ターゲットの暗殺教室 改訂版 (孤独なバカ)
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プロフィール

すいません。感想をよんでいたら主人公のプロフィールが欲しいと言われたので書きます
感想読んでいるんですが返す時間が……
3月21日改定


主人公

 

羽川康太 出席番号19番 (男)年齢 14歳

 

職業 暗殺標的兼椚ヶ丘中学二年F組生徒

 

誕生日 3月13日

 

 

外見

 

髪は黒髪の天然パーマ

顔立ちは幼く少し痩せている

身長160cm体重76kg

ほとんど見た目はいたってどこにもいる中学生

決して顔がいいというわけではない

 

人格

人間不信ぎみで怖がりで臆病

しかし人前では強く見せており殺せんせーを騙せるぐらいの演技力を持つ

 

特技

騙し合い トラップ作り サバイバル

 

趣味

食べること

 

得意科目

家庭科以外の総合科目

 

苦手科目

家庭科

 

 

暗殺技術 G〜SSSS (Sは殺し屋並)

 

ナイフ SSS(死神並)

射的 SS (有名な殺し屋並)

交渉術 SSS 

罠 SSSS (世界で一番優れている)

薬学 SSSS

行動立案 SSS

実行力 A

隠密 SSSS

演技力 SSS

 

烏間先生の暗殺技術評価

薬学、罠、隠密に優れた後衛型の暗殺者。

暗殺標的の経験を生かしナイフや交渉、演技力も高い

しかし実行力は低く暗殺者の才能があるが暗殺に一向に参加する気配はない

 

好きな食べ物

 

甘いものとボリューム満点の物

 

嫌いな食べ物

 

辛いもの

 

E組に入った理由

 

死神(殺せんせー)による推薦

 

好きなもの

 

動物

 

関係性

 

死神(殺せんせー)

 

元殺し屋と暗殺標的の関係性。互いに実力は認めており、時々お互いに刺激しあう。しかし主人公は未だに警戒しており隙を見せることは滅多にない

 

茅野カエデ (雪村あかり)

 

幼馴染であり互いに意識しあう仲。放課後に暗殺技術を教えたり護身術を教わることも。

 

矢田桃花

 

同級生であり唯一主人公の本当の正確に気づいてる人間。主人公から見て優しい人間と評価してあり弱みを見せたことによりつい弱音を吐いてしまう。三年E組の中で唯一信頼している。

 

赤羽業

 

今は何故だが中学入っていてから唯一の交流がある

 

 

雪村あぐり

 

幼馴染であり保護者役だった。主人公の姉さん的存在。シスコン仲間

 

日本政府

 

敵対関係であり、100億の賞金をつけた本人。また捕縛だとさらに高めの賞金が用意されている。

 

羽川佳奈

 

主人公の妹。雪村家とも交流がありあかりねぇと妹同士仲がよかった。

 

倉橋陽菜乃 

 

修学旅行で主人公が雪村あかりと間違え、薬のことを誰よりも早く知る。

 

前作との変更点

 

1神崎さんをヒロイン枠から外しました。すいません。神崎さんの口調がどうしても書きづらく自分ではオリジナルが書けませんでした。元々恋愛描写は友人に任せてたので。

 

2ヒロインを一人加えます。まだ誰かは言いませんが自分の一番好きなキャラなので。どちらかというとサブヒロインに近いかも。すいません、もう一人オリジナルヒロインも追加します。

 

3ぶっちゃけ主人公は苦しみ踠き続けます。前作ではシリアスが途中で抜けましたが今回はその過程も描きたいと考えているからです。なのでギャグ要素よりシリアスが多めになると思います

 

以降少しずつ更新していきます



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始まり

たった一人で俺は天井をみていた。

お金がないし家族は夜逃げしてしまった。

家は売ったしお金は今通帳にあるお金とこの山しかない。

「……やっぱりいいなぁこの山。」

俺は自分で作った家に寝転ぶ俺。

洞窟の中にただ立て札を建てただけの家。

その中にあるのは学校からもらってきた壊れた椅子と机を修理して使ったものと最低限度のものだけ。

後は支給されている学校の教科書だ。

「はぁ、今日の食料でもとってくるか。」

俺はため息をつく。

俺はある条件を元に中学校、高校と行けることになっている。

その先は全く未定だった。

いつまでこの生活が続くかもわからない。

今日で512日間ずっとここで暮らしてきた。この生活にもやっと慣れてきたところで食料の調達、水の確保ができるようになった。

今日は近くの沢の水を昨日貯めておいたので魚だな。うまくいけばクマが動きはじめて罠にかかっているかもしれない。

俺はそう思って歩き出した。

……腹へった。

ため息をつく。少し前までは干し肉と魚の燻製だけで過ごしてきたから腹が減っていた。

最近やっと山菜が手に入るようになったので少しはましになってる。

帰り道に積んだ野いちごやタンポポもあるから餓死はしないとおもうけどやっぱり肉や魚はご馳走だ。

俺は野いちごをつまみ、家を出る。

もう夕方でまわりは少しだけ暗くなりはじめている。

とりあえず罠を家の近くから回る。

すると家の近くの罠を見ようとすると

ガサガサ

と揺れる音がする。

かかっているか?

俺は自分で見よう見まねで作った竹槍を構える。

そして、なるべく音を立てずにゆっくりと近づく。

狩りの基本でぎりぎりまで近づき草陰から覗き込む。

すると

「にゅや、なんでここに罠が?」

人の声らしき音がする。

俺は、ガッガリしてしまう。久しぶりに肉を食べられるかもしれないと思ったのに。

しかし外してやらないとずっと一生このままだろうし助けるか。

「……大丈夫ですか?助けるんでちょっとうごか。」

といったところで俺は目の前にいる生物を見る。

黄色い顔に黒い服を着込んで足は触手が多く生え、2メートルありそうな大きさの黄色いタコがいた。

……なんだこの生物

俺はそいつを見ると少し考える。

なにか言っているが俺は少し考え

「タコだったら食えるよな。」

「にゅや?」

竹槍を構える。黄色いし毒もあるかもしれないが、一応捉えるだけ捉えよう。

「いや、食わないでテレビ局や国に売った方がいいのか。そっちの方がお金もらえるし。」

「ひぃ。やめてください。私美味しくないですし珍しくもないですよ。」

「嘘つけ。それだったら一丁死んでくれないか?いい加減タンパク質と脂質とらないと栄養失調で死ぬんだよ。」

俺はもう限界だった。殺してから考えた方がいいだろう。

もう燻製も干し肉も切れて二〜三日たっていた。草ばっかり食べていたので腹も限界だった。

「ちょ、ちょっと待ってください。お、お腹が減ってるのだったらな、なんでも奢りますんで。」

「……」

俺は少し考える。

学校の春休みが終わるまであと一週間。

それまでは空腹が続くだろう。

そしてこの生物何か隠している。

多分国か何かの秘匿生物が逃げ出したのであろう。

それに俺はこの生物を知っている

ってことは

「……一週間の間奢ってくれるのだったら。この場は放すけど。」

まぁ、捕まえておいて損はないだろう。

「は、はい。お、奢りますのでお、おろして。」

「嘘ついたらわかるよね?」

有利な条件を押し付けるのが交渉の最低条件だ。

その生物は頷くしかなかった。

 

「うめ〜やっぱり焼肉さいこーだわ。」

「……」

俺たちは近所の焼肉食べ放題の店に来ていた。

今日で七日目。明日からは学校が始まる。

目の前にはたくさん積み上げられた皿、

目の前にいる生物が3、俺が7の割合で食べていた。

「にゅや。計算外です。まさかあんな山に君がいるとは。」

「まぁ、仕方ないさ。普通はあんなとこに罠を張ってる男子中学生がいるなんて思いもしないよな。」

俺は笑い目の前のタコを励ます。

「そういえば気になっていたのですが、羽川くんはどうしてあの山にいたんですか?」

「そりゃ。住んでいるからに決まってるだろ。」

「にゅや?一人でですか?」

「あぁ。母さんと父さんが妹連れて夜逃げしたからな。もともと地主だったから地価が暴落したのか知らないけどこの山の権利書と俺の通帳以外は全部持っていきあがった。たぶん俺も売られる対象だったんだけどなんとか裏道を通って逃げ出して来た。」

俺は苦笑してしまう。

「……もしかして君はあの」

「あぁ。元羽川建設の5代目だよ。」

俺は苦笑してしまう。するとその生物は下を見てしまう。

羽川建設。数年前までは大型企業だったがとある事故のおかげで借金ができてしまいそのまま社長夫妻と子供が夜逃げしたというニュースは日本中の騒ぎになっていた。

「多分うちの学校でも噂になってる。俺に直接言いにはこないけどな。ってかマスコミにバレても借金取りが追いに来る可能性があるからな。あの山を残してくれたのは唯一の温情だったんだろうよ。」

俺はギリギリまで逃げ続けた結果こうなっている。

「だから、あんたと同じ俺も逃亡者って訳だ。まぁ、成績が良かったから椚ヶ丘中学校の理事長に誘われて俺の安全を保障してもらいまた、学費と勉強道具を補助してもらい中学校に入学することになったんだよ。」

俺は苦笑してしまう。ある条件を守るかわりにずっと授業を受けさせてもらってる。

「まぁ、結果的に超貧乏な暮らしで原始時代みたいな生活をしてるんだよ。風呂も週に一回の銭湯以外は川で水浴びだしな。」

「……」

タコが不思議そうな顔をしている。

「それは秘密事項じゃないのですか?」

「ん?秘密事項だけど?」

「それならなんで私に?」

「まぁ、真っ白だからな。」

「はい?」

タコが不思議そうな顔をしてる。俺は苦笑してしまう。

「なんかわからないけど俺そういうのわかるんだよね。見捨てられたからか、何度も死にかけたせいか知らないけど信頼できる人は白く、逆に危ない人は真っ黒に見えるんだ。だから俺を狙っている殺し屋から逃げることができるって訳。あんたは真っ白だからな。安心していれるわけ。それに、」

俺は指差して

「あんたに守って貰おうって思ってな。」

「にゅや?」

「さっきから私服に紛れた奴が何人か潜んでいるんだよ。視線がちょろちょろこっち見てるしうざったるいしな。」

俺が指差した先に数人の男と一人の女が座って何かを話していた。

「多分盗聴器か何かつけられてるんだろ。俺がさっき通ったらかすかにあんたの声が聞こえたしな。一応ここは要望があれば防音にできるんだよ。それなのにあんたの声を聞こえるのはおかしい。」

盗聴器もかなりの高性能のものだろう。俺も最初は付いていることを全くわからなかった。

「それに、なんとなくだけどあんたは俺のことを知っていたんだろ。多分名前が羽川康太って聞いた時には気がついていた。だからあんたはわざと盗聴器をつけられた。ちがうか?」

「……」

そのタコは何も言えずたじろぐ。沈黙は肯定と見よう

「たぶん、あの事件の真相を全部知っているんだろ。俺たちの家族は国家に騙され、借金地獄に陥った。そのことを知ってる俺たち家族を抹消しようとした国家は世界最強の殺し屋、つまりあんたを送り出したが他の家族は知らないけど俺の暗殺に失敗。そして何度も殺し屋を送り込むがことごとく失敗。違うか?初代死神。」

するとタコはギョッとしていた。

「……いつから気づいて。」

「ん?最初からかな?まずお前みたいな生物いないし。2代目だと思う死神なんかお前より爪甘かったし。」

最初の死神が現れた時は本気で死にかけた。三年前急に現れ黒だと気づいた体を逸らした時には殺されかけていた。しかし去年現れた死神は簡単に逃げられた。

「なんであんな甘いのかなぁって思っていたらお前が現れたってわけ。だから何か任務でヘマしたか2代目死神に騙されたのか知らないけどな何か原因で捕まりあの計画がまだ続いているのか知らないが実験のモルモットにされその姿になったのかな?そこはわからないけどまぁその触手のエネルギーを使って研究室から逃亡。違うか?」

「だいたい合ってますが。」

俺の顔を見る死神。黄色い丸っこい顔をしながら野菜を取り皿に入れてくる。

「肉ばっかり食べてたら健康に悪いですよ!!もっと野菜も食べてください。」

「お前は母さんかよ。」

はぁとため息をつく。

「まぁ、いい。んで前みたく俺を殺しに来たのか?それなら逃げるけど……」

俺は笑う。すると死神は首を振る。そして真剣な顔になって

「いや。実はですね。私はあなたに依頼しに来たのですよ。」

「依頼?」

「はい。実はですね、私来年の3月に地球と共に死にます。」

「まぁ、理論的にはそうだな。」

「にゅや?驚かないんですか?」

「まぁ、別に。月破壊された時点で可能性はあると考えてたからな。」

去年の3月に月破壊された時ついにやっちゃったかということさえ思った。

「それでですね。私はある人との約束を守るために椚ヶ丘中学3-Eの担任をやることになったのですが」

「はぁ?」

俺は訳がわからなかった。

「にゅや。そこには驚くんですね。」

「まぁな。ってかあんたが約束して先生になるってどんな人だよ。あんた、人を信頼しないことで有名だったじゃねーか。」

「雪村ってきけばわかりますか?」

その一言に俺はびっくりする。

「雪村製薬の長女か。なるほど、あの天然か。」

「はい。」

「死んだのか?」

すると死神が今まで見たことがない表情をしていた。

「……悪い。不謹慎だった。」

「別にいいですよ。それで」

「好きな人と同じ教師になったか。」

「にゅや。な、何をい、言って。」

「あんた。そんな悲しそうな顔してなにいってんだ。後悔してるって丸分かりだぞ。」

俺は死神の顔を見る。

「あの人は可愛いし、いい人だからな。どうせあんたをかばって死んだんだろ。」

「……」

「無言は肯定と見るぞ。そっか。」

俺は少し下を向く。

「俺もあの人は好きだったよ。俺もこの学校に来て教師やってるって聞いてたからな。正直教わって見たかったよ。俺も今年からE組だったから。」

「にゅや?」

「俺が椚ヶ丘に入った条件の一つには卒業後ここの先生になるため、E組に二年生時はいるってことだったんだよ。雪村先生の監視も兼ねて。あの人のこと理事長も買ってたからさ、壊れてもらったら困るってことで。」

俺はピーマンを食って箸を置く。

「多分あの理事長も誰か自分のやり方を否定してほしいんだよ。あんたもE組がどういうとこか知っているんだろ。」

「えぇ。本校舎と隔離されて設備も最悪と聞いてますが。」

「そのほかにも完全に差別されてるんだよ。なんか上司が部下をいじめてるって感じで。」

俺は少し考え

「だけど、なぜか内心後悔してるようにE組を見る時があるんだよ。多分無自覚だけど。過去に何かあるんじゃないのか。あの人も。」

俺はコーラを飲み息を吐く。

「そう言えば依頼ってなんだ?」

「にゅや?」

「いや、なんか暗い雰囲気なったから話戻そうと思ってな。」

「えっと、いや、わたしのキャラはこんなシリアスじゃ。」

「キャラつけてるんかよ。まぁいいけどさっさとしてくれないか?」

「私を殺しに私のクラスに来ませんか?」

「……」

俺は声を失ってしまう。

しばらく無言のまま時を過ごす。

「そっか。あんたはそういう人か。」

俺はやっと重い口を開いた。

「分かったと言いたいとこだけども俺はまだEクラスに入れるか分からない。順当にいけばAクラスだからな。」

「それはこっちの条件に加えましょう。銃の扱いもでき、戦闘経験もあるので暗殺者としては育てるには十分でしょう。」

「確かにな。でもE組の命はどうするんだ?俺もあの教室に関わったら危険が増すぞ。」

「私が生徒たちを守ります。あなたもいることですし30人くらいなら余裕でしょう。なにせ私の唯一の暗殺失敗した人ですから。」

緑のシマシマが見られる。油断だろうか?まぁどうでもいいが

「はぁ。なら勝手にしろ。でも、驚かないんだな。」

「えぇ。わたしの唯一の友人ってあぐりには紹介していましたから。」

「……そうだな。」

少し笑ってしまう。本当におかしい。

「何年振りだ?」

「……えっと。二年振りじゃないですか?あの時いらいですし。」

「全く捕まるなよ。唯一の話し相手ができたと思ったのに。」

「本当迂闊でした。」

「まぁ、最後の最後でやっと人間らしいとこが見られたから満足だけどな。」

少し笑ってしまう

「……まぁ、暇つぶしくらいにはなるか。それじゃあ帰る。御馳走様。先生。」

と俺は少しだけ背を伸ばしてから体をほぐす

「んじゃ、食後の運動といきますか。」



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再会

今頃学校では始業式が開かれているだろう。

俺はため息をつく。

俺はE組の校舎の屋根で寝転んでいた。

「まさか、こんな簡単に許可が出るとはな。」

俺は始業式をサボって裏山で寝転んでいた。

俺はこういうことは珍しくない

てか学校に来ることさえ珍しいのだ。

多分俺がE組行きって言われても誰もが納得するだろう。

「3-Eか。」

俺は笑う。

この学校には階級制度がありE組は差別されている。

階級制度のお陰で椚ヶ丘中学と椚ヶ丘高校はたった数年で全国有数の進学先になった。

たしかに一つのクラスを晒し者にすることによって他のクラスは優越感と危惧感を抱かせることによって他のクラスは有名な大学に進学している。

その代わりEクラスの大学進学率はかなり低いのだが。

「まぁ。俺にはぴったりのとこだよな柳沢に騙されてから借金地獄にあった俺には。」

俺は少しだけため息をつく。

俺はターゲットだ。

死神と同じ殺される側であり殺す側じゃない。

だから思考が他の中学生とは違う。

どこから狙われてるか。わからない。

警戒は寝てる時も怠ることはなく罠を仕掛け防御盾まで用意している。

それでも一度殺しにきた暗殺者がいた。

その時は気づいたからよかったものの唯一死を覚悟した。

……まぁ、そいつが今日から先生やるんだけど。

俺は苦笑してしまう。

変な付き合いだよな。

俺は校舎上から下を見ていると一人の女の子が歩いてきた。

これからクラスメイトになるやつは、始業式は始まったばかりで帰って来るはずもない

ってか中学生にしたら小さすぎるよな

身長は多分150センチくらい?いやもっと小さいか。

その少女が一人で歩いてる。

別にそのことが気になったわけじゃない。

首筋に根っこのような筋が見えたのだ。

旧式の触覚か。

俺はため息をつく。

少し黒くなっているからメンテナンスはしておらず多分盗んだものだろう。

あのアホが。何を簡単に奪われているんだよ。

俺は校舎から飛び降りる。

「おい。そこのお前。」

「えっ?」

俺がいるのがわからなかったのか驚いたようにこっちを見る。

緑色の髪にここの制服を着た女の子が俺の方を見る。

すると、その女の子は信じられないようなものを見たようになる。

「おい、どうした?」

「もしかしてこうちゃん?」

こう?

どこかで聞いたことがあったような。

「……あっ?あかりねぇ。」

「本当にこうちゃんなの?」

「だから羽川康太って言ってんだろ。ってか本当にあかりねぇさんかよ。久しぶりだな。」

雪村あかり。昔、雪村製薬を援助していた時知り合った女の子でよく遊んでいた女の子だった。歳は俺の一個上だったはずで昔、女優として活躍していた。

「嘘。おねぇちゃんがこうちゃんは死んだって。」

「……」

そうか。何も知らない人にはこう伝わっているのか。

「死んでねぇよ。ってか、俺社会的には死んだ扱いになってるのか。それ多分デマだわ。ってかそれ流したの100%柳沢だろ。」

「……」

「ってかあぐりさんのこと大丈夫か?俺はそっちのほうが。」

「うっ……ひぐっ、」

「……」

あかりねぇは力が抜けたように座り込む。

大丈夫なわけなかった。

あかりねぇはあぐりさんが大好きだった。

いつもべったりで俺と会うときは基本仕事かあぐりさんのことばかり話していた。

あぐりさんもそんなあかりねぇのことを溺愛しており本当に姉妹っていうより恋人同士みたいだった。

たぶん誰にも相談できなかったんだろう。

首元には触手があるんだから。

「……」

俺は少し迷ったが今は暗殺者どころか誰からの視線も感じられなかったので。

「……よく。頑張ったな。」

とあかりねぇの頭を撫でる。昔あかりねぇや俺が泣いたときあぐりさんがやってくれたように。

あかりねぇが泣き止むまで俺は頭を撫で続けた。

 

「落ち着いたか。」

「うん。ありがと。」

あかりねぇと俺は座り込む。

「とりあえず、久しぶり。五年?いや六年ぶりか。」

「うん。あの事件以来だからね。」

俺は頷く。

「ってか、一応俺って死んだことになってるの?俺数年間海外を転々としていたから全くこっちのことわからないんだよ。」

「世間では死んだことになってるよ。でも、本当にこうちゃんだよね?」

「まぁ、死んだと思ってたやつが生きてたらこんな反応か。証拠はまぁ昔の思い出でも話せばいいか。一応本物だよ。ちょっと国から追われてただけ。」

「……国から追われるってどんなことをしたの?」

「日本政府の研究室からの誘いを断っただけだよ。まぁちょっと小二の時の自由研究テーマがちょっとな。」

あのときはまだあんなことになるとは思ってもなかった。

「まぁそんなことはどうでもいいとして。」

「よくないよ。どれだけ心配したと思ってるの?」

「それについては悪いっていうか俺のせいじゃないんだけどなぁ。追われるわけになったのは全部柳沢のせいだし。」

私利私欲のために俺の研究を自分の成果にしやがったからな。あいつは

「まぁ。この話は後だ。それよりもあかりねぇ。今すぐその首の触手外せ。」

するとあかりねぇの顔色が一瞬黒に変わった。

「触手?こうちゃん何を言ってるの?」

一瞬だけ黒ってことは侵食はまだ進んでいないのか?

「さっき上から見たときに首の根っこのような物が見えたんだよ。まぁ、見間違いだと思っていたけど。どうやら見間違いじゃなさそうだな。あぐりさんのこともあるし。」

「……お姉ちゃんのことについて何か知ってるの。」

「あぁ。ちょっと色々あってな。まぁ説明すると。」

俺は昨日まであったことを説明する。黄色いタコのこと。そしてあぐりさんの情報も

「そっか。お姉ちゃんが死んだことはもう知ってたんだ。」

あかりねぇが苦しそうに言う。

「まぁな。本当なら断ってるところだけど……あの人の願いは正直叶えてあげたいんだよ。それに今回の件にその触覚が使われている以上見過ごすわけにはいかないんだ。たとえ罠でも」

このことが承認されたのは俺の暗殺も含まれているだろう。それに

多分柳沢はここに現れる。

俺はそう判断していた。

「それに多分本当のことだと思うんだよ。普通世界最強の殺し屋が先生をやるわけないだろ。」

「でもそれが嘘だったら。」

「嘘じゃない。あぐりさんが死んだことの証明がつく。それに……俺は死神がみせたあんな表情を嘘だとは思いたくない。」

俺は一度人間だったころの死神にあっている。その時の死神は優しく、知識もありそれでいて安心をみせるような素振りだった。

それは本当に完璧超人みたいに。

「なぁ。一度あのタコに真実を聞いてみないか?そっちの方があかりねぇが納得できると思う。俺が時間とるから。もし納得がいかなかったり、嘘をついているようだったら俺に言え。俺があかりねぇに仇は取らせるから。だからそれまではその触手とってくれないか?それ以上は危険だから。」

俺が言うとあかりねぇは俺を見る。そして首から触手を取り出す。黄色の触手になっているので俺でも安全にけせる

「でも、どうやってこの触手を。」

「ほら首出せ。」

あかりねぇは今殺気が抜けているので多分できる。

注射器を取り出しそれを触覚に刺す。

すると黄色い触手が光に変わり消えていった。

「えっ?なんで?」

「触手の強化液として作ったんだけど、これがなぜか触手を綺麗さっぱりなくしてしまうんだよ。人体的にも異常はないし副作用もないことは自分に使った時に確かめてる。」

怪我の功名ってやつだろう。条件はあるものの触覚を消し去ることができる。

「まぁ。多分いろいろ聞きたいことはあると思うけど。それは朝のHRの時に話すよ。どうせ言わないといけないことだからな。」

すると校舎側から騒ぎ声が聞こえる。多分もう始業式から帰って来る時間だろう。

「……でも、もうあの時の関係には戻れないけどな。」

「……えっ?」

「俺から近づいておいてなんだけど……近づくなよ。」

そういうと俺は校舎へと向かう。

後ろから声がしたが仕方ないだろう。

もう俺はその世界には戻れないんだから



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日本政府

「失礼します。」

俺が職員室に入ると黒いスーツの男が一人座っていた。

「誰だ?まだ始業式から誰も帰って来てないはずだが。」

体格からして普通の教師ではないことがよく分かるので自然と警戒するようになっている。

そして俺は自分の記憶からその人の名前を思い出す。

「なるほど、情報部の烏間か。珍しく適任の人をよこしてきたじゃん。」

俺は口笛を吹きながら笑う。

「なんで俺の名を。」

警戒する烏間に異変を覚える。

「……お前、俺のこと知らないのか。」

「あぁ。貴様は誰だ?」

俺のことを知らされてない?

