日常と恋模様に祝福を (Syo5638)
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番外編
いつもの日常、そして


初めましてsyoと申します。


バンドリのお話を書きたい衝動に駆られて、書き始めました。

初めて書くので、語彙力の無い拙い文章になってしまいますがよろしくお願いします。

あ、タイトルに深い意味は無いです!


side友希那

 

?「ゆ~きなぁ♪」

 

 いつものように私はリサと下校していた。

 

友希那「ちょっと、抱きつかないで」

 

リサ「いいじゃん幼なじみなんだし♪」

 

友希那「幼なじみと抱きつくことは関係ないでしょ」

 

リサ「ちぇっ」

 

友希那「ふふっ」

 

 これもいつものやり取りだ。だけど、そんな日常が最近では楽しく思えるようになってきていた。前はそんなことは無かったけれど。だから今日は――

 

リサ「友希那。今日さ、バンドの練習お休みだからさ…偶には息抜きにどこかに行かないかなぁ…と思ったりするんだけど…」

 

 今日くらいはリサに付き合ってみてもいいかなと思えるようになっていた。

 

友希那「そうね。偶には息抜きも必要ね。行きましょうか」

 

リサ「って、やっぱり行かないよねぇ。ぇ…えぇ〜!!?良いの!?」

 

友希那「…なんでそんなに驚くのよ。リサから言ってきたのに」

 

リサ「だ、だって友希那、いつもは行かないって言うじゃん」

 

友希那「わ、私だって出掛けたいことだってあるわよ!」

 

リサ「ゆ、ゆきなぁ!」

 

 そう言うと、リサは抱きついてきた。

 

友希那「だから、抱きつかないでって言ってるでしょ」

 

リサ「ありがとう~ゆきなぁ」

 

友希那「も、もういいでしょ。それで、どこに行くのかしら?」

 

リサ「それなんだけどね、最近新しく出来たショッピングモール行こうかなって思ってる。すぐ近くだし」

 

 そういえば最近出来たって前にリサとあこ達が話していたわね。

 

友希那「そう。ならそこに行きましょ」

 

リサ「OK~じゃあ行こっか」

 

友希那「えぇ」

 

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★

 

sideリサ

 

 

 

 それからアタシ達は、駅前のショッピングモールにやって来た

 

リサ(いや~まさか友希那が誘いにノってくれるなんて思わなかったなぁ…)

 

友希那「それで、どこから回るの?」

 

リサ「ん~、そうだなぁ。歩いて喉も乾いたからカフェにでも寄ろっか」

 

友希那「そうね。歌詞のフレーズを書き込みたいしそうしましょ」

 

リサ「お、新しい歌詞作ってるの?」

 

友希那「まだ歌詞を作る段階にはなってないけれど、そうね。その内新しい物を作詞しようと思っているわ」

 

リサ「そっかぁ。出来たらアタシにも見せてね」

 

友希那「えぇ、もちろんそのつもりよ」

 

 そんなこんな言っているうちにカフェに到着。

 

 ドアを開けると、アタシ達と同じくの歳の定員さんが出迎えてくれた。

 

定員「いらっしゃいませ、こんにちは。空いているお席へどうぞ」

 

リサ「ありがとうございます♪」

 

 そう言われたアタシ達は、1番奥の席に座った。

リサ「さて、何を頼もっかなぁ」

 

友希那「…そうね……私はアメリカンコーヒーとチョコレートケーキで」

 

リサ「なるほどぉ。友希那はチョコケーキかぁ。美味しいそうだよねぇ…じゃあアタシは、オレンジジュースとチーズケーキにしようかなぁ。あ、良かったら少し分合わない?」

 

友希那「えぇ、いいわよ」

 

リサ「よし、じゃあすいませ~ん」

 

 あ、呼び鈴があったけど声出して呼んでしまった。ちょっと恥ずかしい…

 

 そして、呼ぶと店員さんはすぐに来てくれた。

 

リサ「えっと…コレと、コレを下さい。」

 

定員「かしこまりました。しばらくお待ちください」

 

 

それから数分、友希那は歌詞作りに没頭していた。

 

リサ(偶には、こんなのんびりした日もいいよなぁ。まぁ友希那は相変わらず音楽の事で頭がいっぱいみたいだけど)

 

 友希那は昔比べたら大分明るくなったけど、まだまだ音楽のこと以外はあんまり興味が無いみたいだ。もう少し、他の事にも目を向けられるといいんだけどなぁ…

 

友希那「ん?どうしたのリサ、ずっとこっちを見てるけど」

 

リサ「ん~ん。なんでもないよ」

 

友希那「そう」

 

リサ「うん♪」

 

 それから少しして店員さんがケーキを持ってきてくれた。

 

定員「お待たせいたしました。チーズケーキとチョコケーキ、アメリカンコーヒーとオレンジジュースです。砂糖は、こちらのポットからご自由にお取り下さい」

 

リサ「お、キタキタ♪ありがとうございます!」

 

友希那「ありがとうございます」

 

定員「どうぞ、ごゆっくりおくつろぎ下さい」

 

 

 

リサ「今の人、気が利いててカッコよかったねぇ」

 

友希那「そうかしら?」

 

リサ「そうだよぉ。さり気なく友希那のため砂糖のポットと言ってはなかったけどミルクも置いていってくれたんだから」

 

 砂糖とミルクはドリンクバーがある所の横から取りに行かないといけないみたいだけど、あの定員さんはわざわざ持ってきてくれていた。

 

友希那「そ、そう。気付かなかったわ…」

 

リサ「友希那は相変わらずだなぁ。あ〜あ、あんな気の利いた優しい人と恋愛したいなぁ」

 

友希那「恋愛…ね…」

 

リサ「どうしたの?友希那」

 

友希那「私達も…いつかは恋愛をして結婚なんてするのかしら」

 

リサ「…ゆ、友希那の口からそんな言葉が出てくるなんて…ホント今日はどうしたの?友希那」

 

友希那「わ、私をなんだと思っているの!私だって偶にはそんなことを思ったりもするわよ…」

 

 友希那可愛いなぁ。

 

リサ「ごめんごめん。まさか友希那から恋愛とか結婚とかって言葉が出るなんて思わなかったから」

 

友希那「まったく…」

 

リサ「そうだなぁ。恋愛かぁ…アタシも恋愛なんてしたことないからよくは分からないけど、今よりも楽しかったり苦しかったり色々苦労するんじゃないかなぁ…」

 

友希那「そうね。私もそう思うわ。だけど苦労した分後の幸せは大きいんだと思うわ。まぁお父さんの受け売りだけれど」

 

リサ「そっかぁ。友希那パパとそういう話をしたから友希那から恋愛なんて言葉が出てきたのかぁ。納得」

 

友希那「まぁ、そうね」

 

リサ「でも、そっかぁ友希那もそういうことに興味を持つようになったかぁ。お姉さん嬉しなぁ♪」

 

友希那「リサ、私達は同い年でしょ」

 

リサ「そうだねぇ。でもアタシの方が少し誕生日は早いわけだからぁ♪」

 

友希那「…じゃあ、姉さんと呼んだ方がいいかしら?」

 

リサ「っちょ、ちょっとやめてよぉ恥ずかしいじゃん!」

 

友希那「ふふっ。リサがお退けているとこ、可愛いわよ♪」

 

リサ「っもう!」

 

 友希那に姉さんなんて言われるなんて、嬉しいけど恥ずかしいよぉ……

 

リサ「そ、それで、何の話してたっけ?」

 

友希那「慌て過ぎよリサ。恋愛について話してたでしょ」

 

リサ「そっか、そうだったね。…これから先好きな人とか出来たりするのかなぁ」

 

友希那「どうかしら。いつかは出来るんじゃないかしら」

 

リサ「もしかしたら、アタシと友希那同じ人を好きになったりしてね」

 

友希那「そんな漫画や小説の様なこと、起こるわけないでしょ」

 

リサ「うーん、そうかなぁ…以外とありそうな気がしないでもないんだけどなぁ」

 

友希那「もし、そんなことが起きたとしたらリサはどうしたいの?」

 

リサ「どうだろ。その時になってみないと分からないけど、友希那が本気で好きになった人だったらアタシから引いちゃうかもしれない」

 

友希那「リサ。私が本気で好きになった人だったとしても、リサが引く必要は無いわよ」

 

リサ「ゆ、友希那?」

 

友希那「私が本気ってことは、リサも本気なのだと思うから自分から引く…なんてこと絶対にしないで」

 

リサ「で、でも…」

 

友希那「でも、じゃないわ。リサも好きな人なのに自分から引くなんて、私も悲しくなってしまうと思うから。だから約束して絶対に、同じ人を好きになっても自分から引いたりしないって」

 

リサ「…分かった…約束する。約束するからには負けないよ!」

 

友希那「えぇ。私も負けるつもりはないわ」

 

リサ「ありがとね友希那…もしこんなことになったとしてもずっと友達でいてね」

 

友希那「何を言っているの?当たり前でしょ。私達幼なじみなんだから切っても切れない縁で結ばれてるわよ」

 

リサ「…もう…友希那今日はホントにどうしちゃったの?」

 

友希那「さぁ?どうしてかしらね。自分でも分からないわ。多分、そういう気分だったのよ」

 

リサ「…そっか、友希那もそういう時はあるよね」

 

友希那「えぇ」

 

リサ「今日ここに来れてよかったよ♪友希那の新たな一面が見れたから」

 

友希那「そう。私も来れてよかったわ。リサの恥ずかしがってる顔が見れたから」

 

リサ「もう~…友希那、そんなにからかい上手だったっけ?」

 

友希那「ふふっ。そんなことないわ。今日は本当にたまたまよ」

 

リサ「…そうだといいけど」

 

友希那「さ、そろそろ食べて出ましょうか。あまり長居するのも時間が勿体ないから」

 

リサ「そうだね♪」

 

 

 そうしてアタシ達はカフェを出てウインドウショッピングして回った。その途中ペットショップの猫を見つけた友希那が、またそこで長居してしまったのは別の話。

 

 

 いつかアタシ達が好きな人が出来ても、今みたいな楽しい生活をみんなで送れるといいなぁ…

 

 




如何だったでしょうか。今回は番外編という形で作らせて頂きました。
初めてなのでおかしなところばかりだと思いますが、これからの本編も読んで頂ければ幸いです。

それではまた次回


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第1章
第1話:これから始まる物語


こんにちは、こんばんは。syoです


今回から主人公ががっつり登場してくるのでどうぞよろしくお願いします。


っピピピ!っピピピ!っピピピ!カチャ…

 

?「ふぁ~…よく寝た」

 

 朝6時。気持ちのいい日差しと共に鳴る目覚ましを消し起き上がる俺――九重蒼真(ここのえそうま)は、父の転勤により九州の方からこっちに引っ越してきた。

 

蒼真「さて、朝飯を作りますかね。親父は…あぁもう仕事に出とるんかぁ」

 

 そう言って俺は朝食を作り始めた。

 

蒼真「今日は何を作ろうかなぁ。親父もまた出張で一時おらんから朝は簡単なもんでいいかなぁ」

 

 父は引っ越してきた来たばかりにも関わらず即出張に出てしまっている。ホントいつも父の仕事は大変だなぁと思いつつ、こうやって生活出来るのも父のお陰だと思い感謝しながら生活していた。

 

蒼真「今日は納豆と味噌汁、後目玉焼き…と完成。ご飯はオカズ…なんてな」

 

 どこかで聞いたことのあるようなフレーズだけど、そんなことは気にせず急いで朝食を済ませた。

 

蒼真「よし。今日は転校初日。遅刻するのもアレやから早めに出ますかねぇ」

 

 こっちに越してきてまだ日が浅いから散歩がてら早めに出ることにした。・・・日が浅いと言ってもすでにこっちに来て1ヵ月は経っていた。諸々の事情や手続きに時間がかかってしまい今に至るのだ。

 

蒼真「いってきまーす」

 

 素早く行く準備を済ませた俺は家の鍵を掛け少し早足で学校に向かった。なぜ早足かと言うと、さっきも言ったがまだ町に慣れてないから。学校に行くついでに町や商店街などを散策して回るためだ。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★

 

蒼真「お、あそこはパン屋かな?美味そうな匂いやなぁ。名前は…やまぶきベーカリーか…帰りに寄れたら寄ってみようかな」

 

 商店街の入口付近で最初に目が止まったのは山伏ベーカリーというパン屋だった。他にも北沢精肉店や羽沢珈琲店など気になる店が多々あった。

 

蒼真「へぇーこの商店街は色々良さげな店が沢山あるなぁなかなか賑わってそうやし」

 

 ここまで朝から活気のある商店街俺は見たことがなかった。前の地元の商店街はシャッターが降りてるところばっかりだったからなぁ。

 

蒼真「おっと、そろそろいい時間やし今度こそ学校に向かいますか…」

 

 そうして俺は商店街を抜けて学校方面の住宅街へと足を運んだ。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★

 

蒼真「でもアレやなぁ住宅街はどこもあまり変わり映えはしないもんやなぁ…」

 

 とつぶやきながら歩いていると、細道の角で俺は思いがけない出来事に遭遇した。

 

タッタッタッ

?「うゎ~!部活の朝練遅刻しちゃう~!っキャ!?」

 

ドン!

蒼真「うお!?」

 

?「いったたぁ…」

 

 勢いよく走って来た女の娘とぶつかってしまった。

 

蒼真「だ、大丈夫ですか?」

 

?「…へ!?あ!ご、ごめんなさい!ぶつかっちゃって」

 

蒼真「自分は大丈夫ですよ。それよりこっちの方こそすみません。よそ見してて走ってくるの気づきませんでした。怪我とかは無かったですか?」

 

?「あ、ハイ!大丈夫です。お気遣いありがとうございます♪」

 

蒼真「いえいえ自分は何もしてないですよ。それより大丈夫ですか?時間とか。急いでたみたいですけど」

 

?「っあ!そうだった!それじゃあ失礼しますね~!」

 

蒼真「はい。道端には気をつけて下さいね~!」

 

タッタッタッ

?「は〜い!ありがとうございま~す!」

タッタッタッ…

 

蒼真「お、足速いなぁ運動部か何かやっとるんやか?ってそろそろ俺も時間ヤバイな…俺も走るか」

 

 そして俺は彼女とは別の方向から学校へ走って向かった。

 

 ギャルっぽい娘やったけど、見た目と違って礼儀正しくていい娘そうだったなぁ。

 

蒼真「あれ?そういえばさっきの娘の制服、羽丘の制服じゃなかったやか?…ま、考えても仕方ない。急ご」

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

sideリサ

 

キーンコーンカーンコーン

 

ガラガラっ

 

 席についたアタシは部活の朝練の後もあって暑かったから下敷きで顔を扇いでいた。

 

リサ「いや~部活にも間に合ってよかったぁ」

 

 朝だけでかなり疲れちゃったよぉ。あ…さっきの人…大丈夫だったかな?見た感じ彼も学生ぽかったけど…

 

リサ「あれ?あの制服どっかで見たことあったような…」

 

?「リサちー何ブツブツ言ってるの?」

 

リサ「あ、日菜。おはよー」

 

 考え事をしていると、日菜に声を掛けられた。

 

日菜「おはよー♪で神妙な顔してどうしたの?」

 

リサ「そんな顔してたかなぁ…」

 

日菜「してたよー」

 

リサ「まぁいいや…さっきね――」

 

 寝坊して急いでいたこと。途中で男の人とぶつかっちゃったこと。その人の制服がどこかで見たことがあるような気がしたこと。この時間までにあった出来事を日菜に伝えた。

 

日菜「そうなんだー♪なんだかルン♪ってするね♪」

 

リサ「いつも思うけどそのルンって何?」

 

日菜「ルンはルン♪だよ」

 

リサ「…まぁいっか。いつもの事だし」

 

 そんなこんな話しているうちに担任の先生が教室に入ってきた。

 

先生「みんな席に着いてー。今日はみんなに大事なお話があります」

 

 大事な話?なんだろ…

 

先生「みんなも知っていると思うけど、今年からうちの学校は共学になりました。1年生にもチラホラ男子生徒がいると思います。しかーし!あなた達2,3年生には男子生徒が居ないという事実…あぁ…あなた達はなんて悲しい人生を歩んでいるのでしょうか」

 

 先生どうしちゃったの?頭でも打ったのかな…

 

先生「だけど安心しなさいあなた達…そんな悲しい人生もここまでよ!転校生を紹介しましょう。入ってきなさい!」

 

 …いや…この状況で転校生って…入って来にくいだろうなぁ…

 

ガラガラっ…

?「…先生…そんな煽り方しないで下さいよ。無茶苦茶ハードルが上がっちゃうじゃないですか」

 

先生「何を言うの。この方が盛り上がるでしょ♪」

 

?「…ハァ…まぁいいや。ご紹介に預かりました…ん?預かったのか?九重蒼真と言います。中途半端な時期の転入となりますがどうぞよろしくお願いします」

 

 シーン鎮まり返った教室…みんなが一斉に叫ぼうとしていたけど、アタシは思わず席を立ち上がって先に叫んでしまった…

 

リサ「っあーー!!?さっきの人!?」

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

side蒼真

 

 遡ること数十分前――

 

?「ごめんなさいね手続きが遅れちゃって」

 

蒼真「大丈夫ですよ理事長先生。お陰さまでこの辺りの地理には大分慣れてきましたし1ヶ月の間でしたけどアルバイトもできたので」

 

理事長「そう言ってもらえると助かるわ♪」

 

 あれから俺は無事羽丘学園に着き今は理事長室でクラスなどの確認などをしていた。

 

理事長「じゃあ君は2年A組に転入してもらいます」

 

蒼真「分かりました」

 

コンコン

?「失礼します」

 

理事長「お、ちょうど良かった。蒼真くん彼女が君のクラスの担任だ。先生説明が終わったので早速クラスに案内してあげて下さい」

 

先生「分かりました。九重くん今日から私があなたの担任です。よろしくね♪」

 

蒼真「よろしくお願いします」

 

先生「じゃあ教室に行きましょうか」

 

蒼真「はい」

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

キーンコーンカーン

 

 教室の前で止まり先生は俺に声を掛けてきた。

 

先生「じゃあちょっと待っててね。みんな発表してくるから。呼んだら入ってきてね」

 

蒼真「了解です 」

 

先生「場は暖めておくから♪」

 

蒼真「いや、そこまでしなくても大丈夫ですよ」

 

先生「いいからいいから♪」

 

 …何だか嫌な予感がするな…

 

ガラガラっ

先生「みんな席に着いてー。今日はみんなに大事なお話があります」

 

 

先生「みんなも知っていると思うけど、今年からうちの学校は共学になりました。1年生にもチラホラ男子生徒がいると思います。しかーし!あなた達2,3年生には男子生徒が居ないという事実…あぁ…あなた達はなんて悲しい人生を歩んでいるのでしょうか」

 

先生「だけど安心しなさいあなた達…そんな悲しい人生もここまでよ!転校生を紹介しましょう。入ってきなさい!」

 

 いや…逆に入りずらくなったし…場を暖めるって言ってたけど冷めちゃってるんじゃ…

 

ガラガラっ…

蒼真「…先生…そんな煽り方しないで下さいよ。無茶苦茶ハードルが上がっちゃうじゃないですか」

 

先生「何を言うの。この方が盛り上がるでしょ♪」

 

蒼真「…ハァ…まぁいいや。ご紹介に預かりました…ん?預かったのか?九重蒼真と言います。中途半端な時期の転入となりますがどうぞよろしくお願いします」

 

 …ほら。場が暖まるどころか冷えきってるじゃん…

 

 そんなことを思っていると突如大きな声が響き渡った。

 

リサ「っあーー!!?さっきの人!?」

 

蒼真「ん?…あ!君はさっきの!」

 

 

 こうして俺と彼女はものすごく早い再会をした。

 

 

 




如何だったでしょうか。

主人公は素だと結構訛りや方言が入ったりしますがあまり気にしないで下さい。心理描写は標準語で語っている様な感じにして行こうと思います。

蒼真達はこれからどうなって行くんでしょうかね。

次回もまた見て頂ければ幸いです。
それまた



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第2話:コミュ力オバケ

こんにちはこんばんは。syoです。

自分が思っていたよりも早く更新が出来ていることに驚いている今日このごろです。

不定期な更新ではあると思いますが、どうぞよろしくお願いします。


 

side蒼真

 

 

っザワザワ…

 

 教室の娘達がいっせいにザワつき始めた。

 

?「ど、どうしたの?リサちーそんな大きな声出して」

 

リサ「日菜!さっき言ってた人!」

 

日菜「嘘!?ホント!?なんかルルンっ♪って感じだー♪」

 

先生「ハイハイみんな静かにー。九重くん、今井さんと知り合い?」

 

蒼真「あ、いやそういう訳じゃないですけど学校に来る途中で出会ったと言いますか…」

 

 ぶつかって出会ったとか流石に言えない。

 

先生「そうなんだぁ。凄い偶然ね!じゃあその偶然ついでに今井さんの隣が今まで空席だったからそこに座って♪」

 

蒼真「あ…はい分かりました」

 

 本当に凄い偶然だ…朝ぶつかった娘がまさか同じクラスだったとは…世間って狭いものなんだなと思った瞬間だった。

 

蒼真「えっと、よろしくね。今井さん?でいいのかな」

 

リサ「あ、うん。よろしく♪今井リサです」

 

蒼真「改めて、九重蒼真です。いやぁでもビックリだね。まさか一緒のクラスになるなんて」

 

リサ「そうだねぇ。こんな偶然ってあるんだね」

 

蒼真「制服は見たことがあったからいつかは会うかもしれないなぁとは思ってたけど、まさか出会って数十分で再会するとはホントに思わなかった」

 

リサ「あ!そっか。アタシもその制服どっかで見たことあると思ってたけど、うちの学校の制服だったのかぁ納得。アタシもこんなに早く再会するなんて思わなかったよぉ」

 

 今井さんも似たような事を思っていた様だった。

 

蒼真「そういえばさっき大分急いでたけど大丈夫だった?」

 

リサ「あ、うん大丈夫だったよ♪気遣ってくれてありがとう♪あと、ぶつかっちゃってホントごめんね」

 

蒼真「全然気にしてないから大丈夫だよ。それにほら俺もよそ見しちゃってたからさ、お互い様って事でこの話は終わりにしよ。授業も始まるし」

 

リサ「OK~。じゃあまた後で話しよ」

 

蒼真「了解」

 

 とは言ったものの…休み時間になる度にクラスの娘達から質問攻めにあっていた。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 あっという間に昼休みになっていた。

 

蒼真「あ、ヤベ…飯買ってくるの忘れた…ハァ何で商店街行った時に気づかんかったんやかぁ…」

 

 仕方ない。購買所に行って何か買ってくるかぁ

 

リサ「うちの購買所ものすごく人気だからこの時間だともう売り切れてると思うよ」

 

蒼真「うぉ!?ビックリしたぁ…マジかぁ…どうしよ」

 

リサ「あはは♪そんなビックリしなくてもいいじゃん。あ!そうだ。じゃあ一緒にお昼食べない?」

 

蒼真「一緒に?いや俺、飯ないんやけど…」

 

リサ「お母さんがご飯作りすぎちゃったみたいで、アタシ1人じゃ食べ切れそうにないから一緒に食べないかなぁと思って」

 

蒼真「友達とかに分けたりしないの?」

 

リサ「いつもだったらしてるけど、目の前に困っている人がいたら放っておけないから」

 

 不覚にも俺は、今井さんの何気ない優しさと仕草に一瞬ときめいてしまった。

 

蒼真「そ、そっか。じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな」

 

リサ「うん♪そう来なくちゃね!蒼真♪」

 

蒼真「…っえ!?いきなり名前?しかも呼び捨て!?」

 

 今日は本当にビックリさせられることばかりだ。

 

リサ「九重くんってなんか言いにくいし、呼び捨ての方が気楽に話せてイイじゃん?」

 

蒼真「イイじゃんって…まぁ今井さんがいいなら「リサ」…え?」

 

リサ「アタシのことはリサって呼んでね♪」

 

 えぇ…まじか。俺、女の子を名前で呼んだこととかないんだけど…

 

蒼真「呼び捨て?」

 

リサ「うん♪」

 

 しかも呼び捨て…

 

蒼真「…拒否権は?」

 

リサ「ないです」

 

 やっぱり…とおもわず小さく呟いた。まぁでも今井さんには色々感謝しないといけないこともあるし、そのくらいならいいかなと思った。

 

蒼真「…分かった。リサ…これでいいか?」

 

リサ「うん♪それでいいよぉ。じゃ屋上に行こっか」

 

蒼真「屋上?」

 

リサ「っそ。幼馴染の子といつも屋上で食べてるからねぇ」

 

蒼真「そっか。でもいいと?2人の邪魔しちゃって」

 

リサ「邪魔なんかじゃないよぉ。アタシの方から誘ったんだからさ」

 

蒼真「…ならいいんやけど」

 

リサ「さっきから思ってたけど、蒼真ってたまに訛ってたりするね」

 

蒼真「あ…しまった…」

 

 1人の時以外は常に標準語を意識はしてたんだけどなぁ…

 

リサ「でもいいんじゃない?そんなに隠さなくても。そっちの方が蒼真らしくていいと思うよ」

 

蒼真「…リサには敵わんなぁ。リサはコミュ力が高いみたいやけん前から慣れ親しんだ感覚やったから思わず素が出とったみたい」

 

リサ「うんうん♪そっちの方が蒼真らしさがあっていいと思う♪」

 

 リサは凄いなぁ。いきなり転校してきた俺にこんなにも気さくに話しかけて来てくれて。正直、元女子高ってこともあって色々不安で、ハブられたりするんじゃないかとか勝手に思ってたけど…リサが居てくれてホント良かったと思う。

 

蒼真 「…なんか…ありがとな。色々気ぃ使ってくれて」

 

リサ「どうしたの?いきなり。気なんて使ってないよ。ただアタシがお節介なだけだから」

 

蒼真「いや、それでも。ありがとう」

 

 気付いたら俺は笑顔でお礼を言っていた。…いきなり笑顔でお礼とか気持ち悪くなかったかな…気づいたらそうなっていたのだから仕方がない。

 

リサ「ッ…さ!そろそろ行こっか。時間ももったいないし」

 

蒼真「そうやね。行こうか」

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

sideリサ

 

 アタシ達は急いで屋上へ向かっていた。

 

 …さっきのはずるいよぉ…ただでさえ今日は色々あって意識しちゃってるのに…

 

 どうしちゃったのかなアタシ…いや、漫画や小説の読みすぎだよねきっと。

 

 今日あった出来事は恋愛漫画や小説に出てくる様なことばっかりだったからかそのせいだよね?と思い気を取り直した。

 

リサ「この上の階が屋上だよー」

 

蒼真「なるほどここが屋上か。大体道順は覚えた」

 

リサ「お?覚えるの早いね」

 

蒼真「まぁね。散歩が趣味やけねぇ」

 

リサ「あはは♪何それ。おじいちゃんっぽいよ」

 

蒼真「っはは。よく言われとった」

 

 そんなことを話しながらアタシは幼馴染が待つ屋上の扉を開けた。

 

ガチャ

リサ「ごめーん友希那!待った?」

 

友希那「いいえ。私も今さっき来たばかりよ」

 

リサ「そっかぁ。よかった♪」

 

友希那「…で、そちらの方は?」

 

リサ「あ、ごめん!連絡するの忘れてた!」

 

蒼真「まぁ、色々とバタバタしてたからね」

 

リサ「友希那。この人が今日転校してきた九重蒼真くん」

 

蒼真「九重です。よろしくです」

 

リサ「で、こっちが幼なじみで親友の湊友希那」

 

友希那「湊です。よろしく」

 

蒼真「…」

 

リサ「さて、自己紹介も終わったことだしお昼にしよっか。はいこれ、蒼真の分」

 

蒼真「…あ、あぁ。ありがとう」

 

「「「いただきます」」」

 

友希那「でも…リサがいきなり男の子を連れてくるなんてビックリしたわ」

 

リサ「あはは…実はね――」

 

 今日あった出来事をアタシは、お昼ご飯を食べながら大まかに友希那に伝えた。

 

リサ「――って事があって、ここに連れてきたの…って蒼真。大丈夫?さっきからぼーっとしてるけど」

 

蒼真「…ん?あ!ごめん。ちょっと考え事してた」

 

友希那「そう…それにしても2人共随分仲がいいようね。いきなりリサが彼を連れてきたから恋人が出来たのかと思ってしまったわ」

 

リサ「っえ!?ッ…そ、そんな訳ないじゃん!?今日出会ったばっかりなのに!」

 

蒼真「そうだな。こんな可愛くて気もきいて優しい娘、俺には勿体ないよ」

 

リサ「///…も、もういいじゃん…!この話は終わりにしよ!」

 

友希那「ふふっ。そうね。リサの恥ずかしがってる顔も見れたし、よしとするわ」

 

リサ「またアタシ友希那弄られたの!?うぅ…最近友希那が怖いよぉ…」

 

 って言うか蒼真も何であんな事サラッと言えるの!?すっごく恥ずかしいんだけど…

 

蒼真「てか、今更だけど2人共俺に対して認識が甘すぎないか?彼氏とかに怒られたりとかしないか?」

 

リサ「…アタシ、彼氏いた事ないよ?」

 

友希那「私も、音楽にしか興味が無かったらかいないわね」

 

蒼真「そ、そうか…なんかすまん。てっきり居るもんだと思ってた。2人共美人だからさ」

 

「「……っ」」

 

リサ「蒼真…何でそういう事サラッと言っちゃうの?」

 

蒼真「そういうこと?」

 

リサ「あ、無意識で言ってるんだ…」

 

蒼真「?…あ、そういえば湊さん。何か音楽やってるの?さっきそんなこと言ってたから」

 

友希那「友希那でいいわよ」

 

蒼真「え?いやで「リサは呼び捨て出来て私には出来ないの?」…いえ、そんなことは…ないです」

 

友希那「なら、呼び捨てにしなさい。私も蒼真と呼ぶから」

 

蒼真「…分かった。友希那。これでいいか?」

 

友希那「えぇ。いいわよ」

 

リサ「あれぇ…友希那ってそんなに積極的だったっけ?」

 

友希那「…それで、何の話だったかしら?」

 

リサ「…今、話逸らさなかった?」

 

蒼真「いや、やから何か音楽をやっとったと?って話」

 

友希那「そうだったわね。というか素が出てるわよ」

 

蒼真「え?あ…またやってしまった」

 

友希那「素の方がいいと思うわ」

 

蒼真「…それ、リサにも言われた」

 

友希那「…そう」

 

リサ「…てかまた話が脱線してるよー」

 

友希那「そうね。…私達はバンドを組んで音楽活動をしているわ」

 

蒼真「そうなんか…ん?私達?」

 

リサ「あれ?言ってなかったっけ?アタシも友希那と一緒にバンド組んでるんだよ♪ちなみにアタシはベースで、友希那はボーカル」

 

蒼真「へぇ。そうやったんか」

 

友希那「よかったら今度練習見に来る?」

 

蒼真「え?いいん?」

 

リサ「友希那がいいって言ってるんだからいいに決まってるじゃん♪」

 

蒼真「なら是非行かせてもらおうかな。俺も音楽好きやけね」

 

友希那「そう。なら私からメンバーに伝えておくわ。今日は練習はお休みだから、明日でもいいかしら」

 

蒼真「俺は全然構わんよ。まだ予定とか特にないし」

 

友希那「なら明日の放課後ということで」

 

リサ「じゃあ色々予定も決まったし、早く食べてしまって教室に戻ろっか。そろそろ予鈴もなりそうだし」

 

蒼真「そうやな。じゃあ友希那。また」

 

リサ「友希那。また後でね♪」

 

友希那「えぇ」

 

 先に友希那は教室へ戻って行った。

 

蒼真「あそうだ。リサ、弁当ありがとな。このタッパ洗って返すけ」

 

リサ「いいよーそんなそこまでしなくても」

 

蒼真「いいや洗って返す。やないと俺の気がすまん」

 

リサ「そう?ならお願いしとこうかな」

 

蒼真「おう!任せとけ。キッチリピカピカにしとくけ」

 

リサ「あはは♪楽しみにしてる」

 

 そんな他愛ない事を話しながらアタシ達は教室へ戻った…戻ると今度はアタシまで質問攻めにあってしまった…

 

 




すみません。
今回だけでは初日のお話を書き切れませんてました。

次回で初日のお話に切りを付けたいと思いますのでよろしくお願いします。


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第3話:まさかな出来事

こんにちは。こんばんはSyoです。

前回言ってた通り今回で登校初日の話に区切りを付けます。
この話だけで長くなってしまい申し訳ありません


では続きをどうぞ


side蒼真

 

 それから俺は教室に戻り午後の授業を受けた。そのあいだの休み時間なども女の子達が集まってきて、たくさんの質問を受けた。

 

 答えられる質問は答えるけど、中にはよく分からない事柄も混じっていた。…例えば「私と結婚して下さい!」とか「私を罵って! 」とか…俺はどう受け答えすればいいんだ…と思いながら愛想笑いするしかなかった。

 

リサ「蒼真、モテモテだね〜」

 

蒼真「そんな事はないやろ。まだ初日やし物珍しいんやろ」

 

リサ「まぁたしかにねぇ。今までこの学校に男の子が1人もいなかったからその反動だろね」

 

蒼真「そのうち収まってくれるといいんやけど…」

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 なんだかんだであっという間に1日の授業が終わり、放課後になった。

 

 さて、そろそろ帰ろうかなぁ。また散歩しながら帰りたいし。

 

リサ「蒼真~。一緒に帰らない?よかったら町の案内してあげる」

 

蒼真「…いいと?友希那と一緒に帰るんやないん?」

 

リサ「友希那にはもう言ってあるよ♪」

 

蒼真「…行動が早いなぁ…まぁなら、ご一緒させてもらおうかな」

 

リサ「はーい♪じゃあ行こっか」

 

蒼真「了解」

 

 気付けば俺は、リサ達と帰ることになった。

 

 教室を出た俺達は、友希那と合流して町の散策へと繰り出した。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

蒼真「それで、これから何処に行くと?」

 

リサ「そうだねぇ。時間も限られてるし、今日は商店街の方に行こうかなと思うんだけどどうかな?」

 

友希那「そうね。私はいいと思うけれど蒼真はどうかしら?」

 

蒼真「俺もそれでいいよ。ちょうど寄ってみたいとこもあったし」

 

リサ「そっか♪買い物とかしたりする?」

 

蒼真「うーん…まだ分からんけど買いたい物があったら買うかも」

 

リサ「りょーかい♪じゃあまずはカフェにでも行こっか。そこのカフェも紹介したいし」

 

蒼真「OK。よし、じゃあ行くか」

 

友希那「えぇ」

 

 商店街に着くまで俺達は他愛ない事を話しながら向かい、気付けば目的地まで着いていた。

 

リサ「ここだよ」

 

蒼真「あ、ここ朝気になっとった場所」

 

リサ「そうなんだ〜よかった♪連れてこれて」

 

 着いた場所は、朝も気になっていた羽沢珈琲店だった。

 

 

カランッ

?「いらっしゃいませ。あ、リサさんに友希那さん。こんにちは♪こちらにどうぞ」

 

リサ「やっほー、つぐみ」

 

友希那「こんにちは、羽沢さん」

 

つぐみ「そちらの方は…」

 

蒼真「あ、どうも初めまして。九重蒼真です」

 

つぐみ「初めまして羽沢つぐみです」

 

リサ「今日うちのクラスに転校してきたんだ~」

 

つぐみ「そうなんですね。確かに今日男の人が2年生に転校してきたって噂になってました」

 

蒼真「マジかぁ…そんなに噂になってるんだ…あ、てことは羽沢さんも羽丘?」

 

つぐみ「はい!羽丘の1年です。」

 

蒼真「そうなんだ。もし学校であったら宜しくね」

 

つぐみ「 よろしくお願いします!」

 

 そんな事を話しながら席に着き、メニューをとった。

 

リサ「今日は時間もあんまりないし飲み物だけにしよっか」

 

蒼真「そうやね。他にも見て回りたいし」

 

リサ「友希那もそれでいい?」

 

友希那「えぇ大丈夫よ」

 

