グラブル 復活!サイコガン (zunda312)
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始まりの島
だろうな とくにPRはしてないからな


ヤツ…?


とある島に向かって、一筋の流星が落ちていく。

 

一見して、流れ星に見えるそれだが…

 

その正体は、宇宙からの隕石などではなく…人が乗っている船であった。

この星の重力圏に入った船は熱により赤くなってはいるが、その船体は確認出来る。

 

無骨で平べったく例えるならば亀に近いだろうか。

島に近づくもその船は速度は落ちることは無く、次第に加速しているようにも見える。

 

最初は、流星と思い、物珍しさで見上げていた島の住人であったが、船の落ちる先…つまり自分たちの生存圏

に落下する可能性に気がつくと、大急ぎで、予測される落下地点から逃げ始めた。

 

 

島中が大騒ぎの最中……落下している船の内部には2人の人影。

 

そのうちの1人が、悲鳴のような声を上げながらあらゆる機器を操作し、船のコントロールを戻そうとしていた。

「こいつはヤベぇぜ、制御不能だ。 このままじゃ、あと1分もしないうちに俺たちゃペシャンコよ」

「冗談言ってないで手を動かして!このままだと、この船ごと貴方の言う通り私達は粉々よ!」

「そうは言ってもよぉ~」

情けない声を出しながらも船の操縦桿を必死に動かす男。

しかし、幾度試せど結果は変わらずその全ては無駄に終わる。

 

やがて男は諦めたのか、両手を頭の後ろで組み、操縦席の背もたれにもたれかかった。

既に操縦席では、自分たちが激突するであろう地面が目の前に迫っている。

 

「へへへッ、俺の人生こんなんが最後か?不死身の名が廃るぜ、そう思うだろう、なぁ?レ――」

男の呟きは途中で途絶え、彼が呼ぼうとした相棒への問いかけは・・・最後まで声に出されることは無かった。

 

 

船は島の中央に聳え立つ山に直撃。

島を揺らすほどの衝撃が響くと同時に、大きな爆発音が響き渡った。

 

振動と爆発音を聞き、ただ事では無いと感じた島の住人は、次第に爆発したと思われる現場に集まっていく。

 

彼らが船の落下現場に到着し、目の前に広がっていた光景――――――

 

 

 

「おい!! 人がいるぞ! まだ息がある!」

 

原型が分からないほどに崩壊している船と、衝撃で船からはじき出されたと思われる一人の人影。

 

 

身体にぴったり張り付いた赤色のTシャツとレギンスを身につけた金髪の男が倒れている光景だった。

島の住人は目の前の光景に驚き目を見開く。

あれほどの振動を与える衝撃に加え、島を揺らすほどの爆発があった、船だったものは原型を留めているようには見えない・・・・・・にも関わらず、地面に伏してる男は意識が無いものの、しっかりと呼吸をしていたのだ。

 

 

この倒れている男が幸運なのか・・・・・・それとも

 

ともかく、男が生きていることに気がついてからの島の住人の行動は、素早くかった。

素早く男を手当てすると、力仕事が得意な男数人で担ぎ上げ、村まで運び、残りの者は消火作業を始める。

 

 

火災の消火が終わり、燃えていた船だと思われるものは、島の住人には理解を超えた代物で、自分たちが稀に使用する騎空艇とは見た目が大きく異なっており、消火が終わった今の姿が原型をとどめていないのか、それとも大した損傷をしていないのか判断することは出来なかった。

 

 

 

そして・・・・・・治療を施された男は、凄まじい生命力を発揮し、なんと2日後目を覚ます。

 

 

しかし、自分が何処の誰で、今まで何をしていたのか覚えてはいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――五年後―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

果てだ・・・

ここは空の果てだ

 

ついにたどり着いた

 

我が子よ――――――星の島

イスタルシアで待つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ~た親父さんからの手紙見てんのか、飽きねぇもんだなグラン」

トカゲのような姿を持つビィは手紙を読む少年に尋ねる。

「おはよビィ」

「おうよ!!・・・だけどょ~グラン。いくら親父さんの手紙にあったからって空の果てなんて辿り着けるわけ――「大丈夫、きっと辿りつける」」

トカゲのような姿の相棒の言葉を遮り、確信があるかのように言い切る16歳ぐらいの少年…グラン。彼の反応にビィは呆れつつも笑ったのだった。

 

 

この島で生まれ、ずっと生活していたグランという名の少年。彼は今日もいつもと変わらぬ生活をしていた。

 

早起きしたグランは一日に行うべき仕事を半日で終え、毎日行っている修練に出かけようとしていた時グランの住む家からこの家に住むもう一人の住が姿を現した。

その姿を見たグランは苦笑いを浮かべ、ビィは怪訝そうな顔をした後一言、苦言を呈した。

「おい!!、いま起きたのかよギリアン?」

寝起きのようで名前を呼ばれた男は眠そうにしながらもビィに挨拶するように左手を挙げた。

 

「よぉ、ビィおはようさん。いい朝だな」

「・・・・・・もう昼過ぎだぜ」

呆れるビィだったが、ギリアンと呼ばれるこの男はいつもこんな感じなので、あまり気にはしていない。

「ギリアンさん僕はビィと一緒に森に行ってきますから後はお願いしますね」

「あぁ、分かった~気をつけてな~」

グランとビィを手をふり見送ったギリアンは大きく欠伸をした後、軽く背伸びし体を捻り自分の体調を確かめる。

昨日と同じで特に異常を感じることはなく、体をほぐし終えたギリアンは最後に大きなあくびをした。

「さぁてと~、それじゃ今日も一日・・・・・・半日頑張りますか~働かざる者食うべからずってね」

 

 

 

ギリアンと呼ばれている大柄の男がグランと分かれた後、寝間着から普段着に着替え、農作業に使う鍬を手に持ち、再び家の外に出ると見慣れない物が視界に映った。

「・・・・・・なんだいありゃあ、艇・・・戦艦みてぇにでけぇな?」

 

ギリアンが見上げる先にはここらで見ることはまず無いであろう大きな艇、それはギリアンの言葉通りの戦艦だった。そしてその直後、戦艦の後方から爆発が起きる。

 

 

 

彼が記憶を無くし自分が何者かいまだに思い出せないでいるが、肉体に変化はない。ギリアンの肉体は一般常識とはかけ離れているのだ。

爆発する光景を見ていたギリアンの目には確かに爆発と同時に飛び出してくる小型の騎空艇を捉えていた。

「これは、なにか起こるか~?・・・・・・と、いっても記憶が無いただの村人に何が出来る訳でもないがね」

そう呟いたギリアンだったが、目つきは険しくなっており、彼自身も忘れている凛々しい姿が、そこにはあった。

 

「まぁ、よく分からないが目は良いもんでね・・・・・・?オイオイ!こりゃあやばくねぇか!!?」

直後、そんな事を呟いていたギリアンだったが、自身がいる村に狙いを定めるかのように戦艦の砲台が向けられると、声を荒げて叫ぶ。

 

「っ!!こいつはヤベェ!」

慌てて逃げるように走り出したギリアンだったが、砲弾の範囲から逃げられる筈もなく、無慈悲にも彼がいる場所めがけて砲弾は撃ち出された。

 

「クソ!」

突如迫る砲弾に対し、ギリアンは手に持っていた鎌を投擲するが、迫り来る砲弾には当たるわけもなく、砲台にぶつかる前に落下してしまう。

 

「あ~あ、なんてこったい」

ギリアンがそうつぶやいた直後、砲弾はギリアンの頭部を直撃……吹き飛ばされたギリアンは自分も住んでいるグランの家の壁に叩きつけられ、その意識を手放したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ギリアンが砲弾を受け意識を失っている最中、森の中でグランは大声で叫んでいた。

 

「この子は化け物なんかじゃない!取り消せよ!!」

森での修練中偶然助けた、青く美しい髪をもつ少女を背後に守りつつ、グランは眼の前に立つヒドラとそれを使役する帝国兵士のポンメルンを睨みつけながら強く言い放っていた。

「ガキが・・・虫けらの分際で意見しようなど」

グランの言葉が癇に障ったのか、ポンメルンは声を張り上げながらヒドラに命令を下す。

「極刑!!!デスネエ!!!!」

ポンメルンの命令を受けたヒドラが猛スピードでグランに差し迫る。

「えっ・・・・・・」

それは戦いと呼べるものでは無かった。

あまりにも一方的で、一瞬のうちにグランはヒドラの攻撃を受け吹き飛ばされた。

吹き飛ばされたグランの体は、空を舞い、そして紙切れのように地面に落ちた。

日頃から鍛えていたとしても、自分よりも何倍もの大きさのものに跳ね飛ばされたのだ、当然の結果である。

 

グランに起き上がる気配は無く・・・・・・そもそも、彼は息をしていなかった。

やがて地面に落ちたグランの体から赤黒い血が零れ始める。

 

辺りを静寂が支配する。やがて事態を把握したビィが大声をあげながらグランだったものに駆け寄っていく。

「なッ!?おい!グラン!し、しっかりしろよ、おい!」

「み、民間人、それも子供を・・・・ポンメルン!貴様、どこまで腐った!?」

必死に声をかけるビィだが、グランの目はどんどん光を失っていく。ルリアを助けるため、共に帝国から逃げ、グランと共に帝国兵と戦っていた女騎士はこの惨劇を見て怒りをあらわにした。

 

そんなやり取りをぼーっと眺める人物がいた。地面に伏しているグランである。彼にはまだ、確かに意識は残っていたが痛みはなく。

そしてとても寒く、睡魔が襲って来ていた。

やがて…聞こえる声も小さくなっていき、グランの意識は落ち、その体はすべての生命活動を停止させた――――――

 

 

 

 

子供の頃からずっと――空ばかり見てた

 

空の果ての星の島――イスタルシアに憧れて

 

事故で記憶を無くして家に居候しているギリアンさんに夢を語って応援された

 

グランの思いが走馬燈のように駆け巡っていく。彼の心に唯々悔しさだけが蓄積されていく。

 

まだ何も・・・女の子一人守ることも出来なかった・・・

 

 

 

嫌だ!!生きたい!このまま死ぬのは嫌だ!!!!

 

 

いくら叫ぼうとも、彼の声が届くことはない――彼一人だけの力では助かることはあり得ない。

 

しかし、グランの叫びとも呼べる、声に応えるように反応する声がある。それは先ほど突然現れグランに助けを求めた少女の声。

 

「グラン――あなたは私を助けてくれた、だから――今度はあなたを―――」

 

命を共有したことで立ち上がったグランと蒼の少女は協力し、この島に眠る存在。原初のバハムートを呼び出し、ポンメルンの操るヒドラを一瞬のうちに葬り去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃

 

 

 

 

 

 

 

 

「何者だっ お前はっ!!」

 

帝国の兵士は怯えるように声を張り上げ、自分たちに一人で立ち向かう男に向かって叫んでいた。

「へへッ、なにをかくそう俺はボンド・・・・・・ジェームズ・ボンドさ」

 

この記憶喪失の男ギリアンだが、直撃したと思われる砲弾を食らい一時的に意識を手放したが、それも束の間、何食わぬ顔で意識を覚醒させると普通に立ち上がり、自分の住む村に迫っていた帝国兵に自前の銃で応戦を開始したのだった。

「くそぉ、こっちは砲弾を喰らった影響で頭がクラクラしてやがるってのに」

 

砲弾の直撃を受ければ、普通の人間なら既にこの世にいないだろう。だが、この男は違う。彼自身が忘れてはいるが、その肉体は健在である。

 

剣が迫れば容易に躱し、隙があれば帝国兵を撃ちぬく、男の辺りには倒れた帝国兵が時間とともに積み重なっていく。

しかしその戦闘が一時中断される。

「・・・・ありゃなんだ?」

本日二度目の驚きの声を上げるジョー・ギリアン。

彼の視線の先、そこには突如島の上空に修験下謎のドラゴン。

 

それに驚いたのはギリアンが相対している、周りの帝国兵も同じで、武器を取り落とすもの、悲鳴をあげるもの腰を抜かすものまでいる。

 

帝国兵は一般人と思っていた男一人に苦戦しており、容易く自分たちを葬る男の不気味さが恐怖として体に染みつき始めた頃、突然、謎のドラゴンの登場である。かれらの戦意喪失は当然である。

しかし、その中でも一部の優秀な帝国の兵士は戦意を失わずにギリアンに向かって斬りかかってくる。

一方、突如現れたドラゴンに驚いただけで、決して油断はしていなかったギリアン。切りかかってきた兵士を簡単に無力化する。

その後も彼は戦う気力を無くした帝国兵は狙わず、こちらに向かってくる者だけを相手にし続けた。

 

やがて、彼の周りから生きている帝国兵は(・・・・・・・・)撤退した。

ギリアンはそんな、戦闘があった場所でどこからともなく葉巻を取り出し火を付けると、周囲を見渡し、この現状を作り出した自分に驚き1人つぶやく。

「俺は一体何者なんだ、へへへッ、よく分からねぇがまぁ、くそ、とりあえずあっちに向かえば何とかなるだろ」

ギリアンの呟きは、誰にも聞かれることはなく空に消えていく。

それは砲弾を直撃した後から、頭の中を不意によぎる映像に対する言葉だったのかもしれない。

 

その後、ギリアンは砲弾が直撃したんこぶになっている箇所を左手をさすりながらドラゴンが現れた方向に向かって歩みを進めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なんとかポンメルン達を撃退し逃走したグランは、なんとか帝国兵から逃げ切り息を整えていた。

「この子は喜び 悲しむ普通の女の子さ、大人の野望に巻き込む訳にはいかないだろう?」

そういって元帝国兵のカタリナはルリアの頭に手をおきグランに向かって、自分の決意を宣言する。

「ルリアを帝国の好きにはさせない!」

そう言ったカタリナの目には強い意志が宿っている。彼女の言葉、そして心の強さに関心したいたグランだったが・・・・・・突如背後の草むらから音が聞こえ、グランとカタリナは剣を構える。

 

しかしそこに現れたのはグランの家に住む居候

「まってくれグラン、俺だ、俺だよ~そんな構えないでくれ」

「ギリアンさん!無事だったの?」

相手が分かったグランは剣を納めギリアンに駆け寄る。その後をビィが追っていく。

 

「あぁ・・なんとか大丈夫さ、村の人も全員無事だとおもうぜ、なんか奴さん達はみんな撤退しちまったぜ」

「ほんとうか?!信じられん!」

ギリアンの言葉に咄嗟に声を挟んでしまったカタリナは一度咳き込むとギリアンに向き直った。

 

「失礼した。わたしはカタリナ、こっちはルリアだ。すまない先ほど村人は全員無事だったとおっしゃったが、それは本当か?」

「あぁ、本当さ なんかゾロゾロきて、せっせっと帰っていったぜ・・・・・そんなことよりお嬢さんお綺麗ですね。どうです?今度お食事にでも」

ギリアンはサッとカタリナに接近するといつもより低い声で語りかけた。

「・・・・・・ハァ?!な、何を突然言い出すんだ貴方は」

突然の事態に驚くカタリナ。

このギリアンの行動にはカタリナも驚きを隠せなかったようだ。

 

 

 

 

「なるほど、帝国兵士が突如撤退を始めたと…信じられん、彼らには撤退する理由がない」

「そう言われても、俺は事実しか言ってないぜ。あいつら突然去っていきやがったんだ」

「ああ、すまない別にギリアン殿を疑っているわけでは無いんだ。気に障ったのなら謝罪しよう」

 

その後もギリアンが口笛を吹きながらカタリナに島襲撃に関する質問に丁寧に答え、島での出来事を共有する。

ギリアンが一通り話し終え、その後グランからここで起きた事の説明を聞き終えたギリアンは新しい葉巻をくわえると・・・・・・

「つまりだ、グランは嫁さんをゲットして、これから新婚旅行がてらそのイスタルシアってとこに行くってことか」

「どうしてそうなるの?!」

「はわわ」

ルリアは顔を赤らめ顔を隠し、グランはギリアンに詰め寄った。

「ギリアン殿あまり、ルリアをからかわないでいただきたい」

カタリナの言葉に悪かったとウィンクで返したあと、問題点を指摘する。

 

「おい、そんなことより早く出発しないと帝国兵が来るんじゃねぇか?俺が思うに撤退した帝国兵士はまた人数をそろえて戻ってくるだろうさ」

 

 

 

 

 

 

 

そんなこんなで小型の騎空艇の乗り込み島を脱出しする一同‥‥‥彼らの冒険が始まる。

 

これは、全宇宙にその名を轟かせていたある男が様々な事件に巻き込まれながらも、グラン達とイスタルシアを目指す長い冒険の記録である。




誰だが分かった人はいないだろうな~



あ、単発です(でした)


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ポート・ブリーズ群島編
何やってると思う? 驚くなよ


こんちはーーっ!!


グラン達の冒険が遂に始まった。沢山の出会いと戦いを得て、イスタルシアに向かう冒険は始まったのだが・・・・・・

 

聞こえたのは小さな爆発音。これを聞き取ったのは、狭い船内の中で操縦主のカタリナとギリアンだけだった。しかし、カタリナの表情を見て疑問を抱いたルリアが声をかけた。

「どうしたの?カタリナ」

「・・・・・・・舵が利かないのだが―――」

ゆっくりこちらを向いたカタリナの顔には尋常ではない汗をかき青ざめてていた。

グラン達の顔が引きつり、唖然としてその動きを止めた。

「こりゃ、オレ達みんな揃って空の底にご旅行かな、そもそも空の下ってどうなってんだ?」

そんな中でも、笑みを絶やさない男が一人、彼の態度が理解できないビィが思わず声をかける。

「おい、ギリアン!なんでそんな余裕そうな顔してるんだよ?!」

ビィの質問を受けてもギリアンの態度が変わることはなかった。

「こういう時は大体なんとかなるもんさ」

 

そんなこんなで船内で悲鳴や大声があがって大騒ぎになったものの、なんとか船はギリアンの予想通り島まで辿りつくのだった。

 

 

 

「終わった・・・」

これは誰から呟かれた言葉だろう、しかしこの言葉は、ここにいる者たちの総意だったのかもしれない。

彼らの前にはボロボロになって墜落した騎空艇。

「面目ない・・・まさか騎空艇の操縦がここまで難しいとは・・・」

「「えっ」」

ヒューッ!

本日二度目の驚愕の声と口笛。

しばらく、震えていたグランとルリアだったが、

「これからどうしましょうか?」

ルリアが不安そうにカタリナに尋ねる。

「そうだな、とりあえ――「オイオイ!なんてひでぇことしやがる!」」

カタリナの声に被せるように男の声が響いてくる。そこに現れたのは一人の男。

20歳後半程度の見た目の男はグラン達を気にするそぶりも見せずに、さっさと騎空艇に近づいていき、目を細め、何やら確認をしていた。

「うわっ竜骨も割れてやがるな」

どうやら、男は艇の現状を確認しているようで、エンジン部分を見終えたのか、やがて艇の周りをグルグルと回り始め、また別の場所に屈みこんだ。

そんな男の右後ろに音もなく忍び寄った男が一人。

「アロンアルファーならあるが無理か?」

「うお!何だよ…気配を消して後ろに立つな!!驚くだろう。…っで?そのあろん?とか言うやつが何かは知らないけど、どう修理したってこいつは二度と空には出られねぇぜ」

いつの間にか自分の直ぐ近くに立っていた事に驚いた男は、ギリアンが取り出した黄色い棒状の何かを凝視した後、艇の現状を説明した。

ギリアンは何処からか取り出したか分からない、黄色い棒状の物を男の返答を聞き残念そうに何処かへとしまった。

ひとまず艇の現状確認が終わったのか、男がグランたちに近寄ってくる。

 

「アンタたち騎空団なのか?人数を見る限り‥‥‥駆け出しってとこか、仮にも騎空団を名乗ってるんなら、操縦士の一人でも仲間にするんだな」

そう言って男はふらふらと何処かに歩いていってしまった。

 

彼が去った後のグラン達の反応はそれぞれ異なっていた。

「なんなんだぁあいつ!!言うことだけ言ってどっか行きやがって」

素直に怒るビィ

「確かに空の旅を続けるなら不可欠な人員だな・・」

男の言葉に納得するカタリナ

「あの人 お艇を見て悲しそうな顔をしていました・・ひょっとして私たちを心配して見に来てくれたんじゃないでしょうか」

男の考えがそうであってほしいと悲しそうな表情をするルリア。

それぞれが男に対しての意見を話す中、ギリアンは‥‥‥

「へへッ、そんなことより腹減ったぜ、飯にしようぜ飯」

「ぐぅぅ‥‥‥」

 

ギリアンの言葉を聞いた影響か、ルリアのお腹の音が辺りに響き、この場から歩いて村に行く方針が決定した。

 

 

 

 

男が歩いて行った方向に村があると判断した一同は歩みを始めて20分。本来ならば村につくはずだったのだが、歩いている途中、飯を提案した張本人のギリアンがグラン達の集団から消えており、慌ててグラン達がギリアンを探すことになる。

 

 

もと来た道を歩いていると細い道のとある場所でギリアンが止まっており、壁の一点を見つめていた。

「オイ!ギリアンどうしたよ?」

「へへへッ、少し気になってな」

ビィの声に反応をみせるが、ギリアンはビィに視線を向けることは無く壁のある一点を見つめたままだった。

ギリアンの反応を見てグラン達は何かあると確信ししばらく、この場にとどまりギリアンが気が済むまで待つことにしたのだった。。

ギリアンは丁寧に壁に手をふれ、何やらいじり始めた。触り方は繊細なものを傷つけないかのように慎重だった。

 

「これが、ココの稼働の条件で…ってことは!!ココを押せば…っ!!!なんでい、簡単じゃねぇか、ってことは次はこっちをいじれば!!よしキタ」

ギリアンが何かを操作したようで、自然の壁だと思っていた場所が、鈍い音と共に動き始め、暗い通路が現れる。

ギリアンの行動に不思議そうにしていたルリアとカタリナは驚き、グランとビィは彼の性格を知っていたため苦笑いを浮かべていた。

「うわー!!ギリアンさん凄いです!!」

「ルリアちゃん。良いこと言うじゃねーか、ほれ、飴玉をあげるぜ」

「わーい!」

「じゃあ早速探索と行こうぜ!グラン俺と一緒に前衛な」

「任せて!ギリアンさん」

 

 

 

暗い通路を進むグランたちの周りには古びた書物や何かの書類の山、それと大量の罠だった。どれもがまともに当たれば命にかかわるものばかりである。

 

「おっと、グランそこのレバーを引いてくれ」

「わかった」

レバーが引かれると同時に飛んでくる火矢をギリアンが手に持っていた木の板で叩き落す。

彼らの後ろを歩くルリアたちはここまでただ歩いているだけだった。

「ギリアン殿は凄いな、どこでそんな罠などの知識を学んだのだろうか?」

「へへ、俺はルパン三世だからな、こんなものは朝飯前さ・・おっとここが終点みたいだが‥‥‥なんだこの頑丈な封印は」

 

 

グラン一行がたどり着いたこの奥地に人が丸々入るよう筒状な物で強力な封印が施されていた。

「なんだか変わった力を感じますが、星晶獣とは違うような・・・・」

「うへぇ‥‥‥オイラお腹すいたぜ、とりあえず一回引き上げよーぜ」

「まぁ、待つんだビィくん。せっかくギリアン殿とグランがここまで頑張ってくれたんだ。もう少し辺りを探索してみようじゃないか」

「ですねっ!頑張りましょう!ビィさん何かいいものがあるかもしれませんし」

お腹が減ったビィが一度戻る提案をするが、カタリナとビィが捜索することを提案する。

少しこの場を調べることが決定したのかそれぞれ辺りを探索し始めた。

封印を眺めるギリアン。

「これは俺が知ってるもんじゃねーな、へへッ一体何が入っているんだか財宝かそれとも兵器か?なぜだか妙に気分が上がるぜ」

 

 

 

探索を始めて10分ほど、封印の解除に挑戦しているギリアンのもとにルリアが駆け寄る。

「ギリアンさーん、調子は・・・・あ、あれ‥‥‥?いま私なにか…」

カチッと言う音と共に突如起こる地震、同時に解除され始める封印

 

「ルリアちゃん、ビンゴだ」

「ひぃっ!?な、なんなんですかこれ!?」

「ルリア!怪我はない?」

ルリアのもとに駆け寄るグラン、少ししてカタリナも戻ってくる。

「ルリア!どうしたんだ!!‥‥‥これはギリアン殿が?」

「いーや、俺じゃねぇ、ルリアちゃんだ」

「や、やべぇぞ、こりゃあ…例の封印とやらが、解けちまったのかもしれねぇ」

「かもじゃないよ、ビィ、封印が解け始めてる」

封印が解け辺りが煙に覆われる。グランたちは煙から離れるように少しづつ後ろに後退する。

 

 

「グラン!!ルリアを連れて下がれ!!!」

突如先頭にいたギリアンが煙に接触する寸前、声を発した直後…デカイ棍棒のような物に吹き飛ばされ鈍い音と共にギリアンの姿は煙の中に吸い込まれていった。

 

「ギリアンさん!!」

グランの声に反応するかのように、銃声が響く。グランの耳にはギリアンがいつも使っている銃の音だと判断し、彼が煙の中で戦っていることを理解する。

 

 

煙から一定の距離を後退し終えたグラン達の前で戦闘音が響く。

煙の中で響く、何かを叩きつける音、無数の銃声…そして煙ごしでも見える謎の光 おそらく何かの魔法が行使されているとみて間違いない。

 

戦闘音を聞き、レイピア似の自前の剣を構え援護に向かおうとするカタリナをグランが止める

「なぜだ!グラン…今にもギリアン殿は追い込まれているかもしれないだろう」

「銃声が聞こえたからギリアンなら大丈夫、煙が晴れるまで様子を見よう」

「しかし!!」

そんな中、戦闘音が突如止まる。少しづつ煙が晴れていく中グランは今にも動き出しそうなカタリナに視線を向ける。

「大丈夫、ギリアンは強いから」

何か確信めいたグランの一言、カタリナが見たグランの瞳には強い意思が感じられた。

 

 

グランの予想通り煙は一時的なものだったらしく、次第に視界が広がっていく。

 

 

「けほっ・・・けほっ・・なんだよコイツ、やっと封印が解けたと思ったらいきなり襲って来やがってよ」

そこに現れたのは2人の影‥‥‥仰向けに倒れるギリアンとその彼を踏みつける一人の美少女だった。

 

少女が辺りを見渡し、そしてグラン達を視界に収めた。

グランは少女に視線を向けられ、まるで蛇に睨まれたかのように動けなくなる。

 

「き、君は・・・・?」

グランは体を震わせながら、少女に投げかけるように声を絞り出す。

「あっ☆ねぇねぇ、貴方達がこの封印を解いてくれたの?それと~この人はあなたのお仲間?」

声を発したグランに少し驚いた素振りを見せた美少女だったが、足で踏んずけているギリアンに視線を向けつつグランの質問する。

そのグランの質問におっかなびっくりながらルリアが答えた。

「え、えと・・・はい、おそらく、それと、ギリアンさんを放してください」

ルリアがギリアンを心配そうに見ながら謎の美少女の質問に答える。

「ありがと~☆悪いおじさん達に閉じ込められて、ずーっと困ってたんだぁ☆」

にこやかに礼を述べる謎の少女。

「ひとまずギリアン殿を放してもらおうか」

 

剣を構えるカタリナだが、そのとなりでグランは剣を収めカタリナの前に手をかざすと美少女に声をかける。

「封印が解けたことが知られるとマズイ?」

「グラン正気か?!」

「うふふ・・それに関しては微妙かな☆・・あぁ大丈夫だよ女の騎士さん☆この人は全然怪我してないから、ホント体何で出来てるの?って聞きたくなるぐらい元気で、今もやられたふりして私のスカートの中を見ようとしているだけだから☆」

 

「へへッ、バレてたか。だが俺は君みたいな発育前の子に興味はないんだよね~」

体を動かそうとしたギリアンだが直ぐさま制止の声がかかる。

「オマエはそこを動くな、少しでも変な動きをしたら先にお前の仲間を潰す」

突如変わる声色。聞こえたのは恐らくギリアンだけでグラン達には聞こえていない。

 

 

 

 

 

 

謎の美少女はグラン達のいるほうに目を向ける。

その姿は見た目と言動からは考えられないほど威圧的で、グラン達は再び動くことが出来なくなってしまう。

 

その姿を見て満足したのか口を開く。

「あぁ自己紹介がまだだったね☆・・・くくく・この俺様こそが、この世界に錬金術を確立した、天才錬金術師、カリ・・!!! テメェ人のスカートを勝手に持ち上げるんじゃねぇ!!」

 

自分が錬金術師の創始者だとかっこよく宣言しようとした少女だったが‥‥‥

自分のスカートを必死に抑えギリアンの顔を踏む少女と、踏まれながらも全く動じずスカートを持ち上げようとするギリアンがそこにはいたのだった。

 




少しだけ続けようと思い短編から連載に変更しました。

ギリアン一体何者なんだ

団員ですが、操縦士の前に一名獲得です。団員は大所帯にする予定はないです。今のオイゲンたちメイングループを除いて6人ぐらいにしようかと(一人は確定)

現メンバー
カリオストロ


感想くださった方ありがとうございます。



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当ててみな、ハワイへご招待するぜ!

町に到着したグラン達は旅に必要な支度を整えてくれるというよろず屋に来ていた。

よろず屋と名乗るハーヴィンと話しているグランとルリア・・・そしてカタリナの3名

 

すこし離れた場所で柱に寄りかかり、こちらの視線に気がついたのか中指と人差し指を立てながらウィンクをしてくる男、名前はギリアンというらしい。

彼は、よろず屋との会話に参加せず果物にかぶりついていた。

カリオストロは一度深いため息をしたあと、見なかったふりをしてグラン達に視線を戻す。

 

 

 

――コイツは何かおかしい――

カリオストロのギリアンへの第一印象だった。

封印が解けた直後、カリオストロは身近に脅威を感じウロボロスを出現させて殺害の命令を飛ばした。

命令通りウロボロスが煙の奥に消えていく。

 

煙の奥で鈍い音が聞こえた時、確かに殺したとカリオストロは確信した。

しかしカリオストロの予想は裏切られるた。

 

ウロボロスに吹き飛ばされ、こちらに飛んできたのは身体にぴったり張り付いた赤いTシャツとレギンスの男

本来死ぬほどの衝撃を受け吹き飛ばされているにもかかわらず、視線はカリオストロを見ており、既に銃を構えていた。

カリオストロはすぐさま理解した。この男はワザと攻撃を食らって自分の元に飛んで来たと。

 

 

男から放たれる銃弾

即座に土の壁を作り飛んで来た銃弾を受け止めることに成功し、男の着地点にウロボロスを飛ばす。

 

再び鈍い音が響く。

ウロボロスの叩きつけで男の体はバラバラになっているはずだった・・しかし吹き飛んでいるのは攻撃したはずのウロボロス(・・・・・・・・・・・・)

男は攻撃を左手で受け止めた後ウロボロスを投げ飛ばしたのだった。

カリオストロの体が総毛立つ。

 

 

―――おかしい――

その男はあまりにも硬すぎた。さらに・・・自分の身長以上のものを投げ飛ばす、普通の常識にはあてはまらない光景である。

 

 

その後三回ほどの攻防の末、彼の背後で爆発を起こした瞬間を狙い、なんとか組み伏せ足で押さえつけているが、この男が本気をだせば今の自分達の立ち位置は一瞬で入れ替わる。

カリオストロにはそんな確信があった。

 

 

「オマエはそこを動くな、少しでも変な動きをしたら先にお前の仲間を潰す」

この一言は一対一では厳しいと判断した、カリオストロによる苦肉の策による防衛手段だった。

 

 

 

 

 

その後紆余曲折があり、グランの騎空団に加わったのが今の現状である。

団の詳しい話を聞けば、駆け出しもいいとこで、いまだ船すらない状況

 

これを騎空団と呼んでいい状況なのか、詐欺ではないかと内心思っているカリオストロであったが、ルリアという自分の興味が引かれる対象がおり、記憶がないというギリアンの驚くべき身体能力の謎

 

なかなか面白いと思っているカリオストロでもあった。

 

 

 

 

「なぁ、操舵手ってんならあいつがいいんじゃねぇか?」

「あいつって、ラカムのことか。確かに腕もいいし、暇そうにしてたけど・・・」

「ああ、だってあいつはもう・・・・・・」

「気が変わってるかもしれないだろ!なぁ、トカゲ。お前もそう思うよな?」

「オイラはトカゲじゃねぇ!!」

村人達の会話から一人の男が話題に上がる。

 

「ラカムさんですか~・・・うん、会ってみてもいいかもしれませんね~」

「シェロさん、そのラカムさんに会うにはどこに行けばいいんですか?」

ルリアに質問に待ってましたとばかりにシェロが質問に答える。

「アンガド高原にある騎空挺の近くにいけば会えると思いますよ~」

 

一行の目的が決まったグランがギリアンとカリオストロのいる方に歩いていく。

「おーい、ギリアンさん、カリオストロ出発する・・・」

 

 

 

 

「だから、俺様が食べたわけじゃねぇのに、なんで金を払わなきゃいけねぇんだよ!!」

「ヘヘっ、すまねぇお金ねぇの忘れてたんだ」

「あんた、知り合いだろ?この男が払えないなら仕方ないだろう」

「・・ちぇ、・・・・・オラよ、これでいいんだろ?」

「へい、まいどあり」

 

グランがギリアン達のいる場所に行くと、商店の村人と口論していたカリオストロとギリアンがこちらに向かって歩いてきた。

 

「どうしたの、カリオストロ」

「あぁ、グランか・・・コイツが金もねぇのに食ったのを俺様に払えって言って来やがったんだ」

「へへッ、すまねぇ・・この借りはこんど返すぜ・・・・・・たぶんな」

「ギリアンさん、次から気をつけてね」

「あぁ、それで次の目的地は決まったのか?」

「うん、アンガド高原に向かうことになった」

 

 

悪びれた様子のないギリアンとそれに対して文句を言うカリオストロを含めグラン一行はアンガド高原に向けて出発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アンガド高原に到着したグラン達は無事に騎空挺に到着したが、その付近にはエルステ帝国の軍隊がいた。

グラン達は物陰に隠れていたのだが、町を壊滅させるという帝国軍の声を聞き我慢できずカタリナが飛び出してしまった。

 

「オイオイ飛び出しちまったぜ、どうすんだグラン?」

「もともと隠れる必要なんてないとカリオストロは思うな☆」

 

「いや、ここは逃げよう」

敵の人数を確認したグランの判断は撤退だった。

 

 

 

 

「――申し訳ない」

「もういいよ、カタリナ。あの人達に怒ってたのは、カタリナだけじゃないもん」

落ち込むカタリナをルリアが励ましながらグラン達。帝国軍が話していた襲撃の事を町に知らせるために来た道を戻っていた。

 

「追ってきてるぜあいつら」

ギリアンが後ろから迫る帝国の兵士に目を向ける。

「とりあえず今は逃げよう」

再び逃げることを選択したが、次第に追いつかれ始め、戦闘を行い、隙をみつけては撤退を繰り返していた。

 

 

 

しかし。追ってくる兵から逃げていた影響で再びグラン達は騎空艇の側に戻ってきていた。

 

「あれ!?なんだい、戻ってきてくれたの?」

先ほどから帝国軍の中で偉そうにしていたフュリアスがグラン達に呼びかけた。

「嬉しいなぁ!君達ってウチの国から指名手配を受けてるんだってね!」

 

嬉しそうにこちらに話しかけるフュリアス、すでにグラン達は囲まれており、逃げ場はなかった。

 

「みんな戦う準備を!!」

グランの一声でカタリナが剣を抜いた。

「ねぇグラン、私は☆あそこの二人を相手にするね☆」

カリオストロが指指す方向には確かに他の兵とは違った二人組がいた。

「わかった、お願い!くれぐれも無茶はしないでね」

「任せて☆もう、グランは心配性だなぁ~」

 

 

「へへッ、俺も今回は少し真面目にやるとしますか」

銃を取り出した。ギリアンの顔には今までと違っておちゃらけた姿はなく凛々しい顔立ちになっていた。

「ルリア、側を離れないで」

「うん」

頷くルリアを確認したグランは一同を見渡しのち

「いくぞぉ!!!」

攻撃を指示しそれぞれが行動を開始した。

 

 

 

 

 

 

戦場となった騎空艇の付近では乱戦になってた。

戦いの場所は主に2箇所

 

グランとカタリナはお互いの背中を預けルリアを庇いながら迫る帝国の兵士を倒していた。

「いくら倒しても切りがないな」

帝国の兵士を倒しながらカタリナが呟いた。

「なにか突破する方法を考えないと」

こちらに斬りかかってきた攻撃をいなし、首筋に打撃を食らわせながら帝国の兵士をダウンさせながらグランが答える。

 

すでに彼らで倒している人数は20を超えていたが、いまだに辺りは敵だらけであった。

「頑張ってください!グラン、カタリナ」

「やっちまえ姐さん!グラン!」

ルリアとビィの応援をうけつつグランとカタリナは突っ込んでくる兵士たちと戦い続けた。

 

 

 

 

グラン達から少し離れた場所では帝国の兵士たちだと思われる二人組と一人の少女が戦っていた。

しかしそれはあまりにも一方的であり、どちらが優勢かは明白だった。

人数の差が勝敗を分けるとは限らない。

「・・オイ!ドランクしっかり援護しろ!」

赤いマントを身につけ、二本の刀を持ったドラフの女は息を整えながら相棒のエルーンの男に向かって声をかけた。

 

「いやぁ援護してはいるんだけどねぇ? 隙がなくてさぁ、あの蛇厄介だなぁ~」

そう言った男も常に警戒しているようで、余裕はないようだ

「ねぇ☆おねぇさん、もうおしまい?」

 

彼らが敵対している少女の周りには蛇が浮いており、可愛い口調からは想像できない威圧感を放っていた。

「これは、ちょっと本格的にやばいかもねぇ~スツルム殿、そもそもあの強さはおかしくない?」

ドランクは軽く汗をかきながらそう呟いた。

 

 

しかし、そんな彼らの戦闘は突如響いた銃声により唐突な終わりを迎える。

 

 

 

 

 

「なんだい君は?」

「お前がこの場で一番偉いやつか?」

ギリアンはフュリアスに向かって声をかける。

 

 

ギリアンは帝国の兵士の隙間を縫うようにしてフュリアスの下にたどり付いていた。

 

一人で来たのがおかしかったのか、フュリアスは笑いをこらえているようだった。

 

 

「もしかしてさぁ、あの船で逃げようとか思ってた?あたり?ねぇねぇ!」

「まぁ、それも考えの一つにはあるぜ」

「こんな! こんなボロ艇がさぁ!空を? ぎゃはははは!!」

「気持ち悪い笑い方しやがる。無駄口を叩くその口はチャックで閉じておくんだな」

 

ギリアンの答えが気に入らなかったのかフュリアスは不機嫌になっていく。

 

「なんでそんな君は偉そうな口調なの?僕が誰だが分かってる あぁ~馬鹿の相手は腹が立つ」

 

「腹を立てるとなにをするんだ? うさぎとワルツでも踊るのか」

ギリアンの挑発は大成功、フュリアスの機嫌が最悪になった瞬間である。

 

 

 

「あー誰でもいい、さっさとこの馬鹿の頭を落としてこの艇をぶっ壊せ!」

 

しかしフィリアスの声に反応する兵士はいない、まるで声が届いていないかのように立っているだけである。

 

様子がおかしいとフェリアスは辺りを見渡し、隣にいる兵の声をかける。

「オィ!僕の声が聞こえ・・・・」

彼の周りにいた三人の兵士が一斉に倒れる。

 

「悪いがそいつらにはもうオマエの声はとどかねぇよ」

倒れた兵士たちには的確に急所を射貫いている銃弾の後があった。

 

 

ギリアンが使った思われる銃はすでにもとの位置に戻っている。

 

自分の周りの兵士が一瞬で倒れたことがどういう事なのか気がついたのか、フュリアスの顔には焦りが見えはじめる。

 

しかし、彼が焦ったのはほんの一瞬・・・倒れる兵士を見ていた他の兵が駆けつけ、フュリアスを守るように立ち、複数の兵士がギリアンを囲む。

 

 

囲まれている状況でも彼はまるで”相手にもならない”と言うように余裕そうに葉巻をくわえ火をつけている。

 

 

 

 

 

 

 

ギリアンは葉巻をくわえながらふと帝国の艇が砲弾直撃した時から、たまに頭をよぎる風景を思い出していた。

その中の自分は別の名前で呼ばれており、様々な冒険をしていた。その風景がなんなのか彼には既に見当がついている。

 

 

 

意識を戻すと帝国の兵士の守られながら騒ぎ立てるフィリアスがいた。

「な、なんなんだよ!なんなんだよ、オマエは!僕にこんなことをしてタダですむと思うなよ!」

 

 

 

「俺か?俺の名前は――――――――」

そう言って右手で左手首を掴んだ時

 

 

 

 

突如銃声が響く。

グラン達に迫る兵士もカリオストロも何事かと手を止めた。

 

 

「てめぇら俺の艇の前で何してやがる!! よそでやれよ!よそで!」

グラン達が探していた、操舵士による銃声と声が響いた。

 




次回ティアマト戦 奴の左手に注目


感想ありがとうございます。




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運てものは力ずくで自分のほうにむかせるものさ

一同はついに凄腕の操舵士と謳われている男、ラカムを発見する。

その彼の放った煙幕により、ピンチを脱したグラン達は彼の隠れ家に移動した。

 

なお、余裕だったカリオストロはギリアンに脇に抱えられ無理やりつれてこられていた。

 

ラカムの隠れ家でグランはラカムを騎空団に誘うが。

ラカムの返答はただ一言。

空は捨てた、と答えるのだった。

 

 

「――そういうわけだ。悪ぃが操舵士なら他をあたるんだな」

「い、いや、しかし・・・・・・何故なんだ?」

カタリナは街でのラカムの評判を口にしながらラカムに質問にする。

そんな質問を鬱陶しそうにするラカム。

「ったく・・・ギャアギャアとうるせぇのな・・・・・・それとお前ら喧嘩するなら追い出すぞ」

ラカムはそう言い放った相手は部屋の隅っこで葉巻をくわえているギリアンと、いまだに脇に抱えられているカリオストロに視線を向けた。

 

「だとよ、静かにしなお嬢ちゃん」

「いいから離せって言ってんだ!!なんなんだよ、コイツの体は超合金で出来てんのか!」

必死にギリアンの腕から逃げようとしているカリオストロだがその全てが無駄に終わっていた。

 

言っても無駄だと判断したのか、ラカムは視線をグランに戻し、どうして断ったのか理由を話し始めた。

 

それは彼の幼少の頃からの話し、空に憧れ努力し、その空に裏切られた彼の人生だった。

 

 

彼の話を聞き終えたグランはラカムに言葉を投げかけた。

「天気が悪かったんじゃないんですか?」

「いや、天気は良かった、腕にも自身があったさ・・・空に裏切られるまではな・・」

そう言ってラカムは一度口を閉じた。

「さぁこの話はお終いだ。さっきの帝国の話を、街の連中に知らせに行こうぜ。知っちまった以上、放っておくわけにもいかねぇからな」

グラン達は街に向かうためラカムの隠れ家を出発するため扉に向かっていった。

 

彼らの後ろ姿を見ながらギリアンも動こうとしたとき

「どうかしたの☆考え事?」

自分の脇に抱えているカリオストロから声がかかる。

「ヘヘヘッ、空に裏切られたと言いつつもアイツは諦めてねぇんだなって思ってよ」

「そうだね☆・・だが、アイツを説得しないとこの団はここで帝国に壊滅させられるぜ?見たんだろこの島を囲んでる帝国の戦艦を」

カリオストロは事実を淡々と告げる。

 

 

「最悪、俺がなんとかするさ、本気を出せば星だって消せるんだぜ、俺は・・操縦だってなんとかするさ」

ヒュー!!