「……羽川建設の羽川康太って知ってるか?」

「確か五年前に死んだ男の子だろう。それがどうかしたか?」

「……なるほど。そういうことか。」

その一言で厄介なことになったことが分かる。

「俺は羽川建設5代目羽川康太。あんたが死んだと認識している羽川康太さ。」

「はっ?」

その男性は固まってしまう。まぁ、当たり前か。

「その様子だったらなんで昨日焼肉屋で俺たちをつけてきたんですか?」

「っ!!気づいていたのか?」

「はい。ってかあの後あなたの部下らしき人からAKぶっ放されて大変だったんですよ。」

「そ、それはすまなかった、って羽川くん今なんて」

「あんたの部下からアサルトライフル撃たれました。」

あの後は大変だった。街中で躊躇なく銃を撃たれたのは初めてだった。

最初は信じてなさそうだったので、俺は撃たれた銃弾を机の上に転がす。

「……」

口をポカンと空けている烏間。

「……ついでにあのタコから何も聞いてないって。ちょっとぶん殴るか。あいつ。」

「ちょっと待て。色々聞きたいことがあるのだが……」

「ん?別にいいけど。朝のHRまでに終わらせてくれると嬉しいんだが。」

「君は何者だ?」

烏間が声を低くしている。

「……六年間、日本政府から隠蔽されてきた標的だよ。懸賞金は100億。」

「……すまないがもう一度言ってくれないか?」

「多分だけど日本政府に聞いた方が早いぞ。羽川康太が3-Eに来たっていえば一発で伝わるから。」

すると信じないと思っていたのだがやけに素直に応対してくれた。

「はぁ。全くあのタコ。何を考えてやがる。」

「おや。やけに殺気立っていますね」

「だれのせいだぁ。」

「にゅや!!」

俺は力一杯にいつのまにか入って来ていた死神を殴りつけた。

「痛いじゃないですか!!」

「はぁ?てめぇ防衛省に俺がこの教室に参加すること黙っていただろうが!!おかげで烏間に何言ってんだこいつって思われたじゃないか。」

「それはあの後アメリカ軍の軍事ミサイルを返しにいってまして。」

「はぁ?そんなもん知るかよ。てか、てめぇは携帯電話とかいうハイテクなもの知らないのか。いつも報告、連絡、相談、のほうれん草はしっかりしろって言われて来なかったのかよ。」

「しりませんよ。そんなもの。」

「じゃあ、今覚えろ。今すぐ覚えろ。」

「ぎゃー。ぎゃーうるさいぞお前ら!!」

バンッと机を叩かれ俺と死神は黙ってしまう。

やべぇ、この人怖い人だよ。

「ところで、あの速度。まさかまたあれを。」

「……」

死神の言葉に俺は黙り込む。

「……正直あんたとの殺し合いの後結構服用した。まぁ予防線にな。」

「そうですか……」

俺は苦笑してしまう。

「ほら、先生になるんだろ?笑顔、笑顔!!」

と死神の肩を叩く。

「は、はい!!」

「それにあぐりさんの妹がいるからな。今晩空けとけ触手持ってたから抜く条件に交渉条件にあんたを使った。一回ちゃんと話せ。」

「はい。ってはい?」

「多分偽名で通っているはずだけど。」

とクラス名簿を見てあかりねぇが誰かすぐにわかった。

「茅野カエデ。確か八年前に単発ドラマのボツ役の名前。カエデって言う珍しい名前はそうそう見ないし多分そいつが雪村あかりだよ。」

「それは。」

「話さないといけないぞ。一応大まかには話してあるけど、ちゃんと話せ。好きだった人の妹だろ。」

「……はい。」

「ほら、一応俺も生徒だから笑顔を忘れるな。」

俺は笑い

「でも、昔のあんたより人間らしいよ。あの時のあんたが今のあんたなら俺は死んでいたな。」

「……」

死神は悲しそうにこっちを見る。

それがIFの話だと知ってるから。

「わかりました。失礼します。」

と電話を切る烏間

「……」

烏間の顔は黄色。俺のことを聞いて驚いているのだろう。

「本当だとわかりましたか?」

「あ、あぁ。」

「まぁ、一応中二ですけど特別強化生徒っていう名目でここにいるんで。ついでにテストは中三の問題を受けることになってます。元々テストはほとんど入学試験時にここの高等部のテストで全部90点以上は取れていたので学力には問題ないのでご安心を。」

俺は笑う。

「後日本政府と暗殺者に警告しますが俺は一応このタコの依頼ってことでこの教室にいます。決してあなた方には協力しないのでそこのところは理解しておいてください。」

「にゅや?」

「は?」

驚いたような二人が俺を見る

「いや、当たり前のことじゃないですか?だって俺は日本政府から狙われてるんですよ。もし協力なんかして殺されたら元も子もないし、俺がするのは生徒の安全性を保つこと。それ以外は基本何もしない。ってか元々俺はここの学生なんだから。そう言う生徒がいたっておかしくはないだろう?」

「……やっぱり君は。」

すると死神は何か知っているのか俺の方をただまっすぐに見てくる。

それでも辞める気はない。

「……まぁ、暗殺の手伝いは状況によってはするだろうけど、学生の暗殺は基本は中立。それと殺し屋は俺が潰すから。俺にとったら敵になるんだし。」

軽い殺気を放ちながら言う

「悪いけど俺にとってそいつに死なれたら困るんだよ。……それに数少ない友達だから死んでほしくないって言うのもあるけどな。」

笑う俺にどこか警戒している烏間

「烏間さん。大丈夫ですよ。羽川くんは基本的に無害です。私達とは違って基本は逃げるだけの逃走専門のターゲットですから。」

「……まぁ、最低限度のナイフと銃も使えるけどな。あんたのスキルもあんたほどじゃないけどいくらか盗ませてもらったし。まぁ、人を殺すってことはあんたらみたいにしないから。」

「……」

「まぁ、どちらかというと学校生活を安全に送るためにこのタコから依頼された同業者ってことで、一応こいつの弱点も、触手の弱点、元の正体についてはこの中じゃ一番知っているのでどちらかというと殺す為のサポート役みたいになると思いますが。」

「羽川くんは触手を知っているのか?」

「……まぁ、そのナイフもそのBB弾も俺が元々作った奴ですし。」

「「……は?」」

すると二人が黙り込む。なんだ知らないのか

「ってか、その触手考えたの元々は俺ですから。知らないわけないですよ。」



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自己紹介

「……」

空を見上げると俺は昔のことを思い出していた

逃げることになったあの日のことを

「……はぁ、なんでこんなことになったんだろうな。」

そんなことを呟く

あれからもう六年

ずっと俺はターゲットとして逃げ続けている。

国を渡ったり、殺し屋に殺されそうになったり、人を裏切られたり

死にかけたこともたくさんあった。

しかし、今はこうやって生きている

どうやら二人とも本当に知らなかったらしい

俺の追われてる理由も

烏間は本当に俺のことを知っていなかったらしく、ただ驚いていただけだった。

今は朝のHR中で政府の人間は説明しているだろう

まぁ、俺のことは話しているのかは分からないが、どうせバラす結果になるだろう。

「一年か。長いな。」

そんなふうに思ってしまう。

一年生き残ることは俺にとってかなり厳しいものである。

特に厄介なのはスナイパーライフルによる狙撃である

遠距離からの狙撃には今でも少しだけ驚くことがある。

それでも俺は生き延びていた

「……まだ死ねないよな。」

俺は呟く

まだ死ねない

恨み、怒り、憎しみ

そんな気持ちが心を蝕んでいく

……どうせ今回の件で現れるんだったら俺はこの一年で確実に終わらせる

……もう永くはない人生でもこんなところで終わらせるのがいいだろう

「死神……俺のことを買いかぶりすぎだ。……俺はそんなにいい人間じゃねーよ。」

そんなことを思ってしまう

俺が今まで人を殺さなかった理由

それは相手にとったらそれが仕事だからだ

するとスピーカーからチャイムの音が聞こえてくる

俺は息を吐き教室へと向かった

 

俺が教室に入ると教室は騒ついていた。

多分死神のことだろう。

俺はその隙を見てゆっくりと入る。

空いている席は2つ

さっきのHR中にこっそり確認しておいた。

多分俺か有名な赤羽先輩の席だろう。

とりあえず席は空いてあった席の一つに座る。

カバンから教科書を取り出し授業の準備をする。

しばらくしたら死神が教科書を持ってきた。

へぇ〜本当に授業やるんだなぁ。

烏間も監視だろうが教室の中に入って来ていた。

教科は数学

正直なところ俺は幼稚園時までに高校クラスの問題は解けるようになった。

理由としては家が厳しすぎて小学生からは習い事で忙しくなるからと理由だった。

今考えると鬼畜すぎるよな。

死神の授業を聞きながら適当に教科書を見る。

でも、やっぱりやったところなので面白くない。

「えっと、ここは?」

隣にいるポニーテールの女の子が悩んでいた。数学は苦手なのだろうか。

「そこ、最初から違う。因数分解は基本だぞ。数学が苦手なのならここは公式を記憶するのがいいぞ。」

「えっ?」

「最初と最後は二乗、中はα+β。難関大学を狙うならそのあと4乗までは覚えたほうがいいぞ。」

「あ、うん。ありがとう。」

俺はとりあえずノートを開くと

「「「お前誰だよ!!!」」」

クラスの主に男子が突っ込む。

「……そこのタコの知り合いだよ。んで今日からこのクラスの生徒になったって言えばいいかな?」

「「「……は?」」」

「いや、そいつ地球生まれだから知り合いいてもおかしくはないだろ?てかそいつがおかしければ俺なんか死者が生きていることになるしな。」

「……あの〜どういうことですか?」

メガネをかけた女の子が俺に質問してくる

「……羽川建設5代目ッて言えば分かるか?」

「は、羽川くんそれ言っちゃいますか!!」

すると死神が慌て始める。俺の席付近まで近づき肩を掴んでくる

「ん?当然だろう。ってか赤羽先輩にはバレてるし。それにこのクラスにいるやつなら話しておいてもいいだろうしな。どうせ俺も一年間はここに通わないといけないし。」

「……あの。羽川建設ってあの?」

「まぁ、その羽川建設だよ。……俺は羽川康太。そこのタコと同じ100億の賞金首だよ。」

すると一瞬ビクッと全員が反応する

「……あの、その冗談はさすがに笑えないだけど…」

すると片岡先輩は俺の方を見て言うけど

「……冗談でこんな馬鹿らしいこと言えますか?」

「……」

「烏間に聞けばそのことが本当だと分かりますよ。生憎そんな冗談言えるほど余裕はないので。」

すると色々顔に色が現れる、驚き、疑心そんな感情が浮かび上がる

……一人を除いては

「……嘘でしょ。」

「…嘘じゃないですよ。まぁ、逃亡者仲間だと思っていてください。」

そう言って俺は教室の自分の席らしきところに座る

「まぁ、本気で暗殺したいやつは手伝いや自主練には付き合うから。あともうひとつ。」

俺はニコリと笑いながら

「俺を殺しに来てもいいけど、多分こいつぐらい殺せないと俺は殺せないよ。経験の差が違いすぎるしな。」

「そんなわけないだろ。マッハ20だぞ。」

と金髪の男が言うが

「……実際のところそうだろう。5年前から何度も暗殺者を送り込んでいるが怪我をするどころか暗殺者をやめ、転職するやつばっかりだ。おかげで有望な殺し屋の数はこの5年間で3割にまで減っている。」

「「「はっ?」」」

「それにもう殺し屋の中では最も優れている人でも殺せなかった。実質ミサイルか核爆弾を使わなければ羽川くんは殺せないだろう。」

烏間の言葉に苦笑してしまう。

「まぁ、さすがにそこまでされたら無理ですけど。でも単純な戦闘能力だったらそこのタコより数倍は高いぞ。伊達に六年も追われてないって。」

時と経験においては俺のスペックは完全に死神より圧倒的に上だ。六年生き抜いたのはかなりの運と実力を持たないといけない。特に俺みたいなやつは特にだ。

俺も逃亡二年目まではほとんど運で切り開いてきた

それはほとんどが死ぬかどうかのギリギリでだ。

「本当によく生きてたよなぁ。」

今生きていることがかなり不思議に覚える

どれだけ生きているのか

どんな人生を歩んでいたのか他人にはわからないだろう

……そう。誰も分からない

「……そんで授業しないのか?もういいだろ俺もあんたもこれ以上は探られたくないだろうし、打ち切るのがいいと思うんだが…」

すると死神は黙り込む。そして少し考えてから

「それもそうですね。……君にも話したくない人がいるでしょうし。」

「……話が早くて助かるよ。」

俺にしか聞こえないだろう声で呟く死神に苦笑してしまう

でも結局そうするしかないんだろう

俺と同じように死神も俺と似たような経験をしているのだから



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殺される者

「終わった?」

「はい。終わりました。」

あれから2週間たったある日

緑色のしましまで俺をむかえるけど

やばい。すごくなぐりたい。

しかしこらえて自分の席に戻る。

「おはよう。羽川くん。」

「おはようございます。矢田先輩。」

どうやら隣の席は矢田という女の子でクラスの中でも一、二を争う人気の女子らしい。

「今日もダメだったんですか?」

「うん。やっぱり速いよ。」

「まぁ、マッハ20の状態になったらそりゃ厳しいに決まってるだろ。俺だって当てられないしな。」

さすがに最高速度マッハ20の速さになれば当てられないに決まってる。

「多分だけどみんな先生を狙って撃ってませんか?」

「えっ?そうだけど。」

「そこですね。馬鹿みたいに先生を直接狙うとその分逃げるスペースを与えることになるから狙いは先生の逃げ場を無くすように撃つといいんですよ。えっと確か速水先輩と千葉先輩がこの中だったら射的がうまいはずなんでアタッカーにして他の人が逃げ場を防げば当たる確率は上がるはずですよ。」

「えっ?」

「簡単にいうとマッハ20になるには時間がかかるんです。最初の速さは600kmぐらいなんでマッハ20よりも当てやすいんですよ。」

どんなものでもトップスピードに入るには時間がかかる。

「まぁ、動けないようにするのが理想的だけど、今の状況じゃ難しいからなるべく動けないようにすればいい。機動力さえなければ知識のあるただのしゃべる巨大なタコだ。」

「……」

絶句したようにしている矢田先輩

「えっと?詳しいね?」

「まぁ。俺もあの生物について研究してたしな。」

するとへぇ〜と周辺の奴らは声を上げる。

「つまり機動力を奪えばあの生物はかなり弱体化するぞ。まぁそれでも時速600kmあるけど。」

「ふーん。なるほど。ありがとう。みんなにも伝えておくよ。」

「さぁ授業を始めますよ。」

そんな話をしながら死神がやってくる

先生は今日もいつもの通り授業を始めた。

 

何が起こるわけもなく授業は進む。

そこは普通の中学校とは変わらずに授業を受けている。

ただ違うのは暗殺ターゲットが二人いることだった。

「……」

真剣に授業を受けている。一応受験生なだけあって口出しする生徒はいない。

「……」

俺も同じようにノートを取り授業を受ける。

そしてしばらくたって。

キーンコーンカーンコーン

チャイムがなり授業が終わる。

……自分が一番嫌いな時間だ。

みんなは自分の弁当やパンを食べているけど

「あれ?羽川くんお弁当は?」

「……」

矢田先輩の質問に俺は指差す。そこには茶色の塊が二つあるだけだった。

「それ、何?」

「熊肉の干し肉です。あまり美味しくないので食べない方がいいですよ。」

俺はため息をつきながら食べる。ちゃんとした干し肉なら美味しいはずなのだが自分のは生きるための干し肉なので味はクソまずい。

俺はまた一つ摘んで食べる。

「……血腥い。」

味、匂い全てにおいて最悪だった。

「えっと、コンビニでお弁当とか買わないの?」

「……買いませんよ。基本土日以外は家から出ないですし。それに変装もなしで山から降りることなんて自殺行為なんで。」

前に死神と食事に行った時に分かったのだが

「多分、俺のことと先生のことを知っている人が最近市街地を徘徊してるんですよ。殺し屋が多すぎて油断できないですし。」

「俺よりも貧しい昼飯は初めて見た。」

磯貝先輩が俺の昼飯を見て驚いてる。

「仕方ないですよ。何もしなくても命がお金になるので自由なところはありませんし。」

いつ殺されるか分からない恐怖があることが追われる側の宿命だ。

「殺される側で堂々としてるのはあの怪物ぐらいですよ。」

今頃中国ので麻婆豆腐を食べているころだろうあの怪物にため息をついた。



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命の価値

死神はずっと授業を続け俺たちはずっとその授業を聞く。

「お題にそって短歌を作ってみましょう。最後の七文字を触手なりけりで締めて下さい。書けた人は先生のところでまで持って来なさい。できたものから帰ってよし。」

時間は国語でどちらかと言うと高校の授業内容に近い。椚ヶ丘は中高一貫の進学校なので別におかしくはないのだが、それは本校舎の生徒だけだ。このE組はその過程から外され、一般受験での入試になる。だから本当は別の授業を組み入れないといけないのだが、ある条件のためにE組も本校舎の授業ペースでしないといけない。

本当に捨て駒みたいな扱い方だ。

俺はこのクラスを見てそう感じる。

だから俺はこのことを予期していた

「……はぁ。」

「どうしたの?羽川くん。」

すると隣の席の矢田先輩が近づいてくる

「いや。少し気になることがあって。」

「……気になること?」

「……火薬の匂いがいつもより濃いんですよ。」

「「「えっ?」」」

すると数人が俺の方を見る。それは死神も同じだったようで俺の方を見る。

「逃亡生活を続けているとどんなに些細なことでも分かるようになるんですよ。五感に関しては特に敏感になる。特に薬品、火薬に関しては他の誰よりも敏感になるんだ。特に安物の花火みたいな物は特にな。そこのえっと?潮田先輩からかすかに火薬の匂い。それも実銃ではなく円形の物体に包まれているんだろうけどな。経験から考えるとおもちゃの手榴弾かな?最初は寺坂先輩が持っていたんですけどね。それならバイク改造のスキルを持っている吉田先輩なら余裕で改造ぐらいできるだろうし。」

「……」

全員が絶句している中俺はため息をつく

「……舐めんじゃねーぞ。だてに五年も逃亡生活を送っているわけじゃないんだ。大体の殺意、方法、感情そして暗殺方法を読み解くスキルは極めてるんだ。それにこのクラスのメンバーの個人情報ぐらいは調べてある。学歴、E組に落ちた理由、そして家庭環境もな。」

殺意を帯びた言葉にクラスメイトはもちろん、死神だって驚いている。

「俺は本気で生きるためにここまでやっているんだ。そこのタコと違って、殺されることを望まないし生きるために必死なんだよ。それなのに。」

俺は拳を握りしめ机をぶん殴る。すると音を立てながら机が砕け散る

いつぐらいだろうか。久しぶりに我を失っている。

本当なら俺だってそっち側に居たかった。

本当なら俺もそっち側にいるはずだった。

真実なんて残酷なんて知っていたのに

過去なんて変えられないのに

「それなのに、自己犠牲で命を捨てるなよ。自分の身を安全にしないんだよ。他人の身を安全にしないんだよ。それなら変わってくれよ。」

俺は叫ぶ。

「こんな醜い世界なんていたくないんだよ。毎日毎日殺されることを怯える人生なんて嫌なんだよ。毎日を命がけで生きているんだ。たとえ、知り合いや家族が死んでもな。そんな中で平和な日本で自爆テロを計画して実行しようとする奴がいると、本気でむかつくんだよ。それが自分じゃなくて他人にさせようとするならなおさらだ。」

命の大切さ、世の中の醜さ全て俺は知ってきた

俺の知り合いなんて死んだ人もかなり多いし、それに殺し屋関係で協定を結んでいることもある

寝るときも安心して眠れず何度だって夜間も魘される毎日

人目を気にしてドブやゴミだめに隠れた事なんてしょっちゅうだ。

ひどい時なんて人間の死骸に隠れた時だってある

「……帰るわ。」

俺は一言呟く

「自殺しようとする奴と他人を犠牲にする犯罪者なんか守る価値がない。……ぶっちゃけそんなことでこいつに死なれたら困るんだわ。そう言った暗殺はこれからは俺が邪魔する。いい加減迷惑だしな。」

俺は冷淡に言い切る。

ただ冷たく、無感情で機械のように。

「……ついでに短歌は終わってるから。」

俺は息を吐き教卓に短歌を置く。

「んじゃ後は勝手にしろ。俺はこんなくだらないことなんて興味はないから。」

「ちょっと待ってください。羽川くん。」

「言いたいことなら、うちで聞く。今日の一件はあんたの依頼に反するしな。でもまずは冷静にさせてくれ。でないとあんたを殺してしまう。」

「……」

すると諦めたようにする死神。

「じゃあまた後で。先生」

内心謝りつつ俺はたった一言だけ言って去っていった。



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苦しみ

今日も屋根の上で寝転がっていると磯貝先輩たちのグループが死神のところに近寄っている。

多分殺す気なんだろう。

「……でもそんなことじゃ殺せねーぞ。死神は。」

俺が呟くと案の定振りかざされたナイフは避けられている。

「……まぁ、こんなもんだろ。」

俺は暗殺を見終えるとまた本に戻る。

俺は最近休み時間はこうしていることが多い。

あの事件から俺はボッチに近かった。

まぁ、これが普通なんだよな。

追われるものとして一歩引いて行動する。

追われるものは極力人と関わらないようにする。

それは当たり前のことである。

死神に感覚が持って行かれていたが元々は学校では目立たないようにしてた。

今回は逆に目立つことをしていたが人から離れられたのでよしだとしよう。

でも、やっぱり人の繋がりは羨ましくある。

もし俺もあの事件がなかったのなら

……そんなことを考えるだけ野暮か。

最近は殺し屋も俺を狙うやつは減っている。

週に二、三回は暗殺されることがあったのがいつの間にか週に一度あるかどうかというくらいになっていた。

多分死神のおかげだな。

……まぁそこは素直にお礼言っとくか。

俺はため息をつく。

まぁ、それはそれとして

「スースー。」

この状況どうしよう。

隣ではあかりねぇがぐっすり寝ていた。

あの日以来あかりねぇは頻繁に話しかけて来るようになった。

今日も同じように話しかけようとして本に逃げるとついて来て余っている本をつまらなそうに読んでいていつのまにか寝てしまった。

休憩時間の間も誰も近づいてこないのにあかりねぇだけは話しかけて来ていた。

元々運動神経がよくて登って来るのは簡単だろう。

俺はそれを教室内の俺として答えると少し悲しそうにしているけどメゲずに話しかけてくる。

多分俺に何があったのか知りたいんだろう。

それを一定の距離感を保つにはかなりの苦痛だった。

それなのにあの一件から距離を詰めてきたのはあかりねぇだった。

失った者の重さを知っているから

もう逃げたくないから

一度近付く理由をきいたらそう言っていた

……あかりねぇもあぐりさんを亡くし精神的につらい事だろう。

それは俺も同じだった

辛い。

本当ならもっと話したい。

昔のように遊びたいし、もっと近くにいたい。

だってあかりねぇは俺が唯一憧れた人だったから。そして昔のように優しく一途であることがわかっているから。

でもターゲットの俺にとってはもう叶わないことだった。

自分がなんでこの場所にいるのかわからなくなる時がある。

復讐のためなのに、全ては捨て駒だと思っていたのに

辛い

どれだけ殺されそうになってる時よりも辛い

あかりねぇのそばで普通に過ごしたい。

青春を送ってみたい。

100億なんてどうでもいい。

地球が滅亡しようがどうでもいい。

それよりも普通の学校に行ってみたい。

俺が無理に中学に通い始めたのはそんな理由だった。

でも結局は狙われ、殺されかけ自由になれる日々を探し生き延びる日々

もし、神様がいるのなら。それはどんなに残酷なものだろうか

普通に生きて生きたい

頭が悪くなりたい。

先生に怒られ、家族に怒られ、友達と話し、買い食いや遊びに行きたい。

でも叶わない。

「誰か助けて」

口に漏れてしまう。

しかし誰も助けてくれる人はいない。

頼りたいのに助けてほしいのに

守りたいのにそばにいたいのに

笑いたいのに

たったひとつも叶わない。

だから今だけは。

周りには俺に対する殺気も何もない。

だからこの瞬間だけは。

たった二人きりの空間。

それが居心地が良くて

ずっとこのままでいれたらいいと思った。

 

「……」

「スースー。」

しばらくこの時間が続くと

「羽川くん。」

下から名前を呼ばれる。見ると烏間が立っていた。

俺は指をさしあかりねえの方を指をさすと烏間は手招きする。

仕方ないのでゆっくりとあかりねぇを下ろし下に飛び降りる。

「どうしたんですか?」

「……ちょっと大事な話があるんだが。後にしたほうがよかったか?」

「いえ。大丈夫ですけど。」

大体の話は読めてるけど

「じゃあ。羽川くん、奴を殺してくれないか?」

「嫌だ。」

即答だった。

「……日本政府からの依頼であってもか。」

「もちろん。ってか日本政府からの依頼だからこそ受けない。」

「……それが地球がなくなるとしても。」

「それはあんたらの都合であって俺には関係ないだろ。別に地球が滅びようが俺には残りの命が早まっただけだしな。ってか一年間生きれるだけでも幸せだろ。俺からみたら一年なんかすごく長いぞ。」

俺が睨む。一年。されど一年。俺からしたら十分に長い時間だ。

「正直あんたらは俺にとって捨て駒にしか思ってないんだろ。どうせ日本政府は殺し屋か秘密兵器を用意しているんだろう。まぁ俺はその件に関しては個人の意思で妨害するつもりだしな。多分俺も殺す対象になってるだろうし。」

俺がいうとするとハッとしたようにしている烏間

「……もし君の安全を保護するといっても。」

「それは殺した後まで継続されるとは限らないし、それは口約束や契約でも守る確証はない。それに最悪、研究室に入れと言われそうだからな。」

「……」

「それにあんたは知らないと思うが、国というものは自分の利益のために裏切り、見捨てるものだ。いつも正しいことをしてる訳じゃない。裏では俺らみたいに追われる奴もいるし、妹みたいに無残に殺されたりする。」

「君の。」

「気持ちなんかわかる訳ないだろ。好きな人を危険だからって知らないふりしたり、普通の生活をできないことがないあんたらが。」

声を低くして言い放つ。いつのまにか叫んでいた。

「どんだけ口で言えたとしてもどんなことをしても、辛い気持ちと苦しい気持ちなんかわかる訳ないだろ。毒や薬品に注意してコンビニやスーパーが使えなかったり、生きるためにドブ水啜って下痢をおこしても水を補給したことなんか。」

どんだけやっても

「人の苦しみが他人に理解できる訳ないだろ。どんだけ辛いのか、苦しいのか、悲しいのか、寂しいのかわかる訳がないんだから。家族を財産を、全てを奪われた。そんな奴らを信用できないし憎しみが消えるはずがない。それを地球を救え?ふざけんな!俺が考えたものを勝手に使って、危ないって言ってるのに実験を続け地球が滅びそうだからって頼ってくるのは都合が良すぎるんだよ。」

「羽川くん。そこまでです。」

するといつのまにかクラスメイトが死神が全員がこっちをみていた。

「……チッ。じゃますんの?」

「冷静になってください。烏間さんは何も知りません。ただ国から雇われた一人です。」

「……そんなんわかってる。分かってるけど…分かってるけどそれでも…」

思い出すだけで涙が溢れ出す。俺だって人間だ。過去に泣きたいことや後悔してる事なんて山のようにある。」

嗚咽が漏れる。

「ころせんせー。羽川くんが言っていたことは本当なの?」

ゆわふわパーマの女の子が質問する。

「それは…」

「烏間さん、羽川くんはなんで追われているんですか?」

「……」

答えられないだろう。

先生は一度話したことがある。

烏間は知っていても答えられないのだろう。

真実なんて残酷でしかない。

残酷だから生き延びられた。

そうだ、信用できない人の方が多い。

「……羽川くんはずっと一人でした。」

死神が話す。

「昔の羽川くんのことを知っている人がいます。頭が良く小学校に通う前から高校レベルの問題を解いたと聞いています。なので両親からは学校に行かず家に習い事の教師を雇っていたらしいです。なので学校に行く機会は一度もなかったそうです。」

「えっ?」

「佳奈さんという3つ下の妹がいたそうですが、世間では羽川くんも一緒になって死んだとされている土砂崩れに巻き込まれて亡くなったと聞いています。でもそれは本当は違います。羽川くんの妹は、国に殺されました。」

「「「……っ」」」

「羽川くんの居場所を吐けと命令した国に拷問を受け4年前に死んだそうです。」

「……俺そこまであんたに話してないはずだけど。」

「…君のことについて調べさせてもらいました。」

「そうかよ。」

なるほど。調査済みってことか

「でもそれって憲法違反じゃ。」

「バレなきゃ罪に問われないんだよ。隠蔽してることなんていくらでもある。俺だって、この教室だってそうだろ。」

「……」

烏間も俺をみてくる。

「正直、私にも考えられないほど多くの死地を乗り越えて来たのでしょう。だから100億という懸賞金がかけられていますが…殺し屋の多くが羽川くんの暗殺を断っています。多分私も羽川くんのことは殺せません。」

その一言に全員が俺を見る。死神は大げさにいうが多分無理だ。ってかマッハ20にかなう訳ねぇだろ。

「羽川くんはそれほどまでにターゲットとして優れているのです。」

「買いすぎだ。俺はそこまで強くねぇよ」

「……いえ。私も殺せませんよ。羽川くんは。」

死神は悲しそうに俺を見る。

「でもいつも君を心配してくれている人はいることは忘れないでください。」

「……わかってる」

その言葉には素直に頷く。

その人が誰なのかもうわかっているから。

 

