お姉ちゃんは0番改め機人長女リリカルハルナA's (Y.Sman)
しおりを挟む

誕生編
第1話『お姉ちゃんはオリ主』


昔書いた小説を発掘したので晒しておきます。



「クックック・・・ついに、ついに完成だ・・・!」

暗い室内に若い男の声が木霊する。

ここはとある管理世界に秘密裏に置かれた研究所。

その一室、そこに置かれたシリンダー状の水槽の前で男、ジェイル・スカリエッティは不気味に笑う。

シリンダーの中は液体で満たされ、気泡でよく見えないが中に人のようなものが浮いている。

「戦闘機人、その栄えある第0号・・・彼女の完成をもって世界は変わる!彼女の力を使い最高評議会を亡き者にし、時空管理局を下し、私は理想の世界を手に入れる!」

狂気に満ちた目でスカリエッティは熱弁を振るう。それに応えるかのごとく、シリンダーの中が一層泡立ち始めた。

「さぁ、目覚めたまえ!私の最初の作品にして最高傑作!戦闘機人『ナンバーズ』、ナンバーゼロ!」

その声と同時にシリンダーが破裂し、中の培養液が床にぶちまけられる。

もうもうと立ち上る蒸気、そこに浮かび上がる影・・・

蒸気が晴れ、そこに現れたのは・・・

「・・・ふぁ?」

可愛らしい赤ちゃんでした。

ぷっくりしたほっぺ、ツンツンはねた銀髪、くりくりした金の瞳、どれをとってもプリチーな赤ちゃんです。

「・・・・・・・・・」

叫んだときと同じポーズのまま硬直しているスカリエッティとそれをつぶらなおめめで不思議そうに見つめるベイビー。

10秒経ち、20秒経ち、そして30秒程経った時、スカリエッティが口を開く。

「で・・・」

『で』、ハッキリ言って言葉どころか単語にすらなっていない物を発っするスカリエッティ。心なしかその身はワナワナというか、プルプルというか、とにかく小刻みに震えていた、そして・・・。

「出来るかぁぁぁ!!」

大絶叫である。

「こんな小さい子にそんな危ないことさせられる訳無いだろうがぁ!てか、自分の娘を計画の道具にするなんて何考えてるんだ!私の馬鹿ヤロー!」

叫びながら壁に頭を打ち付けるスカリエッティ、彼の絶叫に驚いたのか、シリンダーの中で座る赤子はぐずり出し、ついにはわんわん泣き出してしまった。

「ああぁ・・・!すまない、驚かせてしまったね・・・よ~しよしいい子でチュね~・・・オシメじゃないし、ミルクか?あぁ~ほらほら、面白い顔でちゅよ~・・・」

慌てふためきながら顔芸百面相するスカリエッティの手の中でなき続ける赤子、彼女は確かに歴史を変えた。

彼女の存在が後に起こるはずだった大事件を事前に解決したのである。

 

機人長女リリカルハルナ

第1話「お姉ちゃんはオリ主」

 

こんにちは、始めまして。

私?プロローグに登場したプリチーベイビーことゼロちゃんです。

あれから3年、私はすくすくと育ち、赤子から幼女へとレベルうpしました。

後一つ、お知らせがあります。

どうやら私、転生系のオリ主のようです。

つい先日、私が3歳になった前後に知らない記憶が流れ込んできたんですよ。

おかげでこんな身体は子供、頭脳は大人を地でいく性格になってしまいました。

ちなみに生前?前世?の自分についてなんですが記憶が欠落しており、死因はおろか自分の名前や性別すら不明なんですよ。

んで、その不確かな記憶が本当なら、この世界は魔法少女リリカルなのはと呼ばれるアニメの世界で私の父さんはアニメ3期の事件の黒幕らしいです。

まったく持って胡散臭い限りです。

父さんは確かにマッドで変態ですが家族思いな父親です。まぁ、マッドで変態な部分が全てを台無しにしていますが・・・。

記憶にしたってタイトルの通り『なのは』と言う女の子が主人公な事と一部の父さん関連情報、主にアニメ3期の知識くらいであとは靄がかかったように思い出せません。

しかし父さん・・・12人も娘こさえるとか・・・それ何てシ●プリ?

その事を父さんに説明したのですが原因は分からず物語の作られた場所、つまり第97管理外世界『地球』のネットワークに侵入して色々調べてみたんです。

残念ながらリリカルなのはに関する情報は見つけられませんでしたが、興味深い資料を見つけました。

『笛吹』と言うインターネット上の小説投稿HPに私のような前世の記憶を持ったまま生まれ変わった主人公達が活躍する二次創作作品が多数見つかりました。

気になったので父さんと二人でこれを閲覧してみたんですが・・・。

結論だけ言いましょう、二人ともドップリとはまってしまいましたw

仕方ないでしょう!?面白かったんですから!

それ以来私は父さんと二人でそれら二次創作の原作のアニメや漫画を観ては一緒に笑ったり泣いたりと非常に充実した時間をすごしました。

最終的に私は転生系のオリ主の一種だと結論が出た以外まったく分からずじまいでした。

それ自体はあまり気にしないのですが問題は今後の展開です。

記憶の通りに時間が進むなら父さんは今後生まれるであろう妹達、ナンバーズを率いてJS事件を起し、管理局に御用となります。

そう・・・実の娘にピッチリスーツ着せてテロ起こした挙句肌色部分の多い魔法少女にホームランされると言う、それだけ聞いたらわけ分からん結末に・・・。

しかし、今の父さんを見ていると半信半疑です。今もニコ動に謎の技術で編集した神動画を投稿していますし・・・。

とは言え今後もこのままと言う保証はありません。

こうしている間にも父さんはホームランエンドへのフラグを知らずに築いているのかもしれません・・・それだけはなんとしても阻止せねば!

この時、私の今後の行動方針が決定しました。

父さんを更生させ、妹達に真っ当な人生を送ってもらう・・・。

原作ブレイクとか知ったこっちゃありません。

新暦53年…家族を守る私の戦いの火蓋が今、切られたのです。

 

おまけ?

 

「そうだ、父さん?」

「ん?どうしたね、ゼロ?」

聞き返した来た父に私はビシッと指をさします。

「そう、それ!その名前、どうにかならないの?」

ゼロとか、釘宮ボイスの虚無な魔法使いやら福山ボイスな反逆する仮面の王子様じゃないんですから・・・。

「フム・・・確かに、このままだと私もオレンジ博士とか言われかねないし・・・分かった、今から君の名前を決めよう」

そう言って父さんは何処から出したのか、本の山を私の前に置きました。

一冊を手にとって表紙を見ると『MCあ●しず』と書かれたタイトルと萌え萌えなイラスト

「・・・・・・」

他の本にも『世界●艦船』やら『ドイツ戦車パ●フェクトバイブル』やら・・・

「さぁ!好きな名前を選びたまえ!」

ドヤ顔で自信たっぷりに言う父さん。

取りあえず結構本気でパンチ。

ぶっ飛び壁にめり込む父さん。

全く、せっかくならスカリエッティ繋がりで某パスタな国の高級車のカタログでも持ってきてくれればよかったのに・・・。

動かなくなった父さんを尻目にページをめくること30分。

「決まりました」

「い、意外に早かったね・・・」

思いのほか早く復活する父さん、結構しぶといですね。これなら金髪の露出過多な魔法少女(19さい)にホームランされても生きていられそうです。

「それで、何にしたんだい?」

「うん、ハルナにしようと思う」

ハルナ(榛名)、金剛級戦艦の3番艦。

何かリリカルなのはのキャラクター名が車とか航空機から来てるから私は艦船にしようと思いまして・・・。

ちなみに強くて、それで居て女の子らしい名前なのが選考理由。終戦まで生き残ったところもポイントです。

さて、と言うわけで№ゼロ改め、ハルナ・スカリエッティ、家族のために頑張って行こー!

 

お姉ちゃんは0番改め、機人長女リリカルハルナ・・・始まります。




はい、ハルナは大丈夫です。
この頃は艦これとかアルペジオなんて予想だにしていなかった・・・。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第2話「お姉ちゃん、魔法少女になる」

どうも、こんにちは。

この物語の主人公(多分)のハルナ・スカリエッティです。

あの決意から一週間・・・

私は今日も家(研究所)でゴロゴロしています。

 

機人長女リリカルハルナ

第2話「お姉ちゃん、魔法少女になる」

 

家族を守ると決意したのはいいんですが、このロリボディでは外に出る事も叶わず、ダラダラしてるしかありませんでした。

父さんにしてもここを出た後の活動拠点とかそれらを用意する資金とか色々足りないそうなのでもう少しここにいるしかありません。

・・・うん、暇だ。

 

「あ~ハルナ?ちょっと来てくれないかな」

あ、父さんが呼んでいるのでちょっと行って来ます。

「何々?どしたの?」

「君も曲がりなりにもタイトルに魔法少女と付く作品の主人公だからね、魔法のステッキは必要だろう?」

おぉ!と言うことはまさか!?

「ご名答!君専用のデバイスを作ることになったんだ。それについて何かリクエストはあるかな?」

予算はスポンサーをやっている偉い人が用意してくれるらしいので気にしないでいいそうです。

なんて太っ腹な・・・ありがとう権力の権化様・・・

顔も知らない偉い人に心の中でお礼を言いつつ、私は覚束ない記憶を総動員して要望を出しておきました。

出来上がるまで大体3ヶ月位だそうですがさてさて、完成が待ち遠しいです・・・。

 

「とか言ってる間にもう3ヶ月経ってしまった・・・」

「まぁ、尺の都合もあるからね、ダラダラやっていても読者が飽きるだけだし」

さすが父さんです。とてつもなくメタな答えを返してくれました。

「それは置いといて、受け取りたまえ。これが君の相棒だ」

といって父さんから鳥の羽を模したシルバーのネックレス・・・待機状態のデバイスを受け取ります。

「おぉ・・・」

なんというか、とってもキレイです。

「気に入ってくれたようだね・・・」

そう言う父さんの顔は、大業をやり遂げたとばかりに満足げに笑っています。

私が出した大まかな要望は主に3つ

第1にベルカ式カートリッジシステムを搭載していること。

カッコいいじゃないですか?あの『ガシャコン』て駆動するやつ。

第2に射撃型であること。

記憶が確かならリリカルの主人公達の戦闘スタイルはかなり肉体言語に偏ってたと思うんですよ、特に2期以降・・・。

てわけで他の子と被りにくい射撃系で行くことにしました。

最後に他にはないオリジナリティ溢れるデバイスにすること、これ一番重要!

かなりのデザインが出尽くしていたと思うんでとても苦労しましたが何とか完成にこぎつけました。

「ねぇねぇ父さん!この子、名前付けていい!?」

何がいいかなぁ?他のデバイスに負けないくらいカッコいい名前にしてあげないと・・・。

「あぁ、名前ならもう付けてあるよ」

・・・なん、だと?

私が驚愕のあまり劇画調で硬直しているのを見て父さんはニヤリと笑います。なんかムカつく・・・。

「製作者なんだ、名付け親になるくらいの権利はあってもいいだろう?」

ムムム・・・確かに正論ですが何かスゲー不安です。

父さん原作でも妹達の名前に数字当てるようなネーミングセンスですから・・・。

私の名前をミリタリー雑誌から探そうとするネーミングセンスですから、って選んだの私だった・・・。

「フッフッフ・・・心配ないよハルナ。今回は少し自重したから」

「へ~って、少しかよ・・・と言うか普段から自重しようよ?」

「それはムリな相談だよ!そんな事をしたら私と言うキャラのアイデンティティが崩れてしまうじゃぁないか!」

ダメだこいつはやくなんとかしないと・・・。

「それではお披露目と行こうか。君の銃にして翼、魔道師を狩る者・・・マギア・イェーガーだ・・・」

おぉ、なんか普通にカッコいい!

イェーガーとかちょっと中二っぽくて城壁のその彼方の獲物を屠りそうだけど、ベルカ式だし問題ナッスィングです!

「よろしくね、イェーガー」

始めての呼びかけに答えるように掌に乗ったイェーガーはキラリと光りました。

 

おまけ

「さぁ!そういうわけでハルナ、早速デバイスを起動してみたまえ!」

うん、なにがそういうわけでなのか分かりませんがセットアップしたいのは私も同感です。

「よし!それじゃあ行くよ!イェーg・・・」

うん。ちょっと待とうか、父さん&研究員の皆様方・・・。

あなた達が用意しているそのカメラ、確かAMF技術を応用してセットアップ中に魔道師が纏う光を透過して被写体を撮るやつじゃなかったっけ?

それから10分後、部屋の前に獲物を屠るイェーガーされた父さん達が骸の山を築いていたそうですが私は知りません。ええ、知りませんとも。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第3話「お姉ちゃんは逃走者」

3話です。
今回スカさん以外の原作キャラが登場します。


やっほー、みんなのアイドルハルナちゃんです。

皆は元気にしているかな?

私?私はね・・・

父さんと二人、絶賛逃走中ですw

 

機人長女リリカルハルナ

第3話「お姉ちゃんは逃走者」

 

冒頭で述べた通り、私と父さんは、追っ手を撒くべく全力疾走で通路を駆けています。

二人とも両手にカバンやアタッシュケース、背中にはそれぞれリュックと唐草模様の風呂敷を背負ってます。

どれも限界を超えて物を詰め込んだのかはちきれそうな位パンパンに膨らんでおり、さながら漫画の夜逃げのシーンみたいです。

そもそも事の発端は三日ほど前・・・。

この施設、時空管理局上層部・・・と言うか最高評議会の支援を受けているんですが、スポンサーたるノーミソ老人会の方々が研究の成果を発表しろと言って来ました。

此処での研究成果とはもちろん戦闘機人、つまり私です。

想像してみてください。性能テストと称して私に課せられるであろう苦行を・・・。

出力テストと称して精魂尽きるまで行われる魔法行使、耐久テストと称して行われるであろう魔導士たちによる集団リンチ。

あくまで私の想像なので実際にそれが行われるかは分かりませんが、やらされるかも知れない側からしてみればたまった物ではありません。

てなわけで父さんとの家族会議の結果、管理局に施設の場所と活動内容をリークし、強制捜査が行われている隙を突いて脱走しようという結論に至りました。

結果、情報のリークはうまく行き、正義感溢れる管理局の捜査官さん達が研究所に突入してきたまではよかんです。

よかったんですが・・・!

問題は時間です。早すぎたんですよ。

当初の予想では1週間位で来るだろうと思っていた局員達が通報からわずか3日でやってきやがったんです。

「仕事しすぎでしょ管理局!?こんなんだから魔王様がワーカーホリックになっちゃうんだ~!」

局のガサ入れが入ったと知った直後の私らの行動は惚れ惚れする位迅速でした。

部屋に用意していたカバンに当座の生活資金とデバイスや必需品、最悪捕まったときの司法取引に使う研究データや遺伝子サンプルなどを詰め込んで転送ポートに向かいます。

向かったんですが・・・。

「こらぁ~待ちなさ~い!!」

逃走開始から10秒で捜査官に見つかりました。

んで壮絶な追跡劇を演じながら今に至ります。

しっかしこれだけの荷物を背負いながら後先考えずの全力疾走、戦闘機人の私は大丈夫なんですが隣を走る父さんはそろそろ限界っぽいです。

しかも今回は相手が悪すぎます。

「待てっつってんでしょう!?止まりなさぁい!!」

紫がかった青い髪をなびかせながら、履いているローラーブーツで私達を追いかける両手ナックルのおねえさん・・・

どう見てもクイント・ナカジマさんです。本当にありがとうございます。

やばいです、何かもう殆ど詰んだ感じです。

このままクイントさんに御用になって父さんと二人塀に囲まれたお家ENDとか涙を通り越して笑えます。

あ、待てよ・・・もしかしたらクイントさん家の子になってハルナ・ナカジマとして3期参入とかの可能性も・・・

「ゼェ・・・ゼェ・・・ハ、ハルナ。今何かとてもよからぬことを考えてないかい?」

「え、何言ってるのさ?ソンナコトアリマセンヨー?」

「待って!何でそこ半角カタカナなの!?ねぇ何で!?」

意外とまだ余裕そうな父さんとコントを繰り広げている間にクイントさんは私らとの距離をじわじわと詰めて来ました。

どうにかして振り切らないとと考えていた私の目に打開策が飛び込んできました。

「よしっ・・・ぶっとべ必殺!ふり~が~・・・」

私はそれに向けて右腕を・・・

「シュレーク!!」

ぶちかましました。

言ってませんでしたが、私の両腕は肘から先が義手なんです。

どうしてかって?

そのほうがかっこいいからだ!キリッ

ああ、ちなみに左手はロケットパンチじゃなくて機関銃が内臓されてます。

グフのフィンガーバルカンみたいな感じですよ。

 

ロケットパンチよろしく発射された私の右腕は狙い違わず壁に埋め込まれていた赤い非常スイッチに直撃します。

防護カバーをかち割り中のスイッチを力任せに押し込む私のゲンコツ・・・。

すると重い警報の音と共に天井と床から分厚い防火扉がせり出してきます。

この扉、もし私が暴走した場合にと作られた物で厚さ200ミリとかいう頭のおかしい造りになっています。

もちろんこの間を潜ろうとして失敗しようものならまちがいなくペッタンコです、体から色々な物がはみ出すことでしょう。

故に減速なんて出来ません。最高速度のまま防火扉を走り幅跳びの要領で潜ります。

さらにもう一枚防火扉、これも同様に飛び越えます。

分かりやすく言うならカリオストロの城の序章でルパンと次元がやってた逃走方法です。

危険なのでマネしないでください。最悪の場合リアルに転生とかしちゃう可能性があります。

背後で扉の閉まる音・・・どうやら危機は脱したようです。

スペアの義手を取りつけながら父さん共々ホッと一息、さすがにきついので速度を緩めようとすると・・・

ガァン!

・・・何やら背後から嫌な音が聞こえました。

例えるならそう・・・戦車の装甲に砲弾が命中した感じの音です。

それが2回、3回・・・。

恐る恐る父さんと後ろを振り返ると、扉が・・・厚さ200ミリの扉が変形しています。

ボコボコと泡のような丸いふくらみが次々に打ち込まれ・・・。

大体10回目くらいで扉が吹き飛びました。

もうもうと立ち込める煙、その無効からユラリと人影が現れます。

「ま~た~ん~か~!」

その声を聞いた途端、すぐさま回れ右、全速力で逃走を再開です。

怖い!何かもう滅茶苦茶怖いですよ!?クイントさん!

もうね、目を爛々と赤く光らせて追っかけてくる姿がまさに悪鬼羅刹の如くです。

てか、あの防火扉と言う名の鉄塊をぶち破るとか・・・

あの人本当に人間ですか!?

「あはは・・・彼女の遺伝子を基にした戦闘機人はさぞかし強いんだろうな~」

ええ、強いですよ、ぶっちゃけアニメ3期で主人公できるくらいにはね!

てか現実逃避しないでよ父さん!

あぁ、そんなこと言ってるうちにクイントさんが鬼の形相で迫ってきます。

こうなったら・・・仕方ない!

「あ~ハルナ、私を差し出して助かろうとかはやめてもらえないかな?」

「いや、しないから!せっかく意を決したのに色々台無しじゃん!?」

そして減速、クイントさんに向き直ります。

「父さん、先に行って。転送ポートの準備が出来たら私も直ぐに行くから・・・!」

「待ちたまえ!何を言ってるんだ!?」

立ち止まる父さん、心配してもらってちょっと嬉しいです。

「大丈夫!転送ポートの準備が出来るまで時間を稼ぐだけ、準備できたら直ぐ行くから!」

父さんは一瞬戸惑うものの分かってくれたようで転送室へ走っていきました。

さて、改めてクイントさんと対峙します、正直怖くてちびりそうです・・・。

「投降しなさいお嬢ちゃん、抵抗しても罪が重くなるだけよ」

「私も出来れば戦いたくは無いんですが、こっちにものっぴきならない事情がありますんで・・・」

そう言って私はデバイスを起動する。

足元に青白いベルカ式の魔方陣が輝きます。

「いくよ!マギア・イェーガー!」

『anfang・・・』

首から提げてた羽型のネックレスが光り、私の体が包まれる。

 

以下変身シーンをご鑑賞(妄想?)ください。

 

光の中に浮かぶハルナちゃん。

何処からとも無く再生されるカッコいい系のBGM。

着ていた診察衣が光の粒子に変わり消える。

続いて下着も同様に消える。(ブラはまだしておりません)

手に持つネックレスが光り、何処からとも無くいろんなパーツが飛んでくる。

ガシャコンガシャコンと勇者ロボよろしく合体していくパーツたち・・・

全体的に小型化されたM60のような形状になり、最後にマガジンがくっつく。

薬室内にカートリッジを装填。

グリップを握ると展開される騎士甲冑。

灰色をした軍服調のアンダーウェア。

そこかしこに装着されるメカメカしいパーツ

大き目のコートを袖を通さずマントのように羽織り。

背中に現れる、Wガンダムの翼っぽい形状の浮遊パーツ。

これまた大き目の制帽を頭に乗っける。

最後にイェーガーを構えて決めポーズ(ビシッ)

 

以上、機人長女リリカルハルナの変身シーンでした。

 

騎士甲冑を展開した私は、イェーガーの銃口をクイントさんに向けます。

「・・・今すぐデバイスを下ろしなさい。そうすれば公務執行妨害は無かったことにしてあげる」

拳を構えるクイントさん、目がマジです、平静を装ってますが今すぐ逃げ出したいです。

そのまま数秒緊迫したままお互いにらみ合いが続きます。

チャンスは一度・・・私は頭の中でタイミングを計ります。

そしてカウントがゼロに達した瞬間私はイェーガーの引き金を引きました。

銃口から撃ち出された魔力弾は狙い違わず超音速で目標に命中します。

そう、逃走経路たる転送ポート目指して全力疾走してくるここの研究員の顔面に・・・

「ぶべらっ!?」

魔力弾(もちろん非殺傷)がクリティカルヒットした研究員さん、事態が飲み込めずフリーズするクイントさん。そう、今が絶好のチャンス!

「それじゃあその人のことお願いします!」

彼のことをクイントさんにお任せして私は父さんの元へ飛んでいきます。

「え?あっ・・・ちょ、待ちなさい!」

後ろからクイントさんの声が聞こえてきますが無視です、今は脱出が最優先ですから。

え?薄情?おとりにされた研究員さんが可愛そうだって?いいんです、あの人いつも私の事をなんかいやらしい目で見てましたし、インガオホーです、急いでるからハイクは省略です。

途中いくつもの防火扉を下ろしながら私は転送ポートにたどり着きます。

「おまたせ~!」

「あぁ、こちらももう少しで終わるところだよ」

パネルを色々打ち込んで転送ポートを起動させる父さん。

「そういえば父さん、ここを出た後はどうするの?」

「そうだねぇ~ハルナは何かやりたいことはあるかい?」

そう問われ暫し黙考・・・おぉ!ひらめいた!

「地球で暮らすって言うのはどうかな?」

「地球か・・・確かにいいな。出来れば週一で秋葉原に通えて尚且つ有明にも行きやすい場所が・・・」

父さんと二人で今後の人生計画(ただの妄想)を練っていると・・・

ガァン!!

「っ!!まさか・・・!?」

クイントさん・・・もう研究員をしょっ引いてきたのか!?

破壊音は次第に大きく、近くなり彼女がここに来るのは時間の問題のようです。

「間に合わないか、こうなったら・・・!」

突然身体が中に浮く、と思ったら父さんにも抱きかかえられていました。

「えっ!父さん!?」

転送ポートに乗せられる私、父さんは再び操作盤に戻ります。

「すまないね、ハルナ・・・せめて君だけでも脱出してくれ」

・・・え?

「どうも管理局が妨害しているらしくてね・・・一定質量以上のものは転送できないんだ。だが君一人くらいの質量なら跳ばせる」

父さんはなんと言った?私しか脱出できない・・・?

「一緒に行きたいのは山々なんだが後ろから怖いおねえさんが来ているしね・・・システムをハッキングしている時間が無いんだ・・・」

ならクイントさんを倒せば、厳しいけどやって出来ないことは・・・!

「それこそ駄目だよ。君の手を血で汚すわけにはいかない・・・」

悲しそうに笑う父さん・・・。

「いや・・・。イヤだよそんなの!」

なんでそんな顔してるのさ、父さんは『無限の欲望』なんでしょ!?もっと不敵に、いつもみたいに顔芸でもしてみせてよ!

私はいま悔しい気持ちで一杯でした。

自分がもっと強かったら、クイントさん相手でも互角以上にやりあえるのに、それ以前に管理局に通報することなく独力で脱出だって可能なはず・・・

「さすがに殺されることは無い筈だよ、最高評議会のお三方にとっても私はまだ必要だろうしね・・・」

まぁ、当分は軟禁生活かな・・・なんて笑っていますが嘘だ、父さんは間違いなく死を覚悟している!

分かっているのだろうか?自分が非合法な手段で生み出された違法研究者だということを、事態の露見を恐れた最高評議会が父さんを生かしておくとはとても思えない。

ここに残るということは間違いなく死を意味しているのに・・・。

「本当に・・・また会えるよね・・・?」

そう聞いてしまった。

叶わないと分かっていても聞かずにはいられなかった。

「ああ、約束だ。」

ガシャアァァァン!!

直後、一際大きな破砕音が響きました。どうやら最後の隔壁が破られた様です。

「それじゃあ始めるよ。元気でいなさい、ハルナ・・・」

「サヨナラは言わないよ、父さん。まだ妹の顔も見てないんだからね」

「もちろんだよ。またいずれ・・・」

実行キーが押され、転送が開始されます。

「うん。またね・・・」

そして父さんを取り押さえようと突入してきたクイントさんと、最後まで私に微笑みかける父さんを最後に私の視界は光に包まれました。




ハルナちゃんのバリアジャケットのデザインはジャーマンな国の将校制服です。
なのにデバイスの形状はM60です。
スタローンやシュワちゃんも御用達の素敵な分隊支援火器、ミリタリーショップで電動ガンを衝動買いしたのはいい思い出w


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第4話「お姉ちゃんは大切なものを盗まれました」

転送が終了しするとそこは森?林?の中でした。

あたりを見渡してみ木、木、木・・・。

幸い、林道らしきものが存在するので人は住んでいるようです。

ふぅ、野生に返って生活する羽目にはならずに済みました。

そうして私が自分探しならぬ人探しの旅にでようとしていると・・・。

「ふむ、どうやら魔導師のようだな・・・」

妙に凛々しい女の人の声が。第一村人か発見かな?

振り向くとそこには物々しい甲冑を装備したピンク色ポニーテールのお姉さんが・・・。

「すまないが貴様の魔力、貰い受けるぞ」

何か吸われていると思い下に視線を向けると私の平坦な(あくまで現在は!)胸のあたりに光る玉が現れそこから魔力らしき者がお姉さんの持つ本の中へ・・・。

「・・・え゛?」

これは、ヤバクない?

気付いたときには既に遅し。私の意識は闇の中へ、ぶっちゃけ気絶しました。

 

機人長女リリカルハルナ

第4話「お姉ちゃんは大切なものを盗まれました」

 

「知らない天井だ・・・」

うん、テンプレなので言ってみました。

周囲を確認、どうやら先程までいた森林ではなく室内のようです。

それも森の中で七人の小人か筋肉モリモリマッチョマンの元コマンドーが住んでそうな木のお家ではなく非常に未来的でメカメカしい、父さんと住んでいた研究所のような場所でした。

ベッドに寝かされ点滴を受けていることからココは病室なのでしょう、とそこでドア(自動)が開いて誰かが入ってきました。

「あぁ、目が覚めたようだね?医師から様態が安定したと聞いてね」

さわやかに話しかけてくる中田譲治ボイスのおにいさん。

はて、どこかで見たような・・・?

「自己紹介がまだだったね?私はクライド・ハラオウン。この次元航行艦『エスティア』の艦長だよ」

ハラオウン・・・なんでしょう?何かが引っかかります。

たしかリリカルなのはにそんな人物がいたような気が・・・。

いや、それよりも現状の確認です。

「あの~、何故私はここに?」

次元航行艦の艦長と言うことは目の前にいるハラオウンさんは十中八九管理局員です。

仮にもお尋ね者の身、正体がばれていたら即行でココから脱走せねばなりません。

「うん、とある事件の捜査中に君が第22管理世界「スキピア」の森林地帯で倒れているのをうちの捜査員が発見してね、ここに運び込んだんだよ」

ふぅ、どうやら私が戦闘機人だということはばれていないようです。

ん?事件の捜査・・・?

「あの、事件って・・・?」

「・・・実はこの近隣で魔導師を狙った襲撃事件が多発していてね、その捜査の為に私達は派遣されているんだ」

魔導師襲撃ですか、物騒ですね~。

魔導師っていうのはそれだけで戦闘でアドバンテージが握れます。

飛行やら砲撃が出来なくても筋力や瞬発力を魔力で底上げしたり、何より魔導師必須のマルチタスクは戦闘における迅速な状況判断を可能にさせます。

なので魔導師を狙って襲うという行為は非常にリスキーなのです。

まてよ・・・魔導師、襲撃?

「あの~、もしかしてその犯人ってピンクポニテの女の人だったりしませんか?」

私も一応魔導師です、私からよく分からないけれども多分大切な者を盗んでいったピンポニナイトさん(仮称)が他の魔導師を襲っている可能性は高いはず・・・。

「やはり、君も被害者だったのか。彼女は一連の事件の実行犯達、そのリーダーと目されていた人物だ」

一発で当りを引きました。

やっぱりあいつか!

ちくせう、今度あったらハルナちゃんのウルトラグレートすぺしゃるな必殺技で・・・ん?ちょっと待った。この人今なんて言った?

「スイマセン・・・その、『目されていた』っていうのは・・・?」

「ああ、事件は解決したよ。実行犯だったロストロギア『闇の書』、その守護騎士達であるプログラム生命体『ヴォルケンリッター』は闇の書に蒐集され消滅。闇の書本体も何とか確保、封印に成功したんだ」

・・・えーと、つまり・・・出番無し?

 




ピンクポニーテールの騎士・・・一体何ナムなんだ・・・。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第5話「お姉ちゃんピンチです、いや割とマジで」

えーと、本作の主人公のはずのハルナ・スカリエッティです、こんにちは。

早速事件に巻き込まれて物語的にいよいよ本格的にストーリーが動き出すかと思ったんですが・・・。

全部終わっちゃってましたw

・・・orz

 

機人長女リリカルハルナ

第5話「お姉ちゃんピンチです、いや割とマジで」

 

えーと、ハラオウンさん・・・え、名前でいいんですか?

失礼、お許しがでたので・・・クライドさんの話では最近このあたりの世界で魔導師が立て続けに襲われて魔力の源、リンカーコアが奪われるという事件が多発。

クライドさん達管理局が捜査を進めると事件の背後に古代ベルカ王朝が残した魔導書、『闇の書』の存在が浮かび上がってきたそうです。

闇の書は管理局から第一級の危険なロストロギアに指定されており、起動すれば世界の一つや二つ、簡単に滅ぼせる超ヤバイ本との事。

んで、私を襲ったピンクポニテの見た目くっころな女騎士は闇の書を護る守護騎士『ヴォルケンリッター』という魔法生命体だそうです。

彼女とそのマスターである闇の書の主を追い詰めたものの、マスターが闇の書を起動。

足りない魔力を補おうと闇の書は守護騎士どころかマスターまで呑み込んで起動しようとしたそうです。

幸いクライドさんと武装局員さん達が奮闘してギリギリのところで闇の書を封印。

んで現在闇の書を完全破壊ないし永久封印するためにエスティアに載せて管理局中枢、本局に向けて護送中との事・・・。

 

どうしよう、マジでこの事件解決済みなんですけど・・・。

 

本来ならここでハルナちゃんが颯爽と事件を解決して~って言う展開を読者の皆さんは期待していたと思うんですよ。

だってロストロギアですよ!?ロストロギア!

世界の存亡をかけて闇の書と戦うサイボーグ美少女・・・これだけで一本のアニメが出来ますよ!

DVD&ブルーレイやフィギュアや設定資料集とかの関連商品の興行収入だけで軽く数十億は稼げるはずですよ!

なのに全部終わってたなんて・・・。

 

「あ~君?大丈夫かい?」

うぅ・・・お気遣いありがとうございますクライドさん。

落ち込んでいても事態は進展しませんしね。

「ところで、そろそろ君の名前を教えてもらいたいんだがいいかな?」

・・・あ、そういえばそうでした。

えーと名乗っちゃっていいのかな?

そういえば3期後半でゲンヤ・ナカジマさんが話してた過去話だとこの頃はまだ父さんの名前ってあんまり知られてないんでしたっけ?

じゃあ大丈夫だよねw

「はい、ハルナです。ハルナ・スカリエッティ」

「スカリエッティさんだね、よろしく。まもなくこのエスティアは本局に到着する。それで君の扱いなんだが・・・事件の過程で保護した、云わば被害者だ。本局に着き次第体に異常が無いか検査をして問題が無かったら申し訳ないが調書を取りたいから襲われた時の事を話して貰いたいんだ。それが終わり次第、可能な限り早急に家まで送るよ」

・・・ヤバイ。

超ヤバイです、どれ位ヤバイかと言うとエロゲの入った引き出しを親に開けられそうになった時位ヤバイです。

検査なんてしようものなら私が戦闘機人だということが一発でばれてしまいます。

そうなったら命を賭して私を逃がしてくれた父さんの尊い犠牲が無駄になってしまいます!(まだ死んだとは限りません)

「そこで事前にご家族に連絡を入れておきたいんだが・・・」

クライドさんが続けて私に質問しようとしたところ、突然部屋がゆれます。

「な、何だ!?」

「ふぇっ?地震!?・・・なわけ無いですよね、ここ船の中ですし」

すぐさまクライドさんが艦橋に問い合わせます。

「ブリッジ、私だ!先程のゆれは何事だ?」

すぐさま報告が入りますがそれはとんでもないことでした。

『こちらブリッジ!遺失物保管室に封印されていた闇の書が突如再起動、暴走を開始!』

「何だと!?」

『現在当直の武装局員が結界を形成、進行を食い止めていますが、長くは持ちません!」

・・・うん、本当にヤバイです、ガチで生命に関わるレベルで・・・。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6話「お姉ちゃんは血反吐を吐く」

ようやくまともな戦闘です。
アクションシーンって難しい・・・。


「レティ、彼女のことだけど、何か分かった?」

L級次元航行艦『アースラ』のブリッジで当艦の副長、リンディ・ハラオウンは本局にいる友人のレティ・ロウランと連絡を取っていた。

『ダメね、管理局に登録されている戸籍でその特徴に該当する少女は存在しないわ。管理外世界の住人という可能性はないの?』

「可能性は低いわね、所持品にデバイスがあったし、それに・・・」

目を細めながら話すリンディにレティが続ける。

『あの子の体の事ね?送られてきた資料を見たけど。彼女、相当『弄られている』わね・・・」

闇の書の捜査中に現場付近で気絶していた少女、ハルナを保護したクライド達はすぐさまメディカルチェックを行ったがその結果は思いもよらぬ物だった。

遺伝子レベルで人為的に強化された身体能力。

骨格や内臓器官等、脳を除いたあらゆる所を機械化された肉体。

そしてリンカーコアと融合した魔力結晶・・・。

現代の技術では不可能とされている人と機械の融合体。

彼女は違法とされ、裏社会で非合法に研究が行われていると言われている人造魔導師とも一線を画す存在だった。

『詳しい事はこっちに着いてからじゃないと調べられないけれど、十中八九人造魔導師の類でしょうね・・・。問題は何故あんなところに倒れていたかだけど・・・』

「そういった違法施設から逃げ出してきたのかしら?」

『それとも不要と判断され捨てられたのか・・・、これは本人から聞くしかないわね。それで?件の眠り姫はまだ起きないの?』

「クライドさんの話だと様態は安定してるからいずれ目を覚ますそうだけど、これが本当だとしたら管理局始まって以来の大事件に・・・」

リンディの言葉は突如鳴り響いた警報にかき消された。

『どうしたの!?』

「ちょっと待って、状況報告!」

問い質すと、すぐさまオペレーターから報告が返って来た。

「エスティアから緊急伝!闇の書が再起動、メインシステムが侵食されています!」

『なっ・・・!』

「クライドさん・・・!!」

 

機人長女リリカルハルナ

第6話「お姉ちゃんは血反吐を吐く」

 

こんにちは、ハルナです。

現在クライドさんに連れられて連絡艇格納庫に向かっているところです。

既に艦内のいたるところに蔦のような触手がウニョウニョしています。うん、キモイ・・・。

これ、闇の書の端子のようでコイツをエスティアに接続してコンピュータをハッキングしているようです。

既に殆どの防壁を突破され艦が乗っ取られるのは時間の問題でしょう。

え?再封印?出来ると思ってるんですか?

さすがにロストロギア相手、しかもリンカーコアを抜かれた直後の病み上がりとあってはお姉ちゃんパワーと主人公補正を使ってもムリですよ。

魔砲少女が3人がかりで必殺技使ってフルボッコにすれば可能性はあるかもしれませんが・・・。

 

「艇長!この子を頼む!」

「えっ?」

頼むって、クライドさんは乗らないんですか?

「ああ、少しやる事が残っていてね・・・」

そう言ってマギア・イェーガーを渡してきます。無いと思ったらクライドさんが持っていましたか。

「聞いてくれスカリエッティさん。アースラに・・・隣を航行している僚艦に私の家内が乗っている。脱出したら彼女を頼ってくれ」

連絡艇に乗員を載せていたパイロットに私を預けるとクライドさんは元来た道を走り出します。

「待ってください艦長!どこに行くおつもりです!?」

何でしょう?艇長さんに引き止められ振り向いたクライドさんの顔は・・・。

「なに、艦長としての勤めを果たすだけさ・・・」

最後に見た父さんを彷彿とさせました。

「艦長!いけません、戻ってください艦長!!」

他の局員さん達の制止も聞かずクライドさんは走り去っていきました。

向かったのは恐らくブリッジでしょう、しかし・・・。

「艦長はエスティアを闇の書から取り戻すつもりなのか?」

「そんな、無理だ!あれの能力は生半可な物じゃあない!」

そう、彼らの言うとおりそんな簡単に勝てるならロストロギアなんて呼ばれていません。

皆がクライドさんを追うべきか逡巡しているうちに闇の書の触手は格納庫まで迫ってきました。

「早く乗れ!これ以上はもたんぞ!」

艇長さんが叫び、残っていた乗組員も急いで連絡艇に駆け込んできます。

最後の一人が飛び乗り、ハッチが閉じ始める。いよいよ発進のようです。

「・・・・・・・・・。」

これでいいんでしょうか?

確かにあの状況でクライドさんを追いかけても足手まといにしかならないかもしれません。

でも・・・。

『もちろんだよ、またいずれ・・・』

「・・・・っ!」

気付くと私は閉じようとしていたハッチを飛び越え走り出していました。

「おい嬢ちゃん!何してる!?戻って来い!!」

艇長さん達の声が背後から聞こえます。

ゴメンなさい皆さん。でもやっぱりクライドさんを置いてはいけません。

走りながら現在のコンディションを確認します。

 

肉体に異常は無し。

機械化された部分にも機能障害は見られず。

レリックの出力安定。

リンカーコアは未だ不安定ですがバリアジャケットを展開するくらいなら大丈夫。

右手のロケットパンチ、左手のグフマシンガン共に動作正常。

「よし、行きます!」

『パチンッ』と頬を叩き、気合を入れてからイェーガーを起動、バリアジャケットを展開して準備完了。

目指すはブリッジ、全力疾走です。

 

アースラのブリッジは混沌の坩堝と化していた。

「応答せよエスティア!繰り返す。エスティア、クライド艦長。応答してください!」

「エスティア艦内より魔力エネルギー増大!出力、尚も上昇中!」

「エスティアより連絡艇脱出。現在乗組員の安否、確認中!」

アースラ艦長のギル・グレアム提督は必死に対応する局員達に的確な指示を下しつつ最悪のシナリオを予想した。

(エスティアのコントロールは闇の書に奪われたと見て間違いない。とすれば奴は目下の脅威である我々を排除しようとするはず・・・)

それに対する解決策を模索していると、通信席にいるオペレーターがグレアムに向かって叫ぶように報告する。

「艦長!エスティアとの回線繋がりました、映像出します!」

グレアムはオペレーターに頷くと投影された映像に目を向ける。

「クライドさん・・・」

通信席でオペレーターと観測作業についていたリンディも投影された夫の姿に息を呑む。

ボロボロになった制服に一際目を惹く額から流れる鮮血・・・。

映し出されたクライドは誰がどう見ても満身創痍の様を呈していた。

『提督、大至急エスティアを撃沈してください』

開口一番にクライドから放たれた言葉はグレアムにとって予想された、しかし聞きたくなかった物だった。

「クライドさん、何を言って・・・」

一方のリンディは夫の言った言葉を信じられなかった。

当然だろう、大至急エスティアを沈める。

それはクライド諸共と言うことを意味しているのだから。

『闇の書の侵食は阻止できません。本艦が完全に掌握されるのも時間の問題でしょう』

「クライド君!今すぐ脱出して!」

「あんたがいなくなたらリンディたちはどうするのさ!?」

グレアムの両隣にいた彼の使い魔、リーゼロッテとリーゼアリアがクライドに脱出を促す。

しかしクライドはただ、首を振るのだった。

『たった今、『アルカンシェル』の制御が奪われました。奴は恐らく其方を攻撃するつもりです』

クライドの言葉を裏付けるかの様にオペレーターから最悪の報告が上がる。

「エスティア、『アルカンシェル』の発射シークエンスに入りました!」

「レーダー照射を確認!エスティア、本艦を狙っています!」

『アルカンシェル』、時空管理局が所有する魔導兵器の中でも最高クラスの威力を持った魔導砲である。

着弾地点から半径百数十キロに渡る空間を歪曲させながら反応消滅させる管理局の切り札だ。

闇の書に対する最終手段としてエスティア、アースラの両艦に搭載されていたもので、当然ながらアースラが喰らえばひとたまりも無い。

『現在機関部からのエネルギー供給を妨害中ですが長くは持ちません。提督、お願いします』

アルカンシェル発射を妨害する以上、クライドはエスティアから離れることは出来ない。

アースラが助かるにはクライドを犠牲にする以外に選択肢は残されていなかった。

「・・・アルカンシェル、発射用意・・・!」

「・・・っ!?待ってください提督!!」

リンディは掴みかからんばかりの勢いでグレアムに詰め寄るが控えていたリーゼロッテたちの手で引き止められる。

「すまない、もはやこれしか方法が無いのだ・・・」

押し殺した声でリンディに、クライドに、そして自分に言い聞かせるように言葉をつむぐグレアム。

グレアムの言葉を聞いたクライドは彼に敬礼した後、リンディに声をかける。

『リンディ、例の女の子を、スカリエッティさんを頼む。彼女には君の助けが必要だ、支えてやってくれ』

夫の今生の別れの言葉を聞き、リンディは苦笑してしまう。

こんな時だというのに彼は最後まで職務に忠実であろうとしているのだから。ならば・・・。

「ええ、彼女のことは引き受けたわ。安心して」

リンディはその頼みを聞き入れる。彼が最後に笑っていられる様に・・・。

それを聞いたクライドは穏やかな笑顔を浮かべて続ける。

「ありがとう、リンディ。愛してる、クロノと幸せにな・・・」

「っ!・・・うん、私もよ・・・」

二人が最後の言葉を交わしたのを確認し、グレアム自分の務めを果たすべく立ち上がる。

手には一本の鍵、アルカンシェルの発射キーだ。

それを眼前にあるキューブ、発射装置に差し込む。

キューブが赤く染まり最後の安全装置が解除されたことを告げる。

「アルカンシェル・・・発・・・」

グレアムが鍵を回そうとした瞬間・・・。

『ちょぉっとまったあぁぁぁぁ!!!!』

そんな叫び声と共に映像の向こうで扉が打ち破られ軍服姿の少女がブリッジに入ってきた。

 

「す、スカリエッティさん!?」

こっちを見てビックリしているクライドさん。

よし、まだ生きてます。

ここに来るまでに何度も闇の書の触手にウニョウニョと邪魔されまくったんですが、こいつら以外に強いです。

シールドは張るし、魔力弾撃ってくる奴もいました。

もしかしたらクライドさん、こいつらにやられちゃったんじゃ何て思ったりもしましたが杞憂だったようです。

「どうしてここにいるんだ!?クルー達と退艦したんじゃ・・・」

どうして?

人がせっかく苦労してここまで来たのにどうしてとかあんまりな発言ですね?

「そんなのクライドさんを呼びに来たに決まってるじゃないですか!」

全く、一人でふらふらどっかに行って・・・団体行動の輪を乱すとか、先生許しませんよ!

「なんてバカな真似を、直ぐに退艦するんだ!連絡艇を使ったから非常用の救難艇は残っている、それを使って・・・」

「バカな真似はどっちですか!!」

「っ・・・・!?」

私が怒鳴ったことに驚いたのかクライドさんは言葉を噤みます。

必死におどけて見せましたがもう無理です、いろんな物がこみ上げて来てガマンできません。

「そうやって一人でカッコつけて、残された人がこれからどんな思いで生きていくか考えたことがありますか?なんで、なんで・・・」

頭に浮かぶのは父さんの事。

一緒に漫画を読んで笑いあった事、、新発明の実験で爆発して喧嘩した事、そして最後に私に見せたあの笑顔・・・。

視界がぼやけてきてようやく私は、自分が今泣いていることに気付きました。

「何で大切な人がいるのに生きようとしないんですか、なんで直ぐに諦めちゃうんですか・・・なんでみんな、馬鹿・・・」

「スカルエッティさん・・・」

いろんな感情がゴチャ混ぜになって自分でも何を言っているのか分かりません。

嗚咽が止まらない私と返す言葉が見つからないクライドさん。

そこに艦橋に流れる沈黙を破って触手が侵入してきました。

「しまった!ここまで来たか!?」

クライドさんが身構えます。

空気を読まずにウニョウニョ沸いてはあたりの物を破壊し出す触手・・・。

何か腹たってきました。

「うるさい!」

色々あって沸点が低くなってた私は左手を向けると義手の中に内蔵されている機関銃を掃射します。

「人が大事な話してるんだから出てくんなバカー!!」

装弾スペースのせいで9ミリ弾しか撃てませんが魔法が来ると思っていた触手たちには効果覿面です。

障壁を破られタングステンの弾丸に引き裂かれながら退散していきます、ざまーみろこんちくしょう!!

「ふぅ・・・よし、少しスッキリした」

「す、スカリエッティさん?」

あ、クライドさんちょっと引いてます。

もう正体バレとか私の立場とか今は知ったこっちゃありません。

「とにかく!クライドさんは私が助けます、異論は認めません!!」

「し、しかしそうなるとアルカンシェルが、アースラが・・・!」

確かに、クライドさんが離れれば邪魔者がいなくなった闇の書はアースラにアルカンシェルを発射出来るようになってしまいます。

「だから、こうするんです!」

私はイェーガーを足元に向けます。

脚部のパーツが展開、床をガッチリとホールド。

空気中の魔力をリンカーコアを経由してデバイスに送ります。

それでも足りない、なら・・・。

「マギア・イェーガー!カートリッジロード!」

『装弾』

私の言葉に従ってイェーガーがカートリッジシステムを起動。

ドラムマガジンに収められたカートリッジの内、5発を連続装填します。

ロードすると私の中で魔力が爆発的に上昇します。

「スカリエッティさん、一体何を・・・!?」

クライドさんが聞いてきますがとりあえず後にします。

溜まりに溜まった特大魔力をイェーガーに流し込む。

後は撃つだけです。

このリリカルなのはの世界の魔法は願望祈願型・・・魔導師のイメージをデバイスを用いて機械的に実現するという物・・・。

つまり私のイメージが大事なんです。

「すぅ・・・はぁ・・・」

大丈夫。練習した通りに、何よりアニオタの私は妄想力・・・もとい想像力が豊かですから。

MSでビームライフルを撃つイメージで・・・!

「インパクトカノン、発射ぁ!」

イェーガーの銃口から青白い極太ビームが打ち出されます。

なんかビームライフルって言うよりも宇宙戦艦ヤマトの主砲みたい・・・。

放たれた魔砲はエスティアの壁を、床を、天井をぶち抜いていきます。

「・・・あぁ!」

重大なことを忘れてました。

これ、ストーリー初の本格的な魔法じゃないですか!

もっと格好いい演出とかセリフとか考えとくんだったー!

え?研究所から脱走する時に使っただろって?

あれは何か格好付かないからノーカンです。

「どうした!大丈夫かい!?」

叫んだ私をクライドさんが心配してくれます。

「うぅ・・・大丈夫、こっちのことです」

答える私、チョッピリ涙目です。

それから直ぐに結果が現れました。

「アルカンシェルの発射シークエンスが止まった!?」

「ヨシッ!作戦成功ですね!」

アルカンシェルをとめるには幾つか方法があります。

第一にシステムを奪還して停止させます。

うん、ハッキング合戦とか勝ち目が無いので無理。

第二に機関部の停止、もしくは破壊。

これも無理です。機関室まで触手の相手をしながらとか間に合いません。

ぶ厚い隔壁に護られているからここからの砲撃で破壊するのも不可能。

そこで第三の方法、エネルギー伝達の阻害です。

要するに電源コードを切っちゃえばいいんです。

とは言え、これでお終いではありません。

メイン回路が寸断されても艦船のエネルギー伝達系は網の目のように張り巡らされています。

どこかがやられても別の場所からバイパスできるようにするためです。

案の定闇の書は別の回路を使ってアルカンシェルにエネルギーを送り始めました。

でも・・・。

「充填速度が遅い、これなら・・・っ!」

「はい、私達が脱出する時間は稼げます!」

私達が艦から降りればアースラは心置きなく無人になったエスティアを撃てます。

「いきましょう、クライドさん!総員退艦です!」

「ああ、案内する。こっちだ!」

クライドさんに先導され、艦内を走ります。

 

クライドさんと走り出してからしばらくして難関にぶつかりました。

「クッ、何だあれは」

格納庫に通じる通路、そこを強固な防火扉が塞ぎ、その表面を触手が覆っています。

触手は一本一本が大小様々な魔力弾を発射し、さながら要塞のように私達の行く手を阻んでいます。

「この様子では他の通路も。どうすれば・・・」

脱出するには戦うしかありません、しかしそんな時間は私達には残されていない。

戦わずに素通りする方法は無いものか・・・。

「ん、まてよ・・・」

素通り・・・これだ!

「クライドさん、私にいい考えがあります」

何やらフラグなセリフですが大丈夫です、問題ありません。

「何か策があるのかい?」

任せてください、そう言って私は直ぐ横の壁に手を当てます。

さて、皆さん。

戦闘機人には魔導師にはない特別な力が備わっています。

そう、IS・・・インフューレント・スキルです。決して弓弦イズル先生著のハイスピード学園ラブコメではありません。

余談ですが作者はオルコッ党だそうです。チョロインかわいいよチョロイン・・・。

さて、ISですが情報収集能力だったり、加速装置だったり、壁抜けしたり、超振動で機械に大ダメージを与えたり・・・。

そんな普通の人にはない能力が戦闘機人には一つ備わっています。

そして私のISは・・・。

「インフューレント・スキル発動・・・、『フラスコ=オブ=アルケミスト』!」

壁に閃光が走り形を変えていきます。

蝶番やハンドルが形作られ、あっという間に頑丈そうな水密扉ができあがりました。

「なっ・・・!?これは!?」

驚くクライドさん、それをみて私はドヤ顔でハンドルを回して扉を開きます。

「さぁ、こっちです!」

そう、私のIS、フラスコ=オブ=アルケミスト(錬金術師の試験官)は物質変換能力なんです。

生物相手には無理ですけれど、それ以外なら何だって自由自在に原子レベルで作り変えることが出来ます。

構造さえ分かれば鉄塊から戦車だって作ってみせますよ?

うん、自分で言うのもアレだけど超チートくさい。

それになんか鋼○錬金術師の手合わせ練成のパクリっぽいし・・・いつの間に私は心理の扉を開いたんでしょうか?

とにかくISで作った扉を潜り、隣の部屋へ。

そこでまた扉を作ってさらに隣に・・・。

そうして触手要塞を迂回、戦う事無くして私達は格納庫へたどり着きました。

どうでもいいですけど触手要塞とか、何か陵辱系エロゲのタイトルっぽいですね・・・。

「大丈夫かい、スカリエッティさん?」

「ゼェ、ゼェ・・・だい、じょうぶです・・・」

クライドさんにはああ返しましたが正直かなり辛いです。

こんな短時間にISを連続使用したのは初めてなのでかなり体に堪えますね。

リンカーコアも然ることながらさっきから胸のレリックが悲鳴を上げています。

今後のことも考えて鍛えたほうがいいかもしれません。

「そうか、とにかくここまで来れば・・・」

そこで私の強化された聴覚は嫌な音を捉えました。

メキメキと船体が軋むような・・・。

「危ないっ!」

クライドさんを伏せさせ自分も屈みます。

すると頭のすぐ上を闇の書の触手が通り過ぎます。

触手は鞭のようにしなりながら私達の周りを暴れ周り、破壊の限りを尽くしていく。

「くっ、このぉ!」

『ブレイズ・キャノン』

伏せながらクライドさんがデバイスを起動、抜き撃ちで触手を撃ち抜きます。

撃たれた触手は暫く暴れた後、ピクリとも動かなくなりました。

「スカリエッティさん、無事かい?」

ボロボロになったクライドさんが心配そうに聞いてきます、って・・・クライドさん既にもうボロボロでしたね。

「うぅ・・・私は大丈夫です。クライドさんは?」

「ああ、大丈夫だよ。しかし・・・」

言葉に詰まったクライドさん。

不思議に思い彼の視線の先を見ると・・・。

「げぇっ・・・」

台風一過が可愛く見える惨状でした。

残っていた連絡艇や救命ボートは原型も留めないほどバラバラにされ、とてもじゃないけどアレに乗って脱出するのは不可能です。

「っ!そうだ、船外作業服は!?」

次元航行艦は宇宙船としても使えます。

宇宙空間を航行中に船殻が傷ついたら人が外に出て修理しないといけません。

そのための船外作業服、つまり宇宙服が常備されているはずです。

連絡艇とかに比べると非常に心もとないですがもはや贅沢は言っていられません。

クライドさんと二人で格納庫を探すと、案の定船外作業服が出てきました。しかし・・・。

「無事なのは一着だけ、か・・・」

あのウニョウニョやろーが暴れたせいで作業服を収納していたロッカーも破壊され、使えるものは一つしかありませんでした。

もちろん着けられるのは一人。

中に二人も入れません。

「・・・アースラ、聞こえるか?」

通信を入れるクライドさん。

「今から船外作業服でスカリエッティさんが脱出する。そっちで回収してくれ」

・・・ストップ、ちょっと待て。

「言いたいことは分かる、しかしこれ以上の方法が無い。分かってくれ、スカリエッティさん」

「でも・・・」

「行くんだっ!時間が無い!」

・・・なんでしょう、何だかまた沸々と怒りがこみ上げてきましたよ。

クライドさんの言い分は分かりますよ。でもね、さっきも言いましたけど何でそうやってすぐあきらめるかな?

時間が無い?分かってますよ!だったらギリギリまで粘っていい案を考えればいいじゃないですか!?

思考が幼稚かも知れませんけどすぐに諦めちゃうのが大人なら私は子供のままで結構です!

むっ、クライドさんが宇宙服を手に取った。無理やり私に着せる気ですね?

そうはさせません!私はそれを払いのけると左手の銃口を向けて全ての残弾を叩き込みます。

穴だらけになる宇宙服・・・どうだ、これで使えまい!

「そんな、何て事を・・・」

最後の希望が潰えたかの様にに絶望に表情を歪ませるクライドさん。

いえ、実際クライドさんの中では潰えたのでしょう。

でも私はまだ絶望なんてしてません、生きて父さんとまた会おうって約束したんですから。

だから言ってやるんです・・・。

「私は絶対諦めません。誰かを切り捨てるなんて絶対許しませんから!」

項垂れていたクライドさんが頭を上げます。その顔はとても悔しそうです。

「ではどうするというんだ!?もう脱出の手段は残されていないんだぞ!」

「それをこれから考えるんです!」

そうだ、諦めんな私。まだ何かあるはずだから。

考えろ、考えろ・・・私の最大の武器は何だ?間違いなくフラスコ=オブ=アルケミスト(以下FOA)だ。それでどうやって脱出する?

残骸から宇宙船を一隻拵える。うん、無理。構造が分からないからよくできたハリボテしか出来上がらない。

宇宙服の方は・・・こっちも難しそう。生命維持装置とか私には作れない。こんなことなら魔法だけじゃなくて電子系とか工学系の勉強もしとくんだった。

ん?まてよ・・・アレをこうしてソレしたら・・・何とかなるかも。

「クライドさん!消火作業用の装備って此処にあります!?」

「え?あぁ、それならそっちのロッカーに・・・」

戸惑いながらクライドさんが指差した先にあるロッカーに私は走ります。

このロッカーも触手にやられへこんでましたが原型は留めています。

力任せに扉を開くと中には・・・

「あった・・・!」

私はソレを持って連絡艇の残骸の前に立ちます。

「さて、やりますか!FOA、発動!」

先程のように電流が迸り、光りが残骸を飲み込んでいきます。

(ヤバイ、もつかな・・・?)

恐らく限界が近いのでしょう、さっきから胸の奥がものっ凄く痛くて溜まりません。

内臓器官もおかしいのか痛さと気持ち悪さで泣きたくなってきます。

(お願いだからもう少し持ちこたえてくださいよ・・・)

私は自身のリンカーコアとそれに同期しているレリックに心の中でそう願いながら目的の物をイメージします。

そのイメージに合わせて残骸が形を変えてゆきます。

次々とパーツが結合して行き、ばらばらだったスクラップは次第に思い描いた物に近づいていきます。

「こ、これは・・・!」

後ろを振り向くとポカーンとした顔でソレを見ているクライドさん。

(良かった、間に合った・・・)

完成したところでついに限界が訪れたのか、口から紅いものを吐きながら私は意識を手放しました。

 

「クライド艦長、応答してください!こちらアースラ。繰り返します、応答してくださいクライド艦長!」

最後の通信以降、連絡が取れないクライドにアースラの面々は焦燥を募らせていた。

脱出の可能性が見られ、一度は希望を取り戻しただけに、押し寄せる絶望が彼らにはとても大きく見えた。

「クラウディア、アルカンシェルのチャージ再開!エネルギー臨界まで約600秒!」

そこでオペレーターから最も聞きたくなかった内容の報告が齎される。

ハルナによって破壊されたエネルギー系の修復を終えた闇の書は再びアルカンシェルを撃つべく準備を始めたのだ。

グレアムは立ち上がりブリッジを見回す。

そこにいた乗員達は一様に不安の色を露わにグレアムを注視していた。

(恨んでくれ、クライド君・・・)

グレアムは一度、深くため息をつくと砲術長に問い質した。

「こちらのアルカンシェルはすぐに撃てるか?」

「え?あっ、はい。エネルギーの充填はすでに終わっています」

先程ハルナが横槍を入れたため発射することの無かったアルカンシェルはエネルギーを充填したままの状態で今まで待機していた。

「分かった・・・。アルカンシェル、発射用意!」

「・・・っ!?提督!」

リンディはグレアムに詰め寄るが、再びリーゼ姉妹に制止される。

「本艦の乗組員と次元世界にの全市民には代えられないのだ。すまない・・・」

そう言い放つグレアムの手は固く握られ血が滲んでいるのを見てリンディは気付いた。

共に歩んできた教え子を自分の手にかけるのだ。辛く無い訳が無い。

それでも彼は決断したのだ。

次元世界の為に教え子を犠牲にするの言う苦渋の決断を・・・。

アルカンシェルの発射キーの前に立つグレアム、安全装置は既に解除されている。

刺さったキーにグレアムが触れた直後、観測員が叫んだ。

「あっ、待ってください!エスティアで小規模な爆発、何かが射出されました!これは・・・デュランダルのシグナルです!」

デュランダル・・・クライドのデバイスの反応があると言うことは・・・。

「クライドさん!」

「二人が脱出したんだよ!父様!」

「うむ、先程の射出体を追尾!アルカンシェルの安全圏までどれくらいだ!?」

観測員に問い質すグレアム。

「効果範囲外まで後10秒・・・5秒・・・離脱しました!」

報告を聞くや、改めて発射キーを掴むグレアム。

「総員、衝撃に備え!アルカンシェル発射ァ!」

叫ぶや否やキーをまわすグレアム。

直後、アースラの艦首から特大の閃光が放たれる。

閃光はまっすぐエスティアに吸い込まれていき、着弾するや一際大きく光った。

その輝きの中でエスティア、そして闇の書が光りの中に溶けていく。

光りは暫く瞬いた後ゆっくりと収束していき、やがて次元空間はもとの静けさを取り戻した。

「エスティア、完全に消滅。闇の書の反応もありません」

「終わった、のか・・・?」

今だ脅威が去ったのを実感できず呆然と、または緊張が解けないでいる乗員達。

「デュランダルの反応は!?」

グレアムの一言で、再びブリッジに緊張が走る。

観測員がモニターに目を走らせ、通信士がクライドに呼びかける。

それを祈るように見つめるリンディとリーゼ姉妹に険しい顔のグレアム。

重い空気が暫くブリッジを支配していたがそれは唐突に終わりを迎えた。

「・・・っ!デュランダルの反応を探知!方位、3-2-0!距離、2000!」

「目標、光学探知!映像出ます!」

観測員が報告し、当該空間の映像を投影する。

アルカンシェルの余波の影響で不鮮明ながらも映し出された映像には次元空間に小さな球体がポツンと浮かんでいた。

アースラが球体に近づくにつれ、その細部が鮮明に映し出される。

「あれは・・・っ!?」

それは一言で言うならば4~5メートル大の丸い鉄屑だった。

艦船勤務の長い局員が見たら連絡艇のものだと分るパーツ、それを繋ぎ合わせ無理やり球形にしたような物体。

出入り口と思われる重厚な水密扉を除けば、推進装置はおろか窓の一つも存在しない鉄塊、それがアースラのクルーの感想だった。

「あんな物で脱出したのか!?」

「あれじゃあ操縦どころか生命維持だって出来ないじゃないか!」

人間が2~3人入ればいっぱいの玉、そんな小さなものに生命維持装置がつめるはずが無い。

パーツ同士はしっかり接合されているため、空気が流出することは無いだろうがハッキリ言って中の人間は長くは持たないだろう。

「回収を急げ!医療班を直ちに連絡艇デッキに向かわせろ!」

故に、直ちに回収し搭乗者に適切な医療処置を施さなくては最悪窒息死、そうでなくても酸欠で脳に障害を負う可能性が高かった。

「・・・っ!クライド艦長より通信です!」

クライドからの通信、それを聞いたブリッジ要員は歓喜と安堵に包まれた。

クライドが生きていると言うことは保護した少女も無事だろう。

それを聞いた乗組員たちは歓声を上げる。

しかし次の瞬間、回線が開きクライドたちの姿が投影された途端、それが間違いであった事を彼らは知った。

「なっ・・・!?」

「そんな・・・っ!」

絶句する局員達。

『アースラ、応答してくれ!早く回収を!』

投影された映像の向こう、カプセルの中にクライドはいた。

彼の顔には酸素マスクが取り付けられている。恐らく消火作業用の防火服の物だろう。

だが問題は彼の腕の中。

『彼女が、スカリエッティさんが危険な状態だ!早く!』

そこには血の気の失せた顔色のハルナが口から血を流しながらグッタリとしていた。




ハルナ死すっ!嘘ですごめんなさいちゃんと続きます。
そんなわけで死亡キャラ生存のタグ回収完了です。
次回ですが幕間の話を追加中なので少々遅れます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第6.5話「お姉ちゃんが死にかけている時、よそではこんな会話が行われていた」

お待たせしました、予告していた幕間話になります。
自分でやっといてなんだけどスカさん達、キャラ崩壊が激しすぎw


暗い室内、その中央に彼、ジェイル・スカリエッティは居た。

両手を手錠で拘束されたその姿は正に囚人そのものだ。

「さて、ジェイル・スカリエッティ・・・貴様には色々と聞かねばならぬことがある」

 

機人長女リリカルハルナ

第6.5話「お姉ちゃんが死にかけている時、よそではこんな会話が行われていた」

 

突如彼の右斜め後ろから声がする。

視線を向けるとそこにはⅢと表記された時空管理局のエンブレムか輝いていた。

「左様、虚偽ばかりの戦闘機人の研究データ、そして此度の脱走・・・貴様は我々に対し隠し事が多すぎる」

左斜めから別の声。

そこにも現れたのも管理局のエンブレム。

こちらのナンバーはⅡだ。

「全てを話してもらうぞ、ジェイル・スカリエッティ・・・」

最後に正面に現れるエンブレム。

その表記はⅠ。

彼らは数多の次元世界の秩序の守護者・・・時空管理局の意思決定機関の頂点に立つ者達。

最高評議会のメンバーだ。

「さて、話せと言われましても・・・報告は定期的に上げていたはずですが?」

おどけてみせるスカリエッティ、しかし三人は彼の内心を見透かしているのか鼻で笑う。

「フン、ぬけぬけと言いおる」

「では・・・これはどう説明するのかな?」

スカリエッティの前にディスプレイが投影される。

「げっ・・・!」

それをみて彼は絶句した。

『パ~パ、パ~パ!』

『そうだぞぉゼロ。私がパパだぞ~』

生後数ヶ月の赤ん坊、ようやく喋れるようになったハルナをたかいたかいするスカリエッティ。

『次にお前はこう言う、父より優れた娘など存在しねぇと・・・』

『父より優れた娘など存在しねぇっ!ハッ・・・!?』

先ほどよりも成長したハルナとジョジョなのか北斗の拳なのかよく分からないやり取りをするスカリエッティ。

『こう?』

『ふむ、どうも萌えが足りないなぁ』

『じゃあこれは?』

『そっちもなぁ、キャピキャピしすぎて逆にあざとく感じる・・・』

バリアジャケットを展開し、イェーガーを手にしたハルナと決めポーズを考えるスカリエッティ・・・。

そこに映っているのは彼と娘・・・仲睦まじい家族の姿だった。

「さて、これについて説明してもらおうか?」

「あ~、それは、その・・・」

記念に取っていたホームビデオを見せられ詰問されるスカリエッティの顔にジワリと汗が浮かぶ。

「最早言い逃れはできんぞ・・・!」

評議長が怒気の籠った声で言う。

「我等を謀った罪、許されると思うなよ!」

評議員が声を張り上げる。

「貴様の行為、正に万死に値するっ!」

書記の怒声がスカリエッティに叩きつけられる。

(どうやら私はここまでの様だな・・・ハルナ、すまない・・・っ!)

自身の死が確定したのを確信したスカリエッティは施設から逃した愛娘に心の中で詫びる。

そんな彼に三人は更なる怒声を浴びせた。

「「「どうしてこんな可愛らしい娘がいるのに黙っていたっ!!?」」」

「・・・は?」

その問いは次元世界屈指の頭脳を持つスカリエッティをしても理解できないものであり、思わず開いた口から呆けた声が零れてしまった。

「貴様・・・ワシ等が日夜世界の平和守ってる時に自分だけかわいい娘と和気藹々としおって・・・羨ましいぞ!」

「そうだそうだ!我々だってなぁ!潤いが欲しいんじゃ!」

ポカンとしたスカリエッティに評議員と書記が叫ぶ。

「もう我慢できん!大至急彼女を保護しろ!この子はワシが孫として育てる!!」

評議長がそう宣言した瞬間、室内の空気が固まった。

直後オドロオドロしい怒気が部屋中に充満し、そして・・・。

「「「ふざけるなー!!!」」」

評議員と書記、そしてスカリエッティの怒号が木霊した。

「議長!この野郎一人だけ抜け駆けしおって!」

「脳みそだけのお前にまともな育児ができるわけなかろうが!」

「ちょっと待て!そう言うお前らだって脳みそだけだろう!人の事が言えた口か!?」

「お前ら黙って聞いてればなぁ・・・何勝手に人の娘の処遇を決めようとしてるんだ!?お前等なんぞにハルナはやらんっ!!」

「「「何だとぉっ!!?」」」

怒声と怒号、時たま拳とどこからか生えてきたマジックハンドが飛び交う室内・・・。

こうしてスカリエッティと最高評議会、親馬鹿と祖父馬鹿を拗らせた四人の醜い争い・・・『第一回ハルナの親権争奪戦』は彼女がエスティアに保護されたという報告が伝えられるまで続くのだった。

ちなみに結果はクロスカウンタによる4人同時KOであった。




この時空管理局は別の意味でダメかもしれませんねw


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第7話「お姉ちゃん、バレる」

第7話です。
今作で誕生編は終了、次回から新章突入です。


暗い、此処は何処だろう?

「・・・!・・・・っ!!」

何か聞こえる・・・。

「血圧・・・下!・・・にも乱・・・!」

「・・・だ!輸血・・・!」

これは・・・声?

「不可能で・・・こんな身体の・・・前例が無・・・!」

「やるしか・・・!彼女の命が・・・!!」

そっか、そういえばISの使いすぎで身体が限界を超えちゃったんだっけ。

多分私は今手術中で聞こえているのはお医者さんの声なんだ。

どうでもいいけどお医者さんと聞いてエロいイメージが浮かぶ私はかなりアウトかもしれませんね・・・。

とまぁ、アホな思考はそろそろ止めにして・・・やっぱ私死んじゃうんですかねぇ・・・。

あれだけ大量に吐血したって事は間違いなく内臓やられてますしね。

それに先生方の会話からして私を治療することが難しいみたいです。

考えて見ればそうですよね。この時代に戦闘機人なんて私以外に存在しませんもん、治療方法なんて当然ありません。

それなのに妙に他人事に感じるのは私が達観しているのか既に諦めの境地に到達してしまったのか・・・。

あぁ、でも最後にまた父さんに会いたかったです。

あと、出切ればアニメシリーズ3作品分位活躍したかったですし妹にも会いたかったですし栗毛と金髪のツインテ百合カップルやチビだぬきな大阪系少女とかと友達になりたかったですし・・・。

あれ・・・やっぱり未練タラタラじゃね?

「な・・・だ君は!?」

「ここ・・・部外者は・・・だ!」

おや?なんか騒がしくなってきましたよ?

だれか関係者以外が入ってきたんでしょうか?

「許可・・・受・・・る。ここ・・・私に任・・・」

誰かがそう言うと人の気配が少なくなっていきます。

先生方が退出したようです。

「・・・・・・」

何でしょう、誰だか分らない人と密室に二人っきり・・・。

何をされるのか分らない分さっきより一段と不安になってきました。

もしかして薄い本のようなエロい目に!?

「大丈夫だよ」

え?

この声は・・・!?

私は何とかして目を開けようと意識を集中させます。

そしてやっとこさ瞼を開けると・・・。

「とぉ・・・さん・・・?」

今だ焦点の会わない視界の中、父さんが私を見下ろしていました。

しかしそこで気力が尽きたのか私の意識は闇に落ちていきます。

「必ず君を助けてみせるよ、ハルナ・・・」

それが意識を手放す直前に耳にした父さんの言葉でした。

 

機人長女リリカルハルナ

第7話「お姉ちゃん、バレる」

 

「知らない天井だ・・・」

しつこいようですが様式美です。異議申し立ては受け付けません。

とそこで何かが落ちるような音がして其方を見ると看護師さんが立っています。

足下には点滴のパック、これから取り替えようと病室に入ってきたみたいですね。

「目が、覚めたの・・・?はっ・・・!そのまま動かないで!まだ身体は衰弱したままだから!」

そう言って看護師さんは私の枕もとに来ると備え付けのナースコールボタンを押してお医者さんを呼び出しました。

その後は慌てて病室にやって来た先生方に身体に異常は無いか検査されたんですが明らかに違うことを調べてるようにも感じました。

まぁ、先程も言いましたがプロジェクトFなんて影も形もない時代です。

そんな所に超高性能な戦闘機人なんて現れたら大騒ぎになるでしょう。

そして諸々の検査で丸一日つぶれたその翌日。

「こんにちは、スカリエッティさん」

クライドさんがやってきました。

手にはお花と果物の詰め合わせ、どうやらお見舞いに来てくれたみたいです。

「その、身体の具合は大丈夫かい?」

クライドさん、心配してくれていることに嘘偽りは無いようですがどうもそれだけの為にきた訳じゃないようです。

どこか落ち着かないというか警戒しているような素振りですしチラチラとこちらの様子を窺ってきます。

それに各センサーでスキャンしてみれば病室の周りには完全武装の魔導師と思われる人たちが待機しており、何かあればすぐ突入できる状態にありました。

うん。すげー警戒されてますね、私・・・。

まぁ、正体不明の人造魔導師のようなナニカが相手です。警戒するなという方が無理でしょうね。

「はい、おかげさまで」

とりあえず当たり障りの無い返事をしてみましたがさて、どう転ぶでしょうか・・・。

「そ、そうか・・・それはよかった・・・」

クライドさんはそういうとそれっきり黙ってしまいました。

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

沈黙が続きます。

気まずいです!

私こういう雰囲気ダメなんです!

なので先に心が折れてしまいました。

「あの~、何か聞きに来たんじゃありませんか?」

「っ!な、何故そうおもったんだい?」

うわぁ、メチャクチャうろたえてますよ。大丈夫なのか管理局?

結構偉い人なんですからもうちょっと腹芸が出来なきゃだめですよ、クライドさん。

「思いっきり態度にでてますよ・・・それでどうします?続けますか尋問?」

私がそう聞くとクライドさんはガバッという効果音が付きそうな勢いで立ち上がります。

「違う!違うんだ、スカリエッティさん・・・」

全力で否定してくるクライドさん。

助けた女の子にこんなことしたくないんでしょうね。

理想と任務の狭間で葛藤しているようですがどんだけいい人なんですかこの人?

こりゃ余計なことを口走ったらいけませんね。

最悪、最高評議会の送り込んできた暗殺者に消されてしまうかもしれません「お前は知りすぎた」とか「騙して悪いが仕事なんでな」とかいって。

「はぁ・・・そんなに知ってる事は多くありませんよ?」

「・・・すまない」

罪悪感で胸がいっぱいなクライドさんを前に私の身の上の説明を始めました。

とりあえず当たり障りの無い内容を話すとしましょう。

「既に調べたと思いますけれど私の身体は普通じゃありません。人為的に作られた物です」

「では、やはり人造魔導師・・・」

「研究所の人は戦闘機人って呼んでました、文字通り戦うために機械と融合した身体だからでしょう・・・」

その話を聞くや否や顔を歪めるクライドさん。

人間を何だと思ってるんだって顔ですね。

「生まれて3~4年位研究所の中ですごしてきたんですけれども少し前に管理局の強制捜査が入りましてその時に父さん・・・私を生み出した研究員の人に転送ポートで逃がしてもらったんです」

「そしてあの森で守護騎士に襲われて倒れていた、ということか・・・」

そう言ってクライドさんはどこかと連絡を取り始めました。

恐らく最近捜査が行われた研究所の洗い出しをしているのでしょう。

「すみません、大して力になれなくて・・・」

「いや、こちらこそ嫌な思いをさせてしまった。改めて謝罪させて欲しい」

そう言って頭を下げるクライドさんでした。

保身の為に管理局に協力的なポーズをとっておこうと言う下心も少しはありますがクライドさんにはそういった思惑抜きで強力したくなる何かがあります。

これがこの人の人徳なのでしょうね。

それで尋問と言うか事情聴取は終わったのか後は他愛無いお喋りばっかりでした。

クライドさんに私と歳の近い息子さんいる事とか、私と父さんが地球の漫画やアニメを観て盛り上がってた事とか地球つながりでクライドさんの上司兼師匠が地球出身だったとか・・・。

こんな感じに会話が弾んでいたらいつの間にか日が傾いていました。

まぁ、クライドさんがやって来たとき既に午後に突入していたのですから仕方ありません。

看護師のお姉さんが入ってきて面会時間の終わりを告げてきました。

「それじゃあ私はそろそろ行くよ、今日はありがとう。」

名残惜しいですが仕方ありません。

クライドさんだって多忙な中、態々時間を作ってやって来てくれたんですから。

「はい、此方こそありがとうございました」

ですからちゃんとお礼を言わないといけません。

「ああ、そうだ。君の身柄は私が責任を持って護る。だから安心して今は養生してくれ」

更に私が不安にならない様に此処まで気を使ってくれるなんて、もうクライドさんの方に足向けて寝れませんね。

最後に「それじゃあお大事に」と笑顔で言ってクライドさんは病室を出て行きました。

扉が閉まり病室に静寂が訪れます。

「・・・・・・」

病院は静かな場所なのは知っていましたがクライドさんが去った病室はやけに静かで逆に耳がキーンと痛くなるような錯覚すら感じました。

べ、別に一人になって寂しく思ってる訳じゃないんだから!本当だからね!

さて、ほのぼの&ギャグパートはこれ位にして・・・。

「隠れてないで入ってきたらどうですか?」

ここからはシリアスパートといきますか・・・!

声をかけられて観念したのか入ってきたのは一人の男性でした。

本局の青い制服姿の中肉中背40代位の無個性なおじさんです。

人ごみにいたら周囲に溶け込んで絶対に見つけられない。それ位個性と言うものが感じられません。

ガンダムで言うところのGMです。超没個性、同じヤラレメカのザクだってもっと個性があるというのに・・・。

私が思うにきっと名前はジョン・スミスか田中太郎に違いありません。

情報部とかそんな部署の、恐らく最高評議会の息のかかった人でしょう。

「これは失礼しました。隠れている積もりは無かったのですが中々どうして・・・女性の部屋と言うのは入るのを躊躇ってしまっていけない」

場を和ませてるつもりでしょうか?

仮称ジョンさんがジョークを言い放ちますがすげーつまんないです。

これは笑わなきゃいけないんでしょうか?アメリカンコメディのノリでHAHAHA!って・・・。

うん、無理。

「それで何の御用でしょう?面会時間はさっき終わっちゃいましたよ?」

なのでスルーして話を進めてしまいましょう。

「今のジョークは渾身の出来だったのですがね・・・まぁいいでしょう。」

マジで笑いを取るつもりだったんですか?!

部屋に備え付けの椅子に「よっこいしょ」と言って座ってから改めて目の前のおじさんは口を開きます。

「自己紹介がまだでしたね。技術部システム管理課のジョン・田中です」

なんと、本当にジョンさんでしたよ。しかも苗字が田中・・・おもいっきし偽名ですって言ってるようなもんじゃないですか。

おまけに技術部?無個性の癖に眼光だけ鋭かったり身体の重心が全くブレなかったり思いっきり戦闘者じゃないですか。

あなた隠す気ないでしょう?どう見ても最高評議会の刺客ですよ。

「それでその田中さんが何の用で此処に?事情聴取なら先程済みましたよ?」

ここで余計なことを口走ったら田中さんは私を消しに掛かるでしょう。

私だけならまだいいです。返り討ちは無理でも逃げるくらいなら出来るはずです。

問題はクライドさんです。

さっきも言いましたが知りすぎたとかいわれて消されたり、あとは人質にされたりとかしたら私は何も出来ません。

なので下手な手は打たないで様子を見ましょう。

私の前に現れたということは私に何がしかを要求しているのでしょう。

「いえ、なに・・・貴女の今後について話し合いに参上した次第です」

確定。コイツ間違いなくノーミソ老人会の差し金です。

「私の今後ですか?」

とにかく今は無知なフリをして情報を引き出しましょう。

「はい、貴女は現在複雑な立場にいます。違法研究機関の被験体、それだけ観れば被害者として保護される立場です」

「しかし・・・」と田中さんはそこで一回区切ってから話を続けます。

「貴女は非常に強力な力を持っている。使い方を誤れば多くの人を傷つけてしまう程危険な力を・・・。それらは然るべき教育を受けた上で然るべき場所で正しく振るわれなくてはならない。貴女なら理解できますね?」

つまり意訳するとこういうことですかね。

オマエの力はヤバイから管理局の為に使われるべきだ、と。

すげー傲慢な発言ですが本来私は管理局が魔導師不足を補う為に父さんに開発させた戦闘機人な訳であながち間違いでな無いんですよね。

「つまり私は退院後は管理局の預かりになると、そういう事ですか?」

「まぁそう言う事になりますね。具体的な配属先などは追って通達しますので・・・」

なんつぅかこの人、私が管理局入りすること前提で話進めてるよ・・・。

「拒否権とかはあるんでしょうか?」

この手の質問が来ることを予想していたのでしょう。

田中さんは空間ディスプレイを投影してある画像を見せました。

「なっ・・・!!」

それを見た私は文字通り息をのみました。

そこにはバインドで両腕を繋がれた父さんとあの研究所の研究員さん達が連行されている光景でした。

父さんの近くにクイントさんが写っている事からあの日、局員が突入してきた日のものでしょう。

「貴女が正式に局員として管理局に来てくれるのであれば貴女のお父上、スカリエッティ博士との早期再会が叶うのですか・・・いかがでしょう?」

ちくしょう・・・迂闊でした。クライドさんの心配ばっかりしてたせいで父さんの事忘れてましたよ!

そうですよ、父さんあの後御用になったに決まってるじゃありませんか。

口封じに殺されるかと思っていましたが私を縛るための人質にするとは・・・。

こうなっては最高評議会に従わざる追えないでしょう。

「・・・分りました。ご要望通り入局しましょう」

私が大人しく従ったことに田中さんは顔をほころばせます。

「それは良かった。断られたらどうしようかと心配しましたよ」

話は終わったとばかりに田中さんは席を立ちます。

「ただし・・・」

退室しようとする田中さんに私は決して大きな声ではないですがハッキリとした口調で言ってやります。

「私の縁者に何かあった場合はその限りでありませんから。そのつもりでいてください・・・」

父さんだけじゃなくて研究員さん、そしてクライドさん達に何かあったらタダじゃ済まんぞワレェ・・・!と脅しておきました。

最も何かあったらブラフでも何でもなくタダじゃすましません。

アラモ銃器店で全品100%オフの買い物をしてからで羽の付いたカヌーで突入、『デェェェン!』て感じに完全武装してターミネーターと化した挙句爆弾攻勢を開始、首謀者も実行犯もタダの案山子も資本主義者も特殊訓練を受けたゲリラも一人残らず安物のナイフであすたらびすたべいべーした上でカバンにしてやる所存です。

「・・・ええ、承知しました。」

それだけ言って田中さんは今度こそ病室を後にしました。

「はぁ~緊張した・・・」

ガチの工作員と腹の探り合いなんてするもんじゃありませんね。

気力の使い過ぎでお腹がすきました。

食堂に行きたいですがお医者さんの言いつけで病室からは出られません、最もこの体じゃあ立つこともままならないんですけどね。

あ、クライドさんの持ってきてくれた果物がありました。

「頂きます。もきゅもきゅ・・・あ~バナナおいしい」

とりあえず今は養生しましょう、局で働くにしても体が治らなきゃ始まりませんから。

 

Side ジョン・田中

病院を後にした彼、ジョン・田中は通信を入れる。

「私です、ご命令の通り彼女に入局を促しました」

相手は彼の直属の上司、時空管理局最高評議会。

「はい・・・はい。彼女も了承してくれましたよ。ただ・・・」

かわいい孫(最高評議会談)が路頭に迷わない様就職先を用意するという彼らの意向を伝えに来た田中であったが・・・。

「ミズ・スカリエッティは何か勘違いしているようでした・・・」

どうやら説明不足だったらしい。

当の本人は父を人質に服従を迫られたと思ったのか最後に此方を脅すような発言をしてきた。

「釈明しようにもあの様子では信じてくれないと思われます」

結局彼女が真相を知るのは父と再会してからになるのは間違いない。

それまで続くだろうギスギスした関係を想像したジョンは深くため息をつくのであった。

Side out



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

就労編
第8話『雨降って地固まるって言いますけど普通雨降ったら固まるどころか地面ドロドロですよね?』


お待たせしました、新章開始です。
文字通り主人公が働きます。


「はぁ、はぁっ・・・!クソッ!」

男は走っていた。

場所は夜のクラナガン、ネオンの眩しい表通りを外れた暗く薄汚れた裏路地を全速力で。

積み上げられた箱やゴミを蹴り倒し、躓きながらも男は走る。

しきりに後ろを振り向き追っ手の姿を確認するがその姿を確認することは出来ない。

しかし・・・。

「っ・・・!?」

男は咄嗟に右にかわす。

すると先程まで彼がいた空間を青白い弾丸が通り過ぎていく。

気付くのが一瞬遅ければ、かわすのが後コンマ数秒遅れていれば彼は魔力弾のシャワーを浴びていたことだろう。

「畜生!何で奴には見えるんだ!?」

この暗闇の中、闇雲に逃げる自分を追跡者は音も無く的確に追い詰め、狙い違わず発砲してくる。

対してこちらは相手の姿どころか足音や気配すら聞こえず何処からとも無く飛来する魔力弾に撃たれる恐怖で気が狂いそうだ。

永遠に続くと思われた夜の街の鬼ごっこは唐突に終わりを告げる。

「なっ!行き止まり・・・!?」

無我夢中で逃げる男は路地の突き当たりに追い詰められてしまった。

左右を見回し、逃げ道が無いか確認する。

しかし周囲の廃ビルは扉も窓も閉ざされた上から厚い鉄板で塞がれ飛び込むことは不可能だった。

「ちっくしょうがぁ!」

男は振り返り手に持ったデバイスを機動する。

そう、男は魔導師だった。

魔導の才能はそれなりにあったがそれを磨く事は無く、悪い仲間と遊び歩いていたのが祟り、碌な職に付く事ができなかった。

そして男はクラナガンを拠点とするマフィアに雇われお抱え魔導師として後ろ暗い仕事を今日まで続けてきた。

そのため幸か不幸か、こと戦闘に関しては組織で一目置かれるまでになっていた。

「来やがれ、管理局のクソ野郎が!ぶっ殺してやる!」

塞がれた扉を背にし、暗闇にデバイスを向ける。

腕に自信のある自分が追い詰められるのだ。

追っ手・・・時空管理局の捜査官はかなりの戦力を投入しているのだろう。

10人か、20人か・・・。

それでも正面からの撃ち合いならば負ける気はしない。

男は不適に笑いながら現れるであろう捜査官達を待つ。

しかし、10秒過ぎ、20秒過ぎ、1分過ぎても彼らは現れない。

肩透かしをくらい不思議に思った男が眼前の闇に目を凝らしたその時。

突然背後から大きな音がする。

「っ!!」

慌てて背後を振り返った男。

「なんd・・・ぶっ!!」

何だ?

彼はその言葉を最後まで言う事無く自分に向かって飛んでくるぶ厚い鉄板・・・開かずの扉だった筈のドアに顔面を強打される。

扉共々2メートルは吹き飛ばさた男は今しがた廃ビルに出来た出入り口から現れた人影に驚愕する。

「ガキ・・・だと?」

それは屈強な武装局員でも狡猾な執務官ですらなく、小さな少女だった。

その少女が無骨なデバイスと思しきものをこちらに向けるとその先から青白い魔力光が発せられる。

どうやら今まで自分を追い詰めていたのは目の前の少女のようだ。

「こんな、ガキに俺は・・・」

そういったところで少女のデバイスから閃光が走り、男は意識を手放した。

 

機人長女リリカルハルナ

第8話『雨降って地固まるって言いますけど普通雨降ったら固まるどころか地面ドロドロですよね?』

 

「それでは被疑者の護送、よろしくお願いします」

「はっ・・・それでは失礼します」

私に返礼すると警邏隊の局員は護送車のほうへ走っていきます。

どうもこんばんは。いや、こんにちはかな?うん、現地時間23時なのでやっぱりこんばんはで行きましょう。

こんばんは、ハルナ・スカリエッティ執務官です。

病院でのやり取りからはや5年、田中さんとの交わした契約の通り私は時空管理局で働いています。

退院と同時に陸士学校に放り込まれ3ヶ月の短期講習を受け、その後は士官学校に放り込まれこれまた半年の促成コースで法律やら何やらを叩き込まれた挙句執務官試験を受けさせられギリギリこれに合格、今はミッドチルダ地上本部付きの執務官をやっています。

戦闘機人のチートボディのおかげで実技のほうは簡単にパスできたので座学に専念できたのが幸いでした。

ちなみに私の所属を巡って陸と海のお偉いさんが争ったらしいです。

クライドさんをはじめ、私を保護したいという思う人も幾分かはいたとは思いますが殆どは私と言う強力な戦力を他所に取られまいという思惑からでしょう。

結局最後は最高評議会が動いて私は暫定で陸の預かりとなりました。

定期的にクライドさんに手紙を出してはいるのですが果たして届いているのかどうか・・・。

また、定時連絡にやってくる田中さんに父さんの事を聞いてはいるのですがいずれもはぐらかされてしまいました。

私の方でも独自にに父さんの事を調べてみましたが全く情報が手に入りません。

もしかしたら父さんは既にこの世にはいないのかもしれません・・・。

何か湿っぽくなってしまいましたね、この話はお終いにしましょう。

それにしても、さすがはミッドチルダが首都クラナガン。

時空管理局のお膝元の筈ですがとにかく犯罪が多いです。

しかもかなり組織だった犯罪が。

大都市ですからその分動くお金も大きいのでしょう。

それに比例してそこを根城にしている犯罪組織も大きくなるのは分りますがこれだけ連日出動が続けばチートボディな私でも気が滅入ってきます。

そしてもう一つ気が滅入ることがありまして・・・。

「あ、居た居た・・・スカリエッティさーん!」

・・・噂をすればこれですよ。

「やっと見つけましたよ。さぁ、今日こそは検診を受けてもらいますよ!」

そう言って近寄ってくる本局制服の上に白衣を纏った緑がかったショートヘアに円メガネの局員。

コイツ、マリエル・アテンザとか言う私と同じくらいの年齢のこの女は私の専属医らしいです。

とは言えこの女の本来の部署はデバイスの整備、開発が専門の第4技術部・・・。

明らかにコイツ私の事珍しいメカとしか思ってないですよ。

検診とか言いながらどうせ私の稼動データを取って来いとか評議会に言われているに違いありません。

「結構、メンテナンスは間に合ってます」

なので突っぱねます。

私の体を触っていいのは父さんだけです。ちなみに性的な意味で触ったら父さんでもぶっ殺しますが・・・。

「そう言って前回の検診も拒否したでしょう。一度ちゃんとした設備で見ないと心配じゃないですか?」

それなのに何度断ってもしつこく食い下がってくるのでその度にイライラが募っていきます。

「自分の身体です、自分が一番よく分かっている。余計なおせっかいは結構」

いえ、それだけじゃありません。

二度と父さんに会えないかも知れない不安。

現状への苛立ち。

そして何より管理局への憎悪とも言える不信感。

あらゆる負の感情が積もりに積もって山となり今にも噴火しそうな状態です。

「お節介だなんて。私はスカリエッティさんの為を思って・・・」

だからでしょう。

彼女のこの一言で私の堪忍袋の尾が切れたのは。

「だったら私に付きまとうな!!」

後になって思えばかなり情緒不安定だったのでしょう。

周りの目も気にせず眼前のマリエル・アテンザに当ってしまいました。

「私の身体が心配?私の為を思って?あんたが大事なのは私の稼動データだろう!?」

「そんな・・・!?私は・・・」

目の前でアテンザがうろたえていますがもう駄目です。

色々火が着いてしまった私の口は止まりません。

「五月蝿い!!善人ぶるな!どうせ心の中では私の事なんてモルモット程度にしか思ってないくせに・・・っ!」

「違うっ!!」

溜まりに溜まった怒りや鬱憤をぶちまけている途中で目の前の女の叫びに驚き中断してしまいました。

「違うもん・・・私は、あなたと・・・」

彼女は泣いていました。

考えてみれば当たり前です。

就業年齢の低いミッドチルダ・・・とりわけ魔導師は精神の成熟が早いといいますがそれでも目の前の彼女は間違いなく子供です。

私のように前世の記憶なんて物があるわけではありません。

そんな彼女が怒りや憎しみをぶつけられて平気なわけがありません。

肩で息をしている内に冷静さを取り戻した私が感じたのは言いようの無い罪悪感でした。

「えっと・・・あの・・・」

謝らないと、そう思うのですがうまく言葉に出来ません。

そうして私がまごついていると突然向こうから叫び声が聞こえてきます。

「えっ!?」

「なに・・・?」

アテンザも顔を上げてそちらに振り向きます。

そこにいたのは先程私が拘束したチンピラ・・・もとい犯罪組織の違法魔導師でした。

手には先程持っていた物とは別のデバイス・・・どうやらどこかに隠し持っていたようです。

「さっきはよくもコケにしてくれたな・・・このクソガキィ!」

放たれる魔導弾。

慌ててシールドを張りますがかなりの衝撃で私は弾き飛ばされてしまいました。

「ぐあっ・・・!」

地面を二、三度バウンドした後ようやく止まってから立ち上がろうとしますが身体が動きません。

すぐさまシステムチェックを走らせます。すると・・・

(疲労蓄積!?なんでこんな時に!)

検診を拒否してずっとフル稼動だったせいか、身体のあちこちにガタが来ていました。

その溜まりに溜まった疲労が此処で一気に噴出したのです。

実際さっきの攻撃だって万全の状態なら弾き返せたはずです。

それが受身も取れないくらい身体が弱っていたのに気付けないなんて・・・。

「へッへッへ・・・」

違法魔・・・めんどいからもうチンピラでいいや。

そのチンピラが嫌な笑みを浮かべながら近づいてきます。

これは、まさか・・・!?

「やめて! 私に乱暴する気でしょう? エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!」

「・・・・・・は?」

・・・あれ?おかしいな、確か前世で読んだ薄い本だと大体このあたりで女の子がエッチな目にあうんだけれど・・・。

「よく分からんが俺はな、テメーみたいな貧相なガキになんざ興味は無ぇんだよ」

・・・どうやらコイツ、熟女派だったようです。

「おい、テメー。今俺のことバカにしてたろ?」

「いえ、ただ熟女趣味だったんだな~と・・・」

「ちげーよ!俺はなぁ!もっとこう・・・ボンっと出てて、キュっと引き締まってて、そんでまたボンって出てるのが好きなんだよ!」

そんなこと9歳児に力説しないでください。反応に困るじゃないですか。

「それじゃあこのすれんだぁびゅーてぃな私をどうするつもりですか?」

「なに・・・お前中々いい腕だしな。管理局で腐らせるなんざもったいねぇ。俺の所に来ないか?ギャラは弾むぜ」

なんと、カン・ユー・・・もとい勧誘ですか。

ギャラを弾むのくだりに一瞬心惹かれる物が無かったといえば嘘になります。何より管理局は憎くてたまりませんし、しかし・・・。

「魅力的な提案ですね、でも私は管理局でやらなきゃいけない事があるんです。だからお断りします」

そう、父さんを見つけて助け出さなきゃいけません。

可能性は限りなく低いでしょう。第一父さんがまだ生きている保障はありません。でもやらなきゃいつまで経ってもゼロパーセントのままです。

「そうか・・・そりゃ何よりだ、よっ!」

そう言うやいなや、チンピラは私の事を思い切り蹴り飛ばしました。

再び私は地面を転がります。

「ガハッ・・・!」

この野郎・・・女の子を足蹴にするとは何て奴だ。

「あのまま提案を飲まれたりしたらテメェをぶっ殺せなくなっちまうもんなぁ・・・」

ゲス顔で私にデバイスを向けるチンピラ。

コイツはいよいよ持ってヤバイかもしれません。

さっきから身体に力が入りません。

リンカーコアやレリックジェネレーターの出力も安定せず、魔法もうまく組めません。

「クックック・・・いい声で鳴くじゃねぇか?」

畜生、女の子の苦しむ姿を見て悦ぶとは・・・コイツやっぱり変態です。

「でも、てめぇで遊ぶのももう飽きたわ・・・」

チンピラがデバイスをこちらに向けます。

ヤバイ、超ヤバイ!

動け!動け動け動け!!

こんな所で終わるわけには行かないんですよ!

まだ色々遣り残した事があるんですから!

「じゃあな、アバヨ」

私が必死に足掻くもチンピラのデバイスから魔力弾が発射される程度には現実は非情でした。

迫り来る弾がスローモーションで見えます。

あぁ、私ここで死ぬんですね・・・。

でもあれですね。もし父さんが既に死んでたら天国で会えますし、それはそれでいいかもしれませんね・・・。

そんな事を考えながら人生を諦めた私はゆっくりと瞼を閉じます。

どうせ直ぐ死ぬんです、それならあのチンピラのきったないツラ見ながら死ぬのも癪ですし、父さんの事とか考えながら逝くことにしましょう。

父さんとアニメ見たり、一緒にバリア・ジャケットのデザイン考えたり、決めポーズの練習したり、楽しかったなぁ・・・。

畜生、やっぱり死にたくないよ・・・。

「ぐぅ・・・!」

そう思った直後小さな衝撃を感じました。

弾を食らったんでしょうか?

