この素晴らしい世界で2周目を! (ぴこ)
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プロローグ

 魔王と一緒に爆死した後。

 俺はエリスの元へと送られると思っていたのだが。

 

「……あれ?」

 

 気が付くとアクセルの街へと戻っていた。

 

「おいおい、どうなってんだ? 実は死ぬ直前にテレポートで戻ってきてたのか?」

「あ……ああああ……」

 

 俺が街までどうやって戻ってきたのか考えていると、隣から聞き慣れた、というより聞き飽きた声が聞こえてきた。

 

「っておい、アクア、お前も戻ってきてたのか。俺が魔王のやつをテレポートで連れ去った後、何があったんだ? 街まで戻ってきてるってことは、けっこうやばかったのか?」

「あああああ……ああああああああ……」

「おい、聞いてんのか? みんなはどうしたんだ? まだ戦ってるのか?」

「ああああああああああああああああああああーっ!!」

「ちょ、おまっ、襟元掴むな! お前マジでどうしたんだよ!? そんな怖い目に遭ったのか!?」

 

 叫びながら掴みかかってくるアクアに、どうにも違和感を覚える。

 というか、こんなことが前にもあったような……。

 

「どうしたじゃないわよっ! どうすんのっ!? ねえ、どうすんの!? これからどうすればいいのよっ!」

「分かった、分かったからちょっと落ち着け!」

 

 涙目というか、すでに大泣きしているアクアを引き離して、なんとか落ち着かせる。

 もう半信半疑どころではなく、ほぼ確信しているのだが、信じたくない事実を目の前の女神に問いかける。

 

「あの、アクアさん? もしかしてなんですけど、俺がここに来るのって初めてだったりします?」

「はあ? あんたなに当たり前のこと言ってんの? そうに決まってるじゃない。……もしかして文字の習得の時に頭がパーに……」

「ちげーよ! ちょっと確認しただけだ!」

 

 やはり間違いない。

 どういう訳か知らんが、俺はこの世界に来た最初の頃に戻ってきてしまっているようだ。

 アクアがこの様子だということは、俺の記憶だけそのままで全部無かったことになってるってか?

 

「おいおい、嘘だろ……?」

「ちょっと! 嘆きたいのはこっちなんですけど!」

 

 今まで死ぬ思いで魔王軍の幹部たちを倒してきたっていうのに、これからまたやらなきゃいけないのか?

 考えただけでも頭が痛くなってくる。

 

「せめてこの世界に来る前だったら、駄女神じゃなくてチートを貰ってこれたっていうのに……」

「あんた、さっきからぶつぶつ一人で何言ってるの?」

「あんまりな現実を嘆いていただけだ。チートもなしにまた魔王を倒すなんてどんな無理ゲーだよ」

「あんた、私っていう素晴らしい恩恵を連れてきておいて何言ってるのよ! 魔王倒さないと帰れないのよ!? しっかりしなさいよ!」

 

 その言葉にあの日の夜、憂い顔で帰りたいと言っていたアクアの顔を思い出す。

 いつもおちゃらけているアクアがあんな顔をするなんて、思ってもみなかった。

 

「ったく、しょうがねえなぁ」

 

 借金背負ったり、ぽんぽん死んだりと、あんまり良い思い出はないが、楽しくなかったかと聞かれれば嘘になる。

 それに一回経験しているんだから、やろうと思えば借金も死も回避できるんじゃないだろうか?

 そう考えると、なんだかわくわくしてきた。

 

「いいか、アクア。こういう時は取り敢えずギルドで冒険者登録をするのが鉄則だ。登録料で少し金を取られるかもしれないけど、そんときはそんときだ。ほら行くぞ」

「な、なんなのこのニート。さっきまであんなに憂鬱そうにしていたのに、急に頼もしく感じられるのは何故かしら?」

「ばっかお前。暇なニートってのは、異世界に来た時どうするかってのは常にシュミレートしてるもんなんだ。良いから大船に乗ったつもりで付いて来い」

 

 このやり取りもなんだか久し振りに感じる。

 前回はこの後、ギルドの場所が分かんなくて右往左往したんだが、今ではこのアクセルの街は勝手知ったる自分の庭みたいなもんだ。

 俺は、通い慣れたギルドへの道をアクアを引き連れて歩いて行った。

 

 

 

 やはりというかなんというか、登録料をバイトでもして支払おうとしたのだが、アクアが先走って前回同様エリス教徒のおじさんに憐れまれて千エリス恵んでもらった。

 ありがたいけど、カッコつけた手前恥ずかしいからやめてもらえませんかね。

 

 水晶のようなものに手をかざして、ステータスを計測する。

 どうせまた貧弱ステータスなのだろうと、うんざりとした気持ちで待っていたのだが、どうにも様子が違うようだった。

 

「サトウカズマさん……。か、かなりの高レベルですね……。新規登録と言っていましたが、もしかして冒険者カードをなくされたのですか?」

「え?」

 

 一言断って冒険者カードを見せてもらうと、そこにはとんでもないレベルのステータスが記述されていた。

 おかしい。

 本来であれば、貧弱ステータスが露呈して恥ずかしい思いをするはずだったのだが、レベルが既に異常なほど高い。ともすれば、俺の以前のステータスよりも。

 レベルがそのままであれば、強くてニューゲーム的なものだと思えたが、如何せんレベルが大幅に上がっている。しかし、習得したスキルを見るに、俺の冒険者カードで間違いないように思える。

 

 あっ、そうか!

 

 これはあれだ、魔王を討伐した際に貰えた経験値のおかげか。

 ということは、俺は魔王を倒したのだろう。

 二周目にさえならなければ、魔王を倒した英雄として優雅に暮らせたというのに……。

 

「サトウさん?」

「ああいや、なんでもないです。実はそうでして、このまま再発行って出来ます?」

「大丈夫ですよ。手数料として、登録代と同じ千エリスいただきますが」

 

 俺はそれに喜んでで同意し、冒険者カードを受け取った。

 

「カズマさん、いつの間にスキルなんて覚えたの? レベルも高いし……。ただ者じゃないかもとは思ったけど、実は凄い人なの?」

 

 アクアまでもが軽く尊敬の眼差しを向けてくる。

 いつもであればそんなことは絶対にありえないことで、その態度が俺のことを本当に知らないのだということを思い出させて一抹の寂しさを感じた。

 

「どうしたのカズマ? 泣いてるの?」

「泣いてなんかねーよ。いいからほら、カエル倒しに行くぞ」

「あっ、ちょっと待ちなさいよ!」

 

 泣いてなんかいないが、少し目が痒かったので袖でゴシゴシと目を擦る。

 気持ちを切り替えて、俺たちは因縁深いカエルを討伐しに街を出た。

 

 

 

「『狙撃』っ!」

 

 遠距離から矢を番え、カエルへと放つ。

 幸運値に物を言わせた『狙撃』スキルのおかげで、矢はカエルのこめかみへと吸い込まれていった。ちなみに、弓矢はギルドからの支給されたものを使用している。矢を回収することが条件だが、ありがたいので借りてきた。

 

 矢を回収しに行くと、どうやら脳天を貫通していたようだ。

 伊達に魔王を倒した訳ではない。

 最早カエルごとき、俺の敵ではないのだ。

 ……だというのに。

 

「や、やるじゃないカズマ。これは私も良いところを見せないとね!」

「ば、ばか、止まれ! お前、カエルは遠距離から狙撃で倒すって言ったじゃねーか!一人で先走るんじゃねー!!」

 

 カエルの恐怖をまだ知らないアクアは、光る拳を掲げて一人突進していく。カエルに打撃は効かないってギルドのお姉さんが言っていたのを、早速忘れていやがる。

 

「くらいなさい、ゴッドブローォォオ!!」

 

 アンデッド相手には無類の強さを発揮するアクアの攻撃も、カエル相手には相性が悪い。

 

 

「だああああああああ! 結局こうなるのかああああ!!」

 

 俺は、剣を片手に駆け出した。

 

 

 

「ありがどぉぉ。カズマさん、助けてくれてありがどねぇぇぇ」

「わ、分かったから、引っ付くな! ほら見ろ! 俺まで粘液塗れじゃねーか!」

 

 半ベソをかきながら礼を言うアクアを、俺は引き剥がしていた。

 こいつわざとか? わざとなのか?

 結局俺まで粘液塗れになってしまった。

 だけど……。

 

「まったく、お前はほんと変わらないな」

「カズマさん、なんでそんなに笑ってるのよ。ま、まさか粘液塗れの私を見ていやらしい妄想を……」

「するか! ただ少し、安心しただけだ」

 

 そう、安心した。

 どこまでいってもアクアはアクアで、こいつがいればこの世界でも面白おかしくやっていける。そう確信出来たから、安心したのだ。

 

「ほら、帰ってひとっ風呂浴びて、飯でも食いに行こうぜ」

 

 粘液塗れのアクアをおんぶして、帰路へと着く。

 まずはめぐみんとダクネスを仲間にして、またあの家でみんなで暮らそう。

 

 やってやろうじゃないか。

 この素晴らしい世界で、二周目を。




 設定を少し変更しました。
 ご迷惑をおかけして申し訳ございません。


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邂逅 1

「「かんぱーい!」」

 

 二周目の初クエストも終わり、俺とアクアは祝杯を挙げていた。

 カエル五匹の討伐報酬、占めて二万五千エリス。

 報酬の割に楽なクエストだが、こんなクエストをちまちまやっていたのでは、金はあまり溜まらないだろう。

 これからベルディア戦にデストロイヤー戦と、金が掛かりそうな戦いが控えている。

 

 相も変わらず上手いカエルの唐揚げに舌鼓を打ちつつ、俺はアクアに提案した。

 

「なあアクア。明日は仲間集めに専念しないか?」

「なによカズマさん。カエルなら私たちだけでも楽勝でしょ?」

「確かにカエルは楽勝だけど、そのうち必要になってくるんだよ」

 

 こいつ、カエルが楽に倒せると分かって味を占めたな?

 前回どんな感じだったか教えてやりたくなってきた。

 

「仲間はいいけど、どうやって募集かけるのよ? こんな駆け出しのパーティーになんて誰も入りたがらないんじゃないかしら?」

「安心しろ。ちゃんと秘策があるから」

 

 首を傾げるアクアに、俺はドヤ顔でそう言った。

 

 

 

『パーティーメンバー募集! 私たちは魔王討伐のため強力な仲間を求めています。爆裂魔法を使えるアークウィザード、敵の攻撃を一心に引き受けてくれるクルセイダーなんかだと尚良し』

 

「カズマってば馬鹿なの? アークウィザードやクルセイダーがこんな駆け出しの街にいるわけないじゃない。募集をかけるだけ無駄よ無駄!」

「まあまあ。いいから黙って座っとけ」

 

 なんだか昨日から立場が逆転したみたいになっているが、こいつ本当にアクアなのだろうか?

