Reゼロから始める黒足のサンジ (ランホーク)
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プロローグ

どうもランホークです。

今回の作品で三作目となりました。

僕が大好きなキャラであるONE PIECEのサンジをリゼロの世界に入れてみました。リゼロはweb版と小説を少ししか読んでないのでご了承ください。

それではどうぞ!


男は今。

 

絶望に飲み込まれようとしていた。

 

「がああっ・・・・・・・・・・・・」

 

自分が獣のような呻き声を上げているのに自分自身では気づく事は無かった。

 

それよりも問題視する事があったからだ。それは、

 

「この俺が・・・・・・・・・ここで死ぬのか・・・・・・・・・・・・・」

 

腹がない。

 

これは比喩でもなんでもなく。自分の腹部がなくなっているのだ。

 

床には自分の血や臓物が流れ出て顔を顰めてしまうほどの臭いを放つ。

 

きっと自分の腹から全て流れ出たのだろう。

 

「がっ・・・・・・・・・・・ぐっ・・・・・・・・・・・・・・・」

 

男は今まで幾千幾万と死線を潜り抜けて来た。

 

その中には本気で死を覚悟した事もあった。

 

仲間の命を助ける為自分が犠牲になる事もあった。

 

過去の因縁にケジメを付ける為幼少期に過ごした地獄へと戻った事もあった。

 

恩人を救うため仲間を切り捨てようと死よりも辛い決断をした事もあった。

 

 

そんな男が今。死と直面していた。

 

 

「く・・・・・・・・・・・るな・・・・・・ら・・・・・・・・」

 

扉の開く音が微かに聞こえた。

 

声を出そうにも男はすでに体中の血が体外に流れ出てしまい風前の灯という言葉が当てはまるような状態になっていた。

 

「サンジ?大丈夫?」

 

男の名前を呼ぶ少女の声。足音が徐々に自分に近づいてくるのを男は聞いた。

 

「だめ・・・・・・だ・・・・・・・・・てら・・・・・・・・」

 

意識もすでに亡くなりかけている男は最後の力を振り絞り自身の名を読んだ少女に言葉を飛ばす。しかし男の悪足掻きは無意味だったと知る。

 

「!!!!!!!」

 

ドサッ。そんな音が半死状態の男の耳に入る。

 

その少女は死んだのだ。きっと男と同じで今男の隣で倒れて死んでいる少女は自分と同じ状態になっているのだろうと直感した。

 

「(俺はこんな所で死ぬのか。この世界が何なのか。この少女の事も知らずに。)」

 

拳に力を籠め後悔の念を浮かばせる男。

 

「(俺は約束したんだ。この子の願いを叶えるって。そして、)」

 

男は最後の力を振り絞り自身の願望を言葉にして現した。

 

 

「ルフィ・・・・俺は必ず・・・・・・戻るか・・・・・ら・・・・・・・・・な」

 

力を籠めていた拳はゆっくりと開かれ男の呼吸と鼓動が止まる。

 

幾度の死線を越えて来た男。

 

その男が遂に死を迎えた。

 

 

海賊麦わらの一味コック。懸賞金3億3000万ベリー。

 

ヴィンスモーク・サンジ。

 

通称 黒足のサンジ。

 

 

異世界にて命を落とす。

 

 

そして世界は逆行を始める。

 

 



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王都編
仲間


ビックマムの縄張りから逃げ切った後の話です。

2話目どうぞ!


「サンジ~飯!!」

 

「俺も俺も!!」

 

「ちょっと待ってろ!!もうすぐできっから」

 

明るげな声が聞こえサンジは手に持つ包丁で具材を刻んでいく。

 

「ヨホホホホホホ!!!!サンジさーん。今日の夕食は一体なんですか?」

 

「今日はお前らの大好物尽くしだ!!」

 

「「「やったあああああ!!!」」」

 

サンジは喜ぶ仲間の三人の顔を見ながら笑い調理を進めていく。

 

 

 

そしてキッチンと併設された食堂の扉が開かれそこから一人の女性が入って来た。

 

「サンジ君。調子はどう?」

 

「ンナミさあああ~~~~ん!!!!!」

 

目をハートの形にしながらサンジはナミの元へと駆け付け、

 

「今夜のメインディッシュ。界王類の肉をウェルダンで焼き俺特性のタレで味付けしました。どうぞご試食を」

 

「んんんん!!!美味しい!!やっぱりサンジ君の料理は最高よ!!」

 

「サンジ!!俺にも食わしてくれよ!!」

 

「俺もだサンジ!!」

 

「ルフィさん!!キッチンに置いてありますよ!!」

 

「なに!!よし俺たちも試食だ!!!」

 

「おおおおおお!!!」

 

ルフィ・チョッパー・ブルックの三人は料理途中の物を食べようとキッチンに走り出す。

 

「おいテメーら!!!勝手に食うんじゃねええ!!!」

 

 

サンジと三人の攻防が始まり、それをナミは嬉しそうな顔で眺めている。

 

 

「(サンジ君。おかえり)」

 

 

こんなバカみたいな光景をもう一度見る事が出来てナミは嬉しさのあまり、

 

「ふふっ」

 

一滴頬に流れるほどの量の涙を瞳に溜めていた。

 

 

そして夜。仲間が寝静まりサンジは一人で船の芝生の真ん中に立つ。

 

 

静寂な夜。空には満月。偶に吹く冷たい風が金色の髪を靡かせ、口から吐いたタバコの煙が空に昇っていくのを見ながら物思いに耽っていた。

 

 

ーーー本当に良い仲間に巡り合えた。

 

 

ビッグマムの縄張りに攻め込み敵の本拠地のど真ん中にまで会いに来てくれたルフィ。

 

何度全力の蹴りを決め込もうと全てを受け止め帰ってこいと言葉をくれたルフィ。

 

お前の力がなくては俺は海賊王にはなれないとまで言ってくれたルフィ。

 

自分が来ると信じてずっと待っていてくれたルフィ。

 

雨や泥で原型を留めない弁当を自身の母親と同様に美味しいと言って一つ残らず食べてくれたルフィ。

 

そして自分が戻ってくると信じてルフィについてきた大切な仲間。

 

 

月を眺めた。

 

 

新円を描いた綺麗な月だ。

 

 

涙を零さないようにサンジはずっと月を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

「もう寝ないとな」

 

月を見るのも飽きて眠気を催したときにそれは突然現れた。

 

 

「なんだ!!」

 

先ほどまで音一つ無い世界に突然の突風。サンジは両腕で自身の顔を反射的に守る。

 

そして、

 

「これは・・・」

 

目の前が暗くなる。目を瞑った訳でもないのに。

 

 

「アイ・・・・シ・・・・・テ・・・ル・・・・」

 

「誰だ!!」

 

サンジは目を瞑り見聞色の覇気を発動させて声の主を探った。しかし見つからない。

 

「一体誰なん・・・・・・え?」

 

気の抜けた声を出てしまうサンジ。

 

 

サンジの目の前には想像にもつかなかった光景が広がっていた。

 

 

 

 

 

 

 






次の回から異世界編です。


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混乱

サンジのように強くて料理も出来て女性に超優しい人間になりたい。


人気のない暗い路地。辺りには人一人寄りかかれそうな木箱が数箱とタバコを蒸かす金髪の青年。

 

蜂の巣にでも顔を突っこんだのかと言わんばかりに顔が腫れあがり冷たい地面に正座している少年三人。

 

右手の人差し指と中指にタバコを挟み地面に灰を落とす青年が目の前に正座している三人の少年を見下ろしながら尋ねた。

 

 

「ふう・・。さてお前らに聞きたい事があるんだが」

 

 

 

 

 

 

数分前。

 

 

「おい!なんだここは!!」

 

サンジの目にしたものは言葉通り有り得ない物だった。

 

まずサンジが今いる場所。それは街だった。

 

中世の街並みを再現したのかと言わんばかりのレトロな建築物。

 

先ほどまで自身が所属している麦わら海賊団の船。サウザント・サニー号に乗っていたはずなのにいつの間にかに陸に上陸していたのだ。

 

そしてもう一つ不可解な現象がある。

 

それは時間帯。

 

船にいた時の時間帯は夜であった。

 

しかし今はどうだ。空には雲一つなくサンサンと輝く太陽が自分の事を空から見下ろしているではないか。

 

「敵か?人を移動させる能力者か?だけど時間がおかしい。なんで一瞬で夜から朝になってんだ?それに敵だとしても何で俺の目の前に現れない?」

 

混乱するサンジ。そして辺りを見回しているとさらに不可解な現象を目の当たりにする。

 

「なんだここ!!ミンク族・・トカゲ?ゾオンの能力者か?でも普通の人間もいるな」

 

街を行く人々・・・・いや人という言葉が合う生き物は街を闊歩する者の中で半分ほどしか当てはまらないだろう。

 

街を闊歩する者の中には人間以外にもサンジがゾウという島で出会った動物を擬人化したような生き物もいる。しかしこれには驚かない。何故なら自分の仲間に文字通り擬人化した生き物がいるからだ。

 

そういう理由で街行くミンク族(仮)を見ても大して驚きはしない。

 

しかし驚いたのは、

 

「何見てんだよ」

 

「なああんた?あんたは能力者か?」

 

「のうりょくしゃ?何言ってんだお前。じゃあな」

 

目の前を通りかかったトカゲの形をした生き物にサンジは声を掛けた。

 

「能力者じゃないのか?あいつらもミンク族・・いやでもミンク族はチョッパーみたいに全身に毛が生えてるんだよな。何かの種族か・・・いやでもビッグマムの島にはあんなトカゲみたいな奴いなかったし・・・どういうことだ・・?」

 

 

ますます混乱が激しくなるサンジ。

 

「まあそれは置いておこう。今大事なのはここがどこなのかだ。」

 

冷静に考えようと近くの人気のない路地に入り置いてあった木箱に腰をかけるサンジ。

 

「ここは新世界。それは間違いない。問題なのはルフィ達がいる場所とどれくらい離れているかだ。」

 

冷静に考えた結果。まず一つわかったのはここは新世界のどこかの島だということ。

 

「多分俺とルフィ達は大した距離は離れてない。そう仮定しておくか」

 

サンジはそう予想する。

 

理由は1つ。悪魔の実の能力の限界。

 

サンジを襲ったこの空間転移能力。

 

今可能性で考えられるのはおそらくトラ男のように物体を別の場所に移動させる能力を持つ能力者。

 

もしそうならばトラ男と同様自身の能力を干渉させる範囲には制限があるはず。

 

ならば自身が乗っていた船と今自分がいるこの場所とは大した距離は無いとサンジは導き出した。

 

そしてもう一つの謎が解けた。

 

ここは新世界。

 

新世界の気候というのはおそらく世界でもトップに入るであろう航海術を持っている仲間の航海士ですらわからないものがあるという。

 

そう考えたサンジは今空に太陽が昇っている事に疑問を抱かなくなった。

 

「とりあえず謎は解けたな。まず初めにここがどこかを調べる。そして俺をこの島に連れて来た奴をぶっ飛ばす。そんで仲間の元へ戻る。それだけだ」

 

木箱から降りて路地から出ようとした時、

 

「おい。テメーなに一人でブツブツ言ってんだ?」

 

「痛い思いをしたくなきゃ出すもん出しな」

 

「さっさとしろ」

 

サンジの目の前に三人の男がいた。

 

一人は細い体をして右手にナイフを持っている男。

 

もう一人は小太りでサンジと同じくらいの背をした男。

 

最後の一人は一時的にサニーゴに乗船していたモモの介と同じくらいの背の男。

 

薄ら笑いを浮かべながらサンジをバカにする不良三人。

 

サンジはポケットから煙草を取り出しジッポライターで火をつける。その二秒後。

 

 

「ふう・・・さてお前らに聞きたい事があるんだが。」

 



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仮説

4話です。


「新世界じゃないだと!!」

 

人気の無い路地裏。

 

そこでサンジは顔が腫れあがった細身の青年の胸倉を掴み至近距離で怒鳴り散らしていた。

 

「ほ、ほんとうです・・・その・・しんせかい?・・ってのがなんなのかもわからないんです」

 

口の中が切れているのかいまいち発音がはっきりしない事にサンジは苛立ちを覚える。

 

そしてサンジは手を離し、その細身の青年の隣に行儀良く正座していた二人に視線を移す。

 

「「ひいっ!!!」」

 

サンジに睨まれれこの細身の青年の仲間は互いに抱き着く。この二人も同様に元の顔がどんな顔かわからない程に腫れあがっていた。

 

「おいテメーら。今から俺が言う言葉に知ってる単語があったら言え」

 

「「「は、はい!!」」」

 

サンジに完全に恐怖したチンピラ三人はサンジの目の前で正座して震えながらサンジの言葉を待つ。

 

「グランドライン、新世界、悪魔の実、海軍、海賊、白髭、四皇、天竜人。この中で知ってる単語はあるか?」

 

サンジはタバコを加えながら自分のいた世界で誰でも知っていそうな単語を口にする。だが、

 

「わ、悪いんだが・・・どれも知らない。」

 

小デブのチンピラがそう言い残りの二人も同意するように首を縦に振る。

 

「なんだと・・・嘘じゃねーだろうな?」

 

「ほ、本当だよ!!その、あくまのみ・・?そんな食べもの聞いたことねーし、かいぐん、かいぞくってのも聞いたことがねーよ!!」

 

サンジは驚愕した。新世界に住んでいる人間なら自分が言った単語を必ず一つくらいは知っているはずだ。それにこの大海賊時代と言われている時代に海賊という言葉すら知らない人間なんているのだろうか?

 

「・・・・・・」

 

ーーーー嘘はついてねーみたいだな。

 

三人の顔を見てそう判断するサンジ。

 

「じゃあ次の質問だ。ここは一体どこだ?」

 

口から煙を吐きながら聞く。そしてそれに答えたのは背の小さいキノコ頭のチンピラ。

 

「こ、ここはルグニカ王国っていう国だ。し、知らないのか?」

 

「ルグニカ王国?」

 

聞いたことない国名に頭に疑問符を浮かべる。

 

「あ、ああ。神龍と契約したっていう国で世界の最も東にあるデカい国だ。」

 

「東・・・」

 

顎髭を触りながら思考を巡らす。

 

「(どういうことだ・・?イーストブルーに戻っちまったってことか?でも俺がまだイーストブルーにいた時にルグニカ王国なんて国聞いたことなかったぞ?・・・・仮にここがイーストブルーだとしても移動距離は果てしないものだ。これが悪魔の実の能力だとしても能力の限界を超えてるぞ?・・・・)」

 

首を捻り目を瞑りながら考えるサンジを三人のチンピラは見る。

 

「おい、今なら逃げれるんじゃなか・・・?」

 

「ああ。こいつがアホ面している間にさっさと逃げよう」

 

「ああ。逃げよう逃げよう」

 

三人は小声でこの場から逃げる事を話し合うが、

 

「聞こえてるぞ」

 

「「「え?・・」」」

 

その瞬間。サンジの左足が小デブの顔面にめり込む。

 

サンジの足と小デブの顔面が衝突した時、ベキッと音が一瞬響きそのまま吹き飛ばされた小デブは路地の壁に激突。その衝突した勢いで壁が崩れて煙が舞った。

 

「アホ面にアホ面って言われたくねーわ」

 

「「・・・・・・」」

 

残った二人のチンピラは自分の驚きの許容量が超えたのか口を開けながらただ蹴られた仲間を見るだけであった。

 

「まあいいや。知りたい事は結構知れたしな。後お前ら金持ってるか?」

 

煙が止み蹴られた仲間を見る二人。

 

白目を剥きながら顔の半分が壁の中にめり込み残った半分の顔は血だらけになった仲間の姿を見て顔が青くなりガタガタと震え出す。

 

「おい!!」

 

「ひゃ、ひゃい!!!」

 

「気色悪い声を出すな胸糞悪い。甲高い声を出していいのはレディーだけだ!!」

 

「は、はい・・・すみません」

 

完全に委縮したチンピラはすでにもう逃げるという選択肢も無くしただサンジがこの場から立ち去ってくれるのを願うばかりだ。

 

「もう一度聞くぞ、お前ら今、金持ってるか?俺は手持ちが無いんだ。しばらくこの国にいるだろうからな。宿代が欲しいんだ。」

 

知っての通りサンジは女には激甘だが男にはとことん容赦ない。しかも自分に絡んできたチンピラだ。付け加えるならナイフをチラつかせるという行為も相まってかサンジはこのチンピラたちには容赦がない。

 

そして残った二人はポケットから財布と思われる袋を取り出し中から数枚の硬貨を取り出した。

 

「こ、これが俺たちの全財産です」

 

二人がサンジに渡したのは12枚の硬貨。その内の2枚は金貨で残りの10枚は全て銀貨だった。

 

「ん?これベリーじゃねーな。なんだこの金?」

 

「え?ベリー?なんですかそれ・・・」

 

サンジはまたもや驚く。ベリーとはサンジがいた世界では世界共通の金として使用されている通貨。

 

そしてサンジはある一つの仮説を生み出した。

 

「まさかここは・・・・俺がいた場所とは違う世界なのか・・?」

 

違う世界。それは比喩などではなく自分のいた世界とは全く別の世界の事。

 

違う次元に来てしまったという表現なら伝わるだろう。

 

もし本当に自分が元いた世界とは全く別の世界にいるのだとしたら。海賊や悪魔の実などといった言葉を知らないのも納得がいく。

 

「(しかしどういうことだ・・・?もしここが本当に別の世界だとしてもだ。誰が俺をここに連れて来たんだ?目的は何だ?どんな能力者の仕業だ?でも悪魔の実の能力だとしてもありえねーぞ。こんな違う次元に移動させる能力なんて・・・・それとも俺の知らない未知の能力とかがあるのか・・)」

 

サンジは考える。そして答えは出た。

 

「しゃーねー。兎にも角にもまず寝床を探さねーと。あと金と情報収集だ。」

 

考え過ぎて頭が疲れたのか一旦ここに来た原因を置いておき再び仲間の元に戻る為の最善を尽くす事にした。

 

「よし。俺はもう行く。お前らは倒れてる仲間の介抱でもしてろ」

 

サンジはそう言うとチンピラの隣を通り路地を抜けるのであった。

 






あと2話分書き溜めしてるんですけど載せようか迷ってます。


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歓声と剣聖

5話です。


サンジの眉毛ってどうなってるんだろ…


チンピラをぶっ飛ばしたサンジは今いる場所の地形の感覚を覚える為に目的もなくただひたすらと歩いていた。街を歩けば元の世界にいたミンク族に似た種族やトカゲの能力者のような生き物も歩いている。しかしサンジが驚いたのは同様に人間も当たり前のように街を歩いている事。

 

元の世界は魚人などの異種族は人間達から差別の対象となっていたのだ。

 

魚人だけではなく巨人族、手長族、足長族、数多くの異種族が暮らす元の世界は差別という自身と形が違う者を忌み嫌う思想が飛び回っていた。

 

それに比べこの世界はそんな概念など無いと言わんばかりに異種族同士が同じ街で同じように暮らしている。

 

その点に関してはこの世界にいい印象を持つサンジであった。

 

「しかしなんだあの生き物は?」

 

街中を駆け回る竜のような生き物を見てサンジは呟いた。

 

その竜は人を乗せた荷台のような物を引きながら街中を走り回っていて、その竜の見た目を例えるのなら新世界に入り最初に上陸した島。パンクハザードにいた小さい竜をサンジは思い出す。

 

その竜が荷台を引き、それが何匹も街中を走り回っているのだ。

 

「何だあの子?」

 

サンジは建物を見上げた時、速い速度で屋根から屋根へと飛び移る少女を見かけた。

 

「子供・・・女の子か」

 

そしてサンジが見かけた少女はあっという間にサンジの目の届かない所にへと行ってしまった。

 

「うわあああああああああ!!!!」

 

「今度は何だ?」

 

叫び声が街中に響き渡る。

 

サンジは声のした方にへと振り向く。

 

そしてそこには道の真ん中で倒れている少年。そしてその少年に向かって走り寄ってくる荷台を引いた一匹の竜。その少年は転んで足を挫いたのか中々そこから逃げ出そうとしない。

 

「っち!!」

 

サンジは走り出しその少年へと駆け付ける。

 

ーーーー間に合え!

 

心でそう唱え、そして・・・

 

「ふう・・・・ったく、俺がいなきゃ死んでたぞ」

 

サンジは轢かれそうになった少年を抱きかかえながら嫌味のように言った。

 

街行く人の歓声が響き渡る。

 

「ありがとうございます!!グルグル眉毛のお兄さん!」

 

「おう。今度からは気を付けって・・・今なんつったガキ!!!」

 

眉毛の事を言われ大人気もなく子供にキレるサンジだがサンジの怒鳴り声は周りの歓声でかき消された。

 

「ったく。ほらもう行け。今度からは飛び出すんじゃねーぞ」

 

「はい!!」

 

そして少年とは別れ再びサンジは街を歩きだす。

 

「ちょっといいかな君?」

 

「あん?今度は何だ?」

 

心の休まる暇もないサンジはイラつきを態度にだしながら後ろから話し掛けて来た男にダルそうにしながら振り向く。

 

「さっきは僕の代わりにあの少年を助けてくれてありがとう。」

 

サンジの前にいたのは燃えるような赤髪をしたサンジより少し背の高い美青年だった。

 

汚れ一つない真っ白な制服に身を包み腰には高そうな剣を携え騎士という言葉が合いそうだ。

 

「ん?ああ・・・まあな。てかあんた誰だ?」

 

「ああ。紹介が遅れたね。僕は近衛騎士団に所属しているラインハルトっていうんだ。君は?」

 

「俺はサンジ。一流の料理人だ。」

 

サンジは口に加えていたタバコを外し対抗するように自身の職を言った。

 

「へえサンジは料理人なのか。一度君の料理を食べてみたいよ」

 

ラインハルトは爽やかな笑顔を見せながらそう言う。

 

「まあそんな事よりもだ。あんた・・・えっとラインハルトって言ったか?俺に一体何の用だ?」

 

脱線仕掛けた話を無理矢理に戻したサンジは新たなタバコを取り出しライターで火をつける。

 

「君にお礼が言いたくてね。あの少年を助けるのは本来衛兵である僕達の仕事なんだ。なのに君は自身の危険を省みずに躊躇いも無くあの少年を助けた。その事に対してのお礼さ。ありがとうサンジ」

 

「まああれは体が勝手に動いたって感じだな。あ、そうだ。なああんたに聞きたい事があるんだが」

 

「何だい?わかる範囲なら何でも答えるよ」

 

そしてサンジはあのチンピラ共にした同じ質問をラインハルトにした。

 

「かいぞく・・・よんこう・・・かいぐん・・・あくまのみ・・・すまないがどれも聞いた事がないな」

 

「そうか。わかった。」

 

「(やっぱりだ。ここは俺がいた世界とは違う世界なんだ。)」

 

サンジは確信した。今いるこの世界は自分がいた世界とは別の世界だという事を。

 

体の感覚でわかったのは、これは暗示や催眠といった類いのものではないということ。

 

痛みがある事から夢などではないということ。

 

そして悪魔の実の能力で起きた現象でもないということ。

 

もしこれが悪魔の実の能力だとしたらあまりにも人智の力を超え過ぎている。

 

ーーーまあそのうちわかるか。

 

あまり重く考えないようにとサンジはそう自身の中で自問自答した。

 

「何か困っているのかい?よかったら僕にできる範囲ならサンジに協力するよ」

 

「いやいい。これは俺の問題だ。あんたを巻き込む訳にはいかねーよ。」

 

「そうか。わかった。困ったらいつでも僕は君の力になるからね。」

 

「あんたみたいな聖人は初めて見たな。そん時は頼むぜ」

 

そして黒足と剣聖は互いに背を向けて違う道を歩いて行った。

 








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邂逅

6話です。


「これが最後の一箱」

 

サンジは新品のタバコの箱を開けてそう呟いた。

 

「この世界にはタバコがあるのか?なかったら死活問題だぞ。」

 

意外な所で恐怖を感じるサンジは新しく開けた箱から一本取り出し火をつけて吸い出す。

 

「大事に吸わねーと」

 

タバコを吸いながら街を歩くサンジは商店街のような通りに入りそこで売られている物を見ていく。

 

「異世界の食材はどんなものかと期待したが、前の世界と至って変わらねーな。、」

 

前の世界でも使っていた食材を見て少し落胆するサンジ。この世界にしかない食材があるのなら持ち帰って仲間に食わしてやりたいという気持ちがあったのだろう。しかしそれ以前にまず帰り方を見つけなければならないというのに結構サンジはこの世界に来た事については楽観した様子があった。

 

「よう兄ちゃん!うちのリンガ買っていかねーか?」

 

「リンガ?」

 

サンジに声を掛けたのは顔に刀傷を負った年齢30代後半といった所の店主。その店主の店は果実を中心にいろいろと並べられている。体は戦士かと突っ込みたくなるほどに鍛えられていてサンジは何故果物屋など経営しているのだろうと疑問に思った。

 

「これは・・・リンゴだな」

 

「リンゴ?なんだそりゃ?これはリンガだ」

 

店主はリンゴを手に持ちサンジに見せつけてそう言う。

 

「そうだな・・・なあオッサン。一つくれ」

 

「まいど。銀貨一枚な」

 

サンジは先ほどチンピラから奪った金を取り出しそこから銀貨を一枚手に取り店主に渡す。

 

そして受け取ったリンガ?という名の果実をサンジはそのまま齧り付く。

 

「おいおい。店前で食ってんじゃねーよ兄ちゃん」

 

サンジはその言葉を無視して味を確かめた。

 

「(リンゴだな。)」

 

味はそのままリンゴだった。

 

味や形や匂い。それはそのままリンゴだったが名前だけが違うという事にサンジはあまり疑問を抱かなかった。いきなり異世界に連れて来られたサンジにとって物の名前が違うというのは大した問題でもないのだろう。

 

「しかしな・・・・・」

 

サンジは店の看板を見てそう呟く。

 

「読めん」

 

そう。看板に書いてある文字が読めないのだ。

 

「(なんだこの字?ロビンちゃんなら読めるか・・・いやここは異世界。ロビンちゃんでも読めないかもしれないな。文字は読めないが言葉は通じる。こりゃ一体どういうことだ)」

 

「おい兄ちゃん。もう用がねーならどっか行ってくれねーか。商売の邪魔だ」

 

「あーわかったよ」

 

サンジは邪魔と言われ少し不機嫌になりながらその場を立ち去る。そして買ったリンゴ・・・この世界ではリンガ。を食べながら歩きそのリンガが芯のみとなった時にサンジは道端で泣いている一人の女の子を見つけた。

 

きっと迷子だろう。親と逸れたのか。それとも散歩をしていて人混みに流され知らない場所にたどり着いたのか。

 

見た感じ女の子の歳はまだ二桁も行ってないだろう。正真正銘の子供だ。

 

黄緑色の髪を肩にまで揃えた可愛い女の子。将来は有望だなと心の中で密かに思うサンジ。

 

しかし若すぎる為サンジは仲間の航海士や考古学者のような反応にはならない。

 

なってもヤバいのだが・・・。

 

「・・・・・・はあ・・・・ったくこれじゃ俺は海賊じゃなくてただのお人好しだな」

 

ほっとけなくなったサンジはその泣いている女の子に話かける為に近づく。そして、

 

「おい嬢ちゃん。もしかして迷子か?「お母さんと逸れちゃったの?」」

 

「「え?」」

 

そして邂逅を果たした。

 






感想お待ちしおります!


