女性型ヴァンデルにTS転生した俺は… (小豆団子)
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登場人物紹介

登場人物も多くないので必要かどうかはわからないですが一応置いときます。

複雑な設定とかは無いので読まなくても問題ないです。

 

※6話辺りまでのネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨木 悠(あまぎ はるか)

日本で新社会人をしていた元男。現女性型ヴァンデル。今のところ転生なのか転移なのかは不明。こちらの世界では発音の違いからハルカと呼ばれている。本作の主人公。

見た目は十代前半の少女。小さめ。髪は深い闇の様な黒髪で腰位の長さでストレート。本人は確認していないが瞳は黄金で角は黒曜石に似た質感を持っている。角の数や生えている場所は両側頭部に三つずつ、計六本。小さく傾斜もなだらかなため触るか髪をかき揚げなければわからない。

当初は日本に帰るつもりだったが大好きな漫画の世界だと知り、少し寄り道(漫画主人公達の活躍を見る)しようと考えている。

 

 

 

ユーリィ

森で迷っていたハルカを見つけ住んでいるヴォルハ村まで案内する。

職業狩人、後バスター。年頃は十代前半だがハルカよりは上。両親は他界し妹と二人暮らし。

見た目は金髪緑眼優男。体型は未だ若い事もあってスラリとした手足を持っているが、触ってみると結構鍛えられているとわかる。髪は少しだけ癖っ毛。

ハルカのことは手のかかるもう一人の妹の様に思っている。ハルカが無防備で自分が女の子だと解っていないため自覚して欲しいと思っている。

 

 

 

ルチア

ユーリィの妹でユーリィと二人暮らし。年頃はハルカと同じくらいで十代前半。普通くらい。

見た目はユーリィと同じ色彩で金髪緑眼。髪は背中までで緩くウェーブしている。見た目の印象はおっとりした感じだが結構活発。

兄が拾ってきたハルカの事をお客様扱いしていたが、実は一目で気に入り心のなかでは保護対象に。世話をやく。

 

 

 

ラドヴァン

ヴォルハ村の村長でユーリィとルチア兄妹の後見人。わりとご老体。兄妹を実の孫の様に可愛がっている。

多分もう出番はない。

 

 

 

原作主人公勢

詳しくは原作かwiki参照推奨

 

ビィト

原作主人公。自称暗黒の世紀を終らせる男。ゼノン戦士団から才牙五つを受け継いでいる。ビィト戦士団の一員。

 

ポアラ

ビィトの幼馴染でビィトの嫁(ビィトが公言している)。

無鉄砲なビィトの言動に頭を悩ませつつも上手くフォローし手綱を握っている。ビィト戦士団の一員。

 

キッス

ビィトの修行時代の仲間で天撃の天才。頭の回転も速い。夢は世界一の天撃使いになること。少しヘタレだがやる時はやる男。ビィト戦士団の一員。

 

スレッド

修行時代にビィトと行動を共にしていた。現実主義者で理想を語るビィトと度々ぶつかっていたがちゃんと気にかけてくれるツンデレ。

 

ミルファ

バスター協会に認められたブロードバスターというバスターを管理する立場にいる実力者。ロマンチストでゼノン戦士団のゼノンに憧れていた。色々あってビィト戦士団と行動を共にすることになる。キッスのことを憎からず思っている。



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異世界迷子 プロローグ

転生


 

 

「………ここ何処?」

 

 

 気が付いたら森の中に立っていた。

 

 自分自身よく理解できずにいる。

 

 鬱蒼と茂る暗い森は非現実感のある風景にも関わらず、むせ返るような草木の匂いや大地の感触を五感に伝えてくる。

 確かに此処にあるものだと身体が伝えてくるのに頭が受け入れられずにいる。

 

「どうなってるんだ?」

 

 記憶を掘り返してみてもこんなところに来た憶えは無い。

 何年かぶりに発売された漫画の新刊を買って家で読んでいたことまでは憶えている。

 

「それにしても面白かったなぁ」

 

 あの漫画『冒険王ビィト』は確か小学生のころから読み始めたんだっけ?作者の病気やらなんやらで10年も休載してたけど最近になって再連載が始まり、昨日新刊として発売されたんだよね。

 休載になってから長かったな…。ずっと待ち続けて今じゃ俺も立派な新社会人なんだもんな。

 まぁ休載中に作者の前作を買い揃えて読み漁ってたんだけどね。

 いいよね『主人公が成長していくのと同時に悲劇的な過去が明らかに!そして身体に秘められた特別な力が解放される!』っていう展開。

 こう、なんていうか自分の中にも同じような力があるような気がして主人公がやっていた技を再現してみたりしたよね。傘でアバンストラッシュとか、かめはめ波とか。

 それにしても10年ぶりとは思えないくらい違和感の無い作風とストーリ展開だったな。まさか敵と認め合い和解するとはね。あれかな、前作でいうヒュンケルポジみたいな感じで仲間になって最終局面で共闘するのかな?それならどっちかっていえばラーハルトか。ヒュンケルポジは元敵ではないけどスレッドの方が適役かな?たまに噛ませなところはクロコダインだけど…。

 

 何にせよ。

 

「至福の時間だった…」

 

 うん、あれだ、現実逃避はここまでにしておこう。嗚呼。

 

「本当にここは何処なんだーーー!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから俺はずっと歩き続けている。正直しんどい、倒れたい。でも止まれない。

 

「もうちょっとだけ現実逃避させてくれ」

 

 やけに可愛らしくなった自分の声や低くなった視界に気付いていながら、俺はそれを確かめようとはしなかった。

 ただでさえ何処とも知れない森で迷子という厳しい現実なのに更に自分自身までどうにかなっているとか受け止めきれる自信がない。

 

 ひたすら歩きながら心を落ち着け、疲弊によって思考能力を落とし何とか現実を直視した。

 

「ありえないだろ…」

 

 ようやく現実を見た俺を待っていたのは受入れ難い事実だった。

 

「子供になってる?」

 

 足を止め自分の身体を確認する。

 

 以前よりもだいぶ低くなった視界に小さく華奢な手足、可愛らしい声。

 

 新社会人のはずの俺が何故か子供に、しかも女の子になっていた。

 

 




読専でしたがよくわからない衝動に駆られ書いちゃいました。


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1話 迷子

 

 

 

「あれ、ここってもしかして地球じゃない?」

 

 俺は今、森の中でも一際大きな木の上にいる。

 目の前に広がるのは広大な森、いや樹海といってもいいかもしれない。

 そして空には、でっかい双頭の鳥やらプテラノドンモドキが飛んでいた。

 

「やべーだろこれ…」

 

 さっきまで錯乱していた俺は無謀なことに方向すら確かめずにこの樹海を歩いていた。

 こんな化け物どもがいる世界の樹海で迷子とか洒落にならんわ。

 

「空に化け物がいるなら普通に考えて陸にもいるよな」

 

 今までは運よく遭遇しなかったがこれからもそうだとは限らない。

(早く安全な場所に移動しなくては)

 俺は一縷の望みをかけ地平に眼を凝らした。

 

「頼む、近くに人里があってくれ…!」(そもそも人類が存在しているのだろうか?)

 

 

 

 

 

 降り積もっていく焦燥感に眼を向けないよう、遠く地平をみつめること数十分―――。

 

「あれは!?」

 

 遥か南の方角に煙の様なものが見える。人によるものなのかはわからないが今はそれに頼るほかないだろう。

 俺は小さな希望を胸に再び歩き始めた。

 

 

 

 

 

 周りを警戒しながらひたすら歩き続け数時間。

 目を覚ました時は朝だったのに今では日が傾き、空が茜色に染まりつつある。

 疲労は感じるが今のところ飢えや渇きは感じない。

 

(どう考えてもおかしいよな?)

 

 普通の人間はこんなにも長い時間、しかも体を動かしているにも関わらず渇きを感じないなんて在り得ないだろう。

 

(この体が丈夫なのかこの世界では普通の事なのか…)

 

 考えても答えが出るわけもなく、煙の見えた方向へ進んでいく。

 日が暮れ足元も見え辛くなってきた。

 

「今日は結局野宿かな」

 

 まる一日飲まず食わずで過ごしたのは人生で初めてかもしれない。

 

(どうやって寝よう…)

 

 完全に日が沈み周りが見えなくなる前に寝床を探さなくては―――。

 今日一日歩き続けたが奇跡的に化け物には遭遇せずにすんだ。他の野生動物もみなかったしこの森に化け物はいないのだろうか?

 しかし地球の肉食獣には夜行性のものも多くいた。念のため見つかりにくい場所で寝た方がいいだろう。

 色々探し回ってみたもののあまり選択肢は多くなかった。

 

「木の根の隙間か枝の上か…」

 

 結局、樹の上で寝ることにした。

 見つけた大樹には二つに分かれした太い幹と枝があり、小さな身体にはその間がちょうどよかった。

 

 

 

 

 何故自分はこんな場所にいるのか?前の自分の身体はどうなったのか?これからどうしていくのか?

 いくつもの不安を抱えたまま、その不安から逃げるように眠りに就くのだった。




 当たり前ですけど小説を書くのって大変ですね。
 自分では結構頑張って書いたつもりでも投稿可能文字数の下限を超えてなかったり、頭の中にはあるのに文字でしっくりくる表現を見つけられなかったり。
 他の投稿者さんは平気で数千字とかいってるのを見ると尊敬しちゃいます。


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2話 初めての人

 

 

 日の出前に目が覚めた。

 昨日は日が沈んですぐに寝たのだから仕方のないことだろう。

 前の俺では考えられないほど健康的な生活をしている。

 

「やっぱ夢じゃなかったか…」

 

 今までの目覚めと同じ様に、しっかりと覚醒する感覚があったにも関わらず未だに俺はこの世界にいる。

 俺は帰ることができるのだろうか?

 今頃家族はどうしているのだろう?就職が決まってあんなに喜んでくれた姉や就職祝いだと旅行に連れて行ってくれた両親、俺は何も返せないままこの世界に来てしまった。

 

「絶対、帰らないと…」

 

 こんなところでくよくよなんてしてられない、帰る方法を見つけなくては。

 

「よしっ、いくか!」

 

 白み始めた空の下、俺はこの世界での本当の一歩を踏み出した。

 

 

 

 

 

 ◇◆◇◆◇◆◇

 

 

 

「っていってもよ!」

 

 どれだけ歩かせれば気が済むのか?いつの間にか太陽が真上にあるぞ?

 昨日今日とこれだけ歩いたのだから、歩幅が小さく森の中という事を考えても数十㎞は移動したはずだ。

 そして地平線までの距離は4~5㎞と聞いたことがある。昨日煙を見つけた大樹は天辺までは登ってないにせよ学校の屋上の高さくらいまでは登っていた。そのことを考慮しても地平線まで15㎞といったところだろう。

 明らかにおかしい。

 地球よりも大きな天体なのか?それなら地平線までの距離が遠くても納得できる。

 

「その場合眼良過ぎだろ俺…」

 

 数十㎞離れた所で昇っている煙を肉眼で捉えることができるとは。

 そもそも地球があった宇宙と同じ物理法則なのだろうか?

 世界は平らで端まで行ったらでかい滝とかはやめてくれよ…。

 下らない事を考えながらの移動だったが確実に煙までの距離は近くなっている。

 それに迷わない様に何度か方向を確認したが、朝昼とご飯時に煙の量が多くなっている。何かしらの知的生命体がいる可能性はあるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 特に休息もとらず歩き続け日も傾いてきたころ、風の中に微かに何かの匂いが混ざり始めた。

 人が生活している気配を感じる…!

 夕飯どきだろうか?薪の燃える匂いやパンや肉の焼ける匂いだ。

 逸る気持ちを抑えきれずに目の前の大きな根を乗り越えた。

 

 ヒュォッ―――

 

 ……?

 何やら目の前に点?がある。驚いて首を反らすと背後でスコンッと音がした。

 振り向いて視てみると今乗り越えたばかりの樹の根に矢が刺さっていた。

 …矢?

 

「ひぇあぁっ…」

 

 咄嗟に首を反らさなければ矢が眉間に直撃したであろう事実に思い至り、思わずその場にへたり込んだ。

 平和な日本で生きてきた俺にとって、自分の命が故意に害される感覚は生まれて初めての事だった。

 混乱と恐怖で身動きがとれない中、矢が飛んできたであろう方向から何かが向かってきている気配がある。

 

 ―――っ。

 

 木々の間から人影が出てくる。

 どうすればいい!?