 俺がパーティーの募集項目に記述したのは、明らかに特定の二人を狙った文言。

 あいつらは足を引っ張ることも多いが、なんだかんだ幹部級の敵と戦うには、いなくてはならない存在だ。

 

 朝から粘って二時間後、狙いの人物の一人目が、エサに釣られてまんまとやってきた。

 

「爆裂魔法を使えるアークウィザードを求めているのはあなた達ですか?」

「そうだけど、君は?」

 

 分かり切ったことだけど、一応初対面のため聞いておく。

 すると、目の前のロリっ子――めぐみんは、バサッとマントを翻して言った。

 

「我が名はめぐみん! アークウィザードを生業とし、最強の攻撃魔法、爆裂魔法を操る者! あなた達の魔王討伐の旅、この私が力を貸そうではないか!」

「アークウィザード……! しかも、爆裂魔法ですって……!? ちょっとカズマさん、とんでもない大物が来たんですけど!」

「落ち着けアクア。お前だって女神でアークプリーストだろ? 引けは取らないさ」

「そういえばそうでした!」

 

 アクアの尊敬の眼差しに、得意げな顔のめぐみん。

 相変わらずちょろいけど、ここはその性格を利用させてもらおう。

 

「めぐみんって言ったか? 今の言葉が本当なら、是非とも力を貸してくれないか?」

「いいでしょう! 我が爆裂魔法の凄さ、ご覧に見せましょう! ……と言った手前申し訳ないのですが、なにか食べさせてもらえませんか……? ……ここ数日、何も食べていなくて……」

「はいはい。ほら、なんか頼めよ」

 

 今にも干乾びそうなめぐみんに、俺はメニューを手渡した。

 

 

 

「今更なのですが、カズマは私の名前を聞いても笑ったりしないんですね」

 

 めぐみんの実力を測るという名目で、俺たちはまたカエル狩りへとやってきていた。

 その道中、めぐみんがそんなことを聞いてきた。

 俺は紅魔族の名前にはもう慣れたけど、アクセルの街に来たばかりの頃は余程馬鹿にされたのだろうか。

 

「まあ、確かに珍しい名前ではあると思うけど。笑ったりなんかしないさ」

「……なるほど。やはりカズマは普通の人とは違いますね。思った通りです!」

 

 こいつもこいつで苦労してたんだな。

 

「お前は魔王を倒すパーティーの一員になったんだ。名前を笑ったやつらには、これから見返してやればいいさ」

「……はい!」

 

 嬉しそうに言う返事をするめぐみん。

 この純粋な視線も、いつまで続くことやら……。

 

 そうこうしているうちにカエルが出てきた。

 三体同時に。

 

「めぐみんっ! あいつらを俺が引き付けるから、爆裂魔法の詠唱をしておいてくれ!」

「分っかりましたっ!」

 

 詠唱を始めるめぐみんを尻目に、俺は三体のカエルの、丁度中央あたりへと向かった。

 十分にアクアたちと距離を取ったところで、俺はスキルを使った。

 

「『デコイ』っ!」

 

 クルセイダーの十八番スキル『デコイ』を唱えてカエルをおびき寄せる。

 アクアたちの方に向かっていたカエルも含めて、全てが俺の方に寄ってきた。

 

 やべっ、ちょっと怖い。

 いくらジャイアント・トードといっても、地響きを鳴らしながら三体同時に襲い掛かられると、凄い怖い。

 ギリギリまで引き付けようかとも思ったが、めぐみんの爆裂魔法なら大丈夫だろう。

 

「『テレポート』っ!」

 

 テレポートの転送先が一つ残っていた俺は、先ほどアクアたちの真後ろを一先ず設定しておいたのだ。

 テレポートが完了した俺は、めぐみんに向かって叫んだ。

 

「めぐみん、やれっ!」

「『エクスプロージョン』っ!」

 

 撃ち込まれた爆裂魔法。カエルは、文字通り跡形もなく消え去っていた。

 

「やるな、めぐみん! 流石の威力だ」

「ふふふ、我が爆裂魔法の威力は絶大。それゆえに消費魔力も絶大で、撃った後は動けなくなるのですが……」

「ああ、気にすんな。後は俺たちでやるから。アクア、俺はカエルを後二体探してくるから、めぐみんをよろしく頼む」

「まっかせなさい!」

 

 その後、俺は『敵感知』スキルと『狙撃』スキルを駆使して、二度目のカエル討伐を無事に終えた。

 

 

 

「ここまで順調だと、ぶり返しがきそうで怖い」

「なーに言ってるのよ、カズマ。順調なのはいいことじゃない。この調子なら、直ぐに魔王も倒せそうね!」

 

 こいつはまた、直ぐに調子に乗って。

 いつか痛い目に遭っても知らんぞ。

 

「それにしても、カズマはクルセイダーのスキルである『デコイ』や『テレポート』まで使えるなんて……。一体何者なのですか?」

「俺か? 俺はただの冒険者だよ」

「冒険者? 仕事としての冒険者ではなく?」

「そうだよ。……幻滅したか?」

 

 アクアがアークプリーストだから俺のことも上級職だと思ったのだろう。

 めぐみんの目から驚きが見て取れた。

 背負われたままのめぐみんは、ぷるぷると震えながら呟いた。

 

「……かっこいい」

「は?」

「最弱職が魔王を倒す! まさしく物語の主人公のようです! いいでしょう! この最強のアークウィザードである私が! 力を貸そうではありませんか!」

「お、おう……。よろしくな」

 

 何かがめぐみんの琴線に触れたのだろうか、かなり興奮気味だ。

 まあでも、好意的に受け取ってくれたみたいなので良しとする。

 

「っと、俺は換金してくるから」

「じゃあ、私たちはお風呂でも行きましょうか」

 

 夕飯までの短い時間、自由行動することにして、俺たちは別れた。

 

 

 

 

「……今日は、めぐみんさんも一緒だったんですよね? 問題なく終わりましたか?」

「まあ……。なんでですか?」

「いえ、その……。めぐみんさんはなんといいますか、色々とトラブルを引き起こしやすい方ですから。それもあって、長い間、パーティーに入れずにいたのです」

 

 まあ、めぐみんの暴走を御することが出来る人は少ないだろう。

 

「それはそいつらに見る目がないんですよ。まあ、めぐみんは俺たちと一緒のパーティーを組むことになりましたから、ご心配なく」

「それなら安心です。サトウさんのパーティーは、期待の新人として注目されてますから」

 

 この受付のお姉さんの対応も、以前とは大違いだ。

 名前忘れちゃったけど。

 

 報酬を受け取った俺は、ギルドの酒場スペースであいつらを待っていると、懐かしい顔に声を掛けられた。

 

「ちょっといいだろうか。貴方のパーティーはまだ、メンバーを募集しているだろうか?」

 

 愛すべきド変態クルセイダーが、俺たちのパーティーにやってきた。

 



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邂逅 2

「俺たちのパーティーは新米ばかりの駆け出しだ。クルセイダーであるあんたには、相当負担をかけることになる。それでもいいんだな!?」

「おうとも! むしろバッチコイだ!」

「変態」

「んん……っ! 初対面でも容赦なく罵倒してくるとは……! なかなかレベルが高いな……!」

 

 勝手に同類認定するな。

 脅しをかけているにも関わらず、乗り気なドМクルセイダー。黙っていれば、引く手数多なのに、本当に残念な奴だ。

 ダクネスの変わらなさっぷりに、呆れると同時に正直安心した。

 

 やはりこいつらはどこまで行っても、そのままだったから。

 

 その後、やってきたアクアとめぐみんにダクネスを紹介して、その日は解散となった。

 

 

 

 次の日。

 俺たちは掲示板の前で、無数のクエストとにらめっこしていた。

 

 キャベツの時期まではまだ数日あるし、ベルディアが来ればしばらく金が稼げなくなるので、ここらでドカンと稼いでおきたいところである。

 

「うーん……。何か良いクエストはないか……ん?」

 

 目に付いたのは、ゴブリンの討伐クエスト。

 ゴブリンだけであれば楽に倒せるが、報酬もそこまで美味しくない。

 しかし、ゴブリンにくっ付いてくるあの虎型のモンスターであれば、難易度的にも売った時の儲け的にも美味しいのではなかろうか。

 

「みんな、今日はゴブリンの討伐クエスト受けないか?」

「いいんじゃないかしら? ゴブリン位なら、私たちでも余裕でしょ」

「ゴブリンか……! それならば、もしかしたらあのモンスターも……! ふふふ……!」

 

アクアは当然の如く気付いていないが、ダクネスは当然のように例のモンスターについて知っているようだ。まあ、今回はダクネスとの初クエストでもあるため、大目に見よう。

 

狙いは、初心者殺しだ。

 

 

 

「いいか? 作戦はこうだ。俺たちは丘の頂上辺りで構えて、ダクネスが『デコイ』でゴブリンを引きつける。初心者殺しが来たら、俺がバインドするから後回しだ。いいな?」

「ちょっとカズマさん……。初心者殺しなんて聞いてないんですけど……。大丈夫なの? 死んだりしないかしら?」

「か、カズマ! その『バインド』スキル、後で私にも掛けてもらえないだろうか!?」

 

 こいつら話し聞いてるんだろうか?

 まあ最悪俺が全員連れてアクセルまでテレポートすればいいし、大丈夫か。

 

「めぐみんは、いつでも爆裂魔法が撃てるように準備をしておいてくれ」

「任せてください! 初心者殺しだろうがなんだろうが、灰燼と化して見せましょう!」

 

 目的地に向かう前に、アクアに支援魔法をかけまくって貰う。

 まあ、これならば余程のことがない限り負けないだろう。

 

「よし、じゃあやるか!」

 

 

 

そう思っていた時期が、俺にもありました。

 

「『狙撃』っ! 『狙撃』っ! だあああああっ! 数多すぎるだろ!」

 

 撃っても撃っても減らないゴブリンの群れ。

 いつかのように、丘の上から『クリエイト・ウォーター』と『フリーズ』のコンボで凍らせてるから、ダクネスの攻撃でも当たっているというのに。

 一向に数が減ったように感じないのは何故だろうか。

 

「めぐみん! 『敵感知』スキルに反応があった! 岩場にゴブリンが大量に隠れていやがる! やっちまえ!」

「穿て! 『エクスプロージョン』っ!!」

 

五十近くいたゴブリンの反応が一瞬で消える。

これでようやく終わりが見えて来た。

 

「よし! 後はここにいるやつらを倒せば終わりだ!」

「本当かしら? 初心者殺しが近くまで来てたりして……」

「ばっかお前、そういうフラグみたいなこというと……ほら来た! 本当に来た!」

 

 当初は初心者殺しが目的であったが、ゴブリンの大量発生で満身創痍の俺たちにはきつい相手だ。

 俺は大型モンスター用の強力なロープを取り出し、初心者殺しを待ち構えた。

 

「ダクネス、一旦下がれ! 初心者殺しが来る!」

「いいや、下がらん!初心者殺しは私が食い止める! 私ごと『バインド』して構わん! むしろお願いします!」

「おま、こんな時にど変態発揮してんじゃねええええええ!」

 

 そうこうしているうちに、ダクネスが初心者殺しと接敵する。

 だあああ、もう!

