お姉ちゃんは0番改め機人長女リリカルハルナ (Y.Sman)
しおりを挟む

誕生編 第1話『お姉ちゃんはオリ主』

昔書いた小説を発掘したので晒しておきます。



「クックック・・・ついに、ついに完成だ・・・!」
暗い室内に若い男の声が木霊する。
ここはとある管理世界に秘密裏に置かれた研究所。
その一室、そこに置かれたシリンダー状の水槽の前で男、ジェイル・スカリエッティは不気味に笑う。
シリンダーの中は液体で満たされ、気泡でよく見えないが中に人のようなものが浮いている。
「戦闘機人、その栄えある第0号・・・彼女の完成をもって世界は変わる!彼女の力を使い最高評議会を亡き者にし、時空管理局を下し、私は理想の世界を手に入れる!」
狂気に満ちた目でスカリエッティは熱弁を振るう。それに応えるかのごとく、シリンダーの中が一層泡立ち始めた。
「さぁ、目覚めたまえ!私の最初の作品にして最高傑作!戦闘機人『ナンバーズ』、ナンバーゼロ!」
その声と同時にシリンダーが破裂し、中の培養液が床にぶちまけられる。
もうもうと立ち上る蒸気、そこに浮かび上がる影・・・
蒸気が晴れ、そこに現れたのは・・・
「・・・ふぁ?」
可愛らしい赤ちゃんでした。
ぷっくりしたほっぺ、ツンツンはねた銀髪、くりくりした金の瞳、どれをとってもプリチーな赤ちゃんです。
「・・・・・・・・・」
叫んだときと同じポーズのまま硬直しているスカリエッティとそれをつぶらなおめめで不思議そうに見つめるベイビー。
10秒経ち、20秒経ち、そして30秒程経った時、スカリエッティが口を開く。
「で・・・」
『で』、ハッキリ言って言葉どころか単語にすらなっていない物を発っするスカリエッティ。心なしかその身はワナワナというか、プルプルというか、とにかく小刻みに震えていた、そして・・・。
「出来るかぁぁぁ!!」
大絶叫である。
「こんな小さい子にそんな危ないことさせられる訳無いだろうがぁ!てか、自分の娘を計画の道具にするなんて何考えてるんだ!私の馬鹿ヤロー!」
叫びながら壁に頭を打ち付けるスカリエッティ、彼の絶叫に驚いたのか、シリンダーの中で座る赤子はぐずり出し、ついにはわんわん泣き出してしまった。
「ああぁ・・・!すまない、驚かせてしまったね・・・よ~しよしいい子でチュね~・・・オシメじゃないし、ミルクか?あぁ~ほらほら、面白い顔でちゅよ~・・・」
慌てふためきながら顔芸百面相するスカリエッティの手の中でなき続ける赤子、彼女は確かに歴史を変えた。
彼女の存在が後に起こるはずだった大事件を事前に解決したのである。

機人長女リリカルハルナ
第1話「お姉ちゃんはオリ主」

こんにちは、始めまして。
私?プロローグに登場したプリチーベイビーことゼロちゃんです。
あれから3年、私はすくすくと育ち、赤子から幼女へとレベルうpしました。
後一つ、お知らせがあります。
どうやら私、転生系のオリ主のようです。
つい先日、私が3歳になった前後に知らない記憶が流れ込んできたんですよ。
おかげでこんな身体は子供、頭脳は大人を地でいく性格になってしまいました。
ちなみに生前?前世?の自分についてなんですが記憶が欠落しており、死因はおろか自分の名前や性別すら不明なんですよ。
んで、その不確かな記憶が本当なら、この世界は魔法少女リリカルなのはと呼ばれるアニメの世界で私の父さんはアニメ3期の事件の黒幕らしいです。
まったく持って胡散臭い限りです。
父さんは確かにマッドで変態ですが家族思いな父親です。まぁ、マッドで変態な部分が全てを台無しにしていますが・・・。
記憶にしたってタイトルの通り『なのは』と言う女の子が主人公な事と一部の父さん関連情報、主にアニメ3期の知識くらいであとは靄がかかったように思い出せません。
しかし父さん・・・12人も娘こさえるとか・・・それ何てシ●プリ?
その事を父さんに説明したのですが原因は分からず物語の作られた場所、つまり第97管理外世界『地球』のネットワークに侵入して色々調べてみたんです。
残念ながらリリカルなのはに関する情報は見つけられませんでしたが、興味深い資料を見つけました。
『笛吹』と言うインターネット上の小説投稿HPに私のような前世の記憶を持ったまま生まれ変わった主人公達が活躍する二次創作作品が多数見つかりました。
気になったので父さんと二人でこれを閲覧してみたんですが・・・。
結論だけ言いましょう、二人ともドップリとはまってしまいましたw
仕方ないでしょう!?面白かったんですから!
それ以来私は父さんと二人でそれら二次創作の原作のアニメや漫画を観ては一緒に笑ったり泣いたりと非常に充実した時間をすごしました。
最終的に私は転生系のオリ主の一種だと結論が出た以外まったく分からずじまいでした。
それ自体はあまり気にしないのですが問題は今後の展開です。
記憶の通りに時間が進むなら父さんは今後生まれるであろう妹達、ナンバーズを率いてJS事件を起し、管理局に御用となります。
そう・・・実の娘にピッチリスーツ着せてテロ起こした挙句肌色部分の多い魔法少女にホームランされると言う、それだけ聞いたらわけ分からん結末に・・・。
しかし、今の父さんを見ていると半信半疑です。今もニコ動に謎の技術で編集した神動画を投稿していますし・・・。
とは言え今後もこのままと言う保証はありません。
こうしている間にも父さんはホームランエンドへのフラグを知らずに築いているのかもしれません・・・それだけはなんとしても阻止せねば!
この時、私の今後の行動方針が決定しました。
父さんを更生させ、妹達に真っ当な人生を送ってもらう・・・。
原作ブレイクとか知ったこっちゃありません。
新暦53年…家族を守る私の戦いの火蓋が今、気って落とされたのです。

おまけ?

「そうだ、父さん?」
「ん?どうしたね、ゼロ?」
聞き返した来た父に私はビシッと指をさします。
「そう、それ!その名前、どうにかならないの?」
ゼロとか、釘宮ボイスの虚無な魔法使いやら福山ボイスな反逆する仮面の王子様じゃないんですから・・・。
「フム・・・確かに、このままだと私もオレンジ博士とか言われかねないし・・・分かった、今から君の名前を決めよう」
そう言って父さんは何処から出したのか、本の山を私の前に置きました。
一冊を手にとって表紙を見ると『MCあ●しず』と書かれたタイトルと萌え萌えなイラスト
「・・・・・・」
他の本にも『世界●艦船』やら『ドイツ戦車パ●フェクトバイブル』やら・・・
「さぁ!好きな名前を選びたまえ!」
ドヤ顔で自信たっぷりに言う父さん。
取りあえず結構本気でパンチ。
ぶっ飛び壁にめり込む父さん。
全く、せっかくならスカリエッティ繋がりで某パスタな国の高級車のカタログでも持ってきてくれればよかったのに・・・。
動かなくなった父さんを尻目にページをめくること30分。
「決まりました」
「い、以外に早かったね・・・」
思いのほか早く復活する父さん、結構しぶといですね。これなら金髪の露出過多な魔法少女(19さい)にホームランされても生きていられそうです。
「それで、何にしたんだい?」
「うん、ハルナにしようと思う」
ハルナ(榛名)、金剛級戦艦の3番艦。
何かリリカルなのはのキャラクター名が車とか航空機から来てるから私は艦船にしようと思いまして・・・。
ちなみに強くて、それで居て女の子らしい名前なのが選考理由。終戦まで生き残ったところもポイントです。
さて、と言うわけで№ゼロ改め、ハルナ・スカリエッティ、家族のために頑張って行こー!

お姉ちゃんは0番改め、機人長女リリカルハルナ・・・始まります。



はい、ハルナは大丈夫です。
この頃は艦これとかアルペジオなんて予想だにしていなかった・・・。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話「お姉ちゃん、魔法少女になる」

どうも、こんにちは。
この物語の主人公(多分)のハルナ・スカリエッティです。
あの決意から一週間・・・
私は今日も家(研究所)でゴロゴロしています。

機人長女リリカルハルナ
第2話「お姉ちゃん、魔法少女になる」

家族を守ると決意したのはいいんですが、このロリボディでは外に出る事も叶わず、ダラダラしてるしかありませんでした。
父さんにしてもここを出た後の活動拠点とかそれらを用意する資金とか色々足りないそうなのでもう少しここにいるしかありません。
・・・うん、暇だ。

「あ~ハルナ?ちょっと来てくれないかな」
あ、父さんが呼んでいるのでちょっと行って来ます。
「何々?どしたの?」
「君も曲がりなりにもタイトルに魔法少女と付く作品の主人公だからね、魔法のステッキは必要だろう?」
おぉ!と言うことはまさか!?
「ご名答!君専用のデバイスを作ることになったんだ。それについて何かリクエストはあるかな?」
予算はスポンサーをやっている偉い人が用意してくれるらしいので気にしないでいいそうです。
なんて太っ腹な・・・ありがとう権力の権化様・・・
顔も知らない偉い人に心の中でお礼を言いつつ、私は覚束ない記憶を総動員して要望を出しておきました。
出来上がるまで大体3ヶ月位だそうですがさてさて、完成が待ち遠しいです・・・。

「とか行ってる間にもう3ヶ月経ってしまった・・・」
「まぁ、尺の都合もあるからね、ダラダラやっていても読者が飽きるだけだし」
さすが父さんです。とてつもなくメタな答えを返してくれました。
「それは置いといて、受け取りたまえ。これが君の相棒だ」
といって父さんから鳥の羽を模したシルバーのネックレス・・・待機状態のデバイスを受け取ります。
「おぉ・・・」
なんというか、とってもキレイです。
「気に入ってくれたようだね・・・」
そう言う父さんの顔は、大業をやり遂げたとばかりに満足げに笑っています。
私が出した大まかな要望は主に3つ
第1にベルカ式カートリッジシステムを搭載していること。
カッコいいじゃないですか?あの『ガシャコン』て駆動するやつ。
第2に射撃型であること。
記憶が確かならリリカルの主人公達の戦闘スタイルはかなり肉体言語に偏ってたと思うんですよ、特に2期以降・・・。
てわけで他の子と被りにくい射撃系で行くことにしました。
最後に他にはないオリジナリティ溢れるデバイスにすること、これ一番重要!
かなりのデザインが出尽くしていたと思うんでとても苦労しましたが何とか完成にこぎつけました。
「ねぇねぇ父さん!この子、名前付けていい!?」
何がいいかなぁ?他のデバイスに負けないくらいカッコいい名前にしてあげないと・・・。
「あぁ、名前ならもう付けてあるよ」
・・・なん、だと?
私が驚愕のあまり劇画調で硬直しているのを見て父さんはニヤリと笑います。なんかムカつく・・・。
「製作者なんだ、名付け親になるくらいの権利はあってもいいだろう?」
ムムム・・・確かに正論ですが何かスゲー不安です。
父さん原作でも妹達の名前に数字当てるようなネーミングセンスですから・・・。
私の名前をミリタリー雑誌から探そうとするネーミングセンスですから、って選んだの私だった・・・。
「フッフッフ・・・心配ないよハルナ。今回は少し自重したから」
「へ~って、少しかよ・・・と言うか普段から自重しようよ?」
「それはムリな相談だよ!そんな事をしたら私と言うキャラのアイデンティティが崩れてしまうじゃぁないか!」
ダメだこいつはやくなんとかしないと・・・。
「それではお披露目と行こうか。君の銃にして翼、魔道師を狩る者・・・マギア・イェーガーだ・・・」
おぉ、なんか普通にカッコいい!
イェーガーとかちょっと中二っぽくて城壁のその彼方の獲物を屠りそうだけど、ベルカ式だし問題ナッスィングです!
「よろしくね、イェーガー」
始めての呼びかけに答えるように掌に乗ったイェーガーはキラリと光りました。

おまけ
「さぁ!そういうわけでハルナ、早速デバイスを起動してみたまえ!」
うん、なにがそういうわけでなのか分かりませんがセットアップしたいのは私も同感です。
「よし!それじゃあ行くよ!イェーg・・・」
うん。ちょっと待とうか、父さん&研究員の皆様方・・・。
あなた達が用意しているそのカメラ、確かAMF技術を応用してセットアップ中に魔道師が纏う光を透過して被写体を撮るやつじゃなかったっけ?
それから10分後、部屋の前に獲物を屠るイェーガーされた父さん達が骸の山を築いていたそうですが私は知りません。ええ、知りませんとも。