翌日のHR前

「……」

「……」

屋根裏で俺はあかりねぇと並んで座っているが無言がずっと続いていた。

正直言って気まずい

「……ねぇ、こうちゃん。」

しばらくたってからあかりねぇが話しかけてくる。

「何だ?」

「大丈夫なの?」

「……そうみえるか?」

「……」

首を振るあかりねぇ。

「……今日は私を追い返したりしないんだね。」

「……あかりねぇだって泣きそうだしな。あかりねぇもショックだろ。自分の妹みたいに可愛がっていたから。」

「うん。でも、死んじゃったんでしょ。」

「そうだな。」

「私はいいよ。お姉ちゃんから聞いた時覚悟はしてたから。」

「……嘘つけ。」

あかりねぇは顔が青色、悲しみでいっぱいだった。

「……泣いたら。」

「こうちゃんが泣いてないのに?」

「俺は、全部終わったら泣く。それまでは泣けない。」

「なら私も泣けないよ。」

「……そっか。ありがと」

あかりねぇが驚いたようにこっちを見る。

「こうちゃん?」

「……なんでもない。」

するとキーンコーンカーンコーンとチャイムの音が聞こえる。

「行ってらっしゃい。」

「うん。行ってくる。」

あかりねぇは教室に向かうため屋根から飛び降りる。

そしてまたいつもの日常が行われる。



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実力

「い〜ち、に〜、さ〜ん、し〜」

「うわぁ〜。絶対普通の中学生じゃ見られない光景だな。」

「……羽川は見てるだけだろ。」

俺が苦笑すると前原先輩が言う。

今は体育の時間で内容はもちろん暗殺。

体育の担任は表向きは烏間先生だが身の安全を守るために受け身や身の安全に関することは俺が教えることの方が多い。

「だって俺はどちらかというと殺される方だからな。それに半分は俺が受け持ちだし。」

「……確かにそうだけどよ。」

と納得はしてない

「まぁ、ナイフがうまく使えるようになったら二刀流とか使えるようになるので結構オススメですよ。それに前原先輩は4股している最低野郎ですけど、運動神経はありますし銃が壊滅的に下手なんでナイフだけに専念した方がいいですよ。」

すると前原先輩が固まる。

「……」

「えっと、羽川?なんでそれを?」

磯貝先輩が聞いてくると

「えっと銃は見てたらわかりますし、女性関係については岡島先輩と磯貝先輩、片岡先輩に話している彼女さんの学校名が違ったので。後もう一人は3年C組の土屋先輩ですので合計4人です。」

「……」

「ついでに本命は磯貝先輩に話していた人だと。」

「…スゲェ。あってる。」

前原先輩が驚くけど女子からの最低みたいな視線は無視なんだろうか。

あれから、俺に話しかけてくる先輩は増えていった。

一応磯貝先輩などのグループに入ることが多くなった。

だけど昔のことは何も聞いてはこない。

聞くのが怖いのか気遣ってくれているのかその両方か。

「でも羽川くんって暗殺の技術はどうなの?」

「ん?」

「そういえば暗殺に関しては羽川って未知数だよな。」

するとそこからはどんどん広がっていく。

純粋な興味なんだろうけどでもそうなると授業どころではない

そんな空気に少し苦笑してしまう

どちらが戦闘力が優れているのか

まぁ当たり前なことだろう

「はぁ、じゃあ烏間先生。模擬戦しませんか?」

するとクラス中が騒ぎ出す。

「……なんでだ?」

「いや、なんか俺だけ見てるって言うのもおかしいしその武器だったら怪我もしない。それに実力を見せるのはうってつけの機会ですし、あんたの実力を少し見せてほしいかなぁって。」

「……わかった。君の実力も見てみたいしいいだろう。」

すると歓声があがる。

「ねぇ、どっちが勝つと思う?」

「私烏間先生!!」

とか色々言っているクラスメイト。下馬評は俺二割烏間先生八割で烏間先生有利か。

「にゅや!じゃあルールはこのインク付きの武器を使って一撃当てられたら勝利。」

「先生ノリノリじゃねーか。まぁ、いいけど先生何割の力出していい?」

するとみんなが凍りつく。

「だって柔かったら殺す可能性があるし、強いのは知ってるけど…」

「……本気でやっても構いませんよ。伊達に先生の観察役を勤めてませんので。」

「……へぇ〜」

俺は少し息を吐く。烏間先生を見る。

手元にはナイフを握りしめている。

……かなり強いな。

見た目以上の腕前だと俺は判断する。

暗殺には向いてないが銃、体術、ナイフ全てにおいてレベルが高い。

俺は今まで狙われた中で三番目に強いと判断する。

油断はできない。

一気に決める。

「暗殺始め。」

俺は素早く近づき牽制のナイフを一回振る。すると烏間はそれをギリギリで避けナイフを振利かかろうとするのでバックステップで避けながら一撃目の射程外から外れる。その瞬間振りかかろうとしたナイフを諦め防御に回る烏間。その初動の速さに少し驚く

……なんで普通の人間がナイフを1秒間で5回切りかかれるんだよ。

舌打ちをしてしまう。こいつも化け物すぎるだろ。俺も得意な防御に回るしかない

「……」

「……」

足や腕、目線の向きを見て立ち位置を変え次の攻撃を備えると烏間先生3秒ほどで手を挙げた。

「……降参だ。」

「……賢明です。烏間先生。」

死神が一言で言い切る。

烏間先生の降参宣言に少し苦笑してしまう

「えっ?どういうこと?」

みんながポカーンとしていると。

「一切の隙が見当たらないんだ。どこから攻撃してもカウンターでナイフで刺されるか体術で抑えられてしまう。」

「……えぇ、羽川くんは防御に優れています。烏間先生の強さを見て攻撃から防御に回ったのでしょう。目線や少しの変化で体制を変えていました。」

「多分ナイフを振る速さは1秒に10回は振れる。どうやっても勝てる見込みがない。」

「……最初の一発かなり手加減したのになんで本当の振る回数わかるんだよ。」

1秒に5回切る速さで切りつけたのにな。

「……でもそんなに強いのか?100億円の懸賞金をかけられるようでは思わないんだけど。」

「あぁ。ナイフも正しい振り方をしていた。そして速さも勘の良さもいい。それに、合気道か?」

「体術は後中国武術と柔道、後は合気道ですね。空手も少しかじってますが…基本はナイフを使いますよ。ナイフは軽いことが長所ですしリーチがないから小回りが効くんで。防御で使うことが多いんですよ。なれると銃弾をくらいなら弾けますし。」

「「「それは絶対おかしいから!!」」

とクラス中にツッコミが起こる

「でもっけっこう俺レベルの暗殺者なんて結構いるぞ。それにそのスキルだけでは生き残れない。」

「えぇ。ナイフ術、体術、銃もトップレベルですが、本当の凄さは気づかれないことです。」

「……どういうこと?」

「殺し屋のほとんどは居場所がわかっているのに羽川くんを見つけられないまま暗殺に失敗しています。」

「ステルス能力な。実質は、最初俺が入ってきた時先生も気づかないで教室に入って授業しただろ。自然にいてターゲットだと思わせない。それが種明かし。まぁ殺気や匂いに敏感だからすぐに逃げるっていうのもそのひとつだけどな。」

すると全員がはっとする。

「他にもトラップが俺の管轄かな?睡眠取るときには必ず仕掛けるしそれに薬品や医学も詳しい方だな。」

「……烏間先生、羽川くんを舐めない方がいいですよ。防御技術に単純にあなたよりもいや今の私よりもスキルが高い。無駄な技術は覚えず逃走や防御に使える技術を持ち合わせてます。頭の良さも知恵も多分私より優れてる。それに羽川くんは実力のまだ3割程度しか出してませんよ。」

「悪いけど。先生。人との勝負にこれ以上力出すつもりはないぞ。ってかあまり使いたくない。」

「知っていますよ。それが君のいいところですから。」

「……えっ?」

「ちょっと待ってよ先生。それって。」

「今の速さで半分も出してないって。」

「……おそらく実力では私より数倍は上です。私が本気で殺しにかかっても羽川くんは殺せません。まぁ地球を爆破すれば問題はないですが…」

クラスメイトが騒めく。烏間先生は少し考え事をしていた。

その隙を見て俺は何事もなかったようにその場を離れる。しかし一人だけついてくる先輩が一人いた。

俺をよくかまってきているので最近はこの人に能力が効きづらくなっているのも一つの原因だろうけど。

角を曲がって少し待つとその人は声をかけてくる

「……殺せんせーより強いってどういうことなの?」

するとやっぱり矢田先輩が聞き込んできた

この先輩はよく話かけてくるんだよなぁ

悪気もないから拒絶するわけでもいけないし今の悩み事の一つだったりする

「……経験の差だよ。こいつはターゲットとしてまだ一年か二年程度にしかたってない。それにこいつは殺されるのを楽しんでいること、俺は生き残るために必死になっている。それも一応生き残るために自由な時間なんてほとんどない。それに動きも単調すぎる。特に野外暗殺においてあのままじゃ第三者のことを全く警戒してない。まだまだ甘すぎる。」

「……厳しいね。」

「一応プロですから。」

と苦笑してしまう

「ターゲットっていうのは一つのことだけ優れていてもやっぱりすぐに殺されます。多くのことを学んで、経験しないとそれはターゲットして生き残れない。それも全てに関して暗殺者よりも優れていることが条件なんですよ。」

俺がいうと少しだけ驚く矢田先輩

「……命を奪うより命を守る方が難しい。どんな生き物にだって命は一つしかありませんから。」

「えっ?」

「命の価値は決められないので。」

俺の言葉に矢田先輩はただ驚くだけだった。



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温かな教室

「おはよー。こうちゃん。」

いつも通り屋根上に来るあかりねぇ。

「よう。」

俺は読みかけのラノベを閉じてあかりねぇの方を見る。

「そういえば、昨日のカルマくん凄かったね。」

「ってかああ言う暗殺が基本なんだよ。馬鹿正直な暗殺方があるかよ。」

俺が言うとするとあかりねぇはクスリと笑う。

「やっぱり、こうちゃんは厳しいね。」

「……厳しいも何も事実だしな。精神的に追い詰めて殺すんだろ。じっくりじっくり痛めつけて少しずつ追い詰める。殺し方としては間違ってねぇよ。」

殺し方としては正しいだろう。怒りは我を忘れさせることにもってこいだし。

「でも、無理だろうな。死神は殺せない。」

「えっ?」

「多分今日は終始警戒すると思うしな…。殺せるはずないだろうな。」

元々殺し屋だった死神なら気付いてるだろう

痛めつけられるのが嫌なら回避すること。

たったそれだけで対策は練れるのだ。

「……よかった。」

「…えっ?」

「殺せんせーが死なないでよかった。」

すると安心するあかりねぇ。

「あかりねぇ?」

「……前にこうちゃんから聞いたこと、殺せんせーから言ってたんだ。お姉ちゃんと殺せんせーのこと」

「そっか。」

俺は大体気付いてしまった。

「……似てるよな今の死神とあぐりさん。」

「うん。おせっかいなところも優しいところもお姉ちゃんそっくりだね。」

「そりゃ、死神の先生だからな。教師を受け継いだってことは、死神はあぐりさんの魅力に気づいたんだろ。」

「……ねぇ。殺せんせーを誰かが殺した時、こうちゃんはどうするの?」

あかりねぇの言葉に俺は少し考える。

「多分だけども海外に逃げるかな。居場所がバレてるわけだし。」

「……そっか。」

心配してくれているのがよく分かる。でもそれが生き残るたった一つの道。

後一年未満

俺が普通に学校に通える時間だ。

「……」

「……」

無言が続く。気まずいってもんじゃない。

「……嫌だ。」

「……」

あかりねぇの言葉に戸惑ってしまう。

聞こえてしまった。

するとあかりねぇはこっちを見る。

「……こうちゃんといられるのが後一年だなんて嫌だ。」

今にも泣き出しそうなあかりねぇに、俺はどうしていいかわからなくなる。

「……」

目を合わせられない。俺だって嫌に決まってる。

でもお互いに分かっているのだろう

それが叶うことがないってことが。

 

「ほら、ここをくくれば。」

「あっ!!本当だ。」

「……すげぇ。分かりやすい。」

「こうちゃん凄い!!」

「倉橋先輩。その呼び方恥ずかしいのでやめてください。」

俺の周りではこんな形だった。なぜか先輩に勉強を教えることが多くなり、わかりやすいと評判だった。

「でも、よく分かるね。まだ、習ってないところでしょ?」

「まぁ、幼稚園の時に全部解きましたから。」

「……やっぱり羽川くんおかしいよ。」

「……まぁ、自覚はしてますが。」

家の事情であったが、よく幼稚園児の時解けたのか今でも不明だった。

「でもこれ殺せんせーより分かりやすいかも。」

「にゅや!」

「しかもノートも分かりやすいし、……羽川コピーとってもいいか?」

「別にいいですけど…木村先輩、ノートは自分でとった方がいいですよ。数学は答えが分かる場所で繰り返し解くことで成績が上がることに繋がるんで。」

「こうちゃん、ここ教えて。」

「……もういいや。えっとここは。」

と教えようとした時死神の触手が伸びる。

「…カルマくん銃を抜いて撃つまでが遅すぎますよ。ヒマだったのでネイルアートを入れときました。」

「……」

「まぁ、そうなるよなぁ。」

俺は少しだけ苦笑してしまう。

「やっと目が覚めたらしいな。」

死神も目が覚めたらしく油断もしていない。

簡単に死なれてもらったら困るんだよ。

と思ってると目の前に16個の丸い物体が入ったものが置かれる

「なんだこれ。」

「羽川くんもその顔じゃ朝ごはんを食べてませんね。そのたこ焼きを食べたら健康優良児に近づきますよ。」

すると目には差し入れと書かれている。昨日のお礼ってとこか

たこやきは初めて食べるけどソースやタコの歯ごたえがとても美味しく感じた。

 

「……えっとこれはどうすればいいんですか?」

「えっとねこれは。」

四時間目の調理実習は完全にお荷物状態となっていた。

班ごとにするのだが、倉橋先輩と矢田先輩は手際よく進める中、俺は全く調理器具の使い方も何も使えなかった。

しかも矢田先輩に調理器具の使い方を教わりながらやっているので完全に足手まといだった。

「すみません。迷惑をかけてしまって。」

「ううん。大丈夫だよ。でも本当に一人暮らししてるんだよね?いつもごはんどうしてるの?」

「えっと、罠で動物を狩って血抜きしたやつを丸焼きにしたり、山菜を焼いて食べたり、川魚を焼いて食べてますね。」

「……」

班の中が静寂に包まれる

「ねぇ、気になってたんだけど……羽川くんどこで住んでるの?」

「えっと学校付近の裏山の小さな洞窟ですね。あそこの土地の利権は持ってるので。」

「……それ本当?」

「はい。ってか俺今住民票すら消されてるので家借りられませんし」

だから俺は日本にいることさえ今まで隠してたのだ。理事長の協力のもとアメリカにいるように見せて椚ヶ丘で坂本巧という名前で通っている。それも名義は留学生という肩書きでだ。

「……それって洗濯とかどうするの?」

「洗濯は前までは理事長先生が山に来て制服とか数少ない私服は洗濯してくれたな最近じゃ先生にやらせてるけど。風呂はドラム缶風呂で自分で作った石鹸使ってるかなぁ。」

「……」

「ぶっちゃけ山で生活している以上自然を使って生活するしかないんですよ。寒さで凍え死にそうになった事なんて多いですし。正直暗殺者に狙われるよりも自然相手に生き残るほうが厳しいですよ。」

自然は本当に怖い。東京はまだマシだが脱水症状や低体温症など色々な災難が起こる

「まぁ、普通じゃないのはターゲットですから。まぁこういった料理は知り合いに会った時にしか食べれませんしね。」

「……そうなんだ。」

「ぶっちゃけて言うとこういった料理作るのも作ってる人を見るのは初めてなんですよね。俺子供の時は勝手に料理が出てくるような家だったので。」

「まさかカセットコンロの使い方を知らない人がいるとは思わなかったよ。」

と矢田先輩が苦笑する。

ぶっちゃけ元々は金持ち出身の俺はこういった料理は初めてだった。

この雰囲気が俺にとったら新鮮であることだった

やっぱり学校っていいな

俺にはそう感じる

学校に行くのは憧れだった

今まで聞いたこともなく義務教育で進級できる小学校は両親から行かなくてもいいと言われ入学式はもちろん学校に足を踏み入れたことすらなかった

だから憧れの場所でも会った

あかりねぇやあぐりさんの話を聞いてると学校に行きたいと言う気持ちがあった。

だからこそ夢が叶いこういった状況にもかかわらず

辛いなぁ

俺はなるべく小さく呟く

別れの辛さを知っている俺らにとって幸せはわずかな時間しか幸せの時間がない

もし死神が誰かに暗殺されたら

その時点で俺は逃亡者に逆戻りで

一年間平和に学校で暮らしていた俺にとってはとても嫌なことだった

みんなが笑い、温かな教室がここにはある。

「……」

俺は死神が持って来た死神のエプロンを取ると教室を静かにでる。

そして明るい声が聞こえる教室を離れると俺は座り込んでしまう。

目が熱くなり液体が流れる

「くそ。」

罪悪感と嫌悪で潰されそうになる

「……俺の方が嫌に決まってるだろ。」

別れるのが嫌だ

でもいつかはこのE組は終わってしまう

それがどれくらいの時間がかかるかもわからない。

それでも俺はターゲットであり

いつかはこのクラスを裏切ることになるからだった



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イレギュラー

遅れてすいません
ニセコイ実写化と聞いてから少しだけスランプに陥っています
まぁスマホのギャルゲにはまってしまったのも原因ですが
後注意事項としてここから前作と展開が一気に変わります
もしかしたら前作よりも鬱展開が濃くなる可能性があります


「……はぁ。行きたくねぇな。」

俺はただため息を吐く

昨日の調理実習の後の授業をさぼってとある隠れ場にずっと潜んでいた。

「久しぶりだなこの症状。」

俺は少しだけ不安になる。本当に久しぶりだった

昨日の俺は俺らしくなかった

いや。久しぶりに俺らしかったと言うべきだろうか

「……はぁ。」

昨日からもう数えられないほどのため息を吐いてしまう。

死神にも。E組の仲間にも、あかりねぇにも

誰にも見せてない本当の自分

それはターゲットになるためには伏せていないといけなかった

弱さを隠し

誰にも強いように見せて

圧倒的な力を見せる

そんなのは本当の自分ではない

その事実に今自分は体が震え体温が低くなっている

「……くそ。」

今は誰にも会いたくなかった。俺は乾いた声で呟く

優しい人は嫌いだ。

ターゲットになってから優しさには裏があると知ってしまったから

そして裏のない人のほとんどは、別れを惜しんでしまうから

この世は残酷で卑劣だ

思い通りになるわけがないし、どこかでイレギュラーが起こる。

……このイレギュラーは想定外だな

ターゲットになって久しぶりに触れた人の温かさ

それが今になって重くのしかかる

「……本校舎みたいな人ばっかりならよかったんだけどな。」

人の醜さを知っている俺にとってE組は地獄だった。

 

いつも通り登校するとはいかず俺は今日は自分の席に一度も行かずただ屋根の上に寝そべっていた。

「……なかなか思い通りにはいかないよなぁ。」

俺は空を見上げると今日も青空が広がっていた

快晴か。

雲ひとつないよく晴れた日だ。

教室にはクラスメイトの声が聞こえる

今日も元気に暗殺してるのだろう

「……」

正直な話今日明日は学校を休みたかった

ターゲットとして俺は弱みを少しでも隠しておきたい

それは死神にも言えることだった

弱みを見せず、ひたすら自分を隠し続ける

それが何よりも難しいことなのは自分が一番理解していた

睡眠も最近は不足しており、調子が下向きになっているのは知っていた

疲労もかなり溜まっているのが分かる

そしてその状態を精神的な疲労が追い打ちをかける

ただでさえストレスが溜まってきているのに最近じゃ悪夢による睡眠不足が重なり元気に見せることがきつく感じ始めている

体が重く、感覚がなくなりつつある

「……厳しいな。」

薬を飲みながらごまかしつつあるが、今度の休みに確実に睡眠を少しでも取らないとまずいだろう。

「体調面から考えるにもって全力なら二時間か。どこかの授業サボってでも睡眠をとるしかないか。」

俺は少し考える。

「今日は体育は烏間の担当だしそこの間を狙って睡眠をとるしかないか。それも死角で目立たないような場所で。」

寝顔を見られるのは隙を見せることなのであまりしたくない。

本当は洞穴で寝てたいがそんなことも言ってられないし。

多分一番安全なところで死神にも見つかりにくいところは。

「……あそこしかないか。」

俺は予測を立てて潜む場所を決める。

距離を置くにもちょうどいい場所だろう

 

「羽川君昨日はどこに行ってたんですか!!」

教室に入るとそうそう死神に肩を掴まれる

「心配したんですよ。昨日羽川君がいつもいる洞穴に行ってもい」

「悪い。寝不足で大声が頭に響くんだわ。少し静かにしてくれ。」

と強引に話を打ち切る。

「大体分かるだろ。嫌な予感がしたから逃げたんだよ。あの場は逃走スペースないし追い込まれたらクラスメイトの二次災害があったらあんたが責任取られるだろうが。」

「にゅや?」

「殺し屋の気配がしたから逃げたんだよ。まぁ本当にいたのかは知らないが。」

俺はポーカーフェイスのまま嘘をでっち上げる

「授業サボって逃げたことは謝るけど不安にさせないためにはそうするしかないだろ?」

「ちょっと待ってください。しかし政府は私の暗殺には生徒の授業中は」

「それはあんただろう。俺の暗殺はフリーを通して基本は自由だ。」

はっきり答えると死神はうっと言葉を詰まらせる

「それに政府は簡単に嘘つくから信用できないんだよ。あいにく俺はあんたじゃないからな。そんな簡単に信用できないし嫌な気配があれば速攻で逃げる。あいにく俺は人間で、マッハ20で逃げられないんだ。」

「……わかりました。」

するとトボトボと死神は去って行く。

その様子を見送り俺は自分の席に座る。

少し嘘をついたことにおいて罪悪感を覚えるがそれよりも体調面がひどい。

そう言った中で俺は席に座ると

「大丈夫?」

といつも通り矢田先輩が話しかけてくる

「……まぁ、大丈夫です。」

「少し熱っぽい?」

「いや。ただ寝ずに隠れてただけなんで。睡眠不足ってなだけです。」

と心配そうに、いや実際心配してくれているのか

「ただ、今日は少し話かけないでくれると助かります。ちょっとさっきも言ったように頭が痛むので。」

「あぁ。うん。」

と俺は前を向く。すると死神がいつものように授業を始める

ただ今日の俺はいつも通りにする余裕がなく

ただ授業も集中しきれなかった



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悪夢

人に弱みを見せる行為

俺はその行為をひどく嫌う

本当はそれが当たり前なのに

誰かに助けてもらうことを拒む

いつからこんな生活を送ってきたのだろう。

知っているのに覚えてるのに気持ちが悪くなってくる。

自分の中で拒絶し無意識に助けを求めている。

助けてほしい

たった一言言えばいいのに

その一言が言えなくて

自分で自分を傷つける。

そんな俺が嫌いだ。

 

体育の時間教室の近く俺は木陰で休んでいた

他人を欺くには大雑把で大胆な行為が必要だ

特に死神と言われる暗殺者から逃げる時

俺は潜伏先に死神の拠点を選んだ

灯台元暗しと言う言葉の通り

基本逃亡者は暗殺者と分かっているのに会話することはない

でも俺はその逆の戦法をとっていた

身近に潜み暗殺者のように動揺や怯えを伝わらないようにする

そんな演技が昔から得意だった

演技力

それが俺が生き延びている最大の武器

だから俺は死神が暗殺に来たときに宿屋を偽り死神に住食寝の場所を提供し

死神と同じように身近に暮らしていた

だから今回も同じように死神から逃げるため至近距離に隠れる

一応窓や校庭から視界になるような場所を選んだので大丈夫だろう。

「……一応昼休みにトラップは仕掛けてきたし大丈夫だろうな。」

今死神は山に俺を探しにいっているが案の定トラップに引っかかり時間稼ぎをできている

あの調子じゃ多分六時間目まではこっちに戻ってこれないのであろう

俺はポケットの中から睡眠薬と精神安定剤を取り出し自分の口に入れさっき容器に入れておいた水道水で流し込む。

即効性のある薬ですぐに眠気が訪れる

そして目を閉じる。

目を閉じるとどこからか幼い声が聞こえる

周りは真っ暗で誰もいない

しかし聞き覚えのある声だった

お兄ちゃん

もう何年ぶりにその声で呼ばれたのであろう

「……佳奈?」

すると視界が明るくなりその姿が見える

そこには泣きながらボロボロになった佳奈が貼り付けになっている姿だった

「……」

その姿を見て俺は息を呑む

鞭や平手で青あざになった姿

痛々しい火傷痕

どれだけ耐えてきたのであろうか

あの写真のように痛めつけられた佳奈の死体が目の前にはあった

「……あぁ。」

そんな声が漏れる

どれだけ拷問を受け続けても決して俺のことを話そうとはしなかったらしい

夢だとわかっていても涙が出てくる

この夢はもう何回目だろう

悪夢が俺を絶望へと陥れる

「康太。」

今度は優しいそうな聞き覚えのある声が聞こえる

もう誰だかわかっている

夢は自分の思い通りには動いてくれない

見たくないのに視界にその人は現れる

そして同時に触手により腹部を致命傷あぐりさんの姿が

声ももう出ない

あげる言葉はない

しばらくすると視界はまた暗くなり闇が広がる

それなのに二人の声が聞こえる

どこか何か届けようとする声

でも聞く気にはなれなかった

「やめてくれ」

暗闇の中で呟く

もう何回目だろうと呟く

怖くて仕方ない

生きることも死ぬことも

俺にとっては怖くて地獄のように感じる

もうやめてくれよ

やだよ

もう嫌なんだ

俺が何をしたんだよ

なんでこんな目に合わないといけないんだよ

俺が生きているってそんなにダメなことなの?

何もしてないのに、ただ俺は好きなことを調べていただけなのに。

危険だと忠告していたのに勝手に人の研究を使われて、国から裏切られ、家族は全員殺された。

俺ってなんで死なないといけないの?

なんで佳奈は、あぐりさんは死なないといけなかった?

目が熱く水滴が流れる。

俺がいたから?

