とあるボーダー隊員の日記 (小林 陽)
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ボーダーに入隊した頃の日記

日記ものあんまり見ないなぁと思って書いた息抜き作品です。不定期だと思います。
気軽に楽しんでいただければ幸いです。
スタートは原作の1年ちょい前くらいです。


  霜月の頃その1 くもり

 

  大学生になって半年ほど立ったある日、唐突に母親がこんなことを言ってきた。

 

「YOUボーダー入っちゃいなYO」と。

 

  もちろん俺の母親はJから始まる事務所の社長でもないしボーダーの関係者ではない。

  何故かと俺が問えばどうやら妹がボーダーに入りたいと言い出したらしい。

  確かにまだ15の妹を民間の軍事企業に一人で入れるわけにもいかず俺も仕方なく入隊することになった。

  明日は土曜日なのでまずは面接に行こうと思う。

 

 

 

 

  霜月の頃 その2 晴れ

 

 

  今日ボーダーへ面接に行ってきた。

  俺は痛いのとか嫌なので妹と同じオペレーターかそうでなければエンジニアとかでのんびり暮らしていたかったんだが面接官に

 

「君のトリオン能力はすばらしい。是非戦闘員になってくれ」

「いやいや、無理です無理です」

「いやいや、君なら出来る」

「いやいや」

 

  みたいな会話を30分くらい続けた末俺が渋々折れてめでたく戦闘員となった。

  その日の内に書類を書いて渡し、訓練用トリガーをもらった。

  妹はどうやら俺よりもだいぶ早く終わっていたようで休憩室で同級生らしき女の子と仲良くお茶をしていた。

  あんまり邪魔するのもアレなので俺は先に帰る旨をメールで送ってクールに去ることにした。ラジカセを持っていないのが悔やまれるくらいクール。

 

 

 

 

  霜月の頃 その3 晴れ

 

 

  面倒な入隊式をテキトーに聞き流し、早速もらったトリガーを使ってみようと本部のランク戦ブースなるものへ行ってみた。

  確かここに入るとトリガーを使って死なない殺し合いが出来るんだそうだ。これを使えば兵器の開発とか捗りそうだよな。ま、どうでもいいけど。

  確か部屋にある端末に表示された番号を押せば出来ると聞いたので実践。

  おー、すげー。手から弾が出たよ。すげー。

  しかもこれ自分の意思で曲げられるんだぜ。超すげー。

  とりあえず俺の目の前にいる少年に実験台になってもらった。

  細かいのいっぱい飛ばしてメラしたり中くらいの3つ飛ばしてメラミしたりでっかいの飛ばしてメラゾーマしたりしてた。

  魔法ってあったんだな。

  この前までオペレーターがいいとか言ってたけど撤回します。やる気がムラムラ湧いてきました。

  魔法はロマン。

 

 

  霜月の頃 その4 雨

 

 

  妹の研修の終わりを待ちがてらランク戦ブースでぼんやりと試合を見ているとぴっちり中分けデコだし少女が無双してるのが見えた。

  うわぁ、すげぇなぁ。なんか早さからして違うもんな。通常の3倍早い、みたいな。

  てかあれが噂になってた子か。なんでも最初のネイバー戦闘訓練で9秒とか叩き出してたのは。

  確か俺が45秒くらいだったから俺より5倍強いことになるな。

  うん、当たりたくないです。

  だってブースから出てきたやつがすごい顔してるんだもの。あれ絶対感覚とか破壊されてるぜ。

 

 

  霜月の頃 その5 晴

 

 

  あんだけ当たりたくないと言っていたデコっぱちとついに当たってしまった。

  すごくドキドキしながら戦ったのだがやはり1:9とボコボコだった。

  昨日試合見てたからか早さは分かっているつもりだったんだが体感速度ってやっぱ違うわ。

  最後の一本でようやく対応できたわ。

  いやぁ、しかし強かったなぁ。とか思いながらベッドから起き上がった瞬間また勝負を申し込まれた。

  しかし俺はこれから買い物をして帰らなければいけないのだ。行かねば今日の夕飯が卵かけご飯だけになりかねん。というわけで拒否ボタンをぽちり。

  そしてブースを出ると俺の目の前には先ほどまで戦っていたおデコちゃんが立っていた。

  しかも唇を噛み締めた般若みたいな顔をして。

  いやぁ、美人ほど怒ると怖いっていうけどマジだなこれ。

  てかなんでそんな顔してるんだこの子は。と思えばどうやら俺に一本の取られたのが悔しかったらしい。

  なんでも自分は今まで一本も取られてない? これは何かの間違い?

  うん、たぶんそうだと思う。普通に考えて俺が君に勝てるわけないじゃん。

  そう言ったらおデコちゃんは勝ち逃げするつもりですか!と大声で罵ってきた。

  勝ち逃げって言ってもなぁ……デコちゃん、君、俺に勝ってるんだぜ? しかも9:1。

  あれ、これ立場逆じゃね?

