モモンガさんが異世界で神となって冒険するそうです。 (フューリアス)
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第1話 変化と転移は突然に

2018/01/05 誤字、脱字修正しました。
粘土a様、誤字報告ありがとうございます。


ユグドラシル最終日。

 

かつて1500人の襲撃をのけたギルド「アインズ・ウール・ゴウン」、その拠点、ナザリック地下大墳墓の最下層、王座の間にて、ギルド長のオーバーロード‥‥モモンガはギルド武器を携え王座に座り、ありし日のナザリックの振り返っていた。

 

「そうだ‥‥楽しかった‥‥ん、そういえば、何か忘れていたものがあったような‥‥。」

 

楽しかった記憶を振り返っているときに、ふっと何か引っかかるものを感じた。

しばらくして思い出したようにコンソールからアイテム欄を開き、記憶で引っかかったものを探し見つける。

 

「あ、有ったこれだ。」

 

アイテム欄から「聖遺物」と表示されたアイテムを取り出す。

これを手にれたのは、人間種のプレイヤーがあまり来ないエリアでギルドの維持費を集める最中だった。

そのエリアでは遭遇したことがないエネミーと遭遇し戦闘になったが、そのエリアに出現エネミーにしてはレベルが高く、悪戦苦闘の末に倒した際にドロップした物だ。

 

後で調べて分かったことだが、かなりの低確率でポップするレアエネミーで遭遇情報も少なく、討伐した情報もほぼなかった。

 

「手に入れた時、聖遺物ってアイテム名が妙に気になったから鑑定魔法をかけたんだったか‥‥《オール・アプレーザル・マジックアイテム/道具上位鑑定》」

 

記録を辿るように鑑定魔法を使用し、魔法の効果によってコンソールにアイテムの内容が詳しく表示されていく。

 

アイテム名:聖遺物

レアリティ:聖遺物級

効果:装備することによって、聖属性の与ダメージを上昇し、各属性攻撃の被ダメージを軽減する。

内容:神秘が込められていたが、力の大半を失い輝きを失ってしまった結晶体。

 

『《オール・アプレーザル・マジックアイテム/道具上位鑑定》が使用されてことにより更なる情報が開示されました。』

 

かつて、この結晶体は、神の依代として使用され、力を発揮していたが、今では力を使い果たし、能力も弱体化してしまった。

もし力を注ぎ溜めることが出来れば、かつての輝きを取り戻し所有者を次の階位へと引き上げるだろう。

 

(この一文ある‥‥「力を注ぎ溜める」はいろいろ試したけど、結局どれも駄目だったよな、あと試してないのは経験値くらいか‥‥)

「強欲と無欲ならこれに経験値を注ぐことが出来るよな‥‥」

 

ワールドアイテムである「強欲と無欲」は、ギルドの所有物だ、それを一個人の意思で使用することは、モモンガにとってためらうことだ。

しばし考え、悩んでいたが、刻々と終了時間が近づいてる状況、そして、コレクターとして、このアイテムの真の姿を見てみたいという欲求もありモモンガは決意した。

 

「もう最後なんですから、私の我が儘で使用してもいいですよね。」

 

そう呟きつつ、時間を確認する。

 

23:45:30

 

「もう時間がない! 最後ぐらいは王座で終わりたいから早くとってこないと。」

 

「リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン」を使用し、急いで宝物庫に向かい「強欲と無欲」を取り出し、王座に戻ってきた。

道中に扉の合言葉を忘れてしまい慌てたり、自分が作成したNPCを見て、黒歴史を思い出して悶絶しそうになったりといろいろとあったが、そこは割愛。

 

23:53:59

 

「さて、残り時間も少ないし最後のチャンスだ、上手くいってくれよ。」

 

「強欲と無欲」を装備して、「聖遺物」に向けて「無欲」の効果を使用すると経験値を吸い始め「聖遺物」が少しずつ光り輝き始める。

 

「おお! 成功した!」

 

内心でガッツポーズしたのも束の間、ストックされている経験値がみるみる減っていくが条件を満たしていないのか一向に変化が起きる兆しもない。

 

「あれ‥‥これ、大丈夫か? 足りないとかないよな?」

 

膨大にあったはずの経験値ストックが底をつきそうになり、焦りが生まれてきた瞬間、「聖遺物」の発する光が神々しい物へと変わり「無欲」による供給も止まった。

モモンガはさっそく鑑定魔法を「聖遺物」だったものにかける、するとコンソールに情報が表示される。

 

アイテム名:女神の神核

レアリティ:世界級

効果:使用者に対してレベル関係なく、種族:神霊Lv15と職業「○○(分霊)Lv15」を追加します。

※種族によって職業は異なります。

内容:かつての輝きを取り戻し、女神の力を憑依させることが出来る結晶体。

女神の力は、あらゆる強敵を払いのけ、配下についたものに加護と祝福をもたらすだろう。

 

「おお! 世界級ってことはワールドアイテムだったのか! なんだ神霊って隠し種族かよ! 実際の職業は使用してみないとわからないのか! こんなの普通気づくか! くそ運営め!」

 

自分の目論見が成功し、その結果がワールドアイテムになったのだ、しかも最後の最後で、未知の種族や職業の情報を得てモモンガのテンションが一気に上がった、サービスの終了時間がすでにギリギリになっていることも忘れてしまう程に。

 

23:59:58

 

23:59:59

 

終いには、上がったテンションの勢いもあり、意図せず「女神の神核」を使用してしまう、そして結晶体から強烈な光を放たれてメッセージが流れた。

 

『女神の神核が使用されました、設定とアバターを適用します。』

 

00:00:00

 

こうして、モモンガは自身の変化を確認できずに異世界へと旅たっていった。

 

 

 

 




ここまで読んでいただきありがとうございます。

初めまして、フューリアスと申します。

初めての作品になるため、つたない部分や文章がやや短いなどありますが、完結できるように頑張っていきたいと思っております。


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第2話 状況把握

お早うございます、こんにちは、こんばんは。
初めての方は初めまして、フューリアスと申します。

ご覧になっていただきありがとうございます。

まさかお気に入り登録していただける方がいるとは思っておらず、見たときに心が温かくなりました。
お気に入り登録していただいた方に感謝を。

では本編の方をどうぞ。

2018/01/06 誤字脱字修正しました。
にょん様、粘土a様、yaku様、ご報告ありがとうございます。

2018/01/08 誤字修正しました。
九尾様、ご報告ありがとうございます。

2018/01/19 脱字修正しました。
いやああああ様、ご報告ありがとうございます。


女神の神核が発した強烈の光が収まり、眩んだ目が慣れて、ふぅーっと息を吐きだす。

 

「もう‥‥いったいなんだよ、いきなり光り出すなんて‥‥えっ」

 

周りを確認するために見渡してみたが、そこは先ほど居た玉座の間ではなく、鬱蒼と生い茂る森の中だった。

視界に納まった木々を見て、モモンガの頭の中は次々あふれ出てくる疑問でいっぱいになり、なんでこんな状況になったのか訳が分からず、激情が叫び声となって出そうなった瞬間、精神がフラットになり爆発しそうになった感情がすーっとなくなる感覚に襲われた。

 

「何が‥‥」

 

激情がなくなったことにより先ほどとは違い、落ち着いた気持ちで周りを確認することが出来た。

周りはゲームとは思えないリアルな木や草、頬をなぞる風、そして嗅いだことがない匂いが満たしており、視覚、嗅覚から得られた情報に戸惑い、困惑したがふっとギルドのメンバーの言葉を頭に思い浮かぶ。

 

(こういう時こそ、心を鎮め、視野を広く、考えに囚われることなく、回転させるでしたよね、ぷにっと萌えさん)

「まずは自分の安全を確保しないと‥‥状況の確認はそのあとでもできる」

 

安全を確保するために頭をフル回転させ、周りに情報隠蔽、探知・認識阻害、攻勢防壁などの補助魔法を発動させていく。

 

(よし、これで大丈夫だろう‥‥まずは、運営と連絡を取ってみるか。)

 

GMコールをするためにコンソールを開こうとして、モモンガはあることに気づいた。

 

(あれ‥‥いつも表示されるアイコンとかコンソールとか表示されない? これじゃあ、ログアウトもGMコールも無理そうだな。)

(そういえば、魔法を使う時も表示されてなかった気が‥‥でも、魔法は使えるんだ、《メッセージ/伝言》ならもしかしたら同じ状況に陥った人と連絡が取れるんじゃないか?)

