していないが、可能な限り避けたい終わりだ。

 

「じっくり準備したいもんだ」

 

試験にしろ、戦いにしろ。

準備の有る無しは勝敗も生死も分けてしまう。

腕組みをし頷いてそんな事を考えていると、クラスメイトの人が腰を折り、下から見上げるようにしながら口を開いた。

 

「……じゃあさ、勉強会とかしない?」

 

「勉強会?」

 

なにそれ、凄く、こう、荒事とは無縁そうな、血生臭さの欠片もない爽やかなイベント……。

しかもそれを然程善人でも無く気配りが足りているかも少し不安な俺に提案してくる?

女神か何かかな?

ダメだな、女神とか、この世界で神扱いとかクラスメイトの人に失礼過ぎるわ。

シンプルに言うなら、この人のいいクラスメイトの人は、とても人のいいクラスメイトの人である事が判明してしまったな……。

あ、でもこのとても人のいいクラスメイトの人がオルフェノクかワームで、仲間を増やす機会を伺っている可能性もあるのか。

人数にもよるが……いや、来年には多数を相手にする場面も出てくるから、その場合でも練習にはなる。

受けない理由が無い。

 

「そうそう、セバス君ちでやれば、ジルちゃんの面倒も見ながらできるし」

 

「気配り上手かよ」

 

「そこまで言うほどじゃないけど……」

 

照れるように笑うクラスメイトの人。

テスト勉強を改めてする必要があるかどうかはともかくとして、ちょっと憧れる響きではある。

しかし、実利としてはそうでもないが、このクラスメイトの人には精神的に色々と助けてもらって申し訳ない。

いや、申し訳ない、と考えるのは後ろ向きだな。

有り難い話だ。

……そうだ。

 

「ちょっと待った」

 

立ち止まり、カバンの中を漁る。

首を傾げながら立ち止まったクラスメイトの人に、少し前に東京で買いすぎたお土産の一つを手渡す。

 

「はいこれ」

 

「これは……?」

 

「アロマストラップ。リラックスできる香り入り」

 

土産を理由に衝動買いした品の一つ。

恐らく一年持たずに消えるんじゃないかなぁと思わせる、オシャレだけどありふれたデザインの小物屋さんで見つけて一目惚れしてしまったのだ。

小さな銀の円筒に香料の入ったちょっとしたストラップなのだが、簡易な彫り物がワンポイントでされていて気持ちオシャレな気がしてしまったのだ。

実際、買ったは良いが男向けのデザインでなし、学生鞄に付けるのも何か違うかなと思い、どうするか扱いに困っていたのだが……。

 

「……いいの?」

 

「ん。色々世話になってるし、その御礼って事で」

 

元々、適当な誰かに押し付けようと思って鞄に入れっぱなしだったものだ。

受け取ってくれるならあの潰れそうな店の良い供養にもなるだろう。

 

「ありがと! 大切にするね!」

 

廊下の窓から差し込む夕日に照らされて赤く染まるクラスメイトの人の、その人柄に相応しい太陽の様な笑顔に、釣られて此方も笑ってしまった。

こういう良い人が、こういう良い笑顔を浮かべ続けていられるように、この世界ももう少し平和になればいいのになぁ、と、少しだけ思う。

頑張れ仮面ライダー、頑張れ今年の警察機構の方々。

全国の治安を守るために、基本性能も良く拡張性も高くバージョンアップがしやすいパワードスーツとか大量導入するととても良いぞ。

俺は手一杯だから、その分他のみんながんばれ……!

 

「あ、そういえばセバス君って携帯持ってる? 番号交換しない?」

 

「持ってるけど、たまに持ち歩かずに出かける時とかあるからなぁ」

 

「携帯の意味無いよ?!」

 

「いやぁ……面目ない」

 

身バレの原因になるものは、あんまり持ち歩きたくない。

口にすると何それと言われるので言わないが。

そんな話をしながら、保健室でくーくー寝息を立てて熟睡していたジルを回収し、途中まで一緒に帰ったりしたのだった。

 

こういう楽しい日常をなくさない為にも。

警察の人やライダーの人に頑張ってもらうのは当然として。

俺も、俺ができる範囲の事を、頑張って行こう。

さしあたって、対グロンギ。

ゲリザギバスゲゲル最後のムセギジャジャ。

ゴ・ガドル・バ。

こいつを殺して、まずはこの二千年を無事に越えていこう。

 

―――――――――――――――――――

 

東京都多摩市、西多摩警察署前。

十二月は十六日の土曜日、昼を目前にした十一時四分。

数分前まで銃声が鳴り響いていた警察署内部から、リントの戦士を殺し終えたゴ・ガドル・バが堂々と正面玄関から歩き去る足音だけが響く。

 

署内に居た男性の警察官は全滅。

女性の警察官は、立ち向かった者も殺される事は無かったとはいえ、ガドルを追う事ができない程度には負傷していた。

新たに得た雷の力で、戦うリントの男の戦士のみを狙う……つまり男性警察官のみを狙うゲゲルを行う事にしたガドルではあったが、予想していた通りの手応えの無さに僅かな落胆を抱いていた。

 

リントの戦士の強さは、クウガの様な例外でも無ければ、こういった不意を打った真正面からの戦いではそう発揮されるものではない。

勿論、ガドル自身が強くなりすぎたというのも一因ではあるが。

こうして、不意を打って警戒していない場面で攻め込まれれば、並のゲゲルとそう結果は変わらない。

理解してはいたのだが、何処かで期待していたのかもしれない。

クウガだけではない。

こうした並み居るリントの戦士の中にも、自分達に、自らと戦い得る戦士が居るのではないか、と。

 

納得と僅かな落胆を胸に、ガドルは堂々と正面玄関から外に出る。

最早人間体に戻る事すらせず、ゆっくりと歩みを進める。

リントの男の戦士を殺すという彼のゲゲルの性質上、警察は彼のゲゲルのルールを理解したとしてもゲゲルの標的を逃がす事はできない。

急ぐ必要すら無く、後は寄ってくる獲物を殺し続けるだけでも良いが、それでも彼は次の狩場へと足を進める。

 

リントの戦士は賢い。

やもすれば、思いもよらない戦法を用意し待ち構えているかもしれない。

僅かな期待を胸に西多摩署から離れていくガドル。

その姿に、僅かに影が指す。

ふとガドルが上を見上げた。

空は雲の隙間から僅かに青空すら見える。

雨雲も見えない。

ガドルの目には、雨雲ではなく。

雨霰の如く降り注ぐ、視界を埋め尽くす程の無数の長大な金属針。

 

ガドルの反応は速い。

手の中に既に備えていた牙状の装飾品を天に掲げるのと、その装飾品が堅牢な盾に変わるのはほぼ同時。

だが、僅かにタイムラグはあり、ガドルの体に金属針が突き刺さる。

回転しながら肉を抉るように潜り込んだ金属針を、降り注ぎ続ける金属針の雨を盾で防ぎながら引き抜こうとし、その動きに耐えきれずに金属針があっさりと折れた。

超回復能力によって、内側から再生する肉に押し出される針は、その過程で針全体に無数に仕込まれた細かく荒い無数の返しにより押し出される速度を僅かに遅滞させ、ガドルに僅かな痛痒を覚えさせる。

 

二十二号か。

ガドルが歪みようのない口元の代わりに内心で喜色を浮かべる。

自分達に近い、もう一人のクウガ。

正面からでも自分達と戦える例外の一人。

まるで強いムセギジャジャを相手にしたゲゲルでも行っているかの如く獲物を選び続けてきた戦士。

そんな戦士が、自分を相手に工夫を凝らして殺しに来ている。

その誇らしい事実に喜びと戦意を高め、走り出す。

 

殺すための工夫というのなら、この針の雨は命を奪う一手ではないだろう。

受けることすら想定した一手である筈だ。

金属針に削り取られ既に原型を留めていない盾を再構成する手間すら惜しみ、その場から走り離れる。

盾に空いた穴から届いた幾らかの金属針に貫かれながら、ガドルは数秒前まで自分が居た場所に何か大きな質量が激突し、爆発炎上するのを音と衝撃と熱で確認。

盾を放棄し目の色を緑に変え、体を作り変える。

 

射撃体へと変じ盾の残骸を弩へと変化させ、数万倍に増幅させた感覚で襲撃者の位置を割り出し、空へ向けて圧縮空気の矢を放つ。

圧縮空気の矢は過たず襲撃者を、襲撃者が乗っていた巨大な鏃状の金属殻を射抜く。

殻がバラバラに砕け散り、しかし内部からは何も出てこない。

 

弩を構えたままのガドルの背後に、暴風を纏う黒い戦士が降り立つ。

肥大化した両腕を持つその戦士は、正しく警察署でのゲゲルを終えたガドルを待ち伏せし襲撃した犯人でもある二十二号。

既に手にはガドルと同じ様に金で彩られた黒い弩を構えている。

 

射撃。

圧縮空気と封印エネルギーの矢がガドルの背中に放たれ、しかし突如としてガドルの背に現れた重厚な盾により防がれる。

既に幾度か二十二号の戦いを観戦していたガドルが予め背に吊るしていた装飾を盾に変じさせたのだ。

連射により瞬く間に砕け散る盾。

しかしガドルの目は既に青く、砕け散る盾を置き去りにその場を離れると共に振り返り、二十二号を正面に捉えて再び目を紫に。

盾と剣を構え、弩を向ける二十二号を正面に見据える。

 

射撃体から俊敏体へ、そして剛力体への切り替えは瞬時に行われた。

力の切り替えのスムーズさでジャーザを下した二十二号を見て、この短い期間に鍛え直した成果だった。

切り替えの瞬間を隙として狙われる危険は限りなく少ない。

 

二十二号が弩を構えると、ガドルは盾を構える。

威力は既に理解した。

正面から受けるならともかく、逸らすようにして受ければ受け続ける事も難しくはない。

それを双方が無言のままに理解していた。

 

ガドルもまた、一人のグロンギの戦士として究極の闇を目指し、ンを目指し、ダグバを殺し自らが勝利者となることを目標にして戦っている。

だが、その志を叶えるための努力の質が違う。

鍛錬を怠らず、必要十分と切り捨てず。

自らを極限まで、その先まで高め続ける事で、結果的にダグバを殺す。

故に、油断も無く、相手を低くも見ない。

 

二十二号の両肩部に鎧が形成され、ベルトのバックル、オルタリングから赤金の大剣が引き摺り出される。

常のクウガが使う紫の剣よりも、ガドルが構える剣よりも遥かに長大な剣。

それを両手で構え、ガドルと向き合う。

 

じり、と、互いが僅かに軸をずらしながら間合いを測り、先ずは二十二号が距離を詰めた。

一歩、二歩。

重厚な鎧姿に見合わぬ俊敏さで互いの距離を縮めた二十二号。

フェイントすら無い正面切っての踏み込み。

大剣の切れ味か腕力にそれ程の自信があるのか、盾を構えるガドル相手に両手持ちの大剣を袈裟懸けに振り下ろす。

対するガドルは構えていた盾を僅かに掲げる事で大剣を待ち構え、片手の剣で突きを放つ。

がら空きの胴を貫かんと踏み込み──かけたところを、背後に下がる。

それは閃きか戦士としての経験か、或いは二十二号の戦いを幾度か観戦したが故の推測か。

 

開いた距離は大剣の間合いの中。

だが、本来なら直撃する筈の大剣はガドルの鼻先を掠めるように空を切る。

いや、鼻先を掠めたのは大剣の切っ先ではない。

鋭さのない刃物の背、分厚い峰。

ガドルの持つ剣程も有る峰の正体は大鎌の様に曲がった大剣の背。

ショーテルよりもより極端に、中程から直角に近くなる程湾曲した刃は、そのまま盾で受けようものなら、盾を潜り抜けてガドルの背や首を貫いていた事だろう。

振り下ろす瞬間まではガドルも確認していた。

その時点では未だ湾曲のない大剣だった事を鑑みれば、振り下ろす最中、ガドルが盾を構え、刃を盾の向こう、視界の外に置いた瞬間に変化させたのだろう。

 

驚異的な変化速度。

そしてブレのない大鎌の軌道は、それが付け焼き刃の戦法でなく、この場で使うまでに幾度となく練習を繰り返した一撃だという事がわかる。

敬意すら感じる程に研ぎ澄まされた殺意の一撃。

 

返礼は同じく殺意で返される。

二十二号が大曲剣を振り下ろし切るよりも早く、ガドルが渾身の突きを放つ。

体重を乗せるというよりも、全身のバネを使っての跳ねるような突き。

剣の長さからギリギリで届かない、などという事もない。

神速の突きに加え、紫電を纏った直剣は絞るようにその形を刺突剣へと変え、刃を細く、そして長く。

狙うは頭部。

多くの二十二号の犠牲者が失ってきた頭部目掛け放たれるそれは、怨恨ではなくむしろ称賛すら込められた殺意の一撃。

技の模倣は相手の力を認めるからこそ。

遊ばず、殺せる時に殺す、逃さない。

余裕を持って戦うよりも重要な意志、迷いのない殺意の込められた刺突。

 

バンッ、と、剣先が見えない何かを貫き、衝撃波と共に二十二号の顔面を強襲。

二十二号の淡く光るコンパウンドアイズに剣先が潜り込み、結晶状の破片が体液と共に僅かに撒き散らされ、釣られるように二十二号の首が捻りあげられる。

左のコンパウンドアイズを抉り出す様に斬り下ろされる剣先。

ガドルの意図しない軌道。

振り下ろさずにそのまま進むだけだった筈の剣先は不可視の力によって外側に逸らされたのだ。

 

さもありなん。

二十二号の同種、他のアギトがどうかはいざ知らず、二十二号にとっての『超』能力の源泉は誕生時より自己開発を繰り返し、常人のそれを遥かに上回る程に複雑な構造に更新された脳細胞にある。

自らの継続を阻まんとする驚異に対し、思考よりも早く自己防衛機能としての念動力が発動するのは当然の理屈であった。

 

剣先は未だ頭部の脇に、しかし刺突の勢いを残し、ガドルの動きは二十二号よりワンテンポ遅れる。

オルタリングより柄が飛び出す。

ジャーザを仕留めたパターン。

ガドルにとっては既知の動き。

故に、下腹部に膝を叩き込む様にオルタリングから伸びてきた柄を抑え込む。

 

「ブバゲン」

 

「抜けるんだよ」

 

振り下ろし地面に突き刺さっていた大曲剣から二十二号が再び柄の下半分だけを引き抜く。

モーフィングパワーにより大曲剣を鞘に、内部に新たな刀身を形成したのだ。

ハンドリングで新たな刃を逆手に持ち、がら空きのガドルの脇腹に刃を突き刺す。

致命傷に至らない刺突、何かを察したガドルは盾の側面で二十二号を殴り飛ばす。

離れる直前、柄から手を放した二十二号の右手刀がカウンター気味に盾を斬りつけ、融解。

互いに転がる様に距離を取る。

二十二号はえぐり取られた左目に手を当て、ガドルは短刀の押し込まれた脇腹に手を当て、数秒。

二十二号の目が修復を終えるのと、ガドルが自らの脇腹を素手で握り潰し、内部に侵入していた刀身を抉り出すのはほぼ同時。

 

「ジョブゾ……よくぞここまで思い付く」

 

称賛の言葉をリントの言葉で言い直したのは、相手が『リントの戦士』である事への最大級の敬意からだった。

突きこまれた一見して無害な刀身。

それはモーフィングパワーを帯びており、抉り出された刀身は未だ土を潜る虫の如き変形を繰り返している。

無害な一撃と思い放置していれば、ゲブロンから伸びる神経を断絶され、絶命とまでは行かないまでも身体能力を大きく制限されていた筈だ。

趣味嗜好からでなく、相手を殺すため、相手を殺せるようにするための思考、試行錯誤、工夫。

自らを高めることだけに終止するグロンギの戦士とはまた異なる、リントの戦士の戦い方。

グロンギと、自分達と同じ力を得てなお、リントとしての精神性を失っていない証でもあり、双方の力を得て理解し、融合させた稀有な例。

 

「通じなきゃ、意味が無い」

 

吐き捨てるように答える二十二号。

抜き損ねたままだった柄がオルタリングの中に戻っていく。

二十二号の体が放電し、そのシルエットを歪ませる。

同じく、ガドルの体も。

金の外殻が更なる放電により、姿を変える。

その姿はまるで、グロンギの現トップのそれを彷彿とさせる白へ。

ゴ・ガドル・バ。

電撃体改め、驚愕体。

二度に渡る原子力発電所襲撃により生み出された、ガドルの新たなる力。

 

「お前たちの、お前の生み出した力で殺してやる」

 

走り出す。

踏み出す一歩一歩が地面を砕き、放電がアスファルトを溶かす。

対し、二十二号は変化を終えずに待ち構えたまま。

更に激しくなる放電。

呼応する様に展開した頭部のクロスホーンは溶接されたようにその可動部を固定。

放電に溶かされるように崩れたシルエットが、緩やかな速度で全身に鋭角を帯びていく。

緩やかな変化を終えないままに、組む腕の型は花開く瞬間の桜の蕾。

 

ガドルの跳躍。

回転を加えた跳躍に稲妻を帯びた蹴撃。

ガドルの出せる最大攻撃力。

それは二十二号がこれまで見せてきたどの攻撃すら食い破り、二十二号の命を奪うに足りる一撃だ。

 

迫る稲妻の一撃に、二十二号が自ら受け入れる様に拳を開き、花開くように展開した腕が、鋭い手刀を形作った。

守りを考えない、ただ一本の鋭い桜の枝の如く伸びた二十二号の腕に、落雷の如きガドルの蹴りが突き刺さる。

一歩、ただそれだけを踏み出した二十二号の手刀が、稲妻と回転を帯びたガドルの蹴撃を、脚を、張り詰めた布を裂くように切り裂いていく。

ただ立つだけの桜木が、降り注ぐ稲妻を裂き悠然と咲き誇るが如き奇跡。

 

ガドルが知り、しかし、同時に知らなかった事実として。

ガメゴを殺した一撃は、本来相手の必殺の一撃に合わせ、全てを一点の攻撃にのみ乗せて放たれる捨て身の一撃。

これぞ、赤心少林拳黒沼流奥義、桜花の型。

その真の姿である。

 

ガドルは自らの飛び蹴りの勢いのまま、脚から真っ二つに切り裂かれた。

後に残るのは、常のクウガにはありえない黒い細身の、しかし無数の鋭角を備えた、リントの文化圏においてその存在を許されなかった、凄まじき戦士。

その姿は霞の様に消え、後には黒い二十二号のみが残る。

展開したまま戻らない六本角を気にもせず、真っ二つに裂けたガドルの死体に手を向ける。

掌を握り込む事で残された死体がぐしゃりと潰れ、中から飛び出した一つの石が二十二号の手の中に独りでに収まった。

 

未だ警察の応援は来ない。

周囲にあるのは、戦闘の被害で砕けた路面、爆発痕、ガドルの死体。

二十二号が何かをしようとも、見咎めるものも止める者も居ない。

それを確認した二十二号は、取り出したばかりのガドルのゲブロンを手の中で弄びながら、何かを確認する様に西多摩署の中へと軽い足取りで踏み込んでいった。

 

―――――――――――――――――――

 

同日、都内某所。

オフィス街を望むビルの屋上で、二人の人影が向かい合っていた。

一人は黒いドレスに赤いケープを纏った、ウェーブ掛かった髪を靡かせる、白い薔薇のタトゥーを額に刻んだ美女。

もう一人は、白いシャツに白いズボン、全身を白で覆い尽くした黒髪の美青年。

 

やっぱり(・・・・)、ガドルが殺されたね」

 

嬉しそうに笑う白い青年。

彼の中で、ほんの少し前までは優勝候補であったガドルの死は、既に悲しむ事も惜しむことも無い些細なものとなっていた。

いや、果たして白い青年の心の中に誰かの死を悲しむという機微が残っているのか。

ただ、その表情は昼間に行われた、二十二号とガドルの戦いを思い返し、純粋な期待から来る笑みだけが浮かんでいる。

 

「どちらと戦う」

 

また、それはバラのタトゥーの女にとっても想定内の出来事ではあった。

グロンギとしてリントの戦士に劣る、負けるというのは屈辱とも言える。

だが、この時代のリントは彼等の知るリントとは違った。

ただの獲物でもなく、ただの予備(・・)でもなく、グロンギとは異なる形で戦う種族。

その中の二人、グロンギと同じ力を得たクウガが、ザギバスゲゲルに進む可能性も、当然考慮の内。

 

「やはり、二十二号か」

 

ガドルとの戦いで、僅かに至った。

先代のクウガも、もう一人のこの時代の最初のクウガも見せなかった、リントの側の究極の闇を齎すもの、凄まじき戦士。

ザギバスゲゲルの、究極の闇の目的(・・)を思えば、これほど相応しい相手も居ない。

 

「いや」

 

風が吹く。

青年の髪が風で乱れ、その額に刻まれた白いタトゥーが顕になる。

四本角の戦士。

 

「皆でやろう」

 

笑みが深まる。

 

「究極の闇を、始めるよ」

 

応じるように、バラのタトゥーの女は、薄っすらと笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

 




続く!

☆究極の闇チラ見せ青春鈍感フラグ折らずに保持しつつ回収せずでもゲブロンは徹底的に回収する実はもう勝利の方程式は決まってる太郎マン
人目が無いのも監視カメラの類が無いのも確認した上で散歩先でモーフィングパワーを応用した戦闘法とかも練習してるので小技が増える増える
見たこと無いけど記憶にあるグロンギの技だって吸収するし、この世界には恐らく居ないヤマアラシロイドの針だって真似するし、不意を打って殺すためならマシントルネイダーだって高々度からダイブさせちゃう。なおベースは現地で獲得した盗難白バイの模様
自力で空は飛べないけど風の力で安全に減速したりはできる
剣を振ってる最中に剣の重心が大きく変化しても速度も軌道も変えずに振れる
でも青春フラグには気づかない
心に愛が無ければスーパーヒーローにはなれないんだけどそのへんどうなんだい、どうなんだい!
気付かない分はシチュエーションとタイミングバッチリの適度なプレゼントでフラグを保持する事でバランスを保つ
青春っぽい描写しても、俺はフラグ管理しねぇからよ……
だから、回収するんじゃねぇぞ……
たぶんほっとくと本気で止まらないので何がしかのイベントとか思い出がキーになって止まったりするかもしれない
西多摩署蹴撃前に父親に連絡し、居場所を確認したので西多摩署はある思惑からスルー
※究極の闇はじめました

☆脚部性能とスタミナが半年足らずでかなり回復したヒロインちゃん
ふと思うにこいつを学校に解き放って反応する生徒をチェックしておけば色々参考になるかもしれない
いや別にこいつが反応するからって何かあるわけではないんだけどそこのところどうですか
マスコット役に最適、と打とうとして、マスコット焼くに裂いてき、と出てくる辺り普段の変換がどんなのかを思い起こさせてくれる貴重なヒロイン
最終戦でキーになるぞ!

☆クラスメイトちゃん
いまのとこグロンギ回り含む厄介事には一切関わってない平和の象徴
この子出す場面は学校周りのイベントばかりなので書いててほんわりできますね
用事があるから打ち上げは断った(今の状況がその用事だよ!)
勉強会をする(他の誰かを連れて行くとは言ってない)
夕日で赤く染まる大輪の笑顔(夕日だけで赤いとも言ってない)
実際びっくりするくらい押せ押せ
でも鈍感かそうでないかに関わらずアプローチを積極的に行っているか、普通なら気づけるかと言われると難しい
アナザーヒロインちゃんになれたらいいね
アロマストラップは検索かければそれっぽいのが画像出てくるからそのへん参照
鞄に付ける場合と携帯に付ける場合、地面に投げ出された時に絵になるのはどっちかなって迷う
ぷぷー、がしゃーん。ピーポーピーポー……(トラックと人形と救急車の玩具を利用した突然の擬音多様による幼児モーション)
たのしい(恍惚)
一応こっちも最終戦で鍵になる

☆閣下(故人)
実は最初から金閣下だった
五代さんと二十二号の姿と力の違いを見抜いて原発ハシゴしてアメイジングに
重厚な戦い方をする人だから飛んだり跳ねたりしないんだよ、とか思う人も居るかもしれないけど、ミックスアップという言葉もあるからして
最後は白甲虫フォームという奇跡を見せるも本領発揮した赤心少林拳という二十二号の中では珍しい正面からのガチ技に敗北
だまし討に近い殺され方をしていたこれまでの相手に比べると目を抉ったり奇策を封殺したりと拮抗した上でのライダーキックを披露しての討ち死になので戦果はありましたよ
真の桜花の型を出させた辺りは本当に偉い

☆薔薇さん
「しってた」
「なああんた、どっちの子にするん?」
「やっぱ黒い子やろ。昔っから好きやもんなぁああいう子」

☆一年目ラスボスくん
ルールを守って楽しくゲゲル!
ゲゲルで……皆に(よって、僕に)、笑顔を……
黒くない方も誘って楽しく究極の力で遊びたいだけの純粋な子
かーっ! 純粋な子だダグバはー!
見せてやりてぇよマジ、二十二号やグロンギの振る舞いで聖なる泉ボロボロにした五代さんの凄まじき戦士の姿ってやつをさー!
みんなでやろう、究極の闇

☆西多摩署の人々
女性警察官は生き残ってるんだってさ
踏み込んできた二十二号に心臓が止まるかと思ったが、次いで告げられた
「まだ生きている人が居るかもしれない」
という言葉に奮起して男性警察官の死体を確認し始めたりする
お蔭で奇跡的に生きている男性警察官を発見
すげーなーあの激強グロンギに殺されかけて生きてるとかすげーなー
しかし不思議だ、確実にあの未確認に殺された筈、まだ斬り付けられた時の感触が残っているのに……
続く!
嘘、続かない!

☆五代さん
たぶん人が居ない場所で両手で顔を覆ってうつむいたりしてる
人が居るときには笑顔
がんば

☆ドルド
この話の裏とかで殺されてるんじゃないかな
殺されてないなら後々に殺される描写が入る
あっ! クウガ編エピローグで使いみち思いついたから生きてる感じで!

日常パート長いかなーとか思って、休みの前日夜にさあ戦闘パートだ!とか書き始めるじゃないですか
朝に書き上がる頃には大体ちょうどいいバランスになってるんですよね、不思議
でもこんだけ書いてても多分実際に描写したらかなり短い戦闘場面
ガチ殺しにかかるならこんなもんになっちゃうんじゃないかなという言い訳をどうか受け入れてほしいなぁと思わないでもないけど普段自分が受け入れてるかどうかは不明というか覚えてない

閣下相手に結局苦戦してないじゃねーか、みたいに言われそうですが、不意打ちはほぼ防がれたし、念力自動防御無ければ脳味噌やられてたし、目が一時的に潰されたし、修行パートで得た桜花が無ければキックで死んでたので苦戦判定でいいと思います、たぶん
苦戦してるように見えたならいいなって思います、実際どう見えました?
どう見えたとしても次回はダグバ戦!
五代さんにもテコ入れ入るのでお楽しみに
お楽しみに、といえる程の内容になるかはこれ予約投稿してから思いつき次第書く感じなのでわからないけど、気長にお待ち下さい
おやすみなさい!


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13 羽化、天に登るが如く

実の所を言えば、グロンギの出す被害は、ダグバの行う大虐殺を含めても大した被害とは言い難い。

いや、ダグバの三万人はそれなりの数と言えるのだけど、それを除けば年間の交通事故による死亡者とトントンか低いかくらい。

世界全体で見ればそれこそ蚊が、或いはリントと呼ばれる現行人類による殺人の方が遥かに被害が大きい。

大事件ではあるし、歴史書にもそれなりに記されるであろうレベルの事件ではあるのだけれど。

現状、人類種の存続を脅かす程の驚異であると認識されていないのは、対応が警察に一任されている状況を見ても明らかだ。

 

もう一桁程多ければ世間の空気が変わる程度の被害にはなったと思うのだが、現状はそうでもない。

東京では今も変わらず多くの人々が暮らし働いているし、疎開を選ぶ様な人は少数派も少数派。

少し首都圏から離れて地方都市ともなれば、遠い街でカルトが暴れているなぁ、くらいの印象でしかないのだろう事はよくわかる。

大体にして、グロンギ目当てで度々上京している俺を除いても、クラスメイトの内何名かが東京に何度か旅行に行っている時点でお察しだ。

 

実際、俺も東京に行って意図的にグロンギと戦わないのであれば、グロンギに関する情報なんて、ニュースとか新聞とかでしか手に入らない。

地元で単なる一般学生として過ごす上では、極稀に遭遇する白い進化し損ないや時計で呼び出す事のできないデフォルメ無し妖怪を除けば、とても平和な日々を過ごさせて貰っている。

学校と家の往復を繰り返すだけの日々、という程侘しい日々を過ごしている訳でもない。

俺も四六時中、人類に対して敵対的な連中を殺す手段を整える為の準備ばかりをしている訳ではない。

学生らしく、友人と遊びに行ったり、そうでなくてもジルを伴ってちょっと買い物に行ったりもしている。

 

中でも最近楽しみにしているのは、親切なクラスメイトの人と遊びに行く事。

そう頻繁ではないし、放課後にちょっとだけ一緒に寄り道や買い食いをしたり、ジル同伴で休日に一緒に遊びに行ったりする程度。

……他に友人が居ない訳ではないのだが、何故かこの親切なクラスメイトの人と一緒に遊びに行く時に限って、体調を崩してしまったり、他の急な用事で来れなくなったりしてしまったりするのだから仕方がない。

避けられている訳ではないと思うのだが。

ちょっと悲しい。

 

あと、親切なクラスメイトの人も一緒に行くという事を伝えた時に俺をアホ呼ばわりした奴は許さない訳でもないが、こいつに覚えるのは怒りだ。

仮に時代にそぐわないテストの順位張り出しが行われたとして一切恥ずかしくない成績を収めている俺にアホとは何事だろうか。

でも万が一にもあっちの方が成績上だったりするといけないのでアホって言う方がアホとは言わない。

なにせこの世界、脳味噌無改造でIQ600とかいういっそ人間と思考形態からして違うんじゃないかと疑う知能指数を持つ天才が生えていたりするからな……。

 

何はともあれ、俺の平凡で平穏な学生生活にちょっとした潤いとかを与えてくれる人が居る、というのは、とても幸運な事だと思う。

前の高校時代に居た友人達、或いは今の高校生活における大半の友人達は、一緒に馬鹿をやったりするには良い連中なのだが、クラスメイトの人の様に親切さとか優しさとか気遣いに溢れている訳ではない。

昔、どこかのお店、バーだったか喫茶店だったかはうろ覚えだが、そこの店長さんが言っていた。

高校生時代に作る友人というのは、後の人生でも得難い友人になる事が多いのだそうな。

他の友人たちが違う、という訳ではないが、彼女は、クラスメイトの人は、その中でも特別得難い友人である事は間違いないだろう。

 

「……」

 

「お前は行かんのか」

 

ふるふる、と、俺の手を掴んで付いてきていたジルが首を振る。

片手に下げていた花束を押し付けてくるその視線は、やけに強い。

俺が花束を受け取ると、掴んでいた手を離してひょこひょこと待合室に歩いていき、本棚にある週刊誌を物色し始めてしまった。

薄情なやつ、とは言えまい。

この病院は地元でも一番大きな病院だが距離がそれなりにあるため、正直連れてくるかどうかはちょっと迷っていたのだ。

そこを、俺が何処に行くかを察したように自主的に外着に着替えて付いてきたのだから、ジルもクラスメイトの人に何かしら思うところがあるのだろう。

 

ジルが大人しく適当な少年誌を読み始めたのを確認し、病室に向き直る。

入り口に掛けられている名前は一人分のみ。

それなりに大きな個室。

ノックをし、あまり聞き慣れない大人の女性の返事を聞いて入室する。

 

「あら、貴方……」

 

「こんにちは、お見舞いなんですが、今、大丈夫ですか」

 

「いえ、いいのよ、娘も喜ぶわ」

 

落ち着いた服装の、穏やかそうな女性。

人相に何処か見覚えがある、と思うのは、彼女がクラスメイトの人の母親だからだろう。

 

「こちらを」

 

花束を手渡す。

花瓶に入れてもいいのだけれど、まだ入れ替える程古くもなっていない。

どうするかはご家族に任せよう。

 

「ありがとうねぇ、毎日、大変じゃない?」

 

「いえ……」

 

それこそ、毎日毎日通いつめている訳ではない……という訳でもないが。

もののついでなので、ご家族の方に気にされる方が申し訳ない。

ちら、と、ベッドの脇を見れば、俺が持ってきたものの他にも、大量の見舞いの品や花束。

明るく人当たりの良い彼女は、実際クラスでも人望が厚かったのだ。

こんな事になってしまえば、それは見舞いも沢山来るというものだろう。

 

心電図のそれとは異なる、無機質な電子音。

携帯の着信、しかし、俺のものではない。

 

「ちょっと、ごめんなさいね」

 

彼女の親御さんのものであったらしい。

一言断りを入れて、部屋から出ていく。

この時代でも、病室で携帯電話で話すのは禁止されていたのだったか。

 

ご家族が退室し、病室の中には俺と、ベッドに横たわり、目を瞑るクラスメイトの人だけが残る。

当然ながら、会話など起ころう筈もない。

彼女が終始無言で居るというのは珍しい事だが、致し方ない。

意識のない怪我人にそれを求める様な鬼畜に育ったつもりはない。

 

別段、おかしな事が起きた訳ではないのだ。

それこそ、人類がふとした弾みで滅ぼされかねないこんな世界でなくても、そこそこ起きている様な事故。

それに、運悪くこのクラスメイトの人が被害者として当たってしまったというだけの話。

その場に居合わせた俺の対処が良かった事、事故を起こした運転手の人が逃げる事無く即座に救急車を呼んでくれた事などが重なり、命に別状はない。

……実を言えば最初は危険そうな傷を負っては居たのだが、本気で命に別状がありそうな傷に関してはその場で不自然でない程度に塞がせて貰った。

逆に、その程度までしか出来なかったとも言うが。

 

だが、打ちどころが悪かったのか、事故のあった元日から、彼女は二週間も目覚めずにいる。

無理もない。

彼女を撥ねた車は大型のトラックで、トラックが止まった場所と彼女が倒れていた場所を考えれば、かなりの距離を飛ばされた筈だ。

命をつなぐ事ができただけでも奇跡のようなものらしい。

 

不幸な事故。

ただの不幸な事故だった。

未確認生命体も、オルフェノクも、魔化魍も、その他諸々の人類に対し害になる種族とは一切関係なく、彼女は不運な事故に見舞われただけなのだ。

 

「ちょっとした、発見かな」

 

気分が沈んでいる。

友人が、貴重な友人が事故にあったのだから当然と言えば当然なのだけれど。

俺は、思ったよりも、この親切で不運なクラスメイトの人に強い思い入れがあったらしい。

そして、まだ、親しい友人に関する事で、これくらいは悲しむ事ができる。

どういう思想で組み上げられたものかは、実際のところはっきりとしないのだけど。

アークルを作った人には、少しだけ感謝をしなければならないかもしれない。

こういう時、以前の想定どおりに悲しまずに済むような脳構造になっていたら、酷くいたたまれない気持ちになってしまっていただろう。

 

少しだけ、クラスメイトの人の顔に触れる。

怪我は完治していない。

体に負った怪我だけでも完治まで数ヶ月は必要で、リハビリには更に時間がかかるらしい。

それを、短くする事はできる。

毎日、なんだかんだと通っているのもそれだ。

少しずつ、少しずつ、破損している場所をモーフィングパワーで物理的に『繕って』いけば、壊れた肉体を直す為の時間は大幅に短縮されるだろう。

 

だが、意識が戻らない、となると、俺にはどうしようもない。

別に、俺が直さなければならない訳ではないのだけど。

こういう時、少しだけ、自分本位の能力しか生えてこなかった自分の脳か魂が恨めしくなる。

 

視界の端、ベッドサイドの棚の上に、事故当日に彼女が持っていた幾つかの私物が乗せられていた。

ヒビの入った携帯電話。

最新機種なんだ、と、少し前に自慢を聞いた気がする。

数ヶ月もせずに型落ち品だ、とは、あえて口にしなかった。

シンプルなデザイン、一つだけストラップが付けられている。

香料の入った小さな円筒。

紐部分は赤黒く染まっている。

 

「……」

 

口を開いて、言葉が浮かばず、閉じる。

謝る理由が無い。

目覚めを催促するのは図々しい。

いや、何を言いたいのか、というのも、自分の事なのにはっきりと把握できない。

何かを言おうとしたが、何故、何かを言おうとしたのかもわからない。

少しだけ、混乱している。

 

ごろごろ、と、入り口の戸が開く。

親御さんが戻ってきたのかと思い手を離すが、そこに居たのはクラスメイトの親御さんよりは確実に見慣れた顔。

 

「やっぱり、顔くらいは見ていくか?」

 

こくり、と、真顔で頷いたジルがベッドの横に立ち、クラスメイトの人の顔を少しだけつんつんと触る。

怪我人で遊ぶな、と、止めようとするも、その表情は巫山戯ているようにも見えない。

何かを確認するようにつついた後、顔を上げ、ぱくぱくと口を動かす。

 

『あいおおう。いっお、おうあう』

 

「……そうか? いや、……そうだな。良くなる」

 

どう考えた所で、クラスメイトの人の怪我の具合に影響する訳ではない。

なら、少しでもプラスに考えたほうが、精神衛生上良いだろう。

俺が頷くと、ジルはに、と、歯をむき出しに笑った。

 

『ああ、おいあいいおおう』

 

「また?」

 

こくりと頷く。

 

『うええ、おあっああお』

 

全て。

全て、終わった後、か。

 

「そう、だな。また、来よう」

 

全てが終わる。

そう断言できる結末は、俺が生きている間に来るかわからない。

結末に辿り着く前に、俺の人生の結末が先に訪れるかもしれない。

だけど、それでも、せめて、今年の、今年度の、グロンギの全てを終わらせなければならない。

それを終わらせてから、また、来よう。

 

―――――――――――――――――――

 

長野県、九郎ヶ岳。

降り積もる雪により白く染まった世界の中で、一人の白い青年と一体の黒い戦士が向かい合っている。

しんしんと降り続ける雪の中、しかし、一人と一体には不自然な程に雪が付着していない。

白い青年──未確認生命体第0号は、黒い戦士──未確認生命体第二十二号へと、朗らかな笑みを向けていた。

対する二十二号の仮面に覆われた顔から表情を窺い知る事はできない。

 

「こういう手を使うとはな」

 

だが、声からは二十二号の抱く苛立ち、怒り、そういった感情がありありと感じ取れる。

 

「直ぐに来るよ。大丈夫」

 

笑みを深める。

0号はそう言うなり、その姿を変じさせた。

金に縁取られた白い装甲。

グロンギの頂点に君臨する有る種の到達点。

究極の闇を齎すもの。

ン・ダグバ・ゼバ。

 

対峙する二十二号の姿は対照的だ。

金に縁取られた黒い細身の装甲。

熱した炭の如く、僅かな赤が除く仄暗い複眼。

名は、無い。

この姿の彼は、ただ単に未確認生命体二十二号と呼ばれる。

 

ゆっくりと、どちらともなく互いに手を伸ばす。

あらゆる制限を取り払われたモーフィングパワーが互いの体を蝕み、その肉体を燃焼させる。

──それは、二十二号が、無知故の過ちからエルの力を覚醒させた一人の少年が、多くの戦いを越え、殺しに慣れ、しかし、今なお死への恐怖から戦い続ける少年が、実現せぬようにと避け続けてきた、不確定な戦いと、図らずも同じ図面。

 

究極の闇を齎すものと対峙するのはただ一人。

聖なる泉の涸れかけた、戦士クウガにも、仮面ライダーにもなれない、異形の力を振るう少年のみ。

本来居るべき真の英雄は、この場には居ない。

 

誰一人として観戦者の無い山中にて、異形と異形の、壮絶な喰らい合いが始まる。

 

―――――――――――――――――――

 

同刻。

一月二十日土曜日。

都内は混乱の坩堝と化していた。

東京都内二十三区に、同時多発的に出現した、合わせて四十(・・)にも届かんとする白い(・・)未確認生命体。

近頃のグロンギと比べて力も速度も弱く、しかし、奇怪な特殊能力、人のシルエットを大幅に崩す巨大化とすら言える程の変身能力。

未確認生命体、グロンギという生命の枠を越えた白い怪物達が、図ったかのように人々を襲い始めたのだ。

 

「ぉおっ!」

 

ごっ、と、赤い装甲を金で縁取った戦士の飛び蹴りが白い未確認の胸部に直撃。

自らの上半身程もある巨大な爪を持つ異形の未確認は数歩後退り、その蹴りに耐える。

しかし、飛び蹴りに込められた封印エネルギーが徐々にベルトへと伸びていき、青い炎を上げながら灰と化し崩れていく。

 

赤い戦士、五代雄介は焦っていた。

前日に二十二号からの手紙を貰い、未確認生命体、グロンギの頭領とも言えるン・ダグバ・ゼバとの戦いでの助力を頼まれていたのだ。

だが、いざ決戦の地へ、という段になって、この騒動である。

 

二十二号が、二十二号としか呼ばれない彼が、自分から助けを求めてくれた事には安堵もあった。

凄まじき戦士になる事への迷いはあったが、それも、恐らくは先に凄まじき戦士になっているであろう彼を助ける為であれば、と。

そう思っていた。

だが、この状況で、彼のもとに駆けつけるのは不可能だ。

 

警察には、三号の死体などを元に研究開発された神経断裂弾が量産され配備されている。

この騒動も、時間を掛けさえすれば対処できない事もないかもしれない。

ここまでの事態となれば、ついに自衛隊も出てくるかもしれない。

五代雄介一人がこの場に居なくても、最終的には解決できるかもしれない。

それでも。

それでも、そこに至るまでにどれほどの犠牲者が出るか。

 

炎の燻る灰の向こうに、無数の肉塊が転がっていた。

冷たいアスファルトを赤く染める、ほんの少し前まで命だったもの。

力任せに引き千切られた人だったもの、命のない人間の残骸。

 

こんな光景が、今、東京のあちこちで繰り広げられている。

ビートチェイサーから聞こえる無線も情報が錯綜し、近場の何処に新たな未確認が居るのかは判然としない。

しかし、皮肉にも向かうべき場所は直ぐに分かる。

悲鳴が、絶叫が聞こえるのだ。

未確認に襲われ、為す術無く殺されていく人々の断末魔が、クウガを、五代雄介を走らせる。

 

次なる現場に向けてビートチェイサーを走らせる五代の背に、巨大な何かが激突する。

巨大な手裏剣状の円盤。

制御を失いバイクから投げ出される五代。

未確認のそれよりも、よりモチーフとなったであろう生物の特徴を残した、蜘蛛型の白い未確認。

受け身を取り完全な転倒は避けた五代に覆いかぶさるように、下半身を巨大な蜘蛛に変えて襲いかかろうとし、横合いから殴りつけられ、姿勢を崩す。

 

「大丈夫か五代!」

 

蜘蛛の未確認を殴り飛ばし、五代の、クウガの窮地を救ったのは、やはりクウガだった。

いや、よくよく観察するまでもなく、その姿がクウガとも二十二号とも異なる事が分かるだろう。

赤のクウガに似た、しかし、材質の不明なクウガのそれと比べて継ぎ目の多く見える明らかに何らかの金属で作られたと思しき装甲を持つ戦士。

機械で、現代技術でクウガの力を再現しようと作成された機械の鎧。

その声に、五代は確かに聞き覚えがあった。

 

「一条さん! それは?!」

 

「話は後だ!」

 

蜘蛛型の未確認が起き上がるのを視界に捉えながら、強化装甲服を纏った一条がライフルを構える。

全弾神経断裂弾を装填済み、予備の弾倉もあるとはいえ、無駄打ちができる状況でもない。

クウガに迫る程の身体能力を得られるこの強化装甲服の力を使えば、肉弾戦も考慮に入れる事はできる。

しかし、機械的に再現された力に、生身の人間はそう何時迄も耐えきれるものではない。

内部の装着者にかかる負荷を完全に無くす事は、次世代以降の機体へと残された課題だろう。

この戦いが終わった後、一条の体がどうなるか、それすらも未知数。

だが、緊急事態という事で急遽持ち出された装備としては、十分に使用に足る性能であると一条は実感していた。

 

眼前には下半身を乗用車程はある蜘蛛へと変じさせた未確認。

更に反対側には、小さなビル程もあるサイに似た未確認。

間に挟まれる自分達を気にしているのかいないのか。

獲物を取り合い対峙する野生動物のようですらある。

しかし、背を預ける相手が居る。

 

「まずはここを切り抜けるぞ」

 

「……はいっ!」

 

すれ違うように、互いの背を押し合うように、走り出す。

 

東京は混沌の最中にあった。

だが、それも長くは続かないだろう。

 

対処に当たった警察の中には、未確認とは明らかに異なる、楽器の様な武器を操り戦う怪人や、警察のものではない、白い装甲服を用いて戦う謎の戦士の姿を目撃した者たちも居た。

そういった謎の助っ人の活躍だけでなく、対策本部に配備された神経断裂弾による未確認の撃破も目覚ましい。

多くの被害を出し続ける白い未確認の群れは、徐々にだが減りつつある。

夜が明けるよりも早く事態は収束に向かうと見ていい。

 

被害は多くとも、東京が滅ぶ事はないだろう。

少なくとも、今夜の内は。

 

―――――――――――――――――――

 

金属同士の生み出す擦過音。

吹雪の中に火花が煌めく。

黒い大剣を白い大剣が円の動きで絡め取り、巻き上げる。

宙を舞う大剣。

 

無手の二十二号にダグバが大剣を振り下ろす。

二十二号は足元の雪を消滅させながら踏み込み、大剣の柄、ダグバの手元を掴み、体を回転させるようにして投げ飛ばす。

引っこ抜くような一本背負い。

ダグバの着地点には二十二号が踏み込むと同時に生成した剣山の如きスパイク。

 

投げの途中でダグバの手首が二十二号の手の中からずるりと抜ける。

力づくではなく、握りしめていた大剣を消し去り、掴まれている部分の摩擦係数を調整しての抜け。

突き刺さると同時にへし折れ、強力な酸を体内に流し込むスパイクを、ダグバが絶妙な力加減で掴み、掴んだスパイクを起点に受け身を取り着地。

同時、ダグバの眼の前の剣山が捻じ曲がり二十二号へと伸びる。

二十二号が手を翳すと剣山は焚き火の中に放り投げられた塵の如く瞬時に燃え上がり消滅した。

手放されフリーの状態になった武器は、驚くほど相手のモーフィングパワーへの耐性を失うのだ。

 

着地したダグバと二十二号が同時に獲物を振るう。

奇しくも互いに同じ長物、薙刀と槍が打ち合う。

描く軌道すら対照的、まるで鏡合わせの如き一撃。

 

打ち合う刃同士が衝撃波を生み、一瞬だけ荒れ狂う吹雪が周囲から吹き飛び空白地帯が生まれた。

睨み合うのは一瞬。

二十二号の持つ薙刀が折れる。

二十二号の手元で折れた薙刀の逆の刃がダグバに向けて振るわれた。

三節棍だ。

意表を突かれたのか、ダグバはその一撃を顔で受ける。

一拍遅れて二十二号の腹部が横薙ぎに切り払われた。

ダグバの持つ槍もまた、二十二号の薙刀と同じ変化を遂げていたのである。

吹雪の代わりと言わんばかりに互いの血潮が飛び散り、雪原を赤く染める。

 

「ははは!」

 

「ぐぅっ」

 