それにしては軽い衝撃でしたね。

痛くもないし、それになんでしょう?何かが私の上に乗っかってるような・・・。

恐る恐る瞼を開くとまず飛び込んでくるのはやっぱりチンピラの姿。

でも何でしょう?何か驚いているような・・・。

そして次は私に圧し掛かっている物を確認し・・・。

「・・・えっ?」

言葉を失いました。

それは人の形をしていました。

緑がかったョートヘアにまん丸メガネの・・・。

「アテンザ・・・?」

それは先程私が拒絶した少女、マリエル・アテンザでした。

そう、彼女は私の前に飛び出し、飛来する魔力弾から私を護ってくれたのです。

体を見ると、本局の制服の上に纏った白衣にはジワリと赤いシミが広がっていきます。

アテンザの、赤い・・・。

「何だぁこのガキ・・・邪魔すんじゃ・・・」

チンピラがアテンザにデバイスを向け・・・。

「うああああぁぁぁぁぁっ!!」

私の身体は反射的に動いていました。

イェーガーを奴に向け、照準、発砲。

この一連の動作は今まで行ってきた中で最速のものでした。

私の魔力弾を喰らったチンピラは衝撃で吹き飛び、数ブロック先の廃ビルに頭から激突しました。

よく見ると手足がおかしな方向に曲がっていたり耳から出ちゃいけない色の血が出ていたりしますがそんな事どうでもいいです。

「マリエル!!」

今は彼女、アテンザ・・・マリエルの様態が最優先です。

「ぅ・・・あ、スカリエッティ、さん・・・ゴホッ」

「喋らないで、今人を呼んで来るから・・・!」

マリエルが咳き込むと空気と共に血が吐き出される。

畜生、肺がやられている。

「こちらスカリエッティ執務官。拘束した容疑者が抵抗、現在アテンザ技官が重傷。大至急ヘリの出動を要請する」

すぐさま地上本部の航空管制から返事が届く、しかし・・・。

『こちらクラナガンコントロール、現在急行できる機体が無い。救急車を手配したので待機されたし』

救急車?四六時中渋滞してるクラナガンの道路をチンタラ病院まで行けって言うんですか?

「アテンザ技官は肺をやられている、陸路じゃ間に合わない。大至急ヘリが必要なんだ!」

『理解している。しかし向える機がいない。待機されたし』

クソッタレ!

「ゴホッ・・・ハァ、ハァ・・・」

「マリエルっ!」

咳き込むたびに血をはき既に私も彼女も返り血で真っ赤です。

「ハァ、ハァ・・・フフッ」

マリエルが笑います。

何ですか?血が足りなくて頭がおかしくなったんですか?しゃれにならないから止めてくださいよ。

「やっと、名前で呼んでくれた・・・」

「っ!・・・バカ、どうして庇ったりなんか・・・」

私が貴重な実験サンプルだとしても身を挺してまで護る価値があるとは思えません。

「クライド提督からあなたの事を聞いて、私と同い年のあなたとなら・・・友達になれると思って・・・」

「っ・・・!!?」

言葉が出ませんでした。

出会った時からずっと彼女を疑っていました。

どれだけ優しい言葉をかけられても本心では私の事を実験動物としか見ていないと。

でもそんな事は無くて、彼女は純粋に私と友達になりたくて私に話しかけていた。

そんな彼女を、私は・・・!

「・・・・・・・!!」

マリエルを抱き上る。

「ぐっ・・・」

動かされた痛みから呻くマリエル。

「ゴメンなさい、でも少しだけガマンして」

何故でしょう、さっきまで乱れていた魔力が安定しています。

これが火事場の馬鹿力なのでしょうか・・・。

「こちらハルナ・スカリエッティ。これより私がアテンザ技官を直接搬送する!」

そう宣言するや否や私は夜の空へ飛び立ちます。

『スカリエッティ執務官!市街地での飛行は許可できない!直ちに着陸・・・』

「うるさい!始末書でも降格でも受けてやるから今はすっこんでろ!」

管制官の制止に自分でビックリするくらい汚い口調で叫びます。

『なっ・・・!?』

驚き沈黙する管制官、あれだけの暴言を吐いたんです。相応の言葉が返ってくると思っていましたがしかし・・・。

『・・・最寄の医療施設の位置を転送する、確認されたし』

「えっ?」

私が困惑しているとここから一番近くの病院までの最短ルートが送られてくる。

『付き合ってやるから後で一杯奢りやがれ。このガキンチョ』

「・・・!了解っ!!」

あぁ、多分今の私はすんごいひどい顔で泣いてるんでしょう。

さっきから涙と鼻水が止まらないんですもん。

そんなグシャグシャな顔でマリエルを抱えながら私はミッドの夜空を全速力で飛翔しました。

「全く、専属の医務官を派遣すると言うからまた本局の横槍かと思ったが・・・主犯はオマエか、クライド・・・」

病院の通路を二人の男が歩く。

一人はクライド、もう一人は口元に髭を蓄えた恰幅のいい男性局員、階級章は一等陸佐のものだ。

レジアス・ゲイズ、首都防衛隊に所属する若き指揮官だ。

陸と海、魔導士と非魔導士、立場こそ違えど世界を護るという同じ志を持つ二人はとある任務で出会って以来よく言葉を交わす間柄となっていた。

「今の彼女にはケアする者が必要だ。肉体的にも、精神的にもな・・・」

「確かに兵器にもメンテナンスは必要だが・・・」

レジアスはクライドがなぜそこまでハルナを気にかけているのか理解できなかった。

戦う為に培養槽から生まれた兵器、それがレジアスが思い浮かべる戦闘機人だ。

自我や意思にしても柔軟な戦術や局員との円滑な指揮伝達の為に備わっている機能に過ぎない。

しかしクライドは彼の言を聞き苦笑しながら答える。

「違うさ、彼女は兵器ではない・・・」

そう言ってある病室の前で足を止めると静に扉を開けた。

すると・・・。

「あ゛~終わんないよぉ~。ねぇ手伝ってよ『マリー』っ!」

室内からやけに気の抜けた声が聞こえてくる。

「駄目です。それは『ハルナちゃん』の始末書なんだから自分で書かなきゃ意味がないでしょう」

扉の隙間から除くとそこにはベッドに入ったマリエルとその横で涙目になりながら始末書を作成するハルナの姿があった。

「ぶぅ・・・病院まで運んだんだからちょっと位いいじゃん」

「駄~目!第一ちゃんと私の検診を受けていればこんな事にはならなかったんだから」

「なんだと~?やんのかコンチクショウ!」

「上等だよ、受けて立ってやる!」

お互いに『ぐぬぬ』と唸りながら顔を突き合わせる二人

しかし・・・。

「病室ではお静かに!!」

「「はい・・・」」

点滴を交換していた看護師の一括に二人は大人しく従う。

「・・・プッ」

「フフフッ」

それが可笑しかったのか二人は互いの顔をみて笑いあう。

その光景は初対面の二人を知る人物には信じられないほど晴れ晴れとした物だった。

「・・・どうだい?」

室内の様子を見て、クライドはレジアスに問う。

「『戦闘機人』とはいえ結局は人、と言うことか・・・」

ハルナに関する報告を受けた時、レジアスは脳内で戦闘機人を用いた新たな戦力構想を模索していた。

人員を海に取られ慢性的な人手不足に喘ぐ陸。

人造魔導師や戦闘機人はその問題を一気に打開する可能性を秘めているのだ。

技術的な問題はハルナと言う完成品がいるためクリアできた。今後は倫理面や法的な問題をどうにかしようと画策していたがそれも今回の一件で改めなければならないだろう。

「ヤレヤレ・・・お前のせいで練っていた計画がパーになったぞ」

そう言ってため息をつくレジアスだったが、その顔はつき物が落ちたかのように明るかった。

「彼女も、我々が護るべき子供達の一人。そういうことだな?」

「あぁ、あの子が大きくなった時に笑っていられる世界。それを作るのが私達の仕事だからな」

自分達の戦う意味を再確認した大人二人は笑いがら病室を後にした。

戦闘機人は兵器ではない、それにレジアスが気付いた事が今後の歴史に大きな影響を与えるのだがそれは誰も知らない。

 

 

 

「それじゃあ私からも彼女に餞別を送るか・・・」

病院を出たところでレジアスはポツリと呟いた。

「ん?何かあるのか?」

「あの歳で一人暮らしは辛いだろう。ちょうど人造魔導関連の事件を追ってる捜査官がいてな、そいつらに預けようと思う」

「確かに、家族は必要だな。可能ならうちで引き取ろうと思ったんだが・・・」

クライドがそう言ったところでレジアスは深い、とても深いため息を零した。

「年がら年中家を空けているお前になんぞ任せられるか。たまには息子の所に顔を出せ」

友人からの鋭い指摘にクライドの顔が歪む。

「反論できないな・・・。それで?その捜査官は何て言うんだ?」

「あぁ、ゼストの部下で名は・・・クイント・ナカジマといったな」

二人の大人たちがハルナの為に動き出していた頃、別の場所でも暗躍する大人たちがいた。

「ゼェ、ゼェ・・・とりあえず暫定でジェイルが父、ワシ等が祖父と言う事で異論はないな?」

「ぐふぅ・・・まぁ、いいだろう」

「ワシも異論はない、あだだ・・・」

「あんたらが私の父ポジなのが納得いかないがいいだろう・・・」

第38回ハルナの親権争奪戦という大乱闘の末、自分たちの要望が落ち着くところに落ち着いた所で最高評議会議長がスカリエッティに問う。

「ところでジェイル?研究の方はどうなっておる?」

「ああ、問題ない。すでに№Ⅰから№Ⅵまでと№Ⅹが起動。残りも順調だ、研究の場を提供してくれたことには感謝しているよ」

本来ならばすぐにでもハルナの所に帰りたいスカリエッティであったが、彼女の妹達・・・ナンバーズを生み出すために現在は最高評議会傘下の研究施設に身を寄せていた。

「ちょうど研究に行き詰っていたセクションがあったからな、連中もお前の技術を学べて喜んでおるよ」

「タイプ・ゼロ計画だったか、当初はお前さんが反乱を起こした時の対抗策として対ナンバーズ用の戦闘機人を開発してた部署だったんだがな・・・」

スカリエッティにも極秘で進められていたタイプゼロ計画、彼の技術を元にハルナ対策として進められていたが研究は遅滞、そこにスカリエッティ本人が放り込まれた結果研究はすさまじい勢いで進展、あっという間に計画されていた戦闘機人、タイプゼロ・ファーストとセカンドが完成してしまった。

「そのタイプゼロ・・・ギンガちゃんだったかの?お前さんやナンバーズの子たちとは仲良くやっておるのか?」

「勿論だとも、最初こそ別々の計画だったが彼女たちも私の大切な娘に他ならない。ほかの娘たちにとっても大切な姉妹の一員だ」

数か月前に誕生したタイプゼロ・ファースト・・・ギンガは現在ナンバーズの姉妹たちと和気藹々と暮らしている。

その光景に癒されながらスカリエッティと研究員たちはもう一人のタイプゼロ・・・スバルと残りのナンバーズの為に日夜研究に明け暮れているのが現状だ。

「いや~、ハルナも妹を欲しがっていたが、まさか14人も妹が増えると知ったら驚くだろうな~」

「違いない。サプライズは成功間違いなしじゃな!」

「わしらの祖父としての株も急上昇じゃ!」

「これでハルナちゃんの祖父の座は盤石じゃな!」

「「「「はっはっはっは・・・!!」」」」

愛する娘(孫娘)の為に彼らは突き進む、親心と祖父心を変な方向に暴走させている事に気づくことなく・・・。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第9話「再開、父よ・・・パクリだって?リスペクトと言ってください」

ようやくお姉ちゃんがお姉ちゃんになりますw


「よし、最後にもう一度確認するぞ」

そう言って作戦会議を始めるのはダンディなおじさん・・・首都防衛隊きってのストライカー、ゼスト・グランガイツ三佐です。

「A班は俺と正面、B班はクイントが指揮して裏手から回れ。スカリエッティ・・・」

おや、私ですか?

「はい?」

「お前はクイントと共にB班だ」

うん、予想はしてましたがクイントさんといっしょですか・・・。

「いい、ハルナちゃん?私から離れちゃダメよ?」

心配してくれるのは嬉しいんですけどねクイントさん、頭撫でるのは勘弁してください・・・。

 

機人長女リリカルハルナ

第9話「再会、父よ・・・パクリだって?リスペクトと言ってください」

 

皆さんお久しぶり、変わらず元気にやってるハルナちゃんです。

マリーとの喧嘩&仲直りのあとも色々ありました。

これまでその狂犬っぷりから単独行動だった私でしたがそれが落ち着いた為か漸く一つの部隊に腰を据えることになりました。

首都防衛隊特別捜査班、通称ゼスト隊。

クラナガンを護っている首都防衛隊、そこのお偉いさんのレジアス・ゲイズ准将直属の部隊です。

通常の部隊では複雑な命令系統のせいで即応性に欠けるとの事で准将がゼストのおっちゃんと立ち上げた少数精鋭の即応部隊です。

正規の部隊が到着するまでの間被害を最小限に抑える事が目的でその為結構横紙破りな行動も許可されています。

次にですが、なんと私に家族が出来ました。

あ、言っときますけど私がお腹を痛めて赤ちゃんを産んだわけではありません。

何でもこの年齢で一人暮らしは法律的にマズイらしく、その為保護責任者がつく事になったのです。

しかも驚く事に保護者となったのはクイントさんとそのご亭主、ゲンヤ・ナカジマさん。

そう、3期の主人公スバル・ナカジマのご両親ではありませんか!

何と言うことでしょう、以前3話で言ったとおりの事態になってしまいました。

しかもスバルとギンガに先駆けて・・・。

「と言うことは私は二人のお姉ちゃんと言う事でOK?」

「なにいってるの?」

おっと、口に出してしまいましたか。

クイントさんが怪訝な顔でこっちを見ています。

「いえ、クイントさんにはがんばってもらわないとな~と、ね・・・」

なんたってこれから家族が増えるわけですからね、いろいろ大変だとは思いますが頑張ってください。

「?ハルナちゃんって偶に訳分かんない事いうわね。それよりも任務中なんだから気を抜かないでね」

「ラジャー!」

今回の任務は違法研究をやっている施設の手入れです。

何でも研究員の中から密告があったとの事で突然ゼスト隊にお鉢が回ってきました。

恐らくレジアスのおっちゃんに手柄を取らせたい最高評議会のご老体達が手を回したんでしょう。

そうでなきゃ首都防衛隊所属のゼスト隊が同じミッドチルダとは言えこんなド辺境に派遣されるはずがありません。

「そう言えばハルナちゃん、この間の話考えてくれた?」

この間?

・・・何の話でしたっけ?

「はぁ~、その顔は覚えてない様ね・・・養子縁組の話よ」

おぉ、そういえば先週言ってましたね。

「そろそろ私達との生活も慣れてきたみたいだし本当の家族になってみないかって言ったじゃない」

そうでしたそうでした。

私は今クイントさんとゲンヤさんの家で暮らしていますがあくまで保護責任者と被保護者といった間柄です。

そのせいかクイントさん達は私との間に見えない壁みたいな物を感じたんでしょう。

だから私に娘にならないかって言ってきてくれたんです。

非常にありがたいお誘いではありますが・・・。

「・・・ゴメンなさい」

でも、私はそれを受ける事が出来ませんでした。

「・・・やっぱり私が家族じゃ駄目なの?」

聞いてくるクイントさんの表情はとても沈痛な物でした。

「いえっ!そうじゃないんです!」

そんな事はないと私は全力で否定します。

「養子にならないかって聞かれた時凄く嬉しかったです」

正直に言ってメチャクチャ感動しました。

私みたいなのを家族として迎えてくれると聞いた時は涙をガマンするので精一杯でしたもん。

「それじゃあどうして・・・」

「私は、まだ父さんの事を諦めていませんから・・・」

そう、父さん・・・ジェイル・スカリエッティの消息は未だ掴めていません。

それどころか生死すら判らないままです。

でも、だからこそ私が諦めるわけには行かないんです。

この身とハルナ・スカリエッティと言う名前、そして相棒のイェーガーと今までの思い出・・・。

私が父さんから貰った物で残っているのはこれだけなんですから。

父さんを見つけてこれからもっと沢山いろんな物を残したいんです。

「・・・だからクイントさん、ごめんなさい。せめて父さんの生死が確認できるまで、待ってください・・・」

私がそういうとクイントさんは深々と、なんて言うかえらくワザとらしいため息をつきました。

「はぁ~、だめだったかぁ」

そういうクイントさんでしたが顔は笑っていました。

そんな彼女の横で相棒のメガーヌさんがクスクスと笑っています。

「フラれちゃったわね」

「うっさい!しっかし・・・そういうことなら仕方ない、お父さんが見つかるまで待つことにしましょう」

あぁもう、何でこの人はこんなに母性溢れる人なのでしょうか・・・。

一度断ったのにそれでも待ってくれるというんです。

ちくせう、また涙が出そうじゃないですか。

「・・・ハイッ」

そのせいで私はそう答えるので精一杯でした。

「しっかし・・・ハルナちゃんのお父さん、スカリエッティ博士だっけ?こんないい子放って何処にいるのやら・・・」

全くです、私みたいな可愛くて賢くてプリチー(死語)な魔法少女を放っておくとは・・・。

「いい、ハルナちゃん?お父さんを見つけたら一発殴っておきなさい、話はそれからよ」

「ラジャーっ!」

そんな感じで私とクイントさんが話し、それをメガーヌさんが微笑ましく眺めていると・・・。

『ハンターリーダー(ゼスト)よりオールハンター(全隊員)。状況開始、突入せよ!』

ゼスト隊長からの突入命令に私達は早速行動を開始しました。

「っしゃ!行くわよ皆っ!!」

「ええ、何時でも!」

「ガッテン承知!」

クイントさんの声にメガーヌさんと私が答えます。

それを確認したクイントさんは眼前にある研究所の壁に向かって相棒であるデバイス、リボルバーナックルを構えます。

「どっせーい!!」

掛け声と共にクイントさんが壁をぶち破り私達は施設内に侵入します。

「全員動くな!時空管理局だ!神妙にしろーっ!!」

イェーガを構えながら投降を呼びかかけます。

当然素直に従う奴はいません。

近くにいた研究員と思しき人たちは一目散に逃走を図ります。

「逃げるなー!」

そんな彼らの背中目がけて発砲。

え?非殺傷だからって容赦無くねって?

大丈夫!今回は秘密兵器を用意しました。

「うわっ!う、動けない!?」

「バインドだと!?」

逃走を図った研究員達は私の弾丸を喰らった途端忽ちバインドで簀巻きにされてしまいます。

どうです!これが今回の秘密兵器、リストバレットです。

地球の警察、主に機動隊等で使われているネットランチャーを参考にして作ってみました

弾丸にバインドの術式をこめて発射、命中した対象をバインドで拘束する魔力弾です。

コイツなら弾丸の速度で飛んでいくから普通のバインドみたいに態々相手に接触したり罠みたいに予想進路に置く必要もありません。遠くにいる相手も簡単に捕まえられます。

結構便利なのにどうして誰も考えなかったんでしょう?

「クソッ!捕まってたまるかよ!」

施設の警備員でしょうか、研究員と一緒にいた魔導師たちがデバイスを構えます。

でも慌てる事はありません。なぜなら・・・。

「させない!行って、インゼクト!」

私には頼れる仲間達がいるからです。

メガーヌさんが叫ぶと彼女の周囲に画鋲に羽根の生えたような羽虫が召還され一目散に敵魔導師たちに殺到します。

「なっ!?」

「召喚術士かっ!?」

魔導師たちが一瞬たじろぎますが、それが彼らの敗因となりました。

「何だ?魔法が使えない!?」

「デバイスが機能停止っ!?さっきの虫か!」

メガーヌさんが召還した小型の召還虫インゼクト。

偵察等のほかにも機械の操作に干渉したりなんかも出来る優れものです。

ちなみに操作できるのは無機物だけで私の体の一部になっている機械は操れないとのことです。いや~、よかったよかった。

忘年会の一発芸とかで操られたりしたら笑えませんからね。

こうしてデバイスが使用不能になった魔導師たちは次々に私とクイントさんに取り押さえられていきます。デバイスに頼りすぎるのも考え物ですね。

「制圧完了。ここは後続の陸士隊に任せて先に進みましょう」

クイントさんを先頭に私達は研究所の中を進んでいきます。

途中先程のように研究員や警備の魔導師に遭遇しましたが難なく制圧、更に奥へ進みます。

結構地下深くまで降りてきたところでまたもや研究員に遭遇。

しかしこの二人、多少は機転が利くようで二手に分かれて逃走を開始します。

「ハルナちゃん!そっちお願い!」

そう言ってクイントさん達はもう片方を追いかけます。

「了解!待ちやがれー!!」

私も即座に追跡を開始しました。

とは言えもやしっ子の科学者と訓練を受けた戦闘機人、速攻で追いついて捕まえました。

「さぁ!あなたには黙秘権と弁護士を呼ぶ権利とカツ丼を注文する権利があるから大人しくしろー!」

「いや、訳わからないんだけど・・・」

バインドでグルグル巻きにされながらもツッコミを入れてくる研究員、結構大物ですねこの人。

ちなみに取調室で出されるカツ丼、刑事ドラマでは警察側が奢ってますが実際は容疑者の自腹とのこと。

しかも最近では自白に向けた利益誘導になるという理由から食べさせてくれないらしいです。

捕まえた研究員を立たせて連行しようとしたその時、少し先から物音が聞こえました。

「ん?」

音のした方を見るとそこには一枚の扉。

物音を立てずに扉の前まで行き、聞き耳を立ててみます。

やはり間違いありません。中からガサゴソと慌しい物音が聞こえます。

これはアレです。大慌てで荷造りしている音です。

昔父さんと研究所から逃げ出す準備をしている時にこんな感じの音を立てていました。

更に中から小っちゃい子供の泣き声も聞こえてくるじゃありませんか!

もしかしてここで行われていた違法研究と言うのは人造魔導師関連!?

聞こえてくる泣き声がその研究素体である子供の声だとしたら辻褄が合います。

もしそうなら一刻の猶予もありません。

こういう研究をしている手合いはガサ入れが入ると証拠を消しに掛かります。

その証拠の中には実験体にされている被験者の処分・・・殺害も含まれます。

(このままだと中の子達が危ない!!)

そう結論付けた私は早速ドアを蹴破り突入します。

「全員うご・・・」

同時に投降を呼びかけようとして目の前の光景を見て言葉を失いました。

「ドクター、こちらは終わりました!」

「データの消去も完了したわ、これで追跡のほうは大丈夫なはず!」

「こっちもです、早く脱出しましょう!」

カバンに荷物を詰め込んでいる紫がかった髪の少女二人。

片方はウェーブの掛かった長髪、もう片方はベリーショートです。

その隣で端末を操作している金髪ロングの少女。

「やーだー!この子もつれてくのー!!」

「ダメだぞスバル!もうにもつがイッパイなんだ!だからだからなくんじゃない!なくんじゃ・・・うえぇぇん!」

「もう、チンクまで泣き出してどうするの!スバルも泣き止んで?ね?」

「ちょっと!もう少し静かにしてよ!セインちゃんとディエチちゃんが起きちゃうじゃない!」

ぬいぐるみ片手に駄々をこねる蒼髪ショートの女の子とそれを諌めようとしてつられて泣き出す銀髪サラサラロングの女の子。

それをあやすスバルと呼ばれた子に似たロングヘアの女の子とスヤスヤと眠っている子供二人を抱きかかえた茶髪のメガネっ子。

うん、これはまだいいです。

研究員の助手と被験体の女の子ってことで説明がつきます。

室内のテラカオスな状態も脱走前の喧騒ってことで許容してあげましょう。

問題はその喧騒の中心にいる人物・・・。

「判ったよウーノ。もうちょっと待っててくれ。ああ、スバルもチンクも泣かないでくれ。すまないクァットロ、もうしばらくセインとディエチを見ててくれ・・・」

スーツの上から白衣を羽織った・・・。

「とう、さん・・・?」

ハルナの呟きに気付き白衣の研究員が振り向く。

「ハルナ、なのか・・・っ?」

それにつられてほかの子達も私に存在に気付いたようですが今の私には周りの事見えていませんでした。

あぁ、間違いありません。

気づいた時にはその人物目がけて走りだしていました。。

「なっ!?管理局か!ドクター達には手を、へぶっ!!?」

「「トーレ!?」」

途中で横から飛び出してきた誰かを弾き飛ばしたような気がしましたが今はそれどころじゃありません。

なんたって目の前にいるのは私がずっと探していた・・・。

「父さぁんッ!!」

 

Sideクイント

薄暗い通路を私は全速力で疾駆する。

ハルナちゃんとの連絡が取れないと知った直後、私はあの子の向かった方向に駆け出していた。

「大丈夫、よね・・・」

ハルナ・スカリエッティ。

私の後輩兼部下で、そして掛け替えのない娘。

血は繋がってないし書類上も保護責任者と披保護者という間柄だが彼女は間違いなく私の家族なのだ。

戦闘機人という最新の戦闘用サイボーグの彼女がそうそう遅れをとる事は無いだろう。

だが物事には万が一という物がある。

怪我もするし最悪命を落とすかもしれない。

実際管理局に保護された直後に巻き込まれたロストロギアの暴走で生死の境を彷徨ったと聞いている。

幸い一命は取り留めたがそんな奇跡が二度も起こるほど世の中都合よくできてない。

「お願い、どうか無事で・・・っ!!」

そこで私は通路に倒れている人影を見つけた。

最初はハルナちゃんかと思ったどうやらここの研究員のようだ。

バインドで拘束されたその人物は芋虫のように張って逃走を試みようとしているようだ。

「動かないで!アンタには黙秘権と弁護士を呼ぶ権利とカツ丼を注文する権利があるわ!」

「・・・それ流行ってるの?」

よく分からない質問をして来る研究員を再度組み伏せていると通路の先から声が聞こえてきた。

「・・・・・・!!・・・・・・っ!」

内容は聞き取れないが叫び声の様だ。

「まさか・・・!?」

あそこでハルナちゃんが誰かと戦っており重傷を負ったのだとしたら・・・。

すぐさま立ち上がり、扉を蹴破る。

「ハルナちゃんっ!!」

突入した室内で私が見たのは・・・!」

「うわぁぁぁぁんっ!!今までドコで何やってたのさー!!父さんのバカー!!!」

「・・・うん、ゴメンね、ハルナ・・・。だからその、そろそろ離れて、父さん苦しいんだけど・・・」

「トーレ!?しっかりして!傷は浅いわっ!!」

「ぐっ・・・すまん、ドゥーエ・・・私の変わりにドクターを、妹達を・・・頼む。ガク・・・」

涙と鼻水で顔をグシャグシャにしたハルナちゃんとハルナちゃんに抱きつかれそのまま絞め殺されかけている白衣の男。

それと何故か壁にあいた謎の穴とその前でグッタリしている短髪の女性と彼女を介抱している女性二人。

それらを呆然と見ている少女達数人・・・。

「・・・え?何これ、どういう状況?」

私はそれしか言えなかった。

結局メガーヌが隊長たちを連れてやってくるまでこのカオスな空間は続くのだった。

SideOut

「あ~、そろそろ落ち着いたかな、ハルナ?」

「ヒック、グスッ・・・うん。ところであの子等はどちら様で?」

「ん?あぁ、あれね。君の妹」

「・・・え?マヂで?」

「マヂで」

ハルナが父と再会し、妹達との邂逅を果たしていたそのころ・・・。

「・・・ところで私は何時まで通路に放置されていればいいの?」

廊下では簀巻きにされた研究員が一人、彼の呟きを聞くものは一人もいなかった。



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第10話「徹夜組と転売ヤーとダミーサークルと誘拐犯に血の粛清を!あ、でも対応はあくまでソフトにね♪」

書き溜めていた分は今回で最後になるのでこれからは更新が遅くなりますがごご了承ください。
今回、とらハの設定を持ってきましたが作者はやったことが無いにわかなので大分設定が穴だらけですが温い目で見てやってください。

あとよそ様の作品のネタを勝手に出しちゃいましたが拙いようでしたら言ってください、即刻修正します。


待ちに待った刻(とき)がきたのだ。

多くの英霊が無駄死にでなかったことの証のために・・・!

「そう、有明よ!私は帰って来たぁ!!」

「いや、ハルナ・・・初参加だからね・・・?」

いいんです!多分前世で来た気がするから!

 

機人長女リリカルハルナ

第10話「徹夜組と転売ヤーとダミーサークルと誘拐犯に血の粛清を!あ、でも対応はあくまでソフトにね♪」

 

父さんと無事に再会してからまたもや時間が流れて早数年・・・。

本当にいろんなことがありました。

妹たちの親権を巡って父さん&お爺ちゃんズに加えてクイントさんまで参加した第47回親権争奪戦が開催されたり。

激闘の果てに私とウーノからクアットロまでの妹がそのまま父さんの娘に、チンクから下の妹達(セッテはトーレにくっ付いてスカ家残留)はクイントさんに引き取られる事になり、ナカジマ家の隣に我等スカ家が引っ越して毎日がドッタンバッタン大騒ぎになったり。

「陸ばっかりズルイ!うちにも美少女を!」という海側の血涙交じりの嘆願を受けたお爺ちゃんズに言われて本局の遺失物管理部機動2課に異動になりそこの第2特別捜査隊に所属する個性豊かな仲間達と難事件、怪事件を力任せに解決したり・・・。

指名手配中の次元犯罪者集団が内戦中の管理外世界に傭兵名乗って梃入れしてることが分かりISAF(国際治安支援部隊)として現地に派遣、何やら某空戦ゲーに出てくるような場所で『円卓の鬼神』なんて呼ばれてるクール系美幼女エースと共同戦線張ったりと・・・。

とにかくいろんなことがありました。

え?色々端折り過ぎだ?美幼女の件を詳しく?

しゃらっぷ!いい加減本編突入しないと読者さん達も飽きてきちゃうでしょうが!

今回の話が終わったらいよいよアニメ一期に突入するって作者も言ってるんですから!

「おーいハルナ?流石にそれはメタすぎないかい?」

「いいの、今回は半分くらいギャグ回だから」

「あ、そう・・・」

いや、しっかしやっぱり夏コミは凄い人ですね。

ここはやっぱりあのセリフを・・・・。

「ハッハッハ、見ろ!人がゴミのようだ!」

「なっ!?」

突然父さんが私が言おうとしたセリフを、某アニメの名台詞を叫びます。

私が驚愕しているのを見た父さんはあろう事がドヤ顔で私のことを見てるじゃないですか!

「ぐぬぬぬ・・・」

何たる暴虐!父の悪辣なる行いに平坦な胸の美少女ハルナは怒りに顔を歪ませた。

って、だれだ今私の胸が平坦とかいった奴!後で体育館裏に来なさい。

とにかく、人のセリフを勝手に取る父さんには厳しい制裁を与えなければ!

そして私は未だドヤ顔を続ける父さんに一言、その呪文を唱えた。

「バルス!」

すると父さんは両手で顔を覆いながら悶え始めました。

「目がぁ!目があぁぁっ!!」

「フッ、悪は去った・・・」

そんなスカ家のいつもの光景を周りの参加者さん達は奇異な目で見ています。

「・・・・・」(チラッ)

「・・・・・・」(チラッ)

うん、違いますね。みんな私の事見ています。

いや、分かってますよ。私が外見年齢10歳前後な事ぐらい。

でも奇異以上の目で見られることはないみたいです。

「何なんだあの子・・・?」

「ちっちゃいのに纏う空気がプロのそれだぞ・・・!?」

そう、完全武装のうえ戦場(いくさば)に立つ覚悟でココに来ているためか、「戦場に子供が来るんじゃない」的な目で見られることはないんですよ。

まぁ、私なんかよりもずっと格上の人が隣にいるから其れに気圧されてるてのもあるのでしょうが・・・。

「・・・・・・」

そう、私達の隣に座るアルプスに住んでそうな感じの口の周りに立派なお髭を蓄えた、しかし体格はかなりガッチリしたおじいさん。

かなりお年を召しているようですがその雰囲気は古強者とか伝説の老兵とか言われそうなほど老いを感じさせない力強さを感じます。

「おい、見ろ。翁だ」

「それって、第一回から全てのコミケに参加したという伝説の!?」

・・・第一回のコミケって確か70年代でしたよね?

てことは少なく見積もってもコミケ暦30年!?

古強者とか言うレベルじゃないですよ、賢者ですよ!大賢者!!

私なんかとは年季が違いすぎます!

と、そこで件の翁が何やらポケットに手をいれます。

取り出したのは一枚のカード。

何かと思い見てみるとちょっと前に流行ったアニメのヒロインでした。

って・・・!?

「・・・・・・・・・・」

泣いてますよ、この人。

そらもうダバダバと目じりから止め処なく涙がながれてますよ。

「有明か・・・何もかも、みな懐かしい・・・」

「っ!!」

私の、否、私達の心は雷に打たれたような衝撃を受けました。

同時に理解したのです、この人は文字通り最後の命を燃やしてここに来たのだと。

たとえこの有明が自分の死に場所になっても構わない、そんな覚悟で・・・。

暫くカードを見ていた翁でしたがやがて満足してカードをポケットに戻そうと・・・。

・・・ハラリ。

「なっ・・・!?」

翁の手が力なく垂れ下がり、手に持っていたカードがゆっくりと地面に落下します。

「・・・・・・・・・!!」

私は翁に無言で敬礼します。

「・・・・・・!」

それにつられるかのように父さんや周りの人たちも瞳を閉じた翁に敬礼します。

そう、今一人の戦士が眠りについたのです。

あ、ちなみに翁はスタッフの人が列整理を開始したらちゃんと起きました。

私の感動を返せ。

 

「いやー大漁だねぇ・・・」

珍しくホッコリした表情で父さんが言います。

それに対して私の心は非常にダウナーです。

テンションが完全にきゅーそくせんこー状態です、圧壊深度まで一直線です。

「まぁ、仕方ないじゃないか。中身があれでも流石にその外見の子にR-18の本は売ってはくれないよ」

そう、私が行っても18禁の薄い本を売ってくれないんですよ!

サークル参加者さん達のモラルが高い事を喜ぶべきか目的の品が買えなかったことを嘆くべきか複雑な心境です。

「さて、私はこのまま宿に戻るがハルナはどうするんだい?」

買った戦利品は現地で宅配業者にお願いして泊まってるホテルまで送ってもらいました。

なので私達は完全にフリーです。

「んー、ちょっと行ってみたい所があるからそっちに行くよ」

「分った。遅くならないうちに帰ってくるんだよ?」

「はーい」

そこで私と父さんは解散し、父さんは宿泊先のホテルへ、私はバス停からバスに飛び乗りました。

それからバスに揺られて約2~30分程で下りる予定のバス停に近づいてきました。

『次は海鳴大学病院前~、外科、内科、小児科、整形外科・・・」

流れてきたアナウンスを聞いて私は近くの降りるボタンを押します。

バスが泊まってから席を立ち、料金を払ってから目的の地に下り立ちました。

「ここが、海鳴市・・・」

ようやくたどり着く事が出来ました。

そう、ここに、ここにあの・・・。

「あの伝説のパティシエ、高町桃香さんがやってるケーキ屋さんがあるんだ・・・!」

そう、この間関東地方の穴場スイーツ店特集っていう記事を読んでいるときにみつけたお店がこの町にあるんです!

え?違う?そうじゃない?

何やら読者さん達が突っ込んできますがとにかく今はケーキです!

 

と、言いたいところですが・・・。

「・・・うん、迷った」

迷子になっちゃいましたw

いや、マジどーしよ・・・。

「・・・でね、・・・がさ」

「もう、・・・は・・・ちゃんが・・・」

おや?

何やら話し声が聞こえるのでそちらを見ると二人の女の子がこちらに歩いてきます。

片方は金髪碧眼の気の強そうな子。

その相方は紫がかった黒髪の子、こちらは逆に気弱そうな子です。

まだ遠いので何を話しているのかは分りませんが片方の子が外国人ッぽいので日本語ではないでしょう。

と言うわけでそれっぽい外国語で話しかけてみる事にしましょう。

え?話せるのかって?

チッチッチ・・・、戦闘機人の脳みそを舐めてもらっては困ります。

記憶力はバッチリです。

それに執務官という仕事柄いろんな世界に行くので言語の習得は必須スキルですから。

では早速・・・。

『グーテンターク、フロイライン。失礼ですが道を教えてもらえませんか?(ドイツ語です)』

よし、発音もイントネーションもバッチリ。これなら通じるはずです。

「・・・え?」

うん、どうやらドイツ語じゃ駄目みたいです、それなら別の国の言葉で・・・。

『ハラショー、失礼した同志美幼女。これなら通じるだろうか?(ロシア語です)』

「え?ええっ?」

むぅ、ロシア語も駄目ですか。

『ならフランス語ならどうかなマドモアゼル?』

「な、なな・・・?」

駄目か。

『イタリア語は分るかなセニョリータ?』

「ちょっ・・・!?」

これも駄目。

その後もオランダ語、スペイン語、ポーランド語、フィンランド語、広東語、北京語、スワヒリ語、インドのヒンディー語、中東で使われているパシュトー語やダリー語も試して見ましたが全部駄目でした。

「ムキーっ!」

「ア、アリサちゃん、落ち着いて・・・」

なんか向こうも言葉が通じなくて怒ってるみたいだし。

「ああもう、じゃあ何処の言葉なら通じるのさ?」

「ちょおっとまてい!」

私が日本語でぼやくと金髪の女の子が叫びながら強烈なチョップをくらわせました。

 

「日本語喋れるなら最初から喋りなさいよ!」

「そうは言うけどそんな見た目じゃ日本語話せるなんて思わないじゃん」

「アンタが言うなアンタが!」

「ふ、二人とも落ち着いて・・・」

金髪の美少女、アリサに盛大につっこまれた後、私達はお互いに自己紹介を交わてから二人の案内で翠屋へ向かいました。

私にチョップをお見舞いした金髪の子の名前はアリサ・バニングス。

大企業バニングスグループの社長令嬢だとか。

しかしこの子の声、どっから聞いても「くぎゅう」です。

今度メロンパンを奢ってあげましょう。

アリサと一緒にいた気弱そうな子は月村すずか。

この辺の名士月村家のお嬢様とのこと。

「で、翠屋に行きたいんだっけ?」

「うん」

「あそこのお菓子は皆美味しいから楽しみにしててね、ハルナちゃん」

ちなみに私も二人に自己紹介しました。

名前は偽名を使わずハルナ・スカリエッティのまま。

医者の父親と一緒に日本に遊びに来た観光客と名乗ってます。

うん、嘘は言ってない。

そんな感じにガールズトークしながら歩いているとお洒落な喫茶店が見えてきました。

「ここが翠屋よ、ちょっとまってて」

そう言ってアリサが店に入っていきます。

「こんにちは、桃子さん」

「あら、いらっしゃいアリサちゃん」

彼女を出迎えたのはすんげー美人のお姉さんでした。

見た感じおっとりしたお姉さんなんですけれども包容力とか凄そうで何処となくクイントさんに通じるものがあります。

「すずかちゃんもいらっしゃい。あら、そっちの子は?」

そこで店のお姉さんが外にいた私とすずかに気づきました。

「さっき知り合ったの。ハルナって言って観光できたんですって」

アリサが紹介するなか私も挨拶します。

「こんにちは、ハルナ・スカリエッティです」

「あらあら、可愛らしいお客さんね。いらっしゃい、当店のパティシエール、高町桃子です」

そう言って女神か聖母も斯くやといった笑顔で応対するお姉さん、この人があの伝説のパティシエ、高町桃子さんだったとは・・・。

「うん、アレですね。天は二物を与えたもうた」

「え?」

「いえ、気にしないでください。独り言です」

そんなやり取りの後、私達は桃子さんにテラス席に案内されます。

「二人ともごめんなさいね、今なのはは出かけているの」

そう言ってアリサたちに謝罪する桃子さん。

なのはと言うのは桃子さんの娘さんでアリサたちの親友とのこと。

何でもお菓子の材料が切れて急遽お使いをお願いしたのだとか。

まさか桃子さんが子持ちだったとは、しかも聞いた話だと一番上の子は大学生とか、まじパネェ。

クイントさんといい、桃子さんといい、この世界のお母さんたち見た目若々しすぎでしょ、アニメかよ!?

しかしなのは・・・ドコかで聞いた名前ですね。

ドコでしょう?昔読んだ漫画かな?

「そうなんですか」

「入れ違いになっちゃったわね」

桃子さんの娘さんに会えなかったのは残念ですがそれは次回着たときのお楽しみと言う事で・・・。

「いまはケーキを堪能します。注文いいですか?」

「はい、どうぞ」

私の質問に桃子さんはすッごくいい笑顔で答えてくれました。

しかし一つ気になることが・・・。

「・・・・・・・・」(チラッ)

カウンターにいる店員さんが私の事えらい見てくるんですよ、しかも殺気増し増しで。

 

Side 恭也

何なんだあの子は・・・!?。

カウンターでレジを打ちながら俺、高町恭也は戦慄していた。

先程店に入ってきた三人の客。

うち二人は自分もよく知っている人物だ。

妹の親友のアリサちゃんと同じく妹の親友にして俺の恋人である月村忍の妹にあたるすずかちゃん。

問題は三人目の少女だった。

ハルナ・スカリエッティ。

年齢は背格好からして二人と同じくらい、癖毛なのか外に跳ねた銀髪を肩のあたりで切りそろえた外国人の少女。

観光で海鳴を訪れ、先程アリサちゃんたちと意気投合したらしい。

それだけならば俺も気にはしなかった。

まず身のこなしからして素人ではない。

体の重心が全くブレる事が無い。

更にリラックスしているようで常に周囲に気を配っている。

席に案内され椅子に座る際も深く腰掛けず、何かあればすぐに立ち上がれる姿勢だ。

まぁ、それだけならば何かしら武道を修めた少女と言う事で無理やり納得もできる。

問題は彼女の匂いだ。

シャンプーの香りに混じってうっすらと感じる『硝煙』の匂いと『血』の匂い。

そんな物騒な匂いを纏った明らかに訓練を受けた少女。

年齢からして軍人や警官と言うことはありえない。

だとすれば殺し屋の類か!?

アリサちゃんは世界を股にかける実業家の娘、すずかちゃんも名家の娘だ。

いや、すずかちゃんにはもう一つ隠された秘密がある。

それが目的で二人に接近したという事か・・・

俺は注意深く少女を観察する。

その姿は友達と談笑する普通の女の子にしか見えない。

いや、まて・・・。

この子、俺の視線に気づいている!?

先程から何度かこちらをチラチラと見ている。

もしかしたら自分の素性も知っているかもしれない。

いや、早計か?勘が鋭いだけかもしれない。

そう思い試しに視線に殺気を乗せてみる。

普通に生活している一般人なら気づかないだろう。

しかし・・・。

ピクッ。

彼女は反応した。

再びこちらに視線を向ける。

その動作は自然な感じで何もおかしいことは無い。

だが俺には分った、彼女が自分を警戒している事が。

少女が椅子から軽く腰を浮かせる。

何か有ればすぐさまこちらに飛びかかれるように。

・・・来るのか?

カウンターの裏に隠してあった小太刀に手を伸ばす。

食事時を過ぎ客の数が少ないとは言え、一般人がいる中で襲撃するとは思いたくない。

少女が動く。

こちらに背を向けているためよく分からないが懐に手を入れたようだ。

まるで隠し持っていた武器を取り出すように・・・。

「・・・・・・っ!」

来る、そう思い彼女を拘束すべく飛び掛ろうと脚に力を入れたその時・・・。

「お待たせしましたー。チーズケーキにモンブラン、ミルクレープでーす」

母桃子の登場に張り詰めていた空気は霧散する。

「おお・・・これが、これが桃子さんが作ったケーキ・・・」

向こうも争う気が失せたのか、こちらへの警戒を止めて母さんが運んできたケーキに目を輝かせている。

店内で争う気は無い、そういうことだろう。

とりあえず今はまだ大丈夫か・・・。

店を出た後の二人が心配なので忍に連絡を入れておこう。

そう思い俺は接客を再開した。

勿論警戒は怠らないで・・・。

Side out

 

「あぁ・・・いと、しあわせなり・・・」

ケーキを食べた感想はもうこの一言に限りますね。

「ハルナ、顔がトロけてるわよ・・・」

「クスっ、ここのケーキおいしいもんね」

呆れ顔のアリサと何故か子供を見るお母さんのような視線を向けるすずか。

仕方ないじゃないですか、このケーキが美味し過ぎるんですから。

しつこくない程度の、でもしっかりと甘さを主張するクリーム。

それを挟みながら何層も重なったしっとりとした食感のクレープ生地。

それを食べた途端私の口の中が幸せに包まれました。

しかし・・・あの店員さんは何なんでしょうね?

先程カウンターでレジ打ちしているお兄さんが殺気をガンガン飛ばしてくるので思わず首から提げたイェーガーを握り締めてしまいました。

あわや店内で戦闘かと言う空気でしたが桃子さんの登場と同時に殺気は霧散したの感じました。

恐らく堅気の人は巻き込みたくないのでしょう。

もしかしたらアリサかすずかの身を守る執事かボディガードなのかもしれません。

お嬢様の前に突然現れた素性不明の美少女、警戒する材料としては十分です。

なのでこちらも警戒心を解き敵意がない事を示すと彼も引き下がったようです。

これで安心と一口目のケーキを口に運んだのですが・・・。

何ですかこれは!?

こんなのケーキじゃない!

人を幸福にするためのロストロギアに違いありません!

ミルクレープを食べた直後私は叫ばずにはいられませんでした。

「うーまーいーぞー!」

今の私なら口からアルカンシェルが発射できそうです。

「このケーキを作ったのはだれだ!追加注文をお願いします!」

今度は若干引いてるアリサたちを尻目に私は桃子さんにガトーショコラと特性シュークリームを注文します。

「ハーイ、承りましたー」

これまたそれだけで世界を平和に出来そうな笑顔で桃子さんが厨房へ入っていきます。

これは久しぶりに燃えてきました。

今日は全部のケーキをコンプリートするまで帰りません!

なんともいえない顔をする友達二人を他所に私は決意を新たにするのでした。

 

(Side恭也)

本当に彼女は何者なんだ?

ケーキを食べ始めてから彼女、ハルナ・スカリエッティに対する謎は増すばかりだった。

先程のさっきのやり取りからは本物の戦闘者としての風格を感じた。

恐らく彼女は人を、それもかなりの数の命を奪っている。

だというのにケーキを前にした途端その雰囲気はアリサちゃんたちと同じただの少女のそれに変わってしまった。

一体どっちが本物の彼女なのか?

未熟な自分では彼女の本性を見破る事が出来ない。

クソッ、父さんがいてくれれば・・・。

残念ながら父、高町士郎はテロ組織『龍』の残党の存在が発覚し香港へ飛んでいる。

もしかしたら父さんの留守を狙って?だとしたら香港で見つかった龍の残党は囮か?

彼女も龍の構成員なのだろうか?

結局結論がでないまま彼女は店のケーキ全種類を完食し、会計を済ませていた。

彼女とすずかちゃん達の会話を聞く限り、宿泊しているホテルに帰るのでここで分かれるらしい。

どうするか・・・。

このまま彼女を尾行し正体を確かめるのか?

いや、それより二人の安全を確保するのが先決か・・・。

そうして思案している俺だったが一つ、重大な事を見落としていた。

敵が単独犯とは限らないと言う事を・・・。

(Side out)

 

「はぁ~満足満足」

もうおなかの中は幸せで一杯ですよ。

「まさか本当に全ケーキをコンプリートするとは思ってなかったわ・・・」

「あはは・・・ハルナちゃんって凄いんだね・・・」

何故か二人が呆れ顔ですが気にしない事にしましょう。

「ご馳走様でした。おいくらですか?」

「はい、ケーキ21個で12600円(税込)になりまーす」

いやはやこれだけ美味しいケーキが一個税込600円とか・・・。

新手の振り込めない詐欺ですか?

財布から福沢先生と他数名を取り出し桃子さんに払っていると再度アリサが呆れた様子で話しかけてきます。

「しかし、観光とは言え凄い金額じゃない。襲われないようにきをつけなさいよ?」

そう、私のお財布には未だ諭吉さんが10人くらい滞在しております。

こういうとき執務官ってお得ですよね。

長期任務手当てに危険手当、私の年齢だと年少期特別手当なんかも付くのでクイントさん家の子になる前もお金に困った事はありませんでした。

「大丈夫、私こう見えて強いから」

心配してくれるアリサに私は力こぶを作って見せながら答えます。

実際何かあっても戦闘機人のパワーで何とかできます。

最悪の場合は魔法も使いますが・・・。

「アリサたちこそ気をつけなよ?いい所のお嬢様なんだから、その内誘拐されちゃうかも知れないよ?」

私が手をワキワキさせながら茶化すと、二人は笑い出した。

「大丈夫よ!それに何かあっても私達には強い味方がいるんだから。ね、すずか?」

「クスっ。うん、攫われてもきっと助けてくれる人がいるから大丈夫だよ」

なんか二人とも偉い自信ですね。

やっぱりさっきから私を見ているカウンターの店員さんでしょうか?

そう思いながら桃子さんからおつりを受け取り二人に分かれを告げようとしていると車のエンジン音が聞こえてきました。

だんだん近づいてくる車の音に始めはアリサたちを迎えに来た車かと思いましたがすぐに違う事に気づきました。

なぜならその車は黒塗りのリムジンならぬ黒塗りの『ハイエース』だったからです。

道の角から姿を現したハイエースは速度を落とす事無くこちらに突っ込んできます。

「っ!あぶないっ!!」

このままでは轢かれると思った私はアリサたちを突き飛ばすとすぐさま反対側に跳躍します。

幸い私もアリサたちも轢かれることは無かったのですが新たな問題が発生します。

急停止したハイエースのスライドドアが開き数人の男達が出てきます。

全員バラクラバ帽で顔を隠し、手には拳銃・・・拳銃!?

「ちょっ!?」

銃口がこっちを向いてるじゃないですか!

慌てて横に跳ぶと銃声からコンマ数秒後に私がいた空間を弾丸が通過します。

弾が命中した壁に弾痕が穿たれた事から玩具じゃないのは確かです。

「なにすんのよ!?はなしなさい!むぐっ!?」

叫び声が聴こえて振り向けば男達に捕まったアリサとすずかが車に放り込まれているじゃありませんか!

「アリサ!すずか!?」

二人の名前を呼んだ途端、帰って来たのは誘拐犯の放つ銃弾でした。

「うわっ!?」

慌てて回避する私。

銃弾は背後にあったガードレールに当り火花を散らします。

ボディーガードのお兄さんは何をやってるんだと思いそちらを見ると誘拐犯たちの銃撃で身動きが出来なくなっていました。

お兄さん単独ならば問題は無かったのでしょうがそっちには桃子さんをはじめ一般人が何人かいます。

彼ら彼女らを護りながら二人を救出するのは無理のようです。

そうして私達が手を出せないでいるとハイエースが急発進し、逃走を開始します。

「ちっくしょう、逃がすか!」

私は指鉄砲を作りサーチャー付きの誘導弾を精製するとハイエース目がけて発射します。

見事後部バンパーに誘導弾が命中したハイエースはそれに気づく事無く通りの角を曲がり姿を消しました。

翠屋の方は勿論大騒ぎです。

急に車が進入してきたかと思えば乗っていた連中が銃撃してきた挙句アリサたちを攫って逃走したんですから。

でも何でしょうね?

皆さん思ったほど慌ててないんですよ。

桃子さんはすぐさま警察に電話をしてますし店のお客さん達は協力し合って銃撃で荒らされたテラス席を片付けています。

何と言いますか襲撃され慣れてますよねこれ?

もしかしてアリサたちが攫われるのって日常茶飯事なんですか?

何それ怖い・・・。海鳴って実はグンマーなみの人外魔境だったりするのでしょうか?

とにかく今は二人の安全が最優先です。

本来時空管理局の執務官である私が管理外世界の事件に首を突っ込むのはご法度なんですがやっぱり二人を放っとけません。

知り合ってほとんど時間は経ってませんがそれでも彼女達は私の友達なんです。

サーチャーは無事誘拐犯の車に撃ち込まれました。

後はこれを追っていくだけ。

「待ってて、二人とも・・・!」

イェーガーを手に私は走り出しました。

 

「うまく行ったな、リーダー」

「ああ、御神流だかなんだか知らんが大した事なかったな・・・」

海鳴郊外の廃ビル、その中にアリサたちを攫った誘拐犯はいた。

既に顔を隠す必要はないと判断したのか皆覆面を取り下卑た顔で笑っている。

彼らはある人物から月村すずかを誘拐するよう依頼されたチンピラたちだった。

依頼主は多額の前金を彼らに払い、すずかの顔写真だけでなく彼女の友好関係や逃走用の車両、更には何処から調達したのか拳銃まで提供してくれた。

大金と拳銃を手に入れ気を大きくした悪党達は調子に乗りすずかの友人、アリサにも目をつけた。

実業家の娘である彼女も序に誘拐し、月村家共々身代金をせしめようと考えたのだ。

勝手な行動を依頼主から咎められると思ったが、かの人物も営利誘拐に偽装できるとしてそれを許した。

クライアントの許可を得た彼らは早速計画を実行に移す。

すずかを遠くから観察し、アリサと一緒にいるときを見計らい誘拐する。

途中見知らぬ少女と喫茶翠屋に入ったときは作戦を続行するか非常に悩んだ。

すずかの姉、月村忍の恋人の高町恭也は御神流と言う古流剣術の後継者で父士郎は香港マフィア『龍』とやりあった事のある凄腕のボディガードだという。

しかし情報では高町士郎は『龍』の残党と決着をつけるべく今は香港だ。

このような千載一遇の機会はまたとないだろう。

そう判断した彼らは覚悟を決め行動を開始。

かくして誘拐は成功した。

唯一の懸念だった高町恭也は一般人への流れ弾を気にしてうかつに動けず、結果としてアリサとすずかは攫われてしまった。

「それで、お嬢様たちは何処に行ったんだ?」

「クライアントの所だ。何でも話があるんだと」

談笑しながら男達は手を動かす。

彼らの手にはカメラを初めとした撮影機材が握られていた。

これから身代金の要求の為の映像を撮影するつもりらしい。

「しっかしどっちも中々の美少女だったよな?撮影終わったらちょっと愉しんでもいいよな?」

男の一人が暗い笑みを浮かべて言う。

「マジか?お前札付きの変態だなぁ。でも確かに上玉だ、身代金を受け取ったらどっかの変態に高値で売るのも悪くねえ」

「だろ?だからその前にちょっと位いいだろ?」

「仕方ねえな。だが売りもんなんだ。あんまり傷をつけるなよ」

救いようのない人間の屑達。

「やれやれ、何処にでも悪い奴はいるもんだなぁ・・・」

「っ!!?」

そんな彼らに死神の鎌が静かに、そして容赦なく振り下ろされた。

 

(Sideすずか)

薄暗い部屋の中、私とアリサちゃんは縛られた状態で座らせられています。

「気分はいかがかな?まぁ、良くはないか・・・」

私達の前に立つのは一人の少年。

年齢は私達より少し上でしょうか。

「ああ、自己紹介がまだだったね。僕の名前は氷村優太、君の遠い親戚だよ」

顔立ちは整っていて美少年と言っていいでしょう。

ニコニコと笑みを浮かべてはいますが何より印象的なのが彼の目です。

まるでこの世の汚い物を凝縮したような濁った瞳・・・。

人間はこれほどまでにおぞましい笑顔が出来るのかと驚いています。

いや、違う。

恐らく彼は人間ではないのでしょう。

そう、私と同じ・・・。

「その様子だと気づいたようだね月村すずかさん。そう、君のご同類だよ僕は・・・」

ニヤニヤと笑う少年、アレはもはや笑っているというよりも笑っているように顔を歪ませているようにしか見えない。

生理的嫌悪を感る私の心情など考えもせず目の前の少年は醜悪な笑顔で私を舐めるように見つめる。

「クスッ、聞いていたよりも美人だね。ますます君が欲しくなったよ」

その言葉で彼の狙いが私だと理解する。

厳密には私の中に眠る力、私が人とは違う存在だという証・・・。

「さっきから何訳の分らないこと言ってんのよ!?」

そこで我慢の限界に達したのかこれまで黙っていたアリサちゃんが騒ぎ始めた。

「こんなことして許されると思ってるの!?誘拐よ!犯罪よ!!覚悟しなさい!アンタなんか・・・!」

大声で目の前の少年を罵るアリサちゃん。

「・・・チッ、うるさいなぁ」

それを聞いて彼は舌打ちするとアリサちゃんに顔を向け・・・。

「なっ!ダメっ!!」

慌ててやめる様に叫ぶ私でしたが間に合わず、彼はアリサちゃんの目を睨みつけながら一言呟きました。

『黙れ』

「っ!?」

一言、ただ一言小さく呟いただけでアリサちゃんは静かになりました。

「・・・・!ぁ・・・・!?」

必死に声を上げようとするアリサちゃんでしたが身体が言う事を聞かないようで全く声が出せなくなっています。

「これが僕の能力だよ、目を通して相手の肉体に干渉できるんだ。本当なら心臓を止めてあげてもよかったんだけれどそうするとすずかさんがショックで自殺しちゃうかも知れないからね」

恐ろしい事を平然と、笑顔で言ってくる氷村優太。

私には彼がとても恐ろしい怪物に見えました。

「何を怖がっているんだい?君も僕と同類だろう?」

「っ!?」

私の様子に気づいたのか、アリサちゃんがこちらを見ます。

「君は知らないのかい?まぁ、無理もないか。すずかさんだって話したくは無いだろうからね、じゃあせっかくだから僕が教えてあげよう」

「っ!?だ、駄目!」

うろたえる私の姿が面白いのか、氷村優太は顔を愉悦で歪ませながら呟きます。

『お静かに』

その一言で私も声が出なくなってしまいました。

どうやら彼の力は私の肉体にも通用する位強力な様です。

「さて、それじゃあ君に教えてあげよう。すずかさんはね、人間じゃないんだ」

やめて・・・。

「『夜の一族』。分りやすく言うと吸血鬼のようなものでね、思い当たる不意は無いかな?彼女が時折見せる異常な身体能力を」

いわないで・・・。

「分ったかな?彼女は君みたいな人間なんて簡単に殺せる、『化け物』なんだよ」

「やめてえぇぇっ!!」

室内に私の叫び声が響き渡ります。

両手を縛られてなければ耳を塞いで蹲っていた事でしょう。

「何があった!?」

扉が開き銃を持った男の人達が入ってきます。

恐らく私達を攫った誘拐犯たちでしょう。

「何でもないよ、君達は外で待機していればいいんだ」

「しかし・・・」

「聞こえなかったのか?出て行けといったんだ」

私を見ながら何やら言おうとする誘拐犯たちに氷村優太は怒気をはらんだ声で命令しました。

「・・・っ!分ったよ、出て行けばいいんだろ。いくぞ・・・」

「お、おう」

殺気に当てらた誘拐犯たちは怯みながら退室していきました。

「フンっ、低俗な人間風情が・・・それにしても僕の支配から脱する事が出来るとはね・・・ますます君の事が欲しくなったよ」

いやらしい視線を向ける目の前の少年から目を背けると、アリサちゃんと目が合いました。

「あっ・・・」

「・・・・・・」

いまだ喋る事が出来ないアリサちゃん、その目には恐怖や怒りといった負の感情が宿っていました。

それがまるで自分に向けられているように感じた私は俯き目を瞑ります。

辛くて、怖くて、悔しくて・・・。

でも私の力じゃどうしようもできない。

(お願い、誰か助けて・・・っ!!)

そんなふうに祈る事しか出来ない私でしたがそれが通じたのか、下の階が騒がしくなってきました。

『何があった!?下を見てくる、お前はここを頼む』

『分った』

外の見張りも何が起こっているのかわからないみたいです。

「クックック・・・思ったよりも早かったなぁ・・・」

そういってニヤリと笑う氷村優太、なにかとてもいやな予感がします。

「何を、言ってるの?」

「いや、なに・・・あれだけ騒ぎを起こせば君を助けに来るだろうと思ってね。僕の目的は二つ、一つは君の身柄。そしてもう一つは・・・」

・・・っ!!

「まさか・・・!?」

「その通り、高町恭也の抹殺さ」

その発言に私はもとより隣にいるアリサちゃんも目を見開きます。

「彼はこれまでも色々と僕らの邪魔をしてくれたからね、いい加減消えてもらいたかったんだ。彼さえいなければ君のお姉さんもどうとでもできるしね・・・」

「なっ・・・!?」

この人はお姉ちゃんも狙っている!!?

「流石に真正面からやりあったら不利だろうけど、僕の能力なら心臓を止めるのも脳や神経を破壊するのも簡単だからね」

恭也さんの強さは私もよく知っています。

でも恭也さんだって不死身じゃない、万が一と言う事もあります。

『なっ!?貴様は・・・ぐぁっ!!?』

『おい!どうし・・・がはっ!?』

そうこうしているうちに扉の外で誰かのうめき声が聞こえます。

恐らく外にいた見張りのものでしょう。

数秒の静寂。

張り詰めた空気の中、鉄製の丈夫な扉が蹴り破られました。

「・・・・ぁ?!」

「えっ!?」

「・・・君は誰だ?」

それは氷村優太にとっても、そして私達にとっても予想外の人物でした。

(Side out)

 

誘拐犯のハイエースに打ち込んだサーチャーを追うことおよそ30分。

町の郊外にある廃ビルにたどり着きました。

ビルの前には黒塗りのハイエース、ナンバーも誘拐犯等のものと合致します。

「それじゃ、救出作戦と行きましょうか・・・」

イェーガーを起動、バリアジャケットを展開してビルの中へ。

なるたけ音を立てないように階段を上がっていくと2階フロアに3人の男達がたむろしていました。

覆面は取っていますが服装から誘拐犯たちで間違いありません。

「・・・でも確かに上玉だ、身代金を受け取ったらどっかの変態に高値で売るのも悪くねえ」

「だろ?だからその前にちょっと位いいだろ?」

「仕方ねえな。だが売りもんなんだ。あんまり傷をつけるなよ」

話を聞く限り身代金を渡しても二人を返す気はさらさら無いようです。

あまつさえ変態に売り払う前にエロい事をするとか、陵辱系のエロゲーかと。

流石にこのゲス共は救い様がありません。

「やれやれ、何処にでも悪い奴はいるもんだなぁ・・・」

「っ!!?」

もはや慈悲は愚かハイクを詠む暇すら与えません。

大惨事大戦の開幕です。

この距離では撃つよりも殴った方が早いですね。

そう判断した私は戦闘機人の瞬発力活かして一番近くにいた誘拐犯に肉薄、イェーガの銃床でアソコを思いっきり殴りつけました。

「っ!?!?!?!?」

突如襲った衝撃と後からやって来た激痛で言葉にならない叫びを上げながら誘拐犯が蹲ります。

間髪いれずに次のターゲットに突撃。

イェーガの銃口下に魔力で形成した銃剣を作り出しそのまま突進、勿論狙いは相手の股間です。

「っ・・・ぅああアアあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

自分の大切なところに何が刺さったのか理解した誘拐犯は断末魔も斯くやといった絶叫を上げます。

あ、勿論非殺傷設定ですよ、タマタマは原型留めてます。

ただ衝撃とか魔力の影響とかで生殖能力が残っているかは保障しかねますが・・・。

流石に最後の一人は状況を理解したのか、私に向かって拳銃を向けてきます。

さて、ここで目の前の誘拐犯を盾にしてもいいですが味方ごと打つ可能性も捨て切れません。

管理外世界だという事を抜きにしても死人は避けたいですから。

なので自分で防いじゃいましょう。

案の定仲間が射線上にいるにも関らず誘拐犯は引き金を引きます。

中国製と思しき銀色の安っぽいコピートカレフから放たれた弾丸は狙い違わず私の方に飛んできて展開されたシールドにあっさり弾かれました。

「なっ・・・!?」

現れた魔法陣っぽいものに銃弾が跳ね返されたのを見て驚いたのか誘拐犯は呆然としています。

そんな隙を見逃すハルナちゃんじゃあありません。

「そぉいっ!」

未だアソコを抑えている目の前の誘拐犯から銃剣を抜くと彼を向こうに目がけて放り投げます。

「ぐぇっ・・・!」

人間ミサイルよろしく跳んできた仲間が激突し、潰れたカエルのような声を上げる誘拐犯。

気絶した仲間の下敷きになり何とか脱出しようともがいている誘拐犯の目の前に私は仁王立ちします。

「アリサとすずかはどこ?」

イェーガーの銃口を向けながら私は残った誘拐犯に問い質します。

流石にごっついマシンガンを向けられたからか、誘拐犯は階段の方を指差します。

「う、上の階の一番奥の部屋だっ、そこに雇い主と一緒にいる・・・」

そういわれた直後、上から声が聞こえてきます。

「何があった!?」

どうやら残りの犯人も上の階にいるようです。

「いいだろう、お前は最後に殺すといったな・・・」

「へっ?いや、そんな事一言も・・・」

「アレは、嘘だ」

そういうと私は未だ無事だった誘拐犯の股間をおもいきり蹴飛ばしました。

「くぁwせdrftgyふじこlp!!!」

言葉にならない絶叫を上げる誘拐犯。

流石に可哀想に感じてきたので先ほど去勢した二人共々誘導弾を打ち込んで気絶させました。

それから扉まではほとんど作業ゲー状態です。

階段から下りてきた見張りをやっつけ、扉の前にいた残りの一人も倒して終わりです。

勿論大切なところを撃って轟沈させてます。

いたいけな幼女をかどわかそうとしたんです。

インガオホーと言う奴です。

さて、残りはこの扉の向こうですか・・・。

アリサとすずかが人質に取られていたら厄介です。

速攻で突入して速攻で制圧しましょう。

そう決断した私は思い切り扉をけりつけダイナミック入室を果たします。

そこにいたのは縛られた状態で座らされたアリサとすずか、そして・・・。

「・・・君は誰だ?」

なんかスカした感じのいけ好かないお子様がいました。

さて、何て返してやりましょうか・・・。

「貴様に名乗る名など無い!」かな?

「悪を断つ剣なり!」も捨てがたい。

「地獄からの使者、スパイダーマッ!!」もやってみたいです。

とは言え急いで名乗らないとタイミングを逸してしまいます。

此処は私の特徴を踏まえつつオーソドックスに名乗る事にしましょう。

「見てわかんない?正義の魔法少女だ!」

どうだ、決まったぜ・・・!

「「「・・・・・・えっ?」」」

・・・えっ?




文章に出ていたISAFは国際治安支援部隊 (International Security Assistance Force) という実在するものです。
ちなみに某ゲームのISAFは独立国家連合軍 (Independent States Allied Forces) になります。

あとどうでもいい話ですが「有明か、何もかも・・・」のセリフは作者が某逆三角形の建物を見る度に言ってるセルフです。よろしければ皆さんもどうぞw


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第11話「事件解決と思いきやもう一波乱とか勘弁してほしい、てか私の休暇を返せ!」

途中まで書いていた分が完成したので投稿します。
長いので二つに分割しました、続きは明日投稿します。


「・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・」

気まずい沈黙。

何ですか?

私?私が原因ですか?

「えーと、やり直していい?」

 

機人長女リリカルハルナ

第11話「事件解決と思いきやもう一波乱とか勘弁してほしい、てか私の休暇を返せ!」

 

「ん、ゴホン・・・っ。変だなぁ、僕は高町恭也がくると思っていたのに」

あ、こいつさっきのやり取りをなかったことにしやがりました。

まぁ、私としてもさっきのアレは永遠に封印しておきたい黒歴史の一つにノミネートしたのでありがたいのですが。

なわけで私もこの流れに乗ってさっきのアレは無かった事にしましょう。

「高町恭也が誰かは知らないけど、その二人は返してもらうよ」

私がそういうと目の前の子供はスンゲーむかつく笑みを浮かべます。

「彼女達のために態々危険を犯したのかい?」

「友達が攫われたんだ。助けに来たっておかしくは無いでしょ」

「理解できないね、それだけの価値が彼女達にあると?」

と人を小バカにしたような口調で聞いてくるガキンチョ。絶対友達にしたくないタイプです。

「価値観の相違ってやつだね、自分の物差しだけで世間を見ない方がいいよ?」

私がそういうと今度は不機嫌そうに顔を歪ませます。

「不愉快だな・・・ただの人間がこの僕に、氷村優太に意見するだなんて」

・・・うわ、なにこいつ?

沸点低いうえに何か拗らせてますよ。

こういう手合いは何を言っても聞かないし完全論破しようものなら逆ギレして暴れかねません。

せいぜい適当にあしらいながらタイミングを見て二人ととんずらしましょう、それから先はおまわりさんの仕事です。

・・・って、よく考えたら私がおまわりさんじゃん。

そういうことなら仕方ありません、少々面倒ですが力づくでふんじばって然る所に突き出しましょう。

と言うわけで一応最終確認です。

「まぁ、その辺の事はどうでも良いんで一つ質問。あなたが下に居た連中のクライアントってコトでいいのかな?」

私が質問すると氷村容疑者は鼻で笑いやがりました。

「あぁ、あの役立たずどもか。高い金を払ったのにほんっと使えない連中だよね、これだから人間はダメなんだよ・・・」

はい有罪(ギルティ)!

こうして私の中で容疑者から被告に変わった氷村優太(住所不定、職業不詳)にイェーガーの銃口を向けます。

「そう、それじゃあ一応警告しておくね、未成年者略取の現行犯だから黙秘権も弁護士を呼ぶ権利も無いけどカツ丼を注文する権利くらいは残ってるから無駄な抵抗はやめて大人しくしなさい」

そう勧告すると氷村被告は壊れたように笑い始めました。

「クックック・・・アッハハハハハハハハハハっ!」

うん、ちょっと・・・いや、かなりヤバイ感じです。

一頻り笑ってから氷村被告は首をガクッとシャフ度に傾けつつ目だけがぎょろりと私を睨みつける。なんかキモイです。

「ココまで僕を侮辱したのは君が初めてだよっ、どうやってここまで来たのか興味があったけれどもうどうでもいい。僕と言う偉大な存在に楯突いた事を後悔させながらコロシテヤル」

うん、こういうときはこのセリフです。

訳が分らないよ。

今のセリフの何処に侮辱するような単語や文章が存在したのか全く分りません。

何?コイツの中では他の人間は自分に対して平伏するのが当たり前なことなの?

どんだけ自尊心がでかいのさ?アンドリュー・フォーク准将もビックリなレベルだよ。

躁状態とかいうレベルじゃなくて最早重度の精神疾患レベルじゃね?

黄色い救急車を通り越して高い塀に囲まれた病院が来いって叫びたい。

どうするのコレ?こう言うのは父さん達の領分で私は門外漢なんだよ。

「・・・あー、裁判の前に精神鑑定が先だねこりゃ」

とりあえずアリサたちの安全を優先すべく目の前の痛い子を拘束することにしましょう。

 

Side氷村優太

不愉快、あぁ不愉快だ!

目の前にいる人間、銀髪の小娘は事もあろうに夜の一族、その至宝である僕に命令してきた。

しかも「抵抗するな」?「おとなしくしろ」?それは勝者が敗者に行う者だ、間違っても絶対者たる僕が言われるべき言葉ではない。

これほど僕に屈辱を与えた人間が今までいただろうか?

うん、殺そう。

取るに足らない人間とは言えそれなりに腕の立つ連中を雇ったつもりだ。

それをどうやって退けここまで来たのか気にはなるが関係ない。

殺して死骸を解剖すればある程度は分るだろう。

いや、いい事を思いついた。

殺さず心だけを破壊してやろう。

そしてただの人形になったあいつを月村すずかにプレゼントしてやるんだ。

彼女もきっと喜んでくれるに違いない。

そうと決まれば早速始めよう。

殺さずに精神だけを破壊するのは面倒だが今回は許してやろう。

何も知らずに身構えている女を見る。

その綺麗な顔が苦痛に歪む様が見れないのが残念だよ。

そう思いながら奴と目をあわせた。

さぁ、僕に逆らった罪、その身をもって償うがいいっ!

Side out

 

「ん?」

微弱な不可視光線を感知?

照射源は・・・目の前のガキンチョのようです。

何コイツ、目からビームでも出せんの?

放射線とかは検知されませんでしたが念のためにバリアジャケットに光学防御と放射線防御を付加、それから網膜にも光学フィルターをかけておきましょう。

「ハルナちゃんっ!逃げてっ!!」

すずかが慌てた顔で叫びます。

その直『クワッ』っと目を見開く氷村被告。

「ハルナちゃんっ!!」

先程の光線が先程より強い出力で照射されたようですが目に見え無いのでただ睨み付けられただけにしか感じられません。

しかも強いと言ってもレーザー安全基準で言うところのクラス1からクラス1Mに変わった位で大した脅威にはならないでしょう。

「クッ、クフフフフ・・・」

なのに何で目の前のちみっこは勝ち誇った笑みを浮かべているのでしょうか?

「はははははははっ!バカめっ、僕にたてつくからそうなるんだ!見ろ、この無様な姿を!下等な人間の分際で身の程をわきまえないから・・・!」

うん、うるさい。と言うかウザイ。

C級作品に出てくる安っぽいラスボスみたいな事を騒いでいる氷村くん。

てか自分に酔ってるのか私がすぐそこまで来ていることに全く気づいていません。

さて、どうしてやろうか・・・。

パンチ?ありきたりだし何より警官が被疑者を殴打したとか後々面倒な騒ぎになるから却下です、蹴りも同様の理由で不可とします。

まぁ、見た目ガキンチョですしデコピンくらいで許してあげましょう。

え?すずか達を誘拐した奴に優しすぎないかって?

大丈夫ダイジョーブ、私のデコピンは車のフロント叩き割れるから。

「てい」

肩を叩いて顔がこっちに向いたところでデコピン(ジュール換算124.8J)を額に喰らい盛大にもんどりうつチビッ子。

「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!?」

そのチビな体の何処から出るのか不思議に思えるほどでかい叫び声を上げる氷村くん。

額を押さえながら足をバタバタさせている内にアリサとすずかの拘束を解きます。

「二人とも大丈夫?エロいことされてない?」

「されて無いわよっ!って、あれ?声が出る?」

何やら変な事を言うアリサ、先程まで一言も発しなかったから変だとは思ってましたが声が出なかったからだとは・・・。

「多分ハルナちゃんのデコピンを受けたことで彼の支配が解けたんだと思う・・・」

「支配?」

今度はすずかが意味深な事を言い出します。

「そうよ!ハルナもアイツの目を見たんでしょ!何で平気なの!?」

目?確かに変な視線と言うか赤外線っぽいものは観測しましたけど・・・。

「あのね、あの人の目を見た人は体を支配されちゃうの」

何それ!?ギ○ス?ギア○ですか!?

確かにあのアニメは中二臭バリバリの作品でしたもんね。

ちなみに私が好きなキャラはオレンジさんです。

はいそこ、ファザコン言わない、別に中の人がおんなじだからじゃ無いです。無いったら無いんです!

「とにかくさっさとココから逃げよう、外に犯人達の車があるからそれで先ずはここから離れよう、それから警察にでも・・・」

「まてっ!」

警察にでも逃げ込もうといいかけたところで後ろから静止の声がかかります。

振り向くとデコピンに悶絶していた氷村君が復活していました。。

「ハァ、ハァ・・・よくも、よくもボクをコケにしてくれたな・・・!」

何かすごい形相でこちらを睨んでくる氷村くん。

「もういい、お前ら全員ここで殺してやる!月村すずかもだ!ボクのものにならないならもう生きる価値もない!」

私の後ろですずかが身をこわばらせるのが分りました。

同時に沸々と怒りが私の胸の奥底からこみ上げて来るのも感じます。

その人の価値は本人が決めるものです、他人がどうこう言う資格なんて、ましてやそいつの価値観で勝手に殺すなんて言語道断です。

とは言えどうしたものか・・・。

コイツのギアス(仮)が私に効かないのはさっきの戦闘で実証済みです。

問題は私の後ろにいるアリサとすずかです。

私と違ってギアス(仮)で体の制御を奪われていたらしいので恐らく今度も防ぐ事は出来ないでしょう。

マルチタスクで対策を考えていると氷村の目に変化が起こります。

微小ですが角膜が振動しています。

普通の人では気づかない変化ですが戦闘機人である私の目は見逃しません。

もしかして・・・。

仮説ですがああやって角膜を震わせて不可視光線を照射、それを見た相手の脳に直接命令を叩きつけているのでしょう。

こいつ、実は人間じゃなくて光線級BATEなんじゃね?いつの間に地球は地球外起源主の侵略を受けていたのでしょうか・・・?

冗談はさておき確証はありませんが他の仮説を考えている時間はありません。

その仮説に賭けてみましょう!

「死ねぇぇぇっ!!!」

そう言って『クワッ』と目を見開く氷村。

「ええい、ままよっ!」

私はそう言って考え付いた対抗手段を実行に映します。

すると・・・。

「ぐぁっ!?」

氷村君が目を抑えます。

しかしそれも数秒、すぐさま立ち直り再度こちらを睨みつけます。

「お前・・・!何をしたか知らないが無駄な足掻きだっ!」

再度こちらに対し目を見開きます。

「っ!」

私の後ろで身構える二人。

「・・・あれ?」

しかし何も起こりません。

「バカなっ!?フンっ!」

驚きながらもう一度こちらを睨む氷村。

やはり何も起こらず氷村は困惑します。

「おまえ・・・何を、ボクに何をした!?」

私に詰問する氷村くん。

その声色には困惑と怯えが感じられます。

ふむ、これはこれは・・・。

思わずニヤリと笑みが浮かんでしまいました。

「ふ~ん、教えてほしいの?」

そう言って私は氷村くんの方に一歩一歩、踏みしめるように歩いていきます。

「う、あぁ・・・やめろ、くるな・・・」

先程までの余裕は何処へやら、すげービビリまくってる氷村君は私が一歩進むごとに後退し、やがて部屋の隅に追い詰められます。

「何を怯えてるのかな、ひ~む~ら~くぅ~ん?君は選ばれた存在なんじゃなかったっけ?いや、新世界の神だったかな?」

まだ何もしていないのに涙と鼻水でグシャグシャになった氷村君の頭に私は手を伸ばし。

「人間舐めんな糞ガキ・・・っ!」

過去最大威力のデコピンをお見舞いしてやりました。

 

「全く、氷室だか志村だか知らないけれどな、私は『ゆうた』が大っ嫌いなんだ!ハチミツねだるな!勝手に3乙すんな!尻尾位自分で切れ!この腐れふんたーが!」

「いや、なんでモンハン?てかハルナ・・・アンタアイツに何したの?」

二人が縛られていたロープで気絶した氷村君を簀巻きにしながら愚痴る私にアリサが突っ込みと共に聞いてきます。

そうですよね、何も知らない人たちが見たらただ睨み合っていただけにしか見えませんもんね。

「フフン、知りたい?」

「知りたいからさっさと教えなさいよ。後ドヤ顔やめい」

むぅ、そこは「か、勘違いしないでよねっ!べ、別に教えて欲しい訳じゃないんだから・・・っ!」って言って欲しかったのですが。

「何かバカな事考えてたでしょ?」

「エッ?ソンナコトアリマセンヨー」

「何で半角カタカナなのよ!」

「あ、アリサちゃん落ち着いて・・・」

もはや様式美となったやり取りをしていた所で外から『ズドン』という大きな音が聞こえてきます。

「何?!」

「外から?」

轟音と共におなかに響く衝撃にうろたえる二人。

近くにあった窓から階下を見てみると犯人たちの黒いハイエースが濛々と黒煙を上げて燃えています。

敵の新手でしょうか?

私達の逃走手段を潰しにかかるとは中々手馴れています。

「二人はココにいて、ちょっと様子を見てくる」

恐らく相手はそこで絶賛気絶中の中二病患者直属の腕利きです、さっきまで相手にしていたエロ犯罪者集団とはレベルが違います。

さすがに二人を護りながらそんな連中を相手にするのは骨が折れます。

なので一人で新手を倒してから二人を連れて逃げる事にしましょう。

階段を下りて下の階に着きますがだれも居ません。

去勢してやった悪党どもはどこかのダンボール工作員の如くロッカーに「しまっちゃうおじさんの刑」に処したので居ません。

「もう一つ下の階かな?」

そう言って私が一歩前に踏み出した瞬間、濃密な殺気が頭上から降ってきました。

「っっ!!?」

慌てて前方に跳ぶとさっきまで私が居たところに一人の男が落下してきました。

手には小さめの刀、恐らく小太刀が握られています。

「今のをかわすか。翠屋にきたときから只者では無いと思っていたが・・・」

そう言って立ち上がり顔を上げる襲撃者。

それは翠屋のカウンターにいた店員さんでした。

 

(Side恭也)

町中の防犯カメラをハッキングして犯人たちの車を見つけだしたと忍から連絡を受けた俺は装備を整えると急ぎアリサちゃんとすずかちゃんの救出に向かった。

郊外の廃ビルの前に停めてあった車は間違いなく二人を攫った連中のものだ。

二人を助け出してもコイツで追跡されたら面倒だ。

そう思った俺は持ってきていた忍謹製の爆弾を車に仕掛ける。

威力はたいした事はないが燃料タンクに仕掛ければ引火して盛大に爆発してくれるはずだ。

そうすれば騒ぎを聞きつけて近隣の警察が駆けつけてくれるだろう。

そして彼らが駆けつける前に俺は二人を救出、同時に「夜の一族」に関係する証拠を処分して脱出する。

しかし爆弾を仕掛けビルに侵入したものの驚くほどに拍子抜けだった。

出入り口に見張りはおらず、二階に上がっても鼠一匹いない。

さらに上の階で守りを固めていると厄介だ。

そう思った俺は車に仕掛けた爆弾の起爆ボタンを押した。

轟音と共に腹に響く振動。

恐らく爆発に気づいて何人かは様子を見に降りてくるはず、そいつらをしとめて敵戦力の漸減を図る。

案の定階段を駆け下りてくる足音を耳にし、俺は天井に張り付き敵を待ち構える。

そして昇降口から人影が現れた瞬間、俺は落下しながら手にした小太刀を敵に振り下ろした。

しかし・・・。

(かわされたっ!?)

相手は驚くべき直感と瞬発力で前方に跳躍し俺の一撃を回避する。

そして相手の正体を知った俺は再度驚愕した。

「今のをかわすか。翠屋にきたときから只者では無いと思っていたが・・・」

そう、現れたのは二人と一緒に翠屋にやってきた少女、ハルナ・スカリエッティだった。

(Side out)

 

ヤバイです・・・。

何がヤバイかって言うとマジで色々ヤバイです。

第一に今の現状。

もし私が突破されたら襲撃者の障害となるのは階段一つと扉一枚のみ、そんなものではアリサとすずかは護れない。

逃走用の足を奪われた以上子供の足ではすぐに追いつかれてしまうでしょう。

よってここで襲撃者は完全に叩いておかなければいけません。

第二に相手が悪いです。

件の襲撃者、よりにもよって翠屋のカウンターにいた若い店員さんじゃないですか。

物腰といい雰囲気といい、明らかにその道のプロっぽかったのでてっきりアリアかすずかの執事ないし護衛だと思っていましたが・・・まさか犯人側の人間だったとは。

二人の発言からこの人が護衛の人間なのは確かです。

金で買収されたのか、それとも最初ら犯人達の仲間でそれを隠して二人に近づいたのか・・・。

どちらにしても最低のヤロウです、警察に突き出す前に泣いてやめてくださいって言うまで教育上不適切なオシオキをしてやりたいくらいですが・・・。

さて、実はヤバイ状況と言うのはもう一つありまして・・・。

この人、めっちゃ強いです。

「フッ!疾っ・・・!」

肉体を強化された戦闘機人のハルナちゃんを持ってしても防戦一方に追い込まれる程度には強いです。

中でも別格なのはスピード。

壁や天井すら足場にしてスピードに乗った必殺の一撃を繰り出してきます。

その速度、もしかしたらライドインパルス状態のトーレに匹敵するかもしれません。

魔法の露見を恐れてシールドや大出力魔法は控えているのを抜きにしてもこんなに不利になるとは思っても見ませんでした。

ほら、今も彼の一撃が・・・って!?

「ぐふぉっ!?」

ヤバイ、お腹にモロに喰らっちゃいました。

てかバリアジャケット越しにこの威力ってマジありえないんですけど・・・。

痛覚を遮断、脳内麻薬を大量分泌して苦痛を和らげていると謎の店員さんが私の前までやってきます。

「安心しろ、命までは取らない。君には後で聞きたい事が山ほどある、だが・・・」

そう言って私の背後の階段に視線を向ける店員。

私の横を通り抜けた時、彼は最後にこう言いました。

「先ずは上の二人が先決だ」

彼がそういった直後全身の血が凍りついたような錯覚を覚えました。

二人?

二人って言うのはアリサとすずかの事ですか?

彼女達をどうするつもりか?

そんなの振りまく殺気からして決まっています。

殺される?

アリサとすずかが殺される?

この世界に来て最初の、生まれ変わってからマリー以来初めて出来た友達が殺されるっ?

そう思った瞬間胸の奥からマグマのように熱い感情が膨れ上がってきました。

そう、これは怒り。

久しぶりにプッツンしちゃいました。

頭の片隅に追いやられた理性が止めろ落ち着けと騒いでいますが完全に無視です。

魔法の露見も管理局員としての規範とかも一切合財知ったこっちゃありません。

アリサとすずかを守る、そのために目の前にいるスカした感じのアサシンをぶちのめしてやります!

リンカーコア、オーバーブースト。レリックジェネレータ出力最大。

ISほか全兵装使用自由。

異変に気づいた店員が振り向きましたがもう遅いです。

今私の持てる全てをもって、目の前のあん畜生をぶっ飛ばしてやります!

 

(Side恭也)

空気が変わった。

突然の変化に俺は階段にかけようとしていた足を止めた。

同時に体中の汗腺が刺激され汗がにじみ出てくる。

(何だ、一体・・・!?)

今感じている感覚に俺は覚えがあった。

恐怖、それは間違いなく恐怖だ。

だが・・・。

(何なんだ!この凄まじい力はっ!?)

圧倒的、ただただ圧倒的なまでの濃密な圧力。

目の前に腹を空かせたライオンが居たってココまで恐怖を感じる事は無いだろう。

まるで戦車、いや軍艦が搭載されたあらゆる兵器を自分ひとりに向けているかのような純粋で暴力的なまでの力の奔流。

それを感じるのは背後、文字通り恐る恐る後ろを振り返るとそこには一人の少女が立っていた。

「・・・・・・」

ハルナ・スカリエッティ。

アリサちゃんとすずかちゃんに近づいた謎の少女、そしてつい先程俺が倒したはずの敵だ。

それがまるで痛み等感じていないかのような涼しい顔で仁王立ちしている。

そう、俺が恐怖を感じた見えない力は間違いなくこの子から発せられている。

(バカな・・・!この力、人間が出せるレベルを超えているぞ!)

見たことも無い金色の瞳を爛々と輝かせまるで感情が消えうせたかのような無表情で立つ少女。

彼女を一言で表現できる単語は一つしかないだろう。

殺戮人形。

そう表現するのがもっとも適しているであろう彼女一歩前に進む。

「・・・っ!!?」

ただそれだけ、それだけの動作で俺は威圧され一歩後ろに後ずさる。

そんな俺を彼女は無感情に見つめながら手に持った機関銃の銃口を向ける。

すると銃口に青白い光りが集まっていき・・・。

「・・・行かせない」

彼女がそう言った直後、極光が俺に向かって照射された。

「・・・・・・・・っ!!!!!!」

動物的本能で横に跳び、迫り来る閃光を回避する。

光りが収まり目を開ける。

体を確認し、異常がない事を確認すると次に俺は先程閃光が通り過ぎた階段を見つめ。

「なっ・・・!!?」

絶句した。

俺が見たのは空だった・・・。

階段でも壁でもなく空。

先程の極光は俺がいた空間を・・・階段も外壁もぶち抜いてビルに大穴を穿っていったのだ。

そして俺は理解した。

彼女は本気ではなかったのだと。

理由は知らないがこれほどの力を持ちながら彼女はそれを俺に振るっては来なかった。

しかし今は違う。

金色の無感情な瞳が俺を見据えたまま動かない。

間違いない。今の彼女は俺を殺す事に微塵も躊躇いを感じてない。

その瞳にはただただ強い決意が感じられた。

(こうなったら、俺も最早手加減は出来ない・・・!)

手を抜いたら殺られるのは必至。

俺が生き残るには殺す気で彼女に挑まなくてはならないだろう。

覚悟を決めた俺は小刀を構え彼女に向かって疾駆した。

(Side out)

 

目標接近、迎撃準備。

突撃して来た襲撃者を迎え撃つべく身構えると相手は予想外の攻撃を繰り出します。

袖口からワイヤーが放たれイェーガーを持った右腕に撒きつきます。

「!?」

「貰った!」

恐らくこちらの攻撃手段を封じた上で仕掛けるつもりでしょうが私相手にこれは愚策です。

私は戦闘機人のパワーで力任せに右腕を引きます。

「うぉっ!?」

当然ワイヤーで繋がった店員も引っ張られてこちらに跳んできます。

「チッ・・・ならっ!」

しかし彼もただでは転びません。

そのまま私に突っ込んでくるつもりのようです。

「ハァッ!」

振り下ろされる小太刀。

それをシールドで防御、ダメージ無し。

「なにっ!?」

狼狽したところにゼロ距離から左腕のロケットパンチを叩き込む。

「ぐはっ・・・!?」

悲鳴とも嘔吐とも呻きともとれる声と共に件の店員は壁に叩きつけられる。

咳き込みながら何とか立ち上がる彼を尻目に私は大部分がインパクトカノンで抉られ、かろうじで端だけ上り下り可能な状態の階段を背中に立ちはだかる。

「はぁ、はぁ・・・あくまで通す気はないと言うのか・・・」

応える必要はありません、返答はこれで十分。

私はイェーガーを構えると速射モードで発砲。

秒間数十発の魔力弾が襲撃者に殺到します。

「クッ・・・!」

ボロボロの体に鞭打ちながら弾丸の豪雨から逃げる店員。

彼が回避した空間にあった古い机や椅子等が掃射を受けバラバラになった破片が宙を舞う。

店員はまるでニンジャのような機敏な動きでこちらの猛射を交わしながら釘の様な手裏剣を投擲。

慌てず騒がずフィールドで弾き返していると相手は床を蹴って大きく跳躍。

恐らく天井を足場にして上から私に一撃を加えるつもりなのでしょう。

「させない・・・!」

そう呟きながら床に手を当てて・・・。

「FOA、発動・・・!」

跳躍した店員の着地地点から突然コンクリートの針が生えます。

「な・・・っ!!?」

慌てて身をよじって針を交わす店員。

針と言っても太く鋭い、まるで中世の騎士が使うランスのような巨大な針です。

喰らえばひとたまりも無いと悟った彼は身体をひねってなんとか天井からの奇襲をかわします。

しかしそれは同時に貴重な攻撃の機会も失った事を意味しています。

「ハァ、ハァ、ハァ・・・」

「・・・・・・」

肩で息をする彼と無表情の私。

一見私が有利に見えますが実はそんな事も無かったりします。

怒りのあまり後先考えない全力稼動のせいでリンカーコアもレリックもレッドゾーンギリギリです。

アレだけ暴れたんだから警察が駆けつけるだろうと思いましたが未だサイレンが聞こえて来ません。

胸の内でおまわりさんに恨み言を呟きながら現状を把握します。

相手はボロボロ、私もオーバーヒート寸前。

あっちの武器は小太刀一本。

さっきからワイヤーやらクナイやらが飛んでくる以上まだ暗器を隠し持っているのは間違いないでしょう。

私のほうはイェーガーの残弾が2斉射分。

マガジンはあと4つありますがマグチェンジさせてくれる暇はないでしょう。

つまりいい加減勝負を決めないとヤバイって事です。

何か手はないかと相手の様子を窺うと部屋の中央に陣取って全く動きません。

恐らくFOAを警戒しているのでしょう。

下手に動けば壁、床、天井、あらゆる場所が槍衾になって襲ってくるわけですから。

・・・そうだ、FOAで床に大穴空ければいいんだ。

私がいるのは端の階段付近だしさっきやっつけた誘拐犯たちを収納したロッカーも部屋の端・・・。

彼が陣取っている部屋の中央付近を崩してやればそのまま下のフロアまで真っ逆さまです。

上手く着地したとしてココまで登ってくるのよりも私が上の階に登って階段を完全に壊すほうが早いです。

それから二人を担いで飛んで逃げれば追いつかれることもありません。

問題はどうやって彼を束縛するかです。

ISを発動する場合、どうしても足下にテンプレートが浮かびます。

発動がばれる以上相手も阻止しようとするでしょう。

バインドは近づいて設置する必要がありますし、リストバレットは回避される可能性があります。

・・・ちょっと難しいですが遅発式のリストバレットを彼の足下に打ち込んでから改めて中央に誘導するしかありません。

向こうも私が何かを狙っている事に気づいたのか足に力を溜めています。

「・・・」

「・・・・・・」

まるで荒野の決闘のような張り詰めた空気。

来るっ!

そう告げる直感に従い私がイェーガーのトリガーを引こうとした瞬間・・・。

「何よこれ!?階段が壊れてるじゃない!」

「あ、アリサちゃん危ないよ!もっと下がって!」

背後から聞き覚えのある声が聞こえてきます。

会って間もないとは言え大切な友達の声・・・聞き間違えるはずがありません。

振り返るとそこには上の階にいるはずのアリサとすずかがいました。

何でここに!?部屋で待ってるように言ったのに!

同時にこの好機をあの襲撃者が逃すはずがありません。

間違いなくこの隙を突いて飛び掛ってきているだろう襲撃者に視線を戻しながら私は叫びました。

「何やってるの二人とも!危険だから早く部屋に戻って!」「アリサちゃん!すずかちゃん!彼女は危険だ!上に逃げろ!」

・・・・・・あれ?

視線を前方に戻しましたが件の店員は一歩も動いていません。

こちらに攻撃してくる、最悪私を飛び越えて二人を人質にするかもしれないと思っていたのに。

しかも動かないどころか二人に逃げるよう呼びかけています。

まるで彼女達を助けに来たかのように・・・。

「「ん?」」

私と彼、二人同時に首を傾げます。

「・・・あ~今更なんだが一つ聞いていいか?」

「ど、どうぞ・・・」

すっごくバツが悪そうな感じで店員さんが質問してきます。

「君は・・・その、誘拐犯の一員なのか?」

「違います」

速攻で否定します。

あんな下半身テロリスト達と一緒にされるとは不本意ココに極まれりです。

「私からも質問いいですか?」

「あ、ああ」

先程のように、今度は質問する側される側が逆転した状態で同様のやり取りがなされます。

「あなたは、新手の襲撃者だったりします?」

「違う」

速攻で否定されてしまいました。

あんな下種と一緒にするなって顔での即答です。

あー、つまり?

私は当然ながら誘拐犯の仲間じゃないし彼も連中の増援じゃない。

てことは・・・。




ふんたーネタを入れましたが作者はモンハン2までしか知りませんw
あとハルナが恭也さん相手に互角にやり合えたのは所見殺し的な部分があります。
なのでとらハファンの皆様、「恭也はもっと強いだろ」とか怒らず笑って許してください。orz


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第12話「いい加減本編入れと言う友人からの無言の圧力により今度こそ本当の解決と芽生える友情と新たな出会い」

次回から新章だといったな、あれは嘘だ。
ごめんなさい!石投げないで!
本編突入する前に主人公のステータスとかの説明を挟みたいのでそれから本編に入ります。


遥か後方でパトカーのサイレンが響く。

あの後私達は迎えに来たアリサの家の執事、鮫島さんの運転するリムジンに揺られてすずかの家、月村邸に到着した。

「すずかっ!」

到着するなりすずかをそのまま大きくしたようなお姉さんがすずかに駆け寄ります。

今までの経験からして彼女はすずかのお母さんと見ました!

