アバーズレーン (杜甫kuresu)
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1.兄貴姉貴は肩出しらしい

テーマは「お前ら元気出せよ」。間違って消去した当作品ですが投稿している俺は超元気ぃ!
社畜によく効く小説です、笑って疲れも忘れちまえ。

この小説を読んだら多分だけど世界が広いって再認識できる。


「今日も平和だなあ」

「そうだな指揮官」

 

 さて、平和とはなんぞや。勿論広辞苑とか引かねえぞ、あんなの文字数稼ぎにもならん。

 死人が出ないこと? 争いがないこと? いがみ合いがない? まあ色々あるけど、今回は取り敢えず「争いがないこと」としよう。

 

 とすると俺達は実に平和だ。潮風はベタついてイラつくし、ウミガモはキャーキャー喧しいし、空晴れ渡りすぎてサンシャインで干物にされそうな今日だがそれでも平和と言うなら平和。そういやロングアイランドってとっくに干物ですけどサンシャインの最初の犠牲者なんですかね…………。

 

「争ったり働いたりするよりずっとこういう時間が大事だ」

「いや、働いてくれよ?」

 

 何だ急に、俺がそれほどサボる男に見えるか!? 見えるな!

 

 静かに目を閉じると、そこには凄惨な戦争の記憶――――とかは特に思い出さないというか思い出したくないと言うか。まあ何ッ回でも言うけど最近は平和だからな、セイレーンも適当だしコッチも適当という疑惑が有る。

 いいんだよ、皆ゆるゆるならそれで終わり!

 

「ドンパチやってる時間なんて無けりゃ良いのになあ。怪我とかされると今でも焦るし」

 

 ついてくるだけで指揮をするという立場は中々ダメージの来るポジショニングだ。目の前で撃たれても俺が飛び込んだ所で時間の無駄なのだ、そういう細かい現実は我儘とは言え辛いものは辛い。

 

 年端も行かない少女に戦わせて俺は安全マージン取って傍観、とか単純にクズ臭い。でも俺が何かした所で、とか考え出すともう俺の頭はサンドウィッチマン。問題はいつも理不尽に俺をサンドしてくる。上手くもなけりゃ美味くもねえんだよコンチクショウ。

 

 じゃあ平和だけで良いじゃないか。だろ?

 

「それは勿論そうだ…………なあ指揮官。私だって今すっごい大事なこと言ってるのは分かるんだ」

 

 分かってくれればこれ幸い。

 偶にこういうこと言ったら「行動に移せやこの主人公」だとか「結局ゲスじゃねえか」とか心無い感想とか絶対来るもんな。こっちは人間でそれなりに必死でそれなりに弱いんだとご理解いただきたいものだ。

 

「うん、私も気の利いた返しをしてやりたいんだけど先に一つ良いか?」

「何?」

 

 

 

 

 

「私のマントに潜り込んでそんなこと真面目に言うなよ!? 反応に困るっていうか恥ずかしいから辞めてくれ!」

「やだー! ここ安心するんだー!」

 

 あったかいし何か良い匂いするから俺は此処に住むんだ! 誰にも邪魔はさせんぞ!

 無理やりマントに潜り込むとクリーブランドの体が僅かに後ずさる。

 

「本当にコレ誰かに見られたらどうするんだよー!」

「知るか俺を労えぃ!」

 

 自分で言いながらこういうのを職権濫用で言うんだろうなって冷静に見つめている自分がいる。でも俺は止まらねえ、俺の指揮官魂が燃える限りは俺は止まらねえからよ…………!

 逃げ回ろうとするクリーブランドに抱きつく形でがっちりロック。見た目はさながらドヘンタイだが実際ドヘンタイだしやっぱりドヘンタイなんだよな俺って。

 

――ああ、俺は見ての通りドヘンタイだ。ヘンタイじゃないぞ、ドヘンタイだ。常識なんてブラジル相当の何処かにポイ捨て済みだ。

 二次元は良い、好きだ。夢とかロマンとか欲望とか気持ち悪いオッサンの良からぬ妄想の塊。まあコレ全部いっしょじゃないのか、まあ良いや。

 

 俺はその二次元にやってきてしまってからというものの、若干狂った。若干じゃないとか言うな。

 

「何でそんなこの謎空間に固執するんだよ!」

「バブみが尊いからだ!!!!!!!!!」

 

 えぇ…………。自分で言っておきながらさっぱり道理通ってねえじゃねえか、まあやるけどな。

 怯える兄貴姉貴を追いかけ回す男、その名はスパイダーマッ!

 

 マントごと両肩を抱いて執務室を走り回られる。見せてもらおうか、ユニオンの艦船少女の性能とやらを!

 

「多くは言わん、後五分!」

「イヤ! 絶対イヤ、指揮官のためにも私は断固拒否するからな!?」

 

 んなことあるかぁバカモン。俺のENゲージ的なアレがパンパンになってメイドインヘヴンするに決まってんだろがい。

 いつも疲れてんだからさ、偶には(?)こういう事しとかないと俺だって潰れちまうんだよってか御託とかどうでも良いからそのあったか空間に俺を帰還させろ!

 

「良いから黙って潜らせんかい!」

「このヘンタイ! 女誑し!」

「サイッコーの褒め言葉よお! むしろ興奮する!」

 

 何とでも言うがいいさ! それでも俺は指揮官でお前は――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………ねえ、指揮官様?」

「はい」

 

 そうして俺は正座させられている。

 真っ黒も良い所な格好の女のスカーレットの瞳に俺は石化状態だ。毒女、神話的毒女、メドゥーサじゃ。

 

 もう予想がついたのかもしれないが赤城。となるとこれも言うまでもないところはあるかもしれないが――――――

 

「マントですか!? このマントが指揮官様を誑かす邪魔者なのでしょうか!?」

「ええっと、その。あの、このぅ…………oh」

 

 この通りなにか違う。マントを引っ張り回されているせいでクリーブランドが目を回してぐえーとか言いながら揺られている。凄い剣幕で脅してる感じがさながらヤクザなんだけどこの人怖くない? そしてクリーブランドが不憫過ぎる、大体俺のせいだけどな?

 

「羽織ではダメなの!? 答えなさいよクリーブランド、私はこの胸に指揮官様をうずめさせて差し上げる気概は勿論持ち合わせているわ。どうしてお前なの!? ねえどうして!? 答えなさいよ!」

「違う、そうじゃないぞ赤城さん!」

 

 突然大声を出す形になって赤城がぴくっと耳を立てる。

 驚かす形になったのは悪い気分がするが目の前で暴論が跋扈してるんじゃ俺も黙ってる訳にはいかない。世の中には通さなきゃいけない『正義』ってもんが有るわけで、赤城はそれを破ったのだ。

 

 ならば俺が、今此処で『正義』を為すしか無い。

 

「――――アンタじゃ、ダメなんだよ」

「え?」

「恥じらってる兄貴のマントという届かぬ彼方にこそ栄えあり! アンタの開きっぱなしの胸元に飛び込むのなんざ勝負にもなってねえんだよ阿呆が――――――――ッ!!!!!!」

 

 そもそも土台が違うんだよ馬鹿野郎! 致命的にジャンルエラーというのも有るけどな!

 それ唯の赤ちゃんプレイだから! 俺が求めてるのは恥じらってる美少女を辱める合法的陵辱行為だ――――――俺最低だなぁ!?

 

「そ、そんな――――――!」

 

 昼ドラよろしく自供しそうな感じで倒れ伏す赤城、待ってそんな深刻なショックを受ける内容ではなかったように思われますが一体?

 しまった俺が冷静になってきた、上を行く意味不明さに我に返って真顔になってるんだけど。

 

 だが止まる訳にはいかない――――コイツは何も分かっちゃいない!

 

「分かるか赤城さん、アンタの懐にダイブしてもそれは唯の赤ちゃんプレイに過ぎぬ! しかも難易度もぶっちぎりで低いしジャンルは違うわでお門違いってやつなんだよ! 男の夢舐めてんのかアンタ!?」

「男の夢って何なんだ指揮官…………私は公共の場所で叫べないし出来ないような事の総称じゃないと思うんだけど…………」

 

 それはそれで需要はあるだろうが今欲しいのはそれじゃない!

 男はワガママなんだよ! 欲しくない時と欲しい時が有るの!

 

「俺が欲しいのは普段勇ましくて、偶に乙女で兄貴なクリーブランドのマントの下という微妙にガードの硬い空間に居座ってヘヴン状態になること!」

「本人の前で真顔で言って良いことじゃないな…………」

 

 だって考えてみろ、ああお前らもだ! 画面の前のお前だよ、おい読み飛ばすなよおいコラ!?

 艦○れであえて言うならならば愛宕と大和で比べろ! 大和にダイブするほうが――――何というか心許されてる感凄くない!?

 

 いや俺も何言ってるかもうわかんねえけど! そうなんだよ、萌えってそういうもので出来てることを積極的に受容していけ!?

 

「アンタじゃどうあがいても超えられないキャラ属性の壁なんだよ!」

「あ、良いところに。エンタープライズ、この惨状を何とかしてくれ」

「……………はぁ。良いだろう、二人纏めて説教だ――――ッ!」

 

 あ、エンタープライズサァン!?

 

 

 

 

 

 

「…………バカなのか?」

 

 アハンもっと罵って。そんなお前が俺は大好きだ。

 

「もっと、もっとぉ!」

「逆効果…………だと?」

 

 そんな引くところだろうかね、今更感有るぞ。

 俺を豚以下の何かを見るような目で見てくるエンタープライズ…………これはこれで。最近自分でも自覚が生まれてきたんだけど、相手が女なら俺は何をされてもある程度無敵なポイントが存在するらしい。

 

 一緒に正座させられている赤城がギリギリと歯を食いしばってエンタープライズを睨んでいる。これは不味い、逃げろエンタープライズ。

 アイコンタクトは届かない、無念。

 

「大体赤城、君も君だろう」

「…………何ですって?」

 

 ああもう修羅場の匂いがプンプンとしてるぅ!

 火花が! 火花が散ってるよ! なあ兄貴、俺達だけでもう駆け落ちしちまわないか!?

 

 こっちにもアイコンタクトが届いてなぁい!? 顔を赤くするどころかキョトンとした顔で俺を見るな、そういうキュート極振りのモーションは別の時にやって下さい!?

 

「…………ふふっ、ふふふふ。ははははははっ!

「うわ赤城さんはどうしたんだよ?」

「「私達にもさっぱりだ」」

 

 待ってくれ、約一名の火種自身(エンタープライズ)が立場を理解出来ていないのですがこれは大丈夫なのか?

 

 ちょっと赤城の顔を見てみる――――――うわ、これはマジで洒落にならんことをする赤城の顔だ! 目がヤバイ、メインストーリー以来のすごい顔だ!

 赤城が上を向いて呼びかける。

 

「加賀、来なさい!」

 

 天井が綺麗にぽとりと一枚落ちてくる――――かと思えば加賀が音もなく落ちてくる。何やってんのお前!?

 

「はっ、姉様。例のブツですね」

「お願いね」

 

 おい妹さん、ちゃんとこの暴走機関車を止めてくださります!?

 忍者よろしくのモーションで天井裏に飛び登った加賀が消えていく、お前は赤城の側近か何かなのか?

 

 ってか一体何を持ってこさせて――――とか言ってる間に帰ってくる。早いな、命令からわずか五秒。普段からそれくらい機敏に動けってんだ。

 降りた加賀が丁寧に普通の――――ノートだよなアレ。それを手渡す。

 

「ありがとう、愛してるわ加賀」

 

 赤城の言葉に加賀はまるで動じずそのノートをガン見してる。何なんだそのノート。

 

「あの、赤城さん。それは一体?」

「はい? ああ、これは――――――この鎮守府の所属艦のプライベート且つ『知られたくはない』情報を集めたノートです」

「うーん加賀も纏めて終わってるなあウチの馬鹿連中は!?」

 

 碌でも無いノートだ、俺の力で奪えるなら奪い取って今すぐライターで燃やしたい。

 加賀と赤城の愛という概念に対して俺は多大な不安感を募らせてていく日々なんだが本当に大丈夫? 愛故に共に落ちるじゃなくて愛故に引っ張り上げるべきだと思うぞ、加賀?

 

 完璧跪く形になってる加賀が憐れで仕方ない。

 

「なあ加賀、辞めよう? 俺もそのノート結構気になるけど流石に止めよう?」

 

 俺の声を聴くなり加賀が申し訳なさそうに俺の顔を見てポツリポツリと返す。

 

「違う、違うのだ指揮官…………」

「違うって?」

「私も弱みを握られているだけなのだ…………」

「赤城さんそろそろ愛の形を再定義しないと現代社会に乗り遅れてますよ! もしもし聞いてます!?」

 

 愛が歪み倒して最早修復不可能な領域ですね!? 妹の弱みを握らないとさせられないことをさせるなよなホント!?

 エンタープライズとクリーブランドが敵意剥き出しで臨戦態勢を取るが、ちょっと待て――――――そんな情報を奴等は隠しているとでも?

 

――知りたい。いやダメだ、流石にそれはダメだ。

 加賀が応戦するのだが、当然のように艦載機を出してて俺もおこにならざるを得ない。

 

「お前は軍の金を何だと思ってるんだ!」

「知るか! 私の生命が懸かっているのだ、形振りなど構うものか!」

「えー、それでは読みましょうか…………ふふ」

 

 凄い剣幕をしたエンタープライズとクリーブランドを加賀が見たこともない動きでいなしていく。普段よりよっぽど動けてないかお前?

 というか全員多分大真面目なのにバックグラウンドが馬鹿すぎて言葉が出ないぞどうする。

 

――まあ、取り敢えず止める一手を指してみるか?

 

「加賀、なら運用費用はお前持ちだ。大好きな杏仁豆腐とは当分バイバイすると思え」

「何…………だと………………?」

 

 加賀の顔に困惑と絶望、哀愁が漂う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、涙ぐみながら加賀が叫ぶ。

 

「失うものなどとうに無し! 覚悟しろユニオンの腑抜けどもぉ!」

「――――――えぇ!? 何でだよ真顔になっちまっただろうが!」

「要らないことを言うものではないぞ、指揮官!」

 

 要らないことを言ったらしい、っていうか止まってくれよ。頼むからこれ以上罪を重ねないで?

 いや俺だってこんな殺生なことは言いたかないんだけど、これでもまだどうにもならない金がかかるんだ。一応俺だって助け舟は出してやりたいけど、いや何で俺が出す必要あるんだよ巫山戯んなもっとマシな事に貯金を使わせやがれ!

 

 でも何やかんや助けちゃうしこうして俺の金が露と消えていく。これ以上加賀追い詰めてやるのも可哀想じゃないか?

 

「八つ当たりだこのぉ! 火傷しても知らんからな――――ッ!」

「自覚有るなら辞めような?」

「もう止まれないのだ、お前にも分かるだろうそれくらい!?」

 

 分からねえよ、俺には止まるべきライン引きは一応有るんでな。え、ユルユルじゃないかって? うるせえ。

 二人がかりにちゃんと戦ってるのは圧倒的成長だぞやったな加賀、でもお前のおやつはもう無いんだ…………。

 

 とんでもないドンパチが繰り広げられている入口あたりの関係か、いや多分ただの嫌がらせなのだが赤城は嫌に大きな声で朗読に入る。中々のど畜生ムーブじゃないか、気に入った。殺すのは最後にしてやる。

 

「え~ではまずクリーブランド!」

「あ、おいちょま――――――」

「えぇっと…………夜な夜なクソ痛ポエムを書いている。しまっている場所は――――――」

 

 あ、クリーブランド死んだ。へたりこんでぐずっている姿に流石に俺の良心メーターが振り切れる。

 それと同時に可愛いなとか慰めてやりてえなあとか、この流れでエンタープライズのアレな話も聞きたいなあとか黒い俺も脳内を蠢き出した。

 

「赤城さんもう良い、辞めてやれ。とっくに戦意喪失してるから、あとで俺が何でも言うこと一つ聞くから辞めてやれ。な?」

「何でもですか!? 録音は致しましたよ指揮官様!?」

「何で常にテープレコーダー持ち歩いてんだよアンタはよぉ!?」

 

 えっと、それはぁ。とか言ってもじもじする赤城。チョット待って引き攣った笑顔しか出来ない超嫌な予感がする。

 

「指揮官様の声をつなぎ合わせてですね――――「さあ次はエンタープライズのを聞きたいな~俺ぇ!」

 

 不味い、俺の中で赤城が「マジで近寄ってはいけない人」になってしまう所だった。例えそうだとしても俺は指揮官、彼女達にちゃんと寄り添う義務があるのだ。

 そのためには他の艦を犠牲にしたり

 

「なっ!? 指揮官!?」

 

 許容できないものから目を背けることも

 

「昨晩も――――ああ、思い出すだけで滾ってしまいます…………」

 

 必要なのだ。すいませんホントはそんな事考えてもなければ聞きたくなかっただけだしエンタープライズの話も気になったから都合よく誤魔化しただけなんです俺はどう見ても最低だけど頑張ってる日も有ったから許して神様。

 

 神に赦しを乞う内に赤城がページを捲っていた。嗚呼、此処まで来て尚少しwktkしている俺がいる。最低極まる――――――ハハハハ自分のクズさを認めちまえばむしろこの状況は最高の高だなアァン!?

 

「では指揮官様のお望み通り――――」

「待ってくれ、待て待てよ待てと言ってるんだオイコラ巫山戯んな赤城!?」

 

 エンタープライズが口調を保てていない。どんな内容なんだ、尚更気になる。どんだけヤバイことをしてるんだお前は。

 

「通す訳が無いだろう?」

 

 加賀がドS化してきた。えげつねえ、コッチに一歩たりとも進めさせてねえぞ。

 というか段々ノリノリになってきたな、所詮姉妹というか生粋のヴィラン気質というか…………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええっと…………? へぇ~? グリッドレイの指揮官様の盗撮写真を買い取り、しかもお得意様待遇――――――へぇ~????? エンタープライズ、これはホントかしらぁ?」

「エッチョ、エンプラサァン!? っていうかグリッドレイさっきから食堂からコッチ撮ってるだろ、絶対裏取るから首洗って待ってろ!?」

 

 睨むとグリッドレイが逃げていった。馬鹿め、鎮守府内にいる時点で俺の掌の上だっての。

 あたふたとして耳まで真っ赤にしたエンタープライズが顔を覆って弁明を始める。

 

「ち、違うのだ指揮官! グリッドレイが余ったからどうしても買って欲しいと言うから…………そ、それだけなんだ!」

 

 いやおかしいだろそれ、エンタープライズ相手にグリッドレイがゴリ押しで売りにくるとは思えん。

 アイツだって相手は考えてるはず、キャラじゃないやつにはそんな事しても儲けが出るわけないし――――じゃあ、本人から買いに行ったのが自然だろう。

 

 青褪めているエンタープライズの動きが緩慢になって、ご満悦な赤城の一挙一投足を目で追う。赤城の最高に面白いって顔が怖い。

 

 ふふ、とヤバめの笑いと共に目線で俺に「まだ行きますか?」と問いかけてくる。もう好きにしろと目を閉じておく。

 俺もアンタと同類だ、アンタに説教を垂れる権利なんぞ無いだろうさ。

 

「指揮官様――――エンタープライズの項目、A4用紙に文字びっしりですよ?」

「オイオイオイ、アイツ死んだわ(主に俺の中で)」

「アアアアアアアアアアアアアアアッ!」

 

 愛が重いッ! エンタープライズ涙目になるぐらいなら最初からするな!

 

「ええっと、感謝の手紙と称した愛の重すぎる手紙を夜に書いては捨てている。現在252回目のトライだそうです」

「おおう、重いなそれ」

「後は…………え、飼っているメダカに指揮官様の名前をつけている?」

「急に尊い! グハァ!」

 

 何それぇ! 俺が買ってあげたあのメダカかな!? いやホームセンターで備品調達するって言った時に欲しいって言ってたからね!?

 ちょっと俺の理性飛んじゃうよそういうことばっかりしてるとぉ!?

 

 赤城はその行為の意味がわからないのか首を傾げている。くそ、これだから地でヤバい奴は。並の男は卒倒だぞそれ。

 ってかエンタープライズが撃沈してる。逆に加賀が抱き抱える形で支えてる訳だが、これを見ても赤城の良心は痛まないというのか?

 

「これは何でしょうか? いーぐるに指揮官の話ばかりしている?」

「それ弱みじゃなくて尊みリストです!」

 

 え、ってか情報源どこだよ其れ。まさか加賀の独自調べ? 相当赤城につけこまれてるとしか思えない徹底した調べっぷりだけど。

――いやいや、やっぱり加賀ノリノリだろ。脅されてるからっていう名目で嬉々としてやってただろコレ。

 

「なーにが誠実に生きるよ。指揮官様、コレはとんだ女じゃありませんか」

「ちょっと俺もビックリしてる。愛が重い、死ぬ」

 

 逆に今までこれを隠し通してきたスキルに敬服すら送りたい。此処まで来ても有能さが垣間見える辺り、俺はこれからも『艦隊の事に関しては』信頼していこうと思う。いやむしろそっちだけで見ると信頼度はずっと増した、俺が思うよりお前は凄いんだろうな。

 でもたしかにこれは死ぬな、これA4用紙にビッシリだろ? 隠す辺り…………なあ?

 

 ちょっとこう、何か励ましてやろうと歩み寄ると――――――顔をムクリと上げたエンタープライズが突然ニヤリとする。

 

「ど、どうしたエンタープライズ?」

「はは、はははははははッ!――――――もう隠す必要も無いのかと思ってな!」

「開き直ってんじゃねえよ!?」

 

 髪色のせいで顔が闇バ○ラのそれと同じ。もうやけくそなんだろうな、だってその瞳からは涙は流れてる。本当は辛いところも有るんだろうな。

――まあ強がってるが色々来てるんだろう、ウン。

 

 同情はしよう、理解はしないけど。

 

「引いたか!? 気色悪いか!? 恐ろしいか!? さあどうとでも言うと良いぞ指揮官、バレたからには如何なる評価も私は受け入れるつもりだ!」

 

 決意が硬すぎる。メンタル強者だなお前。

――まあ、でも。

 

「いや。それでも今までお前が仕事してきたり、頑張ってくれたのは変わんないから評価は『人間的に好き』で変わらないぞ」

 

 エンタープライズ感涙。表情が思いっきり崩れる。

 

「し、指揮官…………ッ!」

「いやでも引いてるのは引いてるし、今後お前の顔を見るたびちょっと後ずさってもそれは許せというか当たり前だろ普通そうなる」

「上げて落とすとは高度なプレイだなクソッ!? だがそれでも評価の揺らがないあなたが好きだ、愛してる! ケッコンしてくれ!」

「イヤです愛が重すぎます…………」

「カハァ!!!!!!!!!」

 

 うん、何かゴメンな…………。俺に見えないようにすればセーフなわけだし、何というか頑張れ。

 加賀が完璧に倒れ伏したエンタープライズの首の脈を測るような動作を見せた後、俺に悲しそうに顔を向けて静かに首を振る。いや絶対死んでないだろ何でそんなノリノリなんだ加賀。

 

「くっ――――指揮官、だが私もタダで死ぬつもりなど毛頭ない。少し耳を貸してもらえるだろうか」

「うん? まあ好きにしてくれ、死に際ぐらい大体の言うことは聞いてやる」

 

 加賀の肩に寄りかかったエンタープライズの口に耳を寄せる。妙なことをしたら即頭をぶっ叩く用意はしてある。

 エンタープライズが小さな声で

 

「赤城もあんな風に私を言っていたが、夜中に指揮官の部屋を物色しているぞ? 鍵は変えたほうが良い」

「アンタもかあああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」

 

 結論から言うと此処は死体しか転がっていない惨状となって明石に発見される事態となるのだが、もうそれは忘れていい。

 

 

 

 

 

「散々な目に遭ったぞ、全く…………」

 

 いかにもな溜息をついて俺の机に茶を置く加賀だが、お前は明らかに被害軽いと思うんだ。杏仁豆腐こそオサラバしたとは言え、俺の見る目が殆ど変わってないのはお前だけだと思うぞ。

 

 ところで何故加賀が茶を置いているかと言うと、他のやつが軒並み工作艦送りになって消去法で加賀が秘書艦だからだ。アレから色々あったんだよ…………聞いてくれるな。

 

「ってかお前の弱みって何なんだよ」

「どうしてお前に教えなくてはならない」

 

 ま、そう返すわな。だから手も考えてある。

 

「教えてくれたら杏仁豆腐は用意してやると言ったら? 勿論口外はしねえぞ」

 

 加賀が俺の顔をちらりと見て大きな溜息。

 ああ、お前は乗るしか無い。パット見お前のリターンが大きすぎるからな、俺もメリット小さすぎて内心笑ってる。

 

「――――フン、下らん交渉をする。良いだろう」

 

 どうせ給料使う暇ねえしな、本当は元から払えるだけは払ってやるつもりだったわけだがものは言いようよ。

 少しだけ加賀が尻込みした後、座ってる俺に耳打ちで話したのはこうだ。

 

「五航戦の子を盗撮……コホン、観察していたのをバラすと言われた」

「お前も中々だな」

「煩い、文句が有るか。元より私は狂人だろう」

 

 自覚は有ると言われたが、そういう問題ではないんじゃないかなそれは。




どうでした? ずっとこんな感じ。ざっくりとした注意点。
・嫁が見えたら逃げろ、大体狂ってる。
・オタク語録とか出てくる。サブカル大事。
・感想欄がカオスになるはずだが好きに絡んで。鉄血を推す奴とか天上人の作者とか居るけどここでは平等におかしい。
・性癖を採用する。キャラは勘弁、育ててないと難しい。
・前書きと後書きは無理に読まない方が良い、本人も「コイツなんなんだよ」って思ってる。

同じギャグ二回読むとかキツイだろうけど、だからって放置するのも焦れったいだろうと思って敢えて書き直した。復旧とかより一秒でも長く笑えたり、「コイツラバカだなあ」って思える時間が大事。遅かったのはダクソとlolとFGOのせい、坂本龍馬カッコイイ。

あ、次回は愛宕出します。進水おめでとうってことで。
後サン・ルイの愛ボイスでリアルに「ウッ」って言ったことをご報告。分かった、責任取るよ…………(愛放置で酷使するクズ)。モナークが口調に比べて承認欲求お姉さんで思わず肯定したくなってる今日此の頃。出そうかな…………(そうやってまた開発艦ばっかり)。

というかエンタープライズ君、赤城だったらブチのめす気有るってどうよ…………。あ、うちでは口喧嘩は多いけど仲は良い方です。百合一歩手前、いつもこうなってるんだよな俺の女同士の関係って…………。





――――改めて、もしくは始めまして。
我らが狂気の鎮守府ギャグストーリー、「アバーズレーン」の世界へようこそ。貴方(ヘンタイ)を歓迎します。


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2.愛宕に依存されれば勝ちみたいな

突然書き下ろす。全部そのまま投稿するとか誰も言ってねえからな、全然セーフ。
あ、指揮官はコッチ側の知識割と有ります。前は転生者扱いにしてたけど今は適当に考えて、シリアス無いから設定もいらない。

急いで書いたから後で内容以外の加筆修正有っても笑って許して。


「女性が喜ぶプレゼント、ですか?」

 

 赤城の眼がぱぁっと鈍い輝きを放つ。あ、これ要らない勘違いを生んだな?

 少し早口な返答。

 

「勿論指揮官様にならどんなプレゼントであれお気持ちだけで嬉しいものですわ、ですが敢えて言うなら赤城が今もらって一番嬉しいものはやはり指揮官様の部屋の手前の箪笥の二段目に有る――――――誓いの指輪でしょうか…………キャッ」

「いや、俺の話じゃねえから? しっかりして、早とちりが過ぎますからね?」

 

 そんなマシンガンみたいな言葉の応酬を突然ぶつけないでくれます?

 赤城がキョトンとした顔で机から手を離す。いつの間に身を乗り出してたんだアンタ。

 

「え!? てっきり私にプレゼントをしてくださるのかと――――い、いえ決して貰えないからどうというわけではありませんよ?」

「――――――分かった分かりました、赤城さんにも何か考えときますから取り敢えず質問に戻りましょうや」

 

 そんなシュンとされると俺が悪いみたいじゃないか。別に金なんぞ余ってるし全然いいけどさ、それくらい。

 赤城が機嫌良さげに尻尾を振る。

 分かりやすいし愛嬌は有るんだが如何せん普段の言動がな…………エンタープライズの言った通り合鍵持ってたし。勿論没収したけど。

 

 首を傾げて考え込む。

 

「プレゼントと言いますと――――例えば指揮官様は、私に何を渡そうと思いますか?」

「え?」

「いえ、例えばの話です」

 

 真面目な質問に思わず考え込む。いっつもバカなことしてるから偶に真面目な事となると頭が回らんもんだ。

――うーん、だがこういう答えしかできないな。

 

「雑誌とか読んで無難なもの選んじゃいますかね。ちょっと手を出しにくい値段のお菓子とか」

 

 成る程、と赤城が感心したように頷いた後に俺に問いかける。

 

「ですがそれは『指揮官様のプレゼント』でしょうか?」

「と言いますと?」

 

 ですから、と諭すような口調で問われる。

 

「それは指揮官様が選んだのではなく、その誰とも知れない書き手のチョイスということになりませんか?」

「ま、まあそうですね」

「確かに実用性は重要ですし、その方法も一概に否定するものではありませんが――――赤城なら、指揮官様が何をくださってもその気持を有り難く思い尊ぶことでしょう」

 

 真顔で言い切られると恥ずかしいもんだな、辞めて欲しいぞ全く…………。

 軍帽のツバで少し顔を隠した俺に構わず赤城が続ける。

 

「指揮官様がプレゼントする相手というのがどなかたは存じませんし、ああだこうだと今ここで言及はしませんが――――やはり贈り手が相手の事を想い。故にこそ普段の小さな言葉を拾い上げて。そんな風に出来たちょっと不器用な贈り物」

「そういう物はとても素晴らしいものでは有りませんか? その懸命さはきっと、送られた相手にも届くものである筈ではないのでしょうか?」

 

 ふと考えてみるが、確かにそれは言うほど突飛な論点でもない。

 例えば子供のプレゼントは親ならば大体どんなものでもニコニコして受け取るものだ。彼氏彼女はよく知らない、だが『贈り手の気持ち』を無視した感想というのはドライな関係性でもなければ出てこないものだ。

 

 そう考えてみれば盲点だった。

 

「ほう――――――良い話を聞けた。有難うございます、赤城さん」

「いえ、指揮官様の悩みであれば赤城はどんな事であれ真摯にお答えするつもりですから」

 

 重いながら有り難いことだ、そんな風には中々してもらえまい。

――そうだな、赤城は何を貰えば嬉しいのだろう。

 

 和菓子だろうか、髪が長いから櫛なんてどうだろうか――――――おっと、違った違った。俺には別の用事があった、また時間が空いたら考えてみよう。

 立ち上がって外に向かう。

 

「ちょっと話が有るから出てきます。プレゼント、ちゃんと考えてみますね」

 

 軽く礼をして扉を閉めると赤城の微笑む立ち姿。

 

「分かりました――――――――え!? 赤城にもプレゼントを下さるのですか!?

 

 え、本格的な反応が遅くない? まあ良いや、扉に鍵掛けとこ。あのテンションで動かれたら何されるか想像がつかない。

――にしても、何であんなスラスラ返答したんだろ。凄えな、いっつもあんなこと考えてるのにこんな感じなら逆にびっくりする。

 

 

 

 

 

「指揮官! 助けてくれ!?」

 

 さて次の日。エンタープライズがこちらに凄い勢いで走ってくる。

 取り敢えずこっちに飛び込んでくるのでひょいと避けて倒れないように手だけを貸してやる。だって艦の勢いをマトモに受けたら骨折れそうなんだもん。

 

「おはよう。で、何を助けりゃ良いんだ俺」

「アレだ――――――高雄だ!」

 

 ああ――――――俺が口を開けて呆けているとソイツは走ってきた。エンタープライズがすぐさま俺の後ろに小回りを利かせて隠れてしまう。

 黒いポニテに黄金の瞳、妙にやらしい黒ストに白いミニスカート――――――そう、奴の名は。

 

「決闘だエンタープライズ! 今日こそ拙者の竹刀に倒れ伏す時だ!」

「あーもう馬鹿ばっかり! 俺もう嫌だ!」

 

 信じられない速度でこちらまで走り寄ってきた高雄が俺の目の前に竹刀を寸止する。怖い、怖い!?

 ギラついた瞳が俺を捉えたと思うと空気でも抜けたように覇気が消える。

 

「おや、指揮官殿ではないか。朝早くから殊勝だな、拙者も安心して刀を預けられる」

「いや待て待て取り敢えず竹刀を下ろして!? 何普通に喋ってるんだよお前!?」

 

 すまない、と竹刀を下げる。一応分別はついてるんだな、いやホント助かった。

 

 後ろのエンタープライズを見るとまた眼がギラつく、俺がステイステイの動作で決死の鎮静作業。どうにかこうにか話は出来そうな状態まで落ち着ける。

 

()()()()()()()()()()()()、それで――――エンタープライズを寄越してもらえぬか?」

「寄越せとは何だ! 私は指揮官だけの所有物だ、絶対高雄のサンドバックになどなってたまるか!」

「まだやってるのお前ら…………っていうかエンタープライズは誰のものでもないから、お前はお前の頭で選んでお前の足で歩いていくんだし今もそうしてるが自覚は有る?」

 

 エンタープライズがキョトンとしている。お前はお前だ、誰の所有物でもなかったしなることもない。

 

 さて、コイツラのこの流れは着任して初めて出くわしてからすぐに始まった。

 何故かまではよく知らない、高雄が一方的に決闘を申し込んでエンタープライズはいつも逃げてる。曰く「普通に考えて鍛錬漬けの高雄と勝負してもボコボコにされるだけだ理不尽極まるぞ」とのことだ、御尤もですね?

 

 高雄が俺の後ろのエンタープライズに剣先を突きつける。

 

「やかましいぞエンタープライズ! 拙者はそなたのような日々の訓練を怠らぬ強者を決闘という合法的且つ実力至上主義に則った形で竹刀ないし棒もしくは鈍器でボコボコにしたいのだ、黙ってボコボコにされろ!」

「おいおい中々コイツ頭おかしいな、エンタープライズぐらいモテるとアンチも出てきて大変だなぁ」

「誰が頭がおかしいというのだ! 全人類は相手を蹂躙する悦楽を忘れることなど出来ておらぬ! 指揮官殿とてそれは否定できぬだろう!?」

 

 ムカつくが全く否定できない。歴史を見ても明らかだし、俺達はそういうものと戦って生きてる側面は確かにある。

 いや、でもコイツが馬鹿なことをする理由の肯定にはさっぱりならなくない? 何いってんだコイツは。

 

「大体竹刀で追っかけ回さなくて良くない?」

「そうだそうだ!」

「エンタープライズは黙ってなさい! お前が変に喋るとややこしいんだよ畜生が!」

 

 シュンとしたってダメだからな、お前は何しでかすか分からないやつ認定してるから! つい最近まで普通に見えてた分尚更警戒してるぞ俺はなあ!?

 

「指揮官殿、しかしエンタープライズは二十回の果たし状を全て突っぱねてきておる! これはどうなのだおかしくないか!?」

「全くおかしくねえしお前がおかしいんだよ馬鹿野郎!」

 

 お前の論理は突飛すぎてついてこれねえよ!?