目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話「お姉ちゃんは逃走者」

3話です。
今回スカさん以外の原作キャラが登場します。


やっほー、みんなのアイドルハルナちゃんです。
皆は元気にしているかな?
私?私はね・・・
父さんと二人、絶賛逃走中ですw

機人長女リリカルハルナ
第3話「お姉ちゃんは逃走者」

冒頭で述べた通り、私と父さんは、追っ手を巻くべく全力疾走で通路を駆けています。
二人とも両手にカバンやアタッシュケース、背中にはそれぞれリュックと唐草模様の風呂敷を背負ってます。
どれも限界を超えて物を詰め込んだのかはちきれそうな位パンパンに膨らんでおり、さながら漫画の夜逃げのシーンみたいです。
そもそも事の発端は三日ほど前・・・。
この施設、時空管理局上層部・・・と言うか最高評議会の支援を受けているんですが、スポンサーたるノーミソ老人会の方々が研究の成果を発表しろと言って来ました。
此処での研究成果とはもちろん戦闘機人、つまり私です。
想像してみてください。性能テストと称して私に課せられるであろう苦行を・・・。
出力テストと称して精魂尽きるまで行われる魔法行使、耐久テストと称して行われるであろう魔導士たちによる集団リンチ。
あくまで私の想像なので実際にそれが行われるかは分かりませんが、やらされるかも知れない側からしてみればたまった物ではありません。
てなわけで父さんとの家族会議の結果、管理局に施設の場所と活動内容をリークし、強制捜査が行われている隙を突いて脱走しようという結論に至りました。
結果、情報のリークはうまく行き、正義感溢れる管理局の捜査官さん達が研究所に突入してきたまではよかんです。
よかったんですが・・・!
問題は時間です。早すぎたんですよ。
当初の予想では1週間位で来るだろうと思っていた局員達が通報からわずか3日でやってきやがったんです。
「仕事しすぎでしょ管理局!?こんなんだから魔王様がワーカーホリックになっちゃうんだ~!」
局のガサ入れが入ったと知った直後の私らの行動は惚れ惚れする位迅速でした。
部屋に用意していたカバンに当座の生活資金とデバイスや必需品、最悪捕まったときの司法取引に使う研究データや遺伝子サンプルなどを詰め込んで転送ポートに向かいます。
向かったんですが・・・。
「こらぁ~待ちなさ~い!!」
逃走開始から10秒で捜査官に見つかりました。
んで壮絶な追跡劇を演じながら今に至ります。
しっかしこれだけの荷物を背負いながら後先考えずの全力疾走、戦闘機人の私は大丈夫なんですが隣を走る父さんはそろそろ限界っぽいです。
しかも今回は相手が悪すぎます。
「待てっつってんでしょう!?止まりなさぁい!!」
紫がかった青い髪をなびかせながら、履いているローラーブーツで私達を追いかける両手ナックルのおねえさん・・・
どう見てもクイント・ナカジマさんです。本当にありがとうございます。
やばいです、何かもう殆ど詰んだ感じです。
このままクイントさんに御用になって父さんと二人塀に囲まれたお家ENDとか涙を通り越して笑えます。
あ、待てよ・・・もしかしたらクイントさん家の子になってハルナ・ナカジマとして3期参入とかの可能性も・・・
「ゼェ・・・ゼェ・・・ハ、ハルナ。今何かとてもよからぬことを考えてないかい?」
「え、何言ってるのさ?ソンナコトアリマセンヨー?」
「待って!何でそこ半角カタカナなの!?ねぇ何で!?」
意外とまだ余裕そうな父さんとコントを繰り広げている間にクイントさんは私らとの距離をじわじわと詰めて来ました。
どうにかして振り切らないとと考えていた私の目に打開策が飛び込んできました。
「よしっ・・・ぶっとべ必殺!ふり~が~・・・」
私はそれに向けて右腕を・・・
「シュレーク!!」
ぶちかましました。
言ってませんでしたが、私の両腕は肘から先が義手なんです。
どうしてかって?
そのほうがかっこいいからだ!キリッ
ああ、ちなみに左手はロケットパンチじゃなくて機関銃が内臓されてます。
グフのフィンガーバルカンみたいな感じですよ。

ロケットパンチよろしく発射された私の右腕は狙い違わず壁に埋め込まれていた赤い非常スイッチに直撃します。
防護カバーをかち割り中のスイッチを力任せに押し込む私のゲンコツ・・・。
すると重い警報の音と共に天井と床から分厚い防火扉がせり出してきます。
この扉、もし私が暴走した場合にと作られた物で厚さ200ミリとかいう頭のおかしい造りになっています。
もちろんこの間を潜ろうとして失敗しようものならまちがいなくペッタンコです、体から色々な物がはみ出すことでしょう。
故に減速なんて出来ません。最高速度のまま防火扉を走り幅跳びの要領で潜ります。
さらにもう一枚防火扉、これも同様に飛び越えます。
分かりやすく言うならカリオストロの城の序章でルパンと次元がやってた逃走方法です。
危険なのでマネしないでください。最悪の場合リアルに転生とかしちゃう可能性があります。
背後で扉の閉まる音・・・どうやら危機は脱したようです。
スペアの義手を取りつけながら父さん共々ホッと一息、さすがにきついので速度を緩めようとすると・・・
ガァン!
・・・何やら背後から嫌な音が聞こえました。
例えるならそう・・・戦車の装甲に砲弾が命中した感じの音です。
それが2回、3回・・・。
恐る恐る父さんと後ろを振り返ると、扉が・・・厚さ200ミリの扉が変形しています。
ボコボコと泡のような丸いふくらみが次々に打ち込まれ・・・。
大体10回目くらいで扉が吹き飛びました。
もうもうと立ち込める煙、その無効からユラリと人影が現れます。
「ま~た~ん~か~!」
その声を聞いた途端、すぐさま回れ右、全速力で逃走を再開です。
怖い!何かもう滅茶苦茶怖いですよ!?クイントさん!
もうね、目を爛々と赤く光らせて追っかけてくる姿がまさに悪鬼羅刹の如くです。
てか、あの防火扉と言う名の鉄塊をぶち破るとか・・・
あの人本当に人間ですか!?
「あはは・・・彼女の遺伝子を基にした戦闘機人はさぞかし強いんだろうな~」
ええ、強いですよ、ぶっちゃけアニメ3期で主人公できるくらいにはね!
てか現実逃避しないでよ父さん!
あぁ、そんなこと言ってるうちにクイントさんが鬼の形相で迫ってきます。
こうなったら・・・仕方ない!
「あ~ハルナ、私を差し出して助かろうとかはやめてもらえないかな?」
「いや、しないから!せっかく意を決したのに色々台無しじゃん!?」
そして減速、クイントさんに向き直ります。
「父さん、先に行って。転送ポートの準備が出来たら私も直ぐに行くから・・・!」
「待ちたまえ!何を言ってるんだ!?」
立ち止まる父さん、心配してもらってちょっと嬉しいです。
「大丈夫!転送ポートの準備が出来るまで時間を稼ぐだけ、準備できたら直ぐ行くから!」
父さんは一瞬戸惑うものの分かってくれたようで転送室へ走っていきました。
さて、改めてクイントさんと対峙します、正直怖くてちびりそうです・・・。
「投降しなさいお嬢ちゃん、抵抗しても罪が重くなるだけよ」
「私も出来れば戦いたくは無いんですが、こっちにものっぴきならない事情がありますんで・・・」
そう言って私はデバイスを起動する。
足元に青白いベルカ式の魔方陣が輝きます。
「いくよ!マギア・イェーガー!」
『anfang・・・』
首から提げてた羽型のネックレスが光り、私の体が包まれる。

以下変身シーンをご鑑賞(妄想?)ください。

光の中に浮かぶハルナちゃん。
何処からとも無く再生されるカッコいい系のBGM。
着ていた診察衣が光の粒子に変わり消える。
続いて下着も同様に消える。(ブラはまだしておりません)
手に持つネックレスが光り、何処からとも無くいろんなパーツが飛んでくる。
ガシャコンガシャコンと勇者ロボよろしく合体していくパーツたち・・・
全体的に小型化されたM60のような形状になり、最後にマガジンがくっつく。
薬室内にカートリッジを装填。
グリップを握ると展開される騎士甲冑。
灰色をした軍服調のアンダーウェア。
そこかしこに装着されるメカメカしいパーツ
大き目のコートを袖を通さずマントのように羽織り。
背中に現れる、Wガンダムの翼っぽい形状の浮遊パーツ。
これまた大き目の制帽を頭に乗っける。
最後にイェーガーを構えて決めポーズ(ビシッ)

以上、機人長女リリカルハルナの変身シーンでした。

騎士甲冑を展開した私は、イェーガーの銃口をクイントさんに向けます。
「・・・今すぐデバイスを下ろしなさい。そうすれば公務執行妨害は無かったことにしてあげる」
拳を構えるクイントさん、目がマジです、平静を装ってますが今すぐ逃げ出したいです。
そのまま数秒緊迫したままお互いにらみ合いが続きます。
チャンスは一度・・・私は頭の中でタイミングを計ります。
そしてカウントがゼロに達した瞬間私はイェーガーの引き金を引きました。
銃口から撃ち出された魔力弾は狙い違わず超音速で目標に命中します。
そう、逃走経路たる転送ポート目指して全力疾走してくるここの研究員に顔面に・・・
「ぶべらっ!?」
魔力弾(もちろん非殺傷)がクリティカルヒットした研究員さん、事態が飲み込めずフリーズするクイントさん。そう、今が絶好のチャンス!
「それじゃあその人のことお願いします!」
彼のことをクイントさんにお任せして私は父さんの元へ飛んでいきます。
「え?あっ・・・ちょ、待ちなさい!」
後ろからクイントさんの声が聞こえてきますが無視です、今は脱出が最優先ですから。
え?薄情?おとりにされた研究員さんが可愛そうだって?いいんです、あの人いつも私の事をなんかいやらしい目で見てましたし、インガオホーです、急いでるからハイクは省略です。
途中いくつもの防火扉を下ろしながら私は転送ポートにたどり着きます。
「おまたせ~!」
「あぁ、こちらももう少しで終わるところだよ」
パネルを色々打ち込んで転送ポートを機動させる父さん。
「そういえば父さん、ここを出た後はどうするの?」
「そうだねぇ~ハルナは何かやりたいことはあるかい?」
そう問われ暫し黙考・・・おぉ!ひらめいた!
「地球で暮らすって言うのはどうかな?」
「地球か・・・確かにいいな。出来れば週一で秋葉原に通えて尚且つ有明にも行きやすい場所が・・・」
父さんと二人で今後の人生計画(ただの妄想)を練っていると・・・
ガァン!!
「っ!!まさか・・・!?」
クイントさん・・・もう研究員をしょっ引いてきたのか!?
破壊音は次第に大きく、近くなり彼女がここに来るのは時間の問題のようです。
「間に合わないか、こうなったら・・・!」
突然身体が中に浮く、と思ったら父さんにも抱きかかえられていました。
「えっ!父さん!?」
転送ポートに乗せられる私、父さんは再び操作盤に戻ります。
「すまないね、ハルナ・・・せめて君だけでも脱出してくれ」
・・・え?
「どうも管理局が妨害しているらしくてね・・・一定質量以上のものは転送できないんだ。だが君一人くらいの質量なら跳ばせる」
父さんはなんと言った?私しか脱出できない・・・?
「一緒に行きたいのは山々なんだが後ろから怖いおねえさんが来ているしね・・・システムをハッキングしている時間が無いんだ・・・」
ならクイントさんを倒せば、厳しいけどやって出来ないことは・・・!
「それこそ駄目だよ。君の手を血で汚すわけにはいかない・・・」
悲しそうに笑う父さん・・・。
「いや・・・。イヤだよそんなの!」
なんでそんな顔してるのさ、父さんは『無限の欲望』なんでしょ!?もっと不敵に、いつもみたいに顔芸でもしてみせてよ!
私はいま悔しい気持ちで一杯でした。
自分がもっと強かったら、クイントさん相手でも互角以上にやりあえるのに、それ以前に管理局に通報することなく独力で脱出だって可能なはず・・・
「さすがに殺されることは無い筈だよ、最高評議会のお三方にとっても私はまだ必要だろうしね・・・」
まぁ、当分は軟禁生活かな・・・なんて笑っていますが嘘だ、父さんは間違いなく死を覚悟している!
分かっているのだろうか?自分が非合法な手段で生み出された違法研究者だということを、事態の露見を恐れた最高評議会が父さんを生かしておくとはとても思えない。
ここに残るということは間違いなく死を意味しているのに・・・。
「本当に・・・また会えるよね・・・?」
そう聞いてしまった。
叶わないと分かっていても聞かずにはいられなかった。
「ああ、約束だ。」
ガシャアァァァン!!
直後、一際大きな破砕音が響きました。どうやら最後の隔壁が破られた様です。
「それじゃあ始めるよ。元気でいなさい、ハルナ・・・」
「サヨナラは言わないよ、父さん。まだ妹の顔も見てないんだからね」
「もちろんだよ。またいずれ・・・」
実行キーが押され、転送が開始されます。
「うん。またね・・・」
そして父さんを取り押さえようと突入してきたクイントさんと、最後まで私に微笑みかける父さんを最後に私の視界は光に包まれました。



ハルナちゃんのバリアジャケットのデザインはジャーマンな国の将校制服です。
なのにデバイスの形状はM60です。
スタローンやシュワちゃんも御用達の素敵な分隊支援火器、ミリタリーショップで電動ガンを衝動買いしたのはいい思い出w


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話「お姉ちゃんは大切なものを盗まれました」

転送が終了しするとそこは森?林?の中でした。
あたりを見渡してみ木、木、木・・・。
幸い、林道らしきものが存在するので人は住んでいるようです。
ふぅ、野生に返って生活する羽目にはならずに済みました。
そうして私が自分探しならぬ人探しの旅にでようとしていると・・・。
「ふむ、どうやら魔導師のようだな・・・」
妙に凛々しい女の人の声が。第一村人か発見かな?
振り向くとそこには物々しい甲冑を装備したピンク色ポニーテールのお姉さんが・・・。
「すまないが貴様の魔力、貰い受けるぞ」
何か吸われていると思い下に視線を向けると私の平坦な(あくまで現在は!)胸のあたりに光る玉が現れそこから魔力らしき者がお姉さんの持つ本の中へ・・・。
「・・・え゛?」
これは、ヤバクない?
気付いたときには既に遅し。私の意識は闇の中へ、ぶっちゃけ気絶しました。