答えは返ってこない

「羽川君。」

するとそんな声がどこからか聞こえてくる

「来るな!!」

俺は叫んでしまう

もうこないでくれよ。

もう大事な人が死ぬのは嫌なんだよ

もう俺に関わらないでくれよ

嫌だよ

もう嫌だよ

もう嫌なんだよ

優しくしないでよ

俺なんて生きてても意味がないんだから

大事な人が増えるのは嫌なんだよ

嫌だよ

一人になるのは嫌なんだよ

それなら一人にしてくれよ

最初から一人でいれば俺だけが苦しめばいいから

失うのが怖いんだよ

来ないでくれ

……助けて。

 

「羽川君!!」

気がつくとそこには矢田先輩が顔を真っ青にして俺の肩を揺らしていた

えっと確か烏間先生が担当の体育の授業だったからすることもないので木陰で休んでいたんだっけ。

息が切れさっきから制服が濡れている

「……あれ?」

目から涙が止まらない

でもそれはいつものことだった。

精神的にも追い詰められている時に起こる悪夢。

でもそのことよりも俺は焦ってしまう

……やばい

冷や汗が止まらなくなる

よく考えたら授業中どこかいったら誰かが探しに来ることは予測しとくべきだった

初めて弱いところを見られた

その事実が俺を絶望へと追い込む

弱みを見せることはターゲットが一番やってはいけないことだった

体の体温が冷え込み寒気が止まらない

おかげで体が震えて思い通りにいかない

ダメだ逃げないと

立とうとすると体に力が入らない

するとその拍子にポケットからさっき飲んだ錠剤の薬が落ちる

「……」

まずい。と思った時には遅かった

薬を拾おうとした矢先、矢田先輩が先に拾われてしまう

矢田先輩がその表記を見ると驚く

「…羽川君これって睡眠薬じゃ。」

「……」

どうして知ってるのか

俺はそういう考えを起こす前に全身が脱力してしまい座り込んでしまう

終わった

そんな気分だった

恐怖で震えが止まらなくなる

殺される

今の自分には回避をとることができない

その一文字が浮かび上がる

「羽川君」

その一言に俺は息を呑む

声は出ない

体はゆうことを聞かない

矢田先輩が近づいてくる

たった一歩

その一歩に恐れてしまう

演技力もこうなったら意味もなくなる

なるようになるしかない

すると矢田先輩は俺の隣に座る

その瞬間目をつぶる

死の恐怖が襲ってくる

「これ使って。」

矢田先輩の声が聞こえてくる

目を開けると可愛らしいピンクのハンカチを差し出してきた

「……へ?」

自分でも腑抜けた声だったと思う

どうしたらいいかわからずに俺は呆然としてしまう

矢田先輩は笑顔で仕方ないなと言いながら俺の顔をハンカチで拭く

多分涙を拭き取っているのだろう

「あ、えっ。」

どうしたらいいのか分からない

ただなるようになるしかなかった



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弱み

「あの。」

しばらくたって冷静さを少しだけ取り戻す

「どうしたの?」

「えっと授業始まっているんじゃ。」

とどうでもないことを聞いてしまう。すると矢田先輩は

「授業さぼっちゃった。」

と笑顔で言う。その笑顔に少しだけドキッとしてしまう

クラスで人気のある女子と聞いて少しだけ納得してしまう

こういう優しいところが彼女の魅力なんだろう

「でも羽川君がこんな状態でさすがにほっとけないよ。」

本心から心配する声に俺は少しだけ泣きそうになる

優しい人は嫌いだ

……本当に嫌いだ

助けを求めそうになるから

助けてほしいと願ってしまうから

裏切ることを躊躇してしまうから

「……えっと私からもいいかな?」

「……はい。」

「そのさっきのことって殺せんせーは知ってるの?」

俺は首を横に振る

「そっか。」

「すいません。お見苦しいところを。」

「ううん。いいよ。全然。」

「すいません。あの。」

「言わないから安心して。」

俺の言いたいことがわかったのか矢田先輩は先回りして言う。

「……ありがとうございます。」

そうしてまた少しの間無言になる

でも今でも矢田先輩のことが少しだけ怖い

自分の弱さは今まで誰にも見せてはこなかった

それに優しい人はすぐに裏切る

そんな経験が俺を支配してしまっている

「そういえば、あの薬なんで睡眠薬って分かったんですか?あの薬はアメリカでしか出回っていないはずですよね。」

すると矢田先輩は驚いたようにこっちを見る。

「知ってたんだ。」

「……元々は俺が開発して睡眠薬なんで。」

「……えっ?」

矢田先輩が驚く

「……アメリカ政府に体に影響を及ばない強力な睡眠薬として生活費と借金の返済のために売った知識に一つなんです。元々は俺の睡眠不足のために睡眠剤として使ってたんですけど。」

「そ、そうなんだ。」

「でも日本ではまだ政府は認めていないはずでは。」

「……私の弟に勧められた薬の一つなの。」

すると矢田先輩が少しだけ悲しそうに言う

……そうだ。矢田先輩はテストを容態が急変した弟さんの見舞いにいったからE組に落ちたんだった

「すいません。」

「いいよ。それにどう見ても羽川君の方が。」

そう。分かっている

生き延びている代償に俺は多くのものを失っている

その中でも一番危ないのは健康面だ

特に精神面に関しては無茶しているので睡眠不足や食欲不振はしょっちゅうおこっている

「……本当は怖いんですよ。」

「……えっ?」

「殺されるって本当に怖いんです。誰も信用できなくて、でも弱気になんかなれなくて。」

狙われる恐怖心を今でも味わっている

「だから優しい人が怖いんです。弱さを受け入れてしまったらもうその人には少しでも油断してしまうので。そして優しい人ほど裏切りやすいから。」

醜い世界で俺は生きている中で純粋な優しさを持った人は今まであの姉妹しか見てこなかった

全ては自分の欲のために俺という人間は生き抜いてきた

利用され利用し

騙し騙され

自分が生きているってこと以外信じないで生きてきた

「だから正直殺されると思ってました。あの時。」

今でも思い出せる

あの時の恐怖は本当に計り知れなかった

「本当はこういった明るい場所が苦手なんですよ。俺は薄汚い世界で怯えながら生きてたんですよ。だから悪夢を見たり、あぁいったパニック障害が起こることも多いんです。」

「病院にはいかないの?」

「……病院も俺からしたら危険な場所なんですよ。一度睡眠障害で毒を薬と言って渡してきたのがトラウマになって。この睡眠薬も自作なんですよ。」

その言葉に息を呑む矢田先輩

「一応俺だって中学生なんですよ。そんなに精神的に強いわけじゃないし。」

まぁ、俺はある仕掛けを使って身体能力を上げている以外は他の誰が見ようとも普通の中学生だ

「…元々は臆病で怖がりで……いや今でもか。怖がりで臆病だから生き抜いてきたんです。だからこんな隙を見せる事なんてそうそうないんですよ。」

未だ体に力が入らない。六年も緊張感を切らさずにいたのだ。多分もう二時間は動けないだろう。

「……これが本当の羽川康太という人間なんです。強いから生き延びているんじゃなく弱いから生き延びられる。それがターゲットの、逃げる時の基本なんです。」

優れていてさらに弱くなければならない

相手より優れているが相手より弱くなければならない

多くの人が矛盾だと答えるだろう

でも弱さを知っとかないと

相手より弱いと思い込まないと俺は今まで生きてこれなかった

「相手は一度殺せばいい。俺は一度殺されても致命傷を負っても死にますから。」

その一言がとても重たく辛いことだ

「……すいません。聞いてていい話じゃないですよね。」

「ううん。いいよ私が聞いたんだから。」

……本当に優しいよなこの人

気遣いもできるし、それにどこかあぐりさんと似ているような気がする

だから安心できるのかもしれない

多分本質も性格も好きなものも全然異なるだろうが

それでも、どこか似ている

「……あの、すいません。もう少し話を聞いてくれませんか。」

だから俺は無自覚で矢田先輩を引き止めていた。いつもなら優しい人を遠ざけようとしていたのだが、もう少し弱音を聞いてほしかった。一人になるのが嫌で。

気付いた時には矢田先輩は少し驚いたような顔をした後

「うん。いいよ。」

と笑顔で答えた。



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殺し屋

いつから俺は人を信じられないと思ってしまっただろうか?

人は醜いと思うようになったのはいつからだろう。

そんな日々を暮らしている。

誰からも逃げ距離感を保ち、人を怖がり自分を隠している。

元々復讐のためにきたはずなのに

自分の本心が出てしまっている。

俺は一体何がしたいんだろう?

俺はどうしていけばいいんだろう?

俺は一体何者なんだ?

 

五月

死神の暗殺期限まで後11か月

今日は新任教師がくるらしい。

まぁ十中八九殺し屋だろう。

つまり俺にも安全な場所がなくなった訳だ。

どんどん精神をえぐってくる。

「……学校も安全な場所がないってことか。」

今までは学校にいる時は殺し屋に狙われなかった。

銭湯とか必要最低限の行動をした時もなぜか減っている。

先週までは増えていたはずなのに

なんでだ?

……死神のせいでもない。

多分国家の仕業でもない。

っていうことはまたあいつが仕向けて来るのか。

多分リベンジしにきたんだろう。

俺の情報を探り。

俺の位置を特定し

殺し屋に聞き出すやつは一人しかいない

少しだけため息をつく。

まずは今日やってくる殺し屋だ。

油断しては殺される。

すると黄色いタコみたいな生物と金髪の女の人が歩いて来る。

そして脳内の中から一人だけ候補を見つける。

死神にベタベタしたことから、接近または色仕掛けに優れて最近成果を上げているのは

「イリーナ・イェラビッチか。」

 

「おはよう。羽川くん。」

俺がHR終わって教室に入ると矢田先輩が話しかけてくる。

先週あんなことあったから話しづらいんだけど

「おはようございます。」

「そういえば今日あたらしい先生がきたんだけど。」

「イリーナ・イェラビッチだろ?さっき屋根上で見えたし。」

するとクラス全員が反応する。

「羽川知ってるのか?」

「もちろん。殺し屋の多くは頭の中に入ってる。色仕掛けのスペシャリスト。過去に11件の仕事の実績を持つプロの殺し屋。」

その一言に全員が息を飲む。

「ついにきたか殺し屋の先生。」

「……あぁ。」

「ついでに色仕掛けを受けた先生どうなっていた?俺はその一点が知りたいんだけど。」

「えっと。普通にデレデレだったよ。」

その一言に少し考える。

へぇ〜あぐりさんがいるのにデレデレだったのか

あかりねぇはあるところがまな板みたいにペッタンコだけど、あのあぐりさんはメロンみたいだからな。

まぁどこがとは言わないが

「……」

……あかりねぇが後ろからプレッシャーをかけてくるのが分かる。

何?エスパーなの?

って言っても幼馴染だから分かるって言いそうだな

振り返るとあかりねぇと目線が合う

すると今まで見たことないくらい笑顔だった

どうやら機嫌が悪い

あっこれ本気でまずいやつだ

「茅野どうしたの?」

「ううん、なんでもないよ。」

うわぁ。凄く休み時間になってほしくない

冷や汗が垂れてきて軽く寒気を覚える

「……どうしたのこうちゃん?」

「…いや。軽く死刑判決を受けたんで。」

「???」

倉橋先輩が不思議そうにこっちを見るが俺はため息をついてしまう

「後そのこうちゃんやめてください。」

「え〜。」

「……はぁ。」

「どうした?羽川。」

「いや。こんな日常に慣れつつあるなぁって思いまして。」

なんかこののんびりした雰囲気に流されつつあるけど俺ターゲットだよな

「そういえば羽川もターゲットだったな。」

ほら忘れられてるし

「てか殺し屋が来ても大丈夫なの?こうちゃんは。」

「ん?色仕掛け専門だからな。俺あんま巨乳には興味ないし。てか綺麗なバラほど棘があるもんだ。優しい人ほど裏があるとかよくいうだろ?表に見せたいのは自分の中理想像で基本は腹黒いんだよ。人間って生き物は。」

「お前何歳だよ。」

と前原先輩に言われるけど

「そりゃ。ターゲットだから色々な人から逃げまくってましたし。」

「……そりゃ。そうか。」

すると前原先輩はため息をつく

「……まぁ、結論からいうとあの人には何か棘がある。それも猛毒のな。気をつけたほうがいいですよ。」

そういうとクラス全員が頷いた

 

俺が昼休憩にいつもの位置で寝ていると、サッカーをしているクラスメイトと死神の姿がいた。

「……」

正直羨ましいと感じる。

殺される可能性があるのに楽しめる余裕がある。

俺にはないのに

生きるのに必死な俺はため息をつく。するとスマホからバイブが三回

……奥に3人いるな

多分殺し屋の仲間に近い。

しかも全員男性だろう。

別にほっといてもいいけど生徒を脅しつける可能性が高い。

よし、殲滅しようか。

するとイリーナが出てきた。

このチャンスは見逃したらダメだろう。

とりあえずミッション開始。

素早く校舎を抜け俺は山道へ向かう。

すると1分もせずにその3人は見えてきた

ヒゴ、ウエシマ、テラカド

……別に今の所何もしてないけど眠らせるか

あらゆる気配を消し普通に歩く。

自然に

後ろから

そして特製の薬品をウエシマに吸わせる。

すると効いたのか膝をつくウエシマ

「おい。どうした。」

次にヒゴ、テラカドの口にハンカチに含ませた薬品を吸わせる。

「おやすみ。そしてさようなら。」

俺が言った途端意識を失う。

象でも倒れる眠り薬だ。

今日一日は眠ったままだろう。

これでミッションコンプリート。

縄で3人を縛り片手で持ち上げる。

そしてまた学校に向かう。

全くあいつは何を考えてるのかわからない。

そしてグラウンドにつくと潮田先輩とイリーナがキスをしている。

……

俺はゆっくり後ろから近づき潮田先輩を離した瞬間に口にハンカチを当てる。

「ふぐ!!」

「気づかなかったね。イリーナ・イェラビッチ。」

口を塞がれもがくイリーナ・イェラビッチ。

「……えっ?」

「羽川くん?」

「潮田先輩大丈夫ですか?」

俺が言うと潮田先輩は頷く。よかった。気絶はしてないらしい。

するとイリーナは前方に倒れる。

多分もう一日は起きていられない。

「…ふう。」

「……羽川、一体何を。」

「気配を感じさせないように近づいて、睡眠薬を吸わせたんだよ。そこの3人も同じようにな。なんか嫌な予感してたから、監視カメラが人を見かけたら俺に伝わるようにしてたんだよ。一応理事長からも学校の関係者以外は排除してもいいっていわれてるし。」

するとみんなが納得している。

「でもビッチ姉さんは?」

「一日寝てるけどその程度。俺は殺すことだけは絶対にしないから。」

「……そうなの?」

「殺さないよ。相手が俺を殺しにこようとも、どんだけ悪いことをしようとも殺さない。てか今までも殺したことは一度もないぞ。」

するとみんながホッとしている。そりゃうちのクラスに人を殺したひとがいるのは誰でも嫌だろう。

でもいくら死地に陥ろうが一人も殺したことはないけど

「でも、自分の知らないところで自分の大好きだった人が、政府が悪用した俺の研究で殺されたことはある。」

するとみんながこっちを見る。

「えっ?」

「それは殺したことに入るんだったら。俺の技術によって何人もの命がなくなってるさ。俺が知らないところで。」

「……」

それは現実だ。

死神はこのスキルで人を殺している。

別にそれは責めない。

せめてはいけないのだ。

自分が作った触手で人を殺す。

兵器として使われたのだ。

「……」

ダメだ。これ以上は。

「……悪い。忘れてくれ。」

俺は後ろを向ける

話したらダメだ

甘えたらダメだ

逃げることになる

これは俺が受け止めないといけない

「……ちょっとこいつら職員室で烏間先生に届けてくる。」

だから逃げた

この状況から

それが最悪の選択肢だとわかっているのに 



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一流

「あ〜もう。」

さっきからタブレットをバンバンしてるけど

「ププ。」

「イラっ」

「イラついてるなぁ。ビッチ姉さん。」

「先輩イラつかせてるんですよ。」

「……羽川くん一応聞くけどなんで?」

「暇つぶし。」

するとプッとクラスの誰かが笑う。

そしたら矢田先輩に睨まれる。

「羽川くん?真剣に答えて。」

「真剣に答えてますよ。…イラつかせることに効果があるんですよ。」

「……どういうこと?」

「赤羽先輩の暗殺覚えてますか?」

「う、うん。たしか殺せんせーにダメージを与えた。」

すると言葉を止める。

「もしかして羽川くん、わざと怒らせているの?」

「もちろんですよ。」

俺が笑う。

「えっと、なんで?」

「殺す方も殺される方も自分のペースを崩したらダメなんですよ。あのババァの取り柄は色気、美貌。でも先生に通用しても俺と烏間先生には通用してないでしょう。ってか元々は男を殺す暗殺者。どうやったら自分を美しく、綺麗に見せるのかも。ババァもその部類に入りますが…暗殺者の中で一番綺麗だったのはマナフィーさんでしたね。」

「マナフィー?」

「ちょっとあんたマナフィーに会ったことあるの?」

ガタッとババァが少したじろぐ。

「ビッチ姉さん?有名な人なの?」

「ビッチ姉さんいうな!!元接近暗殺者の一人で私たちの業界では有名な人よ。暗殺成功人数は150人を越えているわ。」

「「「えっ?」」」

「はい。ってか基本俺が相手してきた殺し屋は数100人以上暗殺成功したことのあるビッグネームばっかりですよ。マナフィーさんもその一人です。……ってか子供に色仕掛けに優れている暗殺者を送り込むって。」

「……マナフィーさんって暗殺失敗したことが二度しかないっていってたけど……そのうち一人はあんたなの?」

「二度とも俺ですよ。あの人俺の暗殺二度失敗してますから。」

「……」

イリーナは少しありえないような顔をしていた。

「そういえば、授業しないんだったら先生と変わってくれませんか?あいにく自習っていうのも暇なんですよ。」

「はぁ?」

「羽川くんは少し黙ってて。でも私たち今年受験なので。」

「あんたたちあの凶悪生物に教わりたいの?」

ゴトっとイリーナはタブレットを置くけど

「それがここじゃあ普通なんですよ。文句があるんだったら出ていってくれませんか?」

「……あんたもあの怪物の方なのね。」

「そうですね。政府から追われてるので。」

「へぇ〜。じゃあそこの落ちこぼれたちの味方なんだ。地球の危機っていうのにガキたちは平和でいいわね。」

あっこいつ簡単に地雷踏み込んだ。

周囲の温度が下がっていく。

……はぁ仕方ないか

教室を見回すと冷静な先輩が一人いた。

その先輩は怒った様子はなく

ただ周りの様子に困っている

……ちょうどいい機会か

俺はこっそりその先輩に近づく

「潮田先輩。ここは危険です。少しの間教室から出ましょう。」

「…えっ?」

「烏間先生がいるのでそこまで。後ろのドアは開けとくので後ろから出てください。」

俺は気配を消しこっそり素早く出ようとする。怒りの矛先はイリーナに向いているから気づかれないだろう。

こっそりと外に出ると烏間先生は気づいたらしい。

「羽川くんどうした?」

「いや、大事になってきたから逃げ出してきたんですけど……」

「そうだな。」

すると消しゴムを投げ込まれて一斉に殺気は強くなる。

「こりゃ、ダメだ。学級崩壊しますよ。」

「……全くなにやってるんだあいつは。」

「まぁ、まだ20歳の殺し屋ならあんなこと起こりますよ。失敗経験が少ないのもそうですが、プロとしてのプライドが邪魔をする。」

「……君はこうなるのがわかっていたのか?」

「はい。わかってました。」

教室ではついに文房具などが投げ込まれ始めている

「確かにイリーナはプロの殺し屋。だけどプロなだけで一流ではないです。一流の暗殺者ならこんなこと起こりませんので。」

「……」

「一流とプロを勘違いしたら痛い目にあいます。プロにも一流とその他がありますから。」

俺はただ笑う。

「まぁ、化ける時は一瞬ですから。」

「……」

「それを気付けるかはあの人次第ですよ。それじゃあ少しふらついてきます。」

もう授業にならないから別にいいだろう

俺は次の授業が始まるまでふらふらとサボりを決行した



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教師

イリーナがなんやかんやでクラスから認められて数日後

「さて、始めましょうか」

分身した死神を見て俺も含めて全員が思った。

……何を?

「学校の中間テストが近づいてきました。」

「そうそう」

「こんなわけでこの時間は。」

「高速強化テスト勉強をおこないます。」

「……」

そういえば中間テストが近かったな。

俺は少しため息をつく。苦手科目はほとんどないのであまり関係のない。

適当にすませるか。

「羽川くんは矢田さんを教えてください。」

「……」

俺は少し固まる。

「……なんで?」

「羽川くんにはこの程度の問題油断しなければ大丈夫でしょう。最近羽川くんと矢田さんは仲がいいので。」

「……」

確かにそうなのだが。

「矢田先輩は先生じゃなくていいのか?」

「えっ?大丈夫だと思う。羽川くん教えるの上手いから。」

「じゃあ私も受けたい!!」

すると倉橋先輩が手を挙げる。

「にゅや?倉橋さんもですか?」

「うん。こうちゃんの方がわかりやすいし。丁寧だから。」

「……」

「おい。先生珍しく5秒間ぐらいフリーズしたぞ。」

こいつが固まることなんて滅多にないのにショックで固まっているし

「……そういや。羽川くんってどちらのテスト受けるんですか?」

死神がガクガクしながら俺に話しかけてくる

「ん?中三年の受けるよ。今頃中二の問題とったって簡単すぎるし。」

「まぁ、幼稚園児で高三の問題を解く天才少年でしたし。大丈夫でしょう。」

「……ねぇ。羽川くんって本当に何者なんだろう。」

矢田先輩が不思議そうにしている。

「……まぁいいでしょう。」

「いいのかよ。マジか。」

早く帰って寝るつもりが

まぁいいか

「……そういや。授業中もこれやんの?」

「はい。試験範囲まではもう終わらせてあるので。」

「はいはい。了解。」

まぁそれなら

「過去の小テスのプリント明日持ってきてくれないか。どうせ先生の授業まともに聞いとけば基礎はできているはずだし。苦手なところに集中させるから。」

「うん。いいけど。」

……まぁ後は妨害なんだよな怖いのは

理事長の主義は冷徹な合理主義

5%の怠け者と95%の働きものを作るために作られたのがこのE組

そこまで上手く行くかなと俺は少しだけため息をついた

 

「……おい。なんでこんなに増えているんだよ。」

俺がいつも通りHR終了後に入るとそこには大量に増えた死神の姿があった。

「さらに増えてみました。」

「うざい。暑苦しい。面倒臭い。」

「……本当羽川くんは先生に厳しくないですか。」

と言っても

「だって本当のことだし。」

「……」

「はぁ。まぁいいけど。一つだけ忠告。……速さだけじゃ解決できない問題だってあるんだぞ。」

すると死神はビクッと反応する

「……なんか心当たりがあるらしいな。誰かに同じことでも言われたか?まぁ誰だっていいけど。でもそれは事実だ。速ければいいってもんじゃないんだよ。それだけ覚えとけ。」

俺はそれだけ言って席に着く

まぁ、どうせあの理事長のことだろうけどな。

元々俺と理事長は結構話の合う部類だ。

しかし根本的な違いがあるとしたのなら

理事長の強い者を作るっとした主義だけは理解ができない

弱者には弱者のいいところがあるって点だ

それを見失っているようじゃ悲劇は繰り返される

……まぁ、本当に弱者の憎しみほど怖いものはないしな

それにこれで明らかになったしな

浅野理事長の妨害があるって

……まぁ、少しくらい痛い目にあった方がいいだろ。

はぁ、本当に面倒臭いな

「……それで担当はどうするの?俺は昨日と同じ矢田先輩と倉橋先輩に教えればいいのか?」

「……いえ。今日は全員私が教えます。」

「ふ〜ん。その状態で教えられるほど教師ってもんは甘くないと思うけどな。」

俺は少しだけ笑い

「まぁいいや。そんじゃ今日俺は帰る。ぶっちゃけ今のお前に教わることなんて何もないしな。ぶっちゃけ時間の無駄だし。」

「ちょ、羽川くん。」

「今のお前、本当に何がしたいのか分かんねぇんだよ。一旦頭冷やせ。」

俺はカバンを持って教室から出る。

力んで焦って何かに執着している

そんなお前に今教えられることなんて何もないんだ



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一学期中間考査

中間テストと期末テスト

俺は特別留学生ということで理事長室で受けることになっていた

「羽川くん準備はいいかい?」

「いつでも」

「じゃあ開始。」

俺は解き始める。結構難しそうだが俺にとってはかなり昔に解いたのを思い出すだけなので一回思い出せたら後はスラスラ解ける。英語はアメリカに身を潜めたり殺し屋と話したりするときに覚えたし数学、化学に限ったら自分の得意分野だ。そして解き始めてから20分ほどで全教科のテスト問題を解き終わる。

「……」

「大丈夫。全問正解だよ。」

理事長先生の言葉にホッとする。

ペンを置き息を吐く

「相変わらず君は素晴らしい。」

「そりゃどーも。」

テストに浅野理事長は丸をつけて行く

「でもこれはさすがにまずいでしょ。試験範囲と全く違うじゃねーか」

俺が解いていてすぐに気づいた

全くやってないところだと。

「よく見てください羽川くん。試験範囲は二日前に追加されただけですよ。ちゃんと本校舎の生徒には私が教えましたし。」

「……へぇ〜。」

「なんですか?」

「いや。案外教師としての腕を勝っているんだなって思って。」

俺は少しだけ笑う。

「俺だったら復習だからって前回のテストの応用問題をだしてあんたの案は次の期末まで待機していたな。」

「……」

「そうした方が確実に2回A組や本校舎組が勝てる。そして2学期のプレッシャーもかけられる。」

浅野理事長は凄腕の教師だ。なんでもできるが。直前の勝負に凝りすぎて次回のことを考えてない。

「……本当に君はすごい。私の足りないところはを全部持ってる。」

「そりゃどーも。」

「確かにそれでもよかったかもね。でも確実に勝てるとは言い切れない。」

「まぁ、そうだろうな。でも今回こんな問題にしたら次回が苦しくなるだけだ。それなら美味しい蜜を吸わせておいて最後に逆襲したほうが面白いだろ。」

浅野理事長はキョトンとする。

「それに今のやり方だったらいつかは破産する。強者が強者でいられるのが難しいってあんたならわかるんじゃねーの?」

「……」

「速さは完璧な教師も、殺し屋からどれだけ逃げられた実績のある生徒も弱点は必ず存在する。絶対完璧なんてないんだから。完璧に見せるしかない。どんだけ弱いことも隠し続けるしかない。あんたの弱さはそのことがわかってないんだ。理解してるつもりでも、理解できていない。」

「……私にここまで言った生徒は初めてですよ。」

「まぁ理事長に刃向かう生徒いや先生でもいないだろうな。でも」

「だからこそ面白い。」

浅野理事長に先に言われてしまう

「でしょう?」

「正解です。あなたと俺は敵同士だからこそ面白い。そして強くなれる。違いますか?」

「……味方通しでも面白いとは思いますけど。」

「そうかもな。でも今の関係も嫌いじゃないだろ。」

「そうですね。」

浅野理事長が笑う。

「まぁ。こういった会話が楽しいから時々遊びに来るんだよなぁ。」

「私も嫌いじゃないですが…だからこそ君にには生きてもらいたいんですよ。」

「まぁ善処する。」

「そこで素直にわかりましたって言わないところが羽川くんらしいですね。」

「そうだな。」

と俺と理事長は笑う

「まぁでもまた遊びにくるよ。暇だったら。」

「そうですね。こんどは最上級ステーキでも食べながら話しましょうか。」

「……まぁ、期待しとくよ。生きてればの話だけど。」

そうやってあくびをする

それ以降は何もせずただ自分たちのするべきことをやっていた

 

「……」

教室内が静寂に包まれている。

それもそのはず。

中間テストの結果は惨敗だったからだ。

俺はため息をつく。

やっぱり妨害が効いた。その一言。

「……見事にやられたね。」

「……」

「まぁ、元々あんたが入ってきてから理事長先生は気づいてた。このクラスが変わってきてることに。それに理事長先生の言うことだって正直正論だ。追い上げ必要なときだってあるし、試験範囲が変わることも事例があった。」

「羽川くん何が言いたいんですか?」

「……あんたはこの学校を、理事長を舐めてたんだ。甘く見すぎていた。違うか?」

「……」

反論も言い訳もしてこない。

「無言は肯定とみなすぞ。普通敵として同程度だと思っていたんじゃねーの?違う。スペックは確かにあんたの方が上だ。でも実績と経験は明らかにあっちの方が上だった。総合力であんたは負けてたんだ。」

先生として、まだ始めて数ヶ月

「お前はなんで理事長に勝てると思っていたんだ?あんたは教師という仕事を舐めすぎだよ。スピードさえあれば、触手さえあればこのシステムに勝てると思ったのか?」

「羽川!」

「事実だろ。事実でその結果がこれだよ。全ては結果が全てだ。どんだけ汚いことをしようが、卑怯なことをしようが全てはこの5枚の紙切れ。たった五時間で決まるんだ。それであんたは負けた。よかったな。これがテストで。自分のことじゃなくて。もし見限った相手が暗殺者だったら。あんた死んでるぞ。」

ギリギリと歯ぎしりの音が聞こえる。悔しいだろう。そうその悔しさを次に活かせばいいんだよ。

「……まぁ、説教はこれくらいにして逃げるのも立ち去るのもてめぇの勝手だけどよ。まだやることは残ってるからそれが終わってからにしてくれるか?」

「やることとは?」

「……頑張ったやつもいるから褒めてやれよ。赤羽先輩と茅野先輩の点数を見てみたら。」

「……はぁ。なんか羽川に全て計算されてるようで嫌だけど。」

赤羽先輩とあかりねぇがテストの答案を持ってくる。

 

赤羽業   合計点数 494点 学年5位

 

茅野カエデ 合計点数 493点 学年6位

 

「「「はぁ?」」」

「どう。ちゃんとあんな不利な中でもクリアしたやつはいるんだよ。」

「俺の成績に合わせてさあんたが余計な範囲まで教えたからだよ。」

「私もそんな感じかな?」

「まぁ、そんなところだ。まぁ俺も一応。」

とテスト用紙を出す

 

羽川康太  合計点数 500点 学年1位

 

「「「「はぁ?」」」」

「別にこんなテストなんて習っていれば余裕で解ける。ぶっちゃけいうとお前らでも8割は解けた可能性はあるぞ。一応こいつの授業で触れた範囲だったし。」

実際のところ解き方に触れてなかったのはたった二割だった。

「……まぁグチグチ言ったけど伝えたいことはそんだけ。後は勝手にやってろ。」

俺は手のひらをふらふらとふり教室を出る

いい加減気づけよ

俺たちの道具じゃねーだぞこいつらは

……はぁ。本当嫌になる

裏切ることが分かっているのに

もうこの教室が好きになっていることに

 

自分は最低であってもいい。

卑屈で最低だけど

理解してくれる人がいれば

それを認める人がいればそれでいいじゃないか

敗北は糧になる

失敗は成功の元

よくそういうじゃないか。

俺だって間違える。

でもあんたには見てくれる人はいるんだぞ。

間違ってたらそれを指摘する仲間がいる。

自分だけで抱え込むな

あんたもそうだろう。

俺とは違って

でも逃げたらダメなんだ。

見ろよ。死神。

このクラスが変わりつつある。

最初は暗かったのがどんどん明るくなっていく。

俺だって少しどころかかなり変わった。

でも、いつかは俺の過去にもあんたの過去を話さないといけない時がある。

その時

このクラスは一つでいられるのか? 