 

「あれ、人間?」

 

 現れた人物はこちらに対して敵意をもっていない様だった。

 

「すみません、怪我はありませんか?」

 

 人っ、人だ…!

 この世界にも人間がいた!しかも言葉も通じる!

 

 何も答えずにいるとその人は焦ったように近づいてきて謝り始める。

 

「す、すみません、こんな道もない森の中で動いていたので鹿か猪かと思いまして…本当に大丈夫ですか?」

 

 こちらを心配そうに見て気遣ってくれている。

 たった二日ではあるけれど人間がいるかも分からない世界で一人、気を張り続けた俺は限界だった。

 緊張の糸が切れた俺はその人にしがみついた。

「ぇぁっ!?どうしたんですか!?」何か言っているがよく理解できない。

 この世界で初めて人間に触れ、本物だと確かめる。

 

 人の温かさを感じ、俺はその人にしがみついたまま大泣きしたのだった。




 歩く、歩いた、、、
 語彙力が足らな過ぎて同じ単語がしつこく出てくる…。
 語彙力を鍛えなければ。

 やっと物語が動きそうなところまでこれたけど主人公の名前まだ決めてなかった。
 男でも女でもそのまま使えそうな名前かー。他のTSキャラと被っちゃいそう。



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3話 辺境の村

 

 

「おちついた?」

 

 どれだけ泣いていただろうか。やっと俺が落ち着いてきたのがわかったのか、男は声をかけてきた。

 

「ご、ごめんなさいっ」

 

 俺は男にしがみ付いていることを思い出し慌てて離れた。

 離れてみてわかったがそいつは思っていたよりも若そうだった。背は今の俺より多少高いくらいで手足も割と細っこい。落ち着いた喋り方をしているが声の感じは若そうだ。十台前半から半ばだろうか?前の俺よりは確実に年下だろう。

 こんな年下の男の子にしがみ付いて、剰え大泣きしてたとか…、恥ずかしくなってきた。顔が赤くなっているのがわかる。

 

「えっと、大丈夫だったかな?怪我とかしてない?」

 

「大丈夫です、少し驚きはしたけど当たってないですし」

 

 本当は殺されるかと思ったけどな。洒落にならんが一応誤射だったわけだし、人に会えた事を考慮して相殺しておこう。

 

「よかったぁ…」

 

 こいつも緊張していたのか肩の荷が下りたように息を吐く。

 

「本当にすみませんでした」

 

 大丈夫だと言っているのに見た目年下の女の子に頭を下げるとは律儀なやつだな。

 

「僕はこの近くのヴォルハ村に住んでいるユーリィです。君は?」

 

 見た目からか、いきなり君呼ばわりだが自己紹介されたからには返さなくてはな。

 

「俺は雨木悠(あまぎはるか)っていいます。(はるか)って呼んでください」

 

 ユーリィは何か引っかかったのか首を傾げていたが何か変な所でもあったのだろうか?

 

「そういえばハルカはどうしてこんな所に?この先には僕の知る限り人里はなかったはずだし道も通っていなかったはずだけど」

 

 嘘は吐きたくはないけど別の世界から来たとか女に変わったとか言っても信じてもらえないだろうなぁ。とりあえず分かりやすい事実だけでも伝えるか。

 

「えっと、なんていうか気が付いたらこの森にいたといいますか、元々は日本って国に住んでいたはずなんだけど…。だからユーリィに会えた時は本当に嬉しくて…」

 

「ごめんね、ニホンという国は聞いた事ないなぁ…。それにしても別の所で暮らしていたけどいきなりこの森に、か…。僕じゃ何もわからないけど村長が何か知ってるかもしれないし、僕が住んでるヴォルハ村まで案内するよ」

 

 ユーリィは「付いてきて」と言うと勝手知ったる庭を歩くかの如く森の中を先導した。

 俺はそれまでずっと一人でいた反動からか、ユーリィに沢山話しかけている。

 ユーリィはヴォルハ村で代々猟師をしている家系に生まれたらしい。そして両親は昔魔物(化け物の事だろう)に襲われていないこと、年の近い妹と二人暮らしをしていること、今は村長が後見人になってくれていること、色々聞いた。同時に俺の事も沢山話した。

 ヴォルハ村につくころには二人ともだいぶ打ち解けて気軽に話す中になっていた。

 

 

 

 

 

 

「っと、そろそろ見えてくるころだね」

 

 ユーリィが見つめる先には少し開けた場所があり、その奥には木造の民家がぽつぽつと続いていた。

 

「ようこそ、ヴォルハ村へ―――」




 ビィトを読み返すために休日実家に戻ったけど全巻どっかいってた…。どっかに片付けられたのか、捨てられてしまったのか。
 資料がないと設定とか矛盾してきそうで書くに書けないなぁ。
 本屋にもおいてなかったし古本屋か、いっそのこと電子書籍版でも買おうかな。


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4話 村長、そしてこの世界の真実

 

 

「村長の所に案内するからついてきて」

 

 そう言って歩くユーリィの後についていく。周りには日本ではあまり見ることのできないタイプの木造建築があり、物珍しさからつい足を止めてしまう。詳しくはないが北欧の森の中とかに建ってそうなイメージだ。古そうだけどボロいという感じはなくよく管理されている。

 

「何か気になるところでもあった?」

 

 立ち止まった俺に気付いたのかユーリィが問いかけてくる。

 

「ちょっと建物が珍しくって」

 

「この辺りの建物は大体こんな感じだよ?ハルカは大分遠い所から来たみたいだね」

 

「そ、そうみたいだね…」

 

 流石に別の世界から来ましたなんて言えないよなぁ。

 そんなこんなで歩いていると村長の家に着いたようだ。ユーリィは俺に外で待つように言うと村長の家に入っていった。

 数分ほど待つとユーリィが玄関から出てきた。

 

「村長が会ってくれるってさ」

 

 村長、やばい緊張してきた。怒らせて村を追い出されたりしたらどうしよう!ノックは必要か!?自己紹介は!?ユーリィに紹介されるまで待つべきか!?

 

「村長っていっても村の中で一番年寄りで物識りなだけで怖い人じゃないからそんなに緊張しなくても大丈夫だよ。僕と妹の後見人にもなってくれてるし」

 

 ユーリィは緊張から焦る俺が落ち着くようにと村長について説明してくれる。

 

「そんな事いっても目上の人と話す機会なんてほとんど無かったし…」

 

「そんなに改まらなくても近所のおじいさんと話す様な感覚で大丈夫だよ」

 

「そうじゃぞい、そんな事気にせず入っておいで」

 

 家の中からいきなり声がかけられ驚いたが村長だろうか。確かに待たせるのも悪かったな。ユーリィに促され一緒に玄関をくぐった。

 

「お、お邪魔しま~す?」

 

「ここに掛けなされ」

 

 老人にテーブルまで案内され、椅子に腰掛ける。

 どうしようかと考えていたら老人の方から話しかけてきた。

 

「先ずは自己紹介からかの、儂はここヴォルハ村で村長をしておるラドヴァンじゃ」

 

「わ、私は雨木悠です…」

 

「大まかな事情はユーリィから聞いたが大変じゃったのぉ。疲れているところ悪いがもう一度詳しく説明してくれんかの?」

 

 村長に言われ異世界云々を除いて村長に説明する。

 

「以上です」

 

「ふむーーー。すまんが、儂もニホンという国は知らんのぅ…。じゃが突然別の場所にとなると、もしやヴァンデルが絡んでくるかもしれんの」

 

「ヴァンデル、ですか……………ん?」

 

 は?ヴァンデル?ヴァンデルってあの冒険王ビィトに出てくるヴァンデルか?いや、そんなはずは…。

 

「すみません、つかぬことをお聞きしますがビィト戦士団に聞き覚えがあったりとかは?」

 

「すまぬが知らぬのぅ、このあたりで戦士団と言えばゼノン戦士団が有名じゃが」

 

「ゼノン戦士団!?」

 

「なんじゃ知っておるのか」

 

 ゼノン戦士団だと?マジか、この世界ってまさか冒険王ビィトの世界か。しかもビィト戦士団が知られてなくてゼノン戦士団が現役ということは原作の本編開始よりも少し前ってことか。

 どちらにせよ俺は今、あの冒険王ビィトの世界にいるってことだよな?確かに日本には帰りたい。が、帰る方法が分からない。だから世界を越える方法を探しつつ多少ビィトの世界を堪能してもいいよね?いいはず!

 分からない。だから世界を越える方法を探しつつ多少ビィトの世界を堪能してもいいよね?いいはず!

 

「ゼノン戦士団といえば近くの里に来てるみたいだよ」

 

 勝手に自己完結しているとユーリィが追加でそんな情報を投下してくる。

 

「近くにいるの!?会いたい!」

 

「ほほっ、やはりゼノン戦士団は人気じゃのう。じゃが里までは徒歩で三日ほどかかるからのぅ。今日のところは休んでおきなさい」

 

 確かにやっと文明を感じれる場所で休める訳だし今日くらいは安心して眠りたい。

 

「それと泊まる場所じゃが生憎この村に宿はなくての。ユーリィ、泊めてあげなさい」

 

「わかりました村長。じゃあハルカ、行こうか」

 

「おう!村長、色々とありがとうございました!」

 

「よいよい、いつでもまた来なされ。待っとるよ」

 

 俺はユーリィの後に続き村長宅を後にした。

 

 

 

 

 

 この世界がビィトの世界だと知った俺はこれからのことに胸を膨らませるのであった。




遅くなり申し訳ありません。
これからも更新ペースは遅くなるかと思います。


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5話 兄妹との食事

 

 

 村長の家を出てユーリィの家に向かっている。

 

 ビィトの世界にいるとわかり俺は興奮を隠せずにいる。そんな俺をユーリィが微笑まし気に見てくるのが少々気に入らない、が俺は大人だし気分もいいから見逃してやることにする。

 

 ユーリィからゼノン戦士団の活躍なんかを聞き出しながら歩いてきたが、どうやらユーリィの家に着いてしまったようだ。もう少し話を聞きたかったがしょうがない、後でまた聞き出そう。

 

「ただいまー」「お邪魔しまーす」

 

 確か妹さんがいるんだったよな。名前はルチアだったかな?ユーリィの後に付いて家に入る。

 

「おかえり、お兄ちゃん。そちらはお客様?」

 

 今の俺と同じくらいの年頃だろうか?ユーリィとよく似た色彩の女の子が出てきた。

 

「ただいま、ルチア」

 

 その後ユーリィに促され互いに自己紹介をした。

 俺の事情を話したところルチアはとても心配してくれた。天使だ。そしてユーリィはルチアに食べ物だのなんだのと叱られている。いい気味だ。

 

「ごめんなさいハルカさん。何日も森をさまよっていただなんて……。お腹、減ってますよね?直ぐに夕飯にしますね」

 

 なんて出来た娘だろうか、俺を年下扱いしてくる兄とは大違いだ。

 

「ありがとうございます!」

 

 実際は特にお腹が減っている感覚は無かったが食事そのものは好きなので有りがたく頂くことにする。お腹が減らないのはおかしなことだがビィトと同じ様に特異体質で、寝溜め(正確には寝溜めじゃないけどね)ならぬ食い溜め体質なのだろうか?うーん、わからん。

 

 既に用意が出来ていたのか直ぐに夕飯が出てきた。沢山のパンと肉入りシチュー、多分ハーブティー。なかなか美味しそうだ。

 

 ルチアは俺の住んでいた場所について聞いてなんとか手掛かりを見つけようとしてくれる。いい娘だ。

 俺はユーリィとルチアの事、ゼノン戦士団の事、久しぶりの会話を楽しんだ。

 

 

 

 それにしてもこいつら美形だよなぁ。さっきまでは気にしていなかったがこうしてテーブルの対面で向かい合うとよく分かる。

 ユーリィもルチアも朝日の様な淡い金髪で瞳はエメラルドの様に深い緑色をしている。美しい色彩もさることながら爽やかというか暖かというか優しそうな顔立ちをしている。特にルチアは揺れる木漏れ日の下で本とか読んでそうなイメージだ。可愛い。

 まぁ華奢には見えてもしっかり家事もしてるしユーリィが狩に出ている間、家の事を切り盛りしてるんだよな。狩人という家業上仕方のない事かもしれないが家が村の外れ、森の近くに建っているし井戸から水を運ぶのも一苦労だろうに。

 

「そういえばこの村には塀、というか柵はあるけど『門』は無くて大丈夫なのか?」

 

 ビィトの世界の大抵の町には門が有りヴァンデルや魔物の侵入を防いでいたはずだ。

 

「あー、確かに門はないね。けどここは辺境の小さな村なんだ。それこそヴァンデルにとって滅ぼす価値も無いくらいのね。それにこの辺りの魔物は知能も低く元々の野生動物とそう変わらないくらいで柵と村の男衆だけで十分対応可能なんだ」

 

 特に重要拠点でもなく人も少ないこの村は滅ぼした所で星が貰える様な功績にはならず、ド田舎すぎて足を運ぶ気にもならんというわけか。成る程。

 

「言ってて悲しくならないか?」

 

「ははっ、確かにね。でもこうして平和に暮らしていけてる訳だし悪くはないよ」

 

「色々と不便ではあるけどそういった意味では良い事もあるのよね…」

 

ふむ、ここは良いにせよこの世界、危険は付き物だよな。元の世界に帰るためにも世界中を旅する必要が有りそうだし、どうせビィトの世界に来たのならバスターになるのもいいかもな。最初の刻印が痛いのは勘弁して欲しいが。

 

 

 

 そんなこんなで楽しい食事は終わった。空腹感はなかったわりに満腹感と満足はある。腹が膨れたせいか少し眠たくなってきた。

 今日の寝床はどこだろう?