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天使


可愛い子は少しドジの方が萌えますよね


ーーーー目の前に天使がいた。

 

「えっと・・・あなたは・・?」

 

風によって揺られた鈴が奏でる音のような声。

 

一本一本が光の反射で輝く長くて綺麗な銀髪。

 

「あの・・・・聞いてますか・・・?」

 

理知的な紫紺な瞳。

 

柔らかな面差しには艶と幼さが同居しており、どことなく感じさせる高貴さ。

 

身長はサンジより頭一つ分低く、160cmほどで白を基調とした服は銀髪と相まって美しさを増す。

 

まさに美少女という名の天使だった。

 

「おおおお♥♥♥♥♥!!!」

 

一瞬にして眼の形を♥にして目の前銀髪美少女を凝視していた。

 

「え!な、なに!!?」

 

当然銀髪の美少女はそんなサンジを見て戸惑いだす。

 

「ひっぐ・・うええええええん!!」

 

「「あ!」」

 

突然その二人の隣にいた迷子になっていた黄緑髪の女の子が鳴きだしてしまった。流石のサンジも慌てたのか体の向きを銀髪の美少女ではなく迷子の女の子の方に向けた。

 

「待って泣かないで!!いい子だから!!」

 

「えええええええええん!!!」

 

すかさず銀髪の美少女が慰めにかかるが効果なし。

 

「ど、どうしよう!!これじゃまるで私達がこの子をイジメたように見えちゃう!」

 

あわあわと口を抑えながら銀髪の美少女は狼狽えだす。

 

「あ、えーとこんな時は・・・えっとどうすんだ!?」

 

サンジも子供の扱いは慣れてないのか銀髪の美少女と同様に慌てだす。

 

「な、なあ譲ちゃん!!小遣いあげるから泣き止んでくれ!」

 

サンジはチンピラから奪った金を出して女の子に渡そうとするが

 

「びえええええ!!!」

 

効果無し。そして周囲にいた人達がどんどん女の子の泣き声を聞き集まって来た。

 

「おい!お前ら何やってるんだ!!」

 

「「ええ!!」」

 

そして遂に衛兵のようなものが数人やってきてサンジと銀髪の美少女を取り囲む。

 

「ち、違うんです!!私達この子が泣いてたから助けてあげようと・・・」

 

慌てて銀髪の美少女が衛兵たちに言い訳するが、

 

「言い訳は詰所で聞く!!我らと同行願おう」

 

「そ、そんな!!」

 

絶望した顔をする銀髪美少女。足が小鹿のように震えている。そして泣いている女の子も状況がわからず泣きながらオロオロしている。

 

ーーーーしょうがねえ!!。

 

「二人とも!俺にしっかり掴まってな!!ちょっと飛ぶぜ!!」

 

「え!?」

 

「え・・?」

 

サンジは銀髪の美少女と泣いている黄緑髪の女の子を!!両脇に抱えて、

 

空中歩行(スカイウォーク)!!」

 

「きゃ、きゃああ!!」

 

「すごーい!!」

 

空を飛んでその場から逃げた。

 

「なに!!」

 

「すげー!!」

 

「あの人空飛んでる!!」

 

「逃げすな!!追え!!追え!!」

 

そしてその場にいた衛兵たちは地上からサンジを追い、野次馬となっていた人達は飛んでいくサンジの後ろ姿を見ていた。

 



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無邪気



ラムチーとプリシラ様好き。




「ここまで来れば大丈夫か」

 

サンジはタバコに火を付けながらそう呟いた。今いる場所は先ほどサンジがいた場所。

 

チンピラ達をぶっ飛ばした場所と言えばわかるだろうか。

 

何故再びここに来たのか。

 

理由は1つ。サンジはこの街を知らないからだ。

 

まだサンジはこの街・・・もっと極端に言えばこの世界に来てまだ数時間と経っていない。

 

土地勘の無いサンジが無駄に遠くに移動すると元いた場所がわからなくなるかもしれない。

 

そういった理由で今このチンピラ達をぶっ飛ばした場所である路地に来た・・正確に言えば逃げて来たのだ。

 

先ほどチンピラがめり込んだ壁の破壊後は当然ながら今も残っている。そのめり込んだチンピラはすでにどこかに行ってしまったようだが。

 

「はあ・・はあ・・・ちょっと・・・貴方・・・聞きたい事が」

 

「あー大丈夫だよ、お嬢さん。俺は逃げないからさ。だからゆっくり息を整えていいよ」

 

肩で息をして両膝に手をつく銀髪美少女にサンジは優しく声を掛ける。何故抱えられていただけの銀髪美少女が疲れているのかは疑問に思ったが。

 

「おじさん!!さっきどうやって飛んでたの!」

 

そして先ほど道端で泣いていた女の子に聞かれサンジは両膝を曲げて女の子と同じ視線になる。

 

「お嬢ちゃん。俺はおじさんじゃなくてお兄さんだぞ。そこ間違えないようにね」

 

優しく。それはもう本当に優しい声で女の子に間違えを訂正する。

 

「なんで?おじさん髭生えてるよ。なんでお兄さんなの?あと眉毛すごーいグルグル!!」

 

無邪気な子供というのは恐ろしい。

 

なんの悪意もなく人を傷付ける事が出来るのだから。

 

「ふう。もう大丈夫よ。待ってくれてありがとう。」

 

「ん?お、そうか。そんで聞きたい事って?」

 

サンジは壁に寄っかかりタバコを吸う。

 

「えっと・・・どうしよう。聞きたい事がありすぎてどれから聞いていいか・・」

 

迷いだす銀髪美少女。そんな姿を見てサンジは銀髪美少女に提案した。

 

「こういう時はまず最初にお互い名乗りあうのがセオリーですよ。お嬢さん。」

 

「せおりー?どういう意味かわからないけど確かに名前を知らないのは不便だものね」

 

なんだか暗い顔をしながらサンジの提案に同意する銀髪美少女。

 

「よし。じゃあまずは私目名乗らしていただきます。俺の名はサンジ。一流の料理人だ。よろしく!」

 

「私ユウ!!」

 

「ユウちゃんっていうのかよろしくな」

 

「うん!よろしくねおじさん」

 

「おじさんっていうのやめようかユウちゃん。」

 

きっと空を飛んだのが余程おもしろかったのだろう。すっかりサンジに懐いている。

 

「んで。君は?」

 

サンジが銀髪美少女に名を聞く。そして銀髪美少女はサンジ、そしてユウを見た後に目を閉じ、

 

「サテラ。私の名前はサテラ。そう呼んで」

 

サテラ。そう名乗った銀髪美少女の声はこの人気の無い路地に反芻した。

 

 

 



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運命



ワンピースの女キャラで一番好きなのはマーガレットだな。


「ねえサンジ。サンジはどこから来たの?」

 

「ん~なんて言ったらいいか」

 

サンジは左手で顎髭を触りながら考える。正直に別の世界から来たといっても、え?何この人。頭おかしいんじゃないと思われるのが目に見えているし、女性に嘘を言うのも気が引ける。

 

「たかーい!」

 

サンジの肩の上に座っている子供。迷子になっていた黄緑髪の女の子ユウがキャッキャっと笑いながら子供らしい感想を言う。

 

サンジは純粋な心を持つ子供というのが結構好きで自分から肩車をしてあげようとユウに言いだしたのだ。それに高い所から見れば母親も見つかりやすいくなるのではと考えてのこともある。

 

ちなみに今のサンジはタバコを吸っていない。タバコの副流煙というのは非喫煙者や子供にとって毒といっていいほどの有害で今のサンジが吸うとその吐いた煙が肩に座っているユウが吸ってしまうと考えたのだろう。

 

子供と女性にはとことん優しいサンジだった。

 

「ねえユウちゃん。お母さんとはどこで逸れたか覚えてる?」

 

ユウは母親と一緒に買い物をしていた時に母親と繋いでいた手を離してしまい、そのまま人混みに流されて迷子になってしまったらしい。

 

サンジは自身の肩に乗っているユウに問いかけるが首を横に振って否定の意を示す。

 

「そういえばサテラちゃんの方はいいのか?大事な物を誰かに盗まれてそれを追っている最中だって言ってたけど。」

 

「え・・あ・・うん。急がないといけないけど、まずその子のお母さんを探さないと。」

 

実はこのサテラと名乗った銀髪美少女。ある盗人に自身の大切な物を盗られてしまったらしく、その盗んだ相手を探してたのだが途中でサンジと同じく迷子になっていたユウを見つけ放っておけなくなり声を掛けたという。

 

「この子に声を掛けたのが全くの同時・・・何か運命を感じませんか?お嬢さん」

 

イケボでサテラ落としにかかるサンジ。

 

「からかわないの!早くこの子のお母さんを探してあげましょ!」

 

プンプンと怒る銀髪美少女にサンジはまたもや目をハートにしている。

 

そしてサテラとサンジは歩き続け先ほどの商店街のような場所に戻ってきた。そして商店街を歩いていると、

 

「ユウ!!」

 

「お母さん!!」

 

サンジはユウを肩から降ろし母親の元に向かわせる。ユウとユウの母親は抱き締め合い再開の感動に浸る。

 

それを遠くから見るサンジとサテラ。

 

「見つかったな。」

 

「そうね」

 

サンジとサテラは親子を見て微笑んだ。

 

「御二人とも娘がお世話になりました!ありがとうございます」

 

ユウの母親が二人に頭を下げてお礼を言う。やはりお礼を言われるというのは嬉しいことでサンジとサテラはもう一度笑みを浮かべた。

 

そして迷子少女ユウと別れてサンジとサテラは二人きりになる。

 

「そんで君の探し物はどうすんだ?大事なものなんだろう」

 

サンジはタバコを取り出し咥えてジッポで火をつける。サテラはタバコを見て不思議そうな顔をしながらサンジの問いに答える。

 

「うん。とても大事なもの。他の物だったら諦めがつくけどあれだけは絶対に取り返さないと。」

 

真剣な顔付きでサテラは意志の固さを見せる。

 

「オーケーわかった。その君が無くしたものを一緒に探してあげよう」

 

やはりというか必然というか。超がつくほどの女好きのサンジが困っている美少女を放っておけるはずがなかった。

 

「え?でも・・私何もお礼できないよ?」

 

サンジは空を見上げて口から煙を吐きサテラの顔を見つめる。

 

「レディーが困っているのを見過ごすような男は男じゃないぜお嬢さん」

 

最高の決め顔でサテラに名言を放つサンジ。

 

「・・・わかった。でも本当に何もお礼できないからね!!」

 

どんな表情をしても可愛い以外の言葉が見つからない。そんなサテラにサンジは、

 

「俺に任せておきな!」

 

そう言いながらサンジは次のタバコに火をつけるのだった。

 






レベッカもいいよね。鉄ブラ最高。


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情報収集



ワンピースの五巻だっけ?

そこでコラソンの伏線あったけどこの先出て来んのかな?


「徽章?確かそれって身分を表すバッチみたいの物だっけ?」

 

「そうなの。特徴としては真ん中に宝石が埋め込まれてて形は三角の形をしてるわ」

 

サンジとサテラは近くの喫茶店のような店に入りサンジはコーヒー。サテラは紅茶を飲みながら話していた。もちろんサンジの奢りである。

 

「盗賊の姿は覚えてる?」

 

「うん、確かまだ子供だったわ。歳は14歳くらい。女の子で身長は私より頭一つ分くらい小さかった。とてもすばしっこくて屋根から屋根に移動しながら私から逃げて行ったの」

 

それを聞いてサンジは思い出す。

 

「(屋根から屋根・・・すばしっこくて女の子・・・まさかあの子・・)」

 

サンジはチンピラ達をぶっ飛ばした直後の事を思い出していた。一度サンジは今サテラがいった特徴と合致する人物を実際に目撃しているのだ。

 

「それにしてもこんなところでお茶なんてしてても大丈夫なの?」

 

今でもサテラから徽章を盗んだ盗賊がどこかへ逃げているというのに自分達は優雅にお茶をしているという事に不安を持っているサテラ。まあ当然と言えば当然の反応である。

 

「闇雲に探し回っても時間を浪費するだけさ。だからまず君が知る限りの情報を俺に。そして俺は君のようなカワイ子ちゃんとお茶ができるという事でwinwinだ」

 

「うう・・・最初は納得できるけど最後のはちょっとわからないわ・・」

 

コーヒーを飲みながらサンジはサテラから聞いた情報を元に考える。

 

「(おそらく犯人はあの子だな。動きを見た限りかなり訓練を積んでるし。宝石が入っているってことでサテラちゃんから徽章を盗ったんだろう。ならば金に換金するはずだ。しかし正規ルートだと足跡がつく。どこか跡のつかない裏ルートとかで徽章を売るはずだ。だけど子供だけでそんな裏の世界でやっていけるものか?誰か協力者がいるのか。それとも裏の世界とかではなく、そういう盗品を捌く場所がどこかにあるのか・・・こんな栄えている街にか?でも俺が知らないだけで街の外れにありそうな治安の悪い場所があったら可能性はあるな・・・)」

 

「なんだかすごーく考えてるわねサンジ」

 

「え?ああ。ちょっとね~」

 

目の前の可愛い少女を見て鼻の下を伸ばしてデレデレするサンジに困った顔をするサテラ。

 

「それにしても見ず知らずの人の為にそこまで考えるなんてサンジはお人好しなのね」

 

笑いながら紅茶を飲むサテラを見てサンジは心臓を♥の矢で貫かれた感触を味わう。

 

「で、でも君も人の事言えないだろう?自身の事を後回しにしてでも君はあのユウちゃんに声を掛けた。君も十分お人好し・・・いや君の場合は優しいといった方が正しいのかな?」

 

しかしサテラの返しはサンジの想像とは違ったものだった。

 

「違うわ。私はただあの子を放っておきながら探し物をすると集中できないと思ったから声を掛けただけなの。だから私は自分の為にあの子に声を掛けたの。」

 

ーーー素直じゃないなこの子。

 

サンジはそう思いながらカップの中に残ったコーヒーを全て飲み干した。

 

「さあもう行こう。まずはその盗賊の女の子の事に関する情報を集めよう。」

 

「でもどうやって・・?」

 

「人に聞くのさ。それが一番手っ取り早い」

 

サンジは会計で銀貨二枚を支払いサテラと共にその盗賊の女の子に関する情報収集を始めるのだった。

 






個人的にロギアではメラメラの実が一番好き。


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恩人



七武海で一番好きなのはハンコックですね。

理由?美人だからさ。




「おいおっさん。」

 

「んあ?ああまたあんたか。何か欲しいものでもあるのかい?」

 

サンジとサテラは先ほどサンジがリンガを買った店にへとやってきていた。

 

「いや買う気はないんだが。ちょっと聞きたい事があるんだ」

 

「なんだ。客じゃねーなら失せな。商売の邪魔だ」

 

客じゃないとわかり店主はサンジに冷たい態度を取る。しかしサンジもそんな対応をされて少し憤りを感じた。

 

「んだとテメー!!こっちが下手にでてれば調子に乗りやがって!!」

 

「ちょっとサンジ!!なんで怒ってるの?」

 

サンジは結構気が短い。仲間の剣士であるゾロに一言何か言われればぶちぎれるほどに。先ほどもリンガを買った後冷たい対応された事もありサンジは店主の胸倉を掴んでいた。付け加えるならこの店主。ゾロと同じで髪が緑色なのだ。それを見てサンジは知らずの内にゾロと人体像を重ねてしまったのだろう。

 

「ちょっとあんた何するんだ!!」

 

サンジにすごい力で胸倉を掴まれた店主は必至にサンジの手に自身の両手を掴ませるがを全く振り解けない。サンジより重そうな体をしているがサンジは片手でその店主の体を持ち上げ始めた。

 

「サンジ!!ダメよ!!手を離して!」

 

隣でオロオロしながらサンジを止めにかかるサテラ。頭が冷えたのかサンジは手を離す。

 

「わ。悪い。ちょっと頭に血が登って・・」

 

「いや、俺もちょっと冷たかったな。その・・・すまん」

 

互いに謝り一件落着となったとき、

 

「あなた?どうしたんですか?」

 

「あれ?おじさんとお姉ちゃん?」

 

歩いて来たのは先ほど別れたユウとユウの母親だった。

 

「いや。なんでもないんだ。」

 

サンジも店主も今の光景を見られなくてよかったと心の中で思いながらサンジは疑問を口にする。

 

「おいあんた。ユウちゃんとどういう関係なんだ」

 

「関係もなにもユウは俺の娘だ。そんで妻だ」

 

なんという偶然。まさかユウの父親がこの店主だったとわかりサンジとサテラは口をポカーンと開けている。

 

「先ほどはどーも。こちらは主人です。」

 

「マジか」

 

サンジ無意識にそう言葉に出した。

 

「なんだ?この二人と知り合いなのか?」

 

店主は妻に聞く。

 

「あなた。この方たちはユウが迷子になったとき私の元までユウを送ってきてくれた方たちなのですよ」

 

それを聞き店主は目を白黒とさせてサンジ達を見る。そして、

 

「そうだったのか・・・ありがとう。娘を助けてくれて」

 

店主はサンジ達に頭を下げる。

 

「いやいいって。それよりも俺はあんたに聞きたい事があるんだ」

 

「ああ。なんでも聞いてくれ。恩人の頼みなら何でも答えるさ」

 

そしてユウはサテラに何かを渡す。

 

「はいお姉ちゃん!これあげる!」

 

ユウが手に持っていたのは白くて綺麗な花。

 

「これを私に?」

 

「もらってあげてください。娘なりのお礼なんです」

 

そう言われてサテラはユウから花を受け取り自身の胸の辺りに飾る。

 

「ありがとう」

 

サテラは美しい笑顔でユウにそうお礼を言った。

 






本当はミホークも好き。

理由?カッコいいからさ。


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盗品蔵


ワンピースの伏線っていっぱいあるよね。


「おそらくそれはフェルトの奴だな」

 

「「フェルト?」」

 

二人は揃って繰り返す。

 

「ああ。金髪で女で子供ですばしっこいだろ?きっとフェルトの奴だ。こいつはこの辺りでも結構有名でな。確か貧民街に住んでるって事は聞いた事がある。」

 

「貧民街・・・」

 

今度はサテラだけが繰り返す。

 

「もしかしてお前さんフェルトに何か盗られただろ?」

 

図星を突かれてビクッとなるサテラ。そんな反応も可愛いな~と一人思うサンジ。

 

「フェルトに物を盗られて物が返って来たっていう話は聞いた事がない。素直に諦めることだな」

 

「そうはいかないわ!!あれは本当に大事な物なの。」

 

「そうはいってもな・・・まあ貧民街に行ってみたらどうだ。何かわかるかもしれないぜ」

 

「ああ、わかった。ありがとう。」

 

サンジはそう言いながら銀貨を一枚取り出して店主に投げる。

 

「これは?」

 

店主は上手く片手で受け止めてサンジに聞く。

 

「情報提供料だ。ありがたく受け取っておけ」

 

そしてサンジとサテラは貧民街へと向う事にした。

 

 

そして10分ほど歩いた時。サンジは唐突に言い出した。

 

「いつまで隠れているつもりだ?」

 

「え?」

 

サテラはサンジの言葉を聞いて声を上げる。

 

「何時もの俺なら常に女性を落とす為に話しかけるんだけどな。見知らぬ気配がしたんじゃそうもいかねえ。」

 

サンジはサテラに向き直りサテラ以外の人物に話しかける。そして、

 

「すごいね。僕の存在に気づくなんて」

 

サテラの髪の中から何かが出て来た。

 

それは手乗りサイズのネズミだった。普通のネズミと相違する点があるとすれば喋る事そして空を飛ぶ事。そして異常なまでにサンジが警戒しているという事だった。

 

「いつから気づいてたの・・・?」

 

サテラは驚きながらもサンジに聞く。そしてサンジは咥えていたタバコを外し答える。

 

「最初からさ。あの時はユウちゃんの母親を見つける事が最優先だったからな。そのネズミの事に関しては触れなかったんだ。だけど今となってはその縛りもない。聞くがどうして隠れてたんだネズミ」

 

「ネズミじゃない。僕の名前はパック!この子と契約している精霊さ!」

 

サンジの周りをグルグルと飛び回るパックと名乗ったネズミ・・・ではなく精霊。

 

「精霊・・・・」

 

サンジは精霊という単語を聞いて思う。前の世界では精霊というのは架空の存在だったものだ。しかしこの世界ではこのように普通に存在しているという事に改めて異世界なのだと実感した。

 

「あのねサンジ!隠していたつもりじゃないの・・・だけどパック自身が出るタイミングを失っちゃって・・・」

 

申し訳なさそうにサテラは顔を俯かせる。

 

「いやいいんだよサテラちゃん!サテラちゃんが気にする事じゃない!」

 

「そうだよリア。何か色々ありすぎてどのタイミングで出ていいか、わからずにずっと出てこなかった僕が悪いんだ」

 

二人して・・・一人と一匹が何故か罪悪感を感じているサテラを慰めにかかる。

 

「別に怒ってはないんだ。ただ今は徽章探しっていう共通の目的があったからな。ずっとこのこネズミの存在を知らないっていうのはこの先不便になるんじゃないかって思っただけさ」

 

「失礼だなサンジ!さっきも言っただろう。僕にはパックっていう立派な名前があるんだ!そう呼んでほしいな!」

 

ぷんすか怒るパックにサンジは冷たい視線を送る。

 

「ん・・どうしたのサンジ?」

 

パックはサンジに見つめられて戸惑う。

 

「お前相当強いだろ。わかるぜ」

 

「そりゃ僕は精霊だもん。でもそれは君も同じだろ?」

 

パックもサンジを見透かした目で見つめる。

 

「まあいい。先に進もう。もうすぐ陽が暮れそうだからな。サテラちゃんの徽章を取り戻さないと」

 

サンジは二人に背を向けて再び歩き出す。

 

「リア。趣味が悪いよ・・・」

 

「ごめんねパック・・・」

 

 

 

貧民街。

 

「なんだここは・・・」

 

サンジは思わず口に出す。

 

そう。そこは先ほどまで栄えていた街とは違い薄気味悪く、どんよりとした空気が漂っていた。人の声は無く、ちらほらと見える貧民街に住んでいるであろう人達は元の世界にいた奴隷が着ているようなボロボロな服を身に着けている。

 

ーーー俺の勘違いか。別の世界だろうと身分の差ってのはできちまうもんなんだな。

 

この世界に来た時に感じた最初の印象は上辺だけだったと思い何だかやりきれない気持ちになるサンジだった。

 

「もう暗くなってきたわね」

 

サテラは空を見ながら言う。時刻は夕方で陽があと数時間もすれば落ちて代わりに空には月が登ると言った時間帯。

 

「ごめん僕もう限界だ。」

 

「限界?」

 

パックの言葉に疑問を持つサンジが繰り返す。

 

「うん。僕達精霊は活動する為にマナを多く消費しちゃうからね。5時以降はもう現界することはできないんだ。」

 

「マナ?」

 

目を擦りながらパックは説明するが新しく出てきたマナという単語にサンジは首を傾げる。

 

「大丈夫よパック。後は私達だけで何とかするから。」

 

半透明になっているパックを手の平に乗せてそういうサテラ。

 

「何かあればオドを使ってでも僕を呼び出すんだよ」

 

「うん。わかった。お休みパック」

 

そしてパックは光がはじけ飛ぶようにして消えていった。消えた途端今度は気配すらしなくなった。

 

ーーーあとで聞くか。

 

どういう原理か知りたかったサンジだが時間が無いのも事実。先に進む事を選択したためそこではサテラになにも聞かなかった。

 

そしてしばらく歩き、

 

「ここにあいつが言っていたフェルトって言う子の住処があるんだよな。」

 

サンジは見聞色の覇気を発動させてここら一帯の人間の気配を探る。すると、

 

ーーーなんだ?