 

通じる人がいる可能にかけ、米神に手を当てながら思い浮かんだフレンドたちに《メッセージ/伝言》を送っていくが返事が返ってくることはなかった。

駄目だったかと思い、溜息をつきながら米神から手を離したときに、視界にさーっと長い黒髪が入ってきた。

 

(え? 何これ?)

 

手で髪の付け根を辿り、自分の頭部から生えている事がわかり、顔に手を触れて形を確かめるが、返ってきた感触は骨の硬さではなく人肌の柔らかい感触だった。

 

(アバターが変わってる! え、これってあのワールドアイテムの効果のせいか!?)

 

この時、初めてモモンガは自身がオーバーロードの骨の姿から別の物に変化していることに気づいたのだった。

 

「とりあえず、鏡を‥‥うわぁ」

 

鏡を取り出そうとし、無意識にアイテムボックスに手を入れて取り出す動作を想像して実行に移したのだが、目の前に黒い穴が現れて、その穴に手が吸い込まれてる光景に思わず声をあげてしまう。

とりあえず、目的である鏡を取り出さないとと思い、黒い穴を漁っていると触れたアイテムの情報が頭に流れてくる。

いちいち確認するために取り出す手間が掛からないことに安堵し、全身が映る姿見鏡を発見して取り出して自分の前に置く。

そこには、オーバーロード時に装備していた神器級のローブを纏った雪のような白い肌で黒髪赤目の女性が映し出されたのだったが、胸から臍までローブの前が開いたために(大事なところ以外)丸見えになっていた。

 

「!?!?!?! あ‥‥また」

 

目に入った瞬間に女性の半裸を見てしまった罪悪感やら羞恥心やらこみ上げて、手に持っていたギルド武器を手放して急いでローブの前を締めながら声にならない悲鳴を上げようしたときに、先ほどと同じように精神が落ち着いていくのを感じる。

 

(そういえば、アンデッドの精神異常無効化があったはずだから‥‥それか? 見た目は変わったけど元々持っていた魔法、スキルはそのままなのか?)

 

魔法やスキルに意識を向けてみると脳裏に今まで習得した物が脳裏に浮かんでは流れていく、自分が取得した物は全部確認し終えたが、まだ続きが存在し、それは取得した覚えも攻略サイトなどで見たこともないものだった。

追加された種族と職業のスキルかっと思い至り、そして、自分の取得した物に欠落が見れなかったことにより、女神の神核よって追加された計Lv30分のステータスが上乗せなったことが判明した。

これにはモモンガも高揚感を抑えきれずに喜びの雄たけびを上げようとしたが再び精神が落ち着いてく。

 

(またか‥‥発動条件としては気持ちの高ぶりが最高潮に達する直前か、いや、まだ情報が少ない‥‥ここで決めつけてしまうのは時期早々だろう)

「うん、一旦保留だな。」

 

魔法やスキルについては、区切りがついたのでまた鏡と向き合い、今の姿を観察する。

切れ長い目にやや気怠げに見える顔だが、どことなく色気があり美しい顔だ。

次に手を見ようとし、装備したままだった強欲と無欲を外し自分のアイテムボックスに送り、ふっと持っていたギルド武器‥‥スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン‥‥を手に持ってないことに気づいた。

やや焦り気味であたりを見渡し、すぐ隣で浮かんでいるギルド武器に気づいて、ほっと安心してギルド武器もアイテムボックスの中に送る。

改めて手を確認するが、そこには骨の手はなく傷一つない細く美しい女性な手があり、握ったり広げたりしたと感覚が伝わってきたことにより自分の手であると自覚できた。

その手でフード部分から垂れ下がる黒髪を手に取り間近で見ると瑞々しく艶やかな髪で、角度によっては青みを帯びてるように見える、これが濡羽色かとモモンガは一人納得している。

そして、最も目が行くのはローブの上からでもわかる均等が取れた肢体だろうか、見てしまった素肌の部分を思い出してしまい、少し赤くなるの感じつつ、思考を切り替える。

 

(装備してたワールドアイテムはどこに行ったんだ?)

 

素肌の部分を思い出したときに、腹部に収めていた赤い球体のワールドアイテムがなかった。

自身に装備されている状態なのか、意識を自身の装備に向けてみると体に同化する形で件のワールドアイテムと女神の神核の存在を確認できた。

なぜ同化してしまったかが謎だったが、どこかに埋め込められる状態だったり、体内に入ってポッコリ膨らんでいる状態にならかったのは幸いだ。

もし、そんな状態になってしまったら隠すのも大変だし、要らぬ誤解を生みかねない、そうならなかったことにホッとする。

 

「しかし、かなり作りこまれているアバターだな‥‥私はこんなの作れないし、運営が作ったのか?」

「こんな作りこみができるなら、異形種の吸血種とか魚人種に力を入れろよなぁ‥‥」

 

長年ソロプレイからくる独り言と運営への愚痴を言いながら姿見を片付ける。

 

(この容姿で、この口調と服装だと違和感しかないな‥‥口調は営業で慣れた敬語、丁寧語で話せば何とかなるか? あと女性用の装備はいくつかドロップで手に入れて捨てられずに持ってた物があったはず。)

 

コレクター気質が相まって、制限のあるため自分では使うことはできない装備やアイテムなどを捨てられずに、ボックス内で溜めていたのが役に立つなど思いしなかった、しかし使えるとは言っても何も強化されてない聖遺物級や遺産級だ。

装備としてはやや不安が残るが、もし人に会った時に不審がられて警戒や襲われるよりはましだ、取り出すためにアイテムボックスに手を入れる。

 

「この光景も慣れないとなぁ‥‥ん?」

 

目的の物を取り出そうとしたときに、初めて見る神器級の女性用装備があること気づいて取り出す。

 

冥府の女神の鎧(アーマー・オブ・ヘルヘイム)?」

 

それは漆黒ドレスに金の刺繍と装飾、銀の胸当てや手甲脚甲などがセットになったものだった。

念のため《オール・アプレーザル・マジックアイテム/道具上位鑑定》を唱えて調べてみたが、特にバットステータスや呪いなどが発生するものはなく、装備名と説明からして、女神の神核を発動した際に付与されたものだろうと推測出来た。

余談だが、装備ステータスの高さから高揚して、沈静化するという一連の流れが発生したとかなんとか‥‥。

 

「これは良さそうだ、神器級なもの合ってステータス高めで安心できるな‥‥‥このワールドアイテム、椀飯振舞過ぎるだろう‥‥」

「使用してみたけど着脱できなかった‥‥という事は自分で着替えるしかないんだよな‥‥」

 

想定外のアイテムに一喜一憂し、着ることが出来るか不安になるモモンガだが、やってみないことには解らないので着替えを決行することにした。

 

(ここだと少し開け過ぎてるかな‥‥)

 

《センス・エネミー/敵感知》を使用して、敵対生物がいないか確認し、木が密集していて遮るものが多い場所に移動して着替え始める。

 

 

どれ程の時間が過ぎただろうか、移動した木の間から姿を現した、そこには先ほどのドレスような鎧を身に纏い、腰あたりまである髪をポニーテールにしたモモンガの姿があった。

 

(‥‥‥‥いろいろ凄かった‥‥これが噂に聞く黄金律か‥‥)

 

気のせいだと思うが、その白い頬が少し赤みを帯びているように見える。

 

(着るときに体が勝手に動いてくれなかったら無理だっただろうな‥‥プログラムされたモーションか設定のおかげかな?)

