成り代わったのは白き罪人 (ミカヅキ)
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名前:黒羽
※母‐
年齢:17歳
所属:江古田高校2年B組
容姿:やや
身長:165cm
体重:50kg
※因みにDカップ。
特技:マジック、スポーツ全般
※“黒羽
また、“黒羽
性格:基本的にエンターテイナー気質。怪盗ではあるが人を傷付ける事は良しとせず、時には身を挺してコナンを助ける事もあり、“ハートフルな怪盗”と呼ばれた事もある。意外と負けず嫌い。好奇心旺盛だが、自身も秘密を抱える身である為、“仕事”が関わらない限り他人のプライベートや秘密に不用意に踏み入る事は無い。
ライバル:白馬
※イギリスと日本を行き来している白馬より、コナンの方が厄介と認識。出逢ったのは白馬が先だが、“名探偵”と称するのは
しかし、根がお人好しなので時折手助けしてしまい、コナンからはたまに良いように使われている。
家族構成:母
※父は初代怪盗キッドであり、また東洋の魔術師とも
尚、母‐
※原作とは異なり同性同士の為、姉妹のような間柄。
助手:
※父‐盗一の元付き人で、現在は
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序章
覚醒
「
「えっ?!」
悲鳴のような
ドゴォッ!
「っ……!!」
振り返った直後、額にサッカーボールが直撃し、その勢いのまま吹っ飛ばされる羽目になったのだから…。
「キャアアアア!黒羽さん?!」
「
倒れ込んだ自分に悲鳴が上がったのを聞きながら、ぐわんぐわんと揺れる視界に意識を手放した。
怪盗キッド
中森警部
“まじっく
白馬
江戸川コナン
“インペリアル・イースターエッグ”
工藤新一
“ひまわり”
鈴木次郎吉
“名探偵コナン”
そして、“黒羽
衝撃で気を失ったらしい自分が目を覚ましたのは、保健室のベッドの上。サッカーボールが直撃した額には
「転生したら“
そんな展開、“支部”で飽きる程見たわ。
「ウッソでしょ―――………。」
読む分にはおいしい。大好きな展開です、ありがとうございます!
が、しかし…。自分がいざその立場に立たされれば、話は別である。
(自分がその立場になったら“
何を隠そう、コナンより赤井より
だが、
何より、既に自分は“怪盗キッド”を継いでいるし、父‐盗一を尊敬する気持ちもその
前世の“
“やるべき事”は変わらない。
「あら?目が覚めたのね。気分はどう?」
「ちょっとおでこが痛いです……。」
「冷やしてはいたけと、赤くなってるわね…。場所が頭だし、今日はもう早退して念の為病院に行った方が良いわ。」
「今って何時間目ですか?」
起き上がろうとした
「ちょうどもうすぐ4時間目が終わる頃だから、昼休みになったら担任の先生に病院まで送ってもらいなさい。」
本来なら保護者に連絡を入れるところだが、
「げ、2時間も寝てたのか……。」
自分が気絶したのは1時間目の体育が終わった頃。確かに気絶してそれくらい目が覚めなかったのであれば、病院に行った方が良いかもしれない。
キーンコーンカーンコーン…
「4時間目が終わったわね。担任の先生を呼んでくるついでに、あなたのクラスに行って荷物持ってきてあげるから、ちゃんと横になって待ってるのよ?」
「はーい…。」
そのままカーテンを戻し、保健室を出て行ったらしい音を聞きながら軽く溜息を
(まぁ、まだ今日だっただけマシだったかな……。)
3日後に“キッド”として一仕事控えている以上、これが前日や当日だったらと思うとゾッとする。
「って、あれ……?今回の下見って…。」
そこまで思考を巡らせたところで、ヒクリ、と頬が引き
「ベ、ベルツリー急行………。」
90巻以上に及ぶ“名探偵コナン”の事件を全て覚えている訳ではもちろん、無い。しかし、“
いくら“正体”は異なるとは言っても、裏社会において悪名高き“黒の組織”の幹部と
(作戦変更…。)
“怪盗キッド”が身代わりにならなくてはならないのは覆せない。しかし、正体を見破られる危険性を放置したまま捨て駒の
ならば、貸しを作るつもりでいっそこちらから協力を持ち掛けてやれば良い。
「待ってなさいよ“名探偵”…!」
その顔に浮かぶのは、
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ベルツリー急行編
貸し1つ
―ベルツリー急行内―
ブー、ブー…!
ピッ
コナンのポケットに入っていたスマホが振動し、真剣な、見ようにもよっては焦っているような顔でコナンがメールを開いた。
「ん?何か気になる事でもあるのか?」
その様子を見た
「あ、ううん…。ボクも火事の記事見てたんだけとまだ何もわかんなくて…。」
さっと、スマホを隠しながらコナンが
「なーんだ。ボクはてっきり…。《私をお探しなのかと思いましたよ。》」
後半をキッドに扮する時に良く使う男のものへと変え、小声で
「お、お前?!」
「《シー…。どうやら“名探偵”はお困りのご様子…。いかがです?
「っわーたよ…。その代わり、ちょっと体張ってもらうぜ…。」
「ちょっと耳貸せ……。」
そこから説明されたのは、自身の
「《承りました…。その代わり、条件をお忘れなく…。》」
「分かってるっての…。それより、本物の
「《ご心配無く…。本物の彼女には指1本触れておりませんよ…。私は出発の日時変更のメールをお送りしただけですから…。》」
「…なら良いけどよ………。」
「おい、何をこそこそしてんだよ?!さっさと行くぞ!」
「あ、うん!」
小声でコソコソとやり取りする“
「何でも無いよ。さ、容疑者を絞り込みに行こうか。」
そして、容疑者の絞り込みが完了し、“眠りの小五郎”が全ての真相を暴いた後…。
犯行現場でもある一等車である8号車のB室から廊下へと煙が流れ出る。
「ちょ、ちょっと何なの?この煙…。」
すぐさま異変に気付いた乗客たちに、ダメ押しのように上がった一言。
「か、火事!?火事だ!!」
「「「「「え?」」」」」
「皆さん、前の車両に避難してください!!」
「「「うわああああああ!!!」」」
パニックを起こして前の車両へと流れ込む乗客たちを見て、コナンが声を上げた。
「世良の姉ちゃんも早く!ボクはおじさんと一緒に行くから!!」
(目がさっさと行けって言ってるよ…。)
内心顔を引き
「分かった。蘭くんたちも心配だから、ボクは先に行ってるよ!!」
そして、そのまま乗客たちの流れに乗り、6号車まで走り、人目に付かないように乗客が避難した客室へと入り込んだ。
ビリッ…!
そのまま
バサッ…!
最後に鏡でチェックすれば…
(完璧…。)
この間、約30秒。そして、元いた8号車へと走った。
「ゴホッ、ゴホッ…!」
8号車のB室、指示されていた場所へと戻り、煙に咳き込むふりで声のトーンを調整する。
そして後ろに気配を感じ取ったと同時に、その声はかけられた。
「
(さて、いよいよ正念場…。)
“
「このコードネーム聞き覚えがありませんか?君の両親や姉とは会った事があるんですが…。」
「ええ…。知ってるわよ…。お姉ちゃんの恋人の
ブラウスの下に隠したスマホから伝えられる通りに言葉を紡ぐ。イヤホンも服に隠してあるし、髪が邪魔で見え辛い。変装技術も自分で言うのも何だが、完璧と自負している。
(後は、私の演技力…。)
「ええ…。僕の
懐から取り出した拳銃を構える男から目を逸らさず、ゆっくりと後ろに下がる。
(ホントに警察官…?殺気が凄いんだけど……。)
ともすると撃たれるんじゃないかというプレッシャーが重い。
じりじりと下がりながら、そのプレッシャーに耐えているうちに、ドンッと背中が貨物車の扉にぶつかった。
「さぁ、その扉を開けてください…。その扉の向こうが貨物車です…。」
ガラ…!
男から目を離さないように、後ろ手で扉を開けている間に、男が懐を探る。
「ご心配無く…。僕は君を生かしたまま組織に連れ戻すつもりですから…。」
そして、懐から取り出した
「爆弾でこの連結部分を破壊して…。その貨物車だけを切り離し、止まり次第ヘリでこの列車を追跡している仲間が君を回収するという段取りです。その間、君には少々気絶をしてもらいますけどね…。まぁ、大丈夫。扉から離れた位置に寝てもらいますので、爆発に巻き込まれる恐れは………。」
そこで初めて、男から視線を外す。
貨物車中に積まれている
「大丈夫じゃないみたいよ。この貨物車の中、爆弾だらけみたいだし…。」
「!?」
「どうやら段取りに手違いがあったようね…。」
本当に知らなかったらしく、一瞬目を見開いた男に少し
「仕方無い…。僕と一緒に来てもらいますか…。」
「悪いけど…。断るわ!」
言うが早いか、素早く貨物車の扉を閉め、爆弾に紛れ込ませるようにして隠しておいたハングライダーを素早く装着し、列車が橋に差し掛かっている事を確認して飛び降りた。
その数秒後、
ドンッ!!!
貨物車が爆発する。
「ギリギリセーフっと……!」
やり切った達成感を抱えながら、バッとハングライダー開き、滑空姿勢に入った。
「さて、
ビリッとマスクを
「これで
溜息が1つ、風に流れて消えた。
世良さんに変装したのは、コナンの近くにいても怪しまれない、尚且つコナンがやや世良を警戒しているのでそれ程親しくも無く、細かな癖などを把握しておらず成り代わり易かった為です。
原作では1人で行動した隙にベルモットに気絶させられましたが、千暁はずっとコナンと一緒にいたので無事でした。
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鉄狸編
“鉄狸”
長くなりそうだったので今回は分けました。
お気に入り登録、ご感想ありがとうございます。
ブー、ブー、ブー、ブー
朝食として
「
現在の時刻は7:10。早朝、という訳では無いもののこんな時間にメールでもLineでも無く電話を寄越すなんて、今までに無かった事である。平日のこの時間帯は登校前で何かとバタバタしている頃なので、普段の
「どうしたの?
『
「ニュース?」
泡を食ったような
「何チャンネル?」
『どこでも構いません!早くニュースをご覧ください!!』
説明する間も惜しい、とでも言った様子に取り
《今回、怪盗キッドが狙うのは
「………何コレ?」
ニュースキャスターが
『や、やはりお
「予告状出すなら一言相談してるよ。
一体どこの偽者の
「あ。」
『お嬢様?何か心当たりでも…?』
「あぁ、ううん…。取り
『お
「2人の方が逆に目立つってば。大丈夫、何かあったらすぐに逃げるから…。」
『しかし…!』
「大丈夫だってば。じゃ、後で連絡するね。」
食い下がる
そして、再度ニュースに目をやった。
「……これ、アレだ。犬が閉じ込められたヤツ………。」
あの縦書きの
「仕方ないから
まぁ、万が一“原作”とズレが生じていた時の事を考え、
「さて、と…。メイドか使用人か……。それが問題かな。」
メイドの方が立ち回りしやすいが、毎回変装姿が女というのも“名探偵”に何か
「……今回は男で良いか。」
―――――――2日後。
(案外簡単に潜入出来たな…。)
やはり“手を貸してくれ”のメッセージ通り、
そして、相談役の愛犬‐ルパンは使用人たちも知らない間に“入院中”。
“原作”通り、不運にも“
出来る事ならさっさと金庫を開けて出してやりたいが、鈴木相談役が用意した
例え偽物であろうと、1度“怪盗キッド”の名を
幸い、“
本番は明日の夜。
(まぁ、どーせ“名探偵”も来るんだろーけど……。)
折角本番一発勝負の脱出劇の成功で、
(てっきり、
まぁ、良い。今回は“人助け”。邪魔をされる
――――――――――翌日、夕刻。
「お待ちしておりました。園子お嬢様。それから毛利小五郎様と毛利蘭様、そして江戸川コナン様でございますね?」
案の
「あの…、あなたは?見ない顔だけど……。」
「ちょ、ちょっと園子……。」
それを微笑ましそうな顔で眺めるふりをしながら、「申し遅れました。」と礼儀正しく一礼した。
「
“
当然、容姿もそれに準ずるようにイメージしてある。
やや
………作り上げてから気付いたが、肌の色が異なるだけでイメージが先日対峙したバーボンと被る。
(別に意識した訳じゃないんだけど…。)
まぁ、顔立ちそのものを似せた訳では無いし、
こういうのは
「それでは、
鈴木相談役の
・
“原作”で“黒羽
ただし、本家ドジっ子メイドとは異なり執事見習いとして申し分無い能力を発揮しており、潜入2日目にして“気の利く新人”“見どころがある”と評判は上々。
イメージCVは中〇悠一さん。
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予告状
そして、予想以上に長くなったので次回に続きます。
予定では前後編で終わらせるつもりだったのですが…(汗)。
「偽者かもしれない!?今回予告状を送ってきた怪盗キッドが!?」
「ええ。次郎吉おじ様はそう言ってたわ!ねぇ?」
ここにきて知らされた事実に驚愕の声を上げた蘭に、園子が
「はい。今回送られてきた予告状に書かれていたイラストが、普段怪盗キッドの予告状に書かれているものと微妙に異なるという事で、恐らくキッドの名を
やや園子たちの方を振り返りながら、しれっと答える。
「送ったでしょ?その予告状の写メ!何か変じゃなかった?」
「え、ええ…。確かにいつものイラストとは違う感じがしたけど…。」
園子と蘭のやり取りをよそに、コナンは難しい顔で考え込んでいた。
(まだ確証までには至っていないって事か……。)
どうやら違和感を感じつつも、物事の核心には至っていないらしい。
(大丈夫?“名探偵”…。ボヤボヤしてたら、
さて、
「
「おお。ご苦労じゃったな。」
鈴木相談役に一礼し、その
「いいか!偽者かもしれないと思って気を抜くなよ!今夜は予告状にあった“月が闇に呑れる”新月の夜だ!金庫のある部屋の周りをしっかり固めるんだぞ!!」
「中森警部…。来てたのね…。」
気合の入りまくった中森警部の号令に、小五郎が半ば呆れたような顔でそれを眺める。
「でも、何で部屋の周りなんだ?どーせなら部屋ん中の金庫の前で張り込んでりゃいいものを……。」
「無用だからじゃよ毛利探偵…。」
中森警部の指示に疑問を
「え?」
「何なら見てみなさるか?
(まずは下見とシミュレーション…。)
何食わぬ顔で相談役の後ろに控えながら、実際に金庫が
「ホォ~…。あれが
(金庫以外に何も無いって事は、やっぱり部屋そのものが大きな
小五郎がコメントしている後ろで、部屋の中を確認した
「でも壁に
「そうじゃ…。中の広さは奥行き4m弱の約6
蘭の呟きに、相談役が“
「じゃあ、空気穴とかあるんだね…。」
「ああ…。中に設置された棚の上には小窓があり…、扉の下にはホレ!3cmぐらいの隙間もあるしのォ…。」
「でも、外に出る時誰に開けてもらったんですか?」
「中からは簡単に開けられるんじゃよ…。外からの開け方を知っているのはもう
コナンと蘭の疑問に答えながら、相談役が“
「んじゃあ、近くで見させてもらいましょうか!」
「待たれィ!」
すぐにでも部屋に足を踏み入れようとした小五郎を相談役が制止する。
「確か、毛利探偵は煙草を吸われておりましたな?」
「え、ええ…。」
「1本
「じゃあ1本…。」
相談役の求めに応じて自身の
「え?」
「ああ…。彼は先日雇ったボディーガードじゃ!無口じゃが頼りになるぞ!」
「そ、そうっスね…。」
面食らう小五郎に、チェックの終わった煙草を受け取りながら相談役が紹介した。
「では失礼して…。」
相談役が、受け取った
ポトッと軽い音と共に
「な、何スか?この音…。」
「まぁ見ていなされ!」
小五郎の疑問に鈴木相談役が返した時、ズオオオオッと床や天井、壁の全てが一瞬にして
「い、一瞬にして
「重量センサーじゃよ!
(また無駄に大掛かりな仕掛けを…。本当に助けて欲しいと思ってんのこの人………。)
半ば
「
防犯システムのスイッチを切りながら、相談役が
「あ、でも…。中に入ったら今みたいに…、ガシャーンってなるんじゃ…?」
「
「あ、はい!」
鈴木相談役の
「―――――――ったく、彼も先日雇った新入りなんじゃが…。使えん奴じゃわい…。」
キョドキョドと自信の無さ気な態度が余計にそう見せるのか、相談役が小五郎や中森警部たちにも聞こえるようにぼやく。
「あの―――…。この煙草は毛利さんにお返しした方が…?」
「馬鹿者!床に落ちた物を吸わせる気か!?さっさとゴミ箱にでも捨てて来んか!!」
「は、はいぃぃ!!」
「
「おお!それが良い。頼んだぞ
「――――承りました。」
気を
「用が済んだら扉の前から離れてくれませんかねぇ…。警備の邪魔なんで…。」
「フン!無駄じゃと言っておろうが!偽者なんじゃから!」
相談役が中森警部と押し
手首のスナップを
「今夜は何もありゃせんよ!毛利探偵たちの出番も無いじゃろう。もちろん
「は、はぁ…。それじゃ、お言葉に甘えてご
相談役の言葉に押されるようにして小五郎が招待を受ける。
「では、夕食までしばらくかかる。それまで
「
客間へと
「おいジイさん!!今すぐ防犯装置を切ってくれ!!」
「ん?」
「「「「え?」」」」
何事かとたった今後にしたばかりの部屋を振り返る相談役と小五郎たちに、中森警部が続ける。
「部屋ん中に落ちてんだよ!!さっきは無かったカードが!!」
「何じゃとォ!?」
その言葉に、相談役も急いで“
『 月が闇に呑まれし
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ルパン
ご感想、お気に入り登録ありがとうございます。
「良いか、者ども!!今日こそ奴を引っ捕えて、あの
「「「「「「「オォ――――――――――ッ!!!!!!」」」」」」」
「フン!偽者相手に大騒ぎしおって…。」
気合の入った中森警部率いる機動隊の
「本物だよ!確かに、最初の予告状は奴のマークもその文章もパチモン臭かったが…。恐らくあれはワシら警察をおちょくるただの
「まぁ、そうじゃとしても…。この
(よく言う……。)
中森警部の手を引かせる為とは言え、仮にも助けを求めてきたとは思えない言い
「だが、相手はあの
「万が一、
(助けるの止めようかな……。)
思わずそんな考えが頭を
(落ち着け私…。)
「しかしねぇ、現にキッドはその部屋の中にこの予告状を置いているじゃないか!!奴は用意してんだよ!あの装置を
この状況だと、中森警部からの
「―――――って事はさー…。怪盗キッドがその予告状を置いた時…、ボクたちの側にいたって事だよね?」
「え?」
コナンの突然の指摘に中森警部が振り返った。
「だって…、最初にあの部屋の扉を開けた時には何も無かったのに、次に開けた時には予告状があったんでしょ?その間、ボクたちずっと部屋の近くにいたよ?」
「あの重量センサーって、スイッチ切ってる時に置かれた物にはスイッチ入れても反応しないんスか?」
コナンの指摘を受けて小五郎が相談役に確認する。
「ああ…。スイッチを入れた時の状態から重さがかかれば反応する仕組みじゃからのォ…。」
「…となると、スイッチを切っている間に置いたって事か…。」
「そー言えばおじ様、あの時スイッチ切ってたよね?」
考え込む小五郎の隣で記憶を
「そうそう、私たちに重量センサーの性能を見せる為に部屋の中に煙草を投げ入れた後…。」
「その煙草を回収する為にスイッチを切って…。」
同じく数分前の出来事を思い出そうとする蘭に続き、園子が再び口を開く。
「「あ――――――っ!!あの使用人さん、部屋に入って拾ってた!!」」
女子2人の叫びに、その場にいた全員にその場面がフラッシュバックされる。
「あの野郎がキッドだったか!煙草を拾うフリをして、まんまと予告状を置きやがったな!!」
「でも、置けるのはあの使用人さんだけじゃないと思うよ!」
客観的に見て最も疑わしい
「ずっと次郎吉おじさんの側にいたそのボディーガードのおじさんも…、次郎吉おじさんが扉を閉める隙を見て入れられるし!同じくあの時次郎吉おじさんの後ろにいた、執事見習いの
「つまり、キッドが変装してここに乗り込んできた可能性が高いって事だな…。」
コナンの言葉にを小五郎がまとめる。
「よーし、あの使用人をここへ連れて来い!!顔を思いっ切り引っ張って…、変装してるかどうか確かめてやる!!まずは、お前からだ!!!」
「
言うや否や思いっ切り頬を引っ張ってくる中森警部に
(
内心で
「何をするか!!