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修学旅行

俺が学校に入ると教室内がざわめいている

「……ん?」

どうやら楽しみ、高揚などの主に良い気分になっている方が多いだろう。

「……?」

「どうしましたか?羽川くん。」

「いや。なんかこれから行事あったかと思ってな。みんなテンション高いし。って先生おはよ。結局残ることになったんだ。」

「えぇ。見事にカルマくんにやられました。」

まぁ赤羽先輩なら俺が挑発した意図に気づいているだろう

「んで。なんでこんなにテンション高いんだよ。テスト明けで浮かれているのはわかるけど。」

「……そういえば、羽川くんはどうするのか聞いていませんでしたね。」

「ん?」

「羽川くんは修学旅行どうするんですか?」

「……修学旅行?……何それ?」

俺がいうと全員がこっちを見る

「えっとクラス全員で旅行に行くんですよ。」

「……そんな行事があるんだ。でも俺いけるの?」

「浅野理事長に聞いてみたところ羽川くんも参加していいということになっている。でも行くかどうかは羽川くん次第ってことだ。」

「……あっそうなんだ。」

急に現れた烏間の言葉を聞いて少しだけ考える

「そういえば場所は?」

「京都ですね。二泊三日の旅行になってますけど。」

「……う〜ん。絶対に殺し屋がいそうなんだけどな。特にスナイパーが。」

すると全員が反応していた

あぁやっぱりいるのか

「それに最近おかしいんだよ。」

「にゅや?何がですか?」

「いや。俺の位置ばれたのに暗殺者が全く現れる気配っていうか。……殺しにくるやつが全くいなくてさ。それはいいんだけど。なんていうか不気味なんだよな。なんか意図的に狙われてないっていうか。避けられているってか。大掛かりな暗殺計画を組み立てられているようで怖いんだよ。」

そう。この2ヶ月全くと言っていいほど暗殺者が俺から現れないのだ。

「にゅや?それなら羽川くんを暗殺するとすぐさま地球を爆破すると防衛省側に伝えてありますからねぇ。」

「……」

お前そんな大事なこと黙ってたのか。

「おや?言ってませんでしたか?」

「聞いてねぇよ。」

「にゃや。失礼。」

やばい。かなりの殺意は湧いてくる

「まぁ、そういうことなら行こうかな。せっかく下山できる少ないチャンスだし。先生がいる前だったら何もできないだろうし。」

「…じゃあ私たちの班に入らない?」

すると思った通り矢田先輩が誘ってくる

「……まぁ。予想はしてましたが。」

それしか選択肢がないっていうか

「そういえば班とかって関係あるの?ってか俺衣服とか最低限しか持ってないんだけど。」

「基本体操服と制服があれば大丈夫ですよ。生活必需品は…」

「あぁ。それは持参する。てかまだ残っているはずだし。」

「そうですか。なら大丈夫ですね。」

「そういや通帳預けてただろ?少しお金下してくれないか?」

「……えぇ。良いですけど。」

「サンキュー。100kほど下ろしといて。ついでに缶詰あったら買って帰るから。」

缶詰は温度で変化することがないから。とある場所に隠しておけるから冬場まで保てるし

「100k?」

「あぁ。10万ってことだよ。俺とある事情で借金は返して今数100億ぐらいは貯金してあるんだよ。」

「「「数百億?」」」

「まぁ、気にするな。……てか狙われていない国に預けてあるだけだから通貨変換とかが大変なだけ。違法ではないですし。てか俺国籍今日本ではないですから。」

元々信用と亡命するために日本から無茶して出たからな。

「まぁ、羽川くんは薬学に優れていますから今の試薬に羽川くんが考えた試薬もあるんですよ。とある国では英雄扱いされてますし。ただ日本政府にはとある隠蔽したい情報があるから追われているんです。」

「……情報?」

「……あぁ。まぁ知らない方がいいぞ。そうすると俺みたいになってしまうしな。」

俺は予防線を張る。絶対不可侵のここだけは絶対に譲れなくなっていた。

「てかお前に話したつもりないんだけど。」

「いや。日本政府の裏データをハッキングしたら色々と出てきまして。」

「お前あれ見たのかよ。」

「……えぇ。」

つまりもう一つの俺の追われている訳も知っているのか。

「それよりも裏データとはなんだ。」

「知らない方がいいですよ。命が欲しければ。」

「同感。」

俺と死神に諭され烏間は無理に追求してこない。

「……まぁ、羽川くん自体には危険はないので安心してください。」

「それお前に言われても説得力ないからな。お互いに賞金首だし。」

苦笑してしまう

「まぁ参加という方針で。」

「はい。それじゃあ班の方は。」

「もう決まってそうだけど。」

「……そうですね。」

「てか選択肢なくね?」

俺は苦笑してしまう

一瞬あかりねぇが残念そうにしていたが

そういや、あかりねぇと旅行いったことってないよなぁ

……この学校中に行けるかな

それと1番の問題なのは事故に見せかけた暗殺だからな

それだけは用心しないと

「そういえば、他のメンバーは俺でいいのか?」

「えっ?多分大丈夫かな。だって。」

「こうちゃんよろしく。」

「……まぁこうなることは予想できてたから。」

と倉橋先輩と片岡先輩

「まぁよろしくな。」

「うん。よろしく。」

前原先輩と磯貝先輩もいる

「あっ。なんか納得です。」

そのほかにいつものメンバーの岡野先輩と木村先輩はどうやら岡島先輩の班らしい。

「……あと俺基本どこ回っても良いんでルートは勝手に決めても大丈夫ですよ。俺京都行ったことないですし。あんまり観光地も詳しくないので。」

それに暗殺の邪魔したってダメだろうし。

「う〜ん。でも羽川って行きたい場所とかないのか?」

「……あんまり。まず何があるのかもわかりませんし。でも名産品が見られるところにいきたいですね。こういったお土産品って安全なものが多いんで買い込んでいきたいですし。」

「えっ?そうなの?」

「はい。物産品とかってその土地の象徴見たいなものなので比較的安全な部類に入るんですよ。一つ問題になっただけで大惨事を生みますし観光地が危険だと判断されるとその地域は危険だと判断されるので。」

「はい。だから私も基本は観光者向けのところで買っています。」

すると死神も頷く

「やっぱ、20万下ろしといて。先生。」

「多すぎませんか?」

「いいじゃん。どうせ使う機会なんて滅多にないんだし。てか使えるかどうかなんて俺らには分からないだろ?いつ俺たちは死んだっておかしくないし。使えるときに使っておかないと。」

そういうと死神は少し考えたようにしているが

「……分かりました。」

渋々頷いた



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安息

「……へぇ〜これが新幹線か。」

俺は初めて見る新幹線に少し驚いていた。

「羽川くんって新幹線は初めて見るの?」

「はい。日本の新幹線はまだ写真でしか見たことなかったです。」

俺は少しだけ楽しみにしていた

死神もいるし、この新幹線での暗殺はほぼ不可能。

それを見て新幹線に乗ることになった。

「……」

ってかここまで俺は一度も学校行事には参加してこなかったからな。

少し楽しみにしてしまうのは仕方ないことだろう

「……ってかあいつまだ駅中スウィーツ買ってるのかよ。遅れるぞ。」

「いや。羽川くんの駅弁の数もすごいけど?」

「だって久しぶりにまともな物食べれるんですもん。さすがに食べれる時に食べとかないと。」

まぁ、駅弁だけで4万使った。

基本は魚介系と地方原産の物ばかりだけど

新幹線に乗りしばらくすると新幹線が動き始める

「……。」

「本当美味しそうに食べるね。」

前の席の倉橋先輩が俺に向かっていう。

「まぁ、まともな久しぶりの食事ですしね。一つ食べますか?」

「えっ。いいの?」

「まぁ、少し買いすぎたような気がするんで。」

「……まぁ、20箱近く買えばそうなるでしょ。」

さすがに苦笑してる片岡先輩。

「……まぁ、食べようと思えば食べれますけど。でもさすがに昼が入らないようになりそうなので。」

「……食べれることは食べれるんだ。」

「食べれますよ。普段そんなに食べられないので。」

とまた一箱完食して次の弁当へ移る

「……羽川。俺ももらっていいか?」

「別にいいですよ。先生の分残してもらえれば。」

「えっ?殺せんせーの分も買ってあるのか?」

「はい。後々愚痴愚痴言われるのがうざいんで。」

「「「あぁ。」」」

するとみんな納得したのか呆れたようにしている。

「まぁ。ついでに甘い物もどうぞ。」

とさっき先生から盗んでおいた駅中スウィーツを差し出す。

「……なんか。緊張感も何もないね。」

「いや。あの先生が俺を殺したら地球爆破するって言っているんですよ。新幹線で死ぬことになればクラス全員巻き込むことになりますので絶対にないですよ。てかそれ程度で先生が死ぬとは限りませんし。それだったら安全策取るでしょうから」

「まぁ、そうだけど。」

「それに殺気がこの新幹線内はないので。」

俺は駅中スウィーツを食べながら苦笑する

そしてしばらくすると次の駅に着くと

「ふぅ。疲れました。」

と死神が入ってくる

「おう。お疲れさん。これでも食って落ち着けよ。」

「にゅや?ありがとうございます。」

と駅弁の寿司を食べていく死神。

そんなゆっくりしながら京都まで新幹線を過ごしていた。



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大事だからこそ

「一日目からすでに瀕死なんだけど。」

「……んで、新幹線とバスに乗ってグロッキーとは。」

と死神はすでにバスと新幹線に酔ったらしくぐったりしている

「……こいつ大丈夫かよ。」

「羽川くんは平気なの?」

「俺は船やバスは乗り慣れているので大丈夫です。」

でも触手にそんな性能なかったはずだけどな

……こいつは何をお願いしたんだ?

その間にも死神はいつものように暗殺されているが成功するとは思えないし

まぁ、それよりも気になるのは

「どう、神崎さん?日程表見つかった?」

「ううん。」

と神崎先輩は首を横に振り否定する。

「……」

俺はただ少しだけ考える。矢田先輩たちと話していたから詳しくは分からないけどあかりねえの班の神崎先輩のしおりが紛失したらしい。

「……」

少しだけ違和感っていうか嫌な予感がする

「どうしましたか?羽川くん。」

「……いや。なんでもない」

少しだけ気が緩んでいたのか全く警戒もしてなかったからな

気のせいだといいんだが

 

翌日

ゆっくり解放感のあるトロッコに揺られながらゆっくりと進んで行く

時速25kmほどのゆっくりとした観光を目的にしたスピードで進んで行く

「……平和だなぁ。」

「そうですね。」

俺と死神はのんびりと八つ橋を食べながら景色を楽しむ

自然に覆われ空気が美味しい中での甘いものは本当に美味しい

それに暗殺者はスナイパーって分かっている分簡単だし

ただ、昨日の嫌な予感が未だに払拭できていない

なんかモヤモヤするっていうか、なんか歯切れが悪いような

そして八つ橋をもう一個取ると急にトロッコが止まる

『鉄橋の上で少しの間停車します。保津峡の絶景が一望できますのでどうぞゆっくりご覧下さい。』

とアナウンスが流れる。

「……」

あぁここだな

すると死神も感覚から分かったらしいそして少しだけ景色から目線を逸らした

そして斜め下を見てすぐに景色に戻る

どうやら銃口を見つけたらしい

……大丈夫そうだな

俺は少しだけ安心する

結局俺はどんなことより死神の味方だ

正直安全でいられる為よりも友人として死神には生きて欲しいし

それに俺はもう

矢田先輩の方を見る

倉橋先輩と片岡先輩と一緒に死神を窓から出させようとしている

……本当に嫌になる

いつか来る別れが本当に嫌だ

俺はこの暗殺教室が終わったら日本から離れないといけない

……はぁ

本当に今俺は何をしたいのかわからなくなる

俺はイレギュラーとして此処にいる

本当は一個下で学年さえ違う

でも

それでもこのクラスが好きだ

先生を暗殺するという異常なことだがそれでも一つの目標に真剣に取り組んでいる

俺はターゲットだ

それでも俺はここに居たいと思ってしまっている

本当今まで以上にターゲットじゃなければよかったと思ったことはねぇよ

俺は少しだけ泣きそうになってしまう

俺は八つ橋をもう一つ食べる

甘くて、あんこの甘みが程よく美味しい

あと何回食事ができるかもわからない

平和な国で生まれてきて平和とほど遠い生活

なんでこんなことに合わないといけないんだろう

そう思いながらも俺は平常心を保ち続ける

辛いことには慣れている。

でも苦しい気持ちは消えない

せめて普通の学生に戻れれば

 

 

…………ん?

 

 

 

普通の学生に戻る?

……ちょっと待てよ。

俺は世間からどう思われているのかと考えよう

……よく考えたら死んだ存在とされているわけなんだろう?

……もしかしてこれチャンスじゃないのか?

一年

されど一年の期間がある

それを復讐のために使おうと思っていたけど

いや。復讐もできて俺の潔白も証明できる方法

俺はメモをポケットから取り出す

そしてペンを取り出そうとした時

「羽川くん何しているの?」

すると矢田先輩が話しかけてくる。

「…何って少し考え事を。」

「もう終着駅だけど。」

「えっ?」

すると考え事をしていたせいですっかり景色も見ずに終着駅までついたらしい

「やべ。」

俺は急いで席を立つ

完全に考え事で頭が一杯になっていた。

そして荷物を持ち席を立つ。

「すいません。ちょっとボーとしてました。」

「ううん。いいんだけど。何考えてたの?」

すると矢田先輩は踏み込んでくる。あの事件以降俺には遠慮がなくなり聞きにくいことでも聞いてくるようになった。

まぁ、どうやら俺が溜め込んでしまう性格だと思っているからだと言っていた

……否定できないけど

俺は少し考えてから

「……今は話すのはやめときます。。今はまだ危険なので。」

「えっ?」

「すいません。でも、いつかは話します。でもかなり危ない橋を渡るので。」

俺が言うと少しだけ矢田先輩は目を伏せる。

「……すいません。でも今回だけは先生くらいしか話せないので。」

「……そっか。」

遠回しで戦力外通告するしているので悪いが今回だけは信用と危険な橋を渡らないといけない

もし足がつくようなら俺は本当に死ぬだろう

でもせっかくの身の潔白を証明するチャンスを逃すわけにはいかないのだ。

この人に隠し事するのは本当に嫌だ

でも巻き込むわけにはいかないから

「……」

気まずい雰囲気が流れる

でも、これだけは言っておきたかった

「心配してくれてありがとうございます。」

とだけ言い俺は出口へ向かった。



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アクシデント

大事な人

それはいつふとした時気づくこと

いつもそばにいてくれる人

俺には二人いる

一人目は幼馴染で明るくいつも明るくやることになると一直線で危なっかしい人

二人目はクラスメイトで優しく気遣うことができ弱さを見せない人

だから迷惑はかけたくなくて

距離を置こうとするのに近づいてくる

そしていつのまにか自分も心を開いてしまって

甘えてしまう

信用してしまっている

会うたびに嬉しくなって

別れる度胸が痛くなる

この気持ちは痛いほど知っている

でも叶わないから

叶ってはいけないから

ただ気づいていても隠し続ける

……隠し通せるとも思っていないのに

 

「……それでさ。」

と昼に入り俺たちは映画村に来ていた

チャンバラショーを見るがお土産屋を見るがちっとも気分が晴れない

「……」

それは矢田先輩も同じらしく、どこか話に集中できないらしい

クソ。どうすればよかったんだよ

俺は軽く舌打ちしてしまう

本当に不思議だ

少し前までは復讐でクラスメイトを使おうとしたのに

今では傷つけたことがこんなにも苦しいなんて

人の心

それを読み取るのは非常に難しい

人との交流なんかは特にだ

本でならどのように考えているのか文字で伝わってくるのに

感情なら読み解く事ができるのに

人の考えだけはよめない

…苦しい

胸が苦しい

そんな俺を気遣っているのか、それとも矢田先輩を傷つけたのを非難しているのか俺に話しかける人は誰もいない

ただそれだけが救いだった

そうして後をついていくとポケットに入れておいたスマホからバイブ音がする

俺はそれを取り出すと死神から通知が一件

 

 

茅野さんと神崎さんが攫われました

 

 

死神からの通知に血の気が引いてしまう

あかりねぇが攫われた?

そして昨日のことを思い出す

神崎先輩がしおりを失くしたのってもしかして

「……羽川?どうした?」

すると前原先輩の声が聞こえる

しかしそんなことはどうでもよかった

俺は息を吐く

その続きにはその攫われたと思しき住所が書かれている

「……すいません。ちょっとの間離れます。」

おそらくかなり冷淡な声だったのであろう。

それを気にせずポケットの中から薬を1錠取り出す

もうなりふり構ってなかった

その薬を一錠飲むと体がどんどん熱くなっていく

そうした中で俺はそのまま全力で飛ぶと屋根の上まで飛び乗る。

そしてその勢いのまま全力で目的地まで走る

……クソっ

いつも以上に体が悲鳴を上げているが気にしなかった

息が乱れ苦しいがたった一つの目的地へ走る

もし昨日のしおりが盗まれたのなら

計画的な犯行かよ

油断していたのが仇となった

俺は死神とは違い警戒している時しか敵意に気づかない

完全に油断している時には普段の人間と同じようにただ体が丈夫なだけの人間なのだ。

……間に合ってくれ

心から願う

そうしながら走ると目的の場所に着く

祇園近くの廃墟

……中から騒がしい声が聞こえる。その中には潮田先輩たちの声もある

そういえばしおりに書いてあったな。仲間が拉致された時の対処法。

……あの百科事典並みに分厚いしおりを持って来ているなんてまさかだと思ったけどこの場合ありがたい

裏口から入るには10人いるか。

俺は少しだけ息を吐く

ここからは一対十

……早く殺さずに潰す

俺はドアを開け見張りの人物に睡眠薬を吸わせるとその後にその近くにいた奴に飛び蹴りを食らわせながら隠し持っていたサイレンサー付きの即効性のある麻酔弾で潮田先輩たちの声がするドアに近い奴を両手打ちで二人に命中させる。これで四人。

声を上げられる前に後は速さで押すだけ

空気分解でき即効性のある睡眠薬を二人に同時に吸わせ近くでその二人に話していた奴を蹴りで蹂躙する。

その間5秒で7人が倒れる

息を止め睡眠薬入りの煙玉をなげそして突っ走り潮田先輩たちがいるドアを目指して走る。

そしてドアを素早く開きそこに縛られた二人の姿と大勢の不良の姿。そして潮田先輩たちの班がいた。

「……羽川?」

すると杉野先輩が俺の名前を呼ぶ

「おい。そこのお前、他の。」

そう言った途端にそいつ目指して俺は麻酔弾を取り出し放つ。

……外す訳ないよな。こんなイージーなもん

そして首元に着弾しそいつは崩れ落ちる

「……お前ら全員動くな。一歩でも動いたらそいつみたいに撃つぞ。」

怒気を含んだ声で言い放つ

「……羽川。一体何を。」

「麻酔弾ですよ。……まぁ、一時間程度しか効かない即効性の高い奴ですけど。」

素早くマガジンに弾を入れかえ俺はその不良どもを睨みつけ

そして素早く側に移動し顎をねらって蹴り上げる

そして脳が衝撃に耐えられなかったのかすぐに崩れ落ちた

「……まぁ。許す気はさらさらないけど。」

「お、おい。てめぇらやっちまえ。」

震え声で命令する主犯格の不良に

「黙れ。」

殺意を最大に解放する。すると周りの不良はひっと声をあげ座りこむやつや泡を吹く奴が多数だった。

そして次の瞬間殺意を一気に消し素早く後ろに回り込み銃口を突きつける

「……先輩たち二人をお願いします。」

俺はあかりねぇと神崎先輩を指をさす

すると頷きすぐに二人の方へ向かっていく。

「……少しでも動いたら撃つからな。」

「……お前もどうせ。肩書きで見下してんどろ?バカ高校だと見下して。」

すると不良がそんなことを言ってくる

そんなことを言われてつい笑ってしまう

「お前そう考えているからバカなんだろうが。いいか?どこの学校に行こうが、どういう暮らしをしようが肩書きなんて関係ねぇんだよ。その人がどう暮らしどのように生きるか。……どんだけ肩書きが良かろうがクズはいるし、肩書きがなくともいい奴なんて多くいる。……どんだけ失敗しても、一度間違えたならまた同じ失敗を繰り返さなければいいんだから。」

「……」

「いいか。最後に一つ言っておくが、お前のくだらない価値観に他人を巻き込むな。」

それと同時に引き金を引く。そして最後の一人も眠りについた。

「……ふぅ。」

俺は軽く息を吐く

すると体に疲れが一気に溜まり少しずつ痛み始める

いつもの症状がくるのが早い

……しかしこれが全部終わるまでは我慢しないとな

とりあえず、神崎先輩とあかりねぇを見ると二人とも無事だったらしく、とりあえずは一安心って感じか

すると

「遅くなってすいません。この場所は羽川くんと君達に任せて…他の場所からしらみ潰しに探してました。」

ちょうどいいところに死神がくる

「殺せんせー!!」

目線が全員死神の方へ集まった瞬間俺は静かに立ち上がり気配を消しながら外へ出るそして数kmを走り俺は静かな人気のない裏道へ出る

……やばいもう限界

「ゴホッ。」

俺は下を向き。熱い液体を吐き出す。

薬の副作用。さっき飲んだ薬は身体強化系の薬品だが副作用に全身の血流を上げることによって血管に負担をかけることになる

それが吐血に繋がり今に至るってわけだ

……そして何リットルもの血を吐き出したんだろうか

全て吐き出したころには服はもちろん、周り一面が自分の血で真っ赤に染め上がる

貧血がひどくなり立っていられるのも厳しい状態になる

しかし倒れているわけにはいかない

フラフラになりながらも立ち上がる

そしてペットボトルに入れていた水で口をゆすり吐き出す

するとその液体は真っ赤に染まりすぐ様同じように繰り返す。

そしてカバンの中を漁るとなんとか替えの一着を持っていたのでそれに着替える

はぁ。本当嫌になる

俺はよろめきながら裏道を歩く

ただ頭の中がクラクラして頭痛が痛む

視界がぼやけ前すら見るのが厳しくなる

全身が焼けるように熱く痛みが治まらない

……ちょっとまずいな

いやちょっとどころじゃない

俺は目の前を歩くが今どの地点を歩いているのかさえわからない。

……いつも言われてきたことだった

やりたいことがあると一直線になる

でも加減を知ろうとあぐりさんにいつも二人で説教されてきた

……やばい。落ちる

意識が失くなっていくのが分かる

そして前方へ倒れこむと

「羽川くん?おい。しっかりしろ!!」

そんな声がうっすら聞こえながら意識は落ちていった。



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強さの理由

目が覚めると木造の天井がが見える

「……あれ?」

起き上がると軽く頭痛がする。

どうやら貧血で倒れたようだ。

……でもここって宿だよな。

俺は時間を見ると数時間が経過しており

もう皆は夕食を食べ終わっているころだった

「起きたか?」

すると烏間がそこに立っていた

「……うす。」

立ち上がろうとするが力が入らない。

……本格的に限界かなこの薬も

俺は残った錠剤の量を見ると後二粒

これだけは全部飲んでしまわないと

「……そうだ。」

といいながら俺はカバンから干し肉を食べる。生臭い味が身に沁みる

元々はイノシシのレバーなどの臓器を干した物

貧血対策のために常備しているものだ

「……とりあえず聞きたいことはいくつかあるが。」

「……答えられる範囲なら。」

「それならまず、一つ目なんだが、今日の独断行動についてなんだが。」

と最初は事実確認をしていく

まぁ報告とか色々あるんだろうが、真実だけを答えていく。

それにこっちが本題じゃなさそうだしな。

「それで二つ目なんだが、」

「俺の今の健康面についてですよね。」

すると烏間は頷く。

まぁ、わかりきったことだ。

少しだけ迷うが真実を打ち明けようか

どうせ知らないといけないことだし

「ドーピングによる身体強化の副作用ですよ。吐血による貧血ってところですね。」

「ドーピングってどう言うことだ?」

「俺が作った薬で筋肉や皮膚、神経などを強化しているんです。異次元みたいな身体能力は模擬戦で戦ったあなたならわかると思いますが。」

「……。」

烏間先生は言葉を失いかけている。それも当たり前だろう。

「でも、薬なんて飲むそぶりはしてなかったぞ。」

「……簡単ですよ。効果は永続。飲んだ数だけ強くなれる。……これが俺が追われている理由の一つです。」

すると烏間先生は目を見開く。そして考え

「……確かにその薬があれば今の戦争は一気に変わるな。」

「でも大量接収を続けると血管が血圧に耐えきれなくなって内出血を起こし最悪死にます。それに、反対の薬がないんで一度飲んでしまえば後には引けません。……まぁ、今回その薬のもう一つの効果を使うために飲んだんですけど。」