 

「どうしたのサンジ?」

 

顔色を変えたサンジを見てサテラが問う。

 

「いや、なんでもない。とにかく先に進もう。暗くなる前にフェルトを見つけるんだ」

 

「そうね!急ぎましょ!」

 

そして歩く事数分。思った以上にこの貧民街は広くて人探しに難航する二人。

 

「しょうがない。誰かに聞くか。」

 

サンジは近くにいた青年に声を掛ける。この青年の見た目もお世辞にも綺麗とは言えずボロボロになった服を身に纏っている。貧民街の人間というのは皆こうなのかと思うサンジ。

 

「なああんた。フェルトっていう子を知ってるか?」

 

「知ってるぜ。」

 

いきなりフェルトを知っている人物に出会いサンジとサテラは内心喜ぶ。

 

「どこにいるか教えてくれないか?」

 

「嫌だね。あんたら上層階級の人間だろ?そんなやつに教える事なんて何もないな」

 

サンジとサテラを睨み付ける青年。確かにサテラは綺麗な服で身に纏い自分は身分が高いんだぜといった感じの雰囲気を出している。サンジも前の世界で来ていた新品の黒スーツを身に纏っている。このような貧民街の人間にとって上層階級の人間というのは招かれざる客と言ったところだろう。サンジに至っては元の世界では一国の王子なのだが。

 

しかし折角フェルトの事を知っている人に出会えたのだ。サンジ達も簡単には引き下がれない。そしてサンジは、

 

「これでどうだ?」

 

サンジは金貨を取り出し青年に見せる。

 

「金貨じゃないか!まさか・・」

 

「ああ。この金貨とフェルトのいる場所の情報。それで手を打たないか」

 

やはり貧民街の住人。金に困っているのか無駄なプライドを捨てて即座にサンジとの交渉に乗った。

 

「ちょっとサンジ。私の為に金貨まで出さなくても・・・」

 

さすがに申し訳無いと感じたのか待ったを掛けるサテラ。しかしサンジは

 

「俺は勝手に君の事を手伝うって言ったんだ。俺の好きにさせてくれ」

 

サテラの静止を振り切り青年と交渉に入る。

 

先にサンジが青年に金貨を渡す。そして後に青年がサンジに情報を渡すという形だ。

 

「この先に盗品蔵がある。結構デカいからわかるはずだ。そこにロム爺って人がいるからその人に聞いてくれ。」

 

青年が指を指す方向を見るサンジとサテラ。

 

「そこにフェルトって子がいるんだな」

 

「ああ多分な」

 

「多分?」

 

「フェルトは毎日のように盗品蔵に通ってるからな。行けばきっと会える。」

 

「なるほどわかった。ありがとよ。」

 

そしてサンジとサテラは青年に言われた通りの道に進む。

 

「サンジ。本当にありがとう。私の為にここまでしてくれて」

 

すでに陽が沈み暗くなった貧民街で鈴の音のような声が響く。美少女と二人きりという状況にサンジは鼻息を荒くする。

 

「か、構わないさ。さっきも言っただろう。困っているレディーを助けない男なんて男じゃないってさ」

 

「サンジってすごーく優しいんだね」

 

笑いながらそういうサテラにまたもや目を♥にするサンジ。そしてついに、

 

「ここか・・・」

 

「ここに私の徽章が・・・」

 

完全に暗くなり辺りが見えなくなってしまったのでサンジはライターに火をつけて建物を見る。

 

ーーーなんだこの気配・・・。中に誰かいるな。こいつがロム爺か?

 

覇気で気配を探るサンジ。するとこの盗品蔵の中に何者かの気配がするそうだ。

 

「サテラちゃんはここで待っててくれ。俺一人で行ってくる。」

 

「うん・・・わかった。ねえサンジ」

 

「どうした?」

 

サテラは一瞬黙りそして、

 

「後で必ず謝るから」

 

「??」

 

そしてサンジは盗品蔵の扉を開けた。

 





ウルージさん最強説

でも好きなのはローだね。

ローの女体化めちゃ可愛い


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信念

やっと…ここまできた…


「おい兄ちゃん。リンガ買うのか?買わないのか?」

 

「え・・?」

 

サンジの目の前に顔に刀傷の負った緑髪の男がいた。その男は手のひらにリンガを乗せてサンジに見せる。

 

「ここは・・・」

 

辺りを見回して気づく。

 

ここは先ほどサンジがリンガを買った店だ。そしてサテラと一緒に来た所でもある。

 

しかし不可解な事がある。それは、

 

「太陽・・・・?」

 

空を見上げて太陽を見た。眩しかったのかサンジは手で太陽から発せられる光から目を反射的に守る。

 

「どういうことだ・・さっきまで夜だったはずだぞ?それに・・・」

 

サンジは自身の腹部に手を当てて確認する。

 

「腹がある・・・さっき誰かに斬られたはずなのに・・・」

 

この世界に来たばかリの時のようにサンジは混乱し始める。

 

 

 

 

 

時は少し遡る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

サンジとサテラは貧民街で会った青年に道を聞いてやっとフェルトがいると思われる盗品蔵にへと辿りついた。

 

「サテラちゃんはここで待っててくれ。俺一人で行ってくるから」

 

「うん・・・わかった。ねえサンジ」

 

「どうした?」

 

サテラは一瞬黙りそして、

 

「後で必ず謝るから」

 

「??」

 

そしてサンジは盗品蔵の扉を開けた。

 

「じゃまするぜ」

 

ギシギシと立て付けの悪い扉をゆっくり開けて中に入る。

 

蔵の中には電気などは無く何も見えない。そのためサンジが今手に持って付けているライターだけが唯一の灯りだった。

 

ーーー誰かいる。

 

サンジは覇気で蔵の中に誰かいるのを知り警戒しながら進む。

 

そしてライターの火が照らし見えたものは蔵の中に飾ってる鎧や剣。それが至る所に飾ってあるのをサンジは確認した。

 

「(これ全部盗んだものか?)」

 

そんな事を思いながら奥へと進む。そして何か踏んだ。

 

「ん?」

 

サンジは不快感を覚える。それは踏んだ感触が気持ち悪かったからだ。

 

説明するならば液体のようなもの。踏むとビチャビチャと音がして若干粘り気がある。

 

 

「(なんだ?)」

 

 

サンジはライターの火を足元に向けて自分が何を踏んだのか確認する。すると、

 

「(赤いな・・・これって・・・)」

 

そして気づく。この液体はサンジがいる所まで流れて来たのだと。そして流れて来た跡を辿りサンジはライターの火を前に向けた。

 

「なっ!!!」

 

声を上げて驚愕した。

 

「おいあんた!!大丈夫か!!」

 

そこにあった・・・いや、いたのは血だらけの老人だった。仲間の船大工ほどの大きさはありそうな老人が血達磨になってカウンター席のような所に寄りかかっている。

 

サンジは駆け寄りその老人のケガの具合を確認するが、

 

「ダメだ。死んでる・・・」

 

その老人はすでに息絶えて絶命していた。

 

「一体誰が、こんなことを・・・」

 

サンジは老人の死体を見下ろしながら怒りに似た感情を宿す。

 

「・・・・・」

 

その瞬間サンジは瞬時に体を180度回転させた。

 

「テメェだな!!」

 

サンジはそう言いながら全力の蹴りを老人を殺した犯人であろう人物にあてようとしたが、

 

「ふふっ」

 

ーーーー女!?

 

サンジが持つライターの火がそこにいた者の姿を照らした。

 

顔は見えなかったが露出の激しい服を着て胸があったことからサンジは一瞬にして相手の性別を見抜いた。

 

「(クソ!!)」

 

しかし何を思ったのかサンジは蹴りを大振りにしてワザと外した。

 

「あら。外しちゃったわね」

 

妖艶な声がサンジの耳に入る。

 

ーーーやっぱリ女か!

 

 

サンジが自分自身で決めている絶対のルール。

 

それは、

 

『死んでも女は蹴らない。』

 

女性が大好きという事もあるが、このルールを作るきっかけとなったのはサンジに料理の技術を教えた(正確にはサンジが技術を盗んだ)サンジの大恩人でありサンジの仮の父。

 

海上レストラン バラティエのオーナー赤足のゼフ。

 

サンジの精神哲学の基盤となったのが何を隠そうこの男だ。

 

幼き頃のサンジはそれほど女性に対しての暴力は否定的でなく寧ろ賛成派だったのだ。

 

しかしこの男から決して女性には手を上げてはいけないという事を学んだ。

 

『男は女を蹴っちゃならねェ!!そんな事は恐竜の時代から決まってんだ!!いいか!!人間としてならいくらでも間違え!!だが男の道を踏み外した時ァ・・・!てめェの金玉を切り落とし!!この俺も首を切る!!』

 

そして決定打となったのはこの言葉。

 

『それが親の落とし前ってもんだ!おれの嫌いな人間にゃなるなよ!」

 

この言葉がサンジにとってどれほど嬉しかったか。

 

そしてサンジはこの言葉をこの男に言われた時からこの異世界に来るまで守り通してきた。

 

それは敵に殺されかけても、仲間に嘘を付かれても、サンジは自身の親の言葉をずっと守り通してきた。

 

そしてそれはいつしか自身の信念へと変わっていた。

 

そしてそれはこの先も変わらない。

 

 

「今度は私ね」

 

「(マズい!!)」

 

攻撃を外して不安定な体勢となったサンジ。そのためサンジは目の前にいる女から距離を取ろうと地面に着けていたもう片方の足で踏ん張り後退しようとする。

 

それがいけなかった。

 

「うおッ!!」

 

サンジはさらに体勢を崩した。

 

「(しまった!!!)」

 

サンジの足元にはこの女に殺されたであろう老人の血が大量に流れていたのだ。

 

足に力を籠めて踏ん張った為サンジはそのまま背中から床に落ちようとした時に、

 

 

ザシュッ。

 

その生々しい音と同時にサンジは吹き飛ばされた。

 

「がああっ・・・・・・・・・・・・」

 

サンジは獣ような呻き声をあげて自身の腹に触れる。

 

「この俺が・・・・・・・・・・・ここで死ぬのか・・・・・・・・・・・・・・・」

 

腹がない。

 

これは比喩でもなんでもなく。自分の腹部がなくなっているのだ。

 

「!!!?」

 

そしてサンジは自分の目で見てしまった。

 

自身の腹から零れ落ちたであろう自身の血や臓物を。

 

「がっ・・・・・・・・・・・・ぐっ・・・・・・・・・・・・」

 

 

サンジは今まで感じた事のない痛みに耐えて声を出す。

 

 

「く・・・・・・・・るな・・・・・・・・ら・・・・・・・・・・」

 

扉の開く音が微かに聞こえた。

 

声を出そうにもサンジはすでに体中の血が体外に流れ出てしまい風前の灯という言葉が当てはまるような状態になっていた。

 

 

「サンジ?大丈夫?」

 

外に待機していたサテラが心配したのか盗品蔵の中に入って来た。

 

 

「だめ・・・・・・・・・・だ・・・・・・・・てら・・・・・・・・・」

 

意識もすでに亡くなりかけている男は最後の力を振り絞り入って来たサテラに言葉を飛ばす。しかしサンジのした行為は無意味だったと知った。

 

「!!!!!!!!」

 

 

ドサッ。そんな音が半死状態のサンジの耳に入った。

 

 

サンジの隣でサテラが死んでいた。きっと自分と同じで腹をやられたのだろうとサンジは直感した。

 

「(俺はこんなとこで死ぬのか。この世界が何なのか。この少女の事も知らずに。)」

 

拳に力を籠め後悔の念を浮かばせるサンジ

 

「(俺は約束したんだ。この子の願いを叶えるって。そして、)」

 

 

サンジは最後の力を振り絞り自身の願望を言葉にして現した。

 

 

「ルフィ・・・・・・・・俺は必ず・・・・・・戻るか・・・・・・ら・・・・・・・・な」

 

 

力を籠めていた拳はゆっくりと開かれサンジの呼吸と鼓動が止まる。

 

 

 

海賊麦わらの一味コック。懸賞金3億3000万ベリー。

 

 

ヴィンスモーク・サンジ。

 

 

通称  黒足のサンジ。

 

 

異世界にて命を落とす。

 

 

そして世界は逆行を始める。

 

 

 

 




やっぱり一番好きなのはサンジだな。



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謝罪


サンジの新技思案中。


「こりゃあ一体どういうことだ・・・・」

 

サンジは混乱していた。それはこの世界に来た時と同じように。

 

「おい兄ちゃんリンガはいらねーか?」

 

 

目の前にいるリンガと言う名のリンゴを持った緑髪の男。ユウの父親がサンジに聞くがサンジの耳には入らない。

 

「(さっきまで夜だったのに太陽が昇ってる。それに・・・)」

 

サンジは自身の腹を服越しに触り感触を確かめる。

 

「(腹はある。さっき誰かに腹を切られてそんで俺は意識を失ったんだ・・・いや俺はあの時一度・・・)」

 

サンジは冷たい汗を流し、先ほど起きた事を思い出す。

 

「おい兄ちゃん。聞いてるか?」

 

「(いや落ち着け俺。確かに今有り得ない事が起きてるが、それはこの世界に来た時からだ。まずは一服でもして・・・・え?)」

 

 

サンジはポケットからタバコの箱を取り出し中身を確認する。すると、

 

「中身が減ってないだと?どうしてだ!?盗品蔵に行った時にはもう半分も無かったのに!」

 

タバコの本数を見てサンジは驚く。サテラと一緒に貧民街に行き盗品蔵に着くころにはすでにタバコの中身の本数は半分をきっていたのだ。それが今では増えている。

 

ーーー違う!これは増えたんじゃない!

 

そしてサンジはタバコを戻し次にチンピラから奪った金を数える。

 

「全部ある・・・・」

 

サンジは目を見開きながら自分の手に持つ金を見て驚愕した。

 

サンジが持っていた金は金貨2枚と銀貨10枚。合わせて12枚のこの国で使われている硬貨だった。

 

「(この親父からリンゴを買ったのと情報提供量として銀貨を2枚。サテラちゃんとお茶して2枚。そんで貧民街にいたあの男に金貨を一枚使ったのに・・・なんで・・・)」

 

 

そしてサンジは1つの可能性を頭に浮かばせた。

 

 

「おいおっさん!!俺と会うのはこれで何回目だ!!」

 

「はあ、え?」

 

サンジはユウの父親である目の前の店主の胸倉を掴み聞く。

 

「お前いきなりなに・・」

 

「いいから答えろ!!俺と会うのはこれで何回目だ!」

 

サンジの圧に圧されたユウの父親はサンジの問いに素直に答えた。

 

「何回も何も・・あんたに会うのはこれが初めてじゃねーか。」

 

その返答を聞いてサンジは絶句した。そしてそのままゆっくりと手を離して数歩後ろに下がる。

 

「まさか・・・・時間が戻った・・?」

 

「おい兄ちゃん。それよりリンガ買うのか?買わねーのか?」

 

「・・・・いや・・いい。」

 

サンジはその場を立ち去り街を歩いた。

 

 

「(有り得ない・・・時間が戻ってるだと?だけどタバコの本数と金と今の時間帯とあの親父の言葉からするとそれ以外考えられねーぞ・・・・これも悪魔の実の能力か・・・でも時間を戻す能力なんて無敵じゃないか・・・)」

 

サンジは現状で起きている事に理解出来ずにただひたすらに考える。仲間の中では多分1,2を競うほどの冷静さを持つサンジでもパニックになるほどの事だ。これがもしルフィやウソップだったらどうなるかとサンジは頭の隅っこの方で思った。

 

「まずは一本吸おう・・・」

 

サンジは元の量に戻ったタバコの箱の中から一本タバコを取り出してライターで火をつける。

 

「(まず時間が戻ったと仮定しよう。これがどういう能力なのか、誰がやったのかも一先ず置いておこう。大事なのはどの時間まで戻ったかだ。ユウの親父が初めて会ったって言ってたからおそらく、あの赤髪の奴と別れた後くらいか?ってことはサテラちゃんとはまだ会ってないからサテラちゃんは俺の事を知らない・・・。ユウちゃんもユウちゃんのお母さんも俺の事は知らないと・・・。でも俺は覚えている・・・)」

 

ニコチンを摂取して落ち着いたのかいつも通りの冷静さを取り戻す。そして次々と置かれている立場の把握を進める。

 

「(これはただ時間が戻ったのか?もしそうならこの先あの老人・・・おそらくあの死んでたジジイがロム爺だろう。そいつとサテラちゃんは盗品蔵にいた奴にこれから殺されるのか?)」

 

サンジは考えながら歩く。そして案の定考え事に夢中になっていたサンジは道行く通行人にぶつかった。

 

「おっとすまん。」

 

サンジは咄嗟に謝罪して顔を上げる。しかし前には誰もいなかった。

 

「いいって兄ちゃん!これからは気を付けろよ!」

 

サンジは声がした方向・・・下を見た。

 

そこには美少女がいた。

 

背が小さくサンジの視線からは見えなかったのだろう。身長はサテラより頭1つくらい小さく、赤い双眸にサンジと同じような金髪。そしてまるで森の中でくらしているのかと思う感じの服装をしている。

 

説明するなら黒タイツのような体にピッタリ張り付いたズボンに腰には短剣。上半身は動物の皮で出来ている肩までしかないコートを身に着け平らな胸には黒いサラシのようなものを巻いていた。

 

顔立ちも結構・・いやかなりよく大人になれば仲間の航海士や考古学者のように美人になること間違いなしとサンジは直感した。しかし若すぎる為サンジは興奮したりはしない。

 

してもヤバいのだが・・・。

 

「どうしたんだ兄ちゃん?顔色が悪いぞ?」

 

「まあちょっとな。」

 

「まあいいや強く生きろよ!!」

 

そしてその金髪美少女は走ってどこかに去っていった。

 

「今の子どこかで・・・・まあいいか」

 

サンジはタバコを吸おうとライター取り出そうとするが、

 

「あれ?ライター・・・まずいな。どこかで落としたのか?」

 

体中の至ると所を探すがライターが見つからない。

 

「しょうがないな。この世界にもライター・・・火を出せるものが売ってればいいんだが」

 

サンジはチンピラから奪った金を取り出そうとするが。

 

「あれ?ない!金もないぞ!?両方落としたのか?・・・まさか!」

 

サンジは先ほど金髪美少女が去っていった方向に振り返る。

 

「(金髪で女の子で子供・・・・あいつがフェルトか!)」

 

サンジは時間が戻る前の事を思い出して先ほどの金髪美少女の正体を見破った。

 

「クソッ!海賊の俺がまさかスリに会うとはな・・・上等だ!!」

 

サンジは笑みを浮かべて覇気を発動させる。

 

「(やっぱりこの街は人が多いな。だけどこの中で高速で移動しているのはただ一つ)」

 

サンジはフェルトの居場所を突き止め、

 

空中歩行(スカイウォーク)!!」

 

「「「「「おおお!!!」」」」」

 

周りにいた人達の歓声を聞きながらサンジはフェルトを空中から追いかけるのだった。

 





一個思いついた


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不思議


サンジって七武海クラスの強さあるよね?


 

「待てゴラああ!!」

 

サンジは空を飛びながらそう叫んだ。

 

「え!?あいつさっきの!てか空飛んでる!??」

 

そしてそう答えたのはサンジの前を走るサンジと同じ髪色をした少女フェルト

 

サンジは空中を蹴りながら空を飛び、屋根の上を風のように颯爽と駆け抜けるフェルト。

 

世にも不思議な鬼ごっこがルグニカ王国で人知れず行われていた。

 

「おいお前!!俺から盗んだもんを返せ!!」

 

「やだね!!盗られた方がマヌケなのさ!!」

 

「こんのガキィィィィ!!」

 

サンジは怒りを顔に出しながらフェルトを追いかける。風切り音が聞こえるほどの速度で二人は駆け抜けている。

 

時々街を行く人々が空を見上げてサンジとフェルトを指差すが二人は追いかけっこに夢中で全く気付かない。

 

しかし仲間の中では随一の機動力を誇るサンジが中々フェルトに追いつけずにいる。これには少しばかりサンジは驚くが逆に対抗心に火をつける結果となった。

 

「(おもしれえ!俺から逃げきれると思うなよ!!)」

 

サンジは少し本気を出したのか今まで追いつけずにいたサンジが徐々にフェルトとの距離を詰め始める。

 

「ええ!?」

 

それに気づいたフェルトは声を上げながら必死に自分もスピードを上げるが、それでも尚距離を詰められ続ける。

 

今のスピードがフェルトの限界みたいだ。

 

「おらおらどうした?お前のスピードはそんなもんか?」

 

フェルトとの距離が1mまで近づいた時サンジはポケットに両手を入れながら追いかけている。完全にフェルトを挑発している。

 

「クソおお!!あたしについてくるとか何者だよ兄ちゃん!!!」

 

逃げながらサンジに質問するフェルト。

 

「ただの料理人だ」

 

「料理人がこんな事出来るかああ!!」

 

後ろを振り返りツッコミを入れてくるフェルト。

 

「おい止まれ!!」

 

自分の方を向いてきたフェルトにサンジは咄嗟にそう叫んだ。そしてフェルトも危険を感じとったのかすぐに前を向く。

 

「うわあああ!!」

 

サンジの視界から一瞬だけフェルトの姿が消えた。

 

フェルトが走っていたのは並ぶ住宅の屋上。家から家へと飛び移り移動していたのだ。だがその家はずっと並んでいるものだろうか?答えは否。

 

フェルトはサンジの方に気を取られて続く家が無い事に気づくのが遅れ、龍車が何匹も走る大通りへと落ちていった。

 

ーーーマズい!!

 

このまま落ちたら地面に追突するだけでなく大通りの真ん中に落ちれば走ってくる龍車に引かれ大怪我は免れない事態になる。

 

サンジはさらに速度を上げてフェルトに近づき受け止めようと両手を伸ばす。そして、

 

 

 

 

ーーー掴んだ!。

 

サンジは上手くフェルトの肩を掴む事に成功し、再びサンジはフェルトを抱えながら上空へと上がっていく。

 

「もう大丈夫だ。素直に俺か盗ったものを返、」

 

「ふんっ!!」

 

「ホデュうううううう!!!」」

 

サンジの情けない声が響き渡る。サンジはフェルトを抱えていた手を離してフェルトはそのまま地面へと落下していく。

 

「悪いな兄ちゃん!強く生きろよ!」

 

そしてフェルトは上手く地面に着地してどこかへ逃げてしまった。

 

一方サンジは落下途中だった。男の大事な部分を両手で抑えながら。

 

「あ、あんのガキ・・男の象徴であるアレを蹴りやがった・・・」

 

サンジはフェルトを助けた。しかしフェルトはサンジに捕まった。

 

そう思ったのだろう。サンジに抱えられた直後フェルトはサンジのアソコを思いっきり蹴り上げ脱出したのだ。

 

「覚えとけよ・・・・クソガキ!」

 

痛みと怒りを混同させながら地面に向けて落下するサンジ。

 

「え?うわああ!!」

 

なんという不運か。いや、それはサンジがこの世界に来た時からなのだが。

ちょうどサンジが落下する場所に一台の龍車が通り、サンジはその龍が引いていた荷台の中に落ちていく。

 

ボスッ!!

 

サンジの上半身はその荷台を覆っていた布に突き刺さり下半身だけが外部に晒されるという周りから見たら不思議でしょうがないといった感じになった。

 

そしてサンジを乗せたその龍車はそのままどこかへと走って行った。

 






ローとゾロってどっち強いと思う?


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天と地


深夜のテンションで書いた。




 

「一体ここはどこだ・・?」

 

先ほどの龍車が行き交う街の中心ではなくサンジはとある屋敷にへとやってきていた。

 

「この龍車の荷は第一倉庫へそれは第二倉庫へ運べ!」

 

「「はっ!!」」

 

ガラガラと荷台を引く音が聞こえサンジは自分が乗って来た龍車の影に隠れ身を顰める。

 

ちなみに乗って来たというと語弊があり正確に言えばサンジは知らずの内に龍車の荷台に誤って入ってしまい強制的にここへ運ばれてきたという表現の方が正しい。

 

そしてサンジは気配を殺しながら今いる場所がどこかを確認する。

 

「えれーデカい屋敷だな。貴族の屋敷か何かか?」

 

サンジが見たのはそれはもうデカい屋敷。左右対称に揃えられた庭と屋敷は屋敷の主の性格をよく表している。おそらくこの屋敷の主は曲がった事が嫌いな人物なのだろうとサンジは勝手に思う。

 

「でもでかすぎねーか?」

 

サンジは屋敷のデカさに引く。庭の広さは余裕でサニー号が収まる広さ。いやガレオン船もすっぽりと収まる広さ。そして屋敷自体はサニー号の数倍のデカさで持ち主の力がそのまま屋敷に反映している。

 

「おい。お前。」

 

「ん?」

 

サンジは屋敷を見るのに夢中になり、この屋敷の兵らしき者に見つかってしまった。

 

「貴様。この屋敷の者ではないな。見た所クルシュ様に仕える兵でもない。」

 

警備兵と思われる男を無視してサンジはタバコを取り出し火をつけようとするが、

 

「あ、クソッ!ライターはあのガキに取られたんだった。」

 

ライターが無いためタバコが吸えずにサンジはストレスが溜まっていく。

 

「聞いてるのか貴様!!一体何者だ!!」

 

頰肉(ジュー)シュート!!」

 

「べブッ!!!」

 

サンジはイライラの所為か必殺技級の威力を誇る技を使いサンジに絡んできた警備兵の頬を蹴り吹き飛ばした。そして勢いよく吹き飛んだ警備兵はこの屋敷を囲んでいる塀に激突した。

 

「何事だ!!」

 

「やべえ~」

 

サンジが蹴りを放った時に鳴り響いた衝撃音。そしてサンジに蹴り飛ばされた警備兵が壁との衝突した時発生した衝突音。これが小さい音の訳がない。

 

屋敷の敷地内に響いた二つの音を聞いた他の警備兵がサンジの元にやってくるのはそう遠くない未来であった。

 

しかしサンジはこれ以上騒ぎを起こさないようにと物陰から物陰へと移動して警備兵には見つからずに移動する。

 

「ふい~。ここがどこだか以前にこの世界が何なのかも知らないのにこれ以上面倒起こしてたまるか」

 

サンジはそんな愚痴を溢しながら屋敷の裏側に周り裏口がないかと探す。

 

「いや別にそんな事しなくていんだ。空飛んでここから出ちまえばいいんだ。」

 

タバコを吸えなくてイライラしていた為かサンジはそんな簡単な事に気づかないでいた。これでこの世界にタバコがなかったら本当に死活問題だとサンジは鳥肌を立たせる。

 

「待て。侵入者よ」

 

「ん?」

 

いざ飛び立とうという時にサンジに話しかける声が一つ。

 

サンジに声を掛けたのは老人だった。

 

歳は50は超えてそうな初老といった感じの男性。綺麗な執事服に身を包み右手には剣を持ち構えずにいる。

 

顔には皺がたくさんあり髪も全て白髪になっているが不思議とどこか若々しい印象も見受ける。そして佇まいから呼吸の一つまで無駄がなくサンジは自然と目の前にいる老人を警戒する。

 

「この屋敷に一体なんの用があって来たのか聞かせてもらおう。」

 

「あー悪いんだが俺急いでるんだ。勝手に敷地内に入ったのは悪かったよ。だから、」

 

「はあっ!!」

 

「おっと」

 

サンジの言葉を遮って初老の男はサンジに攻撃を仕掛けた。はじめに仕掛けた攻撃はシンプルな剣の突き。

 

サンジの胸目がけて放った突きだがサンジはまるで来るのがわかっていたかのように上半身を最小限横にズラしてあっさりと躱す。

 

「ほう。」

 

自分の攻撃を躱されたが意外だったのか初老の男は声に出して驚く。

 

「おいおい。話してる途中での攻撃はねーだろ」

 

サンジは両手をポケットに突っこみながら男に言う。

 

「はあああああっ!!!」

 

そして男はサンジに追撃する。それは斬撃による連続攻撃。この初老の男、腕はかなりのもので常人にはその剣筋どころか剣自体を見る事もままならないだろう。それはこの男の剣捌きがあまりにも早すぎるからだ。サンジはもしこいつが元の世界で懸賞金に掛けられるなら3000万は行くだろうと男の剣を躱しながらそう予想する。

 

しかし、

 

 

「くっ!!」

 

「おらどうした?掠りもしねーぞ?」

 

サンジは笑いながら男の剣戟を全て躱す。

 

確かにこの男は強い。サンジもそれは認める。剣技だけなら仲間のガイコツであるブルックといい勝負をするだろう。おそらくこの男ではブルックには勝てないが。

 

つまりその程度なのだ。力の差は天と地の差であり初老の男がサンジに勝てる可能性は一分たりとも無かったのだ。

 

 

切肉(スライス)シュート!!!」

 

「なにっ!!」

 

飽きて来たのかサンジは男が振り回していた剣を蹴り上げる。そして無防備になった男にサンジは、

 

腹肉(フランシェ)シュート!!!」

 

「ぐおあぁぁっ!!!!」

 

男の腹に強烈な一撃をお見舞いして吹き飛ばし、男はそのまま屋敷を囲っている塀へとぶつかった。

 

ドゴオォォンッ!!