中森警部の手を振り
「あ、いや…。しかしねぇ……。」
「どうしてもと言うのなら、キッドだという証を
相談役と中森警部のやり取りの中、中森警部の手から解放された“
「やだ!大丈夫?
園子が心配そうな声を上げるのに
「え、えぇ…。少々驚きましたが大丈夫です。」
にっこりと微笑んで見せる
(いつまでも
仕掛けは、マスクの下に仕込んだ特殊な接着剤。
人体に影響が出ないように、かと言って粘着力が弱くなり過ぎないように調整を
専用の中和剤を使わないと、決して
これまでは、顔を引っ張られればすぐに変装を見破られてしまっていたが、そのデメリットをいつまでも放置しておく程
確かに、すぐに変装を解く事が出来ない事は1つのデメリットになり得るが、“見破られない変装”というメリットに比べれば有って無きに等しい。1度
今後、すぐに
現に今、小五郎や園子たちはもちろん
「とにかく、
「くっそー、顔を引っ張りゃすぐわかるのに…。」
ボディーガードの後藤を
「なーんか変よね、おじ様…。」
「え?」
不思議そうな顔をする蘭に、尚も園子が言い
「だって、いつもは「あのコソ泥に目にものを見せてくれようぞ!」ってギラギラしてるのに…。今回は、偽者だから放っておけとか…、証拠が無いから調べるなとか…。もしかしておじ様がキッド様だったりして!」
「まさかぁ…。」
女子2人のやり取りに、コナンもまた
その様子を何食わぬ顔で見詰め、客間へと促した。
「それでは皆様、客間へご案内
「こちらでございます。只今お茶と、毛利様にはお煙草をご用意させていただきますので、どうぞお
コナンや小五郎たちを客間に通し、一礼して一旦退室する。
(さて、このままだと精々
それ以上は客を放っておくのは不自然。だが、そろそろ相談役は夕食の時間である。
(来た…!)
「幸村さん。」
「
カートに夕食を乗せ、相談役の元へと運ぼうとしていたメイドの幸村を呼び止める。
「実は、先程
「
やや
「さぁ、私も詳しい事は…。ただ「手を貸してくれ」と言われただけですので…。」
心当たりは無い、という顔を見せればそれ以上の疑問は無いようだった。
「わかりました。園子お嬢様たちのところへは私が行きますから、
元より
「お願いします。それと、毛利様に新しいお
「ええ。任せてください。それじゃあ、そちらもよろしくお願いしますね。」
互いに一礼してそれぞれの目的地へと向かう。
「手を貸してくれ」と助けを求めてきたのは相談役である為、全てが全て嘘という訳でもない。
今日の夕食を運ぶ係の幸村は、この邸の中では
読みが当たって
表情に出さないように努めながら相談役の自室へとカートを運んだ。扉の前に立つボディーガードの後藤に軽く
コンコンコンッ!
「
「うむ。入れ。」
「失礼
相談役の許可を待ち、入室する。
「ん?
“
「お呼びと伺いましたので、途中で幸村さんに代わっていただきました。」
「別に呼んではおらんぞ。」
「いえ、確かに「手を貸してくれ」と…。」
その言葉に、相談役も
そして、開いたままのドアとその側に立つ後藤に目をやる。
「あ、ああ……。そうじゃったそうじゃった!!」
取り
「詳しい事は食べながらでも良いかの?ささ、こっちに運んでくれ!」
「
礼儀正しく一礼して見せ、ごく自然な動作で扉を閉め、カートを押しながら相談役へと歩み寄った。
相談役が示したテーブルに夕食を並べながら、扉の外までは聞こえないように小声で
「
「!やはりお
「シッ!あの優秀なボディーガード殿に聞こえてしまいますよ…?」
“
「じ、実はお
「分かっていますよ…。私を呼ばざるを得なかった理由も、あなたが焦っておられる気持ちもね……。」
「な、何じゃと……?!」
小声でやり取りしながらも、つい声が大きくなりかける相談役に再び人差し指を立てて見せる。
「泥棒は誰しもが
「お、おお…!そうか………!!」
「その為にもまずはあの部屋に行かなくてはなりません。私1人で行っても良いが、せっかく助け出した名犬に噛まれたくはありません。相談役もご一緒していただきたい……。」
「う、うむ…。しかし、どうやって……?」
「私は金庫を開けたら、そのまま窓から失礼しますのでこのままでも構わないでしょう…。入口で中森警部に止められるかもしれませんが、「あの金庫は複雑だから、1度や2度開けるところを見られても問題無い」とでも言い張ればよろしいのですよ……。あのボディーガード殿には「キッドが盗み見るかもしれないから入口を警戒しておいて欲しい」と言ってね…。ようは、私が“
「な、なるほど…。」
後は時間との勝負である。
「では、参りましょうか。」
「うむ。」
いざ流れが決まれば、相談役の行動は早かった。
扉を開けるや否や、扉の前に控えていた後藤に「これから“
(足早っ!)
「お、お待ちください!」
“
「早く来んか、
「は、はい!」
相談役と
――――――――その後、相談役が気迫で中森警部の疑いを蹴散らし、無事に“
「頼んだぞ……!」
「お任せください…。5分で開けて見せますよ……。」
外に聞こえないように小声で
「危ないので、横にズレていてくださいね…。」
「ああ…。」
相談役が窓際に寄ったのを確認し、“
キチ……キチ……
貼り付けたメモ用紙に番号を書き込みながら、少しずつ慎重にダイヤルを合わせていく。
キチッ…!
(良し…!)
正しい番号によって、ダイヤルが開き鍵穴が現れる。ここまでくれば後は簡単だった。
「おお……!」
それを見て、相談役も顔を輝かせた。
再び
カコンッ……!
小気味の良い音を立てた直後、ズズズ…と“
「や、やったか……!」
ガコンッ!!!
重苦しい音と共に“
「ワンワンッ!」
「お、おぉルパン!無事じゃったか…!!」
“
その姿を横目で見ながら、執事服を脱ぎ捨て、“怪盗キッド”としての
「それでは私の
「か、怪盗キッドだ――――――――!!!」
「お、追え追え―――――――――!!!」
上手く風を捕まえる事に成功し、
・ワイルドセブン…小五郎さんの煙草がマイルド〇ブンという考察を目にした為、それをもじりました。
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幕の裏側
白き罪人更新です。
なんかいつのまにか、閲覧数がえらいことになってて驚きました。ランキング入りありがとうございます。
お気に入り登録、評価、ご感想ありがとうございます。
「怪盗キッドだ―――――――――!!!」
「追え―――――――――っ!!!!」
不意に邸の外から聞こえてきた声に、運ばれてきた夕食に
「キッドが?!」
「キッド様?!」
まずは“
そこにいたのは、ちょうど大金庫の部屋から出て来た相談役と、先程までは姿が見えなかった相談役の愛犬‐ルパン。
「い、犬?!どこから……!?」
怪盗キッド発見の声に、“
「あれ?ルパン君って入院してたんじゃ……?」
「い、いや…。実はのォ………。」
コナンに遅れて数秒後に登場した園子の一言に、相談役がバツの悪そうな顔で事の
「ハァア?!閉じ込めちまった犬を助ける為にキッドを呼び出したァ?!!」
「実はそうなんじゃ……。」
相談役の説明に、その場の一同は開いた口が塞がらない。
「あんた、そんな事の為にマスコミを動かしたってのか?!」
「じゃから散々偽者じゃと言ったろうが…。それに、
「あ、いや……。」
(オイオイ…。ハートフルにも程があんだろ……。)
中森警部と相談役のやり取りの半眼で聞きながら、奴は国際指名手配犯という意識が薄いんじゃなかろうか、という想いがコナンの頭を
仮にも
「
園子の目はもはやうっとりと
「いやぁ―――――…。
アッアッアッ!!!
と高笑いする相談役に、その場に居合わせた一同は何とコメントしたものか
「そ、そう言えばキッドって結局どうやって金庫の部屋に入ったのかな?」
その場の空気を変えるべく放たれた蘭の疑問に、中森警部が
「そ、そう言えばあの“
相談役と一緒に部屋に入った
「うむ…。それも当然……。
「何ィ?!」
「しょ、正体って……。」
「あの
中森警部、蘭、園子の驚愕の声に、声に出さないまでも小五郎やコナンたちも驚きを
「バカな…!アイツは
(入れ替わったのだとしたら、おれたちの側から離れた10分前後の間……。いや、代わりのメイドさんが来た時間を計算すれば、実際には2~3分しか無かった
小五郎の推測にコナンが考え込む中、中森警部の声が響く。
「いや、あの男があんたたちを案内する為に姿を消してから再びワシたちの前に現れるまでの時間は5分も経っていない…。この厳重警戒の邸の中で誰にも気付かれる事無く入れ替わるのは難しいだろう…。まぁ、奴にとっては不可能では無いだろうが、奴が毛利探偵たちの前から姿を消し、相談役の前に現れるまでの時間は実質3分弱!しかし、自分の代わりにメイドさんに話を通していたとなると、誰とも顔を合わせていない時間は1分にも満たない
「ウッソ―――――――!!?」
中森警部の推測に園子が黄色い声を上げた。
「でも、いくら何でも素顔でこんなところに来るかなぁ?」
「奴は変装の達人!奴程の変装技術があれば、例え素顔を知られたところで何の支障も無いという挑発だろう!!現に、奴はこれまでに何度もワシやワシの娘に変装して盗みを成功させている…!!!」
無邪気なフリで上げた疑問の声も、中森警部によって一刀両断される。
確かに筋は通るが、何か
そもそも、アイツ程のマジシャンが
常に十手二十手先を読む“平成のアルセーヌ・ルパン”とも思えない。
すっかり“
そう、全ては
ただでさえ、“パンドラ”を狙う組織は父‐黒羽
おまけに、先日“名探偵”に貸しを作る為に、間接的とは言え
仮に正体がバレ、狙われる事になったとしても
しかし、万が一幼馴染である青子やその家族である中森警部が狙われるような事態に発展した場合、守り切れる自信は無い。
そこで新たな
もちろん、それで完全に“
要は“怪盗キッド”=変装の名人=“常に変装”というイメージを固定化出来ればそれで良いのだ。今後しばらくの間は、別の変装をしてもその下に“
仮に“
隣にいる人間が“怪盗キッド”かもしれない、という疑念は捜査陣のチームワークに小さな、しかし確かな
“瀬戸瑞貴”が生まれた裏話でした。
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絡繰箱編
“木神”
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今回は導入部分。次回に続きます。
『 怪盗キッドに告ぐ。
“
なお、宝石は
本図書館で探されたし。
鈴木財閥相談役 鈴木次郎吉 』
「“
自室のパソコンで鈴木大図書館のホームページを開きながら、
世界最大の
数か月前、スリにスラれた大きな
そして、
「どうしよっかな…。」
“
ただ、気がかりな事が1つある。“パンドラ”を狙う組織の連中が“
盗み出した後すぐに返却していた事もあり、“パンドラ”では無いと早々に見切りを付けて姿を
“
鈴木大図書館では
詳細までは
(取り
幸い、まだ朝の9時過ぎ。まずは一般客を装って下見をしても、夜までにはまだ時間がある。
まずは
溜息を1つ
―鈴木大図書館―
適当に男子大学生風に変装し、
(なんか既に疲れた……。)
まぁ、その1時間の間に防犯装置の仕組みは大体分かったのは
(本当、囲うの好きだなー………。)
思わずポーカーフェイスを忘れて遠い目をしてしまったかもしれない。
テーブルから離れた途端に落ちてきた鉄柵と、テーブルの下だけ他に比べてやけに大きなタイルを見れば仕掛けは
恐らくは重量センサー。“
ただ、今回の場合は“
しかし、その仕掛けもおおよそは想定済み。そして、その切り替えスイッチの場所も。
そんなものより、何よりも
(
ただの下見でありながら、
IQ400とも称されるその頭脳は伊達では無い。1の事から100を知り、1000を悟る、その常人には計り知れない程の知力を
しかし、今回の
およそ30cm×20cm四方の小さな箱の中に対し、仕組まれた仕掛けは恐らく20以上。
(やだ、ゾクゾクしてきた……!)
思わず状況を忘れて解除にのめり込みそうになったところで、はっと現実に立ち戻る。
(って、それどころじゃなかった…。)
ヤバイヤバイ、と瞬時に意識を切り替えた。
防犯装置の仕掛けがだいたい分かった以上、その為の策もおおよそ練る事が出来た。一旦退いて、
7つ目の仕掛けを外したところで、ちょうど5分経った。何食わぬ顔で解除した仕掛けを元に戻し、さも残念そうな顔を見せながら次の人間と交代する。
日が暮れるまでの工程をシミュレーションしながら、メールで
スマホを
はっ、と顔はスマホに固定しながら、目線のみ周囲を走らせると、図書館から約30m程離れたビルの屋上と、40m程離れた路地の影にそれぞれ人影を確認出来た。。
この距離では顔や服装までは詳しく分からないが、黒い服と帽子を被っている事は見て取れる。
(スネイクとその部下か………。)
今回は
それだけ組織の連中も焦れている、という事だろう。
まぁ、
(でも、“名探偵”の目を
お願いだから、余計な騒動を呼び起こさない為にも気付かれないで欲しい、と切実に願いながら、胸に
こういうのを“フラグ”って言うんだろうな、と半ば諦めにも似た思いを抱きながら………。
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“交換日記”
お気に入り登録、評価、ご感想ありがとうございます。
sideコナン
―2時間後、阿笠邸―
「――――――――ったく、またあのジイさんこんなのぶちかましてやんの…。」
鈴木大図書館の、鈴木相談役による“怪盗キッド”への挑戦ホームページを眺めながら、コナンは呆れた声を出す。
そんな様子を、阿笠邸の庭から、1羽の白い
side
その映像は、“怪盗キッド”のアジトの1つでもあるビリヤード場“ブルーパロット”の地下に送信されていた。
『ホラ!行くなら早くして!あなたも呼ばれてるんでしょ?“キッドキラー”だし…。』
『ああ…。さっき蘭からメールが来てたよ……。―――――って、あなたもって事は…。』
(来るのは“名探偵”と灰原哀、阿笠博士、後は“眠りの小五郎”とその娘、それと鈴木財閥のご令嬢ってとこかな…。後は……。)
本来、“名探偵コナン”には関わっていない
『ホォ――――――。
そして、聞こえてきた“沖矢昴”の声にイヤホンを耳から外した。
それから、
sideコナン
ピピ…
バサバサバサッ…………!!
それに反応し、
「「!」」
その羽音に反応したのが、コナンと沖矢の2人。
急いで窓に駆け寄るが、白い影が消えていくのがわずかに確認出来る程度だった。
「ちょっと、どうしたのよ?」
急に不審な動きを見せた2人に灰原が
目だけは鋭く窓の外を
side
(“名探偵”なら羽音に気付いたかもね…。)
「出来ました、お
「完璧。さっすが
カタン、と椅子から立ち上がり、
「お嬢様…。今回は
「大丈夫。無茶はしないから…。」
「し、しかし…!」
「相変わらず心配性なんだから……。そんなに心配しなくても、正面からやり合おうなんて考えて無いってば…。」
そんなに心配されると、こっちも不安になっちゃうじゃない。
唇を
「ですが、お嬢様……。」
「大丈夫だって!何かあったらすぐに連絡入れるから、バックアップよろしくね。」
不安そうな
「さて、今日は誰に変装しようかな……。」
普段変装に使っている服や小物類をしまい込み、クローゼット代わりに使っている部屋に移動しながら
沖矢は入れ替わる隙が全く無いので無理。
小五郎は現在風邪により絶不調。声色を変えたままわざと咳込むのは
毛利蘭は“名探偵”の勘で見破られそう。そもそも彼女の背後に立つ勇気は無い。
と、なれば………。
「………鈴木園子か、阿笠博士か………。」
鈴木相談役により近付き易い事を考慮すれば、まぁ実質1択だろう。
―数時間後、鈴木大図書館―
日が沈んだ後、
昼間とは打って変わり、上品な老婦人に
先程まで混んでいたが、
2つの個室が閉まっているが、後は洗面所に2人、それから隣接したパウダールームに1人。
洗面所にいた2人組が出て行ったのを見届け、
「っ…?!」
一瞬で距離を詰め、パウダールームで化粧していた1人‐鈴木園子の鼻と口をハンカチで
ハンカチに染み込ませていたクロロホルムにより、園子はものの数秒で眠りについた。
ぐっすりと眠り込んだ園子を抱き上げ、空いている個室に運び込む。
(ちょっと顔貸してね…♡)
クロロホルムを
多少の誤差はあるかもしれないので、あまり時間をかけない方が良い。
老婦人のマスクを
ウィッグを付け替えて軽く整え、靴も履き替える。
最後に老婦人としてのブラウスとロングスカートを脱げば、その場を後に園子が着ているものと同じデザインのトップスとワンピース。
(良し…。)
先程は人が入っていた個室も、既に出たようで周囲に人の気配は無い。
(今のうちに……。)
個室の鍵をかけたまま、素早くドアと天井の間の隙間から外に出る。
何食わぬ顔で洗面所の鏡で全身をチェックして、堂々と女子トイレを後にした。
「園子!
「さっきトイレでね♡だってキッド様が来るのよ!少しぐらいお
「だから遅かったのね……。」
“園子”として答える
「例え来たとしても、あの防犯装置や
灰原の言葉に、
(それはどうかな………。)
ちょっとした
(さて、“名探偵”…。あなたはいつ気が付くかな……?)
あくまでも“園子”としての表情を崩さないまま、
(第一段階クリア。)
怪しまれないように適当な本を手に取ってページを
「あの…、参考になるかどうか分かりませんが…。」
10分程経った後、それまで鈴木相談役と警備について話をしていた、
「恥ずかしながら学生時代、私は主人と交換日記をしておりまして…、その日記がとても不思議だったんです。」
そうして語られた、
(気付いたみたいだね、“名探偵”……。箱の本当の中身と、その開け方を記した紙の
それを見た
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“月の記憶”
白き罪人更新です。
ご感想、評価、お気に入り登録ありがとうございます。
今回、ちょこっと急展開です…!
「何!?