 

 

 

 

 

「…………ふう、助かった。指揮官、愛してる」

 

 執務室に入るなりエンタープライズがほっと息をつく。アレをいなすのは少々俺でも厳しい所はある。

 

「助かったなら何より、だが愛されても俺はお前の愛には応えかねるな」

「何故だ!?」

 

 今のお前がアレすぎるからだよ。今まで通りだったら色々な葛藤が有った挙げ句理性が敗北した世界線も有ったのだろうが、今のエンタープライズだと迷うこと無くノーだ。重さに応えきれないし怖いし何よりお前の人格矯正しちまいそうだ。

 別に鎮守府でくらい好きに振る舞ってほしいんだよ、だがそういう関係になると俺は絶対矯正するだろうからな。

 

「あらあら、随分賑やかね」

「あ、すみません。仕事しますね」

 

 そう急がなくていいわ、と愛宕が手を振って急ぐ俺を制する。

 今日の秘書艦だ。俺の秘書艦は漏れなくトラブルを起こす因果を背負う羽目になるので日で変わるようにしたのだ、というかそうしないと俺の身が持たない。

 

 だがある程度の監視と把握も俺の仕事なわけだ。両方するのはキツイぜ?

 

「愛宕か、君の姉には悪い意味で世話になっているよ」

「高雄ちゃんは私にも制御できないのよ、ゴメンなさいね…………」

 

 思ったよりもイヤミが効いているのに焦ったのかエンタープライズが苦い顔をする。じゃあ言うなやお前。

 まあアレを制御しようというのがアホだ。精々拘束できれば良いほうなんじゃないかアイツの場合。

 

「この前は手錠をつけてみたんだけど高雄ちゃんったら素手で壊しちゃって…………ッ!」

「いやアンタも中々怖いことすんなオイ!?」

 

 っていうか何が悔しいんだよ、そんな拳を握るポイントが俺には見つけられないんだが!?

 いや確かに拘束できれば良い方とか考えたけどまさかマジでやってるとは俺も思わないよね!? 何、もう手は尽くしたってことなんだろうかこれ!? いやそうだと思いたいしそうであってくれ!

 

「ギャグボールは噛み砕いちゃうし、鎖は関節を外して抜け出しちゃうのよ…………一体どうすれば高雄ちゃんを拘束できるのかしらね?」

「姉も姉だとは思うんだが妹にこんな事されたら尚更歪むよなとか俺言っちゃダメなのかな!? なあダメなのかなエンタープライズ!?」

「いやもう全く言っていいと思うし流石の私もこれは怖い」

 

 だよな!? 全肯定エンタープライズさん最高!!!!!!!!

 というか高雄強すぎるだろ、この妹のせいで余計にあのデタラメな戦闘力が鍛えられているのだろうか。

 

 いやホントに高雄凄えんだよ、燕返しとか打てるし。多重次元屈折現象に手を出してるとか十分ヤバイんだけど、一歩で6,7メートルを平気で詰めてくるのも中々ヤバイ。言葉通りの人外だらけなのにぶっちぎりでおかしい身体能力してるもんアイツ。

 

 引いてる俺に愛宕が破れかぶれに叫ぶ。

 

「だってアソコまで来ると面白いじゃない!? 限界とか指揮官も気にならないかしら!?」

「高雄ちゃんはアンタの玩具じゃねえから!?」

「でも私の姉よ!?」

 

 どういうことだよ、さっぱり分からんな。

 

「私はヨークタウン姉さんでそんなエゲツない遊び方は絶対にしないぞ…………愛宕、やはり高雄の妹なだけは有る」

「感心してる場合か! 何とか説得手伝え、これはマジでおかしいから!?」

 

 ああだこうだと段々会話が錯綜してくる内に扉がダーンと蹴破られる。頼むからちゃんと開けてくれ!?

 

「愛宕! 愛宕は居るか、居るな、よし問題なし!」

「高雄ちゃん!? 何だよこのタイミングでもう帰れよ!」

 

 竹刀と紙袋を持った高雄がリングに登壇――――――紙袋?

 ああそうか、()()()()()()()()()()。完璧に忘れていた。

 

 ドンドンとエンタープライズも眼に暮れず愛宕の下に歩いていく高雄。流石に空気の凍りついた中でも全く動じない高雄にエンタープライズも愛宕もタジタジだ。

 

「ど、どうしたのかしら高雄ちゃん?」

「どうしたもこうしたも有るか! 愛宕、今日は何の日だ――――――よーく考えてみろ」

 

 高雄の光る瞳に愛宕が少し目を伏せがちにしながら考え込む。

 エンタープライズが何か言いたげだがステイの合図、無粋なことはしないのが出来る空母だぜ?

――――考えて、考えて、考えて漸く手をつく。

 

「ああ、父の日ね!」

 

 おおっとあまりにも的外れで逃げているような言動に高雄選手心理的に詰め寄っていくぅ!?

 

「それは明日だ! 今日は愛宕の進水日ではないか!」

 

 要するに――――()()()6()()1()6()()というわけだ。

 愛宕は完璧に忘れていたのだろう、眼を丸くしているのも気に留めずドンと紙袋を胸元に押し付ける。

 

「こんな日ぐらいしか贈り物が出来ぬからな、使い道が有るかどうかは知らんが受け取ってくれ。気に入るかは分からぬが、一応指揮官殿とも相談した上で買ってきた――――――まあ、世話になっているからな」

 

 少し気恥ずかしそうな顔をしているが拘束されるのは世話になっていると言えるのか高雄。いや、もしかしたら他にもなにかしてもらってるんだろうか、謎は尽きない興味は溢れる正直超気になってる。

 

 愛宕が動揺しながら辛うじて紙袋を受け取ると、高雄は頬を掻いた後。

 

「では失礼した! 後、拙者は諦めぬ故限界など無いからな! 覚えておけ!」

 

 と言うとそそくさと出ていってしまう。ああ、またそうやって扉を乱雑に閉める! 直すこと数十回を超えてるんだぞこの扉。

 

――――取り敢えず、暫く経って俺達三人が揃えて口にしたのは

 

「「「何というか、プレゼント慣れしてない感じ…………?」」」

 

 というかなり的はずれな疑問だった。

 

 

 

 

 

「アレは――――――何だったのだ?」

「いや、俺も分からん」

 

 エンタープライズが扉を見つめて尋ねてくるが俺が分かる訳あるか。

 俺は相談されたから赤城の意見とか参考にしつつ一緒に考えてやっただけだ。珍しくまともなことをすると言い出したんじゃ手助けしてやらざるを得ないからな。

 

 愛宕も中身を見た後俺をちらりと見てどっかに行ってしまった。なあ、その中身絶対碌なもんじゃないだろ。俺でも分かるぞそれくらい。

 

「しかし、何というか高雄は…………アレだな」

「うん。アイツ何というか、ぶきっちょなイケメンみたいな所がある」

 

 決して悪いやつではないんだよ、合法的に相手を棒で殴りたくなる一点を除けば。

 ああいうのは上手いこと制御すれば色んな意味で上手く回ってくれるんだが、如何せん高雄まで来ると制御方法が検討もつかん。なんだろうか、俺も鎖持ってくるか?

 

 今後の方針について思いを馳せていると、エンタープライズがとんとんと俺の肩を叩く。

 

「ん? 何だ」

「いや、流れに乗っておこうと思ってな」

 

 そう言ってエンタープライズがコートの裏から取り出したのは――――――招待状?

 何の招待状かはさっぱりわからないまま、差し出されるままに受け取る。

 

「ナニコレ」

「招待状だ、明日の夜のパーティーのな」

「パーティー? 何処で」

「勿論、此処でだ」

 

 え、そんなの俺聞いてないけど。

 顔に出てたのだろうか、エンタープライズがニヤリと笑って手品のように赤いバラを何処からともなく取り出して俺に差し出す。

 

「言うまでもなく秘密裏に準備していたからな――――――父の日と言っては少しズレているが、あなたは私達の親代わりでも有るからな。明日ぐらいはあなたを労わせてくれ」

「Thank you, our another father.」

 

 キザなセリフを添えてそのまま歩いて外へと行ってしまう。ちらりと見せた横顔が不敵な笑みで何というか――――非常にズルい。

 

――だから赤城があんなにプレゼントの話をスラスラ喋ってたわけね。

 うーむ、その内お返しでもしてやろうかね。どうしよう。




昨日が父の日で一昨日が愛宕の進水日だから書いた。間に合わなかった。

愛宕はイケメン特有の色っぽさとか見せつけると依存束縛ルートに入る気がする。依存されたい。ヤンデレとか重いとかより「強いのに依存が酷い」が好き。兄貴神とはカテゴリエラーを起こす関係性なのかもしれない。
同志は「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」超オススメ。この小説で勧めるのが恥ずかしいくらい泣かせに来る話。

何の話だっけ、ああそうそう。アバーズレーンね、アズレンね。
愛宕誕生日おめでとう。長門艦隊育ててるからよく一番前に配置して沈めてる、スマン。でも高雄と意地でも組ませたいからビーバーズ持ってないと避けれないんだ。
指揮官の設定は何も決めてないけど、顔はFGOの坂本龍馬がドンピシャ。アレでヘンタイチックなこと喋ってたら逆にそれっぽくない?



そういや感想でよく絡む人に艦のイメージがついてるが俺だけなのだろうか?
鉄血兄貴はヒッパーが思い浮かぶし兄貴神は赤城が思い浮かぶみたいな。初詐欺兄貴は何故かエンタープライズ、役得かな? 書いてる作品とかで印象に残ったキャラの気がするのだが、名前だけで織田信長イメージする事例も有ったり忙しない。

どうでも良いけどマグロナは良いぞ。これでおじさんというのが妙にこう、クスっと来る。ガチ恋勢はヤベえ。
今日は疲れてるな、話題があっちこっち行くぞ?

っていうか頭使わない小説感が足りない。次回からもとに戻す。


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3.五航戦はヤツらの後輩だぞ

前回は忘れたほうが良い、何か路線間違えたもん。
何時も通りアホの集まりに戻ろう。もうあんな話はしないぞ俺は、後悔しかしてねえ。普通の日常ものみたいになりやがって…………。

今回はかなり書き換えた。一番コレジャナイ感が強い回。
リメイク版の方はだいぶ指揮官が冷静になったよね。相変わらず琴線に触れると頭おかしいけど。


「まーたー先輩達に負けた~!」

 

 頭をくしゃくしゃと掻いて悶絶する瑞鶴の背中を撫でてやる。何というか、瑞鶴が秘書艦だとこればかりしている。

 ちなみに瑞鶴が弱いと言うか、一航戦とかグレイゾーンゴーストさんが明らかに規格外なだけだ。他の鎮守府で言うと瑞鶴もなかなか強い筈。

 

「しかも模擬弾だからって至近距離で当ててくるし痛すぎないアレ!?」

「そりゃそんなエゲツないシゴキを想定した設計じゃないからね模擬弾ってのは!?」

 

 大丈夫なのか!? 一航戦確かにスパルタだけどそれはどうなのかな、やっぱり倫理的指導が必要だなアイツラ!?

 一航戦の凄まじいサディスティックを垣間見た刹那、瑞鶴まで何かが切れてしまったようにバラバラとマシンガントークに入る。

 

「第一波は早いし何か痛いし赤城先輩は普通にスパルタだし加賀先輩は何か変なスイッチ入ってるし、この鎮守府の古株の人ってどっかおかしくないかな指揮官!?」

「大丈夫だ、古株に限らずおかしいから」

 

 他の鎮守府はどうなのだろうか、俺はあんまり見に行ったり知り合いを作らないまま仕事続けてるから他がどうかまでは知らない。まあ他がどうであれ一航戦はクレイジーだけどな?

 まあ二人が厳しいのはそれだけ信頼している所も有るのかもな。アイツラ本気出したら艦だろうが模擬弾だろうが普通は怪我するし。

 

 にしても、俺が何か選択を間違えたのかなあ…………一応ああだこうだと私生活には口出ししてないんだけどさ。

 それが間違っていたのか? 俺は間違いだと言ってやるべきだったのか? 分からん、分からん分からん分からん!

 

「何でこうなった!?」

「うわ、指揮官どうしたの!?」

 

 何故だ、俺は普通に鎮守府経営をしていたはずだ!

 

「何故一航戦と言い高雄と言いあんなクレイジーになったんだよ! 俺は何もしてないのに!?」

「そりゃあ指揮官自体が相当アレだからじゃないのかな…………」

 

 畜生、何の否定もできないじゃないか!

 

「でもさ俺を反面教師にする可能性は十二分にあるぞ!? 何故だ、何故俺を見習ってしまうんだ! 人のマントに潜り込みたいとか言ってるんだぞ俺は!」

「だって先輩達って元々ちょっと変だし…………」

 

 苦笑いするんじゃねえ、お前も何とかするんだよ瑞鶴!

――とはいえ元々変というのは言えてる。俺が特に何もしなくても赤城は俺の部屋に不法侵入したし、加賀は後輩のストーカーだった。ほら、今も天井から――――――待て。

 

 なんか居るよな?

 

「…………天井に加賀が居る気がする」

「そんなまさか、幾ら加賀先輩でも「流石の察知力だ、やはりお前についてきたのは正解だったらしい」

「ウソでしょ!?」

 

 なーんかミシミシ音が鳴ってる気がしてたんだよ…………加賀が音もなく着地。この高さから無音で降りるのって普通に凄いよな。

 今は何処かに置いているようだが、さっきまで加賀の手にはカメラが握られていた気がしなくもない。俺の見間違いを断固支持していきたい。

 

「後輩のストーカーってやつも大変だな…………」

「誰がストーカーだ、付け回しているだけではないか」

「表現としてはもっと不味いっていう自覚を持って!?」

 

 何でさもソッチのほうがマシみたいな感じになってるんだよ。文字列的には付け回している、って書いてある方が普通に気持ち悪いからな!?

 瑞鶴もちょっと引いている、そりゃそうなる。

 

 というか瑞鶴は比較的マトモなんじゃないか? 希望の星かな?

 

「お前らの愛憎の尺度って真面目におかしい自覚は持つべきだぞ」

「何だと!? 表現の違いで苦情を寄せるなど、訳の分からん理由でバンドにクレームを入れているのと同じではないのか!? ええ!?」

「というとお前は公共で流せない歌詞を歌ってるボーカルだからな?」

 

 アレだな、ハロウィンとか調子乗りすぎて警官に連れてかれる変なおっさんとかと同類ってことだ。

 熱に浮かされるとハメを外しちまいがちなもんだ、だが此処まで酷いと普段の業務に原因が有る? ストレス溜まってんのかな…………。

 

 そうだとしたら俺の責任というわけだ。何とかしてやらねばならぬ。

 

「なんか悩み事あったら聞いてやるぞ?」

「死ね、お前は気色悪い」

「アシ○カはそんな事言わねえから!?」

 

 ほぼ原型ないからただの罵倒じゃねえか!? 確かになみたいな顔すんじゃねえよ、言う前に全然気づけるだろうが!

 俺と加賀の二人漫才に完璧に置いていかれていた瑞鶴が溜息をつく。

 

「先輩、そんな事ばっかり言ってるから指揮官が振り向いてくれないんですよ。私にボヤく暇あったら自制して下さい」

「ま、待て! それを言うんじゃない!」

「あ、聞いてなかったわ」

 

 今ア○タカとサ○の事考えてた。ヘルシェイク矢野も少しだけ頭をよぎったけど。

 加賀が何か顔を赤くしてあたふたしてる、何で瑞鶴ニヤついてんの? え、ちょっと俺がトリップしてる間に何が起きたんだ?

 

「ほらほら、好意は口にしないと伝わらないもんですよ?」

「う、煩いな瑞鶴!」

 

 背中を押される加賀が珍しくたじたじになってる。ホント何があったんだ? ちょっと気になる。

 

「何の話してたんだ?」

 

 俺が尋ねると瑞鶴がパァッと明るい笑顔で

 

「そりゃ勿論加賀先輩が指揮官のことをス「辞めないかッ!?」

 

 え、コークスクリュー決めちゃったけど!? そんな聞かれたくない内容だったのか加賀!?

 瑞鶴が勢いよくふっとばされたかと思うと倒れ込んで咳き込む。むしろ咳き込むだけでよく済んでるな?

 

「い、痛いです先輩…………私はただ進展を…………」

「やかましい! 余計なお世話も良い所だぞ全く!?――――いや、コークスクリューは流石にやり過ぎた。悪かったな」

「後悔先に立たずの典型例ですな、ハハハハ!」

 

 急に反省するの面白すぎるぞ。いや、ちゃんと自省して謝れるのは重要だけどな?

 瑞鶴が痙攣しながら左手を上げてサムズアップ、全然意味わからないけど多分問題ないって意味なんだと思う。頼むから俺でも分かる行動論理で動いてくれないかな君達。

 

「で、何の話だったんだよ」

「お前には関係のない話だ!」

 

 あっそ。そこまで興味ないしそう言い切るなら別に良いんだけどさ。

 

「……………………お、おい気になったりはしないのか!?」

「いやお前が喋りたくなさそうだから敢えて聞いてないんだけど!?」

 

 どっちなんだよ、女ってやつはこれだから面倒だ!

 まあ加賀は比較的男女差を感じずに喋れる方だけど。サバサバしすぎてて俺のほうがナヨっちいからなあ、作戦立案とか俺より圧倒的に有能だし俺の立つ瀬がない時も多かったりする。

 

 仕事は本当に頼りになるな…………。

 

「じゃあ聞くけど何の話」

「答えたくない」

「アアーオンナハメンドクセーナー!!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

「…………何だこの惨状は」

 

 入ってきたエンタープライズが言葉にできない困惑した表情で俺に尋ねる。

 

「分からん」

「たのむ~、わたしにはおまえしかいないんだ! すてないでくれぇ…………!」

 

 話も落ち着いてきた所でちょっと三人でチョコ食ってたらウイスキーボンボンだったってオチ。加賀は俺の脚に縋って謎の懇願をしてくるし瑞鶴は完全に寝ている――――俺? 酒は強い方なんだよ。

 エンタープライズが恐る恐る瑞鶴の頬を突くが、くすぐったそうにするだけで特に起きる様子もない。おいエンタープライズ楽しそうにプニプニするな、瑞鶴は玩具じゃない。

 

「しきかん、すてないでくれ~」

「誰も捨てるとか言ってないのにお前は何なんだよ!?」

「ねえさまがいちばんでいいから…………せめておこぼれをくれ…………」

 

 待て、待て。加賀の中では俺は赤城第一主義者扱いなのか? 眼が節穴も良いところなんじゃね?

――っていうか俺なんか好きになって何が楽しいのやら。まあ俺も変な女に惹かれた時期はなくもないけども、コイツラの狙う相手は間違いなく損しかさせない自信があるぞ。

 

「大丈夫だ、俺は部下を簡単には捨てないから。安心して酔いつぶれとけ」

「ほんとうか」

「本当本当、最後の一線では粗末にしないから」

「じゃあけっこんしてくれるか?」

「お前もかよ。無理だって」

 

 クソォ、と加賀とエンタープライズが同時にジタバタする。もう誰でも良いからOKを貰った例を見たい所あるだろお前ら。

 

 諦めつけてもらうのも手だろうか。

 

「お前な、俺のケッコン艦になるって言ったらアレだぞ? 『羽織とインナーの間に手を突っ込んでもいいか』って平気で求められる関係だぞ、それで良いのかお前?」

「「わたしたちはまったくもんだいないぞ!!!!!!!!!」」

「エンタープライズ、お前もウイスキーボンボン食ったな?」

 

 コイツラ収拾つかねえな、もう手段とかデメリットとか見えてないし。

 いやでも加賀とか赤城のインナーと羽織の間って無性に気にならないか? 俺は偶にすごいガン見するぞ、なんというか魔性の空間だアレは。

 

「それでまんぞくするならかまわないぞわたしは!」

「ああもう分かった分かった、指輪持ってくるからちょっと待ってろ」

「まだいうのかおまえ――――――――待て、今何と言った?

「いやだから持ってくるから、指輪。待ってろ」

 

 そんなに欲しいならくれてやる。アレ馬鹿みたいに有るんだよ本当は。

 

――とはいえ、本物を渡したらごたつく。こういうときに誤魔化すための偽物を渡すけどな。

 酔っぱらいぐらいなら絶対騙せる。酔いが覚めたら偽物って分かるだろ、事態の収束のためなら多少悪役に回るのは構わん。

 

 

 

 

 

「いや~、さすが明石。この贋作の精度よ、そこに痺れる憧れるぅ!」

 

 手に持って偽の指輪をかざしてみるが、驚くほど精巧で本物と見分けがつかない。っていうか予め用意しておくとか俺天才過ぎないか。

 

 質の悪いドッキリには過ぎた代物だな、とか思いながら扉を開くと――――いきなり加賀が俺に抱きついてくる。

 あはん、良くないものが俺の胸筋と理性にダイレクトアタック!

 

「ファッツ!? 胸が、胸が!?」

「た、助けてくれ指揮官――――翔鶴を止めろ!」

 

 翔鶴か、何でこのタイミングで来ちまったんだお前。

 とりあえず加賀を引っ剥がして容れ物ごと指輪を持たせて待機させる。

 

「じょ、冗談かと思っていたぞ…………」

「馬鹿野郎、俺は嘘は言わねえぞ」

 

 今のは嘘だけどな。

 まあ今回の場合、誰も『誓いの』指輪とは言ってないからな。実際邪魔な装飾を取れば普通にオシャレにも使える便利機能付きだ、なかなか洒落たプレゼントだろ?

 

 戸惑いながら頬を緩ませるのを必死で引き締めている加賀を放置して中に入る。

 最初に翔鶴が俺にぶつかってくる。勿論通さない。

 

「指揮官! どいて下さい、加賀先輩が其処にいるじゃありませんか!?」

「お前このままだと加賀が気絶するまで追いかけ回した挙げ句睡眠コスプレ撮影始めるだろうがこの先輩オタク」

 

 赤城もそうだが重桜空母の姉の方は倫理観の緩さのレベルが違いすぎる。

 方向性が俺に向いてるならまあ俺の胃に穴が空くだけで済むというのに、コイツときたら先輩を追っかけてるからなあ。だが加賀はなんだかんだ翔鶴も駄目な方向で甘やかすし、赤城はむしろこれを推奨してるから駄目。

 

「だってボブカット銀髪狐耳でパーフェクトクールな加賀先輩ですよ!? コスプレさせないほうが失礼――――――ッ!」

「謎の迫力を帯びた熱弁辞めろ!?」

 

 というかクールさは今は微塵もないけどな。指輪を眺めてにへら~っと笑ってるレアな加賀なら見えるぞ、ところでグリッドレイはちゃんと撮ってるのか? コレ多分赤城に売れば面白いことになるんだけど。

 

 グリッドレイは責任持って俺が首輪をつけてある。というか悪用してる、意趣返しだ。俺もこんな無法地帯で一々良い子ちゃんなんてしねえぞ。

 翔鶴が背伸びをして顔を近づけてくる。

 

「天然狐耳ですよ!? 私にこの魔性の先輩の姿からどう抗えと仰るんですか!?」

「ええっと、うんとな?――――――知るかよ!?

 

 普通の人間は抗えるから、瑞鶴も余裕だと思う。

 まあ確かにコスプレさせてみたいなと言われたら否定は出来ないんだが此処まで俺は悪化してないよな。

 

 コイツ一体どう追い返そうかと考え込んで硬直していると、加賀が静かに俺の手をどけて翔鶴の前に立つ。

 

「せ、先輩…………」

「おい翔鶴、良いか」

 

 おっとかっこいい顔。シリアスモードかな、おこなのかな? その調子で俺の胃痛を軽減してくれ。

 

「今の私は指揮官の所有物であり指揮官は私の所有物だ――――つまり。指揮官が許可したなら私は一向に構わんということだッ!

「いや許可しねえから、というか何人たりとも誰かの所有物になっちゃダメだから」

 

 っていうかお前も愛が重い。何、ズブズブの共依存しちゃうタイプなのかお前。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ~、今日も今日とて混沌でござったな…………」

「妙な語尾は辞めてくれ指揮官、吹きそうだ」

 

 そんなツボに入る面白さは無いと思いますが。お前の笑いのツボはよく分からん。

 加賀と翔鶴は何か海苔食ってノリノリ、みたいな感じだったから勝手に撮影でも何でもしてろって言ったら本当に行ってしまった。加賀は自分の体を見せるという行為に全く抵抗がないのが俺は実に心配だ。

 

 多分酔いも冷めてるし、冷静になって指輪を見た後に顔真っ赤で襟を掴まれてシェイクされるんだと思う。

 アイツこういう突然のサプライズに弱いもんな。

 

「それにしても瑞鶴は起きねえなあ」

 

 エンタープライズがまた頬を突く。そんなに突きたくなる頬なのか、俺も触りたくなってきたぞ。

 とはいえ仕事を全部放置してるわけにも行かず、仕方なく作業に戻る。コイツラがいっつも執務室で騒ぐから俺は仕事が出来んのだ、勘弁しておくれ?

 

「――――――――グ、グレイゴースト…………!?

「アカン起きやがった、逃げろエンタープライズ」

「アラホラサッサ――――――――違う、こうじゃないぞ。落ち着くんだエンタープライズ」

 

 お前何かキャラの保ち方を忘れ始めてないか?

 目をバチリと開いた瑞鶴が凄い動きで立ち上がると刀を抜く。

 

「決闘だ! 今日こそお前をボコボコにしてみせる!」

「お前も高雄の手のものでござったか!?」

 

 面白いくらいの瞬発力で距離を詰める瑞鶴を、全力ダッシュのエンタープライズがひらりと避けて扉を開けるなり消えていく。

 アイツ、大変だな…………。




アバーズレーン研究を独りで始めたんですけど(作者がやるのか)何か黄金パターンが有るみたいですねこれ。
ローリングして荒らす役と、ローリングしない整地役と、ローリングしてしまったけど後悔するサポート役。この三つが必ず揃ってて、指揮官は全部に該当するジョーカーみたいな感じに見える。どうりで登場人物が4人以上じゃないとピンとこないわけだ。
意識してなかったけどちゃんと話として成り立つ配慮が見えますね、俺すごーい(適当過ぎる自画自賛)。

赤城と別方面に加賀が残念になってきた。おかしい自覚があるから捨てられるのが怖い依存体質加賀。濃すぎるぞ? 守ってあげなきゃ(使命感)。
オイゲンやっぱ暫く出せねえ、スマン。ロンドンは――――未定! 綾波は出さなきゃな。
ってかキャラリクは受け付けないって言ってるよなあ? ホント、こっちも断るの辛いから言わないでね。



ミスって消したとは言え、こんなセコい方法で透明ランキング一位とか屑だと思うね俺は。
ちなみに今回の話の元は「五航戦はツンデレレズなのでは」です。ぶっちぎりで完成度に不満が有ったので別物になってる。

こんなちゃらんぽらんながら書いても書いても不満出てるタイプ。お気に入りは欲しいしランキングには載りたいしそしてこんな事を言ってる割に資料集めとかそういうのはしない。俺は一生プロにはなれませんなHAHAHAHA。


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4.ティルピッツって絶対スタイル最強だと思う

パクリ元から推薦されるとかいう前代未聞の偉業を成し遂げたので失踪します、ありがとうございました。兄貴はもっと言葉を必要としてくれないとリアルで奇声を発したよ?
テンポ激しいかな…………指揮官が静かになったからマシな方だけど。
後、誰とは言わないけど高評価有難うございます。

タイトルから話が想像つかなすぎる。かなりゲームのネタが入る所があるけどわからない人マジでゴメン? 雰囲気を楽しんで。
推敲した時はテンション低すぎて面白く読めなかったが実際は如何に。

※だいぶコレジャナイと思ってしまったので改稿中


「エンタープライズのやつ、何処に行ったんだ…………?」

 

 エンタープライズが昼食に行ってもう数時間、いよいよ俺も執務室から出て捜索を始めていた。現在はユニオン寮をウロウロしている所だ。

 

 アイツは確かにだいぶやべーやつだったらしいのだが、間違いないのは「簡単に約束は破らない」という事。エンタープライズが着任してから、事情もなく約束や時間を破る事例はほぼ、いや全く見たことがなかった。

 

「とはいえ食堂にも居なかったよな…………うーん、いやまさかな……」

 

 有り得もしない想像に頭を振り払う。

 食事を同伴――――というか無理やり一緒になったらしい瑞鶴から聞いた話だと、何時も通りの時間で食べ終わって何処かへ歩いていったらしいのだ。

 

 勿論何か言ってなかったと聞いたんだが、帰ってきたのは

 

『そう言えば、『ロングアイランドが最近外に出ていなさ過ぎる。少し外に出るよう説得でもしていこうか』なんて言ってたよ。というか私エンタープライズのマネ似てない?』

 

 まさかな、いやまさかな? というかホントに真似は似てたぞ、やっぱり京アニ女主人公のつながりは強いものなのかもしれないな――――これ通じにくいネタすぎるぞ。

 

 

 

 

 

【I am the bone of my sword――――】

 

 ロングアイランドの部屋の前、壁越しに聞こえてきたのは体が剣で出来てそうなイケメンの声。

――まさかマジで? いや、エンタープライズに限ってそんなまさかな。

 

 いやな予感に背筋を震わせつつノックをする。居るわけがない、違う用事があるんだきっとそうだ。

 

「開いてるよ~! 勝手に入ってきてダイジョーブ、今幽霊さんはいそがしいの~」

 

 ロングアイランドの腑抜けた声に従ってガチャリ。ホントに鍵閉めてない、この鎮守府では命取りでは?

 入り口でお出迎えするのはダ○ソのパッケージ。ちゃんと整理しような?

 

 散乱した漫画やらゲームやらを踏まないように不規則なステップをかまして部屋の奥を見やると――――――其処には二人いた。

 一人は長いシャツしか来ていない黒髪ロングのちっこい背中。言うまでもなくロングアイランドだろう。

 

 もう一人。此方が問題だった。

 

「クソォ! ギルガ○ッシュを使うなど卑怯だぞ!」

「エ○ヤだし勝てるよね? ほらほら、『別に倒してしまっても、構わんのだろう』って!」

「何でお前らは訓練もせずにア○コしてるんだアホか!?」

 

 というかギルガメッ○ュって、ロングアイランド相当やり込んだな?

 最強らしいけど操作くっそ忙しいからなあの金ピカ。

 

「なっ、指揮官!? どうして此処に!?」

「そりゃお前が数時間アン○してるからだよ!?」

 

 予想外すぎるぞ! 何で説得しに行ったのにお前まで干物になりかけてるんだよ!?

 エンタープライズがK.Oした画面に落胆しながら俺をキッと睨む。

 

「指揮官! だがエミ○は勝たねばならない、そうでなければ報われない――――そうだろう!? 私は勝つまで辞められない!」

「概ね賛成だけど遊んでいい理由にはなってねえんだよなあ…………」

 

 まああの人生だとね、そりゃあ報われなきゃ嘘だとは俺も思うけども。

 終わり終わり~、とロングアイランドが上機嫌にP○2のスイッチをブチ切る。エンタープライズが勝ち逃げか、とまだやりたそうな姿勢を見せているのが誠にシュール。

 

「――――で、何でゲームしてんだよお前ら」

「だから人理の守護者に勝たせてやろうとだな…………」

「そういうことじゃなくて」

 

 絶対アニメ見ただろ。いや俺も好きだけど、アイツ好きだけど!!!!!

 

 まあお前は波長が合うだろうな、何か同じ局面で全く同じことが出来てしまうタイプには見える。変な自己犠牲に慣れてしまわないかは偶に心配してるぐらいだ。

 

「いやいや指揮官さん、最初はエンタープライズもゲームに乗り気じゃなかったんだよ?」

「ああ、そうなのか」

「ただ『正直○ンコの○ミヤ弱いよね~』って煽ったらこうなっちゃっただけで、エンタープライズは全く悪くないんだよ~」

「うん、お前がど畜生なのは分かった。それはしょうがないな」

 

 負けず嫌いでエミヤ好きなのはもう見え見えだからどう見てもロングアイランドが悪い。大体確かにゲームバランス悪いけど、ちゃんとコンボ覚えて頑張りゃ勝ち目は有ると思うんですよ。

 

 

 

 

 

「それで、エンタープライズ的には説得できそうなのか?」

「全く無理そうだな、人数が多いというか――――」

 

 エンタープライズが喋っている途中でノックの音。ロングアイランドがさっきと同じ返しをするとガチャリと開く扉から現れたのは――――多分、ティルピッツ。

 

「今日は暑い。北育ちには辛いものだ」

 

 女はさっさかこちらに歩いてくる。

 

 何故「多分」なのか? そりゃあ見た目がおかしいからだよ。

 下は部屋着の短い灰のズボンで、上は「野獣戦艦」とデカデカとゴシック体で書かれた白いダサT。帽子も被ってないからなおさらアンタは誰だ。

 

「――――誰だあなたは?」

「コッチのセリフなんだが、アンタ誰?」

「ティルピッツだが…………ああ、指揮官か。どうした、こんな淀みだらけの部屋に」

 

 淀みだらけは全く否定出来ないんだがアンタの格好が顔とかキャラから乖離しすぎててついてこれねえんだよ。

 ティルピッツが少し目配せしたと思うと、ロングアイランドが上機嫌にPCのスイッチを入れ始める。二台有るのかよ凄えな。

 

 俺はそんなに金をやってないはずなんだがな……。

 

「かくいうティルピッツは何をしに」

「勿論L○Lをしにきたのだが」

「ガッチガチの対人ゲーしてんのかよアンタ!?」

 

 予想以上の重いゲーマーになってるぅ!? 何故だ、俺が見てない間にティルピッツに何が起こったんだ!?

 ふう、と慣れた動作でデスクチェアに腰掛けてマウスを弄りだす。え、何もしかしてガチ勢なのコレ?

 

「お、おい何でティルピッツまで干物と化してるんだよ。俺には全く分からんぞ」

「孤独に慣れすぎると孤独に生きる術を模索するものだろう、生物ならば当然の適応だ」

 

 全く納得できない大真面目な解説をティルピッツが入れてくる。お前のぼっちレベルってそんな深刻だったの…………?

 

 俺の要領を得てない顔に気づいたのか、ティルピッツが流し目で見た後にため息混じりに淡々とこんな説明を挟んだ。

 

「確かに鉄血に於いて私は以前ほどの孤独とは縁遠いことだろうが――――――よく考えて欲しい。私は同僚の戦艦の知り合いがゼロだ。幾ら言っても艦種の違いを埋めて話を進める気力と言うか、やる気が出なかった」

「ナンカゴメン、アンタのぼっちレベルは俺の予想より圧倒的に高かったのね」

 

 孤高なる北の女王と呼ばれ続けた結果本当に孤高の存在となってしまったティルピッツに敬礼と哀悼を。悪かった、また今度何か考えるから許して欲しい。

 ティルピッツは他に戦艦が居ると地力が下がるときたからな、ちょっと頭は使わざるを得なさそうだが。

 

「指揮官、あなたが自責の念に駆られることではない。正直この方が性に合っているんだろう」

「そ、それなら良いんだがな…………?」

 

 にしても巫山戯た服装もティルピッツぐらいの長身モデル体型が着こなすと薄っすらと色気すら漂わせるものらしい。腕とか細いし白すぎる、日焼けしないのかアンタは。

 へ、へそが見える…………。ああ、鎖骨まで! いかんいかん、自制心を保て俺。

 

 ロングアイランドも横でもう一つのパソコンに座ってゲームを始めてしまう。まああのゲーム実際に声かけあったほうが楽なゲームだしな。

 カタカタとブラインドタッチをしてのける二人からは目を離してエンタープライズに視線を戻す。

 

「エンタープライズ、何というか――――俺ですらキャパオーバーしそうだからお前は帰れ?」

「そうだな…………正直びっくりして言葉が出なかった」

 

 だからさっきから静かだったのね。

 

 

 

 

 

「ふう…………勝ったな。熱い試合だった」

「レーンのプッシュ状況が良い感じだったから集団戦楽だったね~」

「クソ、話が分かる俺が居るのが複雑すぎる!」

 

 分かるよ、サイドレーンとかプッシュされてると集団戦のときに気が散ったりする!