機人長女リリカルハルナ
第4話「お姉ちゃんは大切なものを盗まれました」

「知らない天井だ・・・」
うん、テンプレなので言ってみました。
周囲を確認、どうやら先程までいた森林ではなく室内のようです。
それも森の中で七人の小人か筋肉モリモリマッチョマンの元コマンドーが住んでそうな木のお家ではなく非常に未来的でメカメカしい、父さんと住んでいた研究所のような場所でした。
ベッドに寝かされ点滴を受けていることからココは病室なのでしょう、とそこでドア(自動)が開いて誰かが入ってきました。
「あぁ、目が覚めたようだね?医師から様態が安定したと聞いてね」
さわやかに話しかけてくる中田譲治ボイスのおにいさん。
はて、どこかで見たような・・・?
「自己紹介がまだだったね?私はクライド・ハラオウン。この次元航行艦『エスティア』の艦長だよ」
ハラオウン・・・なんでしょう?何かが引っかかります。
たしかリリカルなのはにそんな人物がいたような気が・・・。
いや、それよりも現状の確認です。
「あの~、何故私はここに?」
次元航行艦の艦長と言うことは目の前にいるハラオウンさんは十中八九管理局員です。
仮にもお尋ね者の身、正体がばれていたら速行でココから脱走せねばなりません。
「うん、とある事件の捜査中に君が第22管理世界「スキピア」の森林地帯で倒れているのをうちの捜査員が発見してね、ここに運び込んだんだよ」
ふぅ、どうやら私が戦闘機人だということはばれていないようです。
ん?事件の捜査・・・?
「あの、事件って・・・?」
「・・・実はこの近隣で魔導師を狙った襲撃事件が多発していてね、その捜査の為に私達は派遣されているんだ」
魔導師襲撃ですか、物騒ですね~。
魔導師っていうのはそれだけで戦闘でアドバンテージが握れます。
飛行やら砲撃が出来なくても筋力や瞬発力を魔力で底上げしたり、何より魔導師必須のマルチタスクは戦闘における迅速な状況判断を可能にさせます。
なので魔導師を狙って襲うという行為は非常にリスキーなのです。
まてよ・・・魔導師、襲撃?
「あの~、もしかしてその犯人ってピンクポニテの女の人だったりしませんか?」
私も一応魔導師です、私からよく分からないけれども多分大切な者を盗んでいったピンポニナイトさん(仮称)が他の魔導師を襲っている可能性は高いはず・・・。
「やはり、君も被害者だったのか。彼女は一連の事件の実行犯達、そのリーダーと目されていた人物だ」
一発で当りを引きました。
やっぱりあいつか!
ちくせう、今度あったらハルナちゃんのウルトラグレートすぺしゃるな必殺技で・・・ん?ちょっと待った。この人今なんて言った?
「スイマセン・・・その、『目されていた』っていうのは・・・?」
「ああ、事件は解決したよ。実行犯だったロストロギア『闇の書』、その守護騎士達であるプログラム生命体『ヴォルケンリッター』は闇の書に蒐集され消滅。闇の書本体も何とか確保、封印に成功したんだ」
・・・えーと、つまり・・・出番無し?



ピンクポニーテールの騎士・・・一体何ナムなんだ・・・。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話「お姉ちゃんピンチです、いや割とマジで」

えーと、本作の主人公のはずのハルナ・スカリエッティです、こんにちは。
早速事件に巻き込まれて物語的にいよいよ本格的にストーリーが動き出すかと思ったんですが・・・。
全部終わっちゃってましたw
・・・orz

機人長女リリカルハルナ
第5話「お姉ちゃんピンチです、いや割とマジで」

えーと、ハラオウンさん・・・え、名前でいいんですか?
失礼、お許しがでたので・・・クライドさんの話では最近このあたりの世界で魔導師が立て続けに襲われて魔力の源、リンカーコアが奪われるという事件が多発。
クライドさん達管理局が捜査を進めると事件の背後に古代ベルカ王朝が残した魔導書、『闇の書』の存在が浮かび上がってきたそうです。
闇の書は管理局から第一級の危険なロストロギアに指定されており、起動すれば世界の一つや二つ、簡単に滅ぼせる超ヤバイ本との事。
んで、私を襲ったピンクポニテの見た目くっころな女騎士は闇の書を護る守護騎士『ヴォルケンリッター』という魔法生命体だそうです。
彼女とそのマスターである闇の書の主を追い詰めたものの、マスターが闇の書を起動。
足りない魔力を補おうと闇の書は守護騎士どころかマスターまで呑み込んで起動しようとしたそうです。
幸いクライドさんと武装局員さん達が奮闘してギリギリのところで闇の書を封印。
んで現在闇の書を完全破壊ないし永久封印するためにエスティアに載せて管理局中枢、本局に向けて護送中との事・・・。

どうしよう、マジでこの事件解決済みなんですけど・・・。

本来ならここでハルナちゃんが颯爽と事件を解決して~って言う展開を読者の皆さんは期待していたと思うんですよ。
だってロストロギアですよ!?ロストロギア!
世界の存亡をかけて闇の書と戦うサイボーグ美少女・・・これだけで一本のアニメが出来ますよ!
DVD&ブルーレイやフィギュアや設定資料集とかの関連商品の興行収入だけで軽く数十億は稼げるはずですよ!
なのに全部終わってたなんて・・・。

「あ~君?大丈夫かい?」
うぅ・・・お気遣いありがとうございますクライドさん。
落ち込んでいても事態は進展しませんしね。
「ところで、そろそろ君の名前を教えてもらいたいんだがいいかな?」
・・・あ、そういえばそうでした。
えーと名乗っちゃっていいのかな?
そういえば3期後半でゲンヤ・ナカジマさんが話してた過去話だとこの頃はまだ父さんの名前ってあんまり知られてないんでしたっけ?
じゃあ大丈夫だよねw
「はい、ハルナです。ハルナ・スカリエッティ」
「スカリエッティさんだね、よろしく。まもなくこのエスティアは本局に到着する。それで君の扱いなんだが・・・事件の過程で保護した、云わば被害者だ。本局に着き次第体に異常が無いか検査をして問題が無かったら申し訳ないが調書を取りたいから襲われた時の事を話して貰いたいんだ。それが終わり次第、可能な限り早急に家まで送るよ」
・・・ヤバイ。
超ヤバイです、どれ位ヤバイかと言うとエロゲの入った引き出しを親に開けられそうになった時位ヤバイです。
検査なんてしようものなら私が戦闘機人だということが一発でばれてしまいます。
そうなったら命を賭して私を逃がしてくれた父さんの尊い犠牲が無駄になってしまいます!(まだ死んだとは限りません)
「そこで事前にご家族に連絡を入れておきたいんだが・・・」
クライドさんが続けて私に質問しようとしたところ、突然部屋がゆれます。
「な、何だ!?」
「ふぇっ?地震!?・・・なわけ無いですよね、ここ船の中ですし」
すぐさまクライドさんが艦橋に問い合わせます。
「ブリッジ、私だ!先程のゆれは何事だ?」
すぐさま報告が入りますがそれはとんでもないことでした。
『こちらブリッジ!遺失物保管室に封印されていた闇の書が突如再起動、暴走を開始!』
「何だと!?」
『現在当直の武装局員が結界を形成、進行を食い止めていますが、長くは持ちません!」
・・・うん、本当にヤバイです、ガチで生命に関わるレベルで・・・。

目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話「お姉ちゃんは血反吐を吐く」

ようやくまともな戦闘です。
アクションシーンって難しい・・・。


「レティ、彼女のことだけど、何か分かった?」
L級次元航行艦『アースラ』のブリッジで当艦の副長、リンディ・ハラオウンは本局にいる友人のレティ・ロウランと連絡を取っていた。
『ダメね、管理局に登録されている戸籍でその特徴に該当する少女は存在しないわ。管理外世界の住人という可能性はないの?』
「可能性は低いわね、所持品にデバイスがあったし、それに・・・」
目を細めながら話すリンディにレティが続ける。
『あの子の体の事ね?送られてきた資料を見たけど。彼女、相当『弄られている』わね・・・」
闇の書の捜査中に現場付近で気絶していた少女、ハルナを保護したクライド達はすぐさまメディカルチェックを行ったがその結果は思いもよらぬ物だった。
遺伝子レベルで人為的に強化された身体能力。
骨格や内臓器官等、脳を除いたあらゆる所を機械化された肉体。
そしてリンカーコアと融合した魔力結晶・・・。
現代の技術では不可能とされている人と機械の融合体。
彼女は違法とされ、裏社会で非合法に研究が行われていると言われている人造魔導師とも一線を画す存在だった。
『詳しい事はこっちに着いてからじゃないと調べられないけれど、十中八九人造魔導師の類でしょうね・・・。問題は何故あんなところに倒れていたかだけど・・・』
「そういった違法施設から逃げ出してきたのかしら?」
『それとも不要と判断され捨てられたのか・・・、これは本人から聞くしかないわね。それで?件の眠り姫はまだ起きないの?』
「クライドさんの話だと様態は安定してるからいずれ目を覚ますそうだけど、これが本当だとしたら管理局始まって以来の大事件に・・・」
リンディの言葉は突如鳴り響いた警報にかき消された。
『どうしたの!?』
「ちょっと待って、状況報告!」
問い質すと、すぐさまオペレーターから報告が返って来た。
「エスティアから緊急伝!闇の書が再起動、メインシステムが侵食されています!」
『なっ・・・!』
「クライドさん・・・!!」

機人長女リリカルハルナ
第6話「お姉ちゃんは血反吐を吐く」

こんにちは、ハルナです。
現在クライドさんに連れられて連絡艇格納庫に向かっているところです。
既に艦内のいたるところに蔦のような触手がウニョウニョしています。うん、キモイ・・・。
これ、闇の書の端子のようでコイツをエスティアに接続してコンピュータをハッキングしているようです。
既に殆どの防壁を突破され艦が乗っ取られるのは時間の問題でしょう。
え?再封印?出来ると思ってるんですか?
さすがにロストロギア相手、しかもリンカーコアを抜かれた直後の病み上がりとあってはお姉ちゃんパワーと主人公補正を使ってもムリですよ。
魔砲少女が3人がかりで必殺技使ってフルボッコにすれば可能性はあるかもしれませんが・・・。

「艇長!この子を頼む!」
「えっ?」
頼むって、クライドさんは乗らないんですか?
「ああ、少しやる事が残っていてね・・・」
そう言ってマギア・イェーガーを渡してきます。無いと思ったらクライドさんが持っていましたか。
「聞いてくれスカリエッティさん。アースラに・・・隣を航行している僚艦に私の家内が乗っている。脱出したら彼女を頼ってくれ」
連絡艇に乗員を載せていたパイロットに私を預けるとクライドさんは元来た道を走り出します。
「待ってください艦長!どこに行くおつもりです!?」
何でしょう?艇長さんに引き止められ振り向いたクライドさんの顔は・・・。
「なに、艦長としての勤めを果たすだけさ・・・」
最後に見た父さんを彷彿とさせました。
「艦長!いけません、戻ってください艦長!!」
他の局員さん達の制止も聞かずクライドさんは走り去っていきました。
向かったのは恐らくブリッジでしょう、しかし・・・。
「艦長はエスティアを闇の書から取り戻すつもりなのか?」
「そんな、無理だ!あれの能力は生半可な物じゃあない!」
そう、彼らの言うとおりそんな簡単に勝てるならロストロギアなんて呼ばれていません。
皆がクライドさんを追うべきか逡巡しているうちに闇の書の触手は格納庫まで迫ってきました。
「早く乗れ!これ以上はもたんぞ!」
艇長さんが叫び、残っていた乗組員も急いで連絡艇に駆け込んできます。
最後の一人が飛び乗り、ハッチが閉じ始める。いよいよ発進のようです。
「・・・・・・・・・。」
これでいいんでしょうか?
確かにあの状況でクライドさんを追いかけても足手まといにしかならないかもしれません。
でも・・・。
『もちろんだよ、またいずれ・・・』
「・・・・っ!」
気付くと私は閉じようとしていたハッチを飛び越え走り出していました。
「おい嬢ちゃん!何してる!?戻って来い!!」
艇長さん達の声が背後から聞こえます。
ゴメンなさい皆さん。でもやっぱりクライドさんを置いてはいけません。
走りながら現在のコンディションを確認します。

肉体に異常は無し。
機械化された部分にも機能障害は見られず。
レリックの出力安定。
リンカーコアは未だ不安定ですがバリアジャケットを展開するくらいなら大丈夫。
右手のロケットパンチ、左手のグフマシンガン共に動作正常。
「よし、行きます!」
『パチンッ』と頬を叩き、気合を入れてからイェーガーを起動、バリアジャケットを展開して準備完了。
目指すはブリッジ、全力疾走です。