コナンの耳打ちに、小五郎が図書館内にも関わらず声を張り上げた。周囲の一般客が何事かと視線を向け、慌て声のトーンを落とす。
「うん!みんなが一生懸命探してるのに…、どーしてその紙が見付からないのかもね!」
「コナン君、どういう事?」
自信満々、と言わんばかりに堂々と告げるコナンに蘭が問いかける。
「あんた良い加減な事言ってんじゃないでしょうね?」
そんな“園子”の反応は、コナンにも想定内だったらしく「じゃあ、手帳とペン貸してくれる?」と全く動じる事なく申し出た。
「これで良いかい?」
『お待たせ致しました、お嬢様……。』
(次は第2段階……。)
笑みを
イエスなら2回。ノーなら3回。
それが
『何秒後に………?』
ノックを小さく5回。
そして胸の内でゆっくりと5秒数える。
(1、2、3、4、5…!)
それと同時に、相談役からスリ盗った防犯装置のスイッチを切った。
その2秒後に再び
『成功です、お嬢様…。後は
再びノックを2回。
(これで第2段階もクリア……。)
今回、
後は
(さぁ、どうするの?“名探偵”……。今回は私の勝ちになるんじゃない……?)
コナンの推理がいよいよ
「おばさんがぜーったいに
「でも、奥さんが嫌いな
コナンの断言に、蘭が疑問を返す。
「その本ならもう、おばさんが念入りに調べてるよ!紙を探すだけなら読まなくても良いからさ!」
「じゃあ、どんな本なのよ!
「だからー、
「料理本の…、“肉ジャガ”のページですね?」
コナンのヒントに気付いた
「なるほど?ご主人の母親からレシピを
灰原の言葉に小五郎が相談役に問いかけた。
「料理本はどこに?」
「確か、あの辺の棚に
相談役が指差した本棚の付近の料理本を小五郎がごっそりと机に運ぶ。
「でも、料理本は数十冊はありますよ!?」
「1万冊の中の数十冊だ!しかも肉ジャガのページを調べるだけなら…、手分けすりゃ数分で……。」
この人数で探せばものの数分で見付かるだろう。
(まぁ、今も隠したままならの話だけどね………。)
そう。“鈴木園子”としてこの部屋に入り、相談役から防犯装置のスイッチをスリ盗った直後、
“怪盗キッド”が登場するストーリーはほとんど詳細まで覚えている。今回のこの
(ちょっとズルいかもしれないけど、有効活用出来るものはさせてもらわなくちゃね……。)
そうやって見付けた、開け方を記した紙は既に
あの
出来れば自分の力で箱を開けたかった。
何食わぬ顔で料理本のページを
―――――――――そして数分後。
「んだよ、どこにもねーじゃねーか、紙なんて…!」
見付からない紙に小五郎がイライラし始めた。
「そう言えば園子、さっき料理本何冊か見てなかった?」
「え?うん、見てたけど…。」
思い出したように尋ねる蘭に、それがどうしたの?と言わんばかりの顔で返す。
「その時も見付からなかったの?紙。」
「やーね。見付けたら教えてるわよ。」
「でも、園子姉ちゃんが料理の本見るなんて珍しいね。」
「失礼ね!私だってたまには料理の本くらい見るわよ…!」
「でも、珍しいのは確かよね。」
「……実は真さんが帰って来た時に手料理でも作ってあげたいと思ったのよ…。ずっと海外にいるから、和食が恋しくなるだろうと思って……。」
不思議そうな顔でコナンに同調する蘭に、ウインクしながら耳打ちするように小声で
「なんだ…、そういう事ね……。」
2人で顔を見合わせてクスクスと笑えば、コナンやそのやり取りに注目していた
(ホントに気付かないの?“名探偵”…。)
悪魔のような
それとも、気付いていて決定的な尻尾を掴むまで泳がせるつもりなのだろうか?
ブー、ブー、ブー…!
「……っ!ゴメン蘭!真さんから電話かかってきたからちょっと外すね……!!」
「いってらっしゃい。」
スマホを見せながら
(ナイスタイミング…♡)
小走りでその場を後にしながら、
もちろん、この電話も“鈴木園子”の彼氏、“京極真”からでは無い。“鈴木園子”がより自然な形でその場から離れ、
“鈴木園子”のスマホと同じ機種を用意し、
人目に触れないように、素早く、
専門的な資料ばかり置いてあるこの部屋は、一般客の出入りがある程度規制されており、事前の申請が必要不可欠。入るにはスタッフルームに保管されている鍵が必要である為、スタッフと一緒でなければ本来は入れない。
しかし、この程度の鍵ならば数秒あれば開ける事は可能。それは
おまけに、今日は“怪盗キッド”の予告にスタッフも浮足立っている為、最低限のスタッフを残して他のスタッフは全員図書スペースにいる。
一時的に身を隠すには最適の場所だった。
「
「お待たせ、
“園子”に
7つ目までは既に攻略法が分かっている。
不敵な笑みを浮かべながら、全神経を集中させながら
そして集中する事、およそ6分。
カタカタ……
カタン…
カタッ………!
軽やかな音を立て、
♪~♪♪~♪~♪♪♪
「“通りゃんせ”?……また意味深な曲を…。」
有名な童謡が流れる、とは聞いていたが何でこの曲をチョイスしたのか。
「おお……!
「まぁ、今回は2回目だしね……。」
そして、オルゴールを巻き直して仕掛けを最後の1つのみ元に戻し、先程回収しておいた、開け方を記した紙を“キッドカード”と共にテープで貼り付けた。
「じゃ、
「はい。お嬢様、くれぐれもお気を付けくださいませ…。」
「分かってる。無理はしないから…。」
先に
周囲に人影がいない事を確認して暗視スコープを付け、図書館内の全ての電気を消した。
「何だ?!」
「もしかして“怪盗キッド”!?」
途端にざわつく客たちの間を素早く走り抜け、再び防犯装置のスイッチを切る。
本物の
音も無く着地し、最後に先程元に戻しておいた最後の仕掛けを解除する。
♪~♪♪~♪~♪♪♪
図書館スペースの入口まで戻りながら、防犯装置のスイッチを入れて作動させた。
ガシャン!
図書館内に響いた音に、相談役がスタッフを怒鳴り付ける声が更に響いた。
「おい、何をしておる!?早く明かりを復旧させい!!」
そして、複数人が
(でも、もう遅いよ“名探偵”…。)
そのまま静かに、しかし素早く図書スペースを出て暗視スコープを外す。その数秒後に電気が復旧したのを確認し、そのまま屋上へと足を進めた………。
ガチャリ……。
屋上への扉を開け、真ん中へと進み出る。
チャラリ…
ポケットから取り出した“
既にパンドラでは無いと分かっているものの、周囲を張っているだろうスネイクたちに、“怪盗キッド”が確認している姿を見せなくてはいけない。
そして、“
(あぁ…。それでこそ……。)
思わず笑みが零れるのが分かった。
扉に背を向けたまま
「キッド!!!!」
その呼びかけにゆっくりと振り返った。
「これはこれは“名探偵”…。なかなか気付いてくださらないので、今回はもういらっしゃらないかと思いましたよ…。」
“鈴木園子”の声のまま、クスクスと笑みを零す
「いつまで園子の姿でいやがる…。さっさとその変装を解け!!」
「やれやれ……。全く…、《
途中から“
バサリ、と夜風にマントを
本の一瞬の間に、顔や服装だけでなく骨格すら変えてしまったかのようなその変装に、コナンもまた顔付きを引き締めた。
「《折角の
「余計なお世話だ、バーロー!!!さっさと宝石返してオレに捕まりやがれ!!!」
真面目な顔しておちょくる
「《この宝石も私の求める物ではありませんでしたから、もちろんお返しさせていただきますが……。ここで捕まる訳にはいきませんね…。私にはやらねばならない事がある。》」
「“やらねばならない事”、だと……?オメーがコソドロなんてやってる理由か。」
「《おっと…!
不意に感じ取った殺気に、本能的に
チュイン…!
「キッド?!」
コンクリートに響いた独特の音と、直前に現れた“赤い光”に、コナンが一拍遅れて事態を悟った。
「狙撃だと…?!どこから……??!」
チュインッ…!
チュイン………!!
連続で響く跳弾の音と、ギリギリでそれを回避する
しかし、
「《!?いけません、“名探偵”!伏せなさい!!!》」
咄嗟にその小さな体を
――――――――直後、
パシュッ……!!!
「っ……!!!!!」
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各々の領分
今回はちょっと短め…。
お気に入り登録ありがとうございます。
「っ……!!!!!」
直後、コナンを抱えたまま、“怪盗キッド”が転がりながら出入り口の影に隠れる。
「キッド?!おい、大丈夫か?!!」
「《………動いてはいけません…。ここからなら、出入り口が死角になって狙撃出来ない…。》」
“怪盗キッド”の身を案じて腕の中で暴れようとするコナンを更に力強く抱え込み、
意外にもしっかりとした
「おい、傷は…?!」
「《ご心配無く……。
ポーカーフェイスを保ちながら、コナンが冷静になったのを確認してそっと彼を離す。傷口に触れないように患部を確認しつつ、左手を動かす。
(神経、筋肉に異常無し…。)
そのままハンカチで傷口を縛り、止血した。
「!?何が
白いハンカチが瞬く間に赤く染め上げられ、“怪盗キッド”の白い装束にもその染みを広げているののを確認したコナンが
「《二の腕を
そう。痛い事は痛いが、問題無く動かせるし後でキチンと処置すれば跡も目立たないだろう。この程度の傷、“怪盗キッド”を継いで以降、
それよりも
「………ヤケに冷静だなオメー…。狙われる心当たりがあるってのか…?」
「《…………私を狙っている者など星の数程おりますとも…。命を狙う者、私自身を利用しようとする者、私の盗んだ宝石を横取りしようとする者……。》」
コナンの追及をはぐらかしつつ、周囲の気配を探った。一瞬。一瞬の隙を作り出せば突破出来る。
(6時の方向に120m…。それと4時の方向に100m……。)
「…とにかく、警察に通報して……。」
「《お止めなさい。奴らも
スマホを取り出そうとしたコナンの手を押えながら止める。
「じゃあ、どうしろってんだ!!」
「《とにかく、隙を作りますから“名探偵”はその間に中に……。》」
「オレはって、オメーはどうする気だよ?
「《おかしな事を
「何だと……?!」
「《“名探偵”、
「っ…!」
一瞬、言葉に詰まったコナンの手をやんわりと外し、その小さな体を抱え上げた。
「!おい……?!」
「《サングラスは
「あ、ああ…。ってか、下ろせよ。何する気だオメー。」
怪我を
「《ああ…。やはり大きいですね…。ズリ落ちないように、しっかり持っていてください。もし落ちそうになったら目を
「は?!」
さらりと告げられた
自身もサングラスをかけ、カウントを取る。
「《5、4、3…。》」
3、のカウントで
「《2、1…!》」
0、と
幸い、ここは屋上であり地上の人々の視線からは外れる上に、この辺りのビルは紫外線対策の為に通常のガラスに比べて
しかし、スネイクたちが使っているライフルの暗視スコープは確実にお
そのまま、開け放ったままの出入り口に向かってコナンを放り投げる。
「イテッ!!……おいっ?!」
バンッ!!!
受け身を取り損ねたコナンが体勢を立て直す前に、扉を閉めて外側からストッパーを噛ませた。
(良し、後は………。)
フェンスへと走り、その上へとよじ登る。
そして、そのまま夜の空へと身を躍らせた。
ヒュウウゥゥゥ……!!!
ある程度勢いが付いたのを確認し、マントに仕込んだハンググライダーを開く。
バッ…!!!!
風に乗って滑空しながら、周囲の気配を探れば、案の定スネイクの部下らしき気配を
「《ちっ…!》」
空中で銃撃されれば
カチッ!
ウイィィ……ィン…!!
念の為に仕込んでいたハンググライダーのプロペラを起動させ、高度を上げた。
「《ここまで上がれば大丈夫か……。》」
高度を保ったまま滑空する事5分。現場からは大分離れる事が出来た。そろそろ高度を下げても大丈夫だろう。
徐々に高度を下げれば、下は住宅街。
(一旦降りても大丈夫かな……。)
公園を見付け、その上を旋回しながらゆっくりと高度を下げる。
バサッ……!
ハンググライダーを
そのまま“
「
気を緩めた途端、狙撃を受けて
改めて止血し直しながら、
(怒るだろうな、
いや、それとも泣くかもしれない。
あれだけ心配していたのを説き伏せた結果がコレだ。
怒られるのは良いが、泣かれるのはちょっと困る。
何しろ、
しばらくは自重した方が良いかもしれない、そんな事を考えながら
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閑話
“しろきつみびと”のひみつ
読まなくても今後のストーリーにさして不都合はありませんが、それでも良いという方のみどうぞ(笑)。
―――――――あるところに、おんなのこがいました。
おんなのこは、びじんでほがらかなおかあさんと、かっこよくておちゃめなおとうさんの3にんでくらしていました。
おんなのこは、おとうさんがだいすきでした。
もちろん、おかあさんもだいすきでしたが、おんなのこにとっておとうさんは“トクベツ”だったのです。
おんなのこのおとうさんは、とってもゆうめいなマジシャンでした。
“とうようのまじゅつし”とよばれるほどのすごいマジシャンで、おんなのこがもっともっとちいさいころは、おとうさんはまほうつかいなのだ、とほんきでしんじていたほどです。
おとうさんは、いつもおんなのこにマジックをおしえてくれました。トランプやハトをつかったマジックはもちろん、ものをだしたりけしたりするマジックをたくさん。
おんなのこは、おとうさんがだいすきでした。
“パパよりすごいマジシャンになる!”
それがおんなのこのくちぐせでした。
でも、おんなのこが9さいになったとき、とつぜんのじこでおとうさんはしんでしまったのです。それも、マジックのショーのまっさいちゅうに。
おんなのこは、ショックでマジックができなくなりました。
まいにち、まいにちないてばかりで、おかあさんも、おとうさんの“つきびと”のおじいさんも、となりのいえのおともだちもおんなのこをしんぱいしていました。
それからながいつきひがすぎ、おんなのこはこうこうせいになっていました。
おとうさんをなくしたショックもやわらぎ、マジックもひとにはみせませんが、ひとりでれんしゅうできるようになりました。
そんなとき、おんなのこの16さいのたんじょうびのことです。
おんなのこはじぶんのへやに、“ひみつのかくしべや”のいりぐちをみつけたのです。
おんなのこは、だいすきなおとうさんの“ひみつ”をしりました。
おとうさんは、“かいとうキッド”だったのです。
“おとうさんのことをもっとしりたい”。そうかんがえたおんなのこは、2だいめ“かいとうキッド”になりました。
しかし、それからすこしたったときのこと。
おんなのこは“かいとうキッド”の“おしごと”をしているさいちゅうに、まっくろなふくをきた、こわいかおのおとこにころされそうになりました。
そして、おんなのこはしってしまったのです。
だいすきなおとうさんが、そのおとこたちにころされてしまっていたことに。
おんなのこは“ふくしゅう”をちかいました。
でも、おんなのこがてをよごすことは、きっとおとうさんがゆるさないでしょう。
だから、きめたのです。
そのおとこたちがねらっている“パンドラ”とよばれるほうせきを、おんなのこがさきにみつけてこわしてしまおうと。
おんなのこは、きょうも“かいとうキッド”としてほうせきをぬすみます。
だいすきな、だいすきなおとうさんの“かたき”をとるために……。
原作との相違点
・千暁が盗一の死後、ショックでしばらくマジックから遠ざかる。その為、家で練習はしてもキッドを継ぐまで、人前でマジックを披露する事はほとんど無かった。
・具体的に何月何日に隠し部屋に入ったのかの描写が無い為、切りよく誕生日に設定。
・原作で快斗がキッドを継いだのは高校2年生になってからだが、継いでから数ヵ月と考えると週何回犯行に及んでいるのか、という問題が出てくる為、1年は経過と想定。
ひらがなばっかりで読みにくくてすみません。
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好敵手との邂逅編
ストーカー
ご感想、お気に入り登録ありがとうございます。
今回はオリジナル編の導入になります。
キーンコーンカーンコーン…
「ふぁああ……。」
鈴木大図書館の一件から一夜明け、5時限目の授業が終わった後、耐え切れずに
昨夜は
その後で食べ損ねた夕食の代わりに軽い夜食を摘み、シャワーを浴びた為、就寝したのは3時前。
おまけに、処方された
(まぁ、体育が無かったのは助かったけどさ……。)
鎮痛剤が効いているのか多少はマシになったものの、ズクン、ズクンと鼓動に合わせて脈打つような痛みを発する左腕を目立たないように軽く
幸い、体育は月曜と金曜の週2回。今日は火曜日の為、後3日もすれば完治は無理でも多少は傷も
「ふぁ~あ…。」
「どうしたのよ
朝から
「ん~…。
「めっずらし~…。いつも早寝早起きの、小っちゃい子どもみたいな生活してる
普段の
「……良く見るとなんか顔色も悪いし、次は自習だから保健室で寝かせてもらえば?」
「うん…。じゃ、そうする~…。」
ふぁああ…。
元よりそのつもりだった事もあり、
(男……?)
ねっとりと絡みつくような視線を感じ、振り返れば電柱の影に慌てて身を隠す男の姿を見付ける。
「ど、どうしたのよ?急に。」
「あ、ううん。なんでも無い……。」
(スネイクたち……?いや、それにしては……。)
いや、と
(止めとこ……。下手に深く考えると精神衛生上良く無い…………。)
何となく薄ら寒い思いがして、それ以上の思考をカットする。
―――――――――――それから1週間後。
自室の机に広げたのは、ポストから回収したばかりの手紙と同封されていた写真。
「……どうしようか…。」
目の前に広がるのは、昨日1日の
この1週間の間、登下校の最中や外出時だけでなく、学校の教室でも感じていた視線は収まることを知らず、また、まさに視線を感じた瞬間を写した写真が1週間連続でポストに投函されていた。
この1週間はある程度自衛していた事と、学校のトイレは道路に面しておらず、更衣室にもしっかりとブラインド式のカーテンが取り付けられている事で、盗撮されたのは教室や登下校の最中などの日常生活の場面のみだった事が幸いである。
自宅に帰ればすぐにカーテンを閉めるようにしていたし、自宅の風呂もトイレも家の構造と庭の生垣のお陰で外から覗くのは不可能。プライベートな写真がほぼ撮られていないのは良いが、
おまけに毎回同封されている手紙が気持ち悪さに拍車をかけていた。
どうやら送り主の中で、
「キッモ………。」
女子高生の1人暮らしは物騒だから、と母が渡米する際に自宅のセキュリティーを上げておいてくれて助かった。
現在、
また、セキュリティー会社に通報が行くと同時にスマホにメールで通知が届くように設定されている為、そのお陰で今のところは自宅に侵入されていないと確信出来ている。
しかし、今のところは大丈夫でも気分は良くないし、このまま放置する訳にもいかない。
1週間前に最初の手紙が投函された時点で警察には相談済みであり、自宅付近や学校周辺の見回りを強化してくれている。手紙も証拠品として提出して調べてくれてはいるが、指紋などは付いていない上に、手紙の消印は毎回異なり、都内のあちこちからポストに投函されているらしく、まだ容疑者を絞り込めていないらしいのが現状だ。
「こーゆーストーカー犯罪って後手に回りがちだしな~……。」
だから世間からバッシングを受けるんだ、と言いたいのはやまやまだが、警察も暇では無い事は分かっている。
いっそ自分で調べた方が速いか、とも思ったが自分でストーカーを突き止める女子高生、というのも一般人の
と、なれば残りの選択肢は1つだが…。
「探偵に依頼しようにも、既に何件か門前払い喰らってるし………。」
そう。まだ高校生の
まぁ、気持ちは理解出来る。それに、相手が未成年では契約を結ぶ際にも色々と面倒があるのだろう。
「ママはベガスだし、
それ以外となると、最も確実に依頼を受けてくれるのはクラスメイトの
「でも、
解決してくれる事に不安も心配も無いが、まだ学生の
彼に万が一の事があっては
学生相手でも依頼を受けてくれそうな探偵と言えば……。
「毛利探偵、かな………?」
あそこには“名探偵”がいるので、出来れば頼りたくは無い。しかし、毛利小五郎ならば
娘と同じ年頃、それも女子高生に付きまとうストーカー調査、となれば彼ならば受けてくれそうだった。
「背に腹は代えられない、か………。」
チラリ、と時計を見ればまだ午後1時を少し過ぎたあたり。
今日は教員たちの研究会があるらしく、午前中で授業が終わったのが幸いした。今から行けば、2時頃には毛利探偵事務所に着く。小学生の帰宅時間には少し早い為、上手くいけば“名探偵”と鉢合わせせずに済む。
そうと決まれば、と
中身はわりとしょーもない事を考えていたり、ちょっと
蘭と違って空手が得意、という女子力(物理)は持っていないので割と狙われがち。
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邂逅
コンコンコン……!