 

 

 

  霜月の頃 その6 雨

 

  今日はリベンジに来たデコちゃんと戦った。

  10本やって2本とれた。

 

 

  霜月の頃 その7 くもり

 

  デコちゃんと戦った。

  20本やって4本取れた。

 

 

  霜月の頃 その8 晴れ

 

  あのデコ助と戦った。

  30本やって6本取れた。

 

 

  霜月の頃 その9 晴れ

 

  俺に対する尊敬の欠片もないデコ助と戦った。

  30本やって8本取れた。

 

  ん、あれ、もしかして俺最近デコ助としかやってない!?

  くそ、道理で全然ポイント貯まらねぇと思ったらそういうことか。

  デコ許すまじ。今度あったらボコってポイント勝ち逃げしてやる。

 

 

  霜月の頃 その10 晴れ

 

 

  例のごとくデコ助に捕まり、ランク戦。

  この流れはいつも通りだったのだが今回は戦績がまったく違った。

  なんと0:10で完敗だった。

  内容的にも圧倒的。なんかこいつ盾みたいなの張ってガンガン俺の弾ガードするんだけど。全然弾通らないんだけどそれ。

  どういうことだと問い詰めればどうやらB級隊員へと昇格したんだとドヤ顔された。

  へぇすごいな、よしよし。こんにゃろう。と強めに頭をがしがしと撫でてやったら嫌そうな顔をしながら安達先輩も早く上がってきてください。そうじゃないと……とかぶつぶつ言ってた。

  なんだ、ハキハキしゃべれハキハキ。お前は夜中チャリ漕いでて警察に本人確認された俺かよ。

  と、とにかく、先輩も早くB級に上がってください!

  みたいなやり取りの後デコ助はなぜか俺にランク戦をしようと誘ってきた。

  おい、ちょっと待て、お前俺のB級昇格応援してんじゃないのかよ。なんで俺から搾り取ろうとしてんの?

  え、正隊員との模擬戦はポイントは動かない? それでも色々問題あるだろ。

  俺の異論は全く聞き入られることなく俺はブースに放り込まれそのままいつもの30本コース。

  意地でなんとかラスト1本とったが厳しい戦いだった……。

  別れ際、今日の借りは今度絶対返しますからね、と睨まれたのが忘れられない。

  またあの蹂躙劇をするのは嫌じゃぁぁぁ。

  ということで早いとこB級に上がろうと決意した今日この頃。

 

 

 ***

 

 

 

  side木虎

 

 

  「お、デコ助、今日も眩しいな」

 

  恐らくテキトーに整えられた髪に強面の長身の男、安達圭一は大袈裟に目をすがめながらそう言った。

 

「センパイこそ相変わらずの不審者顔ですね、ちゃんとここまで来られました?」

「ばっかお前俺くらいになるともうお巡りさんと顔馴染みだからね? にこやかに挨拶して周りの人にざわつかれるくらいで済んだわ」

「どこに自慢できる要素があるんですか……」

 

  そんないつものように軽口を叩きながらランク戦ブースへ向かう。

  まだ出会ってから1ヶ月もたっていないというのに「いつものように」というのは少しおかしいのかもしれない。少しおかしくなって小さく笑う。

 

「なに、どした、なんか辛いことでもあったん?」

「うわっ! な、なんで見てるんですか、セクハラですよ!?」

「そういうことを大きな声で言うと犯罪になっちゃうからな? 笑えないからな?」

 

  そんなセンパイの言葉を無視してズンズンと歩いた。歩調が早くなったのが自分でもわかる。全く、なんでこの人はこういうところばっかり見てるんだ。

 

 

 

 ***

 

 

 

  模擬戦を終えるとこの休憩室で飲み物を飲むのが最近の習慣だ。

  私はココア、センパイはコーヒー。なんだか悔しいがセンパイが砂糖とミルクをしっかり入れているところを見るとなんだかその気持ちも薄れてくる。年上としての体裁とかは考えないんだろうか。まぁそこがこのゆったりとした雰囲気の理由なのだろうとは思うが。

  そしてその件のセンパイはコーヒーを片手に文句を垂れていた。

 

「シールドハンパないって! もぉ〜あいつ俺の弾バンバン防ぐんやもん! そんなん出来ひんやん普通 シールドハンパないって!」

「なんで関西弁なんですか……」

「あ、分からんか……」

 

  センパイは少しシュンとしてコーヒーを煽る。そして私の方を見た。

 

「そんで、あれなに? ちょっと見ない間にパワーアップしすぎだろ」

「ふっふっふ、聞きたいですか?」

「おー、聞きたい聞きたーい」

「……まぁいいでしょう」

 

  私はたっぷりと間をとる。

 

「私、ついにB級に昇級したんですよ!」

 

  ……あれ、おかしい。ここで軽口のひとつやふたつ飛んでくると思っていたから少したじろいだ。

 

「せ、センパイ……?」

 

  声をかけた直後センパイはガバッと立ち上がってすげぇじゃんか。とまるで自分のことのように嬉しそうな声をあげた。

  そしてガシガシと私の頭を撫でた。

  痛いし、頭は揺れるし、髪もボサボサになるから嫌なはずなのになんだか悪くないとも思う自分もいる。

  それが恥ずかしくて思わず口を開いた。

 

「と、とにかくセンパイも早くB級に上がってきてください!」

 