 

「どうなっても知らねえからな! 『バインド』っ!!」

「ああああああああ!」

 

 初心者殺しと共にロープに巻きつかれたダクネスは、苦痛とも快感とも取れる声を上げる。

 

「ゴブリン片付けたら助けてやるから、ちょっと待ってろ! アクアっ、ダクネスに回復魔法かけ続けてやってくれ!」

「合点承知!」

 

残った数匹のゴブリンを『狙撃』スキルで撃破する。

慌ててダクネスの救出に向かうも、全然平気そうだった。俺の苦労を返してくれ。

 

「『パラライズ』」

 

 バインドが解ける前に、初心者殺しを『パラライズ』で動きを封じる。トドメは、ダクネスに刺させるつもりだった。

 

「ほら。クルセイダーとして、こいつにトドメを刺してくれ」

「……良いのか? 私は、足を引っ張って……」

「何言ってんだ。初心者殺しの動きを封じてくれただろ? お前が身を呈して止めてくれなきゃ、ロープを避けられてたかもしれない。そしたらもう逃げるしかなかったからな」

「カズマ……」

 

 本音を言えば、もう少し自重して欲しかったが、贅沢は言わない。

 ダクネスは攻撃がほとんど当たらないから、こういうところで経験値を稼いで貰うしかない。

 それに、助かったというのも事実だし。

 

「私は、素晴らしいパーティーに入れたようだな」

 

 満面の笑みでそう言うダクネスがクルセイダーの務めを果たした後、俺たちは『テレポート』でアクセルの街へと帰った。

 

 

 

「ゴブリンの総討伐数八十九体に、初心者殺し一体の討伐ですか……。とても、つい最近結成したパーティーとは思えませんね」

 

 受付のお姉さんの感嘆の声に得意げな表情の一同。

 実際自分でもとんでもない活躍だと思う。

 アクアを除いた面々はレベルも大幅に上がり、報酬もかなりのものとなるだろう。

 

「このゴブリンの数、恐らく巣をまるごと潰したんだと思いますけど……。普通なら緊急クエストとして、ギルド全体で当たる問題ですよ」

「ふっふっふ、私たちはいずれ魔王をも倒すパーティー! ゴブリン如き何匹来ようが敵ではありません!」

「いや、結構危なかっただろうが」

 

 まあでも、めぐみんが調子に乗るのも無理はない。

 ゴブリンの大半を倒しためぐみんは、大幅にレベルが上がり、俺たちの中でも頭一つ抜け出しているのだ。

 

「それでは、こちらが報酬の四百万エリスになります」

「「うおおおおおおおおお!?」」

 

 俺たちは思わず、大声を上げてしまった。

 大物賞金首の討伐以外で、こんなにも大金を手にしたのは初めてだ。

 めぐみんなんて、今にも泡吹いて倒れそうな勢いだ。

 

「どどどどうしましょうカズマ! 四百万だなんて、みんなで山分けしても、一人頭百万よ!? 何に使おうかしら……!」

「アホ、今回の報酬は他に使い道があるんだから、勝手に使おうとするな!」

 

 こんなときだけ計算の早いアクアに呆れつつ、俺は賞金を受け取る。

 まだまだ足りないかもしれないが、これは屋敷を買う資金に充てるつもりだった。

 前はとんだマッチポンプみたいになってしまったため、今回は悪霊騒ぎが起こる前に買い取ろうと思う。

 

「取り敢えず、俺たちのパーティー結成祝いも込めて、ちょっといい店に打ち上げにでも行かないか? 金は俺の取り分から出すからさ」

「おお、それはいいな! 実に冒険者らしいではないか!」

 

 満場一致で打ち上げに行くことが決まり、どの店に行くか話し合いながら出口へと向かっていると、面倒臭い男が現れた。

 

「アクア様っ!? アクア様じゃないですか!? こんなところで、なにをしているんですか!?」

 

 ――二人の美少女を連れた、魔剣の勇者様が。

 



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懐かしのマイホーム

「僕と勝負だ、サトウカズマ! 僕が勝ったら、アクア様を譲ってくれ! その代わり、君が勝ったらなんでも一つ言うことを聞こうじゃないか!」

 

 面倒臭いことになった。

 何が面倒臭いって、室内だから前みたいな不意打ちが出来ない。

 これ、下手したら負けるんじゃないか?

 王城で戦った時は変なテンションだったからあんまり覚えてないし……。

 

 

 

 ミツルギに連れられてやってきたのは、街はずれにある空き地だ。

 道すがら不意打ちしてやろうかとも思ったが、流石に後ろから思いっきり一撃入れるのは気が引けた。

 

「ねえ、カズマさん。こんな勝負引き受ける必要ないわよ。カズマが負けるとは思わないけど、あんな男のパーティーに入るのなんてごめんだわ」

「そうですよ! なんなら勝負は私が引き受けます! あのスカした顔に、爆裂魔法を撃ち込んでやりますよ!」

「あいつ、黙って聞いていれば好き勝手ばかり……! 受け専門の私だが、一発かましてやりたいくらいだ!」

 

 小声で俺に不満を爆発させる三人。

 あいつ、俺の仲間には本当不評だな。

 俺に勝ってこいつらを仲間にしても、絶対うまくやっていけないと思う。

 

 荒ぶるアクアたちを落ち着かせ、俺はミツルギに勝率を上げるために策を弄した。

 

「なあ、勝負の方法はどうするんだ? 流石に高レベルのお前と、貧弱ステータスのうえただの冒険者の俺とじゃ勝負にならないだろ」

 

 少しでも俺の有利な条件にしようと、下手に出てみる。

 これで油断するか、勝負を取り下げてくれればありがたいんだが……。

 

 俺の言葉に良心が痛んだのか、ミツルギは少しの逡巡の後、一つの条件を提示した。

 

「じゃあこうしよう。君が一撃でも僕に入れれば君の勝ち。君に参ったといわせれば僕の勝ち。それなら公平だろう?」

 

 まじか。

 いくらなんでもなめすぎだろ。

 若干腹が立ったが、勝つためにその条件を受け入れる。

 

「じゃあ、この石が地面に落ちたら勝負開始だ」

 

 ミツルギはそういうと、石を空高く投げ上げた。

 俺は石の軌道を見つめるミツルギにばれないように、小さく『クリエイト・アース』を唱え、両手に砂を用意する。

 

 そして、石が落ちた瞬間に、俺は大声で叫んだ。

 

「『ウインドブレス』っ!」

「うわっ!?」

 

 開始直後に目に大量の砂が入ったミツルギは、視界をふさがれ、武器を手に取ることすらままならない。

 俺は念のため『潜伏』スキルを使いながら、大周りでミツルギの背後へと回る。

 俺の接近に気付いた様子がないミツルギの、無防備な頭に店売りの安い小剣で軽く一撃を入れてやった。

 

「勝負ありだな。いくらなんでも、油断しすぎだろ」

「「…………」」

 

 あっさりと負けてしまったミツルギを見て、絶句する取り巻き二人組。

 地力では到底及ばない俺だが、チート特典の魔剣に物言わせて強くなったような奴に後れは取らない。それになにより。

 

「お前は知恵のないモンスター相手には強いんだろうけど、相手が悪かったな。俺はイケメンが相手だとやる気が出るんだ」

 

 慕ってくれる美少女を二人も侍らせてるやつになんか、死んでも負けたくない。

 

「さてと、勝ったらなんでも言うこと聞いてくれる約束だったよなミツルギ君。君の魔剣グラムでも頂こうかね?」

「そ、それだけは……! 他ならなんでもいいから、それだけは勘弁してくれないか!?」

「……今、なんでもいいって言ったよな?」

 

 言質は取ったぞ。

 

 

 

「悪くないわね! 女神である私が住むに相応しいと言えるんじゃないかしら!」

 

 ミツルギに要求したのは、懐かしの我が屋敷だ。

 体感時間にして、一ヶ月ぶりくらいだからだろうか、えらく懐かしく感じられる。

 

 悪霊騒ぎ前なのでかなり高かったが、俺たちが新進気鋭の冒険者パーティーだと知ると、何故か不動産会社の人が大幅に値引きしてくれた。それでもそれなりの値段はしたが。

 流石に全額ミツルギに支払わせるのも気が引けたので、代金は半々にしてやった。

 

「こんな屋敷に、私たちも住んでいいのですか? 今まで馬小屋暮らしでしたから、正直凄くありがたいのですが……」

「この前のクエスト報酬の大半を使っちまったんだから、当たり前だろ? 何をそんなに遠慮してんだよ」

 

 住む気満々のアクアと対照的に、めぐみんとダクネスはやや遠慮気味だ。

 俺としては、ここはみんなの家という意識が強いから、住んでくれないと逆に落ち着かない。

 

「それより、早く中に入って部屋割り決めようぜ」

「ふふん! 私は日当たりのいい角部屋を貰ったぁ!」

「はいはい、好きにしろよ。俺は引きこもりのプロだからな。日当たりなんぞ逆に要らないまである」

 

 俺とアクアが屋敷に入ると、二人も顔を見合わせ、笑顔を浮かべながらやってきた。

 

 

 

 その日の夜。

 荷物の荷解きも終わり、もう寝ようかという時に、来客が現れた。

 

「カズマ、まだ起きてますか?」

「めぐみん? 起きてるけど、どうかしたのか?」

 

 今回はまだウィズと出会ってないから、幽霊が怖くなったというわけではないだろう。

 俺が扉を開けると、赤い寝間着に包まれた美少女が立っていた。

 

「実は、カズマにお礼がしたくてですね……」

「なんだよ、屋敷のことか?そのことなら気にすんなって。みんなで貯めた金なんだからな」

 

 実際には半分しか支払ってないわけだが、それは今めぐみんの頭にないようなので指摘しないでおく。

 

「それもそうなのですが……。カズマは、私のことを仲間として受け入れてくれました。爆裂魔法しか取り柄のない、口だけ魔導士である私を」

「なに言ってんだ、お前は……」

 

 と、言いかけて慌てて口を閉じる。

 数多くの魔王軍の幹部や、デストロイヤーを始めとした大物賞金首との死闘。

 それらのすべては、めぐみんの爆裂魔法無しでは切り抜けられなかった。

 

 しかし、それは俺にとっては過去の出来事でも、めぐみんにとっては未来の話。

 俺が話したところで納得なんて出来ないだろう。

 

俺は恥ずかしさを押し殺し、めぐみんの目を真っ直ぐに見つめながら言った。

 

「俺は、めぐみんのこと尊敬してるよ。周りからバカにされても、爆裂魔法を極めようとするなんて簡単に出来ることじゃないと思う。実際凄い威力だし」

「でも、私が他の魔法を覚えればクエストももっと楽に……」

「らしくないな。他の誰でも出来るような魔法なら俺が何とかする。お前はお前にしかできない、百二十点の爆裂魔法をこれからも見せてくれ」

「カズマ……」

 

 俺らしくないことを言ってしまい、顔が熱くなるのが分かる。

 俺は潤んだ瞳でこちらを見つめるめぐみんに背を向け、ぶっきらぼうに言った。

 

「わ、分かったらアホなこと言ってないでさっさと寝ろよな。明日もクエスト行くんだから」

「……ええ! 明日も私の二百点の爆裂魔法で、敵を消しとばしてやりますとも!」

 

 恥ずかしいことを言ってしまったけど、めぐみんに元気が戻ったようなので良しとしておこう。

 

 

 

「カズマさんカズマさん!いつまで寝てるの!早くクエストに行くわよ!」

「……今何時?」

「朝の六時前よ」

「……おやすみ」

 

 屋敷を買ってから数日が経過したある日。

 珍しく早起きのアクアが、これまた珍しく俺のことを起こしに来た。

 

「お願いだから起きてよカズマ! クエストに行かないとやばいのよ!」

「……お前、まさか酒場に借金でも作って来たのか?」

「だってだって、キャベツ狩りで儲かると思ったんだもの! それが、あんなレタスばっかり引き当てるなんて……」

 

 半ベソをかきながらアクアが訳を話した。

 つい先日、久し振りのキャベツの収穫でまとまった金を手に入れた俺たちだが、例のごとくレタスばかり収穫したアクアは俺に金の無心をしに来た。その時の分は、金に余裕のあった俺が立て替えてやったのだが……。

 

「少しだけど、小遣いもやっただろ? それはどうしたんだよ?」

「・・・…テヘッ」

 

 こいつ使い切りやがった。この世界に無理矢理連れてきた負い目もあって、今回は優しく接してきた俺だったが、少し甘やかしすぎたかもしれない。

 

「お前のお得意の宴会芸でもやって、おひねり貰ってくればいいだろ?」

「おひねりは受け取らない主義なの! ……ねえお願いカズマさん。私たち仲間でしょ?」

「……ったく、しょうがねーなぁ」

 

 必死に懇願するアクアに、渋々引き受ける。

 それに、そろそろあいつのせいでクエストが少なくなる時期なので、丁度いいかもしれない。

 

 今度は借金作らずに倒してやる。



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ベルディア討伐!