毛利探偵事務所の扉を何度もノックするが、全く応答が無い。
というよりも、
(人の気配が無い………?)
もしや、別の依頼か何かで留守だろうか。
だとすれば、日を改めるよりもやはり別の探偵を探した方が良いかもしれない。
(早いトコ引き上げないと、“名探偵”が帰ってくるだろうし……。)
チラリ、と腕時計に目をやった瞬間である。
トントントン、と軽い足音が聞こえ、危うくチベスナ顔になるところだった(もちろん、“怪盗キッド”のプライドにかけてポーカーフェイスを維持したが)。
「お姉さん、もしかして小五郎のおじさんに依頼に来た人?」
(出た――――――――――!!)
思わず引き
コナンside
「じゃーなーコナン!」
「また明日ね―――!」
「さようなら――。」
「おー。それじゃ、また明日。」
手を振りながらそれぞれの家に帰宅する少年探偵団の面々を見送り、コナンもまた
「あら、お帰りコナンくん。」
「ただいま、梓姉ちゃん。」
ポアロの前を掃除していた看板娘の梓が笑顔でコナンを出迎えた。
「そう言えば、蘭ちゃんももう帰ってるみたいよ。」
「え、蘭姉ちゃんが?」
掃き掃除をしながら告げられた言葉に、コナンが目を
「ええ。ついさっき掃除に出てきた時に、制服のスカートみたいなのがチラッと階段から見えたから。今日は早かったのね。」
「変だな…。蘭姉ちゃん、今日は部活の強化練習で遅くなるから晩御飯はポアロで食べてねって言ってたのに……。」
何でも引退した3年生が受験の息抜き兼後輩の戦力強化、と称して顔を出すらしく、夕食分の弁当まで持って登校した
「あら?じゃあ、もしかして依頼に来た人かしら?今、毛利さんいないのよね……。」
「小五郎のおじさん、どこに行ったの?」
「具体的にどこ、とは聞いてないけど浮気調査の依頼が入ったから行って来るって言ってたわ。遅くなりそうならポアロに連絡を入れるから、先にコナンくんにご飯食べさせておいてくれって…。」
「そうなんだ。」
わざわざ梓に
依頼人が来ているのならば、小五郎の留守について早く教えないといけないだろう、とコナンは階段を上がろうとしたが、思い直して梓に尋ねる。
「梓姉ちゃん、今日
「ええ、いるわよ。どうして?」
「もし急ぎの依頼だったら、
「ああ、そうかもしれないわね。」
表向きの職業である探偵業は真面目にこなしているようだし、本当に緊急性のある依頼ならその方が良いだろう。それに、
ともあれ、まずは依頼人かどうかを確かめなくては。
「じゃ、ボクちょっと見て来るね!」
トントントン、と軽やかに階段を昇れば、この辺りでは珍しいセーラー服を着た少女がいた。
身長は163~167cm、やや癖毛なのかウェーブががったボブの黒髪に、スラリとした体つきで、横顔でも顔立ちが整っているのが分かる。
少なくともこれまで蘭やコナン‐工藤新一の周囲では見た事の無い少女だった。3階の自宅では無く2階の探偵事務所の扉をノックしていたあたり、恐らく依頼人で間違い無い。
「お姉さん、もしかして小五郎のおじさんに依頼に来た人?」
その問いかけに、少し驚いたような顔をしてコナンに向き直った少女の顔を見て、コナンは、工藤新一は少し驚いた。
(オレに似てる………?!)
女子ならではの
「キミ、“キッドキラー”の……?」
どこか凛とした響きを宿した声に、コナンがはっと我に返る。
「お姉さん、ボクの事知ってるの?」
「私、キッドファンだから…。キミ、良く新聞に載ってるし。」
目線を合わせるように
(………父さん、まさか浮気してねーよな?)
思わず思考が
「毛利さんに依頼したかったんだけど、もしかして留守かな…?」
「!あ、うん。別の依頼が入っちゃったみたいで、今日は遅くなるかもって…。」
「そっか…。じゃあ、しょうがないね。ありがとう。それじゃあね。」
そう言って立ち上がり、するりと横をすり抜けようとした少女の手首を
「待って!お姉さん!!」
「待って、お姉さん!!」
パシッと右手首を
(バレた…?)
「えっと…?」
何とかポーカーフェイスを維持したまま、どうしたの?と
「お姉さん、困った事があったから小五郎のおじさんを訪ねてきたんでしょ?おじさんはいないけど、おじさんに弟子入りしている探偵さんが下の
(ちょっとちょっと…。弟子入りしてる探偵ってまさか………!)
やんわりとコナンの手を外しながら、体ごと向き直る。
――――――――そうしなければ、表面上はポーカーフェイスを保てていても心臓の鼓動で動揺がバレそうだったのだ。
「毛利さんって弟子がいたんだ?知らなかった。何ていう人?」
「
(はい、アウト―――――――!!!)
ヤバイ、詰んだ。
1日あればストーカーを突き止めてくれそうだが、同時に自分の正体がバレる危険がある。
どうやって断ろうかと、
「コナンくん?そこにいるのかい?」
「あ、
(ま、また出た…………!)
思わず信じてもいない神に何か悪い事しましたか、と聞きそうになったが直後にあ、めちゃめちゃしてたわ(怪盗的な意味で)と思い直した。
階段の下から顔を覗かせているのは、“黒の組織”のバーボン、私立探偵の
「ああ、彼女が梓さんの言っていた依頼人の方ですか?」
「うん。そうだよ!」
(止めて…!本人置いてけぼりにして話進めないで………!!)
「初めまして。毛利先生の弟子で、探偵の
「…黒羽
わー、笑顔が
思わず現実逃避しかけながら、取り
「せっかく来ていただいたんですが、
「………それじゃあ、よろしくお願いします…。」
ここまで親切な申し出を受けておきながら断ったら、まず怪しまれる。
今この場で出来るのは、素直にその申し出を受ける事だけだった。
流石に“名探偵”と公安のエース2人を相手取るのは分が悪い、という事で…。
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恐怖
今回、ストーカー編解決です。
本来もっと引っ張る予定でしたが、途中からこれは誰得だろう、という疑問が沸いてきた為、サクッと終わらせました。
次回は後日談を挟みつつ、“怪盗キッド”編に戻る予定です。
評価、お気に入り登録ありがとうございます。
「ホー…。ストーカー、ですか。」
「はい。ちょうど1週間前から…。」
小五郎の留守中に勝手に事務所に入る訳にはいかないから、と案内されたポアロの奥まったテーブル席で、
目の前にはお代はいりませんから、と出された紅茶が置いてある。
まずは依頼内容をお聞かせください、という
(ああああああ…!心臓に悪い………!!)
せめて1人ずつでお願い出来ないだろうか。まぁ、無理な相談だろうが……。
というか、
「具体的な被害についてお教えいただいても良いですか?あまり気分の良いものでは無いでしょうが……。」
「ここ1週間、ずっと視線を感じていて…。初めてその視線を感じたのがちょうど1週間前だったんですけど、その次の日に郵便ポストに手紙が………。」
「手紙って?」
コナンの質問にちょっと
「………あんまり子どもに見せたいものでは無いんですけど……。」
より正確に言えば子どもに、というより自分と同じ年頃の男性に、といった方が正しいが。
そう言ってテーブルに広げられた手紙と写真に、コナンと
「これは……。」
どれ1つとして目線の合っていない、一目で隠し撮りと分かる写真の数々と、1通につき5~6枚に渡るポルノ小説
「最初に手紙が届いていた時点ですぐに警察には届け出て、登下校の時間なんかに見回りをしてもらってるんですけど…。」
「まだ手掛かりは掴めていない、と……?」
「はい。手紙も、都内のあちこちから出されているみたいで消印もバラバラで…。指紋なんかも残ってないみたいで……。」
「この手紙は1週間ずっと?」
手紙と写真を検分するように手に取りながら、
「はい、受け取った日の前日の手紙が…。最初の3日分は警察に提出したので、3日分しかありませんが、ここ1週間家に帰ったら必ずポストに入っているんです……。」
「手紙の他に、何か送られて来なかった?直接
手紙を見て顔を
「気持ち悪いから、家に帰ったらすぐにカーテンを閉めるようにしてるから、私は見て無いな…。」
「ご自宅のセキュリティーはどうなっていますか?」
「玄関と裏口に監視カメラがあって、動くものに反応して前後20秒が自動で録画されます。後は、玄関と裏口の両方に、門扉とドアで指紋と掌紋認証の2重ロックが付いてて、登録した人間以外が開けようとすると、すぐに警察と契約した警備会社に通報されるように設定されています。窓も無理に開けようとすると同様に通報されて、登録したスマホに警告メールが届くようになってますから、無断で侵入は出来ないと思いますけど……。」
「厳重ですね。」
思っていたよりもしっかりとしているセキュリティーに、
「最近物騒ですし、母が用心に越した事は無いから、と…。」
「そうですか…。では、外出した際に誰かに後を付けられている、という事はありませんか?」
「視線は感じますけど、誰かに付けられてる、という感じはしないです。登下校中の写真も混ざってますけど、見回ってくれているお巡りさんも怪しい人は見た事無いらしくて…。私も、それらしい人を見たのは初日だけなんです。」
「姿を見たんですか?!」
その言葉に
「1週間前にチラッと…。すぐに電柱の影に隠れてしまったので顔は見ていないんですが……。」
「他に何か覚えてる事ある?」
コナンの問いに記憶を
「たぶん、そんなに体格が良い人ではないと思います。電柱の影にほとんど隠れてしまって良く見えなかったので……。後は、たぶん身長が175cm前後だと…。」
「
「その時隠れていた電柱には番地の看板が付いているんですけど、それがちょうど私の目線の高さと同じくらいなんです。チラッと見えた時にそれより頭1つ分位高かったので……。」
「なるほど………。」
「ねぇ、電話がかかって来たりとかはしてないの?」
直前まで同様に考え込んでいたコナンが尋ねる。
「ウチは固定電話契約してないから…。やり取りはほとんどスマホかEメールなの。」
「今は固定電話を契約される方も少なくなってきているみたいですからね。」
納得したような
「あの…、依頼は引き受けてもらえるんでしょうか?」
「もちろん!お引き受けしますよ。」
「っ良かった…!」
思わず頬が緩むのが分かった。どうやら、自分で思っていた以上に精神的な負荷がかかっていたらしい。
「でも、良いの?」
「え?」
コナンの一言に思わず素の反応を返してしまう。
「だって、小五郎のおじさんに依頼しにわざわざ江古田から来たんでしょ?話だけでもって言って
「ああ…。毛利さんに依頼しようと思ったのは、毛利さんなら引き受けてくれそうだって思っただけだから…。」
特に偽る必要も無い為、素直に教える。
「引き受けてくれそう、とは…?」
「実は、この3日くらい探偵事務所を3件訪ねたんですが、どこも保護者同伴で来てほしいと門前払いされてしまって…。母は、今仕事の都合でラスベガスにいるので、急に帰国はやっぱり難しいらしくて……。毛利さんなら、私と同じ位の娘さんがいると聞いていたので引き受けてくれるんじゃないかと思って………。」
「なるほど…。」
「お母さんがラスベガスにいるって事は、お父さんは?」
「っ…!」
コナンの言葉に、咄嗟に言葉に詰まる。
「父は……、私がまだ小学生の時に亡くなったので、ウチは母子家庭なんです………。」
「あっ、ご、ごめんなさい…!」
何気無いように装ったつもりでも、多少声が震えてしまい、コナンも
「ううん、大丈夫。……なんか気を使わせてゴメンね。」
その言葉は本心だった。
しかし、少しずつ傷が
暗くなってしまった空気を壊すように、
「それでは、依頼内容の確認ですが…。」
「あ、はい。」
思わず姿勢を正して
「ストーカーの正体を突き止める事と、その間の身辺警護という事でよろしいでしょうか?」
「え?身辺警護もしてもらえるんですか?!」
うっかり素のリアクションで返してしまう。
(この人忙しいんじゃ……?)
「もちろんですよ。依頼人の身に何かあっては意味がありませんから。この写真を見る限り、恐らくは望遠レンズを使ったんだろうと思いますが、ストーカーは常にあなたを監視しているようです。身辺警護という形で
(さ、
思わず変なところに感心してしまった。
“怪盗キッド”としての仕事はしばらく
今の
「それで、調査料なんですけど……。」
引き受けてもらったならば、次に気になるのは料金である。後回しにしても仕方が無いので、率直に
探偵を雇うとなると、料金は決して安いものでは無い。拘束時間が長ければ長い程料金が上がるのが一般的だが、依頼先によっては追加料金がかかる事も多い。
「そうですね…。依頼によっては実際に調査にかかった時間で換算する場合もあるんですが、今回は完全成功報酬という形でいただきたいと思います。」
「完全成功報酬、ですか?」
「はい。ストーカーを突き止めて警察に突き出すなり、
警護込みで7万、というのは決して高くは無い。調査料の相場としては、1時間あたり4,000~5,000円程。長期間の調査では一気にそれが跳ね上がる。
状況によっては数十万単位でかかる事も想定しており、母‐
本業は公務員だから安いのか?と明後日の方向に意識を飛ばしつつも、力強く頷いた。
「それで大丈夫です。」
「高校生で7万円って大きいと思うけど、即答して大丈夫?」
コナンが心配そうな顔で問うが、頷く。
「大丈夫。探偵さんにお願いする事に関してはママも知ってるし、何かあってからじゃ遅いからお金で解決出来るならそれで良いって。それに、7万なら相場より安い位だから……。」
「そうなんだ…。」
7万って安いか?という顔をしているコナンだったが、
(というか“名探偵”、探偵を名乗ってる割に料金相場については知らないんだ…?)
いや、まだ高校生だから料金はとっていないのだろうが、将来的な事を考えれば把握しておいた方が良いのでは無いだろうか……。
その後、細かい契約内容について確認し、連絡先を交換した。
この時に誤算だったのは、
(なんでだ………!)
何が彼の興味を惹いたと言うのか。
「それでは、ご自宅までお送りしますから後30分程待っていただけますか?今日は15時までのシフトなので…。」
「えっ?!お仕事中だったんですか?!!」
それで良いのかトリプルフェイス…。
――――――そして30分後。
「本来ならば車で送りたいところですが、ストーカーの動きがあるかを確かめたいのでバスでも構いませんか?」
「大丈夫です。来る時もそうでしたから。」
江古田から米花まではバスで20分程である。
バス停に向かって歩きながら、
「1つ気になっていたんですが…。」
「何でしょう?」
「私の警護をしてくださる、というのはとても心強いんですが、それがきっかけでストーカーを刺激しないかどうかが心配で……。」
ただでさえ気持ちの悪い
「実はそれも目的の1つなんですよ。」
「え?!」
思わず立ち止まる。
「こういったストーカーの思考と行動は、だいたい予想が付きます。あの手紙のような
「危ないじゃないですか!」
いや、腕っ節が強いのは承知しているが、何もそこまで捨て身にならなくても良いのでは無いだろうか。
「僕なら大丈夫ですよ。それよりも、万が一あなたの方に行ってしまった場合が心配なので、当面は学校以外の外出はなるべく控えてください。買い物もしばらくは僕が付き添いますから。」
「は、はい…。」
取り
「?!」
「!」
ねっとりとした、しかしこれまでとは異なり確実に殺気立った視線に、思わず後ろをバッと振り返った
視線の10m程先にいたのは、明らかに挙動不審の男。
「……んで…、……ちゃ…は……ボクの………のハズ………!」
ブツブツと何やら呟いている男の目は、長い前髪を通しても焦点が合っていないのが分かる。
外見は一見して大学生風の若い男。服装もどこにでもいそうなTシャツとジーンズだが、その目と正気を失ったかのような言動が不気味だった。
そして何よりも、その手に握られた金属バットがその異様さを強調する。
ボコボコに
――――――――血の跡だった。
「ひっ………!」
「下がって…。」
スネイクたちと対峙した時とはまた違った恐怖と嫌悪感に、思わず息を呑んだ。
サッと血の気が引くのが自分でも分かる。
(“仕事”の時は平気なのに………!)
“怪盗キッド”としての“仮面”を被っている時は平気なのだ。自分の持つ能力を全て発揮出来るから。
しかし、“黒羽
「ちあきちゃんからはなれろ………。」
何か薬でも使用しているのか、
「ちあきちゃんから、はなれろよォオオオオオ!!!!」
動かない
「やっ…………!!!」
明らかに正気ではない、
――――――――結論から言えば、全く心配する必要は無かったが。
ドゴォッ……!