――さて、マニアックすぎる話はさておき。

 

 ゲームが終わって丸机を囲って座る形になる。

 

「それでどうしてあなたは残ったんだ、指揮官」

「いやちょっと事情を伺いたくて、仕事は済ませてるしな」

 

 一応今日の分はほぼ終わってる、長話でもしなければ帰ってきてからの作業で十分間に合う。

 鎮守府の書類仕事は厳しいしだから秘書艦が居るとは聞いたことが有るが、俺は意外とそこまで苦戦していない。規模はデカイのだが最悪一人でもできるし、周りにそういう話をされると割と驚かれる。

 

 ティルピッツがふむ、と考え込む仕草。

 

「別に構わないが、そう面白い話でもないと思う」

「いやもう見た目だけで面白いから大丈夫」

 

 若干サイズがきついのか体のラインがハッキリ見えてて非常にけしからん感じになってる。動く時にへそが見えたりするし鎖骨がエロい、セクシーッ! 掃除の作業員さんとかが見たら悩殺される、オフのときのえっちな格好は男を百発百中で殺すからな。しかも普段の寡黙さのせいでギャップ萌えまで搭載してるとかもう見敵必殺レベル。

 

 まあ自分の見た目とか興味なさそうだもんなあ…………普通にパリコレ出れるレベルなのにね。

 

「後その格好で外を出歩かないでね、死人が出る」

「涼しくて楽なのだが…………まあ指揮官の忠告なら従おう。あなたは的外れな指摘はしない」

 

 信頼されてるようで何よりです。

 ティルピッツが体を伸ばしながら息を吐く。ただでさえキツキツの服が上に寄っていってけしからんお腹が――――アアアアアアアアアアア!!!!!

 

「お客様!お客様!!  困ります!!あーっ!!! お客様!!困ります!!あーっ!!!困ります!! あーっ!!!!困ります!お客様!!困ります!! あーっ!!!あーっお客様!!」

「ど、どうしたんだ指揮官…………」

「指揮官さんの気持ちはロングアイランドさんも分かるよ~…………」

 

 困ります!? 困ります!?

――フ~~~~、スッとしたぜ。俺はそこらの指揮官やオタクに比べるとちと自制が効かん性格でな~。

 

 奇声でも発して気を紛らわして心を落ち着かせるようにしてるんだ。今のティルピッツはやばかった、俺の中の入るべきではないスイッチに久しぶりに触れてくる事案だったな。

 

「さて、話をしてくれないか? 俺がアンタに飛びかかる前に」

「あ、ああ…………ロングアイランド、彼は大丈夫なのか?」

「多分大丈夫だよ…………ははは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 という訳でティルピッツの話を要約しよう。

 彼女とゲームの出会いは食堂入口で

 

「今日こそボコボコにさせてもらうぞ、エンタープライズゥッ!」

「嫌だ! 私は撲殺なんてまっぴらごめんだ! 死ぬなら指揮官の為に死ぬと決めているからな!?」

 

 おおいきなり酷いな?

 まあこんな感じで竹刀を持った高雄と乗りかかられて決死の真剣白刃取りを決めていたエンタープライズを遭遇する所かららしい。は? 全然どうなるかわかんないんだけど。

 

「やかましい! 半殺しで止めてやるに決まっておるだろう!」

「何を言ってるんだ半殺しは十分おかしくないか高雄!?」

 

 十分おかしいな、高雄は落ち着け?

 明らかに物騒な会話をしている二人を内心呆れつつ、最初はティルピッツは観察していたらしい。曰く「これだけの関係性も逆に少ないものだから、参考にはなるだろう」とのことだ。なんか違うと思うよ?

 

 そんな感じで二人の死闘を眺めている時、横からふと

 

「ゲームで決めれば良いと思うのです!!!!!!!」

 

 謎の熱意を持った綾波が乱入してきたらしい。意味不明過ぎる。

 流石の高雄も「何だお前」という顔をして綾波を見る。エンタープライズはこれ幸いにと抜け出して距離を取ってから警戒しつつ綾波の言葉を待つ。

 

 綾波は続けた。

 

「棒で叩いたり怪我をするのは良くないのです。ですがゲームなら別!!!! いくらボコボコにしようが消えるのは時間と艦としての大事ななにかだけなのです!!!!!!!」

 

 いや艦としての大事ななにかを大切にしていって!? 綾波お前のゲームに対する姿勢は何かがおかしいぞ!?

 しかし高雄には後半の部分が恐らく良い感じに聞こえてしまったのだろうか、急にぐっと拳を握ったと思うと

 

「これならいける!」

「いやだ! 何で高雄はそれならいけると思ってるんだ!?」

 

 こんな事を言ってエンタープライズをガチで怯えさせたらしい。さすが高雄。

 綾波はその様子に満足気にうなずくと――――何が満足なんだろうな? 指を鳴らしてロングアイランドを呼ぶ。

 

「部屋に連れて行くのです。ボードゲームが多いのは綾波の部屋だった…………筈、です」

「そうだね~、じゃあ二人共ついてきて~」

 

 高雄はノリノリで、エンタープライズはロングアイランドに引っ張られてイヤイヤ連れて行かれた。

 

 

 

 

 

「なあ、綾波。少し良いか」

 

 そして次の日にティルピッツから綾波に話しかけたらしい。何故だ。

 何でも綾波の熱意に興味を持ったらしい、普段から想像のつかない淀みきった熱意に満ちた目でゲームのことを語っていたらしい。俺それは喋り掛けないように気をつけていくべき光景だと思うなー?

 

「珍しいですね…………ティルピッツさんが重桜の、しかも駆逐艦の綾波にお話をしようなんて」

「いや、お前が異様な熱意で語っていたゲームについて少し興味を持ってな――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そしてこうなった」

「は? としか言いようがないよなそれ」

 

 その流れからどうしてアンタがその謎の服を着るに至るんだ? えっちさとエピソードの濃さが見合ってませんよ?

 そうか、とティルピッツはまた考え込んで付け加える。

 

「当時の私はチェスぐらいしか知らなかったもので、ゲームというものが進化しているのを彼女達から教えてもらった」

「そしたらびっくりなんだけどね~、ティルピッツはこの手のゲームの精密操作が超得意だったというわけなの!」

 

 ロングアイランドが横入りしてピース。何だお前のその自由奔放さは。

 まあそういう事だ、と言ってティルピッツが部屋の端にあるミニ冷蔵庫からアイスを取り出して舐め始める。

 

――うーむ、世の中めぐり合わせってものは確かにあると思う。だがこの例はなかなか無いだろうなあ、俺は此処までアバンギャルドなミックスは初めて見た気がする。

 

「まあティルピッツがそれで良いって言うなら良かったよ、アンタいっつも何か足りなさそうな顔してたしさ」

「――――――そうだな」

 

 ティルピッツは何というか、寂しそうな戦艦だった。

 最初は俺にも敢えて期待していないようなフシが有って、何となく厭世的。最初はほっとけなかったなあ。何というか、自主的に一人になってるというか閉じこもってる印象がどうしても強くてな。

 

 ティルピッツが俺の顔をマジマジと見ると、脈絡もなく喋り始める。

 

「だがあなたが温もりを教えてくれた。だから『孤独』ではないと言い切れる――――――いつだって独りではないことを、今の私は分かっている」

「本当に感謝しているつもりだ」

 

 辞めろ、そういうの俺泣くから。

――まあ、結局孤独なんて大抵思い込みなんだよな。だって独りで俺達が生きていけるわけがないし。

 誰かがいつも何処かに居て、それなりには自分のことを考えたりしてるものだ。

 

 そういうのが昔のティルピッツはさっぱり見えてなかったんじゃないかな、とは思う。孤独に慣れすぎて目が曇っていたんだろう。

 

「そ、それは良かったな…………駄目だ弱いんだって俺そういうの」

「今独りで在ることを選択できる意味を、あなたが教えてくれたものを――――忘れはしないつもりだ」

 

 もう無理だった。

 

「お客様!お客様!困りますああー困りますお客様アアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!」




どうしてこうなった!? どうしてこうなった!?
はい、干物ティルピッツをどうぞ。ティルピッツは興味が向かないと無頓着過ぎる人っていう天啓が降りたのでサイズキツイダサTとかいう大変えっちな格好になりました。
夢を壊すことを言うと俺のPC前での格好そのまま。ダサ文字は「遊び人」なんですがね。
何というか――――どうしてこうなった!?

ティルピッツは厚着でわからないけど長身でぶっちぎりのモデル体型だと思っている。ダサTとか着るとラインが見えてどえらい破壊力を持つと思う、指揮官が普通に堕ちそうなのは珍しい例。雑やけど綾波出てきたぞ、雑でスマン。

後半はティルピッツ語りと指揮官語りの二つを書いた。片方は幻と消えたよ。

めっちゃ細かいけどティルピッツにやたらと「あつい」に関する描写が有るのは原作セリフが「寒さ=孤独、寂しさ」みたいなイメージ植え付けてきているので今は孤独じゃないむしろ騒がしい=暑いという意味も込めた指揮官の心配に対する返答の一つでも有るし意味合い的には「あなたが教えてくれたから今は大丈夫」的な最強尊い意味合いを込めてある的な事を思いついたんですけど皆様如何でしょうか俺はこの解釈をしてもらいながらティルピッツの尊さに死んでほしいと思うしこのティルピッツが言葉にしない絶対の信頼を指揮官においていてでも指揮官当人は気付いてないこのもどかしさをサブウェポンとして使っていきたい。


アバーズレーンとか書いてるけどアバズレ要素と尊いなり萌えなりの要素を両方共秘めてる内容にしてるつもりだったりする。
でも普通のアズレン好きには胸を張って薦められないと思うんだ俺…………ほら、キャラ崩壊のヤバさがね?

ところで今☆9が三連星されたら☆8以上の調整平均で安定するのでは…………?(雑すぎる誘導)
俺は評価がないと死ぬんだ、残念ながらそういう作者の作品だから暇な人は頼んだ…………。強要はしないから。

※追記
みんな〜、ティルピッツ月末に取れるから取ってな〜(小声)


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5.そうして彼は胃薬を飲んだ

諸事情より前後編構成を変更。理由は後書きで。
後半が増えてるので前編読んだ人は途中まで飛ばしてくださいね。

今回は面白い(断言)、我が最高傑作。今までのアバーズレーンを大体詰め込んだハッピーセット。
ところで折れた100円ビニール傘使ってるんですが骨組みを整えたら使えるので「一人じゃ仕事できない傘ちゃんかわいい」とか思ってます、変態だ…………。

さて、時系列としては3話の続き。頭おかしいよ。

後書き長すぎなんだよなあ…………。1400文字って。
あ、推薦とか特に許可要らないです。事後報告は有れば見に行きますが――――とはいえもう推薦は来ないと思いたい。まず推薦できねえからこれ。


「指揮官様、赤城にしますか? 私にしますか? それとも、ワ・タ・シ?」

「直球で言うけどアンタ頭は確かか?」

 

 こういうことばっか言ってるから一行目でブラウザバックされるんじゃねえのかな。何の話って、そこにいるアンタ(画面の前のアンタ)の話さ。

 

 エンタープライズが見事に瑞鶴に追いかけ回されているので、「偶には他所でもすなるコミュニケーションといふものを、私もしてみむとてするなり」――――とか思いながら結局黒ストエロいよねって話を工廠の人としたわけだが、帰ってきたらそんな俺らよりやべーやつが居るのが俺の日常。頭がおかしくなりそうだ、もうおかしいけど。

 

 いつの間に秘書艦ポジに居座ってるんだこの人。早く代わってもらえないとストレスで突然変異して現実改変とか取得しそうだからしっかりして。天草いい加減に四郎時貞。古○渚ちゃんと代われ、CV一緒だろうがオイ――――え、一緒なのかよ!?

 

「冗談ですよ、ふふ。お茶をお持ちしますね」

「ダメ」

「ど、どうしてですか?」

 

 どうして私を虐めるの? みたいな顔してるんじゃねえよ。俺は女尊男卑のこの鎮守府でアウェーな人権無視をされてる側だからな。

――俺もな、別に赤城が何かすると決めてかかってる訳じゃないんだ。

 

「あの、この前お茶に何入れたか覚えてますか?」

「え? えっと、それはぁ…………」

 

 モジモジしてんじゃねえよ先が読めてるからなすげえ気色悪いんだよ、分かるか? 分かれよ! 分かれって!?

――でもな。一つだけ言えることが有るんだ。

 

「キャッ、やっぱり言いにくいものですね…………」

「そらそうだテメエ媚薬ぶち込んだよなオイ、聞いてんのかコラ」

 

――赤城はな、「何かすると決めてかかる」じゃないんだよ。

 別に決めてかからなくても何かするんだよ。もう俺と喋ってる時点で戦争は始まってるんですね?

 

 とはいえ赤城の羞恥心という回路はかなり別次元の構造をしているのでその行為その物は全く気にしていない。どちらかと言えば俺と何をする気だったかとかを想像してるだろうから…………ぶっちゃけ俺でも引く。

 一応言っておくが何もしてないぞ。指揮官を舐めるな、その程度の修羅場は死ぬほどくぐり抜けてきたんだよ。

 

「今回は入れていませんから。一回だけ、一回だけです」

「ヤクの密売人みたいなこと言っても駄目です、というか尚更アンタに注がせたくねえ」

 

 すり寄ってくるな気色悪い! もっとマトモなこと喋りながら近寄ってきてくれないとウッって声に出るからな俺。

 赤城を振り払って電気ケトルのスイッチを入れよう――――既に入っている?

 

「ちょっと待って、何か細工してないですよねコレ?」

「そんなまさか~、お帰りになったときにすぐに飲んで頂けるように配慮しただけですわ~」

 

 あ、怪しい。まあ、幾ら赤城でも其処までは――――

 

「ゲス顔してる赤城先輩の写真をゲット!!!!!!!!」

「うわ何か翔鶴が落ちてきた!?」

 

 外れた天井の床からうつ伏せで一眼レフに恍惚としているヘンタイ(翔鶴)が落ちてくる。顎を打って明らかに舌を噛んだし、証拠と言わんばかりに口から血を垂れ流しているがその胡乱な目つきに曇りはなし。淀みきってる。

 

 眼をキラキラさせた翔鶴がカメラを眺めてふふふと気色の悪い笑い声を上げる。盗撮も此処まで来ると俺は好感持てるかな…………。いや気の迷いだわ今更引いてきた、現実に脳が追いついてない。

 うわコッチ向いた、あっち行け。

 

「あ、指揮官も見ますか!? 赤城先輩のゲス顔!」

「見たくもないし何でゲス顔してたんだよ赤城さんんんんん!!!!????」

 

 絶対なにかしただろ。赤城は首をブンブンと必死で振っているんだが冷や汗がスゴイよなあ!?

 とりあえず何したのか吐かせようと距離を詰めると顔を真赤にしてあたふたした赤城が手を振って逃げ回る。

 

「あ、あの。ドキドキしてしまいますのでご勘弁を…………」

「あぁ!? 何いってんだこのヘンタイ空母ぉ!?」

 

 男にガチ切れして詰め寄られて何でドキドキしてるの、それ恋じゃなくて恐怖ってことでいいのか?

 

「ストップ! ストップです指揮官様!? お話は勿論致しますのでまずは後輩の教育をですね…………」

あ?――――ああ、そういうことですか。それは先に済ませて下さい」

 

 有難うございます、丁寧な礼をした赤城がきりりと表情を切り替える。そういうテキパキした赤城は真面目に好きだよ、後の部分は大体こわいよ。

 

 翔鶴が蛇に睨まれたカエルの如く固まっているのを良いことに赤城がしゃがみ込んで翔鶴に顔を突き合わせる。

 

「翔鶴、あなたね…………」

「あ、赤城先輩これには深い事情が…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私を撮りたいと言うなら正々堂々撮りなさい!? 重桜空母としての矜持が足りないわ――――――けれど、私はあなたのその在り様は許容します!!!!!!!!」

「一生ついていきます赤城先輩――――――――いえ、赤城お姉さま!?

「ああーもうめちゃくちゃだよ…………」

 

 そうじゃない、確かに矜持が足りないというのは分かるけどそうじゃない。というか加賀も盗撮してた気がするがアレの判定は如何に。いや知りたくねえけどなそんな事!?

 

 目を輝かせて赤城に羨望の眼差しを向ける翔鶴はもう何というか刑務所にぶち込みたい気分だがグッと堪えろ、俺は艦同士のアレコレまで口出してはならない…………ッ! もう若干手遅れだけど! 口出ししちゃってるけど!

 

「では泣き顔も一つ下さい!」

「無理よ!? 私を泣かせられるのは指揮官様だけですもの!?」

「俺はどっからツッコめば良いんだろうか…………」

 

 俺は人を泣かせることはしないつもりで生きてるんでつまり一生泣き顔は見れないということなのだろうか。まあそれで良いんだけどさ。

 

 落胆する翔鶴を死んだ眼で眺める。

 

バキベキィ!

 

 扉が軽くぶっ壊れた!? 誰だ馬鹿な開け方をしたやつは、高雄か。どうせ高雄だろ!?

 

「おい待てお前、ただの指輪じゃないかコレ!?」

 

 あ、気づかれた。蹴破ってきた加賀がそのまま俺の胸ぐらを掴む。

 

「そうだぞ~、ところで吐くからシェイクは辞めてくれ…………」

 

 嗚呼ヤバイ、喉が変な液体でヒリヒリしてる。これは絶対ヤバイ感じのやつだよな。

 顔を真赤にした加賀は俺の話を聞いていない。いやまあ怒られる理由は全然分かるんだけど、俺は女の子の胸元に吐瀉物ぶちまけるような趣味がないと言いますか。

 

――え? そういう奴もしかしている? ちょっとそれは引くな。

 加賀が一瞬えげつなく引いた顔をした後手を離す。

 

「吐かれるのは流石の私も勘弁だ」

「だろ? それで次の罵声はまだ?」

 

 楽しみにしてんだけど。

 とも思えば加賀の顔が呆れに変わってその後いじけだす。ああ、面倒なやつだ。加賀が拗ねるとかなり面倒くさいのだ、コイツも所詮は赤城の妹だからな致し方ない所はある。

 

「本物だと思っていたのに…………やって良い冗談と悪い冗談が有る

「悪かった悪かった、今回は俺が悪いから何か補填を効かせるよ。何が良い?」

 

 今回ばっかりは俺が悪いからな、心は弄んじゃダメよ。

 俺が何が良い、と言う前に加賀の目が妖しく煌めく。今回は何も言わないとも、全面的に折れるつもりでそういう言い方をしたんだからな。

 

「何でもと言ったか?」

「言ってないけど倫理的にオーケーなら例外はあるけど一個だけ聞く」

 

 加賀が悪い顔付きで笑う。やっぱり幾ら言っても一航戦は元悪役臭が凄いし、俺も不用意な発言を理解した上でするとかいう自殺行為は控えるべきだと今思った。

 

「そうかそうか…………ふふっ。保留だ、時期が来れば教えてやる」

 

 恐ろしいことだな、いつの日かこれに静かに頷いた自分を俺は殴りに行きたくなるんだろう。

 

 さて、今更加賀は赤城と翔鶴を見つけたらしい。は?、とでも言わんばかりの顔でイチャつく二人に歩いていく。

 

「何をしているんだこれは」

「盗撮してました」

「盗撮するぐらいなら真正面から撮りなさいと説教していました」

「指揮官、私は帰っていいか…………?」

 

 帰っていいよ、正直な所。

 げんなりした顔で二人を見下ろしていたかと思うと、加賀は電気ケトルのもとにテコテコと歩いていって注ぎ口を見る。

 

「おい、お前これを飲んでいないだろうな」

「え、何で」

「ふむ、これは忠告するべきか――――――注ぎ口に盛ってあるぞ」

「おい、赤城。またか? またやったのかお前――――おい、上官が聞いてるぞ? さっさと答えろ」

 

 テヘペロじゃない。やって良いことと悪いことがある。

 

「つい出来心で☆」

「おいおいおいおい――――お前には再教育が必要らしいな、赤城

「あぁ! 厳格な軍人に戻ってしまった指揮官様――――――これはこれでイイ、ヤハリウンメイノヒト…………」

「おい加賀、この馬鹿の部屋にある俺に関する物を全部捨てておけ」

「いやぁ!? そんな殺生な!? ああでも罵られるのは大変素晴らしいのでもっとお願いしてもよろしいでしょうか!?」

 

 やかましい。流石に俺も怒っているぞ。

 馬鹿みたいに俺に関するものが散乱しているのはとっくに知っているからな、正直敢えて泳がせていたのだがそういうことをするなら相応の罰は必要だ。

 

「自分の体は大事にしろ、阿呆が――――――はぁ、怒ると疲れるので勘弁して下さいよ」

 

 そういうのは遊びじゃ済まないからね、いや弱み握るのも大概っちゃそうなんだがまあギリギリセーフかな。俺の中ではだけど。

 ダメなものはダメだよ。俺の私物盗むとかはまあ俺の被害で済むから良いんだけど、俺に襲われたとか取り返しつかなすぎるからな。

 

「おい、急に元に戻るとギャップで吐き気がする」

「加賀ひどくない?」

「指揮官こわ~い」

「お前は恐れを知ろうな?」

 

 翔鶴がニヤニヤして口から血を流したまま俺をからかう。お前は何でも良いからそろそろその血の出処を診てもらわないか?

 

 しかし何処を切ったのだろうか、僅かな興味で俺が翔鶴の方に歩いていったそのとき――――突然こちらに走ってくるブーツの足音。

 

「指揮官愛してる、何も言わずに匿ってくれ! そしてケッコンしてくれ!」

「匿うのは良いけどケッコンはしねえからなこのグレイゾーンゴーストがぁッ!」

 

 文節滅茶苦茶だよお前、遂に言語能力を失ったか。

 エンタープライズが目を潤ませながら礼をして扉の後ろに隠れる。それでも礼をする辺り、コイツラを見限るのもなーんか違うんだよなあ。俺が甘すぎるのだろうか…………。

 

 加賀が隠れているエンタープライズに意地悪そうに笑いながら扉を閉める。今ミシッって言ったけど大丈夫かなコレ。

 

――――結果から言うと大丈夫じゃなかった。突如として始まった襲撃に扉はいよいよくっついているだけという有様、さて誰に弁償させてくれようかねこれは。

 

「「エンタープライズは何処だぁッ!!!!!!!!!!!!」」

「高雄と瑞鶴のアンハッピーセットに俺も思わずゲロを吐きそうだぜハハハハハハ殺してくれぇ!?」

「おい指揮官、縋り付いてくるな! 私にそんな泣き言を言うんじゃない!」

 

 エンタープライズが勢いよく開いた扉にぶつかりそうになってビクビクしている。良い子だ、そのまま後ろを向かせずに帰らせるから大人しくしてるんだぞ~…………。

 入って来るや否や竹刀を肩に下げた瑞鶴が俺に詰め寄ってくる。変な返答をしたら殺されそうな剣幕に思わず俺も後ずさってしまった。

 

「グレイゴーストは何処」

「え? ナ、ナンノハナシカナー」

((((この人嘘下手すぎない?))))

 

 煩いな、お前らの心の声が透けてんだよ。

 

「何処に隠れてるのかって聞いてんのよ来ヶ谷ぁッ!」

 

 本名で呼ばないでくれますかね!? びっくりするだろうが!?

 竹刀をビシビシ肩に当てる瑞鶴は完璧にヤクザのそれ。高雄まで俺に詰め寄ってきていよいよ女子大生によるオヤジ狩りみたいな絵面になる。

 

「コッチに来たのは分かっておるぞ! エンタープライズが頼るなどそなた以外に誰が居る!?」

「お、お姉ちゃんとか」

「「あ、確かにそうだな」」

 

 よっしゃコイツラ最高に馬鹿だった! そのまま帰れぇ!?

 瑞鶴と高雄がこっちに背を向けてヒソヒソと話し合う。エンタープライズは足が見えないように器用に扉と箪笥に足を引っ掛けて隠れてるのだが、正直一瞬のミスで見つかるなコレ。

 

――――――随分と長い秘密会議が終わった後、二人同時にこちらに振り向く。

 

「悪かったわね指揮官、他を当たってみるわ」

「いや確かにそうだったな、思いつきもしなんだわ」

 

 コイツラマジで馬鹿だな~。口に出さないように必死で取り繕いながら笑って誤魔化す。

 

「ま、まあ取り敢えず俺仕事しなくちゃいけないからさ? せめて他を当たってから来てくれないか?」

 

 あ、しまった。話が続けられなくて首を絞める発言をしてしまったぞ。

 周りにヘルプを求めるが全員苦笑いをして部屋の隅の方へ逃げていく。嘘だろお前ら、俺のこと好きなんじゃないのかよぉ!? いや今すっげえ情けないこと言ったな俺。

 

 そうだな、と二人して頷いてしまう。うなずくな。

 

「では――――――何処だエンタープライズゥッ――――――!

 

 どっかに二人して走り去っていた。

 

 

 

 

 

「た、助かった…………愛してる指揮官」

「お礼代わりに愛を囁くな、新手の羞恥プレイかよ」

 

 持ちネタみたいに連発するんじゃない、お前はもっとこう――――――イケメンになってくれ。お願いだから。

 羞恥プレイという単語が最初理解できていなかったのか、キョトンとした顔をした後に首をブンブンと振って否定を始める。

 

「そ、そんな訳――――――無い! 無いぞそんな事はない絶対無い、無い無い尽くしで無の飽和が起きるくらい有り得ないからな!」

「図星だな、ふふ――――」

「ウソつけ絶対図星だゾ」

「ちがっ――――――なんで否定できない引っ掛かりが有るのかな、もう!?」

 

 あたふたとするエンタープライズを見て加賀が楽しそうに笑う。お前相変わらず混沌が好きなのな。

 すると横から赤城の憔悴しきった罵倒がエンタープライズに飛んでいく。

 

「何いちゃついてるのよ、私も混ぜなさい!?」

「赤城さん、別に俺の追っかけするのは良いから手段は選んだほうが良いよマジで」

 

 完璧に言動がドルオタのそれなんだよなあ…………。まあBLで間に挟まりたいっていう感じのかなりアレなタイプのドルオタに見えるが。

 追っかけ、という単語にピクリと耳が動いて考え込み始める。ありゃりゃ、こういうの言われたら真面目に考えちゃうタイプの人か。

 

 エンタープライズが耳を真っ赤にしながらしたり顔で腕を組む。

 

「フッ、これがヒロイン力の違いというやつだ――――残念だったな、赤城」

「いやお前も大概ヤベー奴だし少なくともヒロイン力はゼロだぞ」

「なっ!? そんな事はないぞ、多分!!!!!」

 

 多分っていう時点でなあ。大体何でお前がマトモなやつって扱いなんだよ、最低でも兄貴姉貴くらいのレベルまでは行かないと普通とは呼ばないんだぜ?

 顔を覆って悶絶しているエンタープライズを赤城が歯をギリギリと鳴らして睨む。まずいなコレ、また戦争が起きてしまう。

 

 特にあのパチモンデスノートが引きずり出されたら不味い。二次被害が尋常じゃないんだよなアレ、俺はその二次被害が見たいというゲスな欲求と戦わなけりゃならないからホント大変だ。

 偶に欲に負けそうになる、だってさぁ!? 俺だっていっつも叱る側に回れるような精神構造じゃないんだよ本当はさぁ!?

 

「言わせておけばあなたね――――――」

 

 

 

 

 

「ええい、貴様ら纏めてろくでもない情報をばらまかれたくなければ静かにしろ!」

「よくやった加賀!」

 

 何処からともなく取り出したパチモンデスノートで周りを牽制し始める加賀。控えめに言って救世主、映像はさながら破壊神。

 メイン常識枠来た! これで勝つる!

 

「最終兵器加賀さんと呼ぶが良い」

 

 最終兵○彼女の話だろうか。

 

「言ってることイミフだけどイケメンスマイルカッコイイケッコンしてーッ!」

「むしろケッコンさせろぉ!?」

 

 うわ怖。あまりに圧が強いので加賀ちゃんのファン辞めます。2-4-11。

 しかし最後にはこの面子で一番信用できるのは加賀だということが今決まった、信頼するぞ。エンタープライズと赤城を止める破壊兵器として存分に力を振るってくれ。

 

 赤城の顔が明らかに「裏切られた女幹部」のそれになる。そんな悲しそうな顔せんでも……。

 

「何ですって――――――どういうつもりかしら、加賀!?」

「止まれ。ツテが有ってな、赤城のアレな情報も盛り沢山だ――――――どうだ、もしや本気で指揮官にゴミを見る目で見られたい訳でもあるまい?」

「いえそのシチュは大いに興味がありますが此処は大人しくしておきましょう」

 

 良くも悪くも欲に正直すぎるぞ赤城。もう俺とすることなら何でも良いのか、だとしたらアンタも愛が重すぎるという他ない。

 加賀の口が裂けんばかりに歪んだゲス嗤い。やっぱりお前ら姉妹だよな。

 

 っていうか赤城が止まってるし情報自体はマジらしい。まあ既に期待してないから別にどんな情報が出てきても俺は受け入れるつもりだよ、赦すつもりはないだけで。

 加賀が俺を見て溜息をつく。

 

「全く…………これぐらい指揮官なら何とかしろ。私が居なければ五回は死んでいるぞお前」

「多分誰も見てない所で俺は無数に死んでることになってるから大丈夫」

 

 むしろこの鎮守府で生きていけるとでも? 何度でも死ぬし蘇るよ、それが理不尽ギャグってもんだ。

 ピクリと動いたエンタープライズをニヤつきながら加賀が制止する。

 

「こらこら、許可もなく動くものではない。バラまくぞ」

「指揮官、助けてくれ。何の捻りもなく脅迫されている」

「まだネタが残ってる方にも責任はある」

 

 エンタープライズが目を丸くした後、納得したようにうなずく。

 

「確かにな!!!!!!!!」

「開き直るな!?」

 

――ああ、俺が平常運転な理由? そりゃあ包み隠さず生きてるからバラ撒かれても「まあそりゃあね?」ぐらいで済む情報しか無いだろうからな。もともと変な人で通ってるんだよ、悲しい話。

 

 加賀のノートのレイアウトに首を傾げつつ尋ねる。

 

「それで加賀、その物騒なノートで何をしようと?」

「お前を助けたのだ、コレを機に本物の指輪でも頂戴しようと――――――」

 

 すかさずノートを没収。

 

「あ、ちょ! こら返さないか!」

「ほれほれ、背が低いでちゅね~」

 

 170は超えてるからな、165も行かないだろう加賀では届くまいフハハハハ!

 顔を真赤にしてぴょんぴょん跳ねる加賀はレアだな――――――向かいの棟のグリッドレイと目線を交わす。「バッチリです」、だそうだ。やったぜ。

 

「はいはい、揉め事の元は破って燃やしちゃおうね~」

「ああ!? 私がどれだけ苦労して情報を集めたと…………」

「うるさい、口答えすると杏仁豆腐没収するぞ」

 

 ぐぬぬ、と拳を握りながら悔しそうにこちらを睨む。

 

「良いねぇその表情! その調子で目を潤ませて頬を染めながら頼むよ、最高に興奮する」

「クソ、このドヘンタイ! クズ! バカ! 女誑し!」

「最高の褒め言葉さぁ! もっと言ってくれないか!?」

 

 悪いが捨てるプライドも持ち合わせてないし罵倒されるのは得意分野でね!?

 とはいえ俺が理不尽なことをしたことが殆ど無いからか、赤城とエンタープライズに関しては肩の力は抜けているように見える。まあね、実際燃やす気だし。

 

 こういうの奪い取って勝手に嗜むやつ居るよな、アレは駄目だ。読むなら真正面から堂々と読まないと。

 

「多少ギリギリアウトなスキンシップを取るのは俺がモテモテ主人公ゆえ仕方がないことなのだが」

「凄まじい自画自賛だな指揮官」

「おっとエンタープライズ、下手なことばっか言うと興奮するがお口をチャックだ。今お前達は俺の掌の上にいるんだぜ?」

 

 何ちょっと嬉しそうなんだよ。俺そっち系に目覚められても対応しかねるからな、俺は基本甘やかすタイプだし。

 様子のおかしいエンタープライズは放置。

 

「あんまり過激すぎるのはやめよう。特にこれはやばすぎる」

 

 モラルハザードが起きるからなこれ。

 

「フッ、お前とて読んでいたくせに」

「今だって読みたいの我慢して大人な対応してるんだから静かにしてよ!? 読みたくなるに決まってんだろこんなおもしろノート!?」

 

 正体を表したな、と言わんばかりの加賀の呆れ顔。我々の業界ではご褒美です!