 飲み物か。何にしよ…あ、これがいいかな。

 

つぐみ「お決まりですか?」

 

蒼真「俺は決まったけど2人は決まった?」

 

リサ「決まったよー」

 

友希那「私も決まったわ」

 

蒼真「ん。じゃあ俺はこのおすすめコーヒーを下さい」

 

リサ「あ、アタシも!」

 

友希那「私も同じ物で」

 

つぐみ「はい!今日のおすすめコーヒーですね。少しお待ち下さい」

 

 そう言うと羽沢さんはいそいそと厨房に入っていった。

 

蒼真「なんだ、みんな同じの選んだんやね」

 

友希那「そうね。ここのおすすめコーヒーはいつも美味しいわ」

 

リサ「そうそう♪ここのコーヒーはつぐみのお父さんが作ってて色々な豆を組み合わせて作ったオリジナルコーヒーなんだって」

 

蒼真「へぇそうなんや。そいつは楽しみやな」

 

つぐみ「お待たせしました!本日のおすすめブレンドコーヒーです。友希那さんはいつもと同じで砂糖は多めに入れてます。足りなかったらここに置いておくので好きなだけ使ってください♪」

 

友希那「いつも悪いわね」

 

つぐみ「いえいえ♪リサさんはミルクと砂糖を少量入れてます。ミルクは多めでよかったですか?」

 

リサ「うん♪バッチリだよ。いつもありがと♪」

 

つぐみ「はい♪えっと…九重さんは初めて来られたので今回は何も入れてないです。お好みで砂糖とミルクを使われてください」

 

蒼真「ありがとう。とりあえずそのまま飲んでみるよ」

 

つぐみ「はい♪じゃあごゆっくりどうぞ」

 

そう言うとまた厨房に戻って行った。

 

蒼真「じゃ、いただきますかね」

 

友希那「そうね」

 

リサ「いただきまーす」

 

 俺はコーヒーなんてあまり飲まないけど、何故か頼んでいた。

 

 うーん…雰囲気に飲まれたかな?まぁいいか。オリジナルのコーヒーみたいだし飲んでみようかな。…ん?これは…

 

蒼真「このコーヒー凄く美味い。砂糖とか入れてないのに飲みやすい」

 

リサ「でしょ~♪連れてきた甲斐があったよ」

 

友希那「そうね。私も苦い物は苦手だけれどここのコーヒーはあまり砂糖を入れなくても美味しく頂けるわ」

 

蒼真「ホント言うと俺、コーヒーってそこまで好きではなかったんやけどここのコーヒーはマジでハマりそうやわ」

 

リサ「そっかそっか♪ホント連れてきてよかった♪」

 

 それから色々と雑談をし、音楽関連の話題が出た。

 

蒼真「そういえば、2人とも同じバンド組んで活動しとるっち言いよったけどバンドの名前は何っち言うと?」

 

友希那「私達のバンド名は…Roselia」

 

蒼真「ロゼリア…へぇカッコイイ名前やね」

 

友希那「そうかしら?ありがとう」

 

素直にそう思った。よくは分からないけどRoseliaと言う名前には色々なものが込められているようなそんな気がした。

 

蒼真「早く明日にならんかなぁ。友希那達の演奏がますます楽しみになってきた」

 

友希那「そう?嬉しい事を言ってくれるわね」

 

リサ「そうだね〜よーし明日はいつも以上に頑張ちっちゃうよ!」

 

蒼真「おう!でもあんまり無理しすぎんようにね。…ちょっと手洗い行ってくる」

 

リサ「りょーかい」

 

 そう言って俺はとりあえずレジの方へ向かった。

 

蒼真「羽沢さん。手洗い所ってある?」

 

つぐみ「あ、ここの奥にあるので使って下さい」

 

蒼真「ありがとう。後、会計もお願い」

 

つぐみ「え!?九重さん皆さん分も支払われるんですか?」

 

蒼真「しー!バレちゃうから!静かにお願い…!」

 

つぐみ「あ、ごめんなさい…」

 

蒼真「こっちこそごめんね驚かせて」

 

つぐみ「いえ…えっと、3人分で960円になります」

 

蒼真「じゃあ1000円で。あ、お釣りは大丈夫だから」

 

つぐみ「え!?いやでも…」

 

蒼真「いいからいいから取っといて。騒がせちゃったお詫びって事で」

 

つぐみ「…分かりました今回は受け取ります。だけど次回はちゃんとお釣り受け取って下さいね」

 

蒼真「うん。分かった」

 

つぐみ「九重さんって漢気があってカッコイイですね」

 

蒼真「そうか?そんなことはないと思うけど」

 

 男としては普通だと思うんだけど。

 

蒼真「まぁありがとう」

 

 そうだ、トイレに行くんだった。早くしないとリサ達に怪しまれるな…急いで行ってこよ。

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

sideリサ

 

リサ「それにしても友希那。昔に比べるとホントに丸くなったねぇ」

 

 蒼真がお手荒に言っている間アタシは友希那と他愛ない話をしていた。

 

友希那「そうかしら。自分じゃ分からないけれどリサがそう言うのならそうなのかもしれないわね」

 

リサ「変わったよ。前はこんな事に付き合っている暇はないって言ってると思うよ」

 

友希那「そういうリサも前に比べるも大分変わったと思うわ。…蒼真と出会ったから変わったのかしら?」

 

リサ「…へ!?な、なな、なに言ってるの友希那!」

 

 変な声出ちゃったじゃん…蒼真に聞かれたりしてないよね…

 

友希那「もしかして、一目惚れ?」

 

リサ「…ふぇ!?い、いやいや流石にそれはナイナイ!だって出会って一日目だよ!」

 

友希那「恋に日にちなんて関係ないってリサから借りた本に書いてあったわよ」

 

リサ「そ、それは本の中の話でしょ!これは現実だよ!」

 

友希那「…っふ…ふふっ…」

 

…あ…友希那がニヤけてる…まさか…

 

リサ「…もしかして…またアタシ、からかわれた?」

 

友希那「ごめんなさい。あまりにリサの反応が可愛かったからつい」

 

リサ「ついって…はぁ。本当に友希那変わったね…」

 

蒼真「何が変わったって?」

 

リサ「っひ!?」

ガタッ

 

蒼真「あ、おい!」

 

 …あれ?アタシ今どうなってるの?確か蒼真に声を掛けられてビックリして飛び跳ねて、コケそうになってそれで…え?

 

蒼真「大丈夫か!?」

 

 今、蒼真に抱き抱えられてる状態になっていた。

 

リサ「…ぇ…え?あ、うん」

 

蒼真「そっかぁよかった。怪我とかない?」

 

 だんだんアタシが置かれてる状態を理解してきた。

 

リサ「う、うん…あ、あり、がとう…///」

 

  は、恥ずかしいー!?今アタシ蒼真に抱き抱えられてるじゃん!?

 

リサ「も、もう大丈夫だから…//」

 

蒼真「お、おうそうか。気を付けりいね」

 

リサ「うん…」

 

友希那「そろそろいいかしら?」

 

リサ「へ?あ、ごめん友希那」

 

友希那「いえ。大丈夫よ」

 

蒼真「リサも大丈夫そうやしそろそろ出る?」

 

友希那「そうね」

 

リサ「じゃあお会計しないとね」

 

蒼真「あ、会計は今さっき済ませてきた」

 

リサ「え!いやいや悪いよ。自分達の分くらいだすよ」

 

友希那「そうね。お金を出せるなんて申し訳ないわ」

 

蒼真「いいからいいから。今日は2人には色々と世話になったしこのくらいさせてほしい」

 

リサ「いやでも…」

 

蒼真「こういう時は男が支払いとかするべきやと思うからさ。それに俺が好きでやってる事やからさ」

 

リサ「…( ずるいよぉ)…」

 

 せっかく振り払ってたのにまた意識しちゃうじゃん…

 

友希那「…そう。じゃあお言葉に甘えさせてもらうわ。だけど、今度はちゃんと支払いさせてちょうだい」

 

リサ「あ、ありがとう…」

 

蒼真「おう♪じゃあ出ますか」

 

友希那「えぇ」

 

蒼真「羽沢さんごちそうさま美味しかったよ。また来るね」

 

つぐみ「はい!是非また来てください!ありがとうございました」

 

リサ「またね♪つぐみ」

 

 つぐみには元気良く言ったけど内心色々と頭が追いつかなくなってきて、その後のことはあまり覚えてない…

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

side蒼真

 

 それから俺達は山吹ベーカリーに寄ってパンを買った。どれも美味そうだったからまた来ようと思う。

 

 他にも北沢精肉店や近くのスーパーに寄って食材の買い出しなどをした。

 

 途中、リサが無言の状態が続いていたけど気づいたら元に戻っていた。

 

 そして帰り道…

 

蒼真「そういえば家はこの近くなん?俺もこの当たりなんやけど」

 

リサ「そうだねぇすぐ近くだよ」

 

友希那「そこを曲がって少し行った所よ。リサとは隣同士なの」

 

蒼真「そうなんやね。てか本当近いんやなぁ」

 

 そんな事を言っている家に着いた。…ん?何で2人とも立ち止まったんだ?

 

2人「「え?」」

 

蒼真「ん?」

 

リサ「ここアタシの家」

 

友希那「その隣が私の家」

 

蒼真「こっちは俺の家だ」

 

 

「「「え?」」」2人「「えぇーーー!?」」

 

 どうやら俺達の家は真向かいだったようだ。

 

蒼真「ま、マジか!?え?そんな事をありえる?」

 

リサ「あ、アタシ達もビックリだよ!?ねぇ友希那!」

 

友希那「そ、そうね。ビックリだわ…でも、確かに1ヵ月くらい前に引越しの車が来ていたわね」

 

リサ「…言われてみればそうだ。確かに来てた。何で今まで気づかなかったんだろ…」

 

蒼真「ホントにな…スゲー偶然が重なるなぁ」

 

友希那「ここまでくると…むしろ運命?…あ、いいフレーズが浮かんできたわ…私はここで。また明日」

 

リサ「え?!あ、ちょっ友希那!?」

 

蒼真「家に入っちまったな…」

 

リサ「あ、あはは…」

 

 少しの間沈黙が流れた…よ、よし話題を切り替えよう。

 

蒼真「リサ。今日はホントに色々ありがとな」

 

リサ「な、何?改まっちゃって」

 

蒼真「いや、リサがいなかったらこんなに今日1日楽しめなかったなぁと思ってさ」

 

リサ「い、いやいや。友希那もいたじゃん…」

 

蒼真「そうやけど、どれもリサがキッカケやったからさ…ありがとう」

 

リサ「…///…うん…」

 

蒼真「これからよろしくね」

 

リサ「…うん♪よろしく!」

 

蒼真「じゃあまた明日。おやすみ」

 

リサ「おやすみ~」

 

 

ガチャ…バタン

 

蒼真「ふぅ…なんか体が熱いなぁ風邪でも引いたやか…」

 

 それにしても今日1日で本当にいろんな事があったなぁ。

 

 今日はホントに楽しい1日だった。それもこれも全部リサのおかげかなと思いながら飯を作り、夕飯をすませ風呂に入り今日は早めに布団にもぐった。

 

蒼真「家に入る前のリサの笑顔、可愛くて綺麗やったなぁ」

 

 そんな事を言っているとまた顔が熱くなってきた。

 

蒼真「何やろ…ホントに風邪引いたやか?早めに寝るか…」

 

 そう言うと俺はスグに眠りに付いてしまった。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

sideリサ

 

リサ「ただいまー」

 

リサ母「おかえり、あら?顔赤いけどどうしたの?」

 

リサ「へ!?いや、何でもないよ!」

 

リサ母「あら?あらあらあら?もしかして、好きな人でも出来たの?」

 

リサ「い、いやいやそんな訳ないじゃん!」

 

 何でお母さんはそういうことにスグ食いついて来るんだろ…

 

リサ母「まぁいいわ。先にお風呂に入ってきなさい。夕飯作っておくから」

 

リサ「はーい」

 

 アタシは急いでお風呂に入って夕飯を食べた。

 

リサ「ごちそうさま。先部屋に戻るね」

 

リサ母「はーい。おやすみ~」

 

リサ「おやすみ~」

 

 部屋に戻り一息付いてベッドにダイブした。

 

リサ「今日はどうしちゃったんだろホント…」

 

 今もアタシは凄くドキドキしていた。

 

リサ「まさか家まで目の前だったなんて…」

 

友希那が言っていた、運命という言葉が頭からずっと離れなかった…

 

リサ「はぁ…恋愛小説の読み過ぎかなぁ」

 

 そう思わずにわいられないほど今日1日の出来事は物語に出てくるような事ばかりだった。

 

リサ「…もし…もし、蒼真の事を好きになるならもっと蒼真の事を知ってからかなぁ」

 

 そんな事を思いながらアタシは眠りについた…

 

 




読了ありがとうございます。

やっと主人公登校初日が終了しました。


次回からはもっとテンポアップしていけたらなぁと思います。

ではまた次回


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第4話:Roseliaと初顔合わせ

こんにちは、こんばんは。syoです。

今回からやっと話が少しづつ進んでいくと思うのでよろしくお願いします。


では、どうぞ


side蒼真

 

 夢を見た…小さな時の記憶だ。

 

 …あれは確か小学2年生の時か…

 

 名前は覚えていないがおじさんと楽しく話していた記憶…

 

 おじさんが歌を歌っている…

 

 俺はその歌を教えてもらって一緒に歌っている…

 

 いつかまた一緒に歌おうと約束した…

 

 そんな小さな時の記憶だった。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

蒼真「ん…んー…もう朝かぁ」

 

 時計を見ると5時45分を指していた。昨日より少し早い時間だ。

 

蒼真「それにしても懐かしい夢やったなぁ…なんでまたあの夢を見たんやろやろ」

 

 まぁ気にしてても仕方ないし学校に行く準備でもするかな。

 

蒼真「朝飯は昨日買ったパンでいいかなぁ」

 

 そう言って俺は昨日買ったパンの袋を出して飯の準備をする。

 

蒼真「パンとプラスで目玉焼きでも作るか」

 

 目玉焼きを綺麗に作るのはなかなかコツがいるが…お、今日は上手く出来た。

 

蒼真「それじゃいただきます」

 

うんなかなか美味い。パンも凄く美味い。

 

 そんな事を考えながら食べ終え今日も学校へ行く準備を済ませる。

 

蒼真「じゃ行くかな。行ってきます」

ガチャ…バタン

 

バタン

リサ「あれ?蒼真朝早いねーおはよー」

 

蒼真「おはよ。リサこそかなり早いな。今日も部活の朝練?」

 

リサ「今日は違うよー癖で早く出てきちゃった。で蒼真は?」

 

蒼真「俺もそんなとこかなぁ癖で早く出た感じ。後散歩しながら学校に行くのも癖かな」

 

リサ「そうなんだ。ホントに散歩してるんだね」

 

蒼真「まぁ趣味やけね」

 

リサ「まぁ立ち話もなんだから歩きながら話そっか」

 

蒼真「そうやな」

 

 俺達は歩き出し通学路でもある商店街を通った。

 

リサ「そういえば、今日のお昼はどうするの?」

 

蒼真「この町に慣れるまでは外で買って行こうと思っとったから今日は買って行くつもり」

 

リサ「そっかぁ。よかったら今度お弁当作ってこよっか?」

 

蒼真「いやいや、流石に悪いって」

 

リサ「えぇー全然気にしなくてもいいのに。昨日のお礼だと思ってさ」

 

蒼真「うーんでもなぁ…」

 

リサ「いいからいいから。アタシが好きでしたいんだからさ♪」

 

 そう言われると断わりずらいなぁ。…今回はリサの好意に甘えさせてもらおうかな。

 

蒼真「じゃあ…お願いしようかな」

 

リサ「うん♪任せて!」

 

 そんなことを話しているうちに学校に着いた。もちろんスーパーで弁当も買って行った。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 時間が進みあっという間に放課後になった。

 

 今日はリサや友希那のバンド、Roseliaの練習を見学させてもらうことになっている。

 

友希那「それじゃ行きましょうか」

 

リサ「OK」

 

蒼真「了解」

 

 そんな訳で俺は2人が最近よく使っているcircleというスタジオに行くことになった。

 

友希那「ここよ」

 

蒼真「へぇ。こっち側はこんな建物があるんか」

 

リサ「こっち側には来たことなかった?」

 

蒼真「うん。まだ商店街方面しか行ってなかった」

 

 スタジオに入った俺達は指定された番号の部屋に入る。

 

ガチャ

 中に入ると機材などを設置している女の子達がいた。

 

リサ「みんな早いねぇ」

 

?「あ、リサ姉!こんにちはー」

 

リサ「こんにちはーあこ♪」

 

あこ「友希那さん!こんにちは」

 

友希那「こんにちは」

 

?「友希那さん、今井さん…こんにちは」

 

友希那「燐子。こんにちは 」

 

リサ「こんにちはー。お、もう準備出来てるんだねぇありがとう♪」

 

燐子「い、いえ…早く着いたので…」

 

友希那「…紗夜はどうしたの?」

 

燐子「あ、氷川さんは今日風紀委員のお仕事があるみたいたいで、少し遅れるそうです」

 

 そんな事を言っていると―――

 

ガチャ

紗夜「すみません遅れました」

 

友希那「大丈夫よ紗夜。私達も、今来た所だから」

 

紗夜「そうですか。あら?湊さん。そちらの方は…」

 

友希那「あ、まだ紹介してなかったわね」

 

 メンバー全員が集まったみたいだだから軽く自己紹介をした。

 

蒼真「初めまして九重蒼真です。成り行きで皆さんの練習を見学させてもらうこと事になりました。短い時間ですけどよろしくお願いします」

 

3人「「「よろしくお願いします」」」

 

 左から宇田川あこさん。白金燐子さん。氷川紗夜さん。

と順番に挨拶された。

 

友希那「じゃあ時間も限られているし早速始めましょうか」

 

 友希那の掛け声とともに楽器を持ち演奏する準備をした。

 

友希那「蒼真はその辺りで座って私達の演奏を聴いててちょうだい。後で意見を聞きたいから」

 

蒼真「え?その話今初めて聞いたんやけど!」

 

友希那「今初めて言ったもの。一般的な意見も欲しかったから」

 

紗夜「…そうですね。一般的な意見を取り入れるのは良い事だと思います。ですから私も賛成です」

 

リサ「そうだねぇ。ただ聴くだけだと暇になっちゃうだろうから丁度いいと思うよ♪」

 

あこ「あこも賛成です!」

 

燐子「私も…いいと思います」

 

蒼真「分かった分かった。意見を言うくらい大丈夫だから…ただあんまり期待せんでよ。ちゃんとした意見とか上手いこととか言えんと思うけ」

 

友希那「大丈夫よ。蒼真の思った事をそのまま言ってくれればいいから」

 

蒼真「了解」

 

友希那「じゃあ始めりわよ。まずはこの曲から」

 

 そう言うと、宇田川さんがスティックを鳴らし演奏が始まった。

 

 俺もしっかり聴く為に耳を澄ました。

 

.•*¨*•.¸¸♬

 

 最初の曲はBLACK SHOUT、続けてONENESSという二曲を演奏してくれた。どちらもレベルが高く体が熱くなって来るのが分かった。まだ荒削りの部分もあるがそれでもあまりある技術に正直驚いていた。

 

 しかもこの二曲はオリジナルらしい…どれだけ努力をすればここまでたどり着けるんだ…

 

 そう思わずにはいられないほど彼女達の演奏は凄まじかった。

 

 ここまで俺は声も出ず。息を呑んで彼女達の演奏を聴いていた。

 

 友希那達は水分補給をし、次の曲に移った。

 

 次の曲はLOUDER……ラウダー…どこかで聞いたような…

 

 そして曲が始まった。

 

.•*¨*•.¸¸♬

 

 あ…この曲…あの時の…

 

 この曲は昔俺がある人から教えてもらった曲に凄く似ている。

 

 こんな所でまた聴く事が出来るなんて…

 

 歌詞は若干アレンジされていたが、あの時の曲で間違いないと俺は確信した。

 

 そして俺は―――

 

.•*¨*•.¸¸♬

 

 

友希那「ふぅ…どうだったかし…ら…え?」

 

 俺は気付けば涙を流していた。

 

リサ「ど、どうしたの!?大丈夫!?」

 

 リサが慌てて駆け寄ってきた。

 

蒼真「ん?…あれ?何で泣いてんだ俺…」

 

 周りを見渡すとみんなあたふたしていた。

 

蒼真「ごめん。大丈夫やから…感極まって涙が出てしまったみたいや」

 

リサ「そう?ならいいんだけど…」

 

蒼真「リサもごめんな。心配させてしまったね」

 

リサ「ううん大丈夫だよ」

 

蒼真「ありがと」ニコッ

 

リサ「ッ…///( だからその笑顔はズルイって)…」

 

蒼真「?」

 

あこ「でも、そんなに感動してくれるなんてあこ、すっごく嬉しいです!」

 

燐子「そうだね、あこちゃん」

 

紗夜「とりあえず事態も収束しましたし、早速感想を聞かせて頂きましょう」

 

リサ「そうだね。友希那もそれでいい?」

 

友希那「…」

 

リサ「友希那?」

 

友希那「…え、えぇ。それで大丈夫よ」

 

リサ「大丈夫?友希那… 」

 

友希那「大丈夫よ」

 

リサ「そう?ならいいけど」

 

蒼真「えっと…感想だったよな…そうやなぁ」

 

 そう言うと俺はそれぞれの感想を簡単に伝えた。

 

蒼真「Roseliaの演奏自体は物凄くレベルが高くて凄かったの一言に尽きるかな。で、個人に対しての感想なんだけど…まず宇田川さんから。」

 

 みんな集中して聞いていた。

 

蒼真「宇田川さんはその小さな体でパワフルにドラムを叩いている姿はカッコよかったです。ただ、アップテンポになる場所が走り気味だったのが少し気になったかな?でもまだ中学生でそれだけ叩けるんだからこれからのキミの成長が楽しみだな」

 

蒼真「次に白金さん。白金さんは凄く丁寧に正確にキーボードを引いて聴き取りやすかったです。だけど少し自信が無さそうに引いているのが引っかかったかな。それだけの技術があるんだからもっと自信を持って引くともっとキーボードが引き立つと思うよ」

 

蒼真「次に氷川さん。氷川さんはギターの技術力が物凄く高くて驚きました。ただ、自分の音っていうのかな?がまだ確立出来てないのかなっていうのが聴いてて感じたかな。でもその自分の音を探しているっていうのも同時に感じられたから。もう少し今までと違う事を取り入れて見るといいかも。自分の音、見つけられるといいね」

 

蒼真「次にリサね。リサは全体的に安定していて安心して聴けたかな。ただ、技術面に於いてはみんなより1歩劣る感じがしたかな。でもホントに少しだけ劣っているだけだからそんなに悲観することはないと思う。このまま行けばスグに追いつくと思うから頑張って」

 

蒼真「最後に友希那。友希那も氷川さんと同じで、物凄く高い技術を持っていると思う。そして、友希那の歌からは物凄い信念のようなものを感じたかな。あれだけ想いを乗せて歌えるのは本当に凄い事だと思う。ただ、歌の最後の方になるとビブラートとは違った震えとかすれた声になっていたから、そこを気をつけるといいかなと思う」

 

 

 スタジオ全体が静まり返る…

 

蒼真「…あ、あれ?俺変な事言っちゃったかな? 」

 

 最初に口を開いたのは氷川さんだった。

 

紗夜「い、いえ大丈夫です。そこまで1人1人意見を言って頂けるとは思わなかったので…」

 

友希那「そうね。何か音楽の経験があったの?」

 

蒼真「うーん…友希那達みたいにしっかりと演奏したりとかはしてないけど、独学で歌を歌ってたりはしたかな」

 

友希那「そう…」

 

リサ「いやーでもホント助かるね。そんなに色々言ってくれると」

 

あこ「うん♪あこもっともっと頑張ります!」

 

燐子「そうだね。私も…もっと自信を付けられるように頑張ります」

 

蒼真「そう言ってもらえると俺も頭をひねり出して言った甲斐があったよ」

 

リサ「あはは♪なにそれ~」

 

 そんな事を話して俺はある事を思い付いた。

 

蒼真「そうだ…友希那ちょっとお願いあるんだけど」

 

友希那「何かしら?」

 

 

 そして俺は言った―――

 

蒼真「最後に歌った曲。LOUDERって曲を俺に歌わせてくれないか?」

 




如何でしたでしょうか。

今回はここで区切らせていただきます。

づづきは出来るだけ早く投稿したいと思います。

それではまた次回


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第5話:歌と絆

こんにちは、こんばんはsyoです。

前回のつづきとなります。


どうぞ


 

side友希那

 

蒼真「友希那…ちょっとお願いがあるんだけど」

 

 急にどうしたのかしら…

 

友希那「何かしら?」

 

蒼真「最後に歌った曲。LOUDERって曲を俺に歌わせてくれないか?」

 

友希那「…え?」

 

 そんな発言に私は…私達はかなり驚いた…

 

リサ「ど、どうしたの?急に」

 

蒼真「ちょっと…気になる事があってね…」

 

 何かしら…気になる事って…

 

友希那「まぁ…構わないわ。みんなもいいかしら?」

 

紗夜「湊さんがそう言われるのであれば私は構いません」

 

あこ「あこも大丈夫ですよ!」

 

燐子「私も…大丈夫です」

 

リサ「うん!私も大丈夫だよ~。友希那の歌以外で演奏するのも新鮮でイイしね♪」

 

蒼真「皆ありがとう」

 

友希那「じゃあ私はここで聴いているわね」

 

蒼真「うん。お願い」

 

 蒼真が何故こんな事を言ってきたのか気にはなったけれど、純粋に蒼真の歌も聴いてみたかった。

 

蒼真「気になる事があったら言って。出来うる限り答えるから 」

 

友希那「分かったわ」

 

蒼真「じゃあ、みんなお願いします」

 

 そう言うと演奏が始まった。

 

 

.•*¨*•.¸¸♬

 

 

 

…!こ、この歌詞は…

 

…どうして…

 

 

 そして演奏が終わった。

 

 

蒼真「…どう…やったかな?」

 

あこ「す、スゴかったです!何ていうかバーン!ってなってこうギュイーンって!」

 

紗夜「宇田川さん、擬音だけでは伝わりませんよ。でも確かに、九重さんの歌には何か人を引き付けるような感じはしました」

 

燐子「九重さんも…友希那さんに負けないくらい上手かったです」

 

リサ「そうだね〜何かこう友希那とは違った感じに空に突き抜ける感じだったね。…でもこの歌詞って…」

 

友希那「…(して )…」

 

蒼真「え?」

 

友希那「どうしてお父さんが歌っていた歌詞を知っているの!?」

 

 思わず私は大きな声を上げてしまった。

 

蒼真「…やっぱり…あの人は友希那のお父さんやったんかぁ…」

 

友希那「えっ?」

 

 お父さんの事を知っているの?

 

蒼真「昔俺がまだ小さかった頃、地元に来ていたバンドの人に会う機会があってその時話をしたのが多分友希那のお父さんなんだ」

 

友希那「…そう…」

 

 確かにお父さんが九州に行っていたのは覚えている。それに…

 

蒼真「その時にこのLOUDERって曲を披露してもらって、小さいなりに、凄く感動したのを今でも覚えてる。そしてこの曲を、歌の歌い方を教えてくれた」

 

 あの頃よく九州に行った時の事をお父さんは楽しそうに話していた。

 

そして―――

 

蒼真「それで、その時その人と帰り際に約束したんだ。いつかまた会うことがあったら一緒に歌おうって」

 

 !…覚えてる…覚えてくれている…

 

―――お父さんは歌を一緒に歌う約束した子の事を今でもたまに話してくれる。今も気にかけているみたいだった…

 

蒼真「だからこの曲を聴いた時驚いて、でも懐かしい気持ちになって思わず涙が出てしまってたんやと思う」

 

 なんだろう…この込み上げて来る感じは…

 

蒼真「…まぁもう昔の話だから覚えてないと思うけど…」

ボスッ

 

蒼真「…えっ?」

 

気付くと私は蒼真に抱きついていた。

 

蒼真「っちょっ!…///」

 

リサ「ゆ、友希那!?」

 

友希那「…れ…い」

 

蒼真「え?」

 

友希那「忘れてなんかない…お父さんは約束の事…今でも覚えているわ…」

 

蒼真「そ、そっか」

 

 私は周りの事も気にせずにそのまま泣き崩れてしまった。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

side蒼真

 

 …ど、どうしたもんか…友希那のお父さんが約束の事を覚えていた事は凄く嬉しいんだけど…この状況…どうしたもんか。

 

 俺は今、友希那に抱きつかれてその上泣かれてしまっている。どしたらいいのか…

 

友希那「…ありがとう…」

 

蒼真「え?」

 

友希那「お父さんの事…約束の事…覚えていてくれて…ありがとう」

 

 

 俺の身体に顔をうずくめながら感謝されていた。

 

 ポンポン…と俺は友希那の頭を撫る。

 

蒼真「感謝するのは俺の方だよ…ありがとなおじさんの事教えてくれて。俺、おじさんの歌好きだしずっとファンだったからさ」

 

 今この瞬間この場所には俺と友希那しかいないような雰囲気になっている…

 

「…」

 

 …が、そんな事はあるわけが無い…

 

 …やばい何やってるんだ俺…皆がいる前で…メチャクチャ恥ずかしいし 。あ…リサがコッチを睨んでる…終わったな俺殺されるわ…

 

 などと考えていると、予想外の言葉が飛んできた。

 

リサ「むー…いいなぁ友希那気持ち良さそう…」

 

あこ「ホントだね!あこもなでなでされたーい!」

 

蒼真「は?」

 

友希那「…///」

 

 思わず素っ頓狂な声が出てしまった。

 

 宇田川さんがそういう事を言うのはなんとなく分かるけどリサがいいなぁなんて言うのはちょっと以外だった。てっきり「友希那に何してるの!」って言われるかと思っていたけど…てか友希那、顔が赤くなってきてるけど大丈夫かな?

 

蒼真「友希那、顔…赤くなってるけど大丈夫か?」

 

友希那「え、えぇ…大丈夫よ…取り乱してしまってごめんなさい」

 

蒼真「いや、俺の方こそごめんな色々と」

 

 そう言って友希那は俺から離れた。

 

 他の娘達にも申し訳なかったなぁ…

 

 と思ってメンバーを見渡してみると、リサと宇田川さんは相変わらず羨ましそうな目で見たいた…うーん…後で少しなでてあげたらいいのかな?白金さんと氷川さんは…ん?あの2人も少し顔が赤い気もするけど…気のせいかな?友希那は…物凄く赤くなってるけどホントに大丈夫か?

 

蒼真「友希那、ホントに大丈夫か?熱でもあるんやないか?」

 

友希那「///…だ、大丈夫よ」

 

リサ「(恥ずかしがってる友希那可愛いなぁ)

 

友希那「リサ。何か言ったかしら?」

 

リサ「な、何も言ってないよ~」

 

 

 それからしばらくして俺も皆も落ち着きを取り戻しまた練習を再開した。俺もしっかり演奏を聴き出来るだけのアドバイスをした。

 

友希那「今日はここまでにしましょう」

 

それを合図に皆それぞれ返事をした。

 

蒼真「俺はこんな感じでよかったんやか?」

 

友希那「えぇ。凄く助かったわ…ありがとう」

 

蒼真「そいつは良かった。俺の方こそ誘ってくれてありがと。凄く楽しかった」

 

 これで終わりと思うと少し寂しい様な感覚に陥った。

 

友希那「…もし…蒼真が良ければこれから私達のサポートを頼めないかしら…」

 

蒼真「え?」

 

友希那「今日は凄く参考になる事を言ってくれた…色々と助けられたから…だから、私達がもっと上に行く為にあなたの力を貸して欲しい」

 

 みんなそれに賛同した。

 

 予想外の事言われたが凄く嬉しかった。彼女達の力になれるなら是非力になりたい。短時間の練習だったけどそう思わずにはいられなかった。それだけ濃い時間だった。

 

蒼真「…俺なんかでいいんか?」

 

友希那「…あなたがいい…」

 

 その言葉に思わずドキッとした。

 

友希那「あなたが居てくれることで私達の技術にも磨きがかかると思うから…だからお願いします」

 

 友希那に続いて皆にも頭を下げられた。

 

蒼真「…頭を上げて友希那、皆。俺も君達の力になりたいと思っとった所やけんさ」

 

友希那「じゃあ…」

 

蒼真「うん。こちらからもお願いするよ。是非君達のサポートをさせてほしい」

 

友希那「ありがとう」

 

蒼真「俺の方こそありがとう。まぁこんな可愛くて美人な子達に頭を下げられて断るなんてありえんけどね」

 

「「「「「…///」」」」」

 

友希那「…(可愛い)(のかしら)…///」

 

リサ「(だからなんでそんな事)(簡単に言ってのけるの)?…///」

 

あこ「わーい♪美人って言われちゃった!」

 

燐子「そ…そうだね…///」

 

紗夜「(美人)(なのかしら)…///」

 

蒼真「?」

 

 それぞれ何か呟いているようだったけど、よく聞き取れなかった。

 

友希那「ごほんっ…じゃあサポーターも決まった事だしそろそろ解散しましょうか」

 

 そしてまた、友希那の号令と共にそれぞれ挨拶をする。

 

 

 

 俺はRoseliaのサポートをする事になった。

 

 

あこ「あ、そうだ!せっかく蒼真さんがメンバーに入ってくれたし歓迎会しませんか!」

 

 

 

 




…え?まだ続くの?


読了ありがとうございます。

とりあえず練習偏はここまでです。


次回も読んで頂けると嬉しいです。



お気に入りの件数が50件を超えました!

皆さん、読んでいただき本当にありがとうございます!

