お姉ちゃんは0番改め機人長女リリカルハルナ (Y.Sman)
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誕生編 第1話『お姉ちゃんはオリ主』

昔書いた小説を発掘したので晒しておきます。



「クックック・・・ついに、ついに完成だ・・・!」

暗い室内に若い男の声が木霊する。

ここはとある管理世界に秘密裏に置かれた研究所。

その一室、そこに置かれたシリンダー状の水槽の前で男、ジェイル・スカリエッティは不気味に笑う。

シリンダーの中は液体で満たされ、気泡でよく見えないが中に人のようなものが浮いている。

「戦闘機人、その栄えある第0号・・・彼女の完成をもって世界は変わる!彼女の力を使い最高評議会を亡き者にし、時空管理局を下し、私は理想の世界を手に入れる!」

狂気に満ちた目でスカリエッティは熱弁を振るう。それに応えるかのごとく、シリンダーの中が一層泡立ち始めた。

「さぁ、目覚めたまえ!私の最初の作品にして最高傑作!戦闘機人『ナンバーズ』、ナンバーゼロ!」

その声と同時にシリンダーが破裂し、中の培養液が床にぶちまけられる。

もうもうと立ち上る蒸気、そこに浮かび上がる影・・・

蒸気が晴れ、そこに現れたのは・・・

「・・・ふぁ?」

可愛らしい赤ちゃんでした。

ぷっくりしたほっぺ、ツンツンはねた銀髪、くりくりした金の瞳、どれをとってもプリチーな赤ちゃんです。

「・・・・・・・・・」

叫んだときと同じポーズのまま硬直しているスカリエッティとそれをつぶらなおめめで不思議そうに見つめるベイビー。

10秒経ち、20秒経ち、そして30秒程経った時、スカリエッティが口を開く。

「で・・・」

『で』、ハッキリ言って言葉どころか単語にすらなっていない物を発っするスカリエッティ。心なしかその身はワナワナというか、プルプルというか、とにかく小刻みに震えていた、そして・・・。

「出来るかぁぁぁ!!」

大絶叫である。

「こんな小さい子にそんな危ないことさせられる訳無いだろうがぁ!てか、自分の娘を計画の道具にするなんて何考えてるんだ!私の馬鹿ヤロー!」

叫びながら壁に頭を打ち付けるスカリエッティ、彼の絶叫に驚いたのか、シリンダーの中で座る赤子はぐずり出し、ついにはわんわん泣き出してしまった。

「ああぁ・・・!すまない、驚かせてしまったね・・・よ~しよしいい子でチュね~・・・オシメじゃないし、ミルクか?あぁ~ほらほら、面白い顔でちゅよ~・・・」

慌てふためきながら顔芸百面相するスカリエッティの手の中でなき続ける赤子、彼女は確かに歴史を変えた。

彼女の存在が後に起こるはずだった大事件を事前に解決したのである。

 

機人長女リリカルハルナ

第1話「お姉ちゃんはオリ主」

 

こんにちは、始めまして。

私?プロローグに登場したプリチーベイビーことゼロちゃんです。

あれから3年、私はすくすくと育ち、赤子から幼女へとレベルうpしました。

後一つ、お知らせがあります。

どうやら私、転生系のオリ主のようです。

つい先日、私が3歳になった前後に知らない記憶が流れ込んできたんですよ。

おかげでこんな身体は子供、頭脳は大人を地でいく性格になってしまいました。

ちなみに生前?前世?の自分についてなんですが記憶が欠落しており、死因はおろか自分の名前や性別すら不明なんですよ。

んで、その不確かな記憶が本当なら、この世界は魔法少女リリカルなのはと呼ばれるアニメの世界で私の父さんはアニメ3期の事件の黒幕らしいです。

まったく持って胡散臭い限りです。

父さんは確かにマッドで変態ですが家族思いな父親です。まぁ、マッドで変態な部分が全てを台無しにしていますが・・・。

記憶にしたってタイトルの通り『なのは』と言う女の子が主人公な事と一部の父さん関連情報、主にアニメ3期の知識くらいであとは靄がかかったように思い出せません。

しかし父さん・・・12人も娘こさえるとか・・・それ何てシ●プリ?

その事を父さんに説明したのですが原因は分からず物語の作られた場所、つまり第97管理外世界『地球』のネットワークに侵入して色々調べてみたんです。

残念ながらリリカルなのはに関する情報は見つけられませんでしたが、興味深い資料を見つけました。

『笛吹』と言うインターネット上の小説投稿HPに私のような前世の記憶を持ったまま生まれ変わった主人公達が活躍する二次創作作品が多数見つかりました。

気になったので父さんと二人でこれを閲覧してみたんですが・・・。

結論だけ言いましょう、二人ともドップリとはまってしまいましたw

仕方ないでしょう!?面白かったんですから!

それ以来私は父さんと二人でそれら二次創作の原作のアニメや漫画を観ては一緒に笑ったり泣いたりと非常に充実した時間をすごしました。

最終的に私は転生系のオリ主の一種だと結論が出た以外まったく分からずじまいでした。

それ自体はあまり気にしないのですが問題は今後の展開です。

記憶の通りに時間が進むなら父さんは今後生まれるであろう妹達、ナンバーズを率いてJS事件を起し、管理局に御用となります。

そう・・・実の娘にピッチリスーツ着せてテロ起こした挙句肌色部分の多い魔法少女にホームランされると言う、それだけ聞いたらわけ分からん結末に・・・。

しかし、今の父さんを見ていると半信半疑です。今もニコ動に謎の技術で編集した神動画を投稿していますし・・・。

とは言え今後もこのままと言う保証はありません。

こうしている間にも父さんはホームランエンドへのフラグを知らずに築いているのかもしれません・・・それだけはなんとしても阻止せねば!

この時、私の今後の行動方針が決定しました。

父さんを更生させ、妹達に真っ当な人生を送ってもらう・・・。

原作ブレイクとか知ったこっちゃありません。

新暦53年…家族を守る私の戦いの火蓋が今、切られたのです。

 

おまけ?

 

「そうだ、父さん?」

「ん?どうしたね、ゼロ?」

聞き返した来た父に私はビシッと指をさします。

「そう、それ!その名前、どうにかならないの?」

ゼロとか、釘宮ボイスの虚無な魔法使いやら福山ボイスな反逆する仮面の王子様じゃないんですから・・・。

「フム・・・確かに、このままだと私もオレンジ博士とか言われかねないし・・・分かった、今から君の名前を決めよう」

そう言って父さんは何処から出したのか、本の山を私の前に置きました。

一冊を手にとって表紙を見ると『MCあ●しず』と書かれたタイトルと萌え萌えなイラスト

「・・・・・・」

他の本にも『世界●艦船』やら『ドイツ戦車パ●フェクトバイブル』やら・・・

「さぁ!好きな名前を選びたまえ!」

ドヤ顔で自信たっぷりに言う父さん。

取りあえず結構本気でパンチ。

ぶっ飛び壁にめり込む父さん。

全く、せっかくならスカリエッティ繋がりで某パスタな国の高級車のカタログでも持ってきてくれればよかったのに・・・。

動かなくなった父さんを尻目にページをめくること30分。

「決まりました」

「い、意外に早かったね・・・」

思いのほか早く復活する父さん、結構しぶといですね。これなら金髪の露出過多な魔法少女(19さい)にホームランされても生きていられそうです。

「それで、何にしたんだい?」

「うん、ハルナにしようと思う」

ハルナ(榛名)、金剛級戦艦の3番艦。

何かリリカルなのはのキャラクター名が車とか航空機から来てるから私は艦船にしようと思いまして・・・。

ちなみに強くて、それで居て女の子らしい名前なのが選考理由。終戦まで生き残ったところもポイントです。

さて、と言うわけで№ゼロ改め、ハルナ・スカリエッティ、家族のために頑張って行こー!

 

お姉ちゃんは0番改め、機人長女リリカルハルナ・・・始まります。




はい、ハルナは大丈夫です。
この頃は艦これとかアルペジオなんて予想だにしていなかった・・・。


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第2話「お姉ちゃん、魔法少女になる」

どうも、こんにちは。

この物語の主人公(多分)のハルナ・スカリエッティです。

あの決意から一週間・・・

私は今日も家(研究所)でゴロゴロしています。

 

機人長女リリカルハルナ

第2話「お姉ちゃん、魔法少女になる」

 

家族を守ると決意したのはいいんですが、このロリボディでは外に出る事も叶わず、ダラダラしてるしかありませんでした。

父さんにしてもここを出た後の活動拠点とかそれらを用意する資金とか色々足りないそうなのでもう少しここにいるしかありません。

・・・うん、暇だ。

 

「あ~ハルナ?ちょっと来てくれないかな」

あ、父さんが呼んでいるのでちょっと行って来ます。

「何々?どしたの?」

「君も曲がりなりにもタイトルに魔法少女と付く作品の主人公だからね、魔法のステッキは必要だろう?」

おぉ!と言うことはまさか!?

「ご名答!君専用のデバイスを作ることになったんだ。それについて何かリクエストはあるかな?」

予算はスポンサーをやっている偉い人が用意してくれるらしいので気にしないでいいそうです。

なんて太っ腹な・・・ありがとう権力の権化様・・・

顔も知らない偉い人に心の中でお礼を言いつつ、私は覚束ない記憶を総動員して要望を出しておきました。

出来上がるまで大体3ヶ月位だそうですがさてさて、完成が待ち遠しいです・・・。

 

「とか言ってる間にもう3ヶ月経ってしまった・・・」

「まぁ、尺の都合もあるからね、ダラダラやっていても読者が飽きるだけだし」

さすが父さんです。とてつもなくメタな答えを返してくれました。

「それは置いといて、受け取りたまえ。これが君の相棒だ」

といって父さんから鳥の羽を模したシルバーのネックレス・・・待機状態のデバイスを受け取ります。

「おぉ・・・」

なんというか、とってもキレイです。

「気に入ってくれたようだね・・・」

そう言う父さんの顔は、大業をやり遂げたとばかりに満足げに笑っています。

私が出した大まかな要望は主に3つ

第1にベルカ式カートリッジシステムを搭載していること。

カッコいいじゃないですか?あの『ガシャコン』て駆動するやつ。

第2に射撃型であること。

記憶が確かならリリカルの主人公達の戦闘スタイルはかなり肉体言語に偏ってたと思うんですよ、特に2期以降・・・。

てわけで他の子と被りにくい射撃系で行くことにしました。

最後に他にはないオリジナリティ溢れるデバイスにすること、これ一番重要!

かなりのデザインが出尽くしていたと思うんでとても苦労しましたが何とか完成にこぎつけました。

「ねぇねぇ父さん!この子、名前付けていい!?」

何がいいかなぁ?他のデバイスに負けないくらいカッコいい名前にしてあげないと・・・。

「あぁ、名前ならもう付けてあるよ」

・・・なん、だと?

私が驚愕のあまり劇画調で硬直しているのを見て父さんはニヤリと笑います。なんかムカつく・・・。

「製作者なんだ、名付け親になるくらいの権利はあってもいいだろう?」

ムムム・・・確かに正論ですが何かスゲー不安です。

父さん原作でも妹達の名前に数字当てるようなネーミングセンスですから・・・。

私の名前をミリタリー雑誌から探そうとするネーミングセンスですから、って選んだの私だった・・・。

「フッフッフ・・・心配ないよハルナ。今回は少し自重したから」

「へ~って、少しかよ・・・と言うか普段から自重しようよ?」

「それはムリな相談だよ!そんな事をしたら私と言うキャラのアイデンティティが崩れてしまうじゃぁないか!」

ダメだこいつはやくなんとかしないと・・・。

「それではお披露目と行こうか。君の銃にして翼、魔道師を狩る者・・・マギア・イェーガーだ・・・」

おぉ、なんか普通にカッコいい!

イェーガーとかちょっと中二っぽくて城壁のその彼方の獲物を屠りそうだけど、ベルカ式だし問題ナッスィングです!

「よろしくね、イェーガー」

始めての呼びかけに答えるように掌に乗ったイェーガーはキラリと光りました。

 

おまけ

「さぁ!そういうわけでハルナ、早速デバイスを起動してみたまえ!」

うん、なにがそういうわけでなのか分かりませんがセットアップしたいのは私も同感です。

「よし!それじゃあ行くよ!イェーg・・・」

うん。ちょっと待とうか、父さん&研究員の皆様方・・・。

あなた達が用意しているそのカメラ、確かAMF技術を応用してセットアップ中に魔道師が纏う光を透過して被写体を撮るやつじゃなかったっけ?

それから10分後、部屋の前に獲物を屠るイェーガーされた父さん達が骸の山を築いていたそうですが私は知りません。ええ、知りませんとも。



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第3話「お姉ちゃんは逃走者」

3話です。
今回スカさん以外の原作キャラが登場します。


やっほー、みんなのアイドルハルナちゃんです。

皆は元気にしているかな?

私?私はね・・・

父さんと二人、絶賛逃走中ですw

 

機人長女リリカルハルナ

第3話「お姉ちゃんは逃走者」

 

冒頭で述べた通り、私と父さんは、追っ手を巻くべく全力疾走で通路を駆けています。

二人とも両手にカバンやアタッシュケース、背中にはそれぞれリュックと唐草模様の風呂敷を背負ってます。

どれも限界を超えて物を詰め込んだのかはちきれそうな位パンパンに膨らんでおり、さながら漫画の夜逃げのシーンみたいです。

そもそも事の発端は三日ほど前・・・。

この施設、時空管理局上層部・・・と言うか最高評議会の支援を受けているんですが、スポンサーたるノーミソ老人会の方々が研究の成果を発表しろと言って来ました。

此処での研究成果とはもちろん戦闘機人、つまり私です。

想像してみてください。性能テストと称して私に課せられるであろう苦行を・・・。

出力テストと称して精魂尽きるまで行われる魔法行使、耐久テストと称して行われるであろう魔導士たちによる集団リンチ。

あくまで私の想像なので実際にそれが行われるかは分かりませんが、やらされるかも知れない側からしてみればたまった物ではありません。

てなわけで父さんとの家族会議の結果、管理局に施設の場所と活動内容をリークし、強制捜査が行われている隙を突いて脱走しようという結論に至りました。

結果、情報のリークはうまく行き、正義感溢れる管理局の捜査官さん達が研究所に突入してきたまではよかんです。

よかったんですが・・・!

問題は時間です。早すぎたんですよ。

当初の予想では1週間位で来るだろうと思っていた局員達が通報からわずか3日でやってきやがったんです。

「仕事しすぎでしょ管理局!?こんなんだから魔王様がワーカーホリックになっちゃうんだ~!」

局のガサ入れが入ったと知った直後の私らの行動は惚れ惚れする位迅速でした。

部屋に用意していたカバンに当座の生活資金とデバイスや必需品、最悪捕まったときの司法取引に使う研究データや遺伝子サンプルなどを詰め込んで転送ポートに向かいます。

向かったんですが・・・。

「こらぁ~待ちなさ~い!!」

逃走開始から10秒で捜査官に見つかりました。

んで壮絶な追跡劇を演じながら今に至ります。

しっかしこれだけの荷物を背負いながら後先考えずの全力疾走、戦闘機人の私は大丈夫なんですが隣を走る父さんはそろそろ限界っぽいです。

しかも今回は相手が悪すぎます。

「待てっつってんでしょう!?止まりなさぁい!!」

紫がかった青い髪をなびかせながら、履いているローラーブーツで私達を追いかける両手ナックルのおねえさん・・・

どう見てもクイント・ナカジマさんです。本当にありがとうございます。

やばいです、何かもう殆ど詰んだ感じです。

このままクイントさんに御用になって父さんと二人塀に囲まれたお家ENDとか涙を通り越して笑えます。

あ、待てよ・・・もしかしたらクイントさん家の子になってハルナ・ナカジマとして3期参入とかの可能性も・・・

「ゼェ・・・ゼェ・・・ハ、ハルナ。今何かとてもよからぬことを考えてないかい?」

「え、何言ってるのさ?ソンナコトアリマセンヨー?」

「待って!何でそこ半角カタカナなの!?ねぇ何で!?」

意外とまだ余裕そうな父さんとコントを繰り広げている間にクイントさんは私らとの距離をじわじわと詰めて来ました。

どうにかして振り切らないとと考えていた私の目に打開策が飛び込んできました。

「よしっ・・・ぶっとべ必殺!ふり~が~・・・」

私はそれに向けて右腕を・・・

「シュレーク!!」

ぶちかましました。

言ってませんでしたが、私の両腕は肘から先が義手なんです。

どうしてかって?

そのほうがかっこいいからだ!キリッ

ああ、ちなみに左手はロケットパンチじゃなくて機関銃が内臓されてます。

グフのフィンガーバルカンみたいな感じですよ。

 

ロケットパンチよろしく発射された私の右腕は狙い違わず壁に埋め込まれていた赤い非常スイッチに直撃します。

防護カバーをかち割り中のスイッチを力任せに押し込む私のゲンコツ・・・。

すると重い警報の音と共に天井と床から分厚い防火扉がせり出してきます。

この扉、もし私が暴走した場合にと作られた物で厚さ200ミリとかいう頭のおかしい造りになっています。

もちろんこの間を潜ろうとして失敗しようものならまちがいなくペッタンコです、体から色々な物がはみ出すことでしょう。

故に減速なんて出来ません。最高速度のまま防火扉を走り幅跳びの要領で潜ります。

さらにもう一枚防火扉、これも同様に飛び越えます。

分かりやすく言うならカリオストロの城の序章でルパンと次元がやってた逃走方法です。

危険なのでマネしないでください。最悪の場合リアルに転生とかしちゃう可能性があります。

背後で扉の閉まる音・・・どうやら危機は脱したようです。

スペアの義手を取りつけながら父さん共々ホッと一息、さすがにきついので速度を緩めようとすると・・・

ガァン!

・・・何やら背後から嫌な音が聞こえました。

例えるならそう・・・戦車の装甲に砲弾が命中した感じの音です。

それが2回、3回・・・。

恐る恐る父さんと後ろを振り返ると、扉が・・・厚さ200ミリの扉が変形しています。

ボコボコと泡のような丸いふくらみが次々に打ち込まれ・・・。

大体10回目くらいで扉が吹き飛びました。

もうもうと立ち込める煙、その無効からユラリと人影が現れます。

「ま~た~ん~か~!」

その声を聞いた途端、すぐさま回れ右、全速力で逃走を再開です。

怖い!何かもう滅茶苦茶怖いですよ!?クイントさん!

もうね、目を爛々と赤く光らせて追っかけてくる姿がまさに悪鬼羅刹の如くです。

てか、あの防火扉と言う名の鉄塊をぶち破るとか・・・

あの人本当に人間ですか!?

「あはは・・・彼女の遺伝子を基にした戦闘機人はさぞかし強いんだろうな~」

ええ、強いですよ、ぶっちゃけアニメ3期で主人公できるくらいにはね!

てか現実逃避しないでよ父さん!

あぁ、そんなこと言ってるうちにクイントさんが鬼の形相で迫ってきます。

こうなったら・・・仕方ない!

「あ~ハルナ、私を差し出して助かろうとかはやめてもらえないかな?」

「いや、しないから!せっかく意を決したのに色々台無しじゃん!?」

そして減速、クイントさんに向き直ります。

「父さん、先に行って。転送ポートの準備が出来たら私も直ぐに行くから・・・!」

「待ちたまえ!何を言ってるんだ!?」

立ち止まる父さん、心配してもらってちょっと嬉しいです。

「大丈夫!転送ポートの準備が出来るまで時間を稼ぐだけ、準備できたら直ぐ行くから!」

父さんは一瞬戸惑うものの分かってくれたようで転送室へ走っていきました。

さて、改めてクイントさんと対峙します、正直怖くてちびりそうです・・・。

「投降しなさいお嬢ちゃん、抵抗しても罪が重くなるだけよ」

「私も出来れば戦いたくは無いんですが、こっちにものっぴきならない事情がありますんで・・・」

そう言って私はデバイスを起動する。

足元に青白いベルカ式の魔方陣が輝きます。

「いくよ!マギア・イェーガー!」

『anfang・・・』

首から提げてた羽型のネックレスが光り、私の体が包まれる。

 

以下変身シーンをご鑑賞(妄想?)ください。

 

光の中に浮かぶハルナちゃん。

何処からとも無く再生されるカッコいい系のBGM。

着ていた診察衣が光の粒子に変わり消える。

続いて下着も同様に消える。(ブラはまだしておりません)

手に持つネックレスが光り、何処からとも無くいろんなパーツが飛んでくる。

ガシャコンガシャコンと勇者ロボよろしく合体していくパーツたち・・・

全体的に小型化されたM60のような形状になり、最後にマガジンがくっつく。

薬室内にカートリッジを装填。

グリップを握ると展開される騎士甲冑。

灰色をした軍服調のアンダーウェア。

そこかしこに装着されるメカメカしいパーツ

大き目のコートを袖を通さずマントのように羽織り。

背中に現れる、Wガンダムの翼っぽい形状の浮遊パーツ。

これまた大き目の制帽を頭に乗っける。

最後にイェーガーを構えて決めポーズ(ビシッ)

 

以上、機人長女リリカルハルナの変身シーンでした。

 

騎士甲冑を展開した私は、イェーガーの銃口をクイントさんに向けます。

「・・・今すぐデバイスを下ろしなさい。そうすれば公務執行妨害は無かったことにしてあげる」

拳を構えるクイントさん、目がマジです、平静を装ってますが今すぐ逃げ出したいです。

そのまま数秒緊迫したままお互いにらみ合いが続きます。

チャンスは一度・・・私は頭の中でタイミングを計ります。

そしてカウントがゼロに達した瞬間私はイェーガーの引き金を引きました。

銃口から撃ち出された魔力弾は狙い違わず超音速で目標に命中します。

そう、逃走経路たる転送ポート目指して全力疾走してくるここの研究員の顔面に・・・

「ぶべらっ!?」

魔力弾(もちろん非殺傷)がクリティカルヒットした研究員さん、事態が飲み込めずフリーズするクイントさん。そう、今が絶好のチャンス!

「それじゃあその人のことお願いします!」

彼のことをクイントさんにお任せして私は父さんの元へ飛んでいきます。

「え?あっ・・・ちょ、待ちなさい!」

後ろからクイントさんの声が聞こえてきますが無視です、今は脱出が最優先ですから。

え?薄情?おとりにされた研究員さんが可愛そうだって?いいんです、あの人いつも私の事をなんかいやらしい目で見てましたし、インガオホーです、急いでるからハイクは省略です。

途中いくつもの防火扉を下ろしながら私は転送ポートにたどり着きます。

「おまたせ~!」

「あぁ、こちらももう少しで終わるところだよ」

パネルを色々打ち込んで転送ポートを起動させる父さん。

「そういえば父さん、ここを出た後はどうするの?」

「そうだねぇ~ハルナは何かやりたいことはあるかい?」

そう問われ暫し黙考・・・おぉ!ひらめいた!

「地球で暮らすって言うのはどうかな?」

「地球か・・・確かにいいな。出来れば週一で秋葉原に通えて尚且つ有明にも行きやすい場所が・・・」

父さんと二人で今後の人生計画(ただの妄想)を練っていると・・・

ガァン!!

「っ!!まさか・・・!?」

クイントさん・・・もう研究員をしょっ引いてきたのか!?

破壊音は次第に大きく、近くなり彼女がここに来るのは時間の問題のようです。

「間に合わないか、こうなったら・・・!」

突然身体が中に浮く、と思ったら父さんにも抱きかかえられていました。

「えっ!父さん!?」

転送ポートに乗せられる私、父さんは再び操作盤に戻ります。

「すまないね、ハルナ・・・せめて君だけでも脱出してくれ」

・・・え?

「どうも管理局が妨害しているらしくてね・・・一定質量以上のものは転送できないんだ。だが君一人くらいの質量なら跳ばせる」

父さんはなんと言った?私しか脱出できない・・・?

「一緒に行きたいのは山々なんだが後ろから怖いおねえさんが来ているしね・・・システムをハッキングしている時間が無いんだ・・・」

ならクイントさんを倒せば、厳しいけどやって出来ないことは・・・!

「それこそ駄目だよ。君の手を血で汚すわけにはいかない・・・」

悲しそうに笑う父さん・・・。

「いや・・・。イヤだよそんなの!」

なんでそんな顔してるのさ、父さんは『無限の欲望』なんでしょ!?もっと不敵に、いつもみたいに顔芸でもしてみせてよ!

私はいま悔しい気持ちで一杯でした。

自分がもっと強かったら、クイントさん相手でも互角以上にやりあえるのに、それ以前に管理局に通報することなく独力で脱出だって可能なはず・・・

「さすがに殺されることは無い筈だよ、最高評議会のお三方にとっても私はまだ必要だろうしね・・・」

まぁ、当分は軟禁生活かな・・・なんて笑っていますが嘘だ、父さんは間違いなく死を覚悟している!

分かっているのだろうか?自分が非合法な手段で生み出された違法研究者だということを、事態の露見を恐れた最高評議会が父さんを生かしておくとはとても思えない。

ここに残るということは間違いなく死を意味しているのに・・・。

「本当に・・・また会えるよね・・・?」

そう聞いてしまった。

叶わないと分かっていても聞かずにはいられなかった。

「ああ、約束だ。」

ガシャアァァァン!!

直後、一際大きな破砕音が響きました。どうやら最後の隔壁が破られた様です。

「それじゃあ始めるよ。元気でいなさい、ハルナ・・・」

「サヨナラは言わないよ、父さん。まだ妹の顔も見てないんだからね」

「もちろんだよ。またいずれ・・・」

実行キーが押され、転送が開始されます。

「うん。またね・・・」

そして父さんを取り押さえようと突入してきたクイントさんと、最後まで私に微笑みかける父さんを最後に私の視界は光に包まれました。




ハルナちゃんのバリアジャケットのデザインはジャーマンな国の将校制服です。
なのにデバイスの形状はM60です。
スタローンやシュワちゃんも御用達の素敵な分隊支援火器、ミリタリーショップで電動ガンを衝動買いしたのはいい思い出w


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第4話「お姉ちゃんは大切なものを盗まれました」

転送が終了しするとそこは森?林?の中でした。

あたりを見渡してみ木、木、木・・・。

幸い、林道らしきものが存在するので人は住んでいるようです。

ふぅ、野生に返って生活する羽目にはならずに済みました。

そうして私が自分探しならぬ人探しの旅にでようとしていると・・・。

「ふむ、どうやら魔導師のようだな・・・」

妙に凛々しい女の人の声が。第一村人か発見かな?

振り向くとそこには物々しい甲冑を装備したピンク色ポニーテールのお姉さんが・・・。

「すまないが貴様の魔力、貰い受けるぞ」

何か吸われていると思い下に視線を向けると私の平坦な(あくまで現在は!)胸のあたりに光る玉が現れそこから魔力らしき者がお姉さんの持つ本の中へ・・・。

「・・・え゛?」

これは、ヤバクない?

気付いたときには既に遅し。私の意識は闇の中へ、ぶっちゃけ気絶しました。

 

機人長女リリカルハルナ

第4話「お姉ちゃんは大切なものを盗まれました」

 

「知らない天井だ・・・」

うん、テンプレなので言ってみました。

周囲を確認、どうやら先程までいた森林ではなく室内のようです。

それも森の中で七人の小人か筋肉モリモリマッチョマンの元コマンドーが住んでそうな木のお家ではなく非常に未来的でメカメカしい、父さんと住んでいた研究所のような場所でした。

ベッドに寝かされ点滴を受けていることからココは病室なのでしょう、とそこでドア(自動)が開いて誰かが入ってきました。

「あぁ、目が覚めたようだね?医師から様態が安定したと聞いてね」

さわやかに話しかけてくる中田譲治ボイスのおにいさん。

はて、どこかで見たような・・・?

「自己紹介がまだだったね?私はクライド・ハラオウン。この次元航行艦『エスティア』の艦長だよ」

ハラオウン・・・なんでしょう?何かが引っかかります。

たしかリリカルなのはにそんな人物がいたような気が・・・。

いや、それよりも現状の確認です。

「あの~、何故私はここに?」

次元航行艦の艦長と言うことは目の前にいるハラオウンさんは十中八九管理局員です。

仮にもお尋ね者の身、正体がばれていたら即行でココから脱走せねばなりません。

「うん、とある事件の捜査中に君が第22管理世界「スキピア」の森林地帯で倒れているのをうちの捜査員が発見してね、ここに運び込んだんだよ」

ふぅ、どうやら私が戦闘機人だということはばれていないようです。

ん?事件の捜査・・・?

「あの、事件って・・・?」

「・・・実はこの近隣で魔導師を狙った襲撃事件が多発していてね、その捜査の為に私達は派遣されているんだ」

魔導師襲撃ですか、物騒ですね~。

魔導師っていうのはそれだけで戦闘でアドバンテージが握れます。

飛行やら砲撃が出来なくても筋力や瞬発力を魔力で底上げしたり、何より魔導師必須のマルチタスクは戦闘における迅速な状況判断を可能にさせます。

なので魔導師を狙って襲うという行為は非常にリスキーなのです。

まてよ・・・魔導師、襲撃?

「あの~、もしかしてその犯人ってピンクポニテの女の人だったりしませんか?」

私も一応魔導師です、私からよく分からないけれども多分大切な者を盗んでいったピンポニナイトさん(仮称)が他の魔導師を襲っている可能性は高いはず・・・。

「やはり、君も被害者だったのか。彼女は一連の事件の実行犯達、そのリーダーと目されていた人物だ」

一発で当りを引きました。

やっぱりあいつか!

ちくせう、今度あったらハルナちゃんのウルトラグレートすぺしゃるな必殺技で・・・ん?ちょっと待った。この人今なんて言った?

「スイマセン・・・その、『目されていた』っていうのは・・・?」

「ああ、事件は解決したよ。実行犯だったロストロギア『闇の書』、その守護騎士達であるプログラム生命体『ヴォルケンリッター』は闇の書に蒐集され消滅。闇の書本体も何とか確保、封印に成功したんだ」

・・・えーと、つまり・・・出番無し?

 




ピンクポニーテールの騎士・・・一体何ナムなんだ・・・。


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第5話「お姉ちゃんピンチです、いや割とマジで」

えーと、本作の主人公のはずのハルナ・スカリエッティです、こんにちは。

早速事件に巻き込まれて物語的にいよいよ本格的にストーリーが動き出すかと思ったんですが・・・。

全部終わっちゃってましたw

・・・orz

 

機人長女リリカルハルナ

第5話「お姉ちゃんピンチです、いや割とマジで」

 

えーと、ハラオウンさん・・・え、名前でいいんですか?

失礼、お許しがでたので・・・クライドさんの話では最近このあたりの世界で魔導師が立て続けに襲われて魔力の源、リンカーコアが奪われるという事件が多発。

クライドさん達管理局が捜査を進めると事件の背後に古代ベルカ王朝が残した魔導書、『闇の書』の存在が浮かび上がってきたそうです。

闇の書は管理局から第一級の危険なロストロギアに指定されており、起動すれば世界の一つや二つ、簡単に滅ぼせる超ヤバイ本との事。

んで、私を襲ったピンクポニテの見た目くっころな女騎士は闇の書を護る守護騎士『ヴォルケンリッター』という魔法生命体だそうです。

彼女とそのマスターである闇の書の主を追い詰めたものの、マスターが闇の書を起動。

足りない魔力を補おうと闇の書は守護騎士どころかマスターまで呑み込んで起動しようとしたそうです。

幸いクライドさんと武装局員さん達が奮闘してギリギリのところで闇の書を封印。

んで現在闇の書を完全破壊ないし永久封印するためにエスティアに載せて管理局中枢、本局に向けて護送中との事・・・。

 

どうしよう、マジでこの事件解決済みなんですけど・・・。

 

本来ならここでハルナちゃんが颯爽と事件を解決して~って言う展開を読者の皆さんは期待していたと思うんですよ。

だってロストロギアですよ!?ロストロギア!

世界の存亡をかけて闇の書と戦うサイボーグ美少女・・・これだけで一本のアニメが出来ますよ!

DVD&ブルーレイやフィギュアや設定資料集とかの関連商品の興行収入だけで軽く数十億は稼げるはずですよ!

なのに全部終わってたなんて・・・。

 

「あ~君?大丈夫かい?」

うぅ・・・お気遣いありがとうございますクライドさん。

落ち込んでいても事態は進展しませんしね。

「ところで、そろそろ君の名前を教えてもらいたいんだがいいかな?」

・・・あ、そういえばそうでした。

えーと名乗っちゃっていいのかな?

そういえば3期後半でゲンヤ・ナカジマさんが話してた過去話だとこの頃はまだ父さんの名前ってあんまり知られてないんでしたっけ?

じゃあ大丈夫だよねw

「はい、ハルナです。ハルナ・スカリエッティ」

「スカリエッティさんだね、よろしく。まもなくこのエスティアは本局に到着する。それで君の扱いなんだが・・・事件の過程で保護した、云わば被害者だ。本局に着き次第体に異常が無いか検査をして問題が無かったら申し訳ないが調書を取りたいから襲われた時の事を話して貰いたいんだ。それが終わり次第、可能な限り早急に家まで送るよ」

・・・ヤバイ。

超ヤバイです、どれ位ヤバイかと言うとエロゲの入った引き出しを親に開けられそうになった時位ヤバイです。

検査なんてしようものなら私が戦闘機人だということが一発でばれてしまいます。

そうなったら命を賭して私を逃がしてくれた父さんの尊い犠牲が無駄になってしまいます!(まだ死んだとは限りません)

「そこで事前にご家族に連絡を入れておきたいんだが・・・」

クライドさんが続けて私に質問しようとしたところ、突然部屋がゆれます。

「な、何だ!?」

「ふぇっ?地震!?・・・なわけ無いですよね、ここ船の中ですし」

すぐさまクライドさんが艦橋に問い合わせます。

「ブリッジ、私だ!先程のゆれは何事だ?」

すぐさま報告が入りますがそれはとんでもないことでした。

『こちらブリッジ!遺失物保管室に封印されていた闇の書が突如再起動、暴走を開始!』

「何だと!?」

『現在当直の武装局員が結界を形成、進行を食い止めていますが、長くは持ちません!」

・・・うん、本当にヤバイです、ガチで生命に関わるレベルで・・・。



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第6話「お姉ちゃんは血反吐を吐く」

ようやくまともな戦闘です。
アクションシーンって難しい・・・。


「レティ、彼女のことだけど、何か分かった?」

L級次元航行艦『アースラ』のブリッジで当艦の副長、リンディ・ハラオウンは本局にいる友人のレティ・ロウランと連絡を取っていた。

『ダメね、管理局に登録されている戸籍でその特徴に該当する少女は存在しないわ。管理外世界の住人という可能性はないの?』

「可能性は低いわね、所持品にデバイスがあったし、それに・・・」

目を細めながら話すリンディにレティが続ける。

『あの子の体の事ね?送られてきた資料を見たけど。彼女、相当『弄られている』わね・・・」

闇の書の捜査中に現場付近で気絶していた少女、ハルナを保護したクライド達はすぐさまメディカルチェックを行ったがその結果は思いもよらぬ物だった。

遺伝子レベルで人為的に強化された身体能力。

骨格や内臓器官等、脳を除いたあらゆる所を機械化された肉体。

そしてリンカーコアと融合した魔力結晶・・・。

現代の技術では不可能とされている人と機械の融合体。

彼女は違法とされ、裏社会で非合法に研究が行われていると言われている人造魔導師とも一線を画す存在だった。

『詳しい事はこっちに着いてからじゃないと調べられないけれど、十中八九人造魔導師の類でしょうね・・・。問題は何故あんなところに倒れていたかだけど・・・』

「そういった違法施設から逃げ出してきたのかしら?」

『それとも不要と判断され捨てられたのか・・・、これは本人から聞くしかないわね。それで?件の眠り姫はまだ起きないの?』

「クライドさんの話だと様態は安定してるからいずれ目を覚ますそうだけど、これが本当だとしたら管理局始まって以来の大事件に・・・」

リンディの言葉は突如鳴り響いた警報にかき消された。

『どうしたの!?』

「ちょっと待って、状況報告!」

問い質すと、すぐさまオペレーターから報告が返って来た。

「エスティアから緊急伝!闇の書が再起動、メインシステムが侵食されています!」

『なっ・・・!』

「クライドさん・・・!!」

 

機人長女リリカルハルナ

第6話「お姉ちゃんは血反吐を吐く」

 

こんにちは、ハルナです。

現在クライドさんに連れられて連絡艇格納庫に向かっているところです。

既に艦内のいたるところに蔦のような触手がウニョウニョしています。うん、キモイ・・・。

これ、闇の書の端子のようでコイツをエスティアに接続してコンピュータをハッキングしているようです。

既に殆どの防壁を突破され艦が乗っ取られるのは時間の問題でしょう。

え?再封印?出来ると思ってるんですか?

さすがにロストロギア相手、しかもリンカーコアを抜かれた直後の病み上がりとあってはお姉ちゃんパワーと主人公補正を使ってもムリですよ。

魔砲少女が3人がかりで必殺技使ってフルボッコにすれば可能性はあるかもしれませんが・・・。

 

「艇長!この子を頼む!」

「えっ?」

頼むって、クライドさんは乗らないんですか?

「ああ、少しやる事が残っていてね・・・」

そう言ってマギア・イェーガーを渡してきます。無いと思ったらクライドさんが持っていましたか。

「聞いてくれスカリエッティさん。アースラに・・・隣を航行している僚艦に私の家内が乗っている。脱出したら彼女を頼ってくれ」

連絡艇に乗員を載せていたパイロットに私を預けるとクライドさんは元来た道を走り出します。

「待ってください艦長!どこに行くおつもりです!?」

何でしょう?艇長さんに引き止められ振り向いたクライドさんの顔は・・・。

「なに、艦長としての勤めを果たすだけさ・・・」

最後に見た父さんを彷彿とさせました。

「艦長!いけません、戻ってください艦長!!」

他の局員さん達の制止も聞かずクライドさんは走り去っていきました。

向かったのは恐らくブリッジでしょう、しかし・・・。

「艦長はエスティアを闇の書から取り戻すつもりなのか?」

「そんな、無理だ!あれの能力は生半可な物じゃあない!」

そう、彼らの言うとおりそんな簡単に勝てるならロストロギアなんて呼ばれていません。

皆がクライドさんを追うべきか逡巡しているうちに闇の書の触手は格納庫まで迫ってきました。

「早く乗れ!これ以上はもたんぞ!」

艇長さんが叫び、残っていた乗組員も急いで連絡艇に駆け込んできます。

最後の一人が飛び乗り、ハッチが閉じ始める。いよいよ発進のようです。

「・・・・・・・・・。」

これでいいんでしょうか?

確かにあの状況でクライドさんを追いかけても足手まといにしかならないかもしれません。

でも・・・。

『もちろんだよ、またいずれ・・・』

「・・・・っ!」

気付くと私は閉じようとしていたハッチを飛び越え走り出していました。

「おい嬢ちゃん!何してる!?戻って来い!!」

艇長さん達の声が背後から聞こえます。

ゴメンなさい皆さん。でもやっぱりクライドさんを置いてはいけません。

走りながら現在のコンディションを確認します。

 

肉体に異常は無し。

機械化された部分にも機能障害は見られず。

レリックの出力安定。

リンカーコアは未だ不安定ですがバリアジャケットを展開するくらいなら大丈夫。

右手のロケットパンチ、左手のグフマシンガン共に動作正常。

「よし、行きます!」

『パチンッ』と頬を叩き、気合を入れてからイェーガーを起動、バリアジャケットを展開して準備完了。

目指すはブリッジ、全力疾走です。

 

アースラのブリッジは混沌の坩堝と化していた。

「応答せよエスティア!繰り返す。エスティア、クライド艦長。応答してください!」

「エスティア艦内より魔力エネルギー増大!出力、尚も上昇中!」

「エスティアより連絡艇脱出。現在乗組員の安否、確認中!」

アースラ艦長のギル・グレアム提督は必死に対応する局員達に的確な指示を下しつつ最悪のシナリオを予想した。

(エスティアのコントロールは闇の書に奪われたと見て間違いない。とすれば奴は目下の脅威である我々を排除しようとするはず・・・)

それに対する解決策を模索していると、通信席にいるオペレーターがグレアムに向かって叫ぶように報告する。

「艦長!エスティアとの回線繋がりました、映像出します!」

グレアムはオペレーターに頷くと投影された映像に目を向ける。

「クライドさん・・・」

通信席でオペレーターと観測作業についていたリンディも投影された夫の姿に息を呑む。

ボロボロになった制服に一際目を惹く額から流れる鮮血・・・。

映し出されたクライドは誰がどう見ても満身創痍の様を呈していた。

『提督、大至急エスティアを撃沈してください』

開口一番にクライドから放たれた言葉はグレアムにとって予想された、しかし聞きたくなかった物だった。

「クライドさん、何を言って・・・」

一方のリンディは夫の言った言葉を信じられなかった。

当然だろう、大至急エスティアを沈める。

それはクライド諸共と言うことを意味しているのだから。

『闇の書の侵食は阻止できません。本艦が完全に掌握されるのも時間の問題でしょう』

「クライド君!今すぐ脱出して!」

「あんたがいなくなたらリンディたちはどうするのさ!?」

グレアムの両隣にいた彼の使い魔、リーゼロッテとリーゼアリアがクライドに脱出を促す。

しかしクライドはただ、首を振るのだった。

『たった今、『アルカンシェル』の制御が奪われました。奴は恐らく其方を攻撃するつもりです』

クライドの言葉を裏付けるかの様にオペレーターから最悪の報告が上がる。

「エスティア、『アルカンシェル』の発射シークエンスに入りました!」

「レーダー照射を確認!エスティア、本艦を狙っています!」

『アルカンシェル』、時空管理局が所有する魔導兵器の中でも最高クラスの威力を持った魔導砲である。

着弾地点から半径百数十キロに渡る空間を歪曲させながら反応消滅させる管理局の切り札だ。

闇の書に対する最終手段としてエスティア、アースラの両艦に搭載されていたもので、当然ながらアースラが喰らえばひとたまりも無い。

『現在機関部からのエネルギー供給を妨害中ですが長くは持ちません。提督、お願いします』

アルカンシェル発射を妨害する以上、クライドはエスティアから離れることは出来ない。

アースラが助かるにはクライドを犠牲にする以外に選択肢は残されていなかった。

「・・・アルカンシェル、発射用意・・・!」

「・・・っ!?待ってください提督!!」

リンディは掴みかからんばかりの勢いでグレアムに詰め寄るが控えていたリーゼロッテたちの手で引き止められる。

「すまない、もはやこれしか方法が無いのだ・・・」

押し殺した声でリンディに、クライドに、そして自分に言い聞かせるように言葉をつむぐグレアム。

グレアムの言葉を聞いたクライドは彼に敬礼した後、リンディに声をかける。

『リンディ、例の女の子を、スカリエッティさんを頼む。彼女には君の助けが必要だ、支えてやってくれ』

夫の今生の別れの言葉を聞き、リンディは苦笑してしまう。

こんな時だというのに彼は最後まで職務に忠実であろうとしているのだから。ならば・・・。

「ええ、彼女のことは引き受けたわ。安心して」

リンディはその頼みを聞き入れる。彼が最後に笑っていられる様に・・・。

それを聞いたクライドは穏やかな笑顔を浮かべて続ける。

「ありがとう、リンディ。愛してる、クロノと幸せにな・・・」

「っ!・・・うん、私もよ・・・」

二人が最後の言葉を交わしたのを確認し、グレアム自分の務めを果たすべく立ち上がる。

手には一本の鍵、アルカンシェルの発射キーだ。

それを眼前にあるキューブ、発射装置に差し込む。

キューブが赤く染まり最後の安全装置が解除されたことを告げる。

「アルカンシェル・・・発・・・」

グレアムが鍵を回そうとした瞬間・・・。

『ちょぉっとまったあぁぁぁぁ!!!!』

そんな叫び声と共に映像の向こうで扉が打ち破られ軍服姿の少女がブリッジに入ってきた。

 

「す、スカリエッティさん!?」

こっちを見てビックリしているクライドさん。

よし、まだ生きてます。

ここに来るまでに何度も闇の書の触手にウニョウニョと邪魔されまくったんですが、こいつら以外に強いです。

シールドは張るし、魔力弾撃ってくる奴もいました。

もしかしたらクライドさん、こいつらにやられちゃったんじゃ何て思ったりもしましたが杞憂だったようです。

「どうしてここにいるんだ!?クルー達と退艦したんじゃ・・・」

どうして?

人がせっかく苦労してここまで来たのにどうしてとかあんまりな発言ですね?

「そんなのクライドさんを呼びに来たに決まってるじゃないですか!」

全く、一人でふらふらどっかに行って・・・団体行動の輪を乱すとか、先生許しませんよ!

「なんてバカな真似を、直ぐに退艦するんだ!連絡艇を使ったから非常用の救難艇は残っている、それを使って・・・」

「バカな真似はどっちですか!!」

「っ・・・・!?」

私が怒鳴ったことに驚いたのかクライドさんは言葉を噤みます。

必死におどけて見せましたがもう無理です、いろんな物がこみ上げて来てガマンできません。

「そうやって一人でカッコつけて、残された人がこれからどんな思いで生きていくか考えたことがありますか?なんで、なんで・・・」

頭に浮かぶのは父さんの事。

一緒に漫画を読んで笑いあった事、、新発明の実験で爆発して喧嘩した事、そして最後に私に見せたあの笑顔・・・。

視界がぼやけてきてようやく私は、自分が今泣いていることに気付きました。

「何で大切な人がいるのに生きようとしないんですか、なんで直ぐに諦めちゃうんですか・・・なんでみんな、馬鹿・・・」

「スカルエッティさん・・・」

いろんな感情がゴチャ混ぜになって自分でも何を言っているのか分かりません。

嗚咽が止まらない私と返す言葉が見つからないクライドさん。

そこに艦橋に流れる沈黙を破って触手が侵入してきました。

「しまった!ここまで来たか!?」

クライドさんが身構えます。

空気を読まずにウニョウニョ沸いてはあたりの物を破壊し出す触手・・・。

何か腹たってきました。

「うるさい!」

色々あって沸点が低くなってた私は左手を向けると義手の中に内蔵されている機関銃を掃射します。

「人が大事な話してるんだから出てくんなバカー!!」

装弾スペースのせいで9ミリ弾しか撃てませんが魔法が来ると思っていた触手たちには効果覿面です。

障壁を破られタングステンの弾丸に引き裂かれながら退散していきます、ざまーみろこんちくしょう!!

「ふぅ・・・よし、少しスッキリした」

「す、スカリエッティさん?」

あ、クライドさんちょっと引いてます。

もう正体バレとか私の立場とか今は知ったこっちゃありません。

「とにかく!クライドさんは私が助けます、異論は認めません!!」

「し、しかしそうなるとアルカンシェルが、アースラが・・・!」

確かに、クライドさんが離れれば邪魔者がいなくなった闇の書はアースラにアルカンシェルを発射出来るようになってしまいます。

「だから、こうするんです!」

私はイェーガーを足元に向けます。

脚部のパーツが展開、床をガッチリとホールド。

空気中の魔力をリンカーコアを経由してデバイスに送ります。

それでも足りない、なら・・・。

「マギア・イェーガー!カートリッジロード!」

『装弾』

私の言葉に従ってイェーガーがカートリッジシステムを起動。

ドラムマガジンに収められたカートリッジの内、5発を連続装填します。

ロードすると私の中で魔力が爆発的に上昇します。

「スカリエッティさん、一体何を・・・!?」

クライドさんが聞いてきますがとりあえず後にします。

溜まりに溜まった特大魔力をイェーガーに流し込む。

後は撃つだけです。

このリリカルなのはの世界の魔法は願望祈願型・・・魔導師のイメージをデバイスを用いて機械的に実現するという物・・・。

つまり私のイメージが大事なんです。

「すぅ・・・はぁ・・・」

大丈夫。練習した通りに、何よりアニオタの私は妄想力・・・もとい想像力が豊かですから。

MSでビームライフルを撃つイメージで・・・!

「インパクトカノン、発射ぁ!」

イェーガーの銃口から青白い極太ビームが打ち出されます。

なんかビームライフルって言うよりも宇宙戦艦ヤマトの主砲みたい・・・。

放たれた魔砲はエスティアの壁を、床を、天井をぶち抜いていきます。

「・・・あぁ!」

重大なことを忘れてました。

これ、ストーリー初の本格的な魔法じゃないですか!

もっと格好いい演出とかセリフとか考えとくんだったー!

え?研究所から脱走する時に使っただろって?