(でもユグドラシルだと、こんな行為をしたらすぐにBANだよな‥‥ここはユグドラシルではない?)

 

またいろんな疑問が出てきたが一旦深呼吸して、気分を切り替えて次の行動に移す。

 

「次は周りの地形の確認だ、近くに町とかがあるといいんだけど‥‥空から探した方が早いか。」

 

《フライ/飛行》を唱えて木々の間から空に向かって飛び立っていった。

 

 

 

 

 

 




ここまで読んでいただいてありがとうございます。

今回はモモンガさんが状況把握と容姿の確認となりました。
ちょっとごちゃごちゃになってしまった感が否めませんが、私ではこれ以上うまくまとめることが出来ませんでした。
申し訳ありません。

次回は、追加された種族と職業についてや装備についての設定集になります。

それではよいお年を


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設定集

明けましておめでとうございます。
今年が皆さんに良い年になりますように。

投票してくださった方ありがとうございます。
皆さんの期待を糧に頑張っていきます。

valeth2様、誤字報告ありがとうございます。
何度も読み直したんですが、気づいておりませんでした。
次から誤字脱字を無くすよう心がけます。

この場を借りて、改めて感謝申し上げます。

今回は、捏造設定もろもろの紹介になります。




・現在のモモンガさんの状態

 

【種族】

女神の神核の効果により、アンデッドから神霊に変更。

 

【職業】

女神の神核の使用前の種族により、冥府の女神が追加。

 

【カルマ値】

種族が神霊に変更されたことにより、極悪から中立に変更。

※魔法、スキルの使用する際に参照されるカルマ値は、変更前のものが適用されます。

 

【容姿(アバター)】

女神の神核の効果により、オーバーロードのアバターから冥府の女神のアバターが適用。

大体18~20歳前後の女性。

濡羽色の髪と切れ長い目に赤い瞳、肌は雪のように白い。

 

【魔法・スキル】

取得済みの物はそのまま使用可能。

種族と職業が追加されたため、新たに魔法とスキルを取得。

 

・オリジナルワールドアイテム

 

アイテム名:女神の神核

レアリティ:世界級

効果:使用者に対してレベル関係なく、種族:神霊Lv15と職業「○○(分霊)Lv15」を追加します。

※種族によって職業は異なります。

 

内容:かつての輝きを取り戻し、女神の力を憑依させることが出来る結晶体。

女神の力は、あらゆる強敵を払いのけ、配下についたものに加護と祝福をもたらすだろう。

 

備考:消費アイテム。

 

【使用することによって獲得できる職業について】

北欧神話の神が題材となっており、このワールドアイテムは神話登場する女神を冠する職業になることが出来る。

種族によってなれるものが決まっており、不死族だと冥界の女神(ヘル)、エルフだと黄金のリンゴの管理人(イズン)、ドワーフだと大地の女神(ヨルズ)といった感じとなっている。

 

 

・種族と職業

 

【種族について】

ユグドラシルに存在する神の分霊を宿すもの。

神の分霊を宿すことにより、その身を昇華し神に近し存在、神霊となる。

昇華した際に、力の強い方に引っ張られるため、種族にかかわらず外見は神の姿に近いものになる。

分霊自体には意思はなく宿したとしても意識を乗っ取られることはないが、観点が中立になる他に、宿した神によって多少価値観に影響が出る場合がある。

 

【職業について】

冥界の女神

ユグドラシルの冥界、ヘルヘイムを統べる女神。

死と復活に関連した逸話から、即死系と回復、復活系に優れた魔法、スキル構成となっており、また悪人の魂を冥界に送り支配していたことから悪人(カルマ値が極悪)に対して特攻魔法、スキルを持つ。

制作陣の感性から、生者は最大限の敬意と羨望を持つ優しいが、悪人は慈悲も憐れみを持たず裁く神様となった。

 

・魔法・スキル

現在使用できるオリジナル魔法・スキル

※物語が進む連れて増えてく予定です。

 

【魔法】

 

サモン・ガルム(館の番犬召喚)

Lv35程度のガルムを召喚する。

館の番犬であるために、索敵範囲、気配察知能力に優れている。

 

スリープ・オブ・デス(死の眠り)

指向性を持つ煙を放ち、Lv20以下の煙を吸ったもの眠らせ死に導く。

 

マリオネット・ヴィラン(操り人形の悪人)

対象者がカルマ値がマイナスの場合、確率で肉体のコントロールを奪い操ることが出来る。

カルマ値がマイナス値に多いほど成功確率が高くなるが、対象者のレベルが高くなるにつれて成功率は落ちる。

 

【スキル】

 

神の加護・祝福

常時発動型。

所有するNPC、眷属に対して加護・祝福のバフを与える。

※冥界の女神の場合、死から遠ざける加護となるため、デバフ耐性強化、回復力向上、即死完全耐性を得る。

 

支配者からの指令

任意発動型。

Lv40以下の存在は、カルマ値が低いほど発動者の言葉に逆らうことが出来ない。

 

生者への帰路

対象者がどのような状態だろうと完全な状態で蘇生する。

使用条件があり限度1日1回まで。

 




ここまでご覧になっていただきありがとうございます。

上手く文章としてまとまっているか不安ですが、設定としてはこのような感じになります。

ガバガバ設定で申し訳ございません。

本編を勧めていくにつれて、コツコツ増やしていくつもりですが、いくつかご都合主義やチートが混じっていくかもしれないです。
なるべくものすごく強い物は設定しないように心がけていきます。


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第3話 夜空の宝石箱と村の発見

この体がハイスペックだったおかげで、迫りくる枝に当たることなく木々の間を飛ぶことが出来たことにモモンガは感謝した。

木々もそれほど高くになかったので、あっという間に木々の間を抜け、飛び出た先で目に入ったものは、雲の一つない夜空と輝く星々、優しく光を放つ月だった。

リアルでは環境汚染が進み、星の光など見えないほど空気は澱み、夜空すら見ることが出来ないのだ、ゆえにモモンガは、初めて見るこの美しい光景に、目を奪われて、胸が高鳴るもの必然だった。

 

「ああ‥‥月明りと星明りだけなのにこんなにも明るいなんて、まるで、宝石を夜空に散りばめてようだ。」

(この光景、ブルー・プラネットさんにも見せてあげたかったな。)

 

モモンガは、夜空で手を広げ、まるで踊るように空を飛び回った、その顔は目を輝かせ、笑みを浮かべる乙女の表情だった。

しばらく上機嫌で、星の海を飛び回り、感情が最高潮に達しようとした時に沈静化され落ち着いたが、さっき取っていた行動を思い出して顔をかーっと赤くなっていくのが解り、両手で顔を覆う。

 

(あぁぁー! 人目がなかったよかったけど、人目があったら私、痛い子じゃん! テンションが上がってもあるけど恥ずかしすぎる!)