「お姉ちゃんっ!」

・・・外れです、母親ではなく姉でした。

彼女の姿を見るなり泣きながら駆けて行くすずか。

今まで若々しいお母さんばっかりに遭遇してきましたがここに来てまさかのフェイントとは、中々やりますね。

いやホント、てっきりすずかのお母さんかと思っていましたよ。

明らかに実年齢と乖離した前例を何件か目の当たりにしてますからね。

お姉さんの腕の中で泣きじゃくるすずかをみてようやく私も方の力が抜けました。

「ふぅ、これで一件落着かな。さて、それじゃあ・・・」

帰ってホテルでアニメでも見ようと思ったのですが・・・。

「待て」

予想はしてましたが案の定店員のお兄さんに捕まってしまいました。

 

機人長女リリカルハルナ

第12話「いい加減本編入れと言う友人からの無言の圧力により今度こそ本当の解決と芽生える友情と新たな出会い」

 

「君には聞かなきゃならない事がある」

何でしょう、今まで事情聴取する側だったせいか偉く新鮮な気分です。

「君は何者だ?何が目的で二人に近づいた?本当に犯人とは無関係なのか?あのビームのような物は・・・」

おぅふ・・・機銃掃射のように飛んでくる質問で射殺されそうです。

「恭也、そんな質問攻めしたら答えられないわよ・・・」

そう言って助け舟を出してくれたのはすずかのお姉さんでした。

「始めまして、すずかの姉の月村忍です」

「あ、ご丁寧にどうも。ハルナ・スカリエッティです」

すずかのお姉さん・・・忍さんが挨拶されたのでこちらも返す。

「・・・なんだか俺と扱いが違わないか?」

そう文句を垂れるお兄さん・・・恭也さんですがそれはお互い様です。

廃ビルからここまで、車内でずっと私の事監視してたでしょ。

警戒するのは分かりますけれど得物持ったまま睨まれればこちらも相応の態度に出ますよ。

こうして月村亭まで睨めっこ(ガチ)を続けることになり一緒に座ってたアリサとすずかがめっちゃビビってました。

「そうは言うけれど挨拶は大切よ?」

そうです、挨拶は大事です。挨拶を蔑ろにする輩はセプクすべしと古事記にも記載されているらしいですから。

「自分の名前も名乗らないであれこれ聞いてくるなんて失礼でしょ?ホラホラ、自己紹介っ」

「・・・高町恭也だ」

忍さんに促されて憮然とした様子で名乗る恭也さん。

「さて、それじゃ場の空気も和んだことだし・・・」

いや、和んでない。和んでないよ忍さん。

「お話、聞かせてくれるかしら?」

何やら先ほどの氷村君の様に目から不可視光線を照射しながら質問してくる忍さん。

微笑みながら投げかけられる妖しげな視線・・・なんというか、エロいです。

「いや、私にも守秘義務というものがありまして・・・あと申し訳ないけどその眼から出てるエロビームですが私には効かないんで・・・」

「え、エロくないしっ!いや、まって・・・私の目が効かないの!?てか分かるの!?」

「え?あっ・・・」

やばいです、自分で墓穴掘りました。

エロビームが効かないって、それ自分が普通の人間じゃないってカミングアウトするようなもんじゃないですか!

「・・・あなた、何者なの?」

忍さんが私から距離を取り身構えます。

「洗いざらい話してもらおうか・・・」

そんな忍さんを守る様に私の前に立ちふさがる恭也さん、手にはしっかり小太刀が握られています。

「・・・」

しかし先ほど言いましたが私も答えるわけにはいきませんので黙秘権を行使します。

総じてジリジリと緊張が高まっていく月村邸。

軽く意識を全周囲に巡らすとどうやら死角から誰かが私を狙っているようです。

恭也さん以外にも戦える人がいたことに驚き半分焦燥半分です。

これホントどうやって突破しよう・・・。

強行突破は無理ですね。

恭也さんに足止めされている間に死角から攻撃されてアウトです。

一目散に逃げるのも手ですが逃げ切れるかは微妙な所です。

何せ追手は目の前にいるリアルニンジャの恭也さんですから・・・。

そうなると忍さんを人質に?

論外ですね。

すずかの家族に危害を加えるなんてできません。

よしんばできたとしてもそのあとの恭也さんの怒りの矛先にゲイ・ボルグ(心臓を捧げよ)されるのがたやすく想像できます。

そんな八方ふさがりな状況下でにらみ合っていたのですが・・・。

「全く、何をやってるんだいハルナ?」

本来聞こえるはずのない声に振り向くと、やっぱりいるはずのない父さんがあきれ顔で立っていました。

「え?父さん、何で?」

「何でも何も帰りが遅いから探しに来たんじゃないか」

「うぐ・・・」

至極真っ当な回答にぐうの音も出ません。

「・・・あなたは、一体?」

そんな私とは裏腹に突然現れた父さんに忍さん達は困惑しています。

恭也さん突然気配も無く表れた警戒しているのか、忍さんを守りながら父さんにも意識を向けています。

「ん?ああ、突然の訪問で申し訳ない。私はジェイル・スカリエッティ、そこにいるハルナの父親さ」

それを聞いた忍さん達は「親子ぉ?」と怪訝そうな顔で私を見ます。

うん、分かるよ。似てないもんね。

ぶっちゃけ目の色と髪が癖っ毛な所くらいしか共通点ないもんね。

とりあえず言ってることは本当なので頷いておきます。

「何やらすっげー不名誉な事を心の中で言われた様に感じるが・・・まぁ、そう言う事だ」

「それで?その御父上が当家になんの御用でしょうか?」

警戒を解くことなく忍さんは父さんに問う。

「御用も何も、さっき言った通り娘の帰りが遅いから迎えに来たんだがね・・・」

「ふざけるなっ!」

期待していた応えが返ってこないことに痺れを切らしたのか、恭也さんが父さんに噛みつきます。

「ふざけるも何も事実だよ。それで探してみれば愛娘が見知らぬ男に刃物を向けられている・・・君こそ自分が何をしているのか分かっているのかね?」

対して父さんはおどけた仕草で返していますが、あれかなり怒ってますよね?

それが恭也さんに対してなのか一人で無茶した私に対してなのかはわかりませんが・・・。

「それは、彼女が・・・」

「うちの娘が君たちに何をしたのかね?ぜひ説明を願いたい。何某かの被害を被ったというのならば父親として謝罪しなければならないからね」

「ぐぅ・・・」

言葉に詰まる恭也さん。

よっぽど知られちゃ困る秘密があるようです、まぁ私も人のことは言えませんが・・・。

「回答無しかね?ならばこちらもこれ以上答える義務はないな」

そう言って父さんは踵を返そうとする。

「ま、待てっ!」

慌てて父さんを引き留めようとする恭也さん、しかし私と言う脅威が未だ健在なためか強くは出られないようだ。

「一つ、我々の名誉の為に言わせてもらうが私も、私の娘も、君たちに対して一切の悪意も害意も持ち合わせてはいない」

「・・・本当なの?」

父さんからの言葉に問い返す忍さん。

その表情はやはり訝し気に警戒したままです。

「勿論だよ、第一今回の一件は偶発的な物だ。君たちの能力に興味がないと言えば嘘になるが、リスクを冒してまで手にする価値は無い」

父さんがそう言うと恭也さんの目が鋭く細められる。

忍さん達の力に興味があるといったのが原因か、それともそのあとに価値が無いと貶されたのが原因か・・・。

どっちにしてもここまで煽るなんて、父さんやっぱり怒ってますよ。

「話は終わりだ。先ほども言った通り、君たちから何かしない限り我々は金輪際現れることも無い。では失礼するよ、帰ろうハルナ・・・」

そう言って今度こそ踵を返し正門に向かって歩き出す父さん。

後ろ髪惹かれる思いですが私も後に続きます。

「・・・・・・」

恐らくもう二度とこの地に立つことは無いでしょう。

でもその方がいいでしょう。

この世界では私の存在は異物そのもの、どんな厄介ごとを呼び寄せるか分かったものじゃありません。

今回恭也さんが私を警戒していたのだって私の普通じゃない部分に気づいたから、あの時私に注意がいってなければ翠屋で襲われた時に恭也さんの手で誘拐犯は撃退されていたでしょう。

今回は都合よく二人とも無事助かりましたが今後もそんなご都合主義が罷り通る訳がない。

だからこれでいいんです。

「さよなら。アリサ、すずか・・・」

決して届くことのない二人への別れの言葉を残して私は月村邸の門を・・・。

「待って!!」

潜ろうとしたところで後ろからかけられた聞き覚えのある声に足を止めてしまいました。

「すずか・・・」

振り向くとそこにいたのは予想通りすずかでした。

彼女のすぐ後ろにはアリサもおり、ここまで走ってきたのか、肩で息をする彼女達の額にはうっすらと汗がにじんでいます。

「すずかちゃん!?アリサちゃんまで!?」

「何してるのすずか!?危ないから下がって・・・」

「お姉ちゃんたちは黙ってて!」

下がらせようとする恭也さんと忍さんにすずかが一喝します。

「っ!?」

「なっ!?」

物静かな雰囲気の通り普段はあまり自己主張な少ない子だからでしょうか、大声を上げたすずかに二人は驚いたまま固まってしまいます。

「どうしてハルナちゃんを疑うの!?ハルナちゃんは私たちを助けてくれたんだよ!!?」

「すずかっ!」

最初こそ驚いた忍さんですが、すずかが疑念を訴えていると今度は彼女が大声を上げます。

「っ!?」

「あなただってわかっているでしょう?私達の秘密は知られてるわけにはいかないの」

「でも、でも・・・」

諭す様に説明する忍さんにすずかは涙目になりながら食い下がります。

むぅ・・・他所様の家庭環境に首を突っ込みたくはありませんが、すずかが泣いているのにこれ以上耐えられませんでした。

「・・・父さん」

私が何が言いたいのか分かったのでしょう。

父さんはすごーく深いため息をついてから頭をかきます。

「はぁぁ、バレたらただじゃすまないが・・・私ももう見てられないのは同感だ。ハルナにまかせるよ」

「うん、ありがとう・・・」

苦笑しながらそういう父さんにお礼を言いながら私は踵を返しすずかたちの間に立ちます。

「ハルナちゃん?」

「ひとの家族関係拗らせたまま帰るのも忍びないもんね。話すよ、私達が何なのか」

意外だったのか忍さんも恭也さんも驚いた顔をします。

これが全部演技で私たちが事情を話す様に誘導していたのだとしたらアカデミー賞ものです。

「ハルナちゃん・・・」

「ただし!こっちも話すんだからそっちの事情も嘘偽りなく説明してもらいます」

機密漏洩上等で助けたのにあそこまで警戒されたんです、事情を説明してもらわなきゃ収まりません。

「・・・わかりました、館で話します」

「忍!?いいのか・・・?」

「せっかく話してくれるっていうんだから聞こうじゃない、勘だけどリスクを冒す価値はあるわ。それに・・・」

そう言うと忍さんはクスリと苦笑します。

「すずかの言う通り、彼女は妹を助けてくれた。危険を顧みずにいね、それを信じてみようと思うの」

 

改めてすずかの家、月村邸の客間に通された私達。

勧められたソファーに座るとふわりと身体が沈みます。

「すずかってやっぱりお嬢様なんだねぇ・・・」

軽く見渡せば見るからにお金かかってそうなお洒落な室内に目を奪われます。

これだけお嬢なら変な能力抜きに誘拐されますね。

「それで?あなた達の事、話してくれるって本当?」

向かいのソファーに座るとさっそく忍さんが切り出してきます。

彼女の隣にはすずかとアリサが座り、反対側には恭也さんが何かあればすぐ飛び掛かれる状態で立っています。

「はい。信じてくれるかはそっち次第ですが・・・」

何やらメカっぽい駆動音がするメイドさんが入れた紅茶を一口すすります。

うん、美味しい。

「どういう事?」

「実は私、地球とは違う異世界から来た魔法少女なんですよ」

「おいっ!ふざけるのも大概にしろっ!」

包み隠さず白状したら案の定恭也さんが声を上げます。

「ほらー、やっぱり信じてくれない」

「恭也は黙ってて。それで?その異世界人さん達は何が目的で地球に来たのかしら?」

忍さんに諫められ渋々恭也さんは下がります。

「観光、って言っても信じてもらえませんよね?」

「・・・っ!」

またもや恭也さんが身を乗り出しますが忍さんに睨まれて身を引きます。

「あーもーっ!分かってますよっ!私の発言が恭也さんを煽ってることくらい・・・でも本当なんだから仕方ないじゃないですか!」

テーブルをバンバン叩きながら私は抗議します。

「私がミッドチルダっていう異世界出身なのも時空管理局っていう司法機関に所属してるのも執務官なんて不相応な役職に就いてるのも全部本当の事なんですから!」

見た目相応に駄々をこねる私に忍さん達はポカンとしています。

「まぁ、ハルナの言っていることは事実だよ。我々は次元の海の向こうに存在する世界、ミッドチルダからやってきた。そこをはじめ複数の世界を守護する司法機関、『時空管理局』に所属しているのも事実だ。そこでハルナは執務官、事件捜査の指揮・統括などを行う役職に就いている。ちなみに私は本局の主任医務官だ」

父さんの補足を受けて忍さんはハッと我に返ります。

「ちょっと待って、さっき複数って言ったわよね?そのみっどちるだ、だっけ?そこ以外にも異世界ってあるの?」

「ああ、あるよ。管理局の司法が及ぶ管理世界が35、司法が及ばない管理外世界が150はある。ちなみに地球は97番目に発見された管理外世界だ」

そのスケールのデカさに皆は再び呆けます。

「その管理世界では魔法が主流技術でね、って言ってもメルヘンなんて欠片も無いSFなノリだけど・・・簡単に説明すると空気中のエネルギー、魔力を呼吸するみたいに体内に取り込んでAI制御のステッキで使用者のイメージ通りに変換して魔法を使うんだ。恭也さんは私の魔法見たでしょ?」

「・・・待て、あのとんでもないビームが魔法なのか!?」

私に聞かれて私との戦闘を思い出した恭也さんが戦慄します。

「え?何?ビームって何っ!?ねぇ、ここでそれやってもらえない?」

それとは反対に忍さんは目をキラキラさせて私の方に身を乗り出します。

「いや、さすがにここで打つのは危ないから・・・」

気圧されながら私がそう言うと「ちぇー」と言ってを膨らませて見せます。

「と言う事は壁や天井から刺が生えてきたのも魔法なのか?」

あー、やっぱりそっちも気になりますよね・・・。

どうしようと父さんの方を見れば肩をすくめて頷きます、どうやらこれも私に任せるらしいです。

ちゃんと話すって約束しちゃいましたからね、仕方ありません。

「そっちは魔法じゃなくて私固有の特殊能力です」

「特殊能力?」

その言葉を着た途端、忍さん達の警戒心を強めます。

氷村某の件もありますし、彼女達があそこまで頑ななのも不思議な力絡みなのかもしれません。

「・・・実は私、普通の人間じゃないんです」

「どういう事・・・?」

ますます身構える月村家ご一行。

もしかして忍さん達も普通じゃないんでしょうか?

「戦闘機人、分かりやすく言うとクローン技術で製造された戦闘用サイボーグなんですよ、私」

「・・・はい?」

先ほどまでとは打って変わって、皆さん頭に『?』を浮かべてます。

どうやら皆さんが予想していたもの物と私の出生の秘密は違う結果だったようです。

「昔違法研究者だった私がハルナを生み出してね、色々あったがこの子には人として生きて欲しくて足を洗ったんだ。今は真っ当に生活しているよ、後ろ暗いことはもうやっていないから安心してくれたまえ」

「「「「はぁ・・・」」」」

忍さんや恭也さんだけでなくすずかとアリサも半信半疑です。

まぁこの人たちにとって戦闘用サイボーグって言ったら元カリフォルニア州知事な某筋肉モリモリマッチョマンなアクション俳優みたいなイメージでしょうからね。

「ホントですよ!鉄のボディに熱血ハートなサイボーグ美少女ですよ!ロケットパンチとかだって飛ばせるし・・・」

「それ本当!?」

ロケットパンチの下りで再び忍さんがすんごい食いついてきました。

「は、はい。今は右腕だけですけどアタッチメント換装でほかにも色々・・・」

「撃ってロケットパンチ!今すぐ!ここで!」

これまでと打って変わってぐいぐい来る忍さんにビビっていると恭也さんが止めてくれました。

「すまないな、忍はメカオタクでな、もしかして忍の目が効かなかったのもそれが理由か?」

「え?あ、はい。なんか目から不可視光線が出てたんで網膜にフィルターかけて無効化しました」

「なるほど、だからさっき忍の魔眼の事をエロビームと・・・」

「だからエロくないしっ!」

何はともあれ私たちが異世界から来たことは理解してもらえたようです。

「てなわけで今度はそちらの秘密を教えてプリーズ」

「プリーズ、プリーズ」

そう言ってバッチコイとばかりに両手で手招きする私と父さん。

「・・・うん、あなた達間違いなく親子ね」

「だな、息がぴったりだ」

どうやらまだ父さんが私の父だと信じていなかったようです。

「・・・解せぬ」

某子安ボイスの聖剣を引き抜いた人のような顔をする父さん。

そんな父さんをよそに忍さん達はすずかを見つめます。

「いいのね、すずか?」

「・・・うん、ハルナちゃんはちゃんと話してくれたんだもん。私もそれに答えたい」

忍さんの問いにすずかは決意を新たにします。

「・・・・・・」

その隣でこれまで黙って聞いていたアリサも、親友の雰囲気に充てられ固唾をのみます。

「じつはね、私も人間じゃないの・・・」

 

sideすずか

「・・・へ?」

私の発言にハルナちゃんと隣にいるハルナちゃんのお父さんがポカンとしている。

隣を見ればアリサちゃんも同様だ。

正直に言うとまだ怖い。

私が秘密を離した後、三人がどんな目で私を見るのか・・・。

嫌われるかもしれない。

怖がって、気味悪がられて、拒絶されるかもしれない。

それが、怖くてたまらない。

でもハルナちゃんだって話してくれたんだ。

異世界の事、魔法の事、自分の生まれの事・・・。

彼女だって不安だったはずだ、化け物扱いされて拒絶されるかもしれないのに、それでもちゃんと話してくれた。

なら、私だって・・・っ!

「夜の一族って言ってね、簡単に言うと吸血鬼なの。生まれ持って力が強かったり不思議な力が使えたり。あとね、定期的に血を飲まないの身体の具合が悪くなっちゃうんだ・・・」

私が言い終わってもハルナちゃんたちは何も言わない。

きっと本当の事を知って私の事が怖くなったんだ。

恐れていたことが本当になったと分かり辛くて悲しくて、胸が張り裂けそう・・・。

「分かったでしょ?私は人の血を吸う・・・」

「すっげーっ!!」

俯いていた私はハルナちゃんのその言葉に思わず顔を上げる。

そこにいるのは恐れなんて微塵も感じていない、キラキラした目でこちらを見つめるハルナちゃんがいた。

「マジで吸血鬼なの!?すごいじゃん!ねえねえ、不思議な力って何ができるのっ?霧とかコウモリに変身したり?もしかして某エロゲみたいに666匹の動物を出せたりとか・・・!」

とっても興奮した様子で立て続けに質問してくるハルナちゃんに私は困惑します。

「え?なんで・・・?私の事、怖くないの?」

これまでと変わらないハルナちゃんに私は質問します。

「え?何で?吸血鬼だよ!ノスフェラトゥ、ノーライフキングだよ!カッコいいじゃない!」

うん、全然怖がってません。

「なんで?何で怖くないの!?私吸血鬼なんだよ!血を吸う怪物なんだよ!」

私は何を言ってるんだろう。

嬉しいはずなのに、変わらずにいてくれるハルナちゃんに私は思わず声を上げます。

「・・・すずかは私達が拒絶すると思ってた?」

「だって、わたし・・・怪物だから・・・」

私がそう言うと私の顔の前にハルナちゃんの手が伸びてきて。

「てい」

「あだっ」

デコピンを食らいました。

さっき氷村優太にした時よりは手加減してくれたみたいですが滅茶苦茶痛いです。

「全く、すずかは心配性だな~。まぁ確かに、普通の人だったら驚いて怖がるかもしれないけど、私達普通じゃないから」

そう言って私から視線を逸らすハルナちゃん。

つられてそっちを見れば私の隣でアリサちゃんがすっごく不機嫌そうな顔で私を見ていました。

「すずかは自分の事怪物だっていうけどさ、すずかの言葉が本当ならアリサなんてツンデレだし、私に至っちゃ戦闘機人だよ?半分メカ、怪物どころか生き物かどうかすら疑わしいナニカだよ?」

「ちょっと待ちなさい!ツンデレってなによ!?ツンデレってっ!?って、そうじゃなくて・・・」

ハルナちゃんの言に鋭いツッコミを入れてからアリサちゃんは私に向き直り・・・。

「・・・うりゃ」

「ふにゃっ!?」

両方のほっぺを思いっきり引っ張ってきました。

「ひたたた・・・っ」

「じゃあ何?友達になってからずっとバレたらどうしようって考えてたの?バッカじゃないの!?そんなことぐらいで友達止めるような小さい器してないわよ!」

そう叫ぶと両手を離し私を抱きしめるアリサちゃん。

「もっと信じなさいよ。私達、友達なんだから・・・」

その言葉を聞いた瞬間、私は溢れる涙を止められなかった。

「っ!うん・・・うんっ!」

私はいつの間にかアリサちゃんを抱きしめ、彼女の肩を借りて泣いていました。

 

「落ち着いた?」

「うん、ゴメンねアリサちゃん」

よく見るとアリサちゃんの目も真っ赤です。

私の為に泣いてくれる友達がいる、それがたまらなく嬉しかった。

「ハルナちゃんもありが・・・」

ありがとう、そう言おうとした私は言葉を失いました。

「ヴぇえええええええ~」

「ヴぁああぁぁああああぁ~」

テーブルを挟んだ向かい側でハルナちゃんとハルナちゃんのお父さんが号泣してました。

「二人が泣いちゃった直後にもらい泣きし始めちゃったのよ」

そう説明するお姉ちゃんの顔は引きつっていました。

隣の恭也さんも若干引いています。

「グスッ、ヂ~ンっ!ふぅスッキリした・・・」

さんざん泣いてようやく落ち着いたハルナちゃんは鼻をかんでから一息つきます。

「ぐず・・・どうさん、ずごい顔」

「はるなだって、まだ鼻水たれてるじゃなか、ズズっ・・・」

「・・・フフッ」」

ハルナちゃん親子のやり取りを見てたら不思議と笑みがこぼれてしまいました。

「あ、すずかようやく笑ってくれたね」

「えっ?」

そう指摘しながらハルナちゃんは微笑みます。

「うんうん、やっぱすずかには深刻な顔よりも笑顔の方が似合ってるよ」

その言葉に私の心はキュンと締め付けられるように感じます。

「ハルナー、カッコいいこと言ったところで悪いけれど・・・まだ鼻水垂れてるから」

そう、ハルナちゃんの鼻からツツーっと垂れる鼻水が全てを台無しにしていました。

「なんですとぉ!?」

慌ててゴシゴシと鼻を拭くハルナちゃんに私はまたしても吹き出してしまいました。

「フフッ、あははっ・・・」

つられて周りのみんなも笑い出します。

暖かい場所・・・大切な家族と友達に囲まれた優しい世界。

そっか・・・ここが、私の居場所なんだ。

「ハルナちゃんもありがとう」

私を助けてくれたこと、私の秘密を受け入れてくれたこと、その両方にお礼を言います。

「ふっふっふ、礼には及ばないのだよ」

エヘンと胸を張りながらそう返すハルナちゃん。

「その、それでね・・・?」

「うん?」

私はハルナちゃんたちにもう一つの秘密がある事を離します。

「私達夜の一族はね、秘密を知られたら記憶を消すか、もしくは知った人とパートナーになって秘密を共有する決まりがあるの」

その言葉にアリサちゃんとハルナちゃんが顔を見合わせます。

「えっと、パートナーって、その・・・・」

「あれだよね?恋人とか嫁とかそんな感じ?」

ハルナちゃんのたとえに私はドキリとします。

「えっと、違うの!いや、違っては無いけれど・・・その、友達とかそういうのだよ」

私が答えると二人はホッとします。

「そ、そうよね。友達よねっ!」

「いや~まさか同性から告白されたらどうしようかと思ったよ。心の準備ができてないもん」

「・・・まてまて、おかしいでしょ?じゃあ何?心の準備ができてたらOKなの?おかしいでしょ!?」

「何言ってるの?女の子同士なんてリリカルな世界でなら普通でしょ?」

「普通じゃないから!てかリリカルとか訳わかんないから!」

二人とも仲いいなぁ・・・。

「まぁ、アホなハルナは置いといて、水臭いわよすずか。私達、とっくに友達じゃない」

そういってアリサちゃんは私に手を差し出します。

「これからもよろしくね、すずか」

「っ!うんっ・・・!」

嬉しさのあまり私は飛びつくようにアリサちゃんの手を握り返しました。

「これで私はオッケーね、あとは・・・」

そう言うとアリサちゃんは私の背中を押してくれます。

「・・・ハルナちゃん」

ハルナちゃんの前に立つ私・・・。

同時にハルナちゃんもソファーから立ち上がります。

「その、さっき説明した通りなんだけど、私、吸血鬼だけど・・・これからも、友達でいてくれる?」

勇気をもって私はそう言います。

「・・・・・・」

そんな私にハルナちゃんは笑顔で・・・。

「やだっ!」

拒否してきました。

SideOut

 

「・・・え?」

私の答えに驚いたのか、すずかは目が点になっています。

「ハ、ハルナちゃんっ!?」

「ハルナ!あんた何言ってるの!?」

すぐさま忍さんやアリサから驚きと非難の混じった声が上がります。

「・・・ハルナちゃん、どうして・・・」

数秒の間をおいて、すずかの顔が見る見るうちに絶望に変わっていきます。

むぅ、これは私の意図が全く伝わっていないようです。

隣を見れば父さんが頭を押さえてヤレヤレとため息・・・。

言葉が足らなかったと言いたいようです。

「すずか、よく聞いて」

なのでちゃんと説明しましょう。

「私はね、秘密を守る為とか一族の決まりだからとか・・・そんな理由ですずかと友達になるのは嫌・・・」

私はそう言いながらすずかの手をギュッと握った。

「そんな事抜きにあなたと、すずかと友達になりたい。すずかが好きだから友達になりたいの・・・」

すずかの家にもいろいろあるのでしょう。

でも、友情や愛情っていうものに理由なんていらないんです。

先ほどと同じように、すずかは一瞬硬直したと思ったらボロボロと泣き始めてました。

「す、すずか!?」

まさかの泣かれるとは思ってなかったのにマジ泣きされ私もうろたえます。

「わ、わたしも・・・」

拭けども拭けども流れ落ちてくる涙をひたすら拭いながらすずかが口を開きます。

「わたしも、ハルナちゃんが好きっ、ハルナちゃんと友達になりたいっ!」

どうやら彼女にも私の考え、思いが伝わったみたいです。

「うん、私も」

そう言うとすずかは泣きながら私に抱き着いてきました。

「その、さっきは言葉足らずでゴメンね・・・」

私の謝罪は聞こえなかったのか、すずかは私の胸でわんわん泣き続けます。

そんなすずかを落ち着かせるように、優しく頭を撫でる私。

この瞬間の事を私は一生忘決してれない。

マリーに続いて二人目の、そして生涯で一番の親友であるすずかと友情を結んだこの瞬間を・・・。

「それにしても、すずかっていい匂いするな~」

「あんたね・・・せっかくいいシーンなんだからオチをつけるんじゃないわよ!」

あ、あとアリサとも親友になりました。

「あたしはついでかっ!って、そうだ。ハルナ、結局あんたあの時何したのよ?あいつの目が急に効かなくなったじゃない?」

あいつ?あぁ、あの氷村ふんたーのギアスもどきか。

「あれ?目に内蔵されてるレーザー照準器であいつの角膜傷つけたの」

普通に使えばただのレーザーポインターですがパワーを上げれば目くらましや微小ですが目を傷つけることもできます。

「・・・って、エロビーム使ってるのあなたじゃない!」

私の説明を聞いてた忍さんが突然声を上げます。

「え、エロくないもん!第一これビームじゃなくてレーザだもん!」

忍さんの失礼な物言いに異議申し立てをしていると再びすずかが笑みを零します。

もしかしたらすずかに笑ってほしくて、自分から笑いを取りに行ったのでしょうか。

なら、同じくお姉ちゃんな私としてはそれに乗ってみたいと思います。

「第一、忍さんのさっきの目!なんかエロかったです!ね?恭也さん!?」

「え?俺っ!?」

「恭也!エロくないわよね!?」

こうして私と忍さんは恭也さんも巻き込んでコントを続けます。

それを見たすずかとアリサが笑い転げているのを見た忍さんの顔はとても嬉しそうでした。

ちなみにこのコント、さんざん弄繰り回された恭也さんが最終的にキレて神速なチョップを私たちに振り下ろして幕を閉じましたとさ、チャンチャン。

 

「それじゃあ私は先に戻るよ」

月村邸の玄関で靴を履きながら父さんは言います。

本来は父さんと一緒に宿に帰るつもりだったんですがすずかが話してくれないのでお泊りすることになりました。

「うん・・・父さん、いろいろごめん」

情報漏洩もそうですがかなり心配させたみたいですから。

「全く、そう思うんだったら今度からは一言言ってから行動してくれよ?」

「うん」

私は返事すると父さんは苦笑しながらワシャワシャと頭を撫でてきます。

マッドで変態で色々暴走しがちですが、やっぱり父さんは私の大切な父さんです。

「それじゃあ娘の事をよろしくお願いします」

「いいえ、こちらこそ。本日はありがとうございました」

忍さんとあいさつを交わしてから父さんは玄関の扉を開けます。

「ああ、例の件、今週中に済ませておきます」

「分かりました、その折はよろしくです」

・・・何のことでしょう?

泣き止んだすずかとお話しているときに二人で何やら話していましたが・・・。

結局何の事か分からないまま二人はいい笑顔でサムズアップし合ってから父さんの退出と共にお開きになりました。

その後、私はすずかの部屋ですずかとアリサと一緒に話してゲームして、簡単な魔法を見せたりしてから一緒にお風呂に入り、それから三人でベッドで寝ました。

入浴シーンは各自でご想像ください、たぶん湯気や謎の光が仕事して胸とか大切な所とかは隠してくれたはずです。

あと一緒に寝ましたが性的なシーンは一切ありません、本作品は健全な全年齢向け小説ですのであしからず。

「ねえ、ハルナちゃん・・・その、さっき女の子同士でも恋人なれるって言ってたの、本当?」

・・・全年齢向け、だよね?

 

朝・・・。

「・・・うん、全年齢向けだった」

「何言ってるのよ?」

あれから本気の目をしたすずかを説得してなんとか友情で思いとどまらせることに成功しました。

「もう行っちゃうの?」

悲しそうな顔で聞いてくるすずか。

「うん、今から行かないとたぶん今日中に帰れないから・・・」

現在午前10時ちょい過ぎ。

今から宿に帰って荷物をまとめて予定の回収ポイントで巡回中の次元航行艦に拾ってもらってそこから転送ポートで近場の管理世界に転送、そこから更に世界間連絡船を乗り継いでミッドチルダに到着する頃には夜になっています。

仕事は明日から、ちなみに巡回艦に拾ってもらえなかったら一週間は地球に足止めなので残念ながらこれ以上長居はできません。

「そっか・・・また、会えるよね?」

不安げにきいてくるすずか、それを見て私は昨日したように優しく頭を撫でます。

「んっ」

「大丈夫、また遊びに来るよ。なんてったって私らは親友、ズッ友だもん」

「・・・うんっ」

私がそう言うとすずかも嬉しそうに頷きます。

滅茶苦茶笑顔がまぶしいです。

「必ずまた来る、約束だよ」

「うん、ハルナちゃん・・・」

「・・・あんた達さぁ、いちゃつくのはいいけれど・・・時間大丈夫なのハルナ?」

何やらすずかと二人だけの世界に足を踏み込みかけていたところで横からアリサの声を聞き、現実に引き戻されました。

しかし、時間・・・?

「へっ?んん・・・?あぁっ!」

そこで帰りの便が迫っていることを思い出す私。

「ヤバイっ!じゃあ二人とも、そろそろ行くからまた逢う日までアリーデヴェルチ!」

そう言って二人に背を向け走り出します。

「ハルナちゃーん!またねー!!」

「たまには連絡しなさいよーっ!」

背後から見送る親友たちの声が聞こえますがハードボイルドなハルナちゃんは決して振り返りません。

決して寂しくてちょっと泣きそうになってるからじゃありませんよ!

暫く全力疾走し、月村邸から大分離れ、最初に降り立った海鳴の地・・・海鳴大学病院前に到着します。

「・・・おや?」

そしてバスの時間に間に合ったことに安心しているとそれが目に入りました。

栗色のショートヘアの可愛らしい女の子、多分歳はすずかやアリサと同じくらいでしょうか・・・。

しかし最も目を引くのは彼女が座っている物、車椅子です。

脚が悪いのかその美少女は車椅子に座って異動していました。

まあ、病院の前です。

脚の診察に来た人かもしれません。

その車椅子のタイヤが歩道の段差に引っかかり身動きが取れなくなっています。

「んんっ、ふんぬ・・・!」

頑張って脱出しようと試みますが中々うまく行きません。

時間が悪いのか、周囲にいるのは彼女を除いて私だけです。

この場合とる行動は一つです。

「手伝おうか?」

そういいながら私は美少女に近づきます。

「へ?ああ、おねがいします」

すると目の前の美少女は関西弁で返してきます。

ほんわかしたイントネーションからして大阪ではなくて京都の方の子でしょうか。

「よっこいしょっと・・・」

手押しハンドルを握り、ちょっと下に力を入れると車いすの前輪が少し浮き上がります。

そのまま前に押し、車止めの上に前輪が乗ったのを確認するとハンドルを持ち上げながら前に押します。

無事後輪も歩道に乗りました、大丈夫そうですね。

「助かりました、ほんまおおきにな」

「ふっふっふ、礼には及ばんのだよおぜうさん。病院まで行くの?なら正面ゲートまでご一緒するよ?」

乗り掛かった舟です、どうせすぐそこなんだから最後までエスコートしましょう。

「ホンマにっ!?やったぁ!」

すぐさま嬉しそうに了承する女の子。

知らない人にホイホイついて言っちゃダメでしょうに、この子の将来が心配ですよ。

「でもよかったん?バスに乗ろうとしてたんじゃ・・・」

病院の正面入り口に就いたところで女の子が聞いてきます。

「大丈夫ダイジョーブ、さっき時刻表見たけど駅行のバスが来るまでまだ余裕あるから」

自信満々に言う私に女の子は訝し気な表情を浮かべます。

「ん?変やな、私よくこの時間にここ通るけどいつもバス今頃来とるで?」

「・・・へ?」

地元民からの有力な情報を得た直後、バス停の方からディーゼルエンジンの音が聞こえてきました。

「・・・もしかして、平日の時刻表見てたんとちゃう?」

ちなみに今日は日曜日です。

「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」

ヤバイ、超ヤバイです!

今ここであのバスを逃したらミッドに帰れません。

一週間すずかのお家でお泊りコースです。

いや、それ自体は嬉しいんですが帰った後で始末書の山脈に挑まなければならなくなります!

「ゴメン、それじゃあね!あぁっ!待って!置いてかないでぇっ!!」

既にお客さんの乗り降りを終え、走り始めたバスを追うべく、私は全力で走り始めました。

 

Side女の子

「なんや、えらい元気な子やったなぁ」

ヒーローみたいに颯爽と現れたと思ったら台風みたいに慌ただしく去って行った。

「はやてちゃんっ」

「あ、石田先生!」

そこでちょうど出迎えてくれた主治医の石田先生に車いすを押され私たちは病院に入っていきました。

「そう言えば、名前聞きそびれてしもうたわ・・・」

もしまた会えたら、その時は改めて御礼を言って、それからちゃんと名前聞かんとな。

SideOut

 

「そう言えば父さん?」

ミッドに向かう連絡船のキャビンで私は父さんに質問します。

「ん?何だい?」

「昨日忍さんと何話してたの?」

私がすずか達と友好を深めているとき、父さんは忍さんと何やら話していました。

帰る時もかなり仲よさそうでしたし。

「クックック・・・あれはね、ハルナの改造計画を練っていたのさ!」

・・・うわぁ。

「何でそんな嫌そうな顔をするんだい?」

「だって、忍さんてなんか父さんと同じにおいしない?」

私が戦闘機人だって知った途端かなり食いついてきたし、あの人絶対マッドだよ。

「勿論だとも!彼女には私と同じ匂いを、そして私にはない発想を感じ取った!私と彼女が組めばそれはもうすんごい新兵器が生み出せるはず!」

後日、とある事件で父さんと忍さんの共同開発した義手を使ったところ、忍さん考案の自爆装置のせいでなんかもう色々大変なことになりました。




車いすの少女、一体何神はやてなんだ・・・(棒)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第12.5話「総集編、別に読まなくても本編には何ら影響はないよ。でも読んでもらえたら嬉しいな、作者が・・・」

予告通り総集編、と言うか設定集的な何かです。
今回もまたよそ様の作品と設定がクロスしています。
拙かったらその部分は削除しますのでご報告ください。

2018年6/13
妹たちの誕生年を修正しました。


機人長女リリカルハルナ

第12.5話「総集編、別に読まなくても本編には何ら影響はないよ。でも読んでもらえたら嬉しいな、作者が・・・」

どうも読者の皆さん、ハルナスカリエッティです。

はい、そんなわけでやってきました総集編。

今回は私の設定やらこれまでのあらすじを年表にしてまとめていこうと思います。

てなわけでドン。

 

ハルナ・スカリエッティ

出身地:次元世界のどこかにある秘密研究所(一応書類上はミッドチルダのクラナガン)

生年月日:新暦50年6月5日、16歳(アニメ1期開始時)

所属:時空管理局地上本部首都防衛隊→同、特別捜査班(ゼスト隊)→本局遺失物管理部機動2課第2特別捜査隊

家族構成:父2人、母1人、妹14人、祖父3人・・・もう訳わかんないなこれ。

魔導士ランク:空戦AA

デバイス:マギア・イェーガー

タイプ:近代ベルカ式、射撃型

魔力光:白に近い青

IS:フラスコオブアルケミスト(錬金術師の試験官)

無機物元素変換、無機物(有機物でも木材などの加工されたものは可)を分子レベルで作り替える。

  例鍋をフライパンへ、ベニヤと釘を犬小屋へ、等。

  構造が分かれば電子回路の様な複雑なものも精製可能。

 

父さんであるジェイル・スカリエッティが最高評議会からの指示を受けてとある世界の秘密研究所で製造し新暦50年に誕生。

当初父さんは私をベースにナンバーズを量産して時が来たら彼らに反逆する積もりだったようですが、当時赤ん坊だった私をみて心変わりがあったのか反逆ではなく彼らの手の届かないところへの逃避行に切り替えました。

でも私が常日ごろ妹が欲しいって言ってたせいかナンバーズの研究は続けていたらしいです。

性格は見ての通り天真爛漫、文武両道才色兼備なパーフェクト美少女です!

・・・おいちょっと待て、今アホの子って言ったやつ出てきなさい。

コホン、性能は父さん曰く、『原初にして究極の戦闘機人』を目指したらしく、えらくハイスペックです。

古代ベルカの騎士の遺伝子と父さん自身の遺伝子を融合させたらしく生まれて間もないのにAランクの魔力持ち、現在は訓練や実戦で経験を積んでAAまで成長しました。

魔法だけでなくSランクの肉体強化と高出力のレリックジェネレータのおかげで純粋な身体能力も高いです。

ただ放熱関係の問題は未だクリアーできていないので考えなしに全力かどうしたらすぐオーバーヒートしてしまいます。

いうなれば滅茶苦茶足の速い短距離ランナータイプです。

長期戦が予想される場合はできるだけ力を絞って戦うためにあまり活躍はできないかもですが最終決戦になれば本編主人公にも負けないくらいの暴れられます。

ヴィジュアルは父さん譲りのツンツンはねたくせ毛、ただし色は紫ではなく銀髪です。

何でもベースにしたのがチンクと同じ遺伝子だったらしいのでくせ毛な所以外は結構彼女に似ています。

と言うのも作者がリリカルなのは小説を書く際銀髪眼帯のロリッ子オリ主を出そうとしていたそうなんですが、数年構想を練っているとアニメ3期・・・リリカルなのはStrikersがテレビ放送されそこにいたのは銀髪眼帯の幼女・・・チンクがいるじゃありませんか!!

「やべぇ!公式に先越された!いや、まてよ・・・チンクさんの姉のオリジナル戦闘機人ておいしいキャラじゃね?」

そんな安直な発想のもとに小説執筆は始まり、艦これとガルパンにはまり忘れ去られること数年・・・HDの整理中に発掘された小説がこうして投稿されることになったのです。

バリアジャケットは某ジャーマンな国の将校軍服がモデル。

プリーツスカートと乗馬ズボン、どっちがいいか検討中。

CVですが作者の脳内では園崎未恵さん(501ラジオでやったブリブリなトゥルーデちゃんの方w)

まだ暫定なのでむしろあの人じゃね?という推し声優がいたら言ってください。

 

次は私の誕生から現在に至るまでの時系列をまとめてみました。

 

 

新暦50年

ハルナ誕生、これにより人と機械の融合技術が劇的に進歩する。

 

53年

ハルナ、前世の記憶を思い出す。家族が道を踏み外さないようにするために立ち上がる。

 

54年

マギア・イェーガー完成。

 

スカリエッティの密告により秘密研究所が管理局の強制捜査を受ける。

 

ハルナ、第22管理世界「スキピア」に転送されるもロストロギア『闇の書』の守護騎士に襲撃されリンカーコアを蒐集される。

時空管理局艦船『エスティア』及び『アースラ』、闇の書を封印。同世界でハルナを保護するもエスティア艦内にて封印していた闇の書が暴走。艦長のクライド・ハラオウンと共に脱出する際にハルナ重傷を負う。

 

スカリエッティと最高評議会による『第1回ハルナの親権争奪戦』開催。

 

ハルナ、ミッドチルダの病院に入院。最高評議会のメッセンジャーであるジョン・田中からの要請で管理局に入局する。

 

55年

ハルナ退院、すぐさま陸士校で短期訓練プログラムを受講。履修後士官育成プログラムを受講。執務官に就任。

 

レジアスとゼスト、地上事件における人員・戦力不足に悩む。

 

スカリエッティ、ナンバーズ製造の為にタイプゼロ開発計画に参加。

ウーノ、ドゥーエ誕生。

 

56年

トーレ誕生。

 

58年

ギンガ誕生。

 

59年

チンク、クアットロ誕生。

 

60年

ディエチ、スバル誕生

 

マリエル・アテンザ、違法魔導士捕縛の際、ハルナを庇い負傷、ハルナの手で直接病院に搬送される。

 

クライドとレジアス、秘密裏にハルナを見舞う。レジアス、戦闘機人計画の破棄を決断。

 

『第38回ハルナの親権争奪戦』開催。

 

61年

ハルナ、ナカジマ家の庇護下に入る。ゼスト隊に配属される。

 

セイン誕生

 

62年

 

ハルナ、違法研究所の強制捜査中父、スカリエッティと再会。

スカリエッティ、違法研究を罪に問われるも恩赦により減刑。5年間の管理局就労を命じられる。

 

ノーヴェ、ウェンディ誕生

      

63年

オットー、ディード、セッテ誕生。

これまでの4人に加えクイントも参加した『第47回親権争奪戦』が開催、セッテを除く年少組がナカジマ家に引き取られる。スカ家、ナカジマ家の隣に引っ越し。

 

ハルナ本局へ移籍、遺失物管理部機動2課第二特別捜査隊に配属される。

ハルナの始末書の数がこれまでの倍になる。

 

次元犯罪者集団が管理外世界へ逃亡、現地の戦争に傭兵として参加。

ハルナ、ISAF(国際治安支援部隊)として現地に派遣、円卓と呼ばれる戦域で現地軍の少女士官と共闘する。

 

64年

ハルナ、一年の任期を終えミッドチルダへ帰還。

ハルナ、父スカリエッティと共に休暇を取り地球へ、コミケ初参加。

ハルナ、アリサとすずかに出会う、翠屋で友好を深めるもアリサとすずかが誘拐される。

アリサとすずか、ハルナに救出される、すずか、自身の秘密をハルナとアリサに話す。

ハルナ、すずかとアリサと親友の契りを交わす。翌日ハルナ、車いすの少女に出会う。後にミッドへ帰還。

 

・・・うん、時系列にしてみたはいいですがえらくハードです。

補足ですが妹たちの誕生はポッドから出た時を指します。

なのでその時点である程度の知識を持っています。

ちなみにウーノ、ドゥーエ、トーレですが、結構成長した状態で生まれています。

何でも育児に自信が無い父さんが助手を欲したとか、おかげで年長三人ともミルクもおしめ交換もプロベビーシッター級です。

そのせいなのか末っ子のセッテがトーレから離れたがらないので引き離すのも可哀想と言う事で彼女はスカ家に残ることになりました。

まぁ、家が隣同士なので何かあってもすぐ駆け付けられるんですけどね、お金がたまったら二世帯住宅に建て替えたいです。

 

『機動2課について・・・』

遺失物管理部はアニメ本編同様ロストロギア関連の事件や事故を担当する部署です。

本作オリジナル設定ですが機動1課は実際に遺跡等に潜りロストロギアを回収する探索、発掘部隊。

機動2課はロストロギアの違法取引や売買及び不法所有、ロストロギアを用いた犯罪に対処するための強制執行能力の高い部隊になっています。

私が所属するのはそこの第2特別捜査隊です。

第1特別捜査隊、通称第1小隊は優秀な魔導士を集めたエリート集団なんですが私のいる通称、第2小隊は能力はあるけれど問題行動の目立つ組織的に落ちこぼれな人材が集まる部隊です。

海のお偉いさんとしてはぜひとも私が欲しいらしいんですが局員の間に私の単独行動時代の狂犬っぷりが広まっており、本当に落ち着いたのか第2小隊に隔離して様子を見ることにしたらしいです。

私としては愉快な仲間たちに囲まれて全く退屈しない日々に満足してます。

皆に中てられてはっちゃけたせいか始末書の数もだいぶ増えましたが・・・。

 

『ぅわょぅじょっょぃ』

分からない人には全く分からないと思いますが知ってる人ならニヤリとするこのネタ。

某アニメ化もされた戦記小説のモデルになった作品だとか・・・。

事の発端は機動2課が追っていた犯罪集団が管理外世界に逃亡したことが事の発端でした。

現地では地下資源を巡って『王国』と『帝国』が戦争をしている世界でした。

犯人たちはそこで帝国側に加担、傭兵として戦争に参加したのです。

彼ら目的は王国が国宝として所有しているロストロギア、聖剣と呼ばれる強力なアームドデバイスでした。

管理外世界への武装隊の大規模派遣は例がなく、陸海双方で会議が紛糾したそうですがロストロギアが犯罪者にわたる危険性がある為最終的に可決、アースラをはじめ次元航行艦数隻が武装隊2個大隊と共に現地へ派遣されました。

ロストロギア絡みの犯罪とあり機動2課からも私が派遣され現地で何度も実戦を経験しました。

戦闘機人のチートボディのおかげで危なげなく戦えましたが戦闘終了後はしばらくトイレから出られず、暫く不眠症で睡眠導入剤が手放せなくなりました。

暫くして慣れてきたころ、何故か敵から変わった二つ名で呼ばれるようになりました。

「リボン付きの死神」・・・。

派遣される前日に妹達からお守りに渡された青いリボンをつけて戦っていたのですが、超機動で攻撃をかわすたびに靡く青いリボンがえらく目立ったのが理由らしいです。

で、そんな戦場の空で件の美幼女・・・王国軍の魔導士官であるM少佐(プライバシー保護のためイニシャルのみ記載)と出会い、何度か共に戦いました。

で、終戦直後に任期満了で帰還。

何とか無事に生き残れましたが最終決戦でお守りのリボンは燃えてしまいました。

てかあの少佐、無口な子でしたが不思議と馬が会いましたね。

もしかして彼女も転生者だったりして、まさかね・・・。

 

他にも離したい小ネタはいくつかありますがそれはまた次の総集編まで取っておきます。

またここはどんな設定なの?ここの説明欲しい、ここ間違ってるぞ、ハルナちゃんカワイイ!などのご意見、質問があったらコメント等でお願いします。

次回の総集編、(1期終了後を予定)で発表します。

それでは皆さん、アニメ本編でお会いしましょう、リリカルマジカル頑張ります!

 

・・・あ~、づがれだ~。

カメラに向かって話すのって緊張するよ~。

って、もうこんな時間・・・急がなきゃ深夜アニメ始まっちゃうじゃん。

いや、それよりもこの時間なら妹たちは寝てるはず、可愛い寝顔を私だけが独占?グヘへ・・・。

ん?どうしたのマリィ?そんなにあわてて・・・え?何?まだカメラ回ってる・・・え゛!?

マジで!?ちょっ、なし、今の無し!カットして!って、生放送!?

ギャー、止めて、とにかくカメラ止め・・・!

(カメラ転倒、ノイズ、暗転・・・)




いよいよ次回からアニメ本編に絡んできます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

本編突入編
第13話「お姉ちゃん参上!三人目の魔法少女なの」


途中まで書いていたのが完成しました。
今度こそ本当に打ち止めで更新が遅くなります。

前回はたくさんの感想ありがとうございました。
まさか総集編なのに6通も感想が来るなんて驚きです。
もうこれからは毎回総集編でもいいよねw
駄目ですか、そうですか・・・(´・ω・`)
兎にも角にもいよいよ本編突入!機人長女リリカルハルナ、始まります。
(以下op)


漆黒の闇の中を一隻の船が航行している。

L級巡航艦、8番艦『アースラ』・・・時空管理局次元航行部隊に所属する巡航艦の一隻だ。

その艦橋に一人の若い女性士官が入ってきた。

「皆どう?今回の旅は順調?」

「やっぱり向こうに着いたら最初に行くのは『と●のあな』かな?」

見た目の年齢は恐らく20代前半、それに比して階級は身に纏っている制服からかなり高い。恐らく佐官以上だろう。

「はい、先に観測された小規模次元震もあれから確認されていません」

「ふむ、●ロンブックスも捨てがたいが・・・しかしハルナ、君の年齢じゃあ買い物リストの半分も購入できないんじゃないかな?」

計器を操作していたブリッジクルーが振り返り応える。

「事件の中心にいると思われる二組の魔道師達も今は活動を休止しているようです」

「ムムム・・・じゃあ私がソフ●ップでゲームとDVD買ってくるからそっちは父さんがお願い」

艦橋の隅に設えた給湯スペースで10代半ばの少女がお茶を入れる。

「小規模の物とはいえ次元震の発生を見過ごすことは出来ません」

「心得たよ。集合場所は指定しておいたメイド喫茶だから間違えないように・・・」

キャプテンシートに腰掛け、差し出されたティーカップを受け取る女性士官。やはり彼女がこの艦の艦長なのだろう。

「はい、早急に解決します」

「りょ~かい。あと途中でボーク●でねん●ろいども観たいから・・・」

キャプテンシートから一段下に位置するオペレータ席、その前に立つ少年が待機状態のデバイスを手に立っていた。

「・・・って、そこ!さっきから何を話してるんだ!?」

 

機人長女リリカルハルナ

第13話「お姉ちゃん参上!三人目の魔法少女なの」

 

クロノの声に私と父さんは作戦会議を中断する。

重要な会議なのになんで邪魔するかなぁ・・・。

「いったいドコが重要な会議だ!?遊ぶ計画立ててるようにしか見えないじゃないか!」

まったく、本当にクロノは失礼な奴だなぁ・・・。

「同感だよ、立ててるようにじゃなくて実際に計画を立ててるに決まってるじゃないか」

「「ねーw」」

絶妙なタイミングでシンクロする私と父さん。

うん、やっぱり親子の絆はすばらしい。

現在私と父さんはアースラに乗っています。

数日前私が所属する機動2課にロストロギアの案件が回ってきました。

何でもスクライア一族が発掘したロストロギアが本局に輸送する途中事故で流失してしまったらしいです。

さらに輸送に立ち会っていたユーノ・スクライアさん(9歳)が責任を感じて単身捜索に出て、それきり連絡が取れないという報告も受けています。

そのためあの近辺をパトロールする予定だったアースラに便乗、現地まで送ってもらうことになりました。

しかも、目的地は第97管理外世界『地球』・・・そう、地球なんです!

前回の一件以来忙しくて鉄道の無い時代の馬車馬の如く働いているせいで全く行けなかった地球です!

そこに経費で行く機会が訪れるなんて!これはもう秋葉原が私を呼んでいるに違いありません!

てなわけで秋葉原・・・もとい、地球に着くまでの間に父さんとアキバ巡りのプランを立てていたのでした。

「以上、回想終わり。どうだ!私がここにいることに何の問題も無いだろう」

「会話の内容が問題なんだ!勤務中だろう!?」

そうは言うけどクロノと違い員数外の人員である私たちは航海中はぶっちゃけ暇なんです。

デバイスのメンテはとっくに終わってるし模擬戦なんてやり飽きました。

次元空間だからインターネットは繋がらないしあとは自室に持ち込んだ箱○でFPSプレイしてるか父さんと駄弁ってるしかすることが無いんです。

ちなみに好きなスタイルは火炎放射機を使ったモヒカンプレイ。ヒャッハァ!汚物は消毒だぁ!ただし即効で芋砂からヘッドショット喰らいます。あべしっ。

「だからってブリッジで雑談する奴がいるか!他のクルーの邪魔になるだろう!」

て言ってますけど皆さん実際のところどうなんですか?

「え?私はにぎやかでいいと思うけどな~」byエイミィ

「私は気になりませんよ?」byランディ

「いつものことじゃないですか、今更なにいってるんです?」byアレックス

ほぅら、問題ありません!(ドヤァ)

「・・・・・・」

ものすっごい嫌そうな顔で睨んでくるクロノ。

全く、何を一体どうしたらクライドさんの遺伝子からこんな石頭が生まれるのでしょうか?

母親似?ありえませんね、だってほら・・・。

「はぁ~美味しいわぁ」

そこでホッコリした顔で緑茶入り砂糖(誤植ではない)を美味しそうに飲んでいる美人さんこそアースラ艦長にしてクロノの母親、リンディ・ハラオウンさんなのですから。

そういえばアリサやすずかにも会いに行きたいですね、あと病院で会ったあの車いすの女の子も元気にしてるでしょうか?時間があったら皆に会いに行きましょう。

 

クロノに完全勝利した2日後、アースラは第97管理外世界近傍に到着、そこで魔道師による戦闘を確認しました。

呼び出された私はブリッジで二人の魔道師が木の怪物相手に共闘しているのをモニター越しに眺めています。

「ハルナ、どう思う?」

隣にいた父さんが問いかけてきます。

「そうだねー、魔法少女もののアニメならやっぱりあっちの白い子が主人公じゃないかな?」

白い服に魔法のステッキ、そしてお供の喋る小動物。

何処から見ても正統派の魔法少女です。

「確かに、そうなると向こうの黒い魔法少女はライバルポジかな?」

父さんの発言に私はもう一人の子、金髪ツインテの魔法少女を見ます。

なるほど、確かにその通りです。

黒い服に裏地赤の黒マントという見るからに悪者っぽい衣装。

おまけに獲物も真っ黒い戦斧、中央にある金色の宝石が目玉っぽくも見えます。

「恐らくそうだろうね、私の見立てでは白い子は魔法の国からやって来た小動物に助けを請われて魔法少女になった普通の女の子で物語が進んでいくとあの黒い子がライバルとして現れるんだよ」

「ああ、最初のうちは黒い少女の方が実力的に圧倒しているが戦いの中でに白い少女が成長して行き、最後は実力が逆転するんだろうね」

さすが父さん、分ってらっしゃる。

「そうそう、そしてぶつかり合ううちに二人の間に友情が芽生えてストーリ終盤かアニメ2期で共闘するんだよ」

「そうなると2期では新たな敵と第三の魔法少女も出てくるだろうね」

父さんと二人で和気藹々と語り合っていると・・・。

「・・・君達二人は一体何を話しているんだ?」

何やらこめかみ抑えながらまたクロ助が水を差してきました。

「え?魔法少女談義だけど・・・?」

見れば分るじゃないですか。コイツは一体何を言ってるんだ?

「今、バカにされた気がしたがそれは置いておこう。そうじゃなくて問題はあっちだろう!」

そう言ってクロノは二人が戦っている木の怪物を指差します。

「あっちって、ジュエルシードの融合体だけど、それがどうかした?」

アレの為に私は此処に来たんですから、知っていて当たり前でしょう。

本当にコイツは何を言ってるんだ?

「・・・ハルナ、いい加減君とは決着をつけなきゃいけない気がしてきたんだが?」

「何言ってるの仕事中だよ?目の前の事態に集中しなさい!」

「・・・(ビキビキ)」

全く、普段口うるさいくせに重要な局面で集中力を欠くなんて、まだまだオコチャマなんだから・・・。

状況からしてあの木の怪物がジュエルシード融合体なのは間違いありません。

んでそれと戦っているのが最初のほうで言ってた二組に分かれたジュエルシードの捜索者。

この魔道師たちはお互いに敵対しているようですが現在は共通の敵に対して共闘しているようです。

恐らくどちらかに捜索要請のあったユーノ・スクライアさん(9歳)がいると思われます。

あ、融合体がやられました。

しかし、あの魔法少女達・・・無茶苦茶強いです。

あの歳でAAAランクくらいの魔力持ってますよ。将来が楽しみなような怖いような・・・。

まあ将来の事はおいといて、私は今目の前の事案に対処しましょう。

「艦長、あの二人がガチンコ勝負を始める前に現場を押さえる必要がありそうなんでちょっと行って来ます」

私の発案にリンディ艦長はニッコリ笑顔で許可をくれました。

「ええ、よろしくね。ハルナさん」

「アイアイマム!」

ビシッと敬礼してから転送ポートの上に立つ私。

魔力光が溢れ転送座標が固定されます。

「ハルナ、いっきまーす!!」

カタパルトが無い事を残念に思いながら現場に飛びました。

 

Sideなのは

木に取り付いたジュエルシードの怪物を倒してから私はフェイトちゃんと対峙していました。

ついさっきまでは一緒に戦っていた仲ですが今この瞬間私達はジュエルシードを巡って戦う敵同士に戻ってしまいました。

「私が勝ったらお話、聞いてもらうんだから・・・!」

「負けないよ、勝つのは私だから・・・っ!」

張り詰めた空気の中、私とフェイトちゃんは同時に駆け出しました。

「てええぇぇぇぇぇい!!」

「はあぁぁぁぁぁぁっ!!」

互いのデバイスが激突する瞬間、目の前が光りにつつまれ・・・!

突如現れた女の子に私達のデバイスは受け止められていました。

マシンガンみたいなデバイスを持った灰色のバリアジャケットの女の子。

ツンツンはねた銀髪と気の強そうな金色の瞳がとても印象的な子でした。

その女の子は私達のデバイスを止めた直後大声で叫びました。

「双方そこまでっ!!」

SideOut

 

転送されたのは激突寸前の魔法少女達の間・・・間!?

「って!?」

急いで白い魔法少女のステッキをキャッチ!同時に黒い魔法少女の戦斧をイェーガーでガード!

ふぅ、ヘルメットが無かったら即死だった。

池田秀一さんの声でそう心の中で呟きながら私は大声で二人に告げました。

「双方そこまでっ!!」

「っ!!」

「!?」

うん、二人とも驚いてます。

表情からして突然現れたとに半分、あんた誰?って思いが半分といったところでしょうか。

お二人がどういう間柄なのかとかなんでジュエルシードを集めているのかとか聞きたいことは色々ありますがそれは後で教えてもらいます、取調室で・・・。

なので先ずはちゃっちゃとお仕事を片付けてしまいましょう。

「お取り込み中のところ大変失礼ですがこの中にユーノ・スクライアさんはいらっしゃいますでしょうか?」

名前からして男の子のはずですが目の前にいる二人は魔法少女。

まさか男の娘とかいうオチはありませんよね?

「えっ?スクライアはボクですけれど、あなたはいったい・・・?」

意外!それは小動物!!

なんと返事をしたのは白い魔法少女と一緒にいたフェレットみたいなお供の小動物だったのです!

まあ魔法少女の相方ですからね、喋れたとしても問題ありません。

噂に聞いた話だとスクライアの一族は遺跡の探索で狭いところにも入っていくそうですからその為に小動物に変身できるのかもしれません。

「あ、こりゃ失礼。私は時空管理局の遺失物管理部機動2課のハルナ・スカリエッティ執務官です」

IDを提示しながら自己紹介します。

「ご家族から捜索願いが出ていたので探しに来ました。いや~ご無事で何よりです」

背後で黒い魔法少女が「管理局!?」とか驚いてますが何ででしょう?何か悪さでもしたんでしょうか?

たとえば学校のガラスを全部割ったり盗んだバイクで走り出したり・・・。

とか考えながらスクライアさんと話していたら死角から魔力の反応が・・・!!

「・・・っ!?危ないっ!!」

慌てて直撃コースにいたスクライアさんと白い魔法少女をシールドで護ります。

シールドに衝撃が走り辺りが土煙で見えなくなります。

何これ!?誘導弾!?どこから?

不覚です、二人と一匹に気を取られていて気づきませんでした。

「フェイト!離脱するよ!!」

声のしたほうを赤外線センサーで見てみると成人女性と思しきシルエットが確認できます。

同時に黒い魔法少女が逃走を図ります。彼女の仲間でしょうか?

とにかくコイツは明確な公務執行妨害、逃走させるわけには行きません。

「逃がすかー!!」

黒い魔法少女に照準を合わせてトリガーを引きます。

銃口から飛び出たフォトンバレットは狙い違わず黒い子に命中。

非殺傷だから死ぬ事はありませんが逃走や抵抗をさせないよう死ぬほど痛いつくりになってます、しばらくは痛みで動けないでしょう。

え?リングバレット?とっさの事だったんで忘れてました、私もまだ未熟ということでしょうか・・・。

「フェイトっ!!」

砂埃が晴れてきたちょうどその時、先程誘導弾を撃ったであろうオレンジっぽい茶髪のお姉さんがフェイト言うらしい黒い子に駆け寄ります。

うん、でかい。何がとは言いませんが。

フェイトを抱き抱えるお姉さんとそれに銃口を向ける私・・・。

何かこの光景だけを見ると私が悪者っぽいですね。

とは言えこれもお仕事、いっぱいいる妹達を養う為にも情けはかけられません。

と言う事で心を鬼にしてお姉さんめがけてリングバレットを撃とうとしていると・・・。

「ダメェッ!!」

なんと白い子が私と二人の間に割って入ってきます。

「撃っちゃダメッ!!」

「えっ、ちょっ!?」

突然射線に割り込んできたので慌ててイェーガーを除けます。てか危ないでしょう!

そんなこんなやってるうちに茶髪のお姉さんは仮称フェイトさんを抱きかかえると跳躍、あっという間に私の射程外に逃げてしまいました。

「あーもう!被疑者が逃走、至急捜査線を敷いて!!」

エイミィに二人の追跡を頼みますが向こうもバカではありません。恐らく途中で巻かれるでしょう。

「はぁ~・・・すみません艦長。二人ほど逃がしました」

音声通信で艦長のリンディさんに謝ると向こうから映像つきで返事が来ました。

「仕方ないわハルナさん、気を落とさないで」

そう言っているリンディさんの声色は優しく、少なくとも怒っていないことは確かです。

どうやら始末書は書かなくて済みそうです、よかったよかった。

「それよりも二人をアースラまでお連れして、いくつか聞きたいことがあります」

早速事情聴取を行うようですね。

「了解です、参考人二名に対し任意同行を行います」

通信を切った私は困惑している一人と一匹に対し笑顔で事情を説明します。

「と、言うわけでお二人を母艦までお連れします」

ニッコリと笑いながらもどこからか逃げんなよゴルァ的なオーラが出ていたのか少女と小動物はたじろぎます。

これが私と彼女、アニメ本編の主人公である高町なのはとのファーストコンタクトとなりました。

・・・あれ?何か第一印象酷くない?



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第14話「お姉ちゃんとしては海軍の意見に反対である!なの」

やばいです、超やばいです。やばすぎてやばたにえんです。
何がやばいかって13話を投稿してからの閲覧数がやばいです。
わずか数日で一気に2万UA突破してしまいました。
評価もすげー付けられてます。
皆さんありがとうございます、心からお礼申し上げます。
嬉しいですけど正直何か怖いですw運気使い果たして今月中に事故死しそうw
そんな作者の不安を孕みつつ14話、始まります。

今回の話の内容から「アンチ・ヘイトは念のため」タグを追加しました。


Sideなのは

突然現れた女の子、ハルナちゃんに連れられて私たちは時空管理局と言う所の船の中にやってきました。

「は~・・・」

ユーノ君と同じ魔法の世界から来た船らしいですが、その船内はどこからどう見てもSF映画に出てくる宇宙船のようです。

「お疲れさん、彼女達が例の参考人だな」

「そだよ、艦長は自室?」

「ああ、君たちを待ってるよ」

海鳴から転送ポートと呼ばれる機械で船の中にワープしてきた私たちを出迎えたのは同じくらいの年齢の男の子でした。

「さて、初めましてだな。僕は時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。艦長がお待ちだ、着いてきてくれ」

そう言ってクロノ君は先頭に立って歩き出したところで一度こちらに振り向きます。

「ああ、そうだ。艦内は安全だからバリアジャケットは解除して大丈夫だよ。君も元の姿になってくれ」

クロノ君の言ったことがいまいちわかりません。

バリアジャケットは理解できたのですが元の姿?

「あ、はい。わかりました」

対してユーノ君は言葉の意味が分かったのか私の肩から下りると急に光りだし・・・。

「え?ふぇっ?」

どんどんユーノ君の身体が大きくなって・・・。

「ふぅ、なのはにこの姿を見せるのは久しぶりだねって、あれ?」

見た事の無い男の子になってしまいました。

SideOut

 

機人長女リリカルハルナ

第14話「お姉ちゃんとしては海軍の意見に反対である!なの」

 

「はわ、はわわ・・・」

超びっくらこいた顔で固まった白い女の子、そう言えばまだ名前を聞いていませんでしたね。

彼女の手はユーノ・スクライアさんを指さした状態で震えています。

「ど、どうしたのなのは?」

「・・・ユーノ君って、ユーノ君って普通の男の子だったのっ!?」

なのはと呼ばれた女の子がスクライアさんに大声で問う。

ん?なのは?どこかで聞いたような・・・昔読んだマンガかな?

「ええっ!?でも、最初にあった時は・・・」

「ううんっ、最初からフェレットだったよっ!」

二人の会話から察するにどうやらスクライアさん、最初にあった時は怪我をして消耗した魔力と体力を温存するために小動物に変身していたようで、それをそこのなのはさんに保護されたのでしょう。

しかしスクライアさんの方は怪我のせいか記憶が混濁していたようで小動物になったのはなのはさんに会ってからだと勘違いしていたようです。

いやはや、何ともまぁ魔法少女ものにありそうな微笑ましいハプニングです。

「じゃ、じゃあ温泉とかで普通に僕を連れて入っていたのってもしかして・・・」

そう、この言葉さえ聞かなければ・・・。

クロノとアイコンタクトするとすぐさま彼もうなずくとさっそく行動を開始。

まず、クロノが二人の間に割って入ります。

「えっ?」

「ふぇ?」

直後に私がなのはさんをスクライアさんから引き離す。

「え?なに?」

それを確認したクロノがスクライアさんの前に立ち言い放しました。

「ユーノ・スクライア、小動物等に変身して女性の着替えや入浴を覗くことは明確な犯罪だ。管理外世界であってもそれは変わらない」

「えっ?ちょっ!?」

クロノ・ハラオウン執務官から罪状を説明されうろたえるユーノ・スクライア容疑者(9歳)

「大丈夫?辛いと思うけれど事件があった時の状況、話してもらえないかな?あなたが望むなら被害届を出せるし裁判も起こせる。もしそうなったら弁護士も紹介するから」

「え?あの・・・」

二人から少し離れたところで私は被害に遭ったなのはさんから事件当時の状況を聞きます。

可愛らしい小動物に扮していたいけな幼女の入浴シーンを覗くだなんて太いヤロウです。

もし覗かれたのは私の可愛い妹達だったならその場でブチ殺してましたよ。

もしかしたら他にも余罪があるかもしれません、これからスクライア容疑者は取調室にお招きして私が直々にかつ丼でおもてなししてあげましょう。

さてさて・・・KGB式とシュタージ式、どちらでいきましょうか?ふっふっふ・・・。

 

「なるほど、それでユーノさんはそちらのなのはさんに協力を依頼したのね?」

場所は変わりアースラ艦長室。

結局なのはさんが被害届を取り下げた為、スクライア容疑者は厳重注意で終わりました。

そのあと私とクロノは二人を連れてアースラ艦長、リンディ・ハラオウン提督の私室にやってきました。

前から思ってたんですけどこの間違った日本文化全開の部屋はいつ来ても慣れません。

室内に盆栽が飾ってあるし同じく室内なのに鹿威しが「カコン」って鳴ってるし・・・。

最近ではこの前の旅行(10話~11話参照)で私が買ってきたお土産の木彫り熊も飾ってあり一層カオス度に磨きがかかっています。

そんな日本文化を勘違いした外国人感丸出しな部屋でスクライア容疑者、もといスクライアさんからこれまで起った事の詳細を聞きました。

事故で流出したロストロギア、ジュエルシードを追って地球に着た直後、ジュエルシードの暴走体の襲撃を受け負傷したこと。

傷が治るまで魔力を温存すべく小動物モードになったところでそちらの少女、なのはさんに保護されたこと。

再び暴走体に襲われやむなく巻き込まれたなのはさんにインテリジェントデバイス、レイジング・ハートを託しこれを封印してもらったこと。

以後、なのはさんに協力してもらいジュエルシードをいくつか封印、回収したこと。

流出したジュエルシードは全部で21個あり、ユーノさん達が6個回収したこと。

途中からさっき逃走した黒衣の魔導師、フェイトと呼ばれた少女が乱入してきたこと。

何度か戦ったがいずれも勝利できず、あまつさえ持っていたジュエルシードも一つ持っていかれ現在確保しているのが5個である事。

「んで、さっきの戦闘で私が確保したのが1つ、これも併せて無事確保できているジュエルシードは6つと・・・」

「はい、あのフェイトって子が僕たちの前で回収したのが4つですから残っているのは多くて11個です」

そう言うスクライアさんの顔色は優れません。

そのフェイトさんが彼ら二人の知らないところでジュエルシードを回収している可能性もあるのでそれを心配しているのでしょう。

「それにしても、ジュエルシードを発掘したのはあなただったのね」

そう、なんとジュエルシードを発見、発掘したのは目の前にいるスクライアさんだったのです。

で、事故とは言えなのはさん達の世界にジュエルシードをばらまいてしまったことに責任を感じて単身捜索にでたと・・・。

「責任感が強いのね、とても立派だと思うわ」

「だが、無謀だ。君に何かあればそれこそ取り返しがつかなくなる」

リンディさんが褒める横でクロノが無謀だと指摘します。

これは全面的にクロノに賛成ですね。

ジュエルシードの件で責任を感じているならなおの事私たちの到着を待ってほしかったです。

もし発掘者であるスクライアさんに何かあればジュエルシードに関する情報・・・その特性や対処法などが得られなくなってしまっていたところです。

なのはさんについても同様です。

いくら素質と強力な魔力を持っていると言ってもまだ9歳の女の子。

私みたいに特殊な生まれでもないのに専門の教育や訓練なしに無双できると思っているならそれはK●EIゲームのやり過ぎです、てかいくら呂布や張遼が強くてもあそこまで「山田ぁ!」とかできません。

「あの~、その「ろすとろぎあ」っていったい何ですか?」

話の腰を折るのが気まずいのか、なのはさんがおずおずと手を上げて質問します。

そう言えばこの子は混じりっけ無しの地球人、次元世界の事なんて分からないのが当たり前です。

「えっと、旧世界の遺産・・・って言って分かるかしら?」

リンディさんの説明を要約するとこんな感じです。

次元空間には地球の他にも様々な世界があってその中にはワープ進化的に超スピードで技術や文明が発達した世界がある。

その中には作った人たちすら制御できなくなりその世界を滅ぼすような物もあり、そんな滅んだ世界の跡地に残ったヤベー兵器や技術の遺産をまとめてロストロギアと呼ばれている。

「要するにイ●オンみたいなもんだよ」

「ふぇ?イデ●ン?」

さすがに平成生まれの魔法少女に富●監督が手掛けた伝説のジム神様は分からないみたいです。

最近じゃスパ●ボにも出てきませんからね・・・。

「あなた達が探しているジュエルシードもその一つ、先日起った次元振もジュエルシードが原因なの」

そう言われてなのはさんとスクライアさんは「あっ」と声を上げます。

数日前も今回の様になのはさんの例のフェイトさんはジュエルシードを巡り戦っていたのですがその過程でジュエルシードが暴走、小規模ながら次元振が発生し、最終的に何とかフェイトさんが怪我を負いながらも暴走を鎮めたそうです。

・・・あれ?

てことは何?私けが人に銃撃したってことじゃん。うわやべぇ・・・。

「たった一つのジュエルシードであれだけの威力、複数が同時に暴走した場合より強力な次元振・・・いいえ、それ以上の災厄、次元断層が発生してしまうかも・・・」

私が罪悪感から頭を抱えている横でリンディさんの説明は続きます。

黒光りするお高そうな湯呑茶碗に砂糖をドバドバ、ミルクをダバダバと流し込みながら・・・。

ほら、リンディさん。なのはさんが引いてますよ。

「聞いたことがあります、旧暦の時代に発生した次元断層でたくさんの世界が滅んだって・・・」

その話は私も聞いたことがあります。

まだおじいちゃんズが脳みそだけになる前の事で救えなかった命の事を嘆いていました。

あんな悲劇がまた起こらないようにと時空管理局を立ち上げたのだとか・・・。

「そう、人の手に余る力。本来ならばしかるべき場所に厳重に封印しなければならない物・・・」

そう言ってリンディさんは緑茶風味の砂糖を一口飲んでから言いました。

「なので現時刻をもってロストロギア、ジュエルシードの捜索は私達時空管理局が引き継ぎます」

「えっ?」

それを聞いたなのはさんは驚きの声を上げ、スクライアさんはうつむいたまま手をギュッと握ります。

「君たちは今回の事を忘れてこれまでの日常に戻るといい」

「で、でも・・・っ!」

クロノの言葉になのはさんは食い下がります。

まぁ、気持ちは分からなくもありません。

相手が専門家集団とは言え今まで自分たちが頑張っていた所に突然横からしゃしゃり出てきて後は自分たちがやるとか言われても納得できませんよね。

でもこれでいいんです。

なのはさんは未だ小学生、魔法なんてない世界の、平和な日本の女の子・・・。

危険な戦いに飛び込む必要なんて無いんです。

事件現場に必要なのはおまわりさんであって変身ヒーロやプ●キュアに来られても困ります。あ、デカ●ンジャーとか宇●刑事とかジャ●パーソンさんは警察に部類されそうな気がするんでギリギリ可とします。

つまり何が言いたいかと言えばいくら強くても民間人であるなのはさんは危険な場所に入っちゃいけないんです。

「まぁ、直ぐに納得はできないわよね。今日は帰って二人でじっくり話し合うといいでしょう」

だというのに、この人はなんてことを言うのだろうか。

「なっ!?かあさ・・・」

「ダメダメダメダメダメぇ~っ!!」

リンディさんがあまりにすっとこどっこいな発言をするもんだからクロノの発言を遮って思わず叫んでしまいました。

 

Sideなのは

「ダメダメダメダメダメぇ~っ!!」

突然ハルナちゃんが大きな声を出します。

両手で×を作って背後から『ブブー!』っていう音が流れてきそうな勢いです。

「これ以上危険なことに巻き込むなんてお姉ちゃん許しませんからねっ!」

凄い勢いで宣言するハルナちゃん。

お姉ちゃんって、見たところ私とハルナちゃんってあんまり歳は離れていないと思うんですが・・・。

「ハ、ハルナさん落ち着いて・・・。とにかくあなた達は今日は帰って休んだ方がいいと思うの。クロノ、二人を送ってちょうだい」

まだ反対だと騒ぐハルナちゃんを諫めるリンディさんの指示に私達を出迎えてくれた男の子、クロノ君が頷きます。

「了解しました、それじゃあ行こうか」

「え?あ、でも・・・」

ハルナちゃんを見ると多少落ち着いたようですが未だにリンディさんと言い合いをしています。

「二人の事なら気にしなくて大丈夫だ」

「なのは、とりあえず今日は帰ろう?」

「う、うん」

クロノ君とユーノ君に言われて私も部屋を後にしました。

「すまなかったね。でもハルナも君たちが嫌いで言ったわけじゃないんだ、分かってやってくれ」

そう言って私達に謝りながらハルナちゃんをフォローするクロノ君。

「確か君達と同じくらいの年齢の妹がいた筈だからな、他人事とは思えなかったんだろう」

・・・あれ?

「あの、私くらいの妹って・・・ハルナちゃんって今・・・」

私の言葉でクロノ君は気づいたのか「ああ」と言って補足してくれます。

「あの外見じゃわかりづらいけれど彼女は今年で15だ。あれで僕の一つ上とはな、もっとしっかりしてほしいものだよ・・・」

「・・・え?えぇっ!?じゃあクロノ君って14歳!?」

私が驚くとクロノ君はムスっと不機嫌そうな顔になります。

「僕が14だと問題でもあるのか?そりゃ確かに身長は少々低いがまだ十分伸びしろが・・・」

何やら地雷を踏んだみたいです。

暗いオーラを放ちながらブツブツと呟くクロノ君に私もユーノ君も後ずさります。

いや、もしかして向こうの世界ではクロノ君やハルナちゃんくらいの年齢でこの身長なのが普通なのかもしれません。

と言う事はもしかしてユーノ君も・・・。

「あの、ユーノ君って・・・」

「へ?あぁっ!僕は違うよ!今年で9歳だからっ」

それを聞いて安心しました。

「そっか、私と同い年何だね。よかった」

「う、うん・・・そうだね、よかった・・・」

「ちっともよくない!とにかくこの話は終わりだ、行くぞ!」

結局怒ったクロノ君に連れられて私たちはアースラを降り、そのまま家に帰りました。

Side Out

 

「んで?どうしてあんな事言ったんですか?納得のいく説明を要求します」

クロノがなのはさん達を送り終わって帰って来てから、私とクロノはリンディさんを問い詰めました。

「えっと、あんな事って?」

「あの二人に一度帰ってよく考えろと言ったことです。二人の性格を考えれば一層決意が固くなるのは目に見えてるじゃありませんか!」

「そ、それは・・・」

ジト目で見つめる私とクロノ、気まずそうに眼をそらすリンディさん、でもやっぱり答えてくれません。

「私たちの事がそんなに頼りないですか?」

埒が明かないのでこじ開けましょう。

私がそう言うとリンディさんは慌てた様子で異を唱えます。

「ち、違うわ!あなたもクロノもこの船に無ければならない存在よ!」

「じゃあ何でなのはさんを引き入れようとするんですか?確かにあの子の才能は凄いですけれど管理外世界の、それもただの民間人ですよ?」

無意識のうちに私の語気は強くなっていました。

いつの間にか私達だけでなくブリッジクルーの全員が見つめていることに気づき一層縮こまるリンディさん。

四方八方からの視線の集中砲火に耐えきれず、ついにカクンと俯くと白状しました。

「ごめんなさい。あの子の才能があまりに凄かったからつい・・・」

その自白に私もクロノも深いため息をつきます。

「はぁ、またですか艦長」

「いい加減その病気は直した方がいいって前も言ったじゃありませんか」

リンディさんの持つ病気・・・『将来有望そうな若者がいたらとりあえずスカウトしたくなる病』がまた発症したようです。

症状はその名の通り、リンディさんは魔力資質やレアスキルなど、才能のある若い子を見つけたらとにかくスカウトしたくてたまらなくなっちゃうんです。

10話と総集編で話した管理外世界の戦争への介入の際にも出会った現地の若手士官の「M少佐」と「A中尉」を引き抜こうとしていましたし・・・。

スカウトやヘッドハンティング自体は文句を言いませんがリンディさんの場合場所とか相手の年齢とかにもっと配慮してほしいです。

今回だってそうです、確かになのはさんは魔力量がAAAという破格の魔導師ですよ。

でもしつこく言いますが彼女は管理外世界の、それも9歳の小学生です。

管理外世界の人が管理局の魔導士になるという事はそれまでの生活を捨てて異世界で暮らすという事です。

成人しているならまだしも小さな子どものなのはさんにそれを強要しようもんならわたし本気で怒りますよ?

あなただって昨今の局員の低年齢化に頭を悩ませていたでしょうに、当の本人が平均年齢引き下げてどうするんですか?

仮に本人が承諾しても他の人、彼女のご家族やご友人から見たら人さらい以外の何物でもありません。

てか局員になるという事は事件や災害と言った危険地帯に飛び込むことになります。

万が一なのはさんに何かあった時、誰がご家族に責任を取るんですか?

リンディさんを正座させてそんな感じの事を小一時間ほど言って聞かせるとさすがに彼女も反省したのかシュンと項垂れてしまいました。

「うぅ、本当にごめんなさい・・・」

「まったく、明日なのはさんが協力を申し出てきても許可以上の事は許しません。勧誘は絶対禁止!ご家族への説明責任もちゃんと果たしてください。あと彼女の現場での活動に関しては私とクロノが全権を持ちます。少しでも危険があれば速攻で後方に下がらせますからね!」

「・・・あれ?許可しちゃうの?」

そう言って顔を上げたリンディさんは半分泣きそうでな顔でした。

「こちらが断ったら独断で行動しそうですからね。なら僕たちでしっかり監督したほうが安全だ」

どうやらクロノも私と同意見だったらしく腕を組んだまま苦々しく説明します。

「とにかく、なのはさんが協力するのは半ば確定ですからリンディさんはちゃんとご家族に包み隠さず説明してください。私もついていきますから」

「はい、クスン・・・」

こうしてリンディさんへのお説教がお開きになったところでそれまで様子を見ていた管制官兼クロノの補佐を務めるエイミィ・ミリエッタが話を切り替えてくれました。

「それにしてもなのはちゃんの魔力値は凄いよね~、さっき計測してみたんだけど平均魔力値は127万、例のフェイトちゃんも143万で二人とも最大発揮すればその三倍は叩き出せるよっ」

・・・え?何その魔力お化け。

私どころかクイントさんやゼスト隊長すら上回るとか、どんだけですか?

「魔力が高くてもそれを使いこなせなければ戦力足りえないよ」

エイミィの説明にクロノがベテランの風格を纏いながら答えます。

「そ、そうだよ!機体の性能が戦力の決定的差ではないという事を教えてやろうじゃないか!」

「何を言ってるんだハルナ?」

「あれ?クロノ君知らない?なのはちゃんの故郷で有名なロボットアニメのセリフだよ」

クロノとエイミィがガ●ダム談義を始めた横でふと私は気づいてしまいました。

「あのなのはさんとフェイトって子・・・カラーリングがガンダムだ!」

なのはさんは初代から続く正統派な白赤青のトリコロール、フェイトさんは黒に死神っぽいビジュアルからデスサイズですね。

「ハルナ、しょうも無いことを言ってないでなのはが参加する場合の戦術を話し合うぞ」

おぅ、いかんいかん・・・確かに今は勤務中。

それに明日からなのはさんも参加するでしょう。

年長者として彼女を無事お家に返すためにも万全を期さねばなりません、あの子も私たち大人が守るべき存在なのですから。

決意を新たに私はクロノとシミュレータルームに向かいました。

 

その翌日・・・と思いきやその日の夜。

当初の予想通り、なのはさんとスクライアさんは事件への協力を申し出てきました。

で・・・。

「ねぇ、ハルナさん。やっぱり・・・」

「駄目です。もうここまで来たんですから、覚悟を決めてください」

「・・・はい」

連絡があった翌日、私は海鳴市の住宅街をなのはさんのご自宅に向かって歩いてます。

・・・リンディさんを引っ張りながら。

さすがにこういう説明は初めてなのか未だになのはさんのお家に行くのに抵抗があるリンディさんをここまで連れて来るのに苦労しました。

とは言え危険なことをさせるんです、ちゃんとした説明と保護者の許可を頂くのがしっかりした大人として当然の仕事です。

なのはさんから教えてもらった住所を地図で参照しながら歩くこと数分、武家屋敷風の立派なお家につきました。

「さて、行きますよリンディ提督」

「・・・ええ、行きましょうか」

さすがに覚悟を決めたのか、さっきまでの泣きべそモードからシャキッとしたお仕事モードに切り替わるリンディさん。

呼び鈴を鳴らして数秒、扉が開き出てきたのは・・・。

「はいはーい、どちら様で・・・あら、ハルナちゃん?」

「桃子さんっ!?」

出てきたのはなんと以前お世話になった喫茶翠屋のパティシエール、高町桃子さんでした。

 

「・・・ハッ!今回出番なし!?」

ん?アースラの医務室の方から父さんの声がしたような・・・幻聴かな?



目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第15話「大人がしっかりしているアニメは名作なの」

名作の条件、エンディングで走る、家族がしっかり描写されている、作画が維持されている・・・他にはどんなのがありますかね?


はい、現場のハルナ・スカリエッティです。

現地は大変重苦しい雰囲気に包まれています。

戦線正面からすさまじいメンチビームの猛射を受けており防衛線は崩壊寸前です。

言い出しっぺの私ですが今すぐかえって布団の中に引きこもりたい。

可及的速やかな後退を進言します。

え?駄目?戦って死ね?

ちくしょう、いいでしょう死んでやりますとも!そうすりゃヴァルハラでは私の方が先達だ!向こうで会ったらあごで使ってやるから覚悟しとけ!

すみません、通信状態とか私の精神状態とかが混乱していますね、つまり今何が起こっているのかと言うと・・・。

なのはさんのご家族の殺気交じりの視線を受けて今にも首が落ちそうです、物理的に。

 

機人長女リリカルハルナ

第15話「大人がしっかりしているアニメは名作なの」

 

なのはさんの家の呼び鈴を押したら以前お世話になった桃子さんが出てきたことも驚きですが、なのはさんが桃子さんの娘さんだったと聞いた時はもっと驚きました。

そう言えば以前話していた娘さんの名前が「なのは」だったような・・・。

あの後すずか達が攫われたり、私が救出したりなし崩し的に恭也さんと遭遇戦に発展したり色々あってすずかやアリサと親友になったりとイベントが目白押し過ぎて忘れてました。

さて、現実逃避はこれくらいにして現在の状況をお話ししましょう。

あの後桃子さんの許しを得て、高町家にお邪魔した私とリンディさんは茶の間に通された後、ご家族全員に集まってもらいました。

なのはさんと桃子さん、数か月ぶりの再会になる恭也さんと初対面になる家長の士郎さんに長女の美由希さん。

彼らに対して改めて自己紹介を行った後、なのはさんと私たちのこれまでの経緯をお話ししました。

「・・・偶になのはが家から抜け出していたのは知っていたが、まさか魔法絡みだったとはな・・・」

既に私経由で魔法の存在を知っていた恭也さんは多少驚きはしましたが納得はしてくれました。

他の皆さんも驚きはしたものの疑っている様子はありません、もしかしたら恭也さんから何か聞いているのかもしれません。

「ええっ!?お兄ちゃん魔法の事知ってたの!?」

逆に一番驚いているのはなのはさんでした。

今まで内緒で家を抜け出していたことも魔法の事も全部バレてないと思っていたのに全部知られていたらそりゃ驚きますよね。

「抜け出していたことは最初から気づいていたぞ。魔法は以前ハルナちゃんと出会った時に知る機会があったんだ。お前が魔法使いになってたことには驚いたがな・・・」

「私はユーノ君が普通の男の子だったことの方が驚きだよ」

「うぅ、すみませんでした・・・」

一応魔法の存在を証明することも兼ねてスクライアさんに変身魔法を解いてもらったんですが確かにこっちのほうに驚かれました。

同時にスクライアさんがフェレットに化けて女湯に入っていたことも露見し、女性陣は赤面して、男性陣は殺気立った面持ちでスクライアさんに視線を向けますが、日本の生んだ最上級の謝罪法、『DOGEZA』を行い全身全霊をもって謝罪の意を示しましたのが効いたのか、それとも高町家の皆さんの心が広いのか、きつく注意すると許してくれました。

それでも男性陣はなのはさんの近くに男子が存在するのが許せないようです。

分かります、分かりますとも。

私だって可愛い妹たちにどこの馬の骨とも分からない奴が近づこうものなら馬刺しにして食ってやるところです、ちなみにスーパーに売ってるニューコーンミート、表記見たんですけどアレ牛100%じゃなくて牛肉と馬肉の合挽らしいです、だから普通のコンビーフよりも安いんですね、美味しいからいいけど。

とりあえずスクライアさんは許されたのはよかったんですが私ら的にはここからが本番なんですよね・・・。

「それで先ほどお話ししたように現在海鳴市にはジュエルシードと言う危険なエネルギー結晶が飛散してしまったんです。我々時空管理局も全力で回収を行いますが早期解決のためになのはさんのお力をお借りしたいんです」

そう言ってリンディさんと一緒に頭を下げますが高町家の方々は渋い顔のままです。

ジュエルシードがどれくらい危険なものなのかは話しましたし別の捜索者・・・フェイトさん達の存在も説明したのでなおさらでしょう。

大切な娘をそんな危険な事に付き合わせたくない、親として、兄姉として当然の反応です。

私達はそんな危険な所に娘さんをよこせと言ってるんですから嫌な顔をされるのも当然です。

で、冒頭部分に至るわけです。

高町家の皆様・・・特に恭也さんと美由希さんの殺気混じりの怒気が私の胃にダイレクトアタックをかましてくれるんですよ。

隣を見ればリンディさんも顔に脂汗を浮かべています。

なのはさんを見れば何かを言おうとしてはご家族の放つ怒りのオーラに中てられて引っ込んでいます。

大方「お願いだから私を行かせてほしい」とか言おうとしてるんでしょう。

「こちらでも比較的安全な作業を選定して危険がある場合は即座に退避させるつもりです」

一応私も安全には配慮すると約束しますがこれでダメならそれまでです。

てか私的にはそうなってほしいです、ご家族がダメと言ってくれればなのはさんも危険な現場に首を突っ込んだりはしないでしょうから。

「・・・なのははどうしたいんだい?」

これまで腕を組んで話を聞いていた士郎さんがおもむろになのはさんに問います。

「ふぇ?えっと・・・わたしね、どうしても会わなきゃいけない子がいるの」

「・・・さっき話に出てきたフェイトって子?」

美由希さんの質問になのはさんは頷きます。

「あの子、とっても寂しそうな眼をしてた・・・どうしてそんな目をしてるのか知りたい。もっとフェイトちゃんとお話ししたい!だから・・・っ!」

・・・うん、なのはさんマジぐう聖。

それだけの為に自分から危険に飛び込もうとしてるなんて超ド級・・・否超ヤ級のお人よしです。

知らない人への豆知識ですが超ド級の「ド」は当時最強だったイギリスの戦艦ドレッドノートから取ったものでドレッドノート以前に造られた古い戦艦が「前ド級」、ドレッドノートと同レベルの戦艦が「ド級」、ドレッドノートを超える超スゲー戦艦が超ドレッドノート級・・・「超ド級」になります。とーりーびーあー。

じゃあ超ヤ級ってなんだよって?戦艦大和から取って超ヤ級です、今考えました。

私がそんなことを考えて(現実逃避)いると士郎さんは「そうか・・・」と呟き、桃子さんとアイコンタクトをしてから私達に顔を向けます。

「なのは本人がこう言ってる以上、私達はそれを尊重したいと思います」

「ふぇっ?」

「なっ!?」

「お父さん!?」

それを聞いてなのはさん、恭也さん、美由希さんが驚愕する。

恐らくみんな反対されるものだと思っていたのでしょう。

「父さん、どうして・・・!?」

「なのはの意志は固そうだからな、反対したらそれこそまた内緒で飛び出しかねない」

「うっ・・・」

士郎さんも私と同じ考えだったようです。

そしてなのはさんは苦い顔をします、本気で家を抜け出す気でいたのか・・・。

「ただし・・・」

そう言って一度区切ると、士郎さんは鋭いまなざしで私たちを見つめます。

「なのはを預ける以上安全には十分配慮してもらいます」

まるで刃の様に鋭くなった士郎さんの目はこう言っていました。

「なのはに何かあったらただじゃ置かない」と・・・。

その身が放つ風格と実戦経験者だからこそ気づくことが出来たわずかな血の匂いから、士郎さんが生粋の戦士であることは理解していました。

そんな人が発する混じりっけ無しの殺気はまるで質量をもって私たちの首を落とさんばかりの物でした。

とは言え少し前まで本物の鉄火場で命のやり取りをしていた身です。

リンディさんだって最前線からは退きましたが以前は数多くの事件を解決してきた優秀な魔導士です。

驚きこそすれ怯むことはありません。

「っ・・・ええ、もちろんです」

「死力を尽くしてお守りします」

何より命を懸けてなのはさん達を護ると心に決めてここに来たんです、そんなこと言われるまでもありません。

自分の言葉を全力で受け止めたのが分かったのか、士郎さんは殺気を解いて微笑んできます。

「ええ、あなた達を信じましょう。なのはの事、宜しくお願いします」

それからは美由紀さんがなのはさんに魔法少女に変身してとせがんだりリンディさんと桃子さんが井戸端会議をしたりと先ほどの重苦しい空気が嘘だったかのように朗らかでした。

私?恭也さんと妹がいかに可愛いかを語り合ってましたよ。非常に有意義な時間でした。

その日はそのまま解散となり、なのはさんは明日からアースラに泊まり込むことになりました。

「それでは失礼します」

私とリンディさんは玄関で高町家の皆さんにお辞儀します。

「こちらこそ。改めて、なのはをよろしくお願いします」

そう言って礼を返す士郎さん達。

宜しくお願いするのはこちらなのにこれです、もう高町家の皆さんには足を向けて眠れませんね。

「あの、ハルナ・・・さん?」

なのはさんがえらく他人行儀に呼んできます。

昨日クロノから私の歳を聞いたらしいですがなんだかむず痒いです。

「そんな他人行儀じゃなくていいよ。これから一緒に頑張る仲間なんだし」

私がそう言うとなのはさんは「パァ」っと顔をほころばせます。

「うんっ!じゃあ私もなのはって呼んでっ」

「いいよ、よろしくなの・・・」

そこまで行ったところでふと私は考えました。

すずかとアリサの時は普通に名前で呼び合うようになりましたがせっかくだから今回はあだ名で呼ぼうと。

「・・・『なのっち』『なのすけ』『なのなの』『なのはさん』『魔王様』どのあだ名がいいと思う?」

「にゃっ!?最後の何で魔王!?」

いや、なんとなくこのあだ名が思いついたんですよ、まるで天の啓示のごとく降ってきたんです。

その後、あーでもないこーでもないとすったもんだした挙句、結局本人の強い要望によりふつうになのはと呼ぶことになりました。

あ、同様にスクライアさんも名前で呼ぶようになったんですがその瞬間何故か『淫獣』と言う単語が頭をよぎったんですよ。

温泉覗いたからかな?

そのことをクロノに話したら後日そのネタでユーノを弄っているのを見かけました。

全く、いい歳こいて年下の子をいぢめるとは、大人げない限りです。

え?何だよクロ助?

「お前も以前僕の事を変態扱いしてたろ」って?

あれは事実でしょう、以前の任務で現地士官のM少佐の事覗いてしかも泣かせたって現地軍のお偉いさんからクレームが届いたんですから。

あれは誤解?僕は無実だ?犯人はいつもそう言うんですよ。冤罪だっていうなら物的証拠を持って来なさい。

何はともあれ明日からなのはさん改めなのはも本格的に作戦参加、彼女を五体満足心身健康な状態で高町家に戻すためにも最善を尽くしましょう。私の首(物理)を守る為にも。

ミッドで待ってる皆、待っててね。お姉ちゃん必ず生きて帰るから・・・!




そろそろ戦闘シーンを書かねば(使命感)


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第16話「まさか打ち切り!?お姉ちゃん暁に死すなの?!」

戦闘シーンは難しい。

追記
コメントで指摘があったので転生者複数のタグを追加しました。


「高町なのはですっ!よろしくお願いしますっ!」

「同じくユーノ・スクライアです!お世話になりますっ!」

アースラのブリッジでなのはとユーノが元気よく挨拶をする。

二人がお辞儀をするとなのはの頭の左右で纏めたツインテールがピョコピョコ動きます、うんカワイイ。

今日からなのはも私達と一緒にジュエルシードの捜索に当たります。

「それでは改めて、アースラ艦長のリンディ・ハラオウンです。よろしくね、なのはさん」

「アースラ付き執務官のクロノ・ハラオウンだ。現場では直接指揮を執ると思うからよろしく」

正式な自己紹介と言う事でまずハラオウン親子が名乗ります。

「あたしはエイミィ・ミリエッタ。アースラの通信管制官兼クロノ君の補佐担当。よろしくねなのはちゃん!」

「ハイッ、エイミィさんっ!」

それからエイミィに続いて管制官のランディとアレックスも自己紹介が終わりいよいよ私の番です。

「で、わたしが・・・」

「私が医務官のジェイル・スカリエッティだ、怪我をしたなら遠慮なく医務室に来たまえ。脳みそ以外なら完全な状態に治療することを約束しよう!」

名前を言おうとしたところで父さんが私を押しのジョジョ立ちで自己紹介します。

「は、はい・・・」

ハイテンションな父さん。

屋や引き気味ななのは。

そして怒る私!

ここでキリッと決めてカッコいいお姉ちゃんな所を見せようと思ったのに!