 

「ハルカさん、森の中でさまよって汚れてしまったでしょう?お湯を用意したので身体を洗いませんか?」

 

「なん、、だと、、、!?」




主人公の頭空っぽにした方が動かしやすいですね。深い心理描写とか私には無理です。


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6話 身体

 

 

 抵抗する間もなく、ルチアに引き摺られる様に一室に連れ込まれた。

 その部屋は衝立で仕切られており奥にはお湯の張られた大きめのタライが置かれていた。

 

「着替えは私の物を使ってください。脱いだ服は衝立に掛けておいてくださいね。洗濯しますので。それと湯加減が気に入らなかったらタライの横に置いてある鍋からお湯か水を足して調整してください。では、何かあったら気にせず呼んでくださいね」

 

「あ、はい」

 

 ルチアの勢いに負けて着替えの入った籠を受け取ってしまう。ルチア、良い娘ではあるけどお節介というか善行してるときは話を聞かんな。

 

 ルチアが部屋から出ていった後、俺は呆然と立ち尽くした。

 

 

 

「こうしていても仕方ないか」

 

 確かに森の中に居たせいか身体は汚れているし、肉体的にはともかく精神的には大分疲れている。風呂に入ってリラックスしたい。

 

「だけどなぁ…」

 

 別に裸になるのは気にならない。確かに女の身体になってはいるが十を少し越えたか程度の子供のものだしそもそも自分の身体だ、恥ずかしいとかそういうのはない。

 ただそれを目で認識し、男じゃなくなったという事を完全に理解した時の喪失感から心が折れないか心配しているんだ…。

 

「女の子になった事は理解しているつもりだけど、つもりと実際に目で確認するのじゃ大きな違いがあるからなぁ…」

 

「お湯が冷める前に覚悟決めないとな」

 

 その後暫く悩んだ末、俺は服を脱ぎ始めた。

 

 

 

「ふぁあ~~……」

 

 いい湯だ。

 お湯は胡座をかいた状態で腰ほどもないが、それでもその温かさから声が洩れた。何度もタライの中でかけ湯を浴びる。風呂の偉大さの前では男とか女とかどうでも良いことだった。

 

 暫く湯を堪能した後身体を洗うことにした。

 

「こうして見ると俺もなかなか良い色を持ってるよなー」

 

 腰ほどもある長い髪は深い闇の様に黒くありながら鍛え上げられた鋼の輝きを放っている。肌は白磁の様に白く滑らかで子供特有の柔らかさを持っている。

 ただ白過ぎて昼間はともかく夜中に見たら血色悪そうに見えそうだ。風呂入ってる子供の肌色じゃねーわな。

 

 それにしても華奢だな。こっちに来た時から村人Aとかが着ていそうな長袖長ズボンだったからわからなかったが、正直あの森歩きに耐えられそうにない。よく歩いたものだ。

 

「ん?」

 

 左腕を洗っていると何やら指先に膨らみを感じた。

 イボか?それにしては水晶珠の様にスベスベしていて透明感がある。

 

「何だこれ…?」

 

 擦ってもとれない。腕に埋め込まれているような感覚だ。ちょっとしたアクセサリーの様で綺麗ではあるのだが自分の身体にくっついているのは気味が悪い。

 

 左腕に埋め込まれた珠ーーー星?

 

「マジかぁ…」

 

 そういえは髪を洗ってる最中に若干の違和感があったな。急いで頭を確認してみる。

 

「こっちもかよ…」

 

 両側頭部の生え際辺りにスベスベした小さくなだらかな瘤が幾つか集合している。少し大きめの瘤両端に小さな瘤が1つずつ、両側頭部で計6つの瘤、角が生えていた。

 

「完全にアレだ、ヴァンデルじゃねーか俺…」

 

 ゼノンやビィトの近くで原作を楽しもうとしてたのにヴァンデルになったんじゃ近付くことすら儘ならない。

 もうなんなんだろうかこの仕打ち。踏んづけ、持ち上げ、叩き落とすとか鬼畜の所業。世界を恨んだのは何回目だろうか?最近そこそこあった気がする。

 

 

 ただ一言云わせてもらうなら…

 

 

 

 

 ふっざけんっなあぁぁーーー!




TSものでよくあるお約束?でした。
サービスシーンを書こうとも少しだけ思ったのですがろくなのにならなさそうだったので止めました。


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7話 これからの事 前編

 

 

 まさかこの俺がヴァンデルだったとはね。女の子になったと思っていたらロディーナの様な女性型だったとは、驚いたよ。

 

 うん、混乱しているせいか口調がよくわからない事になっている。

 今思えば何日も飲まず食わずで歩き続ける事が出来たのはヴァンデルの身体だったからか。色々と納得である。

 それはそうと。

 

「どうすっかな…」

 

 幸いな事に腕の星は(当たり前だが)1つだけだし長袖やリストバンド、籠手の様なもので隠せそうだ。角も小さく髪の毛の生え際にあるので髪をかき上げるか直接触ってみないと分からなさそうだ。

 

「といったところでヴァンデルなのには変りないしなぁ」

 

 元の世界に帰るために情報収集は必須。だがヴァンデルになってしまった以上『門』による感知は避けられないだろう。人間の街で情報を集める事は不可能かもしれない。

 

「それならヴァンデル方面からか?」

 

 ヴァンデルの集まる場所、魔賓館か…。こんな人間の子供の様な姿で行ったら確実に絡まれるし厄介事の予感しかないな。そもそも場所知らないし。

 

「もしかしてこれ、詰んでる?」

 

 この村の様に門の無い場所じゃ情報はたかが知れている。大まかな目的地すらなくしらみ潰しに世界を歩くしかなくなった、最悪だ…。

 

 そもそも俺はどのようにしてこの世界に発生したんだ?

 全てのヴァンデルはダークネス・アイズによって創られたんだよな。だとしたらシャギーには会いたくないな。

 もし俺がダークネス・アイズの預かり知らぬ所で産まれた存在なら危険分子として消されかねない。そもそもあのウサギ胡散臭過ぎて近付きたくない。

 

「うーむ、どうすっかな」

 

 振り出しに戻った。

 

 

 

 

 

 

 

「ヴァンデルになってしまったのはもうどうしようもないな」

 

 もう少しポジティブに考える事にしよう。ヴァンデルの場合のメリットを幾つか挙げてみる。

 先ずは冥撃だろう。ヴァンデルは産まれた時から冥力の影響を受けているし、天撃と違って痛み無く冥撃を撃てるようになるかもしれない。これは大きなメリットだ。バスターになるための刻印はあのビィトですら凄まじく痛いと言わしめたくらいだからな。痛いのは嫌だ。

 次は単純にフィジカル面かな。今回の事でわかったが俺の身体は結構丈夫らしいし体力も十分だ。世界を回るのは結構疲れそうだから有難い。

 次は魔物との関係だろうか。旅をするなら魔物との接触は避けては通れない。こちらがヴァンデルなら無闇に襲ってくる事は無いだろう。多分。

 最後は原作ヴァンデル勢と同じ陣営に立てる事だろう。閣下や卿と敵対せずに会話できるわけだ。ただ同じ陣営といっても皆好き勝手やってるわけで、他の七ッ星の連中とは話が合いそうにない。特にベルトーゼ、テメーはダメだ。あ、後色々と裏で糸を引いてそうなロディーナも勘弁な!

 

 何だろう、メリットを考えていたらなかなか良さそうだった。テンション上がってきた。

 

 

 おっし、頑張るぞー!

 

 

 

 

 

「くしゅんっ…」

 

湯冷めした。




警報が出てるせいか学校が休みになるという放送(2日連続)を聞きながら仕事に出かける準備をしていると、仕事も休みにならないかと思ってしまう。そんな週末でした。


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8話 これからの事 後編

 湯も冷めてきたので手早く洗いを終わらせた。

 若干湯冷めしてしまったが考えもまとまったし身も心もスッキリしていい気分だ。早く服を着てしまおう。

 

「なん、、だと、、、!?」

 

 ついさっきもやった気がする。だがこんな所に伏兵が居ようとは思いもしなかった。

 何で着替えがワンピーススカートなのか?何だかヒラヒラしている。これは寝間着なのか?

 自分の意思と関係無く女にされるのと自らの意思で女物の服を着るのでは受ける精神的ダメージが大きく異なるだろう。俺の男としてのアイデンティティが…。

 だが他に着るものもなく、これを着なければ本格的に湯冷めしてしまう。

 

「着るしかないよなぁ…」

 

 

 

 

 着るしかなかった。

 

 部屋から出て居間に戻ればルチアには可愛いと誉められユーリィに似合ってると言われた。とてつもない違和感に走り出しそうだった。

 さらにルチアには髪のまとめ方やら扱い方で じ っ く り と御指導頂くことになった。ベツニコワクナカッタヨ?

 

 

 その後少しだけ二人と会話を楽しんだが疲れからか直ぐに眠気が訪れた。

 幸いなことに客間が有ったようでふらつきながらもルチアに連れられベッドにたどりついた。個室にベッドというこの世界に来て初めて安心できる空間に居るせいか、俺は横になって直ぐに夢の世界に旅立った。

 

 

 

 

 

 

 

 目が覚める。知らない天井だ。

 

 こういう時に定番のネタを一人やってみたが寂しいだけだった。

 部屋の外からは朝食を用意する音だろうか、人が動く気配を感じる。

 

「いいなぁ、こういうの…」

 

 たった数日人の世界から離れていただけなのに温か味と有り難さを実感する。覚醒と半覚醒を行き来しながら幸せな時間を過ごす。

 暫くすると足音が近付いてきた。部屋の前で止まり数瞬、部屋にノックの音が響いた。

 

「おはようございます。ハルカさん、起きてますか?」

 

 ルチアの声だ。

 

「おはよー。今起きるね」

 

 俺はそれに答え、いそそいそとベッドから降りて居間へ向かった。

 

 二人に挨拶ををして居間に入る。既にテーブルには朝食が並んでいた。

 朝は弱く思考がまとまって無いのもあったが居候の分際で食事の手伝いもしないとは。あまりの事態に頭を下げて謝るが二人は疲れていたから、と軽い調子で許してくれた。お人好し過ぎて心配になるなこの兄妹。

 

 朝食を食べながらこれからの事を二人に話そうと思う。

 

「故郷を探そうと思うんだ」

 

「まぁ、そうだよね」

「場所の見当はついているんですか?」

 

「まったくわからない。多分世界中を回って情報を集める事になると思う」

 

 それでも俺は日本に帰りたいんだ。多少寄り道はするけどな!

 

「ただでさえ人里から離れるのは危険なのに当てもなく一人で世界を回るだなんて危険過ぎます…!ハルカさんが良ければこの村に住んでも良いんですよ?私達も口添えします」

 

 凄く心配してくれている。やはり良い娘だ。

 

「気持ちは凄く嬉しいよ…。でも、故郷を探しに出ようと思うんだ」

 

 多少は自分がヴァンデルだという楽観視や原作を間近で見てみたいという願望は入っているけど帰る事そのものを諦めたくはない。

 

 何度か同じ様なやり取りをする。

 俺の決意が堅いと解ったのか説得は諦めたようだ。

 

 方針が決まったせいかその後は色々と早かった。

 あれよあれよという間に旅支度が進んでいく。俺を置き去りにして。

 

 そして次の日の朝には完璧に旅支度が済んでいた。二人分。

 

 

 

 

 

 えっ?ユーリィ?お前も来るの?