 

そんな音が辺り一帯に響き渡りそれを聞いた者達が続々と集まってくるのをサンジは一早く感づく。

 

「一服できないのが不満だな」

 

サンジは裏口の扉を見つけられなかったので塀を破壊して外に出るのだった。

 

 







バギーって強いよね?


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死に戻り



短めです。


「迷ったな」

 

見知らぬ屋敷で初老の男を倒したサンジはフェルトを探していた。もちろん目的は盗られた物を取り返すのだ。金はともかくタバコの火をつける為にサンジはライターだけは必ず取り戻すと心に決めていた。

 

「しっかしどこだここは?さっきとはまた違う場所だな。」

 

一体どこまで運ばれたのか。サンジはまた見知らぬ場所に一人いる。

 

この辺の地形に疎いとかそんな次元ではなく、この世界そのものを知らないのだ。

 

今いる場所の把握などサンジにできるわけなかった。

 

「(取り合えず貧民街の盗品蔵に行くか)」

 

サンジはまず貧民街に行くことを決めて歩き出す。

 

「(しかし一体あれは何だったんだ・・・?あれは絶対に夢なんかじゃなかったはずだ。痛みもあったし自覚もある。俺は盗品蔵にいた誰かに腹を切られた・・・そして俺は一度・・・・)」

 

 

ーーーー死んだんだ。

 

 

 

サンジは盗品蔵にいった時の事を思い出していた。

 

 

「(だけど俺は今こうして生きている。これも夢なんかじゃなく現実だ。それに時間も戻っている。・・・・いやちょっと待てよ?あの時俺は死んだ。そして生き返った・・これは正確には生き返ったんじゃなくて時間が戻っただけ。殺される前は当然生きているから・・・・。生きている時間に巻き戻った・・・・)」

 

顎に手を当てて考えるサンジ。そして、

 

 

「(これは明らかに悪魔の実の能力なんかじゃない。飽く迄も予想だが、この死んで時間が撒き戻る能力・・・呪いと表現したほうが正しいかもな。この呪いは俺がいた世界の奴の仕業じゃなく、こちらの世界の者が俺をこの世界に連れて来て、この呪いを掛けた。そう考えれば納得できる部分もある)」

 

 

段々と事の繋がりを見つけて脳が理解を進める。

 

「(しかし何故違う世界の俺をわざわざこの世界に連れて来た?理由は何だ?目的は何だ?誰の仕業だ?)」

 

しかし分かった事が増えると同時に謎も増えていく。完全に解と謎のイタチごっことなっていた。

 

「(まあいいや。この呪い・・・死んで時間が戻るこの呪い。)」

 

 

ーーーー死に戻り。

 

 

「とでも名付けておこう。まあこれでブルックの気持ちも少しは理解出来たしな。それに、」

 

サンジは突然走り出し顔付きを変えた。

 

「(この呪いは一度きりかもしれない。次死んだらもう俺はそのままかもしれない。いやそれ以前に人間一度死んだら終わりなんだ。本来俺はもうこうして生きてはいないんだ。)」

 

さらに走る速度を上げるサンジ。

 

 

「(俺はもう絶対に死なねえ。そして必ず生きて、)」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「仲間の元へ帰るんだ!」

 

 

 

 

 

 

 






これから1000UAいったら次話投稿にします。


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修正


モクモクの実って弱くね?


「エミリア・・・?」

 

サンジはとある看板の目の前にいた。

 

「おい兄ちゃん。」

 

後ろからサンジに話しかける野太い声が聞こえサンジは反射的に振り返る。

 

「ん?あ、あんたは」

 

そこにいたのはサンジにとって会うのが4回目となるユウの父親だった。いつの間にかに知った道に戻ってきていてサンジは心の中で安心する。

 

そしてユウの父親とサンジは看板の前にやってきて一緒に看板に貼られている物を見る。

 

ちなみにユウの父親にとってサンジと会うのはこれで2回目である。死に戻りした所為で複雑な感じになったがサンジはそれを頭の中で修正して話し掛ける。

 

「これで会うのは2回目だな。おっさん」

 

「ああそうだな。」

 

 

ーーーやっぱり・・・。

 

「んお?どうした兄ちゃん。顔色が悪いぞ?」

 

「いや、なんでもないんだ。それよりもこの看板なんだ?このクルシュ、プリシラ、アナスタシアって・・・それに・・・」

 

「なんだよ兄ちゃん知らねーのか?ここに貼られているのは王選候補者達だ。」

 

「王選?」

 

「ああ。この国には今王がいないんだ。全員流行り病でぽっくり死んじまってよ。それで賢人会が王候補を募って新しい王を決めようっていう事になってんだ。」

 

わかりやすく説明してくれたおかげで今サンジがいるこのルグニカ王国の情勢は把握できたが、それ以上に気になる事があった。

 

「なあこのエミリアって子・・・」

 

サンジは看板に貼られている一枚の手書きのような写真を指さしユウの父親に聞く。

 

「ああ。まさか王候補にハーフエルフが出てくるとはな。魔女の係累が王様になれる訳ねーのにな」

 

「ハーフエルフだと?」

 

サンジは元いた世界の本で読んだ事があった。ハーフエルフとは元々はエルフという種族が人間と交わり、その間に生まれる存在。それがハーフエルフ。しかしサンジがいた世界では空想上の生き物と言われていたものだ。それが、

 

「この顔・・・あの子じゃないか・・」

 

そう。看板に貼られているエミリアという名の上に描かれている顔はサテラと名乗った銀髪美少女だった。

 

「(俺に嘘を付いていたのか?サテラちゃんは・・・でも何のために・・・まさか姉妹か何かか?いやでも・・)」

 

そしてサンジはふと思い出した。

 

「まずい!!」

 

「おい兄ちゃん!!どこに行くんだ?」

 

「貧民街だ!!」

 

「貧民街?」

 

サンジは前の時間でユウの父親に教えてもらった貧民街へと走り出す。

 

「(多分サテラちゃん・・・いやエミリアちゃんか。多分彼女は俺の事を知らないだろう。だけどもし前の時間通りにエミリアちゃんがフェルトに徽章を盗まれて盗品蔵に行くとしたら、きっと俺を殺した女に出くわすはずだ。不意を突かれたといっても俺を殺した女だ。危険過ぎる!!。)」

 

サンジは盗品蔵にへと急いだ。

 






自分の中ではロギア最弱の実。


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不快


サンジの新技。二つ目思いついた


「案外でけーな」

 

サンジは盗品蔵に来ていた。前の時と違う事と言えば、まず時間帯。前にあのサテラと名乗った銀髪美少女と来た時は街灯も無い夜であった。故に暗く何も見えない状態であった。しかし今はまだ空に太陽が昇っている。それほどの灯りがあれば盗品蔵の全体像を見るのには十分であった。

 

他にも違う事と言えばそのサテラがいない事。そしてサンジの持ち物に金とライターが消えている事。

 

そしてこれからこの盗品蔵で何が起きるかサンジは知っているという事。

 

「行くか。」

 

そしてサンジは盗品蔵の扉を叩く。

 

「おい。誰かいるか!」

 

ドンドンドンドン。

 

返事はない。

 

 

「おい!!誰かいるなら開けてくれ!!」

 

ドンドン。返事はない。

 

 

そしてついに、

 

「開けろって言ってんだろ!!こっちはしばらくケムリ吸ってねーからイライラしてんだ!!開けねーと蹴り破るぞ!!」

 

 

イライラが爆発したサンジは扉の前で怒鳴り散らした。

 

ちなみにサンジはライターを失くしてから2時間は経っている。

 

つまりサンジは2時間もタバコを吸っていなのだ。ヘビースモーカーであるサンジにとっては苦痛以外の何物でもない

 

「うるさいわい!!晩酌をしていたというのに邪魔しよって」

 

「あ・・・」

 

そしてついに扉が開けられて出て来たのは前の時間でこの場所に来た時サンジが見た老人であった。違う所を言えばこちらは生きているという事。ちなみに結構デカい。背が高いのもあるが巨大という表現が一番しっくり来る。サンジはこの老人を見て思い出したのは仲間の船大工のフランキーだった。それくらいに体がデカい老人だった。

 

「なんじゃお主?」

 

「お前がロム爺か?」

 

「そうじゃが?」

 

ーーー間に合った。

 

サンジは自然と笑みを浮かべた。

 

この老人が生きているという事はまだサンジを殺した女は来ていないという事と同時にサテラと名乗った銀髪美少女もまだ来ていないという事。

 

「なんじゃお主。いきなり笑い出して気持ちが悪いぞ」

 

普段のサンジなら怒る発言だがサテラと名乗った銀髪美少女の無事が確認できた事により少し上機嫌となっていた。

 

「いや、なんでもない。悪いんだが爺さん。あんたに聞きたい事があるんだ」

 

「ワシにか?構わんぞ。でも立ち話はなんじゃから中に入れ」

 

サンジはロム爺に言われるがままに中に入り盗品蔵の内装を自身の目で確かめた。

 

ーーー前と同じだ・・・・それに・・・。

 

サンジはカウンター席があるのを確認した。

 

「ブッハアア・・そんでワシに聞きたい事とはなんじゃ?」

 

ロム爺はジョッキに入った酒を豪快に飲みながらサンジに聞く。酒の匂いが蔵の中に広まりサンジの鼻腔をくすぐる。

 

「ああ。爺さん。フェルトって子を知ってるか?」

 

「む?なんじゃお主フェルトの知り合いか?」

 

フェルトの名前を出した途端に酒を飲むのやめてサンジを見つめるロム爺。それにサンジは激しい不快感を覚えた。

 

「知り合いって程じゃないが。」

 

濁すサンジにロム爺がにやける。

 

「待て。当ててやろう。お主フェルトに何か盗られたな?」

 

図星を突かれて驚くサンジにロム爺は盛大に笑って見せた。

 

「ふっはっはっは!!やはりそうか。」

 

「笑うんじゃねえジジイ!!この盗品蔵にフェルトって子が通ってるってのを耳に挟んだから来たんだ。盗った物を返してもらおうと思ってな」

 

「残念じゃがそれは諦めることだ。盗られた方が悪いからの。取り返したくば金を積んで取りかえすことじゃな。」

 

グビグビと酒を飲むロム爺にサンジはストレスを溜めていく。

 

「じゃあいい。おい爺さん。何か火をつける道具とかないか?」

 

「火じゃと?」

 

「ああ。俺はフェルトに火をつける道具を盗られたんだ。あと金もな。まあ金は俺も盗った物だから別に返してもらわなくてもいい。」

 

「お主・・・人の事は言えぬな」

 

ロム爺はサンジの発言に引く。しかしそれ以上に今サンジが思っている事はとにかくタバコを吸いたい。それだけだった。しかしライターがない以上吸うことは出来ない。ただ火さえあればいいのだ。だからタバコを吸えればライターは最悪取り返さなくてもいいとサンジは考えている。

 

「そうだ。おい爺さん。ここに飾ってあるナイフ貸してくれないか?」

 

サンジは壁に飾ってあった盗品と思われる包丁位の大きさのナイフを手に取り聞く。

 

「別に構わないが一体何に使うつもりじゃ?」

 

「ちょっとな。」

 

そしてそのままサンジはナイフを手に持ち盗品蔵から外に出た。

 





サンジ に「あれ」を使わせてみます。


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尻餅

メラメラの能力って結構いろんな人使えるよね。


「お主何をやっておるのじゃ」

 

「見りゃわかるだろ。火起こしんてんだよ」

 

「火じゃと?」

 

サンジは蔵の前で火を起こそうと地面に胡坐を掻きながら木の板に木の棒を擦り合わせていた。

 

「もう少し先っぽを削ったほうがいいか」

 

ロム爺から借りたナイフで棒の先端を削る。

 

「しかし何故火など起こす必要があるんじゃ?」

 

「うるせーなジジイ。こっちにはいろいろ理由があるんだよ」

 

タバコが吸えずにイライラするサンジはロム爺に八つ当たりする。しかし一向に火が付く気配もない。

 

「だああ!!クソッ!ライターがねえとこんなにも不憫なのかよ」

 

火をつけるのを諦めて持っていた木の棒を投げて不満を爆発させる。

 

「ほらよ爺さん。このナイフ返すぜ。」

 

借りたナイフをそのままロム爺に投げて渡すサンジ。そしてそれを上手くキャッチするロム爺。

 

「お主!!刃物を投げるものがあるか!!」

 

「あーわりーわりー。俺今イライラしてんだ。ちょっと黙ってろ」

 

サンジのキレた顔に威圧されたのか図体のでかいロム爺が何も言えなくなる。

 

そしてサンジは盗品蔵の壁に立ちながら寄りかかり空を見上げる。

 

「(もうすぐ日が暮れるな・・・そろそろサテラちゃん・・・いやエミリアちゃんか。来てもいい時間帯なんだけどな)」

 

その時、

 

 

「ロム爺?外でなにしてんだ?」

 

ロム爺とサンジはその声に同時に反応して顔を上げる。

 

「おおフェルト。来たか」

 

ロム爺がその声の主の名前を呼ぶ。そこにいたのはサンジがずっと(今日だけ)探し求めていた人物である金髪美少女のフェルトだった。

 

「やっときたか。」

 

「げ!兄ちゃん!!」

 

フェルトはサンジを見てあからさまに嫌そうな顔をする。女好きのサンジに取っては子供と言っても異性であるフェルトにそんな反応をされれば少し凹むが、今はそんな事よりもなさなければならない事がある。

 

「おい。俺から盗った物を返せ!!」

 

「ったく兄ちゃんもしつけーなあ。返して欲しければ金だしな。」

 

長い時間タバコを吸えずに限界が来たのかサンジには珍しく、

 

「いい加減にしろテメえ!!人から盗ったものを金で返せだ!?ふざけんな!!こっちはタバコが吸えずにイライラの限界を超えてんだよ!!わかったらさっさとライターを返せ!!」

 

女に対してキレたのだ。これが相手がフェルトではなく、もっと綺麗な大人の女性だったら怒りが爆発する事もなかったのだが生憎フェルトは色気ゼロのガキ。それだけならまだ子供に優しいサンジは怒りを爆発させることもなかっただろう。しかし自分の物を盗んだとならば話ば別。さすがに蹴りはしないが大声で怒鳴るくらいはしてしまうのだ。

 

「な、なんだよ兄ちゃん・・・言っとくけどそんくらいじゃあたしはビビんねーからな!!」

 

怒鳴られた瞬間ビクッとなったくせにそんな強気を言うフェルト。さすがは貧民街で生きてきただけはある。

 

そしてサンジは、何も言わずに右足を垂直に上げる。見事なⅠ字バランス。

 

ドゴオォォォォンッ!!!!

 

という。まるで隕石でも落下したのかというほどの爆発音が貧民街全域に鳴り響いた。

 

「「・・・・・」」

 

その発信源の最も近くにいたロム爺とフェルトはモロにその爆音を体全体に受けて肉体的なダメージこそないが驚きのあまり放心状態となり二人共その場にペタリと尻餅をついた。

 

そしてその音の中心となるのはサンジ。

 

サンジは振り上げた足をただ地面に叩きつけただけ。

 

しかしそれだけでサンジが足を叩きつけた地面は直径8m深さは1mはありそうなクレーターが出来ていた。

 

「フェルトちゃん。俺のライター返してくれるか?」

 

今度はいつも女性に対応するような優しい声でサンジはフェルトに聞く。

 

「は、はい・・・・」

 

素直にサンジから奪ったライターをポケットから出して手渡すフェルト。

 

シュボッ。

 

「ふうう・・・・久しぶりのタバコはうめーや。」

 

 

口から煙を吐きながらサンジは久しぶりのタバコの味を楽しむのだった。

 




感想くれると嬉しいですよ


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憂慮

ルフィよりゾロの方が強いんじゃね?


「兄ちゃん一体何者なんだ?」

 

「言っただろ。ただの料理人だって」

 

「ほう。お主料理人だったのか。」

 

 

ロム爺、フェルト、サンジは蔵のカウンター席に座りロム爺に出されたミルクを飲みながら話していた。

 

「おいロム爺。このミルク水入れて薄めてんじゃねーのか!不味いぞ」

 

「我が儘言わずに飲めフェルトちゃん。そんなんだから背が伸びないんだぞ」

 

「おい兄ちゃん。あたしの名前の後に『ちゃん』を付けるのやめろ。鳥肌が立ってしょうがないぜ」

 

サンジのちゃん付けを露骨に嫌がるフェルトにサンジは少ししょんぼりする。

 

そしてフェルトから取り返したライターでタバコに火をつけ煙を吐き出す。

 

「なあ兄ちゃん。兄ちゃんが吸ってるその白い棒なんだ?それにあたしが盗んだその火が出る魔道具も見た事ないぞ?」

 

フェルトはサンジが吸ってるタバコに興味を持ったのか聞いてくる。ロム爺も同じくサンジのタバコを見る。

 

「これはタバコっていうんだ。こっちのせかい・・・この国にはないのか?」

 

「「たばこ?」」

 

その言葉を聞いて二人は首を傾げる。この世界にはタバコは無いのかと思い始めるサンジが額に冷たい汗を掻き始める。

 

しかしその時ロム爺が何かを思いだした顔をしだして言い出した。

 

「もしかしてお主が口に咥えているその白い棒。カララギで嗜好品として売られているダバコか?」

 

「ダバコ?」

 

「ワシにそれを見せてくれんかの?」

 

巨大な手をサンジに向けて渡せというジェスチャーをする。そしてサンジも何も言わずに箱の中から一本取り出して巨大な手の平に乗せる。そしてロム爺はその一本のタバコを見る。片目を閉じて開けているもう片っ方の目に至近距離にまで近づかせて観察する。

 

「やはりこれはダバコじゃな。」

 

サンジはこの世界に来て初めて心の底から喜んだ。いや安心した。

 

ロム爺はこの世界の住人。それがサンジの持っていたタバコを知っているという事は、この世界にも前の世界と同じくタバコが存在するということだ。

 

名前が微妙に違うが前の時間でリンゴの件で学習済み。名前が違う事には何も突っ込まなかった。

 

「なんだよダバコって。」

 

フェルトはロム爺に聞く。そしてフェルトの問いにロム爺は答えた。

 

「フェルト。ダバコというのはさっきも言ったようにカララギで嗜好品として売られ扱われているものじゃ。これは簡単な構造で粉々になるまですり潰した木材を紙で包み火をつけて煙を体に取り込む事で快感を得るものじゃ」

 

サンジはロム爺の説明で確信した。この世界にもタバコが存在するということを。

 

「取り込む?」

 

「そうじゃ。こやつが今しておったじゃろう。このダバコの先に火をつけて中の木が燃える。その煙を体に取り込む事で快感を得るんじゃ。」

 

「ちなみにガキは吸っちゃダメだぜ」

 

タバコが存在する事を知って安心したサンジは自然と笑みが零れる。

 

「つまりその火が出る魔道具を必死になって取り戻そうとしてたのはそのダバコを吸う為だったのか?」

 

「まあそうだな・・・・まどうぐ?」

 

サンジは今更気づいた新たな『まどうぐ』という単語を口に出した。

 

「なあ。君がさっきから言ってる『まどうぐ』ってなんだ?」

 

ロム爺とフェルトは顔を見合わせ、

 

「魔道具は魔道具だよ。知らないのか?」

 

「魔道具・・・・・?」

 

名前からしてサンジは何となく予想した。

 

「(魔道具の魔って・・・・もしかして魔法の魔か?こっちの世界にはもしかして魔法とかが存在するのか?魔力とかそういう感じの・・・?)」

 

 

サンジは結構ファンタジー系が好きなのかいい歳しながらワクワクしている。

 

「そういえばフェルトちゃん・・・・は嫌なんだよな。じゃあフェルト。一つ聞きたい事があるんだが」

 

「ん?なんだ?」

 

「徽章のことだ」

 

サンジが徽章という言葉を口にした瞬間フェルトの顔色が変わった。

 

 

「なんで兄ちゃんがその事を知ってんだよ」

 

フェルトは椅子から立ち上がりサンジから距離を取る。

 

「まあいろいろあってな。その徽章はある銀髪の女の子から盗ったものだろ?乱暴はしないから持ち主に返してくれないか?」

 

徽章を誰から盗ったのかも知っているサンジにフェルトはさらに警戒を強める。しかしフェルトも負けずに言い返す。

 

「わりーがそれは出来ない相談だな。あたしもこれが欲しくて盗ったわけじゃなんだ。」

 

「え?そうなのか?」

 

予想していた事と違う返事が返ってきてサンジは少し驚く。しかし、

 

「この徽章を欲しいって奴がいてな。盗ってきてくれれば金貨20枚と交換してくれるって言うんだぜ!!」

 

「やっぱり金目当てか」

 

やはりというかなんというか。サンジの予想は当たった。

 

この貧民街に住む人間が生きていくには盗みなどをしなければやっていけないのだろう

 

この国の貧富の差にサンジは憂慮を感じる。

 

「なんだよ兄ちゃん!!盗みが悪いっていうのかよ!!」

 

「別にそうは言ってないだろ」

 

一応サンジは海賊。盗みに関しては云々言える立場ではない。

 

その時サンジは急に立ち上がる。

 

ーー来たな。

 

「どうしたんじゃ?いきなり立ちおって」

 

「いやなんでもない。それよりフェルト。その徽章を欲しがってるやつには断りを入れておけ。」

 

「なんでだよ兄ちゃん!!てかあたしに命令すんな!!」

 

サンジはフェルトの言葉を無視して短くなったタバコを床に落として踏み潰した。

 




更新日はこれから毎週火曜日にします。


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螺旋

無刀流
一刀流
二刀流
三刀流
九刀流

千刀流 千手観音とか出てきて欲しいと思う僕。


「やっときたか。」

 

サンジは吸っていたタバコを床に落とし踏み潰す。

 

「来たってなにがだよ兄ちゃん」

 

サンジの発言に疑問が抱いたフェルトが聞く。そして、

 

「「ん?」」

 

 

盗品蔵の扉が開かれる音が鳴りロム爺とフェルトは同時に扉の方向に振り向く。

 

「こんにちわ・・・ああ!!」

 

「げっ!!あんたは・・・」

 

入って来たのは銀髪の超絶美少女だった。しかしサンジはいつもの美女を発見した時のような反応をしない。

 

それは前の時間でこの美少女に会っているからだ。

 

この美少女の名前やこんな辺鄙な場所に来た理由もサンジは知っている。しかし名前に関しては正しい名前を知らない。前の時間で聞いたのはサテラという名前。しかしこの美少女の写真が貼られていた看板にはエミリアと書かれていた。

 

その疑問が興奮に勝りサンジは今も冷静にいる。

 

まあ内心またこの美少女に会えて心躍っているのだが。

 

「見つけられてよかったわ。さあ私の徽章を返して」

 

サテラ・・・仮サテラとしておこう。仮サテラはそう言いながら盗品蔵に足を踏み入れ進んでくる。

 

そしてフェルトはそれに応じて後退する。

 

「本当にしつこい女だなあんた!!いい加減諦めろってのに!!」

 

「残念だけど諦められないものだから。」

 

 

そしてこの瞬間サンジの目が見開くような事が起きた。

 

 

それは仮サテラの上空で緑色の光が発色。そしてその光は互いに集まり結晶のような形に形成されていく。

 

その数8個。ツララのような形をしたその物体はフェルトに向けられて仮サテラの上空に浮遊している。

 

 

「なんだあれ・・」

 

これを見てサンジは少し驚いた。

 

悪魔の実という不可思議な物がある元の世界の住人であるサンジに取って今起きた事は少し驚く程度の事。まあ当然と言えば当然の反応である。

 

「私からの要求は1つ。徽章を返して。あれは大切な物なの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃。クルシュ邸。

 

 

「屋敷に侵入者だと?」

 

サンジが運ばれてきた屋敷の主。クルシュ・カルステンが治療室に横たわる老人に聞く。

 

「はい。クルシュ様。一時間程前の事でございます。」

 

痛みで苦しそうにしながら答える老人。体中に包帯を巻いて一目でケガの具合を察したクルシュは深刻そうな顔付きになる。

 

「ヴィルヘルム。貴殿のその怪我はその侵入者にやられたものか?」

 

二つ目の質問。ヴィルヘルムと呼ばれた老人は主の目を見ながら答えた。

 

「はい。恥ずかしながら手も足も出ませんでした」

 

「『剣鬼』と称されるほどの貴殿がか・・・・」

 

「ええ。屋敷に入られた他に屋敷の至る所を破壊され私を含める怪我人が二人。このヴィルヘルム・ヴァン・アストレア。如何なる処罰も受けれいます。」

 

目を閉じ反省の意を見せるヴィルヘルム。しかし、

 