  じゃないと少し退屈だ。いや、ホントに少しだから別にどっちだっていいのだけれど。いればいい訓練になるというだけで。

 

「ん? どした?」

「な、なんでもないです! そ、それより模擬戦しましょう模擬戦」

「さっきしただろ……」

「まだB級に上がれないセンパイのためにやるんですよ」

 

  なんだかこの人の前だと調子が狂う。

  だから私は努めてふふん、と笑う。

  いつもの私と同じように、誰にも気付かれないように。

 

 

 

 




本人はあんまり気づいてないけどそこそこ優秀、しかし木虎やら村上くんのせいで霞んでます。


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B級隊員を目指していていた頃の日記

わりと深夜テンションで書き上げたので修正するかもしれません。



  師走の頃 その1

 

  久々にデコ助以外とランク戦をしたんだが正直驚きを隠せない。

  なんか……すごく楽勝でした(小並感)

  5人くらいと5本勝負をしてたんだけど全勝でした。

  最近デコ助としかやってなかったから全然分かんなかったけど俺も強くなってたんだなぁ。

  日頃からあんのアホデコにボコられてるから全然気づかなかったけどな!

  まぁこんな感じでいけばあと長くてもあと1週間くらいで昇格できるだろ。

 

 

  師走の頃 その2

 

  あとちょっとでB級に上がれる。そんなことを考えていた時期が僕にもありました。

  この前から1週間経った今ポイントは3500から微動だにしません。それもそうです。だって誰も戦ってくれません。

  ポイントの稼げる高ランク者はもちろんなんなら低ランクの人も戦ってくれないのは一体なんなの。

  今俺と戦ってくれるのはワンチャンス高ポイントを。と夢を見た低ランクぐらいです。意気揚々とかかってきた成金君ははちょっと叩いたらとすぐ諦めました。気骨がありません。もっとかかってきなさい、そして俺にポイントを落とせ成金。

  はぁ、やってられない、しかも今日もデコ助にボコられたし。何度言ってもフル装備だし……。でも最近それにも対応できるようになってきてしまったんだなこれが。

  こんなことしてるから望まぬ強さを手に入れてしまうんだけどな。

  なんかこう書くとそれっぽいな。ラノベ主人公みたい。

  キャーカッコいいー抱いてーふぅ。

  こんなことも言ってないとやってらんねぇよ。癒しがほしい。誰か俺に巨乳をくれ。

 

 

  師走の頃 その3

 

  ブースに入るや否や成金に勝負を申し込まれた。どうせ相手もいないので素直に受けた。

  転送されると成金はいきなり俺の前に現れ、両手に持った拳銃を自慢げに見せてきた。

  いわくトリガーを正隊員用にしてもらって威力が上がったんだとか。

  なるほど、それで急にポイント上がってた訳か。それに前見た時より銃がゴツくなっているような気がする。

  ん? ちょっと待て、じゃあこいつもデコ助みたいに盾張って突撃とかしてくるってことか?

  だったら張らせる前にやっちゃうか。 ちょうど演説に夢中みたいだし。

  という訳でこっそり弾を展開して背後からの集中砲火で成金は吹き飛んだ。

  イエーイ、アイアムウィナー。

  なに? 話してる間に攻撃は卑怯? 知らん、戦闘中に隙を見せるのが悪い。

  と言いながらもう一度バイパーを展開俺を詰るのに必死な成金の背後から集中攻撃。爆散。

  こいつも学習しないなぁ。とか思ってたら3本目からはちゃんと普通に戦いに来てたので俺もちゃんと戦った。

  盾を張られての銃撃が怖いので死ぬほど攻めた。全勝した。成金は覚えておきたまえ!とか言いながらダッシュで逃げていった。

  まぁ特に興味もないので無視で。もう一戦くらいやろうと部屋の中の端末を見たが誰もいない。あれ、故障かな。と思ったがそもそもブースに誰もいない、さっきまでいたんだけどな……。

  まぁいいか。たぶんこの部屋のメンテナンスかなんかなんだろう。

  そう思って俺はC級ランク戦ブースを後にした。

  あ、そういえば今日はデコ助に会わなかったな。

 

 

  師走の頃 その4

 

  最近めっきりランク戦が出来ない。ワンチャンを狙った活きのいい新人ばかり。それに勝っても全然ポイントが入らないのでやめてほしい。

  しかし俺がランク戦しに行くとブースがざわつくのは一体なんなんだ。いや、顔が怖いのは分かるけどそんなにかな。お兄さん涙がでちゃう。まぁもう慣れたからいいがな。

  あ、そういえば今日もデコ助はいなかった。テストだろうか。

 

 

  師走の頃 その5

 

  今日は久しぶりに手応えのあるやつと戦えた。

  日本刀をバリバリ振り回すデコだし男だ。名前は村上鋼、高2だそうだ。

  てかなに、強いやつってみんなデコだしなの?村上くんもすごく強いんですけど。だがデコ助ほどデコを出していないからかなんとか勝ち越すことができた。6:4のギリギリだったけどな。

  強いなぁ、もしかして師匠でもいるの? と冗談混じりで聞いてみたらホントにいるんだそうだ。

  村上くんの師匠……オールバックかな?