いつの間にか一万字越えてました。
一話辺りの文字数は個人的には今のは二~三倍くらいが読んでてちょうど良いので自分もそれを目指したい。


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9話 旅立ち?そして…

 村長に挨拶した後俺は、俺達はヴォルハ村を旅立つ事になった。ルチアが村の入り口まで見送りに来てくれている。

 

「どうしてこうなった?」

 

 当初の予定では俺一人で里まで行くつもりだった。一番近くの人里までは一本道で迷いようがなく、俺の身体はヴァンデルな事もあって肉体的には疲れ知らずで数日くらいなら食事をとる必要もない。ユーリィ達にこれ以上迷惑をかけたくなかったのだが…。

 

「流石に迷惑だしやっぱり一人で行こうと思うんだけど」

 

 恩返しもせずに出ていくのもどうかと思うがそれでもなぁ…。

 

「ダメですよ!ハルカさん。話を聞く限り旅の仕方なんて全然知らないみたいじゃないですか。せめて里まで行く間はお兄ちゃんから旅のノウハウを学ぶべきです!」

 

「そうだよ、それに迷惑だなんて今更なことさ。こんな中途半端に目を離したら心配で寝付けなくなりそうだからね」

 

「うぅ……」

 

「ふふっ諦めなよ。僕達の安眠の為にさ」

 

 確かに旅のノウハウを教えて貰えるのは有り難い。だけど付いてこられるのは非常に不味い。

 里までは行くつもりだったが『門』があるで中まで入るつもりは無かったのだ。事前に感知されていた場合、門に近付いたらバスターが待ち構えてましたなんてこともなくはない。

 俺だけならまだしもユーリィまで仲間だと思われたら最悪だ。ゼノン戦士団も滞在しているというし何とか避けなくては…。

 

「じゃあ行ってくるよルチア」

 

「行ってらっしゃいお兄ちゃん、ハルカさん」

 

 考え込んでる間に勝手に話が進んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――。―――だよ」

 

 結局流されて一緒に出てきてしまった。

 

「―――で、―――――だから気を付けること」

 

 どうするべきか…。途中で撒くか?だが相手は少年とはいえ立派な狩人、しかも一本道だ。簡単に撒けそうにない。

 

「聞いてるハルカ?」

 

「うわぁっ!」

 

 横を向いたらユーリィの顔があった。どアップで。

 

「やっぱり聞いてない。三日しか時間が無いんだからちゃんと聞いててね?」

 

「す、すまん」

 

 流石に聞いてないのは失礼だな。

 

 そうして一日目はユーリィの旅講座で終わってしまった。ちゃんと考えなくては。

 あ、ルチアが持たせてくれたお弁当は絶品でした。

 

 

 

 

 

 

 

 旅二日目だ。朝からユーリィの旅講座を聞きつつ歩を進める。旅は順調に進んでいるようだ。

 

 

 ………何だろう?

 

 今朝から空気が重く感じる。途中何度か休憩を挟みつつ里に向かっていたが最初は全く気付かない位だった。

 だが里に近付くほどその感覚が強くなっている気がする。もうすぐ日も暮れる。

 ユーリィの様子を窺うが特に何時もと変わらない。狩人とはいえ只の人だ。バスターの様に天力を扱える訳でもない。

 

 これ以上進んで大丈夫なのか?夜営の準備をしつつユーリィに声かける。

 

「なぁ、ユーリィ――!!!っ」

 

 反射的にその場から飛び退き、身を隠していた。

 

 何だこれは!?

 

 里の方角から凄まじい圧迫感、威圧感を伴う力の奔流を感じた。大型トラックでも突っ込んで来たのかと思うほどだ。物理的破壊をもたらす様なものでは無かったが、一瞬死を連想した。冷や汗が止まらない。

 

「ハルカ?いきなりどうしたの?」

 

「お前は何も感じ無いのか?」

 

「そういえばやけに森が騒がしく感じるけど…」

 

 やはりバスターかヴァンデルでもなければわからないのか。

 だが今のではっきりした。これは冥力、そしてその波動だ。自分がヴァンデルだからこそわかったがこの道の先に居るヤツは化け物だ。到底人が倒せる様な存在じゃない。

 

 だがゼノン戦士団が居るというし何とかなるのだろうか?

 

 

 里、ゼノン戦士団、化け物……。

 

 

「なぁ、ユーリィ。俺達が向かっている里ってなんて名前だ?」

 

「ん?言ってなかったかな?アンクルスの里だよ。ヴォルハ村で近くの里といったらそこ1つしか無いからわざわざ名前を言わないんだよね」

 

 アンクルスの里!

 原作でビィトが育てられた場所でゼノン戦士団がベルトーゼ相手に壊滅した場所でもある。

 

 それならさっきのはベルトーゼが力を解放した時の、魔奥義の余波か…?。実際に肌で感じるまで理解できてなかったが、将来の七ッ星クラスがここまで凄まじいものだったとは。原作を読み込んだだけではわからなかった。認識を改めなくてはいけないな。

 

 

 

 

 ゼノン戦士団……。原作の流れとはいえ壊滅したと思うと気分の良いものじゃない。だけどもしその場にいたとしても介入することで原作が破綻するのも不味い。

 今回はどうしようも無かったけどちゃんとどうするか考えておかないとな…。




やっと原作プロローグに追い付きました。
中途半端過ぎて〆方がわからない。後日編集するかも。

資料どうしよう…。


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10話 アンクルスの里

 旅も三日目に入った。このまま行けば日が暮れる前に里にたどり着けるだろう。

 目が覚めた時にはベルトーゼの冥力からくる重圧感も消えていた。戦いが終わったのだろう。そろそろビィトがアンクルスの里を飛び出している頃だろうか?

 

 当初は外からビィトの活躍を観賞するつもりだったが、今回の事からそんな甘い考えではいけないと理解した。

 あの圧倒的な重圧感、否が応でも自分がこの世界に居るのだと、死は身近なものなのだと解らされた。

 原作の流れに干渉するつもりは無いが、強くならなくちゃいけない。活躍を見ようにも今の俺では戦いの余波だけで普通に死ねる。

 原作本編が始まるまでの三年間、俺もビィトと同じ様に修行するべきだろうか…。

 

 ユーリィの旅講座を聞きつつも旅路は進んでいく。サバイバル編に突入した。

 

 

 

 

 

 

「みえた!あれがアンクルスの里だよ」

 

 森を抜けると小さな荒野が広がっており、その先には白く高い外壁に囲われた人里が存在していた。

 

「大きい…」

 

 初めて見る外壁の大きさに驚いた。確かにこれは並の攻撃では壊せそうにないな。

 

「そうだね、僕も初めて見たときは同じ様に驚いたよ。ハルカの故郷には無かったのかい?」

 

「それなりに大きな街は有ったけど門みたいなのは無かったな」

 

「ふぅん?ヴァンデルの勢力圏から大分遠いのかな?平和なところだったんだね」

 

「そうだね。退屈な日常だったけど、とても平和だった…」

 

 日本の家族の事を思い出し、少し気分が落ち込む。

 

 そんな俺を励ましてくれているのか、ユーリィがアンクルスの里の美味しい物やウンチクを教えくれる。

 そんな姿を見て少しだけ気分も晴れる。旨いものの話を聞いて気分が上がらないヤツなんていないからな!

 

 

 

 

 

 

 

 

「おかしい…。何故門が開きっぱなしなんだ?それにこのモンスターの死骸は?」

 

 荒野には幾つものクレーターができ、モンスターの死骸がそこかしこに転がっている。とどめは抉じ開けられたかの様にひび割れ、機能していない『門』だ。

 アンクルスの里で何かあったのだと一目でもわかる。

(門が機能していないのは俺としては有り難いのだけどね。―――完全にヴァンデルの思考だな…)

 

 

「ハルカ、少し急ぐよ」

 

「わかった」

 

 二人で里に向かって走り出す。

 里で何があったのか知ってはいるが説明したところで何故知っているのかと不審がられるだけだ。騙しているようで心苦しい。

 

 

 アンクルスの里に着き、事情を聞いたが概ね原作通りだ。戦いが終わり様子を見に出てきたらゼノン戦士団もベルトーゼも消えていたらしい。特に描写は無かったがロディーナあたりが何かしてそうで嫌だな…。

 

 里で宿を取る。最初はユーリィが二部屋取ろうとしていたが宿代の無駄なので無理やり一部屋に変えさせた。

 

 

 

 

 

 

 

「バスターになろうと思う」

 

 宿の一階の食堂で夕食を取っていると唐突にユーリィがそう切り出した。

 

「今日の事で解ったんだ、日常なんて簡単に壊されるって。別に暗黒の世紀を終らせるだとか正義のヒーローになりたいだとかそんな理由じゃないんだ。ただ、せめてヴォルハ村のみんなくらいは守れる様になりたい。でも地形を変えてしまえる様な化け物相手に人はあまりに無力だ…。だから僕は、バスターになる」

 

「………」

 

「ハルカ?」

 

 ユーリィの気迫と覚悟に気圧され、咄嗟に言葉を返す事が出来なかった。

 

「………いいんじゃねーかな」

 

 俺がこの年頃の時は何をしていたっけか?まだ十五にもなってないだろうに。環境が人を育てるとは言うがこれ程とは…。

 

「そっか。それはそうとハルカ?君もバスターにならないかい?」

 

「は?」

 

「いや、旅をするなら危険は付き物だしバスターになれば身も守れるんじゃないかな、と」

 

「確かにそうだが…」

 

 ヴァンデルの身体に刻印なんてして大丈夫か?大丈夫じゃ無い気がする。何か色々と耐えきれなくなって身体がパーンってなりそう…。

 

「………遠慮しとく」

 

「そうかい?なれば便利だと思うんだけどな」

 

「ユーリィに教えてもらった事だけでも何とかなるって!………痛いの嫌だし!」

 

「そ、そう…」

 

 本気で嫌がって見せたら引いてくれた。

 確かに一瞬、光と闇が合わさり最強に!なんて思ったがそれだけのために死ぬリスクを負いたくない。そもそも鑑定士のジジババどもはああ見えて一流だ、ヴァンデルだとばれる可能性も無くはない。

 

「取り敢えず今日はもう休もうぜ。少し疲れた」

 

「そうだね」

 

 

 

 

 

 

 

 それぞれの思いを胸に二人は眠りにつくのだった。

 

 同じ部屋で。

 

「もう少し危機感持って欲しいなぁ、無防備過ぎる…」




三年間の修行期間、ユーリィを主人公に無理やり同伴させようか…別れさせて三年後に再開させようか…。

多分キングクリムゾンしそう。


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11話 別れの前に

 次の日の朝、ユーリィがバスターになるという事で鑑定小屋へ向かった。

 俺はただの付き添いだ。小屋の中には入らず、外でユーリィの契約の烙印(ブランディング)が終わるのを待つ。

 ユーリィは大丈夫だろうか…。

 

 暫くするとユーリィが出てきた。

 

「大丈夫だった?」

 

「問題ないよ。ほら、この通り」

 

 ユーリィが胸元をはだけるとバスターの証である烙印が刻まれていた。

 

「どうだ?バスターになった気分は?」

 

「うーん?まだ慣れてなくてよく解らないけど、何だか新しい感覚器官が増えたような?世界が何時もより広く感じられるよ」

 

 バスターは天力を天力を大気中から体内に取り入れ、天撃を放つ。大気中に漂っている天力まで感じ取れる様になったのだろう。

 

「何とも無かったしハルカもバスターになってみない?」

 

「ならんわ!」

 

 まだ諦めてなかったのか…。心配なのはわかるけど俺はまだ死にたくない。

 それに俺が気付いて無いと思っているのか?烙印するだけにしてはやけに出てくるまで時間がかかった事、微妙に目の周りが赤くなっている事に。

 喉元過ぎれば熱さ忘れる理論で道連れを作ろうとするな!