自分もこれからまた頑張っていこうと思いますのでどうぞよろしくお願いします。


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第6話:練習後にて

こんにちは、こんばんはsyoです。

今回はRoseliaのほのぼのとした練習後を書いてみました。


それではつづきをどうぞ




side蒼真

 

 

 というわけで宇田川さんの提案により俺達はRoseliaのメンバーがよく使うレストランに行く事になった。

 

 

 レストランに着きテーブルのスグ出られる所に座ろうとしたが…

 

友希那「蒼真。ここに座りなさい」

 

蒼真「え?」

 

リサ「じゃあアタシはここかなぁ」

 

あこ「あ!ずるい!あこも蒼真さんの横に座りたーい」

 

リサ「あはは~また今度ねあこ」

 

 …何故こうなった…

 

 白金さん、宇田川さん、氷川さん

リサ、俺、友希那

 

 という並びになった…これじゃあ支払いができないじゃないか。

 

リサ「また勝手に支払い先にされないためにこういう並びにしたんだよ♪」

 

蒼真「…昨日も思ったけど…リサって読心術者か何かなん?」

 

リサ「何のこと?」

 

蒼真「…いや、何でもない…」

 

 心の中を詠まれてる様な気がして怖い…

 

 

 それからそれぞれ注文を取り雑談をしていた。

 

あこ「そういえば蒼真さん、友希那さんとリサ姉の事下の名前で呼んでますね」

 

蒼真「ん?あぁ…昨日色々あってな」

 

あこ「そうなんですね。じゃあ、あこの事もあこって呼んでください!」

 

蒼真「急だなぁ。まぁいいよあこちゃん」

 

そう言ってあこちゃんの頭を軽く撫でる。

 

あこ「えへへ…///」

 

リサ「むー…アタシの時はかなり抵抗したのにあこの時は全く抵抗しないんだね…」

 

蒼真「あ、あれは…女の子を名前で呼ぶとか始めてやったけんさ…」

 

 流石にいきなり名前呼びで呼び捨てとかかなり恥ずかしかったぞ…

 

リサ「…そ、そっか…ふーん…♪」

 

蒼真「悪かったって…」

 

 そう言って俺はリサの頭も撫でた。

 

 あ…リサの髪ウエーブが掛けられているけどサラサラしてて撫で心地がいいな…って何考えてんだ俺は…

 

リサ「ちょっ蒼真!?///」

 

蒼真「あ、ごめん…嫌やったやか」

 

リサ「い、嫌じゃないけど…//」

 

蒼真「そうか?さっきして欲しそうやったけさ」

 

リサ「…///」

 

蒼真「ッいて!」

 

 振り返ると友希那が俺の腕を抓っていた。

 

蒼真「ど、どうしたん?」

 

友希那「…私には何も無いのかしら?」

 

蒼真「え?」

 

友希那「私の時も渋っていたわ」

 

蒼真「あ、いや」

 

 言われてみれば確かにそうだった様な気がする。

 

蒼真「…はい…そうですね」

 

 これ以上何か言っても後が怖そうだから何も言わないでおこう。

 

 そして俺は友希那にも頭を撫でた。

 

友希那「ん…♪」

 

 満足してくれたかな?…友希那の髪も凄くサラサラしてるなぁ。

 

 

 それからしばらくして注文した料理が届き皆食べ始めた。

 

紗夜「ところで、九重さんは時々訛ったり方言が出ることがありますが何処から引っ越して来たのですか?」

 

蒼真「そっか。氷川さんと白金さんは学校が違うから知らないんだよね。俺は九州の北部の方から親の転勤で越してきたんだ」

 

紗夜「なるほど。かなり遠くから来られたんですね」

 

 氷川さんと白金さんは、制服がリサや友希那と違っていたから言われてないけど違う学校だということは分かった。あこちゃんは羽丘の中等部なのかな?色がちょっと違うだけだし。

 

蒼真「まぁそうやねぇ。あ、方言とかは色んな地方のものが混じってたりするから自分でもよく分からん時もあるけど…そうやなぁ…地元で有名な方言って言ったら何とかっちゃとか…何なにばいとか…後俺がよく使ってるのは何とかやけんはよく使いよるね」

 

リサ「あ〜確かによく聞くねぇ」

 

友希那「そうね」

 

蒼真「癖やけんね」

 

あこ「だっちゃって言うのはアニメで聞いたことがあります!」

 

蒼真「うーん…あれはまたちょっと違う様な気がするなぁ。ちゃんと調べた事はないけどあのだっちゃはホントにただの口癖なんじゃないかなぁ」

 

燐子「…あのアニメ…結構古いと思うんですけど、よくご存知ですね…アニメとか詳しいんですか?」

 

蒼真「そうやなぁ…オタクって程詳しいかは分からんけどそれなりにアニメは見てるしゲームも結構しよるよ」

 

燐子「そ…そうなんですね」

 

あこ「あこもりんりんと一緒にオンラインゲームしてます!」

 

蒼真「そうなんやね。最近俺もNeo Fantasy Onlineってゲームやってるよ」

 

2人「「ホントですか!?」」

 

蒼真「うぉ!びっくりしたぁ…」

 

 あこちゃんが大きな声を出すのは分かるけど、白金さんさんまで声を張り上げたのは流石に驚いた。

 

燐子「ご…ごめんなさい…私もびっくりしてしまって…私とあこちゃんもNFOをしているので…それで驚いてしまいました…」

 

蒼真「そうなんやね。確かに俺の身近でもやってる人はいなかったからしてるって言われたらびっくりするな」

 

あこ「今度一緒にゲームしたいです!」

 

蒼真「いいよ。できる時にやろう」

 

あこ「やった♪」

 

燐子「良かったねあこちゃん…♪」

 

あこ「うん!」

 

リサ「ゲームとかの話は中々ついていけないなぁ…」

 

 確かにゲームに詳しくない人からしたらついていけないのかもしれない。

 

蒼真「リサはあんまりゲームとかはせんと?」

 

リサ「うーん…少しはするけどそんなにたくさんはしないかなぁ…あ、漫画とかは読んだりするよ」

 

蒼真「そうなんや。どういったジャンルの漫画を読んだりすると?」

 

リサ「そうだなぁ…恋愛系の漫画は多いかな。友希那にもたまに貸して読んでもらったりするかな」

 

友希那「そうね。たまに読むと面白かったりするわね」

 

 へぇなんか意外だ。リサは分かるけど友希那も恋愛漫画を読んだりするのか…いや、意外なんて言ったら失礼か…彼女も年頃の女の子なんだから。

 

蒼真「恋愛漫画かぁ…俺もたまに読んだりするなぁ」

 

リサ「へぇ意外。男の子って恋愛ものはあんまり読まないって思ってた」

 

蒼真「そんな事はないよ。男でも見る人は結構いると思うよ。特に最近だとラブコメってジャンルが流行ってるからね」

 

リサ「そうなんだ~今度オススメとかあったら教えて♪」

 

蒼真「分かった。リサが気に入りそうなものを探しとく」

 

 そんな事を話しているうちに皆食べ終わっていた。

 

 …ん?氷川さんのとこのお皿…何で5枚も乗ってあるんだ…?

 

蒼真「氷川さん…」

 

紗夜「はい。何でしょうか?」

 

蒼真「何頼んだんだっけ…?」

 

紗夜「フライドポテトですが…」

 

蒼真「5皿も?」

 

紗夜「そ、それは皆さんが食べるかなと思って…」

 

蒼真「俺、食べた記憶が無い…」

 

リサ「アタシも食べてないね」

 

友希那「私も食べてないわ」

 

燐子「わ…私も…食べてない…です」

 

あこ「あこはたまに貰ってましたよ!」

 

紗夜「…」

 

 あ…気を悪くさせちゃったかな…

 

蒼真「あぁ…ごめんね氷川さん。別に責めてるわけやないんよ…ただちょっとびっくりしてね」

 

紗夜「い、いえ…」

 

蒼真「真面目そうな氷川さんがポテトをたくさん食べてるって思うとギャップがあってな可愛いなと思ってね」

 

紗夜「な!!?///か、かか可愛い?//」

 

蒼真「うん。可愛いと思うよ」

 

リサ「今の紗夜凄く可愛いよ♪」ニヤ

 

友希那「そうね。可愛いわよ紗夜」ニヤ

 

紗夜「…///」

 

蒼真「っはは」

 

 こんなに楽しい時間は本当に久しぶりだなぁ。

 

リサ「どうしたの?」

 

蒼真「いや、この時間がホントに楽しいなぁと思ってね…知り合ってまだ間もないけど…リサに出会って…友希那に出会って…Roseliaの皆に出会って良かったって思っとる。ありがとう皆…これから皆のサポートを全力でやっていくのでよろしくお願いします!」

 

 各々反応は違ったけど…

 

「「「「「こちらこそよろしくお願いします!」」」」」

 

 皆本当に歓迎してくれている様だった。

 

蒼真「さて、そろそろお開きにしようか時間もアレやし遅くなってもいけんやろうけね」

 

リサ「そうだね。今回はちゃんと割り勘ね!」

 

蒼真「分かってるって」

 

リサ「そう?ならいいんだけど」

 

蒼真「今度何かお礼しないといけないなぁとは思ってる」

 

リサ「もう…蒼真はもうアタシ達の仲間なんだからそんな事考えなくていいの」

 

蒼真「仲間…」

 

リサ「そう、仲間。だから気を使わなくていいんだよ」

 

 リサも俺に結構気を使ってくれてる様な気がするけど…でもそう言ってもらえて凄く嬉しいなぁ…

 

蒼真「…分かった。ホント色々とありがとなリサ」ニコ

 

リサ「…わ、分かってくれればいいんだよ…///」

 

 こうして俺達は会計を済ませ、解散。

 

 これからの生活がどうなっていくか楽しみだなと考えながら帰路についた。

 

 




読了ありがとうございます

こういうRoseliaの日常みたいなものをこれからたくさん書けたらいいなと思っております。


それではまた次回


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第7話:体育祭前

こんにちは、こんばんは。syoです。

先日初めまして加点式・透明のランキングに乗っていました。

これも読んでくださる皆さんのおかけです!
この場をお借りして、ありがとうございます!


それではつづきをどうぞ


side蒼真

 

 

 Roseliaのサポートをする事になって数週間。5月も中頃に入った。

 

 大型連休があったが俺はまだ終わってなかった家の整理などをして過ごしあっという間に時間が過ぎていった…

 

 もったいないことしたなぁ…

 

リサ「な~にしょぼくれた顔してるの?」

 

蒼真「そんな顔しとった…?」

 

リサ「してたよー。それで、どうしたの?悩み事?」

 

蒼真「悩み事やないけど、大型連休中家の片付けやら何やらやってたら時間が過ぎててどこにも行けなかった…」

 

リサ「あぁ…それはもったいないことしたねぇ…」

 

蒼真「…時間を見つけてどこか出かければと今更後悔…」

 

リサ「アタシも1人で出かけたりしてたし誘えばよかったね…あ!今更思い出したんだけど、蒼真と連絡先交換してなかったね」

 

蒼真「…確かにしてなかったね。家が目の前やけ全く気にしてなかった」

 

リサ「だねぇ…このメッセージアプリ登録してる?」

 

 そう言うとリサは携帯を取り出しそのアプリを見せてきた。

 

蒼真「一応登録してるよ。あんまり使ってないけど」

 

リサ「じゃあ交換しとこ!何かあった時スグに連絡出来るから」

 

蒼真「了解」

 

 俺は携帯を取り出しリサと連絡先を交換。

 

リサ「何かあったらいつでも連絡してね♪」

 

蒼真「分かった。ありがとう」

 

 そう言って俺は席に付き授業の準備を始めると――

 

リサ「あそうだ!今日お昼また一緒に食べない?」

 

蒼真「急にどうしたん?一緒に食べるくらい全然構わんけど」

 

リサ「この前言ってた通りお弁当作って来たからさ」

 

蒼真「マジか…」

 

 こんな事もあるのか…

 

リサ「…やっぱり…迷惑だったかな…?」

 

蒼真「いやいや、そんな事ある訳ないやん…こういう事初めてやけさ…嬉しくて、でもちょっと戸惑ってね…て言うかリサと同じ事考えとったみたい」

 

リサ「え?」

 

蒼真「俺もさこの前の弁当のお礼に今日作ってきたんよ…リサ用の弁当」

 

リサ「ッ…///もう…気にしなくていいのに」

 

蒼真「リサが良くても俺が気にするんよ」

 

リサ「律儀だなぁ」

 

蒼真「それはお互い様やろ」

 

リサ「確かにそうかも」

 

2人「「…アハハ♪」」

 

蒼真「じゃあまぁ昼休みまた屋上かな?」

 

リサ「そうだね」

 

蒼真「了解じゃあまた後で」

 

リサ「OK〜」

 

 それからまた授業が始まり集中して授業を受けた。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 気付けば既に昼休み。あっという間に時間が過ぎていた。

 

 リサは先に屋上に向かったみたいだ。友希那を迎えに行ったのかな?

 

蒼真「さて、じゃあ俺も向かいますかね」

 

日菜「どこに行くの?」

 

蒼真「うぉ!?ビックリしたぁ…あぁ氷川さんか」

 

 ていうかここの女の子はどうして音も立てずに近ずいて来るんだ…?

 

日菜「あはは♪面白〜い♪ルンって来た!」

 

蒼真「ルン?…髪のどっかにハートの触手があるのか?」

 

日菜「?」

 

蒼真「いや…何でもない忘れてくれ。…それでどうしたの?何か用事?」

 

日菜「あそうだった!蒼真君またリサちーとお昼一緒に食べるの?」

 

蒼真「そんなに一緒には食べてないと思うけど」

 

日菜「でも一緒に居る事は多いでしょ」

 

蒼真「まぁ席が隣やけね」

 

 なんか…こっちの氷川さんはグイグイくるなぁ…

 

日菜「2人は付き合ってるの?」

 

蒼真「え?い、いやいや…ま、まだ知り合って間もないのにつ…付き合うとかないやろ」

 

 いきなりとんでもない事を言い出したなぁ…ってか俺も何でこんなにきょどってるんだ?

 

日菜「ホントに付き合ってないの?」

 

蒼真「付き合ってないよ」

 

日菜「なーんだルンってしないなぁ…」

 

 だからそのルンって何なんだ。

 

日菜「でもそっかァ(これならお姉ちゃんにも)(まだチャンスはあるかも)♪」

 

蒼真「何か言った?氷川さん」

 

日菜「ん~ん何でもないよ♪あ、あたしの事は日菜って呼んでいいよ。お姉ちゃんと被って分かんなくなっちゃうだろうから」

 

蒼真「お姉ちゃん?もしかして氷川紗夜さんの事?」

 

日菜「そうだよーお姉ちゃんとあたしは双子なんだよ♪」

 

蒼真「そっかどおりで似てるなって思ったわけだ」

 

日菜「ホント!やったぁ!」

 

蒼真「そんなにに嬉しいのか?」

 

日菜「うん!お姉ちゃんと似てるって言われるとすっごく嬉しいよ♪」

 

蒼真「そっか。お姉ちゃんの事好きなんだな」

 

日菜「うん!お姉ちゃん大好き!」

 

 いい姉妹だな。

 

蒼真「あ、じゃあそろそろ行くね」

 

日菜「うん。ゴメンね邪魔しちゃって」

 

蒼真「大丈夫だよ」

 

日菜「あ、そうだ!最後にね…お姉ちゃんの事も名前で呼んで上げて。きっと喜ぶと思うから」

 

蒼真「そうか?まぁ分かった。じゃあまた教室でな日菜」

 

日菜「またね蒼真君」

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 日菜と話してたら大分遅くなってしまった…いや決して日菜のせいじゃないんだけど。

 

 そんな事を思いながら屋上に向かった。

 

ガチャ

蒼真「うっ」

 

 風が強かったのか砂が少し目に入ってしまった。目を擦り再び目を見開くと、そこには風で靡いた髪を抑えながら空を見上げているリサの姿があった。

 

蒼真「……」

 

 ほんの数秒だと思う…だけどその時間が永遠に感じて、まるでその情景が美しい絵画のような…それほど今のリサがとても可憐に見えて思わず見惚れてしまっていた…

 

リサ「ん?…あ!蒼真遅いよ~」

 

蒼真「…」

 

リサ「蒼真?…どうしたの?大丈夫?」

 

 そう言ってリサが近づいてきた。

 

蒼真「ッ…あ、あぁ悪い遅くなった」

 

リサ「…ホントに大丈夫?顔が少し赤いけど…熱でもあるんじゃない?」

 

蒼真「大丈夫っちゃ。走って来たけちょっと暑いだけ」

 

リサ「そう?ならいいんだけど」

 

蒼真「…ところで、友希那はどうしたん?」

 

リサ「今日はクラスで決め事があるから行けないって」

 

蒼真「そっか…」

 

 マジかぁ…今はちょっと2人きりは居づらいぞ…

 

 俺はさっきの光景が頭から離れずにいた。

 

リサ「なーに?アタシと一緒じゃあ嫌?」

 

蒼真「そんな訳ないやん…嫌やったら弁当とか作ってこんやろ」

 

リサ「…それもそうだね。ゴメンね変な事言って」

 

蒼真「いや全然いいんやけどね」

 

 地面に座り俺達は弁当を取り出した。

 

リサ「はい蒼真の分のお弁当ね」

 

蒼真「ありがとう。これリサの分と友希那の分。友希那には後で渡してあげて」

 

リサ「りょうかーい。友希那も喜ぶと思うよ♪」

 

蒼真「そうやか?やといいんやけど」

 

リサ「それじゃあ食べよっか」

 

蒼真「うん。じゃあいただきます」

 

リサ「いただきまーす♪」

 

 弁当を開くとそこには色鮮やかなおかずが綺麗に並べられていた。

 

蒼真「おぉ…スゲー…食べるのが勿体ないくらいの見た目だ」

 

リサ「ちゃんと食べてね~蒼真の為に作ったんだから」

 

蒼真「わ、分かっとるって」

 

 そう言って俺はおかずを一口づつ食べていった。

 

リサ「どう?」

 

蒼真「うん…美味い…めちゃくちゃ美味い!」

 

リサ「そう?なら良かった♪」

 

蒼真「リサはいいお嫁さんになれると思うな」

 

 うん…本当にいいお嫁さんになると思う。リサの旦那さんになる人が羨ましい…

 

リサ「ふぇ!?///な、ななな、何言ってるの!?///」

 

蒼真「こんなに美味い飯を作れるんやけリサの旦那になる人が羨ましいな」

 

リサ「……///(バカ)…///」

 

 

☆★☆★

 

 

sideリサ

 

 

 それからアタシ達はご飯を食べ終えて雑談をしていた。

 

リサ「お弁当ありがとね蒼真の作ってくれたお弁当もすっごく美味しかったよ」

 

蒼真「そう?ならよかった。作った甲斐があった」

 

 あ、そうだ!

 

 唐突にアタシはある事を思いついた。

 

リサ「そういえば 、もうそろそろ体育祭だね」

 

蒼真「もうそんなに時期なんやね」

 

リサ「この地域ではこの時期にあるのは結構珍しいみたいだけど」

 

蒼真「そうなんや。俺の住んでた地域もこの時期にあってたから何も違和感なかった」

 

リサ「そうなんだね~あ、それでね体育祭に紗夜や燐子も見に来ると思うからさ良かったらみんなの分のお弁当一緒に作らない?」

 

蒼真「お、いいねそれ。そういう事でもRoseliaのサポートとして貢献していきたいね」

 

 蒼真ならそう言ってくれると思った♪

 

リサ「ありがと♪皆も喜んでくれると思う」

 

蒼真「…大人数になるから倉庫から重箱を何個か出さんといけんなぁ…」

 

リサ「家にあるのも出すよ!」

 

蒼真「お、それは有難い。是非使わせてもらうよ」

 

リサ「うん♪」

 

蒼真「ところで、作る場所はどうする?」

 

リサ「あ…」

 

 …考えてなかった…

 

蒼真「ははは。その顔は考えてなかったって顔やね」

 

リサ「ゴメン…てかそんなに笑わなくてもイイじゃん!」

 

蒼真「ごめんごめん。意外とおちょこちょいな所もあるなぁと思ってね」

 

リサ「もう…でもどうしよ…」

 

蒼真「なら俺の家で作るか?」

 

リサ「え?良いの?」

 

蒼真「家は親が出張でいないから俺1人やけね。別に構わんよ」

 

 え…てことは…つまりそうなると…2人きり…

 

リサ「…」

 

蒼真「流石に2人きりだとお互い気まずいかもしれんけ友希那とかRoseliaのメンバーも呼ぼうか」

 

リサ「そ、そうだね!うんそうしよ!」

 

 な、何考えてるんだろアタシ…ちょっといいかも…とか思っちゃった…///

 

蒼真「じゃあ今日の練習の時に皆に伝えるか」

 

リサ「うん!そうだね」

 

 とりあえず予定は決まった。これから体育祭までに色々と準備しないといけない。

 

蒼真「練習終わってからでも皆の好き嫌いを聞かないといけんね」

 

リサ「あ、そうだね!アタシも今同じこと考えてた。一応知ってる物もあるけど改めてまた聞いてみようと思う」

 

蒼真「そっか。意外と俺達って考えてるんだろ事が似てとるんかもね」

 

リサ「あはは♪そうかも」

 

蒼真「じゃあこの話はこんな感じでいいんかな」

 

リサ「うん。いいと思うよ」

 

蒼真「了解。この話は練習後に俺から皆に伝えるけん。リサには練習に集中してもらいたいけんね」

 

リサ「ありがと♪じゃあそうさせてもらうね」

 

 

 こんな感じで体育祭に向けての話が決まっていった。

 




読了ありがとうございます。

今日が七夕という事で急いで書き上げました。まぁ七夕とは一切関係の無いお話ですが…

次回も見て頂ければ幸いです。

それではまた次回


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第8話:サポートとして出来ることを見つけたい

 

side蒼真

 

 

 放課後。俺は急いでいつもRoseliaの練習で使っているCiRCLEに向かった。皆の練習機材の設置などの準備をするためだ。

 

ウィーン

蒼真「こんにちは!まりなさん」

 

まりな「こんにちは蒼真君。今日も早いねぇ」

 

 この人はこのCIRCLEで働いている方だ。以前Roseliaや他のバンドが開催したイベントで皆お世話になったそうだ。

 

蒼真「いやぁサポートとしてはこれくらいしないとですから」

 

まりな「頑張ってるみたいだね。はい予約してた部屋の鍵」

 

蒼真「ありがとうございます」

 

 

 部屋に入った俺はいつも皆が使っている機材諸々の準備とセッティングなどを始めた。

 

蒼真「…リサと紗夜さんのスタンドはここら辺かな……キーボードは下座でドラムは上座だったな……ドラムはあこちゃんに合わせて少し位置を狭めんといけんな……このくらいでいいかな…後であこちゃんにも聞いてみるか……あとアンプとシールド、マイクとマイクスタンドもいるな…」

 

 1つ1つ作動するか確認し、簡易的な準備はできた。

 

蒼真「後はとりあえず水分補給用のスポーツドリンクの用意やな」

 

 まりなさんからキーパーとコップを借り、持ってきたスポーツドリンクの粉末と水を入れかき混ぜ、味を整えて行った。休日であればキーパーとかは持ってくるが、流石に学校がある日は荷物になるから平日はここの物を借るようにした。

 

蒼真「味の方は…うんちょうどいいかな…あ、いや待てよ…九州の方は濃い味を好むけどこっちの人達は確か少し薄味の方が好みだった様な気がするな…少しだけ薄めとくか」

 

 後はマイクの音量調節をしないといけない。

 

蒼真「友希那はかなりの声量だからボリュームを下げて…このくらいかな」

 

蒼真『テステス、マイクテス…とりあえずこんなもんかな……ちょっと歌ってみるか』

 

 そう言って俺は携帯とイヤホンを取り出し音楽を流した。曲は友希那からもらった音源から彼女が書いた歌詞でLOUDERを歌ってみた。

 

 

.•*¨*•.¸¸♬

 

 

 歌いながら考えた。

 

 俺がこの曲に思い入れがあるからかもしれないけど…友希那が書いた歌詞には彼女の想いがたくさん詰まっているように感じた。

 出だしは暗い感情を描き…折れてしまった心…立ち直り、前の自分と決別…そして大声で気持ちを伝えている…これはおじさんに向けてなんだろう。

 …出だしからサビにかけて徐々に暗いフレーズから力強いものに変わって行く…友希那とおじさんの絆がここにあるな…。

 この歌詞を書く時…書くよりも以前なのか分からないけど、友希那は凄く苦悩していたのだと思う…。

 でもだからこそ今の自分がある…そんな想いが詰まった曲のではないかなと自分なりに解釈した。

 

 

.•*¨*•.¸¸♬…

 

 

友希那「相変わらずいい歌声をしているわね」

 

紗夜「そうですね。思わず聴き入ってしまいました」

 

蒼真「え…?」

 

あこ「チョーカッコよかったです!」

 

燐子「とても…素晴らしかったです」

 

蒼真「ちょ」

 

リサ「…」

 

 マジかぁ…メチャクチャ恥ずいんだけど…

 

蒼真「い…いつから()ったん?」

 

友希那「ちょっと歌ってみるか…て所から見ていたわ」

 

蒼真「歌う前から居ったん!?声掛けてよ…メッチャ恥ずかしいやん…」

 

紗夜「恥ずかしがることはないと思います。せっかく良い歌声なのですから」

 

蒼真「そうやかぁ…まぁ、ありがと。紗夜さん」

 

紗夜「!?…ど、どうして急に名前で…」

 

蒼真「あ、何も言わずに名前呼んでゴメンね」

 

紗夜「い、いえそれは良いのですが…」

 

蒼真「紗夜さんの妹の日菜ちゃんと同じクラスで苗字だと分からなくなるから名前で呼んであげてって言われたけね…それで名前で呼ぶようにしたんよ」

 

紗夜「そ、そうですか…(もう日菜ったら)…//」

 

蒼真「大丈夫?また少し顔が赤くなってるけど」

 

紗夜「だ、大丈夫です。では私も蒼真さんと呼びますね」

 

蒼真「お、おう。いいよ」

 

 急に呼ばれると恥ずかしいな…紗夜さんも同じだったのかな…

 

燐子「ず…ズルイです…!」

 

蒼真「ッ!どうしたん?白金さん」

 

 近い近い…近いって!

 

燐子「わ…私だけ苗字です…皆さん名前で呼ばれてるのに…」

 

蒼真「そ、そうやね。確かに1人だけ名前で呼ばないのは可哀想やね…じゃあ…燐子ちゃん。でいいやか…」

 

燐子「は、はい…!だ…大丈夫です///…私も蒼真さんと…呼ばせてもらいますね」

 

蒼真「お、おう」

 

 燐子ちゃんってこんなに積極的な娘だっただろうか…

 

 まぁ…とにかくRoseliaのメンバー全員を名前で呼ぶようになった。

 

蒼真「そういえばさっきから一言も喋ってないけど…どうした?リサ」

 

 そう言いながら肩を軽く叩いた。

 

リサ「へ!?な、何でもないよ!」

 

蒼真「そ、そう?ならいいんやけど…キツいんやったら無理するなよ」

 

リサ「…ありがと…///」

 

蒼真「ま、じゃあ気を取り直して練習始めようか」

 

それぞれ返事をした。

 

蒼真「あ、そうだ。あこちゃんちょっといいやか」

 

あこ「はい!何でしょう」

 

蒼真「ドラムの位置なんやけど、こんな感じで良かったやか?」

 

あこ「はい!大体大丈夫です!あ、あとはスネアとハイハットをもう少し寄せれば完璧です!」

 

蒼真「了解。覚えとくよ」

 

あこ「ありがとうございます!」

 

 それから皆それぞれ準備をし、練習を始めた―――

 

 

☆★☆★

 

 

side友希那

 

 

 それから私達は2時間、休憩を挟みながら練習を続けた。

 

 休憩中、蒼真が作ってくれていたスポーツドリンクを飲んだ。アレはとても美味しかった。なんでこんなに美味しく感じるのかしら…蒼真が作ってくれたから…?

 

まだドリンクが残っていたからコップについで飲んでいると――

 

蒼真「さっきから結構飲んでるみたいだけど美味かった?」

 

友希那「とても美味しかったわ。ありがとう」

 

蒼真「そっか。なら良かった」

 

友希那「これからも色々と頼りにしているわ」

 

蒼真「おう!」

 

 蒼真がサポートに入ってくれてまだ日は経っていないけどれど、もう既にRoseliaには欠かせない存在になって来ている。

 

 何故かしら…今まで音楽以外の事には興味を引かれなかったけれど、ここ最近は蒼真の事が気になっている自分がいる…

 

 あれこれ考えても答えは出ない。だからこの事は一旦置いておくことにする。

 

蒼真「あ、そうだ。皆に聞いてほしい事があるんやけど」

 

 ?…何かしら…

 

紗夜「何かあったのですか?」

 

蒼真「皆はもう知っとると思うんやけど、今度うちの学校で体育祭があるんよ」

 

紗夜「はい。知っていますね。それがどうされたのですか?」

 

蒼真「いやさ、今日リサと話をしてて体育祭の話になってね紗夜さんや燐子ちゃんも観に来るって聞いたからそれやったら皆の分の弁当を作ろうかって話になって―――」

 

 蒼真は事の詳細を説明してくれた。最初は2人で作る予定だったそうだ…

 

 …なにかしら…この胸がチクチクするような…心の中がぐるぐる渦巻いているような感じは…

 

 その後に続いて、2人だけ作るのは大変だと思うから私達にも手伝ってほしい。という事だった。

 

 すると今度は何故か安堵している自分がいる。

 

 私はなぜこんな感情が出てくるのか分からず少し戸惑ってしまっていた。

 

リサ「友希那。大丈夫?顔色が少し悪いみたいだけど」

 

友希那「!え、えぇ大丈夫よ」

 

蒼真「あんまり無理はするなよ」

 

友希那「えぇ。ありがとう」

 

蒼真「で…どうやろうか」

 

 もちろん行くに決まっているわ。家も目の前なのだから。

 

友希那「私は構わないわよ」

 

あこ「楽しそうです!あこも行きたいです!」

 

燐子「何か…手伝える事があれば手伝います」

 

紗夜「皆さんがそう言うのであれば私も構いません」

 

蒼真「ありがとう。じゃあ体育祭前日の放課後にここの外のカフェで待ち合わせでいいやか?」

 

 待ち合わせをしなくても簡単な方法があるわ。

 

友希那「私が皆を集めて蒼真の家に行くわ。その間にリサは蒼真と買い出しをお願い。もちろん割り勘で」

 

蒼真「買い出しまではいいんやけど…うーん…割り勘は流石に悪いかなぁ」

 

友希那「何を言っているの。メンバー全員で作るのだからそれくらい当然よ」

 

紗夜「そうですね。そのくらいはしないと」

 

蒼真「うーん…そこまで言ってくれるんやったらお願いしようかな」

 

友希那「初めから強がらずにそう言えばいいのよ」

 

蒼真「でもさ」

 

友希那「でもじゃないわよ」

 

蒼真「あ…はい…すいません」

 

友希那「…なんで謝るのよ…」

 

蒼真「いや、何となく?まぁありがとう」

 

友希那「…分かればいいのよ」

 

 蒼真はいつも私達の事を気遣ってくれるけど、私達の事ももっと頼ってほしい。私はそんな事を思っていた。

 

リサ「よし!じゃあ予定も決まったしそろそろ片付けて解散しよっか」

 

友希那「そうね」

 

リサ「あ、そうだ。皆も蒼真と連絡先を交換したらどうかな?何かと便利だろうから」

 

友希那「そうね。そうしようかしら…」

 

 …ん?皆も?

 

友希那「リサ」

 

リサ「なに?」

 

友希那「あなた、もう先に連絡先交換しているの?」

 

リサ「え!?…う、うんそうだね…」

 

友希那「そう…」

 

 それは少しずるいのではないかしら…

 

友希那「まぁいいわ。練習のスケジュールや今後の予定とかも送れるから丁度いいわ。交換しておきましょう」

 

 という分けて蒼真と連絡先を交換し帰り支度を始めた。

 

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

side蒼真

 

 

蒼真「鍵は俺が返しとくけん先出とっていいよ」

 

リサ「了解。ありがと♪」

 

蒼真「おう」

 

 そう言って俺は受付の方に向かった。

 

蒼真「まりなさん。鍵返しに来ました」

 

まりな「はーい。ありがとうござました♪」

 

 あ、そうだ。

 

蒼真「まりなさん。ちょっと今いいですか?」

 

まりな「大丈夫だよー。どうしたの?」

 

蒼真「以前ここでRoseliaがライブをしたと聞いたんですけど、その時のライブ映像とかってあったりしますか?」

 

まりな「あるよ。でも貸出とかはできないかなぁ」

 

蒼真「やっぱりそうですよねぇ…」

 

まりな「でも急にどうしたの?」

 

蒼真「いや、まだRoseliaのサポートを始めてまだ日が浅いからもっとRoseliaの事を知りたいと思いまして」

 

まりな「なるほどねぇ。だったら時間がある日にここに来ればいいよ。スタジオ練だったら貸出も出来るからさ」

 

蒼真「ホントですか!じゃあ時間がある時早めに来ます!」

 

まりな「了解♪じゃあそれまでに用意しておくね」

 

蒼真「ありがとうございます!」

 

 Roseliaの一員として何か出来ることがあるといいんだけど…

 

 そんな事を考えながらリサ達と合流し帰路に着いた。

 

 




読了ありがとうございます。


今回から勝手ながら後書きのみで書いていこうと思います。


練習風景など素人が書いているのでチグハグしてたりするかもしれませんが、生暖かく見守って頂ければと思います。

意見、感想などありましたら感想欄やメッセージなどでお待ちしております。


ではまた次回



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第9話:買い物帰り

side蒼真

 

 

 あれからあっという間に体育祭前日となった。今は俺とリサでスーパーに買い物に来ている。

 

 あの一件のあとからちょくちょく皆とメッセージのやり取りをするようになった。

 リサからは他愛ない世間話など。友希那からは練習などの連絡先事項が。

 紗夜さんからは音楽に関しての話など。

 あこちゃんと燐子ちゃんとはゲームの話で盛り上がった。

 燐子ちゃんに関してはメッセージの返ってくる早さと、その早さで物凄い分量のメッセージが返ってくるから凄く驚いた。

 

リサ「そういえば、蒼真は皆の好き嫌いとか聞いた?」

 

蒼真「うん。メッセージのやり取りをしよる時に聞いたよ」

 

リサ「そっかぁ。だいぶ皆と仲良くなったみたいだね」

 

蒼真「これもリサのお陰やね」

 

リサ「そんなことないよ。蒼真が頑張ってコミュニケーションを取ってるからだよ」

 

蒼真「でもきっかけはいつもリサやけさ」

 

リサ「そうかなぁ」

 

蒼真「そうばい。ありがとね」

 

リサ「…もう//…それでどうだった?皆の好き嫌いは」

 

蒼真「そうやなぁ…リサの方が知っとると思うけど…友希那は苦い物が全般苦手みたいやね…特にゴーヤって言われた」

 

リサ「やっぱりそこは重要なんだ…」

 

 そんなにゴーヤは苦手なのか…確かにゴーヤはかなり苦いと思うけど作り方次第では美味くなると思うんだけどなぁ…

 

蒼真「あれ?そういえば…友希那コーヒー飲んでなかった?」

 

リサ「あーあれは…見てなかったから分からなかったと思うけど友希那、砂糖は最低でも7~10杯くらい入れてるよ」

 

蒼真「そんなに!?相当苦手なんやね…」

 

リサ「そうなんだよぉ…」

 

 他にはあこちゃんがピーマン。燐子ちゃんがセロリ。紗夜さんがにんじんが苦手だそうだ。

 

 …ピーマンとセロリはまぁ分からなくはないけど、にんじんかぁ…中々にんじん嫌いな人を見た事が無かったけど、にんじんの甘さがダメなのかな…?

 

 好きな食べ物は、リサは酢の物系。紗夜さんは隠しているみたいだけどフライドポテトなどジャンクフード系の物が好きみたいだ。あこちゃんはハンバーグが好きだと言っていた。燐子ちゃんは少し甘めの物が好きだそうだ。で友希那が言わずもがなガッツリ甘い物。後リサの作ったクッキーと言っていた。

 

 んー…皆の苦手、どうにかして上げたいけど…

 

蒼真「まぁ今回は弁当やけなるべく皆の好きなものを入れていきたいね。もちろん栄養が偏り過ぎないようにはせんといけんね」

 

リサ「そうだね~」

 

 うーん…どんな物を作ろうかなぁ…。

 

 何を料理するか考える時間が楽しい。特に今日はリサとも一緒に考えてるから一段と楽しく感じる。

 

蒼真「あ、そうだ。今日色々と手伝ってもらうから夜飯も作ろうと思うけど何か食べたい物はないやか?」

 

リサ「え?いや悪いよぉ」

 

蒼真「大丈夫大丈夫。リサにも手伝ってもらうだろうし皆にも料理を振る舞いたかったけさ」

 

リサ「そう?ならいいんだけど」

 

蒼真「おう♪ちなみに、個人的にはがめ煮を久しぶりに食べたいかなぁと思っとるんやけど」

 

リサ「がめ煮?」

 

蒼真「あ、こっちじゃこの呼びはあまり馴染みが無かったか。がめ煮は九州でよく使われる呼び方で、正式には筑前煮やね」

 

リサ「マジで!!?アタシ筑前煮大っ好きなんだ♪」

 

がめ煮好きの娘がこんな近くにいるとは思わなかった。

 

蒼真「おぉそうなんやね!…てかずっと思っとったけど、リサは見た目と違ってかなり家庭的で気が利いて皆に優しく出来て和食好きなんやね」

 

リサ「そ、そうかなぁ?確かに見た目と違うとは言われるけど…」

 

蒼真「なんて言うか…凄くギャップがあって可愛いと思う」

 

リサ「か、かわ!?///…もう!…早く買って行くよ!」

 

 そう言うとリサはスタスタ歩き出した。

 

蒼真「あ、ちょ待てって!」

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

sideリサ

 

 

 はぁ…何で蒼真はいつもあんななのかなぁ…

 

 アタシ達は買い物を済ませて蒼真の家に向かっていた。その間アタシは一言も喋っていなかった。

 いつもなら話題を変えて話したりするけど、今日はそれが出来なかった。何故か蒼真の顔を見ると恥ずかしくなってしまっていたから話題を振ることが出来なかった。

 

蒼真「リサ大丈夫?さっきから黙ってるけど」

 

リサ「え?いや~何でもないよ。ちょっと考え事してただけ」

 

蒼真「そっか」

 

リサ「うん」

 

 話しかけられる分には普通に話せるんだけどなぁ…

 

蒼真「あ、そうだ」

 

リサ「どうしたの?」

 

蒼真「今日食材多めに買ったし、筑前煮も結構作ろうと思うんやけどよかったらリサにも筑前煮を作ってもらおうかなと思うんやけどどうやか」

 

リサ「お、イイね♪二種類あったら食べ飽きたりもしないだろうし。せっかくだからアタシが作った物と蒼真が作った物で食べ比べとかしたいね」

 

蒼真「そうやねぇ俺もそう思っとった」

 

リサ「じゃあ決まりだね♪作るの楽しみ~♪」

 

 やっとアタシらしくなってきたかな?