あれは何か格好付かないからノーカンです。

「どうした!大丈夫かい!?」

叫んだ私をクライドさんが心配してくれます。

「うぅ・・・大丈夫、こっちのことです」

答える私、チョッピリ涙目です。

それから直ぐに結果が現れました。

「アルカンシェルの発射シークエンスが止まった!?」

「ヨシッ!作戦成功ですね!」

アルカンシェルをとめるには幾つか方法があります。

第一にシステムを奪還して停止させます。

うん、ハッキング合戦とか勝ち目が無いので無理。

第二に機関部の停止、もしくは破壊。

これも無理です。機関室まで触手の相手をしながらとか間に合いません。

ぶ厚い隔壁に護られているからここからの砲撃で破壊するのも不可能。

そこで第三の方法、エネルギー伝達の阻害です。

要するに電源コードを切っちゃえばいいんです。

とは言え、これでお終いではありません。

メイン回路が寸断されても艦船のエネルギー伝達系は網の目のように張り巡らされています。

どこかがやられても別の場所からバイパスできるようにするためです。

案の定闇の書は別の回路を使ってアルカンシェルにエネルギーを送り始めました。

でも・・・。

「充填速度が遅い、これなら・・・っ!」

「はい、私達が脱出する時間は稼げます!」

私達が艦から降りればアースラは心置きなく無人になったエスティアを撃てます。

「いきましょう、クライドさん!総員退艦です!」

「ああ、案内する。こっちだ!」

クライドさんに先導され、艦内を走ります。

 

クライドさんと走り出してからしばらくして難関にぶつかりました。

「クッ、何だあれは」

格納庫に通じる通路、そこを強固な防火扉が塞ぎ、その表面を触手が覆っています。

触手は一本一本が大小様々な魔力弾を発射し、さながら要塞のように私達の行く手を阻んでいます。

「この様子では他の通路も。どうすれば・・・」

脱出するには戦うしかありません、しかしそんな時間は私達には残されていない。

戦わずに素通りする方法は無いものか・・・。

「ん、まてよ・・・」

素通り・・・これだ!

「クライドさん、私にいい考えがあります」

何やらフラグなセリフですが大丈夫です、問題ありません。

「何か策があるのかい?」

任せてください、そう言って私は直ぐ横の壁に手を当てます。

さて、皆さん。

戦闘機人には魔導師にはない特別な力が備わっています。

そう、IS・・・インフューレント・スキルです。決して弓弦イズル先生著のハイスピード学園ラブコメではありません。

余談ですが作者はオルコッ党だそうです。チョロインかわいいよチョロイン・・・。

さて、ISですが情報収集能力だったり、加速装置だったり、壁抜けしたり、超振動で機械に大ダメージを与えたり・・・。

そんな普通の人にはない能力が戦闘機人には一つ備わっています。

そして私のISは・・・。

「インフューレント・スキル発動・・・、『フラスコ=オブ=アルケミスト』!」

壁に閃光が走り形を変えていきます。

蝶番やハンドルが形作られ、あっという間に頑丈そうな水密扉ができあがりました。

「なっ・・・!?これは!?」

驚くクライドさん、それをみて私はドヤ顔でハンドルを回して扉を開きます。

「さぁ、こっちです!」

そう、私のIS、フラスコ=オブ=アルケミスト(錬金術師の試験官)は物質変換能力なんです。

生物相手には無理ですけれど、それ以外なら何だって自由自在に原子レベルで作り変えることが出来ます。

構造さえ分かれば鉄塊から戦車だって作ってみせますよ?

うん、自分で言うのもアレだけど超チートくさい。

それになんか鋼○錬金術師の手合わせ練成のパクリっぽいし・・・いつの間に私は心理の扉を開いたんでしょうか?

とにかくISで作った扉を潜り、隣の部屋へ。

そこでまた扉を作ってさらに隣に・・・。

そうして触手要塞を迂回、戦う事無くして私達は格納庫へたどり着きました。

どうでもいいですけど触手要塞とか、何か陵辱系エロゲのタイトルっぽいですね・・・。

「大丈夫かい、スカリエッティさん?」

「ゼェ、ゼェ・・・だい、じょうぶです・・・」

クライドさんにはああ返しましたが正直かなり辛いです。

こんな短時間にISを連続使用したのは初めてなのでかなり体に堪えますね。

リンカーコアも然ることながらさっきから胸のレリックが悲鳴を上げています。

今後のことも考えて鍛えたほうがいいかもしれません。

「そうか、とにかくここまで来れば・・・」

そこで私の強化された聴覚は嫌な音を捉えました。

メキメキと船体が軋むような・・・。

「危ないっ!」

クライドさんを伏せさせ自分も屈みます。

すると頭のすぐ上を闇の書の触手が通り過ぎます。

触手は鞭のようにしなりながら私達の周りを暴れ周り、破壊の限りを尽くしていく。

「くっ、このぉ!」

『ブレイズ・キャノン』

伏せながらクライドさんがデバイスを起動、抜き撃ちで触手を撃ち抜きます。

撃たれた触手は暫く暴れた後、ピクリとも動かなくなりました。

「スカリエッティさん、無事かい?」

ボロボロになったクライドさんが心配そうに聞いてきます、って・・・クライドさん既にもうボロボロでしたね。

「うぅ・・・私は大丈夫です。クライドさんは?」

「ああ、大丈夫だよ。しかし・・・」

言葉に詰まったクライドさん。

不思議に思い彼の視線の先を見ると・・・。

「げぇっ・・・」

台風一過が可愛く見える惨状でした。

残っていた連絡艇や救命ボートは原型も留めないほどバラバラにされ、とてもじゃないけどアレに乗って脱出するのは不可能です。

「っ!そうだ、船外作業服は!?」

次元航行艦は宇宙船としても使えます。

宇宙空間を航行中に船殻が傷ついたら人が外に出て修理しないといけません。

そのための船外作業服、つまり宇宙服が常備されているはずです。

連絡艇とかに比べると非常に心もとないですがもはや贅沢は言っていられません。

クライドさんと二人で格納庫を探すと、案の定船外作業服が出てきました。しかし・・・。

「無事なのは一着だけ、か・・・」

あのウニョウニョやろーが暴れたせいで作業服を収納していたロッカーも破壊され、使えるものは一つしかありませんでした。

もちろん着けられるのは一人。

中に二人も入れません。

「・・・アースラ、聞こえるか?」

通信を入れるクライドさん。

「今から船外作業服でスカリエッティさんが脱出する。そっちで回収してくれ」

・・・ストップ、ちょっと待て。

「言いたいことは分かる、しかしこれ以上の方法が無い。分かってくれ、スカリエッティさん」

「でも・・・」

「行くんだっ!時間が無い!」

・・・なんでしょう、何だかまた沸々と怒りがこみ上げてきましたよ。

クライドさんの言い分は分かりますよ。でもね、さっきも言いましたけど何でそうやってすぐあきらめるかな?

時間が無い?分かってますよ!だったらギリギリまで粘っていい案を考えればいいじゃないですか!?

思考が幼稚かも知れませんけどすぐに諦めちゃうのが大人なら私は子供のままで結構です!

むっ、クライドさんが宇宙服を手に取った。無理やり私に着せる気ですね?

そうはさせません!私はそれを払いのけると左手の銃口を向けて全ての残弾を叩き込みます。

穴だらけになる宇宙服・・・どうだ、これで使えまい!

「そんな、何て事を・・・」

最後の希望が潰えたかの様にに絶望に表情を歪ませるクライドさん。

いえ、実際クライドさんの中では潰えたのでしょう。

でも私はまだ絶望なんてしてません、生きて父さんとまた会おうって約束したんですから。

だから言ってやるんです・・・。

「私は絶対諦めません。誰かを切り捨てるなんて絶対許しませんから!」

項垂れていたクライドさんが頭を上げます。その顔はとても悔しそうです。

「ではどうするというんだ!?もう脱出の手段は残されていないんだぞ!」

「それをこれから考えるんです!」

そうだ、諦めんな私。まだ何かあるはずだから。

考えろ、考えろ・・・私の最大の武器は何だ?間違いなくフラスコ=オブ=アルケミスト(以下FOA)だ。それでどうやって脱出する?

残骸から宇宙船を一隻拵える。うん、無理。構造が分からないからよくできたハリボテしか出来上がらない。

宇宙服の方は・・・こっちも難しそう。生命維持装置とか私には作れない。こんなことなら魔法だけじゃなくて電子系とか工学系の勉強もしとくんだった。

ん?まてよ・・・アレをこうしてソレしたら・・・何とかなるかも。

「クライドさん!消火作業用の装備って此処にあります!?」

「え?あぁ、それならそっちのロッカーに・・・」

戸惑いながらクライドさんが指差した先にあるロッカーに私は走ります。

このロッカーも触手にやられへこんでましたが原型は留めています。

力任せに扉を開くと中には・・・

「あった・・・!」

私はソレを持って連絡艇の残骸の前に立ちます。

「さて、やりますか!FOA、発動!」

先程のように電流が迸り、光りが残骸を飲み込んでいきます。

(ヤバイ、もつかな・・・?)

恐らく限界が近いのでしょう、さっきから胸の奥がものっ凄く痛くて溜まりません。

内臓器官もおかしいのか痛さと気持ち悪さで泣きたくなってきます。

(お願いだからもう少し持ちこたえてくださいよ・・・)

私は自身のリンカーコアとそれに同期しているレリックに心の中でそう願いながら目的の物をイメージします。

そのイメージに合わせて残骸が形を変えてゆきます。

次々とパーツが結合して行き、ばらばらだったスクラップは次第に思い描いた物に近づいていきます。

「こ、これは・・・!」

後ろを振り向くとポカーンとした顔でソレを見ているクライドさん。

(良かった、間に合った・・・)

完成したところでついに限界が訪れたのか、口から紅いものを吐きながら私は意識を手放しました。

 

「クライド艦長、応答してください!こちらアースラ。繰り返します、応答してくださいクライド艦長!」

最後の通信以降、連絡が取れないクライドにアースラの面々は焦燥を募らせていた。

脱出の可能性が見られ、一度は希望を取り戻しただけに、押し寄せる絶望が彼らにはとても大きく見えた。

「クラウディア、アルカンシェルのチャージ再開!エネルギー臨界まで約600秒!」

そこでオペレーターから最も聞きたくなかった内容の報告が齎される。

ハルナによって破壊されたエネルギー系の修復を終えた闇の書は再びアルカンシェルを撃つべく準備を始めたのだ。

グレアムは立ち上がりブリッジを見回す。

そこにいた乗員達は一様に不安の色を露わにグレアムを注視していた。

(恨んでくれ、クライド君・・・)

グレアムは一度、深くため息をつくと砲術長に問い質した。

「こちらのアルカンシェルはすぐに撃てるか?」

「え?あっ、はい。エネルギーの充填はすでに終わっています」

先程ハルナが横槍を入れたため発射することの無かったアルカンシェルはエネルギーを充填したままの状態で今まで待機していた。

「分かった・・・。アルカンシェル、発射用意!」

「・・・っ!?提督!」

リンディはグレアムに詰め寄るが、再びリーゼ姉妹に制止される。

「本艦の乗組員と次元世界にの全市民には代えられないのだ。すまない・・・」

そう言い放つグレアムの手は固く握られ血が滲んでいるのを見てリンディは気付いた。

共に歩んできた教え子を自分の手にかけるのだ。辛く無い訳が無い。

それでも彼は決断したのだ。

次元世界の為に教え子を犠牲にするの言う苦渋の決断を・・・。

アルカンシェルの発射キーの前に立つグレアム、安全装置は既に解除されている。

刺さったキーにグレアムが触れた直後、観測員が叫んだ。

「あっ、待ってください!エスティアで小規模な爆発、何かが射出されました!これは・・・デュランダルのシグナルです!」

デュランダル・・・クライドのデバイスの反応があると言うことは・・・。

「クライドさん!」

「二人が脱出したんだよ!父様!」

「うむ、先程の射出体を追尾!アルカンシェルの安全圏までどれくらいだ!?」

観測員に問い質すグレアム。

「効果範囲外まで後10秒・・・5秒・・・離脱しました!」

報告を聞くや、改めて発射キーを掴むグレアム。

「総員、衝撃に備え!アルカンシェル発射ァ!」

叫ぶや否やキーをまわすグレアム。

直後、アースラの艦首から特大の閃光が放たれる。

閃光はまっすぐエスティアに吸い込まれていき、着弾するや一際大きく光った。

その輝きの中でエスティア、そして闇の書が光りの中に溶けていく。

光りは暫く瞬いた後ゆっくりと収束していき、やがて次元空間はもとの静けさを取り戻した。

「エスティア、完全に消滅。闇の書の反応もありません」

「終わった、のか・・・?」

今だ脅威が去ったのを実感できず呆然と、または緊張が解けないでいる乗員達。

「デュランダルの反応は!?」

グレアムの一言で、再びブリッジに緊張が走る。

観測員がモニターに目を走らせ、通信士がクライドに呼びかける。

それを祈るように見つめるリンディとリーゼ姉妹に険しい顔のグレアム。

重い空気が暫くブリッジを支配していたがそれは唐突に終わりを迎えた。

「・・・っ!デュランダルの反応を探知!方位、3-2-0!距離、2000!」

「目標、光学探知!映像出ます!」

観測員が報告し、当該空間の映像を投影する。

アルカンシェルの余波の影響で不鮮明ながらも映し出された映像には次元空間に小さな球体がポツンと浮かんでいた。

アースラが球体に近づくにつれ、その細部が鮮明に映し出される。

「あれは・・・っ!?」

それは一言で言うならば4~5メートル大の丸い鉄屑だった。

艦船勤務の長い局員が見たら連絡艇のものだと分るパーツ、それを繋ぎ合わせ無理やり球形にしたような物体。

出入り口と思われる重厚な水密扉を除けば、推進装置はおろか窓の一つも存在しない鉄塊、それがアースラのクルーの感想だった。

「あんな物で脱出したのか!?」

「あれじゃあ操縦どころか生命維持だって出来ないじゃないか!」

人間が2~3人入ればいっぱいの玉、そんな小さなものに生命維持装置がつめるはずが無い。

パーツ同士はしっかり接合されているため、空気が流出することは無いだろうがハッキリ言って中の人間は長くは持たないだろう。

「回収を急げ!医療班を直ちに連絡艇デッキに向かわせろ!」

故に、直ちに回収し搭乗者に適切な医療処置を施さなくては最悪窒息死、そうでなくても酸欠で脳に障害を負う可能性が高かった。

「・・・っ!クライド艦長より通信です!」

クライドからの通信、それを聞いたブリッジ要員は歓喜と安堵に包まれた。

クライドが生きていると言うことは保護した少女も無事だろう。

それを聞いた乗組員たちは歓声を上げる。

しかし次の瞬間、回線が開きクライドたちの姿が投影された途端、それが間違いであった事を彼らは知った。

「なっ・・・!?」

「そんな・・・っ!」

絶句する局員達。

『アースラ、応答してくれ!早く回収を!』

投影された映像の向こう、カプセルの中にクライドはいた。

彼の顔には酸素マスクが取り付けられている。恐らく消火作業用の防火服の物だろう。

だが問題は彼の腕の中。

『彼女が、スカリエッティさんが危険な状態だ!早く!』

そこには血の気の失せた顔色のハルナが口から血を流しながらグッタリとしていた。




ハルナ死すっ!嘘ですごめんなさいちゃんと続きます。
そんなわけで死亡キャラ生存のタグ回収完了です。
次回ですが幕間の話を追加中なので少々遅れます。


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第6.5話「お姉ちゃんが死にかけている時、よそではこんな会話が行われていた」

お待たせしました、予告していた幕間話になります。
自分でやっといてなんだけどスカさん達、キャラ崩壊が激しすぎw


暗い室内、その中央に彼、ジェイル・スカリエッティは居た。

両手を手錠で拘束されたその姿は正に囚人そのものだ。

「さて、ジェイル・スカリエッティ・・・貴様には色々と聞かねばならぬことがある」

 

機人長女リリカルハルナ

第6.5話「お姉ちゃんが死にかけている時、よそではこんな会話が行われていた」

 

突如彼の右斜め後ろから声がする。

視線を向けるとそこにはⅢと表記された時空管理局のエンブレムか輝いていた。

「左様、虚偽ばかりの戦闘機人の研究データ、そして此度の脱走・・・貴様は我々に対し隠し事が多すぎる」

左斜めから別の声。

そこにも現れたのも管理局のエンブレム。

こちらのナンバーはⅡだ。

「全てを話してもらうぞ、ジェイル・スカリエッティ・・・」

最後に正面に現れるエンブレム。

その表記はⅠ。

彼らは数多の次元世界の秩序の守護者・・・時空管理局の意思決定機関の頂点に立つ者達。

最高評議会のメンバーだ。

「さて、話せと言われましても・・・報告は定期的に上げていたはずですが?」

おどけてみせるスカリエッティ、しかし三人は彼の内心を見透かしているのか鼻で笑う。

「フン、ぬけぬけと言いおる」

「では・・・これはどう説明するのかな?」

スカリエッティの前にディスプレイが投影される。

「げっ・・・!」

それをみて彼は絶句した。

『パ~パ、パ~パ!』

『そうだぞぉゼロ。私がパパだぞ~』

生後数ヶ月の赤ん坊、ようやく喋れるようになったハルナをたかいたかいするスカリエッティ。

『次にお前はこう言う、父より優れた娘など存在しねぇと・・・』

『父より優れた娘など存在しねぇっ!ハッ・・・!?』

先ほどよりも成長したハルナとジョジョなのか北斗の拳なのかよく分からないやり取りをするスカリエッティ。

『こう?』

『ふむ、どうも萌えが足りないなぁ』

『じゃあこれは?』

『そっちもなぁ、キャピキャピしすぎて逆にあざとく感じる・・・』

バリアジャケットを展開し、イェーガーを手にしたハルナと決めポーズを考えるスカリエッティ・・・。

そこに映っているのは彼と娘・・・仲睦まじい家族の姿だった。

「さて、これについて説明してもらおうか?」

「あ~、それは、その・・・」

記念に取っていたホームビデオを見せられ詰問されるスカリエッティの顔にジワリと汗が浮かぶ。

「最早言い逃れはできんぞ・・・!」

評議長が怒気の籠った声で言う。

「我等を謀った罪、許されると思うなよ!」

評議員が声を張り上げる。

「貴様の行為、正に万死に値するっ!」

書記の怒声がスカリエッティに叩きつけられる。

(どうやら私はここまでの様だな・・・ハルナ、すまない・・・っ!)

自身の死が確定したのを確信したスカリエッティは施設から逃した愛娘に心の中で詫びる。

そんな彼に三人は更なる怒声を浴びせた。

「「「どうしてこんな可愛らしい娘がいるのに黙っていたっ!!?」」」

「・・・は?」

その問いは次元世界屈指の頭脳を持つスカリエッティをしても理解できないものであり、思わず開いた口から呆けた声が零れてしまった。

「貴様・・・ワシ等が日夜世界の平和守ってる時に自分だけかわいい娘と和気藹々としおって・・・羨ましいぞ!」

「そうだそうだ!我々だってなぁ!潤いが欲しいんじゃ!」

ポカンとしたスカリエッティに評議員と書記が叫ぶ。

「もう我慢できん!大至急彼女を保護しろ!この子はワシが孫として育てる!!」

評議長がそう宣言した瞬間、室内の空気が固まった。

直後オドロオドロしい怒気が部屋中に充満し、そして・・・。

「「「ふざけるなー!!!」」」

評議員と書記、そしてスカリエッティの怒号が木霊した。

「議長!この野郎一人だけ抜け駆けしおって!」

「脳みそだけのお前にまともな育児ができるわけなかろうが!」

「ちょっと待て!そう言うお前らだって脳みそだけだろう!人の事が言えた口か!?」

「お前ら黙って聞いてればなぁ・・・何勝手に人の娘の処遇を決めようとしてるんだ!?お前等なんぞにハルナはやらんっ!!」

「「「何だとぉっ!!?」」」

怒声と怒号、時たま拳とどこからか生えてきたマジックハンドが飛び交う室内・・・。

こうしてスカリエッティと最高評議会、親馬鹿と祖父馬鹿を拗らせた四人の醜い争い・・・『第一回ハルナの親権争奪戦』は彼女がエスティアに保護されたという報告が伝えられるまで続くのだった。

ちなみに結果はクロスカウンタによる4人同時KOであった。




この時空管理局は別の意味でダメかもしれませんねw


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第7話「お姉ちゃん、バレる」

第7話です。
今作で誕生編は終了、次回から新章突入です。


暗い、此処は何処だろう?

「・・・!・・・・っ!!」

何か聞こえる・・・。

「血圧・・・下!・・・にも乱・・・!」

「・・・だ!輸血・・・!」

これは・・・声?

「不可能で・・・こんな身体の・・・前例が無・・・!」

「やるしか・・・!彼女の命が・・・!!」

そっか、そういえばISの使いすぎで身体が限界を超えちゃったんだっけ。

多分私は今手術中で聞こえているのはお医者さんの声なんだ。

どうでもいいけどお医者さんと聞いてエロいイメージが浮かぶ私はかなりアウトかもしれませんね・・・。

とまぁ、アホな思考はそろそろ止めにして・・・やっぱ私死んじゃうんですかねぇ・・・。

あれだけ大量に吐血したって事は間違いなく内臓やられてますしね。

それに先生方の会話からして私を治療することが難しいみたいです。

考えて見ればそうですよね。この時代に戦闘機人なんて私以外に存在しませんもん、治療方法なんて当然ありません。

それなのに妙に他人事に感じるのは私が達観しているのか既に諦めの境地に到達してしまったのか・・・。

あぁ、でも最後にまた父さんに会いたかったです。

あと、出切ればアニメシリーズ3作品分位活躍したかったですし妹にも会いたかったですし栗毛と金髪のツインテ百合カップルやチビだぬきな大阪系少女とかと友達になりたかったですし・・・。

あれ・・・やっぱり未練タラタラじゃね?

「な・・・だ君は!?」

「ここ・・・部外者は・・・だ!」

おや?なんか騒がしくなってきましたよ?

だれか関係者以外が入ってきたんでしょうか?

「許可・・・受・・・る。ここ・・・私に任・・・」

誰かがそう言うと人の気配が少なくなっていきます。

先生方が退出したようです。

「・・・・・・」

何でしょう、誰だか分らない人と密室に二人っきり・・・。

何をされるのか分らない分さっきより一段と不安になってきました。

もしかして薄い本のようなエロい目に!?

「大丈夫だよ」

え?

この声は・・・!?

私は何とかして目を開けようと意識を集中させます。

そしてやっとこさ瞼を開けると・・・。

「とぉ・・・さん・・・?」

今だ焦点の会わない視界の中、父さんが私を見下ろしていました。

しかしそこで気力が尽きたのか私の意識は闇に落ちていきます。

「必ず君を助けてみせるよ、ハルナ・・・」

それが意識を手放す直前に耳にした父さんの言葉でした。

 

機人長女リリカルハルナ

第7話「お姉ちゃん、バレる」

 

「知らない天井だ・・・」

しつこいようですが様式美です。異議申し立ては受け付けません。

とそこで何かが落ちるような音がして其方を見ると看護師さんが立っています。

足下には点滴のパック、これから取り替えようと病室に入ってきたみたいですね。

「目が、覚めたの・・・?はっ・・・!そのまま動かないで!まだ身体は衰弱したままだから!」

そう言って看護師さんは私の枕もとに来ると備え付けのナースコールボタンを押してお医者さんを呼び出しました。

その後は慌てて病室にやって来た先生方に身体に異常は無いか検査されたんですが明らかに違うことを調べてるようにも感じました。

まぁ、先程も言いましたがプロジェクトFなんて影も形もない時代です。

そんな所に超高性能な戦闘機人なんて現れたら大騒ぎになるでしょう。

そして諸々の検査で丸一日つぶれたその翌日。

「こんにちは、スカリエッティさん」

クライドさんがやってきました。

手にはお花と果物の詰め合わせ、どうやらお見舞いに来てくれたみたいです。

「その、身体の具合は大丈夫かい?」

クライドさん、心配してくれていることに嘘偽りは無いようですがどうもそれだけの為にきた訳じゃないようです。

どこか落ち着かないというか警戒しているような素振りですしチラチラとこちらの様子を窺ってきます。

それに各センサーでスキャンしてみれば病室の周りには完全武装の魔導師と思われる人たちが待機しており、何かあればすぐ突入できる状態にありました。

うん。すげー警戒されてますね、私・・・。

まぁ、正体不明の人造魔導師のようなナニカが相手です。警戒するなという方が無理でしょうね。

「はい、おかげさまで」

とりあえず当たり障りの無い返事をしてみましたがさて、どう転ぶでしょうか・・・。

「そ、そうか・・・それはよかった・・・」

クライドさんはそういうとそれっきり黙ってしまいました。

「・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・」

沈黙が続きます。

気まずいです!

私こういう雰囲気ダメなんです!

なので先に心が折れてしまいました。

「あの~、何か聞きに来たんじゃありませんか?」

「っ!な、何故そうおもったんだい?」

うわぁ、メチャクチャうろたえてますよ。大丈夫なのか管理局?

結構偉い人なんですからもうちょっと腹芸が出来なきゃだめですよ、クライドさん。

「思いっきり態度にでてますよ・・・それでどうします?続けますか尋問?」

私がそう聞くとクライドさんはガバッという効果音が付きそうな勢いで立ち上がります。

「違う!違うんだ、スカリエッティさん・・・」

全力で否定してくるクライドさん。

助けた女の子にこんなことしたくないんでしょうね。

理想と任務の狭間で葛藤しているようですがどんだけいい人なんですかこの人?

こりゃ余計なことを口走ったらいけませんね。

最悪、最高評議会の送り込んできた暗殺者に消されてしまうかもしれません「お前は知りすぎた」とか「騙して悪いが仕事なんでな」とかいって。

「はぁ・・・そんなに知ってる事は多くありませんよ?」

「・・・すまない」

罪悪感で胸がいっぱいなクライドさんを前に私の身の上の説明を始めました。

とりあえず当たり障りの無い内容を話すとしましょう。

「既に調べたと思いますけれど私の身体は普通じゃありません。人為的に作られた物です」

「では、やはり人造魔導師・・・」

「研究所の人は戦闘機人って呼んでました、文字通り戦うために機械と融合した身体だからでしょう・・・」

その話を聞くや否や顔を歪めるクライドさん。

人間を何だと思ってるんだって顔ですね。

「生まれて3~4年位研究所の中ですごしてきたんですけれども少し前に管理局の強制捜査が入りましてその時に父さん・・・私を生み出した研究員の人に転送ポートで逃がしてもらったんです」

「そしてあの森で守護騎士に襲われて倒れていた、ということか・・・」

そう言ってクライドさんはどこかと連絡を取り始めました。

恐らく最近捜査が行われた研究所の洗い出しをしているのでしょう。

「すみません、大して力になれなくて・・・」

「いや、こちらこそ嫌な思いをさせてしまった。改めて謝罪させて欲しい」

そう言って頭を下げるクライドさんでした。

保身の為に管理局に協力的なポーズをとっておこうと言う下心も少しはありますがクライドさんにはそういった思惑抜きで強力したくなる何かがあります。

これがこの人の人徳なのでしょうね。

それで尋問と言うか事情聴取は終わったのか後は他愛無いお喋りばっかりでした。

クライドさんに私と歳の近い息子さんいる事とか、私と父さんが地球の漫画やアニメを観て盛り上がってた事とか地球つながりでクライドさんの上司兼師匠が地球出身だったとか・・・。

こんな感じに会話が弾んでいたらいつの間にか日が傾いていました。

まぁ、クライドさんがやって来たとき既に午後に突入していたのですから仕方ありません。

看護師のお姉さんが入ってきて面会時間の終わりを告げてきました。

「それじゃあ私はそろそろ行くよ、今日はありがとう。」

名残惜しいですが仕方ありません。

クライドさんだって多忙な中、態々時間を作ってやって来てくれたんですから。

「はい、此方こそありがとうございました」

ですからちゃんとお礼を言わないといけません。

「ああ、そうだ。君の身柄は私が責任を持って護る。だから安心して今は養生してくれ」

更に私が不安にならない様に此処まで気を使ってくれるなんて、もうクライドさんの方に足向けて寝れませんね。

最後に「それじゃあお大事に」と笑顔で言ってクライドさんは病室を出て行きました。

扉が閉まり病室に静寂が訪れます。

「・・・・・・」

病院は静かな場所なのは知っていましたがクライドさんが去った病室はやけに静かで逆に耳がキーンと痛くなるような錯覚すら感じました。

べ、別に一人になって寂しく思ってる訳じゃないんだから!本当だからね!

さて、ほのぼの&ギャグパートはこれ位にして・・・。

「隠れてないで入ってきたらどうですか?」

ここからはシリアスパートといきますか・・・!

声をかけられて観念したのか入ってきたのは一人の男性でした。

本局の青い制服姿の中肉中背40代位の無個性なおじさんです。

人ごみにいたら周囲に溶け込んで絶対に見つけられない。それ位個性と言うものが感じられません。

ガンダムで言うところのGMです。超没個性、同じヤラレメカのザクだってもっと個性があるというのに・・・。

私が思うにきっと名前はジョン・スミスか田中太郎に違いありません。

情報部とかそんな部署の、恐らく最高評議会の息のかかった人でしょう。

「これは失礼しました。隠れている積もりは無かったのですが中々どうして・・・女性の部屋と言うのは入るのを躊躇ってしまっていけない」

場を和ませてるつもりでしょうか?

仮称ジョンさんがジョークを言い放ちますがすげーつまんないです。

これは笑わなきゃいけないんでしょうか?アメリカンコメディのノリでHAHAHA!って・・・。

うん、無理。

「それで何の御用でしょう?面会時間はさっき終わっちゃいましたよ?」

なのでスルーして話を進めてしまいましょう。

「今のジョークは渾身の出来だったのですがね・・・まぁいいでしょう。」

マジで笑いを取るつもりだったんですか?!

部屋に備え付けの椅子に「よっこいしょ」と言って座ってから改めて目の前のおじさんは口を開きます。

「自己紹介がまだでしたね。技術部システム管理課のジョン・田中です」

なんと、本当にジョンさんでしたよ。しかも苗字が田中・・・おもいっきし偽名ですって言ってるようなもんじゃないですか。

おまけに技術部?無個性の癖に眼光だけ鋭かったり身体の重心が全くブレなかったり思いっきり戦闘者じゃないですか。

あなた隠す気ないでしょう?どう見ても最高評議会の刺客ですよ。

「それでその田中さんが何の用で此処に?事情聴取なら先程済みましたよ?」

ここで余計なことを口走ったら田中さんは私を消しに掛かるでしょう。

私だけならまだいいです。返り討ちは無理でも逃げるくらいなら出来るはずです。

問題はクライドさんです。

さっきも言いましたが知りすぎたとかいわれて消されたり、あとは人質にされたりとかしたら私は何も出来ません。

なので下手な手は打たないで様子を見ましょう。

私の前に現れたということは私に何がしかを要求しているのでしょう。

「いえ、なに・・・貴女の今後について話し合いに参上した次第です」

確定。コイツ間違いなくノーミソ老人会の差し金です。

「私の今後ですか?」

とにかく今は無知なフリをして情報を引き出しましょう。

「はい、貴女は現在複雑な立場にいます。違法研究機関の被験体、それだけ観れば被害者として保護される立場です」

「しかし・・・」と田中さんはそこで一回区切ってから話を続けます。

「貴女は非常に強力な力を持っている。使い方を誤れば多くの人を傷つけてしまう程危険な力を・・・。それらは然るべき教育を受けた上で然るべき場所で正しく振るわれなくてはならない。貴女なら理解できますね?」

つまり意訳するとこういうことですかね。

オマエの力はヤバイから管理局の為に使われるべきだ、と。

すげー傲慢な発言ですが本来私は管理局が魔導師不足を補う為に父さんに開発させた戦闘機人な訳であながち間違いでな無いんですよね。

「つまり私は退院後は管理局の預かりになると、そういう事ですか?」

「まぁそう言う事になりますね。具体的な配属先などは追って通達しますので・・・」

なんつぅかこの人、私が管理局入りすること前提で話進めてるよ・・・。

「拒否権とかはあるんでしょうか?」

この手の質問が来ることを予想していたのでしょう。

田中さんは空間ディスプレイを投影してある画像を見せました。

「なっ・・・!!」

それを見た私は文字通り息をのみました。

そこにはバインドで両腕を繋がれた父さんとあの研究所の研究員さん達が連行されている光景でした。

父さんの近くにクイントさんが写っている事からあの日、局員が突入してきた日のものでしょう。

「貴女が正式に局員として管理局に来てくれるのであれば貴女のお父上、スカリエッティ博士との早期再会が叶うのですか・・・いかがでしょう?」

ちくしょう・・・迂闊でした。クライドさんの心配ばっかりしてたせいで父さんの事忘れてましたよ!

そうですよ、父さんあの後御用になったに決まってるじゃありませんか。

口封じに殺されるかと思っていましたが私を縛るための人質にするとは・・・。

こうなっては最高評議会に従わざる追えないでしょう。

「・・・分りました。ご要望通り入局しましょう」

私が大人しく従ったことに田中さんは顔をほころばせます。

「それは良かった。断られたらどうしようかと心配しましたよ」

話は終わったとばかりに田中さんは席を立ちます。

「ただし・・・」

退室しようとする田中さんに私は決して大きな声ではないですがハッキリとした口調で言ってやります。

「私の縁者に何かあった場合はその限りでありませんから。そのつもりでいてください・・・」

父さんだけじゃなくて研究員さん、そしてクライドさん達に何かあったらタダじゃ済まんぞワレェ・・・!と脅しておきました。

最も何かあったらブラフでも何でもなくタダじゃすましません。

アラモ銃器店で全品100%オフの買い物をしてからで羽の付いたカヌーで突入、『デェェェン!』て感じに完全武装してターミネーターと化した挙句爆弾攻勢を開始、首謀者も実行犯もタダの案山子も資本主義者も特殊訓練を受けたゲリラも一人残らず安物のナイフであすたらびすたべいべーした上でカバンにしてやる所存です。

「・・・ええ、承知しました。」

それだけ言って田中さんは今度こそ病室を後にしました。

「はぁ~緊張した・・・」

ガチの工作員と腹の探り合いなんてするもんじゃありませんね。

気力の使い過ぎでお腹がすきました。

食堂に行きたいですがお医者さんの言いつけで病室からは出られません、最もこの体じゃあ立つこともままならないんですけどね。

あ、クライドさんの持ってきてくれた果物がありました。

「頂きます。もきゅもきゅ・・・あ~バナナおいしい」

とりあえず今は養生しましょう、局で働くにしても体が治らなきゃ始まりませんから。

 

Side ジョン・田中

病院を後にした彼、ジョン・田中は通信を入れる。

「私です、ご命令の通り彼女に入局を促しました」

相手は彼の直属の上司、時空管理局最高評議会。

「はい・・・はい。彼女も了承してくれましたよ。ただ・・・」

かわいい孫(最高評議会談)が路頭に迷わない様就職先を用意するという彼らの意向を伝えに来た田中であったが・・・。

「ミズ・スカリエッティは何か勘違いしているようでした・・・」

どうやら説明不足だったらしい。

当の本人は父を人質に服従を迫られたと思ったのか最後に此方を脅すような発言をしてきた。

「釈明しようにもあの様子では信じてくれないと思われます」

結局彼女が真相を知るのは父と再会してからになるのは間違いない。

それまで続くだろうギスギスした関係を想像したジョンは深くため息をつくのであった。

Side out



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就労編 第8話『雨降って地固まるって言いますけど普通雨降ったら固まるどころか地面ドロドロですよね?』

お待たせしました、新章開始です。
文字通り主人公が働きます。


「はぁ、はぁっ・・・!クソッ!」

男は走っていた。

場所は夜のクラナガン、ネオンの眩しい表通りを外れた暗く薄汚れた裏路地を全速力で。

積み上げられた箱やゴミを蹴り倒し、躓きながらも男は走る。

しきりに後ろを振り向き追っ手の姿を確認するがその姿を確認することは出来ない。

しかし・・・。

「っ・・・!?」

男は咄嗟に右にかわす。

すると先程まで彼がいた空間を青白い弾丸が通り過ぎていく。

気付くのが一瞬遅ければ、かわすのが後コンマ数秒遅れていれば彼は魔力弾のシャワーを浴びていたことだろう。

「畜生!何で奴には見えるんだ!?」

この暗闇の中、闇雲に逃げる自分を追跡者は音も無く的確に追い詰め、狙い違わず発砲してくる。

対してこちらは相手の姿どころか足音や気配すら聞こえず何処からとも無く飛来する魔力弾に撃たれる恐怖で気が狂いそうだ。

永遠に続くと思われた夜の街の鬼ごっこは唐突に終わりを告げる。

「なっ!行き止まり・・・!?」

無我夢中で逃げる男は路地の突き当たりに追い詰められてしまった。

左右を見回し、逃げ道が無いか確認する。

しかし周囲の廃ビルは扉も窓も閉ざされた上から厚い鉄板で塞がれ飛び込むことは不可能だった。

「ちっくしょうがぁ!」

男は振り返り手に持ったデバイスを機動する。

そう、男は魔導師だった。

魔導の才能はそれなりにあったがそれを磨く事は無く、悪い仲間と遊び歩いていたのが祟り、碌な職に付く事ができなかった。

そして男はクラナガンを拠点とするマフィアに雇われお抱え魔導師として後ろ暗い仕事を今日まで続けてきた。

そのため幸か不幸か、こと戦闘に関しては組織で一目置かれるまでになっていた。

「来やがれ、管理局のクソ野郎が!ぶっ殺してやる!」

塞がれた扉を背にし、暗闇にデバイスを向ける。

腕に自信のある自分が追い詰められるのだ。

追っ手・・・時空管理局の捜査官はかなりの戦力を投入しているのだろう。

10人か、20人か・・・。

それでも正面からの撃ち合いならば負ける気はしない。

男は不適に笑いながら現れるであろう捜査官達を待つ。

しかし、10秒過ぎ、20秒過ぎ、1分過ぎても彼らは現れない。

肩透かしをくらい不思議に思った男が眼前の闇に目を凝らしたその時。

突然背後から大きな音がする。

「っ!!」

慌てて背後を振り返った男。

「なんd・・・ぶっ!!」

何だ?

彼はその言葉を最後まで言う事無く自分に向かって飛んでくるぶ厚い鉄板・・・開かずの扉だった筈のドアに顔面を強打される。

扉共々2メートルは吹き飛ばさた男は今しがた廃ビルに出来た出入り口から現れた人影に驚愕する。

「ガキ・・・だと?」

それは屈強な武装局員でも狡猾な執務官ですらなく、小さな少女だった。

その少女が無骨なデバイスと思しきものをこちらに向けるとその先から青白い魔力光が発せられる。

どうやら今まで自分を追い詰めていたのは目の前の少女のようだ。

「こんな、ガキに俺は・・・」

そういったところで少女のデバイスから閃光が走り、男は意識を手放した。

 

機人長女リリカルハルナ

第8話『雨降って地固まるって言いますけど普通雨降ったら固まるどころか地面ドロドロですよね?』

 

「それでは被疑者の護送、よろしくお願いします」

「はっ・・・それでは失礼します」

私に返礼すると警邏隊の局員は護送車のほうへ走っていきます。

どうもこんばんは。いや、こんにちはかな?うん、現地時間23時なのでやっぱりこんばんはで行きましょう。

こんばんは、ハルナ・スカリエッティ執務官です。

病院でのやり取りからはや5年、田中さんとの交わした契約の通り私は時空管理局で働いています。

退院と同時に陸士学校に放り込まれ3ヶ月の短期講習を受け、その後は士官学校に放り込まれこれまた半年の促成コースで法律やら何やらを叩き込まれた挙句執務官試験を受けさせられギリギリこれに合格、今はミッドチルダ地上本部付きの執務官をやっています。

戦闘機人のチートボディのおかげで実技のほうは簡単にパスできたので座学に専念できたのが幸いでした。

ちなみに私の所属を巡って陸と海のお偉いさんが争ったらしいです。

クライドさんをはじめ、私を保護したいという思う人も幾分かはいたとは思いますが殆どは私と言う強力な戦力を他所に取られまいという思惑からでしょう。

結局最後は最高評議会が動いて私は暫定で陸の預かりとなりました。

定期的にクライドさんに手紙を出してはいるのですが果たして届いているのかどうか・・・。

また、定時連絡にやってくる田中さんに父さんの事を聞いてはいるのですがいずれもはぐらかされてしまいました。

私の方でも独自にに父さんの事を調べてみましたが全く情報が手に入りません。

もしかしたら父さんは既にこの世にはいないのかもしれません・・・。

何か湿っぽくなってしまいましたね、この話はお終いにしましょう。

それにしても、さすがはミッドチルダが首都クラナガン。

時空管理局のお膝元の筈ですがとにかく犯罪が多いです。

しかもかなり組織だった犯罪が。

大都市ですからその分動くお金も大きいのでしょう。

それに比例してそこを根城にしている犯罪組織も大きくなるのは分りますがこれだけ連日出動が続けばチートボディな私でも気が滅入ってきます。

そしてもう一つ気が滅入ることがありまして・・・。

「あ、居た居た・・・スカリエッティさーん!」

・・・噂をすればこれですよ。

「やっと見つけましたよ。さぁ、今日こそは検診を受けてもらいますよ!」

そう言って近寄ってくる本局制服の上に白衣を纏った緑がかったショートヘアに円メガネの局員。

コイツ、マリエル・アテンザとか言う私と同じくらいの年齢のこの女は私の専属医らしいです。

とは言えこの女の本来の部署はデバイスの整備、開発が専門の第4技術部・・・。

明らかにコイツ私の事珍しいメカとしか思ってないですよ。

検診とか言いながらどうせ私の稼動データを取って来いとか評議会に言われているに違いありません。

「結構、メンテナンスは間に合ってます」

なので突っぱねます。

私の体を触っていいのは父さんだけです。ちなみに性的な意味で触ったら父さんでもぶっ殺しますが・・・。

「そう言って前回の検診も拒否したでしょう。一度ちゃんとした設備で見ないと心配じゃないですか?」

それなのに何度断ってもしつこく食い下がってくるのでその度にイライラが募っていきます。

「自分の身体です、自分が一番よく分かっている。余計なおせっかいは結構」

いえ、それだけじゃありません。

二度と父さんに会えないかも知れない不安。

現状への苛立ち。

そして何より管理局への憎悪とも言える不信感。

あらゆる負の感情が積もりに積もって山となり今にも噴火しそうな状態です。

「お節介だなんて。私はスカリエッティさんの為を思って・・・」

だからでしょう。

彼女のこの一言で私の堪忍袋の尾が切れたのは。

「だったら私に付きまとうな!!」

後になって思えばかなり情緒不安定だったのでしょう。

周りの目も気にせず眼前のマリエル・アテンザに当ってしまいました。

「私の身体が心配?私の為を思って?あんたが大事なのは私の稼動データだろう!?」

「そんな・・・!?私は・・・」

目の前でアテンザがうろたえていますがもう駄目です。

色々火が着いてしまった私の口は止まりません。

「五月蝿い!!善人ぶるな!どうせ心の中では私の事なんてモルモット程度にしか思ってないくせに・・・っ!」

「違うっ!!」

溜まりに溜まった怒りや鬱憤をぶちまけている途中で目の前の女の叫びに驚き中断してしまいました。

「違うもん・・・私は、あなたと・・・」

彼女は泣いていました。

考えてみれば当たり前です。

就業年齢の低いミッドチルダ・・・とりわけ魔導師は精神の成熟が早いといいますがそれでも目の前の彼女は間違いなく子供です。

私のように前世の記憶なんて物があるわけではありません。

そんな彼女が怒りや憎しみをぶつけられて平気なわけがありません。

肩で息をしている内に冷静さを取り戻した私が感じたのは言いようの無い罪悪感でした。

「えっと・・・あの・・・」

謝らないと、そう思うのですがうまく言葉に出来ません。

そうして私がまごついていると突然向こうから叫び声が聞こえてきます。

「えっ!?」

「なに・・・?」

アテンザも顔を上げてそちらに振り向きます。

そこにいたのは先程私が拘束したチンピラ・・・もとい犯罪組織の違法魔導師でした。

手には先程持っていた物とは別のデバイス・・・どうやらどこかに隠し持っていたようです。

「さっきはよくもコケにしてくれたな・・・このクソガキィ!」

放たれる魔導弾。

慌ててシールドを張りますがかなりの衝撃で私は弾き飛ばされてしまいました。

「ぐあっ・・・!」

地面を二、三度バウンドした後ようやく止まってから立ち上がろうとしますが身体が動きません。

すぐさまシステムチェックを走らせます。すると・・・

(疲労蓄積!?なんでこんな時に!)

検診を拒否してずっとフル稼動だったせいか、身体のあちこちにガタが来ていました。

その溜まりに溜まった疲労が此処で一気に噴出したのです。

実際さっきの攻撃だって万全の状態なら弾き返せたはずです。

それが受身も取れないくらい身体が弱っていたのに気付けないなんて・・・。

「へッへッへ・・・」

違法魔・・・めんどいからもうチンピラでいいや。

そのチンピラが嫌な笑みを浮かべながら近づいてきます。

これは、まさか・・・!?

「やめて! 私に乱暴する気でしょう? エロ同人みたいに! エロ同人みたいに!」

「・・・・・・は?」

・・・あれ?おかしいな、確か前世で読んだ薄い本だと大体このあたりで女の子がエッチな目にあうんだけれど・・・。

「よく分からんが俺はな、テメーみたいな貧相なガキになんざ興味は無ぇんだよ」

・・・どうやらコイツ、熟女派だったようです。

「おい、テメー。今俺のことバカにしてたろ?」

「いえ、ただ熟女趣味だったんだな~と・・・」

「ちげーよ!俺はなぁ!もっとこう・・・ボンっと出てて、キュっと引き締まってて、そんでまたボンって出てるのが好きなんだよ!」

そんなこと9歳児に力説しないでください。反応に困るじゃないですか。

「それじゃあこのすれんだぁびゅーてぃな私をどうするつもりですか?」

「なに・・・お前中々いい腕だしな。管理局で腐らせるなんざもったいねぇ。俺の所に来ないか?ギャラは弾むぜ」

なんと、カン・ユー・・・もとい勧誘ですか。

ギャラを弾むのくだりに一瞬心惹かれる物が無かったといえば嘘になります。何より管理局は憎くてたまりませんし、しかし・・・。

「魅力的な提案ですね、でも私は管理局でやらなきゃいけない事があるんです。だからお断りします」

そう、父さんを見つけて助け出さなきゃいけません。

可能性は限りなく低いでしょう。第一父さんがまだ生きている保障はありません。でもやらなきゃいつまで経ってもゼロパーセントのままです。

「そうか・・・そりゃ何よりだ、よっ!」

そう言うやいなや、チンピラは私の事を思い切り蹴り飛ばしました。

再び私は地面を転がります。

「ガハッ・・・!」

この野郎・・・女の子を足蹴にするとは何て奴だ。

「あのまま提案を飲まれたりしたらテメェをぶっ殺せなくなっちまうもんなぁ・・・」

ゲス顔で私にデバイスを向けるチンピラ。

コイツはいよいよ持ってヤバイかもしれません。

さっきから身体に力が入りません。

リンカーコアやレリックジェネレーターの出力も安定せず、魔法もうまく組めません。

「クックック・・・いい声で鳴くじゃねぇか?」

畜生、女の子の苦しむ姿を見て悦ぶとは・・・コイツやっぱり変態です。

「でも、てめぇで遊ぶのももう飽きたわ・・・」

チンピラがデバイスをこちらに向けます。

ヤバイ、超ヤバイ!

動け!動け動け動け!!

こんな所で終わるわけには行かないんですよ!

まだ色々遣り残した事があるんですから!

「じゃあな、アバヨ」

私が必死に足掻くもチンピラのデバイスから魔力弾が発射される程度には現実は非情でした。

迫り来る弾がスローモーションで見えます。

あぁ、私ここで死ぬんですね・・・。

でもあれですね。もし父さんが既に死んでたら天国で会えますし、それはそれでいいかもしれませんね・・・。

そんな事を考えながら人生を諦めた私はゆっくりと瞼を閉じます。

どうせ直ぐ死ぬんです、それならあのチンピラのきったないツラ見ながら死ぬのも癪ですし、父さんの事とか考えながら逝くことにしましょう。

父さんとアニメ見たり、一緒にバリア・ジャケットのデザイン考えたり、決めポーズの練習したり、楽しかったなぁ・・・。

畜生、やっぱり死にたくないよ・・・。

「ぐぅ・・・!」

そう思った直後小さな衝撃を感じました。

弾を食らったんでしょうか?