アースラのブリッジは混沌の坩堝と化していた。
「応答せよエスティア!繰り返す。エスティア、クライド艦長。応答してください!」
「エスティア艦内より魔力エネルギー増大!出力、尚も上昇中!」
「エスティアより連絡艇脱出。現在乗組員の安否、確認中!」
アースラ艦長のギル・グレアム提督は必死に対応する局員達に的確な指示を下しつつ最悪のシナリオを予想した。
(エスティアのコントロールは闇の書に奪われたと見て間違いない。とすれば奴は目下の脅威である我々を排除しようとするはず・・・)
それに対する解決策を模索していると、通信席にいるオペレーターがグレアムに向かって叫ぶように報告する。
「艦長!エスティアとの回線繋がりました、映像出します!」
グレアムはオペレーターに頷くと投影された映像に目を向ける。
「クライドさん・・・」
通信席でオペレーターと観測作業についていたリンディも投影された夫の姿に息を呑む。
ボロボロになった制服に一際目を惹く額から流れる鮮血・・・。
映し出されたクライドは誰がどう見ても満身創痍の様を呈していた。
『提督、大至急エスティアを撃沈してください』
開口一番にクライドから放たれた言葉はグレアムにとって予想された、しかし聞きたくなかった物だった。
「クライドさん、何を言って・・・」
一方のリンディは夫の言った言葉を信じられなかった。
当然だろう、大至急エスティアを沈める。
それはクライド諸共と言うことを意味しているのだから。
『闇の書の侵食は阻止できません。本艦が完全に掌握されるのも時間の問題でしょう』
「クライド君!今すぐ脱出して!」
「あんたがいなくなたらリンディたちはどうするのさ!?」
グレアムの両隣にいた彼の使い魔、リーゼロッテとリーゼアリアがクライドに脱出を促す。
しかしクライドはただ、首を振るのだった。
『たった今、『アルカンシェル』の制御が奪われました。奴は恐らく其方を攻撃するつもりです』
クライドの言葉を裏付けるかの様にオペレーターから最悪の報告が上がる。
「エスティア、『アルカンシェル』の発射シークエンスに入りました!」
「レーダー照射を確認!エスティア、本艦を狙っています!」
『アルカンシェル』、時空管理局が所有する魔導兵器の中でも最高クラスの威力を持った魔導砲である。
着弾地点から半径百数十キロに渡る空間を歪曲させながら反応消滅させる管理局の切り札だ。
闇の書に対する最終手段としてエスティア、アースラの両艦に搭載されていたもので、当然ながらアースラが喰らえばひとたまりも無い。
『現在機関部からのエネルギー供給を妨害中ですが長くは持ちません。提督、お願いします』
アルカンシェル発射を妨害する以上、クライドはエスティアから離れることは出来ない。
アースラが助かるにはクライドを犠牲にする以外に選択肢は残されていなかった。
「・・・アルカンシェル、発射用意・・・!」
「・・・っ!?待ってください提督!!」
リンディは掴みかからんばかりの勢いでグレアムに詰め寄るが控えていたリーゼロッテたちの手で引き止められる。
「すまない、もはやこれしか方法が無いのだ・・・」
押し殺した声でリンディに、クライドに、そして自分に言い聞かせるように言葉をつむぐグレアム。
グレアムの言葉を聞いたクライドは彼に敬礼した後、リンディに声をかける。
『リンディ、例の女の子を、スカリエッティさんを頼む。彼女には君の助けが必要だ、支えてやってくれ』
夫の今生の別れの言葉を聞き、リンディは苦笑してしまう。
こんな時だというのに彼は最後まで職務に忠実であろうとしているのだから。ならば・・・。
「ええ、彼女のことは引き受けたわ。安心して」
リンディはその頼みを聞き入れる。彼が最後に笑っていられる様に・・・。
それを聞いたクライドは穏やかな笑顔を浮かべて続ける。
「ありがとう、リンディ。愛してる、クロノと幸せにな・・・」
「っ!・・・うん、私もよ・・・」
二人が最後の言葉を交わしたのを確認し、グレアム自分の務めを果たすべく立ち上がる。
手には一本の鍵、アルカンシェルの発射キーだ。
それを眼前にあるキューブ、発射装置に差し込む。
キューブが赤く染まり最後の安全装置が解除されたことを告げる。
「アルカンシェル・・・発・・・」
グレアムが鍵を回そうとした瞬間・・・。
『ちょぉっとまったあぁぁぁぁ!!!!』
そんな叫び声と共に映像の向こうで扉が打ち破られ軍服姿の少女がブリッジに入ってきた。

「す、スカリエッティさん!?」
こっちを見てビックリしているクライドさん。
よし、まだ生きてます。
ここに来るまでに何度も闇の書の触手にウニョウニョと邪魔されまくったんですが、こいつら以外に強いです。
シールドは張るし、魔力弾撃ってくる奴もいました。
もしかしたらクライドさん、こいつらにやられちゃったんじゃ何て思ったりもしましたが杞憂だったようです。
「どうしてここにいるんだ!?クルー達と退艦したんじゃ・・・」
どうして?
人がせっかく苦労してここまで来たのにどうしてとかあんまりな発言ですね?
「そんなのクライドさんを呼びに来たに決まってるじゃないですか!」
全く、一人でふらふらどっかに行って・・・団体行動の輪を乱すとか、先生許しませんよ!
「なんてバカな真似を、直ぐに退艦するんだ!連絡艇を使ったから非常用の救難艇は残っている、それを使って・・・」
「バカな真似はどっちですか!!」
「っ・・・・!?」
私が怒鳴ったことに驚いたのかクライドさんは言葉を噤みます。
必死におどけて見せましたがもう無理です、いろんな物がこみ上げて来てガマンできません。
「そうやって一人でカッコつけて、残された人がこれからどんな思いで生きていくか考えたことがありますか?なんで、なんで・・・」
頭に浮かぶのは父さんの事。
一緒に漫画を読んで笑いあった事、、新発明の実験で爆発して喧嘩した事、そして最後に私に見せたあの笑顔・・・。
視界がぼやけてきてようやく私は、自分が今泣いていることに気付きました。
「何で大切な人がいるのに生きようとしないんですか、なんで直ぐに諦めちゃうんですか・・・なんでみんな、馬鹿・・・」
「スカルエッティさん・・・」
いろんな感情がゴチャ混ぜになって自分でも何を言っているのか分かりません。
嗚咽が止まらない私と返す言葉が見つからないクライドさん。
そこに艦橋に流れる沈黙を破って触手が侵入してきました。
「しまった!ここまで来たか!?」
クライドさんが身構えます。
空気を読まずにウニョウニョ沸いてはあたりの物を破壊し出す触手・・・。
何か腹たってきました。
「うるさい!」
色々あって沸点が低くなってた私は左手を向けると義手の中に内蔵されている機関銃を掃射します。
「人が大事な話してるんだから出てくんなバカー!!」
装弾スペースのせいで9ミリ弾しか撃てませんが魔法が来ると思っていた触手たちには効果覿面です。
障壁を破られタングステンの弾丸に引き裂かれながら退散していきます、ざまーみろこんちくしょう!!
「ふぅ・・・よし、少しスッキリした」
「す、スカリエッティさん?」
あ、クライドさんちょっと引いてます。
もう正体バレとか私の立場とか今は知ったこっちゃありません。
「とにかく!クライドさんは私が助けます、異論は認めません!!」
「し、しかしそうなるとアルカンシェルが、アースラが・・・!」
確かに、クライドさんが離れれば邪魔者がいなくなった闇の書はアースラにアルカンシェルを発射出来るようになってしまいます。
「だから、こうするんです!」
私はイェーガーを足元に向けます。
脚部のパーツが展開、床をガッチリとホールド。
空気中の魔力をリンカーコアを経由してデバイスに送ります。
それでも足りない、なら・・・。
「マギア・イェーガー!カートリッジロード!」
『装弾』
私の言葉に従ってイェーガーがカートリッジシステムを起動。
ドラムマガジンに収められたカートリッジの内、5発を連続装填します。
ロードすると私の中で魔力が爆発的に上昇します。
「スカリエッティさん、一体何を・・・!?」
クライドさんが聞いてきますがとりあえず後にします。
溜まりに溜まった特大魔力をイェーガーに流し込む。
後は撃つだけです。
このリリカルなのはの世界の魔法は願望祈願型・・・魔導師のイメージをデバイスを用いて機械的に実現するという物・・・。
つまり私のイメージが大事なんです。
「すぅ・・・はぁ・・・」
大丈夫。練習した通りに、何よりアニオタの私は妄想力・・・もとい想像力が豊かですから。
MSでビームライフルを撃つイメージで・・・!
「インパクトカノン、発射ぁ!」
イェーガーの銃口から青白い極太ビームが打ち出されます。
なんかビームライフルって言うよりも宇宙戦艦ヤマトの主砲みたい・・・。
放たれた魔砲はエスティアの壁を、床を、天井をぶち抜いていきます。
「・・・あぁ!」
重大なことを忘れてました。
これ、ストーリー初の本格的な魔法じゃないですか!
もっと格好いい演出とかセリフとか考えとくんだったー!
え?研究所から脱走する時に使っただろって?
あれは何か格好付かないからノーカンです。
「どうした!大丈夫かい!?」
叫んだ私をクライドさんが心配してくれます。
「うぅ・・・大丈夫、こっちのことです」
答える私、チョッピリ涙目です。
それから直ぐに結果が現れました。
「アルカンシェルの発射シークエンスが止まった!?」
「ヨシッ!作戦成功ですね!」
アルカンシェルをとめるには幾つか方法があります。
第一にシステムを奪還して停止させます。
うん、ハッキング合戦とか勝ち目が無いので無理。
第二に機関部の停止、もしくは破壊。
これも無理です。機関室まで触手の相手をしながらとか間に合いません。
ぶ厚い隔壁に護られているからここからの砲撃で破壊するのも不可能。
そこで第三の方法、エネルギー伝達の阻害です。
要するに電源コードを切っちゃえばいいんです。
とは言え、これでお終いではありません。
メイン回路が寸断されても艦船のエネルギー伝達系は網の目のように張り巡らされています。
どこかがやられても別の場所からバイパスできるようにするためです。
案の定闇の書は別の回路を使ってアルカンシェルにエネルギーを送り始めました。
でも・・・。
「充填速度が遅い、これなら・・・っ!」
「はい、私達が脱出する時間は稼げます!」
私達が艦から降りればアースラは心置きなく無人になったエスティアを撃てます。
「いきましょう、クライドさん!総員退艦です!」
「ああ、案内する。こっちだ!」
クライドさんに先導され、艦内を走ります。

クライドさんと走り出してからしばらくして難関にぶつかりました。
「クッ、何だあれは」
格納庫に通じる通路、そこを強固な防火扉が塞ぎ、その表面を触手が覆っています。
触手は一本一本が大小様々な魔力弾を発射し、さながら要塞のように私達の行く手を阻んでいます。
「この様子では他の通路も。どうすれば・・・」
脱出するには戦うしかありません、しかしそんな時間は私達には残されていない。
戦わずに素通りする方法は無いものか・・・。
「ん、まてよ・・・」
素通り・・・これだ!
「クライドさん、私にいい考えがあります」
何やらフラグなセリフですが大丈夫です、問題ありません。
「何か策があるのかい?」
任せてください、そう言って私は直ぐ横の壁に手を当てます。
さて、皆さん。
戦闘機人には魔導師にはない特別な力が備わっています。
そう、IS・・・インフューレント・スキルです。決して弓弦イズル先生著のハイスピード学園ラブコメではありません。
余談ですが作者はオルコッ党だそうです。チョロインかわいいよチョロイン・・・。
さて、ISですが情報収集能力だったり、加速装置だったり、壁抜けしたり、超振動で機械に大ダメージを与えたり・・・。
そんな普通の人にはない能力が戦闘機人には一つ備わっています。
そして私のISは・・・。
「インフューレント・スキル発動・・・、『フラスコ=オブ=アルケミスト』!」
壁に閃光が走り形を変えていきます。
蝶番やハンドルが形作られ、あっという間に頑丈そうな水密扉ができあがりました。
「なっ・・・!?これは!?」
驚くクライドさん、それをみて私はドヤ顔でハンドルを回して扉を開きます。
「さぁ、こっちです!」
そう、私のIS、フラスコ=オブ=アルケミスト(錬金術師の試験官)は物質変換能力なんです。
生物相手には無理ですけれど、それ以外なら何だって自由自在に原子レベルで作り変えることが出来ます。
構造さえ分かれば鉄塊から戦車だって作ってみせますよ?
うん、自分で言うのもアレだけど超チートくさい。
それになんか鋼○錬金術師の手合わせ練成のパクリっぽいし・・・いつの間に私は心理の扉を開いたんでしょうか?
とにかくISで作った扉を潜り、隣の部屋へ。
そこでまた扉を作ってさらに隣に・・・。
そうして触手要塞を迂回、戦う事無くして私達は格納庫へたどり着きました。
どうでもいいですけど触手要塞とか、何か陵辱系エロゲのタイトルっぽいですね・・・。
「大丈夫かい、スカリエッティさん?」
「ゼェ、ゼェ・・・だい、じょうぶです・・・」
クライドさんにはああ返しましたが正直かなり辛いです。
こんな短時間にISを連続使用したのは初めてなのでかなり体に堪えますね。
リンカーコアも然ることながらさっきから胸のレリックが悲鳴を上げています。
今後のことも考えて鍛えたほうがいいかもしれません。
「そうか、とにかくここまで来れば・・・」
そこで私の強化された聴覚は嫌な音を捉えました。
メキメキと船体が軋むような・・・。
「危ないっ!」
クライドさんを伏せさせ自分も屈みます。
すると頭のすぐ上を闇の書の触手が通り過ぎます。
触手は鞭のようにしなりながら私達の周りを暴れ周り、破壊の限りを尽くしていく。
「くっ、このぉ!」
『ブレイズ・キャノン』
伏せながらクライドさんがデバイスを起動、抜き撃ちで触手を撃ち抜きます。
撃たれた触手は暫く暴れた後、ピクリとも動かなくなりました。
「スカリエッティさん、無事かい?」
ボロボロになったクライドさんが心配そうに聞いてきます、って・・・クライドさん既にもうボロボロでしたね。
「うぅ・・・私は大丈夫です。クライドさんは?」
「ああ、大丈夫だよ。しかし・・・」
言葉に詰まったクライドさん。
不思議に思い彼の視線の先を見ると・・・。
「げぇっ・・・」
台風一過が可愛く見える惨状でした。
残っていた連絡艇や救命ボートは原型も留めないほどバラバラにされ、とてもじゃないけどアレに乗って脱出するのは不可能です。
「っ!そうだ、船外作業服は!?」
次元航行艦は宇宙船としても使えます。
宇宙空間を航行中に船殻が傷ついたら人が外に出て修理しないといけません。
そのための船外作業服、つまり宇宙服が常備されているはずです。
連絡艇とかに比べると非常に心もとないですがもはや贅沢は言っていられません。
クライドさんと二人で格納庫を探すと、案の定船外作業服が出てきました。しかし・・・。
「無事なのは一着だけ、か・・・」
あのウニョウニョやろーが暴れたせいで作業服を収納していたロッカーも破壊され、使えるものは一つしかありませんでした。
もちろん着けられるのは一人。
中に二人も入れません。
「・・・アースラ、聞こえるか?」
通信を入れるクライドさん。
「今から船外作業服でスカリエッティさんが脱出する。そっちで回収してくれ」
・・・ストップ、ちょっと待て。
「言いたいことは分かる、しかしこれ以上の方法が無い。分かってくれ、スカリエッティさん」
「でも・・・」
「行くんだっ!時間が無い!」
・・・なんでしょう、何だかまた沸々と怒りがこみ上げてきましたよ。
クライドさんの言い分は分かりますよ。でもね、さっきも言いましたけど何でそうやってすぐあきらめるかな?
時間が無い?分かってますよ!だったらギリギリまで粘っていい案を考えればいいじゃないですか!?
思考が幼稚かも知れませんけどすぐに諦めちゃうのが大人なら私は子供のままで結構です!
むっ、クライドさんが宇宙服を手に取った。無理やり私に着せる気ですね?
そうはさせません!私はそれを払いのけると左手の銃口を向けて全ての残弾を叩き込みます。
穴だらけになる宇宙服・・・どうだ、これで使えまい!
「そんな、何て事を・・・」
最後の希望が潰えたかの様にに絶望に表情を歪ませるクライドさん。
いえ、実際クライドさんの中では潰えたのでしょう。
でも私はまだ絶望なんてしてません、生きて父さんとまた会おうって約束したんですから。
だから言ってやるんです・・・。
「私は絶対諦めません。誰かを切り捨てるなんて絶対許しませんから!」
項垂れていたクライドさんが頭を上げます。その顔はとても悔しそうです。
「ではどうするというんだ!?もう脱出の手段は残されていないんだぞ!」
「それをこれから考えるんです!」
そうだ、諦めんな私。まだ何かあるはずだから。
考えろ、考えろ・・・私の最大の武器は何だ?間違いなくフラスコ=オブ=アルケミスト(以下FOA)だ。それでどうやって脱出する?
残骸から宇宙船を一隻拵える。うん、無理。構造が分からないからよくできたハリボテしか出来上がらない。
宇宙服の方は・・・こっちも難しそう。生命維持装置とか私には作れない。こんなことなら魔法だけじゃなくて電子系とか工学系の勉強もしとくんだった。
ん?まてよ・・・アレをこうしてソレしたら・・・何とかなるかも。
「クライドさん!消火作業用の装備って此処にあります!?」
「え?あぁ、それならそっちのロッカーに・・・」
戸惑いながらクライドさんが指差した先にあるロッカーに私は走ります。
このロッカーも触手にやられへこんでましたが原型は留めています。
力任せに扉を開くと中には・・・
「あった・・・!」
私はソレを持って連絡艇の残骸の前に立ちます。
「さて、やりますか!FOA、発動!」
先程のように電流が迸り、光りが残骸を飲み込んでいきます。
(ヤバイ、もつかな・・・?)
恐らく限界が近いのでしょう、さっきから胸の奥がものっ凄く痛くて溜まりません。
内臓器官もおかしいのか痛さと気持ち悪さで泣きたくなってきます。
(お願いだからもう少し持ちこたえてくださいよ・・・)
私は自身のリンカーコアとそれに同期しているレリックに心の中でそう願いながら目的の物をイメージします。
そのイメージに合わせて残骸が形を変えてゆきます。
次々とパーツが結合して行き、ばらばらだったスクラップは次第に思い描いた物に近づいていきます。
「こ、これは・・・!」
後ろを振り向くとポカーンとした顔でソレを見ているクライドさん。
(良かった、間に合った・・・)
完成したところでついに限界が訪れたのか、口から紅いものを吐きながら私は意識を手放しました。