 

蒼真「やな早く帰って準備せんとね」

 

リサ「うん。じゃあ急ごっか」

 

蒼真「了解」

 

 という事でアタシ達は少し早歩きで蒼真の家に向かった。

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

side友希那

 

 

 私は今、あこを連れて紗夜と燐子を迎えに行っていた。

 

紗夜「こんにちは。湊さん宇田川さん」

 

燐子「こんにちは…友希那さん。あこちゃん」

 

友希那「こんにちは紗夜、燐子」

 

あこ「こんにちは!紗夜さん!りんりん!」

 

紗夜「ずいぶん早かったみたいですね。教室から待っているのが見えましたよ」

 

友希那「そ、そうかしら普通だと思うけれど」

 

あこ「そうですか?だいぶ早歩きで来てた様な気がしますけど」

 

友希那「そんなことないわ。待たせるのが好きじゃないだけよ」

 

 そう。別に楽しみにしていたとかではないわ。なぜ蒼真の家に行くくらいで楽しみにしないといけないのかしら。

 

 と自分に言い聞かせているけれど、実際には少し楽しみだったりする。

 

紗夜「そうですか。私も待たせるのはあまり好きじゃないので行きましょうか」

 

あこ「はーい!あこすっごく楽しみです!」

 

燐子「私も…少し楽しみでした…皆さんと一緒に音楽以外の事をする事が…」

 

 確かに私達は音楽以外の事で何かをした事は無かった。そう思うといい機会なのかもしれない。

 

紗夜「今まで音楽以外の事に興味が無かったから新鮮ではありますね」

 

友希那「そうね。…紗夜も燐子も前に比べて随分変わったわね」

 

紗夜「そ、そうでしょうか…そんな事はないと思いますが」

 

燐子「私も…自分では分からないですね…」

 

紗夜「そう言う湊さんも前とは変わりましたね」

 

友希那「そうかしら?」

 

紗夜「はい。蒼真さんが入ってくる前から少しづつ変わって来てはいましたが、蒼真さんが入ってからはそれが顕著に表れているような気がします」

 

友希那「そ、そんな事、ないわよ…」

 

燐子「前より…少し明るくなりましたね」

 

あこ「あこ難しい事は分からないですけど、前の友希那さんも好きですし、今の友希那さんはもっと大好きです!」

 

友希那「…///」

 

 あこも皆も恥ずかしげもなくよくそういう事を言うわね…

 …仕返しがしたいわね。

 

友希那「紗夜も燐子も蒼真が入ってから随分楽しそうに話してるじゃない。あこもかなり上達したと思うけれど話をする時かなり蒼真に近いのではないかしら?」

 

「「「…///」」」

 

友希那「ふふっ」

 

 昔ならこんな事言わなかったと思う。私も変わったのかしら。

 

紗夜「と、とにかく先を急ぎましょうか」

 

燐子「そ、そうですね…」

 

あこ「はーい!」

 

友希那「そうね。行きましょう」

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

sideリサ

 

 

 蒼真とアタシ、友希那の家の前に着くと既に皆集まっていた。

 

蒼真「悪い。待たせたやか」

 

友希那「…いいえ。私達も今来た所よ」

 

蒼真「そっかならよかった」

 

 ホントに今来たのかなぁ?意外と楽しみで皆早く来てたんじゃないかな?

 

友希那「それにしても沢山買ってきたわね」

 

リサ「蒼真と話して夜ごはんを作ろうって事になってね」

 

紗夜「なるほど。なんだかこう2人で買い物袋を下げて歩いていると夫婦の様ですね」

 

リサ「へ!?ちょっ何言ってるの紗夜!!///」

 

紗夜「(少し羨ましいですねお似合いで)…」

 

 ホント何言ってるの紗夜は…

 

 蒼真は聞こえてなかったようだけど、アタシにはどちらも聞こえていた。そんな事言われたから心臓が飛び出そうなくらいドキドキしていた。

 

 もう…凄く恥ずかしいじゃん……てか…もしかして、紗夜は蒼真の事意識してるのかな…

 

 そう思うと今度は胸がモヤモヤするような針でチクッと刺される様な感覚に陥った。

 

 

蒼真「まぁとりあえず立ち話もなんやし家に入るか」

 

あこ「はーい!」

 

燐子「き、緊張します…」

 

リサ「あ、アタシ達も目の前なのに家に上がったこと無いね」

 

友希那「確かにそうね」

 

紗夜「ということはここに居る全員が蒼真さんの家に初めて入るということですね」

 

蒼真「まぁそんな畏まらんでいいと思うけど…特になんかある訳じゃないし」

 

リサ「それもそうだね」

 

友希那「そうね。じゃあ入りましょうか」

 

 友希那がそう言ってアタシ達が入ろうとすると

 

蒼真「どうぞお嬢様方。お入り下さい――」

 

 

 一瞬ドキッとしてしまったけど今は置いておく。どうしてもツッコミたかったから。

 

リサ「なんでそんな急にキャラ変わってるの?」

 

蒼真「おもてなし?」

 

リサ「なんで疑問系なの!」

 

蒼真「なんとなく?」

 

リサ「説明になってないよ!」

 

蒼真「ハハッまぁあれだ。ノリだ」

 

リサ「もう…急に言われたからびっくりするじゃん」

 

蒼真「悪かったって」

 

リサ「もういいよ。それより早く入ろ時間も皆限られてるし」

 

蒼真「そうやね」

 

そうしてアタシ達は蒼真の家に入った。

 

紗夜「2人は本当に仲がいいですね」

 

友希那「そうね。少し妬てしまうわ」

 

リサ「ちょっ!?友希那も紗夜も何言ってるの!?」

 

 皆蒼真が来てから変わって来たと思うけど、この2人が一番変わったと思う。

 

 今夜は大変な夜になりそうだなぁ…

 

 

 

 

 




読了ありがとうございます。


投稿が遅くなってしまいすみません…

中々忙しくて手を付けられませんでした。


今回のお話、本当はまとめて書こうと思ったのですがあまりに長くなってしまいそうだったので分けて書くようにしました。楽しみにしていた方おられたら申し訳ありません。もう少しお待ち下さい。

次回はもう少し早く投稿出来るように頑張ります。

ではまた次回


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第10話:弁当作りと晩ご飯

side友希那

 

 

 

 蒼真の家に入れてもらった私達は早速リビングに案内された。

 

リサ「おぉ!外見もそうだったけど中も凄く広いねぇ」

 

友希那「そうね。でもリサ、少しはしゃぎ過ぎよ」

 

蒼真「そんなにはしゃげる様なものはないと思うけどまぁ寛いどって」

 

燐子「は、はい…」

 

あこ「はーい!あこ皆で遊べるもの持ってきました!」

 

紗夜「宇田川さん。遊びに来た訳ではないですよ」

 

あこ「うぅ…ごめんなさい…」

 

蒼真「まぁまぁ。時間は取れるやろうけ後でやろうなあこちゃん」

 

あこ「あ、ありがとうございます!」

 

 そう言ってあこは蒼真に抱きついた。

 

蒼真「おっと」

 

 あこは本当に元気がいいわね。ああやって抱きつけるは少し羨ましいわ。

 

紗夜「ちょっと!宇田川さんなぜ蒼真さんに抱きつくんですか!」

 

リサ「紗夜~そんなに慌てなくてもいいじゃん。それとも何か慌てるような事でもあるの?」

 

紗夜「そ、そんな事はありません…」

 

リサ「それとあこ~テンション上がってはしゃいじゃうのは分かるけど、もうちょっと落ち着こうか~。じゃないと夜ご飯抜きにするよ~」

 

あこ「は、はいー!」

 

 あ…リサが偶に見せるどこでスイッチが入るか分らないお怒りモードだわ…笑顔で話してるから分かりずらいけれど、リサがご飯抜きと言う単語が出た時は少しだとしても怒っている証拠。私からするとあの笑顔は身震いするほど怖く感じる…リサの作ってくれるご飯は凄く美味しいからそれを抜かれるのは精神的には辛くなる…

 

リサ「それと蒼真~ちょっとあこに甘いんじゃないかな?」

 

蒼真「ん?そうやか?そんな事はないと思うけど」

 

リサ「まぁ…いいんだけど~… (アタシもあこみたいに)(甘えられたらなぁ)…」

 

蒼真「?まぁ気を付けるよ」

 

友希那「…ところでさっき夜ご飯がどうとか言っていたけれどどういうこと?」

 

蒼真「あぁ、それはな―――」

 

 蒼真から事の説明をされた。帰る途中に私達に夜ご飯を振る舞いたいとリサと話していたようだ。

 

友希那「そう。なら私も手伝うわ」

 

リサ「っえ!?」

 

蒼真「ど、どうしたん?リサ…」

 

リサ「あ、いや…まさか友希那からそんな言葉が出てくるなんて思わなくて」

 

友希那「し、失礼ね!私だって家事くらい偶にするわよ」

 

リサ「ホントに~?…まぁいいや。今は友希那がそう言ってくれたことが嬉しいからね♪」

 

蒼真「あ、てか勝手に決めてよかったやか?」

 

紗夜「大丈夫です。なんだかそんな気がしていたので連絡はしてあります」

 

燐子「わ、私もです」

 

あこ「あこも大丈夫です!」

 

友希那「私とリサは目の前が家だから気にする必要は無いわ」

 

 私も紗夜と同じでそんな気がしていたから先に連絡していた。リサも同じだと思う。

 

リサ「考えてる事は皆一緒だね♪」

 

蒼真「そっか。ならいいんやけど…皆手際がいいね」

 

紗夜「べ、別に今井さんと蒼真さんが作るご飯が楽しみだったとかそんなんじゃないですからね!」

 

蒼真「お、おう。そうか」

 

リサ「ホントに~?実は楽しみにしてたんじゃないの~♪」

 

 そう言うとリサは紗夜に抱きついた。

 

紗夜「ちょっと今井さん!抱きつかないでください!」

 

蒼真「ははっ。ホントに皆仲がいいな」

 

友希那「まぁ…色々あったからかしらね」

 

蒼真「そっか」

 

友希那「えぇ」

 

 まだそんなに時間は経ってないと思うけれど、蒼真が加入する前は本当に色んなことがあったと思う。

 

 

☆★☆★☆★

 

 

side蒼真

 

蒼真「じゃあそろそろ作業に取り掛かろうかね」

 

あれから少し時間が経っていたから作業に取り掛かろうと思う。

 

リサ「りょうかーい」

 

蒼真「俺とリサがまず弁当の具を作っていくけ皆はその盛り付けをお願い。友希那は後でまた手伝ってもらうけその時お願いね」

 

友希那「分かったわ」

 

あこ「はーい!」

 

紗夜「分かりました」

 

蒼真「燐子ちゃんは盛り付けとか上手そうやけそっちを中心で」

 

燐子「わ…分かりました!…が、頑張ります」

 

 ということで弁当作りが始まった。

 

リサ「うーん…なにから作ろっか」

 

蒼真「そうやなぁとりあえず揚げ物を作る準備をしよるけリサは野菜類を切り分けていってもらっていいやか」

 

リサ「OK~」

 

蒼真「切り終わったら卵焼きを作ってもらっていいやか?もう準備はしてあるけ」

 

リサ「おぉ~手際がいいねぇ。…あれ?卵が入ってる器が何種類かあるけど」

 

蒼真「あぁそれね。皆好みがあるだろうから、砂糖入り…何もなし…塩入り…後ネギ入りとかを準備してみた」

 

リサ「なるほどねぇ。了解!」

 

 そうこうしているうちに揚げ物を揚げる準備もできた。

 

蒼真「よし、まずは…定番の唐揚から」

 

 唐揚げも何種類か味の違うものを準備してみた。いつ準備したんだと言われるだろうか。今日の朝のうちにあらかた準備はしていた。

 だから今日は晩御飯用の材料と弁当用の調味料などを買い足した。

 

蒼真「…こんなもんかな」

 

リサ「こっちも卵焼き出来たよ~」

 

蒼真「お、やっぱり手馴れてるねぇ」

 

リサ「そんな事言ったら蒼真だってかなり手慣れててびっくりしたよ~」

 

蒼真「まぁ小さい時からよく作っとったけね」

 

リサ「そうなんだねぇ」

 

 そんな事を言いつつどんどん料理を作っていった。

 

 ……今更だけど…

 

蒼真「そういえば、エプロン持ってきとったんやね」

 

リサ「ん~…そうだねぇ一緒に作るんだから用意しとかないとなぁと思ってね」

 

 慣れた手つきで作業をしながら答えてくれた。

 

 ホントに料理慣れしてるなぁ…

 

リサ「どうしたの?急にそんな事聞いてきて」

 

蒼真「ん?…いや、ふと気になってね。それと凄く似合ってて可愛いなと思ってね」

 

 最近よく思う。俺はあまり語彙力が無くて上手く褒めたり表現出来てないなと。

 

リサ「…///もう…いっつもそんなこと言ってアタシをからかって…」

 

蒼真「別にからかってないぞ。思った事を言っただけやけん」

 

リサ「…///そっか。ありがと♪」

 

蒼真「お、おう」

 

 リサのその笑顔はいつもたじろいでしまう。何でだろう…

 

友希那「二人共凄いわね。話しながら次々料理を作っていくなんて」

 

蒼真「うわちょ!…びっくりしたぁ…」

 

 気づけば後ろのカウンターから友希那が顔を覗かせていた。

 

リサ「あははっ!蒼真すっごい面白い顔になってたよ」

 

蒼真「いやだってめっちゃ焦ってたけんさ…それで友希那。どうしたん?」

 

友希那「いえ。別にどうしたという訳ではないけれど、2人の楽しそうな声が聞こえたから見に来たの」

 

リサ「へ~そうなんだぁ」

 

友希那「…なによ」

 

リサ「ん~ん~何でもなーい。ふふっ」

 

 そんな事を言いながらリサは作業を止めずに料理を作っていた。

 

蒼真「あ、友希那。この作ったやつをそっちのテーブルに持って行って皆で重箱に詰めていって。まとめて持っていかんでいいけさ」

 

友希那「分かったわ」

 

 それから俺もまた作業に戻った。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

sideリサ

 

 

 そんなこんなしているうちにどんどん料理が出来上がっていった。

 

蒼真「よしとりあえずこんなもんかな」

 

リサ「いっぱい作ったねぇ」

 

蒼真「そうやねぇ。でも2人で作ったし皆にも手伝ってもらったからだいぶ早くできたと思う。皆ありがとね」

 

紗夜「いえ。私達はあまり何もしてないと思いますが」

 

蒼真「そんな事はないよ。弁当に詰めてくれるだけでも凄く助かる」

 

あこ「皆とこういう事が出来てすっごく楽しいです!」

 

燐子「私も…楽しいです」

 

友希那「そうね。今まで皆でこういう事をするなんて考えたこともなかったわ」

 

リサ「そうだねぇ。友希那や紗夜は音楽一筋だったからねぇ」

 

蒼真「そうなんやね。まぁ確かに2人ともそんな感じはしたなぁ」

 

友希那「そうね。今でもそうだけれど、私達は音楽の頂点を目指しているから」

 

蒼真「…頂点…か」

 

友希那「えぇ」

 

 …蒼真…どうしたんだろう…何か言いたそうだけど…

 

リサ「どうしたの?蒼真」

 

蒼真「ん?いや…音楽の頂点ってなんやろうなぁって思ってな。…一概に何が頂点なのかって人によって違うと思うんよね。…やけ友希那の言う今の頂点って何なのかなと思って」

 

リサ「今の?」

 

蒼真「うん。話を聞いたり見てきた限り、Roseliaは技術力で頂点を目指そうとしとるんやないんかな」

 

友希那「えぇ。そうね」

 

蒼真「確かに今のまま成長して行けば技術は物凄く高いレベルになると思う。技術だけは…」

 

友希那「…」

 

蒼真「でも技術だけじゃ限界がある。最近少しだけでもそう考え始めたんやないかな?」

 

友希那「っ!」

 

蒼真「やけ俺をサポートに誘ったんやないかなと思った」

 

友希那「…凄いわね。何でもお見通しなのかと思うくらい」

 

蒼真「そんな事はないよ。俺も分からん事だらけよ…やけさ、俺もRoseliaとって何がいいのか考えるけ友希那も一緒に頑張ろ。立ち止まってしまった時は俺が支えちゃるけさ」

 

 …なんだかすっごくクサイセリフだけど…そう言う蒼真の表情は真剣でカッコよかった。

 

友希那「…///えぇ。その時はよろしく頼むわ」

 

蒼真「おう!まかせろ」

 

友希那「ありがとう…///」

 

リサ「(友希那いいなぁ)

 

 思わずそんな事を口にしていた。…誰にも聞かれてないよね…

 

蒼真「友希那だけじゃなく皆も頼ってね。出来ることは限られとるかもやけど」

 

紗夜「分かりました。何かある時は頼らせてもらいます」

 

燐子「わ…私も…多分相談に乗ってもらったりすると思います」

 

あこ「あこも蒼真さんの事すっごく頼りにしてます!」

 

蒼真「そっか。皆ありがと。あ、それとリサ! 」

 

リサ「っへ!?な、何?」

 

 いきなり大きな声を出すからビックリしちゃった…なんだろう…

 

蒼真「リサは特に俺や皆を頼れよ。なんだかかんだいってリサは頼られすぎてたまに無理しとるんやないかと思うけさ…キツイ時は皆を頼れよな」

 

 …ホントによく見てるなぁ蒼真は。

 

リサ「…うん分かった。ありがと」

 

 好きで色々お節介かけてるから無理をしてる訳じゃないと思うけど…確かにたまにキツイなぁと思う事はある。口にはしないけど…

 よく蒼真はそういう所に気付くなぁ。蒼真に気遣ってもらうのは凄く嬉しいし、そういう所…凄くカッコイイと思う。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

side蒼真

 

 

 さてと…洗い物も済んだしそろそろ晩飯を作り始めないとな。

 

蒼真「リサ」

 

リサ「なーに?蒼真」

 

蒼真「そろそろ夜飯の準備をするけ手伝ってもらっていいやか」

 

リサ「OK~」

 

蒼真「友希那も今度は手伝ってもらうけお願いね」

 

友希那「分かったわ」

 

蒼真「他の皆はリビングの方で寛いでて」

 

あこ「はーい!」

 

燐子「分かりました」

 

紗夜「分かりました。では宇田川さん。少しだけ遊びましょうか」

 

あこ「ホントですか!やったー!」

 

燐子「よかったねあこちゃん」

 

あこ「うん!」

 

紗夜「トランプくらいなら私でも出来ますのでそれでいいですか?」

 

あこ「大丈夫です!」

 

 そう言って皆リビングの方に向かっていった。

 

リサ「…友希那…ホントに大丈夫?」

 

友希那「大丈夫よ……多分…」

 

蒼真「友希那は料理作るのとか苦手やった?」

 

リサ「というより…アタシの記憶が正しければ友希那は料理を作った事が無かったと思うよ」

 

友希那「…」

 

蒼真「なるほどねぇ…じゃあ包丁とかは使った事がない感じか」

 

友希那「…そう…なるわね…」

 

蒼真「そっか。まぁ…なんくるないさー」

 

リサ「蒼真って沖縄の人にだっけ?」

 

蒼真「いや違うよ。ただこの言葉が好きやけたまに使いよるだけ」

 

リサ「そっかー」

 

 よし。じゃあ早速始めていくか。友希那はホントに料理が苦手みたいだからまずは実演して見せてそれからやってもらおうかな。

 

蒼真「じゃあリサ友希那は俺が見てるから先にリサの方のを作ってしまって」

 

リサ「OK~じゃあ終ったら交代するね」

 

蒼真「うんお願い」

 

友希那「よろしく」

 

蒼真「おう」

 

友希那「まずは何をすればいいかしら」

 

蒼真「んーとね。俺がやり方を見せるからそれに続いてやってみて」

 

友希那「分かったわ」

 

蒼真「まずはジャガイモの皮を剥いてもらうんだけど、このピーラーを使って皮を剥いてもらう」

 

友希那「ピーラー…」

 

蒼真「そう。ジャガイモの皮は大体2、3ミリの厚さかな?で全体の茶色い部分が無くなるまで剥く。肌色の部分が出てくるくらいでいいけね」

 

友希那「えぇ」

 

蒼真「こんな感じで剥いたらいいけ。あ、後この窪みのところはピーラーの横に付いてる輪っかみたいなのでくり抜かんといけんけ」

 

友希那「?何故?」

 

蒼真「この窪みは根っこが生えてくる部分でここには体に悪い毒素を含んどるんよ。やけちゃんとくり抜かないけんと」

 

友希那「そうなのね。初めて知ったわ」

 

蒼真「まぁ料理をしない人とかは知らない人も多いと思う。…よしとりあえずここまでの作業をやってみようか。横で俺も見ながらやりよくけ」

 

友希那「分かったわ」

 

 そう言って作業を始めた友希那は凄くぎこちなくジャガイモを剥いていた。それを横めに俺も作業を始めた。

 

 

友希那「これくらいでいいかしら?」

 

 それから少しして友希那が聞いてきた。

 

蒼真「お、最初にしては上手く出来とると思うよ」

 

友希那「そ、そうかしら?」

 

蒼真「うん。後はちょっとだけ残ってる皮を削って…あ、両端はまた後で説明するけそこは大丈夫」

 

友希那「分かったわ」

 

 このジャガイモで紗夜さんやあこちゃんが好きな物を作ろうかな。

 

友希那「出来たわ」

 

蒼真「OK。それでいいよ」

 

友希那「次はどうすればいいかしら」

 

蒼真「次は包丁を使ってもらうけちょっと見よって」

 

友希那「えぇ」

 

蒼真「まず、包丁の握り方やけど…まぁ基本どんな握り方でもいいけど俺はこんな感じで持っとる。柄の所を卵を軽く握るような感じで人差し指で包丁を抑えて残りの指で握る感じ…分かるやか?」

 

友希那「えぇ。何となく分かるわ。前にリサからテニスのラケットの持ち方を聞いたことがあるから」

 

蒼真「あ、そうなんやね。てかリサテニスもやりよったんやね」

 

リサ「うんダンス部とテニス部掛け持ちでやってるよ」

 

蒼真「マジか…それに加えてバンドもやっとるんか…ホントにあんま無理するなよ」

 

リサ「うん!大丈夫だよ。ありがと♪」

 

友希那「…それで次はどうすればいいの?」

 

蒼真「おっと、ごめんよ話が逸れたね。えっとね…持ち方を覚えたら今度は切り方ね。まずさっき残してたジャガイモの両端から切っていくけ。ジャガイモを左手で握るんやけど…友希那って右利き?」

 

友希那「えぇ。右利きよ」

 

蒼真「なら俺の教え方で大丈夫やな。じゃあね、ジャガイモを左手で握る時は指を猫手に…第一関節と第二関節の間を使ってまな板にジャガイモを置いて切って行く。切る時に曲げてないと指を切ったり怪我をするからこういう持ち方をするんよ。分かったやか?」

 

友希那「猫手…(にゃー)…//」

 

蒼真「そう猫手…って友希那大丈夫?顔赤いけど」

 

友希那「え、えぇ大丈夫よ」

 

蒼真「そうか?ならいいんやけど…とりあえずやって見せるけ次やってみて」

 

そう言ってジャガイモの両端を切り落とし、やり方を見せて一緒にやってもらった。

 

友希那「こ、こんな感じかしら…」

 

蒼真「うんうんそんな感じ。慣れるまで難しいやろうけど、少しづつ覚えていけばいいけね」

 

友希那「えぇ。…蒼真は教え方が上手いわね」

 

蒼真「いやいや、そんな事はないやろ。この位は誰でも教えられるって」

 

友希那「なら、蒼真だから上手く感じたのかもしれないわね」

 

蒼真「そ、そうか?そう言われるとなんか照れるな」

 

友希那「ふふっ」

 

蒼真「っ…」

 

 友希那のその少しだけ微笑んだ表情に思わずドキッとしてしまった。

 最近こういう事が多い気がする。何でだろうな…

 

 それから俺は友希那に他の物の切り方を教えて一通り作業を終えた。

 

蒼真「よし、こんなもんかな。手伝ってくれてありがとな友希那」

 

友希那「こちらこそありがとう。凄く勉強になったわ」

 

蒼真「そう?ならよかった」

 

リサ「蒼真ー。こっちも終わったよぉ」

 

蒼真「了解。じゃあリサは友希那と一緒に洗い物ものの方をお願い」

 

リサ「OK~」

 

友希那「分かったわ」

 

 それじゃあ俺も自分のメインを作ろうかね。今日は味濃いめの筑前煮を作る。九州の味を知ってもらいたいから。

 まぁ多分味の濃さが違うだけで作り方はいっしょのはずやけど。

 

 紗夜さんがニンジン苦手だったから少し少なめにしておこう。

 

 あ、作り方の違いといえば他の地方の煮物と違って九州のがめ煮は食材を炒めてから煮るのが主流だ。

 

リサ「へー。そっちでは炒めるんだね」

 

 作業工程を見ていたのかリサが声を掛けてきた。

 

蒼真「そうやね。このほうが味が染み込みやすくなっていいんよ」

 

リサ「なるほどねぇ。あ、やっぱりレンコンも入れるんだね」

 

蒼真「うん入れるよ。リサはレンコン嫌い?」

 

リサ「ん~ん好きだよ。ただうちでは入れてなかったから」

 

蒼真「そっかぁ。まぁそういう家庭もあるよ」

 

 そんな事を話しながら作業を続けそして――

 

蒼真「よーし!完成~」

 

リサ「お、待ってました」

 

蒼真「リサ、友希那。最後にテーブルに列べるのを手伝ってくれんやか」

 

リサ「うん!まかせて」

 

友希那「これを持って行けばいいのね。分かったわ」

 

 テーブルではあこちゃん達が盛大にトランプ大会を開いていた。

 

あこ「紗夜さんトランプ強すぎです~」

 

燐子「確かに…どのゲームでもほとんど勝ってましたね」

 

紗夜「昔からよく日菜に付き合わされていたから出来るようになっただけです」

 

蒼真「皆お待たせ~料理出来たよ」

 

 初めに反応したのはやっぱりあこちゃんだった。

 

あこ「うわ~美味しそ~」

 

燐子「ホントだね。凄く…美味しそう」

 

紗夜「に…ニンジン…」

 

蒼真「ごめんな紗夜さん。やっぱりこの筑前煮にはニンジンは欠かせんけ入れさせてもらった。そのかわりと言っちゃなんやけど、紗夜さんの好きなフライポテトも作ったけさ」

 

紗夜「え!?家で作れるものなんですか?」

 

 やっぱりポテトの話には凄く食いついてくるなぁ。

 

蒼真「まぁ簡単な作り方やけねこのくらいやったら作れるよ」

 

紗夜「それでも凄いです」

 

蒼真「そう?まぁよかったら食べて」

 

紗夜「はい。ありがとうございます」

 

リサ「はい皆これがアタシと蒼真がそれぞれ作った筑前煮だよ」

 

あこ「すごーい!どっちも美味しそう!」

 

燐子「そうだね。…同じ筑前煮ですけど個性が出ていますね」

 

友希那「そうね。リサの作る筑前煮はよく食べてたから美味しいのは知ってるから今回は蒼真の作った筑前煮が気になるわね」

 

リサ「そうだねぇ。楽しいだよ~蒼真の作った筑前煮 」

 

蒼真「口に合えばいいけど。じゃあ食べようかね」

 

リサ「うん♪じゃあいただきます」

 

「「「「「いただきます」」」」」

 

 早速リサの作った筑前煮を食べてみた。

 

蒼真「うん…凄く美味い。味付けも丁度いいね。流石リサやね」

 

リサ「そう?蒼真の筑前煮もすっごく美味しいよ!炒めるだけでもこんなに味が違うんだね」

 

友希那「よく分からないけれど凄く美味しいわ」

 

蒼真「そっか。よかった」

 

紗夜「フライポテトも塩加減が絶妙でとても美味しいですよ」

 

あこ「リサ姉も蒼真さんもお店で作っている物をみたいに美味しいです!」

 

燐子「筑前煮も…少し味が濃いですけど…食べやすくて美味しいです」

 

 皆美味しそうに食べてくれてよかった。

 

蒼真「こうやって皆で食事するのは凄く楽しいな」

 

リサ「そうだね~今度また開こうよ!」

 

紗夜「はい。是非また開きたいですね」

 

蒼真「お、珍しく紗夜さんも乗ってきたね。そんなに美味かった?」

 

紗夜「え、えぇ。2人の料理はとても美味しかったです」

 

 皆頷いていて同じ意見だったようだ。

 

蒼真「そっか。作った甲斐があったよ。またこうして集まろうか」

 

友希那「えぇ。そうね」

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

sideリサ

 

 

 それからしばらくして片付けも終わり皆でトランプをしていた。

 

蒼真「よし、これで上がりだ」

 

リサ「うひぁ~蒼真強いねぇ」

 

蒼真「いやいや、皆も強いよ。俺もかなりのギリギリやったし」

 

燐子「氷川さんでも…少ししか勝てなかったから凄く…強いと思います」

 

紗夜「私は自分がそんなに強いとは思ってないですけど…でも悔しいですね。今度またしましょう」

 

 紗夜がギター以外で悔しそうにしてるの初めて見たかも。でもこっちの方が凄く可愛らしいと思うなぁ。

 

友希那「そろそろ時間も時間だしお暇しましょうか」

 

蒼真「あ…ホントやね。ちょっと熱中し過ぎたな」

 

ホントだあこ達も帰らせないといけないしいい時間かな。

 

蒼真「じゃあすぐ近くまで送るよ」

 

紗夜「いえ、それは悪いですよ」

 

蒼真「せっかく来てもらったんやけそのくらいはせんと。それに…ほら見て」

 

あこ「…スゥー…スゥー…」

 

燐子「あこちゃん…寝ちゃってますね。ふふっ可愛ぃ♪」

 

リサ「気持ちよく寝てるねぇ」

 

友希那「そうね。起こすのは少し可愛そうね」

 

蒼真「やけ、おぶって行こうと思う」

 

え!…と思ったけど、アタシ達じゃあおぶって行けない事に気づいたから何も言わなかった。…一瞬いいなぁと思ってしまった。

 

友希那「…そう…その方が良さそうね」

 

紗夜「…ではお願いしますね」

 

蒼真「了解。あこちゃん、帰るよ~」

 

あこ「…ん~…は~い…お兄ちゃん…」

 

リサ「お、お兄ちゃん!?」

 

蒼真「し~…静かにね」

 

リサ「あ…ごめん…」

 

 思わず声を上げてしまった…

 

蒼真「いやいいよ。あこちゃん寝ぼけとるみたいやね」

 

リサ「そうみたいだね」

 

蒼真「ヨイショっと」

 

 あこを背中に載せて玄関の方に向かった。

 

 蒼真ってホント頼りになるなぁ。

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

蒼真「で、結局リサ達も付いてくるんやね」

 

リサ「うん!蒼真帰り道分からなくなりそうだからね」

 

蒼真「あ…確かにそうやん…」

 

 たまに蒼真はおっちょこちょいな所があるなぁ。ちょっと可愛い。

 

リサ「あはは♪蒼真たまに抜けてるね」

 

蒼真「…そんな事はないと思っとったんやけどなぁ…」

 

蒼真「あこはどうかなまだ寝てる?」

 

あこ「…スゥー…スゥー…」

 

友希那「よく寝ているわね」

 

 あこ寝てる姿可愛いなぁ。

 

 そんな事を話しているうちにあこの家に着いた。

 

燐子「ここがあこちゃんの家です」

 

リサ「巴にはもう連絡してあるからもう出てくるはずだよ」

 

蒼真「巴?」

 

リサ「あ、そっか蒼真はまだ知らないんだよね。巴はあこのお姉ちゃんでアタシ達と同じ学校だよ」

 

蒼真「そうなんや」

 

リサ「うん。で、アタシ達の1個下でAfterglowって言う幼馴染みで集まったバンドでドラムをやってるんだよ」

 

蒼真「おぉ!凄いねぇ。じゃああこもそのお姉さんに憧れてバンドを始めたのかな?」

 

リサ「うん。あこもそう言ってたよ」

 

 話しているうちに巴が出てきた。

 

巴「皆さんすみません。送ってもらっちゃって」

 

蒼真「いえ、大丈夫ですよ」

 

巴「あなたは…」

 

蒼真「あ、紹介がまだでしたね。俺は九重蒼真ですよろしくです」

 

巴「ああ!あことつぐみがよく話してた人かぁ。アタシは宇田川巴ですよろしくお願いします!」

 

蒼真「ん?つぐみちゃん?」

 

リサ「さっきも言った通りAfterglowは幼馴染みの集まりでつぐみもその1人なんだよ」

 

蒼真「あ、そうなんやね。世間って狭いねぇ」

 

巴「ですね。あ、今日はありがとうございました!ご馳走まで頂いたみたいで」

 

蒼真「いやいや、好きでやった事だから気にしなくていいよ」

 

巴「はい!…あこ!そろそろ家入るぞ」

 

あこ「…はーい。あ、皆さん今日はありがとうございました…おやすみなさい…ふぁ…」

 

巴「じゃあ失礼しますね。ホントにありがとうございます!また何かあったらよろしくお願いします!それじゃ」

 

蒼真「元気が良いなぁ。流石あこちゃんのお姉さんやね」

 

リサ「そうだねぇ。それじゃあアタシ達も帰ろうか」

 

燐子「はい。私は家がすぐ近くなのでここまでで大丈夫です」

 

紗夜「私もここで大丈夫です」

 

蒼真「そっか。じゃあまた明日ね」

 

紗夜「はい。明日は皆さん頑張って下さい」

 

リサ「うん!頑張るよ~」

 

友希那「ほどほどに頑張るわ」

 

リサ「友希那は相変わらずだねぇ」

 

 そう言いながら帰路に着いた。そして――

 

蒼真「じゃあまた明日な」

 

リサ「うんまた明日」

 

友希那「今日は誘ってくれてありがとう」

 

蒼真「気にせんでいいよ。じゃ」

 

リサ「はーい」

 

蒼真が扉を閉めるのを確認してアタシ達も家に入ろうとした。

 

 

 

友希那「ねぇ。リサ…」

 

リサ「ん?なーに友希那」

 

友希那「……いえ、やっぱり何でもないわ」

 

リサ「え~気になるじゃん」

 

友希那「そのうちまたちゃんと話すわ。それまで待って頂戴」

 

リサ「う、うん分かった」

 

 えらく友希那が真剣な表情だったから少したじろいでしまった。

 

友希那「それじゃあまた明日。おやすみなさい」

 

リサ「おやすみ~」

 

 うーん…何だったんだろう…気になるなぁ。まぁ今気にしてても仕方ないし明日の為にアタシも寝よっと。

 

 そうしてアタシも部屋に戻った。

 

 

 

 

 




読了ありがとうございます。

いつになったら定期的に書けるのでしょうか…
楽しみにして頂いて今皆様には大変お待たせしております。

今回はいつもの倍詰まってしまいました。分けても良かったのですが今回はこのような形にしました。


次回からは特に不定期になると思うのでいつも楽しみにして頂いたいている方々。また今しばらく気長にお待ちください。

それではまた次回


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第11話:体育祭での出来事①

side蒼真

 

 

 朝早くから俺はバタバタしていた。

 

 教室に着くとすぐ先生に呼び止められて体育祭の設営準備を頼まれた。やっぱり男手が少ないから時間が掛かってしまうそうだ。

 

