イナズマイレブン〜骨の力を手に入れた転生者は骨の髄まで頑張る〜 (Rêve)
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彼の話
『HISTALE』


1ヶ月も更新しなかった挙句、本編とはあまり関係ないかもしれない話を投稿して本当に申し訳ない。




どうして?何で俺を見てくれないんだ?彼はそう思わずにはいられなかった。思えば3歳ごろから、あまり見向きされなかった気がする。

 

彼、塵山刃は前世では孤独だった。両親からは相手にされず、純粋すぎる弟は親の影響を受けすぎていた。

 

友達がいるだろうと思えばそうではない。彼に友達なぞ一人もいなかった。

 

原因は左目にある。彼の左目が水色に光るからだ。単純に気味悪がられたのだ。

 

せめて親に相手をしてもらおうと彼は頑張った。学業に精を出し、スポーツも必死になって頑張った。芸術面においても努力をした。全ては親に自分を見てもらうために。

 

しかし、どんなに努力してもどんなに結果を出しても、彼の両親は相手をしなかった。それでも、諦めなかった。彼は決意をしていた。

 

それを10年間…18歳になるまで続けてきた。けれども、ダメだった。彼の努力は全て無意味だと言わんばかりに状況は改善しなかった。

 

その10年間の間に後の彼の人生に大きな影響を与えるゲームと彼は出会う。

 

それが『UNDERTALE』だ。きっかけは、たまたま動画を見ていたというものだったが、彼はそのゲームにのめり込み涙した。

 

何故なら、その結末(TPルート)が彼が望んでやまなかったものだからだ。

 

彼が家族と過ごしたかった幸せな時間。それが『UNDERTALE』にはあったのだ。

 

その後、もう一つの結末(Gルート)を知ったが、それをやろうとはしなかった。例えゲームと言えども、彼はその幸せな時間を壊したくなかったのだ。

 

しかし、現実はどうだ。ゲームは異種族同士が手と手を取り合って幸せを掴んだというのに、現実は同じ種族で差別し、争いを繰り返している。彼はそんな人間を憎悪した。

 

しかし、どんなに憎悪しても当時の彼はあまりにも優しすぎた。両親と弟からは無視され、他人からは陰口を叩かれても、恨むことが出来なかった。

 

彼は人を本当の意味で傷つけることを最大の禁忌としていた。傷つけてしまえば、幸せを壊してしまうから。

 

………彼が変わったのは17歳の時である。ある日、傷害事件を起こした。学校の教師を完膚無きまでに叩きのめしたのである。

 

左目のことを言われるのはまだしも、人間性を徹底的に否定するのには我慢出来なかったことが理由だった。彼の優しい心も限界を迎えたのである。

 

もちろん、彼の両親も呼び出される。呼び出された両親が必死に謝るのを見て、ようやく相手にされると歪んだ考えを抱いていた。しかし、それだけだった。

 

彼の家はお金は無駄にあった。そして、それを使ったのである。誠意を見せるから表沙汰にはしないで欲しい。結局は息子を罵倒した事は気にせず、体裁だけを気にしたのだ。

 

これが弟の灰飛だったらどうだろうか。両親は灰飛を溺愛していた。だから、人間性を否定したことをひたすらに追求するだろう。

 

けれど、自分は?自分は彼らの家族では無いのだろうか?彼は悲しむほか無かった。

 

この事件以降、彼は何もかもを諦めた。全てにやる気が出なくなった。最早、生きる事さえも。

 

この1年後、彼は自殺する。家族団欒の食事の時、家族の前で自分の首を切り裂いて。

 

その後、彼らがどう行動したかは知る由もない。

 

そして、今世に至る。

 

…現在も幸せかと言われればそうでもない。けれども、以前よりはマシなのは確かなのである。

 

彼が幸せになる日は来るのだろうか。




本編も頑張って投稿しますので、もうしばらくお待ちください。

ところで関係ない話ですが…




『SCPTALE』って何だよ(困惑)


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プロローグ
転生者の目覚め


Q.何で書こうと思った?