「……それはつまり」

「今後その薬を飲む時は俺は死ぬ可能性があるって感じですね。もしレシピが奪われようならその国は大きな利益を生みます。多分殺し屋を雇うってことは他国に漏れるのを阻止したかっただと思います。日本も平和国家とは言われていますが、今後の世界状勢によっては戦争を行わないっていえたもんじゃないですしね。それに今回のことみたいなことに備えて持っておきたいんでしょうけど。」

すると今の日本の現状に驚いているのだろうか烏間先生は少し驚いている

「それに俺の場合捕獲だと300億の賞金が付けられてます。……ぶっちゃけ薬学についてはちょっとアメリカで生活費と借金の返済、それと俺の安全を保護してもらうために知識を売りましたからね。あっちでは結構命救っているんですよ。だからこそ、利益を取りたがる。ぶっちゃけどこも俺のことを都合のいい道具としか見てないんですよ。」

……本当嫌になってくる

とことんやりあってこんな目にあって

「……まぁ、運がいいのか悪いのか分からないですけどこうやって生きてますからね。生きないと死んだ佳奈に申し訳ないですし。死ぬ気で生きないと俺は生きられませんしね。命はたったひとつしかないんですから。」

「……」

「烏間さん。生きるってそんな簡単なことじゃないんですよ。」

実際のところ俺は本当についている方だ。知識がありそれを売るだけで生きながらえている。

「まぁ。こんな感じですね。健康状態なんて正直俺にとってはいつも病気にかかっているみたいなもんですから。だから俺は人間は信用しないんです。それがたとえ先生でさえも俺は信用してないんですよ。裏切って裏切られるのが普通ですから。」

それは誰がどう言おうが変わらない

でもそんな自分が一番嫌いなのも分かっている

「……信用したいのに、信用できないんです。助けを求めたいのに求められない。それが俺なんです。」

そんな風に育ってきたから

だから今この状況でさえも俺は警戒してしまう

それが例えあかりねぇであっても

「それじゃあ俺はこれで失礼します。」

俺は立ち上がりドアを開ける。そして

「……盗み聞きするんならもっと気配を隠せよあかりねぇ。」

とだけ言って俺は男子の大部屋へ向かった。



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前へ

「ふぅ。」

一人で入る風呂にただ息を吐く

……さすがに今日は色々ありすぎた

疲労や精神的にかなりきつく欠伸をしてしまう

「……ん〜!!」

風呂は憩いの場とよく言うがそれは本当だ

ドラム缶で風呂を沸かすくらいの風呂は好きなんだよな

疲れが溜まっているし

「……」

やばい眠気が

うとうとと心地いい眠気がやってくると

すると急にビュンっと素早い動きで水が中に入る音が聞こえる

それと同時に水は跳ねせっかくいい気分で入っていたのに気分が削がれてしまう

「……おい。死神。」

少しだけ怒気を含めて言う

「……にゅや?なんでしょうか?」

「お前子供かよ。もう少しゆっくり入れよ。」

ため息をつくと

「……それで何の用だよ。薬のことなら烏間先生に報告したからな。」

「珍しいですね。羽川くんが薬のことを話すなんて。」

「……しょうがねぇだろ。さすがに気絶するほどの貧血だからな。心配かけるわけにはいかねぇだろ。」

今でも頭痛が痛むし疲労も溜まっている

「……まぁ、無事だったから良かったけど。さすがに杉野先輩と奥田先輩は耐性がなかったらしい。結構怖がってたしな。」

「……やっぱり羽川くんはよく見ていますね。」

「まぁ、俺らのポジションは観察眼がないとやっていけないからな。一つのものでも色々な目線を見ないといけないし。」

人間でもどう言う性格でどのように騙すか

騙し使用し見捨てる

それが俺が生き残るためにやってきたことだった

「利用できるものはなんでも利用する。それが俺のやり方だからな。」

するとその一言を言うと胸が痛む

俺は決して善人ではない

ただの一人の復讐者だ

しかし死神は珍しそうに俺の方を見ると

「珍しいですね。羽川くんが嘘を吐くのは。」

「……はぁ。やっぱごまかせねぇか。」

少しだけ苦笑してしまう

「……まぁ利用する気になったのに利用する気が無くなったっていうか。なんか羨ましいって感じ。元々先輩方が本校舎と違うのはわかっていたけどさ。なんか調子が狂うっていうか。」

ニヤニヤしている死神に俺はため息を吐く

「……それよりもちょっと頼みたいことあるけどいいか?」

「にゅや?何でしょうか?」

「…お前羽川建設の過去の取引先からなるべく昔の羽川建設のデータを取り出してほしいんだけど。」

「……何故それを。」

「別に悪いことには使わねーよ。ただ七年前のあの事件。なんか引っかかるんだよ。」

「引っかかるとは?」

「……意図的に内通者。政府関係者がいるんじゃないかと思ってな。」

すると死神は少し驚く

「…俺の記憶上には政府の取引は一度もないのにあのタイミングさすがに不自然だろ。だから意図的に誰かを雇って引きづり込んだ可能性がある。」

「……なるほど。でもなんで今そんなことを。」

「簡単だよ。俺の安全を保護するのに必要なんだよ。この件は。」

俺は淡々と答える

「それに……親父と決着をつけないといけないからな。親父の今の職業知っているだろ。裏ファイルを見ているんなら。」

「えぇ。日本政府直属の殺し屋ですよね。」

俺は頷く。

「……どう見たって黒だろ。だから少しだけ調べてほしい。なるべく足がつかないように。」

そう足がつかないことが大事なんだよなぁ。

俺は少しだけため息を吐く

「……悪いけど今回の件で俺の今後が変わってくる。少しだけ頼まれてくれないか?できれば職員の羽川建設後の職先も全部。」

「そうなるとするとさすがに私でも時間がかかると思いますが。」

「ゆっくりでいい。できるだけ足をつけず、それであって正確なデータが欲しいからな。俺のハックの方法じゃ足が残る可能性もあるし。情報収取あまりできないからな。それに俺も少しだけ考えたいことがあるから……。」

「……考えたいこととは?」

「このクラスのあり方だよ。俺もあんたもいつかは過去に向き合わないといけない。俺が今そうであるようにな。」

俺の過去を多分このクラスの奴には話さないといけない時がある

「……本当生きたいなんて久しぶりに思ったよ。俺は鈍感でもないし、どちらというとそういった方にはめっぽう強い。心配してくれる奴も結構増えたしな。」

「それは矢田さんのことですか?」

「烏間のことだよ。」

すると死神は驚く

「……矢田先輩はまぁ今は遠ざけた方がいいと思っているんだよ。お互いに干渉が多すぎる。俺は俺、先輩には先輩の未来がある。矢田先輩は優しいから、多分言ったら助けてもらえると思う。でも、多少の危険なら目を瞑るけど俺たちがやるのはかなり危険だからな。…さすがに迷惑かけられないよ。俺が助かるなんて5%あればいい方だからな。」

そう俺たちはほぼ死亡が確定している身だ

「俺はまだ可能性があるからマシだけど。あんたは来年の3月13日。俺とあんたの誕生日には必ず死ぬんだから。」

「……」

「悪いけど生きる可能性が高い方を使わせてもらうぞ。まぁスキルとかの問題もあるけど、それでもあの人は大事なんだよ。大事だからこそ遠ざけたい。あの人には生きて欲しい。どうせ俺は争わないと生きていられないし、危険を冒さないと…先輩たちと会う機会なんてもう2度とこないしな。」

だからこそ動かないといけない

「俺はもうやめだ。逃げるんじゃない。攻め時なんだよ。絶好のな。俺も日本で平和に生きるためにな。」

だからこそ俺は一歩を進む。

叶わない願いを叶える為に

 

食事をとり大部屋に戻ると赤羽先輩以外の男子が輪になって何か話していた

「…おっ?羽川?」

すると磯貝先輩が俺の方を見て話しかけてくる。

「体調の方は大丈夫だったのか?」

「はい。栄養不足からくる貧血だったので。いつもの通りですよ。」

と誤魔化しておく

「そういえば何の話しているんですか?暗殺のことならアドバイスくらいならできますが。」

「違うよ。恋話をしているんだよ。」

「恋話ですか?」

すると紙が手渡されると

気になる女子ランキングの文字が書いてあった

「……へぇ〜。」

そこには神崎先輩がトップで二位が矢田先輩三位があかりねぇと倉橋先輩か

まぁ誰が誰に投票したのかよくわかるけど

「羽川は矢田か?」

「なんでそうなるんですか?」

すると少し苦笑してしまう。

「……まぁ、当たっているっていうかあんまり女子と話さないって言うか。気になるとかそれ以前の問題だと。それに……正直矢田先輩苦手ですし。」

「……そうなのか?」

意外そうに前原先輩が言う

「……俺って優しい人にあまり触れたことがないんで、人の裏を読んでしまうんですよ。優しい人は暗殺者や裏切る人が多かったですから。だから純粋な優しさってあまりやりづらくて。今日もちょっと傷つけてしまったみたいですし。」

少しだけ苦い顔をしてしまう

「……嫌いじゃないけど苦手なんですよ。接し方がわからないって言うかなんて言うんですかね。多分先輩方にとっての俺みたいな感じだと思います。」

「……なんか分かるわ。」

すると全員が頷く

「それだと倉橋先輩は楽ですね。基本話を振ってきてくれて知られたくないことを避けてくれるので。」

あの人結構空気をよむのうまいんだよなぁ

そして色々と女子について話していると

「お、面白そうな事してるじゃん。」

と赤羽先輩がやってくる

その後ろに死神がこそっと付いてきているが

……まぁ、少しうるさくなる前に抜け出すか。

俺はいつものステルスを使う。今は確実に目線が赤羽先輩に移っているから大丈夫だろう。

そうやって大部屋から出ると少しだけ夜風に当たりたくなってきた

どうせ暗殺になるんだし外に出るのが無難なんだろう

そして俺は外に出ると三日月が見える

……まぁこの形の三日月が見えるのもあと少しなんだけど

地球が破壊されようが、破壊されまいがこの満月が三日月のような状態はすぐとは行かないが10年くらいで元の形と大きさに似た状態になる。

でも少しだけ安心する

ようやく。あの月のように前に進めそうだと

分かっていた

復讐は次の火種になる素だと

昔から本当心配性だからな。あの二人は。

あぐりさんもあかりねぇも

まぁ心配してくれる人が増えたのだけれど

だから大事にしたい人がいる

守りたい人がいる

心の闇はまだあるし

今すぐ切り替えることはできないけれど

……せめて少しでも足掻き

ほんの少しでもチャンスがあるならば実践しよう

……いつか一緒に笑える未来を夢見て



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自律固定砲台

修学旅行が終わり今日からまた通常授業に入るんだが

「何だあれ。」

教室に入った途端俺は少しだけ唖然としてしまう

修学旅行前にはなかった席に黒い直方体の物体が置かれてある

「…あっ。羽川くん、おはよう。」

「……おはようございます。」

と矢田先輩はやっぱり修学旅行中のことを気にしているのかどこか遠慮しがちのようだった。

……やっぱり俺が悪いんだよなぁ

そうやってため息を吐くととなりで同じようにため息をつく矢田先輩

どこかギクシャクしながら俺は席に座る。

で結局あれなんなの?

と聞きたかったが聞く人がいないしなぁ

多分AIを生徒に見立てたんだろうけど……

そしてしばらくすると死神がやってくる

「おはようございます。羽川くん。」

「おう。ってかあれ何?」

「自立固定砲台律さんです。」

「……やっぱ人工知能の参加かよ。」

俺は少しため息をつく

そして脳の中を詮索。知識の中に元となった軍事施設、及び武器を考えるとすぐに見つかった

「……多分イージス艦の戦闘AIを改良したのか。」

「イージス艦?」

「コンピューターが搭載された戦艦で遠くの敵機を正確に探知できる索敵能力、迅速に状況を判断・対応できる情報処理能力、一度に多くの目標と交戦できる対空射撃能力が優れているんですよ。このシステムのことをイージスシステムと言ったりしますね。アメリカ軍にお世話になっている時に何度か見た事があります。」

ってか何回か乗ったこともあるし説明も受けたんだよなぁ

「……今凄いこと聞いたような気がしたけど。」

「別におかしいことはないと思いますが。ってか訓練しないとさすがに銃や体術、罠作成は上手くいきませんし。それなら軍がきちんとしているところにしていた方がいいですよね。それに暗殺者を紹介することもありますし、逆に暗殺者に転向させるさせることも。」

「……羽川くん敵を増やしてどうするの?」

矢田先輩は苦笑するけど

「……まぁ色々あるんですよ。こっちも。」

案外仲のいい暗殺者を作っとかないといけない時もあるしな

……それで多分銃を作成するのは熱を使っているんでろう。

そしてこのシステムの肝は

進化し成長していく砲台か

「これ俺授業サボっていい?絶対授業中撃ち込んでくるだろ?」

「にゅや?」

「固定砲台ってことは動けないんだろ?それなら授業中発砲するしかチャンスないじゃん。あいつほぼ休み時間中教室にいないし。どうせ授業にならないなら俺いる意味ないんだけど。」

すると全員がハッとしたように気づく先輩達

「……あの、気づかなかったんですか?」

「すっかり忘れてた。」

「そっか、授業中に銃撃するんだよね。さすがにちょっと迷惑かも。」

「…ちょっとどころじゃないと思いますが。」

倉橋先輩の言葉に冷静に突っ込んでしまう。

まぁ別にいいけど

「まぁ、サボらないけど、授業どころじゃないと思うけどなぁ。」

そうして迎えた一時間目の授業

「続けて攻撃に移ります。」

すると授業中ずっと射的の的になっているクラスにため息を吐く

確かにわずかに死神に命中しているが

…これ以上はさすがにまずいだろう

銃声の度に悲鳴が漏れているし

授業どころではない。

俺でさえ集中しないと聞き取れないのに

しばらくたつと授業がおわりやっと一息つけると思いきや

「……これ掃除しないとダメなのか?」

つい呟いてしまう。

俺は少しだけ引きつってしまう

自分で行動パターンを分析して撃つのはいいんだけどそれでも

「さすがに迷惑すぎるだろ。」

自然と漏れた言葉にみんなが頷く

俺にとってはやったことのある授業なんだが先輩達にとっては今年は受験なのだ

先輩達にとっては何も意味をなしていない。

「……よし。」

「サボるのはダメだよ。」

「先に言わないでください。矢田先輩。」

まぁ、多分サボるけど

「……羽川くんって時々分かりやすいよね。」

「隠そうとはしてませんから。」

元々分かりやすい性格だしそれに隠そうと思えば隠せる

でもそれは演技している俺だ

……案外気楽でいいんだよなぁ

死神に怒鳴った時だってなぜか普通に許されたし

本当の自分が出ているんだよなぁ

「……まぁ、サボるけど。」

俺は気配を消すとただ、何を変哲もなく歩き教室を出る

「……えっ?」

教室でそんな声を聞こえたのも気にせずに俺はサボる場所を探しにいった。

……もちろん。後から死神から説教を受けたのは言うまでもない

 

翌日、

「あっ。やっぱそうなるか。」

俺が教室に入るとガムテープでぐるぐる巻きにされている機械の姿があった

「おはよ〜。こうちゃん。」

「倉橋先輩。おはようございます。」

俺は苦笑しながら挨拶をする

「……まぁ、暗殺以前のポンコツだったしなぁ。」

「うわぁ、容赦ないね。」

「だって事実ですよね。」

「まぁ、そうだけどさ〜。」

ってか倉橋先輩もちゃっかり認めているし

「そういえば、桃花ちゃん。怒ってたよ。昨日。」

「サボるなって言っておいて堂々サボったしな。」

木村先輩が笑っている。でも

「……別にいいんじゃないんですか。まぁ、最悪逃げればいいだけですし。」

あまり気にすることでは無いだろう

どうせ今のままじゃあ逃げ切れる自信はあるし

「……そんなこと考えていると桃花ちゃん怒るよ。」

「まぁそうなった場合はとことん逃げたらいいですし。」

「羽川ってこんなダメ人間だったか?」

「何を今更。」

「それは堂々と言うことじゃないと思うんだけど。」

といつのまにか矢田先輩以外のいつものメンバーが揃っている

なんかこのメンバーで集まるのも当たり前になりつつあるな。

……まぁ、矢田先輩の特徴から考えれば口をきいてもらえないと思うけど

「そういえば、昨日ってどうやったんだ。お前急に皆の前から消えたけど。」

「俺の武器は教えませんよ。あれは俺が暗殺者対策の一つなんですから。」

クスクス笑うと

「でも、不破さん曰くミスディレクションだと言ってたけど。」

「あぁ、違いますね。ミスディレクションは意識している相手には通用しづらいですし。それにミスディレクションを使ったらもっと完璧に姿消せますよ。」

そう言って笑うと全員が固まる

「……俺隠密に関しては暗殺者以上の腕はありますよ。」

昔からかくれんぼとかあぐりさんとあかりねぇとよくやってたのだが全く見つからなかった

それでよくあぐりさんとあかりねぇからぐちぐち文句言われてたもんなぁ。

それは逃亡者になってからも同じように通用した。

隠密スキルは逃亡者の基本であったので今でも十分気をつけていることだ

まぁ、考えすぎて前に矢田先輩に見つかったけど

すると矢田先輩が入ってくる

「……あっ。おはよ〜羽川くん。」

「「……えっ?」」

つい俺は声が漏れてしまう

「……えっ?どうしたの二人とも。」」

笑顔で笑っているように見えて笑ってない

……とても怖い

顔が真っ赤だからこれが怒っているんだと思うんだけど

感情をよめるから知っているんだけど

こう言うタイプは怒らせたらダメだ

……いつか、矢田先輩が潰れてしまうから

「すいませんでした。」

頭を下げる

たったそれだけだけどクラスは驚いたような顔をする

それでも謝った方がいいと判断していた

すると矢田先輩も意外そうな顔をしてたけど

「うん。反省しているなら別にいいよ。」

と笑って対処してくる

……てか、この人も

ちらっとあかりねぇの方を見ると潮田先輩に話しかけている

……まぁ、あとから相談してみるか

まぁ、そこの機械のことが解決してからだと思うが

 

そして何事もなかった翌日

いつも通り朝礼の暗殺が終わった頃を見計らい教室に入ると

「おはようございます!!羽川さん。」

「……は?」

俺はさすがに一瞬フリーズしてしまう

全身表示モニターと制服等のモデリングソフトそれだけで60万はするはずだ

「……」

どんだけお金かけたんだよあいつ

まぁ、金銭的なサポートは俺も取引の件でするとは言ったけど

……これだけで100万は損しているような気がする

「……羽川くん?」

「あっ、すいません。ちょっとさすがにあまりにも変な方向に転校生が進化してたので。」

「……さすがに羽川でも戸惑うよな。」

磯貝先輩が苦笑している

「いや、戸惑わない人いるんですか?あれですよ。」

「……まぁ、気持ちはわかるけどな。」

「折角ハッキングツール作ってきたのに無駄になったし。」

「「「何作っているんだよ!!!」

クラスから突っ込みが入る

「いや、迷惑ですし、それなら一度壊して俺が性能は同じだけど強調できるマシなものに作り直そうかなぁって。」

「……いや。絶対やめた方がいいと思うよ。」

「てか、羽川今同じもの作れるって言わなかったか?」

「いや、この程度くらいだったら俺もっと高性能のもの作れますよ。トラップで人工知能搭載している警報機とかあるんで。」

「……」

「そういえばもっと化け物がこのクラスにいたわね。」

片岡先輩に呆れたように言われ苦笑してしまう

「まぁ、こうちゃんだしね〜。」

「それ絶対褒めてないですよね。」

と突っ込む。

まぁ自分がおかしいことはわかっているし別に気にすることではないんだけど

「「……違うよ。」」

と小声で悲しそうに言っている二人の小さな声に気づいていた

 

昼休み時間俺は久しぶりに屋根上に出るとあかりねぇが座っていた

「……おう。久しぶり。」

「うん。久しぶり。」

俺はあかりねぇの隣に座る

するとあかりねぇは雑誌を読んでいたらしい

本をあかりねぇの後ろに隠していた

「……別に見てていいぞ。」

「こうちゃんとちゃんと話すのは修学旅行前以来だから別にいいよ。それよりそっちは大丈夫なの?」

「今頃砲台に目が向いている隙に出てきた。最近は少し居づらいし。」

「こうちゃんは時々無神経だからね。少しは女心研究した方がいいんじゃない。」

「うっせ。」

と軽く頭を叩く

「そういえば、これ。」

「ん?」

すると目の前にはプリンが置かれていた

「一緒に食べよ。」

その言葉に苦笑してしまう

「あかりねぇ、プリン本当好きだよな。」

と俺は一つ受け取り食べると甘みが俺の口に広がりほろ苦いカラメルソースの味が口のなかに広がる

「こうちゃんも好きじゃなかった?」

「俺はチョコ派。男だと食べづらいしな。プリンも好きだったけど佳奈の方だろ。」

「……そっか。」

そう言ってプリンを食べる

「……てかこれうまいな。」

「うん。お父さんに買ってきてもらったの。たまたま神戸に出張に行ってたから。」

「へぇ〜そっちは経営安定しているのか?」

「ううん。柳沢に買収されたよ。元々はそっちの資金援助のお陰で経営できていたから。」

「……そっか。」

俺はため息を吐く

「そういえば、あの砲台すごいね。」

「おかげさまで数100万吹っ飛んだけどな。」

「やっぱりこうちゃんのお金なんだ。」

「あの月に100万以上もらっている教師ってせめて教授レベルだろ。……そんな甘くはねぇよ。」

俺はそう言うと

「なんか詳しいね。」

「まぁ、調べたからな。」

と俺はその間にもプリンを食べ終わっている

「まぁ、変わったとはいえ結局は機械に人権はないしな……全部持ち主の意向でまた元どおりになるだけだろ。」

「……まぁ、クラスのみんなはまだ気づいてないみたいだけどね。」

「まぁ、やろうと思えば止められるけど。さすがに機械に意思があるはずじゃないし、それがそいつの意思なら止めに行けるんだが。それに死神が最悪契約違反に引っかかるんだよな。」

「危険なことしたら怒るよ。」

「……分かってる。そんな危ない橋渡るようなことはしないさ。」

「……ならいいけど。」

「てか心配しすぎなんだよ。あかりねぇは。一応これでもターゲットだぞ。」

「一応私お姉ちゃんなんだよ。弟の心配して何が悪いの?」

「……成長は完全に幼児体型のままだけどな。」

「……せ、成長期まだだもん。」

と弁解しているあかりねぇを見ると笑えてくる

どこか懐かしげに

そしてお互いに笑顔で

「でも、こうちゃん大きくなったね。昔は私の方が大きかったのに。」

「俺男子の中では小さい方だけどなぁ。」

「態度は大きいのにね。」

クスクス笑うあかりねぇに少しだけホッとする

最近元気がなさそうだったからな。少しだけ心配していた

そうしながら過ぎる昼休み。

のんびりしながらもそれでも踏み出せずにいる

あかりねぇがクラスに演技し続ける理由を

 

「……まぁ、こうなるよな。」

翌日教室に入ると昨日の改良点は全部なくなり暗殺特化に戻った機械の姿がいた

……まぁ、壊すこともできるけど死神の契約違反と言いかねないし

「おはよう。こうちゃん。」

「おはようございます。倉橋先輩。」

「もどっちゃったね。」

「まぁ。当たり前といえば当たり前なんですがね。」

苦笑すると

「じゃあ羽川くんは分かってたの?」

「いや、さすがにあんな派手なことしてたらこうなりますって。一昨日にガムテープで括りつけて武器出せないようになればこいつの価値はゼロになるし。」

「……時々毒はくよな羽川って。」

「まぁ、最悪理事長に言ってやめさせますよ。……一応理事長をおど……納得させるカードは何枚かありますし。」

すると全員が絶句していると

そして死神が入ってきたので席に着く

授業を始めて数分後

文字列を書かれプログラムを展開している

しかしそれは暗殺のためではなく

……花?

