深夜のコンビニバイトは割と暇です。 (秋涼)
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深夜廻編
夜のバイトに客は滅多に来ない。
「今日も暇だな。まぁ外に変な奴が相変わらずいるし仕方ないけど」
店内から見える駐車場を照らす街灯の下に居る白い人型のなにかを見ながらそうぼやく
近づくと不快なうめき声をだしながら追ってくる奴だが動きが遅いので逃げるのは簡単だ。
簡単だが、一応駐車場の掃除も業務の内なので2年前に大変お世話になった神様が祭られている隣町の神社のお札を張ったバットを持って駐車場へ出る。
店長に許可を得て設置した工事現場用ライトの電源を入れると駐車場全体が明るくなる。
夜に徘徊するやつらは光で照らさないと見えないやつもいるので見落として掃除にムラがでるといけないのだ。
明るくなった駐車場を確認すると今日は街灯の下にいる白い人型の奴しかいないようなので近くに石を投げて音に人型が気を取られてるうちに頭へバットを一気に振りぬいた。
人型の頭は気持ちがいいほどに飛んでいき途中で消滅し、頭の消滅と同時に胴体も消えた。
「不謹慎だけどちょっと楽しいな」
一仕事終えた後は掃除用具を持ち出し駐車場の掃除とゴミ箱を確認する作業にはいる。
今では大分楽に処理できているが、まだ隣町のコンビニでバイトしていたときはやつらの習性なども分からず真正面から殴りかかっていたから結構苦戦した。犬の散歩中にであった近所のこともちゃんという女の子とそのお姉さんと愛犬のポロがある事に巻き込まれた時、こともちゃんと一緒に夜の町を探索した事があり、そこで得た経験が今のスムーズな業務遂行に役立っているのだった。
こともちゃんは今でも夜の町に出ているらしく、ポロも一緒にいるからまぁ問題ないと思うけど心配だとこともちゃんのお姉さんのことねちゃんが言っていた。
本当に危ない時にはコンビニに入って俺に電話しろと言っといたから大丈夫だと思う。
こともちゃんと夜の町を回ったおかげでこの町で夜勤ができる貴重な存在として時給があがるわあがる。めちゃお金もってる店長に取り壊される神社の重要性を説き、規模は小さいが神社を遷宮できた事はお世話になった身として少しは恩に報いることができたのかと思う。その対価としてはなんだが隣町のコンビニでバイトなのに店長紛いのことをさせられてるのは必要経費だったと割り切ることにした。
夜には客はめったに来ないし、時給はいいし、掃除と商品整理などやることやってれば割と好きなことができるので夜勤は別に悪くない。
プルルルル……プルルルル……
「はい、こちら〇〇〇〇〇マート〇〇町店です」
「私、メリーさん今あなたの後ろにいるの」
時々かかってくる電話の対処がめんどくさい事を除けばだが。
お姉ちゃんの名前はオリジナルです。
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夜のバイトの電話対応
「私、メリーさん、今あなたの後ろにいるの」
ガチャン
返事をせずに電話を切り、後ろを見ないようにバットを回収して駐車場に向かう
先ほど電話を掛けてきたのは怪談とか都市伝説で有名なメリーさん、なぜかコンビニに頻繁に電話を掛けてきては襲い掛かってくる迷惑な客だ。
ちょっと前までは今隣町の学校にいるのとか徐々に近づいてくる演出をしていたが最近は飽きたのか電話にでたらすぐ後ろにいるのって掛けてくるようになった。
初めての時はまだ隣町でバイトしてたころ夜勤中に電話が掛かってきて反射的に後ろを見てしまい、何とか撃退できたが、店内は滅茶苦茶となり朝出勤してきた店長に怒られた苦い思い出がある。
駐車場の明かりをつけて振り向くと5mほど離れたところに満面の笑みを浮かべた40㎝ほどの人形が浮かんでいた。
姿だけ見ると愛らしい人形だがケタケタイヒヒという笑い声と見た目に似つかない血の付いた包丁を持っているのが不気味さを醸し出しているように見える。
彼女が包丁を持ってでたらめに切り付けてくる。彼女の動きは早いが俺に致命傷を与えられるのは包丁だけなので包丁に注意しつつ躱す。
なかなか相手が殺せないからか焦って大振りになったところでバットで包丁を弾き飛ばし、彼女の襟をつかみ拘束する。ジタバタ暴れているが人形なのでかわいいものだ。
躱してるだけでも時間が経つと消えるが面倒なので包丁を奪って消えるまで捕まえることにしているのだ。
「はい、捕まえた。残念ながら君の負けだから今日のところは帰りな」
そう彼女に目線を合わせていうとイヒヒと笑いながら手を振りながら消えていった。
コンビニ電話して襲ってくる迷惑なメリーさんだが最近では慣れてしまったのか段々と遊んでって言ってくる子供みたいな感じでなかなか可愛く見えてくるから不思議だ。彼女と戦うのは慣れて脅威ではなく、いい運動と訓練になるので今度なにかプレゼントを贈ってみるのもいいかもしれない、尤も彼女がそれを持ち帰れるのかわからないのが問題だが……今度こともちゃんかことねちゃんに相談してみよう。
少し運動をして汗をかいたので外で星を見ながら夜の冷たくなった風を浴びつつ星を眺める
こうして見上げた星空が綺麗に映るのは田舎の特権だと実感する。この町の山から見た町の景色もとても素晴らしいが妙な気配というかすごい嫌な気配がするのでなにか良くない奴がいると思われる。最近地方新聞でも妙な事件とかが起こっているらしいし、もしかしたら山にいる何かが原因なのかもしれない。
店長代理みたいな事も大分慣れてきたし、バイトが休みの日にこの町のことを色々調べてみるのも悪くないかもしれないと、時計を見てまだまだ夜は長いなとため息をついた。
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今日は夜勤のバイトはありません。
「いやぁ悪いね、勉強の邪魔しちゃって」
「いえいえ、私も休憩したいところでしたし」
図書館で資料を調べようとしたところ、夏休みで勉強しに来ていたことねちゃんに声を掛けられた。雑談がてら、この町の信仰やら伝説やら書かれた資料などを探しているといったら
すぐに資料を探してきてくれた。
「それにしてもすぐ持ってきてくれたけど、何処に何の本があるのか全部把握しているのかい?」
「いえ、勉強をしに図書館にはよく来ますけどさすがに全部わかりませんよ。私も気になって調べたことがあるので場所を知っていただけです。隣町じゃなくて、私たちが住んでる町のほうの事ですけど。あとは私も見たことありませんが、役に立ちそうなのを何冊か持ってきました!」
あんな出来事があったんだ。まぁ気になるよね。
「ところでなんでまた、調べようと思ったんですか?」
「いやぁ、隣町でバイトすることになって休みに暇だったから山に行った時にトンネルの奥にいたやつほどじゃないんだけど似たような嫌な感じを覚えたからね。新しいバイト先も慣れてきたし、念のため調べとこうと思ってね。」
「そうだったんですね。最近こともが隣町にも行こうかとポロに話しかけてたのを聞いたので山に行くのだけは絶対にやめなさいと言わないと……その、私も一緒に調べてもいいですか?」
「いいけど、勉強は大丈夫なのかい?」
「大丈夫です。今日の分は粗方終わったので!」
「そうか、じゃあ一緒に調べようか。」
ことねちゃんと一緒に調べたところ、この町には神様が2柱いるらしい。
一つは山に縁を結ぶ神
その神は随分と寂しがりやらしく、気に入った人を山に誘導し縁を結んで取り込み。取り込んだ人物(以後生贄)を元にして生贄の大事な人に縁を結び、取り込む。といった事を繰り返す神らしい。名前は調べたけどどこにも書いてなく分からなかった。
もう一つは理様と呼ばれる神
ハサミの付喪神が信仰を経て神格化したものだと書かれている。山に住む神と対極でこの神は縁切を司る神で山に住む神に縁を結ばれて連れていかれるのを阻止するほか、病気、災害、悪縁などを断ち切る神でこの町で信仰されていた神だったらしい。
この神はとても慈悲深い神様で、もういやだと呪文を唱えると助けてくれる
俺たちの住んでる町で例えると山の神がトンネルの奥にいたあれで。理様が百足様になるのかね。昔に信仰されてたなら神社とかあってもいいはずなのにコトワリ様を信仰している神社なんて聞いたこともないな。と、おっと次のページに書いてあった。ダム建設の際に旧市街が水没したため神社正面の入口が使えないため、山の参道の奥地に神社があるらしい。地図で確認したが結構遠いな。
「んーコトワリ様……どっかで見たような……」
ことねちゃんがしばらく考え込んでたが、急にハッとして週刊誌コーナーに向かい、一冊の週刊誌を持ってきた。
「これ読んで見てください。このオカルトコーナーのやつですがこれもコトワリ様って書いてあってこれってこの町の理様のことなんでしょうか?」
差し出された週刊誌にはコトワリ様という怪異は首と手足を持つモノの前に現れ、その手足を断ち切るまでひたすら追いかけてくるらしい。やり過ごすためにはコトワリ様に首と手足がついた人型の物を差しだすと人型の物の手足を切断したコトワリ様は満足して帰っていくらしい。と書いてある。
先週ぐらいに手が切断されている、死んでいるのにさらに殺されている地縛霊を見たばかりなので冷や汗がでる。
「もうちょっと調べないとはっきり分からないな、それでもコトワリ様の噂はシャレになってないからあまり外を出歩かないようにね。あと、どうしても夜、外に出なきゃいけないときは、人形を持っていくといいよ。まぁ用心しとくに越したことはないからね」
「人形ってことものおもちゃ箱に入っている人形ですか?」
「そそ、それ!まぁ使う機会がないことが一番だけどね。」
時計を見るとすでにもうすぐ夕方に差し掛かる時間だった。
「おっと、こんな時間か付き合わせちゃったし、家まで送っていくよ。」
「ありがとうございます。あとついでに八百屋とお肉屋によっていってもいいですか?」
「お肉屋かコロッケでも買って帰るかな」
「あ、もしよかったら送りついでにうちでご飯でも食べていきませんか?こともも喜ぶでしょうし、夜にあまり出歩かないように、こともの説得を手伝ってくれると助かります。」
「あー……分かった。じゃあご馳走になろうかな」
「はい!じゃあ行きましょうか!」
送り届けて家に帰ったら準備して理様の神社へ行ってみるかな。
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神社に夜廻の準備
「あの……夜も遅いですし、泊まっていったらどうですか?」
「いや、随分長居しちゃったからね、家もそこまで遠くないし、そろそろ帰るよ」
やることもある為、ことねちゃんの提案を断る。
まぁやることがなくても女の子二人が暮らしてる家にお泊りなんてできるわけがない。
夕飯だけ食べたらすぐ帰る予定だったが随分と長居してしまった。
「じゃあ、帰るよ、こともちゃんも暫くは家から出ちゃだめだよ。」
「えー、最近はお兄ちゃんとムカデ様のおかげであまりお化け見つからないのに」
「ことも?」
「うっ……わかった」
ちょっと渋った、こともちゃんだったが、ことねちゃんのプレッシャーに負けたようだった。
「じゃあ、お邪魔しました。ご飯おいしかったよ。」
「はい、また!」
「またねー」
挨拶をして外に出るとポロが元気よく尻尾を振りながら
ポロは俺のお願いを聞いたあとに言葉が分かるのか尻尾をブンブンと振りながら元気よく吠えていた。
姉妹の暮らしてる町はムカデ神社が遷宮されたあと、風水を起点とした場所にムカデ神社のお札を防水加工して人が容易に剥がせない場所に貼り付けたらムカデ様の行動範囲が広まったらしく、この町ではあまりお化けを見かけなくなった。
しかし、見かけなくなったといっても少しはいるし、夜廻りさんは相変わらずそんなものは関係なく活動しているらしいので簡単に出歩いていい感じでもない。
町の人もそれを感じ取っているのかこの町のコンビニ周辺に住む人々は時々夜に買い物とかに来るようになった。夜の売り上げも多少増えたと店長がすごい笑顔だったのを覚えている。
遷宮された神社は廃工場跡にひっそりと建てられているが最近、ムカデ様の加護を実感できるため、神社をもっと大きくするかとかなんとか言っていた。町の人も結構お参りに来てくれるようになったのでムカデ様も結構張り切ってるように感じる。
廃工場に神社ができた為、時々こともちゃんが夜廻りさんに連れ去られた時に携帯にムカデ様から電話が掛かってくるようになった。連れ去られてくるのがこともちゃんだけなので分からないが多分他の子が連れてこられても同じように連絡をくれると思う。
本当にムカデ様には感謝しきれないな。
そんなことを考えていると商店街と廃工場の中間あたりにある自宅に到着し、ライト付きのヘルメットや懐中電灯、石、札、お守り、花子さんから貰った人形等をリュックに入れて家を出る。武器に使っているバットを自分の働いているコンビニに取りに行く。
暫くコンビニに向かって歩くと自分の働いているコンビニがある町に入る。ここからお化けが多くなってくるから気を付けないといけない。