 おかしい。

 本来であればとっくにベルディアが来てもおかしくはないというのに、一向に街へとやって来る気配がない。

 丘の古城に住み着いてはいるらしいんだが……。

 

「カズマカズマ、今日はクエストをお休みにするんですよね? でしたら、付き合ってほしい場所があるのですが……」

「なんだ? 爆裂散歩にでも……あっ」

 

 そういえば、城に爆裂魔法を撃ちに行くのを忘れていた。

 

 

 

「ねえねえカズマさん。そろそろ本当にお金がまずいんですけど……」

「わ、分かってるって」

 

 俺の中で魔王軍幹部最弱と名高いベルディアを、借金を作らないように倒して賞金をゲットする予定であったのだが……。

 俺のど忘れで未だにベルディアが襲来しない事態に陥ってしまった。

 

「これなんてどうかしら? 湖の浄化クエスト! 水の女神である私に打って付けじゃないかしら!」

「止めとけ、後悔するぞ」

「ならどうするというのだ? 他はベルディアが街の近くに住み着いてしまったせいで、簡単なクエストなど残ってないぞ。こ、この一撃熊の討伐クエストなんかどうだ? こいつの一撃と私の耐久力、どっちが上か確かめてみようじゃないか!」

「一撃熊ねえ……」

 

 賞金も悪くないし、今の俺たちならやってやれないことはないだろう。

 だけど……。

 

「……なあ、みんな。ベルディアを討伐しにいかないか?」

「……ちょっと、正気なのカズマ。相手は魔王軍幹部なのよ? 序盤の敵にしては強すぎるんじゃないかしら?」

「そうだぞ。流石にあれとやっては、私たちも無事では済まないだろう。せめて、この街の冒険者全員を引き連れるくらいしないと……」

「それに、あの廃城にはベルディアの手下のアンデッドナイトが大量にいると聞きます。流石の私でも、あの数をいっぺんに葬るのは厳しいのです」

「……俺があいつの弱点を知ってるって言ったらどうする?」

 

 そう言って俺はベルディアの弱点を踏まえたうえで作戦を伝える。

 俺の話を聞いていた三人の目には、だんだんと希望の光が宿ってきていた。

 しかし、そんな中でもアクアは。

 

「えー? でも、その話を他の冒険者にも話して、討伐してもらうのはどうかしら? 上手くいったら私たちにもアドバイス料を払ってもらうの!」

 

 いけそうだと思っているのだろうが、びびって及び腰だった。

 こいつは本当に、普段は調子のいいことを言っているくせに、いざ戦いになるとすぐヘタレやがって……。

 仕方ない。

 俺はアクアに向かって、魔法の言葉を唱えた。

 

「三億」

「え?」

「ベルディアにかかってる報酬の額だよ。俺たちだけで倒せば、全部丸ごと俺たちのものに……」

「さあ、準備をしましょう! なにしてるの、ぐずぐずしてたら他の人に討伐されちゃうじゃない!」

 

 こいつ張り倒してやろうか。

 

 

 

「おお、いるいる」

 

 丘の古城から若干離れた位置までやってきた俺たち。

 俺の『千里眼』スキルで確認したところ、城の一番上の階にベルディアらしき人物を発見した。

 

「ねえ、やっぱり帰りましょう? 帰って土木工事のバイトでもして地道にお金を稼ぎましょうよ! 楽することばかり考えていたら、罰が当たると思うの」

「今更なに怖気づいてんだよ。いざとなったら俺がテレポートで皆を脱出させるから、心配すんなって」

 

 ここにきてまたもやぐずり始めるアクアを尻目に、作戦の最終確認を行う。

 

「いいか? まずはめぐみんがあの廃城に向かって爆裂魔法を放つ。そしたらベルディアも何事かと思って、外に出てくるはずだ。そこにすかさずアクアが『セイクリッド・クリエイトウォーター』で水攻めにしてやれ」

「ふっふっふ、ついに私も魔王軍幹部の討伐に加担することになろうとは……。将来書かれるであろう、私の英雄伝説のページ数がまた一つ増えてしまいましたね」

「気が早いっつーの。いいか? 無理そうならすぐに逃げるからな? 絶対に余計なことはすんなよ? 特にアクア」

「ちょっと、私が何するっていうのよ!」

 

 ぎゃあぎゃあ騒がしいアクアをなだめていると、ダクネスがおずおずといった感じに尋ねてきた。

 

「カ、カズマ? 私は? 私はなにをすればいのだろうか……?」

「あっ」

「……おい、まさか忘れていたわけではないだろうな?」

「そ、そんなわけないだろう? ダクネスはそうだな……そうだ! 帰りにめぐみんのことをおぶってやってくれないか?」

 

 それを聞いたダクネスが、俺につかみかかってきた!

 

 

 

「『エクスプロージョン』っ!」

 

 めぐみんの爆裂魔法が、廃城へと放たれる。

 今の爆裂魔法はなかなかの威力だな。

 

「腹にずしんとくる感覚に、遅れてやってくる空気の振動。今のはなかなかな威力だったな。九十六点」

「満点はもらえませんでしたか……。それにしても、カズマは爆裂魔法についてやたらと詳しいですね……。そんなあなたには、爆裂ソムリエの称号を授与しましょう」

「いらんわ」

「お、おい! 何暢気なことを言っている! ベルディアのやつが出てきたぞ!」

 

 ダクネスの悲鳴のような声に廃城へと目を向けると、ベルディアが手下をぞろぞろと引き連れて出てきた。

 いきなりのことに驚いているのが良く伝わってくるようだ。

 

「いよっし、アクア。ぶちかませ!」

「まっかせなさい! この世に在る我が眷属よ……」

 

 アクアが詠唱を始めると、魔力を凝集した水滴が周囲に浮かぶ。

 こういう光景を見ていると、こいつが本当の女神だということを思い出す。

 普段の言動からでは、想像もつかないが。

 

 やがて詠唱が終わり、アクアが叫んだ。

 

「『セイクリッド・クリエイトウォーター』っ!」

 

 街一つ呑み込んでしまえそうな大量の聖なる水が、ベルディアとアンデッドナイトたちに降り注ぐ。

 街から離れたこの場所だからこそできる戦法だ。

 

「な、なんなのだ、これは……」

「アクアは本当に駆け出し冒険者なのですか? こんな芸当ができる冒険者など、駆け出しどころか世界中どこ探したっていませんよ……」

「そうでしょうそうでしょう! なんてったって私は、アクシズ教団が崇拝する、水の女神アクア、その人なんですもの!」

「「そうなんだすごいね」」

「なんでよー!」

 

 最初はあまりの威力に驚いていためぐみんとダクネスだが、いつも通りな様子のアクアに、気のせいだと気づいたようだ。

 こいつは……。

 先ほどまでの、女神然とした雰囲気はどこへ行ってしまったのだろうか。

 

 まあいい、今はそんなことよりベルディアだ。

 視線を向けると、いきなりの攻撃に立ち上がることすらままならないようだ。

 これならば近づいても大丈夫だろう。

 

「な! 何なんだ貴様ら! 不意打ちとは卑怯だぞ!」

「うるさい。スカートの下にわざと頭を転がすような変態に言われたくない」

「「「うわぁ……」」」

「な!? デ、デタラメを言うんじゃない!」

 

 俺の言葉に心底引いたような三人。

 ベルディアは必死に抗議しているようであったが、その態度がかえって事実を物語っていた。

 

 俺はそんな様子のベルディアに――。

 

「『スティール』っ!」

 

 いくら高レベルの魔王軍の幹部とはいえ、めぐみんの爆裂魔法と、アクアの水攻めで弱ったベルディア相手ならば通じるはずだ。

 案の定、手にはずしりとした重い感触が。

 

「あ、あの……。頭は勘弁してくれませんか……?」

「やなこった」

 

 俺はベルディアの要求をバッサリと切り捨てると遠くの森へと頭を放り投げた。

 

「さ、流石にやりすぎでは……?」

「良いんだよ。相手は魔王軍の幹部なんだ。このくらいしないとな」

 

 ダクネスに背負われたまま、苦い顔をするめぐみん。

 流石に良心が痛んだのだろう。

 

「まあでも、これで後は浄化するだけだ。頼んだぞアクア」

「『セイクリッド・ターンアンデッド』っ!」

 

 遠くの森から「ああああああああああっ!」という悲鳴が聞こえたかと思うと、ベルディアの身体は光の粒となって消滅した。

 

「アクア、念のため冒険者カードを見せてくれるか?」

 

 アクアの冒険者カードには、ベルディア討伐の文字が浮かび上がっている。

 

「おし! 魔王軍の幹部撃破だ!」

「こんなあっさりとした感じでよかったのだろうか……? ベルディアのやつ、口上すら述べてなかったぞ」

「楽に越したことはないだろ? ほら、早く街に帰って報告しようぜ。俺たちは、魔王軍幹部を倒した英雄になったんだからな!」

「英雄……! 良い響きです!」

 

 その後俺たち三人は、テレポートで街へと帰還した。

 結局、あいつはなにしに来たのだろうか?

 二周目だというのに終始分からないままだった。

 

 

 

「ほら見なさい! ベルディアはこの私が! わ・た・し・が! 退治してあげたわ!」

 

 ギルド全体に響き渡るような大声でアクアが報告をする。

 ……行く前はあんなに渋っていたくせに、現金なやつめ。

 

「……本当ですね、ベルディア討伐と出てます。し、少々お待ちを!」

 

 受付のお姉さんは、慌てたように奥へと消えていった。

 

「これで、私たちも一躍有名人ですね!」

「ああ、そうだな! これで人類の悲願達成に一歩近づいた!」

 

 めぐみんはともかく、ダクネスまでもが興奮気味だ。

 まあ無理もない。

 長らく停滞していた魔王討伐に貢献したんだ。

 しかも、今回は借金もない。

 

「お待たせしました! こちら、ベルディア討伐報酬、金三億エリスとなります!」

「「「うおおおおおおおおおおおおおおっ!?」」」

 

 俺たちの会話を聞いていた周りの冒険者たちからも歓声が上がる。

 周りの冒険者たちからは奢れコールがあがる。

 俺はその声に応えるように――。

 

「いよおおおおおし、お前ら! 今日は俺のおごりだ! 朝まで飲もうぜええええええ!!」

 

 歓声はさらに大きくなり、宴は文字通り、朝まで続いたのであった。




 すいません、急いでたもので、文章がかなり雑になってしまいました……。
 後で暇を見て修正したいと思います。


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この貧乏店主にも祝福を!

 ベルディア討伐から一週間が経った。

 流石に今は鳴りを潜めているが、つい先日までは街中大騒ぎだった。

 それもそのはずで、長い間停滞していた魔王軍幹部の討伐が、あろうことか駆け出し冒険者の街であるアクセルで行われたのだから。

 俺たちも街を歩けば声をかけられ、ちょっとした有名人のような扱いを受けていたため、あまり外を出歩かずに家で内職をしていたのだ。

 まあ、アクアとめぐめんは爆裂散歩やら宴会やらやっていたようだったが……。

 

 思いがけずにまとまった休日を得た俺は、ベルディアの討伐報酬を元手に、大量のライター作りに精を出していた。

 ベルディアを倒して休まる暇もなかったが、デストロイヤーの被害を受けたダクネスが領主に嫁ぐ羽目になるのを防ぐにはまとまった金が必要である。クーロンズヒュドラ討伐でもやろうかと思ったが、あれは流石に俺たちだけでは難しい。

 そこで思い出したことが、俺の知的財産の行使であった。

 前の時はあの見通す悪魔に儲けを大体持って行かれてしまったので、今回はあいつに出会う前に商売を軌道に乗せ、その分販売する権利を高く売りつけてやる作戦だ。

 

 ちなみにウィズとはもう知り合っている。

 ゾンビメーカー討伐を受けてしまうと、ギルドに違約金を払わなければならないため、墓場まで直接向かって話をつけたのである。またしてもアクアと一悶着あったのだが、そこは割愛しておく。

 

 現在俺だけでは持ちきれない大量のライターを、ダクネスに手伝ってもらってウィズの魔法具店まで運んでいる最中である。

 

「悪いなダクネス、付き合わせちまって」

「なに、気にするな。……しかし、このライターというのは便利だな。火属性の初級魔法をわざわざ覚えなくても、着火出来るとは……」

「俺のいた国では当たり前に普及してるんだけど、こっちじゃ見かけなかったからな。俺の『鍛治』スキルでも簡単に作れるし、材料費も安いから、安価で大量生産出来ればいい儲けになると思ってな」