「クライド艦長、応答してください!こちらアースラ。繰り返します、応答してくださいクライド艦長!」
最後の通信以降、連絡が取れないクライドにアースラの面々は焦燥を募らせていた。
脱出の可能性が見られ、一度は希望を取り戻しただけに、押し寄せる絶望が彼らにはとても大きく見えた。
「クラウディア、アルカンシェルのチャージ再開!エネルギー臨界まで約600秒!」
そこでオペレーターから最も聞きたくなかった内容の報告が齎される。
ハルナによって破壊されたエネルギー系の修復を終えた闇の書は再びアルカンシェルを撃つべく準備を始めたのだ。
グレアムは立ち上がりブリッジを見回す。
そこにいた乗員達は一様に不安の色を露わにグレアムを注視していた。
(恨んでくれ、クライド君・・・)
グレアムは一度、深くため息をつくと砲術長に問い質した。
「こちらのアルカンシェルはすぐに撃てるか?」
「え?あっ、はい。エネルギーの充填はすでに終わっています」
先程ハルナが横槍を入れたため発射することの無かったアルカンシェルはエネルギーを充填したままの状態で今まで待機していた。
「分かった・・・。アルカンシェル、発射用意!」
「・・・っ!?提督!」
リンディはグレアムに詰め寄るが、再びリーゼ姉妹に制止される。
「本艦の乗組員と次元世界にの全市民には代えられないのだ。すまない・・・」
そう言い放つグレアムの手は固く握られ血が滲んでいるのを見てリンディは気付いた。
共に歩んできた教え子を自分の手にかけるのだ。辛く無い訳が無い。
それでも彼は決断したのだ。
次元世界の為に教え子を犠牲にするの言う苦渋の決断を・・・。
アルカンシェルの発射キーの前に立つグレアム、安全装置は既に解除されている。
刺さったキーにグレアムが触れた直後、観測員が叫んだ。
「あっ、待ってください!エスティアで小規模な爆発、何かが射出されました!これは・・・デュランダルのシグナルです!」
デュランダル・・・クライドのデバイスの反応があると言うことは・・・。
「クライドさん!」
「二人が脱出したんだよ!父様!」
「うむ、先程の射出体を追尾!アルカンシェルの安全圏までどれくらいだ!?」
観測員に問い質すグレアム。
「効果範囲外まで後10秒・・・5秒・・・離脱しました!」
報告を聞くや、改めて発射キーを掴むグレアム。
「総員、衝撃に備え!アルカンシェル発射ァ!」
叫ぶや否やキーをまわすグレアム。
直後、アースラの艦首から特大の閃光が放たれる。
閃光はまっすぐエスティアに吸い込まれていき、着弾するや一際大きく光った。
その輝きの中でエスティア、そして闇の書が光りの中に溶けていく。
光りは暫く瞬いた後ゆっくりと収束していき、やがて次元空間はもとの静けさを取り戻した。
「エスティア、完全に消滅。闇の書の反応もありません」
「終わった、のか・・・?」
今だ脅威が去ったのを実感できず呆然と、または緊張が解けないでいる乗員達。
「デュランダルの反応は!?」
グレアムの一言で、再びブリッジに緊張が走る。
観測員がモニターに目を走らせ、通信士がクライドに呼びかける。
それを祈るように見つめるリンディとリーゼ姉妹に険しい顔のグレアム。
重い空気が暫くブリッジを支配していたがそれは唐突に終わりを迎えた。
「・・・っ!デュランダルの反応を探知!方位、3-2-0!距離、2000!」
「目標、光学探知!映像出ます!」
観測員が報告し、当該空間の映像を投影する。
アルカンシェルの余波の影響で不鮮明ながらも映し出された映像には次元空間に小さな球体がポツンと浮かんでいた。
アースラが球体に近づくにつれ、その細部が鮮明に映し出される。
「あれは・・・っ!?」
それは一言で言うならば4~5メートル大の丸い鉄屑だった。
艦船勤務の長い局員が見たら連絡艇のものだと分るパーツ、それを繋ぎ合わせ無理やり球形にしたような物体。
出入り口と思われる重厚な水密扉を除けば、推進装置はおろか窓の一つも存在しない鉄塊、それがアースラのクルーの感想だった。
「あんな物で脱出したのか!?」
「あれじゃあ操縦どころか生命維持だって出来ないじゃないか!」
人間が2~3人入ればいっぱいの玉、そんな小さなものに生命維持装置がつめるはずが無い。
パーツ同士はしっかり接合されているため、空気が流出することは無いだろうがハッキリ言って中の人間は長くは持たないだろう。
「回収を急げ!医療班を直ちに連絡艇デッキに向かわせろ!」
故に、直ちに回収し搭乗者に適切な医療処置を施さなくては最悪窒息死、そうでなくても酸欠で脳に障害を負う可能性が高かった。
「・・・っ!クライド艦長より通信です!」
クライドからの通信、それを聞いたブリッジ要員は歓喜と安堵に包まれた。
クライドが生きていると言うことは保護した少女も無事だろう。
それを聞いた乗組員たちは歓声を上げる。
しかし次の瞬間、回線が開きクライドたちの姿が投影された途端、それが間違いであった事を彼らは知った。
「なっ・・・!?」
「そんな・・・っ!」
絶句する局員達。
『アースラ、応答してくれ!早く回収を!』
投影された映像の向こう、カプセルの中にクライドはいた。
彼の顔には酸素マスクが取り付けられている。恐らく消火作業用の防火服の物だろう。
だが問題は彼の腕の中。
『彼女が、スカリエッティさんが危険な状態だ!早く!』
そこには血の気の失せた顔色のハルナが口から血を流しながらグッタリとしていた。



ハルナ死すっ!嘘ですごめんなさいちゃんと続きます。
そんなわけで死亡キャラ生存のタグ回収完了です。
次回ですが幕間の話を追加中なので少々遅れます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6.5話「お姉ちゃんが死にかけている時、よそではこんな会話が行われていた」

お待たせしました、予告していた幕間話になります。
自分でやっといてなんだけどスカさん達、キャラ崩壊が激しすぎw


暗い室内、その中央に彼、ジェイル・スカリエッティは居た。
両手を手錠で拘束されたその姿は正に囚人そのものだ。
「さて、ジェイル・スカリエッティ・・・貴様には色々と聞かねばならぬことがある」

機人長女リリカルハルナ
第6.5話「お姉ちゃんが死にかけている時、よそではこんな会話が行われていた」

突如彼の右斜め後ろから声がする。
視線を向けるとそこにはⅢと表記された時空管理局のエンブレムか輝いていた。
「左様、虚偽ばかりの戦闘機人の研究データ、そして此度の脱走・・・貴様は我々に対し隠し事が多すぎる」
左斜めから別の声。
そこにも現れたのも管理局のエンブレム。
こちらのナンバーはⅡだ。
「全てを話してもらうぞ、ジェイル・スカリエッティ・・・」
最後に正面に現れるエンブレム。
その表記はⅠ。
彼らは数多の次元世界の秩序の守護者・・・時空管理局の意思決定機関の頂点に立つ者達。
最高評議会のメンバーだ。
「さて、話せと言われましても・・・報告は定期的に上げていたはずですが?」
おどけてみせるスカリエッティ、しかし三人は彼の内心を見透かしているのか鼻で笑う。
「フン、ぬけぬけと言いおる」
「では・・・これはどう説明するのかな?」
スカリエッティの前にディスプレイが投影される。
「げっ・・・!」
それをみて彼は絶句した。
『パ~パ、パ~パ!』
『そうだぞぉゼロ。私がパパだぞ~』
生後数ヶ月の赤ん坊、ようやく喋れるようになったハルナをたかいたかいするスカリエッティ。
『次にお前はこう言う、父より優れた娘など存在しねぇと・・・』
『父より優れた娘など存在しねぇっ!ハッ・・・!?』
先ほどよりも成長したハルナとジョジョなのか北斗の拳なのかよく分からないやり取りをするスカリエッティ。
『こう?』
『ふむ、どうも萌えが足りないなぁ』
『じゃあこれは?』
『そっちもなぁ、キャピキャピしすぎて逆にあざとく感じる・・・』
バリアジャケットを展開し、イェーガーを手にしたハルナと決めポーズを考えるスカリエッティ・・・。
そこに映っているのは彼と娘・・・仲睦まじい家族の姿だった。
「さて、これについて説明してもらおうか?」
「あ~、それは、その・・・」
記念に取っていたホームビデオを見せられ詰問されるスカリエッティの顔にジワリと汗が浮かぶ。
「最早言い逃れはできんぞ・・・!」
評議長が怒気の籠った声で言う。
「我等を謀った罪、許されると思うなよ!」
評議員が声を張り上げる。
「貴様の行為、正に万死に値するっ!」
書記の怒声がスカリエッティに叩きつけられる。
(どうやら私はここまでの様だな・・・ハルナ、すまない・・・っ!)
自身の死が確定したのを確信したスカリエッティは施設から逃した愛娘に心の中で詫びる。
そんな彼に三人は更なる怒声を浴びせた。
「「「どうしてこんな可愛らしい娘がいるのに黙っていたっ!!?」」」
「・・・は?」
その問いは次元世界屈指の頭脳を持つスカリエッティをしても理解できないものであり、思わず開いた口から呆けた声が零れてしまった。
「貴様・・・ワシ等が日夜世界の平和守ってる時に自分だけかわいい娘と和気藹々としおって・・・羨ましいぞ!」
「そうだそうだ!我々だってなぁ!潤いが欲しいんじゃ!」
ポカンとしたスカリエッティに評議員と書記が叫ぶ。
「もう我慢できん!大至急彼女を保護しろ!この子はワシが孫として育てる!!」
評議長がそう宣言した瞬間、室内の空気が固まった。
直後オドロオドロしい怒気が部屋中に充満し、そして・・・。
「「「ふざけるなー!!!」」」
評議員と書記、そしてスカリエッティの怒号が木霊した。
「議長!この野郎一人だけ抜け駆けしおって!」
「脳みそだけのお前にまともな育児ができるわけなかろうが!」
「ちょっと待て!そう言うお前らだって脳みそだけだろう!人の事が言えた口か!?」
「お前ら黙って聞いてればなぁ・・・何勝手に人の娘の処遇を決めようとしてるんだ!?お前等なんぞにハルナはやらんっ!!」
「「「何だとぉっ!!?」」」
怒声と怒号、時たま拳とどこからか生えてきたマジックハンドが飛び交う室内・・・。
こうしてスカリエッティと最高評議会、親馬鹿と祖父馬鹿を拗らせた四人の醜い争い・・・『第一回ハルナの親権争奪戦』は彼女がエスティアに保護されたという報告が伝えられるまで続くのだった。
ちなみに結果はクロスカウンタによる4人同時KOであった。