ヴァンデルバスター、か…。

 

 

 

 ………ユーリィがバスターになった以上、一緒に居られる時間も残り少ない。

 今は天力の扱いに慣れてない様だが、慣れてしまえば俺が周りの人間とは異なる存在だとバレてしまうのは時間の問題だろう。

 原作でドローマスターが人間に化け、ポアラを騙す場面があったが楽観視はできない。ユーリィは元々狩人なこともあってか気配を探るのが得意だ。天力の扱い方を覚えたら『門』の様に気配の探知すらできそうだ。

 

 そんな事を考えながらユーリィの隣を歩く。チラリとユーリィの顔を窺い見る。天力による感覚の広がりに慣れるためか、目を瞑ってみたり耳を塞いでみたりしている。見ていて少し微笑ましいがリミットは近そうだ…。

 

 

 

 

 

 

「そういえば買い物の仕方を教えてなかったね」

 

 ユーリィが突然そう言ってくる。流石に買い物くらい出来るとムッとする。

 

「ははっ、そういう意味じゃないよ。買い物といっても旅のための買い物さ。保存食やその他必需品の良し悪し、相場、買い込む量なんかだよ」

 

 ……確かにそれは知らないな。

 

「でしょう?何時でも出発出来るように今日は買い物をしようか」

 

 

 

 

 ユーリィに連れられ市場を歩く。前の世界では見たことのない物も多く並んでおり面白い。

さっきまで少々ナーバスになっていたが異世界情緒溢れる場所に気分も少し上向いた。旅講座買い物編を聞きつつ市場歩きを楽しむ。

 

 買い物を終える頃には夕方になっていた。

 

「そろそろ宿に戻ろうか」

 

「そうだね…」

 

 ユーリィと過ごすのは楽しかった。こっちの世界で初めて会った人間で初めての友人だ。別れたくない。

 でも俺はヴァンデルで、ヴァンデルはこの世界の人類全てにとっての敵。別れたくはないけどこのまま過ごして正体がバレる事で嫌われるのはもっと嫌だ。

 

 宿で何時もより静かな食事を終え部屋に戻る。

 

「ハルカ、どうかした?」

 

「何でも、無い」

 

「何でも無いって事は無いでしょう?市場から帰る時から元気ないよ?」

 

「………ユーリィ達と別れたくないなって」

 

「………確かにハルカは旅に出るだろうけど僕は縁を切るつもりは無いよ。旅に疲れたら何時でも帰っておいでよ、自分の家の様にさ」

 

「ユーリィ…」

 

 こっちの事情を全部話したわけじゃないけど、それでも俺はその言葉に救われた気がした。

 

 そうだよな、恩も返さず雲隠れなんて男が廃る!恩もお金(マギー)もきっちり利子を着けて返却してやる。出世払いで!

 

 

 

 

 

 部屋はそれまでの暗い雰囲気が無くなり暖かな空気が漂っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ?そっちのベッド行っていい?色々話そーぜ」

「ダメです」




後1、2話で考えていたストックが切れそう。
描きたいシーンは色々あれど話に連続性が無い。いつになったらそこまでたどり着けるのか。

修行期間ほんとどうしよう。


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12話 別れと新たな旅立ち

 夜が明けた。今日が俺の旅立ちの日だ。

 

 寝起きはあまり良い方てはなかったが今日は気持ちよく起きることができた。昨日ユーリィに話を聞いて貰えたたからだろうか。

 

「おはよう、ハルカ」

 

 ユーリィも起きていたようだ。

 

「おはよう」

 

 ユーリィと挨拶を交わしつつ二人で身支度を終わらせる。

 朝食が済めばそれぞれ別の道を歩む事になる。暫くは会うことも無いだろう。

 

「………」

 

 食事も済み、二人は言葉少なく門へと歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

「………」

 

「……そろそろお別れだね」

 

「そう、だな」

 

「ねぇハルカ、手紙を書いて欲しいんだ」

 

「……?」

 

「君の無事を知りたいんだ…。昨日も言ったけど僕がバスターになったのは大切な人達を護るためだ。当然君もその中に入っている。だけど僕は村から離れる事が出来ない。だからせめて、手紙で無事を知らせて欲しい」

 

「あぁ、そうだな。書くよ、手紙」

 

 どうせユーリィもヴォルハ村とアンクルスの里しか知らないんだ。世界を回って今度は俺が色々と教えてやる。こんなご時世だしちゃんと届くか分からないけど、何度でも書こうと思う。

 

「うん…、それなら僕も少しは安心できるかな。それに何時でも帰っておいでよ。ハルカは独りじゃないんだ。だから一人で無茶なことしちゃダメだからね」

 

「……わかってるよ」

 

「「………」」

 

「…じゃあ、行ってくる」

 

「うん、行ってらっしゃい」

 

 

 

 俺は門の外へと歩き始めた。少しは荒れた道を進む。途中何度か振り返ったがその度にユーリィが手を振ってくれる。後ろから見守っていてくれる、背中を押してくれる人がいる、その有り難さがよく解った。頑張ろう。

 

「よしっ、最初の目的地は西、港町レドウだ!」

 

 物流の拠点である港町ならば沢山の情報が集まっているはずだ。レドウまでの道程は途中に森もあり大変な物になるだろうが今の俺には不安は無かった。

 一歩一歩力強く進んでいく。

 もうユーリィは見えなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おふぅっ…」

 

 そういや俺、街に入れねーじゃん。旅一日目にしていきなりピンチ…。

 

 流石にアンクルスの里みたいに門が壊れてたりはしないよなぁ。ベルトーゼみたいなのが現れて暴れられるのも勘弁だけどさ…。

 

「ベルトーゼ………ベルトーゼ?」

 

「星呑み…?」

 

 良いかも知れない。星呑みはヴァンデルが生まれた時から持っている1つ目の星に冥力を込め、封印する修練法だ。上手くいけばどこぞの最弱魔人位まで冥力を抑えられるかもしれない。それなら門の感知をすり抜けられる。それに星も見えなくなるので服装の自由度も高くなる。

 詳しいやり方までは解らないが幸い時間はある。出来る事があるならやるべきだろう。

 

 目標もある、やる事もある。とても恵まれた環境だ。

 

「おっしゃっ!やるぜーー!」




何時もより短いですが切りが良いのでここまでで。


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原作・修行期間 13話 初めての独り旅

 

 

 アンクルスの里を出てから10日が過ぎた。

 

 食べ物は即席の罠で仕留めた小型の野生動物である。もしかしたら野良の魔物を食べているかも知れないが俺はヴァンデルだし問題ないね!流石にビィトの様に虫食に手を出す気にはならない。万歳旅講座サバイバル編!

 保存食も買ってあるがもしもの時のために取ってある。あんまり美味しくなかったしね…。楽しようとしちゃダメだった。

 

 

 

 

 時間はいくらでもあるので移動しながら修行もしている。

 

「星呑みも出来るには出来たけど、なぁ…」

 

 自分でも驚いたが、星呑みを思い付いてから3日目には既に出来るようにはなっていた。だが問題はその持続時間だ。初めて星呑みを成功さてた時は10分も持たなかった。

 無理やり呼吸を止めたかの様な息苦しさから、我慢できず直ぐにやめてしまった。

 ヴァンデルにとって冥力は産まれたときから身体に宿っており、生命維持には無くてはならないものだ。それを無理矢理抑え込むのだ、身体に掛かる負担は鉄下駄どころではない。

 星呑みをしている最中の俺は、まさに見た目通りのひ弱さだった。少し森を歩いただけであんなに疲れるとは…。

 しかし良いこともあった。冥力で強化された身体能力によって普段の行動でも無理を通していたようで、ひ弱になった事で逆に力任せの動きではない、無駄を無くした身体の使い方も解ってきた。

 

「この状態で鍛練したらそりゃ強くなるわ…」

 

 取り敢えず身体能力と冥力の強化方法には目処がついた。

 だが基礎能力が高くても単純にそのまま強くはなれないだろう。

 大事なのは基礎能力を十分に高め、更にそれを上手く扱う戦闘能力だ。

 

 ヴァンデルは種族として人間と比べて強い。

 基本的にヴァンデルは人間よりも圧倒的に大きな体格を持っている。ヴァンデルの強味はその体格からくるパワーとフィジカル、そしてリーチだ。

 人間側は相手に大したダメージを与えることが出来ないのにヴァンデル側の攻撃をまともにくらったら一発でアウト、しかも間合いは相手の方が広い。どんなクソゲーだよ。

 

 だが俺にはそんなものは無く、人間の子供と同じ体格しかない。ヴァンデルは愚か、人間相手でもまともな殴り合いは出来ないだろう。

 それを覆すには武器を持つのが手っ取り早い。しかし俺には武器を人間に向ける度胸は無い。身体はヴァンデルでも心は人間なんだ。

 となると武器を持つことは却下だ。

 非殺傷で相手を無力化でき、体格差もある程度無視できる戦闘方法…。

 合気道、とかだろうか?幸いヴァンデルも一応は人間骨格だ。人間とヴァンデル、両方に対応できなくもない。

 

「よしっ、この方向で行こう!」

 

 極めれば合気道と冥撃を組み合わせた全く新しい格闘技を開発できるかもしれない。

 正に天地魔闘の構え……昂る!

 

 最強の自分をイメージしてニヤニヤするのは、男なら誰しもが通る道だろう。今は女の子だけどね!

 

「ぐふぅ…」

 

 自分で突っ込んで勝手に傷つくとかいう高等プレイを楽しんでいると道脇の薮から物音が聞こえた。

 

 そちらを振り向くと大きな虎と目が合った。

 

「うぉおおぉぉーーー!」

 

 俺は全力で逃げ出した。

 何故だ!?今まで旅をしてきてモンスターと遭遇した事はなかったのに…!

 特に変わったことなんて何時もより長く星呑みしてただけなのに。

 

 ………それかぁ!

 

 何時もはモンスターも冥力垂れ流しの俺にわざわざ近寄って来なかったが、星呑みすることで冥力を感じられなくなり美味しい人間(エサ)にしか見えなくなったわけか!納得!

 

「ふざけんなぁ!」

 

 今は冥力も解放して走っているが相手は冥力を探知しているのか隠れても見つかってしまう。

 一度餌と認識したら人間もヴァンデルも関係ないってかぁ!?

 

「どうする…!」

 

 狭い木々の間を走る事でなんとかもっているが走る速度は向こうの方が上だろう。

 

「捕まるのは時間の問題だ。こうなりゃ一か八かやるしかねぇか…」

 

 そして俺は、全力をもって………隠れた。

 

 いや、だって勝てる気しなかったし。

 星呑みをして冥力を封じ、サバイバル編で学んだ様に気配を消している。

 

「………」

 

 上手くいったか?

 暫くじっとしていたがどうやら去って行ったようだ。やっぱりお前は便りになるぜサバイバル編。

 念のため星呑みを続けて旅を続ける。

 今度はこんな事が無いようにちゃんと気を付けなくては。

 日が沈みかける頃にはレドウの港町が見えてきた。後少しだ。

 

 

 

「グルルルゥ…」

 

 とても嫌な予感がする。俺は後ろを振り向いた。

 虎がいた。

 

「いやぁーーー!?」

 

 俺は星呑みを保ったままレドウへ駆ける。

 

「開けてーーー!」

 

 閉まっている門に助けを求める。願いが通じたのか俺が通れる隙間だけ開けてくれた。そこへ身体を滑り込ませる。

 

 後ろで門の閉まった音がした。

 どうやら助かったようだ。

 

 ありがとう門。少しでも邪魔だとか思ってゴメン。

 

 気が動転して門に助けを求めたが、ヴァンデルだとバレなくて本当に良かった。

 閉め出されたあげくモンスターに負けるヴァンデルとか全く面白くない。

 

 門が何やらお小言を言っているがそれすら気持ちよく聞いていられる。生きてるって素晴らしい!