 

顔を両手で覆いながらその場で縮み込み、沈静化されるまで恥ずかしがっていた。

 

沈静化でふぅーっと息を吐きながら、また星空を眺めながらブルー・プラネットから聞いたことや星座の話などを思い出していた。

星空を見上げながら、教えてもらった星座を探そうしたが、空に輝く星は多く、また輝きも強く判別することはできなかった。

 

「う~ん‥‥駄目だ‥‥輝いてる星が多すぎて、どれを線で繋げればいいかわからない。」

(解れば、判断材料の一つなると思ったんだけどな‥‥)

(あれ? そういえば、なんで空に上がったんだっけ?)

 

星座が解らず落胆していると、空に上がった目的をすっかり忘れていたことを気づいた。

目的を思い出そうと顎に手を当て、う~ん‥‥っと唸りながら考え込み、しばらくしてやっと思い出した。

 

「ああ、そうだ。 周りの地形を確認しようと思ったんだ。」

 

本来の目的を思い出したモモンガは、視線を頭上の星空から地上に広がる森へと移す。

 

(ここら辺一帯は森ばかりか‥‥近くに村とかあると良かったんだけどな。)

(《ホーク・アイ/鷹の目》を使って、もっと遠くの方を見てみるか)

 

《ホーク・アイ/鷹の目》を唱え、森の遠方に視線を向けて地形を確認し始める。

 

(うーん‥‥遠くの方も森が多いな‥‥その先には平原が見えるな)

 

森の先に平原が見えたので、そのあたりをよく見てみると、城壁のようなものに囲まれた都市のようなものを確認することが出来た。

 

(お、壁に囲まれた町が見えるな‥‥だけど、ここからだと遠いな‥‥もう少し近くに街はないかな?)

 

見えた城壁に囲また都市を中心に、他の街がないか探しながら視線を森の方まで戻していくと、森の入り口付近に村らしきものを見つけることが出来た。

 

(おお、あんなところに村があったのか! あそこならさっきの場所より近いし、壁とかも無いからすんなり入れそうだな。)

 

やっと近くにある村を発見することが出来て喜んでいる最中に、横から光が差し込んできた。

何事かと思い、手をかざして、目を守りながら光が差し込んできた方を見ると、地平線から太陽が昇り始めているのが見えた。

 

(もう朝なのか‥‥このまま《フライ/飛行》で飛び続けると目立つかもしれないな。)

(村の方も友好的とは限らないし、近くで降りて徒歩で向かって行こう。)

 

そう決めると、《ホーク・アイ/鷹の目》を解除し、村に向かって飛んでいきながら今後の行動指針について考える。

 

(まずは口調の方を直して慣れておかないとな、村に向かう最中に練習しておかないと‥‥お、ちょうど村に続いてる小道があるな、あの近くで降りて道なりに進もう。)

 

日が昇り始めて周りが明るくなってきたおかげで、小道を発見することが出来たモモンガは、その近くに降りて道なりに進み始める。

道中の空いた時間を利用して口調の練習をしながら、上空から見た距離から、このまま歩いて行けば、村に着く頃には日も完全に登って、人が動き出す時間になるだろうと考えてた。

しばらく練習をして、これなら問題がないだろうと自信もついてたので、次は村でどうやって情報を仕入れようかと考えていた時、ふっとあることに気づいた。

 

「そういえば、私の声はどうなっているんでしょう? 自分自身の声になるとあんまり違和感を感じませんね‥‥確かめてみましょうか。」

 

もし、これで鈴木悟の声だったら大惨事になりかねない、絶対に引かれるし、聞ける情報も聞けなくなってしまうかもしれない。

一旦、小道より反れて森の中に入り、録音魔法で自身の声を録音し、再生魔法にて録音した声を確認する。

その声は、鈴木悟の声ではなく、御淑やかな女性のイメージが浮かぶ澄んだ声だった。

容姿と合う声だったのと、大惨事になる事態を回避できたことにモモンガはほっとした。

 

(よかった‥‥これで本来の自分の声だったら、無口キャラで過ごさないといけなかったし、さっきの練習も水の泡になってたところだったな‥‥)

 

問題が一つ解決したので、再び小道に戻り、リアルでは見ることができなかった自然を堪能しながら村へと向かって行った。

 

あれからしばらく、道なりに進んでいき、そろそろ村に辿りつくだろうと思った矢先、村のある方向から煙が上がるのが見えた。

 

(え、煙? 火事でもあったのか?)

 

モモンガが煙に目を取られ立ち止まっていると、前の方からこちらに向かって走ってくる複数の人の気配を感じた。

ひとまず様子を見るために、小道の横にある木々の間の茂みに身を隠すのだった。

 

 




ここまでご覧になっていただきありがとうございます。

次回は、カルネ村回になります。
帝国軍に変装したスレイン法国の兵に対して、一つ捏造をしようと思っています。
詳しくは、次回のあとがきで説明させていただきます。

次回もよろしくお願いします。

2017/01/08 誤字修正しました。
サンダル様、報告ありがとうございます。


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第4話 村の悲劇とモモンガの決意

おはようございます、こんにちは、こんばんは。
フューリアスです。

今回は、他のよりかなり長いものになってしまいました。
読みにくいようなら前編後編に分けようと思います。

2018/01/14 誤字、脱字修正しました。
粘土a様、圧縮キエフ君(魔王乃小槌)様、瑪瑙@趣味→誤字報告様、ザウラー様、21の目様、誤字報告と指摘ありがとうございます!

では、本編の方をどうぞ。


モモンガが木々の間に生い茂る茂みの中から様子を伺っていると、目指している村の方から手を繋ぎながら走る少女らしき影が2人と、その2人の後ろから追うように走る鎧を着た騎士のような影が見えた。

 

(なんだ追われてるのか? 追っているのは騎士か‥‥村で何かあったのか?)

 

村に罪人でも逃げ込んだのか、あるいは疫病類かと思いつく限りのシチュエーションを考えている間に、件の集団とモモンガのいる茂みとの距離が縮まっていく。

このままでは見つかるのも時間の問題だと思い、モモンガは見つかる前に、その場を離れようとしたとき、追われている2人のうち1人が躓いてその場に倒れてしまった、もう一人が助け起こしている間に騎士たちが追い付いてきた。

追い付いてきた騎士のうち1人が、手に持った剣で倒れた少女に目掛けて振り落したが、助け起こそうとした少女が倒れている方を庇う。

庇った少女は背中を剣で斬られるが、騎士の踏み込みが浅かったためか、致命傷までには至っていないようだ、しかし、あの傷ではもう逃げることはできないだろう。

 

(! 助けに入るか‥‥いや、情報も少ないし、何が起こるか解らない分‥‥リスクが高い、あの2人には悪いけど、ここから離れよう‥‥)

 

相手の強さも不明、自分より強敵の可能性もあり、ここは逃げるべきだと考え、その場を離れようした時、ふと騎士達の顔が視界に入る、騎士達はフルフェイスの兜を被っているはずなのに、悪意に満ちた笑みを浮かべているのが感じ取れた。

それは、モモンガが以前感じたことがるものだった‥‥それは、自分がユグドラシルを始めて間もない頃に、PKを仕掛けてきた人間種のプレイヤー達から向けられた悪意と同等の物だった、そして思い出したのだ、ギルドメンバーの純銀の聖騎士に自分が助けられたことを、それがどれだけ自分が救われたことを。

 

(誰かが困っていたら、助けるのが当たり前ですよね、たっちさん‥‥)

 

モモンガは思った、もしここで逃げれば、危険だからとか情報がないからと理屈を付けて、逃げ続けてしまうのではないかっと、確かに安全かもしれない、でも、安全の代わりに大切なものを失って、後悔してしまうのではないか?