頭部を半ばまで切断されながら朗らかに笑うダグバ。

対象的に腹部を切り裂かれた二十二号が痛みを堪えるように呻く。

正反対のリアクションを起こした二匹はしかし、まったく同時に一歩踏み込む。

獲物を握り込んだままに、拳を振り抜く。

 

鈍い、重い、打撃音。

切り裂かれた頭部を、腹部を、カウンター気味に殴り合う。

吹き飛ばされ、滞空中にすら互いの手の中には弩弓が生み出され、打ち合う。

互いの放った圧縮空気弾は空中で激突し、吹き荒れる暴風すら掻き消す。

 

風に揉まれ、白と黒、どちらも受け身すら取れずに雪原に投げ出される。

倒れ伏す両名の見た目は、既に無傷。

どちらともなく立ち上がり、引き合う磁石が如く走り出す。

 

黒、二十二号が走りながらに開く花弁の如き型を取る。

白、ダグバが走りながら、二十二号のそれと全く同じ構えを取る。

 

「はぁぁぁぁ!」

 

「はは、ははははは!!」

 

赤心少林拳黒沼流奥義、桜花の型。

互いに、回避も防御も無い、殺意のみが込められた手刀を正面からぶつけ合う。

鏡合わせの如く放たれた手刀が激突し、両者の手刀が互いを切り裂く

真っ二つに肩口まで裂ける二十二号とダグバの腕。

まともな生き物の体であれば致命傷、二度と動かすことなど叶わないだろう腕が互いの首を握りしめるように再生。

もう片方の腕で殴り合う。

 

激しい打撃音。

血しぶきを上げながらの打撃戦。

二十二号の拳がふとダグバの脇腹に押し当てられ、同時にダグバの拳が二十二号の鳩尾に押し当てられる。

破裂音。

同時に放たれた寸勁が互いの体を弾き飛ばす。

 

「っ、~~!」

 

「は──、は!」

 

内蔵を掻き混ぜられる……正しく文字通りでの意味で。

腹部の霊石、或いは魔石から伸びる強化神経すら他の内臓と共にひき肉にされ、しかし、死なない。

同時に打ち合い、同時に蹌踉めく姿はまるで筋書きがある寸劇の様ですらあった。

だが、違う。

これが、この戦いこそが、ザギバスゲゲルの本来的な姿なのだ。

 

二十二号は、これまでの戦いの中で培った技術が、戦いに備える時間で積み上げた技術があった。

それは、グロンギが封印される前の古代では存在しない、人類が同種と、或いは敵対種族と戦うために積み上げてきた戦闘技術。

格上を喰らうのに最適な、同格を相手に有利に事を運べる技術。

だが、それらは全く通用していない。

なぜなら、ダグバもまた同じ技術を学習した為だ。

他ならぬ二十二号から。

 

グロンギの持つ恐るべき特性として、現代のリント、人類は頑強な肉体と驚異的な再生能力を挙げるだろう。

だが、それはグロンギに与えられた能力の中では副次的なものに過ぎない。

グロンギが持つ、最も恐ろしい力、それは、知恵、学習能力である。

 

現代で目覚めたばかりのグロンギ達が、僅か一年の間で蛮族からリントの知恵者に匹敵する程に知識を吸収し、各々の趣味嗜好に合わせて個性すら持つ。

そしてその学習能力の高さは、ズ集団、メ集団、ゴ集団と階級が上がるごとに顕著になっていく。

では、グロンギのトップたるン、全能のゼを冠するダグバの学習能力はどれほどのものだろうか。

答えはこの戦いの通り。

戦いながらにして、打ち合いながらにして、殺しあいながらにして、相手の技を取り込んでいく。

事前にどれほど技術を積み上げても、僅か数合の打ち合いの中で、ダグバは同じかそれ以上に技術を積み上げていく。

 

弱者の努力をあざ笑うが如き、戦うためだけの生物兵器と呼ばれるに相応しい力。

圧倒的な力、そして、その力を如何なる形でも自在に操る事のできる圧倒的な学習能力。

それがダグバ、それがン。

 

それだけならば、単純にダグバが勝って終わりになるだろう。

如何に技術や知識を積み上げても、同じか、更に発展させた力を振るうダグバに勝てる戦士など存在しようもない。

 

例外が存在する。

いや、その例外に至ったからこそ、ザギバスゲゲルは行われる。

ザギバスゲゲルの参加者は、すべてのゲゲルを乗り越えた戦士。

ン・ダグバ・ゼバと正面から戦う事を許された、同格と認められたムセギジャジャに他ならない。

 

向かい合うのは、王者と挑戦者──ではない。

ザギバスゲゲルで向かい合う二人は、同格なのだ。

 

「はは、は」

 

口腔を覆うマスクから血反吐を吐きながら、ダグバが笑う。

同格の相手と戦うのが、どうしようもなく楽しい。

どんな相手との戦いでも、格下、いや、戦士と呼べない相手への虐殺でも、楽しい。

戦うのが楽しい。

たまらない程に。

そう有ることができたからこそ、ダグバはンであり、ゼなのだ。

そして、

 

「……はは」

 

向かい合うのは、同格の相手。

この場に立てる、ダグバと等しいもの。

 

―――――――――――――――――――

 

痛い。

切り裂かれた腹部が痛い。

破裂した内蔵が穴という穴から吹き出しそうで、それを押し戻そうとする力が体を作り変える感覚は、筆舌にし難い。

 

悔しい。

積み上げた技術が通用しない。

最善の努力をしたと言えるかは知らない。

それでも、この努力を積み重ね続けてきた。

眼の前のこいつを殺すための力を積み上げてきた。

だというのに、こいつはその技術を軽々と身に付けて、容易く打ち返してくる。

 

憎い。

何故、こんな所で俺は戦っているんだ。

こいつがこんなで無ければ、グロンギがまともな種族であれば。

まだ、俺はここまで戦う必要が無かったかもしれないのに。

 

怖い。

一撃を喰らう度に、それが俺の命を断つに十分な威力だとわかる。

打ち合う度に死ぬかもしれない力と向き合わなければならない。

次の瞬間にも俺は死んでいるかもしれない。

生きていないかもしれない。

 

だというのに。

 

「……は」

 

喉から声が溢れる。

 

軽い(・・)

 

こんなにも痛いのに。

こんなにも悔しいのに。

こんなにも憎いのに。

こんなにも怖いのに。

 

「あは」

 

笑えてくる。

笑うような場面ではないのに。

笑う理由も無いのに。

なのに、笑う度に。

心が軽くなっていく。

ドロドロとした思考が、ゆるゆると洗い流されていく。

 

「あはは!」

 

堪えきれない。

ああ、そうだ。

そうだった。

気付いてしまった。

こんなにも簡単な事だったんだ。

 

余分な気持ちを省いてみれば。

 

そうだ。

 

戦うのは、こんなにも。

 

楽しい(・・・)

 

―――――――――――――――――――

 

「あはははは!」

 

「ははははは!」

 

笑い声が響く。

血塗れの雪原。

向かい合う白と黒の異形の戦士。

場違いな程に朗らかな笑い声は、しかし、二人にとっては余りにも素直な感情の発露。

 

憎しみも無い。

苦しみも苦ではない。

痛みを厭う理由も無く。

命を悼む心も無い。

 

ただ、戦う事の楽しさだけがある。

 

誰一人見届けるものなき山の中。

向かい合うのは、凄まじき戦士。

究極の闇を齎すもの。

 

憂いなく、喜色だけを湛える、黒い瞳が互いを捉え。

ただ、殺し合うためだけに走り出した。

 

 

 

 

 

 




続く!

★落ち込むこともあるけれど戦ってれば元気ハツラツ黒目マン
因みに見た目はちょっとマッチョ気味の六本角アルティメットにオルタリングがついてる感じだと思って貰えれば
アギト成分は、ダグバ戦で戦力に数えられる程の出力はまだ無い
親しくしてたクラスメイトちゃんが事故って昏睡状態で気落ちしていたけど、ダグバくんのおかげで元気になった
正真正銘ダグバと等しくなったりしたけど、そんなのは些細な事ではないだろうか
ちょっとあった瞳の輝きは消えてマットブラックな複眼がオシャレさん
ダグバくんとおそろいだね!
力も学習速度もダグバ君とほぼお揃いだよ!
このままダグバ君に勝った場合、そのフルスペックと楽しい気分を保持したまま人里に降りて、ゆっくりと東京へと移動を開始するよ!
五代さん待っててね! ダグバ君が終わったら遊びに行くからね!
年頃らしい元気で明るい姿を見せに行くからね!
凄まじき戦士の力も見せに行くからね!
楽しもうね!
打ち切りにはならないので次回どうにかなるけど闇落ちさせるのはやっぱり楽しい

☆ダンプだかトラックに跳ね飛ばされて昏睡状態クラスメイトロインちゃん
なんで元日に事故ってしまって直後に主人公に応急修理される事ができたかと言えば、クラスメイトちゃんからみんなで初詣行かない? と誘ったから
因みにみんなで、とは言ったが、クラスメイトちゃんは主人公がジルを連れてくるであろう事を想定して言っただけなので他のクラスメイトたちを連れてこなくても一切嘘にはならないのだ
そんな楽しい思い出も今は昔
おみくじで中吉、恋愛、積極的に構えよ、みたいなのが出たりした
初詣の帰り道で別れた直後、携帯でスキーとかに誘うメールを打ってたら信号無視トラックにプップードシャーンされてしまう
スキー?
来シーズンかなぁ
病室に携帯が置いてあったのは、事故った直後にも携帯及びそこに付けられたアロマストラップを離さなかったからだゾ

☆ヒロインちゃん
記憶がどうかは知らないけど、リントの常識とかも分かってるのでまず主人公一人で面会させるだけの気遣いができる程度にはリントの常識に素直
ちょっとほっぺたつついたくらいだけどクラスメイトちゃんに何か起こったのを把握したりした
何故なんだ……すげえふしぎ
声出てないのは相変わらず、口の形から読み取るしかないので正確には言葉の意味が伝わらない事もあるけど気にすんな!
『きっとそうなる』
『ああ、おいわいにこよう』
そも記憶があるとか無いとか、グロンギ脳とかリント脳とか、はっきりと別れていると思うのは先入観でしかないのかもしれない

☆GRNG40くらい
整理されたグロンギの中から不自然に大量発生したグロンギオルフェノク
なぜこんなにオルフェノクが発生してるんだ……すげえふしぎ
力のイメージが変身後の姿と被っているので見た目はそれほど変わってはいない
全員オリジナルとかいう鬼畜仕様ではあるが、オルフェノク化した肉体がゲブロンの齎す再生能力に耐えきれない為にかなり寿命は短く、再生を繰り返させれば早めに死んだりする
ダグバ君から、特例でゲゲルを成功させたら直ぐに自分への挑戦権を得られるよ、みたいな事を言われて東京で大決戦
なお神経断裂弾とG1と謎の助っ人達
ダグバ君としてはこいつらを始末する為に五代さんが凄まじき戦士になるのを期待していた

☆五代さん
二十二号を助けにも行きたいけどだからって東京の人達を見捨てるなんてできる筈もない
とりあえず常時金にはなれてる
アメイジングは時間制限あり
凄まじき戦士にも心構え一つでなれるけど、なったら危ないんじゃないか、という事で変身は無し

☆一条さん
今夜は俺とお前でダブルクウガ
このクウガ年における二号ライダー爆誕である
このクウガ年における二号ライダー爆誕である
二十二号? なんか敵と敵対してる第三軍枠じゃないすかね
一条さんは人間のまま戦うのがいいんじゃないか、という苦情は受け付ける
でもせっかくだし、このタイミングでG1が存在してこの同時多発ゲゲルに対処するなら引っ張り出さない筈がなく……
たぶん開発メンバーにスカウトされたりもしていたけど、未確認への現場での対策の方を優先したので断ったりしてた

☆試作型強化装甲服
科警研とかで取ったクウガのデータを元に来年出張ってくる部下に焼き肉おごってくれる天才によって開発された結構な性能のパワードスーツ、その名はG1
素赤クウガくらいの性能がある
一条さんに断られたので一般クウガ警察に試験させてたりしたが、怪我人続出で封印された
一条さんの活躍を見て、「やっぱり使えるじゃないの」とか思うも、後日他の人員で試すとやっぱり肉体強度が足りずに封印される
悲しい歌やね
でも再生能力の無いクウガもどきと考えると肉弾戦メインのパワードスーツってのはやっぱり無理がある
性能落として強力な火器とか刃物を持たせたG3のコンセプトは間違ってはいないのだ
無難とも言う

☆ン・ダグバ・ゼバ
一年目のラスボス
学習能力の高いグロンギの頂点という事で相手の技を戦闘中にラーニングするし応用も即座に編み出すしカウンターで相殺できる程の身体能力もあって糞ゲ状態
この世界で言う『究極』の『闇』がどういう存在なのか、という事を考えると、一種の司祭のようなものか、或いは謎のエル反逆のための一手だったのかもしれない
この学習能力を備えたまま古代から戦い続けていたら本気でワンチャンあったのではと思う
最初はむっつりしてた二十二号くんも、戦ってくる内に緊張がほぐれてきて笑顔になったのでつられてさらに笑顔になる
よかったねダグバくん!
二十二号くんが終わったらゆっくりと人里に降りて徒歩で東京に遊びに行く予定
待っててねクウガ、二十二号が終わったら遊びに行くからね
凄まじき戦士の力も手に入れてるだろうし
きっと楽しくなるよ!
もっと笑顔になろう!
究極の闇を始めよう!
楽しもうね!
つまり挟み撃ちの形になるな……

☆東京
SOS
人が多くて壊れて見栄えの良い建物が乱立してる方が悪い

☆謎の鍛えている変身ムキムキミュージシャン達と白い装甲服
いったい何者なんだ……
でも年代を考えるとどちらも中の人は放送当時の人ではない可能性
ミュージシャン達の古株の中の人とかはそのままかもしれない
因みに日本のあちこちに散って潜伏してたグロンギのおかげで日本中で魔化魍の発生率が激上がりしていたため対応に追われていた
主人公の地元で度々定期的に魔化魍が湧いていたし、初動が遅れて主人公に最初の接敵を取られていたのもそのため
今後この設定が出てくるかは不明
使えない設定だったらきっと忘れてる
使える設定でも忘れる事があるのが私の悪い癖です


ついにブラックアイになってしまった二十二号
奥義すらコピーされ、ダグバとどう戦うのか
東京は滅ばずに済むのか
五代さんは曇らずに旅立てるのか


次回、たぶんクウガ編最終回
『空我、それでも』


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14 空我、それでも

月を覆い隠す分厚い雲が、倒壊したビルを焼く炎に赤く照らされ、照り返しで照らされた夜の街は、夜半を過ぎてなお夕暮れ時の如き様相を見せる。

炎に照らされるのはまさに地獄絵図だ。

 

崩れたビル、陥没した道路から水が吹き出し、そこいらに無造作にかつて人間だった肉塊が転がされている。

手だけ、脚だけ、半分、潰れた全身、上だけ、下だけ、中身だけ、外身だけ。

顔が残されたものは、皆残らず苦悶の表情を浮かべている。

瞼は開かれたまま、地獄を見せつけられながら死んだ死体の、乾きつつ有る瞳がまたもこの世の地獄を写す。

そして、地獄に抗う戦士たちの姿も。

 

それはまず人であった。

多くの死傷者を出しながら、しかし配備された銃器と神経断裂弾によって、ゆっくりとではあるが街に溢れる怪人、白い未確認を減らしていく警官隊。

彼等は皆一様に転がる市民の死体を目にし、しかし悔しそうにしながらも未確認への対処に当たっていく。

せめて瞼だけでも、その思いが実行に移せるのは、この世の地獄から未確認共を駆逐して、生き残ったものだけの特権だろう。

彼等の多くはボディアーマーすら無く、未確認に距離を詰められて攻撃を受けようものなら即死しかねない。

しかし、それでも彼等は怯まない。

それは敵を、未確認を倒す為ではない。

未確認に平和を脅かされている、現在進行系で命と平和な生活を脅かされている市民たちを救い守る為。

人のまま、人としての正義で、彼等は命を掛けてこの地獄を駆ける。

 

「そらッ!」

 

或いは、それは異形であった。

未確認と見紛う、人と同じシルエットを持ち、しかし人間のそれとは程遠い異形の戦士。

誰ぞ知るか、その戦士は正しく人にして人にあらず。

人として鍛え、人を越え、人の心を残したままに鬼へと変じた戦人にして防人。

グロンギの肌とも異なる、しかし生物的な滑りのある光沢の肌に、楽器に似た意匠を纏う鬼の戦士は、雑居ビルを踏み潰す程のサイズの白い未確認に跨がり、その背に刃を突き刺す。

いや、突き刺すのは刃ではない。

刃を備える、ギターにも似た長物は、邪悪、妖魔を滅する神具の一つ。

その名も音撃弦・閻魔。

ベルトのバックルに備えていた音撃震・極楽を閻魔に取り付け、弦を掻き鳴らす。

 

「音撃斬、閻魔裁き!」

 

演目を紹介する楽師の如く高らかに宣言すると共に、響き渡るのは清めの音。

人の耳、人の身体には一切悪影響のない、激しくも何処か神聖さを感じさせる音撃が、しかし巨大未確認の身体に響き渡れば、苦悶の声と共にその身体に罅が無数に走り……。

 

「はぁっ!」

 

爆散。

この音撃を叩き込むまでに撃ち込まれた神経断裂弾のお陰か、はたまた鬼自身の浴びせた拳や蹴り、雷撃などのお陰か、あるいは元から何らかの激しい肉体的負荷があったのか、巨大なサイの未確認は青白い炎を上げながら灰の山へと変わっていた。

 

そして、白い未確認を殺すのもまた白い戦士であった。

怪人ではない、科学の力で作られた機械の鎧。

白い未確認の如きくすんだ灰に近い白ではない純白の装甲は、正しく科学の騎士と呼ぶに相応しい。

十字架の如き金のバイザーから覗く視線が未確認を捉え、異様にマガジン部の長い銃の引き金を引く。

 

放たれるのは神経断裂弾、ではない。

警察ですらようやく量産体制が整ったばかりの弾丸を、警察関係者でない謎の白い戦士が持つ筈もなく。

しかし、僅かに絞られた引き金により、狂ったように銃口から吐き出された銀の弾丸は未確認の顔面を襲い、眼球を一時的に破壊する。

柔らかい部分を破壊され怯んだ未確認に、白い戦士が懐に潜り込み、拳を叩き込む。

体全体を捻るようにして左右の連打を繰り返す。

片手は無手、片手にベルトのバックルに装着されていたイクサナックル。

再生能力では対処しきれない、脳を揺さぶる連続フックにぐらつく未確認。

 

そのベルトに、高圧電流を纏ったイクサナックルが叩きつけられ、バックルを砕く。

それが未確認の身体能力に何らかの変化をもたらしたのか、動きを止める。

そこに、すかさず警官隊が神経断裂弾を打ち込み、絶命させた。

 

鬼の戦士の事を警官隊は知らない。

だが、人語で明確に助力を申し出てきた鬼の戦士は、四号という前例とこの緊急事態という事もあり、スムーズに受け入れられた。

白い科学の騎士の事を警官隊は知らされていない。

ただ、上層部よりの通達で、明確に敵ではない事だけが保証されていた。

四号を元に開発中の装甲服の事もあり、これも違和感なく受け入れられた。

 

突然の闖入者達。

しかし、既に混乱を極みにあった現場にあって、それは間違いなく力強い味方として受け入れられ、未確認の撃破へと貢献している。

例え、事態が収束した後に何らかの箝口令が敷かれたとしても、今この瞬間に人々を助ける力である事には何ら変わりない。

魔化魍との激戦の日々の中、唯一取れた休日で東京観光を楽しもうとしていた鬼の戦士も。

街で暴れ始めた未確認の群れを見て、上司の静止を振り切り参戦した白い鎧を纏う戦士も。

素顔や所属や正体を晒すことが出来ずとも、人々を守りたいという思いだけは、間違いなく共有している。

 

被害は大きい。

この日、東京に居た人間は誰であれ少なからず被害を被っただろう。

家族で住んでいる者は、その大半が何らかの形で家族を失ったかもしれない。

だが、戦況は収拾されつつあった。

ゲゲル省略という餌に乗せられたグロンギの戦士達はその殆どが改めて命を落とし、遺骸すら残さず灰になり、残るは数体。

 

「五代、ここは任せて、お前は行け!」

 

銃弾が切れたライフルを投げ捨て、製作中の新型装甲服に搭載予定だったナイフを手にした一条が叫ぶ。

その背後で一匹の未確認に剣を突き刺し灰にしていた五代は、その叫びに一瞬だけ逡巡する。

事態は収束しつつある。

しかし、現状が既に想定外なのだ。

一度に大量の未確認が連続殺人を開始した以上、ここから更に増えないとは誰にも言い切れない。

そこで自分が抜けて、被害が更に拡大でもしたら……。

 

「もう、寄り道はするな。二十二号と協力して……0号を倒して、冒険に戻れ」

 

静かな声に振り返る。

有無を言わさない、反論は許さないと、そう語る頑なな、不器用そうな赤い背中。

 

「ここまで君を付き合わせてしまって──」

 

「良かったと思ってます! 一条さんに会えたから、だから」

 

言葉を遮ったのは、謝ってほしくなかったから。

余計な道でも、無駄な時間でも、苦しいだけの戦いでも無かったと。

 

振り返る。

背中合わせに、どちらともなく、親指を立てる。

互いに向けた、互いが見ずとも分かるサムズアップ。

 

背中越しの別れ。

名を呼ぶ事もなく、五代と一条は、互いの戦いに向けて走り出す。

 

多くの犠牲者を出し、しかし、程なくして、東京の混乱は収まるだろう。

そこに、未確認生命体四号は、戦士クウガは必要ない。

旅人は、最後の戦いへと臨む。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

邪気のない、屈託のない笑い声が、吹き荒れる吹雪と打ち消し合う様に、しかし、絶えること無く九郎ヶ岳に響く。

怒りも無い、苦しみも無い。

ただただ、現世の穢れを知らぬ天使の様に無垢な喜びだけがある。

怒りも憎しみも苦しみも無く、ただ喜び、楽しみと共に、圧倒的な力が九郎ヶ岳を蹂躙する。

 

「はは、ははは!」

 

二十二号が笑う。

未確認ではない、人間としての彼ですら、ここ数年発したことの無いような笑い声。

無邪気な幼子の様な笑い声と共に、踊るように駆ける。

ボクシング、いや、まさにダンスの如きステップ。

蹴り足が捉えるのは雪原ではなく、形を失った大地。

一歩、また一歩と跳ねる度、その足場が爆発するように昇華されていく。

踏み込む脚先の雪も地面も高温のプラズマと化し、足先で精密に制御された爆発力が、見た目の身体の動きからは想像も付かない軌道を、そして、速度を生み出す。

不規則な、それこそ、連続して発生した爆発に吹き飛ばされ続ける様な動き。

しかし、鍛え上げられ、更に霊石の力により強化された体幹が、三半規管が、神経が、脳が、その軌道を完全に把握し掌握する。

浅く握るのは拳、脱力から生み出される最高の初速は、相対する敵/パートナーを、受け入れる/殺害する為。

手首、足首のコントロールリングは迸るモーフィングパワーを稲妻として迸り、次の瞬間にも無から如何なる凶器をも生み出すだろう。

 

「ははは! あははは!」

 

対するダグバも笑う。

常の彼と同じ様に、しかし、封印を解かれ現世に復活してから始めてと思う程に、腹の底から笑う。

堕ちた戦士を嗤うでもなく、ただただ祝福するように笑う。

その動きはまるで二十二号の鏡合わせ。

地に足を付けての技の潰し合いだったほんの少し前までが嘘だったかの様に、自在に空を駆ける。

たとえ相手に背を向けても、意識はただ相手にのみ向いている。

 

(プラズマ)を、或いは(プラズマ)を踏む超常のステップ。

目にも止まらない、いやさ目にも映らない立体軌道が、宙空で激突。

ぶつかり合う衝撃に、熱に、互いの肉体が激しく変形する。

頑強である筈の装甲はひしゃげ、肉は潰れ、骨は砕け、しかし、血の一滴すら流れないのは何故か。

それは、装甲の下、肉も骨も、インパクトの瞬間に流し込まれたモーフィングパワーにより強制的にプラズマ化されかけ、それを互いのモーフィングパワーで打ち消し、しかし打ち消し切れずに滞留、内部で熱エネルギーへと変化して炭化させているからだろう。

 

「は、は……」

 

「あはぁ……」

 

僅かな息切れ、しかし、それすらも笑い疲れた様に聞こえる。

苦痛が伴う筈だ。

ひしゃげた装甲は皮膚の変化であり、肉が潰れ骨が砕ける感触も、潰れて用をなさなくなった肉が焼き潰される感触も、一瞬の内に壊れた何もかもが再生する感触も。

それら全てが、数万倍に増幅された感覚器官によって脳を掻き回している筈だ。

常人なら、いや、如何な屈強な戦士でも泣きわめき転げ回る感覚の筈だ。

肉体が無事に再生されたとしても、心が折れる筈だ。

この戦いを見る者が居たとするのなら、そう思うだろう。

 

「ああ、あああ、ははは」

 

「ふふ、うう、ふふふふ」

 

立ち上がる。

それは苦痛を堪えながらではない。

ただ単に、直立する事が可能なまでに肉体が修復されたが故に立ち上がったに過ぎない。

そこに感慨はない。

ただ、楽しみを目の前にし、駆け寄る子供の様な喜びしかない。

 

ああ、なんと甘美な事だろう。

何度殴っても死なないだなんて。

肉を潰しても、骨を砕いても立ち上がるなんて。

 

ああ、なんと楽しい事だろう。

殺そうとする事が。

殺されそうになる事が。

 

殺しても殺しても、死なない。

そんな相手を、これから殺せるのだ。

 

互いの身体を真横に稲妻が貫く。

自然界でもそう見られない程の巨大な雷。

互い違いに、いや、何の予告も予兆もなく、互いが同時に放った致死性の雷撃。

真っ当な生物ならば、いや、そこらの化物でも容易く命を落とす規模の電流。

 

無傷、ではない。

互いが互いに、相手の肉を焼き、血を沸騰させ、揮発した脳細胞が頭蓋骨を内側から破裂させかねない程に圧迫した。

だが、どちらもそれを感じさせない。

 

手を相手に向け、早足に歩み寄る。

距離が詰まれば、ただ、掴み合い、殴り合う。

重い打撃音が続く。

時に血飛沫が舞い、時に炭化した血液が装甲の隙間から溢れる。

 

互いの拳が顎を正面から捉える。

下顎がぐしゃりと潰れ、しかし構わず殴り返す。

 

互いの手刀が肩口から入る。

まるで刃物と同じ様に抵抗なくその装甲を切り裂き、内部の胸骨と肋骨を、肺を切り裂き抜けていく。

 

血が、肉が、骨が、切り裂かれた装甲を、皮膚を内側から突き破り、撒き散らされる。

しかし、次の一撃を繰り出す時には、まるで経過した時間が倍速で巻き戻される様に、欠損は修復されていく。

 

「はははっ!」

 

白い、振り下ろし気味の右拳。

金の六本角に握り拳が切り裂かれ、しかし構わず振り下ろされ続ける拳が黒い複眼を叩き潰し、頭蓋を陥没させる。

 

「ああ、あ、はは!」

 

黒い、刳り込む様な左拳。

カウンター気味に振り抜かれたベルト狙いの一撃が、頭部を砕かれた衝撃で僅かにずれ、スパイクを生やした拳が鳩尾に文字通りに突き刺さり、心臓を破裂させる。

 

共に即死級のダメージ。

方や脳の幾らかを押し潰され、方や心臓を叩き潰され。

意識を失う様にぐらつき、しかし、踏みとどまる。

 

返す刀で自分が潰された部位を潰しに掛かる白と黒。

ほんの数秒前まで半死体になりかけていたその肉体に、目に見える損傷は残されていない。

倒れる瞬間に、或いは患部から敵の攻撃という異物が除去された瞬間に、霊石に、魔石に刻まれていた宿主の身体情報を元に完全に修復している。

 

許されない。

倒れる事は許されない。

眼の前の敵を打倒し、殺害するまでは。

倒れた相手の死体を踏みにじり、その死体の分だけ高みに登るまでは。

究極の力を得る為に。

究極の闇を齎す為に。

究極の闇になる為に。

 

「あはは!」

 

「ははは!」

 

拳を振るう。

先よりも力強く振るわれた拳が、先よりも頑強な装甲を割り。

蹴りが飛ぶ。

先よりも鋭くしなる蹴りが、先よりも力強い骨格を砕き。

稲妻が迸る。

余波だけで互いの背後にある山が削れ、沸騰して死滅した血肉がその側から再び脈動する。

 

終わらない。

倒れる事も負ける事も許されない。

何より。

 

「あはぁ……」

 

「は、はは……」

 

恍惚の溜息。

蒸発した血液の交じる赤い吐息が両者の口から漏れる。

この二人が。

この楽しい時間を終わらせる事を許さない。

 

一切手を緩める事無く。

全力で互いを殺そうとする二人が。

相手の生存を絶対に許さない二人が。

妥協も。

中断も。

生命も。

敗北も。

絶対に許しはしない。

 

地響き。

二体の怪物の戦いに呼応するように大地が鳴動する。

……いや、この地響きは人為的なものだ。

互いの肉体から止め処なく溢れ続けるモーフィングパワーが、決殺の意志を汲み取り、それを叶えんが為の武器を生成する。

最も身近にあり、巨大で、重く、避ける事の難しい武器。

如何なる生命も生存を許されない灼熱の迸りが、無意識の意図を汲み取り前人未到の巨大兵器を作り出す。

 

構える。

互いに逃げるという思考はない。

しかし、決して相手をこの場から逃さぬ為に。

この場で確実に殺す為に。

 

山が吠える。

猶予は幾ばくか。

あと何時間か何分か。

九郎ヶ岳地下深くに眠る炎の龍が目覚める。

山岳を砲身に、指向性を与えられたマグマが、この場に居る相手を焼き尽くすために発射される。

 

楽しい。

だから殺す。

絶対に。

今度こそ、封印などという半端な決着を絶対に許さない。

 

たとえこの地を、この国を焼き払う事になろうとも、絶対に殺す。

たとえその後に死ぬとしても、生きていけない様な世界にしたとしても。

眼の前に居る相手を絶対に殺すのだ。

 

誰を巻き込もうと。

例えここで終わろうと。

世界がここで途絶えるとしても。

この先に世界全てを燃やし尽くしてでも。

 

「はは、ははは、ははははははははははは!!!」

 

―――――――――――――――――――

 

拳を振るう。

絵に描いたようなテレフォンパンチ。

脚を踏ん張り、腰を捻り、全身の強化された筋肉と骨格と筋の力を乗せた拳を相手に振るう。

それを相手が避けないのを知っている。

眼の前の相手が、同じ様な見え見えの拳を向けているから。

 

衝撃。

脳天を貫く様な衝撃。

いや、実際に穿いているのだろう。

打たれた瞬間異様に頭が軽くなる。

頭の上に乗せたバケツの水を捨てるような重さの変化。

爽快さすらある。

次の瞬間に満たされ、元の重さを取り戻す。

 

今考えているのは何処だろう。

俺が考えているのか。

天使の力が考えているのか。

霊石が考えているのか。

 

俺は何を考えていたのだろう。

なんで考えていたのだろう。

世の中は、こんなにも簡単だったのに。

 

拳を戻す勢いで身体をひねる。

考えて動いているのかわからない。

だが、反対の腕が拳を作っている。

狙うのは勿論弱点。

ボディ、下腹部、ベルト。

砕けば殺せる。

相手も同じ事をしている。

避けるものか。

例え砕かれたとして、砕けば勝ちだ。

殺せるのだ。

 

ああ、でも、無理な姿勢だ。

下腹部を殴る、というのは、存外に難しい。

おなかがすーすーする。

この山の空気は寒い。

でも、相手のお腹の中は温かい。

呼吸するだけで口から熱い何かが溢れる。

どれだけ息を吸っても、先にある肺が一つ無いから苦しいままだ。

苦しい、苦しい、水っぽくて苦しい、鉄っぽくて苦しい。

なのに、今までで、一番楽に息ができている。

 

頭が吹き飛ぶ度に。

頭を吹き飛ばす度に。

頭の中に渦巻いていた不安が消えていく。

 

お腹が貫かれる度に。

お腹を貫く度に。

お腹にずっしりと溜まっていた憤りが吐き出されていく。

 

死ぬかもしれない。

こんなバカみたいな戦いをして。

こんな化物みたいな戦いをして。

でも、たぶん、お腹の中のアマダムが壊された瞬間に、呆気なく終わってしまうのがわかる。

 

拳が硬い、何かが割れる感触を捉える。

お腹の上で、何かが割れる感触を捉える。

全身に電流が走るようだ。

護れ、と、それが今のお前の命だぞ、と、必死に告げている気がする。

 

だけど、それがなんだというのだろう。

死ぬ。

戦って死ぬ。

それに何の不思議がある。

戦って、負ければ、普通は死ぬ。

生まれてくれば死ぬ。

生きていれば勝手に死ぬ。

今日死ぬのと、明日死ぬのと、十年後に死ぬのと、百年後に死ぬのと。

そこに何の違いがある。

 

馬鹿馬鹿しい。

何故命を惜しんでいた。

命を乗せて拳を振るのは。

こんなに楽しいのに。

悩みながら、不安を抱えながら、おっかなびっくり生き足掻くより、よっぽど、充実している。

他の何も、何も要らない。

ただ、戦いだけが、痛みだけが、命だけが、死だけが。

何もかもを忘れさせてくれる。

この地獄の様な世界を、未来への不安も。

何もかも────

 

『あいあおう』

 

―――――――――――――――――――

 

それは。

 

『あいあおう』

 

何時かの夕食。

口元を拭かれ、手にはスプーンを持ったままの、子供の様な無邪気な笑顔。

 

「へえー、どのへん? 教えてあげよっか」

 

ある日の学校での一幕。

前の席に座り、少しの優越感が垣間見える悪戯な笑顔。

 

『えあい、えあい』

 

散歩の最中。

誰が知るでもない努力を、どんな意図からか、称賛するような、でも、何故か少し誇らしげな笑顔。

 

「ありがと! 大切にするね!」

 

祭りの後。

夕日の中、なんてことのないプレゼントを胸元に掻き抱く、少し大袈裟にも思える、はにかむような笑顔。

 

そして。

 

「……」

 

責めるでもなく、ただ病室へと送り出される。

白いベッドに横たわる、無数のチューブに繋がれた、眠るような姿。

 

―――――――――――――――――――

 

ばん、と、激しい破裂音が響いた。

頭蓋が破裂する音でもない。

胴体が貫かれる水音混じりの破砕音でもない。

 

頭部を狙ったダグバの拳を、二十二号が手の甲でいなした。

破壊力を殺しきれず、二十二号の黒い装甲は弾け飛び、ダグバの白い装甲も削れている。

 

ダグバは疑問を覚えない。

戦い方が変わっただけだ。

さっきまでの戦いも楽しかった。

けど、最初の技の出し合いも楽しかった。

だから、殴り合うだけじゃなくて、殴ったり、守ったり、そういう戦いも楽しい。

 

「ははは」

 

笑う。

ただ、笑い声は一人分。

 

「ふぅぅぅ……」

 

長い息。

両脇を締め、腰を低く。

姿勢を正し、息を整える。

それだけで、二十二号の雰囲気が変わる。

 

そこに、頭部を吹き飛ばさんとする容赦のないダグバの拳。

それに、反撃するでもなく身体を逸し、避ける。

 

拳が振るわれる。

それをいなす。

蹴りが飛ぶ。

避ける。

稲妻が迸る。

指向性を持たせて逸らす。

 

互いの力は互角だ。

学習速度も、同じ力を根底に持つが故に互角。

そして、技量もまた互角。

ダグバが学んだ様に、二十二号もまたダグバの技を、癖を学んでいる。

 

攻めるだけ、受けるだけ。

互いにそれを徹底すれば、あるのはただの千日手。

勝つことも、負けることも無い。

決着はつかず、しかし、時間だけは過ぎる。

 

そして、この場において時間はダグバの味方だ。

二十二号が無意識のモーフィングパワー放出を止めたとはいえ、ダグバは既に意識的に地球の、地殻の、マグマの武器化を続けている。

時間を置けば九郎ヶ岳は元が火山だったか否かに関わらず噴火し、更にモーフィングパワーによる刺激を受け地脈が活性化し、日本中の休眠中の火山が活動を再開する。

 

「悪い」

 

ダグバの手刀が飛ぶ。

桜花の型を崩して作られた、カウンターではない、純粋な攻めの、殺しの技術。

絡め取る。

一点に込められた力で相手を貫くのではなく、一点に込められた力を犠牲に生き残る。

桜花同士だからこそ可能な受けの技術。

ダグバの手刀とそれを受けた二十二号の手刀が、絡まりながら肩口から千切れ飛ぶ。

 

「死にたくない……いや、死ぬわけにはいかなくて(・・・・・・・・・・・)な」

 

片腕のダグバ。

片腕の二十二号。

 

「だから」

 

向かい合う二体の構えは、やはり桜花。

二十二号のそれに合わせるように、ダグバが構える。

二対の黒い瞳が……いや、黒と、輝く金の瞳が絡み合う。

 

「死ね」

 

クロスカウンター。

互いに避ける事も、相殺する事も選ばない。

手刀が狙うのは首。

互いの手刀が、腕を絡ませる様にして互いの首を捕らえる。

装甲を貫き、喉を潰し。

 

ダグバの桜花が僅かに鋭い。

最適化されたダグバの桜花は、二十二号の首の骨を粉砕し、貫通している。

脳と肉体の神経の繋がりを断たれた二十二号の身体から力が抜け、金に輝く瞳が光を失い──

 

「桜花」

 

再び、眩く光を放つ。

ダグバが二十二号の生存に僅かに笑みを零し──

 

「二度咲き」

 

上半身を爆散させた。

血霞と化したダグバの上半身が二十二号と周囲の雪を赤く染め、残された下半身がゆっくりと後ろに倒れ込む。

その場に立ち尽くすのは、喉を前から後ろまでダグバの腕に貫かれた二十二号のみ。

 

赤心少林拳黒沼流奥義、桜花の型。

改め、桜花二度咲き。

 

全身の気を一点に集め、相手の攻撃の力すらも合わせて相手を貫く必殺の手刀。

そして相手を貫いた手刀は、相手の体内で周囲の細胞ごと、気の集められた手刀全てを神経断裂弾と同種の多段爆薬と化し、強化神経ごと相手の肉体を吹き飛ばす。

連鎖爆発により魔石の神経より切り離された体内の血肉もその瞬間にモーフィングパワーにより爆薬と化し、更にその爆発により死んだ細胞を爆薬と化し……。

突き刺した手刀を起点に、相手の肉体そのものを連鎖的に一つの爆弾と化す。

 

伸びた手刀という枝の先に、血の華と火の華を時間差で咲かせ、最終的には相手の肉体をこそ満開の桜の如く開花(・・)させる。

黒沼流を収め、アマダムの力を深く理解するものだけに許される一撃。

霊石魔石が最も変化させやすい、人間の肉体そのものを使い捨ての武器に変換するという、元からモーフィングパワーの運用を熟知しているダグバでは、気付くのに一瞬遅れてしまう盲点にある技術。

ゲゲルという儀式の一環として自らを変じさせる事に馴染んでいたダグバと、あくまでも技術、能力の一つとして受け入れていた二十二号。

その小さな差が、この場の勝敗を決したのである。

 

二十二号が、再生した腕で喉からダグバの腕を引き抜き、乱雑に投げ捨てる。

その場に崩れるように膝を付き、ダグバのベルトへと手を伸ばす。

全身に、神経か筋繊維か分からなくなるほどにびっしりと張り巡らされたダグバのゲブロンはしかし、まるでそうあるのが自然であると言わんばかりに、あっさりと引き抜かれた。

ベルトもまた同様である。

それは、優勝者にトロフィーが与えられるかの如く、何の抵抗もなく二十二号の手の中に収まった。

血の一滴も無い、砕けた後すらデザインの内とでも言わんばかりに。

 

―――――――――――――――――――

 

「なにが、究極の闇を齎すもの、だ」

 

立ち上がり、手の中にあるベルトを握りしめ、死体を見下ろして吐き捨てる。

究極の力?

何が究極なものか。

所詮、一年目の通過点、中ボスマンの癖に、大仰なんだよ。

 

「でも」

 

ちょっとだけ、

 

「楽しかったぜ」

 

視界が暗転する。

力が入らない。

身体が言うことを聞かない。

不味い。

流石に無茶を続けすぎたか。

変身が解けてしまったら、後から来るかもしれない五代さんに、正体が……。

 

と、倒れ込む途中で、身体が何かにぶつかり支えられる。

顔を預けるそれは、どうにもきぐるみの様な柔軟性もある。

霞みつつある視界には、赤い装甲。

ああ、五代さんか。

間に合わなかったのか、なんて責める事もできない。

むしろ、こんな短時間でよくぞ。

 

「勝ちました……俺、一人、でも、一人じゃ……な……」

 

意識が遠のく。

ああ、警察に突き出さないで、とか、言っておくべきなのに。

今は、それより。

帰って、じると、くらすめいとのひとの、みまいに……。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

金の力を使いすぎ、一時的に石に戻ってしまったゴウラムを使う事もできず、ビートチェイサーで長野まで飛ばしてきた五代が見たのは、正しく激戦の跡だった。

崩れた山、燃え盛る木々、割れた大地、爆発でもあったかの様なクレーター。

辺りには肉片と骨片、臓物。

それだけで、どれだけの凄惨な戦いが繰り広げられたかが分かる。

 

風が止み、しかし、深々と雪が降り続いている九郎ヶ岳の中を、五代は途方に暮れるように歩く。

戦いの音は聞こえない。

それが雪に音を吸われての事なのか、ただ戦いが終わったからなのか。

 

全ては終わってしまったのか。

頼って貰えたのに、伸ばされた手を掴んであげる事もできなかったのか。

名を呼ぼうとして、しかし、呼ぶべき名前すら知らない事を思い出す。

無言で山中を歩く。

数分としない内に、それを目にした。

 

赤く染まった雪原。

倒れ伏す、人間と怪人のモザイクと化した死体の下半身。

ぐったりと力を失い崩折れている二十二号。

そして、そんな二十二号を優しく支える、赤い人影。

 

「君は」

 

四号に似た、クウガに似た姿を持つ二十二号。

その二十二号に似た、しかし、明らかにクウガとは違う姿。

赤い、真紅の戦士。

赤のクウガと比べてもなお赤い。

まるで東京を襲った白い未確認。

その灰に似た白を、そのまま全て血の赤に染めたような。

二十二号をそのまま赤く塗りつぶした様な、しかし、どこか柔らかなラインを持つ異形。

美しさすら感じさせるその戦士は、二十二号から視線を外さない。

五代に視線すら向けず、二十二号の頭を愛おしげに撫で付ける。

 

「ゲゲルは終わりだ。お前の出番はもう無い」

 

二十二号の声とは、当然ながら違う。

幼さの残る、いや、明らかに幼い、少女の声。

込められた感情は酷く冷たい。

突き放す様な言い草。

しかし、五代はそれに反駁する事もできない。

だが、問わずにはいられない。

 

「君は、君たちは、何だったの」

 

言葉を交わす事はできた。

だが、彼等が何なのか、それを一切知らない。

年若く、戦う事に苦悩を持ち、それでも戦う事を止めない。

何故。

その思いが、かつて一度向かい合った時から、五代の胸から離れずにいた。

 

真紅の戦士が、脱力したままの二十二号を抱え上げる。

五代に背を向け、空を仰ぐ。

 

「──アギト」

 

曇天の空から、バイクを引き伸ばした様な赤い機械が降り立つ。

二十二号を抱えた真紅の戦士はその機械に跨がり、五代に一瞥もくれる事無く、その場を飛び立った。

同時に、周囲で火柱が上がり始める。

飛び散った血液が、肉片が、骨片が。

戦いの証拠となる戦士達の断片が残らず燃焼を始めたのだ。

 

「アギト……」

 

その言葉が何を意味するのか。

明確な答えを示す者は無く。

ただ、悲しそうに空を仰ぐ五代だけが、グロンギの終焉の地に残された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 







クウガ編、おしまい!

☆ヒロイン二人で確定食いしばりマン
ヒロインちゃんとの思い出だけだと踏みとどまれるかは半々くらい
クラスメイトロインちゃんの思い出も合わせ、見舞いの約束をする事で聖なる泉の底が割れて新しい水源が吹き出すぞ!
絶望的なオチとかを予想されていた方が居たら申し訳ないけど、話の展開に困ったりするのであんまり主人公はいじめないタチなんだ……あなた騙されちゃったの!
ここまでさんざん残虐超人みたいな戦いしてきて最後の最後でそういう戻り方をするのか、みたいな感想もあるかもしれないけど
でも少なくともヒロインとの回想シーンで究極の闇を齎すものから立ち返るシーンは結構前から決まっていたので仕方ないのだ
決まる前はダグバのベルトを掲げて東京タワーのてっぺんとかで高笑いして画面フェードアウト、みたいなエンディングもちょっと考えてた
残虐超人ルートを通り続けるとワンパになるからね、仕方ないね
気絶してもダグバのベルトは手放さなかった
というか、ダグバのベルトの方から手の中に収まり続けた
不思議

☆回想シーン
時系列は割りと順不同
でもアークルには人工知能が搭載されてる説(五代さんがレッドアイでアルティメットになった時に新たな文が浮かび上がった為)もあるから、案外アークルの方で宿主を正気に戻すために差し込んだ回想シーンである可能性も
サンキューベルトさん!
皆もベルトさんを目標にしてクリスペプラーのものまねを練習してみよう!
一期のベルトはシャイで口下手な方々が多いけど、それも魅力の一つだったよなと思いませんか

☆一般警察のみなさん
対策班には確かに神経断裂弾が配布されていた筈だけど、東京が襲われたので地域の警官はやはり普段どおりの装備で立ち向かったんだよなと思うと凄い
そんな彼等を救ったのがこちら

☆一般通過音撃戦士
後の過労死マンである
某日曜朝8時から尻丸出しマンとは異なりリアルには死なないばっかりに過労死しそうなまま戦い続ける事になる
この時代でもそうだった
しかし、そんな忙しい日々の中、後輩の家電に詳しそうな音撃戦士がシフトを変わってくれて暫くぶりの休日!
さぁ、東京で遊ぶぞ年甲斐もなくはしゃぐぞー!
とかやった瞬間に目の前に乗用車が飛んできて爆発したりした
逃れられない超過労働の運命!
自らすすんで修行を受けて鬼になんてなろうとする男が、眼の前で死にそうな人達を助けずに居る事は不可能なのだ

☆一般通過青空の会随一のハンター
今までは四号だの二十二号が出張ってきたし、情報が手に入った頃には未確認も撃破されていたけど、未確認による被害に心を痛めていた聖人
ステゴロ殺法は聖人の特権……という訳ではなく、イクサカリバー含む武装はその大半が完全にアンチファンガイアシステムであり、一番相手を選ばないのが馬力任せに殴るのと単純な電磁投射兵器であるイクサナックルだったというだけの話
あとこの時点のバージョンでその他武装がどんだけ完成してるかなってのもあるので、確実にある武装だけで登場した感もある
再登場するにしてもその時には中身も代替わりしてるだろうから、別に現時点の中身が殴る時に鋭く行ったり重く行ったりするおかん系元ヤンねーちゃんとかでも構わないけど……キャラ増やすと管理が面倒なので普通に消えます、さらば
因みにベルトに電流パンチは相手によってはパワーアップするので慎重にね!
整理されるような連中なら問題ないけどね!