 

 お小言を聞き終え御礼を言いその場を離れる。

 獲らぬ狸のなんとやらだったが星呑み状態なら門を騙す事も可能なようだ。

 

「おっし、宿をとった後に情報収集でもするか。何も出てこないなら最悪黒の地平まで足を伸ばそう。グリニデ閣下も見てみたいし」

 

 目標に向けてこつこつと頑張ろう。

 

 

 

 

「俺の冒険は未だ始まったばかりだぜぇ!」

 




後ユーリィ主体の話を1話、ハルカ主体の話を1~2話描いたら原作本編に移ろうかなと思ってます。


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14話 修行期間の日常

 アンクルスの里を旅立ってからそろそろ1年が経つだろうか。

 俺は今、黒の地平にいる。

 と言ってもたまに港町レドウに戻り情報を集めたりユーリィ達に手紙を送ったりもしているが。

 

 黒の地平は既にかなり酷い有り様だ。2年後、原作ビィトのトロワナが滅びず持ちこたえていたのは割と奇跡だろう。

 

 そんな中俺はちょっとした旅商人をしてお金を稼いでいる。

 星呑みしていなければモンスターに襲われる事もないので町の外で薬草等の物資を回収したり、トロワナで不足している物をレドウで買って届けたりだ。

 護衛のバスターを雇う必要もないのでボロ儲けだ。

 

 情報収集は全く成果無しだけどね…。

 

 

 

 修行の方はそこそこ順調にいっている。修行相手はその辺を歩いてたモンスター達が主だけどな。

 

 星呑みに関しては寝ている時や驚いた時も解除することなく、一日中星呑みを持続させる事が出来るようになっていた。

 そのお陰で未だヴァンデルとバレる事無く人里に出入りできている。修行した甲斐があるというものだ。

 

 冥撃も適正が高かったらしく『魔属性』以外の下位冥撃は全属性既に習得している。

 中位も使えはするが精々不意討ちで最初に使うのが精一杯で、実戦で使うには隙が大き過ぎた。

 そのため速射性に優れた下位冥撃の精度や発動速度を鍛えている。

 この調子で中位や、できれば上位の冥撃も速射できるようになりたい。

 

 使っている属性は専ら水・風・雷だ。

 水は水流を叩き込み、その質量と勢いでもって姿勢を崩すのに使っている。

 風も水と使用目的は似ているが弾速が速く不可視で、範囲も広くしやすいので使い分けている。衝撃力(ノックバック)だけ高く威力ゴミな天烈掌みたいなものだ。

 雷は言わずもがな、ほぼ回避不可能な弾速と電流による麻痺のお陰で起点としてかなり使い勝手がいい。相手がデカかったり、冥力が高いとほとんど効かなかったりするけどね。

 火も得意ではあるが人に向けるには加減がきかない。樹や虫のモンスターを一掃するのに使ったりするが、それくらいだ。

 

 体術に関してだが、俺は並のヴァンデルと比べてパワーもリーチも無い。だから相手の力や身体の構造、骨格を利用した自己流合気道と下位の近接冥撃を組み合わせて戦っている。

 相手の足場を崩したり目潰ししたり、届かない掌底を風で飛ばしたり電撃で一瞬麻痺させたり、とやってることは狡いが俺としては中々の良い線いってる気がする。

 勝てばいいのだ。

 

 

 

 そう、勝てば。

 

 長々と説明(現実逃避)していたが俺の目の前にはヴァンデルがいた。そう、モンスターではない、ヴァンデルだ。

 

「貴様ぁー!!この俺様が集めた最強軍団をっ!よくも!よくもぉ!!」

 

 どうやらこいつの配下のモンスターを狩りすぎたらしい。

 せっかく買ったモンスターが居なくなっては領土を増やせず収入も無い。そしてモンスターを買ったから手元に金も無い。詰んでるな。

 そりゃキレて原因潰しにくるわ。

 

 なんか三流っぽいことを叫んでいるが三ッ星だし普通に強そう。

 やけに肥大した筋肉質の上半身に、それと比べれば弱々しい下半身。バランス悪そうだなぁ。

 

「何か言ったらどうなんだぁっ!!」

 

「ごめーんね☆」

 

「ぶっ殺す!!!」

 

 てへぺろしながら上目遣いで可愛らしく謝ったのに、何が不満なのか、襲いかかってきた。

 

 激情からか何も考えていない突進からの大降りな一撃。こいつ心理戦弱いな。

 

 俺の頭を狙った横振りのパンチを前に出ることでかわし、突き出された腕に手を添えつつ相手に背を向ける様に身体に巻き込む。更に掌から電流を流し身体を硬直させた。それにより突進の勢いからつんのめった相手の足を払い腰に乗せ、その勢いのまま脳天から地面に叩き落とした。

 俺流背負い投げだ。

 更に冥力で強化した震脚を御見舞いし、ついでとばかりに火の冥撃を叩き込んだ。

 

 我ながら綺麗に決まったものだ。

 

 ただ相手は腐ってもヴァンデル、燃えていて良く見えないがまだ襲いかかってくるかもしれない。おかわりで中位冥撃もプレゼントしておこう。

 

 中位冥撃を撃とうと溜めの動作に入ろうとしたところ、炎の中から冥撃が飛んできた。

 急いで下位冥撃に切り替え相手の冥撃を逸らす。

 

 今のでまだ冥撃を撃てる元気があるとは…。流石ヴァンデル、無駄にタフだ。

 

「このぉ腐れバスターがぁ!!俺様を虚仮にしやがってぇ!」

 

 どうやら俺をバスターだと勘違いしているようだ。

 冥撃まで見せているのに俺がヴァンデルだとわからないとは観察眼ないな。戦場じゃ長生きできなさそうだ。戦場に立ったことは無いけどな!

 

 一度投げられて警戒しているのか、なかなか攻めてこない。

 もう一回挑発してみるか…?

 

 そんなことを考えていたら相手が動いた。

 

「死ねぃ!」

 

 その長い腕を使い地面を殴り付け、土砂を飛ばしてきた。

 どこのウヴォーさんだてめぇ!

 

 咄嗟に風の冥撃を纏うことで土砂を逸らす。冥撃も飛んできたので自分に突風を当てその場を離脱する。

 風の下位冥撃は威力は控え目だが自分の動きを速めたり、空中で方向を変えたりと色々応用がきいて便利だ。

 流石に天空王の様に自由に飛び回るのは無理だった。試して解ったがあれはおかしい。ヴァンデルは冥力を大地から取り込む、にも関わらず大地から離れて空をビュンビュン飛び回るとかどんな燃料タンクとエンジンを積んでるのか…。

 それはそうとして。

 

「何処行きやがったぁ!!」

 

 アイツは俺を探しているようだ。馬鹿だ、自分の攻撃で相手を見失うとか…。やっぱウヴォーさんの足下にも及ばんわ。

 

 折角の機会なのでこれで終わらせようと思う。

 星呑みを止め、冥力を解放する。火の中位冥撃を作り出し限界まで冥力を注ぎ込み圧縮する。

 

「そっちかぁ!」

 

 冥力の放出によって俺の位置を覚り、突進してきた。

 そちらへ向け火の中位冥撃を盾の様に構える。

 

「そんなノロマな冥撃当たらんわぁ!」

 

 あっ、やっとこちらの正体が解ったんですね。

 相手が飛び掛かると同時に圧縮していた火の中位冥撃を放ち、間髪入れずに風の下位冥撃を後ろからぶち当てた。

 解放された爆炎が風によって指向性を持ち、勢いが増す。

 避けるタイミングをずらされた相手はそのまま爆炎に呑まれ、消えていった。

 

「………」

 

「ふぅ」

 

 周りに気配は無い。ちゃんと倒せたようだ。

 

 最後のは上位冥撃を制御できないなら相性の良い冥撃同士を組み合わせ、それに匹敵する火力を出そうという発想から来たものだ。

 火の中位冥撃もポアラのバーストエンドを参考にしたものだが、あの威力と圧縮率には全く届かなかった。ただ、火の持続時間は長かったのでそれを風で煽り指向性を持たせ、広い範囲に高温の炎風を押し出すことには成功していた。冥撃版クレイモア地雷の様なものだ。

 

「実戦で成功してよかったぁ…」

 

 星呑み状態バージョンを不意討ちで使った事は有ったが、実戦の最中、冥力を解放して使ったのは今回が初めてだった。

 使わなくても倒せたかも知れないが、最初の一合で倒し切れなかった時点で火力不足だと解った。

 正直長期戦はしたくない。冥力や冥撃の制御は神経を使うため、戦闘が長引けば長引くほどこちらがミスする確率が高くなっていくからだ。

 呼吸をするように無意識に制御できればいいが、俺は未だその域に達していない。

 

「まぁそれで一か八かの賭けをするのもどうかとも思うけどな…」

 

 なんにせよ勝てて良かった。

 

 疲れたし今日はもう帰って寝よう。

 

 

 

 

 

 そんなこんなで、割と充実した毎日を送っています。




ハルカ強くし過ぎかなぁ。
まぁ、もしヴァンデルということを隠しつつビィト達と旅することになったら、冥撃使えないのでただの体術馬鹿になっちゃいますが。


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閑話1 ヴォルハ村の危機 前編

 

ユーリィ視点―――――

 

 

 

ハルカが旅立ってから2年が過ぎた。

僕もバスターにはなったが、これまでとそう変わらない生活をしている。

今まで通り獲物を狩り、モンスターがいれば被害が出る前に処理をしておく。

バスターになったことでモンスターを倒すのは格段に楽になったし、その報償金で村の設備も更新しつつある。

前はモンスター用の毒矢を使っていたが、急所を狙わなければ矢が刺さらなかったり、刺さったとしても毒がなかなか効かなかったりとかなり危険だった。

今は矢に天力を込めるだけで相手の防御を貫ける。

更に冥力も捉えられるようになったお陰で相手を視認しなくてもおおよその方向や距離が分かるようになった。

 

もう少し早くバスターになっておくべきだったかな?

 

そう思いつつ茂みに隠れモンスターを処理していく。

 

 

 

 

それにしても最近の森は少しおかしい。今まで見たことが無かった種類のモンスターが現れ始めたのだ。更に日を追う毎にその数が増えている気がする。

あまり嬉しくない事に、前まで村の周辺にいたモンスター達よりも強い。このまま放置しておけば村に被害が出るのは時間の問題だろう。

 

外壁補修を優先しておいてよかった。そうでなければ今頃こうして狩りに出ることもままならず、ずっと村で護衛することになっただろう。

 

できれば誰かに村を任せて森の奥まで探索したい。元を絶たなければどうしようもない。

 

この辺りを拠点に活動しているバスターは少ない。僕の他にはアンクルスの里のポアラさんくらいだろう。

ただ向こうも少し前から付近の池に泥トカゲが住み着いたようで、こちらの応援にこられる状況ではなさそうだ。既に人が噛まれる等の被害も出ていると聞く…。

 

比較的に近い立地の人里で同時にモンスターが活性化か…。何も無ければ良いんだけど何か有るんだろうな。

 

「最悪ヴァンデルが出てくる事も覚悟しなくちゃいけない…なっ!と」

 

群れていた最後のモンスターの脳天を撃ち抜いた。

これで村の周囲にいたモンスターは全部狩った。これで暫くは村から離れても大丈夫だろう。明日は森の奥まで探索だ。

前回は西方向を調べたから今回は北へ行こうか…。できれば今回で終わらせたい。

 

村に帰る途中、今朝狩って解体し吊り下げておいた鹿も回収する。

物流が少し滞り気味な今の村にとって貴重な食料だ。

 

 

 

 

村に戻ってきた。

 

「お帰り、お兄ちゃん」

 

「ただいま、これお願いするね」

 

担いでいた鹿をルチアに渡し、残りの解体を頼む。後日、村の各戸に配分されるはずだ。

 

 

村長に今日の事を報告に行く。

 

「そうか、やはり増えておったか…」

 

「はい、僕が対応しきれなくなるのも時間の問題かもしれません…。明日また探索に行きます。何も無いとは思いますが、村の守りをお願いします」

 

「うむ、ユーリィも気を付けるのじゃぞ」

 

「わかってますよ」

 

報告を終え、家に帰る。明日に備えて早く休みたい。

ハルカは今頃どうしているだろう?手紙は定期的に届くから元気なんだろうけど…。

このままだと物流が麻痺して手紙も届かなくなっちゃうな。

 

 

「頑張ろう…」

 

疲労からくる眠気でだんだん意識が薄くなっていく。

 

「みんな僕が守るんだ…」

 

最初の誓いを胸に僕は眠りについた。




短いですが切りが良いのでこの辺で。
ユーリィの閑話は2話構成になりそうです。

それと話が頭の中に追い付いちゃったので少し更新頻度落ちる思いますがご容赦を。


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閑話2 ヴォルハ村の危機 後編

 

 あれから更に半年以上が過ぎた。

 

 未だ異変を終わらせられずにいるが、何が原因かは調べがついている。

 死人沼の策士ムガイン、そして黒き剛爪ガイクスの2人によるものだ。

 手を組んでいるのか別々の勢力なのかは解らないが、それぞれがアンクルスの里とヴォルハ村を攻めているようだ。そのせいで僕もポアラさんも拠点を離れられず、バスター同士で協力し合えない状況になっている。

 

 二つ名からして死人沼の策士ムガインが糸を引いていそうだ…。

 

 不幸中の幸いだが半年前からモンスターの数はそれほど大きく増えていない。増殖速度が上限に達したのか…。それでも消耗戦となればこちらが不利だ。

 

 少し前にはハルカがこちらに帰ってくるという手紙も貰った。危険だから港町レドウで待つように手紙を返したが本人に届いているかはわからない。遅くても数ヶ月、早ければ数日中には帰ってくるだろう。

 出来ればそれまでに片を付けたい。

 

 

 

 

 

 

 

 そして今、僕はガイクスの居城が見える位置にまで来ている。

 今夜、ガイクスを倒す。そのためにこの半年間準備してきたのだ。失敗はできない。

 半年かけ防衛設備を整え、半年かけて天力を込めた結界装置を準備した。多少の防衛戦ならこなせるだろうし、もしもの時は村長の家に避難し結界を作動させれば数日は持ちこたえられるだろう。

 

 夜になるのを待つ。単独での侵入なら闇に紛れた方が成功率も高まるはずた。

 

「よし、行くか…」

 

 城の外壁に上がる。今晩は新月だ。影も落ちないだろう。

 外壁の上を移動しながら複数箇所で毒草を燻し毒煙を発生させる。ガイクスの配下は狼や猪に似たモンスターが多く鼻も利く。先ずは毒煙で鼻を潰し弱らせる。この暗闇なら毒煙が充満するまで分からないだろうし侵入経路の特定も難しいだろう。

 

 煙が引いたところで自らも侵入し、弱っているモンスターに止めを刺していく。

 流石にこの数のモンスターを同時に相手するのは無理だ。闇に紛れ少しずつ相手の戦力を削ぎ取っていく。

 

 

 この先は本邸だ。

 

 今まで以上に注意してモンスターを処理していく。

 

 

 

 

 

「………」

 

 この部屋の中に何かがいる。

 

 モンスターに比べるとかなり強い気配を放っている。ヴァンデルだろうか?