口笛を吹きつつギリアンはグラン達を追うように扉をくぐるが・・

 

 

衝撃音が響く

 

「ッ!!テメェ!わざとだろ」

脇に抱えたカリオストロを扉の横の壁に盛大にぶつけていた。そうとう痛かったのか、カリオストロは腕で頭を抑えている。

 

「へへッ、すまねぇ」

「いいからもう下ろせよ、俺様の顔に傷がついたらどうすんだ!」

 

頭を抑えるカリオストロを抱えながらギリアンは歩きだした。

 

 

 

 

 

 

「おっ、街が見えてきたぜ」

「ん? そうか?んじゃ、後は任せたぜ。俺はこの辺で隠れ家に戻るからよ」

「待て待てまて!なぜ隠れ家に戻るんだ?街の者と帝国を迎え撃たないのか?」

「事情を知っちまった以上、それを伝える手伝いぐらいはするさ けどな俺が守るのはあくまで、あの騎空艇・・グランサイファーだけだ」

そう言ってラカムは踵を返すが・・

「いいの☆?ここで帝国軍を倒さないと、その☆グランサイファーって艇も壊されちゃうよ?」

後のことをグランに任せ帰ろうとするラカムをギリアンの手から解放されたばかりのカリオストロが引き留める。

「なに?」

ラカムの足が止まる。

「へへッ、その通りだぜ、どうやら奴らはこの島を完全に包囲してやがる。オメェさんがあの艇でこの島を脱出するなら話しは別だが、奴らの狙いの一つは、この島から人を出さないことみたいだからな」

「そうそう☆だから帝国軍をどうにかしないと、あの艇は壊されるとカリオストロ思うな~~だってあの艇飛べるんでしょ?」

 

少し悩んだ後ラカムはグランたちのところに戻ってくる。

「仕方ねぇ、グランサイファーを守るためだ、それまでは協力してやる」

 

 

 

 

いくつもの魔物を退けグラン達はなんとか街の入り口に到着する。

「なんだか、魔物が多かった気がする」

グランが剣を納めながら発した声にカタリナが反応する。

「確かに、先ほどよりも風が強くなって魔物も増えてると私も思っていた」

「それでオマエ達は本当に街で帝国を迎え撃つつもりなのか?」

 

ラカムの質問にグランが勿論と首を立てにふる。

「そうか、とんだお人好しだな・・・分かった俺も腹をくくるぜ・・・グランの目も気に入ったしな」

「それじゃ、ラカムさんも・・・?」

ルリアの声にラカムが力強く答える。

「ああ!帝国なんぞにこの街を潰させてやるもんかよ!! 」

 

 

 

グランの意思に呼応したラカムと共に帝国との戦いに備える。

ギリアンはふと自分の自分の左手に意識をむける。その手にあると思われるある秘密を考えながら。

 

そんなギリアンを見ている仲間が一人いるとも知らずに。

 

 

 

暴風による街の村人は避難を開始していたが、ギリアンとカリオストロの予想通り、帝国は島から逃がす気が無いのか、出航した艇はことごとく撃墜されていた。

 

そこで出た案がポート・ブリーズの守り神である風の星晶獣ティアマトの暴走を止めるというものだった。

 

「しかし相手は神様だぜ?どこにいるかも分かりゃしねぇよ」

ラカムの疑問にルリアが答える。

「分かります・・ティアマトは上!!空にいます!」

「な、なんで嬢ちゃんに居場所が・・・」

「私が・・ずっと帝国に囚われていた理由です・・私には星晶獣を従える力があります」

カタリナは語るルリアの力とその危険さを、そしてグランと命を共有していることを。

 

 

「私は大丈夫!」

「だってみんなが――グランが居てくれるから」

「ああ」

「「行こう!ティアマトを止めに!」」

 

ラカムは驚いていた、ルリアの力にもだが、なぜ彼らがそこまで出来るのか。

女騎士は答える

「なぜそこまで――か・・考えるよりも先に動いてしまっていたな」

まだ若いが目に輝きを持つ少年は答える

「目の前で守れる人が居るなら・・僕たちに出来ることがあるなら最善はつくしたい」

蒼の少女は答える

「後悔したくないですし!」

錬金術師は答える

「団長がやるって言ってんだ、俺様がなんとかしてやるさ」

 

ルリアとグランは声を合わしてラカムに向かって手を差し出す。

「「この街の人たちを救うために一緒に行ってくれませんか?」」

「「空へ!」」

 

 

 

 

「怖くねぇのかよ・・俺が操縦したら・・また艇が落ちるかもしれねぇ・・」

「俺は・・・・・・空は俺を裏切ったん――――」

突如放たれる強烈な左フック、ラカムは2mほど吹き飛ばされ壁に激突する。

倒れるラカムに近づくギリアン。

 

 

「なぁラカムいい加減周りを見ろ・・・悔しい思いをしたのはオマエだけじゃないだろ?オレが見た感じ、オマエを手伝ってくれた奴がいるだろうよたくさん」

「――――ッ」

 

 

ラカムは思い出す、決して一人では修理出来なかったこと。墜落したあとラカムを励ましに来た人たちの涙

 

 

 

――俺はグランサイファーの事しか見ていなかった、喜びも悲しみも俺一人の者だと思っていた驕り――

 

――――だからグランサイファーは墜ちたんだ―――――

 

自分を見つめ直すことで気がついた原因、ラカムの心に刺さっていた何かがとれた。

 

 

 

ラカムが顔を上げる。

「運は向いている、やるなら今だぜラカム」

ギリアンがラカムの方に手を差し出す。

そんなギリアンの周りには以前ラカムを支えた仲間とグラン達。

迷いはないラカムは瞳に輝きを取り戻すと共に強く差し出されたギリアンの手を握る。

 

 

「なぁギリアン その運てえやつに負けた時はどうするんだ」

そんなラカムの質問にギリアンは片目を閉じながら笑って答える。

 

 

 

 

 「笑ってごまかすさあ!」

 

 

 

 

 「それとグラン・・俺は思い出したぜ」

ラカムを立ち上がらせながらギリアンはグランに声をかける

「な、何を?」

「俺の記憶と名前さ、少しづつだったんだが、ラカムを殴ったときに完璧に思い出した」

 

 

 

 

「俺の名はコブラ 宇宙海賊コブラだ」

そう言ってギリアンは話していた場所から外に向かって歩き始め、右手を左手に添え肘から先を外した――――。

 

 

 

 

そこに現れたのは銃、それはこの男の代名詞の武器・・・・・・

 

 

 

 

 

 

コブラが艇の停泊場にたどり着く。

すると遠くに浮かんでいるいくつもの艇に向かって左手の銃口を向け、何かをうち放なった。

 

放たれたのは銃弾ではなくビーム、それはあまりにも銃口から放たれるには大きすぎた。

 

 

放ったビームの威力はそこにいた者たちの予想を遙かに超えていた。

 

突如グラン達の目視できるギリギリにいた3隻の艇が爆発とともにくずれ墜ちていく。

その3隻はグラン達がこの街に着いた時、脱出しようとした村人たちが乗った艇を無慈悲に打ち落とした艇。

 

 

 

コブラは振り返り、左手の義手を元の位置に装着し、一同に呼びかけた。

「さぁ行こうぜ、さっさとこの嵐を納めにな」

 




ちょうど良かったので話しを分けました。全話の後書きと話しが変わっていて申し訳ない

次でポートブリーズは終わる予定です。(続きがあればですが)



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俺は探検家さ。もっとも、獲物は女性専門だがね

「先に艇に行っててくれ、野暮用だ」

街を離れたグランサイファーに急行していたグラン達だが、最後尾にいたコブラが足を止めた。

「おい、どうしたんだよギリアン・・じゃなかった・・コブラ?」

「へへッ、後で合流しようぜ、グラン・・ティアマトは任せたぜ。お前になら任せられる」

 

 

コブラはグラン達に背中を向け、先ほど自分達が走ってきた草原を見つめている。

 

 

 

 

 

グランはいつものふざけている姿とはうって変わったコブラの姿を見て何かを感じたのだろう。

「いこう!みんな」

「いいのか?グラン」

「グランがこう言っているのだ、ラカム殿、我々は急ごう・・なにやらコブラ殿には考えがあるようだ」

 

グランの声に答えるようにコブラをこの場において、グラン達はグランサイファーに向かって走り出す。

 

やがて彼らの姿は見えなくなり、嵐によって荒れている草原にコブラは全身を雨にさらしながら佇む。

そんな草原にグランと一緒にグランサイファーに向かったと思われていた一人がコブラに近づいてくる。

その者はコブラの横で歩みを止めた。

 

自分の横に並び立つ人物に向かって声をかける。

「なんだい嬢ちゃん、オメエさんも早くいきな」

「え~☆カリオストロは星晶獣なんかよりも~おじさんの左腕が気になるな☆」

カリオストロのまとうローブが風に煽られ、大きくはためく。

まるでこれからこの場で起こる何かを煽るように。

 

 

 

 

コブラがここに残った理由・・それは自分達の背後から迫ってくるような無数の振動の正体。

 

この島は帝国軍に包囲されており、彼らは島から人を出す気は無いようで、先ほども逃げようと艇に乗り込んだ村人を無慈悲に艇ごと葬り去った。

グランサイファーの存在は既に帝国軍に知られている。ならば仮に飛ぶ可能性がある艇を帝国軍が見逃すはずが無い。

ならば艇に向かっていくグラン達を目撃した帝国の兵士が居た場合、追いかけてくるのは必然である。

 

 

 

 

 

コブラとカリオストロの前に見え始める無数の人影、それはまるで波のように押し寄せてくる。

無数の帝国軍の数は既に百を超えている。嵐の中でも彼らはこちらに向かって進んでくる。

 

 

コブラは雨の中、葉巻を取り出し火をつけた。

「俺はそんな年はいってないぞ・・・・・・あいつら、この島を落とすって言うのにこんな人数この島に残しているのかよ」

「おじさんが3隻も潰したせいで☆兵隊さんが再上陸したとカリオストロ思うな~☆」

 

 

カリオストロの予想は的中。

島から離れていたはずの艇が3隻沈められた事に怒り狂ったフュリアスがわざわざ帝国兵士を上陸させたのである。

フュリアスにとっては代わりがいくらでもあるもの、自分の身に危険が無ければ構わない男である。

 

 

艇を破壊した正体が突き止められれば上々、自分の乗る艇が攻撃されないよう意識を向けさせるために囮として400人近い兵士を再上陸させたのである。

 

帝国の兵士は上司の命令は絶対。そこが死ぬ場所だと分かっていても向かわなければならない。

彼らはみな鎧を身につけているため、どんな表情をしているか伺うことはできない。

ただ上司の命令を忠実にこなしている。

 

この間にも帝国兵とコブラたちとの間合いは狭まっていく。

 

 

「へへへッ、戦艦まで来やがった」

この艇も囮なのだろう。雨と暴風の中こちらに向かってくる5隻の戦艦。その下にはおおよそ400人の兵士。

 

 

 

そさらに帝国軍とは別の方向からコブラ達に迫ってくる魔物達。

コブラは右手を左手に添えサイコガンを抜き放つ。

 

「お嬢ちゃん、暇だろ? 魔物はたのむぜ」

「チッ、仕方ねぇ引き受けてやる・・・こいつの餌にもなるしな」

カリオストロは魔道書を開き、ウロボロスを出現させる。

 

 

 

 

コブラはサイコガンの銃口を戦艦に向け狙いを定める。

そんな時、ふと隣から声がかかる。

「その銃結構な威力だったが、さっき撃ってから弾をつめたようには見えなかったぞ・・・使えるのか?」

 

 

コブラはにやりと笑い。

 

 

「知らないなら教えてやるよお嬢ちゃん・・・・・・・・・・・サイコガンの弾は俺の精神力だ・・・つまり俺が生きている限り弾切れはない」

 

放たれるサイコガン、陸から放たれた光弾は一瞬で1隻の戦艦の動力部を貫通した。

しかしそれだけでは終わらない。光弾は遥か頭上にある雨雲すら容易にぶち抜き、光弾が突き抜けた箇所には一時、青空が姿を現した。

 

 

 

「お前らは病気だ!そして俺らが薬だ!・・・死ぬ気が無い奴は帰りな!!」

 

コブラの声が帝国の兵士の間を駆け抜ける。

彼の声を援護するかのように動力部をやられた戦艦が墜落し陸に叩きつけられた。

 

 

 

 

辺りは一時の静寂につつまれる。

 

 

 

「お、俺はいやだ!死にたくない」

やがて一人の兵士の悲鳴が起爆剤となり帝国兵士が騒ぎ始めた。逃げるもの、こちらに向かってくるのも、その場を動けないでいるもの。

 

結果的には逃げ出した兵士は少数だった。今、カリオストロとコブラに向かって無数の兵士が迫ってくる。

 

「ちょっとだけ、遊んであげるっ」

「そうか・・ならこれが俺の返事だ」

 

 

帝国兵士の先頭はあと6歩もすればコブラ達を斬りかかれる範囲にまで迫っていた。しかしながら、彼らはその先に足を出す事は出来なかった。

 

 

壁にぶつかる流水のように、突撃する兵士たちが見えざる壁に当たって吹き飛んでいく。

「飛んでる・・・・・」

帝国の兵士が唖然と呟く。

迫っていた兵士は、何の比喩でもなく中空を飛んでいく。それは一人ずつではない。

謎の爆発、輝く光弾。吹き飛ばされた兵士や魔物の残骸が仲間の兵士の頭上に墜ちてくる。

 

結果は戦いが終わるまで待たずとも明らかだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨と暴雨のなかグランたちはなんとかグランサイファーにたどり着いた。

「しかしよぉこいつ本当に飛べるのか?」

「ああ俺が怖がってただけでこいつはずっと待ち続けていたんだ・・それを感じる」

「乗り込めお前ら!!タダ乗り出来ると思うなよ? この嵐だ!しっかり手伝ってもらうからな!」

 

「おう!」

ラカムのかけ声に答えると共にグラン達はグランサイファーに乗り込む。

 

 

 

 

 

 

「こいつを動かすには少し時間がかかる。悪いが周りの魔物を頼む」

そう言ってラカムが操舵室に入っていく

 

 

 

「ルリアこれから戦闘になる、私の近くを離れ―――――」

 

 

突如、自分達が来た方向から雲に伸びる光が現れる。光が突き抜けた場所に本来の青空が現れる。

 

「なんだ、アレは」

カタリナは自分が見たものが信じられないのか自分の目を手で覆った。

「なんかバシュー!!って感じだったねカタリナ!」

グランもビィも作業を止め、突如視界に映ったその光景に驚いていた。

 

 

 

 

それから少しの時間がたち少し揺れたあと、艇が少しづつ浮き始め、ついにグランサイファーが大空をかけ始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後グランサイファーが空で発見したティアマトと交戦中・・島での戦闘は終わりが近かった。

 

 

 

 

 

 

「ああっと!!あぶねぇ!」

 

「これが、真理の一撃だ! アルス・マグナ!!」

カリオストロの攻撃により魔物と帝国兵が吹き飛ばされる。

 

 

 

「ハッ、どいつもこいつも雑魚だらけじゃねーか・・・あの二人組も見当たらねぇしな」

爆発を起こした張本人、カリオストロは戦闘が始まってから一歩も動いていなかった。

こちらに向かってくるものを吹き飛ばし、ウロボロスによって叩き潰し、広範囲を爆発させ・・・敵を近づけさせずにいた。

「元気なのはいいが俺を巻き込むんじゃねぇ」

「うるせぇな、どうせオメェは当たっても大した怪我にならねぇだろうが」

軽口をたたき合うコブラとカリオストロ。

 

 

そんな彼らを遠距離から爆撃しようと戦艦が大砲を構える。

しかし砲弾が放たれる直前、湾曲しながら向かってくる光弾の直撃を受け戦艦が制御を失い陸地に落下する。

落下地点には運良く兵士はおらず巻き込まれたものはいなかった。

 

 

 

嵐の戦場のなか草原を走り抜ける光弾は一発だけではない、嵐で視界が悪い状況でもその弾は確実に目標に命中し帝国兵を沈黙させていく。

 

 

 

 

 

「これで戦艦は終わりだな」

5隻の戦艦を沈黙させ、そう呟いたコブラに戦闘が始まってから一歩も動かなかったカリオストロが詰め寄る。

 

「余計なことしやがって!俺様が対処出来なかった訳ねぇだろ」

「よせよ!感謝されるとほっぺが赤くなる」

「してねぇよ!!」

 

 

 

 

 

彼らは迫り来る帝国兵と魔物を倒しつつ相手しながら会話をする。

 

 

「それで~☆グラン達が失敗したらどうするの?☆」

「あいつらは失敗しねぇよ、絶対にな」

コブラは向かって斬りかかってきた兵士の鳩尾に拳を叩き込み。

そして素早く振り返りカリオストロの後方に迫る10体の魔物にサイコガンを放った。

 

サイコガンから放たれた光弾はその全てが直撃し迫って来ていた魔物を倒した。

 

コブラが魔物を倒した同じタイミングでカリオストロが数十名の帝国兵を無力化させた。

 

 

 

「これで魔物は全て片付けたな、あとはあの雑魚どもだけだな」

そう言ってカリオストロは残りの帝国の兵士に目を向けた

 

 

 

帝国兵の数も既に立っているのはほとんどおらず、

ついには残りの帝国兵も現在彼らに尻を向け逃げ出していた。

 

「へへへッ、どうやら終わったらしいぜ」

コブラは左手をもとに戻し、どこからともなく新しい葉巻を取り出した。

 

 

 

 

 

それは突然の出来事。さっきまで雨雲に覆われひどい嵐だったのが、嘘だったかのように風がやみ、青い空が姿を現す。

 

 

 

 

 

突然の変化で2人も驚いたのか顔を見合わせる。

「へへッ、言っただろ?失敗しないって、さーて街に戻ってグラン達を迎えにいくとしようぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

コブラとカリオストロは街にもどり、帰ってきたグラン達を村人とともに出迎えた。

 

その後は宴会さわぎ、帝国軍を追い払いティアマトの怒りを収めたことで、グラン達は英雄のようにもてはやされていた。

 

 

 

「へへへッ、そこの美人なおねぇさん」

「・・・?え、私?」

「当然君さ、他に誰がいるって言うのさ」

「ふふ、お上手なんだから・・・・・それで、ティアマト様を鎮めた時その場所に居なかった英雄たちのお仲間様が私に何のよう?」

言葉の節々に棘を感じ、またかぁ~と顔に手を当て口説こうとしていた男、コブラは用事ができたと女性のもとから離れた。

 

 

かなりの女好きで手も早いコブラだが、今日はその全てにおいて空振りしている。

 

どうやら、噂が広がり。一番大事な時に逃げ出した団員という噂が広がっているようだ。

島の住人がコブラが一体何をしていたか気がつくのは、もう少し先のこと。

 

 

 

「よろしく!操舵士!」

「おう!団長!」

コブラが今日は厳しいと判断したのか、グラン達がいる机に戻ると、がっちり握手を交わすグランとラカムがいた。

 

 

自分が団長とよばれオドオドしていたグランだが、カタリナやカリオストロそしてコブラ達からも推薦され団長になることが決まった。

 

 

 

グランが緊張しながらも団の本格的な結成の音頭をとった。

「いくぞ!!空の果てイスタルシアへ!!」

「「「「おう!!!!」」」」

 

 

 

「騎空団結成!こぉれはおめでたいですね~そんな生まれたての騎空団の皆さんに~一つ私から仕事の依頼をさせていただきたいのですが~」

 

そう言ってシェロカルテがグラン達に最初の依頼を申し込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〔バルツ公国で人捜し〕これがグラン達の最初の依頼となった。

 

「ここから近いしなによりバルツは工業が盛んで有名なんだ」

ラカムの声にコブラが反応する。

「どれぐらい凄いんだ」

「あそこで手に入らない部品はないってぐらいだ」

「へへへッ、そいつはすげぇ」

 

 

少し考えるそぶりを見せた後グランに向き直るコブラ。

 

 

 

 

「グラン……俺は一回ザンクティンゼルに戻る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

新しい騎空団の船出を祝おうと島の住人が駆けつける。それを見送る中にコブラもいた。

 

 

どうしても確かめたいことがあると、グランに説明し、用事が済んだ後バルツで合流する事になった。

 

 

飛び立ち離れていくグランサイファーその姿が見えなくなるとコブラも自分の行動を開始した。

 

 

 

 

置いて来てしまった、ザンクティンゼルにいる相棒に会いにいくために―――

 

 

 

(ポート・ブリーズ群島編 終了)

 

 

 

ポート・ブリーズ群島で大活躍した俺だったが島の連中はおれに辛辣だった!

こいつは誰がなんて言ったってギルドの仕業に違いねぇ。

 

記憶を取り戻した俺は気分転換がてらあの始まりの島に戻ったってわけ。

最も本心はレディとタートル号が気になって仕方無かったんだがな……。

 

ところが島に戻って俺は元気そうにする予想外な人物に遭遇、急遽グラン達の元に戻ることになったんだが、そこでややこしいことになった訳よ?

 

次回、「舞い歌う五花」で、また会おう!

 




ポート・ブリーズ群島編終わりです。

読んでくださった方ありがとうございます。


予定ではグラン達の冒険にコブラが合流(仲間を一人引き連れて


)するのはアウギュステ列島だと思います。


―――――――――――――――――――――――――――

ミカエル(石)出るまでガチャは引かない(多分無理)


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舞い歌う五花
自慢じゃないが、オレは100メートル5秒フラットで走れるんだぜ


ザンクティンゼルには向いましたがが、そこでの出来事はしばらく先です。


だんだん話タイトルが長くなってるきがします。気をつけないと


追記―――

・5話の最後にに次回予告っぽいのを載せました。・・・似てますかね?

・話し方、内容を一部変更しました。


(舞い歌う五花編)

 

艇の発着場・・・そこにコブラはいた。

 

ザンクティンゼルからバルツ公国への直行で向かう手段はなく、出航する個人艇にお願いして乗せてもらいたどり着いたのがこのショチトル島であった。

 

 

「・・・・・ってことは、バルツ公国にいくには最低でも一週間は待たねぇといけねぇんかよ」

「それが嫌なら他所をあたるんだな・・・なんて言ったって今回がディアンサ様の最後の公演だしな、見ないわけにはいかねぇんだよ」

 

 

ショチトル島からバルツ公国に向かう定期便は、理由は不明だが(噂によると帝国が止めているという)現在運休しており、コブラは船着き場で聞き込みをしていた。その結果、バルツ公国に向かう個人艇は一番早くても一週間後であった。

 

必然的にコブラはショチトル島での滞在が決定した瞬間である。

 

 

 

 

やることがないコブラは今日の宿を探すと共に街を見て回ることにした。

 

そこで、ふとコブラは町中で営業しているバーを視界に収める。

 

ためらう素振りもなくコブラは扉に手をかけ、中に入っていく。

「いらっしゃい、ご注文は」

コブラはカウンター席に腰掛ける。

「アイスミルク・・・ダブルでね」

 

 

「ここはバーなんだがな・……仕方無い、少し待っていろ」

バーの店主はしかめっ面だが、冷たい人間ではなさそうだった。

 

店主が奥に消えていったタイミングでコブラに近づいてくる二人の男がいた。

 

「おいアンタ他所から来たのか?」

声をかけて来たのはエルーンの男。

「あぁ、そうだが?」

「来たのは初めてか?」

「ああ」

コブラの返答にドラフの男とエルーンの男二人が顔を見合わせる。

 

「ぜひアンタに見てほしいものがあるんだ!!」

「アンタは運がいい巫女様達は丁度この街に来てんだ!それに・・・あと1時間ぐらいで講演が始まる」

 

「なんでい、そうせかすんじゃねぇーよ・・・それに巫女さんだ?なんだそれは」

 

バーの店主だと思われる人物が手に注文の品を持って戻ってくる。

「ほらよアイスミルクのダブルだ」

 

その後、二人組の男、戻ってきた店主も途中から参加し、コブラにこの島の巫女についての話しを丁寧に説明をし始めたのだった。

 

 

この国の巫女とは

島の繁栄を祈り、島の各所を巡業し歌って踊るのが役目で、巫女の信望者は「イクニア」と呼ばれ、イクニア達はトレピリという器具を用いた踊りで互いに競っているのだという。

 

 

「俺はアンタを見たときただ者じゃないと感じたんだ、是非この赤色のトレピリを持ってオレ達と盛り上がろうぜ!!」

エルーンの男はどこからともなく赤色のトレピリを取り出しコブラに向かって差し出した。

しかし隣にいたドラフの男がそれを阻止する。

「っと、ハリエ派よぉ?~抜け駆けしようとしてんじゃねーよ」

「ふ・・・・・そういう貴様はリナリア派だったか・・・・」

リナリア派のドラフはピンクのトレピリを取り出しコブラに渡そうとするが・・

 

 

「お前らこの人が困ってるだろ・・・無理に勧誘するんじゃない」

店主の声を聞き男達は一旦コブラから離れた。

 

「へへッ、お前らの熱意の入れようからすると、ここの巫女さんは全員美人さんだとみたぜ・・・もうすぐ講演が始まるんだろう?俺も見に行くとするか」

 

「「行こうぜ!!!」」

 

 

「少し待ってろ店を閉める」

すでに客はコブラだけになっており他の客もどうやら祭壇に向かったようだ。

 

 

店主が店を閉める準備をしている間にコブラはアイスミルクを飲み終える。

片付けが終わり、コブラを含め4人で店を出るタイミングで店主がコブラに近づいてきた。

「夜道は暗い・・何に躓くか分からんこれを持ってろ」

そう言って店主はオレンジ色のトレピリをコブラに渡そうと―――――

 

「「おい!!!」」

ハリエ派とリナリア派の二人に止められたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「へへへッ、こいつはスゲェ」

会場についたコブラだったがその場にいた人の数に思わず顔がにやける。

どうやら巫女の一人が今回でその役目を終えるため、いつもより観客が多いらしい。

 

そしてイクニアは応援のキレでお互いの信仰心を競うようで、講演前にそれぞれの派が自分らの踊りを確かめていた。

 

かくして島の住人に連れられ。他の観客達をかき分けながらコブラは祭壇の目の前に案内される。

意外にも割り込みに苦言を呈するものはおらず巫女達の素晴らしさを広め宇ためにと、快く向かい入れられた。

 

なお、コブラの服装が真っ赤のため、ハリエ派だと勘違いされることが多かったのは仕方ない。

 

「それでは巫女達の登場です!島の繁栄を守る奇跡をとくとご覧ください!」

一人の女性が現れ講演が始まった。

 

 

「「「「「せーの……」」」」」

 

 

「「「「「ティクニウトリ・ショロトル!」」」」」

 

 

一斉に登場してくる巫女達を眺めた。コブラの最初に出た言葉は・・

 

「くそぉ~若すぎるあと6年?いや7年ぐらいたてば・・・・・・」

 

 

なんとも周りを敵に回しそうな一言だった。

 

 

 

講演が終了し、ここまで一緒にきた店主と達とも別れ、コブラは宿探しを再び始めようと思い歩き出したコブラに背後から声がかかる。

 

声をかけてきたのは先ほど講演が始まる前に一言話していた祭司と言われる女性だった。

そしてコブラはその祭司からの頼み事をされるのだった。

 

 

その内容は巫女達の巡業に付き添う警備隊への参加のお願い、コブラはそれを即座に了承した。

 

 

・・・・・・・・けして祭司が美人だったから即決した・・などという訳ではない

 

 

 

 

 

祭司に誘導され巫女達が滞在する場所へと向かうコブラ。

彼女らには街の宿が貸し出されているという。

やどの扉をくぐる祭司についてコブラもホテルに入っていった。

 

「戻りました」

「お帰りなさい、祭司様・・・・・あっ! そちらの男の方は新しい警備隊のかたですか?

「ぼー……お魚が食べたい……」

「へぇー!あれ もしかして島の人じゃない?」

祭司はカンナの質問に答えと共にコブラをどのようにしてこの場に連れてきたのか説明をする。

 

 

 

「そうなんですね。でも、祭司様が自ら選んだ方なら安心できます。」

「うんうんそうだよね!今回の巡業でディアンサ最後だもん、ね?♪」

 

その後彼女らの会話がしばらく続きコブラは一人取り残される。

そして彼女達の会話が一段落したタイミングを見計らって声をかけた。

 

「俺の名前は、コブラって言うんだ・・よろしく頼むぜ」

 

 

コブラの挨拶によって再び騒ぎ出す巫女達。

その中でディアンサだけがコブラの方に向き直ると。

「あはは……」えっと、色々大変だと思うんですがよろしくお願いしますね」

そう言って微笑んだ。

 

「へへへッ、任せなお嬢ちゃん達を守るのなんて朝飯前さ、君達は巡業に専念するといい」

巫女達はコブラの冗談だと思ったかもしれない。

 

「えっ、魔物なんか寝てても倒せる……?さっすが!」

「あぁ、余裕だぜ、任せときな」

 

その後もとりとめない話を躱し、巫女達と分かれたコブラ。

 

 

 

かくして巫女の護衛をするコブラはこの島で発生する事件に、巻き込まれていくこととなる。

 

しかしこの男が側にいるかぎり彼女らが危害が及ぶことはありえないだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

巫女達とともに早朝の街道をいくコブラ。

巫女達を守る他の警備隊たちの一番後方で葉巻をくわえ後ろに手を組んでけだるそうに歩いているだけだった。

 

 

「おい!魔物はいたか?」

「いや。こっちは問題なしだ」

「こっちも異常なし」

 

最初のうちは注意をしていた周りの警備員だが、やる気が無い男と判断したのか次第に彼を当てにしなくなっていた。

 

陽が高く登った頃、休憩となった。

休憩中コブラは岩に腰を下ろすと辺りを見渡す。

 

 

「へへへッ、あの連中……やけに固まってやがるな」

コブラの目にとまったのはイクニア達が形成したスクラム。その中央にはディアンサがいる。

 

囲んでいるイクニア達の隙間からディアンサの姿が一瞬見える。笑顔でイクニアの人たちと会話をしていた。

 

 

「えっと……ディアンサは一番人気なので。その分警備を志望する人も多いんです」

岩に座るコブラのとなりには いつのまにかハリエがコブラの分の食事をもって立っていた。

 

コブラとハリエから手渡される食事をありがたく受け取ると――――

 

 

「私もここで食べていいですか?」

コブラの返事を待たずにコブラの隣にハリエが腰掛ける自分の食事を広げだした。

コブラが断るはずもなく二人はとりとめない会話を続けていく。

 

 

 

 

 

「あれじゃ、ろくに休むことも出来ねぇだろうに」

「え?」

コブラの突然の呟きにハリエが反応する。コブラの視線を追った先にいたのは昼食を食べているディアンサだった。彼女の周りには今もたくさん護衛がいる。

 

 

「……コブラさんはよく人を見ているんですね。……ディアンサは今も笑顔で話していますが、本当はかなり疲れてると思いますよ」

 

「いやいや、あの状況を見れば誰だった分かるだろうよ」

「いえいえ……ディアンサは疲れても表情には出しませんよ。もしも変わっていたとしても一度や2度会っただけの人では分からないと思いますよ~」

 

愛想笑いを浮かべ困った顔をしたハリエだったが、笑顔を見せているディアンサを心配そうに見つめていた。

 

いつも一緒にいるメンバーだからこそ、分かることもあるのだろう。

 

 

 

 

昼食を食べ終えたディアンサが警備の人たちが付いて来るのを断ったのか、一人何処かに歩いていくのをコブラとハリエは見守った後、二人はディアンサの後を追いかけた。

 

 

 

 

 

 

一足先に食事を済ませ、振り付けの復習をしていたディアンサ。

それを眺めているコブラとハリエ。

 

「いち、に、さん、し、 いち、に、さん、し、ステップ3回、手ぐるぐる、キメ・・・・!?!」

 

復習に集中していた。ディアンサがコブラとハリエの存在に気がついたようだ。

 

「コ、コブラさん……それにハリエまで、ど、どうしたの?」

 

「へへッ、すまねぇたまたま通りかかった時に、お嬢ちゃんが熱心に練習している姿に見惚れちまってたぜ」

「とか言って、ディアンサが一人の時に危険がないかって見守ってくれてたんだよ」

ディアンサの気がついたので、コブラとハリエはディアンサに近づいていく。その手には水筒を握りながら。

 

 

 

「あ、ありがとうございます、わざわざ休憩中にまで」

「いや、仕事だからな、やることはやるぜ」

ここまで来る時のコブラの姿を思い出したディアンサとハリエはスッと目をそらしたのだった。

 

 

 

静かになったタイミングでコブラ達を探していたのか声がかかる。

「あっ!ディアンサ達ここにいたんだ~」

声をかけていきたのはカンナで、彼女の後ろにはリナリアとジオラが手をふっている。

 

 

合流した巫女達はディアンサの練習を手伝うようにみんなで練習を始めたのだった。

 

 

 

 

練習が一段落した時、ディアンサがコブラに近づき声をかけた。

「そういえば、コブラさんはいつも何の仕事をしているんですか?」

「俺か?……俺は騎空団をやってるぜ……まぁ今は一人行動だがな」

 

コブラはポート・ブリーズで起きた出来事や団長は君達と同年代など、冒険の一部をかいつまんで話しをする。

 

すると外の話しが新鮮だったのか巫女達はコブラの話題ではしゃぎ始め、盛り上がり、段々と話題は変わっていき、踊り始める時に最初に言う言葉にはどんな意味があるのかなどの話しに変わっていき、瞬く間に休憩時間が過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

「みんなそろそろ休憩終わり出発するよ!」

 

ハリエの号令のもと休憩が終わり、一行は行脚を開始する。

リナリア達も準備のためにそれぞれの場所に戻っていく、その場に残ったのはコブラとディアンサだけとなった。

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢ちゃんも練習もいいが、無理はするなよ」

 

「ふふ、無理なんてしてないです。こうやってずっと練習してるの……もし失敗したら、イクニアさん達の心は離れて……私達の歌も踊りも力をもたなくなりますから」

 

ディアンサによると巫女はこの島はイクニア達の信仰で力をつけるという。だから失敗できない、努力するのは当たり前だと彼女は言う。

 

「なるほどお嬢ちゃんは頑張り屋さんだ」

「えっ……!」

コブラはそう言ってディアンサの頭にやさしく手を置いた。

 

 

今まで誰にも褒められなかったことはなかったのだろう。意外そうな顔をするディアンサ。ほんのり顔が赤くなっているのは気のせいではないだろう。

「し、失礼します!!」

 

 

突然走り去っていったディアンサを見送った。コブラは一度首を傾げた。

 

 

再び列の一番後ろに戻ろうと歩きだした時、後ろから声がかかった。

「コブラさんすいません、少し頼み事が……」

コブラが声の主を確かめようと振り向くとコブラに護衛をお願いした祭司の姿があった。

 

 

 

祭司からの頼みは昨日のホテルに置いてきてしまった荷物を取りにいってほしいとのことらしい。

 

「構わねぇぜ……任せな」

警備隊が減ることになるが、コブラの今までの姿を見ていた祭司は居なくても問題無いと判断したのだろう。

コブラが二つ返事で返すと祭司は感謝を述べた後、行脚の中に戻っていった。

 

 

 

 

 

「あ~ついにコブラさんパシリになっちゃった!!」

コブラと祭司の会話を聞いていた巫女達の反応はそれぞれ異なっていた。

「……行っちゃいましたね」

「別にいいんじゃない?話しは面白いけど護衛のやる気ないみたいだし」

「もう――リナリアそうゆう事は言わないの!」

「はーい……ていうかディアンサ顔赤いけど大丈夫」

「えっ!!大丈夫、大丈夫……なんでもないよ!」

 

 

別方向に歩いていくコブラの後ろ姿を見ていた巫女達だったが、やがて目的地に向かって行脚を始めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――あんな事言われたの。初めてだった―――――

 

今まで失敗しないのが当たり前だと自分に言い聞かせてきた。だから必死に練習し続けた。それがこの島では当たり前のこと……

だけど、外の島から来たコブラさんは私の事を頑張り屋さんだと褒めてくれた。

いまだにコブラさんが私の頭にのせた手の感覚が残っている。

 

 

その出来事を思い出すだけで心が温かくなって体までポカポカしてきた気がする。

 

「本当に大丈夫ディアンサ?」

いつのまにかハリエが私の顔をのぞき込んで心配そうに私を見つめていた。

「ホント何にもないよ!大丈夫」

ハリエの心配そうな顔をさせないために元気な声で返す。自分でもなんでこんなに体が温かくなっているのか分からない。

 

 

「そう、何かあったら言ってね……あれ?  警備隊の人たちが騒がしいね、何かあったのかな?」

 

 

どうやら先頭にいる警備隊の人たちが魔物と遭遇したらしい。

今までにも何回あったので、焦りはなかった。また直ぐに静かになると思っていたディアンサは、自分を褒頑張り屋だと言って頭を撫でてくれた、そして先ほど祭司様に頼まれ荷物を取りに向かったコブラのことを考えていた……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

警備隊の怒号が響く。

先頭にいる警備隊が遭遇した魔物と戦っているが、今までにない数の魔物が同時に押し寄せており、対処が遅れていた。

 

「しまった!!何体かそっちに言ったぞ!!」

警備隊の一人の声が響く。

犬形の姿をした魔物の数体が警備隊の隙間を縫うように走り抜け突破し、巫女達がいる場所に迫っていた。

 

すぐさま巫女達のすぐ側で護衛していた警備隊達が迫ってきた魔物を抑えこむが、運悪く、機敏に動く一体の魔物が巫女達の元にたどり着いてしまった。

魔物は容赦なく巫女達の中で前にいたディアンサに襲いかかる。

 

 

 

 

 

「え……」

 

何か考えごとをしていたのだろう。

ディアンサは自分の状況を把握出来ていなかった。後ろから叫ぶハリエ達の声でやっと自分に迫る魔物を認識することとなった。

 

しかし遅すぎた。既に逃げるのは手遅れ。あと数秒もすれば魔物の牙がディアンサを捉える。

 

 

 

このような事態に陥った最も大きな原因は警備隊が油断していた……この一言につきるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディアンサは目に前に迫る魔物の口がスローモーションで迫ってくるのをただ眺めることしか出来なかった。彼女の瞳には必死に攻撃を止めようとする警備隊の人たちの姿が映る。

 

しかし彼らは間に合わない、私には避けられそうにもない、体が動かない……

 

――――(私、死ぬのかな)――――

迫ってくる牙が自分に何をもたらすのかまるで他人ごとのように唯々冷静に分析するディアンサ。

 

スローモーションに見えるため恐怖する時間が何倍にも膨れあがり迫ってくる。ゆっくりゆっくり死が迫ってくる。

 

 

――(痛いのは嫌だな・・・)――――

痛みに備えるために目を閉じる。

するとディアンサの頭に走馬燈のように今までの出来事の記憶が浮かんでくる。

 

祭司に次の巫女に選ばれた時……

 

初めて他の巫女達に会った時……

 

必死に練習した踊りがしっかり本番で出来で嬉しかった時……

 

 

記憶はどんどん浮かんできては消えていく。

 

 

そして最後に浮かんできたのは、頭にやさしく乗せて自分を褒めてくれた、とぼけたような態度をしていた男との記憶だった。

 

『なるほど、お嬢ちゃんは頑張り屋さんだ』

 

(コブラさん・・そろそろホテルに着いたかな。出来るならもっとお話したかったな~)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分の横を風が走り抜けていったように感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へへへッ、お嬢ちゃん大丈夫だ」

 

 

 

 

一向に痛みはこない。そればかりか、自分の前から聞こえてくる安心させようとする声

 

ディアンサはゆっくり目を開ける。

 

 

 

 

 

 

そこには、“左手を肘まで噛ませ”大型の魔物を受け止めているコブラがディアンサを庇うように立っていた。

 

 

 

 

 

 

 

ディアンサは思考が追いつかない、コブラは祭司に頼まれ荷物を取りにいっている。ここにいるはずがないのだ。

「な・……なんで・・・・・・」

「当然だ、依頼は守るんだぜ俺は、それにな……それなりに走りには自信があるんだ」

 

しかし前にいるのは幻覚でも幻影でもない。コブラは確かにここに居る。

 

 

コブラの左手に噛みついた魔物が内側から3度光った後、右手で掴み遠くにぶん投げた。

投げ飛ばされた魔物は力尽きたようで起き上がることはない。

 

 

 

 

 

 

ディアンサは体の硬直が解けたのか地面に座り込んだ。しかし目を開けた時コブラの左手は肘まで噛まれていたのを思い出す。

 

 

「コ、コブラさん左手は……」

「あぁこれかい……なぁに気にするな、元々だ。それよりも……お嬢ちゃん立てるかい?」

コブラは左手の義手を装着するとディアンサに手を差しのばす。

「は、はい!!」

ディアンサはコブラの差し出された手を掴もうとして・・

 

 

 

 

 

 

「「「「ディアンサ!!!」」」」

 

駆けつけたハリエ達に抱きつかれ、もみくちゃにされたのだった。

 

差し出した手を引っ込め、まるで、手など最初から差し出していないとで言うようにコブラは後ろで手を組んだ。

 

 

 

 




3話ぐらいで終わる予定。



お気に入り登録、感想ありがとうございます。 やる気につながります。




そもそもこの小説を書こうと思った理由は・・・・コブラが好きだから・・それだけです。

宇宙海賊もとあるイベントの時だけ多少出てくる予定ではあります。一体いつになったら・・・



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泣くなよ。人は悲しいから泣くんじゃない。 涙を流すから悲しくなるんだ

祭司の指示で騒ぎが落ち着くまで一時休憩となった。

 

休憩となった瞬間から警備隊の面々がコブラに押し寄せてくる。

 

「本当に助かった!!アンタがいなかったらどうなっていたか」

「へへへッ、よせよ……照れるじゃねぇか」

 

 

 

警備隊の連中から感謝をさているコブラを、ディアンサを含む巫女達が見つめていた。

 

「本当によかった~ディアンサが怪我しなくて!」

「・・・・・うん、無事で良かった」

「リナリアも本当に心配したんだから!!」

 

「だから、大丈夫だって!」

巫女達に詰め寄られているディアンサ、大丈夫と何度も言っているが彼女達はディアンサの元を離れようとしない。

 

 

コブラが来ていなかったらどうなっていたか、考えるだけで背筋が凍るようだった。

 

 

 

 

「というか、コブラさん・・・なんで間に合ったのかな?」

カンナが疑問を口にすると、一同は再びコブラに目を向けた。巫女達の視線に気がついたコブラがウィンクをしてくる。

 

「なんか、不思議な力を使って瞬間移動したとか?」

自分でもおかしな事を言っていると分かっているハリエは苦笑いを浮かべていた。

 

 

カンナの疑問はみんなが感じていることだった。

コブラが昨日の宿泊したホテルに向かって出発した場所は道中の半分辺りのところだ。

一度ホテルに戻りディアンサ達がいる行脚に追いつくのは限りなく不可能で、徒歩では走ったとしても、ディアンサ達が街に着く方が早いのだ

 

だが、今もコブラは脇に依頼された荷物を抱えているのだ。

 

一同は揃って首を傾げる。

なぜあの時コブラがディアンサを助けることが出来たのか、その答えは結局、分からずじまいだった。

 

 

 

警備隊や、巫女達も気がつかない、コブラを見つめるディアンサの頬が僅かに赤く染まっていることに。

 