それにしては軽い衝撃でしたね。

痛くもないし、それになんでしょう?何かが私の上に乗っかってるような・・・。

恐る恐る瞼を開くとまず飛び込んでくるのはやっぱりチンピラの姿。

でも何でしょう?何か驚いているような・・・。

そして次は私に圧し掛かっている物を確認し・・・。

「・・・えっ?」

言葉を失いました。

それは人の形をしていました。

緑がかったョートヘアにまん丸メガネの・・・。

「アテンザ・・・?」

それは先程私が拒絶した少女、マリエル・アテンザでした。

そう、彼女は私の前に飛び出し、飛来する魔力弾から私を護ってくれたのです。

体を見ると、本局の制服の上に纏った白衣にはジワリと赤いシミが広がっていきます。

アテンザの、赤い・・・。

「何だぁこのガキ・・・邪魔すんじゃ・・・」

チンピラがアテンザにデバイスを向け・・・。

「うああああぁぁぁぁぁっ!!」

私の身体は反射的に動いていました。

イェーガーを奴に向け、照準、発砲。

この一連の動作は今まで行ってきた中で最速のものでした。

私の魔力弾を喰らったチンピラは衝撃で吹き飛び、数ブロック先の廃ビルに頭から激突しました。

よく見ると手足がおかしな方向に曲がっていたり耳から出ちゃいけない色の血が出ていたりしますがそんな事どうでもいいです。

「マリエル!!」

今は彼女、アテンザ・・・マリエルの様態が最優先です。

「ぅ・・・あ、スカリエッティ、さん・・・ゴホッ」

「喋らないで、今人を呼んで来るから・・・!」

マリエルが咳き込むと空気と共に血が吐き出される。

畜生、肺がやられている。

「こちらスカリエッティ執務官。拘束した容疑者が抵抗、現在アテンザ技官が重傷。大至急ヘリの出動を要請する」

すぐさま地上本部の航空管制から返事が届く、しかし・・・。

『こちらクラナガンコントロール、現在急行できる機体が無い。救急車を手配したので待機されたし』

救急車?四六時中渋滞してるクラナガンの道路をチンタラ病院まで行けって言うんですか?

「アテンザ技官は肺をやられている、陸路じゃ間に合わない。大至急ヘリが必要なんだ!」

『理解している。しかし向える機がいない。待機されたし』

クソッタレ!

「ゴホッ・・・ハァ、ハァ・・・」

「マリエルっ!」

咳き込むたびに血をはき既に私も彼女も返り血で真っ赤です。

「ハァ、ハァ・・・フフッ」

マリエルが笑います。

何ですか?血が足りなくて頭がおかしくなったんですか?しゃれにならないから止めてくださいよ。

「やっと、名前で呼んでくれた・・・」

「っ!・・・バカ、どうして庇ったりなんか・・・」

私が貴重な実験サンプルだとしても身を挺してまで護る価値があるとは思えません。

「クライド提督からあなたの事を聞いて、私と同い年のあなたとなら・・・友達になれると思って・・・」

「っ・・・!!?」

言葉が出ませんでした。

出会った時からずっと彼女を疑っていました。

どれだけ優しい言葉をかけられても本心では私の事を実験動物としか見ていないと。

でもそんな事は無くて、彼女は純粋に私と友達になりたくて私に話しかけていた。

そんな彼女を、私は・・・!

「・・・・・・・!!」

マリエルを抱き上る。

「ぐっ・・・」

動かされた痛みから呻くマリエル。

「ゴメンなさい、でも少しだけガマンして」

何故でしょう、さっきまで乱れていた魔力が安定しています。

これが火事場の馬鹿力なのでしょうか・・・。

「こちらハルナ・スカリエッティ。これより私がアテンザ技官を直接搬送する!」

そう宣言するや否や私は夜の空へ飛び立ちます。

『スカリエッティ執務官!市街地での飛行は許可できない!直ちに着陸・・・』

「うるさい!始末書でも降格でも受けてやるから今はすっこんでろ!」

管制官の制止に自分でビックリするくらい汚い口調で叫びます。

『なっ・・・!?』

驚き沈黙する管制官、あれだけの暴言を吐いたんです。相応の言葉が返ってくると思っていましたがしかし・・・。

『・・・最寄の医療施設の位置を転送する、確認されたし』

「えっ?」

私が困惑しているとここから一番近くの病院までの最短ルートが送られてくる。

『付き合ってやるから後で一杯奢りやがれ。このガキンチョ』

「・・・!了解っ!!」

あぁ、多分今の私はすんごいひどい顔で泣いてるんでしょう。

さっきから涙と鼻水が止まらないんですもん。

そんなグシャグシャな顔でマリエルを抱えながら私はミッドの夜空を全速力で飛翔しました。

「全く、専属の医務官を派遣すると言うからまた本局の横槍かと思ったが・・・主犯はオマエか、クライド・・・」

病院の通路を二人の男が歩く。

一人はクライド、もう一人は口元に髭を蓄えた恰幅のいい男性局員、階級章は一等陸佐のものだ。

レジアス・ゲイズ、首都防衛隊に所属する若き指揮官だ。

陸と海、魔導士と非魔導士、立場こそ違えど世界を護るという同じ志を持つ二人はとある任務で出会って以来よく言葉を交わす間柄となっていた。

「今の彼女にはケアする者が必要だ。肉体的にも、精神的にもな・・・」

「確かに兵器にもメンテナンスは必要だが・・・」

レジアスはクライドがなぜそこまでハルナを気にかけているのか理解できなかった。

戦う為に培養槽から生まれた兵器、それがレジアスが思い浮かべる戦闘機人だ。

自我や意思にしても柔軟な戦術や局員との円滑な指揮伝達の為に備わっている機能に過ぎない。

しかしクライドは彼の言を聞き苦笑しながら答える。

「違うさ、彼女は兵器ではない・・・」

そう言ってある病室の前で足を止めると静に扉を開けた。

すると・・・。

「あ゛~終わんないよぉ~。ねぇ手伝ってよ『マリー』っ!」

室内からやけに気の抜けた声が聞こえてくる。

「駄目です。それは『ハルナちゃん』の始末書なんだから自分で書かなきゃ意味がないでしょう」

扉の隙間から除くとそこにはベッドに入ったマリエルとその横で涙目になりながら始末書を作成するハルナの姿があった。

「ぶぅ・・・病院まで運んだんだからちょっと位いいじゃん」

「駄~目!第一ちゃんと私の検診を受けていればこんな事にはならなかったんだから」

「なんだと~?やんのかコンチクショウ!」

「上等だよ、受けて立ってやる!」

お互いに『ぐぬぬ』と唸りながら顔を突き合わせる二人

しかし・・・。

「病室ではお静かに!!」

「「はい・・・」」

点滴を交換していた看護師の一括に二人は大人しく従う。

「・・・プッ」

「フフフッ」

それが可笑しかったのか二人は互いの顔をみて笑いあう。

その光景は初対面の二人を知る人物には信じられないほど晴れ晴れとした物だった。

「・・・どうだい?」

室内の様子を見て、クライドはレジアスに問う。

「『戦闘機人』とはいえ結局は人、と言うことか・・・」

ハルナに関する報告を受けた時、レジアスは脳内で戦闘機人を用いた新たな戦力構想を模索していた。

人員を海に取られ慢性的な人手不足に喘ぐ陸。

人造魔導師や戦闘機人はその問題を一気に打開する可能性を秘めているのだ。

技術的な問題はハルナと言う完成品がいるためクリアできた。今後は倫理面や法的な問題をどうにかしようと画策していたがそれも今回の一件で改めなければならないだろう。

「ヤレヤレ・・・お前のせいで練っていた計画がパーになったぞ」

そう言ってため息をつくレジアスだったが、その顔はつき物が落ちたかのように明るかった。

「彼女も、我々が護るべき子供達の一人。そういうことだな?」

「あぁ、あの子が大きくなった時に笑っていられる世界。それを作るのが私達の仕事だからな」

自分達の戦う意味を再確認した大人二人は笑いがら病室を後にした。

戦闘機人は兵器ではない、それにレジアスが気付いた事が今後の歴史に大きな影響を与えるのだがそれは誰も知らない。

 

 

 

「それじゃあ私からも彼女に選別を送るか・・・」

病院を出たところでレジアスはポツリと呟いた。

「ん?何かあるのか?」

「あの歳で一人暮らしは辛いだろう。ちょうど人造魔導関連の事件を追ってる捜査官がいてな、そいつらに預けようと思う」

「確かに、家族は必要だな。可能ならうちで引き取ろうと思ったんだが・・・」

クライドがそう言ったところでレジアスは深い、とても深いため息を零した。

「年がら年中家を空けているお前になんぞ任せられるか。たまには息子の所に顔を出せ」

友人からの鋭い指摘にクライドの顔が歪む。

「反論できないな・・・。それで?その捜査官は何て言うんだ?」

「あぁ、ゼストの部下で名は・・・クイント・ナカジマといったな」

二人の大人たちがハルナの為に動き出していた頃、別の場所でも暗躍する大人たちがいた。

「ゼェ、ゼェ・・・とりあえず暫定でジェイルが父、ワシ等が祖父と言う事で異論はないな?」

「ぐふぅ・・・まぁ、いいだろう」

「ワシも異論はない、あだだ・・・」

「あんたらが私の父ポジなのが納得いかないがいいだろう・・・」

第38回ハルナの親権争奪戦という大乱闘の末、自分たちの要望が落ち着くところに落ち着いた所で最高評議会議長がスカリエッティに問う。

「ところでジェイル?研究の方はどうなっておる?」

「ああ、問題ない。すでに№Ⅰから№Ⅵまでと№Ⅹが起動。残りも順調だ、研究の場を提供してくれたことには感謝しているよ」

本来ならばすぐにでもハルナの所に帰りたいスカリエッティであったが、彼女の妹達・・・ナンバーズを生み出すために現在は最高評議会参加の研究施設に身を寄せていた。

「ちょうど研究に行き詰っていたセクションがあったからな、連中もお前の技術を学べて喜んでおるよ」

「タイプ・ゼロ計画だったか、当初はお前さんが反乱を起こした時の対抗策として対ナンバーズ用の戦闘機人を開発してた部署だったんだがな・・・」

スカリエッティにも極秘で進められていたタイプゼロ計画、彼の技術を元にハルナ対策として進められていたが研究は遅滞、そこにスカリエッティ本人が放り込まれた結果研究はすさまじい勢いで進展、あっという間に計画されていた戦闘機人、タイプゼロ・ファーストとセカンドが完成してしまった。

「そのタイプゼロ・・・ギンガちゃんだったかの?お前さんやナンバーズの子たちとは仲良くやっておるのか?」

「勿論だとも、最初こそ別々の計画だったが彼女たちも私の大切な娘に他ならない。ほかの娘たちにとっても大切な姉妹の一員だ」

数か月前に誕生したタイプゼロ・ファースト・・・ギンガは現在ナンバーズの姉妹たちと和気藹々と暮らしている。

その光景に癒されながらスカリエッティと研究員たちはもう一人のタイプゼロ・・・スバルと残りのナンバーズの為に日夜研究に明け暮れているのが現状だ。

「いや~、ハルナも妹を欲しがっていたが、まさか14人も妹が増えると知ったら驚くだろうな~」

「違いない。サプライズは成功間違いなしじゃな!」

「わしらの祖父としての株も急上昇じゃ!」

「これでハルナちゃんの祖父の座は盤石じゃな!」

「「「「はっはっはっは・・・!!」」」」

愛する娘(孫娘)の為に彼らは突き進む、親心と祖父心を変な方向に暴走させている事に気づくことなく・・・。



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第9話「再開、父よ・・・パクリだって?リスペクトと言ってください」

ようやくお姉ちゃんがお姉ちゃんになりますw


「よし、最後にもう一度確認するぞ」

そう言って作戦会議を始めるのはダンディなおじさん・・・首都防衛隊きってのストライカー、ゼスト・グランガイツ三佐です。

「A班は俺と正面、B班はクイントが指揮して裏手から回れ。スカリエッティ・・・」

おや、私ですか?

「はい?」

「お前はクイントと共にB班だ」

うん、予想はしてましたがクイントさんといっしょですか・・・。

「いい、ハルナちゃん?私から離れちゃダメよ?」

心配してくれるのは嬉しいんですけどねクイントさん、頭撫でるのは勘弁してください・・・。

 

機人長女リリカルハルナ

第9話「再会、父よ・・・パクリだって?リスペクトと言ってください」

 

皆さんお久しぶり、変わらず元気にやってるハルナちゃんです。

マリーとの喧嘩&仲直りのあとも色々ありました。

これまでその狂犬っぷりから単独行動だった私でしたがそれが落ち着いた為か漸く一つの部隊に腰を据えることになりました。

首都防衛隊特別捜査班、通称ゼスト隊。

クラナガンを護っている首都防衛隊、そこのお偉いさんのレジアス・ゲイズ准将直属の部隊です。

通常の部隊では複雑な命令系統のせいで即応性に欠けるとの事で准将がゼストのおっちゃんと立ち上げた少数精鋭の即応部隊です。

正規の部隊が到着するまでの間被害を最小限に抑える事が目的でその為結構横紙破りな行動も許可されています。

次にですが、なんと私に家族が出来ました。

あ、言っときますけど私がお腹を痛めて赤ちゃんを産んだわけではありません。

何でもこの年齢で一人暮らしは法律的にマズイらしく、その為保護責任者がつく事になったのです。

しかも驚く事に保護者となったのはクイントさんとそのご亭主、ゲンヤ・ナカジマさん。

そう、3期の主人公スバル・ナカジマのご両親ではありませんか!

何と言うことでしょう、以前3話で言ったとおりの事態になってしまいました。

しかもスバルとギンガに先駆けて・・・。

「と言うことは私は二人のお姉ちゃんと言う事でOK?」

「なにいってるの?」

おっと、口に出してしまいましたか。

クイントさんが怪訝な顔でこっちを見ています。

「いえ、クイントさんにはがんばってもらわないとな~と、ね・・・」

なんたってこれから家族が増えるわけですからね、いろいろ大変だとは思いますが頑張ってください。

「?ハルナちゃんって偶に訳分かんない事いうわね。それよりも任務中なんだから気を抜かないでね」

「ラジャー!」

今回の任務は違法研究をやっている施設の手入れです。

何でも研究員の中から密告があったとの事で突然ゼスト隊にお鉢が回ってきました。

恐らくレジアスのおっちゃんに手柄を取らせたい最高評議会のご老体達が手を回したんでしょう。

そうでなきゃ首都防衛隊所属のゼスト隊が同じミッドチルダとは言えこんなド辺境に派遣されるはずがありません。

「そう言えばハルナちゃん、この間の話考えてくれた?」

この間?

・・・何の話でしたっけ?

「はぁ~、その顔は覚えてない様ね・・・養子縁組の話よ」

おぉ、そういえば先週言ってましたね。

「そろそろ私達との生活も慣れてきたみたいだし本当の家族になってみないかって言ったじゃない」

そうでしたそうでした。

私は今クイントさんとゲンヤさんの家で暮らしていますがあくまで保護責任者と被保護者といった間柄です。

そのせいかクイントさん達は私との間に見えない壁みたいな物を感じたんでしょう。

だから私に娘にならないかって言ってきてくれたんです。

非常にありがたいお誘いではありますが・・・。

「・・・ゴメンなさい」

でも、私はそれを受ける事が出来ませんでした。

「・・・やっぱり私が家族じゃ駄目なの?」

聞いてくるクイントさんの表情はとても沈痛な物でした。

「いえっ!そうじゃないんです!」

そんな事はないと私は全力で否定します。

「養子にならないかって聞かれた時凄く嬉しかったです」

正直に言ってメチャクチャ感動しました。

私みたいなのを家族として迎えてくれると聞いた時は涙をガマンするので精一杯でしたもん。

「それじゃあどうして・・・」

「私は、まだ父さんの事を諦めていませんから・・・」

そう、父さん・・・ジェイル・スカリエッティの消息は未だ掴めていません。

それどころか生死すら判らないままです。

でも、だからこそ私が諦めるわけには行かないんです。

この身とハルナ・スカリエッティと言う名前、そして相棒のイェーガーと今までの思い出・・・。

私が父さんから貰った物で残っているのはこれだけなんですから。

父さんを見つけてこれからもっと沢山いろんな物を残したいんです。

「・・・だからクイントさん、ごめんなさい。せめて父さんの生死が確認できるまで、待ってください・・・」

私がそういうとクイントさんは深々と、なんて言うかえらくワザとらしいため息をつきました。

「はぁ~、だめだったかぁ」

そういうクイントさんでしたが顔は笑っていました。

そんな彼女の横で相棒のメガーヌさんがクスクスと笑っています。

「フラれちゃったわね」

「うっさい!しっかし・・・そういうことなら仕方ない、お父さんが見つかるまで待つことにしましょう」

あぁもう、何でこの人はこんなに母性溢れる人なのでしょうか・・・。

一度断ったのにそれでも待ってくれるというんです。

ちくせう、また涙が出そうじゃないですか。

「・・・ハイッ」

そのせいで私はそう答えるので精一杯でした。

「しっかし・・・ハルナちゃんのお父さん、スカリエッティ博士だっけ?こんないい子放って何処にいるのやら・・・」

全くです、私みたいな可愛くて賢くてプリチー(死語)な魔法少女を放っておくとは・・・。

「いい、ハルナちゃん?お父さんを見つけたら一発殴っておきなさい、話はそれからよ」

「ラジャーっ!」

そんな感じで私とクイントさんが話し、それをメガーヌさんが微笑ましく眺めていると・・・。

『ハンターリーダー(ゼスト)よりオールハンター(全隊員)。状況開始、突入せよ!』

ゼスト隊長からの突入命令に私達は早速行動を開始しました。

「っしゃ!行くわよ皆っ!!」

「ええ、何時でも!」

「ガッテン承知!」

クイントさんの声にメガーヌさんと私が答えます。

それを確認したクイントさんは眼前にある研究所の壁に向かって相棒であるデバイス、リボルバーナックルを構えます。

「どっせーい!!」

掛け声と共にクイントさんが壁をぶち破り私達は施設内に侵入します。

「全員動くな!時空管理局だ!神妙にしろーっ!!」

イェーガを構えながら投降を呼びかかけます。

当然素直に従う奴はいません。

近くにいた研究員と思しき人たちは一目散に逃走を図ります。

「逃げるなー!」

そんな彼らの背中目がけて発砲。

え?非殺傷だからって容赦無くねって?

大丈夫!今回は秘密兵器を用意しました。

「うわっ!う、動けない!?」

「バインドだと!?」

逃走を図った研究員達は私の弾丸を喰らった途端忽ちバインドで簀巻きにされてしまいます。

どうです!これが今回の秘密兵器、リストバレットです。

地球の警察、主に機動隊等で使われているネットランチャーを参考にして作ってみました

弾丸にバインドの術式をこめて発射、命中した対象をバインドで拘束する魔力弾です。

コイツなら弾丸の速度で飛んでいくから普通のバインドみたいに態々相手に接触したり罠みたいに予想進路に置く必要もありません。遠くにいる相手も簡単に捕まえられます。

結構便利なのにどうして誰も考えなかったんでしょう?

「クソッ!捕まってたまるかよ!」

施設の警備員でしょうか、研究員と一緒にいた魔導師たちがデバイスを構えます。

でも慌てる事はありません。なぜなら・・・。

「させない!行って、インゼクト!」

私には頼れる仲間達がいるからです。

メガーヌさんが叫ぶと彼女の周囲に画鋲に羽根の生えたような羽虫が召還され一目散に敵魔導師たちに殺到します。

「なっ!?」

「召喚術士かっ!?」

魔導師たちが一瞬たじろぎますが、それが彼らの敗因となりました。

「何だ?魔法が使えない!?」

「デバイスが機能停止っ!?さっきの虫か!」

メガーヌさんが召還した小型の召還虫インゼクト。

偵察等のほかにも機械の操作に干渉したりなんかも出来る優れものです。

ちなみに操作できるのは無機物だけで私の体の一部になっている機械は操れないとのことです。いや~、よかったよかった。

忘年会の一発芸とかで操られたりしたら笑えませんからね。

こうしてデバイスが使用不能になった魔導師たちは次々に私とクイントさんに取り押さえられていきます。デバイスに頼りすぎるのも考え物ですね。

「制圧完了。ここは後続の陸士隊に任せて先に進みましょう」

クイントさんを先頭に私達は研究所の中を進んでいきます。

途中先程のように研究員や警備の魔導師に遭遇しましたが難なく制圧、更に奥へ進みます。

結構地下深くまで降りてきたところでまたもや研究員に遭遇。

しかしこの二人、多少は機転が利くようで二手に分かれて逃走を開始します。

「ハルナちゃん!そっちお願い!」

そう言ってクイントさん達はもう片方を追いかけます。

「了解!待ちやがれー!!」

私も即座に追跡を開始しました。

とは言えもやしっ子の科学者と訓練を受けた戦闘機人、速攻で追いついて捕まえました。

「さぁ!あなたには黙秘権と弁護士を呼ぶ権利とカツ丼を注文する権利があるから大人しくしろー!」

「いや、訳わからないんだけど・・・」

バインドでグルグル巻きにされながらもツッコミを入れてくる研究員、結構大物ですねこの人。

ちなみに取調室で出されるカツ丼、刑事ドラマでは警察側が奢ってますが実際は容疑者の自腹とのこと。

しかも最近では自白に向けた利益誘導になるという理由から食べさせてくれないらしいです。

捕まえた研究員を立たせて連行しようとしたその時、少し先から物音が聞こえました。

「ん?」

音のした方を見るとそこには一枚の扉。

物音を立てずに扉の前まで行き、聞き耳を立ててみます。

やはり間違いありません。中からガサゴソと慌しい物音が聞こえます。

これはアレです。大慌てで荷造りしている音です。

昔父さんと研究所から逃げ出す準備をしている時にこんな感じの音を立てていました。

更に中から小っちゃい子供の泣き声も聞こえてくるじゃありませんか!

もしかしてここで行われていた違法研究と言うのは人造魔導師関連!?

聞こえてくる泣き声がその研究素体である子供の声だとしたら辻褄が合います。

もしそうなら一刻の猶予もありません。

こういう研究をしている手合いはガサ入れが入ると証拠を消しに掛かります。

その証拠の中には実験体にされている被験者の処分・・・殺害も含まれます。

(このままだと中の子達が危ない!!)

そう結論付けた私は早速ドアを蹴破り突入します。

「全員うご・・・」

同時に投降を呼びかけようとして目の前の光景を見て言葉を失いました。

「ドクター、こちらは終わりました!」

「データの消去も完了したわ、これで追跡のほうは大丈夫なはず!」

「こっちもです、早く脱出しましょう!」

カバンに荷物を詰め込んでいる紫がかった髪の少女二人。

片方はウェーブの掛かった長髪、もう片方はベリーショートです。

その隣で端末を操作している金髪ロングの少女。

「やーだー!この子もつれてくのー!!」

「ダメだぞスバル!もうにもつがイッパイなんだ!だからだからなくんじゃない!なくんじゃ・・・うえぇぇん!」

「もう、チンクまで泣き出してどうするの!スバルも泣き止んで?ね?」

「ちょっと!もう少し静かにしてよ!セインちゃんとディエチちゃんが起きちゃうじゃない!」

ぬいぐるみ片手に駄々をこねる蒼髪ショートの女の子とそれを諌めようとしてつられて泣き出す銀髪サラサラロングの女の子。

それをあやすスバルと呼ばれた子に似たロングヘアの女の子とスヤスヤと眠っている子供二人を抱きかかえた茶髪のメガネっ子。

うん、これはまだいいです。

研究員の助手と被験体の女の子ってことで説明がつきます。

室内のテラカオスな状態も脱走前の喧騒ってことで許容してあげましょう。

問題はその喧騒の中心にいる人物・・・。

「判ったよウーノ。もうちょっと待っててくれ。ああ、スバルもチンクも泣かないでくれ。すまないクァットロ、もうしばらくセインとディエチを見ててくれ・・・」

スーツの上から白衣を羽織った・・・。

「とう、さん・・・?」

ハルナの呟きに気付き白衣の研究員が振り向く。

「ハルナ、なのか・・・っ?」

それにつられてほかの子達も私に存在に気付いたようですが今の私には周りの事見えていませんでした。

あぁ、間違いありません。

気づいた時にはその人物目がけて走りだしていました。。

「なっ!?管理局か!ドクター達には手を、へぶっ!!?」

「「トーレ!?」」

途中で横から飛び出してきた誰かを弾き飛ばしたような気がしましたが今はそれどころじゃありません。

なんたって目の前にいるのは私がずっと探していた・・・。

「父さぁんッ!!」

 

Sideクイント

薄暗い通路を私は全速力で疾駆する。

ハルナちゃんとの連絡が取れないと知った直後、私はあの子の向かった方向に駆け出していた。

「大丈夫、よね・・・」

ハルナ・スカリエッティ。

私の後輩兼部下で、そして掛け替えのない娘。

血は繋がってないし書類上も保護責任者と披保護者という間柄だが彼女は間違いなく私の家族なのだ。

戦闘機人という最新の戦闘用サイボーグの彼女がそうそう遅れをとる事は無いだろう。

だが物事には万が一という物がある。

怪我もするし最悪命を落とすかもしれない。

実際管理局に保護された直後に巻き込まれたロストロギアの暴走で生死の境を彷徨ったと聞いている。

幸い一命は取り留めたがそんな奇跡が二度も起こるほど世の中都合よくできてない。

「お願い、どうか無事で・・・っ!!」

そこで私は通路に倒れている人影を見つけた。

最初はハルナちゃんかと思ったどうやらここの研究員のようだ。

バインドで拘束されたその人物は芋虫のように張って逃走を試みようとしているようだ。

「動かないで!アンタには黙秘権と弁護士を呼ぶ権利とカツ丼を注文する権利があるわ!」

「・・・それ流行ってるの?」

よく分からない質問をして来る研究員を再度組み伏せていると通路の先から声が聞こえてきた。

「・・・・・・!!・・・・・・っ!」

内容は聞き取れないが叫び声の様だ。

「まさか・・・!?」

あそこでハルナちゃんが誰かと戦っており重傷を負ったのだとしたら・・・。

すぐさま立ち上がり、扉を蹴破る。

「ハルナちゃんっ!!」

突入した室内で私が見たのは・・・!」

「うわぁぁぁぁんっ!!今までドコで何やってたのさー!!父さんのバカー!!!」

「・・・うん、ゴメンね、ハルナ・・・。だからその、そろそろ離れて、父さん苦しいんだけど・・・」

「トーレ!?しっかりして!傷は浅いわっ!!」

「ぐっ・・・すまん、ドゥーエ・・・私の変わりにドクターを、妹達を・・・頼む。ガク・・・」

涙と鼻水で顔をグシャグシャにしたハルナちゃんとハルナちゃんに抱きつかれそのまま絞め殺されかけている白衣の男。

それと何故か壁にあいた謎の穴とその前でグッタリしている短髪の女性と彼女を介抱している女性二人。

それらを呆然と見ている少女達数人・・・。

「・・・え?何これ、どういう状況?」

私はそれしか言えなかった。

結局メガーヌが隊長たちを連れてやってくるまでこのカオスな空間は続くのだった。

SideOut

「あ~、そろそろ落ち着いたかな、ハルナ?」

「ヒック、グスッ・・・うん。ところであの子等はどちら様で?」

「ん?あぁ、あれね。君の妹」

「・・・え?マヂで?」

「マヂで」

ハルナが父と再会し、妹達との邂逅を果たしていたそのころ・・・。

「・・・ところで私は何時まで通路に放置されていればいいの?」

廊下では簀巻きにされた研究員が一人、彼の呟きを聞くものは一人もいなかった。



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第10話「徹夜組と転売ヤーとダミーサークルと誘拐犯に血の粛清を!あ、でも対応はあくまでソフトにね♪」

書き溜めていた分は今回で最後になるのでこれからは更新が遅くなりますがごご了承ください。
今回、とらハの設定を持ってきましたが作者はやったことが無いにわかなので大分設定が穴だらけですが温い目で見てやってください。

あとよそ様の作品のネタを勝手に出しちゃいましたが拙いようでしたら言ってください、即刻修正します。


待ちに待った刻(とき)がきたのだ。

多くの英霊が無駄死にでなかったことの証のために・・・!

「そう、有明よ!私は帰って来たぁ!!」

「いや、ハルナ・・・初参加だからね・・・?」

いいんです!多分前世で来た気がするから!

 

機人長女リリカルハルナ

第10話「徹夜組と転売ヤーとダミーサークルと誘拐犯に血の粛清を!あ、でも対応はあくまでソフトにね♪」

 

父さんと無事に再会してからまたもや時間が流れて早数年・・・。

本当にいろんなことがありました。

妹たちの親権を巡って父さん&お爺ちゃんズに加えてクイントさんまで参加した第47回親権争奪戦が開催されたり。

激闘の果てに私とウーノからクアットロまでの妹がそのまま父さんの娘に、チンクから下の妹達(セッテはトーレにくっ付いてスカ家残留)はクイントさんに引き取られる事になり、ナカジマ家の隣に我等スカ家が引っ越して毎日がドッタンバッタン大騒ぎになったり。

「陸ばっかりズルイ!うちにも美少女を!」という海側の血涙交じりの嘆願を受けたお爺ちゃんズに言われて本局の遺失物管理部機動2課に異動になりそこの第2特別捜査隊に所属する個性豊かな仲間達と難事件、怪事件を力任せに解決したり・・・。

指名手配中の次元犯罪者集団が内戦中の管理外世界に傭兵名乗って梃入れしてることが分かりISAF(国際治安支援部隊)として現地に派遣、何やら某空戦ゲーに出てくるような場所で『円卓の鬼神』なんて呼ばれてるクール系美幼女エースと共同戦線張ったりと・・・。

とにかくいろんなことがありました。

え?色々端折り過ぎだ?美幼女の件を詳しく?

しゃらっぷ!いい加減本編突入しないと読者さん達も飽きてきちゃうでしょうが!

今回の話が終わったらいよいよアニメ一期に突入するって作者も言ってるんですから!

「おーいハルナ?流石にそれはメタすぎないかい?」

「いいの、今回は半分くらいギャグ回だから」

「あ、そう・・・」

いや、しっかしやっぱり夏コミは凄い人ですね。

ここはやっぱりあのセリフを・・・・。

「ハッハッハ、見ろ!人がゴミのようだ!」

「なっ!?」

突然父さんが私が言おうとしたセリフを、某アニメの名台詞を叫びます。

私が驚愕しているのを見た父さんはあろう事がドヤ顔で私のことを見てるじゃないですか!

「ぐぬぬぬ・・・」

何たる暴虐!父の悪辣なる行いに平坦な胸の美少女ハルナは怒りに顔を歪ませた。

って、だれだ今私の胸が平坦とかいった奴!後で体育館裏に来なさい。

とにかく、人のセリフを勝手に取る父さんには厳しい制裁を与えなければ!

そして私は未だドヤ顔を続ける父さんに一言、その呪文を唱えた。

「バルス!」

すると父さんは両手で顔を覆いながら悶え始めました。

「目がぁ!目があぁぁっ!!」

「フッ、悪は去った・・・」

そんなスカ家のいつもの光景を周りの参加者さん達は奇異な目で見ています。

「・・・・・」(チラッ)

「・・・・・・」(チラッ)

うん、違いますね。みんな私の事見ています。

いや、分かってますよ。私が外見年齢10歳前後な事ぐらい。

でも奇異以上の目で見られることはないみたいです。

「何なんだあの子・・・?」

「ちっちゃいのに纏う空気がプロのそれだぞ・・・!?」

そう、完全武装のうえ戦場(いくさば)に立つ覚悟でココに来ているためか、「戦場に子供が来るんじゃない」的な目で見られることはないんですよ。

まぁ、私なんかよりもずっと格上の人が隣にいるから其れに気圧されてるてのもあるのでしょうが・・・。

「・・・・・・」

そう、私達の隣に座るアルプスに住んでそうな感じの口の周りに立派なお髭を蓄えた、しかし体格はかなりガッチリしたおじいさん。

かなりお年を召しているようですがその雰囲気は古強者とか伝説の老兵とか言われそうなほど老いを感じさせない力強さを感じます。

「おい、見ろ。翁だ」

「それって、第一回から全てのコミケに参加したという伝説の!?」

・・・第一回のコミケって確か70年代でしたよね?

てことは少なく見積もってもコミケ暦30年!?

古強者とか言うレベルじゃないですよ、賢者ですよ!大賢者!!

私なんかとは年季が違いすぎます!

と、そこで件の翁が何やらポケットに手をいれます。

取り出したのは一枚のカード。

何かと思い見てみるとちょっと前に流行ったアニメのヒロインでした。

って・・・!?

「・・・・・・・・・・」

泣いてますよ、この人。

そらもうダバダバと目じりから止め処なく涙がながれてますよ。

「有明か・・・何もかも、みな懐かしい・・・」

「っ!!」

私の、否、私達の心は雷に打たれたような衝撃を受けました。

同時に理解したのです、この人は文字通り最後の命を燃やしてここに来たのだと。

たとえこの有明が自分の死に場所になっても構わない、そんな覚悟で・・・。

暫くカードを見ていた翁でしたがやがて満足してカードをポケットに戻そうと・・・。

・・・ハラリ。

「なっ・・・!?」

翁の手が力なく垂れ下がり、手に持っていたカードがゆっくりと地面に落下します。

「・・・・・・・・・!!」

私は翁に無言で敬礼します。

「・・・・・・!」

それにつられるかのように父さんや周りの人たちも瞳を閉じた翁に敬礼します。

そう、今一人の戦士が眠りについたのです。

あ、ちなみに翁はスタッフの人が列整理を開始したらちゃんと起きました。

私の感動を返せ。

 

「いやー大漁だねぇ・・・」

珍しくホッコリした表情で父さんが言います。

それに対して私の心は非常にダウナーです。

テンションが完全にきゅーそくせんこー状態です、圧壊深度まで一直線です。

「まぁ、仕方ないじゃないか。中身があれでも流石にその外見の子にR-18の本は売ってはくれないよ」

そう、私が行っても18禁の薄い本を売ってくれないんですよ!

サークル参加者さん達のモラルが高い事を喜ぶべきか目的の品が買えなかったことを嘆くべきか複雑な心境です。

「さて、私はこのまま宿に戻るがハルナはどうするんだい?」

買った戦利品は現地で宅配業者にお願いして泊まってるホテルまで送ってもらいました。

なので私達は完全にフリーです。

「んー、ちょっと行ってみたい所があるからそっちに行くよ」

「分った。遅くならないうちに帰ってくるんだよ?」

「はーい」

そこで私と父さんは解散し、父さんは宿泊先のホテルへ、私はバス停からバスに飛び乗りました。

それからバスに揺られて約2~30分程で下りる予定のバス停に近づいてきました。

『次は海鳴大学病院前~、外科、内科、小児科、整形外科・・・」

流れてきたアナウンスを聞いて私は近くの降りるボタンを押します。

バスが泊まってから席を立ち、料金を払ってから目的の地に下り立ちました。

「ここが、海鳴市・・・」

ようやくたどり着く事が出来ました。

そう、ここに、ここにあの・・・。

「あの伝説のパティシエ、高町桃香さんがやってるケーキ屋さんがあるんだ・・・!」

そう、この間関東地方の穴場スイーツ店特集っていう記事を読んでいるときにみつけたお店がこの町にあるんです!

え?違う?そうじゃない?

何やら読者さん達が突っ込んできますがとにかく今はケーキです!

 

と、言いたいところですが・・・。

「・・・うん、迷った」

迷子になっちゃいましたw

いや、マジどーしよ・・・。

「・・・でね、・・・がさ」

「もう、・・・は・・・ちゃんが・・・」

おや?

何やら話し声が聞こえるのでそちらを見ると二人の女の子がこちらに歩いてきます。

片方は金髪碧眼の気の強そうな子。

その相方は紫がかった黒髪の子、こちらは逆に気弱そうな子です。

まだ遠いので何を話しているのかは分りませんが片方の子が外国人ッぽいので日本語ではないでしょう。

と言うわけでそれっぽい外国語で話しかけてみる事にしましょう。

え?話せるのかって?

チッチッチ・・・、戦闘機人の脳みそを舐めてもらっては困ります。

記憶力はバッチリです。

それに執務官という仕事柄いろんな世界に行くので言語の習得は必須スキルですから。

では早速・・・。

『グーテンターク、フロイライン。失礼ですが道を教えてもらえませんか?(ドイツ語です)』

よし、発音もイントネーションもバッチリ。これなら通じるはずです。

「・・・え?」

うん、どうやらドイツ語じゃ駄目みたいです、それなら別の国の言葉で・・・。

『ハラショー、失礼した同志美幼女。これなら通じるだろうか?(ロシア語です)』

「え?ええっ?」

むぅ、ロシア語も駄目ですか。

『ならフランス語ならどうかなマドモアゼル?』

「な、なな・・・?」

駄目か。

『イタリア語は分るかなセニョリータ?』

「ちょっ・・・!?」

これも駄目。

その後もオランダ語、スペイン語、ポーランド語、フィンランド語、広東語、北京語、スワヒリ語、インドのヒンディー語、中東で使われているパシュトー語やダリー語も試して見ましたが全部駄目でした。

「ムキーっ!」

「ア、アリサちゃん、落ち着いて・・・」

なんか向こうも言葉が通じなくて怒ってるみたいだし。

「ああもう、じゃあ何処の言葉なら通じるのさ?」

「ちょおっとまてい!」

私が日本語でぼやくと金髪の女の子が叫びながら強烈なチョップをくらわせました。

 

「日本語喋れるなら最初から喋りなさいよ!」

「そうは言うけどそんな見た目じゃ日本語話せるなんて思わないじゃん」

「アンタが言うなアンタが!」

「ふ、二人とも落ち着いて・・・」

金髪の美少女、アリサに盛大につっこまれた後、私達はお互いに自己紹介を交わてから二人の案内で翠屋へ向かいました。

私にチョップをお見舞いした金髪の子の名前はアリサ・バニングス。

大企業バニングスグループの社長令嬢だとか。

しかしこの子の声、どっから聞いても「くぎゅう」です。

今度メロンパンを奢ってあげましょう。

アリサと一緒にいた気弱そうな子は月村すずか。

この辺の名士月村家のお嬢様とのこと。

「で、翠屋に行きたいんだっけ?」

「うん」

「あそこのお菓子は皆美味しいから楽しみにしててね、ハルナちゃん」

ちなみに私も二人に自己紹介しました。

名前は偽名を使わずハルナ・スカリエッティのまま。

医者の父親と一緒に日本に遊びに来た観光客と名乗ってます。

うん、嘘は言ってない。

そんな感じにガールズトークしながら歩いているとお洒落な喫茶店が見えてきました。

「ここが翠屋よ、ちょっとまってて」

そう言ってアリサが店に入っていきます。

「こんにちは、桃子さん」

「あら、いらっしゃいアリサちゃん」

彼女を出迎えたのはすんげー美人のお姉さんでした。

見た感じおっとりしたお姉さんなんですけれども包容力とか凄そうで何処となくクイントさんに通じるものがあります。

「すずかちゃんもいらっしゃい。あら、そっちの子は?」

そこで店のお姉さんが外にいた私とすずかに気づきました。

「さっき知り合ったの。ハルナって言って観光できたんですって」

アリサが紹介するなか私も挨拶します。

「こんにちは、ハルナ・スカリエッティです」

「あらあら、可愛らしいお客さんね。いらっしゃい、当店のパティシエール、高町桃子です」

そう言って女神か聖母も斯くやといった笑顔で応対するお姉さん、この人があの伝説のパティシエ、高町桃子さんだったとは・・・。

「うん、アレですね。天は二物を与えたもうた」

「え?」

「いえ、気にしないでください。独り言です」

そんなやり取りの後、私達は桃子さんにテラス席に案内されます。

「二人ともごめんなさいね、今なのはは出かけているの」

そう言ってアリサたちに謝罪する桃子さん。

なのはと言うのは桃子さんの娘さんでアリサたちの親友とのこと。

何でもお菓子の材料が切れて急遽お使いをお願いしたのだとか。

まさか桃子さんが子持ちだったとは、しかも聞いた話だと一番上の子は大学生とか、まじパネェ。

クイントさんといい、桃子さんといい、この世界のお母さんたち見た目若々しすぎでしょ、アニメかよ!?

しかしなのは・・・ドコかで聞いた名前ですね。

ドコでしょう?昔読んだ漫画かな?

「そうなんですか」

「入れ違いになっちゃったわね」

桃子さんの娘さんに会えなかったのは残念ですがそれは次回着たときのお楽しみと言う事で・・・。

「いまはケーキを堪能します。注文いいですか?」

「はい、どうぞ」

私の質問に桃子さんはすッごくいい笑顔で答えてくれました。

しかし一つ気になることが・・・。

「・・・・・・・・」(チラッ)

カウンターにいる店員さんが私の事えらい見てくるんですよ、しかも殺気増し増しで。

 

Side 恭也

何なんだあの子は・・・!?。

カウンターでレジを打ちながら俺、高町恭也は戦慄していた。

先程店に入ってきた三人の客。

うち二人は自分もよく知っている人物だ。

妹の親友のアリサちゃんと同じく妹の親友にして俺の恋人である月村忍の妹にあたるすずかちゃん。

問題は三人目の少女だった。

ハルナ・スカリエッティ。

年齢は背格好からして二人と同じくらい、癖毛なのか外に跳ねた銀髪を肩のあたりで切りそろえた外国人の少女。

観光で海鳴を訪れ、先程アリサちゃんたちと意気投合したらしい。

それだけならば俺も気にはしなかった。

まず身のこなしからして素人ではない。

体の重心が全くブレる事が無い。

更にリラックスしているようで常に周囲に気を配っている。

席に案内され椅子に座る際も深く腰掛けず、何かあればすぐに立ち上がれる姿勢だ。

まぁ、それだけならば何かしら武道を修めた少女と言う事で無理やり納得もできる。

問題は彼女の匂いだ。

シャンプーの香りに混じってうっすらと感じる『硝煙』の匂いと『血』の匂い。

そんな物騒な匂いを纏った明らかに訓練を受けた少女。

年齢からして軍人や警官と言うことはありえない。

だとすれば殺し屋の類か!?

アリサちゃんは世界を股にかける実業家の娘、すずかちゃんも名家の娘だ。

いや、すずかちゃんにはもう一つ隠された秘密がある。

それが目的で二人に接近したという事か・・・

俺は注意深く少女を観察する。

その姿は友達と談笑する普通の女の子にしか見えない。

いや、まて・・・。

この子、俺の視線に気づいている!?

先程から何度かこちらをチラチラと見ている。

もしかしたら自分の素性も知っているかもしれない。

いや、早計か?勘が鋭いだけかもしれない。

そう思い試しに視線に殺気を乗せてみる。

普通に生活している一般人なら気づかないだろう。

しかし・・・。

ピクッ。

彼女は反応した。

再びこちらに視線を向ける。

その動作は自然な感じで何もおかしいことは無い。

だが俺には分った、彼女が自分を警戒している事が。

少女が椅子から軽く腰を浮かせる。

何か有ればすぐさまこちらに飛びかかれるように。

・・・来るのか?

カウンターの裏に隠してあった小太刀に手を伸ばす。

食事時を過ぎ客の数が少ないとは言え、一般人がいる中で襲撃するとは思いたくない。

少女が動く。

こちらに背を向けているためよく分からないが懐に手を入れたようだ。

まるで隠し持っていた武器を取り出すように・・・。

「・・・・・・っ!」

来る、そう思い彼女を拘束すべく飛び掛ろうと脚に力を入れたその時・・・。

「お待たせしましたー。チーズケーキにモンブラン、ミルクレープでーす」

母桃子の登場に張り詰めていた空気は霧散する。

「おお・・・これが、これが桃子さんが作ったケーキ・・・」

向こうも争う気が失せたのか、こちらへの警戒を止めて母さんが運んできたケーキに目を輝かせている。

店内で争う気は無い、そういうことだろう。

とりあえず今はまだ大丈夫か・・・。

店を出た後の二人が心配なので忍に連絡を入れておこう。

そう思い俺は接客を再開した。

勿論警戒は怠らないで・・・。

Side out

 

「あぁ・・・いと、しあわせなり・・・」

ケーキを食べた感想はもうこの一言に限りますね。

「ハルナ、顔がトロけてるわよ・・・」

「クスっ、ここのケーキおいしいもんね」

呆れ顔のアリサと何故か子供を見るお母さんのような視線を向けるすずか。

仕方ないじゃないですか、このケーキが美味し過ぎるんですから。

しつこくない程度の、でもしっかりと甘さを主張するクリーム。

それを挟みながら何層も重なったしっとりとした食感のクレープ生地。

それを食べた途端私の口の中が幸せに包まれました。

しかし・・・あの店員さんは何なんでしょうね?

先程カウンターでレジ打ちしているお兄さんが殺気をガンガン飛ばしてくるので思わず首から提げたイェーガーを握り締めてしまいました。

あわや店内で戦闘かと言う空気でしたが桃子さんの登場と同時に殺気は霧散したの感じました。

恐らく堅気の人は巻き込みたくないのでしょう。

もしかしたらアリサかすずかの身を守る執事かボディガードなのかもしれません。

お嬢様の前に突然現れた素性不明の美少女、警戒する材料としては十分です。

なのでこちらも警戒心を解き敵意がない事を示すと彼も引き下がったようです。

これで安心と一口目のケーキを口に運んだのですが・・・。

何ですかこれは!?

こんなのケーキじゃない!

人を幸福にするためのロストロギアに違いありません!

ミルクレープを食べた直後私は叫ばずにはいられませんでした。

「うーまーいーぞー!」

今の私なら口からアルカンシェルが発射できそうです。

「このケーキを作ったのはだれだ!追加注文をお願いします!」

今度は弱冠引いてるアリサたちを尻目に私は桃子さんにガトーショコラと特性シュークリームを注文します。

「ハーイ、承りましたー」

これまたそれだけで世界を平和に出来そうな笑顔で桃子さんが厨房へ入っていきます。

これは久しぶりに燃えてきました。

今日は全部のケーキをコンプリートするまで帰りません!

なんともいえない顔をする友達二人を他所に私は決意を新たにするのでした。

 

(Side恭也)

本当に彼女は何者なんだ?

ケーキを食べ始めてから彼女、ハルナ・スカリエッティに対する謎は増すばかりだった。

先程のさっきのやり取りからは本物の戦闘者としての風格を感じた。

恐らく彼女は人を、それもかなりの数の命を奪っている。

だというのにケーキを前にした途端その雰囲気はアリサちゃんたちと同じただの少女のそれに変わってしまった。

一体どっちが本物の彼女なのか?

未熟な自分では彼女の本性を見破る事が出来ない。

クソッ、父さんがいてくれれば・・・。

残念ながら父、高町士郎はテロ組織『龍』の残党の存在が発覚し香港へ飛んでいる。

もしかしたら父さんの留守を狙って?だとしたら香港で見つかった龍の残党は囮か?

彼女も龍の構成員なのだろうか?

結局結論がでないまま彼女は店のケーキ全種類を完食し、会計を済ませていた。

彼女とすずかちゃん達の会話を聞く限り、宿泊しているホテルに帰るのでここで分かれるらしい。

どうするか・・・。

このまま彼女を尾行し正体を確かめるのか?

いや、それより二人の安全を確保するのが先決か・・・。

そうして思案している俺だったが一つ、重大な事を見落としていた。

敵が単独犯とは限らないと言う事を・・・。

(Side out)

 

「はぁ~満足満足」

もうおなかの中は幸せで一杯ですよ。

「まさか本当に全ケーキをコンプリートするとは思ってなかったわ・・・」

「あはは・・・ハルナちゃんって凄いんだね・・・」

何故か二人が呆れ顔ですが気にしない事にしましょう。

「ご馳走様でした。おいくらですか?」

「はい、ケーキ21個で12600円(税込)になりまーす」

いやはやこれだけ美味しいケーキが一個税込600円とか・・・。

新手の振り込めない詐欺ですか?

財布から福沢先生と他数名を取り出し桃子さんに払っていると再度アリサが呆れた様子で話しかけてきます。

「しかし、観光とは言え凄い金額じゃない。襲われないようにきをつけなさいよ?」

そう、私のお財布には未だ諭吉さんが10人くらい滞在しております。

こういうとき執務官ってお得ですよね。

長期任務手当てに危険手当、私の年齢だと年少期特別手当なんかも付くのでクイントさん家の子になる前もお金に困った事はありませんでした。

「大丈夫、私こう見えて強いから」

心配してくれるアリサに私は力こぶを作って見せながら答えます。

実際何かあっても戦闘機人のパワーで何とかできます。

最悪の場合は魔法も使いますが・・・。

「アリサたちこそ気をつけなよ?いい所のお嬢様なんだから、その内誘拐されちゃうかも知れないよ?」

私が手をワキワキさせながら茶化すと、二人は笑い出した。

「大丈夫よ!それに何かあっても私達には強い味方がいるんだから。ね、すずか?」

「クスっ。うん、攫われてもきっと助けてくれる人がいるから大丈夫だよ」

なんか二人とも偉い自信ですね。

やっぱりさっきから私を見ているカウンターの店員さんでしょうか?