 

「とにかくこれは俺が厳重管理するから! 良いですね!?」

 

 

 

 

 

「あ”ぁ”~~~~し”ん”と”…………」

 

 椅子にもたれかかると溶けるように下にずり落ちていく。

 アレから大変だった。駄々をこねる加賀を宥め、揉める赤城とエンタープライズを止め、満身創痍で焼却炉に向かって完全焼却。どれ一つとっても無駄に体力と神経を使わされて面倒この上ない。

 

 ついでに失血ショックを起こしていた翔鶴を運んだりもした。

 何がスゴイってさ――――――今言った仕事の一つたりとも指揮官の業務っぽく無い所だよな。

 

「私は諦めんぞ、何時か必ず本物の指輪を見つけ出してみせる…………!」

「まだ言ってんの? 絶っっっっっっっっっっっ対見つけられないから安心しろ」

 

 見つけられないし開けられないし理解が出来ないし誰も知らない場所に在る。見つけた時はソイツを――――消すしか無いだろうな、多分。

 赤城と加賀はセットで秘書艦にしないと事故る関係上、今は赤城だけが演習の結果報告を聞きに行っている。ぶつくさ言ってる加賀は俺に「何も入ってない」茶を注ぐだけのお仕事。

 

 とはいえ美味い飲み物が有れば仕事も多少は進む。

 書類仕事をぐったりしながらこなしていると加賀が不思議そうな顔で俺の眼を覗き込んでくる。

 

「何故そう頑なにケッコンを拒む。別に世間で言う婚姻とは違うだろう」

「うん? あぁ~それはな…………何となく俺が嫌なんだ、そういうの」

 

 加賀は意味が分からん、という顔をして無言で俺に説明を要求する。まあ分からんだろうな。

 

「俺にとっては娘とか妹みたいなもんなわけで、決して女として見るもんじゃないってこと」

「何だそれは、お前のような兄が居てたまるか」

 

 俺もお前みたいな妹は御免だ。縋ってくるし。

 

「それに――――そんなもん無くても信頼関係は作れるはずだ。加賀は俺が裏切る、とか想像できるか?」

「いや、全く」

「そういうこと。俺だって加賀を信じてる訳だしそれでジューブン、ジューブンなのだ。しかも此処でケッコンすると揉め事の元だし」

 

 そう言ってもらえる関係で俺は十分だ、それ以上なんて求める気がない。

 いつか戦争が終わりゃ普通に生活できるんだろうし、その時に俺よりよっぽどマシな男を連れてきてくれればいい。ただし俺は厳しいがな…………そこら辺の軟弱者には渡さん。

 

「…………信じてる、等と気軽に言わないことだな。これだから女誑しは」

「ん?」

「何でも無い。それで、いつまでサボる気だ」

 

 うわ、急に仕事モードに戻った。

 

「今見てて思ったけどお前らのインナーえっちだからそろそろデザイン変えない?」

「殴っていいか」

「何で!?」

「何というか、裏切られたと言うかさっきまでの私に謝れ。大体肌を見せてはならんのか」

「駄目だよ」

 

 この後は赤城が帰ってこないの良いことに、数十分ほど如何に艦の服装がえっちかについて話し続けたのだが、帰ってきた返答は

 

「そんな目で見ているお前が素直に気持ち悪い」

 

 とのことだった。正直興奮した。

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、何か聞かせたいことは決まったかね?」

「ケッコンが駄目なのだろう?」

「駄目ですね」

 

 さっき真面目なお話してまで駄目な理由説明したからね、絶対ダメ。半裸で逆立ちして鎮守府一周してこいって言われたほうがマシ。

 

 俺の返答を聞いた加賀が何度か頭を振り払って考え込んだり、地団駄を踏んだり忙しなく動いたと思ったら、そっけない顔でボソリと

 

「じゃあ、もっと体に触れてくれ…………」

「え?」

 

 思わず聞き返す。何じゃそりゃ。

 もう一回言わせるのか、と顔を真赤にされる。ゴメン俺にはよくわかんないわ真面目に。

 

「お前は女の体に触れるのをやたらと避けるだろう…………余所余所しくて嫌だ」

「分かったいくらでも触ってあげる!!!!!!!!!!」

 

 もう頭をめっちゃ撫でてあげたよね。

――いやね? 昔にちょろっと読んだ雑誌とかで、「気軽なボディタッチは嫌われる」みたいな事書いてあったから敢えて避けてたのよ。

 娘に「お父さん気持ち悪い」って言われたら三日ぐらい引きずるだろ…………俺ああいう目には遭いたくない…………。

 

 加賀が辞めろと俺の手を何度も振り払う。嫌だね、尊さ100万点あげちゃう。

 耳撫でてやったり色々しているとガタガタ揺れた扉がとうとう倒れた。赤城がスゴイ気持ち悪いニヤつき顔で横のエンタープライズに捲し立てる。

 

「どうですか私の妹は!? 最高に可愛いと思うでしょうエンタープライズ!?」

 

 こいつら救いようがない馬鹿だなーと思って眺めているとエンタープライズが拳を握って涙ぐみながら叫ぶ。

 

「認めよう――――――今はお前が尊いッ!!!!」

「うわなんか言ってるぞこのグレイゾーンゴーストさん」

 

 超ハイテンションな赤城があたふたとする加賀の手を持って穢れ混じりの炎をともした瞳で半狂乱に告げる。

 

「しっかりテープレコーダーで録音したわ加賀! 責任を持って何度でもリピートするから安心して頂戴!?」

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!!」

 

 あ、加賀が顔を真赤にして倒れた。これは――――頭に血が上りすぎたらしい。

――ま、こんな感じが俺の鎮守府らしいか…………。いつになったらコイツラ落ち着くんだろうね。ハハハハハ、笑えねえよ。

 

 さて。取り敢えず盗み聞きするなっていう初歩的な説教から入るとしよう。




この小説でキャラ概念が壊れた人が多すぎるので失踪します、有難うございました。

前後編を纏めた理由は「後編が畳む内容でほぼ全部だったので前編と続けて読まないとつまらない」為です。感想くれた人は何か因果おかしくなっててスマン。

此処からアズレンに入るのは何もかもが間違いだからな?
別人と認識したりして自己防衛おじさんになってどうぞ。艦これがスナックだとするとアズレンはキャバクラ、ぐらい浮世離れ感有るのでこんな闇闘技場みたいなゲームじゃないよ。

最高傑作だと思う。何というか、「アバーズレーン」を体現してる話だなあって。珍しく杜甫kuresuが自分の作品に満足したレアケースだよ、どうですか?

ところで読者層は「社会人が多め」で「シリアスとギャグの両方が激しいやつが好き」だと思いますが違いますか? 4年規模のリサーチで読者層はざっくり掴んでいるつもりなんですが。

以下無駄話。暇じゃなけりゃ飛ばしてどうぞ、結構恥ずかしいことを凄え文字数で書いてる。






――いやー、にしても書き始めてから随分遠くまで来ました。気に食わないと消す性分でログはないんですけど2014年9月11日――――ぐらいが初投稿じゃねえかなあ。
初めて書いた小説は平均評価4.20という面白い代物でした、ログ残してたら読みながら笑い飛ばしてる。酷かったなあ、中学生の厨ニ魂って怖いよ。

さて、とはいえ今では平均評価が8以下で情緒不安定になったりそうでもなかったりという所までやってきた。ランキング10位まで行ったしね、こりゃすげえや。我ながら小説だ け は根性有るな。
変態の知り合いは増えましたし、貴方のようにやりたい放題の後書きも読んでくれる人もいるらしいよ。前置きで散々予防線張ったのに読んでくれて有難うございます。
また、この小説に限らず、作品の一つでも読んでくださった方に御礼申し上げます。これ読んでる奴は――――ええと、まだまだ続くからついてこい。
推薦もらったら引退するだろうなあと思って日陰でガラクタいじりをするような四年間だったので、偶にはマジの長話です。phes2氏から推薦もらったくせに全然辞める気起きねえなあ…………。

ってか今初めて兄貴神の名前書いたね俺?
 読んでるか知らないけどえげつない渾名で呼んでてすんません、目標なんで呼び方が思いつかないんですよね。呼び捨てはつらい、本人の許可降りても怪しい。メジャーリーガーに野球少年が喋ってる絵面のイメージ。

後な、何となく書くの躊躇ってるお前そうお前だよ。俺でも続くんだからお前も続けられるに決まってる、だから――――――エンタープライズを書け! これ言いたかっただけだよハハハハハ!!!!!!!
楽しければ続くから取り敢えず挑戦してみよう。相談くらいは乗る、役に立たないの見えてるけどな。

では1200文字超過の場違いなしんみり後書きを読んでくれた貴方。これからもよろしくしなくていいので、次回も笑って読んで下さいね。

――真面目モード終わり! これからは速くて数日更新にするよ。今回みたいなヒューマンエラーが出てもアレだしじっくり作ってみようかなって。

にしても最近は色々と上手くいくもんだ、何でだろうか。日頃の行いは悪い筈なのだが。






ところで最近、兄貴神が女なのでは思い始めたんだけど俺疲れてんのかな…………んなわけ無いだろ。
いっそハーメルンの住人を全員美少女だと思い込めば俺のアヴァロンなのでは?(狂気)


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6.義人製造二級持ちです

誰でも良いからダクソしようぜみたいなことばっか言ってる間に更新です。出会い厨初段。


「赤城殿! 今日こそあなたを義人にしてみせるぞ!」

「義人を強要するとかコレもう分かんねえな…………」

 

 義人ってなんだろうな、俺にはよく分からん。少なくともそんな「なれ!」って言われてなるもんではなかろうに。

 サン・ルイはうちでは新人の部類のはずなのだが、ご覧の通り既にぶっ壊れてしまっていた。この押しつけの酷さは何となく高雄と同類の匂いがするんだがこれは俺の気のせいだと思いたい

 

 さて。赤城の返答はと言うと大きな溜息を一つ吐いた後にこうだ。

 

「あなたの言う義とやらがなにか知りませんが、私は指揮官様という正義に基づいて息をしていますが何か文句でも!?」

「俺が正義とかアンタの正義ガバガバじゃねえか!?」

 

 というか俺の部屋に不法侵入したりしてるし俺にも十分迷惑なことしてるよアンタさぁ!? 一体どこを以て俺を正義なり規範なりにした生命活動をしてるとか嘯けるのか数十分ほど問い質したいね俺は!

 

 赤城は俺の話など聞く耳持たず、サン・ルイと来たら何故か肩を落とす。

 

「くっ、それでは文句など言えるはずもない…………!」

「待て待て待て待て待て待て。何処に納得したんだよそれで良いのか!?」

 

 一体何をどう文句言えないのか分からない。

 敢えて頑張って解釈して見る限りには「相手には相手の正義が有る」という観点を見落としてたってことか? どっちみち意味が分からんのだが誰か助けてくれ。

 

 苦悶に顔を覆うサン・ルイに赤城が恍惚とした表情でポツリと

 

「これが…………私と指揮官様の愛の力?」

 

 とか呟き出した訳だが、今の所俺の愛は確認できてないけどそこら辺どうなんですか?

 というか俺も感覚麻痺ってきたけど何でコイツラ当然のように執務室で下らない喧嘩してるんだよ。何時になったら執務室は快適なサボり場になるんだろう…………。

 

 遠のく平穏に合掌をしていると、サン・ルイが苦し紛れと言わんばかりに叫びだす。どうしてお前らはすぐ叫ぶんだ!? 俺がすぐ叫ぶからだねそりゃそうだわ!?

 

「しかしだな、指揮官の部屋に不法侵入する事の何処に義が有ろうか! これだけは説明してもらおう!」

「今更だけどそうだよな納得の行く説明をしろやコラ!?」

 

 詳しくは一話とか読もうな、コイツ俺の部屋に勝手に入ってたらしい。

 しかも最近また入ってるという密告を加賀から受けている。アイツ姉のイメージが下限ギリッギリの所になると動き出すんだよ、最初から動いて欲しい。

 

 さてこっからどう巻き返す、サン・ルイは説得できても俺も出来ると思うなよアンタ。というか言いくるめられたら評論番組かなんかに出れるレベルだ。

 

「し、指揮官様!? 誤解です、私物を物色しているだけで指揮官様には一切触れておりません!」

「そういう問題じゃないんですけど?」

 

 マジかよ。私物物色してるんだ、いやもう諦めてるからそんな気にしないんだけど――――やっぱり真犯人が目の前に居るとちょっとアレな感じするな。

 

「予想以上の普通の犯罪者感に俺の好感度は激しくマイナスに振り切れましたが一言」

「それでも指揮官様が好きなんです!!!!!!!!!!!!」

「ありがとう、そろそろアンタとの距離感について真剣に考えることにする」

「冷たい指揮官様も好き!!!!」

 

 重症だな、何でこうなったんだこの人…………。

 

 着任した直後は此処まで酷くなかった気がするんだけどな…………俺が何らかのストッパーをぶっ壊してしまったのだろうか、だとしたら何というか申し訳ないレベルに来てるぞ…………。

 普通にしてれば普通に良い人なんだけども俺が絡むとこうなる。どうすりゃいいんだ。

 

「もうこれは俺がドヘンタイになって赤城さんからドン引かれるしか無いのでは………………!?」

 

 そうだこの手があった。俺はもしかして天才なのではないか?

 

「「いや既にドヘンタイでは?」」

「ちくしょう! 何で二人揃ってそんな事言うんだよ、興奮するだろうが!!!!!

 

 

 

 

 

「指揮官、私は理解したのだ」

 

 赤城を憲兵に突き出しそうになったとか、何もかも諦めて赤城のスカートを捲ろうとする(バカ)と対して超ノリノリの赤城(ヘンタイ)がサン・ルイに全力で制止(物理)されただとかそういうのは置いておいて。

――――――置いておくんだよ、俺はよく血迷うんだ。

 

 高雄に赤城を突き出して決闘の刑に処して、すぐ後。執務室に入るなり俺に振り向いてサン・ルイはこんな事を澄んだ瞳で言いだした。

 既にもうパンドラの匣感は感じていたのだが俺は追求してしまう。何故? そりゃあアンタ(読者)がそう望む以上は仕方ないだろ?

 

「な、何を」

「私の使命のことだ――――――いつも何かが有ると思っていたが、漸く此処に来た意味を見つけた」

 

 何だか嫌な予感しかしない。俺は返答せずに逃げたほうが良いのかもな、だって濁った眼で何もない所視てるもんコイツ。

 トランス状態のサン・ルイが俺を見るわけでもなく、神でも幻視したような狂った様相で捲し立てる。

 

「当初は私もこの鎮守府は狂っている、そう思っていた」

「いやそうだけど」

 

 全くもって正しい見解だな。

 サン・ルイが首を振る。何だお前、ここで一番偉くて発展を見守っていた俺が何の迷いもなしに断言したんだけど?

 

「違う、皆それぞれに義を持っていた。ならば私が為すべきは一つ――――――全ての艦を正し、あるべき姿に戻すことだ!!!!!!!!!」

「良いこと言ってる風だけど価値観の押しつけも甚だしいなオイ!?」

 

 というか出来もしないことを言うもんじゃないね! 俺だってそれぐらいのこと考えたこと有ったさ、でもこんな馬鹿と犯罪者とイカレポンチとヘンタイしかいないカオスフィールドでそんな高尚な目的が果たせることなんて一生ないから!?

 あのエンタープライズですら今はあのザマだ、矯正できるわけがない!

 

「その心意気はボランティアにでも充ててきて!? 実利的で効果的な筈だぞ!?」

「違うの指揮官、運命に逆らってはいけない。使命は果たすものだろう!? ほら、置かれた場所で咲きなさいとかそんな感じだ!」

「馬鹿なこと言ってる場合じゃないから目を覚ませ!?」

 

 ああもう駄目そうだ、眼が完璧にトンでる!? 他の奴を正すも何もお前がイカレポンチだからお前から矯正しなくちゃいけないよなあこれぇ、義人は何処にも居ないぞ。

 新入りですらこうなるのか、分かってたけど壊れる様をリアルタイムで見るのは辛いよ全く!

 

 完璧に思考回路が壊れてしまったサン・ルイを現実に帰還させる方法を探っている最中、扉が開いたかと思うと被さるような呆れた声。

 

「何をあたふたとしている、サン・ルイは――――――どうした?」

「にくすべさぁん! 助けてぇ!?」

 

 ツェッペリンが俺を見るなりはあ、と溜息をつく。

 サン・ルイを芸術品でも鑑定するようにクルクルと眺めて怪訝そうに眉間の皺を濃くしていく。

 

「誰がにくすべだ――――――それはともかく、これは何だ?」

「何かうちの鎮守府を正してあるべき姿に戻すんだ! とか言い出してそのままアチラの世界にトリップなされてしまいましてですな…………」

「待て待て待て。我は一体どこからツッコめば良いのだ」

 

 手を前に突き出して引き攣った顔で問われたが俺にだってさっぱりだ。ボケ続けるやつと自覚有るけど止まれない馬鹿で10割が構成されてる生活を送ってるものでして。

 苦々しい顔付きでサン・ルイの顔を見下ろすツェッペリン。俺よりも背が高いからな、そりゃ見下す絵面になる。

 

 顎に手を当てて目を細めつつ顔を突き合わせた。

 

「ふむ――――――――そうだな」

 

 ツェッペリンが明後日の方向を指さして顔付きからは信じられない可愛らしい声で

 

「見てみて! アッチにカナンが見えるよ!?」

「茅野愛衣ボイスの無駄遣いだなあ!?」

 

 手段を選べ、いや最高だったけどそういう問題じゃないと思うんだ!

 さながら幼児向け番組よろしくの演技は何故か成功したらしい。突然まばたきを始めたサン・ルイが大声で

 

「 カ ナ ン は 何 処 だ ! 」

 

 と奇声を上げながら走っていってしまう。いや場所ぐらい聞けよ、眼の前にツェッペリン居ただろ?

 まあ気持ちは分かる。生真面目なやつはうちで生活してるとストレスと適応の過程で一本ネジの飛び具合が違う感じになる。可哀想では有るが俺にはどうしようもない、だって俺もストレス源のひとつなんだもん。

 

 ドタバタ出ていったサン・ルイを扉から顔を出して確認した後、ツェッペリンが心底うんざりしたような溜息。

 

「また変な艦が増えたらしいな…………これで良かったのか?」

「なんかもーやってらんないんだぜ!?!?!?!?」

「我もやってられぬ、何だアレは」

 

 何を常識人ヅラしてるか知らねえけどアンタああいうやつ大好きだろうが。いつも戦場荒らしみたいなことしてくれやがって。

 ツェッペリンは疲れた、なんて言いながらソファに飛び込むように腰掛ける。しきりに喉を触っているのを見る辺り、無駄な体力を使ったのは事実のようだ。資料すら残らない名演技なんて本当に無駄な体力だがな。

 

 思い出したようにツェッペリンが問う。

 

「そういえば、今日はサン・ルイが秘書艦であったな」

「ああそうだよ、誰かさんのせいで今はカナン探しの旅に出ていらっしゃりますがね!?」

 

 そう怒るな、とでも言わんばかりに手を振って緩やかに口が弧を描く、

 

計画通り…………それで、後は誰が秘書艦をするのだ?」

「考えてもないよ、こうなる事自体計算外だろ普通」

 

誰が秘書艦が奇声を上げながら楽園求めて走り去っていくとか予想できるんだよ。無理だろ。

そうかそうか、と残念そうな口調で言うツェッペリンだが口は未だに愉悦に歪んだ三日月。何が狙いなんだこの人。

 

「なら我が代理をするしかないな、ゲンキョウダシシカタナイコトダー」

「実際そうだろうが今さっきの奇行を見て何を信用するんだよ俺」

「そうかそうか、では赤城でも呼んでこよう」

「ああむしろ最高ですやはりツェッペリン様は最高だバンザイ!?」

 

 何でそんな食い気味に秘書艦をしたがるんだかさっぱりだ。最悪誰でも何とかなるんだけどさ。

 

 しかし悔しいながら揉め事は起きないし仕事もマトモにする――――という条件なら最適解だ。

 エンタープライズは普通にアレだし決闘狂が飛んでくる等々起きるので却下だし、兄貴姉貴は巻き込まれ体質で地獄を見る。

 加賀はまあマトモなんだが後輩と姉のせいでカオスだし、赤城はそもそも頼む気すら起きない。サン・ルイも任せて良いのか疑惑が出てきたと思えば、高雄なんてもはや此処数年頼んだこともない。今でもアイツ秘書艦できるのかな。

 

――――とまあこんな有様。他はどうなんだって? アンタそれ本気で聞きたいのか、時間の無駄だぞ。

 駆逐艦は俺が世話しなきゃいけないしな。Z46(フィーゼ)ちゃんとかは比較的楽だけど。

 

「それで、終わってない業務は何だ」

「装備の見直し、空母系統の設備とか増えたし調整要るかなって」

 

 悪くないではないか、なんてコメントに若干イラッとくる。何様だコノヤロウ。

 空母の装備の機体名、tier、強化値諸々が書かれたゴチャついた資料を机に投げると、向かい側からツェッペリンが読み始める。

 

 まずツェッペリンが口出ししたのは意外にも自分の装備だった。

 

「デストロイヤーのtier3、等という代物を預けるに足る空母と考えられていることは誇るべきだろうが――――他に回すが良い」

「え、何で?」

「Ju-87C急降下爆撃機のtier3が有る。これで面制圧をするのが本分なものでな、期待されるような並の空母の航空攻撃は我には出来ぬ」

 

 グラーフ・ツェッペリンの性能はズバリその「鉄血の翼」と「鉄血の鷹」というスキルを軸に据えていると考えるべきだ。

 短絡的に言ってしまうとスキルに縛られた編成、装備にならざるを得ない空母だ。

 

「というより畑が違うと言い替えてみるか。機体性能のおかげで運用は可能だろうが、我より上手が居る分野を担当する羽目になりそうだと見る」

 

 鉄血艦隊に於いてその頑強さを利用した繰り返しの絨毯爆撃――――これがツェッペリンの基本戦法。Me-155A艦上戦闘機を使うというなら鉄血艦隊の基本である戦艦1、空母2の編成に於いては更に制空権も保証できるな。

 

 性質上主力はティルピッツ、ツェッペリンでエンタープライズになりがちだ。ツェッペリンが制空権とか防御寄りだからイカツイ感じの殴り屋空母が欲しいんだよな、アクロでもいいけど。俺はあまり片方に攻防が偏重する形式は嫌いだ、片方が落ちただけで艦隊の総合力に大穴が空くことになるからな。

 

「あ~、そりゃそうだな。悪い、早めにプラス値上げて積ませるから待ってくれ」

「――――とはいえデストロイヤーが使えぬわけでもない。空母を複数運用するならば重要な話であって、今の練度ならば多少の無理をしてもこれで勝てる。急ぐことはない」

 

 次に、と言って赤城と加賀の装備を指を差す。

 

「これだ。バラクーダと流星ではせっかくの一航戦の速攻の息が揃わないだろう、装備を統一して出来るだけ攻撃を同期させてやるべきだ」

「あ~クソッ、最近ここら辺テキトーにやりすぎだな俺」

 

 今直せば問題はなかろう、とにべもなく言った後に設備に移る。

 

「そして設備。ユニコーンは油圧カタパルトより応急修理装置が必要ではないのか――――――いや、最近の海域は炎上も目立つか。消火装置も悪くない」

「あぁ~、あの娘周回で前衛薄めの単艦よくやるもんな! 盲点だったわ」

 

 改めて見てみると、最近の装備については随分と適当に組んでしまっていることが明らかになってきた。

 まあ危険な海域に頻繁に飛び込まなくなったのも原因かもしれないな。要は平和ボケ、軍人なのにこれはダメだろう。

 

 序盤の阿呆さ何処へやら、俺達の見直し計画は円滑に進んでいった。

 

 

 

 

 

「…………終わりか。確認は取るのだぞ、事前に装備変更のズレに感覚を合わせる必要がある」

「言わんでも分かっとります~、馬鹿にせんといて下さい~」

 

 本当か、とからかうように笑う。クソが、何でいつも年下扱いしてくるんだよ。

 マトモに会話をできるタイプだから普通に遊ばれると非常に対応がしにくい、普通に喋られると喋りにくいってなんだよ俺もう殆ど病気の領域じゃねえか。

 

「戦うのは俺じゃないんだから、専門外の俺の独断なんて有り得ないよ」

「そうか、理解しているなら心配も無用だったな」

 

 子供扱いするなっての!

 まあ取り敢えずこれで装備は終わったから次に行こう――――というときに扉を蹴る音。アレ? 何で壊れないんだ――――――ああ不味い、「扉は蹴破られるもの」って固定概念が生まれ始めてる。

 

「ちょっと! 開けてってば!」

 

 ああ、ヒッパーの声だった。何で蹴るんだろうか。

 しばらく二人で扉を眺めていると扉越しから金切り声に近い叫び。

 

「開けなさいよ! アンタ達がニヤついて扉見つめてるのぐらい私だって分かるわよ!?」

「アァ~、ヒッパーチャンダッタカゴメンネ~」

「ワレモカタマッテシマッテナー、スマナイナヒッパー」

「わざとらしいのよアンタ達!?」

 

 俺達がわざとゆっくりと歩いていると扉を蹴られたので壊れない内にいそいそと開く。

 ムスッとした顔のツンデレまな板とこんにちわ、みんな大好きヒッパーチャンである。俺の中では愛でる枠だったのだが、ツェッペリンも同じらしい。アンタと初めて気が合いそうな気がする。

 

 しかし何故扉を蹴ったのだろうか、と足元を見ると――――ハンモックみたいにぶら下がって目を回すサン・ルイの姿。よく見るとヒッパーも同じだったが、異常なほどびしょ濡れだ。

 

「ちょっと、訓練中にコッチに突っ込んできてかなりメーワクだったんですけど!?」

 

 怖いな、「カナン!!!!!」とか言いながら訓練してる最中に海に突っ込んできたってことだろ?

 

「おいツェッペリン、これはアンタのせいだろ」

「いやいや、卿が命令したのだろう? われわるくないよ」

「責任逃れなんてさせるかぁ!?」

「どっちも同罪以外に何があんのよこのバカコンビ!」

「「全くその通りだな」」

 

 

 

 

 

「ツェッペリン、やはりあなたの髪は良いな。幾らか私にくれないか」

「髪を触りながら言うものではないぞティルピッツ、控えめに言っても我はかなり気持ち悪い」

 

 取り敢えずサン・ルイは医療室のねーさんに任せたその後、何故かソファに座る俺達の後ろでツェッペリンの髪を触りまくるティルピッツ。ヘンタイ過ぎる。

 

 というか気になってたんだけど。

 

「なんで今日もダサTなん、ピッツはん」

「ロングアイランドの部屋から帰る途中でサン・ルイを引きずるヒッパーを見つけてな、着替えずに手伝った」

 

 今日は「孤独な女王やってます」という縦の二行書きのダサTだ。ロングアイランドと言い、特注か何かなのだろうかコレ。

 

「そんな事より、少しぐらい良いだろうツェッペリン。これだけ長ければマフラーも織れる」

「いやそれほど長くはないと思うが――――――待て、我の髪でマフラーは流石に狂気の沙汰だぞ

 

 ツェッペリンが後ろのティルピッツに目を剥く。ティルピッツはいつもどおりの表情だ。

 

「どうせ伸びるじゃないか」

 

 多分ツェッペリンが気にしてるの其処じゃないと思うんですよ俺。

 若干本気で引いてるツェッペリンを差し置いて向かいのヒッパーが机を叩く。

 

「何してんのよ真面目に、プライベートまでごちゃごちゃ言ってないんだから訓練ぐらいマトモにやらせなさいよこの無能!」

「アハン正論だし普通に怒られてるから興奮するぜ!?」

「お願いだツェッペリン、この髪が本当に好きなんだ。少しぐらい駄目か…………?」

「そんな上目遣いで我が落ちる訳無かろう!? というか卿も助けろ、ティルピッツがおかしいぞ!」

 

 これが地獄。全員話が一方通行とかこれほど悲しい光景は中々無い。

 

「ああーもううっさいわね、ツェッペリンは髪渡しちゃえば!? 別に減るもんじゃないし!」

「そうだぞ、私はもらえると幸せになる」

「「ヒッパーまでヤケクソになって流石に俺達(我達)も困惑する」」

 

 今日ばかりは息が合うな。

 ツェッペリンが珍しく本気で怯えだした。ティルピッツは他のメンツと違っていつも通りな感じで唐突にこんな感じになるから割と怖い。

 

 本物はわけが違うのだ。

 

「ティルピッツ――――――夜中にこっそり梳いとけ、此処を指揮する来ヶ谷が許可する。やりなさい」

「その手が有ったか。流石は指揮官、思いもよらぬ奇策だ…………」

「我のプライベート!? しかも奇策でも何でもないぞ!?」

 

 ツェッペリンがワアワアと言ってる内にティルピッツが向かい側に座り直す。ツェッペリンは俺に災厄を持ち込んだりする割に当事者になると弱い、何というか――――狂人だけど割とマトモなんだろうな。矛盾を感じるが俺の鎮守府で矛盾を抱えてない方が難しい。

 

 ティルピッツが何処からともなくチェス盤を取り出して俺の前に置く。

 

「よし、どうせだからチェスをしないか指揮官」

「アンタ私が話してる途中なの理解してんの!?」

 

 横のヒッパーが怒鳴るとそうだったな、とティルピッツが目を丸くする。アンタってホント自分の世界に生きてるよな…………幸せそうで何よりだ。

 

 すまなかったな、とシュンとしながら言いつつ話が終われば俺にチェスさせる気満々のティルピッツ。やるのは良いけど俺は弱いぞ~?

 

「ま、まあ分かったなら良いのよ…………で、アンタ。今後はこういう事無いようにしてよね」

「あ?――――――ああ、分かってるよ。今回はマジでツェッペリンが予想外だっただけで基本は気をつけてるよ」

 

 ホントなのかしら、とジトリと俺を見つめる。辞めてよ興奮するから。

 やがて発言自体に嘘がないのを悟ったのか、溜息を付いて机の珈琲を一気飲み。

 

「ま、ホントに程々にしときなさいよ。今回はもう良いから」

「ヒッパーちゃん優しいし最高!」

「そ、そういうのを辞めなさいって言ってんのよ!?」

 

 机越しに頭撫でちゃう。数少ないマトモな娘だからね、俺は出来るだけ大事に扱っていきたい――――いや他の奴も大事にするけどさ。

 

 めっちゃ手を払われる。

 

「辞めなさいよバカ! ヘンタイ! クズ…………あばずれ。ホントに辞めなさいって……

 

 とうとう耳まで赤くなったヒッパーが服の端を握って大人しくなる。あぁ~、癒やし。

 グリッドレイ、撮れてるな? このショットは俺が責任を持って預かる。

 

 満足したので手を離すと、横のツェッペリンが俺に頭を突き出す。

 

「我も撫でろ」

「は? ヤダよ」

「我も!!!!!!!」

 

 何なんだアンタは。いや、別にそこまで言うなら良いんだけどさ…………。

 

「これで明日も破壊に勤しめる…………」

「手離していいかなコレ」

 

 喜んでんのかそうじゃねえのかよく分からん物騒な文言を吐くんじゃない。




そういえばフォロワーに目標が居た。一ヶ月前から「視られていた」という事になるな…………喋りかけてくださいよびっくりしますから!?

いつも一つの曲を一週間ぐらいループして別のに変えてるんですが、今の流行りは「ふっかつのじゅもん」です。
これからはちょいちょい紹介していきます。

後ネタは好きに盗んでオーケーです。兄貴、ネタが生やせないならウチのカオス空間から持っていって下さい、ぶっちゃけ独占した所で値打ちがないんです(真顔)。



Z46とツェッペリン!!!!!!!!!課金不可避射爆了!!!!!!!!!
「我は…………怒るだろうな」じゃないんだよ可愛いかお前は?

これ豆知識なんですが黒い薔薇の花言葉は「決して滅びることのない愛」なんですよねいっつも滅ぼすだの破壊だのどうのこうの言ってるツェッペリン姉貴が指揮官が「頼んだから」水着を着てしかもその花を身に着けてるとかいうのがもう既に俺を5回は殺したというのにそっから更に「怒るだろうな」とか普段絶対言わない言い方してる辺りから完璧コレは愛ボイスのあのトーンだなっていうのが伝わってきて追加で8回ぐらい殺されたんですけどまさか俺の「十二の試練」を13回削り切る猛者が突然飛んでくるとは思ってなかったんですけどどうすれば良いんですかね残ってるダイヤで足りなかったら課金不可避なのでやはりmanjuuは俺のアバーズレーンによるネガキャンへの嫌がらせとしてスキン実装しているという予測は正しいのでしょうか。


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7.ネタ切れだから入れ替わっとけ

パクリ元が更新してるのを見てやる気出たので失踪します、有難う御座いました。
何かが降臨したので狂気まみれ。これがお前の求める「狂宴(ロマン)」。

仕事疲れた? 学校うんざり? 部活の先輩うるさい? 大丈夫、コレを読めばどうでも良くなるさ。文学ドラッグだもの。

いつもより下品。俺も悪いと思ってる。


「唐突だがエンタープライズと入れ替わってしまった」

「指揮官、これはやはり私達の愛の力というやつではないのか。相思相愛で私はとても嬉しいぞ」

「何寝ぼけてんだこのヘンタイ空母…………!?」

 

 最近は一方通行のそれを「愛の力」だなんだと称して怪奇現象の諸根源に仕立て上げる詐欺でも流行ってんのか? 例え俺の眼を誤魔化せても読者の目は絶対誤魔化せないからなそれ。

 

 という訳で入れ替わった。「何で」だとか「前振りなしかよ」とか言わないで欲しい、俺だってそこら辺気にしてるけど朝起きればこうだったんだ。ウチの神様ってやつはいつも無慈悲に試練だけを与えてくる。

 直感的に「執務室に居るな」と早朝から駆けつけて顔合わせしてみたのだが…………感想としては「俺超イケメンだな」だ。自分の顔最高。

 

「というかさ…………スカートとアメリカンスリーブが最高に気持ち悪いんだけど」

「じゃあ今此処で服を交換するというのはどうだ指揮官!?」

「やはり天才か――――いや待てこんな露出度高い女装した自分なんか見たくないからな俺!?

「クソっ、バレたか!?」

 

 バレバレバーだよ! お前のヘンタイさに底が見えなくて指揮官は大変不安です!?

 しかも身長差が10cm位あるからパツパツ過ぎて殆どアウトだよ!? 馬鹿なのかお前、R-15タグついてないんだからな!

 

「だってそんな指揮官見たくなるだろう!? 私は見たいぞ!」

「いや俺は最高に見たくない」

「指揮官だって酷い格好をした私が見たくないのか!? いや見たいはずだ間違いない!」

「いや見たくないよ!? 俺女の子には身体を大事にしろっていつも言ってるからね!?」

 

 俺はこの格好をしたエンプラが一番好きだって言ってんの!!!!!!!!! 可愛い格好なら他でも赦すけど!!!!!!!!!!

 いや違う違う、熱くなるなよ俺。相手が自分だから尚更乱暴な口調になりそうだ。乱暴とかそれ以前になにか怒るポイントがズレてる気もしなくはないがもう俺達はそんな下らないことを突っ込む余裕が無いんだよ。

 

 美少女じゃないせいでドン引きする鼻息の荒さで俺に歩み寄るエンタープライズに本気でぶん殴ることを考えて抑え込む。力関係がどうであれ女は殴っちゃいかん、そして後で多分俺が痛い。正直後者が優先なので俺もかなり頭がイカれてきた。

 

「何だと!? そこまで魅力が足りないとは…………流石にダメージが!」

「いやそういうことじゃなくてお前はまずそのイカれた脳味噌どうにかしろって話をしてんだよバカ」

「愛に狂うのは女の性だ!?」

「全女性、いや全世界線の女性に謝らんかこのグレイゾーンゴースト!?」

 

 そろそろよく分からない団体に怒られてもおかしくない会話の路線に持っていくのは辞めて欲しい。

 

「魅力は山程あるけどマイナスポイントが地球の海面積を超えてるって言ってんだよ!?」

「魅力は有るのか…………本気で落ち込みそうだったじゃないか、もう…………」

きゅん、かわいい…………と言うとでも?