 

 

 

その後は特に問題が発生することもなく一行は、最後の公演が開かれる街へたどり着いた。

 

 

 

ショチトル島最大の街に到着した一行。

ディアンサが襲われた事件以降はおおきなトラブルもなく無事にたどり着いた事に安心する。

 

ここでの公演の準備のため会場を設営するが、巫女達が踊る大祭壇の設営には2日かかる予定のため大掛かりな仕事なのがうかがえる。

 

それぞれのイクニア達も協力しながら設営の準備を行っている。

それぞれ熱心に自分のやるべき仕事をこなしている。警備隊で参加している面々も自ら手伝いに参加しているのだ、これも巫女達を崇拝しているためなのだろう。

 

一方、コブラはというと美人な女性を見つけては鼻の下を伸ばしていた。

 

 

「ハリエ。私は街の統治者と話をしてきます。その間、ここは任せました。

「はい、祭司様」

 

「へへへッ、嬢ちゃん、祭司の姉ちゃんからずいぶんアテにされてるじゃねーか」

「ふふ・・・なんて言っても、ハリエ様は巫女達の実質のリーダですもの」

ハリエ派のイクニアが作業をしながらコブラに自慢する。

 

「そう・・・・なのかな?確かにみんなの意見をまとめたりとかは多いかもだけど・・・」

「講演前に率先して仕切る所とか、かっこいいんでしよ!ほんとに!」

またもや、別のハリエ派の人が手元の作業を止めることなく会話に参加してくる。

 

「へへへッ、大した信頼じゃねーか・・・あと6年もしたらきっと美人さんになるぜこりゃ」

辺りのハリエ派の人たちの動きが止まる。声には出さなくても威圧感が増していく。

 

コブラも唐突の様がわりに驚いたが、その原因に気がついたのか訂正するように。

「ま。今でも十二分に美人さんだがな・・・・可愛いっていったほうがいいかい?」

 

正解だったようで、今までの威圧感が嘘のように消えていく。

 

「や、やめてくださいよ!コブラさん・・・か、可愛いだなんて」

 

声が聞こえた方に目を向けると・・恥ずかしそうに顔を赤くするハリエがいた。

 

照れている姿を見た女の子達がハリエに群がって行くのを尻目に。コブラはイクニア達と協力して設営の手伝いを始めた。

 

 

 

「へへへッ、こんなの朝飯前だぜ」

コブラは設営の大ベテランのイクニア達も舌を巻く速さと精密さで大祭壇を設置する木枠の一部を組み立てて見せたのだった。

 

 

一日のコブラの働きぶりを見ていたハリエがイスに腰掛けているコブラの側に近づいてくる。

「あ、あの・・・コブラさん設営すごく助かってるんですけど、大丈夫ですか? 疲れていませんか?」

 

すでにこの近くでやる仕事は残ってなく、暇を持て余しているイクニア達も多かった。

「なぁに~この程度の仕事なんぞ、俺なら目隠ししながらでも出来るぜ」

全く疲れた素振りがないコブラ。そんなコブラの言葉を聞きハリエは驚いた顔をみせる。

 

「コブラさんの体力はホントに凄いですね・・・要領もいいですし本当にありがとうございます・・・・・でも、無理はしないでくださいね」

 

「おぉ?心配してくれるのか嬉しいねぇ~、自慢だが俺が本気でやれば大抵のことあ出来できるぜ?」

 

「凄い!なら島を吹き飛ばす事だって出来る?」

突如現れるカンナ。それに驚くハリエ……しかしコブラには驚いた様子はなく。

 

「あぁ出来るぜ」

カンナの冗談で言った質問に自身満々に言い切った。

 

「え・・・もうコブラさん堂々としすぎ、ホントに出来るのかもとか思っちゃったじゃん」

予想外の返答をされ、一瞬ひるんだカンナだったが直ぐさま立て直す。

「実は私、コブラさん、いいなってずっと思ってたんだ。だってコブラさん二つ返事でホイホイ警備についてくれたでしょ?私、凄いと思うの!」

 

「なんだ? お嬢ちゃんは俺が女性に声をかけられたら誰でもついて行く男に見えるってか?」

 

「違うよ~コブラさんはふざけているようで、ディアンサを助けてくれたり実は周りをしっかり見てる頼もしい人ってことだよ!」

ど直球にコブラを褒めたカンナは自分を呼ぶ声が聞こえ嵐のように走り去ってしまった。

 

「面白いお嬢ちゃんだ」

「カンナはああ言う子なんです」

 

日が沈みかけていた時、祭司が戻ってくる。祭司は設営の進行具合の驚いた顔をした後、今日の設営は終了と宣言した。

解散するイクニア達。ハリエも祭司と話しがあるとのことで、その場で分かれることとなった。

 

 

コブラもホテルに向かっている時、ホテルから出て何処かに歩いて行くディアンサを発見する。

 

 

「・・・・・・」

「どうした嬢ちゃん、そんな黄昏れて」

 

「コ、コブラさん?!!・・・えっと・・わ、私、この街の公演が終わったら巫女じゃなくなるんです。ちゃんと公演も続けてこれたしやっと終わりかー、って・・・・・・あ!……何言ってるんだろう私」

突然現れたコブラの姿に驚きアタフタするディアンサ。さらには焦っていたことで思わず本音が漏れてしまう。

「なんでい、嬢ちゃんは巫女が嫌だったのかい・・・・そんな風には見えなかったがな」

「・・・・うん。私、人前に出るの得意じゃないんです。誰にも言う予定は無かったんですけど・・・・コブラさんにならいいかなって思って。」

ディアンサは向き直りコブラの瞳を見据える

 

 

「公演で失敗したら悪いことが起るって言われていますけど・・・何より自分のために失敗出来ないんです。失敗した、人前に出るのがもっと怖くなるから」

「やれやれ、お嬢ちゃんは考えすぎだ、たとえ失敗したとしてもお嬢ちゃんの努力を無駄にならない。絶対にな」

 

「ありがとうございます。私の公演はこの街で最後!だから頑張ります。それと遅くなってすいません、今日のお昼は助けていただきありがとうございます。」

「オレは仕事をこなしただけだぜ、気にするな・・それと公演、頑張りな!」

そう言ってコブラはニヤッと笑う。

 

 

ふと、みんなが疑問に思っていたことを口に出す。

「そういえば、不思議に思ってたんです。コブラさんどうしてあの時、あそこに来れたんですか?」

「へへッ、オレは100メートルを5秒で走破できるし、体力にも自信があるんだぜ」

「・・・・100メートルを5秒?!!早すぎませんか?」

「だろぉ~?凄いだろ」

 

お互いに笑みを浮かべ笑う二人。

「お嬢ちゃんは巫女を卒業したらどうするんだ?」

「そうですね・・・今はまだ決めていません。・・・・・・・コブラさんは私達の護衛が終わったら直ぐに団長さんの元に向かうんですよね?」

答えを聞くのを怖がるかのように声が小さくなっていく。

「ああ、そうなるな、約束の日時はとっくに過ぎてるし・・・・・・ん? なんだいお嬢ちゃん俺に惚れちまったかい?」

 

「な、な・・・なんで!私がコブラさんのことを惚れるんですか!!」

リンゴのように頬を赤くそめディアンサが抗議の声をあげる。

 

「違うのか、てっきり俺と別れたくないのかと思ったぜ、まぁ・・・・俺に惚れるのには4年早いがな」

「ち、違います!別にそうゆう訳じゃなくて、もう少し島にいてくれたらなぁって思っただけです。……それになんで4年なんですか!?」

 

ディアンサの表情は明るく、年齢に相応しい少女の姿がそこにはあった。

 

 

ディアンサとコブラはその後も他愛ない話しで盛り上がるが、やることを思い出したのか

「わ、私 ちょっと大祭壇で練習してきますね」

「へヘッ、こんな時間ににレディが一人は危ねぇぜ」

「大丈夫ですよ、大祭壇の近くには警備している人もいますし」

 

結局ディアンサが折れ、二人で大祭壇の元に向かうのだった。

 

 

 

 

 

ディアンサとコブラが大祭壇の元にたどり着いた時、なにやら騒がしいことに気がつく。

大祭壇の前でならず者2人と警備隊のイクニア達。

「コブラさん、あれ!」

「へへッ、どこにも似たような奴がいるもんだ」

ならず者の2人はお酒を飲んでいるのだろう。一人はふらふらしていて、視界も定まっていない。

 

 

「だから大祭壇には巫女タンが来るんだろう?待ってんだァ、俺達ァ。引っ込んでろ!!」

「この祭壇の上にいまちゅかねー?」

「祭壇に登るな!!そこは神聖な場所なんだ!」

「なんだ、テメェ、文句あんのかよ!」

どんどん彼らとイクニア達はヒートアップしていき、一触即発の雰囲気が漂ってくる。

 

 

 

「講演前の祭壇に上がるなんて・・・イクニアさんは絶対こんな事しない。あの人達、よその人?」

「ええ。巡業の時期にお酒を飲んでるので外から来た観光客の可能性が高いです」

コブラとディアンサの近くにいたイクニアがディアンサの質問に答える。彼も遠巻きに事態を見ていた一人だった。

ならず者たちの暴走は止まらない。彼らは遂に松明に使う油を大祭壇の石像に撒き、火をつけてしまった。

 

「ぎゃーつはっはっは! カッコイイじゃねえか!」

「な・・・・何してるの!せっかくコブラさんとイクニアの人達が設営したのに、燃えちゃう!」

「く・・・・もう我慢ならん!お前達、許さないぞ!」

「あーん?」

「いいか、その祭壇はなぁ!余所者が汚していい場所ではない!」

堪忍袋のきれたのか、大声を上げた

 

ふと、ならず者の一人が声の聞こえた方に視線を大声を上げたイクニアの近くにいるディアンサを発見する。

 

「って・・・・あそこの女、巫女ちゃんじゃねえの?」

「おい、おいおいーい!酒につきあえよ巫女ちゃん」

「・・・・・・・・・!」

ディアンサを発見したならず者達が大祭壇からおり、ディアンサの元に向かってくる。

 

驚き一歩後ずさるディアンサを守るようにコブラは一歩踏み出した。

「ダメだよぉ~大の大人が少女をいじめたりしちゃ~」

「ケッ、なんだテメェ邪魔だ!どきな」

ならず者がコブラ目掛けて拳を振るう。コブラは攻撃をスレスレで躱し男のボディに強烈な一撃を叩き込む。

コブラの一撃をもらったならず者は目を白目に変えその場に崩れおちた。

 

「て、てめぇ――やりやがったな!」

それを見たもう一人が手に持つ銃を構えた。

 

「きゃあああ!」

それを見ていたディアンサが叫ぶと

辺りに妙な気配が満ちた。

 

 

 

 

突如火の中から出現する魔物

「な・・・・魔物・・・!?」

現れた魔物達は銃を構えたならず者に襲いかかる。

突然の事に一行は呆気にとられる。その中でコブラは冷静にディアンサ抱き寄せると左手の義手を外してサイコガンを取り出した。

「え・・・・・・・・え?!!」

突然抱きかかえられたディアンサは困惑しているが、コブラはお構いなし。

 

サイコガンから放たれる4発の光弾、その全てがならず者を襲おうとする魔物に吸い込まれるように直撃し魔物を消失させた。

 

 

 

 

 

何者かが走ってくる足音が響く。

「これは一体・・・・・!」

いつのまにか祭司が息を切らしながらこの場に到着しており目を見開いていた。

「それが、祭司様!そこのならず者二名が祭壇に火を放って・・・・ディアンサ様が止めに入られて すると火から魔物が・・・」

 

「な・・・・・!ディアンサ、あなた一体何を?」

「わ、私は何もしていません!ただ、そこに倒れている人が銃を構えたので・・」

コブラが左手を元に戻し、ディアンサを援護する。

「そうだぜ、なんかよく分からんが、魔物が出てきて俺が倒した・・それでいいじゃねぇか」

 

「これも、巫女の持つ力・・・・?驚いたわね。・・・なんにせよ無事で何よりです。コブラさんも手間をかけさせてしまい申し訳ありません」

 

「へへ、いいってことよ」

「こ、コブラさん・・・降ろしてください」

「おっと、わりぃわりぃ」

ディアンサの声で、今もなお抱きかかえていた事実を思い出したコブラは優しく彼女を降ろす。

 

 

 

 

その後、イクニア達がならず者を縛り上げ、祭壇の被害を確認する。

すると運良く石像が煤だらけなだけで祭壇の被害は少ない事が分かり一同は安堵する。

明日、石像の掃除を祭司からコブラは頼まれそれを了承した。

「よろしくお願いします。・・・ところでリナリアは?」

「み、見ていません、多分ですけどホテルにいると思います・・・・」

「そう。様子を見てきます」

 

 

 

そう言って祭司は、頬を赤くしたディアンサとコブラ達のもとから去っていった。

 

 

 

「へへへッ、俺は便利屋にでもなっちまったのか、まぁいい今日は戻るか嬢ちゃん……こんなんじゃろくに練習も出来やしねぇ」

「は、はい!・・・コブラさん待ってください」

祭壇から歩いて離れていくコブラに返事をして彼に追いつこうとディアンサは駆けだした。

 

 

 

 

 

誰しもが寝静まった深夜。

 

 

「はぁ、はぁ・・・・・・夢、か。怖かった・・・・・」

ディアンサは夜中に目を覚ました。辺りを見渡しても誰もいない・・・ここが自分の部屋だったのを思い出す。

 

「・・・・練習、しよう」

 

寝間着のネグリジェから踊りの衣装に着替え、音を立てないよう部屋を出た。

誰しもが寝静まった夜、少女は練習する・・・失敗しないため、自分の不安を解消するために。

 

 

汗を流し必死に踊りの確認をするディアンサ・・・・・そんな彼女を影から見守る男がいた。

 

 

 

 

こうして夜は更けていく。男は願う、彼女の最後に公演が成功するようにと・・・

 

 

 

 

 

翌日、欠伸をしながら手際よく祭壇の石像を掃除するコブラ。

彼の手で石像は元の綺麗さを取り戻した。

「ああ、コブラさん石像綺麗にしてくれたんですね・・・・・どうしたんですか?そんな欠伸ばっかりして」

「おうよ、それが昨日全然眠れなくてよ」

「ダメですよ、夜更かししたら」

 

ディアンサの忠告を受け取った後、もう一度おおきな欠伸をするコブラ。コブラらの姿を見てディアンサは軽く笑う・・・・。そんな彼らの元に祭司が近づいてくる。

「ありがとうございます。これで遅滞なく公演が行えます。

綺麗になっている石像を確認し、祭司はコブラに一礼した。

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の公演に向け、巫女達の最後の調整が始まる。コブラの仕事は終わり、観客席の一番後ろで公演が始まるのを欠伸しながら待っていた。

陽が沈み、会場にイクニア達が集まった。

公演が始まる直前、いつものように祭司が登場するが、今回は一言だけではなく……公演前に話しがあると言う。

 

ディアンサ派のイクニア達はこれが彼女の最後の公演なのだと悲しそうにしている。しかし悲しんでいるだけでは無い、彼らは目を見開きディアンサの最後の公演を目に焼き付けようとしていた。

 

「へへへッ、嫌な予感がするぜ」

コブラは一人呟いた。

 

 

 

祭司は突如リナリアに話しをふった。巫女達も知らされていなかったのか皆驚いた顔をする。

 

リナリアが自信満々に告げた内容・・・それは独立して単独公演をすると言うものだった。

 

イクニア達も突然の発表で驚いたようで、反応は様々である。

巫女とは二年間の巡業で力を蓄え、この島の平和と繁栄を守るもの、そして公演で歌う巫女様は必ず五人組。

 

昔からの伝統を破ろうとする祭司に批判の声を上げるイクニア達もいれば、応援する声もある。

祭司は語る。この枠組みの影響でかかる労力、そして長年に渡り進行を集めれば強力な力が宿る可能性があると。

「つまり、島の繁栄のため目指すべきは単なる象徴としてではなく真の意味での神格化!島の巫女にまつわる枠組みをまずは人数制限から壊す。リナリアにはその試金石となってもらいます」

 

 

コブラは祭司の言葉を聞き、一理あると考えている。

時代により文化や伝統は変わっていく。様々な惑星を見てきたコブラは知っている。新しいことに挑戦するのは消して悪いことではない。伝統に囚われ続けるだけでは衰退していくだけだと言うことを。

 

 

しかし次のリナリアの言葉に眉をひそめた。

告げられたのはディアンサも単独公演をするというものだった。

コブラはディアンサに目を向けると彼女は今の今まで知らされていなかったのだろう、誰からみても彼女が狼狽しているのは明らかだった。

 

 

リナリアは知らない、ディアンサが一刻も早く巫女を卒業したいと思っている事を・・・または知っていながらも、ディアンサに負けたままで終わりたくないと起こした行動なのかもしれない。

 

勝ち逃げを許したく無かったリナリアが、無理矢理ディアンサを巻き込んだのだろうとコブラは推測する。

 

 

動揺の収まらない会場。そのざわめきに割って入るように楽師達の演奏が始める。

困惑する四人の巫女。中でもひときわ狼狽していたのは他ならぬディアンサだった。

 

「こいつはいけねぇ」

 

なんとか調子を取り戻していくディアンサ以外の巫女達。しかし、対照的にディアンサのステップは乱れていく。

そして曲の最後を飾るステップで足をもつれさせ、転倒してしまった。

 

 

 

 

完璧のはずの巫女の失敗に、会場全体が混乱に包まれる。

観客の中で一人を除いた誰もが、信奉する巫女の単独公演の発表に動転してたのかもしれない混乱の渦はどんどん大きくなっていく。

 

巫女達が場を沈めようと声をかけるが、すでに手遅れ、リナリア派とディアンサ派の喧嘩が始まってしまう。

しかし唐突の地鳴りによって争いは止まる。

 

一部の人達の声が響く

「石像が・・・・!石像が・・・・!」

地鳴りの発生源・・それは今日コブラが必死に綺麗にした石像が声を上げて涙を流したことによるものだった。

 

 

 

コブラはディアンサ達の元に駆けだした。人の隙間を駆け抜けあっという間に祭壇に到着すると、動き出した石像に拳を叩き込んだ。

 

 

まるでスポンジのように吹き飛んだ石像は動きを止め、やがて石像から飛び出た何者かが飛び出し忽然と姿を消した。

 

 

「何が起きたか私には推し量ることはできません」

舞台袖から祭司が姿を表す。彼女も困惑しているのが見て取れる。

 

「ただ、あの存在の出現は公演の絞めの失敗が引き鉄となったかもしれません」

「・・・・・・!」

ディアンサの表情がどんどん沈んでいく。その目には涙を浮かべ――

 

「原因として考えられるのはそれだけじゃないだろ」

ディアンサを庇うようにコブラが祭司の前に立つ。自分の予測を否定され、睨むように祭司がコブラを見る。

 

「どうして関係ないと言えるんですか、あれが何者なのか祭司の間ですら語られた事のない存在です。それを……部外者の貴方に何が分かるんですか?」

「確かに俺にはアレが何だったのか分からねぇよ」

「なら―――」

「だが、今までの公演と違うのはこの嬢ちゃんの失敗だけじゃない、こんな雰囲気の原因を作りだしたオメェさん達が原因だって可能性もあるだろう・・よっと」

 

コブラはそう言って、いつの間にか巫女達の背後に向かって来ている魔物に向かってサイコガンを抜き放ち、迫ってきていた魔物を沈黙させる。

 

 

「とりあえず話しは後だ、一体逃げるとしようぜ」

コブラの案に皆賛成し一同は祭壇から離れるのだった。

 

 

 

 

 




コブラは名言多くてどれにするか悩みます。


評価してくださった方ありがとうございます。


アニメも漫画もコブラは悲鳴ばっか上げてる気がするんですよね。
小説にするとちゃんとコブラが話しているように見えているか、心配で仕方ないです。




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いるさっ ここにひとりな!!

街の住人に迫る3体の魔物に向かってサイコガンを放つ。やはり外れることはなく、魔物達は沈黙する。

街の住人はコブラに感謝の意を伝え。より安全な、街の外れに向かって走りさっていく。

「へへッ、段々と魔物の数が増えてきてやがる」

付近に魔物の姿はない。先ほど倒した三体が最後だったようで、コブラは義手をはめると、巫女達がいるホテルに向かって歩き出した。

あの公演以降島には瘴気が漂いはじめ、魔物の巣は日に日に拡大していた。

 

巫女達から頼まれ、コブラは島の人々を守るため、巫女の警備隊だった人達の一部の人と協力して防衛に回っているが、人数が少数のため防衛には限界があり、少しずつだが住人が避難している地区に魔物が迫ってきていた。、

 

一度コブラが単身で大祭壇に突っ込み付近の魔物を掃討したが、瘴気は消えず次第に魔物が増えていくため、無駄に終わった。

 

 

ディアンサと祭司は島の人々を守るため、過去の文献を探しているが、一向に手がかりは掴めないでいる。

 

 

コブラがホテルに到着すると、ディアンサがコブラに気がつき駆け寄ってくる。

ディアンサの表情は今までの憔悴している顔から変化しており、多少元気に見えた。

「コブラさん!・・これ見てください」

「何か分かったみたいだな」

ディアンサは、年季の入った本のある一部を指し示した。

 

そこには書かれていたのは

 

金色の仮面の星晶獣・・・かつて島を滅ぼしかけた、暴食の獣。その力は万象の因果さえ歪める。

 

魔物を生み出す瘴気は空間の因果が歪んだ結果だと説明する。

巫女達の歌と踊り、そして巡業は金色の仮面の星晶獣を封じる儀式だったと・・・・。

「前に本で読んだんですが、とある島では狂暴な星晶獣を歌で眠りにつかせるとか・・・・」

 

祭司とディアンサが発見した内容から、もう一度イクニア達の巫女への進行を取り戻す策を練り始めた。

策を練る巫女と祭司、コブラもその話し合いに参加し対応策を話し合っていた。

 

対策を反している途中、静かにその場を離れていくディアンサ、コブラは直ぐさま小さい発信器を指で弾き、放れていくディアンサの襟元に付ける。ディアンサは自分の体に発信器が着いたことに気づいていない。

そして彼女を追いかけるように消えていくリナリアも同じく発信器を取りつけた。

 

 

コブラ以外の人達がディアンサとリナリアがホテルからいなくなったことに気がついた時、コブラの持つレーダーではつい先ほどまで一緒にいたのたが、別々の方向に向かって移動を初めていた。

 

様子を見守っていたコブラだったが、ディアンサが大祭壇の方向の向かっているのに気がつくと直ぐさまホテルを飛び出し、ディアンサのいる反応がある方向に駆けだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

リナリアと喧嘩別れに近い別れ方をしたディアンサは大祭壇に向かって足を踏み出した。

彼女の心の中は恐怖と罪悪感で満たされており、正しい判断が出来ない状態であった。

 

 

 

 

 

 

 

魔物を何とか物陰などで避けながらディアンサは大祭壇のある街にたどり着く。満ちる瘴気と魔物にたじろぐも、勇気を振り絞ってさらに足を進めた。

 

「怖い・・・・でも、大丈夫・・・・」

公演前よりもさらに酷い怖さに必死に耐えるよう足を進める。

「♪願わく未来はいいことがいっぱいって――・・・」

(なんで歌ってるんだろう・・・私の行動をコブラさんが知ったら悲しむかな・・)

ディアンサ派今の感情が公演前に近いせいだと自分で検討をつける。

(ふふ・・・・そっか・公演前の、祭壇に上がる時・・本当に、死ぬほど怖かったんだ・・・でもこないだ魔物に襲われて死にかけた時は歌わなかったな~あんなに一瞬を長く感じたのに・・・・何でだろう?)

 

 

ディアンサは気がついていない自分の歌う声が次第に大きくなっていること、その声を聞きつけ魔物がディアンサに迫っていることに。

 

 

ついにディアンサの視界に魔物が映る。

「あ!・・逃げなきゃ私は・・・祭壇からこんな遠い場所で死ねない」

ディアンサが後ろを向き駆けだそうとするが、足が止まる。

魔物はディアンサがここまで来るのを待ち構えていた。まるで狩りのように獲物が逃げられないタイミングまで待っていたのだ。

 

ディアンサは既に魔物に囲まれていた。逃げ場などない。彼女を助ける者はいない。

 

 

 

 

しかし、魔物達はディアンサを襲うことは無かった・・・出来なかったのである。

 

 

ゆっくり歩いてくる孤独なシルエット・・・・・・・・奴が来たのだ。

 

「俺は今まで、何度も助けることが出来なかった。間に合わず何人も守りきれなかったた。・・・だがもうそんなのは懲り懲りさ」

 

ディアンサを囲む魔物達に一斉に光弾が直撃し吹き飛ばす。

 

ディアンサはこの何日かでソレを何度も見ていた、自分の失敗したせいで街を走り回り街の住人を守ろうと戦う男の姿を。

 

男はゆっくりと近づきディアンサの元にたどり着く。怒られるとディアンサは確信していた。もしかしたら殴られるかも知れないと目をつぶる。

 

しかしそんな考えは杞憂に終わる。

男は依然、自分を褒めてくれた時と同じように優しく男は手を載せた。

 

「ダメだ、ディアンサ・・・命を粗末にしちゃいけない」

 

 

 

その一言、その行動で彼女の心を折れた。

ディアンサはとっくの昔にすでに限界だったのだ。彼女は罪悪感でここまで歩いて来た。

恐怖を感じ、逃げ出したい気持ち、死にたくない気持ち必死に押さえ込んで。

 

ディアンサは男に抱きつく。そしてダムが決壊したように泣き出した。ごめんなさいと何度も呟き男の服を涙で濡らす。

 

コブラははディアンサを慰めながら落ち着くまで胸を貸し続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ディアンサが泣き止み、落ち着きを取り戻しかけていた時。コブラがディアンサを自分の背中に隠すように移動させる。

「さぁ~てレディの泣き顔を覗き見るのはどうかと思うぜ?・・・・いい加減出てこいよ」 

「え・・・・」

コブラは物陰に向かって声をサイコガンを構える。ディアンサもコブラが見ている方向に目を向けるがそこは暗がりで特に人の姿は見えない。

 

 

 

 

「ふん・・・・やはり気がついていたか、ただ者ではないと思っていたが・・・」

誰もいないはずの場所から男の声が聞こえ、驚くディアンサ。

 

足音が近づいていき姿を現したのはマントを着け顔に仮面を付けている人物。

「よせ、交戦する気はない。俺は知り合いに頼まれここで起きている事件について調べている」

 

「なら、その仮面を取りな・・仮面野郎」

「・・・・・それは出来ない」

「なら・・・自分の正体を名乗りな」

「・・・・俺の名はシス、十天衆と呼ばれている」

コブラの知識には聞いた事のない呼び名。しかしディアンサは知っていたらしく驚いた声を出す。

「じゅ、十天衆!! コブラさんこの人凄い強い人ですよ!!」

「なんだい嬢ちゃん、知ってるのか?」

「・・・・・私の名前はディアンサです。嬢ちゃんではありません」

そう言ってディアンサは十天衆について知っていることを説明する。

 

十天衆とは、それぞれ十種の武器の全空一の使い手が集まった伝説の騎空団である。

十種に区分された絶対唯一の力を束ねた物が十天衆であり、その実力は同じく全天に絶対唯一の存在である「七曜の騎士」と並ぶとされその圧倒的な強さ故に「全空の脅威」とされる

 

「それで?その十天衆様がオレ達に何のようだい?」

コブラは警戒を解かない。サイコガンは今もシスに向かって構えられている。

「俺はここで起きている事件の解決を頼まれてこの島に来た。・・・貴様達は魔物の巣に向かっていた。ならばこの騒動の解決方法を知っていると考え監視していただけだ」

 

 

無言でにらみ合うコブラとシス・・・・。

「へへッ、陰気くせぇ奴だが嘘は言ってなさそうだ」

コブラはサイコガンをおろし義手をはめた。

その時ディアンサは自分の体に巫女の力が少量だが戻っていることに気がつく。

 

「コブラさん、祭壇に行きましょう。知らない間に巫女の力が少量ですが戻っています」

「俺はこの島に詳しくない。行動はお前たちに任せる・・・・・魔物は任せろ」

 

 

 

コブラとディアンサ、そしてシスをくわえ3人は大祭壇に向けて魔物を蹴散らし進んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

「大祭壇はもうすぐ・・・大丈夫、勇気をだせ、わたし!・・・・」

 

コブラは口笛を吹きつつ、ディアンサを守りながら祭壇に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

「貴様・・・やはりただ者ではないな」

「男に褒められても全然嬉しくねぇな~・・・それに俺の名はコブラだ、覚えろお面」

 

目的地にはあっさり辿り着いた。

もともとここまで一度コブラは一人で魔物を倒して来ているのだ。そこにもう一人戦える人物がいたら、護衛する人物がいたとしても過剰戦力であろう。

 

 

すでに、ディアンサの目に恐怖はない。

それはここまで口笛を吹きつつ、一行の最前列でシスと共に魔物を倒し続けている男の後ろ姿を見ていた影響なのかもしれない。

 

 

 

 

ディアンサは人が弱々しい輝きを身にまといながら、舞台に上がる。自信に満ちあふれた声で高らかに呪文を唱える。

5人に比べれば、その声はあまりにも小さい・・・しかし。

 

――どこからともなく姿を現す星晶獣、そしておびただしい数の魔物。

 

 

「コブラ・・雑魚の相手は俺がする・・・・星晶獣は――」

コブラは義手を外し、ディアンサが立つ舞台を守るよう立ちはだかる。

「OK任せろ・・・・ディアンサとりあえず頑張って歌い続けろ。さぁて、それじゃあ・・一つ遊ぶとしようぜ・・・犬っころ」

挑発ともとれる声を星晶獣に向かってかけた。

 

シスは走りだし、魔物の大軍に向けてかぎ爪を突き立てた。

 

 

 

己の行く手を阻むコブラに星晶獣は牙を剥く。

自分の二倍以上の大きさを持った星晶獣にコブラはサイコガンを放った。

放たれたサイコガンは直撃し星晶獣を後方に吹き飛ばす。しかし、ダメージは与えたものの倒す事は出来なかったようだ。

 

星晶獣は立ち上がり再びコブラに迫る。もう一度サイコガンを撃とうとしたコブラだが・・・。

「ありゃ?」

因果を曲げる力で訳も分からずコブラは転倒した。その後何度も立ち上がろうとするが、コブラはそのたびに尻餅をつく。

 

 

「コブラ!何をしている」

魔物を殲滅しているシスから声がかかる。

「ソレがよぉ?おかしいんだよ、立とうと思っても立てねぇんだこれが」

 

今もディアンサの声は舞台から聞こえてくる。彼女は必死に歌っている。

 

そんなコブラを気に止める様子もなく、星晶獣はコブラの横を通り過ぎ祭壇に近づいていく。

止めようとコブラが星晶獣サイコガンを放とう構え、シスがディアンサを守ろうと舞台に向かって走り出した時。

 

 

 

 

 

よぉぉーッソイ! よぉぉ―ッソイ! よぉぉ―ッソイ!アソレソレソレソレソレ!

突如男達の声が響き渡った。

 

男達の声に弾かれるように星晶獣は祭壇を放れた。すると、そのタイミングでディアンサの体が輝きだした。

 

 

星晶獣の動きが止まる。

 

 

 

 

突然力が戻ったことに驚くディアンサ、そんな彼女に近づいてくる人物達がいる。

「もう、リナリア早く~」

「はぁ、はぁ・・・間に合った・・・」

「・・・・・・疲れた」

舞台に最初に現れたのはカンナ、次に息をきらしたリナリアその後をハリエ、ジオラが続いて舞台に現れる。

「みんな・・・・どうして」

 

そして彼女達の後を追うように現れるたくさんのイクニア達。

 

ハリエは表情を変える事無く、ディアンサに近づいていく。

「ディアンサ!!」

「な、何?ハリエ」

突然現れたハリエに唐突に呼びかけられ事困惑するディアンサ。

「私達も一緒だから。もう一人で抱え込まなくていいよ。」

「え・・・・」

そんなディアンサにハリエは優しく話しかける・・・そして謝った。

ディアンサが怖がっている事を、気づかないふりをしていたと。

リナリアは伝える。星晶獣・・ショロトルは巫女とイクニア達が多も友達だった事を忘れてしまって悲しんでいると。

突如ディアンサの頭にリナリアの聞いてきた事、

星晶獣ショロトルの記憶が流れ込んでくる。

 

一頭の犬が星晶獣に改造され、親友を失い、彷徨った果てにこの島に辿り着いたのだと。

 

「今のは・・・?」

「ショロトル様、寂しくて怒ってたんだって・・・イクニアさん同士で喧嘩してティクニウトリなんて言われてもね」

ジオラが流れ込んできた記憶を説明する。

 

 

するとハリエが舞台の先端に走っていき、ショロトルと戦っているコブラに声をかける。

「へへッ、一体どうなってやがるんだ?魔法にでもかけられちまったか?」

コブラはゆっくり立ち上がる。動かなくなったショロトルを見つつ、今回は問題なく立ち上がれた事に首を傾げた。

「コブラさん!!」

背後からハリエがコブラを呼ぶ声が響く。

攻撃を再開したショロトルの前足の攻撃を躱しながら応える。

「よっと!どうしたぁ?」

「私達がこの会場を盛り上げるまで、ショロトル様を食い止めてください!」

「なあにぃ~?・・・どうやら訳ありかい・・・任せな」

コブラがショロトルの攻撃を躱し、舞台の方に目を向けた。

そこには元気そうな笑顔を見せるディアンサと力を取り戻した巫女達の姿がある。

 

 

 

コブラは彼女達が解決策を見つけたと信じ、ショロトルを倒せるだけの威力をサイコガンに篭める。

「へヘッ!レディの期待に応えない訳にはいかないな」

 

「コブラさん、攻撃は禁止です。」

こんどはディアンサの声が響く。

「・・・・え」

もう一度巫女達の方を向き直るコブラ。そこにはこちらを見てウィンクをしながら親指を立てるディアンサがいた。

 

「おっと!!あぶねぇ危うく三枚おろしにされるとこだったぜ」

間一髪、頭をそらすことで攻撃を避ける。

 

 

「へへッ、やってやるさ・・俺は今まで相撲で負けた事はねぇんだ」

コブラはショロトルの攻撃を躱し懐に潜りこむと手でがっしりと掴み・・・

「オッッッラァアアアアア!!」

足に力を篭めて自分の体の倍はあるショロトルを筋力だけで持ち上げた。そしてそのまま豪快に投げ飛ばす。

 

 

投げとばされたショロトルが最後の一体だった魔物を踏みつぶす。

これで、シスの活躍により祭壇付近の敵は一層された。

 

シスがコブラの元に向かおうとした時、後ろから方を捕まれる。正確に言うならば悪意がない手動きだったため、拒否しなかっただけである。

 

「オメェさん凄いな」

「なんだ、お前は」

シスの方を掴んだのは、コブラがこの島を訪れたばかりの時に訪れたバーの店主彼も他のイクニア達と同じくこの場を盛り上げようと来ていた。

「お前さんが誰だかは知らねぇが、さっきの戦闘を見ていてアンタが凄い奴なのは分かっててお願いする。・・・・頼む、アンタも一緒に踊ってくれ!!」

「何故俺がそんな事を・・・」

 

 

「・・・ビビってんのか?オレ達の踊りについてこれないから」

店主の男は見下すようにシスを見た。

「何だと・・?なめるなよ・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

その後巫女達の歌は無事ショロトルに届き、悲しさは薄れ消えていった。そしてその姿は島の空気にゆっくりと溶けていくのだった。

ショチトル島の瘴気はふき払われ、島は元の平穏を取り戻す。

シスの姿はいつの間にか消えていた。

しかしショチトル島には六本のトレピリを同時に操り5人に分身し五種類の踊りを完璧に踊る男の噂が広がっていた。

 

 

それから二日後――――――

 

「ディアンサ・・あなたがもしこれからも公演に関わろうという気持ちがあるなら楽士という道もありますよ?」

祭司の提案にディアンサは首を横にふる。

「私、まだ将来のことはよく考えていません。・・・ですが、やりたい事ならあります」

力強くディアンサは応える。

祭司の顔に驚きは無い・・・答えは分かっていたようだ。

「そうですか、いつでもこの島に戻ってきていいですからね・・・それとこれを渡して置きます。

そう言って頭部に金色の台座が据えられた一本の短杖を取り出した。

「祭司様・・私は島を出るとはまだ、言っていませんが・・それにこれは・・・・」

祭司はこの杖を使えばどこでも巫女の力が使えると説明する。

 

「さて、挨拶はこの程度にしておきましょう・・・ディアンサ急ぎなさい。彼はもう時期この島を出て行くそうですよ」

 

「え・・・嘘!!・・・・祭司様知ってたんですね!!・・・・・・急がなきゃ、祭司様二年間ありがとうございました」

一度頭を下げ慌てて走っていくディアンサを暖かい目で祭司は見送った。

 

 

 

(どうしよう!・・・どこにいるんだろう・・・それに荷物も何も準備していない)

心配事を考えながら懸命に艇の発着場に向かって走る。

その時、ふとディアンサの視界に4人の人影が映る。

 

 

「ディアンサ!!急いでこの先よ!!」

声の主は巫女達のまとめ役のハリエ、彼女の手には大きなトランクがある。

「ど、どうしてここに!!それに、それは私のトランク・・・」

突然自分のトランクを渡され驚くディアンサ。ハリエの後ろではカンナとリナリアがしてやったりと笑顔を見せていた。

「て、手紙頂戴ね!絶対だよ!」

「わ、わかった」

リナリアに返事をしてトランクを引きディアンサは走りだそうとした時。

「コブラさんはモテそうだからねぇ~敵は多いぞぉ~」

カンナがディアンサの耳元で呟いた。

「な、!!!」

途端に顔が赤くなるディアンサを見てハリエ達は笑顔を見せる。反論しようとディアンサが口を開くが。

「ほ~らいったいった!!早くしないとディアンサの初恋終わっちゃうよ~」

カンナがディアンサを艇の発着場の方向に押し出す。

 

なにやら言いたそうな顔をするディアンサだったが、ひとまず堪え、発着場に向かって走り出す。

 

 

 

「「「「頑張れ~!ディアンサ!!」」」」

背後からディアンサを応援する声がかかる。

 

応援を受けディアンサは懸命に走る。

息はとっくに乱れているが彼女は走るのをやめない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

男は小型の艇に荷物を入れるのを手伝っていた。乗せてもらう代わりに手伝っているのだろう。

 

ディアンサは間に合ったことに安堵し一度止まると大きく息を吸って・・・。

 

「コブラさん!!!・・・・・私も連れて行ってください!!」

大きな声で叫んだ。

 

 

 

 

それは長い旅路・・彼女の空の果てを目指す旅が始まった瞬間だった。

 

 

(舞い歌う五花編 終了)

 

 俺と無理矢理付いてきたディアンサは何とかバルツ公国に辿り着いたが、既にグラン達は別の島に行ったときた。

急いで後を追ったオレ達が見たのは浮いてる島なのに海があるなんとも不思議な島だった。

そこではグラン達が帝国兵と巨人みたいのと戦っているのを発見した俺は彼らを助けるためにディアンサを脇に抱え飛んでる艇から飛び降りたってってわけ

まぁ、それはさておき

団には知らない間に仲間が増えていたり、。この島でまた大型の星晶獣と戦うときた。全く、忙しいっちゃないぜまったく

次回、「アウギュウステ列島」で、また会おう!

