テニスのお弟子様 (テニス歴0年 HORIO)
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0・プロローグ

ハーメルン初投稿です、お手柔らかにお願いします(*´ー`*)


  [私は天使です…いきなりだけど貴方は死にました]

 

 目の前にいる超絶美人なお姉さんの言葉は俺の想像を遥かに越えるものだった

 

 えっと…思い出せ俺、この謎空間にくる前に俺がしてた事って…目覚ましを7時にセットして就寝…よしッ これは夢だ

 

 [残念ながら現実よ、上空より飛来したボーリング玉サイズの雹が天井を突き破り 、寝ている貴方の顔にジャストミートしたの]

 

 ワーオ それってどんな確率ー

 

 [ついでに事故現場はこうよ]

 

 フリップに出されるグロ画像…モザイク必須だろうよ…だが悔しきかな無修正だからこそよくわかる…これ俺の部屋だわ…

 

 [からのこうよ]

 

 おー、けっこう皆来てくれてんのな って本人のお葬式写真見せて何がしたいのさ…

 

 [つまり貴方は死にました、御愁傷様です]

 

 おっ おう…

 

 [さて では説明がめんどくさいのでパッとと生まれ変わりましょう]

 

 はーい ってなるほど俺は柔軟じゃねーよ

 

 [ちッ じゃあ説明を、これから貴方はとある世界に産まれてもらいます]

 

 あっ そこは決定なんだね…あと美人な天使が舌打ちなんてすんなよ イメージが壊れるだろう…

 

 [その世界は、人が簡単に吹っ飛んだり 分身したり オーラや気を使ったり、物理法則をねじ曲げたりする そんな世界です]

 

 物騒な世界だな…

 

 [なので転生特典を3つ与えます、ぶっちゃけ私の上司のしょうもないミスで貴方が死んだので埋め合わせみたいなもんです…めんどくさい]

 

 めんどくさい言うなし…つーか俺しょうもないミスで死んだのか…埋め合わせなら別のほのぼの系の世界とかにできないの?

 

 [無理です、ついでに次に産まれる所はもう決まってます、今 母親のお腹の中で絶賛待機中ですよ、早くしないと特典無いまま産まれます…楽でいいけど]

 

 おいッ…貰えるもんは貰うさ…能力…能力…能力ー? そのオーラとか分身とかって力は その世界の皆は使えるの?

 

 [その人の努力と技術 次第で可能です]

 

 なら一つ目は「努力を続けられる屈強な精神力と何でも器用にこなす技術力ある丈夫な身体」をお願いします

 

 [「屈強な精神力」と「器用さ」と「丈夫な身体」ですね]

 

 くっ しまった、一つにまとめてカウントされなかったようだ…なら脚下で一つ目は「時止め(ザ ワールド)」で二つ目は…

 

 どんどん透けていく俺の身体…

 

 「残念ながらもう出産が始まるみたいですね さっき言ってた3つの特典授けときますね」

 

 えっ …あのー 女神様ー

 

 「その世界は貴方の知識も武器になると思いますよ、いろいろ 頑張ってくださいね~」

 

 意味深な言葉を残して笑顔で手を降る天使様…

 

 俺は転生する…人が簡単に吹っ飛んだり 分身したり オーラや気を使ったり、物理法則をねじ曲げたりする そんな物騒な世界へと…

 

 生き残れるのか…俺?

 

 



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1・物騒な世界?

 今日 2月25日は 、この世に生まれ変わり 逹宮 将人 (タツミヤ マサヒト)としての11度目の誕生日である、そして世界は今日も平和だ

 

 人が吹っ飛んだりすることも無く、前世と殆んど変わらない普通の日本を満喫している

 

 美人な天使様の言っていた物騒な世界の片鱗さえ見当たらない…ここまでくると天使様が世界を間違えたんではないかと思うほどだ…

 

 あの経験が夢だったとも考える時があるが…現実こうして前世?の記憶を持ってるし、天使様から貰った3つの特典がこの身体に宿ってるのを実感出来る

 

 特典その1…「屈強な精神力」

 

 三日坊主だった俺が苦もなく毎日トレーニングを続けられている、 一応念のために身体は鍛えているのだ、特に役立ったのは赤ちゃんの時だ、何も出来ず…オムツとかその他諸々を耐えられたのはこの「屈強な精神力」のお陰だったと思う…

 

 特典その2 「器用さ」

 2歳の頃、始めて渡された軟らかいボールでジャグリングが出来たのはいい思い出だ…器用さというよりはコツを掴むのが早いみたいな感じである

 

 特典その3 「丈夫な身体」

 家族全員がインフルエンザにかかっても俺だけ元気だったり、傷の治りが通常より早かったりと一番目に見えて分かる特典だったりする

 

 ただこの特典を実感するたびに天使様のあの言葉を思い出す

 

 [その世界は、人が簡単に吹っ飛んだり 分身したり オーラや気を使ったり、物理法則をねじ曲げたりする そんな世界です]

 

 …いやいや無い無い、11年この世界で生きてきたら分かりますって ここ普通の日本ですやん

 

 

 現に俺は今 風呂上がりに牛乳を飲みながらリビングでくつろいでる…あー幸せだ

 

 「まーくん、テレビつけてほら、あの「世界で活躍したスポーツ偉人達」ってやつ、新聞のテレビ欄に書いてたんだけど 昔にママが応援してた選手も特集されてるみたいなのよー」

 

 「はーい」

 

 俺の誕生日会の後片付けをしてくれている母さんが時計を見て思い出したのか俺にテレビをつけるようにお願いする、ジャニーズが好きな母さんの事だイケメンな選手とかかな?

 

 リモコンでテレビをつけるとその番組はもう始まっていた

 

 (テレビ)「…いやー、メジャーで活躍した茂野吾朗投手の102mph(164km/h)はいつ見てもテンションが上がりますね」

 

 ん?…茂野吾朗投手? メジャー…?なにかを思い出しそうな俺…スポーツとか殆んど興味ないのに何でこんなに引っ掛かる?

 

 (テレビ)「…さて、続いてはテニスの偉人さんです」

 

 その後に紹介された選手の名前を見て俺は牛乳を盛大に吹き出した、

 

 

 越前南次郎

 

 

 聞いた事ありますわ~…あー…あれか…俺が世間を知らなすぎたんだな…あー分かったわ…人が簡単に吹っ飛んだり 分身したり オーラや気を使ったり、物理法則をねじ曲げたりする そんな世界だわ…

 

 ここあれか…スポーツ漫画の世界か

 

 

 ーーーーー

 

 

 衝撃の事実を知った誕生日から次の日、俺は学校終わりに近くの書店にあるスポーツ雑誌のコーナーに向かう…

 

 <小早川セナ ついに世界へ>

 

 <特集 キセキの世代 黄瀬良太>

 

 <青道高校野球部 片岡監督インタビュー>

 

 

 …おー見たことあるある…スゲーなおい…

 

 現実のスポーツには興味がなかった俺だがスポーツ漫画は好きでけっこう読んでた部類の人間だ…初めて立ち寄ったスポーツ雑誌コーナーには漫画で見たことある名前が沢山ある…

 

 

 …これは是非参加したい‼

 

 

 初めて現実?のスポーツに興味をもった瞬間だった、せっかく生まれ直した世界 楽しまなければ損じゃないか

 

 今から俺の参加出来る「タイトル」はあるんだろうか?…黒子のバスケは…キセキの世代を今特集してるんだから 年齢的に間に合わないし…よし 探そう

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 

 ありましたわー、一番 危険でクレイジーなタイトルが…

 

 「テニスの王子様」

 

 俺の家の近く青春学園があって手塚達3年生組が今1年生らしい…つまり物語が始まる前である

 

 俺の年を考えると、越前リョーマと同学年になるようだ

 

 俺はまだ11才、この春休みが終わったら次から小学6年生…まだ間に合う…間に合うよな?

 

 元凡人の俺がテニヌ超人達に果たして対抗出来るんだろうか?…あと1年か~

 

 …いや無理だろ…鍛えてるって言っても人並みだし、器用って言ってテニヌ超人達の超絶技術に勝てる気がしない

 

 でもどうしても参加したいな…

 

 さて…どうしたもんか

 

 ふと見上げた空、そこに映った光景はまた俺に衝撃を与える、刀をもった紫色のくの一がぴょんぴょんと屋根を跳んでる そんな光景…

 

 スゲーなこの世界 達人もいるのか…

 

 11年間、俺は何も気付かなかったんだなーと自分の鈍感さを恨む…

 

 まだ間に合う…あそこに行けば…

 

 

 目指すか、テニスの達人

 

 目指すか、世界最強のテニスプレーヤーを‼

 

 



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2・テニスの達人目指して

 やっぱり あった…

 

 目の前にあるのは威厳ある純和風の立派な門、ロダンの地獄の門を和風にすればこの門になるんじゃないかと言うほど存在感を放っている

 

 その門の上部には達筆で「梁山泊」と書かれてある…

 

 漫画好きの俺は知っている

 

 そう、ここ「梁山泊」はスポーツ化した武術になじめない豪傑や、武術を極めてしまった達人達が共同生活をしている場所 

 

 凡人の俺がテニヌ界で活躍するにはこれしかない、と言うことでここまで来ては見たものの、なかなか一歩が踏み出せずにいる…俺は漫画で見た あの修行?…拷問に耐えられるのだろうか

 

 いややってやるぜ 逹宮 将人 11才、ここで行かなきゃ男が廃る

 

 ドゴーン

 

 俺が一歩踏み出した瞬間に梁山泊の塀が爆発する、俺はその爆発に身を硬直させてしまい 飛んでくる塀の破片をただ見るしか出来なかった…

 

 シュタタタタッ

 

 目の前に迫った塀の破片がことごとく綺麗に振り払われる

 

 「大丈夫かね、君」

 

 今まで誰もいなかった位置に ぬんッと瞬間移動したかの様に現れる男性、左手に本を持っているからあの量の破片を片手で処理したんだろう…達人ってスゲー

 

 そう、そして俺はこの目の前にいる人を知っている…

 

 哲学する柔術家! 岬越寺秋雨

 

 「ん、何か私の顔についてるかね」

 

 そう言って彼は綺麗に整った髭を撫でる

 

 「いえ…その~ありがとうございます」

 

 お辞儀をして礼をする俺に軽く手を上げて優しい声で俺に話す

 

 「こんな事は滅多に起こらないだろうが 家まで気を付けて帰りなさい」

 

 はい…と言いそうになったが思い止まる、違うだろ、俺は何しにここに来た?このまま帰っても仕方ないだろうが

 

 「いえ、帰れません、俺を一年で出来る限り強くしてください」

 

 自分に気合を入れる意味も込め 大きな声で気持ちを伝える

 

 「ん?」

 

 いきなりの事に若干驚く彼…達人を驚かしたよ 俺スゲーな…

 

 しばらく思案顔をした彼は門を開けて入るように促す

 

 「取り合えず君の話を聞こうか、立ち話もなんだし入りたまえ」

 

 頼むぞ俺の転生特典3人衆…この梁山泊で生き残るには精神力、器用さ、丈夫さが役にたってくれる筈だ

 

 行くぞ俺…テニスの達人を目指して

 

 

 ーーーーー

 

 

 客間で美羽の淹れてくれたお茶をすすりながら 目の前にいる少年とお互いの自己紹介を終わらす

 

 彼、逹宮君は ここで世界最強のテニスプレーヤーになりたいと言った、テニスなら他をあたりなさいと言ったが、「ここでなければ駄目なんです」と真っ直ぐな目をして私に言ってきた

 

 その後も説得をおこなったが私の目を真っ直ぐ見て譲らない

 

 最終手段にと庭にいる弟子一号の修行の風景を見せたが「是非お願いします」と頭を下げられた

 

 彼は若いながら確固たる信念を持っている、私の眼力でどう見ても身体の年齢は十ほど…だが心は…ふむ

 

 ふらっと縁側を通りかかった剣星をちょいちょいとジェスチャーにて近くに呼ぶ

 

 (ひそひそ会話)

 

 「秋雨どん どうしたね、何でこんな無垢な少年を連れて来たね」

 

 「門前で強くして下さいと頼まれてしまって、それより剣星 彼の目を見てどう思う」

 

 改めてその少年をマジマジと見る剣星

 

 「流石においちゃんにも分かるね、あの少年の目は覚悟した人間の目ね…」

 

 「そう、彼の覚悟を些か無下にするのも可哀想かと」

 

 「確かに、あれを見ても引かない胆力は恐れいるね…」

 

 剣星は庭先に魂が抜けたように転がっている弟子一号に目をやる、今の時間はアパチャイ君の担当だったのだが…私でも普通の人が見たらほんの少し刺激が強いんではないかと思う

 

 「よって彼用に一年分プランをさらっと組んでみたんだがどう思う」

 

 手に持っている紙を剣星に見せる

 

 「いやいや秋雨どん、兼ちゃんに比べると優しいけど、どう考えても殺人メニューね」

 

 「彼の覚悟には誠意で答えるのが大人の対応だよ剣星…それに彼がこの梁山泊が抱えてる問題の一つを解決出来るかもしれない…」

 

 

 逹宮君への返事は親御さんに了承をしっかりと取ってきたら考えるということになった

 

 「絶対に取ってきます 、ありがとうございます 岬越寺先生」

 

 ガッツポーズして帰っていく その姿は十才ほどの年齢に相応しいものだった

 

 …さて、準備を整えよう…彼を門から見送りながら髭を撫で彼の再度育成プランを考える、彼の目を見るに絶対に了承を取って来るだろう…

 

 「ホッホッ、良い目をした少年じゃのう」

 

 「…お帰りなさい長老、丁度お話したい事が一つ」

 

 「ほー、それは楽しみじゃの」

 

 にかッと笑う長老、今まで1週間の世直しの旅に出ていたのにまるで全てを知っているかのように走り去る少年を見つめる

 

 きっと彼はここの一員になる――そう確信しているかのように

 

 



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3・梁山泊の拷も…修行

 

 両親の承諾を得て梁山泊に通い始めて3ヶ月、小学校に行ってる時間と土曜日のテニス教室を除き殆んどこの梁山泊にて修行?をおこなっている

 

 「熱ーっ じぇろにもおぉおお‼」

 

 声にならない声が出る、漫画で知ってはいたが、俺が頭の中で考えた特訓なんて…そんなものは天国だった

 

 今現在俺のしている特訓…

 

 

 その名も 「スルメ踊り‼」

 

 

 洗濯物の様に足から吊られ真下の部分に火が設置される…お腹を火傷する前に背中を、背中を火傷する前にお腹をと高速で腹筋と背筋を繰り返している

 

 「人間追い込まれると実力以上の力が出る」

 

 パタパタと火を扇ぎながら岬越寺先生は話しを続ける

 

 「あと9ヵ月しか時間は無いんだ、中学テニスに何としても間に合わせたいと言ったのは君じゃないか、こんな短期間である一定の水準を越えるにはこう言う方法を使わないと不可能だ、私も本当はこんなに厳しくしたくないんだが…ほら後5分頑張りたまえ」

 

 「絶対嘘だー楽しんでるってー 人殺し~」

 

 ーーーーー

 

 「動いちゃ、だめ だよ」

 

 両腕を真横に開き 空気椅子のような体勢の俺に彼女はその台詞を告げる

 

 トン トンと乗せられていく真っ赤なリンゴ…嫌な予感しかしない…何故なら彼女は

 

 剣と兵器の申し子‼香坂しぐれ

 

 あーやっぱり剣を鞘から抜きますよね…

 

 「恐怖を克服する…修行…らしい」

 

 「らしいって…」

 

 シュパ シュパ シュパパン

 

 膝や手 頭に置いてあった林檎達が一瞬で一口サイズにカットされる

 

 「ギャアアアァ‼」

 

 ぬっと木陰から出てきた岬越寺先生がメモをとりながら呟く

 

 「勝負やスポーツでもっとも重要な物、それはー 勇気‼」

 

 やっぱりあんたが考えたんかい!?

 

 「それにしぐれの剣筋を良く見ておくように、モノは違うけれどもラケットも同様に手で持ち振っているんだからね…」

 

 トン、トン

 

 また積まれていく野菜…今度は茄子やきゅうりもある…今晩のおかずかな…余計な事を考えて心を落ち着ける

 

 シュパ シュパ シュパパン

 

 「…見えた?」

 

 「しっかりと目を見開いてましたが殆んどわかりませーん」

 

 「…続ける」

 

 トン トン トン……

 

 

 ーーーーー

 

 「おらおらーっ、どんどんスピードを上げるぞ‼」

 

 「ぎゃああ‼」

 

 強面の大男に足を固定されて捕まれたまま前へと押し出される、急角度の腕立て伏せの体勢…顔から突っ込まぬ様に必死に手を前へと前へと出して猛スピードで進んでいく

 

 「足は腕の3倍の力がある、なぜか!?それは人は足で歩くからだ‼オレもそう思ってたぜ‼」

 

 喧嘩100段の異名を持つ空手家! 逆鬼至緒が上機嫌にスピードを上げてくる

 

 「ひぃぃー押さないで~顔が地面につく~ギャアアァーー」

 

 また木陰で岬越寺先生は呟く

 

 「もっともてっとり早く強くなりたければ、突きをケリ並みに強くするか、ケリを突き並みに器用にするかである!by秋雨 」

 

 「俺は蹴らないし 突きませーん」

 

 「そうだね、でもラケットを振るのは手じゃないか。となれば足並みに鍛えるのが道理というものだよ」

 

 「ひいいぃぃぃぃー」

 

 

 ーーーーー

 

 

 夕飯が終わり各自が部屋で過ごす頃

私の自室に剣星と逆鬼を呼んでいた

 

 「どう思う剣星、逆鬼」

 

 「元から11才にしては身体がしっかりと出来ていたね、だから秋雨どんもこうやって無茶をするね」

 

 「はっ 良いんじゃねーのか、今日の手押し車 結局最後まで頑張りやがったし、基礎は出来てるだろうよ」

 

 「そろそろ 耐えられると思うんだが?」

 

 「おいちゃんもそう思うね、それにそろそろ将ちゃんの技の修行をしないと しぐれどん がぐれちゃうね」

 

 うちには白浜 兼一と言う弟子一号がすでにいる、しかし技の修行が本格的になってくると一つ問題が発生した、彼は無手 つまり武器を使わないのが主流なのだ

 

 この事により、剣と兵器の申し子である香坂しぐれの担当する修行の時間は激減、しぐれ本人も気にしている…

 

 そんな時によきタイミングで未来有望な少年が入ってきてくれるではないか、テニスと言うスポーツであれど あらゆる武器に通ずる彼女なら良き指導が出来るだろう

 

 それに彼女も初めて弟子を持つのだ、こういう特殊な形での指導は彼女自身の成長に繋がるのではないかという願いもある

 

 「噂をすれば…見てみろよ」

 

 逆鬼が月明かり射す庭先に親指を向ける

 

 そこにいたのはしぐれ、私が試しに作ったテニスラケットを持ち剣の型をしている

 

 「無表情だけど なんか嬉しそうじゃねーか」

 

 「現に逆鬼どんも兼ちゃんに嬉しそうに技を教えてるね、しぐれどんの気持ちはわかると思うね」

 

 「バッカ…あれだ兼一の奴が余りにも下手すぎて笑っちまうだけだ」

 

 鼻を擦りながら外の方を向いている

 

 

 …いい弟子は師を育てる、あんな真っ直ぐに夢に向かう少年はなかなかいないよ

 

 私は目の前にあった弟子二号の育成プランのノートにある1文を書き足す

 

  技の修行 担当 香坂しぐれ

 

 

 



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4・楽しい裏社会見学(1)

3月になり青学への入学が近づいた頃

 

 「うーん、君にも実践経験を積ませたいね」

 

 「…いきなり何ですか岬越寺先生?」

 

 背中にしぐれ師匠を乗せながら 部屋に立ててある不安定な4本の棒の上で腕立て伏せをする俺、彼の優しい声は嫌な予感しかしない…

 

 逆鬼先生も馬 先生もアパチャイ先生すらも わざわざこんな基礎トレーニングを見に来ている、部屋の外からは心配そうに美羽さんやケンイチ先輩が覗いている…嫌な予感が増す…

 

 「ほら君、あと一週間で中学生になるから、そろそろ実践経験をだねー…」

 

 「テニスのですか…」

 

 「いや、ちょっとした社会見学だよ…」

 

 バッ

 

 背中に乗っているしぐれ師匠を跳ね上げ、全力で梁山泊敷地内からの逃走をはかる…この前ケンイチ先輩が行ったっていうあれだろ…クリストなんちゃらっていう殺し屋とかと闘ったっていう…裏社会見学…先生達は馬鹿なんですか?俺 はまだ小学生だぞ

 

 「くっ 戦略的撤退」

 

 庭に向かい全力疾走だ

 

 「流石ね、テニスに必要なダッシュ力が良く鍛えられてるね…だがその戦略自体が間違ってるね…今日の秋雨どんはノリノリね」

 

 

  「逃がすかーっ 秘技 畳乱れ返し‼ 」

 

 俺の進行方向を塞ぐように立ち上がる畳達…なんの…

 

 「香坂流 燕尾空風」

 

 上空に飛び上がり 迫り来る畳を回避…しぐれ師匠が教えてくれたムーンサルトに似た回避技だ…よし、庭まで出れた

 

 「ちったあ いい動きするようになったじゃねーか‼」

 

 笑いながら俺の必死の動きをニヤニヤと笑う逆鬼先生

 

 

 「…流石はボクの弟子」

 

 しぐれ師匠~褒めるのは嬉しいんですが何で鎖鎌…

 

 シュッ

 

 「そーーいっ」

 

 飛んできた分銅を避ける為に全力で横に跳ぶ俺…よっしゃー避けた…

 

 「なーんちゃ…た♥️」

 

 ジャラジャラジャラ…

 

 この音は何でしょう…正解は俺に巻き付く鎖の音ですー

 

 何でッ‼ と思って後ろを向くと庭にある木から鎖がUターンして俺の身体に巻き付いている…残念ながら脱出は失敗に終わったようだ…

 

 

 「嫌です 嫌です 死にたくないですー、ケンイチ先輩に聞きましたよ、死にかけたって」

 

 鎖を解いてくれたアパチャイさんにがっちりと抱き抱えられながら岬越寺先生に抗議する…

 

 「いいかい将人君、人間…生まれたら必ず死ぬんだ‼」

 

 「…この世の摂理」

 

 そう言う事言ってるんじゃなくて~

 

 「やれやれ、そんな言い方じゃ誰だって怯えるね。将ちゃん安心するね、将ちゃんが行く社会見学は兼ちゃんの行った奴より10倍安全ね」

 

 いやいやいや…死にかけた の危険度10分の1ってどのみち危険じゃ無いですか…

 

 「行かなきゃ駄目ですか…」

 

 そんなやり取りをしていると奥からこの梁山泊の長老、無敵超人 風林寺隼人が優しい表情であらわれる

 

 「ホッホッ 、皆楽しそうにしておるのー」

 

 「長老、実は…

 

 ーーーーーー

 

 無理矢理は良くないと長老が先生達に言って一旦解散するように伝えた…助かった~

 

 「ところで将ちゃんや、少し話さんかの」

 

 庭先の縁側に座った長老がポンポンと自分のとなりに座るように促す

 

 「はい」

 

 そう言って俺は長老の隣へと座る

 

 「まずワシから礼を言わせてくれ、どうも ありがとう」

 

 長老からの思いがけない一言に固まってしまった俺…

 

 「将ちゃんが来てくれてから、皆の表情がさらに明るくなった…皆 眩しいくらい 世界最強の てにすぷれーやー を目指す将ちゃんが羨ましく思えて応援したくなったんと思うんじゃ」

 

 「…はい、自分で決めた夢ですから」

 

 「だからこそ皆寂しいんじゃよ、もともと将ちゃんは一年間の約束でこの梁山泊に入ってきたからの…巣立ってしまうのが…裏社会見学も皆にとっては思い出づくりみたいなもんじゃよ」

 

 …?