  なんでも同い年だからすぐに仲良くなって教えてもらう流れになったんだとか。

  へぇ、なんかそういうのいいなぁ。

  俺と同い年なんて全然見ないしボーダー入って一番話してるのは誠に遺憾ながらあのデコ助だからな。

  そんな話をまるっとしたら村上くんに案外話しやすい人なんですね。と言われた。

  どういうことかと思ったがなんでも今俺に関してすごい噂が横行しているらしい。

 

  なんでも、ボーダー始まって以来の天才木虎に10本勝負で勝ち越した。そこで力を見切ったから最近は年上としてわざと負けているとか。

  弱いものいじめが趣味で自分より弱い相手でも全力で倒しかかるとかわざわざ低ポイントからポイントを奪って昇格しようとしているとか。

 

  ……いやいやいや、ちょっと待ってほしい。

  木虎にはまったく勝ち越してないしわざと負けたことなんて一度もない。すべて全力で戦って粉砕されてるんだぜ、年上の威厳もくそもない。

  しかも弱いものいじめとかしたことないだろ。

  あぁ、成金? あいつはB級装備になったとか言ってたからついデコ助とやってるときと同じノリで……。

  だがしかし最後のだけは語弊しかないぞ。俺と戦ってくれるのがみんな低ポイントなだけで別に好き好んで戦ってる訳じゃないんだ。いや、ホントに。

  てかデコ助も否定しろよと思ったがあいつ最近来てないんだった。

 

  はぁ、と思わずため息がこぼれてしまう。

  とりあえず村上くんには断じて違うということを念押ししておいた。

  でもなぁ、これで変わるとは思えんのだよなぁ。まぁいいや、どうせデコ助が来たら誤解も解けるだろう……解けるよね?

 

 

 

 

 

 

 

  side村上

 

  その戦いは正に虐殺という言葉が一番似合っていたと村上鋼は考える。C級ランク戦モニターに映っているのは強面の男とボーダーのスポンサーの御曹司の息子唯我尊だった。

  唯我は両手に持ったハンドガンを青年に見せびらかしながら話していたようだ。そしてチャッと青年に銃口を向けた瞬間唯我の体は消し飛んだ。比喩でもなんでもなく消し飛んだのだ。背後から雨のように降り注いだバイパーによって。

  そして2本目、恐らく先程の不意打ちを糾弾しているであろう唯我の体にまたしてもバイパーの雨が降った。

  それで唯我も切り替えたようで無言で襲いかかるようになった。

  しかし青年もそれにあっさり対応し、両手拳銃の唯我をあっさりと制圧した。時にはバイパーで攻撃範囲を狭めたり弾と弾をぶつけて防いだりそしてなにより恐ろしかったのはバイパーを使った進路誘導だ。

  青年はまるで掌で遊ぶがごとく唯賀を倒した。

  観戦していたランク戦ブースはいつの間にか静まり返っていた。

  恐らく誰もが恐怖に近い感情を持っていたのだろう。一人がブースから出だすと次から次へと競うように出ていった。

  村上も例外ではなかった。恐らく、いや、実際のところ怖かったのだ。

  あの虐殺とも言える戦いが。

  その日以降彼は自分よりかなりポイントの低い1000ポイント代の人間ばかりと戦うようになった。

  唯我との戦いで目覚めたのだろうとみんなが口さがなく噂した。

  それから彼がブースに入るとそそくさとブースから出る人間が増えた。まぁそれもしょうがないだろう。誰もあんな虐殺など受けたくないのだから。

  そんなことをぼんやりと考えているとついに村上のところにランク戦のお誘いがきた。

  村上は躊躇なくYESボタンを押した。

 

  結果は村上の敗けだった。スコアは6:4かなり白熱した試合でどちらが勝ってもおかしくない試合内容であった。

  その戦いのあと青年から村上に話しかけてきた。

 

「いやぁ、強いなぁ。もしかして師匠でもいるのか?」

 

  正直その屈託のなさに驚きがなかったと言えば嘘になる。もっと荒々しい喋り方をすると思っていたのだ。

  やや面食らいながらも荒船のことを説明すると

「へぇ、いいなぁ」と言って「俺なんてあのデコ助とばっか……」とぶつぶつ言っていた。

  その様子があまりにもイメージからかけ離れていて少し驚いたが不思議なことにその人の声はなんだか暖かくて噂されているような人間ではないと確信した。

 

「あの……名前聞いてもいいですか?」

「あ、そういえば言ってなかったね。安達圭一だ。よろしく」

 

  その握手をした日から村上は積極的にランク戦を挑みに行った。

  安達が基本空いているということもあったがなにより楽しかったのだ。サイドエフェクトを使ってもまだ自分より強い、まだ強い、今日も強い。

  それが楽しくて嬉しくて村上は今日も彼に声をかけた。

 

「安達さん、今日もどうですか?」

「おぉ、村上くんか、いいよ、やろうか」

「今日こそ勝ち越しますよ」

「今日こそダメかもしれんなぁ、村上くん強いもん」

「また謙遜を……」

「全然謙遜とかじゃないんだけどなぁ」

 