 

 もうお前に萌えたり可愛いとか言う機会は殆ど無いと思う。俺だって悲しいさ、でも俺はお前がこうなるまで気づけなかったことの方が数倍悲しいね。

 何とも言えない哀愁を漂わせて落ち込んでしまったエンタープライズは完全放置して、服装を確認する。

 

――結論から言うとこりゃ何だ。太ももは丸見え、肩は露出パラダイス、慣れない所ばかり風通りが良くて落ち着かない。女の格好だからと言うよりエンタープライズ個人のセンスに問題が有るとしか思えない。

 俺個人は好きだけど、嫁入り前の娘がする格好ではないのは事実だ。

 

「あのさ、こんな格好してたら変な男に襲われるぞ? いやお前ら逆に腕ベッキベキに折れるんだけどさ」

「むしろ変な男に襲われたいぐらいだ!」

「は? 久しぶりにキレちまったよ」

 

 まさかその変な男とやらは俺のことじゃないだろうな、いや確認するまでもなく多分俺だな。眼差しだけで主張をするな眼力強くて鬱陶しい。

――そこまで男癖悪いとは思わんがな、加賀ならともかく。

 

「謂れのないディスりを感じて参上したぞ、殺してやろうかお前」

「ああスマンスマン!? 頼むから殺さんでくれ――――――あ」

 

 しまった。こんな早くも加賀にバレるとは。

 

 

 

 

 

「全くお前というやつは私を何だと思っているんだこれで私は一途な女だと思うぞお前を追いかけ早何年という訳でも何でも無いが愛に関しては姉さまに勝るとも劣らぬ深さを持っていると自負しているし実力だってお前の知っての通りだ誰の理想であるために生きてきた覚えもないが少なくともお前が見過ごせない女であるのは全く疑いようがないというのにお前ときたら私の男癖が悪いなどと思っているとは心外だ大変酷く傷つけられた今どき法廷なら完全に私の圧勝でお前から生涯年収の全てを吸い上げてやれるぞだが私はお前を愛する故お前にだけは甘くしてやるつもりで居るからなケッコンで責任を取ってもらう形で許してやらんこともないのだどうだ魅力的な提案だろう既に十分過ぎるぐらいだが加えて私は実に寛大な女でもあるいやもう自分で自分に困るぐらい寛大なものだから今回は誓いの指輪で一万と百二十一歩ぐらい譲って許してやろうと思うのだが姉さまにも言われるのだが私は非常に独占欲が強いらしいやはりケッコンというなら愛をささやきあうぐらいは許されて然るべきであるが私が独占してしまうのもアレだからなおこぼれぐらいは姉さまやエンタープライズにくれてやっても良いからお前は好きに生きていくと良い万事私が全て解決してやろう手段など選ばないとも何時だって私はそうしてきたのだからお前のために倫理観を捨てる程度のことは造作もない朝昼晩の食事から着替えのチョイスにその日のテレビのチャンネル攻略していくゲーム全てを管理してやろう何なら一緒にゲームぐらい付き合ってやろう寝る時間起きる時間食事の時間身だしなみを整える時間着替える時間職務の時間割帰宅からのスケジューリング全て全て全て全て解決してやる何と出来た妻だろうな例えこれが半ば無理矢理なケッコンとはいえお前は私に毎日感謝の気持ちの雨あられとなるだろうかなり興奮するんだがところで誓いの指輪はまだかもう新たな生活に胸が踊って堪らないぞ指揮官いや夫よ!」

「うるせえ」

「なっ!? 聞いていなかったな、この甲斐性なしめ!?」

 

 甲斐性なしとは全然関係ないと思う。後マジで怖いから話の途中で早口妄想ムーブかまして一人で昇天しないで欲しい。何でこんな所で俺は生理的恐怖を覚えなきゃならんのだ馬鹿馬鹿しい。

 最初は申し訳なく話を聞いていたんだが、途中からあまりに気色悪すぎて話に取り合う気力を失ってしまった。コイツも何してるか分かったもんじゃないし責められる理由はない気がしてきたみたいな屁理屈を頭でこね回してる。ぶっちゃけ申し訳なくは思ってる。

 

 キャンキャンやかましく俺の脚にしがみつく加賀は放置して赤城との話に戻る。

 

「それで、エンタープライズになった俺はどうです。ぶっちゃけ無理なんでしょ?」

 

 赤城の口元は既に釣り上がっている、笑おうと必死だが警戒心がスケスケで何だか俺が悪いことをしているようだ――――というか加賀鬱陶しい。脚ごと振って振り払うと思いの外吹っ飛んでしまった。

 

「カハァ!? そういうプレイが好みなのかお前!?」

「いや違う、普通に加減できなかったすまん」

 

 俺は一体どれだけオープンでトチ狂ったドヘンタイだと思われてるんだろうか、ボブは訝しんだ。

 この身体から出る力は当社比でマイボディの三倍は有るようで。加減が難しい、さっきもミスってコップ握りつぶしたし。

 

「例えお前が女になろうとドS真っ盛りだろうと私はついていくぞ!!!!!! 捨てないでくれ!!!!!!」

「はいはい加賀お姉ちゃん、誰も捨てるとか言ってないからねんねしようね~」

 

 よしよししながら思い出したように子守唄を歌っていると、何だか悔しそうに涙を浮かべて歯を食いしばった後に加賀が心地よさげに眠ってしまう。何だかんだ子供みたいなんだよなコイツラ。

 信じられない勢いで眠りこけた加賀を出来るだけ刺激しないようにソファに横たわらせてエンタープライズのチェスターコートをかけておく。風邪引くと大変だからな。

 

 さて、赤城。口元が釣り上がりっぱなしでものっすごい葛藤をしながら言葉を紡ぎ出す。

 

「い、いえ。指揮官様は例えどんな姿でも指揮官様です、見た目に惑わされるなど赤城は決してそこまで愚かでは――――」

「指揮官、赤城をイジメるものじゃないぞ」

 

 あ、エンタープライズが喋った途端にタガが外れて飛んでいった。

 

「中身はエンタープライズ、中身はエンタープライズなのよ赤城――――――!? 無理です!!!!!!」

「うわ、抱きつかないでくれ! 指揮官、どうすれば良いんだ!」

「捕まった時点で負け」

 

 殺生な、とエンタープライズがもがくが抜け出せるわけない。こっち()の方があらゆる身体能力が上だからな、俺がどことなく肩身が狭いのはそれが原因の一端だと言い切っても良い。

 

 中身が女の筈なのに頬を染めるエンタープライズが必死で抵抗している間に俺は執務机に戻る。

――何って仕事だよ。もうこの程度で一々止まってられんだろう、いつもの事なんだし。

 

「指揮官、仕事は良いが慣れるのは何か違うと思うぞ私は」

「俺もそう思うけどお前らが俺をこうしたんだ、しょうがない」

「指揮官様すき!!!!!!!!!!」

 

 一人IQが10ぐらいしか無くなってませんかね。

 適当に今日の仕事をパラパラ―っと捲って確認していると、一つだけ面白いものが有った。

 

「ふー、ええっと。まず――――駆逐艦のお菓子増量の抗議…………ふーん」

 

 オッケー、決めた。立ち上がって愛し合ってる(適当)の二人の横を通り過ぎる、うるさいなコイツラ。

 

「駆逐艦と喋ってくるわ、エンタープライズも来るか?」

「いやそれより赤城をだな」

「もう諦めろ、慣れればその重すぎる愛を受け入れられる筈だ――――――俺は無理だったけど」

 

 絶望したエンタープライズの顔に心底爆笑しながら扉を開けて外へ向かう。自分の絶望した顔ってナンカ笑えるな。

 

 

 

 

 

「エンタープライズ――――突然にどうした」

 

 Z46――――改めフィーゼは俺を見るなりきょとんとした眼で俺に尋ねた。

 慣れてくるとついつい忘れてしまうもので、自分の髪を見て漸く思い出したように説明する。

 

「ああ、何か入れ替わってるんだけど俺が指揮官。こっちの赤城に取り憑かれた超絶イケメンがエンタープライズ」

 

 紹介すると赤城をおぶりながらげっそりした顔付きのエンタープライズが帽子を取って礼をする。

 

「おはよう、フィーゼ。色々有ったが取り敢えず私がエンタープライズだ」

「そういう事も起きるものなのだな、新しき発見だ」

「落ち着くんだ、こんな事は早々起こらない」

 

 すぐさま納得してしまったフィーゼにエンタープライズがしゃがみ込んで説得に入る。一応駆逐艦の前ではマトモなフリをしてるのか…………いや、本当に愛とやらで狂ったんだろうか? だとしたらそのエネルギーはイライラ棒に充てたほうが良いぐらい無駄だと思う。

 

 状況適応の早すぎたフィーゼに何度も根気強く説明した甲斐もあって、ようやくフィーゼも状況の異様さが見えてきたようだった。

 

「不思議な事なのだな、面白い」

「フィーゼちゃんは素で言ってるのかな其れ。俺的にはかなり怖いんだけど」

 

 このカオスな状況を面白いとか思いっきりどっかのにくすべエンジョイ勢とご同輩の気配しかしないんですけど。

 嫌な気配に戦慄して言葉の出ない俺を他所に、話が通じると判断したのかフィーゼはエンタープライズに積極的に話しかける。

 

「それで、指揮官はどうして駆逐艦の講義棟まで?」

「ああ、お菓子増量の抗議を送ったのだろう? それに関しての話のようだぞ」

 

 成る程、と何が納得できたのかは全く分からないがフィーゼは頷く。まさかこの娘まで狂ってるとかそんな事はないと思いたいが…………今の所この狂気にとらわれる謎現象は大型艦でしか見てないはず。はず。

 

 フィーゼちゃんが先導して歩きだすのについていく。エンタープライズは赤城を背負っているのも有って汗ダクダクである、まあ後で手伝ってやるか。

 

「それなら丁度いい。今日は朗読の日だから、駆逐艦という括りならほぼ総勢が揃い踏みだろう」

 

 喋っている内、意外とすぐに件の朗読なるものをしている部屋にたどり着いた。

 

「ふーん、朗読って誰が朗読を――――――」

 

 喋りながら扉を開けると、俺は思わず目の前の景色に固まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ツェッペリン?」

「何? エンタープライズだと?」

 

 いやこっちが聞いてんだよ?

 クーラーガンガンの素晴らしい環境の部屋で一人パイプ椅子に座って本を開くツェッペリン、文字面だけだと破壊の体現者の一時の平穏――――みたいな感じだけど前には駆逐艦いっぱいだからな。

 

 此方を見て完璧に固まってしまったかと思うと、見たこともない速度で本を直した後に俺の前に仁王立ちの真似事をする。

 

「どうした? 変な顔をしているようだが」

「え、あっ。意外だな―って」

「何のことだ????? 我は少しニーチェを読んでいただけだが」

 

 いや弁明不可能ですから。駆逐艦から続き読めよみたいなドギツイ視線がアンタに飛んでるから、状況証拠しか無いから。

 フィーゼは悠々と俺の横を通って必死で取り繕っているツェッペリンのコートの裾を引く。

 

「いつもグラーフが読んでくれているのだ」

「やっぱり?」

「あ、フィーゼ!? 言うんじゃない!」

 

 明らかに素の声に戻ったツェッペリンがフィーゼの肩を掴む。

 

「おい、口外せぬよう言っただろう!? 裏切ったな!?」

「グラーフ、友人として言わせてもらうが善業を他人に隠す理由は何処にある? 誤解されがちなのだからもっとアピール、をするべきだと思ったまでだ」

「違う、違うぞフィーゼ…………だが親切心なのは分かった。責めはしない…………」

 

 二人が何やら話している内にツェッペリンが根負けしたように項垂れてしまった。何があったんだろうな。

 此方にツェッペリンが向き直ったかと思うと、すぐさま俺に冷ややかな視線を向けて誤魔化そうとする。絶対無理だろ。

 

「何だ、本を読んでは悪いか」

「俺は何も言ってないぞ」

「仕方ないだろうキャラが保てなくなったのだ!? 我だって最初からこんな事をするものか!?」

「いや別に責めてないからね俺!?」

 

 そんな目を潤ませるほど知られたくないことだろうか。俺は良いと思うよ、愛嬌を感じる。

 完璧に錯乱していたツェッペリンだが俺の喋り方の違和感に漸く気付いたのだろうか、突然に眉を顰めて俺の顔を至近距離で凝視して考え込む。

 

「…………卿か」

「凄いな、いや分かる奴には分かるんだろうけどさ」

「いや――――観客(読者)に酷く媚びた状況だと思ってな」

 

 誰だよ観客って。

 ツェッペリンが明後日の方向を睨む。

 

「視ているのが貴様だけだと思わぬことだ、深淵を覗くものは――――というであろう?」

「誰に喋ってんのお前」

「何でも無い、話に戻ろうではないか」

 

 変なやつ。

 ツェッペリンが諦めたようにどっかりと椅子に座り込むと、目を閉じた後頬を染めて俺に尋ねてくる。

 

「…………それで、何が欲しい?」

「はい?」

「体か? 体でご奉仕か? エロ同人なのか?」

「発想の飛躍甚だしいぜアンタ!?」

 

 何でいきなりそんなR-18展開を俺が要求するんだよ!? 大体今女だし!?

 今まで疲労困憊で静かだったエンタープライズが突然俺の前にまで走り出てきたと思うと凄まじい剣幕で俺に詰め寄る。

 

「どうせなら私も混ぜてもらおうか」

「え、いややるとは誰も」

「指揮官がそういう人だとは思っていなかった…………だが心配は不要だ。私は白に染まった愚かな駆逐艦、名も無かった昔とは違う。あなたがどれほど肉欲の底に落ちようとも見捨てるような薄情な真似はしないだろう――――おそらく、たぶん、きっと、めいびー」

「フィーゼちゃんまで!?」

 

 というかワンチャン見捨てられるんだねそりゃそうだわ!?

 顔を真赤にしてさあ来いの姿勢のツェッペリン、鼻息を荒くして既に俺の腰に手を回してるタダの変態(♂)エンタープライズ、無表情ながらツェッペリンのコートの後ろに隠れて俺に確実なダメージを与えてくるフィーゼ、そして「朗読はよ」の大合唱が始まる駆逐陣。

 

 修羅の国である。

 

「俺はそんな事をするとは一言も」

「心配はない」

 

 耳元で囁くようなエンタープライズの声。

 まずいコレガチだ逃げなきゃ。俺逃げなきゃ…………。何でこんな時ばかり力が入らんのだ不便な体め!?

 

 くう、何で動かねえんだ怖い怖い怖い怖い!?

 

「この日の為に仕込みは済ませてあるからな…………」

「ひゃっ!?――――――何だ今の声…………

 

 お、おかしいな。俺男だぞ、何でこんな状況でドキドキしてるんだ? まさか身体に性別が引っ張られてきてるのかコレ。

 う、うわ耳に息が。熱い、顔が熱い!?

 

「身体に力が入っているぞ? 大丈夫だ、激しいのは私も嫌いだからな…………」

「いーやー!!!!!!!!! 私まだ男のままで居たい――――――ッ!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドスドスドス…………ドン!

ドドドドドドドドドドドドド!

 

 

 

 

「エンタープライズは此処かぁ!?」

「――――――――見つけたぞ、尋常に死ぬが良いエンタープライズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!」

 

 扉が突然蹴破られた。この日ほどヤツに感謝した日はない――――――そう、高雄である。




豆知識なんですけど、ドイツでは朗読って凄いポピュラーなものらしいですよ。有名俳優の朗読CDとか結構あるそうです。
そして今回は特殊タグがどれだけマンガ表現に耐えれるのか挑戦した疑惑が有る、後半とか誤字報告で見たら分かるけど軽いプログラム言語みたいになってる

ネタ切れというか天丼が増えてくるので手段を選ばぬカサ増しする。エンタープライズが下品だったけど忘れろ、偶(!?)には羽目を外さないと壊れる(!?)。
フィーゼちゃんのキャラストすき。。。。。。大事にしてる。

クオリティというかヤバさを持続したいなら1週間に一回も厳しい…………。
エンタープライズの誕生日(進水日)が近いので更新しばらくしません。

7の続きは何話か挟んでからだと思う。だって頭おかしすぎて俺がついてこれねえんだもん。


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ex.怪物達の夜

怪文書流行の謎のファクター演じたので失踪します、有難うございました。
マシュマロで匿名の「面白い」ってコメント有ったので更新です。一瞬エタりそうだったから助かった。こういうのはマジで助かる。

文字数が普段と比べ物にならないので注意。無理に読む必要がある回ではない。このexってex海域のアレだと思う。特に偶々ランキングに入ってるから見に来た人は他話へゴー、貴方にはまだ早すぎる狂気の世界だ。

これよりヤバいの作った人はクソトカゲ超えたSCPみたいなものだと思った方がいい。つまり「やり過ぎ」。


あんまりにもあんまりなのでリンク貼っとく。無理せずに挑戦していって欲しい、これは高難易度の趣味領域みたいなものだ。
chapter1
chapter2
chapter3
chapter4
epilogue


「はいという訳で冒頭から俺ですら句読点がないのはぶっちゃけ読者の皆さんも引いてるだろうし俺も引いてるし作者もどうせ「これは文字数が一話だけオーバーフローして爆発するな」とか思ってるんだろうけどそういう回なのでそういう事ばっかりしていきたいと思いますのでついてこい以上」

 

 という訳でやってまいりました夜の尋問大会。司会は指揮官こと俺、解説はツェッペリンさん、尋問官は何を血迷ったのかエンタープライズ大先生でお送りしております。メンツにミスしか感じない。

 

 ツェッペリンが口を忙しなく動かして苦言を呈する。

 

「ところでこの句読点を打てなくなる謎現象は何だ非常に読みにくいのだが」

「いや俺も説明はできないけどフィールド魔法みたいなものだと思ったほうが良いんじゃないだろうかというか俺も正直意味はよく分からん」

 

 何だこれはクソほど読みにくいぞ。神様は何考えてんだよバカなのか?

 さてさて今回のフィールドは静かになった食堂になっております。最近ちょっと調べたんだけど執務室の周りって屋根裏ネットワークが凄いんだよね。アレじゃ機密保持性に問題しか無いなあ――――ということで無人の夜中の食堂というわけだ。普通逆だよね、まあウチだし仕方ないかあ! 是非もないよネ!

 

 さて、映像に戻ろう。最初はサン・ルイ。コイツも『アレ』やるの? ヤバすぎない?

 

『さて、サン・ルイ。あなたは何故此処に呼ばれているか――――心当たりは有るか?』

 

 手を組んで神妙な顔付きのエンタープライズ。その眼圧はいつものオフザケからは想像のつかない鷹のような鋭いものだ。いつもそういう感じで頼む。

 

 サン・ルイは静かに佇んでエンタープライズの顔を見返すが、冷静に考えると「せんせー、私りゆうぜんぜんわかりません」っていう幼女と同じムーブである。つまりアイツ分かってない、重症過ぎる。

 顔が良いとアホなことしてても何か意味ありげに見えるからイカンな。

 

『…………分からないか。ではハッキリ言おう』

 

 エンタープライズがすぅっと息を吸う。

 

『押し付けがましい倫理観で矯正しようとするのを辞めろ! 非常に迷惑だ!』

「うわアイツドン引きするぐらいハッキリ言ったな!?」

「我もびっくり」

 

 コメンテーターも司会も使い物にならなくなるサバサバ具合である。いやド正論だから困るのだが。

 サン・ルイは何と、とでも言わんばかりに口をあんぐり開けて固まっている。いやそりゃそうでしょうよ、俺も押し付けがましいと思う。

 

『何だと!?』

『いや正直そこまで驚くポイントではない』

「エンタープライズがマトモすぎて頭おかしくなりそう」

「我も我も」

 

 アンタはもうおかしくなってるよ。というか何だその大学生みたいなノリでついてくる感じは。

 エンタープライズ大先生畳み掛けます! 机を叩いて威嚇行動だぁーッ!

 

『そもそもあなたの言う義とは何だ、高雄が私に殴りかかる理由と同じくらい分からないのだが!?』

「「いやアッチの方が不可解だと思う」」

 

 思わずハモってしまった。

 コメンテーターと司会が完璧困惑する会話の中、サン・ルイは顔を手で覆って邪気眼を発現し始める。ナンナのアンタ。

 

『フッ――――聞いてしまったなそれを聞きたいなら教えてやろう正直な所真面目にやってしまってはこの小説の完結まで連なりかねないからぎりぎり許されるレベルで説明しようじゃないかまず義とはなんぞやそう正しいことだ正しいこととは何だ間違っていないことだこの点この鎮守府は最高にイカれゲフンゲフンクレイジーだからな疑いの余地なく間違っている私の使命というのはズバリこの間違ったこの環境を鎮守府単位で矯正することでありそのためには多少の暴力理不尽外道行為は許される次元に有ると考えているのだ例えば思想否定に走るのもそうだなその一環だ何せまずエンタープライズあなたは指揮官を愛しているなどと嘯くが全く相手側の気持ちに立っていないだろうこれはとてもよろしくない』

『今あなたは私の立場になって喋っていないと思うが』

「「全く以て正論である」」

『…………それは良いが私が思うに義というものは全くの悪無しには成立しないものだと思うのだ例えばアン○ンマンはばい○んまんも居ないのに湧いて出てきて知らない通りすがりの一般人をあんぱんちとか言いながらぶち殴るだろうかこれは違うなつまり悪が必要なのだ悪を定義して初めて正義が成立する正直私の中でもこのフザケタマッチポンプはどうなのだとは思わなくはないが構図は簡単だろう何せあなた達を悪と定義することで強制的であれ暴力的であれ矯正を買って出る私というのは少なくとも私の中では疑いようもなく正義なのだああ皆まで言うなそんなものは正義ではないと言いたいのだろう知っているともそもそも正義など個々人が勝手に定義するものでしかない以上それを指摘するのは時間の無駄であるし正義を振りかざすのはただの暴力だなどという言い分ももちろん私は理解しているつもりだだが知ったことではないのだ私は私の中で私が定義した義人で在りたいという最終目標の為もっと要約するに個人的な欲求に立って矯正を試みているのだからなあなた達は何か勘違いしているようだが私は使命だ何だと言いながら自分を正当化して悦に浸ることを目的としている究極的で最低なナルシストなんだ残念だったなだからエンタープライズがどれだけ正論で私をまるでレ○プでもするようにぶち殴り続けようと私は変わらないし何よりそれを矯正する事で私の中で私は正義となるのだ残念だったな私は決して理解しないまま無闇に傍若無人な振る舞いをしているのではないむしろ理解した上で積極的に肯定して自分の欲を満たすために義だの何だのと言っているだけなのだハハハハハハハハ!!!!!!!!

「「やべえよ…………やべえよ……」」

『嗚呼――――――私は狂える程に【義人】だッ! そうは思わないかエンタープライズ!?』

 

 狂った目つきで己の定義というか、そんな感じのイカれた美学を語るサン・ルイに、思わず俺とツェッペリンは抱き合って震えを抑え合う関係となったのである。

 しかも理論が無敵すぎて勝てねえ、何だよあのバケモノは…………。セリュー・ユビ○タスかな…………!?

 

 

 

chapter1 fin

 

 

 

「え、えー…………サン・ルイ選手が完璧イカれたラスボスみたいな理論を語って倒れたので次の挑戦者になります。ぶっちゃけ俺はもう帰りたいよ…………

「ワレモソウオモウ」

 

 完璧にツェッペリンが壊れてしまった。治す人員も居ないので放置である。

 次の選手は…………此処から愛宕ですか。もうお腹いっぱいなんですけど…………とは思うがエンタープライズがげっそりしながらアイコンタクトで

 

【まだだ! まだ終わらんよ!】

 

 とか連合側(ユニオン)の癖に赤い彗星みたいな事を言うので仕方なく尊重して続行である。

 愛宕は座る所作も落ち着いていて何だか安心感を与えてくれるがアレは罠だ。

 

 エンタープライズが顔を引き締め直して尋問に入る。

 

『さて。では愛宕、あなたは何故呼ばれたと思う?』

 

 愛宕は不思議な顔付きで首を傾げる。コレは罠だ、罠だぞ…………決して色っぽいエロ姉ちゃんとか思ってはいけない。あの人は獣だ、性的とかじゃなくて生命全般を貪る生の捕食者だ。

 

『えーっと、よく分からないわね?』

 

 とぼけるような愛宕の困り顔に、エンタープライズは心底戦慄したように顔を青くする。

 

 何処からともなく取り出したファイルをすぐさま決め打ち、ピタリと開く。恐らく愛宕のページなのだろうか、冷や汗を流してエンタープライズが読み上げる。

 

『…………まず、高雄の複数回監禁。次に加賀が怪電波…………? まあこれによる複数回気絶。赤城と結託して指揮官の写真で鎮守府財政を傾けること数知れず――――――――あなたがフィクサーだ、認めよう。サイアクだ』

「凄いな、エンタープライズがあんなゲンナリした顔で「サイアク」って言い切ってる」

「やべーやつ、ばかりだからな。仕方あるまい」

 

 いやアンタが言えねえからな?

 愛宕はあらあら~、とすぐさまファイルをエンタープライズからひょいと奪い取る。手付きこそ女性らしいものだったが流石重桜の重巡というべきか、エンタープライズが対応できない速度で奪い取ってる時点で相当おかしい。

 

 ニコニコとした愛宕がペンを取り出してファイルから紙を取り出す。

 

『あ、ちょっと待て――――』

『心配ないわエンタープライズ…………これ、ちょっと処理が甘いから書き足すだけよ』

「もっとやってるらしいけどどう思いますかね、ツェッペリンさん」

「正直我マトモな方では?」

「言えてる」

 

 キュッキュッとどんどん書き足されること数分。愛宕がいつもどおりの表情でペンをしまうなり、エンタープライズにファイルを返す。

 刹那、エンタープライズの顔が固まる。何があったんだ!?

 

――俺達がしばらく固唾をのんで見守っていると、コールタールのような淀み切った瞳のエンタープライズが機械のように呟き出す。

 

『…………赤城への媚薬密輸。回数不明』

「!?」

『屋根裏工事…………同じく回数不明』

「「!?!?!?!?」」

『その他同性への誘惑行為、指揮官の部屋の合鍵販売、諸々………………全て、回数不明』

「「!?!?!?!?!?!?!?!?!?」」

 

 全部黒幕アンタかよ。これは引くわ、ただでさえ引いてるのにもっと引いたわ。

 ツェッペリンが震えすぎてドリル持って工事してるみたいになってる、これ後で身体に響きそうだから止めたいけど俺の力じゃ俺まで震えるだけだ。

 

 エンタープライズがもう勘弁してくれ、という顔付きで顔の前で手を組んで尋ねる。

 

『い、一応聞くが…………何故、こんな事を?』

 

 愛宕の眼がハートに光った気がした。逃げていい? あ、無理ですかソウデスカジャアシニマスネ。

 

『簡単じゃない――――――愛よ私は愛を持つ全ての艦の願いを叶えてあげたいのだってそうでしょう片思い両思いそんな事に意味はないわ其処に愛だの恋だのは確かに生まれてしまっているのだもの相手を知りたい触れたい言葉を交わしたい一緒に出かけたいスケジュール管理したい束縛したい監禁したい自分だけのものにしたいその欲求は愛の形として私オーケーなものだと思うタイプなの赤城なんて最高よ指揮官の下着を舐めたいだなんて背徳的な行為の為にわざわざ体裁も構わず私に相談してきてくれたその勇気と愛の深さには相応のご褒美がなくちゃいけないわ媚薬だってそうよ屋根裏は加賀がどうしても後輩を監視したい指揮官をずっと見ていたいと言うからやってあげたのだって見るだけなら誰も損はしないでしょう別に見られていることに悟られなければむしろ加賀のメリットしか無いわそれはやってあげるしか無いじゃない写真の件は誤解しないで欲しいのだけれど決してお金に眼が眩んだ訳じゃないのただそれを欲するほどに『愛』に満ちた艦が沢山居て足りないって言われたらお姉さん頑張っちゃうじゃないそれで偶々財政が傾くことになったのは勿論浅慮であると恥じるべきであると思うけどやっぱり私はそれ以外に恥じるところなんて無いと思うわ加賀を言葉責めにしたのは何というか正直一瞬性的に見てしまう時があるからなのだけどそれは置いておいて高雄ちゃんの監禁はそれこそ愛よだってあれ程に獣のように強靭な力を持った高雄ちゃんを押さえつけることが出来たならこれ程快楽に浸れる行為はないものいや結局全て高雄ちゃんは自力で脱出してしまったからこんな事を語っても意味はないのだけれどエンタープライズにだって愛は有るでしょう愛の形はとやかく言えないと思うでしょう愛って素晴らしいと思うでしょうだから叶えてあげたのよエンタープライズは人の恋路を愛を応援するただの女である私を責める権利なんて全く無いと断言しても良いし何より望むのならエンタープライズにだって私は手を貸すわ大事なことは愛の形ではなくてその愛がどれだけ深いのか相手がそれを耐えられるものなのかなのよ耐えられないなら如何なる形であれ愛してしまう側に対して最低限の配慮ぐらいしてあげるべきよ――――――ねえ、そう思わない? 指揮官?

「「ヒエッ、こっち見ないでぇ…………ッ!」」

 

 何で超小型監視カメラの場所に気付いてるんだよ、怖いよ。

 

「だってこの鎮守府の売買ルートってもう大体網羅してるんだもの、買っている物だって分かっちゃうわ」

「なあこの鎮守府大丈夫なのか!? ラスボス系の女がいっぱいだぞ!?」

「知ーるーかーッ! 卿が何とかしろ! ええい今日はフィーゼに添い寝してもらわねば眠れんぞ!?」

 

 

 

chapter2 fin

 

 

 

「もう帰りたい、帰りたいよぉエンタープライズゥ……………助けてぇ…………」

 

 日程はまだ残っている、と言わんばかりの視線に心がすり減っていく。外道、鬼、クズ、ヘンタイ、ストーカー、グレイゾーンゴースト!

 次の挑戦者は………………ああ、そうだったな。

 

『さてと、我も尋問対象だったな…………とはいえ、卿には既に筒抜けであろうに』

「コメンテーターまで挑戦する、それが今回の企画となっております」

 

 まあお前も罪状は山程あるからな。一種類なのがコイツの異常性だろう、異常中の異常だと言える。

 少しばかりさっきまでシンパシーを感じていたせいか、それほどこれから始まる凄惨な舞台に対して俺の心は真夜中の湖のように静かなものだった。

 

 エンタープライズも気持ち落ち着きを取り戻しているように見える、まあギリギリ一般人な所がある相手だからな。

 

『さて…………艦隊でよく会う同僚に尋問、というのもアレだが仕事だ。やらせてもらうぞ、ツェッペリン』

『好きにするが良い、我は逃げる理由も隠れる意味も無い故な』

 

 腕を組むツェッペリンにファイルを見ながら帽子をかぶり直すエンタープライズ、本物の尋問の空気感のようなものがほんのり漂いだした。

 最初に切り出したのはエンタープライズだ。

 

『…………とはいえツェッペリンがやったのはたった一つだ』

『ああ、そうだな』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『『「対立煽り」』』

 

 笑えるよな、でもマジだよ。

 ヒッパーにしばかれる原因になったり、赤城と加賀が俺を取り合うとかいう謎展開になったり、高雄とエンタープライズが本格的に戦争を起こしそうになったり、この鎮守府で起きかけた大規模な戦争というのは全て。須らく。完璧に。余す所なく。

 

 眼の前のエンジョイ勢の仕業なのだ。

 

『さて、端的に言おう。何故だ?』

 

 ツェッペリンがエンタープライズの質問の何がおかしいのか、時間も弁えない大笑いをする。

――あ、忘れてた。練習したんだったな。

 

『――――――何だかんだと聞かれたら!』

『!?』

「応えてあげるが世の情け!」

『何故指揮官まで!?』

 

 食堂のスピーカーだけオンにして叫ぶ。

 

『世界を破壊で満たす為!』

「世界の平和を壊す為!」

『破壊と憎悪の限りを尽くす!』

「ラブリーチャーミーな黒幕役!」

『分かった分かった。練習したみたいだから後で聞く、まずは要件から頼む』

 

 チェッ。つまんねえの、ツェッペリンと舌打ちする。

 ツェッペリンがあからさまに不機嫌になって椅子に座り直すと、愉悦に口元を歪める。

 

『――――では、説明してやろう。残念だが我はアレ(愛宕)コレ(サン・ルイ)のように分からぬ話し方はせぬがな』

『ではサン・ルイの冒頭でも踏襲しよう、まず破壊とは何だ? 物理的な欠損損傷の類だろうか? 心に与える壊滅的な傷の類だろうか? 集団を無差別に巻き込む衝動だろうか? 違う、これは我の言う破壊ではない』

『破壊とは即ち混沌なのだ。壊れゆくものには混沌が有る、これに例外など無い』

『消えゆく生命には計り知れない未観測領域――――混沌が有る』

『壊れゆく建物には乱雑とした歴史――――混沌が有る』

『食い散らす食物には生命の在り様――――やはり、混沌が有る。そう、破壊には混沌が必要なのだ』

『我が直接手を下し破壊する、それは海域でやれば良いことだ。鎮守府で我が求めるのは自立する破壊の連鎖――――即ち混沌の渦だ』

『心のぶつかり合いは其れに最も近い。何せ一度ぶつければ自発的にぶつかりやすくなる性質が有る、これはまさしく我の求めるものだ、愛するものだ、我の存在意義なのだ』

『故に繰り返した』

『衝突を』

『対立を』

『決別を』

『混沌を』

『破壊を』

『卿も分かっているはずだ、我の破壊衝動は残念ながら笑い事で済ませられるものでもなく――――――確かに存在するもの。『大マジなやつ』であると』

『故に我は恥じることなど無い。そう設計され、そう生きているのみ』

『むしろこの程度で済んでいることに卿らは胸を撫で下ろし、我の機嫌の良さに驚くべきなのだ――――――――――本気になれば、この鎮守府の危ういバランス如きはとうに崩しているのだからな

『これで我は此処が好きなのだよ――――――それを踏まえ、意見は有るか?』

『「ア、イエ。マジなやつにまで文句はないです」』

『だろう? では、次に移るが良い』

 

 そう言ってツェッペリンが立ち上がって去っていってしまった。

 当小説最大のイレギュラー要因だけ有って、やりたい放題だなあの人…………。シリアスなのかふざけてんのかわっかんねえだよなあ…………偶にアレだけ言っておいて適当言ってる時有るし

 放置が安定である。

 

 

 

chapter3 fin

 

 

 

『指揮官様が見ていらっしゃるのですか!?』

「あー、この人最後に入れたのミスだわ…………」

「卿はバカだ」

「分かる」

 

 ツェッペリンが肩を叩いて不憫そうな眼で俺のことを見る。それは酷いぞ。

 という訳でラストは赤城。ストッパー役に加賀がついているが役に立つのか甚だ不安である。むしろストッパー役のストッパー役が必要な気がするしそのストッパー役のストッパー役のストッパー役がだな。

 

 加賀が溜息を付きながら息を巻く赤城の肩を持って自分の膝に座らせ――――――膝に?

 まあ良いや。

 

『もう何というか…………赤城は罪状とか、要らないよな?』

『そうだな、此処に居る全員が理解している』

「疑いようもない共通認識」

「確かにそうだな――――――貴様も、此処を見ているなら嫌というほど知っているだろう?」

 

 誰に喋ってるんだツェッペリン、まあ良いか。俺適当すぎるな…………。

 しかし実際全員罪状について一々論う意味が全くもってないので此処はスルーするのが正解だろう。

 

 赤城を抑えつけている加賀が代わりに応答する。

 

『それで? 何をさせたいのだ、怪文書か?』

「よくもまあこうやってメタいことばっか言うよな俺達」

「まあそういう作風だからな、というか卿が一番メタいではないか」

 

 返答すらメタくてお話にならん。取り敢えず本題に戻ろう。

 画面に目線を戻すと、そこには頭を抱えながら指をクルクルと振って悩ましげに提案するエンタープライズの姿。

 

『あー、それでだな。まあ一応、赤城に弁明的な説明的な何だろうなアレ、アレをしてもらいたい』

「ダメだ赤城と絡むとエンタープライズが急に大雑把になっちゃう」

 

 一体何故なのか。我々は真相を調査するべくエジプトへ向かい、ません。

 ツェッペリンに意見を求めようと視線を送ってみるが、「知るか」と言わんばかりの冷ややかな態度で返されてしまってお話になりません。俺実はこの職場で虐められているのでは?