蒼真「まぁ、男子学生も少ないみたいやしなぁ」

 

 他にも何人か男子生徒を捕まえては手伝わせているみたいだ。これだけでも準備がまだ出来ていない事が分かる。

 

蒼真「昨日手伝っとけばよかったかなぁ…まぁでも約束もあったしな」

 

 そんな事を呟きながらいそいそと設営準備に取り掛かった。

 

 そして数十分後、ある程度準備も整ったので教室へ戻った。

 

 教室に戻ると既にリサが来ていた。

 

リサ「おはよー蒼真」

 

蒼真「おう。おはよ」

 

リサ「どこに行ってたの?」

 

蒼真「先生に頼まれて設営準備を手伝っとった」

 

リサ「なるほどねぇ。だから荷物が置いてあったんだねぇ」

 

蒼真「うん。まぁまたすぐ出るけどね」

 

 そう言って荷物の中から体操服を出しまた教室を出ようとすると――

 

リサ「?…なんで?…あ、そっか。着替えかぁ」

 

蒼真「うん。いつもの事やけど、流石にここで着替えるのはマズイやろ」

 

リサ「た、確かにそうだねぇ…」

 

蒼真「やけちょっと更衣室に行ってくる」

 

リサ「うん。いってらっしゃーい」

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

sideリサ

 

 

 それから瞬く間に時間過ぎ体育祭が始まった。

 

 アタシは運動が好きだから色んな競技に出る予定。中でも最後の学年対抗リレーには力を入れている。何しろアタシがアンカーだからだ。他にも玉入れや部活対抗にも出ている。あ、今回はダンス部として出場する予定。

 

 そういえば、蒼真は何に出るんだろう。選手決めの時には蒼真、席外してたからなぁ…後で聞いてみよ。

…そういえば蒼真戻ってきてなかったみたいだけど、どうしたんだろ…

 

 あ、開会宣言だ。…あれ?何であそこに蒼真が…

 

蒼真「宣誓!我々選手一同スポーマンシップにのっとり正々堂々と戦い抜くことをここに誓います!選手代表九重蒼真!」

 

 …うわぁ…いつもと違う…凛々しくて…力強くて…

 

リサ「カッコイイ…」

 

日菜「そうだね~蒼真くんすっごくカッコイイね♪」

 

リサ「え?…も、もしかして声に出てた?」

 

日菜「うん!思いっきり出てたよ!ルンって来ちゃった♪」

 

 …うぅ…めちゃくちゃ恥ずかしい…出してるつもり無かったけど、声出てたなんて…

 

日菜「大丈夫だよ。あたし以外には聞こえてないと思うから」

 

リサ「そ、そう?よかったぁ…」

 

日菜「リサちーは蒼真くんの事好きなの?」

 

リサ「へ!?いや、えっと…ど、どうなんだろねぇ…」

 

 確かに最近のアタシは蒼真に対しての反応や行動が少しおかしいなぁとは自分でも思っている。でも好きかと聞かれるとまだ分からない。多分…す、好きなんだと思う。色々あったし…でも、確信持って好きとは言えない。こんなにすぐに好きになってしまってもいいのかとか、何で好きになったのかとか自分では分からない事が多すぎて頭の中で整理が出来ていない。

 

日菜「そっかーまぁいっか。今日は頑張ろうね!」

 

リサ「うん!頑張ろ!」

 

 

 それからしばらくして競技が始まったのと同時に蒼真が戻ってきた。

 

蒼真「よ。調子はどう?」

 

リサ「あ、蒼真!ビックリしたよ!いきなり壇上に立って宣誓するんだもん」

 

蒼真「ごめんごめん。着替え終わって更衣室を出たら先生に捕まって今年は男子にやって欲しいから俺にやってくれって頼まれてさ」

 

リサ「なるほどねぇ。蒼真も色々と大変だね」

 

蒼真「まぁ昔から頼られるのは好きやし、お節介かもしれんけど世話やきやったりするけね」

 

 あ、蒼真もアタシと一緒だ。意外と蒼真とアタシ、似てる所が多い気がするなぁ。

 

リサ「そっかー」

 

蒼真「うん。…すげー恥ずかしかったけどね…」

 

リサ「でも良かったと思うよ」

 

蒼真「そうやか?ならいいんやけど」

 

リサ「そういえば、蒼真は何に出るの?競技」

 

蒼真「俺か?俺は男子対抗と学年対抗の補欠に入っとるくらいかなぁ」

 

リサ「補欠?」

 

蒼真「うん。誰かが怪我したら代わりに出る。まぁ何も無いことに越した事はないけどねぇ」

 

リサ「そうだねぇ」

 

 男子対抗が新しく出来たんだぁ。じゃあ絶対に見ないとなぁ。後で皆にも言っておこう。

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

side蒼真

 

 

 あれよあれよという間に昼になっていた。

 

 最近時間が経つのが早い気がする。

 

あこ「ん~♪この唐揚げ美味しい~」

 

燐子「そうだね。味が凄く整えられてて美味しいです」

 

 皆美味しそうに食べてるな。良かった作って。

 

リサ「良かったね♪皆美味しそうに食べてくれて」

 

蒼真「そうやね。ホントに作ったかいがあったよ」

 

リサ「あはは♪そうだね~」

 

友希那「ねぇリサ。この料理は何ていうの?」

 

リサ「何でアタシが作ったって分かるの?」

 

友希那「…そんなの…長い付き合いだからこれくらい分かるわよ」

 

リサ「そ、そっか。言われてみればそうだね~。えっとこれはね――」

 

 友希那はリサのことよく分かっているんだなぁ。いいな、幼馴染みっていうのは。俺には幼馴染みって言えるほど仲が良かった人はいなかったからなぁ…多分。

 もう古い記憶はどんどん脳の奥底に閉まわれていて思い出せない事も多い。まぁふとした時に思い出したりするんだけど。

 

紗夜「蒼真さん。今日はありがとうございます」

 

蒼真「ん?どうしたん急に」

 

紗夜「いえ、今までこういう事はして来なかったので何だか新鮮で。皆楽しそうに食事されてますし」

 

蒼真「そっか。…またこうやってバンド活動以外でも何かしてあげられればいいけど」

 

紗夜「…あまり無理はしないでくださいね」

 

蒼真「無理はしてないよ。好きでやっとることやけさ」

 

紗夜「…それならいいのだけれど…蒼真さんが自分でも言ってましたが、何かあれば私達を頼って下さいね。あなたはもうRoseliaの一員で1人ではないのですから」

 

蒼真「…うん。心配してくれてありがと」

 

紗夜「い、いえ。メンバーとして当然の事を言っただけです」

 

 紗夜さんは優しいな。他の皆もホントに優しいくていい娘たちばかりだ。

 

 

 それから昼休憩が終わり、午後の部が始まろうとして頂いた。

 

紗夜「では皆さん頑張って下さい」

 

燐子「お…応援してます」

 

リサ「うん!頑張ちゃうよ~」

 

あこ「うん!頑張る!」

 

友希那「程々にね」

 

蒼真「応援されて頑張らん訳にはいかんね」

 

 とは言っても俺が出るのは後1つと補欠の対抗だけなんだけど。…あ、そういえば友希那達は何に出るんだろう。

 

蒼真「3人は何に出ると?」

 

リサ「アタシは後部活対抗と学年対抗に出るよ」

 

蒼真「あ、そうなんやね。頑張れよ」

 

リサ「うん!」

 

あこ「あこは障害物競走に出ます!」

 

蒼真「なるほど。あこちゃんらしいな。友希那は?」

 

友希那「私は全員参加のもの以外は出てないわ」

 

蒼真「そっかぁ。じゃあ全部で終わったんやね」

 

友希那「そう言う蒼真は何に出るのかしら」

 

蒼真「俺か?俺は――」リサ「蒼真はねぇ男子対抗に出るんだって」

 

蒼真「うん…まぁそうやけど」

 

友希那「そう…頑張って。応援しているわ」

 

蒼真「ありがと」

 

リサ「あ、アタシそろそろ出番だから行ってくるね」

 

蒼真「あ、俺も部活対抗の係任さとれるんやった。ちょっと俺も行ってくる」

 

リサ「あ、そうなんだね蒼真も頑張って」

 

友希那「いってらっしゃい2人とも」

 

蒼真「おう」

 

リサ「いってきまーす!」

 

 そして俺とリサはそれぞれグラウンドに向かった。

 

 

 




読了ありがとうございます。

まず始めに、今井リサさん。お誕生日おめでとうございます!

今日がリサの誕生日というわけで、出来るだけ照準を合わせて書き上げました。
かなり中途半端で短くなってしまいましたが、また文字数が多くなりそうなのでここでとりあえず区切らせて頂きます。

ゆっくりな更新にはなっていますが今後ともよろしくお願いします。

それではまた次回


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第12話:体育祭での出来事②

sideリサ

 

 

 皆と別れてアタシは次の種目、部活対抗リレーの準備をしていた。

 

あこ「リサ姉!部活対抗頑張ってね!」

 

リサ「うん♪頑張ちゃうよ~」

 

 同じダンス部としてあこが改めて応援してくれた。あこも中等部の部活対抗に出るみたいだからその準備をしているようだ。

 

リサ「あこも出るんだよね。お互い頑張ろうね」

 

あこ「うん!頑張る!」

 

 

 そして競技が始まった。

 

 まずは中等部から。あこもかなり足が速いからアンカーとかするかな?と思ったけど、どうやら1番最初に走るみたい。

 

 ピストルの合図と共に一斉にスタートした。

 

 

 

 結果から言うと、あこ達ダンス中等部は見事1位だった。

 あこのスタートダッシュはホントに凄かった。群を抜いた速さで圧倒し二秒くらい差を付けてバトンタッチした。そこから抜かされることなく1位を貫く。

 

 

リサ「お疲れ〜あこ!」

 

 そう言ってあことハイタッチ。

 

あこ「リサ姉!あこ頑張ったよ!」

 

リサ「うん!すっごく頑張ってたね。えらいえらい♪」

 

 あこの頭を撫でてあげると凄く喜んでいる。

 

あこ「えへへ~♪」

 

 次はアタシの番だ。あこがこれだけ頑張ったんだからアタシも頑張らないと。

 

リサ「よーし!アタシも気合い入れて行くよ~!」

 

あこ「リサ姉!頑張れ~!」

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

side蒼真

 

 これから部活対抗リレー高等部が始まろうとしていた。これにリサも出るようだ。順番を見る限りアンカーのようだ。

 

 俺はその対抗の係に着いている。大した事をする訳じゃないけど、重いものを運んだりする雑務と、イレギュラーがあった時の対応をする事になっている。何も無いことを祈るばかりだがイレギュラーはいつどこであるか分からないから目を光らせてないといけない。

 

 そんな事を考えているうちにリレーが始まった。

 

 リサたちダンス部は中々速いメンツが揃っているようだ。リサの番になるまで2位をキープ。その差は一秒も満たないほどだ。そしてリサへとバトンタッチし、飛び出した。スグに相手選手に並び追い越し、また追い越されを繰り返し最終コーナーに差し掛かった。

 

 その時――

 

リサ「あ!」

 

蒼真「リサ!!」

 

 足を滑らせ、コケてしまった。

 

 立て直そうとしているリサだったがその間にどんどん抜かされていった。

 

 なんとか立ち上がり走り出したが足を痛めているようだ。思うように走れていない。

 

 そんな足でようやくゴールしたリサにスグに駆け寄った。

 

蒼真「リサ!大丈夫か!」

 

リサ「…あはは~…盛大にコケちゃったなぁ」

 

蒼真「…足、見せろ」

 

リサ「え、ちょ!」

 

 有無を言わさず靴と靴下を脱がせた。

 

蒼真「……流石に折れてはないやろうけど、少し腫れて来とるな…捻挫っぽいな…よし」

 

リサ「いや、よしじゃないよ!ねぇ聞いてる?そゥヒャ!?」

 

 俺はリサをお姫様抱っこした。

 

蒼真「しっかり掴まっとけよ。保健室行くぞ」

 

リサ「ちちちょ蒼真!だ、大丈夫だから!自分で歩けるから!///」

 

蒼真「黙っとき舌噛むぞ」

 

リサ「ぅぅ…( 恥ずかしいんだって)…///」

 

 歩き出した俺は――

 

蒼真「先生!ちょっとコイツを保健室に連れていきます!」

 

先生「え、えぇ。分かったわ」

 

――急ぎ足で保健室に向かった。

 

 …後になって思ったが、何故この時こんな事をしたのかと後悔することになるがそれはまたべつの話だ。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

sideリサ

 

 ぅぅ…すっごく恥ずかしかったぁ…

 

 アタシは保健室で先生に治療してもらった。蒼真の言った通り軽い捻挫だった。その後先生は用があるから少し外すと言って出ていった。

 

 ぇ…てかアタシら置いて出ていくの…?

 

 

 それはさておき…なんとか歩けるようにはなったけど…残りの競技には出れそうにない…

 

 悔しなぁ…すごく楽しみにしてたし、皆にも期待されてたから凄く迷惑かけちゃった…

 

蒼真「…リサ。あんまり自分を責めるなよ」

 

リサ「え?もしかして声に出てた?」

 

蒼真「いや。ただ、いつものリサじゃないような気がしたけさ」

 

リサ「そう…かな…?」

 

蒼真「うん」

 

 蒼真はホントに色んなことに気が回る。凄く優しいくていい人だ。

 

 色んな事を考えていたら何だか涙が出てきた。泣きたいわけじゃないんだけどなぁ…

 

蒼真「辛い時は泣いてもいいと思うぞ。リサはあんまりそういった感情を表に出さんやろうけ」

 

 何でそこまで分かるんだろ……でも…少し…甘えさせてもらおうかな…

 

リサ「…少し…手、握っててもらってもいい…?」

 

蒼真「…おう」

 

リサ「…グスン…悔しい…すごく…悔しいよぉ…皆にも迷惑かけちゃったし…!」

 

 だんだと、感情が抑えられなくなってきた。

 

蒼真「そうやな。あれだけ頑張っとったんやけやっぱり悔しいよな」

 

 でも蒼真の前ならいいかなって思う。

 

リサ「…うん……ぅぅ…」

 

蒼真「…俺…口下手でこういう時なんて言っていいかあんまり分からんのやけど…今は泣いてスッキリするといい。傍におっちゃるけさ」

 

 ホントに蒼真は優しいなぁ…

 

リサ「あり…がと…」

 

 そしてアタシは泣いた。感情のままに泣いた。

 

 泣いてる間、蒼真は優しく頭を撫でてくれた。アタシは思わず蒼真に抱きついた。最初、蒼真は驚いていたけどそのまま何も言わずまた頭を撫でてくれた。

 

 

 

 

リサ「ご、ごめんね。みっともないところを見せちゃって」

 

 ひとしきり泣いてスッキリすると今度はまた恥ずかしさが増してきた。

 

蒼真「いや、全然いいんよ。スッキリしたんやったら良かった」

 

リサ「…ありがと。傍に居てくれて」

 

蒼真「お、おう…」

 

 …蒼真も少し顔が赤くなってる気がする。気のせいかもしれないけど…

 

リサ「あ!そうだ、蒼真競技はどうしたの?」

 

蒼真「あぁ。学年対抗以外は断ってきた」

 

リサ「…なんか…ホントごめんね」

 

蒼真「リサは気にせんでいいんよ」

 

リサ「…うん…ん?…学年対抗以外?」

 

蒼真「俺補欠やけさ、リサの代わり出る事にした」

 

リサ「…そっか」

 

 …蒼真がアタシの変わりに…その響きがちょっとだけ嬉しいかも。

 

蒼真「あ…そろそろ行っとかんといけんかな」

 

リサ「もうそんな時間かぁ…」

 

蒼真「じゃあ行ってくるけ少し落ち着いたら見に来たらいい」

 

リサ「うん…ありがとう。頑張って!」

 

蒼真「おう。リサの為に頑張ってきますかね」

 

 そう言い残して蒼真は保健室を出た。

 

リサ「…もう!…蒼真はいつもいつも…///」

 

 そんな事を呟いたけどホントは凄く嬉しい。蒼真がアタシの為にって言ってくれて。

 

リサ「よし。アタシもそろそろ行こうかな。のんびりしてたら蒼真の活躍が見れないし」

 

 そしてアタシも保健室を飛びだした。

 

 

 




読了ありがとうございます。

今回も書いてたらどんどん延びて言って区切ってしまいました。

次回はスグに更新出来ると思いますのでお楽しみにしていてください。

ではまた次回


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第13話:体育祭での出来事③

sideリサ

 

 

 グラウンドに戻ると友希那達が集まってきた。

 

友希那「リサ。もう大丈夫なの?」

 

リサ「うん。なんとかね~」

 

あこ「 よかった~」

 

燐子「本当に…怪我が酷くなくて…良かったです 」

 

リサ「心配かけてごめんね」

 

紗夜「いえ。それよりも先程の件で今井さんも蒼真さんも注目を浴びているようですね」

 

友希那「そうみたいね」

 

 …やっぱりそうなるよねぇ…

 

リサ「…あ、あはは~…大丈夫だって言ったんだけどねぇ」

 

紗夜「まぁ…あれだけ盛大にコケたのだから仕方ないとは思うわ」

 

友希那「そうね。それにリサも満更ではなかったのではないかしら」

 

リサ「そそそ、そんな事…ないよ?」

 

あこ「蒼真さん凄く必死な顔でリサ姉を連れて行ってたよ。蒼真さんチョーカッコよかった!まるで王子様とお姫様みたいだった!」

 

 お、王子様とお姫様!?

 

リサ「ぅぅ…///」

 

燐子「あ…そろそろ…学年対抗リレー始まる…みたいですよ」

 

 もうそんな時間かぁ。皆と話してると時間が経つのが早い。

 

リサ「アタシの変わりだから蒼真はアンカーかぁ」

 

友希那「そういえば、リサはこの競技に出る予定だったわね」

 

リサ「うん。足がこんなだから変わりに蒼真が出てくれるようになったの」

 

友希那「そう」

 

あこ「蒼真さーん!ガーンバレー!」

 

 …素朴な疑問だけど、蒼真って走るのは得意なのかな?

 

友希那「そういえば、さっき蒼真と少し話をしたのだけれど」

 

リサ「どうしたの?」

 

友希那「あまり走るのは得意じゃないって言っていたわ」

 

リサ「え!」

 

 じ、じゃあ何で引き受けたんだろ…

 

友希那「だけど、リサがあれだけ頑張ったのだから俺も頑張るって言ってた。どんな結果になっても全力で走るって。そう言っていたわ」

 

リサ「そっか…」

 

 ならアタシもしっかり応援しないと。頑張れ!蒼真!

 

 

 

そしてピストルを合図に競技が始まった。

 

 今回の学年対抗は例年と違って男子も混ざっているから実質1,2年生の勝負となる。

 

 2年生は男子が蒼真1人だけだから不利に見えるけど、この学年は段違いで早い子達が揃っている。だから1年生男子にも負けないと思う。

 

 そうこうしているうちに第3走者だ。3人目は日菜だ。今現在5人中の3位。意外と他のクラスや学年の子も速い。だけど日菜はホントに規格外だ。

 

 1位とは既に2秒以上離されていたけど、一気に2位の子を追い抜き1位の子のすぐ近くまで追いついた。ただ、流石にスポーツをしてそうな男子なだけに1位の子は中々抜けない。

 

 そして、蒼真の順番になった。

 

日菜「蒼真くん!お願い!」

 

蒼真「おう!」

 

 勢いよく飛びたした。バトンの受け渡しも完璧だった。

 

 …全然速いじゃん…

 

 蒼真の走りは日菜程圧倒的に速い訳じゃないけど、徐々に1位の人に詰め寄る。

 

リサ「頑張れ…頑張れ蒼真…」

 

 そして最終コーナー…アタシがコケた場所。

 

 ちょうどその場所に差し掛かった時――

 

リサ「あ!」

 

蒼真「っく!」

 

――一瞬よろめいた。

 

 お願い!どうか怪我だけはしないで!

 

 アタシは咄嗟にクラスの勝ち負けよりも蒼真が怪我しないか心配した。

 

 でも蒼真は足腰のバランス感覚がいいみたいで、なんとか持ち直した。

 

 …すごい…あそこから持ち直すなんて。

 

 そこから一気にダッシュして相手選手に追いついた。

 

 蒼真は凄く必死に走っている。手に汗握る勝負だ。見ているこっちまで緊張してしまう。

 

 頑張れ…

 

リサ「負けるな!蒼真!!」

 

 

 そして…決着が着く。

 

 ほぼ同着だった。

 

 係の子が持っていたカメラで判定されるみたいだ。

 

 その間に蒼真は円外に出て転がり込んだ。

 

 相当キツかったんだろうなぁ…お礼も兼ねて労いもしなくっちゃ。

 

 そして、結果が分かったみたい。

 

 結果は………蒼真の勝ちだ!

 

やっったーー!

 

 アタシは自分の事のように喜ぶ。

 

 そして蒼真の方を見ると、ちょうど目が合う。

 

 こっちを見た蒼真は寝転んだまま腕を突き上げ笑顔でピースサインをしてきた。

 

 その笑顔が眩しくて…凄く胸が高鳴る。顔も熱くなってきた。

 

 あ…これが…アタシの恋なんだ…

 

 もう理由なんてどうでもいいくらい…蒼真の事好きになっちゃってたみたい…

 

 ど、どうしよう…意識しだしたら蒼真を見るだけで顔が熱くなっちゃう…どうにかしてバレないようにしないと…

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

side蒼真

 

 

 ふぅ…なんとか…勝つことが出来た。

 

 なんでだろ…こんなに上手く走れるとは思ってなかった。…途中俺までコケそうになったけど…

 

 ふと、リサの事が頭を過ぎって絶対負けられないって気持ちが強くなり体勢を立て直す事が出来た。

 

 そしてそのままゴール出来たのはやっぱりリサの声が聞こえたからだ。負けるな!って。

 

 普通あの中で聞こえる訳はないと思うけど、何故かその時だけははっきり聞こえた。

 

 …不思議な事もあるものだなぁ。

 

 でも…一瞬でもリサの声が聞こえたから俺は頑張れたんだと思う。

 

「おつかれー」

 

 そう言って引っ張り上げてくれたのは、やっぱりリサだった。

 

蒼真「おつかれー。いやぁホントしんどかったァ…」

 

リサ「だろうねぇ。ホントに頑張ってたもん」

 

蒼真「こんなに思いっきり全力で走ったのは初めてかも」

 

リサ「そうなの?」

 

蒼真「うん。あんま走る機会とかなかったけさ」

 

リサ「…そっかー」

 

 そんな事を話しているうちに閉会式に移ろうとしている。

 

 

 閉会式が終わった後友希那達が集まってきてそれぞれ労いの言葉をくれた。

 

 そして時間が過ぎ、下校時間。

 

 

友希那「蒼真ちょっといいかしら」

 

 帰る前に友希那に呼び止められた。

 

蒼真「どうした?」

 

友希那「いえ。たいしたことではないのだけれど。リサ、ちょっと蒼真を借りていくわよ」

 

リサ「う、うん。分かった…て、てかアタシに言わなくてもいいんじゃない?」

 

 そんな事を他所に、友希那に連れられ廊下に出た。

 

蒼真「で、どうしたん?」

 

友希那「ごめんなさい急に。本当にたいしたことではないのだけれど、今日は色々あったしリサも今は足もあんなだから蒼真が連れて帰ってくれないかしら」

 

蒼真「まぁ、それは全然いいんやけど友希那はどうするん?」

 

友希那「私は先に戻らないと行けない用事があるから一緒には帰れないわ。ごめんなさい」

 

蒼真「そっか。まぁそんな謝らんでいいよ。家も目の前なんまし」

 

友希那「お詫びと言っては何だけど、お弁当箱とは私達で持って行っておくわ」

 

蒼真「そう?ならお願い…ん?私達?」

 

友希那「あ…」

 

あぁ…なるほど。何となさっしがついたぞ。何とは言わないけど。

 

蒼真「まぁいいや。じゃあお願いするわ。リサは任せとき」

 

友希那「ありがとう。お願いね」

 

 そうして友希那に弁当箱を預けて教室に戻った。

 

リサ「あれ?友希那は?」

 

蒼真「今日は用があるから先に帰るって」

 

リサ「え?そんな事言ってたかなぁ」

 

蒼真「…まぁ急に用事が出来たんやろ。リサを頼むっち言われたけさ」

 

リサ「そ、そっか…」

 

蒼真「まぁそんな感じやけ帰るぞ」

 

リサ「う、うん」

 

 そうして俺達は学校を出た。

 

 

 

 今日は疲れているのか、俺もリサも口数が少なかった。

 

 リサはまだ足の痛みも残っているだろうからゆっくり歩いている。

 

リサ「ごめんね…アタシに付き合わせちゃって」

 

蒼真「んー。気にせんでいいよ。元々そのつもりやったけさ」

 

 友希那に言われなくても送って行くつもりだった。

 

リサ「…ありがとね。蒼真」

 

蒼真「…おう」

 

 なんか…改めて言われると少し照れてしまうな…

 

リサ「蒼真は優しいね」

 

蒼真「そうか?自分じゃよく分からんけど」

 

リサ「うん。凄く優しいと思うよ。ていうか、皆同じこと言うと思うよ」

 

蒼真「ちょ、そう言うのやめてっチャ…恥ずかしいやん」

 

リサ「あはは~♪蒼真照れてる~可愛い~♪」

 

蒼真「…先帰るぞ」

 

リサ「あ、ちょっと待って…あ!」

 

蒼真「ちょ!危ない!」

 

 急いで歩こうとしたリサはバランスを崩し、転びそうになる。

 

 なんとか受け止める事が出来たけど…

 

 咄嗟の事だったから、抱き締める形になってしまった。

 

蒼真「ご、ごめん…大丈夫か?」

 

リサ「う、うん!大丈夫…///アタシの方こそごめんね。ありがと」

 

蒼真「そ、そっか…大丈夫ならよかった…」

 

 

 

 それからというもの、気まずくて家に着くまで一言も喋らなかった。

 

 着くまでの間に色々と考えてしまった。リサ…嫌じゃなかったかな…とか、出しゃばり過ぎじゃなかったかとか。そんな事を考えた。

 

 

 

リサ「今日は色々と…その…ありがとね」

 

蒼真「…おう」

 

リサ「…凄く…嬉しかったよ」

 

蒼真「そ、そっか」

 

リサ「うん…じゃあまたね!おやすみ」

 

蒼真「おやすみ」

 

そう言って家に入ろうとした。

 

リサ「蒼真!」

 

蒼真「ん?なん……」

 

 俺は一瞬頭がフリーズした。

 

頬に柔らかいものが…

 

リサ「…ん……き、今日たくさん助けてくれたお礼とアタシの為にリレー頑張ってくれたお礼///」

 

蒼真「……」

 

リサ「じ、じゃあ今度こそまたね!」

 

 そのまま俺は呆然と立ち尽くしてしまった。

 





読了ありがとうございます。

これで体育祭編は終わりとなります。

これから先また期間が空くかもしれませんが、更新出来た時はまたよろしくお願いします。


それではまた次回


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第14話:再会

 

 

 

 

 

 夢を見た。それはずっとずっと昔の記憶。

 

 そこには2人の女の子と2人の男の人がいる。1人は俺の親父だ。もう1人は…ダメだ顔が陰っていてよく分からない。女の子も同じ。

 

 その子達と俺は何かを話している。

 

「わたち、おおきくなったら〇□▷×になる」

 

「あたちも△×〇□になりたい!」

 

 何かを言っているが聞き取れない…いや、この場合思い出せない。

 

 その後俺も何かを2人に約束をしたけどそれも思い出す事が出来ない…

 

 そして夢はそこで夢は途切れた―――

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

side蒼真

 

 

 ある休日。今日はRoseliaの練習が早く終わって家に戻ってきた俺は、家の掃除をしていた。

 

 今日の練習中リサのベースのキレがすごく良かった。段々良くなってきているのは感じていたけど、今回の練習では一段とそれが増していた。

 

 凄く楽しそうに弾いていたし、何かいい事でもあったのかな?

 

 リサとは裏腹に、今日の友希那は少し様子がおかしいような気がした。本人はなんでもないと言っていたけど、どこかそわそわした感じだった。

 

 そんな事もあってか、今日はいつもより早めに切り上げる事になった。

 

 俺も早く終わるならちょうどいいからと家の事をしてしまおうと今に至っている。

 

 

 

 たまたま親父の書斎を通り掛かった時、ふと朝見た夢の事を思い出した。

 

蒼真「あの夢はなんやったんやろ…」

 

 そんな事を考えなが書斎を掃除をしていると――

 

バサッ

蒼真「っ危な!」

 

――棚の上から1冊のアルバムが降ってきた。

 

蒼真「アルバム?何で急に降ってきたんやか…」

 

 拾い上げたアルバムの中には昔の俺や親父、母の写真が載っている。

 

蒼真「うわ懐かし…母さんも親父も若いなぁ」

 

 1ページ1ページめくって行くと1枚の写真を見つけた。そこには――

 

「ん…?この写真の子達…どこかで……っ!!」

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

sideリサ

 

 

 練習が終わって私は家に戻ってクッキーを作っている。

 

 リサ「よし!こんなもんかな~。後で友希那と蒼真に持って行こっと」

 

 今日のアタシは何だか調子がいい気がする。自分で言うのもなんだけど、今日のベースは上手く弾けたと思うしクッキーもいつもよりかなり美味しく出来たと思う。

 

 何でだろうって思った時、1番に思い浮かんだのは蒼真だった。蒼真を好きになってた事に気づいて今までモヤモヤしていたものが取れたからなのかもしれない。

 

…そういえば…最近よく思うことがあるんだけど、蒼真と一緒にいるとなんだか懐かしい気持ちになる事がある…何でだろう…

 

リサ「…蒼真……えへへっ」

 

 頬が熱くなって行くのが分かる。アタシはどうしようもなく蒼真にベタ惚れしているみたい。皆の前では絶対にこんな顔見せられない。

 

 

 クッキーを作り終えて蒼真達の所に行こうと準備をしていると、メールとメッセージのそれぞれ1件ずつが来ていた。

 

 メールの方は友希那からだった。…今日の友希那ちょっといつもとは違ってたけど大丈夫だったかな…

 

 内容は…『暇だったらこれから私の家に来ないかしら』との事だった。

 

 だからアタシは『もちろんいいよ~。ちょうど今友希那の所に行こうと思ってた所だったから』と送る。

 

 もう1つのメッセージの方は蒼真からだ。

 

『今友希那からメッセージがきて家に行く事になったんだけど、そこで俺も2人に話したい事がある』

 

 …話したい事ってなんだろ…

 

『分かった。20分後くらいに玄関前でも待ち合わせでいいかな?』

 

 待ち合わせにする事にしてしまったけどよかったかなぁ…

 

『大丈夫。じゃあ20分後にまた』

 

 あ、全然気にしてないみたい。まぁ…蒼真ってそういう所あるよね。

 

『うん♪ありがと。また後で』

 

 そんな感じで、アタシは蒼真と友希那の家に行く事になった。

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

side蒼真

 

 

 友希那に呼ばれた俺はリサと連絡をとり待ち合わせして行く事になった。何の用かは聞かされていない。

 

リサ「ごめん!待った?」

 

 リサが慌てて出てきた。そんなに急がなくてもいいのに。

 

蒼真「いや、俺も今出てきたばっかやけ大丈夫よ」

 

リサ「そっか。ならよかった」

 

蒼真「じゃあ行くか。まぁ目の前やけど」

 

リサ「あはは~そうだね」

 

 そんな事を言いながらチャイムを鳴らす。

 

友希那「早かったわね」

 

 …出て来るの早くないか?まぁいいんだけど…

 

蒼真「そうか?まぁ俺もリサも友希那に用事があったけね」

 

友希那「蒼真も?まぁいいわ。上がってちょうだい」

 

 中へ通され俺とリサはリビングに案内された。

 

友希那「ここで待っててちょうだい」

 

蒼真「分かった」

 

 そう言って友希那は奥の部屋に入って行った。

 

リサ「蒼真は何で呼ばれたか聞いてないの?」

 

蒼真「うん。何も聞かされてない」

 

リサ「そっかぁ。なるほどねぇ…」

 

 リサは何か知っているのかな…

 

蒼真「何か知っとると?」

 

リサ「ん?まぁ知ってるけど、友希那が戻ってからのお楽しみということで」

 

 はぐらかされてしまった…何があるのか凄く気になるけどリサがそういうんだったら仕方がない。待つとしよう。

 

 

 それから少しして友希那が戻ってきた。

 

友希那「ごめんなさい待たせてしまって」

 

蒼真「いや全然待ってはないけど結局何やったん?」

 

友希那「えぇ。これから説明するわ」

 

 そう言って友希那は奥の扉を開ける。そこに現れたのは―――

 

 「やあ。久しぶりだね蒼真君」

 

―――友希那の父親さん。湊雪斗さんだった。

 

 




読了ありがとうございます。

中々投稿出来なくてすみません。


ここからお待たせしております。あの方が登場します。

諸事情、と言うより名前を付けたいという自分の考えで
オリジナルネームを付けさせてもらいます。

ご理解ければと思います。


また時間は掛かると思いますが頑張って書いていきます。

それではまた次回。


※次回以降タイトルが変わるかもしれません


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第15話:約束

 

 

 

side蒼真

 

 

雪斗「やあ。久しぶりだね蒼真君」

 

 俺は今一瞬思考が止まっていた。何で…と思ったが少し考えたら分かる事だった。ここは友希那の家なのだから友希那のお父さんがいるのは当たり前だ。

 

蒼真「…お…お久しぶりです。おじさん」

 

リサ「こんにちは。友希那パパ」

 

雪斗「こんにちは。リサちゃんも久しぶりだね」

 

友希那「ふふっ。緊張してるみたいね蒼真」

 

蒼真「…仕方ないやろ…イキナリでビックリしたんやけ」

 

リサ「あはは☆蒼真も緊張するんだね?」

 

蒼真「…俺を何と思っとるん…?」

 

 

 

 話をしていくうちに何となく全容が見えて来た。今日友希那が早く切り上げたのはおじさんが仕事から早く戻って来ていて俺に会わせたかったからみたいだ。

 

雪斗「それにしても、本当に大きくなったね」

 

蒼真「そりゃあ小さい頃に会ったきりでしたから。おじさんの方こそ元気そうでよかったです」

 

 それからしばらく近況報告などをした。おじさんは今はバンドはやってないけど、やっぱり音楽が好きだから音楽関係の仕事をしているそうだ。

 

リサ「そういえば、蒼真と友希那パパは昔からの知り合いだったんだよね。その時の話聞きたいなぁ」

 

友希那「私も聞いてみたいわ。あまりそういう話しないから」

 

蒼真「とは言っても俺も小さい頃の話だからよく分かってない事もあるんよね」

 

雪斗「そうか。君はお父さんから何も聞かされてないんだね」

 

蒼真「そう…ですね。知り合いとしか」

 

雪斗「なるほど…」

 

 そう言うとおじさんは何か考え始めた。

 

 …確かに親父とおじさんの事を聞いたことがない。そう思うとどんどん2人の関係が気になってくる。

 

雪斗「そうだなぁ…じゃあまず俺と蒼真君のお父さんの事から話をしよう」

 

 ゆっくりとその口が開かれる。

 

雪斗「俺と彼は小さい頃、幼稚園くらいからの幼馴染だ。ちょうど友希那やリサちゃんのような関係だね」

 

リサ「えー!そうなんだ!」

 

 ま…マジか…もしかしたらとは思ってたけど、ホントにそうだったのか…

 

雪斗「あまり驚かないんだね」

 

蒼真「い、いえ…驚いてますよ。確かに予想はしてましたけど、まさかそんなに古い付き合いだったとは思いませんでした」

 

雪斗「もう本当に長い付き合いになるな。高校時代は一緒にバンドを組んだりもしていたな」

 

蒼真「え!?ま、マジですか!あの親父が…」

 

 バンドを組んでたなんて1度も聞いたことない。なんで言ってくれなかったんだ…

 

 それからまた親父とおじさんの話を色々聞いた。大学まで同じ学校に進学し、切磋琢磨していた事。親父とお袋が知り合ったのもこの頃だと言うことも聞かせてもらった。

 