 




舞い歌う五花編 終了です。後半はかなり駆け足になってしまいました。

誤字脱字の指摘ありがとうございます。また感想くださったかたも感謝です。



しばらく更新はないかもです。


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アウギュウステ列島編
カリフォルニアドリーム


一部 訂正しました。


(アウギュウステ列島)

 

「うわぁ~これが海ですか、ホントに水がいっぱいあるんですね!」

ディアンサはガラス越しに見る、海と白い浜辺に目を輝かせている。

「なんだいお嬢ちゃんは海が初めてかい」

運転席に座り小型の騎空艇を操縦する老人は、楽しそうにしているディンアンサに気分を良くしたようだ。

コブラとディアンサはバルツ公国にいた人物からグランがこのアウギュステ列島に向かった話しを聞き、小型の騎空艇の操舵士に依頼してここまで連れてきて貰っていた。

 

 

「爺さんこの島の海は、いつもこんなあれてんのかぁ?」

ディアンサが見つめている窓と反対側に付いている窓の景色を見て、コブラは目を細めていた。

ディアンサは初めて見た海で海の異常さに気がつかなかったが、コブラは何度も海を見ている。この島の海の異常さに気づいていた。

老人もコブラが見ていた方に視線を向け驚いた表情を見せる。

「あん?・・・いやぁ儂の知る限り、こんなに荒れてるのは初めてじゃわい……この島はリヴァイアサンの加護に守られているはずなんじゃがな……」

「こんな荒れた海じゃ、サーフィンは難しそうだ」

 

「リヴァイアサンってなんです――――!!コブラさんあそこ、ショロトル様が暴れてた時みたいに瘴気が!」

ディアンサが聞いた事の無い単語の事を質問しようと口を開いたがコブラが見ている窓に映る光景に驚き、窓に張り付いた。

 

機内は狭い。ディアンサが窓を見るには座席に座るコブラの膝の上を越える必要がある。

つまり、今のディアンサの全体重はコブラに預け体を横にして窓を眺めている。

「お~ぅいディアンサ、重くはねぇが邪魔だ」

コブラは片手でディアンサをつまみ上げ元の座席に座らせた。

「す……すいません、コブラさん……でもあの瘴気凄いですよ。何が起っているんでしょう?」

「さぁな~分からん」

コブラが見つめていた先……そこにはある一箇所が凄まじい濃度の瘴気に覆われた箇所があった。

 

コブラ達が乗る船は高度を上げ、瘴気が一番濃い場所の付近を通過しようとする。

「あの瘴気じゃ、艇の発着場には着陸できそうにないのぉ~一度引き返す方が賢明じゃ」

船の発着場は丁度瘴気が濃い場所にあり着陸には危険が伴うと判断した運転手は戻ることを提案するが……。

「いや、着陸はしなくていいが、瘴気の一番濃い場所の真上を飛んでくれ」

運転手の老人は抗議しようとコブラに視線を向けるが、彼の表情を見て理由があると判断し言われた通り瘴気の濃い場所の上空に向かって舵をきった。

 

コブラの目は確かに捉えていた。巨大な水竜の姿、そして3メートルを超えそうな巨人、そして数多の帝国の兵士たちと対峙し、剣を地面に突き立て懸命に立ち上がろうとするグランの姿を。

さらに、彼を助けようとする人物とルリアとビィの姿も確認できる。

「あれ……いま瘴気の隙間からたくさんの人達の姿が見えた気が……」

ディアンサも同じように何かを発見したようだ。

「コブラさん、大きな竜みたいのが見えた気がしたんですが……」

「ああ、いるな、爺さん……ここまででいい……ディアンサこれを背負え」

コブラは当たり前の様に返事をしてリュックサックのような物をディンアンサに差し出しながら席を立つ。

「なに?おまえさん一体何を……」

コブラが差し出した物を見た運転手が驚くような声を上げる。

 

「コブラさん……これ背負いましたけど何ですかこれ?」

コブラに手渡され、とりあえず言われた通り鞄を背負ったディアンサが首を傾げコブラを見ていた。

 

コブラは黙々と天井に付いている大きなバルブを回している。それに気がついた運転手は止めようとするが……。

制止がかかる前に、コブラは天井に作られていたバルブを持ち上げ脱出口の扉を開けた。直後に大量の風が艇に流れ込んでくる。

コブラは困惑しているディアンサを脇に抱えると脱出口に手をかけた。

「え……えっ!? 嘘ですよね、コブラさん!待ってください!」

ディアンサは今の状況から起きるであろう未来を理解し、コブラの腕から逃げようと暴れる。

「爺さん、コイツの荷物はまた今度届けてくれ」

返事を待たずにコブラはディアンサを抱えながら艇の外に出る。今だに、艇は陸地や水面まで400メートル以上の高さがある空を飛んでいる。風が暴風のようにコブラを叩きつけてくる。

「嫌です。嫌です!ま、待って―――――――!!!!」

脇に抱えられている暴れるディアンサの抗議を一切聞かず投擲のように彼女を放り投げた。

悲鳴を上げながらディアンサが飛び、そして落ちていく。

 

その後コブラもディアンサを追いかけるように艇の上から飛び降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁショロトル様助けてぇぇぇえええ!!!」

 

 

 

ディアンサは風でめくれ上がる自分のスカートのことなど考えることが出来ないようで、悲鳴を上げながら海面に向かって落ちていた。

ディアンサを信奉するイクニアの人達が見ていたらどんな反応をするだろうか……とりあえずコブラは襲われるであろう。

 

しかし彼女は偶然だが落下耐性の姿勢をとっていた。そんな彼女の元に空に放り投げた人物が上から近づいてくる。

「ヘヘッ、大丈夫だディアンサ、そいつはパラシュートさ。地上に近づけば勝手に開く」

そう言い残しディアンサと同じスピードで落下するのを維持していたコブラは、直立不動の姿勢をとり、どんどん加速し瘴気に向かって猛スピードで突っ込んでいった。

 

 

 

 

 

 

やがて、弾丸のように濃い瘴気の中に突入し海竜……リヴァイアサンと戦うラカムとカタリナの姿を確認したコブラは、右手で左手を添えた。

 

 

その構えはこの世界の誰よりも速い早撃ちの構え。

 

コブラは義手を外し、サイコガンをリヴァイアサンに向かって撃ち放った。

その威力は記憶を取り戻した直後に放ったものとは段違い、光弾は6つに分裂しリヴァイアサンの体に迫る。

 

六つの光弾の一発目が直撃しリヴァイアサンは大きく仰け反った。

そこを追撃するかの如く、残りの五発の光弾が炸裂しリヴァイアサンは海大きな水しぶきを上げながら崩れ落ちていった。

 

 

コブラは自分の上でバサッとディアンサのパラシュートが開く音を確認し、彼女のパラシュートが無事に開いた事に安堵した後、目の前に迫っていた海に頭から突っ込み。

頭上をパラシュートで降下していたディアンサを濡らすほどの高さの水しぶきを上げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――時は少し戻る。

 

グラン達は、アウギュステ列島に到着し浜辺で水遊びをしていた所、警備隊をしていたオイゲンと遭遇する。

 

その後帝国の兵器開発により汚染された海を取り戻すため協力し、施設を無事沈黙させた。

しかし、その施設でグランの旅の仲間であるカリオストロが錬金術関係の書類があることを発見し帝国軍と錬金術師が結託し何かを起こそうとしている事実を知る。

 

カリオストロは調査のためその場に残り、グラン達はアウギュウステの兵士と帝国軍が衝突するザニス平原に向かった。

向かう途中オイゲンに一同はルリアの秘密を教え、グランの覚悟を知ったオイゲンが旅に同行することになった。

 

 

 

ザニス高原でアウギュステの兵士と帝国軍が衝突し、クラン達は暴走するリヴァイアサンを沈めるため、海岸に向かう。

 

しかし、リヴァイアサンの元に辿り着く直前、ポンメルンとフィリアスに遭遇し、ラカムとイオ、そしてカタリナがリヴァイアサンの元に向かいグランとルリア、そしてオイゲンが魔晶の力によって変身したポンメルンと戦っていた。

 

 

 

 

 

ポンメルンと戦っていたグラン達は劣勢だった。なぜならグラン達の周りはポンメルンだけではなくフィリアスの部下の帝国の兵士がグラン達を包囲していたためだ。

さらに、兵士たちは陰湿でグラン達よりもルリアを狙うため、オイゲンとグランは攻勢に踏み出せないでいた。

そんなグラン達を遠くからフィリアスが笑いながら眺めている。

 

 

 

 

 

ポンメルンの攻撃をなんとか反らすことで耐えたグランだが、既に体力は限界のようで膝を着く。

膝をついたグランに向かって帝国の兵士が剣を振りかぶり迫る。

「グラン!前です!」

ルリアの声で危険が迫ったのを悟ったグランは素早く立ち上がり迫る剣を弾き、自分の剣を帝国兵士の首元に突き刺した。

その光景を見て一瞬怯んだ周りの帝国の兵士の隙を見逃さず、オイゲンの大砲のような銃弾を直撃させ、周りの数名の兵士をはじき飛ばした。

 

「大丈夫かグラン!」

「オイゲンさん僕はまだ戦えます!!」

オイゲンがグランに走り寄る。二人は軽く言葉を交わした後、自分達の目の前に佇んでいるポンメルンに目を向ける。

 

 

「その絶望しない目つき!!生意気ぃ~ですネ!!」

魔晶の力で変身したポンメルンはまだまだ余裕がありそうに佇んでいる。一方……。

「俺はコイツの目が気に入ったがな? 真っ直ぐでいいじゃねーか!」

既にグランもオイゲンも息が上がり体力の限界は近かった。

 

 

 

「ふん、どこまで威勢を張っていられるか楽しみですネ!!」

再び迫る攻撃……しかしルリアが呼び出したコロッサスが攻撃を受け止める。

「ッ!!」

突然出現したコロッサスに攻撃を防がれ、ポンメルンは驚くが直ぐさま後方に飛び一度距離をとった。

 

 

「私も、戦います!守られるだけは嫌なんです!」

グランとオイゲンの後ろからルリアが大声を上げる。

攻撃を受け止めたコロッサスはゆっくり姿が消えていく。どうやら出現させられる時間は少ないようだ。

 

「嬢ちゃんがいれば百人力だな」

「分かったルリア・・だけど無理はしないでね」

息を整え終えたグランが剣を構え、コロッサスが出現していた間に銃に火薬をつめたオイゲンはグランを援護するようにポンメルンに向かって銃を構えた。

 

 

その時、どこからか少女の悲鳴が響き渡る。

 

グランとオイゲンは悲鳴が聞こえ一度足を止めた。

悲鳴はどこから聞こえてくるのか探す二人は自分達のはるか上空から聞こえてくることに気がつく。

 

グランとオイゲン、そしてルリアは空に目を悲鳴の主を確認しようと上を向き―――。

空を覆っていた瘴気を掻き消すかのように光弾が駆け抜けていった。

 

グランはその光を知っていた。

一度見ていたグランは瞬時に理解して視線を戻し、ポンメルンに向かって駆けだした。

 

 

 

やがて光弾は遠くに見えるリヴァイアサンに迫り、全弾が直撃。リヴァイアサンを海に沈めた。

 

帝国軍は突然の事態に頭が着いていっておらず棒立ちになっていた。これはポンメルンも同じ。

 

ポンメルンが気づいた時には既に手遅れ、グランの剣はポンメルンに迫っており、グランの渾身の一振りは見事に炸裂。その一撃が決定打となりポンメルンを戦闘不能に追い込んだ。

 

 

直後、空から何かが落ちたように大きな音が聞こえた後、大きな水しぶきが上がる。

 

帝国軍は空を駆け抜けた一撃がリヴァイアサンを倒したことと、魔晶によって強化されたポンメルンが倒されたことにより、動揺する。

 

 

やがて帝国兵士はフィリアスの命令により撤退した。

 

 

 

剣を納めるグラン、そしてグランの元に駆け寄るオイゲンとルリア。

「やるじゃねーかグラン!!不覚にも俺は空を駆け抜けたあの光に驚いちまって動けなかった」

「グラン!!凄いです格好良かったですよ」

「オイゲンさんは仕方ないですよ、僕は似たような光景を見ていたから動けただけです」

オイゲンは驚く顔をする。それに対しルリアは何か分かったように笑顔を見せる。

「あ、じゃあやっぱりあの光はコブラさんだったんですね!」

 

オイゲンはコブラという名前を聞き、グラン達の仲間で今は別行動している人物がいる話しを思い出し、その人物に興味をもった。

一撃でリヴァイアサンを沈める人物……ただ者ではないと。

「こいつはたまげたぜ、グラン、そのコブラってやつはすげぇな」

 

 

そんな彼らの元にパラシュートがポスッと地面に落ちる。降りてきたパラシュートの真ん中で何かがもぞもぞと動いており、誰かが近くに降りたったのを理解したグランは剣を再び鞘から抜き、オイゲンは銃を構える。ルリアはその二人の後ろに隠れ、顔をのぞかせていた。

 

 

 

 

やがて何とかパラシュートから抜け出してきた人物。その姿はこの場に似つかわしくない格好をした少女だった。

「い、生きてる!! ……やった、私生きてるよ!!」

突如現れ、自分の生還を大声で叫ぶ少女。その姿を見て危険はないと判断したグランとオイゲンは武器を降ろした。

 

「あの~貴方は~?」

そんな叫んでいる彼女に向かってルリア近づいて声をかけるルリをグランとオイゲンは見守っている。

すると、遠くからリヴァイアサンと戦っていたラカム達がこちらに向かって駆けてくるのが目に入り、二人はやっと戦いが終わった事を理解して安堵の表情を見せるのだった。

 




アウギュステ列島は簡単に終わらせる予定です。





ついでに私がグラブルで一番好きなキャラはオイゲンですね。

誤字脱字の指摘、感想くださった方ありがとうございます。


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毎日山盛りのコーンフレークを二杯食べてるおかげさ

戦闘を終えグラン達一行は合流しお互いの無事を確かめた後、空から降りてきた少女に視線を向けた。

 

既にルリアは少女に声をかけており、仲良くなっているようだ。

「この人はディアンサさんです!コブラさんに付いてきたみたいなんです」

「あ、あの私・・ディアンサって言います。貴方がグランさんですか?」

「うん、僕がグラン・・・一応、団長をやっているよ」

グラン自己紹介を聞き、間違ったいなかった事にほっとした顔を見せるディアンサ。

「オイオイ、グラン!一応じゃねぇお前さんはしっかり団長やれてるぜ!」

「その通りだ、もっと自分に自信を持った方がいいなグランは」

ラカムとカタリナも褒められ照れくさそうに自分の頬かくグラン。

 

「あはは・・グランさんはコブラさんの言っていた通りの人ですね。それと、ラカムさんとカタリナさん・お二人の事を聞いています。優しくて強い人達だって・・・」

顔を見合わせ照れる二人を見てグランとルリアは笑う。

 

 

ディアンサはその後自分がコブラに助けられ、彼の後をついてきたことを伝える。

簡単に一通りの話はしたディアンサは、グランに向き直ると緊張した面持ちで口を開く。

 

「グランさん、いえ団長さん・・突然のお願いだとは思うんですけど・・どうか私も貴方の旅に加えてください! お願いします」

ハキハキした声でグランに向かって90度頭を下げるディアンサ・・グランの答えは聞くまでもない。

 

「もちろん!これからよろしく、ディアンサ」

「わーい、ディアンサさん、これからよろしくお願いします!」

ディアンサは頭をあげ安堵した表情を見せ‥‥。

「うん、よろしくね ルリア」

明るい声で返事をした。

 

 

 

 

ルリアは新しい仲間が増えた事に飛び跳ね喜んでいる。

 

すると…タイミングを見計らっていたのか2人の人物がディアンサに近づいてくる。

「わ、私はイオ・・よろしく・・・・・ディアンサ」

ディアンサに声をかけた少女はイオ。彼女はバルツ公国での一件でグランの旅の仲間に加わった。声が小さいのは緊張しているせいだろう。

「おっと、イオの嬢ちゃんは最初から呼び捨てかい、やるねぇ!」

「もぉ~オイゲン!!そういう事は言わないでよ!!私だって緊張しているんだから」

「おっと……わりぃわりぃ」

指摘され顔を真っ赤にしてオイゲンに突っかかるイオ。

 

「俺はオイゲン……しがない老兵さ、よろしくな」

「はい!よろしくお願いします。イオさんにオイゲンさん」

 

彼らも自己紹介を軽くした後、自分達より先に団の仲間になった、この場にいない人物の名を上げる。

「そ、それで、ディアンサが付いてきたっていうコブラって男はどこにいるのよ?」

イオは辺りを見渡しコブラを探す素振りを見せる。一方オイゲンは心当たりがあるのか、海に向かって目を向けている。

 

コブラに大きく反応したのはラカムとカタリナ

「そ、そうだコブラ殿は!!あのリヴァイアサンに直撃したあの光はコブラ殿の攻撃だろう」

「ほんとアイツの銃おかしくねぇか?」

彼らも気になっていたのだろう。彼らの視線は次第に何処にいるか知っているであろう人物…ディアンサに目を向ける。

 

 

ディアンサは、オイゲンが見ている箇所に目を向けながら呟く。

「コブラさんは‥‥‥海の中です」

「オイラも見たぜ、コブラが海に頭から突っ込むのを」

素っ気なくビィは応えた。

「えぇ!!?海ですか?」

驚くルリア。

 

ディアンサはコブラと小型の騎空艇に乗っていた事・・そこから突然自分を抱え、自分と違いパラシュートを付けずに飛び降り、リヴァイアサンに向かってサイコガンを撃った後、早い速度のまま海に落ちたと・・・。

 

グランとビィ…そして話しているディアンサを除く一同の顔が真っ青に変わる。

「そ、それじゃ…コブラって男は私達が戦ってるのを見て、飛び出して…」

イオの頭の中ではコブラが命をなげうって自分達を助けたと思ったのだろう。

ラカム達も目を伏せる。

 

 

だが……。

「あ、ですが コブラさんなら多分大丈夫かと‥‥‥」

「コブラは大丈夫だとオイラも思うぜ?」

ディアンサとビィに賛同するようにグランも力強く頷く。

 

グランとビィは知っている。ザンクティンゼルで記憶が無かったコブラがやってきたことを。

ディアンサも知っていた。

彼女は艇の中やバルツ公国で買い物中にコブラの話しが聞きたいとせがんでいたのだ。

コブラは、最初は断っていたが、ディアンサに根気負けして渋々ながら昔話や相棒のことを話していた。その話しの中にはこのような出来事もあったのだ。

 

 

 

「オイオイ、そいつは流石に無理だ、そんな高い場所から海に落ちたら――――」

彼らの言葉を否定しようとしたラカムだが、突然咥えていた煙草を落とす。

その顔は驚愕で目を見開きながら海を見つめている。

 

一同もラカムにつられ海に視線を向け、オイゲンやイオ、カタリナが驚いた顔をしている中、グランとディアンサは海から現れた男に笑顔を向ける。

 

 

「へへッ、どうした 一同揃って幽霊を見たような顔してぇ?」

 

コブラは体に昆布を巻き付けて海岸から姿を現し、咥えていた葉巻をしまいグラン達に向かって歩いてくる。その歩き姿は400mの高さから落ちてきた様には見えない。

 

「コブラさん!怪我は!?」

大丈夫だと言っていたディアンサだったが、それでも不安だったらしい。現れたコブラに向かってディアンサが駆け寄っていく。

「無いねぇ、この通りピンピンしてるぜ」

そう言ってコブラは新しい葉巻を取り出し、火をつけた。

 

オイゲン達は苦笑いを浮かべつつ、ディアンサと話しながらこちらに向かってくる男を出迎えたのだった。

 

 

 

カリオストロを除く全員が集合したところで、海から先ほど、コブラのサイコガンによって倒されたはずのリヴァイアサンが姿を現す。

しかし、すでに正気を取り戻しているようで、敵意は感じられない。

「――ごめん、痛かったよね? でも大丈夫だよ」

リヴァイアサンはルリアに視線を向ける。次第にリヴァイアサンの体が粒子のように消え、ルリアの体に吸い込まれていく。

「悪いがその力……こちらにも渡してもらうぞ」

「黒騎士!?なぜ貴様がここに!?」

カタリナは突如姿を現した黒騎士に向かって剣を構える。彼女に続くように各々が自分の武器を構える。

 

ディアンサはコブラの後ろに隠れるが、そのコブラは武器を構えず。腕を頭の後ろに組んでいる。

 

「言ったろう?我々には役割がある、と…さぁ、人形。お前もその力を食らえ」

「ん‥‥‥いただき、ます…」

ルリアに流れ込んでいこうとしていた粒子の一部が黒騎士に人形と呼ばれていた少女に吸い取られていった。

「な‥‥‥どういうことなんだよ!?その子はルリアと同じなのか!?」

グラン達は、少女がルリアと同様にリヴァイアサンの力を吸収したことに驚く。

 

その少女が何者かイオが訪ねるが、黒騎士は語らず。少女を連れてグラン達がいる場所から去っていく…だが、ふと足を止め振り向いた。

 

「おい、そこの赤い服の男」

「なんだい、俺か?」

ディアンサがコブラの背後で体を強張らせる。しかし黒騎士に視線を向けられてもコブラは平然と葉巻を吸っている。

「……貴様が持つその左手の銃はなんだ?」

コブラは左手の義手を少し外しながら答える。

「これか? アクセサリーさ」

 

コブラがまともに取り合わないと判断したのか、黒騎士は一言も発さずグラン達に背を向けその場から立ち去っていった。

 

 

 

 

 

その後アウギュステ列島から撤退していく帝国軍の戦艦を一同は見送った。

帝国軍がこの島から撤退したことによりアウギュステ列島は平和が戻る。

 

黒騎士を追いかけることも案には上がったのだが、多数の戦艦に対しグランサイファーだけでは不可能だと判断。そして合流していないカリオストロが心配というルリアの意見があったため島が歓喜で盛り上げる中、グラン達はグランサイファーに戻ってきた。

 

一同がグランサイファーに戻り、グランとコブラそしてディアンサが船内に入ると既にカリオストロは研究施設から帰ってきており、施設から持ってきたらしい書類に目を通していた。

 

グランが帰ってきたことに気が付き、カリオストロが顔を上げる。

「あぁ~団長さんお帰り☆無事リヴァイアサンの怒りは鎮められたらしいね☆」

グランが頷いて返事をかけそうとするが、そこに割り込む声がある。

 

「へへッ、久しいな嬢ちゃん元気だったか」

「コブラか……テメェもう帰ってきたのかよ」

この早変わりを初めて見たディアンサは何ともいえない表情をしていた。

 

「ディアンサ、コイツが話していたカリオストロだ」

そう言ってコブラはディアンサをカリオストロに紹介するように正面に立たす。

「は、初めましてカリオストロさん……私ディアンサって言います! よろしくお願いします」

「始めまして☆ 私はね、世界一可愛い美少―――いや待て、なんだそのフリフリの服装は」

挨拶していたカリオストロが手にもっていた書類を落とし、興味深そうにディアンサの服装を凝視している。

 

椅子から立ち上がりディアンサに向かって歩いてくる。近づいたカリオストロはディアンサの周りをグルグル歩き、服を引っ張り……スカートの中を見ようとめくろうとして……。

 

小さい悲鳴を上げたディアンサを守るように、コブラとグランは二人の間に割って入ったのだった。

 

 

 

 

 

 

「それで、カリオストロ……何か分かったの?」

カリオストロの暴走を止めて暫くした後。グランがカリオストロに声をかける。

「ん……そうだな、分かったことと言えば、帝国と錬金術師の一部が結託して何かをやろうとしているって、ことぐらいだな」

カリオストロは分かったことを簡単に説明し始める。

どうやら調べた書類の中には重要な書類はほとんど残っておらず、詳しいことは分からなかったようだ。唯一大きな手掛かりといえば一つの研究所の場所ぐらいだと。

「なるほど、だったら近いうちにその研究所に向かおう」

「いいのかよ?オレ様なら別に一人で向かってもいいんだぜ?」

グランの提案にあまりカリオストロは乗り気でないようだ。グランは、今は全く今後の予定がないので向かうなら今しかないと伝え……。

元々団員には、このアウギュステ列島近くで体を休めて貰い、余裕あったら依頼をこなして貰おうと考えていることを伝える。

 

そして最後に一人より二人のほうが危険は少ないと……。グランの粘り強い説得によりカロストロはグランと一緒に向かうことを決めたようだ。

「そうか……ならさっさとこの研究所を壊してくるとするか」

カロストロは研究所の所在が書いてある書類を手に持ち呟いた。

「うん……手伝うよ」

 

二人の会話を見守るコブラとディアンサ。

「へへッ、分かったかディアンサ……あれがグラン……世界で稀にみるお人よしさ」

「ははは……私には出来そうにないです」

乾いた笑い声を上げるディアンサだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、グランサイファーの一室に団員全員が集まり、ディアンサとオイゲンの歓迎会が行われることになり、それぞれが必要なものを買い物にいくこととなった。

カタリナやルリア……が買い出しに出かけている間に、オイゲンやラカムそしてコブラによる歓迎会に備えた酒飲みという訳が分からない飲み会が始まったりと、団を結成してから初めて和やかな時間が流れていく。

 

 

 

 

机に溢れんばかり乗っかる料理、大量の飲み物にお酒の数々。そして……既に酔いつぶれ机に頭を投げているラカム。

準備が出来、歓迎会の音頭を取るグランがカリオストロにも話したように、暫く休みにしたいという意向を団員に伝えた。

グランは既に3つの島を休みなく救っており、ここまで帝国軍や魔物との連戦続きだったから皆に休んでほしいと。

グランの意見は団員一名(寝ているため)を除く全員に受け入れられ、一週間ほどの休暇となった。

「それじゃあ!オイゲンさんとディアンサの加入を祝して乾杯!!!」

「「「「「乾杯!!!! 」」」」」

 

 

 

 

歓迎会は明るいムードで進められる。

イオとディアンサそしてルリアが食事をしながら会話をして親睦を深める。

酔っぱらったコブラとオイゲンが暴走し、外で上半身裸になり相撲を始め、それを見て呆れるカリオストロやカタリナなど皆それぞれが歓迎会を楽しんでいた。

 

歓迎会の終わりでカリオストロとグランが研究所に向かう事を説明したところ、団員たちが皆手伝うと言い出し、それでは休みにならないとグランが宥めた結果、ルリアとビィだけが一緒に行くことが決まった所で、歓迎会は終了した。

 

 

 

朝になり、グラン達がグランサイファーで飛び立っていったのを一同は発着場で見送った。

 

アウギュステに残ってメンバーは軽く挨拶を済ませ、各々が別行動を開始する。

 

カタリナとイオは自己鍛錬に励むようで、浜辺に向かって歩いていった。

オイゲンは軽い依頼をこなしながら帝国軍の動向を探るようだ。

 

 

 

 

残るコブラとディアンサはアウギュステ列島で一番大きな街で買い物をしていた。

街の機械屋に入りコブラは真剣な様子で何かの機械部品を見つめている。

「コブラさん その部品はやっぱり」

コブラは部品から目を離さず、ディアンサの質問に答える。

「ああ、以前話したタートル号の部品の代用品になるか見てるんだ」

 

ディアンサは以前にもバルツ公国で似たような光景を見ている。

 

コブラが乗っていた船は事故で壊れたと思われたが、コブラが記憶を無くしている間、コブラの相棒、アーマロイドレディの手によってその大半が修理されていたという。

ザンクティンゼルに一度戻ったコブラは元気にしているレディと修理されているタートル号を見て大層驚いたらしい。

 

お互いの無事を確認し喜ぶ二人だったが、レディによるとタートル号は元々頑丈でそのほとんどが修理できたらしいのだが、タートル号の核ともいえるエンジンは修理出来ず未だに動かせないようなのだ。

そして何より、ここが何処だか分からないようで宇宙地図やレーダーが一切反応を見せないらしい。

そこで、コブラはレディにタートル号を任せ、グランの冒険を手伝いながら、エンジンの代わりとなりそうなものを探しているらしい。

 

 

「ヘヘッ、どうやらここらの部品じゃ無理そうだ」

部品を熱心に見ていたコブラはそう言って、ディアンサを連れて店を出た。

 

街を歩くコブラとディアンサ。彼女の表情はいつもよりも明るく楽しそうに見える。

 

だが、楽しい時間はすぐに過ぎ去っていく。

 

「コブラさん、そろそろシェロさんとの集合時間ですよ」

「そうか、仕方ねぇ行くとするか」

ディアンサの声にコブラがめんどくさそうに答える。

 

昨日の歓迎会の終わった直後、シェロカルテが現れコブラに依頼をしたいとグランサイファーに来たのだ。詳しい事は明日話すと言って集合場所を言い渡されたのだった。

 

 

コブラとディアンサが集合場所の喫茶店に入ると、すでにシェロカルテが待っていて、こちらに向かって手を振っていた。

 

「コブラさ~んそれにディアンサさんもこちらです~」

2人はシェロカルテが座っている4人掛けの席に腰を下ろした。

 

 

軽い挨拶をすませシェロカルテは依頼の話を話始める。

依頼の内容はこの近くの島に大量の魔物が住み着いてしまい村人が困っているので助けてほしいという内容だった。

 

依頼を聞き終えたコブラが口を開く。

「それで、なんでその依頼を俺にするんだ?」

「それがですね~この依頼をして来た方が是非ともコブラさんにお願いしたいらしいんです~。ああ、依頼主は信用できる方なので心配はありません~」

ヒュー!!

「強烈なアプローチしてくれるじゃねーか、その依頼主は女性かい?」

机に乗り出し前のめりになるコブラ。その隣でディアンサは目を細めている。

「いえ~残念ながら男性です~」

シェロカルテの言葉を聞き、途端にがっくりと崩れ落ち背もたれに寄りかかり、だら~んとするコブラ。

 

「そうですか~でしたら仕方ありませんね~この依頼は元々とある女性の方にお願いしていたのでコブラさんはその方と協力して依頼をこなしていただこうと思っていたんですが―――」

 

「任せな、俺は魔物を倒すのが得意なんだ」

「もう~コブラさん!!」

女性と聞いてやる気を出すコブラに抗議するディアンサ。

 

 

「ありがとうございます~でしたら、すぐに艇を準備するので向かってください」

そこでシェロカルテは一度区切りディアンサに目を向け…。

「ああ、ディアンサさんも一緒で構いませんよ~」

「え、私も!?」

「はい~」

 

 

 

 

 

 

少し躊躇していたディアンサだったが、一度コブラに目を向けた後、力強く頷いたのだった。

 

 

 

 

 

(アウギュウステ列島編 終了)

 

俺とディアンサは急遽とある島に向かい依頼をこなすことになった……だが待っても待って協力者が来やしねぇ。

やっと姿を現した人物はまたまた俺の範囲外のクラリスと言う名前の小女だった。

しかもコイツが超がつくほどの元気娘、それに自分のことを美少女って何処かの誰かと似たことを言うわけよ。

無事に依頼を終わらせたんだが、突如誘拐されるクラリス。

助けに向かった俺たちは帝国軍と錬金術師が何をやろうとしている事を知ることになった。

ふざけんな!奴らの卑劣なさは許しちゃいられねぇ

次回、『アストレイ・アルケミスト』でまた会おう

 

 

 

 




感想、お気にいりしてくださった方ありがとうございます。

また誤字脱字の訂正をしてくださった方、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。
なぜか、突然読んでくださる方が増え驚いております。




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アストレイ・アルケミスト
ふざけていると味噌付けて食っちまうぞ


集合場所の喫茶店に辿り着いたコブラとディアンサ。

店内に客は少なく、カウンターに座り店主だと思われるドラフの男と話している金髪の男と、とにかく元気で、独特の話し方をして盛り上がっているエルーンの三人組だった。

 

入ってきたコブラ達に店主が声をかける。

「いらっしゃい・・・2人か、好きな席に座りな」

「ああ、そうさせてもらうぜ」

コブラが返事をしている間に、ディアンサは店内を見渡し入り口に近い4人がけの席を指さした。

「コブラさん、あそこにしましょう、協力者さんも気がつきやすいと思います」

「そうだな」

ディアンサの提案に賛成し、コブラ達は席に向かい腰を下ろす。

 

 

協力者との集合時間まではまだ余裕がある。

店主に飲み物を頼み、軽い会話をしながら時間を潰すコブラとディアンサ。

ゴブラの冒険の話しをしてほしいと、せがむディアンサ・・・だが、コブラは話す気が無いのか腕を首の後ろに組んで背もたれによりかかっている。

 

 

すると、聞き流せない3人組の男達の話し声が聞こえてくる。

 

「それよか、聞いたかよ、この近くにアウギュウステ列島ってあんじゃんよ?」

「ああ、それがどうしたし」

「オレ達がいた島みたいに帝国軍が島の星晶獣を暴走させたらしいんよ」

話しを聞いていた男二人が驚く顔をする。

 

「!!ッやべぇーじゃんソォレ~」

「だろぉ?」

話しをふった3人組の一人が驚く2人を他所に話しを続ける。

「だけど、なんか突如空から落ちてきた赤い服の男が放った攻撃で、暴れ回る星晶獣を一発で倒して怒りを沈めたって噂があんのよぉ」

 

「「マジで?!」」

「マジも大マジ・・・・・・見た人が大勢いるわけ、世の中にはヤベぇ奴もいんだな~」

「「だなぁ~」」

 

その時、ふと男の一人がディアンサ達のいる方に視線を向けて固まった。

「・・・・ってオイ待てよ、あの可愛い子と入ってきた男見ろよ・・・・・・服装真っ赤なんだが?」

「「「・・・・・・・」」」

 

 

 

ディアンサの目にはこちらを向いて固まっている3人組が映る。

しかし―――。

「「「ないないないない」」」

 

「なんか~その男の左手は銃なんだとヨォ~・・・・・・」

そう言って話題を振った男はコブラを左手を見つめ呟いた後、視線を元に戻す。つられる様に他の2人も視線を向けるのを辞めた。

彼らの話題の話しを続く。

 

「でぇ~話しは戻んだけど、その島で帝国軍と戦っている中に、キャタリナさんがいたらしいんよ!」

 

 

 

 

 

 

一連の話しを聞いていたディアンサはスッとコブラに視線を戻す。

「コブラさん・・・」

「ヘヘッ、また人気者になっちまうなこりゃ、サインの練習でもしておくか」

既に3人組の男達の内容変わっており、キャタリナさんというワードが何度も飛び交っていた。

 

 

 

 

喫茶店には緩やかな時間が流れていく・・・・・・。

3人組の男達は依然盛り上がっている。一方、金髪の男は食事を済ませたのか、今はパフェを口に放り込んでいる。それを遠くから羨ましそうに眺めているディアンサ。

コブラは葉巻を咥え暇そうに肩肘をついて怠そうにしていた。ディアンサのことを配慮したのか火は付いていない。

 

「来ませんね、協力者さん」

「そうだな~」

間延びした返答を返すコブラ。約束の時間はとっくの昔に過ぎている。

 

その後20分ほどした後・・・。

ディアンサが我慢出来ずパフェを注文し、店主が持って来たパフェを嬉しそうにほおばっている時、喫茶店の出入り口の扉が開かれる。

 

コブラは怠そうに扉を開け、現れた人物に目を向ける。

 

「ここが集合場所でいいんだよね?!うん、あってるあってる、赤い服の男・・・・・・あっ!いた!!」

コブラの姿を見つけ駆け寄ってくる。

見た目は17歳程度の赤いマントにミニスカート、髪をポニーテールにしていて・・・そして何より兎のような髪留めが印象的な少女だった。

 

姿を一通り確認したコブラは顔を手で覆った。

「またか・・・・・・少女は美女とは呼ばないぜ、シェロさんよ・・・」

 

少女がコブラ達の前で足を止める。

「遅れてごめんね!道に迷っちゃてさ~貴方・・貴方達が依頼を一緒にやってくれる人達かな?」

少女はコブラに近づき声をかけるが対面の席に座るディアンサに気がついて言葉を言い直した。

「ああ、そうだ俺が協力者のコブラだ・・・そしてこっちがディアンサだ、よろしくな」

コブラは少女に質問に笑顔で応える。そこに一瞬見せた残念そうな顔は見えない。

 

「あ、あの・・・・・・お名前を聞いてもいいですか?」

「ああって! ごめんね! うちまだ名乗ってなかったね!・・・・美少女錬金術師のクラリスだよ☆よろしくねっ! いぇいっ☆」

 

ポカンとするコブラとディアンサ、その表情を見てクラリスは慌てはじめる。

「え、え・・・・うち何か間違えた?」

「いや、知り合いに似たような挨拶をする奴がいただけさ、気にするな」

コブラはディアンサがパフェを食べ終えているのを確認し、席から立ち上がると店主にお金を払い喫茶店を出ようと歩き始める。ディアンサとクラリスがコブラに続くように歩き出す。

「コブラさん、・・・お金――」

ディアンサが財布を取り出そうとバックに手を入れるが、コブラがそれを手で止める。

「いいってことよ、レディにお金を払わすなんてダサくて俺には出来ねぇ」

 

「ええ!!いいなぁ~ねぇ、おじさん依頼が終わったら私にも奢ってよ!」

「俺は、おじさんじゃねぇ・・・・・いくとするか」

扉に手をかけ一度立ち止まり、後ろを振り返る。コブラの瞳はディアンサ達ではなくカウンター席に向けられていた。

何事かとディアンサとクラリスが振り向きコブラが見ていた方に視線を向けると、出て行こうとするこちらに向かって金髪の男と3人組の男・・・そして店主が笑顔で手をふっていた。

 

 

ディアンサが軽く頭を下げ、視線を元に戻す。

すると・・・コブラは既に店を出ていて、ディアンサ達は慌ててコブラの背中を追いかけたのだった。

 

 

 

 

結果から言えば、魔物退治はあっという間に終わった――。

 

 

 

 

山を登り始めたコブラ達は魔物と遭遇。

ディアンサは祭司から貰った杖を使いコブラとクラリスを援護している。

 

援護を貰っているはずのコブラに変化は見て取れない。

コブラはサイコガンを使わず、愛銃であるパイソン77マグナムを使って魔物を倒していく。

 

コブラはかなりの数の魔物を倒しているのだが・・・・

 

そんなコブラよりも多く魔物を倒すクラリスがいる。

「それ☆!」

地形ごと魔物を爆破していくクラリス。

あっという間に周囲からは、魔物の気配が消え去っていく・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぃよしっ☆これで粗方片付いたかな?」

「こいつは驚いた・・・・・・」

 

 

流石のコブラも目の前の光景には驚き、咥えていた葉巻を落としていた。

コブラ達が立っていた場所は更地・・・・既に山ではなくなっていた。

「いっやぁ~なんか今日のうち、妙に力が湧いてくるっていうか・・・・これがディアンサちゃんの力なんだ!!凄いね」

 

 

更地化した原因が自分にもあると発覚したディアンサは酷く落ち込む。

「こ、これ依頼主に怒られたりしません・・・よね・・・」

「大丈夫!依頼主さんも了承済みだよっ!どんな人かは知らないけど・・・なんかね、とりあえず、全力でやってくれればいいみたいだから」

 

生き残りの魔物を発見し、走っていくクラリスをコブラとディアンサは見送った。

 

 

 

 

 

 

 

依頼を終えた、コブラ達は集合場所だった喫茶店に戻る。店内には金髪の男は既にいなくなっていたが、3人組はいまだに元気に騒いでいた。

 

魔物を掃討したコブラ達は祝杯をあげる。

コブラのおごりにより、並べられる料理の数々を美味しそうに食べるクラリス。

「やっぱりさ☆こういうのも何かの縁だと思うんだよね。それでウチ、一緒に依頼をこなした人とは、毎回お茶するんだよね・・・今回は御馳走だけど!!」

クラリスは自分の家が引きこもりだったから、いろんな話しを聞くのが好きだと話す。

ディアンサはクラリスの話に熱心に耳を傾けている。

そして今度はディアンサが自分の生まれた島の伝説を話し、クラリスも楽しそうに聞いている。

 

 

 

 

次第に打ち解けていくディアンサとクラリス・・・そんな彼女たちをコブラは酒を飲みながら静かに見守っていた。

 

 

 

 

 

 

そうして、辺りはいつのまにか日は沈み、夜になり・・・・。

 

 

「また、会えるといいね☆ディアンサちゃん!」

「はい!クラリスさんもお元気で」

喫茶店の入り口で再会の約束を交わし、コブラ達はクラリスと別れ、今日泊まる宿に向かって歩きだしたのだった。

 

 

 

 

 

 

(アストレイ・アルケミスト)

 

 

 

 

既に太陽が沈み不気味なほど静かだった。すでに0時を回っており街は暗闇と静寂に包まれている。

その中を必死に走る足音が響く。そんな足音の主を追うように無数の足音が続く。

 

「追え!必ず捉えるんだ!!!」

無数の足音の正体は帝国兵士達。彼らは大人数でとある少女を追っていた。

 

 

(なんで・・・ウチを追いかけてくるわけ、意味わかんないし!)

 

その少女とは、さきほどコブラ達と分かれたクラリスである。

クラリスは既に走り続けていた影響で体力をかなり消費しており、肩で刻むように息をしている。

 

必死に走る。しかし、どこに逃げても帝国兵士が待ち伏せしており、段々とクラリスが逃げられる場所が減っていた。

 

 

このような状況になった経緯は。

クラリスはコブラ達と分かれた後、帝国軍の兵士に背後から声をかけられた。

最初なぜ声をかけられたか分からなかったクラリスだったが、普通に受け答えをしようと振り返った。

その時、帝国の兵士の周りにいた人物達を視界に納めた途端、クラリスの直感が告げていた。

――このままこの場所にいたら危険だと――。

 

その直後、クラリスは全力で帝国兵士と錬金術師から逃げるように走り出していた。

 

 

 

そして今現在、追いかけて来ている兵だけで六名いる帝国の兵士に追われていた。恐らくクラリスを追いかけている人物は錬金術師も含めれば20人はくだらないだろう。

 

クラリスは逃げながら必死に考えていた。このままでは近いうちに捕まるという確信があった。

 

 

 

息を整えるため、クラリスは全速力で走り追いかけてくる兵士との差を広げると、通路を曲がり路地の物陰に身を隠した。

「近くにいるはずだ、必ず見つけ出せ!」

 

クラリスを追っていた帝国兵が過ぎ去っていく。それを見送りクラリスは大きくため息をついた。

 

(・・ウチなんも悪い事してないよ・・・・・・ご先祖様探してないけどさぁ)

 

 

息を落ち着かせ、クラリスが立ち上がろうとした時、こちらに迫る足音に気がつく。クラリスは立ち上がり狭い路地に向かって走り出す。

 

「こっちだ!いたぞ!」

帝国兵が声を上げクラリスに迫る。

狭い路地を走り障害物となりそうなものを倒し、再び前を向いて走りだそうとした、クラリスが突然足を止める。

 

クラリスが目を向けた先・・・路地は行き止まり、壁は高すぎて上れそうにない。クラリスに逃げ場はなかった。

 

 

 

 

「やっと追いついたぞ、覚悟しろ!」

妨害工作も虚しく。帝国の兵士はクラリスに追いついた。帝国の兵士に続くように錬金術師も現れる。

 

「や、やだよ!!ウチは付いてかないからね!!」

壁に寄りかかり、大声で叫ぶクラリス。

 

帝国軍はクラリスに言葉に反応を見せず、ジリジリと迫ってくる。それは彼女の錬金術を警戒してのことだろう。

 

クラリスが錬金術を使えば、目の前の帝国の兵士たちは余裕で倒せるだろう。しかし加減が出来ない、そのため周りに住んでいる街の人達も巻き込んでしまうので使う事が出来ない。

 

帝国の兵士もクラリスがここでは錬金術を使う事が出来ないと知り、わざと町中でクラリスを追いかけていた。

 

 

 

 

 

帝国兵とクラリスの距離はもう殆どない。帝国兵の一人の手がクラリスを捕まえようとした所で・・・。

 

 

 

「その辺でやめとけ、嫌がってる子供相手に大人が何人も囲んだりして、見ちゃいられねぇ」

 

突如発せられた男の声に警戒する帝国兵達。一度クラリスから距離を取り辺りを見渡す。

帝国兵達の視線がある一点に集まる。

そこは誰もいなかった筈の壁の上、そこに一人の男が立っている。

 

 

「誰だ、お前は!!」

 

「俺か? 俺はジョーギリアン、ラグボール期待の新人さ」

 

いつの間にか姿を現したコブラは、壁から飛び降りクラリスの隣に着地する。

「コブラさん・・・」

「よお、さっきぶりだな、お転婆娘」

 

突然姿を現したコブラにクラリスは思考が追いついていない。

 

コブラは帝国の兵士と錬金術師と相対する。

 

不足の事態に驚いた帝国兵士達だったが、落ち着きを取り戻す。

「貴様、痛い目を見たく無かったら、その娘を渡せ」

「嫌だね」

 

帝国兵士の要求を簡単に突っぱねるコブラ。

 

「我々の邪魔をするのが、どういうことか分かっているのか?!!」

帝国兵士の威嚇にも動じる素振りはない。

 

「いいぜぇ、追われるのはいつものことさ」

 

 

この言葉が決めてとなり、帝国兵士は実力行使に移った。相手は一人こちらは六人、この男を殺した後に少女は捕まえればいいと考えて。

 

 

 

先頭の帝国の兵士がコブラに襲いかかる。

「おっと、危ない」

コブラに向かって突き立てた槍を交わし、槍の持ち手を掴む。

掴んだ槍を引き寄せ、バランスを崩しコブラに引き寄せられる帝国兵の顔面をヘルムの上からぶん殴り吹き飛ばす。

 

殴り飛ばされた兵士が一人の兵士を巻き込み地面に倒れ込む。その男は先ほどコブラにクラリスを引き渡すように言った、帝国兵士だった。

 

「イテぇ、手が赤くなっちまうぜ、こりゃ」

唖然とする帝国兵をよそに殴った右手を痛そうにしているコブラ。殴られた兵士のヘルムは大きく陥没しており起き上がる気配はない。

 

その光景を見て騒然としていた帝国兵士が剣を構え、錬金術師が術を発動させようとするが・・・・

 

「早撃ちは得意でね」

コブラが左手の義手を外し、放たれたサイコガンが直撃し、皆崩れ落ちた。

 

戦闘は一瞬のうちに終了した。コブラの正面にはうめき声を上げながら倒れている兵士と錬金術師。

 

 

 

その後、巻き添えを食らい地面に倒れていた帝国兵士が起き上がろうとしたタイミングでコブラがサイコガンを構える。

「言いな、このお転婆娘を狙ってる理由はなんだ?」

 

立ち上がろうとした兵士は辺りを見渡し、仲間が全員倒されていることに気がつき、怯え始める。

 

「し、知らない!オレ達はタダ、上からの命令で」

 

コブラは右手で怯える帝国兵を持ち上げ、サイコガンを兵士のヘルムに押し当てる。

 

体を持ち上げられ、向けられているサイコガンから逃れようとする帝国兵士だったがコブラの腕は鋼鉄のようにビクともしない。

 

「2度目はないぜ」

 

 

コブラの一言で観念した帝国兵が口を割り、クラリスを襲った理由、そして彼女の両親も今頃襲われているであろうと話し始めたのだった。

 

 

「それで、お前達の親玉の名前は?」

「し、知らない!!ホントに知らないんだ、俺は研究所に入ったことがないんだ」

 

 

聞きたいことは聞けたと判断したのか、持ち上げていた帝国兵を壁に投げ飛ばし気絶させ、クラリスのいる方に振り向く。

 

「だ、そうだ、お転婆嬢ちゃん、俺は一度宿に戻るが一緒に来るか?」

「う、うん!ウチもいく」

いまだに、どうしてここにコブラがいるのか、そして、あっという間に帝国兵を倒してしまった事態に理解が追いついていないが。

クラリスは一度うなずき、コブラの後に続き、彼らが泊まっている宿に向けて歩き出したのだった。

 

 

 

宿に戻ったコブラは、ディアンサが泊まる部屋のドアを叩き、しばらくして眠そうに目をこすりながら扉を開けて現れたディアンサにクラリスを任せ、コブラは自分の泊まる部屋に戻っていった。

 

 




感想、評価ありがとうございます。


そして誤字脱字の指摘してくださる方、本当にありがとうございます。


注意

次回の更新は遅くなると思います。


コブラの口調が難しくて辛い


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ダメだよぉ 君みたいなとびっきりな美人が凄んじゃぁ~

翌日、目を覚ましたディアンサは今も気持ちよさそうに寝ているクラリスを起こさないように部屋を抜けだし、ロビーに向かう。

 

昨日の夜中に突然起こされたと思えば、昨日分かれたはずのクラリスを任され、その後クラリスに何があったのか事情を聞いていたため、昨日は余り眠れていないのが現状である。

軽く欠伸をしながら階段を降りロビーに辿り着いたディアンサは目的とする人物を見つけた。

 

「コブラさん、おはようございます」

「ああ、おはようさん」

コブラはサンドイッチと珈琲の朝食を美味しそうに食べている。その光景にそれにつられたのか、ディアンサも同じものを注文しコブラが座る4人掛けの席に腰掛けた。

「それで、なんで突然クラリスさんを連れてきたんですか?」

「へへッ、夜中に少し散歩してたら拾った」

 

「・・・そうですか」

その後、コブラはディアンサに経緯を詳しく説明し、ディアンサは彼の話に相槌をうちながら聞いていた。

 

コブラが本当にその場に偶然一会わせたのかは分からないが、話している内容はディアンサが昨日クラリスに聞いていたものと合致していた。

さらにコブラは続ける。

「それで、帝国軍と結託している錬金術師の親玉はパラケルススって奴で、今はこの書類に書かれている奴の研究施設がある島で開祖を襲う予定らしい」

そう言って、コブラは話しながら何処から数枚の書類を取り出しディアンサに差し出す。

差し出された書類をとりあえず受け取り、ディアンサは疑問を口にする。

 

「これ・・・どうしたんですか?」

「ん? それかぁ・・・昨日の夜にサッと頂いてきたぜ」

コブラは当たり前にように話す。

 

昨日、ディアンサにクラリスを頼んだあと、この島に帝国の施設に単身乗り込み、バレる事無く、必用な書類を頂いてきたらしい。

突然聞かされたことの大きさに驚きながら、ディアンサは書類に目を通す。

しかし、とにかく字が小さく、賢者の石や開祖だの所々の単語は分かったのだが、書いている内容は全く理解出来ず。ディアンサはしばらく書類と睨めっこをしていたが、諦めて澄まし顔で書類をコブラに返したのだった。

 

「へへッ、まぁ簡単に言えば、グラン達が危ないってことさ」

書類を受け取ったコブラはそう言い終えると、話すことは終わったとばかりに、食事を再開した。

団長が危険だと言うが、コブラが落ち着いているため、ディアンサもコブラに続くように注文した自分のサンドイッチに手を付けたのだった。

 

 

 

「ごっめーん!!寝坊しちゃった」

それからしばらくして、クラリスがロビーに顔をだし、3人とも朝食をすませたのだった。

 

 

「コブラさん、昨日は本当にありがとうございました」

食事が終わったタイミングでクラリスが姿勢を正し、コブラに感謝の意を伝える。

「いいって、たまたま通りかかっただけだし、気にしすぎだ、お転婆嬢ちゃん・・・そんなことより今後の話しをしようぜ」

クラリスの礼を受け流すようにして今の現状を説明し始めた。

 

 

クラリスに一通りの事情を説明し、グランとカリオストロそして捕まっている可能性が高いクラリスの両親を助けるため、3人はパラケルススがいるであろう、とある島に向かって移動を開始した。

 

 

 

丁度その時、コブラが潜った研究施設では、とある部屋の設備が粉々に壊されている事態が発覚し、酷い騒ぎになっていたという。

 

 

 

 

 

 

島に向かう定期便の大型の騎空艇に乗り込んだ3人だったが、意外にも定期便の利用者は多く、コブラ達の他にもかなりの人数が乗り込んでいた。目的の島には五時間ほどかかるらしく3人は艇の甲板で作戦会議を行っていた

「それじゃあウチとディアンサちゃんでグランくん・・・団長くんの援護に向かえばいいのね?」

「ああ任せろ、捕まってたらオメェさんの親を俺が助けてくるぜ」

最初クラリスが親を助けに行くと言っていたのだが、コブラの説得によりグランの援護に行くことになった。

理由としては、クラリスの攻撃手段は潜入には向いておらず、人質含めて塵にしてしまう可能性があるからだ。

そして、クラリス一人ではグランだと分からない可能性があるため、ディアンサも同行することになった。

 

 

「それで、ディアンサちゃん・・・その団長さんはどんな姿なの?」

少し考えるディアンサ。

「そうですね・・・凄いお人好しですね」

そんな彼らの会話に割り込むようにコブラがクラリスに質問する。

「なぁ嬢ちゃん」

「ん?どしたのコブラさん」

クラリスがコブラの方に顔を向け頭に疑問符を浮かべながら首を傾げている。コブラは真面目な顔つきで口を開く。

「一つ質問なんだがよ・・・オメェさんはお母さんに似たのか?」

「・・・うん、どちらかと言えばそうだと思うよ」

「なるほどな~クソ、会うならあと20年早く会いたかったぜ」

 

 

そう言ってコブラは聞きたいことは終わったとばかりに葉巻を咥え、船内に向かって消えていった。

 

なんで、そんな事を聞いてきたのか分からないディアンサとクラリスだったが・・・・・・

 

 

「ぁあ!!! コブラさんダメだよ!!ウチのお母さんに手ぇ出さないでよぉ!!」

しばらくして大声を上げながらコブラを追いかけるようにクラリスが走っていった。

 

 

一人取り残されたディアンサは小さくため息をついたあと、鞄から何も書かれていない紙を取り出すとリナリア宛てに手紙を書き始めたのだった。

 

 

 

 

 

後ろから迫ってきたクラリスを物陰に隠れることで交わしたコブラは通路に戻る。

ヒューッ!