私は両手で指でっぽうを形成して胸の怒りを装填すると未だノリノリで私に気づいていない父さんの臀部に向けて・・・。

「三秒殺しっ!!」

「文明開化ぁ!?」

渾身の刺激的絶命拳をお見舞いしてやりました。

「クッ、ククッ・・・やるじゃないかハルナ・・・」

そう言って笑う父さんですがその額にはだらだらと脂汗が浮かんでいます。

「おかしいなぁ?殺す気で打ち込んだのに、父さん存外しぶといね?」

「当然だろう?君のしぶとさは私の遺伝なんだからねぇ、何より父が娘に負けるわけにはいかないよ。ガ●ダムでジ●に負けるようなものだかねぇ」

「なるほど、でもおあいにく様。私、性能的に●ムじゃなくてνガン●ムだから。父さんに勝ち目なんて億に一つもないんだよ・・・」

一通り皮肉の応酬が終わると私と父さんは暫し黙り込み・・・。

「「ちねぇぇぇっ!!」」

今度は拳の応酬を開始しました。

 

機人長女リリカルハルナ

第16話「まさか打ち切り!?お姉ちゃん暁に死すなの?!」

 

Sideなのは

ハルナちゃんが目の前にいるスカリエッティ先生にカンチョーした直後、二人が喧嘩を始めました。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラぁぁっっっっ!!!!!」

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁぁっっっっ!!!!!」

腕が何本も見えるくらい素早い速度でパンチを繰り出すハルナちゃんとどこから生えたのかボクシンググローブを付けたロボットハンドで殴り返すジェイル先生。

幻でしょうか、二人の背後に筋肉ムキムキの人影が見えます。

「また始まった・・・」

「あらあら、二人とも本当に仲がいいわねぇ~」

その様子をクロノ君は頭を押さえながら、リンディさんはお茶(お砂糖沢山)を飲みながらのほほんと眺めています。

「はいは~いどっちに賭ける?エイミィさんの予想ではすでにジェイル先生がダメージ受けてるからハルナちゃんが有利だよー」

「あ、じゃあハルナさんで」

「大穴でドクター逆転に賭けてみようかな?」

エイミィさん達に至ってはどっちが勝つかで賭け事を始めてました。

「え?止めなくていいのっ!?」

「気にするな、いつもの事だから」

「いつもこんな事やってるの!?」

ユーノ君も私と同じく慌てていますがクロノ君は逆に諦めモードです。

それから5分くらいして二人はクロスカウンターを受け同時に倒れてしまいました。

Side Out

 

「うー、いたた・・・んで、遅くなったけど改めまして・・・ハルナ・スカリエッティ。この事件の担当として派遣された執務官です、よろしくねー」

父さんのクロスカウンタを食らった頬を撫でながら私はなのはに自己紹介をします。

それにしても父さんに殴られた以上もう「親父にもぶたれたことないのにっ!」のネタが使えなくなってしまうんですね、そう考えると寂しいものがあります。

「ハルナちゃん、その執務官ってどんなお仕事なの?」

感慨に耽っているとなのはが手を上げて質問してきます。

実際この辺の役職関係て複雑ですからね、分かんない人にはとことん意味不明でしょう。

「執務官っていうのは事件の捜査とかを取り仕切る役職の事だよ。捜査本部から捜査官に指揮を飛ばしたり場合によっては私みたいに現地で陣頭指揮することもあるんだ」

分かりやすく言うと刑事ドラマ・・・踊る大●査線の室●管理官みたいな感じでしょうか?

「へー、あれ?でもクロノ君も執務官だよね?」

リーダーが二人いるのは何で?となのはが首をかしげます。

「あ、それね・・・クロノはアースラ付き・・・つまり常時アースラにいて艦の近くで事件が起こったら艦ごと駆けつけて捜査に当たるタイプ」

次元航行艦はその特性上一回港を離れれば独自に判断、行動しなければならない状況もあります。

そうなった時に本局からの指示を待たずに現場の判断で動くためには現地の法律や文化、風習などを学んだ執務官が常駐する必要性があるのです。

「で、私は遺失物管理部っていう部署に所属していてロストロギア絡みの事件があった時に身一つで現場に飛んで現地の部隊や捜査官の指揮を執るタイプの執務官なの。それで何でクロノがいるのに私が派遣されたかと言うと・・・」

多分説明する私はすんごいゲンナリした表情になってるはずです。

この辺はもっと面倒くさい理由がありまして、次元航行部隊と遺失物管理部の管轄問題・・・言うなれば縄張り争いが原因なんです。

通例で言えば本案件は可及的速やかに解決する必要がある為直近にいるアースラ、そしてそこに所属するクロノが担当することになります。

しかしジュエルシード輸送船から流出事故発生を受けたのはユーノと同行していた遺失物管理部機動1課の隊員、スクライア家からユーノの捜索要請を受けたのも遺跡調査で彼らと付合いの深い機動1課でした。

結果生じたのが世界の危機を目前にしながらの管轄争い・・・。

次元航行部隊はジュエルシードの反応を発見したのは自分だと主張し、遺失物管理部はスクライア家から捜索要請を受けた自分たちが担当すると言って聞きません。

噂では次元艦隊司令と遺失物管理部長が次の執務官長のポストを巡って対立してるなんて話も聞きますし、両方とも手柄が欲しいと顔に書いてあるようです。

結局統幕議長のミゼット提督から一喝を受け双方から執務官を一人ずつ派遣、双方が現場で協調して事に当たれとお達しが下りました。

で、次元航行部隊からはアースラとクロノ、遺失物管理部からは私とサポートとして父さんが派遣されることが決まったのです。

「はえー・・・」

さすがに小学3年生に組織内における政治や派閥の話は難しかったようです。

「要するに大人の事情・・・めんどくさいお役所絡みのゴタゴタがあったんだよ」

「えっと、うん。ハルナちゃんたちが大変なのはわかったの」

それを分かってもらえれば私は十分です。

なのでドロドロした政治の話はココで切り上げて今後の活動方針について話し合いましょう。

「それじゃあお仕事の話をしましょうかね。現在確認が取れていないジュエルシードは11個、これの捜索はアースラのセンサーで行くからなのはとユーノは発見されたジュエルシードの封印と回収をお願いします。ちなみにこれは私、クロノとの3交代制で発見されるまではアースラで待機しててもらうけれど、見つかるまではのんびりしてて大丈夫だから。休むのも仕事の内だから無理無茶無謀は厳禁とします。破った場合はおでこに『肉』って黒マジックで書かれた状態で海鳴商店街を歩いてもらうからそのつもりでいるように」

「う、うん・・・」

罰則がとてつもなく恐ろしいことになのはは戦慄しています。

「ハルナはああいって茶化しているが実際現場では君の安全が最優先だ。こちらの指示には従ってもらう、いいな?」

至極真面目な顔でクロノが言うとなのはもこわばった表情で頷きます。

「二人とも、なのはさんも分かってくれたみたいだしその辺にしましょう?それよりなのはさん、ささやかだけどあなたの親睦会をするから食堂に移動しましょう」

「ふぇっ!?私の親睦会ですか!?」

驚くなのはさんにリンディさんは頷きます。

「ええ、短い間だけれど一緒に頑張る仲間ですもの。それじゃあ手の空いてるクルーは食堂に集合ねっ」

リンディさんの号令と共に果たした値はなのはを連れて食堂へ移動しました。

 

親睦会は本当に大盛況でした。

宴会部長のエイミィの音頭で乾杯し、私がイタリア語とフランス語の乾杯が『チンチン』だと教えるとなのはが顔を真っ赤にしたり。

何故か父さんが板前姿で握ったロシアンルーレット寿司を皆で食べても誰もリアクションが無いと思ったら当りの激甘(ワサビの代わりに練乳たっぷり)をリンディさんが食べた挙句お代わりを要求したり。

何故か置いてあったお酒で酔った私がクロノを捕まえて延々と妹の素晴らしさについて講義したりと本当に楽しかったです。

もう一度やりたいですね、今度やるとしたら事件解決の打ち上げでしょうか。

そんな賑やかな初日とは打って変わって、捜索開始から今日で三日たちますが本当に静かです。

件のフェイトさんも怪我が完治していないのか、それとも私達の事を警戒しているのか全く音沙汰がありません。

このまま私たちがジュエルシードを回収し終わるまでじっとしていてもらいたいです、てか諦めて自首してほしいです。

そう言えばなのはさんからフェイトさんのフルネーム・・・フェイト・テスタロッサと言うらしいですがそれを聞いた父さんが首をかしげていましたね?

何でも私と生き別れていた時にテスタロッサと言う人に会ったんだとか・・・。

今は本局に問い合わせてその人の足取りを探してもらっているらしいです。

「でも本当に平和だよね~。そろそろ何かあってもいいころだと思うな~」

そんなことをボヤいてフラグを立てるエイミィのリクエストに応えたのか、アースラのセンサーがジュエルシードの反応を捉えました。

「・・・エイミィがそんなこと言うから・・・」

「ゴメンなさい、ってあたしのせい!?」

ステキなノリツッコミを返しながらもエイミィは発信地点を割り出します。

「見つけた、ハルナちゃんお願い!」

「合点承知!」

エイミィに答え、転送ポートに乗ると即座に転送が開始されます。

視界が光に包まれ、収まると私は海鳴の空にいました。

すぐさまイェーガーを起動、騎士甲冑を纏って現場にぶっ飛びます。

幸いなことに融合体ではなくジュエルシード単体で起動していました。

なのは達の証言だと犬や猫と接触してスゴイことになったらしいです。

ネコに至っては『大きくなりたい』と言う願望の通り大きくしてあげたらしいです、全長30メートルくらいに・・・。

それを聞いた時、私は衝撃を受けましたよ。

なんてもったいない!もっと早く地球に着てれば思う存分モフモフできたのに・・・!

今確保したジュエルシードを件の猫にあげたい欲望を頑張って鎮めているとイェーガーが警告を発します。

『警告!4時方向、距離2000に魔力反応2、接近中!』

「来たか・・・」

そう呟いて振り向けば高速で飛来する金色の誘導弾、その数3発。

弾道計算、直撃コースは一発・・・私は微動だにせずシールドを展開してその一発を防御します。

二発が足元で土煙を上げ、シールドで跳弾した一発が背後のビルに直撃し爆発します。

「いきなり攻撃とはご挨拶じゃないかな?フェイト・テスタロッサさんや・・・」

騎士甲冑に着いた粉塵を払いながら言う私の視線の先で襲撃者・・・フェイト・テスタロッサさんはマントを翻しながら着地、警戒した面持ちでデバイスを構えます。

「・・・・・・」

「だんまりですかい、シカトされるって結構ハートにくるもんだね・・・」

「・・・ジュエルシードを渡してください」

そう言うとフェイトさんは戦斧型のデバイスを大鎌に変形させます。

「そう言う事だよ。痛い目見たくなかったらそれ置いてさっさと帰んな」

その声の方に視線だけ向けると以前フェイトさんと一緒にいたオレンジ髪のお姉さんが拳をバキバキ言わせながらすごんでいました。

彼女のお尻には以前は見られなかったフサフサの尻尾、よく見れば頭にも犬耳がついてます。

どうやら使い魔だった様です。

「この間はよくもフェイトを傷つけてくれたねぇ、おまけに神経干渉で激痛を与えるなんて・・・あの後フェイトがどれだけ苦しんだか・・・っ!」

お姉さんの髪が逆立ち、顔が見る見るうちに怒りで歪んでいきます。

そんなフェイトさん主従に対し、私は一歩足を踏み出し・・・。

「・・・・・・っ!?」

「ごめんなさい!」

「・・・・・えっ?」

謝罪しました。

攻撃して来ると思っていたのか、身構えてたフェイトさん達は私の行動に茫然となります。

「職務とは言え怪我をしていたとは知らずにひどいことをしちゃったからね、そのことを謝らせてください」

「え?あの、はい・・・」

根がいい子なんでしょう、謝る私にフェイトさんはオロオロと困惑しながらも謝罪を受け取ってくれました。

「ふーん、それじゃあお詫びの印にそのジュエルシードを置いてってもらおうかな?」

反対に使い魔のお姉さんは調子に乗ってます。

「だが断る!」

あいにく私はノーと言える異世界人なので断固として拒否します。

「なっ!?悪いと思ってたんだろ!?それともさっきの謝罪は出まかせかい!?」

「それはそれ!これはこれ!」

フェイトさんに攻撃したことは悪いと思っているけれどジュエルシードに関しては管理局員としての責任を放棄するわけにはいきません。

「第一、これの危険性は二人も身をもって知ったでしょう?これ一個、しかも不完全な暴走であれだけの威力を出せる危険物を何で集めて回っているのさ?」

「そ、それは・・・」

「っ・・・」

お姉さんは言葉に詰まり、フェイトさんもデバイスを構えたまま俯きます。

「言えない。ううん、教えられていないのかな?」

フェイトさん達のバックには間違いなく彼女たちに命令している人物ないし組織がいます。

二人ともジュエルシードがただ願いをかなえる代物じゃない事はすでに知っている。

なのに捜索をやめないという事はフェイトさん達以外の誰かがこれを使おうとして二人に回収を命じている可能性が濃厚です。

「・・・・・・」

フェイトさんは答えない、この沈黙は肯定と受け取っていいでしょう。

「全く、こんな幼気な少女に危険な事をさせて当の首謀者は安全な場所から命令するだけとはね、フェイトさん達もそんなろくでなしにあごで使われて気の毒に・・・。もし保護が必要なら・・・」

「母さんはそんな人じゃないっ!」

私がえらく挑発的な顔で語っているとフェイトさんが大声で否定します。

今まで感情に乏しい感じだっただけに感情を露わにしたフェイトさんはとても印象的でした。

よほどその人、お母さんが大切なのでしょう。

「・・・うん、あなたの家族を侮辱してゴメン。それにしても成程、黒幕はお母さんか・・・」

「っ!?」

怒らせてこれを乱せ・・・孫氏はハイテクデバイスで戦う魔導士戦でも有効なようです。

うまく誘導され母の存在が露見してしまったことにフェイトさんは狼狽えます。

「もっと詳しいことも聞きたいんでね、武装解除して艦まで御同行願おうかな?」

私がそう言うとフェイトさんが高速で突っ込んできます。

振り下ろされる斬撃を再びシールドを展開し防御。

「うおぉぉぉぉぉっっ!」

フェイトさんの攻撃を防御する私の左側から横っ腹めがけて使い魔のお姉さんの拳が振るわれます。

「おっと」

飛んでくる拳を左手でいなしながら後退する私。

どうやら言葉は不要のようです。

「容疑者の抵抗を確認、拘束しますんでお覚悟を」

いつぞやの様に私は二人にイェーガーの銃口を向ける。

『現場周辺は結界で封鎖したから人目は気にしなくていいよハルナちゃん!』

通信を入れてくれたエイミィに頷いた直後、私とフェイトさんは同時に空へ舞い上がりました。

 

Sideフェイト

(この子、強い・・・!)

それが目の前の目の執務官に対する率直な感想だった。

攻撃、防御、スピード・・・それらは確かに優れているが、どれも自分を圧倒的に凌駕するほどではない。

むしろ魔力と速度に関しては間違いなく自分が上だ、なのに・・・。

「させるかっ、アクセルキーパー!」

「くっ・・・!」

灰色のバリアジャケットを纏った魔導師が展開した三角形の魔法陣・・・。

そこからすさまじい量の魔力弾が猛射され、回避行動を強いられる。

(攻撃が、全部読まれてる・・・!?)

これで何度目だろうか?こちらが仕掛けようと接近すると誘導弾や牽制射撃に阻まれ足踏みしてしまう。

かといって射撃で遠距離から攻撃しても大したダメージを与えられない。

出の早いフォトンランサーは傾斜させたシールドで弾かれ、かといってサンダースマッシャーの様な大技は妨害されてろくにチャージもできない。

「おりゃあっ!」

その隙を作ろうとアルフが仕掛けるがフォトンバレットやいつのまにか設置されていたバインドで近づくこともできない。

やりにくい、とにかくやりにくい相手だ。

「むぅ、結構粘るな。病み上がりだろうしもうちょっと簡単に勝てると思ってたけど・・・フェイトさん強いね」

そう言って称賛の言葉を送ってくる魔導師、確かハルナ・スカリエッティと名乗っていた執務官はその顔に不敵な笑みを浮かべている。

(ダメだ、耳を貸しちゃいけない・・・!)

恐らくこれも彼女の心理戦かもしれない。

先ほども不用意に挑発に乗り、母の事を口走ってしまった。

相手のペースに乗せられちゃダメだ、だというのに・・・。

「全く、クロノたち遅すぎでしょ?なにやってんのさ?」

彼女の言葉に私は焦りを払しょくすることが出来なかった。

クロノと言うのが誰かは分からない。

でもそれが彼女の仲間でなのは確かで、そして間違い無くあの白い子も一緒にやって来るだろう。

艦と言っていたから大勢の武装局員が来る可能性もある。

(来るのが遅いと言っているけれどそれだって私を騙すための嘘でもうすぐそこまで来ているかもしれない、それとも逆に私がジュエルシードを諦めて逃げるように差し向けている?)

既に彼女の術中にはまっていることに焦りを感じるフェイト。

安全を優先するなら今回はジュエルシードをあきらめて逃走すべきだ。

だがただの時間稼ぎならば、このまま力圧しすれば最終的に魔力で勝るこちらが勝てるかもしれない・・・。

逃走か戦闘継続か、揺れる天秤に気を取られていたフェイトに僅かな隙が生じる。

「フェイトっ!!」

「っ!?」

そして歴戦の執務官はその隙を逃しはしなかった。

「隙ありっ!」

発射される魔力弾、回避は・・・間に合わない!

「させるかぁっ!」

とっさにアルフが間に割って入る、しかし・・・。

「えっ!?何だこれっ、バインドっ!!?」

魔力弾を防御したと思った瞬間、食らった個所からバインドが発生し、アルフを拘束する。

「アルフっ!って、しまっ・・・!」

気付いた時にはすでに遅く、飛来した二発目の魔力弾がフェイトに命中し、発生したバインドが彼女を捉える。

「ビンゴっ!さぁ、公務執行妨害と管理外世界での無許可の魔法行使、ロストロギアの不当な収集の現行犯で逮捕します!現行犯だから黙秘権も弁護士を呼ぶ権利も無いけれどかつ丼を注文する権利なら残ってるから大人しくしなさい!」

「えっ?カツ、ドン?」

執務官の言葉に困惑するフェイトだったが、ふと昼にテレビでやっていた昔のドラマの再放送の光景を思い出した。

「それって、たしか取調室で食べさせてもらえる・・・」

「あー、何か故郷の家族の事思い出して泣きながら自白するシーンだっけ?」

一緒に見ていたアルフも思い出したみたい。

あの後興味がわいて近所のお店にデリバリーを頼んだけどとてもおいしかった、また食べたいな。

「そう!それっ!」

自分たちが反応した途端、執務官は嬉しかったのか目をキラキラさせながら大声を上げた。

「いやー、このネタふっても誰もツッコんでくれなくてさー・・・」

「そりゃアンタ、この世界のローカル放送のネタなんてミッドの人間に通用するわけ無いじゃないか」

アルフがツッコミを入れるが執務官の方は聞こえていないのか上機嫌で続ける。

「まぁ、そんなわけで取調室でかつ丼が待ってるから私と一緒に着てもらおうかな」

執務官がデバイスを構えたままこちらに近づいてくる。

自分もアルフも何とか脱出しようと必死にもがくが、バインドは非常に強固に構成されており無力化することが出来ない。

「午後8時43分、被疑者逮h・・・」

そこまで行ったところで、彼女は横から殴りつけられたように倒れこむ。

「・・・え?」

訳が分からず唖然としていると崩れ落ちた彼女の腹部から赤い液体が流れだした。

Side Out

 

「・・・・・・っ!?」

その瞬間、私は何が起こったのかわかりませんでした。

突然横っ腹に強い衝撃が走ると足から力が抜けてそのまま吹き飛ばされました。

「ぐぅっ・・・!」

そのままアスファルトで舗装された道路に倒れこんだ私は何が起こったのかを確認すべく急いでシステムチェックを開始します。

センサーが全身をスキャンし、異常を確認する。

そしてそれは直ぐに見つかった。

『左腹部にクラスAの損傷、脾臓に深刻なダメージ発生、傷口より出血を確認・・・』

・・・え?何これ?

本当にもう訳が分かりませんでした。

何で怪我してんの?しかも内蔵にダメージってかなりやばいじゃん!

油断しました、これまでの戦闘でフェイトさんと使い魔のお姉さんしか確認出来なかったため、実行犯は二人だけと思い込んでいました。

まさか、他にも仲間がいたなんて・・・。

そうしているうちに左お腹の辺りがだんだん熱く感じてきました。

「これは・・・拙い・・・」

すぐさま脳内麻薬を大量分泌します。

これで痛みは感じなくなりましたがそれでも流れ出ていく血の量だけは変わりません。

何とか身体を動かし出血している個所を見ると血がにじみ出した騎士甲冑にピンポン玉位の穴がぽっかりと開いています。

「イェーガー、これは・・・」

『魔力反応検知できず、12.7㎜クラスの弾丸の可能性大』

ますますもってヤバイことになりました。

相手は魔力を必要としない質量兵器・・・つまり銃火器で武装しているようです。

それもバリアジャケットや騎士甲冑の防御を抜いてくるほどの・・・対物ライフルクラスの代物を。

「あ、あぁ・・・いやあぁぁぁぁぁっっ!!」

突然悲鳴が聞こえ、そちらに目をやるとフェイトさんがいました。

どうやら私が撃たれたことに気づいたようです。

すると今度は疑問がわいてきます。

私が撃たれたことに悲鳴を上げるという事はこれはフェイトさんにとっても予想外の出来事だったようです。

仲間がいた事をフェイトさんも知らなかったのか、それとも仲間が銃を持っているのを知らなかったのか・・・。

もしかしたらフェイトさん達とは別の第三勢力が現れた可能性があります。

だとしたらフェイトさんも危険です。

何とかできないかと頭と体を動かしていると、少し離れた所から未確認の魔力反応が接近してきます。

魔法で飛んでいるのか反応はあっという間に私たちの所までやってきます。

「まだ生きてるとは、バリアジャケットは確かに抜いたはずなんだけどな・・・」

現れたのは見た事の無い少年でした。

年齢は多分なのはやフェイトさんと同じくらい。

銀髪紅眼と言う中二感あふれる容貌。

どことなくなのはの物に似た意匠の青いバリアジャケットと腰から下げたアームドデバイスと思しき両刀のロングソード。

肩には私を狙撃したと思われるバカでかい対物銃・・・バレットM82A2を担いでいます。

「あ、あなたは・・・?」

困惑するフェイトさんの様子からやはり彼女の仲間ではないようです。

「ジュエルシードを持って早く逃げろ」

そんな正体不明の少年Aは私を警戒したままフェイトさんに言います。

「え?でも・・・」

そう言いながら私に視線を向けるフェイトさん。

心配してくれてるんですね、ちょっと嬉しい。

「急がないと管理局の応援が来る。母親を助けたいんだろ?」

「えっ!?」

「お前、何でそれを・・・!?」

秘密を知られていることにフェイトさんとお姉さんは驚き、警戒を露わにします。

「・・・急げ、もう一度は言わないぞ」

「・・・・・・」

取り付く島もなく言い放つ少年Aと私を交互に見た後、フェイトさんはジュエルシードに向かいます。

「ジュエルシード、封印・・・」

フェイトさんによって封印されたジュエルシードは沈静化すると彼女のデバイスに吸い込まれていきます。

「・・・・・・」

そのままこちらに背を向け飛び立とうとするフェイトさん。

「・・・ごめんね」

彼女は一度こちらを振り返るとそう言って飛び去って行きます。

「あっ、フェイト!」

こちらを気にしていた使い魔お姉さんも慌ててフェイトさんを追います。

「行ったか、さて・・・」

小さくなっていくフェイトさんの影を何やら優しそうに見つめていた謎の少年Aですが、それが見えなくなると何やらスゴイ剣幕でこちらをにらみつけてきます。

「何でお前みたいなのが・・・彼女から謝られてるんだよ!」

Aのつま先が私のお腹に突き刺さります。

「がっ・・・!」

吹っ飛ぶ私。

何でしょう、デジャビュを感じます。

「ゲホッ、お腹蹴っ飛ばされるようなことした覚えはないんだけど・・・てか、あんた誰?」

私がそう言うとそいつはますます険しい顔になる。

「お前こそ何なんだよ・・・お前がいることそのものが害悪なんだよ!」

そう言ってAは私の事を何度も蹴る。

「んぐっ、がっ・・・!」

こいつ・・・赤ちゃんできなくなったらどうするんだ!今の所作る気も相手もいないけど・・・。

「はぁ、はぁ・・・お前が、お前のせいで・・・」

わけわからん事を繰り返すA、こいつ絶対サイコパスですよ。

「もういい、どっちにしろここで消えるんだからな・・・」

そう言って担いでいたM82を構えるA。

・・・これはヤバイ。

こんな距離で撃たれたら今度こそ死んじゃいます。

ヤバイ、ヤバイヤバイヤバイ・・・っ!

どうしよう、何とかしないと・・・考えろ、考えろ私・・・!

その①、天才でぱーふぇくとな美少女戦闘機人のハルナちゃんは突如反撃のアイディアがひらめく。

その②、クロノ達が助けに来てくれる。

その③、助からない、現実は非常である。

・・・その③は論外。

その②が理想的だけど撃たれてからなんの通信も無いことから妨害されている可能性がある、たぶん間に合わない。

やはりその①しかないようだ・・・。

私の頭の中でそんな実況を行うポルナレフ、実況してる暇があったらスタンドで助けろください。

くそっ、どうにも思考がまとまりません、脳内麻薬を過剰分泌したツケが回ってきたようです。

そんな事やってる間にバレットのトリガーに指をかける少年。

「死ね・・・」

呪詛が籠っていそうな死刑宣告と共に少年の引き金は引かれ・・・。

「バスターっ!!」

ようとしたところで上空から降り注いだ桜色の極光に妨げられました。

「これはっ・・・ディバインバスターか!?」

驚きの声を上げながら上を向く謎A、てか何でコイツなのはの技名知ってるんでしょうか?

「スティンガースナイプっ!」

直後間髪入れずに飛来するクロノの誘導弾。

「チッ・・・!」

降り注ぐ魔法のシャワーの中を右に左にと除けますがさすがの物量を躱しきれず、担いでいたM82に直撃、秘殺傷設定の為直撃しても壊れませんでしたが手から落ち、路面に激突した衝撃で銃身が曲がります、あれではもう使えないでしょう。

「ハルナちゃんっ!」

「なのは、ハルナを抱えて下がれ!ユーノはシールド!二人に飛んでいく攻撃を全部防ぎきれ!」

「分かった!なのは、ハルナをっ・・・」

クロノに遅いと皮肉を言いたい所ですが血を流し過ぎたのか思うように口が動きません。

「・・・どうしてだ」

何がだよ?てかこっちがどうしてだって言いたいよ。

「どうしてそんなやつを助けようとするんだっ!?」

・・・もうね、訳が分からないよ。

突然現れたと思ったら殺意マシマシで殺しにかかって来るし、クロノやなのはが来たら訳わかんないこと叫びまくるし・・・。

てか本当にコイツ何者?

「言い分は後で聞いてやる。公務執行妨害及び管理外世界での無許可魔法行使、殺人未遂の現行犯で逮捕する・・・」

底冷えするような冷たい声で告げるクロノ、これは本気で怒ってますね。

「っ・・・!」

状況不利と見たのかAは発煙弾をばら撒きます。

辺りが煙で包まれる直前、相手は腰のデバイスを抜くと切っ先をこちらに向けます。

「っ!?なのはっ・・・!」

「え?きゃぁっ!」

とっさになのはを突き飛ばし射線上から退避させます。

視線を戻せばすぐそこまで迫ってくる魔力弾・・・。

「くっ・・・!

とっさに両腕をクロスさせた直後、弾が直撃して再び身体が吹っ飛びます。

「ハルナちゃんっ!!」

二度三度、アスファルトの上を跳ねながら転がる私の耳になのはの叫び声が聞こえます。

「チッ・・・」

仕留めそこなった事に舌打ちした直後、Aの魔力反応が一瞬で消えます。

「消えた!?エイミィ!」

「クッ・・・ダメだ、見失った!」

悔しそうに答えるエイミィ。

「とにかく今はハルナだ!転送ポートにドクターと医療班を待機させてくれ!」

「ハルナちゃん!しっかりして、ハルナちゃんっ!」

涙を浮かべながら私の顔を覗き込むなのは・・・。

困りましたね、美少女を泣かせてしまいました。

「うぅ、大丈夫・・・とりあえず止血はしたから、多分これ以上はひどくならない、筈・・・」

なのはを安心させる為にそう言いましたが状況は正直言ってあんまり宜しくありません。

50口径をモロに食らったせいで脾臓はオシャカ、衝撃で他の臓器も傷ついています。

両腕もおかしな方向に曲がってますが、こっちは義手ですから取り換えれば問題ありません。

一番の問題は出血です。

傷口周りへの血の供給をカットしたからこれ以上の出血は無いはずですが、それでも生命活動に支障を来すレベルの血を失いました。

今は補助脳のCPUが思考を補助してますから何とか会話できてますがそれもちょっと覚束なくなってきてます。

「クロノ、ゴメン。さすがにそろそろ辛いから・・・寝るよ?」

今はとにかく体力の消耗を抑えるのが一番です。

「・・・わかった、でもちゃんと起きろよ。永眠なんて許さないからな!」

心配するクロノを見て、嬉しいようなお姉ちゃんとして情けないような複雑な心境です。

「了解、んじゃオヤスミ・・・」

そう言って目を閉じます。

瞼の裏に浮かぶのはアースラで手術準備をしてるだろう父さん、ミッドで帰りを待つ家族と親友のマリィ。

そして未だ顔を見せに行っていないすずかとアリサ・・・。

あー、このこと知ったら皆心配するだろうなぁ、んできっと滅茶苦茶怒られるんだろうなぁ・・・。

大切な人たちの事を思い浮かべながら、私の意識は次第に薄れ、やがて闇に堕ちていった。

 




ご声援ありがとうございました。
Y.Smanの次回作にご期待ください・・・嘘です。
ちゃんと続きます。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第17話「カロリーメイトはフルーツ味が一番(作者の偏見)なの」

前回の投稿以降初の☆1評価を受けてしまいました(´・ω・`)
今後はもっと精進するのでどうか生暖かく見守ってやってください。


Sideなのは

あれから何時間経っただろう・・・。

大けがをしたハルナちゃんをアースラに連れていくと待っていたジェイル先生とお医者さんたちが大急ぎでハルナちゃんを医務室に運んで行った。

扉は今も固く閉ざされ、その上には赤く『手術中』とミッドチルダの文字で表示されている。

「なのはさん、さすがにもう休んだ方がいいわ・・・」

手術開始からずっとここにいた為かリンディさんが心配してきてくれました。

「リンディさん・・・ありがとうございます、でも・・・」

「・・・ハルナさんが心配?」

その問いに私は頷きます。

ハルナ・スカリエッティちゃん・・・。

元気溌剌でいつもはしゃいでいて、でも私よりもずっとお姉さんでいつも心配してくれている優しい女の子。

大家族の長女で暇があればいつも妹の事ばかり話している家族が大好きな子・・・。

そんな優しいハルナちゃんが何であんな大けがを負わなくちゃいけないんだろう?

それを考えた時、ふとハルナちゃんを撃った男の子の事も思い出す。

あの子は一体誰なんだろう?フェイトちゃんの仲間なのかな?どうしてあの男の子はあんなにハルナちゃんを憎んでいたんだろう?

今度会った時はあの子ともちゃんとお話ししなきゃ・・・。

私がそう心に決めた丁度その時、手術中の表示が消えて手術室の扉が開いた。

Side Out

 

機人長女リリカルハルナ

第17話「カロリーメイトはフルーツ味が一番(作者の偏見)なの」

 

目を開けると最初に見えたのは見知らぬ天井、ではなく何度かお世話になったアースラの医務室の天井でした。

「目が覚めたか・・・」

妙に懐かしく感じる声を耳にし顔を向けると妙にくたびれた格好の父さんがそこに居ました。

「父、さん・・・」

「君が撃たれてから一週間が過ぎたよ」

父さんが言うには手術で体に埋まった弾丸を摘出、破壊された脾臓をクローン培養したものと交換して傷口を塞いでから運び入れていた生体ポッドに放り込んだそうです。

それから五日、一応傷口が塞がったのでポッドから出し以降は自然治癒に任せることにしたとのこと。

「一時は本当にヤバかったが何とかもちなおしてね、外傷が癒えても意識が戻らなくてずっと心配してたよ」

「そっか、一週間か・・・結構長かったなぁ・・・って、一週間!?」

少しずつ調子を取り戻しかけていた意識はそれを聞いて一気に覚醒します。

「あれからどうなったの!?なのは達は無事!?・・・って、あれ?」

そう言って上半身を起こそうとしたところで体に力が入らないことに気づきます。

「あの戦いで筋肉を膨張させて止血しただろう?おかげで手術がしにくかったから筋肉弛緩剤をたんまり注射する羽目になったよ」

「それと・・・」と父さんは続けます。

「なのは君達については安心したまえ。クロノ執務官が付いているよ。最も効率は低下したがね・・・」

父さんが言うには私が襲撃され、フェイトさんに協力者がいることが判明した為、何より相手が殺人も厭わない危険な相手である為最初はなのはを捜査から外そうという話が出たそうです、しかしなのは本人がそれを頑なに拒否したのと、返した場合お家を襲撃される危険性があるのでアースラにいた方が安全という結論に至りました。

勿論ご家族にはリンディさんから報告済み、さすがに士郎さんも難色を示しましたが最終的になのはは残留することが決定。

彼女の安全を最優先にするため予定されていたローテーション方式ではなくなのは、ユーノ、クロノがひと纏まりで行動するようになり安全は確保できた代わりに捜索効率が低下、結果ジュエルシードのいくつかはフェイトさん達に持っていかれたそうです。

「なんてこった、寝てる暇なんて無いじゃ、んぐっ!?」

無理やり起き上がろうとした瞬間、お腹に鈍い痛みが走りうずくまります。

「傷口が塞がったって言っても表層だけだよ、下手に動くとまた開くから暫く絶対安静だ、ちなみに医者命令の為拒否権は存在しないよ」

うぅ、こんな時に動けないなんて・・・。

「無様とか考えてるようだがね、むしろ一番しぶとい君だったから助かったんだ。なのは君やクロノ執務官だったら間違いなく死んでたよ」

言われてみれば確かにそうかもしれません。

何しろフィフティーキャリバー・・・12.7㎜なんて明らかに装甲車打つための弾丸で人なんて撃ったら間違いなくネギトロめいたサムシングに早変わりです。

バリアジャケット着こんでシールドで防いでもお腹にバカでっかい穴が開くでしょう。

「そんなわけだ、二人じゃなくてよかったと前向きに考えたまえ」

・・・どうやら父さんは私を励ましてくれているようです。

白衣とスーツがくたびれているのも着替えの時間すら惜しんで私に付いていてくれたんでしょう。

バカ、変態、マッドと三拍子そろっていますが本気で父さんは私の事を案じてくれていたみたいです。

「・・・うん、ありがとう父さん」

私がお礼を言うと父さんは照れくさそうに笑います。

「まあ、そう言う事だ。今は栄誉をたっぷり取って休むといい」

父さんはそう言って私を寝かせ、布団をかけます。

そうですね、今回は父さんの指示に従いましょう。

グッスリ寝て、栄養をたくさんとって・・・。

ん?栄養?

「それだぁっ!」

再びガバッと起き上がった私のお腹を再び激痛が襲いました。

 

 

Side なのは

「ハルナちゃんの目が覚めたの!?」

「うん、さっきリンディ提督から連絡が・・・って、なのは!?」

ユーノ君からそれを聞いた瞬間、私は走り出していました。

あの日、大けがを負ったハルナちゃん。

手術が終わってジェイル先生から峠は越えてもう大丈夫と説明されてたものの、一昨日までずっと面会謝絶でした。

面会許可がもらえるようになったもののずっと目を覚ますことは無く、もしかしたらずっとこのままなんじゃと不安で仕方がありませんでした。

目が覚めて嬉しいような、まだ心配なような・・・いろんな感情でいっぱいになった私はとにかく早く会いたい一心で病室に向かって走ります。

運動音痴なのがうその様にあっという間に病室に着いた私は走り過ぎて荒くなった呼吸を整える暇すらもどかしく、目の前の扉を開きます。

「ハルナちゃ・・・!」

「もがもが、ガブッ、ムシャムシャ・・・ごくん、あぐっ、モキュモキュ・・・ゴクゴク、ぷはっ、バリバリ、バクンっ、むぐっ・・・グビグビ・・・」

・・・えーと、大食い大会?

ベッドで上半身だけ起こしたハルナちゃんはベッドテーブルに置かれたたくさんの料理を手当たり次第に食べていきます。

わきには空っぽになったお皿がたくさん詰まれており、お見舞いに来ていた他の局員さんが片付けていました。

「そんなに慌てて食べるな。胃が受け付けないぞ?」

先に来ていたクロノ君がハルナちゃんの食べっぷりにドン引きしながら注意します。

「ゴクン、うるへー!12時間もありゃジェット機だって直らぁっ!」

対してハルナちゃんはよく分からない事を叫ぶと再び食事に専念します。

口から飛んだご飯粒がクロノ君の顔に着いていて、なんだかとてもバッチイです。

「あ、いらっしゃいなのはちゃん」

後ろから声がすると両手に料理を持ったエイミィさんがいました。

「エイミィさん、これは・・・」

「あ~、ハルナちゃんが『血が足りないから栄養たっぷりつけたい』って言うからさ、暇人総動員でご飯作ってるの」

そう言われてエイミィさんの後ろを見ると他にもお皿を持った局員さんが数人いました。

「でも、たくさんご飯食べてもすぐに怪我が治るわけじゃ・・・」

私がそう言うとエイミィさん達は苦笑します。

「あー、普通はそうなんだけどね・・・」

?どういう事でしょうか?

「そうか、君はまだ知らなかったね。ちょうどいい機会だし説明しておこうか」

私たちの会話を聞いていたジェイル先生はそう言うとハルナちゃんに声をかけます。

「ハルナ」

「モグ?ふぁふぃとふふぁん?」

「うん、飲み込んでから話そうね。この艦で食事語が分かるの父さんだけで皆解読できないから」

ジェイル先生に言われてゴクリとご飯を飲み込んだハルナちゃんは改めて喋ります。

「んで?何父さん?」

「さっき修理が終わったからね、交換するから両手を出してくれないか?」

「そうなの?ほい」

それに従ってハルナちゃんが両手をジェイル先生の前に出します、何が始まるんでしょうか?

「じゃ左腕からいこうか。よっこいせと・・・」

先生が肘の辺りを弄るとハルナちゃんの左腕がスポっと外れて、外れて・・・。

「ふぇえぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!?」

Side Out

 

父さんがスペアに持ってきていた日常生活用の義手を外すとなのはがスゴイ声を上げます。

てかなのはいつの間に病室にはいったの?

ご飯食べてて分かんなかったよ。

「なのは!?大きな声が聞こえたけど一体何が・・・!」

なのはの声を聞きつけてユーノが慌てて部屋に入ってきましたが当のなのははそれどころではないようです。

「ハルナちゃんっ!?手が!腕がっ!」

こちらに人差し指を向けながらブンブン腕を振るなのは、彼女の表情は正に(((○Д○;)))な状態です。

「あー、うん。ビックルしたのは分かるけど落ち着いて。ちゃんと説明するから、ね?」

私とクロノ、エイミィや後からお見舞いにやってきたリンディさんに宥められてようやくなのはは落ち着きました。

「いや~、予想以上のリアクションだったよ」

とりあえずふざけた事言ってる父さん(しょあくのこんげん)は取り外した左腕で思いっきりブン殴っておきました。

「さて、どこから説明しようか・・・」

気絶した父さんを部屋の隅にどかしてから私に関する説明会が開かれました。

「まず私自身の事なんだけどね、私普通の人間じゃないんだ」

「えっと、普通じゃないって・・・」

頭に『?』を浮かべたなのはに変わり、隣できいてたユーノが質問します。

「うん、戦闘機人って言ってね、クローン技術で造られたサイボーグなの」

「サイボーグって、あの身体が機械で出来ている・・・」

困惑しながら聞いてくるなのはに私は頷きました。

「次元世界では旧暦の頃から人型兵器の研究がされていてな、その中には人と機械の融合・・・人体の機械化も含まれていた。しかし人体が拒絶反応を起こしてうまくいかなかったらしい」

「そこで誰かが考えた、適合する人が見つからないなら造ってしまえばいいってね。で、クローン技術で拒絶反応の出ない人間を作って改造したのが戦闘機人」

「そんな、ひどい・・・」

クロノと私の説明になのはは顔を青くします。

「そう、人道的に許される研究ではない、だから管理局はそう言った研究を禁止していたの。しかし・・・」

リンディさんが沈痛な面持ちでそう言っていた所で・・・。

「そう、あれは私がまだ世界征服を企む悪の科学者だった頃の話だ・・・」

復活した父さんが割り込みます。

「んにゃ!?」

驚くなのは、カワイイ・・・。

「人手不足が深刻過ぎて頭がおかしくなっていた管理局のお偉いさんから手っ取り早く局員を増やしたいと依頼が来てね、優秀な魔導士のクローンを生み出す人造魔導士技術と並行して戦闘機人の研究をしていたんだ。もっとも、野心家だった当時の私は戦闘機人が完成したら管理局に反旗を翻す気満々だったがね・・・」

語尾にwwwとつきそうな笑い交じりの口調で父さんは続けます。

「で、満を持して完成した戦闘機人の零号機、それがハルナだったんだ。生まれたばかりのハルナを見た瞬間衝撃を受けたよ、この小さな命を野望の道具にしようとしている自分にね・・・。結局叛逆は止めてハルナと自由に生きる道を選んだんだ。偉いさんしか知らない秘密の研究所だから通報したら正義感溢れる管理局の捜査官たちが押し寄せてきてね、どさくさに紛れてとんずらしようとしたんだが失敗してハルナだけ逃がしたんだ」

「そんな私もリンディさんの旦那さんでクロノのパパのクライドさんに保護されて最終的に管理局のお世話になっちゃったけどね」

「しかし、一番笑えるのが私に研究をさせていた連中までハルナの事見て正気に戻っちゃったことだろうね。『この子はワシの孫にする!』だそうだ、ククッ・・・」

補足する父さんですが当時を思い出して笑っています。

まぁ、おじいちゃんたち根は善人だしね、支配とかじゃなくて本気で世界を守りたいって思ってた人たちだからね。

孫云々に関しては父さんと話し合ってください。

「そんなわけで私は鋼のボディに熱いハートの美少女サイボーグ戦士なのだよ。おかげで新陳代謝も早くてどこぞの伝説の段ボールエージェント(ネイキッド)の如く栄養とればすぐに傷も治っちゃうんだ」

「まぁ、美少女かどうかはともかく、ハルナが半分メカなのは事実だ」

・・・さて、後でクロノが変態だという事をなのはに教えてあげなければいけませんね。

「ふぇぇ・・・じゃあさっき腕が取れたのも?」

「そう。両腕とも義手でね、交換することでロケットパンチも指からビームも想いのままだよ」

「と、言うわけでだ。新しい腕を取り付けるとしようか・・・」

そう言って父さんは取り出したケースを開け、中身をとりだします。

何やら鉄パイプみたいに細い腕にお好み焼きを焼くときに使うヘラみたいな平べったい手・・・。

何故か取り付けるときに「ブッピガァン!」て効果音が聞こえた様な気がします。

「あ、ありがとね父さん・・・ニイハオっ!」

「アオラー!?」

父さんの頭に渾身の中華チョップを叩きこむと、ミサイルやビームライフルはおろか、ラスボスのメガフレア・キャノンすら跳ね返す謎のリフレクター機能で吹っ飛ばされた父さんは医務室の壁に車田落ちの要領で突っ込みました。

 

Side クロノ

「さて、それじゃあ現状の説明から始めようか」

「ふぇ!?ジェイル先生あのままでいいの!?」

そう言ってなのはは大の字で壁にめり込むドクターを指さす。

「放っておこう、どうせ死んじゃいないから」

「投げやり!?」

なのはもいつか分かるだろう、この親子を本気で相手にするのは時間と労力の無駄だと・・・。

「でだハルナ、もうドクターから聞いてるだろうが君が撃たれて以降当初のローテーションは変更になった。なのはとユーノは僕と共に対処に当たっているんだが、安全を確認してからのせいで即応性が低下してな、すでにフェイト・テスタロッサにジュエルシードを二つほど持って行かれてる」

「むぐぅ、そう言えば私を撃ったあん畜生は?やっぱりフェイトさんと一緒にいるの?」

トンカツにチキンカツ、ソーセージにエビフライにゆで卵と千切りキャベツ・・・とにかくトッピングがたんまり乗ったカレーを口にかき込みながら質するハルナ。

「いや、あれ以来姿を現していない。切り札として温存されているのか、それともやはりフェイト・テスタロッサとは仲間じゃないのか・・・」

「でもあの男の子も凄いんだよ。ハルナちゃんを撃つまで全然魔力が感じられなかったし、その後計測された魔力量はなのはちゃんよりもすごかったんだよ」

エイミィの言葉に先日観測されたあの魔導師の魔力量を思い出す。

平均魔力量226万・・・、なんとなのは以上の魔力を持った化け物だった。

「エイミィ、彼の身元は未だ分からないの?」

母さん、もといリンディ艦長の質問にエイミィは力なく首を横に振る。

「ダメでした。管理局にも各管理世界の住民登録にも、該当する魔力波長の人物は確認できませんでした」

つまり管理局に届けのない違法魔導士と言う事か・・・。

そんな強力な魔導師が未登録で、しかもロストロギアが飛散した管理外世界をうろついてるなど悪夢以外の何物でもない。

「奴もジュエルシードを探している、なら近いうちにまたぶつかるのは間違いないな・・・」

あんなのと戦う事になるなんて考えただけで頭が痛い。

自分はともかくなのはやユーノはやはりこの事件から外させた方がいいかもしれない。

「・・・本当にそうなのかしら」

「え?」

「艦長?」

艦長はあごに手を当て何かを熟考する。

「本当に彼の目的がジュエルシードならフェイトさんに持たせて逃がすのは不自然じゃないかしら?」

「それは、彼がフェイトちゃんと仲間だからでは?」

エイミィの言葉に艦長は更に深く思案する。

僕もその可能性は低いと思う。

彼がフェイト・テスタロッサの仲間ならばもっと早期に、それこそなのはとの遭遇戦があった時に現れていただろう。

戦力の温存が目的だとしても、それなら僕たちが介入した時点で姿を現したはずだ、そうしなければ最悪フェイトは僕たちに逮捕されていたのだから。

それが無かったという事はあの魔導師とフェイト・テスタロッサ達は別の勢力だと考えた方が妥当だろう。

フェイト達の黒幕が急遽雇ったフリーランスと言う可能性もあるが、それなら何故彼が現れた時フェイトは驚いていた?仮に急遽雇った存在だとしても顔合わせするくらいの時間的余裕はあったはずだ。

恐らく彼の登場、いや存在そのものがイレギュラーだったからだろう。

「なるほど、確かに謎だね。フェイトちゃんを助けたのも、ジュエルシードを持って行かなかったのも・・・」

上記の内容をエイミィに説明すると納得したように、しかし直ぐに深まった謎に難しそうな顔で首を傾げた。

「ハルナへの恨み・・・怨恨の可能性もあります」

「え?」

僕が口にした可能性に聞いていたなのはは少し驚いた顔をする。

「ハルナちゃんに、恨み?」

「彼女はベテランの執務官だ、解決した事件も数多い。以前彼女に逮捕された者が逆恨みしての犯行と言う可能性も十分あり得る」

「ハルナさん、なにか身に覚えはない?」

ラーメンのスープを飲んでいたハルナは艦長の問いに答えるためにドンブリから口を離す。

というか先ほどまでカレーを食べていたのにいつの間に食べ終わったんだ?

そのラーメンだってゆでたキャベツとモヤシが山と盛られていたのに・・・相変わらずこいつの胃袋はブラックホールだな。

「ゲフっ、身に覚えはいっぱいあるけど、アイツは初めて見る顔でした。あんな特徴的な・・・まるで『ぼくのかんがえたりそうのしゅじんこう』を形にしたようなビジュアル忘れたくても忘れられませんよ」

確かに、マンガの主人公かよと言いたくなる美少年だ、一度見たら忘れられないだろう。

それにハルナが逮捕した犯罪者なら裁判記録なりハルナの始末書なりが残るはずだから未登録なのはおかしい。

前の事件・・・紛争地帯を飛び回っていた時の因縁・・・ハルナが戦友や家族の仇だという可能性もあるがそれをカウントしてたらキリが無い。

なんせ彼女は『リボン付きの死神』なんて呼ばれるくらいには活躍・・・敵を『撃墜』しているのだから・・・。

「まぁいずれやり合うのは間違いないんだし、次にあったらブチのめして取調室で洗いざらいゲロらせてから豚箱にぶちこんでやればいいんです。だからそれまでに怪我を治しておかないと・・・!」

そう言ってハルナは最後の一皿・・・山と盛られたミートボール入りスパゲッティの攻略を開始した。

修理したばかりの両手でフォークとスプーンを器用に操り皿のスパゲッティを団子の様に丸めると大きく開けた口に押し込む。

「はむぅ、もぐ、むぐ・・・ぅうっ・・・!」

直後、見る見るうちに顔色が変わるハルナ。

色白な肌がマンガの様に暗い緑色に変わっていく。

どうやら戦闘機人の胃袋とは言え病み上がりだったのが祟ったようだ。

「全く、言わんこっちゃない。ほら、洗面器だ」

あらかじめ用意しておいた洗面器をベッドテーブルに置くがハルナは首を振って拒否。

両手を抑え、仰向けになりながら何かを言っている。

「何?何だって?」

「むっごごももむぅ・・・!」

嘔吐されるのを警戒しながら耳を使づけるとそんな言葉が聞こえる。

口いっぱいにスパゲッティを含み、両手で抑えながらの発言とは言えそれなりに長い付き合いだ、何を言ったかは大体わかった。

「ハァ、食ったから寝るそうだ・・・」

医務室がなんとも言えない空気で満たされた。

Side Out

 

結局、会議はそこでお開きになった。

謎の魔導師Aについては今後も警戒、現れた場合はクロノと武装隊に全快した私を加えた制圧部隊が対処、なのはとユーノは安全のために後方に退避する方針で決まった。

後ろに下げられることになのはは最初反対したが、復活した父さんに「皆があっちに集中するからフェイト君に専念できるよ」と諭され喜んで了承した、チョロカワイイ。

「で?実際どうなんだい?」

先ほど突っ込んだ壁を補修しながら父さんが聞いてきます。

「ん?何のこと?」

「安心したまえ、今確認したが誰も聞き耳は立ててない。あれは、君と同じ転生者なのかい?」

体が無意識のうちに強張る。

「分からない、でもかなりの確率で間違いないと思う」

あの時、飛び去っていくフェイトさんに向けていた笑み、喜びと憧れの混ざり合った・・・まるで間近でアイドルに出会ったファンの様な表情。

「と言う事は、フェイト君もアニメの登場人物とみて間違いないか・・・」

「そうだね、『なのは』もいるし・・・」

私が転生者として知っていることは3つ。

この世界が『魔法少女リリカルなのは』というアニメの世界だという事。

主人公が、『なのは』と言う名前の女の子と言う設定。

父さんがアニメ3期で起る事件の黒幕で私の妹達を使って事件を起こすという事。

物語りの終盤で露出過多な魔法少女にホームランされること・・・。

あ、間違い。4つだった。

「んで、実際なのはが魔法少女になって戦っているってことはもう物語が始まってるんだと思う。それで・・・」

「あの転生者(仮)はタイミングを見計らって出ていこうとしたらすでにハルナがいて憤っているという事か・・・逆恨みも甚だしいね」

全くです、自分の意志でこの世界に転生したわけじゃないんですから・・・そのことを根に持たれてもいい迷惑ですよ。

恨むんなら私じゃなくて神様か転生トラックを恨んでください、もっとも今の生活堪能してるのは間違いないですが・・・。

「でもまぁ、彼の気持ちも分からなくはないかな」

死んだはずが生まれ変わる、しかもアニメや漫画の世界に・・・。

いまいち前世の記憶があいまいですが、もし記憶が万全で、そこが自分の大好きな物語の世界だったら・・・間違いなく浮かれてはしゃぎまわるでしょう。

恐らく彼もそうなのでしょう・・・。

リリカルなのはが大好きで、その物語の登場人物も大好きで、その世界に転生して嬉しくて嬉しくてたまらない。

そして登場人物と会おう、一緒に物語に自分も参加しようと。

だというのになのはのそばにはストーリに影も形も無かった存在・・・私がいる。

もしかしたら私が気づかないだけで既にストーリを改変してしまったのかもしれません。

元より父さん達家族の為に原作ブレイクする積もり満々でしたが、彼にはそれが許せなかったのでしょう。

「で、理想をぶち壊してくれた君が許せなくて犯行に及んだ・・・こんなところか」

「多分ね、あの人からすれば私は大切な者を穢した諸悪の根源なんだと思う。そういう意味では悪いことしちゃったかな・・・まぁ次あったら本気でブッころばすけど」

理由がどうあれ殺人未遂に質量兵器所持、日本の法律なら銃砲刀剣類所持等取締法違反・・・どちらにしろ明確な犯罪です。

法の裁きと法に触れないレベルで私からの制裁を受けてもらいましょう。

「同感だね、彼にはハルナの父として色々と話さなきゃならないことがあるかね。あぁ、会うのが楽しみだなぁ・・・クックック」

そう笑みを浮かべる父さんから何やらドス黒いオーラがモワモワと立ち上っています。

「あのー、父さん?もしかして怒ってる?」

嫌な予感がして恐る恐る父さんに聞いてみます。

「・・・怒ってる?ハッハッハ、何を言ってるんだい?怒る訳無いだろう・・・」

ハハハ、だよね。いくら私が死にかけたってここで怒るのは父さんのキャラじゃないし・・・。

「そんなレベルじゃ済まないとも、久しぶりに父さんキレちまったよ・・・っ!!」

・・・うん、もっとヤベぇことになっていました。

「嫁入り前の娘の身体に風穴開けてくれたんだ、もはや万死程度では生ぬるい!1億回殺してから無理やり蘇生してもう1兆回ぶっ殺してやるぅ!!」

普段の飄々とした姿はどこへやら、完全にキャラ崩壊した父さんが憤怒の表情で絶叫する姿にすっげービビってます。

なんかもう目の前にあの少年Aが現れたら本当にぶっ殺しかねない勢いです。

「父さん落ち着いて!ほら、私ちゃんと生きてるから!それにせっかく足洗ったのに殺人は拙いでしょ!」

父さんと妹たちに日の当たる世界で生きてほしいのに私の為に手を汚すなんて絶対だめです。何としても止めなければ・・・!

「ハッハッハ、もしかして私が前科持ちになるのを心配しているのかい?安心したまえハルナ」

優しく安心させるように言う父さん、どうやら分かってくれたみたいです。

「おあつらえ向きに君を大切にしているご老人たちは大勢いるからね、何かあっても彼らがもみ消すから心配はいらないよ」

訂正、全然わかってません。

「いやいやいやいや、ダメだからね!もみ消しても殺したって結果は残るからね!」

そこまで私の事を大切に思ってくれるのは嬉しいけれど同じくらい私が父さんたちの事を想っていることを忘れないでほしいです。

「あいつとのケリは私自身が付けるから父さんは手を出すの絶対禁止!わかった!?」

「むぅ、そこまで言うなら仕方ない。いいだろう、君に全部任せるよ」

釈然としないようですが何とか納得してくれた父さんにホッと一安心です。

まぁ、今あれこれ考えても答えは出ないんです。

結局あの魔導師ともう一度ぶつからなきゃ分からないなら今は万全の状態で戦えるようにしなければいけません。

「てなわけで今度こそ寝るよー」

「はいはい、夕飯の時間には起こすから、おやすみ」

私は「はーい」と返事をして布団の中で丸くなります。

やはりまだ体力が回復していなかったのかすぐさま襲ってきた睡魔に無条件降伏した私は速攻で夢の中へバカンスとしゃれこみました。

 

「ところでさ、父さん?」

その後夕飯の時間に起こされた私は食堂で父さんに聞きました。

「ん?何だい?」

「中華チョップがあるってことは『ドリル』とか『キャノン』もあったりするの?」

さっきの会議でネタとして父さんが出してきた義手、通称「中華チョップ」・・・。

あれは昔日本のネット界隈を賑わせた某中華ロボの武装の一つです。

そのロボにはほかにも近接用武器の「中華ドリル」と必殺技の「中華キャノン」が存在します。

詳しいことは中華キャノンで検索してください。

「ん~それなんだけどねぇ・・・」

おや?父さんにしては歯切れが悪いですね・・・。

「両方とも開発は難航しているんだ。ドリルの方は試作した義手、「ギムレット」は出来上がってるんだけど手首から先を高速回転させてるだけでドリルに変形する機能は作り出せていないんだ」

成程、どれだけ見た目がそれっぽくてもそれをドリルと言い張るのは確かに無理がありますね。

「で、中華キャノンの方は出力不足でね。魔力じゃ足りないから元ネタ通り台地からパワーを吸収させたいんだがそのメカニズムが解明できないんだ。今忍君に頼んで中国奥地から仙人をアドバイザーとして招く準備をしてるところさ」

何でこんなネタネタしいのをチョイスしたかと思えばあんたが原因か忍さん・・・。

「・・・てか、それを私に着けるつもりなの?」

「え?ほかにだれが使うんだい?」

・・・誰か父さんに最終攻撃機能を付けてください、速攻でキーボードのQキー押しますので。




中華キャノン・・・ちょうど作者が10代の頃に流行ったネタですが今の10代で知ってる人いるのでしょうか?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第18話「魔法少女の正体はバレてなんぼなの」

今回はなかなか筆が進まず少々間が開いてしまいました。



「外出許可?」

「はい、ダメですか?」

それは父さんからのドクターストップが解除されていなかった時の事。

私的にはお腹の傷は完治したんですが父さんは大事を取って未だ現場復帰はできていません。

まぁ、マリィと喧嘩したときの一件もありますから今回は素直に従っていますがもうやることが無くて仕方ありません。

摸擬戦はリハビリの名目で許されているので溜まったフラストレーションをクロノにぶつけてはいるのですがそれでもまだ足りません。

いい加減外の空気が吸いたいのでリンディさんに地球に降りる許可を貰いに艦長室にやってきました。

「私は構わないのだけれど、ドクターは何て言ってるの?」

私に関しては保護者兼主治医の父さんが全権を握っています、艦長としては現在進行形でクールに錯乱している父さんには正直言って近づきたくないようです。

「戦闘しないなら外に出てもいいって言ってました。襲撃の可能性が捨てきれないから護衛は付けるように言ってましたが・・・」

さすがに護衛は過保護が過ぎるのではと思いましたが実際一度死にかけたわけですから反論できません。

「ん~、そうなると誰を付ければいいかしら・・・」

ただでさえローテーションが組めない上に護衛に武装隊の人員を引き抜くとなると厳しいのか、リンディさんはこめかみを抑えながら唸ります。

「あ、それなら適任な人材がいますよ」

ですがそこは解決出来ます、我に秘策アリです。

 

機人長女リリカルハルナ

第18話「魔法少女の正体はバレてなんぼなの」

 

「と言う事で、やってきました海鳴市!」

リンディさんからもお許しを得た私は護衛を伴って転送ポートから海鳴臨海公園に降り立ちました。

それにしても海鳴かぁ、何もかも、皆懐かしい・・・。

一応この間まで市内をウロウロしてましたがお休みできたのはこないだの夏以来です。

「あの、ハルナちゃん?私達も一緒に来てよかったのかな?」

その声に振り向けば私の護衛役のなのはが心配そうな顔をしています。

その方にはフェレット形態のユーノが乗り、これまた不安げな顔をしています。

「大丈夫だよ、二人は私の護衛役ってことになってるから」

私が撃たれて以来、なのははユーノとクロノと三人でほとんど休みなしにジュエルシードの捜索を続けています。

これまでの捜索で私たちが合計で9つ、フェイトさん達が6つ回収しており、残りのジュエルシードは六つまで絞られました。

本人等は大丈夫と言っていますがいい加減ガス抜きしないと身体が持たないとリンディさんも考えていたのか、私の意図を見抜いてあっさりと提案は受理、なのはとユーノにもお休みを言い渡しました。

それにしてもこの年でワーカーホリックとは、将来がとても心配です。

働き過ぎで大怪我しなければいいんですがね・・・。

「でも私だとハルナちゃんの事守れないんじゃ・・・」

そんなことを言うなのはですがその辺はちゃんと考えてあります。

「大丈夫だよ。多分だけどアイツ、なのはには攻撃できないから」

「ふぇ?」

「どういう事?」

あの謎の魔導師Aは私と同じ転生者の可能性が濃厚です。

実際私を助けにやってきたなのはには攻撃することなくすごすごと退散して行きました。

なのでなのはが一緒にいれば襲撃される危険性はグンと低下します。

仮に襲ってきてもその時は私が相手をすればいいだけです。

父さんは認めていませんがもう完治していますからね私の体。

襲撃も未然に防げてなのはもお休み出来る・・・まさに一石二鳥と言うやつです。

「よぉしっ!そんなわけで出発!」

「お、おー。ってどこに行くの?」

尋ねてくるなのはに私はニヤリと笑みを浮かべます。

「ふっふっふ・・・実はもう行く当てはあるのだよ」

 

Side アリサ

「で、紹介したい友達がいるって言うから来てみたら・・・まさかなのはだったなんて」

「うん、すごいビックリだよ」

そんな訳でやって来ました月村邸。

こっちに着いた次の日にすずかに時間が空いたら遊びに行くとメールを入れておいたのでアポは直ぐに取れました。

ついでにこっちで新しく友達ができたので紹介すると出発前に連絡しておきました。

到着してなのはを見てビックリというサプライズを期待していたのですが思ったよりもリアクションが薄いです。

「えっとね、ここ最近なのはちゃんの様子がおかしかったから、最近は家の事情で学校にも来てなかったし・・・」

「ここ最近不思議な事件が立て続けに起きてるし、そこに来てハルナが仕事で地球に来てるって連絡が来たんだもの。もしかしたら魔法絡みの事件に巻き込まれたのかもって思うでしょ?」

なるほど・・・そう言えばなのはは私たちがくる以前からユーノとジュエルシードを捜索してましたもんね。

そのせいで最近付き合いが悪いことを二人は不思議に想っていたと。

で、当のなのはと言えば・・・。

「はわ、はわわ・・・」

目を点にして硬直しています。

「どうしたのさなのは?鳩が30ミリガトリング砲の機銃掃射を浴びた様な顔をして?」

「ハルナ、そんなもん浴びたら鳩死ぬわよ」

「むしろバラバラになっちゃうよ・・・」

的確なツッコミを入れる二人。

でも実際にそんなもの浴びたらもっとヤバイです。

人間だって食らったらご遺体が残らないレベルの威力ですから・・・。

「な、何で!?何で二人ともハルナちゃんと仲よさそうなの!?もしかして、魔法の事も・・・?」

「勿論知ってるわよ」

「ちょっと前にハルナちゃんに助けてもらったことがあってね、それから友達になったの」

簡単な事のあらましをなのはに説明する二人。

「ふぇぇ・・・」

自分が留守にしている間に私が海鳴に来ていたことに言葉がでないなのは。

二人を驚かす筈が逆になのはに対してのサプライズになってしまいました。

「てか、あたしはなのはが魔法少女になってたのは驚きなんだけれど・・・」

「にゃ、にゃはは・・・」

言い返せず笑ってごまかすなのは、でもアリサにそれは通じませんでした。

「それで、どんな経緯で魔法使えるようになったのよ?私達に話せなかった厄介ごともそれなんでしょ?」

「ふぇっ?そ、それは・・・」

話していい物か否か、なのはが助けを求めるようにチラチラとこっちを見てきます。

「あ、いいよいいよ。さっきすずか達も言ったけどもう魔法の事も次元世界の事も知ってるから」

「う、うん。じゃあ・・・」

そうしてポツリポツリとなのはは語り始めます。

平凡な小学3年生だったはずの、私、高町なのはに訪れた突然の事態。

渡されたのは、赤い宝石。手にしたのは魔法の力。

新たな出会いとすれ違う二つの心。

話したいことがある、伝えたいことがある。

その為に戦わなければいけないなら、私はもう迷わない。

「魔法少女リリカルなのは、始まります・・・」

「ハルナ?何ブツブツ言ってるの?」

なのはが二人にこれまでの経緯を話している横で私はそれをOP前のアレ風なナレーションに変換してお送りしました。

「にしても・・・ユーノが本当は人間の男の子だったなんて・・・」

「うっ、ごめんなさい・・・」

ユーノのくだりを説明するにあたりいつもの様にフェレットモードだったユーノは変身を解いて真の姿をアリサとすずかにお披露目することになりました。

当然温泉で裸を見られたことに気づいた二人にユーノは地球に来てから何度目かのDO☆GE☆ZAを行う事に。

いつの間にか参加していた忍さんは笑って許してくれて、二人からも何とかお許しを貰いようやく肩の荷が下りたユーノは深いため息をつきます。

「それでなのはちゃんはハルナちゃんと一緒にジュエルシードっていう宝石を集めてるんだよね?そのフェイトちゃんっていう子とお話しするために・・・」

「うん・・・」

すずかに質問されたなのはが力なく頷く。

最近はフェイトさんも私達管理局を警戒して隠密行動に徹しているせいでお話しどころか遭遇することすらありませんからもどかしいんでしょうね。

「ハルナちゃん、撃たれたって言ってたけど本当に大丈夫なの?」

「大丈夫ダイジョーブ。ほら、この通り痕も残ってないから」

そう言って服をめくってお腹を見せます。

お腹には縫合の痕すら残っていません、執刀した父さんに感謝です。

「でもハルナちゃんが大けがしたときすごく心配したんだよ?」

「うっ、その件に関してはご心配おかけしました・・・」

父さんやリンディさんから聞いた話だとあの直後は関係者一同大騒ぎだったそうです。

まずナカジマ家、第一報が届いた直後クイントさんがショックで倒れたらしく、それを知ったゲンヤさんが仕事ほっぽり出して病院に駆け込んだらしいです。

ショックを与えないように下の妹達には情報は伏せてあるらしいですがクイントさんの件や以降の夫婦と年長組の慌ただしい様子から何かあったのではと勘づいてはいる様子です。

おじいちゃんズに至っては艦隊司令部すっ飛ばしてリンディさんに直接『下手人を即刻処刑しろ!』と叫んだと聞きました。

何とか田中さんと管理局に就職したドゥーエに抑えられ、命令は取り消されたらしいですが未だ怒りは収まっていないと聞いています。

心配してくれているのは嬉しいですがもう少し落ち着いてほしいです。

艦内も殺気立っており、管制官たちはローテーション無視で少年Aの捜索を行い、武装隊に至っては非殺傷設定を解除した状態で出撃待機していたとか・・・。

私の目が覚めてからは幾分か落ち着いたようですが、未だ艦内の雰囲気はピリピリしたままです。

これも外出した理由の一つ、さすがにあの殺伐とした空間に長時間なのはを居させるのは拙いと思ったんです。

「とか言って、あんたが外に出たかっただけじゃないの?」

「否定はしない!」

「しないんかいっ!?」

キレのあるツッコミを入れるアリサ、それでこそ私のライバルだ!

「あんたのライバルになった覚えは無いわよ!」

「そ、そんな・・・」

私は打ちひしがれ床に膝を屈します。

信じていたのに、アリサとなら切磋琢磨出来ると信じていたのに・・・。

「切磋琢磨って、何をよ?」

「漫才」

「しないわよっ!」

私がそう言うと脳天にチョップと叩き込むアリサ。

やっぱり彼女はツッコミ役に向いていると思います。

「ゼェ、ゼェ・・・このすっとこどっこい振り・・・本当に元気になったようね」

「そうだね、よかった・・・」

肩で息をしながら心底疲れた表情で言うアリサと、心から嬉しそうに同意するすずか。

でも・・・すずかさん?何で顔を赤らめてるんですか?

目もなんかアブナイ感じ・・・忍さんがエロビーム照射してる時みたいに色っぽいし・・・まさかまた貞操の危機っ!?

アリサ!は何かニヤニヤしながらコッチ眺めてるし、ユーノ!は逆にこっちに背を向けて私たちを見ないようにしてるし・・・ダメだこいつらアテにならねぇ!

「あの~、どうやって三人が仲良しさんになったのか教えてほしいんだけど・・・」

そんな窮地に救いの手が!

サンキュなのは!まさに君は光の天使だよ!

心の内で悪魔とか魔王とかいう呼び方がよぎったことに関しては訂正させて。

あなたみたいな優しい子がが悪魔なわけないもんね!

「ま、さっきのお仕置きはこれくらいにしてあげようかしら」

そんなことを宣うアリサ。

畜生、やっぱりさっきのお返しかよ。

でもやられっぱなしのハルナちゃんではありません。

どっかの映画でCIAの偉い人が言っていた・・・『ペロリストにはペロで立ち向かう!』と、私もそれに倣う事にしましょう。

手始めにまずは後であげようと思っていたメロンパン、あれの周りのカリカリ部分を取ったやつを差し上げよう。

ふっふっふ・・・パサパサモフモフな触感を楽しむがいい!

「んで、私らが仲良くなったきっかけだっけ?」

「うん」

とまぁアリサへの報復はさておき目下の問題はなのはへの返答です。

私達の馴れ初めを離すとなると必然的にすずかの秘密も話すことになってしまいます。

話していいかとすずかに視線を向けると、彼女は一瞬不安そうな顔をしましたが、直ぐに毅然とした表情で私に頷きます。

どうやら了承は得られたようです。

「それじゃ話すね。最初に言っておくけれど、聞いたらすんごい驚くと思うから」

「う、うん・・・」

私の言葉になのはは緊張した面持ちで頷きます。

そして私の語りが始まります。

ここからはダイジェストでお楽しみください。

『パンパカパーン!』

軽快なラッパの音と主にサーチライトで照らされる2●thF●Xの文字

休暇を取った時空管理局の執務官ハルナ・スカリエッティ。

都会の喧騒から離れ海鳴という街にやってきた彼女はそこですずかとアリサという少女と出会う。

彼女達に案内されて町一番の喫茶店『翠屋』で友好を深めていると突然襲い掛かる謎の襲撃者!

「いやっ!離してっ!」

攫われるすずか達。

「ダチの命が惜しければ俺たちに協力しろ。OK」

「OK!(ズドン!)」

脅迫してくる誘拐犯の一人を射殺した私はそいつが巨大軍事企業サイバーダイン社の私兵であることを突き止め本社ビルへ忍び込む。

「ペパロニのピッツァだ。激ウマだぜぇ!」

ピザ屋の店員に扮して社内に忍び込んだ私は会社のコンピューターをハッキング。

連中が開発中の軍事AI『スカイネット』をテロ組織、深紅のジハードに密輸しようとしていることを知る。

深紅のジハードは香港マフィア『龍』とつながりがあり『龍』と対立し多大な損害を与えていた月村家に恨みを持っており、すずかは彼らに対する手土産にされたのだ!

「カルロなら逮捕されたよ。警察署長の娘とヤっちまってなw」

直ちに取引の場として指定されていた南米の独裁国家バルベルデへ単身飛んだ私は現地の人間に接触し情報を集める。

「お前は最後に殺すと約束したな?」

「そ、そうだ大佐!た、たすけ・・・」

「あれは嘘だ」

「アーッ!!」

離せ離せと煩い輩の足を離してやったり・・・。

「いたぞぉっ!いたぞおぉぉっ!!怖いかクソッタレ!?元グリーンベレーの俺に勝てるもんかっ!」

「試してみるか?私だって元ナンバーズ(現スカ家長女)だ」

こんなひでぇジャングルは初めてだとかぼやいてた敵の幹部に見つかってガチンコしたりしながら私はすずか達の足取りを追い、ようやく深紅のジハードのアジトを突き止める。

そこは完全武装の兵士たちが守る正に難攻不落の要塞、とてもじゃないけれど丸腰では向かえません。

なので・・・。

「買い物だ」

装備を整えることにします。

一番近場にあったアラモ銃器店にブルドーザーで乗り付けた私はさっそく装備を調達にかかります。

「ソ連製マーヴⅥ」

「かき氷を作るのに最適だよ」

「サイレス社製EM-1レールガン」

「いい銃だろ?間抜けを打ち抜くならこいつが一番だ」

「レイジングハートCVK-792搭載型」

「ここにある物にしてくれ」

「・・・ダイソンサイクロンV10」

「こいつの吸引力は最強だ、決して変わることは無い。で?どれにするんで?」

「・・・全部だ」

10万ドルPONと出すとおまけで安物のナイフもつけてくれました。

そこから先は急展開です。

波止場で奪った羽の付いたカヌーで敵アジトに接近。

浜辺で一人ノルマンディ上陸作戦を慣行、デェェェェェェン!のBGMをバックに完全武装で立ち上がるとアジトに殴り込みます。

飛び交う怒号と銃声、迸る筋肉、爆発爆発、さらに爆発。

ちなみにこの時点ですずかの居場所はまだわかってはいません。

並みいる深紅のジハードとサイバーダイン社のカカシ共を蹴散らしアジトの奥へ奥へと進む。

「来いよU田、銃なんて捨ててかかってこい」

「野郎OFクラッシャーっ!!」

「 (`0言0´*)<ヴェアアアアアアアア」

なんかボスっぽいのがわけわからない事叫びながらかかってきますがしめやかにガス抜きし、横やり入れてきたなんか醜い顔の宇宙人もついでにやっつけて終了。

こうしてすずかを救い出した私ですがそこに予想外の敵が現れる!

「ドーモ、スズカ=サン。俺の名はターミネーターTKMT-001KYOYA・・・月村すずか、お前を抹殺するために未来から来たサイボーグニンジャだ」

デデンデンデデン!数十年後に起るスカイネットの反乱・・・それに立ち向かい、コンピューターを破壊した英雄の母親であるすずかを幼いうちに殺すために未来から差し向けられた死角・・・ターミネーターが襲い掛かってきたのです!

既にこれまでの戦いでほとんどの武器を使い果たした私は武器屋のおじさんからもらった安物のナイフで立ち向かいます。

しかしこのターミネーター、全身が流体金属でできており切っても斬っても再生します。

何故か近くにあった液体窒素のタンクまで誘導し、中身を浴びせて凍らせますがここは南米バルベルデ、すぐさま熱で溶けてしまいます。

それでも時間が稼げた私たちはサイバーダイン社の兵器工場に逃げ込みますがそこで恐ろしい真実を知ります。

なんとあのターミネーターTKMT001は未来ですずかを守り命を落とした私の技術を元に製造されたのです!

すずかを守るための力がすずかに向けられたと知った私は怒り、復活したターミネーターの胸にに安物のナイフを突き立てます。

ターミネーターは涼しい顔でナイフを取り込みますがそれこそ私が待っていた瞬間、最後に残ったグレネードランチャーを奴に向け。

「あすたらびすたべいべー」

引き金を引きました。

本来なら流体金属の身体を通り抜けるグレネードは内部に取り込んだ安物のナイフに直撃し大爆発を起こします。

吹き飛びながらも再生を開始するターミネーター、しかし彼が落ちたのは溶鉱炉の中でした。

打撃や斬撃に対しては無敵の再生能力を持っていても1500℃を超える溶けた鉄の中にダイブしたらひとたまりもありません。

見る見るうちに溶けてなくなりました。

こうしてすずかを狙う敵はすべていなくなった。

でもまだ戦いは終わっていない、まだやるべきことがある。

「ハルナちゃん、まさか・・・っ!」

「・・・うん」

ターミネータKYOYAは私を元に造られている。

このままいけば間違いなく未来で私を元にしたターミネータが製造されてしまう。

「それを阻止するためには今この時代で私を破壊しなければいけない」

「ダメッ、そんなのダメだよ!」

泣きながら縋りつくすずか。

「・・・人間がなぜ泣くのか、ようやく分かった。その人が大切だからだ」

そう言って私はすずかの涙をぬぐう。

「お願いだよすずか。私に大切な人を守らせて・・・」

「・・・ハルナちゃん」

私はすずかをギュッと抱きしめた後、彼女から離れ、クレーンにしがみ付く。

ゆっくりと降下を始めるクレーン、私のカラダは少しずつ溶鉱炉に沈んでいく。

目から涙を流しながら見つめるすずかに向かって私は親指をグッと立てる。

頭も沈み、そしてついにその手も灼熱の中に没した。

「こうして戦いは終わった、残念ながらスカイネットは歴史の通りに起動し人類に牙をむく。誰もが絶望したとき救世主が立ち上がった。父親譲りの銀髪をなびかせた彼女の名は月村、あだっ・・・!?」

「もぅ!ハルナちゃんっ!おふざけは禁止っ!」

握りこぶしで説明する私の後頭部をすずかに叩かれます。

「いたた・・・ゴメンゴメン。でもすずか、ミッド土産の練習用ストレージデバイス(魔力で強度アップ状態)で叩くのは勘弁して。危うくすずかを逮捕することになるかと思ったよ」

「・・・罪状は?逮捕されるようなことしてないもん」

私の言葉にすずかはプクーっと頬を膨らませながら聞いてきます。

こんなの見せられたら答えは一つしか無いじゃないですか。

「・・・かわいすぎること?」

「ぴゃっ・・・!?」

爆発したみたいに一瞬で顔が真っ赤になるすずか。

やっぱり逮捕したほうがいいかもしれません、この可愛さは大量破壊兵器レベルです。

「おーい二人ともー?いちゃつくのもいいけどなのはがフリーズしてるわよ?」

空気を読まず・・・いや、逆になのはの為に空気を読んだのか?とにかくアリサに水を差される形ですずか弄りはお開きとなりました。

見て見ると確かに・・・処理能力の限界を超えたのか、なのはが頭から煙を吹き出しながら沈黙していました。

「あ、ホントだ。おーいなのはー、今の冗談だからもどっておいでー」

「にゃっ?ふぇ?え?冗談・・・?」

私の呼びかけで再起動したなのは、今のが作り話だと知るとすずかと同じように頬を膨らませます。

「もぅ、ひどいよハルナちゃん!せっかく頑張って聞いてたのに!」

「いやいや、恭也さんがターミネーターになってる辺りで気づきなさいよ。第一何でシュワルツェネッガー作品のパクリなのよ?」

失礼な、パクリじゃなくてリスペクトです!シュワちゃんの映画に敬意を表しての行いです!

「てか、途中からアタシ影も形もなかったんだけど?!」

そう言われてようやく作中でアリサを助けていないことに気づきました。

「・・・あ、ゴメン。完全に忘れてた♪」

「フンッ!」

「ごどらたんっ!」

振り下ろされるアリサのゲンコツに私は名状しがたき悲鳴を上げました。

「んじゃ改めて説明を再開するよ」

「う、うん・・・」

未だ引っ込む様子の無いタンコブが気になるのかチラチラと視線をそちらに向けながらなのはが頷きます。

「うん、すずかは吸血鬼です!」

嘘偽り誇張なくなのはに真実を告げます。

「ハルナ、ぶっちゃけ過ぎ・・・」

「もうちょっと順を追って説明しようよ・・・」

速攻ですずか達からダメ出しが入りました、解せぬ・・・。

「きゅ、吸血鬼・・・?」

「うん、正確には吸血鬼じゃなくて『夜の一族』って言ってそれっぽい力を使える人間。それでその力を悪い人たちに狙われてね・・・」

アリサにソファまで押しやられ、代わりに立ち上がったすずかがなのはに説明を始めます。

夜の一族の事、その力を悪用しようとする者の存在、自分が狙われアリサもそれに巻き込まれたこと、それを私が助けた直後救出に来た恭也さんと激突したこと等々・・・。

なのはも相当驚いていましたが、自分も魔法の事を黙っていたのでおあいこ言う事になりました。

「なのはちゃん、私・・・普通じゃないけど、吸血鬼じゃないけれど・・・これからも友達でいてくださいっ」

一族の掟等も説明したうえで、すずかは掟を抜きになのはと友達でいたいと、以前私が彼女に言ったようになのはに思いを伝えます。

「うんっ、もちろん。すずかちゃんは私の友達だよ。これまでも、そしてこれからも・・・」

そう言って微笑むなのは、しかし・・・。

「・・・誰?」

ホント誰これ?めっちゃイケメンなんですけど・・・!?

あまりに普段のなのはとのギャップが激しくて思わず口にしてしまいました。

「知らないわよ。この子たまにカッコイイのよね。普段アレな分余計に・・・」

あぁ、確かに。

いつも私や父さんのおふざけにはわはわしてるなのはとは全く別人のように凛々しいです。

これが主人公力なのでしょうか・・・。

「でもハルナちゃんとお兄ちゃんが戦ってたなんてビックリだよ」

「まーね、その時恭也さんと知り合って魔法が高町家にバレたんだ」

「まったく、あれには驚かされたよ・・・」

ふと、後ろから声がしたのに振り向くと恭也さんと忍さんがちょうど部屋に入ってきたところでした。

「お兄ちゃんっ!?」

「あ、お姉ちゃん。聞いてたの?」

「残念ながら私は恭也ほど耳がよくないから、すずかとハルナちゃんの馴れ初めの話は聞きそびれたわ」

忍さんにからかわれ顔を真っ赤にするすずか。

「も、もうっ!」

「それにしてもさっきの話はどうかと思うぞ。何をどうしたら俺がターミネーターになるんだ?しかも二作目で出てきた流体金属の奴・・・」

だって私がシュワちゃん枠ですから、必然的に出てくるターミネーターはT800以降にするしかなかったんですよ。

「・・・待って。恭也、今なんて言ったの?」

突然忍さんが真面目な声で恭也さんに尋ねます。

「え?俺がターミネーターに・・・」

「その後!」

忍さんの並みならぬ剣幕にたじろぐ恭也さん。

「に、二作目にでた流体金属の・・・」

「それよ!」

ビシッ!っと人差し指と恭也さんに向けながら忍さんは叫びます。

そうよ、「流体金属を使う手があったじゃない。あれなら電気を流せば自由に形状を変えられるし密度を上げれば強度だって・・・こうしちゃいられないわ、まずは電磁波の波長の解析から・・・」

すっごくスッキリした顔で何やらブツブツと呟きながら出ていく忍さん。

・・・うん、嫌な予感しかしない。

「何だったの?」

「多分私の腕のバリエーション絡みだと思う」

今度はいったいどんなビックリドッキリメカを寄越されるのやら・・・。

「って・・・すずか?なんか顔赤いけど大丈夫?」

「えっ?本当?緊張したからかな・・・」

すずかの顔がほんのり赤くなっていることに気づいた私が聞くとつられてアリサもそれを確認します。

「ホントだ、血飲んだ方がいいのかな?」

夜の一族は定期的に血を摂取する必要があり、アリサも何度かすずかに血を分けてあげたらしいです。

すずかがアリサの首にカプリと・・・うん、エロいですね。

「ハルナ?アンタ今すっごくいかがわしい想像したでしょ?」

「うん、した」

「否定しなさいよっ!?」

案の定突っ込んでくるアリサ、ますます芸人でないことが悔やまれます。

「まぁ、それは後でとっちめるとして。ねぇすずか?せっかくだからハルナから血を貰ったら?」

「ふぇ?」

「ええぇっ!?」

アリサの提案にすずかはものごっつ驚いた顔で声を上げます。

「ほら、なのははいつでも貰えるけれどハルナはこの事件が終わったらまたミッドチルダに戻っちゃうんだから、今のうちに貰って置いたら?」

すずかを唆すアリサ。

浮かべた笑みも相まってその姿は人を惑わす小悪魔のごとしです。

「えっと、その、でも・・・うぅ~」

悩み、悶え、葛藤するすずか。

欲望と理性が彼女の中で壮絶な激闘を繰り広げ・・・。

「・・・ハルナちゃん、その・・・いい?」

どうやら勝利したのは欲望の方でした。

「う、うん・・・」

上気した顔で上目遣いに聞いてくるすずかを私は拒絶できず、了承してしまいました。

ムリだよこんなん!断れるわけないじゃん!

おいアリサ!後で覚えてろよっ!?

なのはもなに恭也さんを部屋から追い出そうとしてるのさ!?

「お兄ちゃん早く出てって!覗いちゃダメなの!」

「ちょっ、分かったから押すなって・・・!」

なのはにグイグイと押されて恭也さんが部屋から出ると、アリサも「それじゃあごゆっくり~」と笑顔で退出する。

畜生!ほんとに覚えてろよ~!!

「ハルナちゃん・・・」

「は、はひっ・・・っ!?」

ソファーに並んで座ったすずかに声を舁けられ思わず背筋を伸ばす私。

「ほんとうに、いいの?」

ここまで来ても不安そうに聞いてくるすずか。

親友にこんな顔をさせたとあっては機人長女リリカルハルナの名が廃ります。

何より据え膳食わねばなんとやら・・・女は度胸、当たって砕けて星になった命よジャストフォーエバーです!

「いいよ、来て」

「うん、じゃあ行くよ。ん・・・」

首筋に触れるすずかの唇。

「んん・・・」

くすぐったさを感じた直後、チクリと刺すような痛みが走ります。

「んむ、ちゅる・・・」

犬歯を突き立てられた箇所をすずかの舌が何度も走る。

「んっ、はぁ・・・」

自分でも驚く位艶のある声が零れてきます。

「はぁ・・・ねぇ、ハルナちゃん。さっきのお話し、覚えてる?」

「はぁ、はぁ・・・え?」

朦朧とする意識の中ですずかの声に反応する私。

「お話の最後に出てきた私の子供って、ハルナちゃんとのこどもだよね?ハルナちゃんの世界では、その・・・女の人同士でも赤ちゃん、作れるの・・・?」

「・・・え゛」

朦朧としていた意識が一瞬で晴れました。

「その・・・ハルナちゃんとなら、いいよ?」

うん、ナニがいいのかお姉ちゃん分かりません、てか分かっちゃいけません。

そりゃね、ミッドとかの医療技術・・・てか父さんの力を使えば女の子同士でも赤ちゃん作ることはできますよ?

同性での結構とかも認められてますし、そう言った技術を使った出産もいずれはできるようになると思います。

でもいくら何でも9歳児はまずいでしょう色々と!

私だってすずかの事は好きですけれどそれだって友人としてのLIKEであって恋人としてのLOVEではありません。

これからどうなるのかは分かりませんが少なくとも今はそれで間違いありません。

「ねぇ、すずか・・・」

だから・・・。

「すずかにはまだ早いよ」

逃げることにします。

「・・・やっぱり、私じゃダメ?」

涙目で言うすずか、これは反則ですよ。

「いや、そうじゃないよ。私だってすずかの事は好きだよ?でもね、すずかはまだ9歳でしょ?エッチな話はまだ早すぎます!」

とりあえず未成年な事を指摘します。

「だからすずかがもっと大人になった時に気持ちが変わってなかったら、その時はまた想いを伝えて。ね?」

そこから正論で一気に畳みかけ時間を稼ぎます。

すずかのR指定が解除されるまであと9年・・・それくらいあれば頭も冷えますしすずか位のお嬢様になれば縁談の一つや二つ位はやって来るでしょう。

あわよくばその未来の旦那様と結ばれてくれれば私の貞操も安泰です。

「・・・わかった、私待つよ。大人になってハルナちゃんに思いを打ち明けられるまで、私ずっと待ってるから・・・!」

「・・・アッハイ」

安泰、の筈です。

なんだか執行猶予が付いただけの様な気もしますがとにかく時間は稼げました。

それまでに打開策を練らねば・・・。

「ん?」

今気づいたんですが、アリサたちが出ていった扉、半開きですね。

そしてそのわずかに空いた隙間には・・・。

「はわ、はわわ・・・」

「や、止めようよ。いろいろマズイよ・・・」

「二人とも静かにしなさいよ、見つかったらどうするのよっ」

アリサ、なのは、ユーノの目が室内を伺っていました。

・・・もしかして、見られてた?

私がすずかにチューチューされてエロい声出してた所も、すずかに色っぽい顔で告白された所も、それをかっこよくそれっぽいこと言ってうまく逃げた所も、全部、全部全部全部・・・。

「・・・アハッ」

誰かが笑っています。

「アハッ、アハハハハハッ・・・」

響き渡る壊れた様な笑い声、でもこの声・・・どこかで聞いたことがありますね?

「は、ハルナちゃん・・・?」

おやすずか?どうしたのさそんな怯えた顔して・・・。

「大丈夫だよ、直ぐに終わらせるから・・・」

安心させようと思いそう言った時、さっきの笑い声の正体に気づきました。

あぁ、これ私の声だ。

 

Sideアリサ

空気が凍るっていうのはこういう事を言うんだと思う・・・。

久しぶりにハルナに会えたからか少し調子に乗ってしまったのがまずかった。

もっとも原因の半分以上はおちょくってくるハルナにあるのだが・・・。

助けられて以来妙にハルナにご執心なすずかをけしかけてハルナが動揺する様子を拝んでやろうと思ったのが発端だった。

なのはやユーノも最初は止めようと言っていたがだんだんエッチな雰囲気になっていく二人から目が離せなくなり、いつの間にか私と一緒にデバガメに興じていた。

ハルナは何とかすずかを言いくるめることに成功したらしくホッと息をついた時、ドアの隙間から除く私と目が合った。

そして今に至る。

「アハッ、アハハハハハハッ・・・」

壊れた様ななんかヤバイ笑い声をあげるハルナ。

よく見れば彼女の金色の瞳からはハイライトが消えている。

「もしもし、リンディさん?」

そこでハルナは携帯電話を取り出すとどこかに電話を始めた。

「ちょっと今から封次結界を敷くんで、ええハイ。前に言ってた友達に魔法を見せるのに、はい、ありがとうございます。それでは・・・」

ハルナが電話を切った直後、周囲の景色が変化します。

「な、何これ!?」

「にゃっ!?これって・・・」

「封次結界!?」

いるのはさっきと変わらずすずかのお屋敷の中なのに、まるで時間が止まったかのように全てが沈黙している。

「さて、そう言えば前から魔法が見たかっていってたよねぇ、アリサ?」

ハルナが首にかけたネックレス・・・マギア・イェーガーとかいう名前のデバイスを握る。

最初に見せてもらった時は凄くキレイに見えたそれが今それはとてつもなく禍々しいオーラを放っていた。

「ああ、そうだ。せっかくだからなのはにリハビリを手伝ってもらおうかな・・・」

ハルナの恰好が「レア装備」とかプリントされたダサいTシャツとジーンズから灰色のバリアジャケットに変わる、もっとお洒落しなさいよ。

「ふっふっふ・・・最近火力増し増しのスゴイ魔法を完成させてね、ちょうど実験台が欲しかったんだ~」

口を三日月状に吊り上げながら嗤うハルナ、あれはヤバイ。すごく、ヤバイ・・・。

「多分食らったらショックで記憶が飛んじゃうけれど、別にいいよねぇ・・・」

前に恭也さんが修行してるのを見た時に感じた殺気、それを数十倍にしたものがひしひしと感じられる。

「は、ハルナ・・・」

「はわ、はわわ・・・」

気付けば恐怖のあまり震えながらなのはと抱き合っていた。

その隣でユーノが必死の形相で結界を解こうとしている。

「うん、頑張ってねユーノ。でも結界が敗れるよりも私の魔法が命中する方が早いと思うな・・・」

デバイスが向けられる、先端に魔法の光が収束していく・・・。

「Die(ダーイ)!!」

光りが視界一杯に溢れ・・・。

「「っ・・・!」」

ジャジャーンとクイズ番組で流れるような効果音と共に『ドッキリ大成功!』の文字が浮かび上がった。

「「・・・へ?」」

「フッフッフ・・・ハーッハッハッハ!どうだ!びっくらこいたかっ!」

デバイスを下したハルナがムカつくを通り越してすがすがしいと感じるくらいのドヤ顔で笑う。

それを目にしてようやくさっきのアレが私たちを怖がらせていただけなのだと気付いた。

「は、ハルナっ!アンタ、アタシ達の事からかってたのね!?」

「当然でしょ、私がアリサたちを本気で撃つわけないじゃない。恥ずかしい所を見られたのもあるけれどすずかを巻き込んで悪さしたことはこれでおあいこにしたげよう」

「ぐぬ、ぐぬぬ・・・」

反論できない、確かにすずかをけしかけて共犯にしたのは悪いと思うから。でも・・・。

「いや~泣きべそかいてるアリサなんてめったにお目にかかれないもの見れたし、よかったよかった」

こっちはちっともよくないわよ!

「・・・おかしいな、二人ともどうしちゃったのかな・・・?」

「・・・へ?」

「えっ・・・?」

そこでふと声がする。

聞こえてきたのは私のすぐ隣にいる親友、なのはの方からだ。

でもそんなはずはない、彼女はこんな底冷えするような冷たい声ではない筈・・・。

「怒るのは計るけれど、デバイスは玩具じゃないんだよ?冗談で人に向けちゃだめなんだよ?」

怖い・・・身体が、本能がなのはの方を見るのを拒んでいる。

それでも恐る恐るそちに視線を向けると・・・。

「ねぇ、私の言ってること、間違ってるかな?」

魔王がいました。

まるで感情が死んだかのような能面、しかし放つ怒気と怒りでドロドロに濁った眼差しがなのはの怒りを如実に表していた。

幻だろうが彼女の背後には般若の面がこちらをにらんでいるように感じる。

「って、私も!?」

「元はと言えばアリサちゃんのイタズラが原因なんだよ?だから同罪なの」

なのはの服装がうちの学校、私立聖祥大付属小学校の制服をモデルにした純白のバリアジャケットに変わる。

そして手にしたデバイス、レイジング・ハートをさっきハルナがしたように私とハルナにむけて・・・。

「待ちなさいなのは!冗談でデバイスを人に向けるなってアンタさっき・・・!」

「うん、いったよ。だから、本気で向けてるの・・・」

デバイスの先端に桜色の魔力光が収束していく。

ヤバイ、あれはマジだ。

「えっと、その・・・ごめんねなのは、確かに私も調子に乗ってたよ。この結果を真摯に受け止めて今後の参考に・・・」

ハルナが妙に官僚答弁みたいな弁解をなのはに投げかけるも。

「問・答・無・用・なの♪」

なのははすっごくいい笑顔でレイジングハートの照準を会わせる。

収束した魔力が一層強い光を放ち・・・。

「少し、頭冷やそうか・・・」

「「ぎにゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~ーっっっっ!!!!!!」」

抱き合い叫ぶ私達にぶっ放された。

Side Out

 

はぁ、はぁ・・・っ!死ぬかと思った!

ホント、非殺傷設定を考え付いた人に感謝ですよ。

キレたなのはに全力全壊でブレイカーされた私とアリサはその後も正座させられてなのはから延々とお説教を受けました。

必死に謝り倒して反省の意を示したので何とかなのはに許してもらう事が出来ましたが、マジで怖かったです。

前言撤回!やっぱりあの子は天使じゃありません、超宇宙怪獣鬼悪魔デビルサタンです!

この後すぐに私とアリサの間で『なのはを怒らせてはいけない条約』と『過剰なイタズラ禁止協定』が結ばれ、以降無期限で度が過ぎるイタズラは(少なくともなのはのいる前では)行われなくなりました。

ともかく私達へのお仕置きとお説教も終わり、その後暫く遊んだ後でお開きとなりアースラへ帰る事となったなのはの顔はとても晴れやかでした。

すずか達に秘密を打ち明けられたからか、それとも私をぶっ飛ばしてストレスを発散したからかは分かりませんが、鬱屈としていた気分は晴れたようです。

「ハルナちゃん、ありがとう。私の事心配してくれたんだよね?」

ありゃ、バレていたようです。

「気にしなさんなお嬢さん。危険な事件に付き合わせているのは私達なんだから・・・」

「・・・うん、明日からまた頑張ろうねっ!」

グッと拳を握りながら元気いっぱいに言うなのは。

こんなかわいい子があんなラスボスっぷりを発揮するんですから世の中不思議ですよね。

「おうよ、なのはは私が守るからもっとお姉ちゃんを頼りたまへ」

「にゃはは、そう言えばハルナちゃんの家族の事もっと聞いてもいい?」

「喜んで!まず私の5つ下がウーノとドゥーエで・・・」

その後、熱の入った私の妹自慢は消灯時間ギリギリまで続きました。

なのはもだいぶ疲れたみたいだけど楽しそうに聞いてくれていましたし、今後もこんな風に平和な日々が続けばいいのに・・・。

そう思ってしまったのがいけなかったのでしょうか。

『警報!警報!海鳴沖合にジュエルシードの反応多数!総員第一種警戒態勢!繰り返す、総員第一種警戒態勢!』

鳴り響く警報を耳にした私は見事にフラグが回収されたことに後悔を覚えました。




ちなみにハルナの血ですがすずか曰く「機械油みたいな独特の香りがする」らしいですw
すずかとのくだりでR15タグをつけるべきでしょうか?