そう思いながら桃子さんからおつりを受け取り二人に分かれを告げようとしていると車のエンジン音が聞こえてきました。

だんだん近づいてくる車の音に始めはアリサたちを迎えに来た車かと思いましたがすぐに違う事に気づきました。

なぜならその車は黒塗りのリムジンならぬ黒塗りの『ハイエース』だったからです。

道の角から姿を現したハイエースは速度を落とす事無くこちらに突っ込んできます。

「っ!あぶないっ!!」

このままでは轢かれると思った私はアリサたちを突き飛ばすとすぐさま反対側に跳躍します。

幸い私もアリサたちも轢かれることは無かったのですが新たな問題が発生します。

急停止したハイエースのスライドドアが開き数人の男達が出てきます。

全員バラクラバ帽で顔を隠し、手には拳銃・・・拳銃!?

「ちょっ!?」

銃口がこっちを向いてるじゃないですか!

慌てて横に跳ぶと銃声からコンマ数秒後に私がいた空間を弾丸が通過します。

弾が命中した壁に弾痕が穿たれた事から玩具じゃないのは確かです。

「なにすんのよ!?はなしなさい!むぐっ!?」

叫び声が聴こえて振り向けば男達に捕まったアリサとすずかが車に放り込まれているじゃありませんか!

「アリサ!すずか!?」

二人の名前を呼んだ途端、帰って来たのは誘拐犯の放つ銃弾でした。

「うわっ!?」

慌てて回避する私。

銃弾は背後にあったガードレールに当り火花を散らします。

ボディーガードのお兄さんは何をやってるんだと思いそちらを見ると誘拐犯たちの銃撃で身動きが出来なくなっていました。

お兄さん単独ならば問題は無かったのでしょうがそっちには桃子さんをはじめ一般人が何人かいます。

彼ら彼女らを護りながら二人を救出するのは無理のようです。

そうして私達が手を出せないでいるとハイエースが急発進し、逃走を開始します。

「ちっくしょう、逃がすか!」

私は指鉄砲を作りサーチャー付きの誘導弾を精製するとハイエース目がけて発射します。

見事後部バンパーに誘導弾が命中したハイエースはそれに気づく事無く通りの角を曲がり姿を消しました。

翠屋の方は勿論大騒ぎです。

急に車が進入してきたかと思えば乗っていた連中が銃撃してきた挙句アリサたちを攫って逃走したんですから。

でも何でしょうね?

皆さん思ったほど慌ててないんですよ。

桃子さんはすぐさま警察に電話をしてますし店のお客さん達は協力し合って銃撃で荒らされたテラス席を片付けています。

何と言いますか襲撃され慣れてますよねこれ?

もしかしてアリサたちが攫われるのって日常茶飯事なんですか?

何それ怖い・・・。海鳴って実はグンマーなみの人外魔境だったりするのでしょうか?

とにかく今は二人の安全が最優先です。

本来時空管理局の執務官である私が管理外世界の事件に首を突っ込むのはご法度なんですがやっぱり二人を放っとけません。

知り合ってほとんど時間は経ってませんがそれでも彼女達は私の友達なんです。

サーチャーは無事誘拐犯の車に撃ち込まれました。

後はこれを追っていくだけ。

「待ってて、二人とも・・・!」

イェーガーを手に私は走り出しました。

 

「うまく行ったな、リーダー」

「ああ、御神流だかなんだか知らんが大した事なかったな・・・」

海鳴郊外の廃ビル、その中にアリサたちを攫った誘拐犯はいた。

既に顔を隠す必要はないと判断したのか皆覆面を取り下卑た顔で笑っている。

彼らはある人物から月村すずかを誘拐するよう依頼されたチンピラたちだった。

依頼主は多額の前金を彼らに払い、すずかの顔写真だけでなく彼女の友好関係や逃走用の車両、更には何処から調達したのか拳銃まで提供してくれた。

大金と拳銃を手に入れ気を大きくした悪党達は調子に乗りすずかの友人、アリサにも目をつけた。

実業家の娘である彼女も序に誘拐し、月村家共々身代金をせしめようと考えたのだ。

勝手な行動を依頼主から咎められると思ったが、かの人物も営利誘拐に偽装できるとしてそれを許した。

クライアントの許可を得た彼らは早速計画を実行に移す。

すずかを遠くから観察し、アリサと一緒にいるときを見計らい誘拐する。

途中見知らぬ少女と喫茶翠屋に入ったときは作戦を続行するか非常に悩んだ。

すずかの姉、月村忍の恋人の高町恭也は御神流と言う古流剣術の後継者で父士郎は香港マフィア『龍』とやりあった事のある凄腕のボディガードだという。

しかし情報では高町士郎は『龍』の残党と決着をつけるべく今は香港だ。

このような千載一遇の機会はまたとないだろう。

そう判断した彼らは覚悟を決め行動を開始。

かくして誘拐は成功した。

唯一の懸念だった高町恭也は一般人への流れ弾を気にしてうかつに動けず、結果としてアリサとすずかは攫われてしまった。

「それで、お嬢様たちは何処に行ったんだ?」

「クライアントの所だ。何でも話があるんだと」

談笑しながら男達は手を動かす。

彼らの手にはカメラを初めとした撮影機材が握られていた。

これから身代金の要求の為の映像を撮影するつもりらしい。

「しっかしどっちも中々の美少女だったよな?撮影終わったらちょっと愉しんでもいいよな?」

男の一人が暗い笑みを浮かべて言う。

「マジか?お前札付きの変態だなぁ。でも確かに上玉だ、身代金を受け取ったらどっかの変態に高値で売るのも悪くねえ」

「だろ?だからその前にちょっと位いいだろ?」

「仕方ねえな。だが売りもんなんだ。あんまり傷をつけるなよ」

救いようのない人間の屑達。

「やれやれ、何処にでも悪い奴はいるもんだなぁ・・・」

「っ!!?」

そんな彼らに死神の鎌が静かに、そして容赦なく振り下ろされた。

 

(Sideすずか)

薄暗い部屋の中、私とアリサちゃんは縛られた状態で座らせられています。

「気分はいかがかな?まぁ、良くはないか・・・」

私達の前に立つのは一人の少年。

年齢は私達より少し上でしょうか。

「ああ、自己紹介がまだだったね。僕の名前は氷村優太、君の遠い親戚だよ」

顔立ちは整っていて美少年と言っていいでしょう。

ニコニコと笑みを浮かべてはいますが何より印象的なのが彼の目です。

まるでこの世の汚い物を凝縮したような濁った瞳・・・。

人間はこれほどまでにおぞましい笑顔が出来るのかと驚いています。

いや、違う。

恐らく彼は人間ではないのでしょう。

そう、私と同じ・・・。

「その様子だと気づいたようだね月村すずかさん。そう、君のご同類だよ僕は・・・」

ニヤニヤと笑う少年、アレはもはや笑っているというよりも笑っているように顔を歪ませているようにしか見えない。

生理的嫌悪を感る私の心情など考えもせず目の前の少年は醜悪な笑顔で私を舐めるように見つめる。

「クスッ、聞いていたよりも美人だね。ますます君が欲しくなったよ」

その言葉で彼の狙いが私だと理解する。

厳密には私の中に眠る力、私が人とは違う存在だという証・・・。

「さっきから何訳の分らないこと言ってんのよ!?」

そこで我慢の限界に達したのかこれまで黙っていたアリサちゃんが騒ぎ始めた。

「こんなことして許されると思ってるの!?誘拐よ!犯罪よ!!覚悟しなさい!アンタなんか・・・!」

大声で目の前の少年を罵るアリサちゃん。

「・・・チッ、うるさいなぁ」

それを聞いて彼は舌打ちするとアリサちゃんに顔を向け・・・。

「なっ!ダメっ!!」

慌ててやめる様に叫ぶ私でしたが間に合わず、彼はアリサちゃんの目を睨みつけながら一言呟きました。

『黙れ』

「っ!?」

一言、ただ一言小さく呟いただけでアリサちゃんは静かになりました。

「・・・・!ぁ・・・・!?」

必死に声を上げようとするアリサちゃんでしたが身体が言う事を聞かないようで全く声が出せなくなっています。

「これが僕の能力だよ、目を通して相手の肉体に干渉できるんだ。本当なら心臓を止めてあげてもよかったんだけれどそうするとすずかさんがショックで自殺しちゃうかも知れないからね」

恐ろしい事を平然と、笑顔で言ってくる氷村優太。

私には彼がとても恐ろしい怪物に見えました。

「何を怖がっているんだい?君も僕と同類だろう?」

「っ!?」

私の様子に気づいたのか、アリサちゃんがこちらを見ます。

「君は知らないのかい?まぁ、無理もないか。すずかさんだって話したくは無いだろうからね、じゃあせっかくだから僕が教えてあげよう」

「っ!?だ、駄目!」

うろたえる私の姿が面白いのか、氷村優太は顔を愉悦で歪ませながら呟きます。

『お静かに』

その一言で私も声が出なくなってしまいました。

どうやら彼の力は私の肉体にも通用する位強力な様です。

「さて、それじゃあ君に教えてあげよう。すずかさんはね、人間じゃないんだ」

やめて・・・。

「『夜の一族』。分りやすく言うと吸血鬼のようなものでね、思い当たる不意は無いかな?彼女が時折見せる異常な身体能力を」

いわないで・・・。

「分ったかな?彼女は君みたいな人間なんて簡単に殺せる、『化け物』なんだよ」

「やめてえぇぇっ!!」

室内に私の叫び声が響き渡ります。

両手を縛られてなければ耳を塞いで蹲っていた事でしょう。

「何があった!?」

扉が開き銃を持った男の人達が入ってきます。

恐らく私達を攫った誘拐犯たちでしょう。

「何でもないよ、君達は外で待機していればいいんだ」

「しかし・・・」

「聞こえなかったのか?出て行けといったんだ」

私を見ながら何やら言おうとする誘拐犯たちに氷村優太は怒気をはらんだ声で命令しました。

「・・・っ!分ったよ、出て行けばいいんだろ。いくぞ・・・」

「お、おう」

殺気に当てらた誘拐犯たちは怯みながら退室していきました。

「フンっ、低俗な人間風情が・・・それにしても僕の支配から脱する事が出来るとはね・・・ますます君の事が欲しくなったよ」

いやらしい視線を向ける目の前の少年から目を背けると、アリサちゃんと目が合いました。

「あっ・・・」

「・・・・・・」

いまだ喋る事が出来ないアリサちゃん、その目には恐怖や怒りといった負の感情が宿っていました。

それがまるで自分に向けられているように感じた私は俯き目を瞑ります。

辛くて、怖くて、悔しくて・・・。

でも私の力じゃどうしようもできない。

(お願い、誰か助けて・・・っ!!)

そんなふうに祈る事しか出来ない私でしたがそれが通じたのか、下の階が騒がしくなってきました。

『何があった!?下を見てくる、お前はここを頼む』

『分った』

外の見張りも何が起こっているのかわからないみたいです。

「クックック・・・思ったよりも早かったなぁ・・・」

そういってニヤリと笑う氷村優太、なにかとてもいやな予感がします。

「何を、言ってるの?」

「いや、なに・・・あれだけ騒ぎを起こせば君を助けに来るだろうと思ってね。僕の目的は二つ、一つは君の身柄。そしてもう一つは・・・」

・・・っ!!

「まさか・・・!?」

「その通り、高町恭也の抹殺さ」

その発言に私はもとより隣にいるアリサちゃんも目を見開きます。

「彼はこれまでも色々と僕らの邪魔をしてくれたからね、いい加減消えてもらいたかったんだ。彼さえいなければ君のお姉さんもどうとでもできるしね・・・」

「なっ・・・!?」

この人はお姉ちゃんも狙っている!!?

「流石に真正面からやりあったら不利だろうけど、僕の能力なら心臓を止めるのも脳や神経を破壊するのも簡単だからね」

恭也さんの強さは私もよく知っています。

でも恭也さんだって不死身じゃない、万が一と言う事もあります。

『なっ!?貴様は・・・ぐぁっ!!?』

『おい!どうし・・・がはっ!?』

そうこうしているうちに扉の外で誰かのうめき声が聞こえます。

恐らく外にいた見張りのものでしょう。

数秒の静寂。

張り詰めた空気の中、鉄製の丈夫な扉が蹴り破られました。

「・・・・ぁ?!」

「えっ!?」

「・・・君は誰だ?」

それは氷村優太にとっても、そして私達にとっても予想外の人物でした。

(Side out)

 

誘拐犯のハイエースに打ち込んだサーチャーを追うことおよそ30分。

町の郊外にある廃ビルにたどり着きました。

ビルの前には黒塗りのハイエース、ナンバーも誘拐犯等のものと合致します。

「それじゃ、救出作戦と行きましょうか・・・」

イェーガーを起動、バリアジャケットを展開してビルの中へ。

なるたけ音を立てないように階段を上がっていくと2階フロアに3人の男達がたむろしていました。

覆面は取っていますが服装から誘拐犯たちで間違いありません。

「・・・でも確かに上玉だ、身代金を受け取ったらどっかの変態に高値で売るのも悪くねえ」

「だろ?だからその前にちょっと位いいだろ?」

「仕方ねえな。だが売りもんなんだ。あんまり傷をつけるなよ」

話を聞く限り身代金を渡しても二人を返す気はさらさら無いようです。

あまつさえ変態に売り払う前にエロい事をするとか、陵辱系のエロゲーかと。

流石にこのゲス共は救い様がありません。

「やれやれ、何処にでも悪い奴はいるもんだなぁ・・・」

「っ!!?」

もはや慈悲は愚かハイクを読む暇すら与えません。

大惨事大戦の開幕です。

この距離では撃つよりも殴った方が早いですね。

そう判断した私は戦闘機人の瞬発力活かして一番近くにいた誘拐犯に肉薄、イェーガの銃床でアソコを思いっきり殴りつけました。

「っ!?!?!?!?」

突如襲った衝撃と後からやって来た激痛で言葉にならない叫びを上げながら誘拐犯が蹲ります。

間髪いれずに次のターゲットに突撃。

イェーガの銃口下に魔力で形成した銃剣を作り出しそのまま突進、勿論狙いは相手の股間です。

「っ・・・ぅああアアあぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

自分の大切なところに何が刺さったのか理解した誘拐犯は断末魔も斯くやといった絶叫を上げます。

あ、勿論非殺傷設定ですよ、タマタマは原型留めてます。

ただ衝撃とか魔力の影響とかで生殖能力が残っているかは保障しかねますが・・・。

流石に最後の一人は状況を理解したのか、私に向かって拳銃を向けてきます。

さて、ここで目の前の誘拐犯を盾にしてもいいですが味方ごと打つ可能性も捨て切れません。

管理外世界だという事を抜きにしても死人は避けたいですから。

なので自分で防いじゃいましょう。

案の定仲間が射線上にいるにも関らず誘拐犯は引き金を引きます。

中国製と思しき銀色の安っぽいコピートカレフから放たれた弾丸は狙い違わず私の方に飛んできて展開されたシールドにあっさり弾かれました。

「なっ・・・!?」

現れた魔法陣っぽいものに銃弾が跳ね返されたのを見て驚いたのか誘拐犯は呆然としています。

そんな隙を見逃すハルナちゃんじゃあありません。

「そぉいっ!」

未だアソコを抑えている目の前の誘拐犯から銃剣を抜くと彼を向こうに目がけて放り投げます。

「ぐぇっ・・・!」

人間ミサイルよろしく跳んできた仲間が激突し、潰れたカエルのような声を上げる誘拐犯。

気絶した仲間の下敷きになり何とか脱出しようともがいている誘拐犯の目の前に私は仁王立ちします。

「アリサとすずかはどこ?」

イェーガーの銃口を向けながら私は残った誘拐犯に問い質します。

流石にごっついマシンガンを向けられたからか、誘拐犯は階段の方を指差します。

「う、上の階の一番奥の部屋だっ、そこに雇い主と一緒にいる・・・」

そういわれた直後、上から声が聞こえてきます。

「何があった!?」

どうやら残りの犯人も上の階にいるようです。

「いいだろう、お前は最後に殺すといったな・・・」

「へっ?いや、そんな事一言も・・・」

「アレは、嘘だ」

そういうと私は未だ無事だった誘拐犯の股間をおもいきり蹴飛ばしました。

「くぁwせdrftgyふじこlp!!!」

言葉にならない絶叫を上げる誘拐犯。

流石に可哀想に感じてきたので先ほど去勢した二人共々誘導弾を打ち込んで気絶させました。

それから扉まではほとんど作業ゲー状態です。

階段から下りてきた見張りをやっつけ、扉の前にいた残りの一人も倒して終わりです。

勿論大切なところを撃って轟沈させてます。

いたいけな幼女をかどわかそうとしたんです。

インガオホーと言う奴です。

さて、残りはこの扉の向こうですか・・・。

アリサとすずかが人質に取られていたら厄介です。

速攻で突入して速攻で制圧しましょう。

そう決断した私は思い切り扉をけりつけダイナミック入室を果たします。

そこにいたのは縛られた状態で座らされたアリサとすずか、そして・・・。

「・・・君は誰だ?」

なんかスカした感じのいけ好かないお子様がいました。

さて、何て返してやりましょうか・・・。

「貴様に名乗る名など無い!」かな?

「悪を断つ剣なり!」も捨てがたい。

「地獄からの使者、スパイダーマッ!!」もやってみたいです。

とは言え急いで名乗らないとタイミングを逸してしまいます。

此処は私の特徴を踏まえつつオーソドックスに名乗る事にしましょう。

「見てわかんない?正義の魔法少女だ!」

どうだ、決まったぜ・・・!

「「「・・・・・・えっ?」」」

・・・えっ?




文章に出ていたISAFは国際治安支援部隊 (International Security Assistance Force) という実在するものです。
ちなみに某ゲームのISAFは独立国家連合軍 (Independent States Allied Forces) になります。

あとどうでもいい話ですが「有明か、何もかも・・・」のセリフは作者が某逆三角形の建物を見る度に言ってるセルフです。よろしければ皆さんもどうぞw


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第11話「事件解決と思いきやもう一波乱とか勘弁してほしい、てか私の休暇を返せ!」

途中まで書いていた分が完成したので投稿します。
長いので二つに分割しました、続きは明日投稿します。


「・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・・・」

気まずい沈黙。

何ですか?

私?私が原因ですか?

「えーと、やり直していい?」

 

機人長女リリカルハルナ

第11話「事件解決と思いきやもう一波乱とか勘弁してほしい、てか私の休暇を返せ!」

 

「ん、ゴホン・・・っ。変だなぁ、僕は高町恭也がくると思っていたのに」

あ、こいつさっきのやり取りをなかったことにしやがりました。

まぁ、私としてもさっきのアレは永遠に封印しておきたい黒歴史の一つにノミネートしたのでありがたいのですが。

なわけで私もこの流れに乗ってさっきのアレは無かった事にしましょう。

「高町恭也が誰かは知らないけど、その二人は返してもらうよ」

私がそういうと目の前の子供はスンゲーむかつく笑みを浮かべます。

「彼女達のために態々危険を犯したのかい?」

「友達が攫われたんだ。助けに来たっておかしくは無いでしょ」

「理解できないね、それだけの価値が彼女達にあると?」

と人を小バカにしたような口調で聞いてくるガキンチョ。絶対友達にしたくないタイプです。

「価値観の相違ってやつだね、自分の物差しだけで世間を見ない方がいいよ?」

私がそういうと今度は不機嫌そうに顔を歪ませます。

「不愉快だな・・・ただの人間がこの僕に、氷村優太に意見するだなんて」

・・・うわ、なにこいつ?

沸点低いうえに何か拗らせてますよ。

こういう手合いは何を言っても聞かないし完全論破しようものなら逆ギレして暴れかねません。

せいぜい適当にあしらいながらタイミングを見て二人ととんずらしましょう、それから先はおまわりさんの仕事です。

・・・って、よく考えたら私がおまわりさんじゃん。

そういうことなら仕方ありません、少々面倒ですが力づくでふんじばって然る所に突き出しましょう。

と言うわけで一応最終確認です。

「まぁ、その辺の事はどうでも良いんで一つ質問。あなたが下に居た連中のクライアントってコトでいいのかな?」

私が質問すると氷村容疑者は鼻で笑いやがりました。

「あぁ、あの役立たずどもか。高い金を払ったのにほんっと使えない連中だよね、これだから人間はダメなんだよ・・・」

はい有罪(ギルティ)!

こうして私の中で容疑者から被告に変わった氷村優太(住所不定、職業不詳)にイェーガーの銃口を向けます。

「そう、それじゃあ一応警告しておくね、未成年者略取の現行犯だから黙秘権も弁護士を呼ぶ権利も無いけどカツ丼を注文する権利くらいは残ってるから無駄な抵抗はやめて大人しくしなさい」

そう勧告すると氷村被告は壊れたように笑い始めました。

「クックック・・・アッハハハハハハハハハハっ!」

うん、ちょっと・・・いや、かなりヤバイ感じです。

一頻り笑ってから氷村被告は首をガクッとシャフ度に傾けつつ目だけがぎょろりと私を睨みつける。なんかキモイです。

「ココまで僕を侮辱したのは君が初めてだよっ、どうやってここまで来たのか興味があったけれどもうどうでもいい。僕と言う偉大な存在に楯突いた事を後悔させながらコロシテヤル」

うん、こういうときはこのセリフです。

訳が分らないよ。

今のセリフの何処に侮辱するような単語や文章が存在したのか全く分りません。

何?コイツの中では他の人間は自分に対して平伏するのが当たり前なことなの?

どんだけ自尊心がでかいのさ?アンドリュー・フォーク准将もビックリなレベルだよ。

躁状態とかいうレベルじゃなくて最早重度の精神疾患レベルじゃね?

黄色い救急車を通り越して高い塀に囲まれた病院が来いって叫びたい。

どうするのコレ?こう言うのは父さん達の領分で私は門外漢なんだよ。

「・・・あー、裁判の前に精神鑑定が先だねこりゃ」

とりあえずアリサたちの安全を優先すべく目の前の痛い子を拘束することにしましょう。

 

Side氷村優太

不愉快、あぁ不愉快だ!

目の前にいる人間、銀髪の小娘は事もあろうに夜の一族、その至宝である僕に命令してきた。

しかも「抵抗するな」?「おとなしくしろ」?それは勝者が敗者に行う者だ、間違っても絶対者たる僕が言われるべき言葉ではない。

これほど僕に屈辱を与えた人間が今までいただろうか?

うん、殺そう。

取るに足らない人間とは言えそれなりに腕の立つ連中を雇ったつもりだ。

それをどうやって退けここまで来たのか気にはなるが関係ない。

殺して死骸を解剖すればある程度は分るだろう。

いや、いい事を思いついた。

殺さず心だけを破壊してやろう。

そしてただの人形になったあいつを月村すずかにプレゼントしてやるんだ。

彼女もきっと喜んでくれるに違いない。

そうと決まれば早速始めよう。

殺さずに精神だけを破壊するのは面倒だが今回は許してやろう。

何も知らずに身構えている女を見る。

その綺麗な顔が苦痛に歪む様が見れないのが残念だよ。

そう思いながら奴と目をあわせた。

さぁ、僕に逆らった罪、その身をもって償うがいいっ!

Side out

 

「ん?」

微弱な不可視光線を感知?

照射源は・・・目の前のガキンチョのようです。

何コイツ、目からビームでも出せんの?

放射線とかは検知されませんでしたが念のためにバリアジャケットに光学防御と放射線防御を付加、それから網膜にも光学フィルターをかけておきましょう。

「ハルナちゃんっ!逃げてっ!!」

すずかが慌てた顔で叫びます。

その直『クワッ』っと目を見開く氷村被告。

「ハルナちゃんっ!!」

先程の光線が先程より強い出力で照射されたようですが目に見え無いのでただ睨み付けられただけにしか感じられません。

しかも強いと言ってもレーザー安全基準で言うところのクラス1からクラス1Mに変わった位で大した脅威にはならないでしょう。

「クッ、クフフフフ・・・」

なのに何で目の前のちみっこは勝ち誇った笑みを浮かべているのでしょうか?

「はははははははっ!バカめっ、僕にたてつくからそうなるんだ!見ろ、この無様な姿を!下等な人間の分際で身の程をわきまえないから・・・!」

うん、うるさい。と言うかウザイ。

C級作品に出てくる安っぽいラスボスみたいな事を騒いでいる氷村くん。

てか自分に酔ってるのか私がすぐそこまで来ていることに全く気づいていません。

さて、どうしてやろうか・・・。

パンチ?ありきたりだし何より警官が被疑者を殴打したとか後々面倒な騒ぎになるから却下です、蹴りも同様の理由で不可とします。

まぁ、見た目ガキンチョですしデコピンくらいで許してあげましょう。

え?すずか達を誘拐した奴に優しすぎないかって?

大丈夫ダイジョーブ、私のデコピンは車のフロント叩き割れるから。

「てい」

肩を叩いて顔がこっちに向いたところでデコピン(ジュール換算124.8J)を額に喰らい盛大にもんどりうつチビッ子。

「ぎゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!?」

そのチビな体の何処から出るのか不思議に思えるほどでかい叫び声を上げる氷村くん。

額を押さえながら足をバタバタさせている内にアリサとすずかの拘束を解きます。

「二人とも大丈夫?エロいことされてない?」

「されて無いわよっ!って、あれ?声が出る?」

何やら変な事を言うアリサ、先程まで一言も発しなかったから変だとは思ってましたが声が出なかったからだとは・・・。

「多分ハルナちゃんのデコピンを受けたことで彼の支配が解けたんだと思う・・・」

「支配?」

今度はすずかが意味深な事を言い出します。

「そうよ!ハルナもアイツの目を見たんでしょ!何で平気なの!?」

目?確かに変な視線と言うか赤外線っぽいものは観測しましたけど・・・。

「あのね、あの人の目を見た人は体を支配されちゃうの」

何それ!?ギ○ス?ギア○ですか!?

確かにあのアニメは中二臭バリバリの作品でしたもんね。

ちなみに私が好きなキャラはオレンジさんです。

はいそこ、ファザコン言わない、別に中の人がおんなじだからじゃ無いです。無いったら無いんです!

「とにかくさっさとココから逃げよう、外に犯人達の車があるからそれで先ずはここから離れよう、それから警察にでも・・・」

「まてっ!」

警察にでも逃げ込もうといいかけたところで後ろから静止の声がかかります。

振り向くとデコピンに悶絶していた氷村君が復活していました。。

「ハァ、ハァ・・・よくも、よくもボクをコケにしてくれたな・・・!」

何かすごい形相でこちらを睨んでくる氷村くん。

「もういい、お前ら全員ここで殺してやる!月村すずかもだ!ボクのものにならないならもう生きる価値もない!」

私の後ろですずかが身をこわばらせるのが分りました。

同時に沸々と怒りが私の胸の奥底からこみ上げて来るのも感じます。

その人の価値は本人が決めるものです、他人がどうこう言う資格なんて、ましてやそいつの価値観で勝手に殺すなんて言語道断です。

とは言えどうしたものか・・・。

コイツのギアス(仮)が私に効かないのはさっきの戦闘で実証済みです。

問題は私の後ろにいるアリサとすずかです。

私と違ってギアス(仮)で体の制御を奪われていたらしいので恐らく今度も防ぐ事は出来ないでしょう。

マルチタスクで対策を考えていると氷村の目に変化が起こります。

微小ですが角膜が振動しています。

普通の人では気づかない変化ですが戦闘機人である私の目は見逃しません。

もしかして・・・。

仮説ですがああやって角膜を震わせて不可視光線を照射、それを見た相手の脳に直接命令を叩きつけているのでしょう。

こいつ、実は人間じゃなくて光線級BATEなんじゃね?いつの間に地球は地球外起源主の侵略を受けていたのでしょうか・・・?

冗談はさておき確証はありませんが他の仮説を考えている時間はありません。

その仮説に賭けてみましょう!

「死ねぇぇぇっ!!!」

そう言って『クワッ』と目を見開く氷村。

「ええい、ままよっ!」

私はそう言って考え付いた対抗手段を実行に映します。

すると・・・。

「ぐぁっ!?」

氷村君が目を抑えます。

しかしそれも数秒、すぐさま立ち直り再度こちらを睨みつけます。

「お前・・・!何をしたか知らないが無駄な足掻きだっ!」

再度こちらに対し目を見開きます。

「っ!」

私の後ろで身構える二人。

「・・・あれ?」

しかし何も起こりません。

「バカなっ!?フンっ!」

驚きながらもう一度こちらを睨む氷村。

やはり何も起こらず氷村は困惑します。

「おまえ・・・何を、ボクに何をした!?」

私に詰問する氷村くん。

その声色には困惑と怯えが感じられます。

ふむ、これはこれは・・・。

思わずニヤリと笑みが浮かんでしまいました。

「ふ~ん、教えてほしいの?」

そう言って私は氷村くんの方に一歩一歩、踏みしめるように歩いていきます。

「う、あぁ・・・やめろ、くるな・・・」

先程までの余裕は何処へやら、すげービビリまくってる氷村君は私が一歩進むごとに後退し、やがて部屋の隅に追い詰められます。

「何を怯えてるのかな、ひ~む~ら~くぅ~ん?君は選ばれた存在なんじゃなかったっけ?いや、新世界の神だったかな?」

まだ何もしていないのに涙と鼻水でグシャグシャになった氷村君の頭に私は手を伸ばし。

「人間舐めんな糞ガキ・・・っ!」

過去最大威力のデコピンをお見舞いしてやりました。

 

「全く、氷室だか志村だか知らないけれどな、私は『ゆうた』が大っ嫌いなんだ!ハチミツねだるな!勝手に3乙すんな!尻尾位自分で切れ!この腐れふんたーが!」

「いや、なんでモンハン?てかハルナ・・・アンタアイツに何したの?」

二人が縛られていたロープで気絶した氷村君を簀巻きにしながら愚痴る私にアリサが突っ込みと共に聞いてきます。

そうですよね、何も知らない人たちが見たらただ睨み合っていただけにしか見えませんもんね。

「フフン、知りたい?」

「知りたいからさっさと教えなさいよ。後ドヤ顔やめい」

むぅ、そこは「か、勘違いしないでよねっ!べ、別に教えて欲しい訳じゃないんだから・・・っ!」って言って欲しかったのですが。

「何かバカな事考えてたでしょ?」

「エッ?ソンナコトアリマセンヨー」

「何で半角カタカナなのよ!」

「あ、アリサちゃん落ち着いて・・・」

もはや様式美となったやり取りをしていた所で外から『ズドン』という大きな音が聞こえてきます。

「何?!」

「外から?」

轟音と共におなかに響く衝撃にうろたえる二人。

近くにあった窓から階下を見てみると犯人たちの黒いハイエースが濛々と黒煙を上げて燃えています。

敵の新手でしょうか?

私達の逃走手段を潰しにかかるとは中々手馴れています。

「二人はココにいて、ちょっと様子を見てくる」

恐らく相手はそこで絶賛気絶中の中二病患者直属の腕利きです、さっきまで相手にしていたエロ犯罪者集団とはレベルが違います。

さすがに二人を護りながらそんな連中を相手にするのは骨が折れます。

なので一人で新手を倒してから二人を連れて逃げる事にしましょう。

階段を下りて下の階に着きますがだれも居ません。

去勢してやった悪党どもはどこかのダンボール工作員の如くロッカーに「しまっちゃうおじさんの刑」に処したので居ません。

「もう一つ下の階かな?」

そう言って私が一歩前に踏み出した瞬間、濃密な殺気が頭上から降ってきました。

「っっ!!?」

慌てて前方に跳ぶとさっきまで私が居たところに一人の男が落下してきました。

手には小さめの刀、恐らく小太刀が握られています。

「今のをかわすか。翠屋にきたときから只者では無いと思っていたが・・・」

そう言って立ち上がり顔を上げる襲撃者。

それは翠屋のカウンターにいた店員さんでした。

 

(Side恭也)

町中の防犯カメラをハッキングして犯人たちの車を見つけだしたと忍から連絡を受けた俺は装備を整えると急ぎアリサちゃんとすずかちゃんの救出に向かった。

郊外の廃ビルの前に停めてあった車は間違いなく二人を攫った連中のものだ。

二人を助け出してもコイツで追跡されたら面倒だ。

そう思った俺は持ってきていた忍謹製の爆弾を車に仕掛ける。

威力はたいした事はないが燃料タンクに仕掛ければ引火して盛大に爆発してくれるはずだ。

そうすれば騒ぎを聞きつけて近隣の警察が駆けつけてくれるだろう。

そして彼らが駆けつける前に俺は二人を救出、同時に「夜の一族」に関係する証拠を処分して脱出する。

しかし爆弾を仕掛けビルに侵入したものの驚くほどに拍子抜けだった。

出入り口に見張りはおらず、二階に上がっても鼠一匹いない。

さらに上の階で守りを固めていると厄介だ。

そう思った俺は車に仕掛けた爆弾の起爆ボタンを押した。

轟音と共に腹に響く振動。

恐らく爆発に気づいて何人かは様子を見に降りてくるはず、そいつらをしとめて敵戦力の斬減を図る。

案の定階段を駆け下りてくる足音を耳にし、俺は天井に張り付き敵を待ち構える。

そして昇降口から人影が現れた瞬間、俺は落下しながら手にした小太刀を敵に振り下ろした。

しかし・・・。

(かわされたっ!?)

相手は驚くべき直感と瞬発力で前方に跳躍し俺の一撃を回避する。

そして相手の正体を知った俺は再度驚愕した。

「今のをかわすか。翠屋にきたときから只者では無いと思っていたが・・・」

そう、現れたのは二人と一緒に翠屋にやってきた少女、ハルナ・スカリエッティだった。

(Side out)

 

ヤバイです・・・。

何がヤバイかって言うとマジで色々ヤバイです。

第一に今の現状。

もし私が突破されたら襲撃者の障害となるのは階段一つと扉一枚のみ、そんなものではアリサとすずかは護れない。

逃走用の足を奪われた以上子供の足ではすぐに追いつかれてしまうでしょう。

よってここで襲撃者は完全に叩いておかなければいけません。

第二に相手が悪いです。

件の襲撃者、よりにもよって翠屋のカウンターにいた若い店員さんじゃないですか。

物腰といい雰囲気といい、明らかにその道のプロっぽかったのでてっきりアリアかすずかの執事ないし護衛だと思っていましたが・・・まさか犯人側の人間だったとは。

二人の発言からこの人が護衛の人間なのは確かです。

金で買収されたのか、それとも最初ら犯人達の仲間でそれを隠して二人に近づいたのか・・・。

どちらにしても最低のヤロウです、警察に突き出す前に泣いてやめてくださいって言うまで教育上不適切なオシオキをしてやりたいくらいですが・・・。

さて、実はヤバイ状況と言うのはもう一つありまして・・・。

この人、めっちゃ強いです。

「フッ!疾っ・・・!」

肉体を強化された戦闘機人のハルナちゃんを持ってしても防戦一方に追い込まれる程度には強いです。

中でも別格なのはスピード。

壁や天井すら足場にしてスピードに乗った必殺の一撃を繰り出してきます。

その速度、もしかしたらライドインパルス状態のトーレに匹敵するかもしれません。

魔法の露見を恐れてシールドや大出力魔法は控えているのを抜きにしてもこんなに不利になるとは思っても見ませんでした。

ほら、今も彼の一撃が・・・って!?

「ぐふぉっ!?」

ヤバイ、お腹にモロに喰らっちゃいました。

てかバリアジャケット越しにこの威力ってマジありえないんですけど・・・。

痛覚を遮断、脳内麻薬を大量分泌して苦痛を和らげていると謎の店員さんが私の前までやってきます。

「安心しろ、命までは取らない。君には後で聞きたい事が山ほどある、だが・・・」

そう言って私の背後の階段に視線を向ける店員。

私の横を通り抜けた時、彼は最後にこう言いました。

「先ずは上の二人が先決だ」

彼がそういった直後全身の血が凍りついたような錯覚を覚えました。

二人?

二人って言うのはアリサとすずかの事ですか?

彼女達をどうするつもりか?

そんなの振りまく殺気からして決まっています。

殺される?

アリサとすずかが殺される?

この世界に来て最初の、生まれ変わってからマリー以来初めて出来た友達が殺されるっ?

そう思った瞬間胸の奥からマグマのように熱い感情が膨れ上がってきました。

そう、これは怒り。

久しぶりにプッツンしちゃいました。

頭の片隅に追いやられた理性が止めろ落ち着けと騒いでいますが完全に無視です。

魔法の露見も管理局員としての規範とかも一切合財知ったこっちゃありません。

アリサとすずかを守る、そのために目の前にいるスカした感じのアサシンをぶちのめしてやります!

リンカーコア、オーバーブースト。レリックジェネレータ出力最大。

ISほか全兵装使用自由。

異変に気づいた店員が振り向きましたがもう遅いです。

今私の持てる全てをもって、目の前のあん畜生をぶっ飛ばしてやります!

 

(Side恭也)

空気が変わった。

突然の変化に俺は階段にかけようとしていた足を止めた。

同時に体中の汗腺が刺激され汗がにじみ出てくる。

(何だ、一体・・・!?)

今感じている感覚に俺は覚えがあった。

恐怖、それは間違いなく恐怖だ。

だが・・・。

(何なんだ!この凄まじい力はっ!?)

圧倒的、ただただ圧倒的なまでの濃密な圧力。

目の前に腹を空かせたライオンが居たってココまで恐怖を感じる事は無いだろう。

まるで戦車、いや軍艦が搭載されたあらゆる兵器を自分ひとりに向けているかのような純粋で暴力的なまでの力の奔流。

それを感じるのは背後、文字通り恐る恐る後ろを振り返るとそこには一人の少女が立っていた。

「・・・・・・」

ハルナ・スカリエッティ。

アリサちゃんとすずかちゃんに近づいた謎の少女、そしてつい先程俺が倒したはずの敵だ。

それがまるで痛み等感じていないかのような涼しい顔で仁王立ちしている。

そう、俺が恐怖を感じた見えない力は間違いなくこの子から発せられている。

(バカな・・・!この力、人間が出せるレベルを超えているぞ!)

見たことも無い金色の瞳を爛々と輝かせまるで感情が消えうせたかのような無表情で立つ少女。

彼女を一言で表現できる単語は一つしかないだろう。

殺戮人形。

そう表現するのがもっとも適しているであろう彼女一歩前に進む。

「・・・っ!!?」

ただそれだけ、それだけの動作で俺は威圧され一歩後ろに後ずさる。

そんな俺を彼女は無感情に見つめながら手に持った機関銃の銃口を向ける。

すると銃口に青白い光りが集まっていき・・・。

「・・・行かせない」

彼女がそう言った直後、極光が俺に向かって照射された。

「・・・・・・・・っ!!!!!!」

動物的本能で横に跳び、迫り来る閃光を回避する。

光りが収まり目を開ける。

体を確認し、異常がない事を確認すると次に俺は先程閃光が通り過ぎた階段を見つめ。

「なっ・・・!!?」

絶句した。

俺が見たのは空だった・・・。

階段でも壁でもなく空。

先程の極光は俺がいた空間を・・・階段も外壁もぶち抜いてビルに大穴を穿っていったのだ。

そして俺は理解した。

彼女は本気ではなかったのだと。

理由は知らないがこれほどの力を持ちながら彼女はそれを俺に振るっては来なかった。

しかし今は違う。

金色の無感情な瞳が俺を見据えたまま動かない。

間違いない。今の彼女は俺を殺す事に微塵も躊躇いを感じてない。

その瞳にはただただ強い決意が感じられた。

(こうなったら、俺も最早手加減は出来ない・・・!)

手を抜いたら殺られるのは必至。

俺が生き残るには殺す気で彼女に挑まなくてはならないだろう。

覚悟を決めた俺は小刀を構え彼女に向かって疾駆した。

(Side out)

 

目標接近、迎撃準備。

突撃して来た襲撃者を迎え撃つべく身構えると相手は予想外の攻撃を繰り出します。

袖口からワイヤーが放たれイェーガーを持った右腕に撒きつきます。

「!?」

「貰った!」

恐らくこちらの攻撃手段を封じた上で仕掛けるつもりでしょうが私相手にこれは愚策です。

私は戦闘機人のパワーで力任せに右腕を引きます。

「うぉっ!?」

当然ワイヤーで繋がった店員も引っ張られてこちらに跳んできます。

「チッ・・・ならっ!」

しかし彼もただでは転びません。

そのまま私に突っ込んでくるつもりのようです。

「ハァッ!」

振り下ろされる小太刀。

それをシールドで防御、ダメージ無し。

「なにっ!?」

狼狽したところにゼロ距離から左腕のロケットパンチを叩き込む。

「ぐはっ・・・!?」

悲鳴とも嘔吐とも呻きともとれる声と共に件の店員は壁に叩きつけられる。

咳き込みながら何とか立ち上がる彼を尻目に私は大部分がインパクトカノンで抉られ、かろうじで端だけ上り下り可能な状態の階段を背中に立ちはだかる。

「はぁ、はぁ・・・あくまで通す気はないと言うのか・・・」

応える必要はありません、返答はこれで十分。

私はイェーガーを構えると速射モードで発砲。

秒間数十発の魔力弾が襲撃者に殺到します。

「クッ・・・!」

ボロボロの体に鞭打ちながら弾丸の豪雨から逃げる店員。

彼が回避した空間にあった古い机や椅子等が掃射を受けバラバラになった破片が宙を舞う。

店員はまるでニンジャのような機敏な動きでこちらの猛射を交わしながら釘の様な手裏剣を投擲。

慌てず騒がずフィールドで弾き返していると相手は床を蹴って大きく跳躍。

恐らく天井を足場にして上から私に一撃を加えるつもりなのでしょう。

「させない・・・!」

そう呟きながら床に手を当てて・・・。

「FOA、発動・・・!」

跳躍した店員の着地地点から突然コンクリートの針が生えます。

「な・・・っ!!?」

慌てて身をよじって針を交わす店員。

針と言っても太く鋭い、まるで中世の騎士が使うランスのような巨大な針です。

喰らえばひとたまりも無いと悟った彼は身体をひねってなんとか天井からの奇襲をかわします。

しかしそれは同時に貴重な攻撃の機会も失った事を意味しています。

「ハァ、ハァ、ハァ・・・」

「・・・・・・」

肩で息をする彼と無表情の私。

一見私が有利に見えますが実はそんな事も無かったりします。

怒りのあまり後先考えない全力稼動のせいでリンカーコアもレリックもレッドゾーンギリギリです。

アレだけ暴れたんだから警察が駆けつけるだろうと思いましたが未だサイレンが聞こえて来ません。

胸の内でおまわりさんに恨み言を呟きながら現状を把握します。

相手はボロボロ、私もオーバーヒート寸前。

あっちの武器は小太刀一本。

さっきからワイヤーやらクナイやらが飛んでくる以上まだ暗器を隠し持っているのは間違いないでしょう。

私のほうはイェーガーの残弾が2斉射分。

マガジンはあと4つありますがマグチェンジさせてくれる暇はないでしょう。

つまりいい加減勝負を決めないとヤバイって事です。

何か手はないかと相手の様子を窺うと部屋の中央に陣取って全く動きません。

恐らくFOAを警戒しているのでしょう。

下手に動けば壁、床、天井、あらゆる場所が槍衾になって襲ってくるわけですから。

・・・そうだ、FOAで床に大穴空ければいいんだ。

私がいるのは端の階段付近だしさっきやっつけた誘拐犯たちを収納したロッカーも部屋の端・・・。

彼が陣取っている部屋の中央付近を崩してやればそのまま下のフロアまで真っ逆さまです。

上手く着地したとしてココまで登ってくるのよりも私が上の階に登って階段を完全に壊すほうが早いです。

それから二人を担いで飛んで逃げれば追いつかれることもありません。

問題はどうやって彼を束縛するかです。

ISを発動する場合、どうしても足下にテンプレートが浮かびます。

発動がばれる以上相手も阻止しようとするでしょう。

バインドは近づいて設置する必要がありますし、リストバレットは回避される可能性があります。

・・・ちょっと難しいですが遅発式のリストバレットを彼の足下に打ち込んでから改めて中央に誘導するしかありません。

向こうも私が何かを狙っている事に気づいたのか足に力を溜めています。

「・・・」

「・・・・・・」

まるで荒野の決闘のような張り詰めた空気。

来るっ!

そう告げる直感に従い私がイェーガーのトリガーを引こうとした瞬間・・・。

「何よこれ!?階段が壊れてるじゃない!」

「あ、アリサちゃん危ないよ!もっと下がって!」

背後から聞き覚えのある声が聞こえてきます。

会って間もないとは言え大切な友達の声・・・聞き間違えるはずがありません。

振り返るとそこには上の階にいるはずのアリサとすずかがいました。

何でここに!?部屋で待ってるように言ったのに!

同時にこの好機をあの襲撃者が逃すはずがありません。

間違いなくこの隙を突いて飛び掛ってきているだろう襲撃者に視線を戻しながら私は叫びました。

「何やってるの二人とも!危険だから早く部屋に戻って!」「アリサちゃん!すずかちゃん!彼女は危険だ!上に逃げろ!」

・・・・・・あれ?

視線を前方に戻しましたが件の店員は一歩も動いていません。

こちらに攻撃してくる、最悪私を飛び越えて二人を人質にするかもしれないと思っていたのに。

しかも動かないどころか二人に逃げるよう呼びかけています。

まるで彼女達を助けに来たかのように・・・。

「「ん?」」

私と彼、二人同時に首を傾げます。

「・・・あ~今更なんだが一つ聞いていいか?」

「ど、どうぞ・・・」

すっごくバツが悪そうな感じで店員さんが質問してきます。

「君は・・・その、誘拐犯の一員なのか?」

「違います」

速攻で否定します。

あんな下半身テロリスト達と一緒にされるとは不本意ココに極まれりです。

「私からも質問いいですか?」

「あ、ああ」

先程のように、今度は質問する側される側が逆転した状態で同様のやり取りがなされます。

「あなたは、新手の襲撃者だったりします?」

「違う」

速攻で否定されてしまいました。

あんな下種と一緒にするなって顔での即答です。

あー、つまり?

私は当然ながら誘拐犯の仲間じゃないし彼も連中の増援じゃない。

てことは・・・。




ふんたーネタを入れましたが作者はモンハン2までしか知りませんw
あとハルナが恭也さん相手に互角にやり合えたのは所見殺し的な部分があります。
なのでとらハファンの皆様、「恭也はもっと強いだろ」とか怒らず笑って許してください。orz


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第12話「いい加減本編入れと言う友人からの無言の圧力により今度こそ本当の解決と芽生える友情と新たな出会い」

次回から新章だといったな、あれは嘘だ。
ごめんなさい!石投げないで!
本編突入する前に主人公のステータスとかの説明を挟みたいのでそれから本編に入ります。


遥か後方でパトカーのサイレンが響く。

あの後私達は迎えに来たアリサの家の執事、鮫島さんの運転するリムジンに揺られてすずかの家、月村邸に到着した。

「すずかっ!」

到着するなりすずかをそのまま大きくしたようなお姉さんがすずかに駆け寄ります。

今までの経験からして彼女はすずかのお母さんと見ました!