やらずに後悔して苦しむなら、今できることをやってから後悔しよう、ギルドの名に恥じない行動をしようと思い、回復アイテム類を入れた無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァザック)をアイテムボックスから取り出して腰に付け、2人の少女を救うために茂みから身を出す。

 

side:エンリ・エモット

 

エンリは、母親の手伝いのために妹のネムと一緒に森の近くにある井戸に水を汲みに来ていた。

いつもと変わらない日常、慣れた手つきで井戸から汲んだ水を持ってきた桶に入れている。

ネムは、井戸の近くに咲いている花を見ながら、姉が水を汲み終えるのを待っている。

そんなネムを愛しそうに見つめながら水を入れた桶を持ち、ネムに声かける。

 

「ネムー。 水汲み終わったからお家に帰るわよ。」

「はーい、お姉ちゃん!」

 

ネムは元気よく返事して、姉のもとに急ぐ。

2人並んで家に帰ろうとした時に、村の中心部付近から人の悲鳴が響いた、それも1人ではなく複数の悲鳴だった。

 

「何事かしら‥‥ネム、お姉ちゃん、ちょっと様子見てくるからここで少しだけ待っててね?」

「うん‥‥わかった‥‥。 お姉ちゃん、早く戻ってきてね‥‥?」

「いい子ね、なるべく早く戻るからね。」

 

聞き分けがいい妹を誉め、エンリは村を目指して走り始める。

しばらく走り、家の近くまでたどり着いたとき、中央の広場に繋がる道から鎧を着た4人の騎士達が現れた。

エンリは騎士達に気付いて、いったんその場で止まり様子を見ることにした。

すると騎士達の存在に、家にいた両親も気づいたのか外に出てきて、父が騎士達に問いかける姿が見えた。

 

「これはいったい何事なんだ? あんたらは何しにここに来たんだ?」

 

騎士の1人がほくそ笑みながら、その問いに答えた。

 

「ああ、それはな‥‥お前らを殺すためだ!」

「あなた、危ない!」

 

騎士が剣を抜き父に斬りかかっていったが、母が父を庇い代わりに斬られてしまった。

その瞬間をエンリは見てしまい、悲痛の叫びをあげる。

 

「いやー! お母さん!」

 

その叫び声を聞いた騎士がエンリの存在に気付き、新しい獲物を見つけたっと騎士達の半分が目標を変え、エンリに近づいていく。

エンリの叫び声で、騎士に隙が出来たのか、父が決死の覚悟で騎士にタックルを行い、そのまま騎士にしがみ付き行動を阻む。

 

「エンリ、逃げなさい! ここは父さんが食い止める、早く逃げなさい!!」

 

さらに斬られて瀕死のはずの母が最期の力を振り絞り、娘のもとには行かせないと、もう1人の騎士の足にしがみ付く。

騎士達は、両親の決死の抵抗にあい、なかなか引き剥がすことが出来ず足止めを食らっていた。

そんな両親の思いを受け、目に涙をため、お父さん、お母さん、ごめんなさい‥‥っと呟き、全速力でその場を走り、ネムの下に向かう。

井戸の側まで来ると、ネムが座りながら待っていた。

 

「ネム! 立って! 森の方に行くわよ!」

「う、うん、わかった。」

 

姉の気迫に戸惑いながら、ネムは立ち上がり姉に手を引かれる。

森に向かって走り出そうとした直後、後ろの方から金属鎧のたてる音と足音が近づいてくる。

もう追手が来てしまった、早く逃げなければとネムの手を引きながら、森の小道を走り出す。

しかし、子供と大人の歩幅では違うため、着実に距離を縮められてしまっている、ネムの方も体力をどんどん削られて、スピードも落ち始めている。

 

追われる恐怖に怯えながらも、エンリは頭を動かし必死に逃げ切る算段を考える。

 

(どうしよう‥‥このままじゃ追い付かれちゃうわ。 ネムを抱きかかえて森の中に逃げ込むしかないかしら‥‥?)

 

相手は鎧だ、そんな重たいものを身につけているなら、森の中では身動きが取りづらいはずだ。

逃げ切るなら森の中に入るしかないと思い、ネムを抱き上げようとした時、ネムは足をもつれさせてこけてしまう。

エンリは急いでネムに駆け寄り、助け起こそうとした時、とうとう騎士に追い付かれてしまった。

騎士は手に持った剣をそのままネムに振り下ろそうとした、エンリは咄嗟にネムを抱え込み庇うと背中に鋭い痛みが走る。

 

「お、お姉ちゃん」

「手こずらせやがって!」

 

騎士は相手を蔑んだ笑みを浮かべ、もう一度、剣を振り落とそうとした。

エンリは、自分はもうだめだが、ネムだけは逃がそうと考え、一矢報いるべく反撃をしようとした、その時、停止を呼びかける声が響いた。

 

「そこの騎士様、お待ちください。」

 

side out

 

モモンガが静止を求める声をかけると、それに応じてエンリ達に剣を振り落とす寸前で止まった。

 

(危なかった‥‥もう少し出るの遅れたら怪我をしてる子は助からなかったな‥‥)

 

間に合ってほっと一息ついて、騎士に対して質問を投げかける。

 

「騎士様、なぜ少女達にこのような仕打ちを行うのでしょうか? この子たちが何か悪さでもしたのでしょうか?」

 

しかし、2人の騎士は反応は鈍かった、何故なら目の前に見たこともない美女が居るのだ、その美貌に見入ってしまい一時的に思考が停止しまった。

しばらく間が空いたが、片方の騎士が思考停止状態から復帰し、フルフェイスの兜の下で下卑た笑みを浮かべながら返答した。

 

「これは極めて重要な任務だ、教えることは出来ん‥‥そして、目撃した者は見逃す訳にはいかん、一緒に来てもらおうか。」

 

モモンガを舐め回すような視線を向けながら、剣をちらつかせながらこちらに近づいてくる。

 

(うわぁ‥‥下心が丸見えだ‥‥解りやすい悪人だな)

 

騎士の行動を見て、モモンガは対応を決め実行しようした時に、先ほどまで剣をエンリに向けていた騎士が復帰し、行動し始めた。

 

「おとなしくついてくるなら、このガキみたいなことはしないさ!」

 

脅して言うことを聞かせるために、騎士はその刃でエンリ達の命を奪おうとしたが、それは叶わなかった。

なぜならば既にモモンガは、行動に移し魔法を発動させていた。

 

「《 心臓掌握(グラスプ・ハート) 》」

 

対象となったエンリを殺そうとした騎士は、くぐもった声を上げその場に崩れ起き上がることはなかった。

モモンガに迫っていた騎士は、突然倒れた相方に驚き、駆け寄って声をかけたが、すでに絶命しているので反応が返ってくることはなかった。

いったい何が起こったのか解らず、何かしたであろうモモンガを見て怯えながら後ずさりし始める。

 

(殺したことには何も感じなかったけど‥‥柔らかい何かをつぶした感触があった、あれは心臓か?)