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第19話「アニメじゃない!なの」

お久しぶりです。
仕事がクソのように忙しくて妄想を文章に起こす暇すらない今日この頃・・・。
台風で休みが取れたので何とか更新できました。
今後も多分更新は遅くなると思うので亀更新タグをつけておきますw
でも頑張って完結目指すので見捨てないでください(懇願)



Sideなのは

鳴り響く警報、明滅する赤色灯。

海でジュエルシードが発動したと聞いた私とユーノ君はハルナちゃんに連れられてブリッジに向かいます。

「状況はっ!?」

ブリッジに入るなりハルナちゃんが大声でききます。

「海鳴沖合にてジュエルシード複数起動!エネルギー量より6つと推定!」

すぐさま管制官のランディさんが答えます。

これまでの捜索で私達が見つけたジュエルシードは9つ、フェイトちゃんたちが見つけたのが恐らく6つだから残りのジュエルシードが全部発動したことになります。

「映像来ました!」

同じく管制官のアレックスさんがそう言った直後、ブリッジ正面に現場の様子が投影されます。

荒れ狂う海、空には竜巻が立ち上り、稲妻がとどろいています。

そんな空にポツリと小さな影が二つ。

「フェイトちゃんっ!」

そこに居たのは竜巻を避けながら必死に電撃を放つフェイトちゃんとアルフさんでした。

Side Out

 

機人長女リリカルハルナ

第19話「アニメじゃない!なの」

 

「全く、無茶をする子だわ・・・」

そう漏らすリンディさんですがその言葉には呆れではなく怒りや苛立ちが感じられる。

その矛先は恐らくフェイトさんにこんなことをさせている黒幕・・・彼女の母親で間違いないでしょう。

「それだけ焦っているんでしょう。あそこにあるのが最後のジュエルシードですから」

そう言いながらクロノは恐らくフェイトさんとジュエルシードを確保する算段を考えているのでしょう。

「あのっ!私今すぐ行って・・・!」

出撃を進言するなのは。

恐らく今すぐ言ってフェイトさんを助けたいのでしょう。

でも・・・。

「いや、行く必要はない」

うん、そう言うと思ってました。

「どうしてっ!?」

「あれだけのジュエルシードだ、放っておけば勝手に自爆してくれる。仮に封印できたとしても激しく消耗するのは間違いない。そうなったところをジュエルシードもろとも確保する」

「そんなっ・・・!」

愕然とするなのはを横目にクロノはフェイトさん捕獲の準備に取り掛かる。

「言いたいことは分かるわ。でもこれが私たちのやり方なの・・・」

非常かもしれませんがリンディさんの選択は間違っていません。

私達の任務は常に数百の世界と数千億の人命がかかっています。

今回の事件もそう、もし私達が失敗してジュエルシードが暴走すれば・・・地球だけでなくその周辺の世界も巻き込んだ次元断層で何百億と言う命が失われてしまいます。

それをさせないためにはまず助ける側にいる私たちの安全が確保されていなければいけません。

味方が一人無事ならそれだけ救える人が増えるのですから。

そして残念ながら、敵であるフェイトさんは抑えるべき損害に含まれていないのです。

「でも・・・」

なのはが助けを求めるように私に視線を向けます。

「・・・・・・」

でも私はそれに応えられない。

本音を言うなら今すぐにあそこに飛んで行ってフェイトさん達を助けたい。

しかし例の魔導師Aの姿が確認できていません。

もしフェイトさんを助けているときに襲撃されたら今度こそ、それこそクロノやなのはを巻き込んで大惨事になる可能性が捨てきれない・・・。

私は時空管理局の執務官です、大勢の局員と更に大勢の人の命を預かる立場の人間として軽率な行動はできません。

(それなのに・・・っ!!)

モニターの向こうで必死に嵐と戦うフェイトさんを見ていると胸が張り裂けそうになります。

何度彼女が竜巻に呑まれそうになり、その度に悲鳴が喉元までこみあげてきたことか・・・。

畜生・・・何が時空管理局だ、何が執務官だ!目の前で苦しんでいる女の子がいるのに、肝心な時に動けないでなんの意味があるんだ!

(・・・ナ、ハルナ)

「ふぇっ?」

悔しくて脳みそが沸騰しかけていたその時、唐突に父さんの声が聞こえそちらに・・・。

(ああ、こいつは秘匿通話だからそのままで、下手に反応すると艦長たちにバレるよ)

おっと、あぶないあぶない・・・。

私を始め姉妹達(ギンガとスバル含む)には頭に思考補佐用の補助脳が存在します。

その補助脳同士はデータリンクで結ばれていて念話とは別のプライベート通信ができるようになっています。

ちなみに父さんも脳みそに専用のブレインチップを埋め込んでるんで通話可能です。

(どうしたの?急に秘匿回線で通話なんてして・・・)

それを使って通話してきたってことはリンディさんやクロノたちに聞かれたくない内容ってことですよね?

(いやね、君が何やら悩んでいる様だったからね。大方彼女を助けに行きたくて仕方がないんだろう?)

鋭い。いや、私の顔に出てたんでしょうか?

(それで?どうするつもりだい?)

(どうするもこうするも・・・フェイトさんがばてるまでここで待機って方針で・・・)

私の返答を聞いた父さんは「はー、ヤレヤレ」とばかりに首を振ります、何かムカツク。

(時空管理局のスカリエッティ執務官としてはそれで正しいだろうね。それじゃあただのハルナ・スカリエッティはどうしたいんだい?)

(私は・・・)

それは遠回しに助けに行って来いって言ってるんですか?

それが出来れば苦労しませんよ!

(フェイト君の年齢は多分なのは君と同じ9歳・・・トーレと同い年の子が死にそうな目に遭っているのにハルナは平気なのかい?

(ッ!助けに行きたくないわけ無いじゃないですか!)

私が平気だと想っているんですか!?

妹と同じくらいの女の子が危険な目に・・・死にそうな目に遭っている。

助けたくないわけないじゃないですか!

(フフン、もう答えは出てるんじゃないか)

へ?

(ハルナ、君は難しく考えすぎだよ。まだ十代なんだからもっと後先考えずに突っ走ってみたらいいじゃないか)

(でも、そんなことしたら・・・)

(まぁ、一緒に怒られるくらいはしてあげよう。それに・・・)

(それに?)

(彼女たちの方は行く気満々のようだしね)

父さんの言葉に視線をそちらに向けると、なのはとユーノがアイコンタクトを指定す。

恐らく念話で内緒話をしているのでしょう、そしてその内容はきっと・・・。

「・・・・・・っ!」

「あっ!?おいっ!」

踵を返し転送ポートに向かって走り出すなのは。

それに気づいたクロノは慌てて制止しようとしますが。

「うりゃっ!」

「うぇっ!?グハッ・・・!」

とっさに私が食らわせた足払いで床と熱烈なベーゼを躱すことになりました。

「ごめんなさいっ!高町なのは、勝手に出撃します!」

「あの子のいる空域に緊急転送!」

そうこうしている間にユーノの手でなのはは現場の上空数百メートル上空に転送、レイジングハートを起動しながら降下していきました。

直後にユーノもなのはに続き自身を現場に転送。

「・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

そして残された私と突き刺さる皆の視線。

「あーこれはいちだいじ、なのはがかってにしゅつげきしたぞー。すぐにおいかけないとー」

とっさに渾身の演技で乗り切った私はなのはを追って転送ポートの上に乗ります。

「なっ!おいハルナっ!」

「さぁエイミィ!なのは達のピンチだ!急いで転送!ハリーハリーハリィィ!!」

何としてもこの場を乗り切りたい私はエイミィを急かします。

「あ?え?りょ、了解っ・・・!」

そのかいあって転送ポートは機動、私を現場海域に飛ばす準備にかかります。

「・・・ハルナさん、彼女達をお願い。それと気を付けて・・・」

怒るクロノや慌てるエイミィとは対照的にリンディさんは落ち着いた声と至極真剣な表情で私を送り出してくれます。

恐らく件の少年Aを警戒しての言葉でしょう。

「・・・了解っ!」

その負託に応えるべく私も気合の入った返事を返します。

とにかくこれで峠は越えました、後はこのどさくさで私の不祥事をうやむやにできれば逃げ切れます。

「あぁ、それと・・・さっきの事は帰ってからじっくり「おはなし」しましょうね♪」

畜生、逃げ切れなかったか。

 

Side アルフ

 

「フェイトちゃんっ!」

桜色の極光がフェイトを捉えていた竜巻を吹き飛ばした直後、頭上からその声は聞こえた。

雲の切れ間から降り注ぐ陽光・・・。

こっちの世界で天使の階段と呼ばれるそれから降りてくるのはあの白い魔導師だった。

私達がやって来る以前から本来の持ち主と共にジュエルシードを探していたフェイトと同じくらいの年齢の子供。

何度もフェイトの前に立ちふさがって邪魔をした、最初は弱かったけれど出会う度に強くなっていった女の子だ。

「うぉぉっ!フェイトの邪魔はっ・・・!」

またフェイトの邪魔をしに来たと思った私は残った力を振り絞りその魔導師に突撃する。

「待った!今は争ってる場合じゃないよ!」

しかしその直後私の前に展開されたシールドが行く手を阻む。

それはジュエルシードの本来の持ち主であるスクライア族の男の子だった。

「今は協力して暴走を止めないとっ!」

そう言うとそいつはバインドを展開して暴れまわる竜巻を捕まえる。

そこでさっきの白い魔導師がフェイトの方に向かったのに気づきそちらに目をやる。

「フェイトちゃん、一緒に止めよう!」

フェイトに自分の魔力を分け与えながら白い子が言う。

「えっ?えっと・・・うん」

助けてもらった上に魔力も分けてもらったためか、フェイトも強く拒否することが出来ず頷く。

それも一瞬の事で目に力の戻ったフェイトが愛用のデバイス、バルディッシュを構える。

ご主人様がやる気になったんだ、ならアタシも頑張らないとね。

アタシはスクライアの子の隣で同じようにバインドを放ち、残りの竜巻を拘束する。

「二人で一緒に、せーのでいくよっ!」

「・・・うんっ」

白い子とフェイトは頷き合うとデバイスに魔力を充填する。

白い子のデバイスに桜色の光が、フェイトのバルディッシュに金色の雷光が集約する。

暴れまわる竜巻の力が強くなり、いよいよバインドの強度が限界に達しようとしたところでようやくその時が訪れた。

「行くよ!せーのっ!ディーバイィン・バスタァァァァァっっっ!!!」

「っ!サンダーっ・・・!レェイジッッッ!!!」

合図で同時に二人のデバイスから強烈な一撃が放たれる。

桜色の閃光が海を割き、金色の轟雷が空を焦がす。

ジュエルシードもその暴走がもたらす竜巻も、全てを呑み込んで魔力の本流が吹き荒れる。

目の前が光に包まれアタシは思わず目を瞑る。

そしてそれが収まり瞼を開くとそこにあったのはさっきまでの嵐が嘘の様に静まり返った穏やかな海だった。

「・・・フェイトちゃん」

「・・・」

静かな世界で対峙するフェイトと白い魔導師・・・。

ジュエルシードを前にしているというのに、二人の間にあるのはとても穏やかな空気だった。

そんな空気の中見つめ合う二人・・・。

「・・・」

「・・・」

「・・・」

訂正、三人・・・。

「って、ハルナちゃんっ!?」

「おっす」

いつの間に現れたのか、そこに居たのは以前やり合った銀髪の執務官だった。

Side Out

 

私の登場になのはもフェイトさんも大層驚いています。

「ハルナちゃん!?どうしてここに・・・?」

「どうしてって、そりゃなのはを追っかけてきたに決まってるでしょう」

全く、こんなに無茶をして・・・いや、共犯の私が言えた口じゃありませんが。

「あの、大丈夫なの?傷・・・」

そこでなのはの横にいたフェイトさんが恐る恐る聞いてきます。

敵の筈の私を心配してくれるとは、やっぱり根はやさしい子のようです。

「ああ、大丈夫ダイジョーブ。ちゃんと治ってるよ、ほら」

そう言って騎士甲冑をめくって傷一つないお腹を披露するとホッとしたように胸をなでおろします。

「そっか、よかった・・・」

ホントにいい子です。

こんな子を利用して危険な真似をさせるなんて・・・フェイトさんの親御さんには一言物申さずにはいられません。

まぁ、いまはそれよりも・・・。

「そう言う事なんで遠慮しないで、続けて続けて」

なのはとフェイトさんにそのまま友情を育むよう促します。

「ふぇっ!?急にそう言われても・・・」

「あなたは、その・・・私を逮捕しなくていいの?」

戸惑うなのはと困惑しながらも質問するフェイトさん。

「ああ、気にしないで。それも大事だけど今は二人がお話しする方が重要だと思うから」

毒を食らわばテーブルまで、ここまで来たら最後までなのはに付き合いましょう。

誰だって女子の友情に首突っ込んで馬に蹴られたくはありませんから。

それに・・・。

「それに、私はどっちかって言うと蹴っ飛ばす馬の方になりたいし・・・ねっ!」

そう言って私は左手の中華チョップ(形状は普通の左手)で飛来してきた弾丸を打ち返します。

「えっ!?」

「何っ!?」

驚く二人の前で打ち返された弾丸は元来た軌道で下手人に・・・慌ててシールドを張った少年Aに命中しました。

「なっ?ぐぁっ!?」

ギリギリシールドが間に合ったようですが飛んできたのは先日私に打ち込まれたのと同じ12.7㎜弾、シールドで防いでもその衝撃はすさまじくAは身体をのけ反らせます。

ちなみに今私を撃った狙撃銃は被弾の衝撃で手からすっぽ抜け海に落っこちていきました。

「てなわけで私はお邪魔虫を蹴っ飛ばしてくるから二人はそのまま続きをヤっててね、それじゃっ!」

「えっ?ちょ、ハルナちゃんっ!?」

なのはの制止も聞かずAに向かってぶっ飛んでいく。

なのはには申し訳ないけれど、こいつだけは私の手で倒さなきゃならない。

やり返したいって思いも無いことは無いけれどもし私がケリを付けなきゃ最悪父さんやお爺ちゃんズがこいつをブっ殺しかねない。

家族の手を汚させたりはしない、その為なら・・・私はどんな業だって背負ってやる。

「お久しぶりだね少年A君、自分が撃った弾丸に撃たれる気分はどうかな?」

「ぐっ、貴様ぁっ!」

おお、怒ってる怒ってる。

何で私が相手する輩って挙って沸点が低いのでしょうか?

ならお約束のコーメイ戦術です。

バカと悪党は煽って隙を作らせるに限ります。

と思っていた時期が私にもありました・・・。

「お前さえ、お前さえいなければっ!」

私が煽る必要もなく、Aは親の仇を見るかのような形相で腰からサーベル型デバイスを抜いて切りかかってきます。

太刀筋は鋭くそれなりに鍛錬なり訓練なりはしているようですが太刀筋が単調なのでこうして輪切りにされずに済んでいます。

「避けるな!」

「やだよ!痛そうだもん!」

「っ・・・!舐めやがってぇ・・・っ!」

失敬な、至極真面目に答えてますよ。

しかし・・・。

「・・・へたっぴだね」

「っ!ぶっ殺す!」

思わず口に出た言葉に切れるA。

だって仕方ないじゃないですか、あんまりにも直線的過ぎて防御以前に避けられるんですもん。

これは何と言うか、怒って直線的になってる以前に実力の問題でしょうね。

訓練は積んだけれど実戦は経験したことないって感じです。

あと注意力も散漫です。

ブンブン剣を振り回す彼の視線の先には・・・。

「フェイトちゃん、私の話を聞いて・・・」

幼女二人がお話をしていました。

刃が空を切る音と頭に血が上った若者の怒声がうるさい空に白い魔導師の子の声が響く。

「私ね、理由は分からないけれどずっとフェイトちゃんとお話ししなきゃって思ってた。でも、やっとその理由が分かったの」

そう言ってなのはは一呼吸おいてから言った。

「友達に、なりたいんだ・・・」

「えっ・・・」

その言葉に言葉を失うフェイトさん。

彼女は、高町なのははそのためにずっとフェイトさんにぶつかっていたのだから。

任務や義務感からではなく、フェイトさんと友達になりたくて何度も何度も・・・。

ここまで拒絶されたら普通は諦めるでしょうがなのはは決して折れることなくフェイトさんと向き合い続け、ようやく彼女に思いを打ち明けられた・・・。

・・・アレ?これってめっちゃ重要なシーンなんじゃね?

Aの方もすっかり二人に意識を集中してしまい、剣先がリーチの外にあるのにも気づかず機械的に振るわれては私の遥か手前で空を切ります。

これ、このままブっちめて逮捕しちゃってもいいのかな?

そう悩んでいると見る見るうちに空模様が悪くなり、周囲は暗雲に覆われてしまいました。

そして迸る稲光と轟音。

「ひゃっ!?」

驚き首をすくめるなのは、そして・・・。

「そうか、これは・・・」

何かに気づいた様子のAと・・・。

「・・・母さん?」

怯えた表情で空を見上げるフェイトさん。

まさかの事実!フェイトさんのお母さんは雷様だった!?

でもそれならフェイトさんが某任天堂のドル箱電気ネズミみたいに電流ビリビリさせているのも納得です。

てのは冗談で、こいつは空間跳躍型の遠距離攻撃です。

本来複数人で行うか強力な増幅器やエネルギー炉が必要な一撃、それをその「母さん」一人で行ってるとしたら・・・オーバーSの超ヤバイ大魔導師じゃないですか!やだー!

そういやさっきからアースラとの通信ができません。

この大規模魔法の余波で妨害されているだけならいいのですが、最悪既に撃沈された可能性も・・・。

私が最悪の事態を想像して青ざめているうちに頭上の雷雲はゴロゴロと帯電を続け、溜められた電力がついに撃ちおろされます。

「皆っ!そこから離れてっ!」

空を見上げていた全員が私の声に反応し退避を始めます。

彼女たちのいた所を通過する稲妻。

そう、『彼女達』のいた所です。

この攻撃を行っている下手人は私やなのはどころか味方である筈のフェイトさん達まで見境なしに電撃を撃ってきます。

しかしそれが違うと分かったのは直ぐでした。

それまで手当たり次第にばら撒いていた電撃は明確に一人を狙い撃ちするようになります。

「フェイトちゃんっ!」

そう、フェイトさんを・・・。

「っ・・・!」

ジュエルシードの強制起動にその後の戦闘、なのはから魔力を分けてもらったとは言え負担の大きい大出力の広域魔法の使用・・・フェイトさんの消耗は深刻なレベルに達しており、もはや回避起動もままなりません。

そんな彼女を雷は容赦なく襲い。

「まぁにぃあぁえぇぇぇぇっっ!!」

「えっ・・・!?」

彼女を安全圏に突き飛ばした私に直撃します。

「ぐっ、ぐぁぁぁぁあああああああああーーーーっっっ!!!」

「ハルナちゃんっっ!!」

やばい、これは冗談抜きで本気でヤバいです!

さっきから頭の中で警報が鳴り止みません。

『対電磁コーティング限界突破』『電装系損傷78%』『電磁筋肉に異常過負荷』『補助脳機能停止』

ざっと上げただけでも全部深刻なダメージです、身体の中の電子機器の大半がスクラップと化しました。

既に飛ぶ力すら失った私は重力に従い落下していた所をなのはに抱き留められます。

どうやら春先の海鳴湾へダイブしないで済んだようです。

フェイトさんはどうなったでしょう?

見れば顔面蒼白で私を見つめるフェイトさんをアルフさんが抱えて飛び去って行くのが見えます。

彼女の手にはジュエルシードが3つ。

残りはと探せば駆けつけたクロノが確保していました。

「無事かハルナっ!?」

険しい顔でクロノが問います。

「・・・メカの部分はほとんど、全滅。生身の部分は・・・なんとか」

イェーガーが守ってくれたのでしょう。

とっさに展開されたバリアが無ければ今頃電子レンジの中のネコ状態でした。

「分かった、とにかく今は動くな。すぐにアースラへ・・・!?」

そこまで言いかけたところでクロノがS2Uを構えます。

疑問に思いデバイスを向けた先を見れば・・・。

「・・・何故だ?」

偉く驚いた顔の魔導師Aが私を見ていました。

「何が、です?」

こちとら生焼けで体中痛いんです。

機械系が死んでるから痛覚カットも出来ず、喋るだけで体が痛むんですからあまり喋らせないで欲しいんですけど。

「分かっていたはずだ、守る必要は無いのに・・・なのに、どうしてだ!?」

ここまで来ても訳わかんないこと言ってる少年A。

これはあれでしょうか?

ストーリー上あの攻撃はフェイトさんが食らう筈だったと、でも主人公補正か何かで死なないんだから守る必要な無いだろうってことでしょうか?

・・・馬鹿じゃねーのコイツ。

「あんなの食らったら、普通死ぬでしょうが・・・何、を・・・いって・・・ぐっ」

この世界はアニメじゃないんです。

そこで生きているのはアニメの登場人物かもしれませんが怪我をすれば血が出るし、酷ければ命を失う事だってある。

あの攻撃をフェイトさんが食らって大丈夫な保証なんて、この次元世界のどこを探してもありはしないんです。

「おまえは・・・何を言って・・・」

訳が分からないと言いたげな顔でこちらを見つめるAに我慢の限界が来たのかクロノが吼えます。

「いい加減にしろ!お前は自分が何をしたのか分かっているのか!?次元管理法違反と公務執行妨害、そして・・・殺人未遂だ!今すぐに武装を解除しろ、でなければ・・・!」

これには私も驚きました。

常に冷静でクールなクロノが本気で激怒しています。

それもよりによって私の件で。

常に素っ気なくて仕事以外では殆ど話しかけてこないクロノ。

私が撃たれた時も冷静さを欠かなかったから心のどこかで彼から嫌われてるんじゃないかと思っていたからなおさら驚きです。

今にも撃ち殺さんばかりの殺気をぶつけられたAはたじろぎ、逃げるように私たちに背を向け・・・。

「待って!」

なのはの声に足を止めます。

「私、なのは!高町なのは。あなたの名前は・・・?」

フェイトさんにそうしたように、Aとも対話して彼を止めようと試みるなのは。

「ガヤルド。ガヤルド・チェンテナリオ・オプトーラ・・・」

謎の魔導師A・・・ガヤルドはそう名乗ると改めて私達に背を向け逃走します。

飛翔中に転送魔法を使ったのか彼の身体は霞のように空に溶けて消滅しました。

「エイミィ!追跡は最小限でいい、今はハルナが最優先だ!大至急転送の準備を・・・!」

クロノの声が遠ざかっていきます。

あれを食らったせいかそろそろ体力的に限界のようです。

まぁ今回はメカの部分が全損ですがそれ以外は何とか無事なので命に別状はないでしょう。

「てなわけで、おやすみ・・・ガクッ」

「なっ!?おいっ、ハルナっ!?」

「ハルナちゃんっっ!!」

皆の慌てふためく声を子守歌に私はそのまま寝落ちして・・・。

「・・・おはよう」

数時間後に目が覚めてすぐ、既に顔なじみになりつつあるアースラ医務室の天井に挨拶しました。

 

Side なのは

「幸い今回は大事に至りませんでしたが、あなた達の軽率な行動が部隊全体を危険にさらす可能性もあったんですよ?」

「ごめんなさい・・・」

「すみませんでした・・・」

海での戦いが終わってから1時間後・・・現在私とユーノ君はリンディさんからお叱りを受けています。

私達の行動がどれくらい軽はずみだったか、もし失敗したらどんなことになっていたのか・・・。

改めて聞かされると私たちがどれだけ危険な事をしていたのか・・・。

フェイトちゃんを助けたかった気持ちに偽りはありませんがリンディさんの言っていることも正しいのは私にもわかります。

「・・・はぁ、とは言え確かにあのまま静観していたら次元震が起っていた可能性もありますし、今回は不問にしますが・・・次はありませんよ」

最後に静かに、しかしはっきりとそう言ってリンディさんのお叱りは終わりました。

「「はい・・・」」

「結構、それじゃこの話はおしまい。さっき事件に進展があったの」

私達が反省しながらそう返事をするとリンディさんも険しかった表情を崩し、今後の方針に話を移します。

「あの、ハルナちゃんは・・・?」

そこでふと、私はここにいない友達の事が思い浮かび聞いてみました。

あの雷からフェイトちゃんを守ってまた怪我をしたハルナちゃん。

今回はそこまで重症じゃないらしいですが今もまだ医務室の中です。

「ああ、ハルナさんね・・・」

私の質問を聞いてリンディさんは困ったように苦笑します、何買ったのでしょうか?

「彼女の怪我に関しては問題ない。すでに意識も戻って明日には現場復帰できる。今は・・・」

そう言って会議室に置かれた机の中央に映像が投影されて。

『お、おわ、おわった・・・』

『はい、なのはちゃんの出撃幇助に関する始末書はこれで全部ですね。それじゃその後の無断出撃及び不明魔導との交戦に関する報告書がこっちです』

『始末書と同様提出は今日中なので急いでお願いします』

『・・・・・・・』

医務のベッドに逃げられないよう縛り付けられた状態で延々と書類を書かされているハルナちゃんがいました。

「君たちに対する無断出撃幇助と独断専行等・・・罰則行為が多すぎて医務室で謹慎中だ」

「最初は文句や悲鳴も上げてたんだけれどね、もうそんな気力も残ってないみたい・・・」

「うわぁ・・・」

精魂尽きかけた状態でも尚、ランディさん達に急かされながらひたすら始末書や報告書にペンを走らせるハルナちゃん。

私達の為とはいえ、始末書を書くだけの機械状態のハルナちゃんに私もユーノ君も若干引き気味です。

「昔から何度言っても鉄砲玉みたいに飛び出していくからな、ここらで痛い目を見ていい加減周りが心配しているのを分からせないと・・・」

ため息をつきながらぼやくクロノ君。

いつもからかわれて怒っているイメージでしたがやっぱりハルナちゃんが心配なようです。

「それでクロノ?今回の事件の首謀者が判明したって本当?」

「はい、ドクターからの証言のおかげで該当する人物を突き止めました。」

そう言ってクロノ君が卓上のコンソールを操作すると始末書マシーンと化したハルナちゃんの映像が脇においやられ、新たにモニター緩やかなウェーブのかかった長い黒髪の優しそうな女の人の画像が投影されます。

「あら?彼女はもしかして・・・」

「はい、プレシア・テスタロッサ。かつて大事故を起こしミッドチルダを追放された大魔導師です」

「テスタロッサ・・・そう言えばフェイトちゃんあの時『母さん』って・・・」

「やはり親子、かしらね・・・」

やはり親子だからか、写真の女の人はフェイトちゃんに似た優しそうな雰囲気がある。

だから分からない。

なぜフェイトちゃんがあそこまで怯えていたのか・・・。

「現在、エイミィが当時の事故の裁判記録など残った資料から彼女の足取りを追っています」

「それまでは向こうの動向待ちね・・・なのはさん」

どうやらまたしばらく動きは無いらしい、そう判断したところでリンディさんが私に話しかけてきます。

「あ、はいっ」

「そう言う事だから当面は待機になるわ、だから久しぶりにご家族にあっていらっしゃい」

そう言って私にお休みをとるよう促すリンディさん。

とてもありがたいです、ありがたいのですが・・・。

「はい。・・・あの、その・・・ハルナちゃんは・・・?」

やっぱりハルナちゃんが心配です。

机の隅に追いやられた映像の向こう側で今も「あ゛~」とか「う゛~」とか言葉になっていない声を上げながら作業を続けています。

私の言葉にリンディさんとクロノ君は顔を見合わせ、苦笑します。

「ん~、さすがにいい加減解放してあげないと可哀想かしら?」

「個人的にはもう少し反省していてもらいたいところですが・・・確かにこのままでは逆に艦から脱走しかねませんしね。上陸を許可してもいいと思います」

「そうね。と言うわけでなのはさん、ハルナさんも一緒に連れて行ってもらっていいかしら」

お許しは直ぐに出ました。

「はいっ・・・!」

忙しい時に不謹慎だとは思いますが嬉しくて思わず顔がほころんでしまいます。

帰ったら皆に何を離そうかな?

あと学校も最近お休みしてたから投稿して、アリサちゃんとすずかちゃんともお話しして。

でもその前に・・・。

『大きな光が点いたり消えたり・・・わぁ、流星かな?いや、違うな。流星ならもっとこう・・・ブワァってなるもんなぁ・・・』

先ずはハルナちゃんの魂を連れ帰ってこないといけません。

ディバインバスタ―でいけるかな?




ようやく名前の出てきた謎の魔導師A事ガヤルド君。
ちゃんとリリカルなのはの命名基準に則り車から取ってきましたw


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第20話「魔王誕生?と明かされた真実なの」

ハーメルンよ私は帰ってきた!(出張から)
ただし明日からまた出張(吐血)
書いてて思ったこと、今回活躍してるの殆どなのはだったw
多分お姉ちゃんは次回活躍します、きっと恐らくもしかしたら・・・。


何だこれは・・・!?まるで理解できない。

目の前でまばゆく輝く金色・・・。

そのまぶしさに目がくらみそうになりながらも私は手を伸ばす。

本当に触れてしまってよいのだろうか?

そんな神々しさを放つそれを恐る恐る手に取る。

力を入れたらボロボロと壊れてしまいそうな手触りに私は一層慎重になる。

この次の瞬間私を待っている、それは・・・。

「ゴクリ・・・」

無意識のうちに私は喉を鳴らす。

震える手で恐る恐るそれを目の前に持っていき。

「パク・・・ふおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」

口に入れた瞬間キャラメルプリンタルトのあまりのおいしさに咆哮した。

 

機人長女リリカルハルナ

第20話「魔王誕生?と明かされた真実なの」

 

翠屋のテラス席から海鳴の空に私の絶叫が響き渡ります。

道行く人が奇異の視線を一瞬向けますが、すぐに「なんだ翠屋か」的な感じで再び歩き始める皆さん・・・私以外にも叫ぶお客さんがいるのでしょうか?

まぁ仕方ないよね!桃子さんのケーキ美味しいから!

「ありがとう、ちょうど次の新作を試食してくれる人を募集してたの」

そう言いながらテーブルにやって来る桃子さん。

その手には夏に売り出す予定のメロンタルトが・・・ジュルリ。

「おっと、ヨダレが・・・失礼。でも本当にタダで頂いていいんですか?」

現在私は翠屋にて新製品の試食、モニターをさせてもらっています。

なのは?あの子は今学校なので別行動です。

ちなみに少年A改め、ガヤルド・チェンテナリオ・オプトーラの姿はあれ以来確認されていません。

とは言えいつ襲撃されるか分からない現状の為、外出はできても遠出は認められず出歩けるのは海鳴市内に限定です。

単独行動も危険と言う事で未だ認められておらず、今回はユーノがフェレットモードで同行しています。

そんなわけで出かけたのはいいけれどすることの無い私はなのはのご家族が経営している喫茶店「翠屋」に顔を出すことにしたのですが、何故か桃子さんに捕まってそのまま新作ケーキの試食を任されてしまいました。

「いいのよ、なのはがお世話になってるしそのお礼って事で。それにここだけの話、ハルナちゃんが来ると売り上げが上がるのよ~」

桃子さんが言うには前回私がテラス席で美味しそうにケーキを食べているのを見た通行人が自分もと翠屋に足を運ぶようになったそうです。

周りを見ると成程、お昼のピークを過ぎて閑散としていた店内がお客さんで溢れています。

「なるほど、そう言う事なら新作ケーキの宣伝にご協力しましょう!」

公務員たる管理局執務官としてはバイトや副業は原則禁止なのですがこれは友達の実家のお手伝いだから例外ですよね。

報酬だってケーキを御馳走になるだけで金品を受け取ったわけじゃありませんから。

そう言うわけでテーブルに置かれたメロンタルトにフォークをいれて・・・。

「おや、電話だ」

ポケットに入れた携帯電話から軽快な〇女巫〇ナースが流れてきたためにスィーツタイムを中断することになりました。

「なのはから?はいはい、ハルナちゃんでs・・・」

『ハルナちゃんっ!大変なのっ!!』

「◇×●△Σ■・・・!?!?!?」

むしろ私の耳が大変です。

電話越しに鼓膜をブレイカーしそうな大声でなのはが叫んでいます。

「お、おぢづいてなのは・・・何があったの゛?」

未だキンキンする耳で私がなのはに尋ねるます。

『あのねっ、さっきアリサちゃんから・・・』

そしてそれを聞いた私は耳の痛みが一瞬でぶっ飛びました。

「っ!?分かった、すぐ行く。場所は?アリサの家か・・・うん、それじゃ」

電話を切った私は席を立ち・・・上がろうとして目の前に置いてあったメロンタルトを見て固まります。

「・・・・・・」

時間にして約5秒程・・・逡巡した後にタルトを掴むと大口を開けて放り込みます。

「もぐっ・・・もももはん、ほめんまはひ。ひょっときゅふほうはでひまひは」

「うん、聞いてたわ。アリサちゃんの家よね。事故とか大丈夫だと思うけどきをつけてね」

驚くべきことに私の食事語を一瞬で解読した桃子さんは事態を察して行くように促してくれました。

「ゴクン、ありがとうございます。それじゃ言って来ますッ」

速攻で咀嚼し、でも可能な限り味わってからメロンタルトを胃に収めた私はユーノを肩に乗っけると走ってる車を追い抜きながらアリサの家で向かいました。

 

「やっぱり、アルフさん・・・」

「・・・アンタ達か」

アリサのお屋敷に到着してすぐ、執事の鮫島さんに案内されて中庭にやって来るとそこに居たのはオレンジの毛並みの狼・・・フェイトさんの使い魔のアルフさんだった。

しかし先日まで感じられた覇気は感じられず、全身に巻かれた包帯も相まって非常に衰弱しているように見える。

「わっ!?ホントに喋った!?」

なのはの隣で驚くアリサ。

聞いた話によると先日習い事の帰りに傷ついた彼女を見つけて保護したとの事。

その間ずっと喋らず犬のフリをしていたから最初はアリサも珍しい見た目の大型犬だと思っていたらしいですがなのはや私に似た何かを感じたらしく今日久しぶりに学校に来たなのはに相談したとの事。

そう言えば以前二人に練習用のストレージデバイスをプレゼントしたときに魔力診断したらリンカーコアありましたね。

アリサはほとんど魔力を持たないEランク、すずかは夜の一族出身なのが理由なのかDランク程度でしたがそれでアルフさんの魔力を感じ取ったのでしょう。

さて、普段ならここで「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!!」とかいっておふざけするところですがあのアルフさんがここまで大けがするとなると事態はなかなかに深刻です、フェイトさんが一緒にいないことも気がかりです。。

彼女が敵わないレベルの相手となると恐らくプレシア・テスタロッサかガヤルド・チェンテナリオ・オプトーラ・・・後者が二人を襲うとは考えられませんから間違いなく下手人はプレシア・テスタロッサでしょう。

実の娘の使い魔・・・家庭で差異はあるでしょうが家族同然の相手をここまで痛めつけるとなると、最悪フェイトさんも同じかそれ以上の目に遭っている可能性もあります。

「それじゃあ改めて自己紹介をば、時空管理局本局遺失物管理部機動2課第2特別捜査隊所属のハルナ・スカリエッティ執務官です。詳しくお話を聞かせてくれませんか?」

「・・・遺失物ってハルナ落とし物係だったの?」

「ちゃうねん」

人が珍しくシリアスに行こうとした途端アリサがまさかのボケです。

いや、たしかに日本で遺失物って言ったら落とし物のこと指しますけど・・・。

「コホン、とりあえずアースラまで御同行願います。よろしいですね?」

「・・・ああ」

一応確認しましたがアルフさんは力なくうなずくだけです。

観念しているというよりも心ここにあらずと言った感じですね。

多分置いて来てしまったフェイトさんの事で頭がいっぱいなのでしょう。

「あの、ハルナちゃん!私も・・・」

「うん、却下」

「にゃっ!?」

ショックを受けているなのはには申し訳ないけれどこれは私の仕事です。

「日本の法律でも取り調べを行う権利を有するのは警察官と検察官だけだった気がするし・・・つまり何が言いたいかと言うとね、ただの一般魔法少女であるなのはには現行犯逮捕はできても取り調べや刑罰を与える権利はないのだ!」

となのはに言っては見せましたが実際の所なのはは知らない方がいい情報だってあるのです。

フェイトさんがどんな目に遭ってきたのか、想像ですがなのはが聞いたら取り乱す程度じゃ済まない内容の物もあるはずです。

「で、でもっ・・・!」

そうとは知らずに食い下がるなのは、何としても説得して諦めさせねばいけません。

「大丈夫だって、こう見えて私ベテランの執務官だよ?もっとその道のプロを信じなさいって。それに、取り調べだって最近日本の刑事ドラマ観て研究してるんだから任せてよ」

私がそう言った途端なのはの顔が青ざめます。

いや、よく見たらアリサとすずかの顔も真っ青です。

「ハルナちゃん!やっぱり私も一緒に行くよ!」

「そうよ!ハルナに任せたらよっぽど危険だわ!」

「ハルナちゃん!絶対マシンガンを乱射しちゃダメだよ!?」

どうやらみんなの頭の中では私が観た刑事ドラマが石原軍団シリーズで確定しているようです。

納得いきません。いや、間違っちゃいないけど・・・。

ミッドに帰ったらバイクに乗りながらショットガンを撃つ練習をしようと思ってましたし・・・。

結局アースラにいるクロノの助力を受けて何とか三人を説得した私はそのままアースラにアルフさんと共に帰艦しました。

 

Sideアルフ

あのハルナって言う執務官に連れられて管理局の巡航艦―アースラって言ってた―に連れていかれ、今あたしはそこの取調室にいる。

何を考えたのかこの間フェイトと見たドラマに出てきた取調室そっくりの部屋・・・そこでハルナと机を挟んで座っている。

あれから事情聴取って形でハルナからこれまでの経緯を質問され、答えられるものには全部答えた。

あたしが怪我を負った経緯についても聞かれ、答えるとハルナは静かに、しかし明確に怒りを露わにした。

「フムン・・・大体わかりました、今後私たちはジュエルシードの回収と並行してフェイト・テスタロッサの保護とプレシア・テスタロッサ捕縛を目的に行動することになるでしょう。あなたは本案件における重要参考人として保護、全力を以て安全を保障します」

フェイトの処遇が『逮捕』ではなく『保護』であることに僅かながら安堵できた。

こいつらとは敵同士だけれど、あの鬼婆と比べたらずっと信用できる相手だ、きっとフェイトの事も悪いようにはしない筈だ。

「さてと、そう言えばお昼まだなんじゃない?」

「え?ああ、そうだけど・・・」

「ふふん、そう思ってね・・・じゃーん!」

そう言ってハルナはどこから取り出したのか、アルミ製の大きなケースを机の上に置いた。

これには見覚えがある、たしか・・・そう、デリバリーを頼んだ時に配達員が持ってきた岡持ちだ。

と言う事は中身は・・・。

「取調室と言ったやっぱりこれでしょう、へいおまちっ!」

そう言って岡持ちを開けると出てきたのは丼ぶりいっぱいに乗ったトンカツとそれを包んだ卵・・・かつ丼だった。

「私が作ったんだ。はい、召し上がれ」

そう言って割りばしと一緒に差し出されるかつ丼。

戸惑うものの腹ペコなのは事実だ。

何しろ昨日の夜からあの子の家で消化に良いタイプのドッグフードしか食べてない。

胃には優しいんだろうけど直ぐに吸収されてしまうため、満腹にはならなかった。

「それじゃあ、いただきます・・・」

割りばしを割って、トンカツとご飯を口に運ぶ。

その様子をワクワクした様子で見つめてくるハルナ。

「どう?そのかつ丼ね、自信作なんだ。美味しい?」

どうやら感想を言ってほしいらしい。

なので以前フェイトと食べたかつ丼とコレを比較した感想を言ってやった。

「全然、大したことないね」

「え~っ!?」

信じられないような、納得いかないような声を上げるハルナ。

「煮込みが甘いから玉ネギが固い。つゆも砂糖が多いのか妙に甘ったるい。それに、作ってだいぶ経ってるだろうこれ?カツが覚めて冷たくなってる」

あたしが一つ一つダメ出ししていくと「うぐっ」と心臓の辺りを抑えながらハルナは呻く。

「第一、あ・・・」

そこであたしは気づいてしまった。

このかつ丼がおいしくないと感じる根本的な理由それは・・・。

「フェイトが、一緒じゃないから・・・」

そう、甘しょっぱい天つゆに煮込まれトロトロになったトンカツと玉ネギ、それをご飯にのっけた熱々のかつ丼・・・。

それをフェイトと一緒に笑いながら・・・。

「・・・フェイト」

気付けばあたしの目からは大量の涙がこぼれていた。

あたしがいなくなって一人ぼっちになってしまったフェイト、今頃あの子はどうしているだろう?

お腹を空かせていないだろうか?泣いてはいないだろうか?

あの女・・・プレシアにひどい事をされていないだろうか?

「うぅ、フェイト、フェイトぉ・・・」

会いたい。フェイトに、会いたいよぉ・・・。

そんな時背中に温かい感触を感じる。

振り返れば立ち上がったハルナが私を後ろから抱きしめていた。

「大丈夫、大丈夫だよ。信じて、フェイトさんは私が必ず助けるから」

「ハルナぁ・・・うん、うんっ・・・!」

抱きしめるハルナの腕から、優しくあやす様に頭を撫でる手からは不思議な安心感が感じられた。

温かく、包み込むような・・・ずっと大昔に一度だけ感じた、生まれた時に母親に抱き抱えられた時のような優しい感じ。

だからあたしはこいつらを、あの白い子やこのハルナを信じることにした。

きっとこいつらならフェイトを助けてくれる、よく分からないけれどそんな確信があたしの中に確かに生まれていた。

「うん、フェイトさんを助けるときにはきっとアルフさんの力も借りることになると思う。だから今は栄養いっぱいとってゆっくり身体を休めて」

「うん・・・そうする・・・」

そう言って残っていたかつ丼を一気に口の中にかきこむ。

・・・やっぱりおいしくない、今度はメチャクチャ塩辛く感じる。

今度はフェイトと一緒にもっとおいしいかつ丼を食べよう。

そう決意を新たにしたあたしはどんぶりの縁についていた最後の米粒を口に放り込んだ。

Side Out

 

で、次の日の早朝・・・。

なのはは海鳴臨海公園にいます。

以前私と出会った海に面した堤防の上で瞑想するかのように静かにまぶたを閉じ微動だにしません。

暫くそうしていると、相手の気配を感じたのか目を開けます。

「ここならだれにも邪魔されない・・・出てきて、フェイトちゃん」

なのはがそう言うとそれに応えるように背後の街灯の上にフェイトさんが降り立ちます。

「フェイト!もうやめようよ!これ以上こんな事続けたら、フェイトは・・・!」

なのはに同行したアルフさん・・・アルフがフェイトさんを説得します。しかし・・・。

「それでも・・・私は母さんの娘だから、止まれない、止まる訳にはいかないんだ・・・!」

アルフに対して首を振りながら答えるフェイトさん。

彼女の瞳には何か覚悟を決めた様な・・・そんな悲し気な決意が感じられます。

「フェイトちゃんは止まれないし、私も譲れない。全ての始まりは、ジュエルシード・・・だから賭けよう、お互いの持ってる全部のジュエルシードを」

なのはがそう言うとレイジングハートがこれまで回収したジュエルシードを展開します。

「・・・・・・」

それを見てフェイトさんもデバイス・・・バルディッシュからジュエルシードを取り出します。

「それからだよ、全部それから・・・」

それは合意の合図、二人の戦いの火ぶたが静かに切って落とされる。

「私達の全ては、まだ始まってもいない。だから、本当の自分を始めるために・・・始めよう、最初で最後の本気の勝負!」

なのはのその言葉を開始のゴングに、二人は同時に大空へ舞い上がった。

・・・え?私?今アースラの医務室です。

前回の戦いで御釈迦になって交換した電子機器の最後の調整が間に合わず、ここで指をくわえて二人の決戦を生中継で観戦中です、ぐぎぎ・・・。

「そんな顔してもダメだよ、万全の状態でなければ出撃は認められない、いい加減もっと自分を大事にしなさい」

そう言う訳でこうして父さんの監視の元、アースラでお留守番しております。

まぁ、他にもちゃんとした理由がありまして・・・。

「それに、相手はあのプレシア・テスタロッサだ、万全の準備をして尚勝てるか怪しい相手だよ、彼女は・・・」

そう、二人の勝敗の結果にかかわらず、プレシア・テスタロッサは行動を開始するでしょう。

その隙を狙ってアルフからもたらされた彼女の拠点である『時の庭園』に突入しプレシアの身柄を確保する作戦です。

時の庭園・・・次元空間移動が可能な施設でプレシア・テスタロッサが居を構える難攻不落の要塞。

アースラのエンジンを超えるトンデモ出力の魔力炉を備え、恐らく防衛設備も十重二十重・・・そんなところにたった一個小隊の武装局員達と乗り込んでいかなきゃいけないわけですから。

しかも最深部には大魔導師プレシア・テスタロッサがラスボスよろしく待ち構えている・・・どれだけ準備をしても足りませんよこれ。

そんなわけでギリギリまでパーツの調整を行っているのですがそれをやるのは父さんの仕事でぶっちゃけ私は暇です。

かといって調整中の為医務室から出るわけにもいかずこうして画面越しに二人の無事を祈っているわけです。

「そう言えばよくこんな私闘をクロノ執務官が許したね・・・」

「クロノにも考えがあるんでしょう。戦いが終わって撤収するフェイトさんを追跡すれば庭園のより正確な座標が分かるわけだし」

まぁ、私としてはこれ以上二人に危険な事をしてほしくはないんですが、なのはがどうしてもやらせてほしいと言うのでついに折れました。

確かにここで勝負をつけておかないと不完全燃焼のまま事件が解決しちゃうかもしれませんしね。

そんなことになったら今後二人の関係もやきもきするかもしれません、ここで後腐れ無いよう全力でぶつかり合うのも一理あります。

「そう言えば、なのは君に例の事は教えなくてよかったのかい?」

父さんの言う例の事とは、プレシア・テスタロッサに関して調べた情報の事です。

その結果浮かび上がってきた事件の真相とフェイトさんに関する秘密・・・。

「クロノと話し合ったんだけどね、大勝負に挑むなのはに迷いを持たせたくないってことで黙っておくことになった・・・」

「・・・そうか。いや、そうだろうね」

これから全力の真剣勝負に挑もうっというんです、迷いを持ったまま挑んでもろくな結果にはならないでしょう。

とにかく、おぜん立ては可能な限り行いました、後はなのはが無事に勝つことを祈るだけです。

なのですが・・・。

「しかし・・・今どきの魔法少女は皆こうなのかね?」

「いや、この二人がぶっ飛んでるだけでしょ」

そう言って呆れながら投影モニターに映る二人の戦いを見る私と父さん。

何これ?ガンダムの新作か何か?

朝焼けの空を縦横無尽に飛び交うなのはとフェイトさん。

スピードと機動性でなのはの背後を取ったフェイトさんがフォトンランサーを放つとなのはは急降下してこれを回避。

そのまま水面すれすれを飛行し、こっちで用意した廃ビル型のオブジェクト群に逃げ込みます。

ビルを盾にするなのはを追うフェイトさん、二人が通ったビルは衝撃波で窓ガラスが割れ、ガラス片が朝日を浴びてキラキラと輝いています。

なのはは飛行しながら背後に振り返り、ディバインシューターを発射。

誘導弾に気づいたフェイトさんが回避起動を取り、シューターは逃げるフェイトさんを追跡します。

先ほどと立場が逆転するも、フェイトさんは慌てることなく殺到するシューターを回避、再度追跡軌道に乗ったシューターをサイズフォームに変形したバルディッシュで切り落としていきます。

最後の一発を迎撃し終えたフェイトさんがなのはの方を見るとビルの屋上に立ちこちらに狙いを定めるなのはの姿が・・・。

「ディバイィン・・・バスタァァァァァっ!!」

桜色の直射方がフェイトさんめがけて突っ込んできます。

回避が間に合わないと判断したのか、シールドを展開するフェイトさん。

とっさの所で間に合い、フェイトさんは閃光に包まれるも数秒後無事にその中から姿を現した。

しかし先ほどまでビルにいたなのはの姿が見つからず、フェイトさんは慌てて辺りを見渡す。

そして肝心のなのはは・・・上にいた。

「せぇぇぇえええええいっ!!」

「なっ!?」

敵機直上急降下!正にそんな感じでフェイトさんに対してほとんど垂直に落下してくるなのは。

そんな彼女の手には大きく振りかぶったレイジングハート・・・。

またもやギリギリでバルディッシュを構えガードするフェイトさん。

ここまでフェイトさんに対して優位に立っていたなのはですが、いかんせん経験値という点ではフェイトさんにアドバンテージがあります。

つばぜり合うなか、フェイトさんはフォトンランサーを形成、ゼロ距離でなのはにぶちかまします。

なのはも慌ててガードしながら後退し、ダメージはほとんど食らいませんでしたが、イニチアシブはフェイトさんの手に移りました。

バルディッシュの刃で切りつけるフェイトさん。

とっさに回避するも、胸のリボンの端が切り裂かれ、魔力に還る。

そして再び始まるドッグファイト。

フェイトさんが追い、なのはは逃げながら隙を伺います。

「・・・うん、私が知ってる魔法少女と違う」

「だね・・・魔法少女と言うより魔『砲』少女だねこれは」

多分世間一般の人々は魔法少女同士のバトルと言ったらもっとキラキラしたメルヘンチックなものを想像されると思います。

ですが現在海鳴湾上空で行われているのは高度なマニューバで相手の背後を取り合いながら大出力の魔法を打ち合い、接近すればメカメカしいステッキで白兵戦闘を繰り広げるというメルヘンの欠片もない未来型ガチンコバトル。

ミッドチルダ式の射撃魔法は見た目がまんまビームですからなおさらSFな光景です。

本局の武装隊・・・いや、戦技教導隊の教本映像として使えるレベルのガチバトルですよこれ。

前言撤回、勝ち負けはいいから二人とも無事に生きて帰ってきて!

リリカルなのはを初めて見たであろう視聴者の感想を私達が代弁している間も二人の戦いは続きます。

上空で螺旋を描く光の軌跡。

離れては交差し、すれ違う瞬間激しく閃光が瞬くと再び離れてを繰り返します。

そして何度目かの交差の直後、二人がガッチリとつばぜり合い、動きを止める。

がら空きになったフェイトさんの背後を狙ってなのはが上空にディバインシューターを形成、フェイトさんの死角から接近させます。

それに気づいたフェイトさんが再びゼロ距離射撃でなのはを吹き飛ばし、飛んで来るシューターをギリギリのところでガード、誘導弾はシールドにぶつかり霧散する。

対するなのははそのまま眼下のビルに落下、戦果確認のために近くの高いビルに降り立つフェイトさん。

濛々と立ち込める粉塵・・・その中でキラリと桜色の輝きが瞬くのをフェイトさんは見逃さなかった。

慌てて飛翔すると彼女がいた場所を極太のビームが通り過ぎ、先ほどまでたっていたビルをごっそりと抉る。

・・・これ、本当に秘殺傷設定だよね?

私がそんな不安を抱いていると落下地点からなのはが飛び立つ。

激闘を繰り広げた二人ですが決定打に欠けるのか双方ともに大きなダメージは負っていません。

ここにきてフェイトさんが勝負に出たのか、彼女の足元に巨大な魔法陣が形成される。

それを見て身構えるなのはでしたが突然彼女の両腕が拘束される。

「バインドか・・・」

「確実に大技をぶつけるつもりだね」

魔法はファンタジーやRPGの例にもれず、威力の大きいものになればなるほど準備や充填に時間がかかります。

その間に攻撃されたり逃走されたりしたら元も子もありません。

そんな時に頼りになるのがバインド、射程距離こそ短いですがこれなら相手の抵抗も逃走も阻止することが出来ます。

「マズイ、フェイトは本気だ・・・っ!」

「なのはっ!待ってて、今すぐ・・・」

現地で戦いを見守っているユーノとアルフもフェイトの意図に気づいたのか慌てています。

「だめぇっ!」

しかしなのはは未だに諦めてはいませんでした。

「お願い、手を出さないで。私とフェイトちゃん・・・二人の本気の勝負だから・・・っ!」

そう言うなのはですがこれと言った動きはありません、恐らくバリアジャケットに魔力を注いでフェイトさんの攻撃を直に受け止めるつもりなのでしょう。

「アルカス・クルタス・エイギアス。疾風なりし天神、今導きのもと撃ちかかれ。バルエル・ザルエル・ブラウゼル・・・」

詠唱するフェイトさんの周囲にフォトンランサーが次々に形成されます。

10、20、50、100・・・まだまだ増えます。

隣接するランサー同士が干渉して電流が迸り、フェイトさんの周囲はさながら雷雲のようです。

「フォトンランサー、ファランクスシフト・・・」

準備が完了したフェイトさんがキッとなのはを見据え。

「撃ち、砕けぇぇぇぇぇっっっ!!!」

振り上げたバルディッシュを彼女に向けて振り下ろしました。

直後展開されたフォトンランサーが次々に射出され、我先にとなのはに殺到します。

一発目が着弾し閃光と爆炎が上がるも、ランサーは止まることなくなのはのいる場所にに降り注ぐ。

猛烈な光の嵐が吹き荒れ、ランサーの大半が打ち出されるとフェイトさんは残っていたランサーを己が掌の上に集約させ・・・。

「スパーク・・・」

巨大なやりにしてなのは目掛けて投射しました。

「・・・エンド」

雷の槍は煙を突き破りなのはに激突、ひと際巨大な輝きを放ち爆発します。

「・・・これは」

「ああ、勝負がついたね」

私も、そして父さんも同じ結論に至ったようです。

そう・・・。

「フェイトさんったら・・・グミ弾連射なんてして、これ絶対効いてないフラグだよ」

「全くだ、きっとこの後煙の中から無傷のブロリーよろしくなのは君が出て来て倍返しがくるだろうね」

いや、ほんと・・・フェイトさんのアレを見た時は不覚にも笑いそうになりましたよ。

だってエネルギー弾の連続発射ですよ?

どう見ても「なんなんだぁ今のはぁ・・・?笑えよベジータ」な展開が来るに決まってるじゃないですか!

そして案の定煙が晴れるとその中からなのはが姿を現しました。

とは言え決して無傷と言うわけでは無く、バリアジャケットは傷つき、レイジングハートもコアが明滅しています。

「行くよ、レイジングハート」

『イエス、マイマスター。キャノンモード』

反撃開始とばかりにレイジングハートが砲撃形態に変形します。

「クッ・・・うあぁぁぁぁっ!」

必殺の一撃の筈が効果が無かったことに愕然としていたフェイトさんでしたがすぐさま自身を奮い立たせ、なのはの攻撃を妨害すべく加速しようとします。しかし・・・。

「なっ!?バインド・・・っ!?」

ファランクスシフトが放たれる直前に仕掛けたなのはのバインドが発動します。

ぶっつけ本番で組んだ為に術式が甘かったのか左腕だけは拘束されていませんが足を止めさせた時点でなのはの目的は十分に達せられました。

「今次はこっちの番っ、ディバイィィン・・・バスタアァァァァァァァッッッ!!!」

フェイトさんをすっぽり飲み込める直径の閃光がレイジングハートから放たれる。

「・・・くぅっ!」

対するフェイトさんはバインドの解除を諦め、シールドを展開。先ほどなのはがそうしたように彼女のディバインバスターを真っ向から受け止めます。

「ぐぁっ・・・一撃が重い。でも、あの子だって耐えたんだ。これを、防ぎきれば・・・」

正面からの圧力にくじけそうになりながらもなんとか耐え抜いたフェイトさん。

衝撃で吹き飛ばされたバリアジャケットのマントが魔力に還るのを見ながら耐えきれたことにだとホッと胸をなでおろします。

しかし・・・。

「えっ?魔力が・・・」

なのはのバトルフェイズは終了していませんでした。

これまでの戦いで周囲に飛散した大量の魔力・・・それらが光の粒子となって天に昇っていきます。

やがて空が、自分の頭上が明るくなっていくことにフェイトさんは違和感を覚えます。

現在は朝方、先ほど日の出を迎えた直後で太陽が彼女の頭上にあるはずがありません。

不審に思い空を仰げば遥か上空に上っていった魔力が集まっていく、そしてそれを成しているのは・・・。

『StarlightBreaker』

飛散した周囲の魔力がなのはの元に集まっていく。

それは小さな光の粒となり、球となり、そして桜色の太陽へと変わっていく。

「使いきれずにばら撒いちゃった魔力をもう一度、自分の所に集める・・・」

「収束、砲撃・・・私の魔力も?そんな、ズルいっ!」

「ズルくない!レイジングハートと一緒に考えた知恵と戦術、最後の切り札なの・・・受けてみて!これが私の全力全開っ!!」

なのはがそう言った直後、彼女が作り上げた太陽が輝きを増す。

「うぅ、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」

やけくそ気味に叫びながら残っていた魔力を全てシールドに注ぎ込むフェイトさん。

展開されたシールドは5枚。

高速戦闘時では展開できない・・・バインドで動きを封じられている今だからこそできる全力の防御です。

そんな鉄壁の護りを固めたフェイトさんに向けてなのはの全力全開の魔法が・・・。

「スターライトォォブレイカァァァァァァァァッッッッ!!!!!!」

放たれた。

まるで水を注がれた風船に大穴が開いたかのように桜色の太陽から同色の極光がフェイトさんめがけて降り注ぐ。

それはまるで巨大な光の柱がフェイトさんに向かって落下していくようにすら見えた。

その光の柱の先端がフェイトさんが展開した5重のシールドにぶつかり弾けて周囲に飛び散る。

飛び散った光の粒はそれ一つ一つが正に砲弾並みの速度と威力で海面やオブジェクトにぶつかって破壊を振りまく。

必死にシールドを維持しようとするフェイトさんだったがその力の差は正に決壊したダムに傘で挑むかのごとし・・・。

1枚、2枚と傘(シールド)が叩き割られ、ついに最後の一枚が破られたフェイトさんの身体は光の本流に飲み込まれ流されていく。

膨大な光のうねりはいくつかの支流に分かれながら周囲に降り注ぎ、形成されていたオブジェクトをフィールドもろとも吹き飛ばした。

「・・・」

「・・・・・・」

静寂に包まれる医務室。

もう何て言うか、開いた口塞がりません。

隣を見れば父さんもあごが外れたかのように大口を開けて沈黙しています。

目が合う父さんと私。

何が言いたいのか私にもわかった。

父さんも同様なのか私たちは頷き合うと同時に思いのたけを口にした。

「「・・・なぁにこれぇ」」

いや、ホント・・・どうしてこうなった!?

前々からなのはが何か必殺技みたいなのを考えているのは知ってましたが、こんな・・・え?何あれ?

今簡単に威力を図ってみましたが爆心地のエネルギー量が約6.43ペタジュール・・・TNT火薬に換算して1.6メガトン、戦略核ミサイル5~6発分とか訳が分からないよ!

恐らくブリッジでもクロノやエイミィが慌ててるか茫然としているのでしょう。

こうして私たちは後に「管理局の白い悪魔」「桜色の核弾頭」「アースラの最終兵器」等の異名と共に恐れられることになる高町なのはの必殺技・・・スターライトブレイカー誕生の瞬間を目の当りにしたのでした。

「スターライト(星も軽く)ブレイカー(ぶっ壊す)」・・・何それ怖い。

兎にも角にも、なのはとフェイトさんの本気の勝負はなのはの辛勝と言う形で幕を閉じました。

ここでめでたしめでたしならよかったのでしょうが・・・。

『空間跳躍魔法確認!魔力波形・・・プレシア・テスタロッサ!現場上空に反応拡大っ、来るよなのはちゃん!』

そう、それまで一切手を出してこなかったプレシア・テスタロッサがここにきて次元空間から現場に向けて跳躍攻撃で狙撃してきたのです。

その狙いは・・・。

「フェイトちゃんっっ!!」

そう、やはりフェイトさん。

雷はなのはに助けられたフェイトさんを撃ち、彼女が持っていたジュエルシードを奪っていきました。

ここまで死力を尽くしても尚プレシア・テスタロッサはフェイトさんにひどい仕打ちを行ったのです。

「・・・・・・」

私の胸の奥から怒りがマグマのように込み上げてくる。

「父さん」

「・・・調整は終わっているが、無茶はしないように」

心配はしてくれますが引き留めはしない父さん。

父さんも一人の親として子供にあんなことをするプレシアに怒りを感じているのでしょう。

私は父さんに頷くとイェーガーを握りしめ転送ポートに向かいます。

既にそこには出撃準備を終えたアースラ所属の武装局員たちが集まっており、最後の点呼を行っているところでした。

「スカリエッティ執務官、入られました!」

私の入室に気づいた局員がブリッジに報告すると艦内放送でリンディさんが突入命令を下します。

『武装隊、突入開始!目的はプレシア・テスタロッサの捕縛!突入後、現地での指揮はスカリエッティ執務官に一任します』

「了解!野郎ども、準備はいいかぁっ!?」

「「「「「「「おおうっ!!」」」」」

私の言葉に武装隊の面々は気合の籠ったこえで応えます。

皆アルフの取り調べ調書は読んでいるでしょうしさっきの戦闘の映像だって見ていたはず、恐らく彼らもプレシアの行為に怒りを覚えているのでしょう。

公平を重んじる局員としてはフェイトさんだけに肩入れするのはご法度なのですが今回ばかりはそれを咎めるつもりはありません。

あんな優しい子が小さな体に鞭打って頑張っているというのにやらせている当の本人が本当に彼女の身体に鞭打っていたなんて・・・もはや怒りしか沸いてきません。

ふんじばって正座でお説教聞かせた上でフェイトさんに対して謝らせたうえで刑務所に送ってやります。

「相手はフェイトさんを虐待していたフ●ッキンDVマザ-だ。抵抗するなら私が許す、法に触れないレベルでしばき倒せ!」

「「「「「サー!イェッサー!!」」」」」

「バカモーン!私は♀だから「サー」じゃなくって「マム」だー!総員出動ー!!」

直後、転送ポートが起動し見慣れたアースラ艦内から石造りの庭園内に転送されました。

「周辺警戒!防衛機構が起動しているか確認!」

「クリア!」「クリア!」「同じくクリア!」

「オールクリア!どうやら歓迎委員会は休暇中らしい。どうするお嬢?」

隊員たちから報告を受けアースラ武装隊の最先任であるエイブリー・ハマー二等海曹が私に聞いてきます。

「生憎パーティする気分じゃないの。即行で突っ込んで速攻で逮捕、これでいく」

「聞いたな野郎ども!お嬢は電撃戦をご所望だ!」

「「「「「ウーラー!」」」」」

何て言うか、この間の軍事介入事件以来アースラ武装隊のノリが完全に海兵隊です。

とはいえ今はこの勢いがありがたいです。

今は一刻も早く、プレシアが何らかの行動を起こす前に拘束しなくてはいけませんから。

そのまま私たちは周囲を警戒しながら庭園の奥へと進んでいきます。

で、あっさりと最深部・・・玉座の間の前まで来てしまいました。

「まさか全く無抵抗とは・・・」

「すでに逃走してたとか?」

「その可能性もありますな」

私とハマー二曹がそんな会話をしていると扉を調べていた局員から報告が来ます。

「扉にトラップの類はありません、また内部をスキャンした結果プレシア・テスタロッサと思しき反応も確認できました」

ますます分かりません。

抵抗もトラップも無し、かといって逃走する様子も無し。

観念してじっとしている可能性も無きにしも非ずですがここまで騒ぎを大きくした人物がここにきて諦めるでしょうか?

「何にせよ、やる事は変わらない。突入する!総員準備!1班は私と一緒にプレシア・テスタロッサを拘束、2班は奥へ行って証拠物件を押収!」

「了解っ!野郎ども!カチコミだ、気合を入れろ!」

私の指示と二曹の激励でみんながデバイスを構えます。

「スゥゥ、ハァァ・・・突入っ!!」

一度大きく深呼吸してから私はその号令と共に扉をケンカキックで蹴り破り、玉座の間へと飛び込みました。

背後からは私に続いて殴り込みをかける武装隊の足音、そして目の前には気だるげに玉座に座る妙齢の女・・・プレシアテスタロッサがいました。

「時空管理局本局遺失物管理部機動2課第2特別捜査隊所属、ハルナ・スカリエッティ執務官です。プレシア・テスタロッサ、管理外世界での魔法行使等の次元管理法違反、並びに管理局艦船への攻撃をはじめとした公務執行妨害、そして未成年者暴行の容疑で逮捕します」

私の宣言と同時に武装局員たちがデバイスをプレシアに向ける。

ここまで来てもプレシアは物憂げに・・・否、つまらなそうに私達を見ているだけでした。

彼女の行動が気がかりですが今は逮捕が最優先です。

私と1班がプレシアに睨みを聞かせている横を2班が奥の部屋へ入っていきます。

そこでこれまで沈黙していたプレシアの表情に焦りの色が見えます。

「執務官!来てくださいっ!!」

怪訝に思いましたがその直後2班の班長に呼ばれた私はハマー2曹にここを任せて奥の部屋に向かいます。

「どうしたの?」

「見てください、あれです・・・」

そう言って班長が指さした方を見るとそこには円筒形のシリンダーが置かれ、その中には・・・。

「フェイト、さん・・・?」

そこに居たのは膝を抱えるように眠るフェイトさんそっくりの女の子でした。

「いや、ちがう。これは・・・」

その瞬間リンディさんやクロノ、父さんと行ったプレシアの経歴調査で行き着いた仮説が確信に変わります。

でも、それが本当ならフェイトさんは・・・。

「私のアリシアに近寄らないでっ!!!」

その直後、プレシアに放り投げられた班長がぶつかり、私は思考を中断させられました。

てか、何でプレシアここに来てんの?2曹達は・・・ダメだ、全員床にダウンしてる。

死んではいないようだから恐らく電撃で気絶させられたのでしょう。

2班の隊員に気を失っている班長を任せてプレシアに対峙する私。

「・・・消えなさい」

フェイトさんの母親とは思えないほど冷酷な声でそう口にするプレシアの手が帯電し始める。

成程、何もリアクションをしなかったんじゃなくてする必要を感じてなかったのか。

彼女にとって私たちは弱すぎて虫けらどころか道端の石ころにしか感じられなかったってことです。

実際今プレシアから感じられる魔力量は半端なく膨大です。

とは言えプレシア・テスタロッサは戦闘者ではなくあくまで研究者、今観察した限りですが攻撃魔法もかなり粗が目立ちます。

魔力がすごくても戦闘能力自体は大したことのない力押しスタイル、これなら私一人でもものごっつ頑張れば勝ち目が無い相手ではありません。

そう、私一人だけならば・・・。

「ぐっ」

「うぅ・・・」

ですが今私の背後にはプレシアにボコされて戦闘不能の武装隊のみんながいます。

彼らを守りながらではどうやったって勝ち目がありません。

こういう時は・・・。

「・・・ハマー2曹、生きてる?」

『ぐぅ、何とか・・・やれやれ、キャバクラ通いがバレた時のかみさんの雷より強烈だぜ』

うん、大丈夫そうですね。

「おーけ2曹。作戦変更、プランBでいこう」

『了解、で?プランBってのは何でしたっけ?』

「簡単さ、逃げるんだよぉぉぉっっ!!!」

そう言うや否や、私はイェーガーを構えるとアクセルキーパをプレシアの方目掛けて乱射します。

牽制や敵誘導弾の迎撃を目的とした小口径魔力弾の連射魔法・・・。

ある意味劣化版グミ弾ともいえるこの攻撃でプレシアにダメージを与えられるわけがありません。

ですが別にダメージを与えなくても相手を止める方法はあるんです。

「・・・っ!?アリシアっ!」

私が何をしようとしているのか気づいたプレシアは背後にあるシリンダー・・・その中の女の子を守ろうと慌ててシールドを展開します。

そう、私が狙ったのはプレシアが守っているシリンダーです。

さっきまでさんざんシカトしてたくせにシリンダーに触れようとした途端に血相変えて飛んでくるぐらいです、よっぽど中にいる女の子が大事なのでしょう。

え?卑怯?ゲスいって?

しょうがないでしょう、こっちは文字通り生死かかってるんです。

そう、言わばこれは超法規的措置!緊急避難なのです!なので見なかったことにしてください。

それに私だって何の罪もない幼女に向けて実包叩き込むなんて真似しませんよ。

「っ!?バインド!?」

はい、毎度おなじみリストバレットです。

手足だけでなく頭のてっぺんからつま先まで・・・某タイヤメーカーのマスコットキャラクターみたいな外見になるくらいしこたまリストバレットを叩きこんだ私は即座にエイミィに連絡を入れます。

「エイミィ!緊急転送!全速力で!」

『了解っ!』

こちらの状況をモニターしていたアースラではすでに回収準備が進められていたのか負傷者から順に転送が開始されます。

一塊になっていたならまとめて回収も出来たのですが班を分けたのは失敗だったかもしれません。

玉座の間でKOされている1班の転送が完了し2班の回収が始まったところでプレシアが全身を拘束していたバインドを解除します。

さすがはミッドでもトップクラスの技術者だっただけあり、あれだけ打ち込んだバインドが一瞬で解除されてしまいました。

結構頑張って組んだ術式だっただけにあっさり破られてちょっとショックです。

そんな私の心境など知らんとばかりにプレシアは不快感を露わにした顔で私たちに杖・・・デバイスを向けてきます。

「よくも、よくも私のアリシアに・・・っ!」

その顔は正に大切な娘を気づ付けられて怒り狂う母親そのものでした。

そんなに子供を想う事の出来る人がなぜフェイトさんにあれだけつらく当たれるのか・・・。

先ほどの仮説が事実なら頷けないことも無いですがまさかここまでとは・・・。

そんな考えも一瞬だけ、すぐさま襲い来る稲妻から倒れた仲間たちを守ります。

「ぐっ、ぐぬぬぬうぅぅぅぅ」

戦闘特化でないとはいえ、仮にも大魔導師と言われるだけあってただの魔法でもこの威力は結構厳しいものがあります。

その上相手は電気系の魔力変換資質持ち・・・私の防御フィールドでは攻撃魔法は防げても電流は防げません。

前回フェイトさんを守って電撃を食らった経験から対電撃コート(アニメ3期の終盤でトーレ達が行った電撃対策)を施して来ましたが果たして付け焼刃のこれがプレシア相手にどこまで持つ事やら・・・。

二度、三度と立て続けに電流を食らい気分は宇宙征服を企む帝国皇帝の無限の暗黒パワー攻撃を受ける某空歩さんの気分です、助けて父さん!

とはいえしぶとく粘る私にプレシアの方も業を煮やしたのか、更にデカい威力の魔法を放つべくチャージを開始。

しかもご丁寧に先ほどの私を真似て背後の味方も巻き込むための広範囲魔法ときました。

「エイミィ急いで!あれは無理!!」

あんな電撃食らったら外はパリパリ、中までこんがりのウェルダンにされてしまいます。

大魔導師云々のレベルじゃありません、たぶん庭園の動力炉からも魔力を持ってきて急速に魔力をチャージするプレシア。

このままじゃホントにウルトラ上手に焼かれてしまいます、私を食っても満腹度は回復しませんよ!

そうしている間にもプレシアのデバイスに魔力がたまっていき先端カラは紫色の電流が迸る。

「目ざわりなのよ、いい加減消えなさい・・・!」

遂に準備ができたのかプレシアは私達目掛けて特大の電撃を放ちます。

これまでかと思いながらも体は訓練で染み付いた習性から防壁を展開、せめて武装隊のみんなだけでも護ろうと防御を固めます。

『もうちょっと・・・よし、転送開始!』

そこでようやく転送準備が整いフィールドが魔法を受け止めている間に私たちはアースラに回収、轟雷が轟いた後には私達の姿はそこから消えていました。

 

 

 

Side クロノ

『ぶはぁっ!死ぬかと思った!!』

通信で九死に一生を得たハルナの悲鳴が聞こえてくる。

どうやら無事に全員帰還できたようだ。

「エイミィ、ハルナさんに急いでブリッジまで来るよう伝えて、疲れているところ悪いけれど武装隊の被害状況を確認したいの」

「了解、直ちに伝えます」

矢次に指示を飛ばしながらも艦長の視線は投影されたモニターからはなれない。

確かに、ハルナ達の受けた損害も気になるが、今はこっちかが問題だな・・・。

「あれって・・・」

「・・・私?」

人一人が収まる大きさのシリンダー・・・おそらくハルナとドクターが医務室に運び込んだのと同型の生体ポッド、そしてその中で眠るフェイトそっくりの少女・・・。

いや、確かにフェイトとうり二つではあるが外見はポッドの中の少女の方が幼い、フェイトに妹がいたらあんな感じだろう。

そんな少女をポッド越しに愛おし気に撫でるプレシア・テスタロッサ。

『たった9つのジュエルシードではアルハザードにたどり着けるか分からない。でももうどうでもいいの、ここで終わりにするわ。アリシアを失ってからの陰鬱とした時間も、アリシアの出来損ないの人形を娘扱いするのも・・・』

「えっ?人、形・・・?」

『聞こえていてフェイト?あなたの事よ。私の娘、アリシアの出来損ない』

通信を切るべきだったと後悔するもすでに遅く、プレシアは憎悪に満ちた視線をモニター越しにフェイトに注ぐ。

これまで彼女たちの為に真実を伏せてきたが、もはや隠し通すことは不可能だ。

「この前言ってたプレシアが関わっている事故・・・あの時にね、彼女は一人娘のアリシア・テスタロッサを亡くしてるの・・・その後ミッドを追放されてから彼女が研究していたのは使い魔とは異なる人造生命の生成技術・・・」

沈痛な面持ちで話し始めたエイミィ、だが彼女の説明は遮られる。

「そう、実の娘・・・アリシアを蘇らせるために彼女は当時違法研究者だった私に接触した」

振り返ればブリッジの入り口にドクターとハルナが立っていた。

「ハルナちゃん」

「ハルナさん、大丈夫?」

なのはが心配そうに声をかけ、艦長もハルナを案じ問う。

「私は問題ありません、ですが武装隊は全員が重症、再出撃に耐えうる者は残っていません」

「そう・・・」

ハルナの報告に艦長が苦々し気に頷く中、ドクターは説明を続ける。

「その提供した研究資料の名はプロジェクトF・・・正式名称は記憶転写型人造魔導士製造計画『プロジェクトF.A.T.E』」

『そうよ。久しぶりね、ジェイル・スカリエッティ。まさか管理局にいるとは思わなかったわ』

そう口にするプレシアだったがその声には何の感慨も感じられない。

「私もだよ、プレシア。こんな形での再会は望んでいなかったさ・・・」

対してドクターの表情からは後悔と哀愁が感じられた。

『あなたの研究成果ではちっとも上手くいかなかったわ。せっかくアリシアの記憶を与えたのに出来上がったのはそこに居る出来損ない、似ているのは見た目だけでちっとも役に立たない私のお人形・・・、アリシアはもっと優しく笑ったわ。わがままも言ったけれど、私の言う事をちゃんと聞いてくれた。アリシアは、いつでも私に優しかった・・・」

そう言ってアリシア・テスタロッサの入ったポッドを撫でるプレシアの表情は娘との過去を思い出しているのかとても哀しげだ。

だがの表情もすぐに消え憎しみに満ちた眼差しを再びフェイトに向ける。

『フェイト、あなたはやっぱり駄目ね。アリシアの記憶を上げても所詮は偽物、アリシアの蘇らせる間私が慰みに使うための人形・・・でもそれももう必要ないわ、何処へなりとも消えなさいっ!』

「やめて・・・もうやめてよっ!」

フェイトを抱きしめたなのはが懇願するようにプレシアに叫ぶが彼女は止まらない。

『いいことを教えてあげる。貴女を作ってからずっとあなたが、大嫌いだったのよ・・・!」

床に何かが落ちる、見ればフェイトの手から待機状態のデバイス・・・バルディッシュが落ち、床に当たって結晶部分が砕けていた。

「フェイトちゃん!?」

フェイトも力なく崩れ落ち、見れば彼女の眼には光を失っていた。

『フフフ・・・アッハハハハハハハッ・・・!!』

それを見たプレシアが高らかに笑う。

誰もがプレシアを止められぬ自分を、フェイトを助けられない無力さに心おられようとしたとき・・・。

「さっきから黙って聞いてりゃアリシアアリシアアリシア・・・どんだけ依存してんだよ!いい歳こいて子離れもできなのか!?」

そこでこれまで沈黙を保っていたハルナが怒りをあらわにする。

「ハ、ハルナちゃん・・・?」

困惑するなのはの事など気にも留めず、ハルナは続ける。

「あなたの娘が亡くなったことは確かに悲劇だよ、生き返らせたいっていう願いも個人的には賛同できる。でもね、どんな理由があってもフェイトを虐げていい理由にはならないだろう!昔は優しく笑った?大人びただけだろう。いう事を聞いた?じゃあアリシアならジュエルシードを集められたのかよ?!」

『うるさい・・・』

「結局あんたが観ているのはアリシア・テスタロッサじゃなくて自分に都合のいいアリシアの幻影だ!」

『黙りなさい・・・っ』

「いいや、言わせてもらうね!アンタが求めているのは娘の復活じゃない、自分の思い通りに従うだけの文字通り娘の形をした人形だ。たとえ本当にアリシア・テスタロッサが蘇ったとしても、今のアンタじゃ絶対に彼女を愛せやしないっ!」

『黙れぇぇっっ!!』

ハルナが大声で言い放った直後プレシアは絶叫と共にジュエルシードを起動させた。

「じ、次元振ですっ!」

「空間歪曲係数増大!このままでは・・・次元断層が発生しますっ!」

観測を行っていたアレックスとランディから悲鳴のような報告が上がる。

「プレシア・テスタロッサ、一体何を・・・!?」

『私とアリシアは旅立つのよ・・・永遠の都、アルハザードへっ!』

彼女の強い願いを受けてジュエルシードが輝きを増す。

『このジュエルシードで・・・アルハザードの力で取り戻すのよ、全てをっ!!』

狂気すら感じられる笑みを湛えながらプレシアテスタロッサが自身の計画を、その目的を高らかに明かす。

「させるかよ・・・」

それにもハルナは真っ向から噛みついて見せる。

『・・・何ですって?』

「やらせないって言ったの。そのフライトはキャンセルだ、あんたは私がとっ捕まえて豚箱にブチ込んでやる・・・!」

ハルナの宣言に、先ほどまで狂ったように笑っていたプレシアの顔が見る見るうちに険悪になっていく。

『不快ね・・・さっきから野良犬のように吼えて、何なのよあなたは?』

「さっき言ったでしょう。時空管理局本局遺失物管理部機動2課第2特別捜査隊付き執務官。そして、スカリエッティ家長女兼ナカジマ家長女のハルナ・スカリエッティだ!」

威風堂々、そんな言葉が似合うほど堂に入った名乗りにブリッジの面子も、プレシア・テスタロッサも言葉を失った。

『・・・スカリエッティですって?』

ようやく立ち直ったプレシアが、ドクターの方に視線を向ける。

「まぁ、そう言う事さプレシア。私の自慢の娘だよ」

『フンス』と鼻息の荒いハルナに苦笑しつつもどこか誇らしげに肯定するドクター。

『フフッ、アハハハッ・・・!』

対して、それを聞いたプレシアは再び狂気の籠った笑い声をあげる。

『成程・・・要するにそこに居る人形の同類ってこと。訂正するわスカリエッティ・・・お仲間が貶されて怒るなんて、よくできた人形じゃない』

「ケッ、なんとでも言えばいいさ。そうやって笑っていられるのも今の内だよ、今すぐ言って、一発殴って、フェイトに土下座で謝らせたうえで牢屋に送ってやる!」

モニターの向こうのプレシアを指さしながら高らかに宣言するハルナ。

ハルナの宣戦布告にもプレシアは動じず、余裕ありげに笑って見せる。

『クックック・・・面白いわ、やれるものならやってみなさいお人形さん?ただし、来れるものならね・・・ッ!』

プレシアの言葉と共にブリッジに警報が響く。

「何があった!?」

「まって・・・庭園内に魔力反応!?」

僕の言葉にエイミィが庭園をスキャンすると今までなかった魔力反応が庭園のいたるところから確認された。

「魔力量・・・推定Aランク!20、70、90・・・まだ増えますっ!!」

どうやら庭園の防衛機構を作動させて傀儡兵(ゴーレム)を起動させたようだ。

『せいぜい来れるものなら来てみなさい。もしたどり着けたら、旅立ちの餞別に破壊してあげるわ』

そうハルナを挑発し、プレシアは通信を切った。

「・・・エイミィ、転送ポートの準備を、それと装備科に連絡してありったけのカートリッジを用意して待ってるように言っておいて」

エイミィにそう言うとハルナは踵を返して扉に向かって歩き出す。

「待ちなさいスカリエッティ執務官」

しかしそれは艦長によって止められる。

「これより時の庭園に再突入しプレシア・テスタロッサを捕縛します」

「許可できません」

ハルナの意見を即座に却下する艦長。

「・・・このままでは次元断層が発生します。地球も、周囲に点在する世界も、悉く滅ぼされてしまいます」

「分かっています、ですが出撃するのはクロノ執務官です。消耗したあなた一人ではあの数の傀儡兵を突破できません、行ってもプレシアにはたどり着けないでしょう」

艦長・・・母さんの言葉に迷いが無いとは言えない。

息子である僕を文字通り死地に向かわせるのに平気なわけがない。

だが今のハルナは危険すぎる、どんな無茶をするかわかったもんじゃない。

母さんにとって、本人には言いたくないが僕にとってもハルナは家族も同然だ、死ぬと分かっていて行かせるわけにはいかない。

「どうしても行かせる気はないと?」

「どうしてもです」

にらみ合うハルナと母さん。

暫くして「分かりました」と答えるハルナだったが、その目はどう見ても諦めてはいない。

「ならば現時刻を以てアースラを退艦、遺失物管理部執務官として独自に行動します」

「ハルナさんっ!」

ハルナめ、厄介な裏技を持ち出してきたな・・・。

彼女の本来の所属は遺失物管理部、そして僕たちとアースラは次元航行部隊所属だ。

今回の事件は二つの管轄が重なったため暫定的にハルナをアースラに所属させて合同捜査という体裁をとっている。

だが艦から降りたら彼女の所属は元の遺失物管理部に戻る、そうなったら次元航行部隊の僕たちは彼女の行動に口を挟めない。

もしそんなことをしたら越権行為として大事になりかねないのだ。

「だめよ、行かせない・・・」

それを分かって尚、母さんは扉の前に立ちふさがりハルナを止める。

「・・・お願いです、行かせてくださいリンディさん」

母さんの覚悟に気づいたのか、力づくで通ることもできるというのにハルナは言葉での説得を選んだ。

「彼女は何としても私の手で捕まえなくちゃいけないんです」

「・・・それはさっきの挑発が理由?それだけの理由では行かせるわけにはいかないわ」

母さんの問いにハルナが首を横に振る。

「いいえ、確かにそれも理由に含まれないわけじゃありません。でもそれは挑発されて腹が立ったのが理由じゃありません」

ハルナは一度区切るとひどく真摯な眼差しで母さんを見つめながら続けた。

「私が、フェイトと同じプロジェクトFの産物である私がプレシアに打ち勝って証明しなきゃいけないんです。私たちは、フェイトは人形なんかじゃないって・・・」

ようやくハルナが頑なに出撃しようとしている理由が分かった。

ハルナもプロジェクトFから派生した戦闘機人・・・見方によってはフェイトと彼女は姉妹と言う事になる。

彼女はこれまでずっと、家族の為に戦ってきた。

父に再会したい一心で管理局に入局し、再開してからは妹達の生活の為にと言って我武者羅に働いた。

そして今、彼女はフェイトの為に出撃しようとしている。

フェイトの尊厳を・・・心を救うためにプレシアを打ち倒し、彼女が人形じゃないことを証明する。

その為に彼女はこれから単身で死地に飛び込もうとしているのだ。

事情を知らないものが聞けば赤の他人の為にどうしてそこまでと思うだろう。

しかしハルナはフェイトを自分と同じ、試験管から生まれた姉妹として認識した。

そして彼女は、家族を決して見捨てはしない。

「・・・はぁ」

ハルナの事情を知る母さんも彼女の心中を察し悟ったようだ、こうなったハルナは文字通り梃子でも動かないと・・・。

「やはりだめです、あなた一人を行かせるわけにはいきません」

「リンディさん!」

母さんの出した結論に思わず叫ぶハルナ。

だが彼女は勘違いしている、母さんは『一人で』行くことを禁じたのだ。

「クロノ、直ちに出撃準備を。ハルナさんについて言ってあげて」

「了解です」

やはり先ほどのプレシアの言動に憤りを感じていたのだろう、母さんからの指示に僕は不謹慎にも心が弾むのを感じた。

「なのはさん、申し訳ないけれどフェイトさんを医務室に送り届けたらあなたにも出撃してほしいの」

「え?私もですかっ?」

「なっ!?リンディさんそれは・・・!」

なのはとハルナが同時に驚きの声を上げる。

これまで僕とハルナがしつこく反対してきたためなのはが危険な作戦に投入されることは無かった。

それは正しい、なのはは本来民間人なのだから。

だが残念ながら今回ばかりはそうも言ってはいられない。

「危険な作戦なのは重々承知しています、でも今は持てるすべての力を出し切らなければ勝機は無いの。だから・・・」

母さんはなのはに向き直ると頭を下げてなのはに助力を求めた。

「お願いします、私達に力を貸して下さい・・・」

その声からは計ることのできない苦悩が感じられた。

なのはの才能に惹かれてこそいたが、彼女を危険な任務に就かせたくないのは母さんも一緒だ。

しかし今回は地球の運命がかかっている、なのはの安全と地球・・・認めたくないが天秤は地球の方に傾いていた。

「リンディさん・・・わかりました。私、行きます・・・!」

そうして覚悟を決めてしまったなのはを見て、僕は必死で湧き上がる憤りを抑えこむ。

その矛先は主犯者のプレシアと、何よりなのはに頼らざる負えない非力な僕たち自身に対してだ。

だが今は事件の解決事こそが最優先だ、自責は後でやればいい。

「・・・分かりました、でも危険と判断したら強制的にアースラに転送してください」

「ええ、勿論そのつもりよ」

その言葉にハルナの方も未だ納得していないがなのはの参加を認めたようで不承不承ながら頷いた。

そして僕は転送ポートへ、ハルナは装備を整えるために倉庫へ向かう。

「あ、そうだ・・・」

と、そこでハルナは歩みを止めなのはに抱きかかえられたフェイトに向き直る。

「聞いてフェイト、さっきあなたのお母さんに思いっきり文句言ってやったけどまだ言い足りないからちょっと行って続き言ってくるよ」

ハルナはフェイトの頭を撫でながら優し気に話す。

「フェイトはここで待っててもいいし、私達を追っかけてくるのもいい。決めるのはフェイト自身だから、でも追いかけてくるつもりなら急いできてね。捕まえるつもりだけれどフェイトのお母さん強いから、最悪逃げられるかもしれないよ」

それだけ伝えるとハルナは踵を返しブリッジを後にした。

全く、おせっかいなやつだ。

来なくてもいいと言いながらプレシアに逃げられる可能性も示唆する。

そうなったらフェイトは母親に自分の思いを伝える機会を永遠に失うことになるのだ。

変わらぬ愛情か、それとも憎しみの言葉か・・・どちらにしろ通信を切られた以上伝えるには直接言いに行かなければならない。

だから早く立ち直って追いかけて来い、ハルナは遠回しにそう言っているのだろう。

そう言う事はドクターに任せればいいのに、それに呼び捨てにしている事にも気づいていない。

彼女が名前かあだ名で呼ぶのは家族や本当に心を許した親友だけだ。

家族としてフェイトを守ろうと決意したことに自身が気づいていない、しかし無意識のうちに彼女を救おうと躍起になっている。

フェイトも面倒くさい相手に妹認定されたものだ・・・きっとこれから苦労するだろうな、色々と・・・。

だがそれもこれも、全てはプレシアを逮捕し次元断層の発生を阻止してから。

そう、本当の戦いはこれからだ・・・!

僕は気合を入れなおすと転送ポートに向かって走り出した。

Side Out

 

「・・・はっ!?どこかで打ち切りフラグが立った気が!!」




打ち切りません、続きます。
形態の着信音は多分当時流行っていたネタだからw
そんなこんなで次回、いよいよ決戦。
多分また更新遅くなるけど許してください何でもしませんから!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第21話「笑えない決着と悲しい決着なの」

皆様お久しぶりです。
活動報告通り投稿することが出来ました。
目まぐるしく変わる状況に投稿する時間も意欲も奪われていましたが他の方のSSに元気づけられ続けることが出来ました。
ありがとう青川トーン先生!ありがとうおりん!
シンフォギアXV編での活躍も期待しています!
そんなこんなで無印編もいよいよ佳境、ハルナお姉ちゃんの激闘をお楽しみください。
それでは本編開始です。


いよいよ決戦の時が来た。

相手はプレシア・テスタロッサ・・・大魔導師とまで呼ばれたオーバーS魔導師だ。

怖くないと言えば嘘になる。

それでも私は行かなきゃいけない。

フェイトの心を救うために、彼女の尊厳を守るために。

どうしてあの子の為にここまで必死になっているのか、考えたけれどなんてことはない。

あの子は私と同じ父さんの技術でこの世に生まれた命、いわば私の妹も同然だ。

ならお姉ちゃんとして、私にはフェイトを守る権利と義務があるわけだ。

何より、あんないい子を泣かせたプレシアを私は決して許さない、日本全国の・・・訂正、全次元世界のお母さん&お姉ちゃんを代表してお仕置きしてやる!

「さーて、ペイバックタイムだ。行くよ、イェーガーっ!」

『地獄の底だろうと喜んで』

ホントによくできた頼もしい相棒です、本当にあの変態な父さんが作った子なのでしょうか?どっかの研究所から攫ってきたとかじゃないよね?

ま、それは後で父さんに問い詰めるとして・・・。

「マギア・イェーガー、セットアップ!」

『anfang・・・!』

どこかこれまでよりも力強いイェーガーの声と同時に私の体が光に包まれる。

カッコイイBGMをバックに光の中を漂う私の体。

来ていた黒い執務官用制服が光の粒子に変わり下着姿に。

次いで下着も制服同様光りに変わる。(前回と違って今度はちゃんとスポーツブラを付けてます)

飛んできたパーツが次々に合体してデバイス形態のイェーガーに。

それのグリップを掴むと灰色の騎士甲冑が形成され背中に羽の様な浮遊型パーツが展開。

コンバットブーツの靴紐を結んでから防弾ベストを羽織り、ハンドガンの初弾を装填してホルスターへ。

ベストに予備の弾薬や手りゅう弾、肉厚なコンバットナイフを装着してから顔や腕にドーランを塗って迷彩を施す。

ライフルとショットガンに初弾を装填し、最後に足元に置いてあったロケット蘭ちゃんのベルトを掴みながらライフルを肩に担いで・・・。

『デエェェェェェェェェェェンッッ!!!』

最後にこの効果音、パーフェクトだイェーガー。

『感謝の極み』

え?何です?何か問題でも?

ふざけないでちゃんとやれって?

ふざけてませんー、これから決戦だから気合を入れたんですー。

「それじゃあ改めて、フェイトのお母さんをぶっ転ばしに行きますか!」

 

機人長女リリカルハルナ

第21話「笑えない決着と悲しい決着なの」

 

転送ポートから再び時の庭園に戻ると(格好もちゃんと元に戻しましたよ)内部は先ほどとはかなり変わっていました。

そこかしこに亀裂が走り、床が抜けて外が見えます。

恐らく動力炉を臨界までぶん回した負荷で庭園の崩壊が始まっているのでしょう。

その証拠に床の抜けた穴からは虚数空間が見えます。

こいつは次元断層が原因で次元空間に空いた穴で簡単に言ったらブラックホールみたいなもんです、この中では魔法も使えないので落ちたら上がってこれません。

これがあるって事はいよいよもってヤバいですよ、小規模ながら次元空間にひびがが入っているじゃないですか。

この亀裂が次元断層に変わるのも時間の問題・・・それを止めるためには庭園の動力炉とプレシアのジュエルシード、両方を止める必要があります。

一足先に突入したクロノたちを追って走るとすぐさま彼らに追いつきました。

「こんなところで何してるのさ?」

「見ての通りだ、足止めを食らってる」

そう言ってクロノがあごでしゃくった方を見ると、うわぁ・・・いるわいるわ傀儡兵の群れ。

えーと・・・ちゅう、ちゅう、タコ、イカ、ウニ・・・ざっと40体位。

「なのは、ユーノ。君達はハルナと一緒に動力炉の停止に向かってくれ」

クロノがなのは達に指示を出す。

「クロノ君は?」

「プレシアを止める。今、道を・・・!」

敵を蹴散らそうとクロノがデバイスS2Uを構えようとしたので止めます。

「はいストップ」

「何っ?」

「ハルナちゃん?」

皆が困惑する中、私は最前列に出ます。

「こいつ等は私が蹴散らすから、なのははユーノとアルフと一緒に動力炉へ行って。プレシアは私とクロノが相手する」

「ハルナっ!何を言って・・・」

「彼女の実力は本物だよ、クロノ一人じゃ返り討ちに遭う」

「だが・・・」

なおも食い下がるクロノの言葉を私は砲撃の轟音で遮った。

「時間が無いから異議申し立ては後で聞く!ぶっ飛べ、インパクト・カノーネッ!!」

そう言って私は密集した傀儡兵に魔力の塊を叩きこむ。

第6話以来のお披露目となる砲撃魔法はその名に恥じぬ威力を以て敵の防衛線に風穴をぶち開けた。

「今だ!行けぇっ!」

私の大声になのはは動力炉への道を一直線に飛んでいきます。

ユーノとアルフがその後に続いたのを見届けると私も玉座の間への道を駆け抜けます。

「待てハルナ!今の言葉は本当か?」

後ろからクロノが聞いてきます。

「ふぇ?プレシアの事?半分は嘘」

「ちょっ!?何だ半分はって!?」

驚来ながらも襲い掛かる傀儡兵をスクラップに変えるクロノに説明します。

「実際プレシアの実力は想像以上だったよ、でも私かクロノが頑張れば何とか勝てると思う」

「それじゃあどうしてなのは達だけで動力炉へ向かわせたんだ?」

隔壁をぶち破りながら言う私にクロノが胡乱気な顔で聞いてきます。

「単独じゃプレシアにたどり着けるか分かんないじゃん」

「僕や君が傀儡兵に遅れを取るとは思わないんだが?」

扉を傀儡兵もろともぶち抜いて広間に出た私とクロノ。

「いやほらさぁ、こういう状況じゃん?なら出て来るじゃない?」

「何が・・・っ!?」

直後飛来した無数の弾丸を私とクロノはシールドで防御する。

傾斜させたシールドの表面で何度も弾丸が火花を散らしながら跳弾する。

数秒して射撃が止むと部屋の角の暗がりから一人から人影が姿を現す。

「お前は・・・!?」

「ほら、居たでしょ?こうゆうしっちゃかめっちゃかな状況で介入してくる輩が・・・」

そう言って私は鋭いまなざしを先ほどの襲撃者、ガヤルド・チェンテナリオ・オプトーラに向けました。

 

Side クロノ

最悪だ、最悪のタイミングで現れてくれた。

ガヤルド・チェンテナリオ・オプトーラ、事件の渦中に突然現れハルナに襲い掛かってきた謎の魔導師・・・。

以降も何度かハルナに対して襲撃をかけてきたが、よりにもよって一番現れてほしくないタイミングで姿を現した。

しかもプレシアが巧妙に隠匿していた時の庭園にだ。

僕達だってアルフからの情報提供とプレシア本人の次元跳躍攻撃から発射位置を逆算してようやく正確な座標を割り出したというのに・・・一体どうやって?

いや、その方法を突き止めるのは後だ。

今はこいつを突破してプレシアを逮捕しなくては。

だが・・・。

「本当に、こんな時に・・・」

無意識のうちにいら立ちで歯を食いしばっているのに気づく。

次元断層が発生する前に何としてもプレシアを止めなければいけない、そんな一刻を争う時にこんな厄介な相手が立ちふさがるとは。

手には屋内での戦闘を想定してかこれまで使っていた大口径の狙撃銃ではなく小型のサブマシンガン―確かハルナの呼んでいた電動ガンカタログに載っていたFN-P90というタイプの銃だ―を構えている。

噂だと高い連射性と防弾ベストも貫く貫通力を持ったとんでもない銃だったはず。

それが無くてもなのはやフェイトを上回る魔力の持ち主だ、これまで魔法を使ったところを見たことは無いが決して油断していい相手じゃない。

そこで僕はようやく気付いた。

「クロノ、行って」

ハルナが無理を言って僕とプレシア捕縛に向かう事にした理由に。

「ハルナ・・・まさか、このことを!?」

どうやら彼女はこの混乱に乗じてガヤルドが襲撃してくる可能性を想定していたのだろう。

だから標的である自分からなのはを遠ざけ、彼女の安全を確保したというのか・・・。

「まぁ、来るんじゃないかなぁとは警戒してたよ。ホントに来てほしくはなかったけど・・・」

心底げんなりした顔で頭を掻きながらハルナは一歩前に出る。

「こいつの狙いは私だよ。だから悪いけどここからは一人でプレシアの所に向かって」

そう言ってイェーガーを構えたハルナを見て、彼女がやはりこうなる可能性を危惧していたのだと確信した。

「駄目だ!危険すぎる、ここは二人で・・・」

「ジュエルシードの臨界まで時間が無い、こいつに時間を取られてたら次元断層が防げなくなるよ」

これほど苦々しく感じたことが今まであっただろうか?