「構わない。これが怠慢によるものだとしたら罰は与えたが貴殿は私の屋敷を守ろうと最善を尽くしてくれた。その者に罰などは与えない。」

 

「心より感謝を。クルシュ様」

 

動けない体の為言葉だけだがヴィルヘルムの顔からは感謝の意が感じ取れる。

 

そしてクルシュはさらに質問を重ねる。

 

「その侵入者の特徴は覚えいるか?」

 

「はい。性別は男性。私と同じほどの背丈に燕尾服のような服を着た者でした。髪色は金。そして私が思うに一番の特徴は螺旋状の眉でしたね」

 

「螺旋状の・・・眉?」

 

さすがに疑ったのか言葉を繰り返すクルシュ。しかしヴィルヘルムは嘘を言ってないという事がクルシュにはわかる。

 

「なるほど。どうやら本当のようだな」

 

「はい」

 

そしてクルシュは治療室の扉に手を掛けた。

 

「もうすぐフェリスが戻ってくる。そしたら貴殿の負傷した箇所を治療するよう私から言っておく。」

 

「ありがとうございます」

 

そしてクルシュは部屋から出て行った。

 

 




覇王色

使える人結構いるよね


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炸裂

この作品投稿してから結構経ちますね。


「なんだよ!!そんなものであたしがビビるとでも思ってんのか!!やっちまえロム爺!!」

 

「いや人頼りかよ!!」

 

サンジのツッコミがフェルトに炸裂。しかしロム爺は黙ったまま仮サテラを見る。

 

「むうう・・・ただの魔法使い相手ならワシも引いたりはせんがこの相手はまずい」

 

「なんだよロム爺!!やる前から負け認めんのかよ!!」

 

フェルトが何か言ってるがロム爺はそれを無視。そして、

 

「お嬢ちゃん。あんたエルフじゃろ?」

 

ロム爺が聞く。そして仮サテラは一瞬の沈黙。その次に溜息を吐いて答えた。

 

「正確には違う。私がエルフなのは半分だけだから」

 

ーーー本当にエルフなのか・・・しかもハーフエルフ。

 

あの店主の言っていた通り仮サテラの正体は人間ではなくエルフ。しかもハーフエルフだった。

 

確かに人間離れした美貌に微妙に自分とは違う耳の形。サンジは今になって仮サテラの特徴に気づく。

 

「ハーフエルフ!?しかも銀髪・・・まさか!!」

 

「他人の空似よ!!私だって迷惑してるんだから!!」

 

サンジには理解できないやり取りが行われて頭を傾げる。

 

 

「さては兄ちゃん。あたしを嵌めたな!!」

 

「え?」

 

急に振られて気の抜けた声を出すサンジ。

 

「魔道具返せって言ってたけど本当はこっちが本来の目的なんだな!!」

 

サンジはマイペースにタバコを吸いながら仮サテラとフェルトを交互に見る。

 

「え?どういうこと?貴方達仲間じゃないの?」

 

「違うぜお嬢さん。俺もあんたと同じでこのガキに大事な物を盗まれてな。そんで取返しに来たんだ」

 

「そうだったんだ・・・ねえあなた。そこの人の大事な物はもう返してあげたの?」

 

「ま、まあな・・・」

 

フェルトはサンジの威嚇を思い出しのか額に汗を掻く。

 

「じゃあ私のも返してよ!!」

 

「嫌だね!!これはもうあたしのだ!!返して欲しければ金出す事だな!!」

 

フェルトと仮サテラが言いあってる間にサンジは気付いた。

 

ーーーやっぱり優しい子なんだな。

 

仮サテラの胸に飾られた白い花を見てサンジは心の中でそう思い小さな笑みを浮かべた。

 

「なんだよ兄ちゃん!!何笑ってんだよ!!」

 

「いや。なんでもないさ。それよりも・・・・」

 

 

その次の瞬間。剣と剣が交わる時のような金属音が盗品蔵に鳴り響いた。あまりの大きさにこの場にいる『5人』の内3人が反射的に耳を塞いだ。あと一匹も。

 

 

「あら?防がれちゃったわね」

 

「やっとテメーの面を拝めたぜ。」

 

「え!!?何?」

 

それが行われていたのは仮サテラの真後ろだった。

 

サテラは急いでその場を離れて振り返る。

 

そこではサンジと見知らぬ女が鍔ぜり会っていた。

 

サンジは右足を顔の所まで上げて脛の部分で女は手に持つデカめのナイフで鍔ぜり会う。

 

そしてサンジはそのまま右足に力を加えて女の体を吹き飛ばす。

 

「貴方すごい力だわ。私が押し負けるなんて」

 

そこにいたのは美女だった。分類するなら年上のお姉さん系美女。サンジは改めてその女を見ると一瞬で目をハートにした。

 

仲間の考古学者。ロビンくらいの歳だろう。

 

黒い髪は三つ編みにされて一本に。垂れ目の優しそう顔をしているがそれに似合わず物騒なククリ刀を手に持っている。服は胸から腹を大胆に出した露出した物で背中には黒いマントをしている。

 

サンジはその服装を見て叫びながらクルクルと回っている。

 

「何してんだ兄ちゃん・・・」

 

「えっと・・・どうしたの?」

 

「お主・・・・」

 

「あら?一体この人はどうしたのかしら?」

 

当然この場にいる物達は戸惑った。しかし

 

「女性とは思えない程の殺気だな。」

 

女の放つ異常な殺気を感じ取りサンジは目を通常の物へと戻し動きも止める。

 

「今のが何の動きかわからなかったけれど、仕切り直しといきましょう。」

 

女は器用にナイフを回しながらそう言う。

 

「ねえあなた・・・さっきは私を助けてくれたの?」

 

仮サテラが後ろから聞いてくる。そしてサンジは振り返らず答える。

 

「まあな。それとこいつは俺が相手する。君はそこで髪に隠れているネズミに守ってもらいな」

 

「え!」

 

サンジのそう言われて仮サテラは声を出して驚いた。

 

「すごいね君。僕の存在に気づくなんて」

 

サンジは仮サテラの髪から出て来たネズミ。パックの言葉を無視する。

 

「精霊・・・精霊ね。まだ精霊の腸は見た事がないの」

 

粘りとした笑みを浮かべる目の前の美女。サンジはタバコの灰を落として再び口に加える。

 

「おいあんた。一体どういうつもりだ」

 

いきなり言葉を発したのはフェルトだった。

 

「え?どういうつもりって?ここにいる人達も皆殺しにするつもりよ?」

 

至極当然といった感じで女はフェルトに返す。仮サテラは目に力を籠め、フェルトは歯を噛みしめてロム爺はどこから持ってきたのか巨大な棍棒を手に持ちサンジは口から煙を吐く。

 

「なんでだよ!!」

 

「当然でしょ?こんなに人を連れて来られたら商談なんてとてもとても。貴方は仕事を全うできなかった。所詮は貧民街の子供ね。仕事一つまともにできないなんて」

 

女にボロクソ言われてフェルトは泣きそうな面持ちになる。

 

「おい」

 

「あら?なにかしらお兄さん?」

 

サンジは新しいタバコに火をつけて女に声を掛けた。

 

「テメーは俺が今まで見て来たレディーの中でも最低なクソ野郎だ」

 

「先ほどまで私の体を見て興奮していた人とは思えない発言ね」

 

「うるせーよ。簡単に人の命を取ろうとする奴にも言われたくないな」

 

 

サンジには珍しく美女に対して怒りを向ける。

 

「まあいいわ。さあ一緒に楽しみましょう」

 

女は剣を構えて腰を落とす。それに対してサンジは何も構えずにマイペースにタバコを吸う。

 

 

「腸狩り。エルザ・グランヒルテ」

 

「サンジ」

 

サンジは名乗るのと同時に咥えていたタバコを床に落とす。

 

 

そしてタバコが地面についた瞬間。

 

 

「来な」

 

「楽しませてちょうだいね!」

 

 

腸狩りエルザ・グランヒルテVS黒足のサンジ

 

 




一章もそろそろ終わるな…


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不完全燃焼

サンジのキャラが崩れてないか心配。


「来な」

 

「精々楽しませて頂戴ねぇ!」

 

黒足のサンジVS腸狩りのエルザ。

 

 

初めに仕掛けたのはエルザだった。

 

エルザはサンジに向かい一直線に走りだして、

 

「ん?」

 

「ふふ」

 

サンジの射程距離ギリギリの距離でサンジを中心にグルグルと高速で回り始める。

 

そして徐々に近づきながらサンジの背後から背中に斬りかかるがサンジはそれを上体を前方に逸らし躱す。

 

「あら?良い反応ね」

 

そしてサンジは振り返りエルザと向かい合う。そしてそのままエルザはサンジ向けて連続の剣戟を繰り出す。

 

「楽しいわぁ!」

 

エルザは笑いながらそんな事を言うがサンジは目を瞑りながらエルザの攻撃を躱し続ける。

 

ガキィィンッ!!

 

「この程度か?」

 

 

サンジは足で刃を受けながらエルザに聞く。

 

 

「すげー兄ちゃん・・・」

 

「足で刃を受けるとは・・・・あやつの足は鉄でできておるのか?」

 

「すごい・・・・」

 

 

その戦いを観戦するフェルト、ロム爺、仮サテラが各々の感想を述べる。

 

 

「くっ!!」

 

サンジはそのままナイフを受けた足に力を籠めてエルザを体ごと吹き飛ばす。力に関してはサンジに軍配が上がるようだ。

 

「すごい力だわぁ。ってあら?」

 

エルザは数メートル吹き飛ばされた後サンジの姿を見ようと前を向くがそこには誰もいなかった。

 

「上か!」

 

エルザはそう口にして上を見上げる。

 

そこには空中で壁と水平に180度開脚して横回転をするサンジの姿があった。

 

串焼き(ブロシェット)!」

 

エルザは一早く気づき回避を始める。

 

「!!!」

 

サンジの攻撃はエルザには当たらず床を直撃。その衝撃で盗品蔵の床に大穴が開いた。

 

そしてエルザは警戒したのか必要以上の距離をサンジから取る。

 

「さすがに今のを食らったら私でも死んでたかもしれないわぁ」

 

エルザは粘りとした笑みを浮かべながらサンジに言う。

 

 

「あわわわ・・・」

 

「ここまでとは・・・・」

 

「一体何者なのあの人・・・」

 

「すごいね。もしかしたらあの子『剣聖』クラスに強いんじゃないかな?」

 

フェルトは驚きのあまり震え、ロム爺は目を最大にまで見開きながら驚き、仮サテラも同様に驚き、パックは冷静にサンジの強さを評価する。

 

「降参するつもりはないのか?」

 

「え?」

 

サンジはタバコに火を付けながらエルザに聞く。

 

「それは一体どういうことかしら?」

 

「俺とあんたとの力の差は今のでわかったはずだ。あんたでは俺には決して勝てない。だから素直にこの場から消えろ。」

 

煙を吐き出しながらサンジはエルザに言う。

 

「それは無理な相談だわぁ。私はもう貴方との戦いで体が火照ってるのよ。このまま不完全燃焼で帰ったらこの昂りを抑える為に」

 

エルザは自身の唇を紅い舌でペロりと舐めながら、

 

「腸を沢山切り開いちゃうかも」

 

エルザの言葉にフェルトは背中にゾクりとした感覚を覚える。

 

「クズが」

 

「否定はしないわ」

 

その言葉と同時にエルザは再びサンジに襲い掛かる。

 

「はあっ!!」

 

ギィィンッ!

 

サンジの足とエルザのナイフが交わり金属音がこの盗品蔵に反響する。

 

そしてその反響は連続する。

 

「ははは!!貴方の足は一体どうなってるのかしら?」

 

エルザは笑いながら何度も斬りかかるがサンジはそれを全て足で受ける。

 

切肉(スライス)シュート!!」

 

サンジはエルザのナイフだけを蹴り上げる。エルザのナイフはエルザの手から離れ天井に突き刺さる。

 

「やるわねぇ」

 

ビリビリと痺れる自身の手を抑えながらサンジを称賛する、そして、

 

「今度は俺の番だ」

 

サンジは短くなったタバコを床に落として踏みつける

 

「いいわよ。ダンスというのは互いに調和して初めて楽しめるものよ」

 

「じゃあ遠慮なく」

 

 

 

そして遂にサンジは本格的に攻撃を仕掛けた。

 

 

(ジュー)!!」

 

 

サンジの蹴りがエルザの顔面に迫るが、

 

 

「へえ。よく躱したな」

 

 

エルザは難なくサンジの蹴りを躱した。

 

「(躱した・・・?)」

 

エルザは隠していた予備のナイフを取り出して構える。

 

 

「ふうう・・・さあ続きを楽しもうぜ。お嬢さん」

 

 



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疑問

エースの伏線すげー


鳴り響く金属音。

 

 

 

「ふふっ」

 

恍惚とした笑みを浮かべながら戦うエルザ

 

「っち」

 

グルグルの眉をひそめるサンジ。

 

その二人の戦いは熾烈を極め常人では、ただ立ち尽くし見る事しか出来ないだろう。

 

 

そしてその戦いを見届ける3人と1匹。

 

「いけー兄ちゃん!!」

 

と金髪で赤色の双眸のフェルトが叫ぶ。

 

「このままいけば勝てるかも・・・」

 

戦況からしてサンジの方が有利と見たのか仮サテラが呟く。

 

「むう・・・」

 

デカい棍棒を持った盗品蔵の持ち主ロム爺。何か疑問を持ったのか首を傾げる。

 

「ねえお爺さん。」

 

「なんじゃ?」

 

仮サテラの肩に座っていた精霊パックが浮遊しながらロム爺に近づき話しかける。

 

「おじいさんはこの戦いをどう思う?」

 

「やはりお主も疑問に思うのか?」

 

「う~ん。なんていうんだろう。あのサンジって子。確かにあのエルザって子よりは確実に強いとは思うんだけど・・・」

 

パックとロム爺が戦っているサンジにある疑問を抱いていた。

 

「ワシも戦闘の専門家ではないからの。詳しい事は言えんが1つだけおかしいと思ったことがあるの」

 

「それは?」

 

 

「はあっ!!」

 

「ふんっ!」

 

 

サンジの足とエルザのナイフがぶつかり合う瞬間をパックとロム爺は見る。

 

「あのサンジと言った小僧。攻撃を躱させていないか?」

 

「ボクもそう思うよおじいさん」

 

 

肩ロース(バースコート)!!後バラ肉(タンドロン)!!!」

 

「!!」

 

サンジの攻撃を紙一重で躱すエルザ。エルザは気付いてるのだ。サンジの攻撃を一度でもまともに食らえば致命傷は免れない事を。

 

「・・・・・」

 

 

エルザはサンジから距離を取り体勢を整える。無表情で。

 

 

「もうわかっただろ。あんたでは俺には勝てない。さっさとこの場から消える事だ。」

 

エルザに退散するよう促すが、

 

「ねえあなた。1つ聞きたい事があるのだけれど」

 

サンジの顔を見つめて問いただすエルザ。

 

「時間稼ぎか?」

 

「いいえ違うわ。時間稼ぎして私に利はないから。そんなことよりも・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故わざと攻撃を躱させるの?」

 

 

 

 

 

「「え?」」

 

 

反射的に声を上げたのはフェルトと仮サテラだった。

 

「やっぱりか」

 

「おかしいと思ったんだよね~」

 

 

パックは宙に浮きながら腕を組みロム爺は禿げた頭部を指で掻く。

 

 

「何を言ってるんだ?」

 

「とぼけても無駄よ。相対している私にはわかるわ。貴方は私に攻撃する瞬間に必ず速度を落とす。その速度は私が反応して躱せるくらいの速度。付け加えるなら貴方さっきから攻撃を少しずらしているわね。私が確実に攻撃を躱せるように。」

 

 

サンジはタバコを咥えて火をつけるだけで何も答えない。

 

「どういう・・・こと・・?」

 

「手を抜いてたってことか?」

 

フェルトと仮サテラがエルザの言葉に困惑する。

 

 

「一体どういうつもり?」

 

 

エルザはナイフをサンジに向けて返答を求める。

 

「女は蹴らない。俺の中のルールさ」

 

「それは一体どういうことかしら?」

 

「俺は決して女は蹴らない。ガキの時からそう教え込まれたんだ。相手が誰だろうと女である限り、」

 

 

サンジは声を大にして叫んだ。

 

 

 

「俺は死んでも女は蹴らん!!」

 

 

 

一瞬の沈黙。

 

 

フェルトと仮サテラはポカーンとアホ面を晒しロム爺は『むう・・』と口にしながら自身の顎髭に触り、パックは何か納得したような顔をしていた。

 

 

「それは例え命に係わる事態な時も?」

 

エルザはさらに聞く。そしてサンジの答えは一言。

 

 

 

「ああそうだ。」

 

 

 

またもやこの場を沈黙が支配する。

 

普通だったらサンジの今の言葉など信じるものなどいないだろう。

 

しかし、

 

 

「その目・・・どうやら本心から言っているのね・・・」

 

 

サンジは目がマジだった。

 

 

 

 

「すごい覚悟だね。女の子を絶対に蹴らない。蹴るなら死んだほうがマシだなんて言うんだから」

 

 

パックはふよふよという擬音が似合いそうな浮遊をしながらサンジに近づく。

 

「おいネズミ。お前はそこでその子を守ってろ」

 

「う~ん。確かにボクはこの子を守る使命はがあるけどさ。そのエルザって子は君だけではなく僕達も殺そうとしてるんだよね。」

 

「ええそうよ。ここにいる人は全員殺すわ」

 

 

パックの疑問にエルザが答える。

 

 

「でもサンジは死んでも女の子は蹴らない。それは目の前の殺人鬼も例外なく」

 

 

「ああそうだ」

 

 

次はサンジが答える。

 

 

「じゃあ君の言う事は聞けないな。君がその子を倒してくれるならいいんだけど。君の覚悟を見る限りそうはいかない。じゃあ君の代わりに僕がその子を倒すしかなくなるからね」

 

 

パックの正論に何も言えなくなるサンジ。

 

 

サンジが自身の中で決めている絶対のルール。

 

 

『女は蹴らない』はサンジの目の前にいるエルザにも適応される。

 

 

つまりだ。実力を見る限りエルザはサンジには遠く及ばない。

 

 

しかしサンジはエルザを蹴る事が出来ない。これではいつまでたっても終わらない。

 

 

なのでパックは女を蹴れないサンジの代わりに戦う事を申し出たのだ。

 

 

「私もやるわ。貴方ばかりにいい恰好ばかりさせてられないもの」

 

 

仮サテラもパックと同じくサンジの代わりにエルザと戦う事を決めた。

 

ーーーしょうがない。

 

 

「わかった。ここは君達に任せるよ」

 

 

サンジはエルザからゆっくりと離れてフェルトたちの所まで下がった。

 

 

そして代わりに仮サテラとパックがエルザの前に立つ。

 

 

 

「もうお話は済んだかしら?」

 

エルザは器用にナイフを回しながら仮サテラ達に聞いた。

 

 

「うん。だけど今度はサンジみたいに攻撃しないなんて事はないからね」

 

パックは盗品蔵の天井にまで登り浮遊してエルザを見下ろす。

 

「素敵ね。貴方達は精々私を楽しませてね」

 

 

エルザは自身の紅い唇を舌でペロリと舐めた。

 




お玉ちゃん可愛い


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異常

今回は少し長めです。


仮サテラVS腸狩りのエルザ。

 

 

「今度は楽しませて頂戴ね」

 

エルザはその言葉を発すると同時に仮サテラに仕掛けた。

 

「精霊術の使い手を舐めない事」

 

仮サテラはその場を動かずに両手の掌を合わせる。すると仮サテラの目の前に魔力で形成されたと思われる白い盾のようなものが出現する。

 

エルザのナイフと仮サテラの作り出した盾がぶつかりあい、

 

キィィィィン。

 

雑音の無い綺麗な金属音が盗品蔵に奏られる。

 

「素敵よ」

 

エルザは攻撃を仕掛けてすぐに離脱するという消極的な行動をするが、

 

 

「ボクがいるのも忘れないでね」

 

その瞬間。上から大量の『何か』がエルザに降り注ぐ。そしてエルザはそのままその『何か』を全て受けた。

 

 

大量の煙が舞いエルザの姿は一時的に見えなくなる。

 

「あれは・・・」

 

サンジはカウンター席に寄りかかりながら目を細めて上を見上げる。

 

そこには仮サテラと一緒にいたパックという精霊が宙に浮いており、おそらくパックが今の攻撃をしかけたのだろう。

 

「ツララみたいな・・・・魔法か・・?」

 

サンジはそう呟く。

 

高速で降って行ったのでサンジの目には微かにしか見えなかったが、それでもサンジはその『何か』を微かに自身の目で捉えたのだ。

 

 

「もちろん。忘れてないわよ」

 

 

その声がした瞬間サンジの視線は上からエルザにへと移される。

 

煙が止んだと同時にサンジ達が見たのは肩にかけていたマントで自身の体を覆うエルザの姿だった。

 

 

「ダメか・・・」

 

上でパックが残念そうにそう声を上げた。

 

そしてエルザのマントはそのまま消滅する。

 

「備えはするものね。このマントは一度だけ魔法の攻撃を完全防御してくれる代物よ」

 

マントが無くなり肩と胸の中央。そして腹まで露出した姿になるエルザの姿を見てサンジはまたもや目をハートにする。隣にいたフェルトはジト目でサンジの事を見る。しかし戦いに集中している者達はそんなサンジに気づかずにいる。

 

「さあもっと私を楽しませて頂戴!」

 

そしてエルザは再び仮サテラに仕掛けようと走り出すがパックが上からさらに追撃。

 

魔法で形成されたツララのようなものを次々とエルザに飛ばし続ける。

 

 

しかしそれをエルザは素早い身のこなしで次々と躱していく。

 

「すごい戦い慣れしてるね。女の子なのに」

 

「女の子扱いされたのなんて久しぶりだわぁ」

 

「ボクからしてみれば大抵の相手は赤ん坊みたいなものだからね!それにしても不憫なくらいに強いもんだね君」

 

「精霊に褒められるなんて恐れ多い事だわぁ」

 

エルザとパックの一進一退の攻防が続く。パックは上空からエルザに向けて一方的に魔法で形成されたツララを放ち続けるがそれを全てエルザは躱すかナイフで迎撃するがで対処する。

 

 

「おお。すげーな」

 

サンジは腕を組みタバコを吸いながらその戦いを観戦する。ちなみにサンジが声を上げた理由はエルザの戦い方によるもので、エルザはこの狭い盗品蔵の空間を全て無駄なく利用しているのだ。

 

簡単に説明すれば壁から壁へ。天井から床へとまるでバネバネの実の能力者べラミーのような動きをしている。

 

「なんだよ兄ちゃん!!兄ちゃん強いんだから見てないで戦えよ!!」

 

フェルトが呑気に観戦しながらタバコを吸うサンジに言うが、

 

「さっきも言ったが俺は決して女は蹴らない。それはあのエルザも例外じゃない。」

 

飽く迄も自身の信念を貫くサンジにフェルトは歯を噛みしめる。

 

「でもこのまま消耗戦に持ち込めば勝てるだろ」

 

「残念じゃがそれは無理じゃな」

 

サンジの発言を即ロム爺が否定をした。

 

「ああん?」

 

サンジとフェルトは、どういう意味か教えろという顔をしながらロム爺を見る。

 

 

「精霊というのは現界できる時間に限界があるからの。」

 

 

「そういえば・・・・そうだったな」

 

前の時間で仮サテラと行動を共にしてこの貧民街に来た時パックが消滅したのをサンジは思いだす。

 

「前に消えた時もこんくらいの時間か」

 

サンジは窓から沈みそうな陽を見てそう予想するが、

 

「やばい・・ボクもう限界かも・・・」

 

「あら?折角楽しくなってきたのにつれないわぁ」

 

「モテるオスも辛いもんだね。女の子の方が寝かせてくれないんだから。でもほら、夜更かしするとお肌に悪いからそろそろ幕引きと行こうか!」

 

パックがそう言った瞬間エルザは足元に違和感を感じて動きを止める。

 

「あら?これは・・・」

 

「無目的にばら撒いてた訳じゃにゃいんだよ」

 

エルザの右足はパックが放った魔法の結晶によって捕まりそれが床に固定され身動きが取れない状態となっていた。

 

「へえ・・・」

 

サンジは意外に考えていたパックに驚いたのか思わず声を出す。

 

「してやられたってことかしら?」

 

しかしエルザはこの状況にも関わらずに表情を崩さずパックに聞く。

 

「おやすみいいい!!!」

 

パックと仮サテラは同時に自身たちの体が完全に隠れる程巨大な結晶をエルザに放った。

 

「よし勝った!!」

 

「いや・・・・」

 

フェルトはフラグを立てサンジは目を細める。

 

エルザとパック達が放った巨大な結晶がぶつかる瞬間。

 

「「「「!!??」」」」

 

サンジとエルザ以外の3人と1匹が驚愕した。

 

「素敵・・・・死んじゃうかと思ったわぁ」

 

サンジがタバコを吸い顔を歪める。

 

「女の子なんだから、そういうのはボク関心しないなあ」

 

パックは仮サテラの肩に乗りエルザに言う。

 

「マジかよあの女・・・攻撃を躱す為に自分の足を切りやがった・・・」

 

フェルトは鳥肌を立てながら今起きた事を口にした。

 

確かに。エルザは今、生死の境目に立たされていた。そして自身が生き残る為に自身の足を犠牲にした。

 

エルザの足首から下が切り離され切り口からは大量の血がドバドバと流れている。

 

自身の足と自身の命。冷静に天秤で量りで自身の足を切り捨てるという判断をエルザはしたのだろう。

 

しかしだ。たとえどんなに修羅場を潜り抜けて来た猛者と言えど、あの短い時間で自身の手で自身の足を切るという決断を下しそれを実行するなど並の度胸で出来るものではない。

 

流石のサンジもエルザの行動に驚いたのか一筋の汗を額から垂らす。

 

それに加えエルザは自身の足を切ったというのに顔色は変わらない。

 

さすがは異常の類に入る人間だ。

 

サンジも元の世界でかなりの数の異常者を見て来たがエルザはその中でも上位に入るほどの異常者だった。

 

「う~ん。少し舐めて掛かってた。ボクもう眠いや・・・」

 