 

 「巣立つ…なんか勘違いしてません?…って先生達 思い出づくりにあんな事しようとしてたんですか…俺ここ続けますよ…と言うか誰が梁山泊辞めるなんて噂流したんですか?」

 

 「…違うのかの?…いやの 兼ちゃんがこの前、将ちゃんが電話をしてる時の声を聞いての「4月になったら梁山泊を辞める」と言っていたと、皆に相談してきたのじゃ。その時そう言えば将ちゃんが最初に「一年で出来るだけ強く」って言っておったのを思い出しての…」

 

 「…何でピンポイントでそこだけ聞いちゃうんですかね ケンイチ先輩…、単身赴任中の父さんへの電話ですよそれ、ここの月謝を払ってくれているのが父さんなので…「(4月になったら梁山泊を辞める)…って言ってたけどまだ俺にはここが必要なんだ、中学のテニス部には勿論入部するけど…続けてもいいかい 父さん… 」って話してたんですよ、勿論、父さんのOK貰いましたよ」

 

 

 わざとか後ろ部屋の方にいる先生達に聞こえるように大きな声で言った、遠くからケンイチ先輩の叫び声が聞こえるが気のせいだと思う

 

 「ふふ、でも先生達、寂しがってくれたんですね。俺の事」

 

 「ホッホッ、そうじゃのう ここの皆は家族じゃからの将ちゃんはもう その一員じゃて 」

 

 「ふふ、裏社会見学に連れてこうとする物騒な家族ですけどね」

 

 

 俺は立ち上がり廊下の曲がり角にある部屋まで歩いていく、中には先生達と鎖でぐるぐる巻きにされた兄弟子のケンイチ先輩の姿が…

 

 「先生方、遅くなりましたが逹宮将人、地上最強のテニスプレーヤー目指して頑張るので、これからもよろしくお願いします」

 

 

 

 ここまでだったらイイハナシダナー?…で終わっていたのかも知れないが俺がその後に調子に乗って言ってしまった一言が余計だったと思う

 

 「いやーそれにしても裏社会見学で思い出づくりって先生達らしいですね、先生達が言ってると遠足くらいの雰囲気に聞こえますよ(他人事)」

 

 

 

 「…そうだね、遠足みたいなものだね 、君がここを続けてくれるのは嬉しいが思い出なんてものは いくつあっても良いものだと私は そう思うんだよ」

 

 ん…先生方…‼何で皆うなずくの?

 

 「それにね…長老がおっしゃったじゃないか、我々は家族だと」

 

 「…はい」

 

 「行こうじゃないか…皆で家族旅行に」

 

 えっ…助けて長老ー、裏社会見学に連れてかれる

 

 「ホッホッ、良いのう楽しい旅行になりそうじゃわい」

 

 「素敵、じゃあ私は皆さんの分のお弁当を作りますわね」

 

 「ボクも手伝う…」

 

 「アパ、アパチャイも味見手伝うよ」

 

 「酒忘れんなよ」

 

 「 おいちゃんカメラの準備してくるね」

 

 「うんうん、では家族全員参加という事で異議のある者はいるかい?」

 

 そんなに目をビカビカ光らせながら俺とケンイチ先輩を見ないでくださいよ岬越寺先生…

 

 

 こうして俺の…始めての裏社会見学は梁山泊メンバー全員という過剰戦力でおこなわれる事になった…

 

 

 

 敵さんに合掌…

 

 

 

 



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5・楽しい裏社会見学(2)

 

 鳴り響く銃声に、叫び声、ホッホッと笑う老人に宙を舞う人…俺の目に写る光景は 全米が涙したアクション作品を鼻で笑えるくらいのとんでもなものだった

 

 「風林寺 人間手裏剣 」

 

 わー、人ってこんなに簡単に飛ぶんだね~…天使様、貴方の言った通りです、ここは人が簡単に吹っ飛ぶ世界です

 

 「アパパパパパ」

 

 通称「死んだほうが少しましかもパンチ」文字通りこれを喰らった大抵の者は動けなくなるほど強烈なパンチ…ほんとに死んでないよね…先生達のテンション高いから心配になる

 

 「風林寺 光鵬翼」

 

 うん、知ってた美羽さんも可愛い顔してそっち側の人ですもんね…

 

 あまりにもこちらの戦力が過剰な為銃声が聞こえるのに 謎の安心感みたいなものがある…見学でよかった…

 

 今回はなんかの取引現場の阻止みたいだ、般若の面を被った集団と黒服サングラスの集団がテンプレみたいな倉庫でアタッシュケースを交換していた

 

 俺は入り口付近でしぐれ師匠と逆鬼先生の二人に守られながらの見学…滅茶苦茶安全な空間なんじゃ無いだろうか

 

 しかしその超安全な空間は 、味方サイドの一言によって破られる

 

 「しまった、私としたことが、一名取り逃がしてしまったようだ、 きっと入り口付近の方に逃げるだろうなー(棒)」

 

 岬越寺先生の嘘つき~ 絶対わざとでしょ 、台詞に(棒)ついてますよ

 

 「おいちゃんに任せるね」

 

 おー倒してくれるんですね馬先生…優しい 、黒服の大男と馬先生が交差する

 

 「これで安全ね」

 

 彼の懐から拳銃等の危ない物をスリのように抜き取ってくれたようだ…それ倒したほうが簡単じゃないですか?…岬越寺先生ー スリルが減ったなって顔しない‼

 

 近づいてくる黒服の大男

 

 「ほれ、男なら決めろよ」

 

 逆鬼先生に何故かラケットを渡される…護衛じゃ無いんですか?…何故遠くに行くんですか…

 

 「どけー クソガキがー」

 

 凄い形相で迫る黒服の大男…

 

 「…ほい …ぱーす」

 

 近くにいたはずのしぐれ師匠もいつの間にか遠くにいて、俺は一人ぼっちになっていた…

 

 遠くからしぐれ師匠の投げたボールが的確に俺の超得意コースに飛んでくる

 

 「あー…もうッ」

 

 飛んでくるボールにタイミングを合わせて独特の居合いのような構えをとる

 

 

 「無拍子」

 

 

 テニスボールが黒服の大男の顔面にめり込む…ごめんなさい これは全部先生達のせいです…俺は悪くねー

 

 後方に吹っ飛ぶ大男…俺が今放てる最強の一撃

 

 「無拍子」

 

 剣術をベースに空手、柔術、中国拳法、ムエタイ の5種類全ての全身運動の要訣から放つ俺 独自の必殺ドライブショット

 

 独特の構えから先述の全ての動きを一瞬のうちにこなすことで、ノーモーションから最大パワー・最大スピードでのドライブショットを放つことができる 、しかしまだ欠点も多く 居合いのような構えが必要だったり 、現段階では得意コースにきた球にしか無拍子が打てない、今回上手に打てたのはしぐれ師匠の絶妙なトスコントロールによるものが大きい

 

 「…K.O」

 

 しぐれ師匠…それテニス用語じゃ無いですよ…いや?この世界だと…どうなんだ?

 

 ふと気が付くと倉庫は静かになっていて、あんなにいた謎の集団が今は1ヶ所に山積みのようにされている、どうやら最後の一人を俺に任されたらしい

 

 「この集団は結局 何の取引をしてたんですか、岬越寺先生?」

 

 「まだ小学生の君には知らなくても良いこともあるだんだよ」

 

 ならこんな所 連れてくんなし…

 

 「さて、去るとしようか…一応秘密裏で動く事になってるし 鉢合わせたら面倒だ」

 

 岬越寺先生がその台詞を言ってしばらくしたら パトカーのサイレンが聞こえてくる…

 

 「ホッホッ、つかまってなさい 将ちゃん」

 

 長老がまるで肩掛け鞄のように俺を肩に乗せる

 

 …待って、心の準備が、はふんッ

 

 長老が地面を蹴り上げ飛翔する…達人特有の超高速移動だ、かなりのGが俺の身体を襲う…ケンイチ先輩も逆鬼先生の小脇に抱えられて叫んでる

 

 気が付いたら近くの倉庫の屋根の上…速すぎるしジャンプ力どうなってんのさ?

 

 今までいた倉庫に警官隊が到着する、後の事は警察に全部丸投げで任せるらしい

 

 無事一件落着、めでたしめでたしと言ったところか…

 

 

 それにしても…右手に握っているものに目をやる、逆鬼先生から渡されたこの ラケット、初めて持つのに手に吸い付く様にフィットする

 

 「あの…これ?」

 

 「中学生になる君へ私達からの餞別だよ、公式の規格にも問題ない私の力作だよ」

 

 芸術品かのような雰囲気を漂わすシングルシャフトのこのラケット…

 

 「…秋雨作 かなりの業物 」

 

 武器の専門家から見てもかなりの業物らしい

 

 「ありがとうございます、大切にします」

 

 ラケットを強く握り誓う、コイツと一緒に俺はテニスの達人になります‼

 

 

 こうして楽しい裏社会見学は無事終了したのだった

 

 

 

 




投稿初日なので頑張りました、読んで下さった皆様ありがとうございます( ゚Д゚)ゞ、次回から舞台は青学へ…続きは来週の予定です(*´ー`*) では皆様良い一週間を!


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6・青学に来なかった王子様

お気に入り100越え本当にありがとうございます…でも正直ビビってます…(´・ω・`)、月曜日に上げる予定でしたが出来たので投稿させていただきます、皆様のご期待に答えれるようにゆっくり頑張っていきます。


 目の前の景色に身を引き締める、桜が咲き誇るこの学園の門の前「代26回青春学園中等部 入学式 」と書いた看板が置いてある

 

 やっと物語のスタート地点に立った俺、その1歩目は何の迷いもなく踏み出される

 

 わくわくした気持ちが止まらない…あー早く ここでテニスをやりたい

 

 わくわくを抑えながらサクラの木の根元付近に目線を向ける…確か主人公の王子様はそこで寝てるんだよなー

 

 パッと見 見当たらない、まーサクラの木けっこう沢山あるしどっかで寝てるんだろう まー後で教室とかで会うし焦らなくてもいいかー…

 

 

 ーーーーー

 

 

 …と思って時期もありました…

 

 

 おい主人公!何で一年生の名簿の中に「越前リョーマ」の文字が無いんだよ?えっナニコレ…ドッキリ?

 

 これヤバくないかい…?青学強いけどさーリョーマ君主戦力だったじゃん…どこ行ったの主人公~ここがあなたの居場所よ王子様~

 

 

 

 現実逃避終了

 

 

 いや、でもプラスに考えよう そうしよう…リョーマ君のポジションが1つ空いたんだ 、これはある意味チャンスなのではないか

 

 よし…一種のロールプレイだな、俺が主役ポジションを演じきってみせる…頑張れ 俺!

 

 ーーーーー

 

 

 衝撃の入学式が終わり、先生の話など全く頭に入らないまま今日の学校の日程は終わりを迎える、目指すはテニスコートだな

 

 学校の鞄とラケットバックを肩から下げて廊下に出ると一人の男子に声をかけられる

 

 「よう 同じクラスの達宮だよな!、そのカバンってお前もひょっとしてテニス部入んの?」

 

 この声、この顔、その繋がりそうな眉毛 知ってます、テニス歴2年(笑)の少年、堀尾君だ…でもまー初対面として普通の反応をっと

 

 「だれだっけ?」

 

 「堀尾だよ」

 

 軽く自己紹介をしてテニスコートに向かう為足にを進める

 

 「お前知ってる?ここのテニス部名門だからメチャ強いらしいぜ」

 

 よく知ってますとも、と思いながら下駄箱に到着、お決まりのテニス歴2年トークを横耳にテニスコートの場所を聞こうと適当にそこのにいた背の高い上級生っぽい人に声をかける

 

 …桃ちゃん先輩? 振り返った顔が知ってる顔で驚く…秘技ポーカーフェイス発動、そのまま適当に会話を

 

 「…あの、テニスコートってどっちですか?」

 

「ああテニスコート?あっちあっち」

 

 ポーカーフェイスが効いたのか最初に顔をガン見していたのを気にせず良い笑顔で教えてくれる桃ちゃん先輩…良い先輩だ

 

 「ありがとうございます」

 

 「おう いいってことよ!」

 

 手を上げてさって行く桃ちゃん先輩、その桃ちゃん先輩を信じて進んだ結果、今いる場所は相撲部の前…桃ちゃん先輩こんなキャラだっけか?

 

 

 相撲部員さんに本当のコートの場所を聞いてようやくフェンスが見えてくる

 

 「ったくよ!あの2年逆教えやがって!」

 

 「なんかイライラしてたんじゃない?」

 

 確か足を怪我してるんだっけか…暴れ足りてないんだな きっと

 

 「おおーっ さすが青学!設備いいじゃん」

 

 コートを見て駆け出す堀尾君…その先に二人いる…名前なんだったっけか…必死に思いだしながら近付くと向こうから話しかけて来てくれる

 

 「今日は3年生とレギュラーの2年生が遠征でいないから 仮入部は明日からだって、ほとんどの1年も帰っちゃったけど ボク達この外でちょっと打っていこうかなって」

 

 説明ありがとう、でもおかっぱ君に丸刈り君…まずは名前を覚えるから自己紹介と行こうか

 

 カチロー君(加藤勝郎)にカツオ君(水野カツオ)…ついでに堀尾君は聡史だった、へぇーはじめて知った

 

 

 軽い自己紹介が終わった頃、テニスコートの方から声をかけられる

 

 「なあ、お前らうちのテニス部にはいんのかよ? 先輩の林と池田だ」

 

 「「「ちわーす!!」」」

 

 一年トリオの先輩への挨拶につられて会釈だけする…リョーマ君みたいな俺様キャラを演じるが…もともと気が弱いからいつまで続くか…今日主役不在を知ったんだしキャラ付けは後々考えて行こうか…でもリョーマ君みたいな俺様キャラだから目立ってレギュラー争奪戦に名前を書かれた説あるし…しばらく俺様キャラで頑張ろう

 

 

 俺が自分のキャラ作りについて考えてるうちに一年トリオ達は「十球以内にこの缶倒せたら一万円(挑戦料200円)」というゲームをしていた

 

 …確かこれボール代別だったけか?

 

 サービスコートの端に置いてある缶めがけてサーブをするカチロー君にカツオ君…二人共 右利きなんだねー、ついでに俺は右利きだが両利きに改造された…梁山泊の先生達に両手を使えるようにと拷も…修行にて矯正させられた感じだ…確かに先生達に左右の概念無いもん…左と右のパンチの速度カワンネーもん…

 

 そんなことを考えてるうちに「テニス歴2年堀尾いかせていただきます!」と言って意気揚々とサーブしてた堀尾君の球の残りが最後の一球になっていた

 

 「おいおいあと一球しかねーぞ!」

 

 堀尾君を煽る先輩方…

 

 「ちぇっ、こんなの100球やったって、当たんないよっ!…しまった!」

 

 堀尾君のサーブはフレームに当たりいい感じに缶の方向へ

 

 まー結局 缶の縁を軽くカスっただけなんだけどね

 

 「くーっもう数センチ右だったら倒れてたのに~」

 

 悔しいがる堀尾君に先輩方が

 

 「惜しいねぇ残念残念」

 

 「まあ俺達だって10球じゃ無理だからな」

 

 と声をかける、そんな先輩方に堀尾君は「やっぱ難しいっスね」と言いながら挑戦料の200円を渡す

 

 「はぁ?なに勘違いしてんの…お前ら」

 

 そう言って缶に書かれてる文字を一年トリオに見せる、「サーブ缶倒しゲーム・一球500円也(挑戦料別途) ・賞金一万円」

 

 はい、知ってたー、と言うかPTAにこの事 訴えたら一年トリオは勝てると思うのは俺だけだろうか?