ハルナの言う通り、ここでガヤルドを相手にしていたらプレシアとジュエルシードを止める時間が無くなってしまう・・・。

これもハルナの想定の内だというのか?

だとしたらこれほど腹立たしいことは無い。

どうしてこの可能性に気づけなかったのか?どうして彼女は全部一人で背負い込もうとするのか・・・!

同時に僕は何とかして二人でこの状況を打開できないかを模索する。

しかし思いつかない。

どう対処しても二人で行動していたらプレシアの元に間に合わない。

二人でガヤルドと戦えばタイムアップ。

ガヤルドを無視してプレシアの所へ向かえば追撃されて大きな損害を受ける。

逆に僕が残ってハルナがプレシアのもとへ向かうとしてもこれもアウトだ。

仮にハルナが背中を向ければガヤルドは僕には目もくれず彼女の背中に銃弾を浴びせるだろう。

ほぼ八方塞がり、唯一の道はハルナを置いていくこと。

局員として、人として、一人の男として認められないその道を・・・。

「・・・さっさと終わらせて追いかけてくるんだ。倒れるなんて許さないからな!」

僕は選択した。

不甲斐ない自分と、勝手に自己完結させるハルナへの怒りを押し殺して絶対に死ぬなと言ってやる。

「フフンっ、お姉ちゃんに任せなさい!さぁ!ここ任せて先に行け!くぅ~、一度行ってみたかったんだよねー。あ、待てよ。このセリフ、死亡フラグなんじゃ・・・」

・・・うん、心配するだけ無駄そうだ。

かなり余裕そうなハルナに背を向け、僕は玉座の間に向かって走り出した。

Side Out

 

ガヤルドの隣を通り抜け、反対側の扉へ駆けて行くクロノ。

案の定ガヤルドはクロノには目もくれず私にガン飛ばし続けている。

とりあえずプレシアとジュエルシードの方は大丈夫になった。

クロノは石頭でムッツリだけど私なんかよりも優秀な魔導士ですから、相手が大魔導師プレシアでも後れを取ることは無いでしょう。

なので・・・。

「おかげで心置きなくこっちに専念できる・・・!」

イェーガーもみなぎっているのかマガジンから追加でカートリッジを装填します、私に無断で勝手に・・・。

「・・・一つ、聞きたいことがある」

私がこのフリーダムな相棒に帰ってからどんな制裁を加えようかと考えていると、突然ガヤルドが私に声をかけてきました。

今まで私の話なんぞ聞く耳持たず問答無用で殺しにかかって来た相手がです。

「・・・お聞きしましょう」

私もこいつに聞きたいことがあったし、それにまだ彼は間に合います。

原作に介入したいだけなら私も協力を惜しまない、だからこれ以上罪を重ねないでほしい。

そんな思いもあり彼の質問に応じました。

「・・・お前は、転生者なのか?」

「ええ、そうです。そう言うあなたも?」

私が問い返すとガヤルドは頷きました。

「そうだ、ずっとこの時を待っていた・・・なのに・・・!」

彼顔が見る見るうちに憎悪に歪み、手にしたP90の銃口を私に向けます。

「お前が全てをぶち壊したんだっ!」

惹かれるトリガー、閃光、銃声。

回避行動をとりながら展開したシールドの表面で5.7x28mm弾が火花を散らします。

「くぅ・・・っ!」

あぁ、もう!結局このパターンかよ!

「この世界で生まれ変わって凄く嬉しかったんだ!本物のなのはに、フェイトに会えると!だからずっと準備してたんだ、魔法を学び、戦う術を学んだ!なのに・・・ようやくこの時が来たと思ってやってくれば俺がいるべき場所には見たことも無い奴が、お前がいる・・・ふざけるな!」

そう言って今度は左手に持った短機関銃・・・ヴェクター CRBをフルオートで発砲してきます。

アメリカ製サブマシンガンから放たれた45APC弾の猛射が被弾し減衰していたシールドを叩き割る。

「チッ・・・!」

脚を止めるとやられると判断した私は踵に仕込まれたローラーダッシュで高速走行を開始。

聞いただけでむせそうになる駆動音を響かせながら床や壁を駆けまわり機銃掃射を必死にかわします。

私が通過したすぐ後ろを鉛のシャワーが降り注ぎ前衛アート的な内装にリフォームしていく。

「何でお前が、お前だけが!なのはやフェイトと一緒にいられるんだ!」

「んな事、言われても・・・うわっ!?」

もし最初に私を襲撃しなければ違う結果になっていたでしょう。

管理局員を襲撃した犯罪者としてではなく、フリーの魔導師として協力することもできた筈です。

でも彼は私を撃ってしまった。

結果として彼は管理局から追われる身となり、アースラメンバーからのヘイトを一身に受けることになってしまった。

「なら、だからこそ投降してください!今ならまだ間に合う、私を殺したらそれこそ取り返しのつかないことになっちゃいますよ!」

アクセルキーパで牽制射を放ちながら私は説得を試みる。

自慢じゃないが私はなのはからそれなりに好かれている。

クロノやリンディさん達アースラメンバーとの信頼関係も築けましたしアリサとも友達です、すずかとの関係は何やらアレですが・・・。

何より、私に何かあったら父さんやおじいちゃん達が何しでかすか分かったもんじゃありません。

確か父さん達が登場するのは3期・・・つまりアニメは後2シーズンあるという事です。

今投降して、罪を償えば次回作でならなのは達と共闘もかなうかもしれない。

だというのに・・・。

「情けのつもりか?ふざけるなっ!お前さえ・・・お前さえいなければっ!!」

ヤベェ!こいつが沸点低いの忘れてた!

頭に血が上った状態で私に向けて弾丸をぶちまけるガヤルド。

それでも両方同時に弾切れになることは無く、左右交互にリロードしてどちらかは確実に私に照準を向けたままです。

思ったよりも冷静なのか、それとも怒っていてもできるくらい動作が身体に染み付いているのか・・・。

前者だと厄介ですが後者だともっと厄介です。

身体に染み付くと言う事はそれだけ反復練習・・・訓練を重ねてきたという事です。

剣の腕も実戦で洗練こそされていませんがしっかりと訓練を受けた太刀筋でしたし・・・。

何よりコイツの魔法は未知数なのです、どんな奥の手があるのか分かったもんじゃありません。

そんな理由から攻めあぐね、マルチタスクで打開策を考えていたのですがもう一つ大事なことを忘れていました。

私とクロノがこの部屋に入った時、彼は『既にここにいた』んです。

一体いつからいたのかは分かりませんがトラップの準備をする猶予くらいはあったようです。

「うぇっ!?」

足に何か引っかかったと思った時にはすでに遅し・・・ワイヤーに引っ張られて隠されていた手りゅう弾の安全ピンが引っこ抜かれました。

 

Side なのは

「っ?」

何だろう、一瞬何かを感じた。

ジリジリとした焦りの様な、何か嫌な感じ・・・。

(ハルナちゃん達に何かあったのかな?)

プレシアさん・・・フェイトちゃんのお母さんを止めるためにハルナちゃんとクロノ君は玉座の間へ向かった。

広い庭園の中、分厚い壁や天井に遮られ、二人の魔力反応も感知できない。

なのに感じた予感のような何か・・・ハルナちゃん達が危険な目に遭っているのかも・・・。

「なのはっ!」

「ふぇっ?」

そんなことを考えていたせいでしょうか、いつの間にか背後に近づいてきた傀儡兵が手にした戦斧を振り下ろすまで気づきませんでした。

スローモーションで迫ってくる大きな刃・・・。

「なのはぁっ!!」

ユーノ君の声が聞こえる。

でもたぶん間に合わない。

「・・・っ!」

思わず目をつぶってしまったその時聞きなれた声がしました。

「サンダーッレェイジッッ!!」

その声を耳にした直後、閃光と轟音が辺りに轟きます。

目を開ければ周囲にいた傀儡兵は殆どが破壊され煙を吹いています。

そして見上げれば・・・。

「フェイトちゃんっ!」

バルディッシュを構えたフェイトちゃんがいました。

その眼には再び光が宿り、抜け殻の様だった先ほどとは打って変わり強い決意に満ちています。

「フェイトちゃん、来てくれたんだね・・・」

「うん・・・追いかけなきゃ、行けないから」

「えっ?」

私が首をかしげるとフェイトちゃんは明後日の方角・・・おそらく玉座の間のある方を向きながら続けます。

「母さんが行っちゃう前に、私のこの思い・・・ちゃんと伝えないといけないから」

「・・・うん、そうだね」

「それに、ちゃんとお礼も言いたいし・・・」

「えっ?」

お礼?ハルナちゃんに?

「あの子は私に選ばせてくれた。私が人形じゃないって、フェイト・テスタロッサっていう一人の人間だって教えてくれたから・・・」

「あっ」

そこでようやく私はハルナちゃんの言葉の意味を理解しました。

出撃前にハルナちゃんがフェイトちゃんにかけたあの言葉・・・。

最初はフェイトちゃんに早く立ち直って欲しいから言ったんだと思っていました。

でもそれだけじゃなかった。

ハルナちゃんはフェイトちゃんに来てもいいしアースラに残ってもいいと言ってました。

それはつまり言われるままに動くんじゃなくて自分で選びなさいって言う意味だったんです。

遠回しにフェイトちゃんに自分が人形じゃない事を自分自身で証明しなさいって言っていたんだと思います。

明るくて妹が大好きで、ちょっとおバカな感じがするけれどとてもやさしい・・・。

これもそんなハルナちゃんのお節介なのでしょう。

「・・・うん、そうだね。お礼言わなきゃねっ」

「うんっ、そのためには・・・」

直後壁を打ち破って現れる大型の傀儡兵。

これを倒さないと先には進めなさそうです。

「装甲が厚い、一人では撃ち抜けない。でも、二人でなら・・・」

力を貸してと言うフェイトちゃんからのお願い。

これもハルナちゃんが背中を押したからかもしれません。

「っ!うん、うんっ!」

だから私も、後でハルナちゃんにお礼を言うために、フェイトちゃんと一緒にここを切り抜けるっ!

「いこう、フェイトちゃん!」

「うんっ」

傀儡兵から繰り出されるビームを左右に回避しながら私とフェイトちゃんは反撃を開始しました。

Side Out

 

耳が痛い・・・。

腕も痛いし足も居たい、背中も腰も・・・たぶん痛くないところを探した方が早い感じで体中が痛い・・・。

「・・・グッ、いでっ」

うかつでした、まさかブービートラップまで用意してくるとは・・・某魔術師殺しさんの戦法はリリカルな世界でも有効なことが実証されてしまいました。

今まで魔法戦に特化しすぎた弊害ですね、ケイネス先生の事を笑えません。

帰ったら魔法以外を使った戦術も勉強しないと。

「チッ、まだ生きているのか・・・」

帰れればいいなぁ・・・。

煙の向こうから現れる人の話を聞かない転生者、ガヤルド・チェンテナリオ・オプトーラ。

作者でも名前を打ち込むのが面倒でコピペで済ますレベルの長い名前のあん畜生。

そいつが短機関銃のマガジンを交換しながらこちらに近づいてきます。

「最後に聞かせろ、どうしてあの時フェイトを助けたんだ?お前なら彼女が無事なのはわかってたはずだろう?」

銃口を向けながらそんな質問をしてくるガヤルド。

そう言えば私の原作知識の事は知らないんでしたね・・・。

「そんなこと言われても、原作の知識があいまいですからね・・・何が起こるかなんて知りませんよ」

「えっ?そうなのか?」

それが予想外だったのか呆けるガヤルド・・・。

恐らく彼は十分すぎる原作知識を持っているのでしょう。

父さんが露出過多な魔法少女(19)にホームランされる事以外にもいろいろ知っているんでしょうね・・・う、羨ましくなんかないんだからっ!!

「第一、決まった未来なんて存在しませんよ・・・」

ここが仮に「リリカルなのは」の世界でアニメに登場する人物がいたとしてももうここはアニメの中じゃない。

そこに居るのも同じ姿で同じ性格の、同姓同名の別人です。

ここはそんな皆が一日一日を精いっぱい生きている現実の世界何です。

そこに決定づけられた未来なんて、シナリオや台本なんて存在しない・・・紛れもない現実の世界なんです。

「・・・そうか。いや、そうなのだろうな」

私の言葉にガヤルドは目を閉じながら答えます。

「確かに未来なんて決まっていない、未来はこれから作るもの。そのために俺はこうして戦ってるんだからな・・・」

おや?これは説得のチャンスなのではないでしょうか?

「そうですよ。今ならまだ間に合います、投降して罪を償えばもしかしたら次のストーリではレギュラー入りできるかも・・・」

「そうだ!だからお前から本来の居場所を取り戻すことだってできるはずだ!」

だからどうしてそうなるんだこのやろう!

「お前がいなくなれば皆も目を覚ます!そうに決まってる!」

やっぱコイツ馬鹿だ!

「そうすればみんなの心は俺に戻って来る・・・!」

しかもコイツハーレム願望持ちかよ!

戻って来るも何も最初からあの子たちの心はオメーの所にねーから!

「・・・あー、何か疲れてきた」

思わず口に出しちゃいましたが当のガヤルドは自己陶酔に入っちゃってるのか聞いていません。

「安心しろよ、彼女たちは全員俺が守って見せるから」

「へー、ぜんいんってだれ?」

得意げに言い放つガヤルド、ここはテキトーに聞き流して隙が出来た所を拘束して先に進みましょう。

「勿論全員さ!皆守ってやる、幸せにしてやるよ!なのはもフェイトも、はやてもヴォルケンリッター達も・・・」

まぁ、なのはとフェイトはまず候補に挙がるでしょうね、すさまじく気に入りませんが・・・。

「はやて」と「ヴォルケンリッター達」と言うのは分かりませんが今後出てくる人たちなんでしょう・・・。

さて、まだ続くみたいですが誰が出てくるのやら・・・。

「マテリアルズもフローリアン姉妹も、ユーリとイリスも、スバルもギンガも、ティアナもキャロも、ヴィヴィオもナンバーズ達もアインハルトも・・・」

・・・あ゛ぁ゛ん゛?

コイツイマナンテイッタ?

スバル?ギンガ?ナンバーズぅっ!?

気が付けばいつの間にか私は立ち上がり目の前の馬の骨のすぐ至近まで接近するとその右腕を野郎の顔面に叩き込んでいました。

この間僅か1.4秒・・・人体の構造どころか完全に物理法則を無視していますね、鳥山先生のマンガかよ?我ながらどうやったのやら・・・。

「ぶぶぅっ!?」

豚の様な泣き声をあげながら飛んでいく人の形をしたナニカ。

壁に激突するも辛うじて意識は保っていたのか起き上がろうとする。

頑丈ですね、近接戦用に装備した「超むせるアームパンチver1.55」をもろに食らったのに生きてるどころか意識を手放さないなんて・・・。

とりあえず「それ」の所までツカツカと近づきます。

「が、はっ・・・な、なにが・・・」

起き上がろうとしてた「それ」が何か言おうとしているのでとりあえず髪の毛を掴み、顎に膝を叩きこんでおきます。

「ふんっ!」

「がっ!?」

反動で頭が跳ねあがった所に私はすかさず追撃を加えます。

右、左、裏拳、肘打ち、地獄突き・・・。

反撃しようとしていたので鼻っ柱に頭突きを叩きこんで黙らせてからなおも続けます。

「おい、今なんて言った・・・?」

何でしょうね、理性では拘束した上でアースラに連行しなきゃいけないと分かってはいるんですけれど・・・。

「誰を守って、幸せにしてやるって?」

胸の奥底から熱く、どす黒い感情がマグマのように湧き上がってきて止まりません。

それでいて脳みそは凍り付くぐらい冷徹に冴え渡り、目の前のこれをどうやって始末しようかを淡々と計算している・・・。

ああ、なるほど・・・私、今本気でキレちまってます。

「ひ、ひぃぃぃぃ・・・!」

恐怖に駆られたのか床を這いながら私から逃走を図ろうとする男・・・。

「・・・おい、どこに行く気だ?」

それに向けて私は左腕のフリーガーシュレークを発射。

「がっ・・・!?」

延髄に直撃をくらい床に接吻する男の襟首をつかんで回収用のワイヤーを巻き取る。

ずるずると顔面を擦りながら私の元まで引きずられてくる馬の骨。

よく見ると気を失っているので一発殴って目を覚まさせます。

「ぶぅっ・・・はぁっ・・・!?」

「スバル?ギンガ?ナンバーズ?・・・ふざけるなよテメェ・・・っ!」

ギリギリ理性が働いてくれたのか、非殺傷に設定されたアクセルキーパ―をゼロ距離で猛射します。

「あっがぁあああぁぁあぁぁっっ!!??」

距離が近すぎてシールドは展開できず、バリアジャケットもゴリゴリと削り取られてついに砕け散ります。

「お前が、お前ごときがっ!あの子達の名前を呼ぶ事すら烏滸がましい・・・っ!」

カートリッジの切れたイェーガーを放り捨てながら火山の噴火の如く、目の前にいるナニカに対して罵詈雑言と共に拳をぶちまけます。

殴る、殴る殴る殴る殴る蹴る殴る殴る殴る肘殴る殴る殴る膝殴る殴る殴る殴る殴る頭突き殴る殴る殴る・・・。

拳林弾雨にさらされ、肉の詰まったサンドバックは見る見るうちに無残な姿に変わっていく。

「あまつさえそれを「守ってやる」?「幸せにしてやる」だぁ?いいだろう、よっぽど殺されたいらしいな貴様ぁ・・・!」

起き上がろうとするボロ雑巾をひたすら激情のままにけたぐり回す私・・・。

「ぶべっ、がっ・・・!ひっひぃっ!なんで、何でそんなに怒って・・・何なんだよお前はぁっ!?」

振り下ろされた踵を必死に床を這い転がり回って回避し、怯えた表情で私に問う男、ガヤルド・チェンテナリオ・オプトーラ・・・。

今までさんざん殺そうとして置いて、相手が何者なのかも調べなかったんですか。

なら教えてやりましょう。

私が何者なのか、自分が何をしでかそうとしていたのかを・・・。

「スカリエッティ家長女にしてナカジマ家長女・・・ハルナ・スカリエッティだっっ!!!」

先ほどプレシア・テスタロッサに言ったものと同じ言葉を、あの時以上に誇りと力を込めて宣言してやりました。

案の定ガヤルドの顔が驚愕に染まります。

「スカリエッティ・・・だと?それじゃあお前まさかジェイル・スカリエッティの・・・!?」

何かゴチャゴチャと言っていますがそんなの無視です。

「マギア・イェーガー!」

私の命令でイェーガーが手元に戻って来る。

「ロードカートリッジっ!!」

マガジンを交換した直後に薬室にぶち込まれるカートリッジ、その数バースト三斉射分9発。

全身に魔力が行き渡り、過剰供給された魔力があふれ出す。

熱変換された魔力が揺らめき、逆立つ髪の毛と合わせて怒りのオーラのように周囲の空間をゆがませます。

「ま、まてよ!お前は騙されてるんだ!お前だって知ってるだろう?あいつは犯罪者だぞ!いずれミッドチルダを滅茶苦茶に・・・!」

「黙れ」

私は静かにそう言うとリストバレットを撃ち、ヤツの手足と耳障りな騒音を垂れ流す口をふさぎます。

「むぐぅっ!?」

「私からあの子たちを奪おうとしただけじゃ飽き足らず父さんまで侮辱したその罪、万死に値する・・・っ!否っ!!一万回死んだ程度じゃ到底足りんっ!!!」

足元にベルカ式魔法陣が展開し、膨大な魔力が迸る。

周囲の床が、柱が、天井が、分解され魔力に変換されていく。

なのはみたいな大規模魔力収束が出来ないから無意識のうちにISが発動して漏れ出す魔力を補填する。

集めた魔力をイェーガーの中で力任せに固めて固めて固めまくる。

圧縮され密度が急激に高められ一転に凝縮された結果魔力は超質量物質・・・要するに極小サイズのブラックホールに変質します。

こうして完成したマイクロブラックホールが装填されたイェーガーの銃口をガヤルドに向けて・・・。

「百穣回死んで償えぇぇっっ!!!!グラビトロン・デトネイタァァァァァッッッ!!!」

絶叫と共に引き金を引いた。

投射された超重力の塊は周辺の空間を歪ませながらガヤルドにぶち込まれる。

「ぐぎっ、が、ぁぁあっ!?があぁぁあああぁぁあぁぁぁぁああああぁああああああああっっっ!!!」

全身を押し潰すようにかかる重圧にガヤルドが悲鳴を上げる。

私の耳の超高感度収音マイクからは野郎の骨がミシミシと軋む音が聞こえてきます。

やがて圧縮された超質量は崩壊を始め熱と光を放ちながら縮小、消滅しました。

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ・・・」

肩で息をする私とその視線の先で大の字になって倒れるガヤルド。

え?殺したんじゃないのかって?

非殺傷設定に決まってるじゃありませんか。

いくらプッツンした私だってさすがに殺したりはしませんよ、実際に妹にちょっかい出されたわけじゃありませんし。

何より妹達が人殺しの家族とか周りから言われるのは嫌ですからね。

「ぜぇ、ぜぇ・・・お前なんぞに、妹達はやらんっ!!」

ヤムチャ状態で倒れ伏す馬の骨をバインドで拘束してからそう高らかに宣言した私はクロノを追って玉座の前向かおうとして・・・。

「ま、まて・・・」

背後から聞こえた声に足を止めました。

「・・・まぢかよ」

恐る恐る背後を振り向くと、倒したはずの転生者・・・ガヤルド・チェンテナリオ・オプトーラが立ち上がりこちらを睨んでいました。

必殺のグラビトロン・デトネイターの直撃をくらい、その前にもさんざん滅多打ちにした結果その身は正にボロ雑巾のようです。

蒼いバリアジャケットは完全に砕かれ半裸状態、銀髪も埃や煤に塗れて輝きを失っています。

しかしその憤怒に歪んだ貌、その紅い瞳は相も変わらず憎悪に満ちた眼差しを私に向けてきます。

てかあれくらって立ち上がれるとか頑丈すぎでしょ、転生者特典か何かでしょうか?

「ふざけるな、ふざけるなふざけるなふざけるなっ!!」

直後膨れ上がるガヤルドの魔力。

そういやコイツ、なのは達の倍近い魔力持ってるんだっけ・・・。

そりゃもう某集英社の看板マンガの戦闘民族よろしく轟々と闘気が体中から噴き出しています。

スパウザーとかつけてたら計測不能で壊れるレベルです。

おかげであいつを簀巻きにしていたバインドが魔力で弾けましたよ。

「そこは俺の居場所だ・・・!俺が主役なんだっ!」

そう言って腰のサーベル型デバイスを抜き放つ。

足元に見た事の無い魔法陣が展開され、デバイスの刃に魔力が集まっていきます。

「・・・・・・っ!!」

そのとんでもない威圧感に再び戦闘態勢をとる私。

「お前が・・・お前がっ!お前がぁあっ!!」

聞いただけで呪われそうな怨嗟に満ちた絶叫をあげながらガヤルドはデバイスを振り上げ・・・。

その直後彼の足元から突然生えた光の柱に飲み込まれました。

「っ!・・・え?」

最初はそう言う攻撃なのだと思い一瞬身構えましたがその光が私に注がれることも光の中から彼が飛び出してくることもなく、「桜色と金色の」極光は螺旋を描きながら庭園の壁や天井をぶち抜き、そのまま通り過ぎていきました。

光りが収まった時そこにはガヤルドの姿はなく、あるのは盛大に穿たれた巨大な穴・・・。

「・・・イェーガー、さっきのは何?」

『・・・推論ですが魔力波長からして高町嬢とテスタロッサ嬢の魔法と思われます』

なのはとフェイトの魔法?

そう言われると確かにさっきの光、桜色と金色でしたけれど二人の合体攻撃だったの?

うん、何それ怖い。

ガヤルドとの距離があと数メートル近かったら私も巻き込まれてましたよ。

てかフェイト、自分のお家ぶっ壊しちゃダメでしょうに・・・。

「・・・そうだ、あの自称オリ主はどこ行ったの?」

そこで私は光に飲み込まれたガヤルドの事を思い出します。

『魔力反応なし、先ほどの魔法は秘殺傷設定でしたから死んではいないと思いますが・・・』

と言う事はあのままお外にぶっ飛ばされたってことですか。

「えぇぇ、マヂかよ・・・」

また仕事が増えましたよ、こんな次元振で荒れてる海の中から人一人捜索するなんて・・・!

「はぁぁ・・・とりあえず今はプレシアを止めるのが先決かな?」

とりあえずエイミィに周辺の捜索を頼んだ(押し付けたんじゃありません、ええありませんよ!)私は今度こそ玉座の前向かって駆けだしました。

にしても・・・本当に締まりませんね!

遂に決戦だと思って意気込んできてみれば、私がやったことと言えば一山いくらの傀儡兵薙ぎ払ってから妹達に手を出そうとしていた色ボケ転生者をボコっただけじゃないですか!

もうちょっとこう・・・活躍できると思ったのに!

思い返せば思い返すほど私の胸にはフラストレーションがたまっていきます。

振り上げたこの腕はいったいどこに下ろせばいいんだ!?

そう思っていると実にタイミングよく、私の進路を妨害するように傀儡兵の群れが時代劇の悪者のようにわらわら現れて立ちふさがります。

「・・・ありがとうっ!いっぱい出てきてくれてっ!」

イェーガー曰く、この時私はすっごくイイ笑顔を浮かべていたらしいです。

そんなオリジナル笑顔状態のまま、私は傀儡兵の集団に向かって突撃をかましました。

 

Sideプレシア

先ほど大きな揺れが起った・・・。

侵入した管理局の魔導師が暴れているんでしょう。

私を捕えるために、私からアリシアを取り上げるために。

でももう遅い、もうすぐアルハザードへの道が開かれる・・・。

「もうすぐよ、もうすぐ・・・っ!?」

そこで私は気づいた。

揺れが止まったと・・・。

戦闘の振動は今も断続的に響いている、しかし次元振が起こす継続的な振動が収まっていた。

『そこまでですプレシア・テスタロッサ』

広域回線で念話が届く。

投影モニターが表示されるとそこ映っていたのは管理局部隊の指揮官と思しき緑の髪の女だった。

『次元振は私が抑えています。庭園の動力炉も停止、あなたの元には執務官二名が向かっています」

何処までも私とアリシアの邪魔をしてくれる・・・!

でも今は我慢よ、ジュエルシードは私の手中にある。

これさえあればいくらでも挽回は可能なのだから・・・。

「忘却の都アルハザード・・・そんなものはもう存在しない。かの地に眠るという英知も軌跡も、とうの昔に失われています」

だから今は彼女の話に付き合おう、私に必要なのは再びジュエルシードを起動させるための時間なのだから。

「いいえ、アルハザードはあるわ。失われた奇跡も時間と空間の狭間に確かに存在しているのよ」

だというのに、私の言葉は次第に熱がこもっていった。

「仮にアルハザードが存在したとして、そこに至ったあなたは一体何を成そうというの?」

知れたこと、たどり着いたならすることなど一つしかない・・・っ!

「取り返すのよ、アリシアとの失われた時間を。こんなはずじゃなかった世界の全てをっ!」

そう叫んだ直後だった、背後で大きな爆発音とともに壁が崩れ大穴が穿たれる。

「はぁ、はぁ・・・ふざけるなよコンチクショウ・・・!」

粉塵の中から現れたのは黒い髪の男の子と例の小娘・・・。

ジェイル・スカリエッティが制作した戦闘機人の試作機・・・声を大にして私の計画を、アリシアの復活を邪魔すると豪語した銀髪の小娘。

「ハルナ・スカリエッティ・・・!」

忌々し気に私がその名を口にする中、二人の執務官はズカズカと玉座の間に入ってくる。

バリアジャケットはボロボロ、額や頬に切り傷を負い血が流れているが、その眼に宿る戦意は通信で話した時と変わらず彼女達の心が折れていないことを如実に表していた。

「あんたほどの天才が分からないわけ無いだろう?どれだけ技術が進歩しても、どれだけスゴイ魔法が生まれても、死んだ奴はなぁ!絶対に生き返らないんだよっ!」

「世界はいつだって、こんなはずじゃないことばっかりだ・・・それに立ち向かうのか、それとも現実から逃げるかは個人の自由だ。だけど・・・自分の勝手な悲しみに無関係な人間を巻き込んでいい権利は誰にもありはしない!」

彼らの言葉が私をいらだたせる。

知ったようなことを言う小僧と、相も変わらずアリシアの復活を否定する小娘。

だが同時に私は焦りも覚えていた。

本局の執務官が二人・・・仮に魔力が上で相手が消耗していたとしても油断していい相手じゃない。

さっき一方的に攻撃できたのは瀕死の取り巻きを守っていたから、それがいない今なら心置きなく私を攻撃してくる。

あの小娘の悪辣さはアリシアを狙ってきたことからよく分かる、今同じことをされれば間違いなくもう一人の執務官に対応できない。

庭園の残った魔力をかき集めながら私が打開策を思案していると・・・。

「母さん・・・」

二度と聞きたくなかった声が聞こえてきた。

Side Out

 

「母さん・・・」

私とクロノがプレシア・テスタロッサと対峙していると、彼女を挟んで反対側の通路からフェイトとアルフがやってきました。

どうやらなのはとは別行動をとり、プレシアの所に駆け付けたようです。

「・・・」

「・・・・・・」

何を言えばいいのか分からず言葉に詰まるフェイトとただ無言でフェイトを睨むプレシア。

どこかでなのはが戦っているのか、時折庭園が揺れる以外はこれまでと打って変わって静まり返る玉座の間。

「・・・ごふっ!?」

その沈黙はプレシアの吐血によって破られた。

「なっ!?」

突然の喀血に私とクロノは驚愕する。

思えばミッドを追放されてから、プレシアの記録は一切途絶えています。

もちろん病院などへの通院や診察の記録もありません。

恐らくずっとアリシアを蘇らせるために生命創造の研究を続けてきたのでしょう。

病気になってもろくに治療もせず、ボロボロの身体に鞭打って何年も何十年も・・・。

「母さんっ!」

崩れ落ちるプレシアにフェイトは駆け寄ろうとする。

「・・・何をしに来たの」

しかしプレシアの嫌悪に満ちた眼差しと言葉に足を止めてしまう。

「消えなさい・・・あなたにもう用はないわ」

明確な拒絶の言葉にフェイトは一度俯くも、顔を上げると決意に満ちた表情で口を開きます。

「・・・あなたに、伝えたいことがあって来ました」

再び静まり返る玉座の間。

「私は、アリシア・テスタロッサじゃありません」

「・・・」

フェイトの言葉をプレシアは黙って聞く。

「あなたが造った人形なのかもしれません。ただの失敗作で、出来損ないなのかもしれません。アリシアになれなくて、期待に応えられなくて・・・」

フェイトの表情が一瞬陰る。

一度俯き口を閉ざすも、フェイトは顔を上げプレシアに続ける。

「だけど私は、フェイト・テスタロッサは・・・あなたに生み出してもらって、育ててもらったあなたの娘です!」

フェイトがぶつけた思いの丈に対し、プレシアは・・・。

「・・・フフフッ、あっはっはっはっはっ・・・!」

嘲笑で返した。

「だから何だというの?今更あなたを娘扱いしろと!?」

それはアリシアになれなかったフェイトに向けた物か、それともフェイトを愛せなかった自分に向けた物か・・・。

プレシアの叫びは、どこか怒りと悲しみを孕んだものだった。

「・・・あなたが、それを望むなら」

彼女の慟哭に、フェイトはまっすぐに返す。

「あなたがそれを望むなら私は、あなたを誰からも、どんなことからも守る・・・」

そう言って手を差し出すフェイト・・・。

「私が、あなたの娘だからじゃない。あなたが、私の母さんだから。生み出してもらってからずっと・・・今もきっと、母さんに笑って欲しい、幸せになって欲しいって言う思いだけは本物です。私の、フェイト・テスタロッサの・・・本当の気持ちです」

今度こそ本当に全部、プレシアに対するありったけの想いと共に差し出されたその手を・・・。

「・・・くだらないわ」

プレシアがとることは無かった。

「っ・・・!」

フェイトの顔が悲しみに染まる。

話は終わりだとばかりにプレシアはデバイスで地面を突く。

彼女の足元に魔法陣が展開され、ジュエルシードが一層まばゆい輝きを放ち始める。

「くっ・・・!」

同時に庭園が一層激しく揺れ、庭園の内外問わずそこかしこで紫電が迸る。おそらくリンディさんが次元振を抑えきれなくたってきたんだ。

『艦長!ダメです、庭園が崩壊します!』

それを裏付けるかのようにエイミィから連絡が入る。

『クロノ君たちも脱出して、崩壊まで時間が無いよ!』

「そうは言うけどジュエルシードはどうすんの!?このままじゃ次元断層が・・・!」

そう、ここから脱出できたとしても次元断層が発生したら変わりません、アースラどころか地球を始め周囲の世界も巻き込まれてしまいます。

『大丈夫!規模なら次元断層は発生しないから!』

・・・うん、なら心置きなく逃げましょう!

「てなわけでクロノは出口の確保お願い!私はフェイトとアルフを連れてくる!」

「今回ばかりは君に同感だ。そっちは任せた!」

「まかされたーっ!」

落下してくる瓦礫を直射魔法で撃ち落として転送ポイントを確保するクロノに背を向けて私はフェイトに走る。

「フェイトーっ!」

私の声が届いていないのか、フェイトは今にも泣きそうな顔でプレシアを見つめている。

「母さん・・・」

「私はアリシアと行くわ。いったでしょう、私はあなたが大嫌いなの・・・」

アリシアの入ったポッドに寄り添いながらプレシアはフェイトに拒絶の言葉を投げかける。

そしてまるでそれが合図だったかのように彼女のいた足場が崩落した。

「っ!アリシアっ!母さんっ!!」

慌てて駆け寄るフェイトだがすでに遅く、プレシアとアリシアは虚数空間に堕ちていく。

しかし崩落はなおも止まらず、今度はフェイトの足元も崩れ、彼女の身体が投げ出された。

 

Side フェイト

「あっ・・・」

ガクンと一瞬揺れたと思った瞬間、私の身体が浮遊感に包まれる。

「フェイトっ!」

背後からアルフの叫び声が聞こえる。

何とか身体を捻って振り向くとこちらに走ってくるアルフの姿が見えた。

そしてその姿が地面に沈んでいく。

(ちがう、アルフが沈んでいるんじゃない、私が落ちてるんだ・・・!)

恐らく崩落に巻き込まれたのだろう、私はの体が重力に従い落下していく。

慌てて飛行魔法を展開して上に上がろうとする。

「あがらないっ!?」

でも魔法は発動せず、私の身体は重力に従って落ちていく。

そこで私は自分が時空の裂け目にいるのだと気付いた。

(そうか、虚数空間・・・!)

魔法が使えない原因に気づいた私は、どこか達観・・・いや、諦めの様な感情に包まれていた。

もう脱出はできない。

でも、いいかな・・・このまま、母さんやアリシアと一緒に行くのも・・・。

(フェイトちゃんっ!)

そこで頭をよぎるのはあの子の顔。

(お願い!話を聞いて!)

何度も、何度も私にぶつかって語り掛けてきたあの白い魔導師。

(友達に、なりたいんだ・・・)

「っっ・・・!!」

そうだ、このままあの子に会えなくなるのは嫌だ。

まだ何も話せていない、何も伝えていない!

それなのに、このままあえなくなるなんて、嫌だっ!

思わず伸ばした右手・・・。

取る者のいるはずの無いその手に、私は確かに感じた。

強く、強く私の手を握る手の感触を。

「えっ・・・?」

恐怖に瞑っていた瞼を開けると。

「フェイトぉっっ!!」

銀髪の執務官がそこに居た。

「な、なんで・・・!?」

「助けに来たっ!」

私が困惑していると彼女はただ簡潔にそう言った。

「で、でもここでは魔法が・・・」

「なら、魔法以外を使えばいいっ!」

そう言って右腕で私を抱えた執務官は左腕を上に向け。

「カッとべ鉄拳!フリーガーシュレークっ!!」

発射した・・・。

「えぇっ!?」

うん、思わず声を上げた私は悪くないと思う。

Side Out

 

ロケットモーターの閃光と共にワイヤーという尾を引きながら天に向かって飛んでいく私の左腕・・・。

今回装備した義手は二種類。

右腕にあのガヤルドとかいうハーレム願望野郎をぶっ飛ばした格闘戦専用義手の「超むせるアームパンチver1.55」、そして左腕がこの「飛ばせ鉄拳フリーガーシュレークver2.45」です。

度重なる改修とバージョンアップを経て、かつての無誘導ロケットパンチは光ファイバーを用いた有線誘導ミサイルパンチへと進化を果たしました。

ちなみにこの誘導用ワイヤー、パンチの回収機能も兼ねる優れもの。

ワイヤーの強度も強く、かなりの重量を保持することが可能。

(だから、こういう無理な使い方もできる!)

飛んでいったゲンコツは玉座の間の天井に突き刺さり、落下していくはずだった私とフェイトをつなぎ留めます。

「んぎっ!?」

あ・・・やばいです、何か今左肩から「ゴキッ」っていう聞こえちゃいけない系の音が聞こえてきました。

案の定左腕に力が入らないばかりか激痛まで走りだしました、これは間違いなく脱臼しちゃってます。

軽い女の子とは言え、人二人分の重量+落下による運動エネルギーにワイヤーは耐えられても私の肩関節は耐えられなかったみたいです。

てか痛い!超痛い!

(でも泣かない・・・だってお姉ちゃんだもんっ!)

いつも通り脳内麻薬を大量分泌して痛覚をマヒさせてからワイヤを巻き取り始めます。

キュルキュルとリールがワイヤーを巻き取り、徐々に私とフェイトの身体は上に登り始めます。

「・・・って遅っ!」

こんな使い方想定していなかったせいか、私とフェイトの上昇速度は非常にゆっくりしたものでした。

しかし私達が上にたどり着くのを待ってはくれず、庭園は徐々に崩壊の速度を速めていきます。

「・・・・・・」

上昇を始めてからフェイトは一言も話しません。

ただ黙って眼下に、プレシア・テスタロッサとアリシア・テスタロッサが落ちていった方向を見つめています。

「フェイト、お母さんの事は残念だった。でも今は顔を上げて!」

「・・・えっ?」

私の言葉にフェイトが私を見る。

「虚数空間の影響圏から脱したらすぐ魔法であそこまで飛んでいくんだ。崩壊まで時間が無い、一秒だって惜しい。だから今は下を向いちゃダメだ。顔を上げるんだ、生きて・・・帰るために!」

「帰る、ため・・・?わたしの、帰る場所は・・・」

フェイトにとって帰る場所とはこの時の庭園、それが崩壊を始めたということは彼女の帰る場所は無くなったと言う事。

でも・・・。

「帰る場所が一つだなんて誰が決めたんだ!?フェイトがいなくなったらアルフはどうなる!?」

私の言葉にフェイトは「ハッ」となる。

「フェイト―っ!」

見れば未だ退避せず、崩れかけた足場から顔をのぞかせ私達を見ているアルフがいた。

「頑張って!フェイトちゃん、ハルナちゃんっ!」

その隣には、やはり避難せずにこちらに手を伸ばすなのはの姿もある。

「皆帰りを待っているんだ。本当の自分を始められるんだ、新しい帰る場所だってきっと作れる。だから、生きるのを諦めるなっ!!」

最後にとある歌って戦うアニメの名言を拝借してそう叫ぶと、フェイトは顔を上げて上に、なのはとアルフに向かって手を伸ばす。

未だに互いの手が届く距離ではない、でもそこには彼女の生きたいという思いが感じられた。

『急いでハルナちゃん!崩壊が加速してる!そこももう持たないよ!』

だというのにエイミィから告げられた現実はとても無粋だった、もうちょっと空気読んで待っててくれてもいいじゃない!

実際フリーガーシュレークを打ち込んだ天井もひび割れはじめ、いつ突き立てられた拳が抜け落ちてもおかしくありません。

「ちっくしょう!まにあえぇぇぇぇぇっっっっ!!!」

毒づきながら私は脚のスラスターを全て展開、全力でブースターをふかします。

さっきのガヤルドとの戦闘で攻撃を躱すのに結構使ったので燃料が持つか不安ですがもう悠長なこと言っていられません。

上昇速度が速くなり、落ちてきた足場が近づいてきます。

あと20メートル、15メートル、10メートル・・・。

あと5メートルで虚数空間の効果範囲から出られる、そう思ったところで天井が崩落を開始、突き刺さっていた私の左腕が抜け落ちました。

「げっ!」

「あっ!」

さすがに足のブースターだけでは推力が足らず、私達の体は再び落下を始める。

なら、せめて・・・!

「なのはぁっ!受け取ってっ!!」

せめてフェイトだけでも、そう思い私は渾身の想いを込めてフェイトの身体を上へ投げます。

「っ!ダメッ!!」

だというのにフェイトは効果範囲外に届いたと思った瞬間魔法で加速して私の所に戻って来るじゃありませんか!

「なっ!?バカーっ!何で戻ってきたの!?」

そう怒鳴りつけてしまいましたがフェイトは委縮する様子もなく毅然とした様子で返してくる。

「私の帰る場所にあなたもいて欲しいからっ、こんな形でお別れ何て・・・嫌だっ!」

「っ・・・!」

何ともまあ嬉しいことを言ってくれます。

非常時だというのに目がウルっとしてしまいましたよ。

全く、そんなこと言われたら諦めかけていた私だって・・・もっと生きたいと思ってしまうじゃありませんか!

「うぉりゃぁぁぁぁぁぁああああああああっっ!!」

気合を入れなおして脚のスラスターを全力噴射。

ついでに天井が崩れ、使い道の無くなった左腕をパージして身を軽くします。

強度重視で造られたえらく重たいロケットパンチを切り離したことでかなり重量を削減出来たのか、私達の身体は再び浮かび始めます。

無理なブーストでスラスターが異常過熱を起こしているのをフラスコ・オブ・アルケミストで強化、ついでに足りない燃料も魔力からFOAで作り出します。

そんなことできるのかって?

魔力を炎に変換できるんです、なら炎を燃焼させる酸素や可燃性ガスに変換するのだって不可能じゃありません。

「二人ともっ!頑張って!」

「もう少しだっ!諦めるな!」

いつの間にか魔法で飛翔し、安全圏ギリギリまで接近していたなのはとクロノが私達に手を伸ばす。

「・・・・・・っ!」

片腕の私に代わり、抱きかかえられたフェイトがなのは達に手を伸ばす。

もう少し、あと3メートル・・・!

それなのに、あと少しなのに・・・届かないっ!

燃料はおろか魔力も枯渇し、FOAで無理くり持たせていたスラスターももはや限界に達していました。

私自身もFOAの連続使用が祟り、もう意識を保っているのがやっとの状態です。

「ちっくしょう・・・!」

こんな事なら左腕を切り離さなければ・・・いや、そうしたらここまで上がって来ることすら出来なかったです。

万事休す・・・いや、まだ諦めんな、何か手はあるはず・・・!

どうする?考えろ?何か、何か無いのか?

混濁する意識の中で必死に脱出の糸口を探していると。

『マスターっ!膨大な魔力が接近、下方です!』

「何ッ!?」

イェーガーの報告に下を向くと、眼下の虚数空間の中から膨大な魔力がこっちに向かって吹きあがってきます。

魔力と言うファンタジーな名称ですがれっきとしたエネルギーです。

水や炎に変換していない素の状態でもそこにはしっかりと質量が存在します。

しかし物理法則に干渉、しかも人二人を浮かせるだけの魔力量なんて人の限界を超えています。

そんなことが出来るものと言えば・・・。

「まさか、ジュエルシード?」

そして今この場でジュエルシードを操れるのは・・・。

「っ・・・FOA、フルドライブ!」

いや、今は脱出が最優先です。

手放しかけていた意識をなんとが手繰り寄せ、最後の力を振り絞る。

とは言えFOAで魔力を燃料に変換して脚のスラスターに充填している暇はありません。

スラスターもまた補強しなきゃいけませんし、そんな時間はもう残っていない。

なので背中を押すこの魔力を水素ガスに変換、点火して爆風で一気に上まで上がります。

危険ですがこれだけの爆発力なら・・・!

「フェイト!シールド張って!」

私が何かをしようとしているのを察したのか、フェイトは指示通りにシールドを展開します。

クロノも私の行動を予感したのか、青ざめた顔でなのはを引っ張って退避します。

「ぐぅ・・・!」

FOAの負荷で神経が焼けるように痛い。

血流も加速しているのか、鼻血がツーっと滴り落ちる。

でも拭いている暇なんて無い、一心不乱に周りの魔力を手当たり次第に変換していく。

そして十分な量の水素が集まったのを確認した私はフェイトにしっかりつかまる様に言ってからイェーガーを下方に向けた。

「届えぇぇぇぇっっ!!」

引き金が引かれ、撃針がカートリッジを叩く。

銃口から吹きあがった発砲炎が水素に飛び火し、一気に燃焼を開始する。

膨れ上がった炎は私の背中を思いっきり叩き、私達の身体は上に向かって一気に加速する。

「ぐうぅぅぅぅ・・・!!」

まるで背中を熱した金属バッドでぶん殴られた様な衝撃と熱に耐えながら私はスゴイ速度でなのは達に向かって飛んでいく。

伸ばされる二人の手、それに対し私とフェイトも手を伸ばし・・・ようやく取ることが出来た。

「脱出するぞ!エイミィ、転送をっ!」

『了解っ!!』

既にいつでも回収できるよう待機していたのであろう、クロノが連絡を入れると私達の周りに転送用の魔法陣が展開され周囲は光に包まれた。

 

Side プレシア

「行ったようね」

遥か上で小さな光が瞬くのを確認した私はそう独り言ちた。

恐らく転送魔法の輝きだ。

ならば彼女たちは無事脱出できたのだろう。

「全く、世話を焼かせてくれるわ・・・」

脳裏に浮かぶのはさんざんケンカを売って来たあの憎たらしい銀髪の小娘、そして・・・。

「・・・フェイト」

アリシアの出来損ない、どうしようもないお人形、私の・・・。

「・・・・・・」

そこまで考えた所で私はかぶりを振った。

そうよ、あの子は私の娘なんかじゃない。

娘じゃない筈だ、なのに、なのに何で・・・。

何で私はあの子を助けたんだろう?

「いいえ、理由は分かっている・・・」

私は寄り添っていた生体ポッドに目を向ける。

「アリシア・・・」

虚数空間に落ちてすぐの事だった。

ポッドの中で眠っていたアリシアがわずかに動いたのだ。

驚き目を見開いていると微かに、本当に微かに彼女の口が動いた。

(フェイトを、たすけて・・・)

声を聴いたわけではない、でも確かにアリシアは私にそう言っているように感じた。

気付けば私は共に落ちてきたジュエルシードから魔力を抽出して落ちてくる二人に向かって放射した。

虚数空間では魔法が使えない、しかし魔力が消滅するわけでは無い。

あれだけの魔力があればあの忌々しいスカリエッティの娘が何とかするでしょう。

「・・・・・・」

思い起こすのは失われたあの日々、事故が起こる前の最後の誕生日に何が欲しいか聞いた時アリシアは言った。

「妹が欲しい」と・・・。

・・・本当はどこかで気づいていた。

フェイトはアリシアにはなれなかった。

しかし決して人形ではなかった。

紛れもない私が生み出した命、アリシアの妹で、私の娘なんだと・・・。

でもアリシアを蘇らせることに必死だった私はどうしてもそれを認められなかった。

認めてしまえば、アリシアに向けていた愛情をフェイトに注いでしまうから。

アリシアを蘇らせるのを諦めてフェイトと生きる道を選んでしまいそうだから・・・。

「本当に私は、気づくのが遅い・・・」

今更あの子に何かしてあげる何でできない。

ならばせめて、あの子の未来が明るくありますように・・・。

そう祈りながら私は目を瞑ると、アリシアを抱きしめながら重力の底に落ちていった。

 




次回、無印編完結です。(多分)

告知
私がお世話になっているTRPGサークル「からあげ会」さんが出しているマブラヴオルタTRPGの上級ルールブックとシナリオ本が夏コミで出ます。
本家マブラヴのシナリオを手掛けたタシロハヤト先生も制作に携わっています。
日時は一日目、8月9日の金曜日、場所は南棟ハ―21bになります。
マブラヴ好きな方もTRPG好きな方も、コミケに参加されるならぜひ立ち寄ってください。
また私がセッションに参加した同TRPGのリプレイ本が三日目、8月11日の日曜日に出ます。
場所は南棟ソ―38b「夕霧じゅぴたー」です。
あ、でも私は売り子とかやっていませんので行っても会えません、あしからず。
でも本は買って欲しいです(圧力)
そんな訳でこれまでと勝手が違うしガッデムホット(めっさ暑いわ)な上に台風も近づいて波乱万丈なコミケですが皆さん身体に注意して楽しいコミケをどうぞ。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第22話「2期までちょっとのお別れなの」

お久しぶりです、今回も遅くなってすみません。
で、でも今回は前よりは早かったからいいよNE!
嘘ですごめんなさい、ちゃんと更新していきます。
と言う訳で機人長女リリカルハルナ最終話、始まります。


Side なのは

ようやく戻って来たアースラ、その医務室・・・。

時の庭園にいたのは2~3時間くらいの筈なのに数日ぶりに戻ったような安心感を感じる。

最後の最後で悲しいお別れを迎えることになったけれど、私達は大きな怪我もなく無事戻って来ることが出来ました。

「はーい、関節くっつけるぞハルナー、とりゃ」

「ぎゃぴぃぃ~~っっ!!」

ハルナちゃんを除いて・・・。

Side Out

 

機人長女リリカルハルナ

第22話「2期までちょっとのお別れなの」

痛い痛いっ!

超痛い、マジ痛い、ぼっけえ(岡山弁)痛いっ!

体中傷だらけだし内臓もISの酷使でボドボドダ!

両脚はスラスターを限界以上に吹かしたからミディアムレアだし何より今一番痛いのが左肩!

「あー、だめか・・・も一回行こうか。君、ハルナを抑えといてくれ」

「分かりました。失礼しますよ、執務官・・・!」

父さんの指示で艦の医務官が私をガッチリ押さえます。

「それじゃあ行こうか・・・1、2、さーんっ!」

直後爆発する私の左肩(比喩)。

「ぎょへぇぇぇぇぇぇええええっっ!!!」

痛みに暴れますが医務官がバインドまで使って抑えているから殆ど動けません。

そのまま5分くらい押し込んだり諦めたりを繰り返してようやく「ゴキンッ!」という大丈夫じゃない音と共に痛みが治まりました。

「ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ・・・」

「ふぅ、ようやくはまったか・・・じゃあ今度は脚の治療に移ろうか」

そう言って父さんがパチンと指を鳴らすと補佐していた医務官が私の足元にバケツを・・・膝から下がすっぽり入りそうな底の深~いバケツを置きます。

「・・・ね、ねぇ父さん?それって、それってまさか・・・」

私が尋ねても父さんは答えてくれません。

代わりに医務官さんがこれが答えだとばかりに消毒用アルコールをバケツになみなみと注いでいきます。

「ねぇ、待って・・・それおかしくない?もっとこう穏当な治療の方法があるんじゃないかな?ねぇ聞いて。お願いだから、ちょっ、まって!それ絶対痛いからっ!!」

泣いて命乞いする私の懇願は非常にも無視され、簀巻きにされた私の両脚は盛大にバケツの中に突っ込まれた。

「ぎぃゃあああああああああああああああっっっ!!!」

 

Side リンディ

医務室に盛大に響くハルナさんの悲鳴・・・。

さすがにやり過ぎではと思うけれどそれを止めることは私には出来なかった。

あの普段は剽軽なドクターがうっすらと笑みを浮かべながらも淡々と、しかも怒りのオーラ全開で行われる拷問染みた治療を誰が止められるだろうか?

いや、誰も居ない。

「あ、あの・・・フェイトちゃんは・・・?」

ハルナさんが気になるのか時たまチラチラと視線を向けながらなのはさんが私とクロノに聞いてくる。

「彼女は今回の事件の重要参考人だ、悪いが拘束させてもらった」

クロノが言う通り、フェイトさんはアースラに転送後検査を行い、怪我が無いことを確認後デバイスを没収の上で独房に入って貰っている。

「・・・これから、どうなっちゃうんですか?」

不安そうに尋ねるなのはさん。

他でもない、フェイトさんの事だろう。

「管理外世界での魔法行使に無許可での危険なロストロギアの収集活動、一部には公務執行妨害も適用される。本来なら厳罰に処されるんだが・・・」

「そ、そんな・・・!」

クロノの説明に蒼白になるなのはさん。

もぅ、クロノも言葉が足りないんだから。

「な・ん・だ・がっ!」

まだ説明の途中だと言いたいのか、その部分を強調しながらクロノは続ける。

「彼女が未成年である事、親から虐待を交えた強要があった事などから情状酌量の余地がある。おそらく数年間の社会奉仕処分が妥当な所だろう。何も知らされず母親の為に必死になっている子を不当に罰するほど管理局は落ちぶれてはいないさ」

そう言ってのけるクロノの声には誇らしさに隠れ、小さな悔しさが感じられた。

無理も無いわね、近年の管理局の組織的腐敗は目に余るものがあるから・・・。

高ランク魔導師を優遇する身内人事などは可愛いもの・・・中には現地での局員の犯罪を隠ぺいしたという事例すらある。

最高評議会のお三方や三提督が辣腕を振るっていた頃は浄化作用もあったが、彼らも人間だ。

老齢の域に入り刃の切れ味が鈍り始めると今まで大人しくしていた連中が脈動を開始したのだ。

(でも、まだ間に合う・・・。)

腐敗した局員は上層部とは言えまだ一部の人間だ。

大多数は清廉で実直、彼らと共に一丸となれば管理局の立て直しも不可能ではない。

「大丈夫!いざとなれば私がコネと権力で押し通すから!」

とりあえずまずは目の前の不正から正すことにしましょう。

お説教は長くなりそうだし、エイミィにお茶を用意するよう言っておかないと・・・。

そう心に決めた私は痛みから復活して公文書に残せなさそうな発言をするハルナさんを連れて艦長室に向かった。

Side Out

 

どうも皆さん、ハルナ・スカリエッティです。

あれから数日経つのに、まだお腹がもたれてます、ウプッ・・・さすが「リンディ茶濃い味」、すさまじい破壊力です。

次元震も順調に鎮静化し、もう数日したらアースラも本局に向けて出発です。

だからお別れ前になのはと少し話すことにしました。

「うぷ・・・そう言えばユーノは一緒に帰らないの?」

胃薬を処方しながら私はユーノに尋ねます。

「うん、なのはにもっとレイジングハートを使いこなせるようになって欲しいから」

ミッドチルダに帰るにあたりユーノとしてはなのはに助けてもらったお礼をちゃんとしたいとの事。

しかし着の身着のままで地球にやって来たユーノに渡せるものと言えばレイジングハートのみ・・・。

その為なのはを正式にレイジングハートのマスターとして登録するためにちゃんと魔法の基礎を勉強してもらうべく彼は地球への残留を希望した。

確かに、ジュエルシードやらフェイトやらガヤルドやらとのドンパチばっかりでなのはの魔法はよく言って戦闘特化、悪く言えば脳筋仕様です。

その為きちんとした基礎を教えるためにユーノは先生としてしばらく地球に残ることを決めたそうです。

「それに、高町家やお世話になった人たちにお礼と謝罪もちゃんとしたいし。主にお風呂とか温泉とか・・・」

「「「あぁ・・・」」」

ユーノの言葉に私達は一様に顔を引きつらせます。

件の一見は許してもらえたらしいですがあれ以来別の部屋を宛がわれ、なのはの部屋で寝泊まりすることを禁じられたそうです。

そりゃまあ健全な青少年を年頃の女の子と同衾させるわけにはいきませんわな。

もし私の妹が男連れてきたら速攻で撃ち殺す自信あるよ。

どこの馬の骨とも知れん輩に妹をやるもんか!

ん?馬の骨と言えば・・・。

「そう言えばガヤルド某はまだ見つからないの?」

「残念ながらな・・・」

そう、あれからガヤルド・チェンテナリオ・オプトーラの消息はつかめていません。

アースラも必死に探しましたが痕跡すら見つからず、ついに昨日で捜索は打ち切られました。

考えたくありませんが次元震に巻き込まれて・・・。

「・・・あ、そう言えばプレシアさんが探していたアルハザードって何なんですか?」

暗い雰囲気になりかけていた空気を払拭すべくなのはが話題を変えます。

「え?ああ、そうね・・・遥か昔に栄えたと言われている伝説の世界よ。高度な科学技術と魔法が発達してそこに行けば叶わない願いはないといわれているわ」

「しかし旧暦の昔に次元断層に飲み込まれ滅んだと言われている。今では名前しか残っていないおとぎの国さ」

何でも叶うおとぎの国か~、私だったら何を願うかなぁ・・・。

まず妹達が健やかに育つようお願いするでしょ?あとついでの父さんの変態が治りますように。それからあのマンガとあのゲームをアニメ化して欲しいし、あとそう!5000兆円ほしい!

私がそんなことを考えている間もクロノは続けます。

「プレシアはアリシア・テスタロッサの復活の為にあらゆる手を尽くした末に万策尽きた。だから彼女はそんなおとぎの国の奇跡に縋るしかなかったんだ・・・」

「・・・本当にそうなのかしら?」

クロノの意見にリンディさんが待ったをかけます。

「ふぇ?」

「どういうことですか艦長?」

「事件の時の彼女の言葉が真実なら、もしかしたらプレシアはアルハザードの存在を確信していたのかもしれないわ」

リンディさんの仮説に私を含めた一同は困惑を隠せません。

「そんな・・・」

馬鹿な、そう言おうとしたところで新たな闖入者の声が聞こえます。

「アルハザードは実在するよ」

「えっ?」

振り向けば父さんがコーヒー片手にこちらにやってきます。

白衣はヨレヨレ、目の下に隈が浮かんでいることから今までずっと重傷者の経過観察をしていたのでしょう。

「まぁもっとも、今どうなっているのかは分からんがね。あ、ハルナ。隣失礼するよ」

そう言って私の隣に座る父さん。

「ドクター、何故アルハザードが実在するって断言できるんですか?」

みんなが抱いていた疑問をエイミィが代表して質問する。

「そうだな、理由は二つあってね・・・ひとつはハルナを傷ものにしたあの間男の魔法陣さ」

「間男・・・ガヤルドなんとかの?」

確かに庭園で戦った時に見た彼の魔法陣は見たことが無い物でしたが・・・。

「あれはアルハザード式と言ってね、ミッド式やベルカ式に比べて汎用性や瞬間火力こそないが、順序だてて詠唱や術式を行使すれば圧倒的な射程と破壊力を有する魔法さ。旧暦よりはるか昔、アルハザードはその魔法で他の世界と核戦争染みた魔法の撃ち合いをしていたらしい」

つまり、ミッド式を銃、ベルカ式を剣に例えるならアルハザード式は大陸間弾道弾でしょうか?

何かすんげー使い勝手悪そうです。

射程と火力は凄いけど小規模戦闘ではオーバーキルだし何より接近されたら対処できないじゃないですか。

私がそう言うと父さんは当然だとばかりに頷きます。

「その通りだよ、実際常勝無敗だったアルハザード魔導師たちだが、対立していたベルカ騎士団の少数部隊に接近を許したとたんあっけなく壊滅したことも少なくなかったらしいし・・・」

ベルカとも戦争してたんですか?敵作り過ぎでしょう・・・。

そんなことを考えていた私ですが次の父さんの言葉に何もかも吹っ飛ばされました。

「そしてもう一つの理由だが・・・私自身がアルハザード人だからさ」

「「「「「「「・・・えぇぇ~~っっ!!?」」」」」

父さんの爆弾発言に驚きの声を上げる一同。

ちょ!?父さんがアルハザード人って・・・どういう事!?

あ・・・いや、待てよ。

確か父さんもおじいちゃんズがアルハザードの技術で生み出した人造生命の筈。

と言う事は・・・。

「ハルナは気づいたみたいだね。私はアルハザードの技術で造られた人造生命、そして・・・私の素体となった遺伝子こそ、アルハザード最高の頭脳と呼ばれた天才科学者、ジェイル・スカリエッティその人なんだよ」

そう言って胸に手を当てる父さん。

しかしその表情は悲しそうです。

やはり自分を生み出し、自身が再び実用化した技術がプレシアを凶行に走らせたことに負い目を感じているのでしょう。

全く、悪の科学者気取ってるくせに変なところでお人よしなんだから・・・。

「・・・父さん」

「ん?なんだ・・・」

「うりゃっ!」

私の声に父さんが振り向いた瞬間を見計らい、口の中になのはにあげようと用意していたロシアンルーレットガム(当たりの超酸っぱいヤツ)を放り込みます。

「むぐっ!?うげぇっ・・・!おげぇ・・・」

どうやらそのまま気管支に飛び込んだのか激しくむせてます。

「げほっ・・・ハルナぁっ!てめぇ何してけつかるぅ!?」

完全にキャラ崩壊を起こしながら掴みかかってくる父さん。

でも・・・。

「そう、父さんはそれでいいの!」

「・・・何だって?」

私の言葉に父さんが唖然とし、他の皆がキレた父さんにたじろぐ中私は続けます。

「父さんが悩むことなんてない、父さんはいつも通り馬鹿でいいの!だって父さんは何も悪くないんだから!」

技術は技術、力は力にすぎません、それで悲劇が起ったとしてもそれは使った人間にこそ罪と責任があるんです。

ノーベルもライト兄弟もフォン・ブラウンもアインシュタインも、彼らの生み出した技術はたくさんの命を奪う兵器になりましたがそれだって生み出した彼らに罪はありません。

何時だって誰かを傷つけるのは道具を使う人間なんですから。

「だから父さんがプレシアの事で気に病む事なんてないの。それにプレジェクトFは確かに彼女を狂わせたかもしれない、でもあれが無ければフェイトだって生まれなかった・・・父さんの技術は誰かを不幸にするものじゃないんだよ!」

「ハルナ・・・やれやれ、娘に諭されるとはね。私も年を取ったのかな?」

私が励まそうとしているのに気づいたのか苦笑する父さん。

「そうだね、それじゃあお言葉に甘えてそうさせてもらうよ。プっ!」

そう言うや否や、先ほど私が口に放り込んだロシアンルーレットガム(当たりの超酸っぱいヤツ)を口から発射します。

狙いは開いていた私の口・・・。

「んぐっ?おえぇぇっ!!?」

吐き出されたガムは案の定先ほどの父さんの焼き直しのように気管支に飛び込み、私は激しくむせかえります。

「クックックッ・・・あーっはっはっはっはっは・・・www!!!」

そんな私を見て大爆笑する父さん、ご丁寧に私を指さして完全に「m9(^Д^)プギャー!!」状態です。

この後何が起こったのかは説明するまでも無いでしょう。

そう、NA☆GU☆RI☆A☆I・・・DATH!飛び交う拳とお皿、吹っ飛ぶ椅子とテーブル、しれっと避難するリンディさんとクロノとエイミィ、そしてディバインバスターに吹き飛ばされる私達親子・・・。

乱闘開始からわずか20秒で私達は魔王モードのナノハサンに鎮圧されました。

「納得いかない!私は父さんの被害者だよ!」

「はぁ?何言ってるんだいハルナ?それを言ったら最初にガムを飛ばしてきたのは君だろう?」

「父さんの唾液交じりだった分私の方が被害でかいんですっ!」

「二人とももうちょっと頭冷やそうか?」

「「ハイッ!ゴメンナサイ!」」

こうして今日もアースラではチャメシ・インシデントな光景が繰り広げられるのでした。

(ハルナ、ありがとう・・・)

(はて?何のことやら?)

叱られながら念話でやり取りする私と父さん。

まぁ、たまにはこういういい話も必要だよね。

「二人とも、お説教されてるのに念話なんてずいぶん余裕だね・・・?」

アー、イイハナシダッタノニナー・・・。

結局頭冷やされるところまでがチャメシ・インシデントでした。

 

Side なのは

ハルナちゃんたちにお仕置きしてた翌日、私とユーノ君は海鳴のお家に帰ってきました。

アースラでの生活も快適でしたがやっぱり家のベッドに横になると落ち着きます。

ホッと一息ついてからカレンダーに目を向ける。

「5月30日・・・まだあれから一か月ちょっとしかたってないんだ・・・」

私とユーノ君が出会ったのが4月の半ば、そして明日が5月の終わり。

それだけしか経っていないのに私にはもう一年くらい経ったように感じます。

「それだけ、色々あったってことかな・・・」

怪我をしていたユーノ君を助けて、託されたレイジングハートで暴走したジュエルシードと戦って、ジュエルシード集めをするって決意してしばらく経ったらフェイトちゃんと出会った。

それから何度もぶつかり合って、途中からハルナちゃんたち管理局の皆がやってきて・・・。

そう言えばその後ハルナちゃんが大けがをしたんだっけ・・・相手はガヤルド君、何でハルナちゃんを狙っているのか結局聞けなかった。

行方不明だけどハルナちゃんやジェイル先生はあの子はきっと生きているって言ってた。

なら、次に会った時は必ずお話ししよう。

そして、フェイトちゃんと二人で協力して残りのジュエルシードを封印して、その後はお互いのジュエルシードをかけて最初で最後の本気の勝負に挑んだ。

最後は、皆で時の庭園に乗り込んでまたフェイトちゃんと力を合わせて戦った。

結局プレシアさんを止めることも助けることも出来なかったけど、次元断層は防げた。

私達のやったことは決して無駄じゃなかった。

こうしてジュエルシードを巡る事件は一応の終わりを見せた、けど・・・。

「・・・フェイトちゃん」

やっぱり気になるのは、フェイトちゃんの事。

友達になりたくて何度も呼びかけ続けた、きれいな目をした女の子・・・。

リンディさんもクロノ君も大丈夫って言ってくれたけれど、やっぱり気になります。

「もう一度、会いたいな・・・」

そう呟きながら夢の世界に旅立った私は、まさかその願いが翌日叶うとは思ってみませんでした・・・。

Side Out

 

『プルルルル、プルルルル・・・』

通話ボタンを押して少し経ったけど、未だ繋がらずコール音が繰り返される。

「うーん、やっぱり朝早くは拙かったかなぁ・・・」

先日なのはが携帯を持っているというので番号とアドレスを交換したんですが・・・さすがに朝6時じゃあ小学生は寝てるでしょう、なのはが電話に出る気配が無いことに私はため息をつく。

実はここだけの話、携帯の電話帳に友達の番号が増えて嬉しかったりします。

家族とすずか達の携帯を除けば登録してあるのマリィ(ハルナの為にわざわざ購入した)のだけでしたから・・・そこ、ボッチ言うな!

「仕方ないだろう?時間が無かったんだ」

ため息をつく私を窘めるクロノ。

「そうは言うけどさぁ・・・」

次元振の余波が安全レベルまで収まったのが1時間前、その直後に「早く帰ってこい」と本局からお達しがありました。

全く、船も人も足りてないからって人使いが荒過ぎでしょうに・・・。

そんなわけで現在アースラでは慌ただしく出発の準備を始めました。

恐らく明日には本局に向けて出発します。

だからその前になのはに会いたいというフェイトのお願いを叶えるためにアースラメンバーは人肌脱ぐことにしました。

なのはとの面会許可の書類や重要参考人の外出許可書類を大急ぎで作成、リンディさんのハンコを貰って速攻で受理しました、出発準備そっちのけで・・・。

そんなこともあり現在アースラでは準備の遅れを取り戻すべく入稿前の作家先生が如き状態で作業を行っています。

なのでなのはとフェイトの面会に立ち会うのはアルフを除いて私、クロノ、父さんと現在仕事が無い面子がそろいました。

実際は報告書やら何やらで忙しいんですけどね、そんな事よりも絶対こっちが重要ですからほっぽって来ましたよ!

「あ、繋がった」

『ハイ・・・もしもしハルナちゃん?』

電話の向こうからちょっと寝ぼけた感じのなのはの声が聞こえてきます。

「ヒューヴェーフォメンタなのはー」

『ふぇ?ひゅ、ひゅーべー・・・?』

『ヒューヴェーフォメンタ、フィンランド語でおはようと言う意味ですマスター』

さすがに小学三年生にフィンランド語は難易度が高すぎたようです。

レイジングハートに説明され理解したなのはがおはようと返してきます。

『なるほど・・・おはようハルナちゃん、どうしたの?』

「うーん、実は残念なお知らせでね、私達明日には帰ることになっちゃったのさ」

私がそう言うとなのはは驚いたのか『ふぇぇっ!?』と声をあげます。

「そんなわけでお別れ前に何とかしてフェイトに会えるよう手配したの」

『ほ、本当!?』

聞き返してくるなのは、その声は喜びの為か若干上ずっています。

「ホントホント、だから朝早くで悪いんだけれど今から海鳴臨海公園に来てくれないかな?」

『うんっ!分かったっ!』

全く人を疑うと言う事をしないなのはが本当に心配になってきました。

これ、相手が私だからいいんですけど知らない人だったらどうするんでしょうね?

今度恭也さんとそのあたりについて話し合う必要がありそうです。

可愛い妹は何としても守らなければ・・・(使命感)

それから30分くらいでしょうか。

「フェイトちゃーんっ!」

公園の海辺付近で待っていたら入口の方からなのはが駆けてきました。

恐らく家から走ってきたのでしょう、運動音痴なのにがんばりましたねぇ・・・たどり着くと肩で息をしています。

「そんなに慌てないの、とりあえず深呼吸しよっか?はい、ひっひっふー、ひっひっふー・・・」

「ひっひ・・・って、それは赤ちゃんが生まれるときの呼吸だよっ!」

魔法戦で鍛えられたのかツッコミを入れるだけの余裕はありました。

「全く、馬鹿な事やってないで行くぞ」

その声と共に後ろから引っ張られる感触・・・。

振り返れば呆れた顔のクロノが私の襟首を引っ張ってるじゃないですか!

「やめろー!放せー!服が伸びる~!」

「どうせユニク○のセール品だろう、いいから来るんだ」

畜生、否定はしないけどなんか悔しい。

そうして引っ込められる私と後退でフェイトが前に出ます。

・・・まあ確かに、お邪魔虫は退散したほうがいいでしょうね。

だって今日は二人にとって、とても大切な日になるんでしょうから・・・。

 

Side フェイト

執務官たちがアルフと一緒に離れていく。

本来ならあの艦・・・アースラから出ること自体許されない筈なのに私の為に無理をしてここに連れてきてくれた。

本当に優しい人たちだ。

彼らも、そして目の前のこの子も・・・。

「・・・」

「・・・・・・」

無言で見つめ合う私と彼女・・・。

どうしよう、何を言ったらいいのかな?

アースラであれこれ考えてきたのに、いざ向かい合ったら全部吹き飛んでしまった。

「えへへ、色々お話ししよと思ってたのに・・・フェイトちゃんの顔見たら全部忘れちゃった」

どうやら彼女も私と同じらしい。

「うん、わたしも・・・上手く言葉にできない・・・」

そのことに同意した直後二人とも沈黙する。

どうしよう、何を話そう・・・。

私が話したいことは、私が今思っていることは・・・。

「でも、嬉しかった・・・」

「えっ?」

それを考えたら自然と言葉が出た。

「嬉しかった。まっすぐに、向き合ってくれて」

私のその言葉に彼女はまぶしいくらいの笑顔になる。

「うんっ、友達になれたらいいなっておもったの」

しかしそう言った直後、彼女の顔が曇る。

「でも、もうこれから行っちゃうんだよね?」

それを聞いた私も気分が重くなる。

「・・・うん、そうだね。少し長い旅になる」

そうだ、もうすぐこの子と別れなくちゃいけない。

それを考えるととても苦しい、とても悲しい。

「また、会えるよね?」

その言葉に私はハッとなる。

そうだ、これが永遠の別れになる訳じゃない。

またいつか必ず会える。

そう思い、心が軽くなった私は微笑みながら頷いた。

「少し悲しいけれど、やっと本当の自分を始められるから」

そのための最初の一歩、犯してしまった罪を償ってこれまでの自分にけじめをつける。

だからそれまで少しお別れ。

「あっ・・・うんっ」

また笑顔が戻ったところで私は何を伝えようとしていたのか思い出す。

「今日来てもらったのは、返事をするためなんだ」

「返事?」

聞き返す彼女に私は頷く。

「あの時君が言ってくれた言葉、友達になりたいって・・・」

「あっ・・・!」

「その、私でいいなら・・・私にできるならって・・・!でも、どうしたらいいか分からない」

今まで友達なんて作ったことが無かった。

だから友達になるには何をすればいいのか分からない。

「だから、教えて欲しいんだ。どうしたら友達になれるのか・・・」

我ながらひどいことを言っていると思う。

友達になりたいと言いながらそのためにどうしたらいいのか教えて欲しいと尋ねるなんて・・・。

そんな自己嫌悪と不安から俯いていると・・・。

「簡単だよ」

「え?」

「友達になる方法、すっごく簡単なんだよ」

そうしてこの後言った彼女の言葉を、私は生涯決して忘れないだろう。

「・・・名前を呼んで」

ただ一言、なのにその一言が私を胸にしみわたる。

「初めはそれだけでいいの。『君』とか『あなた』じゃなくってちゃんと相手の目を見てはっきり名前を呼ぶの。私、高町なのは・・・なのはだよ」

改めて自己紹介する彼女、ううん・・・なのは。

それは今行った言葉の通り名前を呼んで、友達になろうなのはから差し伸べられた手。

私に拒絶されても諦めなかった勇気の結晶。

だから、今度は私が勇気を見せる番だ。

「な・・・の、は?」

「うんっ、そうっ!」

恐る恐る、名前を呼ぶとなのはが嬉しそうに答える。

「なの、は・・・」

「うんっ」

もう一度呼ぶ、さっきより私達の距離が近づいた気がした。

「なのは・・・」

「うん・・・」

三度目、涙目で頷きながらなのはは私の手をそっと握る。

掌越しになのはの温もりを感じた。

「君の手は温かいね、なのは・・・」

「・・・!グスッ・・・」

私の言葉に、ようやく友達になれたことに感極まったのかボロボロと涙を流すなのは。

気付けば私の目からも涙が流れていた。

ああ、そうか・・・。

私、なのはと友達になれて嬉しいんだ。

でも、折角友達になれたなのはともうすぐ離れ離れになってしまう。

それがとても寂しくて、悲しくて・・・。

「少しわかったことがある・・・友達が泣いていると、自分まで悲しい気持ちになって来るんだって」

「っ!フェイトちゃんっ!!」

遂に涙を堪えきれなくなったなのはが泣きじゃくりながら私を抱きしめる。

「ありがとう、なのは」

そう言って私もなのはを抱きしめる。

身体に伝わってくる彼女の温もりが温かい。

叶うならずっとこうしていたい、なのはの温もりを感じていたい・・・。

でもそれは許されない。

私は行かなきゃいけないから、重ねた罪を償うために。

だから・・・。

「今は離れてしまうけれどきっとまた会える、そうしたらまた君の名前を呼んでもいい?」

「うん・・・うんっ!」

だから誓おう、また会おうと。

「会いたくなったら、きっと名前を呼ぶ。だからなのはも私を呼んで?なのはが困っていたら今度は私がなのはを助けるから」

「うんっ、フェイトちゃんっ・・・!」

私は生涯決して忘れないだろう。

本当の自分を始めた日を。

そのきっかけをくれた人を。

そして、そんな彼女と友達になったこの瞬間を・・・。

Side Out

 

「グスッ・・・あの子はさ、なのははさ・・・本当にいいこだよ・・・クスン、フェイトがあんなに笑ってる・・・」

公園のベンチに座り二人を見守っていた私達。

二人が泣いた辺りからアルフもボロボロと泣き始めた

ずっとフェイトっと一緒にいたからです、今までずっと辛い目に遭ってきたフェイトがようやく心から笑えたのが嬉しくてたまらないのでしょう。

クロノも父さんも、あとアルフの涙を拭うユーノ(フェレット形態)も優しそうに微笑んでいます。

え?私ですか?

「ヴぇぁああああああああああ~」

フェイトがなのはの名前を呼んだ辺りからすでに大号泣ですよ!

涙腺はおろか鼻の粘膜まで完全崩壊を起こして涙と鼻水がフタの空いたペットボトルをひっくり返したみたいに出てきます。

「ハルナ、顔がうるさいよ。今いいところなんだから静かにしてくれないかな?」

うっさいのは父さんです!

いいところだから泣いてるんじゃないですか!

ああ、また鼻水が・・・あれ?ティッシュ使い切っちゃってる。代わりに何か・・・涙で視界もにじんでよく分かんない・・・あ、なんかタオルっぽい物あった、これでいいや・・・ズビズバーっっ!!

「ぎゃぁぁぁっ!お約束ぅぅぅぅ!!!」

何かうるさい父さんの絶叫に紛れてクロノの足音が聞こえます。

涙を袖で拭うとなのはとフェイトに近づいていくクロノの姿・・・。

「すまないがそろそろ時間だ・・・」

どうやらアースラに帰る時間になったようです。

名残惜しそうになのはから離れるフェイト・・・。

「フェイトちゃんっ!」

そんな彼女を引き留めたなのはがおもむろに自分のツインテールに手を伸ばしました。

 

Side なのは

髪を結んでいたリボン・・・それを解いてフェイトちゃんに差し出します。

フェイトちゃんに何か渡したいけれど急いできたから何も用意できなかったから。

「思い出にできそうなもの、こんなのしかないけれど・・・」

「うん、じゃあ私も・・・」

そう言ってフェイトちゃんも髪を結んでいた黒いリボンを解いて私に差し出します。

海風を受けてフェイトちゃんの長くてきれいな金髪がサラサラとなびく。

「ありがとう、なのは・・・」

「うん、フェイトちゃん・・・」

リボンを交換し合いながらお別れの言葉を交わします。

「きっと、また・・・」

「うん、きっとまた・・・!」

ううん、ちがう・・・。

これは約束です。

今は離れ離れになるかもしれない、でもいつか必ずまた会おうっていう約束。

私達がそうして約束を交わすと背中にユーノ君が乗る。

どうやらアルフさんが下ろしてくれたみたいです。

「ありがとう、アルフさんもげんきでね」

「ああ、なのはも。ありがとね?」

「それじゃあ僕も」

「うん、クロノ君も元気でね」

「ああ」

アルフさんやクロノ君とも言葉を交わす。

「に゛ゃに゛ょはぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛~~~!!!」

ハルナちゃんとも・・・って、うわぁ・・・。

どれだけ沢山泣いたんでしょうか?

涙と鼻水で顔が何かもうすごいことになってます。

「フェイトは私が守るからっ!絶対なのはに会いに行けるようにするかなねーっ!!」

「う、うん・・・」

ハルナちゃん、今までたくさんお世話になって今もこうしてフェイトちゃんの為に頑張ろうとしてくれてる。

でも、さすがに今は近づき辛いです・・・。

「はいはい、分かったからハルナ、とりあえず涙・・・いやその前に鼻水拭こうか」

そう言ってハルナちゃんを引っ込めるジェイル先生。

普段来ている白衣は何故か脱いで手に・・・うん、何やら謎の粘液でデロデロになった白衣を見て大体わかりました。

「そう言う訳だ、フェイト君の事は私たちに任せてくれたまえ」

「はい、ありがとうございます」

そうしてお別れを言って、いよいよ本当にお別れの時が来てしまいました。

皆の足元に展開される魔法陣・・・。

このままアースラに転送されるんでしょう。

(バイバイ、またね・・・)

次第に魔法陣は光を増していきます。

(クロノ君、アルフさん・・・)

(ジェイル先生、ハ、ハルナちゃん・・・)

って、ハルナちゃん・・・そんな号泣しながらブンブン手を振っていたら・・・ほら、クロノ君とジェイル先生にぶつかってる・・・。

何度もぶたれて遂に我慢できなくなったのかクロノ君とジェイル先生に頭を叩かれるハルナちゃんに苦笑してから私は彼女を見つめます。

(フェイトちゃん・・・)

私が顔を向けるとフェイトちゃんが手を振ってきます。

「・・・っ!」

わたしも手を振り返します。

前にハルナちゃんが言ってました。

これは悲しいお別れじゃない、フェイトちゃんの新しい旅立ちなんだって。

だから笑顔で送り出そう、フェイトちゃんが笑って歩いていけるように。

そうして笑顔で見送っているうちに魔法陣はひと際強い光を放ち、それが収まると皆は転送された様でそこには誰も居ませんでした。

聞こえるのは風と波の音、そして海鳥の鳴き声だけ。

穏やかなその音色はこれまでの大冒険が夢だったのではないかと思わせます。

ううん、夢じゃない。

「なのは?」

「うん、平気・・・」

こうしてユーノ君と出会ったのも、ジュエルシードを巡ってフェイトちゃんとぶつかり合ったのも、そのフェイトちゃんと友達になれたのも。

そして、また会おうって約束したのも。

お別れは少し寂しいけれど、でも大丈夫!

だって・・・。

「きっとまた、会えるからっ」

そう、だって・・・また会えるから!

Side Out

 

Side ???

やぁ、目が覚めたかい?

そんな顔しないででもらいたいなぁ、仮にも私は君の命の恩人だというのに・・・。

全く、苦労したんだよ?管理局の艦に見つからずに君を回収するのは。

まぁいいさ、別に君から感謝の言葉を聞きたいから助けたわけじゃないからね。

あれからどうなったのかだって?

キミも予想はついているんじゃないかな?庭園は崩壊、時空震は沈静化・・・「ジュエルシード事件」はこれにて解決さ。

しかし、君があそこまでボロボロにされたのは予想外だったよ、一体誰にやられたんだい?

何?スカリエッティ?

クククッ・・・そうか、それは実に興味深い。

まさか「無限の欲望」の遺伝子がこの時代で蘇るとは・・・。

とは言えさすがに君はやり過ぎた。

恐らく管理局も警戒しているだろう、当面は大人しくしてもらうよ。

そんな怖い顔をしてもダメなものはダメさ。

君の望みは叶わなかった、それが答えだ。

なら、今何をするべきかは分かるだろう?

・・・結構、では今は休みたまえ。

幸い今回の一件で面白いものが手に入った、少し台本に手を加えれば舞台は一層にぎわうだろう。

その準備も必要だからね、今は雌伏の時さ。

それではよい夢を、ガヤルド・チェンテナリオ・オプトーラ・・・。

Side Out

 

こうしてジュエルシード事件、またの名をプレシア・テスタロッサ事件と呼ばれる地球におけるジュエルシードを巡る一連の事件・・・魔法少女リリカルなのはの第1期に当たる魔法少女達の物語は幕を閉じました。

何やらどこかで陰謀が渦巻いているみたいですが兎にも角にも地球の平和は護られ、何よりフェイトが新たな一歩を踏み出したのです。

今後もいろいろな事件が待ち受けているでしょうがそんな事関係ありません。

父さん、は足を洗ったからいいとして・・・妹達に真っ当な人生を送ってもらうためにもお姉ちゃんの戦いはまだまだ続きます!

行け!リリカルハルナ!戦え!リリカルハルナ!

妹達が幸せになるその日まで!

 




分かってると思いますがあくまでアニメ1期編の最終話です。
物語はちゃんと続きます。
機人長女リリカルハルナA's・・・の前に幕間を何話かお送りする予定ですのでお待ちください。

現在オリキャラの名前を募集してます、詳しくは活動報告をご覧ください。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第22.5話「第二回総集編、ちなみに本作では某ガ○ダム作品みたいに総集編を使った露骨な尺稼ぎはしないから安心してね(はぁと)」

あけましておめでとうございます。
年越し前に投稿するか悩みましたが冬コミとかで結局年明けてからになってしまいました。
次回からは予告通り幕間編になります。

実は読者の皆さんから今後登場するキャラクターの名前を募集しています。
詳しくは後書きに書いてあるのでどうぞ。


こんにちは、皆のお姉ちゃんことハルナスカリエッティです。

無事一期が終わったので今回は以前総集編の時に宣言した通り第二回総集編になります。

 

機人長女リリカルハルナ

第22.5話「第二回総集編、ちなみに本作では某ガ○ダム作品みたいに総集編を使った露骨な尺稼ぎはしないから安心してね(はぁと)」

 

とりあえずまずは私の現在のスペックからいってみましょう。

ハルナ・スカリエッティ

年齢:16歳(現在)

所属:本局遺失物管理部機動2課第2特別捜査隊→現在ジュエルシード事件捜査の為巡航艦アースラに出向中。

役職:執務官(三尉相当)

家族構成:祖父三人、父二人、母一人、妹14人、妹分二人(なのはとフェイト)

魔導士ランク:空戦AA

デバイス:マギア・イェーガー

タイプ:近代ベルカ式、射撃型

魔力光:白に近い青

IS:フラスコオブアルケミスト(錬金術師の試験官)

 

なんか前回の総集編とあんまり変わんない気がする・・・。

あと正確には妹分じゃなくて妹だから!その辺間違えないように!

え?何?嫁が抜けてる?

すずかとはそう言う関係じゃないから!

確かにすずかは可愛いしいい子だし・・・だ!け!ど!恋愛感情とかじゃないから!LOVEじゃなくってLIKEだから!

はい!この話はおしまい!次行ってみよう次!

 

てなわけでお次はアニメ一期編の時系列を見て見ましょうか。

 

2月某日

ユーノをリーダーとしたスクライア一族の発掘隊が遺跡からジュエルシードを発掘する。

 

3月某日

本局にジュエルシードを移送中の次元航行艦で事故発生。

ジュエルシードが流出、第97管理外世界(地球)に落下する。

 

3月末

ユーノ、単身ジュエルシードの捜索の為地球へ。

 

4月5日

ユーノ、海鳴市に到着。

ジュエルシードを1つ確保するも、その後ジュエルシード融合体との戦闘で負傷。

念話による救難信号をなのはが受信。

 

4月6日

なのは、ユーノを保護。

同日夜、なのは魔法少女になる。ジュエルシード融合体を撃破し2つ目のジュエルシードを回収。

 

4月7日

海鳴市内の神社にて戦闘、ジュエルシード3つ目を回収。

時空管理局遺失物管理部機動1課にユーノとの連絡が途絶えたとスクライア家より捜索要請が出される。

管轄を巡って遺失物管理部と次元航行部隊が衝突。

 

4月8日

プールにてジュエルシード4つ目回収。

 

4月9日

学校にてジュエルシード回収、5つ目。

 

4月10日

翠屋FCのサッカー試合、試合後ジュエルシードが暴走、市街地に被害が出る。

6つ目のジュエルシード回収。

 

4月17日

なのはとユーノ、月村邸を訪問。

ジュエルシードを発見するもフェイトと初遭遇、交戦の末なのは敗北。

フェイトがジュエルシードを回収。

巡航艦アースラ、ユーノ保護とジュエルシード回収の為に本局より出航。

 

4月23日

温泉回!

フェイトがジュエルシードを回収。

なのはとフェイト2度目の交戦。なのは、敗北しジュエルシードを一つ奪われる。

 

4月26日

なのは、アリサと喧嘩。

夜の市街地でフェイトと3度目の交戦。

戦闘中にジュエルシードが発動、小規模な次元震が発生する。

 

4月27日

アースラ第97管理外世界(地球)近傍に到着、現地にて魔導師によるジュエルシードを巡る戦闘を確認、ハルナ現場に急行し高町なのは、ユーノ・スクライアと接触。

 

リンディ、なのはを勧誘するもハルナに阻止される。

 

4月28日

ハルナとリンディ、高町家に事情説明を行いなのはの捜査協力の了承を取り付ける。

なのは、アースラに乗艦。

 

4月31日

ハルナ、ジュエルシードの回収に向かいフェイト・テスタロッサと使い魔のアルフと交戦、戦闘中に謎の魔導師の襲撃を受け重傷を負う。

なのはとクロノ、ハルナを回収、アースラにて緊急手術の末一命を取り留める。

 

5月7日

ハルナの意識が回復する。

この間になのはが3つ、フェイトが2つジュエルシードを回収する。

 

5月14日

ハルナ、なのはとユーノと共に月村邸へ。

すずかとアリサになのはの事を打ち明ける。

 

5月16日

海上の決戦。

ハルナ、謎の魔導師と再度交戦。魔導師の名がガヤルド・チェンテナリオ・オプトーラと判明。

 

5月17日

なのは、一時帰宅。

アルフ、フェイトに対するプレシアの虐待に怒り反抗。撃退され時の庭園から脱出。

 

5月18日

アリサ、傷ついたアルフを保護。

 

5月19日

なのは、バニングス家を訪問。アルフと再会。一時休戦し、協力体制を結ぶ。

 

5月20日

早朝、なのはとフェイト、臨海公園で決戦。

ハルナ、武装隊を率いて時の庭園に突入するも返り討ちに遭う。次元震発生。

なのは、ユーノ、クロノと共に再度突入、ガヤルド・チェンテナリオ・オプトーラと3度目の交戦の末に勝利する。

時の庭園崩壊、プレシア・テスタロッサ、アリシア・テスタロッサ、ガヤルド・チェンテナリオ・オプトーラの3名行方不明。

フェイトとアルフ、アースラにて保護。

 

5月28日

懸命の捜索にも拘わらずプレシア、アリシア、ガヤルドの三名は発見できず。

死亡と判断、捜索打ち切り。

 

5月29日

スカリエッティ、自身がアルハザードの末裔だと明かす。

 

5月30日

次元空間、安全値まで回復。次元震終息宣言。

なのは帰宅、本局よりアースラに帰還命令が下る。

 

5月31日

なのは、フェイト達との別れ。ユーノは残留。1期終了

 

 

こんな感じですね。

前回の総集編の時も濃かったですが今回はそれ以上です。

なんてったってこれがたったの一か月で起ったんですから。

てか最後の方怒涛の戦闘ラッシュですね、なのはとフェイトに至ってはあのガチンコ勝負の直後に最終決戦突入ですから・・・二人とも元気ですねぇ、若さのなせる技でしょうか?

 

次で最後ですが私が劇中で使っていた魔法をちょこっとだけ紹介しますね。

 

リングバレット

作中でちょくちょく使ってる拘束魔法。

ネットランチャーの様にバインドを射出する為、従来のバインドの様に設置したり接近して使用する必要が無いので。

回避や反撃のリスクを軽減できる。

 

アクセルキーパ―

なのはやフェイトで言う所のアクセルシューターやフォトンランサーに当たる魔法。

照準した方向に魔法陣を展開してそこから多数の魔力弾を掃射する。

名前の由来は水上艦の近接防御機銃「ゴールキーパー」から。

誘導性能は皆無、しかしその濃密な弾幕で敵誘導弾の迎撃や敵の接近阻止等、非常に使い勝手の良い魔法。

 

インパクトカノーネ

ディバインバスターやサンダースマッシャーと同じ直射型魔法。

ディバインバスターに比べて射程がかなり劣るものの屋内での使用も想定して一発の威力と速射性に優れている。

逆に威力を絞って射程を延長した長距離射撃モードも存在する。

 

グラビトロン・デトネーター

ハルナの必殺技。

極限まで魔力を圧縮して精製したマイクロブラックホールを打ち出す魔法。

自前の魔力じゃ足りない為FOAで周囲の元素を魔力に変換してようやく使用が可能になる。

効果範囲はそこまで広くはないが威力は・・・ヤバイ。

非殺傷設定を解除しての使用は厳に禁じる。

 

ちょこっとと言うか現状で登場した魔法全部ですね・・・。

ハッキリ言って私の魔法は魔力量の関係でバリエーションが少ないです。

基本はこの4つを主軸してそのバリエーションISや義手のギミックを加えて戦術を組んでいきます。

近接戦?

ありますよ、たぶん今後出てくるはずです。

 

こうして書けそうなことを色々書いてみましたが・・・今回はネタが少ないですね。

就業編からそんなに時間がたっていないのが理由でしょう。

恐らくStrikerS編辺りになれば劇的に変わるとは思いますが・・・。

まぁ、どうせあの作者の事です。

次回も私が酷い目に遭ったり関係各所に迷惑かけまくったりするんでしょう。

そんな機人長女リリカルハルナを

それでは皆さん、また次の総集編でお会いしましょう。

次回の総集編はA's編終了後を予定してます。

それまでごきげんよう!ノシ

 

 

ん?電話?誰からだろう・・・。

はいはい、もしもし・・・す、すずか!?

どどど、どうしたのかな?

え゛?私の事嫌いなのって・・・そ、そんなことないよ!

じゃあどうしてって・・・何ですずかこの放送聞いてるの!?ここ海鳴じゃなくてミッドだよ!異世界なんだよ!?

まさか盗聴器!?盗聴器か!?

畜生!忍さんめぇ、時空を超えて盗み聞ぎできるとか何て無駄にハイスペックな物を・・・一体どこにそんなもの仕込んだんだ!?

あ、泣かないですずかっ!嫌ってない!すずかの事嫌ってなんてないよ!嘘じゃないよ!

え?じゃあ証拠を見せろって?ホントだから信じて!何でもするから!って、あっ・・・。

あの、すずかさん?何で急に泣き止んだのかな?てかどうしてクスクス笑ってるの?まさかウソ泣きだったの!?

いや、何でもっていうのは比喩表現で本当に何でも言う事聞くわけじゃ・・・アッハイ、わかりました。

・・・何か今度一緒にお出かけすることになっちゃいました。

避妊具、必要かな・・・?




実は以前から敵オリキャラの名前を募集してたりします。
リリカルなのはキャラなので車の名前からこんなのどうだろうという名前があったら活動報告の名前募集の感想覧から送ってください。
別に敵じゃなくても構いませんので応募お待ちしています。

それ以外の感想等もお待ちしています。
それでは今年もY.Smanとハルナお姉ちゃんをよろしくお願いします。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

幕間編
第23話「お姉ちゃん、帰宅す。(ただし帰宅先は隣のお家です)」


戻ったぞ(CV玄田哲章)
前回の総集編から色々あってかなりお待たせしましたが幕間編開始です。
いよいよお姉ちゃんのお姉ちゃんたる所以が発揮されます。

最近コロナウイルスが蔓延してますが皆さんお気を付けください。
可能な限り外出を控え、外出する場合は可能な限り人混みを避けましょう。
こまめに手洗いうがいをして部屋の換気も定期的に行いましょう。
ハルナおねえちゃんとの約束だぞ!


ドーモ、ドクシャ=サン。ハルナ=チャン、デス。

なんとなく忍殺語で言ってみました。

なのはとフェイトの感動のシーンから数日・・・アースラは無事本局に帰還しました。

しかし宇宙要塞ソロモンを細くした感じの本局が七色に揺らめく次元空間に浮かぶ光景はいつ見ても壮観です。

てか、やっぱりどう見てもSFじゃん!タイトルに入ってる魔法少女って詐欺でしょ!

本局に帰ってからも色々大変でした。

まずおじいちゃんズに呼び出し食らって帰還報告で滅茶苦茶心配されて3時間くらいかかってようやく解放。

次にお偉いさんに今回の事件の報告書とスクライアの族長さんへの報告書の提出。

更に保護したフェイトの裁判での調書に不備がないか再確と無限書庫で関係資料集め。

あと、やりたくないけど独断先行やらなにやらの始末書を提出してお小言を貰う・・・。

んで父さんに新装備の評価レポート提出。

ハッキリ言ってパソコン無かったら間違いなく腱鞘炎になってます。

え?戦闘機人なのに腱鞘炎なんてあるのかって?

ありますよ!人口筋肉とか関節系のシャフトとかがへたれるんですよ!

で、全てを終えた私は今、ミッドのとある住宅街を早足で歩いています。

暫くすると見えてきました。

洋風の家々の中に一際異様な雰囲気を放つ木造平屋の武家屋敷。

入り口には樫の表札にこれまた見事な達筆で『すかりえってぃ』と書かれています。

そう、ここが我が家です。

が、今は此処をスルー。

本当の目的はその隣のお家。

表札には『NAKAJIMA』の文字。

敷地に入るとまず目にするのは広~い庭。

その庭を天使達が楽しそうに駆け回っています。

「あっ!おねえちゃんだ!」

「ほんとだぁ!おーい!」

あぁ・・・神様、天国ってうちの隣にあったんですね・・・。

 

機人少女リリカルハルナ

第23話「お姉ちゃん、帰宅す。(ただし帰宅先は隣のお家です)」

「たっだいま~!!」

両手を広げダッシュする私。

そんな私に飛びついてくる天使(いもうと)達。

「ハ~ル~ナ~ちゃ~んっっっ!!!」

をものっそいスピードで追い抜いて私に突っ込んでくるクイントさん。

「ぐっふぉっっ!?」

某京都の大学のラグビー部員もかくやと言う破壊力満点のタックルをくらった私はナカジマ家の敷地外へ強制退去させられてしまいました。

「ハルナちゃん!?大丈夫!?撃たれたって聞いたけど平気!?生きてる!?」

殺人タックルを食らわせそのまま馬乗りになった姿勢で心配げに聞いてくるクイントさん。

一言いいですか?現在進行形で死にそうです・・・。

「待って母さん!?いま撃たれたって言わなかった!?姉さん撃たれたの!?」

「本当なの!?お姉ちゃん大丈夫!?」

「ハル姉どこ撃たれたッスか!?手ッスか!?足ッスか!?頭ッスか!?」

クイントさんの発現に騒ぎ始めるギンガ達・・・。

そう言えば下の子達には私が撃たれた事伏せられてたんだっけ・・・。

と言うかウェンディ、さすがに頭撃たれたらお姉ちゃんも死ぬからね?