 ここに来て初めてダガーナイフを構える(・・・)

 この部屋の扉はここしか無さそうだ。気付かれずに侵入するのは難しいだろう。

 

「それなら…」

 

 豪奢な扉に火の天撃を叩き込む。その爆炎に紛れ部屋に飛び込み、気配の有った場所にも天撃を放つ。更に間髪入れずダガーでも斬りかかる。

 

 ギャィンッ!!

 

 防がれた…!

 

 直ぐにバックステップでその場を離れる。

 数瞬前まで僕がいた場所を何かが通りすぎた。

 黒い…爪!

 全身強靭な筋肉と黒い毛皮に覆われ、身体の半分は有りそうな黒い爪を生やした虎顔のヴァンデルが立っていた。

 

 二ッ星か……。

 

「貴様一人か?この城に単独で侵入してくるとは良い度胸だ…!」

 

「一応聞いときますけど、貴方がガイクスですか?」

 

「いかにも、我輩が黒き剛爪ガイクスだ」

 

 なるほど、二つ名に違わぬ容姿をしている。これが僕達の敵!

 

「そうですか、では…大人しく倒されてください」

 

「図に乗るな小僧!」

 

 向かってくるガイクスに煙幕代わりに袋に入った毒粉を投げつけ、部屋から逃げ出す。

 

「ぐぅっ、待て!」

 

 狙った通り袋を爪で弾いた事で袋が破れ毒粉が飛び散る。顔の近くではぜたので相当量の毒粉を吸い込んだはずだ。

 

 そのまま城の外へ向けて駆け続ける。

 時折冥撃が飛んでくるがそれを避け、こちらも天撃で牽制する。

 威力は要らない、目眩ましになればそれでいい。

 

 城から森の中とへ駆け込む。

 

「逃げるか、腰抜けがぁ!」

 

「そんな安い挑発、買ってあげないよ」

 

 勝ち目が薄い戦いに何も手を打たず赴いて死ぬのは馬鹿のやることだ。少しでも自分に有利な条件で戦おうとするのはごく普通の事だろう。

 

 森の狭い木々の間ではヴァンデルの大きな体格が仇になり本来の力も速度も出せていない。

 これならそう簡単には追い付かれないはずだ。

 

「むぅ、何処へいった!」

 

 僕は物陰に隠れ気配を消す。

 

 そして相手の死角から天力を込めた毒矢を放つ!

 

「ぐぅっ…、闇討ちとは卑怯だぞ!」

 

 知らないよ。

 僕はバスターではあるけれど、戦士の前に狩人なんだ。獲物を仕留められればそれでいい。

 

「そっちかぁ!」

 

 向かってくるガイクスに天撃を放ち、その爆炎に紛れ移動する。

 

「またかぁ!隠れてないで出てこい!」

 

 嫌だね。

 

 もう一度死角から矢を放つ………命中だ。

 後はこれの繰り返し。

 

 何も考えずこちらのフィールドに出て来てしまった以上、そちらの負けは確定している。

 ここで戦って死ぬか、逃げ延びるか。まぁ毒で弱ったヴァンデルを逃がすつもりも無いけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 何度繰り返しただろう?

 やはりヴァンデルはタフだ。なかなか毒が回りきらない。ヤツの身体には何本も矢が突き刺さっている。

 

「………ぅ、…………っ」

 

 遂に膝をついた。

 そろそろか…。

 

 僕は感知されることも厭わず天力を高める。

 高めた天力を炎の天撃へと変換し矢に纏わせる。

 そして弓を限界まで引き絞り、その矢を相手の眉間に打ち込んだ!

 

 相手の頭部が弾け飛び、上半身が炎に包まれる。

 

 

 

 

「………終わった、かな」

 

 気付けば東の空が白み始めている。

 

「帰ろうかな…」

 

 

 

 僕は疲れきった身体を引きずる様にして、ヴォルハ村へと帰るのだった。




少年漫画の主人公側のキャラとしてこの戦い方はどうなのだろうか。


作中で出てきた結界発生装置ですが、門と同じ様な効果の結界を張れるという設定です。門と違い恒常的に展開しているものでは無く天力を溜めておいて緊急時のみ展開する感じです。


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原作の始まり 15話 帰って来たハルカ

 

 俺がヴォルハ村を旅立ってからもうすぐで3年が経とうとしている。

 今は村へと帰る旅の最中だ。ユーリィから『アンクルスの里やヴォルハ村でモンスターが発生して危険である。港町レドウで事態が収まるまで待っていろ』という旨の手紙が届いていたが今回は無視させてもらう。原作開始を見逃すわけにはいかない。少し余裕を持って帰っておきたい。

 そもそもこちとら黒の地平で修行していた身、泥トカゲレベルのモンスターなど物の数ではない。

 

 ただ少し気になったことがある。ヴォルハ村周辺に出没したモンスターが泥トカゲの様な沼の章に属するモンスターでは無く狼の様なモンスター、つまり地の章に属するモンスターだったことだ。

 

 アンクルスの里を攻めている死人沼の策士(笑)ムガインは沼の章のモンスターしか使っていなかったはずだ。

 数からして野良でも無さそうだし地の章のモンスターが出てくるのはおかしい。

 原作で描写がなかっただけなのか、もしくは俺の行動によって何かしら変化があり、他のヴァンデルまで介入してきたのか…。

 どちらかと言えば後者の可能性が高いだろうか?

 ムガインは原作でバスターの人数や性格を調べ抜いていた。その結果ポアラは単独でムガインの本拠地に誘い込まれることになったわけだ。

 ユーリィがバスターとなり敵となりうる存在が増えた事で警戒し、応援を呼ぶ事は十分に考えられる。

 

 そうであるなら少し心配だ。原作と違う事があると俺もどう動けばいいのかわからない。大丈夫だとは思うがやはり早めに帰っておきたい…。

 

 

 そう思いアンクルスの里への道程を急ぐ。

 

 

 

 

 それにしてもこの3年間色々あった…。

 

 無名の三ッ星とやりあったり、生き物としてどうなの?と思いたくなるモンスターとやりあったり、それらを糧に修行したり…。

 

 だけど結局、黒の地平でグリニデ閣下やその配下のヴァンデル達とは会えずじまいだった。

 黒の地平の奥地に向かった事はあるのだが、密度の高くなっていく在野のモンスターや警備のモンスターに阻まれ進むことが難しかったのだ。多少隠密行動も覚えたがユーリィ程じゃない。地面が見えなくなるほどウジャウジャいる虫どもに見付からず奥へ進める自信はない。生理的にも無理だ。

 

 所詮は虫だし蹴散らしなが進んでも良かったのだがやり過ぎるとグリニデ閣下の嫌いな粗暴な振る舞いともとられかねないしね。

 敵対行動をした上で閣下が見逃しても良いと思わせられるほどの有能さ(セールスポイント)は無いからなぁ。

 それに取り次ごうにもモンスターの数は多いが知能があるものは少ないらしく、人語を解すモンスターには会えずじまいだった。

 

 

 最後まで原作登場キャラ達と出会えなかったのは残念だがビィト達をストーキングしていればその内遭遇出来るだろう。

 ムガイン?序盤の噛ませは眼中に無いですね………ゴメンやっぱりあの三下っぷりは間近で見たいわ。

 

 

 そうこうしている内にアンクルスの里の外壁が見えてきた。

 今回は星呑みしてるし正面から堂々と入れる。

 先ずはヴォルハ村がどうなっているのか情報を集めないとな。これからの行動はそれから考えよう。

 

 

 

「おーい、門さーん!いれてー!」

 

 

 アンクルスよ!私は帰って来た!!

 




大変長くお待たせしてしまい申し訳ないです。しかも短い…。

今回ほどお待たせすることは無いと思いますが(多分)、これからは不定期更新になりますのでよろしくお願いします。


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16話 里帰り

 アンクルスの里に着いてからは宿を取った後、ここ最近の状況について住人達に聞いて回った。相変わらず泥トカゲやガブリ貝の被害は出ているものの、里への大規模な襲撃等は起こっていない様だった。

 

 既に原作からの若干のズレは有るものの粗筋自体はそう変わっていないだろう。出来ればこの世界が原作漫画よりの世界なのかアニメよりの世界なのか見極めておきたい。

 アニメ二期のエクセリオンも余り観れなかったとは言え結構好きだったし、出来れば漫画とアニメの良いとこ取りハイブリッドだと嬉しいな。

 

 ポアラの様子も隠れて窺ったがどちらなのか良く分からなかった。

 まぁ里への襲撃が有るか無いか、トト(ピンキーベアタマリンという種類の子どもの猿?)が着いてきているかどうかで判断できる。それに今回はどちらであってもそこまでの違いは無い。こちらの動きも特に変える必要は無いだろう。

 ……それにしても3年間でここまで育つか。格好も相まってなんというか、エロい。

 それに比べて俺は…いや、考えるのはよそう。

 

 そんな下らない事で意識を飛ばしていたらいつの間にか鑑定小屋前まで着いてきてしまったようだ。

 

 鑑定士の婆さんにガン見されている。

 

 ヤバい、咄嗟に無邪気な子どもを装い、ポアラの事をさも憧れているかのように見つめる…。

暫くそうしていると婆さんは不思議そうに首を捻り俺から視線を外した。

 それと同時に俺はポアラに気付かれない様、急いでその場を離れる。

 

 

 冷や汗がでたよ……それに心臓にも悪い。

 

 だが今回の事で、たとえ鑑定士相手であっても直ぐにヴァンデルだとはバレないと分かった事は儲け物だ。星呑みをして冥力のコントロールを重点的に鍛えた甲斐が有ったというものだ。

 二度とはやりたくないがな。

 

 

 

 取り敢えずポアラが行動を起こすまでもう暫く余裕が有りそうだった。ユーリィやルチアの事も心配だし一度ヴォルハ村に行っても良いかもしれない。

 まぁポアラが行動を起こしていたとしてもユーリィ達の事を優先してたとは思うけどね。大切だし。

 

 そうと決まれば今の内に買い出しとかもしておこうかな。そろそろ日も暮れる、急がなければ市場も閉まってしまうだろう。明日の朝一からヴォルハ村に向かいたいしここで時間を浪費しているわけにはいけないな。

 

「よし、行くか」

 

 そうして買い出しを終え宿に泊まり、明日に備える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ―――アンクルスの里を出てヴォルハ村へと向かっているが、確かに3年前には見かけなかった地の章のモンスターがちらほら見受けられる。

 たまに襲われもしたが黒の地平で鍛えた俺にとって物の数ではない。

 敏捷性なら虫どもよりもこいつらの方が高いくらいだが、哺乳類に近く分かりやすい骨格をしているのでどこに力が掛かってくるか、可動域はどの程度か、重心は何処かなど一目で解る。