 

 抗議をする一年トリオ、先輩方はヘラヘラ笑いながらこのゲームを遠巻きに見ていた俺にターゲットを移す

 

 「ところで、そこのチビ…、おめーも見てねぇでやれよ」

 

 チビではない、152cmは 中一の平均身長は越えている…このテニス界の身長がおかしいダケダ…

 

 ラケットを出して所定の位置へと着く

 

 「やりますよ…でも不正は駄目ですよ先輩…まー関係無いけど」

 

 右手から上がったトスは通常のサーブよりかなり高く上がる それに合わせるように身体も宙へと飛び上がる、まるでジャンプスマッシュのようにラケットを振り抜く…「虎砲」

 

 身体を目一杯使って高い打点から打ち下ろすサーブ…もちろんこの技は 山吹中のラッキー千石さんの技をパク…リスペクトしたものです、威力あるんで純粋に気に入って練習していた技だ

 

 高い打点から打ち出されたボールはサービスコート端にある缶に吸い込まれた様に命中する、缶はメコッ と言う重たい音を立てて空を舞う

 

 吹っ飛ぶ缶、へこんだ弾みで缶の蓋が開き中に入ってあった石を辺りにぶちまける

 

 「あーっ先輩達ズルしてる、缶にみっちり石詰めちゃってキッタネーの!」

 

 缶を指差し抗議をする堀尾君、うん不正は駄目だよな

 

 「く…クソガキがぁ、余計なことしやがって!」

 

 えっ!余計なこと?俺 不正してないよな~あくまでルールに乗っ取ってッと

 

 へこんだ缶めがけもう一球打ち出す…石をぶちまけ軽くなった缶は更に吹っ飛び 先輩の顔の横スレスレに吹っ飛ぶ…絶句する先輩

 

 「二万円~!…あー挑戦料とボール代で18800円か」

 

 固まる先輩をよそに一年トリオが寄ってくる

 

 「すげぇコントロールだなお前…?」

 

 「まーね」

 

 そんな会話をしてるとコートの方から メコッ っていうさっき聞いた音が鳴り響く

 

 「お~っ、当たっちゃったよラッキー! 多分つぎは当たんねえだろ」

 

 そんな台詞を言いながらやって来る人物が1人…

 

 「あー、さっきの!ウソつき男」

 

 堀尾君…ウソつき男って…確かに相撲部に案内されたけどさー 優しい先輩だよ

 

 「桃 お前…」

 

 「おいおい、林もマサやんも先輩達が居ないからって…、か弱い新入生をカモっちゃー いけねーなあ いけねーよ!」

 

 軽く2年生の二人を注意した後 俺の前にやって来る

 

 「よう、さっきのサーブ見てたぜ、お前名前は?」

 

 「達宮 将人です…先輩は?」

 

 俺の俺様キャラ態度を見て軽く笑いを浮かべ彼は答える

 

 「出る杭は早めに打っとかないとな…桃城 武 2年だ!」

 

 

 

 




その頃…主人公

???「たるんどる!」

王子様「にゃろう…」


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7・vs桃ちゃん先輩(怪我)

 

 

「達宮!マジで2年のレギュラーと試合すんのかよ!?」

 

 堀尾君の言葉を軽く受け流しながら俺はしっかりと動けるようにテニスウェアを着る

 

 桃ちゃん先輩との試合が始まるから…

 

 ーーーーー

 

 「おい桃!ちょっと待てって、だってお前っ」

 

 桃城がその先の台詞を手で止める

 

 「まぁいいじゃねぇの! お前らが一年からカモってたの内緒にしてやっからよ」

 

 「でもよ…」

 

 ーーーーー

 

 俺と桃ちゃん先輩はネット越しに対峙する

 

 「さっきのサーブ、つい最近まで小学生だと思えねえ芸当だ…なー もう一回見せてくれるよな」

 

 「その為に俺を試合誘ったんでしょ?桃先輩?」

 

 「だな、じゃあやるか、フィッチ?(どっち)」

 

 ラケットを回してスムース(表)かラフ(裏)かを聞いてくる

 

 「スムース…」

 

 カランっと音を立ててラケットが倒れる

 

 「残念ラフだ、サーブはやるよ、こっちはコートをもらう」

 

 桃ちゃん先輩はラケットを拾いさっさとコートに入って行く、それ対して先輩達が口を出す

 

 「おい!桃 先にサーブ取らねーのかよ」

 

 「だってあのサーブ早く見てぇじゃん!」

 

 そう言って桃城は軽く笑った

 

 

 ーーーーー

 

 

 「ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ 達宮サービスプレイ!」

 

 堀尾君の元気な声がテニスコートに響く

 

 俺様キャラっぽくまずは挑発をっと

 

 右手で (軽く)トスを上げ 普通にサーブ

 

 シュ タンッ

 

 相手コートに響く球の音…

 

  「15ー0」

 

 「はえぇっ!」

 「いきなり桃からエースとりやがった!?」

 

 驚く2年を余所に桃ちゃん先輩がラケットを俺に向け言う

 

 「いーよ普通のサーブは、出し惜しむなよ!」

 

 「いやです…」

 

 「むうっ 生意気なヤツ…」

 

 「…なーんちゃった」

 

 挑発行動はこれくらいにして俺は右手からボールを上げる、もちろん今度は高く…

 

 シュ ドッ

 

 先程より高い打点から放たれたサーブは桃ちゃん先輩の横をさっきより速い速度で通り抜ける

 

  「30ー0」

 

 

 「ホントに一年のサーブかよ…おーコワイ コワイ」

 

 桃ちゃん先輩は面白い玩具を見つけた子供のような笑みでこっちを見てくる、それに答えるようにもう一度「虎砲」を放つ

 

 「だが、速いだけなら」

 

 パァン

 

 もうサーブにタイミングを合わせラケットに当ててくる桃ちゃん先輩、しかしそのボールは俺のコートに入らなかった

 

 ーーーーー

 

 想像以上に打球に力があるな…

 

 「タイミングだけじゃ返せねぇってことか…おもしれぇ!」

 

 

 「あの桃城がパワーで押された?」

 

 「タイミングはバッチリだったのにすげぇ威力ってことか…?」

 

 当たったのにあさっての方向に飛んで行ったボールに焦る2年生二人、焦りでその声が大きくなっている

 

 「ウソだろ!?桃城は団体戦のメンバーだぞ!?」

 

 「あんな1年に!?」

 

 そう焦んなって…林にマサやん

 

 また相手コートであの高いトスが上がり気を引き締める

 

 もうタイミングはつかんでるんだ、パワー勝負で負けられねぇっての!!

 

 パァァン

 

 「よっしゃあ!桃城がとうとう返しやがったー!」

 

 ーーーーー

 

 返ってきたボールを更に返しラリーが始まる、試合が動き出した…しかしここで俺はある問題について考える…桃ちゃん先輩があんなに走って大丈夫かというもの…無理そうなら…

 

 たしかめるか…

 

 ちょっと怖いがあえて相手を走らせるようなテニスをする

 

 やっぱりね…

 

 返しが甘くなった桃ちゃん先輩の球はフワッと上に浮いてしまう

 

 「いっけー逹宮スマッシュだ!!」

 

 チャンスボールに審判をしてる堀尾君が吠える…審判は公平にだよ

 

 チャンスボールに合わせて俺は飛び上がる

 

 スッカ

 

 「「えっ」」

 

 スマッシュをすかした俺の動きに皆が動揺する…わざとですよーっと

 

 クルッと空中で横回転してフワッとドロップボレーをおこなう

 

 「エアウォークドロップ」

 

 聖ルドルフのハチマキがトレードマークの木更津 淳さんの技をパクっ…リスペクトしたものこれも「虎砲」と同じく好きで練習していた技だ

 

 フワッ トン トン…

 

 桃ちゃん先輩は走れない…全力で前に踏み込むのを躊躇したせいだ

 

 「…げ ゲーム1ー0(ワンゲームトウラブ) 逹宮リード…」

 

 静かなコートに堀尾君の声が響く

 

 「おい お前そんな器用なのも出来んのかよ…」

 

 ストン と座り込む桃ちゃん先輩、足にダメージが入る前に終わらせないとな…俺様キャラっぽく 俺様キャラっぽく…

 

 「桃先輩、もしあれなら腕の良い接骨院紹介しますよ」

 

 座り込む桃ちゃん先輩の前に行って手を差し出す俺

 

 「チッ、気付いてたのかよ…たく…食えねー一年だ」

 

 手を取り立ち上がる桃ちゃん先輩…

 

 「中途半端なことして悪かったな、とりあえずは俺の行き着けの接骨院行ってくるわ、この勝負お預けって形でいいか」

 

 ポンっと頭に手を置いたと思ったら出口の方にヒラヒラと手を振りながら歩いてく

 

 「じゃあ 治った時にっすね」

 

 桃ちゃん先輩は後ろを振り返らず

 

 「おう、次にやる時 1ー0からでもいいぜ、俺が余裕で勝つからさー」

 

 「楽しみにしてますよ桃ちゃん先輩」

 

 初めて青学でしたテニスの結果はお預けに終わった、でもやっぱり真っ向勝負をしたいしね、再戦を楽しみにしておこう

 

 さー明日から仮入部だし今日は帰ってゆっくり寝るかー…そーだった…ヤベー今日から修行日以外の日は自主練習メニュー(秋雨作)しないと駄目だったわ…よしとっとと家に帰って始めよう、サボったら100%バレる

 

 堀尾君逹の賛辞や先輩達の不満そうな目を軽く流しながらに今日は帰路へと着くのだった

 

 

 追記

 自主練習のメニュー(秋雨作)がキツすぎます…頑張れ俺と俺の能力達(丈夫な身体)(屈強な精神力)

 

 

 

 




 その頃の王子様
 
 ・とあるゲーム実況動画で手塚を倒したテニスの女王様… 「あっ リョーマ君も立海なんだ」
 
 ・アメリカのJr.大会で4連覇した天才少年…「あんた 誰?」
 


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8・はじめての部活動

 青学のテニスコートに向かう青と白を基調したジャージを着た学生達が数名

 

 「逹宮将人?」

 

 「聞いたことあるか?」

 

 「知らないッス」

 

 「桃の話じゃ並みの一年じゃ無いってよー」

 

 「ほう、それはデータの取りがいがありそうだ」

 

 「強い選手なら大歓迎じゃないか」

 

 「それは楽しみだね」

 

 

 ーーーーー

 

 「やっぱレベル高ぇーよ青学は!」

 

 練習前のフリーの時間を使ってコートでボールを打ち合っている先輩達を見て堀尾君が自分の事のように話してくる

 

「今だってレギュラーの先輩達が来てないのに あんなうめぇもん」

 

 更にどや顔をして指を振りながら堀尾君が続ける

 

「なんでレベルが高いか知ってるか?毎月1回の部内の「ランキング戦!」、毎回レギュラーの座をかけて試合すんだぜ、このへんに青学の……」

 

 青学ウンチクを自慢気に語る堀尾君、俺はもちろん知ってる為いつも通りスルーする、でも他の新入部員の一年生達は なるほどーと何人か集まって来る 堀尾君は更に自慢気に話している…

 

 さーてと、俺は軽く働くか…一年生達は堀尾君の話に夢中…自主練習って言ってもボール拾いは一年の役目、それがほぼ堀尾君のところへ…まー練習前だしボール拾いも強制じゃ無いからね、そして俺は堀尾話をスルーをした為 手が空いている…

 

 よし 今から ボール拾いだ!(主人公にあるまじき下っ端思考…)

 

 さて、ここで俺が考えたキャラ付けを整理しておこう、リョーマ君のようなキャラは俺には無理 、断言しておこう無理…自然に敬語出てくるし 出来てもちょい生意気が限界だ

 

 必要な事は「生意気な1年」では無く「目立つ1年」になること…目立つ事でのランキング戦のメンバー入りを目指すつもりだ…これなら行けると思う

 

 と言う訳でボール拾い開始!

 

 落ちてあるボールをラケットで軽く弾ませバウンドさせる、それを軽くポンっと打って次々に散らばったボールのカゴに入れていく

 

 秋雨さんが半年前に梁山泊の庭にテニスコートを作ってくれてボールを修行で使うようになってから片付けの際 毎回やっているこのボール拾い、カゴに持っていく作業が短縮されるためめっちゃ効率の良いやり方だと思う

 

 ついでにこのやり方になったのはボールを拾いを手伝ってくれた先生達が誰一人としてボールを拾って運ばず 蹴ったり ポイっと投げ百発百中でカゴに入れていて 持っていく作業がバカみたいに感じてしまったから

 

 カシャン カシャン カシャン カシャン …

 

 綺麗なリズムでボール入れのカゴへと入っていくボール達、「スゴい」とか「あんな簡単に入んのか」とか他のボール拾いの一年達から注目される、YES目立ってるぜ 俺!

 

 ポン ポンとラケットでボール拾いを続けていると後ろから声をかけられる

 

「スゴい1年ってのはお前か?」

 

 出ました、今回のキーパーソン、2年生の荒井先輩、原作ではリョーマ君に目立つ舞台を用意した人物…荒井先輩には悪いけど目立つ為に ランキング戦まではこの先輩だけには生意気にならざるをえない…すいません

 

 「…どの程度がスゴいのか分かりませんが…この程度なら…先輩も余裕で出来ますよね」

 

 と言ってさっきからやっているボール拾いを見せる…

 

「こんな大道芸みたいな事や桃城みてぇな怪我人と互角だったからって、調子こいてんじゃねぇぞ1年!」

 

 急に大声やめて下さい先輩…しかもこの程度では調子のれませんって…世の中には五感奪うテニスする人とかいるんですよ!

 

「俺なんて まだまだですよ」

 

「チッ だいたい1年は夏の合宿まではボール拾いと基礎体力作りのみだ…あんまり調子こいてるとこの2年の荒井様が…」

 

 ザッ ザッ ザッ

 

 コートに入って来る数名、一気にテニスコートの雰囲気が変わる

 

 「き 来たぁー!レギュラー陣」

 

 堀尾君が大きな声で反応してる

 

「「「ちぃーす!」」」

 

 続けてこの部の挨拶がコートこだまする…ついでに俺は「先輩ちぃーす」…煽ってるみたいに感じるから全体の挨拶以外は使って無い、普通に「こんにちは」です

 

 

「新入生も部の雰囲気に慣れてもらいたいから 部長が来るまで空いているコートに入ってもいいよ」

 

 大石先輩…ツッコミませんよその髪型…違うむしろ慣れろ俺、みんな当たり前に大石先輩を受け入れるんだ、この思考になる俺が悪いんだ…きっと…

 

「じゃあ オレ達も軽く打っておくか」

 

 大石先輩のその言葉で始まるレギュラー陣のフリー練習

 

 ガシャン! ガシャン!

 

 聞いたことあるような音がコートに響き出す、大石先輩がロブを上げてレギュラー陣がカゴへとスマッシュを放っている

 

「ホイ ホイっと」

 

 菊丸先輩がジャンプしながらカゴにボールを打ち返す、続いて不二先輩や乾先輩と次々にカゴにスマッシュを決めていく

 

「さすがだな 相変わらずうちの先輩達は…わかったか1年、あんなフワッとしたボールカゴに入れたくらいで調子に乗っ…」

 

 「あっ しまったデカい」

 

 大石先輩からポーンっと打たれたボールは俺のいる場所に飛んで来る…大石先輩あなたのコントロールって針に糸通すって言われるくらい正確でしょうに…わざとかな?

 

 せっかくの目立つチャンスなので 丁度飛んで来たボールに合わせてスマッシュを打ち込む

 

 ガシャン!!

 

 カゴには入ったものの威力でボールが5~6個 散らばってしまう…散らかしてすんません

 

 でもレギュラー陣達の目線が俺へと集まる、YES目立ってるぜ 俺!

 

 「おい ここは一年がしゃしゃり出る場所じゃあねーんだよ」

 

 俺の行動がまた隣にいた荒井先輩の何かに触れたようで大きな声で肩を持ち注意してくる…1年は目立たずおとなしくしてろって事かな?

 

「コート内で何をもめている」

 

 ピシッ と音が聞こえるくらいにコートの雰囲気が変わる

 

 青学テニス部の部長 手塚国光 、原作では登場してから一貫して作品内で最強レベルであり続けたテニプリ界最強クラスのテニヌプレーヤーである

 

 オーラが違う…この人ホントに中学生か?前世と合わせると手塚部長の倍くらい生きてた筈なんだが勝てる気がしない…何この完成された個体…

 

「コート内で騒ぎを起こした罰だ、そこの二人グランド10周」

 

 「はい!」( ゚Д゚)ゞ

 

 梁山泊の先生に似たオーラに当てられ反射的に走り出す俺

 

「えっ ちょっと待ってくださいよこの1年が…」

 

 「20周だ!」

 

 荒井先輩ファイトです、ごねたら回数が増える、梁山泊では常識ですよ…

 

 走りだす俺達を余所に手塚部長は渋い声で部員全員に指示を出す

 

「全員ウォーミングアップ、済んだ者から2年3年はコートに入れ、1年は球拾いの準備 以上!」

 

「「「ハイ!」」」

 

 

「…覚えてろよあの1年」、部員全員の返事に紛れてこんなセリフが聞こえてきたけど気のせいであると思いたい

 

 

 

 

 追記

 グランドは10周ですみましたが、テニス部の練習後の自主練(秋雨)で町内3周しています(重り付き)(´・ω・`)

 

 

 




お気に入り180越え本当にありがとうございます…これからも皆様のご期待に答えれるようにゆっくり頑張っていきます(*´ー`*)。それでは皆様良い一週間をお過ごしください


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9・テニスバック盗難事件

 仮入部初日の今日、俺達一年生組はもうすぐ始まる練習を前に部室で着替えをしていた

 

 「部長にはあこがれちゃうよなー、なんてったって去年手塚部長は負けなしだぜ!スゲぇだろ!」

 

 まるで自分の事のように自慢する堀尾君、その態度に向けられるカチロー君とカツオ君の目線はけっこう冷たい

 

 「堀尾くんがいばる事じゃ無いけどね」

 「そうそう」

 

 負けるな堀尾君…俺はいつも聞き流してるどキミのキャラは嫌いじゃないぞ

 

「それにしても昨日の達宮くんスゴかったよね」

 

 話題が 昨日の俺の話へと移る、先生達からはなかなか褒められたことが無く 褒められ慣れてないのでちょっと照れる

 

「ありがとう」

 

「でもよ 達宮 お前2年の先輩ににらまれてヤバいんじゃない?

特にあの荒井さんって人 上下関係うるさそうだし絶対根に持ってるって…」

 

 カラン ゴリっ

 

 話ながら俺に近付いてきた堀尾君が立てかけてあったテニスラケットを倒してしっかりと踏みつける…

 

「ヤベ…誰かのラケット踏んじゃったよ!先輩のとかだったらどうしよう」

 

 急いで拾い上げられるラケット、幸いな事に一目で誰も使ってないとわかるようなボロいラケットだ

 

「良かったな堀尾君 誰も使ってないっぽい古いラケットでさ」

 

「本当だ埃まみれじゃん、よかったー、荒井さんのだったら俺までにらまれるとこだよ」

 

 俺までって…俺はある目的(校内ランキング戦)の為にわざとにらまれてるんだよ

 

 そんな話をしながら俺達は着替えを終える

 

「えーっと 今日の1年の練習メニューはまずマラソンからだね」

 

 カチロー君が練習メニューの確認をしているそれを聞いた堀尾君がまた得意げにしゃべり出す

 

「へへっ 俺走るのは得意なんだよ」

 

 そう言って扉を勢いよく開ける堀尾君…

 

 ガチャ

 

 ドンっ

 

 「チッ 気を付けろよサル」

 

 勢いよくぶつかったのは荒井先輩…そー言えば ボロラケットでの対決イベントって今日か…なら挑発 挑発ー

 

 「ちぃーす」

 

 目線すら合わせずにシラっと外に出ていく俺…若干の罪悪感 これを素でやってたリョーマ君 スゲーな…

 

 「けっ」

 

 気持ちはわかりますよ…クソ生意気な1年ですよね~ 俺

 

 ーーーーー

 

 「荒井 あいつだろ生意気な1年って」

 

 不機嫌そうにベンチに座る俺の態度を見てか周りのヤツらとの話が自然に奴(達宮)のものになる

 

「ああ、それにしてもくそムカつくぜ、あいつのせいで部長ににらまれるし 走らされるし 散々だぜ」

 

 本当に腹が立つ…

 

「でもよ テニス上手いって話じゃん、もしランキング戦に入ってきたら2年念願のレギュラー取りも…」

 

 「1年だぜ、そんなことあってたまるか!…なんとかしてあいつに恥かかしてやる…」

 

 仕返しの策を考えているとメンバーの1人が急に動き出す

 

 「おい これ達宮のテニスバックじゃね? ははっ ネコのアップリケとかつけてある ダッセー しかもこのテニスバック手作りっぽいぜ ママに作ってもらいました~ とかだったら笑えるな 」

 

 そんな達宮のテニスバックとその奥にあったボロいラケットを見てあることを思い付く…恥をかけばいいんだよあんな奴

 

 「……おい、ちょっと貸してみろよ」

 

 ーーーーーー

 

 「はぁ はぁ はぁ…だーーー!こんなに辛いんだ青学の練習…」

 

 だー…なんてぬるいんだ青学の練習…なんでこんな練習でスーパーテニヌ人が生まれるんだ?

 

 「頑張れー堀尾君、このあと素振り500回だとさ (梁山泊と比べると余裕だなー)」

 

 「ウソ~、まだ仮入部なのにーこの練習量 キツすぎるよー…」

 

 これでキツすぎるなら梁山泊の修行はなんなんだろう…やっぱり拷問…なのだろうか?

 

 ーーーーーー

 

 「64! 65! 66! 67!…」

 

 仮入部の1年生達が一生懸命ラケットを振る中 俺はラケットを振れずにいた…

 

 「ん?達宮 お前ラケット忘れたのかよ」

 

 「いや…て言うより テニスバックから無くなってる…」

 

 このラケット盗難イベントを予測して一応 秋雨先生作のラケットを練習用のラケットにしておいたんだが まさかテニスバックごといかれるとは思って無かった…、しまったな… 美羽さんが作ってくれたテニスバックになんかあったら…よし 顔面に無拍子当てる!

 

 そんな決意をしていると犯人であろう人が声をかけてくる

 

「おい、ラケット持たずに部活にでるとか いい度胸じゃねーか! 部長や副部長がいないからってサボってんのか」

 

 荒井先輩と取り巻きの先輩達がヘラヘラと笑う

 

「そんなに自信満々なら今 俺達2年は試合形式の練習やってから 相手してやってもいいんだが…ラケットが無いんじゃなー」

 

 わざとらしいセリフの後 ちらっと仲間の方に目をやる

 

 「荒井ー」

 

 仲間からパスされるラケット…それを雑に俺に渡してくる

 

 「おっと 、コレならあまってたみたいだぜ!」

 

 俺の手元にあるこのラケット、もちろん普通のラケットでは無い

 

「あっ それって 部室にあったボロいラケット」

 

「うわー…ガットゆるゆる フレームガタガタ…こんなの使えないよ…」

 

 っと1年生組が言った具合に見事なボロラケットだ

 

「どーした 相手してくんねぇの期待の新人くんよ」

 

 おー なかなかの どや顔…こんなラケットじゃ無理だよーってでも言って欲しいのかな?

 

「1年のお前にはそのボロラケットがお似合いだぜ、これに懲りて二度とでしゃばろうなんて思うんじゃねぇぞ…そうすれば無くなったあのダサいテニスバックも出てくるかもな」

 

 ダサいテニスバック…可愛いだろうが三毛猫のアップリケ、カチンとくるな~… 逆鬼先生のセリフを借りるなら「ドタマにきたぜ」ってところかな…打とうかな顔面 無拍子?