☆一条さん
一条さんにG1とGK-06ユニコーンが合わさり最強に見える
いや、本気で
え、ユニコーンはG3じゃなくてG3Xの専用装備だって?
武装だけは現時点で試作されていたとか、二十二号が刃物を多用してたから万が一の時の対抗策として取り回しの良い刃物が優先的に作られた可能性もあるんじゃないかなって思う

☆五代さん
間に合わなかったけど気にすんな!
実は最初からこの人と二十二号を共闘させるつもりは無かった。
だって単純に片方がダグバのモーフィングパワー封じてもう片方がモーフィングパワーで焼くなりすれば簡単に勝てちゃいそうだし……
気にすんなと言われても気にする
心穏やかなまま旅立つ事は出来なかったけど、実は小説版に繋がるルートだと仮定すると元からそうなんやで
海外で知り合った仮面の戦士に旅先でアギトについて訪ねたりするかもしれない
元悪の組織の義手仮面マンパイセンに聞いたらその時点で世界観破壊レベルの原作崩壊が起こるから旅立った後は普通にストレンジジャーニーに徹するんじゃないかな
その中で出会う、元人間のオルフェノクとかいう真っ当に生きれば生きるほど悲劇にしかならない種族……これは曇る
何処に曇らずに旅できる国があるんだこの世界
人が居なくて自然が無くてアンデッドもファンガイアも寄り付かない場所があればたぶんそこ
不毛地帯かな

☆ダグバ君
ダグバがクウガに怒りを覚えていた理由は、自分に勝ったのに自分を殺さなかったから、だそうで
そう考えると今回ばかりは満足して成仏したんじゃないかなって
戦って戦って、その先に負けて死んだので一切の悔いがないためオルフェノク化はできない
というか上半身が吹き飛んでるのでどちらにしても復活は無い
桜花のクロスカウンターに持ち込めたのはダグバが相手のやろうとする戦い方に合わせてくれるから
串刺しとかそういうのが好みなんだね、くらいの感覚で合わせてくれた

☆ダグバのベルト
不自然な程に自然に取れた
元からそういうシステムなのかもしれない
ひび割れてるけどひび割れてるだけでパーツ欠損は無い

☆赤心少林拳黒沼流奥義桜花の型が崩し、桜花二度咲き
解説どおりの必殺技です
基本エルとかテオスみたいな同種能力の同等か上位互換みたいなの以外は確殺
使う機会は今後たぶんそんなに無い
通じないか、使う前に相手が死ぬかするので

☆推奨BGM
雪山の中で無数の火柱に囲まれた五代さんが悲しげな表情で空を見上げて、そこから画面が引いていってアギトの引きの画面、暗転してスタッフロールと共にアギトOP、どぅどぅんでんででん♪
え、「青空になる」は、って?
青空にはならない

☆真紅の戦士
1,無着色のアギトの線画を用意します
2,全部赤く染めます
でーきまーしたー
何者なのかは不明
二十二号への好感度が高い
でもゲゲルとかいう専門用語は知ってる
何者なのかは不明なのだ(念押し)
独自設定の塊ちゃん
世界観繋げてる時点でその辺はお察しください



次回からたぶんアギト編突入
嘘予告か番外編的に仮面ライダースピリッツ編とかも何時か書いてみたい
書けたら書く
でも続きの方を先に書く





☆追記☆
ゴウラムは生き残りました
たぶんプロトアークルとはリンクしてない……はず


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15 幕間、流れは途絶える事無く

ダグバが死んだ。

いや、万が一の可能性として残された下半身から復活する可能性もあったのだが、奇妙な確信がある。

ン・ダグバ・ゼバは死んだのだ。

例え、あの場で復活する事ができたとして。

決してそれは選ばれなかったのだろう。

 

相手を殺して勝つ。

負ければ死ぬ。

 

俺がそう望んで。

奴もまたそう望んだ。

完全な決着。

 

「……」

 

目を開けると、白い肌、白い髪。

細められた赤い瞳があった。

優しげな顔だ。

ぼうっとしてるか、歯をむき出しにした子供のような笑顔ばかりが印象に残っているが、こういう柔らかい表情もできるらしい。

横向きに見える優しげな笑顔に、意識せず言葉が口からこぼれた。

 

「ただいま」

 

『おあえい』

 

視界が暗くなる。

前屈みになったジルに頭を抱えられているらしい。

慎ましやか……というには、些か良好に発達した柔らかな双丘が顔面に押し付けられ、膝枕をされていたのだなぁ、と理解が及ぶ。

息を大きく吸い込むと、嗅ぎ慣れたこいつの匂い。

使っている石鹸は異なれど、浸かる湯船は同じなのだ。

匂いが混ざるのは仕方のない事だろう。

しかし、それでもこいつからは自分にはない、元の種族を考えれば似つかわしくないと言わざるを得ない心が安らぐ匂いを感じる。

 

帰ってきた。

勿論、当初の予定では余裕で勝って帰ってくる予定だったのだけど。

予定が崩れて、想定よりも苦戦して。

それでも、帰ってきた。

 

これから、まだまだ続けていかなければならないのだけれど。

それでも、最初の山場を乗り越えた事に安堵を覚える。

 

……いや、待て。

帰ってきたって、何処にだ。

俺はあの九郎ヶ岳で意識を失って、ギリギリのところで五代さんに抱えられて……。

その場で目覚めた訳ではないはずだ。

 

あの日、東京に無数の白い未確認が現れた、というニュースを聞き、流石に一度東京にジルを連れ出す言い訳が思いつかず、自宅に置いてきた。

理想はジルを東京の父さんのアパートに預けてから長野にマシントルネイダーで向かうことだったのだが……。

ジルがあの時点で自宅から長野まで移動する手段は無い。

 

ぐい、と、手で押して伸し掛かっていたジルの上半身をどけて起き上がる。

周囲は見慣れた木々の中。

稀に魔化魍が現れるものの、沢もありキャンプなどで人が訪れる場合もまぁまぁある地元の隠れた癒やしスポットだ。

最近は熊などの目撃情報があったりなかったりするのでそれほど人の入りは良くないが、お蔭で鍛錬を積む場所の一つとして重宝していた。

ベンチ代わりにしていた倒木の上に寝かせられていたらしい。

 

「ジル、俺はどうやってここまで来た。お前はなんでここに居る」

 

俺の問に、ジルはしばし考え、口を開こうとしてやめ、立ち上がり、なにやらウネウネと怪しい踊りを……あ、ジェスチャーか。

わたし、一人で、散歩に来たら。

空から、でかい……長い? 手首クイッ……バイクが。

だらけた猫……倒れた? 俺が、落ちてきた。

 

ふむ。

こいつの証言を信じるのなら、どうやら朝からゆっくりと休憩を挟みながらいつもの散歩コースを歩いていたら、折り返し地点のこの森の中にマシントルネイダーが降りてきて、そこから意識を失った俺が転げ落ちてきた、らしい。

 

なるほど、言われてみれば、視界の端には俺がスクラップから組み上げたバイクが無造作に転がっている。

あの状態で五代さんから逃げられた理由がわからんが……恐ろしい事に、アギトは無意識の内に身体が動いて敵を倒したり、という事もやってのけてしまう。

絶対に正体バレをおこしたくないが故に、無意識の内にマシントルネイダーを呼び出して五代さんを振り切って逃走した、という事も無くは無いだろう。

一度も使ったことはないが、俺も一応はゴウラムに対して干渉が可能なはずだ。

追跡されたとして、マシントルネイダーの飛行形態の速度と妨害を合わせれば振り切るのは難しくない。

 

……出来すぎた話だ、とは思うのだが。

そも完全なアギトへの目覚めからして戦闘中に頭蹴っ飛ばされたショックで、という、出来すぎたミラクルで成してしまっている以上、完全に否定するのは難しい。

 

「携帯持ってるか」

 

こくりと頷き、家に置いてあった俺の携帯を手渡してきた。

費用の関係、というより、だいたいの場合は一緒に行動している為に俺とジルの携帯は共用だ。

ジルのリハビリが進み、完全に一人で出歩けるようになったらジル用の携帯も契約する予定なのだとか。

俺は今使っているので不便ないのでそのままでいいのだが……。

スマブレを無事に滅ぼせたらファイズフォンなりカイザフォンなりが欲しかったりもする。

いっそ一般機種の外装を弄って自作してしまうのも手か。

それはともかく、携帯の画面を確認。

日付は……日曜日。

なんと、ダグバと戦ってからまだ四分の一日しか経っていない。

疲れから丸一日経過している、とか、気付けば一週間経って天使がアギト狩りを始めていた、なんて事態もありえるかと思っていただけに少し拍子抜けだ。

 

「……あ、母さん? うん、ごめん。……うん、大丈夫、用事は終わったから。お昼作っちゃった? ……いや、今日は外で食べてこようかなって。……うん、うん、わかってる。レシートね。ありがと。それじゃ」

 

急ぎ家に電話を繋ぎ、結局無断での外泊になってしまったことを謝る。

が、予想外になんでもない風に流されてしまい、そのまま昼は作らなくても良い旨を伝える。

……前の親の時は無断外泊とかはなかったからわからないのだけど、東京で謎の怪人軍団が現れた日に外に出かけて、結局なんの連絡も無しに一泊して帰ってきた子供に対する反応はこれで正常なのだろうか。

 

何かがおかしい気もする。

気もするが、気にしても仕方がない部分はどうしても出てくると思う。

いっそ、母さんが昭和組織のどこかの幹部級怪人で組織の壊滅と共に足抜けして主婦やってる、くらいの方が安全面に気を使わなくて済むのだけど、流石にそこまで大事ではないだろう、たぶん。

肉体を大きく改造しているのなら、流石に身体が出す音に違和感を覚えるくらいはあるはずだ。

……そんな違和感とか人間態での無改造体との差異を完全にごまかせる程の技術力なんだよ、と、言われてしまえばそれまでなのだけど。

 

逆にそうなら頼もしいので良しとする。

もう、オルフェノクとかファンガイアとかワーム系列と関わりが無いならなんでもいい。

いっそ白くて細身のゼクロスみたいな変身体だったりすると大変助かる。

黒沼流の師範代の人が生き残ってる上にバダンシンドロームなどの言葉が出ていない以上、あっちの方のややこしい話は無いものと見ていいし。

そうなると父さんの方が心配になってくるが……。

たぶん、昨日の騒動を生き残っていたとして、今は事後処理で忙しくて家族からの電話とか受けられないだろう。

というか、そういう訃報があったりしたら母さんの声がもっと沈んでいるはずだ。

 

グロンギは滅んだ。

いや、多少の生き残りは居る。

何処に居るかも判る。

だが、奴らは手の内だ。

目が覚めてから、奇妙とも思えるほどに魔石ゲブロンへの探知範囲が広がっている。

近い内に最低でもゲゲルリングは破壊しにいかなければならないし、運営側であるラの二人は抹殺しなければならないが、それもそう問題にはならない。

現状、まともにゲゲルを遂行できる基準に達したグロンギは存在しないのだから。

 

「んー……」

 

大きく背筋を伸ばす。

それなりの時間を睡眠に費やしたからか、身体には不自然な程に疲れが無い。

勿論、裂けた腕、もげた腕、貫かれた首も背骨も、半分くらいになった頭も、死に際のマモちゃんみたいになったお腹も、一切ダメージは無い。

倒木に寝かせられていたというのに、こりもほとんど無い。

枕は心理的な諸々を無視すれば極めて良質だったのも大きいのかもしれないが。

 

「終わった」

 

終わってはいないのだけど。

決して終わってはいないのだけど。

まだまだ人類を脅かす、俺の平和な人生を脅かす諸々は健在なのだけど。

それでも、今だけは言っていいだろう。

終わったのだ、ひとまず。

 

空を見上げる。

雲ひとつ無い青空、とはいかない。

むしろ雲の方が多いけれど。

雨雲というわけではないし。

隙間から少し青空も覗いていて。

太陽も運良く雲の隙間から日差しを見せている。

 

逆に、この時期はこれくらいの方が風情があるし過ごしやすい。

 

「行くぞ。まずは昼飯だ」

 

手を伸ばす。

手を掴まれる。

掴まれた手を握り返し、歩き出す。

 

さあ。

久しぶりの、休日だ。

 

―――――――――――――――――――

 

・未確認生命体二十二号/セバスと呼ばれる少年

『死にたくない』という願いから試製アークルを巻いた超能力少年。

オルフェノクを殺し、魔化魍と戦い、グロンギを滅ぼした。

片手の中には現時点での最強の敵、ン・ダグバ・ゼバのベルト、ゲドルードのバックルとゲブロン。

もう片方の手には、自らが殺し損ね、多くを損なったまま生かしてしまった少女の手を握り、束の間の休日を楽しむ。

積み重なったままの諸々の問題について考えを巡らせるのは、また明日以降になるだろう。

 

―――――――――――――――――――

 

・ジル/かつてズ・グジル・ギであった少女

元ゲゲルムセギジャジャにして脱落者。

背を裂かれ、腹を裂かれ、ゲドルードを砕かれ、ゲブロンを奪われた。

変身能力、再生能力を失い、後遺症として記憶すら無くし、身体は虚弱体質に。

ズ・グジル・ギであったことを知るものは少ない。

身体の傷は残り続け、しかし、確実に快方に向かっている。

彼女の身体が彼女の意のままに動く日は、決して遠くはない。

今日も彼女は少年に手を引かれ、背を眺めながらゆっくりと歩く。

背を見つめる彼女の表情は、楽しげである。

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

一月二十一日、東京。

狂乱の一夜が明け、東京にもまた夜明けが訪れていた。

崩れ落ちたビル、そこいらに転がる無残な死体の山、白いグロンギが変じた灰の山。

 

「終わった、か」

 

がしゃ、と、コンバットナイフを腰部にマウントしながら、一条が呟く。

全身に血液の代わりに鉛が流れているのではないか、と思う程の疲労感。

後頭部にあるスイッチを押し、頭部装甲を外す。

むわ、と、汗が蒸気の様に吹き出した。

忙しさにかまけて伸ばしっぱなしの髪が汗でべたつく。

一月の冷たい大気が僅かに心地よく、しかし、それを上回る程に不快な匂いに眉をしかめる。

 

それは血と臓物の匂い、何かが焦げる匂い、何かが燃える匂い。

鳴り響くサイレンは聞き慣れたパトカーのそれではなく、救急車や消防車のそれだ。

大量の未確認の出現により出動できずに居た彼らが、ようやく動き出せる様になったのである。

 

無線から聞こえるのは、出現した全ての未確認撃退の知らせ。

東京都内、警察の感知できる範囲での未確認の活動は終わったらしい。

少なくとも、現時点でまだ活動している未確認を警察は確認できていない。

 

「……」

 

ぐ、と、手を握る。

今、一条には力があった。

それは五代雄介の、クウガのそれを模した力。

仮にここから新たに未確認が出現したとしても、一条が多少の無茶をすれば、幾らかは撃退できるだろう。

だが……。

手の中に、感触が残っていた。

 

それは拳が肉を打つ感触であり、骨を砕く感触であり。

手に握った刃物が肉を断ち、命を断つ感触。

余りにも生々しい、生き物を殺す感触。

 

警察という職業柄、暴力に関わることは多い。

一条自身、剣道、柔道を修め、銃器などを用いずとも人間の犯罪者を無力化し確保することは可能であるし、幾度となく職務として熟してきた。

だが、これは違う、あまりにも違う。

これは、殺しだ。

生命の本質に近すぎる、最も原始的な暴力。

 

相手が殺人を繰り返す怪人である、という事実はある。

説得が不可能である、という事も。

殺さずに無力化する事が難しい相手である事も理解して、しかし、それでも。

手に残る感触は、生き物を、人に近い生き物を殺すものだ。

 

この強化服を着て戦って、改めてわかった。

自分はわかった気になっていただけなのかもしれない。

生き物を、あるいは人と呼べるかもしれないものを殺しているのだと。

それを、あんな、こんな事に関わるべきではない、気のいい旅人に押し付けるべきではなかったのだ。

 

「五代……」

 

別れ際に、顔を合わせる事すら出来なかった。

それで良かった、もうこんな事件に関わらず、旅に戻って貰うためには。

だが、もう少し、何かを言ってやれたのではないか。

この一夜の中で現れた、四十前後の未確認。

それを上回る数を、実質一人で撃退してのけた……殺してしまった事を、きっと五代は抱え続けてしまうだろう。

なら──

 

「一条、無事だったか!」

 

自らの拳をじっと見つめる一条に、同僚である杉田が駆け寄る。

頭に血の滲む包帯を巻き、服も所々ボロボロになっている姿は、一条以外の合同捜査本部の面子も奮戦を繰り広げていた事を物語っている。

そして、戦っていたのは合同捜査本部だけではない。

通常装備しか充てがわれていない所轄の刑事達ですら、逃げること無く未確認に立ち向かい、身体を張って市民の避難を続けていたのだろう。

それは、未だに弔う事すら出来ずに転がされている制服姿の死体を見れば嫌でも判る。

 

「はい、杉田さんもご無事で」

 

答えながら、思う。

無事だったのは、幸運だったからに過ぎない。

幸運にも、自分でも使える装甲服の試作品が完成していて、持ち出す事ができた。

幸運にも、素性の知れない助っ人が手を貸してくれ、全体の負担を減らす事ができた。

 

これまでだってそうだ。

幸運にも、得た力を正しく使える、五代の様な男がクウガになれたから。

幸運にも、五代と同じ力を持ちながら、最低限人を巻き込むこと無く戦う程度の良識を二十二号が残していたから。

 

「疲れてるところ悪いけどな、これから補給を済ませてから事後処理だ。ようやく鑑識も入れるだろうからな」

 

「その前に、救助が入らなければならないでしょうが……」

 

杉田に先導されながら、一条は思う。

先を見なければならない。

戦って、勝って、生き残って終わりではいけない。

運良く勝てた、運良く生き残れた、では。

 

運良く居合わせた、不運にも力を得てしまった民間人に頼るのではない。

自分達が、可能な限りの力を尽くさなければならないのだ。

あの気のいい旅人が、ただの旅人で居られる様に。

あるいは、二十二号が、二十二号ではない、本当の名前で居られる様に。

 

―――――――――――――――――――

・一条薫警部補/仮面ライダーG1

長野県警からの出向で未確認生命体合同捜査本部へと配属になった警察官。

古代の戦士の力を受け継いだ五代雄介と協力し、未確認生命体への対処にあたる。

雄介との交流を経て人間的に柔らかくなり、また、心を通わせた雄介がどの様な思いで戦い続けていたのかを、別れた後に改めて思い知る。

警察官としての活動の範囲を大きく逸脱することは無いが、その心には重く、硬い決意が宿る。

なお、数々の試験装着者に重症を負わせていた強化装甲服G1使用後も、極度の筋肉痛に数日悩まされるのみで、スーツ稼働による過負荷から来る負傷は一切存在しなかった。

 

―――――――――――――――――――

 

「何よ、使えるんじゃない」

 

警視庁、未確認生命体合同捜査本部に充てがわれた、専用装備開発室。

そこで、モニタ越しにG1の戦闘記録を確認していた、ウェーブがかった髪の女性が唇を尖らせながら呟く。

いきなりやってきて、封印予定のG1をあれよあれよと言う間に持ち出していった時は何事かと思ったが、どうやら思ったよりも近くにG1を使いこなせる人材が居たらしい。

 

「G2も付けてあげれば良かったかしら」

 

外され、小脇に抱えられた頭部装甲のカメラの動きから、やはり肉体的に大きな負担が掛かっていたのが判る。

全身の筋力を増幅する関係でそれ単体での機動力も高いG1ではあるが、戦闘時により万全な状態を維持する為には機動力は別に確保するべきだろう。

そういう理由もありG2──武装無人バイクも開発はされていたのだが、AIの調整が上手く行かず、現在は解体、武装とAIを取り除き、新型(・・)の為のバイクとして調整中で使えなかった。

 

「まぁ、搭乗員の事も含めて、まだまだ発展途上、ってところね」

 

悔しい話だが、今の技術力では神経断裂弾抜きで未確認に対抗するには多くの試行錯誤を積み重ねていくしかない。

噂に聞くI.X.A.程、一着に資金を掛ける事はできない。

だが、自分にとっては、資金面でも設備面でも不足はない。

 

完成させてみせよう。

G1を運用できる可能性は名残惜しくはあるけれど、あれを普及させるのは難しいだろう。

一流の中の一流、奇跡の肉体とも呼べるああいった例外で無ければ使えない、というのは、警察の装備としては論外だ。

鍛え抜かれた警察官であれば、無理なく使える、普及型の特殊強化装甲服。

その叩き台としての、新型。

 

「頼むわよ、G3、氷川君」

 

事件は収束した。

しかし、その後、次の事件までの間にこそ戦う者が居る。

彼女もまた、その一人だ。

 

―――――――――――――――――――

・小沢澄子/Gシリーズ製作者

時を経る毎に凶悪化していく未確認の被害に対抗する為の装備開発を任された。

赤い四号と同等のスペックを叩き出せる強化装甲服を開発するも、あまりの性能に装着員が付いてこれず実用化出来ず、大幅にスペックダウンし無数の装備で性能を補った新型を開発中。

が、大量の未確認の同時出現という未曾有の事態に半ば強引に持ち出されたG1が何故か無事に運用された事で、『完全な性能の特殊装甲服』への未練が残る。

それが後に大きな問題となるのだが……。

それはまた後に語られる事になるだろう。

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

歩きながら食べられるものとして、ふと商店街に立ち寄りたい焼きを買う。

具はハムマヨネーズ、海鮮。

これに自販機で買ったお茶を合わせれば昼食としてまぁまぁ成り立つ。

お昼ご飯というよりも軽めのおやつだが、今日は腰を落ち着けて食べるよりも歩き回る日にしたい。

ゆっくりと、休み休み歩く分には、ジルもそれなりに付き合えるはずだ。

 

付近の公園でベンチに座り、小休止。

手の中で遊ばせていたダグバのゲドルードとゲブロンをポケットにねじ込み、空いた片手でたい焼きにかぶりつく。

具は……タコ、そしてソースとマヨ、カリカリしているのは刻んだ沢庵か。

実質たこ焼き。

 

見れば、隣に座るジルもがつがつとたい焼きに齧り付いている。

海産物がお気に入りらしく、こいつはハムマヨではなく海鮮を二つ。

もうこいつが水絡み海絡みのものが好きなのは気にしなくていいのではないかな、とも思う。

そういう人も居るだろう。

よく漫画とかで出てくる真っ黒に日焼けして髪を逆立ててねじり鉢巻に白いタンクトップをして両親が漁師だったりする海属性の人らの亜種と考えればなんの不自然も無い。

今日だけはそう思う事にしよう。

頑張れ明日以降の俺。

今日の俺はとにかく頑張らないぞ。

 

さて、次は何処に向かうか。

ハムマヨというハズレのない味を堪能しながら思うのは、この休みをどう過ごすかだ。

ゲーセン、という選択肢。

無いではないが、少なくとも最終的にクレーンゲームは大事になってしまうのでやめておこう。

いい加減質屋や中古ショップにゲーセンからラジコンやネズミの国のチケットを流すのも難しくなってきた。

そうで無ければ、今のところ欲しい景品も思いつかない。

音ゲ、シューティング、レースなども不味い。

人類では不可能なスコアを出してしまう。

やはりゲームをするなら自宅というのが時代なのかもしれない

 

本屋で立ち読み、というのも地味に時間を取れていなかった選択肢だ。

だがジルを立たせっぱなしにするのも問題だろう。

歩きっぱなしと立ちっぱなしでは負荷の掛かる部分がかなり違うのだ。

まぁ、別に店内の適当なとこで座らせて休ませてもいいのだが、それは店側に迷惑になるしマナーの問題もある。

手当たり次第に買って読んで覚えたら古本屋に流せば済む話ではないか。

まぁ立ち読みをじっくりしてしまうのは、有る種の非効率な楽しみの一つではあるからそのうちやろう。

 

……花屋、花屋はどうだろうか。

近場にいい感じの、滅多に立ち寄らない花屋があったはずだ。

店先で意味もなく季節の花の香を数分掛けてじっくり堪能する。

これはなかなかできる事ではない。

最終的に適当な花束でも買っていけばお店の人も文句は言えない、言わせない。

 

「あ、石焼き芋」

 

遠くから聞こえる録音の音声に気を引かれる。

買っていこうか。

半分ジルに食わせれば楽に腹に入るだろう。

なんなら母さんにも一本二本と買っていってもいい。

お土産だ。

花屋はその後。

 

―――――――――――――――――――

 

バスに揺られながら、窓の外を眺める。

マシントルネイダーで走る時とは比べ物にならない程にゆっくりと流れていく、見慣れた町並み。

東京などに比べれば明らかに田舎ではあるのだけど、普通に生活する分には何の過不足も無い。

 

「ジル、行儀」

 

一番後ろの席を陣取り、楽しげに後ろを覗き込むジルの尻を叩いて注意。

利用者もそう多くは無いのだけど、中学生くらいには見えるジルが子供の様にはしゃぐ姿は注目を集めやすい。

 

目的地に到着し、誰よりも早く降車ボタンを押す。

押そうとして先に押された時のちょっとした悔しさとそれに倍する気恥ずかしさは耐え難いものがあるが、今の俺には無縁だ。

多くのグロンギの屍を越えて成長した俺の反射神経はタイミングを逃さない。

 

料金を払い、先に降りてジルが降りてくるのに手を貸し、そのまま手を引き大きな建物の中に入っていく。

こういう大きな病院は、入り口まで直付けする様な位置にバス停があって利用しやすい。

まぁ、俺の今の肉体では特に自分で利用するような事態には陥らないだろうが。

俺の恐ろしいまでの、お蔭でまともにCTもレントゲンも撮れなくなってしまった健康体とは裏腹に、目を瞑っても移動できる程に通い慣れた院内を歩く。

途中、ジルが立ち止まる。

またか、と思いきや、その視線は院内に備わった売店……というより、おしゃれな喫茶店風の場所に釘付けになっていた。

喫茶店に、というより、その入口にディスプレイされている商品サンプルのドーナツに、だろうか。

 

「俺の分もな」

 

ピッ、と、財布から千円札を二枚程取り出して渡しておく。

に、と笑い、

 

『おうっうい』

 

と口を動かし、ててて、と小走りに駆けていった。

最初は色々と純朴な雰囲気だったような気もするが、色々学んできたお蔭で性格に方向性が見えてきた気がする。

元の性格、というのが出てきたのだとしたら……明日の俺がどうにかするだろう。

 

手に下げていた花束を、花が傷つかない様に、ぶらぶらと揺らしながら、軽くノックをし、返事を待たずに病室に入る。

家族が来ていない、というのは、入る前から確認済みだ。

部屋の中に生き物の気配が一人分しか無かったのを確認している。

ずかずかと部屋の中に入り、花瓶の中の古くなった花(俺が持ってきたもの)を捨て、内部の水を綺麗にしてから、新しい花束を刺していく。

 

「実は、お見舞いに花束って、あんまり良くないらしいんだけど、まぁ、定番だし」

 

この時代ならまだありなのかもしれないけれど、十年もすればお見舞いに花束を禁ずる病院も多くなる。

感染症のリスクもそうだが、水が悪くなれば悪い菌が発生したりして危険だし、そもそも花の匂いがダメ、という事もあり得る。

枯れた花の処分でナースなどに負担が掛かる、なんてのもあるか。

だけど、まだそんなに表立って禁止されている時代ではないので、お目溢し頂きたい。

どうせ、明日も来るだろうし、枯れた花とか水の交換とかはやるので。

 

「花も色々迷ったんだけど、送りたいのは花束よりも鉢植え向きでさ。調べたら手入れ次第じゃ一年中咲くとかで、じゃあお見舞いには持ってけないなって。結局店員のオススメ通り」

 

返事はない。

まぁ、返事を期待してのものではない。

気長に待とう。

幸いにして、意識云々を抜きにすれば延命に関しては手段がある。

……そうなると、彼女が目覚めるまでは、死ぬわけには行かない、が継続なわけだ。

別に、元から死ぬつもりなぞ毛頭ないのだけど。

 

「じゃあ、早く、退院しないと、ね」

 

…………………………………………………………。

……?!

 

「……起きてた?」

 

背後からの不意の声に、ゆっくりと振り返る。

ベッドに横たわったまま、顔だけをこちらに向けている、クラスメイトの人。

少しだけやつれたようにも見える。

俺の問いかけに、クラスメイトの人ははにかむように笑みを浮かべた。

 

「んーん、おはよう、セバスくん」

 

「あ、あー、……おはよ、う?」

 

唐突過ぎて、変なアクセントを付けてしまった。

目覚めてくれたのは嬉しいけれど、いきなり過ぎたので、なんとも言えない顔になっているかもしれない。

そんな俺のリアクションが面白かったのか、クラスメイトの人はくつくつと小さく笑いだした。

笑われる事自体は、それほど喜ばしい事ではないのだけど……。

暫く振りに見た、クラスメイトの人の楽しそうな顔を見て、釣られて少しだけ、口の端が上がるのを自覚できた。

 

―――――――――――――――――――

・クラスメイトの人/眠りから目覚めた人

クラスメイトであり友人でもあるセバスと呼ばれる少年の秘密は何一つ知らず、普段の彼との接触から興味と好奇心、自覚しつつも意識するには恥ずかしい感情を抱く。

何の変哲もないごくごく平凡な一般人であったが、運悪くトラックに跳ね飛ばされ、後遺症の残りかねない重傷を負う。

が、異様なほどの回復力でみるみるうちに身体を直していき、後に医者や看護師からは奇跡だと言われる程の短期間で退院を果たす。

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして……。

与那国島で発見されたオーパーツが動き出す時。

新たな戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




アギト編スタート、ではなく
クウガ編エピローグなのです
こんな詐欺の様な真似をして、本当に……すまないと思っている
傲慢かもしれないが、エピローグ特有のキャラ別短め紹介みたいのをやらずにはいられなかった
ここからは助長で真面目でない紹介という名のチャチャ入れ

☆ついにおっぱいに顔を突っ込むもリアクション薄いマン
毎日素手で洗ってる部位だからリアクションの薄さも多少はね?
ジェスチャを使った言いくるめを成功されてしまったのはアギトという存在が割と自動で動いたりと制御を離れる事があることを知っているがゆえの過ちなのだ
ダグバを殺したので今日ばかりは自分を徹底的に甘やかす
明日の俺頑張れと言って今日の問題を投げたからには翌日から頑張る(ガチ)
クラスメイトの人に送りたかった花はカランコエ

☆怪しくないヒロイン
かーっ! 偶然散歩してたら偶然空からバイクで降りてきた義理の兄ひろっちまったい!
しかたねーなー膝枕だなー! 起きたならおっぱいだ!
怪しいところはないが、ガツガツとたい焼きを食べてる様な図の時は歯がギザギザだったりすると絵的には可愛いと思いませんか
色々とあるけどその辺は次回から
デザイン上の元ネタにしているキャラの公式絵を見れば胸は無いとは言えないのではないだろうか。
これなるはスレイヤーズ世界においてはリナが貧乳と呼ばれてしまうのと同じ現象である
納得できないなら単純にここのヒロインは普通にあると思ってもらえれば

☆一条さん
クウガと同等の威力のパンチとナイフでグロンギを殺して始めて五代に押し付けていた役目の重さをはっきりと理解した
決して民間人に重荷を背負わせてはいけないのだ、という決意に満たされた
たぶん最初期イクサを装着しても疲れる程度で済む可能性がある

☆焼肉さん
自他ともに認める天才だけどコミュ力もある、すごい
この世界だと、仮に未確認出現当初から開発をしていたとしても一年でG1を開発した挙げ句、そこから数ヶ月でスペック的にはそう劣っていないG3-Xも開発してしまえる天才
何が天才って、総合スペックではG1は軍用ベースのイクサに匹敵し、イクサが十数年掛けて安全性を確保した所をスペックを落とし装備で補う形とはいえ一年程度で問題なく運用可能な状態にまで持っていった事
これでIQ180オーバー程度とか、それじゃあIQ600とかだとどんな危険物を作り上げてしまうんだ!
答え V3を作ります
並の天才はG3を作る
天才の中の天才はV3を作る
つまりはそういう事なのだろう
三倍超の頭脳があればアギト編も楽勝だったかもしれない……
助けて警視総監!
V1システム?知らない子ですね……
二つ違うだけで大違いではないだろうか

☆クラスメイトロインちゃん
無事復活、めでたい
なんで目覚めたって?
アギト編ではかなり出番があるからかなぁ
この世界で楽に生きる方法は死ぬ時は諦めてざっくり死ぬ事
苦しんでも生きる方法は死ぬような目に合いながらも絶対に諦めない事
諦めてはいけない
諦めるのが許されない位置にこれたよ


次回、今度こそアギト編
お楽しみに、でも期待しすぎずに、気楽に気長にお待ち下さい


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16 微睡む戦士

世の中平和が一番だ。

命を脅かすような危機は無いほうが当然良いし、人類と入れ替わり文明を乗っ取ろうなんて輩も居ないほうが良いし、人類を食料としてしか見ていないような種族も生存お断りだ。

だけど、残念なことにこの世界には人類の繁栄を脅かす輩が多量に存在する。

 

勿論、人類だってそれに対して無力なまま蹂躙されるばかりではない。

現在、警視庁では未確認生命体への対抗手段として特殊強化装甲服の第三世代機を完成させようとしているし、先日各新聞の紙面やニュースなども賑わせた、何故か使えてしまった特殊強化装甲服の第一世代機の活躍も記憶に新しい。

人間が知恵を振り絞れば、余程どうしようもない危機でなければ、案外乗り切れるのではないか、というのが、俺の見解だ。

まぁ今年にはそのどうしようもない運任せ同然の方法でしか乗り切れない危機が目覚める訳だが……。

 

だが、それはあくまでも人間という種族全体での話でしかない。

対抗手段を作り出すまでに犠牲になる人間の数はとても必要経費と割り切る事ができる物ではないだろうし、それが自分の知り合い友人家族ではないという保証もない。

だからこそ、人は懸命に自分ができることをやろうとするし、努力を積み重ねる。

 

封鎖された新宿の一部には何故かフレシェット弾が雨霰と超高々度から降り注いで、着弾寸前にバンカーバスターへと姿を変えたりしたものだけれど、これも人類の未来を憂いての事だと思うので、地下に居たかもしれない地球外生命体の方々は慌てず騒がず死んで欲しい。

幸いなことに、着弾から爆発の規模、周囲への飛散物まで計算ずくだったのか周辺被害は軽微だ。

新たな未確認のゲゲルが始まったのかもしれないなぁ。

俺の記憶にそんなゲゲルをやろうとした個体は居ないが、なにせこの世界は必ずしも俺の記憶通りに進むものではない事が先日の東京大襲撃で明らかになってしまった。

 

その結果として、という訳ではないのだろうけれど、父さんの東京出向が終わる気配が一切無い。

俺の知るおおまかな流れでも、ダグバの死後三ヶ月程は追加の捜査が行われ続けていたらしいので、少なくとも現時点で対策本部が解散される理由は一つもないのだ。

だが、そうなると、一つ問題が出てくる。

既に未確認生命体、グロンギはほぼ壊滅し、ゲゲルを行える個体はほぼ存在しない。

だが、人類側からすれば明らかに未確認の同種としか思えない様な怪物は、それなり以上に存在するのだ。

オルフェノクしかり、ファンガイアしかり、ワームしかり。

大概は被害者の死体がまともに残らないので事件が発覚しにくいのだけれど、本格的に未確認の被害に対する捜査網が機能し続けているこの世界ではどうだろうか。

新種の未確認として、それら種族が認定される可能性は非常に高い。

 

更に問題がある。

先日、文京区の中学校で生徒の遺体が発見される事件が起きたらしい。

その生徒の遺体は、木の洞に詰め込まれていたのだとか。

怖い話だ。

新たな未確認の事件かもしれない、という話がアングラサイト()で実しやかに囁かれている。

……馬鹿を言うな。

ズやメの単純なゲゲル、それも殺し方に拘りがある連中であればまだ判るが、これは違う。

そもそも、グロンギは殺し方や殺す対象を縛る事はあるが、殺した後の死体に関しては恐ろしく無頓着だ。

殺した上で、死体を木の洞に詰め込むなんてのは、ゲゲルのルール上で一切意味がない。

 

いや、こいつは死体を詰め込むのではなく、木の洞に生きたまま無理やり詰め込む事で殺しているのだったか。

どちらにせよ、グロンギの殺すための殺しとは趣が異なる。

 

犬猫が狩った獲物を隠しておく動物的習性のようなものだ。

それが、犬猫の元になった、もっと高位の生命体のものであったとしても、それは変わらない。

武器もあるだろうにこういう殺し方になるのは、彼ら自身の怨恨も込められているからだろうが……その結果の殺し方がこれという時点で、グロンギとは異なる。

畜生は、どれだけ位階が高かろうが畜生に過ぎない、という証明でもあるだろう。

一緒にされるのは甚だ不愉快だ(・・・・・・・・・・・・・・)

 

―――――――――――――――――――

 

それはそれとして、おれは正気に戻った。

 

ちょっと、こう、グロンギどもの相手をしている時は、少しばかり殺気立っていた様な気もする。

さもありなん。

相手は基本的に徐々に強い相手が出張ってくるのが決まっていたし、それに合わせて俺も強くならねばならなかった。

何しろ、父さんの生存を目指すのであれば、最終的にグロンギのトップであるダグバを相手取らなければならなかったのだ。

最終的に凄まじき戦士にならなければならない、という前提の上で、強くなり続ける相手と戦わなければならない、というのは、ストレスを感じずにはいられないだろう。

 

だが、今の俺には些か精神的な余裕がある。

勿論、東京で警察官としての仕事を続ける父さんが新たな未確認……いや、もう言ってしまおう。

マラークや野良オルフェノク、雇われオルフェノク、野良ファンガイアに襲われて父さんが死んでしまう可能性は無いではない。

だが、警察だって馬鹿じゃない。

数多くの未確認生命体との戦いを経て、取るべき戦術、取るべきでない戦術は理解している筈だ。

 

近寄らない。

遠くから神経断裂弾を駆使して戦う。

 

これだけでも死亡率は下がる。

マラークを相手にした場合は、そもそも銃弾が念動力で届かないとかいう糞みたいな条件が追加されるが、これも実は手がない訳ではない。

ぶっちゃけた話、弾速を上げればいいのだ。

マラーク全体が持つ力場、それを極端に強化して盾に纏わせていた個体が居るが、これもマシントルネイダーのスライダーモードによる追加加速キックで突破できている。

高質量、超高速。

これがマラーク攻略の鍵であり、それは後のG3Xが証明している。

 

使用される弾頭も神経断裂弾である必要はないが、神経断裂弾はそれ自体の殺傷能力が非常に高い。

後のG3Xの持つ銃火器が通用した以上、それに準ずる性能の銃火器さえ配備されてしまえば、マラークくらいまでならどうとでもなる。

いや、はっきり言おう。

G3Xの銃火器が使用できるように調整されたG3マイルドを大量に配備してしまえば今年は大体解決する。

そして、それはこの世界においては難しい話ではない筈だ。

たぶん。

 

俺にもそれがわかる以上、専門家である警察がそれを理解できないとは言わせない。

だから、今年はそれほど最初から頑張る必要もないのである。

最終的にエルが襲ってくるので、鍛錬を欠かす事は絶対にできないのだけど。

あと、マラークが活動する日付がはっきりせず、基本的にアギトの力が齎す感覚しか当てにならないので、一々現地に赴いても空振りになる可能性が高い、という事情もある。

俺にできることといえば、警察が去年に比べて極端に無能になっていない事と、父さんが賢明で自分の命を大事にしてくれるように祈ることくらいである。

 

今年の努力目標は、人間らしく生きる事。

相手を殺す事ばかりを考えて生きていると、精神的に参ってしまう。

もっと文化的に、力が衰えない程度に鍛錬は欠かさずに。

 

だから、ピアノだって弾いちゃう。

既に数えるほどしか居ないグロンギと同じ、高度な学習能力を備える俺は、この短期間でピアノの演奏をも習得できてしまった。

家になぜピアノがあるのかと聞かれると困るのだけれど。

誰が使っていたんだこのピアノ。

部屋もよくよく調べて見ると防音のようで、気兼ねなく使える。

嬉しい(思考放棄)。

 

トレーニングを終えて、風呂上がり、パンイチで弾くピアノは爽快感抜群である。

もっと、もっと文化的に、もっと!

興奮が演奏の激しさにつながる。

楽器は良い、音楽はいい、実に文化的だ。

肉体の精密な動作の訓練にもつながる。

この俺の身体は、指先の細胞一つ一つに至るまで完全に俺の制御下にある。

 

「ふぅ……」

 

一頻り演奏を終えると、拍手の音が聞こえる。

少し離れた場所で、薄い青色の、小さいクジラが大量にプリントされたパジャマを着たジルが椅子に座って控えめな動作で手を叩いている。

 

『おーうあうお?』

 

「ショパンだ」

 

今度CDでも買ってくるか。

情操教育に音楽は欠かせないからな。

できればこういうのはコンサートにでも連れて行った方が感動を得やすいのだけれど、ちょっと値段がな。

音質がどうのと言う輩も居るが、気軽に聞ける、というのは文化が広がる上で重要な要素だと思う。

楽譜を買ってきて俺が弾くのが一番早いかもしれない。

 

「二人共、もう遅いから部屋に戻りなさい」

 

と、もう一曲行ってみるかと思ったところで母さんが部屋に入ってきた。

壁掛け時計を見ると、もう十時を回っている。

もう寝なさい、ではない辺りに、母さんの年頃の少年の夜更かしに関する理解が見て取れる。

もっとも、同室のジルに夜更かしをさせるつもりもないので早めに寝るが。

 

「ほいほい」

 

「あと服は着なさい」

 

「ふぉい」

 

ピアノを弾くのでもなければ、パンイチのまま家の中をぶらぶら歩いたりはしないのだ。

何しろ俺は文明人だからな。

ジルに持たせていた俺のパジャマを受け取り、その場で袖を通す。

今日は少し興が乗りすぎてピアノに時間を使いすぎた。

予習復習は終えているが、研究(・・)に関しては時間が取れそうに無い。

だが、慌てる必要も無いだろう。

研究成果をフィードバックしたからといって即座に戦力増強に繋がるわけでもないし、今年を乗り切れるかどうかには直結しないのだから。

気長にやろう。

でも、なるべく急ごう。

もしかしたら、の話だけど、近い内に、研究の成果を使わなければならない場面が出てくるかもしれない。

 

―――――――――――――――――――

 

夜が明け、日課の早朝トレーニングなどを終えれば、登校の時刻がやってくる。

 

「服は着たほうがいいんじゃないかなぁ……」

 

「別に服を脱いでいる事に拘りが有るわけじゃないよ?」

 

何しろ、パンツは履いているのだ。

それも自宅の一室での話、誰に憚る事があるだろうか。

いや、冷静に考えれば、クラスメイトの人くらいには憚ったほうがいいのかもしれないけれど。

 

会話の内容はともかくとして、会話の相手は、勿論麗しのクラスメイトの人だ。

通学路の途中から合流できる事に気が付けば、朝に示し合わせて共に向かう程度には親しい友人だという事実はとても喜ばしいものだと思う。

そう、このクラスメイトの人、既に退院し、復学しているのだ。

全治数ヶ月だの、リハビリにも相当な時間がかかるだの、という話はどこに行ってしまったのか。

いや、まだ完治とは言い難いし、以前に比べれば体力も衰えている。

時折体温が異常に高くなるなど、不調も残しているのだけれど、それでも退院して学校に通える程度には回復してしまっているのだ。

………………うん。

 

「? どうしたの?」

 

「あー……いや、身体は大丈夫かなって」

 

「うん、最近は全然! 前よりも調子がいいくらいだよ!」

 

明るく笑い、少し早足に先に行き、振り返りながらぐっ、と、脇を締めて両手でガッツポーズを取ってみせるクラスメイトの人。

ぞいっ! と言わんばかりのやる気はいいのだが、後ろ歩きのまま足元の小石を踏み、バランスを崩して転けそうになってしまった。

こういう部分が、完治していない証拠なのだろう。

単純に元からおっちょこちょいである可能性もあるが。

 

勿論、俺が倒れゆく怪我人の友人をそのまま地面にダイブさせる筈も無い。

少し踏み出し、手をばたつかせながら後ろ向きに倒れかけていたクラスメイトの人の腕を掴む。

強く握ってしまうのは多めに見てほしい。

すっぽ抜けて後頭部を強打するよりは余程マシな筈だ。

そして引っ張る。

予想よりも軽いクラスメイトの人の身体が引き寄せられて腕の中に収まる。

いや、クラスメイトの人が軽すぎるのか、俺が自分の平時の筋力を把握しきれていなかったのかはわからないけれど。

 

「わ、わ」

 

腕の中でわちゃわちゃと慌てふためくクラスメイトの人の身体は柔らかく温かい。

体温が高いのは代謝が高い証拠だし、俺のモーフィングパワーを抜きにしても、怪我の治りが元から早い方なのかもしれない。

或いは一条さんと同種の、特に理由はないけれどすごい頑丈な人、という可能性だってあるじゃないか。

一条さんならトラックに跳ね飛ばされたくらいなら翌日から仕事に復帰するかもしれないけれど。

天然道士かな?