「お姉ちゃんっ!」

・・・外れです、母親ではなく姉でした。

彼女の姿を見るなり泣きながら駆けて行くすずか。

今まで若々しいお母さんばっかりに遭遇してきましたがここに来てまさかのフェイントとは、中々やりますね。

いやホント、てっきりすずかのお母さんかと思っていましたよ。

明らかに実年齢と乖離した前例を何件か目の当たりにしてますからね。

お姉さんの腕の中で泣きじゃくるすずかをみてようやく私も方の力が抜けました。

「ふぅ、これで一件落着かな。さて、それじゃあ・・・」

帰ってホテルでアニメでも見ようと思ったのですが・・・。

「待て」

予想はしてましたが案の定店員のお兄さんに捕まってしまいました。

 

機人長女リリカルハルナ

第12話「いい加減本編入れと言う友人からの無言の圧力により今度こそ本当の解決と芽生える友情と新たな出会い」

 

「君には聞かなきゃならない事がある」

何でしょう、今まで事情聴取する側だったせいか偉く新鮮な気分です。

「君は何者だ?何が目的で二人に近づいた?本当に犯人とは無関係なのか?あのビームのような物は・・・」

おぅふ・・・機銃掃射のように飛んでくる質問で射殺されそうです。

「恭也、そんな質問攻めしたら答えられないわよ・・・」

そう言って助け舟を出してくれたのはすずかのお姉さんでした。

「始めまして、すずかの姉の月村忍です」

「あ、ご丁寧にどうも。ハルナ・スカリエッティです」

すずかのお姉さん・・・忍さんが挨拶されたのでこちらも返す。

「・・・なんだか俺と扱いが違わないか?」

そう文句を垂れるお兄さん・・・恭也さんですがそれはお互い様です。

廃ビルからここまで、車内でずっと私の事監視してたでしょ。

警戒するのは分かりますけれど得物持ったまま睨まれればこちらも相応の態度に出ますよ。

こうして月村亭まで睨めっこ(ガチ)を続けることになり一緒に座ってたアリサとすずかがめっちゃビビってました。

「そうは言うけれど挨拶は大切よ?」

そうです、挨拶は大事です。挨拶を蔑ろにする輩はセプクすべしと古事記にも記載されているらしいですから。

「自分の名前も名乗らないであれこれ聞いてくるなんて失礼でしょ?ホラホラ、自己紹介っ」

「・・・高町恭也だ」

忍さんに促されて憮然とした様子で名乗る恭也さん。

「さて、それじゃ場の空気も和んだことだし・・・」

いや、和んでない。和んでないよ忍さん。

「お話、聞かせてくれるかしら?」

何やら先ほどの氷村君の様に目から不可視光線を照射しながら質問してくる忍さん。

微笑みながら投げかけられる妖しげな視線・・・なんというか、エロいです。

「いや、私にも守秘義務というものがありまして・・・あと申し訳ないけどその眼から出てるエロビームですが私には効かないんで・・・」

「え、エロくないしっ!いや、まって・・・私の目が効かないの!?てか分かるの!?」

「え?あっ・・・」

やばいです、自分で墓穴掘りました。

エロビームが効かないって、それ自分が普通の人間じゃないってカミングアウトするようなもんじゃないですか!

「・・・あなた、何者なの?」

忍さんが私から距離を取り身構えます。

「洗いざらい話してもらおうか・・・」

そんな忍さんを守る様に私の前に立ちふさがる恭也さん、手にはしっかり小太刀が握られています。

「・・・」

しかし先ほど言いましたが私も答えるわけにはいきませんので黙秘権を行使します。

総じてジリジリと緊張が高まっていく月村邸。

軽く意識を全周囲に巡らすとどうやら死角から誰かが私を狙っているようです。

恭也さん以外にも戦える人がいたことに驚き半分焦燥半分です。

これホントどうやって突破しよう・・・。

強行突破は無理ですね。

恭也さんに足止めされている間に死角から攻撃されてアウトです。

一目散に逃げるのも手ですが逃げ切れるかは微妙な所です。

何せ追手は目の前にいるリアルニンジャの恭也さんですから・・・。

そうなると忍さんを人質に?

論外ですね。

すずかの家族に危害を加えるなんてできません。

よしんばできたとしてもそのあとの恭也さんの怒りの矛先にゲイ・ボルグ(心臓を捧げよ)されるのがたやすく想像できます。

そんな八方ふさがりな状況下でにらみ合っていたのですが・・・。

「全く、何をやってるんだいハルナ?」

本来聞こえるはずのない声に振り向くと、やっぱりいるはずのない父さんがあきれ顔で立っていました。

「え?父さん、何で?」

「何でも何も帰りが遅いから探しに来たんじゃないか」

「うぐ・・・」

至極真っ当な回答にぐうの音も出ません。

「・・・あなたは、一体?」

そんな私とは裏腹に突然現れた父さんに忍さん達は困惑しています。

恭也さん突然気配も無く表れた警戒しているのか、忍さんを守りながら父さんにも意識を向けています。

「ん?ああ、突然の訪問で申し訳ない。私はジェイル・スカリエッティ、そこにいるハルナの父親さ」

それを聞いた忍さん達は「親子ぉ?」と怪訝そうな顔で私を見ます。

うん、分かるよ。似てないもんね。

ぶっちゃけ目の色と髪が癖っ毛な所くらいしか共通点ないもんね。

とりあえず言ってることは本当なので頷いておきます。

「何やらすっげー不名誉な事を心の中で言われた様に感じるが・・・まぁ、そう言う事だ」

「それで?その御父上が当家になんの御用でしょうか?」

警戒を解くことなく忍さんは父さんに問う。

「御用も何も、さっき言った通り娘の帰りが遅いから迎えに来たんだがね・・・」

「ふざけるなっ!」

期待していた応えが返ってこないことに痺れを切らしたのか、恭也さんが父さんに噛みつきます。

「ふざけるも何も事実だよ。それで探してみれば愛娘が見知らぬ男に刃物を向けられている・・・君こそ自分が何をしているのか分かっているのかね?」

対して父さんはおどけた仕草で返していますが、あれかなり怒ってますよね?

それが恭也さんに対してなのか一人で無茶した私に対してなのかはわかりませんが・・・。

「それは、彼女が・・・」

「うちの娘が君たちに何をしたのかね?ぜひ説明を願いたい。何某かの被害を被ったというのならば父親として謝罪しなければならないからね」

「ぐぅ・・・」

言葉に詰まる恭也さん。

よっぽど知られちゃ困る秘密があるようです、まぁ私も人のことは言えませんが・・・。

「回答無しかね?ならばこちらもこれ以上答える義務はないな」

そう言って父さんは踵を返そうとする。

「ま、待てっ!」

慌てて父さんを引き留めようとする恭也さん、しかし私と言う脅威が未だ健在なためか強くは出られないようだ。

「一つ、我々の名誉の為に言わせてもらうが私も、私の娘も、君たちに対して一切の悪意も害意も持ち合わせてはいない」

「・・・本当なの?」

父さんからの言葉に問い返す忍さん。

その表情はやはり訝し気に警戒したままです。

「勿論だよ、第一今回の一件は偶発的な物だ。君たちの能力に興味がないと言えば嘘になるが、リスクを冒してまで手にする価値は無い」

父さんがそう言うと恭也さんの目が鋭く細められる。

忍さん達の力に興味があるといったのが原因か、それともそのあとに価値が無いと貶されたのが原因か・・・。

どっちにしてもここまで煽るなんて、父さんやっぱり怒ってますよ。

「話は終わりだ。先ほども言った通り、君たちから何かしない限り我々は金輪際現れることも無い。では失礼するよ、帰ろうハルナ・・・」

そう言って今度こそ踵を返し正門に向かって歩き出す父さん。

後ろ髪惹かれる思いですが私も後に続きます。

「・・・・・・」

恐らくもう二度とこの地に立つことは無いでしょう。

でもその方がいいでしょう。

この世界では私の存在は異物そのもの、どんな厄介ごとを呼び寄せるか分かったものじゃありません。

今回恭也さんが私を警戒していたのだって私の普通じゃない部分に気づいたから、あの時私に注意がいってなければ翠屋で襲われた時に恭也さんの手で誘拐犯は撃退されていたでしょう。

今回は都合よく二人とも無事助かりましたが今後もそんなご都合主義が罷り通る訳がない。

だからこれでいいんです。

「さよなら。アリサ、すずか・・・」

決して届くことのない二人への別れの言葉を残して私は月村邸の門を・・・。

「待って!!」

潜ろうとしたところで後ろからかけられた聞き覚えのある声に足を止めてしまいました。

「すずか・・・」

振り向くとそこにいたのは予想通りすずかでした。

彼女のすぐ後ろにはアリサもおり、ここまで走ってきたのか、肩で息をする彼女達の額にはうっすらと汗がにじんでいます。

「すずかちゃん!?アリサちゃんまで!?」

「何してるのすずか!?危ないから下がって・・・」

「お姉ちゃんたちは黙ってて!」

下がらせようとする恭也さんと忍さんにすずかが一喝します。

「っ!?」

「なっ!?」

物静かな雰囲気の通り普段はあまり自己主張な少ない子だからでしょうか、大声を上げたすずかに二人は驚いたまま固まってしまいます。

「どうしてハルナちゃんを疑うの!?ハルナちゃんは私たちを助けてくれたんだよ!!?」

「すずかっ!」

最初こそ驚いた忍さんですが、すずかが疑念を訴えていると今度は彼女が大声を上げます。

「っ!?」

「あなただってわかっているでしょう?私達の秘密は知られてるわけにはいかないの」

「でも、でも・・・」

諭す様に説明する忍さんにすずかは涙目になりながら食い下がります。

むぅ・・・他所様の家庭環境に首を突っ込みたくはありませんが、すずかが泣いているのにこれ以上耐えられませんでした。

「・・・父さん」

私が何が言いたいのか分かったのでしょう。

父さんはすごーく深いため息をついてから頭をかきます。

「はぁぁ、バレたらただじゃすまないが・・・私ももう見てられないのは同感だ。ハルナにまかせるよ」

「うん、ありがとう・・・」

苦笑しながらそういう父さんにお礼を言いながら私は踵を返しすずかたちの間に立ちます。

「ハルナちゃん?」

「ひとの家族関係拗らせたまま帰るのも忍びないもんね。話すよ、私達が何なのか」

意外だったのか忍さんも恭也さんも驚いた顔をします。

これが全部演技で私たちが事情を話す様に誘導していたのだとしたらアカデミー賞ものです。

「ハルナちゃん・・・」

「ただし!こっちも話すんだからそっちの事情も嘘偽りなく説明してもらいます」

機密漏洩上等で助けたのにあそこまで警戒されたんです、事情を説明してもらわなきゃ収まりません。

「・・・わかりました、館で話します」

「忍!?いいのか・・・?」

「せっかく話してくれるっていうんだから聞こうじゃない、勘だけどリスクを冒す価値はあるわ。それに・・・」

そう言うと忍さんはクスリと苦笑します。

「すずかの言う通り、彼女は妹を助けてくれた。危険を顧みずにいね、それを信じてみようと思うの」

 

改めてすずかの家、月村邸の客間に通された私達。

勧められたソファーに座るとふわりと身体が沈みます。

「すずかってやっぱりお嬢様なんだねぇ・・・」

軽く見渡せば見るからにお金かかってそうなお洒落な室内に目を奪われます。

これだけお嬢なら変な能力抜きに誘拐されますね。

「それで?あなた達の事、話してくれるって本当?」

向かいのソファーに座るとさっそく忍さんが切り出してきます。

彼女の隣にはすずかとアリサが座り、反対側には恭也さんが何かあればすぐ飛び掛かれる状態で立っています。

「はい。信じてくれるかはそっち次第ですが・・・」

何やらメカっぽい駆動音がするメイドさんが入れた紅茶を一口すすります。

うん、美味しい。

「どういう事?」

「実は私、地球とは違う異世界から来た魔法少女なんですよ」

「おいっ!ふざけるのも大概にしろっ!」

包み隠さず白状したら案の定恭也さんが声を上げます。

「ほらー、やっぱり信じてくれない」

「恭也は黙ってて。それで?その異世界人さん達は何が目的で地球に来たのかしら?」

忍さんに諫められ渋々恭也さんは下がります。

「観光、って言っても信じてもらえませんよね?」

「・・・っ!」

またもや恭也さんが身を乗り出しますが忍さんに睨まれて身を引きます。

「あーもーっ!分かってますよっ!私の発言が恭也さんを煽ってることくらい・・・でも本当なんだから仕方ないじゃないですか!」

テーブルをバンバン叩きながら私は抗議します。

「私がミッドチルダっていう異世界出身なのも時空管理局っていう司法機関に所属してるのも執務官なんて不相応な役職に就いてるのも全部本当の事なんですから!」

見た目相応に駄々をこねる私に忍さん達はポカンとしています。

「まぁ、ハルナの言っていることは事実だよ。我々は次元の海の向こうに存在する世界、ミッドチルダからやってきた。そこをはじめ複数の世界を守護する司法機関、『時空管理局』に所属しているのも事実だ。そこでハルナは執務官、事件捜査の指揮・統括などを行う役職に就いている。ちなみに私は本局の主任医務官だ」

父さんの補足を受けて忍さんはハッと我に返ります。

「ちょっと待って、さっき複数って言ったわよね?そのみっどちるだ、だっけ?そこ以外にも異世界ってあるの?」

「ああ、あるよ。管理局の司法が及ぶ管理世界が35、司法が及ばない管理外世界が150はある。ちなみに地球は97番目に発見された管理外世界だ」

そのスケールのデカさに皆は再び呆けます。

「その管理世界では魔法が主流技術でね、って言ってもメルヘンなんて欠片も無いSFなノリだけど・・・簡単に説明すると空気中のエネルギー、魔力を呼吸するみたいに体内に取り込んでAI制御のステッキで使用者のイメージ通りに変換して魔法を使うんだ。恭也さんは私の魔法見たでしょ?」

「・・・待て、あのとんでもないビームが魔法なのか!?」

私に聞かれて私との戦闘を思い出した恭也さんが戦慄します。

「え?何?ビームって何っ!?ねぇ、ここでそれやってもらえない?」

それとは反対に忍さんは目をキラキラさせて私の方に身を乗り出します。

「いや、さすがにここで打つのは危ないから・・・」

気圧されながら私がそう言うと「ちぇー」と言ってを膨らませて見せます。

「と言う事は壁や天井から刺が生えてきたのも魔法なのか?」

あー、やっぱりそっちも気になりますよね・・・。

どうしようと父さんの方を見れば肩をすくめて頷きます、どうやらこれも私に任せるらしいです。

ちゃんと話すって約束しちゃいましたからね、仕方ありません。

「そっちは魔法じゃなくて私固有の特殊能力です」

「特殊能力?」

その言葉を着た途端、忍さん達の警戒心を強めます。

氷村某の件もありますし、彼女達があそこまで頑ななのも不思議な力絡みなのかもしれません。

「・・・実は私、普通の人間じゃないんです」

「どういう事・・・?」

ますます身構える月村家ご一行。

もしかして忍さん達も普通じゃないんでしょうか?

「戦闘機人、分かりやすく言うとクローン技術で製造された戦闘用サイボーグなんですよ、私」

「・・・はい?」

先ほどまでとは打って変わって、皆さん頭に『?』を浮かべてます。

どうやら皆さんが予想していたもの物と私の出生の秘密は違う結果だったようです。

「昔違法研究者だった私がハルナを生み出してね、色々あったがこの子には人として生きて欲しくて足を洗ったんだ。今は真っ当に生活しているよ、後ろ暗いことはもうやっていないから安心してくれたまえ」

「「「「はぁ・・・」」」」

忍さんや恭也さんだけでなくすずかとアリサも半信半疑です。

まぁこの人たちにとって戦闘用サイボーグって言ったら元カリフォルニア州知事な某筋肉モリモリマッチョマンなアクション俳優みたいなイメージでしょうからね。

「ホントですよ!鉄のボディに熱血ハートなサイボーグ美少女ですよ!ロケットパンチとかだって飛ばせるし・・・」

「それ本当!?」

ロケットパンチの下りで再び忍さんがすんごい食いついてきました。

「は、はい。今は右腕だけですけどアタッチメント換装でほかにも色々・・・」

「撃ってロケットパンチ!今すぐ!ここで!」

これまでと打って変わってぐいぐい来る忍さんにビビっていると恭也さんが止めてくれました。

「すまないな、忍はメカオタクでな、もしかして忍の目が効かなかったのもそれが理由か?」

「え?あ、はい。なんか目から不可視光線が出てたんで網膜にフィルターかけて無効化しました」

「なるほど、だからさっき忍の魔眼の事をエロビームと・・・」

「だからエロくないしっ!」

何はともあれ私たちが異世界から来たことは理解してもらえたようです。

「てなわけで今度はそちらの秘密を教えてプリーズ」

「プリーズ、プリーズ」

そう言ってバッチコイとばかりに両手で手招きする私と父さん。

「・・・うん、あなた達間違いなく親子ね」

「だな、息がぴったりだ」

どうやらまだ父さんが私の父だと信じていなかったようです。

「・・・解せぬ」

某子安ボイスの聖剣を引き抜いた人のような顔をする父さん。

そんな父さんをよそに忍さん達はすずかを見つめます。

「いいのね、すずか?」

「・・・うん、ハルナちゃんはちゃんと話してくれたんだもん。私もそれに答えたい」

忍さんの問いにすずかは決意を新たにします。

「・・・・・・」

その隣でこれまで黙って聞いていたアリサも、親友の雰囲気に充てられ固唾をのみます。

「じつはね、私も人間じゃないの・・・」

 

sideすずか

「・・・へ?」

私の発言にハルナちゃんと隣にいるハルナちゃんのお父さんがポカンとしている。

隣を見ればアリサちゃんも同様だ。

正直に言うとまだ怖い。

私が秘密を離した後、三人がどんな目で私を見るのか・・・。

嫌われるかもしれない。

怖がって、気味悪がられて、拒絶されるかもしれない。

それが、怖くてたまらない。

でもハルナちゃんだって話してくれたんだ。

異世界の事、魔法の事、自分の生まれの事・・・。

彼女だって不安だったはずだ、化け物扱いされて拒絶されるかもしれないのに、それでもちゃんと話してくれた。

なら、私だって・・・っ!

「夜の一族って言ってね、簡単に言うと吸血鬼なの。生まれ持って力が強かったり不思議な力が使えたり。あとね、定期的に血を飲まないの身体の具合が悪くなっちゃうんだ・・・」

私が言い終わってもハルナちゃんたちは何も言わない。

きっと本当の事を知って私の事が怖くなったんだ。

恐れていたことが本当になったと分かり辛くて悲しくて、胸が張り裂けそう・・・。

「分かったでしょ?私は人の血を吸う・・・」

「すっげーっ!!」

俯いていた私はハルナちゃんのその言葉に思わず顔を上げる。

そこにいるのは恐れなんて微塵も感じていない、キラキラした目でこちらを見つめるハルナちゃんがいた。

「マジで吸血鬼なの!?すごいじゃん!ねえねえ、不思議な力って何ができるのっ?霧とかコウモリに変身したり?もしかして某エロゲみたいに666匹の動物を出せたりとか・・・!」

とっても興奮した様子で立て続けに質問してくるハルナちゃんに私は困惑します。

「え?なんで・・・?私の事、怖くないの?」

これまでと変わらないハルナちゃんに私は質問します。

「え?何で?吸血鬼だよ!ノスフェラトゥ、ノーライフキングだよ!カッコいいじゃない!」

うん、全然怖がってません。

「なんで?何で怖くないの!?私吸血鬼なんだよ!血を吸う怪物なんだよ!」

私は何を言ってるんだろう。

嬉しいはずなのに、変わらずにいてくれるハルナちゃんに私は思わず声を上げます。

「・・・すずかは私達が拒絶すると思ってた?」

「だって、わたし・・・怪物だから・・・」

私がそう言うと私の顔の前にハルナちゃんの手が伸びてきて。

「てい」

「あだっ」

デコピンを食らいました。

さっき氷村優太にした時よりは手加減してくれたみたいですが滅茶苦茶痛いです。

「全く、すずかは心配性だな~。まぁ確かに、普通の人だったら驚いて怖がるかもしれないけど、私達普通じゃないから」

そう言って私から視線を逸らすハルナちゃん。

つられてそっちを見れば私の隣でアリサちゃんがすっごく不機嫌そうな顔で私を見ていました。

「すずかは自分の事怪物だっていうけどさ、すずかの言葉が本当ならアリサなんてツンデレだし、私に至っちゃ戦闘機人だよ?半分メカ、怪物どころか生き物かどうかすら疑わしいナニカだよ?」

「ちょっと待ちなさい!ツンデレってなによ!?ツンデレってっ!?って、そうじゃなくて・・・」

ハルナちゃんの言に鋭いツッコミを入れてからアリサちゃんは私に向き直り・・・。

「・・・うりゃ」

「ふにゃっ!?」

両方のほっぺを思いっきり引っ張ってきました。

「ひたたた・・・っ」

「じゃあ何?友達になってからずっとバレたらどうしようって考えてたの?バッカじゃないの!?そんなことぐらいで友達止めるような小さい器してないわよ!」

そう叫ぶと両手を離し私を抱きしめるアリサちゃん。

「もっと信じなさいよ。私達、友達なんだから・・・」

その言葉を聞いた瞬間、私は溢れる涙を止められなかった。

「っ!うん・・・うんっ!」

私はいつの間にかアリサちゃんを抱きしめ、彼女の肩を借りて泣いていました。

 

「落ち着いた?」

「うん、ゴメンねアリサちゃん」

よく見るとアリサちゃんの目も真っ赤です。

私の為に泣いてくれる友達がいる、それがたまらなく嬉しかった。

「ハルナちゃんもありが・・・」

ありがとう、そう言おうとした私は言葉を失いました。

「ヴぇえええええええ~」

「ヴぁああぁぁああああぁ~」

テーブルを挟んだ向かい側でハルナちゃんとハルナちゃんのお父さんが号泣してました。

「二人が泣いちゃった直後にもらい泣きし始めちゃったのよ」

そう説明するお姉ちゃんの顔は引きつっていました。

隣の恭也さんも若干引いています。

「グスッ、ヂ~ンっ!ふぅスッキリした・・・」

さんざん泣いてようやく落ち着いたハルナちゃんは鼻をかんでから一息つきます。

「ぐず・・・どうさん、ずごい顔」

「はるなだって、まだ鼻水たれてるじゃなか、ズズっ・・・」

「・・・フフッ」」

ハルナちゃん親子のやり取りを見てたら不思議と笑みがこぼれてしまいました。

「あ、すずかようやく笑ってくれたね」

「えっ?」

そう指摘しながらハルナちゃんは微笑みます。

「うんうん、やっぱすずかには深刻な顔よりも笑顔の方が似合ってるよ」

その言葉に私の心はキュンと締め付けられるように感じます。

「ハルナー、カッコいいこと言ったところで悪いけれど・・・まだ鼻水垂れてるから」

そう、ハルナちゃんの鼻からツツーっと垂れる鼻水が全てを台無しにしていました。

「なんですとぉ!?」

慌ててゴシゴシと鼻を拭くハルナちゃんに私はまたしても吹き出してしまいました。

「フフッ、あははっ・・・」

つられて周りのみんなも笑い出します。

暖かい場所・・・大切な家族と友達に囲まれた優しい世界。

そっか・・・ここが、私の居場所なんだ。

「ハルナちゃんもありがとう」

私を助けてくれたこと、私の秘密を受け入れてくれたこと、その両方にお礼を言います。

「ふっふっふ、礼には及ばないのだよ」

エヘンと胸を張りながらそう返すハルナちゃん。

「その、それでね・・・?」

「うん?」

私はハルナちゃんたちにもう一つの秘密がある事を離します。

「私達夜の一族はね、秘密を知られたら記憶を消すか、もしくは知った人とパートナーになって秘密を共有する決まりがあるの」

その言葉にアリサちゃんとハルナちゃんが顔を見合わせます。

「えっと、パートナーって、その・・・・」

「あれだよね?恋人とか嫁とかそんな感じ?」

ハルナちゃんのたとえに私はドキリとします。

「えっと、違うの!いや、違っては無いけれど・・・その、友達とかそういうのだよ」

私が答えると二人はホッとします。

「そ、そうよね。友達よねっ!」

「いや~まさか同性から告白されたらどうしようかと思ったよ。心の準備ができてないもん」

「・・・まてまて、おかしいでしょ?じゃあ何?心の準備ができてたらOKなの?おかしいでしょ!?」

「何言ってるの?女の子同士なんてリリカルな世界でなら普通でしょ?」

「普通じゃないから!てかリリカルとか訳わかんないから!」

二人とも仲いいなぁ・・・。

「まぁ、アホなハルナは置いといて、水臭いわよすずか。私達、とっくに友達じゃない」

そういってアリサちゃんは私に手を差し出します。

「これからもよろしくね、すずか」

「っ!うんっ・・・!」

嬉しさのあまり私は飛びつくようにアリサちゃんの手を握り返しました。

「これで私はオッケーね、あとは・・・」

そう言うとアリサちゃんは私の背中を押してくれます。

「・・・ハルナちゃん」

ハルナちゃんの前に立つ私・・・。

同時にハルナちゃんもソファーから立ち上がります。

「その、さっき説明した通りなんだけど、私、吸血鬼だけど・・・これからも、友達でいてくれる?」

勇気をもって私はそう言います。

「・・・・・・」

そんな私にハルナちゃんは笑顔で・・・。

「やだっ!」

拒否してきました。

SideOut

 

「・・・え?」

私の答えに驚いたのか、すずかは目が点になっています。

「ハ、ハルナちゃんっ!?」

「ハルナ!あんた何言ってるの!?」

すぐさま忍さんやアリサから驚きと非難の混じった声が上がります。

「・・・ハルナちゃん、どうして・・・」

数秒の間をおいて、すずかの顔が見る見るうちに絶望に変わっていきます。

むぅ、これは私の意図が全く伝わっていないようです。

隣を見れば父さんが頭を押さえてヤレヤレとため息・・・。

言葉が足らなかったと言いたいようです。

「すずか、よく聞いて」

なのでちゃんと説明しましょう。

「私はね、秘密を守る為とか一族の決まりだからとか・・・そんな理由ですずかと友達になるのは嫌・・・」

私はそう言いながらすずかの手をギュッと握った。

「そんな事抜きにあなたと、すずかと友達になりたい。すずかが好きだから友達になりたいの・・・」

すずかの家にもいろいろあるのでしょう。

でも、友情や愛情っていうものに理由なんていらないんです。

先ほどと同じように、すずかは一瞬硬直したと思ったらボロボロと泣き始めてました。

「す、すずか!?」

まさかの泣かれるとは思ってなかったのにマジ泣きされ私もうろたえます。

「わ、わたしも・・・」

拭けども拭けども流れ落ちてくる涙をひたすら拭いながらすずかが口を開きます。

「わたしも、ハルナちゃんが好きっ、ハルナちゃんと友達になりたいっ!」

どうやら彼女にも私の考え、思いが伝わったみたいです。

「うん、私も」

そう言うとすずかは泣きながら私に抱き着いてきました。

「その、さっきは言葉足らずでゴメンね・・・」

私の謝罪は聞こえなかったのか、すずかは私の胸でわんわん泣き続けます。

そんなすずかを落ち着かせるように、優しく頭を撫でる私。

この瞬間の事を私は一生忘決してれない。

マリーに続いて二人目の、そして生涯で一番の親友であるすずかと友情を結んだこの瞬間を・・・。

「それにしても、すずかっていい匂いするな~」

「あんたね・・・せっかくいいシーンなんだからオチをつけるんじゃないわよ!」

あ、あとアリサとも親友になりました。

「あたしはついでかっ!って、そうだ。ハルナ、結局あんたあの時何したのよ?あいつの目が急に効かなくなったじゃない?」

あいつ?あぁ、あの氷村ふんたーのギアスもどきか。

「あれ?目に内蔵されてるレーザー照準器であいつの角膜傷つけたの」

普通に使えばただのレーザーポインターですがパワーを上げれば目くらましや微小ですが目を傷つけることもできます。

「・・・って、エロビーム使ってるのあなたじゃない!」

私の説明を聞いてた忍さんが突然声を上げます。

「え、エロくないもん!第一これビームじゃなくてレーザだもん!」

忍さんの失礼な物言いに異議申し立てをしていると再びすずかが笑みを零します。

もしかしたらすずかに笑ってほしくて、自分から笑いを取りに行ったのでしょうか。

なら、同じくお姉ちゃんな私としてはそれに乗ってみたいと思います。

「第一、忍さんのさっきの目!なんかエロかったです!ね?恭也さん!?」

「え?俺っ!?」

「恭也!エロくないわよね!?」

こうして私と忍さんは恭也さんも巻き込んでコントを続けます。

それを見たすずかとアリサが笑い転げているのを見た忍さんの顔はとても嬉しそうでした。

ちなみにこのコント、さんざん弄繰り回された恭也さんが最終的にキレて神速なチョップを私たちに振り下ろして幕を閉じましたとさ、チャンチャン。

 

「それじゃあ私は先に戻るよ」

月村邸の玄関で靴を履きながら父さんは言います。

本来は父さんと一緒に宿に帰るつもりだったんですがすずかが話してくれないのでお泊りすることになりました。

「うん・・・父さん、いろいろごめん」

情報漏洩もそうですがかなり心配させたみたいですから。

「全く、そう思うんだったら今度からは一言言ってから行動してくれよ?」

「うん」

私は返事すると父さんは苦笑しながらワシャワシャと頭を撫でてきます。

マッドで変態で色々暴走しがちですが、やっぱり父さんは私の大切な父さんです。

「それじゃあ娘の事をよろしくお願いします」

「いいえ、こちらこそ。本日はありがとうございました」

忍さんとあいさつを交わしてから父さんは玄関の扉を開けます。

「ああ、例の件、今週中に済ませておきます」

「分かりました、その折はよろしくです」

・・・何のことでしょう?

泣き止んだすずかとお話しているときに二人で何やら話していましたが・・・。

結局何の事か分からないまま二人はいい笑顔でサムズアップし合ってから父さんの退出と共にお開きになりました。

その後、私はすずかの部屋ですずかとアリサと一緒に話してゲームして、簡単な魔法を見せたりしてから一緒にお風呂に入り、それから三人でベッドで寝ました。

入浴シーンは各自でご想像ください、たぶん湯気や謎の光が仕事して胸とか大切な所とかは隠してくれたはずです。

あと一緒に寝ましたが性的なシーンは一切ありません、本作品は健全な全年齢向け小説ですのであしからず。

「ねえ、ハルナちゃん・・・その、さっき女の子同士でも恋人なれるって言ってたの、本当?」

・・・全年齢向け、だよね?

 

朝・・・。

「・・・うん、全年齢向けだった」

「何言ってるのよ?」

あれから本気の目をしたすずかを説得してなんとか友情で思いとどまらせることに成功しました。

「もう行っちゃうの?」

悲しそうな顔で聞いてくるすずか。

「うん、今から行かないとたぶん今日中に帰れないから・・・」

現在午前10時ちょい過ぎ。

今から宿に帰って荷物をまとめて予定の回収ポイントで巡回中の次元航行艦に拾ってもらってそこから転送ポートで近場の管理世界に転送、そこから更に世界間連絡船を乗り継いでミッドチルダに到着する頃には夜になっています。

仕事は明日から、ちなみに巡回艦に拾ってもらえなかったら一週間は地球に足止めなので残念ながらこれ以上長居はできません。

「そっか・・・また、会えるよね?」

不安げにきいてくるすずか、それを見て私は昨日したように優しく頭を撫でます。

「んっ」

「大丈夫、また遊びに来るよ。なんてったって私らは親友、ズッ友だもん」

「・・・うんっ」

私がそう言うとすずかも嬉しそうに頷きます。

滅茶苦茶笑顔がまぶしいです。

「必ずまた来る、約束だよ」

「うん、ハルナちゃん・・・」

「・・・あんた達さぁ、いちゃつくのはいいけれど・・・時間大丈夫なのハルナ?」

何やらすずかと二人だけの世界に足を踏み込みかけていたところで横からアリサの声を聞き、現実に引き戻されました。

しかし、時間・・・?

「へっ?んん・・・?あぁっ!」

そこで帰りの便が迫っていることを思い出す私。

「ヤバイっ!じゃあ二人とも、そろそろ行くからまた逢う日までアリーデヴェルチ!」

そう言って二人に背を向け走り出します。

「ハルナちゃーん!またねー!!」

「たまには連絡しなさいよーっ!」

背後から見送る親友たちの声が聞こえますがハードボイルドなハルナちゃんは決して振り返りません。

決して寂しくてちょっと泣きそうになってるからじゃありませんよ!

暫く全力疾走し、月村邸から大分離れ、最初に降り立った海鳴の地・・・海鳴大学病院前に到着します。

「・・・おや?」

そしてバスの時間に間に合ったことに安心しているとそれが目に入りました。

栗色のショートヘアの可愛らしい女の子、多分歳はすずかやアリサと同じくらいでしょうか・・・。

しかし最も目を引くのは彼女が座っている物、車椅子です。

脚が悪いのかその美少女は車椅子に座って異動していました。

まあ、病院の前です。

脚の診察に来た人かもしれません。

その車椅子のタイヤが歩道の段差に引っかかり身動きが取れなくなっています。

「んんっ、ふんぬ・・・!」

頑張って脱出しようと試みますが中々うまく行きません。

時間が悪いのか、周囲にいるのは彼女を除いて私だけです。

この場合とる行動は一つです。

「手伝おうか?」

そういいながら私は美少女に近づきます。

「へ?ああ、おねがいします」

すると目の前の美少女は関西弁で返してきます。

ほんわかしたイントネーションからして大阪ではなくて京都の方の子でしょうか。

「よっこいしょっと・・・」

手押しハンドルを握り、ちょっと下に力を入れると車いすの前輪が少し浮き上がります。

そのまま前に押し、車止めの上に前輪が乗ったのを確認するとハンドルを持ち上げながら前に押します。

無事後輪も歩道に乗りました、大丈夫そうですね。

「助かりました、ほんまおおきにな」

「ふっふっふ、礼には及ばんのだよおぜうさん。病院まで行くの?なら正面ゲートまでご一緒するよ?」

乗り掛かった舟です、どうせすぐそこなんだから最後までエスコートしましょう。

「ホンマにっ!?やったぁ!」

すぐさま嬉しそうに了承する女の子。

知らない人にホイホイついて言っちゃダメでしょうに、この子の将来が心配ですよ。

「でもよかったん?バスに乗ろうとしてたんじゃ・・・」

病院の正面入り口に就いたところで女の子が聞いてきます。

「大丈夫ダイジョーブ、さっき時刻表見たけど駅行のバスが来るまでまだ余裕あるから」

自信満々に言う私に女の子は訝し気な表情を浮かべます。

「ん?変やな、私よくこの時間にここ通るけどいつもバス今頃来とるで?」

「・・・へ?」

地元民からの有力な情報を得た直後、バス停の方からディーゼルエンジンの音が聞こえてきました。

「・・・もしかして、平日の時刻表見てたんとちゃう?」

ちなみに今日は日曜日です。

「うわああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!」

ヤバイ、超ヤバイです!

今ここであのバスを逃したらミッドに帰れません。

一週間すずかのお家でお泊りコースです。

いや、それ自体は嬉しいんですが帰った後で始末書の山脈に挑まなければならなくなります!

「ゴメン、それじゃあね!あぁっ!待って!置いてかないでぇっ!!」

既にお客さんの乗り降りを終え、走り始めたバスを追うべく、私は全力で走り始めました。

 

Side女の子

「なんや、えらい元気な子やったなぁ」

ヒーローみたいに颯爽と現れたと思ったら台風みたいに慌ただしく去って行った。

「はやてちゃんっ」

「あ、石田先生!」

そこでちょうど出迎えてくれた主治医の石田先生に車いすを押され私たちは病院に入っていきました。

「そう言えば、名前聞きそびれてしもうたわ・・・」

もしまた会えたら、その時は改めて御礼を言って、それからちゃんと名前聞かんとな。

SideOut

 

「そう言えば父さん?」

ミッドに向かう連絡船のキャビンで私は父さんに質問します。

「ん?何だい?」

「昨日忍さんと何話してたの?」

私がすずか達と友好を深めているとき、父さんは忍さんと何やら話していました。

帰る時もかなり仲よさそうでしたし。

「クックック・・・あれはね、ハルナの改造計画を練っていたのさ!」

・・・うわぁ。

「何でそんな嫌そうな顔をするんだい?」

「だって、忍さんてなんか父さんと同じにおいしない?」

私が戦闘機人だって知った途端かなり食いついてきたし、あの人絶対マッドだよ。

「勿論だとも!彼女には私と同じ匂いを、そして私にはない発想を感じ取った!私と彼女が組めばそれはもうすんごい新兵器が生み出せるはず!」

後日、とある事件で父さんと忍さんの共同開発した義手を使ったところ、忍さん考案の自爆装置のせいでなんかもう色々大変なことになりました。




車いすの少女、一体何神はやてなんだ・・・(棒)


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第12.5話「総集編、別に読まなくても本編には何ら影響はないよ。でも読んでもらえたら嬉しいな、作者が・・・」

予告通り総集編、と言うか設定集的な何かです。
今回もまたよそ様の作品と設定がクロスしています。
拙かったらその部分は削除しますのでご報告ください。

2018年6/13
妹たちの誕生年を修正しました。


機人長女リリカルハルナ

第12.5話「総集編、別に読まなくても本編には何ら影響はないよ。でも読んでもらえたら嬉しいな、作者が・・・」

どうも読者の皆さん、ハルナスカリエッティです。

はい、そんなわけでやってきました総集編。

今回は私の設定やらこれまでのあらすじを年表にしてまとめていこうと思います。

てなわけでドン。

 

ハルナ・スカリエッティ

出身地:次元世界のどこかにある秘密研究所(一応書類上はミッドチルダのクラナガン)

生年月日:新暦50年6月5日、16歳(アニメ1期開始時)

所属:時空管理局地上本部首都防衛隊→同、特別捜査班(ゼスト隊)→本局遺失物管理部機動2課第2特別捜査隊

家族構成:父2人、母1人、妹14人、祖父3人・・・もう訳わかんないなこれ。

魔導士ランク:空戦AA

デバイス:マギア・イェーガー

タイプ:近代ベルカ式、射撃型

魔力光:白に近い青

IS:フラスコオブアルケミスト(錬金術師の試験官)

無機物元素変換、無機物(有機物でも木材などの加工されたものは可)を分子レベルで作り替える。

  例鍋をフライパンへ、ベニヤと釘を犬小屋へ、等。

  構造が分かれば電子回路の様な複雑なものも精製可能。

 

父さんであるジェイル・スカリエッティが最高評議会からの指示を受けてとある世界の秘密研究所で製造し新暦50年に誕生。

当初父さんは私をベースにナンバーズを量産して時が来たら彼らに反逆する積もりだったようですが、当時赤ん坊だった私をみて心変わりがあったのか反逆ではなく彼らの手の届かないところへの逃避行に切り替えました。

でも私が常日ごろ妹が欲しいって言ってたせいかナンバーズの研究は続けていたらしいです。

性格は見ての通り天真爛漫、文武両道才色兼備なパーフェクト美少女です!

・・・おいちょっと待て、今アホの子って言ったやつ出てきなさい。

コホン、性能は父さん曰く、『原初にして究極の戦闘機人』を目指したらしく、えらくハイスペックです。

古代ベルカの騎士の遺伝子と父さん自身の遺伝子を融合させたらしく生まれて間もないのにAランクの魔力持ち、現在は訓練や実戦で経験を積んでAAまで成長しました。

魔法だけでなくSランクの肉体強化と高出力のレリックジェネレータのおかげで純粋な身体能力も高いです。

ただ放熱関係の問題は未だクリアーできていないので考えなしに全力かどうしたらすぐオーバーヒートしてしまいます。

いうなれば滅茶苦茶足の速い短距離ランナータイプです。

長期戦が予想される場合はできるだけ力を絞って戦うためにあまり活躍はできないかもですが最終決戦になれば本編主人公にも負けないくらいの暴れられます。

ヴィジュアルは父さん譲りのツンツンはねたくせ毛、ただし色は紫ではなく銀髪です。

何でもベースにしたのがチンクと同じ遺伝子だったらしいのでくせ毛な所以外は結構彼女に似ています。

と言うのも作者がリリカルなのは小説を書く際銀髪眼帯のロリッ子オリ主を出そうとしていたそうなんですが、数年構想を練っているとアニメ3期・・・リリカルなのはStrikersがテレビ放送されそこにいたのは銀髪眼帯の幼女・・・チンクがいるじゃありませんか!!

「やべぇ!公式に先越された!いや、まてよ・・・チンクさんの姉のオリジナル戦闘機人ておいしいキャラじゃね?」

そんな安直な発想のもとに小説執筆は始まり、艦これとガルパンにはまり忘れ去られること数年・・・HDの整理中に発掘された小説がこうして投稿されることになったのです。

バリアジャケットは某ジャーマンな国の将校軍服がモデル。

プリーツスカートと乗馬ズボン、どっちがいいか検討中。

CVですが作者の脳内では園崎未恵さん(501ラジオでやったブリブリなトゥルーデちゃんの方w)

まだ暫定なのでむしろあの人じゃね?という推し声優がいたら言ってください。

 

次は私の誕生から現在に至るまでの時系列をまとめてみました。

 

 

新暦50年

ハルナ誕生、これにより人と機械の融合技術が劇的に進歩する。

 

53年

ハルナ、前世の記憶を思い出す。家族が道を踏み外さないようにするために立ち上がる。

 

54年

マギア・イェーガー完成。

 

スカリエッティの密告により秘密研究所が管理局の強制捜査を受ける。

 

ハルナ、第22管理世界「スキピア」に転送されるもロストロギア『闇の書』の守護騎士に襲撃されリンカーコアを蒐集される。

時空管理局艦船『エスティア』及び『アースラ』、闇の書を封印。同世界でハルナを保護するもエスティア艦内にて封印していた闇の書が暴走。艦長のクライド・ハラオウンと共に脱出する際にハルナ重傷を負う。

 

スカリエッティと最高評議会による『第1回ハルナの親権争奪戦』開催。

 

ハルナ、ミッドチルダの病院に入院。最高評議会のメッセンジャーであるジョン・田中からの要請で管理局に入局する。

 

55年

ハルナ退院、すぐさま陸士校で短期訓練プログラムを受講。履修後士官育成プログラムを受講。執務官に就任。

 

レジアスとゼスト、地上事件における人員・戦力不足に悩む。

 

スカリエッティ、ナンバーズ製造の為にタイプゼロ開発計画に参加。

ウーノ、ドゥーエ誕生。

 

56年

トーレ誕生。

 

58年

ギンガ誕生。

 

59年

チンク、クアットロ誕生。

 

60年

ディエチ、スバル誕生

 

マリエル・アテンザ、違法魔導士捕縛の際、ハルナを庇い負傷、ハルナの手で直接病院に搬送される。

 

クライドとレジアス、秘密裏にハルナを見舞う。レジアス、戦闘機人計画の破棄を決断。

 

『第38回ハルナの親権争奪戦』開催。

 

61年

ハルナ、ナカジマ家の庇護下に入る。ゼスト隊に配属される。

 

セイン誕生

 

62年

 

ハルナ、違法研究所の強制捜査中父、スカリエッティと再会。

スカリエッティ、違法研究を罪に問われるも恩赦により減刑。5年間の管理局就労を命じられる。

 

ノーヴェ、ウェンディ誕生

      

63年

オットー、ディード、セッテ誕生。

これまでの4人に加えクイントも参加した『第47回親権争奪戦』が開催、セッテを除く年少組がナカジマ家に引き取られる。スカ家、ナカジマ家の隣に引っ越し。

 

ハルナ本局へ移籍、遺失物管理部機動2課第二特別捜査隊に配属される。

ハルナの始末書の数がこれまでの倍になる。

 

次元犯罪者集団が管理外世界へ逃亡、現地の戦争に傭兵として参加。

ハルナ、ISAF(国際治安支援部隊)として現地に派遣、円卓と呼ばれる戦域で現地軍の少女士官と共闘する。

 

64年

ハルナ、一年の任期を終えミッドチルダへ帰還。

ハルナ、父スカリエッティと共に休暇を取り地球へ、コミケ初参加。

ハルナ、アリサとすずかに出会う、翠屋で友好を深めるもアリサとすずかが誘拐される。

アリサとすずか、ハルナに救出される、すずか、自身の秘密をハルナとアリサに話す。

ハルナ、すずかとアリサと親友の契りを交わす。翌日ハルナ、車いすの少女に出会う。後にミッドへ帰還。

 

・・・うん、時系列にしてみたはいいですがえらくハードです。

補足ですが妹たちの誕生はポッドから出た時を指します。

なのでその時点である程度の知識を持っています。

ちなみにウーノ、ドゥーエ、トーレですが、結構成長した状態で生まれています。

何でも育児に自信が無い父さんが助手を欲したとか、おかげで年長三人ともミルクもおしめ交換もプロベビーシッター級です。

そのせいなのか末っ子のセッテがトーレから離れたがらないので引き離すのも可哀想と言う事で彼女はスカ家に残ることになりました。

まぁ、家が隣同士なので何かあってもすぐ駆け付けられるんですけどね、お金がたまったら二世帯住宅に建て替えたいです。

 

『機動2課について・・・』

遺失物管理部はアニメ本編同様ロストロギア関連の事件や事故を担当する部署です。

本作オリジナル設定ですが機動1課は実際に遺跡等に潜りロストロギアを回収する探索、発掘部隊。

機動2課はロストロギアの違法取引や売買及び不法所有、ロストロギアを用いた犯罪に対処するための強制執行能力の高い部隊になっています。

私が所属するのはそこの第2特別捜査隊です。

第1特別捜査隊、通称第1小隊は優秀な魔導士を集めたエリート集団なんですが私のいる通称、第2小隊は能力はあるけれど問題行動の目立つ組織的に落ちこぼれな人材が集まる部隊です。

海のお偉いさんとしてはぜひとも私が欲しいらしいんですが局員の間に私の単独行動時代の狂犬っぷりが広まっており、本当に落ち着いたのか第2小隊に隔離して様子を見ることにしたらしいです。

私としては愉快な仲間たちに囲まれて全く退屈しない日々に満足してます。

皆に中てられてはっちゃけたせいか始末書の数もだいぶ増えましたが・・・。

 

『ぅわょぅじょっょぃ』

分からない人には全く分からないと思いますが知ってる人ならニヤリとするこのネタ。

某アニメ化もされた戦記小説のモデルになった作品だとか・・・。

事の発端は機動2課が追っていた犯罪集団が管理外世界に逃亡したことが事の発端でした。

現地では地下資源を巡って『王国』と『帝国』が戦争をしている世界でした。

犯人たちはそこで帝国側に加担、傭兵として戦争に参加したのです。

彼ら目的は王国が国宝として所有しているロストロギア、聖剣と呼ばれる強力なアームドデバイスでした。

管理外世界への武装隊の大規模派遣は例がなく、陸海双方で会議が紛糾したそうですがロストロギアが犯罪者にわたる危険性がある為最終的に可決、アースラをはじめ次元航行艦数隻が武装隊2個大隊と共に現地へ派遣されました。

ロストロギア絡みの犯罪とあり機動2課からも私が派遣され現地で何度も実戦を経験しました。

戦闘機人のチートボディのおかげで危なげなく戦えましたが戦闘終了後はしばらくトイレから出られず、暫く不眠症で睡眠導入剤が手放せなくなりました。

暫くして慣れてきたころ、何故か敵から変わった二つ名で呼ばれるようになりました。

「リボン付きの死神」・・・。

派遣される前日に妹達からお守りに渡された青いリボンをつけて戦っていたのですが、超機動で攻撃をかわすたびに靡く青いリボンがえらく目立ったのが理由らしいです。

で、そんな戦場の空で件の美幼女・・・王国軍の魔導士官であるM少佐(プライバシー保護のためイニシャルのみ記載)と出会い、何度か共に戦いました。

で、終戦直後に任期満了で帰還。

何とか無事に生き残れましたが最終決戦でお守りのリボンは燃えてしまいました。

てかあの少佐、無口な子でしたが不思議と馬が会いましたね。

もしかして彼女も転生者だったりして、まさかね・・・。

 

他にも離したい小ネタはいくつかありますがそれはまた次の総集編まで取っておきます。

またここはどんな設定なの?ここの説明欲しい、ここ間違ってるぞ、ハルナちゃんカワイイ!などのご意見、質問があったらコメント等でお願いします。

次回の総集編、(1期終了後を予定)で発表します。

それでは皆さん、アニメ本編でお会いしましょう、リリカルマジカル頑張ります!

 

・・・あ~、づがれだ~。

カメラに向かって話すのって緊張するよ~。

って、もうこんな時間・・・急がなきゃ深夜アニメ始まっちゃうじゃん。

いや、それよりもこの時間なら妹たちは寝てるはず、可愛い寝顔を私だけが独占?グヘへ・・・。

ん?どうしたのマリィ?そんなにあわてて・・・え?何?まだカメラ回ってる・・・え゛!?

マジで!?ちょっ、なし、今の無し!カットして!って、生放送!?

ギャー、止めて、とにかくカメラ止め・・・!