  ぶつくさ言ってる安達を尻目に村上はブースに入る。そして安達のいるブースのボタンを押した。

  さて、今日はどんな工夫をしてくるのだろうか。村上は内心ワクワクしながら、目を閉じた。

  そして小さく呟いた。

 

「トリガー、起動」

 

 

 

 

 




なんだか最終回みたいになりましたがまだ続きます。


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新たなデコだしに出会った頃の日記




  師走の頃1

 

  3週間ぶりくらいにボーダーにいったら村上くんがB級になってた。お兄さんさみしい。

  しかしそこは俺も大人である。笑顔をつくり激励の言葉を送ってやった。ほめてほめて。

  その後村上くんと模擬戦したらこれまたすっげぇ強くなってんだけど。なんか超硬い盾持って孤月で斬りかかってくるんですけど。

  だがどうやら接近戦しかないようなので盾を持ってた側に回り込み続けてたら盾が剣になった。気づいたら真っ二つだった。

 

  聞いてみれば弧月より重くて切れ味は少し落ちるが盾に変化する剣なんだと。スラスターもつけられてジェット斬りもできるとか。

  なにそれロマン、俺も使いたい。

  まぁB級に上がらなきゃそれも無理なんですけどね。はいはい、頑張りますよ。とりあえず今日もランク戦してみたのだがやっぱり誰も相手してくれない。ワンチャン狙いのやつはもういらねーんですよ……。

 

 

 

  睦月の頃2

 

  最近ランク戦ブースにボーダーに入りたての新人やポイント2000以下のルーキーとばかりランク戦をしてポイントを稼ぐ「新人狩り」と呼ばれるやつがいるらしい。しかも一戦終わった後に確実にもう一戦しようとしてくるとか。

 

  えっなにそれこわい。

 

 

  睦月の頃3

 

  ブースにいたデコだし少年に「お前が新人狩りか」と言われた。

 

  違うよ。怖いよね、君も気を付けるんだよと言っておいた。

 

 

  睦月の頃4

 

  昨日いた少年にいきなり「なぜ嘘をついた」と絡まれた。

  なんの話だ? あれか、子ども特有の思考の飛躍か。とりあえず目線を合わせて「なんの話かな?」と言ってみたところ少年は何かが気に食わなかったらしく「まだとぼけるのか」とか言いながらトリガーを取り出した。

  そして鋭く俺を睨み付けて「5本勝負だ。それでお前が【新人狩り】かどうか分かる」と言ってきたから違うので断ると言っておいた。

 

 

  睦月の頃5

 

  今日も少年に勝負を挑まれた。妹の迎えに来ただけだからと断っておいた。

 

  睦月の頃6

 

  今日も少年に勝負を挑まれた。妹の買い物について行くからと断っておいた。

 

  睦月の頃7

 

  今日も少年に勝負を挑まれた。ねぇしつこくない?なんでそんなに俺と勝負したいの? さてはあれか、君もワンチャン狙いか。

  正直ポイント貰えないし今日疲れたんだよなぁ。そう思っていたらいつからいたのか視界の端の妹とその友達の子がいた。ふと目があったら頑張って♪と両手でガッツポーズをしてきた。なんだあれかわいい。

  うぅむ、しゃーねぇ。妹のかわいすぎる姿に免じて勝負してやろう。そう言いながら俺は少年の頭をポンポンと叩きながらブースに入るのだった。少年はすごく嫌そうに俺の手を振り払った。照れやがって少年よ。

 

  少年は転送された瞬間からすーっと透明になった。なんだ、召されたのか?とパニックになってたところ俺の首にスコーピオンが突き刺さった。もうパニック。なに、C級じゃねぇのかよ?なんでそんなチートみたいなトリガー持ってんだよ。くっそ、ずりぃ。

  とりあえず透明になった瞬間バイパーをばらまく。しかしあっさりとかわされスコーピオンが突きささった。

  なんつー早さだよ。デコ助より早ぇんじゃねぇかこれ。

  その後も何度かチャレンジするがまったく当たらん。俺はマイラブリーシスターが見てる前で負けるわけにはいかんのだ。

  とりあえず冷静になってバイパーを超低速で散らしてみたり弾幕でシールドもどきを作ったり背後から撃ち込んだりと必死の防戦で粘る。その時の粘りといったらもう納豆越えてトリモチみたいになってた。まぁその粘りあってこそ引き分けに持ち込めたんだがな。

  まさか少年も自分の身体をブラインドにしてそのまま撃ち抜くとは思ってなかったみたいだね。

 

  まぁ結局その勝負が一番よかったかな。集中力が切れたのと少年も本気でかかってきてたし。シールド細かく分割して身体に纏うんだぜ? ズルすぎないかそれ。割っても割ってもすぐ再生するしよ。重戦車かお前は。

 

  しかし強いなぁ。まだ小学生くらいにしか見えないのに。そう言ったら少年は思いっきり頭をぶん殴ってきた。俺トリオン体じゃないからちょっとは手加減してくれないかなぁ。

  あぁ、愛しのシスター、看病しておくれ。寄ってきた妹にすり寄ると無言でぺいっと振り払われてしまった。優しくしてよぉ。お兄ちゃん今結構傷ついてるからぁ。小学生にボコられるのけっこうキツいからぁ。