目を擦りながらパックはそう仮サテラに言う。

 

「大丈夫パック?後はこっちで何とかしとくからもう休んでいいよ」

 

仮サテラは優しくパックにそう言う。

 

「ボクは契約に従い君を守る。いざとなればオドを使ってでもボクを呼び出すんだよ・・」

 

「うん。お休みパック」

 

そしてパックはそのまま微光を放ちながら消えた。

 

その間エルザはパック達が放った魔法の結晶を使って即席の義足を無くなった右足に取りつけた。

 

「あら・・消えちゃったわね・・それはひどく残念な事だわ」

 

エルザはその言葉と共に仮サテラに向かって走りだす。

 

仮サテラも魔法で生成した盾と剣を空中に浮かべる。

 

エルザは仮サテラの周りを高速で回りながら斬りつけるがそれを全て剣と盾で防ぐ仮サテラ。

 

「おーおー。あの子も中々やるな」

 

サンジは何時でも動けるように準備しながらタバコを吸って戦いを観戦する。

 

「そろそろただ見てるだけという訳にはいかんなフェルト。」

 

ロム爺がドデカい棍棒を持って立ち上がりフェルトにそう言う。

 

「わかってるよ・・・逃げるにしたってそろそろ動かないといけねーってことくらい・・さっきは悪かったな兄ちゃん・・・疑ったりして・・」

 

「構わないさ。」

 

優しくフェルトにそう返すサンジにフェルトは安心したような顔付きを見せる。

 

実際サンジは3億を超える懸賞金を付けられるほどの大海賊。これくらいの事では怒る事などしない。それが女の子だと尚更。

 

そしてしばらくエルザと仮サテラの攻防が続き、

 

 

 

その均衡が崩れた。

 

 

「くっ!!」

 

エルザが仮サテラにも対応できないスピードにまでギアを上げて仮サテラの腹に回し蹴りを繰り出す。

 

「あら?」

 

しかし仮サテラは自ら後ろに飛び威力を殺す。そしてそのままカウンター席に飛び乗るが、

 

「ふふっ」

 

「きゃ!!」

 

エルザは自らが回転して近づき遠心力を使った切りつけを繰り出す。それを仮サテラは盾でガードしたがあまりの威力に盾ごと吹き飛ばされて酒が置かれていた棚にぶつかり床に落ちる。そしてそのまま棚の下敷きになる仮サテラ。

 

 

「さて・・・えみ・・・どっちだ?」

 

仮サテラがやられたのを見てサンジは名前を呼ぶがわからず困惑した。

 

「いくぞおおおお!!」

 

ロム爺は仮サテラがやられたのを機に棍棒を持って走り出しエルザに仕掛けた。

 

「あら?ダンスに横入りなんて無粋じゃないかしら?」

 

「そんなに踊りたけば最高のダンスを踊らしてやろう!」

 

ロム爺の棍棒とエルザのナイフが何度もぶつかり合う。

 

「そーれ!!きりきりまい!!」

 

ロム爺の渾身の一撃が繰り出されるがエルザは常人離れした跳躍でそれを躱す。しかしロム爺の放った一撃はかなりの威力でエルザの代わりに衝突した盗品蔵の壁にデカい穴があいた。

 

当たればエルザとてかなりのダメージだったはず。

 

当たればの話だが。

 

「なに!?」

 

「貴方が力持ちだからこんな事も出来るのよ」

 

エルザはなんと跳躍し、落ちて来た後ロム爺が持っていた棍棒の上に乗っていた。なんという曲芸技。

 

そしてそのままロム爺の首を斬り落とそうとエルザはナイフを振りかざし、

 

「オラッ!!」

 

「なっ!」

 

エルザの手からナイフが離れて飛んでいきそのまま壁に突き刺さった。

 

「おれがいるのをわすれてもらっちゃあ困るぜお嬢さん」

 

「っち!!」

 

サンジは逆立ちした状態でエルザのナイフだけを蹴り飛ばした。

 

そしてエルザは再び跳躍してサンジから離れる。

 

「すまぬな」

 

「かまいやしねーよ」

 

命を救われたロム爺がサンジに対してお礼を言うがサンジは男からのお礼なぞ欲しくなどない。

 

ダッダッダッダ!!!

 

「!!」

 

エルザにツララが飛んでくる。それをエルザは全て紙一重で躱していく。

 

「私とまだ決着ついてないわよ!」

 

仮サテラが棚の下から現れツララの攻撃を仕掛ける。無事だったと知りサンジは安心した。

 

「フェルト!逃げるんじゃ!!」

 

「はあ!?あたしだけ尻尾巻いて逃げろってのかよ!!」

 

ロム爺がフェルトに逃げるように促すがフェルトは変なプライド邪魔してか逃げようとしない。

 

「騎士か衛兵を連れて来てほしいのじゃ!」

 

「騎士?」

 

「そうじゃ!儂やあのエルフの娘ではあの女には勝てん!唯一勝機があるとすればこの小僧だけじゃ。だがお前さん女を蹴るのは嫌なんじゃろ?」

 

「ああ。死んでも蹴らない」

 

「そういうことじゃ!頼むフェルト!!」

 

「わかった・・・すぐ呼んでくる!!それまで踏ん張っててくれ!!」

 

フェルトは走りだして先ほどロム爺が壊した壁の穴から出ようとするが、

 

「行かせると思う?」

 

フェルトたちの話を聞いていたエルザはそう言いながら小型のナイフを取り出してフェルトに投げつけた。

 

だが、

 

パシッ!

 

「行ってこいフェルト!!」

 

「うん!!」

 

サンジがそう声を掛けてフェルトは元気よく返事をして盗品蔵から出て行った。

 

「刃物は投げるなって親に教わらなかったかテメーは」

 

サンジはエルザがフェルトに投げつけた小型のナイフを左手でいとも簡単に掴み受け止めていた。

 

さすがに舐められ怒りを感じたのか表情は変わらないがエルザの額に青筋が見える。

 

「お主さっき自分でも投げてたじゃろ」

 

「そんな昔の事は忘れた。」

 

ロム爺に突っ込まれるサンジはシラを切る。

 

 

「あなたムカつくわ」

 

「え?」

 

「ん?」

 

エルザは仮サテラと戦っていたというのに急に標的をサンジに変えて走り出す。

 

「お?」

 

エルザはサンジの一歩手前まで近づき跳躍。そして先ほどサンジが蹴り飛ばした事で壁に刺さった自身のナイフを回収。そしてそのまま壁を蹴ってサンジに斬りかかる。

 

「おっと!」

 

 

サンジは半歩下がり攻撃を躱す。そして床に着地したエルザは再びサンジに高速で斬りかかる。そのスピードは先ほどより少し速い。

 

「おお。さっきよりスピード上がってるぞ」

 

「本当にムカつく子ね」

 

遂に顔に出して言ってくるエルザ。何度ナイフを振ってもサンジには掠りもしない。

 

それもそのはず。2年前のサンジでもこのエルザより遥かに上回る力を持っていた。それがさらに本人にとって本物の地獄で本物の地獄の特訓をした今。エルザがサンジに勝てる可能性は0に等しい。

 

そしてサンジは1つ大きなバックステップをしてエルザから距離を取る。

 

「よし。一つハンデをやろう」

 

「え!?」

 

「な!?」

 

「・・・・」

 

上から仮サテラ、ロム爺、エルザの順。

 

「一撃だけわざと食らってやる。」

 

「「なっ!!」」

 

「あら・・・」

 

 

ロム爺と仮サテラは同じ反応。エルザは少し嬉しそうな顔をする。

 

「ちょっとあなた!!一体何言ってるの!?」

 

「そうじゃお主が強いのは知ってるがさすがにそれは調子に乗り過ぎじゃ!!」

 

サンジは二人の言い分を無視してエルザにさらに言う。

 

「ほら。俺は動かねーから好きな所に斬りかかってこい。」

 

サンジは両手をポケットに入れながら防御も回避もしないと断言する。

 

「一体どういう風の吹き回しかは知らないけれど・・・ちょうどいいわ。貴方の所為で少しストレスが溜まってたの。これで貴方の腸を見れるわあ」

 

「(狙いはあの時と同じ・・・腹か・・・まあいい。実験だ)」

 

 

「じゃあ遠慮なく」

 

 

エルザは走り出しナイフを構えてサンジに接近する。

 

「させないわ!!」

 

仮サテラはそう言いながら魔法を出そうとするがもう間に合わない。

 

「さようなら」

 

そしてサンジとエルザの距離が0距離となった時。

 

サンジの腹部にエルザのナイフがに当たった。

 

「きゃああああ!!」

 

「小僧おお!!」

 

仮サテラは顔を両手で覆いながら。ロム爺は叫びながら。

 

そして・・・・。

 

 

「こ・・・これは一体・・・」

 

エルザはこの日・・・・いや今まで生きてきて初めて目を見開くほどの事態に遭遇した。

 

両手でナイフの柄を持つエルザ。その刃先は完全にサンジの腹部の中心に当たっていた。

 

 

しかし、

 

 

 

「武装色『硬化』。なるほど使った事なかったけど。結構便利だなこれ。全く痛くねー」

 

「くっ!!」

 

エルザは急いで離脱する。そしてサンジと向かい合い自身ナイフを見る。すると、

 

 

「どういうこと・・・何故私のナイフに亀裂が・・・」

 

「信じられない・・・・あの人の体どうなってるの・・・?」

 

「体どころか服にも傷一つないとは」

 

仮サテラとロム爺は今の状況を見てかなり驚いている様子。

 

「これからは徹底的に覇気を鍛えていくとするか」

 

サンジはタバコを取りだし火をつける。

 

そしてエルザは、

 

「あは♥・・・・アハハハハハハハハ!!!!!素敵!!素敵よ貴方!!今まで戦ってきた人の中で最高よ!!」

 

エルザは甲高い笑い声を上げてサンジを称賛する。

 

「貴方ともっと殺し合いたいわぁ。」

 

「残念だがそれは無理だな」

 

サンジの発言に3人は首を傾げる。

 

 

そして次の瞬間。

 

 

「そこまでだ」

 

どこからともなく声だけが聞こえた。

 

「まさかこいつが来るとわな」

 

 

サンジはタバコの煙を吐き出しカウンター席にへと下がる。

 

 

さらに次の瞬間。

 

 

ドガアアアアアアアアアアアンッ!!!!!!

 

 

「「「!!」」」

 

盗品蔵の天井が破壊されて大穴が開いた。

 

正確に表すなら何かが落ちて来た。と言うのが正しいか。

 

 

「派手な登場しやがって」

 

土煙が舞いしばらくこの場にいる者の視界が遮られる。しかしそれもすぐに収まる。

 

 

「あの人は!」

 

仮サテラが最初に気づき声を上げる。

 

 

そして土煙が完全に収まり全員が視界に捉えた者とは。

 

 

腰に大剣を携えた青年。

 

燃えるような赤髪に染み一つない真っ白な服。

 

 

「貴方は・・・」

 

エルザはその青年を見て笑みを浮かべた。

 

 

その者の名前は、

 

 

『剣聖』ラインハルト・ヴァン・アストレア。

 

 

 

 

「さて。舞台の幕を引くとしようか」

 




王下七武海とルフィの傘下。

どっち強いかな


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笑顔

もうそろ一章が終わりますね


その男の存在感。

 

 

 

まさに四皇そのもの。

 

 

 

 

「危ない所だったようだけど。とにかく間に合ってよかったよ」

 

 

天井をぶち抜いてやってきたのは『剣聖』。

 

 

 

「さて。舞台の幕を引くとしようか」

 

 

 

その姿を見て最初に声を上げたのはサンジであった。

 

 

「まさかお前が来るとはな。確かラインハルトだったか?」

 

「やあサンジ。さっきぶりだね。まさか君がここにいるとは思いもしなかったよ」

 

「まあいろいろあってな」

 

 

一通りの会話を終わらせサンジとラインハルトはエルザに視線を移す。

 

 

「黒髪に黒い装束。そして北国特有の刀剣。それだけ特徴があれば見間違いたりはしない。君は『腸狩り』だね」

 

「腸狩り・・・・」

 

サンジは先ほどエルザの口からこの『腸狩り』という単語を聞いたが特に気にしてはいなかったのだろう。

 

しかし今を思い返してみれば最初にやられた時もこのエルザは自身の腹を狙い。そして先ほどのやりとりの時も腹を狙って来た。

 

「そういうことか」

 

サンジはたった今腸狩りという名の意味を理解した。

 

「サンジ。よく彼女相手に堪えてくれたね。彼女は王都でも危険人物としても名前が挙がっている程の者だ」

 

「へー」

 

サンジは興味なさそうにそんな返事をする。

 

「(この女で危険人物扱いか。)」

 

今まで旅をしてきてエルザ程度の者はサンジはごまんと見て来た。

 

まあ仮に元の世界にエルザがいたとしても海軍の軍曹や兵長クラス。海賊なら2000万クラスのやつならエルザなど軽く捻る程度で倒せるだろうが。

 

「貴方はラインハルト。騎士の中の騎士。『剣聖』の家系ね。すごいわぁ。こんなに楽しい相手ばかりだなんて」

 

「いろいろと聞きたい事もある。投降をお勧めしますが?」

 

「血に飢えた肉食獣が極上の獲物を前に我慢できるとでも?」

 

「そうですか。ではサンジ。少し下がっててくれ。彼女の相手はボクがする。」

 

「おう。頼むぜ」

 

そしてサンジは仮サテラとロム爺の近くに移動してエルザとラインハルトを見る。

 

「素敵ね。貴方も精々私を楽しませて頂戴ね!」

 

エルザは走り出してヒビの入ったナイフで斬りかかろうとするが、

 

「女性相手に乱暴はしたくないのですが」

 

ラインハルトはエルザの脇腹を蹴り吹き飛ばした。

 

その勢いのままエルザは壁際まで飛ばされる。

 

「噂通り・・いえ、噂以上の存在なのね。貴方は」

 

「御期待に添えるかどうかわかりませんが」

 

「その腰の剣は使わないのかしら?伝説の切れ味を味わってみたいのだけれど」

 

「残念ですが、この剣は抜くべき時以外は抜けないようになっている。鞘から刀身がでていないという事は今はその時ではないということです」

 

「安く見られたものだわぁ」

 

「ぼく個人としては困らされる判断です。なので」

 

ラインハルトは落ちていた一本の剣を拾い上げる。

 

「こちらでお相手します。何かご不満でも?」

 

「いえ、素敵。素敵だわぁ!!楽しませて頂戴ね!」

 

そしてエルザ対ラインハルトの戦いが始まった。

 

エルザは再びヒビの入ったナイフで斬りかかるがラインハルトはいとも簡単にナイフの柄と刃の部分を持っていた剣でへし折る。

 

「武器が失ったのなら投降をお勧めします」

 

「・・・・・」

 

エルザは黙ったままラインハルトに向かう。

 

「!!」

 

エルザの射的距離に入った途端エルザは隠していた3本目のナイフを手に持ちラインハルトに斬りかかる。

 

しかしそれをいとも簡単に躱すラインハルト。

 

「よく躱したわね。」

 

「ぼくは世界から恩恵を受けていますので」

 

「(恩恵?)」

 

ラインハルトの言葉にサンジは首を傾げる。

 

「しかし牙はこれだけではないの。」

 

その言葉と同時にエルザは再び盗品蔵の壁や床や天井をベラミーのように飛び回る。

 

「牙が無くなれば爪で」

 

壁を蹴りラインハルトに斬りかかるが防がれる。

 

「爪が無くなれば骨で」

 

天井を蹴り斬りかかるが防がれる。

 

「骨が無くなれば命でそれが腸狩りのやり方よ」

 

何度も何度も移動を繰り返し攻撃するがその全てを防ぐラインハルト。

 

「(こいつ・・あのマリモと・・・いやそれ以上か・・?)」

 

サンジは仲間のゾロとラインハルトの強さを見比べる。サンジの評価は今のところラインハルトの方が上という判断だが。

 

「(もしかしたらあの七武海の鷹の目と互角かもしれねーな)」

 

 

サンジがいろいろな考察をしているがいつの間にかにクライマックスにへと突入していた。

 

 

「何を見せてくれるのかしら?」

 

「アストレア家の剣戟を」

 

エルザとラインハルトは向かい合い。

 

 

「腸狩り。エルザグランヒルテ」

 

「剣聖の家系。ラインハルト・ヴァン・アストレア」

 

互いに名乗りあい構える。そして、

 

 

ラインハルトの持つ剣が白い光を発しそれが徐々に強くなる。

 

「これはまずいな」

 

サンジは危険を察知したのか仮サテラを抱える。

 

「え!?何?」

 

「ちょっと飛ぶぜ!」

 

そしてサンジは仮サテラを抱えたまま空にへと飛んでいった。もちろん天井は破って。

 

「おい小僧!!儂も助けんか!!」

 

「うるせークソジジイ!!男なら自分の身は自分で守りやがれ!!」

 

「はああああっ!!!」

 

ラインハルトは剣を振り降ろし。

 

 

 

 

盗品蔵は大爆発を起こした。

 

 

 

「うおっ!!」

 

あまりの爆風にサンジは身を煽られたが空中で体勢を立て直す。

 

 

そして爆発は収まり再びサンジは仮サテラを抱えたまま盗品蔵にへと戻った。

 

 

「ふう・・・よし」

 

「良しじゃねえぞゴラ!!」

 

「おっと!!」

 

 

サンジはキレながらラインハルトの横顔に蹴りを繰り出すが手の甲でガードされる。

 

「!!」

 

ラインハルトは何故か驚いた表情をしながら自身の手の甲を見つめた。

 

「どうしたんだいサンジ?」

 

「どうしたもこうしたも俺たちを巻き込むつもりか!!」

 

「いやーごめんごめん。サンジがその方を連れて空に逃げてくれたからボクも少し本気を出せたんだ。それにその御老人にもちゃんと気をつけてって・・・あれ?」

 

ラインハルトとサンジと仮サテラは倒れているロム爺を見る。

 

「おい爺さん。何倒れてんだ?」

 

サンジがゲシゲシと倒れているロム爺を蹴る。

 

「気絶してるなこれ。おそらくお前の今の爆音の所為だろ」

 

「・・・・・・」

 

サンジの言葉に何も言えなくなるラインハルト。

 

「まあいいか。エルザも倒せたことだし」

 

「そ、そうね。無事に終わったわね」

 

サンジの言葉に仮サテラが答える。

 

「さて。これでほとんど終わった訳だし。早速君に聞きたい事があるんだ」

 

サンジの真剣な眼差しに仮サテラはビクっとなる。

 

「えーと・・・私に聞きたい事って?」

 

困った顔をする仮サテラにサンジはデレデレとするが今はそれより為さなければならない事がある。

 

「今回の事で共闘した貴方とおれ。これは運命の巡り合わせに他ならない。」

 

「えーと・・・運命かどうかはわからないけど・・・恩人である事には変わりないわね。」

 

「おれからの質問は1つ。」

 

仮サテラはサンジの質問を待ちながら内心ドキドキしている。

 

 

 

 

 

 

 

 

「君の本当の名前を教えてほしい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バキバキッ!!

 

 

「「なっ!!」」

 

 

ラインハルトと仮サテラは同時に声を上げた。

 

「エルザ!!」

 

瓦礫の中から傷だらけのエルザが出てきたのだ。ナイフを構えながら仮サテラに迫る。

 

ラインハルトも急ぐが間に合わない。

 

「今いいところなんだ・・・邪魔すんじゃねえええよ!!!!」

 

「なっ!!!」

 

ついにぶちぎれたのかサンジはついに女に蹴る・・・

 

「があっ!!」

 

エルザは吹き飛ばされて壁に激突した。

 

「蹴りの風圧で・・・・吹き飛ばした・・?」

 

ラインハルトが驚いていた。

 

そう。サンジは女は蹴らない。これはサンジの中で絶対の真理だ。

 

その為サンジは足を振り上げた時の勢いに発生した風のみでエルザの体を持ち上げ吹き飛ばしたのだ。

 

「そこまでだエルザ!!」

 

ラインハルトがサンジと仮サテラの前に立ち庇うようにしてエルザに言う。

 

「っち!」

 

エルザは舌打ちをつきながらナイフをラインハルトに投げつけるが、そのナイフはラインハルトには当たらずに不思議なことにナイフ自身がラインハルトを避けるようにして外れていった。

 

「いずれここにいる全員の腸を切り裂いてあげるわ。精々それまで腸を可愛がってあげてて」

 

そう言うとエルザはそのまま大破した天井から逃げて行った。

 

「二人共怪我はないかい?」

 

「俺はねーよ」

 

「私も平気よ」

 

そしてサンジは1つ深呼吸をして仮サテラの前に立つ。

 

 

「じゃあ気を取り直して。君の名前を教えてほしい」

 

 

サンジは仮サテラの目を真っ直ぐ見て言う。そしてついに、

 

 

 

 

「エミリア。私の名前はエミリア。ただのエミリアよ」

 

 

エミリア。そう自身で名乗った。

 

 

「そうかエミリアか。いい名前だ。」

 

エミリアの最高の笑顔に惚れそうになるサンジだが名乗られたからには名乗り返さなければならない。

 

「おれの名前はサンジ。君の名前を知れてよかった」

 

「私もよサンジ。そして私を助けてくれてありがとう」

 

エミリアが手を差し出しサンジはそれにすぐに応える。

 

 

エミリアの名前を知り。そして彼女の笑顔が見れた。

 

 

 

サンジにとってこの世界に来て一番の幸せはタバコなんかじゃなく。

 

 

今この瞬間だった。

 

 

 





ホーキンスって弱くね?


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月下






腸狩りのエルザを撃退したサンジ達はラインハルトの所為で壁と天井が8割方無くなった盗品蔵に留まっていた。

 

 

「そういえばラインハルトはどうしてここがわかったの?」

 

エルザとの戦いの所為か高級な布で作られた服を汚したエミリアがラインハルトに聞く。

 

「エミリアちゃん。それは多分そこにいる子が教えてくれるぜ」

 

 

サンジはタバコを吸いながらある方向に視線を向ける。それに釣られてエミリアが振り返る。

 

「あなた・・・」

 

「よ、よお・・・」

 

生き残っていた盗品蔵の壁に半身を隠しながらこちらを除くフェルトの姿がそこにあった。

 

「彼女が助けを求めながらこの近くを走っていてね。そこに偶然近くにいたのが僕だったというわけさ」

 

フェルトの代わりにラインハルトが答え、エミリアは納得する。

 

「それにしてもエルザを相手によく無事だったね。サンジ」

 

「まあな」

 

ラインハルトの問いにサンジは適当に返すが、

 

「本当はあのエルザよりサンジの方がすごーく強かったのよ」

 

「それは本当かい?」

 

エミリアの言葉に疑りの感情を宿しサンジを見るラインハルト。

 

「さあな。そんな事よりこの後どうすんだ?」

 

無理矢理話題を逸らすサンジにエミリアは困惑顔。

 

ラインハルトは肩をすかして笑みを見せる。

 

「それもそうだね。もう夜も更けたしそろそろお開きにしようか」

 

ラインハルトのこの言葉と同時にサンジは倒れているロム爺の元へ向かう。そしてロム爺の容態を見ているのかサンジはロム爺の肩を揺らし始める。

 

「ところでエミリア様。彼・・・サンジとは一体どういう関係で?」

 

「サンジとはここで初めてあったのよ。私と一緒であのフェルトって子に何か大切な物を盗られたらしくて」

 

エミリアとラインハルトは自身の4倍の重さはありそうなロム爺を軽々と持ち上げるサンジを見た。

 

「サンジ。君は一体どこから来たんだい?」

 

「あーおれはな・・・・・」

 

バツが悪そうな顔をしながら笑って誤魔化すサンジにラインハルトは少し怪しんだ。

 

「じゃあ質問を変えよう。サンジは今日帰る場所はあるのかい?」

 

「ある。だがしばらくはこの国にいるつもりだ。どこか屋根のある場所を教えてくれると助かる」

 

「それならボクの家に来るといい。食客扱いとして迎えよう。」

 

「ホントか!」

 

ラインハルトの提案は正直言ってサンジにとって幸運以外の何物でもなかった。元の世界に帰る方法を探すには時間がかかるだろうと踏んでいたサンジはしばらくこの国にいる滞在するつもりでいた。だがそれにはまずしばらく生活するための家が必要だ。しかしそんなものあるわけがない。宿に泊まるとしても金が必要になる。

 

働いて金を稼ぐ事は出来ない事はないが、そんなすぐに仕事は見つからない。

 

サンジは超がつくほどの一流コック。どこかレストランなどで料理の腕前を見せればすぐ採用になるだろう。

 

しかし問題が一つある。それは文字が読めない事。

 

看板の文字。メニューの文字。それが読めない人間を雇う場所などあるだろうか?いやないだろう。

 

つまりラインハルトのこの提案はその問題をまとめて解決してくれるものなのだ。

 

「ロム爺・・・」

 

「大丈夫だ。ただ気を失っているだけだ」

 

フェルトはロム爺が心配なのか早足で向かってくる。そしてサンジは一度ロム爺を床に降ろした。

 

「いろいろわりーな。ラインハルト。お言葉に甘えてお前んちで世話になるわ」

 

「ああ大丈夫だよ。」

 

「それにしてもあの二人は一体どうなるの?」

 

エミリアはロム爺とフェルトを見て心配そうな声音でラインハルトに聞く。

 

「職務上、見逃す事は出来ない部類であると考えます。しかし・・・」

 

サンジとエミリアはランハルトの溜めを気にしたのか同時にラインハルトの顔を見た。

 

 

「生憎今日は非番なので」

 

 

笑いながらそんな事を言うラインハルトにエミリアとサンジは笑みを浮かべた。

 

「悪い騎士様ね」

 

 

そしてエミリアはフェルトに近づき聞いた。

 

「そのお爺さんは貴方の家族?」

 

「・・・そうみたいなもんだ・・・私にとってたった一人の・・・爺ちゃんみたいなもんだ」

 

 

「そう・・私も家族は一人だけ。大事な時にスヤスヤと寝てるけど大事な家族」

 

「もっと怒ってるのかと思ってた・・・」

 

フェルトはエミリアの顔色を窺う。

 

「命を救ってもらったんだ。恩知らずな真似は出来ねえ。盗ったものは返すよ」

 

 

 

ーーーーこれで一件落着か。

 

 

 

サンジは心の中でそう呟きながら残り5本となったタバコの箱の中から一本取りだし火をつける。

 

 

そしてフェルトはポケットから3センチくらいの大きさの徽章を取り出しエミリアに渡そうとした時、

 

 

 

 

「これは!!!」

 

 

 

「え!」

 

「え?」

 

「ん?」

 

 

ラインハルトの後にエミリア、サンジ、フェルトは同時に声を上げた。

 

そしてサンジが見たのはフェルトの手首をがっちり掴んだラインハルトの姿だった。

 

 

「な、なんてことだ・・!!」

 

「おいおい。どうしたんだテメぇ」

 

顔色が急に悪くなったラインハルトにサンジは声を掛ける。

 

 

「君の名前は!」

 

しかしサンジを無視してフェルトに質問攻めを始めた。

 

「ふぇ、フェルト・・」

 

「家名は!年齢はいくつだい!?」

 

 

「家名なんてねえよ。多分15くらい・・・てか放せよ!!」

 

本気で抵抗を始めるフェルトだがラインハルトの手は全く振り解けない。

 

「おいおい。一体どうしたってんだ」

 

「エミリア様。先ほどの約束は守れなくなりました。彼女の身柄は私が預からせてもらいます」

 

「え・・?一体どういうこと?徽章盗難での罰というなら・・・」

 

「それも決して小さな罪ではありませんが目の前の光景を見過ごす罪深さに比べれば些細な事に過ぎません。」

 

そしてラインハルトは無理矢理フェルトを立たせた。

 

「ついてきてもらいたい。すまないがが拒否権は与えられない」

 

ラインハルトがそうフェルトに言った瞬間。それは突然飛んできた。

 

 

首肉(コリエ)シュート!!!」

 

ドォォン!!