 

 「…先輩 そんな回りくどい事しなくても言ってくれたら何時でもテニスの相手くらいしますよ」

 

 「…なんだよ 俺が隠したとでも言いたいのか?」

 

「いえいえ…それより早くやりましょうよ」

 

 ボロいラケットを真っ直ぐ荒井先輩へと向ける

 

「チッ 上等だコテンパンにたたきのめしてやるよ」

 

 さて…美羽さんの作ってくれたバックをダサいって言った罰として、ちょいと本気出させていただきますよ荒井先輩…

 

 ーーーーー

 

「おいまた荒井が達宮のヤツにからんでるぜ」

 

「無茶苦茶言ってんなー」

 

 騒ぎを見て練習していた部員達が騒ぎ出す

 

「どうする 止めるか?」

 

 コートに入っていたレギュラー陣の1人 乾が 隣にいた菊丸と不二に話をふる

 

 「もうすぐ大石達も帰って来るし見つかったらどやされるぜ」

 

 手塚は罰として走らせるだろうし… ダブルスのパートナーの大石はねちねちと説教するだろうし…で菊丸はあまり乗り気では無い様子だ…

 

「…うーん、でも もうちょっと見てみようか」

 

 一方 不二の方はニコニコとこの出来事を楽しんでいるように見える

 

「じゃあデータでもとるか」

 

 不二の案に乗ったのかノートをひらく乾

 

 「あーあ 、大石達に怒られても おれ知らないもんね」

 

 責任転化する菊丸

 

「…フン フシュウ~」

 

 黙って見つめる海堂

 

 レギュラー陣も見つめる中、荒井 VS 期待の新人のテニスが始まる

 

 

 

 

 

 

 

 




お気に入り270越え本当にありがとうございます…感想等もいただき大変嬉しいです。これからも皆様のご期待に答えれるようにゆっくり頑張っていきます(*´ー`*)。


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10・香坂流庭球術

 ~テニス部に入る前のお話~

 

 「秋雨先生…ラケットのガットに穴が空くスマッシュって どう対処したらいいと思いま

す?」

 

 「?…ふーむ…君は面白い事を言うね、確かにアパチャイ君達ならボールをパンチしてスマッシュのように打つとそれくらいの芸当は出来るだろうね」

 

「はい…今 外で先生達がやってるテニスと言う名の何か 見てるとラケットの面に穴が空きそうだな~って…」

 

 基礎練習 及び 俺とケンイチ先輩の修行を担当していない先生達が たまに庭のコートでやっている遊び、ラケットを使わずに拳や蹴りでおこなうテニス? そのパンチで放つスマッシュを見てふと思い出した事がある

 

 風林火山陰雷の「雷」のショット…流石にテニスラケットのガットなんて破れ無いだろ…と思ってたけど目の前を音速のような速度で行き来するボールを見ると自信を持って大丈夫だと言えない…

 

 「そうか…素直に言ってくれたら良かったのに、対策を考えるということは 今度の修行の時にあれに参加したいんだね」

 

 「いえ、違います」

 

 「そうと決まれば しぐれと共に修行のプランを考え直さないとね」

 

 「あの~…秋雨先生 決まってないですし 参加したいなんて一言も言ってないんですが…」

 

「何…修行の日程がほんの少し早まるだけだよ、だから早まる分 今日の修行内容を濃くしようか」

 

「え…マジ?…」

 

 …このあとめちゃくちゃシュギョウした

 

 

 ーーーーー

 

 

 ぺしっ… ポフ…

 

 情けないインパクト音がコートに響く、その音に負けないくらい情けない 威力のボールはネットの上を越える事が出来ない

 

「ああ~~…」

 

 堀尾君達のテンションと声のボリュームが下がる

 

「おらおらどうしたぁ!」

 

 対象的に上手く返せない俺を笑うように 荒井先輩のテンションとボリュームは上がっていく

 

「やっぱりあんなラケットじゃ無理だったんだ」

 

 頭を抱えて「もう無理だ~おしまいだ~」のテンプレを俺の代わりにしてくれている堀尾君…喜怒哀楽の激しい良い性格だと思う

 

「一度でかい口をたたいたんだ、最後までやってもらうぜ!」

 

 

 パヒュン… ガシャ…

 

 次に 返球したショットはコントロールが出来ず 空へと向かいコート後ろの金網まで届く大ホームランになる

 

「だめだーっ、全然コントロールきかないじゃん!」

 

 堀尾君がまた大げさにリアクションをとる中 観戦しているレギュラー陣はいたって冷静に試合を見つめる

 

「まともに打ったってムダだろうな 、ガットの緩み等を考え調整するのに後 数手はかかる」

 

 乾はリアルな視点から

 

「確かに まずあんなガットじゃスピンはかからないよね」

 

 不二はこれから起こる ルーキーの反応を楽しむように…

 

 

「うーん…やっぱりこのガットじゃ慣れるまで時間かかるか…じゃあのあの技使うか…」

 

 俺はラケットのガットをデコピンのように弾きながら呟く

 

「…?余裕ぶりやがって、てめえには勝機はねぇんだよ!」

 

 余裕ぶった俺の態度がムカつくのか力の入ったサーブを打ってくる

 

 ポコン! シュトン

 

 謎の音の後に続き 軽快な音を立てて相手コートへと返球されるボール

 

「…えっ」

 

 返球されたボールに戸惑う荒井先輩…

 

「打てた~!?」

 

 俺の返球を喜びながらもどうして返球出来たか解って無い堀尾君…、それに答えを教えるかのようにレギュラー陣達が話し出す

 

「おー あの おチビやるー ラケットのシャフトにボール当てて難なく返したよ」

 

 「シングルシャフトのラケット上手く使っている…さらにあのボールの角度と威力から計算するにまぐれ当たりでは無く狙ったものだな」

 

 レギュラー陣のお褒めの言葉に周りのギャラリー達も盛り上がる

 

「マジかよ?あんな所に当てて打ち返しやがった…」や「いやいや あんな所に狙って当てるとか無理だろ…」 などの半信半疑の声が大半だが コートの目線は全てこの試合に集まる

 

「ふ…っ ふざけるな! 1球まぐれで返したからって」

 

 飛んでくるサーブ まぐれじゃ無いですよ とシャフトに当てて返球する

 

 「チッ こんな返しただけの球…なめるな!」

 

 荒井先輩も負けじと返球

 

 「そーですね、ただ返すだけじゃダメですよね、「 香坂流庭球術 「雷鳴返し」 」

 

 まるで大太刀を扱うがごとく 両手で大きくラケットを振るう

 

 硬いシャフト部分に当たった球は弾け飛び 力強く相手コートにめがけて加速する

 

 シュタンッ!!…

 

 相手コートに響くボールの音、その音の後コートはしばらく無音の空間へと変わる

 

 「 ……… 」

 

 膝から崩れ落ちる荒井先輩

 

 「達宮のヤツ あんな打ち方で更にスマッシュまで打ちやがったー」

 

 堀尾君の声でコート付近は音を取り戻す、「スゲー」やら「何者だ」など むしろ 無音になる前よりざわざわしている

 

 

 

 「来るな、アイツ…」

 

 そのショットを見た乾が呟く 、その言葉に 菊丸と不二は ランキング戦の組み合わせを決めている手塚達のいる教室に目を向けた後 ゆっくりとうなずく

 

「チッ バカバカしい 2年の恥をさらしやがって」

 

 そう言って 海堂は踵を返しコートとは別の方向へと歩いていく…

 

 

 彼らが察していた通り 後日 出来上がった ランキング戦の表にある名前が記載されていた

 

 達宮 将人 (1年)

 

 

 

 追記

三毛猫のテニスバッグは部活が終わった頃には元の場所に戻ってました…めでたし めでたし

 

 

 

 

 

ー梁山泊のお泊まり修行の風景ー

 

 「あの~秋雨先生?ガットが破れる以前に…このラケットにガット張って無いんですけど…」

 

「達宮くん 破れるのは無理矢理ガットで返そうとするからだよ、逆に考えるんだ、『ガットなんて無くてもいいさ』と」

 

 いや…それはおかしい…

 

「…出来るまで 今夜は寝かさない…ぞ♥️」

 

 ネットを挟み 同じくガットの無いラケットを構えた しぐれ師匠が甘い声で徹夜での修行を宣言する…(目は本気…)

 

 この後 俺はしぐれ師匠の熱血指導のもと 「雷鳴返し」を習得します…

 

 

 ○香坂流庭球術「雷鳴返し」

 

 ・ガットを突き破るような強力な回転、球威のボールをラケットのシャフトにぶち当て返球する剛の技、受け流す訳でなく真っ向から返す為 体全体を使い シャフトの一点に力を注ぎ込むような打ち方をする

 ※普通のテニスでは使いどころの無い悲しい技…

 

 

 

 




お気に入り1300越え本当にありがとうございます、一気にお気に入り数が跳ね上がった時は信じられず 別の小説ページを開いたんだ とガチで勘違いしました、
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11・ランキング戦 開始 と 動きだす闇

 ー 校内ランキング戦 ー

 

 それは毎月 2・3年生 全員を4ブロックに分けてリーグ戦を行い、各ブロックの上位2名 計8名がレギュラーとして 各種大会への切符を手にする 戦いである

 

 だが 今回のランキング戦はかつてない空気につつまれていた…一人の1年生の参加によって

 

ーーーーー

 

シュタンッ

 

 相手のコートに俺のスマッシュが綺麗に決まる

 

「おおーっ いったぁー!!」

 

 応援に来てくれている堀尾君とカツオが 俺以上に勝利を喜んでくれる

 

 「ゲームセット ウォンバイ達宮 6 - 0」

 

 審判のコールの後に二人が駆け寄ってくる、同じ1年の俺が頑張ってるのがうれしいんだろうな

 

 「スゲェ!2連勝じゃん、やったな達宮!」

 

 「お疲れ様 達宮君 昼食の後今日は残り一試合…レギュラーの海堂先輩とだよ」

 

 カツオ君がDブロックの表を俺に見せながら言ってくる、一方堀尾君は…

 

「3年のレギュラーには無理かもしれないけど2年のレギュラーなら勝てたりしてな」

 

 幸い今は周りに人がいなかったけど 、やめてくれ 堀尾君…先輩に睨まれる発言はもう駄目ゼッタイ、ランキング戦に名前の書かれた 俺は もう普通の可愛い後輩に戻るつもりだ

 

 試合結果を報告するため 各ブロックの表が書かれている受付に足を運ぶ、今担当してるのは大石先輩だった

 

 「Dブロック 達宮 将人 6-0 で勝ちました」

 

 その言葉を聞いて Dブロックの表に6-0という文字が書かれる

 

 「よし OK、次の試合は昼食休憩の後だ、頑張れ応援してるよ」

 

 まさかの大石先輩の応援してるよ の言葉にテンションが上がる、ちょろい?違うピュアなんだよ俺!

 

 「ありがとうございます、俺 頑張ります」

 

 ーーーーー

 

 昼食休憩をしている最中も堀尾君のマシンガントークは止まらない

 

「ランキング戦に達宮が入ってる時はビックリしたけど 、2連勝ってのもビックリだよな」

 

 ただ食べながらはやめて欲しい、ご飯粒がマシンガンのように口から飛び出してくる…

 

「堀尾君…メシ食うかしゃべるかどっちかにしようか」

 

 俺の注意を受けた堀尾君は箸を置く…あー しゃべるのね

 

「でもよー1年の達宮がレギュラーを取れたりしたら、テニス歴2年の俺にだってチャンスが…」

 

 食うよりしゃべるを優先した堀尾君の自分語りは止まら

 

「あー ないない」

 

 カツオ君の声もきっと聞こえて無いんだろう

 

 

 

「いた! 達宮君ー」

 

 昼食を食べてた俺たちに向かってカチロー君が走って近づいてくる

 

「ん?、カチロー君どうしたその目?」

 

 赤く腫れ上がったような右目付近…あー思い出したそう言えば原作で海堂先輩にぶつけられたやつだっけか?

 

「気にしないで、ちょっとがんばりすぎてボールが…そんな事より、撮ってきたよ達宮君の次の対戦相手…海堂先輩の試合」

 

 右手に持ってるビデオカメラを俺に見せてくる、俺の為に…カチロー君 めっちゃいい子

 

「でかしたじゃん、達宮の試合と重なってたから見逃しちゃったもんな」

 

 そう言って堀尾君も覗き込む…そう言えばリョーマ君はこの映像無視してたよね、こんな好意 無下にする事は俺には無理、内容は原作でほぼ知っているがの撮った映像をありがたく見せてもらう

 

「…何だこれ…こんなの見たことないぜ!?」

 

「このプレースタイルから海堂先輩は「マムシ」って呼ばれてるんだって」

 

 一通りプレーを見た頃 カメラに映る海堂先輩がこちらを睨んでくる… あー… バシッ

どうやらこのタイミングでカチロー君は顔にテニスボールをぶつけられたたようだ…

 

「やばいよ 達宮、やっぱり1年がレギュラーなんて 無理かも…」

 

 さっきまで調子に乗ってた堀尾君が動揺している、そんな堀尾君を余所に

 

 「さーて、メシ食ったしアップしてくる、カチロー君 映像ありがとう 、お礼は試合でね」

 

 そう言って俺は何事も無かったかのように 試合前のアップの為コートに向かう俺、可愛い後輩はもう少しお預けかな? 顔面にテニスボールって痛いんだよ 海堂 先輩

 

 ーーーーー

 

「大石、交替するからメシ行っていいよ」

 

 試合を終えて来た 乾が記録係の交替を告げる

 

 「乾、どうだい?試合の調子は」

 

 ある程度の結果を予測しながら俺は乾が書き込んでいるDブロックの対戦表の目をやる 6-0 、 予想通りだ 危なげ無い試合したんだろう

 

「ああ、ほぼイメージ通りに勝てているよ、でもあの1年予想以上にやるな まだ1ゲームも落としてない」

 

 乾が言っているのは達宮の事だろう2試合とも6-0、彼のおかげでランキング戦や部活全体に緊張感がでて副部長としてはありがたい限りだ でも…

 

「乾と同じDブロックだったな、 あの子も かわいそうに…」

 

 乾の持っているノートを見ながら自然とその言葉が出てくる、乾もその視線に気づいたのかそっとノートを近づけてくる

 

  「おっと そのノートあんまり近づけないでくれ 苦手でね」

 

 ほんとに苦手だから やめて欲しい

 

「ふふ…でも俺よりも前に やっかいな相手の試合があるだろう 、かわいそうに 」

 

 「…ケンカ売ってんスか…先輩」

 

 近くにある木の影から声が聞こえ目線を向ける…そうかDブロックには海堂もいるんだったな…もうすぐ二人の試合か…かわいそうに

 

 

 

 ーーーーー

 

 

 殺人拳 と 活人拳。

 

 決して相いれないこの2つの武術思想は長い歴史の中で常にせめぎあってきた、 殺人拳こそが真の武術たる証明をするには、活人拳を象徴する梁山泊を滅ぼす意外の方法は無い

 

 (水)「見事にグレーゾーンじゃな」

 

 (炎)「ええ、彼は梁山泊の弟子でありながら武術家ではなく スポーツマン…」

 

 (王)「カカカ そんな児戯をしとるワッパの事などほっておけばいいわいの」

 

 画面に映される9つの顔、一影九拳のメンバーが協調性の欠片も無く言葉を交わしている、今回の議題「梁山泊の二人目の弟子」について

 

 (流)「 闇の 目的の一つ 、次世代を担う 梁山泊 最強の弟子を 私達いずれかの闇の弟子(YOMI)が倒し 殺人拳が真の武術だと証明する事…武術家 意外が相手となると殺人拳の品位を下げる…予定通りYOMIのターゲットは白浜兼一のみ、それで皆さんよろしいですか?」

 

 反対意見も出ずにこの議題は早々と終了した

 

 (鋼)「アーッハッハ、流石は無敵超人 ここまで考えてあんな形で弟子をとるとは もはや笑うしかないな」

 

 (水)「じゃが あやつの考え通り事を運ぶのも癪じゃな」

 

 (無) 「うむ、そう言えば 妖拳の女宿 殿は無敵超人 殿と因縁があるのでしたな」

 

 (流)「幸い “久遠の落日”まで時間はあります、どうでしょう 、闇の弟子育成能力と梁山泊の弟子育成能力 、テニスというモノであれ 比べてみるのも一興かと…」

 

 暇をもて余した闇の達人達の暇潰し…この暇潰しが今年の全国大会に一波乱起こすことになる

 

 

 

 

 




暇をもて余した神々(達人)の遊び!

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12・スネイク

「出たぁーっ!桃の十八番…「ダンクスマッシュ」!」

 

 まさにバスケのダンクシュートのように高く 空より降ってくるスマッシュ 、高さはもちろん相当な威力で敵のコートへと突き刺さる

 

「どーん」

 

 指を指して相手に向ける桃ちゃん先輩、今のスマッシュが試合を終わらす最後のボールだった、ネットに近付き今はゲーム終わりの握手をしている、

 

「足の方はもう大丈夫みたいだね」

 

 隣で一緒に見ていた不二先輩が桃ちゃん先輩に喋りかける

  

「今回は間に合わねぇと思ったのになぁ」

 

 不二の発言に菊丸先輩も話しを付け加える

 

 「いやー、達宮にススメられた接骨院が良かったんッスよ、逆にまだまだ暴れ足りないくらいで」

 

 そんな風に喋る中、俺は試合が終わり空いたコートへと入って行く、海堂先輩の試合の場所はこのコートだ

 

「おっす、お前 次 海堂 とだろ?」

 

 丁度コートを出る桃ちゃん先輩とすれ違い様に話しかけられる

 

「お疲れ様です、そうですね今からです」

 

 桃ちゃん先輩は別の入口から入ってくる海堂先輩に目を向ける

 

「奴には気をつけろよ」

 

「了解です」

 

 ーーーーー

 

 二人がそれぞれのコートに行き準備が完了する、最初のサーブ権は俺 ボールを持って 後は審判のコールを待つばかりだ

 

「いよいよ達宮 対 レギュラーか、海堂相手にどこまでくらいついていくんだろう…」

 

 期待の新人対レギュラーの対戦 注目度はなかなかのようで結構な人数のギャラリーがこの試合を見にきている

 

「ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ達宮サービスプレイ!」

 

 コールとともに俺は右手からボールを上げる、もちろん上げるトスは通常のものよりはるかに高い…レギュラー相手だここは始めから…

 

 シュ ドッ

 

 高い打点から放たれたジャンピングサーブ「虎砲」は海堂先輩の横を速い速度で通り抜ける

 

  「15ー0」

 

 周りのギャラリーが ざわざわ 騒がしくなってくる、虎砲を見せるのはランキング戦ではこの試合が初である

 

 「おー やるじゃん おチビ、海堂からサービスエースとったぜ」

 

 「そうだな、ヤツのデータはまだ少ないがあのジャンプサーブは桃城との試合で使っていたらしい、実際 聞くと見るでは違うものだな より正確なデータがとれる」

 

 「でも 海堂の方もスイッチがしっかり入ったみたいだよ、腰を落としてしっかり構えてる」

 

 3年生の期待の目線を感じながら ボールがふわっと高く舞い上がり高い位置でラケットと交わる、

 

 ボールの軌道は最短距離のセンターラインギリギリ…だが

 

 そこにすでに陣取っていたのは低い体勢の海堂先輩、低い体勢からラケットにボールを当ててくる…「チッ」 ここまで聞こえる 舌打ちと共にボールがコートに落ちる、ネットが邪魔だと言わんばかりに睨む海堂先輩…怖いわー

 

「30ー0」

 

 怖い視線にも負けず再度俺は上空へとボールを上げ放つ「虎砲」

 

 それを打ち返す 海堂先輩、若干 虎砲の威力に押されて甘く入った所を俺は見逃さない…

 

 コートの右側ギリギリを狙って放たれたボール…それをなんとかギリギリで拾う海堂先輩しかしそのボールは高く上がってしまう

 

 「やっぱり身長が欲しいな…」そんな小さな呟きと共にフワッと浮いたボールをバスケのダンクシュートのように高く、 空からボールを地面に叩きつける

 

 「どーん…なんちゃった」

 

 

 「40ー0」

 

 海堂先輩のコートにライバルの桃ちゃん先輩のダンクスマッシュもどきが決まる、ニヤっと笑う俺にここまで聞こえる舌打ちをする海堂先輩…だから怖いって…

 

 ーーーーー

 

「…す……スゲぇー!!ハイレベルな試合だ、まばたきしてたら見のがしちまいそうだよ」

 

 ギャラリーの一部、1年生トリオがいる場所から一際うるさ…元気な声が聞こえる、もちろん堀尾君

 

 「やっぱり達宮君、海堂先輩相手に全然負けてないよ」

 

 拳を握り同じようにガッツポーズするカツオ君…しかしカチロー君の顔はそこまで晴れやかでは無い

 

 「…で でもまだ海堂先輩のアレが…」

 

 ーーーーー

 

 フゥゥー

 

 深い呼吸と共にユラユラと揺れるラケット、今にも殺すぞとまで言わんばかりで睨んでくる海堂先輩…低い体勢で俺のサーブを待っている

 

 このまま焦らしてイラつかせるのもありかな…と思うも俺は右手からボールを高く上げ「虎砲」を放つ

 

 返ってくるボール、やはりまだタイミングが完璧ではないようで返しが甘い

 

「おっ 達宮がまたうまく海堂の逆をついたぞ、決まったか?」

 

 ギュンン

 

 右側へとに走り込む海堂先輩の腕がまるで伸びたかのように錯覚する…その腕が下から上に大きく振り上げられる

 

 放たれたボールはぐねんと曲がり一度コートで跳ねた後更に角度をつけコートの外に…まるで蛇がコートの外に獲物を見つけかのように飛び出していった…

 

 ーーーーー

 

「相変わらずえげつねぇな海堂のアレは」

 

 かなりの角度で外へ逃げていったボールを見てギャラリーがざわつく

 

 「あのビデオに映ってた…」

 

 1年生トリオがビデオに映っていたものを思い出す

 

「そう、アレが海堂のスネイク!」

 

 後ろから聞こえる声に振り向く

 

「桃城先輩!?」

 

「桃ちゃんでいいって」

 

 軽く1年生達の緊張をほぐしながら説明を続ける

 

「右足から左足へ体重が移動する瞬間にラケットを大きく振り抜き異常なスピン回転をかけるショット…リーチの長い海堂だからこその技だ」

 

 

 

 

 




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13・蛇に勝つには?