鬼の素質とかだと一番面倒が無くていいのだけど。

……少なくとも、病院の記録では心肺停止に陥った事は無いとの事なので、寿命やスマブレのスカウトの心配をする必要はないだろう。

来ていたら始末しよう。

 

「あの、あの、これは」

 

腕の中、チラチラと上目使いに俺の顔を見上げるクラスメイトの人の顔は赤い。

元の代謝が高い、という可能性はともかくとして、今は熱があるのかもしれない。

怪我の治りかけにはよくある事だった気もするが。

 

「病み上がりなんだから、気を付けて。俺も気をつけるから」

 

「う、うん…はい」

 

少し俯いて小さく頷くクラスメイトの人。

きつく言い過ぎたのだろうか。

でも、病み上がりこそ身体に気を使わなければならないのは当然の話だ。

クラスメイトの人の俺への好感度と引き換えにクラスメイトの人が無事に怪我を完治させる事ができるというのであれば、喜んで嫌われ役になろう。

 

「じゃあ、はい」

 

腕の中に居たクラスメイトの人から距離を取り、手を差し出す。

 

「……ええと、転ばない様に?」

 

「うん、転ばない様に」

 

差し出した手と俺の顔を交互に見比べ、一言では言い表せない百面相をした後に、手を繋ぐ。

まぁ、差し出しておいてなんだが、転けない為に恋人でもない友人の手を握って登校、というのは、高校生に対してするべき提案ではないとは思ったのだけど。

もう、そんな事しなくても転ばないってー! くらいの軽い返しを予想していただけに驚きだ。

それくらい、脚がふらついている可能性もある。

入院生活でスタミナ、というか、筋力が低下しているのかもしれない。

疲労からまた転倒しないように、彼女の歩行速度を意識して、気持ちゆっくりめに歩いていく事にしよう。

 

―――――――――――――――――――

 

そんなわけで、ダグバを殺してからここ一月程、俺は極めて平穏な日々を過ごしている。

どういう訳か魔化魍の発生現場に居合わせる事もないし、人気のないところでオルフェノクに襲われる事もない。

異様な程の平穏に、少々落ち着かない、というのが正直な所だ。

仕事漬けの日々を送る中、唐突に長期休暇が取れてしまった時の様な、やりたいことが無い訳でもないし、やってもいるのだけど、長引けば長引くほどに『仕事の方はどうなっているのだろう』と、不安になるのと同じ症状だろう。

……実際、これがアンノウン出現の感覚なんだろう、という感触は幾度かあった。

場所もはっきりとわかる。

だが……遠いのだ。

仮にマシントルネイダーをスライダーモードにしても間に合わないだろう、と、断言できてしまう程に。

加速をマシントルネイダー任せにせず、火で加速して風を操り空気抵抗を低減すれば間に合わないでもない筈だが、そこまでする理由もない。

 

さもありなん。

確かに、アギトになる素養を持つ人間は全国各地に存在する。

いや、神話の時代から考えれば、人類の大半はアギトになる因子を少なからず備えていると言っても良い。

だが、今、アンノウンことマラーク達が襲っているのは、あくまでもあかつき号事件の関係者回りでしかないのだ。

何しろ低位のマラークはアギトの因子を持つ人類と通常人類の区別が付かない。

 

上位の天使、エルロードが出張るか、テオスが自らアギトを探そうなどという殊勝な考えを持たない限り、地方に居るアギト候補及び隠れアギトは襲われる事はない。

……と、思う。

少なくとも、俺の知る知識の中では、アンノウン関連事件と似た事件が地方でも発生している、なんて話は無かった筈だ。

 

エルロードに関してはともかく、テオスに関してはそこまで気にしなくても良いだろう。

奴が自ら出張る段階になったというのなら、標的はアギトの因子持ちの人間などというケチな規模では収まらない。

手始めの段階で、人類のおよそ十二分の一程を巻き込む超大規模ゲゲルを始める筈だ。

なるほど、確かに人間はこいつをモデルに作られたのだろうと思わず納得してしまう程の蛮行。

そこまで来たら、流石に何かをするべきかな、とは思うのだが。

俺にできることと言えば、最終決戦回りで唐突に現れてエル達を撃破する手伝いをするくらいか。

それまでは、特に手出ししようとも思えない。

闇の力は割りと説得に弱かったりするので、試してみようかな、とも思うのだが。

……どうにも、本人……本神に会ったら、煽り同然の文句の山しか口から出てこなさそうで、説得できるビジョンがまるで浮かばない。

 

「俺ってば、つくづく話し合いに向かない性格してるわ……」

 

グロンギ脳の高性能さにかまけて気付けなかったが、コミュ力は据え置きなのだ。

基本的に、話し合って決めよう、とか、相手を言いくるめよう、なんて方向に使える頭ではないからな……。

正しく文化が違う。

 

『?』

 

「なんでもない。ほら、電気消すぞ。布団に戻れ」

 

何故か俺の布団の上でゴロゴロと転がっていたジルが不思議そうな目を向けてくる。

これが、元の記憶と価値観を取り戻しているというのであれば、今の視線は『話し合うより戦ってみればいいんじゃね?』くらいの視線なのかもしれない。

勝って、相手を負かして、それで言うことを聞かせろ、くらいの。

だが、相手は神だ。

後の時代に出てくる自称神とか惑星単位の小規模な神とは異なる、正真正銘の神。

戦って勝ってこちらの道理を通す、という事は難しいだろう。

聞く耳を持たない、という時に、殴って耳を引っ張って、耳元に言いたいことを怒鳴りつける、くらいがせいぜいだ。

 

それで説得に成功するならいいが……そういう穏やかな神ではない筈だし。

何しろ一発いいパンチ喰らうだけで人類滅ぼす方向にシフトチェンジする様な神だ。

話し合うなら、言いくるめる為の材料を全て用意した上で、暴力的な事は一切無しに言いくるめるしか方法はないだろう。

考えても考えても、答えが出る話ではない。

今日は寝よう。

何かを思い付くまでは、保留という事で……。

 

―――――――――――――――――――

 

目が覚める。

今まで何度かあった、マラークどもが活動を開始した時の感覚だ。

これまでも何度か似たような感覚はあったが……。

近い。

 

「……?」

 

勢いよく飛び起きたせいか、ジルが目を擦りながら目を覚ましてしまった。

 

「ちょっと出てくる。お前は寝てろ」

 

パジャマを脱ぎ、学校指定でない市販品のジャージに袖を通し、襤褸を接いで作った大きな布を手に、部屋に常備しているシューズに履き替え、窓から飛び降りる。

塀の上に音もなく着地。

反応は……走るよりまだバイクの方が早い、という位置。

周囲に視線が無い事を確認し、変身。

変身体の上から布を被り姿を隠した上で、トルネイダーを呼びながら走る。

 

母さんは家に居る。

父さんは東京。

俺がこの反応に駆けつける旨味は少ない。

が、近場にマラークが出た、という事の方が問題だ。

あかつき号事件の関係者がこの辺りに来ているのか?

別にあかつき号事件の関係者の殺害を妨害するつもりも無いが……。

確認だけはしておこう。

 

―――――――――――――――――――

 

空を切る音、肉を打つ音、地を蹴る音。

月のない夜に響く、田舎町の公園には似付かわしくない非日常を告げる音。

 

戦いの音色を発するのは、向かい合う二体の異形。

虎に似た白い(・・)異形。

その姿は、つい先日に東京で佐伯一家を殺害したアンノウン、パンテラス・ルテウスに酷似している。

違いがあるとすれば、その姿がかつてのルテウスとは異なり、同種であるアルビュスに似た白を基調とした体色に変化していることか。

灰に近いくすんだ白。

真っ赤だったマフラー、黒いベルト、腕輪、靴などの装飾品に至るまでを灰に染めたジャガーロード。

だが、少なくともこの場にその体色を気にする者は居ない。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

 

少なくとも、相対する緑の異形にそれを意識する余裕はないだろう。

金のアンクレットとベルト、赤い瞳を除けば、その体色をほぼ緑と黒で統一した短い角を持つ異形は、明らかに戦い慣れていない様子で腕を振り回す。

良く言えば本能的な、野性的な動き。

しかし、どこかその動きには躊躇いがあった。

そして、向かい合う灰のジャガーロードには、その躊躇いを慮る理由も無い。

 

「がぁっ!」

 

しゃがみ込んでいた緑の異形──ギルスが、振り上げる様に拳を振るう。

まともに振るえば十トンの威力を備える拳も、破れかぶれに振るわれては当たる筈も無い。

ジャガーロードはそれを一歩後ろに跳ぶ事で避け、そのままギルスの顎をつま先で蹴り上げる。

人間が喰らえばそのまま首の骨を折って絶命するであろう一撃。

ギルスの身体が重力を失ったように背後に飛び、転がるように墜落する。

 

「う、うぅぅぅぅっ!」

 

獣同然の唸り声。

だが、獣のそれと異なり声にはわかりやすい程に感情が乗せられている。

痛み、外敵に対する恐怖。

同時に、恐怖を自覚しながらも目をそらす虚勢。

逃げる事ができない為に、立ち向かうことしか出来ないが為に、自らを奮い立たせなければならない。

背を向ければ背中から殺される。

逃げ切る事もできない。

 

怖い。

戦いを知らない者の恐れだ。

そして、暴力の恐怖を知る者の恐れだ。

敵だけではない。

自らの姿への、自らの力への恐怖。

 

死ぬような勢いで蹴られた。

痛くて痛くて、泣きそうなのに、この身体は涙も出ない。

痛みが残っているのに、動かなければならない、と、必死になれば直ぐに身体が動く。

誰の身体かわからない。

いや、自分の身体の筈だ。

この、恐ろしい身体が。

 

「っ、がぅっ!」

 

倒れていたのに、虎の様な化物が迫ってくるのが良く見える。

異常に広い視界。

反射的に脚が跳ぶ。

蹴りを食らった相手が後ろに吹き飛ぶ。

 

人を、いや、生き物を思い切り蹴った事など一度も無い。

脚に伝わる肉を蹴る感触に嫌悪感。

蹴りぬくよりも早く、思わず脚が引っ込んでいた。

 

「ふー……ふー……!」

 

荒く息を吐くギルス。

吹き飛んだジャガーロードは、着地すると同時に、ゆっくりと歩き出す。

走る事はしない。

本能的なものか、相手が戦う気力も、自分から逃げる気力も失い始めているのに気付いたからだ。

両手を体の前で重ね、印を結ぶ。

貴方の子である人間を、貴方の元に送る。

そんな意味の込められた、対象に取っては殺害を予告するものでしかないジェスチャ。

 

「う、うぅぅ……」

 

逃げられない。

戦っても、相手は逃げないし、まして倒すなんてできる筈もない。

大声を出して、助けを呼ぶなどできる筈もない。

今は、自分も化物なのだ。

 

目まぐるしく身体を動かしていたからこそ、戦う事ができた。

だが、一度攻めが止まれば、身体が止まれば、理性が強くなってしまう。

何故。

ただそれだけが頭を占める。

本当なら溢れ出る筈の涙すら流せず、恐怖と悲しみが内部で滞留する。

動けない。

動かなければならないと身体が言っているのがわかるのに。

生存本能が突き動かしていた身体が、理性の鎖に囚われる。

 

「い、いや……」

 

後退る。

攻撃の為の距離を取るでなく。

驚異からの逃走の為でもなく。

ただ、迫る怪物という現実からの逃避の為に。

だが、ジャガーロードのゆっくりとした歩みは、じりじりと、確実に距離を詰めていく。

 

「……けて、誰かぁ……」

 

理性では意味のない行為だと思いながら。

誰かが来る時間でも場所でもない事を知りながら。

誰かが来たとして、化物二匹が戦っているようにしか見えないと知りながら。

 

「助け……、助けてよぉ……!」

 

死にたくない(・・・・・・)

その願いが声となり、

 

「?!」

 

ジャガーロードが、唐突に真横に吹き飛んだ。

暴風が吹き荒れる。

ジャガーロードを吹き飛ばしたのは超高密度に圧縮された空気弾。

だが、それがただの空気砲でない事は、ジャガーロードの肉体に浮かんだ輝く印が証明している。

封印の紋章。

それはジャガーロードの動きを数秒だけ封じ、霧散。

受け身も取れずに地面に激突したジャガーロードが素早く起き上がり、それを目にする。

自分と同じ顔、同じ姿の同種達。

そして、僅かに女性的な身体的特徴を備える統率者。

それらが、同胞が。

手足を奪われ、身体に無数の杭を打たれ、鎖に縛られ、引きずられている。

 

じゃり、じゃり、と、金属が地面に擦れる音を立てながら、それは姿を表した。

夜の闇に溶け込む様な、血管の如きラインの浮かぶ漆黒の鎧。

全身に走る金の装飾は絶えず火花を散らし、血霞みの如く赤い靄が浮かんでいる。

 

その姿を目にした者は、そう居ない。

だが、その姿を、佇まいを見るだけで、多くの者がその正体を想起するだろう。

 

「運がいい」

 

背にマントの如くたなびく、孔雀の羽根を思わせる金の装飾が揺らめく。

金に輝く瞳が公園を睥睨する。

 

「事情を話せそうなのが居る」

 

手足をもがれ、杭打たれ、鎖に縛られ。

未知の力で生かされていた二体のジャガーロードとクイーンが、一瞬にして燃え上がり、跡形もなく消え失せた。

 

「そこの緑の人。俺とお話しませんか」

 

未確認生命体二十二号。

吹き飛ばされたジャガーロードを無視するように掛けられた声は、場違いな程に明るく。

しかし、ギルスにとっては、どこか、馴染みのあるような声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




てってれーん、てってれーん(予告編BGM)
という事で、アギト編の様でクウガ編よりも更にアギト本編から遠くにあるアギト編、始まります
アギト編は時系列とか日付とか場所とかがふわふわしてる上に発生直後に現地のライダーが駆けつけるので本筋にはそうそう絡まないからそこんとこは勘弁な
本編見返すと手元にある資料とかネットで漁った資料とかとかなり違う部分が出てきて、本編かなり忘れてるなぁと焦る
でも間違って書いてしまったものは仕方がないのでそこら辺はなぁなぁで


☆パンイチピアノ航空爆撃ボスドロップ装備マン
平和を謳歌しつつもどうにも馴染めないというか不安が残る
不安からか東京の一部封鎖区画にグロンギがゲゲルを仕掛けてしまったのを見逃してしまったなぁまいったなぁ追跡できないなぁこれ絶対グロンギの仕業やろってなったりする、無罪ですよ無罪、証拠不十分で
というかこの世界観だと驚異を一つ倒した程度で日常を完全に満喫できる訳ではない
実は何もせずに居ればワンチャン何事もなく今年を越えられる可能性があるが、エルロードが出てきた時点で戦いには巻き込まれるので予め戦いには備えていくスタイル
クウガ警察が引き続き存在している事を知っているので警察に対する信頼は厚い
でもどうせ裏でオルフェノクとか研究してるんでしょ? 人権無視してモルモットにしてるんでしょ?知ってるんだからね……?
という事で正体ステルス続行
でも警視総監に会ってV3の設計図を持ってるか聞きたいのでどうにか警視総監には接触したい
でも劇場版の話は入れると本編の整合性がううんってなるけどどうしようね
ちなみに自分はG4は映画として好きだしG4もデザイン的に好きだけど、主人公の立場からすると何この鉄くず、ってくらいアンチG4にならざるを得ない
相変わらず人から見られた時の印象に関しては考慮できてない
指摘する人が居ないからなぁ……
背中の何処かで見たこと有る金色のビロビロは知らない間に生えてた
レベルとスキルを完全に引き継いだまま次回作に出るとどうなるかをこれから実演したりする

☆ヒロイン
モーツァルトとショパンの違いがわからない程度には音楽に明るくない
今回は眠気を優先したのだ

☆クラスメイトちゃん
全治数ヶ月のところを一月かからず退院した奇跡の人
ラブコメ……ラブコメッ!
手をつないで登校という事、心配してくれてる点は嬉しいけど、恥ずかしがって貰えてないのは意識されてないからかな、という不満が入り混じったりする
ラブコメ要員だよーほんとだよー
不穏な要素なぞ一つもないぞ!
ただ奇跡的に身体が回復しただけだぞ!
なんか夜中に急に目が覚めてしまって近場の自販機までジュース買いに行ったけどそこまで治安の悪い町でもないので別に騒動に巻き込まれたりなんかしないよ!

☆上の項目とはまったく関係ない主人公の地元に何故か出現した謎のギルス
角伸びない、上手く戦えない、本能に任せても生来の優しさがストップをかけてしまい力を出しきれない
珍しい種族らしいけど珍しいだけで一匹しか居ない訳ではないんじゃないかなって思うよ
葦原さんは東京の方でちゃんと終わらない上に乗り越えても命が繋がるだけの苦しい試練を受けてるから安心してくれ

☆白いジャガーロード
平成一期を一繋ぎにした結果生まれた超捏造存在
とりあえず東京に絡みに行けない間はこいつの同種を出したりしてお茶濁します
設定とかは……次の話で?
モノローグで主人公が説明できなかったら次のあとがきでどういう存在か説明するかも




クウガ編がやたら評判良かったからアギト編すごいプレッシャー
このSSは平成一期を振り返るとは言っているけど作者の思いつきを書き綴るだけのような内容だから過度な期待は禁物だという事を忘れないで欲しい
原作キャラ救済とかも無いのはクウガ編を見ての通りだし、よくよく読み返すとここの主人公時折出てきて人の獲物を横取りするだけで日常面はほぼオリキャラと戯れてるだけだから
でも高校二年だから、修学旅行とかで東京に行かざるを得ない展開にできなくもない……?
時間経過もふわふわしてるから、そこを佳境に当てる事も難しくはないし
無理にクウガ編みたいな長さにしなければまぁまぁまとめられるかも?
というような志の低さから成り立っているので
時間経過とかも本編できっちりと言及されてたり場面の繋がりがあったりしなければ一話一週くらいで進めようかなって思います
そんなSSでもよろしければ、次回もまた、気長にお待ち下さい


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17 儘ならない日常

水気のある音と共に、灰の濃淡で斑点が浮かんだ腕が飛ぶ。

断面から漏れるのは血か、灰か。

だが、中に何が詰まっていたとしてそれが表に出る事はないだろう。

切り落とされた腕は宙を飛び、地に落ちるよりも早く炎となって消え失せた。

 

腕を切り落とされ、始めてジャガーロードは目の前、懐まで踏み込んでいる黒いアギトに気がついた。

ほんの一瞬前まで十数メートル離れた位置に居た相手が、瞬きの間に懐で腕を振り抜いている。

腕を切り落としたのは黒いアギトの肘に伸びる、刃の如く鋭利な装甲。

それに気付いたのは、懐に入ったアギトが、自らの備える凶器を見せつける様にゆっくりと動いているからだろう。

緩慢と言っていい動作。

 

豹の原種、モデルとも言えるジャガーロードが攻めずに一歩引いたのは、その持ち前の生存本能からだろう。

或いは遥かな古代において、人類を相手に行われた蹂躙とも呼べる戦争での記憶、ネフィリムから得た恐怖からか。

 

一歩を引く。

その脚が空を切る。

一瞬前まであったはずの足場が消失し、バランスを崩す。

黒いアギトの持つモーフィングパワーがジャガーロードの後ろの地面を陥没させていたのだ。

バランスが崩れたのは一瞬。

引いていない脚で即座に跳躍し姿勢を直すのは難しい事ではない。

だが、この黒いアギトの前で、その動きは悪手に過ぎる。

 

ひょう、と、ジャガーロードが宙を舞う。

バク宙気味の跳躍。

追うように黒いアギトが踏み出す。

一歩、二歩、三歩。

跳ぶジャガーロードの下に潜る様な、しゃがみ込む様な踏み込み。

オルタリングから柄が伸びる。

七千度、いや、或いはそれを遥かに上回る熱を内包しうる刀身が、未知の金属の冷たさを残したまま引き抜かれ──振り上げられた。

 

ジャガーロードが着地する。

赤い剣を振り上げたまま動かない黒いアギトに、仕切り直しと言わんばかりに全身の捻りを加えて拳を打ち込まんとするその身体が、

 

ぴつ、と、

 

左右に割れる。

或いは、そのまま動かずにいたのなら、繋がったのかもしれない。

しかしそれは、この場この時において、左右に割れた驚愕の表情を晒しながら炎と化したジャガーロードにおいては、関係のない話だ。

 

ぼう、と、間の抜けた燃焼音。

 

爆発すら無く、炎に投げ込まれた薄紙の如く、灰のジャガーロードは消滅した。

 

―――――――――――――――――――

 

脆い(・・)

先の、公園の端であのギルスが嬲られているのを観戦していた三匹も似たようなものだったが、武器が無い分だけ余計にそう感じてしまう。

というか、頑丈な肉体があるわけでもなく、ジャガーロードの中で一匹だけ武器を持たずに戦わされている辺り、あのグループ内部で陰湿な何かが行われていた可能性もあるかもしれない。

そんな想像ができてしまう程度には、手応えのない勝利だった。

 

「ふん」

 

軽くフレイムセイバーを振り、刀身に僅かに残った灰を払い、消滅させる。

少なくとも、あれらの身体がオルフェノクのそれと同一である、という事だけは確かな気がする。

刃の通る感触が似ている。

俺もそれほど多くの種族を斬った訳ではないけれど、少なくとも、グロンギ、魔化魍、童子に姫、オルフェノクのどれに近い感触かと言われると、オルフェノクのそれに似ている。

実はマラークとオルフェノクの肉体構造が似通っている可能性も無いではないが、少なくとも、ここのジャガーロード達が通常のロード達と異なる存在である事は間違いない。

知識の中の通り、死亡時に爆発しないから、というのもあるが……。

不思議な感覚だ。

少なくとも、俺は一度たりとも直接マラーク達と接触した事はない筈なのだが。

こいつらの本来の状態を知っている気がする。

 

「さて」

 

問題の、話を聞けそうな相手、だが。

ちょっと遠くに背中が見える。

どのタイミングで逃げ始めたか、と言えば、あの身体に慣れきっていない事を鑑みても遅い足取りから考えて、俺がジャガーロードの腕を切り飛ばした前後から。

言ってしまえば俺が出てきた直後に脇目もふらずに逃げ出した、という事になる。

 

難しい話だ。

あいにくと、俺は生き物を生け捕る為の知識はそれほど持ち合わせていない。

一応基礎知識として野山の獣を捕らえる為のトラップくらいは作れるが、人型の相手をあまり怪我をさせずに捕らえる手段はあまり思いつかない。

戦うからには勝ちを目指し、勝ったからには相手を殺すのは当然だからだ。

戦った上で死んでいない魔化魍などもいるが、あれは単純に清めの音で倒さないと即時復活する特殊な生き物なのでカウントできない。

 

無理矢理捕まえるのは簡単だと思う。

走れば俺の方が早く、更に俺は近くにマシントルネイダーを待たせてある。

更に腕力も俺の方が上。

捕まえれば振りほどかれる心配はないだろう。

体術も、恐らくは俺が勝っていると見ていい。

少しだけさっきの闘いを見たが、荒事を経験した事の有る人間の動きではなかった。

はっきり言えば素人。

追えばあっさり追いつき、組み伏せて無理矢理話を聞かせるのも難しくはない。

相手の精神状態を無視すれば、の話になるが。

 

自慢には決してならないのだが、俺の変身後、未確認生命体二十二号は、全国的にも知名度が高い。

噂のフォークデュオ、チメイドにくらべても遥かに高い。

何しろ幾度となく新聞や週刊誌に写真が掲載され、ニュースで取り上げられている。

勿論九割悪評だ。

姿を消して数ヶ月が経つためにマスコミはもう沈静化したけれど、お蔭でネットなどで玩具になり始めている感すらある。

正体を探る系のスレで、考察という名の黒歴史ノート作成が定期的に行われている程だ。

 

さっき少しだけ聞こえた声からするに、あのギルスが女性の変身体である事は想像に難くない。

無理やり捕まえた瞬間に人間の姿に戻り、悲鳴でも上げられようものなら、またいらぬ悪評が添付されてしまう。

これで、ギリギリ警察から積極的に追われることがない程度には穏便に事を収め続けているのだ。

 

今更、婦女暴行未遂、なんていうクソくだらない理由で警察から追われたくはない。

五代さんと連携をとっていた警察の方々も、現状では未確認の残党を探している最中な筈だ。

つまり、未だ警察では有能な方々が実働に当たっているという事になる。

が、アンノウンが活動を開始した、という事は、未確認生物関連事件対策本部以外にも、有能でそれなりに正義感もある筈なのに珍妙かつ短絡的な作戦を立てては失態を繰り返す、オルフェノクにそっくりさんが居る筈の人間巻き寿司の中身みたいな人も動いている可能性がある。

またぞろ難癖を付けて無駄な労力を割いて欲しくない。

真面目に働いて優秀な結果が出せる人は、変な野心から無茶な行動はせずに真面目に働くべきなのだ、それが最終的に治安の向上に繋がるのだから。

 

追いかけるのは、とりあえずやめにしておいてもいいだろう。

あのギルスの反応は覚えた。

俺の腹の中にある、アマダムとは異なる力。

それに似た反応があのギルスからも感じられる。

分子レベルで分解して格納している人間時ならともかく、変身した後であれば、いくらでも居場所を察知できる筈だ。

見た所、闘い慣れている感じでも、暴力を振るい慣れている感じでもない。

放置して害になるものでもないだろう。

 

周囲を見渡す。

戦闘手段が互いに素手であったためか、周囲に肉片や血痕が散らばっている様子はない。

周囲のものを盾にする、という発想も無かったのか、周囲の物を使わずとも追い詰められたのか、この場で戦闘が起きたなど、言われなければ誰も信じないだろう。

 

今後もこうであればいいのだが。

後片付けも何もおまわりさんがやってくれる東京とは違う。

俺の地元で不自然に公共物が破壊されていたり、戦闘の痕跡などが発見されてしまえば、こちらに調査の手が及んでしまうかもしれない。

モーフィングパワーで全身を覆う布を作り、被る。

移動距離が短いせいで、逆に姿を隠す手間が増えた。

戦う事に慣れたと思えば、戦いの前後でやるべき事が増えてしまう。

なんとも、

 

「難しいものだ」

 

―――――――――――――――――――

 

強化された五感を駆使し人目や監視カメラが無いのを確認しながら家に帰った。

飛び降りた時とは逆に、塀を登り、塀から俺の部屋がある二階の窓枠まで跳び、窓の縁に指を掛け、念動力で窓の鍵を空けて部屋に戻る。

……こうして玄関を経由せずに戻る事で、家の警備面での脆弱性が明らかになってしまった。

身体能力が高めの超能力者であれば、家への、というか、俺の部屋への侵入も容易だろう。

なにか対策を、とは思うのだが、そうすると俺が夜中に部屋からこっそり外に出るのが難しくなるのが悩みどころか。

 

月明かりの差し込む部屋の中では、布団にくるまりすやすやと眠るジルが居るのみ。

明日も学校があるわけだし、俺も早く寝なおさなければならないのだが、軽い運動で少しだけ目が冴えてしまった。

勉強机の隣に置いてある、場違いな程に頑丈な金属の箱に手を翳す。

鍵どころか扉、蓋すら無い、完全に密閉された箱。

モーフィングパワーを流し込み穴を空け、中身を取り出す。

 

手の中に収まったのは、グロンギが腰に巻いていたベルト状の装飾品、ゲドルードのバックル部分。

俺が殴ったせいで綺麗な放射状に罅が入っており、残念ながら完品とは言い難い。

だが、重要な機能は殆ど残っており、魔石ゲブロンを搭載し、ベルト部分を後付して、誰かに巻けばそれで新たなグロンギを生み出す事ができるだろう。

 

そう、新たな魔石を搭載しさえすれば。

 

実に不可思議な現象ではあるのだが、元々このゲドルードを装着していたダグバの魔石は、現在機能していない。

元々、魔石ゲブロンは生物の肉体に取り込まれた状態で無ければ休眠状態に入るのだが、それとは違う。

ダグバのゲブロンは、今や完全に機能を停止している。

組成としては他の休眠状態のゲブロンと変わらないのだが、内包していたエネルギーが完全に枯渇していたのだ。

 

ものは試しと、万が一にも変異後に即座に暴れ出さない様に四肢切断し、ついでとばかりに全身の神経を少しずつ切除して回復に時間が掛かるように加工したモルモット(文字通りの意味で怪しい隠語ではない)にこのゲブロンを移植してみたのだが、一切反応がない。

このモルモットが特異な個体である可能性を考慮して別のゲブロンを移植した際には、以前の実験と同じ様に変異した後に焼けて死んだ。

あれ程の力をダグバに与えていたゲドルードの核、魔石ゲブロンは、自らの役目は終わりとばかりに完全に機能を停止していた訳だ。

 

こうなってしまえば、如何なンから取り出したゲブロンと言えど価値は殆ど無い。

実際、ベルトの機能に関しては他のゲブロンを搭載する事で機能する以上、この抜け殻のゲブロンは取っておく必要もなし、安全面を考えれば、粉々に砕いてあちこちにバラバラに撒いて万が一にも回収されないようにするのが良いとは思うのだが。

 

捨て難い。

愛着が少し湧いているのが自覚できる。

あの、九郎ヶ岳での戦いで感じた事を、俺は上手く言語化する事ができない。

だが、あの戦いの結果、戦果として手に入れたものを、容易く手放す気になれない、という事だけは確かだ。

嵩張るようなサイズでなし、トロフィー代わりにとっておくくらいは良いだろう。

 

しばしダグバのゲドルードを弄り、時計を見る。

家を出て、ロードもどき共を殺して戻って、結果的に十分程しか掛かっていない。

早く寝るべきではあるのだが……少しくらいの夜更かしはいいだろう。

 

ゲドルードを箱の中に戻し、その箱の中から作りかけのバックルを取り出す。

見る人が見れば、それがまるでクウガのベルト、アークルの様にも見えるだろう。

俺の付けているアークルや五代さんのアークルと似た経緯で作られたものだから、当然と言えば当然だ。

 

今年を乗り越えるにあたって、幾つか乗り越えなければならないポイントがある。

その一つが、アギトの力の消失。

消失、というか、テオスによるアギトの力の奪取か。

……正直、そんな器用な真似ができるなら、殺すんじゃなくてお前が自らアギトの力を回収して回るとか、そうでなくてもアギトの力を人間から引きずり出せるマラークなりを作ってしまえばいいだろう、とは思うのだが。

だが神が人間を愛するという感覚が、人間が人間を愛するものとは大きく異なるというのはよく聞く話で、有り体に言えば、人間を愛してはいるがそこまで手間をかける程の愛ではない、という事なのだろう。

 

ともかく、仮にアギトの力を奪う、という行為が当時に見た映像上のものだけでなく、全国のアギトに対しても行われていたのだとすれば、俺もアギトの力を奪われかねない。

それだけならまだマシだが、俺の仮説では、アークル、アマダムの齎す力はアギトのそれに近い。

アマダムすらも身体から抜き取られる可能性を考えれば、奪われた後に奪還しに行く為の力を用意しておくのは当然のことだ。

そして、幸運な事に、俺の手元には二つの参考モデルが存在する。

俺の付けているプロトアークルに、ダグバのゲドルードだ。

 

本当なら、もっと気軽に分解とかできるように数を揃えたくもあったのだが、基本的にゲゲルを行うグロンギのベルトは、ゲゲルリングにより封印エネルギーという爆弾が仕込まれている。

破壊した後に回収するにしても、エネルギーの残滓によって爆発したりする危険性があり、うかつには回収できなかった。

こうして、研究してアークルを新造しようという段階になってくると、つくづくゴオマのベルトを放置してきたのが惜しまれる。

所詮はズのベルトだから、などと置いてきてしまったが、基本的な構造は共通している筈なので、格好の研究資料になっていただろう。

なにより思い入れも愛着もかけらも無いから好きに解析できる。

 

が、やはりゲドルードの模造品の完成品であるアークルが手元(腰元?)にあるおかげか、現代版アークルの作成はまぁまぁ順調だ。

機械部品を一切使わない、ゲブロンからあふれるエネルギーとモーフィングパワーの経路が重要になる構造は、現代の科学文明からすればオカルト的ですらあるが、実際に組み上げる段階になってくると実に理に適っている造りで面白い。

更に、今回はこのプロトアークルが作られた時とは違い、十全にモーフィングパワーの運用に精通した俺が作っているだけあって、アークル程巨大化していない、というのも良い。

グロンギのコンパクトなゲドルードと比べて、アークルは縦横も厚みも倍以上大きい。

破壊されたら即死、とまではいかないまでも、壊れればそのまま変身能力を失うか、或いは中の霊石魔石の制御を失い過剰進化で身体を焼かれてしまう以上、バックルのサイズは小さいほど良い。

 

実際、もう少し弄れば最低限の機能は確保できる。

そもそも装着するのが俺である以上、制御という点ではそれほどきつい縛りを入れずに済む。

構造上、一度完全に霊石の力を受け入れた個体、凄まじき戦士への変身を経験し身体を慣らした装着者であれば、元のアークル程段階的なモーフィングパワーのブロックは必要なくなる。

グローイングも四色のフォームも無い、アルティメット専用ベルトの方が、余計なギミックが無い分構造は単純で済む。

ただ、これが実際正常に作動するか、というのは未知数な部分も多い。

モルモット、ネズミ、犬、猫などでの実験では限界がある。

そもそも最低限の機能で十分とはいえ、それは俺の肉体が慣れているからであって、実験体にするような動物に耐えきれるものではない。

 

本当なら組み込む必要もないフォームチェンジ機能、各種安全装置を組み込んだものでなければ、動物実験すらままならない。

難しいものだ、とは思うが、半端にベルトの構造を単純化して覚えてしまっては、後々不都合が出るかもしれない。

なんなら、俺以外の誰かにベルトを与えて戦わせる、という可能性も無いではない。

そんな時に必要になってくるのは、最低限の機能を備えた簡易アークルではなく、素人でも変身に耐えうる安全装置完備アークルなのだ。

 

二つの完成品があり、既に俺の頭の中にはプロトとゲドルードを元にした現代版の完成図がある。

材料も特殊なものは使っておらず、強度の問題も結局は埋め込む魔石由来のもの。

加工が難しいだけで、完成は目前と言っていい。

言っていいのだが……。

 

何かが足りない。

可能なら人体実験も行いたいところだ。

それに……俺よりも、ゲドルードの構造に詳しい者から情報も引き出したい。

人体実験のあてはある。

だが、ゲドルードに関して詳しそうな奴は……、少し遠くに居るな。

まさか本州からも脱出しているとは。

だが、行こうと思えば日帰りで行ける距離だ。

次の休みにでも、接触に行ってみるか。

拷問のやり方は知識でしか知らないから、素直に教えてくれるといいのだが。

 

―――――――――――――――――――

 

日帰りで行ける距離、というだけで、標的の居る場所は平日に行ける距離には無い。

そうなると俺にできることと言えば何時も通りの日常を過ごす事のみ。

少しの間ベルト造りを進め、眠り、目覚めれば朝になり、当然ながら学校へ行く時間がやってくる。

朝、少しだけ走り込み、体操で身体を温め、重り代わりに背負っていたジルとシャワーを浴び、制服に着替え、ジルも着替えさせ、ちょうど母さんが作り終えていた朝食を食べればもう登校の時間がやってくる。

 

次に戦う予定が無い日常、というのも、久しく無かった事のように思える。

暴力とはかけ離れた日常は穏やかではあるが、少しの緊張感の欠如も感じてしまう。

別段、刺激が欲しい訳ではないのだが、それでも定期的に戦いに触れていないと不安を感じる。

いざという時に鈍っていては命にかかわるのだから、仕方がない事だろう。

 

だが、それでも学校に限って言えば、平和な、戦いとは無縁の場所であって欲しい。

ワームの群れがやってきて、クラスごと成り代わっていこうとしたり、オルフェノクが乱入してきて繁殖活動をおこなったり、という事が起こりえる場所である事は理解しているつもりだが。

それでも、常在戦場とは中々いかないもので、ただの学生としての穏やかな時間は大切にしておきたいという気持ちがある。

 

だから、だろうか。

仲良くしているクラスメイトの人が、このタイミングで学校を休んだり。

そういう少しでも何時もと違う事が起きると、なんとも過剰に不安になってしまうのだ。

 

―――――――――――――――――――

 

「来てしまった」

 

見慣れぬ民家の正面で立ち尽くす。

俺の家からもおそらくそう遠くないと思われるここは、今日病欠のクラスメイトの人の家。

何のことはない、今日学校で配られたプリントを渡しに来たのだ。

俺よりも家が近い人も、保健委員も、学級委員も居たのだが、全員が全員腹痛を患ってしまい、急遽俺がプリントを渡しに行く事になったのだ。

集団食中毒かな。

全員揃って『アイタタタ、すまん、お腹痛いから代わりにプリント持っていってやってくれ!』とかやりだした時は新手のコントか何かかと思ったが。

次いで振り向いた先、教室に残っていた他の学友たちも全く同じポーズで同じセリフを吐いた時こそが新手のコントだったのだろう。

或いは全員、クラスメイトの人の家に行きにくい理由があるか。

 

……いや、流石に俺でも判る。

最近は朝の登校途中に合流する事が多くなったクラスメイトの人が居なかったせいで、どうも俺は一日上の空だったらしい。

上の空のまま授業を受け、上の空のまま先生に解けと言われた板書の問題を解き、上の空のままノートを取り、上の空のまま体育の授業を受け……。

上の空のまま、何事もなく学校での作業を終えてしまった。

 

心ここにあらずと言った雰囲気のまま何事もなく全ての工程を終えていく俺の姿は、他の学友たちの目には随分と奇っ怪に映ったかもしれない。

窓の外を眺めながら手元だけが板書を自動筆記の如く写していた様はオカルト案件に見えたらしい。

それで、原因がクラスメイトの人の欠席だと感づいた学友たちが、俺に気を使って様子を見に行く権利を譲ってくれたのだ。

有り難い話だと思う。

何時かこの借りは補填したい。

 

「ええと」

 

インターホンを前に、チャイムを鳴らすのを躊躇う。

俺らしくもない。

いくらなんでも、心配しすぎだ。

このタイミングで、クラスメイトの人が学校を休んだからといって。

いくらこの世界が厄ネタに溢れているからといって、こんな身近にピンポイントで厄介事が湧き上がる訳もないというのに。

 

チャイムを押す。

軽やかな電子音が鳴り響き、しばし。

家の中から足音が聞こえ、インターホンからはかちゃりと音声が繋がる音。

 

『……セバスくん?』

 

「うん」

 

『え、あの、えぇ!? なんで』

 

「プリント渡しに来たのと、お見舞い」

 

カメラがあるので、プリントと買い物袋を掲げてみせる。

体調不良、との事なので、一般的な見舞いの品を一通り揃えて持ってきたのだ。

鼻風邪なら鼻セレブ、と言いたい所なのだが、残念な事にまだこの時代に鼻セレブは存在しないのだ(タイムトラベラー的意見)。

 

『ちょ、ちょっと待って、待っててね!』

 

「待ってるから、慌てなくていいよ」

 

この人生では体調不良など殆ど経験が無いが、風邪などで休んだ日の家での過ごし方なんて、誰も似たようなものだろう。

それも女性となれば、油断しきってとても同年代の異性のクラスメイトに見せられるような格好ではない筈だ。

インターホン越しでなくても家の中から聞こえてくるどたどたという騒がしい足音に、とりあえずそれほど元気がないという訳ではない事を察し、少しだけ安心した。

 

―――――――――――――――――――

 

玄関先でプリントとお見舞いの品を渡すだけで終わろうかと思ったら、パジャマの上に半纏を羽織った、芋芋しさが逆に可愛らしいクラスメイトの人に誘われて家に上がる事になってしまった。

体調不良で学校を休んだ人に余り動いて欲しくはないのだが、上がっていけ、というのを断るのもあれなので、しばし彼女の部屋にて雑談。

同年代の女子の部屋に上がるのは、中学時代、剣道部の後輩に勉強を教えてくれと頼まれた時以来か。

 

部屋は片付いていた。

……という事にしておく。

クローゼットからいろいろな物がはみ出していたのを見て見ぬ振りをする情けが俺にも存在するのだ。

一度、彼女がお茶を入れに行った後、内部からの圧力に耐えきれずに下着やら人形やら雑誌やら脱ぎ散らかした服やらが雪崩を起こした際も、目をそらしながら念動力で綺麗に元通りにするだけの情けがあるのだ。

見舞いに来たのにお茶まで、お茶菓子まで出されては返って申し訳ないのだが、とりあえず元気な姿が見れたので良しとする。

 

しばし、彼女の部屋で菓子をつまみながら雑談。

体調の悪い時に長々と起きているのも悪いから、と、俺が帰ろうとする度に、一人で寝ているだけだと暇だったんだ、と、引き止められる事一時間。

随分と長居をしてしまったが、話す話題が無くなり、いい加減日も落ちてきたので、帰る事に。

 

「ありがとね、来てくれて」

 

はにかむように、……というより、少し儚げに笑うクラスメイトの人。

無理をして笑顔を浮かべているような顔だ。

風邪で休んだ日、午後にはもう熱が引いているけれど、身体はなんだかだるいままだったりするので、彼女もそうなのだろう。

 

「いいよ別に。それより暖かくして寝てなよ。まだまだ寒いんだから」

 

と、注意するまでもないか。

半纏に加えて、腕に湿疹が出たとかで包帯をぐるぐる巻きにしている姿は、春も間近なこの季節には暑そうですらある。

 

「うん。……あの、さ」

 

ぎゅう、と、包帯を巻いた腕を抑えて、クラスメイトの人がうつむく。

返事は返さず、黙って続きを口にするのを待つ。

一分は無い沈黙の後、クラスメイトの人は顔を上げ、笑顔を見せた。

 

「……やっぱり、なんでもない。またね」

 

包帯を巻いた腕を背中に回し、もう片方の手をひらひらと振る。

何時も通りの、いや、何時も通りに見せようとしている笑顔だ。

 

「うん、またね」

 

玄関が閉じ、クラスメイトの人の姿は見えなくなる。

しばし歩き、立ち止まる。

アマダムに強化された肉体は、全体的に性能がいい。

変身後と比べれば雲泥の差ではあるが、五感も常人よりも鋭敏になっている。

だから、普通の人なら聞こえないような音も聞こえる。

ドアに寄りかかり、座り込み、声を殺して泣く声が。

 

しばし、悲しげな嗚咽に耳を傾け、歩き出す。

歩いて、歩いて、歩いて、少しづつ速度を上げて、走り出す。

走って走って走って、自宅の玄関に入る前に曲がり、庭に備え付けられた巻藁を思い切り殴る。

拳の当たった箇所から吹き飛んだ巻藁をモーフィングパワーで直す。

 

空を仰ぐ。

分厚い雲が赤い夕日を遮り、白い雲の中に燃えるような赤い雲が混じっている。

溜息。

 

「畜生」

 

なんて世界だ。

あの呑気そうな白い雲も、空気を読んでやったぞと言わんばかりの赤い夕日も。

くそったれめ。

人のことを、馬鹿にしやがって。

 

「荒れてるわね」

 

「……母さん」

 

振り返れば、白いジャケットを羽織った母さんが玄関先に出ていた。

タイミング的に、巻藁を粉砕する場面も直す場面も見ていた様な気がするのだが、驚いた風でもない。

が、今は、そんな事はどうでもいい。

 

「今からちょっと出かけるから、明日、体調不良で学校休む」

 

「また東京?」

 

……もう驚かないぞ。

 

「いや、沖縄……の方」

 

まずは、沖縄だ。たぶん。

正確な位置はわからないが、そこに見知った稼働状態のゲブロンの反応がある。

近づけば発見も容易だろう。

ベルトを完成させる。

 

「そう。なら、母さんのバイク使っていいわよ。何時までもお手製ボロじゃ格好つかないでしょ」

 

「……うん、ありがと」

 

「そのうち、ちゃんと免許も取りに行きなさい。なんならバイクは新しいの買ってあげるから」

 

「……そうね」

 

驚かないったら、驚かないぞ。

今は、何より、ベルトを完成させなければならない。

他の全ては、全部後回しだ。

 

 

 

 

 

 

 

 




☆生き残るだけなら戦い続けるだけで済むけど、知らず普段から穏やかな日常という贅沢を噛み締めていたのだと思い知って生き残るだけでは満足できなくなってしまった欲張りマン
余分を削ぎ落とす事が完成に近づく条件だというのなら、ダグバとの最終決戦は完成から遠ざかった結果とも言えるのんな
生きやすさで言えばブラックアイのままダグバ殺すルートの方が楽っちゃ楽だったんだよなあ……
冷酷だったり残酷だったりの面が目立つが、それは優しさが無いのではなく優しさが必要ない場面にばかり遭遇していたからなんやなって思い知る
こういう奴をどうにかするには親しいやつから攻めていくのが簡単なんやで(インストラクション・ワン)
やるべきこと
1,魔石内臓のグロンギリント混合型の新ベルトの製造
2,ベルトが作動するかの人体実験(できれば)

☆ダグバのゲブロン
今更だけど、ゲドルードがグロンギのベルトで、腹の中の魔石、霊石アマダムに当たるのが魔石ゲブロンだそうで
ある日気付くとダグバくんの形見のゲブロンは息を引き取っていたんや
代わりにとでも言うように、割れた主人公のアークルは修復されていた
これはダグバくんの友情の起こした奇跡なんやなって……
ついでに変身後にダグバ君関連の装飾品が生えてて、それに一切違和感を感じないけど、それはどうでもいいから忘れてええやで

☆ロードもどき君
瞬ころだったけど、あっさり殺される感じは実は原作再現なのかもしれない
実質前作ラスボスと戦っているようなもんだから仕方ない
なんでこんなのが出てきたのかは、本物のロードと対峙した後に説明できそう

☆必死に逃げてるギルスちゃん
二十二号を見た瞬間に、自分も殺される! ってなった
世間一般の市民の認識では二十二号は残虐な未確認ハンターなのでな
残当
変身解除後は勿論みんなお待ちかねの副作用の時間やで(ニッコリ)

☆ただの体調不良のクラスメイトちゃん
言いたいことも言えないこんな世の中じゃ
信頼していないわけじゃないけど、気になる異性だからこそ相談できないってのはあるんよ、女の子には(場末のバーのママ感)
女の子には辛いと思うんだ、何がとは言わないが
笑顔で見送った後、扉の裏で泣き崩れながら「うぅ、うぅぅぅ!」って、言語化できない悲しみに襲われて、包帯に巻かれた腕を抱えながらボロボロ泣いたりしてた、なんでやろな
この子で書きたかった事は次回かその次で書ける
良かったな、レギュラー入りだぞ、たぶん

☆ママン
ジル関連で便利キャラにした弊害でめっちゃ怪しい位置に来た
でも息子が学校を休んだ日に限って二十二号が東京で暴れてる、なんて、普通の主婦でも気付きそうなもんだし……
若い頃はレディースとかで特攻服とか決めてた可能性
母親に強いキャラ付けすると脱線するって前作で学んでいるので前面に出張ってくる事はないと思う
なんかいろいろ知ってる人だなぁくらいに思っといてくだしい
母親が死んで再び聖なる泉が枯れ果てるルートは消えてしまったのだ……
バイクを買ってあげる発言は息子に買ってあげるという名目で自分のセカンドバイクが欲しいだけという意見も無いではない

☆留守番ヒロイン
ただの飼い猫みたいなポジに居る
イベント並列処理できんからもうちょい待ってな


オリジナル話ばっかで申し訳ない
でももうちょいしたらたぶん東京に遊びに行くから
人体実験しないといけないし
ちょうどよく死にかけでベルトが起動したら助かりそうな人も居るし
そしたら運良くロードとかテオスに会えたりするだろうし
その前にまたオリジナルを挟む
まぁ無理に主人公の方針を捻じ曲げて東京に行かせるのもあれなので仕方ないのです
平成一期を振り返るとはいったい……

それでもよろしい人は、次回も気長にお待ち下さい


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18 受け継がれるもの

冬の厳しい時期を過ぎ、春の兆しが見え始めるこの季節。

俺の生まれ育つ町は未だ寒さ厳しく、コンビニで食べる肉まんやおでんが美味しい。

だが、日本でも最南端にあるこの県では、もうそろそろ半袖に切り替えてもいいのではないか、と、そう思える程度には気温が上がり始めていた。

日差しが強い。

じりじりと照りつける、という程でもないが。

いや、やっぱり暑い。

少なくともこの時期の沖縄でライダージャケットは無謀だ。

 

持たせてくれた母さんには悪いが、ジャケットは既に脱ぎ、鞄に押し込んでいる。

暑くてとても着ていられない。

……というか、このジャケット変身してもそのままだから焦った。

なんなんだこのジャケット、妙に頑丈だし。

 

「家族会議……いや、藪蛇だな」

 

一番腹を探られて不味い思いをするのはほぼ間違いなく俺だ。

健康診断で腹を探られる(医療)危険性が一番身近だと思っていたが、まさかうっかり自分から腹を探り合う(心理)ような真似をしようと思いついてしまうだなんて思わなかった。

謎は謎のママにしておこう。

不都合が出るまでは。

 

バイクを適当な場所に止め、春の沖縄を歩く。

本州北部からだから正確な位置情報が掴めなかったが、ここまで来れば探そうと意識するだけでゲブロンの場所は筒抜けだ。

だから、バイクで近場まで来れば、あとは逃げられる事が無ければ数分もせずに発見できる。

 

「来たか」

 

声を掛けるより、袖の中に投擲用の針を作るより早く、その女は振り向く。

薄暗い店内、しかし、一般的な商店街の古物店とそう変わりなく見える店内には似付かわしくない筈なのに、嫌に空気に馴染んだ姿。

白いサマードレスに身を包んだ豪奢な、妖艶な美しさを誇る女。

以前見た時には背中まであった髪は、首元で斜めにばっさりと切り落とされていた。

イメチェンか、或いは誰かに切られたか。

額に刻まれていたバラのタトゥーは、ファンデーションで隠されていた。

だからといって、顔写真が警察に出回っている以上、それだけで姿を隠せるものではない。

この女が、ラ・バルバ・デが何事もなくこうして居られるのは、間違いなく外部協力者が居るからだろう。

ちら、と、店のカウンターで膝の上の猫を撫でるおじいさんを見る。

ゲブロンの反応。

東京で確認できたどれとも異なる、あの都市に集まらなかったものか。

 