リサ「へぇー!蒼真のお父さんとお母さん大学生の時に知り合ったんだね」

 

友希那「お父さん。もしかして、お母さんとも大学生の時に知り合ったの?」

 

雪斗「ん?…あぁ、そうだな」

 

蒼真「親父とおじさんホントに仲がいいですね」

 

雪斗「うん。本当に色々良くしてもらったよ。あ、そういえば、4人でよく出掛けたりもしたな。懐かしい」

 

リサ「え!それってダブルデートですか!」

 

雪斗「まぁ、そうなるね」

 

リサ「わぁお♪青春してますね!」

 

 はははっ。ホントに親父とおじさん青春してるな。おじさんも親父の話をするのは楽しそうだ。

 

雪斗「お互いの結婚式の時にはスピーチをして歌を披露したの懐かしい思い出だ」

 

蒼真「そんな事もしてたんですね」

 

雪斗「今は凄く真面目に働いてるけど昔はかなりおちゃらけた性格だったからな。いつも驚かされたし笑わせてもらったよ」

 

 へぇー昔はそんな性格だったんだ。今からしたら考えられないな…

 

雪斗「性格が変わり始めたのは君が産まれてきてからだな。凄く頑張ったんだと思うよ今に至るまで」

 

 そっか…親父も色々と頑張ってるんだな。今もだけど。

 

 

 

 親父とおじさんの事色々きけてよかった。そうだ、丁度いいからあの事についておじさんに聞いてみよう。

 

蒼真「おじさん」

 

雪斗「何かな」

 

蒼真「今日ホントは友希那とリサに見てもらおうと思ってた物があったんですけど、おじさんも居るから一緒に見てもらおうと思って」

 

リサ「そういえば、話したいことがあるって言ってたけど…見せたいもの…?」

 

友希那「何かしら…」

 

 そして俺はこの1枚の写真を3人に見せた。

 

リサ「え!これって…」

 

友希那「私達…?」

 

 やっぱり2人も困惑しているようだ。でもおじさんは――

 

雪斗「あぁ懐かしいな。そういえばこれも言ってなかったけど…と言うか皆ここまで聞いてなんとなく気付いているかもしれないけど、蒼真君の家族は昔はこの近くに住んでたんだ」

 

リサ「っえ!そうだったんだ!」

 

 やっぱりそうだったんだ。小さい頃だからほとんど覚えてないけど写真の風景は確かにこの近くだ。

 

蒼真「そっか…そうだったんですね。これで点と点が繋がりました」

 

友希那「という事は、私とリサも蒼真と幼馴染になるのね」

 

リサ「あ…そっか。そうなるんだね…(だから懐かしく思ったんだ)…」

 

雪斗「あの頃も3人共仲が良かったな」

 

リサ「へ、へぇーそうなんですねぇ」

 

蒼真「どうしたん?リサ」

 

リサ「え!い、いや何でもないよ~あはは~…」

 

蒼真「そう?ならいいんやけど」

 

 

 しばらく時間が経ち話が一段落した所で友希那から話が振られた。

 

友希那「そういえばお父さん」

 

雪斗「なんだ?友希那」

 

友希那「前に蒼真と歌を歌うって約束をしていたのを教えてくれたじゃない。あれ、よければ私が代わりに蒼真と歌ってもいいかしら…?」

 

 友希那から思わぬ提案なあがった。

 

蒼真「うーん…俺は構わんけど…」

 

雪斗「いいんじゃないか。俺も久しぶりに友希那の歌も聴いてみたいしな」

 

リサ「あ、じゃあアタシベース取ってくる!」

 

 そう言ってリサはベースを取りに戻った。

 

蒼真「じゃあ俺も少し準備しようかな」

 

友希那「私もそうするわ」

 

雪斗「なら俺も防音室の準備をしてくる」

 

 そして皆それぞれ準備に取り掛かった。

 

 …というか…この家防音室まであるのか。流石だな。

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 リサも戻って来て打ち合わせを始めた。

 

蒼真「歌う曲どれにする?」

 

友希那「もちろんこの曲でいくわよ」

 

リサ「この曲だねりょうかーい」

 

 まぁやっぱりこの曲だよな。

 

 

雪斗「準備は出来たかい?」

 

蒼真「俺は大丈夫です」

 

リサ「アタシもOKです」

 

 友希那は念入りにハミングや発声をしている。

 

雪斗「友希那はもう少しかな」

 

友希那「…いえ。もう大丈夫よ」

 

 2人とも準備が終わりセッティングを始め、俺もマイクを持ち始まりを待つ。

 

友希那「今日は紗夜達がいないから音源を使うわ。リサも蒼真もそれに合わせて頂戴」

 

蒼真「了解」

 

リサ「OK~」

 

友希那「じゃあお父さん、聴いていて。行くわよ2人とも。LOUDER」

 

 そして音楽が流れ始まる。

 

 

.•*¨*•.¸¸♬

 

 

 練習の時も思ってたけど、リサはホントにどんどん上手くなってるな。友希那もいつも以上に気合が入っている。俺も負けてられない。

 

 友希那がメインで歌を構成し、俺がユニゾンで友希那音を押し上げる。リサのベースで全体を包み込む。

 

 俺達3人での演奏…音に惹き込まれれる感覚がある。

 

 なんだろう…昔もこんな事をしていたような気がする。いや、もしかしたらそうなのかもしれない。

 

 友希那とリサも同じ感覚を抱いでいるようだ。少し驚きつつも楽しそうに演奏している。

 

 俺も友希那の横に立ち一緒に歌い、リサの音聴きながら一緒に友希那を押し上げる。

 

 

.•*¨*•.¸¸♬

 

 

 演奏が終わり、辺りが静まり返る…そして、後からおじさんの拍手が響き渡った。

 

雪斗「うん。凄く良かった。3人共本当に上手くなったね」

 

蒼真「ありがとうございます。でも彼女達はまだまだこんなもんじゃ満足はしないですね。やろ?友希那、リサ」

 

友希那「もちろんよ。私達はこんな所で止まってられないわ」

 

リサ「そうだね。Roseliaの目標はまだまだ上だからね」

 

 再度目標を確認する2人。俺も2人を、Roseliaを全力で支えて行こうと改めて心に誓う。そして―――

 

 

 

★☆★☆★☆★☆★

 

 

蒼真「今日は本当にありがとうございました。おじさんにまた会えて良かったし、楽しかったです」

 

雪斗「ああ。俺も楽しかったよ。また遊びに来なさい」

 

蒼真「はい!」

 

 

 おじさんに挨拶をし、友希那の家を出た俺はすぐ家に戻ろうとするが――

 

リサ「あ、そうだ!今日2人にクッキー作ってきたんだった。はいこれ」

 

 リサからクッキーを渡された。凄く形が凝っていて上手に焼けている。

 

蒼真「ありがとうリサ」

 

リサ「うん♪」

 

 そういえば、友希那の反応が無いけど…

 

友希那「…にゃーん……にゃーんちゃん…ふふっ」

 

蒼真「ゆ、友希那?どうしたん」

 

リサ「あぁ…あんまり気にしなくてもいいよ。いつもの事だから」

 

 そうなのか…それにしてもあまりにもギャップがありすぎて…

 

 確かにネコの形をしたクッキーもあったけど、それだけでこんなになるとは…

 

リサ「可愛いでしょ友希那。この表情あんまり見せるつもりは無かったんだけど蒼真には特別。幼馴染だったって分かったから」

 

蒼真「うん、ありがとう。また2人の新しい一面が見れて嬉しい」

 

リサ「そ、そう?なら良かった♪」

 

 

 しばらくして友希那も元に戻り――

 

友希那「ごめんなさい。少し取り乱してしまったわ」

 

蒼真「少し…?」

 

リサ「ま、まあまあ。それにしても友希那パパと蒼真パパの過去を聞けて良かった♪」

 

友希那「そうね。お父さんはあまりああいう事をあまり口にしないから新鮮だったわ」

 

蒼真「そうやな。うちの親父も全くそういう事いわんけ聞きよって面白かった」

 

 

 それから少し世間話をした俺達は――

 

蒼真「じゃあそろそろ家に戻るか」

 

リサ「そうだね」

 

蒼真「友希那。今日は誘ってくれてありがとな凄く嬉しかった」

 

友希那「そう。それは良かったわ。私も今日楽しめたわ」

 

リサ「えぇ~?それっていつもアタシ達といても楽しくないって事?」

 

友希那「そ、そんな事言ってないじゃない」

 

リサ「あはは♪ウソウソごめんね。ちゃんと分かってるから」

 

友希那「もう…」

 

蒼真「はははっ。ホントに2人は仲がいいな」

 

友希那「これからもっと私達の事を知っていけばいいわ」

 

リサ「そうだね♪アタシももっともっと蒼真の事知りたいし」

 

蒼真「そうやな。俺ももっと2人の事知り合い」

 

リサ「そうだ!今度Roseliaの皆も一緒にお出かけしない?」

 

友希那「いいわよ。その代わり次からの練習はもっとハードになるから覚悟していて頂戴」

 

リサ「OK~♪」

 

 

 こうしてまた次の予定が決まったようだ。

 

蒼真「じゃあそういう事で。また明日」

 

リサ「はーい。おやすみー」

 

友希那「おやすみなさい」

 

蒼真「おやすみ。2人共」

 

 そして家の扉を閉じた。

 

 

 

友希那「…ねぇリサ―――」

 

 




読了ありがとうございます。

最近あまり書く事が出来ていないSyoです。見て下さっている方、更新が遅れてしまってごめんなさい。


さて、次回より新章に入ります。それに伴って前回も言っていましたが、メインタイトルを変更します。

そろそろ(仮)じゃアレだなぁっていうのは常々思っていたのでこの度きりもいいので変更する形となりました。

これからも見て頂けると自分も嬉しいです。

それではまた次回


感想などもお待ちしてます!


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第2章
第1話:心境の変化


 

 

 

 

 

 私は最近気になっている事がある。それは…蒼真の事。学校の休み時間や練習の休憩中、無意識のうちに目で追っている。

 

 不意に蒼真に話しかけられると顔が熱くなる事もある。

 

 それが何なのか分からなかったから、この前蒼真とリサが家に来た夜―――

 

 

 

☆★☆★☆★☆★

 

 

 

―――蒼真が家に入り、リサも部屋に戻ろうとした時、私は唐突にリサに声を掛けてしまった。

 

「…ねぇ…リサ」

 

「ん?どうしたの?」

 

「…えっと…その…」

 

 何も考えずに呼び止めてしまった私は、何をどう言うか思考を巡らせていた。

 

「珍しいね。友希那が言い淀むなんて」

 

「…私にもそういう時くらいあるわ」

 

「そっかー。それもそうだね」

 

 そう言いつつ未だに何を言っていいか分かっていない。だから――

 

「少し歩かない?」

 

「OK~いいよ」

 

 私達はすぐ近くにある公園に向う事にした。

 

 

 

「それにしても、今日は色んなことが聞けて良かった~♪」

 

「そうね。お父さんがあんなに楽しそうに話すのは久しぶりに見たわ」

 

「それだけ蒼真と再会出来て嬉しかったんだねぇ」

 

 そうだと思う。私がお父さんに蒼真の事を話した時も凄く嬉しそうだったし。何故かはその時話してくれなかったけど、さっきの話しでようやく分かる事が出来たわ。

 

「幼馴染かぁ。何だか実感はないけど、ずっと懐かしい様な感じはしてたんだよねぇ」

 

「確かにそうね。私も何故蒼真をRoseliaのサポートに誘ったか自分でも疑問に思っていたけれど、その時から懐かしく感じていたのかもしれないわ」

 

 …そういえば、あの時私…蒼真に抱きついてしまったわね…

 

「…っ」

 

 そう思うと次第にまた顔が熱くなってきた。

 

「友希那大丈夫…?顔が赤いけど…」

 

「え、えぇ。大丈夫よ」

 

「そう?ならいいんだけど」

 

 やっぱり蒼真の事を思うと顔が熱くなってしまう。

 

「…」

 

「友希那?ホントに大丈夫?風邪とか引いてない?」

 

「大丈夫よ。ただ…」

 

「ただ…?」

 

 …この際だからリサに聞いてみよう。

 

「…リサは…蒼真の事どう思う?」

 

「え…?蒼真の事?」

 

「そう。リサはどういう風に思っているか気になったの」

 

「…そ、そうだなぁ…優しくて気が利いて色々出来る凄い人だなぁと思うよ」

 

「そうね。私もそう思うわ」

 

「友希那がそんな風な事聞いて来るなんて珍しいね。ホントにどうしたの?」

 

 そう言われた私は、今思っている事をリサに話した。

 

 

 

 

「…そっかァ…そうなんだね…」

 

「えぇ。…私はどうしたらいいのかしら」

 

「…うーん…そうだなぁ…(どうしよ)(どう言ったらいいだろ)…」

 

 リサは真剣に考えてくれている。

 

 そして少しして――

 

「……それはね友希那。アタシからは何も言えないかな…」

 

「え…?」

 

 リサから思いもよらない言葉が返ってきた。

 

「意地悪で言ってるんじゃないよ?これは…友希那自身が気付かないといけない事だと思うから」

 

 私自身が気付かないといけない事…

 

「…そう…」

 

「ごめんね友希那…力になって上げられなくて」

 

「いいのよ気にしなくて。私の方こそ変な事聞いてごめんなさい」

 

 そう言った直後――

 

「変じゃないよ!」

 

「えっ?」

 

――急に大きな声を出したリサに少し驚いてしまった。

 

「全然変じゃない…むしろ今の友希那の抱いてる気持ちは凄く大切な事だと思う。…だから変だなんて言わないで…」

 

 …リサ…

 

「ごめんなさい…私が軽率だったわ。…ありがとうリサ。私の事をそんなに親身になって考えてくれて」

 

「幼馴染なんだから当然だよ。でも友希那がこんな事を話してくれる日が来るなんて思わなかったから凄くびっくりしたよ」

 

「そうなの?」

 

 そんなに大ごとなの?今抱いてる気持ちは…

 

「うん。友希那からは絶対に聞かないだろうと思ってたから」

 

 やっぱりリサは何か知っているのね。

 

「そう…」

 

 でも、何も聞かない。リサが言ってくれた。この気持ちはとても大事な事だから、自分で気付かないといけないと。だから、私は自分で答えを見つける。

 

 

 

 それからしばらく雑談をして――

 

「今日はありがとね友希那色々と話してくれて」

 

「いいえ。私の方こそ話を聞いてくれてありがとう。お陰で少しはスッキリしたわ」

 

 リサに聞いてもらえて本当に良かった。と言うより、リサ以外こんな話は出来ないと思う。

 

「そう?それなら良かったよ♪もし、また何かあったら話して欲しいな。相談に乗れるかは分からないけど話なら聞いてあげれるから」

 

「えぇ。またその時はお願いするわ」

 

 そして私達はそれぞれ家に戻った―――

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 それからしばらくが経ち今に至るわけだけれど…未だにこの気持ちが何なのかははっきりしない。

 

 けれど、嫌な気はしない。色々と不安もある…でもそれも何だか心地がいい。

 

 だから、リサに言われた通りこの気持ちを大事にしていこうと思う。この答えが見つかるまでちゃんと向き合っていきたい。

 

 

 

「…き……ゆ…な……友希那!」

 

「!……何かしら?蒼真」

 

「そろそろ休憩終わるぞ。珍しいな友希那がぼーっとしとるとか。どっか体調とか悪くないか?」

 

 そうだった。今はバンド練習の休憩中だったわ。

 

「…心配を掛けてしまったみたいね。でも大丈夫よ。ありがとう」

 

「そうか?ならいいんやけど」

 

 気を引き締めてまた練習を再開する。

 

「じゃあ、さっきの続きからいこうか。まずONENESSの頭からLOUDERの終わりまで。あこちゃんには結構負担掛かると思うけど大丈夫やか?無理はせんでいいけ」

 

「大丈夫です!任せてください!我が闇の力に……えっとー……りんりん…」

 

「…(不可能はない。がいいと思うよあこちゃん)…」

 

「うん!我が闇の力に…不可能ない!」

 

「はははっいいねそのノリ。うん、じゃあよろしくね」

 

「はい!」

 

 あこの言っていることはいつもよく分からないけど、蒼真は良く分かるわね…

 

 それにしても、蒼真が加入してくれてからは凄く練習効率が上がっている。他の皆のレベルも蒼真の意見で確実に伸びてきている。

 

 凄く有難いし、感謝してるけど…無理してないかしら…

 

 

 

 それから2時間続けて演奏し続けた。

 

「蒼真。そろそろ時間かしら?」

 

「お、そうやな…てかもうこんな時間か」

 

「時間経つの早いねぇ」

 

 確かにリサの言う通りあっという間に時間が過ぎたように感じる。

 

「それだけ濃い時間だったということです」

 

「まぁこれだけみっちり短い時間で詰め込んだらそうなるわな」

 

「うへぇ~…疲れたよ~…」

 

 あこも集中して演奏していたからだいぶクタクタのようね。

 

「お疲れあこちゃん。よく頑張ったね。はい、スポーツドリンク」

 

「わぁー!ありがとうございます!蒼真さんが作ってくれたドリンクすっごく美味しくて大好きです!」

 

 …何故かしら…あこの好きと言う言葉を聞くと胸が苦しくなって何だかもやもやしてしまう。

 

「そう?嬉しいこと言ってくれるね」

 

 そう言うと今度はあこの頭を撫でる。

 

「えへへー…♪」

 

 あこも照れながら嬉しそうにしている。……羨ましい…

 

 そう思っているとリサが動きだし蒼真の方に向かう。

 

「っイテ!!ちょリサ!?」

 

 リサは蒼真の足を踏み付けた。ヒールで。

 

「っふん!」

 

 何故かは分からないけれど、少しだけ良くやったわリサと思った。

 

「…なんかしたやか…?俺…」

 

「…何をしているのですか…早く片付けて出ますよ」

 

 紗夜の一喝で皆急いで片付けをし、スタジオを出た。

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 それからスタジオを出たあとは外のカフェテリアで少し雑談をし、解散となる。これは最近の私達の日常。

 

「それではまた」

 

「皆バイバ~イ」

 

「お…お疲れ様でした…」

 

 そしてそれぞれ帰路についた。

 

「友希那、リサ。俺達も帰るか」

 

「えぇ。そうね」

 

「OK~」

 

 

 蒼真が加入して2ヶ月ほど経つ。その間に少しだけど色々と変化して来ている。多分…私自身も変化して来ている。

 

 そして…この中ではリサが1番変化している様な気がする。

 

「そういえばこの間学校でね蒼真――」

 

 凄く蒼真と仲良くなっている。

 

「――へぇそんな事があったんやねぇ」

 

 そう思うとまた少しもやもやしてしまう。…何なのかしら一体…

 

「あ、そうだ友希那。さっきの練習中にまとめた全員の練習資料なんやけど――」

 

 でも、蒼真はどんな時でも平等で私にもちゃんと声を掛けてくれる。だからさっきのもやもやもすぐに消えてしまった。

 

「そうね…これは――」

 

 蒼真はRoseliaのために本当に色んなことを考えてくれている。このノートも凄く参考になるアドバイスなどがびっしりと書き綴られている。

 

 よく皆の事を見ているわね。と思いつつ、技術面の事までしっかり書いてくれていて凄く助かる。

 

 

 そうした事を話しているうちにあっという間に家に着いてしまう。

 

「じゃあまた明日」

 

「はーい♪明日ね~」

 

「おやすみなさい」

 

 

 そしてまた一日が終わる。

 

 今まで無かったこの風景。

 

 だけどそれが当たり前になっていく。

 

 悪い気はしない。

 

 むしろ心地が良い。

 

 そんな柄にもない事を思うそんな一日。

 

 

 蒼真に対するこの気持ちが何なのかまだ分からない。何度も思っている事だけれど…

 

 でもこれからゆっくりとこの気持ちを知っていきたい。

 

 

 

 

 

 




読了ありがとうございます。


今回から2章に突入します。

…何かががる訳では無いですけど、ゆっくり物語は動いて行くと思います。


これからもまだまだ投稿に時間がかかってしまうと思いますが、気長に待って頂ければとおもいます。


ではまた次回



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第2話:今日の晩ご飯①

 

 

 

 

「…うーん…どうしようかなぁ…」

 

 今俺は悩んでいる事がある。それは今日の練習後の事―――

 

 

 

 

―――今日の練習を終えたRoseliaのメンバーと俺は帰り支度をしていた。

 

「あ、そういえば蒼真さ」

 

 支度を終えたリサが声を掛けてきた。

 

「ん?何?」

 

「前に蒼真が住んでた所って筑前煮の他に何か美味しい物ってあるの?」

 

 どうやらリサは俺が住んでいた所の料理に興味を示しているようだ。

 

「美味しい物か…そうやなぁ…思い出したら結構あると思うけど」

 

「そっか。いやぁこの間ご馳走になった時凄く美味しかったからさ、他にも作れる物があるんだったら教えて欲しいなぁって思ってね」

 

 そんなに気に入ってくれたのか…嬉しいような少し恥ずかしいような…

 

「アレやったらまた家にくるか?なんか作っちゃる( つくってあげる)けど」

 

「ホント!やった♪」

 

 そんな話をしていると

 

「え!蒼真さんまた何か作るんですか!」

 

「あ…あこちゃん…!」

 

 あこちゃんが話に食いついてきた。燐子ちゃんもあこちゃんに引っ張られて付いてきたようだ。

 

 そして他の皆も集まってくる。

 

「リサ。あなたまた蒼真の作った料理を1人で頂こうとしていたの?」

 

「っえ!そ、そんなことないよ!ちょっと作り方を教わろうかなぁって思ってさ」

 

 そう。と言って友希那はいそいそと片付けを再開する。

 

 よく見る光景だけど、友希那とリサは本当に仲がいいなぁと思う。

 

「それで蒼真さん。先程の話は本当ですか?」

 

 今度は紗夜さんが話しかけて来た。

 

「そうやね。そういう事になったね」

 

「そうですか。…では私達もご一緒してもよろしいでしょうか…その…以前頂いた料理、とても美味しかったので」

 

 そう呟きながら手の指を遊ばせながら少しモジモジさせている。

 

「紗夜さんも嬉しいこと言ってくれるね。もちろんいいに決まっとるやん。同じメンバーの仲間やろ」

 

 そう言うと何故か顔を手で隠し後ろを向かれた。

 

「どうしたん?紗夜さん」

 

「い、いえ。何でもありません…ありがとうございます…」

 

「?うん」

 

 よく分からなかったが、こうして紗夜さん達…と言うよりRoselia全員また家に集まることになった。

 

 

 

 

 

「じゃあ先に買い出しに行ってくるけリサ、鍵渡しとくけ先家に入っとって」

 

 そして俺はリサに手渡しで鍵を預ける。

 

「え?いや…え?いいの?そんなに簡単に鍵預けて」

 

「リサと友希那は家が目の前やし、それに何より信頼しとるけさ」

 

「信頼…そ、そっか…えへへっ♪うん分かった!しっかり預かっておくね」

 

 よろしく。と言い残して俺は急いで街に出た―――

 

 

 

―――そして現在(いま)に至る訳だが…

 

「あんまり時間もないしなぁ…かと言って半端なもんも作りたくないし…」

 

 色々と思考を巡らせながらスーパーを見て回っているとあるものを見つけた。

 

「あ!そっかその手があったか!これなら簡単にでも美味しく地元の料理を作れる!…となると後は…」

 

 それから色々と考え買い揃える物が決まり少し急ぎ目にレジに向かう。

 

「うん。これなら皆も喜んでくれるはず」

 

 もしかするとダメな物もとかも皆あるかもしれないから何種類か作っておこう。余ってもいつでも使えるから。

 

 

 買い物を済ませた俺は急ぎ家に戻もうとするが…

 

「あ、そうや…米炊いてなかったな…」

 

 うっかりしていた。家に戻ってから炊いてたら時間があまりなくなってしまう…

 

「…うーん…申し訳ないけど言い出しっぺのリサにお願いしとくか」

 

 携帯を取り出しリサに米を炊いてもらうようお願いのメッセージを送った。

 

 そしてまた急ぎ足で帰宅する。

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 

 

 

「それじゃあ開けて入るよ」

 

 アタシ達は帰り支度を終えて蒼真の家にに来ていた。

 

 鍵を預かったアタシは玄関の鍵を開け皆を連れて家の中へと入っていく。

 

「それにしても…まさかまたここに来るとは思っていなかったです」

 

「確かにねぇ。アタシと友希那は家が目の前だからもしかしたら機会はあったかもしれないけど、紗夜達とこんなにすぐにまた来るとは思ってなかったよぉ」

 

 リビングに入り荷物を下ろしながアタシは紗夜と話をしている。そしてソファーに向かっていると…

 

「今井さん。それは自慢ですか?」

 

「ぶっ!!」

 

 足が滑り思わずソファーにダイブしてしまった…

 

「ちょ紗夜!?そんなわけないじゃん!」

 

「ふふっ。冗談ですよ今井さん」

 

 え…もしかして…紗夜にもからかわれたの?アタシ…

 

「もう…」

 

「それにしても今のは…ふ、ふふっ…」

 

「ちょ、そんなにおかしかった!?」

 

「リサ姉今のは凄かったよ!何かこう…バナナの皮で滑ってバーン!って感じだったよ」

 

「……」

 

「今井さん…今のは…ゲームのキャラクターみたいだった…ってあこちゃんは…言おうとしてるんだと思います」

 

「う、うん…何となく分かったよ。ありがと燐子…」

 

 分かるんだけど…それだとアタシが色んな意味で滑ったみたいじゃん…

 

 

 

 それから少し時間が経って蒼真からメッセージが来ていることに気づいた。

 

「了解っと…あ、そうだ!」

 

「何をしているの?」

 

 蒼真にメッセージを返していると後ろから友希那が話しかけて来た。

 

「あ、友希那。今蒼真から連絡があってお米の準備をしてて欲しいってきてね」

 

「そう…」

 

 …うーん…友希那何か言いたそうだけど…

 

 少し考えたアタシは1つの答えにたどり着いた。

 

 そっか。今友希那は蒼真のこと気にしているんだった。…じゃあ…

 

「友希那」

 

「何…?」

 

「米とぎやってみない?」

 

 え…?…と言われたけどまぁいきなりそんな事を言ったらそうなっちゃうよねぇ。

 

「友希那もこういう事とかも出来た方がいいと思うし、それにできるようになったら蒼真も喜んでくれると思うよ」

 

「そうかしら?」

 

「うん!アタシはそう思うな」

 

「…ならやってみようかしら」

 

 そう言うと友希那はキッチンの方に向かった。

 

 上手くいったかな?蒼真をダシに使っちゃったけど、そろそろ友希那も家事とか少しづつできた方がいいと思うから機会がある時は教えながらやってもらおうと思う。

 

「それで、どうすればいいの?米をとぐくらいなら私でもできると思うのだけれど」

 

 さすがに米とぎくらいはした事あるかな?じゃあ…

 

「じゃあね、美味しく炊けるご飯の炊き方を教えてあげるね」

 

「分かったわ」

 

 準備を始める友希那。決して手際がいいわけじゃないけどその眼は真剣そのもの。

 

…音楽以外でこんなに真剣になってるの…もしかしたら初めて見たかも。アタシも気合い入れなくちゃ。

 

 

「じゃあまず最初は米びつの中から米を…そうだなぁ…6合分入れようか」

 

「合?」

 

 あー…やっぱり単位とか分かんなかったかぁ…

 

「そう。合はお米で使われる単位ね。1合約150グラムくらいで、炊けた後だとだいたいお茶碗1杯半くらいって覚えてればいいかな」

 

「なるほど」

 

 説明をしながら米びつの中にある計量カップを取り出す。

 

「で、その1合はこの計量カップ1杯分が1合分ね。ソレを6杯米がまの中に入れてね」

 

 分かったわ。と言い慎重に米をかまのなかに入れていく。

 

「終わったわよ」

 

「オッケー。今度は米をといでいくんだけど、ボールとザルで洗った方がいいんだけど今回はこのままで洗うね」

 

「何故使わないの?」

 

「お!いい質問だね。それじゃそれも一緒に説明するね」

 

 そう言ってアタシはまず冷蔵庫に行き中に入っているミネラルウォーターを取り出した。

 

 さっきメッセージを返した時に使っていいか確認してちゃんと許可してもらっている。他にも使っていいと言われたけど今はこれだけで十分かな。

 

「米とぎをする時1番最初に入れる水は、水道水じゃなく美味しい水。つまり洗浄された水やミネラルウォーター」

 

「何故?」

 

「それはね、とぐ前の米はカラカラな状態でしょ?そこに水を入れると米がその水を吸収して使った水の風味が出るの。水道水だと少しだけ塩素が混じってるから味が落ちるの。だからこのミネラルウォーターを今回は使うんだよ」

 

 本当は水道水を沸騰させれば塩素も飛んで美味しく炊けるんだけど、今回は時間がないからミネラルウォーターを使う。

 

「なるほど」

 

 説明通り友希那ミネラルウォーターを入れてとぎ始める。

 

「最初のは水を吸収させたいだけだから少し水に浸して2、3回かき混ぜる程度でいいよ」

 

 少し時間を置きそしてかき混ぜる。

 

「こんな感じかしら」

 

「うん!オッケーだよ。じゃあ水を切っていくね。かまの中の水がある程度無くなったら今度は水道水で米をとぐよ」

 

「ミネラルウォーターじゃダメなの?」

 

 お、これもいい質問だね。

 

「確かにミネラルウォーターでもいいんだけど、勿体ないってのもあるし最初の水でちゃんと米に吸収されてるから残りはとぐ時水道水で大丈夫なんだよ」

 

 なるほど。と言い作業に戻る。

 

「米の出汁で今白くなってきてるけど、それがある程度無くなるまで洗ってみて。それをだいたい2、3回繰り返す」

 

 そして友希那は言われた通りにある程度水が透明になるまでといでいった。

 

「このくらいかしら」

 

「うん!バッチリ!じゃあ最後の工程ね」

 

 少し身構える友希那。

 

「と言ってもそんなに大した事はしないよ。最後はまたミネラルウォーターを6合のメモリまで入れるだけ。何でか分かる?」

 

 たまには友希那にも少し考えてもらおうかな。

 

「そうね……リサが最初に言っていたように米を美味しく炊くためじゃないかしら」

 

「正解。さすがに分かるよねぇ。最後にミネラルウォーターを入れることによってより米の美味しさが引き立つようになるの」

 

「リサはお菓子作りだけじゃなくて料理にも詳しいのね」

 

「まぁ和食とか好きだから自分で作ってたりしたからねぇ」

 

 そんな話をしながら作業を進め準備が整った。

 

「後は炊飯のボタンを押すだけ。これで大体40分から50分くらいで炊けると思うよ。メーカーにもよるんだけど」

 

「なるほど。勉強になったわ。ありがとう」

 

「アタシの方こそ手伝ってくれてありがとね。じゃあちょっとアタシ達もゆっくりしよっか」

 

 そうね。と言い友希那はソファーの方に向かっていった。

 

「ただいまー」

 

 それと同時に蒼真も帰ってきたようだ。

 

 

 

 

 

 




読了ありがとうございます。

久々に投稿が出来ました。中々諸事で遅くなっていますが、自分の中では満足のいく物が書けたと思います。

ではまた次回


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第3話:今日晩ご飯②

「ただいまー」

 

 家に帰り着いた俺は皆がくつろいでいることを確認する。

 

「あ、おかえりー」

 

 リサを筆頭に皆それぞれ反応する。

 

 家に帰ってきて自分以外に人がいるって久しぶりで何だか新鮮な気持ちなるな。

 

「どうしたの?そんな所で立ち止まって」

 

 立ち止まって考え事をしていたからかリサがまた声を掛けてきた。

 

「ん?いや、なんでもないよ」

 

「そう?ならいいんだけど」

 

 そんな会話をしながらキッチンに行き荷物を下ろし米の準備が出来ているかを確認する。

 

「うん。しっかり出来とるね」

 

「今日はね~友希那に手伝ってもらったんだ~♪」

 

 リサは凄く上機嫌で話してきた。

 

「お、そうなんやね。ありがとう友希那」

 

「…いえ…ほとんどリサに教わりながらだったけれど」

 

 少し恥ずかしそうに言っている。

 

 もっと自信持っていいと思うけどなぁ。

 

「そっか。リサもありがと」

 

「いやいや、大したことはしてないよ。教えた事をしっかり丁寧にしてくれたからスムーズに出来たんだよ」

 

 いつも思うが幼馴染だからなのだろうか本当に仲がいいと思う。俺はそこまで昔から仲が良かった友人はいなかったから少し羨ましくもある。

 

 そんな事を聞きながら夜ご飯の準備を進める。

 

「2人ともありがとね。ココからは俺の仕事やけゆっくりしとって」

 

 そう言うと…

 

「その作業見てていいかな?」

 

 リサは俺がする作業を見たがっているようだ。

 

「うーん…そうやなぁ…後から教えようかとも思ったけど…うん。いいよ」

 

「やった♪」

 

 凄く嬉しそうにリサはガッツポーズをしている。

 

 そんなに嬉しかったのだろうか…

 

「友希那はどうする?」

 

「私は少し休ませてもらうわ」

 

 そう言って友希那はリビングの方へ向かって行った。

 

「今日は何を作るの?」

 

「今日はね…カレー」

 

「カレー…?」

 

 カレーと言う言葉に疑問を浮かべているリサ。まぁ確かに普通のカレーだったそうなってしまうと思う。けど…

 

「ただのカレーじゃないけ。リサに言われてた通り地元ならではの料理やけ」

 

「ホント?」

 

「もちろん。俺の地元付近で発祥って言われとる焼きカレー」

 

「焼きカレー!」

 

 お、その反応は知ってたかな?