直後に響いた
「目を開けて大丈夫ですよ。」
そして、その足元にはあの男が
「どうやらこの男がストーカーだったようですね…。まさかこんなに早く行動を起こすとは思いませんでしたが…。」
男の腕を背中で纏め、脱いだ自身の上着で縛り上げながら呆れたように呟く
「け、怪我が無くて良かったです……。」
色々言いたい事はあったが、取り
・千暁が怖がっていた件について
本文中でもチラッと書きましたが、本来ならば千暁も素人の男を1人撃退するだけの術はあります。格闘技などをやっているわけではないので、マジックの応用やアイテムを利用しての技術ですが、それでスネイクたちと渡り合えているので決して弱い訳ではありません。
しかし、“怪盗キッド”とは異なり“黒羽千暁”はただの女子高生である為、そんな技術を持っている事を知られる訳にはいきません。千暁が1人であの場を何とかするのは技術的には可能でも、それをする訳にはいきませんでした。
出来るけどしてはいけない、というジレンマによって下手に対処出来ず、それが恐怖に繋がった訳です。
以上、蛇足の説明でした。
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ポアロ
白き罪人、本編の更新です。
今回は前回までの後日談。次回からまた“怪盗キッド”編に戻ります。
そろそろ白馬くん出したい…。
お気に入り登録、誤字報告ありがとうございます。
コナンside
――――――――その依頼人‐黒羽
しかし、どこか
“黒の組織”と対峙した時のようなプレッシャーや殺気の
自分でも何がこんなに引っかかっているのかは分からない。
だが、それを無視するのも得策とも思えなかった。疑問を否定出来る程彼女の事を知っている訳でも無いのだから。
だからこそ、ポアロでの
最初は自分に聞かれてはまずい話なのか、と
(こりゃー普通の小学生には見せらんねェよな……。)
あからさまに隠し撮りと分かる写真に、過激なポルノ
相談した相手が
年頃の少女にとっては、どこの誰かも分からない男に性欲の対象にされた
デリケートな依頼に踏み込んでしまった事を若干反省しつつも、こうなった以上は自分も出来る限りの事をするのが最低限の礼儀だろう、と
その途中で、ついうっかり彼女の地雷を踏み抜いてしまった事に関しては、自分でもやらかしたと反省している。この強過ぎる好奇心のせいで度々危ない目にも
その後、
今後しばらくの間
あの後、通りすがりの通行人がすぐに警察を呼んでくれ、米花署の警官によってストーカーは連行されていった。
てっきり
江古田署にストーカーについて相談していた事も大きかったらしく、後は米花署が江古田署に問い合わせて手紙や写真を出していたのがあの男かどうか慎重に調査するらしい。
また、ストーカーを取り押さえたというのが
ストーカーが捕まった以上、依頼は
それには複雑な心境の
あのストーカーはまともな思考の持ち主とも思えなかったのだから。
―――――――――そしてその後、結果としてストーカーの薬物使用が認められ、覚醒剤所持及び使用の件で再逮捕となった為、5日後には依頼は
その間、
――――――――5日後。
何しろこの5日間、
みなさんで召し上がってください、とでも言えば受け取ってもらい易いだろうし。
一応
そしてやって来たポアロの店内で、思わず
「あ!
(め、“名探偵”…なんでここに……!)
見れば、コナンが駆け寄ってきた席には毛利蘭と鈴木園子、世良
学校帰りにお茶ですか、そうですか…。
そりゃ、自分も学校帰りに来たのだから、同じく高校生の彼女たちがこの時間にいても不思議は無い。毛利蘭の姿があれば、この“名探偵”がいても自然と言えた。
一瞬ポアロに来た事を後悔しそうになったが、“怪盗キッド”の意地とプライドにかけてポーカーフェイスを維持する。
「こんにちは、コナンくん。」
「こんにちは!」
何て白々しい会話…、と思いつつも表面上はにこやかに会話を続ける。今の自分はストーカーから解放されて晴ればれとしている女子高生、と暗示をかけながらではあったが。
「今日はどうしたの?
「ああ、
「じゃあ、どうして?」
何でそんな興味津々なんだ。奥の席で“
そんな事を想いながら何食わぬ顔で事情を説明する。
「
「そーなんだー。」
それからドアベルの音に反応してカウンターから出てきた梓に向き直る。
「すみません、今日はマスターさんはいらっしゃいますか?」
「ごめんなさい。今
「そうですか…。それじゃあ、これをマスターさんにお渡しいただけますか?」
「えっと……?」
東都デパートの袋から包装された箱(
「私、黒羽と言います。こちらでバイトされている
「ああ!マスターから聞いてました…!
「いえ…。ご迷惑をおかけしたのは確かですし、
「そうですか…?それじゃあ、お預かりします。わざわざ来てくださってすみません、ありがとうございます。」
そうまで言われては断る方が失礼、と梓も受け取る。
店の入口で店員と客がお互いに頭を下げる、という一見不思議な光景が繰り広げられたが、カランカラン♪とドアベルを鳴らして新たな客が入って来たのをきっかけにそれは終了した。
「あ、いらっしゃいませ―――!」
「それじゃあ、私はこれで失礼します…。」
梓が慌てて客を案内しようとしたのを見て帰ろうした
「あ、待ってよ
「コナンくん?」
内心でシャウトしながら自身を呼び止めた“名探偵”を見下ろす。
「もう帰っちゃうの?もうちょっとお話しようよ。蘭姉ちゃん、毛利のおじさんの子どもにも紹介するからさ!」
表面上はニコニコと無邪気に提案するコナンだったが、蘭よりもむしろ同じ高校生探偵である世良
(絶対
しかし、
これ以上ここにいるのは危険(自分にとって)、と判断し逃亡を図った。
「気持ちは嬉しいけど、もうすぐバスが来ちゃうから早く帰らないと……。暗くなってから帰るのはまだちょっと怖いし………。」
「そっかぁ…。」
困ったように笑いつつもストーカーの件について匂わせれば、コナンも素直に引く。
「それじゃあ、また今度お話しようね!約束だよ?」
「…うん、また今度ね。」
(良し!
(ヤバイ、
それぞれ正反対の事を考えつつ、帰る
「またね――――!
「またね―――――…。」
見かけだけはたいへん可愛らしく手を振る
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銀翼の奇術師編
“運命の宝石”
今回は“銀翼の奇術師”導入編です。
映画とどう変わっていくのかお楽しみに。
お気に入り登録、ご感想、誤字報告ありがとうございます。
『
26の文字が飛び交う中
“運命の宝石”を
いただきに参上する。
怪盗キッド 』
赤いバラの花束に予告状を添え、女優‐
ヒュウウウウゥゥ………
バッ、とハンググライダーを開き、そのまま滑空体勢に入る。
(さて、今回はどうなるかな………。)
人目に付かないように高度を上げながら、今出したばかりの予告状へと思いを
今回“怪盗キッド”が狙うのは女優の
最初は、偽物と分かっているものをわざわざ盗む気は無かった。
しかし、連日舞台“ジョゼフィーヌ”の宣伝も兼ねて“運命の宝石”についてテレビで報道されており、中には“怪盗キッド”が狙うのでは?!と余計な
嫌な予感がして
放置すればどんな手段に出るか分からない。
本来ならば、明日の
そのまま前回のように狙撃、もしくは銃撃戦となる可能性がある以上、劇場での犯行は避けた方が良い。舞台のキャストや観客たちにもしもの事があっては遅いのだ。
止む無くストーリー通りの予告状を出したものの、不安要素しか無かった。
(“名探偵”だけでも結構いっぱいいっぱいなんだけどな……。)
“沖矢
―――――――――思わず
―“ブルーパロット”地下―
『成程…。これがキッドからの予告状ですか…。』
『はい…。今朝、自宅マンションのベランダに大きなバラの花束を添えて置いてあったんです…。』
『う~む…。』
「やっぱりこうなったか…。」
たぶん、ここはストーリー通りになるんだろうな、と飼っている
トランプ銃の手入れを行いながらモニターを注視すれば、来ないで欲しいと思っていたうちの1人が同席している。
(やっぱり……?)
せめて“沖矢”の方は来てくれるな、と祈りながら手入れを進めていた
「どうぞ、お嬢様。」
「ありがと。」
一旦手入れの手を止め、温かいココアを
「
心配で心配で仕方無い、といった様子の
「今回は直接やり合う訳じゃないし…。放っとけば“組織”の連中が
何か前にも似たようなシチュエーションで同じような会話をしたな、と思いながらココアを飲む。
「しかし、この
「分かってる…。
密室の中で“名探偵”と対峙しなくてはならない、という難易度は上がるが、“組織”の連中とやり合う事を考えれば1番周囲への巻き添えが少ないのが正直コレなのだ。
基本的に
警察関係者や、あるいはその場で口封じが可能な少人数の人間に姿を見せた事はあるものの、基本的に一般人の目に触れないようにはしているらしかった。
これが地上ならば、数百人単位の人間がいようとテロか何かに見せかけ、劇場に爆弾なりなんなりを仕掛けてその
今回、“怪盗キッド”が予告状を送った事で劇場を囲んで待ち伏せる位の事はするだろうが、その場で“運命の宝石”を狙う事もまず、無い。
“怪盗キッド”目当てのマスコミが多数いる中、顔を
恐らく“怪盗キッド”がいつ現れても良いように
女優という職業柄人間関係も
まぁ、“名探偵”だけでなく
「ま、何にしても本番は明日…。今から心配してても身が
ココアを飲みながらモニターを眺め、
「はぁ…。」
まだ不安そうな
『キッドが今夜その宝石を狙って来るのは間違いありません!!』
「残念…。今日じゃないんだな~…。」
小五郎の断言に茶々を入れつつ、“名探偵”と同席している
どうやら暗号はまだ解けていないながらも、今夜狙って来る、という事に関しては疑っていないらしい。
(このまま
まぁ、そう上手くいく
さて、“組織”の連中が来ているかどうか今夜
そんな事を考えながらココアを飲み干し、モニターの電源を切る。
チケットが無ければ中には入れないし、周辺の様子だけ
――――――――――――午後6時、劇場“
(何で私ここにいるんだろう…。)
自分でもこの展開は想定していなかっただけに、思わず遠い目になる。
「どうしたのよ、
その様子を見
「…何でもないって。開場まだかなって思っただけ。」
良く考えればその可能性は気付けた
最近は鈴木相談役
そして
だから、今回の舞台のチケットを中森警部が
「そう?それなら良いんだけど…。それよりこのワンピースどう?おニューなの!」
大粒のパールを模したイヤリングと、足首丈のブーツもワンピースと合っていた。
「似合ってるよ。可愛いね。シュシュもお揃い?」
「うん!セットだったの!」
夜に開演の舞台、という事もあって周囲の客もある程度フォーマルな服装が多いが、これなら浮く事も無いだろう。
アクセントとして黒いレースの手袋と、アクセサリーに赤い宝石(もちろん
軽くだがメイクもしていた為、普段よりもグッと大人びて見えた。
「
「これ?ママが送ってきたヤツ。
「へぇ~。良いな、ちょっと大人っぽーい!」
クルクルと
「それよりおじさんは?チケットのお礼を言いたいんだけど…。」
「あ、いっけなーい!着いたら電話するように言われてたんだった!」
そう言って
(電話ったって
そんな事を考えている間に無事に中森に繋がったらしい。そのやり取りを何とはなしに聞いて待つ。
「うん。うん、分かった!それじゃ今から行くね!」
そう言って電話を切り、携帯をしまった
「おじさん、何て?」
「今、
「え?入って良いの?楽屋…。」
「今なら他にもお客さんいるから大丈夫って言ってたよ!」
「へぇ…。」
そう言って
「待って!せっかく行くならもっと可愛くして行こ。メイクしたげるから。」
「え?でもお父さんたち待ってるよ?」
「任せて。そんなに濃くしないし、3分で終わらせるから。」
善は急げ、と
―――――――そして5分後。宣言通りに3分で
「ここ?」
「そうみたい……。」
コンコンコンッ………!
ノックする
「何隠れてんのさ?」
「だって緊張するよ~…。」
『はい…。』
ガチャ…
応対したのは、眼鏡をかけたスーツの女性。
「ああ、あなたたちが中森警部の娘さんとそのお友達…?」
「はい。」
「どうぞ。お話は伺ってました。」
話は既に通っていたらしく、すんなり中へと入れてくれる。
「おお、
「あ、お父さん!」
父親の姿を見付けた途端に心強くなったのか、
「あれ?
(そうだった、その可能性をすっかり忘れてた………!)
本当に驚いた顔で
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噂
次回、いよいよ“怪盗キッド”登場。
誤字報告、お気に入り登録どうもありがとうございます。
「
「ん?何だ、君たち知り合いだったのか?」
コナンの
「前にちょっと……。」
引き
ストーカーの件は
これで
「ちょっと?」
「
「しっ―――――――――………!!!」
余計な事を言うなと
「依頼って、このちょび
「まぁまぁ、それよりお父さん。チケットをくれた
「あ、ああ…。そうだな……。」
(ありがとう、ホンットありがとう
父親の性格を知り尽くしている
「
中森の
「中森
「黒羽
「ああ…。良いのよ。ぜひ楽しんでちょうだい。」
騒がしくなった楽屋の様子にか、一瞬
だが、
黙って口元に指を立て、“後で”と口の動きだけで伝えると
ペコリ、と
「ん?どうした、
先程とは対照的に、若干顔を
問いかけるように
「じゃあ、ワシはこれから仕事だからな…。
「「はーい。」」
2人で“良い子の返事”を返し、これから警備の事で打ち合わせるらしい中森たちと小五郎を残し、楽屋を出る(
「そういえば
「え?」
楽屋から出るなり話しかけてきたコナンに、急に何だと思わず素で振り返る。
「中森警部ってもしかしてストーカーの事知らなかったの?さっきボクが言おうとしてた時に止めてたけど…。」
「お父さん、アレで昔から過保護なの。」
「中森のおじさん、昔から私の事も可愛がってくれてて……。」
「
「
「だから、
中森の過保護エピソードを苦笑しながら聞いていた
「いえ。正式な報酬はいただきましたし…。梓さんに聞きましたがポアロにも来ていただいたみたいで、むしろ気を使わせてしまってすみませんでした。」
「こちらこそ、
表面上はにこやかなやり取りを続ける
(今回、ちょっと無理ゲーじゃない……?)
世良
「ねぇ、がきんちょ。そろそろその
「あ、うん。」
勢いに負けて頷くコナンだったが、
「中森警部の娘の
「黒羽
「あ、毛利蘭です。毛利小五郎の娘の…。
「鈴木園子です。同じく
「世良
黒いスラックスに白いカッターシャツ、ダークブラウンのベストといった出で立ちの世良がニッと笑うと一瞬ナンパでもされているのかと錯覚しそうだった。
一瞬
が、それも“名探偵”が再び口を開くまでだった。
「世良の姉ちゃんは高校生探偵なんだよ!」
「え?!女の子だったの??!」
「
ばっちり口に出してしまった
「ご、ごめんなさい!あんまりかっこよかったから………!!」
「はははは!気にしないでよ。良く間違えられるんだ。」
フォロー出来ているのか微妙な
「
微妙になりかけた空気を園子が変える。
もとより世良は気にしていなかったものの、わたわたと取り乱しかけた
「さて、と…。開場まであと40分位あるし、お茶でもして待ってよっか?」
劇場のスペース内にイートインの売店があった
「黒羽さんたちも一緒にどう?」
「うん!行く行く♪」
(げっ…………!)
笑顔で了承する
何となくある程度予想はしていたものの、この流れだと確実に…。
「あ、良いな~。ボクも行きたい!!」
(だよね~…。知ってた………。)
そう。この“
「珍しいわね、がきんちょ。こういう時だいたい来ないのに。」
「だって~…。ボクもお腹空いちゃった~。それに
園子の疑問に何食わぬ顔で答え、最後の「ね!」で、にーっこりと
顔の筋肉を総動員させて笑顔をキープしていた為、
「
「おや?僕も良いんですか?」
「むしろイケメンは大歓迎よ♡」
園子の誘いで
(というか……。2人とも“怪盗キッド”捕まえに来たんじゃないの………?)
女子会に交ざっている場合では無いと思うのだが。
(え、嘘?もしかして、もう暗号解けた?)
映画では解読出来ていたのはギリギリのタイミングだったので油断していたのだが…。
内心焦るが、表面上はポーカーフェイスを保つ。
何食わぬ顔で会話を続けながら、万が一の場合を想定して複数の作戦を立てていく。
「ねぇ、
「なあに?コナンくん。」
それぞれ売店で購入した飲み物をイートインスペースに運び、席に着いたのを見計らってコナンが
「さっき
「あ、見てたの?」
「うん。ボクがいた位置からはね。ねぇ、どうして?」
「う~ん…。
コナンの追及に、あくまでも感覚的なもので
困ったように
「さっき、私たちが楽屋に入らせてもらった時に
「え?そうだった?」
「気付かなかったけど……。」
「ボクも見たよ。一瞬だったけど
「僕も見ました。すぐに取り
蘭と園子は気付かなかったようだが、やはり探偵を自称するだけあった観察眼の鋭い世良と
「
「良く知ってるね?」
感心したように片眉を上げる世良に苦笑で返し、小声で続ける。
「ネットの掲示板は
実際、今回の舞台もネットでだいぶ叩かれているのだ。
「ウッソ――――――――?!」
「でも、それって
園子が小声で叫び、蘭も穏やかでは無い
「でも、火が無いところに煙は立たないって言うじゃないか。それに、さっきの楽屋での様子を見てるとあながちただの
「まぁ、芸能界で生き残るにはそれ位じゃないといけないんでしょう。」
肩を
―――――――――――その後は普通に女子高生らしい話題で盛り上がり、コナンは勢いに押されてほとんど
主演女優にやや難ありだったものの、舞台自体も素晴らしいものだった。
幕が下りきってから、中森と小五郎によって
そして、舞台は“怪盗キッド”に
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865便
誤字報告、評価、お気に入り登録ありがとうございます。
何か、評価とお気に入り登録数が短期間で伸びたな、と思ったら7月28日付けのランキングで4位でした。
どうもありがとうございます。
――――――――黒羽家、地下隠し部屋。
『良いかい、
灯りを付けると同時に、部屋の奥に設置されたジュークボックスが作動し、レコードに録音された、亡き父‐
ジュークボックスには複数のレコードが保管されており、どのレコードが流れるかは完全なランダムだったが、不思議とその時の
いつものように、ジュークボックスの前に備えられた1人掛けのソファに座り、目を
『客に接する時、そこは決闘の場…。決して
父の低く甘い声が、
元々甘い響きの声の持ち主の父だったが、母‐
幼い頃はその膝に抱かれ、良くお気に入りの絵本を読み聞かせてもらっていたものである。どんなに怖い夢を見ても、嫌な事があっても、父の声はいつも
『相手の心を見透かし、その
並外れた知能と身体能力を持つ
初めて父の秘密を知った日、“怪盗キッド”を継ぐと決意した日、初めてスネイクと
不安に涙した日もあった。
恐怖に震えた夜もあった。
興奮で眠れずに迎えた朝も。
そんな時は、決まってこの隠し部屋で父の声を聴いた。
それだけで、どんなに心が乱れていても落ち着きを取り戻す事が出来たのだ。
この時間は、“怪盗キッド”になる為の大切なルーティン。
そして同時に、“黒羽
『いつ何時たりとも…、ポーカーフェイスを忘れるな…。………分かったかな?
「………分かってるよ、パパ……。」
レコードの父の言葉に、目を
それと同時に、再生の終わったレコードが
ゆっくりと開かれた
――――――数時間後、羽田空港。
「函館は雷雨みたいだね…。」
空港内のテレビから流れる天気予報に、世良が呟く。
「あーあ…。せっかくめかし込んで来たのに、雨とはねぇ……。」
「ねぇ、
園子が不満気に呟く横で、
「さぁ…。でも、欠航にならないって事は、プロの目から見て心配無いって事じゃない?」
不安を
舞台“ジョゼフィーヌ”で
そして、
正直なところ、このメンバーの中で
直接“運命の宝石”の警備に関わり、
しかし、
確かに
言っては何だが、
彼女の言動は全て、自分にとって得になるかどうか、という一点にのみ重きを置いている。
そんな彼女が、呼んでも何の得にもならない女子高生2人を打ち上げに呼び、自分の別荘に招待する、というのも妙な話だった。
(一体どうして……?)