「ドルドはどうした」

 

「そろそろ、新たなンが訪ねてくるだろうとの事でな」

 

バルバが投げた何かを受け取る。

ベルト、それも、完全な品。

ゲドルード、そしてゲブロン。

生物と結合していないから最低限の反応しか無いが、ゴのゲゲルが始まる辺りから東京で感じていた反応と同じ。

 

「どちらでも良いが、私の方が説明は上手い。奴は役目を終えた」

 

「予想していたのか?」

 

「いや、正式な手続きだ。来い」

 

店の奥へと歩き出すバルバ。

その背を追い歩く。

罠を警戒する、という考えは、不思議と思いつかなかった。

グロンギは残虐な殺しを行う事はあるが、相手を罠に嵌める、という事はあまりしない。

ゴの強い方のイノシシなどは珍しい例外と言っていい。

いや、そんな理屈よりも先に、この流れが非常に自然なものである、と、受け入れている自分が居るのがわかる。

良くない感覚だ。

根拠のない思い込みよりもタチが悪い。

 

「設計図というものは存在しない。ヌであれば感覚で作れるだろうが、生憎とヌはもう居ないのでな」

 

「表のは」

 

「あれは、もうヌではない。ゲゲルに関わる事は無いだろう。戸籍もあるそうだ」

 

そういうものか。

いや、わかる。

表の店主は、確かに魔石ゲブロン、或いは霊石アマダムに似た反応を示していた。

だが、見える範囲にタトゥーは無く、そして、恐らくはゲドルードではない何かで魔石を制御している。

 

「工房か」

 

「教材が多く有る、説明には都合がいい」

 

古物店の奥には、明らかに現代の文明のものとは異なる様々な器具が修められた棚が並んでいた。

一目で判るとすれば、これらがどれ一つ例外なく、グロンギのゲゲルに関わる祭具を作る材料や工具であろう、という事だ。

わからない部分があるとすれば。

 

「ここで、ゲドルードは作れない」

 

破損しているとはいえ、ダグバのゲドルードの解析は済んでいるため、基本的な機能は理解している。

ここにある器具は、ゲドルードと同等のベルトを作れても、ゲドルードを作るには適していない。

棚の端を見れば、修理を途中で投げ出したベルトのバックルが見える。

ゲドルード、ではない。

アークルでもない。

だが、新たに作られようとしているものではない。

修理している最中に、修理する理由がなくなって放置されている、のではないか。

使うタイミングがなくなったのだ。

ガンバライジングが普及した後のガンバライドカードの如く。

埃の積り具合は一年で済むものではない。

寂れた古物店の隅に放置されたゴミの様な、そんな年季を感じる。

 

「そうだ。だが、役には立つだろう。お前が作ろうとするものには」

 

「……正式な手続きの一環として?」

 

「ああ。今度こそ、正式な手続きとして、だ。座れ。リントの言葉にまとめては有るが、我々独自の言い回しに関しては、私が説明しよう」

 

白のサマードレスが汚れるのも厭わず、バルバは部屋の中心に備え付けられた作業机の椅子に腰掛けた。

 

―――――――――――――――――――

 

無理矢理にでも吐かせるつもりで来て、吐かせるつもりでいた相手が自分から差し出してきた情報は、驚くほどに纏まっており、仰々しい物言いしかできないバルバの言葉にも関わらず、すんなりと俺の頭の中に収まった。

まるで、元からこの情報を引き継ぐ時のテンプレートでも作られていたかの様な無駄の無さ。

教材もいいのだろう。

恐らくは一通りのゲゲルをクリアし、しかしザギバスゲゲルは経験していない。

劣化も無い完品のゲドルードとゲブロン。

 

「覚えが良いな」

 

「お前らは全員そうだった」

 

言ってしまえば、俺のこの物覚えの良さに関して言えば、グロンギは全員が持っていて当たり前のものだ。

覚えが良い、と言っても、覚えることに熱意を持てるかどうか、の違いでしかない。

 

「いや……、ダグバはな、この話に関して、覚えるつもりが無いと言っていた」

 

苦労した。

そう、バルバは目を瞑り、呟いた。

超然とした態度を取り続けていたバルバに似付かわしくない、僅かに疲れを滲ませた様な声。

 

「純粋だった。ンとして、あそこまで完成された者は居なかった」

 

「そうか。……いや、そうだな」

 

ンである為の条件など、俺は殆ど知らない。

だが、ムセギジャジャの頂点として相応しい存在であったか、と言われれば、俺は一も二もなく頷くだろう。

 

「強かったか」

 

「間違いなく」

 

頷くと、バルバは形の良い唇を歪ませ、満足気に薄く笑う。

 

「ならば、お前はもっと強い」

 

「…………」

 

「究極の闇は齎された。ダグバは、役目を果たした。究極の闇にはなれなかったが」

 

「それは」

 

お前の役目だ(・・・・・・)。挑戦権はお前に移った。……ガミオを知っているか」

 

頷く。

 

「今はもう居ない。ダグバも、ガミオも、それ以前の者も。──お前が『ン』だ。解かるな?」

 

しばし考え、頷く。

 

「そうか。……ならば」

 

白い長手袋の細い指先が、バルバの下腹部に充てがわれる。

ず、と、肉を貫く音と共に、手袋を赤く染めながら、その指先が沈んでいく。

進む度にぶつぶつと繊維質の何かが千切れる音が埃っぽい部屋の中に響き、ずる、と、中身が引きずり出された。

 

「役目は終わった」

 

真っ赤な、血よりも薔薇に似た赤に染まった魔石。

完全に肉体から離れると同時に、血液と漏れ出した内臓に塗れた白いドレスの上に、ゲドルードが浮かび上がる。

それを、白いままの手袋で覆われたもう片方の手でつかみ、テーブルの上に置く。

並べられた、赤く濡れた魔石とベルト。

 

次は(・・)お前達の番だ(・・・・・・)

 

―――――――――――――――――――

 

死体を消す事は、モーフィングパワーを極めた者にとってみればどうということも無い。

ただの身元不明の死体ならばともかく、未確認生命体として知られている人間の死体なぞ、残しておいても悪い事態を呼び起こすだけだ。

 

だが、ここにちょうど、良い材料が二つもある。

周囲の器具や直し掛けの知らないベルトも材料にできる。

念のためにと持ってきていた、一番どうでもいいゲブロンが一つある。

今、教えてもらった知識を元に、一先ず試作を完成させてしまおう。

 

しかし、その前に。

バルバの死体に触れる。

漏れ出た内臓を腹の中に念動力で押しやり、傷を塞ぐ。

破れたドレスも直し、床に溢れた血液だけを消し、部屋の隅に横たえる。

消すのは後だ。

 

「お疲れ」

 

そう告げて、机に向かい直す。

後は、頭の中にあった設計図を修正しながら実物を作るだけ。

家に置いてある造りかけに関しては、このベルトを使った実験の後、被験体の経過を少し観察してから改めて修正を入れて作り直そう。

 

今日は、収穫の多い日だった。

収穫の多さが幸福に繋がる訳ではない。

知らなくてもいい、余計な事を知った様な気もするが。

少なくとも、貴重な被検体を無駄死にさせる危険性がなくなった事だけは、手放しで喜んで良いだろう。

 

―――――――――――――――――――

 

そして、俺の沖縄旅行は無事に終わった。

本当なら、沖縄に来たのなら、美ら海水族館くらいには行きたい。

行きたいが……残念な事に、この2001年にはまだオープンしていない。

いや、正確には前身となる海洋生物園は存在しているのだが、聞いた話では老朽化が進んでいて、少し今向けの水族館とは言い難い、らしい。

それでも見てみたくはあるのだが……、流石に今はベルトの完成を優先するしかないだろう。

 

ベルトの完成を優先する関係で、一度家に帰宅。

大荷物を抱えて戻ってきた俺を、居間でテレビを見ていた母さんとジルは何事も無かったかの様に出迎えた。

……実は、ジルが本性現すか本能覚醒させて襲いかかっても余裕だったりするのだろうか、母さん。

まさかね。

 

「あら、早かったわね」

 

「うん、途中(瞬間移動で移動距離を)飛ばして来たから。はい、お土産」

 

マシントルネイダーで飛ばしても二から三時間ほど掛かる距離だが、行きの途中で米軍とかに捕捉されたりする可能性を考慮して転移に切り替えた。

この瞬間移動というのがまた曲者で、中々に感覚的で信用ならない。

大体ここ、というのはできるのだが、知覚範囲の外へ行くとなると割りと洒落にならない誤差が生じる。

これが元からそういう仕様なのか、慣れでどうとでもなるものなのかはわからない。

今後の実験で検証していくしかないだろう。

 

それはともかく、転移直後を目撃されては堪らない。

変身せずに転移しても超能力者か何かとして噂が立ってしまうし、二十二号が瞬間移動を可能とする、という情報が出回るのも不味い。濡れ衣を着せられ放題になってしまう。

だからこそ、時間が掛かってもバイク移動をメインに据えてきたのだ。

が、今回は海に囲まれた土地、という事で、沖縄周辺の海中へと転移を決行した。

お蔭で、俺は学校帰りに決断的に沖縄行きを決定し出発してから、なんと夜の十時頃には自宅への帰宅を完了してしまったのだ。

移動二時間、説明一時間、ベルト試作一時間、お土産屋巡り一時間。

余裕の帰宅だ。

 

「チラガー、サーターアンダギー、ちんすこう、あと、クソダサ海人Tシャツ、クジラのぬいぐるみ、あとは……」

 

「暫くは沖縄づくしかな」

 

うん、まぁ、見た目の面白さでチラガーを何枚も買ってきてしまったのは俺の落ち度だ。

袋に入ったままのチラガーをお面の様にしてはしゃぐジルを横目に、母さんがなんでもない風に聞いてくる。

 

「それで、目当てのものは手に入ったの?」

 

「うん。……あ、それと明日は東京に行くから体調不良で休みって伝えておいて」

 

夜通しバルバとかドルドとかとの追いかけっこをする可能性を考慮していたのだけど、向こうの覚悟が決まりすぎていて大幅に時間が余ってしまった。

夜の内に東京に行って被検体を確保するのもいいか、とも思ったのだが、夜分遅くに尋ねるのは失礼だし、相手を警戒させてしまうだろう。

そも、どうやって被検体に試作ベルトを装着させるか、という問題もある。

装着後の経過を多少なり観察したいので、できれば双方合意の上で、というのが望ましいのだが。

 

「彼女には連絡しなくていいの?」

 

「彼女なんて作れてないよ」

 

仮にそういう関係になれる相手ができたとして、四六時中その相手と行動をともにできる訳でなし。

知らぬ間にオルフェノクにされてスマブレの尖兵になっていたり、ワームに入れ替わっていたりしたら精神面で非常にダメージを受ける可能性がある。

実はそれほどダメージを受けないんじゃないか、という可能性も無いではないのだが、もしとかたらとかればとかで弱点になる可能性のある人間関係を作りたくない。

 

「そうじゃなくて、ほら、いっつも話してくれてるでしょ、クラスメイトの子」

 

「ああ、クラスメイトの人」

 

「名前で呼んであげたら……?」

 

「いやぁ……どうにも」

 

名前を覚えていない訳ではないのだけど、名前で呼ぶと唯でさえ強すぎるくらいになってる思い入れが更に強くなりそうで、ちょっと躊躇う。

現状、友人としてそれなりに仲良くやれているとは思うのだけど……。

それも、これからどうなるかわからない。

 

彼女がああなってしまったのは、極端な話、彼女に運が無かった、というのが一番大きい。

が、俺が彼女の身体を治すのに手を入れてしまったから、という可能性も無いではない。

明確にそうなのかと言われると決して断言できる訳ではないのだけど、そういう可能性が欠片もないのか、と言われれば、わからないとしか答えられない。

彼女に発生している問題を解決する上で、完成したベルトを装着してもらう必要がある。

そうなれば、そのベルトが齎す諸々の効果、生活する上で生じる問題などを説明しなければならない。

 

いっそ、素知らぬ顔でベルトだけこっそり装着させる、という手も無いではない。

……が、彼女がこれからの人生で生きていく上で、自衛の為の力が必要になる場面も出てくるだろう。

少なくとも今年の間は必要だろうし、何の知識も無いままに本能的に戦いの場に向かってしまう可能性だってある。

 

あと、ベルトの構造上、服の上から装着する場合は確実にベルトの下になっている服は破けてしまう。

例えば変装して、雑踏の中ですれ違いざまにベルトを付けたとして、彼女はその瞬間に激痛に呻きながらその場に倒れ込み、痛みが収まったと思ったらヘソ出しルックである。

原因不明の突然の露出に加え、こちらもやはり自らの身体に起きた新たな変化に無知でとても危険だ。

不用意にレントゲンでも撮ろうものなら、何の心当たりもないままに研究者の玩具にされかねない。

 

だから、たぶん。

クラスメイトの人を根本的な部分から助ける、普通の人間に戻すのは無理だし、俺にできる解決手段を示した段階で、彼女はもう俺のことを友達とも思ってくれなくなってしまうだろう。

クラスメイトの人はとてもいい人だけど、それでも、自分が怪物になる原因になったかもしれない奴に親しみを覚え続けてくれるのを期待するのは、酷な話だ。

何しろ、似たような怪物が去年、東京周辺限定とはいえ、大量に人を殺し回っていたのだ。

 

しかも、場合によっては、説明の仕方によっては、俺の正体にも勘付くかもしれない。

そうなれば、どうしようか。

言いふらされたりするのだろうか。

脅しつける、なんて真似ができるなら、そもそもこんなにベルトの完成を急いだりしない。

ああいや、去年の俺の、二十二号の評判を考えれば、下手に言いふらそうとも思わないかもしれない。

逆に正体に関してはばらした上で説明する方が、安全と言えば安全か。

その後、どういう目で見られるかは、考えないものとしよう。

 

「うん、でも…………呼びたいよね、名前」

 

気軽に名前を呼び合えるというのは、とても素敵なことだ。

なんでもない、他のクラスメイト連中は、気軽に呼べていたのに。

大事にしたい、今の、たぶん一番の友人であるクラスメイトの人の名前を呼べなかったのは、そんな理由なんだと思う。

セバスとかいうあだ名が定着したのも、運が良かった。

皆が呼んでいるから、距離を置かれても、その呼び名は変わらないだろう。

回りに変な目で見られるのを好む人でもないと思うし。

 

「──」

 

くいくい、と、燻製にしたチラガーを勝手に開封して齧り付いていたジルが俺の袖を引いていた。

袖を引く手の中には、俺との共用である携帯電話。

通話状態である、と伝えたいらしい。

チラガーを母さんに取り上げられるのを名残惜しそうにしているジルから携帯を受け取る。

 

「はい、代わりました」

 

『あ、セバス君?』

 

「ん……、あれ、どうしたの、何かあった?」

 

クラスメイトの人だ。

直前まで考えていた相手の声を突然聞いたせいで、少しだけまともな反応を返すのに時間がかかってしまった。

 

『いや、私はなんとも無いんだけど、ジルちゃんからメールがあって』

 

「なんて?」

 

『電話するから、切らずに待ってて、って』

 

「何やってんだあいつ……」

 

ちらと視線をやれば、母さんが食べやすいサイズにカットしてくれたチラガーを齧ってご満悦だ。

俺の視線に気が付けば、片手でピースを作り軽く左右に振ってみせた。

……もう記憶完全に戻ってるか、さもなきゃ随分と『いい性格』に育ててしまったのかもしれない。

 

『ジルちゃんはなんて?』

 

「電話代われ、ってさ。俺に」

 

『セバス君に?』

 

「体調不良で休んだやつの家に上がり込んで話し込んだんだから、その後の体調に気を使え、みたいな事を言いたいんじゃないかな」

 

『私が上がってくれ、って言ったんだけどなぁ……』

 

ははは、と、呆れるように笑うクラスメイトの人。

こうして話している分には、普通に話せるらしい。

逆に、人と話している間のほうが精神的に落ち着くのではないかとも思う。

気を張ってるだけ、とも言えないでもないのだけど。

相談して貰えれば、とも、思わないでもないのだけど。

自分でもできないような事を、人に強要できる訳もなし。

 

「あのさ、明日、学校行けそう?」

 

『……ん、まだ、ちょっと、わかんない、かも』

 

「そっか。俺も明日体調不良で休む」

 

『え?』

 

「で、ついでに出かけるんだけど、お土産は甘い物としょっぱいものどっちが良い?」

 

『えぇぇ?! あ、甘い物? かな?』

 

年相応の女の子っぽくて好感が持てる。

しょっぱいものって答えられても似たような感想だったろうけど。

 

「じゃあ、お土産渡すついでに遊びに行っていい?」

 

『へぇぁ、ぉ、ぉぅ、いや、うん、いぃですよぉ?』

 

声が上擦ってる。

急過ぎたか、とも思う。

良く考えれば、思春期の少女の家に男の方から予告して上がり込む、なんてのはマナーに反するとも思う。

が、実際、何が起こるかわからない以上、早いに越したことはない。

どうせ要件済ませた後は親しみもクソもなくなるだろうから、気にするだけ損だ。

 

本題を済ませられるかどうかは明日の人体実験次第なのだけど。

九割九分成功する筈なのだが、被検体候補の人は運が極端に悪い。

うっかり感電死したり過剰成長で一瞬で老衰死したり、その後に何らかの悪運から蘇生してベルトのデータ取りには役立たない人体の神秘だけが実験記録として残ってしまうかもしれない。

そうなれば、少し条件から外れるが、適当なスマブレ所属オルフェノクでも見つけてモルモットにするしかないが、どちらにせよ遅かれ早かれだ。

 

ベルトは完成させる。

完全な形でだ。

 

「楽しみにしててね」

 

『うん、……へへ、楽しみに待ってるから』

 

―――――――――――――――――――

 

そういう訳で、俺は久しぶりに東京にやってきた。

今年の秋には修学旅行が予定されているが、行き先の候補の一つが東京になっている。

……冷静に考えてみれば、未確認の完全壊滅が確認されていない状態でアンノウンの事件も発生している東京に修学旅行に行くとか正気ではない。

生徒による厳正なる投票によって決まるとの話しなので、是非とも修学旅行は京都に行きたいものだ。

グロンギを殺しに来た時にはほぼ毎回どこかしら観光しているので、わざわざ修学旅行でまで来たくない、などという浮ついた気分から言っている訳ではない。

 

さて、実の所を言えば、被検体の居場所どころか、今現在どのアンノウンが現れて殺されたか、ということすら把握出来ていない。

一応の目安として、ジャガーロードが死んでいる、城北大学から葦原涼が退学している、という二点だけは簡単に把握できた。

この年は、事件が発生する正確な日付が記録されておらず、アンノウンに関してもニュースで取り上げられることがない為に、去年ほど先を見越した動きができない。

できないのだが、時系列を把握するコツと、俺にしかできないであろう裏技がある。

 

まず、事件性の有る死亡記事。

殺され方が明確で無かったりするものは怪しく、被害者の名前はプライバシーもクソも無く新聞に取り上げられる為、その名前が覚えのある名前であれば、大体の時期が把握できる。

そして、つい先日三浦智子なる人物の死体が発見されたという記事が確認できた。

となると、少なくともタコの前後。

更に言えば、どこぞのビルで車に乗ったミイラが目撃された、というクソスレを発見できたのは非常に大きな収穫と言えるだろう。

タコは死んだので、馬だ。

 

……面倒な時期だ。

この時点で、被検体候補の人は、闇の力に老化した部分を治癒して貰っている。

そして、変身後の老化現象は必ずしも毎回起きる訳ではない。

例えば、闇の力の急成長にびっくりして踵落としをかましに行った時は、本当に変身して踵落としをするだけだった為か、変身後も老化現象は起きていない。

事態が逼迫していない状態で、というか、副作用がどれくらいの頻度で起きるか、命にどれほどの別状があるかもわからない状態で、それを解決する為の手段を見ず知らずの相手から受け取るだろうか。

 

「スタンガン……ガス……当身……いや、説得からか」

 

説得……。

そうだ。

よくよく考えてみれば、だ。

このタイミングなら、割りと説得がしやすい。

逆に、今こそ接触するべき時じゃないか?

 

昨日、バルバから変な話を聞かされたせいで妙に気を張ってしまったが、俺にはリントの基礎にして最終奥義である説得がある。

話し合いに向いていない、殴ったほうが早い、などと言っている場合ではない。

手持ちの情報をちらつかせて、上手いこと言いくるめてみせよう。

 

 

 

 

 

 




☆説得ロールよりも先に言いくるめロールよりも先にこぶし+赤心少林拳が出るマン
文字通り言葉が届くよりも早く届くこぶしをぐっと堪えて、被検体をだまくらかせると信じて……!
グロンギの運営サイドが持っていたバトンを渡されて正式に今年の案件に取り組む役目を引き継がされた
聞かなきゃ良かったとおも思うが、聞かなくてもどうせどこかで関わらなきゃいけないハメになるので動じない程度の落ち着きは手に入れた
高校の時期に得た友達は生涯の友になる、みたいな話は聞くけど、じゃあ高校の時期に友だちを作って維持するのってきっと難しい事なんだろうな、とか思う
でもクラスメイトの人は助けたい
ホントの所は名前で呼びたい
助けた後の事を想像するとお腹が重くなるけどそれも仕方がない事だよねという割り切りもできる
生きると決めたからには後ろを振り向く暇も下を向く余裕も無いのだ
だから前向きに出先では観光するしお土産も買う
割りとアマダムの力が脳を変えたから保ってるって部分はある

☆ラ・バルバ・デ
前グロンギ運営サイド
時代のグロンギの始まりを確認し、クランクアップ
「終ったな」
「あれなら大丈夫やろ」
「みどころがある、あの子の言う通りやったわ」
「……なんやダグバ、向かえか」
「殊勝やん。ええわ、ゆっくり行こな」
などと書きつつ、ここから主人公が心臓にフレイムセイバーぶっ刺して蘇生して仮面ライダーG1に力を貸す謎の赤バラグロンギオルフェノクアギトの人として活躍するルートを一瞬と言わず数秒考えたりもした
555まで生き残って薔薇幹部怪人対決とか……素敵やん?
でも主人公が今更死体の処理を人任せにするとは思えないので蘇生ルートは消滅なのだ
登場人物増えると管理が面倒というまっとうな理由もある

☆ラ・ドルド・グ
一言の出番も無く終了
仕事を終えた
というか、グロンギ回りの設定は弄りすぎて改めての説明が必要なのではないか、とも思うけどどうだろう
元考えてた使い道とは異なるけど、グロンギがデザインされた種族だ、というここでの設定からすると有る種規定路線である

☆ヒロイン
内部にいろいろ溜め込みがちな主人公にさりげないフォロー
男女の関係にある事だけがヒロインの役目ではない事を教えてくれた
最近ジョーズを見たのでクジラよりもサメのぬいぐるみが欲しい
でもチラガーは見た目が面白いし美味しい
サポとして優秀なのではないか
だがまだいろいろ隠してるイベントがあるので油断もならない
爆発しなさそう、という状態が一番あぶないのでは
いぶはボブかしんだ

☆クラスメイトの人
この子との平穏なやり取り書いてるとラブコメっててわきわきする
いろいろあるけど、この子がベルト受け取って説明受けて、そこからどう反応するかで主人公の今後の方針が決まるまであるレベル
できれば主人公の予測を覆すレベルの善人ぶりを見せて欲しいけどどうなるかはこれから考えるので未知数なのだ
原理原則だと貴方のせいで私はこうなったんでしょからの疎遠か転校ルート
でもそれは多分書いてる方がしんどくなるのでどうにか真の天使とか女神みたいな感じで救われて救って欲しいとも思う
祈れ祈れ……

☆ママ↑ン
結局、主人公の名字と名前を考える上でこの人の設定も考えたけど
名字の由来だのなんだのはよっぽどの事が無いと主人公に説明したりはしないと思う
仲良くなった友人に尽く絶縁されたりしても最悪でもこの人が居る、と思えばまだ救いはあると思われる
父親の影が薄い?
クラスメイトのエピソードに入って露骨にヒロインの影が薄くなってるのにこの上で更に父親まで登場させてそれなりにキャラ付けなんてしたら話進まないので



世にも珍しい一切バトル描写が無い平和な説明回
だからきっと読んでて心が安らぐ感じに……
なんだこのネガティブ話(驚愕)
画面が薄暗いし音楽もしっとりしてるし
気軽に書けて気軽に読めるを表題としているだけにこれはいかん
救われる展開を書かなければ……
そのために生贄を捧げなければ……
具体的には放っといても救われなさそうな元大学生
なんと結果的に双方win-winの結果が訪れるかもしれないぴょん
たぶんな
書かないとどうなるかはわからんし
結局この話で東京まで行けなかったし
それでもよければ次回も気長にお待ち下さい


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19 偽りの救い

薄曇りの空の下、湖畔にて、二匹の怪物が戦っていた。

シマウマに似た人型の怪物、ゼブラロード、エクウス・ディエス。

カミキリムシに似た人型の、いや、かつて人であった怪物、ネフィリム、或いはギルス。

いや、戦う、というのは語弊があったかもしれない。

その戦いは一方的なものだった。

 

ゼブラロードの動きは明らかに精細を欠いている。

直前にギルスレイダーによる体当たりを幾度となく食らったダメージが残っている、というのもあるだろう。

だが、明らかに戦意が薄い。

明らかに自分を害しに来ているギルスに対して、避ける、防ぐなどの消極的な行動しか取っていない。

そして、ゼブラロードの消極的な動きとは対象的に、ギルスの動きには一切の迷いがない。

 

殴る、蹴る。

動きそれ自体は、多少喧嘩慣れした程度の動きでしかない。

だが、拳を、脚を振り抜く速度に迷いがなく、明らかに殺しに掛かっている。

それは本来あり得ざる事だ。

このギルスの元となった、ギルスへと変身した青年は一般市民に過ぎない。

たとえ相手が人間でないとして、たとえ相手が人を殺そうとしていたとして、躊躇いなく殺しに掛かれるものだろうか。

これこそがギルス、ネフィリムの本来あるべき姿。

変身元となった人間の元の性格に関係なく、戦うと心に決めたのであれば、もう一人の自分、人間でないギルスとしての本能の赴くままに暴力性を発揮できる。

 

ギルスの赤い複眼が滑るように光り、ゼブラロードを睨めつける。

虫の冷酷さ、肉食獣の獰猛さ、人間の意志を全て内包する捕食者の瞳。

ゼブラロードの身体が竦む。

勝てない相手ではない。

だが、既に滅んだ筈のかつての敵が、かつて群れを成して立ち向かってきた恐れを知らない戦士との戦いの記憶が、ゼブラロードの中に恐怖に近い感情を蘇らせた。

 

「ガァッ!」

 

肉体的ダメージ、精神的な揺らぎを抱えたままのゼブラロードに対し、ギルスは迷いなく、流れるように後ろ回し蹴りを放つ。

二十トンにも及ぶ蹴撃をまともに喰らい、受け身すら取れずに背後の水辺に吹き飛び倒れるゼブラロード。

 

「う、ぉ、おおああああああああっっ!!」

 

脳を焼くような闘争本能。

戦う、という意志を苛烈な程に後押しするギルスとしての暴力性が、何の意味も持たない咆哮となり、口部クラッシャーから溢れ出す。

びりびりと湖面すら振るえさせる咆哮と共にギルスの踵の爪が鎌の様に伸長。

跳躍。

 

ダメージにふらつきながら起き上がったゼブラロードが目にしたのは、大きく脚を上下に開いたギルスの姿。

避けるか防ぐか。

そう考える間もなく、大上段から振り下ろされるギルスの踵落としが背を貫く。

長大に伸展したギルスの踵の爪が、振り下ろされる勢いのままにゼブラロードの肩甲骨の間から心臓を貫き、鳩尾から先端を覗かせる。

 

「グッ、がッ……!」

 

致命傷。

マラークの生命力が如何に優れていたとして、地上で、この世界で活動する以上、その肉体は真っ当な生物としての生体活動を行っている。

銃砲に耐える皮膚と筋肉を持っていようが。

心の臓を貫かれてしまえば長くは持たない。

ゼブラロードが苦痛に呻き、身を捩る。

 

それは生きているが故の反応。

ギルスの次の動きは早い。

心臓を貫くヒールクロウを支えに跳び、正面からもう片方の脚でゼブラロードを蹴り飛ばす。

二十トン相当の蹴りに押し込まれ、背から突き刺さっていたヒールクロウが肩甲骨を、肋骨を、筋肉を、内臓を切り裂き、ゼブラロードの上半身を半ば斬り裂きながら貫通。

ギルスは背後へと宙返りをするように着地。

依代となる肉体の命を失ったゼブラロードは、再び湖面に倒れ込むよりも早く、爆発。

 

完全なる決着。

古の時代にマラークと対等以上に渡り合ったネフィリムの、正当なスペック通りの力が正しく振るわれた結果だ。

……だからこそ、だろうか。

力を振るった後の結末も古のそれと等しくなる。

 

ギルスの姿が消え、その場には人間、葦原涼の姿が現れる。

そうしてようやく、涼は自分が助けるべき相手の事を、篠原佐恵子の事を思い出した。

いや、考えてはいたのだろう。

自分の父親の事を教えてもらう為、いや、そうでなくても、多少なり知り合った相手が殺されそうになったからこそ、力を奮った。

連れて逃げるには明らかに目の前の怪物が殺意を抱きすぎていたからこそ、先に倒さなければならなかった。

だが、潜水装備を持って挑むような湖畔の中で、怪物に襲われて恐慌状態の人間が、無事で居られるだろうか。

 

涼自身、自らがかつて水泳選手だったからこそ言える。

水中での精神的な混乱は容易く生命に関わる事故に繋がる。

それに、今の今まで気付けなかった自分に愕然としながら、揺らめく湖畔の水面を見渡し、佐恵子を探す。

 

「佐恵子さん!」

 

水面で仰向けに浮かぶ、意識を失っている様に見える佐恵子を見つけ、上着を脱ぎ捨て走り出し、躊躇いなく湖に飛び込もうとした涼は、目撃した。

ゆらゆらと波に揺られていた佐恵子の身体が、ゆっくりと水面から持ち上げられていく。

佐恵子と同じく、この湖でダイビングをしていた誰かか。

いや、違う。

その姿は、ほんの数ヶ月前まで入院生活を送っていた自分ですら見覚えのあるものだった。

ニュース、新聞、週刊誌、どれを見ても姿を見ない日の方が少なかった。

赤い装甲、黒い皮膚、赤い瞳に金の二本角。

ざぶざぶと水中を歩きながら近付いていくる、或いは自分の姿にも似た異形の戦士。

 

「四号……?」

 

涼の言葉に反応する事もなく脇を通り、水のない砂利の上に気を失った佐恵子を横たえる。

しゃがみ込み、胸元に手を翳す。

すると、佐恵子の口からごぼごぼと音を立てて水が溢れ出し、暫く激しくむせた後、ゆっくりと呼吸を取り戻した。

 

「これで大丈夫。念のために、救急車を呼んでくれないかな」

 

落ち着いた声の向けられた先が自分である事に僅かに遅れて気づき、119へと通報する。

そして、その間中、四号の視線が自分に向いている事に気がついた。

自分と同じく変身し、その上で人間を守る存在が珍しいのかもしれない。

涼からしても、或いは自分と同じ境遇なのかもしれない四号には聞きたい事が、いや、話したい事があった。

それは具体的な相談なのか、或いは、同じ境遇の相手であればこそ、胸の中にあるもやもやを打ち明ける事ができると思っての事なのか。

涼は口を開こうとし、しかし、何時の間にか四号が手に持っていた何かに目を奪われた。

 

「それは」

 

「君の助けになる筈だ。受け取って欲しい」

 

「何故、俺にこれを?」

 

「同病相哀れむ、って言うだろう。それを付ければ、少なくとも今よりは楽になる」

 

言うが早いか、四号は涼にベルトのバックル──四号のそれに良く似ている──を渡し、腰に付けるように促す。

いきなりの話ではあった。

だが、彼は入院生活の中で、人々の命を脅かす未確認に対して人並み程度には憤りを感じ、そんな未確認を倒して人々の助けになっていた四号に、僅かな疑いと、それに比べやや大きい感心を抱いていた。

そして、異形と化してしまった自分に絶望せずにいられたのは、少なからず四号の事が頭の片隅にあったからだ。

涼は僅かに逡巡し、しかし、結局は自らの下腹部にそれをあてがった。

 

―――――――――――――――――――

 

「東京名物ひよこ饅頭~!」

 

※東京名物ではない。

俺は一人、東京と地元の間にある道の駅で密かに祝杯をあげていた。

いわゆる、よくやった自分へのご褒美、というやつだ。

因みにこの道の駅の食堂にはそれなりに有名な名物料理があるらしいので、おやつ代わりにそれも頂いている。

燃費という意味ではもう実は無補給永久稼働ワンチャンありえるような身体ではあるのだが、美味しいものは美味しい。

それに今日は実によく出来た日なので少しくらい贅沢をしてもいいだろう。

 

試作グロンギ・リント混合型ライダーシステムの実験はものの見事に成功した。

実際、装着した瞬間にものすごい勢いでクリーチャー化が進んだりエネルギー過多で焼け死んだり感電死したり、再生能力の不具合でよくわからない奇妙な肉と臓物の塊に変化する可能性があっただけに、人体実験で正常に作動する事がわかったのは実にめでたい。

これで気兼ねなくこのベルトを使用する事ができる。

一番のネックだった、被検体である葦原涼にどうやってベルトを巻くか、という問題も、ふとした思いつきから簡単にクリアーできたのも大きい。

 

なるほど、確かに、俺が素性を明かして事情も説明して、という、情に訴える方法もあるだろう。

あるいは、変身後の姿で訳知り顔であかつき号事件に関する全情報をブッパするという手も無いではないだろう。

もしくは、手足をもいでから力任せにベルトを装着させるのも可能ではある。

だが、俺には第四の選択肢があった。

そう、第四の選択肢……。

ニセ四号作戦が!

 

俺の、未確認生命体二十二号の世間的な評価ははっきり言って低い、というか酷い。

だが、だがしかし。

俺は、ある時期までは四号と同一視されていたのだ。

そして、基本フォームこそ更新されているが、アークルだけを用いた変身で、基本形態を取る事も、まぁ、頑張れば、めちゃくちゃ頑張れば、出来ないでもない。

多少ムキムキになってしまっているかもしれないが、写真越しにしか見たことのない一般人相手であれば、完全なマイティフォームを取った俺と、五代さんの変身したマイティフォームの違いはわからないのである。

そして俺、二十二号は、実は純粋なマイティフォームで戦ったことが殆どないのだ。

 

つまり、世間一般の認識で言えば、赤いクウガ=四号。

マイティフォームに変身して活動するだけで、勝手に相手は勘違いをしてくれる。

しかも、その形態でむやみに暴力を振るわずに紳士的に振る舞えば勘違いされる確率は跳ね上がる。

これほど便利な話はない。

後に何らかの理由でこの事実が露見したとしても問題は無い。

何しろ、俺は葦原涼との接触時、一度も自分が四号であるなどと発言していないし、四号かどうか、との問いにも一切答えていない。

そして、これ以降は別に無理にマイティになる必要も無いので俺に話が及ぶ事も無い。

 

確認の為に変身もして貰った。

再生能力も無事に発現しているし、肉体の制御は完全に行われている。

被験体は健康かつ戦い続けることのできる肉体を手に入れてハッピー。

俺は人体実験のデータが取れて安全性を確認できてハッピー。

win-winな上に、葦原さんは今後、四号に助けられたんだ、的な話のネタにもできる。

これはもう、慈善事業と言っても過言ではないのではないだろうか。

 

ギルスの老化に対して、アークル、あるいはゲドルードが制御装置の役割を果たせるというのはご都合主義の様に思えるかもしれないが……。

……実際、グロンギの生まれた経緯などを想像すれば、これが正しい形なのかもしれない。

無限に進化し続けるが、老化現象により短命なギルス。

それに対し、老化を抑え、或いは暴走しかねない肉体を制御する機能を備えたゲドルード。

やもすれば、グロンギという種族が作られたのは次善の策であった可能性すらある。

もしも本当にそうなら、数千か数万かの年月を経て、真にベルトを装着するべき者にベルトが渡ったという事か、実に感慨深い。

 

これで、当初の目的は果たした。

あとは、帰ってクラスメイトの人の家に行くか、或いは明日の休日を待ってクラスメイトの人を家に呼ぶかして、ベルトを渡すだけ、なのだが……。

一つ、問題が発生した。

ある意味では収穫とも取れるが、クラスメイトの人にどうやって話を切り出すか考えるのに頭を悩ませている今は、正直、面倒事でしかない。

これが、本当にそう(・・)なのかを確かめるのと、クラスメイトの人への事情説明は、やろうと思えば、恐らく同時にできる。

その場合、恐らく小一時間一緒に歩き回る、くらいの時間は必要になるのだけれど……。

 

……もういいか。

少しくらいいいだろう。

後先を考えずに、力を行使しても。

葦原さんの様に適当に誤魔化す気にもならない。

最終的に全部話す方が、少なくともベルトを巻いてもらう事に関してはスムーズに行く筈だ。

後は、そうだな、家に帰って、細々としたところは、母さんにも相談してみよう。

 

―――――――――――――――――――

 

そんな訳で、まだ同級生達が学校でホームルームとかやってるであろう時間には帰宅できてしまったのだ。

なにしろ途中で結局マシントルネイダーで制空権ぶっちぎりバトルハッカーズしてしまったからな……。

あと、沖縄行きを想定した加速を経験すると、相対的に東京までの距離が短く感じるというのもあると思う。

 

「ただいまー」

 

ベルトを抜いて余裕が出来た分まで鞄いっぱいに詰め込まれた東京土産を広げる為に居間に行くと、ジルが一人でソファにうつ伏せに寝転がってテレビを見ていた。

まずは母さんに聞きたいことがあったのだけど、この時間はまだ母さんはパートに行っている筈なのでこれは仕方がない。

ジルは……少しだらけすぎかな、とは思うのだが、かつての種族のかつての同じ階級の連中の世紀末雑魚的あらくれ具合を考えるに、非常に文明的な怠惰っぷりなので特に問題はないだろう。

 

『おあえい。あいおおうあっあ?』

 

ソファの上でごろりと仰向けになり、シャツが胸の下辺りまでめくれるのを気にする様子も無く手を振り口を動かし返事をしてみせるジル。

胸元が見えるぞ、と言いたい所だが、たぶん多分にある胸の膨らみにひっかかってそれ以上捲れようがないのを理解しての動きだと思うのでそこには触れないでおく。

傍に寄りめくれたシャツを直し、同じソファの足元に座り込む。

 

「大丈夫じゃないならここには居ないだろ」

 

『えいおういあ?』

 

唇の動きから読み取っているので、疑問符が付く内容かどうかは首を傾げる動きなどでしか判断できない。

えいおういあ……せいこうした?

どこまで知ってるのか、とも思ったが、よくよく考えるとこいつは記憶の有る無し関係なしに俺が戦っている事も新しいベルトを作っている事も隣で見ていたから知っているんだったか。

 

「成功、かな。うん、成功した。完璧だ」

 

別物のベルトの安全性を調べても意味がないので、細かい設定を除いて葦原さんに埋め込んだベルトは、完成品とほぼ同じ構造になっている。

装着する人間の性別や年齢などにもそこまで左右される事はない筈なので、まず間違いなく有効な実験データが得られたと見ていいだろう。

本音を言えば、同じ年代の女性のギルスを使ったデータが欲しかったのだが、そもそもギルスの絶対数が少なすぎる為に今から探索して見つけ出してベルトを巻くには時間が足りない。

参考にしたゲドルードからして、年齢性別に制限があるようなものではない。

更に追加した安全装置により、予期せぬ動作、制御装置の不備により急激な肉体の変化が始まった時点でゲブロンを自壊させる機能も搭載している。

この安全装置にも不具合があって起動しない場合は……もう、死ぬ運命にあったと見て諦めるしかないだろう。

もったいないと言えばもったいないが、魔石に関してはもう供給のあてがある。

 

『ああいいあ?』

 

「あげない」

 

ぷー、と頬を膨らませ唇を尖らせるジル。

油断も隙もない。

元の記憶がベルトを取り戻そうとしているのか、単純に俺が変身や鍛錬を見せたせいで新しい人格の育成に大失敗してしまったのか。

だが、少なくともこいつにベルトを付ける意味はないだろう。

延命したくなったのなら話は別だが。

今はそのつもりも無い。

 

「代わりにまんじうをやろう」

 

ぽいっ、と、袋を剥がしたいちご大福を投げる。

寝転がった姿勢のままジルがそれを器用に口でキャッチ。

しゃきん、という音が聞こえる程に勢いよく閉じられた口に大福が半ばから切り裂かれ、即座に開かれた口の中にもう半分も落ちていく。

ぐぁつぐぁつと、知能指数が低そうな音を立てながら咀嚼し、飲み込む。

 

『おいいい』

 

歯を見せて笑うジル。

 

「そうかそうか」

 

『おああい』

 

「夕飯が食べれなくなるから駄目」

 

しゅん、と、寝そべりながら項垂れた。

器用な真似を、と思いつつ、もう一つ包みを取り出す。

 

「ほれ」

 

ぽい、と、放り投げる。

目を煌めかせながら、放物線の軌道上に顔を動かし口を開け……、がちん、と、歯が虚空を噛む。

放り投げられた大福は元の軌道を逆になぞり、俺の手の中に。

ハンドパワーならぬ手力ならぬサイコパワーならぬ、ただの超能力で火のエルの力の片鱗。

種も仕掛けもございません。

無いお蔭で今年も平穏はございません。

 

「こっちのはやらねー!」

 

起き上がって俺の手の中からいちご大福を奪還しようとするジルの眼の前でそれを頬張る。

完全な平穏とは言えないかもしれない。

でも、今この時、夕食前にいちご大福を食べるこの一時は間違いなく平穏な一時だ。

命の危機もあるだろう。

隣人を唐突に失う事もあるだろう。

人を信じられなくなる事もあるだろう。

友から恐れられる事もあるかもしれない。

それでも、美味しいものを食べれば美味しいし、楽しい事をすれば楽しいのだ。

 

―――――――――――――――――――

 

そんな訳で、休日。

病欠の翌日が休みだと連休っぽくてなんだかうきうきするが、前日は東京くんだりまで行って、力をセーブした面倒な変身で湖に潜って女の人を助け、慣れない人命救助まで行ったので休んだ気がしなかったのだ。

しかも、今日はもしかしたら友達が一人減ってしまうかもしれない、大袈裟に言えば運命の日。

普段ならクラスメイトの人と一緒となれば楽しい休日になるのだが、後の事を考えるとちょっと気が重い。

 

「お邪魔します」

 

「いらっしゃい」

 

気が重いが、そういう感情を表に出すと、相手の方が気を使うものなので、表面上は何時も通り。

ご両親にも挨拶を済ませ、東京銘菓ひよこの箱を渡し、クラスメイトの人の部屋に上がり込む。

図々しく思われるか、とも心配したが、先に丁寧に挨拶を済ませてお土産を渡したおかげか警戒はされていないようだ。

それよりも、

 

「えっと、どうかした?」

 

小さなテーブルを挟んで座るクラスメイトの人が首を傾げる。

 

「いや、なんだか……あ、香水付けてる?」

 

「……わかる?」

 

「うん、詳しくないから銘柄まではわからないけど」

 

原材料名ならだいたい当てられるけど、それをしてもなんだこいつってなるだけだからやらない。

匂いに気付いたのだって、部屋に上がり込んで、クラスメイトの人の部屋の匂いとはまた違う匂いがしているから気付けただけの話だし。

 

「前に、友達と一緒に買いに行ったんだけどさ、うちの学校って香水禁止だし、付ける機会が無いから……ほら、あの、使わないのももったいないし!」

 

そう言いながら、時折、包帯に包まれた手を気にするようにもう片方の手で撫ぜるクラスメイトの人。

気にしている。

きっと香水も、この手から何か匂いがしないか、という不安からのものだろう。

さて、どうするか。

などと、考えるのは小賢しいし保身的過ぎる。

俺は、今日ここに、目の前にある問題を解決しに来たのだ。

 

「だから別に今日特別意味があって付けた訳じゃないっていう、か?」

 

しどろもどろになりながら何やら言っているクラスメイトの人の手を掴む。

しきりに気にしていた、包帯に包まれた手だ。

包帯越しでも、掴んだ瞬間に解かる。

張りのない、生気のない、枯れ木の様な感触。

 

「やっ……」

 

掴まれた手を振りほどこうとし、

 

「あの、あのね、違うの、ごめん、この手、ちょっと……変で……」

 

目に涙を浮かべるクラスメイトの人。

それらの一切を無視して始めてしまおうか迷い、ふと、頭にあの言葉が浮かぶ。

 

大丈夫(・・・)

 

手首にコントロールリングだけを形成し、掴んだ腕にモーフィングパワーを流し込む。

思えば、自分以外の生き物にモーフィングパワーで干渉するのは、ダグバ以外では初めてか。

なら、大丈夫だ。

何も、問題は起きない。

部分的な老化を起こしたクラスメイトの人の手……というか、腕。

施す変化は、恐らく、霊石か魔石を腹に抱えている人間なら常時行っているものと同じで良い。

細胞分裂による遺伝子の劣化を抑える。

短くなったテロメアを伸ばし、若い細胞を作れるようにした上で、肉体の再生の応用で老化した細胞を剥がし若い細胞で再構成。

 

掴まれた手から何かが流れ込む感触も、自分の腕に何が起きているのかも、なんとなくでしかわからない為か、あっけに取られた表情で自分の腕と此方を見るクラスメイトの人。

こっそりと一部繊維を崩壊させておいた包帯がはらりと落ちれば、その下には、もう片方の手と見比べて遜色ない、年齢相応の若々しい肌に包まれた腕と手指が顕になった。

 

「難波さんが悲しむような事は、何も起こらないから」

 

だから、

 

「今日はちょっと、外に出かけない? いろいろ、話したい事があるんだ」

 

―――――――――――――――――――

 

ご家族の方に断りを入れて、クラスメイトの人を家から連れ出し、歩く。

 

「ギルス?」

 

「うん、それが、難波さんの……なんて言えばいいかな、体質っていうのが、一番穏便な言い方なんだけど」

 

「……未確認、みたいな?」

 

「察しが良くて助かるよ。うん、有り体にいうと、未確認と同じ様な、変身する力だね」

 

詳しい説明は、すればするほど余計に説明するべき項目が増えるので、あくまで大雑把に現状を把握するのに必要な知識のみ。

 

「変身する度に、という程ではないけど、何度か変身したり、時間経過とかで、身体の一部が急激に老化していく」

 

「そんなの、聞いたことない……」

 

「それはそうだよ。本当なら、もうとっくの昔に絶滅してるんだ。……でも偶に、大怪我とかがきっかけで、そうなっちゃう人も居るらしい」

 

純粋な意味での、古の時代に猛威を振るったギルスと同じではないのだろう。

被検体、葦原涼がギルスに目覚めたのは、確か、大怪我を負った時に、父親から火のエルの力が移って来て、それで目覚めてしまった、というものだったか。

大隔世遺伝というものに近い。

厳密に言えば、どれだけ条件が重なればギルスに目覚めるかはわかっていない。

クラスメイトの人を含めてもギルスに目覚めた人は二人しか心当たりが無いのだから、当然と言えば当然だが。

 

「あはは……それは、とんだ災難だなぁ……」

 

笑ってみせて、でも、どうしようもなく声が沈んでいる。

 

「でも」

 

振り返る。

 

「老化を抑え込む方法はある」

 

俺の言葉に、クラスメイトの人が顔を上げる。

 

「さっきみたいに?」

 

「いや」

 

手足程度であれば、あの方法でも問題はない。

だが、変身の副作用である老化が、必ずしも手足の一本や二本程度、老人と見紛う程度で済むとは限らない。

例えば内臓、特に心臓や肺などが、或いは脳が老化したならどうだろうか。

それが、それこそ老衰死直前、という状態であれば?