 

「おい…いつになったら終わるんだよこの試合…」

 

 試合を見ているギャラリーの誰かが言った言葉だ、言葉には出さないがそう思っている者も沢山いるだろう

 

 デュース…先ほどから何回審判がこの言葉を発したかわからない

 

 ゲームは5ー4で達宮のリード後1発 綺麗にスマッシュでも決まればゲーム終了である…だが

 

「…デュース」

 

 まだこの試合は終わりそうもない

 

 ーーーーー

 

「おチビのやつ完全に海堂の罠にハマって喰われると思ったんだけどねー」

 

 試合を終えたレギュラー陣達がこの試合を見てそれぞれに感想を言う、あまりにも長いこの試合 青学の全コートの内 打ち合っているのはもう海堂と達宮だけ、テニス部員ほぼ全員がこの試合を観戦している

 

 「そうだな…海堂のテニスは「スネイク」を使って左右に大きく走らせて体力を奪うテニスだ …セオリー通りに相手を走らせてる」

 

「だけど勝ってるのは達宮の方…海堂焦ってるだろうな彼のしぶとさに」

 

 ーーーーー

 

 正直きついがまだやれる!梁山泊の拷問を思えば

 

 インターバルの無い高速シャトルランをしながら俺はテンションを上げる為に今の状況と過去にあった地獄とを比べて大丈夫だと言い聞かせる

 

 昼イチに始まったこの試合だったが気付けばもう夕方である…二人共が粘り1ゲーム事に長いデュースになった結果がこれである、 たたでさえポイント毎にとても長いラリーが続くこの試合…だがその試合にも終わりが見えてきた

 

 「くっ」

 

 食い縛るような声と共に放たれるスネイク、試合始めと比べると威力は落ちているが、狙いや回転が洗礼されてきていて 相変わらず全力で走り 届くか届かないかギリギリのボールである

 

 「ちょわー」

 

 馬先生がたまに出す奇声を上げながらなんとか返球…

 

 「っフシュゥー」

 

 逆サイドに放たれるショット、負けるか

 

 「アパー」

 

 謎の掛け声と共にさらに返球…サイドに走らされまくる俺は海堂先輩の2~3倍位は走っているだろう、汗だくである

 

 「チッ」

 

 海堂先輩が返球したボールがネットに遮られる

 

 「達宮 アドバンテージ」

 

 対する海堂先輩も汗だくである、達宮より走っていないが全力でラケットを振り上げる動作を何百と続けている、過去にこれだけ粘った選手がいたのか聞きたい位だ

 

 

 そして俺のサーブからまた始まる長いラリー、お互いの意地と意地がぶつかりあったこの試合がついに終わりを迎える

 

 カクッ

 

 右側に走り込む海堂先輩の膝が疲れからなのか カクンと折れバランスを崩したのである…

 

 それを見た瞬間 俺の感想は 「よし」 では無く「ヤベー」だった …何より海堂先輩の目が死んでいない

 

 俺の身体は無意識にある方向に向かい飛んでいった

 

 バランスを崩す海堂先輩、その手には力強くラケットが握られている

 

 「ナメんじゃねぇ!」

 

 斜めになった体勢から振り上げられるラケット そこから放たれるショットはポールの外側を通り俺のコートへと入ってくる

 

 「…何故そこにいやがる…」

 

 縮地法…地面を蹴って走るのではなく引力、自然落下を使い移動する技法である…だけど俺のはまだ不完全だ…着地が出来無い、でも加速したままラケットを出し飛び込む

 

 「うっ」

 

 無理な体勢から落ちたせいかあれほど梁山泊でした受け身を失敗する…だがそのお陰で無事成功した

 

 ポトッ

 

 縮地法の初速を利用したダイビングボレー

 

 「…ゲームセット、ゲームウォンバイ 達宮将人 6-4」

 

 審判のコールだけがコートに響く、その後徐々にざわざわし始める「何だあの海堂のスネイク…」「いや…達宮のヤツ 変な加速しなかったか?」など様々である

 

 「勝った!? 達宮君が勝った!やったー」

 

 一年生トリオも盛り上がっているようだが正直しばらく動きたく無いな…寝転がりながらオレンジがかった空を見て考える

 

 それにしてもヤベー…原作読んで無かったら反応すら出来て無かったんじゃないだろうかあの「ブーメランスネイク」…と言うか王子様 このランキング戦で余裕で海堂先輩に勝ってたよね…王子様やっぱパネェ…

 

 明日は「データテニス」か…ヤベーな長期戦だったからめっちゃデータ録られたかも…頑張ろう

 

 こうして期待の新人 対2年生レギュラーの戦いは粘り勝ちで期待の新人に軍配が上がった

 

 

 ~テニス部に入る前のお話~

 

 「…蛇って どうやったら勝てますか?」

 

 修行のやり過ぎのせいで いろいろツッコミたくなるような言葉が口から出てくる、ついでにこの言葉が出た理由は 手のひらの摩擦でとんでも魔球を放つ中国人を見て「青学の蛇」を思い出したからである

 

 「…ナメクジ?」

 

 謎の質問にも関わらず答えてくれるしぐれ師匠…ヘビ、カエル、ナメクジの三竦みかな?

 

「いや…すいません端折り過ぎました…」

 

 「?…ふーむ…また君は面白い事を言うね、君の事だからテニスの事だろう、あれの事かな?」

 

 一緒に謎の質問を聞いていた秋雨先生の目線の先は俺と一緒、うねうねとした軌道で動くテニスボールだ

 

 「ついでに言うとおいたんの所では蛇に勝つのは蛞蝓(ナメクジ)じゃなくて螂蛆(ムカデ)ね」

 

 ヘビのようなうねうねとした魔球を放ちながら馬先生が答える

 

 「螂蛆食蛇、蛇食蛙、蛙食螂蛆、互相食也…つまり三竦みの事だね」

 

 秋雨先生が難しい言葉を言い出す…若干ニヤついているのが怖い…

 

 「蛇にどうやったら勝てるか?だったね…なら蛇に勝つムカデに習おうではないか」

 

 嫌な予感がする…

 

 「いやいや、秋雨先生それは諺ですよね、ムカデなんて蛇にパクって食べられて終わりですって」

 

 「そうだね、でも終わりでは無く結局はムカデが勝つんだよ、生命力でね、蛇は基本 丸飲みだから生命力の強いムカデは蛇を中から倒してしまうんだよ」

 

 くっ 流れが悪い話をそらさなけ…

 

 「だから鍛えようじゃないか「生命力」!」

 

 イヤーーーーーーーーー

 

 「「生命力」は言い換えると「しぶとさ」つまり持久力、その蛇とやらを正面から倒すまでずっと持久力強化の練習だ」

 

 「倒すまで…ずっと?他の修行は?」

 

 「勿論するに決まってるじゃないか」

 

 この日より更に修行の量が多くなった…

 

 つまり…このあともめちゃくちゃシュギョウした

 

※後日談…全力を出して 正面から挑み蛇を倒したにも拘らず…修行量は減りませんでした…倒すまでって言ったのに なんでだろー(´;ω;`)

 

 




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次回6/4に投稿します…待っていただいてる皆様申し訳ないです(´・c_・`)


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14・データテニス

「いよいよ3年レギュラー乾先輩との試合か」

 

 青学のランキング戦二日目、Dブロックの今日 2試合目が始まろうとしている

 

「勝てたら達宮君のレギュラー入りは確定!」

 

 今まで全勝の達宮はこの勝負に勝つとレギュラー入りが確定となる

 

「乾先輩って強いのかな?」

 

 堀尾がボソッと呟く、その言葉に答えが帰ってくる、後ろから来た桃ちゃん先輩だ

 

「強いよ、ここ半年間一度もレギュラーを落としたことがない…ちなみに俺は苦手な相手だ、なんてたって 乾先輩はな…」

 

 乾先輩の強さの秘密を語ろうとする桃ちゃん先輩…

 

「おーい桃、おチビと乾の試合見てんの?」

 

「あっ エージ先輩これから始まるんッスよ 達宮と乾先輩の試合」

 

 Dブロックのコートを見ながら答える

 

「へぇー、でも 前の試合が早く終わったから お前今から試合だよ オ・レ・と」

 

「ええっ! ウッソォ…」

 

「別に俺の不戦勝でもいいけどね~ 残念無念 また来週~」

 

 桃ちゃん先輩は 試合見たかったな~と後ろ髪引かれながら「そりゃないっスよ~」って菊丸先輩を追いかけていった

 

「行っちゃった…桃ちゃん先輩、何か言おうとしてたね?」

 

「それより見てみろよ、あんなに身長が違うぜ、まるで大人と子供だな」

 

 ーーーーーー

 

 聞こえててるよ堀尾君…大人と子供で悪かったね……実に的を得た発言だよ、目の前に巨人がいるんだよ ナニコレ マジで中学生? 秋雨先生ほど正確では無いが 目算 185㎝…デケぇ…

 

 ネットを挟み乾先輩を見上げる、その視線に気づいた乾先輩は紳士的に手を出してくる

 

「お互いくいの残らない試合にしよう」

 

 「こちらこそ よろしくお願いします」

 

 お互いに握手を交わし試合が始まる

 

 ーーーーー

 

「ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ 乾サービスプレイ!」

 

 審判のコールが試合開始を告げる…快進撃を続ける同級生に1年トリオも観戦に熱が入る

 

「いよいよ達宮君の試合開始だね、乾先輩のあの身長からどんな技が…」

 

 乾の左手からトスが上がり 高身長を生かした 高い打点から強烈なサーブが放たれる

 

「はや…すげぇ 高速サーブ、放った瞬間にはもう達宮の所に届いてるって感じだ 強烈~!」

 

 コート外で盛り上がる堀尾君をよそに コートの中にいる達宮は冷静にその高速サーブをしっかりと対処して打ち返す

 

 「乾先輩がネットにつめて来る!」

 

「うまい!プレーに全く無駄がない」

 

 そう、ギャラリーが言うようにまったく無駄が無い…ネットにつかれ達宮が抵抗して逆サイドに放ったボールが…

 

「ハズレ」

 

 その声と共に放たれるボレーであっけなく始めの得点コールが響く

 

 「15-0」

 

「乾先輩が先制した!」

 

 盛り上がるギャラリー、逆に達宮を応援している1年生トリオは若干盛り下がる

 

「あっ やられちゃった まるでアプローチの方向読まれてたみたいだね」

 

「偶然だろ? 確かに乾先輩はサーブ速いし お手本のようなプレースタイルだけど 海堂先輩の「スネイク」のほうがスゴかったって…」

 

 1年トリオが話をしている間にも試合は流れる

 

 

「いいコースだけど…ハズレだ」

 

 また乾先輩の呟きの後に審判のコールが響く

 

 「30-0」

 

「乾がまた取ったぞ」

 

 盛り上がるギャラリー、淡々とプレーする乾先輩のテニスに違和感が加速する

 

「ねぇ…乾先輩って達宮君が打つと同時にポジションについてない?ほら…」

 

「やっぱり乾先輩って相手の打ち返す場所がわかってるんじゃ…」

 

「…あっ乾先輩がまた前に出た」

 

 乾先輩自身が前に出ることにより返すコースがいくつかに絞られる、左側(クロス)にはスペースが無い…ロブを上げるか?右側に打つか?

 

「なんのっ」

 

 低い球を剣術の居合抜きのようにバックハンドでスペースが僅かな左側(クロス)の方向へと返す達宮

 

「あえて意表を突くためにスペースの無い左側(クロス)に強烈なショットを!これなら乾先輩を…」

 

「バックハンドで左側(クロス)に打つ確率93%…」

 

「なんで乾先輩が?」

 

 意表を突いたかのような左側(クロス)の位置にはもうすでに乾先輩が打ち返す万全の体勢で準備していた

 

 お返しにと強烈なボールが達宮のコートへと放たれる

 

「決まった!?」

 

 この強烈なショットにギャラリーのほとんどは乾の得点を確信する

 

 「いや…彼はここで終わらない」

 

 乾の言葉の通りギリギリ追い付く達宮

 

「取った…達宮もすげぇ…でも」

 

 ギリギリで拾ったボールは弱々しく

 

 「…しかし返したボールはネットに阻まれ…ボール2個分届かないか」

 

 その言葉と共にネットに引っ掛かりポトリと音をたてるボール

 

 「どうしよう完全に読まれてるよ」

 

 「気味悪いほどスキのないプレイじゃん海堂先輩より手強いかも…」

 

丁度 試合が終わり観戦に来た不二先輩がその堀尾君の発言を聞いて情報を付け足してくれる

 

 「 ふふ あたりまえだよ、乾は海堂に3戦3勝なんだから」

 

 ーーーーー

 

 ネットを挟み 先程まで 独り言のようにデータを呟いていた乾の言葉が 俺の方へと向けられる

 

 「海堂の試合を含め君の過去4試合をみせてもらった、君は剣術…又は武術を習っているね」

 

 あー…やっぱり解っちゃいますか…武術の部分

 

 「……はい」

 

 「武術というのは格闘技…テニスのような球技とは考え方が全く違う、それを混ぜ合わせテニスに応用した「特殊」な動きが君の強さだ…しかし「特殊」という事は癖があるという事でもある…今回はそれを利用させてもらったよ…」

 

 「…俺 変なクセついてましたか?」

 

 「あからさまなものでは無いが随所にテニスではない動きが出ている…その特殊さ故に君は傾向は読みやすい…実際にデータの確率は高く 君はデータ通りにクロスの方向へとボールを打った」

 

「……そうですか」

 

 でも90%超えって あからさまじゃ無いと出ない確率だよな…ヤバいな…データテニス、秘策その1とその2を惜しみ無く出したとしてデータの確率をいくつ下げられるかが勝負の鍵だな…

 

 

 「ゲームカウント 1-0 乾リード」

 

 

 




お気に入り、感想等ありがとうございます大変嬉しいです。これからも皆様のご期待に少しでも答えれるようにゆっくり頑張っていきます(*´ー`*)


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15・「五月雨」と「天泣」

 

「92%…ハズレだ」

 

 また無情に呟かれる乾先輩の声と共に点数が入る

 

 「30-0」

 

 

「さすが乾先輩今日は特に冴えてるんじゃないか」

 

「ああ」

 

 ギャラリーの声に混じり不二先輩が優しく 一年生トリオに乾の強さを説明する

 

「試合データやプレイパターンに基づいて、相手との対戦を何度も繰り返し予想(イメージ)する、パワーやテクニックなどの派手さはないけど…詰め将棋の様な穴の無いテニスだよ 乾のテニスは…」

 

 

 ーーーーー

 

 

 ネットを挟み乾先輩が俺に向かって話しかける

 

「君は俺よりテニスのセンスもある、ハッキリと言って強い…、けれど どんなショットでも返ってくる場所がわかれば… 打ち返せない球はないよ 」

 

 クイッ っとメガネを上げる乾先輩、ワンピースとかなら背後に「ドーン!」という文字が背景に出てるのではないだろうか

 

 それにしても…マジですか乾先輩…波動球百八式 とか アパチャイ スマッシュを返ってくる場所がわかったら返せるんですね…

 

 軽く冗談を頭で思い浮かべリラックスさせる、 秘策の成功率を上げる為にも深く集中する必要がある… 限界まで息を吐き 一気に息を吸い込む

 

 空手で言うところの息吹き…丹田呼吸だ…これは梁山泊での練習の際 俺がしているプリショットルーティーン、技を繰り出す前にある特定の動作を行うことにより集中力を高めて技の成功するイメージを高める技術らしい

 

また乾先輩の呟きと共に続くラリー 、乾先輩が勝負を決めにかかる

 

 「でも…もうちょっと駆け引きを楽しみましょうよ乾先輩?」

 

「駆け引き?…バックハンドでクロスを打つ確率93%…なっ!!」

 

 「香坂流庭球術「五月雨」」

 

 乾がデータで予測したコースとは全く逆位置にボールが飛んで行く…

 

 

 「30-15」

 

 「おっ 7%引いちゃいましたか?でもガチャの低確率に比べたら7%とか高確率っすもんね乾先輩」

 

 「……」

 

 ーーーーー

 

 「やったー 達宮君の初得点だ」

 

 「それより達宮のヤツおかしいぜ…何でラケットを逆の手で持ってんだ?」

 

 

 はしゃぐ一年生トリオを横に試合を見ていた不二はさっき放たれたショットを冷静に考察する

 

「…一振りのうちにラケットの持ち手を素早く持ち替えている、それにより相手が予測する軌道とタイミングを狂わせているようだね…まさに変幻自在」

 

 ーーーーー

 

 乾のデータ通りに進んでいた試合の流れが更に狂いだす

 

「右サイドへのボレーの確率89%…」

 

 

「香坂流庭球術「天泣」」

 

 

 「くっ…」

 

 ガシャン

 

 今度は急に爆ぜるように加速した達宮のボレーが乾のラケットを弾く

 

 「なんで普通のボレーがあんな速度に?」

 

寸勁という技がある、超近距離から相手に衝撃を与えることで、外面ではなく内面に強いダメージを与える技、その技をボレーに応用

 

 ボレーのフォームはそのままにインパクト時の発勁による衝撃がボールに加わり、そのボールは相当なスピードやパワーを秘めていた

 

 「ボレーは当てるだけ」どこのテニススクールでもそう教え、どの雑誌でも参考書にも書いてあるようなこと…このボレーは一見その当てるだけを体現したようなお手本のような綺麗なボレーである、しかしラケットに当たる瞬間に寸勁で加速する為 放たれたるまで 普通のボレーか爆ぜるボレーかわからないの正にに緩急の二択である

 

 「乾も困ってるだろうね…緩急や軌道…その答えが二通りあるショットは乾のデータの数字を半分以下にしている」

 

 不二の言うようにボレーやバックハンドのショットになる確率がいくら高くてもそこからの流れつく答えが1つに絞れない、逆位置にタイミングをずらし放たれる「五月雨」、急加速する「天泣」が乾を追い詰める

 

 

 そんな中また彼のボレーが爆ぜる

 

 「くっ…」

 

 急加速するボレーにギリギリタイミングを合わせななんとか相手のコートへと返す乾 しかし…

 

 「乾先輩、情報提供です ここ俺の絶好球ですよ」

 

 今まで達宮は居合抜きのようなフォームで返球した事はあるが、今回は腰を低く落とし完全な停止…

 

 ボールが彼の間合いに入った瞬間彼の姿がぶれる…

 

 

 「無拍子」

 

 

 ガシャン

 

 一度コート中で跳ねた後コートの後方にある金網に当たりボールが停止する

 

 このショットに反応出来た者は少ないだろう…現に審判をしていた二年生部員も反応出来ていない

 

 「……」

 

 「審判、入っている達宮の得点だ」

 

 ギャラリーから渋カッコいい声が聞こえる 手塚部長だ

 

 「さっ 30-40」

 

 審判はなんとか得点を告げる、まだ向かいにいる乾は固まっていた

 

 

 ーーーーー

 

 反応すら出来なかったあのショット…普通ショットを打つにはリズムがある…構えから 1,ターン 2.テイクバック(振りかぶり) 3,ヒット 4,フォロースルー という工程を踏む、彼のショットにはそれが無い…構えの後にはその工程を飛ばしたかのように放たれるショット…

 

 「まいったな…予測しても返せない球を打つ奴がいるなんてね」

 

 つい口から出てしまった言葉…反応すら出来なかったショットは俺のメンタルにもダメージを与えてるようだ…

 

 「でも乾先輩は 来る場所がわかったら返せるんですよね…同じ場所にもう1球いかがですか?」

 

 ネットを挟み彼が含みある笑顔で言ってくる、まったく…本当に生意気な新入生(ルーキー)だ

 

 ーーーーー

 

データ通りに進まなくなったゲームは終わりを迎える

 

 

 「ゲームセット、ゲームウォンバイ 達宮将人 6-3」

 

 この日 青学に一年生レギュラーが誕生した。

 

 

 

 なおDブロックではもう1つ誰もが予想しなかった大波乱起こる、海堂があの乾からレギュラーを勝ち取ったのだ

 

 -かくしてランキング戦は幕を閉じた

 

 ここに8人のレギュラーが決定

 

 手塚 国光(3年)

 大石 秀一郎(3年)

 不二 周助(3年)

 菊丸 英二 (3年)

 河村 隆(3年)

 桃城 武(2年)

 海堂 薫(2年)

 

 達宮将人 (1年)

 

 青学は全国大会を目指して動き始める

 

 

 

 

 ー梁山泊でのお話ー

 

「適当に殴っとけば終わるだろ…そういうのはオレ じゃ無くて秋雨やしぐれにでも聞け 」

 

「いいじゃないですかー、せっかくラーメン連れて来てもらって 会話の話題 無しとか寂しいじゃないですか」

 

 修行終わりにどうだ?と言われ逆鬼先生と二人でラーメン屋に来ている、出した話題は相手の行動を読む敵の対処法だ、他の人に聞け と言いながらも面倒見のいい逆鬼先生はアドバイスをくれる

 