暫く道なりに進んでいくと団地が見えてくる。人がかなり住んでいると思うが明かりがちらほらと付いているだけでまるで殆ど誰も住んでいない団地みたいに覚える。この町の住人は寝るの早すぎると思うんだ。家は結界というし他の家の明かりとかがあれば多少町の雰囲気も明るくなると思う。
「きゃああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
急に悲鳴が上のほうに見上げると女の人が上から落ちてくるのが見えた。一瞬人かと思ったけどあれはお化けだなと直感で分かった。よく見ると悲鳴を上げているが俺のほうを見て笑っている。
ああして人の上に落下してきてお仲間を増やすつもりなのだろう。
落ちてくるタイミングに合わせて顔面にオーバーヘッドキックをお見舞いすると吹っ飛んで壁にぶつかってそのまま消えていった。俺だったからよかったけど他の人が巻き込まれたら大変だからな。しかし久しぶりにバットを使わず倒したけどまだまだいけるなと確信してコンビニへ急いだ。
その後は手で戦うのが鈍ってないかそこら辺の白い人型で試した後、コンビニに無事辿り着き。夜勤をしてる店長に挨拶しバットを回収して俺はコトワリ様が祀られているという神社へ向かった。
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神社廻
タイヤ輪入道を横から叩いて転がし、火球で野球をし、化け犬を蹴り飛ばしながら移動すると山の入口へと辿り着いた。街灯の下で地図を開きながら壁に体重を預ける。この付近には後ろから結構な速さで近づいてくる奴が出るので念の為に用心してる。ある程度まで近づいてくれば気配で分かるがそれでも用心に越したことはない。一回発見したときに逃げていったやつを完全に消滅させるまで追いかけたが、また同じやつが出てくる可能性もあるのだ。
地図を確認すると山頂へ向かう道ではなく奥の山道からダムの方向へ移動すると神社へたどり着けるらしい。俺は地図をしまい、山へと入っていく。
山に入って神社へと進む道を道なりに進んでいくと最近見ないが廃工場にいた道ふさぎの亜種のような巨大なお化けが道を塞いでいた。そいつは俺を発見したのかのそりと俺の方へと迫ってきた。横をすり抜けざまにバットをフルスイングさせると奴の体の半分が消し飛び、動きが止まったのを確認したのち頭をバットで消し飛ばすと完全に消滅した。
やっぱり山にいるお化けは町にいるやつと少し違うなと思いつつ先を急ぐ。
暫く道を行くと神社のような建物を見つけ裏口から入ると絵馬が大量に吊るされているのを確認できた。神社の規模はかなりの大きさのようなのに建物がボロボロなので管理が行き届いていないのが確認できる。
絵馬も少し確認したが縁切りのお願いというより殺人依頼や他人を不幸にしてくれみたいな内容ばかりだった。
週刊誌に載っていた内容を思い出す。信仰がなくなった神様が絵馬の願いを叶え続けた結果、縁を切るのに人を切る形で縁を断っているのだろうか。
境内に入ると広い空間にゴミなどが散らかっておりかなり汚かった。
綺麗な時はかなり立派だったんだろうなと感じられる。
しばらく周りを見ながら探索してるとカンッと小気味良い音がした。
どうやら足元を見ていなかったせいで空き缶を蹴飛ばしてしまったらしい。
すると突然足元が緑色に光り出し、確認してみると地面に人形を模した石畳があり、現在は頭から体にかけて発光していた。
観察していると俺が缶を蹴飛ばしたせいで石畳からゴミがなくなった為頭から体にかけて発光したらしい。こんなに目で分かるぐらいハッキリと光るなんてここにいる断り様というのは相当な力を持っている神様なのだと感じられた。
どの様な効果があるのか分からないが、少なくとも嫌な感じはしなく、むしろ
神聖な感じがするので全ての石畳からゴミを取り除き結界を発動させる。
特に変わった様子はないが神社の雰囲気が一変した。
陰鬱な雰囲気から神聖な雰囲気へ――まるで新しく遷宮されたムカデ神社のようだった。石畳を掃除しただけでは断り様に申し訳ないので一旦全てのゴミを神社の外に集め、次のバイトが休みの日にまとめて処理するための作業を開始した。
結局朝までゴミ集めに時間がかかり、清掃は次の休みの日に百足神社の掃除が終わったらここにきてピカピカにしてやろうと決意し、今日の夜勤に備える為、自宅へと足を向ける。神社へ来てからずっと感じていた視線はもう感じなかった。
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夜廻する子供保護システム
この地域のコンビニの夜勤の開始時間はかなり早い。
日が落ちる前に始まり、日が昇ったら朝勤の人が来るシフトになっている。
夜勤の売り上げが絶望的な為、夜に配送トラックすら来ないのがこのコンビニの特徴である。
店を閉めてもいいんじゃないかと思うが、突然の物入りや緊急時の逃げ込める場所もあったほうがいいとのことで、夜のコンビニは粛々と営業している。自分が休みの日は店長か、コンビニから家に近いバイトが担当してくれている。
店長とバイトが夜勤の時はなにかあったら自分に連絡する事と、絶対に店の電話は出ないようにと言ってある。百足様のお札や塩やらできる限りの防備は固めているものの、メリーさんのような条件を満たして出てくるようなのに対しては効果が薄い為、他の人が遭遇しないように、なるべく休まないようにしている。
自分の住んでいる町みたいに百足様の加護があればこのようなシフトじゃなくてもいいがそう上手くいかないものだなと感じる。
粗方の商品の発注、前だし、廃棄品の確認などが終わり、夕食を食べて腹ごなしに外にいるやつらをバットで念入りに吹き飛ばし(今日は鉈を持った物騒な小さい奴がいた)て汗をかいたので、ドリンクの補充のついでに涼んでいると店の電話が鳴り響いた。
時計を見るとまだ深夜でもなく、そろそろ子供が寝る時間かなというところ。
メリーさんかなと思ったが、彼女は深夜から丑三つ時にちょっかいを出してくることが多いので普通の電話と判断し電話に出ることにした。念のためバットを近くに用意し電話に出ると店内が一変し、店内の空間が赤く染まる。しかしそれは一瞬で、直ぐに元の店内の雰囲気に戻った。
これは夜廻さんが子供を連れて来たよということを百足様が教えてくれる時にこんな風になる。百足神社の片隅にはコンテナがあり、夜廻さんが子供を
電話を受けた後、直ぐに店長へと連絡して少し店を離れる事を伝えた後、コンビニの制服を着たままバットと懐中電灯を持って店を出る。
働いている手前あまり褒められたものではないが、子供に万が一があるといけないのと、早く行かないと夜廻さんが連れてきた子供がコンテナから脱出し何処かに行ってしまうので、早急に駆けつける必要がある。コンビニの制服を着たままなのは、突然知らない所に連れて来られた子供が突然バットを持ったお兄ちゃんに声をかけられたらほぼ100%逃げられる為、少しでも警戒させないように見慣れてるであろうコンビニの制服を着ているのである。
コンビニから百足神社までの道筋をタイムアタックするかの如く、最短で駆け抜ける。
道先に白くて巨大なやつが立ち塞がっていたので周囲に音に寄ってくるやつがいないのを確認した後に、地面をバットで軽く叩いて俺の接近をやつに知らせる。急いでいるので素直に道を譲るならよし、退かなければそのままぶっ飛ばすだけなのだが、幸い素直に消えて道を譲ってくれたのでそのまま神社へスピードを維持したまま向かうことができた。
途中、道路で進行方向へ向かう上半身だけで疾走するやつが居たので分岐路まで乗り、降りるときにバットで消滅させて時間を短縮させる。
自己ベストを更新したことで満足感と共に神社へ到着した。
コンテナに向かう前に軽く百足様に参拝した後、コンテナに向かいつつ周囲を確認すると、まだ連れてこられた子供はコンテナの中で意識を取り戻していないらしい。意識があったら泣き喚いたり何とか脱出しようとしているからだ。すでに脱出しているのならば、町へ戻る道は自分が通って来た道しかない為、会っていないという事はまだコンテナの中にいるのだろう。
あまり大きな音を立てずに静かにコンテナを開けると、活発な印象のこともちゃんとは違った、赤いリボンが似合う女の子が眠っていた。
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少女と犬
コンテナの中の電灯をつける。コンテナの中が明るく照らされる。
コンテナの中には連れ去られた子供が、過剰に不安にならないようにちょっとした部屋になっている。コンテナ置いただけじゃ駄目だと、ことねちゃんがこの様に整備してくれました。俺の金で!
こういうことに気が回るのはさすが女の子だなと思いつつ、ベッドで未だ眠ってる女の子に近づく。
連れてきて丁寧にベッドに寝かせ、掛け布団まで掛けてる夜廻りさんのマメさに苦笑して、ぐっすり寝てる女の子に起こすのも悪いなとそのまま近くの交番へ連れて行こうと近づくと、女の子の傍にリュックが置かれており、雑に置かれたのか中身が外に出ていた。荷物の雑な扱い方に夜廻さんは子供以外どうでもいいんだなと感じながら散らかったものをリュックに戻しながら確認する。懐中電灯や塩、石、紙飛行機など、まるでこともちゃんの夜廻りキットの様な中身だった。
リュックの中をみて、女の子は突発的に外に出て連れてこられたわけではなく、何か目的を持って外に出ていると判断をしたので彼女を起こそうとした時、遠くの方から何かが走ってくる音がした。気配を探るとお化けではなく、音から人間でもなく、四足歩行の動物が走る音なので動物だと判断を下す。
しばらく待つとコンテナの入り口に黒い小さな犬が姿を現した。犬は俺を無視して女の子の元に向かい、顔を舐めて優しく女の子を起こしはじめた。
しばらくすると女の子が起き、俺に気づくことなく犬にお礼をいい、撫ではじめたので、しばらく眺めたあとに声をかける。
本当に俺がいることに気が付いていなかったのか、慌てふためき、次に警戒をしていたが膝に乗せている犬が俺を警戒していない為、しばらくしたら話してくれる気になったようだ。名前を聞くと、彼女の名前はユイちゃんといい、一緒にいる犬はクロという名前らしい。
ユイちゃんから話を聞くと、いつも一緒にいる友達のハルちゃんという子が突然居なくなり、居ても立ってもいられずに探しに出たとのこと。
色々な所を探しても見つからなくて、途方に暮れているところに大きな袋を持ったお化けに捕まったらしい。
その話を聞き、現在の場所とユイちゃんを捕まえた夜廻りさんのことを説明した。
あまり納得いっていないようだったが、真実なので納得してもらうしかない。
しかし、お化けが徘徊している夜の町で友達を探して回るなんて。姉を探して夜の町に飛び出したこともちゃんといい、この地域の女の子はとても肝が据わっている。
ユイちゃんの勇気や頑張りをほめた後、ハルちゃんが何処にいるのかを考える。
最近の夜廻さんは夜の町探索のプロこと、こともちゃんが全力で逃げても3時間ぐらいで捕獲している(何故かこともちゃんだけ、コンテナじゃなくて直接家にこともちゃんをぶち込んでいる)のでも分かるように子供を探すのと捕まえるのが本当に上手くなった。
実際ユイちゃんも夜廻りさんが主に活動している町とは違う隣町なのに1時間半ほどでユイちゃんを見つけて捕まえているので、ハルちゃんという子が夜の町にいるのならユイちゃんがここに来る前に夜廻りさんがハルちゃんをここに連れてきてもおかしくはない。
連れてきてないということは、この町にいないか、夜廻りさんの手の届かない場所にいる可能性が高い。
もしやこの町にいたトンネルの奥にいたやつの仕業かと思ったが、もう完全に消したはずなのでその可能性はない。断り様とも考えたが生まれと信仰を考えたらそんなことはしないし、噂通りなら道路でハルちゃんが大変なことになっているのを捜索中のユイちゃんが見つけているはずなので、消去法的にコンビニのある町の山にいる神のほうかなと当たりをつける。
ユイちゃんに山には入ったかと聞くと、呼ばれた気がして、最初に行こうとしたがクロが止めるのと呼んでいるのはハルじゃないと感じ、すごく嫌な感じがしたので、ほかの場所を探していなかったら山に踏み込もうと思ったらしい。山が山の神の領域でも神域などに入っていなければ、さ迷っている間に夜廻りさんが連れてきていると思うので、ハルちゃんは山にいる神に魅入られて連れていかれてしまったのだろう。
ユイちゃんに恐らくハルちゃんが山にいることと、恐らく神域へ行くのは連れていかれた人との縁がないと辿り着けないのと仮に行けたとしても助けたハルちゃんが本物かどうか自分では判断がつかない為、危険を承知でユイちゃんに着いて来てほしいとお願いする。するとユイちゃんは二つ返事で了解してくれた。ユイちゃんが返事をした後に自分のことも忘れるなとクロもキャンキャン吠えて主張する。分かった!お前も一緒にハルちゃんを救いにいこうな!