考えるが、心当たりは全く無い。
「それにしても、
「探偵の依頼が入っちゃったんだから、仕方無いわよ…。」
溜息を
そのやり取りを眺めながら、内心
(上手くいって良かった…。)
“怪盗キッド”としての“仕事”の下調べの最中に手に入れた、いくつかの反社会派組織の情報を公安の複数人の捜査官のパソコンをハッキングして
“ゼロ”である彼が出張る程の案件かどうかは判断が付かなかったので一種の賭けだったが、どうやら情報の裏取りと洗い出しに時間を
残る唯一の不安要素は、探偵としての実力がある意味未知数の世良
(いつも以上に気を引き締めていかないと危ないな…。)
下手をすると足を
「いやあ、すみませんなぁ…。私らまで舞台の打ちあげにお招きいただいて…。」
「皆さんのお陰で宝石が無事だったんですから、当然の事ですわ!」
「そうそう、そんな事気にせずに函館を楽しみましょう…。」
小五郎の
「それにしても、
「ホント…。」
「すいません、今なつきさんにメイクしてもらってるんです…。駐車場の車の中で…。」
「メイクですか…。大女優ともなると大変なんスなぁ…。」
矢口の説明に感心したような声を上げる小五郎だったが、それは
「大変なのはなつきちゃんの方よ!」
「ああ、
その言葉を聞いて、世良が
「どうやら、あの噂は本当みたいだね…。」
「そうみたい…。」
ニヤッと笑いながら小声で
「ハ~イ!!お待たせ、皆さん!!」
「いやあ、今日は一段とお綺麗ですなあ!」
「どうも、毛利さん…。」
鼻の下を伸ばすような小五郎の
「全員揃ってるみたいね…。」
「いや、まだ
同じく“ジョゼフィーヌ”で共演していた俳優‐
「ああ、
それに最初に反応したのが
「あら、そうなの…。残念ね
「…え?何が?」
「ううん、別に…。」
ある種の
(恐っ…!)
「あのう…、他の役者さん達は来ないんですか?」
「当たり前じゃないの。
ニッコリと微笑む
その様子に、世良が再び
「イイ性格してるよ…。ホントに…。」
一部を除いて微妙な空気になったが、一同は函館行きの飛行機‐スカイ・ジャパン865便へと乗り込んだ。
コックピットのすぐ
つまり、
A B| 通路 |J K
の順で席が並んでいる。
図解すると
1A 2B| 通路 |1J
2A
山口 酒井| 通路 |コナン 世良
蘭 園子 | 通路 |5J 5K
となる。その他は空席で完全な貸し切り状態だった。
「ホントに良いの?
元々4A、つまり窓側は
「良いよ。景色、見たいんでしょ?」
「へへ…!いつもありがと!!」
いつも新幹線などで窓側に座りたがる
その為、不思議そうな顔をしていた
(通路側の方が機内を把握し易いしね…。)
これぞwinwin。
何食わぬ顔でこれからの手順をシミュレーションしている時だった。
「どうしたのよ、蘭。さっきから振り返ってばっかりで…。」
後ろの席で蘭が最後部の階段をしきりに気にしているようで、隣に座っていた園子が不思議そうな顔をしている。
「あ、ううん、何でもない…。」
蘭が
(貸し切りじゃないんだ…?)
「来たって誰が?」
「しっ!黙って…。」
園子の問いかけを制止し、蘭が前に向き直った。
「どしたの?」
「しー…!」
後ろのやり取りを耳にした
直後、後方から歩いてきた女性がチケットの座席番号を確認しながら小五郎に声をかけた。
「あの、お隣の席……。」
「ああ、どうぞ……。」
返事をしながら機内誌から顔を上げた小五郎が、その女性を見るなり驚愕の声を上げる。
「いっ!?
「あ、あなた!!」
そう。新たに入って来た乗客は小五郎の別居中の妻で蘭の母親‐妃
(ああ、そういう事……。)
そういえば、こんな展開が映画にあったかもしれない、と
その後、小五郎が
『業務連絡です…。乗務員はドアモードを変更してください…。』
機内に離陸間際のアナウンスが流れる。
ふと、通路を挟んで斜め前の席に座っていたコナンの様子が変わった事に気付く。
(予告状の意味が分かったみたいだね…。)
予告状の暗号が解けたタイミングは、映画とほぼ同じ。
しかし、安心は出来ない。
少しでもしくじれば、“怪盗キッド”は一巻の終わり…。
(さぁ、始めましょうか“名探偵”…。私の
既にいくつかの
最後に笑うのは、一体どちらか…。
上空1万フィートの密室で、“怪盗”と“探偵”の化かし合いが今、始まる―――――――…。
千暁の狡い作戦で、安室さんは不参加。
次回、世良ちゃんがどう動くのか!?それは作者にも分からない←
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運命の分かれ道
お気に入り登録、誤字報告どうもありがとうございます。
今回、ちょっと急展開です。
『皆様、本日もスカイ・ジャパン航空をご利用いただきまして、誠にありがとうございます。この便の機長は
アナウンスに、それまでつまらなそうに機内誌を眺めていた
「?どうかしたのか?コナンくん。」
「ううん、別に何でも無いよ…。」
それを
(
(あの人、サービス業向きには見えないけど……。)
だからこそ女優に転向したのか、はたまた上手く外面を取り
しょうもない事を何とは無しに考えている間に、一同が乗った飛行機はいよいよ離陸態勢に入った。
865便が滑走路を走り出し、機内のビデオスクリーンに移り変わる滑走路の様子が映し出される。
「見て見て
「完全に離陸しないうちにずっと外見てると酔うよ?」
子どものようにはしゃぐ
大型の旅客機だけあって揺れはそうでも無いが、その分窓の外を流れる景色は速く、みるみるうちに過ぎ去っていく。乗り物酔いし易い体質の人間なら、それだけで酔いそうな位だった。
「平気平気!」
まぁ、
ニコニコと機嫌良く答える
ゴトリ、と微かな振動と共に機体が浮き上がり、上昇していく。
(さて、いよいよ……。)
離陸時のGによって微妙に座席に体が押し付けられるのを感じながら、
機内に点灯していたシートベルトの着用ランプが消える。どうやら完全な水平飛行に切り替わったらしく、非常口の
そのまま座席後方のギャレーへと向かって仕切りのカーテンをくぐるのを、首だけ振り返った状態で確認する。
「どうしたの?」
「ん?ちょっと
機内サービスを待っていたのだ、と
「そういえば、
「話には聞いてたけど、やっぱり機内って乾燥してるみたいだね。」
乾燥を理由に
「仕方無いよ。一般的に飛行機が飛ぶ上空1万mは、気温-50℃の極寒の世界。機内を暖める為に、エンジンの高熱を利用してるんだけど、湿度を上げると外気と機内の温度差で結露が起こって、
「………コナンくん、難しい事知ってるよね…。」
(ホントに正体隠す気ある……?)
「って、この前テレビでやってたから!!」
(
「ちっちゃいのに凄いね~!昔の
(げっ……!)
本心から感心したらしい
「昔の
いつの間にかシートベルトを外して立ち上がったらしいコナンが、通路から
「
「え?!ち、
普通の小学生ではあり得ないエピソードに、コナンが本気で驚くのが分かる。
そう。その頃の
小学校で習う範囲など既に完璧に頭に入っていた為、正直、学校へは友達と遊ぶ為に遊びに行っていたようなものだ。
今考えると、歴代の担任の先生には申し訳無い事をしていたと思う。
中学生になってもそれは変わらず、むしろ基本的な授業態度は高校生になった今も変わっていない。精々、堂々と寝るのでは無く、真面目に授業を受けるフリが劇的に上手くなった位の変化である。
しかし反面、その頭脳を惜しげも無く
高校に入ってからは多少取り
唯一例外として、同じくクラスメートの白馬
「だからコナンくんも今の友達は大切にね。あんまり知識ひけらかしても良い事無いよ。」
興味津々に根掘り葉掘り聞きたそうな“
「あ、ほら機内サービス来たよ!
(逃げたな…。)
ギャレーから出てきたキャビンアテンダントを指差し、そそくさと自身の席に戻ったコナンに半ば呆れつつも、カートを押してきたキャビンアテンダントに向き直る。
「洋菓子と和菓子、どちらになさいますか?」
「洋菓子お願いします。」
「あ、同じく洋菓子で!」
「お飲み物は何に致しましょう?」
「紅茶をお願いします。」
「ウーロン茶ください。」
「かしこまりました。」
受け取った紅茶を1口飲み、マドレーヌを
もし、“
(…何を考えているんだか……。)
怪盗と探偵、それこそが自分たちの間にある唯一だろうに。
自身の思考に思わず笑いながら、溜息を1つ
「コーヒーを。お菓子はいらないわ。」
「かしこまりました。」
キャビンアテンダントが
「
「ん?」
不意に
「ちょっとトイレに行って来るね。」
「トイレなら前と後ろにあるみたいだけど…。」
そんな話をしている間に、前のトイレへ入っていた
ちょうどその様子を
(女優の割に顔に出過ぎ……。)
内心苦笑しつつ、ゆったりと席に座り直す。
数分して
トイレに入った
「ちょっと、
酒井がそれを見て隣の矢口を促す。
直後、
「あれ?」
「ん?どうしたんだい?コナンくん。
「
「え?」
コナンの言葉に、世良が立ち上がって前を見やる。コナンはその間に席を立ち、カーテンの隙間からコックピットを覗き込んでいた。
「
「へぇ、あの人、元CAだったんだ…。」
その後、コナンが戻って来た直後に
それを見た矢口が立ち上がり、先程酒井に促されていたチョコレートの箱を差し出す。
「
「ありがとう。」
箱の中の数種類のチョコレートの中から、1つを選び
「毛利さんもいかがですか?」
「ああ、いただきます!」
矢口が小五郎にもチョコレートを勧めている間に、
その途端、
映画では、
予告状を出した直後、
元々の酒井の殺意の
だからその証拠と、これまでに
“手を汚すのではなく、世間に公表して味方を作る方が建設的ですよ。”
“あなた程の腕を持つ“アーティスト”が、堕ちる必要はありません。”
“あなたと同じような被害に
その言葉は、思い留まらせるだけの方便ではなく、
それが伝わったのか、酒井は思い留まった。
“そうね。あんな奴の為に一生を棒に振る事は無いんだわ。”
そう言って笑った酒井は、まるで
その笑顔を見て、
これでこの人は大丈夫だ、と――――――――。
だから、
矢口が差し出したチョコレートは、
全てに睡眠薬が仕込んである。
効力は口にしてから2~3分後。持続性はさほど無く、30分程度で目覚めるように調整してあるが、その代わりに服薬してから5~20分前後は眠りが深くちょっとやそっとの事では目覚めない。
アルコールを摂取している状態での睡眠薬の服薬は
そして、それからきっかり10分後。席を立ち、前のトイレへと進んだ。
小五郎は腕を組んで大イビキをかき、
その横を通り過ぎる一瞬の間に、右手の薬指から“運命の宝石”を抜き取り、代わりに精巧に作った偽物とスリ換えた。
まして、スリ換えた指輪は
光りに
スリ換えるシーンも、時間にして1秒足らず。
ずっと
(良し…。)
スリ盗った“運命の宝石”を隠し、トイレを出る。
(後は乗り切るだけ…。)
内心でほくそ笑みながらも、何食わぬ顔でそのまま席に戻った。
これで後は無事に函館に着くのを待つだけ、と一息
後方からキャビンアテンダントの進藤の困惑した声が聞こえてきたのは。
「お客様、こちらはスーパーシートになりますのでチケットをお持ちでない方の出入りは……。きゃあっ!!!」
「「「!?」」」
突然上がった悲鳴に、コナンと世良、そして
「おっと!動くなよ…。下手に動くとコイツの
進藤を後ろから拘束し、その
「余計な真似をするなよ…。コイツを殺したくなきゃな…。」
「な?!」
コナンの息を呑む声に、
(ハイジャック………?!)
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“貸し”の清算
“銀翼の奇術師編”完結です。
ちょっと自分の中での消化不良感が否めないので、後々手直しするかも。…。
誤字報告、お気に入り登録、評価どうもありがとうございます。
「きゃあああああ!」
「なっ?!」
「うるせェ!!!静かにしてろ!」
怒鳴り付ける男に、スーパーシートに座る者たちの緊張が一気に高まる。
蘭と世良、そしてコナンが男の隙を窺っているのが分かるが、その立ち振る舞いには一切の隙が無い。
その間、
これが犯罪組織による計画的なものであるならば、近くに仲間がいる
(たぶん、単独犯……。)
周囲にいるのは一般人ばかりで、乱入してきた男の他に殺気立った気配などは感じない。
男の身長はおよそ180cm前後。一見するとビジネスマンにも見えるかっちりとしたスーツ姿だが、ジャケットの上からでも鍛えられた体付きが分かる。
年齢は恐らく30代前半。
やや目付きが悪いものの、これと言って特徴の無い、集団に溶け込みやすい風貌をしている。
しかし、ハイジャック犯の男が纏っている空気は、間違い無く裏社会の人間の
(スネイクの手下……?!でも、それにしては…。)
一瞬、“怪盗キッド”を狙う“組織”の差し金かとも思ったが、ハイジャック犯の目を見て、嫌な予感が込み上げる。
どこか
(まさか………。)
厄介な事に、手にしている暗器の他に、手荷物検査をどう
また、堂々と顔を
「動くんじゃねェぞ?!この女を殺したくなかったら、黙って座ってやがれ!!」
蘭と世良、コナンが男の隙を窺っているのが分かるが、キャビンアテンダントの進藤の
「良――――し。そのまま大人しくしてろよ…?」
そのままコックピットの方へと進藤を拘束したまま歩いていく。
「開けろ。」
「で、出来ません!」
「開けろって言ってんだよ!」
「出来ません!っ痛……!!」
「ら、乱暴は
「うるせェって言ってんだよ!黙ってろ!!」
その様子に、
「開けろ…!殺されてェか………?!」
その、
(仕方無い……。)
このままでは死人が出る。
“怪盗キッド”のステージを血で汚すなど、この自分のプライドが許さない。
コックピットへ続くドアのしっかりと閉じられている事を確認し、
ポンッ……!
カッ!
男の顔スレスレにトランプが突き刺さった瞬間、
プシュウゥゥゥ――――――――ッ!!!
トランプに仕込まれた催眠ガスが噴き出す。
「な?!吸っちゃダメだ!鼻と口を押えて!!」
「!!?」
ガスは瞬く間に2階のスーパーシート周辺に広がった。
ズル…、ドサッ…!
ハイジャック犯の男は、進藤を拘束したまま意識を飛ばし、床に崩れ落ちた。
そして、それは他の乗客たちも同じ事。
いち早くガスの発生に気付いたコナンと、その忠告に即座に従う事が出来た世良を除き、スーパーシートに座っていた全ての乗客たちが眠りに付いた。
ほぼ同時に、スーパーシート周辺に充満していたガスが空調によって散っていく。
「《全く…。余計な邪魔が入ったものですね……。》」
“瀬戸瑞貴”の声で独り
「《やれやれ…。少々お転婆が過ぎるのでは?》」
「チッ……!」
世良が攻撃の体勢に入った一瞬を見抜き、即座に屈んで
「避けるな!」
「《無理を
間髪入れずに第2撃に移ろうとする世良に警告する。
「《それ以上、近付かれない方がよろしいかと…。》」
「?!世良の姉ちゃん、危ない!下がって!!」
「!?」
世良よりも低い目線であるが
「コナンくん…?どうして止めるんだい?!」
「良く見て!このまま突っ込んだら怪我するよ…!」
「?これは、ピアノ線……?!」
コナンの言葉に、自身が今まさに突っ切ろうとしていた箇所を見直した世良が目を見開く。
先程世良の蹴りを避け、後方に退避した際に、座席を利用する事で通路に張り巡らせたワイヤートラップである。丸いボタンが2つ重なったような形状のケースに収納させてあり、ボタン状の
それを通路を横断させるように左右の座席にそれぞれ貼り付けたのだ。
「《ご安心を……。ピアノ線よりも太くしてありますから、切れる事はありませんよ…。ただ、少々
このワイヤー、肌を傷付けるような事が無いように通常のピアノ線よりもやや太くしてある。そして、最大の仕掛けはワイヤーに触れる事で大人が動けなくなる程度の電流が流れる、スタンガン形式の一種のブービートラップだ。
「今の一瞬で良くこれだけの罠を張ったな……。」
驚愕を通り越して半ば呆れた顔の世良が溜息を
「
世良の目を気にしてか、わざわざ“姉ちゃん”呼びのコナンがギリギリと
「《もちろん、ご無事ですとも。ただ、悪天候の為に飛行機が2時間遅れる、と偽装メールを送らせていただいただけですから……。》」
「なら良いけどよ…。」
「それより、ここは高度1万フィートの密室…。どうやってここから逃げ出すつもりだい?」
世良の言葉に、
「《そろそろ“貸し”を返していただこうかと…。》」
「“貸し”?」
「げ…。」
心当たりは全くありません、といった様子の世良とは対照的に思い当たったコナンが
「《そこの小さな“名探偵”と、先日お約束したのですよ…。彼に協力する代わりに、1度は私の仕事を邪魔しない、とね…。》」
「そうなのかい?コナンくん。」
「うん…。この前のベルツリー急行でちょっと助けてもらって…。」
「あの時か!偽のメールでボクを騙した時!!……でも、助けてもらったって一体何をしたんだい?」
「ちょっとね……。」
言葉を濁すコナンにちょっと首を傾げた世良だったが、「でも、ボクには関係無いけど?」と続ける。
「むしろ、この前の“借り”を返すにはちょうど良い機会だね…!」
自身の顔と名前を勝手に使われた事に腹を立てていたらしい世良が好戦的に笑うが、
「《そうそう…。言い忘れていたのですが、このガスの効果は約5分程…。早くその男を拘束しないと、そろそろ目を覚ましてしまいますよ?》」
「「それを早く言え!!」」
慌てて2人がかりでハイジャック犯を拘束しにかかるコナンと世良を尻目に、
ボンッ!!
ゴオォォオ……!!!
激しい音を立てて非常ドアが吹っ飛び、機内に風が吹き荒れる。それと同時に、着ていたサマーセーターとジーンズを脱ぎ捨てた。
「キッド?!」
「何を?!」
吹き荒れる風に、ハイジャック犯を拘束していたコナンと世良がハッと顔を上げ、“怪盗キッド”の衣装を纏った事に驚愕する。
「《それではまたいずれ…。月下の淡い光の
言うや否や飛行機の外、高度1万フィートを超える上空へと身を躍らせる。
ゴ、オォォオオオォオオオ…………!!!!
そのまま自然落下に身を任せる事数十秒、眼下に北海道の街の灯りが見えたのを確認してハンググライダーを開く。
「取り
まぁ、“運命の宝石”自体は手に入れた後だったのが幸いだった。元より偽物とは分かっているが、“怪盗キッド”が1度盗むと宣言したものを盗めないのは
いつも通り中森警部に送り返す時に、ついでに“偽物”を“本物”と偽って公表した事についてマスコミにリークすれば良いだろう。酒井の告発の後押しくらいにはなるだろうから…。
北海道の上空を滑空しながら、
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幕が下りた後で
8月13日付けランキングで14位ありがとうございます。
ご感想、評価、誤字報告どうもありがとうございました。
865便のハイジャック未遂から4日、学校から帰宅したコナンは珍しく少年探偵団たちとの集まりも無く、毛利家のリビングに寝転がってテレビを眺めていた。
『女優の牧樹里さんがモラルハラスメントで訴えられてから今日で3日。それを受け、次々と被害を訴える若手女優やスタイリストが続出し、芸能界に波紋を広げています。牧さんの所属事務所前には連日報道陣が詰めかけますが、未だ正式なコメントは無く、……』
ピッ…!
『“怪盗キッド”により偽物と発覚した、牧樹里さんが所有する“運命の宝石”を鑑定した鑑定士が無資格である事が明らかになりました。安価な偽物を本物と偽って鑑定書を偽装し、値段を吊り上げ、その見返りに多額の報酬を得ていたとみられ、昨夜その鑑定士の自宅兼事務所に家宅捜索の手が……、』
ピッ…!