「ヘヘッ、やっぱお転婆嬢ちゃんは元気なほうがいいぜ」

 

 

手を頭の後ろで組みながら口笛をふき通路を歩くコブラ。これから島に付くまで何をしようか考えて、通路の曲がり角を曲がったところで何者かとぶつかってしまった。

「おおっと悪ぃ悪ぃ」

「こちらこそ、すまない」

コブラの声に返事をするように聞こえてきたのは男の声。

コブラは自分よりも上から聞こえた声に反応し顔を上げ、ぶつかった相手を見て驚く。

 

「こいつはデケぇ・・・おっと悪ぃ、つい言葉が出ちまった」

コブラが驚いたのは男の体格とその姿にだった。コブラの身長は190センチあるのだが、目の前の大男は2m優に超えていた。

そして何より、大男がもつ、布にまかれた何かが強烈な威圧感を漂わせていた。

「いや、気にするな・・・この体は特別製だからな、」

 

 

 

「ちょっと、バザラガ!!いきなり止まんないでよ!」

大男・・・バザラガの背後から女性の声が聞こえバザラガの背後から一人の女性が顔をのぞかせた。

その瞬間、コブラの顔がキリッとして真面目な顔になる。

ヒューッ!!

突如鳴り響く口笛。

 

「あー・・・どちらさまで?」

突然目の前に迫ったコブラに狼狽する女性。彼女の視線はバザラガに移る。バザラガは何も語らずコブラを見続けている。

 

 

「初めましてお嬢さん・・俺の名はコブラ、よろしく頼むぜ」

事態が飲み込めない女性をおいて、コブラは自己紹介を始める。

 

「は、はぁ・・・どうもご丁寧に、私の名前はゼタ、よろしく?・・・なのかしら」

女性・・・ゼタと握手をするコブラ。

「いやぁ~今日の俺は運がいい。君みたいな凄い美人と会えるなんて」

「え!?そ、そうアンタ良いこと言うじゃない、そういうアンタも中々いい男よ」

「ありがとぉ~」

100%お世辞の解答にも笑顔で応えるコブラ。

 

お互いの自己紹介が終わり、コブラが次の言葉を言おうと口を開いた時――。

「ゼタ、喋りすぎだ」

突如制止の声をかけるバザラガ。その声に反発するようにゼタが噛みつく。

「まだ、挨拶しかしてないんだけど!」

突如喧嘩を始める2人、このままでは艇内でそれぞれがもつ武器で戦闘になるのではないかという危険な雰囲気が漂い始める。

 

 

「ダメだよ~君みた「アンタは少し黙ってて」・・・へへッ 怖いなぁもう」

仲裁に入ろうとするコブラだが、門前払いを受ける。彼らの喧嘩はヒートアップしていくが、突如、バザラガがその場を離れるように歩いて行ったことで突然の終了となった。

必然的にその場に残ったのはゼタとコブラとなる。

 

「・・・・・・それで? 貴方・・・コブラだったかしら?私に何のよう」

苛ついているのが目に見えるゼタに対しコブラは―――。

「お茶でもどう?」

笑顔で言い切ったのだった。

 

 

 

 

船内には喫茶店などはなく、飲み物程度しか売っておらず、コブラはそれを2つ買って一つをゼタに差し出す。

ゼタはそれを受け取り、コブラと他愛のない話しをする。

 

 

 

「―――それで、私達はアウギュウステの暴走した星晶獣を倒したっていう人物を探しにわざわざ向かってる訳」

 

「へへッ、なるほどな・・・ってことはアンタ達とはこの艇でお別れか、残念だねぇ」

ゼタがイライラを解消するかのように目的を説明しそれに相槌をうつコブラ。

 

「それで、コブラは何のためにあの島に向かうの?」

「俺かい? へへッ、ちょいと知り合いの家族を助けにな」

コブラは事情をやんわりと説明する。その後グランの話しや、島が突然浮力を失って落ちるなどの噂話で盛り上がり、ゆっくり時間が流れていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして時間は過ぎていき、もうじき艇が到着する時刻が迫っていた。

 

「もう、着くみたいよ?それに・・ほら貴方のお仲間さんが迎えに来たわよ・・・なんでアイツが近くにいるのかは分からないけど」

コブラは辺りを見渡し誰かを探す素振りを見せているディアンサとその後ろを歩くバザラガの姿を確認する。

「そうみたいだな、それじゃ、また会おうぜお嬢さん」

 

 

 

 

ディアンサがコブラを見つけ駆け寄ってくる。

「コブラさん!探しましたよ」

「おぉ、ディアンサ、元気だったか」

ディアンサの後ろを歩いていたバザラガはコブラに何も言わず横を通り抜け、ゼタの元に歩いていく。

 

「おう、ところで、ディアンサあの大男とは知り合いか」

コブラは振り向きバザラガに視線を向けながらディアンサに質問を投げかける。

「ああ! バザラガさんですか?先ほど書いていた手紙が風で飛んでいきかけた所をとって頂いたんです。話してみたら優しい方でしたよ」

 

楽しそうに出来事を話すディアンサ。

「そうか、そうか知り合いが増えるのは、いいこっちゃ・・・ところでお転婆嬢ちゃん見てねぇか?」

「クラリスさんですか?・・・見てないですね」

 

 

その後、迷子になっているクラリスを発見し3人は甲板で話した通り各々の行動を開始しのだった。

 




今回短めでした。感想、お気に入りありがとうございます。やる気につながります!!

誤字脱字の訂正 本当に感謝です。






昨日ふと思ったんですけど・・・・・



凄腕ハッカー パダール王国王女 今でも十分楽しみなんですが、主人公がコブラだったら、どうなるのかなと思ってしまった自分がいます。






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サイコガンは曲げて撃てるんだよ

イベント本編入ります、蛇足が長すぎました。


島に降り立ち、ディアンサとクラリスが帝国兵とパラケルススに追い詰められていたグラン達を助太刀に入った事でピンチを脱出。賢者の石の影響で弱体しているカリオストロをグランが担ぎ、撤退している最中、男の姿はとある施設にあった。

 

 

 

葉巻を咥え、とある施設を遠巻きに見つめるコブラ。彼が調べた結果、すでにクラリスの両親は囚われているらしく。軟禁されている目の前の施設には多数の錬金術師と帝国兵の姿があった。

 

「おやまぁ~随分警戒が厳重だこと、パーティでもやるのかね」

コブラは冷静に施設を警備する兵士を確認するが、如何せん人数が多く正面突破は余り良い選択とは思えなかった。

 

「まぁ、忍び込むのは得意さ」

葉巻を吸い終えたコブラは施設に向かって歩き出した。

 

 

 

並大抵の人間では、近づく事すら出来ない警戒状態だが、コブラにとって潜入は本業に近い。

そして監視カメラや金属探知機などが無い場所に潜入することなど造作も無い。

 

兵士達の視線が逸れたタイミング。または話してる隙に、物陰から物陰に素早く移動。そして時には大胆に音を立てずに兵士の背後を走り抜ける。

コブラはあっという間に、誰にもバレることなく施設内部に潜入することに成功したのだった。

 

新しい葉巻に火をつけ、クラリスの両親を探すため、颯爽と施設内を歩くコブラ。

 

途中、遭遇する帝国兵や錬金術師を上手く躱し、施設の奥へと進んでいたコブラは遂に目的とする部屋を発見した。

 

 

「よっと、ここだな」

施設の最奥の部屋、扉は鋼鉄で出来ており見るからに無骨で頑丈、鍵穴が見受けられるが、コブラはここに来るまでに見つけられていない。

仕方無いと、一度手をはたき、扉の持てそうな箇所を握り。力を篭める。

「ッッッッッ!!」

すると、扉の周りの壁に亀裂が走りは始め、壁が少しづつ崩れ始めた。

そしてコブラは取り付けられた扉自体を強引に引き抜いた。同時に扉付近の壁が抱懐する。

 

「・・・・・・な、何事です!?」

中から狼狽する女性の声が聞こえ、コブラは両手で持っている扉を付近の壁に立てかけ。部屋の中に入っていった。

 

 

「さがっていろ、プロメティア!」

 

コブラが部屋に入ると、中にいたのは2人の男女。彼らはコブラの姿を見て警戒をあらわにする。

男が、女を庇うように前に出る。

「何者だ」

「オレか?ただの傭兵さ、名はジョー・ギリアン・・・・・・お転婆嬢ちゃん・・・アンタらの娘さんに助けるように言われて来ただけさ」

 

コブラの言葉に2人が反応する。

「く、クラリスは無事なのですか?何か怪我とかは・・・・・・」

「ああ、元気にしてると思うぜ、今は別行動中だがな」

 

少し安心した素振りを見せる2人。やがて女性が口を開く。

「そ、そうですか申し遅れました。私はクラリスの母でプロメティアと申します」

「父のハロルドだ、感謝する」

 

「へへッ、挨拶は後にしょうぜ、とりあえず今は脱出が優先だ」

コブラがそう言って自分が入ってきた報告に目を向ける。

プロメティアとハロルドがコブラの言葉に賛同し頷く。

 

「ついてきな、余り音を立てるなよ、バレちまったら面倒くせぇからな」

 

 

結局最後まで帝国兵士や錬金術師は気がつかれることなく、コブラは2人を施設から盗みだしていったのだった。

彼らが壁から強引に引き抜かれた扉、そしてプロメティアとハロルドがいなくなっていることに気がつくのはもうしばらく先の事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「みんな大丈夫?」

。当初ルリア、ビィそしてカリオストロと研究施設に向かっていたが、それがおびき出す為の罠だったらしく。パラケルスス達との戦闘でカリオストロが賢者の石によって弱体化。

 

グランがルリアとカリオストロを守りながら賢明に戦うも、カリオストロが弱体化した原因。賢者の石で錬成された、白い人型の塊・・・・・・ヘルメスの門と呼ばれる兵器には攻撃が効かず絶対絶命の危機だった。

 

そんなタイミングで最近グランの旅のメンバーに加わり、アウギュステにいるはずのディアンサが少女と共に現れ、窮地を救われ、この場所まで逃げてきたのだった。

 

「グラン、私は大丈夫です」

「オイラも問題無いぜ」

グランの問いに真っ先に応えてくるルリアとビィ。グランは一同を見渡す。

 

息を切らしている自分達を助けてくれたクラリスという少女。そして彼女に声をかけているディアンサ。

「す、すごいね、ディアンサちゃんは……ウチもう走れないよ」

「私は少し踊りの練習とかで体力が付いただけだよ」

クラリスと対照的にディアンサはあまり疲れている様には見えない。

 

そして最後の1人、グランが今抱きかかえているカリオストロがいる・・・全員無事に逃げられていることほっとするグラン。

「オイ、グランいいからもう降ろせ」

その声には恥ずかしさが混ざっており、頬も若干赤くなっている。

今のカリオストロの状態はお姫様だっこと呼ばれるものであり、その姿を見たルリアが羨ましがるなどの経緯もあった。

グランはゆっくりカリオストロを降ろす。

 

逃げながら途中、軽く自己紹介をするクラリスと、そんな彼女を警戒するカリオストロとの間で少しもめ事があったが、無事に解決していた。

 

グラン達はディアンサとクラリスが指定した場所に向かっている。そこに何があるのかは知らされていないが、ディアンサが行けば分かるとの事なので一同は歩みを進めている。

やがて、集合場所だと思われる広場が見えてくると、その場に立つ人影が見えてくる。

その光景を目にした途端、グランの脇をクラリスが走り抜けていった。

 

グラン達が近づき人影の正体が見えてくると、そこには、ディアンサが現れた時点で、いるであろうと予想していた人物がグランの到着を待っていた。

 

 

 

「お父様! お母様!」

「クラリス・・・・・・心配かけたようですね」

「すまないな、クラリス。お前に迷惑をかけてしまって・・・・・・」

「そ、そんなの気にしなくていいって!お父様達が無事なら・・・・・うち、それで十分だから」

プロメティアとハロルドの元に駆け寄ってきたクラリス。

その後、両親に何か言われたのか戸惑ったような表情を浮かべるクラリス。

 

家族の再会に水を指さないよう、少し下がったコブラはクラリスが走ってきた方向からグラン達の姿を確認し、葉巻を取り出した。

 

 

 

「おい、コブラじゃねーか!なんで、オメぇがここにいるんだよ」

「うっせーなトカゲ、少し黙ってろ。家族の感動的な再会シーンだぞ」

「オイラはトカゲじゃ「コブラありがとう」・・・おい、グラン・・・オイラまだ話してんだけど」

自分の抗議の声をかき消され少し落ち込むビィをおいて、話すコブラとグラン。

 

「いいってことよ……おお、ディアンサもお疲れさん」

「ははは、私は殆どなんもしていませんけどね……コブラさんはやっぱり凄いですね」

話すクラリス一家に目を向けディアンサが呟く。

 

「そんなことない ディアンサさの援護は助かったよ」

「そうですか……それなら頑張ってよかったです!」

少し落ち込む素振りを見せるディアンサにグランがフォローを入れる。

 

 

「いいか、ディアンサ、誰にも得意、不得意はあるんだ。完璧な人間なんてこの世にはいねぇよ。自分の出来ることをやればいいんだ」

「は、はい!!分かりました」

 

 

 

 

それから家族の再会を見守ること数分。

 

 

 

 

 

「さて、それじゃ、クラリスそろそろ始めるか」

「ううっ・・・・・・わかったよー」

カリオストロの声に嫌そうに反応するクラリス。

 

 

 

こうしてカリオストロによるクラリスの錬金術講座が始まろうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

集合場所から移動し、カリオストロがクラリスに講義をしている途中、他のメンバーは近くの建物に入り、現状の報告共有をしていた。

 

「錬金術の勉強・・・・・・ですか?それも開祖直々の?」

「はい。クラリスさんにみっちり、教え込むんだそうです。」

プロメティアの疑問にルリアが元気よく答えている。

 

 

どうやら、逃げている途中。クラリスがグランの旅の仲間に加わりたいと言ったようで、グランが頷こうとする直前、加わる条件としてカリオストロがこの講義を提案したようなのだ。

 

外では、カリオストロの怒号とクラリスの悲鳴が聞こえている。

グラン達との合流前、コブラがカリオストロのことを軽く話していたおかげで、プロメティアとハロルドは開祖カリオストロを警戒はしているが敵視してはいなかった。

 

彼らは一通り内容を話したところで、カリオストロ達の場所に向かったのだった。

 

 

 

 

講義が進みカリオストロに教えられたとおりに、錬成をしていくクラリス。しかし中々思うようにいかず、失敗が続いていた。

 

そんな彼女達を遠くから眺めるコブラとディアンサ。

「クラリスさんは大丈夫ですかね」

「分からん・・・お転婆嬢ちゃん次第だな」

 

彼らが見守る先で再び爆発が起きる。

「ちっ・・・・・・また、失敗か・・・・・」

「・・・・・・ごめん。やっぱり、うちには・・・・・・」

錬成の失敗続きで元気がなくなっているクラリス。カリオストロが励ましていた。少してカリオストロがひとり、何かを考え込み始める。

そこにコブラ達と同じようにグランとルリアが近づいていく。どうやら2人も落ち込むクラリスを励まそうとしているらしい。

グラン達のおかげで元気を取り戻すクラリス。もう一度錬成に取りかかろうとした時―――

 

 

 

 

コブラがディアンサに呟く。

「・・・ディアンサ。俺の後ろに隠れてろ」

「コブラさん一体何を・・・・・・」

ディアンサを背後に回し、コブラはホルスターからパイソン77マグナムを撃ち放つ。

 

コブラの放った銃弾は物陰にいる何かに確かに命中し鈍い音が響く。

しかし、コブラの銃弾が効かなかったのか怯んだ様子は無く物陰の何かから光線が放たれる。

「クソォ! オイ、嬢ちゃん!」

コブラの声に反応してクラリスとカリオストロが振り向くが時既に遅く、光線がクラリスに迫っていた。

「え・・・・・・」

「チッ、何ボーっとしてやがる!」

反応出来ず、棒立ちのクラリスを守るためその身を盾にするカリオストロ。

 

「ぐはっ・・・・・・」

攻撃を代わりに受けたカリオストロは力なく地面に倒れる。

 

「まさか、ニグレドの奇襲に気がつく者がいるとは思わなかった、だが残念なことにニグレドには錬金術しか効かないことを知らなかったようだな」

物陰からニグレドを連れてパラケルススが現れる。同時に多数の帝国兵士が後方から駆け寄ってきてコブラ達を包囲する。

 

 

 

 

「今日の俺は運が良い。さぁ、ニグレド・・・・・チャンスだ。開祖を吸収しろ。」

「させるかよ」

コブラがパイソンの銃口をパラケルススに向けて放つ。

だが、その攻撃は近くの帝国兵士が盾となりパラケルススに届かない。

「こんにゃろぉ~何処からともなくゴキブリのようにゾロゾロと・・・・・ディアンサ俺の側を離れるなよ」

「は、はい!!」

ディアンサを抱き寄せるコブラ。この間にもグラン達とコブラ達の間に兵士が入り込んできて彼らと段々と距離を離され孤立する二人。

 

コブラは斬りかかってくる兵士にパイソン77マグナムを放ち、ホルスターに戻すと左手の義手を外し、サイコガンを引き抜く、そして兵士達には銃口を向けず、真上に向かって撃ち放った。

 

コブラが最後に兵士と兵士との隙間から見えたのは吸収されていく、カリオストロの姿と絶望するクラリスの姿だった。

 

 

 

 

 

 

 

大袈裟な身振りで喜びを表すパラケルスス。そしてニグレドの体にちりばめられた結晶が少しずつ輝きを放ち始める。

やがて閃光が収まると、そこにはカリオストロの容姿を模したニグレドの姿があった。

「あはははっ! これで開祖の知識と技術は私の――――なにっ!!?」

 

突如パラケルススは背後を振り向き手から障壁を展開し、迫る光弾を防いだ。しかし―――。

「っ!!! なんだ、この攻撃の威力は!!」

 

迫る光弾を防いだパラケルススは息を切らしながら崩れるように、片膝をついた。

「あの赤い服の男・・・何者だ、まぁいい開祖は手に入れた。あの男は今、帝国兵と戦っているはずだ、こっちには来れまい」

パラケルススは体制を立て直し立ち上がった。

 

 

 

 

 

グラン達は帝国兵士達を捌きながら、各々に背中を預けていた。

 

「うちが・・・・・・うちがちゃんと出来なかったから・・・・・・」

「違うクラリス!!まだ何も終わって無い!!」

「そうです!クラリスさん、カリオストロさんも言ってました。まだ何か出来るはずです!」

「なに言ってんの!?そんなわけ・・・・・・」

「大丈夫、カリオストロはそんな簡単にくたばったりしない!」

グランの瞳がクラリスを見つめる。その目にはカリオストロの無事を確信しているように強く輝いていた。

「っ!!」

「私達はクラリスさんなら、なんとかできるって!・・そう信じていますから!」

ルリアの言葉に強く頷くグラン。

「もちろん、オイラも信じてるぜ」

 

グランとルリアが必死に声に反応するように、絶望しかけていたクラリスの瞳に灯りが点る。

グラン達に続くようにプロメティアとハロルドも声をかける。

貴方になら出来ると・・・・・それまでは私達、親が貴方を守ると。

 

 

 

 

 

一同は体制を立て直し、前にいるパラケルスス、そして何人もの帝国兵に向かって各々の武器を構える。

すると 突如、彼らの体を優しい力が包み込む。突然の状態に驚く一同。プロメティアとハロルド以外は全員この力が誰のものなのか知って居た。

グラン達が逃走している時、グラン達の心を支えてくれた力。

 

何も出来なかったと言っていた少女の人の精神力を底上げしてくれる優しい力。

この力こそが彼らが今も戦っていることの証明だった。

 

 

 

 

「そろそろ作戦会議は終わったか?」

余裕そうにグラン達を見据えているパラケルスス。その傍らにはカリオストロの姿を模したニグレドが圧倒的な威圧感を放っていた。

 

 

 




私は早くレディを出したい・・・だけど話しが進まない。

アストレイ・アルケミストは次回で終わる予定。


感想、お気に入りありがとうございます。
誤字脱字の指摘をしてくださる方本当に感謝です。


今のところ、クラリス以降で2、3人仲間を増やせたらいいなと思ってるんですが、何も考えていません。


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どうだ あてがはずれてがっかりしたか?

カリオストロの姿を模したニグレドと戦うグラン達。

 

しかし、手加減の一切ないカリオストロの圧倒的な攻撃力の前に一行は瞬く間に追い詰められていく。

 

錬金術の爆撃を剣で受け止めるグラン。しかし力を抑えきれず、引きずれられる様に後ろに下がる。

「やっぱり凄いな、カリオストロは・・・・・・いつもは全然力使って無かったんだ」

額に流れる汗を袖で拭いながらグランはニグレドを見つめる。

そんなグランの声にビィが賛同する。

「改めてカリオストロがとんでもねー奴だってのが、良くわかるな」

時間と共に賢者の石の黒化の能力によって体が重くなっていく一同。グランも戦闘直後ほどは体が動かなくなっていた。

 

「だけど、ここで負けるわけにはいきません! 今もコブラさんとディアンサさんが帝国兵士さんを抑えてくれています」

ルリアの言葉に強く頷き、再び二グレドへと向かっていくグラン。それをルリアがティアマトを呼び出し援護する。

 

最初、グラン達を取り込んでいた帝国兵士たちも、パラケルススの指示によりコブラのいる方向に向かっているため、今彼らの敵はニグレドとパラケルススのみ・・・勝てるタイミングは今しかない。

 

 

ニグレドの放つ攻撃を星晶獣ティアマトの発生させた風により僅かに反らし、その隙にグランがニグレドに向かって剣を振り下ろす。

攻撃は確かにニグレドに届き鈍い音が響くが、ニグレドにダメージを与えたようには見えない。

そんなグランの攻撃に追従するかのように、プロメティアとハロルドの錬金術が炸裂し、爆音と共に辺りは爆発に包まれる。

爆発から逃げるようにグランは再び大きく後退し、剣を構え直す。

 

 

ダメージを与えられたと確信していた一同だが、その期待は裏切られる。

爆風が消え、錬金術の攻撃を受けてもなお平然としているニグレドが姿を現す。

 

グランは苦笑いを浮かべ、額には汗が流れる。

 

 

 

彼らの耐えられる時間はもう殆ど残されていない。

 

グランが賢明に戦っている最中、彼の後方でクラリスは必死にカリオストロを助け出すための方法を模索していた。

 

 

 

 

そんなグラン達の戦いを見ているパラケルススは機嫌が良さそうだった。

「良いぞ、実に良い調子だ。有意義なデータを提供してくれ」

 

彼の表情には戦いへの慢心もグラン達への哀れみもない。そこには、ただひたすらに真理を追究使用とする科学者の顔がそこにはあった。

時は少し遡る――――――

 

 

「くそ、防ぎやがったぜ、あの男」

悔しそうに上に向けたサイコガンを降ろすコブラ。ふと、辺りが静かな事に気がつき、見渡すと自分とディアンサに襲いかかってきていた帝国兵士の動きが止まっていることに気がつく。

ヘルム越しでは見えないが、困惑しているのを感じとれる。

 

「あ、赤い服で、左手に銃をもつ男・・・・・・」

「ま、間違いない!!コイツがポート・ブリーズ群島での惨劇を起こした人物だ!!」

次第に恐怖に染まった、悲鳴に近い声が広がっていく。

 

 

 

 

 

 

「くっ、何をしている!!相手は二人だ!!数で押しつぶせ!!進め!進むんだ!」

帝国兵士の指揮官だと思われる人物の号令を受けて、多数の兵士が自分に渇をいれるように大声を出しながらコブラに向かって突撃してくる。

 

「おおっと!危ねぇ、ディアンサ」

右手で背後にいたディアンサの腰に手を回し抱き寄せる。彼女がいた場所を帝国兵士の放った銃弾が通過していく。

コブラは左手のサイコガンで銃を放った帝国兵士を含め、迫り来る帝国兵に向けて同時に六発の光弾を放つ。

その全てが直撃し、喰らった帝国兵士が地面に倒れ込む。

 

「ありがとうございますコブラさん・・・って・・・え、歌うんですか?それも今!?」

 

波のように次から次へと迫る兵士に向かってサイコガンを放っていたコブラだったが・・・。

 

「ええぃ、切りが無い!ディアンサ、ここで一曲、元気になる奴頼むぜ」

コブラはそう言ってディアンサを抱きかかえると、自分の義手をディアンサに渡す。

 

今のディアンサの体勢は、先ほどグランがカリオストロに行ったものと同じお姫様だっこされている状態で、抱きかかえている彼女のスカートは重力に従い垂れている。

 

「こ、コブラさん・・・あのスカートが・・・そ、それにこの体勢で歌うんですか?」

「ヘヘッ、誰も見ちゃいないさ、あの世に行く奴以外はね」

恥ずかしそうに、スカートの裾を手で伸ばそうとして、見えない様に隠そうとするディアンサを他所に、コブラは今も、帝国兵士の銃弾を躱し、左手のサイコガンで辺りの帝国兵士を葬っていく。

 

 

やがて、諦めたのか、ディアンサは顔を真っ赤にしたまま、祭司に貰った杖を使いリズムを奏で始める。

ディアンサが歌い始めた直後から、ディアンサの歌の力が優しくコブラを包み込む。

 

「へへッ、どうも不思議なもんだ、体の奥底から力が湧いてくるようだぜ」

 

 

彼の放つサイコガンが熱を帯びたかのように白色の光から赤い色に変化し、威力も目に見えて変化する。

 

その一撃は迫りくる帝国兵士を簡単に沈黙させ、帝国兵士達を次々と葬りさっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

サイコガンの光弾が飛び交わなくなった時、コブラ達の周りには倒れた帝国兵士の山が築かれていた。

残る帝国兵士は指令官だと思われる男ただ一人。彼はこの光景に呆然としており自体が把握出来ていないようだった。

 

そして、次の瞬間この男にも赤い光弾が直撃し、地面に崩れ落ちたのだった。

 

 

 

コブラが最後の一人を仕留め、ディアンサをゆっくりと降ろした時、先ほどからグラン達が戦っていると思われる場所で、起きていたクラリスだと思われる爆破音が止まっている事に気がつく。

 

「へへッこっちは片付いた事だし、グラン達の応援にいくとしますか」

「は、はい・・・そうですね」

コブラの傍らにいるディアンサの声は小さい。

「なんだよ、ディアンサ?元気ねぇじゃねーか」

コブラはディアンサの方に手を置こうと腕を伸ばすが、ディアンサに払いのけられてしまう。

「そ、そんなこと無いですよ。それよりも早く、団長さんの元に向かいましょう。かなり離れてしまったみたいですし・・・」

 

倒れる帝国兵士を踏まないように避けながら、グラン達がいる方に向かうディアンサの後を追うようにコブラは歩き出した。

 

 

 

 

 

コブラとディアンサがグラン達を遠くから目視できる程度に近づいた時、その戦場はコブラが最後に見た光景とは大きく異なっていた。

 

 

グランはルリアの前に立ち、今も彼女を庇おうとしているが、その立ち姿はボロボロで戦闘の激しさを物語っている。

 

 

そしてもう一つ疑問なのが、服装も普段とは異なっているが、ニグレドに吸収された筈のカリオストロがその場におり、クラリスと共に方を並べパラケルススをにらみつけていた。

さらに、パラケルススが操るニグレドの姿は何処にも見当たらない。

 

 

コブラとディアンサは目の前の光景に理解が追いつかず、仲良く揃って首を傾げた。その後

コブラとディアンサは見るからに圧倒的不利な状況でも嬉しそうに笑うパラケルススに視線を向けた後―――――――。

 

 

 

 

 

 

 

「随分と嬉しそうだな」

「くくくくっ・・・・・・ああ・・・・・・嬉しいとも。今日は俺の今までの人生の中で最良の日と言っても過言ではないだろうな」

パラケルススは一度口を閉じた後、声を張り上げる。

「なにせ、ここまで素晴らしいデータがとれたのだからな・・・・・・その上ニグレドを分解してくれたのだ。これ以上に嬉しいことなどあるか?」

 

「なんだと?」

パラケルスス言葉を聞き警戒するカリオストロ。

次の瞬間、どこからともなくニグレドの残骸が一箇所に収束し始める。

 

突然の変化に驚く一同をよそに、残骸は集まっていき新たな形を表す。

 

「え・・・・・・ど、どうして・・・・・・」

「どうしたんだよ、ルリア?」

驚愕するルリアにビィが心配そうに声をかける。

ルリアは自分でも分からないと言ったあと、ニグレドが収束した中から星晶獣の気配が現れたと告げのだった。

 

 

「ほう・・・・・・星晶獣の気配を感知できるのか。ああ、帝国で効いたことがあったが、お前がそうか。・・・だとすると、あの赤い服の男が戦艦を五隻潰した男だったか」

一人でに、納得した素振りを見せるパラケルスス。

彼は、ルリアの発言を肯定した後、姿を表そうとする星晶獣について語り始める。

この星晶獣は賢者の石の翠化によって再構成され、誕生したと。

 

 

「これこそが星の民の遺産と我らの技術の融合で生み出された最強にして成長する星晶獣・・・アルフェウスだ、さぁこれにどう抗うか見せてもらおうか・・・・・・」

 

「はっ、その程度で最強とは笑わせてくれるな」

「最強だろうとなんだろーと、全部纏めてドカーンって、するだけだっ!」

 

 

 

 

「いくぞ!!クラリス!!塵一つ残すんじゃねぇぞ!」

振り下ろされる。アルフェウスの攻撃を躱し、クラリスとカリオストロが二手に分かれ各々の攻撃手段を放つ。

 

カリオストロとクラリスの攻撃を受け大きく怯むアルフェウス、しかし倒しきることは出来ず、クラリスに向かって多数の魔法陣を形成し放たれる。

 

「や、やば!」

攻撃を放った直後で動けないクラリスに魔法陣の攻撃が迫るが、後ろから走ってきたグランが、クラリスを突き飛ばし、迫る攻撃を剣でたたき落とす。

「クラリス、カリオストロ!!援護するよ!」

 

満身創痍に見える、グランだが彼の目の輝きは失われていない。

 

「団長!!ありがとね!」

「団長さん☆無理はしないでね!」

クラリスが立ち上がり、再びカリオストロと息の合った攻撃を仕掛けていく。

 

 

 

 

彼女達の攻撃を受けながらも、今度はグランに向かって攻撃しようとするアルフェウスだったが、突如目の前に姿を表した。コロッサスの左ストレートが直撃し大きく吹き飛ばされる。

「私も援護します!頑張ってください皆さん!」

グラン達の後方でルリアが声を張り上げる。そんな彼女を守るようにプロメティアとハロルドが立ちふさがっている。

 

 

その後も確実にカリオストロとクラリスが攻撃を仕掛け、ダメージを与えていきアルフェウスに一切の行動をさせず、一方的に責め続ける。

 

しかし、突如アルフェウスが姿を消し、一定の距離が離れた場所に姿を現す。

そして拳を握りしめた途端、グラン達全員の足下に魔法陣が現れ、土で出来た大量の杭が出現し各々に襲いかかる。

 

「「「「っ!!」」」」

グランが剣で弾き、クラリスが存在崩壊で粉々にする。

「こんな攻撃でオレ様を倒せると思っているのかよ!」

カリオストロは何もない空間から2匹のウロボロスを出現させ、向かってくる杭を粉々に打ち砕く。

「皆さん!何か来ます!!」

ルリアの声に反応し、カリオストロが再びアルフェウスに目を向け、今の攻撃が囮だったことに気がつく。

 

アルフェウスの周りには、先ほどとは比べるのが、馬鹿らしくなるほどの魔法陣が展開されており、魔法陣を読み取るに自分の奥義と似た、強力な攻撃が来ることを感じ取る。

 

「クソ!!」

もし、仮に自分と同じ威力の攻撃だった場合、確実に何人か死ぬ。その確信があった。

急いで、自分の奥義を発動させようとしたカリオストロだったが、間に合わずアルフェウスの一撃が発動してしまう。

 

魔法陣が輝きだし、辺りの光が奪われたかのように世界が暗闇に包まれる―――――

 

しかし、その瞬間・・・暗闇の中、カリオストロの目の前を赤色の光弾が高速で駆け抜けていく。

 

 

すると突如、暗闇が晴れ、胴体のど真ん中に大きな風穴が開いているアルフェウスが視界に映る。

アルフェウスの攻撃がキャンセルされたことを理解したカリオストロは、直ぐさまクラリスに向かって叫ぶ。

 

「クラリス!塵一つ残すんじゃねぇぞ!」

「おっけー☆クラリスちゃんにお任せっててねっ☆」

 

 

「うちに壊せないものなんて無い! ジャガーノート・スフィア!」

クラリスの存在崩壊の一撃によって跡形も残らないほどに、粉々に砕け散るアルフェウス。

 

 

 

こうしてグラン達は、星晶獣アルフェウスを倒し完全に消滅させることに成功したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして時は流れ――――――

 

クラリスの両親達に事後処理を任せ、一同はラカムが待つグランサイファーの元へと戻ってきた。

 

黒幕のパラケルススには逃げられたが、団員2名を除くが、帰還できた事を喜ぶグラン。

 

新たに旅の仲間に加わった、カリオストロを「ししょー」とよぶクラリスをつれ、一同はカタリナ達が待つアウギュステ列島に向けて飛び立っていった。

 

 

 

 

 

 

 

再び、彼らを見送る形となった、コブラ。しかし今回は一人ではなく隣にはディアンサがいる。

「へへッ、それじゃオレ達も行くとしますか、ディアンサ」

「はい! レディさんの所にむかうんですよね?」

「ああ、これを届けに行かなくちゃな」

そう言ってコブラは左手のリストバンドの様な器械を操作する。

 

 

少しして、通信がつながったのか、女性の声が聞こえてくる。

 

ディアンサは不思議そうにコブラの左手の機器に顔を近づけていく。

「どうしたのコブラ? 突然連絡をよこして、エンジンの代わりは見つかった?」

「へへッ、なさそうだから仲間に作って貰ったぜ、今からそっちに二人で向かう」

「二人?ああ、貴方のとなりにいるお嬢さんと一緒ってことね?」

 

コブラのいじる器械を不思議そうに見つめていたディアンサは、自分の事を指摘され驚き、コブラの背後に隠れる。

 

「あぁ、そうだ、オレの旅の仲間さ」

「分かったわ、それじゃあ待ってるわ、コブラ・・・寄り道はしないでね」

 

 

「ああ、分かってるさ・・・レディ」

 

 

 

(アストレイ・アルケミスト終了)

 

 

レディと合流するために、俺とディアンサはまたまた、ザンクティンゼルに向かった。

ところが、向かう艇はどれも運行中止、何処にいっても帝国兵士が俺たちに襲いかかってきやがる。

なんとか隙をついてディアンサをザンクティンゼルに送ったんだが、おかげで俺は一日中追い回される日々よ

逃げている途中、野盗から逃げている赤髪の美人の女性と遭遇、たまらず俺は彼女を助け一緒に逃げることになったんだが

そんな俺達に救いの手をさしのべたのは、何処かであった金髪の男だった訳なんだが、タダとは言わず男は逃がす代わりにある条件を提示してきやがった。

次回「神境にて辿る後」で、また会おう!

 

 

 




アストレイ・アルケミスト編終了です。読んでくださったかたありがとうございます。

感想、お気に入りありがとうございます。

誤字脱字の訂正も本当に助かります。



液体窒素の浸かっても復活するって・・・どゆことよコブラさん


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神境にて辿る後
へッ いい夢をみろよ


次回予告を前話に追加しております。こちらを読んでいただく前に目を通していただけると幸いです。


今回導入につき短めです。


男は夕暮れの街中でリンゴを齧りながらのんびりと歩いている・・・・・・彼を追いかけるように歩く少女の姿はそこには無い。

 

彼に心引かれた女性の大半は、みなこの世界を去ってしまう。まるで男が死神であるかのように。

 

 

今、男の側を離れている少女、彼女は無事に相棒の元に辿り着けただろうか?