  ん? なんでそんなに苦笑いして俺から離れるの?後ろ? なんだ、ちょっと怖い顔した少年しかいないじゃないか。

  これはあれだよ、勝って嬉しいけどクールを装いたい中2病の開始症状みたいなもんだよ。

  若いっていいなぁ、少年。と後ろを振り向こうとした瞬間、へたりこんでいる俺の頭はがっとつかまれギリギリと後ろに回された。。いやいや、死んじゃうから。俺の首180°回らないから。

  慌てて後ろを向くとそこには能面みたいな顔をした少年が。でも子どもだから怖くはない。

  すっと手を差しのべてきた。お、握手か。出来た子だな感心感心。と手を握ると少年は俺の手を握り潰さんとばかりに握ってきた。思わず変な声でちゃったじゃないか。

  お、おい、少年、手が取れそうだから離してくれないかな。

  顔をうかがうと少年は能面のような顔をピクリとも変えず衝撃の言葉を放った。

 

「風間蒼也。20歳だ。よろしくな。後輩(・・)

 

  後輩という部分をやたら強調して風間くんの言葉を俺は受け入れられず思わず「うっそだぁ」といってしまった。記憶がとんだ。

  どうみても小学生じゃんとは言わなかったんだから許してくれたっていいじゃんな。

 

 

 

  睦月の頃8

 

  この間あったことをまんまデコ助に話したらすっごい勢いで罵倒された。そんなに怒らなくていいじゃんな。だって知らなかったんだもの。

  そう言ったらデコ助は余計にため息をついた。放っておけば「あんたバカァ?」とか言い出しそうな雰囲気だ。俺はアスカ派じゃないのでチェンジで。

 

  件の風間くんだがどうやらホントに20歳らしい。絶対みんな騙されてるわ。まぁ俺がビックリしたのはそこじゃない。風間くんはどうやら現A級4位風間隊の隊長だというのだ。ちなみにA級というのはB級に上のランクでボーダーに10%くらいしかいないとかなんとか。詳しくは忘れた。とにかくすごく強いのだ。なるほど、あの強さはそういうことか。なんかチートトリガー持ってたしな。

 

  俺が一人で納得しているとデコ助は深くため息をついて「私たちの努力が……」とかなんとか言ってた。

  どうしたのか聞いたら「もう知りません。一生C級のままでいればいいです」と何気に酷いことを言われた。

  なんか怒らせるようなことしたっけな、最近怒らせたのは風間くんだけなはずだが……。

 

  俺がうんうんと唸っているといつの間にか風間くんがおなじテーブルに座ってパックの牛乳をちゅうちゅうしていた。かわいい。

  今日も元気そうだね。風間くん。と言ったらソッコー「さんだ」と言われた。サンダー? あぁ、サンダー受けてちっちゃくなってんの?

  そう言おうとしたがやめた。これを言ったら怒られるかなぁと思ったのが2割。残りはデコ助が風間くんに話しかけたからだ。デコ助は話しながら百面相している。

  不安そうに聞いたり、年相応に笑って喜んだり。こいつ笑うとちゃんとかわいいんだよな。いっつも澄まし顔だからあんまり見れんが。子どもはもっと笑うべきなんだよ。

  ぼんやりその光景を眺めているとデコ助がいい笑顔でこっちを向いた。お、おぉう、びっくりしたぁ。どうしたんだよ急に。

 

「ついにB級昇格ですって! やりましたね!」

 

  …………は?

 

  デコ助のテンションに全く追い付けずにいると風間くんがフォローしてくれた。

  どうやら色んなC級隊員から苦情があったそうだ。

  苦情……ちょっと心当たりがいっぱいあって分かんないなぁ。

 

  まぁいいや、要はC級という場にそぐわないほど強いのでさっさと上げてくれということだ。

  そんな事で簡単に上げていいのかと思ったが実際に俺みたいな目にあったやつが過去何件かあったらしい。ボーダーとしても優秀な隊員が腐っているのはもったいない。C級からはいなくなってくれてありがたいでwinwinらしい。

  そういう場合にこの間みたいに正隊員が直接戦って審査して上げるかどうかを会議にかけるんだと。まぁA級が来たのは今回が初めてだったらしいが。

  つーかそんなんだったらもっと早くに来てくれよな。そう言ったらお前が断っていたんだろう。と一蹴された。そりゃあ事前に知らされないで小学生にストーカーされたら怖いじゃん。あ、痛い痛い。太ももをつねらないでください。

 

  まぁとにかくB級に昇格は確実だそうだ。近々正式に呼び出しがあるらしい。

 

  ついに俺もB級か。なんか感慨深いなぁ。そんな事を考えているとデコ助は「やっとこれで対等ですね!」とか言ってはしゃいでた。なんでお前が俺よりうれしそうなんだよ。

  でも確かにやっとだよな。村上くんにも報告しなきゃ。

  これで俺もこいつらのようにたくさんの武器が持てる……。ふふふ、見てろよ。今までやられてきた分を百倍にしてかえしてやるわ。

 