他者からのモーフィングパワーによる治療も間に合わない。

あの再生方法は、あくまでも生きていればこそ可能なものなのだ。

死人を蘇らせる事は出来ない、たぶん。

だからこそ、これが必要になってくる。

 

「これを使う」

 

鞄に入れていた、アークルよりも二回り小さいバックルの付いたベルトを取り出す。

 

「ベルト……?」

 

「未確認生命体達のベルトを参考に作った。彼等の不老の源がこれだ」

 

息を呑む音。

目を見開き、驚愕の表情で俺の顔を見やるクラスメイトの人。

 

「セバス君、なんで、そんな物を持ってるの? なんでそんな事を知ってるの? そもそも……」

 

「なんで、私が変身したことを(・・・・・・・・・)知ってるの(・・・・・)?」

 

……そう、それはそうだ。

あの夜、変身して戦っていたギルスがクラスメイトの人、難波さんだとすれば。

その後に変身する機会など有る分けがない。

だからこそ、彼女が緑色の異形、ギルスである事を知る人物は限られる。

彼女は聡明だ。

黙っていたとして、騙したとして、何時か真実にたどり着くだろう。

だから。

 

振り向く。

いつぞやの、或いはいつもの、オルフェノクが屯している事があるトンネル。

そこに、灰に塗れて燃えている何人分かの衣服。

その向こうに、天を仰ぎ、微動だにしないオルフェノク。

モデルは、小さめの馬、ポニーか?

ホースオルフェノクとはまた違うようだ。

ふわふわと、頼りない速度で、人魂の様な何かが、オルフェノクへと吸い込まれていく。

昨日、爆死したゼブラロードから抜け出した、不安定なエネルギー体。

それがオルフェノクへと吸い込まれると、ぼこ、ぼこ、と音を立て、ポニーオルフェノクの体が泡立ち、膨らんでいき……。

実に十数秒の時間を掛けて、オルフェノクカラーのゼブラロードへと変貌を遂げた。

 

なるほど、やっぱりな、と、そんな事を考えていると、難波さんが俺を押しのけて前に出ようとしてきた。

戦おうとしているのかもしれない。

怪しいところばかりが出始めた、明らかに胡散臭い俺をかばう為に。

それを、片手で制して、前に出る。

 

「セバスくん……?」

 

声は震えている。

俺を押しのけようとしていた手もまた、震えていた。

改めて思うのは、彼女が、俺の友人をやらせておくのはもったいない程、良い人だという事。

そういう人物に、友人である事を誇りに思える人に、誠実でありたい、と思うのは。

きっと、幸せな事なのだろう。

 

「俺の秘密を教えよう」

 

―――――――――――――――――――

 

腰にプロトアークルが、次いでアークルを覆い隠す様にオルタリングが現れる。

ベルトの実体化は、精神的なスイッチにより行われる。

守る為に、戦う為に。

そのスイッチを、特定の身体的動作、雄叫びなどにより切り替えるのが通常の手順となる。

だが、少年のベルトは、まるで最初からそこにあったと言わんばかりに、なんの前触れも無く現れた。

 

「変身」

 

一歩踏み出す。

踏み出した足が地面を再び踏む時には、金のアンクレットを付けた黒い装甲に覆われ。

腕を振る間に、手が、腕が、血管の如きラインを浮かび上がらせた靭やかな黒い装甲を纏う。

張り付くようなスマートな鎧、肩や肘、踵などには刃の如き鋭角。

天を衝く六本の角は黄金、瞳は薄っすらと赤の交じる金に輝く。

背には金細工で作られた孔雀の羽根に似た装飾が、風も受けずにマントの如く翻る。

まるでスローモーションの様に、しかし、実時間にして瞬きを終えるよりも早く、変異は完了する。

 

恐らく、少年の本来の姿よりも遥かに多くの人が知る、狩人を狩る狩人の姿。

未確認生命体二十二号。

或いは、新たなるグロンギの王。

 

「そんな……」

 

背後で立ち尽くす少女を振り切る様に、黒い戦士は走り出した。

 

 

 

 

 

 

 





☆四号詐称するには基本形態が進化し過ぎてる妹で遊んで心を安らげるマン
実は感想で『四号のふりすればむしろ信用ロールに+補正入るまであるよね?』みたいな意見が来ないかどうか心配でならなかった
これは私の勝ちと言っても良いのではないだろうか!
何の勝ちなのかはわからないけど、勝つのはいいことだって鳥坂先輩が言っていたような言っていないような
そんなモラルのものじも残ってるか怪しい男ながら、親しい友人を相手にするには誠実さが必要だと思ったりするんだって
いろいろとどうなるか予想もあるだろうけど、結局は書きやすい展開を優先するのでそこら辺は勘弁してほしいわにゃん
でも前作最終形態が基本形になってしまったが為に正体バレしたのに正体バレ失敗する可能性あるっていうね
だいたいわかるだろうけども、禍々しいのが二十二号ね
新たな、グロンギの王
なのか
新たなグロンギ、の王
なのかは不明

☆被検体一号葦原さん
不幸にも四号を自称する二十二号に騙され、新ベルトの試作を装着してしまう
変身後の老化に悩むASHRに新ベルトが提案する驚きの新形態とは(登場予定無し)
きっと入院中とかリハビリ中、未確認のニュースに心を痛め、四号のニュースを見て安心していたのかもしれない

☆たとえ仰向けで脚を上にしてシャツの裾捲れてもおっぱいにシャツの裾が引っかかってぽろりしないヒロイン
ソファから一歩も降りずに出番終了
ベルトが欲しい理由?
ベルトまで付ければ主人公とお揃いみたいなあれがこれするので、決して元の記憶関連ではないんじゃないかと思う
ベルト無くても問題無いしね、現状

☆出番は無い母親
行間にて
息子に「ジルは言うこと聞く?」と問われ
「ジルちゃんは賢い子だもの」と笑顔で答えた
深い意味はない
別に後に「ジルちゃんは力の差を理解できていたのに、貴方にはその頭も無いのねぇ」
みたいな事を敵相手に言わせる為ではない

☆クラスメイトの人ちゃん改クラスメイトロインちゃん改ギルスメイトロインちゃん改、難波ちゃん
名字だけながら、本編で初めて名前がちゃんと言及された、めでたい
元となる名前があるジルとは違い、命名が難しかった
名字の難波は難波草から

☆ロード怪人のオルフェノク化のからくり
水のエルとかが死んだ後にテオスの元に飛んでって新たな肉体を貰ったりするあれの下位互換
チャンスは一回、復活後は記憶曖昧で近場のそれっぽい奴に襲いかかる
ほっとくとぼっとしてる
近場の強いアギト、濃い火のエルの力の持ち主にふらふらと近付いていき、その付近に居るオルフェノクの体に憑依し乗っ取る
なんでオルフェノクの肉体を乗っ取れるか?
ここだとオルフェノクはロードたちを元にして作った生物を殺し喰らい続ける事で呪いが蓄積されて生まれた存在だから、みたいな感じ、変更あり




そんなこんなで、クラスメイトちゃんにまつわる話しは次で決着かな?
その後は、たぶん度々東京行って
一回ロード殺して、人魂おっかけて、取り付いたオルフェノクを潰す感じのルーチンが必要になるからね
地元に迷いでるとクラスメイトちゃんがあぶないし
原作キャラと顔合わせとかもいい加減させたいような、別にこのまま裏方でも良いんじゃない、という思いもある
全ては書かないと決まらないのだ
そんな訳で、次回も気長にお待ち下さい


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20 土砂降り

二十二号が走り出すのと、白いゼブラロードが走り出すのはほぼ同時だった。

明らかに異様な圧を放つ二十二号に対し、ギルスにすら怯み一方的に殺されたゼブラロードが一切の躊躇い無しに立ち向かったのには、幾つかの理由がある。

 

一度肉の器を打ち砕かれ、マラーク達の呪いを受けて変異した人間──オルフェノクの身体を無意識の内に乗っ取る事で、ダメージがリセットされ、万全な状態にあること。

未だ超能力すら発現させていない一般人を襲おうという油断しきった状態でバイクで繰り返し跳ね飛ばされたダメージが無ければ、先日のギルス相手でもまともな戦いになっただろう。

 

更に言えば、オルフェノクの肉体を乗っ取る形の復活は、本来想定されていないイレギュラーな復活であり、再生したゼブラロードの意識が曖昧な状態にあること。

ぼんやりとした記憶の中、主である闇の力、テオスの命令により『誰か』を殺そうとしていた、という事だけを覚えている。

対象も、あるいは今の時代が何時なのかすら曖昧な状態で、眼前に敵意を放つ異形が存在する。

ゼブラロードの意識は、あるいは現代において無力な人間を抹殺するのではなく、古の時代、裏切り者の火のエルと人間の間に生まれた子供達と殺し合っていた時期に立ち返っているのか。

 

答えは無い。

漠然とした形でしか再生できていないゼブラロードの精神と記憶は、既に本人ですらどうなっているのか理解できない。

或いはテオスが魂を回収でもすればわかるのかもしれないが……。

並のマラークであるゼブラロードにとって、死は再生にも再誕にも繋がらない。

確かなものは、『殺せ』という命令のみ。

今ある全てを持って、目の前に現れた敵を抹殺する。

 

駆け出すゼブラロードの手の中に、円盾と槍が現れる。

それは元からゼブラロードが持っていた武器なのか、或いは、乗っ取った肉体が使っていたのか。

どちらであるかに関わらず、騎兵の如く盾を構え、槍の切っ先を前に突き出して突撃。

速い。

この世界のあらゆる馬……とまではいかないが、シマウマのモデルであるゼブラロードの脚は並の野生馬どころか、バイク、自動車すら置き去りにできる。

その速度を乗せた刃物による突撃は、生半な守りは容易く貫き命を奪う。

戦う力を持たない人間だけではない。

或いは嘗ての時代においては多くのギルスを討ち取ったかもしれない。

 

対する二十二号は無手。

いや、よく見ればその前腕が肥大化しているのがわかるだろう。

肘から先、指先に至るまで膨らんで見えるのは気の所為ではない。

装甲厚が増している。

 

速度と全体重を乗せたゼブラロードの突撃。

明らかに受け流しを狙う二十二号に対して、ゼブラロードは躊躇いなく槍を突き出す。

ゼブラロードの肉体は、基本的には人間と、或いは創造主である闇の力の肉の器と同じく二足歩行。

移動速度こそ速いが、仮に同じだけの力を持つ存在が四足であれば速度で負ける。

しかし、小回りでは圧倒的に優れる。

騎兵の突撃に似てしかし切り返しの速さにおいては地に足を付けた歩兵と変わらない。

過剰な速度故に背後を取られる、という事も無く、避けられたとしてもシールドで押しのける事も苦ではない。

その戦法がゼブラロードのものかオルフェノクのものか、或いは両者に共通する戦法であったかは不明だが、それ以外をする必要がない、という程に絶対的な信頼があった。

 

交差、いや、正面からの激突。

ゼブラロードの予想に反し、二十二号は受け流す事を選ばなかった。

槍の切っ先と二十二号の突き出した拳……いや、手刀の指先が、かち合う。

 

拮抗は無い。

槍が手刀を、ではなく、鋭く尖った指先が槍の穂先を切り裂く(・・・・)

紙でも裂くように槍の穂先を、柄を斬り裂き迫る手刀に、ゼブラロードは槍を捨て、横殴りに盾で殴りつける。

ダメージを期待して、というよりも、仕切り直しを行う為の動き。

勢いよく相手を押し込むようなシールドバッシュ。

 

「盾か」

 

押し込まれながら、盾の向こうから二十二号が何事かを呟く。

同時、ゼブラロードの爪先に激痛。

二十二号の爪先が、杭を打つ様にゼブラロードの脚の甲を地面に縫い付けているのだ。

肉の器が伝える痛みに僅かに怯んだ為か、脚を文字通り踏み抜かれ重心移動に支障を来したからか、或いは元からのスペック差か、押し込み遠ざけようとした盾の縁を掴まれ、スライドさせられる。

盾の向こうから、薄っすらと赤い金の瞳が覗く。

 

「真面目にやれ」

 

ぐしゃり、と、掴まれた盾の縁が粘土のように握りつぶされた。

槍を捨て無手になった手で、フック気味に脇腹を狙い反撃を試みる。

脇腹に突き刺さる寸前、二十二号の膝と肘に挟まれ不発。

そのまま片手を押し潰され、しかし爪先から足が解放され、ふらふらと距離を取ろうと後ずさる。

が、後ろに下がった分だけ二十二号が前に踏み出した。

 

「ガドラより遅い」

 

膝を横から蹴り抜かれる。

横から曲がらない方向に曲げられ、かくんと下がった視界が暗くなり、顔面に衝撃。

距離を取る為に手放した盾の縁で目元を殴りつけられたのだ。

 

「ジャーザなら避けたぞ」

 

からん、と、二十二号はゼブラロードを殴りつけた盾を投げ捨てる。

顔面を強打されふらつくゼブラロードの長い鼻元を握り潰すように掴み、持ち上げる。

もう片方の手には、山刀程度の長さのフレイムセイバー。

横薙ぎに振り抜く。

ぴっ、と、勢いよく水気の有る何かを切り裂く音と共に、どさりと重みのある音がトンネルの中に響く。

ぼう、と、青白い炎を上げて燃えだすのはゼブラロードの首なし死体。

次いで、二十二号が持つゼブラロードの生首が炎を上げ、どちらも程なく跡形もなく燃え尽きた。

 

―――――――――――――――――――

 

もう、身体の弱さ、脆さに文句を言うつもりはない。

さっき見た通り、オルフェノクの肉体に無理矢理憑依している、というのなら、いろいろと劣化する部分もあるのだろう。

それを考慮した上で評価するなら。

弱い。

何が悪いかと言えば思いきりが良くない。

自分の武器はこれだ。

だから、こう使って、こう殺す。

そういう基本となる部分がふわふわとしている。

 

別に、俺は目的意識が実際の行動に強く影響するだなんて考えちゃいない。

だが、自分からやりたい、と思った事をやるのと、偉い人からこれをやれ、と言われてやるのでは大きくモチベーションが変わってくるのは間違いない。

では、こいつらに人間を殺す上での個人的な理由が無いのかと言えば、そうではない筈だ。

『見よ、人間の動物どもを家畜とし、従えしを。我ら人間どもを家畜とし、従えん。さもなくば滅ぼすべし』

という様に、こいつらにも人間を殺す、という意思がある。

いや、或いはその意思が嘗てはあった、くらいの話なのだろうか。

 

何しろ、エル達が起こした洪水で当時の人間もその他生物達も男女一組ずつを除いて滅んでいる……という事になっている。

実際、テオスを全ての起源とした神話がこの世界の根底にあるとすると、俺が幼稚園に入る前くらいに東京を中心に起きていた大災害とか、都市伝説的に語られるマンモス怪人などの出身組織、五万年前に人類文明を滅ぼしている組織などの経歴がどうなのか分からなくなる。

多少の嘘、誇張、彼等視点であるが故の見えない部分などもあると考えれば、もっと多くの人間が生き残っていた、と考えても可笑しくはない。

 

いや、それはともかく、彼等視点で彼等の子供とも言える動物たちと人間は、最終的にはテオスの手によって平等に救われた訳だから、意外と人間を積極的に殺してやろう、という気持ちは無いのか。

殺してもいいけど、別に積極的に殺す程ではない、という程度の感情しか無いのかもしれない。

もともと、互いに二億居た状態で、四十年掛けて戦っていたのだ。

人間を家畜化する、という試みを行っていたとしても、マラークと人間の差を考えれば長過ぎる時間だ。

殺すよりも時間を掛けて苦しめるのが好みか、或いは、途中からモチベーションが下がってきたか。

或いは、そんな戦いと進歩に積極的でない彼等の欠点を改善したのが、かつてのグロンギなのか。

 

片手に持ったフレイムセイバーを消し、ゼブラロードを持っていた手を叩く。

灰も残さず消えたが、オルフェノクを殺した後の事を思い出してついやってしまう。

周囲を見渡せば、殆ど動き回らずに戦ったおかげか、ゼブラロードに憑依されたオルフェノクに殺された人間の残骸、灰に塗れ焼け焦げた衣類が落ちている。

プラズマ化し片付け。

後に残るのは、ゼブラロードの脚を爪先で踏み抜いた時の地面の穴。

念動力で手近な石を手元に寄せ、空いた穴の形に手で削り、埋める。

 

振り返れば、

 

「セバス、くん、なんだよね?」

 

幸か不幸か、難波さんはまだ逃げずにその場に留まってくれていた。

難波さんは頭も悪くないので、逃げることの無意味さを理解しているのだろう。

顔に浮かんでいるのは、戸惑い、恐怖。

逃げていないのは、俺が難波さんの家を知っているからだ。

俺が殺すつもりなら、何らかの危害を加えるつもりなら、逃げたところで意味がない。

或いは、恐怖で足が竦んでいるのか。

 

可哀想に。

彼女は暴力に忌避感を抱ける人だ。

他人の暴力にも、自分の暴力にも。

それは先日の戦いとも言えないような戦いを見ればわかる。

怖がらせるつもりは無かった、なんて、何の言い訳にもならない。

視線の有無、カメラ等の機械音、人の呼吸、心音、全てが感知範囲内に無い事を確認し、変身を解く。

 

「このベルトは、俺や四号のベルト、未確認達のベルトの構造を参考に作った。変身……身体を作り変える機能の一環で、老化や体調不良は起きなくなる」

 

カバンから再びベルトを取り出し、踏み出す。

難波さんが身体を震わせ、後退った。

難波さんからの視線がある。

難波さんから受けたことの無い視線。

二十二号なら受け慣れた視線と感情だ。

なんという事もない。

 

「万が一戦いに巻き込まれても殺されないよう、逃げ出せるように、幾らか変身後の姿を調整もするようにしてある。けど、一番良いのは、変身しないこと。人気の無いところには近寄らない事、怪しい奴や危ない奴には近寄らない事、戦わない事」

 

少し歩いて、足元にベルトを置く。

 

「戦える力があるなんて考えない事。変身するなら、人前ではしないこと。まず、自分の命を第一にする事。……前の公園の時でわかってると思うけど、ギルスも、ああいう奴らに狙われてる。一々戦ってたらキリがない。難波さんは、戦える人ではないしね」

 

このままだと難波さんがベルトを拾えないので、振り返り、背を向けて歩く。

 

「あと、できれば、俺の秘密はバラさないでくれると嬉しい。けっこう好きなんだ、学校生活」

 

証拠も無しに言えば鼻で笑われるかもだけど、彼女にはベルトを渡してしまった。

ベルトを装着せず、証拠品として警察にでも渡してしまえば、それでレントゲンでも取られてしまえば、一発でバレる。

彼女の人の良さか、或いは、彼女が二十二号に抱く恐怖心に期待するしかないだろう。

どちらも期待できるから、たぶん、大丈夫だと思いたい。

 

「それじゃ」

 

振り返って、挨拶をして、そのまま立ち去る。

難波さんの顔は見ていない。

見るまでもないだろうし、それなら別に、見なくてもいい。

しばし歩いて、難波さんから見えなくなったであろう辺りで、適当に転移してその場を離れた。

 

―――――――――――――――――――

 

適当に転移したからか、本当に適当な位置に跳んでしまったらしい。

人気のない山の中。

雪は半ば解け地肌が見える。

 

「九郎ヶ岳か」

 

うっかり幾つか県をまたいでしまった。

もう一月以上も経過しているからか、或いは明確にここで何が起きたか知る人間が殆ど居ないからか、警察が警備している様子も無い。

少しばかり、見える範囲の山が削れていたりするけれど、自然豊かで良い場所だと思う。

適当な大石に座り込む。

ポケットの中に飴ちゃんが幾つか入っていたのを思い出し、適当に石を幾つか積んで、そこに飴ちゃんを供える。

ダグバが甘味に対して何かしらの感想を抱けたかは知らないが、気持ちの問題だ。

死人は物を食べないし、何かを言うわけでもない。

たとえ死体を埋めたちゃんとした墓があっても、その前で何を言おうが独り言でしかない。

だから、気持ちがあればいい。

 

「ありがとう」

 

口をついて出たのは感謝の言葉だ。

誰に、という訳でもない。

だけど、今となっては感謝するべきだ、とも思う。

仮に、グロンギが居なければ。

リントはアークルを作らなかっただろう。

そうなれば、今の俺は無かった。

或いは、アギトの力にも未だ目覚めず、戦う力も無く、藁束を刈るようにマラークに殺されていたかもしれない。

去年の未確認関連事件の被害者達の前ではとても口にできないような話だが。

それでも、俺はたぶん、このプロトアークルが作られるきっかけになったグロンギに感謝をしたい。

或いは、その背後に居る者にも。

 

それに、難波さんだって、助けられたかわからない。

アークルを付けて戦い続けて、モーフィングパワーを使いこなせるようになったからこそ、老化した肉体の再生なんていう真似もできるようになった。

ダグバを倒し、ンとして、バルバからグロンギの持つ知識を受け継いだからこそ、あのベルトを作る事ができた。

あのベルトを、難波さんが付けてくれるかはわからないけど。

老化現象と天秤に掛けて、たぶん、巻いてくれると思いたい。

 

それに、だ。

精神的にも頑丈になれたのは大きい。

涙が一滴も流れない(・・・・・・・・・)

だから、俺は悲しんでいないのだろう。

悲しくなくて、友達も救えたのだから、俺はたぶん、とても嬉しい。

きっと、ようやく、アマダムから伸びた神経が脳に届いてくれたのだ。

これでもう辛くない、苦しくない、悲しくない。

晴れ渡る青空のように清々しい気分だ。

胸のつかえが取れた。

 

空を見ればこの心の様に澄み渡る青空が……無い。

どんよりとした曇り空だ。

今にも雨が降り出しそうな黒々とした曇天。

肘から先が瞬間的に黒の装甲に包まれる。

 

「今日は、快晴っ」

 

ぶん、と、空に向けて薙ぐ様に腕を振る。

なんとなくでモーフィングパワーを空に向けて放つ。

振った腕に掻き分けられる様に雨雲が真っ二つに割れ、左右にずれていく。

後に残るのは雲ひとつ無い青空。

簡単な事だ。

青空から大量の雨が降ってくる。

適当にどかしただけだから、雲がそのまま全て雨粒になったのだろう。

 

「はは……、ははは、ははははっははははは!」

 

ばしゃばしゃと振り続ける雨に打たれている内に、なんだか笑いがこみ上げてきた。

バカみたいだ。

楽しい。

面白い。

きっとそうだ。

 

地元は今日雨の確率0だったか。

びしょ濡れで帰ったら何事かと思われるな。

雨が止んだら、乾かしてから帰ろう。

寄り道もしていくか。

タイミング的にマラークも居ないから、東京に寄ってもいいかもしれない。

ポレポレのカレーを食べに行くか。

いや、一度帰ってジルも連れて行ってやろうか。

どうせまだ休日は始まったばかり。

心配事が一つ減って、それで、楽しいことはまだまだたくさんある。

 

「あははははははは!!!」

 

冗談みたいに降り続ける雨に、何故だか笑いが止まらない。

笑うことができて、楽しいことがたくさんあって、それを楽しむ事ができるんだから。

楽しくて嬉しいに決まっているのだ。

 

―――――――――――――――――――

 

「ひっどい顔ね」

 

とりあえず服と髪を乾かしてから家に帰ると、母さんに出会い頭に罵声を貰った。

 

「父さん母さんに良く似てるって言われる」

 

造形は悪くない筈なのだけど。

でもこの言い方だとげんこつの一つも飛んできそうと思ったけど、そういう事も無い。

溜息と共に、お風呂の方を指差す。

 

「お風呂湧いてるから入ってきなさい」

 

「えー、たいして汗かいてないからいいよ」

 

「適当に乾かすだけだと、臭うわよ?」

 

「温まってきまーす」

 

そこは考えてなかった。

火で乾かすにしてもモーフィングパワーで水分飛ばすにしても、皮脂汚れとか雨に含まれる雑菌とかゴミには何もしてないものな。

部屋に戻り、着替えを用意。

部屋を出る時には、何故かジルが付いてきた。

横で何かごそごそしてると思ったら自分の分の着替えを用意していたらしい。

 

「お前は夜入れば良いだろ?」

 

首をふるふると横に振る。

 

『いっおいおうお』

 

一緒にお風呂、か。

別に、昼間にお風呂に入っちゃいかんというルールも無いわな。

そのまま風呂に移動しようとすると、ジルが手を握ってきた。

足元が不安定なのだろうか?

まぁ、体調とかは波があるからな、リハビリが進んでいてもそういう日もあるか。

 

―――――――――――――――――――

 

なんか変だ。

別に、ジルと風呂に入る事が、ではない。

俺がジルを洗うことでもない。

かといって、ジルが自分で身体を洗ったという訳でもない。

ジルが、俺の背中を洗ったのだ。

普段は普通に自分で洗ったり、或いは念動力の訓練でたわしを浮かして洗ったりするのだが。

洗うとジェスチャと口パクで宣言してから徐に身体に石鹸を付けて背中に抱きついてきた時の違う、そうじゃない、という内心から湧き出たツッコミに流されてしまったが、如何にも不自然ではないか。

 

風呂を上がり、髪を乾かして部屋に戻った後、ふとジルに告げる。

 

「なぁ、こんな事されても、ベルトはやれんぞ」

 

いわゆる、年頃の娘さんがお小遣い欲しさに父親に甘えたりするのと同じ行動なのだろうと思う。

パパー、私も新しいゲドルード付けて次世代ゲゲルに挑戦したーい!

みたいな。

むーん。

パーパはそんな子に育てた覚えはありません!

いや、こいつの実年齢がわからんから俺がパパってのはおかしな話なんだけど。

 

あと次世代のゲゲルはまだルールも決まってないので事前登録しか出来ない。

恐らく内容的にはオルフェノクとかワームとか魔化魍相手にしたエンドレスもぐらたたき(柔らかめの比喩表現)になると思うが、どれくらいの規模でムセギジャジャを募るかは決めていないし。

安全面とかを考えれば、ワームとかオルフェノクの存在を広く知らしめ、アギトやギルスに市民権が保証された状態でやりたい。

あとは囲って棒で叩いて殺す形式のチームプレイ推奨。

でも万が一孤立した時というか上位個体を相手にするために個々人の能力向上も強く強く推奨します。

 

……やれたらいいよな、そういうの。

人類総仮面ライダー。

負担は分散される訳だし。

現時点じゃ人類総旧型グロンギしかできないのが悩ましい。

成長する前に死にそうなのが難点か。

魔石をオルフェノクやワームに奪われるのも嫌だし。

 

そんな事を考えている間に、ジルは俺の言葉を無視し、布団に潜り込む。

そして、掛け布団を半分程めくり、自分の隣のスペースを掌でぺしぺしと叩いた。

 

『おいうえ』

 

叔父上?

いや、お昼寝だろうとは思うんだけど。

 

『おいうえ、いっおい』

 

「いや、せっかくの休みに昼寝ってのもなぁ」

 

もったいない。

まだ昼も回っていないのに。

そう思っていると、ジルがびしりとカレンダーを指さした。

今日は、土曜日。

そう、まだ学校週五日制が土曜授業によって実質廃止される前、それどころか開始される前の時期の、第二、第四土曜日の休みなのである。

……つまり、別に明日も休みだから、一日くらい昼寝してもいいだろう、と、言いたいのか。

じっ、と、こちらを見つめながら、一定間隔で隣のスペースをぺしぺしと叩き続けている。

嫌に頑なというか、そこまで強要するような事か?

だけど、こいつが自分からこういう自己主張する事はそんなに無い。

だから、偶には、付き合ってやってもバチは当たらないだろう。

 

「母さんが昼飯作ってくれてるから、それまでな」

 

ジルの隣に横になる。

自慢じゃないが、今更寝込みをオルフェノクに襲われた程度ではどうにもならない。

殺気を感じる、なんて、一年ほど前なら何いってんだお前、みたいな真似もできるようになった。

だから、力を抜いて、枕に頭を乗せ、目を瞑る。

布団を肩まで掛けられて、顔に柔らかい何かが押し付けられる。

嗅ぎ慣れた匂い。

珍しくもない感触。

頭に腕を回されている。

抱きまくらにされているのか。

首元を、ぽんぽんと、軽く、心臓の鼓動に近いリズムで叩かれる。

まだ昼間で、疲れてる筈も無いのに、今日は、妙に、眠い。

意識が、鈍くなっていく。

 

ああ。

明日は、まだ、休みだけど。

明後日からは、ちょっと、気まずいなぁ……。

 

―――――――――――――――――――

 

母に当たる女性と、兄であり王である少年が家を出た後、少女はいつも一人だった。

未だ不自由な身体を引き摺り、狭くは無いが限られた空間で半日を過ごす。

それに、不満を持った事はない。

彼女にとって、家の外を自由に歩き回るのは、見返りの少ない重労働だ。

 

もっと遠くへ、もっと自由に、もっと気軽に。

そう焦る気持ちが無いと言えば嘘になるが、気長にやろう、という気持ちの方が強くあった。

記憶にある、自分でない自分に比べて、少女は物覚えが良くなく、身体も頑丈ではない。

焦ったからと言って、どうにかなるものではないと理解するのに時間はそう必要無かった。

 

傍に居られる時、常に共に有ってくれる人が居るからだ。

それが、純粋な親切でない事も知っていた。

或いは、観察するような、警戒するような視線を向けられている事も知っていた。

だが、それだけでは無い事を、他ならぬ彼女だけは知っていた。

 

はっきりとした実感。

警戒され、或いは自分の背後に、何時かの、自分以外の何かを見ているとしても。

温かみがあった。

何かしでかすのではないか、という警戒と共に、大丈夫なのか、という、少女自身の身を案じる感情が必ず混じる事に気がついたのは、或いは彼女が、少年が世話をする少女から、少しだけピントがずれた存在だったからだろうか。

 

常に、共にあった。

『彼女』にとって、或いは生まれた時から共にあったと言ってもいい。

兄のような、王のような。

しかし、同時に母であり父でもあった。

全てを失い、或いは、全てを持たずに生まれてきた少女に、多くの事を教えたのは、やはり少年だった。

 

この世界での生き方を、知識を教えられた。

人間らしさは何かを教えられて、そうある事の尊さを教えられた。

そして、他ならぬ少年自身から、常にそうあれる訳ではない事を教えてもらった。

 

暴力はいけないことだ。

糧を得るためでない殺しはいけないことだ。

どちらも兄の口から似たような言葉が出て、兄自らが破っていた。

常識の全てを教えられて、原理原則の全てを教えられて。

常に、どうしようもない例外が存在するのだと、その背中から学んだ。

 

せせら笑う声があった。

自分以外には聞こえない声。

ただ、背後から、どこからか聞こえる声。

道理を教え、しかし、道理に背かなければ生きていけない様を無様と笑う声。

生き足掻く様を嘲笑う声。

その声が、次第に静かになっていくのを、少女だけが聞いていた。

 

戦って、戦って。

ゲゲルをしているのではない、と、知っていて。

それでも、その戦績は認めてやる、と。

戦いに全力を注ぐ姿に、たぶん、真摯さを感じていた。

声を聞いていた少女だけが、その声に共感した。

 

卑劣だったかもしれない。

だけど、そんな事は関係無かった。

 

彼は殺し続けた。

自分の為だ。

誰かを守る為、殺させない為という事すら、彼にとっては自分を守る事だった。

一切の偽りは無かった。

自分の為だけに、倒すのでなく、封じるのでなく、容赦無く殺していった。

 

少女はその背中を見続けて育った(・・・)

少女(自分)殺し(産み)、多くのムセギジャジャを殺し、王へと駆け上がる背中を。

それが華やかな戦いでも、名誉有る狩りでもない事を理解していた。

上り詰める為の戦いですら無かった。

ただ、生き残る為に、死なない為に、自らの心を傷つけない為に。

無様で、泥臭く、冷酷で、残酷で。

剥き出しの、彼の『真実』から出た戦いだった。

だからこそ、彼はダグバを殺し、越えた。

 

少女が、少年から学んだものの中で、一番信頼を置く法則があった。

勿論、例外がある、と、理解した上でのものだ。

だが、そうありたいと思い、そう有るべきだと願った。

ある種の信仰心。

 

認められないかもしれない。

排斥されるかもしれない。

だけど、彼は、彼の意思は絶対に止まらない。

どれだけ醜くとも、どれだけ犠牲を産もうとも、真実から出た、誠の行動である限り……決して滅びる事はない。

 

……だからこそ、少女は、ジルは、憤りを感じていた。

彼の教えた道理で考えれば無理のない話だとは思う。

だけど、それでも。

あの日、帰ってきた彼の顔を見て。

抱きしめずには居られなかった。

そんな顔をしないで欲しかった。

貴方は正しいと。

お前は正しいと。

言ってあげたかった。

例え、彼がどんな形であれ、納得していたとしても。

 

「あの……ごめんね、変な時間にお邪魔しちゃって」

 

眼の前の、親切な、常識的な、親しくあれると思っていた相手に、苛立ちが募る。

今更だ。

どの面を下げて。

何故、私のところに。

口を開こうとも思えなかった。

知らない仲では無かったし、無碍に追い返すのも、相手のレベルに合わせるようで嫌だった。

だから家に上げたけれど、ジルは、来客に向けて返事になりうる反応を返そうとは思わなかった。

 

お茶を出し、適当に茶菓子を出し、テーブルを挟んで、座る。

ちく、たく、ちく、たく、と、居間の掛け時計が刻む秒針の音だけが響く。

気まずい無音を気にする事無く、ジルは来客に視線を向ける事無く、手元の本に視線を落とす。

一分か、十分か。

幾らかの時間が流れた時、来客が、難波と呼ばれる少女が口を開いた。

 

「ジルちゃんは……、お兄さんが、今まで何をしてきたか、知ってる?」

 

ちらり、と、ジルの視線が難波の顔に向く。

それは、私は知っているけど、お前は知っているか、という類のものではなかった。

純然たる問い、質問。

自分が知らないが故に、知るであろう相手から聞こうとする、探求者の目だ。

視線に込められた感情は、恐怖ではない。

それが、どういう類の感情であるか、ジルの知識では、はっきりと理解する事は出来なかったが。

 

声が背中を押す。

教えてやれよ、と。

どうしてやるかは、それから決めても遅くないぜ、と。

 

口を開きかけ、ポケットの中を探り、溜息。

溜息をどう受け取ったのか、目の前の客がびくりと肩を狭め小さくなるのを横目に、台所へ向かう。

手にとったのは、メモを貼り付けたりするホワイトボード。

専用のマジック。

長話になるなら、これが一番効率的だ。

 

居間に戻り、どっかとソファに腰を下ろし、ホワイトボードに文字を書き連ねる。

何時か、王……兄と話した様に、やはり専用の携帯電話が欲しいなと、そんな事を考えながら、一つの文章を書き上げた。

 

『戦士クウガ、小春(こはる)交路(こうじ)は覚醒者アギトである』

 

端的な説明、或いは、長話の枕として。

 

『彼が戦いを挑む相手は、人類の存続を脅かす敵性種族である』

 

『覚醒者アギトは、自分の人生の平穏の為、戦うのだ』

 

 

 

 

 

 




☆二十二号なのでそういう視線とか感情向けられるの慣れてる膝関節をしめやかに横から破壊するライダーローキック炸裂おっぱいに挟まれて安眠マン
慣れてると宣言したからには慣れてる
悲しいなら泣くのが人間なのできっと悲しくないか人間じゃない
休み明け、学校に難波さんが登校していないのを確認してちょっとほっとして、その直後にクラスメイトが学校これてない事にホッとした事に自己嫌悪
おっぱいに顔を突っ込むという癒やしにより無意識に安らぎを得る
でもお前の想定だと長くて十年前後でそいつ死ぬけど大丈夫?
このままだと事情を知る友人も恋人も無い妹分との二人暮らしで心を許した妹分の死に際をひっそり看取るルートだけど
実際どうかは別だけどな
なんかテンション低かったり親友と書いて強敵と読むような相手の墓参りに無意識に訪れたり直後に無理やり脳内テンション上げたり忙しいね
次の話でたぶん直る感じ
あと名前決まりました
響鬼編をどうするかは未定だけどとりあえず名字と名前の頭文字を同じにしつつ
名字にはまだ出てない母親関係の設定を込めて、生まれた子供にどんな思いを託したかを考えて名前を付ける……
実際キャラの名前考えるのは大変だよなぁと
そりゃ名前出るまでに二十話掛かるよ
え、掛からない?
そっかぁ(思考放棄)

☆ゼブラロード君
首チョンパ
別にこいつに限った話じゃないけど、アギトの敵怪人のマラークって殺人方法に個性あるけど、アギトとの戦いだと途端に無個性になる奴多くないですか
アギト側に居たのならともかく、ギルス側に居たのって実質原作でもただのサンドバックじゃないですか
明確な武器とか戦法が無いと戦いが書きにくいんですが
でもそもそもテオスがマラークを作った理由がはっきりしてないし、戦いに向かない連中も居たのかも
じゃあ水分消して殺すのはなんだったんだろ
元は木材から水分抜いて燃料にするためとか?
そういえばテオスの天使って植物モチーフ居ないな
テオスが人類とか幾らかの動物作ったけど世界も地球も色んな生き物も元から居た可能性がある……?
これはゴルゴムとかテオスの格下じゃない説ワンチャンありますねぇ!
そんな訳で武器持たせたりするかもだけど、それやるくらいなら今後は戦い方がちゃんとしてる相手出すと思うので
高度の柔軟性を維持しつつ臨機応変に戦わせていきたいと思います

☆クラスメートの難波さん
女神でも大天使でも聖女でもなくギルスだが人間なのだ
人間で沢山だ!
実際恐れるななんて無茶を誰が言えるというのか
これが普通のリアクション
最終的にどういう心境なのかは次の話で書けるんじゃあないかな
彼女は人の痛みも悲しみもわかる人だから安心してね
恐れは乗り越えるのが仮面ライダーだしね

☆ママン
最初、主人公を九郎ヶ岳に転移させたあと、何の説明も無くその場にすっと現れて
「なんで居るの」
「母の愛よ」
みたいな話をさせようかとも思ったけど
そこまでベッタリフォローするのは流石に甘やかし過ぎなので家でお風呂を沸かしておく程度の優しさに留めた
なんで風呂を沸かしていたかって?
母の愛だよ(強弁)

☆初モノローグヒロイン
こういうキャラがふわふわしてるキャラはそいつ視点とかで何考えてるか出すと人気下がるよって誰かが言ってたような言ってないような
でも出す
現状いきなり人を害する事がないだろう、ってとこだけは確定したっぽくて残念に思う方も居るとは思うのですが
やろうと思えばやれるから
やるかどうかは知らないが
ちょっとだけ明言された内なる虚枠の謎の声ちゃんがいざとなればいざとなるから
だから今は安心して普通のやや巨乳失声症ちょっと虚弱健気妹娘キャラとして受け取ってくれて構わないです
あと、拾ってから一年くらいたったから髪もけっこう伸びてる
髪伸びてるのをここで明言したのは作者が長髪ビッキーみたいな、元がそんな髪長くないキャラが髪伸ばした時のギャップとかにドキッとする性癖を持っているからだからそんな気にしなくていいです
実際ちょっと髪伸ばしたレ級って良いよねって思う
ロン毛好きなだけじゃないかって?
いけませんか?(強気)

☆いただきもの
ナナス様より、現時点での主人公の変身後イラストを頂きました!

【挿絵表示】

実質この後姿を見ていくら好感度高くても即座に受け入れるのは無いなと確信した結果この展開みたいな部分もあります
挿絵機能初めて使ったので貼れてなかったらごめんなさい



今回でクラスメイト関連終わりと言ったな
あれは嘘だ
というか嘘になった
でも最初からハッピーエンドの映画なんて三分あれば終わっちゃうってマイ・フェイバリットな曲でも歌われてるので
疑ってみたり不安だったりさせて、次回でどうにかまとめます
いい加減東京に攻め込ませたいですしね
ラブコメとか痴情のもつれとかいい加減食傷気味でしょうし
まったく関係ないけどSD仮面ライダーのアニメの冒頭の戦闘シーンちょっと見たんですけど、ライダーの本来のスペックでの戦闘ってああいう作品から描写引っ張ってこれそうですよね
キャラも可愛いし
あと、感想返しはゆっくりやったり歯抜けでやったりするかもですが、ご了承ください
どうやら自分は全レスマンではいられなかったようです
理想郷で生を受けたSS書き失格ですね……
あとキン肉マン最新話が激アツなので、読んでない方は是非読みましょう!
そして誰かレオパルドンの能力を最大限拡大解釈した状態でヒロアカ辺りで主人公にしてSS書きましょう!
そんな訳で、次回も気長にお待ちいただけたら幸いです


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21 暴走する善意

くよくよしていても始まらない。

俺の私生活が少し寂しくなったところでやるべきこと、やらなければならない事に変化はないのだ。

自慢ではないが、というか、本気で自慢にもならないのだけど、現時点でアギトとしてもっとも進化を進めているのは、少なくとも日本国内においては俺であろうと思われる。

ゼブラロードを葦原さんが殺害した後、漂う未知のエネルギー浮遊体は、ゆっくりとした速度で俺へと追尾を開始した。

それも、葦原さんがその場を離れた後で、だ。

葦原さんが居た時点では、俺と葦原さんの間を、常人の視力では視認できない程度に弱った状態でゆらゆらと動いていたのを確認している。

そして、葦原さんがあの時助けた……ええと、ダイバーの人が救急車で運ばれた後にバイクに乗ってその場を去った後は完全に此方に標的を定めたような動きをしていた。

 

俺と葦原さんの間にある共通点と言えば、アギトの、火のエルの力。

……まぁ、葦原さんにベルトを渡してしまったお蔭でもう一つ魔石と霊石という共通点も生まれてしまったのだが、現状最も安全装置が解除されているのは俺の魔石なので結論は変わらない。

強いアギトの力か、霊石、魔石の力に群がってくる。

 

奴らは恐らく、一度撃破されて闇の力の元に戻って再生した水のエルと同じ様に、死んだ後にも完全消滅する訳ではないのだろう。

魂の様な状態で、恐らく、それでも創造主である闇の力から下された使命を果たそうとしている。

なるほど、忠義心に厚いやつらだ。

そして、明確に水や風や地のエルよりも格下であるとされており、俺の知る流れでも再生怪人の如く現れる事も一部を除いて無かったことから考えて、再生は本来想定されていない、あるいは再生できても不完全な状態なのではないか。

そして、不完全な復活により余分なもの、肉の器を失う事で感知能力が上がり、アギトの力を察知できるようになった。

 

後に残るのは、下された指令に関する曖昧な記憶と、アギトという、過去の戦争からもある程度の因縁があるであろう相手を感じ取る力。

恐らく無意識に、或いは本能的に、抹殺対象であるアギトの力を強く感じる場所に近付いていく事になる。

オルフェノクの肉体に宿るのは……、まぁ、闇の力とマラークが存在する世界で、人類の進化系が人類以外の生物をモチーフにした異形になる、という時点で、何かしらの関係があると見て間違いない。

恐らく、奴らはオルフェノクの肉体を介する事で、ようやく復活を遂げる事ができるのだろう。

そこいらの人間を依代にできる、というのなら、手近な場所に居る人間に取り付く事でもっと早くにアギトの力を持つ人間に襲いかかっている筈だ。

 

現状、わかっている危険性として、

1, アギトの力を持つとされている人間、及びその親族を殺しにやってくる。

2, 殺しても一度、復活のチャンスがある。

3, 復活する場所は、恐らくアギトの力を持つ人間が居る近くである。

4, より強いアギトの力に対して誘引性を持つ。

5, 現時点で最もアギトの力を乱用して進化を進めているのは恐らく俺である。

という五つの点が上げられる。

 

勿論、全てが全て俺に近付いて再生する、という訳でもあるまい。

それならもう何匹かと交戦していなければおかしいのだから。

途中で他のアギトに引っかかったか、実体化した直後に野良の仮面ライダーの皆さんに殺されたりする可能性だって十分にある。

だが……。

だが、それでも、既に二件の例が存在してしまっているのだ。

安全を確保する為に、そして、地元で変身して身バレの危険性を上げるのを避けるため、東京で出現した直後、他所にフラフラと飛んでいくのを阻止し、その場で完全に始末しなければならない。

それにはどうするべきか。

 

そう、東京に行って、直接マラークを殺害、ないしは殺害されるのを確認し、適当に東京をうろちょろと徘徊。

近場のオルフェノクに宿って実体化した所を再殺。

これだ。

これこそがベストな選択。

 

実際、母さんに護衛が必要かという疑問が上がり始めた今日このごろ、一番危険なのは父さんなのだ。

マラークは現状、良くてメ集団相当の戦闘力しか無いが、銃弾に対する念力などの防御、特殊能力による救助の難しい殺害など、量産ライダーシステムも無い一般警察官にとっては命の危機があるばかりの危険な敵だ。

そんなものが変なタイミングで復活してしまえば、現場の警察官、つまり、父さんが危ない。

やはり、殺せるものなら殺してしまうのが一番だろう。

 

実際、やろうと思えば、マラーク出現の瞬間に瞬間移動で近隣の水中、個室などに移動して殺害に向かう事も出来なくはない。

具体的なイメージが無い場合は大雑把になるが、割りと東京の隠れて変身するのにマストなスポットには一家言ある。

なんなら東京上空にでも移動して、劇場版のG4(高価な鉄屑)の如く着地してみせてもいい。

落下の寸前に減速するのも当然可能だし、減速せずに位置エネルギーを全身で味わってもさして問題はない。

 

というか、変身した状態で向こうに転移してそのまま此方に戻ってこれるので、マシントルネイダーで既存の監視網に引っかからない様に移動を繰り返していた今までに比べてもかなり隠密性は高い。

逆に、家とは異なる方向にマシントルネイダーで暫く移動した後に瞬間移動で家に帰れば追跡されたとしても撹乱までできてしまう。

こういう言い方は悪いが、都合の良い簡単な仕事とも言える。

 

そして、移動に時間は取られないが、マラークが何時事件を起こし始めるかわからない以上、自由な時間は減るだろう。

だから、……こう、放課後とか、友達と一緒に楽しく帰る時間とかが削れた分対処がしやすくてよかったねっていうか、ね。

うん、逆に都合よかったし。

もう、ほら、付いてこれる者だけ付いてこい、みたいな戦いになるから。

逆に休みの日に出かける予定が無いからもしもの時も対処しやすいし鍛錬の時間も趣味に没頭する時間も増えるしいい事ずくめだよね?