そんな事を考えながら街を歩く男。自分が帝国兵士や賞金稼ぎに追われているのを知っていながらも、男は堂々と町中を歩いていく。

 

 

 

 

 

 

色鮮やかの果物を売る出店が並び、男・・・コブラの歩く道は賑わい続けている。

出店が売り出す果物に目を惹かれ、手に持つリンゴにかじりつきながら視線を向けた直後、ドンっと何かが自分に当たり衝撃が駆け巡る。しかし、その衝撃はとても柔らかく、コブラの体にダメージは無い。

「あら、ごめんなさい」

聞こえて来たのは女性の声、コブラが視線を向けると、声の主は既にそこにはおらず、既にコブラを通り過ぎ、彼の後方に回っていた。

 

「おっと、コイツはすまねぇ・・・どうだいお詫びにディナーでも御馳走するぜ?」

コブラは振り向き、離れていく女性に声をかける。

 

女性の足が止まり、コブラに向かって振り向く。

目に付くのはまず彼女の綺麗で長い赤髪、そして次に目が行くのが、。この世界では過剰だと思うほどの露出の多さだろう。そして、綺麗な彼女の足をさらに際立たせる青いミニスカートだろう。

 

女性は、コブラの返答に驚いたようで、軽く笑った後・・・・・・

「ふふ、面白いわね貴方・・・だけど、ごめんなさいね。今私追われているのよ。また今度で構わない?」

「へへッ、もちろん」

 

「それじゃあ、また会った時はお願いね」

コブラの返答を聞き、一度笑みを浮かべた女性は人混みに紛れるように姿を消した。

 

視線を後方から元に戻し、どこからともなく葉巻を取り出し、それを咥え、火をつけたコブラに今度は前方から、男に声をかけられる。

「オイ、そこのアンチャン、赤髪の女とすれ違わなかったか?」

コブラに声をかけた人物は、明らかに、柄の悪そうな男達の一人で、今も辺りを見渡し、誰かを探していた。

「知らんね」

コブラは素っ気なく応えると葉巻を咥え、煙を吹き出した。

 

「使えねぇな、オイ、テメェーら!!あんな上玉滅多にお目にかかれねぇ、なぁにアイツは今、帝国兵士に目を付けられてこの島から出れやしねぇ、それに懸賞金もかけられてる。少しぐらい楽しんだって、怒られやしねぇよ」

コブラの返答を聞き、一度睨んだ後、男達はコブラの横を抜け、走り去っていった。

 

男に声をかけられた場所から一歩も動かず、道の真ん中で葉巻を吸い終えたコブラは先ほどまで歩いていた道を180度反転させ、男達が消えていった方向に向かって歩き始めたのだった。

 

 

 

 

 

コブラがグラン達と別れて何日かした後・・・・・・

コブラ達はザンクティンゼルに向かうため艇を探していたのだが、元々小さな島なため、定期便など出ているはずも無く、向かってくれる操舵士を探していた。

 

グラン達と別れた島から別の島に移動し探すこと一週間、高額だが、以前コブラ達をアウギュウステに送ってくれた操舵士を見つけ、約束を取り付けたのだが・・・

 

出発する当日突然、帝国軍がホテルに押し入りコブラを襲った・・・・・・しかし、コブラはまるで来るのが分かっていたのかのように、逆に入ってきた兵士たちを難なく制圧すると、ディアンサと共に約束を取り付けた操舵士がいる艇泊所に向かい、艇の乗り込んだディアンサに荷物を渡し、帝国兵士を艇泊所に近づけさせないよう殿となって、迫り来る帝国兵士を抑え込み無事艇を出発させたのが、3日前である。

 

 

 

 

 

 

 

 

コブラは未だに島を抜け出せずに、帝国兵士や賞金稼ぎを退けながら脱出方法を探していた。

何度目かのコブラを襲撃した帝国兵士から聞き出した話しによると、市民に聞き込みを行いコブラの居場所が分かったらしい。

それと同時になぜ、市民がコブラの居場所を話したかも判明する。

 

簡単に説明すると・・・・・・コブラには賞金が賭けられたらしい。

それもコブラに賭けられた額は10人で山分けしても一生遊んで暮らせる額なのだ。

 

しかし、コブラの手配書には似顔絵は無いそうなのだが・・・

背が高く、金髪で赤い服を着ており、左手に銃を隠していると

容疑は大量殺人と窃盗と指名手配書には書かれているらしい。

 

コブラはこの世界に来てから、まだ一度も盗みをしていないため、帝国軍が誇張したのだろう。

盗みに殺人・・・これでは、市民がコブラの居場所を伝えるのも頷ける。

コブラに帝国から賞金が賭けられたのは今まで、何人もの帝国兵士を葬っているため納得は出来るが、グラン達には賞金は賭けられていないらしい。

何か裏があると確信するコブラだったが、今それを確かめるすべは無い。

 

 

 

 

 

 

 

コブラが男達を追いかけ光が差し込まない路地に足を踏み入れた時、路地の奥から大きな音が響く。

 

コブラに焦る様子は無く、ゆっくり歩みを進めた、先に広がっていた光景は――――――

 

 

 

 

 

地面に倒れている先ほどコブラに声をかけた無数のならず者達と。先ほど会った時と全く同じで、服にシミ一つなく左手に楽器を持つ赤髪の女性の後ろ姿だった。

 

 

「おや、てっきり俺はあの楽器で、殴り倒すのかと思ったんだがね」

コブラの声に反応し女性が振り向く。

 

「あら、またお会いしたわね、ふふ、貴方ホントに面白い事言うわね。私のリラは殴るためのものじゃ無いわよ?」

「へへッ、よせやぃ、俺は褒められるとほっぺが赤くなるんだ」

 

女性は倒れるならず者の一人に近づきしゃがみこみ、立ち上がった後、コブラ向かって近づいてくる。

 

 

「アンタ一体帝国兵士様に何やったんだ?どうやら、帝国兵士だけじゃなく賞金までかけられてるみたいじゃねーか」

「別に、悪いことは何もしてないわ、私の演奏を聞いた帝国兵士さんが何度も私に声をかけてきて、別に好意をもたれるのは嫌いじゃないんだけど、襲われるのは困るのよ」

 

「それで、今みたいに対処したと?」

「ええ 私のリラで眠っていただいただけよ?そしたらいつのまにか指名手配されてて驚いちゃった」

女性はゆっくりと、もう一歩コブラに近づく。コブラはその場を動かない。

 

 

「ねぇ、高身長で赤い服を着た金髪の指名手配犯さん・・・この島を脱出するまで協力しませんか?」

「へへッ、美人レディの誘いとあらば、断るわけにはいかねぇな・・・・・・・だからその手にもつ武器を降ろしなよぉ~危ないったらありゃしない」

 

 

 

 

 

そう言ってコブラはニヤリと笑顔を浮かべ、目の前にいる女性がコブラのいる方に振り向いてからずっと後ろに回されている右手に目を向ける。

 

「あら、指名手配犯を警戒することはいけないかしら?・・・・・・わたしの名前はアンリエット、エティって呼んで?みんなからは、そう呼ばれてるの」

 

そう言ってエティの右手には、ならず者が持っていたブロードソードが握られていた。

 

(神境にて辿る後)

 

 

 

「それじゃあ、エティひとまず、この島から脱出するとしますか」

「ひとまずじゃないわ?私達の関係はこの島を脱出するまでよ」

「へへッ、こいつは手厳しい」

 

ひとまず協力体制を組んだ二人は、路地から離れ、道を歩いている。向かう先は決めておらず帝国兵士を避けながら町中を歩く。

運よくシェロカルテがいないだろうかと探す、コブラだったがどうやら彼女はこの島にはいないらしい。

 

日も沈み、夜になると街の賑わいも代わり始める。

出店は減る代わりにお酒を出す店が営業を開始し始めた。

 

今日、操舵士を探すのは難しいと判断した二人は、おたずねものでも泊まれそうな宿を探すため大通りから一つ外れた路地を歩く。

 

しかし、一行に信用出来そうな宿が発見できず、アンリエットは嫌がっているが、本気で野宿を覚悟し始めたコブラに声をかける男が現れる。

声をかけた男は以前ディアンサと共にクラリスを待った喫茶店にいた金髪の男。この男も偶然この島に足を運んでいたようなのだ。

 

 

男はコブラ達の事情を聞くと、条件つきで手を貸してくれるらしく。コブラ達はその条件を男に尋ねる。

 

「なぁに、そんなに無理難題を押しつける気はないから安心して、条件は簡単、極秘でとある島の調査にいって来てほしいんだ」

 

それが素なのか、それとも相手に警戒させない為なのか、金髪の男は信用出来なさそうなにやけ顔をしながらそう話したのだった。

 




感想、お気に入り登録ありがとうございます。

誤字脱字の報告本当にありがとうごさいます。
レディが出るといったな・・・・・・あれは嘘だ。もう少し待っていただけると幸いです。


悩んだ据え、本来考えていた流れの間に一つイベントストーリーを挟むことにしました。
ディアンサの出番はしばらく先になると思います ごめんなさい。



――――――ここから先は本小説と一切関係ありません――――――




いつディアンサのガチャくんの? なぜ私はあの時のサプチケでクリフィンを選んだんですかね・・・・・・・・・・・・


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ピクニックにきたようにみえるか。バスケットももってないぜ…

「オイオイ、辺り一面雪景色じゃねーか。こんな所に遺跡なんてあるんかねぇ~まったく。エティさんよ、どう思います?」

近づいたことで見えてきた島は大量の雪で地面が覆われている。如何にも寒そうでコートが欲しいと心の底から思いながらコブラは一緒にこの艇に乗った女性に声をかける。

 

「分からないわ?…でも、あの島を脱出する条件なんですから依頼はこなさなくちゃ」

コブラに淡々と返事を返すアンリエット。彼女の表情もこの島を見てから余り優れない。

それもそのはず。彼ら二人とも雪の上を歩くような服装ではないのだ。アンリエットはコブラよりも薄着のため、その顔は僅かにだが引きつっている。

 

「それもそうだわな、ヘヘッ、あの金髪野郎~今度あったら覚えてやがれ」

「それは私も同意見だわ、せめてコートぐらい貸してくださってもよかったと思うの」

 

 

 

 

 

彼らを乗せた騎空艇は目的となっている島には上陸せず、島の周りをグルグルと旋回し、島の全景を把握しようとしていた。

 

コブラ達が搭乗している艇は新しく発見された先遺隊で、彼らは島には上陸せずに調査をする隊らしく、彼らの調査結果をもとに正式な調査依頼が出されるらしい。

 

 

 

座席の肘掛けに肩肘をつき、外の景色を眺めるコブラ。その時ふと彼のリストバンドが振動する。

 

 

リラの調整をしていたアンリエットが振動に気が付きコブラに目を向けると…コブラは小さく笑みを浮かべた。

「なに?その笑みは・・・何か良いことでもあったのかしら?」

 

「どうやら返りの艇は期待して良いみたいだ」

「なに?どういうこと」

コブラはそれ以上なにも語ることはなく、再びつまらなそうに外の景色を眺め始め、アンリエットも自前のリラの手入れを再開したのだった

 

そして暫くの時間が流れ、先遺隊が全景のスケッチや情報収集が終わり、コブラとアンリエットを島に置いていく形で彼らはこの島から離れていったのだった

 

 

 

島に上陸しお互いの荷物を確認した後、コブラは大きく伸びをする。

「それで? わざわざ迎えを断ってどういうつもりなの? コブラ」

 

「ヘヘッ、安心しろよエティ・・・・・・そんな怖い顔しないでぇ~美人が台無しになっちまうぜ。」

すでに彼らを乗せていた先遺隊の艇は見えず、少量の食糧と彼らの荷物だけがこの場に残されている。

コブラは何処からともなく紙を取り出し、辺りを見渡す。紙には手書きだがこの島の地図が書かれており、どうやら自分のいる位置を確認しているらしい。

「遺跡は…ヘヘッ、あっちだな、とりあえず向かうとしようぜ」

「はぁ、分かったわ。行きましょうか」

 

二人は荷物を持つと一面銀世界の島を歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

一面の銀世界の中を進んでいくコブラとアンリエット。無言で進むのもつまらないとコブラがアンリエットに声をかける。

「そういや、エティはなんで一人旅なんてしてんだ?」

「あら? 言ってなかったかしら、私の持っているこの楽器、リラって言うんだけど、演奏の腕を磨こうと思ってね」

 

「ほほう、いいじゃねーか!夢を持つのはいいことだと思うぜ」

「ええ、私もそう思うわ それじゃあコブラ、貴方はどんな夢をもってるの?」

一瞬歩みを止めたコブラだったが、すぐさま歩き出し、葉巻を取り出し火をつけると口を開いた。

「俺かぁ? 俺の夢は金もかからず草臥れず、腹の減らない遊びをしながら生活を続けることだな」

 

 

「ふふ、そうやって貴方は本心を言わないのね」

「それはお互い様だぜ、只の演奏家が剣なんて振れないぜ」

コブラの言葉が気になったのか、アンリエットはたまらず言い返す。

 

「あら、失礼しちゃうわ。私は本心で言ってるわよ。演奏でみんなの心を癒したり、魔物を鎮めたりして‥‥音楽の力で世界平和にしたい‥‥‥これは紛れもなく私の本心よ」

 

「おっと、すまねぇ別にあんたの音楽への思いを疑ったわけじゃねぇんだ‥‥‥へへッ、大分歩いたな丁度大きな岩もあるここらで休憩しようぜ」

そう言ってコブラがアンリエットの機嫌を損ねたことを理解したのか、荷物を置き銀世界にポツンと佇む岩に体をもたれかけようとして体重を預け―――――――。

 

「あ、コブラそれ岩じゃないわよ?」

「へ?‥‥‥あっりゃあ?!」

もたれかかった岩が突如動きだし、大きな岩が魔物だったのに気が付いたコブラは悲鳴に近い声を上げ飛び上がった。

 

 

「――――――アオォォォォォッ!――――――」

魔物が雄叫びのような大声を上げ大きな魔物が立ち上がりコブラに向けて拳を振り下ろす。突然の事態に右手で左手に手を添えたコブラだったが・・・・・・突如聞こえてきた楽器の音を受け魔物は瞬く間に崩れ落ちた。

 

 

「雪に擬態する魔物もいるのね」

音の発生源はもちろんアンリエットが手に持つリラからだった。彼女は音色で魔物を寝かしたようだ。

 

 

眠った魔物の近くを歩き、少し指で突っついた後、起きそうにないのを確認したコブラはアンリエットに近づく。

 

「エティさんよ、分かってたんなら、教えてくれてもいいじゃねーか。あと少しで俺はペチャンコにされてあの世行きだったぜ」

「ふふ、今度からは教えるわ」

アンリエットはいたずらが成功して喜ぶ素振りを見せた後、コブラを置いていくように歩き出し、一度頭を掻いた後コブラも後を追うように歩き始めたのだった。

 

彼らは、そこから少し歩いたところで洞窟を発見し、一度暖を取り体を休ませた後再び目的とする遺跡に向かって歩みを進めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よっと、ここが上から見た遺跡だな、どれどれ~何かお宝でもありますかね。エティは少し待っててくれ、俺はちょっくら調べてくるぜ」

 

 

コブラとアンリエットは半日歩き続けた結果、やっとこ遺跡に到着する。コブラは遺跡を調べるために、近づいていくがアンリエットは近くの岩場に腰を下ろしていた。

 

並大抵の人間では半日も歩き続ければ疲れもするだろう。むしろ疲れた様子を見せないこの男が異常なだけである。

 

やがてコブラの姿は遺跡の奥のほうに進んでいき、段々姿が見えなくなっていった。

 

「あの人、ホントに人間なのかしら?体全身機械だって言われても信じるわ」

 

 

 

アンリエットはコブラが消えて方向を向きながら一人愚痴る。

コブラが古代文字を読めるとは微塵も思ってもいないアンリエットは、リラを取り出すとゆっくりと音を奏で始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

コブラ達の依頼は遺跡を調べるといっても、遺跡の雰囲気や遺跡への道筋を調べることなので、ここに辿り着いた時点で既に依頼はほぼ完了しているのだ。

 

予想外の出来事と言えば、依頼を受けた人物の一人が古代文字を解読出来てしまうことや、2時間もせずに遺跡全ての内容を把握してしまうことだろう。

 

 

「つまり、この島には風神と雷神って呼ばれる星晶獣がいて、・・・2体を会わせると危険ってわけだな・・・・・・へへへッ、それでぇ? そいつらがいる場所は~っと・・・おっと風神とやらはこの遺跡にいるのか、っと雷神は・・・おっと! 島の反対側か。なんでい、封印っていっても以外と近いじゃねーか。・・・なんだぁ、特にお宝らしきものは無しと・・・・・ハァ、帰るとしますかね」

 

 

遺跡に書いてある情報を読み解くコブラ。

ココでは古代文字と呼ばれるものはコブラにとっては以前見たことがある文字が使われており、少しアレンジが加わっているものの、少し考えれば読むことが出来る文字だった。

 

 

 

自分の求めるお宝、財宝が一切無いことに落胆したコブラは、顔はやる気なさそうに弛み、腰は猫のように曲がりながらアンリエットがいる場所にノロノロと引き返していく。

 

 

 

そんな怠そうに歩くコブラのリストバンドが一瞬、振動したように見えた――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コブラが遺跡を離れ、アンリエットがいる場所に歩いて行くと、何処かの艇の中であった人物と相対しているアンリエットの姿があった。

 

 

 

 

 

 

「それで? アンタは何者、ここにいる理由は?」

「私は演奏家で旅をしている者ですよ。そう槍を構えないでください。ココにいる理由は遺跡の調査に協力しているからです」

アンリエットは穏やかな声で女性の問いに答える。

 

 

「ふ~ん そっか、エルステ帝国の関係者かと思ったんだけど、なら全空捜査局・・も違うのね。・・・そっか、なら別に私の邪魔しないんだったらいいわ」

そう言って、槍を構えていた女性・・・ゼタは武器を降ろした。それを見てとりあえず危険は去ったと判断したアンリエットもあげていた両手を降ろす。

 

彼女達の会話は続く。

 

「で?アンタ一人で遺跡調査してる訳じゃないでしょ? 他の人はどうしたの」

「あ~今は二人なんですけど・・・あ!今戻ってきましたよ」

 

そういったアンリエットがコブラに視線を向ける。彼女につられるようにゼタが視線を向けた先にいたコブラの姿を確認し動きを止めた。

 

 

 

 

「・・・・コ・・コブラじゃない、こんなところでなにやってんの?てゆうか一緒にいたあの可愛い女の子何処いったのよ」

呆れた表情でコブラに視線を向けるゼタ。

 

「ディアンサか?彼女なら今はお使い中さ」

コブラは頭の後ろに手を組みながらゼタ達がいるもとに向かう。

 

「で?なんでアンタがこの島にいるの ここは関係者以外立ち入り禁止よ?」

 

 

「そんな睨まないでくれよぉ~俺ぁ肝っ玉小せぇんだ。俺とエティはこの島の調査を依頼されただけさ 俺たちの仕事終わったからこの辺で失礼させてもらうぜ。いこうぜエティもう少しで迎えが来る」

 

「そう、分かったわ。私もだいぶ休憩も出来たし行きましょうか?」

 

コブラの後をアンリエットが続く様に歩きだそうとするが――――

 

 

 

 

 

 

「まぁ、待ちなさいってコブラ」

 

突如コブラは歩くのを辞め立ち止まる。彼に続いていたアンリエットも立ち止まる。

 

 

 

 

 

「オイオイ、突然だなぁお嬢さんに俺がなんかしたかい?」

コブラは首筋に当てられた槍を一度確認し、槍を向けている人物に目を向ける。

 

コブラの首筋にはゼタが槍を向けている。彼女の瞳からふざけているようには見えない。

 

槍を向けられているコブラの態度に変化はなく。槍を向けたゼタに視線を向ける。

「あんた前は、騎空団に所属してるって言ってなかったっけ? でも今は遺跡の調査をしてる・・・これっておかしいでしょ?」

 

「へへへッ・・・それで?」

「・・・手を貸してほしいのよ 聞いてくれる?」

 

「美人の頼みとあらば断れねぇな。こんな脅しみたいなことしなくても俺は断らねぇぜ」

 

コブラは槍を向けられていながらも平然と葉巻を取り出し火をつけた。

話しを聞く様子を見せたコブラの態度を見てゼタは槍を降ろす。

 

 

「それで ?アンタはなにが知りたいんだ」

「ここの遺跡に書かれていた星晶獣の情報を教えてほしいのよ。遺跡調査を任されるぐらいでしょ?なんて書いてあったか教えてほしいんだけど」

 

「・・・・・・って言われてもな~教えても良いんだが・・・先にあいつら何とかしないかね?」

そう言ってコブラは視線をゼタから外し、いつの間にか集まってきていた魔物達に向けて葉巻で指し示した。

 

 

 

「ハァ・・・仕方無いわね。それじゃああんた達はその辺に隠れてなさい。コブラ、倒したらちゃんと教えて貰うからね!」

そういったゼタは辺りにいる魔物との戦闘を開始した。

コブラが不意に盗み見る様にアンリエットに視線を向けると・・・彼女は魔物相手に無双するゼタの動きを見逃さない様に、注意深く観察している。

その演奏家とは思えない表情を確認した後、コブラは視線を戦っているゼタに戻したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「セェイ!!!」

最後の魔物にゼタの槍の横払いが炸裂し蹴散らした。

 

ゼタは武器を降ろし、汗を手で拭った後こちらに振り向かって歩いてくる。

その戦いに参加せず眺めていたコブラとアンリエット。アンリエットに先ほどまでの真面目な面持ちは無くいつものにこやかな顔に戻っている。

 

「ありがとうございますゼタさん。凄く強いんですね、驚いてしまいました」

「うん、ありがと。だけど、あんな相手に苦戦なんかしてたら星晶獣となんて戦ってられないわよ」

 

ゼタの言葉から彼女が星晶獣の情報を知りたい理由を察するコブラ。アンリエットと会話を交わした後、ゼタがこちらに振り向いたのを確認しコブラは遺跡の中で見た情報をゼタに説明し始めたのだった。

 

 

 

 

 

話しを聞いたゼタは少し困ったような表情を見せる。

事情を聞くと、この遺跡に辿り着く前にゼタとバザラガは喧嘩し別行動をとったらしい、ゼタは風神の封印を解いてらしく戦闘になった。その後逃げられて後を追っていた所、休んでいるアンリエットに遭遇した様なのだ。

 

「なるほどねぇ~2体で一つ星晶獣ってわけ・・・ってことはもう一体いるって訳ね。アイツに見つからないうちにさっさと倒したいんだけど・・・ここに来てないってことはもう戦ってる可能性が高いわね。コブラ アンタこの後暇でしょ?なら付いてきてくれない」

 

 

 

「いやぁ~それがよぉ、俺ぁこの後デートなんだ、ヘヘッ、行きてぇのは山々なんだが申し訳ねぇ」

「あら? そんな予定ありましたっけ?」

なんとか逃げようと言い訳したコブラだが、アンリエットに事実を指摘され顔に手をあてながら嘆くコブラ。

 

「冗談じゃないぜ、エティさんよぉ~それはあんまりじゃねぇか」

「どうせ、迎えがくるまでは時間がかかるんでしょ?いいじゃない」

 

なぜか乗り気なアンリエットに付いていく形でコブラはゼタを2体の星晶獣が合流しそうな場所に案内することになったのだった。

 

 

 

「・・・・・・! この音なんなんでしょう?」

「ん? 戦闘音か さっきゼタが戦ってた風神じゃねーのか?」

コブラとアンリエットがゼタに視線を向けるが、既にそこにゼタの姿はなく戦闘音が聞こえる方にとてつもないスピードで向かっていた。

 

 

 

「遺跡に眠る星晶獣・・・・・・その姿、雷神か」

 

「―――道を開けぬかえ・・・通せ―――」

コブラがゼタ達に追いつくとゼタの相棒、バザラガが雷神と呼ばれる星晶獣と戦闘していた。

 

「大鎌グロウノス!星の獣の魂を刃と成せ!カルネイジ・ムーン!」

バザラガの大鎌による攻撃が雷神の攻撃を弾きながら雷神を斬りつける。雷の攻撃を放った直後で雷神は防御行動を取ることが出来ず、切りつけられ凄まじい勢い吹き飛んでいく。

ヒュー!!

「やるじゃねぇか バザラガだったっけか? 大した力だぜ」

 

 

やがて起き上がる雷神だが、その体には大きな切り傷が刻まれており、かなりのダメージを与えたことが伺いしれる。

 

――く、くっ ・・・この肌に刃を・・空の民め・・・――

 

怒った雷神が先ほど放ったよりも大きな雷をバザラガに向かって放つが、バザラガは攻撃を避ける素振りを見せずに真っ直ぐに突っ込んでいく。

 

雷が直撃し、後方で見ているコブラ達にまで爆風が届くが、その爆風で生じた煙を切り裂くようにバザラガが現れ、雷神に接近し何度も斬りつけた。

 

 

 

彼の戦闘をみていたコブラだったが、思わず口から言葉が零れ落ちる。

「アイツ防御を知らねぇのか? それともサラマンダーみたいな思念体なんじゃねーか」

 

「そのサラマンダーって奴が誰だが知らないけど、あれがアイツの戦い方。放っておいて大丈夫だから。あいつの体は特別製なの」

 

「それよりも・・・・「♪♪~」!?」

「あら? 解説を続けてくださいな 魔物は私が寝かしつけておきますから」

 

ゼタがバザラガの戦闘音で近づいてきた魔物達を対処しようとしたところ既にアンリエットによって無力化させられていたことに気がつく。

 

「・・・あんた・・・・・・何者よ?」

「リラの演奏家ですよ・・・ね?コブラさん」

 

アンリエットの言葉を聞きゼタが半目でコブラを睨む。

「いや~世の中スゲェ演奏家もいるもんだぜ、俺も初めて見た時は驚いたぜ」

から笑いをしながらコブラはバザラガの戦闘に視線を戻すが―――――。

コブラの目には確かにこちらに猛スピードで近づく風神の姿を捉えていた。その姿を確認した直後、コブラはバザラガの元に駆けだした。

 

 

「オイ!! バザラガ、さっさと倒すなら倒しな。早くしねぇと風神が来ちまうぜ!!」

 

コブラの大声をあげながらバザラガの元に走り出す。

「あっ!ちょっとコブラ 待ちなさい」

 

コブラの声に反応しバザラガが振り替える。

「貴様は・・・艇の中であった男か・・・それにゼタ、無関係な人間を巻き込むな『掟』を忘れたか」

 

 

「うっさいわね!この二人は道案内を任せただけよ」

ゼタとアンリエットがやっとこコブラに追いついた時、彼女達の目にもコブラが走った見当がついたのだった。

 

 

 

 

 

「――く、鎖、断ち・・・我、ら・・・の・・・真の、力、を・・・――」

「――くかかかか・・・消し炭じゃ・・・――」

 

2体が揃い、雷神の纏う輝きが増した。その狙う先はゼタとアンリエット。

 

 

「「「!!?」」」

 

突然の事態で動けない二人。バザラガが直ぐさま庇おうと彼女達の元に向かうが、既に攻撃は彼の頭上を越え後方にいた彼女達に向かっているため間に合わない。

 

 

 

 

 

 

「最初に女性を狙うとは卑劣な奴らだぜ」

 

雷神の放った雷撃を二人から庇うようにコブラが立つ。同時にコブラは自信の持てる最速のスピードでサイコガンを引き抜き撃ち放つ。

 

放たれたサイコガンの光弾は雷なりと相殺されると思われたが――。

 

雷神が放った電撃が光弾とすれ違う様にしてコブラに迫る。

 

「ッ!!」

息をのむバザラガ。彼の目にはコブラが攻撃を外したように見えたからだ。

 

雷撃がコブラの体に直撃し爆発が発生した後、黒煙が立ち上る。コブラは受け身すらとらず崩れ落ちる様に雪の地面に突っ伏した。

「コ、コブラ!!」

「な、なにやってんの!この馬鹿!」

駆け寄ろうとするゼタとアンリエットを制止する声がかかる。

 

「引くぞ!ゼタ、そして女。あの威力、先ほどとは比べ物にならん!今は怯んでいるがいつ動きだすか分からん」

コブラのサイコガンの一撃を受け怯んでいる雷神の姿を確認しながらバザラガが言い放った。

 

「くっ!任せたわ!!この先に洞窟があったわ。そこでまで撤退よ・・・いくわよ!アンタもいくのよ!」

 

「え、ええ この人運ぶの手伝ってくださる?」

そう言ったアンリエットは必死に地面に倒れたコブラを引っ張ろうとしていた。その姿を見てゼタは目をそらす。

 

「ねぇ、ア、アンリエットさんだったかしら?・・・・・・残念だけどバザラガみたいな体じゃないと生きていない「この方は生きてます」・・・はぁ?!」

アンリエットの言葉を聞き、慌ててコブラに近寄ったゼタ。すると確かにコブラが息をしているのを確認する。

 

「ホントだ、まだ息がある・・・っ!重いわねコイツ何キロあるのよ」

アンリエットと一緒にコブラを持とうとしてゼタが苦戦していると・・・・・・。

 

「俺が持つ!引くぞ」

結局、風神を大鎌の攻撃で怯ませたバザラガがコブラを担いで風神雷神の元から撤退したのだった。

 





誤字脱字、評価、感想 本当にありがとうございます。やる気につながります。



更新遅くなってすいません。コブラの口調が難しいんですよ。ホント!!
投稿初めてから何回、漫画とアニメを読んだり見たかな




次回の投稿は遅くなるかもしれません。
100万当たりませんでした・・・


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ふだんはベットの上じゃクツはぬぐんだけどね、ズボンも・・・

アンリエットとゼタを庇ったことにより倒れたコブラを、バザラガが担ぎ洞窟まで撤退した一同。

 

コブラのサイコガンによってダメージを受けた影響か風神雷神は撤退していたゼタ達を追いかけてくることはなかった。洞窟に到着するとバザラガはそっとコブラを地面に横たわらせる。

「コブラ…」

先ほどまでバザラガに担がれていたコブラに目を向け、申し訳なさそうにするアンリエット。そんな彼女の姿を見て、ゼタは声を上げる。

「ああっ!!もう 別に助けてほしいなんて私は言ってないって言うのに!!なのに、この男は!」

ゼタはバザラガが容態を確認しているコブラに一度目を向けた後、近くの洞窟の壁にもたれかかりながら呟いた。

彼女のイライラは、助けられた自分に向いているようだ。

 

 

 

洞窟に到着してから少し時間が経過した後、ふとアンリエットが声を2人に声をかける。

「あなた達の目的は星晶獣を倒すことでしたよね?」

 

 

アンリエットの言葉にゼタが反応する。

「ええ、そうよ。アタシもコイツもアイツらを倒すのが目的」

「おい。あまり喋るな」

静止するバザラガを気にせず、ゼタは続ける。

「いいじゃないの。守秘義務は破らないよ。…それに癪だけど、彼女たちには迷惑をかけたのは事実よ。なら、ある程度は教えないと私の気が収まらない」

「‥‥‥」

バザラガはゼタの言葉を聞き押し黙った。しかし、アンリエットはゼタにこれ以上質問をすることは無く、彼らを驚かせる提案を持ち掛けたのだった。

 

 

 

 