(カメラ転倒、ノイズ、暗転・・・)




いよいよ次回からアニメ本編に絡んできます。


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本編突入編 第13話「お姉ちゃん参上!三人目の魔法少女なの」

途中まで書いていたのが完成しました。
今度こそ本当に打ち止めで更新が遅くなります。

前回はたくさんの感想ありがとうございました。
まさか総集編なのに6通も感想が来るなんて驚きです。
もうこれからは毎回総集編でもいいよねw
駄目ですか、そうですか・・・(´・ω・`)
兎にも角にもいよいよ本編突入!機人長女リリカルハルナ、始まります。
(以下op)


漆黒の闇の中を一隻の船が航行している。

L級巡航艦、8番艦『アースラ』・・・時空管理局次元航行部隊に所属する巡航艦の一隻だ。

その艦橋に一人の若い女性士官が入ってきた。

「皆どう?今回の旅は順調?」

「やっぱり向こうに着いたら最初に行くのは『と●のあな』かな?」

見た目の年齢は恐らく20代前半、それに比して階級は身に纏っている制服からかなり高い。恐らく佐官以上だろう。

「はい、先に観測された小規模次元震もあれから確認されていません」

「ふむ、●ロンブックスも捨てがたいが・・・しかしハルナ、君の年齢じゃあ買い物リストの半分も購入できないんじゃないかな?」

計器を操作していたブリッジクルーが振り返り応える。

「事件の中心にいると思われる二組の魔道師達も今は活動を休止しているようです」

「ムムム・・・じゃあ私がソフ●ップでゲームとDVD買ってくるからそっちは父さんがお願い」

艦橋の隅に設えた給湯スペースで10代半ばの少女がお茶を入れる。

「小規模の物とはいえ次元震の発生を見過ごすことは出来ません」

「心得たよ。集合場所は指定しておいたメイド喫茶だから間違えないように・・・」

キャプテンシートに腰掛け、差し出されたティーカップを受け取る女性士官。やはり彼女がこの艦の艦長なのだろう。

「はい、早急に解決します」

「りょ~かい。あと途中でボーク●でねん●ろいども観たいから・・・」

キャプテンシートから一段下に位置するオペレータ席、その前に立つ少年が待機状態のデバイスを手に立っていた。

「・・・って、そこ!さっきから何を話してるんだ!?」

 

機人長女リリカルハルナ

第13話「お姉ちゃん参上!三人目の魔法少女なの」

 

クロノの声に私と父さんは作戦会議を中断する。

重要な会議なのになんで邪魔するかなぁ・・・。

「いったいドコが重要な会議だ!?遊ぶ計画立ててるようにしか見えないじゃないか!」

まったく、本当にクロノは失礼な奴だなぁ・・・。

「同感だよ、立ててるようにじゃなくて実際に計画を立ててるに決まってるじゃないか」

「「ねーw」」

絶妙なタイミングでシンクロする私と父さん。

うん、やっぱり親子の絆はすばらしい。

現在私と父さんはアースラに乗っています。

数日前私が所属する機動2課にロストロギアの案件が回ってきました。

何でもスクライア一族が発掘したロストロギアが本局に輸送する途中事故で流失してしまったらしいです。

さらに輸送に立ち会っていたユーノ・スクライアさん(9歳)が責任を感じて単身捜索に出て、それきり連絡が取れないという報告も受けています。

そのためあの近辺をパトロールする予定だったアースラに便乗、現地まで送ってもらうことになりました。

しかも、目的地は第97管理外世界『地球』・・・そう、地球なんです!

前回の一件以来忙しくて鉄道の無い時代の馬車馬の如く働いているせいで全く行けなかった地球です!

そこに経費で行く機会が訪れるなんて!これはもう秋葉原が私を呼んでいるに違いありません!

てなわけで秋葉原・・・もとい、地球に着くまでの間に父さんとアキバ巡りのプランを立てていたのでした。

「以上、回想終わり。どうだ!私がここにいることに何の問題も無いだろう」

「会話の内容が問題なんだ!勤務中だろう!?」

そうは言うけどクロノと違い員数外の人員である私たちは航海中はぶっちゃけ暇なんです。

デバイスのメンテはとっくに終わってるし模擬戦なんてやり飽きました。

次元空間だからインターネットは繋がらないしあとは自室に持ち込んだ箱○でFPSプレイしてるか父さんと駄弁ってるしかすることが無いんです。

ちなみに好きなスタイルは火炎放射機を使ったモヒカンプレイ。ヒャッハァ!汚物は消毒だぁ!ただし即効で芋砂からヘッドショット喰らいます。あべしっ。

「だからってブリッジで雑談する奴がいるか!他のクルーの邪魔になるだろう!」

て言ってますけど皆さん実際のところどうなんですか?

「え?私はにぎやかでいいと思うけどな~」byエイミィ

「私は気になりませんよ?」byランディ

「いつものことじゃないですか、今更なにいってるんです?」byアレックス

ほぅら、問題ありません!(ドヤァ)

「・・・・・・」

ものすっごい嫌そうな顔で睨んでくるクロノ。

全く、何を一体どうしたらクライドさんの遺伝子からこんな石頭が生まれるのでしょうか?

母親似?ありえませんね、だってほら・・・。

「はぁ~美味しいわぁ」

そこでホッコリした顔で緑茶入り砂糖(誤植ではない)を美味しそうに飲んでいる美人さんこそアースラ艦長にしてクロノの母親、リンディ・ハラオウンさんなのですから。

そういえばアリサやすずかにも会いに行きたいですね、あと病院で会ったあの車いすの女の子も元気にしてるでしょうか?時間があったら皆に会いに行きましょう。

 

クロノに完全勝利した2日後、アースラは第97管理外世界近傍に到着、そこで魔道師による戦闘を確認しました。

呼び出された私はブリッジで二人の魔道師が木の怪物相手に共闘しているのをモニター越しに眺めています。

「ハルナ、どう思う?」

隣にいた父さんが問いかけてきます。

「そうだねー、魔法少女もののアニメならやっぱりあっちの白い子が主人公じゃないかな?」

白い服に魔法のステッキ、そしてお供の喋る小動物。

何処から見ても正統派の魔法少女です。

「確かに、そうなると向こうの黒い魔法少女はライバルポジかな?」

父さんの発言に私はもう一人の子、金髪ツインテの魔法少女を見ます。

なるほど、確かにその通りです。

黒い服に裏地赤の黒マントという見るからに悪者っぽい衣装。

おまけに獲物も真っ黒い戦斧、中央にある金色の宝石が目玉っぽくも見えます。

「恐らくそうだろうね、私の見立てでは白い子は魔法の国からやって来た小動物に助けを請われて魔法少女になった普通の女の子で物語が進んでいくとあの黒い子がライバルとして現れるんだよ」

「ああ、最初のうちは黒い少女の方が実力的に圧倒しているが戦いの中でに白い少女が成長して行き、最後は実力が逆転するんだろうね」

さすが父さん、分ってらっしゃる。

「そうそう、そしてぶつかり合ううちに二人の間に友情が芽生えてストーリ終盤かアニメ2期で共闘するんだよ」

「そうなると2期では新たな敵と第三の魔法少女も出てくるだろうね」

父さんと二人で和気藹々と語り合っていると・・・。

「・・・君達二人は一体何を話しているんだ?」

何やらこめかみ抑えながらまたクロ助が水を差してきました。

「え?魔法少女談義だけど・・・?」

見れば分るじゃないですか。コイツは一体何を言ってるんだ?

「今、バカにされた気がしたがそれは置いておこう。そうじゃなくて問題はあっちだろう!」

そう言ってクロノは二人が戦っている木の怪物を指差します。

「あっちって、ジュエルシードの融合体だけど、それがどうかした?」

アレの為に私は此処に来たんですから、知っていて当たり前でしょう。

本当にコイツは何を言ってるんだ?

「・・・ハルナ、いい加減君とは決着をつけなきゃいけない気がしてきたんだが?」

「何言ってるの仕事中だよ?目の前の事態に集中しなさい!」

「・・・(ビキビキ)」

全く、普段口うるさいくせに重要な局面で集中力を欠くなんて、まだまだオコチャマなんだから・・・。

状況からしてあの気の怪物がジュエルシード融合体なのは間違いありません。

んでそれと戦っているのが最初のほうで言ってた二組に分かれたジュエルシードの捜索者。

この魔道師たちはお互いに敵対しているようですが現在は共通の敵に対して共闘しているようです。

恐らくどちらかに捜索要請のあったユーノ・スクライアさん(9歳)がいると思われます。

あ、融合体がやられました。

しかし、あの魔法少女達・・・無茶苦茶強いです。

あの歳でAAAランクくらいの魔力持ってますよ。将来が楽しみなような怖いような・・・。

まあ将来の事はおいといて、私は今目の前の事案に対処しましょう。

「艦長、あの二人がガチンコ勝負を始める前に現場を押さえる必要がありそうなんでちょっと行って来ます」

私の発案にリンディ艦長はニッコリ笑顔で許可をくれました。

「ええ、よろしくね。ハルナさん」

「アイアイマム!」

ビシッと敬礼してから転送ポートの上に立つ私。

魔力光が溢れ転送座標が固定されます。

「ハルナ、いっきまーす!!」

カタパルトが無い事を残念に思いながら現場に飛びました。

 

Sideなのは

木に取り付いたジュエルシードの怪物を倒してから私はフェイトちゃんと対峙していました。

ついさっきまでは一緒に戦っていた仲ですが今この瞬間私達はジュエルシードを巡って戦う敵同士に戻ってしまいました。

「私が勝ったらお話、聞いてもらうんだから・・・!」

「負けないよ、勝つのは私だから・・・っ!」

張り詰めた空気の中、私とフェイトちゃんは同時に駆け出しました。

「てええぇぇぇぇぇい!!」

「はあぁぁぁぁぁぁっ!!」

互いのデバイスが激突する瞬間、目の前が光りにつつまれ・・・!

突如現れた女の子に私達のデバイスは受け止められていました。

マシンガンみたいなデバイスを持った灰色のバリアジャケットの女の子。

ツンツンはねた銀髪と気の強そうな金色の瞳がとても印象的な子でした。

その女の子は私達のデバイスを止めた直後大声で叫びました。

「双方そこまでっ!!」

SideOut

 

転送されたのは激突寸前の魔法少女達の間・・・間!?

「って!?」

急いで白い魔法少女のステッキをキャッチ!同時に黒い魔法少女の戦斧をイェーガーでガード!

ふぅ、ヘルメットが無かったら即死だった。

池田秀一さんの声でそう心の中で呟きながら私は大声で二人に告げました。

「双方そこまでっ!!」

「っ!!」

「!?」

うん、二人とも驚いてます。

表情からして突然現れたとに半分、あんた誰?って思いが半分といったところでしょうか。

お二人がどういう間柄なのかとかなんでジュエルシードを集めているのかとか聞きたいことは色々ありますがそれは後で教えてもらいます、取調室で・・・。

なので先ずはちゃっちゃとお仕事を片付けてしまいましょう。

「お取り込み中のところ大変失礼ですがこの中にユーノ・スクライアさんはいらっしゃいますでしょうか?」

名前からして男の子のはずですが目の前にいる二人は魔法少女。

まさか男の娘とかいうオチはありませんよね?

「えっ?スクライアはボクですけれど、あなたはいったい・・・?」

意外!それは小動物!!

なんと返事をしたのは白い魔法少女と一緒にいたフェレットみたいなお供の小動物だったのです!

まあ魔法少女の相方ですからね、喋れたとしても問題ありません。

噂に聞いた話だとスクライアの一族は遺跡の探索で狭いところにも入っていくそうですからその為に小動物に変身できるのかもしれません。

「あ、こりゃ失礼。私は時空管理局の遺失物管理部機動2課のハルナ・スカリエッティ執務官です」

IDを提示しながら自己紹介します。

「ご家族から捜索願いが出ていたので探しに来ました。いや~ご無事で何よりです」

背後で黒い魔法少女が「管理局!?」とか驚いてますが何ででしょう?何か悪さでもしたんでしょうか?

たとえば学校のガラスを全部割ったり盗んだバイクで走り出したり・・・。

とか考えながらスクライアさんと話していたら死角から魔力の反応が・・・!!

「・・・っ!?危ないっ!!」

慌てて直撃コースにいたスクライアさんと白い魔法少女をシールドで護ります。

シールドに衝撃が走り辺りが土煙で見えなくなります。

何これ!?誘導弾!?どこから?

不覚です、二人と一匹に気を取られていて気づきませんでした。

「フェイト!離脱するよ!!」

声のしたほうを赤外線センサーで見てみると成人女性と思しきシルエットが確認できます。

同時に黒い魔法少女が逃走を図ります。彼女の仲間でしょうか?

とにかくコイツは明確な公務執行妨害、逃走させるわけには行きません。

「逃がすかー!!」

黒い魔法少女に照準を合わせてトリガーを引きます。

銃口から飛び出たフォトンバレットは狙い違わず黒い子に命中。

非殺傷だから死ぬ事はありませんが逃走や抵抗をさせないよう死ぬほど痛いつくりになってます、しばらくは痛みで動けないでしょう。

え?リングバレット?とっさの事だったんで忘れてました、私もまだ未熟ということでしょうか・・・。

「フェイトっ!!」

砂埃が晴れてきたちょうどその時、先程誘導弾を撃ったであろうオレンジっぽい茶髪のお姉さんがフェイト言うらしい黒い子に駆け寄ります。

うん、でかい。何がとは言いませんが。

フェイトを抱き抱えるお姉さんとそれに銃口を向ける私・・・。

何かこの光景だけを見ると私が悪者っぽいですね。

とは言えこれもお仕事、いっぱいいる妹達を養う為にも情けはかけられません。

と言う事で心を鬼にしてお姉さんめがけてリングバレットを撃とうとしていると・・・。

「ダメェッ!!」

なんと白い子が私と二人の間に割って入ってきます。

「撃っちゃダメッ!!」

「えっ、ちょっ!?」

突然射線に割り込んできたので慌ててイェーガーを除けます。てか危ないでしょう!

そんなこんなやってるうちに茶髪のお姉さんは仮称フェイトさんを抱きかかえると跳躍、あっという間に私の射程外に逃げてしまいました。

「あーもう!被疑者が逃走、至急捜査線を敷いて!!」

エイミィに二人の追跡を頼みますが向こうもバカではありません。恐らく途中で巻かれるでしょう。

「はぁ~・・・すみません艦長。二人ほど逃がしました」

音声通信で艦長のリンディさんに謝ると向こうから映像つきで返事が来ました。

「仕方ないわハルナさん、気を落とさないで」

そう言っているリンディさんの声色は優しく、少なくとも怒っていないことは確かです。

どうやら始末書は書かなくて済みそうです、よかったよかった。

「それよりも二人をアースラまでお連れして、いくつか聞きたいことがあります」

早速事情聴取を行うようですね。

「了解です、参考人二名に対し任意同行を行います」

通信を切った私は困惑している一人と一匹に対し笑顔で事情を説明します。

「と、言うわけでお二人を母艦までお連れします」

ニッコリと笑いながらもどこからか逃げんなよゴルァ的なオーラが出ていたのか少女と小動物はたじろぎます。

これが私と彼女、アニメ本編の主人公である高町なのはとのファーストコンタクトとなりました。

・・・あれ?何か第一印象酷くない?



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第14話「お姉ちゃんとしては海軍の意見に反対である!なの」

やばいです、超やばいです。やばすぎてやばたにえんです。
何がやばいかって13話を投稿してからの閲覧数がやばいです。
わずか数日で一気に2万UA突破してしまいました。
評価もすげー付けられてます。
皆さんありがとうございます、心からお礼申し上げます。
嬉しいですけど正直何か怖いですw運気使い果たして今月中に事故死しそうw
そんな作者の不安を孕みつつ14話、始まります。

今回の話の内容から「アンチ・ヘイトは念のため」タグを追加しました。


Sideなのは

突然現れた女の子、ハルナちゃんに連れられて私たちは時空管理局と言う所の船の中にやってきました。

「は~・・・」

ユーノ君と同じ魔法の世界から来た船らしいですが、その船内はどこからどう見てもSF映画に出てくる宇宙船のようです。

「お疲れさん、彼女達が例の参考人だな」

「そだよ、艦長は自室?」

「ああ、君たちを待ってるよ」

海鳴から転送ポートと呼ばれる機械で船の中にワープしてきた私たちを出迎えたのは同じくらいの年齢の男の子でした。

「さて、初めましてだな。僕は時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ。艦長がお待ちだ、着いてきてくれ」

そう言ってクロノ君は先頭に立って歩き出したところで一度こちらに振り向きます。

「ああ、そうだ。艦内は安全だからバリアジャケットは解除して大丈夫だよ。君も元の姿になってくれ」

クロノ君の言ったことがいまいちわかりません。

バリアジャケットは理解できたのですが元の姿?

「あ、はい。わかりました」

対してユーノ君は言葉の意味が分かったのか私の肩から下りると急に光りだし・・・。

「え?ふぇっ?」

どんどんユーノ君の身体が大きくなって・・・。

「ふぅ、なのはにこの姿を見せるのは久しぶりだねって、あれ?」

見た事の無い男の子になってしまいました。

SideOut

 

機人長女リリカルハルナ

第14話「お姉ちゃんとしては海軍の意見に反対である!なの」

 

「はわ、はわわ・・・」

超びっくらこいた顔で固まった白い女の子、そう言えばまだ名前を聞いていませんでしたね。

彼女の手はユーノ・スクライアさんを指さした状態で震えています。

「ど、どうしたのなのは?」

「・・・ユーノ君って、ユーノ君って普通の男の子だったのっ!?」

なのはと呼ばれた女の子がスクライアさんに大声で問う。

ん?なのは?どこかで聞いたような・・・昔読んだマンガかな?

「ええっ!?でも、最初にあった時は・・・」

「ううんっ、最初からフェレットだったよっ!」

二人の会話から察するにどうやらスクライアさん、最初にあった時は怪我をして消耗した魔力と体力を温存するために小動物に変身していたようで、それをそこのなのはさんに保護されたのでしょう。

しかしスクライアさんの方は怪我のせいか記憶が混濁していたようで小動物になったのはなのはさんに会ってからだと勘違いしていたようです。

いやはや、何ともまぁ魔法少女ものにありそうな微笑ましいハプニングです。

「じゃ、じゃあ温泉とかで普通に僕を連れて入っていたのってもしかして・・・」

そう、この言葉さえ聞かなければ・・・。

クロノとアイコンタクトするとすぐさま彼もうなずくとさっそく行動を開始。

まず、クロノが二人の間に割って入ります。

「えっ?」

「ふぇ?」

直後に私がなのはさんをスクライアさんから引き離す。

「え?なに?」

それを確認したクロノがスクライアさんの前に立ち言い放しました。

「ユーノ・スクライア、小動物等に変身して女性の着替えや入浴を覗くことは明確な犯罪だ。管理外世界であってもそれは変わらない」

「えっ?ちょっ!?」

クロノ・ハラオウン執務官から罪状を説明されうろたえるユーノ・スクライア容疑者(9歳)

「大丈夫?辛いと思うけれど事件があった時の状況、話してもらえないかな?あなたが望むなら被害届を出せるし裁判も起こせる。もしそうなったら弁護士も紹介するから」

「え?あの・・・」

二人から少し離れたところで私は被害に遭ったなのはさんから事件当時の状況を聞きます。

可愛らしい小動物に扮していたいけな幼女の入浴シーンを覗くだなんて太いヤロウです。

もし覗かれたのは私の可愛い妹達だったならその場でブチ殺してましたよ。

もしかしたら他にも余罪があるかもしれません、これからスクライア容疑者は取調室にお招きして私が直々にかつ丼でおもてなししてあげましょう。

さてさて・・・KGB式とシュタージ式、どちらでいきましょうか?ふっふっふ・・・。

 

「なるほど、それでユーノさんはそちらのなのはさんに協力を依頼したのね?」

場所は変わりアースラ艦長室。

結局なのはさんが被害届を取り下げた為、スクライア容疑者は厳重注意で終わりました。

そのあと私とクロノは二人を連れてアースラ艦長、リンディ・ハラオウン提督の私室にやってきました。

前から思ってたんですけどこの間違った日本文化全開の部屋はいつ来ても慣れません。

室内に盆栽が飾ってあるし同じく室内なのに鹿威しが「カコン」って鳴ってるし・・・。

最近ではこの前の旅行(10話~11話参照)で私が買ってきたお土産の木彫り熊も飾ってあり一層カオス度に磨きがかかっています。

そんな日本文化を勘違いした外国人感丸出しな部屋でスクライア容疑者、もといスクライアさんからこれまで起った事の詳細を聞きました。

事故で流出したロストロギア、ジュエルシードを追って地球に着た直後、ジュエルシードの暴走体の襲撃を受け負傷したこと。

傷が治るまで魔力を温存すべく小動物モードになったところでそちらの少女、なのはさんに保護されたこと。

再び暴走体に襲われやむなく巻き込まれたなのはさんにインテリジェントデバイス、レイジング・ハートを託しこれを封印してもらったこと。

以後、なのはさんに協力してもらいジュエルシードをいくつか封印、回収したこと。

流出したジュエルシードは全部で21個あり、ユーノさん達が6個回収したこと。

途中からさっき逃走した黒衣の魔導師、フェイトと呼ばれた少女が乱入してきたこと。

何度か戦ったがいずれも勝利できず、あまつさえ持っていたジュエルシードも一つ持っていかれ現在確保しているのが5個である事。

「んで、さっきの戦闘で私が確保したのが1つ、これも併せて無事確保できているジュエルシードは6つと・・・」

「はい、あのフェイトって子が僕たちの前で回収したのが4つですから残っているのは多くて11個です」

そう言うスクライアさんの顔色は優れません。

そのフェイトさんが彼ら二人の知らないところでジュエルシードを回収している可能性もあるのでそれを心配しているのでしょう。

「それにしても、ジュエルシードを発掘したのはあなただったのね」

そう、なんとジュエルシードを発見、発掘したのは目の前にいるスクライアさんだったのです。

で、事故とは言えなのはさん達の世界にジュエルシードをばらまいてしまったことに責任を感じて単身捜索にでたと・・・。

「責任感が強いのね、とても立派だと思うわ」

「だが、無謀だ。君に何かあればそれこそ取り返しがつかなくなる」

リンディさんが褒める横でクロノが無謀だと指摘します。

これは全面的にクロノに賛成ですね。

ジュエルシードの件で責任を感じているならなおの事私たちの到着を待ってほしかったです。

もし発掘者であるスクライアさんに何かあればジュエルシードに関する情報・・・その特性や対処法などが得られなくなってしまっていたところです。

なのはさんについても同様です。

いくら素質と強力な魔力を持っていると言ってもまだ9歳の女の子。

私みたいに特殊な生まれでもないのに専門の教育や訓練なしに無双できると思っているならそれはK●EIゲームのやり過ぎです、てかいくら呂布や張遼が強くてもあそこまで「山田ぁ!」とかできません。

「あの~、その「ろすとろぎあ」っていったい何ですか?」

話の腰を折るのが気まずいのか、なのはさんがおずおずと手を上げて質問します。

そう言えばこの子は混じりっけ無しの地球人、次元世界の事なんて分からないのが当たり前です。

「えっと、旧世界の遺産・・・って言って分かるかしら?」

リンディさんの説明を要約するとこんな感じです。

次元空間には地球の他にも様々な世界があってその中にはワープ進化的に超スピードで技術や文明が発達した世界がある。

その中には作った人たちすら制御できなくなりその世界を滅ぼすような物もあり、そんな滅んだ世界の跡地に残ったヤベー兵器や技術の遺産をまとめてロストロギアと呼ばれている。

「要するにイ●オンみたいなもんだよ」

「ふぇ?イデ●ン?」

さすがに平成生まれの魔法少女に富●監督が手掛けた伝説のジム神様は分からないみたいです。

最近じゃスパ●ボにも出てきませんからね・・・。

「あなた達が探しているジュエルシードもその一つ、先日起った次元振もジュエルシードが原因なの」

そう言われてなのはさんとスクライアさんは「あっ」と声を上げます。

数日前も今回の様になのはさんの例のフェイトさんはジュエルシードを巡り戦っていたのですがその過程でジュエルシードが暴走、小規模ながら次元振が発生し、最終的に何とかフェイトさんが怪我を負いながらも暴走を鎮めたそうです。

・・・あれ?

てことは何?私けが人に銃撃したってことじゃん。うわやべぇ・・・。

「たった一つのジュエルシードであれだけの威力、複数が同時に暴走した場合より強力な次元振・・・いいえ、それ以上の災厄、次元断層が発生してしまうかも・・・」

私が罪悪感から頭を抱えている横でリンディさんの説明は続きます。

黒光りするお高そうな湯呑茶碗に砂糖をドバドバ、ミルクをダバダバと流し込みながら・・・。

ほら、リンディさん。なのはさんが引いてますよ。

「聞いたことがあります、旧暦の時代に発生した次元断層でたくさんの世界が滅んだって・・・」

その話は私も聞いたことがあります。

まだおじいちゃんズが脳みそだけになる前の事で救えなかった命の事を嘆いていました。

あんな悲劇がまた起こらないようにと時空管理局を立ち上げたのだとか・・・。

「そう、人の手に余る力。本来ならばしかるべき場所に厳重に封印しなければならない物・・・」

そう言ってリンディさんは緑茶風味の砂糖を一口飲んでから言いました。

「なので現時刻をもってロストロギア、ジュエルシードの捜索は私達時空管理局が引き継ぎます」

「えっ?」

それを聞いたなのはさんは驚きの声を上げ、スクライアさんはうつむいたまま手をギュッと握ります。

「君たちは今回の事を忘れてこれまでの日常に戻るといい」

「で、でも・・・っ!」

クロノの言葉になのはさんは食い下がります。

まぁ、気持ちは分からなくもありません。

相手が専門家集団とは言え今まで自分たちが頑張っていた所に突然横からしゃしゃり出てきて後は自分たちがやるとか言われても納得できませんよね。

でもこれでいいんです。

なのはさんは未だ小学生、魔法なんてない世界の、平和な日本の女の子・・・。

危険な戦いに飛び込む必要なんて無いんです。

事件現場に必要なのはおまわりさんであって変身ヒーロやプ●キュアに来られても困ります。あ、デカ●ンジャーとか宇●刑事とかジャ●パーソンさんは警察に部類されそうな気がするんでギリギリ可とします。

つまり何が言いたいかと言えばいくら強くても民間人であるなのはさんは危険な場所に入っちゃいけないんです。

「まぁ、直ぐに納得はできないわよね。今日は帰って二人でじっくり話し合うといいでしょう」

だというのに、この人はなんてことを言うのだろうか。

「なっ!?かあさ・・・」

「ダメダメダメダメダメぇ~っ!!」

リンディさんがあまりにすっとこどっこいな発言をするもんだからクロノの発言を遮って思わず叫んでしまいました。

 

Sideなのは

「ダメダメダメダメダメぇ~っ!!」

突然ハルナちゃんが大きな声を出します。

両手で×を作って背後から『ブブー!』っていう音が流れてきそうな勢いです。

「これ以上危険なことに巻き込むなんてお姉ちゃん許しませんからねっ!」

凄い勢いで宣言するハルナちゃん。

お姉ちゃんって、見たところ私とハルナちゃんってあんまり歳は離れていないと思うんですが・・・。

「ハ、ハルナさん落ち着いて・・・。とにかくあなた達は今日は帰って休んだ方がいいと思うの。クロノ、二人を送ってちょうだい」

まだ反対だと騒ぐハルナちゃんを諫めるリンディさんの指示に私達を出迎えてくれた男の子、クロノ君が頷きます。

「了解しました、それじゃあ行こうか」

「え?あ、でも・・・」

ハルナちゃんを見ると多少落ち着いたようですが未だにリンディさんと言い合いをしています。

「二人の事なら気にしなくて大丈夫だ」

「なのは、とりあえず今日は帰ろう?」

「う、うん」

クロノ君とユーノ君に言われて私も部屋を後にしました。

「すまなかったね。でもハルナも君たちが嫌いで言ったわけじゃないんだ、分かってやってくれ」

そう言って私達に謝りながらハルナちゃんをフォローするクロノ君。

「確か君達と同じくらいの年齢の妹がいた筈だからな、他人事とは思えなかったんだろう」

・・・あれ?

「あの、私くらいの妹って・・・ハルナちゃんって今・・・」

私の言葉でクロノ君は気づいたのか「ああ」と言って補足してくれます。

「あの外見じゃわかりづらいけれど彼女は今年で15だ。あれで僕の一つ上とはな、もっとしっかりしてほしいものだよ・・・」

「・・・え?えぇっ!?じゃあクロノ君って14歳!?」

私が驚くとクロノ君はムスっと不機嫌そうな顔になります。

「僕が14だと問題でもあるのか?そりゃ確かに身長は少々低いがまだ十分伸びしろが・・・」

何やら地雷を踏んだみたいです。

暗いオーラを放ちながらブツブツと呟くクロノ君に私もユーノ君も後ずさります。

いや、もしかして向こうの世界ではクロノ君やハルナちゃんくらいの年齢でこの身長なのが普通なのかもしれません。

と言う事はもしかしてユーノ君も・・・。

「あの、ユーノ君って・・・」

「へ?あぁっ!僕は違うよ!今年で9歳だからっ」

それを聞いて安心しました。

「そっか、私と同い年何だね。よかった」

「う、うん・・・そうだね、よかった・・・」

「ちっともよくない!とにかくこのはな債は終わりだ、行くぞ!」

結局起こったクロノ君に連れられて私たちはアースラを降り、そのまま内に帰りました。

Side Out

 

「んで?どうしてあんな事言ったんですか?納得のいく説明を要求します」

クロノがなのはさん達を送り終わって帰って来てから、私とクロノはリンディさんを問い詰めました。

「えっと、あんな事って?」

「あの二人に一度帰ってよく考えろと言ったことです。二人の性格を考えれば一層決意が固くなるのは目に見えてるじゃありませんか!」

「そ、それは・・・」

ジト目で見つめる私とクロノ、気まずそうに眼をそらすリンディさん、でもやっぱり答えてくれません。

「私たちの事がそんなに頼りないですか?」

埒が明かないのでこじ開けましょう。

私がそう言うとリンディさんは慌てた様子で異を唱えます。

「ち、違うわ!あなたもクロノもこの船に無ければならない存在よ!」

「じゃあ何でなのはさんを引き入れようとするんですか?確かにあの子の才能は凄いですけれど管理外世界の、それもただの民間人ですよ?」

無意識のうちに私の語気は強くなっていました。

いつの間にか私達だけでなくブリッジクルーの全員が見つめていることに気づき一層縮こまるリンディさん。

四方八方からの視線の集中砲火に耐えきれず、ついにカクンと俯くと白状しました。

「ごめんなさい。あの子の才能があまりに凄かったからつい・・・」

その自白に私もクロノも深いため息をつきます。

「はぁ、またですか艦長」

「いい加減その病気は直した方がいいって前も言ったじゃありませんか」

リンディさんの持つ病気・・・『将来有望そうな若者がいたらとりあえずスカウトしたくなる病』がまた発症したようです。

症状はその名の通り、リンディさんは魔力資質やレアスキルなど、才能のある若い子を見つけたらとにかくスカウトしたくてたまらなくなっちゃうんです。

10話と総集編で話した管理外世界の戦争への介入の際にも出会った現地の若手士官の「M少佐」と「A中尉」を引き抜こうとしていましたし・・・。

スカウトやヘッドハンティング自体は文句を言いませんがリンディさんの場合場所とか相手の年齢とかにもっと配慮してほしいです。

今回だってそうです、確かになのはさんは魔力量がAAAという破格の魔導師ですよ。

でもしつこく言いますが彼女は管理外世界の、それも9歳の小学生です。

管理外世界の人が管理局の魔導士になるという事はそれまでの生活を捨てて異世界で暮らすという事です。

成人しているならまだしも小さな子どものなのはさんにそれを強要しようもんならわたし本気で怒りますよ?

あなただって昨今の局員の低年齢化に頭を悩ませていたでしょうに、当の本人が平均年齢引き下げてどうするんですか?

仮に本人が承諾しても他の人、彼女のご家族やご友人から見たら人さらい以外の何物でもありません。

てか局員になるという事は事件や災害と言った危険地帯に飛び込むことになります。

万が一なのはさんに何かあった時、誰がご家族に責任を取るんですか?

リンディさんを正座させてそんな感じの事を小一時間ほど言って聞かせるとさすがに彼女も反省したのかシュンと項垂れてしまいました。

「うぅ、本当にごめんなさい・・・」

「まったく、明日なのはさんが協力を申し出てきても許可以上の事は許しません。勧誘は絶対禁止!ご家族への説明責任もちゃんと果たしてください。あと彼女の現場での活動に関しては私とクロノが全権を持ちます。少しでも危険があれば速攻で後方に下がらせますからね!」

「・・・あれ?許可しちゃうの?」

そう言って顔を上げたリンディさんは半分泣きそうでな顔でした。

「こちらが断ったら独断で行動しそうですからね。なら僕たちでしっかり監督したほうが安全だ」

どうやらクロノも私と同意見だったらしく腕を組んだまま苦々しく説明します。

「とにかく、なのはさんが協力するのは半ば確定ですからリンディさんはちゃんとご家族に包み隠さず説明してください。私もついていきますから」

「はい、クスン・・・」

こうしてリンディさんへのお説教がお開きになったところでそれまで様子を見ていた管制官兼クロノの補佐を務めるエイミィ・ミリエッタが話を切り替えてくれました。

「それにしてもなのはちゃんの魔力値は凄いよね~、さっき計測してみたんだけど平均魔力値は127万、例のフェイトちゃんも143万で二人とも最大発揮すればその三倍は叩き出せるよっ」

・・・え?何その魔力お化け。

私どころかクイントさんやゼスト隊長すら上回るとか、どんだけですか?

「魔力が高くてもそれを使いこなせなければ戦力足りえないよ」

エイミィの説明にクロノがベテランの風格を纏いながら答えます。

「そ、そうだよ!機体の性能が戦力の決定的差ではないという事を教えてやろうじゃないか!」

「何を言ってるんだハルナ?」

「あれ?クロノ君知らない?なのはちゃんの故郷で有名なロボットアニメのセリフだよ」

クロノとエイミィがガ●ダム談義を始めた横でふと私は気づいてしまいました。

「あのなのはさんとフェイトって子・・・カラーリングがガンダムだ!」

なのはさんは初代から続く正統派な白赤青のトリコロール、フェイトさんは黒に死神っぽいビジュアルからデスサイズですね。

「ハルナ、しょうも無いことを言ってないでなのはが参加する場合の戦術を話し合うぞ」

おぅ、いかんいかん・・・確かに今は勤務中。

それに明日からなのはさんも参加するでしょう。

年長者として彼女を無事お家に返すためにも万全を期さねばなりません、あの子も私たち大人が守るべき存在なのですから。

決意を新たに私はクロノとシミュレータルームに向かいました。

 

その翌日・・・と思いきやその日の夜。

当初の予想通り、なのはさんとスクライアさんは事件への協力を申し出てきました。

で・・・。

「ねぇ、ハルナさん。やっぱり・・・」

「駄目です。もうここまで来たんですから、覚悟を決めてください」

「・・・はい」

連絡があった翌日、私は海鳴市の住宅街をなのはさんのご自宅に向かって歩いてます。

・・・リンディさんを引っ張りながら。

さすがにこういう説明は初めてなのか未だになのはさんのお家に行くのに抵抗があるリンディさんをここまで連れて来るのに苦労しました。

とは言え危険なことをさせるんです、ちゃんとした説明と保護者の許可を頂くのがしっかりした大人として当然の仕事です。

なのはさんから教えてもらった住所を地図で参照しながら歩くこと数分、武家屋敷風の立派なお家につきました。

「さて、行きますよリンディ提督」

「・・・ええ、行きましょうか」

さすがに覚悟を決めたのか、さっきまでの泣きべそモードからシャキッとしたお仕事モードに切り替わるリンディさん。

呼び鈴を鳴らして数秒、扉が開き出てきたのは・・・。

「はいはーい、どちら様で・・・あら、ハルナちゃん?」

「桃子さんっ!?」

出てきたのはなんと以前お世話になった喫茶翠屋のパティシエール、高町桃子さんでした。

 

「・・・ハッ!今回出番なし!?」

ん?アースラの医務室の方から父さんの声がしたような・・・幻聴かな?



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第15話「大人がしっかりしているアニメは名作なの」

名作の条件、エンディングで走る、家族がしっかり描写されている、作画が維持されている・・・他にはどんなのがありますかね?


はい、現場のハルナ・スカリエッティです。

現地は大変重苦しい雰囲気に包まれています。

戦線正面からすさまじいメンチビームの猛射を受けており防衛線は崩壊寸前です。

言い出しっぺの私ですが今すぐかえって布団の中に引きこもりたい。

可及的速やかな後退を進言します。

え?駄目?戦って死ね?

ちくしょう、いいでしょう死んでやりますとも!そうすりゃヴァルハラでは私の方が先達だ!向こうで会ったらあごで使ってやるから覚悟しとけ!

すみません、通信状態とか私の精神状態とかが混乱していますね、つまり今何が起こっているのかと言うと・・・。

なのはさんのご家族の殺気交じりの視線を受けて今にも首が落ちそうです、物理的に。

 

機人長女リリカルハルナ

第15話「大人がしっかりしているアニメは名作なの」

 

なのはさんの家の呼び鈴を押したら以前お世話になった桃子さんが出てきたことも驚きですが、なのはさんが桃子さんの娘さんだったと聞いた時はもっと驚きました。

そう言えば以前話していた娘さんの名前が「なのは」だったような・・・。

あの後すずか達が攫われたり、私が救出したりなし崩し的に恭也さんと遭遇戦に発展したり色々あってすずかやアリサと親友になったりとイベントが目白押し過ぎて忘れてました。

さて、現実逃避はこれくらいにして現在の状況をお話ししましょう。

あの後桃子さんの許しを得て、高町家にお邪魔した私とリンディさんは茶の間に通された後、ご家族全員に集まってもらいました。

なのはさんと桃子さん、数か月ぶりの再開になる恭也さんと初対面になる家長の士郎さんに長女の美由希さん。

彼らに対して改めて自己紹介を行った後、なのはさんと私たちのこれまでの経緯をお話ししました。

「・・・偶になのはが家から抜け出していたのは知っていたが、まさか魔法絡みだったとはな・・・」

既に私経由で魔法の存在を知っていた恭也さんは多少驚きはしましたが納得はしてくれました。

他の皆さんも驚きはしたものの疑っている様子はありません、もしかしたら恭也さんから何か聞いているのかもしれません。

「ええっ!?お兄ちゃん魔法の事知ってたの!?」

逆に一番驚いているのはなのはさんでした。

今まで内緒で家を抜け出していたことも魔法の事も全部バレてないと思っていたのに全部知られていたらそりゃ驚きますよね。

「抜け出していたことは最初から気づいていたぞ。魔法は以前ハルナちゃんと出会った時に知る機会があったんだ。お前が魔法使いになってたことには驚いたがな・・・」

「私はユーノ君が普通の男の子だったことの方が驚きだよ」

「うぅ、すみませんでした・・・」

一応魔法の存在を証明することも兼ねてスクライアさんに変身魔法を解いてもらったんですが確かにこっちのほうに驚かれました。

同時にスクライアさんがフェレットに化けて女湯に入っていたことも露見し、女性陣は赤面して、男性陣は殺気立った面持ちでスクライアさんに視線を向けますが、日本の生んだ最上級の謝罪法、『DOGEZA』を行い全身全霊をもって謝罪の意を示しましたのが効いたのか、それとも高町家の皆さんの心が広いのか、きつく注意すると許してくれました。

それでも男性陣はなのはさんの近くに男子が存在するのが許せないようです。

分かります、分かりますとも。

私だって可愛い妹たちにどこの馬の骨とも分からない奴が近づこうものなら馬刺しにして食ってやるところです、ちなみにスーパーに売ってるニューコーンミート、表記見たんですけどアレ牛100%じゃなくて牛肉と馬肉の合挽らしいです、だから普通のコンビーフよりも安いんですね、美味しいからいいけど。

とりあえずスクライアさんは許されたのはよかったんですが私ら的にはここからが本番なんですよね・・・。

「それで先ほどお話ししたように現在海鳴市にはジュエルシードと言う危険なエネルギー結晶が飛散してしまったんです。我々時空管理局も全力で回収を行いますが早期解決のためになのはさんのお力をお借りしたいんです」

そう言ってリンディさんと一緒に頭を下げますが高町家の方々は渋い顔のままです。

ジュエルシードがどれくらい危険なものなのかは話しましたし別の捜索者・・・フェイトさん達の存在も説明したのでなおさらでしょう。

大切な娘をそんな危険な事に付き合わせたくない、親として、兄姉として当然の反応です。

私達はそんな危険な所に娘さんをよこせと言ってるんですから嫌な顔をされるのも当然です。

で、冒頭部分に至るわけです。

高町家の皆様・・・特に恭也さんと美由希さんの殺気混じりの怒気が私の胃にダイレクトアタックをかましてくれるんですよ。

隣を見ればリンディさんも顔に脂汗を浮かべています。

なのはさんを見れば何かを言おうとしてはご家族の放つ怒りのオーラに中てられて引っ込んでいます。

大方「お願いだから私を行かせてほしい」とか言おうとしてるんでしょう。

「こちらでも比較的安全な作業を選定して危険がある場合は即座に退避させるつもりです」

一応私も安全には配慮すると約束しますがこれでダメならそれまでです。

てか私的にはそうなってほしいです、ご家族がダメと言ってくれればなのはさんも危険な現場に首を突っ込んだりはしないでしょうから。

「・・・なのははどうしたいんだい?」

これまで腕を組んで話を聞いていた士郎さんがおもむろになのはさんに問います。

「ふぇ?えっと・・・わたしね、どうしても会わなきゃいけない子がいるの」

「・・・さっき話に出てきたフェイトって子?」

美由希さんの質問になのはさんは頷きます。

「あの子、とっても寂しそうな眼をしてた・・・どうしてそんな目をしてるのか知りたい。もっとフェイトちゃんとお話ししたい!だから・・・っ!」

・・・うん、なのはさんマジぐう聖。

それだけの為に自分から危険に飛び込もうとしてるなんて超ド級・・・否超ヤ級のお人よしです。

知らない人への豆知識ですが超ド級の「ド」は当時最強だったイギリスの戦艦ドレッドノートから取ったものでドレッドノート以前に造られた古い戦艦が「前ド級」、ドレッドノートと同レベルの戦艦が「ド級」、ドレッドノートを超える超スゲー戦艦が超ドレッドノート級・・・「超ド級」になります。とーりーびーあー。

じゃあ超ヤ級ってなんだよって?戦艦大和から取って超ヤ級です、今考えました。

私がそんなことを考えて(現実逃避)いると士郎さんは「そうか・・・」と呟き、桃子さんとアイコンタクトをしてから私達に顔を向けます。

「なのは本人がこう言ってる以上、私達はそれを尊重したいと思います」

「ふぇっ?」

「なっ!?」

「お父さん!?」

それを聞いてなのはさん、恭也さん、美由希さんが驚愕する。

恐らくみんな反対されるものだと思っていたのでしょう。

「父さん、どうして・・・!?」

「なのはの意志は固そうだからな、反対したらそれこそまた内緒で飛び出しかねない」

「うっ・・・」

士郎さんも私と同じ考えだったようです。

そしてなのはさんは苦い顔をします、本気で家を抜け出す気でいたのか・・・。

「ただし・・・」

そう言って一度区切ると、士郎さんは鋭いまなざしで私たちを見つめます。

「なのはを預ける以上安全には十分配慮してもらいます」

まるで刃の様に鋭くなった士郎さんの目はこう言っていました。

「なのはに何かあったらただじゃ置かない」と・・・。

その身が放つ風格と実戦経験者だからこそ気づくことが出来たわずかな血の匂いから、士郎さんが生粋の戦士であることは理解していました。

そんな人が発する混じりっけ無しの殺気はまるで質量をもって私たちの首を落とさんばかりの物でした。

とは言え少し前まで本物の鉄火場で命のやり取りをしていた身です。

リンディさんだって最前線からは退きましたが以前は数多くの事件を解決してきた優秀な魔導士です。

驚きこそすれ怯むことはありません。

「っ・・・ええ、もちろんです」

「死力を尽くしてお守りします」

何より命を懸けてなのはさん達を護ると心に決めてここに来たんです、そんなこと言われるまでもありません。

自分の言葉を全力で受け止めたのが分かったのか、士郎さんは殺気を解いて微笑んできます。

「ええ、あなた達を信じましょう。なのはの事、宜しくお願いします」

それからは美由紀さんがなのはさんに魔法少女に変身してとせがんだりリンディさんと桃子さんが井戸端会議をしたりと先ほどの重苦しい空気が嘘だったかのように朗らかでした。

私?恭也さんと妹がいかに可愛いかを語り合ってましたよ。非常に有意義な時間でした。

その日はそのまま解散となり、なのはさんは明日からアースラに泊まり込むことになりました。

「それでは失礼します」

私とリンディさんは玄関で高町家の皆さんにお辞儀します。

「こちらこそ。改めて、なのはをよろしくお願いします」

そう言って礼を返す士郎さん達。

宜しくお願いするのはこちらなのにこれです、もう高町家の皆さんには足を向けて眠れませんね。

「あの、ハルナ・・・さん?」

なのはさんがえらく他人行儀に呼んできます。

昨日クロノから私の歳を聞いたらしいですがなんだかむず痒いです。

「そんな他人行儀じゃなくていいよ。これから一緒に頑張る仲間なんだし」

私がそう言うとなのはさんは「パァ」っと顔をほころばせます。

「うんっ!じゃあ私もなのはって呼んでっ」

「いいよ、よろしくなの・・・」

そこまで行ったところでふと私は考えました。

すずかとアリサの時は普通に名前で呼び合うようになりましたがせっかくだから今回はあだ名で呼ぼうと。

「・・・『なのっち』『なのすけ』『なのなの』『なのはさん』『魔王様』どのあだ名がいいと思う?」

「にゃっ!?最後の何で魔王!?」

いや、なんとなくこのあだ名が思いついたんですよ、まるで天の啓示のごとく降ってきたんです。

その後、あーでもないこーでもないとすったもんだした挙句、結局本人の強い要望によりふつうになのはと呼ぶことになりました。

あ、同様にスクライアさんも名前で呼ぶようになったんですがその瞬間何故か『淫獣』と言う単語が頭をよぎったんですよ。

温泉覗いたからかな?

そのことをクロノに話したら後日そのネタでユーノを弄っているのを見かけました。

全く、いい歳こいて年下の子をいぢめるとは、大人げない限りです。

え?何だよクロ助?

「お前も以前僕の事を変態扱いしてたろ」って?

あれは事実でしょう、以前の任務で現地士官のM少佐の事覗いてしかも泣かせたって現地軍のお偉いさんからクレームが届いたんですから。

あれは誤解?僕は無実だ?犯人はいつもそう言うんですよ。冤罪だっていうなら物的証拠を持って来なさい。

何はともあれ明日からなのはさん改めなのはも本格的に作戦参加、彼女を五体満足心身健康な状態で高町家に戻すためにも最善を尽くしましょう。私の首(物理)を守る為にも。

ミッドで待ってる皆、待っててね。お姉ちゃん必ず生きて帰るから・・・!




そろそろ戦闘シーンを書かねば(使命感)


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第16話「まさか打ち切り!?お姉ちゃん暁に死すなの?!」

戦闘シーンは難しい。

追記
コメントで指摘があったので転生者複数のタグを追加しました。


「高町なのはですっ!よろしくお願いしますっ!」

「同じくユーノ・スクライアです!お世話になりますっ!」

アースラのブリッジでなのはとユーノが元気よく挨拶をする。

二人がお辞儀をするとなのはの頭の左右で纏めたツインテールがピョコピョコ動きます、うんカワイイ。

今日からなのはも私達と一緒にジュエルシードの捜索に当たります。

「それでは改めて、アースラ艦長のリンディ・ハラオウンです。よろしくね、なのはさん」

「アースラ付き執務官のクロノ・ハラオウンだ。現場では直接指揮を執ると思うからよろしく」

正式な自己紹介と言う事でまずハラオウン親子が名乗ります。

「あたしはエイミィ・ミリエッタ。アースラの通信管制官兼クロノ君の補佐担当。よろしくねなのはちゃん!」

「ハイッ、エイミィさんっ!」

それからエイミィに続いて管制官のランディとアレックスも自己紹介が終わりいよいよ私の番です。

「で、わたしが・・・」

「私が医務官のジェイル・スカリエッティだ、怪我をしたなら遠慮なく医務室に来たまえ。脳みそ以外なら完全な状態に治療することを約束しよう!」

名前を言おうとしたところで父さんが私を押しのジョジョ立ちで自己紹介します。

「は、はい・・・」

ハイテンションな父さん。

屋や引き気味ななのは。

そして怒る私!

ここでキリッと決めてカッコいいお姉ちゃんな所を見せようと思ったのに!