 

「まぁ飲めよ」

 

ごん、と、机の上に置かれた缶ジュース。

机から顔を上げれば、難波さんほどではないが、それなりに友好的な関係にあるクラスメイトの一人が。

ぽん、と、肩を叩かれる。

 

「人生、いろいろだろ」

 

訳知り顔でうんうんと頷くそいつの後ろに、更に何人かのクラスメイト。

むう、どうにも、いろいろと顔に出てしまっていたらしい。

心配を掛けてしまうのは、本意ではない。

というか、こういう対処をされると、

 

「……!」

 

ちら、と、視線を向けた先で、難波さんに視線を慌ててそらされた。

今回の人生でもまあまあ役立ちそうな知識の中から、経験談として語らせて貰うとすれば。

人間関係が拗れた時は、周りの人間は腫れ物に触る様に、しかしなるべく触らないようにして置いてもらいたい。

どっち側も気まずくなるからね。

 

―――――――――――――――――――

 

活動方針は決まった。

東京に行って人間を殺す化物を殺します。一体につき二殺。

名付けて天使は二度死ぬ作戦。

ちょっとかっこいい。

ジーザスの第一話みたい。

 

やることは去年とあまり変わらないのだけど。

違いがあるとすれば、警察に対する信用度だろうか。

あと、五代さんが居ない代わりにアギトとギルスが一人づつ、G3も一応居る。

出現場所によっては、瞬間移動で向かっても殺される瞬間に立ち会えるか否か、くらいの場合もあるだろうが、それはそれで良い。

今回は力試しをする必要も無ければ、倒した相手から利用価値の高い資材が回収できる訳でもない。

 

良い点があるとすれば、上手いこと誘導できれば合法的に表の身分を持つオルフェノクを殺害できる、或いは、警察の眼の前で憑依させる事でオルフェノクの存在を示唆できる点か。

元からオルフェノクの情報を持つ勢力は内部に少なからず居るだろうけれど……。

口が達者な連中なら、敵対的な種族でない、みたいなアピールをする可能性もある。

悩ましいところだ。

やはり警察に認知させるなら、野良の頭の悪い個体を見せてやりたいところ。

 

などと、いろいろと予定は立つものの、世間の多くの場合と同じく、予定は未定というもので。

マラークが活動を開始して気配を出してこない事には、何もやることがない。

学校の授業の予習復習を欠かさず行い、剣術、槍術、射撃術、投擲術、格闘術などの訓練、シャドー(ダグバを想定すると実質千日手なので此方の能力を制限した上でガドルを想定)などを熟した上での話だ。

新式のベルトは完成した。

難波さんに渡した分はともかく、葦原さんに渡した分は変身時のエネルギーの流れ、肉体を変化させる過程も観測できている。

それを踏まえた上で、俺用の予備ベルトの設計図もできている。

現状持ちうるすべての知識を総動員して作った最高傑作だ。

 

……つまり、この状態から先を目指す事は難しい。

アギトの力があれば、別にベルトのアップデートは必要ないかもしれないが、やはり万が一、という事もある。

或いは、無限の進化が望めるアギトの力も、途中で進化に躓いて伸び悩む時期が出てくるかもしれない。

現状がそうなのだ。

トリニティだかバーニングだかわからんフォームから進める気配が無い。

だから、既にある力に対する刺激にもなりうる様なベルトが作れるようになりたい、という思いもある。

 

あと、モーフィングパワーやアギトの力方式でない、肉体を組み替えないタイプの装着型の装甲服を展開するベルトも欲しい。

あれがあれば正体バレを気にせず人前で変身できるし、頑張れば外身を残しつつ中身だけ変身することで正体を隠しつつ本気も出せてしまうかもしれない。

だが、大きめのベルトに強化装甲服を仕込む、というのは、如何にグロンギとしての頭脳を持つとしても0から作り出すのは至難の業。

やはりありものを頂戴するのが一番いいのだけど……、ベルトの所有者、所有組織と敵対するのは良くない。

組織力があるところなら、監視カメラなどによらない特殊な監視方法があるかもしれない。

無闇に盗もうとしたり、技術を解析するまでの間、無断で借りようなんて真似はしない方が無難だろう。

 

ううむ、最終的に必要なものばかりとはいえ、いくらなんでも物欲に塗れすぎか。

無い物ねだりをしても仕方がない。

少なくとも、今年の問題を解決するまでは人前で変身する危険性と全力を出せずに戦う危険性を両立するような真似はできないのだ。

じれったく思うところもあるかもしれないが、とりあえずは次のマラークの出現に備えよう。

 

―――――――――――――――――――

 

アマダムの力で肉体を改造した後に問題になるのは、トレーニングの難しさだ。

何も、老化を停滞させる効能の副作用で筋肉が付きにくくなる、なんて馬鹿げた話ではない。

むしろ、この身体はトレーニングを重ねれば重ねるほどに素直に強化されてくれる。

当然だろう。

アマダム……いや、ゲブロンは生物を戦うためだけの生物兵器にする為の機能を有する。

それは勿論、アークルやゲドルードに備わるリミッターの解除による段階的かつ劇的な強化だけに留まらない。

 

問題となるのは、必要な負荷の増加だ。

例えばメの最上位であるガリマなどは、生身の状態でも身の丈ほどもある双刃を軽々と振り回し、人間離れした脚力で十数メートルを一息で詰める事ができる。

見た目、明らかに筋肉量が多いとは思えないような身体で、だ。

魔石により改造された肉体は、極めて効率的な、人間のそれとはかけ離れた高効率な筋肉を備えさせる。

故に、その筋肉を鍛える為には、それなり以上の負荷が必要になる。

 

単純に、スタミナをつけようと走り込みをしようと考えたなら、やや虚弱体質なジルのリハビリに合わせていてはとても運動量が追いつかない。

両手両足、特性のジャケットの内部にモーフィングパワーででっち上げた超高比重金属の重りを仕込んで、なおかつ、ジルが疲れすぎない距離を歩いた後は、ジルを背中に背負い、走る。

街中ではなく、郊外、いや、山の中。

坂道、山道を走るのは、平地を走るよりも遥かに負担が掛かる。

 

舗装された道は歩きやすいので、あえての獣道。

獣道と言っていいかすら怪しいヤブの中を、念動力で掻き分けながら駆け上がる。

過剰とすら思える重りを抱えながらのRTA(リアル・登山・アタック)。

全力で山道を駆け上がり続ければ、流石に山頂では息も切れる。

だが、山頂から見渡せる絶景は心が洗われるようだ。

 

「魔化魍でも出ないかな」

 

変身の段階を一つ二つ落とした状態なら、良い訓練になると思うのだが。

やはり、グロンギのゲゲルが開催されていないからか、魔化魍の出現頻度は目に見えて下がった。

今年は今年でマラークどもが暴れているのだから、それ関連で出現頻度が上がってくれても良いんじゃないだろうか。

 

今の変身後で戦う場面の少ない生活を考えると、定期的に湧いてくる魔化魍は格好の練習相手だったのだな、と痛感する、

そも、グロンギが現れたから出現頻度が上がったのか、それともマラークが現れているから出現頻度が下がっているのか。

よくよく考えると例年の平均出現頻度なんかも知らないからなんとも判断しかねる。

改造人間なり自立型のロボットなりの設計図でもあれば、モーフィングパワーで組手の相手としてでっち上げる事もできないではないと思うのだけど。

これも無い物ねだりか。

 

そんな事を考えていると、背負っていたジルが麓の当たりを指差す。

山道の入り口の辺りで、難波さんがうろちょろと右往左往している。

ふむ……彼女は山ガールだったのか。

未来では一部で静かなブームになるからな、珍しくもない。

 

魔化魍が出そうな気配があれば、顔を合わせにくいという気持ちをぐっと抑えて忠告に行くのだが。

たぶん魔化魍は現れないだろう。

森の動物、虫の音が大きい。

警戒すべき対象が山に居ない、という証拠だ。

俺も変身待機状態になると一斉に動物が逃げたり息を潜めたりしっぽを自切したり死んだふりをされる側だが、未変身時には力を抑え込む練習だってしている。

だから、現状この山に魔化魍は居ないし、暫くは現れることもないだろう。

 

そして、何かを決心したような雰囲気で山を登り始めた難波さん。

一見して普通の普段着っぽい明らかに山に登る装備ではない感じだが……。

彼女から、励起状態の魔石の反応を感じる。

どうやら、前に渡したベルトを装着してくれたらしい。

なら大丈夫だろう。

無装備でも通常の道を行けば遭難する事も無いし、なんなら遭難してもなんとなくで川から魚は取れるし熊くらいなら仕留められる。

 

「ぐるっと回って帰ろう」

 

肩越しに頷くジルの顎と頬の感触を感じながら、難波さんが登り始めた山道とは反対側へと、森の中を突っ切って走る。

意識せず、なんでもないクラスメイトとして接する事ができるようになるには、もう少し時間が必要なのだ。

 

―――――――――――――――――――

 

ごぼ、と、海面に大きな泡が浮かび上がった。

昼の港、船が無いにしても波はあり、不自然に大きな泡は誰に気づかれるでもなく消えていく。

いや、仮にその場に誰かが居たとして、海面に浮かぶ泡程度に視線をやる事はないだろう。

 

爆発音。

火薬を用いたものではない、未知のエネルギーとしか表現のしようもないそれは巻き上がる炎と爆音を響かせる。

今まさに爆発したものは、サソリに似た異形。

古の時代においてサソリのモデルになったと言われている天使、スコーピオンロード、レイウルス・アクティア。

闇の力よりの命令で超能力者狩りを行っていたそれは、幾らかの被害者を出した後に、現場に駆けつけたアギトにより撃破されたのだ。

そう、撃破。

 

スコーピオンロードの命はまだ尽きてはいない。

或いは、その場に優れた第六感の持ち主が居たのであれば、それを目撃する事ができただろう。

スコーピオンロードの肉の器が爆散すると同時、爆炎に紛れるように……爆炎に吹き飛ばされるようにして、うっすらと光るエネルギー体が飛んでいく光景を。

これこそが、スコーピオンロードの本体……魂とでも言うべきもの。

それは昼間の太陽の明るさに溶け込み、空に浮かんだが最期、地上から観測する事は難しい。

現に、スコーピオンロードを撃破したアギトもまた、マシントルネイダーに跨がりその場から立ち去っていく。

 

地上での活動をする為に必要な肉の器を失い、しかし、それでもなお死ぬ事のない天使。

しかし、エルロードではない下級の天使であるマラークは、創造主である闇の力の元に戻る資格が、いや、その発想すらない。

何処に向かうでもなく、それ単体であれば最早何の害もない幽霊の様な存在。

しかし、それは過去の時代の話でしかない。

今、この地球上には、彼等マラークの依代たりえる存在が溢れている。

不運にも、野生の天使とも言える魔化魍や、或いは鏡の世界を住処とする魔物に捕食される場合もあるが……。

人の中に多くの依代が紛れ込むこの大都市であれば、概ね、新たな肉体を得る事ができる。

 

使命を果たしきれていないマラーク達の肉体は、半ば本能的に抹殺対象の気配に近づき、その周辺に存在する依代へと入り込む。

スコーピオンロードはしばし、泡の消えた海面に近付こうとふわふわと漂った後、弾き飛ばされる(・・・・・・・)

原因は、海中から放たれた光弾。

封印エネルギーと呼ばれる、天使達のそれとは似て非なる超常の力。

圧縮された空気弾に込められたそれに押し出されるように、続けざまに放たれる光弾に弾かれ続け、本来の浮遊速度とは比べ物にならない速度で都市部へと飛んでいく。

慣性の法則に従っているのかいないのか、しばし弾かれ続けた後、スコーピオンロードの魂は真っ直ぐに市街地へと移動し、標的を見つけた。

 

アギト。

忌まわしき裏切りの天使の力。

主に望まれざる異端。

 

思考を司る肉の器を破壊され、明瞭な記憶を持たないスコーピオンロードの魂は、近場で最も強いアギトの力へと近付いていく。

おあつらえ向きに、その十数メートル前には、依代が居る。

一も二も無く乗り移る。

 

依代の名をオルフェノク、殺され続けたマラークの写し身達の呪いを受けし者。

王の洗礼を受け人間性を除去される様に、マラークの魂に人間の魂を塗りつぶされたその肉体は、瞬く間に人としての特性を失い、天使の肉の器として機能し始める。

ぐ、と、手を握り、肉の器の感触を確かめる。

次いで、頭上に光輪。

中から冥府の斧、冥王の盾を取り出す。

 

棒立ちの黒い(・・)アギトに冥府の斧を投擲。

盾を構え距離を取り、まずは様子見。

曖昧な記憶にも確かに刻まれた記憶。

自分の盾は強力ではあるが、完全ではない。

破る方法もあるのだ。

身を以って知った教訓を元に戦いを組み立てる。

距離を取りすぎてもいけない。

近距離での格闘戦では恐らく敵わない。

距離を開けすぎれば、またあの鉄の騎馬で盾を抜かれる。

どうするか。

 

思案するスコーピオンロードの眼の前で、冥府の斧がアギトの頭部に迫り、寸でのところで受け止められた。

もう片方の手には弩の様な武器。

アギトの新たな力か。

そう思い盾を構える。

正面から迎え撃つ事はしない。

飛び道具であろうそれを、斜めに傾けた冥王の盾で受け流す(・・・・)事で、次に繋げる。

接近して斧を取り戻すか、或いは毒針を使うか……。

 

ズンッ、と、盾に異様に重い衝撃。

念動力を纏う冥王の盾越しに、まるで素手で攻撃を受け止めたかのような感触。

数センチ後ろに押し出される。

……或いは、つい先程の戦闘で、スコーピオンロードが冥王の盾を破られ、その後も戦闘を続行する事ができていたのなら、その違和感に気がつく事ができただろう。

冥王の盾は、基本的にはスコーピオンロードの持つ超能力、念動力を強化する事で強力な力場の盾を生み出す防具だ。

故に、防ぐ事ができたのならなんの反動も無い。

衝撃を受けた、という事は、即ち力場を破られ盾そのものに攻撃を受けたという証明なのだ。

しかし、スコーピオンロードにそれに気付くほどの時間は与えられない。

 

眼の前のアギトが両手に弩の様な武器を構えている。

既にその手に冥府の斧は無い。

何処に、視線をアギトから周囲に向けるよりも先に、二丁の弩から放たれた、念動力によって十分に加速された無数の金属矢が、冥府の盾を蜂の巣にし、スコーピオンロードの肉体を挽肉に変えた。

 

金属矢はスコーピオンロードの肉体を破壊すると同時に消滅し、肉体の破片、残された頭部と胸部の大部分、腕の無い肉体もまた、火に掛けられた薄紙の如く消滅。

黒く、鋭利な装甲のアギト──二十二号は、手の中の弩を消し、残った冥府の斧を手の中で弄びながら、鼻歌混じりにその場を離れようとし……。

 

「待て!」

 

がしゃ、と、金属音

背後からの声に呼び止められる。

立ち去ろうとした二十二号が振り返れば、そこには赤い戦士。

仮面ライダークウガ、マイティフォーム。

いや、それを模して純粋科学の力により作られた、人類の牙。

仮面ライダーG1。

その声に、二十二号は聞き覚えがあった。

 

「お久しぶりです。一条警部補」

 

まるで旧知の友に会ったかのように気安い、明るい声色でその正体を看破る。

手の中で斧をペン回しの様にくるくると回し続ける二十二号に、G1──一条薫警部補は、手の中のGM-01スコーピオンとGK-06ユニコーンを構えながら。

 

「ああ、再会のついでに、署まで同行願おう」

 

「謂れ無い罪に問われそうなので嫌です」

 

「君には、公務執行妨害と、器物破損の容疑が掛けられている」

 

「器物破損に関しては置いておくとして……G3に襲いかかったのは俺ではないですよ。一応言っておきますけど、グロンギが居なくなってからは東京にも殆ど来てないんですから」

 

「やはり、アンノウンは未確認とは異なる種族なのか」

 

「グロンギ、未確認は滅んだから安心して下さい」

 

「ならば、奴らは何者か、君は知っているのか」

 

「……天使」

 

「何?」

 

思わず、一条はユニコーンとスコーピオンを下げかける。

荒唐無稽な単語、未確認、アンノウン、そのどちらとも異なるイメージの言葉に、本当にカルトにハマっているのか、と、そんな思考が浮かぶ。

 

「そんな声出さないで下さい。だから説明したく無かったのに……」

 

ちえっ、と、足元の小石を蹴る二十二号。

 

「申し訳ないのですが、去年に引き続き警察のお世話になる訳にはいきませんので、ここらで失礼します」

 

ぷい、と、金のマントに似た装飾で覆われた背を向ける二十二号。

軽くその場から跳び、近場のビルの上へと跳んでいく。

 

「逃げるな!」

 

スコーピオンとユニコーンを腰のホルダーに戻し、装甲に覆われた掌でベルトの左側、アークルにおけるレフトコンバーターの位置に据えられたスイッチを叩く。

紫電を纏いながら、装甲が赤から青に変色し、装甲の一部が変形を始める。

リミッターの外された脚部倍力機構が唸りを上げ、力強く跳躍。

脚部、背部にブースターが展開。

ご、と、激しく炎を噴出し、機械の鎧であるG1と一条を空へと打ち上げた。

激しい熱とGが一条の身体を軋ませる。

多くの代償と共に再現された機械式ドラゴンフォーム。

その、飛翔とも跳躍とも付かない軌道が、確かに宙を跳ぶ二十二号へと追いすがる。

 

「ん? お、おぉっ?!」

 

唐突なジェット音に振り返った二十二号が疑問、そして驚きの声を発しながら、予定していた着地点であるビルの上に着地。

次いで着地した一条に、二十二号が駆け寄る。

 

「すごい! すごいけど、作った人すごいバカじゃないですかこれ?!」

 

油断せずに構える一条、伸縮式の電磁ロッドを抜き放とうとし、それよりも早く懐に潜り込んだ二十二号が装甲に触れる。

瞬間、G1のOSが機能を停止。

いや、内部電源が全て切断された。

内臓バッテリーから全ての電力が消え失せたのだ。

後に残るのは鉄の塊を全身に纏った、ジェットパックの起動で満身創痍の一条のみ。

 

「ふん、ふん……。凄いな、特殊な技術じゃない、既存の技術の組み合わせだけでここまでできるのか……。あ、やけどは直しておきますね」

 

まるで、正式な装着手順を知っているかのように装甲を順繰りに外されていき、ブースター周辺に負った火傷の辺りが熱を持ったかと思えば、痛みが引く。

何をされているか、理解しきれない一条。

腹部、ベルトにも見えるインジケーターを取り外され、何かが当てられる。

次いで、違和感。

何か(・・)が、体内へと潜り込んでいく。

 

「何を……何をしている!」

 

「いやだな、人助けですよ、人助け。……生半可な人じゃあ、腹裂かれて奪われておしまいですからね。どうやって見つけるか、ちょっと考えていたところなんですよ」

 

「何の事だ!」

 

「どうするかは迷っていたんですが、こんなものを付けてまで戦い続けるつもりなら、ね?」

 

違和感、苦痛ではない。

身体が作り変えられる。

 

「どうせその身体も、遅かれ早かれ、でしょうから」

 

何かが根を張る感触。

薄れゆく意識の中、一条は二十二号の笑い声を聞いた。

悪意の欠片もない、純粋な歓迎の言葉を。

 

「おめでとう、そしてようこそ。あなたもまた、新しいムセギジャジャだ」

 

 

 

 

 

 

 

 




※ラスボスルートに向かっている訳ではありません
たぶんな


☆でも客観的にはランダムエンカウントラスボスマン
きが くるっとる!
訳ではないのだけど、いい加減倫理観もガバガバになってきた
ほら、前回で箍が一つ外れちゃったから……
アルティメットの操る稲妻の力で加速された、封印エネルギーでコーティングされた金属の弾体は、射手の任意のタイミングでモーフィングパワーを解いて消滅させられる便利弾頭
殺意が高まっているというか、封印エネルギーの効きが強さの割りにいまいちなので火力を単純に向上させている
戦いというより狩りというよりも始末に近い
なお、類似装備が新ベルトの武器パターンにプリセットされている
外れた箍を付け直せばちょっと冷静になる
でも根本的にはこういう事を人類にたいしてしたいってのがあるので完全には治らないんじゃないかな

☆観察者サイドなヒロイン
おら、どうすんだよ、オラ!
って思ってるけど、電話とか来たら取り次いでくれる程度にはまだ期待してる
背負われてる時はおんぶ形式だから豊かな胸の膨らみがワクワクする
ワクワクさせるにはちゃんとした性欲を自覚させよう
ところでよくよく考えるとこいつ回収されたその日から欠かさず全身素手石鹸で洗われてるのって一種の性感開発なんじゃないかって思った
例えば指先とかそういう普通の場所をヌメヌメで撫で付けてから、最期に特に汚い粘膜部分だのを洗うって手順だと完全に丁寧な愛撫だと思うんだけどどうですか
成長を止めてたゲブロンが無い状態で女性ホルモンバンバン出されて育った可能性
でもこのSSはエロスとか求められてる感じじゃないんでね
書くべき展開と書くべき場面てもんがあるからね
──求められてる内容とか書くべきかどうとかでお前はSSを書くのかよ! 違うだろ!
そういう訳でこいつの性的な部分がどんな具合になっちゃってるのかは書きたくなったら空気を読まずに適度なタイミングで唐突に書くけど許せ

☆山ガール難波さん
ヤ マ ノ ス ス メ 
大切な事は直接会って話をしたいタイプ
話をしたい相手が山に登っていくのを見かけて、何故か最近高まり始めた身体能力に任せて登山を開始
中腹までを登山コースで歩いたところで、麓の道を妹を背負って走るターゲットを発見し、その日は心が折れる
家に訪問する勇気?
学校で連れ出して休み時間に話す勇気?
うーん、頑張ろう
いろいろ葛藤はあるだろうけどいい加減フラグ回収しないと手遅れになるぞい
ベルトはあるけど治療目的で渡されたので主人公的にはムセギジャジャではない
ここまでヒロイン面しといて外見容姿の描写がほぼ無いというのも珍しいのではないだろうか
APPは高いだろうけどOPPは決めてない

☆クラスメイトの方々
実は作中、主人公と難波さんの両方からぼかした事情を聞いているので、誰か一人でもおせっかいを焼けば事態を収束させられる
でもやらない、人の恋路とかに口出しするとマシントルネイダーのテーマが流れ出すからね!
基本善人揃い
ラスボスルートに入るとフルオートで新ムセギジャジャに登録される、善意で
そうすれば完全生存ルートが開けるぞ、嬉しかろう

☆スコーピオンロード
射的の的
盾に力場を作って防ぐという能力の関係上、盾を迂回する大鎌には弱いのではないか、と思われる
正面突破されて再殺完了
冥府の斧ドロップ

☆仮面ライダーG1/一条さん
ひさしぶりのまさかの再登場
山登ってるとこまででは本気で登場予定無かった
でも出てこない訳がないんだよなぁ……理屈で考えて
恐らく主人公の元に来なかった復活マラークの内幾らかを撃破してたのはこの人
下手にG1の負荷に耐えるもんだからフォームチェンジまで再現されて搭載されてしまった
青い四号再現装備は、装着者の負荷を気にしなければオリジナルの四号青の連続跳躍にも推進剤が切れるまではついて行けるぞ!
ブースター直近の肉体に対する熱遮断に関しては研究中だゾ★
みててあんまりな装備だったので、善意で何かを腹部に埋め込まれた
カムヒアにゅーチャレンジャー



新ムセギジャジャ募集中!
まっとうな精神性をお持ちの方、人類の為に戦い続ける事のできる善性な方
身体が頑丈で生き残りやすい方、放って置くと戦いの中で死にそうな方、勝手に進化して自滅しそうな方、歓迎します
時間切れによる自爆制度の無い明るい職場です
経験者優遇、戦歴によるゲブロン制御装置のアンロック要相談
面接、改造希望の方は新生グロンギ、新作ゲゲル運営委員会まで

そんなゲゲル運営に私生活での知り合いが突撃!

やめて! 親しい友人との仲直りで新たなンがリントとしての正気を取り戻したら、ムセギジャジャの登録者が元の狭き門に戻っちゃう!
お願い、正気に戻らないで主人公! あなたがここで正気に戻ったら、人類ライダー化計画はどうなっちゃうの?
まだ難波さんはヘタれてて主人公に突撃出来ていない
このままずるずると引き伸ばして行けば、新たなムセギジャジャがねずみ算式に増える事もありえるんだから!

次回
「ラブ展開大勝利、希望の未来へレディーゴー!」
ゲゲルスタンバイ!


そんな感じでもよろしければ、次回も気長にお待ち下さい


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22 錯綜する思惑

関東医大病院。

患者衣を着てCTスキャンに掛けられている一条。

スキャン結果が映るモニタを見る椿の視線は険しい。

 

「まさかな……」

 

「まさか、とは?」

 

静かに呟く椿に、患者衣から仕事着であるスーツに着替えた一条が問う。

 

「お前があんなもの(・・・・・)を着て五代のマネごとを始めた時は、いよいよ俺も本業でお前の身体を見ることになるのか、と思っていたが」

 

死体の解剖を専門とする椿からしても、一条が使用するG1……第一世代特殊強化装甲服の運用はとても受け入れがたいものだった。

装着員の身体的安全を考慮しない、目的性能を果たすためだけに作られた装甲服は、使用者の健康を、命を、時間を掛けて刈り取るだけの装備にしか思えなかった。

緊急時とはいえその使用を申し出た一条も一条なら、アンノウンの存在を理由に運用の継続を命じる上層部も上層部だ。

遠からぬ未来で、高校時代からの友人が自分の元に運び込まれる事になるのではないか、と、不安に思っていたところで、これだ。

 

「まさかここまで真似る事になるとはな」

 

「やはり、か」

 

「筋肉組織の強化、神経の発達。細かい所を上げていけばまだあるが……、未確認と、初めてここに来た時の五代とほぼ同じだ」

 

モニタに映るスキャン結果は、ほぼ一年前の五代と同じ。

特徴的な腹部の異物に、そこから伸びる神経組織。

発達した筋肉や神経に偏りこそ無いものの、今や一条の肉体は五代や未確認同様、人間の規格から外れかけていた。

 

「ほぼ?」

 

「ああ、どんな目論見があるのかはわからんがな」

 

腹部の異物から伸びる神経組織。

それは複雑に元の神経組織に絡み合いながら、全身(・・)に根を貼っている。

五代のそれとは明らかに異なる進行速度。

既に脳にまで達している。

にも関わらず、少なくとも、一条の思考に何かしらの変化は起きていない。

事前に受けた精神鑑定もクリアしている。

 

異物から伸びる神経組織が脳にまで達した時、戦うためだけの生物兵器になる。

それがかつて椿が出した推論だった。

勿論、その推論自体が間違っていた可能性もある。

 

「これは一見して脳にまで神経組織が到達しているようにも見える。が」

 

「が?」

 

「数が異常だ。単純に、脳に作用して思考を生物兵器のそれに変えるだけならここまで増やす必要もない」

 

異物から脳へと指令を送るためであれば、五代が最後に検査を受けたときと同じ様にもっと神経の数は少なくて済むだろう。

思考の方向性を操作するだけなら、脳の一部に干渉するだけで良い。

だが、脳の全ての領域に接続せんとばかりに発達した神経はまるで、異物と脳の間で大量の情報を定期的にやり取りでもしようというもの。

 

幾らでも仮説は出てくる。

だが、逆にこの状態は良い方向にも悪い方向にも多くの可能性が見えてしまい、これと断言できる推論を出せない。

椿はがりがりと頭を掻き、

 

「何がしたくてこうなっているかは、それこそ、二十二号に直接聞くしか無いだろうな」

 

「そこまでのものか」

 

「話からすれば、二十二号はお前の為にこれを付けたんだろう。だが、俺たちゃ二十二号が何を持って『人助け』とするかもわからん。仮に本当に善意からのことだとして、良かれと思って何をされてるかわからんぞ」

 

現に、親切心で未確認と同じ様な身体にされてる訳だしな。

そう続ける椿を他所に、一条は、かつて未確認が活動していた頃に、一度だけ交わした二十二号との会話を思い出していた。

 

『命の危機に怯えず、隣人を疑う事無く、穏やかで平穏な生を過ごす事』

 

『なら、何故』

 

『必要な事だからです。全てが』

 

あの言葉は嘘だったのか?

いや、そうではないだろう。

夢見るようなあの口調、実際の行動との乖離はともかく、口にした願いは真実の筈だ。

ならば、何故?

 

(これがお前の、君の平穏に繋がるとでもいうのか)

 

未確認と、五代と、自らと同じ存在を作り上げることが。

ならば、止めなければならない。

四号が、五代が悲しみを抱きながらも拳を振るい続ける姿を、見ている事しかできなかった自分だからこそ。

あの時、力になれなかったからこそ。

たとえそれが、二十二号を、彼を傷つける事に繋がるとしても。

 

一条の決意に呼応し、体内に眠る魔石が、笑うように脈動した。

 

―――――――――――――――――――

 

未確認生命体合同捜査本部専用装備開発室。

未確認が出現せず、アンノウンが活動を開始してからは、半ば第一世代型特殊強化装甲服、G1の整備室と化した部屋にて、小沢澄子は眉間に皺を寄せて一つのデータを参照していた。

 

『すごい! すごいけど、作った人すごいバカじゃないですかこれ?!』

 

戦闘時、アンノウンを圧倒していたらしい部分はいつものように記録出来なかったが、アンノウンが消えた後のやり取りは例外だったのだ。

不鮮明な、男とも女とも、若者とも年寄りともつかない不明瞭な声。

驚愕とも称賛とも呆れともとれ、最終的に罵倒で〆られた言葉。

自らの作品に、その設計者である自分に対するその言葉に、ふん、と、不満げに鼻を鳴らす。

 

「わかってるのよ、それくらい」

 

腹立たしい事に、二十二号の指摘は的を射ている。

それを理解しているのは他ならぬ設計者である小沢澄子その人だ。

G1は、はっきりと言えば欠陥兵器でしかない。

警察と協力体制を取っていた四号、その身体能力を再現する為に僅か数ヶ月の間に製造されたこの装備は、多くの欠陥に目を瞑りながら運用されている。

 

多くのテスターを、一度の運用で病院送りにしてきたという実績は伊達ではない。

天才小沢澄子の持てる技術を詰め込んだこの機体は、生身の人間に四号に匹敵する運動能力を与えることができる。

が、それに生身の人間が耐えきれるかはまた別問題。

少なくとも、現状の技術では、要求性能を満たしながら装着員の身体への負担を軽減することは叶わなかった。

それが、何を間違ったのか、半年以上運用できてしまうような装着員が見つかってしまったのが間違いの始まりだった。

 

当時は、運の良い拾い物をした、程度の考えだったと思う。

同じくらいに頑丈な装着員を探すのは難しく、後の普及を考えて、最終的には開発中のG3に仕事を引き継いで、その後に封印すればいい。

そんな見通しは、アンノウンの出現により脆くも崩れ去った。

 

アンノウンに翻弄され、アギトに絡まれて戦闘不能に陥ったG3を、一条の駆るG1が助け出した事が始まりか。

アンノウン撃破数では、アギトに次いでG1。

装着員が、去年一年を未確認合同捜査本部の最前線で戦い続けた猛者である、という事実を、上がそう重く受け止めていない事も大きい。

現在のG3に課せられた目標は、現状の安全性を保ったまま、G1に匹敵するパフォーマンスを発揮できるようにすること。

 

……G1は、一条薫は、周囲に力を見せつけ過ぎてしまったのだ。

今年の頭、同時多発未確認発生事件での三面六臂の大立ち回り。

ライフルを振り回し、未確認を殴り倒し、ナイフで首を切り飛ばし、炎と瓦礫の中で鬼神の如く暴れまわるG1の性能を。

あれに魅せられて(・・・・・)しまった幹部は多い。

故に、アンノウンに対する、警察が現状持ちうる中で最高の戦力を引っ込めるという選択を誰も取れなかった。

 

いや、或いは小沢ですら、G1の性能に、一条の働きに、浮かれていたのかもしれない。

異様な程に頑丈な一条の身体に任せて、青の四号の性能を模倣しようとしたのは、確かに空を飛ぶアンノウンに対応する為だった。

だが、空を飛ぶ相手に対して、必ずしも空を飛んで対応しなければならなかったか?

それこそ、G3が持つ火器の様に、遠距離武器で対応するのが真っ当な方法だった筈だ。

目的を果たすために最適な手段から目を背け、G1の機能を拡張するという手段を優先してしまった。

 

自分が天才である、という自覚はある。

自分の作り出したスーツがどれも優れた作品である事も。

だが、ならばこそ、それを使いこなせる優れた装着員の事も、気にするべきだったのではないか。

使用者の安全を無視したシステム。

それは、結局は今回の二十二号の行いと同じではないか?

 

「……これは、止めておきましょうか」

 

一つの設計図を閉じる。

普及向けのG3の後継ではない。

スペシャルであるG1の発展形。

二十二号の模倣(・・・・・・・)とも取れる新システム。

装着員を一条薫警部補として進めるつもりでいた新プロジェクトは、その設計図だけを残し、密かに封印された。

 

―――――――――――――――――――

 

新たなムセギジャジャ、などと言ってはみたが、現状、一条さんのベルトは殆どの機能を封じたままのお試し版に過ぎない。

変身機能すら封じてある、という点では、旧グロンギのべにも劣る可能性がある。

開放されている機能は、ちょっとしたモーフィングパワーと、ズ相当の再生能力程度。

身体能力増幅及び拡張機能搭載個人装着型自己拷問器具、或いは緩慢な処刑装置とも言えるあのG1システムを装備して戦い続けるのであれば、再生能力くらいは必要だろうと思っての配慮だ。

いわゆる小さな親切大きなお世話というもので、無許可かつノータイムで一条さんの肉体を改造したのは倫理的にも道徳的にもアウトだろうという自覚はある。

 

が、仮に俺があのタイミングで一条さんにベルトを巻かなかったならどうなっただろうか、という話だ。

 

誰も不思議に思わなかったのだろうか。

G1システムは、戦闘機動どころか、試験機動の段階で数々の被験者を病院送りにしてきた凶悪なシステムだ。

ここで言う被験者、というのは、当然ながら一般公募で集めた生贄などではない。

厳しい試験をくぐり抜け、警察学校での教練を乗り越え、去年の未確認事件の時には勇敢に未確認、グロンギに立ち向かわんとした選ばれし精鋭である警察官なのである。

当然、生半な肉体の持ち主ではなかった事は想像に難くない。

しかも、設計段階で装着員にそれなりの負荷がかかることを見越して集めたテスターばかりだった筈だ。

そんな彼等、或いは彼女等が尽く病院送りになった凶悪なシステムを、何故、一条薫警部補は運用できたのか、出来てしまっていたのか。

 

その理由とは……。

はっきり言えば俺もわからん。

まったくわからん。

知らんし、知ったことでもない。

だが、推測はできる。

この世界だからこそ、というべきか。

人間には、多くの進化の可能性が秘められている。

 

進化人類であるアギト。

混血天使であるギルス。

或いは鬼。

ぱっと思いつくところならこの程度か。

だが、アギトならずとも超能力者などは俺が生まれる前からちょいちょい確認されているし、先祖の何処かでファンガイアなどを含む魔族の血が混じっていたという可能性もある。

俺の知らない全く未知のルートで進化している、という事もあるだろう。

鬼、猛士の存在を思えば、変身忍者だの化身忍者だのが跋扈していた時代もあったのかもしれない。

 

確かな事は、彼の肉体強度は人類の限界値を越えつつあった、という事だ。

ならばこそ、予めベルトを装着しておくのは悪い事ではない。

アギトや鬼であればまだいいが、ある日唐突に訪れた進化の日、途端に肉体に害を及ぼすような変化が起きてもおかしくはないのだ。

しかし、その時点でベルトを巻いてあれば話は変わってくる。

 

他所のベルトに関しては知らないが、少なくとも俺の作るベルトは制御装置としての側面が強い。

勿論、それは魔石という肉体を強制的に進化、改造するコアがあるからこそ用意したものだけれど、このベルトが齎す肉体を人間の形に留めておく機能は極めて強力だ。

いつの日にか一条さんに訪れるかもしれない進化の日、その進化先が、凄まじき戦士をも遥かに上回る程の荒れ狂う力を備えていたりしなければ、ベルトは確実に一条さんの肉体を人の形に抑え込む事ができる。

或いは、副作用が強く働き人体に害が及ぶ様な場合でも、魔石の齎す強力な再生能力がその身体を守るだろう。

 

「……という、言い訳を思いついたんだ。ふと」

 

対面でおやつを食べているジルが、スプーンを加えたまま、親指と人差指で丸を作った。

こいつ的にはオッケーな感じの弁明らしい。

まぁ、誰にオッケーと言われても、何処かの誰かに言う機会も無いだろうから関係ないのだけど。

自己弁護を誰かに肯定してもらえるというのは精神的な負荷を和らげる大事な儀式なので疎かにはできない。

 

別に、俺が個人的な感情から一条さんに死んで欲しくない、という訳でもない。

憧れの人物ではあるが、個人的な交友があるわけでもなく、危険な仕事を選んだのは他ならぬ彼自身だ。

だが、彼は戦士(・・)だ。

大げさに言えば、人類を守る防人である。

もっと直接的な言い方をすれば、人類に敵対的な種族を殺す事のできる戦闘力の持ち主である。

それが、不測の事態でリタイアする可能性は、可能な限り減らしておきたい。

だからこそ、人の形から外れて一条さんが仲間である警察から駆除されてしまうような可能性を排除したのだ。

 

結果的に、一条さんはグロンギと同種になってしまった。

だが、それは彼が望んだわけではなく、二十二号という謎の存在に無理矢理に改造された結果なのだ。

少なくともその情報を持つ人間からは、一条さんは被害者側として映るだろう。

しかも、一条薫の顔はG1装着員として広く知られているとまではいかないまでも、調べれば出てくる程度には認知されている。

即座に実験動物扱いされる、という事も無い筈だ。

 

これで、戦い続ける事のできる戦士が一人増えた。

それが、一条さんにベルトを巻いた理由、の、筈だ。

いまいち、ベルトを即座に巻いた理由も思い出せないが。

彼の身を案じて、というよりは、より、らしい(・・・)理由だろう。

 

世間的に、未確認生命体二十二号は、怪人を殺す怪人なのだ。

同じく怪人を殺す怪人を増やす機会があるのなら、それを逃すという事もないだろう。

それはたぶん、結果的に俺が戦う機会を減らし、平穏に過ごせる時間を増やす事にも一役買ってくれる事になるだろう。

 

意識の先を目の前のジルに戻す。

おやつを食べ終え、手を合わせて無音のごちそうさまを行っている。

ポケットから、予備のベルトのバックルを取り出す。

視線が向く。

バックルを上に掲げる。

視線がバックルを追い、上に向かう。

右に動かす。

視線がそれを追いかける。

上下に波打たせながら左に動かしていく。

視線は上下に揺れながらバックルを追いかける。

 

「欲しいか?」

 

頷く。

眼が輝いている。

本気の眼だ。

ショーケースの中のトランペットを見つめる少年の様な瞳。

 

「やろうか?」

 

す、と、差し出す。

最近、ふと思った事なのだが。

日常的に俺がこいつに張り付いているのであれば、こいつにベルトを渡してしまうというのも一つの手なのではないか。

最低限の戦闘能力を与えてしまえば、東京にアンノウン狩りに行く場合も、近場の適当な場所に待機させておく必要もなく、手間が省ける。

母さんと二人きりにしてしまう時間も、俺が以前のように急いで家に帰れば殆どなくなる。

危険は無く、手間が省ける。

なら、それをしない理由はない。

と、思う。

 

「…………………………」

 

長い、長い沈黙。

ジルは黙ったままベルトのバックルに手を伸ばし、その手首をもう反対の手で掴んで、下ろした。

いや、抑えられた手がぐぐぐっ、と、力強く持ち上がりベルトのバックルに近づく。

あと少しで指先が届く、というところで、力尽きる様に再び下に降ろされる。

バックルにあと一歩届かなかった手首ががっくりと項垂れるように下がり、完全に膝の上に戻された。

ものすごく、ものすごく名残惜しそうな、お預けを食らった子供の様にぶーたれた顔で、口を開く。

 

『いああい』

 

いらない、と。

 

「滅茶苦茶欲しそうだったけど」

 

ぷー、と、唇を尖らせながら、手を差し出す。

口パクだけでは表現しきれない複雑な理由があるのかと、ポケットを探る。

と、携帯は部屋で充電器に挿しっぱなしにしているのを思い出した。

固定電話の子機の脇に置いてあるメモ帳とペンを渡す。

がりがりと、最近ある程度マシになってきた指先を器用に使い、力強く文章を書き連ねていく。

 

『欲しい』

 

一枚目を丸々使ってデカデカと書かれた欲求。

それを破り捨て、二枚目。

 

『でも、なんとなくで渡されたくない』

 

『力には、与えられるだけの理由が必要』

 

『ベルトを受け取るだけの資格を示していない』

 

べり、と、二枚目を破り捨てる。

 

『──私は難波じゃない』

 

「む」

 

走り書き気味のそれを破り捨て、メモ帳とペンをテーブルの上に置く。

ソファから立ち上がり、ててて、と、此方に歩み寄り、俺の座るソファに腰を下ろすと、俺の膝の上に頭を乗せる形でぼすんと倒れ込んだ。

顔を背け、側頭部を太ももにこすりつける様にぐりぐりと動かし、身体を丸める。

髪を撫で付け、小さな耳をつまみ、顔のラインをなぞるように指を這わせる。

くすぐったいのを堪えるように身動ぎをすると共に、んふー、と、満足げな鼻息と共に、顔をなぞっていた指を噛まれた。

がじがじと甘噛みされながら、ジルの精神的な成長に思いを馳せる。

 

ベルトは欲しい、しかし、意味もなく、何かの代償行為の様な形では受け取りたくない。

降って湧いた幸運に飛びつくだけではない、何かを与えられるだけの理由を示さんとする誇り(・・)

それは或いはグロンギとしての記憶から来るものなのかもしれないし、学習し、成長する上で得た人間性なのかもしれない。

理由がなんであろうと、その成長は、文章の頭の『──』から強く読み取る事ができるだろう。

力強く、定規で引いたような『──』にこそ、こいつの強い決意が滲み出ているのだ。

俺もまだまだ修行が足りないようだ。

 

だから、次の休みにはツーリングがてら、東京にスマブレのオルフェノク狩りか、地方に魔化魍狩りにでも行って鍛え直して来るとしよう。

いや、別に観光に行こうみたいな話ではなくて。

 

―――――――――――――――――――

 

埼玉県川越市、関越自動車道入間川橋。

人払いすらされていない薄暗い橋の下で、一体の異形が追い詰められていた。

緑色の生体装甲を持つ戦士、ギルスこと葦原涼は、アンノウンとの戦闘中に突如として襲いかかってきた無数の銃撃に困惑した。

襲いかかる銃弾と、煙の向こうに見えるのは警官隊、例えば歴史の授業などで見たことの有る機動隊の様にも見えた。

自分が撃たれる、というのは、まだ理解できた。

自分は四号ではない。

知らない者から見れば、自分はあの人を襲う化物達と対して変わりはしないだろう。

 

だが、それならば何故、自分と戦っていたあの犬に似た化物には目もくれず自分だけを狙うのか。

あの化物は警察と面識がある、四号と同じ様な警察の協力者なのか?

馬鹿な考えだ、今の状況で考える事でもない。

しかし、これまでの人生で警官隊に囲まれて銃撃を一身に受ける状況など一度たりとも想定した事のない葦原にとって、現状を冷静に見据える事は難しい。

 

だが、それは逆説的に、混乱し、益体もない想像を働かせるだけの余裕が涼に存在している事実を示す。

生体装甲越しに断続的に伝わる衝撃、着弾と同時に神経を麻痺させる特殊なガスが撒き散らされる中、何故それほどの余裕があるのか。

それは、今の涼の、ギルスの姿を見れば一目瞭然だろう。

 

夏の緑を思わせる濃い緑の装甲は、今や金属質の銀を帯び、ゴツゴツとした生き物の甲殻にも似たシルエットから、まるで丁寧に鋳造された鎧の如く滑らかな、攻撃をそらす美しい曲線を描いていた。

立ち込める特殊ガスを見通せるだけの特殊な視力の持ち主であれば、その装甲が本体への被弾を減らす為、その面積を広げてすらいる事に気が付けただろう。

呼吸器を奥に潜ませるデモンズファングクラッシャーはその攻撃的機能を排除され、ガスに対する濾過機能を備えた構造へと自動で切り替わっている。

 

(逃げよう)

 

戦闘時、荒れ狂う様な闘争本能に支配されていた嘗てからは想像も出来ない程に、涼は冷静に事態を見つめていた。

自分が変身して戦ったのは亜紀を庇う為、そして、嘗て佐恵子を殺そうとした化物と同種であると思い、撃退しようと思ったからだ。

少なくとも、ここで警官隊の銃弾に無理に耐え続ける事に何の意味もない。

混乱から脚を止めていた時間は十数秒ほどだろうか。

涼、ギルスは降り注ぐ銃弾の嵐から頭部を守りながら、犬に似た化物、ジャッカルロード、スケルス・ファルクスが跳んだ方向を確認し、跳んだ。

河川の近くである事から水中に逃げる、という手も考えたが、亜紀を狙う化物を放っておくのは危険だと、とっさに思い直したのだ。

 

ぐ、と、脚を踏ん張ると同時に、脚部の筋肉が、骨格が、筋が、僅かな放電と共にその性質を変化させていくのを、涼が自覚する事はない。

硬化、そしてモーフィングパワーにより質量すら増加していた装甲は、跳躍と同時にその質量の大半を放棄した。

だが、それはそのまま装甲の脱落を示すものではない。

跳躍の瞬間、余剰質量は即座に気化。

高熱を伴う気体へと変化し、本体の跳躍を助ける様に噴出される。

 

びょう、と、勢いよく警官隊の銃撃の射線上から姿を消し、橋の上へと飛び上がるギルス。

青みを帯びた軽量な装甲に身を包んだギルスは、橋に着地する直前に、その姿を見た。

かつて佐恵子から話を聞き出そうとした時に遭遇した、能天気そうな男。

 

「変身!」

 

その姿が、光に包まれ、現れたのは……。

 

「二十二号?!」

 

かつて、池袋で一度だけ表した、二十二号の本性とも言うべき姿であった。

 

―――――――――――――――――――

 

「ふうん」

 

どうにもややこしい事になっているらしい橋の上に興味は湧くが、今はそちらに気を向ける必要はないだろう。

少なくとも、あのベルトを巻いている葦原さんは、衝動的にジャッカルロードではなくアギトに殴り掛かる、なんていう真似はできない。

現時点ではアギトとの交戦は無い筈だし、榊亜紀を襲っていたのはジャッカルロード。

狙うべきはジャッカルロードだし、アギト──津上翔一の方は本能的に戦うべき相手を理解できる。

 

無念無想の境地で力をコントロール出来ているアギトに、ベルトの力で凶暴性を制御でき、搭載された人工知能との相互バックアップで常に冷静な状態での判断を下せるギルス。

そんなものにサンドイッチにされてしまえば、ジャッカルロードの命など偶数回の残り五分位の様なもの。

問題があるとすれば、だ。

 

「これも公務執行妨害にカウントされちゃうかな?」

 

一人残らず道路に倒れ伏している警官隊の皆様。

武装している方々も、ガスマスクだけ装着して指揮をしていた才能の無駄遣いなスーツの人も、一人残らずだ。

しかも、ただ倒れているだけではない。

彼等は道路から伸びた無数の手により、がっしりと地面に固定されている。

彼等を拘束する手は、元はアスファルトではあるが、現在はタイタンフォームの鎧に迫る程の強度。

生半な力で外す事はできないだろう。

変に葦原さんを追いかけられても困るから、仕方がないと言えば仕方がないのだけど。

これでまた罪に問われてしまうのは、どうにも困る。

 

「貴様、二十二号……!」

 

ガスマスク越しに何か恨めしそうな声が聞こえてくる。

反応する程度に内容の有る声ではないので、無視。

そもそも、捕獲するのにアギトもアンノウンも違いはない、などと抜かしながら、明確に標的を定めて殺そうとしているアンノウンではなく、そのアンノウンを食い止めているギルスを狙う、という辺りで、この男の判断力やモラルは高が知れている。

こういう時、未確認生物対策本部の人員であれば、四号の前例を加味して呼びかけを行うなり、そうでなくても優先順位を間違えずにジャッカルロードに標的を変更する程度の機微は見せてくれたろうに。

 

「警察官もピンキリだな」

 

難しい話だ。

現状、未確認生物対策本部はその活動を終えて解散、とは行っていない。

首魁であるン・ダグバ・ゼバ、第0号の死亡確認すらできず、未確認の大襲撃などという事件を経験したが為に、一部を除き、残党の捜索に当たっていたりするのだろう。

だからこそ、こういうのが前線で指揮を取れてしまうのだ。

 

「おっと」

 

弾丸が側頭部目掛けて飛んでくるのを、摘んで止める。

しかもなんと驚き、この弾丸、神経断裂弾である。

指の間で発生した多段爆発を念動力で丸く押さえ込み、銃撃の主に視線を向ける。

第三世代特殊強化装甲服、G3。

装着員は、確認していないけれど、恐らく氷川誠だろうか。

銃口を向けたまま、距離を詰めて来ないのは、以前にG1のバッテリーを空にしてみせたのを警戒しての事か。

あれは、あくまであのまま無駄に動かし続けて一条さんの身体に負担を掛けないように、という配慮があった気もするので、無闇にやろうとは思わないのだけど。

 

さて、折角装着型のライダーシステムを新たに確認できたから、これも解析してみたい、とは思うのだが……。

一度、G1の方を確認した今だから解かるが、現状のG3にG1に無い新技術は殆ど搭載されていない。

負荷を少なくする為の特殊な機構が、とも思ったが、どうにもこれは全体の倍力機構の出力を下げる事で対応している様に見える。

つまり、相手をする意味がまるでない。

 

「お前の目的は何だ!」

 

「はぁん」

 

一条さんと同じ事を聞くんだなぁ。

俺の長期目的は、勿論、平和で穏やかな暮らしだ。

それは既に説明している。

情報として共有してくれているだろう。

少なくとも、俺はそれに矛盾する様な行動は殆ど取っていない。

同じことを聞くのは馬鹿のやることなので、馬鹿ではない、という想定で答えよう。

まだジャッカルロードが爆発してないから、時間つぶしだ。

声は変えてある。

そもそも変身後は発声方法からして違うのだから、そこを理解さえすれば変声はたやすい。

記録されても痛くも痒くもない。

 

「罪のない一般市民を射殺しようとしていたから、止めてあげたんじゃあないですか」

 

「罪のない一般市民だと……?」

 

「ああ、あの緑色の奴ですよ。まさか由来不明のUMAだとでも思ってましたか? あれはれっきとした人間ですよ。ほら、未確認とか、四号とか、前例はあるでしょう?」

 

「……」

 

沈黙。

銃口が揺らいでいる。

 

「俺と同じく見た目が(あく)いですから、撃たれるのも仕方がない、ってとこはあるんですが、根は良い人ですし、ナイーブなところもあるので、あんまり意地悪はしないであげて下さい」

 

「意地悪って」

 

「警官隊で囲んでガス弾浴びせ撃ちなんて、一般人にやるには意地が悪過ぎますよ」

 

困惑するG3、声からして恐らく氷川さん。

地面に縫い付けられた警官隊の呻き声をバックにしばしの沈黙。

遠くからは、アギトと完全制御ギルスに滅多打ちにされているジャッカルロードの身体が上げる千切れ飛ぶ筋繊維と骨格の悲鳴。

 

風流だ。

まるで夏の夜の田舎の縁側ではないか。

虫の音の代わりに警官隊の呻き声、祭ばやしの太鼓の変わりはジャッカルロードの身体が奏でる肉を激しく打つ打撃音。

近くで戦いが起きていて、自分に攻撃する理由のある相手が目の前に居るのにこれほどゆったりできる日が来るとは。

 

そして鳴り響く爆発音。

お、花火かな?