「「山突き」とかがいいヒントになんじゃねぇか?」

 

 「山突きですか?」

 

 「そうだ、あの技は1つの技でありながら結果を2つもたらす、拳が向かう先が頭と腹2つあるのさ」

 

 抜塞大の中の山突 、1つの動作で上下同時突きを放つ空手の技である

 

 「それをテニスで…どうやって?」

 

「そこはお前が考えろよ…」

 

 

 「逆鬼大先生…そこをなんとかもう少し何かヒントを」

 

 「しょうがねぇな…オレの昔の友人に山突のように両手で貫手を放つ奴がいる、ただ山突と違うのは片方の貫手に全力を込める…よって片方は虚…ただその虚は当たるまで本物 過ぎてわからないんだ…つまりだその技は必然的に勝負を二択にもって行く」

 

 「二択…」

 

「いくら相手が動きを読んでも強制的に二択にしてしまえば 確率は2分1…2回に1回は殴れるんだ なんとかなるんじゃねーか」

 

 「殴りはしないですけどね…でもなるほど…二択ですか 参考になりました、さすが逆鬼先生 頼りになりますね」

 

 「いやぁー ほらあれだ ここのラーメンがオレの大好物でよ、テンションが上がっちまっただけだ、 別にお前の為に方法を考えたりした訳じゃねぇよ」

 

 謎に照れだす逆鬼先生…見ているこっちが恥ずかしくなるレベルだ

 

 「はい、ラーメン4つお待ち」

 

 「…4つ?」

 

 横を見ると髭を撫でるダンディーなおじ様と刀を持った美女が…

 

 「よし、じゃあ次の修行から早速 「山突」に似た技の修行をしぐれ にしてもらおうか…虚を気付かせない練度となると…今の修行の4ば…大丈夫だろう」

 

 秋雨先生…4倍って一瞬聞こえましたよ!それは人が死ぬレベル…

 

 「…次の修行楽しみにしてて…ね♥️」

 

 「イヤぁァアーーー」

 

 こうして達宮は「五月雨」と「天泣」を習得する

 

 

 追記 アパチャイ先生達 他のメンバーは後ろのボックス席の方でジャンボ餃子 3万円チャレンジをしてました…




 
 香坂流庭球術「五月雨」
 
 [家庭教師ヒットマンREBORN!]より 時雨蒼燕流 攻式五の型「五月雨」(さみだれ)
 参考にさせていただいた技

 香坂流庭球術「天泣」
 
名前の由来は天気雨、狐の嫁入りなどの意味を持つ天泣(テンキュウ)より、雨と晴れの 二面性を持つのをイメージ
 
お気に入り、感想等ありがとうございます大変嬉しいです。これからも皆様のご期待に少しでも答えれるようにゆっくり頑張っていきます(*´ー`*)

・すいません難産です(´・ω・`)まだ出来上がってません… 6/25までには書きますのでお待ちください…申し訳ないです_(._.)_
 


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16・負けず嫌いな奴ら

 

「青学ファイ!オー!」

 

「声出してー」

 

「ナイスショットー」

 

 青学のテニスコートの至るところから気合い溢れる声がきこえる

 

「なんかいよいよって感じだよな」

 

「地区予選もうすぐですもんね」

 

 俺と桃ちゃん先輩はストレッチをしながらレギュラー練習にそなえている、そんな中ある人物がテニスコートに入って来る

 

  

「…何だいその球出しは」

 

「「ちぃーす !」」

 

「まったく ちんたらしてんじゃないよ」

 

 球出しをしていた部員からラケットをぶんどり意気揚々と球を打ち出す

 

「ホレ!! ホレ!! ホレ!! ほら声どうした」

 

 出た…妖怪ホレホレ婆…竜崎先生、すごい勢いで球を打ち出している…

 

「おっ久々にバァさんでてきたな」

 

「いつも思いますがパワフルっすよね」

 

ーーーーー

 

 

「よし!!全員整列だ!!」

 

 手塚部長のピシッとした号令がコートに響く、整列したテニス部員達に顧問の竜崎先生からの激が飛ぶ

 

「今回の校内戦で決定したレギュラー8名は都大会まで団体戦を戦い抜く、どの学校も年々レベルが上がってきているからね、決して油断するんじゃないよ-以上!」

 

「よし 練習を続行する 2・3年はCコートへ一年は球拾い」

 

「「はい」」

 

「レギュラーはA・Bコートで…」

 

 手塚部長がレギュラー陣に指示を出しそうになった時に竜崎先生から待ったが入る

 

「お前達には とっておきの練習メニューがあるそうだ なあ乾」

 

 そう言って現れたのは大きなダンボールを持った乾先輩、箱から取り出した物を配っていく

 

「はい、まずレギュラーそれぞれにこれを…」

 

「ヴぇ…」

 

「どうした達宮?カエルがつぶれたような声出して」

 

「いや…この字に見覚えが…」

 

「ん?…まぁとりあえずそのノートについて説明しようか、このノートには俺の尊敬する最先端スポーツコーディネーターMr.オータム・レイン氏がレギュラー陣の個別能力を配慮し構築した君たち専用の自主練メニューだ」

 

 ですよねー 見たことある字だと思った…オータム(秋)レイン(雨)先生…マジでなにしてんすか…

 

「偶然とは言えオータム・レイン氏に会って話す機会があったんだ、ついでに練習メニューを考えてもらえるとは本当に幸運だったよ」

 

 …それは俺にとっての不運じゃ無いでしょうか…俺は恐る恐るノートを開く、書いてあったのは達筆で一言「前に渡したノートの練習量の1,5倍するように」

 

 いやいやいやいや…今の量でもギリギリなんですよMr.オータムレイン

 

 チラッと隣にいた桃ちゃん先輩のノートを覗き込む、桃ちゃん先輩は「はっは…きっついなー」って苦笑いしてるけど 桃ちゃん先輩の個性を生かす為のその練習メニューには優しさしか無かった

 

 俺の自主練メニュー?…始めから優しさなんて無かったよ…

 

「さて自主練は各自に任せるとして全体練習を開始しようか、よっと」

 

 そう言って乾はダンボールから250gの鉛板が2本入ったパワーアンクルを配る

 

「全国大会までの長い試合を乗りきるにはまず足腰の強化は必須、さあみんなこれを両足につけて」

 

 

「ふーんそんなにたいした重さじゃないッスね」

 

 桃ちゃん先輩が足を持ち上げ重さの確認をする、そんななんか

 

「…俺はどうしたらいいですかね」

 

 そう言ってもうすでに足についてあるパワーアンクルを乾に見せる

 

「倍プッシュ」

 

「!」

 

「…と書いてあるな、聞いた話によると達宮はすでにオータムレイン氏から指導を受けているそうだな、その身体能力も納得だ、はい これ」

 

 そう言って一回り大きなパワーアンクルを渡されるすでに1,5㎏のをつけていたので+250g×2で2kgか…マックス3㎏が既製品での一番の重さだったっけな…

 

 それ以上の重さは…梁山泊でやってるお地蔵様の装着か…「お地蔵様を装着」とか自分自身何を言っているのかわからな…

 

「俺もその重さにしてもらってもいいッスか」

 

 抱きつき地蔵の事を考えていたら 後ろから来た海堂先輩が俺への対抗意識からかパワーアンクルの変更を要求する

 

「出来ないこともないが…段階的に上げていこうと思っていたから今日のヤツはマックス6枚しか入らないぞ」

 

 海堂先輩は何故か俺を少し睨んだ後 不服そうに乾先輩が持って来たダンボールを指差す

 

「…なら残りの鉛板 4枚 もらえますか」

 

 その要求に対して他のレギュラー陣も鉛板の入っているダンボールの方へ動き出す

 

 「そうだよ乾、遠慮はいらない全部でいいよ」

 

「そうッスね 全部つけるまでやるんでしょ なら始めからフルでいきましょうよ」

 

 レギュラーのみんなはそれぞれ自分でダンボールから鉛板を取り出して装着していく

 

 コートで準備されているのは三色のコーンとテニスボールの溝に三色の色が入ったボール…原作で見たことあるなこの練習…

 

 

 ーーーーー

 

 重りが体力を奪い、体力の低下から集中力の低下を起こす…

飛んで来るボールの溝の色と同じ色コーンに当てるこの練習は体力、集中力を育てる しっかりと考えられものだと思う さすがは乾だね

 

 どれ、へばってきたレギュラー達に喝を入れてやろうか

 

 「ホレ どうしたんだいお前達、1年の達宮が一番元気じゃないか」

 

 突如現れたルーキー達宮将人、体力、技術共に申し分ない逸材、どんな育て方をしたらこの年でこんなんになるのか…

 

 「…もう一回お願いします」

 

 「そうだねー おチビに負けるなんて先輩の威厳に関わってくるからね」

 

 

 早速 喝の効果が出たみたいだね、体力を強化すると技術は何倍も生きる、だがこいつらの最大の武器はこの向上心、よくぞこれだけの負けず嫌い達がそろったもんだ、それに達宮将人…よい起爆剤になってくれたもんだよ

 

「ホレ お前達、声出して」

 

「目指すは中学ナンバーワン!!青学ファイ!!」

 

「「オーー!!」」

 

 

 ーーーーー

 

 

「…どうしたんだい手塚?」

 

 練習後の部室でノートを見つめている手塚に声をかける不二

 

 「いや…なんでもない」

 

 そう言ってノートを閉じ家に帰る準備を始める手塚

 

 「そうかい…でもノートを見て頬が緩むくらい 余程良い自主練のメニューだったのかな?」

 

 ポーカーフェイスが基本の手塚がノートを見て笑う…気にもなるはずだ

 

 「まあ…そんなところだ」

 

 

 彼は一度 乾と一緒に秋雨先生に会っている、今日渡された手塚用のノートには自主練メニューは書かれていない、肘の怪我からの完全復帰へのプランがこと細かく書いてあったのだ、一度診ただけで現在 肘にある違和感を全て言い当てた彼…

 

 ついでにノート最後には達筆でこんな文章が綴られている

 

「安心しなさい、地区大会までには 肘の些細な違和感までしっかりと治療出来るよ、それこそアームレスリングの世界チャンピオンを目指せる位にね、だから大丈夫 胸を張って 部長としてテニス部を支える大黒柱でありなさい」

 

 

 

 




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・すいません難産でした、お待たせしてしまいすいません…次回から地区予選、主人公 達宮の頑張りを生暖かい目で見守ってあげてください
 


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17・フラグの立て忘れ

ーー地区予選試合会場ーー

 

 地区予選→都大会→関東 そして 全国 ー

 

 1年に一回きりの全国大会への道を目指し各校の選手が集結した

 

 

「おい…来たぞ」 「いよいよおでましか」

 

 第一シードである彼らは 主役は遅れてやってくる と言わんばかりに青と白のジャージを着たメンバーが受け付けに堂々とその姿を現す

 

「青春学園中等部レギュラー八名の受け付けをお願いします」

 

「青学だ…」「今年も強そうだなぁ…」「キャー手塚さーん」

 

 登場のみでこの注目度…手塚部長含めレギュラー達のオーラが半端ない、そんな中

 

 

「なんだ…あのチビレギュラーのジャージ着てるぞ」「あの身長どうみても1年じゃねーか!」「あんなちっちゃい子使うとか余裕だね青学は…」

 

 ーーーーー

 

 聞こえてます…ちっちゃいだのチビだの ミジンコだのって1つだけ言っておく俺は中1の平均な身長だ!周りがでかいだけ、あと桃ちゃん先輩笑わないで

 

 「はは そう睨むなって達宮、お前のペアみたいに常時そんな顔になんのも嫌だろ」

 

 「…チッ」

 

 「おーこわいこわい」

 

 地区大会はじめにあたる対戦相手「玉林中」原作のテニスの王子様ではリョーマ君と桃ちゃん先輩がダブルスを組み「阿吽戦法」や「二人シングルス」をやっていた記憶がある…なんでこうなったし…

 

 

 先程乾先輩に渡された登録オーダーの紙に目をやる

 

 ダブルスNO.2

 ・海堂 薫 (2年)

 ・達宮 将人 (1年)

 

 ダブルスNO.1

 ・大石 秀一郎(3年)

 ・菊丸 英二 (3年)

 

 シングルスNO.3

 ・桃城 武(2年)

 

 シングルスNO.2

 ・河村 隆(3年)

 

 シングルスNO.1

 ・不二 周助(3年)

 

 はじめはなんで?ってなったけどよく考えると原因が見えてくる…

 ちょっと前の話だが桃ちゃん先輩とハンバーガーを食べに行ったことがある、そこまでは多分原作通り…その後に別れてしまい、俺が梁山泊に修行しに行ってしまった為 玉林のダブルス ペアと会わなかった→つまりフラグが立ってないって事だろう

 

 このオーダー表…手塚部長が出ないのは知ってた、秋雨先生が完全治療を施すって言ってたし、フラグ立ててないから桃ちゃん先輩とのダブルスが無いのも納得しよう…でもなんで海堂先輩…

 

「…頑張りマショウネ海堂先輩…ははは」

 

 「…チッ」

 

 俺の悩みを聞いてくださいダブルスのパートナーの返事の七割が舌打ちです(´・ω・`)

 

 

 ーーSide 乾ーー

 

「達宮と海堂先輩がダブルス!?」

 

 オーダー表を応援席に持ち帰って、応援の部員達に見せたら1年生の3人含め殆どの部員が驚いた、正直この采配は俺でも驚いた

 

 「竜崎先生も直前まで悩んでいたそうだが、達宮のダブルスの実践投入と海堂の成長を考えてだそうだ…」

 

 まあ実際達宮のダブルス適正は悪くない、海堂のヤツも達宮を意識してスタミナ技術共に急成長をしている…しかしそれをダブルスで混ぜるとなると…

 

 チラリとダブルスのコートに目を向ける、隣にいるゴールデンペアとの対比が面白い

 

 「英二」と大石が菊丸の名前を呼んだだけでそれを察してタオルを渡したり何も言わずにドリンクを渡してとさすがと言ったところだ

 

 一方

 「…海堂先輩よかったらこれどうぞ」

「…おう」

 「海堂先輩、た タオルを持ってきますね」

 「…」

 「海堂先輩、これ修行場所の人が作ってくれたレモンの蜂蜜付けなんですが…」

「…チッ」

 

 ボスとそのパシりみたいな関係性だな…テニス中にはあんなに挑発的になれるのに普段はかなり気が小さいようだ、いいデータが取れた

 

 若干の心配はあるが達宮は試合になると肝が座る…大丈夫だろう

 

 そろそろ試合が始まるな

 

 ーーーーー

 

 「ーシングルス 1、青学 不二、玉林 鈴木 以上 、5試合中3勝した方が勝ち進めます、なおこの試合は青学が初戦の為決着がついても5試合すべて行います」

 

 審判による説明がおわりようやく試合が始まろうとしていたネット越しに対峙する玉林のペア、布川と泉

 

 「よかったゴールデンペアじゃないようだ、しかも見てみろよチビの方 舎弟みたいにペコペコしてやがる試合にビビってるんじゃねーのか」

 

 「言ってやるなよ、ダッセー猫のテニスバック持ってたぜ心も お子様なんだよきっと、でも手塚を温存してあんなちっこいのを出すなんて顧問も判断ミスだな」

 

 ………だから聞こえてるっつうの誰が豆粒ドチビだ!しかもテニスバックダサいって言ったな長老に殴られろマジで…

 

 「海堂先輩1つお願いが…」

 

 「…」

 

 「あのヘラヘラした顔…全力で叩き潰しましょうね」

 

 「…あたりまえだ」

 

 

 青学テニス部全国大会へ向けての第一歩が踏み出される 

 

 

 

 

 

 

 

  

   




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※次回投稿は7/16です、筆が遅くて申し訳ありません(´・ω・`)


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18・海堂先輩に任せとけばなんとかなるだろう

 

「ほんとに大丈夫かな達宮君と海堂先輩…さっきベンチでの会話ほとんど舌打ちか無視だったよ」

 

 カチローが心配そうに二人を見つめる、その横でメガホンを持った堀尾がその不安を吹っ飛ばすかのように

 

 スーッ 「達宮~初めてのダブルス頑張れよ~」

 

 大きな声でコートに向けて声援を飛ばす…、一応初めてじゃ無いんだけどな…いや?テニスとしてならほぼ初めてに近いか…

 

 コートを挟んだその先に堀尾君の声援を聞いてニヤニヤしている二人がいる今回の対戦相手玉林中の布川と泉だったかな?

 

「おい聞いたかよ、あの二人ペア組むの初めてだってよ…余裕だな」

 

「賭けてもいいさ結成 初日のダブルス素人に負けるわけがない」

 

 天使様に貰った「丈夫な身体」のおかげでだろうか…それとも梁山泊で生き残る為に進化したのか…俺の耳には彼らの小さな声での呟きがハッキリと聞こえた、まーそれをそのまま右から左へ海堂先輩にチクったけどね

 

 おー…こわい こわい

 

 ーーーーー

 

「ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ 玉林サービスプレイ!」

 

 審判の声と共に盛り上がる会場「玉林魂見せてやれー」や「いけぇ~ 海堂・達宮!」など声援が送られる

 

「ダブルスに出てきたことを後悔させてやるよ」

 

 泉がボールをトスしてサーブの体勢にはいる、サーブを受けるのは俺だ

 

「ミスすんじゃねーぞ」

 

「オッケーです、海堂先輩こそミス無く頼みますね」

 

「チッ」

 

 俺は海堂先輩の舌打ちを背中に聞きながらサーブを難なく返球する

 

 (いくら青学でもダブルス素人…ガタガタのコンビネーションで恥をかけばいいさ、狙いは単純に二人の間 真ん中)

 

 「さーてお見合いかな」

 

 その呟きと共に返ってきた球は綺麗に俺と海堂先輩の間、 原作とかだと桃ちゃん先輩とリョーマ君が共に見送ったり ラケットが当たったりと言う事があり「阿吽戦法」とか言うのが生れた

 

 しかし今回は俺はあえて際どいボールは全て無視するという戦法をとろうと思う

 

 名付けて「海堂先輩 頑張ってね戦法」

 

 ぶつかったり、二人して見送る位なら海堂先輩に任せちゃっていいさ という発想のもと考えた戦法だ(海堂先輩には言ってないと言うより無視されました)…海堂先輩の負担がかなり大きくなるけどスタミナの鬼だから問題無いだろう、 現にボールしっかり拾ってるし

 

 それで俺の役目は…ボールを無視した結果 走ってネット際に付いた俺…

 

 「このボレー…爆ぜるよ」

 

 格好つけながら放つ「天泣」普通のボレーのようなモーションから放たれるスマッシュのような速度のボールに 玉林ペアは全く反応ができていなかった

 

 「0ー15」

 

「おぉ、意外と息合ってんじゃん 海堂と達宮」

 

 観客席から来る声援を背に玉林ペアの二人に向かって試合開始前に二人が言っていた言葉を言う

 

 「「賭けてもいいさ結成 初日のダブルス素人に負けるわけがない」…お二人様は何 賭けますか?」

 

 ーーーーー

 

 「おりゃーーっ てね」

 

  スマッシュ体勢からクルッと空中で横回転してフワッとドロップボレーをおこなう

 

 「エアウォークドロップ」

 

 トントントン…相手コートにボールが静かに跳ねる

 

「0ー40」

 

 

「さすが海堂先輩ですね、全部拾ってくれるから 攻撃に専念出来ますよ 」

 

 「チッ 集中しろ」

 

 「了解です」

 

 褒めたのに睨まないで下さい先輩…こわいです

 

 ーーーーー

 

「くそッ なんて1年だ…」

 

 布川の言いたいこともわかる、急加速する変なボレーや空中で打ったドロップショットとまさになんて1年だ…だが

 

「焦るな 布川 揺さぶればボロが出る…見てろ」

 

 右サイド前衛の後ろにボールを落とす!

 

 サーブをして返ってきたボールを右サイドにいる達宮の頭上を越えるように打つ…やはりな

 

 ダブルスの基本陣形は対角線上にお互いがいることが理想となる、ボールを取りに言ったらもう一人の選手は逆サイドのフォローに回るのが基本だ

 

 達宮の頭上を越えるボールを打った事で海堂が右サイドに走り込みボールを拾う、達宮はフォローに入れていない…つまり相手二人は今縦一列に並んでいる

 

 「片方のコートががら空きだぜ!」

 

 力強くラケットを振り左サイドへとボールを返す…決まっ…た?

 

 「なめんじゃねー」

 

 なんでお前がいるんだよ?

 

 決まったと思ったボールは何故か右サイドにボールを拾いに言った海堂が打ち返した

 

 くそッもう一回だ…?

 

 海堂が返球したボールを返そうと身構えていたがボールの軌道がおかしい…

 

 跳ねたボールはコートの外に獲物を見つけた蛇の如くコート脇に消えていった…コートに響くは審判のコールと相手コートから聞こえる蛇の威嚇音のみだった

 

 ーーーーー

 

「「虎砲」っと」

 

 シュタンッ

 

 相手コートにボールが突き刺さる

 

「やったー達宮君達、サービスゲームもキープしたよ」

 

「しかもまだ達宮と海堂先輩1ポイントもとられて無いんだぜこれはもう勝ったも同然だな」

 

 …観客席から聞こえる堀尾君達の声…堀尾君…そういう発言はフラグになるから止めなさい

 

 ほら…あっちの玉林ペア何かやるつもりじゃん…目がクワってなってるよ…

 

 サーブは玉林、布川がサーブの為にトスを上げる

 

 パシ

 

 ?打ち損じのヒョロいサーブ…

 

 そのボールと共に布川が前へと走り出す

 

 

 ダブルポーチ!!