私は両手で指でっぽうを形成して胸の怒りを装填すると未だノリノリで私に気づいていない父さんの臀部に向けて・・・。

「三秒殺しっ!!」

「文明開化ぁ!?」

渾身の刺激的絶命拳をお見舞いしてやりました。

「クッ、ククッ・・・やるじゃないかハルナ・・・」

そう言って笑う父さんですがその額にはだらだらと脂汗が浮かんでいます。

「おかしいなぁ?殺す気で打ち込んだのに、父さん存外しぶといね?」

「当然だろう?君のしぶとさは私の遺伝なんだからねぇ、何より父が娘に負けるわけにはいかないよ。ガ●ダムでジ●に負けるようなものだかねぇ」

「なるほど、でもおあいにく様。私、性能的に●ムじゃなくてνガン●ムだから。父さんに勝ち目なんて億に一つもないんだよ・・・」

一通り皮肉の応酬が終わると私と父さんは暫し黙り込み・・・。

「「ちねぇぇぇっ!!」」

今度は拳の応酬を開始しました。

 

機人長女リリカルハルナ

第16話「まさか打ち切り!?お姉ちゃん暁に死すなの?!」

 

Sideなのは

ハルナちゃんが目の前にいるスカリエッティ先生にカンチョーした直後、二人が喧嘩を始めました。

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラぁぁっっっっ!!!!!」

「無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ぁぁっっっっ!!!!!」

腕が何本も見えるくらい素早い速度でパンチを繰り出すハルナちゃんとどこから生えたのかボクシンググローブを付けたロボットハンドで殴り返すジェイル先生。

幻でしょうか、二人の背後に筋肉ムキムキの人影が見えます。

「また始まった・・・」

「あらあら、二人とも本当に仲がいいわねぇ~」

その様子をクロノ君は頭を押さえながら、リンディさんはお茶(お砂糖沢山)を飲みながらのほほんと眺めています。

「はいは~いどっちに賭ける?エイミィさんの予想ではすでにジェイル先生がダメージ受けてるからハルナちゃんが有利だよー」

「あ、じゃあハルナさんで」

「大穴でドクター逆転に賭けてみようかな?」

エイミィさん達に至ってはどっちが勝つかで賭け事を始めてました。

「え?止めなくていいのっ!?」

「気にするな、いつもの事だから」

「いつもこんな事やってるの!?」

ユーノ君も私と同じく慌てていますがクロノ君は逆に諦めモードです。

それから5分くらいして二人はクロスカウンターを受け同時に倒れてしまいました。

Side Out

 

「うー、いたた・・・んで、遅くなったけど改めまして・・・ハルナ・スカリエッティ。この事件の担当として派遣された執務官です、よろしくねー」

父さんのクロスカウンタを食らった頬を撫でながら私はなのはに自己紹介をします。

それにしても父さんに殴られた以上もう「親父にもぶたれたことないのにっ!」のネタが使えなくなってしまうんですね、そう考えると寂しいものがあります。

「ハルナちゃん、その執務官ってどんなお仕事なの?」

感慨に耽っているとなのはが手を上げて質問してきます。

実際この辺の役職関係て複雑ですからね、分かんない人にはとことん意味不明でしょう。

「執務官っていうのは事件の捜査とかを取り仕切る役職の事だよ。捜査本部から捜査官に指揮を飛ばしたり場合によっては私みたいに現地で陣頭指揮することもあるんだ」

分かりやすく言うと刑事ドラマ・・・踊る大●査線の室●管理官みたいな感じでしょうか?

「へー、あれ?でもクロノ君も執務官だよね?」

リーダーが二人いるのは何で?となのはが首をかしげます。

「あ、それね・・・クロノはアースラ付き・・・つまり常時アースラにいて艦の近くで事件が起こったら艦ごと駆けつけて捜査に当たるタイプ」

次元航行艦はその特性上一回港を離れれば独自に判断、行動しなければならない状況もあります。

そうなった時に本局からの指示を待たずに現場の判断で動くためには現地の法律や文化、風習などを学んだ執務官が常駐する必要性があるのです。

「で、私は遺失物管理部っていう部署に所属していてロストロギア絡みの事件があった時に身一つで現場に飛んで現地の部隊や捜査官の指揮を執るタイプの執務官なの。それで何でクロノがいるのに私が派遣されたかと言うと・・・」

多分説明する私はすんごいゲンナリした表情になってるはずです。

この辺はもっと面倒くさい理由がありまして、次元航行部隊と遺失物管理部の管轄問題・・・言うなれば縄張り争いが原因なんです。

通例で言えば本案件は可及的速やかに解決する必要がある為直近にいるアースラ、そしてそこに所属するクロノが担当することになります。

しかしジュエルシード輸送船から流出事故発生を受けたのはユーノと同行していた遺失物管理部機動1課の隊員、スクライア家からユーノの捜索要請を受けたのも遺跡調査で彼らと付合いの深い機動1課でした。

結果生じたのが世界の危機を目前にしながらの管轄争い・・・。

次元航行部隊はジュエルシードの反応を発見したのは自分だと主張し、遺失物管理部はスクライア家から捜索要請を受けた自分たちが担当すると言って聞きません。

噂では次元艦隊司令と遺失物管理部長が次の執務官長のポストを巡って対立してるなんて話も聞きますし、両方とも手柄が欲しいと顔に書いてあるようです。

結局統幕議長のミゼット提督から一喝を受け双方から執務官を一人ずつ派遣、双方が現場で協調して事に当たれとお達しが下りました。

で、次元航行部隊からはアースラとクロノ、遺失物管理部からは私とサポートとして父さんが派遣されることが決まったのです。

「はえー・・・」

さすがに小学3年生に組織内における政治や派閥の話は難しかったようです。

「要するに大人の事情・・・めんどくさいお役所絡みのゴタゴタがあったんだよ」

「えっと、うん。ハルナちゃんたちが大変なのはわかったの」

それを分かってもらえれば私は十分です。

なのでドロドロした政治の話はココで切り上げて今後の活動方針について話し合いましょう。

「それじゃあお仕事の話をしましょうかね。現在確認が取れていないジュエルシードは11個、これの捜索はアースラのセンサーで行くからなのはとユーノは発見されたジュエルシードの封印と回収をお願いします。ちなみにこれは私、クロノとの3交代制で発見されるまではアースラで待機しててもらうけれど、見つかるまではのんびりしてて大丈夫だから。休むのも仕事の内だから無理無茶無謀は厳禁とします。破った場合はおでこに『肉』って黒マジックで書かれた状態で海鳴商店街を歩いてもらうからそのつもりでいるように」

「う、うん・・・」

罰則がとてつもなく恐ろしいことになのはは戦慄しています。

「ハルナはああいって茶化しているが実際現場では君の安全が最優先だ。こちらの指示には従ってもらう、いいな?」

至極真面目な顔でクロノが言うとなのはもこわばった表情で頷きます。

「二人とも、なのはさんも分かってくれたみたいだしその辺にしましょう?それよりなのはさん、ささやかだけどあなたの親睦会をするから食堂に移動しましょう」

「ふぇっ!?私の親睦会ですか!?」

驚くなのはさんにリンディさんは頷きます。

「ええ、短い間だけれど一緒に頑張る仲間ですもの。それじゃあ手の空いてるクルーは食堂に集合ねっ」

リンディさんの号令と共に果たした値はなのはを連れて食堂へ移動しました。

 

親睦会は本当に大盛況でした。

宴会部長のエイミィの音頭で乾杯し、私がイタリア語とフランス語の乾杯が『チンチン』だと教えるとなのはが顔を真っ赤にしたり。

何故か父さんが板前姿で握ったロシアンルーレット寿司を皆で食べても誰もリアクションが無いと思ったら当りの激甘(ワサビの代わりに練乳たっぷり)をリンディさんが食べた挙句お代わりを要求したり。

何故か置いてあったお酒で酔った私がクロノを捕まえて延々と妹の素晴らしさについて講義したりと本当に楽しかったです。

もう一度やりたいですね、今度やるとしたら事件解決の打ち上げでしょうか。

そんな賑やかな初日とは打って変わって、捜索開始から今日で三日たちますが本当に静かです。

件のフェイトさんも怪我が完治していないのか、それとも私達の事を警戒しているのか全く音沙汰がありません。

このまま私たちがジュエルシードを回収し終わるまでじっとしていてもらいたいです、てか諦めて自首してほしいです。

そう言えばなのはさんからフェイトさんのフルネーム・・・フェイト・テスタロッサと言うらしいですがそれを聞いた父さんが首をかしげていましたね?

何でも私と生き別れていた時にテスタロッサと言う人に会ったんだとか・・・。

今は本局に問い合わせてその人の足取りを探してもらっているらしいです。

「でも本当に平和だよね~。そろそろ何かあってもいいころだと思うな~」

そんなことをボヤいてフラグを立てるエイミィのリクエストに応えたのか、アースラのセンサーがジュエルシードの反応を捉えました。

「・・・エイミィがそんなこと言うから・・・」

「ゴメンなさい、ってあたしのせい!?」

ステキなノリツッコミを返しながらもエイミィは発信地点を割り出します。

「見つけた、ハルナちゃんお願い!」

「合点承知!」

エイミィに答え、転送ポートに乗ると即座に転送が開始されます。

視界が光に包まれ、収まると私は海鳴の空にいました。

すぐさまイェーガーを起動、騎士甲冑を纏って現場にぶっ飛びます。

幸いなことに融合体ではなくジュエルシード単体で起動していました。

なのは達の証言だと犬や猫と接触してスゴイことになったらしいです。

ネコに至っては『大きくなりたい』と言う願望の通り大きくしてあげたらしいです、全長30メートルくらいに・・・。

それを聞いた時、私は衝撃を受けましたよ。

なんてもったいない!もっと早く地球に着てれば思う存分モフモフできたのに・・・!

今確保したジュエルシードを件の猫にあげたい欲望を頑張って鎮めているとイェーガーが警告を発します。

『警告!4時方向、距離2000に魔力反応2、接近中!』

「来たか・・・」

そう呟いて振り向けば高速で飛来する金色の誘導弾、その数3発。

弾道計算、直撃コースは一発・・・私は微動だにせずシールドを展開してその一発を防御します。

二発が足元で土煙を上げ、シールドで跳弾した一発が背後のビルに直撃し爆発します。

「いきなり攻撃とはご挨拶じゃないかな?フェイト・テスタロッサさんや・・・」

騎士甲冑に着いた粉塵を払いながら言う私の視線の先で襲撃者・・・フェイト・テスタロッサさんはマントを翻しながら着地、警戒した面持ちでデバイスを構えます。

「・・・・・・」

「だんまりですかい、シカトされるって結構ハートにくるもんだね・・・」

「・・・ジュエルシードを渡してください」

そう言うとフェイトさんは戦斧型のデバイスを大鎌に変形させます。

「そう言う事だよ。痛い目見たくなかったらそれ置いてさっさと帰んな」

その声の方に視線だけ向けると以前フェイトさんと一緒にいたオレンジ髪のお姉さんが拳をバキバキ言わせながらすごんでいました。

彼女のお尻には以前は見られなかったフサフサの尻尾、よく見れば頭にも犬耳がついてます。

どうやら使い魔だった様です。

「この間はよくもフェイトを傷つけてくれたねぇ、おまけに神経干渉で激痛を与えるなんて・・・あの後フェイトがどれだけ苦しんだか・・・っ!」

お姉さんの髪が逆立ち、顔が見る見るうちに怒りで歪んでいきます。

そんなフェイトさん主従に対し、私は一歩足を踏み出し・・・。

「・・・・・・っ!?」

「ごめんなさい!」

「・・・・・えっ?」

謝罪しました。

攻撃して来ると思っていたのか、身構えてたフェイトさん達は私の行動に茫然となります。

「職務とは言え怪我をしていたとは知らずにひどいことをしちゃったからね、そのことを謝らせてください」

「え?あの、はい・・・」

根がいい子なんでしょう、謝る私にフェイトさんはオロオロと困惑しながらも謝罪を受け取ってくれました。

「ふーん、それじゃあお詫びの印にそのジュエルシードを置いてってもらおうかな?」

反対に使い魔のお姉さんは調子に乗ってます。

「だが断る!」

あいにく私はノーと言える異世界人なので断固として拒否します。

「なっ!?悪いと思ってたんだろ!?それともさっきの謝罪は出まかせかい!?」

「それはそれ!これはこれ!」

フェイトさんに攻撃したことは悪いと思っているけれどジュエルシードに関しては管理局員としての責任を放棄するわけにはいきません。

「第一、これの危険性は二人も身をもって知ったでしょう?これ一個、しかも不完全な暴走であれだけの威力を出せる危険物を何で集めて回っているのさ?」

「そ、それは・・・」

「っ・・・」

お姉さんは言葉に詰まり、フェイトさんもデバイスを構えたまま俯きます。

「言えない。ううん、教えられていないのかな?」

フェイトさん達のバックには間違いなく彼女たちに命令している人物ないし組織がいます。

二人ともジュエルシードがただ願いをかなえる代物じゃない事はすでに知っている。

なのに捜索をやめないという事はフェイトさん達以外の誰かがこれを使おうとして二人に回収を命じている可能性が濃厚です。

「・・・・・・」

フェイトさんは答えない、この沈黙は肯定と受け取っていいでしょう。

「全く、こんな幼気な少女に危険な事をさせて当の首謀者は安全な場所から命令するだけとはね、フェイトさん達もそんなろくでなしにあごで使われて気の毒に・・・。もし保護が必要なら・・・」

「母さんはそんな人じゃないっ!」

私がえらく挑発的な顔で語っているとフェイトさんが大声で否定します。

今まで感情に乏しい感じだっただけに感情を露わにしたフェイトさんはとても印象的でした。

よほどその人、お母さんが大切なのでしょう。

「・・・うん、あなたの家族を侮辱してゴメン。それにしても成程、黒幕はお母さんか・・・」

「っ!?」

怒らせてこれを乱せ・・・孫氏はハイテクデバイスで戦う魔導士戦でも有効なようです。

うまく誘導され母の存在が露見してしまったことにフェイトさんは狼狽えます。

「もっと詳しいことも聞きたいんでね、武装解除して艦まで御同行願おうかな?」

私がそう言うとフェイトさんが高速で突っ込んできます。

振り下ろされる斬撃を再びシールドを展開し防御。

「うおぉぉぉぉぉっっ!」

フェイトさんの攻撃を防御する私の左側から横っ腹めがけて使い魔のお姉さんの拳が振るわれます。

「おっと」

飛んでくる拳を左手でいなしながら後退する私。

どうやら言葉は不要のようです。

「容疑者の抵抗を確認、拘束しますんでお覚悟を」

いつぞやの様に私は二人にイェーガーの銃口を向ける。

『現場周辺は結界で封鎖したから人目は気にしなくていいよハルナちゃん!』

通信を入れてくれたエイミィに頷いた直後、私とフェイトさんは同時に空へ舞い上がりました。

 

Sideフェイト

(この子、強い・・・!)

それが目の前の目の執務官に対する率直な感想だった。

攻撃、防御、スピード・・・それらは確かに優れているが、どれも自分を圧倒的に凌駕するほどではない。

むしろ魔力と速度に関しては間違いなく自分が上だ、なのに・・・。

「させるかっ、アクセルキーパー!」

「くっ・・・!」

灰色のバリアジャケットを纏った魔導師が展開した三角形の魔法陣・・・。

そこからすさまじい量の魔力弾が猛射され、回避行動を強いられる。

(攻撃が、全部読まれてる・・・!?)

これで何度目だろうか?こちらが仕掛けようと接近すると誘導弾や牽制射撃に阻まれ足踏みしてしまう。

かといって射撃で遠距離から攻撃しても大したダメージを与えられない。

出の早いフォトンランサーは傾斜させたシールドで弾かれ、かといってサンダースマッシャーの様な大技は妨害されてろくにチャージもできない。

「おりゃあっ!」

その隙を作ろうとアルフが仕掛けるがフォトンバレットやいつのまにか設置されていたバインドで近づくこともできない。

やりにくい、とにかくやりにくい相手だ。

「むぅ、結構粘るな。病み上がりだろうしもうちょっと簡単に勝てると思ってたけど・・・フェイトさん強いね」

そう言って称賛の言葉を送ってくる魔導師、確かハルナ・スカリエッティと名乗っていた執務官はその顔に不敵な笑みを浮かべている。

(ダメだ、耳を貸しちゃいけない・・・!)

恐らくこれも彼女の心理戦かもしれない。

先ほども不用意に挑発に乗り、母の事を口走ってしまった。

相手のペースに乗せられちゃダメだ、だというのに・・・。

「全く、クロノたち遅すぎでしょ?なにやってんのさ?」

彼女の言葉に私は焦りを払しょくすることが出来なかった。

クロノと言うのが誰かは分からない。

でもそれが彼女の仲間でなのは確かで、そして間違い無くあの白い子も一緒にやって来るだろう。

艦と言っていたから大勢の武装局員が来る可能性もある。

(来るのが遅いと言っているけれどそれだって私を騙すための嘘でもうすぐそこまで来ているかもしれない、それとも逆に私がジュエルシードを諦めて逃げるように差し向けている?)

既に彼女の術中にはまっていることに焦りを感じるフェイト。

安全を優先するなら今回はジュエルシードをあきらめて逃走すべきだ。

だがただの時間稼ぎならば、このまま力圧しすれば最終的に魔力で勝るこちらが勝てるかもしれない・・・。

逃走か戦闘継続か、揺れる天秤に気を取られていたフェイトに僅かな隙が生じる。

「フェイトっ!!」

「っ!?」

そして歴戦の執務官はその隙を逃しはしなかった。

「隙ありっ!」

発射される魔力弾、回避は・・・間に合わない!

「させるかぁっ!」

とっさにアルフが間に割って入る、しかし・・・。

「えっ!?何だこれっ、バインドっ!!?」

魔力弾を防御したと思った瞬間、食らった個所からバインドが発生し、アルフを拘束する。

「アルフっ!って、しまっ・・・!」

気付いた時にはすでに遅く、飛来した二発目の魔力弾がフェイトに命中し、発生したバインドが彼女を捉える。

「ビンゴっ!さぁ、公務執行妨害と管理外世界での無許可の魔法行使、ロストロギアの不当な収集の現行犯で逮捕します!現行犯だから黙秘権も弁護士を呼ぶ権利も無いけれどかつ丼を注文する権利なら残ってるから大人しくしなさい!」

「えっ?カツ、ドン?」

執務官の言葉に困惑するフェイトだったが、ふと昼にテレビでやっていた昔のドラマの再放送の光景を思い出した。

「それって、たしか取調室で食べさせてもらえる・・・」

「あー、何か故郷の家族の事思い出して泣きながら自白するシーンだっけ?」

一緒に見ていたアルフも思い出したみたい。

あの後興味がわいて近所のお店にデリバリーを頼んだけどとてもおいしかった、また食べたいな。

「そう!それっ!」

自分たちが反応した途端、執務官は嬉しかったのか目をキラキラさせながら大声を上げた。

「いやー、このネタふっても誰もツッコんでくれなくてさー・・・」

「そりゃアンタ、この世界のローカル放送のネタなんてミッドの人間に通用するわけ無いじゃないか」

アルフがツッコミを入れるが執務官の方は聞こえていないのか上機嫌で続ける。

「まぁ、そんなわけで取調室でかつ丼が待ってるから私と一緒に着てもらおうかな」

執務官がデバイスを構えたままこちらに近づいてくる。

自分もアルフも何とか脱出しようと必死にもがくが、バインドは非常に強固に構成されており無力化することが出来ない。

「午後8時43分、被疑者逮h・・・」

そこまで行ったところで、彼女は横から殴りつけられたように倒れこむ。

「・・・え?」

訳が分からず唖然としていると崩れ落ちた彼女の腹部から赤い液体が流れだした。

Side Out

 

「・・・・・・っ!?」

その瞬間、私は何が起こったのかわかりませんでした。

突然横っ腹に強い衝撃が走ると足から力が抜けてそのまま吹き飛ばされました。

「ぐぅっ・・・!」

そのままアスファルトで舗装された道路に倒れこんだ私は何が起こったのかを確認すべく急いでシステムチェックを開始します。

センサーが全身をスキャンし、異常を確認する。

そしてそれは直ぐに見つかった。

『左腹部にクラスAの損傷、脾臓に深刻なダメージ発生、傷口より出血を確認・・・』

・・・え?何これ?

本当にもう訳が分かりませんでした。

何で怪我してんの?しかも内蔵にダメージってかなりやばいじゃん!

油断しました、これまでの戦闘でフェイトさんと使い魔のお姉さんしか確認出来なかったため、実行犯は二人だけと思い込んでいました。

まさか、他にも仲間がいたなんて・・・。

そうしているうちに左お腹の辺りがだんだん熱く感じてきました。

「これは・・・拙い・・・」

すぐさま脳内麻薬を大量分泌します。

これで痛みは感じなくなりましたがそれでも流れ出ていく血の量だけは変わりません。

何とか身体を動かし出血している個所を見ると血がにじみ出した騎士甲冑にピンポン玉位の穴がぽっかりと開いています。

「イェーガー、これは・・・」

『魔力反応検知できず、12.7㎜クラスの弾丸の可能性大』

ますますもってヤバイことになりました。

相手は魔力を必要としない質量兵器・・・つまり銃火器で武装しているようです。

それもバリアジャケットや騎士甲冑の防御を抜いてくるほどの・・・対物ライフルクラスの代物を。

「あ、あぁ・・・いやあぁぁぁぁぁっっ!!」

突然悲鳴が聞こえ、そちらに目をやるとフェイトさんがいました。

どうやら私が撃たれたことに気づいたようです。

すると今度は疑問がわいてきます。

私が撃たれたことに悲鳴を上げるという事はこれはフェイトさんにとっても予想外の出来事だったようです。

仲間がいた事をフェイトさんも知らなかったのか、それとも仲間が銃を持っているのを知らなかったのか・・・。

もしかしたらフェイトさん達とは別の第三勢力が現れた可能性があります。

だとしたらフェイトさんも危険です。

何とかできないかと頭と体を動かしていると、少し離れた所から未確認の魔力反応が接近してきます。

魔法で飛んでいるのか反応はあっという間に私たちの所までやってきます。

「まだ生きてるとは、バリアジャケットは確かに抜いたはずなんだけどな・・・」

現れたのは見た事の無い少年でした。

年齢は多分なのはやフェイトさんと同じくらい。

銀髪紅眼と言う中二感あふれる容貌。

どことなくなのはの物に似た意匠の青いバリアジャケットと腰から下げたアームドデバイスと思しき両刀のロングソード。

肩には私を狙撃したと思われるバカでかい対物銃・・・バレットM82A2を担いでいます。

「あ、あなたは・・・?」

困惑するフェイトさんの様子からやはり彼女の仲間ではないようです。

「ジュエルシードを持って早く逃げろ」

そんな正体不明の少年Aは私を警戒したままフェイトさんに言います。

「え?でも・・・」

そう言いながら私に視線を向けるフェイトさん。

心配してくれてるんですね、ちょっと嬉しい。

「急がないと管理局の応援が来る。母親を助けたいんだろ?」

「えっ!?」

「お前、何でそれを・・・!?」

秘密を知られていることにフェイトさんとお姉さんは驚き、警戒を露わにします。

「・・・急げ、もう一度は言わないぞ」

「・・・・・・」

取り付く島もなく言い放つ少年Aと私を交互に見た後、フェイトさんはジュエルシードに向かいます。

「ジュエルシード、封印・・・」

フェイトさんによって封印されたジュエルシードは沈静化すると彼女のデバイスに吸い込まれていきます。

「・・・・・・」

そのままこちらに背を向け飛び立とうとするフェイトさん。

「・・・ごめんね」

彼女は一度こちらを振り返るとそう言って飛び去って行きます。

「あっ、フェイト!」

こちらを気にしていた使い魔お姉さんも慌ててフェイトさんを追います。

「行ったか、さて・・・」

小さくなっていくフェイトさんの影を何やら優しそうに見つめていた謎の少年Aですが、それが見えなくなると何やらスゴイ剣幕でこちらをにらみつけてきます。

「何でお前みたいなのが・・・彼女から謝られてるんだよ!」

Aのつま先が私のお腹に突き刺さります。

「がっ・・・!」

吹っ飛ぶ私。

何でしょう、デジャビュを感じます。

「ゲホッ、お腹蹴っ飛ばされるようなことした覚えはないんだけど・・・てか、あんた誰?」

私がそう言うとそいつはますます険しい顔になる。

「お前こそ何なんだよ・・・お前がいることそのものが害悪なんだよ!」

そう言ってAは私の事を何度も蹴る。

「んぐっ、がっ・・・!」

こいつ・・・赤ちゃんできなくなったらどうするんだ!今の所作る気も相手もいないけど・・・。

「はぁ、はぁ・・・お前が、お前のせいで・・・」

わけわからん事を繰り返すA、こいつ絶対サイコパスですよ。

「もういい、どっちにしろここで消えるんだからな・・・」

そう言って担いでいたM82を構えるA。

・・・これはヤバイ。

こんな距離で撃たれたら今度こそ死んじゃいます。

ヤバイ、ヤバイヤバイヤバイ・・・っ!

どうしよう、何とかしないと・・・考えろ、考えろ私・・・!

その①、天才でぱーふぇくとな美少女戦闘機人のハルナちゃんは突如反撃のアイディアがひらめく。

その②、クロノ達が助けに来てくれる。

その③、助からない、現実は非常である。

・・・その③は論外。

その②が理想的だけど撃たれてからなんの通信も無いことから妨害されている可能性がある、たぶん間に合わない。

やはりその①しかないようだ・・・。

私の頭の中でそんな実況を行うポルナレフ、実況してる暇があったらスタンドで助けろください。

くそっ、どうにも思考がまとまりません、脳内麻薬を過剰分泌したツケが回ってきたようです。

そんな事やってる間にバレットのトリガーに指をかける少年。

「死ね・・・」

呪詛が籠っていそうな死刑宣告と共に少年の引き金は引かれ・・・。

「バスターっ!!」

ようとしたところで上空から降り注いだ桜色の極光に妨げられました。

「これはっ・・・ディバインバスターか!?」

驚きの声を上げながら上を向く謎A、てか何でコイツなのはの技名知ってるんでしょうか?

「スティンガースナイプっ!」

直後間髪入れずに飛来するクロノの誘導弾。

「チッ・・・!」

降り注ぐ魔法のシャワーの中を右に左にと除けますがさすがの物量を躱しきれず、担いでいたM82に直撃、秘殺傷設定の為直撃しても壊れませんでしたが手から落ち、路面に激突した衝撃で銃身が曲がります、あれではもう使えないでしょう。

「ハルナちゃんっ!」

「なのは、ハルナを抱えて下がれ!ユーノはシールド!二人に飛んでいく攻撃を全部防ぎきれ!」

「分かった!なのは、ハルナをっ・・・」

クロノに遅いと皮肉を言いたい所ですが血を流し過ぎたのか思うように口が動きません。

「・・・どうしてだ」

何がだよ?てかこっちがどうしてだって言いたいよ。

「どうしてそんなやつを助けようとするんだっ!?」

・・・もうね、訳が分からないよ。

突然現れたと思ったら殺意マシマシで殺しにかかって来るし、クロノやなのはが来たら訳わかんないこと叫びまくるし・・・。

てか本当にコイツ何者?

「言い分は後で聞いてやる。公務執行妨害及び管理外世界での無許可魔法行使、殺人未遂の現行犯で逮捕する・・・」

底冷えするような冷たい声で告げるクロノ、これは本気で怒ってますね。

「っ・・・!」

状況不利と見たのかAは発煙弾をばら撒きます。

辺りが煙で包まれる直前、相手は腰のデバイスを抜くと切っ先をこちらに向けます。

「っ!?なのはっ・・・!」

「え?きゃぁっ!」

とっさになのはを突き飛ばし射線上から退避させます。

視線を戻せばすぐそこまで迫ってくる魔力弾・・・。

「くっ・・・!

とっさに両腕をクロスさせた直後、弾が直撃して再び身体が吹っ飛びます。

「ハルナちゃんっ!!」

二度三度、アスファルトの上を跳ねながら転がる私の耳になのはの叫び声が聞こえます。

「チッ・・・」

仕留めそこなった事に舌打ちした直後、Aの魔力反応が一瞬で消えます。

「消えた!?エイミィ!」

「クッ・・・ダメだ、見失った!」

悔しそうに答えるエイミィ。

「とにかく今はハルナだ!転送ポートにドクターと医療班を待機させてくれ!」

「ハルナちゃん!しっかりして、ハルナちゃんっ!」

涙を浮かべながら私の顔を覗き込むなのは・・・。

困りましたね、美少女を泣かせてしまいました。

「うぅ、大丈夫・・・とりあえず止血はしたから、多分これ以上はひどくならない、筈・・・」

なのはを安心させる為にそう言いましたが状況は正直言ってあんまり宜しくありません。

50口径をモロに食らったせいで脾臓はオシャカ、衝撃で他の臓器も傷ついています。

両腕もおかしな方向に曲がってますが、こっちは義手ですから取り換えれば問題ありません。

一番の問題は出血です。

傷口周りへの血の供給をカットしたからこれ以上の出血は無いはずですが、それでも生命活動に支障を来すレベルの血を失いました。

今は補助脳のCPUが思考を補助してますから何とか会話できてますがそれもちょっと覚束なくなってきてます。

「クロノ、ゴメン。さすがにそろそろ辛いから・・・寝るよ?」

今はとにかく体力の消耗を抑えるのが一番です。

「・・・わかった、でもちゃんと起きろよ。永眠なんて許さないからな!」

心配するクロノを見て、嬉しいようなお姉ちゃんとして情けないような複雑な心境です。

「了解、んじゃオヤスミ・・・」

そう言って目を閉じます。

瞼の裏に浮かぶのはアースラで手術準備をしてるだろう父さん、ミッドで帰りを待つ家族と親友のマリィ。

そして未だ顔を見せに行っていないすずかとアリサ・・・。

あー、このこと知ったら皆心配するだろうなぁ、んできっと滅茶苦茶怒られるんだろうなぁ・・・。

大切な人たちの事を思い浮かべながら、私の意識は次第に薄れ、やがて闇に堕ちていった。

 




ご声援ありがとうございました。
Y.Smanの次回作にご期待ください・・・嘘です。
ちゃんと続きます。


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第17話「カロリーメイトはフルーツ味が一番(作者の偏見)なの」

前回の投稿以降初の☆1評価を受けてしまいました(´・ω・`)
今後はもっと精進するのでどうか生暖かく見守ってやってください。


Sideなのは

あれから何時間経っただろう・・・。

大けがをしたハルナちゃんをアースラに連れていくと待っていたジェイル先生とお医者さんたちが大急ぎでハルナちゃんを医務室に運んで行った。

扉は今も固く閉ざされ、その上には赤く『手術中』とミッドチルダの文字で表示されている。

「なのはさん、さすがにもう休んだ方がいいわ・・・」

手術開始からずっとここにいた為かリンディさんが心配してきてくれました。

「リンディさん・・・ありがとうございます、でも・・・」

「・・・ハルナさんが心配?」

その問いに私は頷きます。

ハルナ・スカリエッティちゃん・・・。

元気溌剌でいつもはしゃいでいて、でも私よりもずっとお姉さんでいつも心配してくれている優しい女の子。

大家族の長女で暇があればいつも妹の事ばかり話している家族が大好きな子・・・。

そんな優しいハルナちゃんが何であんな大けがを負わなくちゃいけないんだろう?

それを考えた時、ふとハルナちゃんを撃った男の子の事も思い出す。

あの子は一体誰なんだろう?フェイトちゃんの仲間なのかな?どうしてあの男の子はあんなにハルナちゃんを憎んでいたんだろう?

今度会った時はあの子ともちゃんとお話ししなきゃ・・・。

私がそう心に決めた丁度その時、手術中の表示が消えて手術室の扉が開いた。

Side Out

 

機人長女リリカルハルナ

第17話「カロリーメイトはフルーツ味が一番(作者の偏見)なの」

 

目を開けると最初に見えたのは見知らぬ天井、ではなく何度かお世話になったアースラの医務室の天井でした。

「目が覚めたか・・・」

妙に懐かしく感じる声を耳にし顔を向けると妙にくたびれた格好の父さんがそこに居ました。

「父、さん・・・」

「君が撃たれてから一週間が過ぎたよ」

父さんが言うには手術で体に埋まった弾丸を摘出、破壊された脾臓をクローン培養したものと交換して傷口を塞いでから運び入れていた生体ポッドに放り込んだそうです。

それから五日、一応傷口が塞がったのでポッドから出し以降は自然治癒に任せることにしたとのこと。

「一時は本当にヤバかったが何とかもちなおしてね、外傷が癒えても意識が戻らなくてずっと心配してたよ」

「そっか、一週間か・・・結構長かったなぁ・・・って、一週間!?」

少しずつ調子を取り戻しかけていた意識はそれを聞いて一気に覚醒します。

「あれからどうなったの!?なのは達は無事!?・・・って、あれ?」

そう言って上半身を起こそうとしたところで体に力が入らないことに気づきます。

「あの戦いで筋肉を膨張させて止血しただろう?おかげで手術がしにくかったから筋肉弛緩剤をたんまり注射する羽目になったよ」

「それと・・・」と父さんは続けます。

「なのは君達については安心したまえ。クロノ執務官が付いているよ。最も効率は低下したがね・・・」

父さんが言うには私が襲撃され、フェイトさんに協力者がいることが判明した為、何より相手が殺人も厭わない危険な相手である為最初はなのはを捜査から外そうという話が出たそうです、しかしなのは本人がそれを頑なに拒否したのと、返した場合お家を襲撃される危険性があるのでアースラにいた方が安全という結論に至りました。

勿論ご家族にはリンディさんから報告済み、さすがに士郎さんも難色を示しましたが最終的になのはは残留することが決定。

彼女の安全を最優先にするため予定されていたローテーション方式ではなくなのは、ユーノ、クロノがひと纏まりで行動するようになり安全は確保できた代わりに捜索効率が低下、結果ジュエルシードのいくつかはフェイトさん達に持っていかれたそうです。

「なんてこった、寝てる暇なんて無いじゃ、んぐっ!?」

無理やり起き上がろうとした瞬間、お腹に鈍い痛みが走りうずくまります。

「傷口が塞がったって言っても表層だけだよ、下手に動くとまた開くから暫く絶対安静だ、ちなみに医者命令の為拒否権は存在しないよ」

うぅ、こんな時に動けないなんて・・・。

「無様とか考えてるようだがね、むしろ一番しぶとい君だったから助かったんだ。なのは君やクロノ執務官だったら間違いなく死んでたよ」

言われてみれば確かにそうかもしれません。

何しろフィフティーキャリバー・・・12.7㎜なんて明らかに装甲車打つための弾丸で人なんて撃ったら間違いなくネギトロめいたサムシングに早変わりです。

バリアジャケット着こんでシールドで防いでもお腹にバカでっかい穴が開くでしょう。

「そんなわけだ、二人じゃなくてよかったと前向きに考えたまえ」

・・・どうやら父さんは私を励ましてくれているようです。

白衣とスーツがくたびれているのも着替えの時間すら惜しんで私に付いていてくれたんでしょう。

バカ、変態、マッドと三拍子そろっていますが本気で父さんは私の事を案じてくれていたみたいです。

「・・・うん、ありがとう父さん」

私がお礼を言うと父さんは照れくさそうに笑います。

「まあ、そう言う事だ。今は栄誉をたっぷり取って休むといい」

父さんはそう言って私を寝かせ、布団をかけます。

そうですね、今回は父さんの指示に従いましょう。

グッスリ寝て、栄養をたくさんとって・・・。

ん?栄養?

「それだぁっ!」

再びガバッと起き上がった私のお腹を再び激痛が襲いました。

 

 

Side なのは

「ハルナちゃんの目が覚めたの!?」

「うん、さっきリンディ提督から連絡が・・・って、なのは!?」

ユーノ君からそれを聞いた瞬間、私は走り出していました。

あの日、大けがを負ったハルナちゃん。

手術が終わってジェイル先生から峠は越えてもう大丈夫と説明されてたものの、一昨日までずっと面会謝絶でした。

面会許可がもらえるようになったもののずっと目を覚ますことは無く、もしかしたらずっとこのままなんじゃと不安で仕方がありませんでした。

目が覚めて嬉しいような、まだ心配なような・・・いろんな感情でいっぱいになった私はとにかく早く会いたい一心で病室に向かって走ります。

運動音痴なのがうその様にあっという間に病室に着いた私は走り過ぎて荒くなった呼吸を整える暇すらもどかしく、目の前の扉を開きます。

「ハルナちゃ・・・!」

「もがもが、ガブッ、ムシャムシャ・・・ごくん、あぐっ、モキュモキュ・・・ゴクゴク、ぷはっ、バリバリ、バクンっ、むぐっ・・・グビグビ・・・」

・・・えーと、大食い大会?

ベッドで上半身だけ起こしたハルナちゃんはベッドテーブルに置かれたたくさんの料理を手当たり次第に食べていきます。

わきには空っぽになったお皿がたくさん詰まれており、お見舞いに来ていた他の局員さんが片付けていました。

「そんなに慌てて食べるな。胃が受け付けないぞ?」

先に来ていたクロノ君がハルナちゃんの食べっぷりにドン引きしながら注意します。

「ゴクン、うるへー!12時間もありゃジェット機だって直らぁっ!」

対してハルナちゃんはよく分からない事を叫ぶと再び食事に専念します。

口から飛んだご飯粒がクロノ君の顔に着いていて、なんだかとてもバッチイです。

「あ、いらっしゃいなのはちゃん」

後ろから声がすると両手に料理を持ったエイミィさんがいました。

「エイミィさん、これは・・・」

「あ~、ハルナちゃんが『血が足りないから栄養たっぷりつけたい』って言うからさ、暇人総動員でご飯作ってるの」

そう言われてエイミィさんの後ろを見ると他にもお皿を持った局員さんが数人いました。

「でも、たくさんご飯食べてもすぐに怪我が治るわけじゃ・・・」

私がそう言うとエイミィさん達は苦笑します。

「あー、普通はそうなんだけどね・・・」

?どういう事でしょうか?

「そうか、君はまだ知らなかったね。ちょうどいい機会だし説明しておこうか」

私たちの会話を聞いていたジェイル先生はそう言うとハルナちゃんに声をかけます。

「ハルナ」

「モグ?ふぁふぃとふふぁん?」

「うん、飲み込んでから話そうね。この艦で食事語が分かるの父さんだけで皆解読できないから」

ジェイル先生に言われてゴクリとご飯を飲み込んだハルナちゃんは改めて喋ります。

「んで?何父さん?」

「さっき修理が終わったからね、交換するから両手を出してくれないか?」

「そうなの?ほい」

それに従ってハルナちゃんが両手をジェイル先生の前に出します、何が始まるんでしょうか?

「じゃ左腕からいこうか。よっこいせと・・・」

先生が肘の辺りを弄るとハルナちゃんの左腕がスポっと外れて、外れて・・・。

「ふぇえぇぇぇぇぇぇぇぇっっ!?」

Side Out

 

父さんがスペアに持ってきていた日常生活用の義手を外すとなのはがスゴイ声を上げます。

てかなのはいつの間に病室にはいったの?

ご飯食べてて分かんなかったよ。

「なのは!?大きな声が聞こえたけど一体何が・・・!」

なのはの声を聞きつけてユーノが慌てて部屋に入ってきましたが当のなのははそれどころではないようです。

「ハルナちゃんっ!?手が!腕がっ!」

こちらに人差し指を向けながらブンブン腕を振るなのは、彼女の表情は正に(((○Д○;)))な状態です。

「あー、うん。ビックルしたのは分かるけど落ち着いて。ちゃんと説明するから、ね?」

私とクロノ、エイミィや後からお見舞いにやってきたリンディさんに宥められてようやくなのはは落ち着きました。

「いや~、予想以上のリアクションだったよ」

とりあえずふざけた事言ってる父さん(しょあくのこんげん)は取り外した左腕で思いっきりブン殴っておきました。

「さて、どこから説明しようか・・・」

気絶した父さんを部屋の隅にどかしてから私に関する説明会が開かれました。

「まず私自身の事なんだけどね、私普通の人間じゃないんだ」

「えっと、普通じゃないって・・・」

頭に『?』を浮かべたなのはに変わり、隣できいてたユーノが質問します。

「うん、戦闘機人って言ってね、クローン技術で造られたサイボーグなの」

「サイボーグって、あの身体が機械で出来ている・・・」

困惑しながら聞いてくるなのはに私は頷きました。

「次元世界では旧暦の頃から人型兵器の研究がされていてな、その中には人と機械の融合・・・人体の機械化も含まれていた。しかし人体が拒絶反応を起こしてうまくいかなかったらしい」

「そこで誰かが考えた、適合する人が見つからないなら造ってしまえばいいってね。で、クローン技術で拒絶反応の出ない人間を作って改造したのが戦闘機人」

「そんな、ひどい・・・」

クロノと私の説明になのはは顔を青くします。

「そう、人道的に許される研究ではない、だから管理局はそう言った研究を禁止していたの。しかし・・・」

リンディさんが沈痛な面持ちでそう言っていた所で・・・。

「そう、あれは私がまだ世界征服を企む悪の科学者だった頃の話だ・・・」

復活した父さんが割り込みます。

「んにゃ!?」

驚くなのは、カワイイ・・・。

「人手不足が深刻過ぎて頭がおかしくなっていた管理局のお偉いさんから手っ取り早く局員を増やしたいと依頼が来てね、優秀な魔導士のクローンを生み出す人造魔導士技術と並行して戦闘機人の研究をしていたんだ。もっとも、野心家だった当時の私は戦闘機人が完成したら管理局に反旗を翻す気満々だったがね・・・」

語尾にwwwとつきそうな笑い交じりの口調で父さんは続けます。

「で、満を持して完成した戦闘機人の零号機、それがハルナだったんだ。生まれたばかりのハルナを見た瞬間衝撃を受けたよ、この小さな命を野望の道具にしようとしている自分にね・・・。結局叛逆は止めてハルナと自由に生きる道を選んだんだ。偉いさんしか知らない秘密の研究所だから通報したら正義感溢れる管理局の捜査官たちが押し寄せてきてね、どさくさに紛れてとんずらしようとしたんだが失敗してハルナだけ逃がしたんだ」

「そんな私もリンディさんの旦那さんでクロノのパパのクライドさんに保護されて最終的に管理局のお世話になっちゃったけどね」

「しかし、一番笑えるのが私に研究をさせていた連中までハルナの事見て正気に戻っちゃったことだろうね。『この子はワシの孫にする!』だそうだ、ククッ・・・」

補足する父さんですが当時を思い出して笑っています。

まぁ、おじいちゃんたち根は善人だしね、支配とかじゃなくて本気で世界を守りたいって思ってた人たちだからね。

孫云々に関しては父さんと話し合ってください。

「そんなわけで私は鋼のボディに熱いハートの美少女サイボーグ戦士なのだよ。おかげで新陳代謝も早くてどこぞの伝説の段ボールエージェント(ネイキッド)の如く栄養とればすぐに傷も治っちゃうんだ」

「まぁ、美少女かどうかはともかく、ハルナが半分メカなのは事実だ」

・・・さて、後でクロノが変態だという事をなのはに教えてあげなければいけませんね。

「ふぇぇ・・・じゃあさっき腕が取れたのも?」

「そう。両腕とも義手でね、交換することでロケットパンチも指からビームも想いのままだよ」

「と、言うわけでだ。新しい腕を取り付けるとしようか・・・」

そう言って父さんは取り出したケースを開け、中身をとりだします。

何やら鉄パイプみたいに細い腕にお好み焼きを焼くときに使うヘラみたいな平べったい手・・・。

何故か取り付けるときに「ブッピガァン!」て効果音が聞こえた様な気がします。

「あ、ありがとね父さん・・・ニイハオっ!」

「アオラー!?」

父さんの頭に渾身の中華チョップを叩きこむと、ミサイルやビームライフルはおろか、ラスボスのメガフレア・キャノンすら跳ね返す謎のリフレクター機能で吹っ飛ばされた父さんは医務室の壁に車田落ちの要領で突っ込みました。

 

Side クロノ

「さて、それじゃあ現状の説明から始めようか」

「ふぇ!?ジェイル先生あのままでいいの!?」

そう言ってなのはは大の字で壁にめり込むドクターを指さす。

「放っておこう、どうせ死んじゃいないから」

「投げやり!?」

なのはもいつか分かるだろう、この親子を本気で相手にするのは時間と労力の無駄だと・・・。

「でだハルナ、もうドクターから聞いてるだろうが君が撃たれて以降当初のローテーションは変更になった。なのはとユーノは僕と共に対処に当たっているんだが、安全を確認してからのせいで即応性が低下してな、すでにフェイト・テスタロッサにジュエルシードを二つほど持って行かれてる」

「むぐぅ、そう言えば私を撃ったあん畜生は?やっぱりフェイトさんと一緒にいるの?」

トンカツにチキンカツ、ソーセージにエビフライにゆで卵と千切りキャベツ・・・とにかくトッピングがたんまり乗ったカレーを口にかき込みながら質するハルナ。

「いや、あれ以来姿を現していない。切り札として温存されているのか、それともやはりフェイト・テスタロッサとは仲間じゃないのか・・・」

「でもあの男の子も凄いんだよ。ハルナちゃんを撃つまで全然魔力が感じられなかったし、その後計測された魔力量はなのはちゃんよりもすごかったんだよ」

エイミィの言葉に先日観測されたあの魔導師の魔力量を思い出す。

平均魔力量226万・・・、なんとなのは以上の魔力を持った化け物だった。

「エイミィ、彼の身元は未だ分からないの?」

母さん、もといリンディ艦長の質問にエイミィは力なく首を横に振る。

「ダメでした。管理局にも各管理世界の住民登録にも、該当する魔力波長の人物は確認できませんでした」

つまり管理局に届けのない違法魔導士と言う事か・・・。

そんな強力な魔導師が未登録で、しかもロストロギアが飛散した管理外世界をうろついてるなど悪夢以外の何物でもない。

「奴もジュエルシードを探している、なら近いうちにまたぶつかるのは間違いないな・・・」

あんなのと戦う事になるなんて考えただけで頭が痛い。

自分はともかくなのはやユーノはやはりこの事件から外させた方がいいかもしれない。

「・・・本当にそうなのかしら」

「え?」

「艦長?」

艦長はあごに手を当て何かを熟考する。

「本当に彼の目的がジュエルシードならフェイトさんに持たせて逃がすのは不自然じゃないかしら?」

「それは、彼がフェイトちゃんと仲間だからでは?」

エイミィの言葉に艦長は更に深く思案する。

僕もその可能性は低いと思う。

彼がフェイト・テスタロッサの仲間ならばもっと早期に、それこそなのはとの遭遇戦があった時に現れていただろう。

戦力の温存が目的だとしても、それなら僕たちが介入した時点で姿を現したはずだ、そうしなければ最悪フェイトは僕たちに逮捕されていたのだから。

それが無かったという事はあの魔導師とフェイト・テスタロッサ達は別の勢力だと考えた方が妥当だろう。

フェイト達の黒幕が急遽雇ったフリーランスと言う可能性もあるが、それなら何故彼が現れた時フェイトは驚いていた?仮に急遽雇った存在だとしても顔合わせするくらいの時間的余裕はあったはずだ。

恐らく彼の登場、いや存在そのものがイレギュラーだったからだろう。

「なるほど、確かに謎だね。フェイトちゃんを助けたのも、ジュエルシードを持って行かなかったのも・・・」

上記の内容をエイミィに説明すると納得したように、しかし直ぐに深まった謎に難しそうな顔で首を傾げた。

「ハルナへの恨み・・・怨恨の可能性もあります」

「え?」

僕が口にした可能性に聞いていたなのはは少し驚いた顔をする。

「ハルナちゃんに、恨み?」

「彼女はベテランの執務官だ、解決した事件も数多い。以前彼女に逮捕された者が逆恨みしての犯行と言う可能性も十分あり得る」

「ハルナさん、なにか身に覚えはない?」

ラーメンのスープを飲んでいたハルナは艦長の問いに答えるためにドンブリから口を離す。

というか先ほどまでカレーを食べていたのにいつの間に食べ終わったんだ?