 

自分が最も得意とした魔法が通じた事に安堵し、使用した時の感触について考えながらも残った騎士に目を向けた。

 

「うわぁぁぁ! た、助けて!」

 

残った騎士は、この状況が理解できず、何故、どうして、何が起きたっといた思考がループしており、視線が自分に向けられた時、次は自分の番だと恐慌状態になり走って逃げだした。

しかし、そこで逃がすほどモモンガは甘くはない、雷撃魔法で痺れさせ、捕えようとしたが予想外のことが起きた。

 

「《 雷撃(ライトニング) 》」

 

雷撃(ライトニング) 》を受けた騎士は、そのまま倒れ、起き上がることなく絶命してしまった。

 

(えっ‥‥第3位階魔法で一撃? 弱すぎるだろう? もしかして、死んだふりか?)

 

念のために近づいて確認してみたが、騎士は絶命していた。

 

(考えたほどリスクは高くなかったのか‥‥あ、そうだった、あの少女達の容態を確認しないと。)

 

いろいろと思うことがあったが、気持ちを切り替えてエンリ達の下に向かい、目線を合わせながら声をかける。

 

「よく頑張りましたね、あなたの傷を見せてもらってもいいですか?」

 

怯えさせないように、なるべく笑顔で安心させようと接するモモンガだが、2人は頬を赤く染め、呆けたように固まっている。

あまりにも反応がないので、目の前で手を振りながら再度声をかける。

 

「あの‥‥? 大丈夫?」

「あ、ご、ごめんなさい、い、今見せます。」

 

慌てた様子で後ろを向き、モモンガに斬られた傷を見せる少女。

 

(これなら下級治癒薬(マイナー・ヒーリング・ポーション)でも治せるかな?)

 

傷を見せてもらったモモンガは、無限の背負い袋(インフィニティ・ハヴァザック)の中から赤い液体のポーションを取り出し、エンリに渡しながら飲むように促す。

 

「傷を見せてくれて、ありがとうございます。 これは治癒の薬です、飲めばあなたの傷を癒せます。」

 

エンリはポーションの色に戸惑いながらもそれを飲み干す、すると斬られた傷が一瞬にして塞がり、傷一つない肌が露になる。

 

「嘘‥‥」

「これで大丈夫ですね、ここに留まっては危険です。 安全な場所まで私が連れて行きましょう。」

 

エンリの様子から傷は問題なく回復出来たので、移動を考えていたモモンガであったが、そこにエンリが待ったをかけた。

 

「む、村が騎士の一団に襲われているんです! 見ず知らずの人にお願いするようなことではないことは承知ですが、どうか村を救ってください!」

「救ってください!」

 

エンリは両親はもう助からない事はわかっている、でも心のどこかでまだ生きていると信じている、この人なら助けるかもしれないと藁にも縋る思いで頭を下げて頼み込む、ネムもそんな姉を見て一緒に頼み込む。

姉妹揃って頭を下げる姿を見たモモンガは、2人を救ったのに他を見捨てるのは後味が悪いし、後悔はしたくない、ならやることは決まっていると即行動に移す。

 

「‥‥‥解りました、その願いお受けしましょう。」

「あ、ありがとうございます! ありがとうございます!」

「ありがとうございます!」

「誰かが困っていたら、助けるのが当たり前ですよ。」

 

モモンガは立ち上がり、アンデッドを召喚し戦力を増やして挑もうと魔法を唱えようとしたが、思いとどまる。

 

(2人とも怖い思いしたんだよな‥‥ここでアンデッドを召喚したらトラウマになっちゃうかな?)

 

2人のことを考えると召喚するモンスターも限られてくる、どれにするべきか考えてるとちょうどいい召喚魔法を覚えたことを思い出した。

 

「《 館の番犬召喚(サモン・ガルム) 》」

 

魔法を唱えると目の前に召喚陣が現れ、その中から現れたものは、白銀の毛並みに金色の眼、口元から胸当たりまで毛が赤く染まった巨大な狼犬だった。

 

(うん、この子なら大丈夫だな。)

「ガルム、この先にある村を襲っている騎士達から村人を守りなさい。騎士の容姿は、そこの鎧と同じ者たちです、さあ、行きなさい!」

 

ガルムは絶命している騎士を一瞥して、特徴の確認を行い、自分の主に一度頭を下げ、村に向かって走り出した。

モモンガはガルムが村に向かったのを見送った後、ガルムを見て呆けてるエンリ達に魔法をかける。

 

「《 生命拒否の繭(アンティライフ・コクーン) 》、《矢守りの(ウォール・オブ・プロテクション)障壁(・フロムアローズ)》」

「守りの魔法をかけました、この中に居ればある程度は安全です。 もしもの時はこれを使ってください。」

 

回復用の鞄の中に紛れ込んでいたゴブリン将軍の角笛を2つをエンリ達の前に投げ入れる。

 

「この角笛を吹けば、あなたたちに従うべくゴブリンたち‥‥小型のモンスターの軍勢が姿を見せるはずです。 そのモンスターに簡単な指示でもいいので出して身を守ってください。」

「私もガルムを追って村に行きます。怖いかもしれませんが、私かガルムが迎えに来るまで待っていてくださいね。」

 

そういうとモモンガは、村に向けて走り出す、村を救うために。

 

side:ロンデス・ディ・グランプ

 

ロンデスは憤りを感じていた、村の娘たちに蛮行に走る同僚の騎士達を止めることが出来なかった無力な自分に対してだ。

この任務自体、リ・エスティーゼ王国のガゼフ・ストロノーフをおびき出すのが目的なのだ。

決して、略奪や蛮行するために村を襲ったわけではないのだ、村人は被害者で貶めていいものではないのだ、なのに神の名の下なら何をしてもいいと勘違いしている者までいる。

さらに質が悪いことに、部隊を率いてる隊長のベリュースが諫めるのではなく率先して蛮行を行っているのだ。

最高神官長より直々に命令されたもの以外、ベリュースも含め部隊のものは理解していないのだろう、自分たちが捨て駒であることを。

 

「お前達は何をぐずぐずしている! この役立たず共が!」

 

ベリュースが怒鳴り散らかしている声で、ロンデスは意識を外に向ける。

何故、ベリュースが怒鳴っているかと言うと、招集を掛けたはずの騎士達が一向に全員集まらないからだ。

招集した理由もベリュースが誤って村を燃やすための種火を落としたためにボヤ騒ぎになり、鎮火させるための人員を集めるためだった。

村に火を放つのは、すべての仕込みが終わった最後なのだ、まだすべて終わってないのに、こんなところで段取りを乱されては堪ったものではない。

自分の不祥事を部下にやらせようとしている隊長に、周りの目は冷たく、視界に入るすべて騎士がお前が一番役立たずだろうと視線が雄弁に語っている。

ベリュースのことはともかく、招集を掛けてからだいぶ時間が経ったが、呼びに行った騎士も含めて一向に戻ってくる気配がない。

この村自体は、それほど広くないはずだ、略奪をしてたとしても時間がかかり過ぎてる、明らかな異常だ、ロンデスは捜索の指示を出そうとした時、1人の若い女性の悲鳴が聞こえた。