 

「名前は聞いた事あったけど食べた事は無かったんだよねぇ」

 

「そっか。それを聞いて安心した。食べた事あるって言われたらどうしようかと思った」

 

 そう言うと…

 

「アタシお菓子とかは結構作るけど料理の方はお菓子程は作らないよ。だから作れる料理はそこまで多くはないかなぁ。知らない料理も結構あると思うよ」

 

「…へぇ。そうやったんや」

 

 以外だった。凄く料理上手いから色々と作れるものだと思っていた。

 

 いや、謙遜しているだけのような気もするけど。

 

「じゃあまぁ作り始めるかね」

 

「オッケー。じゃあアタシはカウンターテーブルの方で見てるね」

 

「分かった」

 

 さてと、まずは焼きカレーを作る前の下準備から。

 

 今回は時間短縮のためカレーは一から作ったものではなく代替えでレトルトのカレーを使う。

 

 今日作る焼きカレーは全部で3種類。1つ目は鶏肉を使ったチキンカレー。2つ目は魚介のシーフードカレー。3つ目は野菜カレー。この3種類を作る。

 

 何故3種類作るかと言うと、もしかしたらものによっては食べれない物もあるかもしれないと思ったから。

 

 杞憂なのかもしれないけど。

 

 1つ目の鶏肉は一口大0.5cm~1cm程の大きさに切り分ける。切り分けたら塩コショウを軽く振りかけ5~7分程置いておく。

 

 その間に2つ目のシーフードの準備。今回はイカ、エビ、そしてツナ缶を使う。何故ツナ缶?と思うかもしれないがこれを入れることによって味が膨らみ美味しく出来上がる。

 

 イカとエビも時間がないためあらかじめ下ごしらえをした物を使う。

 

 エビはそのまま使いイカは一口大に切り分けそれををフライパンに乗せ中火で焼いていく。

 

 魚介類は火が通りやすいためサッと炒める程度にする。量が多い場合は全体の色が変わるのをメドに焼いていく。

 

 焼き上がったらお皿に載せ替え次の準備をする。

 

 フライパンを洗い終わったらさっき置いておいた鶏肉を今度は焼いていく。

 

 鶏肉も全体の色が変わるまで焼いていく。魚介に比べて火が通りにくいため少し長めに焼きそして焦げ付かないように気をつける。

 

 十分に焼き上がったらこれも別のお皿に乗せ置いておく。

 

 3つ目の野菜に移る。今回使う野菜は赤、黄パプリカ、ナス、アスパラガス。

 

 これもさっきと同じように軽く焼き目が付くまで焼いていく。野菜は火の通りが良いためサッと焼く程度で大丈夫。ただしアスパラは火の通りが他より時間がかかるためアスパラだけ別で焼く。

 

「よし。下準備はコレでオッケー」

 

「やっぱり凄く手際がいいね」

 

 作業中声を掛けてこなかったリサが一段落したのを見てようやく声を発した。

 

「そうやか?そんな事はないと思うけど。もうだいぶ時間が経っとるし」

 

「あれ?もうそんなに経ってる?」

 

 時計を見ると準備を初めて既に30分は過ぎている。

 

「うわぁホントだ。見入っちゃってた」

 

「そんなに見とって楽しい?」

 

「うん!楽しいよ♪」

 

 …そう言われると何だか気恥ずかしいな…

 

 そうこうしているうちにご飯の炊ける音がした。

 

「お、炊けたみたいやね」

 

 しっかり炊けているか確認をする。

 

「おぉーいい感じに艶が出とって上手く炊けとるね」

 

「でしょ!友希那~上手く炊けてたよ~♪」

 

 リビングのソファーにいる友希那に手を振りながらしっかり炊けていることを伝える。

 

 何かを書いている友希那はこちらに振り向き「そう」と言いまた手を動かし始めた。

 

 多分新しい曲の歌詞作りをしているのだろう。

 

 ああやって素っ気く感じる時は歌詞のフレーズを考えている時の証拠だ。それだけ集中しているという事だろう。

 

「ああいう時の友希那は凄いよ~。きっとい良い歌詞ができるよ」

 

「…」

 

「何?」

 

「いや…なんでもない」

 

 何も言うまい…何でいつも心の中を詠むとかそんな事言わない…

 

「よし、じゃあ続きをするかね」

 

「はーい♪」

 

「いや、リサは作ってないやろ」

 

「いやぁ何となくノリでね♪」

 

「まぁいいけどね」

 

 焼きカレーを作るのはここからが本番。

 

 まず耐熱皿を用意する。この耐熱皿に出来たての米を装っていく。

 

 装った皿の中にさっき作った鶏肉、シーフード、野菜をそれぞれ別の皿に乗せていく。この時真ん中は空けておくといい。

 

 そしてその上にレトルトのカレーを乗せていく。

 

「レトルトのカレーってただレンジで温めるだけじゃなくてそういう使い方もあるんだね」

 

「まぁ創意工夫やね。俺も最近知ったんやけど」

 

「色々と調べてるんだねぇ」

 

「飯作るの割と好きやけねぇ」

 

 

 乗せたカレーの上に皿にピザ用などに使われるチーズを全体に塗す。

 

 そしてその上にさらに生卵を1つずつ真ん中に乗せていく。

 

 これで作業工程は終了。最後にオーブンで焼いていく。

 

 量があるから今回2つのオーブンを使う。

 

 何故オーブンが2つあるのかは聞かないでほしい。

 

 …だってその方がカッコイイからさ!

 

 というネタはさて置き、生前お袋が親父に――

 

〝キャーッッ!このオーブンカッコ可愛い!ねぇねぇパパーこのオーブン買って買って~〟

 

――と、ねだって買った代物だ。…結局あまり使わなかったけれど。

 

 まぁでも今は役に立っているからいいかなと思う。皆の役に立つなら。

 

 

 オーブンで焼く時間は通常約5分程度だが今回量が多いため10分程焼き上げていく。

 

「後は待つだけ」

 

「楽しみだなぁ」

 

「はいこれ。今作ったやつのレシピ」

 

 そう言って俺はメモしてあったレシピをリサに渡した。

 

「ありがとう♪今度作ってみるね」

 

「おう。今日は時間が無かったけレトルトを使ったけど時間がある時は作ったカレーを使うといいよ」

 

「うん!分かった。作ったら今度は蒼真が味見してね」

 

「了解。楽しみにしとくわ」

 

 その後はたわいもない話をして時間を潰していった。そして…

 

 オーブンのタイマーが鳴る音が響いた。

 

「よしこれでホントに完成」

 

「ん~♪いい匂い」

 

 確かにいい匂いだ。いつも以上によく出来てると思う。米のおかげかな。

 

「リサ。これをリビングのテーブルまで持って行ってくれんやか」

 

「オッケーまかせて」

 

「かなり熱いけ気を付けて」

 

 そう言いミトンとおぼんを手渡す。

 

「うん♪ありがと」

 

 俺も残りをテーブルまで持っていく。

 

 

「お待たせ皆。出来たよ」

 

 各自一斉にテーブルに集まってきた。

 

「わー!すごーい!美味しそー!」

 

 あこちゃんは凄く楽しそうにはしゃいでいる。

 

「ほんとだね…これは…焼きカレー…ですか?」

 

 燐子ちゃんは少し驚いているようなそんな表情を浮べている。

 

「うんそうだよ。もしかして食べた事ある感じ?」

 

「いえ、知っていただけで…食べた事はないです。九州北部の方ではかなり有名なので…少しびっくりしました」

 

「そっかぁ」

 

「焼きカレーですか。私も聞いた事はありますが食べた事はないですね」

 

 紗夜さんも食べた事はないのか…有名な割に食べた事がない人が多い気がするな。

 

「焼きカレー…久しぶりに食べるわね」

 

「友希那は食べた事あるん?」

 

 意外…でもないのかな?

 

「お父さ…父に食べさせてもらった事があるから」

 

 今更言い直さなくてもいいんじゃないかな。

 

「なるほどね。おじさんだったら確かに作れそうやね」

 

 そして皆席に着く。

 

「じゃあ皆。冷めんうちに好きなの食べて」

 

「はーい!」

 

 あこちゃんが、みんなの代わりに返事をした。

 

「じゃああこはー…このチキンカレーにします!」

 

「私もそれにするわ」

 

 あこちゃんと友希那はチキンカレーを選んだ。紗夜と燐子ちゃん、リサはどちらを選ぶかな。

 

「私はこのシーフードカレーにします」

 

「じゃあ…私は…こっちの野菜カレーを…いただきます」

 

 なるほど。紗夜さんは予想通りだったけど、燐子ちゃんは意外だった。

 

 あこちゃんと少し分け合うだろうからてっきりシーフードにするかと思ってた。

 

「蒼真はどっちがいい?」

 

 リサはどちらがいいか決めかねているようだ。

 

「どっちでもいいよ。リサは食べたい方を選び」

 

「うーん…じゃあこっちのシーフードにするね」

 

「了解」

 

 これで全員決まった。

 

「じゃあ食おうか」

 

「うん♪いただきます」

 

 他のみんなもそれぞれいただきますと言い食べ始める。

 

 さて、皆の反応はどうだろう。

 

「 ん~♪美味し〜!焼きカレー始めて食べましたけどすっごく美味しいです!」

 

 あこちゃんは嬉しそうに、そして何より楽しそうに食べている。

 

「そうだね。…一つ一つしっかり焼かれていて…手間がかかっていますね。本当に美味しいです」

 

 燐子ちゃんはじっくりと食べているようだ。

 

「そうですね。魚介類もちょうど良い感じで調理されていてとても美味しく頂けます」

 

 紗夜さんも美味しく食べてくれてるようだ。

 

「ん~♪この卵のトロトロ具合とチーズの絡み方が凄く良くて美味しい♪」

 

 リサは見ていたからあれだけど、それでも美味しいと皆から言われるのやっぱり嬉しいな。

 

「友希那はどう?味の方は」

 

「えぇ。凄く美味しいわ。皆みたいに上手いことは言えないけれど、とにかく美味しいと思うわ」

 

「そっか。そんなに気にせんでいいのに。その気持ちだけで十分嬉しいけさ」

 

 そう。と言いまた食べ始める。少し顔が赤い様な気がするけどカレー少し辛かったかな?

 

 さて、俺も食おうかな。

 

 まず一口。口に入れるとカレーの辛さ、チーズのまろやかが広がりその後に米の甘さが徐々に増えていく。

 

 今まで食べた中で1番美味いかもしれない。

 

 リサの教え方も凄く上手かったのだろうが友希那はそれを聞き、一所懸命 にといで行ったんだろう。それが伝わってくる美味さだった。

 

「友希那」

 

「何かしら」

 

「ありがとね、米。めちゃくちゃ美味い」

 

「…そ、そう。それは良かったわ」

 

「家にある米やけどこんなに美味い米食べたの初めてかもしれん。友希那が頑張ったお陰やね」

 

 そう言うとさらに顔が赤くなったような気がする。

 

「ツ…そ…そんな事ないわ。リサのお陰よ」

 

「いやいや、アタシはただやり方を教えただけだよ。頑張ったのは友希那だから」

 

 すると友希那は恥ずかしそうに顔をうつ向けた。

 

「あ!友希那照れてる!可愛い~♪」

 

 確かに可愛いと思う。凄く…

 

「うん。可愛い…」

 

 言うつもりはなかったがポロッと口が滑ってしまった。

 

「ッ~~!……(バカ)…」

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 それからしばらくして皆食べ終わり片付けとかをしていると…

 

「片付けはアタシがしておくから蒼真はゆっくり休んでていいよ」

 

 リサが片付けを申し出てくれた。

 

「そう?じゃあお願いしようかな。少しゆっくりさせてもらう」

 

「うん!まかせて~」

 

「ありがと」

 

 そう言って俺はリビングの方に向かった。

 

 すると、以前と同じくあこちゃん達がトランプで遊んでいた。

 

「うー…紗夜さんホント強すぎ~…」

 

「宇田川さんは顔に出すぎなのですよ」

 

 どうやらババ抜きをしているようだ。

 

「あ、蒼真さん!」

 

 正面に立っていたからいち早くあこちゃんが気付いた。

 

「ババ抜きやりよると?」

 

「はい。宇田川さんがこの間のリベンジと言うものだから」

 

 そう言いつつも表情は穏やかで楽しそうにしている。

 

「そっか。じゃあ俺も混ぜてもらおうかな。俺もこの間は惨敗やったけね」

 

「私は構いませんが」

 

「あこもいいですよ!みんなでする方が楽しいし」

 

「ありがと。燐子ちゃんはどうやか」

 

 燐子ちゃんは自分に話を振られて少し驚いていたけど…

 

「はい。…私も大丈夫ですよ」

 

 今ここにいるメンバーには承諾を得た。

 

 友希那は相変わらず歌詞作りに没頭している。

 

「では始めましょうか」

 

 俺達はカードを配りゲームをスタートさせる。

 

 

 

 結果から言うと今回は全員2回ずつ1抜けし、ドローという形になった。

 

 途中でリサも加わり他にと色々とゲームをし白熱したがそれはまた別の話にて。

 

 

「おっと、そろそろ皆帰ろっか」

 

 リサの呼びかけに皆それぞれ返事をした。

 

「時間が経つのは早いな」

 

「そうだねぇ。楽しい時間はあっという間だね」

 

 そして皆帰り支度が済んだようだ。今回はあこちゃんもしっかり起きている。

 

「今日はちゃんと歩いて帰ります。蒼真さん、この間は送ってくれてありがとうございました!」

 

「いや気にせんでいいよ。あの時はあこちゃんも疲れてたみたいやし」

 

 あの時は体育祭前だったからホントにしょうがないと思う。

 

「そうですか?後からお姉ちゃんに聞いてビックリしました!おんぶして連れて帰ってきてくれたって聞いて。その…覚えてないですけど嬉しかったです!」

 

 ホントに無邪気に嬉しそうに言っている。そう言って貰えると送ったかいがあったなと思う。

 

「まぁじゃあ今回も少し遅くなったし皆送って行くよ」

 

「アタシも皆を送っていく~。友希那はどうする?」

 

 リサがそう言うと…

 

「…今日は少し疲れたから送るのは辞めておくわ。ちょっと考えたい事もあるから」

 

 少し珍しかった。リサの誘いを断るのは。まぁ人間たまにはそういう事もあるか。

 

「そっか。じゃあ今日はゆっくり休んでね」

 

「えぇ。ありがとう」

 

 そして俺達は家を出てあこちゃんの家の方に向かった。

 

 

 歩きながら他愛もない話をしているとゲームの話が度々出てくる。

 

 俺やあこちゃん、燐子ちゃんが話をするのは分かるけど、意外とリサやまさか紗夜さんまで話についていけるなんて思っていなかった。

 

 そんな事を話しているうちに目的の場所に着いた。

 

「今日はありがとうございました!焼きカレーすっごく美味しかったです!」

 

「こちらこそそう言ってもらえて嬉しいよ。ありがとね。風邪引かんように寝るんよ」

 

「はーい♪じゃあまた!」

 

 あこちゃんが家に入って行くのを確認し、紗夜さんと燐子ちゃんも近くまで送る。

 

「そういえば、紗夜さんと燐子ちゃんは家が同じ方角なんやね」

 

「えぇ、そうですね。ただすぐ近くの交差点で別れるのですけど」

 

 それから少し歩き2人と別れた。

 

 そして、帰り道はリサと2人になる。

 

「そういえば、こうして2人で帰るのって久しぶりな気がする」

 

 そう言われればそうやな…

 

「中々2人になる事とかないけね」

 

「そうだねぇ。いつもは友希那がいるから」

 

「疲れとったみたいやね」

 

 今日も練習一段と頑張ってたからなぁ。

 

 そして会話が途切れてしまった。いつもなら途切れることもなく家に辿り着くのだがこの時はお互い話題が出てこなかった。

 

 …何でだろ…と思うが理由は何となく思い当たった。

 

 多分あの時体育祭の後の帰りの事だ。

 

 ずっと考えないようにしていたから今まで普通通り過ごせていたけど、こう…夜に2人っきりで歩いていると嫌でも思い出してしまう。

 

 それを考えていると少しづつ心臓の音が早くなって来るのがわかる。

 

 

 それからしばらく声を掛けようとしたが話しかけることが出来ず無言の状態が続いた。

 

 そして、家の前に着く。

 

「い、いや~家の前にたどり着くのあっという間だったねぇ」

 

 先に口を開いたのはリサだった。

 

「そー…やね。気付いたらもう着いとった」

 

「何だか珍しく何も話さずに帰ってきちゃったね」

 

「そうかね。まぁそういう事もあるやろ」

 

 自分にそう言い聞かせているだけだ。

 

「確かにそうだねぇ」

 

「…」

 

「…どうしたの?」

 

「…いや。なんもないよ」

 

「そう?」

 

 …何だろう…緊張してるのか?俺…

 

「あ、そうだ。今日はありがとう凄く楽しかった」

 

「そう?それなら良かった。でもそれなら言い出してくれたのがリサやけさ。こっちの方こそありがと」

 

「アタシはただ蒼真が料理してる姿をまた見たかっただけなんだけどねぇ……あ…」

 

「え…?」

 

 今なんて?

 

「いや!今のは、今のはなんでもないの!だから忘れて!お願い!」

 

「いや…え?」

 

 めちゃくちゃ混乱している。頭が追いついていない。え?なんて言った?

 

「じゃ、じゃあ!アタシはこれで!また明日ね!バイバイ!」

 

「あ!ちょま!」

 

 急いで家に入ろうとするリサの腕を慌てて掴んでしまった。

 

「え?わっ!」

 

 そして…少し力が強すぎたのか腕を引っ張ってしまいそのまま抱きしめてしまう形になってしまった。

 

「…」

 

 ほのかに甘いシャンプーのいい香りが漂ってくる。

 

「…」

 

「わ、悪い…」

 

「う、ううん…全然気にしなくていいんだけど……その……」

 

 ゆっくり手を離し少し離れる。

 

「ホント…ごめん…いきなり腕掴んだりして」

 

「アタシの方こそ…急いで家に入ろうとしちゃってごめんね」

 

 お互いこの空気が居た堪れなくなってしばらく謝り続けた。

 

 それから少しして…

 

「あはは~何してるんだろうねアタシ達こんなに謝り続けて」

 

「ははっ。確かに」

 

 やっと落ち着いた俺達は笑い合った。

 

「いや、まぁ色々あったけど…さっき言ったあれは…嘘ではないから…」

 

「…そ、そっか」

 

「う、うん…」

 

 この話は…今は聞かないでおこう。今聞いちゃいけないような気がする。

 

「じゃあ今度こそ家に戻るね」

 

「うん。さっきはホントに悪かった」

 

「もういいって謝らなくて。じゃまた明日ね」

 

「分かった。おやすみ」

 

 そしてリサは家に入って行った。

 

 それを見送り俺と家へと戻る。

 

 心臓が飛び出そうなほど高鳴っている。

 

 明日、まともにリサと話を出来るだろうか…

 

 そう思いつつ俺は部屋と戻って行った。

 

「……」

 

 この時はまだ誰かに見られていたなんて思いもしていなかった。

 

 




読了ありがとうございます。

そして、令和元年おめでとうございます!

何とか…何とかこの日に間に合いました。

途中で右往左往してしまいました。

コレからもまた見ていただけると嬉しいです。

これからもよろしくお願いします!


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第4話:練習の休みに

 今日は久しぶりにバンドの練習は休み。こういう日は皆大抵予定がある様だ。だから今日は俺はやることがなくて暇である。

 

「さて、どうしようかな」

 

 久しぶりに駅前のショッピングモールにでも行ってみるか。楽器店や本屋、スーパーも入っているし。

 

「そういえば、最近忙しくてあっこに行ってなかったけ行ってみようかな」

 

 そうして、俺は駅前の方へ向かった。

 

 

 

 駅前に行く途中商店街を通るがここ最近色んな店の人に声を掛けられるようになった。

 

「おう! 兄ちゃんたまにはうちの野菜買って言ってくれよな!」

 

「了解です。今度何か作る時にでも寄ってみます」

 

 八百屋のおじさんはいつも元気で楽しそうに野菜を売り捌いている。

 

「あ! そうくんじゃん! やっほー。うちの特製コロッケ買っていかない?」

 

 今度は北沢精肉店の娘さんのはぐみちゃん。

 

「こんにちははぐみちゃん。学校から帰ってくるの早くない?」

 

「そうかなぁ? いつも走って帰ってるからかも」

 

 いや、絶対それだろ。

 

「なるほどね。コロッケは今度また買っていくね」

 

「ありがとう!」

 

 はぐみちゃんもいつも笑顔で元気だ。

 

「あ、そうだ。はぐみちゃんが入ってるハロー、ハッピーワールド! は最近どんな感じなの?」

 

 はぐみちゃんはハロー、ハッピーワールド! 通称ハロハピというバンドのベースを担当している。

 

「うーんそうだなぁ…色んなところに行って沢山演奏してるよ!」

 

「そっかぁー。それは凄いなぁ」

 

 ハロハピは沢山の病院や施設、幼稚園などを周って演奏をしているのは有名な話だ。みんなを笑顔に! をもっとうに活動しているそうだ。高校生でそれをやってのけるのは本当に凄いと思う。

 

「あれ? 蒼真さんだ。こんにちは」

 

「こんにちは蒼真さん!」

 

 声をかけられ振り向くと。ヤマブキベーカリーの娘さんの山吹沙綾ちゃんと以前からカフェでもお世話になっているつぐみちゃんだ。

 

 つぐみちゃんは以前聞いたようにAfterglow通称アフロ、またはアフグロのキーボードを担当している。以前あこちゃんのお姉さんの巴さんから聞いたが、幼なじみどうしで結成されたバンドだそうだ。

 

 沙綾ちゃんはPoppin’Party通称ポピパのドラムを担当している。ポピパはなんというかthe女子高生って感じのバンドだ。何曲か聞いた事があるが、等身大の彼女達、その周りにいる人達の絆をありのまま歌っていて…そこまで上手くはないがRoseliaと違った惹かれる物がある。

 

 …というか、この地域やけにバンドをしてる子が多くないか? 

 

「こんにちは。2人共今帰り?」

 

「はい。すぐそこで沙綾ちゃんととばったり会って一緒に帰ってきました」

 

 2人は違う学校どうしだが、家が近いからよく帰りが一緒になるそうだ。

 

「蒼真さんはこれから何処か行かれるんですか?」

 

「俺か? うん。ちょっと駅前の方までね。楽器の機材とか本とか見たいけ」

 

「なるほど。Roseliaの皆さんと一緒じゃないのは珍しいですね」

 

 俺がRoseliaのサポートをしているのは何故か俺の事を詳しく知らない人まで知っている。

 

「珍しいかな? そんな事はない……いや、なくはないか…」

 

 常にリサや友希那と一緒に居たからそう見られるのか。

 

「いつも一緒にいますから。特に()()先輩とは」

 

 何故かつぐみちゃんはリサの部分を強調して言った。

 

「つぐみちゃん…何でそこだけ強調したの?」

 

「いえ! 別に何でもないですよ?」

 

「そう?」

 

「はい!」

 

 そう言うとつぐみちゃんと沙綾ちゃんヒソヒソと何か話し出した。

 

(何でこの人は気づかないんだろ)…」

 

(ん?)(あぁなるほどね)(鈍感と言うかなんというか)…」

 

 なんだろう…俺の事を言われてる気がするが…

 

「おっと、時間もアレやしそろそろ行くね」

 

「あ、はい! 気を付けて。また店に来てくださいね!」

 

「おう。その時はまたよろしく」

 

「ヤマブキベーカリーもご贔屓に」

 

「北沢精肉店もね!」

 

 そして俺はまた歩き出した。

 

 

 

 駅前の広場まで来た俺はふと広場の周りを見渡した。すると…

 

「あれ? 蒼真くんだ。やっほー」

 

「あら? 蒼真さん。こんにちは」

 

 今度は氷川姉妹と出会った。

 

「こんにちは。紗夜さんと日菜が一緒に居るのは珍しいね」

 

 何故か姉妹なのに一緒にいる所をほとんど見たことがない。

 

「そうかなぁ? 最近はだいぶ一緒に過ごす事も増えたよ」

 

「そうなん?」

 

「え…えぇまぁ…というか日菜が先回りして待ち伏せしていたのよ…」

 

 今日の紗夜さんはテンションが少し低い。まぁいつもクールだけど。

 

「だってここに来るって聞いてルン♪ ってしたんだもん!」

 

「はぁー…報せるんじゃなかったわ……というか日菜! 仕事はどうしたの!」

 

「んー? まだ時間じゃないし大丈夫だよぉ」

 

 前に言ったかもしれないが日菜は、アイドルバンドPastel*Palettes通称パスパレに紗夜さんと同じギターで所属している。最近はテレビ番組でも観るようになってきた今売れっ子のアイドルだ。

 

 以前この事で一悶着あったようで、紗夜さんはかなり荒れていたそうな。今は和解して落ち着いてきているようだ。

 

 あ…だから俺はあの時音を探している、なんて言葉が出てきたのか…今になって気付いた。

 

 あの頃から比べると紗夜さんは正確に奏でるだけの音だけではなく少し楽しげにRoseliaらしくそして自分の音に誇りを持って弾ける様になっていると思う。

 

 何がきっかけだったかは俺には分からないけど、紗夜さんにとってそれは凄く大事な事だったんだろうな。

 

「大体あなたはいつもいつも──」

 

 …考え事をしていたけど未だに紗夜さんは説教している……でも何処か優しく姉らしく感じられるな。

 

「ははは…じゃあ俺はそろそろ行くな」

 

「え!? 蒼真くん行っちゃうの! 待って! お姉ちゃんを止めてー…」

 

「頑張れ日菜!」

 

「えぇ…」

 

「まだ話は終わってないわよ日菜!」

 

 少し涙目でこっちを見ている日菜。だけどそんな日菜がどことなく嬉しそうだった。姉の紗夜さんと話が出来て嬉しいのだろう。前にもお姉ちゃん大好き! って宣言していたくらいだから。

 

 というか…紗夜さん…説教を始めるとホントに長いな…俺もあのくどさよには気を付けないと…

 

 

 そして俺はその場を後にした。

 

 

 ショッピングモールに着き何処から行くか少し考えたが道順としてはゲームセンターから行く方が効率的だなと思いそっちの方に向かった。

 

 ゲーム好きとしてはやっぱり寄らないと気が済まないし、それに買い物をした後だと荷物が邪魔になるから先に行っておこうと思い至ったのだ。

 

 

 ゲームセンターに着くと何処からか聞き覚えのある声がしてきた。

 

「ねぇりんりん、次はあれ! あのゲームしない?」

 

「うん、いいよ。あこちゃん」

 

 やっぱり…今度はあこちゃんと燐子ちゃんだった 。

 

「あ! 蒼真さんだ! こんにちはー!」

 

 どうやら俺に気付いたようだ。

 

「こんにちはあこちゃん。それに燐子ちゃんも」

 

「こ、こんにちは。蒼真さん」

 

 いつも2人は一緒で本当に仲がいいな。学年も学校も違うのに。

 

「蒼真さんはここで何をしてたんですか?」

 

「してたと言うか、今来たんやけどね」

 

「そう…だったんですね」

 

「うん。少しゲームでもしてから買い物をしようと思ってね。てか今日は色んな人に会うなぁ」

 

「そうなんですね。すっごい偶然!」

 

 ホントに色んな知り合い会う。…もしかしたら他にも会うかもしれない。

 

 それからしばらく2人と話をしつつアーケードゲームを少し遊んで別れた。

 

「さて、今度こそ買い物をして回らないとな」

 

 そう言いつつ階を上がると…

 

「あ! 蒼真じゃん!」

 

 また偶然が重なった…

 

 

 

 

 

 




読了ありがとうございます。

今回は少し早く出来上がりました。

ほぼほぼ日常回です。

少し少ない文字数ですが、あまり気にせず読んで頂けたなら幸いです。

次も出来るだけ早く投稿出来るように頑張ります。


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第5話:重なる偶然①

 

「あ! 蒼真じゃん!」

 

 そう言って声を掛けてきたのはリサだった。

 

 用があるとは言っていたけどまさかここに来ているとは思わなかった。もちろん友希那も横にいる。

 

「こんにちは。蒼真」

 

「おう。こんにちは友希那、リサ」

 

 結局Roseliaメンバー全員に出会ったな。

 

「珍しいね蒼真がこっちの方まで来るなんて」

 

「そうか? まぁ最近忙しくてあんまり来れんかったけね」

 

「私は来ようと思って来たわけではないのだけれど……」

 

 どうやら友希那はリサに言いくるめられて来たようだ。

 

「今日は何か買い物に来たの?」

 

「ん? あぁ、まぁ音楽機材とかを見ようかと思ってね」

 

「なるほどーそっかぁー」

 

 ……何だろう……そのリサの含みのある言い方は……

 

「じゃあまぁ俺はこれで」

 

 矢継ぎ早に俺はここから立ち去ろうとする。

 

 先日の事もあるし少し居た堪れなくなってしまう。

 

 練習とかでは意識しないようには出来ているけど……何故かそれ以外の時は無意識のうちに見てしまってる。

 

「アタシ達も同じ所に行くし一緒に行こ?」

 

「え…?」

 

 驚いた俺は思わず声に出してしまった。

 

 そして俺に近づいてきたリサは…

 

「……アタシ達とじゃ…嫌…?」

 

 少ししゃがみ覗き込むように上目遣いでそう言ってきた。

 

「~~っ!」

 

 思わず仰け反ってしまい顔も熱くなってきた。

 

 そんな言い方されたら断れないじゃないか……いや、断るつもりはないけど…

 

 というか何だよその上目遣いは!? 近いしそんな潤んだ目をするなよ……

 

「……いや、別に嫌じゃないけど…せっかく2人で出かけとるみたいなのにのにいいと?」

 

 せめてもの抵抗をしてみるが……

 

「私は構わないわよ」

 

 ……友希那にそう言われてしまっては仕方がない。

 

「ふぅ……なら一緒に行くか」

 

「よし♪ そう来なくっちゃ!」

 

 おい…さっきまでの涙目ではどこ行ったリサ! 

 

 そう思ってしまうほど切り替えの早いリサだった。

 

 

 

 楽器店に着きそれぞれの目的の物を見て回った。

 

 リサは新しい弦の購入とその張替えだそうだ。

 

「自分でも出来るけどこういう時くらいしっかり調整してもらおうと思ってね」

 

 友希那はマイクを見ているようだ。

 

「高音から低音までしっかり拾えるマイクがいいわね。後ノイズがカット出来る物」

 

 友希那が言っている物は通常の物よりもさらにクオリティーの高い物を言っているのだろう。

 

「蒼真は何を見に来たの?」

 

「俺か? 俺はバンドで使う機材とか個人的にはヘッドホンが欲しくてな。重低音の音が楽しめるやつ。前地元に居た時友人に教えられてね。少しのHzの違いだけで聴こえる音が違って聴こえるけしっかり聴けるやつがいいってさ」

 

「へぇーそうなんだね♪ 久しぶりに蒼真自身の事を聞いたかも」

 

 そうか? とも思ったが確かに自分からはあまり話していないかもしれない。

 

「それにしてもその友達はそんなに細かい所まで聴いてるんだね」

 

「いや…それに関してはアイツが頭がおかしいだけやと思う。確かに音楽にはかなり詳しいけど」

 

「うぁ…蒼真がそんな風には言うなんて相当なんだろうね」

 

「まぁ、割と長い付き合いの悪友やけね」

 

「そっかぁー。いいねそういう友達がいて」

 

 そう言うとリサは友希那の方を見ている。

 

「それを言うならリサと友希那もそうやろ。俺とアイツに比べたらさらに長い付き合いやろうし、仲がいいじゃんか」

 

「そう見えるかな? だったら嬉しいな♪」

 

 前に聞いた事があるが友希那のお父さんがあんな事になってからはお互い距離を取ってしまうようになってしまっていたようだ。お互いと言うよりは友希那が一方的にの様だが。

 

「蒼真はその友達とはどのくらいの付き合いなの?」

 

「んー…そうやなぁ……小学5年くらいからやけ5年位の付き合いやな」

 

「そうなんだね」

 

「そういえば……」

 

「何?」

 

「アイツの事を話していると何故かいつも電話が掛かって来よったんよね……」

 

「えぇ?そんなまさかぁ」

 

 そんな事を言っていると……

 

 ~~♪ ♩♬

 

 携帯が鳴り出した……

 

「え…?」

 

 うん…リサの反応は妥当だと思う。

 

 そして携帯の画面を見るとやはりと言うかかなんと言うか……悪友の名前が表示されていた。

 

「やっぱりこいつなのか……」

 

「嘘…ホントに?」

 

「マジマジ…」

 

 言ったはいいがまさかホントに掛かってくるとは思っていなかった。

 

 そして俺は電話に出た。

 

「もしもし」

 

『もしもーしオレオレ!』

 

 こいつはいつもこの言い方をする。だから少しイラッとする。

 

「誰ですか? オレオレとか言う人は知りません。それじゃ」

 

『ちょちょちょ! 待てちゃ! 俺だって! カズ!』

 

「そんな事は着信見れば分かるわ!」

 

 この流れはいつもの事だ。

 

 この電話の相手は昔からの友人原口和平(はらぐちかずひら)。こんな感じでタイミングを見計らったように電話を掛けてくることがある。

 

「ちょっと待ってなカズ。……ごめんリサ少し外すね」

 

「うん分かった~」

 

 そう言って俺は店の外に出た。

 

「で、どうしたん?」

 

『いや、別にどうしたってわけやないけど最近連絡出来んかったけどうしとるやかと思って』

 

 それは電話を掛けて来る度に言っているような気がするが今は気にしないようにしよう。

 

「そうか。まぁ環境が変わって色々大変やけど楽しくやっとるよ」

 

「なるほど。それなら良かった」

 

 何だかんだ言って色々と気に掛けてくれる良い奴だ。

 

『で、さっきの声は誰?』

 

 ……さすがにコイツは耳がいい。ノイズがあっても聞き取れるのだから。

 

『もしかして…彼女か?』

 

「ぶっ!?」

 

 さっきのは前言撤回。やはりコイツは頭がぶっ飛んでいる。

 

「は、はぁ? 何言っとるん? そんな訳ないやん? 友達でバンド仲間!」

 

 てか、何で俺はこんなに焦っているんだ? 