そのラーメンだってゆでたキャベツとモヤシが山と盛られていたのに・・・相変わらずこいつの胃袋はブラックホールだな。

「ゲフっ、身に覚えはいっぱいあるけど、アイツは初めて見る顔でした。あんな特徴的な・・・まるで『ぼくのかんがえたりそうのしゅじんこう』を形にしたようなビジュアル忘れたくても忘れられませんよ」

確かに、マンガの主人公かよと言いたくなる美少年だ、一度見たら忘れられないだろう。

それにハルナが逮捕した犯罪者なら裁判記録なりハルナの始末書なりが残るはずだから未登録なのはおかしい。

前の事件・・・紛争地帯を飛び回っていた時の因縁・・・ハルナが戦友や家族の仇だという可能性もあるがそれをカウントしてたらキリが無い。

なんせ彼女は『リボン付きの死神』なんて呼ばれるくらいには活躍・・・敵を『撃墜』しているのだから・・・。

「まぁいずれやり合うのは間違いないんだし、次にあったらブチのめして取調室で洗いざらいゲロらせてから豚箱にぶちこんでやればいいんです。だからそれまでに怪我を治しておかないと・・・!」

そう言ってハルナは最後の一皿・・・山と盛られたミートボール入りスパゲッティの攻略を開始した。

修理したばかりの両手でフォークとスプーンを器用に操り皿のスパゲッティを団子の様に丸めると大きく開けた口に押し込む。

「はむぅ、もぐ、むぐ・・・ぅうっ・・・!」

直後、見る見るうちに顔色が変わるハルナ。

色白な肌がマンガの様に暗い緑色に変わっていく。

どうやら戦闘機人の胃袋とは言え病み上がりだったのが祟ったようだ。

「全く、言わんこっちゃない。ほら、洗面器だ」

あらかじめ用意しておいた洗面器をベッドテーブルに置くがハルナは首を振って拒否。

両手を抑え、仰向けになりながら何かを言っている。

「何?何だって?」

「むっごごももむぅ・・・!」

嘔吐されるのを警戒しながら耳を使づけるとそんな言葉が聞こえる。

口いっぱいにスパゲッティを含み、両手で抑えながらの発言とは言えそれなりに長い付き合いだ、何を言ったかは大体わかった。

「ハァ、食ったから寝るそうだ・・・」

医務室がなんとも言えない空気で満たされた。

Side Out

 

結局、会議はそこでお開きになった。

謎の魔導師Aについては今後も警戒、現れた場合はクロノと武装隊に全快した私を加えた制圧部隊が対処、なのはとユーノは安全のために後方に退避する方針で決まった。

後ろに下げられることになのはは最初反対したが、復活した父さんに「皆があっちに集中するからフェイト君に専念できるよ」と諭され喜んで了承した、チョロカワイイ。

「で?実際どうなんだい?」

先ほど突っ込んだ壁を補修しながら父さんが聞いてきます。

「ん?何のこと?」

「安心したまえ、今確認したが誰も聞き耳は立ててない。あれは、君と同じ転生者なのかい?」

体が無意識のうちに強張る。

「分からない、でもかなりの確率で間違いないと思う」

あの時、飛び去っていくフェイトさんに向けていた笑み、喜びと憧れの混ざり合った・・・まるで間近でアイドルに出会ったファンの様な表情。

「と言う事は、フェイト君もアニメの登場人物とみて間違いないか・・・」

「そうだね、『なのは』もいるし・・・」

私が転生者として知っていることは3つ。

この世界が『魔法少女リリカルなのは』というアニメの世界だという事。

主人公が、『なのは』と言う名前の女の子と言う設定。

父さんがアニメ3期で起る事件の黒幕で私の妹達を使って事件を起こすという事。

物語りの終盤で露出過多な魔法少女にホームランされること・・・。

あ、間違い。4つだった。

「んで、実際なのはが魔法少女になって戦っているってことはもう物語が始まってるんだと思う。それで・・・」

「あの転生者(仮)はタイミングを見計らって出ていこうとしたらすでにハルナがいて憤っているという事か・・・逆恨みも甚だしいね」

全くです、自分の意志でこの世界に転生したわけじゃないんですから・・・そのことを根に持たれてもいい迷惑ですよ。

恨むんなら私じゃなくて神様か転生トラックを恨んでください、もっとも今の生活堪能してるのは間違いないですが・・・。

「でもまぁ、彼の気持ちも分からなくはないかな」

死んだはずが生まれ変わる、しかもアニメや漫画の世界に・・・。

いまいち前世の記憶があいまいですが、もし記憶が万全で、そこが自分の大好きな物語の世界だったら・・・間違いなく浮かれてはしゃぎまわるでしょう。

恐らく彼もそうなのでしょう・・・。

リリカルなのはが大好きで、その物語の登場人物も大好きで、その世界に転生して嬉しくて嬉しくてたまらない。

そして登場人物と会おう、一緒に物語に自分も参加しようと。

だというのになのはのそばにはストーリに影も形も無かった存在・・・私がいる。

もしかしたら私が気づかないだけで既にストーリを改変してしまったのかもしれません。

元より父さん達家族の為に原作ブレイクする積もり満々でしたが、彼にはそれが許せなかったのでしょう。

「で、理想をぶち壊してくれた君が許せなくて犯行に及んだ・・・こんなところか」

「多分ね、あの人からすれば私は大切な者を穢した諸悪の根源なんだと思う。そういう意味では悪いことしちゃったかな・・・まぁ次あったら本気でブッころばすけど」

理由がどうあれ殺人未遂に質量兵器所持、日本の法律なら銃砲刀剣類所持等取締法違反・・・どちらにしろ明確な犯罪です。

法の裁きと法に触れないレベルで私からの制裁を受けてもらいましょう。

「同感だね、彼にはハルナの父として色々と話さなきゃならないことがあるかね。あぁ、会うのが楽しみだなぁ・・・クックック」

そう笑みを浮かべる父さんから何やらドス黒いオーラがモワモワと立ち上っています。

「あのー、父さん?もしかして怒ってる?」

嫌な予感がして恐る恐る父さんに聞いてみます。

「・・・怒ってる?ハッハッハ、何を言ってるんだい?怒る訳無いだろう・・・」

ハハハ、だよね。いくら私が死にかけたってここで怒るのは父さんのキャラじゃないし・・・。

「そんなレベルじゃ済まないとも、久しぶりに父さんキレちまったよ・・・っ!!」

・・・うん、もっとヤベぇことになっていました。

「嫁入り前の娘の身体に風穴開けてくれたんだ、もはや万死程度では生ぬるい!1億回殺してから無理やり蘇生してもう1兆回ぶっ殺してやるぅ!!」

普段の飄々とした姿はどこへやら、完全にキャラ崩壊した父さんが憤怒の表情で絶叫する姿にすっげービビってます。

なんかもう目の前にあの少年Aが現れたら本当にぶっ殺しかねない勢いです。

「父さん落ち着いて!ほら、私ちゃんと生きてるから!それにせっかく足洗ったのに殺人は拙いでしょ!」

父さんと妹たちに日の当たる世界で生きてほしいのに私の為に手を汚すなんて絶対だめです。何としても止めなければ・・・!

「ハッハッハ、もしかして私が前科持ちになるのを心配しているのかい?安心したまえハルナ」

優しく安心させるように言う父さん、どうやら分かってくれたみたいです。

「おあつらえ向きに君を大切にしているご老人たちは大勢いるからね、何かあっても彼らがもみ消すから心配はいらないよ」

訂正、全然わかってません。

「いやいやいやいや、ダメだからね!もみ消しても殺したって結果は残るからね!」

そこまで私の事を大切に思ってくれるのは嬉しいけれど同じくらい私が父さんたちの事を想っていることを忘れないでほしいです。

「あいつとのケリは私自身が付けるから父さんは手を出すの絶対禁止!わかった!?」

「むぅ、そこまで言うなら仕方ない。いいだろう、君に全部任せるよ」

釈然としないようですが何とか納得してくれた父さんにホッと一安心です。

まぁ、今あれこれ考えても答えは出ないんです。

結局あの魔導師ともう一度ぶつからなきゃ分からないなら今は万全の状態で戦えるようにしなければいけません。

「てなわけで今度こそ寝るよー」

「はいはい、夕飯の時間には起こすから、おやすみ」

私は「はーい」と返事をして布団の中で丸くなります。

やはりまだ体力が回復していなかったのかすぐさま襲ってきた睡魔に無条件降伏した私は速攻で夢の中へバカンスとしゃれこみました。

 

「ところでさ、父さん?」

その後夕飯の時間に起こされた私は食堂で父さんに聞きました。

「ん?何だい?」

「中華チョップがあるってことは『ドリル』とか『キャノン』もあったりするの?」

さっきの会議でネタとして父さんが出してきた義手、通称「中華チョップ」・・・。

あれは昔日本のネット界隈を賑わせた某中華ロボの武装の一つです。

そのロボにはほかにも近接用武器の「中華ドリル」と必殺技の「中華キャノン」が存在します。

詳しいことは中華キャノンで検索してください。

「ん~それなんだけどねぇ・・・」

おや?父さんにしては歯切れが悪いですね・・・。

「両方とも開発は難航しているんだ。ドリルの方は試作した義手、「ギムレット」は出来上がってるんだけど手首から先を高速回転させてるだけでドリルに変形する機能は作り出せていないんだ」

成程、どれだけ見た目がそれっぽくてもそれをドリルと言い張るのは確かに無理がありますね。

「で、中華キャノンの方は出力不足でね。魔力じゃ足りないから元ネタ通り台地からパワーを吸収させたいんだがそのメカニズムが解明できないんだ。今忍君に頼んで中国奥地から仙人をアドバイザーとして招く準備をしてるところさ」

何でこんなネタネタしいのをチョイスしたかと思えばあんたが原因か忍さん・・・。

「・・・てか、それを私に着けるつもりなの?」

「え?ほかにだれが使うんだい?」

・・・誰か父さんに最終攻撃機能を付けてください、速攻でキーボードのQキー押しますので。




中華キャノン・・・ちょうど作者が10代の頃に流行ったネタですが今の10代で知ってる人いるのでしょうか?


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第18話「魔法少女の正体はバレてなんぼなの」

今回はなかなか筆が進まず少々間が開いてしまいました。



「外出許可?」

「はい、ダメですか?」

それは父さんからのドクターストップが解除されていなかった時の事。

私的にはお腹の傷は完治したんですが父さんは大事を取って未だ現場復帰はできていません。

まぁ、マリィと喧嘩したときの一件もありますから今回は素直に従っていますがもうやることが無くて仕方ありません。

摸擬戦はリハビリの名目で許されているので溜まったフラストレーションをクロノにぶつけてはいるのですがそれでもまだ足りません。

いい加減外の空気が吸いたいのでリンディさんに地球に降りる許可を貰いに艦長室にやってきました。

「私は構わないのだけれど、ドクターは何て言ってるの?」

私に関しては保護者兼主治医の父さんが全権を握っています、艦長としては現在進行形でクールに錯乱している父さんには正直言って近づきたくないようです。

「戦闘しないなら外に出てもいいって言ってました。襲撃の可能性が捨てきれないから護衛は付けるように言ってましたが・・・」

さすがに護衛は過保護が過ぎるのではと思いましたが実際一度死にかけたわけですから反論できません。

「ん~、そうなると誰を付ければいいかしら・・・」

ただでさえローテーションが組めない上に護衛に武装隊の人員を引き抜くとなると厳しいのか、リンディさんはこめかみを抑えながら唸ります。

「あ、それなら適任な人材がいますよ」

ですがそこは解決出来ます、我に秘策アリです。

 

機人長女リリカルハルナ

第18話「魔法少女の正体はバレてなんぼなの」

 

「と言う事で、やってきました海鳴市!」

リンディさんからもお許しを得た私は護衛を伴って転送ポートから海鳴臨海公園に降り立ちました。

それにしても海鳴かぁ、何もかも、皆懐かしい・・・。

一応この間まで市内をウロウロしてましたがお休みできたのはこないだの夏以来です。

「あの、ハルナちゃん?私達も一緒に来てよかったのかな?」

その声に振り向けば私の護衛役のなのはが心配そうな顔をしています。

その方にはフェレット形態のユーノが乗り、これまた不安げな顔をしています。

「大丈夫だよ、二人は私の護衛役ってことになってるから」

私が撃たれて以来、なのははユーノとクロノと三人でほとんど休みなしにジュエルシードの捜索を続けています。

これまでの捜索で私たちが合計で9つ、フェイトさん達が6つ回収しており、残りのジュエルシードは六つまで絞られました。

本人等は大丈夫と言っていますがいい加減ガス抜きしないと身体が持たないとリンディさんも考えていたのか、私の意図を見抜いてあっさりと提案は受理、なのはとユーノにもお休みを言い渡しました。

それにしてもこの年でワーカーホリックとは、将来がとても心配です。

働き過ぎで大怪我しなければいいんですがね・・・。

「でも私だとハルナちゃんの事守れないんじゃ・・・」

そんなことを言うなのはですがその辺はちゃんと考えてあります。

「大丈夫だよ。多分だけどアイツ、なのはには攻撃できないから」

「ふぇ?」

「どういう事?」

あの謎の魔導師Aは私と同じ転生者の可能性が濃厚です。

実際私を助けにやってきたなのはには攻撃することなくすごすごと退散して行きました。

なのでなのはが一緒にいれば襲撃される危険性はグンと低下します。

仮に襲ってきてもその時は私が相手をすればいいだけです。

父さんは認めていませんがもう完治していますからね私の体。

襲撃も未然に防げてなのはもお休み出来る・・・まさに一石二鳥と言うやつです。

「よぉしっ!そんなわけで出発!」

「お、おー。ってどこに行くの?」

尋ねてくるなのはに私はニヤリと笑みを浮かべます。

「ふっふっふ・・・実はもう行く当てはあるのだよ」

 

Side アリサ

「で、紹介したい友達がいるって言うから来てみたら・・・まさかなのはだったなんて」

「うん、すごいビックリだよ」

そんな訳でやって来ました月村邸。

こっちに着いた次の日にすずかに時間が空いたら遊びに行くとメールを入れておいたのでアポは直ぐに取れました。

ついでにこっちで新しく友達ができたので紹介すると出発前に連絡しておきました。

到着してなのはを見てビックリというサプライズを期待していたのですが思ったよりもリアクションが薄いです。

「えっとね、ここ最近なのはちゃんの様子がおかしかったから、最近は家の事情で学校にも来てなかったし・・・」

「ここ最近不思議な事件が立て続けに起きてるし、そこに来てハルナが仕事で地球に来てるって連絡が来たんだもの。もしかしたら魔法絡みの事件に巻き込まれたのかもって思うでしょ?」

なるほど・・・そう言えばなのはは私たちがくる以前からユーノとジュエルシードを捜索してましたもんね。

そのせいで最近付き合いが悪いことを二人は不思議に想っていたと。

で、当のなのはと言えば・・・。

「はわ、はわわ・・・」

目を点にして硬直しています。

「どうしたのさなのは?鳩が30ミリガトリング砲の機銃掃射を浴びた様な顔をして?」

「ハルナ、そんなもん浴びたら鳩死ぬわよ」

「むしろバラバラになっちゃうよ・・・」

的確なツッコミを入れる二人。

でも実際にそんなもの浴びたらもっとヤバイです。

人間だって食らったらご遺体が残らないレベルの威力ですから・・・。

「な、何で!?何で二人ともハルナちゃんと仲よさそうなの!?もしかして、魔法の事も・・・?」

「勿論知ってるわよ」

「ちょっと前にハルナちゃんに助けてもらったことがあってね、それから友達になったの」

簡単な事のあらましをなのはに説明する二人。

「ふぇぇ・・・」

自分が留守にしている間に私が海鳴に来ていたことに言葉がでないなのは。

二人を驚かす筈が逆になのはに対してのサプライズになってしまいました。

「てか、あたしはなのはが魔法少女になってたのは驚きなんだけれど・・・」

「にゃ、にゃはは・・・」

言い返せず笑ってごまかすなのは、でもアリサにそれは通じませんでした。

「それで、どんな経緯で魔法使えるようになったのよ?私達に話せなかった厄介ごともそれなんでしょ?」

「ふぇっ?そ、それは・・・」

話していい物か否か、なのはが助けを求めるようにチラチラとこっちを見てきます。

「あ、いいよいいよ。さっきすずか達も言ったけどもう魔法の事も次元世界の事も知ってるから」

「う、うん。じゃあ・・・」

そうしてポツリポツリとなのはは語り始めます。

平凡な小学3年生だったはずの、私、高町なのはに訪れた突然の事態。

渡されたのは、赤い宝石。手にしたのは魔法の力。

新たな出会いとすれ違う二つの心。

話したいことがある、伝えたいことがある。

その為に戦わなければいけないなら、私はもう迷わない。

「魔法少女リリカルなのは、始まります・・・」

「ハルナ?何ブツブツ言ってるの?」

なのはが二人にこれまでの経緯を話している横で私はそれをOP前のアレ風なナレーションに変換してお送りしました。

「にしても・・・ユーノが本当は人間の男の子だったなんて・・・」

「うっ、ごめんなさい・・・」

ユーノのくだりを説明するにあたりいつもの様にフェレットモードだったユーノは変身を解いて真の姿をアリサとすずかにお披露目することになりました。

当然温泉で裸を見られたことに気づいた二人にユーノは地球に来てから何度目かのDO☆GE☆ZAを行う事に。

いつの間にか参加していた忍さんは笑って許してくれて、二人からも何とかお許しを貰いようやく肩の荷が下りたユーノは深いため息をつきます。

「それでなのはちゃんはハルナちゃんと一緒にジュエルシードっていう宝石を集めてるんだよね?そのフェイトちゃんっていう子とお話しするために・・・」

「うん・・・」

すずかに質問されたなのはが力なく頷く。

最近はフェイトさんも私達管理局を警戒して隠密行動に徹しているせいでお話しどころか遭遇することすらありませんからもどかしいんでしょうね。

「ハルナちゃん、撃たれたって言ってたけど本当に大丈夫なの?」

「大丈夫ダイジョーブ。ほら、この通り痕も残ってないから」

そう言って服をめくってお腹を見せます。

お腹には縫合の痕すら残っていません、執刀した父さんに感謝です。

「でもハルナちゃんが大けがしたときすごく心配したんだよ?」

「うっ、その件に関してはご心配おかけしました・・・」

父さんやリンディさんから聞いた話だとあの直後は関係者一同大騒ぎだったそうです。

まずナカジマ家、第一報が届いた直後クイントさんがショックで倒れたらしく、それを知ったゲンヤさんが仕事ほっぽり出して病院に駆け込んだらしいです。

ショックを与えないように下の妹達には情報は伏せてあるらしいですがクイントさんの件や以降の夫婦と年長組の慌ただしい様子から何かあったのではと勘づいてはいる様子です。

おじいちゃんズに至っては艦隊司令部すっ飛ばしてリンディさんに直接『下手人を即刻処刑しろ!』と叫んだと聞きました。

何とか田中さんと管理局に就職したドゥーエに抑えられ、命令は取り消されたらしいですが未だ怒りは収まっていないと聞いています。

心配してくれているのは嬉しいですがもう少し落ち着いてほしいです。

艦内も殺気立っており、管制官たちはローテーション無視で少年Aの捜索を行い、武装隊に至っては非殺傷設定を解除した状態で出撃待機していたとか・・・。

私の目が覚めてからは幾分か落ち着いたようですが、未だ艦内の雰囲気はピリピリしたままです。

これも外出した理由の一つ、さすがにあの殺伐とした空間に長時間なのはを居させるのは拙いと思ったんです。

「とか言って、あんたが外に出たかっただけじゃないの?」

「否定はしない!」

「しないんかいっ!?」

キレのあるツッコミを入れるアリサ、それでこそ私のライバルだ!

「あんたのライバルになった覚えは無いわよ!」

「そ、そんな・・・」

私は打ちひしがれ床に膝を屈します。

信じていたのに、アリサとなら切磋琢磨出来ると信じていたのに・・・。

「切磋琢磨って、何をよ?」

「漫才」

「しないわよっ!」

私がそう言うと脳天にチョップと叩き込むアリサ。

やっぱり彼女はツッコミ役に向いていると思います。

「ゼェ、ゼェ・・・このすっとこどっこい振り・・・本当に元気になったようね」

「そうだね、よかった・・・」

肩で息をしながら心底疲れた表情で言うアリサと、心から嬉しそうに同意するすずか。

でも・・・すずかさん?何で顔を赤らめてるんですか?

目もなんかアブナイ感じ・・・忍さんがエロビーム照射してる時みたいに色っぽいし・・・まさかまた貞操の危機っ!?

アリサ!は何かニヤニヤしながらコッチ眺めてるし、ユーノ!は逆にこっちに背を向けて私たちを見ないようにしてるし・・・ダメだこいつらアテにならねぇ!

「あの~、どうやって三人が仲良しさんになったのか教えてほしいんだけど・・・」

そんな窮地に救いの手が!

サンキュなのは!まさに君は光の天使だよ!

心の内で悪魔とか魔王とかいう呼び方がよぎったことに関しては訂正させて。

あなたみたいな優しい子がが悪魔なわけないもんね!

「ま、さっきのお仕置きはこれくらいにしてあげようかしら」

そんなことを宣うアリサ。

畜生、やっぱりさっきのお返しかよ。

でもやられっぱなしのハルナちゃんではありません。

どっかの映画でCIAの偉い人が言っていた・・・『ペロリストにはペロで立ち向かう!』と、私もそれに倣う事にしましょう。

手始めにまずは後であげようと思っていたメロンパン、あれの周りのカリカリ部分を取ったやつを差し上げよう。

ふっふっふ・・・パサパサモフモフな触感を楽しむがいい!

「んで、私らが仲良くなったきっかけだっけ?」

「うん」

とまぁアリサへの報復はさておき目下の問題はなのはへの返答です。

私達の馴れ初めを離すとなると必然的にすずかの秘密も話すことになってしまいます。

話していいかとすずかに視線を向けると、彼女は一瞬不安そうな顔をしましたが、直ぐに毅然とした表情で私に頷きます。

どうやら了承は得られたようです。

「それじゃ話すね。最初に言っておくけれど、聞いたらすんごい驚くと思うから」

「う、うん・・・」

私の言葉になのはは緊張した面持ちで頷きます。

そして私の語りが始まります。

ここからはダイジェストでお楽しみください。

『パンパカパーン!』

軽快なラッパの音と主にサーチライトで照らされる2●thF●Xの文字

休暇を取った時空管理局の執務官ハルナ・スカリエッティ。

都会の喧騒から離れ海鳴という街にやってきた彼女はそこですずかとアリサという少女と出会う。

彼女達に案内されて町一番の喫茶店『翠屋』で友好を深めていると突然襲い掛かる謎の襲撃者!

「いやっ!離してっ!」

攫われるすずか達。

「ダチの命が惜しければ俺たちに協力しろ。OK」

「OK!(ズドン!)」

脅迫してくる誘拐犯の一人を射殺した私はそいつが巨大軍事企業サイバーダイン社の私兵であることを突き止め本社ビルへ忍び込む。

「ペパロニのピッツァだ。激ウマだぜぇ!」

ピザ屋の店員に扮して社内に忍び込んだ私は会社のコンピューターをハッキング。

連中が開発中の軍事AI『スカイネット』をテロ組織、深紅のジハードに密輸しようとしていることを知る。

深紅のジハードは香港マフィア『龍』とつながりがあり『龍』と対立し多大な損害を与えていた月村家に恨みを持っており、すずかは彼らに対する手土産にされたのだ!

「カルロなら逮捕されたよ。警察署長の娘とヤっちまってなw」

直ちに取引の場として指定されていた南米の独裁国家バルベルデへ単身飛んだ私は現地の人間に接触し情報を集める。

「お前は最後に殺すと約束したな?」

「そ、そうだ大佐!た、たすけ・・・」

「あれは嘘だ」

「アーッ!!」

離せ離せと煩い輩の足を離してやったり・・・。

「いたぞぉっ!いたぞおぉぉっ!!怖いかクソッタレ!?元グリーンベレーの俺に勝てるもんかっ!」

「試してみるか?私だって元ナンバーズ(現スカ家長女)だ」

こんなひでぇジャングルは初めてだとかぼやいてた敵の幹部に見つかってガチンコしたりしながら私はすずか達の足取りを追い、ようやく深紅のジハードのアジトを突き止める。

そこは完全武装の兵士たちが守る正に難攻不落の要塞、とてもじゃないけれど丸腰では向かえません。

なので・・・。

「買い物だ」

装備を整えることにします。

一番近場にあったアラモ銃器店にブルドーザーで乗り付けた私はさっそく装備を調達にかかります。

「ソ連製マーヴⅥ」

「かき氷を作るのに最適だよ」

「サイレス社製EM-1レールガン」

「いい銃だろ?間抜けを打ち抜くならこいつが一番だ」

「レイジングハートCVK-792搭載型」

「ここにある物にしてくれ」

「・・・ダイソンサイクロンV10」

「こいつの吸引力は最強だ、決して変わることは無い。で?どれにするんで?」

「・・・全部だ」

10万ドルPONと出すとおまけで安物のナイフもつけてくれました。

そこから先は急展開です。

波止場で奪った羽の付いたカヌーで敵アジトに接近。

浜辺で一人ノルマンディ上陸作戦を慣行、デェェェェェェン!のBGMをバックに完全武装で立ち上がるとアジトに殴り込みます。

飛び交う怒号と銃声、迸る筋肉、爆発爆発、さらに爆発。

ちなみにこの時点ですずかの居場所はまだわかってはいません。

並みいる深紅のジハードとサイバーダイン社のカカシ共を蹴散らしアジトの奥へ奥へと進む。

「来いよU田、銃なんて捨ててかかってこい」

「野郎OFクラッシャーっ!!」

「 (`0言0´*)<ヴェアアアアアアアア」

なんかボスっぽいのがわけわからない事叫びながらかかってきますがしめやかにガス抜きし、横やり入れてきたなんか醜い顔の宇宙人もついでにやっつけて終了。

こうしてすずかを救い出した私ですがそこに予想外の敵が現れる!

「ドーモ、スズカ=サン。俺の名はターミネーターTKMT-001KYOYA・・・月村すずか、お前を抹殺するために未来から来たサイボーグニンジャだ」

デデンデンデデン!数十年後に起るスカイネットの反乱・・・それに立ち向かい、コンピューターを破壊した英雄の母親であるすずかを幼いうちに殺すために未来から差し向けられた死角・・・ターミネーターが襲い掛かってきたのです!

既にこれまでの戦いでほとんどの武器を使い果たした私は武器屋のおじさんからもらった安物のナイフで立ち向かいます。

しかしこのターミネーター、全身が流体金属でできており切っても斬っても再生します。

何故か近くにあった液体窒素のタンクまで誘導し、中身を浴びせて凍らせますがここは南米バルベルデ、すぐさま熱で溶けてしまいます。

それでも時間が稼げた私たちはサイバーダイン社の兵器工場に逃げ込みますがそこで恐ろしい真実を知ります。

なんとあのターミネーターTKMT001は未来ですずかを守り命を落とした私の技術を元に製造されたのです!

すずかを守るための力がすずかに向けられたと知った私は怒り、復活したターミネーターの胸にに安物のナイフを突き立てます。

ターミネーターは涼しい顔でナイフを取り込みますがそれこそ私が待っていた瞬間、最後に残ったグレネードランチャーを奴に向け。

「あすたらびすたべいべー」

引き金を引きました。

本来なら流体金属の身体を通り抜けるグレネードは内部に取り込んだ安物のナイフに直撃し大爆発を起こします。

吹き飛びながらも再生を開始するターミネーター、しかし彼が落ちたのは溶鉱炉の中でした。

打撃や斬撃に対しては無敵の再生能力を持っていても1500℃を超える溶けた鉄の中にダイブしたらひとたまりもありません。

見る見るうちに溶けてなくなりました。

こうしてすずかを狙う敵はすべていなくなった。

でもまだ戦いは終わっていない、まだやるべきことがある。

「ハルナちゃん、まさか・・・っ!」

「・・・うん」

ターミネータKYOYAは私を元に造られている。

このままいけば間違いなく未来で私を元にしたターミネータが製造されてしまう。

「それを阻止するためには今この時代で私を破壊しなければいけない」

「ダメッ、そんなのダメだよ!」

泣きながら縋りつくすずか。

「・・・人間がなぜ泣くのか、ようやく分かった。その人が大切だからだ」

そう言って私はすずかの涙をぬぐう。

「お願いだよすずか。私に大切な人を守らせて・・・」

「・・・ハルナちゃん」

私はすずかをギュッと抱きしめた後、彼女から離れ、クレーンにしがみ付く。

ゆっくりと降下を始めるクレーン、私のカラダは少しずつ溶鉱炉に沈んでいく。

目から涙を流しながら見つめるすずかに向かって私は親指をグッと立てる。

頭も沈み、そしてついにその手も灼熱の中に没した。

「こうして戦いは終わった、残念ながらスカイネットは歴史の通りに起動し人類に牙をむく。誰もが絶望したとき救世主が立ち上がった。父親譲りの銀髪をなびかせた彼女の名は月村、あだっ・・・!?」

「もぅ!ハルナちゃんっ!おふざけは禁止っ!」

握りこぶしで説明する私の後頭部をすずかに叩かれます。

「いたた・・・ゴメンゴメン。でもすずか、ミッド土産の練習用ストレージデバイス(魔力で強度アップ状態)で叩くのは勘弁して。危うくすずかを逮捕することになるかと思ったよ」

「・・・罪状は?逮捕されるようなことしてないもん」

私の言葉にすずかはプクーっと頬を膨らませながら聞いてきます。

こんなの見せられたら答えは一つしか無いじゃないですか。

「・・・かわいすぎること?」

「ぴゃっ・・・!?」

爆発したみたいに一瞬で顔が真っ赤になるすずか。

やっぱり逮捕したほうがいいかもしれません、この可愛さは大量破壊兵器レベルです。

「おーい二人ともー?いちゃつくのもいいけどなのはがフリーズしてるわよ?」

空気を読まず・・・いや、逆になのはの為に空気を読んだのか?とにかくアリサに水を差される形ですずか弄りはお開きとなりました。

見て見ると確かに・・・処理能力の限界を超えたのか、なのはが頭から煙を吹き出しながら沈黙していました。

「あ、ホントだ。おーいなのはー、今の冗談だからもどっておいでー」

「にゃっ?ふぇ?え?冗談・・・?」

私の呼びかけで再起動したなのは、今のが作り話だと知るとすずかと同じように頬を膨らませます。

「もぅ、ひどいよハルナちゃん!せっかく頑張って聞いてたのに!」

「いやいや、恭也さんがターミネーターになってる辺りで気づきなさいよ。第一何でシュワルツェネッガー作品のパクリなのよ?」

失礼な、パクリじゃなくてリスペクトです!シュワちゃんの映画に敬意を表しての行いです!

「てか、途中からアタシ影も形もなかったんだけど?!」

そう言われてようやく作中でアリサを助けていないことに気づきました。

「・・・あ、ゴメン。完全に忘れてた♪」

「フンッ!」

「ごどらたんっ!」

振り下ろされるアリサのゲンコツに私は名状しがたき悲鳴を上げました。

「んじゃ改めて説明を再開するよ」

「う、うん・・・」

未だ引っ込む様子の無いタンコブが気になるのかチラチラと視線をそちらに向けながらなのはが頷きます。

「うん、すずかは吸血鬼です!」

嘘偽り誇張なくなのはに真実を告げます。

「ハルナ、ぶっちゃけ過ぎ・・・」

「もうちょっと順を追って説明しようよ・・・」

速攻ですずか達からダメ出しが入りました、解せぬ・・・。

「きゅ、吸血鬼・・・?」

「うん、正確には吸血鬼じゃなくて『夜の一族』って言ってそれっぽい力を使える人間。それでその力を悪い人たちに狙われてね・・・」

アリサにソファまで押しやられ、代わりに立ち上がったすずかがなのはに説明を始めます。

夜の一族の事、その力を悪用しようとする者の存在、自分が狙われアリサもそれに巻き込まれたこと、それを私が助けた直後救出に来た恭也さんと激突したこと等々・・・。

なのはも相当驚いていましたが、自分も魔法の事を黙っていたのでおあいこ言う事になりました。

「なのはちゃん、私・・・普通じゃないけど、吸血鬼じゃないけれど・・・これからも友達でいてくださいっ」

一族の掟等も説明したうえで、すずかは掟を抜きになのはと友達でいたいと、以前私が彼女に言ったようになのはに思いを伝えます。

「うんっ、もちろん。すずかちゃんは私の友達だよ。これまでも、そしてこれからも・・・」

そう言って微笑むなのは、しかし・・・。

「・・・誰?」

ホント誰これ?めっちゃイケメンなんですけど・・・!?

あまりに普段のなのはとのギャップが激しくて思わず口にしてしまいました。

「知らないわよ。この子たまにカッコイイのよね。普段アレな分余計に・・・」

あぁ、確かに。

いつも私や父さんのおふざけにはわはわしてるなのはとは全く別人のように凛々しいです。

これが主人公力なのでしょうか・・・。

「でもハルナちゃんとお兄ちゃんが戦ってたなんてビックリだよ」

「まーね、その時恭也さんと知り合って魔法が高町家にバレたんだ」

「まったく、あれには驚かされたよ・・・」

ふと、後ろから声がしたのに振り向くと恭也さんと忍さんがちょうど部屋に入ってきたところでした。

「お兄ちゃんっ!?」

「あ、お姉ちゃん。聞いてたの?」

「残念ながら私は恭也ほど耳がよくないから、すずかとハルナちゃんの馴れ初めの話は聞きそびれたわ」

忍さんにからかわれ顔を真っ赤にするすずか。

「も、もうっ!」

「それにしてもさっきの話はどうかと思うぞ。何をどうしたら俺がターミネーターになるんだ?しかも二作目で出てきた流体金属の奴・・・」

だって私がシュワちゃん枠ですから、必然的に出てくるターミネーターはT800以降にするしかなかったんですよ。

「・・・待って。恭也、今なんて言ったの?」

突然忍さんが真面目な声で恭也さんに尋ねます。

「え?俺がターミネーターに・・・」

「その後!」

忍さんの並みならぬ剣幕にたじろぐ恭也さん。

「に、二作目にでた流体金属の・・・」

「それよ!」

ビシッ!っと人差し指と恭也さんに向けながら忍さんは叫びます。

そうよ、「流体金属を使う手があったじゃない。あれなら電気を流せば自由に形状を変えられるし密度を上げれば強度だって・・・こうしちゃいられないわ、まずは電磁波の波長の解析から・・・」

すっごくスッキリした顔で何やらブツブツと呟きながら出ていく忍さん。

・・・うん、嫌な予感しかしない。

「何だったの?」

「多分私の腕のバリエーション絡みだと思う」

今度はいったいどんなビックリドッキリメカを寄越されるのやら・・・。

「って・・・すずか?なんか顔赤いけど大丈夫?」

「えっ?本当?緊張したからかな・・・」

すずかの顔がほんのり赤くなっていることに気づいた私が聞くとつられてアリサもそれを確認します。

「ホントだ、血飲んだ方がいいのかな?」

夜の一族は定期的に血を摂取する必要があり、アリサも何度かすずかに血を分けてあげたらしいです。

すずかがアリサの首にカプリと・・・うん、エロいですね。

「ハルナ?アンタ今すっごくいかがわしい想像したでしょ?」

「うん、した」

「否定しなさいよっ!?」

案の定突っ込んでくるアリサ、ますます芸人でないことが悔やまれます。

「まぁ、それは後でとっちめるとして。ねぇすずか?せっかくだからハルナから血を貰ったら?」

「ふぇ?」

「ええぇっ!?」

アリサの提案にすずかはものごっつ驚いた顔で声を上げます。

「ほら、なのははいつでも貰えるけれどハルナはこの事件が終わったらまたミッドチルダに戻っちゃうんだから、今のうちに貰って置いたら?」

すずかを唆すアリサ。

浮かべた笑みも相まってその姿は人を惑わす小悪魔のごとしです。

「えっと、その、でも・・・うぅ~」

悩み、悶え、葛藤するすずか。

欲望と理性が彼女の中で壮絶な激闘を繰り広げ・・・。

「・・・ハルナちゃん、その・・・いい?」

どうやら勝利したのは欲望の方でした。

「う、うん・・・」

上気した顔で上目遣いに聞いてくるすずかを私は拒絶できず、了承してしまいました。

ムリだよこんなん!断れるわけないじゃん!

おいアリサ!後で覚えてろよっ!?

なのはもなに恭也さんを部屋から追い出そうとしてるのさ!?

「お兄ちゃん早く出てって!覗いちゃダメなの!」

「ちょっ、分かったから押すなって・・・!」

なのはにグイグイと押されて恭也さんが部屋から出ると、アリサも「それじゃあごゆっくり~」と笑顔で退出する。

畜生!ほんとに覚えてろよ~!!

「ハルナちゃん・・・」

「は、はひっ・・・っ!?」

ソファーに並んで座ったすずかに声を舁けられ思わず背筋を伸ばす私。

「ほんとうに、いいの?」

ここまで来ても不安そうに聞いてくるすずか。

親友にこんな顔をさせたとあっては機人長女リリカルハルナの名が廃ります。

何より据え膳食わねばなんとやら・・・女は度胸、当たって砕けて星になった命よジャストフォーエバーです!

「いいよ、来て」

「うん、じゃあ行くよ。ん・・・」

首筋に触れるすずかの唇。

「んん・・・」

くすぐったさを感じた直後、チクリと刺すような痛みが走ります。

「んむ、ちゅる・・・」

犬歯を突き立てられた箇所をすずかの舌が何度も走る。

「んっ、はぁ・・・」

自分でも驚く位艶のある声が零れてきます。

「はぁ・・・ねぇ、ハルナちゃん。さっきのお話し、覚えてる?」

「はぁ、はぁ・・・え?」

朦朧とする意識の中ですずかの声に反応する私。

「お話の最後に出てきた私の子供って、ハルナちゃんとのこどもだよね?ハルナちゃんの世界では、その・・・女の人同士でも赤ちゃん、作れるの・・・?」

「・・・え゛」

朦朧としていた意識が一瞬で晴れました。

「その・・・ハルナちゃんとなら、いいよ?」

うん、ナニがいいのかお姉ちゃん分かりません、てか分かっちゃいけません。

そりゃね、ミッドとかの医療技術・・・てか父さんの力を使えば女の子同士でも赤ちゃん作ることはできますよ?

同性での結構とかも認められてますし、そう言った技術を使った出産もいずれはできるようになると思います。

でもいくら何でも9歳児はまずいでしょう色々と!

私だってすずかの事は好きですけれどそれだって友人としてのLIKEであって恋人としてのLOVEではありません。

これからどうなるのかは分かりませんが少なくとも今はそれで間違いありません。

「ねぇ、すずか・・・」

だから・・・。

「すずかにはまだ早いよ」

逃げることにします。

「・・・やっぱり、私じゃダメ?」

涙目で言うすずか、これは反則ですよ。

「いや、そうじゃないよ。私だってすずかの事は好きだよ?でもね、すずかはまだ9歳でしょ?エッチな話はまだ早すぎます!」

とりあえず未成年な事を指摘します。

「だからすずかがもっと大人になった時に気持ちが変わってなかったら、その時はまた想いを伝えて。ね?」

そこから正論で一気に畳みかけ時間を稼ぎます。

すずかのR指定が解除されるまであと9年・・・それくらいあれば頭も冷えますしすずか位のお嬢様になれば縁談の一つや二つ位はやって来るでしょう。

あわよくばその未来の旦那様と結ばれてくれれば私の貞操も安泰です。

「・・・わかった、私待つよ。大人になってハルナちゃんに思いを打ち明けられるまで、私ずっと待ってるから・・・!」

「・・・アッハイ」

安泰、の筈です。

なんだか執行猶予が付いただけの様な気もしますがとにかく時間は稼げました。

それまでに打開策を練らねば・・・。

「ん?」

今気づいたんですが、アリサたちが出ていった扉、半開きですね。

そしてそのわずかに空いた隙間には・・・。

「はわ、はわわ・・・」

「や、止めようよ。いろいろマズイよ・・・」

「二人とも静かにしなさいよ、見つかったらどうするのよっ」

アリサ、なのは、ユーノの目が室内を伺っていました。

・・・もしかして、見られてた?

私がすずかにチューチューされてエロい声出してた所も、すずかに色っぽい顔で告白された所も、それをかっこよくそれっぽいこと言ってうまく逃げた所も、全部、全部全部全部・・・。

「・・・アハッ」

誰かが笑っています。

「アハッ、アハハハハハッ・・・」

響き渡る壊れた様な笑い声、でもこの声・・・どこかで聞いたことがありますね?

「は、ハルナちゃん・・・?」

おやすずか?どうしたのさそんな怯えた顔して・・・。

「大丈夫だよ、直ぐに終わらせるから・・・」

安心させようと思いそう言った時、さっきの笑い声の正体に気づきました。

あぁ、これ私の声だ。

 

Sideアリサ

空気が凍るっていうのはこういう事を言うんだと思う・・・。

久しぶりにハルナに会えたからか少し調子に乗ってしまったのがまずかった。

もっとも原因の半分以上はおちょくってくるハルナにあるのだが・・・。

助けられて以来妙にハルナにご執心なすずかをけしかけてハルナが動揺する様子を拝んでやろうと思ったのが発端だった。

なのはやユーノも最初は止めようと言っていたがだんだんエッチな雰囲気になっていく二人から目が離せなくなり、いつの間にか私と一緒にデバガメに興じていた。

ハルナは何とかすずかを言いくるめることに成功したらしくホッと息をついた時、ドアの隙間から除く私と目が合った。

そして今に至る。

「アハッ、アハハハハハハッ・・・」

壊れた様ななんかヤバイ笑い声をあげるハルナ。

よく見れば彼女の金色の瞳からはハイライトが消えている。

「もしもし、リンディさん?」

そこでハルナは携帯電話を取り出すとどこかに電話を始めた。

「ちょっと今から封次結界を敷くんで、ええハイ。前に言ってた友達に魔法を見せるのに、はい、ありがとうございます。それでは・・・」

ハルナが電話を切った直後、周囲の景色が変化します。

「な、何これ!?」

「にゃっ!?これって・・・」

「封次結界!?」

いるのはさっきと変わらずすずかのお屋敷の中なのに、まるで時間が止まったかのように全てが沈黙している。

「さて、そう言えば前から魔法が見たかっていってたよねぇ、アリサ?」

ハルナが首にかけたネックレス・・・マギア・イェーガーとかいう名前のデバイスを握る。

最初に見せてもらった時は凄くキレイに見えたそれが今それはとてつもなく禍々しいオーラを放っていた。

「ああ、そうだ。せっかくだからなのはにリハビリを手伝ってもらおうかな・・・」

ハルナの恰好が「レア装備」とかプリントされたダサいTシャツとジーンズから灰色のバリアジャケットに変わる、もっとお洒落しなさいよ。

「ふっふっふ・・・最近火力増し増しのスゴイ魔法を完成させてね、ちょうど実験台が欲しかったんだ~」

口を三日月状に吊り上げながら嗤うハルナ、あれはヤバイ。すごく、ヤバイ・・・。

「多分食らったらショックで記憶が飛んじゃうけれど、別にいいよねぇ・・・」

前に恭也さんが修行してるのを見た時に感じた殺気、それを数十倍にしたものがひしひしと感じられる。

「は、ハルナ・・・」

「はわ、はわわ・・・」

気付けば恐怖のあまり震えながらなのはと抱き合っていた。

その隣でユーノが必死の形相で結界を解こうとしている。

「うん、頑張ってねユーノ。でも結界が敗れるよりも私の魔法が命中する方が早いと思うな・・・」

デバイスが向けられる、先端に魔法の光が収束していく・・・。

「Die(ダーイ)!!」

光りが視界一杯に溢れ・・・。

「「っ・・・!」」

ジャジャーンとクイズ番組で流れるような効果音と共に『ドッキリ大成功!』の文字が浮かび上がった。

「「・・・へ?」」

「フッフッフ・・・ハーッハッハッハ!どうだ!びっくらこいたかっ!」

デバイスを下したハルナがムカつくを通り越してすがすがしいと感じるくらいのドヤ顔で笑う。

それを目にしてようやくさっきのアレが私たちを怖がらせていただけなのだと気付いた。

「は、ハルナっ!アンタ、アタシ達の事からかってたのね!?」

「当然でしょ、私がアリサたちを本気で撃つわけないじゃない。恥ずかしい所を見られたのもあるけれどすずかを巻き込んで悪さしたことはこれでおあいこにしたげよう」

「ぐぬ、ぐぬぬ・・・」

反論できない、確かにすずかをけしかけて共犯にしたのは悪いと思うから。でも・・・。

「いや~泣きべそかいてるアリサなんてめったにお目にかかれないもの見れたし、よかったよかった」

こっちはちっともよくないわよ!

「・・・おかしいな、二人ともどうしちゃったのかな・・・?」

「・・・へ?」

「えっ・・・?」

そこでふと声がする。

聞こえてきたのは私のすぐ隣にいる親友、なのはの方からだ。

でもそんなはずはない、彼女はこんな底冷えするような冷たい声ではない筈・・・。

「怒るのは計るけれど、デバイスは玩具じゃないんだよ?冗談で人に向けちゃだめなんだよ?」

怖い・・・身体が、本能がなのはの方を見るのを拒んでいる。

それでも恐る恐るそちに視線を向けると・・・。

「ねぇ、私の言ってること、間違ってるかな?」

魔王がいました。

まるで感情が死んだかのような能面、しかし放つ怒気と怒りでドロドロに濁った眼差しがなのはの怒りを如実に表していた。

幻だろうが彼女の背後には般若の面がこちらをにらんでいるように感じる。

「って、私も!?」

「元はと言えばアリサちゃんのイタズラが原因なんだよ?だから同罪なの」

なのはの服装がうちの学校、私立聖祥大付属小学校の制服をモデルにした純白のバリアジャケットに変わる。

そして手にしたデバイス、レイジング・ハートをさっきハルナがしたように私とハルナにむけて・・・。

「待ちなさいなのは!冗談でデバイスを人に向けるなってアンタさっき・・・!」

「うん、いったよ。だから、本気で向けてるの・・・」

デバイスの先端に桜色の魔力光が収束していく。

ヤバイ、あれはマジだ。

「えっと、その・・・ごめんねなのは、確かに私も調子に乗ってたよ。この結果を真摯に受け止めて今後の参考に・・・」

ハルナが妙に官僚答弁みたいな弁解をなのはに投げかけるも。

「問・答・無・用・なの♪」

なのははすっごくいい笑顔でレイジングハートの照準を会わせる。

収束した魔力が一層強い光を放ち・・・。

「少し、頭冷やそうか・・・」

「「ぎにゃああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~ーっっっっ!!!!!!」」

抱き合い叫ぶ私達にぶっ放された。

Side Out

 

はぁ、はぁ・・・っ!死ぬかと思った!

ホント、非殺傷設定を考え付いた人に感謝ですよ。

キレたなのはに全力全壊でブレイカーされた私とアリサはその後も正座させられてなのはから延々とお説教を受けました。

必死に謝り倒して反省の意を示したので何とかなのはに許してもらう事が出来ましたが、マジで怖かったです。

前言撤回!やっぱりあの子は天使じゃありません、超宇宙怪獣鬼悪魔デビルサタンです!

この後すぐに私とアリサの間で『なのはを怒らせてはいけない条約』と『過剰なイタズラ禁止協定』が結ばれ、以降無期限で度が過ぎるイタズラは(少なくともなのはのいる前では)行われなくなりました。

ともかく私達へのお仕置きとお説教も終わり、その後暫く遊んだ後でお開きとなりアースラへ帰る事となったなのはの顔はとても晴れやかでした。

すずか達に秘密を打ち明けられたからか、それとも私をぶっ飛ばしてストレスを発散したからかは分かりませんが、鬱屈としていた気分は晴れたようです。

「ハルナちゃん、ありがとう。私の事心配してくれたんだよね?」

ありゃ、バレていたようです。

「気にしなさんなお嬢さん。危険な事件に付き合わせているのは私達なんだから・・・」

「・・・うん、明日からまた頑張ろうねっ!」

グッと拳を握りながら元気いっぱいに言うなのは。

こんなかわいい子があんなラスボスっぷりを発揮するんですから世の中不思議ですよね。

「おうよ、なのはは私が守るからもっとお姉ちゃんを頼りたまへ」

「にゃはは、そう言えばハルナちゃんの家族の事もっと聞いてもいい?」

「喜んで!まず私の5つ下がウーノとドゥーエで・・・」

その後、熱の入った私の妹自慢は消灯時間ギリギリまで続きました。

なのはもだいぶ疲れたみたいだけど楽しそうに聞いてくれていましたし、今後もこんな風に平和な日々が続けばいいのに・・・。

そう思ってしまったのがいけなかったのでしょうか。

『警報!警報!海鳴沖合にジュエルシードの反応多数!総員第一種警戒態勢!繰り返す、総員第一種警戒態勢!』

鳴り響く警報を耳にした私は見事にフラグが回収されたことに後悔を覚えました。




ちなみにハルナの血ですがすずか曰く「機械油みたいな独特の香りがする」らしいですw
すずかとのくだりでR15タグをつけるべきでしょうか?


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