 

「きゃぁ、ひぃ、や、やめてください!」

「へへへ、言うことを聞けば暴力は振るわんよ、暴力はな。」

 

下賤な笑みを浮かべながら、騎士の1人が若い女性の腕を掴み連れて行こうとしていた。

どうやら待機している間に我慢できずに、手を出したのだろう。

ロンデスが、その軽率な行動に怒りを覚え諫めようと声を発しようしたところ、それは現れた。

それは、先ほどの騎士の肩を鎧ごと食いちぎり、女性とは反対に弾き飛ばした、そして、喉をフルフェイスの兜ごと嚙み砕く。

突然の出来事だったので、その場にいた全員が何が起きたか解らずに固まった、そして、先ほどの出来事を起こした張本人も様子を確認すべく止まり姿を現していた。

それは巨大な狼犬だった、しかもただの狼犬では、その場にいるだけで押しつぶされそうな威圧感、本能が絶対に戦闘してはいけない、逃げろ、殺されるぞと警告を発するほどの強大な力の差を感じた。

ロンデスは撤退するべきか思考していると、ベリュースが恐怖を感じて悲鳴のように命令を出す。

 

「お、俺は、こんな場所で死んでいい人間じゃない! おまえら、時間を稼げ! 俺の盾になるんだぁ!」

 

自分が助かるために部下を盾にし、あろうことか狼犬と自分の間に村人が来るように逃げ出したのだ。

ロンデスはベリュースの行動に舌打ちをしながら、同じように最高神官長より直々に命令を受けた少人数と共に、村人を守るべく狼犬と村人の間に入り込んだ、これは潜在的に抱いていた後悔の気持ちが起こした咄嗟の行動だった。

だが、狼犬はそんな自分達には興味を示さず消えた、死角から攻撃してくるつもりかっと考え、輪を作るように背中を合わせどこから来ても対応できるように構え警戒したが、一向に来る気配がなく、次の瞬間、ベリュースが悲鳴を上げながら宙を舞い、目の前に落ちてきた、そして、先ほどの狼犬も同じ位置に姿を現す。

ベリュースはそれなりの高さから落とされたため、気を失っただけだが、その姿に恐怖を抱かせるには十分な効果があった。

騎士数名が恐慌状態になり、その場から逃走しようと走り出したが、狼犬に先回りされ、最初に殺された騎士のように喉をかみ切られて絶命していく。

その光景を目にした騎士達から錯乱したように悲鳴が上がり始めた。

 

「やだ‥‥やめてくれ! し、死にたくない」

「神様‥‥助けてください!」

 

これはまずいと思い、ロンデスは自分の中にある勇気を総動員して檄を飛ばす。

 

「----落ち着け!!」

 

悲鳴にも負けないロンデスの咆哮が響いた、それにより騎士達はある程度冷静さを取り戻した。

 

「撤退だ! 合図を出して馬と弓騎兵を呼べ! 残りは合図を出すまで時間を稼ぐ!」

 

ロンデスは命令を出した後、小声で背中を預けた仲間で言う。

 

「後のことは任せた、無事撤退出来たら任務を遂行してくれ、頼んだぞ。」

「全員行動開始!」

 

ロンデスは号令をかける、それと共に今まであり得ないほどの流れるような連携で行動を進んでいく。

その行動に満足し、味方の逃走の時間を稼ぐため、狼犬に剣を振り落とした、それはロンデスが生きてきた中で最高の一撃だった。

これなら倒せないまでも傷は負わせることが出来るだろうと思う程に、だがしかし、現実は非常だった、その一撃は牙で軽く受け止められ、剣が嚙み砕かれる。

剣が砕かれ、狼犬と目が合う、その目を見て悟った、これは今まで行ってきた無辜の民を惨殺した報いなのだと。

ロンデスは、目をつぶり、噛み殺される現実を受け入れた、だが来た痛みは噛みつかれた痛みではなく、力で吹き飛ばされた衝撃と背中に走る激しい痛みだった、どうやら思いっきりタックルされて、壁か木に激突したのだろう。

まるで他人事のように思いながら痛みから意識が遠のいてく。

 

「ガルム、そこまでです。」

 

最後に、とても美しい声を聴いてロンデスの意識は途切れた。




ここまで読んでいただきありがとうございます。

登場人物も増えたので、人物ごとに視点を分けて書いてみましたが、いかがでしょうか?
見ずらい、分ける意味がないという意見が多いようでしたら、次回からモモンガさん視点のみで進めていきます。

下記が本作のスレイン法国の捏造設定になります。

捏造設定
・スレイン法国
上層部が真剣にかつ、自己犠牲の精神で人類の守り手として、日夜戦っている。
過激派の中では、獣人や異種族がいつか人類に牙を向けてくると考えており、討伐の対象とみている。(陽光聖典は争う機会が多いため過激派が多い)
しかし、中層部や下層部には、汚職や特権を勘違いしたものが増え始めており、腐敗が始まっている。
これには上層部も頭を痛めてる。

・偽装バハルス帝国部隊

ガゼフ・ストロノーフをおびき出すための捨て駒部隊。
主にスレイン法国で問題行動を起こし続ける貴族や騎士、投資家で構成された部隊。

何故、このような部隊になったのかというと、法国内でさんざん注意、警告、罰金などにもなったにも関わらず、更生の見込みがなく、賄賂や隠ぺいなどを行い問題行動を起こし続けている者たちがいる。
(本人たちはバレてないと思っているが、風花聖典によって証拠も集められ、賄賂を渡している相手も国に情報と受け取った物を渡している。)

法国の上層部も、この者たちをのさばらせては、貴族などの腐敗が進み王国の二の舞になりかねないということで、今回の部隊構成につながった。
参加させたる理由として、参加し無事任務を遂行すれば、報奨金も多く出すし、可能な限り物は融通するなど、参加した者が喜びそうなものを餌として提示している。
さらに軍資金として、それなりの額を渡している。(賄賂として回収された金なので痛くない。)

しかし、そのような者で構成しては任務を遂行することはできないだろうというもあり、苦渋の決断として小数名の優秀な人物に声をかけ、最高神官長直々に頼み込んみ、任務内容を理解したうえで参加している。
報酬としては、家の名誉の保護と家族の生活の保障と支援が約束される。
(最高神官長としてはどんな無理難題も権力を使い、できるだけのことをしようとしたのだが、参加者が望んだは大体が上記に記したものだった。)


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第5話 王国戦士長

村の広場に居た人々や森側の入り口近くに居た騎士は、声がした方へ一斉に視線を移す。

そこには、黒髪の美しい女性‥‥モモンガが歩いて向かってきているのだ、その姿を見た人々は、一時目を奪われ、静かに見入っていた。

一方、一斉に視線を向けられたモモンガは、内心怯んでいた。

 

(うぉ‥‥一斉に視線が集まるとさすがにびっくりするな。)

 

表情に出さないようにしながら、一度立ち止まり、広場を見渡していると、ガルムが静かに村人たちの壁になるように騎士との間に移動しているのが見えた。

村人も恐怖のあまり口を押えて黙っている。

それ見て、命令通り動いてくれていることにほっとし、村人には申し訳ない気持ちになりつつ、一度、こほんと一つ咳払いしてからモモンガは話し始めた。

 

「初めまして、皆さん、私はしがない旅の者で、そちらにいる狼犬の主です。」

 

モモンガがガルムの方を指さすと、騎士たちは、その指先に視線を向ける。

 