こんな健気な子を巻き込んだ山の神、いや山にいる糞野郎に怒りを覚える。
しかし山に行った時の気配もそうだが、戦うにしても2年前のトンネルの奥にいたやつぐらいかそれ以上を相手するにはバットは心もとない。
準備をするため、ユイちゃんとクロと一緒に境内に出て、拝殿までくると突然スマホが鳴り始めた。
電話に出ると。世界が一変し、また直ぐに元に戻った。
すると足元に紫色の袋に包まれた細長い物と刃渡りが30cmぐらいの水晶で出来たナイフが6本はいったナイフケース。何故か自分の家に置いてあるいざという時用に用意してあるカバンが一緒に置かれていた。
紫色の袋に包まれている細長い物は刀であり、手にしたことは2年前なので久しぶりである。
百足様がこれを貸してくれたということは、犯人は山にいるヤツ確定なのだろう。
ユイちゃんがびっくりとしていたが、ここにいる神様が力を貸してくれただけだよと伝え。
装備を回収し、2人と一匹で山へ向かった。
ユイちゃんがつけている包帯と絆創膏はどう考えても転んだりしたケガとかじゃない為、全てが終わったら迷惑かもしれないが児童相談所に連絡してやろうと思った。
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山へ
ハルを助けに行くためにクロとコンビニの服をきた、えがおがうさんくさいおにいさんと一緒にやまをめざしてあるいていく。
神社から出たところでわたしを誘拐したおばけがじっとこっちをみてたが、お化けの視線がおにいさんをみて、おにいさんが挨拶するように手を上げたしゅんかんにきえてしまった。
心配性なんだよとおにいさんがいう、いがいとお化けにもいい子がいるのかもしれないと思いました。
山に向かう途中でおにいさんはハルとはどんな子なのかと聞いてきました。
ハルは臆病だけど、とても優しく、かつ一緒にいると、とても楽しいことを目一杯おにいさんに説明しました。あとはもうすぐハルが引っ越してしまうこと、その前に一緒に花火をみにいく約束をしたことなど話してやまをめざしました。じゃあ、早く助けて花火大会楽しまないとなとおにいさんはいい、私の前を散歩でもいくようにのんびりと歩いていました。
よるの道をひとりで歩くのはとても怖くて心細かったけどクロもうさんくさいおにいさんもいるのであまり怖くありませんでした。
1人の時はたくさんお化けがいたのに、おにいさんとあるいているとまったくお化けが出てきませんでした。おにいさんに聞いてみると、神社のムカデ様から貸していただいた刀は、ムカデ様とそのムカデ様より偉い神様も宿っている刀で、お化けは逃げて近づいてこないし、近づいてきたとしても刀の力でお化けは死んでしまうらしい。
おにいさんの話はよく分からないといったらおにいさんは軽く笑ったあと、やまについたら大変だからね、今のうちは休んでおけとムカデ様がいっているんだよと教えてくれました。
そのあとおにいさんはわたしと同じ夜の町にでた、勇気があってとてもやさしい、姉思いの女の子の話をしてくれました。おにいさんのおはなしはとてもうまく、わたしとハルと年が近いので会えたら友達になれるかなとワクワクしました。
あそぶのはいいけど夜の町にはでないように注意されたけど、ハルが帰ってきたら花火大会の時いがい、夜にでる理由はないのになにをいってるんだろうとおにいさんをみた。
そしたらおにいさんは、こともちゃんとなかよくなればわかるよといいました。
クロや家でお留守番をしているチャコのはなしなどをしていると、あっというまにやまのいりぐちにつきました。やまのいりぐちまでは、おにいさんのいうとおりまったくお化けがでてきませんでした。
入り口を見ていたおにいさんはうさんくさい笑顔から真剣な顔になって私に
山に入ったら、おにいさんと離れないこと、おにいさん以外の声が聞こえたらかならず確認をとること。とちゅうこくしてくれました。
ハルを見つけたらハルと一緒にこれを持って山をでなさいとおにいさんは懐から淡い緑色の光をまとっているお守りを二つわたしにくれました。
よくみるとムカデの絵が描かれていてとても高そうでした。
慌ててお金をもっていないことをつたえると、こういう時のために準備しているものだから気にしなくてもいいということでした。
このお守りはハルと一緒に朝になるまで手放さないようにとのことです。
それと朝になっておにいさんが戻ってこないときは先ほど話した、こともちゃんのお姉さんを頼りなさいと教えてくれました。
わたしはおにいさんの言葉に頷き、おにいさんはむらさき色の袋から刀を取り出し鞘から刀を取り出しました。月と電灯に照らさられた刀は青白く光ってみえ、まるで大きなムカデのように見え、ムカデなのにとても美しく感じられました。
おにいさんは、鞘を袋にいれるように私にいい、そのまま袋を背負うようにいいました。少し重いので、なぜかと聞くと念の為だよと誤魔化されたのでムッとしていると、おにいさんは誤魔化すように笑い、さぁいこうかとピクニックに行くかのごとく軽く私に手をさしのべました。
ハルを絶対に助けるのだとおにいさんに手を引かれながら決意をあらたにしました。
ハル待っててね。もうすぐだから
アクセスがすごいことになっていてびっくりしました。
読んでいただきありがとうごさいます。
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山にて
気配的には山の頂上のほうかなとお兄さんは言うと私の手をひいて山を登り始めました。
頂上までの道は町の中では出なかったでかいお化けが沢山出てきました。
お兄さんは遠くに出てきた大きなお化けに向かって刀を振りました。
すると遠くにいたお化けがお兄さんが刀を振った形に切れて消えていきました。
今までお化けを避けて通って来たけど、こうもあっさり消えていくのは私でもおかしいと思うので、どうしてこんなことが出来るのかとお兄さんに聞いてみることにしました。
するとコンビニバイトは色々な事が出来ないと務まらないからねとのことでした。
コンビニバイトってすごい、そう思いました。
お兄さんが刀を持っているので懐中電灯が使えない為、明かりを照らしてお化けを見つけたりするのは私の役割です。お化けを見つけたり、道を見やすいように照らすとお兄さんが胡散臭い笑顔を浮かべて褒めてくれます。
夜の山でお化けも出てくるのに、なぜかお兄さんがいると昔にいった遊園地のアトラクションのようだと感じました。
お兄さんに手を引かれて順調に進んでいくと山頂にたどり着きました。
そこでお兄さんは困った顔をして気配が強すぎて詳しい場所がよく分からないらしく辺りを探し始めました。
お兄さんが探しているのをクロと眺めていると突然声が聞こえてきました。
ソイツハキケン、ソイツガ ワタシヲ サラッタ キケン ハヤクコッチニオイデとハルでいてハルの声じゃないような声が聞こえてきました。さすがに一緒にきてお兄さんは危険じゃないと思うがなんでそんなことを突然いうのだろうか。声は奥のほうから聞こえてきており。お兄さんに声を掛けようとしたが声が出ず、体が勝手に奥へと進んでいきました。
道の先には崖になっていて崖の近くに大きな木が生えており、木の幹に紐がぶら下がっていました。
体は紐目掛けてゆっくりと動いていきます。
体が勝手に動き始めてから頭の中に常にオイデ、オイデと声が響いていて、山に入った時のお兄さんの言葉を思い出しました。お兄さんの言ってたことはこういう事なんだなと感じました。
木へもうすぐ到着しそうな時に頭に痛みが走りました。
気づくと体も自由になっていて、声も聞こえてきませんでした。
振り向くとお兄さんが困った顔で立っていました。
離れるなといっただろうと怒られたあと、お兄さんをクロが呼んでくれたらしく、クロにお礼を言いなさいといわれました。クロにお礼を言い終わるのを待っていたお兄さんが緊急時だったとしても頭を叩いたのは悪かったと謝ってくれました。いつもより痛くなかったから平気だと答えると、にこにこして目が閉じているようにみえる顔なのに一瞬目が薄く開いたあとすぐ元の胡散臭い笑顔に戻りました。
お兄さんから先ほどの聞こえた声はハルを攫った犯人だということと、私にちょっかいを出したことで居場所が分かったと言いました。おにいさんは少し道を引き返して道の半ばにあるお地蔵さんを横にずらすと地下へ進む道が現れました。
道から漂う嫌な雰囲気にお兄さんはすこし顔を顰めたあと、ここからは神域だから気を付けていくよとゆっくりと私の手を引いて中に入りました。
中はとても広い洞窟のようで入口からは奥まで見えませんでした。
さすがに暗いなとお兄さんはカバンの中から発炎筒というものを取り出し道を進みながら一定間隔で地面に突き刺していきました。ハルを連れて戻るときにはこの光を目印に帰るようにとお兄さんは言いました。
突き刺した発炎筒の筒の部分は簡易の結界になっていて、私とハルが戻るときにはここを通ると先ほどからお兄さんに飛び掛かっては刀の結界に触れて消えていく黒い蜘蛛も襲ってこないらしいです。
さらに奥に進んでいくと、最奥へ続く入口に神社にかかっている縄のようなものが掛かっていました。それを見たお兄さんは、逆注連縄かと呟きました。
逆注連縄とはなにかとお兄さんに聞くと、百足神社などにある普通の注連縄は穢れた人間等が神域へ入ってこれないよう、つまり外から内へ入れないように張るもので、この入り口にはるような逆注連縄は中にいるやつが外にでないようにと張られるものだと教えてくれました。
簡単に言うと中にいるのはろくでもないやつだよと苦笑しながら言うと、私の手を引いて奥へと進みます。
道なりに進んでいくとすごく大きな空間へ出ました。お兄さんが指を差したさきにはハルが倒れていました。
すぐに近づいてお兄さんが様子をみるとケガもなく無事で安心しました。
ハルは多少意識があるようで私が支えれば歩けることが分かりました。
ハルを連れて帰ろうとした時奥から、骨と手に目玉がたくさんついた大きなお化けが出てきました。
お兄さんは思ったよりでかいなといい、私にハルを連れて早く逃げるように言い、カバンの中から銃のようなものを取り出し、上に向けて撃つと洞窟の中がすごく明るくなり足元もよく見えるようになりました。
私はハルを支えながら外に目指してなるべく早く移動しました。途中でお化けの悲鳴のようなものが聞こえて少し振り向くと大きなお化けの腕が切り離されて飛んでいるのが見えました。
色々な音や悲鳴やらが奥から響いているのを聞きながら洞窟の外へ目指します。
途中からオイデ オイデ タスケテと声が頭に響いていますが、ハルを救うのに惑わされてはいられないので一生懸命足を進めます。道はお兄さんが設置してくれていた発炎筒に加え、クロが先導してくれるので安心して通ることができました。
無事洞窟を出ることができたあと、私はハルを連れて急いで山を下ろうとしました。道を下っていると洞窟があったほうから巨大なお化けが私たちを追ってきていました。速度はそこまで早くない為逃げられると思いハルを支えながら来た道を戻ります。行きがけに置いた木箱を渡り、ハルの負担にならないように道を急ぐと谷間に差し掛かりました。クロが先行して木の板を渡った瞬間板がはずれ、下に落ちてしまいました。
自分ならぎりぎり飛び越えられる距離だけど、今の状態のハルじゃ飛び越えられない。
後ろから大きなお化けが迫ってくる。しかし道がない、頭の中の声もモウムリ ニゲラレナイ アキラメロと私にむけて馬鹿にした風に声が聞こえた瞬間に悲鳴が聞こえて聞こえなくなった。どうしようと思考を巡らせているとかさかさと音が聞こえました。
振り向くともうすぐ近くに大きなおばけが迫っていた。私はせめてハルだけでも守れるようにハルに覆いかぶさりました。
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神域にて
目の前にいる山の神を見て、思ったよりでかいなと感じた。
骨と手の集合体のような見た目だが手が握り合って顔を形成していて、一応縁結びの神なのだな。トンネルの奥にいたやつとは違いかなりの大きさなので、このまま戦い始めたらユイちゃんとハルちゃんを巻き込んでしまう可能性が高い。先に逃げるようにユイちゃんに促した。
俺の言葉にユイちゃんは大人しく従ってくれ、ハルちゃんを支えながら出口を目指し始めた。少しでも足元が見えるように、あと山の神を視認しやすくするために信号拳銃を天井に向けて打つ。信号拳銃の中には照明弾が入っており、照明弾のおかげで洞窟の全容と山の神の姿がよく見えた。
山の神は俺ではなく、逃げるユイちゃんとハルちゃんの道を塞ぐべく手を振りあげようとしていた為、腕に向かって刀を振るう。斬り飛ばされていく腕をみて案外脆いなと感じた。ユイちゃんとハルちゃんが心配だが、道中の結界もあるし神域の外にさえ出られれば大丈夫だろうと思い。山の神へ集中することにした。