『先日、スカイ・ジャパン865便をハイジャックしようとした男の素性が明らかになりました。』
暇を持て余し、適当にザッピングしていたコナンの手が止まる。
寝転がっていた体を起こし、テレビのボリュームを上げた。
『男の名前は
「オイオイ…。」
『警察は“
「なるほど…。それで
あの時、幼馴染で親友である中森青子すら
「相変わらず“ハートフル”な奴…。」
あの時、
コナンが
『
そこで画面がワイドショーのスタジオへと切り替わる。
コメンテーターやゲストの女優などがあーだこーだと議論を交わす様子を数秒眺め、コナンはテレビを消した。
「あのヤロー、今度会ったら覚悟しとけよ…!」
無理矢理にでも借りを返してとっ捕まえてやる…!
コナンが内心で誓った、その同時刻―――――…。
「へっくち…!」
「どしたの?」
掃除中に突然くしゃみをした
「ん~?わかんない。
すん、と軽く鼻を啜りながら
(今、“名探偵”の声が聞こえた気が…。)
ゾワリ、と嫌な予感に背筋が震えるが、気付かないフリをして青子に尋ねる。
「そう言えば青子、私の荷物ってまだ返してもらえないのかな?おじさん、何か言ってなかった?」
「あ、ゴメンわかんない。今日帰ってきたら聞いてみよっか?」
「お願いして良い?」
「オッケー!」
865便に置き去りにした、“
あの段階でのエスケープははっきり言って不本意だった為、荷物は全部置いてこざるを得なかったのだが、あの後に用意していた荷物が自宅から無くなった、と被害者のフリをして中森に相談したのだ。
用意しておいた“キッドカード”を見せれば、中森は読み通りに“怪盗キッド”が
見られて困る物は全て身に付けていた為、鞄に入っていたのは着替えの他は財布や携帯、化粧ポーチ位である。調べられてマズイ訳でも無いが、数日経つのに未だに1度も話題に出ていない。
まぁ、中森も色々忙しい身であるのでまだ調べ終えていないのだろう、というのは想像が付く。そういう証拠品は得てして調べるのに時間がかかるものだろうから。
しかし、“普通の高校生”なら何日も自分の荷物が返ってこなかったらまず話題に出す。
わざわざ青子に尋ねたのはその為でもあるのだ。
「財布はまだしも、携帯が無いと色々不便で…。青子んちの電話借りてママには電話出来たから、心配はしてないと思うけど…。」
駄目押しのように口にすれば、青子は「任せて!」と力強く頷いた。
「あれから4日経つもんね。お父さんせっついてみるから待ってて!」
携帯が無いのはさぞかし不便だろう、と青子が頼もしく請け負ってくれたのを「よろしくね。」と微笑む。
(まぁ、“仕事用”の携帯は持ってるから支障はそれ程無いんだけどね…。)
内心で舌を出しつつ、呟く。
しかし、今時の女子高生の手元に携帯が無いのに文句の1つも言わないのは逆に怪しいので、それはそれ。これはこれ。
イレギュラーな事態のせいで肉体的にはそうでも無いにしろ、精神的な疲れが後でどっと襲ってきた前回の“仕事”を思い返し、次の“仕事”は少し控えよう、と内心で決めた―――――…。
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三世との邂逅編
屈辱と怒り
今回から新章突入です。
以前質問にもあった“あの人”が登場。
お気に入り登録、評価、誤字報告ありがとうございます。
満月が都心の空を彩る夜、月島川近くの宝石店では数十人の警官と野次馬、4台の装甲車がその近くを固め、物々しくも興奮と熱気に包まれていた。
「「「「「「キッド!キッド!キッド!」」」」」
「警部!全車配置に着きました!」
「うむ!」
野次馬‐
「「「「「「キッド!キッド!キッド!」」」」」
キッドファンの興奮が最高潮に達した時――――――――。
「キャ――――――――ッ!!!キッド~~~~!!!!」
宝石店の入ったビルの前のファンが黄色い声を上げる。
中森がビルを見上げると、“怪盗キッド”が屋上の
「キッド―――!頑張って―――――――っ!!」
「逃げて―――――――!!」
「手ェ振って――――――!!」
「こっち見てキッド―――――――!!」
それを目にしたキッドファンの女性たち‐通称:キッドガールが一斉に騒ぎ出し、キープアウトのロープから身を乗り出す彼女たちを側の警官たちが必死で抑える。
「出たなキッド!全員配置に着け!!」
「「「「「「ハッ!!!」」」」」」
中森の指示に警官たちが一斉に配置に着く。
その様子を屋上から眼下に眺めながら、“怪盗キッド”が手にしたダイヤを掲げ、不敵に微笑む。
「フフ…。確かにダイヤは頂きました。」
「「「「「「キャアァアアアアッ!キッド――――――!!!」」」」」」
一斉に上がったキッドガールの歓声を、数十m離れた場所で愛用のバイクに
「一体、何者………?」
これまでの、有象無象の偽者たちとは明らかに格の違いを感じさせる身のこなし…。
最近
盗みの手口も、付け焼き刃などではあり得ない“本職”の手際。
その2つを併せ持つ相手など、業界広しと言えどもそう多くはない。
(まさか……!?)
その中でも、わざわざ“怪盗キッド”に化けるなんて愉快犯的な事をやりそうな“大泥棒”に、1人だけ心当たりがあった。
「キッド捕獲作戦開始―――――!!」
中森の指示で、指令車のオペレーターが「全車、タービンスタート!!」と無線機に叫ぶと同時に、4台の装甲車の天井が一斉に開き、巨大なタービンが現れる。
ジェット機のような凄まじい轟音と共に、空気が一斉に吸い込まれ始めた。
ビルを取り囲む4台のタービンを見下ろした“怪盗キッド”が、その純白のマントを
「キッドは西へ!」
「2号車、4号車、パターンBへ移行!」
指令車のモニターにビル周辺の地図が映し出され、風の流れが表示された。2号車のタービンによって、街路樹が大きく揺れ始める。
ビルの屋上からハンググライダーで飛び立った“怪盗キッド”だったが、その直後にサーチライトで照らし出され、ほぼ同時にタービンからの強力な突風に襲われる。
下からの突風に、ハンググライダーは崩れ、身動き出来ないまま“怪盗キッド”が回転しながら上空へと舞い上がっていく。
月島川の方向へと飛ばされていく“怪盗キッド”に、
グォオオ…オン…!!!
警官に発砲してその包囲網を抜け、月島川を屋形船で
もし、あの“怪盗キッド”が
ヴィイイイ……!!!
ザアァアアア――――――!!!!
唸るようなモーター音と共に、水面をかき分ける音が響く。
「?!」
思わず
「待てぇ、キッド!!」
月島川をスケートボードタイプの水上ジェットで
「………とうとう水上まで制覇したんだ、“名探偵”…。」
あの小さな体で、あの身体能力は一体何なんだ。
一刻も早く回り込まなくてはいけないのだが、一瞬放心してしまう。
だが、いつまでも呆けている時間など無い。
グオオオオ………ンン!!
気を取り直して大通りへの最短ルートを爆走する。
あのまま
しかし、一瞬でも放心してしまった事が仇となり、
これ以上近付いては気付かれる。
仕方無くバイクを停止させ、裏道から大通りへと繋がる路地に身を潜ませ、150m程後方からオペラグラスで遠ざかるカーチェイスを眺める。
スケボーで疾走しながらえげつない威力のサッカーボールを蹴り飛ばすコナンに、“公共の道路で迷惑な…”と内心冷や汗を流す。
しかしその直後、アルファロメオから飛び出した人影に、
「でぃや―—――――っ!!!」
という気合と共に、抜き放った日本刀で“名探偵”のスケボーを縦に真っ二つに斬り裂くなど、そんな芸当が出来る剣の達人など他にいない。
辛くも地面に着地したもののバランスを崩し倒れ込み、また追跡手段を失った事で悔し気にアルファロメオを見送る“名探偵”の様子をオペラグラスで確認しつつ、
「13代目石川
この業界で知らぬ者無し。
彼の“大怪盗”アルセーヌ・ルパンの孫にして、世紀の“大泥棒”。
“ルパン三世”。
彼の“大泥棒”が何故わざわざ“怪盗キッド”の名を
「良くも“怪盗キッド”の名に傷を付けてくれたわね……!」
これが“黒羽
既に鬼籍に入ってしまった父の存在を感じる事が出来る、言わば
“怪盗キッド”は決して人を傷付けない。実弾入りの銃など
それを勝手に名を
いくら相手が彼の“大泥棒”と言えども決して赦される事では無かった。
「見てなさい…。この屈辱、必ず返してあげる………!!!」
激しい怒りをその瞳に宿し、いっそ恐ろしささえ感じさせる艶やかな微笑みを浮かべながら、
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If Stories
IF Story
評価、お気に入り登録、ご感想ありがとうございます。
・黒羽家と工藤家はト〇とジェリーの関係(つまり仲が良い)。
・今回全く出て来ないけど、盗一さんは今日も元気にマジシャンとキッドの二足の草鞋。
・描写無いけど、千暁の前世の記憶はまだ戻って無い。
・千暁が2代目キッドじゃなくて2代目怪盗淑女(完全な義賊設定)。
・突然始まって突然終わる。
・矛盾点をスルー出来る人向け
・難しい事を考えずにライトに読んでください
「アホ、マヌケ、お調子者、目立ちたがり、ドジ、スカポンタン、えーっとそれから…。」
「………良い加減にしろよオメー、久しぶりに会ったってのに
顔を合わせるなりボキャブラリー豊かに
っつーか、スカポンタンって何だ。
そんな疑問を綺麗に丸っと無視してくれた昔
「ってか、前から思ってたんだけどさぁ…。新一って実は馬鹿でしょ?」
心底馬鹿にし切った目で見降ろしてくる彼女‐黒羽
昔からこの頭も
「ったく、最近連絡も無いし新聞でもニュースでも見かけないと思ったら…。“
「ちょっと待て……!母さん、一体コイツにどこまで
つい、勢いに押されていたものの、よくよく考えるとなんでコイツはオレの正体を知ってんだ?!と今更疑問が
思わず話を
「あら、
しかし、母までもパチクリと目を
「私を誰だと思ってるの?」
ふふん、とでも言いた気な
「2代目
取り
すなわち、“宮野
―――――――そして、無事に工藤邸で合流。
リビングにて
「で?何か私に言う事無いの?新一。」
「……悪ィな無理言って。お陰で助かったぜ。」
「………27点。」
もちろん、100点満点中だから。
一先ず礼を言わねばなるまい、と口を開いたコナンを、
「………えーと、せ、説明が後になっちまって悪かったな……?」
「49点。」
どうやら求めている言葉はこれではないらしい、と頭をフル回転させながら言い直すが、どうやらこれも違うらしい。
「えーっと…。お、オメェが化けてくれた奴はオレが今関わってる事件の……。」
「12点。」
今度は食い気味で採点された(しかも大幅に下がった)。
「新ちゃん、新ちゃん……。」
表情に出さないようにしながらも、既に
こしょこしょこしょ、と耳元で
「……………し、心配かけたみてぇだな。悪かった。」
「……悪かった?」
それまで1粒300円の高級チョコレートをひょいパクと
「ご、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした!!!」
その視線の鋭さに耐えかね、思わず敬語でガバリと頭を下げたコナンの
「全く…。何度家に電話かけても出ないし、パソコンにメールしても開封した様子も無い!おまけに家に来てみても庭は草がボーボーで業者を呼んだ形跡も無いし……!優作おじさんたちに連絡を取ってみれば変に
「や、ホント悪ィ……。」
そう言われてみれば、会う事こそ年に数回あれば良い方だが、メールや電話で何だかんだと連絡は取り合っていた。
それが半年以上も音信不通ともなれば、いくら何でも不審に思うのは当然だった。
「ホントにもう…!てっきり暴力団関係の事件にでも首突っ込んで口封じに殺されたんじゃないかと思ったんだから!」
「ははは…。」
(だいたい合ってやがる…。)
意外と的を射ていた
「よりもによって
「はっ……?って、ちょっと待て!何でオメーが黒ずくめの組織について知ってんだ?!」
一瞬、
「答えろ
ガッと
「何で知ってるかって…?何度も言うけど、私を一体誰だと思ってるの?」
コナンをソファーに転がした代わりに立ち上がり、仁王立ちで上から見下ろす
「…2代目…
そう、平成になっても名高き、昭和の女二十面相とも
いくら常人離れした頭脳と身体能力を持つ
予想を裏切り、彼女は今も尚
「わかってるじゃない。裏社会であれだけ影響力がある組織の事を私が知らないとでも思ってるの?」
個人的な情報網も持ってるしね。
そう言って呆れたような視線を送った
「ったく、もっと早く言ってたら話は早かったのに……。」
「は?」
一体どういう意味だと視線で訴えかけるコナンに、
「まぁ、もう手持ちの情報は既に取引に使っちゃったし?やっぱり日本人としては“お巡りさん”の味方をしないとね?」
意味あり気な笑みと
「なーんの権利も無い、余計な仕事ばっかり増やす“
「おい、それどういう意味……?!」
ボフン………!!!
コナンが問いただそうと声を荒げた瞬間、
「なっ…?
「じゃーね。チョコごちそうさま♡」
その言葉を残し、煙幕が晴れたそこには中身が空になったチョコレートの空き箱のみが置かれていた――――――――。
ホントは公安(降谷さん)の協力者になった千暁とか、怪盗キッドじゃなくて怪盗淑女を追う白馬くんとのラブコメ(セイント〇ールパロ)とか書きたかったんですが、力尽きました。
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IF Story 2
IFのの続きです。前回ちろっと匂わせた“お巡りさん”との関係が明らかになります。
たぶん、次回に続くとしたら“緋色の帰還”編ですね。
勝手知ったる昔馴染みの家。
土日の昼過ぎ、住宅街のこの辺りは午後2時から4時頃までの間は極端に人通りが少なくなるのだ。
本来の住人である昔馴染みも、その両親も、そしてその許可を得ている間借り人も現在は留守。
両親は海外で、昔馴染みは小学校の同級生と隣人の博士と一緒にキャンプ。間借り人も隣人の少女の護衛でそれに同行している。
そんな中、密かに工藤邸に侵入した
1番怪しんでいた洗面所には変装道具の
ならば、寝室もしくは書斎の2択。
そう当たりを付けて忍び込んだ客用寝室の1室。ベッドの下には見当たらなかったが、枕を持ち上げれば拳銃が隠されていた。
(ビンゴ♡)
“依頼人”から渡されたスマホで静かにその様子を撮影し、即座にメールで送る。シャッター音がしないのは助かるが、一応捜査用だというのにかなりの犯罪臭がするのは
(いや、人の事は言えないんだけどさ……。)
完全に非合法的な手段で忍び込んだ自分が言える事では無いが……。
まぁ、それはそれ。これはこれ。
依頼をこなしてとっとと撤収するべきである。
いくらセキュリティーを無効化しても、人目についてしまったら何の意味も無い。
本腰を入れて探せば、出るわ出るわ…。
クローゼットの中に隠されたギターケースの中にはバラバラに分解されたライフル、そしてその
(ラッキー…!)
持参したビニール袋に入れて丁寧にしまい込む。
本来なら指紋も採取したいところだが、
残念だがそれは出来そうに無かった。
写真に収めてメールで送った後、全てを元通りにしまい込む。
(次は、と………。)
場所を書斎に移す。
本来、この
手早く自身が持ち込んだモバイルパソコンと繋ぎ、ノートパソコンを起動させる。
カシャカシャカシャ……!
モバイルパソコンを操作し、自作のハッキングシステムを起動させれば、わずか2秒足らずでノートパソコンのパスワードが解除された。
(良し…!)
そのままモバイルパソコンにUSBメモリを差し込み、ノートパソコンの全データのコピーを開始する。
コピー終了までおよそ3分。
その間に、書斎の中を探す。
そして、机の引き出しから盗聴器の受信機を見付ける。
電波の発信源を確かめれば隣家のリビングと寝室、地下の研究室に仕掛けられているようだ。
(はい、アウト――――――――♡)
もちろんそれも写真に収め、メールで送信する。
(さて、と…。そろそろ撤収した方が良いかな……。)
データのコピーも終わったようだ。
そろそろ潮時だろう。
ノートパソコンをシャットダウンし、モバイルパソコンとUSBメモリをしまい込む。
最後に物の配置が元通りになっている事を確認して、そのまま工藤邸を後にした。
カランカラン……♪
「いらっしゃいませ―――♪」
「いらっしゃいませ。」
軽やかなドアベルの音と共に足を踏み入れたのはポアロ。
「お1人様ですか?」
「はい。」
ただの店員として接してくる“依頼人”に、
「それでは、カウンターへどうぞ。」
もう1人の店員である梓がカウンター越しに出してくれたお冷を1口飲み、注文する。
「日替わりケーキセットをアイスティーでお願いします。」
「はい、少々お待ちください。」
笑顔で頷く梓や他の客に悟られぬように、指先でカウンターを軽く3回ノックした。
ノック3回は渡す物がある、という合図。
そしてその後は普通にケーキ(ベイクドチーズケーキだった)とアイスティーを
それを見て、すかさず“依頼人”‐
財布から千円札を出す際に、他人には悟られないように例のUSBメモリをその下に忍ばせ、手渡した。
USBメモリの感触を確かめて一瞬笑みを深めた
「470円とレシートのお渡しです。ありがとうございました。」
「ありがとうございました―――――!」
カランカラン…♪
そして、ポアロから充分離れた事を確信した後で、レシートに重ねられて渡されたメモに目を通した。
“20時にいつもの場所で”
(了解…。)
となると、
ここから江古田の自宅まではバスを利用して30分程。
…が、ちょうど良いバスが無ければもう少しかかるだろう。
現在は午後4時。すなわち16時を少し過ぎたところ。20時、午後8時までは多少時間があるが、移動時間と準備等を考慮した場合、そこまで余裕がある訳でも無い。
(……バイク使お…。)
たぶん、それが1番手っ取り早い。
――――――――4時間後、
自宅から駅までバイクを飛ばし、その後駅のトイレで着替えたのである。
セミロングの亜麻色の髪に、背中の大きく開いた黒いワンピースにシルバーのピンヒール。耳には小粒だが本物のパールとダイヤモンドをあしらったゴールドのイヤリング。そして、胸元には同じデザインのペンダント。
顔もよくよく見れば面影があるが、一見して
服装とメイク、何よりもそのこなれた雰囲気も相まって、今の彼女を高校生と気付く者はいないだろう。
「お待たせしました。」
『遅かったじゃない。』
20時からやや遅れて登場した
「すみません。埋め合わせはしますから……。」
『ホントに~?』
「もちろんですよ。…場所を変えましょうか。下のレストランを予約しているんです。」
そう言って
―――――そして場所を移した中華料理店の個室で、盗聴器のチェックを終えた後。
それまでの“仮面”を取っ払い、本題に入っていた。
「君のお陰で、僕の予想を確信に変える事が出来たよ。」
「いえいえ…。こちらも色々
そう。公安に協力する事と引き換えに、これまで
これまで行ってきたのも、ほとんどが犯罪者の告発である為、被害届もほとんど提出されていない事から不問にされたのだ。超法規的措置ではあるが、罪に問うよりも引き込んだ方が有益と判断された為である。
「そうそう…。“チェック”をかけるつもりなら、1つアドバイスを……。」
「アドバイス?」
実に嬉しそうに話す
「“あの
「……それは、“平成の女二十面相”が協力してくれる、という事かな?」
キラッと目を光らせた
「お望みならば。………そもそも、私“平成のホームズ”たちにはまだちょっと怒ってるんですよね。」
「…と言うと?」
「だってそうでしょう?自分の実力を過信し過ぎて死にかけた挙句にあんな
「へぇ?」
“あの
「君、
「直接は無いんですけどね…。私の
「……やはり君とは上手くやっていけそうだよ。」
「私もそう思います。」
――――――――その後、“作戦会議”は日付が変わる間際まで続いた。
某“赤い人”嫌いの2人が手を組んでアップを始めました。
………続くと良いな…。
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IF Story 3
そして次回に続きます。
今回は、前回チラッと存在だけ匂わせていた“友人”のご登場。
IFなのでなんでもあり、という方だけお進みください。
一応、次回で経緯については説明する予定です。
今回主人公あんまり出ていない上に、安室さんの登場も中途半端ですが、導入部分なのでご了承ください(汗)。
お気に入り登録、評価ありがとうございます。
そして7月18日付けのランキング2位ありがとうございました。1桁台初めてだったので、思わず興奮しました(笑)。
誤字報告もどうもありがとうございます。
ピンポーン…!