 

『そうなん? てっきりそうなのかと思ってしまった』

 

「何でそうすぐそっちの方向に持っていきたがると……」

 

『ってかバンドやりよると?』

 

 音楽好きのカズ。やっぱり食いついてきた。

 

「うん。まぁ俺はサポートやけどね」

 

『そうなんか。いいねぇサポートでも』

 

 

 それからしばらく今までの現状を話て電話を切った。

 

 切り際に独り言の様に…

 

『あー…そうや。お前は自分の事とか他人の事にしても割と鈍いみたいやけど、これからもし何かあったとするならしっかり考えて答えを出した方がいいやろうな』

 

 そう言い残して電話を切られた。

 

「何やったんやアイツ……」

 

「長かったねぇ話」

 

「うぉ!? びっくりしたぁ……」

 

 振り向くとそこには買い物を済ませたリサと友希那が居た。

 

「あはは~♪ そんなにビックリしなくてもいいじゃん」

 

 心臓が止まるかと思ったと言いつつ呼吸を整えていく。

 

「ごめんねビックリさせて。それにしても蒼真…ものすごく辛辣に話してたね。聞いてて凄く新鮮だったよ」

 

「そうね。中々聞けるものじゃないから貴重ね」

 

「え……」

 

 2人に聞かれていたようだ。少し恥ずかしい……

 

「どこから聞いとったと?」

 

「んーとねぇ…バンド仲間! って所からくらいかなぁ」

 

「マジかぁ……割と前からやん…」

 

 意外と聞かれてて尚恥ずかしくなってくる……

 

「まぁそれはそれとして、蒼真も買い物を済ませて来なよ」

 

「そ、そうやな。急ぐわ」

 

 そう言って急ぎ買い物を済ませた。

 

 

 

「次はどこに行くの?」

 

 リサから質問を受ける。

 

「これからちょっと、前にお世話になった所に行こうと思うんやけど…リサ達も来るか?」

 

「あ、そうなんだ。行ってもいいの?」

 

「うんまぁ構わんよ。見られて困るようなことはないし。…さっきのは別やけど……」

 

「あはは~…ごめんねぇ」

 

「友希那も来る感じでいいか?」

 

「えぇ。構わないわよ」

 

 なら3人で行く事にしよう。

 

 

 この時俺達は気付いていなかった。まさかこういう事だったとは……

 

 

 




読了ありがとうございます。

少しはペースを上げられているでしょうか。

これからは月一から月二のペースで書いていきたいと思っているのでこれからも何卒よろしくお願い致します。


っと…そうだ。今回オリジナルキャラクターが出てきましたが、これからの本編とはあまり関係がないので気にしなくても大丈夫です。

それではまた次回


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第6話:重なる偶然②

 

 ショッピングモールで蒼真と会う少し前──

 

 

「いやぁありがとね友希那。買い物に付き合ってもらって」

 

「断ってもまたお願いしてくるでしょ。まぁ楽器店なら私も用があったからちょうどよかったわ」

 

 モールまで行く道の間、友希那と色々な会話をしていた。

 

 何だかんだ言って友希那は以前よりどんどん人付き合いが良くなってきていると思う。

 

 この間も友希那のクラスに行った時、麻弥、同じクラスの大和麻弥(やまとまや)と音楽の話や楽器の話で盛り上がっていたくらいだ。

 

 それもこれも、Roseliaというバンドを結成して。そして、蒼真と再び出会ったおかげだと思う。

 

「そういえば、今日は蒼真は誘わなかったのね」

 

 最近では友希那の方から蒼真の話題を振られることがある。

 

「んー今日は蒼真は日直で忙しそうだったから誘わなかった。それにほら、今日は久々にRoseliaの休みでもあるからゆっくりしてほしいし」

 

「そう。確かにそうね。しっかり身体を休めてもらわないと。彼も私達の一員なんだから」

 

 こういう事を言うようになるなんて今までは思いもしてなかった。ホントに成長してるなぁ友希那。

 

 

 それからもたわいもない話をしながら目的の場所に着いた。

 

 そして2階へ行きマップで楽器屋と他に見たい所の目星を付けて改めて向かおうとしてた。

 

「あ、そう言えば」

 

「どうしたの?」

 

 アタシは昼間に蒼真と話をしていた事を忘れていた。

 

「蒼真の事なんだけどね。さっきのはあぁ言ったけど、ふと今日話していた事を思い出したんだよね」

 

「そう」

 

「うん。今日日直の仕事が終わったらRoseliaの練習休みだからちょっと遠出して買い物をして来ようと思うって言ってたんだ」

 

 色んな会話の中で聞いた話だったからすっかり忘れちゃってた。

 

 でも何で今思い出したんだろ……

 

「……もしかすると、蒼真はここに来るかもしれないわね」

 

「あぁ……確かに有り得ちゃうかも。ちょっと遠出するって行ってたし、この辺りまで来るのかもしれないね」

 

 一応冗談交じりで言ったんだけど…もし来てたとしてもこれだけ大きなモールだからそうそう会うことはないと思うんだけどなぁ…

 

 そんな事を思っていると、1階から見慣れた人が上がってきた。もちろん蒼真だ。

 

 

──そして今に至るんだけど……まさかホントに蒼真が現れるなんて思わなかった。ビックリし過ぎて心臓が飛びたしちゃうかと思ったよ……

 

 ただでさえ最近は蒼真と一緒いるだけでもドキドキしっぱなしなのに……でも…蒼真と一緒にいるのは凄く楽しい。

 

 だからかな……あの場を離れようとした蒼真を引き止めてしまったのは…

 

 自分で言うのもアレだけど、上目遣いって……凄くあざといなぁ…それに……今になってめっちゃ恥ずかしくなってきた…

 

 でも、慌てた表情をする蒼真。可愛かったなぁ。

 

 

 楽器店に寄った時は蒼真の友達の話をしている時にその人から電話が掛かってきたようだ。

 

 大体掛かってくるって言ってホントに掛かってきた時はホントにビックリした。狙いすましてるんじゃないかと思うくらい。

 

 そしてその友達の蒼真の対応が物凄く辛辣で驚いた。いつも温厚で優しい蒼真があんな風に話をするなんて思っても見なかった。

 

 でもまた蒼真の新しい一面が見れて嬉しい。

 

 

 それからしばらく蒼真その友達と話をしていた。

 

 その間にアタシと友希那は買い物を済ませて蒼真の所へ向かった。

 

 蒼真は電話を終えた後急いで買い物を済ませに行き、戻ってきて次はどこに行くか聞くと、前にお世話になった所に行くと言う。

 

 蒼真がお世話になった所かぁ…ちょっと気になる。

 

 ついて行っていいと言ってくれてるのだから是非ついて行こう。

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 蒼真の目的の場所に向かっている途中思わぬ出来事にあった。

 

 アタシ達が話をしながら歩いて少し余所見をしていたのがよくなかったかな…

 

「わきゅ」

 

「うお!」

 

 小さな女の子と蒼真がぶつかってしまった。女の子は走って来ていた様子。手にはコーンに乗ったアイスクリーム……の残骸……

 

 ぶつかった衝撃で落としてしまったみたいだ。……蒼真のズボンに。

 

「蒼真大丈夫? キミもケガはない?」

 

 女の子がケガをしていないか確認する。

 

「……うん……」

 

「俺は大丈夫やけど…」

 

 女の子にケガはなかった。だけど、今にも泣きそうになっている。アイスクリーム、凄く楽しみにしてたんだろうなぁ。嬉しくてはしゃいでいたんだと思う。だから蒼真にぶつかってアイスを落としちゃって色々混乱しているみたい……

 

 …あぁどうしよう……こういう時どうしたらいいんだろ…

 

 アタシも友希那も唐突な出来事で少しパニック状態で体が動かなかった。

 

 だけど蒼真は、女の子の前でしゃがみ…

 

「お嬢ちゃん。ごめんな。俺のズボンがお嬢ちゃんのアイスを食べちゃった」

 

 冗談を交えながら蒼真はゆっくり話している。

 

「お詫びとしてはアレだけど、このお金でまた新しいアイスをお母さんに買ってもらいな」

 

 財布からお金を取り出し女の子に渡した。

 

「ぇ……でも……」

 

「大丈夫、気にしなくていいから。ほらお母さんも迎えに来たよ」

 

「……うん! ありがとう! お兄ちゃん!」

 

 そう言って女の子はお母さんの方に走って行った。

 

 お母さんも気付いたようで深々と何度もお辞儀をされた。

 

 そしてそれを見て蒼真は頭を下げその後手を振って2人を見送った。

 

やっぱり蒼真…カッコイイなぁ……

 

 アタシは思わずそう呟いてしまった。

 

 はっ! っとなったアタシは思わず友希那方を見た。

 

 幸い今のは聞かれていなかったけど、じっと蒼真の方を見つめていた。

 

 

「あ、蒼真ズボン大丈夫? 汚れちゃったけど」

 

 やっと動けるようになったアタシは蒼真の元に駆け寄りズボンの汚れを確認する。

 

「うーん…洗えば落ちると思うけど……」

 

「このくらい大丈夫」

 

 でもなぁ……あ、そうだ! 

 

「この際だから服見に行こ。アタシがコーデしてあげるから」

 

「え…いやでも」

 

「ちょうどアタシも服見たかったからさ。友希那も、お願い!」

 

 友希那にも了承を得ないと。

 

「私は別に……行きたいとは思わないけど……蒼真のズボンは見ないと行けないと思うから、ついて行くわ」

 

「ありがとう~友希那♪」

 

 そしてアタシはまた蒼真の方を向く。

 

「……はぁ…しょうがない。行くかぁ」

 

 そんな訳でアタシ達は服屋に寄ることになった。

 

 

 と意気込んで来たはいいけど、男の子の服って選んだ事ないんだよなぁ。友希那の服なら沢山選べるんだけど。

 

 まぁ今回は無難な服を選んでいこう。

 

 1つづつ手に取って蒼真な服とズボンをあてては替えてを繰り返していく。

 

「うーん……蒼真にはコレとコレかな」

 

 蒼真に渡した服は白いメンズシャツと黒のスキニーパンツ。この服なら他の服とも着合わせが出来るからちょうどいいと思う。

 

「なるほど。ちょっと着てみるわ」

 

 そう行って蒼真は試着室方に行った。

 

「相変わらずリサは手際がいいわね」

 

「そんな事ないよ。男の子の服なんて選んだ事なかったからちょっと緊張しちゃった」

 

「ふふっ。そうなの?」

 

「そこ笑うとこ? まぁいいけど」

 

 そりゃあまぁ……す…好きな人の服を選ぶんだから緊張もするよ……

 

「あ、ちなみに友希那の服はもう選んでるからね♪」

 

「え……私も……?」

 

 友希那は思ってもみなかったという顔をしている。

 

「もちろん♪蒼真だけ私服じゃあ可哀想でしょ。アタシも買って着替えるから友希那も着替えてね」

 

「……はぁ……分かったわ」

 

 少し考えた友希那は諦めたように了承する。

 

 そんな事を話しているうちに蒼真も出てきた。

 

「こんな感じやけどどうやか?」

 

「うん♪ アタシの、見立てに狂いはなかった。凄く似合ってるよ♪」

 

「そう? なら買ってくる」

 

「あ、待って待ってここはアタシが出すから」

 

「え…いやでも悪いって」

 

「言い出しっぺはアタシだし、それに…蒼真にはいつもお世話になってるからたまにはアタシからプレゼントさせて?」

 

 最初からそう決めていた。何か蒼真にお返しをしたいとずっと思っていたからチャンスだと思った。服選びはアタシの専売特許だから。

 

「…うーん……分かった。リサがそう言うならお願いするわ。ありがとう」

 

「うん♪」

 

 そうしてアタシはレジに向かった。ついでにアタシの服と、友希那の服も一緒に買った。

 

 

 服を買ったアタシ達はそれぞれ着替えてまた集合した。

 

「ホントによかったと?」

 

「いいのいいの。アタシがそうしたかったんだから気にしなくていいよ」

 

「…そっか。ホントにありがとな。友達からプレゼントとか貰ったことなかったけ凄く嬉しい」

 

 初めて…か……ふふっ♪アタシも蒼真にプレゼント出来て嬉しいな♪ 

 

 そして、また改めて蒼真の目的の場所に向かった。

 

 

 その目的の場所は──

 

 

 オシャレなカフェだった。

 

 

 




読了ありがとうございます。


時間が経つのは早いですね。

気付けばこの小説を書き始めて1年が経ちました。

……どうですかね…少しは自分も成長しているでしょうか。


まだまだこれからも続けて行きますのでこれからもどうぞよろしくお願いします。

それではまた次回


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第7話:少しづつ

 アタシ達がたどり着いた場所はオシャレなカフェだった。

 

「あれ? ここって……」

 

「どうしたん? もしかして来たことあると?」

 

 ここは以前春休み明けに来たカフェだった。

 

「うん。前に1回、友希那と来たことがあるの」

 

「マジか! いつくらい?」

 

「確か春休みが明けてすぐくらいだったと思う。ここのモールが出来たばっかりの時だったから」

 

 そう言うと蒼真は黙り込んだ。何かを考えているみたい。

 

「どうしたの?」

 

「ん……? あ、いや……なんでもない。それよりほら、入ろ」

 

 蒼真に促されるまま店内に入って行くアタシと友希那。用事ってここの事なのかな? 

 

「マスター! こんにちは」

 

「ん? おー蒼真くんじゃないか。いらっしゃい。春以来かな?」

 

「そうですねぇ。色々と立て込んでたので中々来られなかったです」

 

 お店の人と話をしている蒼真。知り合いなのかな? 

 

「まぁゆっくりして行きなさい」

 

「ありがとうございます。2人とも軽く休憩しようか」

 

「そうだね。アタシもちょうど喉が乾いてたから。友希那もよかった?」

 

「えぇ。構わないわよ」

 

 そうして、蒼真に促されるまま席に着いた。

 

 

「それにしても、蒼真はここのマスター?さんと知り合いだったんだね」

 

「まぁね。親が知り合いでちょうど店を出すって事になってたから、その時にちょっと手伝いをしとったんよ」

 

「え! そうだったんだ。知らなかった」

 

「そりゃ今まで言ってなかったけね。それまで来る事もなかったし」

 

 確かにこの数ヶ月練習やライブ、体育祭とか色々と忙しかったから、中々アタシ達も遠出は出来なかったなぁ。

 

「……ん? 待って。蒼真がここで働いてたのって春先?」

 

「そうやね」

 

「友希那。アタシ達がここに来たのも春先だったよね?」

 

 さっきも自分で言っていたけど改めて確認する。だって──

 

「えぇ。そうね」

 

「え、じゃあもしかして」

 

「そういえば、蒼真くんがここで働いている時に君達も来ていたね。そちらのお嬢さんが砂糖をたんまり入れていたからよく覚えているよ」

 

 メニューを持ってきていただいたマスターさんがその時の事を話してくれた。

 

 そう言われて友希那は少し恥ずかしそうに少し俯いている。

 

 可愛いなぁ友希那……いやいやそうじゃなくって……

 

「やっぱり……そうやったんや。やけあの時、見た事があるような気がしたんや……」

 

 ──あの時……あのぶつかってしまった時が高校二年生に上がって初めて出会ったと思っていたけど、そうじゃないみたい。もうすでにこの場所で、お互い気付かずに出会っていたみたい。そう思うと……

 

 うわっ……うわぁ……何だか急に恥ずかしくなってきちゃった……だって……あの角でぶつかった時の事を思い出すだけでも恥ずかしくなっちゃうのに、その前に出会ってたって考えると……何だか漫画や小説とかであるような……運命めいたものを感じちゃうじゃん……

 

 だから今、アタシは物凄く顔が熱くなってきているのが自分でも分かる。

 

「リサ、大丈夫? 顔が赤くなっているけれど……」

 

 友希那にも心配されるくらい顔が赤くなっているようだ。

 

「だ、大丈夫大丈夫! 心配してくれてありがとう友希那♪」

 

 そう言いながら蒼真の方を向くと、まだ1人で考え事をしているようだった。

 

 良かった……気付かれてないみたい。今のアタシの顔を見られたら卒倒しちゃいそう。

 

「……ふむふむ……なるほど。まぁゆっくりして行ってくれたまえ」

 

 マスターさんに何か言われたような気がしたけど耳に入らなかった。

 

 

 それからしばらくして、軽く飲み物を頼み少し休憩。ようやくアタシも落ち着きを取り戻した。

 

「いやぁでも、ホントビックリやったな。ここで会っとったなんて」

 

「そ、そうだねぇー。ホントにビックリしちゃったよ」

 

 前言撤回。全然落ち着けていない。蒼真に話しかけられると胸が高鳴りすぎてマトモに顔を見て話す事がまだ出来ない。

 

「転校初日にリサと会った時に、服装で何処かで見た事があると思っとったんやけど……そうやなかった。まんまリサと友希那と出会ったから見覚えがあったんやとさっき気が付いた」

 

 どうやら蒼真も同じ事を考えていたみたい。ちょっと嬉しい。

 

「こんな偶然ってあるんだねぇ」

 

 と呟くと……

 

「ふふっ。本当に運命で繋がっているようね」

 

 友希那に思っていることを言われてしまった。……口に出して言われると尚更恥ずかしくなってしまう……

 

 

 

 それからしばらく談笑をして、お店を出た。学校帰りだし、そこまで長居は出来ない。

 

 店の外までマスターさんが見送ってくれた。

 

「また何時でも来てくれたまえ。歓迎するよ」

 

「ありがとうございますマスター。また時間がある時に来ますね」

 

 蒼真はマスターさんに挨拶をし、アタシ達はその場を離れまた歩き出した。

 

 

「蒼真は他に行く所はあるの?」

 

「そうやなぁ……あ、ちょっとアクセサリーショップに寄ってもいいやか?」

 

「お! アクセショップ! いいねぇ♪ 行こ行こ! 友希那もいいかな?」

 

 アタシは凄く乗り気だけど友希那はどうだろ。

 

「ここまで来たのだから最後まで付き合うわ」

 

 ホントに変われば変わるもんだね。前は用事が済めばすぐに帰ろうとしていたのに。

 

「ありがと♪ 友希那」

 

 

 そして今度はアクセサリーショップ行くことになった。

 

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

 アクセショップに着いたアタシ達は早速お店の物を見て周った。

 

 蒼真はおもむろに何かを探し始めた。何かお目当ての物があるのかな? 

 

 真剣な表情をしている蒼真を見てアタシは一瞬ドキッとしたけど、今は蒼真の邪魔をしちゃういけないかなと思い、友希那を連れて少し離れた場所の物を見ることにした。

 

「あ、このアクセ可愛い~。あ、この蝶の形の髪留め友希那がたまに付けているものに似てるね」

 

「そうね。リサは本当によく見ているわね」

 

「そりゃ見てるよ。なんてたって幼なじみなんだから」

 

「そ、そう……ありがとう」

 

 そ、そんなに照れるとアタシまで照れちゃうよぉ……

 

 それからも色々とアクセを見ていると……

 

「あ! この猫のアクセ超可愛い! 友希那、どうかな?」

 

 勢いよく友希那に投げかけてみる。

 

「……にゃーんちゃん……可愛い……っん……い、いいんじゃないかしら。私はあまり興味はないけれど……」

 

 ……友希那……しっかり聞こえてるよ? それに、友希那が猫好きなのは昔から知っているし、隠しているつもりでも全く隠せてないからね? ホントに友希那は可愛いなぁ。

 

 なんだか今日はいつにも増して友希那を可愛いって思ってる気がする。

 

 

 そんなやり取りをしつつ友希那話しながらアクセを眺めていると、蒼真が戻ってきた。

 

「おかえり~蒼真。何かお目当ての物は見つかった?」

 

「ん? あぁ。見つかったよ。良いのが」

 

 そう言われると気になってしまう。

 

「どんなのを買ったの?」

 

 と、聞くと蒼真はアタシと友希那に紙袋を渡してきた。

 

「ん? 何?」

 

「さっきのお礼。大したものやないけど」

 

「え! いやいや、そんな気にしなくてよかったのに!」

 

 蒼真はさっきの服のお礼にと何かを買って来てくれたみたい。ホントにそんなに気にしなくていいのに……

 

 でも、ちょっと喜んじゃってるアタシが居る。だって好きな人からお礼だとしても何かをプレゼントしてくれるなんて嬉しいに決まってるじゃん! 

 

 言葉とは裏腹に凄く喜んでいるアタシだった。

 

「……理由は分かったけれど、どうして私まで?」

 

「んー理由は色々あるけど、今日付き合ってもらったお礼と、日頃の感謝の気持ちかな? いつも世話になってるし」

 

「私は蒼真の世話なんてしてないわよ」

 

「いや、まぁそれは言葉の綾みたいなもんで……まぁよかったら受け取ってくれんやか?」

 

「蒼真がそこまで言うなら有難く受け取らせてもらうわ。ありがとう」

 

 そう言って友希那はプレゼントを受け取った。

 

「リサは貰ってくれるやか?」

 

「うん。せっかくだから頂くよ。ありがとう蒼真♪」

 

 そしてアタシも蒼真から紙袋を貰った。

 

 外に出たアタシ達は早速──

 

「開けてもいいかな?」

 

 と聞き、許可をもらい袋を開ける。

 

「何だろうなぁ……あ、これって……」

 

 ソレは、石の付いたイアリングだった。

 

「そのイヤリング、ワインレッドの色合いがリサのベースとリサ自身に凄く似合うんじゃないかなぁと思って」

 

 アタシの事を考えて選んでくれたんだ……当たり前のことなのかもしれないけど、凄く嬉しい。

 

「ありがとう♪ 蒼真。すっごく嬉しいよ♪」

 

「そっか。それなら良かった」

 

 後から気づいた事だけど、このイアリングの石の名前、ロードナイトと言うらしい。蒼真は知ってか知らずかソレを選んでくれた。ロードナイトはアタシ達Roseliaの曲名のなかにも入っているし、アタシにとっても特別な意味のあるものだ。

 

 そう思うと、嬉しさが2倍3倍と膨らんでいくのと同時に恥ずかしさも膨らんでいった。

 

 

 友希那が貰ったものは青薔薇をモチーフにした髪留めと、ヘアバンドだった。よく似合っている。そのヘアバンドでポニーテールとかすると凄く良いと思う。

 

 蒼真は意外とそういうセンスがあるのかもしれない。

 

 友希那も少しだけど赤らんだ表情で嬉しそうにしていた。

 

 

 

 それからまた少しウインドウショッピングを楽しみ帰路に着いた。

 

 

 もう夏はスグそこまで来ている。

 

 今年は今まで以上に楽しい夏になるといいな。

 

 

 

 

 

 ……と、思っていたけど……夏休みの少し前、Roselia最大のピンチが訪れた。

 

 

 

 

 だけど、この話はまた別のお話しで。

 




読了ありがとうございます。

中々書くのに時間がかかってしまいました。ごめんなさい。

如何でしたでしょうか?感想など頂けると凄く嬉しいです。


後、ここで1つ

最後の話にも書いた通り、一部話を飛ばそうと思います。

ただし、その飛ばそうと思う話はこれからの話でも触れて行くであろう所なので、回想シーンなどで書いていきたいと思っています。


それではまた次回


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第8話:ある夏の日に

 

 

「ふぅ……暑~……」

 

 俺は今家の物の買い出しをしに、商店街にやって来ている。

 

 季節は夏も中盤。夏休み真っ只中である。

 

 

 俺がこの場所に引越してきてまだ数ヶ月しか経っていないが、本当に沢山の出来事があった。

 

 

 その中でも凄く印象に残っているのは、先日行われたばかりのRoseliaのライブだ。

 

 それよりも少し前にもかなり大きなライブがあったのだけど、そのライブをきっかけに一時Roselia崩壊の危機にまで陥ってしまった。

 

 そのライブ自体は悪くないものだったと思うが、ライブでの評価がRoseliaにとって……いや、友希那にとっては心に突き刺さる評価だったようだ。

 

 そこから友希那は何かに取り憑かれたように練習に入れ込むようになり、時にキツく当ったりと凄く苦しんでいた。他のメンバーもキツく辛い数日数週間だったと思う。

 

 

 その時はRoseliaに纏っている空気感、雰囲気がかなり澱んでいたと思う。

 

 あこちゃんと燐子ちゃんは今までとRoseliaの空気感が違う事に戸惑い、あこちゃんはミスを連発し友希那に何度も注意を受けた。そしてその態度言動にあこちゃんと燐子ちゃんは激怒し『こんなのRoseliaじゃない!』と言いスタジオから飛び出した。

 

 俺とリサは、友希那に話を聞こうとするが突っぱねられた。そしてそのまま友希那も帰宅した。俺はこれからどうすればいいか悩み、リサは今までここまで突っぱねられる事がなかったようで、ショックで酷く落ち込んでしまっていた。

 

 紗夜さんもこの事に悩み俺達とどうすればいいか考えつつ、自分達は練習を続けようと演奏を続けた。

 

 俺は紗夜の意見は正しいと思うが、他に何か出来ないものかと奔走した。

 

 これがホント良かったのかは分からないが……

 

 

 一方、友希那は友希那で酷く思い悩んでいたようだ。1人で悩みを抱え込んでしまっていた。自分ではどうすればいいのか分からずどんどんと塞ぎ込んでいってしまったようだ。

 

 

 そんな時、駅前でPoppin’Partyのボーカル戸山香澄ちゃんが何かに思い悩み泣いている友希那を見つけ、いてもたってもいられなくなり、勢いで友希那にその日行われるポピパのライブに誘ったようだ。

 

 そのライブを観た友希那は何かを感じ、憑き物が落ちたように悩んでいた事が吹っ切れたようだ。

 

 

 その後、友希那から何を悩んでいたかを話してくれて謝られ、話してくれたおかげで蟠り(わだかまり)も無くなった。

 

 一人一人が悩み、考え、やっぱりRoseliaが大好きだと皆がそう思い至る。

 

 皆個に囚われがちでRoseliaというもの自体に意識を向けられていなかったと気付く。

 

 

 そして新たにRoseliaは始動した。

 

 

 そして、冒頭の方にあったが、先日行われたRoseliaのライブ。

 

 一言で表すなら、在り来りだがとても感動した。

 

 今までにないRoselia。全員が活き活きとした表情で演奏をしている。

 

 新曲も歌った。Roseliaメンバー全員の意志と誇りを新たに掲げるに相応しい曲だった。

 

 以前と比べて遥かに技術も向上している。

 

 そして、皆顔にはあまり出さないが凄くライブを心から楽しんでいる。

 

 全員が同じ方向を向き、同じ目標を目指し進む新たな姿。

 

 聴き終えた俺は自然と涙が出ていた。

 

 Roseliaの初ライブから今までのライブまでの映像は全て観たし、皆からの話を聞いてこれまでRoseliaは成長している事は分かっていたが、肌で感じ取れたのはこの時が初めてだった。

 

 ライブ中は鳥肌が立ちっぱなしだった。それほど今回のライブは迫力があった。

 

 

 ライブ後、控え室ではリサが号泣していた。

 

 安堵して気が緩み、涙腺が崩壊したそうだ。それはそうだろう。この中で1番不安に感じていたのはリサだったと思う。だから安心した途端涙が溢れてきたに違いない。

 

 そしてそんな俺は控え室に入ると、友希那に抱きついていたリサだったがすぐに俺の方に向かってきて抱きつかれた。

 

 俺は驚き、たじろいでしまい皆に笑われてしまった。

 

 俺はどうすればいいか分からず、とりあえず頭を撫でた。それで涙が止まるのならそれでいい。リサはやっぱり笑顔が似合うから──

 

 

 

 それからも色々とあったが、しばらく経ち今に至る。

 

 

「あ、蒼真さん! こんにちは」

 

 買い出しの途中やまぶきベーカリーに立ち寄った。

 

「こんにちは。沙綾ちゃん」

 

 昼も近く匂いにつられてやって来た。

 

「買い物ですか?」

 

「うん。買い物の途中でいい匂いがしてきたから寄ってみたんだ」

 

「それはどうもありがとうございます♪」

 

 トレイにパンを載せていき手早く会計を済ませた。

 

「あ、そういえば…この間は大丈夫でしたか…?」

 

 この前の事というと友希那の事だろう。

 

「うん。もう大丈夫だよ。心配してくれてありがとう。あ、戸山さんにもお礼を言っておいて。友希那にライブ誘ってもらったみたいだから」

 

「はい。分かりましたー。……って言うか、蒼真さん白々しいなぁ」

 

「んー? なんの事かな?」

 

「まぁいいですけどね」

 

 そんなやり取りをしつつ店を出ようとすると…

 

「あ、そうだ! これ、どうぞ」

 

 紗綾ちゃんから何かの紙を2枚渡された。

 

「これは?」

 

「今商店街で福引をやってるんです。良かったら蒼真さんも福引をして行ってください」

 

「分かった。帰りによってみる。ありがと、また来るね」

 

「はーい! ありがとうございました」

 

 そして店を出た。

 

 

 それからしばらく買いのを続け、帰り際に商店街の奥まで行き福引を行っている所までやってきた。

 

「ここか……ふむふむ。景品は……」

 

 五等からあり、まずはおなじみのティッシュ1枚。

 四等は、500円分の商品券。

 三等は、3000円分の食事券。

 二等は、テーマパークの招待券。

 一等は、海外旅行の優待券。

 

 となっているようだ。

 

 あんまり期待はしてないけど、食事券とか当たるといいなぁと思い2回回してみた。

 

 そして、一回目はやはりというか五等のティッシュだった。まぁそんなものだろう。

 

 そして2回目……

 

 これは──

 

 

☆★☆★☆★☆★☆★

 

 

 

「え!? テーマパークのチケットが当たったの!?」

 

 Roseliaの練習を終え、帰り際にリサに先日の事を話した。

 

「うん。まさかの当たるとは思ってなかった。しかも都合よく6人分。やけ皆を誘って行こうと思うんやけど…」

 

「凄いじゃん! 蒼真! 運がいいねぇ。早速明日皆に話をしていつ行くか決めよ!」

 

 リサは凄く喜んだ。そんなに喜ぶとは思っていなかった。

 

「そうやね。明日皆に聞いてみようか。皆も喜んでくれるといいけど」

 

「絶対喜んでくれるって」

 

「そうやか? そうやといいけど」

 

 

 話をしているうちに家の前まで着いていた。

 

「あ、そうだ」

 

 とリサが切り出してきた。

 

「ん? どうしたと?」

 

「あー……えーっと……こ、この前はゴメンね。控え室に入っていきなり抱きついちゃって……」

 

 どうやらこの前の事を思い出したようだ。

 

「あ…おう…気にしてないけ大丈夫」

 

 アレは俺も恥ずかしかったなぁ。皆の前だったし。いや、皆の前じゃなかったらもっと恥ずかしいかも。

 

「…そっか…」

 

 少しだけリサのトーンが落ちた気がする。どうかしたのかな…

 

「まぁ…ちょっと嬉しかったりしたかな…」

 

 ポロッと口に出してしまった。

 

「ふぇ!?」

 

「あ…いや、うん…まぁそんな感じやけ気にせんでいいよ」

 

 やば…凄く恥ずかしい…全身熱くなってる気がする。

 

「う、うん…」

 

「じゃ、じゃあまた明日練習で!」

 

 そう言い、急ぎ早に家に入った。

 

 

「もう…バカ…急にあんな事言われたら我慢出来なくなっちゃうじゃん……」

 

 家に入る直前、何か聞こえたような気がしたが何を言っていたかは分からなかった。

 

 

 

 次の日の練習中、少し気まずかった。

 

 

 

 ちなみに、テーマパークに行く事は即決まった。

 

 

 

 




読了ありがとうございます。


そして、リサ。お誕生日おめでとうございます。

今年も誕生日の話は書くことが出来ていませんが、何とか今日に間に合わせる事が出来ました。



さて、主人公も少しづつ感情の振れ幅が見え隠れしてきました。

これからどうなって行くのか、気長に楽しみにお待ちいただけたらと思います。

感想や評価などお待ちしています。

ではまた次回


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第9話:テーマパークにて①

 

 

 という訳で、皆とテーマパークへやってきた。

 

 テーマパークに行くのは何年かぶりだったから俺は密かに楽しみにしていた。

 

 それは皆も同じだったようだ。あこちゃんはもちろんのこと、意外にも紗夜さんも楽しみにしているようだ。あの紗夜さんが「早く行きますよ」なんて言うとは思っていなかった。

 

「それにしても、夏休みだから平日でも人は多いねぇ」

 

 話を切り出してきたのリサだった。いつも会話が途切れるとつなぎ止めてくれるからホントに助かる。

 

「まぁ夏も後半やけねぇ。あ、そういえば…燐子ちゃんは大丈夫?前に人混み苦手って言っとったけど」

 

「あ、はい。何とか…大丈夫です。今日は…皆がいてくれるので…」

 

「そっか。ならいいんやけど。無理はせんようにね」

 

「はい。ありがとうございます」

 

 燐子ちゃんも以前に比べたら少し人にも慣れてきたようだ。

 

 そういえば、このテーマパークは今期間限定で某宇宙をテーマにしていた遊園地をモチーフに様変わりしているようだ。

 

 何だか凄く懐かしく感じる。

 

「はぁ~すごいな……ここまで作り込まれとるんかぁ…」

 

「蒼真はここに来たことあるの?」

 

 不意にリサから質問を受けた。

 

「いや、ここには来たことないよ。ただ、ここに…というかコレをモチーフにしたであろう場所には行ったことがある」

 

「へぇ~!そうなんだねぇ。後でその話聞かせて」

 

「分かった。また後でな」

 

 そして俺達は園内に入っていった。

 

 中に入るとそこには懐かしい風景が見えた様な気がする。

 

「なるほど……ここまで作り込まれとるなら色々と案内も出来るかもな……」

 

「そんなに似てたの?」

 

「うん。物凄く似とる。ホントよくここまで作りこんだなと思うくらい」

 

「へぇーそうなんだねぇ!それは確かに凄いね」

 

 リサと話をしていると…

 

「ねぇねぇ!蒼真さん!早くアトラクションに乗ろ!」

 

 あこちゃんが凄くはしゃいだ様子で服を引っ張った。

 

「分かった分かった。どこから行きたい?」

 

「ん~と……」

 

 少し考え──

 

「あれに乗りたいです!」

 

 あこちゃんが指さしたのは何個かあるうちの1つのジェットコースターだった。

 

「ジェットコースターかぁ……うーん…流石にいきなりは後がきつくなるんじゃないかなぁ」

 

「そうですか?」

 

「まぁ苦手な人もおるやろうけ最初は緩いのから行かん?」

 

「分かりました!じゃあ……メリーゴーランドで!」

 

「ん。じゃあ行こうか」

 

「はーい!」

 

 そう言ってあこちゃんは燐子ちゃんの元に行き歩き出した。

 

「蒼真、何だかお兄ちゃんみたいだね」

 

「そうか?俺、兄弟とかおらんけ分からんけど」

 

「アタシも今まで兄妹とかいなかったから分からないけど、周りの姉妹や兄妹を見てたら何となくね」

 

「そうなんかなぁ」

 

「うん!頼り甲斐があってカッコよかったよ」

 

「そ、そっか…」

 

 そう言われると嬉しいけど、何だかこそばゆい。

 

「ん?と言うか、ちょっと含みのある言い方やったような気がするんやけど……兄妹いなかったって…?」

 

「あ、うん。改めて言おうと思ってたんだけど、今度家に新しい家族ができるの 」

 

「あ、マジか!それはめでたいね」

 

「うん!あ、でもこの話もおいおいね。アタシも昨日聞いたばかりでビックリしてるんだ。だからまだ色々と整理出来てないの」

 

「それはホントに驚きやな……うん。分かった。今度色々と聞かせてくれよな」

 

 凄くめでたい事を聞いたな。

 

「うん♪あ、皆先行っちゃう。早く行こ!」

 

「あ!ちょ!引っ張るなって!」

 

 リサに手を引かれ皆の元まで走った。

 

 ダメだ……最近リサの前だと平静を保てない時がある。何でだろう……

 

 そうこうしているうちにメリーゴーランドど前までやって来ていた。

 

 皆運良く乗れていたが……

 

「残り1枠は二人乗りとなってます!」

 

 とスタッフの人が声を掛けてきた。

 

「マジか……」

 

 流石に2人で乗るのはリサも気が引けるよな…

 

 と、そう思っていると…

 

「……ちょっと恥ずかしいけど、せっかくだし一緒に乗ろ?」

 

「いいと…?俺とで嫌じゃない?」

 

「……嫌…じゃないよ。……蒼真となんだから嫌なわけないじゃん」

 

 そう言われると断れる訳がない。

 

 そして、少し照れくさそうに話すリサは何だかいつもと違ってしおらしく印象的だ。

 

「…そっか。じゃあ乗るか」

 

 そう言って俺達は最後の1頭に乗った。俺は前に股がる形で、リサは後ろに横向きで座る形で乗った。

 

「ふふっ。何だか王子様とお姫様みたいだね」 

 

「……どうやろうな……」

 

 照れくさくてあまり言葉が出てこない。

 

 そしてメリーゴーランドは回り始めた。

 

「いやぁ凄く久しぶりに乗るから楽しね~」

 

「そりゃよかった」

 

「蒼真は楽しくない?」

 

「そんな事ないよ。ただ…」

 

「ただ?」

 

「小さい時以来やし、今乗るとなると気恥ずかしくてな」

 

 それに、後ろにはリサも居るし。

 

「あはは~♪確かに男の人ってあまり乗ってないイメージあるね」

 

「今も数人しか乗ってないしな」

 

「他の人達はカップルで乗ってるみたいだねぇ」

 

「みたいやなぁ。……うーん…他の人から見ると、俺らもカップルに見えるんかなぁ…?」

 

 何気なく言った一言だったが、すぐに地雷を踏んでしまったと思った。

 

「うぇ!?そ、そうかな?ど、どうだろー……」

 

 そして少しの間沈黙が続いた。

 

「…何かごめん。変な事聞いて」

 

「いやいや、そんな事ないよ?ちょっとビックリしただけ」

 

「そうか?ならいいんやけど」

 

「うん♪」

 

 それからしばらくの間リサは凄く上機嫌だった。何でだろう……?

 

 メリーゴーランドが終わり、次のアトラクションはどこに行くか皆で話し合っていた。

 

「うーん…次はどこに行こっかなぁ?」

 

 あこちゃんはどこに行きたいか迷っている。

 

「友希那と紗夜さんはどっか行きたい場所とかある?」

 

 2人にも行きたいところがないか聞いてみたが…

 

「私は特にないわ」

 

「私も今回色々と忙しくて調べる暇がなかったので、皆さんにおまかせします」

 

「そっか。了解」

 

 そうだよなぁ。事前に調べてないと中々決まらないよなぁ。

 

「とりあえず、空いてるところから行こうか」

 

「はーい!」

 

 あこちゃんが元気よく返事をし、また歩き出した。

 

 歩きながら辺りを見渡していると目に止まったのは……

 

「室内ジェットコースターか……ふむ…」

 

「へぇー室内でもジェットコースターってあるんだねぇ」

 

「そうやな。これは何となく想像出来るけど楽しいと思うよ」

 

「そっかぁ♪人も少なそうだしここにしよっか」

 

「俺はいいけど、皆はどうやか?」

 

「あこも賛成です!」

 

「私も…人が少ないなら…いいと思います」

 

「そうですね。人が少ない方が皆で乗れるので良いと思いますよ」

 

「私はどちらでも構わないわ」

 

「じゃあここにするか」

 

「OK~♪皆行こっか」

 

 次に行く場所が決まった。

 

 この室内ジェットコースターもあの場所に似せているならかなり迫力があって楽しめると思う。

 

 中に入ると意外と人がいてしばらく順番待ちをした。

 

 待っている間は飽きることなく皆色んな話をしていた。

 

 やっぱり女の子は話が尽きないな。いや、ホントに凄いと思う。俺は話すのは好きな方だが何分口下手で話を続けられない。だからリサが合いの手を入れてくれるのは本当に助かっている。

 

 とまぁそんな事はいいとして、皆と話している内に順番になった。

 

 




読了ありがとうございます。

いつも投稿が遅くてすみません。

まだ納得出来るものにはなっていないですけど、まずは上げていかないとと思い今回少ないですが投稿した次第です。

中々悩むシーンが多くまだ時間はかかると思いますが、しっかり書き上げていきたいと思いますので何卒よろしくお願いします。

ではまた次回


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