勿論違う、ジャッカルロードの身体が爆発する音だ。

花火とするには汚すぎる。

肉の器を失った魂の反応を捉えた。

あとは、適当な近場のオルフェノクの身体に憑依するのを確認して、潰すのみ。

 

「それでは、自分はこれから狩猟系と始末系の作業があるので、これで」

 

「あ、待て」

 

勿論待たない。

加減無しで跳躍し、手頃なビルに飛び移る。

前は一条さんの決死(比喩ではない)の跳躍によって驚かされたが、今回はそうはいかない。

何しろ、この現場近くに一条さんが居ない事は、魔石の反応で丸わかりなのだ。

そしてどうやら、G3の方にはあの噴進跳躍機構は搭載していないらしい。

空にヘリが飛んでいたりもしない。

しかし、より高所のビル、他のビルの内部などから近場のビルの屋上を監視している可能性を考えれば、これでも安心できない。

そこで、一度屋上からドアを空けて内部に入り、完全にカメラも人目も無いのを確認し、

 

―――――――――――――――――――

 

瞬間移動である。

瞬間移動の欠点として、移動直後を目撃される事で、二十二号には瞬間移動能力があるという情報が出回り、諸々の冤罪が次々と積み重なりかねないという危険性がある。

しかし、これは直接自室に戻る、という以外でも、予め現地入りしておく事で、回避手段を用意できる。

そう、ホテルを一室借りておくのだ。

転移先をホテルにする事で、飛んでいったマラークの魂が俺の事を見逃す事無く、しかし、その場から完全に離脱する事が可能になる。

留守にしている間に清掃員の人などが入る可能性もあるのだが、これも鍵を掛けたトイレの中から瞬間移動し、戻ってくるのもトイレの中にすれば問題ない。

しかもこのホテル、母さんの知り合いが偉い人をやっているらしく、格安で良い部屋を借りる事ができたのだ。

食事も美味しい。

 

ふらふらと近付いてくるか弱い力の反応を逃さない様にしながら、トイレから出る。

このホテルに来るのにも時間が掛かるだろう。

少しだけ、お土産コーナーを見てこよう。

そう思い、手を洗い、置きっぱなしにしていた財布に携帯などを手に取り、部屋を出る。

 

「あ」

 

そこに、

 

「い?」

 

何故か、めかしこんだ服装の、難波さんが居た。

 

「う、え、えっと、あのー、ど、土偶だねぇ!」

 

「うん、奇遇だ」

 

「あ、あははは」

 

難波さんも混乱しているのか、ユーモアセンスが地獄に落ちているようだ。

唐突なエンカウントに混乱している脳を見事に冷やしてくれた難波さんは、俺の目の前で誤魔化す様に笑ったあと、大きく深呼吸をし、真剣な眼差しを向け、

 

交路くん(・・・・)!」

 

名を呼ばれ、思わず息を呑む。

何故、呼ばれただけでこんな反応が出てしまったのか、自己分析が追いつかない。

 

「はい」

 

しかし、表面上は努めて冷静に。

誤魔化すのは、慣れているのだ。

真っ直ぐに目を見られるのは、慣れていないし、

 

「デート、しよう!」

 

……そういうのも、慣れていないのだけど。

 

 

 

 

 

 

 




( ゚д゚)、ペッ

カーッ(゚Д゚≡゚д゚)、ペッ

☆順調にラスボスムーブを重ねつつも次回ラブコメ勢力の猛攻で即落ちニコマされるマン
でもやってる事は許されざるよ
新ゲゲルはまだルールが手探りなので、独自に外装型ライダーシステムを持ってるムセギジャジャはそれを武装及び変身体としてカウントするべきかどうか悩んでる
理想としては外装型の機能を残しつつ、その外装と身体能力をモーフィングパワーで強化する形にして新しい可能性を見せてほしい
説明が難しいが……破壊魔定光のAJ装備した狗隠みたいな感じと言ってどれくらいの人がわかるというのか
一条さんの身体をあんじて、というのも嘘ではない
戦士が減ると最終的に自分に来る負担が大きくなるからね
絆されていたのと、ちょっと精神的に参ってる部分があって思わずジルにベルトを渡しそうになった
声変えられるじゃん、と気付いて、その場からの離脱も容易になったのでちょっとお喋り多め
ここまでラスボスムーブしているし精神性も順調にラスボス化しつつある
が、ラスボスはラブコメに敵わないという不文律には逆らえない
償いとかは正常化してからな
※償うとは言ってない

G(グレート)1条さん
変身能力は手に入っていないがG1を実質ノーリスクで使用できるようになった
今までの運用はそれはそれは大変だったのだろうけれど、それが人間として積むべき苦労だったんじゃないか?
安易に人間から外してまで安全にすればいいのか?
ン人公「戦士が減らない、という事実こそが重要なので思想的な事は知らない」
というエゴイストの手で改造された戦士は最終的に報いを受けさせたりするのかもしれない
報いを受けさせる展開を思いついてその展開に自然に繋げられるように話を書ければそんな展開もあるかもしれないけどそんな未来の話は知らん!
現状位置情報モロバレなので二十二号との遭遇率は格段に下がる
でも決意を抱くのは大事だって一条さんのお腹の中の魔石は頷いている

☆親友の身体に興味津々椿さん
♂的な意味ではない
これで死体になってやってくる事はなくなるんだろうな、と思ったが、五代が死体になった事があったのを思い出しヒヤヒヤ
でも最終的に復活するしな
何考えてんだ二十二号は
くらいの、実はかなり良心的
G1の運用に関しては悪いこと言わんから止めとけ、くらいの事を一条さんに言ってた
めっちゃいい人だぞ、早く彼女見つけろ

☆悪い悪いと思いつつも必要ならやれちゃう思い切りもある焼き肉の天才
焼き肉(ブースター付近の装着員の肉的な意味で)は流石に不味いと思いつつ、やれるな、やっちゃうか、必要だし、くらいの感覚でやった
しかし人のふり見て我がふり直す
やっぱり装着員の安全も考えないと駄目だよね……
そんな思いから、強化装甲服二十二号モデルとかいう厄ネタの塊は封印されたので安心してくれ、その存在を二十二号が知らないから対策とかできないし当然スパイも来るけど安心してくれ
そして話の裏で更にG1の強化は進むのだ
ちゃんと装着員の身体能力とか再生能力に合わせて思いやりを持って改造してくから安心してくれ
大丈夫大丈夫、一条警部補が二十二号をとっちめられる様にするから
地味に階級が一条さんよりも上なのでもう目も当てられない

☆身体能力増幅及び拡張機能搭載個人装着型自己拷問器具、或いは緩慢な処刑装置その名もG1システム
でもあながち間違った呼び名じゃなくないですか
装着員が頑丈だから成り立ってた
更に頑丈になった上に自力も上がって回復力も上がったので更に性能は向上する
反動だって向上する
いたちごっこねずみごっこ

☆装着者の命と正気だけは守る新グロンギ首魁特性ベルト
新ゲゲルリングにより、段階的に機能を拡張していく事ができる
先代ンとの戦いでの経験を元に、装着員の意識のバックアップ機能を搭載している
あっ! とうぶはかいをねらうガチせんぽうをつかうてきだ!
でもおれはへいきだぞ!
という、頭部潰されてもどうにかなる戦法が使える
実際どれくらい平気でどれくらい完全に元の意識に戻るかは不明
試したいやつおりゅ?
全身に伸びた神経は強力な進化を齎すものではなく、破損を迅速に修復する為のものなのだ
頭部を覆う神経は勿論常時意識のバックアップを取るためのものだぞ
更に、魔石に蓄積された宿主の意識データは、普段は人工知能として戦闘時の冷静な判断を助けてくれるんだ!
これを付けて、君も人類の敵を抹殺しよう!

☆完全制御型ギルス
ベルトの力で生体装甲とか諸々の機能が制御されて副作用に悩まされたりせず、生半な銃撃ではびくともしない身体、高い生存性能を獲得した
しかも変身シーンを目撃したお蔭でアギトと敵対するルートには入らないので速攻で話し合いからの和解の芽が出た
被検体扱いされたりもしたけど、新しいベルトを渡された中では一番原作から良いルートに進んでいる
元の待遇が悪かったから相対的にそう見えるだけだって?
そうだよ(開き直り)


☆地面に縫い付けられたアギト警察の方々
何時間かしたらモーフィングパワーが解けて元に戻ると思うので安心して欲しい

☆ガスマスクの男
優秀だけど抜けが多い
でもあの場面でジャッカルロードじゃなくてギルスを狙う辺りはほんとに擁護のしようがない

☆ショーイチクン!
二十二号と同じ姿になってしまう事に悩んだりしたけどショーイチクンはショーイチクンだよみたいな説得と生来の明るさ前向きさで無事
この人は多分五代さんみたいに曇らされたりしないと思う、展開的に
からむ要素が少ないとも言う
アリバイあるから二十二号本人じゃないのは明らかだしね
でも初見さんには二十二号に間違われる

☆カリ城のルパンがクラリスを抱きしめないシーンくらいの葛藤が内心で繰り広げられてたヒロイン
ベルトは欲しい
ベルトは正直言えばめっちゃ欲しい!
でも施しは受けない!
寂しさを埋めるため、みたいな理由で渡されるのは、なんか違う!
こいつにベルトを付けさせてやりてぇ!
くらいになってから、正々堂々とベルトを授与されたい
でもベルトは欲しかった
めっちゃ欲しかった
だから代わりにめっちゃ構ってもらう事で満足した
よかったね

☆逆襲の難波さん
何故か主人公が取ってたホテルの部屋の前に偶然居た
偶然かーじゃあ仕方ないなーデートするしか無いよね!
実際名前読んだ時点で諸々のフラグが完成したので勝ったも同然
ヽ( ゚∀゚)ノ┌┛)`Д゚)・;'
だからフラグ立ててくめんどいシステムはやらんて言ったろが!
つまりとにかく彼女は勝つ!
そして強くなりすぎて単調になりがちだった戦闘シーンを受け持ったりするかもしれないけどそれは後の話を書いてからじゃないとわからんから未来に期待しよう

☆知り合いにホテル経営者が居るママン
知り合いと書いて昔の舎弟とか部下とか下僕とか信者と読むのかもしれない
勿論何号室を取ったかも把握しているし、それを息子の友人に知らせて現地までの脚を手配するのもやぶさかではない
孫の顔見せろとは言わんけど彼女くらい見せてほしいなぁって母心がある良いママン

☆デッドプール2(映画)
超絶名作
笑いあり涙ありのファミリー映画(断言)
とにかく面白いので近くに上映中の映画館があるなら見に行くのだ
友人と見に行くもよし、一人で行って泣ける場面で思う存分無くもよし
ええい説明などまどろっこしいとにかく見よう
ソフト出たらソッコで買います


そして、以前にナナス様より頂いた挿絵に、カラーが入ったものを頂きました!

【挿絵表示】

金の照り返しが黒の装甲に映って、明らかに主人公がしていい後ろ姿じゃなくなってますね!
こいつ裏切りそう、っていうか、正体表して主人公チーム壊滅させる寸前ぽい(他人事)
こんな残虐超人にも春は来るんやなって……(希望)



どうやってラブ展開にもってこうか、それより先に警察側とか一条さんのリアクション書いとくか、タイミング的にギルスが狙われるからそれも書いとくか
とかやってたらラブ展開は殆ど入れられなかった
予告が嘘になってしまったなぁ、よくあるよくある
何も考えずに予告書いたからね、こうもなる
運営に私生活の知り合いが突撃、までは予告通りだから
残りの展開は次回でやるからユルシテユルシテ
そんな感じでよろしければ次回も気長にお待ち下さい


※ギルスがジャンプした橋の上で変身してたのは主人公でなくでショーイチクン!です
詳しくは原作のアギト捕獲作戦回ね
芦原さんが撃たれてるのが橋の下で、その橋の上にショーイチクン!が居てジャッカルロードを待ち構えて変身してます
冷静に考えると銃声ガン無視でジャッカルロードに冷静に対応したショーイチクンちょっと怖い


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23 決意と共に

実際問題、この世界のこの国の人間の神経はどうかしている、と、そう思う事がある。

東京で、ターゲットがどのように選ばれるかわからない連続殺人事件が一年に渡り繰り返されたにも関わらず、結局東京から避難しよう、みたいな世間的な流れは生まれなかった。

ダグバと戦っている時に、東京では無数のグロンギが暴れまわっていたと聞くが、それを抜きにしてもグロンギの行っていたゲゲルは日本史上に残る程の大事件だった筈だ。

どいつもこいつも詰めが甘く、まともにゲゲルを完遂する事すら出来なかったが、それでも最終的に殺害した人数は常人が起こす連続殺人事件のそれを大きく上回る。

 

冷静に考えて、もう被害者の数で言えばグムン(見たことはない)の時点で、警察にも大きな被害が出ていた。

後のゴ集団だの、この世界では起きなかった三万人大虐殺と比べるから地味に感じるが、今までの犯罪史に照らし合わせれば、数十人どころか十数人の連続殺人だって悪名が歴史資料に残る程だ。

 

まともに考えて、一度事が起こり始めれば数十人から数百人の被害を出す様な化物が居る、少なくとも一年前までは確実に居たと言える様な都市で、何故今までどおりに生活できるのか。

会社が休むなと言ったから通勤している?

学校は帰宅時の寄り道、放課後の集まりを禁じた?

ナンセンスだ。

せめて疎開くらいはするべきだった。

 

だから、クラスで修学旅行先の選定を行う際に、相も変わらず東京を候補地として上げるのは幾ら何でもバカすぎると呆れたものだ。

当然俺は京都行きを希望した。

前年の被害を考えれば、東京に行きたがるような阿呆は居ないと高をくくっていた。

京都で八つ橋食って三十三間堂で「スプリンター」ごっこをして、奈良に行っては鹿せんべいを食べ、鹿の角を戦果として獲得してジルへのお土産とするのは確定事項だと思っていた。

別に、東京にはゲゲル関係で何度も来ているから別に修学旅行でわざわざ来る必要性がない、とか、どうせなら行く予定のない京都に行きたい、みたいな、浮ついた気持ちで言っているのではない。

皆の安全性を考えればこそ、そして、みんなもちゃんと危険の少ない京都を選ぶと思っていた。

 

何故だ?

何故修学旅行の行き先は東京なのだ。

未確認生命体関連事件資料館、みたいなものを見に行きたいのか。

俺も正直今年の七月オープンの日本科学未来館は行きたくて仕方がないが、それはプライベートでマラーク殺すついでに行くから別に修学旅行は京都で良いぞ。

 

だが、東京にも良いところはある。

その良いところが修学旅行向けかどうかはともかく。

 

「うー、ん。ね、どれが良いと思う?」

 

「レビューだとクレヨンしんちゃんべた褒めだったよ」

 

「デートだよ?」

 

「じゃあホラーだけど降霊。役所広司とか出るってさ」

 

「面白い?」

 

「見るとすごく落ち込めるよ」

 

「デートだよ?」

 

「そうねぇ……」

 

映画館が多いので、とりあえず話題作だろうとマイナー作だろうと見ようと思えば見れるという点だ。

京都は違うのかって?

知らん、京都人に聞け。

 

―――――――――――――――――――

 

俺は恋愛強者という訳ではないので、デートスポットの選び方なんぞ知らないし、およそ映画館というのがデートに向いているか向いていないか、というのを正確に評価する事はできないのだが。

映画の好みの違いなんかもあるんだから、デートのルートに組み込むのは結構難しいんじゃないかな、と、そう思う訳だ。

恋愛系を見て雰囲気出す、なんて話も聞くが、男女双方ともに感動して良い雰囲気になれる映画ってランダムに引くのは難しいし、一緒に恋愛映画を見て良い気分になれるというのなら、それはどんなシチュエーションでも良い雰囲気になれる出来上がったカップルなのではないだろうか。

 

更に言えば友人同士で見に行くには恋愛系はキツイ。

同性で見に行くと誤解されそうだし、異性の友人で見に行くと誤解されそうだし。

そういう意味で言えば、ファミリー系映画はどんな相手と見に行く場合でも安牌だと思う。

良いファミリー映画は殺し合いのシーンから始まるという法則もあるが、そうでなくても名作は名作なので安心してほしい。

 

「で、どうだった?」

 

「クレヨンしんちゃん舐めてた……」

 

上映後、パンフレットの入った袋をぎゅっと抱きしめて感慨深げに溜息を吐く難波さん。

デート向きかと言われるとわからんけど、そも、この人がどういう意図でもってデートしよう、などと言い出したのかがわからん以上、安牌を投げるしか無かったのだ。

安牌を投げるしか無かったのだが……。

時は2001年春、個人的にはメトロポリスなどもオススメしたい。

映像表現が凄いのだ。あと音楽。

というか、手塚漫画の映画化は大体ヤバイ級の出来なのでこれも外れ無いと思うのだけど、マニア向けっぽくて友人……を、誘うには、少し躊躇われる。

 

「それで」

 

「うん?」

 

「ご飯どうする?」

 

「……おまかせしていい?」

 

上目遣いで聞いてくる。

任せていいか聞いているようで、その実選択肢はないのだろうな、と。

デートしようと提案しつつ、ノープラン過ぎるのではないだろうか。

まぁ、美味しくて、今だからこそ気兼ねなく行けるお店、というのもある。

 

「まぁ、カレーとかコーヒーとか、そういう店でいいなら」

 

恋人をどういう場所に連れていけば良いのかは知らないが、友人なら気兼ねする必要もない。

……実は、四号カレーを食べてみたかったのだ。

金箔入りのスペシャルバージョンは、まだ売っているのだろうか。

 

―――――――――――――――――――

 

一般的なデート、というのが、どういったものであるか。

前の人生まで含めれば経験が無い、という訳ではないのだが、いきなり疎遠になっていた異性の友人にデートに誘われる、という経験は無い為、それほど当てにはならない。

そも、ふよふよと此方の周辺を浮遊しようとするマラークの魂を念動力で離れた位置でお手玉しながらのデートというのは、気が張るとまでは言わないが、集中しきれない。

デートに集中できない、というのは、どういう意図があれ、デートに誘った相手に失礼なのではないか、と、そう思う。

 

結局、東京という優れた地の利を駆使する事もなく、学校帰りの寄り道か、散歩の様な形に収束してしまった。

良い友達だと思っていた、そして、疎遠になってしまった相手との時間だと考えれば、それほど悪くはない。

映画を見て、食事をして。

以前は、ジルを伴って幾度か一緒に遊びに行った時にそういう機会もあったのだけど。

めっきりそういう事も無くなって久しいので、正直、少し、楽しい。

 

「あ」

 

ふと、脚を止める。

 

「何、どうしたの」

 

「いや、懐かしい場所に出たな、と思って」

 

気付けば、俺と難波さんは、見晴らしの良い海沿いの公園へと辿り着いていた。

階段を降り、遠くにフェリーを見る。

沈んでいない、平和に海を行くフェリーに、銃口を向けるように人差し指を向ける。

無論、人差し指を立てた手はペガサスボウガンでもないし、銃口に見立てた人差し指からは殺傷攻撃が出るわけでもない。

出せるが。

 

「ここでさ、初めて会ったんだ」

 

「……ジルちゃんと?」

 

僅かな沈黙の後に続いた問に、なんとなく察する。

多少なり、事情を誰かが説明したらしい。

何処まで説明されたのかは知らないけれど。

 

「ズ・グジル・ギ。俺が戦った、はじめてのグロンギの戦士だった」

 

はっきり言って、力だけの雑兵だった。

苦もなく、とは言わないが、手に入れた技術を駆使すれば想定通りの戦いを経て殺せる相手だった。

戦い、という形式になったのは、俺もまたその時点では雑兵のようなものだったからだろう。

なんとなく、あそこがスタートラインだったような気もする。

力を得たのはベルトを巻いた時だった。

元が人の生物を殺したのは、名も知らぬオルフェノクだった。

だけど、俺が、小春交路が、未確認生命体二十二号と認識されるに至る始まりは、恐らく、ここだ。

 

味方のふりをして油断を誘わなかった。

変身し、認識の外から一方的に殺す一撃を不意打ちで叩き込まなかった。

完全に戦闘に適した形態で、向かい合い、武器を構え、互いの攻撃が届く距離で、殺される可能性が互いにある位置で、攻撃を交わしあった。

修行、鍛える意味もあったから、正面からの戦闘を挑んだ。

 

「あいつの背中に、大きな傷、あるでしょ」

 

「うん」

 

難波さんが頷く。

あいつの水着を見繕う上で、布面積の多い水着を選ばなければならない原因の一つ。

 

「俺が斬った」

 

沈黙。

既に誰かから聞いていたか、聞いていなかったか。

それは知らない。

 

「実際はさ、骨も斬ってた。背骨、肋骨、内蔵にも届いてたと思う」

 

思う、と、断定できない形になってしまうのは、当時の俺が、人間に近い構造を持つ生物を斬り慣れていなかったからだろう。

そこまでの人型相手の経験で得ていたのは、不意打ち気味に抜き打ちで首を跳ねる手応えだけだ。

 

「その時点では、まだ変身してたから。だからあの程度の傷で済んでる」

 

「あの程度って……」

 

「背骨も断ち切ったから、治ってないならそもそも歩けてないよ」

 

「……」

 

反論なんて幾らも出てくるだろうに。

続きを促すような無言。

顔は見ない。

どういう表情をしていようが、意味はないのだ。

 

「そのまま、背中から、ベルトを壊した。槍で刺してね。下腹部の傷はその名残かな」

 

「どうして」

 

「その方が確実だし、被害も少ない。死んだ未確認が爆発するっていうのは知ってるよね、ニュースでも散々やってたし」

 

ベルト周りの神経を断裂されると死ぬのは、ダグバが証明している。

ベルト無し、そもそも魔石無しで変身体で活動していたキノコも居るが、あれは変異後の生態が特殊だったからこそだろう。

あれは変身体ではなく、変身体の細胞を元に生まれた、変身体によく似た別の生物だ。

変身の要になるのはベルト、ゲドルードと、魔石ゲブロン。

これを破壊すれば死ぬ。

……という訳でもない。

 

「ヂガグ、ボンバボパ、パダギパ、ゲゲルゾ、クウガゾ、パダギパ」

 

「え?」

 

「未確認の言葉だよ。意味としては『ちがう、こんなのは、わたしは、ゲゲルを、クウガを、わたしは』かな」

 

「……」

 

「わかるよ」

 

「え?」

 

「あいつ、一人称、わたしだったんだな、って」

 

わとあの区別がつきにくいので、あたし、かもしれないけど。

ちょっとイメージ違わない?

みたいになるのはわかる。

でも『ぼく』とか『おれ』もなんか違うし、一人称を名前にするのは教育の段階で許していないので心配ないが。

実際、振る舞いから無邪気そうな部分はあるけど、知識量はかなりのものになってきたし、ベルトの件も考えれば『わたし』でも違和感は無いのだけど。

 

「いや、そういう話じゃなかったよね?」

 

「そういう話だよ。未確認、グロンギにも当然言語があって、一人称があって、死に際に悔いがあれば未練がましく譫言も言う。……変身中にベルトを壊されると、どうなると思う?」

 

「……元の姿に戻る?」

 

「そんな感じかな。制御されてない石は残るから、点滅するみたいに元の姿に戻る」

 

安全装置の一種だ。

ベルトを破壊されただけで、一気に安全性を無視して完全に進化の力を開放するというのであれば、ゲゲルの最中に短時間で死ぬン級の脱落者が続出する可能性だってあるし、それが知れれば強くなるために故意にベルトを破壊する輩も出かねない。

ベルトの機能が死んでもゆっくりと元に戻るのは、制御から外れた時点で元の身体に戻るような機能が、変身後の肉体に組み込まれているからだ。

正確には元に戻るというより、魔石の影響を遮断するというべきか。

 

通常時、非戦闘時に人間の身体でいる時、ベルトは魔石に対し、肉体に干渉するな、という命令を出している。

実験でもわかることだが、ある程度の生体電流を持つ生物に接続された魔石は、制御無しで勝手に肉体を作り変え始めるからだ。

逆に、変身時には、肉体をある程度(階級により異なる)作り変えてよし、という指令を下す。

当然、ベルトが破壊された時点で、本来ならば制御下から離れた魔石は勝手に肉体を際限なく作り変え始める。

 

肉体を作り変えるのはモーフィングパワーだし、それが切れれば元の人間の肉体に戻る。

しかし、モーフィングパワーで作り変えられた物質は完全に元の形に戻る事はない。

基本的に、無機物を元に武器を作った場合、モーフィングパワーを切らせば塵のようになる。

グロンギ、クウガに共有する、変身と変身解除を司る可逆変身機構は、最終的には魔石の力で元となる肉体も修復するから成り立つのだ。

全身の追加神経はモーフィングパワーを流し易く、直し易くするための土台のようなもので、ベルトの認識する肉体に干渉していない形は、ベルト装着後は基本的に繰り返しの変身に耐えられるような構造に作り変えた後のものを指す。

 

そして生きている生物の肉体の中で無ければ、肉体を作り変えるモーフィングパワーは作られない。

なので、ゲドルードのバックルには、幾つかの制御装置が搭載されており、完全に破壊されない限り、変身限度を維持する命令を下し続ける。

変身、解除を繰り返すような肉体の挙動は、制御から完全に外れたから起きる現象ではなく、制御下にあり、不完全な状態でも魔石の制御を続けているからこそ起こる現象なのだ。

言ってしまえば、ダグバの不完全体もこの形態であると言える。

人間態に戻らず、中間形態になるのは、ほぼ全開放状態のンだからこそ。

 

変身体と人間体のモザイクな死体が生まれるのは、修復が間に合わない損傷を受け、肉体を限度を決めた状態で変異させている最中でモーフィングパワーが切れ、変異を繰り返す中で停止したからに過ぎない。

あいつ……ジルが今、傷こそあれど、人間の姿を維持しているのは、ベルトを破壊し、魔石を抉り出した後に蘇生したからだろう。

半端に変化した状態で死んだ肉体を、恐らく、オルフェノクとして蘇生する上で死因の一部として認識され、傷のある完全な人間体で甦ったのだ。

負傷が残っているのは、スネークオルフェノクの手指と同様、生前に負った傷、としてカウントされたのだろう。

 

「人間の顔で、人間の姿でさ、譫言言いながら、口から血とか吐いてさ、まぁ、嫌なことするなぁ、って」

 

「嫌なこと……」

 

「だってそうでしょ、化物殺すつもりで、実際殺して、もうそろそろ死ぬ、ってところで、人間の姿で苦しみ出すとか、悪趣味にも程がある。こっちの身にもなってほしい。これから、爆発させないように殺す度に、安全に殺す度に、人間の姿に戻って、譫言だの、恨み言だの、人間の死に様でさ。死に顔も覚えてる。涙に濡れて、血まみれで、悔しそうな、嫌でもわかるよ。ああ、人間を殺したんだな、って。だから」

 

「だから?」

 

「顔を焼く事にした」

 

息を飲む音がやけに大きく響いた。

 

「一番やりやすいのがそれだった。顔を削ぐより、戦いの流れの中で狙いやすい。まあ、余裕が無い時とかは省いたけど」

 

実際、途中から、顔を焼くのは省略していた。

結果的に顔が焼ける事はあったけど、頭部は急所だから結果的にそうなっただけだ。

たぶん、気にならなくなってきたんだと思う。

殺して、殺せて、ほっと息をついて、終わり。

 

「四号みたいには、できなかったの?」

 

「だって危ないじゃない。爆発とか」

 

そりゃあ、周囲への被害を気にしなければ封印エネルギーで爆発させるのがスマートなやり方だとは思う。

でも、そういうのは警察とかと連携して避難指示とかができるからこそ成り立つ訳で。

もし、俺が最初から爆殺する方針でやっていたとしたら、バッシングも大きくなっていただろうし、警察ももっと敵対的だったろう。

ズだのメだの、木っ端の爆発なら大丈夫、という話でもない。

人間大の生物がバラバラになる爆発力で、バラバラになった死体の一部が周囲に飛んでいくのだ。

手榴弾に鉄片だのが入っている、なんて話じゃあない。

十分な速度が伴えば、人間の骨の欠片だって十分に殺傷力を得る。

 

そして、この世界ではマスコミのカメラマンが命がけ過ぎる距離でグロンギの写真を撮ろうとする。

そしてその骨片がマスコミや周辺の野次馬に直撃して被害でも出たりすれば、それはもう、二十二号は残虐な狩りをする怪物でなく、周辺への被害も省みない危険生物として報道され、警察も対処せざるを得なくなる。

俺が、最期までマスコミにヤバいやつ扱いされたり、現場に駆けつけた所轄の刑事に通常弾頭で撃たれる程度(・・)で済んでいたのは、殺し方が残虐なりに、一般人への被害は徹底的に避けたからこそなのだ。

 

「顔を焼くのは、ストレスを溜めない為。四号みたいにやらないのは、危ないから。警察と協力なんてできないから。信用してないから」

 

振り向く。

難波さんの顔を、目を、まっすぐに見る。

 

「そういう奴だよ。俺は。全部、全部、全部、自分の為にやってる。望んで殺してる。望んで戦ってる。今も(・・)そうだ」

 

念動力で、手元にマラークの魂を引き寄せる。

それが何か、ギルスである、そして、ムセギジャジャとしての資格を持っている難波さんには理解できるだろう。

 

「これを、人間から生まれた生き物にねじ込んで、殺し直す(・・・・)。それで完全にこいつは死ぬ。そして、ねじ込まれた元人間も死ぬ。俺が殺す」

 

見ればわかる。

恐れている。

目に涙が浮かんでいる。

振るえている。

そうとも、それが正常な反応だ。

何がおかしい。

いや、何もおかしくない。

恐れて然るべきだ。恐れられて然るべきだ。

 

難波さんは知っている。

ジルは人間らしく生きている。

グロンギ、未確認の様に、人をゲームとして、儀式として殺す事もなく、平和に過ごしている。

ベルトを破壊し、魔石を引きずり出し、記憶を失えば、グロンギは社会復帰すらできる可能性がある。

結局、未確認生命体は、ただの、変な信仰を持ち、変身能力を持つだけの人間だ。

未確認生命体二十二号?

バカバカしい。

ただの、超能力を持って、犯罪者を、人間を勝手に殺して回っているだけのイカレだ。

何処由来とも知れぬ、語らぬ、よくわからない、出所不明の知識だけを元に人間を殺し回る危ないやつだ。

 

恐れて離れたなら、そのままの方が絶対に良い。

知らずに友人でいるならいい。

知った上で友人関係を続けようなど馬鹿のやる事だ。

それを理解するべきだ。

優しさから、仲直りなんて、するべきじゃあない。

難波さんのような優しい人が、気にするべきではないし、関わるべきじゃあない。

唯でさえ、難波さんは体質的にエルロードに狙われる危険性があるというのに。

自分から、戦いの場に赴くようなアホと付き合いを続けるべきではない。

 

「今日はありがとう、デートに誘ってくれて。気の利いた場所に連れていけなくてごめん。でも、ここまでにしよう。ここからは、これからは、難波さんが関わるべきじゃ」

 

手首を握られた。

距離は離れていた訳ではない。

一歩踏み出せば手の届く距離だった。

それは不思議ではない。

おかしくはあるけれど。

でも、わからない。

なんで、

 

「なんで、そんな怒ってるの」

 

困り顔でもない。

泣き顔でもない。

涙は浮いている。

でも、恐怖に歪んだ顔ではない。

怒っている。

誰にかと言われれば、俺に、だろう。

涙を浮かべて、怒った顔で、俺の手を掴んでいる。

オトナ帝国の逆襲のパンフレットが投げ捨てられている。

 

「怒るよ。勝手過ぎる」

 

一歩近づく。

 

「そういう奴だもの」

 

手を振り解き、下がる。

 

「そんなんじゃない。交路くんは、優しい人だよ」

 

もう一歩。

 

「人を見る目がない」

 

距離が近い。

後退る。

 

「ジルちゃんを見る目が優しい」

 

二歩踏み込まれた。

 

「錯覚だよ。しっかり介護してるとそう見える」

 

大きく後退る。

 

「いっつも気遣ってくれてた!」

 

後退るのと同時に踏み込まれる。

体当たり染みた動き。

背に腕を回される。

 

「お見舞い、ずっと来てくれてたんだよね。目が覚めた時、君が居てくれて、嬉しかった」

 

どう返すか考えて、肩を掴んで、押し戻す。

 

「優しい奴は、自分から人殺しなんてしない。難波さんはもう、一度見てるから解かる筈。あの馬みたいなのも、元は人間だ」

 

「なら……、なら」

 

難波さんの視線と、俺の視線が絡み合う。

涙に濡れて、でも、強い意思の込められた瞳。

 

「私も戦う」

 

「何を馬鹿な」

 

「殺すのが、戦う事が罪なら(・・・・・・・)――

 

――私が、一緒に背負う!」

 

告げられた言葉に、ぐらりと脳が揺れる。

何故、これほど衝撃を受けているのか、自分自身わからない。

だが、自分自身でも想像できない程に、今の言葉に衝撃を受けたのだろう。

念力でグリップしていたマラークの魂の感触が無い。

周囲を見渡せば、ふらふらと力なく浮いていたエネルギー体が、早めの紙飛行機程度の速度でまっすぐと飛んでいくのが見えた。

その先には、見慣れた灰の怪物の姿。

突き刺さり、変形を開始する。

 

下がって、と、俺が告げるよりも早く、難波さんが前に、マラークの魂に乗っ取られつつ有るオルフェノクへと近づく。

肩幅程に開いた脚が、ザッ、と、地面をこする。

顔だけでちらりと振り返り、

 

「だから、見ていて」

 

前に向き直った。

小さく、細く、薄く、柔らかい線の、頼りない背中。

しかし、

 

「私の……変身!」

 

その背中に、嘗て見た多くの戦士の背中が、重なって見えた。

 

 

 

 

 

 

 




( ゚д゚)、ペッ
ってやりたい部分もあるけど、こういう展開を書くのは楽しくて素直に反吐を吐けないのが悩ましい

☆フォースグリップマラークの魂キープマン(実質ヒロイン)
なんか俺は悪鬼なのだ、みたいな弱音を吐いている様に見えるけど、実際まともな生活を送るべき相手だと思ってる難波さんが相手だからこういう思考になっているのであって、別にグロンギ連中を殺したこと、元人間の多種族を殺す事に関して何らかの負い目がある訳ではないしこれからも特に変わらず殺す
平気な振る舞いができるのは立場、心情共に比較対象とするべき相手が居なかったからなのだけど、居ても別段実働においては問題なし
デートを口実にポレポレにおもむき特性カレーを味わう程度の余裕はある
難波さんと疎遠になるのは悲しいけど実際疎遠になっておいた方が安全だからこれでいいよね、みたいに自己完結してたら難波さんが覚醒してトゥンクさせられる
まさかこやつヒロインなのでは?
でもヒロインパート終わって戦う決意を受け入れたら多分修行パート入れさせる
夏休みに一緒に旅行に行こう、みたいな事言ってドキドキ勘違いとかさせるパートをやりたいという思いが私の胸の中に沸き立つ
ン人公イン「師匠、今年も修行に来ました」
女の子二人を背負子で背負って、また奴が赤心寺を訪れる……!

☆EDをバックに変身ポーズを取って次回への引きを担当する難波さん
誰かのために戦う決意をするその姿はまさに仮面ライダーなのだ
次回、いい感じにギルスとクウガの方式が混ざりあった変身シーンからスタート
まさかこやつ主人公なのでは?

☆家に凸してきた難波さんがママンにホテルの部屋番号教えられて新幹線のチケット貰うのを見て、にやりと笑うヒロインちゃん
強キャラムーブ
主人公のやってきた事の大まかな説明の中で、自分がお風呂の世話をされてる事をさり気なく説明したりしたのは背中を押す意味もあったのだ(行間の話)
こう、傷のあたりを洗う時には指先が優しくなるなー、みたいな事をさり気なくほのめかした結果、ちょっとだけ難波さんが大胆になれたのが今回の抱きしめなのです
アギト編の間にイベントを起こすが難波さんのそれとは方向性の異なるイベントになる予定
どれくらいの予定かっていうと予告時点でなんも決まってないけど、予告の背景様にそれっぽい絵コンテ風の一枚だけ書き下ろす感じ
まさかコヤツ敵か味方か不明なライバルキャラポジなのでは?

そして、またもやナナス様よりイラストが、二枚も!
一条さんです!

【挿絵表示】

そして

【挿絵表示】

背中合わせの共闘!
……のような、主人公だけが後ろを向いて一条さんの事をちら見してるのが意味深なような
なんか企んでない?
ベルト装着後の容態を心配しているのか、変身未開放状態の戦闘データを欲しているのか
一条さんが前だけ見てるのは、詳しく話は聞きたいし凶行も止めたいけど、共闘が必要な状態ならまずは戦って驚異を取り除く事を先決するクウガ警察ムーブを貫いている感あっていいと思います
後で詳しく聞かせてもらうぞ! とか言いながら戦意はあくまで敵に向ける一条さん有能



ちゃんとしたデートシナリオ書けなくてごめんな……
でもこのSSライダーSSなんでね、ここからが本番よ
次回で難波さん変身と初まとも戦闘
その後になんでそこまで気遣うのか、みたいな事を聞かれて、告白しきれずにヘタれる難波さんを書いたらすっきりする
変に早期に恋愛関係でくっつけちゃうと話を動かしにくくなるからね
それでエタったSSを幾つも俺は見てきた……
とりあえずその後はちゃんと原作シナリオに寄り添いマラークをぶち殺してく感じになると思いたい
そんなSSでもよろしければ、次回も気長にお待ち下さい


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24 変身、新たなる戦士

ベルトの実体化は基本的に精神的なスイッチによって行われる為に、身体での動作にこれといった決まりはない。

頭一つで日常の自分と戦場の自分を切り替えることができるのであれば、身体を動かす必要すら無い。

では、変身に際しての動きには如何なる由来があるのか。

それは、戦いに対する心構えが基本となる。

 

少女が、眼前で拳を握った腕をXの字に交差させ、深く息を吸い込む。

顔を覆い隠す、目の前の敵を腕越しに隠し、しかし、目は逸らさない。

戦うための精神的な準備を察知し、その腹部にアークルに似た小型のバックルが現れる。

 

自分はこれから戦わなければならない。

しかし、戦うのはこの自分ではない。

 

腕越しに敵を睨みつける少女の真横に、緑色の装甲に身を包んだ戦士の(ヴィジョン)が浮かび上がる。

進化、あるいは先祖返りにより発現した、彼女のもう一つの姿。

忌まわしき異形の躰。

戦いに臨む自分、戦いに挑む自分。

 

斜め十字に交差させた腕を、勢いよく左右に下ろす。

それは平和に生きる少女の皮を破り捨てる動き。

素顔を隠す、恐怖に震える自分を隠す面を被る動き。

人の殻を破り捨て、生きる為獲物に食らいつく戦士が生まれる動きだ。

 

「ぅぅう、あああああッ!」

 

絶叫。

原始的な、言葉ですらないそれは天を突く産声であった。

緑の異形、ギルスの像が少女、難波祝(なんばはじめ)の姿に重なり、その姿を、存在を塗りつぶす。

後に残るのは、火のエルと人間の混血児。

驚異的な力を、混血特有の多くの代償と共に備える異形の戦士だ。

脳は闘争本能に熱され、天使の力を思うままに振るう代価として人としての残り時間を擦り減らす宿命の戦士。

だが、その運命は捻じ曲げられる。

 

賢者の石を内蔵するメタファクター。

ギルスの力の源に隠れる様に埋め込まれたベルトが、電光を走らせながら無尽蔵に溢れる力を押さえつける。

全身に寄生し、装甲にも武器にもなる寄生生物達に指令を下し、その構造をより強固に、安定した形に作り変え、ベルトに搭載された宿主の意識のバックアップ兼制御AIが、本人の意思に同調し、興奮状態を抑制。

 

常のギルスを知る者が居れば、その外見に驚くだろう。

生物の外骨格、亀の甲羅、虫の外殻、爬虫類の鱗にも例えられる生体装甲はまるで卸したての鎧の様に滑らかに、ハードスキンですらレザースーツのような美しい光沢を放っている。

格納され、今は伸長していないクロウもまた、切れ味の良い刀剣の如き鋭さを備えていた。

 

「ふぅぅぅぅ……」

 

緊張を解すための深呼吸。

しかし、呼気と共に漏れた声から恐怖の色を感じる事はない。

天使の力が齎す高揚感は、ベルト搭載のAIにより完全に制御されている。

戦闘に対する恐怖心が過剰な場合、恐怖を戦闘行動が可能な程度に抑えるため、やや強めに高揚感が残される。

力がある、戦える。

高揚感と打ち消しあった恐怖による肉体の緊張すら、精神的な緊張から来るものであると誤認させているのだ。

 

一歩踏み出す。

二歩、三歩と歩く速度は加速していく。

最早躊躇いはない。

ベルトの機能だけではない。

ベルトの精神安定はそれ単体では意味をなさない。

戦わない、逃げる、という選択を取るのであれば、ベルトは逃走の為の最適解を頭に浮かび上がらせ、的確に逃げるための動作のみを補助し、立ち向かう為の勇気を錯覚させる事はない。

 

戦士として機能を宿主に与える為には、宿主の心に覚悟が必ず必要となる。

覚悟無きままでは戦えない。

戦おうと思う心があればこそ、ベルトは戦う為の道を整えるのだ。

 

「あぁぁぁぁぁっ!」

 

自らを奮い立たせる為の雄叫び。

恐怖に打ち勝つ為ではない。

眼の前の化物を。

()を。

倒す。

 

いや、

殺す(・・)のだ。

 

はっきりと目的を意識する。

身体が熱を帯びるのを自覚できているだろうか。

攻撃的思考に引っ張られるように装甲の深緑が塗り替わる。

どくどくと脈打つ鼓動、ごうごうと流れる血流。

装甲を染めるのは自らの血にも似た赤。

烈火の如き炎の色。

走り出したその時から姿を見続けていたのなら、ハードスキンに覆われた筋肉が僅かに膨張している事に気がつくだろう。

元から赤い複眼はより鮮やかな赤光を帯び、獲物を睨めつける。

 

「っゃあっ!」

 

気の抜けるような甲高い叫び。

しかし、それに付随する拳が空を裂く音は重い。

効率的に相手を殴り、破壊する方法など一切しらない、走るフォームから連続した、全身を振り回す様な大ぶりのパンチ。

ぼっ、と、空気の壁を抜く様な鈍い音と共に、拳は変形途中のジャッカルロードへと迫る。

 

直撃すれば、人間を遥かに超える強靭な肉の器を持つマラークでも唯では済まない一撃。

それに反応したのはジャッカルロードか、消えかけのオルフェノクの闘争本能か。

ざっ、と、足を揃え、跳躍。

ギルスの上を飛び越えるうちにも変形は続き、着地と同時に頭上に光輪を浮かび上がらせ、自身の獲物である断罪の大鎌を引き抜き、振り返る事もなく斬りつける。

見るまでもない、という事か、それは戦士の力を持ちながら戦士の動きができていないギルスへの侮りであった。

 

それは正しい選択だった。

ギルスの持つ超身体能力と言えど限度があり、全力で拳を振り抜いた後では、背後からの奇襲に対応できない。

通常のギルスであれば、仮に腕で防ごうとも斬り飛ばされ、振り抜いた大鎌に腸を抉られていただろう。

だが、ここにあるのはかつて世界に多く居た野生のギルスとは訳が違う。

それを、ジャッカルロードは大鎌越しに感じる硬質な金属の感触と共に思い知る。

 

とっさに大鎌を受けたギ