 黒の地平のわけのわからん形をした虫どもと比べたらイージーモードだ。特に苦戦することとなく投げ殺していく。

 

 飛びかかってくる相手の勢いの向きを変え、更にこちらの力を加えて脳天から地面に叩き落とす。頭蓋骨がパッカーンしてグロい。これはやめよう。

 

 今度は飛びかかってくる勢いを後ろに逃がしつつ相手の頭を固定し、捻る。自らの慣性と体重でもって首がへし折れる。折れた感覚が手に残ってキショい。これもやめよう。

 

 命は平等とは言ったものの、虫よりも脊椎動物を殺す方が後ろめたさが若干大きい。まぁ結局敵対するならどっちも殺っちゃうんだけどね。

 

 もう少し小さく、可愛らしい見た目で無害ならペットにしても良いんだけどなー。この狂暴で、肩まで口が裂けてる狼擬きは却下だ。普通に怖いわ。

 

 

 さあ次だ――。

 

 

 ……………

 

 

 ………

 

 

 …

 

 

 

「もう向かってくるのはいないかな…?」

 

 

 逃げて行くのは無視して旅路を急ぐ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、そろそろヴォルハ村が見えてきても良い頃だ。

 

 ユーリィやルチアがどう成長しているか楽しみにしつつ、俺はヴォルハ村へと進んでいった。

 

 




ピンキーベアタマリン…か。今までカネックだと思ってたなんて言えない。


取り敢えず手元に無かったビィト全巻を楽天市場で注文した。ネット通販初めてなので少し緊張した…。なんというか個人情報をネット上に打ち込む気になれない。金銭が絡むと特に。

これで更新速度が安定したらいいなぁ。


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17話 二人との再会

 

 

 ようやくヴォルハ村が見えてきた。

 

 何だろう?記憶と少し違う。村の周りを囲っていた塀が立派になっている。というか普通に外壁だ。

 流石に門は喋る『門』じゃないがちゃんとした門もついている。

 

「変わったな~…」

 

 今は解放されている門をくぐり、ヴォルハ村の中へと入る。

 内部は然程変わってないように見える。記憶にあるユーリィ達の家へと歩く。

 

 少し緊張してきた…。

 

 胸の高鳴りを抑えつつドアをノックする。

 

「は~い?」

 

 若い男の声だ。ユーリィだろうか?3年前はまだ声変わりもしておらず少年らしい声色だったが、今聞こえたのは落ち着きのある若者の声だ。

 

 ドアが開く。

 

「や、やほー…?」

 

「えっ…、ハルカ?」

 

 おー、でっかくなったなー。前は少し目線を上げれば目が合ったのに、今は若干見上げないと目が合わない。心なしかユーリィも顎を引くようにして下を見るような顔の角度だ。

 

「ふんっ!」

 

「わっ!いきなり何するのさ!?」

 

 何故かイラッときたので軽くボディブローを打ち込んだが普通に受け止められた。悔しい。

 

「まぁいいや…、取り敢えず上がってよ」

 

 ユーリィに続いて家に上がる。

 あの時と同じ様に居間に通される。3年前のままだ、懐かしいな…。

 

「ハルカさんが戻って来たんですか!?」

 

 とたとたと廊下を駆ける音がして一人の少女が居間に飛び込んできた。

 ルチアだ。

 ルチアも3年前と比べると大分成長している。主に胸部装甲が。ぐぬぬ………ぐぬぬ?まぁいいや。

 そして顔立ちも少し大人っぽくなり、可愛らしさの中に美しさも見えてきている。

 

「やっほー、ただいまルチア」

 

「お帰りなさいハルカさん!」

 

 椅子から立ち上がり挨拶をするとそこに飛び付いてきた。

 ユーリィ程では無いが3年間で離された身長差からか、ちょうど良い感じ抱きすくめられる。

 

 こっ、これは……!

 

 

 

 

「その辺にしておきなよ。ハルカも疲れてるだろうしお茶にしよう」

 

 暫く揉みくちゃにされているとユーリィがお茶の用意を終え話しかけてきた。

 

「あぁ、私ったらすみません…」

 

「大丈夫だ、問題ない…!」

 

 ユーリィに勧められ席につき、お茶をすする。

 

「いきなり帰ってきたから驚いたよ。改めてお帰りなさい」

 

「おー、ただいまー!」

 

「で、だ。どうして戻ってきたんだい?手紙で危険だと伝えたはずだけど?」

 

「いやー、あはははー……」

 

「笑って誤魔化さないで」

 

「えーと…そのー…」

 

「まあまあ、こうして無事に帰ってこれたんですし良いじゃないですか。せっかくの再会なんだから小言は後にしましょう?」

 

「天使だ…!」

 

 ルチアは昔と変わらずに天使だった。

 

「ふふっ、何ですかそれ」

 

 口に出ていた様だ。

 

「まったく……」

 

 ようやくユーリィも諦めたようだ。

 

 

 ……………

 

 

 ………

 

 

 …

 

 

 この3年間で有ったことについて沢山話し合った。

 ユーリィがモンスターの群れからこの村を守りきったことやヴァンデルを倒したこと等色々聞いた。こちらの事については流石に黒の地平の事は心配をかけるしぼかして伝えた。

 驚いたのはつい先日ルチアまでバスターになったという事だ。

 理由は「無力なままでいたくない。自分の手で大切な人を守りたい」だそうだ。

 やはり天使か…。

 

 

「それにしても、二人とも大きくなったなー」

 

「そういうハルカはなんというか…」

 

「昔と変わらず愛らしいです!」

 

 ぐふっっ!

 

 その無邪気な笑顔が今は憎いぜ…。

 

 

 そう、この3年間で俺は全く成長していないのだ。当然と言えば当然だ。ヴァンデルは最初から完成された姿で産まれるのだ。最初から完全体であり、成長することなど無い。

 といっても身体能力やら冥力やらは成長するようだ…。けれども見た目は変わらない。

 

 つまりヴァンデルである俺の見た目が成長するはずが無いのだ。たとえ子どもの様な見た目であっても!見た目であってもぉ……。

 

 

 

 そのまま夕飯となり楽しい時間は過ぎていった。

 

 

「ふぁああ~…」

 

 久しぶりにはしゃいだせいもあり、いつもより早い時間に眠気が進行してきた。

 

「ふふっ、大きな欠伸ですね」

 

「そうだね、そろそろ休もうか」

 

「うぃー」

 

「さてハルカ、寝るまえにやることがあったよね?」

 

「……?」

 

 何かあっただろうか?風呂にも入ったし歯磨きもした。他にやることなんて…?

 

「中断してた説教の続きだよ」

 

「!!」

 

 ルチアに助けてくれとアイコンタクトを送る。

 

「では先に失礼しますね。おやすみなさいハルカさん、お兄ちゃん」

 

 気の毒そうな顔をして目を反らされた。

 

「さぁ、覚悟はいいかな?」

 

「勘弁してくれぇーーー!」

 

 

 




書いてて思ったんですが自分の小説って説明文が多くて吹き出しが少ないんですよね。
そういう意味ではこの話はよく喋らせた方かな?と。

好みはあるだろうけど読者さん的にはどちらの方が良いんだろうか?


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18話 アンクルスの里の襲撃

 

 

 朝が来た。小鳥や家畜の鳴き声が外から聞こえてくる。俺は覚醒しきらない頭でその事を認識する。もう少しだけ微睡んでいたい。もう少しだけ…。

 

 ノックの後に誰かが部屋に入ってきたようだ。

 

「ハルカさーん?朝ですよー」

 

 ルチアのようだ。

 眠いからもうちょっとこのままで…。

 暫くするとカーテンの開く音がした。

 

「うぅ…眩しい……」

 

「ほら、起きてください」

 

 ルチアの気配が近付いてくる。そのままベッドの直ぐ横まで来た。

 

 ………。

 

 なんだか視られているようで落ち着かない。

 流石にだんだんと覚醒してくる。観念して起きることにしよう。目を開く。

 

 目の前にルチアがいた。

 

「あぁ、起きちゃいましたか」

 

「……?」

 

 起こしに来たのでは?

 

「おはようございますハルカさん」

 

「おはよう、ルチア」

 

 そのまま伸びをして、立ち上がる。

 

「ふう」

 

「朝ごはんできてますよ。準備ができたらすぐに来てくださいね」

 

「わかったー」

 

 眠気から目を擦りつつ返事をする。

 

 

 

 

 その後朝食を取り、これからの予定について相談する。

 

 俺としては二人や村の無事も確認できたしアンクルスの里へ行きムガイン討伐を見学したい。

 

「ハルカはこれからどうするんだい?故郷探しの旅はまだ続けるんだよね?」

 

「そうだね、故郷に帰ることはまだ諦めたくないかな。とりあずこの3年間さがしてみたけど手懸かりは見付からなかったし、今度はもう少し遠くまで足を延ばしてみるつもりだよ」

 

 そう、この3年間で元の世界に帰る手懸かりは見付からなかった。何故自分がこんなところにいるのか?この世界に転移してきたのか?それとも転生してきたのか?全く分からなかった。

 元の世界に帰れるなら帰りたい。でも、もしこれが転移ではなく転生なら、元の世界の自分が死んでいるなら、その時は……。

 

「そっか諦められないよね」

 

「うん、そうだね…」

 

 ユーリィは腕を組少し考える素振りを見せた後、こう切り出した。

 

「ハルカの故郷探しの旅に僕も着いていっちゃダメかな?」

 

 何を言っているのだコイツは。

 

「いや、ダメとかの前に何故?」

 

「んー、心配だからかな?」

 

「心配だからとか言われましても…」

 

「それがいいです!ハルカさんは少し抜けているところもありますし、お兄ちゃんと一緒なら安心です!」

 

 ぬ、抜けてないし…!

 

「でも色んな場所に行くし危険なところも有るかもしれないよ?」

 

 ビィト達に着いていくのだ、危険なんてものじゃないぞ。

 

「そう言われたら逆に放って置けないかな」

 

 むぅ…。

 

「そっ、それにこの村はどうするのさ?」

 

「それなら安心してください!私もバスターの端くれですし、お兄ちゃんから必要な事は学び終えています。そもそも猟師の娘ですからね、基本は元から押さえていますよ。……本当はハルカさんに着いていきたいところですが村の事もありますからね」

 

「と言うわけだ。諦めた方が良いんじゃないかな?」

 

「ぐぬぬ…」

 

 何だか前にも同じ様なやり取りがあった気がする。潔く諦めるか……。

 

「決まったみたいだね。なら僕は村長にその事を伝えにいってくるよ。ルチアは準備をお願い」

 

「はーい」

 

 

 あれよあれよという間に話は進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 ――そして次の日の朝…。

 

「じゃあいってくるよ。ルチア、後はよろしくね」

 

「はい、お兄ちゃんもハルカさんをお願いね」

 

「うん、わかったよ」

 

 俺の関与しないところで俺の身柄の譲渡が行われている…。

 

「ではお兄ちゃんもハルカさんも気を付けてね」

 

「あぁ」

「そっちもね…」

 

 

 こうして俺達はヴォルハ村を旅立った。

 

 

 

 

 

 

 アンクルスの里までの旅路の途中にユーリィからムガイン討伐に手を貸したいから少しアンクルスの里で待っていて欲しいという旨の話を聞いた。後顧の憂いを断ちたいらしい。

 それには賛成なんだけど待つのはなー。

 

 そうこうしている間にアンクルスの里の『門』の前までたどり着いた。

 何か様子がおかしい。『門』に話を聞いてみると少し前にに泥トカゲによる襲撃があったらしい。そしてポアラがムガインを討伐しに出ていったそうだ。

 

 

 泥トカゲによる襲撃、ね…。

 原作漫画よりアニメ版に近い世界なのかな?もしくは手を組んでいたヴァンデルがユーリィによって倒されたせいで焦って勝負を決めに来た線もあるか…。

 

「ハルカ」

 

「うん、わかってる。助けに行くんだよね?俺も付き合うよ」

 

「ハルカが?こう言っちゃなんだけど足手まといに…」

 

「安心しろよ、これでも3年間この世界を旅したんだ、身を守るくらいはできるさ。その辺のモンスターに後れはとらないよ」

 

「……うん分かった、一緒に来て」

 

 

 

 俺達二人は、ムガインの住まう死人沼へと向かうことになったのだった。




アニメのエクセリオン編のことを考えるならアニメの世界線の方が良いかな、という事でアニメよりで進行しようと思います。


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