刀身は約二尺四寸七分、普通に切りかかったのでは山の神へ攻撃が届かない。刀は振ると霊刃を飛ばすことができ、生身の人間などには効果がないが霊的なものには自分が刀で切った時と同じような威力が得られるのでとてもありがたい。
山の神は悲鳴をあげた後、すぐに新しい腕を生やし自分に叩きつけてくる。
避けた先に蜘蛛の巣のようなものが設置してあったり。ドス黒い霊力のようなものを放ってきたりしてきた。どうやら力はトンネルの奥にいたやつよりは強いらしい。もっともトンネルの奥にいたやつは昔の人によって作られた、百足様の結界があったためそこまで暴れられなかったということもあったが……
避けながらよくみると、生やした腕から目玉が一つ減っている。刀で切った場所ではないので自分ではない。山の神の再生能力は目玉によるものが多いのかもしれない。取り敢えず目玉を全て潰したら弱るだろうと判断をし、攻撃を避けながら霊刃で目玉を切ってみる。すると多少傷ついたものの完全には潰れなかった。霊刃では効果が薄い為、直接切ったほうがいいと判断する。
避けながら観察をしていたおかげで大体繰り出してくる攻撃も分かったので、フェイントに注意すれば食らうことはないだろう。やつが右腕を振り下ろした瞬間。先端の目玉を潰しながら右腕に飛び乗り、そのまま目に付いた目玉を潰しながら頭から左腕へと移動する。目玉を潰されるたびに悲鳴をあげる山の神を見て、目玉が弱点なのだと確信する。
見える範囲で目玉を潰し終えて地面に着地すると、山の神は息も絶え絶えで地面に体を倒しているのを見た俺は、戦いながら地面に設置した水晶のナイフを起動させた。
山の神を中心とした六ヶ所に設置してある水晶が光り、光の線が水晶につながり結界を形成させる。
水晶はトンネルの奥に設置してあった百足様の社に入っていた結界の起点となる水晶と同じ素材でできており、百足神社に安置して百足様に時間をかけて力を注いでいただいた水晶である。
水晶をトンネルの奥にいた神を倒した時と同じ様に設置した。結界の中は百足神社の境内となる。水晶が完全に起動すると懐に入れてあった携帯が鳴りはじめた。
携帯を取ると世界が一変し結界の中に巨大な百足様が出現した。
その日、町の人々は何かの悲鳴とそれを断ち切る音が聞こえた。
洗い物が終わり、テレビを見ていると階段を急いで降りてくる音が聞こえてきた。
台所から顔を出すと、こともが夜に出かけるリュックを背負い家を出るところだった。
お兄ちゃんがしばらく出るなと言ったのを忘れたの?といったらちょっと出てくるだけと家を出て行ってしまった。禁止されてから2日ほどでソワソワしていたので我慢できなくなったのだろう、危険だから夜に出るのをやめてほしい。ポロもついているし、いざとなったら先輩がいるので大丈夫だと思うが心配なものは心配だった。
しかし、夜を回ったときのこともは本当に楽しそうで、楽しそうな笑顔を見ていると絶対的に禁止するのもどうかと台所に戻りながら考えていたら、玄関が開く音が聞こえた。
随分と早く帰って来たわね、と玄関にでると玄関の前にいるポロと2階へ上がっていく夜廻りさんの姿が見えた。
夜廻りさんを追いかけて2階の部屋にいくと、すでに夜廻りさんの姿はなく、こともと見たことない女の子二人が三人仲良くベッドで寝ていた。活発そうな女の子の腕には刀の鞘が大事そうに抱えられていた。
こともちゃん、最速敗北タイム更新
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その後
百足様によって山の神の消滅を確認したのち、山の神が最後に残したのか手や洞窟の入り口へ赤いクモの糸がびっしりと付いていた。蜘蛛の糸を無理矢理引き剥がしながら神域を出た為、少し時間がかかってしまった。
神域を出た後、神域を塞いでいた地蔵様を元に戻す際に神域に面した部分に防水加工したお札を貼る。復活することはないと思うが、内からお札に何かが干渉した場合、百足様と自分に分かるように念の為貼っておく。
時計を見ると時間がだいぶ経っており、数時間後ぐらいには日が昇ってきそうだった。
刀の鞘の気配はこの山にはなさそうなので、ユイちゃんとハルちゃんは無事に逃げられたと判断し、未だ残ってる大型のお化けを駆逐しながら下っていくと犬の鳴き声が聞こえた。この鳴き声はクロの声だ。
鳴き声のした方へ駆けていくと、クロは断り様の神社付近で大型や小型のお化けに追い詰められていた。急いで霊刃を飛ばすが数が多く間に合いそうもなかった。しかしクロが一鳴きした瞬間何かを断ち切る音が聞こえ、クロを追い詰めていたお化けすべてが腕などを切り裂かれ消滅した。
一瞬しか見えなかったが大きなハサミを持った大きな手が見えた。
恐らく理様がクロを助けてくれたのだろう。境内の掃除をした後、帰り際にこの周辺に住んでる全ての人や動物から災厄の縁が切れますようにとお願いしていたのを叶えてくれたのだろうか。断り様にどの様な意図があったかは知らないがクロを助けてくれたのは確かなので、頑張って神社の境内や本殿の掃除をしようと決意し、山を後にする。
山から出た後、クロが先導してくれたので2人を見つけるのは早かった。
2人がこともちゃんの家で寝ているのか分からないので、ことねちゃんに聞いたところ、こともちゃんが我慢できなくなり外に出たすぐ後にこともちゃんと一緒に2人が寝ていたそうな。
多分
百足様「子供達が出てきたぞ!夜廻りはよ回収しろ!」
夜廻り「おk!安全な神社に連れてったろ!」
ことも 「!!!」
夜廻り 「ついでにいつも逃げ回る子供捕まえた!こいつは家のベッドに寝かせとこ!あっ、ここも安全だし、2人も一緒でいいか!」
実際の2人は喋らないが、そんな感じで保護されたのだろう。鞘には百足様の目になる力もあるので、百足様が夜廻りさんを呼んでくれたのは間違いない。
こともちゃんの家で2人の無事を確認した後、バイトが終わったらまたくるとことねちゃんにいい。鞘を回収して神社にいき、本殿で刀の整備をして百足様へ刀を返納した。百足様へお礼をし、俺は急いでコンビニへ戻る。
いざという時用の装備は全部使い切った為、また補充をしなきゃいけないなと思った。
コンビニへ戻ると、店長が眠そうに店番をしていたのでお礼をいい、朝番がくるまで業務に勤しんだ。自分がコンビニに入った音で凄く店長がびっくりしてたのが少し笑えた。
目が覚めた私はお兄さんとハル、新しく出来た友達のこともちゃんと一緒に山を少し入ったところにある神社に来ました。神社はとても綺麗で人がいないのが不思議なくらいでした。この神社は断り様という縁切りの神様が祀られているらしく。
今回、山の神という一応縁結びの力を持つ神と関わりというか縁を結んでしまった為、大丈夫だと思うが念の為、お参りしておいたほうがいいとお兄さんが私とハルを連れてきてくれました。
(こともちゃんは暇なのか着いてきた。)
ハルは何も覚えて居なく、突然知らない神社に連れてこられて困惑しているが後で信じるかどうか分からないけど説明してあげようと思いました。
お兄さんが言うにはクロを助けてくれたのは断り様だというので、クロの分の感謝を込めてお参りをするとハサミで何かを切る音が3回聞こえたような気がしました。
もう大丈夫、帰ろうとお兄さんが少し眠そうに胡散臭い笑みを浮かべて言いました。神社の外へ向かう3人を見ながら、ハルを助けて駆け回った私の夜の旅がやっと終わったのだと実感しました。
3人を追おうと走ろうとした瞬間、目の前に何か落ちてきました、
カチャンと音が鳴って地面を見ると大きな赤い断ち切りバサミが落ちていました。
数年後、儀式を通じて人を閉じ込める呪いの小学校の霊や様々な事件の縁等を、時には概念、時には物理で断ち切り解決する赤いリボンが似合うポニーテールの少女がいたりいなかったりしたそうな。縁を結びそうな名前なのに断ち切ることが得意になってしまった少女の未来はどうなるかは別の話。
お終い。
一応本編はこれで終わりです。
初投稿のこともあり、色々文章が迷走していますがここまで読んでいただきありがとうございました。
深夜廻をやってご都合主義だろうがこんなハッピーエンドもあってもいいかと書き始めましたが一応完結までかけて良かったです。
この後は本編で回収できなかったお化け等を書いていけたらと思っています。
改めて読んで頂きありがとうございました。
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蛇足という名の短編
パーフェクト除霊教室。
突然だがユイちゃんを家で預かることになった。ユイちゃんの家での環境は思った以上に酷く、状況を知った家にいる婆さんが、神様が見初めた子供に何しとるんだといきり立ち半ば強引に預かることになったらしい。断り様に気に入られてるのは事実だし、今ユイちゃんを虐待していると逆に両親のほうが命が危うい。
両親も最近視線を感じるのか、お金を積まれたらあっさりユイちゃんを出してきたため、さらに婆様を怒らせることになった。
まぁあくまでこちらの話で、最終的にはユイちゃんの意思を尊重してどうしたいかユイちゃんに聞いたところ、こちらの方が良いということでうちで預かることになった。
それはともかく、ユイちゃんには、断り様のハサミを持っている関係上、お化けやそういう類のもの、あるいはそれを狙う不届き者に対する対処や心構えを教えなきゃならない。婆様がやるだろうと思っていたが、あんたがやるんだよと言われ、現在、ユイちゃんと夜の町に出ている。
夕方までハルとこともと遊んだあと、部屋で寝ていたお兄さんを起こし、眼帯をしている優しいお婆ちゃんが作ってくれた夕飯を皆で食べました。
誰かと食べるご飯は美味しいと言ったら、お兄さんは胡散臭い笑顔を浮かべて今度みんなを呼んで焼肉をしようと言いました。ハルが転校するまでまだもうちょいあるし、いっぱい思い出を作ろうと思いました。
断り様の神社でハサミを貰った為、ハサミを狙う人やお化けなどの対処の仕方を勉強する必要があるとお婆ちゃんが言いました。
お婆ちゃんからそのやり方はお兄さんから学べと言われて、お兄さんと一緒に夜の町を歩いています。
お兄さんは私が懐中電灯で照らしている白い人型のお化けに数発蹴りを打ち込み、動けなくすると、私にこいつを思いっきり殴れと言いました。
言われた通りに殴ると拳はお化けを素通りしてしまいました。
それを見たお兄さんは自分の命の感謝を拳に込めろと言い、自分なりに試してたら、少し時間が掛かったけどお化けに触れるようになりました。
そのまま叩き続けろと言われ、叩き続けているとお化けがだんだんと消えて無くなりました。
お兄さんに聞くと、現世に執着ししがみついている幽霊を痛みと恐怖で執着をなくさせて払うらしい。まだ普通の幽霊なら心残りを探し、解消させて除霊することもできるが、このお化けみたいに人を襲うようになったのは話も通じないのでこうやった方が早いとのことでした。
慣れないうちはバットを使いなさいと、普段持っているのと別のバットを私にくれました。
ハサミを使ったらどうかとお兄さんに言うと、断り様のハサミは気軽に使うものではなく、使うとしても私自身が知識と力をつけないと危険な為、滅多なことじゃ使わないようにと言われました。それとお化けを必要以上に怖がる必要はないが、決して侮ってはいけないと教えられました。
勉強すれば立派なコンビニの店員に成れるかなとお兄さんに聞くと、お兄さんはきっと成れるさと綺麗な笑顔で言いました。
でもたくさん勉強したとしても、人と同じぐらいの大きさやそれ以上のお化けをサッカーボールのように蹴っ飛ばすのは私には無理だなと思いました。
婆様「誰かあんたの野蛮きわまりないやり方を教えろと言ったんだい!あれはあんたぐらいしか出来ない方法じゃないか!ユイが可哀想だよ!」
バイト「えっ、ユイちゃんバットで普通にお化け殴ってたけど」
婆様「えっ、何それこわい」
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校庭にて
私は、校庭を逃げ回ることもと友達のユイちゃんとハルちゃん、その三人が全力疾走でぎりきりで逃げ切られる速度をキープしつつスキップしながら追いかける先輩を、校庭の隅で見ていた。
最初はユイちゃんの訓練だそうだが、ちょうどこともとハルちゃんもいた為、一緒にやることにしたそうだ。
私は、先輩が側から見ると女の子を追いかけてる変態にしか見えない為、保護者的な役割と何かあった時の説明の為に先輩にお願いされてついてきていた。
追いかけられている3人は必死で逃げて悲鳴を上げているが、楽しそうなのでいいとして、先輩は笑い声をあげながらスキップで追いかけてるのでとても気持ちが悪かった。普通に追いかけたらただの鬼ごっこになってしまう為、こんな奴に捕まりたくないと思わせることが重要だと先輩が言っていた。
確かにあんな風に追いかけられたら誰でも逃げる、私でも逃げる。夜に遭遇したらと思うと夢にでも出てきそうだった。