「……なあカズマ。お前は以前から金を稼ぐのに必死だったが、理由はなんなんだ? ベルディア討伐報酬だって、まだ大分残っているのだろう?」

 

 確かにそうだ。ギルドのみんなに奢ったり、アクアが豪遊したりしているが、まだ丸々二億残っている。

 しかし、デストロイヤーの被害額およそ二十億円を貯めるにはまだまだ足りていない。

 

 要するに、あれもこれも全部ダクネスのためなんだが、今言ったところで理解出来ないだろうし、なんか恩着せがましくて格好悪い。

 ここは、誤魔化しておくことにした。

 

「俺は楽したいから頑張るんだよ。今大量に稼いでおけば、後々働かなくても済むだろ?」

「な、なるほど……。そういう考えも、でも……。うーん?」

 

 口をついて出た言葉ではあったが、あながち嘘でもない。だが、それを聞いたダクネスは、頭を抱えて悩み出してしまった。

 流石に大貴族だけあって、将来働きたくないという俺の宣言はどうなのかと思う気持ちが強いのだろう。

 そういえば前もこんな感じのことを言った時、漫画家を例に出して責任がどうのという説教を受けたな。あれにはちょっと衝撃を受けてしまったのを今でもよく覚えている。

 

「流石に全く働かないってのは無理かもしんないけど、何かあった時に蓄えがあるのとないのじゃ大違いだろ? まあそんな感じだよ。ほら、そうこうしているうちに着いたぞ」

 

 気が付けば、ウィズの魔法具店の目の前までやって来ていた。

 ドアを開くと、相変わらず閑古鳥が鳴いているようだった。

 

「おーい、ウィズー? いないのかー?」

「あっ、カズマさん! 今行きますね!」

 

 どうやら店の奥にいたようで、ぱたぱたと小走りでウィズがやってきた。

 

「ダクネスさんも、こんにちは。カズマさんのお手伝いですか?」

「ああ。一人じゃ持ちきれなさそうだから、私から買って出たんだ」

「そうでしたか。……ところで今日は、アクア様は……?」

「安心しろ、置いてきたから。それよりほら、約束通りライター、持ってきたぞ。お値段は、なんと驚きの一個百エリスだ!」

 

人件費がかからなかった分、安く作れたための値段だ。

これで売れ行きが良ければ、大量生産するためのルートを確保していこうと思っていた。

 

「意外と小さいんですね……。ちなみにどの位使えるんですか?」

「頻度によるだろうけど、一ヶ月はもつよ」

「これで一ヶ月ですか……。初級魔法である『ティンダー』に余計なスキルポイントを使いたくないという人は大勢いますからね。結構な売れ行きになるとは思います。ただ……」

「なんだよ、なにか心配事でもあるのか?」

 

 売れると思っているだろうに、なにか懸念事項でもあるのだろうか。

 もしかして、似た魔道具でも開発されたのか?

 前はなかったからと言って、今回もその限りとは言えない。

 しかし、ウィズの口から出たのは意外な答えだった。

 

「どう宣伝しようかと思いまして……。一度使ってさえ頂けたら、もう一度買ってくださるとは思うのですが、その最初がなければ元も子もありません……」

「ふむ、確かに宣伝は大事だろうな。どんなに便利なアイテムも、宣伝方法を誤れば、大衆に埋もれてしまう。どうしたものか……」

 

 ダクネスまでが黙り込んでしまう。

 宣伝は商売にとっての基本で、最も大事なものと言える。

 だが、俺にはとっておきの秘策があった。

 

「……俺に良い案があるんだけど、ウィズには辛い選択になってしまうかもしれない。どうする?」

「……私、やります! どんなことだって、成し遂げてみせます! だって、今月の家賃が払えませんから!」

 

 仕入れに失敗してばかりの貧乏店主の、悲しい決意であった。

 

 

 

「はああー? なんで女神であるこの私が、アンデッドの店の手伝いなんかしなきゃいけないのよ! 私は忙しいんだから、他を当たって頂戴!」

「そう言わずにさ、頼むよ。お前、こういうの得意だろ? 魚屋のアルバイト、大盛況だったじゃないか」

 

 忙しいと言いながら、昼過ぎまでパジャマ姿の駄女神。

 余りある賞金を湯水のように使い、自堕落な生活をしているアクアにライターの宣伝を頼むも、断られてしまう。

 まあ、こうなることは予想していたけど。

 

「そうだけど……」

「お前ほど商才のあるやつを、他に知らないんだ。三時間だけでいいし、バイト代も弾むから」

「……そ、そうかしら? ま、まあカズマがそこまで言うなら……」

 

 珍しくアクアがすぐに折れてくれた。

 こういう時は、脅すか破格の条件でも提示しないと引き受けてくれなかったが、一体どうしたのだろうか?

 まあ俺としてはありがたいので、黙っていよう。

 

「ありがとな! 礼と言ったらあれだけど、バイト代とは別にうまい酒でも買って待ってるから、頼んだぞ!」

「なによ、分かってるじゃないカズマ! まあ見てなさい! 私にかかればバイト時間内に完売させて見せるわ!」

 

 調子に乗っていつものような大口をたたくが、俺は数時間後、アクアの真の実力を目の当たりにするのであった。

 

 

 

「さあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! ここにあるのは、カチッとするだけで火を点けられる夢のような魔法具よ! これさえあれば、ティンダーいらず! お値段たったの百エリス! さあ、買った買ったー!」

「お、おいアクアの姉ちゃん! 一つ売ってくれ!」

「こっちは二個くれ!」

「はいはい、慌てないでねー? ここだけじゃなくて、ウィズ魔法具店にも大量に在庫があるから、そっちでも買えるわよー!」

「…………」

 

 大通りで路上販売を始めてからたったの三十分。

 即席で用意した露店の前には、長蛇の列が続いていた。

 

「カズマカズマ! ウィズの店の方もこっちと同じくらいの長い行列ができています! もう在庫が少なくなってきたとかで……!」

「嘘だろ!? 俺、一週間掛けてかなりの数作ったんだけど!?」

 

 まずいことになった。

 アクアの力を舐めすぎていたかもしれない。

 

 アクアの客寄せは、それはもう見事なものだった。

 まずはお得意の宴会芸を、ライターを交えつつ披露し、道行く人の足を止め。

 テレビショッピング顔負けのセールストークで、次々と購入者が増えていき。

 行列に誘われた人たちも、気づけばライター片手に列を離れていく始末だ。

 

「ごめんなさい、もう売切れちゃったみたいなの! お詫びと言ってはなんだけど、私の必殺宴会芸でも見ていきなさいな!」

 

 そう言って大勢の人の前で宴会芸を始めてしまうアクア。

 三時間で、との約束のアルバイトだったが、半分以上の時間を残して終了と相成った。

 

「カズマ―! あんたも見てなさい! これが機動要塞デストロイヤーよ!」

「バカ! 宴会芸見せるためにやってんじゃ……すげー! なんだそれ!」

 

 肌が凍てつくような冬空の下、アクアの周りだけが熱気に包みこまれていた。

 

 ちなみにこの日の総売り上げは六十万エリスにまでなり、ウィズには泣きながらお礼を言われることとなった。



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最強の魔法使いの生誕祭

「ようウィズ。ライターの売り上げはどうだ?」

「カズマさん! 見ての通り、順調ですよ!」

 

 初日にわずか一時間で売り切れてしまったライターだったが、街の鍛冶師と連携することで、安定した大量生産が見込めるようになった。

 ちゃんとした特許もとったため、販売はウィズの魔法具店でしか行われていない。

 今では、作ったそばから売り切れてしまう人気商品である。

 安定した収入を得たおかげか、ウィズも心なしか前より元気そうに見えた。

 

「今日はどうしたんですか? そうだ、実は今回の売り上げでいいものを仕入れたんですよ! これ、高純度のマナタイトです! こんな質の高いものは、なかなかお目にかかれません!」

「……ほうほう。ちなみにお幾らなんですか?」

「一個二千万エリスです! とってもお得でしょう?」

 

 こんな駆け出しの街で、誰がそんなもの買うのだろう。

 ウィズの顔色が良かったのは、こういう訳か。

 いずれ必要になるだろうが、今はまだ使う予定もないため、遠慮しておいた。

 

「それよりさ、杖を探してるんだけど、なんか良いのないかな?」

「杖、ですか?」

「ああ。実は今日、めぐみんが誕生日でな。プレゼントは杖にしようかと思って……」

 

 前の時は知らなかったため、何もしてやれなかったが、今回は違う。

 正確な日にちは知らなったから、こっそり冒険者カードを拝借して確認しておいた。

 今頃は、アクアとダクネスもプレゼント選びに奔走していることだろう。

 

「では、これなんかどうでしょう? 魔力を攻撃力に変換する杖です。持っていると、無限に魔力を吸い続けてしまうのが難点ですが……」

 

 どこかで聞いたことのある杖だ。

 めぐみんの魔力ならば、さぞかし重い攻撃となるだろう。

 だが、爆裂魔法以外の攻撃をしたがらないめぐみんでは、貰っても困るのがオチだ。

 

 他にもいろいろな杖について説明を受けたが、どれも難点があったり、高かったりと微妙な感じであった。

 

「今のが最後ですね……。他には、ウィザード用のマジックアイテムがありますが……あっ! そういえばいいものがありました!」

 

 ウィズは「少し待っててくださいね」と告げると、店の奥へと消えていった。

 

 ……ウィズが『いいもの』と言うものには、嫌な予感しかしないが、一応見させてもらおう。

 杖だけで決めるならば、あの五個目の歌が上手くなる杖が最有力だ。

 まあ、実用性重視のめぐみんが喜ぶかどうかを聞かれたら、疑問ではあるが。

 

 プレゼントのことで頭を悩ませていると、ウィズが商品を携えて戻ってきた。

 

「こちらになります」

「これ、指輪か?」

 

 少し古いように見えるが、それが却ってアンティークな雰囲気を醸し出していて、中二心をくすぐられる。

 めぐみんがいかにも好きそうなデザインであった。

 だが、ここで一つ気になることが……。

 

「……この指輪、どんな効果なんだ?」

「ある特定の魔法の攻撃力のみを上げてくれるんです。副作用とか、着けると一生取れない、みたいなことはありませんから安心してください」

「へえ。それだけ聞くと、結構よさそうに感じるんだが……。なんで売れなかったんだ?」

「その特定の魔法というのが、爆裂魔法でして……」

「あー……」

 

 なるほど、そういうことか。

 めぐみんだけでなく、ウィズや俺も使えるから忘れがちだが、この世界で爆裂魔法を使える人なんて滅多にいないのだ。

 只でさえオーバーキル気味なのに、更に火力をかさ増しさせるような魔道具が売れるわけがない。

 

 ただ一人を除いては。

 

「ウィズ、これいくらだ? 俺が買うよ」

「こちら、一個五十万エリスとなります」

 

 結構高いが、手が出ない値段というわけでもない。

 金ならば、また稼げばいいのだ。

 

「あっ、そういえば指輪のサイズ大丈夫か?」

「それなら問題ありませんよ。指輪が自動的にサイズを調整してくれますから」

 

 なるほど、そいつは便利だ。

 これに決まりだな。

 

 俺は買い取った後、ウィズに綺麗にラッピングしてもらってから店を後にした。

 

 

 

「よく考えたら、出会って一ヶ月程度の仲間に指輪をプレゼントするってどうなんだ? 少し重たいんじゃないか……?」

 

 屋敷へと帰る途中、ふとそんなことを思ってしまった。

 だ、大丈夫だよな?

 引かれたりしないよな?