 

 

 

 

 

  SIDE風間蒼也

 

  安達とじゃれあいながら年相応の笑顔を見せる木虎を見ながら風間蒼也は思い出す。

  実のところ、安達がこうして昇格したのは特例中の特例でボーダー始まって以来のことである。

 

  風間は本部長室に呼び出された。風間隊は城戸司令の直属の部下である。たまにこうして直接任務を受けることがある。

  今回の任務はというと。

 

「安達圭一との模擬戦……?」

 

「あぁ、彼はC級内で孤立してしまっているらしくてな。聞けば非常に高い実力を持っているらしい。そんな人間をC級で腐らせておくには惜しい」

 

「……自分が戦ってB級に値するかどうか審査してこいということですか?」

 

「そういうことだ」

 

  確かに安達圭一という名前は聞いたことがある。今期の新人で有望な一人だったはずだ。しかし、そこまでするほどの才能なのだろうか。

 

「こんな特例措置までとって昇格させるほど強いんですか?」

 

「強いのだろう。それにこれを見ろ」

 

  言いながら忍田は2枚の紙を渡してきた。それは嘆願書であった。今現在彼がおかれている状況。そして客観的な評価や戦績。それらを鑑みてB級への昇格を勧める嘆願書だった。出し主の名前は【木虎藍】に【村上鋼】

  この二人に、しかもB級のトリガーを持った相手にC級トリガーだけでこの戦績は驚くべきことである。軽くB級に中位クラスはあるだろう。

  それに、こんな嘆願書などを作ってくれるこの友人たちが彼の人格を保証している。

  きっと推薦しても大丈夫なはずだ。

  と、まぁそんな風に思った自分を今は殴りたい気持ちでいっぱいだが。

 

  確かに戦闘センスというかトリガーの使う発想には非凡なものがある。しかし風間への敬意が一切ないのが問題である。ボーダーの中でこうも自分をなめているのは諏訪と安達くらいである。あまりに子ども扱いするものだからスコーピオンだけで模擬戦をするつもりがフル装備で思いっきり戦ってしまった。反省はしていない。

  まぁそれでも風間が油断していたとはいえ引き分けまで持ち込むのだから将来有望だろう。

 

「そういや風間くんはこれから暇?」

 

「そうだな、あと【さん】な」

 

「風間くんはこれから暇さん?」

 

「そこにつけるバカがいるか」

 

「まぁいいじゃないか。それよりどう?暇?」

 

「一応暇だな」

 

「じゃあ夜ご飯食べに行こうよ。俺のB級昇格祝いに

 さ」

 

  俺が上がれたのも風間くんのおかげだしさ。と屈託なく笑う。こういうところに木虎は心を許したのかもしれない。このフレンドリーさも長所とも言えないこともないのかもしれない。

  そんなことを思いながら風間は頷いたのだった。

 

 

 




ラーメン屋にて

「すいませーん、チャーシュー麺とお子様ラーメン。あと小皿もくださーい。ちょっと待った。箸は危ないから、好きなの頼んでいいから」

「チャーシュー麺ください、トッピング全部のせで」

「人の奢りをいいことに……」

「あ、あと餃子も二皿下さい」

「ごめんって、謝るから許してください」

「…………やっぱりたまごもう1個追加でお願いします」

「ごめんってばぁぁぁ!!!」





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相棒と出会った頃の日記




  睦月の頃1

 

  やっとB級になったのでとりあえずトリガーを弄りたい。俺もデコ助みたいに盾張って安全確保しながら撃ったり村上くんみたいにロマンブレード使ってみたい。そういや風間くんのあのスケベトリガーはA級特権なのだろうか。

 

  正直そんなことすらもよく知らないので見たことのあるエンジニアを捕まえてセットしてもらった。

  年は近くて、俺の1個上。やや小太りで愛らしい見た目をしている。寺島雷蔵さんである。

  使いたいトリガーは? と聞かれたのでロマンブレードを真っ先に出したらバッと手を握られあの魅力が分かるのか。と言われた。

  どうした、急に目がガチになったぞ。家にたまにくる宗教勧誘の人みたいな目になってる。

  とりあえずすすすっと手を抜いて、あれいいですよね。変形するし硬いし。しかもジェットとかロマン過ぎる。みたいなことを言ったら俺の肩をガシッと掴んで「セットは俺に任せろ」サムズアップ。

  なんでこんなにノリノリなんだ。この人。

  太ってる雷蔵さんがウキウキしながら歩くと顎の辺りがポヨポヨしてゆるキャラみたいになってる。

 

  とりあえず開発室の雷蔵さんのデスクでトリガーの説明を受ける。思ってたより色々あるんだなぁ。

 

「レイガストは? メイン?」

 

  いや、サブで。俺も一応射手扱いなんで。みたいなやり取りをちょいちょい挟みながらも無事トリガーはセットしてもらう。

 

  レイガストへの執着がすげぇよ、なんなんだこの人。とか思ってたら実はレイガストの開発者だったらしい。どうにも不人気な武器なので使ってくれる人がいたら嬉しい。そしてもっと広まってほしいのだと。

 

  ……そんなこと言われたら使わねぇ訳にはいかないじゃないか。

  雷蔵さん。レイガストをメインでセットしてくれ。俺が広めてやるよ。こいつの魅力ってやつをな!