夜の
「はい…。」
『宅配便です!』
宅配便との返答に玄関を開けた
「こんばんは…。初めまして、
「はぁ…。」
宅配便業者とは思えない男‐
「少し話をしたいんですが…、中に入っても構いませんか?」
「ええ…。あなた1人なら。申し訳ありませんが、外で待たれてるお連れの方たちはご遠慮願います。お出しするティーカップの数が、足りそうにないので…。」
一旦は
「気にしないでください。彼らは外で待つのが好きなので…。でも、あなたの返答や行動次第で全員お邪魔する
しかし、
―――――――――そして、通されたリビングで
「ええ、まあ…。」
紅茶を出しながら頷く
「では、まずその話から…。まあ、単純な死体スリ替えトリックですけどね…。」
「ホォ―――――――…。ミステリーの定番ですね…。」
「ある男が
「
「その携帯に残っていた指紋ですよ…。その男はレフティ…、左利きなのに…、
表情こそ柔らかいままの
「携帯を取った時、偶然利き手が何かで塞がっていたからなんじゃ…。」
「…もしくは右手で取らざるを得なかったか…。」
「ほう、
表面上は穏やかなやり取りの2人だったが、もし
「その携帯はね…。その男が手に取る前に別の男が拾っていて、その拾った男が右利きだったからですよ…。」
「別の男?」
「ええ…。実際には3人の男にその携帯を拾わせようとしていたようですけどね。さて、ここでクエッション…。最初に拾わせようとしたのは
「………。2番目の
「ええ…。」
わずかな沈黙の後で見事に正解を導き出してみせた
「でも、
「付かない
「恐らくその男はこうなる事を見越し…、あらかじめ指先にコーティングを
「成程…。なかなか興味深いミステリーですが…。その撃たれたフリをした男、その後どうやってその場から立ち去ったんですか?」
「その男を撃った女とグルだったんでしょうから、恐らくその女の車にこっそり乗り込んで逃げたんでしょうね…。離れた場所でその様子を見ていた…、監視役の男の目を盗んでね…。」
「監視役がいたんですか…。」
「ええ…。監視役の男はまんまと
――――――そして、
ピーンポーン、ピーンポーン……!
「はいはい…!誰かな?」
ドタドタと玄関に走り、ドアを開けたのはこの家の主たる
「夜分すみません。」
「君は……?」
立っていたのは2人の女性。うち1人は、
「お久しぶりです、
「お、おお…!
「良かった、覚えててもらって……!」
「それでまた、今日は一体どうしたんじゃ?」
「突然ごめんなさい。でも、どうしても新一には内緒でお話したい事があって……。」
「ん?」
「おーい、
「はいはい…。」
リビングのソファでファッション誌を
「あ、お構いなく…。それよりも、彼女‐
「「?!」」
立ち上がった
「ち、
「あなた…。一体何者なの?!」
笑って
「
「え…?」
それまで、
「
「そ、の声…!嘘でしょ…?まさか………?!」
そして、誰よりもその声に反応したのは
現れたのは、短いが良く手入れされた艶やかな黒髪に、やや垂れ目がちな黒い瞳。普段、優し気でありながら強い光を宿すその瞳は、涙で
「お、お姉ちゃん……?本当に、お姉ちゃんなの………?!」
驚愕と期待、そしてもし違っていたらという不安で動けない
「本人ですよ。正真正銘、あなたのお姉さん‐宮野明美さんです。……
目を伏せられて告げられた言葉に、まだ大部分で理解が追い付かないながらも
目の前にいるのは、正真正銘自身の姉であると。
1度は
「お姉ちゃんっ………!!!」
理解したと同時に、
しかし、
「
飛び込んできた
「お姉ちゃん、お姉ちゃん、お姉ちゃん……!
「ゴメンね、
状況の全く理解出来ない
これで、
(降谷さん、後はお願いしますよ…?)
ここが、あのいけ好かない
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もし、千暁と快斗が双子の兄妹だったら
ネタに詰まったのでちょっと息抜きにIFバージョンをアップします。
今回は、これまでに上げていたIFとはまた別の設定で、快斗が双子の兄として存在する世界。
“怪盗キッド”は快斗で、千暁は寺井と共にそのサポートに徹しています。基本的な性格やスペックは本編とさほど変わりありませんが、前世の記憶は無し。
“まじっく快斗”原作を知らない人にはやや不親切。
白馬に快斗の正体がバレたところから始まります。
突然始まって突然終わるので、何でも許せる人向け。
それでも良い方のみどうぞ…。
「転校生に正体がバレたかもしれない?」
今夜の“仕事”への最終打ち合わせを行っていた
「ああ…。まぁ、大丈夫だって!証拠なんざ残してねェし、疑いは1度晴らしてるしな!」
心配する
(白馬
どんな方法で快斗=“怪盗キッド”と悟ったのかは定かでは無いが、“高校生探偵”という肩書は伊達では無いらしい。そして、その正体を明らかにする手段があるのだろう。
でなければ、わざわざ“怪盗キッド”が予告を出した美術館に快斗を招待したりなどしないだろうから。
しかし、厄介な事になった。
例の“赤魔術”の“魔女”がわざわざ警告してくる位である。決して楽観視出来る状況では無いというのに、いまいち快斗には自覚が足りない。
楽観的な
(前の青子の遊園地デートの時とは、状況が違う……。青子は快斗を信じてくれているから、多少不自然な事があっても無意識に除外してくれてたけど、今回は完全に“怪盗キッド”が快斗だと確信されてる………。)
やっぱり、“例の手”でいくべきか。
「快斗。」
「あ?」
「美術館への招待、受けちゃったんでしょ?」
「おう。安心しろよ。オレ様にかかりゃー、あーんなヘボ探偵の1人や2人、
ケケケ、と楽し気に笑う快斗に目を
これは何を言っても無駄だ、と早々に悟る。
快斗はプライドが高い。
IQ400とも言われる天才的頭脳に、超人的な身体能力。そしてアマチュアとは思えない程のマジシャンとしての才能…。
これまで、いずれか1つの分野だけでも快斗に並び立てる者は同世代にはいなかった。
片割れである
そして、この数ヶ月の間に
元々楽天家で調子に乗り易い気質は、それによって更に増長されてしまった。
1度痛い目を見れば改めるだろうが、今回はそんな悠長な事は言っていられない。一歩間違えば即逮捕の危険性があるのだから。
(しょうがない“お兄ちゃん”なんだから……。)
まぁ、それをサポートするのが
内心で溜息を
快斗の驚く顔を想像しつつ、今夜のシミュレーションを行う
――――――――その夜、大島美術館。
時刻は“怪盗キッド”が犯行を予告した時間、午後9時の1分前。
その場にいたのは、中森警部率いる警官達と高校生探偵の白馬
「警部、予告1分前です!」
「ウム!」
警官の1人が中森警部に予告時間まで後わずかに迫っている事を告げる。
(よーし、そろそろキッドに変身するか…。)
「あれ?快斗、どこ行くの?」
快斗がひっそりと宝石の展示してあるフロアから姿を消そうとした途端、目ざとくそれを見付けた青子が快斗に行き先を尋ねる。
「トイレだよ、トイレ!!」
「いってらっしゃーい!!」
快斗の切り返しに頬を赤らめた青子が見送った直後、ガシャッ!と音を響かせて快斗の右手を白馬が手錠で拘束した。
「へ?」
「そうはさせないよ黒羽くん……。」
「な、何の
突然利き手を拘束された快斗が、自身を拘束した張本人である白馬に詰め寄る。
「フフフ…。もうネタは上がっているんだよ…。キッドの残した毛髪から、彼が高校生だという事が判明したのだよ。そして現役高校生のデータとキッドのデータを照らし合わせていくうちに…、ある名前が弾き出されたのだよ…。黒羽快斗、君の名がね!!」
「んな…、偶然だよ偶然……。」
自信満々に言い切る白馬に、快斗が内心の動揺を押し殺したまま、ポーカーフェイスで否定する。
「フン、今に分かるさ…。怪盗キッドの予告時間になればね…。」
(くそぉ、何とかここから抜け出さなけりゃな…。)
快斗が打開策を見出そうとした時だった。
「警部、時間です!!」
「え、もう…?」
予告時間である午後9時になってしまった。
「よーし、者共抜かるなよ――――!!」
中森の
プシュ――――――――――――――ッ!!!!
「な、何だ…?!」
「何も見えない!!」
「ええい、慌てるな、奴だ!怪盗キッドだ!!」
慌てる部下を中森が
「《フッ…!ハハハハハハ…!ご機嫌、中森警部…。そして白馬探偵…。》」
煙幕が晴れ、展示ケースの上に“怪盗キッド”が現れた。
「何ぃ!?」
「そんな馬鹿な…!?」
快斗と白馬が上げた驚愕の声が重なる。
「《予告通り、宝石は頂いて行きます。それでは、またいずれ、月下の淡い光の
宝石を掲げ持った“怪盗キッド”がパチン!と指を鳴らすと同時に、館内の電気が一斉に消える。
「で、電気だ!早く電気を点けろ!!」
「く、暗くて何も…。」
「痛てて!!」
急な暗闇に目が慣れていな中森始め、警官達の悲鳴が上がった。その直後、バタンッ!と何かが開くような音が響き、フロアに風が吹き込んだ。
「ま、窓だ…!奴を飛ばすな!!」
中森の叫びから数秒後に電気が復旧したが、既に“怪盗キッド”は美術館から姿を消していた。
開かれた2階の窓から、美術館から飛び去る“怪盗キッド”のハンググライダーが視認出来る。
「キッドを追え―――――!今日こそ絶対に逃がすな!!」
中森の号令と共に、美術館内の警官が一斉にパトカーへと走り、追跡を開始する。
その様子を、快斗と白馬が半ば呆然とした様子で見送っていた。
――――――1時間後、黒羽家。
「ただいま――――…。」
「おかえり、快斗。」
まだ若干呆然とした様子で帰宅した快斗が見たのは、正体不明の“怪盗キッド”が盗んだ
「
「フフフ…。《私のショーはいかがでしたか?》」
クスクスと笑いながら、後半を快斗そっくりの声で尋ねる
「さっきのキッドはオメーだったのかよ?!」
「シ――――…。ご近所迷惑だよ…。青子に聞こえたらどうすんのさ?」
「ヤベッ…!」
「そ…。さっきの“怪盗キッド”は私。前に、青子に疑われた時に
「だからって、そんな危ねェ
心配そうに言い
「それはこっちの
にっこりと微笑む
「わあ―――――ったよ…。オメーに任せる…。そん代わり、絶対に無茶はするんじゃね――ぞ!」
「分かってるって。」
その後、
因みに、原作で快斗の代わりに“怪盗キッド”に扮した紅子は、千暁が身代わりになるつもりだという事を水晶玉で知ったので様子見のみに留まりました。
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最新話
“怪盗キッド”のプライド
今回の副題は“IQ400の本気”。本気でサブタイトルにしようかと悩みましたが、シリアスブレイクもいいとこなので自重しました。
さて、次回はいよいよ千暁の仕返しが始まります。今回はその導入です。
―――――翌朝、警視庁。
昨夜のルパン三世によるダイヤ盗難事件の捜査会議が行われる中、
適当な捜査員を眠らせ、用具入れに閉じ込めてトイレで入れ替わったのだ。
(濡れ衣は晴れたみたいだけど…。)
既に警視庁の発表により、昨夜の“怪盗キッド”がルパン三世の変装である事は一般市民にも告知されていた。それにより“怪盗キッドの発砲”という汚名は晴れたが、今度は“怪盗キッドが名前と姿を使われた”という屈辱を知られた事になる。
少しでもルパン三世の情報を得る為に捜査会議に紛れ込んだものの、そこでもたらされた情報は
(わざわざ“
ともすると剣呑になりそうな表情をポーカーフェイスに保ちつつ、
トレンチコートとソフト帽に身を包んだ壮年の男。ICPO‐国際刑事警察機構に所属する、ただ1人のルパン三世専属捜査官、銭形幸一警部。
そして、銭形が言うには今回ルパン三世が狙うのは“チェリーサファイア”と呼ばれる宝石。
そしてその根拠は…
「メールが来た。」
「「「「「「えっ?」」」」」」
銭形の答えに、
「メ、メールが来るんですか?」
「来るよ。返信は出来んがな。」
驚く目暮に銭形が自身の携帯を開いて見せた。
「見る?」
「見ます!」
「見たいです!」
一斉に銭形の携帯に群がる刑事たちに
「お~、絵文字!」
「とっつぁん、おひさ~、だって。」
「アドレス、フジコLOVEだって~!」
(アドレスが手に入るとは思わなかったな…。)
思いがけない情報に、内心ほくそ笑みながらもそのアドレスを頭に叩き込む。
本当にそのアドレスから送信されているが、妨害によりメールの返信が出来ないのか。
或いはそのアドレスは単なるブラフなのか。
どちらにしても、ネット上には痕跡が残る。わずかでも痕跡が残っているのなら、それを追う事は
上手くいけばハッキングでルパン三世の使う端末を特定し、そこから情報を抜き出す事も出来るだろう。
大した情報は得られないと思っていたが、意外な収穫だった。それだけでも忍び込んだ成果があるというものだ。
(中森警部への“借り”もあるしね…。)
ルパン三世のせいで月島がめちゃくちゃになってしまった為、指揮を執っていた中森は責任を取らされ現在謹慎中なのだ。
お陰で青子も落ち込んでいた。その点でもルパン三世は許し難い。
決意も新たにこれからの行動を決めながら、捜査会議が終わるのを待つ。
―――――黒羽家、
「さて、どうしてやろうかな…。」
自室のパソコンで、USBメモリにコピーしたデータを眺めながら
捜査会議終了後、何食わぬ顔で警視庁を出た
いつ足が付いてもすぐに捨てる事が出来るように、最低限の設備しか無いそれらは、万が一があっても
それらのアジトは、犯行前の下見や犯行後の小休憩に主に利用しているが、時折偽名と複数のIDを使って株取引などで怪しまれない程度に稼ぎ、怪盗としての資金にしているのだ。
そして、そのうちの最も新しいアジト‐月ごとに更新を行う単身赴任者向けアパートの一室で、
端末内のデータをそっくりコピーし、ルパン三世に気付かれないうちにハッキングを終了させた。所要時間はわずか4分足らず。海外の複数のサーバーを経由した為、仮にハッキングに気が付いても
念の為、ハッキングに使用したアジトももう廃棄した。元々長期出張者や単身赴任者向けの月ごとに更新するアパートである為、大家も急な退去には慣れているし、いちいち詮索もしてこない。
荷物は残したままだが、個人的な物は一切置いていないし、アジトを後にする前に徹底的に掃除をしてきた為、証拠になりそうなものは髪の毛1本すら残さなかった。
他のアジトも同じような形式のアパートがほとんどである為、万が一の場合はすぐに引き上げられるようにしているのだ。
“チェリーサファイア”の秘密も、ルパン三世の真の目的も、そしてこれから狙うつもりの獲物も全てが分かった。何なら、ルパン三世の目的そのものを邪魔しても良かったのだが、下手をすれば
ルパン三世の出した予告状の日付は明日。となると、近日中に全ての片を付けるつもりだろう。
(3日…、いやルパン三世が本気を出すなら2日もあれば十分……。)
奪われたヴェスパニア鉱石を奪い返すのに、そこまでの時間はかけられないだろうから。
世界の軍事的バランスをひっくり返しかねない、究極のステルス能力を秘めた鉱石。それが盗まれ、軍事国家に売り渡されようとしているとなれば一大事。
一瞬、ルパン三世よりも先に盗んでしまおうか、という考えが全く無かったかと言えば嘘になる。ヴェスパニア鉱石があれば、今後の“仕事”は一層楽なものとなるだろう。
しかし、
あの鉱石は、下手をすれば第三次世界大戦を引き起こしかねない、危険な兵器にもなり得る。このまま一般的には知られる事の無いまま、そっとしておいた方が良い。
世界の為にも、ヴェスパニアの国民たちの為にも。
ルパン三世に任せれば、適切な方法で処分するに違い無い。
あくまでもルパン三世の目的そのものは邪魔する事無く、しかし一泡吹かせてやる方法…。
「ちょっとねちっこいけど、まぁ良いか……。」
『 月が弓張りし夜
3度目の
“セレネの微笑み”を頂きに参上します。
怪盗キッド
PS.
“紛い物”とは違う、本物の“ショー”をお魅せいたしましょう。 』
――――――――半日後、大阪府警に直接予告状を送り付けた
一先ず適当に変装し、老夫婦としてチェックインしたホテルの一室で、
「いいえ。“怪盗キッド”の名が
詫びる
いつもなら急な計画には
まぁ、それも無理も無い。
“怪盗キッド”は、
それは
世界情勢の安定の為にルパン三世の邪魔をする事は出来ない。
しかし、泣き寝入りするなど“怪盗キッド”のプライドが許さない。
せめてルパン三世に恥をかかせる位の事はしないと気が済まなかった。
あの予告状はその表れ。
暗に“お前の変装はその程度”“猿真似とは違う“芸術”を魅せてやる”という思いを込めているのだ。最後の1文にそれが十二分に表れている。
そして、今回
本来ならば“ビッグジュエル”専門の“怪盗キッド”が狙う獲物では無いが、“セレネの微笑み”はルパン三世が今回密かに盗もうと計画していた、歴史的にも大いに価値のある宝石だった。
盗もうとしていた宝石を横取りされた挙句に、自分の変装を
ルパン三世にとっては、否自身の“仕事”にプライドを持っている泥棒ならばさぞかし屈辱だろう。
まして、最初に“怪盗キッド”の名に泥を塗ったのはルパン三世が先。それを更にやり返す事など出来まい。仮にやれば裏社会中の笑い者である。
「見てなさいよ…!絶対に赤ッ恥かかせてあげるんだから………!」
「その意気でございます、お嬢様!!!」
決意も新たに、
予告状を暗号風にしてみたんですが、意味が分かった方いらっしゃいますかね…?
一応、次回答え合わせあります。
PS.もっとがっつりルパンの邪魔とかさせようと思ったんですが、下手に邪魔するとコナン世界でガチに第三次世界大戦とか勃発しかねないので平和的?解決法に落ち着きました。
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