 

「あれだけ二人でネットに詰められたら打つスペースが無いじゃん」

 

 トシュッ

 

 くっ 観客席の堀尾君が言った通り抜くスペースが無い…返球したボールがネット際の彼らのボレーによって角度を付けて返されてしまう

 

「15ー0」

 

 

 

 

「あーっ まただ」

 

 さっきと同様にヒョロいサーブと同時にダブルポーチの状態になる…なら相手のボディーめがけて強めのショットを放つ

 

 シュタ

 

 その球も上手に捌かれ角度をつけられる、海堂先輩が角度のきついボールに追い付いてくれ ロブを後方に上げるがそれも難なく返球され またダブルポーチの形になりポイントを取られてしまった…

 

 …これは困ったなこの玉林ペアかなりネット際のボレーが上手い…まるで壁があるようだ…壁…ねぇ

 

 壁を乗り越える…壁を壊す?…でも普通 目の前に壁あったら横から回り込むよな…よし挑発してみよう…もちろん味方の

 

 

「海堂先輩~俺との試合で最後に見せたショット打ってくださいよ」

 

 「なに言ってやがる…」

 

 「隠してるんですか?練習してるの知ってるんですよ」

 

 「チッ」

 

 「試合で試す良い機会じゃ無いですか…それとも練習しても…出来なかったとか?」

 

 舌打ちすらされずにただ睨まれました…だが所定位置について蛇の威嚇音と共にゆらゆら揺れている…挑発は成功だきっと海堂先輩ならやってくれるだろう

 

 ーーーーー

 

 また相手のヒョロいサーブから始まるゲーム…彼らの必勝パターンなのだろうかダブルポーチをまた仕掛ける、俺は俺で出来る限り海堂先輩にいいボールが行くように努力する

 

 よし絶好球、この前の俺との試合の時のようなコースに向かい相手から海堂先輩へとボールが飛んでいく…

 

 低い姿勢、凄い勢いで振り上げられるラケット 超回転で放たれるボール

 

「ははっ ドコ打ってやがる!?」

 

 ポールの外側に飛んでいったボールは空中で大きく軌道を変えネットの横を通りコートに戻ってくる…まるでブーメランのように…

 

 シュタンッ

 

 「チッ 気に入らねぇ…」

 

 「いやいや、喜びましょうよ海堂先輩…ダブルならあそこもポイントですって」

 

 でもきっと海堂先輩はシングルコートに入れたかったんだろうな…

 

 「スゲー 海堂先輩のボールブーメランたいに戻ってきたよ」「ブーメラン見たいなスネーク?」「ブーメランスネークだってよ」「へーあれブーメランスネークって言うのか」

 

 1年トリオの会話をきっかけに伝播していきこのポール回しの技名が勝手に「ブーメランスネーク」と決定される

 

 盛り上がる青学応援席を余所に玉林のほうは静まりかえっていた…

 

 「ポールの横を通って…おいおいそんなのありかよ…」

 

 せっかくダブルポーチにより来ていた流れがたった一球で完全に断たれてしまった…

 そのあとの試合は終始 達宮・海堂ペアが主導権を握り危なげ無く6ー0で青学の勝ちで試合は終了した

 

 ーーーーー

 

「ダブルス2勝、シングル3勝よって、5勝0敗で青学の勝ちとします、 礼 」

 

「「「ありがとうございました」」」

 

 礼が終わり昼過ぎからある準決勝の試合に備える、次は…水ノ淵中?記憶に全くないな

 

 

 

 うーーーん…

 

 

 

 と考えているうちにその準決勝は青学の3戦先勝で終わっていた…

 

 あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!

     

 『おれはコートの前で準決勝が始まると思っていたらいつのまにか終わっていた』

 

 …きっと俺はDIO様のスタンド攻撃をくらったに違いない…

 

 

 こうして青学が順調に決勝に駒を進めていたころ

 

 もう一方の準決勝ではシード校の 柿ノ木中が敗れるという波乱が起こっていた…

 

 

 追伸

 海堂先輩は試合後 相変わらず舌打ちと無視がほとんどでしたが、美羽さんが作ってくれた蜂蜜レモンを渡したら食べてくれました…ちょっと心の距離が近付いた気がします(*´ー`*)

 

 

 

 

 




お気に入り2000超え、そしてたくさんの感想等ありがとうございます大変嬉しいです。これからも皆様のご期待に少しでも答えれるようにゆっくり頑張っていきます(*´ー`*)
次回投稿は7/30です…亀筆で申し訳ありません(´・ω・`)


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19・守りたい その身体

 

「えっ!? シードの柿ノ木中が負けた?」

 

 掲示板を見に言った部員からの報告に青学のメンバー達が驚いている

 

「まさか?都大会出場候補だぜ?」

 

 原作マンガを読んでいる俺はむしろ柿ノ木中を知らない…シード校なんだな って言う前情報くらいだ

 

「で決勝はどこになった?」

 

「不動峰中 ノーシードです」

 

 はい…知ってました、俺 不動峰のメンバー大好きです…いいよねなんかあの「下克上」感…氷帝の日吉さんより似合ってると思う

 

「不動峰中?昨年の新人戦前に暴力事件で出場を辞退したあの?」

 

「オレあそこの顧問キライ…エラそうで」

 

 俺はポーカーフェースを維持したまま原作マンガを思い出す…暴力事件のサイドストーリー…あの時は読んでて不動峰を応援したくなったな~

 

 

「試合を見てきたがまったくの別物だったよ」

 

「選手は全員新レギュラー、部長意外はすべて2年生 顧問も変わったらしい、鍵を握るのは実質的に監督も兼任している部長の橘と言う男だな…」

 

 実は九州で凄い人物なんですよ~と言える訳もなくポーカーフェースをキープする…

 

 そんな感じで頑張って顔の形をキープするなかMr.堀尾がまたいつもみたいな発言をする…

 

「でも青学ならそんな新参者余裕ッスよ! ブッチギリで優勝ッス」

 

 発言の直後 ザッザッザッっと地面を踏み鳴らし現れる不動峰のメンバー…さすがMr.堀尾タイミングが完璧だ

 

「わわっ!不っ…不動峰!」

 

 のけぞるくらい驚く堀尾君…そんなにビビるんなら始めから言わなきゃいいのに…

 

「おいでなすった みてーだな」

 

 不動峰のメンバーの中から部長の橘さんが前に出てうちの手塚部長と対峙する

 

「手塚だな…俺は不動峰の部長 橘だ!、いい試合をしよう」

 

「ああ」

 

 少しの沈黙のあと部長同士の握手…落ち着いた二人の内なる闘志…絵になるな、でもあえてそこに俺はツッコミたい、本当にあなた方は中学生ですかと…

 

「ふはー…ビックリした、一触即発かと思った…」

 

「2人共 落ち着いた大人(中学生)だから大丈夫だよ」

 

 堀尾君の問いに何気無く答える俺…

 

「二人?達宮…手塚はともかく不動峰の橘を知ってるのか?」

 

 乾先輩…そこは気にしない方向でお願いします…原作知識なんですよ…

 

「…そこはなんとなく雰囲気で…」

 

「ん?そうか…何かのデータになると思ったんだが」

 

 実際は原作知識(データ)の宝庫なんですけどね…俺自身どこまで言って良いのかがわからない…慎重に考えていこうと思う

 

 ーーーーー

 

 不動峰の選手達と別れたあと青学のメンバーは顧問の竜崎先生の前に集まっていた、いよいよ決勝戦のオーダーの発表だ

 

「いいかい決勝の不動峰戦今までと同じと思うんじゃないよ、優勝候補の柿ノ木中を全く寄せ付けなかった程のチームだからね」

 

「「「はい」」」

 

「じゃあ 決勝のオーダー!」

「ダブルス2 河村 達宮 先手必勝かましてきな!」

「ダブルス1 大石 菊丸 しっかり頼むよ」

「シングルス 3 桃城 暴れておいで」

「シングルス 2 不二 期待してるよ」

「そして、シングルス1 手塚!」

 

 「さあ お前達行っておいで!」

 

 ーーーーー

 

 「ダブルスよろしくお願いしますタカ先輩」

 

 「みんなみたいにタカさんでいいよ」

 

 笑顔で答えてくれるタカさんこと河村隆先輩 、ついでに普段はこんな感じで温厚で大人しい人柄だが、テニスラケットを持つと人格が豹変し、バーニング!とか叫ぶ豪快でアグレッシブなキャラになる人だ

 

 一番記憶(原作知識)にある試合は氷帝の樺地戦と四天宝寺の石田銀との試合、正攻法では太刀打ちできない格上の相手と対決するタカさん、そんな相手との試合で負けない為に彼が取った戦法は「自分より先に相手の腕を壊して試合続行不可能にする」というものであった

 

樺地戦では波動球の撃ち合いに持ち込み、互いに試合続行不可能の引き分けに持ち込むという成果を残し、

  銀戦では108式まである波動球と相手の波動球無効化能力によってフルボッコ(大怪我)にされるも、最後の執念で放った一球で銀の腕を折り逆転勝利を収めている、いや~あの試合は胸アツだったな~

 

誰よりも仲間がいる青学が勝つことに執念を燃やしており、その為なら自分を犠牲にしてでも青学に勝利をもたらそうとしている尊敬出来る人なのだ…

 

 だがしかし…ここは現実…マンガ越しに見ていたから胸アツなのであって目の前で見るとなると話は変わる…

 

 こんなにいい人が血塗れになって良いわけがない、殺人寿司屋なんて呼ばれて良いわけがない

 

 俺だって梁山泊で変われたんだ、きっとタカさんには別の成長の仕方があるはずだ、純粋なパワーテニスで四天宝寺の石田銀との試合してほしい

 

 最初に彼の歯車が狂ったのはこの不動峰戦の諸刃の剣…「波動球」からだ

 

だから俺はタカさんを守る!!

 

 「タカさん…頑張りましょうね」

 

 「?…うん よろしくね 達宮」

 

 

 決勝戦、Vs不動峰の幕が上がる

 




・(大怪我) 肋骨3本にヒビ、大腿骨損傷、踵骨損傷、頚部挫傷、右足首の捻挫…etc.…信じられるか…これテニスの試合で出来た怪我なんだぜΣ(゜Д゜)
・タカさん改造計画実行します、今後どんな成長をとげるのかはお楽しみに、原作のタカさんも大好きなんですがタカさん改造はこの小説を書いた時から決めてました…自己犠牲の胸アツなタカさんは偉大な原作「テニスの王子様」でお楽しみください
・お気に入り2000超え、そしてたくさんの感想等ありがとうございます大変嬉しいです。これからも皆様のご期待に少しでも答えれるようにゆっくり頑張っていきます(*´ー`*)
・次回投稿は8/13になります鈍筆で申し訳ありません(´・ω・`)



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20・達宮 VS 波動球

 

「決勝戦どうなってる?青学と…不動峰だっけ?」

 

「第一シード校とノーシード校の試合だしな」

 

「じゃあ青学の圧勝か…ん?4ー3…接戦じゃないか」

 

 決勝戦がおこなわれているテニスコートの得点板に目をやると、ギャラリーの想像以上にいい勝負をしている不動峰の姿があった

 

 ーーーーー

 

「先程の二年の石田のパワーにこの強烈なトップスピン…強いねまさかこれほどとは…」

 

 石田のパワーショットや先ほどのポイントを取った 不動峰の桜井に対して竜崎先生が一言 漏らす、一方 不動峰ベンチでは

 

「…あの1年やるな、さすがは青学と言ったところか パワーテニスの河村 それをフォローするテクニックのテニスか…穴が無いな」

 

 河村がパワーで押して、1年の達宮がドロップなどで敵を翻弄するその相性に舌を巻く

 

「そんなに難しく考え無くても大丈夫ですよ橘さん、今のアイツらはノってますから」

 

 そう言って神尾はテニスコートに目を向ける

 

「ラリーの応酬!不動峰 なんてねばっこいテニスするんだ」

 

「桜井のトップスピンのキレも増してきたよ」

 

「おいおい…不動峰サイドの方が気迫で押してきてんじゃねーか面白くなってきた」

 

 ギャラリー達もこの熱戦に熱い視線を送る、そんな接戦状態にあるこの試合が動き出す

 

 ーーーーー

 

 さすがは不動峰…並みの精神力じゃない、不動峰戦の初戦であるこの試合…流れをつくる為にも負けたく無いからね…

 

 まずはこの不動峰に傾きかけている流れを断ち切る

 

 鞘から刀を抜くようにバックハンドでボールに向かってラケットを振るう

 

 それを見て不動峰の二人は飛んでくるボールに備える…

 

 シュタン

 

 …しかし放たれたボールは二人が警戒した所と全く違う位置から跳ねた音を空しく響かせる

 

 「なっ…」

 

「何だ今のは?」

 

「バックハンドから…いつの間にフォアハンドに?」

 

 会場がざわつく中 乾先輩が眼鏡をクイッと持ち上げながら喋り出す

 

 「バックハンドのフォームから一振りのうちにラケットの持ち手を素早く持ち替える事により 相手が予測する軌道とタイミングを狂わせる技…「五月雨」俺との試合の時に使われた技だな…」

 

 ノートを片手に味方の技をギャラリー解説する乾先輩…技を見たら大体解るけど大々的なネタバラシみたいなのはやめてほしいです先輩…

 

「でもこれで奴らは達宮のバックハンド時には常に警戒せざるを得なくなった、「五月雨」…つまり逆方向へのショットに」

 

 ーーーーー

 

「どりゃあ!バーニング!」

 

 強烈な球が不動峰のコートめがけて放たれる

 

「今度は青学が押し始めやがった」

 

 タカさんのパワーによって相手の返球がおろそかになる、その球目掛けてまた居合抜きのようなフォームでバックハンドからショットを放つ…

 

「なんちゃっ…た」

 

 シュタン

 

「今度は普通に打った…でも不動峰の選手の反応が悪い…」

 

 「五月雨」の真骨頂は相手に対して二択を迫る事…どっちに飛んでくるのか考えるその時間が最初の一歩目を遅くする

 

 

 「青学1年 達宮…か、「五月雨」と言う技一つで試合の流れを変えちまいやがった」

 

「やったー!完全に青学のペースだ」

 

 

 不動峰のサーブ、今は 40ー15で次のポイントを取ると相手のサービスゲームをブレイク出来る

 

「よっしゃー!ブレイクチャ~ンス!一本集中 」

 

「そうですね…タカさん」

 

 次のポイントの意味は大きい…俺達がポイントを取ればゲームは 5ー3 次は青学のサービスゲームでかなり優勢になる

 

 

 つまりこの勝負のタイミングであれが来る…

 

 

 ふと相手のコートへと視線を向ける…間違いないな 、不動峰の石田が腕捲くりをして戦闘準備万端ってね…

 

 限界まで息を吐き 一気に息を吸い込む、俺は深く集中する為のルーティーンを行い…決戦の場に備える

 

 不動峰のサーブから始まるこの重要な局面…タカさんが返し石田が受けて俺がまた返す、続くラリー…

 

 

 ゾクッ…不動峰の石田の纏う雰囲気が変わる

 

 彼は腰を落としまるで仁王象かのように左を前に出してボールを待ち構える

 

 「行け!石田ぁ!波動球~!」

 

 

 石田の仁王象のような構えに対して俺は剣道の五行の構えの一つ上段の構えで向かい打つ

 

この上段の構えを取っている場合、斬る為に必要な動作は、極論をすればその体勢から剣を振り下ろすだけであり、斬り下ろす攻撃に限れば他の全ての構えの中で最速の行動が可能である 非常に攻撃的な構えだ

 

 

 勝負…

 

 

「ヌンッ」

 

 バコーン!!!

 

 テニスラケットから鳴るとは思えない音で不動峰の石田放たれる技「波動球」が 放たれた、その瞬間に俺は前方へと距離を詰め加速する

 

 

 激しい強烈な球…それを叩き切る!

 

 「雷鳴返し」

 

 上段の構えから振り下ろされるラケット、ボールを捉えるのはシングルシャフトの芯の部分、綺麗に体重が乗ったその打ち下ろしは固い物がぶつかる特有の重い音を立て波動球の威力そのままに不動峰のコートへと返球される

 

 「返した!!」

 

 しかしその先には腰を深く落とした石田が意思のこもった強い目で待ち構える

 

 「げげ!あの構え…連続で波動球だ」

 

 「止めろ 石田! 腕が…」

 

「ヌンッ!?」

 

 ビシッ!

 

 カランカラン…

 

 地面に音を立てて落ちるラケット、石田のラケットは初球の「波動球」を放った際ガットの真ん中の部分が破れたようだ、僅かに残ったガットに引っ掛かったもののジャストミート出来ず その反動でラケットが弾き飛んだようだ

 

 「ゲームカウント 5ー3 青学リード!」

 

 

 わーー!! っと試合に勝ったかのように盛り上がるギャラリー「スゲー技のぶつかり合いだ!」「見たかよアレ…どうなってんだ?」「河村先輩~あと1ゲームバーニングサーブで決めちゃってくださーい!」

 

 

そんな盛り上がりの中俺は ジンジンする自分の両手を見つめる、体重を乗せ完璧に芯で捉えて返したのにこの反動…やっぱりテニスってスゲー…もっと修行頑張らないとな…まるでバットで地面をおもいっきり叩いたかのような手のしびれを感じ改めて気合いを入れ直した

 

 

 決め技の波動球を返された不動峰…その後の試合展開は不動峰が粘って意地を見せるも届かず6ー3で青学の勝ちとなった

 

 試合後 竜崎先生の話を聞いた後、俺達はコートから離れた所にある水道で蛇口をひねり顔を洗っていた

 

 「タカさんダブルスありがとうございました、 試合お疲れ様です」

 

 「…お おう」

 

 「ん? どうかしました?」

 

「いや…なんでもないよ、こちらこそありがとう 達宮」

 

「さあ、応援に戻りましょうか、次は青学のゴールデンペアですもんね」

 

 「…ちょっと俺はトイレに行ってから応援に行くよ、多少の応援が遅れても大丈夫、なんたって青学のゴールデンペアだからね」

 

 「そうですね、じゃあ特等席準備して先に応援してますね」

 

 そう言って俺は特等席キープの為にコートの方へと足を進めた、ゴールデンペアの試合…ダブルスの勉強になるしあの二人の試合は見てて面白いんだよな~♪

 

 

 ーーーーー

 

 

 無邪気に試合の応援に行く達宮…今の俺はそれに合わせて無邪気に応援出来そうに無い…

 

 試合に勝てた嬉しさはある…青学が勝つ為にこの初戦の勝利はとてもデカイのは分かっている…でも素直に喜べない自分が居る

 

 試合の流れを変えたのは達宮、相手の決め球を返したのも達宮…

 

 俺はいったい何をした?…

 

 込み上げてくる自分への悔しさ 腑甲斐無さ…

 

 俺がレギュラーで良かったのか…

 

 

 

 「河村か?」

 

 突如かけられた声に振り返る

 

 「辻さん?なぜこんな所に?」

 

 声をかけたのは 辻新之助 昔空手をやっていた時にお世話になった先輩だ、らぐなれく?とかなんか言う不良集団みたいな所に入ってからは疎遠になっていた

 

 「たまたま通った道に 湿気た面した後輩がいると思ってな 近くまで来てみた」

 

 「…」

 

 「でっ どうしたよ、昔見たいに相談にでも乗ってやろうか?」

 

 不良集団に所属したと聞いたが目の前に居るのは昔と変わらない 面倒見が良い辻さんのままだった、その懐かしさのせいか俺の口が軽くなる

 

「嫌になってたんです…自分の弱さに…本当に俺なんかがレギュラーで良かったのかって…」

 

「相変わらずしみったれた事言ってんなぁ 河村」

 

 そう言うと 辻さんはピトっと手の平を近くにあった木につける

 

「そんなもんはオメーよー…強くなりてぇならウダウダする前に…」

 

 ズドン!!

 

 目の前にある木が大きく揺れ傾く、葉っぱが舞い散り、衝撃により木の幹はベキベキと音を立てる

 

「命懸けで山に籠ればすむこったぜ!」

 

 ベキベキ! ズン!!

 

 衝撃に耐えきれず折れる形で倒れる木…

 

 その一撃に一体どれだけの力がいる?…その一撃にどれだけの技術がいるのだろうか…俺に出来るのだろうか…再び下を向いてしまう

 

「ウダウダ考えるな ただがむしゃらに前見て進め、俺はそうやって強くなった」

 

 そうだ…俺に落ち込んでる暇など無い、乾や他の選手達が着たかったこのレギュラージャージを俺が着ているんだ…何をしてでも前に進まないと

 

 

「…はい、辻さんありがとうございます」

 

 「おう、少しマシな面になったみてーだし大丈夫そうだな…じゃあな、頑張れよ」

 

 そう言い残して去っていく辻さん

 

 倒れた木を見て思う…山篭もりは無理でも山にトレーニングに行こうと…今 目の前で見た辻さんのパワーと技術に少しでも近づけるのなら…

 

 

 この日の出会いをきっかけにタカさんの運命は大きく変わっていく…

 




・辻新之助…同世代でケンイチに勝った珍しいキャラです…作者はあのキャラ好きなんですが…後半全然登場すらしない悲しいキャラです(´・ω・`)

お気に入り2200超え、しおり500超え、そしてたくさんの感想等ありがとうございます大変嬉しいです。これからも皆様のご期待に少しでも答えれるようにゆっくり頑張っていきます(*´ー`*)
・次回投稿は8/27になります鈍筆で申し訳ありません(´・ω・`)


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21・ダブルス1→シングル3へ

「おかえりなさい タカさん」

 

 テニスコートに戻ってきたタカさん、俺が先に来て 取っていた特等席に座る、少し顔が明るくなったような気がするが…トイレでスッキリしたのかな?