 

 エンタープライズが既に頭を抱えているのなど何処吹く風、赤城が明らかにノーモーションで畳み掛ける。

――正直、もう飽きてきた。

 赤城がうんうんと高速あかべこみたいに頷く、首の関節外れそう。

 

『成る程、本家に頼むのは道理ですね分かりますわ』

「本家ってなんだよ」

「本家なのだろう」

 

 何か一周(リメイク)前ぐらいの世界線で確かに第一人者だったような。

 ミスって削除、リメイク投稿、まるで再評価受け直し工作…………うっ、頭が!

 

 エンタープライズが苦笑いというか最早単に口が半開きのような状態で止める。

 

『待て、そうやって取り敢えず私の精神を削らないでくれ。いやもうどうせそうなるのは分かっているからお決まりの流れぐらいさせてくれ』

「エンタープライズ、何時も通りの顔だけど明らかに錯乱してるぞアレ」

「だな」

 

 何だよお決まりの流れって、アレはスペシウム光線か何かなの? エネルギー切れ直前に撃つのがお約束なの?

 ツェッペリンも流石に「アレを恒例化するな…………」と引き攣った笑いを浮かべている。ホラホラ、笑顔忘れてるゾ☆

 

 アレこそ脳の言語中枢を破壊するという意味では最高に『破壊』である気がしなくもないのだが、ツェッペリン的には何か違うのだろうか。まあコイツ自分がやられると急に被害者ヅラしだす辺り、被害者にはなりたくないのかもしれないな。

 中々終わってるぞお前。

 

『とはいえ赤城もいつも必死なものだ。何故部屋に入るという段階まで及ぶ? 私は写真で済ませているが』

「ちょっと待てアイツラは俺で一体何を済ましているんだ!?」

 

 今すぐ追求してやろうかと息巻いて立ち上がると、ツェッペリンが上から肩を押さえつけて無理矢理座らせる。

 

「おい、離せ! 俺は貞操の危機を感じてるんだ!?」

「分かっておる、何も心配することはない」

 

 普段からは想像もつかない母のような微笑に思わず俺も体の力が抜ける。

 

「我はタグを護る者。決して要らぬ追求を許し、警告タグを増やすような愚行はさせぬとも」

「ええいどかんかエンジョイ勢! アレはダメだろアレは!?」

 

 ある程度は「まあストレス発散には良いだろうし」、ぐらいで済ましてたが本格的に生理的な恐怖を覚える内容になってきてるんだが!?

 ツェッペリンの力は凄まじくて俺では肩を動かすことも敵わない。クソぉ、今こそアイツ(エンタープライズ)と入れ替わりたい!

 

 俺が不在のまま会話は進んでいく。

 

『それは保守的というものよ、お前だってどうせしたくないとは答えられないくせに』

『……………………まあそれは言えてるな!!!!!!!

「アアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!! オレァクサムヲムッコロス………………ッ!!!!」

「落ち着け! 落ち着けと言っているのだ対策を練るのだ! 我も手伝おう、今はステイだ、耐える時なのだぞ!?」

「ヅェベリィンザァーン!! ナズェミテルンデイス!!」

「オンドゥル語は各界隈からひんしゅくを買うぞ、モウヤメルンダ!?」

 

 これが落ち着いてられるか!?

 いや良いさ、皆そんなもんだって俺だって分かってる。現実なんて非情なもんさ、俺だって大人だそれぐらい慣れたつもりだったとも。

 

――でもさ…………でもさ…………!

 

「一時期ガチ恋してた相手がそんなんだと俺もこうなるに決まってるだろうが――――――――ッ!!!!!!」

「ああ…………エンタープライズは体裁だけは取り繕うのが上手いからな、そうなることもあろう」

 

 チクショウ…………チクショウ…………チクショウ…………。

 

 俺の怒涛の叫びは外にまで聞こえてきたのだろうか、三人が一斉にモニター室の方を向く。

 

『クソ…………私にはチャンスが有ったのか!?』

『待てエンタープライズ。赤城がお前を眼だけで殺す勢いで睨んでいる』

 

 ヒエッ、とエンタープライズの情けない声。お前って絶対石川由依が一生出さなくていい声を沢山出すよな。そろそろイメージダウンで訴えが来そう。

 

 赤城の顔は――――何というか、表現が不可能だった。クトルゥフ言語的なアレでいいなら語ろうと思うが要するに「いあ! いあ!」みたいな言語理解不能なアレになる顔をしている。

 宇宙的恐怖にたどり着いてしまったようだ。

 

『ふふ……………ふふふ、ははは――――――ハハハハハハハハハハハハハハゲホッゴホッ!』

「咳き込んでるじゃん。無理するなよ…………」

『コホッ…………心配は無用ですわ、指揮官様ぁ』

 

 ナズェコッチガミエテルンデイス!? アクァグ゙サァン!?

 震えた赤城の八尺様に似た認識崩壊のオーラに加賀がすぐさま飛び退く、いやストッパー仕事しろ。

 

 エンタープライズにくわりと机越しに距離数センチまで迫る。

 

『足りない、お前には愛に応える力がないわエンタープライズ!?』

『ど、どういうことだ――――あっ、今のフラグかだれか助けてくれ!?』

「もう手遅れだ、賽は投げられたぞエンタープライズ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『指揮官様を愛するというのに愛されていることすら分からないなどというのは愚鈍なのよ愚か惨め残虐嗜虐的まさしく其れなのよ良いかしら指揮官様を愛するとは即ち全てを許容することよ分かるかしらつまり全てを理解することも必要なのよ好きな味付け好きな顔のタイプ好きな番組好きな小説悉くを理解し尚許容することなのよお前には圧倒的に其れが足りていないのよ黙って聞いていればさも私が狂人のように話が進んでいるけれど何がおかしいのかしらそれからして質問事項なのよ私はただ指揮官様の朝を昼を夜を眠った後すらも知り尽くしその情報すら貪り尽くし愛し尽くしたいだけなの愛が重いだなんて関係ないわだってそれすら許されるほど私は指揮官様にとっての完璧であろうと努力できるのですもの望まれれば呼吸の間隔だって命令されても応えられる自信があるわそれに比べて愛された側だったお前は何よ必死で下らぬ体裁で自己を隠しそれで愛されて一体意味が分からないわお前では指揮官様を何一つ満たすことが出来ないのはもとより見えていると思わないかしら良いかしら愛するというのはそもそも別段難しいことでも形の決まってものでもないのよ何せ私がそう思えばそれが愛の形なのだもの指揮官様だって私を理解してくださっているわ』

「いや理解はしていないんだが」

「放っておけ、もうアレは止まらん」

『お前は指揮官様の好きだと言える箇所を幾つ挙げられるのかしら私は求める限りそしてこの鼓動が続くまで言える自信があるわもちろんこの愛を無闇に指揮官様にぶつけても無駄なことぐらい私だって当然理解していますですが私に応えられるからこそ私は見定めたのであり少なくともこの惑星に於いて指揮官様ほど愛することの出来る殿方など居ないわこれだけ言わせてもらって今一度尋ねたいと思うのだけれどお前本当に指揮官様が好きなのかしら正直押しが弱くてそうは見えないわ!?

「アンタの押しが強すぎるだけなんだよなあ…………」

「われはねるからあとヨロシク」

『お前に指揮官の筆跡が鑑定できるかしら指紋が分かるかしら声紋が判定できるのかしら私は出来るわだって愛しているのだもの指揮官様に関する情報が脳から一秒たりとも消えてくれないのだもの意図してそうしたわけじゃないわ気づいたらこうだったのよああ愛とは残酷なものよエンタープライズだって愛するほどに相手のことしか見えなくて気づけなくて触れたくなくて愛せなくて壊したくなくて憎悪できなくなるわけれどどれほど夢中になろうと指揮官様は指揮官様でしか無く私はただただ短く感じていく時間を苦しむことばかりが増えていくのよけれどこれは素晴らしいことよ私は『指揮官様で』苦しめるのだもの苦痛すら誰かに染まる感覚というのはもう言葉に出来ない快楽よ恐らく狂ったように快楽物質が脳を駆け巡っているに違いないわこの幸福をお前は知らない知ることもない知ることが出来ないだと言うのにけれどおかしなことに愛されたなのに答えることも出来ないお前に一体指揮官様を手にできる権利が何処に有るのよ私には一生分からないわ愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して愛して最後に漸く一度愛されてそれで満足できてしまう私よりお前が一体どこが良いのか――――――全く、全くわからないのよ!』

「アンタのそういう所が俺は無理なんだよ」

 

 

 

 

chapter4 fin

 

 

 

 

「凄まじい情報量だった…………後、赤城さんには暫く近寄りたくないという結論が出た」

「それは――――――良かったな…………」

 

 自信喪失と言うか心神喪失と言うか自己消失してしまったエンタープライズがうずくまって答える。

 誰も居なくなった食堂でへたり込むエンタープライズの背中を擦ってやる。アレ、映像とか文字より眼の前で言われた時のダメージと精神汚染が凄いものだと思うよ、俺。

 

「お疲れ様、エンタープライズ。何というか、罰ゲームの一環だったが本当に悪かったよ。まさかアレほどメンツが全員狂ってるとは…………」

「そうだな、私が可愛く見えないか…………?」

「ああ、別にそれは感じなかったけど」

 

 皆おかしい、振り切れてるから評価が付けれませんでしたね。

 エンタープライズが尚更深く両手に顔を埋めこむ、いやでも変な嘘言ってぬか喜びさせるほうが俺の中では駄目だと思うから…………。

 

「…………なあ、指揮官」

「何だね」

「少し、話に付き合ってくれ」

 

 まあそれぐらいなら。

 

「良いよ」

「ありがとう…………」

 

――――――待て、このカンジはもしかしなくても? いやまさかまさか、もう四連発だぞ、文字数考えたら作者だって流石にしたくないだろうっていうか俺ならしないというか。

 

 誰か、応えてくれ。

 

「赤城に言われて考え始めたのだがそもそも私は何故指揮官が好きなどという結論が出たかと言うと実のところこれは着任直後まで遡ることになるのだ初めて会ったときからあなたは今と大層変わらない態度で私に接していたのはもちろん言うまでもないことだと思うのだがあの頃の私というやつはとにかく今より自己犠牲が酷いらしくてな「自分の為」ではなくて「知らない誰かの為」を願って戦っていたそれはもちろん真っ当な神経が保つような行為ではないのはあなたも想像がつくはずだ結果から言うと私は戦うだけの機械のような精神状態に”なったつもり”で日々を過ごしていたわけだがいつもあなただけがそれを邪魔してきていた何だったろうかふと言った「素直で誠実に生きるのが願いだ」という言葉をあなたは本気で尊重してくれたからだろうな摩耗する精神にはむしろこれが致命傷となってしまっていたというか心もつ生物である自分が認められないというかそういう何とも言えないセンチメンタルであなたとは少し距離を置いていたのには気づいていたのだろうかいやそれは聞くまい過去は過去だ私は今に生きているのだからなそれを誤魔化しながらひたすら戦ったよ身体も心も半ば無理矢理に痛めつけて傷だらけにして自分は機械なんだと言い聞かせるために感覚が麻痺できるようにひたすら戦っていただというのに毎日毎日めげないあなたに段々と私も頭の容量が取られ始めてしまってな最初は考えまい考えまいとしていたのだが本当に一日たりとも欠かさず私と会話をして「心」に触れてくるあなたを私は無視できなくなっていた触れる度に自分が何であるかを再認識してそれに苛まされて自分を否定して周りすら否定しそうになってハッキリ言って散々だったなどうやら顔や態度には出ない性格らしくそれだけは非常に助かったが恐らくあなたが思う以上に昔の私は頭がぐちゃぐちゃで傷だらけで荒んでいたのだと思うそれでとうとうガタが来て一度だけ私が半身を持っていかれる怪我をしたことがあっただろうアレは多分私の独断専行だった気がするのだが正直な所あんな事をした瞬間の気持ちとしては「死にたい」だった苦しむが逃げられず認められないが捨てられない環境に気が狂っていたのだろうなだから目が覚めた直後の私の放心状態は決してショックではなく失望と絶望だったなにせ「死のうとしても死ねない」事が分かってしまったからなそんなときですらあなたはまだ声を掛けていた正直正気を疑ったよ最初の数日なんか目すら合わせていなかったというのにまだ日々の些細なことやニュースを報告してはりんごをキレイに剥いてそのまま置いていく何度思い出してもアレは不思議に映ってしまうよ実はあなたがアレを1週間続けるまで一切食べて無くてな捨てられていたんだこれは申し訳ないがそれでその一週間が過ぎた辺りで確かあなたに私は問うた筈だ「私は何なのか」とこれは半分意地悪で自分を苦しめる相手にそれ以上の矛盾を孕んだ問題でも与えて苦しめてやろうと思ったのだがこれは愚直と言うべきが純粋というべきかあなたの回答は「エンタープライズ」だった訳だこれには流石に笑えてきてな確か大笑いをした気がするがこれはどちらかと言えば吹っ切りの大笑いだった何というか悩みが大体どうでも良くなって戦う理由を無理に作るのも馬鹿らしくなってきてな私は単純に「この鎮守府に居たい」という理由に切り替えることにしたんだ実際それで上手く行ったしあなたも知っての通り私の成績というのは目に見えて向上した当たり前だ何せ一番のストレス源が消えたのだからだが次に問題が発生した「鎮守府に居たい」ではない願望が発生し始めてないよいよこれには私は対処法が分からずただただ悶々とする日々だったよ何せコレに関しては本当に縁遠いものでな今までではじめての感情というやつだやはりまた体調を崩すなりあなたが心配し始めるのだが此処でそのあなたが「心地いい」という感覚に気づいてしまったんだああ最低な女ではないだろうかだって「心配されているのが嬉しい」等ととても当人に言えたものではないそこでようやく私は「鎮守府が好き」である以上に「あなたを愛している」という結論に至ったのだ全く遅すぎるし赤城の言う通り私のこれはままごとにも近い感情なのは分かっているが私が本気である以上はこれは私の中ではどうしようもなく『本物』で誰と比べて卑下するものでも鼻にかけるものでもないんだ――――――――だから、それでも私はあなたを愛している。断言しよう、故にケッコンしてくれ

「 嫌 だ け ど ? 」




よく読み切ったな、飴ちゃんあげるよ。
Mery調べだと「本文:怪文書=14000:5500」です。14000文字の内5500文字が怪文書とか凄えな。俺頭おかしいわ。
後半ほど読みたくないレベル上げたつもり。エンタープライズは「シンプルに強い」というゲーム性能を反映して小細工無しで「ただただ読みたくないの極地」を目指したつもり(意味不明)。
推敲が一番疲れた。いつも五回ぐらいするのに一回で精一杯だった。もう二度とやらねえこんなの。



と い う 訳 で




『曖昧さ回避の怪文書講座』

なぜこんなものを書いてるんだろうね。「新規減るのでは」とか思ったけどハーメルンで流行らせたほうが早そうなので「杜甫kuresuの場合」を紹介しときます、本家は本家が書いてくれるでしょう! 多分! まああの人は絶対しないけどね多分。

※テキトーに書いているので真に受けすぎてはいけない、というかコレ要らないだろ。

【歴史】
始まりは思いつきだっただろう、そして本人は一度きりの予定だっただろう。ここを読むなら知っているだろう赤城がやべー小説で出てきたエンプラの怪文書がすべての始まりである。
phes2氏ありがとう、でもこの流れを皆がやるのは予想しなかった。俺はあの人のパクリ小説を自称してるのでパクっただけである。後思ったよりスッキリしたから趣味でやってた。

【定義】
ぶっちゃけ無えよ、お前が怪文書って言うならそれが怪文書だよ。本家は細かいの有るのかね、知らねえや。
取り敢えず「これは怪文書っぽい」っていう条件を列挙。
・文字数が500は超えている。
・「。」「、」が皆無。
・言っていることがヤバイ。(狂気、論理破綻、意味不明何でもあり。理解に時間がかかれば良い)
・最近は一般的に特殊タグ(《 big》《 /big》みたいな。詳しくはハーメルン自体の取扱説明書を読もう)でやや大きめにして文字圧力が高いのが主流らしい、というか俺がそうしてるだけ。此処は適宜。
・思い切りが良い事。怯えるな、読まれなくて良いんだという決意と勢いと狂気を込めて書け。
・読みたくない――――風に作って読みたくさせられる変なもの。ストレスを与えていけ。

多分こんなのだと思う。ちなみに俺は「完璧に自己満足とストレス発散」で書いている。

【ぶっちゃけ何処で使うんですかコレ】
場面転換に困ったら使え。やる気出たら使え。読者をふるい落としたい時も使え。愛が重いキャラのために使え。とにかくテキトーに使え、俺はテキトーだ。俺はな。
ただ面白くしたいならちゃんと流れは踏襲したい。文章じゃなくていい、ポネキならいきなり怪文書でもナンカ納得できるし。取り敢えず「怪文書キャラ」と「怪文書を引き出す会話」が有ると良いのではなかろうか、無くても面白いものは面白い。
俺が気をつけているポイントは「存在するだけでダメージを与える」事とか「読まれなくても中身はちゃんと作る」事。怪文書自体が面白いからって喋ってる内容を手抜きしたら話全体のクオリティが落ちるぞ、これはマジ。
よく考えろ、自己満にも全力じゃない話が面白くなるわけねえだろ?

【よく書けるよな、どうやんのこの怪文書】
感覚です、感覚。書けば面白そうなときと書きたいときとネタが合わさって発動する。多分これを書く時の作者は全員レイプ目だし、タイピングの限界ぐらいのスピードで入力できてると思う。俺は少なくともそう。一秒五文字単位で打つので結構すぐ出来るよ、ぶっちゃけ普通に書くより文字数稼げる。

【コレ何がしたかったの?】
いやこれでphes2兄貴もそのうちガイドラインで笑わせに来てくれるかなって(希望的且つ神頼み)。あの人あとがきも面白いから全員読め。
どうやら巷で流行っているのは本家の奴と言うよりは俺のやつに近い気がするな。本家読むと俺のとは全然空気感が違うので、もしかすれば流派の問題かもしれない。流派って何。
っていうか此処まで読んだ変人おる?

ちなみに(流行っては)ないです。単に目につくやつがやってるだけ、「蠱毒」とか「臨界現象」で例えた人は天才だけどそんな感じのアズレン一部二次作家の変態的な風潮でしか無い。真似しなきゃ人気でないとかテンプレとか絶対ないので新規は好きに書いて。良ければエンタープライズ。



ダイマしとくと最近コッチに比べて泣くほどマトモな原作再現モノも書いてるのでよろしければどうぞ。今ホーネットが「三人に勝てるわけ無いだろ!」ってなってます。

今日聞いていた曲は「僕は空気が嫁ない」。あの曲からこれが出来上がるとはいい時代だなあ。


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8.指輪、ダミーのむこうに

decisive battle聞いて読もうな、というかタイトルの元ネタ分かる?
怪文書なんて解説しないのが当たり前だと俺も思う(素)。ただキーボード叩いたら壊れたんですけどどうしましょう()。
読めないように作ってるのに読みきった報告多すぎる。後感想欄に怪文書多い、疲れた。

尚、当作風は至って「正常ではない」事を前置き、普通に書いてる人に怪文書だの特殊文字といった単語は必要ないことを宣言します。
という訳で失踪します、有難うございました。
実力ある人はこんな勢いだけで殺す一発作品から学ばなくていいから…………。わが道行こう?


「それでは、これより作戦会議を始める。司会は今回より参加する私――――――エンタープライズが務めさせてもらう、不慣れだが宜しく頼む」

 

 了承の首肯すら返らない。ミーティングルームは何時になく張り詰めた空気感が漂い、ホワイトボード前の円卓は艦で溢れかえっていた。

 座っているのは主に戦艦、空母の類の――――つまり精神年齢の高い艦が多いように見える。だが駆逐艦なども皆無というわけではなく、決して大型艦に限る議題を挙げるわけではないのが分かる。

 

 会議メンバーの出欠をエンタープライズは目視で済ませたと思うと、通る声で確認を取る。

 

「早速だが、目標の明確化及び議題の脱線防止の為に当会議の目的についてボードに明記させてもらう。異論は有るだろうか」

 

 静寂。いつもの騒がしさは嘘のように静まり、ピリピリとした空気感に出席者の表情は一層引き締まっていく。

 エンタープライズはそれを全会一致と捉え、丁寧かつ迅速に一文字ずつ書き連ねていく。

 

 ホワイトボードから音が鳴り止むと軽くコンコン、とエンタープライズがボードを叩く。

 

「さて、読めない者は居ないだろう。議題は――――――指揮官の『誓いの指輪』の探索だ

 

 議題を読み上げるなり、赤城が手を上げた。

 どうぞとエンタープライズが手で問題なしと表す。

 

「すみませんが、この話を始める前に一つだけ忠告するべき事がありますのでご報告を」

「赤城、頼んだ」

 

 加賀が読み込んでいた資料をジェスチャーだけで受け取った赤城が、苦々しい顔つきで椅子にもたれかかると読み始めた。

 

「では当会議の発端者である私――――――赤城より、今回からの作戦参加者数の増大に際して今までの我々の活動の内容、結果の報告をさせて頂きますわ」

 

 赤城が新しい参加者を一瞥し終えると、大仰な咳払いをする。

 一同が生唾を飲むのさえ気にも留めない赤城は、冷めきった目つきで歴史について語り始める。

 

「この会議は第六回。参加者は第一回が三名に始まり、現在では数十名に及んでいる大規模なものと言い切って差し支えありません」

「勿論作戦の実働部隊の参加人数も増加傾向に有りますので、いわば「今までの戦績」について踏まえていただきたく思います」

 

 加賀、と軽く呼ぶと次の資料が手渡される。加賀はすぐに次の資料をまるで機械のように眼を規則的に流していきながら目を通している、とてもではないが赤城でもなければ話しかけられないような真剣な顔つきだろう。

 

「誓いの指輪――――今後『指輪』と略しますが、これは遊びでやっているとしか思えない多量のダミーが確認されています。第一回攻略では一航戦、及び愛宕で辿り着けたのはおおよそ四十二個目、此処で指揮官様に勘付かれてしまいました」

 

 たった三隻で四十二個だと、と何処かから感嘆と畏怖の声が漏れた。

 

「以後作戦の度に手を加えた跡を見るには『指輪』のダミーは増産、また配置されているのが伺えます。製造元である明石に総数を問い合わせた所――――少なくとも八百は作った、との返答も来ました」

 

 参加者がざわつき始める。赤城達ですら四十二個しか見つけきれなかった物を、一体何回続けることで弾切れに持ち込むつもりなのかが彼女達にはまるで分からない。

 しかし件の赤城は意にも介さず淡々と報告を続けていく。

 

「第二回で六十五個、第三回で七十二個、第四回で三十七個、第五回で九十二個のダミーが確保されました。計三百八個確保したというのは大変な努力と言って良いのでしょうが――――――明石の回答が正しいのならばまだ四百九十二個、少なくとも存在することになります」

 

 次に参加者の目に絶望が映る。流石の赤城も数を見直すなりげんなりとした顔で溜息をついている、彼女に関してはその三百八の発見全てを知っているのだから、覚えているのだから倦怠感は並大抵のものではなかろう。

 

 早くも諦めの声や無気力な意見が目立ちだす。

 

「静粛に。まだ話は続いているぞ」

 

 ざわつく参加者をエンタープライズが一声で黙らせると、赤城が不満そうにエンタープライズの顔をちらりと見て話を続ける。

 

「…………このまま物量作戦に持ち込むのは無理があります。そこで今回――――『グレイゴースト』、この女と例外的に手を組むことにしました」

 

 虫酸が走る、とでも言わんばかりにエンタープライズを睨む。当人は慣れているのか、それにすら呆れ笑いをするだけでまるで動じている様子はない。

 

 赤城のせいで固まっていた一同のアイスブレイクでも狙ったのだろうか、肩を竦めてユニオンジョークじみた空気を漂わせたエンタープライズがハッと失笑する。

 

「前々から変な動きをしている事は知っていたが、まさかこんな下らないことを――――――やめろ赤城、流星を飛ばすな」

 

 飛んで来た流星をエンタープライズが間一髪で首を横に振って避ける。見事にホワイトボードに刺さった流星を見るなり赤城が舌打ちをする。

 

「手が滑ってしまいましたわ」

「照れなくて良いんだぞ、私が大好きなのだろう知ってる」

「死にたいようねえ、グレイゴースト?」

 

 分かってやっているのかバカなのか、いつもの澄ました笑顔でバッサリと言い放つエンタープライズに赤城の眼がギラギラと燃える。笑ってはいるがこれは威嚇の笑顔だろう。

 明らかに悪くなる空気に加賀が焦りながら話に割り込む。

 

「 そ れ で だ ! 更に重桜でも幸運で有名な瑞鶴も(強制)参加したことで、我々は『運』という一番イレギュラーで強力な味方をつける作戦に出ることが可能となった」

「先輩、正直嫌なんですけど帰っていいですか? グレイゴーストに喧嘩吹っかけていいならやりますけど」

「終わったら幾らでも吹っかけろ、何も言わずに殴っていいぞ」

「私を売るな加賀!?」

 

 よっしゃやりますよ、と目を輝かせて意気込む瑞鶴を見てエンタープライズは軽く目眩を起こす。

 加賀が支えて無理矢理放り投げて立たせると、エンタープライズは頭を振りながら司会に戻った。

 

「…………えぇー、それでだ。今回のターゲットについて端的な攻略法を考えてもらう、意見は規律を乱さなければ自由に出してもらって構わない。数撃ちゃ当たる、という重桜の言葉を信じてゴミのように案を出し、ゴミのように案を捨て、一つの宝石を見つける作業が今回の会議だ」

「質問は有るだろうか」

 

 まっさきに手を上げたのはツェッペリンだった。許可するといつもどおり、口を開くだけで鈍重な空気感が円卓を包み込む。

 指揮官の前でこそ巫山戯てばかりで一見面白ヘンタイお姉さんのような風体だが「何やら外野(地の文)が囀っているようだな…………」許してくださいこういう作風なんです仕方ないじゃないですか。

 

――――ええー、風体だが、彼女は普段はこの通りである。元々見た目の圧力も有り、かつ彼女のアンニュイな表情は周りの沈黙を誘うものだ。むしろ指揮官の前だと煩すぎるだけである。

 

「先程貴様は乗り気でないような発言をしたようだが、では何故司会を買って出る? 私情では有るが、同時に参加者の多くの疑問ではないか?」

 

 参加者の一部が意見表明のように頷いてみせる。

 

 確かに話が繋がらない。エンタープライズの司会は(議題に反して)至ってマトモなものであったし、それは怠慢や無気力を感じさせない責任感の伴う空気が見えた。

 エンタープライズから目の光が消えた。周りの気温が明らかに数度下がる。

 

「指輪を取ればコッチのものだという意見は大いに賛同しているからだ、言うまでもないだろう?」

(コイツも思ったよりヤバイ!?)

 

 口には出さないがそんな空気が流れて、暗黙の了解となり、一部の(ギリギリ)マトモな艦の中でエンタープライズは赤城と同類の危険艦種であると認定された。

 

 エンタープライズの壊れた笑顔に、ツェッペリンは引き攣ったような笑いを浮かべてすごすご引き下がってしまった。流石に今の断言には彼女も思うところがあるらしい。

 

「他に質問は?」

「では拙者から」

 

 何時から居たのか、エンタープライズが開けている椅子のすぐ横で刀の手入れをしていた高雄が問いかけた。相変わらず刀を見ていてその顔はエンタープライズには向いていない。

 今まで居る事自体に気がつかなかった事実に誰もが背筋に冷たい感触を感じていたが、高雄はそんな周りの反応など何のその、何もない所で軽く刀を素振りながら許可を出したエンタープライズに尋ねる。

 

「今回拙者は指揮官殿から『万が一が有ったら全員の記憶をトバしておいてくれ』という命の下此処に出席しているのだが」

(思いっきり指揮官にバレてるじゃん!?)

 

 新人達の脳内はかなりシンクロしていて、そして煩い。勿論実際もかなりざわついている。

 それよりも高雄の言う「全員の記憶をトバし」というのはどんな方法なのかにエンタープライズは身震いしたが、やはり無視して高雄は続ける。

 

「そなた達忘れておらぬか? 誓いの指輪もだが、ケッコンには指揮官殿の誓約書が必要だぞ?」

「……………………」

 

 一気に静かになった。静寂を破ったのは赤城の

 

「何か勘違いしているようだけど、少なくとも私は単に見つけたいだけであってそれで勝手にケッコンだ、何だと言う気は端からありませんわ」

「え、そうなのか!?」

 

 突然放たれた予想外そのものな一言である。

 全体が大きく叫んだが、一際食いついて赤城に噛み付いたのはエンタープライズだった。

 

「どういう事だ赤城! 私はてっきり無理矢理既成事実でも作るのかと思っていたぞ!?」

「勘違いですね。私は指揮官様の身長体重ほくろの位置一日のスケジュール人生設計好きな食べ物嫌いな食べ物持ち物の位置その他諸々の全てが知りたいだけで、別に手に入れるつもりなんて有りませんよ?」

「それは大いに同意です!」

 

 叫んだのはベルファストだった。横のPoWは既に顔が死んでいる、いつも眼が死んでいるので尚更悲壮感が漂っている。

 

「私もご主人様の起床朝食着替え歯磨き髭剃り洗濯食器洗い書類業務昼食その他諸々の尽くを知りたく、また須らく管理したいと感じています。赤城様のお気持ちは痛いほど分かります」

「ベルファスト、同意は嬉しいけれど私はそういう趣味はなくてよ

(何いってんだこのメンヘラヤンデレストーカー空母…………!?)

 

 バッサリ切られてそのまま直立不動で後ろに倒れだすベルファストをPoWは無言で抱きかかえる。お姫様抱っこの形になったまま何処かへと運んでいくさまはまるで白馬の王子であったがやはり顔は死んでいる

 

 遅れてエンタープライズが加賀の肩を揺らしながら鬼気迫る表情で尋ねる。

 

「おい加賀、彼女は何を言っているんだ。私にはわからないぞ!?」

「私も知らんわそんな事! 断言できるのは姉さまは単純に頭がオカシイという事だけだ!」

「加ぁ~賀ぁ…………?」

「ヒッ!? な、何でもありませんよ姉さま!?」

 

 司会が動揺している内に会議全体が段々と騒がしくなってくる。

 目的消失に戸惑うもの、赤城にただ単純に戦慄するもの、第一回の参加者三名の三人目である愛宕の思考が分からず混乱するもの、とにかく混沌と不協和音が鳴り響く。

 

 長く、長く、長くそれは続いたが、突然に刀を音を立てて鞘に収めた高雄の

 

「拙者は今、刀の手入れをしておる。邪魔をするならば――――――纏めて斬るぞ」

 

 という何とも横暴な一言で何とか事態は収束したのであった。

 

 

 

 

 

 

 

「すまない。この会議なるものに参加しているわけではないのだが、具申は許されるだろうか」

 

 何とか会議の体を取り戻しだした彼女達に言葉を発したのは、ツェッペリンの膝の上で何やら小難しい革装丁の厚い本を読んでいたZ46である。

 

 既にホワイトボードは乱雑な作戦見取り図、それの取り消し線、キーワードの羅列、意味不明な数列、そして流星の突撃痕で滅茶苦茶だった。消しながらエンタープライズが許可を出す。

 

「い、居たのかフィーゼ。まあ彼女には私の正体はバレているようなものか――――それで、何だろうか?」

「話を聞かせてもらっていた。よく分からないがあなた達は指輪に全力と見えるし、何よりその熱意に私も何らかの助言をさせてもらいたい」

 

 構わないが、とエンタープライズは内心不安に思いながら頷く。そして会議の内容のアレさに気づいていないZ46を放置して良いのだろうか――――少しだけエンタープライズは躊躇ったが、今回は黙っておく。

 Z46は有難う、と丁寧に礼をすると本を閉じた。

 

 ツェッペリンの膝上にちょこんと座ったままに全体に向かって問いかけ始める。それはまるで雄弁な演説者のようで、身振り手振りを添える様は普段の無口無表情の人形のような彼女とはまるで別人だ。

 

「現在指輪のダミーを突破するという点、また指輪をダミーであれ迅速に回収するという点、この2つから会議が進んでいる。これは合理的で、確かに最適なアプローチだ」

「だが指揮官は一個の人間、そんな最適などでは縛れないものが有る――――――もっと核心に触れていくが、そもそも指揮官は指輪など隠しているのか?」

 

 周囲が奇異の目でZ46を見る。彼女はその金の瞳でエンタープライズを見つめたまま、改めて問いかける。

 さながらひな壇にでも上がったような錯覚をまとう。

 

「もう一度問おう、『指輪など本当に在るのだろうか』。私はこれが一番の疑問に見える」

「Z46、納得行きませんね。その論の根拠をお願いして構わないでしょうか」

 

 少し怒ったような雰囲気すら見せる赤城に、Z46は臆せず返す。

 

「赤城、あなたも思わないだろうか? そもそもダミーを置いた所で、あなた達はダミーを判別する手段を持った体で話をしている」

「ならば無数のダミーの中から、幸運にも本物を見つけられてしまっては指揮官は困るはずだ」

 

 そうですね、赤城が頷く。

 

「そして高雄の参加理由から見れば、彼は間違いなくあなた達の行動を明確に認識しているし、概要まで把握している」

「だが実際はどうだろう? 高雄が来ただけでこの会議に滞りなど発生しない。彼が泳がせているとしか思えないのは誰もが分かっている筈だ」

「…………要するに何が言いたい」

 

 イライラし始めていた加賀がZ46に核心を迫る。

 

「要は、そもそも『この会議が無駄である』と定義していると見る。つまりあなた達が決して見つけられない場所に本物が在るのが妥当な線だ」

「そんな馬鹿な事があり得るものですか! 私に見つけられない場所など在る筈がありません、私室にすら侵入可能なのですよ!?」

(シリアスっぽく言ってるけどソレ相当おかしいことなのでは?)

 

 しかし誰も突っ込めない。赤城の目は真剣そのものだ、大半の艦は呆れ半分恐れ半分で眺めるばかりである。

 

 実際赤城の指揮官のプライベートへの食いつき方は走り幅跳びで前に思いっきりコケようとする小学生並みのそれであり、彼女が見つけられない場所というのは誰一人として瞬時には思い至らない。

 興奮を隠せない赤城が握りこぶしを作って抑えながら、あくまで理路整然と話そうと続ける。

 

「いえ――――――仮に在るとしましょう、私が侵入したことのない指揮官様の隠し部屋でも何でも良いです。あなたには見当がついているとでも!?」

「違う、赤城は怒りに身を任せて視野が狭くなっている。私は「見つけられない場所」を引き合いに出したが、「そもそも存在しない」という可能性も考えるべきだ」

「では何故ダミーなど用意する必要があるのですか!? 見つけたらケッコンしても良い、とまで言われたのですよ私は!?