 真面目に選んだプレゼントで引かれたら、ちょっと立ち直る自信がない。

 

 そんなことを考えながら屋敷へと帰ると、プレゼント選びを終えたであろうダクネスがパーティーの準備をしていた。

 

「お帰り、カズマ。少し遅かったな。プレゼントは選び終えたのか?」

「悪い、少し手間取ってな。その分、プレゼントの方はばっちりだ。アクアとめぐみんは?」

「二人なら爆裂魔法を撃ちに出かけている。アクアがたっぷり時間を稼ぐと豪語していたからな、まだ時間には余裕があるはずだ」

 

 ダクネスの言葉に取り敢えず安心する。

 念のため『千里眼』スキルで周囲を確認してみたが、近くにアクアとめぐみんは見つからなかった。

 

 パーティーの準備を手伝いつつ、ダクネスになにを買ったか尋ねたところ。

 

「私は櫛にした。めぐみんは素材はいいのに、少し女としての自覚が足りないからな」

 

 とのことだった。

 ちなみにアクアは、手作りの機動要塞デストロイヤー人形だそうだ。

 あいつは本当に、芸術の道に進んだ方が大成するのではなかろうか。

 

 準備も終わり、待つこと三十分。

 ようやくアクアとめぐみんが帰ってきた。

 

「ただまー! 寄り道してたら遅くなっちゃった」

「いやあ、あの鉱石を破壊されたときの店員の顔は見ものでした! 明日もやりたいものです」

 

 こいつら、まさか街中で爆裂魔法をぶっ放したんじゃないだろうな?

 めぐみんの言葉に一抹の不安を抱きながらも、当初の予定通りサプライズを決行することにした。

 

「えー、んんっ。めぐみん、今日が何の日か分かるか? そうだ、お前の誕生日だ。というわけで、ささやかながら俺たちからプレゼントを用意した」

 

 あまりの気恥ずかしさに口早になってしまう。

 慣れないことはするものじゃないな。

 

 ちらりとめぐみんの方を見ると、驚きのあまり言葉を失っているようである。

 

「カズマ、もう少し言い方はなかったのか? ……まあでも、そういうわけだ。めぐみん、誕生日おめでとう」

「私からはこれよ、機動要塞デストロイヤー! どう? なかなか上手く出来てるでしょ!」

「……ありがとうございます」

 

 呆然としながらも、二人から受け取ったプレゼントを大事そうに抱えるめぐみん。

 展開の速さについていけてない様子であったが、俺も構わずプレゼントを手渡した。

 

「俺からはこれだ。べ、別に深い意味はないからな! 勘違いすんなよな!!」

「なあに、今の。カズマ、ツンデレのつもり? 気持ち悪いだけだから、やめときなさい」

「違うわ!」

 

 良い雰囲気なんだから、こういう時位気付いても見逃してほしい。

 確かに気持ち悪いけど。

 

「開けてみてもいいですか?」

「ああ」

 

 俺のだけラッピングされていたため、許可を取ってから、割れ物にでも触るかのように丁寧に開封していく。 

 出てきた小洒落た箱を開けると、当たり前だが例の指輪が出てきた。

 

「「…………」」

「引くな! これはあれだ、爆裂魔法の威力を上げてくれるんだ!」

 

 無言で俺を見つめるアクアとダクネス。

 くそっ、やっぱりやめときゃよかった。

 そう思ったが、貰った本人はというと。

 

「ありがとうございます。思えば家族以外の人からこうやって誕生日を祝ってもらうのは初めてのことで、気恥ずかしい反面、こう、なんて言ったらいいか……」

 

 帽子のつばで顔を隠し、尻すぼみに言葉を失っていくめぐみん。

 その様子を見た俺たちは、顔を見合わせ、サプライズが上手くいったことを喜び合った。

 

「さあ、今日は無礼講よ! ケーキも用意したから、朝まで飲むわよ!」

「おい、お前無礼講の意味を知ってて言ってるのか? 自分の地位が上だって言いたいのか?」

「まあまあ、カズマ。今日は目出度い日だ。ほら、めぐみんも突っ立ってないでこっちへ来い」

 

 こんな日でも変わらず、ぎゃあぎゃあと騒がしい俺たちだが、めぐみんは顔を上げると――。

 

「はい!」

 

 と満面の笑みを浮かべるのであった。

 

 

 

 酔いつぶれたアクアを部屋へと運び、片付けもし終えた俺が、部屋で寝ようとしていると。

 めぐみんが訪ねてきた。

 

「カズマ、今日はありがとうございました。ダクネスに聞きましたよ。今日のパーティーはカズマが企画してくれたんだって」

「まあパーティーメンバーだからな。別にお前だけ特別にってわけじゃないぞ? ダクネスだって春頃に誕生日らしいからな、その時はお前も協力してくれよな」

「それはもちろんですが、やっぱりちゃんとお礼を言っておきたくて」

 

 そういって微笑むめぐみんは、思わず抱きしめたくなるほどに可愛かった。

 一周目の時は、結局『仲間以上恋人未満』の関係で終わった俺とめぐみん。

 今も信頼されてきてはいるだろうけど、そのことを思い出すと切なくなってくる。

 

「礼なんかいいから、早く寝ろよな。明日からまたクエストに行くんだから」

「分かってます。ですから……」

 

 そう言って軽く手招きするめぐみん。

 俺は深く考えずに近づくと。

 

「んっ……」

「!!??」

 

 直ぐ近くにある顔。

 頬には、柔らかい感触を感じる。

 

 あまりの衝撃に呆然としていると、めぐみんは顔を離し、赤く染まった顔で言った。

 

「今のは、ほんのお礼です。それではカズマ、おやすみなさい」

 

 ばたん、と扉が閉まる音がどこか遠くから聞こえてくるように感じる。

 その後、めぐみんが出て行ってから数分が経っても、俺はその場に動けずにいるのだった。




 戦闘シーンを書くのに疲れてしまい、二話連続で日常回にしました。
 次回は、あの大物賞金首との戦闘です。


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デストロイヤー襲来!

「…………」

 

 昨夜は、ほとんど眠れなかった。

 今思い出しても、夢なんじゃないかという気持ちの方が強い。

 

 めぐみんの唇が触れた頬が、未だに熱を持っているように感じられる。

 

 二周目では、出会ってまだ約一ヶ月。

 それだというのに、少し進展しすぎではないだろうか。

 確かに、俺がめぐみんについてよく知っているというのはある。

 だが、それにしたってだ。

 

 いや、嬉しいよ? 嬉しいけど……。

 めぐみんのことだ、また顔を合わせればケロッとしたように普段通りなのだろう。

 そうだ、そうに違いない。

 本当にあいつは、魔性とか小悪魔とか、そういう言葉が歳の割に似合うやつだ。

 

 そうと決まれば、俺も普段通りにいってやる。

 俺のポーカーフェイスは自慢じゃないが、彼の有名なカジノ大国であるエルロードの猛者だって欺くことが出来る。

 今日こそは、一矢報いてやるのだ。

 

 

 

「カカカ、カズマ。お、おはようございます」

「おおお、おう。おはよう」

 

 おかしい。

 いつもなら何事もなかったような顔であいさつをしてくるはずが、動揺しているのが見え見えであった。

 おかげで俺までどもってしまう。

 

 思えば、あんな甘酸っぱい空気になったことはなかったんじゃなかろうか。

 ムードもへったくれもない、そんなのばかりだった。

 最後にはアクアやダクネスの邪魔が入り、有耶無耶になってしまう。

 それがお決まりというか、お約束だった。

 

 甘い空気を残したまま別れたことで、めぐみんも昨日の余韻が残っているのだろう。

 そうと決まれば……!

 

「なあ、めぐみん。この後、良かったら二人で……」

 

『デストロイヤー警報! デストロイヤー警報! 住民の皆様は、急いで避難してください! 街にいる冒険者の方々は、直ちに冒険者ギルドに集まってください!』

 

「…………」

 

 俺が決死の覚悟でめぐみんをデートに誘おうとしたら、それを邪魔するかのように緊急警報が聞こえてきた。

 やはり、俺には甘い空気など似合わないということだろう。

 

 俺はかぶりを振って、思考を切り替えた。

 今はデストロイヤーが優先である。

 

「カズマ! 今の警報聞いた!? 逃げるわよ! 遠くへ逃げるの!」

「待て待て、せっかく手に入れた家がぱあになるだろ? 取り敢えず落ち着けって」

「はあー? あんた何言ってんのよ! デストロイヤーよ、デストロイヤー! 倒せるわけないじゃない!」

 

 元はと言えば、こいつがこの世界に送り出した日本人が作り出したというのに、なぜこんなに弱気なのだろうか。

 こいつは本当に、自分が女神ということを素で忘れるからたちが悪い。どうでもいい時は、女神女神うるさいというのに。

 

 行きたくないとぐずり始めたアクアを、どうにか外に連れ出そうとしていると、二階からダクネスが下りてきた。

 

「すまない、遅くなった。……アクア、あまりカズマを困らせてやるな。それに、この男なら案外簡単になんとかしてしまうかもしれないぞ?」

「そうですよ、アクア。それにもし倒せれば、デストロイヤーに掛けられた賞金ががっぽり手に入れられます」

「もし本当に危なくなったら俺が『テレポート』で避難するから、な?」

 

 三人がかりでアクアを説得しにかかる。

 実際、アクアがいなければ障壁が破れず、爆裂魔法が通らないのだ。

 アクアの同行は、絶対条件である。

 

「……カズマさん、本当に倒してくれる?」

「俺一人じゃ、そりゃ無理だ。だけど、お前が来てくれれば絶対に倒せる。こういっちゃなんだが、俺は勝てる自信があるクエストしか引き受けないからな、その俺が太鼓判を押すんだ。安心しろ」

「それは、なんだか微妙に格好良くないぞ……」

 

 うるさい、過信するよりましだ。

 俺の言葉に、渋々といった感じでアクアが同行を決意してくれた。

 

「よし! じゃあみんな、行くぞ!」

「「「おう!」」」

 

 アクアの説得を終えたところで、ようやく出発となった。

 デストロイヤー戦の前だというのに、やる前から疲れてしまった。

 

 俺が溜息をつきながら、玄関を出ようとした時。

 めぐみんが俺の袖を軽く引っ張って――。

 

「カズマ。これが終わったら、さっきの話のつづき、聞かせてくださいね?」

 

 みんなに聞こえないくらいの小声で、そう呟いた。

 若干死亡フラグのようにも感じたが、現金な俺のやる気はさらに上がるのであった。

 

 

 

 ギルドに入ると、既に見慣れた冒険者たちが大勢やって来ていた。

 

「サトウさん! 来てくれたんですね!」

 

 今やアクセルの街でも言わずと知れた俺たちのパーティーがやってくると、ギルド内のボルテージが上がった。

 カエルにだって苦戦していたというのに、俺たちも強くなったものだ。

 

 俺は受付のお姉さんの元まで行くと、デストロイヤー討伐の作戦について話した。

 

「すいません、実はデストロイヤーに通じそうな戦法があるんですけど……」

「ほ、本当ですか!? ぜひ、お聞かせください!」

 

 大まかな作戦は前回とそう大差ないが、今回は効率重視だ。

 受付のお姉さんは俺の作戦を聞くと、すぐさまギルドにいる人員で班を作成し始めた。

 

 元はと言えば、俺と同じ転生者の悪ふざけで始まったデストロイヤー騒ぎ。

 本人はもう死んでいるため、責任を問うことは出来ないが、尻ぬぐい位は同じ転生者である俺がしてやる。

 

 

 

「サトウカズマ、この前はすまなかった」

「……なんだよ突然、気色悪い」

 

 ウィザード組と一緒に『クリエイト・アース』で砂を作り出していた俺のところに、唐突にミツルギが謝りに来た。

 ミツルギも仲間の美少女を引き連れて、デストロイヤーの討伐に名乗り出ていたのだ。

 

「聞いたよ、ベルディアを倒したんだってね。君のことを誤解していたよ」

「ベルディアのことなら俺だけの実力じゃないし、正面からやりあえば俺はお前に勝てない。誤解でも何でもねーよ」

「それでもさ。ベルディアは今の僕じゃ倒せなかった。君は本当にすごい奴だよ。それに――」

 