すると一斉に飛び出す花に俺すらビックリしてしまう

「花を作る約束をしていました。」

機械音ながらどこかおかしく

「殺せんせーは私のボディに計985点の改良を施しました。そのほとんどはマスターが暗殺に不要と判断し削除。撤去、初期化してしまいました。しかし学習したE組の状況から、私個人は強調能力は不可欠の要素と判断し関連ソフトの隅に隠しました。」

「……は?」

俺はその意味を理解していた。つまり

「自分の意思で持ち主に逆らったってことか?」

「はい。その通りです。羽川さん。」

「……」

いや。意思のある機械ってなんだよ。

「……はぁ。」

科学的に進化する固定砲台

甘く見ていたのは俺の方か

小さくため息を吐く

予想外な転校生に俺は完全にお手上げだった



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世界の敵

俺たちは海外のホームドラマを見た後にイリーナの授業を聞いていた

俺とイリーナは暗殺者とターゲット反対の関係

俺もイリーナもお互いにあまり近づこうとはしない

そしてそれは授業中でも同じことでよほどのことがない限りは当てられない

英語独特のポイントを掴み日本人と相性の悪い発音を的確に掴む

時々俺でも知らなかったことがあるので結構真剣に聞いている授業の一つでもある

しかし顔の色は少しだけグレー色をしている

焦りがあるのかただ戸惑ってばかりだ

……

それは何に焦っているのか俺には分からないが

俺はただ焦っているイリーナを見て

少しだけ不安を覚えていた

 

「……あの。」

「……羽川くん気にしないでくれ。」

烏間の言葉に俺は内心こう思う

無理だと

いや、明らかに俺が請け負っている授業の一つでもある受け身練習に全く集中できてないし

それもそのはず俺たちの目線の先には

……烏間を狙う二つの影が

いや殺し屋がいた

殺し屋ロヴロとイリーナの姿に俺はため息を吐く

「……なんで追われているんですか?」

すると烏間がため息を言って

「羽川くんは殺し屋ロヴロについては。」

「知ってますよ。俺を狙ってきたことがありましたが殺しに来ずに帰りましたからね。確か今は暗殺者の育成と斡旋でしたよね。」

「……詳しいな。」

「一応ターゲットなんで。」

「まぁ、いい。実は昨日のことなんだが。」

と烏間曰くイリーナを引き上げさせにきたと言うログロと残留したいイリーナがお互いの主張を押し通す為に模擬暗殺をすることになったらしい。

「……烏間も大変なんですね。」

「同情するな。」

このクラス1の苦労人に同情しつつも

「まぁ、確かにロヴロさんの言っていることは確かですね。」

「……」

「色仕掛けの得意な殺し屋っていうのは身の元が分からないから怖いだけですしね。元々イリーナはぶっちゃけナイフも射的もこのクラスだったら上にいますけどでもそれでも並程度。ぶっちゃけ身元がわかれば全然怖くないんだよなぁ。おれぶっちゃけあぁいうのは好きじゃないし。」

すると全員が苦笑しているけど

「でも、クラスに必要なのはどう考えてもイリーナですね。……前の失敗からちゃんと学んでいる見たいですし。」

「どういうことだ?」

「まぁ、これ以上はフェアではないのでやめときます。でも……殺される側はそんなに簡単じゃないですよ。」

俺はそうして前を向く

「んじゃ次は組手なナイフのみ30秒10セット。……先生にはこのくらいでとどめまでいかないとやれないぞ。」

「「「は〜い。」」

「殺す側でも殺される側でも学ぶことが多くある。相手がどう動くのか、それを予測しないと始まらないんだ。自分だったらどう動くのか。よく考えて行動しろ。」

と号令をかける。

「……中々様になっているな。」

すると烏間先生がそう言ってくる

「……まぁ、ある人の教えですしね。」

「……俺はあいつも羽川くんの過去も断片的にしか知らない。……だが、羽川くんの件に関しては俺たちが間違っているのは分かってる。だが。」

「分かってますよ。……分かっているから今はこうしているです。」

俺がちゃんと暗殺者の育成している理由はそこだ。

「……まぁ、あの人への恩返しもあるんですけどね。俺も先生も普通じゃ恩返しできないからな。」

だからこそ俺たちはE組を請け負っている。そうじゃないとつじつまが合わない

「俺たちはターゲットであり、世界の敵なんですから。」



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殺意

6月梅雨に入り俺はただ空を眺めていた。

「……雨かぁ。」

元々今頃暗殺をしているはずなんだけど

「……」

俺はただのんびりと外を見回す。

外は雨が降っているので廊下で待機している

……さてもうそろそろか

俺が教室に入ると

「おはよ〜こうちゃん。」

「おはようございます。倉橋先輩。」

俺はいつも通りに挨拶すると

いつもよりなんか緊張しているクラスメイトに首をかしげる

「どうしたんですか?」

「あれ羽川くんは知らなかった?今日転校生がくるんだよ?」

「……初耳なんですが。」

死神の方を見るとあれって顔している

「伝えていませんでしたか?」

「……お前本当いい加減にしろよ。」

俺はため息を吐くと

殺意を放たず一直線に走り

「歯食いしばれ。」

拳を握り思いっきり殴りつける

すると重くてぬるっとした感触がする

「「「えっ?」」」

「痛いじゃないですか!!羽川くん!!」

「お前、開始前に俺が言ったこと忘れたのか?」

笑顔を見せると

「……すいませんでした!!!」

と土下座をする死神にため息を吐く

なんかここに来てからため息が多くなったな

「まぁ、それでどんな転校生なんだよ。」

「それがまだ来てないんだけどですよ。」

「……来てない?ってことは前みたいに機械じゃないのか?」

「そういえばさ、律。詳しくは聞いてないの?同じ転校生暗殺者として。」

原先輩がそんなこと言いだす。まあ俺も聞いておきたいし聞かせてもらおうか

「はい、少しだけ。初期命令では私と彼の同時投入の予定でした。私が遠距離射撃、彼が肉薄攻撃。連携して殺せんせーを追い詰めると。ですが、2つの理由でその命令はキャンセルされました。」

「へぇ、理由って?」

「1つ目は、彼の調整に時間がかかったから。もう1つは、私の性能では彼のサポートには力不足。私が彼より圧倒的に劣ってたから」

「ん?調整がかかった?」

「はい。そう聞いています。」

……すると一瞬心臓が跳ねる

「……」

「羽川くん?どうかしました。」

「……なるほど。そう言うことか。」

俺は呟き笑う。案外早かったな

すると怒り、憎み、負の感情が俺に襲いかかってくる。

殺せと言う憎悪の感情に覆われていく

堪えろ

殺意や感情を抑え込め

すると死神は何か俺の方をみる

「にゅや?羽川くんどうかしましたか?」

どうやら死神にはバレてはいないらしい

「なんでもねぇよ。んじゃ来るまでは待機ってことでいいのか?」

「その必要はないよ。」

すると変声期で声色が変えられていても俺にとって一番会いたくなかった奴があらわれる

マスク越しでも分かる俺に対して優越感と嫉妬を描いている相手

柳沢

すぐに分かる。ずっと会いたくて今にとったら会いたくない相手

……やばい

殺意が、溢れ出してくる

……もう誰が何を言っているのかさえも分からない

自分が何をしているのか、何を話しているのかも分からなかった

誰かが聞いてくる

どうしたいと

自分の中では復讐したい気持ちは未だ多くを占めている

俺は生きれる可能性は少ない

それなら今殺すのも悪くないと思う自分と

……あかりねぇと矢田先輩。そしていつも話してくれる先輩方。

そして死神のこと

俺は二つの気持ちで揺らいでいた。

 

「……」

いつも通りの休み時間。俺はいつも通りに話を聞きながら悩んでいた

いつも通りに見せて話の内容も分からない

ただ分かってるのは矢田先輩と倉橋先輩が時々心配そうに話しかけてくることだけ

元々クラスのことをよく見ている二人だから分かるのだろう

俺の異常について

あかりねぇも心配そうに俺の方を見ていた

でも何にも感じない

ただロボットに搭載されているプログラムのように話ている中で俺はどうしたいのか考えていた

そうした中で時間は過ぎていく

そして放課後

転校生らしき人と死神は机で作られたリングの中に立っていた。

それを先輩方から少し離れたところで見つめていて俺は完全に戦闘態勢をとっていた

「……」

さっきから何か説明しているが、俺はただ見ているだけ

……思えばこの判断が間違いだったんだろう

「……」

……俺はすぐに分かった

転校生が触手を持っていることに

「……なっ!!」

クラス全員が驚いている中でたった一人だけ、あかりねぇだけ気づいたようだった

「……こうちゃん?」

俺が放っている殺気に

視界に広がる転校生の触手が死神に襲いかかる

俺は今まで遠くで見ているか絶対に殺されないような暗殺しか見てこなかった

しかし今回は死神が殺されそうになっている

……俺が見つけたもので

すると柳沢は圧力光線を使ってフォローする

……本当変わってないなあいつは

遠くから見守っているだけで何も危険な真似はしない

「……」

俺は天を見上げ息を吐く

やっぱ無理そうだ

……人の研究勝手に使われたのも。佳奈とあぐりさんを殺されたのも今でも憎んでいる

その事実が俺の闇を動かすには十分だった

俺は手慣れた動きでポケットの中からいつもの錠剤を取り出す

俺は錠剤を口の中に加えようとした

「桃花ちゃん。こうちゃんにあの薬を飲ませないで!!」

すると倉橋先輩が大きな声でそう言う

……なんで知っているのか

そんな疑問を覚える前よりもはやく口の中に放り込んだ。

すると声も発することのできないような苦痛が俺を襲う

「……」

ヤバい熱い

熱いし痛いし気分は最悪

でも俺は思いっきり全速力で地を蹴る

それでも

…奴だけは絶対に殺す。

思いっきり転校生を蹴り飛ばすとすごい勢いで飛んでいく

「……羽川くん?」

「……悪いがお遊びは終わりにしてくれないか?……ウザったるい茶番は面倒なんだよ。」

俺は殺気を解放し全員をスタンさせる。するとクラス全員が全員座り込んでしまう

「……ごめんなさい。」

と言って俺は全速力で柳沢に接近し腹に思いっきり腹に前蹴りを食らわせる

「…はぁ、やっと会えた。ようやく会えた。やっと一人目。」

俺はただ殺意に満ちた顔だと思う。

「……やっと殺せる。」

「ダメです羽川くん。」

「少し黙ってくれないか?そうじゃないとてめぇも殺すぞ。」

殺気をずっと隠していた

だから殺気を受けていなかった先輩方にとっては気づいただろう

俺が隠し持っていた狂気を

ナイフを取り出し俺は笑う

「……ねぇ、今までどんな気持ちだったの?……ねぇ。」

「……」

柳沢が苦しそうにしているところを見て笑ってしまう。

「自分が奪った技術によって自分の立場を悪くしたって今どんな気持ち?地球を滅ぼす原因になって全てを失ったってどんな気持ちなの?」

「……えっ?」

誰かが呟くけど俺はナイフを握る

もちろん対先生用でも偽物でもない本物のナイフ

「……俺は最悪だったよ。親父はともかく妹や母さん。それと姉さんを殺されたんだ。……それに殺されそうになるしな。いや〜本当大変だったよ。親父に殺されかけるわ、殺し屋に襲われるし、鬱になるし最悪の6年間だったよ。」

俺はただ一歩ずつ前に進む

「別に殺しにくるのは当たり前だから怒ってないんだよ。ただ殺しにきたってことは殺される覚悟はできているんだよな。」

恐怖で包まれる教室全体に俺は笑う

……憎しみは力になる。この6年間ずっと感じていた。大抵俺が追い詰められた時は自爆テロや自暴自棄になってきたやつか……俺に暗殺失敗し仕事を失った奴だったから。

何度も悪夢を見てきた

それはうなされてきた

どうせ永くはない命

最後に復讐を

もう少し歩けば殺せる

そう思った時

誰か後ろに抱きとめられる

誰だと思った時

動きを止めてしまう

「……ダメだよ。こうちゃん。そんなやつ殺したらダメ。」

それは幼なじみであり……そして誰よりも憎んでいるはずのあかりねぇだった。

そしてその後ろには

「……チッ。」

俺はあかりねぇを抱きかかえ飛び退く。するとすぐに黒い触手が通り過ぎた

俺は飛んできた方を見ると暴走した転校生の姿があった。

「……俺は強くなったこの触手で。誰よりも。」

「……強くなんかねぇよ。その触手頼みなだけで弱いんだよてメェは。」

俺はきっぱりいうと余計にキレ始める。

あかりねぇのおかげで怒りはもう消えていた

「……はぁ。あかりねぇ離れろ。もう殺さないから。」

「……」

「…聞いてないし。」

とこの状態でやるしかないのかと思っていると

すると転校生の首元にダーツのような物が打ち込まれる

「すいませんね、殺せんせー。どうもこの子はまだ登校できる精神状態ではなかったようだ。転校初日でなんですが、しばらく休学させてもらいます」

どうやら、柳沢が止めたようだった。袖に麻酔銃が仕込まれており、それでイトナを撃った。んでそこの転校生を回収するのだろう。

「待ちなさい!担任としてその生徒はほっとけません。卒業するまで面倒を見ます。それにシロさん!あなたからも聞きたい事が山ほどある」

「やめとけ。相手はご丁寧に鉄板と対先生繊維でできた服を着込んでいる。……あんたじゃ触ることすらできないよ。」

「……羽川康太の言う通りだ。しかし戻ってきているとは聞いてたが。本当……ゴキブリみたいな生命力だね。」

「……そりゃどーも。そっちもいい加減技術泥棒はやめたのか?」

「……人聞き悪いなぁ。……それと姉妹そろって本当うざったるいね。」

どうやらあかりねぇのことを言っているらしい

それを捨て台詞に柳沢は去っていった



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関係

クラスに静寂と沈黙が流れ俺は息を吐く

……やっぱりこうなるか

元々は俺が作った流れだ

多分俺の過去については全員が知ることになるだろう

「……皆言いたいことはあるとは思う。でも、まずは俺からいいか?」

磯貝先輩の言葉にクラスの先輩は全員頷く

「羽川はシロとなんや関わりがあるのか?技術を盗まれたとか言っていたけど」

「……」

俺は息を吐く

「……生命体による反物質エネルギーの作成。」

俺は少しだけ黙って黒板に化学式を書こうとするが

「……本当離れてくれ。あかりねぇ。」

「……」

さっきからずっと離れてくれないんだけど

てか小さな声で泣き声が聞こえるし

「そういえば茅野のことをあかりって呼んでるけど。」

「あぁ、こいつ女優やってたから偽名使っているんだよ。」

「……えっ?なんでそんなこと知っているの?」

俺はやっぱり聞かれるとは思っていた言葉に少しだけため息を吐き

「……幼馴染で元許嫁なんですよ。」

「「「………えっ?」」」

すると全員の声が重なり

「「「「「え〜〜〜〜!!!!」」」」」

クラスに広がる大絶叫にため息を吐く。てかあぐりさんから聞いてないのか死神すら驚いていた

「本名が知りたいなら本人に聞いてくれると嬉しいんですが。」

「ちょっと待ってそれってどう言うこと?」

矢田先輩が俺の方に向かって向かってくる。多分聞きたいのはあかりねぇの本当の名前でもなく俺のことだろう

「…政略結婚みたいな感じですよ。元々建築学に関しては妹の方ができが良かったので俺は投資先に婿入れするって言う簡単な話ですよ。まぁ、こう言うことはよくあるんですけどね。」

「「「絶対ないよ!!!」」」

「まぁ、そんなとこですかね。話は外れましたけど、まぁ簡単に言うと……反物質は今の触手の卵です。」

「……」

「まぁ反物質エネルギーっていうんですけど……これ以上は俺が話さない方がいいですね。まぁ、俺が触手を最初に見つけた人間だと思ってくれたらいいです。それが俺が狙われている一つ目の原因なんです。」

と簡単に説明していく

「「……」」

「……まぁ、俺からも聞きたいことがあるんですけど……もしかして修学旅行の時倉橋先輩烏間との話聞いてました?」

すると倉橋先輩は句切れが悪そうにしながら

「……うん。」

と首を縦に振った

「……はぁ。やっぱりかぁ」

俺は頭を掻いてしまう。

……本当にやらかしているなぁ。あかりねぇと倉橋先輩を間違えるなんて

「それよりもこうちゃん大丈夫なの?」

「全身が軋むように痛いですね。吐き気も少々。」

俺は少しだけ薬が切れてきていることを感じる

「……殺せんせー。こうちゃんが飲んでいた薬って。」

「……身体強化剤です。」

「身体強化剤?」

「……少ししか聞いていませんがそれでも一粒飲めば身体能力は2倍から3倍に増えるって聞いてます。……ただ、副作用が強すぎて並大抵の人間では一粒でも死ぬ可能性があると。」

「「「……」」」

全員驚きで声もできないんだろう

「……じゃあ今のこうちゃんは。」

「……いつ死んでもおかしくないんですよ。……今まで復讐のために生きていたようなものですから。本気で死ぬ気でいたので。」

俺がそういうとため息を吐く

「……そのはずだったのにな。」

「……」

背中を見ると泣いているあかりねぇの姿を見ると

……なんであの時見えてなかったのかな。

……気づいてたはずだったのに。気づいていたはずだったのに。

本当は一番俺よりもあかりねぇが辛かったはずなのに

……殺意で染まったらダメだったのに

すると

「がはっ!!」

急に吐き気が押し寄せ熱い液体を吐き出してしまう。

「げほ、げほ。」

「羽川?」

「……こうちゃん?」

あかりねぇが俺の方を心配そうに見る

……ごめん。無理だ

咳には血が混じり喉が焼けるように痛い

「……こうちゃん!!」

どんどん出血量が増し、あかりねぇにも血がかかってしまう

「…まずい。すぐに病院に。」

「……大丈夫……です。慣れて……ます……から。それに……病院……だけはダメです。……一番……自然死に……見せやすい場所なので。輸血……だけして……くれないか?先生。……多分それで大丈。」

暗転していく視界の中で俺はなんとか伝えようとしているけど

……ダメだ

最後に見えた涙を流しているあかりねぇの姿が印象に残った

 

目が覚めると古びた木材の天井が見える

「……」

その姿に少しだけため息を吐いてしまう

……また死ななかったか

俺はドーピング剤の力により大体の薬や暗殺は聞かない

銃器で俺を打ってもかすり傷くらいまで皮膚の強化は進んでいる

……本当に化け物だな。

俺はただそんなことを呟いてしまう

さっきから喉が痛いし気分は最悪

それもあかりねえを泣かせてしまうなんて

頭がクラクラしている中で俺は起き上がると

「いっ?」

コツンと頭が何かとぶつかる

「いたぁ。」

「……あかりねぇ?」

俺は起き上がるとその方を見る

ぼやけて何も見えないけど声があかりねぇだった

「……いたぁ。」

「大丈夫か?」

「それはこっちが聞きたいよ。」

俺はあかりねぇに抱きしめられる

「あかりねぇ?」

「……バカ。苦しいことがあれば相談してほしかった。」

「……」

たった一言が突き刺さる。

「仕方ねぇだろ。迷惑かけたくなかったし。……あんなにも殺意があることだって分からなかったんだよ。でも見た瞬間殺意が抑え切れなくなって……」

「知ってるよ。私だってそうだから。」

「でも耐えてただろ。」

「私だって殺意はあったんだよ。でも、こうちゃんが苦しんでいるんだもん。」

「まぁ、助かったよ。あのままじゃ本気で殺してたし。」

ってか

「はぁ、ってか今更だけど悪い。関係性も本名以外ほとんど話してしまった。」

「別にいいよ。そんなこと。……ってか話したくないのはそっちの方でしょ?」

「俺は別にいいんだよ。ただ先生がな。てかお前はどうするんだよ。触手結局いるのか?」

「いらないかな。もう……殺せんせーのことを信じてみようと思う。それにお姉ちゃんがあのとき私に言いたかったことが分かったから。」

……そういや俺死神とあぐりさんの関係を推理したくらいで知らないこと多いな

今度それは聞くとして

「……なんで膝枕なんかしているんだよ。子供じゃないんだし。流石に恥ずかしいんだけど。」

「いいじゃん減るわけじゃないし。」

「いや、恥ずかしいって。」

と座ろうとすると

一瞬くらっと目眩がしてしまう

「……こうちゃん。」

「はいはい。もうどうにでもなれ。」

俺はもう一度膝枕されることになる。

……そういや

「他の先輩たちは?」

「烏間先生に居残り練習だって。イトナくんの暗殺見てたら自分が殺したいって思ったんだって。」

「あぁ。なるほどな。」

まぁ、だけどな

「あかりねぇは行かなくていいのか?」

「こうちゃんがこんな状態でいけるわけないよ。」

「……はぁ。本当心配かけてばっかだな。」

「本当だよ。」

とかすかに声が震えていた

「でも無事でよかった。」

俺はかすかに胸が痛む

俺は死にたかったのに死ねなかった

そのことを一瞬でも考えたことに……心が痛む

でも

「ありがとな。」

とだけ言って少し目を瞑る

そして闇の中に身を委ねた



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化け物

まぁあかりねぇとはあの件については一旦区切りがついたわけでだが先輩たちとは何も話をしていない。

となると自然に入りづらくなるわけで

「行きたくないな。」

そんなことを呟く。

するとそんなことを呟いてしまう

まぁ、自業自得な訳なんだけど多分これで気づいたに違いないだろう

そして俺の逃走術の本元も多分死神にはバレているだろう

「……はぁ。」

俺はもう何度かも忘れるほどのため息を吐く。そして本物のナイフを振る。

鋭く、早くそして型を取れる

無茶苦茶に見えて理にかなう振り方で

そして最後の一振りを振ると俺は木の上に乗る

地表には古典的なトラップが多く引かれており俺でさえかわすことができない

だから木の上のカメラや赤外線センサーという最新ながら古典トラップよりも劣ったシステムだ

……はぁ行くか。

俺はそうやって赤外線をカメラの位置を見ながら高スピードで回避していく

理論的には赤外線カメラは有能とされているが俺の理論では違う

電子機器には何らかの弱点がある

赤外線センサーは俺はそれが効かない衣服を開発しているしカメラは死角が必ずある

それとは違い古典的なトラップはかかったら絶対に発動するし、バレても罠が仕掛けてあると警戒させることができる

さらに機械と連動させることによって時間によると絶対に発動することも可能だ

威力や範囲も調整できるので俺の理論では古典的なトラップの方が相手から逃げやすいのだ

トップスピードに入ると素早く移動し全ての赤外線をくぐり抜ける

そして飛び降りると息を吐く

俺はそして崖を登り安全な場所へたどり着く

「……ふぅ。」

ここまでおよそ一分およそ1キロメートルを走り終わる

まぁ、軽く人間やめているよなこれ

俺はドーピングのせいとはいえ障害物走で普通の1kmの世界新超えているんだもんなぁ

「……はぁ。本当にバケモノだよ。」

俺はただため息を吐きながら俺は学校へ向かった

 

ガラガラ

ドアの開くとそこにはもうすでに何人かの先輩が座っている

というのもいつもより早く来たからであり人もまだらだ。

ステルスを使っているせいか俺に気づく人は全くいない

……その間に俺はため息をつき睡眠のポーズに入る

おはよう。とか明るい声で挨拶する声が聞こえるがその後はやっぱり俺と死神の話が殆どだ

といっても多分このステルスも多分あの二人には通じないと思うんだけど

俺の予想ではすでに数人はもう効きづらくなっている

……元々こうなるのが嫌で俺は嫌われる態度をとろうとしてたはずなのにな

まぁ、推測だっただけで気付かれなければいいんだけど

そして目をつぶろうとしたら

「あれ?こうちゃん今日は早いね。」

するとそんな明るい声が聞こえてくる

ちょっと意外だった

……いくら話しているとはいえステルスを看破されることがこの人も看破されるとはな

「おはようございます。倉橋先輩。」

「おはよう〜。えっと体調大丈夫?」

「大丈夫じゃなければ学校にきてませんよ。」

まぁ、本当なら熱が出てくれた方が良かったが

ただ珍しく少しだけ驚いた

見抜ける人は正直あかりねぇと死神だけだと思っていたのにな

「あれ?羽川くん今日は早いね。」

「おはようございます。矢田先輩」

と一人にバレるともう後は済し崩しになって行く

元々視線をずらすだけの技なので一度存在を見つかるとそれは効果がきれるのだ

……さすがに軽度のステルスじゃ慣れるよな

俺はなるべく人と触れ合わないようにしてきたのはそれが原因だった

ステルスはなれるのだ

このステルスはミスディレクション。まぁ不破先輩が言っていたのと同じだ。

意識の感覚をずらすのが目的のことで始業式にやったのはその応用版だ

まぁ、動かないで意図的に消せるのはちょっとしたコツがあるのだが

はぁ、ってことは矢田先輩も見えることは確実か

俺はこの二人といつも話しているしな

そうしながら俺は机をバタンと伏せ考える

悪夢はずっと続くだろうと思いながら

 

授業開始前の号令

するとやはり死神は俺の姿を見ると同時に暗殺の禁止を言い渡す

まぁ聞きたいことがたくさんあるだろうからな

……多分俺の過去の話を少しだけしないといけないだろう

号令が終わりそして全員がすわる

「HRをはじめます。とは言っても連絡事項はないんですが……その分聞きたいことがあります。」

と俺の方を向く死神

「……羽川くん。」

「なんだよ。」

「あなたはその技術をどこで学びましたか?」

すると死神はやはり気づいているようだった。

「……はぁ。」

やっぱりかと思ってしまう

「殺せんせー。どういうこと?」

潮田先輩が不思議そうに首をかしげる

まぁ、当たり前だろう。

……このことは経験しないと分からないことだ

「羽川くんの逃走術。……あれは殺すための技法なんだ。」

すると烏間はやっぱり気づいていたらしい。

「元々近接戦で一対多を殺すためにするもので殺気で人を驚かせる……しかし威力は今まで見た中で一番でした。実際に全員をわざと気絶させることではなく意識を保てるギリギリの調節をして。」

「……」

やっぱりバレているのか

元々この殺し方は元々教わった

一番基礎の殺し方

気づかれずに殺す

暗殺者の基礎的基礎だ

「……ルーチャス・フラワー」

「……」

「俺にはそう名乗っていた。まぁ殺し屋の間ではこっちの方がいいかな?」

俺は笑い

「クローバー。殺し屋殺しクローバー。」

すると死神とイリーナの顔が一気に変わる

「…殺し屋殺し?」

「殺し屋専門の殺し屋だよ。俺はその人に4年付いていった。助手という立場で。」

「そんな人いるのか?」

どうやら烏間は知らないらしいが殺し屋といえばクローバーとは彼女のことを指す

「そりゃいますよ。特に依頼は多いのは国際警察ですかね。でも、俺が見た殺し屋の中では2番目に優れていた殺し屋だった。」

実際に俺はその人と旅をしていた。半年くらい逃げ回っているとひょろっと現れて殺しの技術と安全なところ。そして様々なところに連れていってくれた

普通なら入れないような軍隊施設やホワイトハウスの中、また宇宙航空研究開発機構まで様々なところを俺はその人に連れられていった

一言でいうなら……可愛いといったところだろうか

誰もが子供だと思う姿だが……実に凶暴で極悪

力の強い暗殺者には力で

頭脳がいい暗殺者には頭脳で

相手のもっとも得意な分野を相手に見せつけそうやって暗殺者の心をへし折っていった

「……まぁ殺し屋といっても殺さない殺し屋で有名だったんですけどね。」

「殺さない殺し屋?」

「……殺し屋の心を折って殺し屋から撤退させるのが目的なんですよ。だから俺の周りには殺し屋をやめ別の職業に転職することが多かったんですよ。殺すのは……本気で殺すのが楽しいと思ってる異常者くらいで。まぁ、今も自由に旅していると思いますよ。俺のことを来るべき時がきたら力になってくれるらしいですし。」

「来るべき時が来るってどういうこと?」

「……多分わかる時がきますよ。今はまだ分からないと思いますけどそれでも……もう少し経てば全てが終わりますしね。」

俺はただあの人の依頼については理解していた

今回も同じことを繰り返すだろう

「……でも、なんでそんな人と一瞬にいるの?その人も殺し屋なんでしょ?」

矢田先輩の言葉は確かにそうだ。でも

「……恩人ですからね。人にはどう思われても俺に逃走術を教えてくれたのも、アメリカに掛け合って俺を守ってもらっているのも全部はあの人のおかげですから。それに利害が一致してたんですよ。」

すると全員が首を傾げると

「本名は杉田華。……ブラックリストによって存在が消されたもう一人の日本人だったんです。その人もまた日本政府に復讐をする為だけに生きていた人の一人です。」

「なっ?」

今度は烏間が驚く番だった。まぁそれもそのはず。俺が防衛省のこと、ブラックリストを知っていたこともこのことが起因だ。

「バカな。杉田先輩は5年前に交通事故で亡くなったと聞いている。」

「ブラックリストというのは存在を消された人物を指します。そしてその大半が俺と同じ組織の元活動している。実際に消された人物を集めているといった方がいいんでしょうか?俺がいるのに死んだ人が生きていると思わない方がおかしいんですよ。」

実際に杉田華は生きて殺し屋をやっているわけだし

「……消された人が本当に消えているからブラックリストなんかあるんですよ。まぁ、俺と華さんは追われても避けれるんで表に出て活動しているんですけどね。」

俺は苦笑してしまう

「まぁいずれにしろこの件に関しては多分華さんはノータッチですよ。わざわざ俺たちを見捨てた日本政府には……一度痛い目にあってもらわないといけませんしね。それに俺たちはたとえ地球よりは復讐を選ぶと思いますよ。」

殺意を調節し烏間にだけ当たるように調節しながら俺は笑う

「……まぁ、これ以上は話すつもりないしな。俺に関してはもう話さないぞ。」

「…にゅや?」

「だって盗聴器ついているところでなんて話せないだろ。先生見てみなよ……もう18、いや19かそれくらいの反応があるし。てか烏間のスマホに盗聴器元々ついている。……さすがに処理するのが面倒くさいんだよ。」