 

~~~~~~~~

 

 

 

「やめておけ、あいつらの攻撃を食らえば、おまえの体では耐えられん」

「私はいいけど? アンリエット…あなた死ぬかもしれないわよ?」

アンリエットの提案を聞き、かれらの意見はまちまちだった。

 

「大丈夫ですよ。私はこう見えて強いんですよ。わたしのことはエティと呼んでくださって結構よゼタさん。それと、バザラガさん。私は足手まといにはならないわ。あなた達の手柄も取らないし、援護するだけよ。なんの問題があるの?」

 

「お前がここで危険なことをする必要はない。それにここでコイツを看病する奴も必要だ」

「大丈夫です。わたしこう見えても結構役に立つと思いますよ。それと…コブラに看病はいらないわ。私よりの適任がそろそろ来るみたいだから」

 

 

アンリエットの提案とは、今現状動ける3人で風神雷神を倒すというものだった。それからしばらく話し合いをした結果、アンリエットの発した「彼らは合流してからもどんどん強くなる可能性がある」という実際には本当かどうかもわからない一言を受けたのと、ゼタの後押し受け、渋々バザラガが頷いたことで、アンリエットの提案は受け入れられた。

 

 

 

 

 

 

「いいか、戦闘中は後ろにいろ」

「そう、何度も言われなくても分かっていますよ。バザラガさん」

「で? エティ。あんたの武器ってその楽器でしょ。その剣なんでもっていくの?」

「これですか? ん~お守りですかね」

 

 

倒れているコブラは簡易的なベットに寝かされ。体温を下げないよう、いくつもの服がかけられている。準備が終わったアンリエットが眠っているコブラに近づき、膝をおると…

「コブラ、借りっぱなしは嫌なので、あの時庇っていただいた恩を返しに行ってきますね。あなたの仲間がくるまで、お眠りになっていて」

 

そういって手にもつリラを軽く撫でるアンリエット。コブラに何か変化が起きた用には見えないが、アンリエットは立ち上げり、洞窟入り口からこちらに目を向けている2人のもとに向かって歩き始めた。

 

 

「敵の行動は把握した。ゼタ、おまえは後ろで彼女を守っていろ」

「あ、アンタ!!さっきまでと言ってることが違うじゃない。アンタが守ってやりなさいよ!でかい図体してんだから、壁でしょ!壁」

「荒事は俺の方が得意だ」

「お二人とも、喧嘩はいいですが、予想以上に強かったら提案通りに協力することを忘れないでくださいね…

洞窟から離れていく、どちらの手柄にするのか言い合う2人の声。やがてその声が聞こえなくなる。

 

暫くした後、コブラの眠る洞窟に小さな揺れが発生する。その揺れは次第に大きくなっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうやら・・・・・・先ほどよりも、強くなっているようですね」

洞窟から先ほど戦っていた戦場に戻ったバザラガ達は。戦った場所から動いていなかった風神雷神の姿を確認し、アンリエットが呟いた。

 

「なーるほど? 面白いじゃない。じゃ、いきますか!足引っ張らないでよ、バザラガ!」

「お前こそしくじるなよ、ゼタ」

「うっさい!・・・ともかく、エティ。まずは身の安全。出来ると思った範囲での援護で良いからね!」

「ああ、死ぬんじゃないぞ」

 

そう言いながら、二人がアンリエットに顔を向ける。

アンリエットは安心させるように言葉を紡ぐ。

「ええ、無理はしません。お二人もお気を付けてください」

 

 

三人は再び風神雷神に向き直る。彼らも気がついたようでこちらを威嚇するかのように雄叫びを上げた!

 

この雄叫びが第二ラウンドの幕開けの号令となり、ゼタとバザラガが武器を構え、風神雷神に向かって突き進んでいく。

 

 

 

 

「――くかかかか・・・貴様らなどわれらの敵にあらず・・・――」

体の体格の影響か身軽なゼタがバザラガの前を先行する形となりながら突き進む2名に向かって、雷神が無数の雷を差し向けられる。

 

 

「どんな、威力の攻撃だってね!! 当たらなきゃ意味なんてないのよ!!」

迫り来る、雷撃をスレスレで躱し、弾き。走る速度を落とすことなく、放たれた矢のように突き進む。

攻撃範囲を抜けたゼタはさらに加速し瞬く間に雷神の懐にまで駆け抜けると狙いを定め、人間でいう心臓がある付近に向かって槍をくりだした。

「―――!!!―――」

 

移動から攻撃までの流れに、不要なものが何一つなく、洗練された動きから繰り出された一撃を雷神は避けることが出来るはずも無く。防御しようとしたした時

「♪♪~」

メロディーが響き、雷神が気を失ったかのように動きが止まり、槍の攻撃は確かに雷神の体を捉えた。

 

 

 

しかし、ゼタの一撃は確かにダメージを与えたものの致命傷にはならず、雷神を大きく怯ませた程度のものとなった。

「チッ!火力が足りなかったか、なら!!!」

舌打ちをしながらも、ゼタは一撃で雷神を倒せる程度に槍の力を解放しようと意識を傾けたところで――――

「――――れ・・・で・・・お、わりだ・―――」

 

風神の竜巻を纏った拳の攻撃が迫る。ゼタに回避する手段はなく。攻撃は直撃し、体がバラバラに吹き飛ぶ――――――と思われたが。

 

「ブラッディ・ムーン!!」

バザラガが追いつき、ゼタに迫っていた風神の放つ攻撃と風神諸共吹き飛ばした。

バザラガの鎌による切断は出来なかったが、風神の片腕の一部を抉り取り、再起不能にしたのだった。

 

その光景を目の前で見せられたゼタは・・・

「助けられたなんて思ってないわよ」

バザラガもゼタの言葉を気にした様子はない

「別に助けたつもりはない――ッ!!」

 

突如、バザラガの腹に衝撃が加わり、彼の言葉をかき消しながら肉体が後ろに後退した。

 

その直後、バザラガのいた箇所にはるか頭上から雷が落下し、辺りに爆発と爆風が吹き荒れる。

 

もし仮に、先ほどの雷がバザラガに直撃していたら、流石の彼の体でも、相当なダメージを負ったであろう。

 

 

爆風により雪が舞い、一時敵に辺りの視界がおぼつかないタイミングで言葉を交わす2人。

「なかなか、厄介ね2体同時っていうのも、どちらの攻撃も当たれば致命傷になり得るか~」

「俺は問題ないが、ゼタ・・・お前は即死すら考えられるな」

「うっさいわね!体の自慢ならもう聞き飽きたわよ!・・・それにしても彼女凄いわね。星晶獣も寝かしつけられるってどうゆうことよ?」

「ああ、それに関しては同感だ」

視界がおぼつかない中、迫り来る風の刃や、雷撃をアンリエットに援護について言葉を交わしながら各々で対処する。

 

 

やがて、爆風が落ち着き、耐性を立て直した風神雷神と2対2の形で向き合う形となったゼタとバザラガ。

 

ゼタが再び攻撃を仕掛けようとしたタイミングで―――

「~♪♪~♪~♫」

 

再び音色が聞こえ、今度は風神雷神共に動きを止めた。

 

音色が聞こえた時、ゼタとバザラガは既に走り出しており、彼らとの間合いをつめ各々の技を繰り出した。

 

「大鎌グロウノスよ、力を示せ!ブラッディ・ムーン!」

「アルベスの槍よ、その力を示せ! プロミネンスダイヴ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――時は少し遡る――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バザラガたちが、洞窟を出てから少しして、何もなかったはずの洞窟の前には、一隻の船が着陸していた。

 

 

 

入り口から金属の足音が聞こえてくる。やがて足音は眠るコブラのもとにたどり着くと‥‥‥。

 

「あら、コブラ。こんなところで眠ってるなんて、アナタらしくないじゃない?」

女性の声に反応する声が一つ。

 

反応する者はいないと思いきや、ベットの上から声が帰ってくる。

 

 

「へへへッ、俺としたことが少しばかり寝過ぎたようだ」

コブラはベットから体を起こす。コブラは声をかけてきた人物に顔を向けると穏やかな表情をしつつ、声をかけた。

 

 

「久しぶりだな・・・会いたかったぜ、レディ!」

「ええ、私もよコブラ」

久々に再会する二人。再会の挨拶を済ませ。軽く現状をコブラが説明し、レディと情報交換を終えたところで―――。

 

 

 

 

「タートル号でディアンサちゃんが待ってるわ。早く行きましょう」

 

「ヘヘッ、モテる男は忙しいぜ」

レディの言葉を受け、コブラは簡易ベットから跳ね起きると、気絶から回復した体を確認するように動かす。やがて確認し終えたコブラは葉巻を取り出した。

 

 

洞窟の出口に向かって歩く二人。歩きながらコブラがレディに問いかけた。

 

「レディ、タートル号の調子はどうだ?」

少し、悩む素振りを見せたレディだが―――

「万全とは言わないけど、問題は無いと思うわ」

カリオストロに頼んで錬成して貰い。ディアンサが運んだ部品が無事に機能しており、タートル号に問題がないことを説明する。

 

 

 

レディの返事を受けコブラは表情が切り替わる。

「そうか、カリオストロには礼を言わなくちゃな。―――レディ!!発進準備だ。この近くで戦ってる連中の援護に向かう!!」

 

 

 

再会した相棒とともにアンリエット達のもとに急行するコブラ達であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




誤字脱字、評価、感想 ありがとうございます。


楽しみに待っていただいた方いらっしゃいましたら、遅くなってしまい申し訳ありません。

次話で、このイベントストーリーは終わる予定です。





上手になりたいものです。






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お祈りの時間くらいは待ってやるぜ 誰だって死刑囚にはやさしいもんさ

「あ、コブラさん!!!お帰りなさ・・・い?・・・じゃなくて・・・・・・お久しぶりです」

運転席の後ろに作られていた新たな座席、おそらくレディがディアンサの為に新たに作ったものだろが、その席に座っていたディアンサがコブラに気がつき、駆け寄ってくる。

「ヘヘへッ、ディアンサとりあえず、無事に合流出来てよかったぜ!それと、ちゃんとレディのところまで、届けてくれてありがとよ」

コブラはディアンサの頭に手を置きやさしく撫でる。

 

「コブラ、確認だけど、この近くで戦闘が行われてる場所を探して、向かえばいいのね」

「ああ、頼むぜレディ」

コブラの後に続くようにタートル号に乗り込んだレディが、コブラに目的地を確認しながら運転席に腰を下ろした。

「了解、ディアンサ座席に座ってちょうだい。発進するわよ」

 

「分かりましたレディさん!とにかくです、コブラさんまた再会出来てよかったです!!」

そう言ったディアンサは、コブラの手から残念そうに離れ、座席に座り直す。

 

 

ディアンサが席についたと同時にタートル号のエンジン音が響く。その後、少しの船体が揺れた着陸のために使用するランディングギアを外し、タートル号が浮上し移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

 

 

雪の大地の上を高速で移動するタートル号。

発進と同時に、操縦室から突如出て行っていたコブラが戻ってくる。

「ディアンサ 護身用だ、これを持ってな」

どうやら、タートル号の荷物室で何かを探していたようだ。

操縦室に戻ってきたコブラは自分の座席に座らず、ディアンサの座席に背もたれに肘を掛けながらディアンサに向かって声何かを放り投げた。

 

「え?・・・え!!?」

膝の上に乗ったものに目を向けたディアンサが驚きの声を上げる。

コブラが放り投げた物・・・見た目はコブラの着る服と同じで赤く、一般的には銃と呼ばれるものだった。

「わ、わたし!こんな物使えませんよ!!」

慌ててコブラに返そうとするが、

 

「大丈夫だ、護身用って言っただろ? 弾を撃っても虫一匹殺せやしねぇ」

「で、ですけど」

「それにだ・・・その銃に入ってる弾は特別製でよ、使えば俺が駆けつけるまでの相当な時間稼ぎが出来る。その厄介さは俺が身をもって体験したから保証するぜぇ・・・おっとあいつらの姿が見えてきたな」

 

そういったコブラは、風神雷神の姿を目にすると話しを切り上げた。

 

タートル号内でコブラが遠くに風神雷神を確認した時、その戦場では雄叫びを上げながら攻撃を繰り出す風神雷神と、その攻撃をどうにかかいくぐり、接近しようとするゼタとバザラガ・・・・・・そして、彼らから少し離れた箇所でリラを持たず、代わりに以前、ならず者から拝借したブロードソード片手に魔物を圧倒しているアンリエットの姿だった。

 

 

 

 

 

「へへへッ、エティのやつとうとう隠す余裕が無くなったか・・・レディ、エンジンの調子はいいんだよな」

「ええ、さっきも言ったけど好調よ、それがどうかした?」

「へへッ、ディアンサにこの船を凄さを教えてやろうと思ってな」

 

 

レディの回答が満足のものだったが、コブラは再び、ディアンサに視線を戻す。

「ディアンサこの船のことどれぐらい教えて貰った?」

手に持つ赤色の銃に視線を向けていたディアンサが顔をあげる。

 

「え、えっとです・・・凄いお金がかかっているのとレディさんが教えてくれました」

 

「へへへ、そうだな、なら丁度いい、タートル号の機能の一つを見せてやるぜ」

 

 

すでにディアンサの目にもゼタ達の姿も目視で確認出来る距離に近づいており。彼らが苦戦しているのが見える。

 

「レディ、フォーメーションCだ!俺は上に出る」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何度目かの攻防の据え、大きく怯んだ雷神に向かって槍を繰り出すゼタ。しかし、今までと同じように、タイミングを狙ったかのような風神の攻撃がゼタに迫る。

 

「クソ!!ホント邪魔ね」

風神の攻撃を槍で受け止め、後方に吹き飛ばされるゼタ。空中で耐性を整え、着地する。

その直後、彼女の横に、バザラガ大きな振動と共に落ちてきた。

 

どうやら雷神に投げ捨てられたようだが、直ぐさま立ち上がり大鎌を構えるバザラガ。彼がダメージを受けたようには見られない。

 

「・・・・・・ッ!!」

「・・・どうしたゼタ、もう息切れか? 疲れたのなら下がっていろ」

「うっさいわね!アンタと違ってこっちは擦っただけで致命傷なのよ!!それに疲れてないわ!余裕よ」

遠くに佇む風神雷神を睨み付けるように見るゼタ。

先ほどバザラガに吠えたが、肩で息をする程度に疲れているのは確かなのだ。

 

「そうか、無理ならいつでも言うが良い。二体ぐらい俺には余裕だ」

「言わないわよ!アンタも疲れてるならそう言えば? アタシがあいつら纏めて倒してあげるから」

ゼタは、彼らから目を離すと、小言を言ってくるバザラガに目をむける。一見、戦闘前と変化は見られないが、訓練時代からよく見ているゼタにはバザラガの疲労が見て取れた。

 

 

「エティはこの騒ぎで集まった魔物の相手をして貰ってるし援護は期待できそうにないわね・・・というか彼女、どう見ても剣の扱い初心者じゃないわよね」

「そうだな、やはり何処かの機関には属しているようだ。だが俺たちの敵ではなさそうだ」

 

息を合わせたかのように二人がアンリエットの視線を向ける。

 

女性が持つのに丁度いい長さの剣を可憐に操り、魔物の群れを蹴散らすアンリエット。

彼女が魔物の注意を引きつけてくれているおかげで、ゼタ達は2対2で戦えているのだ。

 

 

「さぁて、バザラガ、仕方無いから協力してあげる。先に片方潰しましょう?あいつら強さの上限無に感じるから、このままだと正直な話し・・・負ける可能性もあると私、思うだけど・・・」

 

「いいだろう」

バザラガは多くを語らなかった。しかし、ゼタの提案を受け入れる。彼らを指導した教官がこの場にいたのなら目を見開いて驚愕していただろう。

 

 

 

 

 

「――くかかかか・・・貴様らなど既に我々の敵にあらず・・・――」

あざ笑う風神を、にらみ殺さんばかりの視線を向け、槍を構えたゼタ。彼女に続く様に大鎌を構えたバザラガ。

「うっさい!!お前達みたいな―――??!なにこの機械音・・・・・・なによあれ?」

 

機械音のする方向に目を向けたゼタは。遠くから戦場に向かってくる物体を見つけると目を細め、その正体を確かめようとする。

 

 

ゼタの視界が捉えたソレは、騎空艇にしては四角くそして長かった。ソレは今もなお凄まじいスピ―ドーでこちらに向かってきているのだ。

 

 

そして遠くからでも目に付く赤色・・・・・・凄まじいスピードで動く機械の上で発生しているであろう風に一切怯む事無く、葉巻を加え、左腕の銃を風神に向けて構えている男を発見する。

 

 

ゼタはその男の名前を小さく呟く。

 

瀕死の重傷を受けても、液体窒素で体を凍らせても・・・死ぬことがない奴の名前を。

やがて、男の左腕の銃から赤色の光が飛び出した。

 

 

 

 

勝負は一瞬。

 

高速で風神雷神の元に接近するタートル号、その姿は先ほどまでとは異なっており、列車のようにも見え、獲物を捕らえるために動く蛇のようにもみえる。

 

 

轟音を感知し、接近する視線をタートル号の方角に向けた風神雷神だったが、彼らが振り向いた時には既に、コブラの放った無数のサイコガンの光が目に前に迫っていた。

 

攻撃を防ごうとした風神は風をおこし、雷神は雷で対抗しようとしたが、

普段とは異なる赤色の光を放っていた無数の光弾は雷に相殺されず突き進む。

また、風神の風で逸れたに思われたが、光弾は意識があるかのごとく湾曲し風神雷神の元に向かって飛んでいき、彼らの体に直撃した。

 

風神の体を光弾は貫通し、残っていたもう一方の腕も吹き飛ばした。一方雷神も無傷なはずはなく、少なからずダメージをその身に受けていた。

しかし、風神雷神が揃い時間がたっている影響によって、この一撃も彼らを再起不能にすることは出来なかった。

 

普通の星晶獣が今のコブラの一撃を受けていたならば、一発で致命傷となるのだが、それに耐える風神らが異常だとしか言いようがない。

 

 

 

サイコガンを放ったコブラはタートル号の上で屈み、これから起こるであろう振動に備えると相棒に聞こえるようにと、大きな声で叫ぶ。

「レディ!突っ込め!!」

 

コブラの声に反応するかの如く、タートル号はさらにその速度を上げ、風神に向かって突き進む。

 

風神らとの距離は50メートルもなく、タートル号は速度を落とさず風神に体当たりした。

 

 

 

 

衝突した直後、タートル号の先端からフックのような物が2本出現すると、体当たりの勢いと衝撃で吹き飛ぶ風神を逃がさないように、ガッチリとホールドするとスピードを維持したまま急上昇を開始する。

まるで花火でも打ち上げるかのように、風神を掴みながら上昇していったタートル号だったが、少しずつその姿が少しずつ霞んでいき、風神ごと突如消失したのだった。

 

 

 

 

 

「・・・・・・なに?どういうこと?」

「・・・さぁな」

目の前で起きた戦闘に理解が追いつかないゼタ、それはバザラガも同じだったようで今、目の前で起きた出来事を理解しようとしているようだ。

そこに、轟音に動きを止めた魔物達の隙を見逃さず、手に持つ剣で、魔物を掃討し終えたアンリエットが合流する。

 

サイコガンにより、反撃の隙を与えず怯ませ、高速で接近した騎空艇のようなもので、風神を吹き飛ばし、その後捕まえて、何処かに連れ去った。彼らにはソレしか分からないのだ。

やがて、考えても無駄だと判断したアンリエットが二人に声をかける。

 

「えっと・・・とりあえず、いいではありませんか。あちらはコブラが引き受けてくれるようですし、我々で、弱体したもう一方を倒すことにしませんか?」

 

 

強敵に対し協力することを選んだ2人だったが、その真化を発揮することなく、戦いは終結することになる。

相手は一人でも余裕で倒せてしまうほどにまで弱体した雷神のみ。もちろん、彼らが協力する訳も無く、お互いに妨害しあう二人を避け、雷神にトドメを指したのはアンリエットだった。

 

 

 

現在コブラ一同と風神がいる場所、そこは異次元と呼ばれる場所である。

元々タートル号にはこのように異次元に潜り込むことは出来なかったのだが、コブラに命を救われたエンジニア達によって恩返し的に異次元潜行能力を付加されたのだった。

 

風神雷神は側にいることで力を増していくため、コブラのサイコガンで仕留められなかった場合、二体を引き離すために準備していたのだ。

 

異次元に潜り込むまでは風神の抵抗する力が強く、バリアを展開していたが異次元に潜ってからはみるみる弱体化していき、使う必用は無くなっていた。

 

船体正面のスーパーブラスターを捕まえている風神にたたき込みながら、左右の側面にもある複数ビーム砲をぶっ放している状態である。

 

言うまでもなく、風神は既に虫の息であった。

 

 

 

やがて、タートル号の砲撃が止まり、コブラが立ち上がり、風神に目を向ける。

「悪いな、アンタラを無理矢理、離すようなまねして」

「――――キ、キサマ!―――――」

 

風神はコブラを睨み付ける。その目には確かに怒りがあった。

「最後だな風神、お祈りの時間ぐらいは待ってやるぜ」

 

 

 

 

一時の静寂のあと、一発の光弾が異次元に走った。

 

男はサイコガンを義手に収めると、葉巻を取り出し火をつけた。

 

やがて一服終えたコブラはタートル号の船内に戻っていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雪原の大地に、最初はぼんやりと、そして少しずつタートル号が姿を現す。

気がついた3人は話しを中断し視線を向ける。

 

やがて、完全に姿を現したタートル号のハッチが開き、コブラが姿を現す。

「へへッ、さっきぶりだなぁ?元気だったかい」

一同様々な表情を見せるが、コブラは気にする素振りを見せず言葉を続ける。

 

「へへへッ、三人とも、お帰りの切符はお持ちかい、なんなら送ってくぜぇ?」

コブラはそう言って腕を首の後ろで組むと、体を反転させ、タートル号の内部にへと消えていった。

 

 

「ふふふ、ではお先に」

最初に一切の悩む素振りを見せず、アンリエットがタートル号に乗り込む、既に彼女が使っていた剣は何処にも見当たらず、彼女の持ち物は大事そうに持つリラだけだった。

 

 

「ねぇ、バザラガ、コブラはひとまず置いておいて、エティって結局何処の者だと思う?」

「さぁな・・・帝国でも組織でもないなら秩序か全空捜査局のどちらかだろう。何せよ彼女一人に協力するぐらいなら問題ないだろう」

「そっか・・・・・・そうだよね。やっぱ問題はコッチかぁ~」

そういったゼタは、タートル号に目を向ける。近くで見ればみるほど、その異質さが分かるのだ。

明らかなオーバーテクノロジー、艇内には何があるのか全く検討がつかないのだ。

一度大きなため息をついたゼタ。しかし自分の頬を叩き気持ちを切り替え、タートル号に乗り込むために一歩踏み出したのだった。

 

 

雷神を倒し、コブラが合流するまでの間、三人で話していた内容、ゼタの質問にアンリエットは自分の所属する組織以外の事の質問には正直に話していた。

その後、アンリエットはゼタとバザラガのことは会う前から知って居たことも伝えたところで、とある提案をしたのだった。

 

その提案をゼタとバザラガが受け入れた直後、タートル号が姿を現したのだ。

 

 

 

ゼタの後を続くようにバザラガが艇内に足を踏み入れる。アンリエットや、ゼタ達はこの艇内で過ごす時間はそう長くは無い。

彼らがどんな協定を結んだかコブラは知りもしない。しかし、「彼らがコブラの敵になること」これだけは、絶対にあり得ないだろう。

 

 

 

 

 

 

この世界の一部の組織、一部の人物がこの男の危険さに気がついているのだ。やがて、男の選択によって本来の筋書きから乖離していく事件がいくつも発生することにる。

 

 

 

(神境にて辿る後 終了)

 

 

 

ロミオとジュリエットってしってるか?

恋愛悲劇だとよく言われているが、まぁ、悲しい物語だと思えばいい

ところが俺がディアンサと降り立ったこの島、何か~その話と似ている箇所がチラホラあるんだよねぇ

まぁ、その話しは置いといてだ

買い物をしてた俺とディアンサはひょんなことから演劇を見ることになったんだが

そこからこの島は大変なことになっていくわけよ。

若い恋人たちが社会の障壁によって制限される。

気に入らねぇ、そんな障壁この俺達が吹き飛ばしてやるぜ

次回、「届かないほど、近くのあなたへ」でまた会おう。

 




神境にて辿る後編終了です。読んでくださったかたありがとうございます。

感想、お気に入りありがとうございます。

誤字脱字の訂正も本当にありがとうございます。



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届かないほど、近くのあなたへ
オレは部外者だ、帰ってもいいだろ。ママが心配するんだよ


(届かないほど、近くのあなたへ)

 

 

「コブラさん!!これ美味しいですよ!」

屋台で賑わう町中を楽しそうにディアンサが歩く。彼女の服装は踊りの時の衣装ではなく、とあるエルーンに仕立てて貰った特注の服装である。

スカートは水色のチェック柄で、白いシャツの上に黄色いセーターを着込み、その上に青色の上着を着込んでいる。

コブラから見たその格好は地球の学生服なのだが、口にはださなかった。

 

しかし、そんなディアンサの服装だが、一つおかしな点がある。

それはホルスターを斜めがけしており、その中に収まっている銃が赤く、そして彼女には大きすぎるのだ。

ディアンサ自身も最初は嫌がっていたが、今は抵抗がないようだ。

 

「へへッ、そいつは良かった。だが、ディアンサ俺は最近思うんだよ・・・」

 

「どうしました?コブラさん」

美味しそうに屋台で注文したイカ焼きを食べるディアンサに向かってコブラは視線を向ける。

一方、言葉の続きを話さないのを不思議に思ったディアンサもコブラに振り向いた。

 

しばらく見つめ合う二人・・・しばらくしてコブラは彼女に言いかけていた言葉の続きを話しだした。

 

「そんなに食べてると、増えるかも知れねぇぜ・・・・・・いろいろとな」

 

 

言葉を理解した直後、楽しそうな表情から一瞬にして絶望の淵に立たされたような表情に変わるディアンサ。

「そ、そんなに食べてませんよ!!・・・別に運動していない訳じゃありません!コブラさんだって知ってるじゃないですか。私がタートル号内で踊りの練習で汗かいているの・・・それに体型だって、キープしていますし・・・・・・」

 

最初は元気があったが、段々と尻すぼみになっていくディアンサの声。いくら言葉を並べたところで嘘か事実かは彼女自身が一番分かっているのだ。

 

「コブラさん・・・・・・残り食べてください」

「へいへい」

スッと差し出される食べかけのイカ焼きを、に受け取り口に放り込むコブラ。

 

 

 

そんな彼らの直ぐ隣から楽しそうな明るい声が聞こえ、少女が姿を現す。そんな彼女に続く様に鎧を身につけた男と女性が付いてきたのだ。

 

「くんくん・・・・・・なんだか・・・・・・とっても香ばしい匂いがします!ティボルト、コレは何ですか?」

「ああ・・・・・それはイカ焼きだな!アウギュウステ産のダイオウ――っ!!」

 

鎧を着た男がコブラを視界に収めた途端、目を見開いた。男は本能的にコブラが危険だと判断したのか手に持つ槍を構えようとして――――。

「へっ?!ちょ、ちょっとコブラさんいきなり何を!ま、待ってください!!その持ち方はスカートの中周りの人に見られちゃいますって!!ちょっと聞いてくださいよコブラさん!」

 

コブラがスッとディアンサの腰に手を回し、その体を持ち上げたと思いきや直ぐさまその場を離れたことで、連れの少女にティボルトと呼ばれている男は一度落ち着きお忍びで来ていることを思い出した。その後少女・・・ジュリエットに話しの続きをし始めたのだった。

 

 

「・・・・・・・・・えっと何処まで説明したっけか?」

「説明もなにもイカ焼きとしか教えてもらっていません!!」

「はは、悪ぃ悪ぃ。イカ焼きっていうのはな、イカをぶつ切りにして甘辛いタレを絡めて炭火で焼き上げたものさ めちゃくちゃうまいぞぉ~」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゼタとバザラガ、そしてアンリエットと協力して星晶獣と戦い、彼らを各々の場所に降ろしてから二ヶ月が過ぎたころ。ディアンサの服を偶然知り合ったとあるデザイナーに頼み調達し、調べ物も無くなり暇を持て余していた所、偶然遭遇したシェロカルテにとある演劇のチケットを貰ったコブラ達。

 

シェロカルテ曰く、最初はグラン達に渡したのだが、サブル島と呼ばれる島での出来事で手が離せないとのことで、遠慮されたらしい。

そこで、たまたま遭遇したコブラ達にこのチケットが巡ってきたという訳である。

 

 

コブラ達はタートル号をレディに任せ、城塞都市ヴェローナのモンタギュー領内に降り立ち、演劇の開演まで観光を行っていたところである・・・・・・

 

コブラの目的はモンタギュー領の財宝目当てでもあるのだが、ディアンサはその事実を今のところ認識していない。

ディアンサが演劇を見に行きたいと言ったところ、ここ一週間程度やる気をなくしていたコブラが突如元気を取り戻し、行動を始めたため、何かあるとは感づいてはいるのだが。

 

 

少し離れた所で降ろされ理由を聞いても答える素振りがないコブラを問い詰めるのを諦め、スカートや服を直し終えた後、一度落ち着いた後、コブラに、別の話をふることにしたディアンサ。

 

「それで、コブラさん。この場所に見覚えがあるとはどうゆうことですか?」

「見覚えがあるわけじゃねぇんだ。ただ俺の知っていることに酷似しているってだけさ」

そういったコブラは自分の知って居る知識を掻い摘まんでディアンサに説明する。

 

かの作家が作った物語。若い恋人たちが社会によって課された障壁をはねのけて愛を成就させようとする恋愛喜劇について・・・・・・。

 

おおよそ、5分程度で内容を説明したコブラ。その後コブラはディアンサに質問をすることにした。

「ディアンサ今の話しを聞いてだが、自分が王女様の立場だったらどういう結論を下す?」

 

悩むディアンサ。しばらくした後、彼女は小さな声で彼女自身の答えを口にし始める。

 

 

「そうですね。私だったら・・・・・・・・・・・・すいません。直ぐに結論は出せそうにないです」

「へへッ、まぁそうだろうな。普通はいきなり結論なんてだせねぇさ」

 

「コブラさんが王子だったらどうするんですか?」

率直な疑問なのだろう。彼女はコブラに問いかけた。

 

「へへへッ、俺かい?俺なら当然――「間もなく夜の公演の入場開始時間です!!チケットをお持ちの方はこちらで確認させていただきます!」―――だそうだ。行くとしようぜ、ディアンサ」

 

 

「あっ!!待ってくださいコブラさん!!答え教えてくださいよぉ~」

手を首の後ろで組み、葉巻を吹かしながら入場口に向かうコブラをディアンサが慌てて追いかけていった。

 

その後、入り口で、葉巻で一悶着した後、結局葉巻を取り上げられ残念そうにするコブラと共にディアンサは演劇場の入り口に足を踏み出したのだった。

 

 

 

 

 

 

 

劇場内は薄暗いが、全く見えないという訳では無い。そんな劇場内で自分の席を探す二人。

「ロミオさんもういますかね?」

「へへッ、いるだろうよ。どうせ楽しみで仕方無くて椅子にお行儀よく座ってるだろうさ・・・」

 

 

 

コブラ達がモンタギュー領内にチケットと一緒に入っていた正式な許可書を用いて入場した直後、少女を誘拐している筋肉ムキムキ赤い服の変態がいると通報があり、駆けつけた警備兵とコブラが一悶着していた。

そんな時に増援として後からかけつけたロミオとマキューシオがコブラ達を助けてくれたのだった。

 

 

あのまま連れて行かれれば、まず演劇は見ることは叶わなかっただろう。それを助けてくれたお礼として五枚あったチケットの内の二枚をディアンサが感謝の念として渡したのだった。

受け取れないと拒否していたロミオだったが、彼自身この演劇が見たくて仕方無かったのだろう。

 

最終的にはディアンサに根負けしたのかチケットを受け取り、警備に戻っていったのである。

 

 

 

開演直前、今だ、ロミオとマキューシオの姿はみえず、ディアンサがギリギリまで彼らを探していたが、結局彼らが劇場内に入ったのは会場の明かりが完全に落ちた後だったため、合流することは叶わなかった。

 

 

 

観客達が固唾を呑んで見守る舞台上。下手から一人の男が現れる。

舞台中央で歩みを止める男は、含みのある落ち着いた声で詭弁に語り始める。

 

 

 

やがて、語り部は舞台を降り、舞台の幕がゆっくりと上がっていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしその時、劇場の扉が荒々しく開かれる。

 

突然、舞台上になだれ込んでくる甲冑姿の男達に騒然となる客席。

 

甲冑姿の男は劇が政治的に不適切だという密告があったと言いだし、観客を含め関係者全員の捕縛しようと動き出す。

「黙って聞いてりゃふざけんな!舞台を見に来ただけで、なんで捕まらなきゃならねぇんだよ!」

「そうだそうだ!やれるもんならやってみやがれ!」

 

 

 

 

突如、神王軍憲兵隊と観客の乱闘が起こり、騒然となる劇場内。

 

 

「コブラさん!!どうしましょう」

他の観客同様慌てふためく、ディアンサ。そんな乱闘のさなか、ふとコブラの後ろの座席から声がかかる。

 

「貴方がコブラね・・・」

座席に座っていたコブラに突如、背後から声がかかる。声に反応したディアンサが振り向き驚きの表情をする。

それは恐怖で驚いたなどではなく、単純に声の主の姿を見て、その綺麗さに驚いての表情だった。

 

背後から聞こえる女性の声に殺気を感じなかったコブラは乱闘騒ぎの中。体を動かさず女性の言葉を待つことを選んだ。

「ふふ、ごめんなさい。脅かすつもりはないのよ。この島に入ってから貴方のことは見させてもらっていたけど、随分となりに座る女の子と楽しそうにしてるから、ホントは眺めるだけだけの予定だったのだけれど、思わず声かけちゃったのよ」

 

「へへへッ、あの熱心な視線は君だったのかい、てっきり俺は遠距離からライフルで狙われてると思ってたぜ。それで?綺麗なお嬢さんは俺に何のようだい?」

声から美人だと判断したコブラは騒ぎの中、少しずつディアンサがオドオドし始めたのを横面に、未だに振り返らずに言葉を返す。

 

コブラの視線の先では、ロミオが先ほど出店で遭遇した少女と共に逃げている最中だった。

 

「あら?気がついてたの。かなり遠くから見てたんだけど」

「こう見えて俺は人の視線が気になっちゃう人間でよ~少し敏感なんだ」

 

「ふふ、面白い人ね。シエテが凄い男がいるって聞いたからお話してみたかったの・・・ダメだったかしら?」

「ヘヘへッ、嬉しいもんだぜ。だが、まずはこの騒ぎから逃げないといけねぇな~手伝ってくれるかい?」

「ええ、いいわよ」

 

 

「あの・・・コブラさんこちらの女性は・・・・・・・」

ディアンサがコブラと後ろの席に座る人物に視線を向ける。

「ふふ、初めましてかしらディアンサちゃん、貴方とコブラのことは少しだけだけど知って居るのよ。よろしくね」

 

 

立ち上がったコブラはやっと振り向き初めて女性の姿を視界に収めた。

明るく柔らかそうなオレンジブラウンの髪に、以前コブラに頼み事をしてきた人物と同じ色のマントを身につけた整った目鼻立ちの美しい女性だった。

 

 

「あ!ごめんなさい、言い忘れてたわ。・・・・・・私の名前はソーン。貴方達と友達になれたら嬉しいわ」

 

ソーンは何処からともなく大弓を取り出すが・・・・・・。

「へへッ、ありがと~オレは美人の友達はいつでもウェルカムさ」

 

 

攻撃しようとするソーンをコブラが右手で遮った後、左手の義手を外すと、ロミオやマキューシオ達と一緒にいるジュリエットと呼ばれていた少女に斬りかかる神王軍憲兵隊に向かって、サイコガンを撃ち放ったのだった。

 

 




感想、お気に入りありがとうございます。やる気につながります

誤字脱字の訂正も本当にありがとうございます。



今回の助っ人キャラは一名ですが、その分強力です。
前回の話でコブラがディアンサに渡した銃ですが、詳しく知りたい方はCOBRA THE ANIMATION 「コブラ ザ・サイコガン」を見ていただければ幸いです。

ディアンサの服装ですが、公式ツイッターの4月4日のお花見風景イラストのまんまです。


2018 12/08追記
本小説、1話いろいろと修正、書き加えしてみました。少しはましな文章になったでしょうか?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


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オレを探してたんだろう?もっとうれしそうな顔をしろよ

劇団での戦闘が始まり、何とかジュリエットと合流したロミオとマキューシオだったが、同じ国の兵士でもある彼らを、二人は斬ることが出来ず守りに徹していた。

「マキューシオ!!どうすればいい!」

「さぁな!っと!とりあえず一目惚れの相手と合流出来たんだ、ここから逃げるとしようぜ」

迫る神王軍の兵士を躱し、拳を兜ごしに殴りつけ無力化させたマキューシオが返事を返す。

 

「あ、あなた達はいったい」

「下がれ!ジュリエットここは危険だ。オレの後ろに隠れていろ・・・・・・それとキサマら!モンタギューの者だろう?なぜ俺たちを助ける」

協力する形でジュリエットと付き人である婦人を守る三人。

なぜ、モンタギューの兵士である彼らが協力してくれているのか、分からないティボルトは攻撃の手を緩めずに彼らに向かって声をかけた。

 

「なんでと言われてもねぇ~俺はコイツについて行くだけさ」

そう言ったマキューシオは行動を起こした人物…ロミオに視線を向ける。

「話しは後だ。とりあえずここから逃げるとしよう」

そのロミオは、確かな決意を抱いた目で現状からの打開策を考えていた。

 

「ふん、それで?何処に逃げ-っ!!」

彼らが会話をするため意識を向けた一瞬。その瞬間を狙ったように神王軍の兵士の三人が同時にティボルト迫る。

なんとか、同時に二人の攻撃を押さえ込んだティボルトだったが、その二人が囮だったことに気がつく。

三人の内の残りの一人があっという間にティボルトの脇を抜け、今まさにジュリエットを斬りかかろうと剣を振り上げた。

「クソ!!ジュリエット!!!」

大声で叫ぶティボルト・・・・・・だが、間に合わない。

 

振り上げられた剣がジュリエットに向かって振り下ろされる。

迫る剣に怯え、目をつむるジュリエット。

 

「っ!!!どけぇ!!」

相対していた兵士を押しのけ、ジュリエットの元に向かおうとするロミオ。

しかし、剣は既にジュリエットに向かって振り下ろされている途中・・・どうやっても彼ら三人では助けることが出来ない。

故に、彼女が助かることはない――――――

 

 

 

 

 

 

他に彼女を助ける存在がいなければの話しだが・・・・・・。

 

剣を振り下ろしていた騎士に突如現れた光弾が直撃する。

兵士を横から殴りつけられたかのように、吹き飛んでいく。兵士は自分に何が起こったのか理解する前に、大きな音を伴いながら壁に激突しその意識を手放したのだった。

 

突然の事態にロミオ達と兵士の動きが硬直する。辺りが一時の静寂に包まれる中、最初に聞こえた声はロミオ達には聞き覚えのある男の声だった。

 

 

 

「先に美女を狙うなんて、肝の小さいやつらだねぇ~女は優しく扱うもんさ」

 

 

ティボルトが自分と相対していた神王軍憲兵を倒し、ジュリエットを助けた光弾の出所そして攻撃を行ったと思われる男の声を探し、先ほどの攻撃を放った男・・・コブラに視線を向けた

「お前はあの時の――」

「ジョーどの!助太刀感謝する」

ティボルトの声は隣にいたロミオの声によってかき消される。

 

コブラはサイコガンを別の兵士に向けて放ち、光弾はまるで生きているかのように、瞬く間に数人の兵士を無力化させた。

サイコガンを義手に収め、ロミオ達の方に振り替える。

「とりあえず、道は確保するんでさっさと逃げるとしようぜ」

まるで、これからショッピングにでも行くかのような声で話しかけたのだった。

 

 

 

突然の事態に思わず、顔を見合わせるマキューシオとティボルトだったが、それも一瞬

一行は迫り来る神王軍の兵士から上手く逃げ切り劇場を抜け出したのだった。

―――なお、神王軍憲兵の大半が意識を刈り取られてものの死人はいなかったという。

 

 

 

 

「なるほど、事情は大方理解した。私でよければ力になろう」

「ありがとうございます」

「この御恩は、忘れません」

「‥‥‥よいよい。ゆっくりと休まれよ」

公演艇から脱出後ロミオの進めもあり、一行が向かった先は、2つの国に間にあるヴェローナ大聖堂だった。深夜に突然現れた事の次第を、ロレンス神父に説明したところ、彼は快くロミオ達がこの場に隠れることを許可したのだ。

 

戦闘の際、殿をつとめたコブラ、そして彼を手伝い、遙か上空に飛び上がり援護した十天衆のソーンの活躍により、一行は一切の怪我を負わずにこの場に辿り着き、身を隠すことに成功した。

ひとまずの安心が確保できた一行は少しの休憩の後、各々の自己紹介が始まった。

・・・・・・しかし、いがみ合っている国同士。みんな仲良くとはいかない。

キャピレットから演劇を見に来たという、ジュリエット、ティボルト、デボラ。一方、モンタギュー領の兵士である、ロミオとマキューシオ。

一時共闘したとは言え、お互いに信頼することはやはり難しいようで・・・・・・結局大聖堂内でもそれぞれの陣営に別れてしまっていた。

 

大聖堂に到着した直後は今すぐ、キャピレット領に戻ろうとしたティボルトとデボラだったが、国境線を越えるのは難しいというマキューシオの説明により、ひとまずの決着を迎えた。

 

 

 

「これで、モンタギューとキャピレットの関係者は全員終わったな? 次は・・・ジョー殿とディアンサ殿、それと・・・そちらのお方もよろしければお願いしたい」

二国の関係者が自己紹介を終えると、会話の音頭を取っていたロミオが会議に参加している全員の視線を他所から来たであろう3人に集める。

 

一同の視線に向けられ、ロレンス神父睨まれているのを知りながら葉巻を加えていたコブラがふと視線をあげた。

「ん? 自己紹介は終わったかい、それで俺たちの番だと‥‥‥そうだな、俺の名はコブラ、ジョーは俺の偽名だな、黙ってて悪かった…そしてコイツが仲間のディアンサ…んで、この大弓を持っている美人さんが友達のソーンだ、よろしくするぜ。俺たちがこの国に来た理由は演劇のチケットを知り合いから貰ったんで、息抜きがてら見に来たんだが…運悪くお宅らのいざこざに巻き込まれたって感じだな」

そう言ってコブラは葉巻を吹かすと、両腕を首の後ろで組んで柱にもたれかかった。再び、怪訝な表情をするロレンス神父をコブラは気にした素振りも見せない。

紹介されたディアンサはペコリと丁寧なお辞儀をし、ソーンは軽く手を振った。

「ディアンサです。よろしくお願いします」

「ソーンよ、よろしくね・・・あら?どうしたのかしらマキューシオさん」

 

「ジョー殿の本当の名前はコブラどのであったか、しかしその名前どこかで聞いたことがある気がする……どうした、マキューシオ?」

コブラの話しを聞いている途中から、目つきが変わり、ただならぬ威圧感を見せるマキューシオの姿にロミオとソーン、ロレンス神父を含めキャピレットの一同も困惑していた。

その中で異質な態度をとったのはコブラとディアンサ。

コブラは全く微動だにしておらず、一方、何かを悟ったのか残念そうな表情をするディアンサ。

「おい!どうしたんだマキューシオそんなに殺気だって」

突然の相棒の行動が分からず、マキューシオに詰め寄るロミオ。

マキューシオは剣から手を放さず、コブラを視界にいれたままロミオの質問に答える。

「いいか、ロミオ今俺たちは・・・いや、ここにいる全員がこの男に命を握られているんだ。‥‥‥最初から変だとは思っていたんだ。ふざけた口調の癖して、何が起きても直ぐに動ける姿勢を維持してやがった。決定打は演劇艇で見せた左手の銃と・・・この男の名前だったがな」

マキューシオの言葉で何かを思い出したのか、ロミオ・・・そしてティボルトが視線をコブラに向けた。

「なんだい?なんだい?もったいぶったいい方しやがって・・・」

「っ!!」

コブラの挑発ともとれる言葉に反応するマキューシオとティボルト。二人が今にも斬りかかりそうなタイミングで制止の声がかかる

「ティボルト!!それにマキューシオさんもいきなりどうしたんですか!!私は貴方達が何を危険視しているのか分かりかねますが、まずは話し合うと決めたばかりです。ここではそういった事は辞めましょう」

ジュリエットの怒りの籠もった声に驚き、怯む2名。一方ロミオは、そんなジュリエットに感心し、心に秘める思いをさらに強くしたのだった。

 

「ヒューッ! やるねぇ~お嬢さんもう少しで惚れちゃうところだったぜ」

このコブラの言葉に眉をひそめる人物が4人いたというのは別の話。

 

 

 

 

「この男は帝国に賞金をかけられている男だ。その賞金額は国家予算並だ。犯罪例でも帝国から秘宝を強奪、大量殺人と・・・・・・まぁ切りが無い」

「そ、そんな」

マキューシオの言葉を聞き段々と、顔を真っ青に変貌させるジュリエット。しかしここでマキューシオがジュリエットの思考を止める。

「だが、どれもこれも帝国軍が言っているだけだ。商人の話しによれば、殺したのは襲ってきた帝国兵のみで、少女の誘拐も・・・まぁ彼女のことだろうさ」

マキューシオの言葉で、少し冷静さを取り戻すジュリエット。

「これで、宝石などの窃盗まで嘘でなければ良いんだがな?どうやらコイツは黒らしいぜ」

「なるほど、だからマキューシオはコブラ殿から事実を聞こうとさっきの行動を起こしたのか」

「ああ、そうゆうことだ」

相棒の行動に納得がいき安心したロミオ。

 

「俺は帝国の話を鵜呑みにするつもりはねぇ、一時期、秩序の騎空団もコイツを指名手配していたが・・・なぜか、今は取り下げられている。…だが、俺はこの男から事情を聞いてから判断したいと思ってる」

マキューシオは一度言葉切った後、再びコブラに視線を向ける。

「で? 本当のところはどうなんだ――コブラさんよ?アンタはタダの観光客か?」

 

今まで静観を決め込んでいたソーンも、不安そうにしていたディアンサもコブラに視線を向ける。

全員の視線が集まり数秒、しばしの静寂の後コブラは口を開く

「俺に向かって泥棒かだって聞く奴がいるとは思わなかったぜ。 返答?そんなの――――」

コブラが問いに答えている途中、突然ディアンサが腕に付けているリストバンドから機械音が響きコブラの言葉をかき消してしまう。

 

 

「何で今なのかな?あ、レディさんだ。。―――・・・すいませんレディさん、今少し取り込んでて・・・・・・はい、そうです演劇の始まる直前で・・・はい。いつ戻るかですか?えっと、すいません遅くなるかもしれません。・・・・・・分かりました伝えておきますね・・・」

 

小型の通信機を知らない人達には、突然ディアンサが一人言を言い始めたとしか見えていない。コブラの言葉の続きよりも気になるのか、不思議な行動を見せるディアンサに皆の視線は向かっていた。

タートル号で待機しているレディとの通信を終えたディアンサが、視線を戻した時に向けられた視線の数々に驚くディアンサだった。

 

この後、必死に事情を説明しようとしたディアンサだったが、その全てが無駄に終わり、おかしな子という印象は拭えず・・・・・・最終的に隅っこで膝を抱え、いじける彼女を慰めようとするソーン。笑いを堪えるコブラの姿があった。

 

この、ディアンサの行動により、コブラの言葉はうやむやになり自己紹介は終わり、各々の休憩時間となった。

 

 

 

 

各々の行動をしていたところ、ロレンス神父にロミオが呼び出されていた。

「ロミオ・・・・・・疲れているところすまないな」

「いえ・・・・・・私は大丈夫です」

ロレンス神父の言葉に元気に返事を返すロミオ、演劇艇での戦闘を行ったが、彼の表情に疲れはみえない。

そんな彼を知ってかしらずか、ロレンス神父は笑顔を見せた。

「ふふ・・・・・・しかし・・・・・・お前の性格はよく知っているが、まさか、突然こんな日を迎えようとは・・・・・・」

「ロレンス様?」

含みのあるロレンスの言葉に疑問を感じるロミオ。しかし次のロレンス神父の言葉に目を見開くこととなる。

「お前もようやく・・・・・・真実の恋をみつけたようだな」

 

 

大聖堂の荘厳な雰囲気の中、ロレンス神父の言葉に驚きながらも冷静に受け答えをするロミオ。

静かな大聖堂内、聞こえる声は二人だが、この会話を盗み聞きしている人物がいた。

 

「何やら大事な会話と思って後を付いてきたら、コイツは不味い、人の恋路に手を突っ込むのは目覚めが悪ぃぜぇ~・・・・・・しかし・・・・・・臭うな」

そう言って盗み聞きしていたコブラは大きな欠伸をする。

コブラの声は幸い聞かれる事は無く、ロミオは胸の内を吐き出すように言葉を紡いでいる。

 

「・・・・・・ボクは今まで、国のことを第一に考えて生きてきました。今この瞬間に生きる恋よりも・・・・・・国の未来を見据えていたい。それに・・・恋よりもマキューシオのバカとつるんでる方が楽しかった」

ロミオの言葉は止まることはなく、崩壊してたダムのようにあふれ出続ける。