 言葉を区切って、ミツルギは視線をアクアの方へと向ける。

 そこには、他の冒険者にああだこうだと言いながら、楽しそうにバリケードを作るアクアの姿が。

 

「――君といた方が、アクア様は楽しそうだ」

 

 寂しそうな笑みを浮かべたミツルギは、そう言ってその場を後にした。

 

 あいつの、こういうところが、本当に嫌いだ。

 こういう、憎み切れないところが。

 

 

 

 ウィザード組と一緒に砂を生成していた俺だが、魔力を節約するために休憩をとることとなった。

 作業場を離れ、正門前のバリケード作りの様子を見に行くと、ダクネスが手伝いもせず遠くを見つめていた。

 

「ダクネス、こんなところで突っ立って、なにしてんだ? いくらお前が耐久力に自信があるからと言って、デストロイヤーを止めるなんて無謀もいいところだ」

「……カズマ、私には聖騎士としてだけでなく、この街を守らねばならない理由があるのだが……。お前には話しておこうと思う」

 

 そう言うとダクネスはくるりとこちらを向き、胸元からペンダントを取り出した。

 それは昔俺がよく悪用していた、とある貴族の家紋であった。

 

「私の本名は、ダスティネス・フォード・ララティーナ。名前からも分かるように、貴族だ。であるならば、この地に住まう人々を守るのは、当然の義務なのだ」

「……お前、普段あんな格好良い言動なのに、本名は可愛らしいんだな」

「それを言うなっ! ……カズマ。今私は、結構な重大発表をしたと思うのだが、言いたいことはそれだけなのか?」

 

 まあ、知ってましたから。

 それに、いくら大貴族のお嬢様だからと言って、うちのパーティーの大事なクルセイダーだということに変わりはない。

 

「別にお前が貴族だとか、そんなことは関係ない。これからもお前が貴族だからといって遠慮することもなければ、特別扱いするつもりもない。そこんとこだけは覚悟しておけよな」

「……そうか。そうっだな、そうだった。カズマはそういうやつだったな」

 

 ダクネスは何がそんなに面白いのか、ひとしきり笑うと。

 

「ありがとう」

 

 思わず見とれるほどの笑顔で、そういった。

 

 

 

 結局ダクネスの説得には失敗し、決戦の時がやってきた。

 

「おい! 俺の『千里眼』スキルで敵を発見した! まだ視認は出来ないが、もうすぐ来るぞ!」

 

 俺がそう叫ぶと、作業中だったものも手を止め、一斉に避難を開始する。

 もっと阿鼻叫喚の地獄絵図になるかと思ったが、全員思った以上に冷静だった。

 

「アクア、準備はいいか? お前はこの作戦の要だ。頼んだぞ」

「任せなさい! あんなガラクタ、私にかかればイチコロよ!」

 

 ここ一番という時のアクアは、本当に頼もしい。

 こいつの頭の中の辞書には、緊張という文字がないのだろうか。

 

 そういえば前はめぐみんが緊張で、危うく爆裂魔法を失敗するところだった。

 まだ視認できるまで少し時間があるため、緊張をほぐしてやろうと視線を向けると。

 

「どうしました、カズマ? 私も準備ばっちりですよ。いつでもいけます」

 

 緊張どころか、普段より落ち着いためぐみんの姿が、そこにはあった。

 

「……お前、緊張とかしてないの? いや、むしろ全然ありがたいんだけどさ。相手はあのデストロイヤーだぞ?」

 

 訝しむように俺が尋ねると、めぐみんは優しく微笑みながら。

 

「緊張はしています。ですが、隣にはカズマがいてくれますから」

 

 そんなことを、恥ずかしげもなく口にした。

 おかげで、俺の方がめぐみんの近くにいるというだけで緊張してきてしまった。

 

 なんなの? こいつ、本当に俺のこと好きなの?

 

 そんな考えが頭の中にループし始めていたが、アクアの声に現実に引き戻された。

 

「来たわよ、デストロイヤー!」

 

 遠くに見えるのは、クモ型の超巨大兵器。

 機動要塞デストロイヤーが、その姿を現した。




 すいません、長くなりそうなので区切りました。
 次回で決着となります。


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激闘とその後

 私情により、昨日は投稿できませんでした。
 申し訳ありません。


「『クリエイト・アースゴーレム』っ!」

 

 魔力に物を言わせ、俺は巨大な砂のゴーレムを作った。

 この街にもクリエイターは多数いるが、全員駆け出しばかりだ。そのため、魔力総量が圧倒的に多い俺がゴーレムを作った方が大きくて強いゴーレムを作ることが出来る。要は量より質を取った作戦である。

 大きさだけで言えば、機動要塞デストロイヤーにも引けを取らない。

 

 真っ直ぐ向かって来るデストロイヤーに、立ちはだかるゴーレム。

 今、大きな音を立ててぶつかり合った。

 

「おお! 動きが止まったぞ!」

 

 バリケードの内側からは冒険者たちの歓声が上がるが、これも長くは保たない。

 ゴーレムが足を止めているうちに、俺はアクアに指示を出した。

 

「アクア! やっちまえ!」

「『セイクリッド・スペルブレイク』ーっ!!」

 

 アクアの周りに魔法陣が浮かんだかと思うと、そこから光の柱が放出される。

 光は真っ直ぐにデストロイヤーへと向かうと、一瞬、薄い空気の膜のようなものの抵抗を受けるが、乾いた音を響かせながら粉々に砕け散った。

 

 デストロイヤーの結界は破った。

 後は動きを止めるだけである。

 

「『エクスプロージョン』っ!!」

 

 めぐみんによって放たれた爆裂魔法は、以前の倍近い威力であった。

 指には、俺が贈った指輪がはめられている。

 

 デストロイヤーへと放たれた爆裂魔法は、脚だけでなく機体本体にもダメージを与え、デストロイヤーは完全に停止した。

 

「どうですカズマ……。我が渾身の爆裂魔法の威力は……?」

「ああ、二百点をくれてやる」

 

 ウィズの力を借りることなく、一人でデストロイヤーの動きを止めためぐみんは、倒れたまま誇らしげに言った。

 

 いかにもやり切った顔をしているめぐみんには申し訳ないのだが、まだ終わりではない。

 そう、俺は二度目だから知っている。

 知っているのだが。

 

「やったか!?」

「俺、この戦いが終わったら結婚するんだ……」

 

 こういかにもな死亡フラグを建てるやつを見ると、腹立たしくなる。

 ご期待通り、デストロイヤーからは機械的な声が流れてきた。

 

『この機体は、機動を停止しました。排熱、及び機動エネルギーの消費ができなくなっています。搭乗員は速やかに、この機体からはなれ、避難して下さい。繰り返します』

 

「カ、カズマ。これはどういうことなのだ?」

「どういうこともなにも、まだ終わってないってことだよ……ほいっと」

 

 不穏な様子に駆けつけてきたダクネスに返事をしながら、フック状になった矢をデストロイヤーの甲板へと放った。矢は、『狙撃』スキルの補助を受けて甲板に引っかかった。

 

「アクアとめぐみんは危ないから待機してろ。ダクネスは俺と来い。中に警備用のロボットとかもいるかもしれないからな」

「あ、ああ。分かった」

 

 めぐみんはデストロイヤーの中身を見たがったが、渋々といった様子であきらめた。

 アクアは態々危険を冒してでも街を救おうという根性は持ち合わせていないため、むしろ喜んでいるようにも見える。

 

 俺はダクネスを伴い、デストロイヤーへと乗り込んだ。

 

 

 

「ダクネス! そこの扉だ! お前の怪力でぶち壊せ!」

「……カズマ、私だって女の端くれだ。そんな面と向かって怪力とか言われると傷つくのだが……」

「だったら先に普段の言動改めろ!」

 

 デストロイヤーの内部に乗り込んだのは俺とダクネスの二人だけだ。

 コロナタイトのある場所はすでに把握しているため、テレポートですぐに帰ってこれる俺が乗り込むというのは、すでに作戦会議の時点で提案していた。

 途中のゴーレムはすべて無視し、真っ直ぐに動力部へと向かうと。

 

「これは……」

 

 絶句するダクネスが見つめるのは、白骨化した死体であった。

 側には日記が置いてある。

 

「デストロイヤーから降りれず、一人寂しく死んだのだろうな……。せめて、遺骨を持ち帰って供養してやらねば……」

「うんそーだね」

 

 真相を知っている俺からすれば、傍迷惑なだけの話であるが、態々言う必要もあるまい。

 

 ダクネスが遺骨をまとめている間におれは動力源であるコロナタイトを取り出すことにした。

 

「『スティール』っ! ぅあぢゃあああああああああああああああっ!!」

「カ、カズマ!? どうしたのだ!?」

「『ヒール』! 『ヒール』! だ、大丈夫。問題ない」

 

 問題なくはないが、他にコロナタイトを取り出す方法も思いつかなかったため、仕方なしにやったのだ。

 別に何度やっても学習しない馬鹿なわけではない。そこだけははっきりと真実を伝えたかった。

 

 取り出したコロナタイトであるが、転送先はすでに決めていた。

 ベルディアが根城にしていた廃城である。

 ベルディアを討伐した際にテレポートの転送先に設定しておいたのだ。

 あそこならめぐみんの爆裂魔法ですら壊れないし、人もいない。

 

「『テレポート』」

 

 コロナタイトを無事転送させた俺は、無事ダクネスと二人で脱出した。

 

 

 

「あ、カズマさん。おかえりなさい」

「……お前、くつろぎすぎだろ」

 

 戻ってくると、アクアは退屈そうにお茶を飲んでくつろいでいた。

 確かに一番大事な役目は終えたけど……。

 まあいいか、大目に見てやろう。

 

「カズマさん、お疲れ様です」

「ありがとな、ウィズ。後は、手はず通り頼むよ」

「はい」

 

 ウィズには最後の仕上げのために、待機してもらっていた。

 別に魔力を分けてもよかったが、アンデッド専用スキルである『ドレインタッチ』を使っているところを見られて、あらぬ容疑を掛けられるのも面白くない。

 そのため、デストロイヤーの動きを止めるのは、指輪で爆裂魔法の威力が上がっためぐみんに任せたのだ。

 

 ウィズの爆裂魔法は、指輪で威力の上がっためぐみんの爆裂魔法には及ばずとも、満身創痍のデストロイヤーを破壊しきるのには十分な威力であった。

 

 

 

 デストロイヤー討伐も無事終わり、街へと戻ってきた。

 討伐の報告はすでに行われているだろうが、念のために俺たちもギルドへ報告にやってきたのだが……。

 

「サトウさん、お見事でした! デストロイヤー討伐の中心となったあなた達には、特別報酬が与えられることとなりました!」

 

 帰っていきなり奥の部屋へと通され、賞金の話になった。

 ベルディア戦の時は受付で普通に行われたというのに、慌てた様子で手を引っ張られたときはひやひやしたものだ。ないとは思うが、また逮捕されたりしたら立ち直れない。

 

 奥に通されたのは他でもなく、賞金総額が大きかったからだ。

 その額なんと。

 

「「「二十億!?」」」

「しー! 声が大きいですよ!」

 

 デストロイヤーってそんなに賞金がかかってたのか。

 しかし、考えてみれば無理もないのかもしれない。

 

 デストロイヤーの制作者は、確か紅魔族の生みの親でもある。

 となると、めぐみんの祖先の代からデストロイヤーはいたということだ。

 そんな長い間、誰にも討伐されることなく世界中で破壊の限りを尽くしていたのだ。

 

 これ、魔王軍より厄介な相手だったんじゃないか?