「それで!?本当に大丈夫なの!?痛むところとか無い!?」

そんな中冗談抜きの本気で心配してくれるクイントさん。

ここまで思われるなんて嬉しい限りです、なのでお言葉に甘えてハッキリ申し上げることにしましょう。

「その、しいて言えば・・・」

「言えば!?」

「重いです・・・」

直後私の額にクイントさん渾身の空手チョップが振り下ろされました。

威力については私の後頭部があった辺りが大きくめり込んだとだけ言わせていただきます。

 

 

「まったく、本当に心配したんだからね!」

「うぅ、その件については大変ご心配おかけしました」

場所をナカジマ家の居間に移して私は帰還報告と事の顛末の説明を行いました。

「おぉ、本当に穴あいてないっ!」

「プニプニッス!」

うん、セインもウェンディも心配してくれているんだろうけれどわざわざ服めくってお腹触らないでね・・・。

「もう!二人ともやめなさいっ!」

「そうだぞ、姉上だって病み上がりなんだからな」

うん、ギンガもチンクも心配してくれてありがとう。

でも大丈夫だよ、もう傷も塞がってるし下手人をフルボッコにする位には元気だから。

「さて、堅苦しい報告はこの辺にして・・・」

そう言って私は立ち上がり妹達に向き直る。

目の前に並んだ無垢な天使たち・・・。

今、私の理性の限界が10、9、8・・・

「ヒャアがまんできねぇゼロだ!」

気が付けば私は妹達に突撃していました。

私が来ることを予想していたのか、妹達はキャーキャーはしゃぎながら蜘蛛の子を散らす様に逃げ始めます。

「はっはっはーっ!まてまて~!」

唐突に始まった鬼ごっご、ついにその最初の犠牲者が現れた!

「捕まえたぞディエチ~!」

「わーっ!」

私達ナンバーズ(ギンガとスバルも含む)は皆大なり小なり身体能力が強化されていますがディエチは遠距離射撃スタイルと言う事もありそこまで強くありません。

姉妹の中にはオットーの様に彼女より身体強化レベルの低い子がいますがあの子は意外とちゃっかりしてるところがあるのかうまく逃げおおせたようです。

セインもディエチと同レベルですがどうやらディープダイバーで真っ先に逃走したのか気配すらありません。

「フッフッフ・・・それじゃあディエチは罰ゲームとして、こうだーっ!うりゃうりゃ~!」

「キャーっ!」

捕まえたディエチを私は抱き上げて頬ずりします。あ~、やわらけ~。マシュマロみたい・・・。

「あー、ハルナちゃん?お願いだから家族以外にそれやらないようにね」

そんな私に5寸くらいありそうな釘をさすクイントさん。

「失敬な!私は妹が大好きなのであって小さい女の子が好きなんじゃありません!」

「本当に?気に入った子を手当たり次第に妹認定してないでしょうね?さっき言ってたフェイトちゃんって子みたいに・・・」

うっ・・・あれは、フェイトの件は正真正銘私の妹だったからノーカウントです!

彼女も私と同じ特殊な生まれの命・・・お姉ちゃんである私が守護るのは当然の義務なのです!

「ハルナちゃん・・・カッコよく決めたつもりだろうけれどディエチとじゃれながらじゃ全然決まってないわよ?」

「・・・うん、今は目の前の妹達を優先しましょう!」

そう決心した私は改めて愛しの妹を小脇に抱えながら鬼ごっこを継続します。

その後、ご近所さんがディエチを抱えたまま妹達を追いかける私を見て地域警邏隊に通報したのはそれから15分後の事でした。

 

「あっはっはっは・・・っ!それで警邏隊の隊員に必死に弁解していたって言うのかい?ハルナ・スカリエッティ執務官殿www」

こっちを指さしながらケタケタ笑う父さん、スッゲーイラっと来ます。

なので無言で父さんのお皿から唐揚げを徴収すると父さんは笑ったまま私のお皿から唐揚げを強奪し返します。

「二人とも行儀が悪い!」

「「ごめんなさい・・・」」

暫く互いのお箸の上で唐揚げがピョコピョコ踊っていましたがクイントさんの一括で鎮圧されてしまいました。

ココはナカジマ家のお茶の間・・・。

私と父さんが帰って来たのもあり、今日はナカジマ家&スカ家全員集合でご飯会です。

そんなわけで今からキュートでプリティな妹達を紹介するぜ!

「しかし本当に大丈夫なんですか姉さん?」

まずはどんぶりサイズのお茶碗にご飯を盛りながら聞いてくるスカ家次女のウーノ!

冷静沈着、知的でクールなお姉さんだ!

普段は本局で父さんの助手を務めており現在医師免許取得中だよ!

「ウーノは心配性だな。ドクターの医者としての実力はお前も知っているだろう?」

次はウーノからどんぶりを受け取りながら自慢げに言ってのけるスカ家四女のトーレだ!

男勝りでイケメン!皆の頼れる姉御だぜ!

航空魔導師隊に所属しているストライカーだ!

「でも姉さんが撃たれたって聞いた時はビックリしました」

そう驚きを口にしながらも大皿からおかずをひょいひょいと取り皿に移す手は止まらないのはナカジマ家長女のギンガだ!

しっかり者で包容力抜群!将来は間違いなく美人になるに違いない!

将来はお母さんみたいに活躍したいらしく、今はクイントの下でシューティーングアーツの修行中だ!

「もしかして最近父上と母上、それに上の姉たちの様子がおかしかったのはそれが原因なのですか?」

そんなギンガの隣で質問しながら反対側に座るセッテの口元を拭いてあげているのはナカジマ家次女のチンクだ!

ちっちゃくてカワイイけれどその姉力は半端ないぞ!

チンクも局員になるつもりらしく、魔法を始め色々勉強してるみたいだ!

「あ、あたしも気になってたそれ。なんか皆ソワソワしてたよね」

チンクの言葉に同意しながら追加の唐揚げを大皿に盛っていきますのはナカジマ家三女のディエチだ!

優しくて気配り上手、将来はいいお嫁さんになる事間違いなしだ!

何かやりたいことがあるみたいで何やら色々勉強しているみたい。

「いやー、それにしてもハル姉に喧嘩売るとか命知らずもいたもんだねー・・・って熱っ!」

その揚げたて唐揚げを取りながらガヤルドに対する感想を述べるのはナカジマ家四女セインだ!

お調子者でうっかりさん、あれは舌火傷したかな?そんなところがカワイイ!

その明るい性格もあって学校では友達も多いみたい。

「モキュモキュ・・・ゴクン、そう言えばお姉ちゃん今度はどれくらい居られるの?」

口いっぱいに頬張っていたご飯を飲み込んでから聞いてくるのはナカジマ家五女のスバルだ!

元気いっぱい!食欲もいっぱい!おねえちゃんはそのまま元気に育って欲しいぞ!

優くて争いが苦手な性格だけどいざという時に妹を守りたいとギンガとそろってクイントさんからシューティングアーツを習っているみたいだ!

「あ、あたしもしりたいっ」

その隣で醤油さしに手を伸ばしながらスバルに同意しているのはナカジマ家六女のノーヴェだ!

引っ込み思案で甘えん坊なお姉ちゃん子、最高にキュート!

保護欲を掻き立てられるのか学校では上級生たちから人気みたい・・・妹はやらんぞ!

「あたひもあたひもっ!もぐもぐ・・・おやふみのひにあほびたいッスっ!」

半分食事語状態でそう言って直後に行儀が悪いとチンクに叱られているのはナカジマ家七女のウェンディだ!

天真爛漫が過ぎてアホの子にしか見えないけれど、だがそれがいい!

そんな性格の為か学校ではよくボケて友達からツッコミを受けるみたい。

「私も姉様とお出かけしたいです」

「僕も」

そう言いながらちゃっかり嫌いな野菜を私のお皿に移すのはナカジマ家八女と九女のオットー&ディードだ!

大人しそうに見えながら結構いい性格だけど詰めが甘い!ほら、クイントさんに見つかった。あ~あ、こりゃお説教は長そうだ・・・。

二人とも普段はしっかりしてるんだけど、私が帰ってきてはしゃいでいるのかな?

「・・・・・・・・・」

モキュモキュとご飯を頬張りながらこちらをジッと見つめるのはスカ家末っ子のセッテだ!

その眼差しは自分も遊びたいと言っている、うん、大丈夫だよ!当分地上勤務になるしお休みもたくさん取るから!

物静かで口数は少ないけれどとっても優しい子だよ!

以上!最高にキュートでプリティーな私の妹達・・・

ん?何?まだいるだろう?

まぁ、そうなるよね。

多分そろそろ・・・。

「ふあぁぁ・・・あれ?姉さん帰ってたの?」

そう言ってボサボサ寝ぐせを掻きながらにしてやってきたのはスカ家三女のドゥーエだ!

今はこんなだけど普段は査察部でバリバリ不正を暴くスーパーエージェントだ!

「あ、ドゥーエ姉。また徹夜でマンガ描いてたの?」

「いや~、今週中に印刷所に出さないと即売会に間に合わなくって・・・」

あと腐女子である。

・・・もう一度言おう腐女子である。

 

 

 

どうしてこうなった!?

いや、分かってる。分かってるんだよ!?だいたい私と父さんのせいだって!

さて、ここで原作である「魔法少女リリカルなのはStrikers」におけるドゥーエの設定を簡単に説明しよう。

ナンバーズのナンバーⅡ、あらゆる人物に変装するIS「ライアーズ・マスク」を駆使して潜入や暗殺を行うナンバーズの諜報担当。

ナンバーズの中で最もジェイル・スカリエッティの影響を受けており、さまざまな面で彼に似通う。

・・・そう、本作「機人長女リリカルハルナ」においてもドゥーエは父さん、そして私の影響を強く、強~く受けてしまい、マンガ、アニメ、ラノベと言ったサブカルチャーに染まってしまったのです。

そして何がどう化学変化を起こしたのかBLに走ってしまい今では有明の二日目にサークル参加するまでになってしまったのです!

・・・もう分かるよね?

そう、ドゥーエがこうなったという事は当然・・・。

「んあ゛~あら?ハルナ姉様、おかえりなさ~い」

女の子がしちゃいけない感じの欠伸をしながらドゥーエに続いてやってきたのはスカ家五女のクアットロ・・・。

「あ、お姉ちゃん!服出来た!?」

「あー、もうちょっとかかりそう・・・やっぱりレースから自作するのは失敗だったかも・・・」

・・・はい、ご覧の通りドゥーエによってクアットロも染められました。

おかげでBLもGLもなんでもござれの汎用的オタク少女になりました。

ちなみに一番はまったのはコスプレ、最近は衣装の自作まで行うようになり作品の販売でかなりお小遣いを稼いでいるようです。

・・・いやホントどうしてこうなった!?

あれか!?原作みたいな捻じくれ曲がった性格にならないようにいっぱい愛情マシマシで構ったからか!?

確かにあんな腹黒キャラにはならないだろうけど・・・キャラブレイクってレベルじゃねーぞ!?

「どうしたの姉さん?」

あまりの原作乖離っぷりに頭を抱えていた私はギンガの声で現実に引き戻されました。

「うん、いやね・・・ドゥーエもクアットロもどうしてこんな風になっちゃったんだろうなって思って・・・」

「いや、どう見てもお前とジェイルが原因だろ・・・」

返って来た鋭利かつ正論すぎるツッコミに私はちゃぶ台に突っ伏すのでした。

てかゲンヤさんいたんだ、影が薄くて気づかなかったよ。

「言っておくがな、俺の影が薄いんじゃない。お前らの存在が濃すぎるんだ」

畜生、なんもいえねぇ・・・!




本作の姉妹達の順番は数字順ではなく生まれた順になります。
あと正確はリリカルなのはイノセントに近い感じになってます。
ドゥーエとクアットロを除いて・・・w


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第24話「個人的に実写版逆転裁判は100点、ただしサイバンチョの頭の毛を除く」

24話になります、今回は前話と並行して執筆してたので比較的早く完成しました。
今回は新キャラ登場、そして生臭い組織内政治の話になります。


Side クロノ

「それでは判決を言い渡す」

法廷に裁判長の声が響く。

しかしその声はどこかやる気が無さげだ。

見渡せば検事も傍聴席も一様にげんなりした様子だ。

ただ一人の例外は僕の隣にいる弁護人のみ。

「被告人、フェイト・テスタロッサに一年の社会奉仕を命じる。これにて閉廷!」

そう言って裁判長を務めるレジアス・ゲイズ一等陸佐はさっさと終われとばかりに投げやりに小槌(ガベル)を叩いた。

「えっへんっ」

その判決にドヤ顔の弁護人

・・・ハルナ・スカリエッティ執務官。

そんな彼女に困惑している被告人であるフェイトを除く・・・僕を含めた法廷内にいる全員の想いは一つになった。

(こいつ、殴りたい・・・!)

Side Out

 

機人長女リリカルハルナ

第24話「個人的に実写版逆転裁判は100点、ただしサイバンチョの頭の毛を除く」

 

「ね?うまく言ったでしょ?」

「アアソウダナ」

裁判所を出てから私がそう言うとクロノは凄く平坦な口調で返してきます。

素っ気ない発言とは裏腹に彼の体からは濃厚な不機嫌オーラが溢れ出ています。

「むぅ、何怒ってるのさ?フェイトの為に裁判頑張ったのに何が不満なの?」

私の質問にクロノは「ハァァ・・・」とひと際大きなため息をついてから私に向き直ります。

「ハルナ、君は裁判を頑張ったと言うがな・・・あれを裁判と言うのは全次元世界の司法関係者にケンカを売るに等しい行為だぞ?」

そのあまりにあんまりな回答に私は声を上げずにはいられませんでした。

「酷いっ!あの裁判のどこが気に入らなかったのさ!?」

「全部だ全部!弁護人が君で裁判官がレジアス・ゲイズ一佐?何の茶番だ!?その時点でまともに裁判する気無いだろ!?大方検察側のジョン・田中三佐も君か評議会の差し金だろ!?」

「ンーナンノコトカナー?オネエチャンシラナイナァー」

さすがクロノです、鋭い。

今回の裁判の為に私は考えうる最高の作戦を練って来ました。

おじいちゃんズにおねだりして裁判の人事に手を加え裁判官をレジアスのおっちゃんが、検察官をジョンさんが務めるように手配しました。

同時にフェイトの診断結果や時の庭園に残っていたプレシア・テスタロッサのフェイトに対する虐待の記録をかき集め、ジュエルシード集めはプレシアが強要していた事を強調、フェイトに悪意が無かったことを法廷にいる全員に印象付けます。

その上でフェイトの口からいかにプレシアを愛していたかを語ってもらい彼女に対する同情も誘う。

結果としてプレシアには悪いですが彼女にすべての罪をおっ被って貰ったおかげでフェイトの罪と罰を大幅に減刑する事に成功しました。

もちろんプレシアに対してのアフターケアも忘れません。

母親の名誉が穢されたままではフェイトを救ったことにはなりませんから。

今日裁判が行われていたのと同時刻、全ての始まりであるヒュードラの暴走事故の再調査とその原因となったミッドチルダ中央技術開発局に対する強制捜査が決定、ドゥーエに潜入してもらった甲斐もあって手抜き工事やもみ消されたプレシアの実験中止要請の証拠が山の様に発見され当時の関係者が野球リーグが作れるくらい逮捕されました。(チームではありません、リーグです)

判決直後にそのことがフェイトに伝えられるとフェイトはボロボロと泣き出してしまいました。

その様子に法廷にいた人たちももらい泣きし、アリシアとプレシアは少しだけ救われることとなったのです。

「ほら!こんなに頑張ったんだよ!?なのにその扱いはどうなのさ!?」

「ほぅ?じゃあ審議中の君の言動に関してはどう弁明するつもりだ?」

審議中の言動?何かしましたっけ?

「検察側の証言にいちいち待ったをかけて話が全く進まないし何よりなんで証拠品を投げつけるんだ!?」

「え?裁判ってああやるもんじゃないの?」

そう、何を隠そうハルナちゃんは裁判に立ち会うのが初めてでした。

なので事前に逆転裁判を全シリーズプレイして予習してきたんです。

ちゃんと「意義ありっ!」てカッコよく決めてきましたよ。

「そんな訳あるかっ!常識的に考えてあんなのあり得ないってわかるだろう!?いい加減現実とゲームを混同するのは止めろ!ぜぇ、ぜぇ、ぜぇ・・・」

大声かつ息継ぎ無しの早口でまくし立てたクロノは言い終わってから肩で息をします、大丈夫?

「ぜぇ、ぜぇ・・・はぁ、そう思うんだったらもう少し真面目にやってくれ、いつレジアス一佐がキレるんじゃないかって戦々恐々だったんだぞ?」

「あ、あの・・・ゴメンなさい、私なんかの為に・・・」

息を整えたクロノが呆れた声でそう言ったところでフェイトがおずおずと会話に参加します。

しかしその発言は非常に自分を卑下した感じです。

「・・・むぅ」

腹が立ったのでフェイトのほっぺを引っ張ります。

「ふひゃぁ!?」

「もう、私なんかとか言わないの!」

フェイトは、いやフェイトだけじゃなくて人間誰もがこの世界に一人しかいない掛け替えのない存在なんだから。

例えフェイトがアリシアのクローンだとしてもそれは変わらない、クローン=同一人物ではないんだから。

「だからフェイトはもっとワガママになっていいの、自分を大切にしていいんだよ?」

「う、うん・・・」

頷くフェイトはどこか少し嬉しそうです。

「それはそうと、いい加減手を放してくれないかな?」

「だが断る!フェイトのほっぺが柔らかいのがいけないんだ!」

そう言って私はフェイトのほっぺをプニプニする。

おぉ、すっごいモチモチです!

妹達のプニプニほっぺに負けずとも劣らない柔らかさ!癖になる!

「やばい・・・これはやばいぞぉっ!」

「ふにゃにゃ~!?」

そうやって私が慌てるフェイトに癒されていると・・・。

「裁判では偉くご活躍だったそうじゃないか?スカリエッティ執務官?」

正面から横やりが入りました。

正面なのに横やりってどうなんでしょう?

見れば前方5メートルくらいの位置に二人の男女が立っていました。

年齢は大体私やクロノと同じくらい、二人とも顔は整っていますがいかにも高慢ちきで鼻持ちならない感じのこちらを馬鹿にした感じのニヤニヤとした笑みを浮かべています。

「・・・どちらさまで?」

当然ながらこれっぽっちも面識はありません。

なので尋ねたら二人は「フンッ」と鼻で笑って来ます。

「僕たちを知らないなんて、戦闘機人の記憶力も大したことないなっ」

「仕方ないわよっ。文字通りただの機械ですもの、言われたこと以外できないのよっ」

何かすんげー馬鹿にされてるんですが、ここまで言われる事なんかやらかしましたっけ?てかホントこいつら何者よ?

「ヘンリー・クラウン三尉とフランソワーズ・アルファード三尉、二人とも第一艦隊の司令部付き魔導師だ」

「第一艦隊?ああ、漬物石か・・・」

私がそう言うと目の前の二人の綺麗なお顔が歪みます。

「その不適切な呼び方を訂正してもらおうか、甚だ不愉快だ」

「まったくだわっ!ほんと、一体何処の誰がそんな不敬な呼び名を考えたのかしら・・・!」

時空管理局本局次元航行部隊第一艦隊・・・非常に長くて言い辛い名前のその艦隊は次元世界の中心たるミッドチルダとそれに隣接する世界の警備、防衛を司る管理局の誇る最精鋭艦隊・・・。

と言えば聞こえはいいですが地上はともかく管理世界の中枢で悪さしようって言う悪党共がいるはずもなく、平和すぎるミッド近海に高価なお船をプカプカ浮かべているだけの暇人連中です。

おまけにやたらの見栄えを気にしているのか配備されているのはL級の最新モデルや近年就航予定のXV級の試作艦などの最新鋭艦ばかり・・・。

そのおかげでミッドから離れた世界や航路を警備する艦隊に回されるのは彼らのお古の型落ち艦ばかり・・・。

しかも近隣航路で事件が起きても『ミッドの防衛を最優先する』と言って航路警備部隊に仕事を丸投げと言う始末・・・。

文句を異言おうにも無駄に権力や政治力ばかりは強いのでこれまで何度も艦隊の解散や戦力縮小の声が上がっても実行されることはありませんでした。

結果前線の部隊からは蛇蝎の如く嫌われ石の様にミッドから動かないその姿と運用している人間が熟成を通り越して腐りきってるのを揶揄して漬物石と呼ばれるようになりました。

まぁ、それ広めたの私なんですけどね。

だってムカつくじゃないですか!

私達が汗水時たま血を流している間あいつ等ミッドの軌道上で仕事そっちのけで優雅にティータイムとしゃれこんでるんですよ!

しかも定時で退勤するアフターファイブ勢・・・私が何日も妹達に会えなくて何度泣いたと思ってやがるんだこんちくしょう!

「んで?その精鋭艦隊()の人たちが何の御用で?」

私がそう質問するとまたもや二人は「フンッ」と鼻を鳴らします。鼻づまりかな?

「あなたは及びじゃないのよ戦闘機人。用があるのは彼女よ」

そう言ってアルファードが向けた視線の先には状況が飲み込めていないフェイトの姿がありました。

「え?あ、あの・・・」

「フェイト・テスタロッサ、君は非常に有能だ。その魔力量、魔法スキル・・・いずれもその辺の木っ端魔導師とは格が違う。さすがはかの大魔導師プレシア・テスタロッサの作品だ」

クラウンのその言葉にフェイトの表情が陰り、私とクロノの眼光が鋭くなる。

このヤロウ、フェイトの事「作品」とか言いやがった・・・つまりフェイトを人じゃなくて物扱いしてやがる!

「それだけの性能だ、ぜひとも調査隊に欲しくてね・・・こうしてわざわざ足を運んだと言う訳さ」

そこでようやくコイツらの目的が分かりました。

時空管理局には大きく分けて三つの派閥が存在します。

一つは今管理下にある世界の治安の安定化を優先する統制派、お爺ちゃんズやレジアスのおっちゃんを始めとした主に陸の人たちがこれに当たります。

次に管理局の組織体制自体を見直し、より円滑な治安維持と管理外世界調査を行おうとする改革派、これはリンディさんやクライドさんと言った海・・・本局の一部の人たちの集団です。

そして最後の派閥・・・拡大派なのですがこいつらが非常に厄介でしてまだ見ぬ危険なロストロギアを捜索、回収するためにひたすら次元航行部隊の規模拡大を推し進める連中です。

言ってることは間違ってはいないのですが問題なのが艦隊増強のためには地上の戦力低下とそれに伴い治安が悪化してもかまわないと彼らが考えている事です。

もう気づいているとは思いますがクラウンとアルファードが所属する第一艦隊も拡大派の巣窟です。

そこで「あれっ?」と思ったあなたは鋭いです。

何故拡大派に属する第一艦隊がロストロギア調査を行わずミッド周辺で油を売っているのか?

簡単に言ってしまえば彼らはそんな危険な事したくないからです。

拡大派の中核を占めているのは高い魔力資質を持った高ランク魔導師エリート達・・・いわゆる魔導師キャリア組です。

彼らは横の繋がりを強くするためにキャリア組同士で婚姻を結び代々優秀な魔導士を輩出してきました。

それはやがて自分たちは魔法を使えぬ非魔導士や魔力資質の低いノンキャリア組より優れた存在なのだという一種の選民思想に行き着きます。

そんな魔導貴族達はロストロギア探索の様な危険な任務は下々の連中にやらせ高貴なる自分たちがやる必要はないと本気で思っているのです。

ではどうやってそんな連中がロストロギアの調査、捜索をするのか・・・そこで先ほどの調査隊が出てきます。

第一艦隊とは別の、管理外世界でのロストロギア調査を目的とした拡大派子飼いの外征部隊・・・そこに所属するのは魔導師キャリア組に取り入ろうと接近したノンキャリアや魔導師としては優秀ですが何らかの理由でキャリアに属さない魔導師達・・・主に恩赦や司法取引で管理局の嘱託魔導師となった元犯罪者たちです。

そんな部隊の為か非常に危険な任務に平然と投入され損耗率も管理局上位に入ります。

当然部隊内の規律は最低で管理外世界や新たに編入された世界で問題を起こすのもこの部隊に所属する局員たちが大部分を閉めます。

そんな懲罰部隊のような所にこいつらはフェイトを放り込もうとしてやがるんです!

一発殴ろうと踏み出すと、リンディさんの手が肩に乗せられます。

何故止めるのかと視線を向けるとリンディさんも怒りを押し殺しながら首を横に振る。

曲りなりにも本局の主流派・・・そんな連中と事を構えれば大変なことになります。

私一人ならともかく父さんにクイントさんとゲンヤさん、何より妹達の立場が悪くなったら目も当てられません。

だから暴力は無しです。

「ハァ・・・お断りだね」

それ以外なら容赦なく行使しますが。

「何ですって?」

「お断りだっていったの。大層なのは魔力だけで聴覚は不良品かな?耳鼻科行け耳鼻科」

「なっ!?」

驚きと憤怒に二人の顔が歪みます。

「フェイトは私の・・・遺失物管理部機動2課所属、ハルナ・スカリエッティの預かりだ、次元航行部隊の人間が口を挟まないでもらおうか。第一彼女の身の振り方は他でもないフェイト・テスタロッサ本人の意思で決めるもんだ、外野はすっこんでろ!」

私が口汚くまくし立てると我慢できなかったのかクラウンがデバイスを展開します」

「言わせておけば・・・!この出具人形がっ!」

そう叫んでデバイスを私に向ける。

しかしお忘れだろうか?ここは裁判所の外・・・ミッドチルダ官庁街のど真ん中だと言う事を。

クラウンの叫び声とデバイスを構えた姿に周囲を歩く人々が騒然とします。

「おやおや?いきなり人にデバイスを向けて来るなんて・・・お偉いエリート様はフォークとナイフの使い方は教わっても一般常識は教わらなかったのかな?」

「お、お待ちなさいヘンリーっ!さすがにそれ以上は・・・!」

「くっ・・・!」

フェイトを庇うように立ちながら私が周囲に聞こえるように言ってやるとアルファードのほうが慌ててクラウンを止めに入ります。

いやホントどうして私を目の敵にする輩は総じてこう沸点が低いのでしょうか?

とにかく今日の夕刊の見出しは本局所属のエリート局員の不祥事で決まりですね。

ハッキリ言ってデバイスを向けられてもこれっぽっちも怖いと感じられませんでした。

殺気も可愛いもんですし何より分かりやすいくらい短気なのでこうやって簡単に誘導できました。

本気で怖い輩って言うのは・・・。

「何の騒ぎだクラウン?」

こう言った手合いの事を言うんです。

突然割って入った第三者の声にクラウンとアルファードはそろって青ざめる。

私やクロノ、リンディさんも思わず身構えます。

クラウンたちの背後・・・そこに居たのは初老に差し掛かった細身の男だった。

身に纏うのは次元航行部隊の制服、階級章は大将、胸には略綬がズラリ・・・。

顔にはしわが刻まれているがその眼光とピンと伸ばされた背筋からは少しも老いを感じさせない迫力があった。

アルベルト・ガルシア・プリウス提督・・・次元航行部隊第一艦隊の指揮官にして拡大派の実質的トップです。

「儂はテスタロッサ嬢をスカウトしたいと言うから傍聴に同行を許可したのだがな・・・」

「あ、いえ・・・アルベルトおじい様、これは・・・」

怯えた様子で言い訳を口にしようとするクラウンたちから興味が失せたのか彼らを無視して私達の前に来ます。

「不詳の孫たちが失礼したな、スカリエッティ執務官。お嬢さんも、不快な思いをさせて申し訳ない」

「あ、その・・・大丈夫です」

そう言って頭を下げるプリウス提督にフェイトはおずおずと応えます。

「あー、とりあえずここは人目が多いですし、お暇してもよろしいでしょうか?」

クラウンたちならともかくこれほどのビッグネームが出てきては分が悪いです、ここはさっさと逃げるに限ります。

「ふむ、そうだな・・・では改めて後日謝罪の品を送らせてもらおう。ではな執務官、また会おう」

そう言って踵を返す提督と慌てて後を追う高飛車コンビ。

彼らが黒塗りの高級車に乗り込み走り去るとようやく金縛りが解けたかのように力が抜けます。

「はぁ・・・緊張した」

見ればクロノとリンディさんも胸をなでおろしています。

一見すると話の分かる好々爺の様なプリウス提督でしたがそれは表の顔です。

その正体は文字通り怪物です。

若かりし頃から次元航行部隊の参謀として権謀術数の限りを尽くし政敵たちを悉く破滅に追いやって今の地位に上り詰めた来た妖怪爺です。

かといって実戦経験が無いわけでは無く彼自身も非常に優秀な魔導士で数えきれない事件を解決したエース魔導師です。

ハッキリ言いましょう、もう二度と会いたくありません!

「まったく、プリウス提督にまで喧嘩を売るんじゃないかとヒヤヒヤしたぞ?」

失敬な!私だってdisていい奴と悪い奴の区別くらいできますよ!

「それにしても・・・緊張したらお腹すいたよ、帰ってご飯にしよう」

「そう言えば昨日からアースラの厨房で仕込みをしてたわね、何を作っていたの?」

ふっふっふ・・・よくぞ聞いてくれましたリンディさん!

「なんとなんと!ハルナお姉ちゃん特性カツ丼mkⅡなのです!」

「・・・ハルナ、またカツ丼作ってたのか?」

「カツドン?そう言えばアルフがアースラで食べさせてもらったって言ってたっけ・・・」

そう、あの事情聴取の時に出したカツ丼が不評だったのでずっと内緒で練習してたんです!

「だからすっごい上達したんだよ!きっと今度はアルフも泣いて自白してくれること間違いなし!」

それを聞いてクロノが「何を自白させるんだよ?」とツッコミを入れてきますが決まってるじゃありませんか!

私が冷蔵庫に入れておいた翠屋特性シュークリーム・・・その最後の一個!あれを勝手に食べた事を白状させるんです!

「あ、ゴメンなさい、あれ食べたの私・・・」

「・・・なっ、何だってーっ!!?」

まさかこんなところに真犯人がいたなんて!

叱るべきか許すべきか・・・シュークリームかそれともフェイトか・・・!?

苦悩の末に私は、フェイトを取った・・・。

ちなみにその日はかなり落ち込んでましたが翌日お詫びにと第一艦隊から送られてきた高そうなお菓子がとってもおいしかったので直ぐに元気になりました。

 

Side プリウス

「おじい様!何故あんな出具人形に頭を下げたのですか!?」

全く、少しは静かにすることが出来んのだろうか?

裁判所前を後にしてから一時間・・・本局に戻って来てからもヘンリーとフランソワーズの機嫌は悪いままだ。

「それで騒ぎを大きくして世間に更なる醜態をさらしたいのか?」

「そ、それは・・・」

やれやれ・・・こ奴らも優秀な魔導士ではあるのだがそれを鼻にかけ慢心しているのがいただけない、このままではいずれ足元を掬われるだろう・・・。

「あそこで矛が収められるなら頭の一つ等安いものよ、それより事件の資料は集まったのか?」

「は、はい。艦隊司令部に提出された資料はすべてここに・・・しかしおじい様が気になさるほどの事件でしょうか?首謀者のプレシア・テスタロッサは死亡、ジュエルシードも虚数空間に落ちたものを除いて全て回収済み・・・別段目を見張る情報は無いように思えますが・・・?」

フランソワーズの報告にため息が出る、二人とも大局が見えておらん。

「スカリエッティに重傷を負わせた魔導師がおっただろう?」

「はい、しかし最終局面で庭園の外に吹き飛ばされ生死不明と・・・」

「いや、予想だが間違いなく生きておるよ・・・」

重要なのはその魔導師・・・ガヤルド・チェンテナリオ・オプトーラの秘めたる力だ。

あれだけの膨大な魔力量を誇りながらこれまで我々管理局を始め管理世界のどんな組織にもその存在は知られていなかった。

更に襲撃の直前までスカリエッティやアースラに悟られなかったほどの隠密行動とその後の追跡欺瞞技術、そしてハルナ・スカリエッティ・・・戦闘機人とも互角に戦える戦闘技術。

よほど高度な訓練を受けたに違いない。

とてもではないが一個人で体得できるものでは無い、何らかの大きな組織が背後に存在するはずだ。

それも管理局を欺き続けてきたほどの力を持った組織がだ・・・。

「ガヤルド・チェンテナリオ・オプトーラの足取りを追え、なんとしてもこの者と接触するんだ」

その力が資金力なのか技術力なのか・・・それは分からんがもしそれを手にすることが叶えば我々の局内における権力基盤はより一層盤石なものになる・・・。

「すべてはこの世界の為に。その為ならば・・・」

その為ならばどのような手段もどれほどの犠牲も許容しよう・・・。




今回登場したプリウス提督は募集したキャラ名を使用しました、nagara1208さんありがとうございます。
他の名前もどんなキャラに使うかは決まっているのでお楽しみに。
ちなみにクラウンは先日ムカついたタクシーから、アルファードはネットで調べたDQN車から取りました。


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第25話「アニメ版トータルイクリプスのオープニングをどうしてINSANITYにしてくれなかったんだと今でも思っている件について」

25話になります。
今回は俗にいう「ナンバーズスーツ」の開発秘話になります。
どうでもいいけどナンバーズスーツでpixiv検索したら悪堕ち系多すぎw
それもこれもデザインしたスカ博士が悪いんや!あとギンガ。

そんなわけで25話、始まります。


「管理局の連中だ!」

「武器を取れ!応戦だ!」

四方八方から向けられる銃口・・・。

「テーマパークに来たみたいだぜ テンション上がるなぁ~」

そんな猛烈なラヴコールの中心で私はそうつぶやきます。

あ、おいーっす!ハルナ・スカリエッティだぜ!

・・・声が小さい!もう一度っ!

え?そう言うのはいいから話を進めろ?

ショーガネーナー、キョウダケダカンナ?(・x・)

現在私は自称過激派武装集団「こだわりのある革命家の集い」の検挙に来ています。

名前からしてもうお察しかと思いますがこの組織、かなりしょうもない連中で今回も「コンビニのエロ本コーナーを撤去すべきと言う差別主義者に対して正義を行使する」とか言ってミッドの行政区画を占拠しやがったんです。

内容に関してはアホですが各官庁や報道局を乗っ取る手際の良さはかなりの練度がうかがえます。

おまけにこいつら、なんとどこから手に入れたのやら旧暦時代の大量破壊兵器・・・要するに戦術核まで運び込んで要求が満たされなければ核を起爆すると言ってきたのです。

健全な男子たちの代弁者とは言えやってることはテロに変わりはなくテロには屈さない姿勢の管理局は速やかに鎮圧作戦を展開しました。

封次結界の中に彼らだけを閉じ込め、人質と犯人を切り離すのと同時に核の脅威を無力化。

然る後に私とゼスト隊が突入、テロリストたちの拘束に乗り出しました。

「おのれぇ・・・青少年の敵め!貴様らただで済むと思うなよ!特にそこっ!そこの人妻っぽい美人たちと幼女!」

最初の奇襲で数人やられたからでしょうか、クイントさんとメガーヌさん、そして私を名指しで罵倒するリーダー。

それを合図にこだわりのある革命家の集い・・・略してコダ革の構成員達は私達を取り囲むように布陣し、手にした武器・・・デバイスに火薬式や光線式のアサルトライフル、同サブマシンガン、それから何の冗談かブーメランを構えてるやつもいます。風雲拳の使い手かな?

彼らが発砲する前に私達は散会、三方に分かれて各々がテロリストに向かって突撃します。

「イヤー!」

「「「グワー!」」」

クイントさんは敵の中に突っ込んで周囲にいるコダ革メンバーをちぎっては投げちぎっては投げしていきます。

「ふっ、はぁっ!」

メガーヌさんはインゼクトを放って銃やデバイスを無力化しながらバインドでコダ革の連中を次々に拘束していきます。

私?私は・・・。

「ホント 戦争は地獄だぜ! フゥハハハーハァー!」

撃ちまくってます。

封次結界のおかげで民間人はおらず、周囲にいるのはクイントさん達を除けばコダ革のテロリストのみ。

「いいぞベイベー!逃げる奴はコダ革だ!逃げない奴は訓練されたコダ革だ!」

そして今このホールにいるコダ革の構成員はざっと50~60人。

つまり何が言いたいかと言うと・・・。

「こいつはいいぞ!どっちを向いても敵ばかりだ!」

と言う事です。

狙いをつける必要もありません、とにかく撃てば敵に当たる状態です。

そう言う訳でイェーガーを右に左に振り回し魔力弾を手当たり次第にばら撒きます。

「リーダー!あの人妻と幼女滅茶苦茶強いですよ!?」

「ぐぬぬ・・・数では圧倒しているというのに・・・こうなったらアレをやれ!」

「了解!選抜チームを投入します!」

敵の指揮官たちが何やら企んでいるようですからここは速攻で制圧にかかった方がいいですね・・・!

そう思い更に濃密な弾幕を形成したその時でした・・・。

「え?あれっ?魔法が効かない!?」

放たれた魔力弾はコダ革のテロリスト達に当たる前に消えてしまいました。

いや、消えたというよりも霧散した・・・?

「まさかAMF!?」

AMF・・・アンチ・マギリンク・フィールド。

リリカルなのはStrikersではおなじみの魔力結合を解いて魔法を無効化、弱体化させるかなり特殊な魔法。

それが私達の周囲に展開されているようです。

しかし、よくAAAクラスの魔法なんて使えましたね・・・。

「ふははははっ!どうだ!?夜も寝ないで昼寝しながら猛特訓を重ね身に着けた我等の必殺技だ!魔法に頼るお前たち管理局の連中にはどうすることも出来まいっ!さぁお前等っ!こいつらをやぁっておしまいっ!」

「ヒャッハーッ!」

様式美にあふれたリーダーの号令の下、コダ革構成員達は私達目掛けていっせいにルパンダイブしてきます。

「イヤー!」

「「「グワー!」」」

しかし直後に展開されるなんかさっき見た様な気がする光景・・・。

うん、AMFで魔法が無効化されてもステゴロ主体のクイントさんと戦闘機人の私には全く関係ないんですよね。

唯一ピンチ到来かと思われたメガーヌさんもAMFが展開される直前に召喚した召喚獣のガリューが無双しているのでこれっぽっちも危機が感じられません。

「・・・あるぇー?」

思っていたのと全く違う展開にコダ革のリーダーは珍奇な声を上げることしかできません。

結局AMFを展開していた魔導師を私がカラテ・ジツでしめやかに失禁せしめた私達は再び使用可能になった魔法でもって残ったコダ革御一行様を蹂躙するのでした。

 

機人長女リリカルハルナ

第25話「アニメ版トータルイクリプスのオープニングをどうしてINSANITYにしてくれなかったんだと今でも思っている件について」

 

「えー、そう言う訳で第一回新兵器開発会議を開催します!」

その日の翌日、私は家族を集めてそう宣言しました。

場所はスカ家のお茶の間、大きめのちゃぶ台を囲った姉妹達が怪訝そうな表情を浮かべます。

「えっと、急に呼ばれてきたけれど会議って・・・?」

困惑する姉妹達を代表してギンガが質問します。

「よくぞ聞いてくれました!じつは・・・」

そこから始まるお姉ちゃんの事情説明・・・。

今回の事件で起こったことを詳細に、かつ分かりやすく説明するだけで軽く30分を要しました。

「つまり途中で魔法が使えなくて大変だったから魔法に頼らない装備が欲しいって私に泣きついて来たんだよ」

だというのにその苦労を数十秒ですっげー簡潔に説明しやがる父さん。

まぁ大体あってるけどさ・・・。

「まあそんな感じだね。特に騎士甲冑がやばかったわ。攻撃は殴ればいいけど防御はあれとシールド頼りだから・・・」

実際の所攻撃に関してはそこまで苦労しませんでした。

今言った通り魔法が撃てなくてもステゴロで戦えばいいですし私の場合両腕の義手があるので攻撃手段はたんまり残ってます。

でも防御はそうはいきません。

AMFでフィールドもシールドも騎士甲冑・・・バリアジャケットも薄くなっていますから拳銃弾の一、二発位ならともかく連射されると防ぎきる自信がありません。

今回は何とかなりましたが今後同様の事態が起こった時、私はともかく他の局員の安全が不安視されてきます。

彼らだけでなく今後管理局に就職するかもしれない妹達が安全に勤務できるように今の内に装備を整えておきたい・・・。

「なので魔力に頼らないパワードスーツみたいなのが欲しいからみんなも意見をちょうだい!」

私のお願いに妹達も納得したのか快く頷き、第一回新兵器開発会議がスタートしました。

とは言えみんなの意見は十人十色です。

「魔力に拠らない防御となると装甲で全身を覆う必要があるわね」

「だがそうなるとかなりの重量になるぞ。姉上ならともかく一般局員の筋力で動かせるか?」

「そうなるとパワーアシストも必要です」

「でもそのエネルギー源は?魔法は使えないのよ?」

真面目に議論する妹達・・・。

「それでね、目からビームだすの!」

「ドリルもほしーッス!」

「その前に合体しないと!」

思い思いのアイディアを言いながら完成図を描く妹達・・・。

「ところで、このプラズマキャノン・・・こいつをどう思う?」

「すごく、大きいです・・・」

会議そっちのけで┌(┌ ^o^)┐<ホモォ)談義してる妹2名・・・そう言う事は部屋でやんなさい。

「さて、意見も出尽くしたし検証していこうか」

そう言って父さんが部屋に運び込んだホワイトボードに開発プランを書き込んでいく。

「えー、まず最初に言っておくが今回のお題がパワードスーツなので変形&合体等のギミックは没とするよ」

父さんがそう宣言すると妹達の一角・・・提案を没にされた年少組の子達から不満の声が上がります。

「え~!?合体かっこいいのに!」

「まぁ、待ちなさい。別に今回は没にすると行っただけだから。そのうちハルナイカロスとかVRVハルナとかになるから」

・・・え?なるの?

父さんに諫められたスバルやセインたちは渋々座ります。

ねぇ、ホントに私合体するの?てかナニと合体させるつもりなの!?

「と言う訳で残った意見を総合してパワードスーツのプランは大きく分けて二つになった。一つは全身をアーマーで覆った文字通りのパワードスーツだ」

結局父さんは答えてくれず会議は進みます。

「と、言いたいところだが残念ながらパワードスーツ型は不採用だ」

「「「「ええ~!?」」」」

開始早々の不採用宣告にウーノやトーレと言ったこれを提案した妹達から大ブーイングです。

「いやね、確かに防御力とか強そうな見た目から相手に与えるプレッシャーとかいろいろメリットはあるんだけどね・・・」

以下、父さんの説明した内容のイメージです。

 

鳴り響く警報、発せられる事件発生の報。

「出るよイェーガー、スーツの準備を」

『了解、ドレッサーマシン展開』

台座の上に私が乗るとその周りの床からアームがせり出します。

アームはそれぞれ掴んでいたパーツを私に取り付けていく。

足から始まりすねとふくらはぎ、膝、太もも、下半身がメタリックなアーマーに覆われると次は天井からアームが下りてきて上半身にアーマーを取り付けていきます腕、肩と同時にお腹や胸に背中・・・。

胴体のアーマーがロックされると胸に埋め込まれた追加動力・・・ジュエルシードリアクターが青白く輝きます。

最後に頭もアーマーに覆われた私は脚から脚の小型ジェットエンジンを吹かし飛翔、現場に急行するのでした。

 

「こんな風にアーマーの装着には専用の大型設備が必要になるんだ、それを地上の全部隊に配備するとなると明らかに予算が足りない・・・」

いつの世も行政機関の最大の敵は予算と言う事ですか・・・。

「じゃあさドクター、事件のいっぱい起きる場所でだけ使うのはダメなの?」

父さんが説明するとセインが質問してきます。

原作でもそうですがこの子結構確信を突いた質問するあたりかなり思慮深い子なんです。

メンタルが子供っぽいから皆からはアホの子扱いされてますが・・・。

「ああ、特殊部隊や強行係みたいな重犯罪専門の部署に優先的に配備することも考えたんだけどね・・・それそれで問題があってね・・・」

「?」

そこから再び父さんの説明が続きます。

 

最後の犯人がスタン弾をくらって崩れ落ちる。

「確保っ!」

倒れた犯人を陸士隊の局員たちが拘束します。

「ふぅ、これにて一件落着。あ~、帰ってアイス食べよ」

後の事後処理を陸士隊の人たちに任せて帰り支度を始めると父さんから通信が入ります。

『やぁ、ハルナ』

「おりょ?どうしたの父さん?」

帰りにお使いでも頼むのでしょうか?

昨今日本では批判したいだけマン達が五月蠅いようですがミッドでは犯罪抑止の観点から局員の制服での買い物が公式に認められています。

ただ、この格好で買い物行ったら店員もお客さんもドン引きでしょうが・・・。

「あ~、実はだね、ちょっと悪い知らせなんだが・・・ドレッサーマシンが壊れた」

「・・・はぁっ!?」

軽く言ってくれますがコレ結構深刻な事態ですよ!

何せ鉄火場でドンパチするための装備です、多少の衝撃で脱落やらしないようにアーマー総着用設備・・・ドレッサーマシンのアームでガッチリ固定されています。

なので脱ぐためにはそのドレッサーマシンで固定を解除して取り外さないといけません。

それが壊れたという事は・・・。

「どうすんの!?あれ使わないとこのスーツ脱げないんでしょ!?」

『ああ、悪いが脱ぐことはできん』

「えぇー!?じゃあ早く機械の修理を・・・」

『部品が無くてね、メーカーに問い合わせたら在庫もないそうだ』

「ファッ!?」

アーマーもそうですがドレッサーマシンもえらい高額です。

なので配備は一部の部隊に限られその生産数は非常に少数です。

当然補修部品等も値段の関係から少なく、何より今回故障したのはめったに壊れることのない部分だとかで在庫の補充が行われていなかったのだとか・・・。

『今から急いで作るそうだけど複雑な部品でね、完成までざっと三か月くらいだそうだ・・・』

「いやいや、ちょっと待って!じゃあなに!?私三か月このままなの!?」

『申し訳ない、そうだ・・・』

そんな某鉄男のパチモンの登場人物みたいなセリフを吐く父さん。

結局その後、仲のいい魔導師総動員でブレイカーしてもらい、ボロ雑巾のようになりながらも何とかこれを脱ぐことが出来ました。

ちなみに壊したアーマーの修理費は私の給料から惹かれることになり、それを知った私はかなり本気で父さんをボコしました。

 

「とまぁ、そう言う事だ。ちなみにアーマー着てる間はまともに食事も出来ないよ」

「・・・これはふさいようだね」

「うん、ふさいよう」

「ふさいようッス」

ご飯が食べられないと聞いた途端妹達は速攻でパワードスーツ案を不採用としました。

「分かってくれて嬉しいよ。じゃあもう一つのプラン、ヒーロースーツの説明に入ろう」

「「「「「ヒーロースーツ!?」」」」」

父さんが追う言うと年少組の妹達が目をキラキラさせます。

皆ニチアサ大好きだもんね。

「あー期待してるところ悪いんだけどこのヒーロースーツ、ニチアサ型じゃなくってアメコミ型なんだ」

それを聞いて妹達がまた「えー?」という。

「うん、気持ちは分かるけどね・・・ライダーも戦隊ヒーローも一瞬で変身するじゃん?あれね、どうやってもバリアジャケット以外で再現出来なかったんだよ・・・」

むぅ、言われてみれば確かに・・・一瞬で「蒸着!」とか魔法でないと無理ですもんね。

とは言えパワードスーツがさっきのアレですから・・・こっちは一体どうなる事やら・・・。

「で、このヒーロースーツなんだが・・・まずさっきのパワードスーツに比べると格段に着替えやすくなってる。それにスーツだから持ち運びにも便利で近くで何かあったらその場で着て駆け付けられるよ。ただその分肝心の防御力がガッツリ下がったけどね」

まぁ、ガチの合金プレートと防弾繊維を比べるのは無理があるよね。

「それに着やすくなったと言ってもあくまでパワードスーツに比べたらだ・・・」

 

どんより曇り空のクラナガン・・・そのダウンタウンの路地裏から悲鳴が聞こえる。

「誰かっ!強盗だっ!たすけ・・・」

「うるせぇ!いいからその金を渡しやがれっ!」

通りから見れば路地で見るからにガラの悪そうな男が中年男性に拳銃を向け、彼が手にした給料袋をひったくろうとしている。

「・・・悪党め、そうはいかないぞっ!」

目の前で平然と行われる悪行に私の正義の炎が燃え滾る!

そして私は走り出した。

荘厳なファンファーレが流れ出すのと同時に都合よくあった電話ボックスに入る。

スモークガラスのせいでハッキリ中が見え無いのでガラス越しに浮かぶシルエットだけでご覧ください。

上着を脱ぎ、下のシャツにも手をかける。

ジーンズも脱ぎ捨てると持っていたボストンバッグを開き中からスーツを取り出す。

ファスナーを下ろし大きく開いて足を入れ・・・入れ・・・クソっ!つっかえた!

狭い電話ボックスの中で四苦八苦しながらようやくつま先まで足を入れホッと一息・・・て、まだ片足だった。

急いでもう片方の足も・・・ああもぅ!また中でつっかえる!

なんとか両足を入れてスーツを腰まで引っ張り上げ今度は袖に手を・・・イテっ!電話ボックス狭過ぎるよ!

反対も中で引っ掛かりながら袖を通し同じくらい電話ボックスの壁に体をぶつけながらなんとかスーツを着終え、ファスナーを上げる。

ようやく手が空いたので受話器を取り、小銭を入れダイヤルをプッシュ。

「・・・あ、セッテ?お姉ちゃんだけど父さんいる?・・・え?いない?じゃあ帰ったら伝えといて、このスーツメッチャ着づらいって。うん、それじゃあ」

受話器を戻してからベルトやらホルスターやらをガチャガチャと・・・

『バーンっ!』

「はっ!?・・・まだ間に合うまだ間に合う・・・」

自分にそう言い聞かせながらベルトを締め、着替えが終わったので電話ボックスの扉を開け外に躍り出る。

「ワォッ!イカしたスーツじゃなっ!」

出るとすぐ近くにはグラサンをした白いお髭のおじいさんが・・・。

「おじいちゃんッ!それ以上はダメっ!なんか色々怒られるから!」

そう言って慌ててお爺さんを画面の外に引っ込めさせてから何やら静かになった路地裏に駆け込んで・・・!

 

「それ絶対間に合ってないですよね?」

「うん」

ウーノのツッコミに父さんは軽く頷く。

「それは電話ボックスの中で着替えたのが原因では?」

そうは言うけどねトーレ、さすがにお外で服を脱ぐのは嫌だよ。

「それ以前に服の下に来ていればよかたんじゃ・・・」

アッハイ、そうだねギンガ。おもいっきし正論だ。

「と言うか最後に出てきたお爺さんって・・・」

おっとディエチ、それ以上はいけない・・・。

ていうか何で俺ちゃん風味なの?

ヒーロースーツならそれこそアメリカのケツとかダーマとかほかにも大勢いるじゃん!

そこであえてあのお下品ヒーローをチョイスする辺り父さんの悪意を感じるよ。

まぁそんなわけでどちらも一長一短・・・若干ヒーロースーツの方が優勢ではありますがこれと言った決定打はなく第一回新兵器開発会議はお開きとなりました。

 

「はぁ~、当面は騎士甲冑のままか~・・・」

その日の夕方、お風呂から上がった私は部屋でため息をつきながら布団にダイブします。

折角皆のピンチに秘密兵器もって颯爽と登場しようと思っていたのに・・・。

「やっぱりネックは着づらさか・・・」

急いで出動しなきゃいけないのに着るのに時間がかかってたらどうしようもありませんから。

かといって来たのはいいけど脱げなくなるのも嫌です。

なんとか楽に着替えられる戦闘服ってないでしょうか・・・。

「・・・あ、そう言や今日TEの再放送の日だ」

ゴロンとうつ伏せになりリモコンに手を伸ばす。

地球に侵略してきた地球外起源種と戦争するという某ゲームの外伝作品・・・。

確かに好きな作品なんですがどうせなら外伝じゃなくって本編の方アニメ化して欲しかったです。

テレビのスイッチを入れる。

『ピロピロピロピロ ゴーウィゴーウィヒカリッヘー』

「あとこのオープニングどうにかならなかったのかなぁ・・・」

そうぼやいている間にオープニングは終わる物語が進む。

ロッカールームで主人公の相棒の女の子の着替えシーンが・・・

「ん?んんっ!?これだぁっ!」

雷が落ちた様な衝撃と共に舞い降りてきた天恵に私は布団から飛び起き父さんの研究室に駆け込みました。

 

「はい!と言う訳で第二回秘密兵器開発会議を行います!」

声高に宣言する私。

場所は昨日と同じスカ家のお茶の間。

ですが今回は昨日と違い私の隣に白い布が被せられた何かが置いてあります。

「はいっ、ハル姉!新兵器開発会議邪無いんッスか!?」

「うむ、いい質問だウェンディ隊員。それでどうして名前が違うかだけどね・・・こまけぇこたぁいいんだよ」

「了解ッス!」

その翌日開かれた会議・・・昨日やったばかりで進展がない筈なのに会議を行う事に妹達は皆怪訝な顔をしています。

「ねえ、昨日は結局どっちの案にするかも決まらなかったけど・・・」

やっぱり気になるのかディエチが皆に先駆けて聞いてきます。

「うん。じつはね・・・昨日新スーツが完成しました!」

「「「「「「「・・・ええ~っ!!?」」」」」」」

驚く妹達。

そりゃそうですよね。

機能全く進展が無かったんですから、完成はずっと先だと思っていたんでしょう・・・。

「昨日ハルナが面白いアイディアを思いついてくれてね、一晩で完成させました!」

そんな私のプランを立った一晩で形にして見せる父さんはやっぱり天才です。

とは言えやっぱり変態かつマッドな部分が全てを台無しにしていますが・・・。

「そんなわけで見よ!昨日観たロボットアニメのパイスーから思いついた私達専用新装備!その名もナンバーズスーツだ!」

そう言って私は横に置いてあった物体・・・それにかけられた布を取り払いました。

「なっ・・・!?」

「これが・・・」

露わになったソレ・・・マネキン人形に着せられたスーツを見て言葉を失う妹達。

青いスーツはウエットスーツの様に体を全部覆うタイプのボディスーツ。

肩と腰にプロテクターの様に取り付けられた耐魔法フィールド発振装置。

背中にはそれらを動かすエネルギーを供給する為のパワーパック。

・・・うん。みんなご存知、リリカルなのはStrikersで妹達が着ていたナンバーズ用の戦闘服です。

「どお?カッコいいでしょう!でもね、カッコいいのは見た目だけじゃないんだよ」

それを証明するために私はさっそくスーツに着替えます。

少しゆったり目のスーツは某野菜な戦闘民族の戦闘服よろしく引っ張れば何処までも伸びる伸縮性のおかげで楽々着られます。

着終わったのをセンサーが確認したのかスーツが縮み、見事な乳袋が・・・できません。

畜生、やっぱりこの幼児体系じゃ無理か・・・今後!今後に期待と言う事で!

「と言う訳で完了!どうだ!カッコいいだろう!」

腰に手をやる古き良き光の戦士なポーズをとる私。

そんなカッコイイお姉ちゃんに対し妹達の反応は・・・。

「「「・・・なんかエロい」」」

辛辣でした。

「何でわざわざ体のラインが出るようなデザインにしたんですか?セクハラですよ?」

うぐっ!?

「ナンバーズスーツという事は私達が着るのが前提なのか?嫌だぞそんな破廉恥な恰好」

ぐふぅ!?

「そんなカッコで人の前に出るのヤダ。はずかしいよ」

ぐわぁぁ~!

やめてー!特に年少組、そんな心底嫌そうな愛でお姉ちゃんを見ないでー!

馬鹿な、リリカルなのはStrikers本編では何のためらいもなくこのスーツ着てたのに!?

「ハルナ、このSSのタイトルを思い出してごらん?」

「えっ?それや機人長女・・・はっ!?」

そうだ、これ魔法少女リリカルなのはじゃない、機人長女リリカルハルナだ!

だから父さんは悪の科学者なんてやってないし妹達も普通に暮らしているから感性も普通の女の子なんだ!

故に体のラインが丸見えなこのスーツを誰も着たがらないのです!

「チクショウ・・・カッコイイと思ったのに・・・!」

「元気出して姉さん、私はこのスーツいいと思うわよ?」

「そうですよ姉様、これ有明で着たら絶対話題騒然ですよ!」

床に突っ伏した私を慰めるドゥーエとクアットロ。

うん、慰めてくれるのは嬉しいけれど何か釈然としない。

あと、尻を撫でるんじゃありません。

その後、高い防御力を有し、なおかつ魔力を必要としないと言う理由で一応管理局に売り込んでみたのですが妹達と同じ理由で不採用。

それから10年後・・・具体的に言うとStrikerS編の辺りにとある理由で高い評価を得ることになるのですがそれまで私と一部の妹を除いて誰も着ようとしませんでした。

え?私以外に誰が着るんだって?

うん、ドゥーエとクアットロが強化装備っぽく手直しして有明で着てます。




うん、今更ながらドゥーエとクアットロのキャラ崩壊ぶり・・・w
二人の設定読む限りこうなる未来しかなかったんや!

次回、ハル☆スカと上二人が大暴れ!
理由?有明行からだYO!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第26話「ニコ動に動画投稿したよ!観てね!コメントしてね!マイリスしてね!・・・え?タイトル?あーはいはい、コミケ回その②」

タイトルの通りニコニコ動画に動画投稿しました。
マブラヴオルタ・ネイティヴTRPGのリプレイ動画です。
結構渾身の出来なので観てください。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm36971108
・・・あれ?これって利用規約に違反しないのよね?


遂に今年もまたやって来た・・・。

あまたの豪傑たちが集い、おのが欲望をぶつけ合う祭典・・・。

ある者は勝ち取り、ある者は夢破れ、ある者は戦場に果てる。

そんな場所に何故わざわざ足を踏み入れるのか?

決まっている、それが私の存在理由だからだ。

私が愛するもののために焼けるような太陽の下で、凍えるような風の中で命の炎を燃やしている間だけが私を私でいさせてくれる。

あそこに立たなかったらもう私は私ではいられない。

私が死ぬのはあの戦場以外にありえ・・・。

「あー、ハルナ?明日コミケ何だから早めに寝なさい」

「はーい」

てなわけでハルナお姉ちゃん二度目のコミケ、参加します。

 

機人長女リリカルハルナ

26話「ニコ動に動画投稿したよ!観てね!コメントしてね!マイリスしてね!・・・え?タイトル?あーはいはい、コミケ回その②」

「我々は半年待ったのだ!」

「おーっ!」

「ジーク・コミケ!」

AM,09:30

開催30分前となりテンション上がった私のジオン残党的な演説に周りの参加者さん達がノってくれます。

「すみませーん!騒がないでくださーい!」

「「「アッハイ」」」

そんな一堂にスタッフが注意するとみんな素直に従います。

さすがコミケ参加者、訓練が行き届いていますね。

「有明か・・・なにもかも、皆懐かしい・・・」

そしてやっぱり今年も参加している翁のじいちゃん、持っているカードのイラストの女の子が前回と違う子になっているんですが気にしてはいけません。

1クールごとに嫁がいる人だっているんですから。

それから大人しく待つこと30分・・・

『おはようございます・・・これより、コミックマーケットを開催します・・・』

その放送が行われるとそれを今か今かと待ち望んでいた私達はいっせいに万雷の拍手で迎えます。

動き出す人の群体、既に日は高く上り私達参加者に容赦なく照り付けます。

気温もどんどん上りエアコンは処理容量をとっくに超え館内には人の熱気で雲が出来ています。

「そうっ!それ二部づつで!こっち!?今西館行の階段上り終わったところ!」

「はーい!走らないでー!走るなーっ!」

「現在新刊一人一限となってまーすっ!」

しかし誰一人としてこの異様な熱気に怯む者はいない。

一般参加者は人の波頭を超え進み、サークル参加者とスタッフはその激流を捌いていく。

「・・・・・・っ!」

そんな人の濁流をかき分けながら私は進みます。

普段は平均より小柄で悩んでいるこのちんまいボディですが今回に限っては人と人の隙間に滑り込むのに重宝します。

ちなみに今回ばかりはおふざけは無しです。

何て言ってもコミケは文字通り戦い、生死がかかった闘争なのですから。

そうして私はなおも歩みを進めます。

僅かにできた人の隙間に体をねじ込み、時には小太りなお兄さんを盾にし、列移動で足止めされては焦る心を落ち着かせ、迷子が無事見つかったという放送に拍手をしながらついに私は目的地にたどり着きました。

「新刊2部ください!」

「・・・すみません、完売です」

・・・私はその場に崩れ落ちました。

 

「やぁハルナ。成果は・・・あー、ダメだったみたいだね?」

某しわしわピ●チュウみたいになってる私を見て全てを察した父さん。

現在私達は集合場所にしていたコスプレ広場前に来ています。

「うぅ・・・なんで、なんで私が来る直前に完売するのさ・・・」

「あ~、一番ダメージでかいパターンだったか・・・まぁ元気出しなさい、あそこのサークルは委託販売もしてるから、そのうちアキバの同人ショップにも出回るよ」

「そうだけどさ、そうなんだけどさ・・・」

やっぱり秋葉で買ったのと有明で勝ち取ったのだとそれだけで価値が違ってくるじゃないですか!?

「・・・そういやドゥーエとクアットロは?」

今回は私と父さんに加えてドゥーエとクアットロの貴腐人コンビも参加しています。

「ああ、ドゥーエはサークルの方が盛況らしくてね、しばらく離れられないそうだ」

いつの間にかこっちに腐女子友達を作っていたドゥーエはサークルの売り子として参加、同時に今回描いていた本も出したみたいですがどうやらかなり売れてるみたいです。

「クアットロは・・・ああ、いた。あそこ」

そう言って父さんが指さした方を見れば・・・。

「みこーん☆」

キャス狐がポーズ取ってました。

「アレ?」

「そう、アレ」

アレこと玉藻の前のコスプレをしたクアットロはごついカメラを抱えたお兄さんたちの中心でキャピキャピなポーズをとっています。

コスプレ衣装作ってるのは知ってたけどキャス孤だったんだ、中の人繋がりかな?

「初参加ってことで気合入れて作っていたからねぇ、とは言えさすがに手間がかかったから次回はもっと簡単なコスプレにするって言ってたよ」

そりゃあの着物作るのは骨が折れるでしょう・・・。

そうしている間も撮影会は続きます。

って、おい最前列のおっさん、なにカメラ地面すれすれで構えて下からあおり入れた様なアングルで撮影しようとしてるんですか?

シャッターボタンが押されようとしたその瞬間、クアットロの履いた厚底下駄がローアングルおじさんの顔面をしたたかに踏みつけます。

「オホホホ・・・イケナイ子ですねぇ~?そう言う事する子はキリキリ呪うゾ♪」

嗤いながら下駄をグリグリを捻るクアットロ・・・てかローアングルおじさん何気に嬉しそう・・・。

他の撮影者さん達もクアットロの太ももを拝んでるし・・・っておいっ!マネーカードをお供えするんじゃありませんっ!何が呼び符だ!?

「・・・父さん?アレ令呪(お姉ちゃん権限)で没収できるかな?」

「どうだろうねぇ?今のクアットロ抗魔力高そうだし・・・」

・・・はぁ、何か本が買えないのも相まってすんげー疲れました。

「先帰る・・・」

一応他の欲しかった本は手に入ったので先に戦場から離脱することにします。

「おや?いいのかい?」

「もうなんかメンタルがボドボドだよ。かえってすずかの家のヌコに癒されてくる」

もうお気づきかと思いますがコミケ期間中私は父さん達と別行動ですずかの家にお世話になってます。

コミケで地球に行くって連絡したら「是非うちに泊まって」って誘われました。

・・・何だろう、この順調に外堀が埋まっていく感覚は?

とにかく今はモフモフ分の補充が先決です。

未だ売り子をやってるドゥーエにも先に帰ると念話で連絡を入れて私は国際展示場駅に向かって歩き出しました。

 

「あ゛あ゛~、モフモフ~」

「ニャー」

抱きしめた子ぬこに頬擦りします。

「ハルナちゃん顔が蕩けてるよ?」

すずかの家にお邪魔した私は案内された部屋に買った本を丁寧に放り込むと大きなお庭でゴロゴロしているぬこの群れに突撃したのでした。

庭のテラスでティータイム中だったすずかがヘヴン状態の私に苦笑する。

しっかし、すずかの家のぬこ達は本当にカワイイです。

アリサの家のでっかいゴールデンレトリバーも捨てがたいですが今回はこのちんまい子ぬこに癒されていたいです。

「しっかし、この子が30メートルサイズに巨大化したのか・・・」

そう言って私は抱きしめていた子ぬこを抱き上げます。

「ニャー」と大てはしゃぐ子ぬこ・・・実はこの子、16話で話した大きくなりたいとジュエルシードに願って巨大化したぬこなんです。。

想像してみてください、「ニャー」と鳴きながら愛くるしい表情ですり寄ってくる30メートルのモフモフ・・・。

「畜生!マジでどうしてもっと早く来れなかったんだ!」

「うん、ハルナちゃんが何を考えてるのか大体わかったよ」

悔しさのあまり絶叫した私に驚いて逃げた子ぬこを抱き上げながら呟くすずか。

「それにしても子猫が巨大化するなんて本当に本の中のお話みたい・・・あっ」

そこまで言いかけた所ですずかの声が止まります。

「すずか?」

「ゴメンねハルナちゃん。図書館で借りた本、今日が返却期限日だった」

「そうなの?そりゃ大変だ」

借りた本はちゃんと期日までに返さないとね。

所で図書館に延滞金とかってあるのかな?

「それじゃあ私も一緒に行っていい?図書館とか最近はちっとも行かなかったから」

近頃は忙しくて無限書庫での資料集めも他の人に押し付け・・・任せっきりでしたから。

「ホントっ!?うんっ、行こう!」

私がそう言うと嬉しそうに頷くすずか。

外暑いですもんね、そんな中一人でお出かけ何て嫌ですよね・・・。

うん、わかってる・・・わかってるよ?

私と一緒なのが嬉しいのは。

でもそれ認めちゃうのってなんかもう色々手遅れになっちゃいそうじゃないですか!?

昨日の夜も一緒に寝るときとか顔赤らめてだきついてくるんですよ!

三か月くらい後に赤ちゃんできちゃったとか言われたらどうするんですか!?

「ハルナちゃん?」

「・・・うん、行こうか?」

そしてお姉ちゃんは考えるのを止めた。

図書館かー、文庫本置いてあるかなー?

え?現実逃避するな?現実と向き合え?できるかっ!

そんなに言うならいっぺん愛が重いヤンデレ美少女と交際してみなさい!絶対やべーから!

え?作者は交際したことあるのか?作者の嫁はK少尉一択だ!(多分)

「ハルナちゃん、図書館では静かにしなきゃダメだよ」

「アッハイ」

読者と戦っているうちに気付けば図書館に到着していました。

右を向いても本棚、左を向いても本棚・・・。

いずれの段にもずらりと並べられた本・・・。

ほのかな紙とインクの匂いが鼻孔をくすぐり私の心を和らげます。

なんだか読〇さんの気持ちが分かった気がする。

「う~ん、何がいいかなぁ~?」

本なんて最近はマンガとラノベと薄い本しか読んでいないからどんな本が面白いのか分かんないです。

「やっぱりすずかが戻ってきてから聞いてみようか・・・おや?」

そう言いながら隣の本棚を除いてみると先客が一人いました。

「んっ、よっと・・・」

栗色の髪の、脚が悪いのか車いすに座った女の子が本に向かって手を伸ばしています。

しかし手が本に届かず四苦八苦しているようです。

これは、手伝った方がいいでしょう・・・。

「あっ・・・」

車いすの子の隣に来た私は彼女が伸ばした手の先にある本を取りました。

「探し物はこれですか?おぜうさん?」

「あっ、はい。ありがとうござ・・・」

そう言って私が本を差し出し、女の子がそれを受取ろうとして目が合うと・・・。

「「あ・・・」」

それは以前海鳴病院前で出会った車いすの関西弁美少女でした。

 

「そっかー、ハルナちゃんって言うんか。そう言えばバスには間に合ったん?」

「うん、ちゃんと間に合ったよ。次のバス停で・・・」

それから私は数か月振りの再開を果たした車いすの美少女・・・八神はやてと友好を深めていました。

「・・・は?いや、ちょっとまって・・・それじゃ何か?次のバス停まで追いかけていったん?」

「え?そうだけど?」

「いやいやいや・・・おかしいやろ?何で人間がバスに追いつけるんや?」

おかしいかな?士郎さんとか恭也さんとか、あとクイントさんや妹達も普通に走ってバスに追いつけると思うんだけど・・・。

私がそれを口にするとはやては何故か頭を押さえて俯いてしまいました。

「え?何?私がおかしいんか?普通の人は皆走ってバスに追いつけるんか?」

はやてが何やら至高のスパイラルに沈んでいると反対側からすずかが声をかけてきました。

「お待たせハルナちゃん。本返してきたよ、折角だからこれから一緒に翠屋で・・・」

そこで固まるすずか。

「お帰りすずか。翠屋でしょ?一緒に行こう、ちょうどなのはにも渡すものがあったしね」

地球に行くと言う事でフェイトから手紙とビデオレターをなのはに渡して欲しいと頼まれていたので正に渡りに船です。

「・・・・・・」

しかしすずかは一向に固まったままです。

よく見れたその視線は私の隣・・・未だうんうん唸っているはやてに向けられています。

「すずか?おーい、すずかー?」

「・・・ハルナちゃん?」

あ、やっと反応してくれました。

「もう、どうしちゃったのさ?急に固まっちゃったから・・・」

「・・・その女(こ)、誰?」

 

Side はやて

「いやー、ホンマビビったわ」

「うぅ、だってぇ・・・」

あれから図書館を後にした私らはハルナちゃんと後からやって来たすずかちゃんの行きつけの喫茶店、翠屋に場所を移してお話の続きをしていた。

しっかしすずかちゃん・・・第一印象は間違いなくヤベー奴やったわ。

瞳孔の開ききった目で私の事ガン睨みしてるし、口の端に髪の毛加えてるのが恐怖を一層引き立てるんよ。

正直に言うで、少しちびった・・・。

ハルナちゃんが事情を話してくれたから事なきを得たけれど最悪刺されてたで、間違いなく。

「そう言えばハルナちゃんとすずかちゃんって付き合ってるん?」

そこで疑問に思うんはどうしてすずかちゃんはあそこまで病んだ目でうちを睨んできたのかや。

それも翠屋に着くまでの間にある程度知ることが出来た。

すずかちゃんなんやけど、さっきからハルナちゃんにベッタリなんや。

しかも、えらい熱っぽい目でハルナちゃんの事見とるし・・・。

恋愛ものの小説とかでよく見る熱い眼差しって言うのはこういうのを言うんやな。

実際の所どうなのか?それを確かめるために質問してみたけど・・・。

「えぇっ!?そんな、付き合ってるなんて・・・エヘヘっ」「ちがいます」

「あっはい・・・」

二人の反応は正反対やった。

顔を赤らめながらイヤンイヤンという感じに身体をくねらせるすずかちゃんと、淡々と無感情に否定するハルナちゃん。

うん、これ完全にすずかちゃんの片思いや。

「・・・ハルナちゃん」

「うぇっ!?なっ、ちょっ・・・!そ、そんな泣きそうな顔してもダメだからねっ!前から言ってるけど私とすずかは女の子同士でしょうっ!?」

かと思ったらこの狼狽え様・・・ハルナちゃんも心のどこかではまんざらでもないみたいやな。

これは、すずかちゃんがグイグイ行けばワンチャンあるんとちゃうか?

ハルナちゃんの言動がやんちゃな男の子っぽい雰囲気のせいか二人の関係が普段引っ込み思案だけど急に大胆になる彼女とそれにドギマギしてる彼氏に見えてきたわ。

数多くの恋愛小説を読んできた恋愛マスター(自称)としては二人の行く末を応援せざる負えないわな。

「・・・ところではやて?なんでそんな某狸型ロボットがするような温かい目(昭和版)でこっちをみてるの?」

「え?平成版の方がよかったん?」

「怖いわっ!」

私が温かい眼差し(昭和版)を送っていたら速攻でキレッキレのツッコミを入れてくるハルナちゃん、この子できるわ・・・。

そんな二人のラブコメを挟みながらおしゃべりは進む。

二人がこの翠屋の常連さんな事とかお店のマスターの娘さんが二人の親友な事とか・・・。

ハルナちゃんのお父さんがスゴイお医者さんだって聞いた時、私は無意識に自分の脚に手を伸ばしていた。

物心つく前から動かなかった私の脚・・・きっと治ることは無いって半ばあきらめていた。

なのに今になってハルナちゃんのお父さんならもしかしたら・・・そう思ってしまったのはなんでやろう?

・・・やっぱり皆が来たからかな?

ずっと一人で暮らしてきた私にできた新しい家族・・・。

あの子らと暮らしているうちに少しずつ元気をもらった。だからやろうか?

脚を治して皆と一緒に歩きたい・・・そんな風に心のどこかで思うようになっていた。

「ん?はやて?どしたの?」

「ふぇっ?ううん、なんでもないんよ・・・」

うん、今は考えるのは止めよう。

いくらハルナちゃんが気さくやからって今日あったばっかりでこんな事相談するのは失礼やろ。

だからこの話はおしまいや。

そのあとも楽しくおしゃべりは続いて結局ハルナちゃんがお店のメニューを端から端までコンプリートするまで続いた・・・って食べ過ぎやろ!?どんだけ胃袋でかいねん!?

その後お会計―ハルナちゃんだけ謎の特別優待券なるものを使って割引してもらってた―を済ませ、この後どこに行こうかと話している時やった。

黒い車・・・フロントガラスもスモークで隠した真っ黒なハイエースが突っ込んできたのは。

「危ないっ!」

「きゃっ!?」

「わわっ!?」

轢かれそうになってたところをハルナちゃんに引き寄せられ事なきを得る私とすずかちゃん。

「動くなっ!俺たちを来てもらおうか」

・・・うん、全然事なき得てなかったわ・・・。

Side Out

 

いやーまさかまたすずかを狙った誘拐犯の襲撃を受けることになるとは思ってなかったよ。

なに?私がコミケに行くとすずかが狙われるジンクスでもあるの?

もしそうなんだとしたら襲われてもいいように次のコミケまでに装備を整えておく必要があるな・・・。

え?コミケに行くのを控えろ?ヤダ!

「ほぇ~・・・」

目の前・・・私に車いすを押されるはやては目が点になっています。

大丈夫かな?

「はやてー、そろそろ戻っておいでー」

「・・・ハッ!?ここは八神はやて、私は海鳴!」

うん、まだ大丈夫じゃないみたいです。

「はやてちゃん、まだ混乱してるの?」

「いやいや当たり前やろ!?なんなんアレ!?身代金目的で攫われるとか完全にサスペンス映画やん!かと思いきや最後はハルナちゃんが無双しまくってアクション映画状態やし・・・脳みその処理が追い付かへんで!」

はやてが説明してくれましたが・・・まぁ、そう言う事です。

普段なら誘拐犯が現れた所で恭也さん達が速攻で成敗するところですが恭也さんも士郎さんも少年サッカークラブ「FC翠屋」の練習の為に留守、美由紀さんも材料の買い出しの為になのはと外出中という千載一遇のタイミングを狙われました。

銃をすずかやはやてに向けられていたので私も大人しく従い、ハイエースに乗った覆面集団にハイエースされた私達は連中のアジトに連れて行かれました。

話を聞くにこいつら、いつぞやの氷村ふんたー同様夜の一族絡みの連中の様ですずかの力が目当てだったようです。

で、ふんたーをbanしてやった私を警戒しており何者なのか調べるために簀巻きにした挙句自白剤を注射しやがりました、しかも事前のアルコール消毒無しで・・・バイキンが入ったらどうするんだ!?

それから放置されることおよそ一時間・・・戦闘機人の私に薬物が効かない事を知らない拷問係が油断した状態で戻って来た所で反撃開始。

見張り共々ボッコボコにしてからお次は脱出作戦DA☆と意気込んで男らしく正面ゲートから堂々と出ていきました。私女子だけど・・・。

で、さっき最後の追手を返り討ちにしてあとは駆けつけた恭也さん達にまかせてはやてを家まで送っているところなんですが誘拐事件初体験のはやてにはさすがに刺激が強すぎたようです。

「何なん?ハルナちゃんランボーか何かなん!?」

失礼な、私がランボーなわけないじゃん。

「コマンドーだよ!(デェェェェェェェェェェェェェェンッッッッ!!!!)」

「どっちも同じやろ!」

子気味良い音と主に頭に走る軽い衝撃・・・って、どこから出したのさそのハリセン!?

「ハリセンは関西人の必須アイテムや!」

最初に出会った時の大人しい感じとはとは打って変わってかなり強烈な個性の持ち主ですよこの子・・・。

こうしてアリサもかくやと言う高いレベルのツッコミを繰り出すはやてと熾烈な戦いを繰り出していると私達の前に二匹のぬこがやってきました。

「わぁ、にゃんこや!」

「本当だ!カワイイ・・・」

現れたぬにはしゃぐすずかとはやて。

二匹は飼いぬこで人になれているのか、すずか達が抱き上げても嫌がったり逃げたりするそぶりは見せなかった。

「見て見てハルナちゃん、この子達ソックリ!双子なのかな?」

そう言って私にぬこを見せるすずか。

私はそれを受け取ってまじまじとはやての抱いてるぬこと見比べます。

「どれどれ・・・お~ホントだ。しっかし・・・このぬこどっかで見た様な・・・」

一見可愛げがある様に見えてかなりちゃっかりしてそうな顔・・・もし人になれたならすっごくいい性格してると思う。

いったいどこであったのか?よく見ればほのかに魔力も感じるし・・・。

私がガン見下からかぬこの方も何やら警戒し始めました。

そうして数秒にらみ合っていると・・・。

「はやてちゃ~ん」

向こうから金髪の美人さんがはやてを呼びながら近づいてきました。

「あ、シャマル・・・って、あっ」

はやてが気づくと同時にはやての膝の上にいたぬこが逃げ出します。

同時にもう一匹のぬこも私の手を振りほどき逃走します。

「あぁ、にゃんこが~・・・シャマルぅ?」

「えぇっ!?私のせいですか!?」

ぬこに逃げられジト目で睨むはやてと睨まれて狼狽える金髪さん。

アリサのものより色の薄い金髪を肩の辺りで切りそろえたおっとりした若奥様風の可愛い感じの美人さん・・・。

いったいどちら様なんでしょうか?はやてとは全然似てないからお母さんやお姉さんって事はないだろうけど・・・。

「はやてちゃん、この人は?」

「あぁ、この子はシャマル。わたしの・・・わたしの家族や」

すずかの質問にはやては一瞬迷った後そう答えます。

「は、初めまして。シャマルと言います」

紹介された美人さん・・・シャマルさんは戸惑いがちに私達に挨拶する。

「あ、これはご丁寧に・・・ハルナ・スカリエッティです」

「月村すずかです」

ん?何だよ?忍殺語で挨拶なんてしませんよ?私だって初対面の人には礼をもって当たりますよ?

それ以降は相手次第だけど・・・。

「はやてちゃんを送ってくれたんですね、ありがとう。ところで・・・あなた達ははやてちゃんのお友達ですか?」

友達・・・友達であってるのかな?

あったのは半年前に一度だけだし本格的に親しくなったのは数時間前なんだけど・・・。

「せやで、私の友達や!」

・・・はやてがそう言ってるんならそうなんだねっ!

「せやせや、ウチとはやてはマブダチやで!」

「・・・えっ?」

「えっ?」

え?何でそんな驚いたようなこえだすの?

え?私とはやては友達だよね?マブダチだよね!?

「いや、えっと・・・私が友達なのはすずかちゃんで・・・」

なん、だと・・・?

そんな・・・私は信じてたのに、はやては友達だって信じてたのにっ!!

畜生っ!裏切ったな!

「うわーんっ!はやてのバーカバーカ!今度はやてが本に挟んでる栞の位置滅茶苦茶にしてやるーっ!!」

「ちょっ!おどれソレ本当にやったら戦争やぞ!?」

「あっ!ハルナちゃんっ!はやてちゃんっ!」

「え?えっ?ええっ!?」

泣いて走る私、怒って追いかけるはやてとそれを追うすずか、そして状況についていけないシャマルさん。

今日も海鳴は平和でした。

ちなみにさっきのは冗談だとはやてが誤ってくれたので栞は10ページ戻すだけで許してあげました。

 

Side シャマル

今日はやてちゃんが友達を紹介してくれました。

以前お世話になったというハルナちゃんとその友達のすずかちゃん。

二人ともいい子みたいできっとはやてちゃんと仲良くしてくれる筈。

でも気になるのはハルナちゃんの方・・・。

あの子、とても強い魔力を持っていた。

それもしっかり制御された・・・。

ここは管理局の手の及ばない管理外世界、当然魔法も存在せず魔力を持ってる人もめったにいない。

よしんば持っていても制御することなく自然に体外に放出している。

だというのにハルナちゃんの魔力は上手にコントロールされていました。

まるで管理世界で暮らす魔導師の様に。

ハルナちゃんは管理局の魔導師なんでしょうか?

私たちを・・・『闇の書』を追ってきたのでしょうか?

もしそうだとしたら、私達は彼女と戦わなくてはいけない。

仮に違ったとしても、彼女の魔力はかなりのもの・・・。

蒐集すれば闇の書のページをかなり埋められるはず。

でも、いざその瞬間が訪れた時・・・私は戦えるでしょうか?

ハルナちゃんを、はやてちゃんの友達を傷つけることが出来るでしょうか?

・・・ううん、やらなきゃ。

それが私の、私達ヴォルケンリッターの務め。

例えハルナちゃんを傷つけることになっても、それではやてちゃんに嫌われても構わない。

全てははやてちゃんを救うために・・・!

Side Out

 

Side ???

はぁ、ヤバかった。

バレるかと思ったけどあの子がアホで助かったわ。

とは言えまさかハルナが闇の書の主と接触するとは、これは見過ごせないわね・・・父様に報告しないと。

恐らくそう遠くないうちに守護騎士達が本格的に動き出す。

そうなれば捜査に動くのはこの辺りを管轄としているアースラだ。

そして闇の書絡みとなれば遺失物管理部だって黙っていない、間違いなく地球での活動経験のあるハルナが派遣される。

・・・もしハルナが真実を知ったらどうするだろう?

あの子はアホだけど決して道理が分からない人間じゃない。

でも同時に甘いと言われるほどの人情家だ。

もし闇の書の主と守護騎士の真実を知ったら・・・。

あの子にはクライド君の件で大きな借りがある。

だからお願いハルナ、頼むから私達に力を貸して。

それが駄目ならせめて、せめて私達の邪魔をしないで。

あんたの事を気づ付けたくない。

でも、邪魔するならあんたでも容赦はしない・・・。

Side Out

 

はやてを家まで送った後、数日すずかの家にお泊りしてからミッドに帰還しました。

それから数か月後・・・地球近傍の管理外世界や無人世界で魔導師や魔法生物に対する襲撃事件が発生。

被害者が一様に魔力の源・・・リンカーコアを抜き取られていることから何らかのロストロギアが使用された可能性も考慮しアースラチーム、そして私は再び地球へ派遣されることになりました・・・。

 




これにて幕間編は終了、いよいよA'S編に突入です。
また少し間が開くかもしれませんが平にご容赦を。
あとしつこいようだけど動画見てね!


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

A's編
第27話「2期開幕!再びやって来る嵐なの」


お久しぶりです&お待たせしました。
遂にA's編突入です。
暦の方も気付けば12月に突入、令和2年もあとひと月になってしまいまいたね・・・。
それが過ぎれば令和3年、それから10ヵ月過ぎればアニメマブラヴオルタ放映開始です!(ここ重要)動く嫁に合うその日まで頑張ります。
・・・はい、投稿の方も頑張ります。
それではA's編第一話、始まります。


それは、小さな願いでした。

求めたのは温かい家族、手にしたのは大きな力。

力を手にした少女は、その力を振るう事を拒みます。

しかし狂った歯車は少女の願いとは裏腹に彼女を壮大な物語の中心に立たせます。

少女を救いたい者達、悲劇に立ち向かう者たち、陰で脈動する者たち・・・。

それぞれの思惑が絡み合う中、今新たな物語の幕がいま開く。

機人長女リリカルハルナ・・・始まります。

 

「遥か天空響いてる・・・」

室内に歌が聞こえる。

深い青空の様などこまでも吸い込まれていく深い声・・・。

強い、決して折れぬ強い意志を秘めた強い声・・・。

そんな声が奏でるのはどこか切なげな歌だった。

最初は優し気な、しかし次第に力強さを感じさせる歌・・・。

聞くものを聞き入らせ、勇気を与えてくれる、そんな歌。

「君のその笑顔だけ・・・守り抜きたい、願いは一つ・・・!」

そして聞くものが完全に引き込まれたその瞬間・・・。

「時を超え刻まれ「ウィー!ウィー!シャーッ!シャーッ!」

読者の腹筋を光にするような絶叫が響いた。

 

機人長女リリカルハルナA's

第27話「2期開幕!再びやって来る嵐なの」

 

「ファイナルフュージョンッ!!」

ん?やぁ皆。

みんなのお姉ちゃんことハルナ・スカリエッティだよー。

「ガオーマシンッ!」

何やってるのかって?

いやね、この間気づいたんだけどこのリリカルな世界線・・・テレビアニメ「リリカルなのは」は存在しないけれど田村ゆかりさんや水樹奈々様はいらっしゃるんです!

「ディバイディングドライバー!」

で、ご存知A'sの主題歌「ETERNAL BLAZE」はアニソンとしてではなく奈々様のオリジナル曲として配信されてたんです。

「ヘル!アンドヘヴン!」

それでせっかくだからフェイトに歌ってもらったんですがただ聞くだけじゃあれなので合いの手を入れてみたんです・・・勇者王バージョンで。

「光になれぇぇぇぇぇ!!!!!!!」

「うるさぁぁぁぁぁぁいっっ!!!」

って・・・誰ですか人が盛り上がってるところに水を差すのは!?

「誰ですかじゃないっ!今何時だと思ってるんだ!?」

そう怒り心頭と言った様子で聞いてくるクロノ。

「時間?午後三時過ぎですけど?」

「嘘を言うな!三時は三時でも午前三時、深夜もいいところだぞ!」

失敬な、今は東京標準時間で午後三時です!

「だから私は間違ったことはいってないもん!」

「アースラ艦内の標準時間はクラナガン準拠だ!」

チッチッチ・・・わかってないなぁ。

だからこそこうやって今の内に体内時計をあっちに合わせて時差ボケを予防してるんじゃないですか?

「・・・百歩、いや一千万歩譲ってこの時間に起きているのは良しとしよう・・・だがこの騒音は何だ!?」

「え~?だって歌ってテンション上げてないと眠くて・・・ふあぁ~」

「だったらおとなしく寝ろ!うるさいって当直員から苦情が来てるんだ!」

むぅ、仕方ありませんね。残念ながら今日はお開きです。

「と言う訳で今日はもう寝よう、突き合わせてゴメンねフェイト」

「えっ?あっ・・・」

そう言って私はフェイトを伴って部屋を出・・・

「おい、ちょっと待て。君の部屋はここだろう、フェイトを連れてどこに行く気だ?」

「え?どこってフェイトの部屋だけど?」

「ほぅ?じゃあ質問を変えよう、どうしてわざわざフェイトの部屋まで一緒に行こうとしているんだ?」

まったく、何を聞くのかと思えば・・・。

「私はお姉ちゃんなんだよ?妹と添い寝するのに何の問題が・・・」

そこまで言いかけた所で私はバインドで簀巻きにされた状態でベッドに放り込まれ、、その間にフェイトはクロノに連れられて部屋を後にしました・・・解せぬ。

 

Side ユーノ

「えー、そんな訳で裁判の結果フェイトに課せられた1年の社会奉仕の内容はアースラでのタダ働きになりました」

「人聞きの悪いことを言うな。嘱託魔導師として配属されるんだ。だからちゃんと給料も出る」

アースラ艦内の食堂、その一角で僕は朝食をとりながらフェイトの裁判の経過を聞いていた。

あの事件から約半年・・・あれから数か月ほど高町家でお世話になりながらなのはに魔法の基礎を教えていた僕は講習がひと段落したこともあって一度スクライアの実家に報告の為に帰省した。

それからすぐに地球に戻ろうとしていた所にハルナ達から連絡があってアースラが地球へ向かう事を知り動向させてもらった。

「あー、そう言えばユーノ。この間ユーノの実家から頼まれてたもの完成したって父さんが言ってたよ」

「えっ?もう完成したの?」

ハルナが言っているのはP.T事件解決後に僕の実家・・・スクライア家がドクターに開発を頼んだ新装備の事だ。

昔の遺跡・・・とりわけ旧暦の軍事施設跡地などは侵入者の迎撃を目的とした警備装置がまだ生きていることが多々ある。

それら凶悪な魔法トラップの数々によって被る少なくない被害に長老集たちは常々頭を抱えており、思い切って今回知己を得たドクター・・・スカリエッティ博士に遺跡内部の探査を行う無人機の開発を依頼したのだ。

開発を依頼してからまだ三か月も経っていないはず、それなのにもう実機が出来上がったなんて・・・。

「ん~なんかね、ベースにするのにすっごい最適なメカを見つけたとか言ってたからそれが理由じゃないかな?」

ハルナの言葉が本当なら今は使われていないドクターの古い研究所の地下から遺跡が発見され、そこの警備機械を発掘してそれを流用したらしい。

大丈夫かな?暴走とかしないよね?

「まぁ、フェレットもどきの実家の件は直接ドクターと話し合ってもらうとしてだ・・・」

「おいっちょっと待て!誰がフェレットもどきだ誰が!?」

クロノの許されざる発言に僕はすぐさま反論した。

「誰って、君の事に決まってるだろう?」

「何を言ってるんだ?」とばかりにさも当然の様な顔で応える執務官・・・。

そりゃ確かになのはの所でお世話になってた時は大体フェレットモードだったけど、あれは消耗した体力と魔力を回復するためのやむを得ない手段だったんだ、断じて好き好んでフェレットになっていたわけじゃない。

だというのに目の前の真っ黒クロ助は僕がフェレットになって合法的に女の子にすり寄るのが趣味の変態の様に言ってのける。

畜生・・・何か、何かないのか?この邪知暴虐なる執務官を誅する方法は・・・!?

「クロノ?私が今何て言いたいか分かる?お前が言うな変態」

・・・ん?

「な、何を言い出すんだ!?何を根拠にそんなでたらめを・・・」

「ブリテン王国に派遣された時現地の空軍少佐(9才)をのぞき見したんだってね?十二分に変態じゃん」

・・・ほぅ?

「あ、あれは誤解だと前から何度も・・・!」

「じゃあ何で空軍からの抗議文が終戦後も取り下げられなかったのかなぁ?向こうは未だに誤解だと思っていないってことだよねえ?」

クロノとハルナのやり取りを聞いていた僕は自然とほくそ笑んでいた。

そうかそうか・・・クロノ、君は僕の事を散々淫獣扱いしてくれたみたいだが、それは特大のブーメランだったんだねぇ・・・。

僕が不敵な笑みを浮かべているのに気づいたのかクロノの表情がこわばる。

「・・・何だその嫌らしい笑みは?言いたいことがあるならハッキリ言ったらどうだ?」

「ん~?別に?言いたいことなんて別にありませんよ?変態執務官殿w」

僕が嘲笑を込めてそう言ってやるとクロノが「ガタッ!」と立ち上がった。

「上等だ、表に出ろ。蹂躙がお望みなら期待に応えようじゃないか」

そう言ってデバイスを起動しようとしたところでクロノの体をバインドが縛る。

「なっ!?バインドだと!?」

拘束され芋虫の様に床を這うクロノに対し、バインドを放った術者が口を開いた。

「なにやってんの?ごはん中なんだから静かにしなさいっ」

ハルナから受けた叱責にクロノは雷を食らったかのように衝撃を受ける。

「ハ、ハルナに・・・常識を解かれる、だと・・・っ!?」

打ちひしがれ力なく横たわるクロノ・・・。

「その、なんだ・・・うん、さっきは悪かったよ。」

あまりのショックに同情の念が沸いた僕はクロノに謝罪する。

「いや、僕の方こそ済まなかった。僕としたことが、こんなばからしいネタで人をおちょくるなんてハルナみたいな真似をして済まなかった」

そして僕とクロノはお互いに苦笑する。

そこに言葉は必要なかった。

そう、どれだけいがみ合っていても人は分かり合う事が出来るんだ・・・。

「あのさぁ、いい話っぽくなってるとこ悪いけど二人してすっげぇ失礼な事言ってない?なに?私が常識を解いたらいかんの?OK上等だ二人そろって表に出ろ」

そう言って食堂の出入り口をあごでしゃくるハルナ。

どうやら訓練場に行くからついて来いと言う事らしい。

「クロノ・・・」

「ああ、行こう」

僕とクロノはアイコンタクトを交わすと頷き合い席を立つ。

分かり合えた今の僕達ならどこまでだって行ける、どんな苦難だって乗り越えられる。

 

 

 

そんなふうに考えていた時期が僕にもありました。

 

 

「ちょっ!?クロノ!今僕ごと撃っただろ!?」

「何の事だ?おっと、ハルナはまだ継戦可能か・・・そらっ、もう一発」

 

 

「おいっ!何で僕にはシールドを展開しないんだ!?自分だけ助かるつもりか!?」

「ん~?何のことかなぁ?僕は後衛なんだから簡単に墜とされるわけにいかないのは常識だろう?」

 

 

「クロノ・・・」

「ユーノ・・・」

「「くたばれえぇぇぇぇぇ!!!」」

 

 

うん、こいつとの友情なんて幻想、いやまやかしだったんだ。

ハルナそっちのけで乱闘を開始した僕たちはその後、のけ者にされてむくれたハルナの理不尽で暴虐極まる肉体言語を動けなくなるまで一方的に語られ続けたのだった。

Side Out

 

「うぅ、腰が・・・」

「まだお尻がジンジンする・・・」

意味深なセリフをこぼしながら痛む箇所をさするユーノとクロノ。

そんな二人を遠目に見ながらブリッジにいるウェーブ(女性局員)達はヒソヒソと会話する。

「ねぇ、あの二人・・・」

「やっぱり昨日何かあったわね・・・」

「ハルナちゃんの話だと食堂で見つめ合ってたって、それから二人で訓練場から出てくるところも・・・」

・・・うん、嘘は言ってない。

食堂で私が表に出ろって言った直後に見つめ合ってましたし、ストレス発散して訓練場から退出したすぐ後ろを二人で出てきました。

ん?何で腰やお尻が痛むのか?

偶然ですよ、偶然そこに私の攻撃が集中しちゃったんです。決して・・・ええ、決して他意はありませんよ?

「で?ハルナちゃん、本音は?」

「私の事いいようにdisりやがって、仕返しにエロい噂を広めてやる!」

「「やっぱりお前が犯人か!」」

ちっ、聞いてやがりましたか・・・。

「さて、ユーノ・・・君とは色々あったが今回ばかりは協力し合える気がするんだがどうだろう?」

「ああ、奇遇だね。僕も今だけは分かり合える気がするよ」

しかも懲りずに意気投合してるじゃないですか。

さて、どうしたものか・・・。

「艦長、第97管理外世界で魔導反応、何者かが魔法を行使した模様!」

「データベース検索・・・魔力波形に該当無し!」

即座にブリッジの空気が張りつめます。

何故アースラが地球へ向かっているのか、そして私が何故今回もアースラに乗っているのか?