先輩は一人を暫く追いかけ回したら、反転し、また一人を追いかけ回している。三人に休憩と全力疾走を繰り返させ、体力と瞬発力を鍛えているのだろう、三人は先輩が他の人を追いかけてる時に休憩しているが、先輩は休むことなく、三人をスキップで出すには異様な速さで追いかけているので、見かけはともかく、相変わらずすごい体力だなと思いました。
逃げる三人の中で一番足が速いのはこともで、夜に出回ってることで鍛えられたのかその速さはもう私では追いつけないほどになっているが、先輩にとってはまだまだ遅いようで余裕でスキップして追いかけていました。
その次がユイちゃんで、先輩が重点的に追い掛け回しているせいか、息も絶え絶えで必死で逃げている。
最後にハルちゃんは必死に逃げていたが、力尽きたのか先輩に捕まって、捕まったまま、私にも見えないぐらいの回転でぐるぐる回られて目を回して私の横で寝かされていた。
こともも友達が増えて楽しそうだし、もうすぐハルちゃんが転校してしまうけど、この事も良い思い出になってくれるといいなと思う。
横を見ると、寝ているハルちゃんを心配そうに見る、ユイちゃんと一緒に先輩の家で預かることになった犬のクロとチャコ、そして一緒になってハルちゃんを見ているポロの姿があって、初めて会ったクロとチャコと仲良くできてよかったと思いました。
こともが空のリードを引きずりながら帰ってきて、先輩とポロが居なくなっちゃったと言った時はどうしようかと思ったけど。色々あったけどみんな無事で本当によかった。
ユイちゃんとハルちゃんが家で寝ていた時も、先輩から話を聞いて、本人がそう思っていなくても先輩がまた無理をしたのだと分かってしまった。町や皆の為になっているため、やめてくれともいえないので、先輩の負担をすこしでも減らしたいと思っているがなかなか難しい。
気が付くと二人とも力尽きたのか、目を回したこともとユイちゃんを抱えてきた先輩に、お疲れ様ですと声をかけ、三人と追いかけっこしていたのに汗ひとつかいてない先輩に飲み物と一応タオルを渡したのだった。
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こともアップデート
シフト作成や発注、バットと掃除用具を持って駐車場と店の周りの掃除を終わらせて、少し遅い夕飯を食べることにした。
バックヤードで新商品のパスタと一体誰が飲むのだろうと思う新商品の納豆味の飲み物をセットで頂いていると、珍しくお客様の来店を知らせるコンビニの象徴とも言える特徴的な音が店内に響く。
バックヤードから顔を出すと店の入り口に肩で息をしながらへたりこんでいることもちゃんがいた。こともちゃんから目を離し店の外を見ると、夜廻りさんが外からじっとこともちゃんを見つめて、悔しそうに身震いして消えていった。
よく隣町まで逃げ切れたなと感心しつつ、納豆味の飲み物をこともちゃんに差し出すと、ラベルを確認せずに一気に口にして盛大に吐き出した。
それを見て盛大に笑ったあと掃除用具を取りに行くことにした。
掃除が終わり、まだこちらをジト目で睨んでいることもちゃんに謝罪をして普通の飲み物を買って渡した後、こともちゃんに何か用があるのか聞いて見ることにした。
聞いてみるとうちの婆さんから夜出歩くなら懐中電灯だけだと危ないからとプレゼントを貰い、それを見せびらかしにここまで来たらしい。
貰ったのはいいが、使い方はお兄さんに教えてもらいなさいと婆さんに言われたようだ。別に朝でもいいじゃないというと、我慢できなくて今会いに来たとのこと。
なにを貰ったのかと聞くと、こともちゃんはカバンの中から一つのデジタルカメラを渡して来た。よく見るとデフォルメされたムカデ様のイラストが描かれており、子供が持ち歩くには丁度いいデザインをしていた。
よく観察してみるとただのデジタルカメラではなかった。
射影機だった。昔婆さんが持ってたやつを使ってみたことがあったが、殴った方が早いため結局使わなかった感じだが、婆さんがデジタルカメラを改造して射影機にしたのだろう。婆さんもこともちゃんとユイちゃんのことをすごく可愛がってるからな。最近、実の孫の扱いが適当すぎて泣けてくる。
ちょい前から色々変なものを取って来させられたのは、これを作るためだったんだなと納得した。
ことねちゃんも夜に出歩くこともちゃんを心配していたので、安全になるのはいいことだった。
こともちゃんは実戦で使い方を教えてほしいらしく、俺の腕を引っ張って行こう、行こうと急かすので、仕方なく外に出ることにする。
あまり店を空にするのは良くないが、少しならいいだろうと店の外へ出る。
コンビニの周りの掃除は終わっているため、橋を渡りながらフィラメントと呼ばれるレーダーの見方を教えつつ反応がある場所に行くと、いつもの白いやつがぼーっと電柱の下に立ってるのが見えた。光のないところにいくと白いやつは普通の子には見えなくなるが、射影機越しに見ると姿が見えることをこともちゃんに説明しつつ、白いやつに近づき、振り向いた瞬間にカメラのシャッターを切る。
フラッシュが焚かれ、撮影が完了するかと思ったら物凄い勢いで連射され、瞬く間に白いやつが消滅してしまった。
一回目の撮影時に消滅していたため、後の連射分は空振りとはいえ、このカメラは一体何と戦うんだというぐらいな過剰な威力と婆さんの過保護っぷりに苦笑が出た。
しかも封印された瞬間、除霊も完了しているらしく。カメラの写真には白いやつは写っていなかった。
射影機で一回の撮影で除霊または封印できるのは相当いいフィルムでないと無理だった覚えがあるため、テクノロジーの進化はやばいなとしみじみと実感した。
こともちゃんには撮影方法のほかに、充電が切れた時用に換えのバッテリーを持ち歩くことと、すこし調子が悪くなった時に対処できるように婆さんからメンテの仕方を教えてもらったほうがいいと教えた。
コンビニに戻った後、お化けなどに対処を出来るようになったが、あくまでも護身用であることや決して油断などしないことも伝えた。
こともちゃんに家まで送ると言ったがカメラを使う練習をして帰ると断られ、ウキウキとしてコンビニを出ることもちゃんを眺めていると、店を出て、駐車場に出ようかというタイミングで横から急に接近してきた夜廻りさんに捕まって消えていった。
油断するなと伝えた矢先にやらかしたこともちゃんと、一回逃げ切られて相当悔しかったのか早速リベンジに来た夜廻りさんに溜息を吐き、ユイちゃんにも何かプレゼントしないとと思いつつ、今日も夜は更けていった。
デジタルカメラ 一写=零式フィルム
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ちょっと先の未来の話
夜廻編はあと1話か2話ぐらいで完結できると思います。
俺はコンビニで夜勤のバイトをしている。
家庭の事情から一人暮らしをして高校に通っているため、あまり仕送り等に頼りたくないのでこのコンビニの時給が異様にいいのは助かっている。
個人的には高校も辞めてもいいかと思っていたが、学校の友人やサボるとうるさい奴や笑顔が胡散臭い店長にも高校は出といた方がいいと言われたので通い続けている。
高校生が夜勤をするのは違法だが、一人暮らしで金が必要なので事情を汲んでくれ
特に用がない金曜と土曜日の夜勤に入らせてもらっている。
週に2日出るだけで普通に生活でき、遊べるぐらいには稼げるので、高校に通っている身としては大分助かっている。
電車に乗って通うのが嫌だという理由で隣に越してきた、学校では親友の真似をしてお淑やかな女の子に振舞っている猫被り女のユイからこのバイトを紹介されて働き出した時はとんでもないところに来てしまったと思ったが、慣れてしまえば多少の命の危険はあるものの、毎日ではないし、俺が夜勤の時は二人で入る為安心して業務が出来る。
今日は部屋に置いてある、西洋人形(気づいたら部屋にいた)も大人しくしていたみたいなので電話で奇襲してくることもないだろう。
「そいえば、良樹のクラスって出し物なにやんの?」
隣で検品の作業をしている、須田先輩が声をかけてきた。
須田先輩は高校の一つ上の先輩で、卒業後はここのコンビニに就職することにしたらしい。卒業と同時に彼女と結婚するそうだ。もげろ
去年の夏にオカルトツアーしようぜと、とある村に連れていかれた時は酷い目にあった。こともからもらっていた改造スマホがなかったらガチでやばかった。
本人も懲りたようで最近は大人しくなった。彼女ができたからかもしれないな。もげろ
「喫茶店っていってましたね。あまり手伝ってないんでよく知りませんけど」
「嘘つけ、材料とかの買い付けとか見えないとこを全部お前がやってるって、ユイちゃんがいってたぞ」
「知ってたなら聞かないでくださいよ」
あの猫被り女め
「まぁ、良樹にも大分世話になったからな、喫茶店にも行かせてもらうよ。
美耶子と一緒に」
「来てもいいですけど、俺裏方なんで接客しませんけど」
「来た時だけこっちに出てくればいいじゃ……おっと電話だ」
目配せしたあと、須田先輩が店用の携帯電話に出る。今日は自分の部屋にいたので可能性は低いがメリーさんだった時に備えて身代わり人形を用意していたが、内容は商店街のおばあさんの体調が悪く、救急車を呼んだとのことだった。急病人などで薬などが必要になった時など、この街で夜に歩くのは危険なので始めたサービスらしい。今回は救急車が無事にたどり着けるように道の掃除と誘導が仕事だ。
「先に行って掃除してくるから、良樹は救急車の誘導を頼む」
須田先輩が刀袋を持って外に出る
「了解です。焔薙は見られないように気をつけてくださいよ」
須田先輩は背を向けたまま、腕をヒラヒラとさせて、夜の町へ出て行った。
須田先輩を見送ったあと、緊急時の連絡先を書いてあるプラカードをレジに立てかけ、誘導灯とお札を貼ったバットを持って夜の町へ駆け出した。
ハルちゃんの転校先→童守町
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夜廻編
始まり
ポロとボールで遊んでいるとトンネルの方へと不自然にボールが跳ねて転がっていってしまった。ボールはトンネルの奥へ転がって行ってしまったらしく、私の位置からはボールの位置は特定出来なかった。
夕方近く、まさに逢魔が時で、トンネルはもうすでに暗くボールを取りに行くのを躊躇うほどトンネルは不気味な雰囲気を醸し出していた。
しばらく悩んだが、ボールを無くしたらお姉ちゃんに怒られるかもとやっぱりトンネルに取り行こうとした時、後ろから声を掛けられた。
今日はやめといた方がいいよ。ポロもそういっているとお兄さんはポロの方を見て言うとその言葉に反応してポロが返事をして、お兄さんにじゃれついていた。
お兄さんは私が物心ついた時から知っている。お姉ちゃんの友達で単身赴任のお父さんについていっているお母さんが私達の保護者をお願いしているのもお兄さんのお婆さんだ。その為、よく家にいたりする為、血は繋がっていないが本当のお兄さんのように思っている。笑う顔がうさんくさいが優しいお兄さんだ。
学校の帰りなのか高校の制服を着ているお兄さんにもうすぐ暗くなるから送っていくよと体の向きを帰り道に変更され、背中を押され帰りを促された。
体の向きを変える際にお兄さんがトンネルを目を開けて睨んでいたような気がした。
トンネルは暗いし危ないから、ボールは明日取って来てくれるとお兄さんが約束してくれた為、胸のつっかえが取れた私はお兄さんの夜の街で半べそになりながら迷子になっていた大人を助けたら、その大人が最近ど田舎なこの街にできるコンビニの店長だったらしく、その縁でバイトとして雇ってもらえるようになったとのこと。本当はダメだが内緒で夜勤も可能で、金曜日と土曜日だけだけど夜勤ならお金も稼げるぜ!と胡散臭い笑みを浮かべて語っていた。給料が出たらお姉ちゃんと私にもなにか買ってあげようと言って、何が欲しいか考えておいてねと、色々欲しいものがあったのでお兄さんにお礼をいい、帰り道を歩いていく。
夕方にポロを連れて散歩をしているとお姉ちゃんかお兄さん、それか二人で来る時もあって、ポロを連れてお姉ちゃんとかとお話しながら帰るのはとても楽しい。
土でも崩れたのか道の端に石が転がって来るのが見えた。ちょっと不思議だなと思いお兄さんを見るとお兄さんは後ろをじっと見ているみたいで石に気付いた様子はなかった。
石を拾い上げるとポロが石投げて遊ぼうと尻尾を振って促して来たので、私は道路に石を放り投げた。
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黄昏
先輩のおばあさんが遠くに仕事に行くため、申し訳ないけど孫に餌をやっといてくれないかと言われ、普段より多めに夕飯の材料を買って家に着いた時、ポロの散歩に行っていたこともが帰ってきた。こともがポロの散歩に行く時間は先輩の帰宅時間と被っているため、大抵帰ってくる際はこともをからかう先輩の声やポロの元気な声が聞こえてくるが今回は妙に静かに帰ってきたので、不思議に思って振り向くと、青ざめた表情のこともがポロの首輪だけがついたリールをもって立ち尽くしていた。