「ひぃ!」

「いつの間に!」

 

村人の前で陣取っていた騎士達は、いつの間にか後ろに回られてことに驚き、味方の騎士達がいる方に後ずさる。

騎士達が恐怖で判断能力が鈍ってそうなので、何か情報を引き出せる可能性があると思い、質問することにした。

 

「騎士様方、一つお尋ねしたいことがあるのですが、よろしいでしょうか?」

 

先ほど、後ずさった騎士のうちの1人がその問いに答えた。

 

「‥‥なんだ」

「おい!」

 

答えようとした同僚を制止しようと他の騎士が、その騎士と軽く小声で何か話し、その後、制止しようした騎士は下がった。

やり取りからして、何か仕掛けてきそうな気配があり、実際に動きがあった。

ガルムから思念が送られてきており、どうやら比較的近くに居た騎士が静かに背後に回ってきているようだ。

つまり、このやり取り自体は時間稼ぎとこっちの意識を向けさせるのが目的‥‥思いのほか冷静に対応してくる騎士達に当てが外れたと思いながら、とりあえず、背後の騎士はすぐに対応できるようにし、聞けるもの聞いておこうと対応を続ける。

 

「すまない、待たせた。 で、何が聞きたいのかな?」

「それでは‥‥」

 

質問をしようとした瞬間、背後から向かってくる金属鎧の音が聞こえた、背後から近づいて来ていた騎士であろうと判断し、すぐさま振り返り、騎士を雷撃魔法を放ち、撃ち貫く。

雷撃を受けた騎士は、短く悲鳴をあげるとその場に倒れ、動かなくなる。

倒れて動かなくなったことを確認し、視線を戻すと目の前の騎士は、舌打ちをしつつ叫ぶ。

 

「魔法詠唱者だ!」

 

その瞬間、援軍を呼ぶための角笛が吹かれ、同時に周りに居た騎士達がモモンガに殺到してきた。

モモンガは、角笛の意味を悟りつつ、自分に向かってくる騎士達を素早く雷撃魔法で迎撃する。

 

(しまったな‥‥たぶん、あれは別の騎士を呼ぶための合図だよな、村人を守りながら捌ききれるかな?)

 

敵の騎士が増えることを考えつつ、どう対処するか考えながら、騎士を倒そうとしたが、最初に仕掛けてきた騎士達以外、攻撃してくる気配がない。

疑問に思って、見渡してみると周辺を見ていると、ほとんどの騎士が足を止めており、中には腰を抜かして尻もちついてるものまでいる。

どうやら、先ほどの対応を見て、恐怖で固まってしまった者がほとんどらしい。

 

「次はどなたから来ますか? 来ないならこちらから行きますよ?」

 

こちらから仕掛けようとした時に、馬の足音共に同じ鎧を着た騎士と弓騎兵達が入り口付近から入ってきた。

敵の援軍が到着したようだ、さすがに数が多いと判断し二重化して魔法を放つ。

 

「《 魔法二重化(ツインマジック)・ 魔法の矢(マジック・アロー) 》」

 

モモンガの周りに幾つもの光弾が出現し、撃ちだされる。 

光弾は軌跡を残しながら的確に騎士の胸を貫いていく、それを見た援軍の騎士は、モモンガを障害と判断し、弓騎兵に命令し弓矢にて、攻撃を開始しようとしたその時、馬が駆る音が轟音となって響きわたった。

騎士達はいったい何事かと動きを止め、音のする方を向くと、軽装鎧を身に纏った戦士達が馬に乗って勢いよく広場に向かってきた。

 

「突撃!」

 

先頭にいる屈強な男が号令をかけると、戦士達は剣を抜き騎士達を攻撃し始めた。

騎士達は先ほどの恐怖もあり、目の前のモモンガに対して隙を作ることが出来なかったため、次々と討ち取られていく。

モモンガは敵かどうか判断が付かなかったため、ガルムに村人の近くで警戒するように思念を送り、自分も何かあった時に対応できるように近くの騎士を倒しながら、村人の近くに移動する。

ガルムと合流し、周りを警戒しつつ、騎士と戦士の戦いを観察した。

戦士達は、騎士達は違い練度が高く、統制の取れた動きをしている、何より連携の息が合っており、隙をなるべく出さないようにしている。

特に屈強な男は、他と比べることもないほど強く動きに隙が少ない。

 

「さあ、勝負はついた! 投降せよ!」

 

これ以上の戦闘は無意味と感じたのか、屈強な男が一喝する。

生き残った騎士達は、すでに戦意はなく、一斉に剣を捨てて投降する。

それを確認した男は、次の命令を出す。

 

「全員捕縛せよ!」

 

命令に従い、戦士たちが一斉に動き出し、怪我している騎士にもお構いなく縄をかけていく。

 

(あの人が指揮官みたいだな。)

 

モモンガは的確に指示を出していくを眺めていたら、副長らしき人に指示を出して、こちらに向かってきた。

 

屈強な男‥‥ガゼフ・ストロノーフは、村人を守るように立つモモンガと、その後ろからいつでも援護に入れるように身構えるガルムの下に向かっていた。

突撃時に敵対しているのはガゼフも確認していた、騎士が倒れていたのも後ろにいる狼犬か、あるいは魔法によるものだろう。

 

(まだ距離があるというのに冷や汗が出てくるな‥‥抑えてないと震えてしまいそうだ‥‥何て強大な力を持つ狼犬なんだろうか、そして、その狼犬を従えてる女性はかなりの実力者なんだろう。)

 

戦闘の後なのに怯えた様子もなく、多少は警戒しているものの自然体と見れる態度で自分が近づいて行っても動じる様子がない。

 

(全く疲労の色も見えないとは、大したものだ。)

 

まずは、これ以上争いが発生しないように、女性と話しをしなければと考える。

 

一方、モモンガの方は、近づいてくるガゼフからは悪意は感じられず、こちらに害を及ぼすことはないことがわかったので、ガルムを落ち着かせて襲わせないように気を付けながら、先ほどの戦いを思い出していた。

 

(あの戦いっぷりと指揮の出し方からして、実戦経験が豊富なんだろうな‥‥。)

 

今までの経験の積み重ねを自分の力として発揮されたのだろう、まさに歴戦の戦士という風貌に、かっこよさを感じいていた。

 

「お初にお目にかかる。 自分はリ・エスティーゼ王国にて王国戦士長を拝命されたガゼフ・ストロノーフと申します。 村人の危機を救っていただき感謝の言葉も無い。」

 

感謝の言葉と共に頭を下げ、頭を上げ名を訪ねる。

 

「よろしければ、貴女様の御名をお聞かせ願いたい。」

 

決して相手の事を下に見ず、礼節を持って相対する姿勢。 要職にありながらも先に名乗り、見知らずに自分に頭を下げて礼を言う行動。

これらを行動はモモンガの好感度もぐんぐんと上昇した。

そして、次は自分の番である。

名前の関しては大いに悩んだ、普通にモモンガと名乗った人は偽名と思われてしまうかもしれない、かといって即席で思いつくような名前もない。

なら、こちらに来ているかもしれないギルドメンバーの目印になるよう、この名前を使おうと決めて、その名前を告げる。

 

「ご丁重なるご挨拶、痛み入ります。 私はしがない旅の者、名をアインズ・ウール・ゴウンと申します。」

 

その顔には、自信と覚悟が現れた笑顔が浮かび上がっていた。

 

 



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