 

「「え!!」」

 

突然真夜中に響いた衝突音。咄嗟にエミリアとフェルトが声を上げて反応する。

 

「なんのつもりだい?」

 

「テメェその手を離せ」

 

サンジの右足の蹴りをラインハルトは悠々と右手で防ぐ。

 

「か弱いレディに手を出すクソ野郎は俺が許さねえ。」

 

「すまないがサンジ。これは必要なことなんだ。わかってくれ」

 

サンジとラインハルトは鍔迫り合ったまま話し続ける。

 

「せめて何か理由を聞かせろ。」

 

「悪いが出来ない。」

 

「なんだと」

 

サンジの顔が険しくなる、そしてラインハルトは、

 

「うおっ!!」

 

少し手を押し返した。

 

そのままサンジは一気に吹き飛ばされて盗品蔵の外まで飛んでいってしまった。

 

「すまないサンジ。事は一刻を争うんだ」

 

そしてラインハルトはフェルトに振り返り手をかざした。

 

「うっ・・・」

 

すると一瞬にしてフェルトの意識が消えて眠りについてしまった。

 

「ラインハルト・・・・貴方は一体何をしているの?」

 

「エミリア様。この事は必ず後日ご説明致します」

 

ラインハルトの真剣な顔付きにエミリアは、

 

「わかったわ・・・」

 

その場では何も聞かなかった。

 

「あとはサンジを説得しないと」

 

ラインハルトは一旦フェルトを床に寝かせてサンジが吹き飛んでいった方角に向く。

 

タッタッタッタッタ。

 

「・・・・・・」

 

何者かが地面を連続で蹴っている音がラインハルトに聞こえた。

 

「エミリア様。申し訳ありませんがこの場から少し離れていてください。」

 

「え?どうして・・?」

 

「理由は聞かずに。さあ!」

 

「わ、わかったわ・・・ケンカはダメだからね!!!!」

 

「かしこまりました」

 

そしてエミリアは盗品蔵から足早に出て行き、この場で意識ある者はラインハルトと、

 

悪魔風脚(ディアブル・ジャンブ)・・・・」

 

脚に炎を纏ったサンジ だけだった。

 

 

一級挽き肉(プルミエール・アッシ)!!!」

 

 

 

黒足VS剣聖

 

 

新円の月下の元に戦いが始まる。

 

 

 

 

 

 

 






次で一章最終話です!


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理由

サンジも最悪の世代だったらいいのに。


悪魔風脚(ディアブル・ジャンブ)・・・・」

 

 

サンジVSラインハルト

 

 

「足が・・・・炎に包まれている?」

 

 

ラインハルトは自身に向かってくるサンジを見て呟いた。

 

サンジの右足が燃えているのだ。これは比喩などではなく現実に起きている事。

 

「サンジは火属性の魔法を使えるのか?」

 

一級挽き肉(プルミエール・アッシ)!!!」

 

 

 

サンジの高速の右蹴りがラインハルトに迫る。

 

「っち」

 

サンジが舌打ちを打つ。ラインハルトが自身の攻撃を半身を逸らして躱したからだ。

 

 

「待つんだサンジ!!ボクは君と戦う気はない!!」

 

「人を吹き飛ばしといてよく言うぜ!!」

 

 

サンジは連続の蹴りを繰り出すがラインハルトはそれを全て避けて躱す。

 

だが、

 

ガキッ!!

 

「なっ!?」

 

サンジの蹴りがラインハルトの右肩にヒットしたのだ。

 

「(ボクが攻撃を受けた?)」

 

「何考えてやがる」

 

サンジは攻撃を受けた後のラインハルトの一瞬の隙を逃さなかった。

 

「しまっ・・!」

 

 

 

腹肉(フランシェ)ストライク!!!!!!

 

 

「ぐっ!!」

 

 

サンジの渾身の蹴りが決まり勢いよく吹き飛ばされたラインハルトはそのまま盗品蔵の外にまで吹き飛ばされていく。

 

 

サンジは燃えた右足を床に降ろして咥えたタバコを外す。

 

「・・・・・・・」

 

サンジは気を抜かないままラインハルトが吹き飛んでいった事により障害物が無くなった地平線を見ていた。

 

 

とこ・・・・・とこ・・・・・。

 

 

誰かの歩く音がする。

 

 

「さすがは剣聖だな。俺の蹴りを食らって無傷で済んだ奴は初めて見た。」

 

 

その音の主は、

 

 

「サンジ。君は本当に強いね。」

 

真っ白な制服を少し汚したラインハルトだった。

 

 

「まだやるのか?」

 

「・・・・・」

 

 

ラインハルトは何も返さない。

 

「サンジ。ボクはあの少女を至急保護しなければならない。君にした事も本当に申し訳なく思っている。すまなかった。」

 

 

ラインハルトはサンジに頭を下げて自分のしてしまった事を謝罪した。

 

「ならば理由を聞かせろ。何故フェルトちゃんを連れていく。」

 

「・・・・・・」

 

 

ラインハルトはまた沈黙する。

 

 

「答えろ!!!!」

 

サンジはラインハルトに返答を催促させるが、

 

「悪いができない。だがいずれ必ず君が納得する答えを持ってくる。」

 

「信用できない」

 

「それでも信じてもらうしかない」

 

 

サンジは新しいタバコに火を付け、

 

 

「なら。こうしよう」

 

 

「・・?」

 

 

 

サンジはある一つの提案ををした。

 

 

「フェルトちゃんを連れて行きたくば、おれを倒せ」

 

 

サンジの提案はラインハルトには少し理解できなかった。それは、

 

「どうしてサンジと戦わなければならないんだ。」

 

そう。考えてみればサンジとフェルトの関係というのはまだ極僅かの事なのだ。

 

 

エミリアが言っていた。サンジはフェルトに大切な物を盗られた為、それを取り戻す為にこの場に来たと。例え盗人でも知り合いから物を盗む訳はない。

 

ラインハルトは頭を働かせてサンジとフェルトの関係を一瞬にして見抜いていた。

 

つまりサンジとフェルトは知り合ってまだ一日と経過していない。

 

サンジが自身と戦ってまでフェルトを守りたいという理由がその短い時間で生まれるはずがないのだ。大切な物を盗んだ相手とならば尚更。

 

しかしサンジはまだ関係の浅いフェルトを守る為に覚悟を持って自身に戦いを挑んだのだ。

 

ラインハルトは全く理解できなかった。

 

 

「お前がフェルトを連れていく理由を教えないならおれもフェルトを守る理由をお前には教えない。だが、」

 

 

 

 

 

 

レディーを守るのに理由なんて必要か?

 

 

 

 

「・・・・・なるほど。そういうことか」

 

 

ラインハルトは理解したのか自然と笑みを浮かべた。

 

 

「わかった。なら君を倒して彼女を連れていく。」

 

 

ラインハルトは落ちていた剣を拾って構える。

 

「ならおれはお前を倒してフェルトちゃんを守ってみせる」

 

サンジは片足を上げて炎を纏わせる。

 

 

 

 

 

剣聖。ラインハルト・ヴァン・アストレア

 

VS

 

黒足。ヴィンスモーク・サンジ

 

 

 

 

 

最後の戦いが始まる。

 




すいません!

次で一章最終話です!


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一章最終話になります!



 

 

剣聖 ラインハルト・ヴァン・アストレア

VS

黒足 ヴィンスモーク・サンジ

 

ラインハルトは剣を両手で握り構え、サンジは右足を上げて炎を纏わせる。

 

双方一瞬の気も抜かずに相手を見据えて動かない。

 

その時間は永遠に思えて一瞬であった。

 

 

「いくぞ」

 

「ああ」

 

 

最初に仕掛けたのはサンジだった。

 

悪魔風脚(ディアブル・ジャンブ)・・・・」

 

 

 

サンジは高速でラインハルトに接近する。

 

そしてラインハルトはサンジの一挙一動を見逃さずに観察している。

 

まるで自身と同等の力を持つ者と戦う時のように。

 

ほほ肉(ジュー)シュート!!!!」

 

「(速い!!)」

 

ラインハルトは驚きながらもサンジの蹴りを上体を逸らして紙一重で躱す。

 

「へえ」

 

サンジは自身の蹴りを躱したラインハルトを見て笑みを浮かべる。

 

「次はこっちの番だ」

 

ラインハルトもすぐに体勢を立て直し持っていた剣をサンジに当てにいく。

 

 

「おおっと!!」

 

ラインハルトの超高速の剣戟がサンジを襲う。

 

しかし・・・。

 

「(ボクが攻撃を当てられない・・!?)」

 

 

サンジはラインハルトの剣を全て躱し続ける。所々髪や服に掠りはするが決定的な物は1つも貰わずに躱し続ける。

 

 

「(やっぱりこいつ!!あの迷子マリモよりも強え!)」

 

 

サンジは直接ラインハルトと戦った事により仲間の剣士ゾロと比べてラインハルトの方が強いと確信した。

 

 

悪魔風脚(ディアブル・ジャンブ)・・・切肉(スライス)ストライク!!!!」

 

 

ドオォォォォン!!!

 

 

ラインハルトの剣の柄の先を蹴り上げるサンジ。まず初めにサンジは獲物(武器)を仕留めようとしたのだろう。

 

ラインハルトは剣聖だ。ゾロと同じで主力武器(メインウェポン)は剣だ。

 

その剣さえ外してしまえばサンジは自身に大きなアドバンテージが来ると思い実行した。

 

 

だが、

 

「惜しいねサンジ」

 

「ちっ!!」

 

サンジの強力な蹴り上げをラインハルトは左手一本で防ぐ。

 

それにより自身の武器の無力化を防いだ。

 

 

ドゴンッ!!

 

「ぐおっ!!」

 

サンジの右の脇腹にラインハルトの右後ろ回し蹴りが炸裂した。

 

サンジは最初と同じように盗品蔵の外にまで吹き飛ばされる勢いで飛んでいくが今度は地面に両足を付けて耐える。

 

「おおおお!!!」

 

サンジは自身に喝を入れたのか大声を上げながらラインハルトに襲い掛かる。

 

ラインハルトも再び剣を構えて応戦の態勢になる。

 

 

 

 

「消えた!」

 

 

目の前にいたサンジが消えたのだ。

 

 

そして次の瞬間にラインハルトはこの世に生を受けてから一番の衝撃と対面することになる、

 

悪魔風脚(ディアブル・ジャンブ)・・・」

 

「(後ろか!!!)」

 

気付いた時にはもうすでに遅し。

 

 

最上級挽き肉(エクストラ・アッシ)ィィィィィ!!!!」

 

「ぐああっ!!!!!!」

 

 

サンジの炎を纏った強力な蹴りがラインハルトの背後から烈火の如く襲い掛かる。

 

 

「うおおおおおおおお!!!」

 

 

サンジはラインハルトの悲鳴を聞いた後も力を一寸も緩めずにラインハルトの体に自身の蹴りを連続で打ち込む。その所為で盗品蔵の床まで壊されて辺りに土埃が舞っていく。

 

 

そして視覚の機能が使えなくなるくらいにまで土埃が舞った時。

 

それは起こった。

 

 

 

「!!!」

 

 

ズシャッ!!!

 

 

「があっ・・・!」

 

 

サンジの蹴りの動きが止まり一気に土埃が止んでいく。

 

そして反射的にサンジは自身の胸を抑えて膝をつく。

 

「はあ・・・・はあ・・・」

 

膝をつくサンジの後ろに息を切らしていたのは自身の腰に携えてあった剣を持ったラインハルトであった。

 

「全く・・・なんて人なんだ君は・・・・はあ・・はあ・・・」

 

ラインハルトの服は至る所が破れていて肌けている部分には痣などが確認できる。

 

顔にも複数の痣や傷がありとても痛々しそうである。

 

それに対しサンジは胸に剣で斬られたような巨大な傷があり、その傷からはポタポタと鮮血が流れ出ている。

 

サンジの傷は深いのか胸を抑えながら立ち上がれないでいる。必死に立とうともがいてはいるが。

 

そんなサンジを見たラインハルトは考える。

 

「(初めてだ。剣聖として生きてからここまでダメージを負わされたのは。)」

 

「なんだてめえ・・・まさか一撃入れたくらいで勝ったつもりでいるのか」

 

サンジは傷を抑えながら立ち上がる。

 

「そんな事ないよ。まだ勝負はついていない。わかっているさ。さあ決着をつけよう」

 

ラインハルトは自身の腰に携えてあった聖剣を構える。

 

 

 

二人は同時に動いた。

 

 

「「はああ!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボクはもう行くよ。約束通り君を倒したからこの子はボクが連れていく。」

 

 

ラインハルトはフェルトをお姫様抱っこの形で抱え上げてうつ伏せで倒れているサンジに言った。

 

 

「ありがとうサンジ。」

 

 

 

黒足と剣聖の勝負は剣聖の勝利に終わった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ラインハルトは考えていた。

 

もちろんサンジの事についてだ。

 

 

「加護が発動しなかった・・・」

 

 

加護というのは世界の恩恵と言われる物で世界で数えるほどの人間しか所有できない世界からの祝福だ。

 

 

加護にもいろいろ種類がある。

 

生活に役立つ加護。

戦闘に役立つ加護。

交渉に役立つ加護。など。

 

加護を持つ者は1つ以上の加護を持つ事ができない。

 

しかしラインハルトは世界から愛され過ぎている存在だ。

 

様々な分野の加護を全て合わせても100は軽く超える。

 

 

 

その中には戦闘に関する加護も多く含まれている。

 

 

「(一体どういうことなんだ・・・今まで加護が発動しない時なんてなかったのに)」

 

 

ズキッ。

 

 

「いっつ・・」

 

ラインハルトは体中にできた痣や傷で痛みを感じた。

 

「これが痛み・・・・・」

 

サンジが現れるまでラインハルトの体に傷を負わせたものはただの一人もいなかった。

 

つまりラインハルトは今日まで痛みを知らないで生きて来たのだ。

 

「痛みというのは嫌なものだな」

 

ラインハルトは初めての痛みを噛みしめながらフェルトを抱えて足早に貧民街から立ち去るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「負けたのかおれは・・・・・」

 

うつ伏せから仰向けに体勢を変えたサンジが呟いた。

 

「女一人も守れずにこの様か。情けねえ」

 

腕を自身のデコに置き呟く。

 

「サンジ・・・?」

 

鈴の音のような声がサンジを呼ぶ。

 

「エミリアちゃんか」

 

すぐにサンジはその声の主の正体を見抜きその名前を呼ぶ

 

「ちょっとサンジ怪我してるじゃない!!どうしたのこれ!!!」

 

サンジの胸の傷を見て驚いたエミリアがすぐさま治療に取り掛かる。

 

「安心してくれ。これくらいじゃ俺は死なねえよ」

 

「ちょっと静かにしてて!!」

 

エミリアに怒られたサンジはどこか嬉しそうにしていた。いつにも増して女性に弱いサンジだ。

 

 

「あ、」

 

ここでサンジはある事に気づいた。

 

「どうしたのサンジ?」

 

 

突然声を上げたサンジにエミリアは疑問に思い聞く。

 

 

「そう言えば向こうで最後に見た物も月だったな」

 

破れた盗品蔵の屋根から覗く月は前の世界で最後に見た月と同じ形をしていた。

 

 

 



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二章 屋敷編
書庫




二週も無断で休んですいません。




数時間で沈んでしまうかもしれない夕日をバックにサンジは海岸を走る。

 

 

「待ってえええんサンジきゅうううん♥♥♥♥」

 

「うるせえええ!!ついてくんなああ!!」

 

 

走るサンジの後ろについてくる者はそれはそれは綺麗ドレスを身に着けオシャレをした。

 

「「「「サンジきゅううううん♥♥♥♥♥」」」」

 

「ああああああああああ!!!」

 

 

オカマだった

 

 

「いだっ!!」

 

サンジは段差のない砂浜で転び倒れる。同時に足を掴まれたような感覚に襲われる。そして足元を見てると。

 

「うっふううん♥♥♥♥」

 

「(あっあああああああああ!!!!!!!)」(声にならない声)

 

 

地面を潜って来たのか上半身だけを地中から出したオカマ(キャロライン)がサンジの足を両手でガッシリと掴んでいた。

 

 

「「「「サンジきゅうううん♥♥♥♥♥」」」」

 

 

そして後を追ってきていたオカマ(悪魔)たちが一斉にサンジに襲い掛かるその瞬間。

 

 

誰かに両手を握られている感覚も感じた。

 

 

「ぎゃあああああああああああああああ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぶっはあああ!!はあ・・・はあ・・・何だ夢か・・・」

 

サンジは先ほどの地獄は夢だとわかり安心したのか深いため息をついた。

 

上半身だけを起き上らせて周囲の確認を始める。

 

「ん?どこだここ?」

 

そしてすぐにサンジは自身の首を様々な方向に曲げて回りの状況を確認した。

 

サンジが今いる場所。

 

それは一言で言えば寝室であった。

 

だがかなり豪華な装飾をされている寝室だ。

 

まるで貴族が寝泊まりしそうなほどの豪華な寝室。

 

サンジが眠っていたベッドもキングサイズ程の大きさで毛布もシーツも新品同様で寝心地を最優先した所為か肌触りが布の中でも一級品であるとサンジはすぐに理解した。

 

そしてベットの前には巨大な絵画が飾られていたり高級そうな絨毯が床に敷かれていたりと起きて早々のサンジの困惑は必然であった。

 

「ここは・・・もしかしてエミリアちゃんの家か?」

 

ベットから起き上がり無駄に広い寝室の床を裸足で歩いて扉に向かう。

 

 

ガチャ

 

「家っつうか・・・屋敷だな」

 

床は紅い絨毯。壁には連続して高級な額縁に入れられ一際存在感を示す絵画。天井には派手に装飾されたシャンデリア。

 

それだけ見れば家ではなく屋敷だと認識を変えるのには充分だった。

 

そしてサンジはひたすらに廊下を歩いていく。

 

 

ピクッ

 

 

「ん?」

 

歩いている内にサンジはある一つの扉に視線を向けた。

 

「誰かいるな」

 

サンジは見聞色の覇気でその扉の向こうに誰かがいる事を見抜く。

 

ガチャ

 

「ノックくらいするかしら」

 

「子ども?」

 

扉の向こうには椅子に座り本を読む少女がいた。

 

年齢はフェルトよりも下か。十歳ほどでフリルの装飾を施した赤いドレスを着用している。自身と同じ色の髪をドリル状に結んだ可愛らしい女の子。

 

「ここは・・・図書館か何かか?」

 

少女の次に疑問に感じたのはこの部屋。

 

広さはサニー号程の広さはあるだろうか。高くそして長い本棚が何列も並んでおり、その本棚にはぎっしりと本が敷き詰められている。

 

「(ロビンちゃんとチョッパーが喜びそうだな)」

 

「べティを無視すんじゃないかしら」

 

 

自身をべティと名乗ったこの少女は言葉に不満を孕ませながらサンジに言う。

 

「え・・ああ。悪い悪い。ちょっとこの部屋に驚いちまってな。君はこの屋敷の住人かい?」

 

サンジも相手が少女な所為かいつもより低姿勢で受け答えをする。

 

「お前に教える義理なんてないかしら」

 

冷たく返されたサンジは多少なりともショックを受ける。しかしサンジにとってここがどこなのかの把握は必要な事であり少し跳ね返されたくらいで聞く事を諦める事は出来ないのだ。

 

「頼む。教えてくれないか。わからない事が多すぎて結構混乱してるんだ、お願いだ」

 

「べティーの寝室なのよ」

 

マジトーンで頼み込みをするサンジにちょっとした罪悪感を得たのか目の前の少女は答える。しかしサンジが求めている答えと違った所為か内心サンジは「そうじゃねーよ」とツッコんだ。

 

「寝室っていうか図書館だろ・・・いや書庫って言った方が正しいか?」

 

「お前の言う通りここはこの屋敷の主の禁書庫。べティーはここの番人と言えばわかるかしら」

 

自身の事をべティーと名乗る少女にいろいろ情報を貰うがサンジが欲しいものとは少しズレているものばかりな為サンジは今も尚この場所がどこなのかわからないでいる。

 

「そうかわかった。いろいろ教えてくれてありがとな。べティーちゃん」

 

「べティーの事をべティーと呼ぶのはべティーと二ーチャだけかしら」

 

べティーと呼ばれたのが余程腹立ったのか幼女のクセに眉間にしわを寄せてサンジを睨む。

 

「じゃあなんて呼べばいいんだ?」

 

「べティーの名前はベアトリスよ。気軽にべティーのことをべティーと呼ぶんじゃなかしら。」

 

「そうか。ベアトリス・・・可愛い名前じゃないか。」

 

「なっ!!」

 

サンジの笑顔での不意打ち可愛いはベアトリスと名乗った少女を動揺させた。

 

「俺の名前はサンジ。一流のコックだ。何か食いたいものがあったら俺に言いな。なんでも作ってやるぜ」

 

そう言いながらサンジはベアトリスに向かってほほ笑み掛けた瞬間。

 

「うるさいかしらーーー!!!」

 

「ドボアッ!!」

 

サンジは勢いよく扉まで吹き飛ばされそのまま激突。さらにその衝撃で扉が勢いよく開き扉の向こうにまで吹き飛ばされていった。

 

「はあはあ・・・何なのよあいつは・・・」

 

右手を正面に突き出しながら息切れするベアトリスの頬は綺麗な紅色に染まっていた。

 

 

 





ベアトリスとサンジ のキャラがイマイチ違う…

不定期更新です。


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絶叫



旱害のジャックを今まで早害のジャックと呼んでた。


「いつつ・・・何だ今のは・・・あれも魔法なのかって・・・え?」

 

サンジは謎の力で吹き飛ばされた後すぐに気づく

 

「ここは・・・最初に俺がいた部屋?」

 

サンジは辺りを見回して今自分がどこにいるのかの把握をする。

 

しかしサンジが見たのは最初に自分がいた豪華な寝室だった。

 

「どういうことだ?何であの部屋とここが繋がっているんだ?」

 

サンジが疑問に思った事。それは何故か今自分がここにいるのか。

 

書庫の外に出たら入っていった時と同じく廊下に出るはずだ。

 

つまりベアトリスと名乗った少女がいた書庫と最初に自分がいたこの寝室が直接繋がっているはずがないのだ。

 

「(確かあの書庫にたどり着く為にはまずこの寝室を出てしばらく廊下を歩いていかないといけないはずなのに・・・これも魔法かなにかか?)」

 

試しにサンジはこの寝室の扉を開けて確認する。

 

「さっきの廊下か」

 

サンジが見たのは連続した高級絵画が並ぶ廊下。

 

「さっきの書庫と繋がっていないだと?」

 

あまりに不可解な出来事にサンジは頭を悩ます。

 

「これも魔法の類なのか・・・まあそういうことにしておこう」

 

わからない事に何時までも時間を掛けているのが馬鹿らしくなったのかサンジは魔法という事で片を付けた。

 

そしてサンジはいつの間にかに着せられていた寝巻のような服を脱ぎ寝室の隅に置いてあったクローゼットの中から自身の服を見つけた。

 

「(いい匂いがする・・)」

 

誰かが洗濯してくれたのか。服から花の香りがするためサンジは無意識に顔をうずめた。

 

そしてシャツ、上着、ズボンと着ていくうちにある事に気づく。

 

「(そういえば破れた箇所が一つも見当たらねえな)」

 

ラインハルトと戦いかなりのダメージを自分の服に負わせたはずなのに破けた部分が一つもないのだ。

 

「・・・いや、縫い目があるな」

 

上着の胸の部分を触って確認すると明らかに縫い合わされた後があるのに気づく。

 

「誰かが縫ってくれたのか」

 

そして全ての服を身に着け最後に気づいたのは、

 

「タバコがねえな」

 

まだ全部吸いきってないタバコの箱が見当たらない。

 

サンジはクローゼットの中やズボンのポケットの中などを探すが見当たらない。

 

 

「御探し物はこれですか?」

 

「え?」

 

サンジは声がした方・・・つまりは後方を振り返る。

 

「ああ・・・ああ・・・・」

 

そこには瓜二つの姿をした二人超美少女メイドが互いの頬をすり合わせながらサンジを見ていた。

 

片方は桃髪の美少女。髪は肩辺りにまでのショートカットスタイルで黒子一つない白い肌に髪と同じ色をした瞳を片方だけ出している。もう一方の目は自身の前髪で隠してしまっている。そして健康的な赤い唇を艶めいているのか少し光って見える。

 