ポロの首輪は何か強い力で引っ張られて千切れており、何があったか想像できるがその想像をしたくなくて、こともにポロはどうしたの?と聞くと
お兄さんとポロがいなくなっちゃったとこともがいい、こういう緊急事態に限って頼りになる先輩もポロと一緒にいなくなっており、頼りになるお婆さんも
いないと頭を抱えたくなるが、心ここに在らずのこともを安心させる為にお姉ちゃんが探してくるからお家で待っててねと伝え、昔先輩にもらった懐中電灯を手に黄昏の町にポロと先輩を探しに出かける。せめて自分の目で確認をするまで諦めないと心に誓った。
懐中電灯の明かりをつけて黄昏が終わり、夜になった道を先輩とポロを探して歩く。
夜の街を歩くのは母がいなくなり、いてもたってもいられずに夜の街に飛び出した時以来だ。あの時は町の正義の味方、百足マンとデフォルメされた百足のお面を被った先輩が近くにいてくれたお陰で不思議と恐怖が和らいでいたのだろう。
もうあの頃と違い体も大きくなったのに、家から出て少ししか歩いてないのにもう家に帰ろうかと思い浮かんできて、弱い自分に嫌気がさす。
電柱の近くには昔のようにうめき声をあげて近づいてくるお化けが出てきたが、小さい時は走って逃げていたお化けも早歩きでかわせる。近づいてきたお化けには先輩から貰った懐中電灯を向ける。見た目はただの懐中電灯だが百足様の神社で清められた水晶をもとに作られたため、その光には退魔効果があり先輩のお婆さんや先輩が使うと光を収束させて光でできた剣を作り、霊をも倒せるらしい。が先輩は殴ったほうが早いと私にくれた。
使う機会は停電した時ぐらいしかないと思っていたが、こんな機会があるとは大切に保管しといた甲斐があったというものだ。
一匹目の黒いお化けを避けた後、道を塞ぐ大きなお化けの目に向かって懐中電灯の光を当てる。
しばらく当て続けると大きなお化けは身悶え、逃げるように姿を消した。
こともとポロがよく行く散歩コースを見回りながら進んで行くと、時々こともとポロが遊んでいる空き地にたどり着いた。
いつもは歩いてすぐの場所なのに思ったより時間がかかるようだ。
人や犬がいるようには見えないが、念の為にと空き地を探していると後ろに人が立つ音が聞こえた。
咄嗟に懐中電灯の光を当てるように振り向くとそこには懐中電灯の光で眩しそうにしていることもがいた。
一人で家にいるのは不安だったのかついてきちゃったようだ。
ポロと先輩がまだ見つかってないけどすぐ見つかるから待っててねとこともに言うとこともは一緒にお家に帰ろうと私に言った。
ここまでくるのに色々怖い思いをしたのだろう。時間のロスは痛いけどこともを家に送り届けたあと探すのを継続しようと決めた時、こともの後ろに先輩が言っていた夜廻さんがいた。
子供を攫って仕舞ってしまう怪異だといってそこまで危険なやつではないといっていたが、先輩の基準での危険の為イマイチ本当かどうかわからない。
危険かどうかはともかくこともには刺激が強すぎる為、こともを後ろを見ないように茂みに隠れるように言い、こともが茂みに隠れたのを見届けたあと夜廻さんと対峙する。
夜廻さんに懐中電灯の光を当てるが何も反応も示さないまま、夜廻さんに掴まれ袋に入れられる。せめて無事にこともが家に帰れるように袋に入れられる瞬間に外に懐中電灯を放り投げた。
お化けの脅威度の説明に信頼度がない可哀想なコンビニ店員
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幼少期
物心がついた時から不思議なものが見えた。
最初から見えているものだから他の人が見えていないのが分からずに伝え、嘘や冗談と受け取られることが多かった。見ていて気持ちがいいものでもないし、大人達は見て見ぬ振りをしているんだなと思っていた。
近づくのは怖かったので遠目に観察していると気付いたことがあった。
普段日中は電柱の影や暗いところでぼーっと立って歩いている人を半笑いで眺めているだけの黒い人影が、人が怪我をする等、何か不幸なことが起きる前に起きる人に纏わり付いていた。
何気なく見てた時は、あんなに頬ずりするみたいに半笑いの顔をこすり付けられ、抱きつかれているのに平気な顔で歩いているのですごい人だなと思っていた。
そのまま抱きつかれている人が歩いて赤信号の交差点に差し迫った際、纏わりついていた黒い影が急に離れたかと思うとその人の背中を押して、その人は交差点を通過しようとしたトラックに轢かれてしまった。
幼いながらあれはあまり良くないものだとは感じていたが、やっぱりそうだったと確信した。
そのあとも時々見かけたが、纏わりついていたやつの大きさはまちまちで、影が大きいやつのほうがよりひどいことを起こすことが分かった。
ある日小学校のクラスメイトの一人に黒い影が纏わりついていた。
そいつは教室中央の一番後ろに座っている俺の目の前の席に座っており、黒い影が背中に乗っているため後ろの席の俺には黒板が見えなかった。その背中に乗せてるものをどかせよと前の席の奴に言うと、何言ってんだこいつみたいな目をされ、余計に腹が立った。
授業内容に興味はなかったが、その時なぜか黒板に書かれる文字をいかに早く綺麗に書けるかという遊びにはまってた俺は横から体を乗り出さないと黒板が見えないため、イライラしていた。
一、二時間目は我慢していたが、3時間目で遂に切れた俺は目の前の席の背中に乗ってる
黒い影をおもいっきり殴りぬいた。
黒い影が横に吹っ飛び隣の席の子供机を倒しながら転がる。
見かける黒い影は車や人が当たってもすり抜けていた為、まさか殴れると思っていなかった俺は驚きで止まっていた。
その間に黒い影は起き上がっていたらしく、半笑いの顔を満面の笑みにしてこちらに飛びかかってきた。
そいつを迎撃する為に椅子を投げたが、椅子は黒い影を通り越し、後ろに消える。投げた椅子には誰も当たらなかったようで少し安堵した。
黒い影はすり抜けた椅子の方に気を取られていた俺に体当たりをして、吹き飛んだ俺はそのまま教室から廊下に繋がる扉に叩きつけられる。叩きつけられた衝撃で扉がはずれ廊下側に倒れる音が聞こえたが気にしている余裕はなかった。
次飛びかかってくる前になんとかしなくちゃいけないと思った俺は、近くにある掃除用具箱からモップを取り出し武器にして黒い影を迎え撃つ。モップを武器にして黒い影を叩くと、モップはすり抜けず叩くことができ、黒い影が怯んだのを確認したのち、めったうちにした。しばらく続けていると黒い影が消滅した。
倒せた達成感に浸っていると騒ぎを聞き駆けつけてきた教師につかまった。
俺はつかまった後に丁寧に説明したが、頭がおかしくなったと思われそのまま病院につれていかれた。
病院でカウンセリングを受けていると、道行く人は見て見ぬふりをしているのではなく本当に見えていないということを皮肉にも理解することができた。
迎えに来た両親が何も言わずによく頑張ったなと言ってくれたことだけが救いだった。
病院から復帰して登校してみると、クラスメイトの対応が一変していた。
聞こえるヒソヒソ声に、目を合わせると目をそらしたり、馬鹿にした顔をされる。
それも目の前の席のやつにもされて、曲がりなりにも助けてやったのになんでそんな顔をされなければいけないのかとイライラしたのを覚えている。
そのままクラスメイトの対応はよくなるどころかだんだんといじめに発展し、運動をそれなりにできる俺には直接危害が加えられることはなかったが、その分陰湿な方向へ発展していった。
俺が精神的に大分弱っていたのを見かねた両親が、不思議なものが見えるのなら祖母に対処を教えてもらってきなさいとおばあちゃんがいる田舎の町へ引っ越すことになった。
犬の鳴き声が聞こえ、顔を舐められる感触がした。
目を覚ますとあたりはすでに真っ暗で崖の上にある道路の街頭から届く光で目の前にいる犬がポロだということが分かった。
ポロの無事を確かめて、自分の状態を確認することにした。
ポロをかばって車と接触する瞬間に衝撃を後ろに流したつもりだったのだが、足りなかったらしく、肩が外れていたのと落ちる際に木の枝とかで切ったのだろう傷があちこちにできていた。
肩を嵌めなおし、動くのを確認した後、こともちゃんにポロの安全を伝える為、俺はポロと一緒に夜の街へ歩き出した。
車に乗っていた薬物中毒者のようなやつれた顔をした男はぼっこぼこにすると心に誓いながら。
両親「対処法は自分たちでも教えられるが、仕事で移動できないため、婆様に頼もう!」
深夜廻の時の彼ならポロを担いでそのまま運転席へダイナミックエントリーで車にのっている男は終了していました。
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幼少期2
婆様と祖父の家に預けられて、町の学校に通うことになった。
学校へ行った時に生徒の少なさと陰気臭さに眉を顰めた。
黒い影を付けている人はいなかったが、クラスでいじめが起きていた。
見ててイラついたので辞めろといってもやめなくて、こちらに手を出してきたので丁寧に一人ずつボコボコにしてあげた。
いじめはなくなり、いじめられていた子は転校したが、俺は同じ学年では危険人物になってしまい、孤立してしまった。
婆様は頭を抱えていたが、祖父は学校から帰った俺に良くやったなと頭を撫でてくれた。悪いことをしたのになぜ褒めるのかと聞くと、ちゃんと加減をして怪我など後に残るものを残さず、痛みと恐怖だけ与えていじめをやめさせたのを評価するとのことだった。
暴力は良くないが使わないとどうしようもないときもあるからなと祖父は言っていた。
友達がいない俺は放課後になると公園で壁にサッカーボールを蹴り、跳ね返ってきたボールをバウンドさせずに何回蹴り返せるかという遊びや、祖父が管理しているムカデ様の神社をお参りした後掃除し、夕食の匂いがする商店街を祖父や祖母が迎えに来るまでぼーっとしていた。
黒い影やお化けへの対処の仕方は主に祖父のいうことを聞いていた。
婆様の言っていることと呪文と道具は使い方や覚えるのが難しいのに対し、祖父が教えてくれたのは身体を鍛えることと投げるものに生きることの感謝や祈りを込めれば黒い影に石などを当てられるという分かりやすいことで、時間をかければより安全に倒せるようになった。
普段仲がいい婆様と祖父は俺の教育方針についてはソリが合わなかったらしく、
婆様の教えたことを覚えず、祖父の言うことだけを吸収していく俺にぐぬぬとしていたが、俺があまり覚えないことより祖父のドヤ顏にイラついていたようだった。
俺がある程度動けるようになると祖父が夕食後に俺を夜の町に連れていくようになった。夜の町には人じゃない黒い影やらデカくて道を塞いでいる奴やらがたくさんいたが、一つ一つ2人で協力して倒していった。
この町はお化けやらが多いが、ムカデ様のお陰でこれぐらいで済んでいると祖父は言っていた。祖父と一緒にお化け退治は楽しかったが、こんなことやってても見えない人には何やってるか分からないし、感謝もされないのになんでやってるの?と疑問に思っていた。
ある日、夜の町でパトロールと言う名の怪異退治が終わった後、祖父に聞いてみると、そうだなと苦笑したあと、やらないとこの町は大変なことなるから誰かがやらなくちゃいけない、その誰かがわしらなんだよ。と俺と目線を合わせて言ったあと立ち上がり歩き出した。
納得いかなそうな顔をしている俺に振り返り、人に感謝されなくてもムカデ様はちゃんとわしらの事を見ているよ。それに人知れず町を守る。ヒーローみたいでかっこいいだろ?と茶化して笑った。
たしかにカッコイイと俺も笑った。
廃線になっている線路に出た時は来るはずのない電車に追いかけられていた。
ポロを横に放り投げ、落ちている廃材を拾い、線路にあるレールをおもいっきり殴りつける。するとレールが外れ、追いかけてきた電車は脱線し、森に消えていった。久し振りに殺意のある現象に冷や汗を浮かべた。
気を取り直し、ポロと合流して先を急ぐことにした。
祖父「子供にそんな難しいことやらせようとしても、余程のことがないと覚えんだろう、それにしても大して祈りや感謝を込めてなくても干渉できるとは我が孫恐ろしや!将来が楽しみだな、なぁ婆さんや」
婆様「ぐぬぬ」
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夜半
先輩は町に来て直ぐに有名になった。
曰く、転校して早々にいじめっ子数名を一人でボコボコにした。
その時に先輩のお婆様は、先輩と一緒に集められていたいじめっ子の親と子に説教したらしい。
説教が効いたのか、お婆様が恐ろしかったのか、クラスかからいじめはなくなった。
私は学年が違ったので先輩のことは話でしか知らなかった。
友達がいないのか、休み時間や昼休みに校庭にある背の高い鉄棒でひたすら大車輪していたり、サッカーボールを壁に思いっきり蹴った後、オーバーヘッドで壁に蹴り返して遊んでる姿が見えたが、特に話し掛けようとも思わなかった。なんか怖いし。
学校から帰った後、お母さんと一緒に買い物に行く時に先輩を目撃をすることがあった。