「ジュリエットと出会った瞬間。僕は確かに永遠を感じたんです。でも・・・・・・彼女が僕と同じ思いかどうかはわかりませんが・・・・・・」

 

コブラは柱に体重を預け、葉巻を加え、腕を組んだ。その後コブラは2人の会話が終わるまで静かにその場に立ち続けていた。

 

ロレンス神父との会話を終えたのか、ロミオは大聖堂の方向へと歩きさっていき、即座に物陰に隠れたコブラに気がつく事は無く通りすぎていった。

ロミオの独白を最後まで聞いていたコブラはロミオの率直さに笑みを浮かべていたが、ふと、一瞬のうちに顔を引き締めたかと思えば、ロレンス神父が消えていった扉を睨み付けた。

「あの表情は・・・あれはちがう。アイツはロミオを祝福していない。あの笑み・・・・・・あれは周りを不幸にするものだ」

 

普通の人が聞けばただの人生相談だっただろう。だが、コブラは盗み聞きを始めた直後、驚いた神父の表情を見た瞬間。コブラは一瞬サイコガンを撃つか、悩んでいたのだ。

コブラの今までの人生での直感が、ロレンス神父を警告していた。

 

結局撃つことを選ばす、最後まで話しを聞いていたが―――――

「どうやら、俺の知っている話とは違うみたいだな」

コブラは、ロミオが歩き去っていた通路・・・ではなく、神父が消えた扉へと手をかけ中へと消えていったのだった。

 

 

 

 

―――――――――――――――――――

 

 

 

 

「僕は・・・・・・ジュリアの気持ちが知りたい」

ロレンス神父との話を終えたロミオは、考え事をするため、大聖堂から夜道へと歩みを進めた。

するとそこで、考え事の理由であるジュリエットが夜道の段差に腰をかけ何か呟いているのを発見する。

「ああ、ロミオ、ロミオどうしてあなたはロミオなの?モンタギューと縁を切り、ロミオという名もお捨てになって」

ロミオの存在に気がついていないジュリエットは何かに願うように呟いている。

「それが無理なら、せめて私を愛すると誓って・・・・・・そうすれば、私もキャピレットの名を捨てましょう」

 

彼女は自分の思いを本人に聞かれているともしらず声に出し続ける。

「ロミオ、その名を捨てて。名前とあなたは関係ない・・・・・・名前を捨てて、私を取って!」

 

彼女の呟きに、ロミオは我慢出来ず、ジュリエットに向かって声を張り上げる。

「ジュリア!!!あなたの気持ち確かにうけとった!僕を恋人と呼んでくれ、それが新たな僕の名だ!モンタギューだの・・・・・・キャピレットだの・・・・・・そんな意味の無い名前は・・・・・・これからはもう関係ない!」

 

「ロ・・・・・・ロミオ様!?い、今の言葉を・・・・・・聞いていらしたのですか!!」

ロミオが聞いていたのに驚きの声をあげるジュリエット・・・・・・しかし

 

「やるねぇ~あの仕事一筋だったロミオが?こうも変わりますか?・・・その変どう思うよティボルトの旦那」

「ふん、俺が知るか。俺はジュリエットが幸せならそれでいい。だが・・・・・・あのロミオという奴の思いの強さは認めてやる。なんせ、次期国王筆頭が名前は入らないと言うぐらいだからな」

「あ、あの私・・・盗み聞きって良くないと思うんですけど~」

「いやいや、お嬢ちゃんも興味あるでしょ?さっきまで羨ましそうに見てただろ?」

「う、羨ましくなんかありませんよ!からかわないでくださいマキューシオさん」

 

 

男の相棒と、聖王軍の指揮官・・・そして2人に巻き込まれた少女が物陰に隠れていたのに気がついていなかった。

 

そんな時――――――

彼らの頭上にキャピレットの同盟国の侯爵を勤めるパリスが騎空艇に乗って現れる。

「ジュリエット様! ただいまお迎えに上がりました!」

 

 

突如姿を表した騎空艇だったが、各々の行動は素早かった。

即座にジュリエットの元に走っていったティボルト。キャピレットの関係者だと判断し、ロミオに駆け寄ったマキューシオ。

そして、何処からともなく、ディアンサの背後に現れるソーン。

「あらあら、大変なことになったわね。大丈夫?ディアンサちゃん」

「ソーンさん!いったいいつから?」

「ん~ディアンサちゃんが、大聖堂からあの2人と一緒に抜け出してからかしら」

 

 

 

パリスの乗って現れた騎空艇から聖王軍の兵士たちが止めどなく現れジュリエットと騒ぎで駆けつけたデボラを確保すると、即座に乗り付けた騎空艇に連れていってしまう。

やがて、ロミオとマキューシオ・・・そしてソーンとディアンサを聖王軍が包囲した。

 

 

「ティボルト殿・・・ジュリエット様の護衛ご苦労であった。貴殿も艇の中で待っていてくれて構わない」

 

そう言ったパリスはマキューシオ・・・そしてロミオ。ディアンサを守るように立つソーンに視線を向ける。

 

「事態は我々もある程度は把握している。ジュリエット様を殺害しようとしたのが、貴様らモンタギューの者であること。・・・・・・ロミオ様ご一行がジュリエット様を誘拐して何か企んでいるらしいが・・・・・・その企みは私が全て潰すため、なんら問題にはならない」

 

自信にあふれる言葉。しかし、パリスの言葉はこれで終わらない。

「だが・・・・・・演劇艇で暴れていたと噂されている人物。左腕に銃を持つ男――海賊コブラ・・・そしてその関係者だと思われるそこの小女がこの場にいるのは些か問題だ」

そこで、パリスはディアンサ自信も知らなかった事実を告げた。

 

「・・・・・・そこの少女は海賊コブラに誘拐されている人物として、帝国軍が捜索願いを出している。見つけてしまったのなら仕方無い。ジュリエット様の救助は成功し、当初の目的は達成しているが、誘拐されている少女を無視して帰ることは出来ん」

「・・・・・・わ、私がコブラさんに誘拐されて捜索願い・・・ですか?」

 

「そこの女性・・・・・・コブラの仲間ではないのなら・・・・・・大人しくその少女をこちらに渡してもらおうか。私の要求に従わない場合、貴殿もコブラの仲間と判断し、この場で討ち取らせてもらう」

突然告げられて事実に困惑しているディアンサ。しかし彼女の表情はソーンの影に隠れてしまっており、パリスは困惑しているディアンサの姿を見ることはなかった。

 

 

 

「ま、待ってくれパリス殿・・・確かに我々を襲ったのはモンタギューの者だが、そこの者たちは――」

「私は今、貴殿に話すことを、許した覚えはないぞ?さっさと艇に戻るがいい」

事情を説明しようとするティボルトだったが、パリスはジュリエットの安否が分かった以上、これ以上ティボルトの話しを聞く気は無いようだ。

 

 

「話しを聞く素振りすら見せないのね。困ったは~マキューシオさんのほうが、柔軟な思考を持ってるのね」

戦闘は避けられないと判断したソーンは弓を持つ手に力を篭め、矢を出現させる。

「美人に褒められて悪い気はしないが、今はそれどころじゃなさそうだ・・・・・・ロミオ、どうする?」

「決まっている。ジュリエットを取り返す・・・・・・と、言いたい所だが、ひとまずはこの場から逃げることに専念したほうが良さそうだ。パリスは本気で俺たちを殺すつもりらしいしな」

「オーケー、そんじゃ、いっちょ頑張りますか」

「ディアンサちゃん。貴方援護が得意って聞いてるんだけど・・・お願い出来るかしら?」

「は、はい!任せてください」

 

ソーン達3人の態度から、ディアンサを引き渡さない事を察し、呆れるようにため息をついたパリスは号令をかける。

「ふん、ならば・・・・・・ロミオ共々この場で息絶えるがいい――――」

 

 

 

 

 

 

 

「騒ぐなら他所でやってくれねぇか。五月蠅くて目が覚めちまったぜ」

 

 

 

 

 

 

パリスの号令は、大聖堂がある方向から突如聞こえて来た男の声によって中断させられることになる。

 

「誰だ!キサマは」

「俺か?・・・そうだな、今のアンタの中では誘拐犯ってとこだな」

 

「そうか、キサマがコブラかのこのこ自分から出てくるとはな」

「でぇ?俺のサインでも欲しいのか?」

「いや、そこにいる連中も含めてキサ―――」

「辞めときな、少しでもそこにいる連中にでも触れてみるといい・・・・・・お前らの大事な物がなくなるぞ」

そこには、いつの間にか左手の義手を外しサイコガンを騎空挺に向けているコブラの姿があった。

「っ!!―――――人質とは卑劣な」

コブラが戦艦を破壊出来る力を持っていることは、捕まえようとする。帝国軍が自信が世界に広めてしまっている。

そのため、コブラが騎空艇を壊せてしまう可能性を持つことを理解するパリスには十分な牽制となっていた。

大聖堂から歩みを進めていたコブラが、遂に囲まれていた4人のもとに辿り着く。

「こ、コブラさん!一体どちらに行ってたんですか?」

コブラが戻ってきて安心した表情を見せるディアンサ。

「ん?・・・ああちょっとな。後で話す。それと・・・・・・おいソーン、少し耳をかしてくれ」

「何かしら?」

サイコガンを騎空艇に向けたまま、ソーンに耳打ちするコブラ。

 

やがて、話しが終わりソーンが頷いたのを確認したコブラはロミオとマキューシオに視線を向けた後、ソーンの後ろにいる。ディアンサに近づき優しく抱き寄せると―――――

「少し、お宝を頂いてくる。心配しないで待ってろ」

耳元でディアンサにのみ聞こえる声で呟いたのだった。

 

「ロミオ、マキューシオ・・・演劇艇での借りを返してもらうぜ」

そう、呟いた直後。コブラは両手を挙げ、降参の意思を見せつつ、パリスに向かって自身が投降することを宣言し周囲を騒然とさせたのだった。

 

 




感想くださった方ありがとうございます。

本小説1話、2話とすこしずつ編集しています。よかったら読みかけしてみてください。少しは読みやすくなったと思います。


実際、コブラと関わった女性の大半は・・・・・・というか男も・・・・・・



感想くださると、私のやる気ゲージが上昇します。



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おやおや、ルームサービスを頼んだ覚えはないぜ?

2日前・・・コブラが、自身が捕まる代わりにロミオ達を今回は見逃すという提案に渋々ながら賛成したパリス。しかし誘拐されている疑いのあるディアンサは見逃せないとして、一悶着あった後、結局、ロミオがモンタギュ-の王城にて保護し、誘拐が事実だったならば其方に引き渡すことを宣言したことで、渋々ながら引き下がったのであった。

その後、ロミオ達一行はロミオの父である神王に謁見し、事の次第をはぐらかしながら説明。ディアンサとソーンを一時的に、客人として取り扱うこととなり事態は収束するかと思われたが、パリス達がコブラを連れて去って行く最中に話した自身とジュリエットとの結婚が明後日に控えているという話しをマキューシオが神王に伝えてしまったため、事態はさらに危険な方向へと進んでしまうこととなる。

 

 

 

そこは、ほの暗い世界。

辺りは石に囲まれ、触れれば肌寒く感じる場所。聞こえてくる音は付近に落ちる水滴の音のみ――。

そこは、とある島にある国王の住まう王城・・・その地下牢である。罪を犯した物が、処罰が決定するまで拘束される場所なのだが、近年、収監されていた物はおらず、看守は暇を持て余していた。

しかし現在、しかし2日前の深夜、ついにこの地下牢に一名連行されてきたのだ。連れてきた何処かの偉い人物は、“警戒を怠るな”など何度もしつこく伝えてきたが、看守からすれば馬鹿げた話しである。

繋がれている男に傷つけられた外傷は見当たらないが、両足に鋼鉄の枷をはめられ、右手は壁に拘束され、本来あるはずの左腕は無く、おそらく義手と思われる物と、何かの銃のような形のものは男の手の届かない範囲に置かれているのだ。

この状況から逃げ出せる者がいるならば、会ってみたいものだと看守は思いつつ、気晴らしに拘束されている男に声をかけたのだった。

 

「おい、アンタ一体何をしてこんなことになってんだ?・・・我らが王女様とお前を此処に連れてきた伯爵様の結婚式のパレードが後3時間もしないで始まるっていうのに」

看守の声に顔を上げた男は、捕まることになれているかのように、余裕そうに言葉を返してくる。

「へへっ、オレなんかを慕う奴を守るためさ・・・・・・まぁ、それとは別にこの城のお宝を貰うためでもあるけどな。それと、結婚式だぁ?どうせ、国の為とかそんな考えだろうよ。そんなことよりだ!・・・なぁアンタ、この城にはどんな宝があるか聞いた事を教えてくれねぇか?」

男の表情からふざけていると判断した看守は、自分も暇で仕方ないため、暇つぶし半分で動けない男に自分が噂で聞いた話しを語り出した。

「そうだな~この国の宝っていったら、王妃の像じゃないか?」

「ほ~如何にもって感じの奴だな」

「王家の秘宝らしいんだが、“真に国を想う気持ちに応え、覆いなる力を与える・・・とか何とか噂だな」

言い終えた所で看守が何か思い出したのか、目を見開く

「あ、後・・・これは3年前ぐらいに此処にアンタみたいに収監された奴が言ってたんだが、伝説と呼ばれている弓があるって話しだぜ、ソイツの話しによれば、覚醒寸前だとか何とか・・・・・・まぁココから動けないアンタには関係ない話しだ――――」

「感謝するぜ、自ら捕まって収穫なしってのは、笑い話にもなんねぇからな」

看守が言葉を言い終える直前。男の者だと思われる義手が独りでに動きだし、看守の意識を絶った。

「まぁ、こんなことしなくても、この枷ぐらい引きちぎれるんだがな」

枷を外し、サイコガンと義手を左腕に収めた男・・・コブラは簡単に地下牢を脱出し、結婚式のパレードの準備で盛り上がっている最中、看守の言っていた2つの宝を探すため城内を探索し始めたのだった。

 

 

 

コブラが地下牢を脱出した同時刻――

 

ヴェローナ大聖堂。

ジュリエットの結婚を知り傷心のロミオはロレンス神父に今までの出来事を説明していた。

「そうか・・・・・・あの夜に、そんなことが・・・・・・」

「せっかく神父様に背中を押していただいたのに・・・・・・申し訳ないです」

意気消沈するロミオにロレンス神父は声を潜めて話しかける。

「こんな時になんだが・・・・・・実は、ヴェローナ教会の仲間から・・・・・・ジュリエット王女の暗殺計画の噂を聞いてな」

「・・・・・・なっ!?どういうことですか!?」

ロミオはロレンス神父から、神王の指令のもとで、パレード中に暗殺するという計画を聞き、阻止する方法を思いつかないまま計画を止めようと動こうとする。

 

その時、ヴェローナ大聖堂にマキューシオとソーンが現れる。

「ロミオ。やっぱりここにいたか・・・・・・それにしても良い目をもお持ちのようだ。王城からこの大聖堂に入っていくロミオの姿が見えるとは」

「ふふふ、私は天性の狩人だからね目はいいのよ、だから今城の窓からこっちを見ているディアンサちゃんの姿も見えるわよ」

そう言って、恐らくディアンサがいるであろう場所に向かって手を振るソーン。

現れた二人にロミオは神妙な面持ちでジュリエットの暗殺が秘密裏に計画されていることを伝える。

「おいおい・・・・・・それにしても、いきなり話しが大事すぎねぇか?」

話しを聞き終えた、二人の表情は似通っており、ソーンは何も声に出さないが、自身の右手首に巻かれている金属の腕輪を左手で支える様な素振りを見せている。

「正直、どうすればいいか・・・・・・行ってみないとわからない」

「お前にしちゃあ・・・・・・ずいぶんと無計画だな」

一旦落ち着かせようとするマキューシオの言葉にロミオは耳を貸さず、一人でも行くと二人の元を歩き去ろうとする。

「やれやれ。オレは、これ以上付き合いきれねぇな。・・・・・・ここで待たせてもらうぜ」

「・・・・・・分かった、コブラ殿にディアンサ嬢の護衛を頼まれたのは俺たち2人だ。任せてすまいマキューシオ」

少し寂しげな表情をしたロミオだったが、この場に来てからずっと自身の右手首に触れ続けているソーンに視線を移す。

視線を向けられている事に気がついた本人は――。

「・・・・・・あら?私・・・そうねぇ~いいわよ手伝ってあげる」

「感謝するソーン殿」

 

マキューシオを残し、キャピレット領に向かおうとする二人。

そんな中ソーンが振り向きマキューシオに向かって言葉を投げかける。

「マキューシさん・・・ディアンサちゃんの警護なら私が空からやるので、気にすることはないですよ」

「・・・・・・そうかい。なら、オレも参加させてもらうぜロミオ。だが・・・・・・覚えとけ。こんな無茶に付き合うのもこれで最後だからな・・・・・・」

「ありがとう、それにソーン殿も恩に着る」

 

「いいわよ別に、私は空から暗殺者を探すわ・・・・・・あと、マキューシオさん?」

「ん?」

 

 

 

 

「本当にこれからロミオさんの無茶に付き合わないつもりなの?」

ソーンの言葉に動きを止めるマキューシオ。しかしそれも一瞬彼は笑みを浮かべ楽しそうに応える。

「・・・・・・当然、冗談さ。俺は何度だって、コイツの頼みなら無茶でも付き合うとおもうぜ」

 

 

 

 

 

 

三人はロレンス神父が教えてくれた秘密の通路を用いてキャピレット領へと踏み込んでいったのだった。

 

「あっらぁ~」

キャピレット領の中央通りではジュリエットとパリスの結婚パレードが開催されている。

その最中、城から民家の屋根へと飛び降りる物陰そして衝突音。

「クソぉ、せっかくボーナスタイムの宝探し中だって言うのに、ソーンの奴覚えてやがれ」

 

愚痴をいいつつぶつけた鼻っ柱をさすりながら起き上がるコブラ、肩に白い袋を担ぎながら、屋根の上を高速で移動し始める。お宝探索中、ソーンからの通信が入り、耳を傾ければ、聞こえてきた内容は現在行われているパレードでのジュリエットの暗殺という内容だった。

知ってしまった以上、見捨てるのは目覚めが悪いと判断したコブラは、急遽、探索を終了し発見していた金色の弓を白い袋に入れ城から飛び降りたのだった。

やがて、遠巻きだが目視でジュリエットとパリス。そして守るように立つティボルトの姿を発見する。

やがて、突如空中へと飛び上がる物体を目視し、それがソーンだと理解したコブラはさらに、走る速度を上げながら殺気を放つ人物を探すため意識を集中し始めたのだった

 

やがて、ジュリエットとパリスを乗せた馬車が中央教会へと辿り着く。

 

するとコブラは中央協会の直ぐ近くの民家で足を止め白い荷物をドスンと地面に落とし、袋の中から盗み出した弓を取り出し構えるが―――――

「へへへッ、弓があっても矢が無くちゃ使えねぇぜ。」

袋の中に丁寧に戻し、左腕からサイコガンを抜き放つ。

構えた状態で目を閉じ狙撃手の気配を探し始めたのだった。。

 

 

 

上空から狙撃手を探すソーン。遠の昔にコブラが向かって来ていることが見えていたソーンは一度、ロミオ達に視線を向ける。

ロミオとマキューシオ二人とも頑張ってはいるが、人混みの影響で思うように近づけないでいる。何やらロミオが作戦を考えたらしく二人が話し合いを終え、強引に馬車に突っ込んで騒動となる。

ロミオが叫んだことによりジュリエットが姿を現した直後――――

 

ソーンの視線の端に窓を少しだけ開け、狙撃銃を構える人物を発見する。

「見えた!」

狙撃手を確認した瞬間、左手に矢を出現させ瞬く間に狙撃手に向けて撃ち放つ。

彼女の矢は狙った目標に外れることは、けして無く。見事に直撃し目標を沈黙させた。

長距離からの狙撃に加え、弓のため音は出ず、気がついた人物はこの場に三人といないだろう。

暗殺を阻止出来たと安心した瞬間、ソーンの心臓を凍らせる者が視界に映る。

 

ソーンは狙撃兵を確かに沈黙させた。しかし・・・・・・狙撃兵が一人しかいないという訳ではない。

先ほどまではソーンの視線外だった箇所・・・・・・つまり、一人を仕留めた時は開いていなかったはずの窓が僅かに開き、銃口が窓枠から外に出ているのを発見する。

ソーンの目は驚異の力をもっているが、弱点が無いわけでもない。例えば彼女の目の前で閃光弾が炸裂した場合。通常よりもダメージが大きいだろう。

今回は、建物の中・・・彼女の瞳でも見えない場所だったため、気がつくのが遅れてしまった。

 

 

広場では・・・馬車の近くで狙撃に気がついたのか、ティボルトがジュリエットを庇おうと射線上に立つ姿が見える。

 

急遽新しい矢を構えるが、時既に遅く―――――

中央広場に銃声が響いた・・・・・・しかし銃声だけでは無く、銃声が鳴るよりも一瞬早く、光弾が駆け巡っていった。

 

 

 

 

 

 

 

静まりかえる中央広場、始まりは女性の悲鳴・・・やがて、連鎖が始まり一斉に悲鳴を上げる観客。

銃声とほぼ同時に駆け抜けた光弾、中央広場は蜘蛛の子を散らす様に大混乱に包まれる。

 

最初は一つだったものが突如分裂し3本の光となって広場を駆け巡り狙撃手とその仲間を同時に撃ち抜き無力化したのをソーンの瞳は捉えていた。

彼女は驚いた後、目を輝かせ始める。

「殺気を感知した時点で光弾が撃ち出される常識外の早撃ち、そして殺気を瞬時に感知する彼・・・・・・凄いわね。シエテが気にする理由も分かるわね。

 

 

 

広場を駆け巡った光弾を見て、狙撃手がコブラだと勘違いしたパリスは、聖王軍を指揮しコブラを捕まえるよう指令を出す。

「コブラだ!屋根の上にいる!あの大罪人を捕まえろ!!・・・それとそこに居るロミオを捕らえろ!」

「そりゃねーって!!こっちは――ヒィ!危ないったらありゃしねぇ!当たったらどうするんだ!!」

パリスの指示で攻撃する聖王軍の攻撃を叫びながら躱すコブラ。

「けっぇ~しつこい野郎だぁ!!やってらんねぇぜ」

そう言い残して、コブラは中央広場から姿を消す。コブラが戦闘を行っている近くでロミオとマキューシオもこの場から撤退しようと戦っている。

 

「また、コブラ殿とソーン殿に借りが出来てしまったな・・・マキューシオ!俺たちも撤退しよう」

「そうだな・・・・・・逃げられればだがな」

決死の覚悟を身にまとい聖王軍の攻撃を捌きながら包囲網を突破しようとする2人。かれらに諦めの表情は無い。

見たところ、ジュリエットを守るためティボルトは彼女の側を動かないのを確認しつつ二人は後退していったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

コブラの追跡に大人数が向かったようで、ロミオとマキューシオは、手傷を負わずに撤退出来ている。

本来ならばコブラが役半数以上を引き連れて消えたとしても、2名で捌ける人数では無かった(・・・・)

「待てっ・・・・・・逃がすかぁ!」

マキューシオに向かって振り降ろされた剣を難なく受け止め、弾いたのち鎧の隙間を斬りつけ無力化した。

「これで・・・五人ってとこか。へっ・・・死ぬ気でやればなんとかなるもんだな!・・・・・・まぁ実際問題全然辛くないんだがな」

「気を抜くな!まだ追っ手がいる!・・・彼女が大半の兵士を倒してくれているとしても、一太刀喰らえば、どうなるか分からない!」

二人が撤退を初めてから、間もなく、彼らが帰る道を作るかのように、無数の矢が飛んで着始めた。

最初は警戒した二体だったが、飛んで来た全ての矢が聖王軍に直撃していき、聖王軍を大幅に減らしていくのを見て彼女の援護だと気がつく。

「こいつは、すげぇ・・・彼女だけで国とやり合えるじゃねぇか?・・・おっと!ロミオあそこの路地を曲がるぞ!」

「ああ、分かった」

 

 

 

「くそっ・・・・・・逃がすかぁ!!・・・っなんなのだ!この矢は我々のみを正確に撃ち抜いてくる!一体何処から・・・」

コブラに逃げられ、憤るパリスが撤退する2名を睨み付けている。彼は現在、先ほどまで自分が乗っていた馬車を立てにすることで、なんとか空から墜ちてくる矢を避けてはいたが、動く事が出来ないでいた。

「撃て!逃がすくらいならロミオを撃ち殺せ!」

「はっ!大盾を持つ者は固まって、盾を上に向けて矢に耐えろ・・・狙撃班はその下で構えろ」

聖王軍の一人が指示をだし、何とか射撃準備を整えた。

そして、マキューシオとロミオが曲がり角を曲がる直前―――――

「撃てぇ!」

発射の号令が中央広場に響き渡った。

 

 

「ん・・・・・・!!っ!ロミオ! 危ない!」

マキューシオがロミオに標準が向いていることに気がつき咄嗟に、盾になろうと射線上に飛び込んだ。

しかし・・・聞こえて来たのは銃声ではなく爆発音。

マキューシオの目にはスローモーションでこちらに向けられた銃に、横から突き刺さった矢が見えていた。

 

 

銃弾を放とうとした兵士は、矢を受けたことで発生した爆発に周囲の兵士も巻き込みながら吹き飛んだ。

「マキューシオ!!」

「大丈夫だ!撃たれてない。急げ、このまま逃げ切るぞ!」

 

路地を曲がった二人の前にロレンス神父が姿を表す。

「こっちだ!この先に秘密の通路がある!」

するとそこに、頭上からソーンが降りてくる。

「よっと、・・・無事二人とも撤退は出来たみたいね。最後のは少し危なかったけど」

彼女は疲れた素振りもみせず、出発前と同じ表情で話しかけてくる。

「感謝するソーン殿。あなたがいなかったら、どうなっていたか分からない」

「俺からも礼を言わせてくれ、正直銃口を向けられた瞬間・・・覚悟してたぜ」

 

 

追っ手をまいた一行はロレンス神父に案内された小さな聖堂の地下に隠されていた秘密の通路を進むのだった。

 

 

 

 

コブラが聖王軍から逃げ回っている間に、ロミオとマキューシオはソーンと合流し、元来た道から大聖堂へと戻ることに成功する。

「ふぅ・・・どうやら無事に帰って来られたようだな」

「あ、ああ しかしコブラ殿を置いてきてしまった」

自分が生還できたことよりも置いてきてしまったコブラの事が気がかりで仕方がないロミオ。

 

「彼なら大丈夫よ・・・これはディアンサちゃんに聞いたんだけど・・・・・・彼の呼び名は不死身のコブラなんですって」

そう、彼が帰ってくるのを確信するソーンであった。

 

 

 

 

 

ジュリエット暗殺未遂事件は二国間の緊張状態をさらに圧迫し・・・ついに決壊した。

キャピレットは暗殺未遂事件はモンタギューがコブラに指示をしたとして、パリスを指揮官に任命し、ティボルト、ジュリエットの必死の説得も虚しく同盟国の力も借りてモンタギューへの戦争を宣言した。

 

 

ロミオとマキューシオから見ても、キャピレットがそう認識してしまう可能性があるのは分かっていた・・・・・・だがもう一つの国、自分達が兵士として守るモンタギューの行動に目を見開くこととなった。

 

 

モンタギューの神王は自ら計画したジュリエットの暗殺計画を都合良く現れたコブラになすりつけた。

その後公的に、モンタギューは暗殺未遂への関与の一切を否定。また、自国の名誉を守るとコブラ捜索においては協力することを宣言した。

 

そればかりでは無く、マキューシオからディアンサの事情を聞いていた神王は、『コブラが誘拐したと思われていた少女は、コブラの犯罪グループの一員であると自身が証言した』と宣言しディアンサを拘束、尋問したのち、数日後帝国軍に引き渡すとしたのだった。

 

自身は何もしていないが、あらぬ疑いをかけられ、さらに宣戦布告されたと世間にアピールした後、宣戦布告に応じる対応を見せ、諸侯へ呼びかけ兵を集め、決戦の準備を開始した。

 

 

 

 

 

両国の決戦は近い・・・・・・

 

 

 

 

 

 

神王は戦争に持ち込むまで、最良の結果が出せたと考えているのかもしれない

だが・・・・・・暗殺を阻止したのにも関わらず実行犯として聖王軍に追われ・・・・・・神王に暗殺の罪をなすりつけられた。これらは、男にとってはよくある事かも知れないが・・・

それに加えて・・・・・・自分を慕う少女を傷つけようとしている人物をあの男が許すだろうか

 

 

 

 

 

 

―――――「オレだ。少し頼みがあるんだが・・・・・・何をするかって? 決まってんだろう。借りはきっちり返す。そんで、アイツが恐怖を感じる前に助け出すのさ。・・・場所は・・・・・・だ。よろしく頼むぜ」




誤字脱字の訂正ありがとうございます。
また、感想くださった方もありがとうございます。

本編とは少し違った話に変わってきたかと思います。無事に収められればいいですが・・・・・・(汗)







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手を頭にのせろ!!じゃないとのせる頭がなくなるぜ

ディアンサが異変を感じたのは太陽が沈みかけていた時であった。

今日はジュリエットとパリス侯爵の婚姻パレードが開催されるとして、ディアンサの客室は城の上層にあり、客室から見えるキャピレット領が異様に盛り上がっていたのがディアンサの目からも確認できていた。

 

陽が沈み、そろそろソーンが戻ってくる頃合いだと思っていた時、突然無数の足音が廊下から聞こえ始め、ディアンサのいる客室に段々と近づいて来ていた。

「・・・なにかあったのかな?」

近づく足音に違和感を感じつつも自分には関係ないことだろうと思ったディアンサだったが、その考えは裏切られることとなる。

無数の足音はディアンサがいる部屋を通り過ぎる・・・・・・ことはなく、彼女のいる部屋の前で止まり、次の瞬間、大きな音を立てながら扉が開かれた。

 

 

「・・・・・・?!! ど、どうしたんですか!一体・・・ちょっと!!」

突如押し入ってきた8名の神王軍は困惑するディアンサを瞬く間に取り囲んだ。

事態に驚き危険を感じたディアンサは、この場から逃げようとしたが―――――

 

「痛い!痛いです!は、離してくださ――きゃっ!!!」

出入り口は一つ、さらに既に彼女は取り囲まれており逃げ場は元々存在しなかった。

 

兵士の一人がディアンサの手を掴まえると、容赦なく彼女を床に押さえつけた。

「うっ・・・・・・」

押さえつけられた衝撃で少女が痛ましい悲鳴を上げる。痛みに耐えつつそれでも何とか、拘束をふりほどこうと暴れるディアンサだったが、大男と少女の力の差は歴然・・・その実虚しく逃れることは出来なかった。

 

「目的を確保した。直ちに撤退――――――」

心がこもって居ないかのかのように冷静な声を発する神王軍の兵士の一人・・・・・・しかし、兵士の言葉は最後まで紡がれることはなった。

 

 

客室の外から・・・・・・突如、窓を割って赤色の光弾が入り込み、湾曲するとディアンサを取り押さえていた兵士の心臓を貫いた。

 

兵士の心臓を貫いたタイミングで割れた窓から人影が客室に飛び込んでくる。

「何者だ!!」

「ピーターパンさ」

入ってきた人影は、続けざまに二発、光弾を放ちディアンサの近くにいる兵士達を沈黙させる。

 

ここまでの時間は5秒もかかっておらず一瞬の出来事であった。

 

月明かりが差し込み、このタイミングで残り五人の兵士は入ってきた人物の姿を確認することが出来た。

 

赤いレギンスを着込み、金髪で長身・・・・・・そしてこの人物の代名詞・・・・・・大男の左腕、肘から下には銃が付いていた。

「さっさとソイツから離れて手を頭にのせろ!!じゃないとのせる頭がなくなるぜ」

 

コブラの態度・・・とぼけた口調は未だ健在だが、彼の表情・・・・・・それを見た途端、大半の人物は言葉をなくすだろう。

 

そこにあるのは普段からは考えられないほど凜々しい姿。

地獄が寝ぐら、悪魔が友の、本物の殺人者の顔である。

 

例え、サイコガンを向けられていなかったとしても、言葉を発っせた兵士はこの場にいなかっただろう。

 

 

 

拘束から解き放たれ、自分に覆い被さっていた兵士の死体を退かし、ディアンサは素早く立ち上がると、入ってきたコブラの背後へと素早く身を移動させた。

 

瞬く間に約半分の兵士を無力化され、そして蛇に睨まれたかのように動けない神王直属の兵士たちだったが、優秀な兵士なだけあり、時間がたつと共に冷静さを取り戻す。

 

一人の兵士が入ってきた男の命令を聞かずに剣を抜こうと手をかけた途端・・・・・・

コブラは容赦なく兵士に光弾を放ち、沈黙させた。

 

「残り、四人・・・動けばお前らもあの世行きだ。選べそこで大人しくしているか・・・死ぬかだ」

そう言ったコブラは、左腕のサイコガンを向けたまま、自分の後ろに隠れた少女の方を振り向いた。

 

「ディアンサ・・・・・・怪我はないか?」

ディアンサは顔を上げ、信頼出来る人物の登場に安堵の表情を見せる。

「大丈夫です。またご迷惑をおかけしてすいません」

「いや、問題ないね。囚われの姫様を救い出すのは慣れてるからな」

そう言って、コブラは加えている葉巻を動かしながらディアンサにウィンクをする。

 

「さぁてと・・・そんじゃ戻りますかね。いくぞディアンサ」

 

 

その後、部屋で四発銃声が響いた後、窓の外に浮遊してた2輪車に跨がりコブラとディアンサは颯爽とモンタギュー城を去って行く。

 

 

 

銃声を聞きつけ、駆けつけた神王軍の兵士は、地面に倒れる仲間と、淡い水色の光に包まれ動く素振りを見せない四人の仲間の兵士を発見するのだった。

 

まるで、水色の光の中では時間が止まったかのように動かない。

謎の現象の報告を聞き、ディアンサを取り押さえる命令を出した神王は、自分は判断を間違えたのではないか?と心の内で考え始めるのだった。

 

 

淡い水色の光の原因・・・・・・その正体は彼らの知るよしもないもの。

これは以前、コブラ本人も喰らった経験があるもので、非常に厄介なものである。

時間弾・・・・・・ディアンサが以前の戦いの途中、自衛の為とコブラが貸し与えた武器で、この国に来て以降も一度も手放さなかった、肩から斜めがけしていた赤色の銃の弾薬である。

 

時間弾・・・撃たれた者の周りの時間の進む速さを10000分の1に遅くなる。モンタギューの者がどれだけ調べようとしても、答えに辿り着くことは出来ないだろう。

 

 

太陽が沈み月明かりに照らされながら、空を移動する2輪車が一台。

コブラ達が跨がって移動している二輪車・・・それは、ディアンサがタートル号内で何度も見かけたことがあるもので、コブラがたまに整備していたのを見ていたのを思い出す。

「コブラさん、今更ですけど・・・これ飛べたんですね」

「おうよ、言ってなかったか・・・へへへ、まぁここら一帯じゃオーバーテクノロジーだろうがな。どうする?ドライブとしゃれ込むかい」

「もう、コブラさんは・・・また今度、連れて行ってください・・・・・・それよりも自ら捕まってまで、今回は何を貰ってきたんですか?」

 

「これさ――まだよく調べてねぇが、飾り物じゃなくて普通に使えるものらしいぜ」

ディアンサの質問に自分の宝を自慢するかのように、どこからともなく黄金に煌めく大弓を取り出し、ディアンサに投げ渡すコブラ。

 

「おっと・・・また変なの見つけてきたんですね・・・・・・なんですかこの弓、矢は無いんですか?」

「ああ、矢は無かった・・・さっぱり分からねぇぜ。まぁソーンにでも聞けば分かるんだろうさ」

 

会話をしつつ、二人は日が沈んだ暗闇の世界へと姿を消していったのだった。

 

 

 

 

 

 

なんとかモンタギューとキャピレットの争いを止めようとするロミオ達・・・二人はヴェローナ大聖堂で夫婦の近いを飼わした者は決して離婚が許されないという決まりを利用し、ふたつの国のすれ違いを正そうというロレンス神父の計画を立てていた。

しかし、モンタギュー王がコブラにジュリエット暗殺の罪を擦り付けた事を知り、急遽ディアンサを助けようと動き出していたロミオとマキューシオだったが・・・・・・

 

コブラが、颯爽とモンタギュー城に侵入しディアンサを救出し終えていることが知れ渡り、コブラの凄さに驚愕しつつも、予定通り、ジュリエットに仮死状態にする薬をロミオがジュリエットのもとに向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。一行のもくろみ通り。ジュリエットの葬儀は、ヴェローナ大聖堂で密やかに行われた。

ロミオは作戦が成功したことに一安心しながらロミオとマキューシオは葬儀の様子をソーンと共に陰から伺っている。

泣き崩れるデボラや、怒りに拳を握りしめるパリス。そして無言で立ち続けるティボルトの姿を見つつ、ロミオは隣に佇む昨晩突如姿を消していたシスター服を身にまとうソーンに言葉を投げかけた。

 

「ソーン殿・・・・・・一体貴方は今まで何を?」

パレードでロミオとマキューシオを助けた後、ソーンは突如姿を消したと思いきや、ジュリエットの葬儀が始まったタイミングで再びロミオ達の前に現れたのだ。彼がソーンの行動に疑問を持つのも頷ける。

 

「ふふ、すこしコブラに頼まれてね。この国で大罪を犯した人物と不自然死した人達の墓の場所を調べてたのよ。それで、ここの地下の石桶を調べてたってわけ」

ソーンの言葉に、なぜコブラがそのような事を頼んだか皆目見当が付かないロミオは首を傾げる。

「いいのよ・・・コブラの考えすぎかもしれないから。私には彼がなぜ調べろと言ったのか理由は分からないし」

 

「そうゆうものか・・・しかし、不自然な死に方は分からないが・・・・・・神王に反逆した者たちは、確かにここの石桶に安置されると聞いています」

「そうなのよ。私も見てきたけど・・・中々の人数がいて驚いたわ。貴方の国は大変ね」

 

「お二人さん。話すのは構わねぇと思うが、もう少し声を落としたほうがいいぜ。みろよティボルトの旦那がこっち睨んでるぜ?」

 

小声で話す二人だったが、声が大きくなっていることをマキューシオが注意し、三人は睨み付けるようにこちらを見ているティボルトの姿を視界にいれ、会話を中断させた。

 

それからしばしの時間が流れ――――――

 

「これよりジュリエットは地下の霊安室に安置される」

そう言って、ロレンス神父はジュリエットの葬儀を終わたのだった。

 

 

 

仮死状態のジュリエットを霊安室に運び込み、その場に向かったロミオとソーン・・・・・そしてティボルトの姿。

マキューシオはにらみ合う両軍を偵察しに向かった為、この場にはいない。

 

ティボルトがこの場にいる理由・・・・・・それは昨日、ジュリエットの元に向かうロミオをティボルトが発見した為である。運良く直ぐに戦闘にはならず、話し合いの据え、彼はジュリエットの幸せを願い、ロミオ達の作戦に協力することを選んだのだった。

 

「ここなら・・・・・・ひと目にもつかないだろう」

「本当にジュリエットは無事なんだろうな」

心配そうにジュリエットに視線を向けるティボルト。仮死状態と分かっていても不安で仕方が無いのだろう。

「大丈夫だとも。さぁ・・・・・・ロミオ。ジュリエットをその石桶の上へ・・・・・・」

「はい・・・・・・」

 

そして、ロレンス神父は薬がきれるまでは決して目覚める事が無いと言うが・・・その直後目覚めの呪文があると言い始める―――――

 

「今から私が・・・薬の効果を払う・・・覚醒の呪文を唱えよう・・・・・・ロミオは、ジュリエットが目覚めた時に危険が無いようにその体を支えてくれ・・・・・・」

「はい!分かりました」

そう言って、ロミオはジュリエットの体を優しく抱きかかえようとして―――――

 

 

 

 

「そう、ロレンス神父、貴方はやっぱり―――」

そう小さく呟いたソーンは手に持つ弓を強く握りしめた。三人ともジュリエットに意識が向いており一番後方にいたソーンのつぶやきを耳にした者はいなかった。

彼女がここまで、神父を気にしていた理由・・・・・・それは演劇があった日の夜。コブラが自ら捕まる直前・・・通信機を渡すと同時にロレンス神父を警戒しろとの話しが、あったからである。

 

ソーンは別の目的で動くコブラの代わりにロレンス神父について調べるのと、同時に定期的に連絡を取り合っていた。そのため、ディアンサの危険を知ったソーンがコブラに連絡をとり、素早い救出劇が展開されることになったのである。

 

二人の体が重なるのを見届けたロレンス神父は、呪文の詠唱を始めていた。

 

ソーンは静かに弓を構えると矢を出現させ、神父に狙いを定めたのだった。

 

 

 

 

「汝・・・・・・覚醒した眠れる獅子・・・・・・凍える補のを巻き起こす・・・・・・汝――――」

 

目が覚めるのを今か今かと待つロミオだったが、偶然、後ろに目を向け困惑することになる。

 

すると視線の先には修道服を脱いでおり、いつもの服装に戻っているソーンがロレンス神父に向けた弓を構えているのが目に入る。

急ぎ視線をロレンス神父に向けたロミオだが、ロレンス神父とティボルトは今もジュリエットの方を向いており気がついていない。

 

「惹かれ合う陽極の標をもって・・・・・・今・・・・・・ここにその姿を―――」

「ロレンス神父!!!!」

 

 

突如ロミオの視界が全てスローモーションに変化する。

ジュリエットを抱えた状態でロレンス神父を突き飛ばす。すると突き飛ばされたロレンス神父の頭部があった場所を高速で矢が走り抜ける。

 

 

 

回避に成功した事を安心したロミオが、背後から弓を引いたソーンに敵意を向ける直前。

 

今まで見たこともない邪悪な笑みを浮かべたロレンス神父が瞳に映る。

「・・・・・・え・・・」

 

彼は邪悪な笑みを浮かべながら最後のことばを呟いたのだった。

「表せ・・・・・・」

 

 

その後、自分と手に抱えるジュリエットが、目映い光に包まれていくのをスローで他人ごとのように見ていたロミオ。

 

光が収まった直後・・・彼の体を内側から焼き尽くすかのような痛みが駆け抜けたのだった―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロミオとジュリエットから放たれた閃光・・・・・・危険を感じ、寸前のところで瞳をそらし、回避したソーン。背後から攻撃をロミオの妨害で失敗したことを悔やみつつも二本目の矢を出現させた時―――。

 

「ふはは・・・・・・ここまで長かった・・・・・・ついに!ついにやったぞ・・・・・・」

「!!・・・・・・くっ!」

ロレンス神父の言葉と共に発した二度目の閃光は対処が遅れ、視界が真っ白になる。

 

 

 

 

閃光と共に地下を揺るがす衝撃の後、目の前に何かが現れたのを気配で感知したソーン。

その場に突如姿を現す星晶獣オクシロモン。

狭い室内だが、この場で倒す事も彼女なら可能だったかもしれない。彼女が光で目を一時的に潰されていなければだが・・・・・

 

 

 

 

事態が把握出来ず体に奔る激痛に、顔を歪めるロミオと困惑しているティボルト。

ロレンス神父は星晶獣オクシロモンを目覚めさせることが狙いだったと明かす。

「本当に・・・・・・本当にありがとう、君は最後の最後まで、私を助けてくれた。ロミオ!これでもう、君の役目は終わりだ。星晶獣オクシロモン。我をここから連れ出せ!」

 

「逃がすと思う?神父さん」

「ふふふ、君はもしかしたら、凄い人物なのかも知れないが、今の君に何が出来るようには見えないよ」

 

 

 

ソーンを小馬鹿にした後、ロレンス神父はは自分を主と認める星晶獣オクシロモンに命令し憑代であるジュリエットを伴いながら地下の霊安室を破壊し飛び出していった。

「「ジュリエット!!!」」

大声を上げるロミオとティボルト。

 

 

「待て!!ジュリエットを離せ!!」

ジュリエットを追って真っ先に飛び出していくティボルト。

自分もそんな彼の後を追おうとするロミオだったが、視界に端に、目を押さえうずくまるソーンの姿を見つけ駆け寄る。

「ソーン殿大丈夫か。それよりも僕は大きな間違いをしたようだ」

 

「いいわ、大丈夫。私の目は少し繊細なの・・・・・・しばらく動けないと思うからロミオ君はあの神父をティボルトさんと一緒に追って。このままだと大変なことになるかもしれない」

 

「分かった」

ソーンに返事をしたロミオは、星晶獣オクシロモンとロレンス神父の後を追いかけて破壊されて霊安室を去って行ったのだった。

 

 

 

 

 

ロミオがティボルトを追いかけると、外では、大聖堂で起こった異変を感じて引き返してきたパリスがおり、ティボルトと二人でロレンス神父、彼の操る星晶獣オクシロモンと向かいあっていた。

 

「なっ・・・・・・なんだこいつは!!!?お前は正体を知っているのかティボルト!!」

 

「あの化け物は星晶獣だ。あの神父が操っている・・・・・・はずだ」

 

そこに現れる、ロミオ。彼が来たことに気がついたパリスが驚きの声をあげる。

「ロ・・・・・・ロミオ!キサマ・・・・・・何故ここに!!」

「話しは後だ!今はあれを退け、ジュリエットを助ける!」

 

ジュリエットの言葉に反応し、パリスは星晶獣オクシロモンに目を向け目を見開く。

「なに!?あ・・・・・・あれは・・・・・・ジュリエットの亡骸!!」

 

「違う。パリス侯爵・・・・・・ジュリエットはまだ生きている。訳は後で説明します。ですから今は協力してほしい!!」

 

「く・・・・・・一体なにがなんだか」

ティボルトの嘘に見えない真剣な表情とあまり丁寧とは言えない言葉を受け混乱するパリスであったが、ジュリエットを心配するティボルトを信じ、協力することを選択し、剣を抜き構えたのだった。

 

「やれやれ・・・・・・のこのこ戻ってくるとは揃いも揃ってバカな奴らだ・・・・・・」

「・・・・・・ロレンス神父・・・いや!!ロレンス!説明を求めたい!」

 

パリスのロレンスという名前に苛ついた反応見せたロレンス神父は、自分が11年前の王位継承者、イアゴであると言い放ち三人を騒然とさせたのだった。

 

「イアゴは・・・・・・11年前に死んだはずだ!」

「その通り・・・・・・確かに我は死んだ・・・・・・いや、正確には殺されたんだがな・・・・・・」

イアゴは一度言葉を区切りロミオに視線を向けた後―――

「ロミオ・・・・・・貴様の父親、モンタギューにな!」

 

「・・・・・・なっ!?でたらめを言うな!・・・・・・父上がそんな卑劣な真似を・・・・・・・」

父への暴言を正そうとして、言葉が途切れてしまう。その姿を見てイアゴは笑みを深くする。

「言えないだろう?今回の王女暗殺事件計画・・・・・・さらには助けに入ったコブラに汚名をきせ、奴が連れていた少女をも殺そうとしたんだからなぁ!!お前は気づいていながらも目を背けているだけだ」

 

「くっ―――――」

 

反論できずにいるロミオ、しかし、劣勢に立たされた彼を助ける声が聞こえてくる。

 

 

「・・・・・・だが、お前さんも人の事を言えないと俺は思うがね。そこら辺どうなのよイアゴさんとやら」

 

「?!何者だ」

言葉を詰まらせたロミオを助けるかのように、彼の相棒が姿を現す。聞き慣れた声に思わず顔を向けるロミオ

「マキューシオ!!」

「ああ、戻ってきたら変なことになってやがるなロミオ」

 

ロミオ、マキューシオ、パリス、ティボルト

遂に、この場にこの国を救える力をもつ人物が揃い立った。

 

 

しかし、マキューシオが増えても星晶獣を連れている自分の有意差は覆らないと判断したイアゴは饒舌に話しを続けた後。

「くくく・・・・・これより・・・・・・モンタギューとキャピレットを滅ぼしお互いに憎しみ会うことのない理想の国家を・・・・・・我が作ってやる・・・・・・その時にはお前らが取り合った聖女ジュリエットを我が妻に迎えるのも一興だな」

 

そう言い残しイアゴは星晶獣オクシロモンを引き連れ、戦闘が行われようとしてる空に向かって飛んでいったのだった。

イアゴを追おうとする4人。

「いくぞ!いま奴を見失えばたいへんなことになる!!」

ジュリエットが心配なティボルトが真っ先に後を追おうとして、マキューシオに肩を掴まれ止められる。

「まちな!・・・心配かもしれんが奴は空だ。今焦ったところで空にいくには、騎空艇をとりに行かなきゃならねぇ」

「くっ・・・・・・」

 

 

そこで、水と油だと思われていたロミオとパリスが協力し行動方針を決める。

付近にはいつのまにか大量に集まった魔物達・・・これらを倒さなければイアゴは追えない。これが2人の見解だった。

「パリス・・・俺たちが星晶獣に引きつけられた魔物の相手をしている間に艇を!!」

「ああ、分かった―――?!」

ロミオの提案を素早く理解したパリス。

「そんじゃ、俺とロミオでお前さん方が通れる道を始めに作りますかね!」

そう言ってマキューシオが剣を両手で構え、戦闘態勢を取り始める。

方針が決定し行動を始めようとした一同――――――

 

 

 

 

しかし、突如空から光線が降り注ぎ四人の周囲の魔物を爆散させる。

光線は見事に4人に当たらず魔物のみを狙い撃っていく。やがて、集まってきた魔物が全て消えた後、空から銀色の船らしきものが姿を現す。

船らしきものの側面に付いている兵器から煙が上がっており、先ほど周囲を一層した攻撃がこの船からだとここにいた者たちは全員理解する。

 

「なんだ!!次から次へと!おいロミオこれはなんだ?!お前と関係あるのか!」

「いや、多分だが――――――」

 

相談をする二人を置き去りに船のハッチが開き、四人とも見覚えのある人物が姿を表す。

 

ジッポを軽やかに使い、葉巻に火をつけたコブラが入り口で壁に寄りかかりながら佇んでいた。そして、ふと、視線を船内に向け・・・・・・

「ディアンサ・・・そんじゃお使い頼んだぜ?」

「はい!任せてください」

船内から黄金に輝く大弓を抱えてヴェローナ大聖堂・・・星晶獣に破壊され出来た道を辿って消えていくディアンサの姿を見送った。

 

 

葉巻を一度口から離し、煙を排出した後、コブラはやっと4人に視線を向けた。

「へへへ、ココに世界一早い船があるがどうする・・・・・・乗ってくかい?」

口元で笑みをうかべつつ、四人にとぼけながら訪ねたのだった。

 




ピンチのヒロインを助けるのに、もう一波乱(これはこれで好きです)
コブラはそれを、あっさり簡単そうに助けてほしい(願望)

3日前に投降してたらピーターパンがサンタクロースに変わっていたと思います。
あと1話でこの章は終わる予定です。

幕間見たいのを書きたいです。

届かないほど、近くのあなたへに入ってから、地の文がかなり増えてまして、1話の文字数が多くなってます 困った。

感想くださった方ありがとうございます。凄いやる気につながります。



次の話・・・何にしましょう・・・・・・誰登場させましょうかね


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