「おい赤城、私に隠し事とは良くないな――――――――おい、赤城

 

 新しい新事実にざわめき出す。そしてエンタープライズは明らかなガチギレである。

 熱くなっていく赤城を加賀がハンカチで口を抑えるとそのまま目を閉じて倒れてしまう。

 

「クロロフォルムだ。最近手放せなくてな」

「いい加減姉を何とかするんだ加賀、そして其れを渡せ――――――問い詰めなくてはなるまい」

 

 当然のようにクロロフォルムとか言い出す加賀など何処吹く風、無表情に淡々と圧力を掛けてくるエンタープライズに加賀も少したじたじになる。

 Z46が倒れて眠ってしまった赤城の顔を見た後、加賀に頭を下げる。

 

「すまない、怒らせてしまったようだ」

 

 シメた、と加賀が逃げる。

 

「いや、誰もが本気で語り合ってる証拠だ、気にすることはない。些細なぶつかり合いが真の繋がりを生む」

 

 加賀は滅多に見せないような慈愛混じりの笑顔でZ46の頭を撫でる、正直現実逃避も混じっているのだろう。あまりのレアさに間近で見ていたツェッペリンは口を開けて黙り込んだし、遠くから盗撮していたグリッドレイは「これは売れる」と謎のガッツポーズをする。

 

 スライディングするなりとてつもない連続ショットで撮っていた翔鶴の胸ぐらを加賀が掴みだした辺りでZ46の視線がエンタープライズに戻っていく。

 

「いや、しかし赤城については後で考えるとして貴重な意見だと私は思う――――――――今のフィーゼの意見を踏まえて、会議を改めて進めていこうじゃないか」

 

――――会議は踊る、されど進まず。

 結果を言ってしまうと、この会議の8.5割ぐらいはこの言葉の通りとなった。

 

 同時に――――光る1.5割も、確かに有ったのである。




毛色が違う感じ。多分最初はウケない。
暫く更新が滞る――――かもしれない。
文学ドラッグは他でも滲み出る(断定)ので読みたい人は俺をお気に入りしとけ(露骨)。評価してもいいぞ(投げやり乞食)。
忘れてるだろうけど、これパクリ小説なので俺よりphes2氏に感謝して欲しい。アレ読んだら急に思いついたのは実話、狂気は狂気に呼ばれてやってくる。

そして今日聞いていた曲はback numberの「瞬き」。内容物との不一致が半端ではない。


最近のZ46のジョーカー枠感よ、なかなか面白駆逐艦枠になってしまった。最強の空回り枠として頑張っていってもらいたい。後ツェッペリンとイチャイチャして欲しい、切に。


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9.望めば斬り、願えば断つ

人のアカウント名が読めなくて一文字目でググるも中国語で首をひねり過ぎて三回転してます、そんなこんなで更新が空いてしまったので失踪しますね。

マトモな小説を書くと失敗するという謎の状態に俺は顔を覆っている。作り直すか…………このギャグで行くしか無いらしい。


「エンタープライズは此処かぁ!?」

「――――――――見つけたぞ、尋常に死ぬが良いエンタープライズゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!!!」

 

 扉が突然蹴破られた。この日ほどヤツに感謝した日はない――――――そう、高雄である。

 入り口から見れば否応なく目に入るのは俺達の売れないトレンディドラマみたいなハグ模様。一瞬だけ高雄の眼が俺に向けてギラつく。

 

 初めて殺意をセイレーン以外に向けられたので背筋が凍らせていると、高雄がすぐに視線を外した。

 

「貴様――――――いや、そなたはエンタープライズではないのか」

 

 秒で見抜かれただって!? 何を見て判断したのか後で詳しく聞きたいところである。

 

 いや高雄の心眼じみた観察眼は勿論びっくり仰天だし驚くべきタイミングなんだけどエンタープライズの顔が近い!? 近すぎる、辞めて!

 完璧に脱力して抱き抱えられるままの絵面はハッキリ言って相当恥ずかしく、柄にもなく蚊の鳴くような声で

 

「ヘルプミー…………」

 

 としか言えなかった。すかさず高雄が目を細める。

 

「…………助けを乞うているには気の抜ける空気感、指揮官殿か。何だ、どうなっている」

「洞察力が有るのは分かったから助けて! 近い、ああ辞めて!?」

 

 どんどん顔を寄せてくるエンタープライズを手で押しのけるが力が思うように乗らない。背筋の凍るような気色悪さに頭がメチャクチャだ。

 

 高雄は暫く俺と顔を見合わせるなり能面のように固まっていたが、赤城を背負ったまま暴走するエンタープライズの姿に何かを見出したのだろう。小さく口角を上げて眼がまたギラつく。

 

「何となくだが、珍しく拙者の暴力が正当化される展開だな! よしブッ叩いてやろう、覚悟は良いか!?」

「もう何でも良いから早くして…………」

 

 委細承知、と呟く刹那に高雄が目の前まで詰め寄った。その速度は数メートルを一足に詰める程の、まさしく「一瞬」。

――黄金に燃える瞳が僅かに揺らめくと、気づけばその手は竹刀を両手で強く握っていた。眼でもなく、顔でもなく、ただ全体像を見据えて射殺さんばかり。

 

 エンタープライズがすぐさま俺から手を離した。

 

「――――――捕捉。竹刀の歪み、想定内。姿勢に綻び無し。呼吸の乱れ、調整範囲内」

 

 まるで機械がアクション前に確認でも取るような呪文、流れるような息遣いのまま続いていく。

 

「我が一撃、他物を殺すに非ず。唯『斬る』のみ」

 

 飛び込みながら大きく構えたその竹刀が、歪んで見えるほどの速度でエンタープライズに疾走る。まるで体の一部のように力の逃げが視えない。

 眼すら閉じた其れはまさしく心技一体。視覚ではなく脳による空間理解だけに依存した一撃は、確かに尋常の反射神経では回避不可能な軌道を描いていた。

 

 だが相手は尋常ではない。エンタープライズは直感的に首に向かって横に振られる竹刀を察して、背を向けながら思いっきり走り抜ける。

 赤城の靡く髪が数本程切れた。

 

「指揮官の体であろうとお構いなし、か…………ッ!」

「甘い。命令であれば、拙者は指揮者であれ殺してみせよう。『刀』に斬る相手など関係無し」

 

 決意に煌めく眼を見ると、エンタープライズは話など無意味と悟る。

 竹刀を手早く持ち直した高雄が目を瞑り、静かに剣先をエンタープライズに構える。

 

「その足捌き、見事だ。では――――――これはどうする」

 

 目を見開いた高雄が、ツェッペリンの後ろの窓目掛けて全力疾走するエンタープライズにまた一度の跳躍で目前まで到達。

 後ろに引いていた竹刀を凄まじい勢いで突き出す。エンタープライズと高雄の身体の正中線をなぞるような軌道は正確で美しく――――また恐ろしい。

 

「殺す気なのか、高雄――――!?」

 

 冷や汗を流したエンタープライズはまた人ならざる奇妙な身のこなしで横に躱す。

 高雄が其の目を睨む。

 

「殺そうとしてやっと半殺し。拙者は常に貴様を殺すつもりで追っているに決まっておるだろう――――ッ!」

 

 続いて構えに入った高雄に目を剥きながらエンタープライズが窓から飛び降りていく。

 二階だから心配はないと思いたいが――――と思考が元に戻る瞬間、我に返って身体が崩れ落ちる。遅まきに状況判断をしてしまったらしい。

 

 すぐさま駆け寄った高雄に支えられる。

 

「流石に指揮官殿を捨て置くことは出来ぬ、か――――――チッ、次に会った時はブッ叩く」

 

 窓の方向を睨む高雄に思わず抱きつく。

 

「うわ!? な、何だ気色悪い!」

「あ”り”か”と”う”! こ”わ”か”っ”た”ぁ”!」

 

 男に迫られるってこんな急に怖くなるもんなんだな、腰抜けた。これから痴漢撲滅運動とか参加してみたくなる勢いだった。

 いきなり抱きついてきた俺はさぞ気持ち悪かったことだろうが、高雄は表情を七変化させるなり俺を引っ剥がそうとして手付きに迷ってしまう。エンタープライズなら竹刀でブッ叩かれてるんだろうなあ、と何だか冷静な俺が居た。

 

 人の好意に甘えている感じがしてすごく自分でイラッときたが忘れておこう。

 

「はぁ…………駆逐艦の前で情けないことを言われても困る。アレぐらいもいなせずして如何様にこの鎮守府で生きるつもりなのだ」

「あそこまで生理的恐怖を覚える目つきされると俺もどうしようもない」

 

 アイツ高雄が来るのが遅かったら俺にマジで何をする気だったのか分からないし想像したら寒気がして顔を気絶するまでくさやでしばき倒したくなる。

 

 もう泣くのも止まらないまま抱きつきっぱなしの俺に変な事もできないと思ったのだろうか、バツが悪そうに頭を激しく掻くと折れの頭をグシャグシャと撫でる。

 

「ううむ…………よく分からんが、そこまで大の男に大泣きされては無碍に出来ぬ。もう好きにして下され――――――こういう態度は対応に困るぞ」

 

 惚れた。

 

 

 

 

 

 

 

「さて、だいぶ落ち着いたから取り敢えずケッコンしようか高雄」

「指輪は力に繋がると聞く、良いというのなら一向に構わない」

「よし今持って「待て! 卿もそれはダメだと言っておったろう!? せめて熟慮の上で渡すべきだ要するに落ち着けと言っておるのだこのチョロイン気質め!?」

 

――――――――そうじゃん!? 渡したら1000チャンぐらいで鎮守府が崩壊したりしなかったり。多分崩壊する。

 危ない危ない、俺はギャップに極端に弱いんだ。

 

「という訳で若干迷うがごめん。無理そうだ」

「いや、拙者も己の力のみでブッ叩きたい(倒したい)敵が居た。血迷っていたようだ、惑わせてすまぬ」

「ルビでは誤魔化せない「ブッ叩きたい」の文字列破壊力」

 

 何か殴るのに美学とか有るんですかね、俺はもう其処らへん恐ろしくて聞くに聞けないわ。

 取り敢えずお菓子は増やすという旨だけ伝えて帰ってきた。実は軍から金をちょろまかしているのでその程度なら足も出ないという寸法である。

 

 お偉方はメンタルケアの費用の考慮が皆無なのでちょろまかすのも致し方なし。

 

「ところで、指揮官は何故高雄を此処まで連れてきたのだろうか」

 

 今は暇らしく、どうせならとついてきたフィーゼちゃんが無軌道に俺に尋ねてくる。

 良い質問だワトソンくん。

 

「いや、あのエンタープライズ――――――というかケダモノから護衛を頼みたくてな」

「拙者が、か? 守るより殴った方が速いぞ、意識を飛ばせば良いだけの事だ」

「其処は抑えて「了解した」とか言って欲しい」

 

 何で暴力的解決案しか模索できないんだお前は。

 ツェッペリンが俺達の漫才を見ている内に疲れてきたのだろう、大きな溜息をつくと部屋を後にした。

 

「我はもう休もう――――――」

 

 最初はお大事に、程度に思っていたが扉を出てすぐに

 

『ま、待て!? ここから朗読か!? 我も流石に体力の限界が――――――待て、待て魚雷だけは容赦せよ!?』

 

 と中々可哀想な声をこちらにお届けしたが『おい、卿も聞いておるのだろう!?助けろ!』、正直面白いので放置することに『憎んでいる、全てをッ!!!!』した。

 

 フィーゼが扉を指さしてキョトンと俺に尋ねる。

 

「グラーフは放っておいて良いのか?」

「良いんだよ。ああいう輩はたまに痛い目を見るぐらいでちょうどいいし、ギャグ小説的にもバランスが取れるからね」

「そうなのか、では仕方ないな」

『聞こえておるからな!? おのれ、マトモな死に方が出来るとは思うなよ――――ア、ハイ。イクノデギョライダケハ』

 

 それはコッチのセリフだ煽動厨。お前の罪はエンタープライズだとか加賀だとかよりはよっぽど重いことをご自覚下さいだバカヤロー。

 段々と遠ざかっていく声に頷きながら席に着く。

 

「よし、じゃあ高雄が今から秘書艦ということで!」

「まあそれは構わぬが、随分久しぶりだな。そなたの執務を監視するのは――――――」

 

 そういやコイツ意外とそこら辺厳しいんだった。「仕事は仕事、遊びは遊び」というタイプだ。遊びは仕事、仕事は遊びの俺とは其処らへんが噛み合わない。

 

 俺の知ってる高雄と随分違うと常々思うのだが、ここだけは唯一よく知っている性格だ――――いや全員全然俺の知ってる艦ではないがな?

 

「指揮官殿はいつも仕事が遅いからな、やればもっと早く出来るだろう」

「やらないから出来ないんだよ。やればどうとかいう想定が無意味」

「指揮官、それは正当化で使う論理ではないと私は思うのだが」

 

 フィーゼちゃんのキレッキレのツッコミで俺が昇天する。耳が痛い事を言わないで頂けると嬉しいのですがね?

 書類をざっと見てさっきまでの進捗を確認して取り掛かる。

 

「 何 も し て な か っ た な 俺 ! 」

「呆れたものだ、それでエンタープライズと乳繰り合っておったと…………?」

「乳繰り合ってないから!?」

 

 やめろよ気色悪い――――――ああ思い出すだけでゾワゾワする!

 両肩を抱いて気味悪さをこそぎ落とすような仕草を咄嗟にしてしまう。

 

 アレ。何か俺、段々女っぽい動きしてきてない? いや気のせいだなそういう事にしておこう。

 

「ああ、キモチワル。さっさと仕事しよう」

「そうしてくだされ――――――はぁ、エンタープライズと話しておるようで疲れるな」

 

 そう言われても対処法も見つからないわけだし。

 仕事に戻ってみた感想だが、何気なく印を押すだけでも武骨な手とオサラバ出来るのは素晴らしきかな。どうせなら美少女の美しい手で生きていきたいよなそりゃあ。

 

 声は男の頃の方が圧倒的に慣れてるから違和感が凄いが、カラオケとか行くときには便利そうな声帯をお持ちのようだ。ただ俺が喋ってるから口調とかが若干荒いけどな。

 

「ふぅ…………慣れない身体だと一々カルチャーショック的なサムシングを受けて集中できない」

「エンタープライズの声でそんな軽い喋り方をされると拙者もサムシングを受けるがな」

「フッ――――何だ、カッコをつけた方が良いとでも?

 

 精一杯の不敵なイケメンスマイル。声は宝○意識。

 

「いや気色悪いぞ指揮官殿」

「バッサリ行くな高雄は!? ()()()()()()()()()()――――――待て、何で「私」って言ったんだ俺」

 

 うーん、気持ち悪い。だが咄嗟に出る言葉選びが段々と変わってきてるような…………。

 高雄と見合わせて首を傾げていると、フィーゼが俺のスカートを軽く摘んでくる。

 

「先程から思っていたが――――指揮官の言葉のイントネーションは、若干だがエンタープライズに似てきていないだろうか?」

「えっ、何でそんなピンポイントで観察してるのフィーゼちゃんっていうかそれマジ?」

 

 コクコク、と赤べこのように頷いて肯定される。

 

「語彙センスも僅かながら寄ってきている――――――もしや、身体の方に引っ張られているのではないか?」

「そ、そんな馬鹿な事が。幾ら言っても私は男だぞ――――――ああだから私じゃないって!?」

 

 いや図星だわ、何か妙だぞ。

 違和感がある。いつもの喋り方をしようとすると明確な違和感がある、しかもちょっとずつ抵抗感が強くなってきてる気がする。

 

 これヤバくないか、ってことはアイツも――――――。

 

「――――――ハッ! 指揮官、どこだ捨てないでくれ!」

「ひゃあ!? な、何だ加賀か」

「明らかに女の悲鳴だが指揮官殿、大丈夫か?」

 

 やかましいわ! お、俺は男だぞ! 多分。

 ガバリと突然起き上がった加賀がキョロキョロと辺りを見回す、やはり俺が一目では判別できないらしい。高雄がおかしいんだ。

 凄い勢いで俺をロックオンしたかと思うとかけてやっていたチェスターコートを顔に押し付けてきた。

 

「い、息。息が」

「私を子供扱いするんじゃない!!!!!!!!!」

 

 いやしてないんだけど。

 窒息死寸前でお見せできない青い顔をしている俺など何処吹く風、フィーゼが無軌道に考察を挟んでくる。

 

「成る程。今のは俗にいう「ツンデレ」か、加賀は子供扱いされて嬉しさ半分恥ずかしさ半分という事らしい」

「違うぞZ46!!!!!!!!!」

 

 顔を真赤にして一人百面相されながら反論されてもなあ。やめろ、コートをさらに強く押し付けてくるな息できない!?

 正直な所、女としては見てない。所詮男なので色々負けるタイミングは有るだろうが、根本的に女に見えないのとポリシーの問題だ。

 

 最後は上官であるべきだとこれで弁えてるんだよ。

 

「あの加賀さん? 窒息死する」

「――――――――ああ、悪かったな」

 

 押し付ける力が一気に抜ける、急いで肺に空気を入れながらチェスターコートを着た。暑いけど、まあキャラ的にな?

 加賀が俺と高雄を交互に何度も何度も見たかと思うと、頭を捻って手で顔を覆って大変難しい顔になる。

 

 ジョジョ立ちみたいな奇妙なポージングで長考に入った加賀などなんのその、高雄は当然のように俺と加賀に茶を寄越すと部屋の端にもたれかかる。

 

「うん? う~ん?? う~~~~~~~~ん????????? 気のせいかそうだな、まさか高雄が秘書艦などと」

「いやそうだけど」

「おい!? 自殺するぐらいなら相談しろ、朝昼晩の食事も着替えのチョイスも全て私が解決してやるぞ!? いやむしろ解決させろ!?」

「自殺願望じゃねえから!?」

 

 まだ言ってるのかよ其れ。お前も中々しつこい女だな。

 加賀が慌てふためいて俺の両肩を持ったりするものだから、不機嫌そうに歩いてきた高雄が俺達に向かって呆れた顔をして尋ねる。

 

「おい、拙者は何だと思われているのだ」

「「くびかりぞく」」

 

 何かバトルアックス持って変なステップ踏んでるアイツみたいなイメージだな。

 

「何故此処まで言われねばならぬ…………まあ、エンタープライズから守り抜く為だ」

 

 ほうほう、と言った後に加賀は訳がわからんと言わんばかりに俺の方を見る。

 

「アイツ何かしたのか」

「俺を襲った」

「いつものことじゃないか、何を今更」

 

 全くもっていつもの事じゃねえよ!? まあ盗撮写真買い占めたり逆プロポーズ連発したり挙動不審なのは事実だとしてもこんな直接的で酷い手段には手を出してないだろ!?

 エンタープライズは一体何だと思われてるんだ…………。

 

「…………というかだ。エンタープライズの身体なら振りほどいて骨を103本折るのも容易ではないか、護衛は不要だろう」

「いやアッチが私の身体だから…………い、言いにくいが若干危なかったんだよ」

「何だと!? つまり私も籠絡可能と見て良いのだなそうなんだな!?」

 

 いや、否定は出来ないがそう食い気味に言われてもな…………。というか頼むから辞めろ。

――ああ~思い出したくもない。俺としたことが男にオチかけるなど何たる不覚、しかも中身エンタープライズで自分の顔だぞ。一生黒歴史だわこんなもん。

 

 加賀がまーた騒ぐなりに息の掛かる距離まで詰めてくる。

 

「………………どうだ!?」

「どうだじゃねえよ、私だって伊達で指揮官はやっていないぞ」

 

――――私? 不味い、本格的に戻れなくなってきてる気がする。

 加賀も此方を見るなり言いにくそうな顔をして少し考えた後、絞り出すような声で指摘する。

 

「――――なあ。お前、雰囲気がエンタープライズに似てきてるぞ」

「辞めてくれないか!? わた――――俺はまだ男だ! た、多分…………」

 

 クソ、魂と身体は容易に切り離せないとは言うがまさかこんな事になるとは。

 これはいよいよ早く何とかしないと不味い、私は男だ。信じろ、男のはず…………多分な。

 

「指揮官殿、何かこうなった理由に思い当たる節は無いだろうか」

「わ、分からない…………朝起きたらこうだった、としか」

「イントネーションも若干似てきているな、面白いぞ指揮官――――いや、()()()()()()()()?」

「違う! オレは指揮官だ!?」

 

 ああもう自分でもどっちだったか若干あやふやだ! やってられないなこれは!

 乱雑に頭を掻きながら立ち上がる。

 

「おい、何処に行く気だ」

「取り敢えずエンタープライズを捕まえないとどうにもならない! 私の力なら捕まえれば勝ちだ、行ってくる!」

「落ち着くのだ指揮官殿! 取り敢えずアタリぐらいつけて――――ああ面倒だ! 纏めてブッ叩く!

「クソ、この流れは私も放置とは行かないな!」

 

 何かぞろぞろとついてきた。




ちょっと前までマトモな話書いてたから勢い無いかもしれないけど、勢いはともかく話の粗さみたいなのはそろそろ整理していきたい。

恋愛とかシリアス書いてるほうが…………ウケが悪い…………だと!?
もうギャグ混ぜちゃおうかなあ。無理って訳でも無いしぃ…………みたいな事を考えている内に時間が経った。コレのせいで妙なギャグだけは出来るけど一発ネタなんだよなあ…………。

という感じでかなり意味不明な伸び悩みに苦しんでます。これどうしようかな、「ハリボテの指揮官」もそうだけどギャグが有ったほうが良いのかもしれない。
分かってんだよ…………ぶっちゃけギャグ無しは向いてないってことはよぉ…………ッ! 諦めねえぞ…………。


今回聞いていたのはZガンダムの主題歌「Z~刻を超えて~」。昔から妙に好きなんですよ。
後異色ですがヴァイオレット・エヴァーガーデンのBGMの「A Simple Mission」。後者は聞いてもどうやったらこれが出来るかわからない良BGMなので機会があれば是非。


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ex.アンジャッシュエンプラ

タイトルが全て。そして遅すぎた起工おめでとう。
社会人と交流するほど時間がすぎるのが恐ろしくなるので失踪します、有難うございました。

exの立ち位置が決まりました、「取り敢えず一話で独立してる奴」です。
今回はいつもよりかなり短いです。


――――あ、エンタープライズの起工日この前だったな!?

 男は思い出す。ぶっちゃけ作者が別作品書いていただけなのに、忘れていたと尤もらしい理由(ご都合主義)を嘯きながら。

 

 

 

 

 

「指揮官が私を直接呼ぶとは珍しい、ようやく私と誓いを交わす決意が…………」

「いや違うけどな」

 

 何故だ、と目を白黒させるエンタープライズに指揮官が目を丸くする。

――ひょっとしてギャグで言っているのか!?

 

 ギャグで言っているのである。

 いきなり馬鹿な叫び声で満たされた執務室だったが、指揮官が咳払いをして話が戻される。

 

「そうじゃなくて、ちょっと聞きたいことが有ってな」

「そうかそうか、指揮官の質問と有れば私はスリーサイズからお風呂で最初に洗う部位まで包み隠さず答えよう!」

「そこまでは求めてねえよ」

 

――重すぎるわ。

 話が逸れ放題なのを良いことにとんでもない暴露を始めかねないエンタープライズに苦い顔をしながら話を戻す。

 

 逸れては戻しの繰り返しである。

 

「お前はプレゼントされるなら何が欲しい?」

「――――――――――ん? は?」

「いや、は?じゃなくて」

 

 エンタープライズがいきなり頭を抱えて考え込みだす。

――いや待て指揮官が私にどうしてそんな質問をするのだ自慢ではないがどう考えても私にプレゼントというのは考えにくいし参考にするにしてももっとマトモな艦は沢山居るだろう何故私なのだ正直人選ミスとしか思えないぞだが指揮官がせっかく私個人を頼っているわけなのだからそんな心無い返答も出来ない善処するしか無いらしい…………。

 

 ご立派な空回り思考をキメたエンタープライズは破顔する。

 

「成る程そういう事か、了解した。では指揮官の質問に答えよう」

「――――――? まあ良いや」

 

――多分赤城とか加賀辺りにプレゼントするつもりなのだな!!!!! 私と思考回路は確かに似ている!!!!!

 いや全然違います。というかお前らは似ても似つかない。

 

――別に回りくどいことしてないんだがなあ、プレゼントするから欲しいもの聞いているだけなのに。

 指揮官、残念ながら彼女は度重なる不遇と自らのアレ具合への多大な自覚のせいでかなりの誤解を招いてしまっているのだ。

 此処(地の文)で言っても意味は無いのだが。

 

「そうだな…………やはり指揮官から(赤城へ)と言うなら、誓いの指輪に違いあるまい」

「(まだそのネタ引っ張るとか)マジかよ」

「今更だろう?」

「まあ(お前そういうとこ有るし)今更だったな」

 

――これで真面目に考えているのだぞ? 贈り物は男性の質が問われる、私も出来るだけ誠実かつ効果的な回答をだな…………。

 だからそういうことではない。

 

 指揮官は頭を掻いて悩みだす。

 

「うーん、まあ直球で(好意を)言ってもらえるのは有り難いがもっと何か現実的なものをだな…………」

 

――ふむ。確かに指揮官が私に最初の指輪を送るのは確定的に明らか。先に赤城や加賀に渡そうというのは無理難題なことだったな…………。

 

 11話まで来て今更であるが、エンタープライズはバカである。

 とはいえこれは自覚故の慰めと誤魔化しの面が強いところもあり、本人が至って真面目に誓いの指輪をもらえると思っているのかには若干疑問が残るとは言えるが。

 

 頭を捻る指揮官に倣うようにエンタープライズも顎に手を当てて考え込む。

 

「まあ(プレゼントを)渡すことは決まってるにしても」

「(誓いの指輪を)渡すのかっ!? そんなあっさりと!?」

 

――え、何。女性的にはプレゼントはもったいぶられたいとかそういうの? 変わってんなあお前。

 動揺が隠せないエンタープライズに肩をすくめる。

 

「え? いや、まあ(お前への)日頃の感謝を込めてだな…………」

「(誓いの指輪とは)そういう流れで渡されるものだったのか!? ならば私ももらって良いのではないか!?」

「何言ってんだお前」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺が(プレゼントを)渡す相手ってのはお前のことだ、エンタープライズ」

「――――――――――Repeat.

 

 顔が固まったまま機械のように尋ね返してくるエンタープライズに、指揮官が変な顔をしながら復唱する。

 

「だから、(プレゼントの)相手は最初からお前で考えてたんだが」

 

――私が誓いの指輪をもらうのか!? こんなあっさりと!? しかも最初から私に決めていただと!? Why!?

 誤解も来る所まで来てしまったらしい。

 

 すっかり自分が最初から正妻候補だったと思いこんだ(とはいえ若干事実である側面は有るが)エンタープライズは顔を真赤にしてしまう。

 

「(プロポーズが)いきなり過ぎて驚いてしまったが…………そうか、それは有り難い事だ」

「お、おう? まあ(プレゼントは)誰から貰っても嬉しいものだよな、基本的に」

 

――いや他ならぬあなただからこそだがな!?

 今だからこそ言うべきだが、『「思い込む」という事は、何よりも「恐ろしい」事だ』。

 

 しおらしくなってしまったエンタープライズがソファに小さく腰掛けると、俯きながら素っ頓狂な声で尋ねる。

 

「そ、そのだな! (誓いの指輪は)私以外にも贈ったことは有るのか!?」

「ああ? 今まで贈ったことはなかったが、これを気に(プレゼントは)贈っていこうと思ってるよ」

 

――まさかの一夫多妻制か!? ジュウコン勢だったのか指揮官!?

 エンタープライズの中で指揮官が光源氏か何かと同類枠に入りかけてしまっている。

 

――そういや他の奴には殆ど贈ってないなあ…………起工日とかは暗記してるし、もっと細かく気を配れるイケメンになっていくぞ俺は。

 一方コッチはコッチで妙なことを考えている。

 

 深呼吸をしたエンタープライズが何か難しげな顔をした後にゆっくりと何度も頷いた。

 

「いや、だが最初であることは誇るべき事か。(例え他の艦とケッコンするにしろ)私はとても嬉しく思っている、指揮官」

「最初となると(たかだかプレゼントだってのに)意外と緊張するもんだよな」

 

 ふふっ、とエンタープライズは少し顔を赤くしたまま小さく笑う。

 

「大丈夫だ、次に(ケッコン相手を)選ぶ時も一緒に考えれば良い」

「そりゃあ頼もしいな、(女性側の意見として)お前を選んで良かった」

 

――それはケッコン相手として相応しいということか!?

 飛躍が酷くなってきた気がする。完璧に舞い上がっているようだ。

 

 というかエンタープライズから見えてくる指揮官像が光源氏のそれでしか無く、しかもアレは相当タチが悪い男だと言えるのだがエンタープライズの今後の恋愛遍歴はマトモなものになるのだろうか、天井裏でニヤついていた加賀は訝しんだ。

 

 エンタープライズは暫く沈黙していたかと思うと、意を決したように立ち上がって指揮官の前に立つ。

 

「さて――――――コホン」

 

 すっと左手を差し出すが、指揮官は意味不明な顔をする。

 

「…………なんですかねこの手は」

「言わせるのか? は、恥ずかしいのだが…………」

「は?????????」

 

 呆気にとられている指揮官の顔もよく見ないまま、目線をアチラコチラさせて頬を染めたエンタープライズが答えた。

 

「だ、だから。その――――――誓いの指輪を、だな……………」

「???????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????????」

 

 指揮官が頭から煙を出して倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

「どんだけ壮大な勘違いをしてるんだよお前…………」

「わ、悪かったと言っているじゃないか! そこまで言うこともないだろう!?」

 

 呆れて肩をがっくりと落としている指揮官に、顔を真赤にしたエンタープライズがあーだこーだと言いながら廊下を歩く。

 結局すぐに起き上がった指揮官が事情を聞いて、結論から言うと

 

「だから誰にも渡さねえっての」

 

 という一言だけでエンタープライズを完璧に撃沈させてしまったのであった。

 現在エンタープライズはプレゼントの内容について必死に考えながら、指揮官の訓練の様子見についてきている状況となる。

 

「まあ俺も言葉足らずだったな、悪い」

「全くだ、女の純情を「女は何処だろうか、俺には見えないが」弄ぶものではないぞ…………」

 

 こういう訳で、現在エンタープライズはプレゼントの内容について全く案が出てこないままである。

 さっさとエンタープライズを置いて歩いていってしまう指揮官をよそに、エンタープライズはぽつりと

 

「正直、何でも本当に嬉しいから特に決められないな…………」

 

 と言ったのを耳ざとく聞いていたヨークタウンが卒倒し、ホーネットが天井から落下してきて気絶し、指揮官が鼻血を噴いて倒れた。

 

 本日も平和な一日である。




最近書きたいものが想定する限り5つぐらいあるけど全部中途半端にやって途中で飽きてる。ちなみに一つの候補に「アバーズレーンのシリアスの再錬金」というのが有ってですな、詳しくはサイトをチェックだ。

正妻になると急に普通になってしまうエンプラに沈め。書いてる俺が「むり。。。むりこれ。。。。。。」ってなったからな。
どっかで書いたけど正妻ポジに収まればエンプラは落ち着きを取り戻します。ただし多方面で多大な影響が出るので平和にはならない。


勘違いモノ死ぬほど難しくて笑った。機会があればまたしたい。


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End.最終回なのでトばすぞ

アバーズレーンってのはなァ!!!!正直パクリとノリとウケ狙いで書いた俗物そのものみたいなもんなんだよ!!!!突然終わったとしてもしょうがねえ杜撰な小説だよなあ!!!!!なあ指揮官!!!!!お前もそう思うだろう!!!!!?????その通りだぞクソ野郎(作者)!!!!!ぶっちゃけむしろ12話も書いてる方がちょっとおかしいことは薄々アンタも気づいてるんだろ!!!???早くこんな劇物から卒業するべきだと思うぜ!!!!!!(またパクリ)(ぶっちゃけ過ぎ)(破壊と創造のクソ二次創作)(飛んでくる一航戦)(エンタープライズは既に抱きついている)(勢いで差をつけろ)

という訳で失踪します、有難うございました。


「――――――お前を貰いに来たぞ」

「え、あのちょっとそういうのは早いというか心の準備がというか」

 

 ミーティングルームの扉を蹴破ったダイナミック登場の指揮官。冒頭でえらい勘違いをかましていくエンタープライズ、もう既にカオス。

 最終回なので好き勝手言っていくがお前そもそも明らかに襲おうとしていたのに何を言っているのか、そして可能性がゼロだぞ。

 

――さて、話に戻ろう。このバカバカしいメタさも仕様である、もう書いてる本人がヤケクソなのでは無かろうか。

 大体一話を越える最終話など中々作れないもので特にコレなんて一話で釣れなかったら大体読んでもらってないのではというか…………

 

「何か話が進まない感じがするから俺が話を進めていくぞ!!!!!!!!!」

 

 あーもう冒頭で収集つかねえよ。作風崩壊とかそういうのですら無いから読んでる人多分ドン引きだよこれ、ちっとは許されるライン引きとかする気はないんだろうか此処。

 そんな話はさておきエンタープライズが何処に潜伏していたのか、どうやって発見したのかについてだが――――――勘である。

 

 基本こんな感じこれまで生きてきたし、これで何とかなってしまったし、最終回が終わっても俺はこういう感じなんだろうなと思うといっそ大気圏外に捨ててきて欲しくも思う。これ以上異常者を生み出すよりは俺は速やかに処理されるべきなのでは?

 

 目を見開いた赤城が俺に掴みかかる。

 

「エンタープライズ!? お前、指揮官様を私から奪おうとはいい度胸ね!?」

「いや、あの。私は指揮官です」

「――――――ハッ!?」

 

 掴みかかっていた手を抑えつけながら赤城の顔が笑ったり泣きそうになったり怒ったり大変面白い感じになる。普通の人は怖がる絵面だね、俺は慣れたから面白いけど。

 

 多分俺の顔を見たらぶん殴りそうなんだろう、とうとう赤城がフラれたかのごとく涙目で走り去っていってしまった。いや、二回ぐらいフッた覚えは有るけどな。無理だろあの人は、俺だって受け止めきれない愛ぐらい有る。

 

 エンタープライズが赤城を目で追いながらニヤつきを抑えられていない俺に凄く気色悪いものを見るような目を向ける。

 

「指揮官…………此処まで言っておいておかしい話だが、私はあなたを愛して問題ないのか?」

「さあ? 元々マトモではないよ、私は」

 

 こんな所で生活してるから狂ったのか、こんな狂ったやつの指揮受けてるから部下が狂ったのかまでは知らないが。

 類は類を呼ぶっていうし、俺が原因なのだろうか。いや、もうどっちでもどうでも良いんだがな? 手遅れだし。

 

「――――――まあ良い、キャラ作りも疲れたのでな。何時も通り喋らせてもらおう」

「アレ素じゃなかったの?」

 

 エンタープライズが「お前は馬鹿か」と顔に出る。殴りたいこの顔。

 

「幾ら何でもこの鎮守府に適合できるほどではないよ。いや、一部は全く素なのだが」

「エンタープライズはツェッペリン以上の隠れ常識枠だった………………!?」

 

 全くもって受け入れがたい事実だな。絶対ほとんど素だったと思いたい。

 

「キャラ崩壊にも限度は有ると指揮官も思わないか?」

「現行でお前がその限度とやらをブッちぎってるからさっぱりだな!!!!????」

 

 キャラ崩壊という概念をキャラ崩壊してる側が触れてしまったらもうどうしようもねえんだよなあ…………。

 とはいえ納得できなくもない。

 

――いやーよく考えて欲しいんだけどさ、俺バカっぽいけどバカではないんだよ。最低限の人を見抜く目ぐらいは養ってきたつもりだし、何なら若干チート気味な転生な筈だぜ?