もう一人の美少女は海を連想させそうな青い髪と青い瞳が特徴。色が違うだけで顔の造形などはほとんど最初に背説明した桃髪の美少女と一緒だ。

 

強いて違いを上げるのなら桃髪の少女は釣り目。青髪の少女は垂れ目。そして青髪の少女の方が胸が大きい。

 

「レムレム。お客様が急に動かなくなってしまったわ。」

 

「姉さま姉さま。お客様が突然動きを止めてしまいました」

 

「ああ・・・・ああ・・・・」

 

「「お客様?」」

 

 

そして、

 

 

「うおおおおおおお!!!!!!!!」

 

 

突然のサンジの絶叫。

 

双子と思われる姉妹は突然のサンジの絶叫に驚き一瞬体をビクッと震わせた。

 

 

「俺この世界来てよかったああああああああ!!!!」

 

 

サンジは泣きながらそんな本末転倒な事を叫んだのだった。

 

 






レムよりラムが好き。


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当然

猿王銃と因果晒し

威力同じ説


「姉さま姉さま。お客様が荒い息を立てながら私達を見てきます」

 

「レムレム。発情したお客様が性的な目で私達を見てくるわ」

 

「美少女メイド美少女メイドはあはあ」

 

双子と思われる美少女メイドを見てサンジは鼻息を荒くして少しずつ近づいていく。

 

さすがに気持ち悪かったのか双子のメイドはひきつった顔をしながらサンジが近づくにつれて後退していく。

 

それを察したサンジはすぐに自身の昂りを抑えて平常心になる。

 

「初めまして美しきお嬢さんたち。おれの名前はサンジと申します。お二方のお名前を教えてください」

 

まるで執事が主人に接する時のような作法でサンジは床に片膝を突き胸に手を添えて双子と思われるメイド姉妹に名を訊ねた。

 

「ラムはラムよ」

 

「レムはレムです」

 

「ラムちゃんとレムちゃんか!!双子なのかな?君達みたいな美少女に会えて俺は最高に嬉しいよ!!」

 

目をハートにしてどこかのオカマと同じようにクルクルと回りながら喜びを表現するサンジにラムとレムと名乗ったメイドは若干引き気味だ。

 

その時この部屋の扉をノックする音が響く。サンジはその音が聞こえたのと同時にこの寝室の部屋の扉の方を向く。

 

 

「おはようサンジ。朝から元気ね」

 

「エッミッリアチャーン!!!!」

 

王都で出逢った心優しき美少女。

 

エミリアであった。

 

「ここはエミリアちゃんのお家だったんだね~~!!」

 

海の底で並にユラユラと揺られている昆布のモノマネでもしているのだろうか。サンジは体全身を使ってそれを表現していた。

 

「正確には私の家じゃないけど・・・。でもサンジ本当に朝から元気ね。まるで子供みたい」

 

ふふふっと笑みを見せるエミリアにサンジは心を打たれて両手で自身の胸を抑え込んだ。

 

「ど、どうしたのサンジ!!胸を抑えて・・・まさか昨日の傷がまだ・・・」

 

本当に優しい子なんだとサンジは再確認した。ラインハルトにやられた胸の傷が痛んだと思ったのだろう。エミリアはすぐさまサンジの身の心配をして駆け寄ったのだ。

 

「違うぜエミリアちゃん。これは君の笑顔があまりにも美しすぎておれの心を愛の天使が鞭を打った痛みさ!!」

 

「ごめんね。ちょっと何言ってるかわからないわ。二人は意味わかる?」

 

「「全くわかりません」」

 

双子だから息はピッタリだった。

 

「そういえばお客様。これはお客様のズボンのポケットに入ってたものです。お返しします。」

 

青髪のメイド。レムがメイド服のポケットから手の平サイズの箱を取り出しサンジに渡す。

 

「あ、おれのタバコとライター。持っててくれたのか」

 

レムが持っていたのはサンジのタバコとライター。タバコに至っては中身はもう数本しか残されていないがサンジは一本取り出して口に咥える。

 

「初めて会った時から気になってたけどそれってもしかしてダバコ?」

 

エミリアがサンジのタバコに興味を持ったのか近づいて口に咥えたタバコを観察する。

 

「(ダバコ・・?ああそういえばあの盗品蔵のジジイが言ってたな。こっちの世界じゃタバコじゃなくてダバコっつうんだっけ?)」

 

「ああそうだぜ。エミリアちゃんも吸ってみるか?」

 

「遠慮しとくわ。ダバコは体に悪いものだって本に書いてあったもの」

 

「そうか。」

 

そしてサンジは返してもらったライターでタバコに火をつけて吸い始める。

 

「ではお客様。何か御用がありでしたらお呼びください。」

 

そう青髪メイドのレムが言うと桃髪メイドのラムも一緒に寝室から出ていってしまった。

 

「・・・・・・・」

 

サンジは出て行く二人の姿を無言で眺めていた。

 

「ねえサンジ?このあと私ね。朝の日課で庭に出るんだけどサンジも来る?」

 

前傾姿勢でサンジの顔の近くに自身の顔を持っていくという童貞を殺す行動をしたエミリア。今のエミリアの誘いで断らない男などいないだろう。例えそれが仲間の剣士だろうと。しかしサンジは・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい!!よろこんで!!」

 

 

 

 

 

 

鼻血を吹き出しながら全力で肯定したのだった。

 

 

 

 

 

当然の結果だった。

 

 

 

 

 

 



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日課



ルフィVSビックマム
ゾロVSスムージー
サンジVSカタクリ
ブルックVSオーブン
ナミ&ウソップVSクラッカー
フランキーVSダイフク
チョッパーVSスナック
ロビンVSペロスペロー
ジンベイVS他の兄弟達。

だと思うんだよねー



「朝からダラケルのもいいもんだな」

 

サンジは今いる超巨大な屋敷の超巨大な庭に寝そべりながら空を見上げる。

 

サニー号にいる時のサンジはまず朝起きると一味全員の朝食を作るのから始まる。

 

ルフィには大量の肉や米などの腹持ちする食事を。

ゾロやナミなどには一般の家庭と変わらない軽めの朝食を。

ロビンには紅茶。チョッパーには甘い卵焼きなど。

ウソップにもフランキーにもブルックにも仲間の好みを完全に把握しており、それぞれに合った朝食を毎日考えて作っているのだ。

 

「ふう・・・・」

 

タバコを吸いながら雲一つない青い空を見るサンジは心が洗われる感覚を覚えた。

 

「やあサンジ。おはよう」

 

「あん?・・なんだネズミか。俺になんか用か?」

 

寝転がっているサンジに近づいてきたのは手乗りサイズの小さなネズミだった。

 

「ボクの名前はパックだよ!それにしてもサンジ。この前はリアを守ってくれてありがとう。何かお礼をしないとね」

 

パックは寝転がっているサンジの顔の真上に浮きながら目を擦っていた。まだ寝起きなのだろう。

 

そしてサンジは体を横にしてパックから目を背けた。

 

「なあネズミ。あの子は一体何をしてるんだ?」

 

「ネズミじゃなくてパックだって!!リアは今微精霊と会話をしている最中だよ。これはリアの朝の日課なんだ」

 

サンジとパックの視線の先には庭の中に建てられたドーム状の休憩場所。屋根と椅子がついていて雨宿りなどが出来る形をしている。

 

そこでエミリアが一人で座っておりエミリアの周りには無数の光る粒のような物が浮かんでいる。

 

そしてその光る粒に話しかけるエミリアは何だか画家が描く一枚絵のように見えた。

 

「微精霊?確かお前もだっけか?」

 

サンジは寝たまま顔だけをパックに向ける。

 

「ボクはもう立派な精霊だよ。微精霊っていうのはリアの周りにいるようなまだ実体を持たない精霊の事を言うんだよ」

 

「ほーん」

 

頬杖を突きながら面倒臭そうに返事をするサンジ。

 

「やっぱりエミリアちゃんは可愛いなああ!!」

 

目をハートにしながらサンジはエミリアの事を遠くから見つめる。

 

「そうだろう!なんて言ったってボクの娘だからね!」

 

「ああっ!」

 

パックの発言に怒気を孕んだ言葉を飛ばす。

 

「お前の娘じゃねーだろうがネズミ!!お前はあの子と確か契約だっけか?それがなんなのかは知らねーけど親子ではねーだろ!!ネズミ風情が調子乗んな!!」

 

ネズミ風情がエミリアのような可愛い子を自分の娘扱いしたのが相当頭に来たのだろう。サンジは立ち上がりながらパックにキレていた。

 

「なにおお!!ボクとリアは家族以上に深い関係なのさ!!君がどうこう言おうがリアはボクの娘なんだ!!これは絶対に変わらない!!それといい加減ボクをネズミと呼ぶはやめてくれサンジ!!」

 

パックは立ち上がったサンジの顔辺りまで上昇してボクサーのように拳を構えてシャドーをし始める。

 

「ふん。フウゥー」

 

「うわ臭!!なんだこれ!!」

 

サンジは口からタバコの煙をパック目がけて吐き出したのだ。パックはモロにその煙を吸い込んで涙を流しながらムセていた。

 

「やったなあ!!」

 

「うわちょっ!!何すんだテメー!!」

 

仕返しとパックもサンジに襲い掛かった。パックはサンジの鼻の穴に腕を突っこみながら耳を引っ張り始める。サンジも抵抗してパックの体と尻尾を引っ張るが中々自身の顔から離れない。

 

「ふふふ。二人とも仲いいのね」

 

そこにやってきたのは朝の日課を終わらせたエミリアだった。サンジとパックのやり取りを見てクスクスと笑いながら二人に話しかけた。

 

それと同時にパックもサンジから離れてエミリアに近づく。

 

「やあリア。日課はもう終わったのかい?」

 

「うん。サンジも待たせちゃってごめんね」

 

「ぜーんぜんいいよお!!」

 

パックに対しての怒りも完全に忘れてサンジはエミリアに超笑顔だった。

 

「ねえサンジ。私サンジにいろいろと聞きたい事があるからちょっとお話しましょ」

 

「はい!よろこんで!!」

 

「ふふふ。サンジっておもしろーい」

 

「「エミリア様」」

 

 

 

聞き覚えのある声がサンジとエミリアの耳に入る。

 

 

「「エミリア様。当主ロズワール様がお戻りになられました」」

 

礼儀正しくサンジとエミリアにお辞儀をしたラムとレムの二人だった。

 

 

「わかった。ありがとう。ラムレム。じゃあサンジこれからこの屋敷の当主と会うから行きましょ」

 

エミリアとラムとレムは屋敷に戻ろうと歩き出した。

 






サンジの最強の必殺技が思いついた


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道化

エミリアたんに膝枕してもらいたい。
レムりんに頭なでなでしてもらいたい。
ベア子に後ろからギュッと抱きしめてもらいたい。
ラムチー踏まれたい。
プリシラたんに罵られたい。


「入ってサンジ。ここが食堂だよ」

 

「すげえ・・てかデカいな」

 

サンジは双子メイドとエミリアに連れられてこの屋敷の食堂にへとやってきていた。

 

「10mはありそうなロングテーブルに染み一つ無い真っ白なシーツ。派手な装飾品のないこの食堂は食事するには最高のコンディションが整ってるな」

 

一流のコックとなれば作る料理以外にも食事する時のシチュエーションなども大事にするのだろう。

 

自然とサンジの口から食堂に対しての感想が零れた。

 

「上から見てた感じ、お前あれなのよ」

 

「ん?」

 

背後から聞き覚えのある子どもの声がサンジの耳に入り反射的にサンジは振り返る。

 

「お前、相当頭が残念みたいかしら」

 

「なんだいきなり」

 

そこにいたのは一番初めにこの屋敷で出逢った少女。ベアトリスであった。

 

「やあべティ。ちゃんといい子でお淑やかにしてたかな?」

 

「にーちゃ!!」

 

エミリアの髪の中からパックが現れた瞬間。ベアトリスの不機嫌顔が一気に笑みへと変わった。

 

「にーちゃの帰りを心待ちにしてたかしら!!今日はずっと一緒にいられるかしら!?」

 

「うん。いいよ!!久しぶりに二人でゆっくりしようか!」

 

「わーいなのよ!!」

 

パックはベアトリスの掌の上に移動してそのままベアトリスと一緒にテーブルの席にへと向かって行く。

 

「おったまげたでしょ。ベアトリスはパックにベッタリだから」

 

「ああ。あんな感情の切り替えがわかりやすい子供は初めてみたよ」

 

サンジは苦笑いをしながらパックとベアトリスを見ていた。

 

 

 

「おんや~。ベアトリスがいるなんてめんずらしい~。久々にわーたしと食事する気になってくれたのなんて嬉しいーじゃーないのお」

 

「頭幸せなのはそこの奴だけで充分かしら」

 

「誰だこいつ。気持ち悪い話し方しやがって。」

 

サンジは突然食堂に入って来た男に視線を向けた。

 

その男の容姿は一言で言えばピエロだった。

 

道化のメイクを施した顔をよく見ると意外に顔立ちは整っており素の顔はかなりイケている部類に入るかもしれない。

 

切れ長の目に高い鼻。一番の特徴は左右の目で色が違う所。左目が琥珀色。右目が蒼色と俗にいうオッドアイと呼ばれるものだ。

 

サンジと同じほどの背丈で年齢は20代後半が妥当か。

 

「サンジ・・その人は・・・」

 

エミリアはサンジに何か注意したそうな面持ちで話し掛ける。

 

「いやいや構いませんよ~エミリア様」

 

「誰なんだテメーは」

 

サンジはまるで敵と相対した時のような鋭い眼光で道化の男を睨む。

 

「そーんな怖い目でわーたしを見ないでほしい~ね。あ、そうだ自己紹介が遅れたね。」

 

道化の男はサンジと向かい合うように立ち、

 

「私がこの屋敷の当主。ロズワール・L・メイザースというわ~けだよ。サンジ君」

 

 

 

「顔を近づけんな変質者!!!ぶっとばされてーのか!!」

 

 

 

 





ハーレムって、現実にはないのかな…

5万UA達成!!


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深夜のテンションで書いた。




「美味いな」

 

サンジは目の前に並べられた数ある料理の中からスープをスプーンで啜る。

 

隣ではエミリアがパンを自分の小さな口に運び、ベアトリスは向かい側の席でパックと一緒に自身と同じスープを食していた。道化の男・・・ロズワールは一番奥の全ての席が見渡せる席に座り後ろには双子メイドのラムとレムを立たせていた。

 

「んふー。こう見えてレムの料理はちょっとしたものだよ」

 

「確かに。塩、砂糖、ミルクに具材の芋から滲み出る旨味が絶妙に合わさってる。」

 

「なーんだか知ったような口ぶりで話すねえ~。もしかして君は料理人か何かかな??」

 

「その通り。俺は一流のコックだ。」

 

意外だったのかベアトリスを除いてこの場にいた者達は無意識に声を出していた。

 

「サンジってコックさんだったの?」

 

「そうだぜ。前いた場所でも基本はコックとして働いてたからな」

 

「まーさか本当にコックだーたとは思いもしなかーたよ。」

 

「むう・・・」

 

ロズワールの後ろに立っていたレムがサンジがコックと知った瞬間美しく整った顔を少し歪ませる。

 

「でも本当に不思議だーね君。メイザース辺境伯の邸宅にまで来て今の国の現状を何もしらなーいって言うんだから」

 

ロズワールは突然話を変えてサンジに聞く。

 

「国の状況?何か問題でも起きてるのか?」

 

「穏当な状況ではないね。なーにせ今のルグニカは王が不在」

 

「ああ。そう言えばそうだったな」

 

「なーんだ知ってたのかーい?」

 

「まあいろいろあってな。だけどおれは今この国が王がいないってことしか知らねえ」

 

「んふー。じゃあ少し補足説明をしておこーか。前の王は流行り病で親族まで全て根絶やし。この国を運営する賢人会の方々が新しい王を選出するために動いているところなーんだよ」

 

「新しい王を選出・・・」

 

王を選出。どこかで聞いたフレーズにサンジは一瞬考えた。

 

「さーらに君はエミリア様と接触したと同時に我がメイザース領と関係を持ってしまったことだーしね」

 

「ん?ちょっと待てよ」

 

サンジは何か疑問に思ったのかロズワールに質問した。

 

「なんでお前がエミリアちゃんを様付けで呼ぶんだ?お前ここの当主だろ?」

 

「当然のこーとさ。自身より地位の高い人を敬称で呼ぶのはね~え」

 

その瞬間サンジは思い出した。街で見かけた看板の事を。

 

それと同時にサンジはエミリアの方を振り向く。

 

「私の今の肩書はルグニカ王国42代目の王候補の一人。そこのロズワール辺境伯の後ろ盾でね」

 

「(そういうことか)」

 

「おんや~?あまり驚いてないね。目の前に、この国の王に成りうる御方がいるというーのにねえ~」

 

「俺はにとってはそう驚くことでもねーのさ」

 

サンジの言う通り。前の世界でサンジは結構な数の国の王と知り合いになってきた。

 

アラバスタの王。コブラやその娘のビビ。カマバッカ王国のオカマ王。エンポリオ・イワンコフ。魚人島の王。ネプチューン王と娘の人魚姫のしらほし。ドレスローザの王であったドフラミンゴとは一戦交え、その国の真の王女とも関係を持ち、ゾウの王とも仲良くなる。最終的には不本意ながらも自身も一国の王子であったためサンジにとって『王』というのは結構自身の身近にあるものという認識になってしまっているのだ。

 

「これがその証拠よ」

 

エミリアは自身のポケットから何かを取り出しテーブルの上に置く。

 

「徽章?エミリアちゃんが王になるのに必要なものなのか?」

 

サンジがそう尋ねるとエミリアは気まずそうな顔をしながら黙りこむ。ロズワールはニヤニヤとエミリアを子バカにした感じに視線を向けるとサンジにその徽章がなんなのかを説明し始めた。

 

「こーの徽章は王選の参加を示す証なーのさ。」

 

「えっ!てことはエミリアちゃん。王選参加資格の徽章を失くしてたのか!?」

 

サンジは目を見開きながら声を大にする。

 

「失くしたなんて必要な人聞きの悪い!!手癖の悪い子に盗られちゃったの!!」

 

「むしろそっちの方がダメだろ!これないと参加できないんだろ?」

 

「んまー。失くしました盗られましたなんて国の運営に知られれば一貫のおーわりさ。徽章一つ、まーもり切れないと思われればそれでおーしまい。だーから我々にとっては君がやってくれたこーとはとても感謝してるんだあーよ。」

 

「ロズワールの言う通り私はサンジにとても感謝してるの。だからお礼したいの。」

 

サンジは立ち上がり残り2本となったタバコの箱を取り出して、その内の一本を取り出す。

 

「ロズワールって言ったな。」

 

「そうだよ~」

 

「お前ならこれがなんだかわかるだろ」

 

サンジは残り一本入ったタバコの箱をロズワールに投げつける。そしてそれをロズワールは片手で上手く受け止めた。

 

「これはカララギで売られているダバコ・・・」

 

サンジから受け取ったタバコの箱を凝視するロズワール。サンジは口に咥えたタバコにライターで火を付けていた。

 

「そうだ。お礼がしたいっていうならそれをありったけ用意してくれ。」

 

「この辺りではダーバコを吸う人なんていないからねえ~。街に行ってもダバコの店はなーいと思うんだーよねえ~。あ、ずっと前に贈り物としても貰った記憶が・・・・ラム」

 

 

ロズワールは後ろに立っていたラムに振り向かずに話し掛ける。

 

「今すぐ物置にダバコが無いか見て来てくれないか?あったらあるだけ全部持ってきてくれ」

 

「はい。かしこまりました」

 

スカートの裾を両手で摘み礼儀正しくお辞儀をするラムを見てサンジは目をハートにしていた。

 

「い~やあ。ダバコを吸うなんて珍しい。あれは快感は得られるけど体に悪いからね~え。私もむーかし吸っていたけど今はきっぱりやめてさーあ~。若気の至りってやつ?」

 

ロズワールは笑いながら自身もサンジと同じく喫煙者だった事を話していた。

 

そしてラムが食堂から出て行きしばらく経った時にロズワールが前触れもなくサンジにある事を訊ねる。

 

「ねえサンジ君。」

 

「なんだ?」

 

食事を終えたサンジは口をナプキンで拭きながらロズワールに振り返る。そしてレムは食事をしていた四人の食器を片付けていた。

 

「話を聞いたんだーけど君は腸狩りを弄ぶほどの実力があるらしいねえ~。この実力っていうのは主に武力だね~」

 

両肘をテーブルの上に乗せ、手は指を絡めその上に自身の顔を乗せるロズワール。単純にサンジは気持ち悪がっていたが。

 

「それがどうかしたのか」

 

「いんや~。エミリア様を襲ったあの腸狩りはかなり強さを持ったシリアルキラーなんだあよ。多分この国の騎士でも一騎打ちでは多分負かされるだろうねえ~~」

 

「ほーん。そうか」

 

サンジは頬杖を突きながらロズワールの言葉を聞き流す。興味がないのだろう。

 

「うん。あの腸狩りは本当に強かった。ラインハルトとかユリウスとかじゃないと勝てないよ」

 

隣でロズワールの話を真剣に聞いていたエミリアが当時の事を思い出して腸狩りの強さを再確認していた。

 

「でもサンジはさらにその上を行っていたわ。本当にすごかったわサンジ」

 

「ええ~。そんな事ないよ~」

 

鼻の下を伸ばしながらエミリアの賞賛に喜び、体をひねらせる。

 

 

「そーこでお願いがあーるんだぁけどサンジ君。」

 

ロズワールは席を立ちあがりサンジに近づく。そしてサンジも席を立ちあがりロズワールと向かい合うようにその場に立ち尽くす。

 

そしてそれを見ていたエミリアは何だか不安な表情で二人を見ていた。

 

 

「お前のお願いってのがなんとなくだがわかるぜ」

 

サンジは最後の一本を箱から取り出してライターに火をつけた。

 

 

 

「そうかい。じゃあお願いするとしようか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君と本気で手合わせ願いたい」

 

 

 

 

 

「望むところだ」

 

 

サンジはロズワールの顔を睨み付けながら煙を吐いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






トキトキの実がついに出てきたね。



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語彙力

 
投稿かなり遅れて本当にすいません。 




傲岸不遜にただ一つ。蒼天の空に唯一つ。

 

存在するのは太陽と呼ばれる火の玉。

 

それが巨大な館の巨大な庭に立つ二人の男を見下ろす。

 

「サーンジクン。私の我ーがままに付き合ってくれてあ~りがとう。こーれが終わったら君には何かダバコとは別のお礼をしないとねえ~」

 

道化の化粧をした長身の男が発する言葉はある男に向けられる。

 

「勝ってにここに泊まったお詫びだ。戦う理由については聞かないでおいてやるよ」

 

金髪・長身・グルグルの眉毛。

 

そして口に咥えたタバコ。

 

特徴を上げるなら真っ先にその四つが出てくるであろう。

 

海賊。黒足のサンジが自身の視線の先に立つ道化の男に返す。

 

 

「ロズワールと戦うなんて無茶だよ。」

 

エミリアはロズワールとサンジから遠く離れた場所にレムとラムと一緒に立っていた。

 

「でもサンジなら大丈夫じゃないかな?あの子の力の底はボクでも量りしれないし。」

 

エミリアの肩に座りながらそんな事を言うパックにエミリアは黙り込む。

 

「ロズワール様と試合形式と言えど戦いを受けるなんて命知らずにも程があるわねレム」

 

「そうですね姉さま。いくら腸狩りを退いたとしても王国最高位の称号を持つロズワール様に勝てるはずがありません。」

 

綺麗に横並びで立っている双子のメイド姉妹はサンジを子バカにするが心優しいエミリアがそれを黙って見過ごす事はなかった。

 

「確かにロズワールは強いけどサンジも、ものすごーく強いのよ!!」

 

「エミリア様。あのお客様を擁護するのはいい事なのですがもう少し語彙力を増やした方がいいですよ。まるで物心が付いたばかりの子供と会話している気分になります」

 

レムに思わぬ毒を吐かれてショックを受けるエミリア。肩に座っていたパックも『僕もそう思うよ』と追い打ちを掛けられてエミリアのライフはすでにゼロだった。

 

エミリアがショックを受けている傍らロズワールが持つ屋敷。通称『ロズワール邸』の庭で向かい合う現当主のロズワールとサンジは戦う際に気を付けるべきこと。注意事項やルールなどを決めていた。

 

「ルールはとーても簡単さ

 

ルール。その一 互いにどんな手を使ってもよい。

ルール。その二 この私の屋敷の敷地内から出ない事。

ルール。その三 互いに全力を出す事。

 

以上このみっ~つを守ってくれればな~んでもしていい~よ」

 

ルールを言うたびに自身の手の指を親指から順に折り曲げるロズワールに対しサンジは右手の人差し指と中指を使い咥えていたタバコを持ち、

 

「俺からも一つ注意事項がある。観戦しているエミリアちゃんやラムちゃんレムちゃんに絶対被害を及ばさないようにしろ」

 

「ん~もちろんさ。じゃあはじめようか」

 

ロズワールは身に着けていた上着の懐に手を忍ばせて何かを弄る。

 

「開始の合図は平等に。わーたしのこの手に持つコインを今から君と私の立つ平行線の中心地に落とす。それが地面についた瞬間から初めという事でいいかい?」

 

ロズワールはこの国の金貨を親指と人差し指で摘まむようにしてサンジに見せる。

 

「好きにしろ」

 

サンジは素っ気ない返事をする。しかしロズワールは全く気にせず事を進めた。

 

「じゃあはじめるよ」

 

 

ロズワールは親指で金貨を弾く。すると弾かれた金貨は放物線を描き回転しながらサンジとロズワールの立つ平行線の中心地に向かっていく。

 

 

 

「ふうぅ・・」

 

 

タバコの煙を吐きながらサンジは金貨が地面に落ちて音を奏でるのを待つ。

 

 

 

「は、はじまるわ・・」

 

エミリアは鼓動を速めながらサンジと同じくコインが落ちるの待つ。

 

 

「ロズワール様が勝つ」

 

「右に同じく」

 

 

ラムとレムは平常運転。無表情でいたが自身の主の勝利を疑わない。

 

 

 

「んっふう~・・」

 

 

ロズワールは笑みを浮かべて、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チャリンッ。。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 
ワノ国編 面白いですなー


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