この時空管理局は別の意味でダメかもしれませんねw


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7話「お姉ちゃん、バレる」

第7話です。
今作で誕生編は終了、次回から新章突入です。


暗い、此処は何処だろう?
「・・・!・・・・っ!!」
何か聞こえる・・・。
「血圧・・・下!・・・にも乱・・・!」
「・・・だ!輸血・・・!」
これは・・・声?
「不可能で・・・こんな身体の・・・前例が無・・・!」
「やるしか・・・!彼女の命が・・・!!」
そっか、そういえばISの使いすぎで身体が限界を超えちゃったんだっけ。
多分私は今手術中で聞こえているのはお医者さんの声なんだ。
どうでもいいけどお医者さんと聞いてエロいイメージが浮かぶ私はかなりアウトかもしれませんね・・・。
とまぁ、アホな思考はそろそろ止めにして・・・やっぱ私死んじゃうんですかねぇ・・・。
あれだけ大量に吐血したって事は間違いなく内臓やられてますしね。
それに先生方の会話からして私を治療することが難しいみたいです。
考えて見ればそうですよね。この時代に戦闘機人なんて私以外に存在しませんもん、治療方法なんて当然ありません。
それなのに妙に他人事に感じるのは私が達観しているのか既に諦めの境地に到達してしまったのか・・・。
あぁ、でも最後にまた父さんに会いたかったです。
あと、出切ればアニメシリーズ3作品分位活躍したかったですし妹にも会いたかったですし栗毛と金髪のツインテ百合カップルやチビだぬきな大阪系少女とかと友達になりたかったですし・・・。
あれ・・・やっぱり未練タラタラじゃね?
「な・・・だ君は!?」
「ここ・・・部外者は・・・だ!」
おや?なんか騒がしくなってきましたよ?
だれか関係者以外が入ってきたんでしょうか?
「許可・・・受・・・る。ここ・・・私に任・・・」
誰かがそう言うと人の気配が少なくなっていきます。
先生方が退出したようです。
「・・・・・・」
何でしょう、誰だか分らない人と密室に二人っきり・・・。
何をされるのか分らない分さっきより一段と不安になってきました。
もしかして薄い本のようなエロい目に!?
「大丈夫だよ」
え?
この声は・・・!?
私は何とかして目を開けようと意識を集中させます。
そしてやっとこさ瞼を開けると・・・。
「とぉ・・・さん・・・?」
今だ焦点の会わない視界の中、父さんが私を見下ろしていました。
しかしそこで気力が尽きたのか私の意識は闇に落ちていきます。
「必ず君を助けてみせるよ、ハルナ・・・」
それが意識を手放す直前に耳にした父さんの言葉でした。

機人長女リリカルハルナ
第7話「お姉ちゃん、バレる」

「知らない天井だ・・・」
しつこいようですが様式美です。異議申し立ては受け付けません。
とそこで何かが落ちるような音がして其方を見ると看護師さんが立っています。
足下には点滴のパック、これから取り替えようと病室に入ってきたみたいですね。
「目が、覚めたの・・・?はっ・・・!そのまま動かないで!まだ身体は衰弱したままだから!」
そう言って看護師さんは私の枕もとに来ると備え付けのナースコールボタンを押してお医者さんを呼び出しました。
その後は慌てて病室にやって来た先生方に身体に異常は無いか検査されたんですが明らかに違うことを調べてるようにも感じました。
まぁ、先程も言いましたがプロジェクトFなんて影も形もない時代です。
そんな所に超高性能な戦闘機人なんて現れたら大騒ぎになるでしょう。
そして諸々の検査で丸一日つぶれたその翌日。
「こんにちは、スカリエッティさん」
クライドさんがやってきました。
手にはお花と果物の詰め合わせ、どうやらお見舞いに来てくれたみたいです。
「その、身体の具合は大丈夫かい?」
クライドさん、心配してくれていることに嘘偽りは無いようですがどうもそれだけの為にきた訳じゃないようです。
どこか落ち着かないというか警戒しているような素振りですしチラチラとこちらの様子を窺ってきます。
それに各センサーでスキャンしてみれば病室の周りには完全武装の魔導師と思われる人たちが待機しており、何かあればすぐ突入できる状態にありました。
うん。すげー警戒されてますね、私・・・。
まぁ、正体不明の人造魔導師のようなナニカが相手です。警戒するなという方が無理でしょうね。
「はい、おかげさまで」
とりあえず当たり障りの無い返事をしてみましたがさて、どう転ぶでしょうか・・・。
「そ、そうか・・・それはよかった・・・」
クライドさんはそういうとそれっきり黙ってしまいました。
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
沈黙が続きます。
気まずいです!
私こういう雰囲気ダメなんです!
なので先に心が折れてしまいました。
「あの~、何か聞きに来たんじゃありませんか?」
「っ!な、何故そうおもったんだい?」
うわぁ、メチャクチャうろたえてますよ。大丈夫なのか管理局?
結構偉い人なんですからもうちょっと腹芸が出来なきゃだめですよ、クライドさん。
「思いっきり態度にでてますよ・・・それでどうします?続けますか尋問?」
私がそう聞くとクライドさんはガバッという効果音が付きそうな勢いで立ち上がります。
「違う!違うんだ、スカリエッティさん・・・」
全力で否定してくるクライドさん。
助けた女の子にこんなことしたくないんでしょうね。
理想と任務の狭間で葛藤しているようですがどんだけいい人なんですかこの人?
こりゃ余計なことを口走ったらいけませんね。
最悪、最高評議会の送り込んできた暗殺者に消されてしまうかもしれません「お前は知りすぎた」とか「騙して悪いが仕事なんでな」とかいって。
「はぁ・・・そんなに知ってる事は多くありませんよ?」
「・・・すまない」
罪悪感で胸がいっぱいなクライドさんを前に私の身の上の説明を始めました。
とりあえず当たり障りの無い内容を話すとしましょう。
「既に調べたと思いますけれど私の身体は普通じゃありません。人為的に作られた物です」
「では、やはり人造魔導師・・・」
「研究所の人は戦闘機人って呼んでました、文字通り戦うために機械と融合した身体だからでしょう・・・」
その話を聞くや否や顔を歪めるクライドさん。
人間を何だと思ってるんだって顔ですね。
「生まれて3~4年位研究所の中ですごしてきたんですけれども少し前に管理局の強制捜査が入りましてその時に父さん・・・私を生み出した研究員の人に転送ポートで逃がしてもらったんです」
「そしてあの森で守護騎士に襲われて倒れていた、ということか・・・」
そう言ってクライドさんはどこかと連絡を取り始めました。
恐らく最近捜査が行われた研究所の洗い出しをしているのでしょう。
「すみません、大して力になれなくて・・・」
「いや、こちらこそ嫌な思いをさせてしまった。改めて謝罪させて欲しい」
そう言って頭を下げるクライドさんでした。
保身の為に管理局に協力的なポーズをとっておこうと言う下心も少しはありますがクライドさんにはそういった思惑抜きで強力したくなる何かがあります。
これがこの人の人徳なのでしょうね。
それで尋問と言うか事情聴取は終わったのか後は他愛無いお喋りばっかりでした。
クライドさんに私と歳の近い息子さんいる事とか、私と父さんが地球の漫画やアニメを観て盛り上がってた事とか地球つながりでクライドさんの上司兼師匠が地球出身だったとか・・・。
こんな感じに会話が弾んでいたらいつの間にか日が傾いていました。
まぁ、クライドさんがやって来たとき既に午後に突入していたのですから仕方ありません。
看護師のお姉さんが入ってきて面会時間の終わりを告げてきました。
「それじゃあ私はそろそろ行くよ、今日はありがとう。」
名残惜しいですが仕方ありません。
クライドさんだって多忙な中、態々時間を作ってやって来てくれたんですから。
「はい、此方こそありがとうございました」
ですからちゃんとお礼を言わないといけません。
「ああ、そうだ。君の身柄は私が責任を持って護る。だから安心して今は養生してくれ」
更に私が不安にならない様に此処まで気を使ってくれるなんて、もうクライドさんの方に足向けて寝れませんね。
最後に「それじゃあお大事に」と笑顔で言ってクライドさんは病室を出て行きました。
扉が閉まり病室に静寂が訪れます。
「・・・・・・」
病院は静かな場所なのは知っていましたがクライドさんが去った病室はやけに静かで逆に耳がキーンと痛くなるような錯覚すら感じました。
べ、別に一人になって寂しく思ってる訳じゃないんだから!本当だからね!
さて、ほのぼの&ギャグパートはこれ位にして・・・。
「隠れてないで入ってきたらどうですか?」
ここからはシリアスパートといきますか・・・!
声をかけられて観念したのか入ってきたのは一人の男性でした。
本局の青い制服姿の中肉中背40代位の無個性なおじさんです。
人ごみにいたら周囲に溶け込んで絶対に見つけられない。それ位個性と言うものが感じられません。
ガンダムで言うところのGMです。超没個性、同じヤラレメカのザクだってもっと個性があるというのに・・・。
私が思うにきっと名前はジョン・スミスか田中太郎に違いありません。
情報部とかそんな部署の、恐らく最高評議会の息のかかった人でしょう。
「これは失礼しました。隠れている積もりは無かったのですが中々どうして・・・女性の部屋と言うのは入るのを躊躇ってしまっていけない」
場を和ませてるつもりでしょうか?
仮称ジョンさんがジョークを言い放ちますがすげーつまんないです。
これは笑わなきゃいけないんでしょうか?アメリカンコメディのノリでHAHAHA!って・・・。
うん、無理。
「それで何の御用でしょう?面会時間はさっき終わっちゃいましたよ?」
なのでスルーして話を進めてしまいましょう。
「今のジョークは渾身の出来だったのですがね・・・まぁいいでしょう。」
マジで笑いを取るつもりだったんですか?!
部屋に備え付けの椅子に「よっこいしょ」と言って座ってから改めて目の前のおじさんは口を開きます。
「自己紹介がまだでしたね。技術部システム管理課のジョン・田中です」
なんと、本当にジョンさんでしたよ。しかも苗字が田中・・・おもいっきし偽名ですって言ってるようなもんじゃないですか。
おまけに技術部?無個性の癖に眼光だけ鋭かったり身体の重心が全くブレなかったり思いっきり戦闘者じゃないですか。
あなた隠す気ないでしょう?どう見ても最高評議会の刺客ですよ。
「それでその田中さんが何の用で此処に?事情聴取なら先程済みましたよ?」
ここで余計なことを口走ったら田中さんは私を消しに掛かるでしょう。
私だけならまだいいです。返り討ちは無理でも逃げるくらいなら出来るはずです。
問題はクライドさんです。
さっきも言いましたが知りすぎたとかいわれて消されたり、あとは人質にされたりとかしたら私は何も出来ません。
なので下手な手は打たないで様子を見ましょう。
私の前に現れたということは私に何がしかを要求しているのでしょう。
「いえ、なに・・・貴女の今後について話し合いに参上した次第です」
確定。コイツ間違いなくノーミソ老人会の差し金です。
「私の今後ですか?」
とにかく今は無知なフリをして情報を引き出しましょう。
「はい、貴女は現在複雑な立場にいます。違法研究機関の被験体、それだけ観れば被害者として保護される立場です」
「しかし・・・」と田中さんはそこで一回区切ってから話を続けます。
「貴女は非常に強力な力を持っている。使い方を誤れば多くの人を傷つけてしまう程危険な力を・・・。それらは然るべき教育を受けた上で然るべき場所で正しく振るわれなくてはならない。貴女なら理解できますね?」
つまり意訳するとこういうことですかね。
オマエの力はヤバイから管理局の為に使われるべきだ、と。
すげー傲慢な発言ですが本来私は管理局が魔導師不足を補う為に父さんに開発させた戦闘機人な訳であながち間違いでな無いんですよね。
「つまり私は退院後は管理局の預かりになると、そういう事ですか?」
「まぁそう言う事になりますね。具体的な配属先などは追って通達しますので・・・」
なんつぅかこの人、私が管理局入りすること前提で話進めてるよ・・・。
「拒否権とかはあるんでしょうか?」
この手の質問が来ることを予想していたのでしょう。
田中さんは空間ディスプレイを投影してある画像を見せました。
「なっ・・・!!」
それを見た私は文字通り息をのみました。
そこにはバインドで両腕を繋がれた父さんとあの研究所の研究員さん達が連行されている光景でした。
父さんの近くにクイントさんが写っている事からあの日、局員が突入してきた日のものでしょう。
「貴女が正式に局員として管理局に来てくれるのであれば貴女のお父上、スカリエッティ博士との早期再会が叶うのですか・・・いかがでしょう?」
ちくしょう・・・迂闊でした。クライドさんの心配ばっかりしてたせいで父さんの事忘れてましたよ!
そうですよ、父さんあの後御用になったに決まってるじゃありませんか。
口封じに殺されるかと思っていましたが私を縛るための人質にするとは・・・。
こうなっては最高評議会に従わざる追えないでしょう。
「・・・分りました。ご要望通り入局しましょう」
私が大人しく従ったことに田中さんは顔をほころばせます。
「それは良かった。断られたらどうしようかと心配しましたよ」
話は終わったとばかりに田中さんは席を立ちます。
「ただし・・・」
退室しようとする田中さんに私は決して大きな声ではないですがハッキリとした口調で言ってやります。
「私の縁者に何かあった場合はその限りでありませんから。そのつもりでいてください・・・」
父さんだけじゃなくて研究員さん、そしてクライドさん達に何かあったらタダじゃ済まんぞワレェ・・・!と脅しておきました。
最も何かあったらブラフでも何でもなくタダじゃすましません。
アラモ銃器店で全品100%オフの買い物をしてからで羽の付いたカヌーで突入、『デェェェン!』て感じに完全武装してターミネーターと化した挙句爆弾攻勢を開始、首謀者も実行犯もタダの案山子も資本主義者も特殊訓練を受けたゲリラも一人残らず安物のナイフであすたらびすたべいべーした上でカバンにしてやる所存です。
「・・・ええ、承知しました。」
それだけ言って田中さんは今度こそ病室を後にしました。
「はぁ~緊張した・・・」
ガチの工作員と腹の探り合いなんてするもんじゃありませんね。
気力の使い過ぎでお腹がすきました。
食堂に行きたいですがお医者さんの言いつけで病室からは出られません、最もこの体じゃあ立つこともままならないんですけどね。
あ、クライドさんの持ってきてくれた果物がありました。
「頂か居ます。もきゅもきゅ・・・あ~バナナおいしい」
とりあえず今は養生しましょう、局で働くにしても体が治らなきゃ始まりませんから。