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()? 普通ボロ出るよな、俺もそう思う。

 あながち「いや全く違うだろ」とも言えない。

 

「いや愛は本物だ、信じてくれ。大好きで仕方ない、あなたを思うと夜も眠れないとはこの事だというぐらいだ。今後一生あなたより愛してるなどと感じる相手は居ないと明言して全く問題ない

「ぅわ素直クールかてないつょぃ!!!!!!!!!!! じゃなくてそこは優しい嘘であってほしかった!!!!!!!!!!!!」

 

 直球はやめろ、俺に効く。

 

 どうしようもない最上級のアタックに俺が悶絶していると、後ろの扉が勢いよく開く――――というかぶっ壊れてエンタープライズの方に飛び込む形になる。

 

「あッ。わ、悪い…………!」

 

 いつもなら全く問題ないのだが身体のせいか尋常じゃなく恥ずかしい。

 顔を見れないままフニャフニャ声で答えるが、漸く見たエンタープライズの顔は壊れた扉の有った方を見て固まっている。

 

「い、いやそれより――――――ッ!?」

 

 エンタープライズの震え声の理由はすぐに分かった。

 

 

 

 

 

「――――――丁度いい、纏めてブッ叩く。尋常に死ね!!!!!!!!!!!」

「「取り敢えず今までの流れは放置して逃げないか!?」」

 

 気が合うな俺達、そろそろケッコンでも考えますかね!?

 見たことのない血走った眼の高雄に本気で膝を笑わせつつ、エンタープライズをお姫様抱っこしながら窓から飛ぶ。

 

 さっきよりも数段速い突きが俺の首のすぐ横を通り、髪を掠めた。軽く俺の首の薄皮が切れてしまう。

 

「――――――逃げるのか? せっかく拙者が殺してやろうと言うのに」

「おい指揮官、高雄は本気なのか!? 私達は殺されるのか!?」

「知らないがともかく逃げるぞ! 万が一首が飛んでは今後の指揮は誰が執るというんだ!?」

 

 私だってこんな所で死にたくはない!? っていうか地の文まで喋り方が影響してきてしまったぞ、もう私は実質エンタープライズなのでは!?

 こんな発想をするうちは程遠いか、と小さな安心感に浸りつつ着地に脚を痺れさせた。

 

 

 

 

 

「どちらに逃げる!?」

「指揮官が適当に決めてくれ! 責任も持てなければ意味もない質問だ!」

 

 何の迷いもなく右に進む。取り敢えず執務室回りは一段と詳しいからそこで時間を稼ぐしか無い!

 幸いエンタープライズの身体は俺とは比べ物にならない脚力、肺活量、視力が有る。高雄が下から追い上げてくるのも見えるし、というか何か若干浮いているようにすら見えるのも分かる。

 

「…………高雄、何かクハハハハハって笑ってないか」

「いや、私には見えないがそうなのか?」

 

 いつから彼氏面するようになったんだアイツ。まあ時間だろうが空間だろうが脱獄しそうっていうところだけはドンピシャだけど。

 というか普通の話だが人を抱えながら走るのは辛い、追いつかれる日もそう遠くは有るまい。だからといってボロ雑巾みたいに引っ張り回してもアレなのだがまあ何はともあれクソだるいぞコレは。

 

 いつものご都合主義で何とかなってくれないものか、と思案しながら辺りを見回す。

 

「クソ、どうすればあの殺人鬼から逃げられるんだ!? どこに隠れても看破されそうな予感がする!」

「経験則で言えばそうだな。屋根裏も挑戦してみたが入ってくるどころか竹刀の突きで一撃で見抜かれた、お勧めは相手の機動力を削ぐ方向性だ」

「彼女か、天井を壊していた大馬鹿者は!? 後で絶対責任追及してやる!?」

 

 しかし機動力を削ぐ、削ぐ…………駄目だ、何をしても高雄止まらないと思う。

 さっき上司の身体だろうがボロボロにする覚悟決めてる感じだったし、というかよく考えたら何で追いかけられてるんだ?

 

 纏まらない思考のまま疾走を続けていると、向かい側から白い何かが走ってくる――――――サン・ルイだ。このタイミングで!

 

「さあ! 『正義』を始めようか、指揮官ッ!」

「ああーもう滅茶苦茶だよ!?」

 

 中盤に出てくる仮面ライダーみたいな奴が大層嬉しそうに足を速める。正義とかに拘って一番程遠いものになるとかありがちすぎて食傷気味だわ。

 しかし高雄が階段から駆け上ってきた音で漏れかけた溜息も短く切れた。

 

「先に言っておくが――――――避けろ…………ッ!」

「指揮官、私は死を悟ったんだが」

 

 奇遇だな、私もだ。

 

「駄目だ、死ぬなコレ。エンタープライズ、愛してる」

「私もだ――――――――え?????

「流石に冗談だよ」

「慰謝料を請求する!?」

「そんな事を言っている場合か!?」

 

 コチラが全面的に悪かったんだがな!?

 なまじっか全速力なんかで走ってたもんだから止まるもクソもない。サン・ルイの構えられた木製らしき槍に突っ込む形にならないことだけを祈りつつ、目を瞑りながら更に低姿勢で突進する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――後ろで何かがぶつかる音が鳴った。

 目を見開いて振り返ると、高雄がサン・ルイの正面突きを全く同じ角度で竹刀で突きを放って受け止めていた。

 

「は!?」

「指揮官、確認するが――――――――暴力は、悪だな?

 

 そんな最高に楽しい、みたいな歪み切った笑顔で言われても理解できないですね。

 高雄が叫ぶ。

 

「どかぬかサン・ルイ! そなたであろうと道を塞ぐならブッ叩く!」

「これでも開発艦が一隻、簡単に通れるとは思わないことだな」

 

 高雄の不可視に近い振りを槍をくるくると回してサン・ルイは遊ぶように防ぎ切る。時には竹刀を下に打ち伏せて宙に跳ね、時には追う高雄の竹刀を掴んですぐに足を付き、木製とは言え高雄に負けず劣らずの神速の刺突を数度。

 

 アイツそんな強かったのかよ、全くもって予想外だな。

 さながら軽業師。高雄の打ちを予め知っているように軽々と受け流して下がると、勢いを殺したまま回転した槍を飛び上がりながら高雄にけしかける。

 

 攻め一辺倒な高雄の打ちが強すぎるせいで回転はまるで衰えない、円盤ノコギリのような槍がサン・ルイの指捌きに勢いを乗せられたままぶつけられ続ける。

 

「チッ――――――曲芸師のような指遣いだが、芸がないぞ――――――ッ!?!」

 

 高雄の言葉の途中でピタリと高雄に向けて止まった槍がモリのように放たれた。とっさのことで高雄も避けるので精一杯、苦い顔をした高雄がバックステップで5メートル程距離を取る。

 

「やはり自分で彫ったものならば木製でも使えるな――――行かれよ指揮官」

「いや私はこのガチバトルを止める義務みたいなのが」

 

 サン・ルイの鮮血の瞳が此方を睨め付ける。抱きかかえたエンタープライズと私の心拍数が零に到達した。

 

「立ち塞がるは悉く不義である、指揮官は――――――義人だ。そうだろう?」

 

 凍てつくような静かなる忠告。

 冷や汗を流しながら後ろを向いて走る。

 

「い、いえ!? 立派だと思いますよサン・ルイさん!?」

「指揮官、早く逃げてくれ!? オレはこんなところで――――――オレ? ん?」

「ああーやばい、そろそろお前も寄ってきたか!?」

 

 振り向きもせずに涙目で全力疾走をしていると

 

「やはり『正義』は『悪』を打倒せねばな――――――ハハハハハッ!」

 

 とか明らかに正義の味方ではない声が響いてきたが、今回ばかりは「悪の敵」という事で放逐した。

 私の周りには馬鹿と狂人しか居ないらしい。

 

『正義執行――――ッ! 我がエゴと自己愛に死ねッ!』

 

 どっちが悪いのだかさっぱりなセリフを言ってるなアイツ。

 

 

 

 

 

 

 

「何だアイツラは…………存在が混沌としている」

 

 サン・ルイは何を間違えたんだ? 私はあんな全身武装改造しそうな女を連れてきた覚えはない。

 新入りも数ヶ月もすればダメになる。いい加減マトモな人を増員しないか…………。

 

「まあサン・ルイと高雄ではな」

 

 ソファーに座って鍋に入っている味噌汁を三杯目、ツェッペリンの一言だった。執務室に戻ってきてからずっと飲んでるんだけどアンタ気は確かか?

 ごくごくと清涼飲料水が如き飲みっぷりのツェッペリンを見て怖気だった加賀が横入りしてくる。

 

「とはいえ、お前がもとに戻る方法を真面目に考えるべき頃合いだな」

 

 私の横で突っ伏してへばってしまっているエンタープライズを加賀がつつく。

 

「これでもこの鎮守府最強の空母だ、中身がお前みたいなポンチでは作戦行動に支障が出る」

「ポンチまで言われて腹は立つのだが全く反論要素がないな」

 

 実際ポンチだ。一般人よりは戦闘センスも頭も期待してもらって構わないが(そうでなければ指揮官にはなれない)、だからといって存在が戦闘に特化したエンタープライズの類に勝てるかと言うとそれは有り得ない。

 

 ツェッペリンが明らかにろくなことを考えていないニヤケ面で指を立てる。

 

「こういうのは大抵キスと相場が決まっておろう?」

「何処で少女漫画を読み漁ってきたんだ、そんな馬鹿な…………」

「少女漫画を侮るなよ、アレは我の知らぬ感情の尽くを納めた驚異的な書物でだな――――――」

「話を戻すぞ、ツェッペリン――――――後でおすすめを教えろ」

 

 加賀は何ちゃっかり本友達増やそうとしてるんだ。いや、別にそれは構わないが。

――というかさっきから妙に落ち着き払っていて自分で自分が気持ち悪い。いよいよ性格まで似てきたのか…………と思ったが横でへばっている男の顔からはクールさは殆どなかった。

 

 まあ良いか。

 エンタープライズがふと起き上がる。

 

「おすすめは「神様はじめ○した」だ!」

 

 思わず頭を思い切りしばいた。

 

「痛ぁ!? 指揮官、酷くないか!?」

「あなた――――――じゃなくてお前まで参加すると収集がつかないじゃないか」

 

 ちなみに私のイチオシは――――――って言わないからな。

 頭を擦る阿呆を置いて話を続ける。

 

「まあ、とはいえ寝たら治るとかいうオチもある。キスだろうがなんだろうが別に解決のためには惜しまないが「ああ指揮官!? 今すぐ指輪をもらわないと元に戻れない気が痛ぁ!?」馬鹿なことを言っていないで真面目に考えるんだ」

 

 何度シバかれたら今私が真面目に喋っていると理解してくれるんだこのポンコツゴースト。

 頭を抑えたポンコツは置いておいて話を進める。

 

「しかしどうしたものか…………時間経過で治るような都合のいい事は――――まあよく有るが今回もそうだとは限らないからな……」

 

 大体原因が分からないのに解決方法なんて分かるものだろうか。

 

「何故だ指揮官、こんなにもオレは愛しているというのに…………」

「自重と女性らしさとキャラ保持力が足りてない」

「良いだろう! 望むがままに生きてやるからケッコンしてくれ!」

 

 いや、そういう事でもないのだが…………。

 駄目だ駄目だ、完璧にペースを持っていかれていた。

 

「何を笑っているんだ、ツェッペリン」

「いや、案外キスで戻るというオチは視点を変えれば(メタ的に見ると)ありそうだと思ってな」

「またそういう事を言って私で遊んでるだけだろ」

「「思い込む」という事は何よりも「恐ろしい」事だ。特に他人の意見を蹴ったり、くだらないプライドから護っている「思い込み」は尚更にな」

 

 何マトモなこと言ってるんだ、事実は変わらない。

 そもそも脈絡のない出来事だから終着点も見えてこない。転生者という立場上は何か意味のある状態の気もするが…………こういう思考は経験上当てにならない。

 

 常にいきあたりばったりな感じがするというか。

 

「うーむ…………キスとは言わず密着ならどうだろう」

 

 試しに抱き寄せてみる。

 

「ナッ!? んっ!? ヘアッ!?」

「指揮官、もう気絶してるぞソイツ」

「何だ、ちょっと抱き寄せただけだ。今更ではないか?」

 

 普段アレだけグイグイ来ておいて押しに弱すぎだ。

 湯気の出ているエンタープライズを取り敢えず寝かせて手を合わせながら思考を続ける。

 

 

 

 

 

 

 

――そうだ。

 

「寝て起きたらこうなったんだから、今のうちに私も寝れば良いのか」

「冴え過ぎだな。名探偵だ」

「むしろ三話も引っ張って結論が雑だが、まあ多分そうだろう」

 

 そうと決まれば寝てしまうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「治ったじゃん」

「治ってしまったな…………勿体無い」

「勿体無いってなんだよ」

 

 良いじゃねえか、この方がやっぱ楽だ。

 ガタイの良さが若干気になるがやっぱりいつもどおりが一番だ。女の体なんてのは出来れば二度とゴメンだね。

 

 ただ肩こりひどいな。

 

「冷静な指揮官は控えめに言って最高だったぞ」

「俺に寄っていってバカそのもののエンタープライズは見てて痛ましかった」

「そこまで言うことはないだろう指揮官!?」

 

 むしろオブラートに包みまくったわ馬鹿。本当ならドン引きしたって言うところだぞ。

 加賀も名残惜しそうに俺の顔を見る。

 

「不憫なお前の姿を見るとゾクゾク来たのだがな、もう拝めそうにもない」

「嗜虐心はセイレーンにでも当ててきてどうぞ」

「破壊と混沌は過ぎ去ったか………………はぁ」

 

 まずやって来てないと思うんですけど。

 意味不明な所感ばかり並べられて困惑して椅子につくと、途端にバタンと扉が開かれる。

 

「だーかーらー、何でどいつもこいつも扉をちゃんと開けれない…………ッ!」

「指揮官様!? 指揮官様は居られますか!?」

 

 まーた面倒な人が来た。そろそろ退役するかな俺…………。

 赤城がしきりに右往左往していたかと思うと、俺――――――ではなく未だに落ち込み気味のエンタープライズに向かって歩き出す。

 

「な、何だ赤城…………?」

「私、決意致しました――――――――見た目に騙されるなど愛ではありません! 例えどんなお姿でもあなたを愛してみせますわ!

 

 ああー、そういやこの人は知らないのか…………。

 すぐさま事情を説明しに行こうと思うがエンタープライズが意地の悪い笑顔で俺を止める。

 

「…………もう良いや」

「遂に投げたな、姉さまが流石に不憫だ」

「我は面白いから構わぬぞ、もっとやれ」

 

 手をしっかと握って決意じみたものを瞳に募らせる赤城に対してエンタープライズはそっと手を振りほどくと抱き寄せる。

 

「分かった…………ケッコンしよう、赤城」

「し、指揮官様…………ッ!」

「まあ元に戻ってるから私は心身共にエンタープライズだがなァッ!!!!」

 

 まさに外道。途中の時点であんなキザったらしいモーション取らない点に気づいて欲しいものだが、これこそ

 

「「思い込む」という事は何よりも「恐ろしい」事、だよな」

「そうだ。卿も分かってきたではないか」

 

 赤城が笑顔を引き攣らせて顔面発火してるんじゃないかと言うぐらい赤くなる。

 

 

 

 

 

 僅かな沈黙の後に何処からともなくサバイバルナイフを取り出して首筋に当てる。

 

「加賀…………私は先に逝くけれど、あなたは立派に生きて頂戴。お願いよ、姉としてたった一つの願いなのだもの」

「ね、姉さま!? 早まらないで下さい!?」

 

 ナイフを握りしめた赤城をエンタープライズが押さえつけて喚く。

 

「悪かった! 私が意地悪だったで良いからやめろ!?」

「止めないでくださります!? もう生きていけないわ、まさかお前にプロポーズするハメになるなんてサイアクよ! 死んだほうがマシだわ!?」

「分かった、私が嫌いなのはそれでいいから落ち着け!」

 

 まーた始まったよ。まあエンタープライズこういう時はちゃんと仕事するし止めてくれるだろう。

 放置して仕事に戻る。赤城も時間が経てばクールダウンするだろう、そのうちエンタープライズの顔をベチベチしばいたりして落ち着くはず。

 

 必死に止める三バカ空母と傍から見て愉悦に口元を歪ませるツェッペリンを放置して書類を眺め直していると、ふと一枚の書類が目に止まった。

 

「ああ――――今日は新人が来るのか」

 

 噂をすれば扉が開く。

 ああー、目の前で起きてる光景に早くもお困りのようだ。取り敢えず書類は捨て置いて彼女のもとに走り寄る。

 

「ゴメンな、ちょっと騒がしくて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ようこそ、君を歓迎しよう」

「仕事をすれば文句はないから、まあコイツラみたいに好き勝手やっていってくれ。ちーとばかし慣れない環境に見えるだろうが―――――何、大抵数日で慣れる」

 

 また犠牲者こそ増えているが、世界は平和なのである。

 

「じゃあまずはこの阿呆三人から紹介する、よく見かけるだろうし悪いやつじゃないから早めに慣れておくことだ」

 

 さて、彼女は何日保つのか。

 一抹の希望は有るが、どうせアバズレになるのがオチなのだろう。




今回をもちましてアバーズレーンを完結致します。ご愛読ご声援謎の奇声怪文書ついでによく分からない性癖とスペシャルサンクスのphes2氏、纏めて有難うございました。特に最後、崇めていけ?




















という訳で次回作も書くので失踪したいと思います、宜しくお願いします。

あ、次に書くエンプラは多分少しマトモです。どうせ変態になるし多少はね?
飛ばしすぎたから元に戻したい。キャラ設定がね…………何というか、分かるだろ? カバヤキな夢、見せてやるからよ。


ついでに謝罪キメておくか。アズレンユーザー全員に土下座案件だけど一部の人だけね。
まず此処まで(何故か)到達し(てしまっ)た読者の人、すまんかった。次回作なんて唾を吐いてスルーし、真っ当な世界に戻ることを祈る。堅物読んで堅物(ダイマ)。すき(何の捻りもない好意)。
感想勢、汚染してしまったらしく土下座しか出来ない。他の作品でそのノリになるなよ、怖い。
評価勢、高評価もらえるような小説ではなかったと思う(素)。文学ドラッグには懲りて、真っ当なギャグを楽しむことを祈るばかりです。ありがとう。
後ネタにされすぎた作者勢(というか一人)、土下座しか出来ないけどゆるして。特に一名異常にネタにされてた、みすてないで。勝手に読んで勝手にオマージュするわたしを許容して(強欲)。なかよくして()。これからもネタにするよ(クズ)。しないかもしれない……()。明言すら出来ないというのがまた。

そして石川由依氏、中原麻衣氏、茅野愛衣氏には名誉毀損で訴えられても仕方ないですねハイ。特にエンプラは「絶対言わないセリフ集作ったったwwwww」みたいな状態。



せっかくなので最終回っぽく執筆で聞いた曲を挙げ連ねよう。
「ドラマツルギー」「トーキョーゲットー」「アウトサイダー」「お気に召すまま」「あの娘シークレット」「ナンセンス文学」「らしさ」「オドループ」「ふっかつのじゅもん」「瞬き」「Hologram」「ブリキノダンス」「激昂壮志」「僕は空気が嫁ない」「脱法ロック」「渇いた叫び」「ECHO」「Decisive Battle」「残酷な天使のテーゼ」「Beautiful World」「Lemon」「LOSER」「アンビリーバーズ」「パンダヒーロー」「マトリョシカ」「宙船」「ノンフィクション」「Hello,world!」「カルマ」「天体観測」「daze」「SNOBBISM」「ゴーストルール」「シャルル」「ロキ」「ヒバナ」「My Soul Your Beats」「夜は眠れるかい」「約束の絆」「成るがまま騒ぐまま」「This game」「Catch the Moment」「境界の彼方」「Super Driver」「Sincerely」「みちしるべ」「スクランブル」「Brain Power」「ユリーカ」「全力少年」「されど奇術師は賽を振る」「拝啓ドッペルゲンガー」「bad day」「猛独が襲う」「Z・刻を超えて」

計いっぱい。本当はもっと聞いた気がするけど確証が有ってタイトルに思い当たるのはこんなもん。目に止まったの聞くと新たな出会いが有るかもね、知らんけど。
全ての曲のボーカル、作詞、作曲、演奏に感謝。音楽は生きる糧。
全部youtubeとかニコ動で聞いちゃったけど内緒ね。そのうちちゃんと買いたいものです、金無いとわびしい。



はい、終わり。
これからもアバーズレーンより例の堅物小説を超プッシュしてけ。この小説のネタの3割ぐらいはあの作品をパク――――――オマージュだし。一応お許しは一度貰った。何で許したの?(素)
お礼が遅まきで恐縮ですが、ネタ出しと後書きのネタとして誠にお世話になりました。感想に順位をつけるのは邪道と思いますが、貴方の感想が一番嬉しかったです。ただ無軌道なの怖いから言葉で語って下さい。嬉し恥ずか死どころか死死死死死死みたいな状態でしたよ俺は。ただのファンだから、握手したら倒れる側だから…………。
………………いや他の皆も面白いから好きだったよ!? ホント、ホントだからな!?



ちなみにアズレン垢名は「くらうち」です。話しかけにくいとかそういうのを感じる必要が全然ない人種ですので、好きに絡んで下さい。以上。大湊って言うと変人が多いイメージがついた、俺は普通だよ普通(自称普通)。


ところで最終話だけどぉ!? お前ら元気出たか!?(遅すぎる一話前書きの回収)


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おまけ:設定集と雑多なお話

まあ本当におまけだけどな。


蛇足の蛇足。俗に言う設定集に近いやつ、つまりワンチャン怒られるやつ。怒られたら消すだけのこと、こういうのってライン引き皆わからないと思う。

別に此処に書いた設定は勝手に使っちゃって結構ですし、「真似をしてはならぬ」みたいな反面教師にしても結構です。

イメージとかけ離れた設定に震えろ。

 

 

【指揮官】

気軽に設定が生える人。身長体重は共に平均よりやや上程度、狂ってるけど理解できなくはないぐらいのキャラ構成。

基本的なスタンスは「ジョーカー」。転生者設定だから無茶なことも言うしパロディはむしろ自然だし、「まあモテるのもやむなし」とか巫山戯たこと抜かしてもメタ的に見てるとスルーできる。

初期案――――というかリメイク前の設定では「艦のロストから自己犠牲を恐れる自己犠牲野郎」という設定だった。今作では特に重い設定もなくなり、明るくそして根が善人のオッサン枠。とはいえ25歳。

チート持ちでも有る。問答無用のハーレム状態はチャームみたいなものだし、戦闘力も意外とある。頭のキレは元々ただのオッサンなので高くなってもたかが知れている。メンタルザコ。

使う上で意識したことは「うざくないが、読者じゃない誰か」の徹底。面倒くさいが喋りたくないほどでもないし、親近感は湧くけど読者が自己投影できないキャラにした。基本的にはそういう風に指揮官を作ってます、観客型の読書家なもので。

スターシステムが好きなので他作品でも顔を出すと思う。どうせ馬鹿やってる。

あまり表面化してないがかなり子煩悩、艦に対する対応が杜撰なのはそれが原因。

 

【エンタープライズ】

あんまり書くと小論文になるので出来るだけ短くしような。

元正妻候補、というか指揮官の中では一番目を掛けているつもり。原作との乖離が甚だしいやべーやつ筆頭。手紙を252通も書くな、出合い頭にプロポーズするな、でもかわいい。俺も頭がやられてしまったらしい。

どうしても普通のエンタープライズにして書くとツッコミ役に回る羽目になりそうなのでこの通り。というかぶっちゃけ某堅物の影響でこうなった、俺は元々ギャグ自体書かないと言いますか。

言動や行動結果は大きく違いますが根っこは変わらない。真っ直ぐ何でも突っ切ってくるし、それでいて合理性が有る。意外な話指揮官よりも良識的で、毎日のハプニングには時々「いやこれで良いのか?」と首を傾げているタイプだったりする。俺も思うよ、お前が言うのかって。

石川由依に土下座する理由そのもの。あの人が一生言わなくてもいいし言わないセリフが沢山収録されている爆弾。次回作はマトモに戻したい、こんなヤベー推しを抱えて俺は生きていけないよ。

やたら指揮官プッシュするのは単純に彼の万物への向き合い方が「真っ直ぐぶつかって終わり!」というアバウトなものだから。

異性として意識されることがたま~に有る唯一の艦。俺も書き終えるまで気づかなかった。

 

【赤城】

重桜のヤベー奴。元が元なので作風に反してぶっ飛び具合はあまり。狂気も後半のサン・ルイが気味の悪い追い上げ決めたし。

指揮官を狙うすげーお姉さんにするつもりだったが割と子供っぽい性格に仕上がった。ある意味一番人間味を帯びたキャラでしたか、まあ他のやつが共感理解その他諸々不可能だしね。

指揮官の部屋に日夜不法侵入するヤンデレ女。尚重さはエンタープライズに負けた模様。酔うと動きがにゃんにゃんになるというすっごいアレな設定を回収できなかった。

指揮官の写真で鎮守府の財政傾けたりと割と黒幕に立ちがち。メインストーリーとかイベントのせいでいつも黒幕の人みたいなイメージがね。

意外と仲間思いなイメージが有るのでエンタープライズにも何だかんだ付き合うのはそういう理由だったりする。赤城の解釈はその人の性格というか好み見えるなあという余談。

部屋に不法侵入云々は例のアレより流用。パクリポイントがビミョーなのでバレてない、多分。

指揮官に嫌われるのは本格的に駄目なのでそうなるとプライドをかなぐり捨てて何でもしてしまう悪癖が有る。多分エンタープライズとキスしろって言われてもするぐらいのイメージで書いてたと思う、ゆり好き。でもこれゆりじゃない。

赤城は大体理解されないタイプだが指揮官は分からないなりに付き合い方を考えたりするので、そこが特に好きみたいな設定。

 

【加賀】

重桜のふつーの奴。妙に不憫枠が板についている。リメイク前ではもっと出番多かったりするし、俺の第二の推しである。まあ大体みんな好きなんだケド。

三馬鹿空母の尊み担当。キャラ崩壊させるには甘えさせる路線に舵を切るしか無かったのである。どうでも良いけど一航戦って露出に抵抗なさそう。

縋る加賀、生える加賀、やられる加賀。大体これで説明が終わる出番だったと今でも思う。生える加賀は例のアレからの流用、だからパクリ小説なんだってコレ。

依存癖が強いので指揮官が手を焼くベクトルの違うタイプ。赤城にも共通するが「理解者」ではなくとも理解しようとするのが指揮官の長所であり、そこに惹かれているというのが細かい設定。意味もなくメロメロとは行かない。

戦闘狂設定がお空に飛んでいった。大丈夫、次回作もぶっ飛ぶやつはぶっ飛ぶから。

軽食を作るとかそういう気遣いのできる感じがとても好き。職場で態度の割に後輩にすっごい構われるタイプだよね。

 

【高雄】

加隈亜衣ごめんなさい案件。ぶっ飛びすぎたやべーやつ。誰もがコイツをクレイジーと認識できているはずだ、俺もそう思う。

戦闘に頭が振り切れたイカレ女。俺でもイカレ女としか評価できない、しかも本作ではイケメン枠として取り扱われている。ゲームの高雄こんなやつじゃねえ…………。

戦闘力は鎮守府で三笠の次に高い。登場しなかっただけで三笠も居るという小さなアピール。ちなみに斬艦刀を持てば不完全な燕返しぐらいなら打てる程度の技量。

普段は鍛錬馬鹿で、自分に出来る最良の貢献は戦闘だと弁えてる人種。何かをブッ叩くことに快感を覚えること以外は至って武人然とした扱いやすい艦だったりする。仕事は真面目にこなす。

意外と小型艦には慕われている方で、高雄は子供相手になると何をしても空振って何も出来ないかわいい女の子に戻ります。後本気で弱ってる相手への対応も戸惑う、エンタープライズは常に活きが良いからボコし甲斐が有るというオチ。

指揮官とは独特な距離感を持っている変わり種。恋愛的な好きがそもそも認識できないので上司として、意中の相手として、気の合う相手として、色んな距離感が混ざっている。総合的に言えば好き。

自分は武器に過ぎないという考えなので命令に戸惑いをもたない、というか気になったらすぐ指摘する。昔その手の事で尻込みをして失敗したのでスタンスを徹底しているらしい。

鎮守府最強の前衛として他の艦から指導を頼まれることも多いが、かなりのスパルタ。ただし厳しいだけで辛辣ではないのがミソ。

 

【サン・ルイ】

カナンから最も遠い重巡。貴様に安寧の地など不要、そうだろう?

原作の原型はゼロ。『正義でないものに存在価値はない』という異様に歪んだ価値観で動いていた一番やべーやつ。表面化しなかっただけでツェッペリンとかと同類、人間味が有る苦悩の混じった性格なので尚質が悪い。

戦闘力は開発艦だけ有って艤装なしなら高雄と互角。とはいえ偏った正義こそ掲げるが『危害を加えては駄目だろう、怪我は駄目』みたいな感じの性格なのでまず味方と矛を交えない。当たり前だよバカヤロウ。高雄は『暴力』に出たからこそ『暴力』で対応しただけ。フランス相当の出身なのに発想は古代中東である。

歪んでいるだけで本当に善人では有る。押し付けがましいので上手く止める役が必要、やっぱり指揮官が適任である。相性の良さは感じ取っているらしく、サン・ルイ当人も好印象。恋愛感情はゼロである。

自己評価が異常に低く、『悪を断ずる『正義』に執着する悪人』のフリをしていなくてはならない。自分はあくまで善人など程遠く、それが背伸びをしている。そういう構図だと思いこんでいるし、そうなりそうな状態。

唯一明確に未解決な問題が有るので、解決するのかは今後の指揮官次第。着任して間もないということでこういう立ち位置。

 

【グラーフ・ツェッペリン】

めっちゃ面白いやつ。何やらせてもろくな事にならなかった、お前は黙って静かに寝てろって時々思ってた。

破壊と混沌が好き。Z46も好き、指揮官も割と好き。後のやつは面白いことしてる間は好き。そういう道化師みたいなちゃらんぽらん気質でも有る。

良識は「識っている」ので立ち回りはかなり上手い。というかツェッペリンでも毎日巻き込まれるとゲロ吐くので当然の進化である。

本当は「大体ツェッペリンのせい」とかこつけて色々使いやすいキャラにする予定だった。そこまで来る前に飽きた、仕方ない。

甘いものが好きで小心者、弱い相手には割と強く出る。但し基本ヘタレ。こういう男主人公のほうが似合うキャラ付けで動かしていた。

混沌と破壊で満ちた鎮守府なのでかなりご満悦だが、偶に所属艦のぶっ飛び具合には怯えている。ツェッペリンじゃもう勝負なんねえだわこの魔境さあ…………。

指揮官はリアクションが豊富かつ感情豊かなので「ついつい知らぬ内に」イジってしまう。要するに好きな相手にするアレである。

 

【Z46】

本領発揮する前に完結されてしまった不憫枠。俺をくさやでビンタする権利をやろう。

唯の無知という空気感を常に見せながら喋っていたが一部確信犯の所がある。後常識というか予測能力に欠けるので無軌道にとんでもないことを言う事がよくある。

とはいえ思考は基本マトモ。問題は周りの異常さを許容する謎の懐の広さに有る。

 

 

以下サブキャラ、急激に紹介が雑になる。一回登場しただけだとサブとは言わない。

 

 

【瑞鶴】

別作品では主人公とかさせてた。アッチ更新したいね、もうリメイクするって書いたけど。

グレイゴーストの追っかけそして高雄二世。瑞鶴はいつも何処と無くヤクザ気質を感じたりするのは全然俺だけじゃないと思うんだよ。

 

【翔鶴】

説明するところがないが超のつくドヘンタイ。要らない所だけ先輩に似てしまった。

 

【グリッドレイ】

とある人の推しということで偶に出てきていた。写真ばらまき常習犯、鎮守府の個人財産の移動の7割はコイツのせい。

 

【愛宕】

拘束大好きオギャリティねーさん。愛の体現者というこの小説には重すぎる設定を抱えていた。もっと暴れさせたかった。

 

【三笠】

一回も登場してないけど指揮官が未だに性的に襲われなかったり命の危険がないのはこの人のおかげという設定。全部三笠ちゃんが居たからじゃないか…………!

 

 

 

【細かい設定】

基本的にアズールレーン所属という設定に見えそうだが指揮官はスーパー重桜人で「鎮守府」なので重桜に居る。出てこなかったがセイレーンも馬鹿なのでピュリーファイアとかは水着回にちゃっかり乱入したりしてる、指揮官はそれに胃を痛めたとかいう裏話。

アズールレーンとレッドアクシスは比較的友好的な世界しか書いてないのでコレも同様。そうじゃないと指揮官の鎮守府って他国の技術盗用とかで怒られてそう。

ちなみに指揮官割と偉い人。でも普段から上の対応に文句行ったり艦の命優先で作戦を放棄したりするので問題児扱い。仕事は出来るのでクビとかにはなってない。

一話で察せられるが艦の爆走タイムの損害を弁償するのは指揮官。指輪のダミーも有って常に金欠なので食堂通い。

後設定というか全く表に出なかったが、登場した艦は意外な話大体が後輩とか駆逐艦からは人気。俺は大の子供嫌いなんですが登場した艦は皆面倒見がいい。

赤城と加賀は普通に相手をしてやるし、エンタープライズは指揮官から隠れてこっそりお菓子とかあげてるイメージ。にくすべは出てきた通りむしろ奴隷、高雄はかなりあたふたしてる。何かしようとはしてる、でもから回るし逆に駆逐艦に察せられるレベル。

精神年齢が低いのは指揮官絡みが殆どだったというわけだな。

 

 

 

意外と書くこと無いから他所様からパクったところでも晒していくか…………。(自供)(逮捕直前)(そろそろ他作者ネタに頼るのやめろ)(ジャン・バールすこ)

この前言われちゃったし自分でネタ錬金しような!!!!!!!

 

・フォント芸(コレ書くまでほぼ使ったことなかったねウン)

・屋根裏鎮守府同盟(露骨なやつ。おこられてないよ)

・お客様コピペ(バレテナイバレテナイ…………)

・不法侵入ウーマン赤城(パンツは食ってない、舐めた)

・そもそも登場キャラの傾向(ダダ被りだな???????)

・怪文書(よく分からない発展とかしなくていいから…………)

 

並べてみると少なそうだが使用頻度が高い。丸パクリとかそういう問題ではなく怒るべきだと思うよ俺、当事者が言ってもアレだけど。

 

 

 

 

 

結局コレって書いて良いものなのだろうか。ぼくにはわからない。

次回作はパクり方(とは)をもっと分かりにくくだな…………とかそういう次第。指揮官がぶっ飛びすぎたからもっと薄味にしたいと思う。

 

次回作も何かこんなノリなんですけど改善点みたいなのを自戒するためにも書いておこう。

・地の文をもう少し堅く(どうしても不足が目立つ粗い感じになる)

・指揮官をマトモにする(いつの間にか変なやつばっかだった)

・ギャグ以外も欲しい(俺が嫌になってきてたしな)

・自分でネタを錬金しような(そろそろ頃合いだと思う)

 

実はギャグの引き出しみたいなのがえらく少なくてですね、必然的にアズレン二次から引っ張ってきているだけで別にパクろうなんてわけじゃないんですよ。ただ単にバリエーション無いだけ。

ナンカおもしれえギャグ作品ねえかなあ…………二次創作から学ぶのもまあ良いんだけど、やっぱプロの手が入った文庫とかにも手を出してみてえ。




アバーズレーン以上のホイホイタイトル無理です。。。。。。だれかたすけて


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