商店街の周りを腰にタイヤを付けて、自転車に乗ったお爺さんに追いかけられている姿や、買い物帰りにいつも神社へお参りする際に境内の端で木刀を素振りしているのをよく見かけた。
お母さんが先輩の姿を見て元気ねぇって笑いながら見ていたのが印象的だった。
先輩の蹴り返すボールが二つになった頃、いつも通りに買い物の帰りにお母さんと一緒に神社に行くと境内を掃除しているお婆様と、ボールを三つ同時にリフティングしながら掃除をしている先輩に会った。
お母さんがお婆様と話し込んでしまったので手持ち無沙汰になった私がリフティングしながら掃除をしている先輩を眺めていると、視線に気付いた先輩がボールを一つ私に蹴り出した。
ボールは放物線を描き、取ろうとしていないのに私の手にすっぽりと嵌り、先輩は笑いながらこうやるんだよと教えるようにゆっくりとリフティングをした。真似しながらやっていると最初は全然出来なかったが、やっていくうちに一つのボールならなんとか数十回ぐらいなら落とさずリフティングできるようになり、ドヤ顔で先輩を見ると笑いながら拍手をしてくれた。
まだお母さんとお婆様が話し込んでいるので、先輩と話していると、本当はキャッチボールがやりたいが一人じゃ出来ないから困ってる、と言ったので境内では狭いので公園でキャッチボールをやろうという話になり、公園で先輩のお爺さんが迎えに来るまで一緒に遊んだ。
当時は分からなかったが、先輩とお爺さんと一緒に帰る際、黒い影みたいなものとかを目撃していたが、その時はまだ影が変な見え方をしているだけと思っていた。
そのあとは先輩と放課後に一緒に遊ぶようになり、あまり運動が得意ではなかったけど先輩と遊んでいたお陰か運動もある程度できるようになって楽しくなってきた。先輩の蹴り出すボールの数が三つになり、サッカーボールが野球ボールに変わって一人で打って、跳ね返ってきたボールをさらに打つセルフバッティングセンターになった頃。
先輩のお爺さんが亡くなり、その1週間後ぐらいにお母さんが買い物帰りに神社へ向かった帰りに突然いなくなった。
いなくなる前に頻繁に左目を気にしていたのが印象的だった。
夜廻りさんがコンテナ越しに誰かは分からないが、私よりは大人だろうが、そこまで年齢がはなれていない男の人と話をしていた。男性は殺された婚約者の無念を晴らす為にこの町で起こっている不思議な事が関係していると考えこの町に来たのだとそういう。
夜廻りさんにコンテナに入れられていた私がすぐに脱出してポロと先輩を探そうとすると、コンテナから出る時に歩いてくる足音が聞こえ、念のためにコンテナの扉を閉めて外から開かないように中で栓をした際に話しかけてきたのがこの男性だった。
男性は調べていくうちに婚約者が殺されて行方不明になっているのは夜廻りさんが原因ではないかと疑ってるいるらしいが、私が夜廻りさんは中学生ぐらいまでの子供しか攫わないと昔先輩に教えてもらったことを覚えているかぎりに男性に伝えたところ、この町に先輩やおばあさんみたいに詳しい人がいるのを知らなかったらしく、先輩やおばあさんを紹介してほしいと言ってきた。
しばらく話をしていたが、受け答えもしっかりしているし、先輩やポロも一緒に探してくれるらしいので、見つかったら先輩に色々話してもらえるように働きかけるつもりだ。
私は男性と一緒にポロと先輩を探すために、コンテナにしてある閂を外し、外に出た。
コンテナ内には色々とカンテラやら非常食、それとちょっと目のやり場に困る雑誌などが色々とあり、誰かが日常的に出入りしているコンテナっぽいが、誰が使っていたのかは分からなかった。
大きいムカデのお使いが終わり、ムカデさんにお姉ちゃんはどことダメもとで聞いてみるとムカデさんが鈴のような音を数秒間鳴らして、しばらく待つとポロを担いだおにいさんがものすごいスピードで走ってきた。わたしは電話をとって不思議な空間にきたのにおにいさんは普通に走ってきたように見えてびっくりした。
おにいさんはムカデさんの近くにきてポロを降ろすとやっとわたしがいることに気付いたのかびっくりしたあと、もう夜だから帰りなさいといいました。
お姉ちゃんが見つかるまで帰らないつもりなのでむっとしているとまたムカデさんが鈴のような音を鳴らしました。するとおにいさんがムカデさんの方向を向いてお辞儀したあと、結界の修復を手伝ってくれたんだなありがとうとわたしの頭を撫でてくれました。
お姉ちゃんは夜廻りさんが保護(誘拐)したらしく、お姉ちゃんは廃工場にいるよと、おにいさんはそうわたしに言いました。
コンテナの中にいてくれれば大丈夫だが、色々とみられるとまずいから早く助けにいくぞ!それとポロか俺から離れるなよ、とおにいさんはわたしに言い、一人から二人と一匹になったわたしたちはお姉ちゃんを廃工場へ迎えに出発するのでした。
私たちが出発する姿をムカデさんが見ていておにいさんを見た後、鈴のような音を出していましたが、心なしかすこし呆れているような感じがしました。
なんで行方不明なのに殺されたって分かるんですかね(すっとぼけ
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夜更け
お母さんがいなくなり、私はお母さんを探しまわった。
いつも一緒に買い物に行く商店街を駆ける、途中、お肉屋さんのおばちゃんがいたので藁に縋る思いでおばちゃんに聞く。
「お母さんをみませんでしたか?」
息も絶え絶えに必死に聞いてくる私に対して、店仕舞いの準備をやめ、私の話を聞いてくれました。
「先ほどことねちゃんと一緒に帰ったのを見たっきりだね。一緒に帰らなかったのかい?」
「一緒に帰ってたのに、急に道端に黒い手のようなものが見えた気がして、それを見てたら急に隣のお母さんが消えちゃったの」
「……分かった。おばちゃんが探しとくからもう、日が暮れるからことねちゃんは家にお帰り、帰れないなら私の家で休んでいくかい?」
私の話を聞いたおばちゃんの顔が一瞬険しくなり、私の視線に気付いたのか私を安心させるような笑顔になった。
「ううん、お母さんが見つかるまで帰らない」
「夜は危ないからね、じゃあおばちゃんの家で今日は休んでいくかい」
おばちゃんは少し困った顔をしたあと、私の手を取ろうとする。
手を取られたらお母さんが探せなくなると思った。当時の私はおばちゃんから逃げるようにまたお母さんを探して駆けだした。
途中まで追いかけてきていたようだが、だんだんと遠ざかるおばちゃんの声がやがて聞こえなくなるのを背に、黄昏時も終わりを告げ、夜が町を支配していく中お母さんを探しはじめた。
完全に夜を迎えて辺りが真っ暗になったころ、私は夜の町を歩きながら一人でお母さんを探していることを後悔し始めていた。普段歩いてる道や遊んでいる公園等、昼間には人の姿が見えて暖かさがあるところも夜には人が一人も歩いておらず、聞こえる音だって微かな虫の声ぐらい。
それだけでも怖いのに、黒い人型のようなものやビニール袋みたいなものを被ったお化け等があたりをうろちょろしているのである。
お化けたちは私を見つけたら脇目も振らず追いかけてくる奴や、私が驚いて声を出したり駆けだすと凄まじい勢いで追っかけてくる奴など様々で、お母さんを探したい気持ちより恐怖心が若干勝ってしまった私は家に帰ろうとしたが、帰り道も大きいお化けに塞がれてしまっていたため、結局家に帰れないまま私は半べそをかいてお母さんを探し回ることになった。
声を出したいが、声を出したら音に反応するお化けに襲われるので恐怖と戦いながらお母さんを探す。
お化けを避けながら一つ一つ場所を探していく内に、家からちょっと奥まった所にあるトンネルにまだ行ってないことに気付き、無性にそこが気になった私は目的地をそのトンネルに変えて歩き出した。トンネルに向かう途中、黒い人型のお化けが五人佇んでおり、道が塞がれて通れなくなっていた。
姿を見せれば追っかけてくることは既に分かっていたので、ここはわざと誘い出して出来た隙間から一気に駆け抜けようと思っていた矢先、後ろから物凄い勢いで駆けてくる音が聞こえ、振り返ると――
ムカデのお面を被った先輩がバットを構えたまま黒い人型のほうへ飛び込み。
飛び込んだと思えば眼前の一人の頭へとバットを振り抜き。
そこで止まるかと思えば、なんと降り抜いた勢いのまま回転しながらもう一人の胴を振り抜き――とまるで踊るようにして瞬く間に五人の黒い人型は姿を消されていた。
周りにお化けがいなくなったのを確認していた先輩が、物陰から見てる私に気付き、
ポーズをつけてこう言った。
「ムカデマン 参上!」
「夜廻さんが 裏返ってるのは久しぶりにみたな、裏返っているってことは……」
気持ち悪い肉の塊みたいなのに追いかけられているのに、お兄さんはいつも通りの胡散臭い顔のままそうつぶやいた。
もうすぐ廃工場に繋がる橋を渡るというというタイミングで急にわたしたちの後ろに出てきた気持ち悪い肉の塊を見たお兄さんが私を抱え、ポロついてこいと声をかけて駆けだした。ものすごいスピードで走っているのに私にあまり振動がこないのにびっくりしてる。
私を抱えたまま廃工場に来たお兄さんは廃工場のゲートを少し開け、私とポロを中に入れた後、ゲートを閉じて追ってきた気持ち悪い肉の塊のお化けと対峙した。
「その姿を見るのは久しぶりだね、正気に戻してやるから待ってろよ」
肉の塊がお兄さんに飛びかかった。
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深夜
小説より前に書きはじめたので色々と設定に差異がありますが
とりあえずこのまま書き続けようと思います。
直し始めると失踪しそうなので
仕事などが落ち着いたらリメイクでも作ろうと思います。
ムカデマンこと、先輩と一緒に気味の悪いトンネルを抜けると辺り一面の草原と奥に神社の入口だろうか、赤い鳥居のようなものが見えた。
結構幻想的な光景で綺麗なところなのに、感じるのは寒気だけだった。
そんな私に気が付いたのか、先輩はバットを握り直すと私に手を差し伸べて
「さっさとお母さん見つけて、こんなところから出よう」
明るい声で励ましてくれ、少し元気が出た私は先輩の手を握った。
先輩の手は妙に冷たく、汗ばんでいた。
境内の石段を上っていくと道の途中で黒い手のお化けが私たちを追いかけるように襲ってきた。先輩は襲ってくる黒い手を片手のバットで倒しながら私の手を引いて進んでいく。流石の先輩も疲れるのか、道の途中にある小さな祠に持ってるお守りを近づけると社が淡く光り、襲ってくる黒い手が近寄らなくなるらしく、休憩しながら登っていく。
石段を登り終え、先輩と私は孤独な神社にたどり着いた。
あたりを見回すと社を囲むように道中休憩に使っていた小さな祠が立っており、よく見ると祠と祠の間に地面に線が彫られており、社とこちら側を切り離しているようにも感じられた。
先輩と一緒に社のほうへ近づいていく、彫られていた境界を超えると辺りから聞こえていた、草を揺らす風の音も、穏やかな虫の声も一切聞こえなくなっていた。耳鳴りを誘うほど静かになったとき、先輩の足が止まった。
どうかしたのかと先輩の方を見ると、先輩は首から下げていたお守りを外し私に掛けた。
どうして急にお守りを私に渡したのか疑問に思っていると。
「お母さんを見つけたら、すぐここから出るんだ。お守りさえあれば大丈夫だと思うから」
「お守りを渡しちゃったらムカデマンはどうするの?」
「大丈夫、俺にはこれがあるから」
バットを軽く振ると静かな空間にバットが空気を斬る音が聞こえた。
「さぁ、早くお母さんを見つけよう」
先輩の手を握り直し、先を進むと社の入り口にお母さんが倒れているのが見えた。
「お母さん!」
先輩の手を離して、私はお母さんに駆け寄る。
揺さぶっても声をかけると少し身をよじった後
「……ことね?」
お母さんが無事だったと安心した時、低い吐息が社の中から吐き出された。
それと同時に辺りに漂う鉄の臭い、噎せ返るような大量の鉄の臭いが近づいてくる。
「……ひぃ……」
先輩か私どちらかの悲鳴かは分からないが声が漏れる。
大きな顔がそこにいた。
具体的には顔のようななにか、ヒトが複雑に絡み合って顔の形になっている。
人で出来た肉団子のようだった。
全身が青白く、一本も毛が生えていない、顔にあるのは三つの空洞のみで男性か女性とも分からない人間の体が顔を形成していた。
口の部分の人から骨が出ており。側から見てるとまるで歯が生えているようだった。
さらに上から大きな手が二本落ちてきて、まるで巨人の腕と手がそのまま出てきたようだった。
「-----」
顔が雄叫びをあげる。
今まで聞いたことのない叫びだった。
目の部分にある大きな右目と左の大小様々な目から向けられる想い、
それはとてつもなく、深い悪意と敵意だった。
足が震え、胃液が込み上げてくる。
見た目以上に、敵意に耐えられなくなる。
体が動かなくなる。
「----」
先輩が雄叫びをあげた。
それは悲鳴というより、恐怖などを振り切る叫びだった。
先輩の雄叫びを聞いて少し、体が動くようになった。