「……ちょっと待てそんなわけ。」

「国最新鋭の盗聴器。……今世の中に開発してある分には届かないとは思うけど、普通開発者っていうのはその対策法を開発してから広げるんだ。俺の仲間が開発したものだからな。」

「……」

「あんたはただ使われているんだよ。知らないところでお偉いさんで動いていることなんて沢山ある。所詮下っ端っていうのはそういうものだ。平和なところでただ傍観しているバカとは違ってな。それに俺はあんたに言ったろ。おれは誰も信用してない。いや違う信用しようとしてもできない。何故ならば自分がわからなくても聞かれたくない情報は漏れることがある……俺はあんたらにとったらそこの先生と同じなんだよ。バケモノで敵だ。」

人間っていうのはそんなものである

知らずに使われる

「……だから人ってもんは怖いんだ。悪気がなくとも、意志がなくともな。……まぁ、一つだけいっておくけど。先生もどうように世界政府の実験によって殺されるみたいなもんじゃん。……まぁやってきたことがあれだから文句はいえないとは思うけど。でも、俺たちはあんたらの被害者で、命よりも復讐のために今でも手入れを続けているからな。」

「……」

盗聴器中の声も全部上に届いたのだろう。これで他にも目を向けてくれると嬉しいんだが

まぁどっちにしろ俺がしっちゃこっちゃないしな

「……まぁ、俺がいたら授業にならないだろうし今日は帰るわ。」

「ちょっと待ってくだ」

おせぇよもう

「……だから俺は消えるんだよ」

といって能力を使い全員の視界から外れる

俺はのんびり歩きながら帰ることになった



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師匠

梅雨が終わり6月下旬

するとクラスの先輩たちは球技大会で忙しそうだが

ドーピングで固めてある俺はもちろん入ることができるわけがなく

丁度いいかと思い俺は今外に出て人と会う約束をしていた

とある焼肉の店には俺は入るとすぐに盗聴と通信器具から身を守る道具を引くと

「……やっぱり、優秀ねあなた。」

するとターゲットとして緊張感のかけらもない女が入ってくる

「うっせ。あんたに教わっていた技術を使っているんだから当たり前だろ?自慢かよ。」

「あのね?私を自衛隊から引き抜いたことを忘れてもらったら困るのよ。何で私が殺し屋なんかしないといけないわけ?」

「俺を殺したふりをして殺したと言い逃れようとして、国からの逃亡者を引き取ってとお願いしたのは誰だっけ?」

「……すいませんでした。」

と頭を下げる140cmの32歳の女性に少し苦笑してしまう

「そういや、最近どう?新婚生活は?」

「まぁまぁよ。旦那も元気で今じゃ元気にホワイトハウスで仕事に明け暮れているわ。」

「まぁ、まさかジョスフェスが大統領になるなんて夢にも思わなかったなぁ。相変わらずのどMで安心したよ。」

「まぁ、私の旦那だからね。多少いじめがいがなくちゃ。」

「いじめんなよ。自分の旦那くらい。まぁジェスフェスのどMじゃあ仕方ないか。」

俺は苦笑し

「久しぶり、師匠。相変わらずのようで。」

「えぇ。烏間は元気?」

「あぁ。てか烏間の先輩だなんて聞いていないんだが?」

「そりゃ言ってないわよ。というより気づきなさい。それくらい。」

「へいへい。それでクローバーさんは殺し屋から足を洗ったのになんで日本なんかにいるんだよ。データなんてまだハッキングできたって訳じゃないんだろ?」

俺が真剣に尋ねるとUSBメモリーを一つ渡される

「それが殺せんせー?だっけ今現在の暗殺計画をまとめたものだわ。旦那から配達を頼まれたから仕方なく持って来てあげたってわけ。」

「……あのおっさん。何考えてんだか。」

と俺はUSBを自分のデータハッキング用のPCに差す。すると

「……おい。何考えているんだよあんた。これ。」

「しっ。旦那から頼まれた物だからあまり大声で話さないで。」

「……本当助かる。」

俺は頭を下げる。いや本当にアメリカがバックについていると本当に助かるんだよなぁ。

「あんたのことだから何かしているんでしょ?」

「まぁ否定はしないしかなり危険なことをしているな。」

するとナイフがいつのまにか首筋に当たる。殺す気は無いのでスルーをしていたが結構怒っているらしいな

「……へぇ?私に命を救われていておいてまだ危険なことするの?」

「仕方ないだろ。これも俺のためになるんだし。」

「……やっぱりあなたは日本にいることを望むのね。」

呆れたようにする華に苦笑してしまう

「当たり前だ。一応腐っていても故郷でこんなに住みやすい国は滅多にないからな。あいにくアメリカやロシアに軍事開発員として居座るのはもってのほかだろ。」

俺は少し笑顔をみせる。

「それに、あの教室に来たら分かると思うぞ。」

「へぇ〜あんたが気に入っている教室は確かに気になるわね。どんな学校なのよ。」

「校内格差がひどい落ちこぼれ学級ってところか?まぁ、それも変わりつつあるけどさ。」

「……ふ〜ん。まぁいいわ。あなたが何をするのかよく見させてもらうわ。あなたの親としてね。」

「てか、そういや一応義理だけど母さんってことになるのか。……あの、無言でこっちを睨むのやめてくれません?」

「その義理だからっていうのやめない?確かに義理の母親だけど偽物みたいで嫌なのよ。」

「……はぁ、何でそこだけ一般論出すんですかね?」

「あんた程では無いと思うわよ。まぁあんたには私も感謝しているのよ。私の旦那もね。あんたはあんたのやりたいことをやりなさい。例えあんたが私たちを裏切ってもそれはその時だと思うことにしている。」

「……裏切れないことを知っているくせに。それをいうのは卑怯じゃねーの。」

俺はため息を吐く。それも本心から言っているからタチが悪いんだよ。

「いい。私から最後の命令忘れた訳じゃないわよね。何回か死にかけているの知っているし、何度も約束を破ろうとしているのも知っているけど……まぁ生きているからいいわ。」

「……何でそんな臭いセリフをシラフで言えるんでしょうね?」

「あら、あんた程ではないと思うわよ。このたらしが。」

「……はぁ。本当嫌いだよ。あんたみたいなタイプは。」

俺はお手上げだった。心配してくれるのは分かるし、何で危険を冒してまで日本に来たのかも理解した。

だからこの人は嫌いだ

そして何でも理解してしまうこの人は本当に嫌だ。

「……まぁ、なんか食おうぜ。飯屋に来て何も頼まずに帰るのは無礼に近いだろ。」

「えぇ。その一般論を持っているうちはあんたはヘタレで人を傷つけるわよ。」

「……チッ。」

舌打ちを払って適当にタブレットを入力し注文する

そんなこと俺でも分かっていることも多分見抜かれていると思うが口論に持ち込むしかなかった。



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烏間

俺は体育の時間はほとんど何もしない

というよりも屋根上でのんびりしていることが多い。

まぁデータを取って烏間に渡しているんだが

「まぁ、だいぶマシにはなってきているな。まぁ絶対日常生活では役にたたない技術だけど。」

まぁ、やはり成長のスピードは結構早いな。

特に烏間の指導は特に的確かつ正確で順調に育ってきている

怪我もなく、中学生ならこのくらいが一番いいのだろう。

特に前原先輩と磯貝先輩ペアはかなりの実力だろう

タブレット端末をうちながら少し内部を弄る

とりあえずデータを烏間に送ろうとした瞬間わずかに殺気を感じる

俺は身構えるが何もおきずドスンと大きな音が校庭から聞こえてくる

俺は覗き込むとするとそこには潮田先輩が倒れており、驚いたようにしている烏間が近づいていった

「……マジか。」

思ったより早い目覚めに俺は少し目を見開く

俺はその時ばかりはターゲットであることを忘れ、ただ潮田先輩のことを見ていた。

 

俺は授業が終わるとのんびりいつものように教室に戻ろうとすると急に寒気を感じる

ふと、そっちを見ると太い男がクラスメイトの元に歩いていくのがみえる

……どこか俺の父親に似ている薄気味悪い雰囲気

そして人を殴ってきたのが分かる拳の形

俺は飛び降りると烏間のところに近づく

「烏間、あいつ何モンだ?」

単刀直入に切り出す。俺はここのところあまりクラスメイトと話す機会は少なくなっているので話しかけられることはないだろう

「鷹岡明。今日から俺の補佐として働くことになった俺の空挺部隊の同期だ。」

「……まぁ、でも感覚的にあんまり身体能力に優れているとは思いませんけど?」

「あぁ。しかし教官としては俺よりも遥かに優れていると聞いている。」

「……すいません。多分ですが気をつけた方がいいですよ。」

「どういうことだ?」

「いや、多分ですが手が人を殴り慣れているっつーか。多分だけど人を傷つけるだけの拳っていうんだろうか?なんか嫌な予感がするんですよ。生憎俺は教師については何も言えませんし。言える立場じゃないですけど。何となく父親に似ている気がして。」

俺は頭を掻くとするとため息を吐く

「分かった。とりあえずは警戒はしておこう。それとまた頼るが鷹岡のことについて、少し調べてくれると助かる。」

「……うす。てかあんた最近俺のこと頼りすぎじゃないのか?あんた俺側についていると思われるぞ。」

俺は軽くため息を吐くと

「別に構わない。羽川くんも俺に取っては生徒の一人だ。生徒を信じて何が悪い。」

俺はその言葉にきょとんとしてしまう。少し悩み

「……裏切られても知りませんよ。」

と忠告だけしておくと

「その時はその時だろう。それに俺は俺なりの正義を貫いているだけだが。」

「はぁ、少しはかっこ悪いところ見せてくださいよ。」

俺は不機嫌になり校庭の先輩たちを見る

本当にこの先生は見る目は一直線で色を見ることもなく正直だ

……俺が守りたいと思うほどに

「……まぁ、やりますけど成果は期待しないでくださいね。俺の万能ってわけじゃないので。」

「あぁ。分かっている。」

俺はそれを後にして教室を出る

んじゃ期待に応える為に少し無茶をしようか。



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弱さ

俺は学校に入りタブレット端末を見ながら学校へ向かう

……まさかここまでとはな

俺は鷹岡の資料を見た時が目を疑った

まぁ防衛省のデータを盗み取ってきたわけなんだが

上半身があざだらけになった奴や

火傷跡が大きい女性の姿

それを集団で捉えているとはなるとはな

一応理事長にも連絡は入れておいたから最悪の想定にはならないんだろうけど

「……」

真剣にタブレットを見ながら対策を考える

とは言って無理に刺激すると余計に危険な目に合うことになるし

俺にとっても未だに恐怖は残っている

俺は昔ではあまり取り上げていられなかったがDV被害にあっていた

今でも痣や火傷痕が残るくらいに

さすがにあの時は痛みや激痛で泣き叫び苦しんだこと

親の顔色を伺いながら生きてきた思い出がある

父親の言うことは絶対であることを子供の時から叩きつけられていた

そんな想いはさせたくないしな

鷹岡の機嫌を伺いながらの中学生活なんて嫌に決まっている

と言っても俺にできることなんて限られているしなぁ

そんなことを考えながら歩いていると

「こうちゃん。おはよ〜。」

「うわぁ。」

と肩を叩かれるというベタなことに驚いてしまいタブレット端末を落としてしまう。

俺は後ろをむくとそこには倉橋先輩がいた

「お、おはようございます。倉橋先輩。」

「おはよ〜。珍しいね〜こうちゃんがタブレットを持っているなんて。」

「まぁ、少し調べ物がありまして。」

「へぇ〜羽川が調べものって珍しいな。もしかしてエロいこと?」

「あっまず。」

すると気になったのか岡島先輩がタブレットを見てしまう

「……な、何だよこれ。」

「えっ何々。」

と倉橋先輩もそのタブレットの中を見てしまうと顔色が一変する。

「こうちゃん。これ、どういうこと?」

少しだけ舌打ちをしてしまう。

やはりというべきかそこには鷹岡の資料が大量に展開されていた

オートロック機能を面倒がらずにつけるべきと思ってしまう

「昨日、防衛省のPCからあいつの鍛えた部隊のデータばかりを集めて抜きとってきたんだよ。嫌な予感が見事に的中して訓練では潰れるようなトレーニングで虐待的。……あいつに潰された奴も多くはない。しかも外面は家族のように扱うせいで外面はいいらしい。それに潰れなく育った訓練生は一流で大体は将来有効株として扱われているせいか、黙認されているというって感じだな。」

あいにく烏間だけに今朝見せるつもりだったんだが。

「……しくったな。本当に。」

俺はため息を吐く

調べるまでは順調だったのに答えが出ずに迷っていたのが災いした

そして優しく魅力的な物にこそ毒はあるってことも

「前に倉橋先輩にはいいましたよね?綺麗なバラほど棘があるもんだ。優しい人ほど裏があるとかよくいうだろ?表に見せたいのは自分の中理想像で基本は腹黒いって。その典型的な例ですよ。」

まぁ、あの優しさからはまずは疑われないだろうけど

でも

「ターゲットにとって優しさは凶器ですから。」

人を疑え、誰も信じるな。

どうせ裏切る

それが俺にとっての普通だったはずだ。

利用し、ずっと利用し続ける予定だった

だったんだがいつの間にか罪悪感が生まれ、

いつの間にか自分から行動するようになっていた

だから、今回も同じようにするだけだ

裏切られるくらいならぼっちでいる

頼ることは許されないし頼ってもいいのかもわからない

だから一

「……ねぇ。こうちゃん。私たちにできることってないかな?」

「「……は?」」

俺はともかく岡島先輩までもが声に出してしまう

いや、倉橋先輩何言っているんだ。

「いやいや。何言っているんですか。危険なことなんですよ!!」

「こうちゃんは人の事頼らなさすぎ。私たちのことそんなに信用できないの!!」

そう言われると顔を歪めてしまう

俺は信用するということは未だに慣れない

慣れないというより最初から利用するという考えしか浮かんでいない

……大抵俺はそうしてきた

利用価値があるから使い、そして潰したり壊したりしてきた

だから未だに怖いのだ

頼るってことは

本当に俺は臆病だと思う

たった一つ言い出すだけなのに

もう巻き込んでいるはずなのに

助けを求めるのが、

信用することが

未だにできない

好きなのに

ずっと居たいはずなのに

誰かが傷つけることを嫌う

安全なところはないはずなのに

誰かに頼ることが怖いのだ

自分が傷つけばいいだけだから

一人になれば、誰にも好かれなければ

逃げている。

未だに俺はこの教室から距離を保っている

暖かい場所でまるで本当に求めていた家族みたいなところだから

「こうちゃん?」

「えっ。はい。なんで。」

という前に俺は目から水滴が流れているのに気づく

「あれ?何で。」

俺は目をこすると涙は止まりそうになく少しだけ気づいてしまう

やばいこれ以上はまずい

「すいません。そのタブレット烏間先生に渡しといてください。」

俺はすぐさま外を出る。このままいたら甘えることになる

今はまだダメだ。

そう自分に言い聞かせながら



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苦しみ

大好きなのに

大好きだから

俺は一歩踏み出せない

裏切られることが当たり前だからなんて言い訳に過ぎない

好意、善意に満たされているあの教室は俺にとってまぶしすぎるのだ

復讐のために一度刃を向けたはずなのに

怖がらせたのに

どこまで走ったのだろうか?俺は森の中に入っていた

トラップがないので奥地までは行っていないと思う

適当に木の上に飛び乗ると俺は木を登っていく

「……」

俺は木を登りきると校舎が一望できた。

「……」

本当に嫌になる

こんな自分が本当に嫌だ

独りぼっちには慣れているはずなのに

ずっと独りだったのに

涙が止まりそうにない

目が滲んで前が見えなくなる

「どうすればいいんだよ。」

言葉が漏れる

「どうすればよかったんだよ。」

本心だった。どう伝えたらいいのか分からなかった

「なんで俺なんだよ。何で俺がこんな目に合わないといけないんだよ。」

心の痛みが消えそうもなく、誰かを傷つけた痛みが襲う

自分が自分勝手ってことも。

全部わかっていたはずなのだ

はずなのに

怖い。

死ぬのが怖い

生きるのも怖い

優しさが怖い

裏切りが怖い

暖かさが怖い

誰かに懐かれるのが怖い

誰かにすかれるのも怖い

何よりも嫌われるのが一番怖い

恐怖が一斉に襲いかかってくる

怖いよ。

誰か助けてよ。

声にならず泣き噦る

何で話しかけてくるんだよ

何で俺みたいな奴を優しくしてくれるんだよ

裏切ったんだぞ

殺意を向けたんだぞ

それなのに何で

何であんなに暖かいんだよ

笑顔で迎えてくれるんだよ

「羽川くん。」

「……」

すると俺に話しかけてくるこういう空気が読めない奴は一人しかいない

「……なんだよ。死神。」

「……ひどい顔してますね。」

「悪いかよ。」

俺は苛つきながら死神を睨む

独りにしてほしかった

独りがよかった

苦しい

誰かいるのももう関係ない

辛い

辛すぎる

ふと声に出してしまう

ここから飛び降りたら楽になれるだろうか

もしくは誰かに殺されると楽になれるだろうか

でも

「ここで苦しまないとあいつらに近づけないだろ。」

嫌なんだ

もう一人がいいって思ってしまう自分が

死んでしまいたいって思ってしまう自分が

「……君は優しい。優しすぎるのが偶に傷になる。人を傷つけることですら躊躇ってしまう。」

するとふとそんなことを言い出す

「だから俺はそんなに。」

「優しいですよ。羽川くんは。君がクラスに馴染ませないようにしてたのも、わざと傷つけているのも。全てE組の皆さんのためですから。」

「……」

「ただ、自分を犠牲にしてしまうところがいけません。君はまだ中学2年生です。……もっとわがままを言ってもいい。」

「わがままって。もう子供じゃないんだからさ。」

「あなたは子供ですよ。あなたがこのまま変わろうとするだけで変われないままじゃいつになろうとも子供のままです。」

的を得た言葉だ。俺は少しだけ笑ってしまう

「厳しいな。確かにそれじゃあ俺は子供のままだな。」

変わりたくても変われない。

いや変わろうとしないのだ。

変わるってことが怖くて臆病であるままだったら

「……人間って難しいな。大体の気持ちはわかっても本当の気持ちって誰にもわからないんだから。」

「えぇ。それが人っていう種族なんですよ。」

本当にそれは厳しいな

俺じゃあ解ける問題ではなさそうだ

「……んじゃ。戻りましょうか。もうそろそろ始業のベルがなりますよ。」

「俺はのんびり戻るから先戻っといて。少し考えたいことがあるし。」

「いえ。今日こそは羽川くんにも朝礼も受けてもらいます。」

「……えっ?」

俺は少し固まってしまう。

「やはり、全員揃って点呼しないのもおかしいですし最近の素行不良っぷりはカルマくん以上ですからね。」

「いや〜それはちょっと。」

「問答無用です。」

触手に掴まれるといつのまにか教室に死神と一緒に来ていた

「おはようございます。皆さん。」

「……えっ?」

いや、何でこんなにも早く学校に着いたのか?

てか俺が見たところ結構離れていたのにもかかわらずに?

キョロキョロと教室を見回すと苦笑いしている潮田先輩と赤羽先輩がいるほか、俺の席と堀部の席以外が全員埋まっている

「マッハ20。いや。距離から計算するにマッハ10くらいか?」

「えぇ。羽川くんの推測通りです。」

だろうな。あの距離から俺の負荷がかからない最大出力はマッハ10くらいだ。

……はぁ。捕まったのが運の尽きか。

消えようにもこれだけ注目とクールタイムが効いた状態では消えることはできないしな。

「……」

俺は席に座ると出席を取り始める死神

「……あはは。大変だったね。」

苦笑している矢田先輩。

「大変ってこれから起こる方が大変だと思いますよ。」

「へ?」

ターゲットに向いてないよ君は

一度華に言われた言葉

俺は少し苦笑する

本当にあんたは俺の教師だよ。

そんなことを思いながらつまらない号令を聞いていた



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力になりたくて

「……そういや、鷹岡の件何も解決してねぇや。」

俺はため息を吐くとそう呟く

授業中にボソッと呟いたのに倉橋先輩は聞こえてらしく少し反応する。

そういや烏間に呼び出されることもなかったし、なんか対策でもしているのか?

俺は少し首を傾げる。

まぁ、6限目が体育だし分かることなんだろうけど。

どうすればいいんだろうか

どうすれば人を傷つけられずにこの問題を解消できるのか

その答えは未だに出そうにない

この問題は多分俺は出てはいけないのだろう

烏間がどうするのかが今回の件の肝だろう

烏間がこれからどんな関係を築きたいのかの試練だろう

……はぁ、なんかこの教室にきて色々考えているな

ノートに今の現状と予想そして想定されるこの後を書き出していく

一番いいのはこのまま防衛省とは違い適切な指導をする場合

まぁ、これならば文句なしに一番いいんだけど

二番目は烏間先生で対処できる場合。

まぁ、この二つに関してはほぼ確実に可能性はないと言っていいだろう

この二つを除外するとなるとどうする?

俺は制約上教育に関連する行為には触れることができない。

一応生徒兼安全な暗殺のサポートと護衛をやっているはずなので先生の任命権は俺にはない。

理事長からも任命権は預かってあるけど、成る可くは触ってほしくないらしい。まぁ利益とかそんな感じだろうけど

まぁ、一番どうしたいのか決めるのは生徒とこの教師だろう

……本当こういうところだよなぁ俺がクラスに馴染めないのは

本当上から目線で、実力も圧倒的に優れている

だから本当に距離感がある

どこか見えない壁があるように感じる

近づきたいのに、壊したいのに

遠くに行ってしまいそうで

焦ってしまい余計に壊れてはくれない

だからこうやって冷静になった時に改めて後悔するのだ。

前に進んでいるように見えて

俺はいつも進んではいない

6年前のあの日からずっと

思考の中で鎖に囚われていく

もがけばもがくほど絡まっていく鎖が複雑で厳しくからまり苦しみを生み出す

それは呪いのように

闇を形成し、そこに引きづりこんでいく

……どうすればいいんだろうな

分からないことが多すぎる

どうすれば正解なのか

どうしたら前に進めるのか

一向に分からず時が過ぎて行く

「…う………。」

どうしたらいいんだろう

「こ…ちゃ…。」

俺が人を本当に信用できるようになるには

「こうちゃん!!」

すると肩を叩かれると一気に視界に倉橋先輩が目の前に立っていることに気付く。

「あっ。すいません。ぼーとしてました。」

といい静かにノートを隠す。

……こういうところだよなぁ。

自分だけで抱えようとして頼ろうとしないところが

ぶっちゃけ人を使えば簡単に解決する

鷹岡の体罰を撮影し、理事長に利益を計算すれば簡単に追い出すことができるだろう。

でもそれは俺が受けたって意味がない。

あいにく俺はターゲットである以上殺されるのは当たり前なのだから

「……どうしたの?今日一日中話しても反応ないし。」

「……えっ?」

時間を見ると12時30分を少し過ぎたあたりで昼休みの時間に入っていた。

「……すいません。完全に考え事してました。」

「あ〜桃花ちゃんのいう通りだったんだ。」

まぁ、矢田先輩には一度見られているからな。

「……そういや、タブレットって。」

「烏間先生に渡しておいたよ。」

「ありがとうございます。」

といい俺はまた思考の渦へ身を任せようとすると

「こうちゃん一緒にご飯食べよう!!」

と珍しく倉橋先輩が昼食を誘ってくるんだが

「いや、今日俺飯ないんですけど。」

昨日は夜中防衛省が会議を開いている時の盗聴や鷹岡のデータを入手するために防衛省に忍んでいたので飯を持ってきてないのだ

「じゃあ、私のお弁当分けてあげるから。」

純粋な目に少しだけため息を吐く

「……別にいいですけど今の俺結構きついこと言いますよ。結構朝の件引きずっているんで。」

「あはは。やっぱり引きずっているんだ。」

「……引きずりますよ。平和ボケであんなに隙だらけの俺なんて自殺行為にも近いんですから。」

ため息を吐く。それよりも今はどんな問題よりも難しいことを解いている

というよりも、こっちで疑問になっていることを聞いてみるか

「それよりもなんで倉橋先輩は最近俺に話かけてくるんですか?珍しいですよね?あんなことが起こっても話かけようとするなんて。」

俺は率直に聞いてみる。

少しくらい恐怖があるのが当たり前だろう。

すると周辺の空気が少しだけ変わったのが分かった

全員が思っていることかそれとも俺に避けていたってことを見抜かれたくなかったのか

まぁ、ほとんどが両方なんだろうけど

「……ぶっちゃけ、取り返しのつかないということをしたし、嫌われる覚悟はあったんですけど。」

覚悟というよりも懺悔の感じが強い

「嫌われたいの?」

「いや、そんなわけじゃないんですけど。」

というよりも分からないのだ。

なんでこんな自分を話しかけてくるのかが分からない

「助けてほしいんだよね?」

「……」

その一言に俺は倉橋先輩を見てしまう

そういえばこの先輩には聞かれたんだよな

 

助けを求めたいのに求められない

 

俺は修学旅行の時に言った言葉だ

「……多分、こうちゃんは私たちに隠していることだって立場上色々あるし、私たちに気を使っているのも分かっているよ。でも私たちだって少しは力になりたいんだよ。」

素でこう言える先輩は少しだけ羨ましく感じる

純粋すぎて、考えていたのが、バカみたいに思えてくる

「……なんか、本当にバカらしいや。」

俺は少し笑って

「それじゃあ体育の教師が烏間先生に戻ったら今まで以上に倉橋先輩鍛えないといけませんね。」

「えっ?」

「今のままじゃ助けになるどころか足でまといにしかならないので。」

事実そこまで差が開いているのだ

それにナイフ術に関しての努力は女子の中で群を抜いている

正直なところあんまり伸びるとは思ってなかったんだけどなぁ

烏間の影響だろうけど、それでもいい攻撃手に成長するだろう

「……む〜。さすがにひどくない。」

「俺のサポートなんて烏間くらいにしか今はできませんよ。」

するときょとんとする倉橋先輩。なんか変だったか?

「そういえば、こうちゃん烏間先生と最近仲いいけど。」

「別に何かと相談受けるだけですよ。殺し屋関係は俺の方が詳しいですし暗殺業は俺が教える方ですしね。」

「教えるっていいの?そんなことして。」

「別にいいんじゃないですか?それで俺を殺せるっていうなら話が別ですが。殺されるつもりはないので。」

まぁ、多分殺す気もないんだけど

「……それに烏間かっこいいですもん。だって普通ターゲットの俺なんか信用してくれる先生なんてあの人ぐらいですよ。」

俺の先生での評価ではどう考えても死神よりも烏間の方が上だ。

あれ以上にまっすぐで俺見てくれる人なんて見たことねぇよ

「それよりも昼食食べないでいいんですか?時間結構経ってますよ。」

「あっ、本当だ。」

「それも先輩方盗み聞くのならもうちょっと話すか食事の箸を進めてください。盗み聞きしてるってバレバレですよ。」

それにやることが見えてきた

そして決心するこの件は俺は何もしないでおこうと。

……まぁ、元々関わってなんとかなる訳じゃないけど。

まぁ弁当の件は適当に嘘をついて誤魔化しながら断ったので少し五時間目倉橋先輩の機嫌が悪かったのを書いておこう。



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