Side ジョン・田中
病院を後にした彼、ジョン・田中は通信を入れる。
「私です、ご命令の通り彼女に入局を促しました」
相手は彼の直属の上司、時空管理局最高評議会。
「はい・・・はい。彼女も了承してくれましたよ。ただ・・・」
かわいい孫(最高評議会談)が路頭に迷わない様就職先を用意するという彼らの意向を伝えに来た田中であったが・・・。
「ミズ・スカリエッティは何か勘違いしているようでした・・・」
どうやら説明不足だったらしい。
当の本人は父を人質に服従を迫られたと思ったのか最後に此方を脅すような発言をしてきた。
「釈明しようにもあの様子では信じてくれないと思われます」
結局彼女が真相を知るのは父と再会してからになるのは間違いない。
それまで続くだろうギスギスした関係を想像したジョンは深くため息をつくのであった。
Side out

目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

就労編 第8話『雨降って地固まるって言いますけど普通雨降ったら固まるどころか地面ドロドロですよね?』

お待たせしました、新章開始です。
文字通り主人公が働きます。


「はぁ、はぁっ・・・!クソッ!」
男は走っていた。
場所は夜のクラナガン、ネオンの眩しい表通りを外れた暗く薄汚れた裏路地を全速力で。
積み上げられた箱やゴミを蹴り倒し、躓きながらも男は走る。
しきりに後ろを振り向き追っ手の姿を確認するがその姿を確認することは出来ない。
しかし・・・。
「っ・・・!?」
男は咄嗟に右にかわす。
すると先程まで彼がいた空間を青白い弾丸が通り過ぎていく。
気付くのが一瞬遅ければ、かわすのが後コンマ数秒遅れていれば彼は魔力弾のシャワーを浴びていたことだろう。
「畜生!何で奴には見えるんだ!?」
この暗闇の中、闇雲に逃げる自分を追跡者は音も無く的確に追い詰め、狙い違わず発砲してくる。
対してこちらは相手の姿どころか足音や気配すら聞こえず何処からとも無く飛来する魔力弾に撃たれる恐怖で気が狂いそうだ。
永遠に続くと思われた夜の街の鬼ごっこは唐突に終わりを告げる。
「なっ!行き止まり・・・!?」
無我夢中で逃げる男は路地の突き当たりに追い詰められてしまった。
左右を見回し、逃げ道が無いか確認する。
しかし周囲の廃ビルは扉も窓も閉ざされた上から厚い鉄板で塞がれ飛び込むことは不可能だった。
「ちっくしょうがぁ!」
男は振り返り手に持ったデバイスを機動する。
そう、男は魔導師だった。
魔導の才能はそれなりにあったがそれを磨く事は無く、悪い仲間と遊び歩いていたのが祟り、碌な職に付く事ができなかった。
そして男はクラナガンを拠点とするマフィアに雇われお抱え魔導師として後ろ暗い仕事を今日まで続けてきた。
そのため幸か不幸か、こと戦闘に関しては組織で一目置かれるまでになっていた。
「来やがれ、管理局のクソ野郎が!ぶっ殺してやる!」
塞がれた扉を背にし、暗闇にデバイスを向ける。
腕に自信のある自分が追い詰められるのだ。
追っ手・・・時空管理局の捜査官はかなりの戦力を投入しているのだろう。
10人か、20人か・・・。
それでも正面からの撃ち合いならば負ける気はしない。
男は不適に笑いながら現れるであろう捜査官達を待つ。
しかし、10秒過ぎ、20秒過ぎ、1分過ぎても彼らは現れない。
肩透かしをくらい不思議に思った男が眼前の闇に目を凝らしたその時。
突然背後から大きな音がする。
「っ!!」
慌てて背後を振り返った男。
「なんd・・・ぶっ!!」
何だ?
彼はその言葉を最後まで言う事無く自分に向かって飛んでくるぶ厚い鉄板・・・開かずの扉だった筈のドアに顔面を強打される。
扉共々2メートルは吹き飛ばさた男は今しがた廃ビルに出来た出入り口から現れた人影に驚愕する。
「ガキ・・・だと?」
それは屈強な武装局員でも狡猾な執務官ですらなく、小さな少女だった。
その少女が無骨なデバイスと思しきものをこちらに向けるとその先から青白い魔力光が発せられる。
どうやら今まで自分を追い詰めていたのは目の前の少女のようだ。
「こんな、ガキに俺は・・・」
そういったところで少女のデバイスから閃光が走り、男は意識を手放した。

機人長女リリカルハルナ
第8話『雨降って地固まるって言いますけど普通雨降ったら固まるどころか地面ドロドロですよね?』

「それでは被疑者の護送、よろしくお願いします」
「はっ・・・それでは失礼します」
私に返礼すると警邏隊の局員は護送車のほうへ走っていきます。
どうもこんばんは。いや、こんにちはかな?うん、現地時間23時なのでやっぱりこんばんはで行きましょう。
こんばんは、ハルナ・スカリエッティ執務官です。
病院でのやり取りからはや5年、田中さんとの交わした契約の通り私は時空管理局で働いています。
退院と同時に陸士学校に放り込まれ3ヶ月の短期講習を受け、その後は士官学校に放り込まれこれまた半年の促成コースで法律やら何やらを叩き込まれた挙句執務官試験を受けさせられギリギリこれに合格、今はミッドチルダ地上本部付きの執務官をやっています。
戦闘機人のチートボディのおかげで実技のほうは簡単にパスできたので座学に専念できたのが幸いでした。
ちなみに私の所属を巡って陸と海のお偉いさんが争ったらしいです。
クライドさんをはじめ、私を保護したいという思う人も幾分かはいたとは思いますが殆どは私と言う強力な戦力を他所に取られまいという思惑からでしょう。
結局最後は最高評議会が動いて私は暫定で陸の預かりとなりました。
定期的にクライドさんに手紙を出してはいるのですが果たして届いているのかどうか・・・。
また、定時連絡にやってくる田中さんに父さんの事を聞いてはいるのですがいずれもはぐらかされてしまいました。
私の方でも独自にに父さんの事を調べてみましたが全く情報が手に入りません。
もしかしたら父さんは既にこの世にはいないのかもしれません・・・。
何か湿っぽくなってしまいましたね、この話はお終いにしましょう。
それにしても、さすがはミッドチルダが首都クラナガン。
時空管理局のお膝元の筈ですがとにかく犯罪が多いです。
しかもかなり組織だった犯罪が。
大都市ですからその分動くお金も大きいのでしょう。
それに比例してそこを根城にしている犯罪組織も大きくなるのは分りますがこれだけ連日出動が続けばチートボディな私でも気が滅入ってきます。
そしてもう一つ気が滅入ることがありまして・・・。
「あ、居た居た・・・スカリエッティさーん!」
・・・噂をすればこれですよ。
「やっと見つけましたよ。さぁ、今日こそは検診を受けてもらいますよ!」
そう言って近寄ってくる本局制服の上に白衣を纏った緑がかったショートヘアに円メガネの局員。
コイツ、マリエル・アテンザとか言う私と同じくらいの年齢のこの女は私の専属医らしいです。
とは言えこの女の本来の部署はデバイスの整備、開発が専門の第4技術部・・・。
明らかにコイツ私の事珍しいメカとしか思ってないですよ。
検診とか言いながらどうせ私の稼動データを取って来いとか評議会に言われているに違いありません。
「結構、メンテナンスは間に合ってます」
なので突っぱねます。
私の体を触っていいのは父さんだけです。ちなみに性的な意味で触ったら父さんでもぶっ殺しますが・・・。
「そう言って前回の検診も拒否したでしょう。一度ちゃんとした設備で見ないと心配じゃないですか?」
それなのに何度断ってもしつこく食い下がってくるのでその度にイライラが募っていきます。
「自分の身体です、自分が一番よく分かっている。余計なおせっかいは結構」
いえ、それだけじゃありません。
二度と父さんに会えないかも知れない不安。
現状への苛立ち。
そして何より管理局への憎悪とも言える不信感。
あらゆる負の感情が積もりに積もって山となり今にも噴火しそうな状態です。
「お節介だなんて。私はスカリエッティさんの為を思って・・・」
だからでしょう。
彼女のこの一言で私の堪忍袋の尾が切れたのは。
「だったら私に付きまとうな!!」
後になって思えばかなり情緒不安定だったのでしょう。
周りの目も気にせず眼前のマリエル・アテンザに当ってしまいました。
「私の身体が心配?私の為を思って?あんたが大事なのは私の稼動データだろう!?」
「そんな・・・!?私は・・・」
目の前でアテンザがうろたえていますがもう駄目です。
色々火が着いてしまった私の口は止まりません。
「五月蝿い!!善人ぶるな!どうせ心の中では私の事なんてモルモット程度にしか思ってないくせに・・・っ!」
「違うっ!!」
溜まりに溜まった怒りや鬱憤をぶちまけている途中で目の前の女の叫びに驚き中断してしまいました。
「違うもん・・・私は、あなたと・・・」
彼女は泣いていました。
考えてみれば当たり前です。
就業年齢の低いミッドチルダ・・・とりわけ魔導師は精神の成熟が早いといいますがそれでも目の前の彼女は間違いなく子供です。
私のように前世の記憶なんて物があるわけではありません。
そんな彼女が怒りや憎しみをぶつけられて平気なわけがありません。
肩で息をしている内に冷静さを取り戻した私が感じたのは言いようの無い罪悪感でした。
「えっと・・・あの・・・」
謝らないと、そう思うのですがうまく言葉に出来ません。
そうして私がまごついていると突然向こうから叫び声が聞こえてきます。
「えっ!?」
「なに・・・?」
アテンザも顔を上げてそちらに振り向きます。
そこにいたのは先程私が拘束したチンピラ・・・もとい犯罪組織の違法魔導師でした。
手には先程持っていた物とは別のデバイス・・・どうやらどこかに隠し持っていたようです。
「さっきはよくもコケにしてくれたな・・・このクソガキィ!」
放たれる魔導弾。
慌ててシールドを張りますがかなりの衝撃で私は弾き飛ばされてしまいました。
「ぐあっ・・・!」
地面を二、三度バウンドした後ようやく止まってから立ち上がろうとしますが身体が動きません。
すぐさまシステムチェックを走らせます。すると・・・
(疲労蓄積!?なんでこんな時に!)
検診を拒否してずっとフル稼動だったせいか、身体のあちこちにガタが来ていました。
その溜まりに溜まった疲労が此処で一気に噴出したのです。
実際さっきの攻撃だって万全の状態なら弾き返せたはずです。
それが受身も取れないくらい身体が弱っていたのに気付けないなんて・・・。
「へッへッへ・・・」
違法魔・・・めんどいからもうチンピラでいいや。
そのチンピラが嫌な笑みを浮かべながら近づいてきます。
これは、まさか・・・!?
「やめて! 私に乱暴する気でしょう? エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!」
「・・・・・・は?」
・・・あれ?おかしいな、確か前世で読んだ薄い本だと大体このあたりで女の子がエッチな目にあうんだけれど・・・。
「よく分からんが俺はな、テメーみたいな貧相なガキになんざ興味は無ぇんだよ」
・・・どうやらコイツ、熟女派だったようです。
「おい、テメー。今俺のことバカにしてたろ?」
「いえ、ただ熟女趣味だったんだな~と・・・」
「ちげーよ!俺はなぁ!もっとこう・・・ボンっと出てて、キュっと引き締まってて、そんでまたボンって出てるのが好きなんだよ!」
そんなこと9歳児に力説しないでください。反応に困るじゃないですか。
「それじゃあこのすれんだぁびゅーてぃな私をどうするつもりですか?」
「なに・・・お前中々いい腕だしな。管理局で腐らせるなんざもったいねぇ。俺の所に来ないか?ギャラは弾むぜ」
なんと、カン・ユー・・・もとい勧誘ですか。
ギャラを弾むのくだりに一瞬心惹かれる物が無かったといえば嘘になります。何より管理局は憎くてたまりませんし、しかし・・・。
「魅力的な提案ですね、でも私は管理局でやらなきゃいけない事があるんです。だからお断りします」
そう、父さんを見つけて助け出さなきゃいけません。
可能性は限りなく低いでしょう。第一父さんがまだ生きている保障はありません。でもやらなきゃいつまで経ってもゼロパーセントのままです。
「そうか・・・そりゃ何よりだ、よっ!」
そう言うやいなや、チンピラは私の事を思い切り蹴り飛ばしました。
再び私は地面を転がります。
「ガハッ・・・!」
この野郎・・・女の子を足蹴にするとは何て奴だ。
「あのまま提案を飲まれたりしたらテメェをぶっ殺せなくなっちまうもんなぁ・・・」
ゲス顔で私にデバイスを向けるチンピラ。
コイツはいよいよ持ってヤバイかもしれません。
さっきから身体に力が入りません。
リンカーコアやレリックジェネレーターの出力も安定せず、魔法もうまく組めません。
「クックック・・・いい声で鳴くじゃねぇか?」
畜生、女の子の苦しむ姿を見て悦ぶとは・・・コイツやっぱり変態です。
「でも、てめぇで遊ぶのももう飽きたわ・・・」
チンピラがデバイスをこちらに向けます。
ヤバイ、超ヤバイ!
動け!動け動け動け!!
こんな所で終わるわけには行かないんですよ!
まだ色々遣り残した事があるんですから!
「じゃあな、アバヨ」
私が必死に足掻くもチンピラのデバイスから魔力弾が発射される程度には現実は非情でした。
迫り来る弾がスローモーションで見えます。
あぁ、私ここで死ぬんですね・・・。
でもあれですね。もし父さんが既に死んでたら天国で会えますし、それはそれでいいかもしれませんね・・・。
そんな事を考えながら人生を諦めた私はゆっくりと瞼を閉じます。
どうせ直ぐ死ぬんです、それならあのチンピラのきったないツラ見ながら死ぬのも尺ですし、父さんの事とか考えながら逝くことにしましょう。
父さんとアニメ見たり、一緒にバリア・ジャケットのデザイン考えたり、決めポーズの練習したり、楽しかったなぁ・・・。
畜生、やっぱり死にたくないよ・・・。
「ぐぅ・・・!」
そう思った直後小さな衝撃を感じました。
弾を食らったんでしょうか?
それにしては軽い衝撃でしたね。
痛くもないし、それになんでしょう?何かが私の上に乗っかってるような・・・。
恐る恐る瞼を開くとまず飛び込んでくるのはやっぱりチンピラの姿。
でも何でしょう?何か驚いているような・・・。
そして次は私に圧し掛かっている物を確認し・・・。
「・・・えっ?」
言葉を失いました。
それは人の形をしていました。
緑がかったョートヘアにまん丸メガネの・・・。
「アテンザ・・・?」
それは先程私が拒絶した少女、マリエル・アテンザでした。
そう、彼女は私の前に飛び出し、飛来する魔力弾から私を護ってくれたのです。
体を見ると、本局の制服の上に纏った白衣にはジワリと赤いシミが広がっていきます。
アテンザの、赤い・・・。
「何だぁこのガキ・・・邪魔すんじゃ・・・」
チンピラがアテンザにデバイスを向け・・・。
「うああああぁぁぁぁぁっ!!」
私の身体は反射的に動いていました。
イェーガーを奴に向け、照準、発砲。
この一連の動作は今まで行ってきた中で最速のものでした。
私の魔力弾を喰らったチンピラは衝撃で吹き飛び、数ブロック先の廃ビルに頭から激突しました。
よく見ると手足がおかしな方向に曲がっていたり耳から出ちゃいけない色の血が出ていたりしますがそんな事どうでもいいです。
「マリエル!!」
今は彼女、アテンザ・・・マリエルの様態が最優先です。
「ぅ・・・あ、スカリエッティ、さん・・・ゴホッ」
「喋らないで、今人を呼んで来るから・・・!」
マリエルが咳き込むと空気と共に血が吐き出される。
畜生、肺がやられている。
「こちらスカリエッティ執務官。拘束した容疑者が抵抗、現在アテンザ技官が重傷。大至急ヘリの出動を要請する」
すぐさま地上本部の航空管制から返事が届く、しかし・・・。
『こちらクラナガンコントロール、現在急行できる機体が無い。救急車を手配したので待機されたし』
救急車?四六時中渋滞してるクラナガンの道路をチンタラ病院まで行けって言うんですか?
「アテンザ技官は肺をやられている、陸路じゃ間に合わない。大至急ヘリが必要なんだ!」
『理解している。しかし向える機がいない。待機されたし』
クソッタレ!
「ゴホッ・・・ハァ、ハァ・・・」
「マリエルっ!」
咳き込むたびに血をはき既に私も彼女も返り血で真っ赤です。
「ハァ、ハァ・・・フフッ」
マリエルが笑います。
何ですか?血が足りなくて頭がおかしくなったんですか?しゃれにならないから止めてくださいよ。
「やっと、名前で呼んでくれた・・・」
「っ!・・・バカ、どうして庇ったりなんか・・・」
私が貴重な実験サンプルだとしても身を挺してまで護る価値があるとは思えません。
「クライド提督からあなたの事を聞いて、私と同い年のあなたとなら・・・友達になれると思って・・・」
「っ・・・!!?」
言葉が出ませんでした。
出会った時からずっと彼女を疑っていました。
どれだけ優しい言葉をかけられても本心では私の事を実験動物としか見ていないと。
でもそんな事は無くて、彼女は純粋に私と友達になりたくて私に話しかけていた。
そんな彼女を、私は・・・!
「・・・・・・・!!」
マリエルを抱き上る。
「ぐっ・・・」
動かされた痛みから呻くマリエル。
「ゴメンなさい、でも少しだけガマンして」
何故でしょう、さっきまで乱れていた魔力が安定しています。
これが火事場の馬鹿力なのでしょうか・・・。
「こちらハルナ・スカリエッティ。これより私がアテンザ技官を直接搬送する!」
そう宣言するや否や私は夜の空へ飛び立ちます。
『スカリエッティ執務官!市街地での飛行は許可できない!直ちに着陸・・・』
「うるさい!始末書でも降格でも受けてやるから今はすっこんでろ!」
管制官の制止に自分でビックリするくらい汚い口調で叫びます。
『なっ・・・!?』
驚き沈黙する管制官、あれだけの暴言を吐いたんです。相応の言葉が返ってくると思っていましたがしかし・・・。
『・・・最寄の医療施設の位置を転送する、確認されたし』
「えっ?」
私が困惑しているとここから一番近くの病院までの最短ルートが送られてくる。
『付き合ってやるから後で一杯奢りやがれ。このガキンチョ』
「・・・!了解っ!!」
あぁ、多分今の私はすんごいひどい顔で泣いてるんでしょう。
さっきから涙と鼻水が止まらないんですもん。
そんなグシャグシャな顔でマリエルを抱えながら私はミッドの夜空を全速力で飛翔しました。