「早く、お母さんを連れて逃げろ!」
といい、叫びながら大きな顔の化け物に向かっていく。
先輩と顔の化け物の間に大きな腕が割って入るが、先輩がバットで弾き飛ばす。弾き飛ばしている間でもう片方の手が先輩を弾き飛ばそうとするのを先輩
は地面に体がつくぐらい体を傾けてかわす。
「はやくしろ!出られなくなるぞ」
ぼっーと先輩の戦いを見ていた私に先輩がどなる。
慌てて意識が朦朧としているお母さんを歩かせて、祠の境界からでる。
するとさっきまで感じていた、恐ろしい敵意と鉄の臭いがなくなった。
振り向くと静かな社がたっており、先ほどの化け物と先輩の姿はなかった。
先輩はどこにいったのか、と疑問に思っていると草むらの方から黒い手が出てきたので私は慌ててお母さんと神社から逃げ出した。
お守りを祠に翳しながら神社を下っていく。
お母さんは意識が朦朧としており、動きが遅かった。
祠のおかげでまだ凌げているが、黒い手は減るどころがどんどん増えてきており、トンネルに着く頃には後ろをむけば手で視界が埋まるほどだった。
その光景のあまりの恐ろしさに今、お母さんを置いていったら逃げられるのだろうと想像する。
しかし今逃げたら先輩と一緒に助けた意味がなくなると自分を奮い立たせ必死で次の祠を目指す。
なんとか次の祠まで逃げたのはいいが、周囲を完全に黒い手に囲まれしまった。祠の方も長時間効果を持続させるには力が弱いみたいでだんだんと光が狭くなってきており、もうだめだとお母さんに抱きついた。
突然、光が黒い手の間から生えてきて周りの黒い手を吹き飛ばした。
よく見ると、先輩のおばあちゃんが懐中電灯から光の剣みたいなものを振り回して黒い手を倒していた。
黒い手が全部いなくなり、カメラを取り出してあたりを撮影し終わった後
呆然と見上げている私に
「よく頑張ったね。あとは私に任せて先にお帰り」
と優しい笑顔でそういった。
夜廻さんの突進をすれ違いざまに避け、バットをフルスイングする。
肉袋を叩いたような汚い音と共に夜廻さんが吹き飛び、そのまま電柱に突き刺さった。まるで団子のように突き刺さった夜廻さんを見て
「あっ、やべ」
とお兄さんはぼそりと呟き、咳払いをして
ピクピクしている夜廻さんにお札を貼り付け
「まぁ大丈夫だろう、先を急ごう」
と私とポロを促した。
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丑三つ時
大きな手が自分を捕まえにくるのを躱し、躱すと同時にバットで殴りつける。
大きな手が吹き飛ぶが、ほかのお化け等と違い消し飛ばせない為、もう片方の手に対処している間に復帰してしまい。前で叫び声やら呻き声をあげている白い人型の集合体に近づけない。
相手に有効打を与えられず、体力だけが削られていく。
相手もそれが分かったのか、明らかに自分から距離を取って白い人型を震わせて笑いながらこっちを見ていた。
舐めやがって。
もう一度大きな手がきた。
次は両手で挟みこむようにきた手をバットを横にしつっかえ棒のように両手の間に入れる。
一瞬だけ両手の間にバット分の隙間ができる。その隙間から両手の範囲外へと脱出し、バットをつかんで外にでて、大きな手が来る前に本体の白い人型の集合体に駆ける。
叫び声と共に後ろから大きな手がくる気配を感じるが、無視して全力でバットをやつの一番大きな目玉に叩きこむ。
生々しい破裂音と共に奴の右目から血が噴き出す。
ひと際高い叫び声と共に攻撃が通じると判断し、そのまま追撃でバットを振り上げる。
振り降ろそうとした瞬間、バットを何かに掴まれた感触がし、横からすごい衝撃がきて吹き飛ばされる。
転がりながら体勢を整えて様子を見ると。後ろから迫ってきていた大きな右手にバットを掴まれ、左手に叩かれたようだ。
右手はバットを遠くに投げ飛ばした後、左手と一緒にこちらに迫ってくる。
右目を潰されてお冠なのか、大きな両手のほかに小さい黒い手が沢山神社の軒下から湧いてきていた。
手元にバットがなく、両手はともかく沢山の黒い手からは間違いなく逃げ切れないと判断した。まぁことねとことねのお母さんは助けられたから良しとするが、そのままやられるのも癪なので命尽きるまで抵抗してやると身構えた瞬間、大きな光が神社全体を包んだ。
振り返ると神社の境内に配置されている社が光り、社の一つに婆様が立っていた。
「まったく、無理すんじゃないよ、馬鹿孫が」
婆様が息を切らしながら喋った言葉を聞いた瞬間、意識が途絶えた。
意識が戻った時には病院にいた。どうやら戦っていた時には気付かなったが、叩かれたときに腕と足を折っていたらしい。
婆様がきてくれたが、俺は泣いた。説教がつらいとかではなく、婆様の右目には本来あるはずの目が無かった。
こともちゃんがことねちゃんのお守りを見つけ、ことねが俺の秘密基地のコンテナにいたことに気付き、こともちゃんをコンテナの外に少し待たせて中を確認する。
隠してあった秘蔵のコレクションは見つけてないらしく、安心した後、走り書きのようなメモを見つけた。
「さらわれたひとはトンネルのむこうがわで、いけにえになる」
真っ黒なクレヨンで書かれていた。筆跡は急いで書いてあるみたいで誰のものか分からないが恐らくことねちゃんだろう。
ひらがなで書いてあるってことはこともちゃんが読んだときにトンネルの向こう側にいかないように警告でもしようとしたのだろうか
そうか、あんなところ2度も行きたくないだろうに。
元からことねちゃんを見つけたら向かおうと思っていたからことねちゃんを迎えにいくついでに山の神、いや奴を神というのはやめよう。奴との決着をつけるとしよう。
こともちゃんにお姉ちゃんを迎えにいくけどどうする?と聞くと、ポロが元気よく返事したあとこともちゃんも付いていくと言ったので、お姉ちゃんを見つけたらすぐ山から下りろと言って2人と一匹はトンネルへ向かって歩き出す。
道を歩いていると鈴の音が聞こえ。なんとなく百足様が呼んでいる感じがした。
神社へ歩いていくと神社近くの公衆電話が鳴り、電話を取ると赤い世界に変わった。
そのままこともちゃんとポロと一緒に神社へいくと一瞬百足様の姿を見せたあと神社の襖が開き、奥に昔じいさんが使っていた刀が置いてあった。
刀を取り、百足様にお礼をいい公衆電話から元の世界に戻る。
刀を取り出してみると月と電灯に照らさられた刀は青白く光ってみえ、まるで大きなムカデのように見える。この刀を貸して頂けたということは百足様も自分を認めてくださったのだろうか。
昔やられかけた時とは違う。術等も、苦手だが必死で覚えた。
ポロを殺そうとしたこと、ことねちゃんを攫おうとしたこと、そして婆様の目玉のお礼をしなければならない。刀と鞘の籠の近くによってきた霊が消滅していくのを見ながら覚悟を決めた。
これが完結したらコープス編かSIREN編どっちやろうか悩み中
やるなら別枠で立てます。
夜半ででてた男の人はどうなったのか?
夜廻の小説読めばわかるよ!
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夜明け
奥がまったく見えないトンネルの前にたどり着いた。
トンネルに入る前に再度こともちゃんに本当についてくるのかと確認する。
こともちゃんの意思も堅いようでここまで来たのに家で待っているのは嫌だとついてくるらしい。昔のことねちゃんといい、この町の女の子はとても強いらしい。
トンネルに入る前に家に寄り、取ってきたものをこともちゃんに渡す。
首から下げるライトととある石を使った懐中電灯、いわゆる霊石灯だ。
一通り使い方をトンネルに入る前に教えておいたので大丈夫だと思うが、万が一があるため、自力で戻れる力は持っていたほうがいいだろう。使う機会は俺が作らせないが。
霊石灯はあげてもいいが、婆様から貰ったものだしな、貸すだけにしとこう。
婆様だったら言えば俺が持っているのより良いのをこともちゃんに渡すだろう、俺とは比べ物にならないくらい猫可愛がりしてるしな。
ポロが早く行こうと吠え始めたので、まるで一切の光を拒絶するかのようなトンネルの中へと2人と一匹で足を踏み入れた。
中に入った時に感じたのは、見られているという気配、しかし襲ってくる気配はしないため
そのまま進む。こともちゃんもなにかしらの気配を感じるらしく、顔色が悪い。
しかし、ポロが一鳴きすると、見られている気配が消える。
犬の鳴き声には魔を払う効果があるっていうが、本当だったんだなと感じた。
そのままトンネルを進むと奥から目玉のついた大きな手が迫ってくるのが見える。
迎撃しようとした瞬間、後ろからものすごい勢いで夜廻りさんが走ってきて。
袋に石でもたくさん詰めてきたのかジャラジャラと音がなっている袋を大きな手に叩きつけまくっていた。大きな手も最初は抵抗していたが、音とは裏腹に威力が物凄いらしく抵抗が弱くなっていく。夜廻りさんは大きな手の動きが鈍くなった時を狙って袋の中に放り込みそのうえに座ってしまった。
座りながら手のような触手で顔を拭い、こちらに早く行けと言わんばかりに手を振っていた。下に敷いている袋はごそごそいってるが、夜廻りさんは知らんぷりである。
手伝ってくれるならありがたいとそのままトンネルの奥へと歩を進めた。
トンネルを抜けると鬱蒼としげった草原とその先に石段の上に神社が見える。
ほたるでも飛んでたら幻想的ないい景色だろうに、それを禍々しい気配が台無しにしていた。気配的にあまり悠長にするのはよくないと思い、こともちゃんを脇に持ち、ポロに付いてこいといい駆けだす。
近づいてくる小さな手が刀と鞘の加護と道の途中にある祠のおかげで近づいて来ない為、
スムーズに孤独な神社までたどり着くことができた。
見回すと社を囲むように道中休憩に使っていた小さな祠が立っているのが見える。
いよいよか
鞘から刀を抜き、鞘をそのままこともちゃんに渡してからこれから出てくる奴は俺が倒すから、やつの周囲にある小さな祠に鞘を掲げて光の線をつなげてくれとお願いする。
こともちゃんは顔色が悪いながらも頷き、ポロもこともちゃんを守るといわんばかりにしっぽを振りながら元気に吠える。
彫られていた境界を超えると辺りから聞こえていた、草を揺らす風の音も、穏やかな虫の声も一切聞こえなくなる。
社の前には倒れていることねちゃんの姿が見える。
こともちゃんがお姉ちゃん!と声をかけるが、返事がない。
ことねちゃんに近づこうとしたとき、人でできた肉団子の顔が出てきて叫び声をあげた。
あぁ、ついにこの糞野郎を倒すことができる。
こともちゃんとポロに頼んだぞ!声をかけて大きな手を2つ出した山の神へ駆け出した。
お兄さんが珍しく目を開けて走っていく。大きな手がお兄さんに飛びかかった。
お兄さんが大きな手に刀を振るうと大きな手が赤い霧になってしまった。
消えたと同時に気持ちが悪い人でできた顔が叫び声をあげる。
その様子をみていたらポロが後ろから押して一鳴きした。
お兄さんにお願いされたことを思い出し、小さな祠にお兄さんから受け取った鞘を翳す。
鞘と祠が光り、祠から走っている線が光りだす。
全部繋げるようにわたしは次の祠へ駆け出す。
途中で黒い小さな手が邪魔してくるが、ポロが一鳴きすると消えてしまう。
ポロが守ってくれるうちに祠に鞘を翳していく。
残り一つになったころ、ひと際大きな叫び声が聞こえる。
思わず振り返るとお兄さんが顔に取り付いて、人でできた顔にある沢山の目をひとつひとつ潰しているのが見えた。大きな手がなくなった為、顔を成型してる人型もお兄さんを振り払おうとしているがちかくの人型の手足は刀で切られており、抵抗ができないまま目を潰されていた。
最後の祠に鞘を翳して、線を全て繋ぎ終え、お兄さんに声をかける。
声をかけるとお兄さんは人型でできた顔から離れ、早口に呪文?のようなものを唱えると、急に辺りが百足様に会った時のような、赤い世界に変わった。
急に地面に影が差したので上を見るとすごく大きな百足様が大きな顔を見下ろしていた。
この夜、町中になにかの叫び声が響いたが、聞いていたものはごく一部だったという。
目が覚めると自分のベッドで寝ていた。
起き上がろうとすると私に抱きついてこともが寝ており、その横にポロが寝ていて動けなかった。
「あぁ、起きたのか」
横をみるといつもは胡散臭い笑顔を浮かべている先輩がまじめな顔して頭をなでてくれた。
「先輩無事だったんですね」
「まぁあれぐらいじゃ死なんよ。」
「ありがとうございました。」
「どういたしまして、お礼はポロとこともちゃんにも言うといいよ。もう何も心配いらないから、また寝るといい」
先輩はまた私が寝るまで頭を撫でてくれていたのを覚えている。
あのあと病院にいったら入院している先輩を見つけた。
車に轢かれた際に肋骨を折っていたらしく、終わって家に帰ったら痛くて帰ってきた婆様に病院に連れていかれたらしい。
一応これで終わりです。
短編などはこっちであげるかもしれませんが
続編をやるなら、違う枠でやります。
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