 倒せたからよかったけど……。

 

 しかし、貰えるものなら貰っておこう。

 

「なあダクネス。このお金銀行に直接預けに行っててくれないか?」

「それは構わないが……。カズマは行かないのか?」

「俺はちょっと、用事があるからな」

 

 ダクネスならば信用できるため、二十億を預けてギルドを後にした。

 これで本当に最後だ。

 

 

 

 デストロイヤーが通った道を引き返していくと、蹂躙された農村が見えてきた。

 村人たちは必死に復興作業に勤しんでいたが、顔には覇気がなかった。

 

「すいません、ちょっといいですか?」

「……なんだ」

 

 そこらにいる村人に適当に声を掛けたが、態度があからさまであった。

 

「この農村の代表者の方ってどこにいます?」

「……なんでそんなことを?」

「いえ、実はダスティネス家の方がデストロイヤーに蹂躙された村々に復興資金を出してくれるとのことでして……。俺はその使者としてきたんですよ」

「! 今、村長を呼んでくる!」

 

 男は顔色を変えると、走ってどこかへと消えていった。

 

 これが最後の大仕上げであった。

 この地域の領主であるアルダープは、その義務を放棄し、復興資金を一円たりとも出さない。

 代わりに頼ったのが、ダクネスの実家でもあるダスティネス家だ。

 しかし、前回のベルディア戦の際に起こした大洪水によって、資金が底をついていた。

 そこで、ダクネスが自身を担保にアルダープに借金をしたのだ。

 

 どこからどうみても筋が通っていないが、あの時のダクネスはそれが正しい行いだと信じて止まなかった。

 意外なところで頑固なダクネスを説得するのは骨が折れるため、借金自体をさせないように先回りしたのだ。

 

 数分後、先ほどの男が初老の男性を伴って戻ってきた。

 

「私がこの村の村長です。復興資金を、ダスティネス家の方々が出してくれるというのは、本当ですか?」

「はい。詳しくは、近隣の村の被害状況を確認してからとなりますが……」

「分かりました、他の村にもすぐに連絡します!」

 

 取り敢えず、後日話し合いの場を設けることとなり、その日は解散となった。

 村長のおおよその見積もりでは、やはり二十億近くかかるらしい。

 

 俺は、その日からアルダープをさっさと失脚させ、国からの返金を求めるための行動に移るのであった。



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人見知りな少女

 アルダープについて調べ始めてから一週間が経過した。

 小さい隙でも、つついて大きくしてやろうかと思っていたのだが、考えが甘かったようだ。

 

 証拠が全くと言っていいほど出てこないのだ。

 

 いやいや、おかしい。

 領主が失踪した後のことではあったが、不正の証拠は山ほど出てきたのだ。

 前の時は俺の捜査力に不備があると思っていたのだが、どうにも違うようであった。

 

 しかし、考えてみても仕方ない。

 分からないものは分からないのだ。

 

 俺は復興支援のために、農村へと向かうのであった。

 

 

 

「とりあえずこれ、五億エリスだ」

「おお、ありがとうございます!」

 

 二十億は四人で均等に分けたため、取り敢えず俺が出せる最大額を持ってきた。

 一日に五億を引き出すのはさすがに無理なので、一週間かけてゆっくり引き出したのだ。

 農民の人々も、流石に即金で二十億も貰えると思ってはいなかったようで、問題の先送りにはなったようである。

 

「復興の計画とかは決めているのか?」

「まだ大まかなものですが……。こちらです」

 

 そう言って手渡された分厚い資料に、目を通していく。

 避難民の仮設住宅に食糧費など、多種多様にやることがあるようだ。

 

 そんななかで、いくつか節約できそうな項目が見つかった。

 

「この瓦礫の撤去なんだが、業者に頼まなくても、タダで済むからなしで」

「ほ、本当ですか?」

「むしろ、喜んでやってくれるまである」

 

 めぐみんに頼めば、瓦礫なんて一瞬で粉々だ。

 これでかなりの金額が浮くことだろう。

 

「あとこれ。畑とか建物の修繕費なんだが、上手くいけば抑えられるかもしれない。知り合いのニートに、こういうのが得意な奴がいるんだよ」

 

 紅魔族の魔王軍遊撃部隊とかいうふざけたニート集団を上手く焚き付けられれば、人件費を大幅に抑えられる。

 問題はどう焚き付けるかだが……。

 まあ封印がどうのとか、適当に格好いいこと言ってれば何とかなるだろう。

 

「そんな人が、なんでニートに……?」

 

 まあ真面目に生きている人からすれば、当たり前の疑問だろう。

 プロの引きこもりだった俺からすれば、あいつらはニートを舐めている。

 

 他にも細かいところを詰めていき、最終的に復興費は十億エリスくらいまでに抑えられることになった。

 半分になったはいいが、それでもまだ五億エリスも残っている。

 さて、どう稼いだものか……。

 

 やはり知的財産を有効活用するしかないと思い、俺は村を後にした。

 

 

 

 日本では当たり前のものだが、この世界では画期的で尚且ついくつか実現できそうなものに心当たりがあった俺は、ウィズの店に相談しにやってきた。

 扉に手をかけ、中に入ろうとすると、なにやら話し声が聞こえてくる。

 来客中か?

 

「ウィズ、いるかー?」

「あ、カズマさん! 丁度いいところに。この方、めぐみんさんのお友達らしいんですよ!」

「友達? ……あっ」

 

 そこにいたのは、黒いローブに身を包んだゆんゆんその人であった。

 

「あっ、いえ、友達と言いますか、ライバルと言いますか……。わ、我が名はゆんゆん! アークウィザードにして、上級魔法を操る者! やがては紅魔族の長になる者!」

 

 恥ずかしそうにしながらも、紅魔族特有の自己紹介をやり遂げるゆんゆん。

 嫌ならやらなければいいのに……。

 

「そっか。俺はカズマ。めぐみんの冒険者仲間だ。よろしくな」

「……えと、カズマさん? 私の名前、馬鹿にしないんですか?」

 

 紅魔族は名前を馬鹿にされないと気が済まないのかと、逆に問いかけたくなる。

 めぐみんもゆんゆんも、名前を馬鹿にされなかった位で驚きすぎだろ。

 

「しないよ。そんなの、本人の性格とはなんにも関係ないだろ? それより、めぐみんの友達なんだろ? 良かったら家来るか? めぐみんに会って行けよ」

「え、えええええええ!? そ、そんないきなり!? 急に訪ねるなんて失礼じゃありませんか!? もっとこう、先にお手紙を送って、お土産もいっぱい用意して……!」

「お前はどこへ行く気だ! そんなことされたら、逆に気を遣うわ!」

 

 友達が少ないとは聞いていたが、ここまで拗らせているとは……。

 前の時はウィズやバニルだけでなく、チンピラとも仲良くしていたみたいだし、少し将来が不安になってきた。悪い男に引っかからなければいいのだが……。

 

「そうだ、カズマさん。ライターの売り上げ金についてなんですけど……」

「ああ、それなら月末だろ? まだ数日あるし、今日はいいよ」

「それもそうなんですけど、売り上げの途中経過がですね……」

 

 あまり他の人に聞かせるようなものではないため、ゆんゆんに聴こえないようにウィズが耳打ちしてきた。

 その途中経過は、俺の想像を遥かに超える金額であったのだ。

 

「……それまじ? まだ月末まで数日あるだろ? あんな単価の安い物でそんなに儲かるのか?」

「それがですね、作ったそばから売れて行きまして……。職人さんとも連携しているおかげで、薄利多売を地で行く結果に……」

 

 ウィズも我がことながら驚きを隠せないでいるようだ。

 これは二十億近くで売ったとはいえ、前回は勿体無いことをしたものだ。口角が自然と釣り上がっていってしまう。

 

「あの、どうかしました?」

「ああいや、なんでもない。取り敢えず、ゆんゆんは家で飯でも食っていけよ。めぐみんも会いたがってるだろうし。ウィズ、またな。ちょっと相談したいことがあるから、また明日来るよ」

 

 ウィズに別れを告げ、俺とゆんゆんは帰路についた。

 

 

 

「ひ、久し振りねめぐみん! 約束した通り、修行の旅から帰ってきたわよ!」

「……なんであなたがここにいるんですか?」

 

 ゆんゆんに対してだけは、相変わらずきつい態度のめぐみん。

 それだけ心を許しているということだろうけど、もう少し優しくしてやれよ……。

 

「なになに? めぐみんのお知り合いかしら?」

「珍しいな、めぐみんの知り合いが訪ねてくるなんて」

 

 騒ぎを聞きつけたアクアとダクネスもやって来て、お互いに自己紹介をしている。 

 コミュ障のゆんゆんだが、頑張って自己紹介をしているところを見ていると微笑ましい。

 

 俺が三人を眺めていると、めぐみんが耳打ちしてきた。

 

「カズマ、ゆんゆんとはどこで知り合ったのです?」

「ウィズの店だよ。ウィズに紹介してもらったんだ。めぐみんの友達だって」

「別に、友達というわけでは……」

 

 そのままぶつぶつと独り言を言い始めてしまう。

 全く、どっちも素直じゃないな。

 

「そうだ、ゆんゆん。紅魔の里にテレポートってできるか? 出来たらお願いしたいんだけど……」

「すみません、実は登録してなくて……。でも、王都に紅魔の里にテレポートできる知り合いならいますよ?」

「本当か? ちょっと紹介してほしいんだが……」

 

 紅魔の里をテレポートの転送先に設定していなかったため、ゆんゆんに頼もうと思ったのだが、当てが外れた。

 でもその知り合いとやらが頼まれてくれれば、ニート集団と知り合いになって復興の手伝いを頼めるかもしれない。王都までの旅費は痛い出費だが、先行投資と考えれば悪くない。

 

「カズマ、紅魔の里になにか用事でもあるのか?」

「ちょっとな」

 

 ダクネスに素直に目的を答えるわけにいかない。

 こいつのことだ、俺が領民の復興費を肩代わりしていると知ったら、意地でも返そうとしてくるだろう。

 そうなればまたアルダープに借金することになり、ダクネスの多すぎる属性がまた一つ追加されてしまう。

 

「紅魔の里ですか……。私も久しく帰省していません。一度顔を出すのもいいかもしれませんね」

「いいじゃない、紅魔の里! たまには息抜きも必要よね!」

「お前は年がら年中息抜きしてるだろ。……ていうか、お前らも来んの?」

 

 着いてくる気満々の三人に尋ねるも、むしろなぜ着いてこないと思ったのかと聞き返されてしまった。

 一応秘密裏にやっていたのだが、こいつらのこの顔はもう何を言っても無駄であることを物語っていた。

 

「分かった分かった。じゃあ明後日、急だけど俺がウィズへの用事を済ませたら出発だ。急なことで悪いんだけど、ゆんゆん、明後日頼めるか?」

「は、はい! 任せてください!」

 

 ああ、ゆんゆんは良い子だなあ。

 癒される。

 今回の件が片付いたら、正式にパーティーに誘ってみるのも悪くないかもしれない。

 俺が使えない上級魔法をいくつも使えるし、いてくれたらかなり助かる。

 

「ありがとな、ゆんゆん。お礼と言っちゃあれだが、今日は晩飯食っていってくれよ。俺の『料理』スキルの腕前を見せてやる」

「ええ!? いいんですか!? まだ出会って一日なのに!?」

「食べていきなさいな。言っとくけど、カズマさんのご飯はそんじょそこらの店より美味しいわよ!」

「なんでお前が自慢げなんだよ」

 

 まあ悪い気はしないけども。 

 

 俺とアクアの誘いに、それでもまだ少し躊躇っているゆんゆん。

 それを側で見ていためぐみんが、ついに業を煮やし。

 

「ああもう! じれったい子ですね! 食べていきたいならいけばいいでしょう!? なにをそんなにぐじぐじ悩んでるんですか!?」

「めぐみん……」

 

 そっぽを向きながら、そんなことを口にする。

 なんだかんだ言って、ゆんゆんのことは放っておけないのだろう。

 

 それを聞いたゆんゆんは、笑顔で夕飯食べていくことを決めるのであった。



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