「全く、専属の医務官を派遣すると言うからまた本局の横槍かと思ったが・・・主犯はオマエか、クライド・・・」
病院の通路を二人の男が歩く。
一人はクライド、もう一人は口元に髭を蓄えた恰幅のいい男性局員、階級章は一等陸佐のものだ。
レジアス・ゲイズ、首都防衛隊に所属する若き指揮官だ。
陸と海、魔導士と非魔導士、立場こそ違えど世界を護るという同じ志を持つ二人はとある任務で出会って以来よく言葉を交わす間柄となっていた。
「今の彼女にはケアする者が必要だ。肉体的にも、精神的にもな・・・」
「確かに兵器にもメンテナンスは必要だが・・・」
レジアスはクライドがなぜそこまでハルナを気にかけているのか理解できなかった。
戦う為に培養槽から生まれた兵器、それがレジアスが思い浮かべる戦闘機人だ。
自我や意思にしても柔軟な戦術や局員との円滑な指揮伝達の為に備わっている機能に過ぎない。
しかしクライドは彼の言を聞き苦笑しながら答える。
「違うさ、彼女は兵器ではない・・・」
そう言ってある病室の前で足を止めると静に扉を開けた。
すると・・・。
「あ゛~終わんないよぉ~。ねぇ手伝ってよ『マリー』っ!」
室内からやけに気の抜けた声が聞こえてくる。
「駄目です。それは『ハルナちゃん』の始末書なんだから自分で書かなきゃ意味がないでしょう」
扉の隙間から除くとそこにはベッドに入ったマリエルとその横で涙目になりながら始末書を作成するハルナの姿があった。
「ぶぅ・・・病院まで運んだんだからちょっと位いいじゃん」
「駄~目!第一ちゃんと私の検診を受けていればこんな事にはならなかったんだから」
「なんだと~?やんのかコンチクショウ!」
「上等だよ、受けて立ってやる!」
お互いに『ぐぬぬ』と唸りながら顔を突き合わせる二人
しかし・・・。
「病室ではお静かに!!」
「「はい・・・」」
点滴を交換していた看護師の一括に二人は大人しく従う。
「・・・プッ」
「フフフッ」
それが可笑しかったのか二人は互いの顔をみて笑いあう。
その光景は初対面の二人を知る人物には信じられないほど晴れ晴れとした物だった。
「・・・どうだい?」
室内の様子を見て、クライドはレジアスに問う。
「『戦闘機人』とはいえ結局は人、と言うことか・・・」
ハルナに関する報告を受けた時、レジアスは脳内で戦闘機人を用いた新たな戦力構想を模索していた。
人員を海に取られ慢性的な人手不足に喘ぐ陸。
人造魔導師や戦闘機人はその問題を一気に打開する可能性を秘めているのだ。
技術的な問題はハルナと言う完成品がいるためクリアできた。今後は倫理面や法的な問題をどうにかしようと画策していたがそれも今回の一軒で改めなければならないだろう。
「ヤレヤレ・・・お前のせいで練っていた計画がパーになったぞ」
そう言ってため息をつくレジアスだったが、その顔はつき物が落ちたかのように明るかった。
「彼女も、我々が護るべき子供達の一人。そういうことだな?」
「あぁ、あの子が大きくなった時に笑っていられる世界。それを作るのが私達の仕事だからな」
自分達の戦う意味を再確認した大人二人は笑いがら病室を後にした。
戦闘機人は兵器ではない、それにレジアスが気付いた事が今後の歴史に大きな影響を与えるのだがそれは誰も知らない。



「それじゃあ私からも彼女に選別を送るか・・・」
病院を出たところでレジアスはポツリと呟いた。
「ん?何かあるのか?」
「あの歳で一人暮らしは辛いだろう。ちょうど人造魔導関連の事件を追ってる捜査官がいてな、そいつらに預けようと思う」
「確かに、家族は必要だな。可能ならうちで引き取ろうと思ったんだが・・・」
クライドがそう言ったところでレジアスは深い、とても深いため息を零した。
「年がら年中家を空けているお前になんぞ任せられるか。たまには息子の所に顔を出せ」
友人からの鋭い指摘にクライドの顔が歪む。
「反論できないな・・・。それで?その捜査官は何て言うんだ?」
「あぁ、ゼストの部下で名は・・・クイント・ナカジマといったな」
二人の大人たちがハルナの為に動き出していた頃、別の場所でも暗躍する大人たちがいた。
「ゼェ、ゼェ・・・とりあえず暫定でジェイルが父、ワシ等が祖父と言う事で異論はないな?」
「ぐふぅ・・・まぁ、いいだろう」
「ワシも異論はない、あだだ・・・」
「あんたらが私の父ポジなのが納得いかないがいいだろう・・・」
第38回ハルナの親権争奪戦という大乱闘の末、自分たちの要望が落ち着くところに落ち着いた所で最高評議会議長がスカリエッティに問う。
「ところでジェイル?研究の方はどうなっておる?」
「ああ、問題ない。すでに№Ⅰから№Ⅵまでと№Ⅹが起動。残りも順調だ、研究の場を提供してくれたことには感謝しているよ」
本来ならばすぐにでもハルナの所に帰りたいスカリエッティであったが、彼女の妹達・・・ナンバーズを生み出すために現在は最高評議会参加の研究施設に身を寄せていた。
「ちょうど研究に行き詰っていたセクションがあったからな、連中もお前の技術を学べて喜んでおるよ」
「タイプ・ゼロ計画だったか、当初はお前さんが反乱を起こした時の対抗策として対ナンバーズ用の戦闘機人を開発してた部署だったんだがな・・・」
スカリエッティにも極秘で進められていたタイプゼロ計画、彼の技術を元にハルナ対策として進められていたが研究は遅滞、そこにスカリエッティ本人が放り込まれた結果研究はすさまじい勢いで進展、あっという間に計画されていた戦闘機人、タイプゼロ・ファーストとセカンドが完成してしまった。
「そのタイプゼロ・・・ギンガちゃんとスバルちゃんだったの?お前さんやナンバーズの子たちとは仲良くやっておるのか?」
「勿論だとも、最初こそ別々の計画だったが彼女たちも私の大切な娘に他ならない。ほかの娘たちにとっても大切な姉妹の一員だ」
数か月前に誕生したタイプゼロ・・・ギンガとスバルは現在ナンバーズの姉妹たちと和気藹々と暮らしている。
その光景に癒されながらスカリエッティと研究員たちは残りのナンバーズの為に日夜研究に明け暮れているのが現状だ。
「いや~、ハルナも妹を欲しがっていたが、まさか14人も妹が増えると知ったら驚くだろうな~」
「違いない。サプライズは成功間違いなしじゃな!」
「わしらの祖父としての株も急上昇じゃ!」
「これでハルナちゃんの祖父の座は盤石じゃな!」
「「「「はっはっはっは・・・!!」」」」
愛する娘(孫娘)の為に彼らは突き進む、親心と祖父心を変な方向に暴走させている事に気づくことなく・・・。

目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。