それは地球近傍の世界で多発している謎の傷害事件が理由です。

一ヵ月ほど前を境に地球から個人転送で行ける世界で魔導師や原生魔導生物が襲撃を受け、あるものが奪われるという事件が多発しています。

そのあるものとは魔法の源・・・そう、リンカーコアです。

魔導師が襲撃されリンカーコアが奪われる・・・それは数年前に私やアースラが関わった「あの事件」を連想させました。

故に当時の一件で所縁のある、そして戦力として申し分ないアースラチームが派遣されることになったのです。

「魔法の発生場所の特定を急いで!」

それまでキャプテンシートで事の成り行きをニコニコと眺めていたリンディさんの顔も艦長の物に変わりオペレーターたちに矢次に指示を飛ばす。

「魔法形態・・・規模からして封次結界型、発信源は日本の・・・これはっ!?」

流れる様にキーを叩き、魔法の解析を行っていたエイミィの顔が青ざめる。

「どうしたの!?」

「発信源は海鳴市、なのはちゃんのいる街です!!」

それを聞いたブリッジメンバーに衝撃が走る。

前回のP.T事件で知り合って以来、大切な友達であり同時に可愛い妹分的存在であるなのは・・・。

クロノたちアースラメンバーにとっても先の事件で絆を育んだなのは・・・。

なによりフェイトにとって初めての、そして掛け替えのない親友のなのは・・・。

そのなのはが、今何者かに襲われているっ!

真っ先に動いたのはやはりフェイトだった。

「あっ、フェイトっ!?」

弾かれたかのようにブリッジから走り去るフェイト。

向かうのは恐らく転送ポートだろう。

「ハルナさんっ、フェイトを追って!」

「僕も行きます!」

「了解!クロノはここから指揮任せた!」

「任された!エイミィ、ハルナ達が通る瞬間だけでいい、結界に穴をあけられるか!?」

「かしこまりっ!結界を構成する魔力量と分布をスキャンするから3分ちょうだい!」

まるで一つの生き物の様に淀みなく行動する一同。

それだけ皆がなのはの事を大切に思っていると言う事です。

「フェイトっ!」

転送ポートに着いた私は操作用パネルに座標を入力しようとしているフェイトに声をかける。

「そっちはエイミィたちがやってくれるからフェイトはバリアジャケットを展開して、転送後は即戦闘になるはずだから」

「ハルナ・・・うんっ」

慌てていても私の意図を理解してくれたらしいフェイトは素直にバルディッシュを起動します。

ユーノもバリアジャケットを展開したのを確認して、私もイェーガーを起動します。

と言う訳で2期変身バンク行ってみようか!

「マギア・イェーガー・・・セぇ→ットアぁ↑ップ!」

いかん、気合入れ過ぎて声が裏返った・・・。

『anfang・・・』

そんな私の掛け声を空気の読める子なイェーガーはあえて聞かなかったことにしてくれました。

・・・その気遣いが逆に辛い!

 

何はともあれ以下返信シーン(イメージ)になります・・・。

 

イェーガーの発した閃光が辺りを包む。

カッコいい系BGMと光の中を揺蕩う美少女(わたし)

執務官の黒制服が光りになって消える。

次いでスポーツブラとショーツも消え、大切な所を謎の光が隠す。(※ブルーレイ版でも光は消えませんのであしからず)

どこからともなく飛んでくるイェーガーのパーツたち・・・。

それらがガチャガチャと合体してイェーガー(射撃戦形態)になる。

マガジンが差し込まれカートリッジシステムが初弾を装填。

グリップを握ると同時に騎士甲冑が展開される。

灰色の軍服調のアンダーウェアから始まり、指抜きじゃないグローブ、ごっついコンバットブーツにナンバーズの戦闘服についてるようなパーツが肩や腰に装着され大きめのコートをマントの様に羽織る。

その背中に翼状の富裕パーツが展開、頭上で形成された大きめの制帽が頭に乗る。

ぐるりと一回転してからイェーガーをビシッと構えて決めポーズ!

 

以上が機人長女リリカルハルナA'sにおける私の変身バンクになります。

「よし、決まった・・・」

「なにやってんのさ?」

「視聴者(読者?)サービス」

「はぁ・・・?」

聞いてきたアルフにそう返したら怪訝そうな顔されました。

やっぱり第四の壁を認識できる存在は誰からも理解されず、孤高の戦士であることを義務付けられているというのか・・・。

『よく分かんない事してないでポートに乗って、直ぐ転送するよ』

「アッハイ」

おっと、こうしちゃいられません。

慌てて転送ポートに乗ると魔力で足元が光り出します。

『結界に穴をあけられるのは数秒だから増援は見込めない。向こうに着いたら急いで術者を拘束して』

「了解、そっちは私がやるからフェイトたちはなのはの救出をお願い」

この結界は間違いなくなのはを閉じ込めるための物・・・。

であるならば術者はなのはの抵抗で被害を受けないよう結界の外にいる可能性が高い・・・。

なので危険ではありますがフェイト、アルフ、ユーノの三人に結界内に突入してもらいなのはを救出。

内部に敵がいる場合抵抗して時間を稼いでいる間に私が外の術者を捕まえて結界を解除させる。

あとはクロノと武装隊が突入して中の四人の安全を確保する算段です。

私の指示にフェイト、アルフ、ユーノはそろって頷きます。

「おっけー、それじゃあお願いエイミィ!」

「了解っ、目標海鳴市上空・・・転送開始!」

エイミィの宣言と同時に室内は転送時の閃光で埋め尽くされました。

 

Side なのは

「う・・・くぅっ」

私は今、とあるビルの中にいます。

「はぁ・・・はぁ・・・」

目の前には崩れて外の見える壁、そして赤いバリアジャケットを着た女の子が立っています。

突然町が結界に覆われたのが十数分前、それからレイジングハートを起動して結界の発信源を調べに向かったところ目の前の女の子に襲われました。

どこの誰なのか、何で襲ってきたのかを尋ねましたが答えてくれません。

話を聞いてくれないことに腹が立ったのもあり、威嚇射撃にディバインバスターを撃ったところ目の前の子は激怒して突っ込んできました。

その時に彼女の持つハンマーの様なデバイスが弾丸の様な物を装填するのが見えました、あれはたしかハルナちゃんのイェーガーに付いている・・・。

戦っているときにそんな風に考えていたせいか、女の子はデバイスのロケット噴射で加速して一気に私の目の前まで飛んできました。

振り下ろされるデバイス・・・私はとっさに防御しましたがものすごいパワーでバリアも、そしてレイジングハートも砕かれ今いるビルまで吹き飛ばされてしまいました。

そして今に至ります。

蓄積したダメージでカラダが思う様に動かず、バリアジャケットもレイジングハートもボロボロ・・・

「悪く思うなよ・・・」

そして目の前の女の子は手にしたハンマー状のデバイスを振り上げます。

もう、ダメなのかな・・・?

そんな考えが頭をよぎります。

「ユーノ君、クロノ君・・・」

気付けば口からは最近できた大切な友達の名前が出てきます。

折角分かり合えたのに、友達になれたのに・・・!

こんなところで終わるなんて、会えなくなるなんて・・・嫌だ!

「フェイトちゃんっ・・・!」

親友の名前を呼んで目を瞑った直後、デバイスが私に振り下ろされ・・・硬質な打撃音と共に遮られました。

「・・・えっ?」

恐る恐る目を開けると、黒いマントに綺麗な金髪の・・・。

「フェイト・・・ちゃん?」

私に背を向け目の前の女の子と対峙するのは間違いなく私の大切な親友・・・フェイトちゃんでした。

「ゴメンなのは、遅くなった」

「ユーノ君・・・?」

その声に隣を見るとそこにはユーノ君もいました。

「チッ、仲間か?」

突然現れたフェイトちゃんたちに赤い女の子はいったん距離をとってそう尋ねます。

「・・・友達だっ」

彼女の質問にフェイトちゃんはそう言うと手にしたデバイス・・・バルディッシュを構えるのでした。

Side Out

 

・・・あれ!?私の名前呼ばれてない!?




しっかし、ETERNAL BLAZE勇者王バージョンはさすがにネタが古すぎたかもしれない・・・(;´・ω・)
ちなみにここだけの話、以前作った動画の続きも本格的に作り始めるので投稿遅れます。
え?いつも遅い?ゴメンなさい、なるたけ早く次投稿しますorz


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第28話「フェイト大ピンチ!?出撃!ジェネシックハルナちゃんなの!?」

お久しぶりです。
前回の投稿から半年かぁ・・・。
それもこれもシヴィラゼーションとかいう時間泥棒ゲーが悪いんですっ!
何はともあれはやて誕生日おめでとうっ!
まぁ、今回はやての出番皆無なんですが・・・w

それはそうとマブラヴオルタTRPGリプレイ動画の第1話投稿しました。
https://www.nicovideo.jp/watch/sm38637623
良ければ視聴&コメント&マイリスお願いします!


くっそう、どこだぁ・・・。

・・・ん?

なんだよ?今忙しいんだよ・・・え?挨拶?

あー、はいはい、ハルナ・スカリエッティですよー、これでいい?今忙しいんだから・・・。

え?何が忙しいんだって?

ほら、前回結界内のなのは救出をフェイト達に任せて結界張ってる術者を私が探すって話になったじゃないですか・・・。

なのに・・・!

「術者はどこだぁぁぁぁぁぁ!?」

肝心の術者が全く見つかりませんっ!

 

機人長女リリカルハルナA's

第28話「フェイト大ピンチ!?出撃!ジェネシックハルナちゃんなの!?」

 

Side フェイト

バルディッシュを構えたまま、私は目の前の少女を見据える。

背後にはユーノに介抱されるなのは・・・。

何故なのはを襲ったのか?どうすれば彼女があそこまでボロボロにされるのか?

問いただしたいことはたくさんあるけれど、今は目の前の少女の拘束が最優先だ。

「管理外世界で民間人への魔法行使・・・軽犯罪じゃすまない行為だ」

「何だテメェ・・・管理局か?」

私に対して警戒するように、あるいは威嚇するように尋ねる赤い少女。

「時空管理局嘱託魔導師、フェイト・テスタロッサ。抵抗しなければ君には弁護の機会がある」

例え重い罪を犯したとしてもそれには理由があるはずだ、なら罪を償いやり直すチャンスがきっとある。

そう、私の様に・・・。

「武装を解除し、投降を・・・」

「誰がするかよっ!」

そう言って私の投降勧告を拒絶した少女は手に持ったデバイスを床に打ち付ける。

直後閃光と爆炎が辺りを包み私の視界を奪う。

「っ・・・!」

襲い掛かってくる気配はない、という事は逃げたか!

「ユーノ!なのはをお願いっ!」

それに気づいた私はなのはの事をユーノに任せると煙を振り払い壁の破孔から外へと飛翔する。

案の定赤い少女は私に背を向け逃走しようとしている。

「逃がさないっ・・・!」

私はバルディッシュをサイズフォームに変形させ形成された刃に魔力を込める。

「アークセイバーっ!」

そのまま大きく振りかぶり魔力刃を逃走する少女に投擲する。

「っ・・・!?」

ブーメランの様に回転しながら追ってくる刃に少女は一瞬慌てるもすぐに迎撃態勢に移る。

『シュワルベフリーゲン』

「うぉりゃあ!」

空中に複数の鉄球を出現させると手にしたデバイスを打ち付ける。

打ち出された鉄球とアークセイバーは見る見るうちに距離を詰め・・・。

「迎撃しない・・・!?」

そのまま交差した鉄球がこちらに向かってくるのを見て、ようやく私は彼女の狙いに気付いた。

『パンツァーヒンダネス!』

赤い魔力光の障壁を展開する少女をみて私は確信する。

彼女がどれだけ防御に自信があるのか分からないがあえて攻撃を受け止め、大本である私を潰しにくる・・・。

間違いなく彼女は手練れだ、それも私以上の・・・!

障壁に止められたアークセイバーを横目に見ながら私は迫りくる鉄球の回避に専念する。

この鉄球・・・重厚な見た目に反してなのはのディバインシューター並みの追尾能力がある。

単調な回避だと、やられる・・・!

右へ左へ、上へ下へ緩急をつけながら休みなく鉄球を避け続ける。

そうしているうちに障壁に遮られていたアークセイバーは徐々に魔力が減衰し小さくなっていき、やがて消滅した。

それを確認した少女は逃走を再開しようとする。

飛来する鉄球を躱して同士討ちさせた私が追跡しても間に合わないだろう。

でも・・・。

(でも私は・・・一人じゃない!)

「アルフ!お願い!」

「何ッ!?」

「バリアぁっ・・・ブレイクぅっっ!!」

下から奇襲する形で飛んできたアルフの拳が少女の障壁を打つ。

いかに強固な障壁でもバリア破壊効果の付与された一撃には耐えきれず砕けて霧散した。

「チィっ・・・!うらぁっ!!」

しかし少女は怯むことなく手にした鉄槌をアルフに振り下ろす。

「クッ・・・!ぐぁっ・・・!」

咄嗟に防御したため大きなダメージは避けられたがその威力でアルフは遥か下方に叩き落されてしまう。

しかし、そのおかげで隙が出来た・・・!

「はぁっ!」

足を止めた少女の周囲にライトニングバインドを展開。

「クッ・・・!」

発動寸前で回避され間に合わなかったが直後に体勢を立て直したアルフがチェーンバインドを投射。

わたしもそれに続いてバインドを放つ。

少女は飛んでくるバインドを時に躱し、時に魔力任せに引きちぎる。

しかしそんな芸当が何時までも続くわけがなく、ついにアルフのバインドに巻き取られた。

「クッソ・・・」

再度バインドを引きちぎろうとする少女を私はとどめとばかりにライトニングバインドで拘束する。

「出身世界と今回の事件の目的を話してもらうよ・・・」

どこか語気が荒い気がする、やっぱりなのはがやられたのが原因かな?

そんなことを考えながらも油断せず少女との距離を詰めていた私達に突如強い殺気が浴びせられる。

「フェイトっ!何か来るっ!」

アルフの警告の声に身構えるが間に合わず・・・。

「っ・・・!」

「なっ・・・!?」

紫電の様な速さで切りかかられた私は辛うじて防げたものの吹き飛ばされてしまった。

「うおぉぉぉぉぉっ!」

「ぐぁっ・・・!?」

体勢を立て直そうとする視界の端でアルフが吹き飛ばされているのが見える。

どうやら新手が現れたようだ。

視線を襲撃者に向けるとそこに居たのは女性・・・。

長いピンクの髪をポニーテールにした女騎士という雰囲気の出で立ちをした20代前半の、鷹の目を思わせる鋭い眼光が印象的な女性だった。

「シグナム・・・?」

赤い少女にシグナムと呼ばれた女騎士は手にした剣・・・おそらくデバイスを構える。

「レヴァンティン、カートリッジロード」

『Explosion』

女騎士・・・シグナムが呟くとデバイスが何かを排出する。

直後に刀身が炎を渦を纏い始めた。

「あれは、カートリッジ!?」

ハルナのデバイス、イェーガーにも搭載されているベルカ式カートリッジシステム。

リンカーコアへの負荷と引き換えに爆発的な魔力を生み出す古代ベルカの遺産・・・。

つまり彼女たちは・・・!

「紫電一閃っ!」

しかし考え事をしている暇はなく、シグナムがこちらに切りかかってくる。

「くっ・・・!」

あの攻撃は危険だ。

実戦や摸擬戦で何度かハルナとやり合ったがあのカートリッジによる爆発的な攻撃力の恐ろしさは身をもって体験済みだ。

最悪防御の上から叩き切られかねない・・・!

その結論に至った私は全速力で回避に専念する。

しかし・・・。

「速いな、だが・・・っ!」

巧みに誘導された私はついに彼女の剣の間合いに補足されてしまった。

咄嗟にバルディッシュで防御するもやはりそれは悪手だった。

刃を受けたバルディッシュの柄はあっという間に両断されてしまった。

再度剣を振り上げるシグナム。

(やられる・・・っ!)

そう思った直後バルディッシュがバリアを展開する。

おかげで助かったもののそれでも防ぎきれず、私は眼下のビルに墜落するのだった。

 

Side Out

 

「フェイトっ!?」

結界の向こうで落下していく妹・・・。

その姿に私は喪失感と共に強い怒りを覚えた。

怒りの矛先は下手人の女騎士ではなく私自身だ。

妹の危機なのに肝心な時にそばにいられない・・・そんなことが姉である私にあっていいのか?

いいわけがないっ!

「エイミィっ!」

すぐさまアースラに連絡を入れる。

『ハルナちゃん!?いいところに、結界の解析が思ったより難航してるの。おそらくベルカ式の魔法で・・・』

結界の解析と解除を行っていたエイミィからそんな言葉返ってくる。

なるほどベルカ式か・・・それならこれまでミッド式を扱ってきたエイミィが解析できないのもうなずける。

私の近代ベルカ式を見ているエイミィでも苦戦していると言う事は恐らく古代ベルカ式か・・・。

でもそんなの関係ねぇ!

「エイミィ!大至急G装備を送って!」

優先すべきはフェイトとなのはだ!

『ま、まってよ!あれはまだテストが・・・』

「そんな暇あるかっ!いいから早くっ!」

某真田さんの様なセリフを返しながら私は再度催促する。

『あぁもぅ!何かあっても知らないからね!艦長!』

振り返ったエイミィにリンディさんは毅然と頷く。

『ええ、許可します・・・って、やっぱり『アレ』やらないとダメ?』

『仕方ないじゃないですか!ドクターが設定変えてくれなかったんですから!』

『そうよねぇ、コホン・・・ガジェット・ツール!射出、承認!』

『了解っ!ガジェット・ツール、セーフティデバイス、リリーブ!!』

父さんの設定した某勇者王的音声入力の通りに発せられたリンディさんの承認を受け、私の所に秘密兵器が転送された。

「隊長ー!助っ人にきましたーっ!」

現れたのは全長一メートルほどのメカの集団。

カプセル薬みたいな楕円形のボディの中央に光る黄色いモノアイ・・・

そう、なのはStsでおなじみのやられメカ、ガジェット・ドローンです!

それが某押井守監督作品に出てくる思考戦車みたいな緩~い口調で話しながらフヨフヨ浮いています。

以前言っていたユーノの実家からの依頼・・・。

遺跡調査用の無人機、その作成を頼まれて白羽の矢が立ったのが研究所の地下から発掘された遺跡防衛用兵器・・・ガジェットⅣ型でした。

それをベースにして完成したのがこのガジェットⅠ型なのです。

本来はただ命令通りに行動する機械でしたがこの子は柔軟な判断が出来る様にAIが組み込まれており、将来的には警邏用として管理局に売り込む予定の様です。

もちろん大量生産可能、おかげで1機あたりの単価が抑えられました。

って、これじゃジェネシックハルナちゃんじゃなくてジェネリックハルナちゃんじゃん!タイトル詐欺だよ!

ちなみにあのエロ同人で猛威を振るいそうな触手状のコードは取っ払われてギャグマンガに出てくる感じのロボットアームが取り付けられています。

いや、今はそんなことよりもフェイト達です!

「詳しい説明は省略!結界内に突入するよ!」

『ラジャー!』

ロボットアームで器用に敬礼するガジェト・ドローン達。

言動はゆるゆるですがこの子らの力はアニメを知ってる読者なら分かるでしょう?

その一端をお見せしようじゃありませんか!

「ガジェットツールっ!!」

私の掛け声とともにガジェット軍団、その最前列にいた二体が飛翔します。

空高く飛び上がったガジェットはガチャガチャと変形しゴツく、メカメカしい前腕に変形します。

「ツールコネクトぉっ!」

そう言って両腕を上にあげ万歳の姿勢をとると変形したガジェットが急降下、両腕にはまる。

「ブッピガァン!」とおなじみの音と共に装着されたガジェット・・・通称ガジェットアームを装備した私はその鋼(正確には軽合金と炭素繊維の複合材)の拳を目の前の結界に思いっきり打ち付けます。

「うぉりゃあっ!」

突き立てられた拳は当然のことながら結界に阻まれそこで止まります。

しかしそれを打ち破る手段がこの拳にはあるんです!

「AMF、展開っ!」

『合点招致っ!AMFアクティブ!』

暫くすると結界に阻まれていた拳が少しずつ結界の内側に沈んでいきます。

そのまま結界を左右に引き裂いて突入後を開けます。

気分はさながらエヴァ初号機です。

「ぐぐぐ・・・どぉっせぇぇいっっ!!」

力任せにこじ開け、人一人が通れる穴が出来ました。

「突入ー!」

広げた穴が閉じる前に結界内に飛び込みます。後ろを見れば穴が閉じて何事もなかったかのような結界・・・。

これで術者がやっぱり外にいたとかだったら積んでますね・・・。

いや、今はフェイトの安否確認が最優先です!

待っててねフェイト!お姉ちゃんが今行くから!

 

Side シグナム

「ヴィータ、お前らしくないな・・・」

私は管理局の新手を警戒しながら拘束されている盟友、ヴィータに振り替える。

「うるせぇっ、こっから逆転するところだったんだよ!」

むくれた表情でそんな風に返す鉄槌の騎士に私は苦笑を禁じ得なかった。

「フッ、そうか。とにかく無理はするな、お前に何かあれば我らが主が悲しむ」

「むぅ・・・わかってるよ」

さすがに主はやての事を言われては言い返せないのかバインドを解除する私の言葉に素直に応じるヴィータ。

「ならよし。ああそうだ、墜とした帽子だが修復しておいたぞ」

「あ、ありがとう・・・」

先ほどまで戦っていた白い魔導師の攻撃で吹き飛ばされた帽子をかぶせてやるとしおらしく礼を言うヴィータ。

そう言えば主はやてにデザインしてもらったお気に入りだったったな。

そんなことを考えながら眼下を見下ろせば私同様加勢に来たザフィーラとオレンジの狼、恐らく先ほどの魔導師の守護獣・・・ミッド風に言えば使い魔が戦っている。

さらにそれまで白い魔導師を守っていたもう一人も上昇しやり合う姿勢だ。

「先ほどの魔導師も含めれば状況は3対3。そして1対1の戦いならば我等ベルカの騎士に・・・」

「ああ、負けはねぇ!」

そう言って私達は同時に降下を開始する。

ヴィータは先ほど上昇してきた魔導師へ、そして私は・・・。

「っ・・・!」

一度墜とされても未だ闘志の衰えない黒い魔導師。

それが応急処置を済ませた戦斧型のデバイスを構えながらこちらに向かって突進してくる。

その勇気と覚悟やよし、挑まれたのならば騎士として受けて立とう。

わたしも速度を上げ互いの距離が一気に詰まる。

一交、二交三交・・・交差するたびに交わされる刃。

先ほどの咄嗟の防御もそうだがこの魔導師・・・カートリッジシステムを知っているのか中々こちらの間合いに入らない。

今も警戒しているのか一撃離脱を徹底している。

やりずらい、だがこの年でこの才覚・・・実に面白いっ!

「フォトンランサー・・・撃ち抜け、ファイアっ!」

離脱後そのまま距離を取り誘導弾をこちらに撃つ魔導師。

「レヴァンティン、私の甲冑を・・・」

『Panzegeist』

私が命じるとレヴァンティンは騎士甲冑を強化する。

迫る誘導弾。

その速度だけで並の守りなら打ち貫けるだろう。

「回避しない・・・!?」

だが私はレヴァンティンを、そして主より与えられたこの騎士甲冑を信じている。

微動だにしない私に魔導師が困惑する中、誘導弾が直撃した。

「・・・ミッドチルダの魔導師にしては悪くない」

なるほど、なかなかどうして・・・ただの誘導弾だというのに大した威力だ。

よほど守りの固い相手を想定して練られた魔法なのだろう・・・。

「だが、我等ベルカの騎士に一対一を挑むには・・・まだ足りんっ!」

噴煙を切り裂き私は魔導師に疾駆する。

いとも容易く攻撃を防がれたことに驚いていたのか足の止まった魔導師の回避が遅れる。

「っ・・・!!」

それでもデバイスを構えバリアを展開して見せた反応速度は称賛に値する。

だが、ベルカの騎士相手にそれは悪手だと知れ!

振り下ろされたレヴァンティンは一刀のもとにバリアを砕く。

姿勢を崩す魔導師、反撃の機会は・・・与えん!

カートリッジを装填し二の太刀を振るう。

「レヴァンティンっ!叩き斬れっ!」

『Jawohl!』

振るわれた刃を魔導師はまたもや受け止めて見せる。

その反応速度といい、迫る刃に身をすくませない勇気といい、その若さで本当に対したものだ。

しかし反応できても防ぎきれるかは話が別だ。

推し負けた魔導師は再び眼下のビルに落下、激突する。

「じっとしていろ、抵抗しなければ命までは取らん」

「ぐぅ・・・誰、がっ・・・!」

未だその心は折れるどころか亀裂すら見られない。

「クッ・・・!」

だが心は折れずとも身体は限界の様だ。

脚に力が入らず、膝をつく魔導師。

一応手加減はしたつもりなのだがな・・・私としたことが想像以上の闘志と実力に思わず熱が入っていたようだ。

それでも三度立ち上がろうとする闘志、この時代にこれほどの勇者がいたとは驚きだ。

いや、それだけあの白い魔導師が大切という事か・・・。

「・・・あの魔導師は、お前の家族か何かか?」

「・・・友達だ」

私の問いに魔導師が呟く。

「何?」

「大切な・・・友達なんだっ!」

「・・・そうか」

その叫びに私は一抹の罪悪感に襲われるもすぐに振り払う。

全ては主を救うためだ。

命までは取らない・・・だが恐らく彼女は間違いなく今後も大きな障害となって我等の前に立ちふさがるだろう。

なればこそ今ここで再起不能にする!

許しは請わない、憎んでくれて構わない。

今この瞬間、私は心を殺して一個の修羅となる・・・!

「・・・!」

私の殺気を感じ取ったのだろう。

魔導師はふらつく足に鞭打って身構える。

「・・・まだ名乗りを上げていなかったな。ヴォルケンリッターが将、剣の騎士シグナム・・・そして我が剣レヴァンティン。お前の名は?」

私の問いに魔導師はまっすぐな目で答える。

「ミッドチルダの魔導師、時空管理局嘱託、フェイト・テスタロッサ。この子はバルディッシュ」

「テスタロッサにバルディッシュか・・・その名、覚えたぞ」

そうだ、忘れてはならない。

主の未来の為にこれから未来を奪う少女の名を。

そして彼女の胸に私の名を刻まねばならない。

憎悪の対象となるのは私だけでいい、他の騎士たちと・・・何より主はやてが憎まれない為にも。

「行くぞ、テスタロッサ・・・!」

「っ・・・!!」

無言で身構える魔導師・・・テスタロッサに止めを刺すべく私は一気に加速し・・・。

「インパクト・カノーネ貫徹モード!ファイヤーッ!」

突如頭上から飛来した直射魔法に足止めされた。

「なにっ!横槍だと!?」

そう言って新手の姿を確認しようと空を見上げると・・・

一個の修羅がいた。

「・・・・・・・・・」

一切の感情が読み取れない能面の様な表情に氷すら温かく感じられる絶対零度の眼差し・・・長く戦場を歩いて来た私をもってしてもめったに見ることが無かった感情・・・灼熱の憤怒すら超越した怒りの感情だ。

そんな凍てつく視線を私に浴びせながらテスタロッサとそう変わらぬ銀髪の少女は私の前に下りてきた。

「ハルナ・・・?」

「・・・もう大丈夫だよフェイト、あとは私が何とかするから」

私へのそれとは180度違う、慈愛に満ちた視線と声をテスタロッサにかける少女。

しかし、再びこちらに振り向いた時にはそれがまるで見間違いだったかのように元の冷徹な眼光をこちらに向けていた。

「貴様・・・何者だ?」

私の問いに新手の少女は手にした銃型のデバイスをこちらに構えながら言い放った。

「管理局魔導師、そしてこれからお前をぶちのめす女。何よりお前がさっきまでさんざん痛めつけてくれたフェイトの姉だっ!」

今まで人形の様に感情が感じられなかった顔が一瞬で怒り一色に染まる。

「・・・そうか」

なるほど、私に対してはそれだけ名乗れば十分という事か・・・よかろう。

お前の怒りは尤もだ、さりとて私にも引けない理由がある。

テスタロッサの姉よ、まずは貴殿の魔力からもらい受ける!

「・・・えっ、姉?」

「えっ、姉でしょ?」

「えっ?」

「えっ・・・?」

しかしそんな彼女の名乗りにその背後にいたテスタロッサが唖然とした顔をする。

何だ?違うのか?なら何故姉と名乗ったんだ?

先ほどまでの張りつめた緊張を返してくれ、この何とも言えない微妙な空気に私はそう言いたくて仕方がなかった。




前回のウィーウィー!シャーシャー!は今回の伏線でした(嘘w)
ガジェットドローンのガジェットツール化は前からやってみたかったネタですw
次回!ハートキャッチ・シャマキュア♪


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第29話「過去の因縁&予想外の再開なの」

あけましておめでとうございます!(現在2月)
今回もえらく間が開きましたが何とか投稿です。
色々忙しいですが今年ものんびり続けていくので宜しくお願いします。


そんな、嘘だ・・・。

嘘だよね、嘘だと言ってよバーニィっ!

「いや、その・・・妹じゃ、ないです・・・」

うわあああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~っっっっっ!!!

 

機人長女リリカルハルナA's

第29話「過去の因縁&予想外の再開なの」

 

Sideシグナム

この状況・・・当事者ではあるが全く理解できない。

目の前で困惑するテスタロッサと打ちひしがれる彼女の姉を名乗る不審な少女・・・。

管理局の執務官らしいがそれすら疑わしいレベルの不審な存在だ。

それが今器用に空中で突っ伏し、悲嘆に暮れている。

原因は今しがたテスタロッサに「妹ではない」と否定されたからだろうが何故それであれほどまでに・・・それこそ絶望と言えるほどに衝撃を受けているのだろうか?

「・・・・・・」

「・・・えっと、あの」

打ちひしがれているテスタロッサの姉(自称)になんと声をかけようか困惑しているテスタロッサ・・・。

何とも言えない空気に支配されていた戦場だったが不意にテスタロッサ姉(自称)が立ち上がる。

「・・・殺(シャー)っ!!」

かと思えば突然私に斬りかかって来た。

「なんだとぉぉ!?」

Side Out

 

こんにちは!ハルナお姉ちゃんです!死ねっ!

あ、言っとくけど読者の皆に言ったわけじゃないよ?

今の発言と殺意の矛先は目の前にいる何かどっかで会ったような気がするピンクポニテの女騎士です。

「待て待て待てっ!いきなり斬りかかって来るとはどういうつもりだっ!?」

フェイトに姉であることを否定され絶望と悲嘆に沈んでいたお姉ちゃんとしましてはこのマグマの様に沸き立つ哀と怒りと悲しみのぶつけどころに困っているときにふと気が付いたんです。

いるじゃないか、目の前にちょうどいい相手が・・・。

公務で殴ってよく、何よりフェイトを傷ものにしたという許すまじ相手が・・・!

「そう言う訳だから覚悟しろこん畜生!」

「って、それは明らかに八つ当たりだろうがっ!?」

「そうだよ!」

「開き直るなっ!!」

そんな感じで言葉の応酬を繰り広げながら同時に首から下で刃と魔法の応酬も行います。

イェーガーの銃口部に形成された魔力製の銃剣で鋭い刺突を繰り出すも女騎士は身体を反らして回避。

がら空きになった私の胴体を一閃しようと刃を繰り出します。

「チッ・・・!」

訪れたピンチに私は思わず舌打ちしますが慌てず騒がずイェーガーから手を放して女騎士のデバイスが加速に乗る前に受け止めます。

「何ッ!?」

まさかデバイスを手放すとは思っていなかったのか女騎士の顔に驚愕の色が浮かびます。

そんなチャンスを見逃すハルナちゃんではありません。

「フッフッフンッ・・・!」

右っ!左っ!ローキックっ!

MGS3で鍛えたCQCを女騎士に叩き込みます。

「クッ・・・!」

バリアジャケット・・・いや、恐らくベルカ騎士と思われるので騎士甲冑に阻まれ思ったよりダメージは与えられませんでしたが想定外の徒手格闘技に女騎士は私から距離を取ります。

でもそれこそ私の狙いです。

フェイトに姉否定されたショックから少々自暴自棄になりかけてはいますが、さすがにベルカの騎士相手に白兵戦を仕掛けるような真似はしません。

こうして一度相手の得意な間合いで戦ったうえで肉薄するのは危険だと思わせる・・・一種のブラフですがこれで彼女の全力は封じることが出来ました。

「面白いヤツだな、魔導師だというのになかなか奇妙な技を使う・・・」

「大陸に伝わる武術でね、俗にいう東洋の神秘ってやつだよ」

え?さっきCQCって言っただろって?

嘘は言ってませんよ、これは以前中華キャノン開発の際に中国の奥地より招いた仙人のお爺さんから教わった武術でその名を「チャイニーズ・クリティカル・カンフー」・・・略してCQCとの事です。

・・・うん、言いたいことは分るよ?

これ聞いた時、私もすごい勢いでうさん臭く感じましたからね、「こいつ本当に仙人か?」って・・・。

でもその実力は見た目に違わぬものでこうして目の前の女騎士に接近を躊躇わせることに成功しました。

「だがデバイスを手放したのは悪手だったな、いくら貴様が体術自慢でも徒手空拳でベルカの騎士とやり合えるとでも?」

「武器が無かろうと戦う術はいくらでもあるんだよ?」

あー、やっぱりこいつベルカの騎士だったか・・・。

なんというか方向性は違いますがどことなくゼスト隊長に通ずる何かを感じますし・・・。

しかもその言動と見るからに一品もののアームドデバイス・・・彼女は私みたいな近代ベルカ式を使うなんちゃって騎士じゃなくて正真正銘、古代ベルカ式の使い手足る騎士です。

余裕のある感じで返してみましたが内心ヒヤヒヤです。

やっぱりハッタリかましたのは正解でしたね。

切った張ったガチ勢なベルカ騎士相手に近接戦闘とか手の込んだ自殺もいいところです。

しかし今打った一芝居のおかげで彼女もうかつに斬りかかってきたりは・・・。

「成程、私が思っている以上にこの世界は奥が深いと言う事か・・・しかしだからこそ面白い、死合う甲斐があると言うものだ・・・っ!」

「・・・はぁぁっ!?」

そう思っていた時期が私にもありました・・・。

あろうことかこの女騎士・・・すっごいいい笑顔で斬りかかって来やがりましたよっ!

畜生っ!これだから脳筋ぞろいのベルカ人は嫌いなんだ!何なのコイツら!?薩摩武士なの!?なら私じゃなくて江戸幕府かそうでなきゃ異世界行って黒王様でも相手にしてろよっ!

「・・・イェーガーっ!」

『了解、自立戦闘モード』

女騎士のデバイスが私の首を切り落とすその直前、私の叫びに応じてそれまで重力に従って落っこちていたイェーガーは突如飛翔、ファ〇ネルよろしく浮遊したまま女騎士に目掛けて発砲します。

「何ッ!?」

再び私から距離をとる女騎士、何とかハルナちゃんの愛らしい顔は胴体から離れず済みました。

え?アホらしいの間違いだろって?お前ら後で屋上な?

って、そんな事言ってる場合じゃないっ!

このままチャンバラを続けていても私が負けるのは時間の問題・・・。

カッコ悪いけどここはフェイトの手を借りて・・・。

「って、いない!?」

どゆこと?まさか私を見捨てて!?

な訳ないですね、見ればここから離れた所でアルフと協力して犬耳グラップラーとやり合っています。

どうやら劣勢だったアルフに加勢しに行ったみたいです。

優しいフェイトの事です、きっと私とアルフ・・・どちらの助力に向かうか真剣に悩んだでしょう・・・。

いやー、そんなお姉ちゃんを想ってくれる妹を持てて私は幸せです・・・。

とか思っていると気付けば目の前に刃が・・・。

「あぶなっ!?」

慌てて躱す私。

急いで距離を取ると同様に一旦下がった女騎士でしたが私が飛んできたイェーガーのグリップを握るのと同時に再度斬りかかってきました。

ああそうかいっ!あくまでガチンコをご所望かよっ!

分かったよ!そっちがその気ならとことん付き合ってやろうじゃないかっ!

「イェーガーっ!白兵戦闘モードっ!」

『了承、トレンチ・フォルム・・・』

イェーガーがそう言うと、銃口部に取り付けられていた銃剣が射出されます。

私がそれをキャッチすると柄の部分が伸長し徐々に刃の部分も変形していき・・・。

「おい、まさか『それ』で私とやり合うつもりか・・・?」

予想外の得物を手にした為か、女騎士は唖然としながら私が手にする『それ』を指さします。

「当然っ!こいつの性能を馬鹿にしたら痛い目みるぞ!?」

そう言って私は某サンライズアニメでおなじみな勇者ロボっぽい構えで手にしたスコップ・・・白兵戦等モード、通称「トレンチ・フォルム」に変形したイェーガーの切っ先・・・いや、堀っ先?を女騎士に向けました。

「・・・・・・」

その質実剛健なフォルムに女騎士も恐れ慄いたのかプルプルと震えています。

「ふざけているのか貴様っ!?」

・・・訂正、慄いてたんじゃなくて怒ってたみたいです。

「失敬な、大真面目ですよ!」

全く、戦の名手たるベルカ人のくせにスコップの素晴らしさを理解できないとは嘆かわしい・・・。

古くは古代中東のモスクで聖遺物として祀られ、二度の世界大戦においても最良の白兵戦装備として兵士達から愛され、日本の芸能界においてもスコップを手に頂点に上り詰めたアイドルもいるほどだというのに・・・。

殴ってよし、突いてよし、斬ってよし、掘ってよし、埋めてよしの万能兵器、それこそがスコップなのです!

ちなみに東日本では大きいものが「スコップ」、小さいものが「シャベル」と呼ばれていますが西日本だと呼び方が逆になるそうですので遠方で穴を掘る場合はご注意ください。

「信じられないというならばいいでしょう、地球人が生み出した最高の近接兵器の力その身をもって思い知れーっ!」

そう言って私はイェーガートレンチ・フォルム・・・もう長いからスコップでいいや、手にしたスコップを銃剣よろしく構えると女騎士目掛けて突撃をかましました。

「・・・ちぃっ!」

弾丸よろしく突っ込んできた私に女騎士は応戦します。

突き出された鋭いスコップの先端をデバイスでいなすとそのまま突進、あて身を喰らわせてきます。

「なんのっ・・・!」

それをスコップの柄の部分でガード、勢いを殺したところでイェーガーに死角から発砲させます。

「クッ、レヴァンティンっ!」

『Panzegeist』

イェーガーの弾丸が直撃する寸前、女騎士のデバイスがカートリッジを装填。

彼女の周りにバリアが展開され殺到した魔力弾を受け止めます。

「さすがベルカ式・・・固い」

ちょっとくらいはダメージを与えられると思ったんですがそこはさすがの古代ベルカ、煙の中から現れた女騎士の甲冑には傷一つ突いていません。

「フッ、テスタロッサといいお前といい・・・この時代の魔導師もなかなかやる。いや、それともお前は騎士か?カートリッジを使っているようだが・・・」

「・・・一応書類上は騎士になります」

こんな私ですが自慢じゃないけど聖王協会から正式に騎士号も貰ってたりします。

え?ならもっと騎士らしく正々堂々と戦えって?

チッチッチ・・・わかってませんねぇ、中世の騎士は結構ろくでなしが多いんですよ?

ベルセルクのモデルになったことで有名な「鉄腕のゲッツ」ことゲッツ・フォン・ベルリヒンゲンなんてお前騎士じゃなくて盗賊だろ?ってくらいの悪党だったらしいです。

つまり何が言いたいかというと・・・。

「ならばこの時代の騎士よ、改めて名乗りを上げよう。私はヴォルケンリッターが将、烈火の・・・」

勝てばよかろうなのだー!

なんか女騎士が悠長に名乗り始めたので某チンギスさんとこの騎馬民族よろしく名乗りの途中で攻撃を仕掛けてやりました。

「うぉっ!?き、貴様っ!相手が名乗りを上げているときに襲い掛かって来るなどそれでも騎士か!」

「違うっお姉ちゃんだ!」

「・・・いや、それは今しがたテスタロッサに否定されただろ?」

「・・・ブッコロガス!」

コイツは今言っちゃあいけない事を口にしました!

私とフェイトの姉妹の絆を否定した罪・・・その報いを受けろぉぉぉぉぉぉ!

「ちぇすとぉぉぉぉぉぉ~~~!!」

「ちぃっ!レヴァンティン!」

『シュランゲフォルム!』

吶喊する私に女騎士はデバイスを蛇腹剣へと変形させて鞭のようしならせながら打ち込んできます。

あんなのを喰らったら一瞬でざっくばらんにされてしまいます。

「なんのっ!」

なので対抗してスコップの刃の部分が高速で回転を始めます。

「何ッ!?」

打ち込まれた剣の鞭はドリルのように高速回転するスコップの刃からめとられました。

「ハーハッハッハッ!どうだ!?これで自慢の剣は振るえないぞ!さぁ、武器を置いて大人しく投降しなさい!今ならカツ丼の付け合わせにたくあんもおまけしますか・・・」

そこまで行ったところで私は異変に気付きました。

「・・・ら?」

丁度胸のあたり、そこから腕が生えている。

「・・・ん?」

指の位置からして恐らく左手、細く白魚の様な人差し指と薬指には指輪がはめられている。

「・・・んん?」

そして生えた腕、その伸ばされた先には青白い光の玉が・・・。

「・・・んんん~っ!?」

あ、これやばいヤツだ。

そう思った矢先に件の手は青白い球から何かを吸収し始めました。

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!」

「シャマルか、助かった。ああ、そいつが終わったら白い魔導師も頼む」

吸われる・・・吸われる・・・吸われ・・・あれ?

「許せ、名も知らぬ騎士よ。我等には為さねばならない目的があるのだ」

・・・何も起こらないよ?

吸われてるように見えたのも見間違いで玉は変わらぬ大きさと光量で輝いています。

「だが卑怯とは言わないでもらいたい、それを言ったら貴様の方が・・・」

と言うかこの手誰だよ?

試しに指でツンツンしてみます。

「え?何っ?」

指で突くと腕がピクリと反応し、困惑した声が聞こえます。

改めて腕を観察するとこの腕・・・私から生えているわけでは無く、何やらワームホール的な何かから出てきているようです。

つまりこの穴の向こうに腕の持ち主がいる。

そしてこの状況でこんな事をしてくる相手はこの結界を貼った術者以外にいない・・・!

「確保ーっ!」

そう判断した私は穴から伸びた腕を逃げないようにガッチリホールドし、そのまま引っ張ります。

「キャアッ!?シ、シグナム~っ!!」

「大体貴様の行動は騎士としての・・・って何事!?」

穴の向こうにいる術者の悲鳴を聞き、延々と独り言をつぶやいていた女騎士が我に返ります。

でも今はそんなことよりもこの術者の方が優先です。

「ふんっ!こんのぉ・・・抵抗しないで出て来ぉーいっ!」

「イタタタっ!無理無理っ!やめてっ!もげちゃう!腕もげちゃうから~っ!」

力任せに引っ張りますが穴が小さいせいで肩から先がつっかえて術者を引っ張り出すことが出来ません。

「いかんっ!その手を放せっ!」

術者の腕をグイグイ引っ張っていた私に女騎士が斬りかかってきます。

「あぶなっ!?」

慌てて避けるも、うっかり術者の腕から手を放してしまいました。

自由になった術者は慌てて腕を引っ込め、ワームホール的な穴も消滅します。

「あーっ!逃げられたっ!」

チクショウ!もうちょっとだったのに~!

「ふぅ、今のは少々肝が冷えたぞ」

悔しがる私とは対照的に無駄にデカイ胸をなでおろす女騎士・・・。

「・・・上等。ならその肝、もっとキンキンに冷やしてやろうじゃないかっ!」

フェイトにお姉ちゃんて呼んでもらえない悲しみに加えて術者を捕まえられなかった悔しさ・・・。

全部まとめてぶつけさせてもらおうじゃありませんか!

改めて女騎士と対峙した私はスコップを構えると一気呵成に飛び掛かりました・・・。

 

Side シャマル

「はぁ、はぁ・・・あ、あぶなかったぁ・・・」

辛くも危機を脱した私はホッと胸をなでおろす。

本当に、今回の蒐集は驚かされてばかりだ。

「まさかハルナちゃんが本当に管理局の人間だったなんて・・・」

ハルナ・スカリエッティ・・・。

私達の主、はやてちゃんの大事な友達の女の子。

出会った当初は高い魔力を持っていたからもしかしたら管理局の局員なのではと警戒していたのだけれど・・・まさか本当に局員だっただなんて。

しかもシグナムと渡り合えるほど強くて、何より闇の書による蒐集が行えないなんて予想外過ぎるでしょう!?

「でも、どうして・・・?」

どうしてハルナちゃんの魔力を蒐集出来なかったんだろう?

「ううん、考えるのは後。今は・・・」

私は遠くに立つビルを睨む。

その屋上・・・そこに展開された緑色の結界。

中にいる者の傷を癒し、同時に外からの攻撃や干渉を防ぐ厄介な代物・・・。

そこに居る白い魔導師・・・。

ヴィータちゃんが狙っていた高い魔力を持つ女の子・・・彼女が結界から出てくるのが見えた。

それはまたとないチャンス、結界の中にいられたら旅の扉も使えないけれど外に出くれたのなら・・・。

「・・・ゴメンなさい、でもはやてちゃんのためなの」

言い訳なのは分かっている。

はやてちゃんを救うためにはやてちゃんと同じくらいの年の子を襲う事に対する罪悪感。

それから逃れるためだというのは分っている、でも、でもはやてちゃんの為なら私は迷わない・・・!

「座標、確認・・・」

左手を正面に掲げクラールヴィントを展開する。

両手の指にはめられた指輪型デバイス、クラールヴィントの宝石部分が空中に丸い円を描く。

その輪の中・・・旅の扉の先に彼女がいる。

狙うは白い魔導師の少女、その胸の奥にある・・・。

「座行固定・・・捕まえたっ!」

狙いを定めた私は勢いよく右腕を旅の扉に突き入れた。

Side Out

 

「なのはぁっ!!」

女騎士とのどつき合いに夢中になっていた私はフェイトの叫び声で我に返ります。

見れば顔面蒼白になったフェイトがなのはのいるビルに飛んで行くのが見えます。

なのはの身に何が?そう考えた時、私の脳裏に先ほどの腕だけ術者の存在がよぎる。

しまった!やっぱり確実にとっ捕まえとくんだった!

私に何かしようとして失敗した謎の術者、フリーになったのなら真っ先に狙うのは戦う力の残ってないなのはに他ならない・・・!

ユーノの張った結界に守られているはずですがあのなのはです、私達が戦っているのを見てじっとしていられるわけがありません。

「・・・っ!」

そこまで考えた所で私はフェイトを追ってビルへ飛んで行きます。

「させんっ!」

しかしそれを彼女が許してくれるわけがない。

案の定、女騎士は私の前に立ちはだかりました。

「・・・どけ」

自分でもビックリするくらい底冷えする声がでます。

「退かん」

しかしはいそうですかと女騎士が道を開けるわけがありません。

デバイスの切っ先を向けられた瞬間私の選択肢は一つになりました。

「押し通る・・・!」

そう呟き、私はイェーガーを構えます。

「通さん・・・!」

対する女騎士も不退転の構えでデバイスの切っ先をこちらに向けてきます。

そう、これが今の最善手・・・。

目下最大の脅威は目の前の女騎士。

戦闘中に観察した感じだとこいつが襲撃犯たちのリーダー格の様です。

あの赤いロリっ子やら犬耳マッチョがどれほどの強さかは分かりませんが連中が大人しく指示に従っていると言う事は相応の実力者なのは間違いありません。

仮にフェイトがこの女騎士の相手をしていたら決してなのはにたどり着けません。

その間になのはがどんな目に遭うのか?

だから私がこいつを釘付けにしてフェイトになのはを救出してもらうのが最善です。

なによりこの湧き上がる怒りのぶつけどころとして目の前の相手は正にうってつけでした。

何に怒ってるのか?

今戦っている女騎士か・・・否。

今なのはを襲っている謎の術者か・・・否っ!

私が怒りを向けている相手、それは他ならない自分自身です。

連中の狙いがなのはであることは最初から分かっていた。

なのに私は目の前の女騎士を相手することに夢中になり過ぎてなのはを助けるという一番大切な目的を忘れていました。

結果として今なのはが傷つき、苦しんでいる。

他ならぬ、私のせいで・・・。

「・・・・・・っ!!」

気付けば私は女騎士に肉薄、その首目掛けてスコップを振り下ろしていました。

 

結果から言うと負けました。

あ、別に私がボッコボコにされた訳じゃありませんよ?

私がシグナムとか言う女騎士に突撃かまして暫くした後、なのはが満身創痍の状態でスターライトブレイカーを発射。

私達を閉じ込めていた結界が破れるのを見た襲撃者一行は散り散りになって逃走しました。

・・・と、言えば聞こえがいいですが実際のところあっちが目的を達成して帰っていったというのが正しいところです。

なのはは命に別状はないもののリンカーコアが著しく衰弱、今しがた父さん達が本局の病院に搬送していきました。

レイジングハートも大破、フェイトのバルディッシュも損傷が酷いとの事。

対して向こうに与えた被害と言えばなのはのディバインバスターがあの赤いチビッ子の帽子を吹き飛ばした事くらいでしょうか。

それもあの女騎士が帽子を修復したみたいなので実質ノーダメージ・・・どこからどう見ても私達の完敗です。

「そっか、追跡は巻かれたか・・・」

『うん、ゴメン・・・』

おまけにエイミィの追跡の手からも逃れたみたいです。

物理で最強なのは知ってましたけどこういった後方支援系でも強いというのは初めて知りました。

『ああ、そうだ。ハルナちゃんが探してた結界の術者、こっちで姿を捉えたから映像送るね』

そう言ってエイミィが送ってきた映像を見て、私は目を見開きました。

「なっ!?」

そんな、バカな・・・!

『ハルナちゃん?』

そんな、まさか・・・。

「こいつ・・・晩ご飯はお鍋だ!」

飛翔する術者、彼女が手から下げたスーパーの袋から覗く品は、間違いなく水炊き鍋の材料でした。

『・・・・・・・・・』

うん、エイミィからの視線が痛いです。

「・・・冗談だよ?」

『本気で言ってたら艦長に言って減給してもらうところだったよ・・・』

何気に怖いことを言ってくるエイミィ・・・妹達に色々買ってあげたいお姉ちゃんにとってそれはあんまりな仕打ちです。

「・・・ロストロギア、闇の書」

『やっぱりハルナちゃんも知ってるの?』

「も」とエイミィが言うと言う事は恐らくクロノも気づいたんでしょう。

闇の書・・・私が管理局、クライドさんに保護されるきっかけとなった存在・・・。

あれからクライドさんは今もあのロストロギアを追っているとの事。

いわばあれはハラオウン家にとって因縁の存在という事です。

「本気でヤバいロストロギアだよ。あれが絡んでくるとなると・・・今回の事件はかなり大事になるかも」

あれが原因で滅んだ世界もある以上、管理局としてもいつも以上に本腰を入れなければいけません。

そう感じた私はエイミィに本局にいるグレアム提督にも事の次第を伝える様に頼みます。

あの人なら事の重大さを理解してくれるはずです。

『うん、分かった・・・!』

エイミィとの通信が切れます。

「・・・はぁ~!」

危なかった、気づかれないかとヒヤヒヤしましたが何とかごまかすことが出来ました。

胸をなでおろしながら私は改めて送られてきた映像を見ます。

闇の書とスーパーの袋を手にした魔導師、今回結界を展開していたと思しき術者・・・。

「・・・これ、シャマルじゃん!」

そして親友であるはやての家族、シャマルの姿に私は叫ばずにはいられませんでした。




次回、突撃隣のヴォルケンリッターw


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第30話「お笑いは90年代が一番おもしろいの(あくまで作者の感想です)」





Sideリンディ

「艦長、ドクターから連絡がありました。なのはちゃん、怪我は大したことないそうです。ただ・・・」

なのはさんの様態についての明るい報告の直後、エイミィは言い淀む。

「ただ、リンカーコアが異常に収縮してたと・・・」

その報告に私の眉間にしわが出来る。

「最近多発している魔導師襲撃事件の被害者と同様ね・・・」

「はい、恐らく同一犯で間違いなさそうです」

地球の近傍で魔導師が襲撃され、リンカーコアを奪われる・・・。

それはまるで10年前のあの事件・・・闇の書の暴走事件を彷彿とさせた。

ロストロギア「闇の書」、私達ハラオウン家やハルナさんにとって因縁浅からぬ存在。

嫌な予感がするわね、なにも起こらなければいいのだけれど・・・。

事件が地球の周辺で起っている以上、現地を管轄とする私達アースラチームが捜査に当たる可能性が高い。

そして、ロストロギアが絡んでくる以上遺失物管理部からも人員が・・・ハルナさんが派遣されてくるでしょう。

不安だわ。どうしてもあの時の光景が・・・クライドさんの腕の中で血まみれで倒れるハルナさんの姿が浮かんでしまう。

「っ・・・そうだわ、ハルナさんは今どうしてるの?」

嫌なイメージを払しょくするように首を振ってから私はハルナさんの所在を訪ねた。

なのはさんやフェイトさんと一緒に医療棟に入っていったのは確認したけれどしばらくしたらすぐ一人で出てきたわね。

あれからどこに行ったのかしら?

「ハルナちゃんならあれからすぐに地球に戻りましたよ」

その質問に対しエイミィから返って来た答えは予想外のものだった。

「地球に?」

「はい、何でもちょっと調べ物があるとかで・・・」

Side Out

 

機人少女リリカルハルナA's

第30話「お笑いは90年代が一番おもしろいの(あくまで作者の感想です)」

 

Side シャマル

「とにかく当面の間シャマルは主はやてと行動を共にしていた方がいいだろう」

ザフィーラの意見に私達はそろって頷いた。

あの時旅の扉を開いたのは失敗だったわね・・・。

まさかハルナちゃんが管理局の執務官でしかも闇の書によるリンカーコアの蒐集が出来ないなんて・・・。

幸い顔を見られたわけじゃないけれど彼女が管理局の魔導師だった以上魔力の波形から私にたどり着く可能性がある。

故にこれ以上下手に魔法は使えない・・・つまり蒐集に出られない。

理屈は分るけれどやはり蒐集に参加できないのは痛い。

皆だけを危険にさらすことが心苦しいのは当然ながらやはり蒐集が遅れる・・・ひいてははやてちゃんを救うのが遅れることが辛い。

でも今は我慢しないと、もし私が守護騎士の一人だとハルナちゃんに知られたら全てがご破算に・・・。

『ピンポーン』

思考の海に沈んでいた私の意識は来客を知らせる呼び鈴で再浮上する。

「おりょ?お客さんか?ゴメンな~、誰か代わりに出て~?」

台所からはやてちゃんが私達に言う。

「あ、じゃあ私がいきます」

そう言って私は椅子から立ち上がり玄関に向かう。

「はーい、どちら様ですか?」

私の問いかけに対して扉の向こうにいる来客から返って来た答えは・・・。

「開けろっ!デトロイト市警だ!」

想定をはるかに超越した内容でした。

「・・・はい?」

え?何?今何て言ったの?

デトロイトって言うのは確かこの世界にある国・・・アメリカの都市の名前よね?

と言う事は「しけい」って言うのは恐らく市警・・・警察って意味よね?

違う国の警察が突然来て扉を開けろと言ってくる、訳が分からないわ・・・!

「えっと・・・」

私が困惑していると・・・。

「デトろ!開けロイト市警だ!」

・・・せかいのほうそくがみだれる。

何!?何なの?!

デトろって何を要求してるの!?というか開けロイトってどこ!?

「・・・シグナムー!」

もうどうしていいか分からなくなった私は頼れる将、シグナムに泣きついた。

「ど、どうしたんだ?来客があったんじゃないのか?」

私の慌てぶりに困惑するシグナム。

「大変なの!市警の開けロイトがデトろって・・・!」

「落ち着け、何を言ってるのか全く分からん」

自分でも全く要領を得ない発言なのは分かっているけどもう何て説明したらいいのか分からなかった。

「もぉ~、みんな何しとるん?お客さん外で待たせたら失礼やろ・・・」

私達がそうこうしていると、台所から出てきたはやてちゃんが玄関の扉を開けます

「あ」

「えっ?」

「なっ!?」

そして扉の向こうにいた予想外の客人に私達は思わず声を上げる。

「んちゃ!」

そんな私達の心の内を知ってか知らずか、ハルナちゃんはどこの国のものかもわからない挨拶を口にした。

「んちゃ!」

それに返すはやてちゃん。

・・・えっ、それ日本の挨拶なの!?

Side Out

 

はいどうもこんにちは。

そんな訳で二人分も他の人視点を経てからのハルナちゃんのターンです。

ご覧の通り私はいまはやてのお家にお邪魔しているわけですが・・・

「「「「・・・・・・・・・」」」」

視線が痛いです。

八神家のリビングに通された私に対して闇の書の守護騎士達がメンチビームの集中砲火を浴びせてきます。

以前PT事件の時になのはの家族に事情を説明しに行ったときも士郎さん達の視線が痛かったですがこちらはもっとヤバイです。

なんと言うか僅かでも不審な動きを見せたら比喩でも何でもなく殺すと彼女たちの目が言ってます。

うーん、今更だけど少し浅はかだったかな?

でも完全武装+武装隊を引き連れてお宅訪問なんてしたらヤクザの組事務所のがさ入れなんかよりも荒事になってしまいます。

ご近所さんが迷惑通り越して命に係わる実害を被りかねません。

「えっと、みんなどうしたん?」

凄まじくギスギスした雰囲気に戸惑いながらはやてが効いてきます。

「いえ、べつに・・・」

「何でもねーです」

そう答える守護騎士達ですがどう見ても何でもねくは無いですよね?

「はぁ・・・じゃあハルナちゃん、ハルナちゃんは何のご用でうちに来たん?」

守護騎士達に質問しても埒が明かないと判断したのか、今度はこちらに質問してきます。

「いやね、ちょっとばかしシャマルたちにあってさ・・・」

私がそう言うと対面に座った守護騎士達は「ビクッ!」と肩を震わせます。

顔を見ればすごい苦々し気な表情や青ざめた表情で額に汗を浮かべていたりで、まるで黙っていた悪行がお母さんにバレた子供の様です。

これはアレでしょうか?闇の書の事はやてに黙って活動していたとか?

だとしたら少なくともはやては罪に問われる心配はなくなりましたね、よかったよかった・・・。

「シャマルたちに?」

「うん、でもその前に・・・」

私は持ってきていた鞄を開けて中を物色する。

「実はねー、今回はやてにお土産を持ってきたのだ!」

「おー!何や何やっ?」

お土産と聞いてワクワク顔でカバンの中を覗きこもうとするはやて。

そんなはやてに急かされながら私は鞄から目的の品を取り出します。

「ジャーン!はい、受けとってはやて!」

そう言って私は持参したお土産・・・鳥の羽で出来た帽子と色鮮やかな刺繍のポンチョ、そしてオモチャの斧をはやてに差し出しました。

「おー、ありがとな!そうそうコレコレ・・・」

渡されたはやては笑顔でそれらを受け取ります。

「これをな、こうしてな・・・」

羽防止をかぶり、ポンチョを羽織り、オモチャの斧を右手に・・・。

「ドンドットット・・・ドンドットット・・・ドンドットット・・・」

踊る様に部屋をグルグル回り始め・・・。

「・・・って、ちがーうっ!!」

斧を床に叩きつけました。

 

Side はやて

「ネタが古いねん!平成生まれの良い子たちがついて来れへんやろがっ!!」

あかんあかん・・・ハルナちゃんのあまりの自然なフリに思わずつられてもうた・・・。

しっかし、ダ〇ン〇ウンのコントとか・・・ホンマにハルナちゃんは外国人なん?昭和生まれの日本人とちゃう?

「いや~さすがははやて、見事なノリツッコミ!私の目に狂いはなかった!」

うん、せやなー。

目は狂ってなさそうやなー、脳みその方は狂ってるけど・・・。

「さて、イイ感じに場の空気も和んだことだし・・・」

そう言ってハルナちゃんは話を進めようとします。

イヤイヤイヤ・・・和んでへん、和んでへんよ。

ほら見てみいシグナム達を・・・私とハルナちゃんのやり取りについて行けなくて唖然としてるやん。

・・・あれ?これって半分は私のせいなん?違うよね?

「んでね、単刀直入に聞くけど・・・はやては闇の書の事どこまで知ってる?」

「・・・えっ?」

何でハルナちゃんが闇の書の事知ってるん?

そう聞こうとした直後、部屋の空気が変わった。

「貴様・・・っ!」

「てめぇ・・・!」

シグナム達からこれでもかって言うくらい強い殺気が放たれる。

な、何なん!?何が起こってるん!?

鋭く、重苦しい・・・文字通り触れれば斬られそうな殺気を当てられてもハルナちゃんは涼しい顔で私達の様子を観察していた。

「ふむ・・・その様子だとシャマルたちからは何にも聞かされていないみたいだね。なら私が代わりに説明する?」

「不要だ!そして金輪際我らに干渉するな!さもなくば・・・」

騎士甲冑を纏って実力行使も厭わないという雰囲気の家族に私は何が何だか分からなかった。

何でそんなに殺気立ってるん?私に何を隠してるの?ハルナちゃんは何を知ってるんや・・・?

そして私の疑問は次にハルナちゃんの言葉で最高潮に達した。

「そうはいかないよ。このまま蒐集を続ければ、はやての命はおろか地球すら滅びかねないんだから」

・・・えっ?

「ハルナちゃん、それって・・・どういう事?」

私が死ぬ?世界が滅ぶ?

「主!耳を貸しては・・・!」

「シグナムは黙っててっ!」

「・・・っ!?」

語気を荒げて発言を遮った私にシグナムがたじろぐ。

「皆どういう事?何を隠してるん?・・・まさか、私に内緒で魔力の蒐集をしてたんか!?」

私が問い詰めると騎士たちは皆バツが悪そうに視線を逸らす。

つまり本当に魔法の蒐集をやっとったんか?私に内緒で・・・。

あれだけ蒐集はしたらアカンって言ったのに!

気付けば私はシグナムの頬をひっぱたいていた。

「っ!?あ、主・・・?」

「・・・・・・!」

次にヴィータ、シャマル、ザフィーラ。

騎士達の・・・家族の頬を叩く。

「・・・バカ、みんなのバカぁっ!アホ!大馬鹿っ!」

そう罵倒する私の目からは涙がボロボロ零れていた。

「蒐集はしないって言うたやろ!私なんかの為に、みんなに何かあったら・・・!バカぁ・・・」

最後の方はもう言葉にならず、シグナムに抱きついて泣いてもうた。

「主・・・申し訳、ありません・・・」

「グスッ、うっさい・・・!ヒック、謝るんやったら最初からするんやないっ・・・バカシグナム・・・!」

「はい、わが主・・・ズズッ」

顔を埋めてるから見えんけど声からしてシグナムも泣いてる見たいや。

「はやてぇ・・・」

「うぅ、ごめんなさい・・・」

「・・・ぐすっ」

周りでは涙声の皆が誤っている。

私は主失格やな。

皆が思い詰めてるのにも気づかないなんて。

それで家族に悪い事をさせてもうた。

ホント、ダメな主や・・・。

Side Out

 

 

「落ち着かれましたか主?」

「ズビッ・・・うん」

ひとしきりワンワン泣いた八神家ご一行、とりあえず落ち着きを取り戻したようなので改めて話を聞くことにしましょう・・・。

え?何?フェイトの時みたいにもらい泣きしないのかって?

フッ、甘いですね。

「グス・・・ハルナちゃんにもカッコ悪いとこ見せてもうたな・・・」

「う゛ぇ゛あ゛ぁ゛ぁ゛~゛~゛」

こちとらはやてが泣き出したところで既に大号泣ですよ!

「うわっ汚っ!?」

おいはやて、この美少女に向かって汚いは無いでしょうが?

そりゃさ、涙やら鼻水やらでグチャグチャですけど・・・。

それからはやての家の洗面所を借りて顔を洗った私は改めて八神家一同と相対します。

「ずびー!ぷはぁ・・・んで?結局はやては闇の書の事どこまで知ってるのさ?」

ティッシュじゃ足りないんで八神家のトイレから拝借したトイレットペーパー(無許可)で鼻をかみながら改めてはやてに質問します。

「なぁ、ハルナちゃん・・・そのトイレットペーパーうちの・・・はぁ、まぁええわ。んで、闇の書の事やな?んーと、たしか大昔にベルカってところで作られた魔法の本でページを全部埋めると闇の書が完成するって。でもそのためにはいろんな人から魔力を蒐集せなあかんってのも・・・これくらいかな?」

はやてから聞いた闇の書の概要は概ね局内のデータベースにある情報と同じだった。

「なるほど、んじゃ次にヴォルケンズ」

「ヴォ、ヴォルケンズ・・・?」

困惑する守護騎士一同。

何だよ?ヴォルケンリッターって言い辛いじゃん?

え?ヴォルケンズも大概変わらないって?うっさい。

とーにーかーく!質問に答える!

「あなた達の目的ははやての脚を治すこと、それで間違いない?」

「あ、あぁ。その通りだ・・・」

肯定するピンクポニテの騎士・・・シグナムでしたがその返答はどうにも歯切れが悪いです。

さては他にも何か隠しているような!?

「何を隠してる?さぁ吐け!洗いざらい吐くんだ!さもないとそのデッカイ乳揉むぞ!?揉んでるシーンsk〇bに依頼して完成品をツ〇ッターに曝すぞ!?」

「ちょ!?何を訳の分からんことを・・・」

「なに言うとるんや!?シグナムのオッパイはうちのもんや!あとs〇ebの完成品はこっちにも回してください!」

「主まで何を・・・えぇいっ!その怪しい手つきを止めろ!そのまま近づいて来るんじゃないっ!」

はやてと揃って手をワキワキさせながらシグナムににじり寄っていくと身の危険を感じたのかデバイスの切っ先をこっちに向けてそう叫びます。

「むぅ、シグナムの不忠者・・・それで?まだ隠してることがあるんやろ?」

「う・・・じ、実は・・・」

完全にこっちのペースに乗せられてしまったシグナムは圧の強いはやての詰問についに白状した。

このままでははやてが命を落とすだろうことを・・・。

「・・・・・・」

シグナムの語った内容ははやてにとって非常に衝撃的だった。

はやてがリンカーコアの蒐集を拒んだ結果、闇の書ははやての体を蝕み始めた。

彼女の脚が動かないのも闇の書の呪いによるもの、それがはやての覚醒・・・守護騎士システムの起動と共に加速。

次第に全身に広がり、ゆくゆくは内蔵機能をはじめとした生命活動にも影響を及ぼすというのです。

故に騎士達ははやてを救うために彼女に内緒でリンカーコアの蒐集を始めたと・・・。

「ふーむ・・・事情は私の予想通りか・・・」

「え?ハルナちゃんは知ってたの?」

私があんまりショックを受けてないことにシャマルが驚きます。

「まぁ、捜査の過程でいろいろ調べたからねー」

エスティアの一件で死にかけてからはや11年・・・私だって闇の書について色々調べたんです。

「・・・何を知っているか話してもらいないか?」

「私達が覚えていないことが、はやてちゃんを救う方法が見つかるかも・・・!」

当然ながら捜査内容を無許可で教えるのは違法です。

でもこれは私が個人的に調べた情報、だからなーんも問題ありません。

「てなわけで話すよ。まずみんな闇の書って呼んでるけどそれは間違いなの」

「えっ?」

「何?」

しょっぱなから皆が唖然とします。

てか守護騎士の皆、自分が護るものの名前とか一番忘れちゃいけない事柄でしょうが・・・。

「正式名称は「夜天の魔導書」、古代ベルカ時代に作られた情報蓄積用のデバイスだよ」

各地の優れた魔導師や騎士、彼らの魔法を収集、記録して研究の為に後世に残すことを目的としたもの。

それそのものに戦闘能力は備わっていないものの当時のベルカは戦国乱世・・・。

係争地を避けての収集活動や戦火からの退避を行うための長距離跳躍機能。

戦火を受け蓄積した魔法データが破損した場合を想定した自己修復機能。

そして魔導書とそれを運用する研究員を守るための守護騎士システム・・・。

それらを備えた夜天の書は稼働当初は問題なく機能し、当初の目的である魔法の収集を行っていました。

「それがおかしくなったのは歴代の主たちが色々な機能を追加してからみたい」

ベルカの戦乱が激しさを増し、夜天の書を作成した最初の主が戦火に倒れたことで、二代目の主は守護騎士システムだけでは主と魔導書を守るには心もとないと判断。

魔導書そのものに高い戦闘能力を持たせるために自動迎撃プログラム、「ナハトヴァール」が追加された。

その後、歴代の主の手で改変は続き、ついに制御が効かなくなった夜天の書は暴走。

ページを完成させるために主の身体を蝕み否が応でも蒐集を強制させ、完成したら破損したナハトヴァールが主を取り込んで破壊の限りを尽くす。

長距離跳躍機能は転生機能へ、自己修復機能は無限再生機能へと変わり果て、幾度破壊されようとも再生してはランダムで選ばれた次の主の元へと転生して再び蒐集と破壊を繰り返す。

こうして呪われた魔導書は数多の世界に破壊を振りまきいつしか闇の書と呼ばれるようになった。

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

説明を終えた八神家の居間は重苦しい空気に支配される。

そりゃそうだ、そんな重大な事を忘れていた事もさることながら、はやてを助けるために行っていた蒐集が最終的にはやての命を奪う事になるんだから・・・。

「どうすりゃ・・・どうすりゃいいんだよ!?」

あまりにも残酷な未来についにロリッ子・・・ヴィータが声を上げます。

「闇の書のページを集めてもはやてが助けられないなら・・・アタシ等はどうすりゃいいんだよ!?」

私に詰め寄るヴィータ、その眼からは大粒の涙が零れ落ちています。

はやてはいい家族を持ちましたね、まぁ私には負けますけど・・・。

そんな感じで自画自賛してみましたが正直なところどうしましょうか・・・。

一番確実なのは私達管理局に保護を求める事でしょう。

これまでの事は歴代の主の命令でしょうし今回の魔導師襲撃事件に関してもはやての命がかかっていたわけですから情状酌量の余地はあります。

ですが・・・法と人の感情は別物です。

いくら裁判で無罪を勝ち取っても闇の書が原因で亡くなった人たちが帰って来ることはありません。

当然被害者やそのご遺族からの憎悪も消えることも無い。

そしてその憎悪の矛先が向くのは今代の主であるはやて。

はやてに罪がない事は明らかですが被害者たちはそのことを知りませんし知った事ではありません。

彼らの心に深く根を張った憎しみ・・・もはやそれはぶつけなければどうにもならないほどに肥大化してしまっています。

そしてそんな人物は、残念ながら管理局内にも存在します。

同僚を殺されたもの・・・友や恋人、家族の仇を取るために入局した者・・・。

理由は様々ですがそんな彼らがはやてを知ったらどんな行動に走るか分かりません。

ならこのままはやてが主であることを隠し通すか?

それも難しいです。

管理局は無能ではありません。

私が気づけたんです、守護騎士達が海鳴市内で生活している以上やがてはやてに行き着きます。

そして隠している間も守護騎士達ははやての病状を抑えるために蒐集活動を続けなければいけない・・・つまり罪を重ねなければいけません。

捕まった時の刑罰が重くなってしまい結局はやてが不幸になります。

はやてを助けるための選択、私は・・・

→【はやての事を報告する】

 【はやての事を秘匿する】

・・・え?安価?

やりませんよ、ここは掲示板の転生スレじゃないんだから。

 




はやてに「ドンドットット・・・」はいつかやらせてみたいネタでしたw


目次 感想へのリンク しおりを挟む


しおりを挟む

第31話「一人でどうにもできないときは素直に他の人を頼りましょう・・・なの!」

あけましておめでとうございます。
年末年始の休みでようやく筆が乗って投稿できましたw
ちなみに今回オリキャラが登場しますが今後本編で活躍するかは未定です!(ヲイw)
それでは本編どうぞ、今年もよろしくお願いします。


Side なのは

「わぁっ・・・!」

「すごいいい眺め・・・あっ、あそこ見て!私の家っ!」

「ほんとだ・・・!」

いま私たちは海鳴のとある高層マンションにいます。

無事退院した私とフェイトちゃんはあの後、管理局の偉い人でクロノ君やリンディさんの知り合いのギル・グレアム提督とお話ししました。

グレアム提督は私と同じ地球出身でイギリスの人らしいです。

なんでも子供の時に管理局の魔導師さんを助けたことがきっかけで入局したそうで、私とユーノ君に事情が少し似ています。

そうして楽しくお話ししていた所でクロノ君が闇の書という名前を出した途端グレアム提督の雰囲気が変わりました。

どこか張りつめた・・・ピリピリとした緊張感がグレアム提督から感じられました。

闇の書・・・大昔に作られたロストロギアでグレアム提督やクロノ君のお父さん、そしてハルナちゃんとかかわりがある魔法の本らしいです。

クロノ君の話ではこの事件をアースラチームが担当することが決まったそうです。

同時に私とフェイトちゃん、そしてハルナちゃんも捜査に参加するとのこと。

最後に部屋を出る前にグレアム提督はクロノ君に「あまり熱くなるなよ」と話していました。

でもその表情は何かを思い詰めているような・・・そんな風に見えたのは私の見間違いだったのでしょうか?

本局での出来事を思い出しているとふとお部屋の呼び鈴がなりました、誰か来たみたいです。

「「こんにちはー!」」

「アリサちゃん!すずかちゃん!」

「いらっしゃい、二人とも」

やって来たのはアリサちゃんとすずかちゃんでした。

「こんにちは、フェイトちゃん」

「実際に会うのは初めましてよね」

「うん、なんだか変な感じだね・・・」

お互いビデオレターでやり取りしていたから初めてという感じがしません。

「あれ?そういえばハルナちゃんは?」

暫くお話ししているとすずかちゃんがハルナちゃんがいないことに気付きます。

あの事件から二日・・・本局の病院にお見舞いに来て以来、ハルナちゃんの姿を見ていません。

どうしたんだろう?もしかしてハルナちゃんの身に何かあったのかな?

ううん、あんなのでもハルナちゃんはクロノ君とおなじ執務官でとっても凄い魔導師です。

きっと私達の知らない方法で事件の事を調べている・・・そう思いたいですがやっぱりちょっと心配です。

「ハルナちゃんは・・・」

私がそう口を開いたその瞬間、マンションの玄関が勢いよく開かれました。

「ちわ~!三河屋で~す!」

・・・うん、心配したなのはがバカでした。

Side Out

 

機人長女リリカルハルナA's

第31話「一人でどうにもできないときは素直に他の人を頼りましょう・・・なの!」

 

ちわ~、ハルナお姉ちゃんで~す。

作者のやる気が原因でまーた間が開きましたが無事続きが出来ました。

場所は海鳴市にある高層マンションの一室。

ここは今回の事件の捜査本部として急遽購入されたものです。

事件の間、アースラチームのメンバー・・・主に事件の際に現場に向かうフェイトやクロノが生活するためのセーフハウスになります。

・・・ん?フェイトとクロノが生活!?

何てけしからんっ!そんなふしだらな事、お姉ちゃん許しませんからね!

「ハ、ハルナちゃん?その格好は・・・?」

私がいかにしてフェイトと二人でここに住もうか考えているところになのはから声がかかります。

「ふぇ?私の格好がどうかしたの?」

「いや、どうかしたもなにも・・・なんで蕎麦屋さんみたいな格好なのよ・・・?」

そう言って私を指さすアリサ。

彼女の言う通り、今の私は白の割烹着と同色の和帽子という、蕎麦屋さんや料理人みたいな格好です。

「そりゃここに引っ越してくるんだもん、ちゃんとおもてなししないと・・・」

そう言って私は手に持った岡持ちを部屋のテーブルにドンと置きます。

「ハルナちゃん、最近姿を見なかったのってもしかして・・・」

フッフッフ・・・なのはは気づいたようですね。

「さぁ、刮目するがいい!この二日間、駅前の蕎麦屋さんで修行してきたハルナちゃんの渾身の力作・・・」

そう言って私は岡持ちの蓋を開く。

途端に噴き出す蒸気、その中から出てきたのは出来立てアツアツの・・・

「三河屋のスペシャルカツ丼っ!」

「蕎麦をだせぇぇぇっ!」

カツ丼を出した瞬間アリサから猛烈なツッコミが飛んできました。

Side Out

 

Side フェイト

「何でカツ丼なのよ!?引っ越しなんだから引っ越し蕎麦でしょうそこは!?モグモグ・・・てか無駄に美味しいのが何か腹立つ!」

「結局食べるんだ・・・」

ハルナと合流した私達はあの後、なのはの家族が経営する喫茶店翠屋に場所を移した。

リンディ提督はなのはの家族に引っ越しの挨拶に向かい、私達はテラス席を囲んで談笑する。

先ほどのハルナの奇行に文句を言いながらも出されたカツ丼を口に運ぶアリサ。

・・・うん、何でわざわざ翠屋に来て食べるのかは聞かないでおこう。

「まぁまぁアリサちゃん・・・それはそれとして、ユーノ君も久しぶりっ!」

「う、うん・・・」

すずかはその隣でアリサを宥めながら久しぶりの再会を果たしたユーノを抱き上げる。

非常時の護衛もかねてフェレットモードなことが不服なのかどこか釈然としないユーノ・・・。

なんと言うかアリサもすずかもユーノの事を人じゃなくて喋るフェレットとして見てるきらいがあるし・・・。

うん、後で元気づけてあげよう。

「んぐ・・・ごくん。そういえばアルフも随分小っちゃくなったわね」

「フフンッ、可愛いだろう?」

カツ丼を平らげたアリサがアルフに声をかける。

彼女の言う通り、狼形態のアルフは以前よりもずっと小さい・・・子犬の様な姿になっていた。

何でも魔力消耗を抑えるためにユーノに協力してもらって子犬モードに変身できるようにしたとか・・・。

実際得意げに胸を張るアルフ(子犬モード)は可愛い・・・。

・・・うん、その件も含めてユーノにはあとで何か奢ってあげよう、そうしよう。

そんな二人を微笑まし気に見つめるなのはとハルナ、でも・・・。

「ハルナ、どうかしたの?」

「うぇっ!?」

私が声をかけると驚き、次いでバツが悪そうに視線を逸らす。

「さっきから元気なさそうだよ?」

今日のハルナはどこか様子がおかしい。

なのはとアリサは気づいてないみたいだけど僅かなりともハルナと付き合いの長い私にはわかった。

「うん、私もそう思う。ハルナちゃん、何か悩み事?」

すずかもハルナの様子に気付いたらしい。

どの様におかしいのかと聞かれると説明しづらいけれど、なんとなく元気がない。

さっきカツ丼を持って司令部にやって来た時もなんだか無理やり元気そうに振舞っている感じだった。

「ナ、ナンノコトカナー?オネエチャンワカラナイナー・・・」

「ハルナちゃん、喋り方が片言になってるよ?」

なのはの指摘にとうとうハルナは黙り込んでしまう。

何か言いづらいなのかな?

ハルナは執務官だ、職務柄話すことのできない秘密だっていくつもある。

今回の悩みはそんな部外にの情報なのかもしれない。

でも・・・。

「言い辛い事なのかもしれない。でも、辛いなら言って欲しい。ハルナの力になりたいんだ・・・」

「フェイト・・・」

あの日・・・絶望に心砕かれた時、私を支え、もう一度立ち上がる力をハルナがくれた。

アルフやクロノやユーノ・・・そしてなのはも私を助けてくれたが、あの時真っ先に私に手を差し伸べてくれたのは間違いなくハルナだ。

母さんから投げかけられた拒絶の言葉に真っ向から啖呵を切り、訂正させようと庭園に乗り込んでいったハルナに私の心は救われた。

だから誓ったんだ・・・もしハルナが辛い目に遭っていたら、今度は私がハルナを助けるって・・・。

私の言葉にハルナ躊躇いがちに口を開きます。

「いやね、追ってた守護騎士達・・・あいつらの手掛かりが完全に途絶ちゃったからさ・・・」

話してくれたのは闇の書の守護騎士、ヴォルケンリッターの事だった。

あの戦いの後、エイミィたちの追跡から逃れた彼女たちは今も尚、その足取りが追えていない。

私やなのはがやられたことにハルナが強い責任を感じているのは知っている。

ハルナが言うには彼女自身も独自に足取りを追っているらしいが全く手掛かりもつかめていないとのことだ。

「だから少し焦っててさ・・・向こうの動き待ちなのがじれったくてさ・・・」

だから溜ったフラストレーションをさっきの様にはしゃいで無理やり発散していたらしい。

ハルナの説明は一応筋が通っている。

でも何か釈然としない・・・まるでまだ何か隠しているような・・・。

もっと踏み込んで聞くべきだろうか・・・考えるが答えが出ない。

思い悩んでいる所に大きめの箱を抱えたアレックスが私たちに声をかけてきたのは丁度その時だった。

Side Out

 

あっぶねぇ・・・。

危うくフェイトの熱のこもった説得でゲロっちまうところでした。

「おー!よく来たマーカー!待ってたよ!」

「アレックスです」

あれ?そうだっけ?

ほら、オスカとマーカーって偶にどっちがどっちか分からなくなるじゃん?

ブライトさんはよく見分け着くよね、さすがはガンダムシリーズ屈指の指揮官だよ。

・・・いや、分かってる。分かってるよ。

皆は気づいていると思うけどフェイト達に嘘をつきました。

あれからはやて達と話し合いましたが結局答えは見つかず、とりあえず解決策が見つかるまで闇の書の浸食を抑制するだけの魔力蒐集を継続することで落ち着きました。

え?現状維持?問題の先送りだろって?

と!に!か!く!

ヴォルケンズが闇の書を抑えている間に私が何とかする!これがお姉ちゃんの決定です!異議申し立ては認めません!

当然管理局はこんな事許さないでしょう、なので私が独断でやらねばなりません、フェイト達は巻き込めません。

だからみんなには嘘をつかなきゃいけないんですが・・・やっぱり良心が痛い。

何だよ?お前に良心なんてあるのかって?あるに決まってるでしょう!ケンカ売ってんのかコノヤロウ!買うぞ100割引きで!

そんな訳でうまく話しに割り込んでくれて助かりました。

ありがとねオスカ!

「アレックスです」

コイツ!?私の心の声を・・・!?

「えっと、それでどうしたんですか?」

「ああ、フェイトちゃんに渡すものがあってね・・・」

そう言って抱えていた箱をフェイトに渡すランディ。

「・・・もうツッコミませんからね?」

え~?張り合いがないなぁ・・・。

私のボケをスルーしやがったアレックスをジト目で睨んでいる横でフェイトは渡された箱を開けます。

「あっ!」

「どうしたの・・・わぁっ!」

箱を開けたフェイト達から驚き混じりの歓声が上がります。

白のジャケットとスカートに赤のリボンタイ・・・。

それはなのは達が通っている私立聖祥大附属小学校の制服でした。

「あの、これって・・・!?」

「リンディさんから贈り物だって」

困惑するフェイトに笑顔で返すアレックス。

つまり、そういうことですね・・・。

嬉し恥ずかしな顔でフェイトはリンディさんのところに向かう。

それを温かい目で見送る私・・・。

「ハルナさん?なんですそのニタニタとした締まらない顔は?」

「何だとぉ!?」

気色悪いとは失礼な!これは未来の世界からやって来た青狸型ロボットを起源とする由緒正しき温かい目なんだぞ!(平成版)

「いや、控えめに言って気味悪いですからやめてください」

その日の夜、私は少し泣きました・・・。

 

Side シグナム

夜、主はやてがお休みになったのを確認した我らはこれまで通り蒐集に出かけた。

「ハルナちゃんの話だとこっちに捜査本部が置かれたらしいし・・・これから管理局も本格的に動き出すわ」

「これまでの様にはいかない、か・・・やはり少し遠出する必要があるな」

主の友人でもあるあの執務官・・・ハルナ・スカリエッティの協力を取り付けたとはいえ、主の様態が悪化していっているのは変わりがない。

彼女が解決策を見つけるまで、呪いの進行を抑えるために蒐集は続けることとなった。

とは言え魔法の無い世界・・・しかも管理局も警戒している現状、この世界での収集は限界がある。

なるべく離れた世界で蒐集する必要があるな。

「今何ページだっけ?」

「ちょっと待って、えっと・・・340ページね」

ヴィータの問いにシャマルは闇の書のページをめくって確認する。

「かなり集まったな・・・」

「この間の白い子・・・なのはちゃんでかなり稼いだわ」

高町なのは・・・スカリエッティから教えられた先日襲撃した白い魔導師。

スカリエッティとテスタロッサの親友。

さらに主はやての友人の月村嬢の友人でもある少女・・・。

「彼女にも謝罪せねばな・・・」

主の為とはいえ、何も知らない彼女を襲った事は決して許されるものでは無い。

この罪は我らの全てで償うつもりだ。

「・・・だが、それは主の御身をお救いしてからだ」

ザフィーラの言う通りだ。

まずは主を闇の書・・・否、暴走した夜天の書の呪いから解放するのが先決。

全てはその後だ。

「とにかく!もう半分まで埋まってるんだな?なら下手に完成しないように気を付けないと・・・」

ヴィータの言葉に私達は頷く。

スカリエッティの言葉が真実なら夜天の書はページが埋まった瞬間、主を食い殺し呪いをまき散らす。

夜天の書が主を蝕まぬように、されど完成しないよう慎重にページを埋めねばならない・・・。

何とも面倒な話だが、やらねばならん。

我等が主・・・八神はやてのために!

「行くぞ」

「おう!」「ええ」「うむ」

騎士甲冑を纏った私達は決意を新たに夜天の空へと飛翔した。

Side Out

 

「はい、オッケー。以上はないよ」

「うん、ダンケダンケ」

アレックスの心ない一言に一晩枕を濡らした翌日、私は父さんのラボに居ました。

とはいっても本局やミッドに戻ったわけではありません。

リンディさんが現地司令部として海鳴市のマンションを購入したのと同じ日、私達スカ家も海鳴にお家を買いました。

この海鳴市、文字通り海に面した風光明媚であり、気候も穏やか。

なにより都内へのアクセスも容易と来ました。

つまり秋葉や有明にも行きやすいという3話辺りで話してた引っ越し先として正に理想の立地な訳です!

そんな訳で局員としての給料やら父さんの発明品の特許料やらでため込んでいた貯金をはたいてなのはやフェイトの家の近所の空き家を購入しました。

ミッドの家と似た木造平屋の武家屋敷・・・。

何でもすずかの実家と並ぶ大地主のお屋敷だったらしいのですがご先代が亡くなってから家を引き継いだ跡取り息子は都内に住んでおり、以来ずっと空き家だったとか。

そこにバブル崩壊のあおりを受けて維持できなくなり手放してしまってから買い取りてもおらず、私達が見た時は幽霊か妖怪でも住んでるんじゃないかと思うレベルの状態でした。

それを私や父さん、ウーノ達年長組とガジェットドローンであっという間にリフォームしました。

ちなみにご近所さんたちはガジェットを見て驚いていましたがすずかの家のお手伝いロボだと言ったら納得してくれました。

・・・月村家驚異のメカニズムは海鳴では周知の事実の様です。

そんなスカ家海鳴市別邸、交換した畳の匂いに包まれたお茶の間・・・ではなくその大深度地下に建設された秘密の研究室に私と父さんはいます。

先日シグナムとやり合ったので身体の検査が目的です。

ISこそ使っていませんが本気のガチンコバトルでしたからね。

なのはの治療や捜査本部の設置やらで後回しにしてましたが漸く身体のチェックが出来ました。

「さて・・・身体には異常はなかったが、心の方は何か抱えているみたいだね?」

「ギクッ・・・!?」

フェイトやすずかといい父さんといい・・・なんでみんな私が書く仕事してるの分かるんですか!?

「ハルナは顔に出やすいからねえ、付き合いの長い人間ならすぐに気づくよ。きっとリンディ提督やクロノ執務官も感づいてはいるんじゃないかな?」

マジですか?

完璧に隠し通しているつもりだったのに・・・駄々洩れだったとは!!

「それで?皆に黙っていると言う事は何かしらの厄介ごとなのだろう?」

そこまで感づかれるとは・・・。

「どうだい?ここに次元世界随一の天才がいるんだが・・・相談してはどうかな?」

確かに父さんなら力になってくれるでしょう。

実際私一人だと八方ふさがりのどん詰まり状態・・・もう誰かに助けてもらいたくて仕方ありませんでした。

でも父さんの言う通り、今回の一件はかなりヤバいです。

管理局にバレたらクビ・・・最悪またお尋ね者になってしまうかもしれません。

そんな厄介ごとに家族を巻き込むなんて・・・。

「・・・ハルナ。皆を巻き込みたくないというのは分かったよ。だがね、私達は家族だろう?ならもう少し頼って、巻き込んでくれてもいいんじゃないかな?」

うぅ・・・父さん、その言い方はズルいです!

「・・・実は」

父さんに説得された私ははやての事と闇の書の呪いの事を説明します。

全て話し終える頃には父さんの顔はすんげーめんどくさそうな顔になっていました。

「ハルナぇ・・・何で君はそう、アレなんだ?」

そんな顔で言わないで欲しいです、私だって困ってるんですから。

仲良くなった子がラスボス・・・しかも敵対しなきゃ生きられない系のラスボスとか・・・私はマンガの主人公じゃないんだぞ!

「はぁぁ・・・要するにそのはやて君を闇の書の呪いから救いたい、そう言う事だね?」

そう確認する父さんに私はコクリと頷きます。

「事情は分かった。とはいえ、デバイス・・・しかも古代ベルカのロストロギア級が相手となるとさすがに父さんでも門外漢だ。だからここは専門家を頼ろう」

「専門家?」

ロストロギア級をのデバイスを弄れるデバイスマイスターなんていましたっけ?

「闇の書は古代ベルカの遺産だ。ならベルカ人をたよればいい」

「・・・もしかして聖王教会?」

聖王教会・・・。

古代ベルカ人の子孫を中心にゼーゲブレヒト王朝最後の聖王、オリヴィエ・ゼーゲブレヒトを信仰する宗教団体です。

それだけあって、古代ベルカに関する資料、遺物を相当数所有、管理しています。

「確かにあそこなら夜天の書に関する資料もあるだろうけど・・・資料請求に時間がかかり過ぎるよ。審査の過程で局にもバレるだろうし・・・」

私がそう言うと父さんはいつもの悪い笑みを浮かべます。

「その辺は問題ないよ。なんたって教会内に資料を閲覧できる人物が身内にいるじゃないか」

父さんの言葉に私はハッとなります。

「父さん、まさか・・・!」

「ああ、彼女に頼むとしよう」

 

Side ???

ミッドチルダ北部、ベルカ自治領にある聖王教会本部。

その大聖堂の庭に目的の人物はいた。

「ごきげんよう、グラシア司教」

「ああ、シスターフジコ。ごきげんよう」

私が近づいて挨拶するとグラシア司教は笑顔で返してくる。

隣にいるのはグラシア司教の補佐を務めるヌエラ助祭だ。

どうやら週末行われるミサの準備について話し合っていたらしい。

「どうかしたかねシスター?」

「はい、折り入ってご相談したいことがございまして・・・」

私がそう言うと司教たちは顔を見合わせてから聞いてくる。

「あー、私は席を外した方が?」

「いえ、ヌエラ助祭にもご協力いただきたいので・・・」

それを聞いてグラシア司教は辺りを見回してから言った。

「分かった、では私の執務室で話そう。ここでは人目が多い」

そう言われ私は二人に連れられてグラシア司教の執務室に向かった。

 

執務室に着いた私は扉が閉まるのを確認すると部屋の中を調べる。

「・・・大丈夫です。盗聴されていません」

「ふむ・・・盗聴を警戒すると言う事はそれだけ重大な話問う事だね、シスターフジコ・・・いや、スカリエッティ査察官」

グラシア司教の質問に私・・・頷いた。

清楚で可憐、誰からも愛される聖女の様な修道女、シスターフジコことフジコ・ミーネとは世を忍ぶ仮の姿・・・。

その正体は時空管理局三等海尉にして本局査察部潜入査察官、そしてスカリエッティ家三女ドゥーエ・スカリエッティよ!

グラシア司教から教会が保管している聖遺物が流出したとの通報を受けてシスターとして教会内で内偵捜査を開始してから3か月・・・シスター姿が板についてきたと思ったら突然ドクターとハルナ姉さんから手を貸して欲しいと連絡。

しかもその内容がとんでもないものだった。

「はい、先日闇の書が見つかりました」

私がそう伝えると二人の表情がこわばる。

当然だ、古代ベルカの生み出した最悪の魔導書・・・それが再び復活したんだからベルカ人の末裔である教会関係者が冷静でいられるわけがない。

「あれが・・・また活動を再開したのかね?」

「はい。既に管理局は現地に部隊を派遣、闇の書の捜索を開始しています。ついてはその件でお二人にご協力をお願いしたいのです」

「・・・事情は分かった。しかし何故君から?事が事だ、通例なら本局から正式に協力要請が来るはずでは無いかね?」

さすがは若くして司教にまで上り詰めただけありグラシア司教は鋭い。

「仰る通り、これは私の・・・私の姉からの個人的なお願いです」

「君の姉・・・スカリエッティ執務官かね?」

ハルナ姉さんは執務官であると同時に教会から騎士号を授与されている。

故に姉と聞いて司教はすぐに相手がハルナ姉さんだと気付いたようだ。

「はい、故に事は他言むようにお願いします」

その言葉にグラシア司教は暫し黙考したのち答えた。

「・・・わかった、協力しよう。我々聖王教会にとっても闇の書は他人事では無いからね」

「ありがとうございます、グラシア司教」

そう言ってくれた事に私は秘かに胸をなでおろしていた。

いやー、正直なところ断られたらどうしようって内心ハラハラだったわw

「では詳しい話を聞かせてくれないか?管理局にも内密と言う事は何か事情があるのだろう?」

「はい、じつは・・・」

私が事情を説明し始めるとグラシア司教とヌエラ助祭の顔が次第に曇っていく。

二人とも善良な人間、かつとても責任感のある人柄だ。

自分たちの先祖が生み出したロストロギアが多くの犠牲を生み、そして今一人の少女の命を蝕んでいると知り、自責の念に捕らわれているのだろう。

「なるほど、つまり主の少女・・・八神はやてさんを救いたいと・・・」

「はい。管理局に知られれば局内にいる過去の被害者、及びその関係者からの敵意や憎悪に彼女が曝される。それを防ぐためにもお二人のお力添えを賜りたく・・・」

説明を終えると聞いていたグラシア司教たちは一度顔を見合わせた後頷いた。

「事情は分かりました、協力しましょう」

「あ、ありがとうございます・・・!」

その言葉に私の顔はほころんだ。

半分は演技だが残り半分はまぎれもなく喜びと感謝の念からだ。

潜入・諜報担当の私は姉さんやトーレの様に前に出て戦うことが出来ない。

口に出したことは無いが、いざという時姉妹を守れない自身の非力さに逐次たる思いを抱いたのは一度や二度ではない。

だからせめて、自分の力になれる分野で姉さんやドクターの力になりたいと思った。

そう、今がその時だ。

あざとかろうが何だろうが知ったこっちゃない。

グラシア司教たちには悪いが、とにかく教会側から協力を引き出して姉さん達の助けにさせてもらうわ!

「先ほども言ったが闇の書については我々聖王教会も他人事ではいられないからね。なにより・・・娘と同じくらいの少女の命がかかっているのだからね。必要があったら何でも言ってくれ」

・・・よし、言質は取った。

これで最大の関門は突破できた。

後はいかに早く成果を出すか・・・闇の書の呪いの進捗状況もある、ここからは時間との勝負だ。

「・・・ところで査察官。別件で一つ確認したいことがあるのだが・・・」

「はい、何でしょう?」

「最近シスターたちの間に広まっているいかがわしい本・・・あれの出所が君だと聞いたのだが本当かね?」

・・・ん?

「実はね、うちの娘がね・・・君から借りたという本にえらくご執心でね。その・・・人の趣味趣向をとやかく言う気は無いがああいうものを大々的に配るのは・・・」

「ゲイ術です」

「・・・なんだって?」

「あれはゲイ術です。いかがわしくなんてありません」

私はキッパリと言い放った。

大多数の人には理解できないかもしれない。

でも!あれは間違いなく美しく、そして尊いもの!

いかがわしいなんて一言で切り捨るなんて聖王陛下が許そうともこの私が許さない!

「え?でも・・・」

「ゲイ術です」

「男性同士の・・・」

「ゲイ術です」

「・・・・・・

「ゲイ術です」

「芸術・・・なのかい?」

「はい!ゲイ術です!」

「・・・そ、そうか」

うん、グラシア司教も分かってくれたみたい。

やっぱり言葉は偉大ね、真摯に語り合えば人は分かり合えるんだわ・・・。

え?ヌエラ助祭が釈然としない顔をしてる?

それはいけないわね、ゲイ術の素晴らしさをもっと知って貰わないと!

とりあえず娘さんがシスター見習いだったわね、手始めに彼女に布教しましょうか・・・。

Side Out

 




聖王教会の腐敗は深刻な様子w
ちなみに10年後、騎士カリムからウ=ス異本を勧められたはやてから後日痛烈なドロップキックをかまされるハルナお姉ちゃんでしたw


目次 感想へのリンク しおりを挟む




評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に
評価する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。