 

  雷蔵さんは無言でトリガーを弄ってセットを変える。そして静かに立ち上がり俺の手にトリガーを握らすと

 

「任せたぜ。相棒」

 

  とキメ声で言った。

 

  よーっし。そうと決まれば今夜は祝杯だ! 焼き肉いこうぜ!

 

「応!」

 

  という熱い友情を結んだ俺たちはその後焼肉屋で有り金以上に肉を食べてしまい冷や汗をかいていたところたまたま店にいた風間くんに土下座して金を借りるという一幕があったのだがまぁそれはいいか。

 

  ただあんなに冷たい目は見たことがなかったということはここに記しておく。

 

 

 

  睦月の頃2

 

 

  すまん、相棒、レイガストに未来ないかもしらん。

  デコ助にランク戦挑まれたからC級の時でさえ勝ってたんだしB級に上がったら楽勝ですわ。とか煽ってたらボコボコにされた。そりゃあもうぐうの音もでないくらい。30:0だぞ。30:0。

 

  デコ助に「散々バカにしてた相手に負けるってどういう気持ちなんですか? ねぇ今どんな気持ち?」と煽り返された。あんなにイキイキとしたあいつの顔見たの初めてだちくしょう。

 

  敗因はまぁ分かっている。レイガストがすっげぇ重い。今回初めてだったから慣れてないってのもあったがそれを差し引いても酷いもんだった。デコ助の早さに全くついていけなかった。周りからごりごり削られて焦って斬りかかったらカウンター食らって終わり。

  もはや途中からアタッカー運用は諦めて村上くん的に盾にしてたからな。重くて動きづらいことは変わらんかったが。

  スラスター使いながら立体起動装置みたいにしてたけど行く方向がバレやすいんだよなぁ。デコ助にも読まれてたし。

  あいつの「バレバレですよ」って言ったときのドヤ顔を俺は忘れない。絶対許さんぞ。

 

  最終的にはもうクナイみたいになってたからな。スラスターオンでレイガストをぶん投げると結構な早さで飛んでいくのだ。甘えたシールドくらい叩き割るが単純な動きのため避けられやすい。

  それにデコ助はガンナーだ。距離を取ればとるほどあれは避けやすくなってしまう。

 

  とりあえずこんなことを相棒に報告するわけにもいかないので風間くんのところにアドバイスを求めに行ってみた。

 

「お前は機動力を生かしたシューターじゃなかったのか。強みを殺してどうする」とマジレスされてしまった。そんなもん男の約束の前にはちっぽけなもんだぜ。風間くんの身長くらいな。痛い痛い。アイアンクローしないで。

 

  いや、本気で悩んでるんだよ。相棒の手前使わない訳にもいかないし。

 

「さぁな、お前の強みはもう教えた、後は自分で考えろ」

 

  クールぶりやがって。これだから厨二は。

  しかし俺の強みねぇ。あ、なるほど。その手があったか。

 

 

  睦月の頃3

 

 

  デコ助に16:14で勝った。やったぞ相棒! くぅー、デコ助は強敵でしたねぇ。

 

  とりあえず「今まで1度も負け越したことない奴に負け越すってどんな気持ち? ねぇねぇどんな気持ち?」とおもくそ煽ってきた。大人げない? はっ、好きなだけ言うといい。やられたらやり返す……倍返しだ!

  こんな感じで勝ち誇っているとデコ助は肩をプルプルと震わせながら次は絶対勝ちますから!と今まで聞いたことないような声をビンタと一緒にプレゼントしてくれた。不条理。

  まぁ俺も煽りすぎたところもある。次からはもう少し優しくしてやろうと思わないでもない。反省も後悔もしていないことは内緒。

 

  ちなみにどうやって勝ったかというと。スラスターの出力を最大限まで上げて片手にブレードを展開していない状態のレイガストを握り引っ張られるようにして動き、機動力を上げて、バイパーやら、メテオラで吹き飛ばしたりした。

  俺はトリオンは結構あるらしいのでさほど残量も気にせず使えた。

 

  いくらデコ助が早いとはいえ風間くんみたいにスケベトリガー使って隠れて移動するわけでもないし捉えるのはさほど難しくはなかった。ホントは結構ギリギリでヒヤヒヤしてたのは内緒。

 

  その後相棒に勝利の報告をしたら軽く小躍りしそうな勢いで喜んでた。なんならしてた。あんなに軽快に動けたのかよ。

  だがあんまり剣として使ってなくてほぼ移動手段としてしか使っていないことは言えなかった。だって……こんなに嬉しそうなんだもの。レイガスト使用者が俺を含めて3人だけしかいないなんて悲しすぎる。

  結構優秀な性能だと思うんだけどなんで流行らないんだろうなぁ。

 

 




レイガストにはまだまだ遊び甲斐があると思う。個人的にはかなり気に入ってる武器の一つですね。


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