 

 「ただいま、試合はどうなってる?」

 

「いや~ やっぱりゴールデンペアの安定感はすごいですよね」

 

 青学のゴールデンペア 大石先輩と菊丸先輩の試合、相手は不動峰の内村と森…原作でシルエットを辛うじて覚えてるくらいで…申し訳ないが殆ど記憶に無い人達だ

 

「なにより 殆ど菊丸先輩の独壇場ですよ」

 

 

「なんじゃらホイホイ!」

 

 菊丸先輩の声と共にまた青学にポイントが入る、先程から不動峰の黒い帽子をかぶっっている内村って選手が狙っているショットが菊丸先輩のアクロバティックなプレイで空回りしている

 

 前衛キラー…黒い帽子 内村の別名らしい(乾先輩のデータより)、相手の体制が崩れた所に顔面を狙ってショットを放ったりとダーティなプレイをする選手だ

 

 しかし今回は相手が悪い…菊丸先輩はそれを避けて尚且つその避けた体勢から返球する事が出来る…菊丸先輩の球を見極める動体視力やボディーバランスは本当に凄いと思う、そのうち美羽さんみたいな舞う羽のような動きとかも出来そうだな…

 

 梁山泊でのテニス修行の時に美羽さんが相手をしてくれた事を思い出す、美羽さんめっちゃ上手いんだよなテニス…ジャンプ力ヤベーし…スピードもヤベーし…おまけに羽の幻覚見えるくらい美しいテニスするし…

 

 その実力で「テニスをするの初めてです、楽しいですね」って言われた時は自分の才能の無さにスゲー落ち込んだ記憶がある…

 

 「ん?…雨 」

 

 美羽さんにボロ負けになった試合を回想していたら 不意に雫が頬にあたる

 

 「うっそー雨だ、ひぇー カサ カサ !」

 

 一気雨足が早まりポツリポツリがザザーッと言う音に変わる、応援席の堀尾くんが慌てたドラえもんのようにカバンから折り畳み傘を取ろうとしている…そんな悪天候の中試合は続く

 

 ズザッ

 

 泥濘む地面に足をとられる菊丸先輩、そこに狙ったように放たれる前衛キラーのショット…

 

 「残念無念のまた来週~♪」

 

 ヒラリとボールを交わして背中越しにラケット構えて返球する…カッケーな菊丸先輩

 

「クソ!またかよ、あいつ何でこんな足場悪いなかで猫みたいに反応出来んだよ」

 

 「おおおおーっ!」

 

 菊丸先輩のアクロバティックなプレイに観客が沸く

 

「今度はダイビングボレーだ!」

 

「ほいほいっと」

 

 片手をついてそのまま側転のように身体をひねって着地する

 

「くっ もう捕球体勢に」

 

 不動峰の森が放った逆サイドに打たれた球はもうすでに 菊丸先輩の捕球テリトリーに入っている

 

「にゃーんてね♪」

 

 その菊丸先輩の言葉の後に背後から にゅっと出てきた黒い卵…?

 

「!!」

 

 菊丸先輩の動きから予想され警戒されていた方向とは真逆方向にスパーンッ と大石のショットが決まる

 

「…大石 う うますぎる」

 

 地味じゃ無いぞと言わんばかりにゲームを決める大石先輩…タイミングといいショットのコースといい完璧だったな

 

「ゲームセットウォンバイ青学6ー2」

 

 

「よっしゃー、流石 青学ゴールデンペア、これで2勝目だ!」

 

 沸き上がる一年トリオや観客席の皆、そんな中顧問の竜崎先生は落ち着いて青学のゴールデンペアを評価する

 

「あんなアクロバティックな菊丸の動きをサポート出来るのは視野が広く状況に応じて対処出来る大石しかおらん、二人共よくやったよ」

 

 落ち着いているように見えたが 私が育てた と言わんばかりの どや顔だった…

 

 ーーーーー

 

 「シングル3の選手は前へ」

 

 審判の掛け声によりシングルの試合が始まろうとしている、原作「テニスの王子様」には無かった組み合わせの試合だ…

 

「桃ちゃん先輩 頑張って来てくださいね」

 

「あったりめーよ」

 

 ラケットで肩をトントンと叩きながらコート中央へと向かう桃ちゃん先輩 

 

「シングル3 青学 桃城 、不動峰 神尾」

 

 ネットの前で対峙する二人…ここからは聞こえないが何か言い合ってるな…

 

 確かこの二人の組み合わせはひったくり犯を捕まえる時にいつの間にかお構い無しにレースしだす二人だっけ?

 

 きっと負けず嫌いの二人だ…挑発し合ってるんだろうな…

 

 おっ 始まる!

 

 

「ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ 不動峰サービスプレイ!」

 

 不動峰の神尾がボールを上に投げてサーブを放つ、その瞬間前方に走り出してネット際に詰める

 

 かなり挑発的なプレイだな…

 

 「クロスが がら空きだぜ!」

 

 サーブを打った後に前に詰めるとどうしてもクロスが空いてしまう、誘い込みかもしれないが普通は そこの向かって打つだろう…しかし

 

「は 速い! なんてスピードだ」

 

 不動峰の神尾のスピードが速すぎる…空いてあったクロスに打たれたボールにもう追い付いて更に角度を付けて返す余裕すらある

 

 シュタンッ

 

 「15ー0 」

 

「どうなってんだ不動峰強いぞ?」

 

 いきなり青学サイドがあっさりとポイントをとられギャラリーがざわつく、その反応に不動峰のベンチから自慢気な声が聞こえる

 

「へへ 当たり前だ、青学はゴールデンペアのダブルスが無類の強さを誇るように 不動峰のシングルスの三人ははっきり言ってダブルスのメンバーより数段強い」

 

「特にスピードに関しては神尾の右に出る奴はいないだろう」

 

 

 

「リズムにのるぜ♪」

 

 ポイントを先制してリズムを刻むようにステップを踏み挑発的な表情で桃ちゃん先輩を見つめる神尾

 

「へっ おもしれーじゃねーか」

 

 獰猛に笑う桃ちゃん先輩、あらためてシングル3の試合が始まる

 




原作のキャラを動かす難しさ…神尾も桃ちゃん先輩も好きだからどっちにも勝ってほしいというジレンマ…

お気に入り2200超え、しおり500超え、そしてたくさんの感想等ありがとうございます大変嬉しいです。これからも皆様のご期待に少しでも答えれるようにゆっくり頑張っていきます(*´ー`*)
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22・もっと高く

「あーもうダメだおしまいだ~」

 

 堀尾くんが観客席から叫び声にも似た何かをあげる、そんな声をあげるのにはもちろん理由がある

 

 周りの観客達もそうだ、地区予選の決勝戦シングルス3を観戦する人々の表情はある理由で三者三様だった、勝利を確信して笑みを浮かべる者、それでも諦めずに勝利を祈る者、中には次の試合の事を考える者までいた

 

 その理由が今のゲームスコア 5ー0…沈む観客席の一角…先程の堀尾くんの叫び声…つまり 不動峰が 5 で 青学が0である

 

 この試合 一言で言ってしまえば 相性 の問題だろう、神尾のスピードに翻弄されて 今日桃ちゃん先輩は一度も空を舞っていない…

 

 大差のついたこの試合 負けてる方からすれば ここからの逆転は難しく1ゲームも落とせない、更に次のサーブは不動峰…まさに絶対絶命…

 

 そんな中 コートの中にいる彼の集中力はこれまでに無いほど高まっていた

 

 「暴れたんねえな…暴れたんねえよ」

 

 そう呟く桃ちゃん先輩の目は一ミリも死んでいなかった…むしろ… 

 

 「桃ちゃん先輩…?ははっ…やっぱスゲーな…「この世界の住人」は…」

 

 自分が必死に修行しているのに一段や二段飛ばしで成長するこの世界の住人を俺は羨ましく思ってしまった

 

 

 ーーーーー

 

 自分が情けねー…怪我をしていた足は達宮に薦められた接骨院の先生のお陰で完治している、むしろ自主トレに渡されたノートのお陰で前より調子が良いくらいだ…なのにこの結果…5ー0…しかも同世代2年の選手相手にだ、認めよう俺は弱い…何よりこの試合俺は何も出来ていない…

 

 「暴れたんねえな…暴れたんねえよ」

 

 自分を鼓舞して意識を全て相手に向ける、スピードは相手の方が上…それによって角度をつけてボールを返され 神尾に勝っているであろうパワーすらまともに使えていない…スマッシュも打てなければ…捕球によって後手に回るばかり

 

 スピードでは勝てない…これは紛れもない事実だ…ならどうする

 

 もっと早く反応して一歩目を早く出せばいい…

 

 目を見開きネット越しにいる対戦相手である神尾を見つめる…その動きの一ミリすら見逃さないように…

 

 周囲の声や音が消え景色の色さえも灰色になっていく、まるで目の前にいる相手意外の不要な情報をカットするかのように、必要な情報だけを取り組み最速で答えを出す…

 

 

 「ゾーン」

 

 

 余計な思考感情が全て無くなりプレイに没頭する、ただの集中を超えた極限の集中状態、選手の持っている力を最大限に引き出す事が出来る反面 トップアスリートですら偶発的にしか経験出来ない稀有な現象である

 

 努力を積み重ねた者だけがその扉の前に立つことを許され、それでもなお気まぐれにしか開くことはない、それは選ばれた者しか入れない究極の領域

 

 だが…青学1のポテンシャルを秘めた桃城の才能はそれをあざ笑うかのように その扉を自力でこじ開けた

 

 ーーーーー

 

 圧倒的に優勢である不動峰の神尾…しかしその心中は穏やかでは無い、まるで何かに背を追われるようなプレッシャーを身体 全身で感じていた

 

 「ここで決めてやる」

 

 自分のリズムのテンポを1つ上げ ボールを空へと投げる…クイックサーブからのダッシュ 神尾のスピードを生かすサーブだ

 

 「なッ!!」

 

 そのサーブの後に声をあげたのはサーブを打った張本人 神尾だ…

 

 サーブに対して完璧なタイミング、完璧な立ち位置、そして完璧な体勢でそのボールを捉える桃城の姿を見たからだ…

 

「くッ 届かね…」

 

 この試合の始まりと同じようにクロスの方向へと桃城が打ち返す…同じだったのはここまでだろう、結果が全く違うのだ

 

 「リターンエース…」

 

 完璧なタイミングで放たれた桃城のショットが音を立てて相手のコートを突き抜けた

 

 「キタ━(゚∀゚)━!桃ちゃん先輩~!!」

 

 「行け~桃!」

 

 いきなり出た好プレーに青学の観客席が沸き立つ、しかしリターンを決めた本人は 冷静にコートでラケットを構え直し 静かに次のサーブに備えている

 

 冷めているわけではない…それは彼を見れば一目瞭然だ…彼の目はまるで獲物を狩る鷹のような鋭い光を放ち ただ一点神尾を見つめる

 

 高ぶる気持ちを濃縮して一点に集めたかのようなその目が神尾の次の動きに反応する

 

 神尾の手から再びボールが離れサーブが放たれる、先程の事もあってか クイックサーブでは無い

 

「くッ…またかよ」

 

 神尾の目に映ったのは再びサーブに対して完璧なタイミング、完璧な立ち位置、そして完璧な体勢でそのボールを捉える桃城の姿…

 

 返ってくるのは強烈なショット…しかし 先程とは違い自慢のスピードでボールに追い付く神尾

 

「お…重ぇ」

 

 ラケットにくる衝撃に耐えて辛うじて返球する神尾…しかしそのボールは高く空へと浮き上がってしまう

 

 ダンッ

 

 地面を蹴り上げる音がコートに響く、桃城の十八番「ダンクスマッシュ」…ただゾーンに入った今の桃城のダンクスマッシュはまさに別物だった…空を歩くかのように天を舞う桃城、脚力はもちろんそのボディバランスによって出来上がる脅威の滞空時間…その頂点より振り下ろされるように放たれたボールは地面に当たり再び空へと帰って行く…

 

 「ドーン!」

 

 桃城が言ったセリフのような衝撃音を出したボールは神尾のコートで一度バウンドした後 後ろの客席にまで飛んでいったのだ

 

 「嘘だろ…」

 

 観客席から盛り上がる声ではなくざわざわと驚きの声が聞こえる…

 

 そんな驚きと喧騒の中ゲームは続く…勝負はこれからだ と言わんばかりに桃城の獲物を狩る様な目が暴れたんねえと叫び声を上げていた

 

 ーーーーー

 

 5ー1

 

 5ー2

 

 5ー3

 

 5ー4

 

 数を数えるかのようにストレートで追い上げる桃城、その姿は圧倒的の一言だった…

 

 神尾のスピードに付いていく桃城の超反応…まるで練習で素振りをするかのように綺麗な体勢から放たれるショット…空へ舞い上がれば隕石のように振り下ろされるダンクスマッシュ…どれ1つとっても敵からすると脅威でしかない

 

 「くそッ」

 

 また強力なショットが神尾のコートで音を立てる

 

 「0ー30」

 

 審判の声が響く…並ばれる…圧倒的な速度で追い上げられるプレッシャーが神尾の精神を疲弊させる

 

 ただ神尾も負けられない…橘さんへの恩…ゼロから立ち上がった不動峰の絆が彼の心を奮い起たせる、手から舞い上がるボール、気持ちのこもったサーブが放たれる

 

「…知ってるよッ」

 

 神尾の目に映ったのは散々見た光景、完璧な体勢でサーブのボールを捉える桃城の姿…

 

 返ってくるのは角度のついた強烈なショット…

 

 「負けるかよッ」

 

 神尾のダッシュのスピードからそのボール目指して飛び込みそのショットを返球する

 

 しかしそのボールは無情にも…空高くへと浮き上がってしまう

 

 同時に聞こえる桃城がダンクスマッシュを放つであろう 地面を蹴り上げる音…

 

 ………

 

 しかし…いつまで立ってもコートにはボールが跳ねる音が聞こえる事はなかった…代わりに響くのは審判の声

 

 「15ー30」

 

 放たれたダンクスマッシュはコートでバウンドせずに観客席へと吸い込まれて行った…

 

 ーーーーー

 

 青学の桃城がプレーするテニスは会場すべてを魅了し、その逆転劇に観客すべてが胸を踊らせ逆転が起こりうる事を期待した

 

 だがその望んだ結末とは違うものが突然訪れた

 

 

 ゾーンの時間制限(タイムリミット)

 

 

 ゾーンは本来試合では発揮する事の出来ない実力の100%を可能にするというもの…

 

 どんなに集中した一流の選手でもいいとこ80%だろう…

 

 それ故に時間制限というものが存在する、集中力の限界…100%の力を発揮した反動が桃城を襲う

 

 

 「30ー30」

 

 

 さっきまでと動きが別もののように違う桃城…息は荒れ 肩で息をしている…

 

 「ハァ…ハァ…」

 

 闘志は消えていないが身体がついていかない…

 

 

 「40ー30」

 

 

 あらためて思う…俺は弱い…だからこそ ここで止まってはいけない…もっと高く…もっと前に

 

 

 迫りくるボールに対して身体に鞭を打ち 右足で踏みきり飛び込む

 

「うおおおぉ りゃぁ」

 

 両手のバックハンドから放たれる桃城の強力なショット、まるで流星のようにネットを通過する

 

 「くそッ 届かね…」

 

 神尾のスピードをもってしても届かないその球威 、死に体で打ったとは思えない強力なショットだ…しかしこれがこの試合の結末となる

 

 「…アウト」

 

ボール2個分外に出てしまったボールが後ろの金網に当たりその動きを止める…

 

 「…ゲームセット、ゲームウォンバイ 不動峰 神尾 6-4」

 

 

 

 コートに大の字に倒れ空を見上げる桃城…

 

「あー…もっと強くなりてぇ…」

 

 呟かれたその言葉は勝ちに 盛り上がる不動峰の声によってかき消された

 

 シングル3

 

 神尾 6 ー 桃城 4

 

 




・桃ちゃん先輩の覚醒回ですね(*´ω`*)…神尾の始めの試合運び5ー0の展開ですが、原作では海堂はリョーマ君に負けて 馬鹿みたいに練習量増やしてギリギリ勝利といった結果だった為 、今まで強化イベントの無い 桃ちゃん先輩が戦うと厳しいだろうなと思いこのような展開にしました…楽しんで頂けたら幸いです(*´ー`*)

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23 ギアの入る音

「桃ちゃん先輩…お疲れ様です」

 

 

 コートの真ん中にいつまでも大の字になり寝転がって空を見ている桃ちゃん先輩、それを回収してこいと手塚部長に言われ俺がコートへと派遣されてきた

 

「おう…達宮か…」

 

 同学年相手に負けたのがショックなのか元気が無いし、極度の集中の反動なのか反応も鈍い、かなり落ち込んでる様子だ…よし発破をかけるか

 

 

 「次の試合始まるんで向こう行きますよ、よっこらせっと」

 

 

 桃ちゃん先輩を軽々と お姫様抱っこ してベンチ後ろの方に向かって運び始める

 

「ッやめろ達宮、流石にハズかしいっての」

 

 反応が鈍く元気が無くても羞恥心はあったみたいだ、疲れきった体をじたばたさせて降りようともがく

 

 「なんだ…まだ元気あるみたいじゃないですか、根性とスタミナ足りて無いんじゃないですか?海堂先輩に笑われますよ」

 

 そっと海堂先輩の方に目線を向け確認…聞こえるハズの無い距離なのに「フッ」っと鼻で笑う音が聞こえた(不思議だな~)

 

 「ぜってー…殺す」

 

 桃ちゃん先輩がはメラメラの実でも喰ったの?ってくらい燃えてる、もう大丈夫 この世界の住人だし、この発破だけで後は勝手に強くなるだろう…俺は地獄の修行でやっとこさなのにな…(涙)

 

 抵抗を受けながらもメラメラ燃える可燃物をお姫様抱っこのままベンチに運びきることに成功した、動けない所を助けたのにも関わらず文句しか言わない先輩を放置しながら俺は次の楽しみが待つコート方に目を向ける

 

 

 「シングル2の選手は前へ」

 

 

 審判の掛け声により2人の選手がコートに入っていく、この試合は一言で言うなら 青学の天才 VS 不動峰の天才 の戦いって所かな?うん めっちゃ楽しみだ

 

 

 「シングル2 青学 不二 、不動峰 伊武」

 

 

 2人共 無口なままコート中央へと向かう、先ほどの試合では桃ちゃん先輩 と神尾さんが試合前に言い争っていたがまさに真逆な雰囲気である、もちろん2人が冷めている訳では無いだろう、だってさっきの試合を見て燃えないテニスプレイヤーはいないだろうから…

 

 

 「ザ・ベスト・オブ・1セットマッチ 青学サービスプレイ!」

 

 

 不二先輩のサーブから始まるこの試合、原作の 越前 対 伊武 の試合では主人公の王子様がいきなりお得意のツイストサーブをかまして相手のド肝を抜き「スッゲェー、何アノ1年ツエェー」をしていたが 、この試合では

そんな派手な始まりは無く言ってしまえば普通…そんな静かな始まりだった

 

 流れは圧倒的に不二先輩のペース、打ち合いが続くと2人の実力差がわかりやすい、徐々に伊武さんがペースが乱され点差が広がっていく

 

 

 「ゲームカウント 1ー0」

 

 

 ほぼストレートにて青学の天才 不二先輩が1ゲームを先勝する 、しかし会場は原作程の異様な盛り上がりは無い、概ね観客達の予想通りの結果なのだろう何せ相手は無名中学 しかも2年生、ただ原作知識持ちの俺は1人の視聴者としてワクワクしながらこの試合を観戦する、梁山泊で無理やり鍛えられた聴覚が教えてくれたのだ、

 

その無名の2年生のギアが入った音を…

 

 

「いいよな…いい環境にいて… 周りからの評価され… 天才…もっと苦労すべきだろ…」

 

 「いいよなぁ… ムカつくよなぁ… ぶっ倒そ…」

 

 

 

 

 




皆様お久しぶりでございますテニス歴0年HORIOです、長い間だ投稿出来なくて、本当にすみませんでした、スマホが溺死してしまい パスワードがわからずログイン出来ませんでした、つい先日大掃除の際パスワードのメモ達が出てきたので無事ログインすることが出来ました
しかしキャラ設定やプロットなどが全部消えている為、まだしばらく次の投稿が出来ません…今回短いですが思い出しつつ書いてみましたがキャラ(達宮)等にかなりのブレがあります…現在も「テニスのお弟子様」の続きを気力振り絞りながら執筆中です…頑張ります…

○同時にパスワードが見つかり2年ぶりにログイン出来た「小説家になろう」に「PIGRO」の名前で上げていた過去作品を掲載させていただきます…「高性能な愛車と異世界で最高の一杯を!」です お暇潰しに少しでもその作品を楽しんでいただけたら幸せです


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