A.ある人物が私の創作意欲を刺激してくれたから。


「クソが。どういうこった」

 

一般的な子供部屋の中で、少年が一人呟く。彼の名は塵山刃。現在5歳の育ち盛りである。そんな彼だが、5歳児とは到底思えない口調をしている。

 

「俺は首掻っ切って死んだはずだよな?何で生きている。それより、何で若返ってやがる」

 

5歳児の脳で5歳児に似つかわしくないことを考える奇妙な光景。考える内に彼は断片的に記憶を取り戻す。

 

「神…転生…能力…ランダム…玩具…。あぁ、そうかい。完璧に理解したよ」

 

つまるところ彼は転生者である。しかし、多くの転生物とは違い、神からの詫びではなく、神々の玩具として転生している。その為、能力、転生する世界もランダムというクソったれな仕様である。

 

「しかも、両親はまたネグレクトときた!俺にまた自殺しろってか!後、何で灰飛もいやがる!あいつはいつ死んだんだよ!?」

 

彼は前世もロクな人生を送れていなかったようである。そして、何故か前世での弟である灰飛もいる。彼にとっては最悪な展開である。

 

「更に、能力と世界が合致してねぇよ!?何でイナイレの世界にUTとUT_AUの能力を持って転生しなきゃいけないんだよ!?身体能力はこの世界基準とはいえそのままだしよ!」

 

哀れな事に戦闘物(ガチ能力バトル)では無く、戦闘物(超次元サッカー)に転生した為に能力がほぼ活かせない。彼に一体どうしろというのだろうか?

 

「オーケー。少し冷静になろう。取り敢えず現状の確認をしなければならない」

 

「えーと、俺は塵山刃。前世と名前は一致。両親はネグレクトで3人兄妹。前世に妹はいなかったな。転生したこの世界はイナズマイレブンの世界。サッカーしないサッカーとして有名な作品だったはずだ。転生特典はundertaleとその二次創作以降の作品の能力。この世界でどう使えと。しかも、能力だけだから技能や身体能力は付属しない。クソか。殺傷能力があるような力を軽々しく使えるか」

 

彼のまとめを総括すると総じてクソ。つまり、人生ハードモードである。前世はハードモードどころかJin must dieレベルだった。

 

「…待て?AU?派生?つまり、俺も派生する存在の一つ?オリジナルは別にいるということか?」

 

5歳児どころか殆どの人間が理解したら、狂いそうなことを理解しようとし始める5歳児。正解を完全に導き出してはいるが。

 

「いや、オリジナルとかどうでもいい。それより…これから俺はどうするべきなんだ?」

 

彼の精神は思いの外強かったようだ。それだけの精神力を持っているのに何故自殺したのか

 

「取り敢えず、前世と同じ様にネグレクトから解放される為に、努力して色々やるしかない」

 

これからの行動の指針を決める。しかし、彼には重大な欠点がある。

 

「前世は何やったかな。えーと、ダンスに剣道に野球にギター…あぁ、乗馬もやったな。ダンスとギター以外やる気が起きないけど」

 

彼はやる気無い系男子である。基本的にやる気が無いことは当たり前である。

 

「能力を見せるは論外。逆に酷くなるな。やれやれ、この骨みたいにコツコツとやってくしかないか。骨だけに」

 

自分の手元に骨を出しながらジョークを言う。能力の保持者本人の得意なことである。

 

「サッカーは……やったことないけどな。今の両親が毛嫌いしてるんだよなぁ。灰飛は前世と同じなら、クソ親の影響を良くも悪くも受けやすいからな。どうしたものか」

 

イナズマイレブンにおいて、サッカーとは重要なスポーツである。サッカーによって全て解決すると言われるくらいである。野球でも似たようなものがあるけど気にしてはいけない、

 

「よし、サッカーやるか。それがいい。そうと決めたらさっそ「おにいちゃん?」ん?」

 

刃のすぐ近くにいる少女。名は塵山薫。刃と双子であり前世ではいなかった妹である。

 

「か、薫?いつからここに?」

 

「おにいちゃんがほねをだしてるところから」

 

刃から嫌な汗と恐怖が湧き出る。刃は彼女だけには家族の中で嫌われたくないのである。唯一の自分の味方であるから。嫌われでもしたら彼は自殺しかねない。

 

「えーと…見てたのか?」

 

「うん!おにいちゃんすごい!わたしにもおしえて!」

 

しかし、彼女はそんなことを知らずに純粋な眼差しで刃を見つめる。大好きな兄を疑う事などしないのだ。

 

「悪いな薫。これは俺にしかできないんだ。教えることはできない」

 

「えー…」

 

悲しそうな顔をする妹を目の前にして、刃はさっきまでの自分を恥じた。薫は記憶が戻る前から俺に気を掛けていたぐう聖であったことを忘れていたのだ。

 

「代わりにこのことは俺と薫だけの秘密だ。誰にも言うなよ?」

 

「…うん!かあさんたちにもはいとにもだれにもいわない!やくそくする!」

 

塵山薫は純粋である。大好きな兄が言うのだその約束を破ることはないだろう。

 

「それで、おにいちゃん?さっかーするの?」

 

妹である薫の登場で刃も忘れていたが、本題はサッカーをするかどうかである。

 

「…あぁ。やる!サッカーであのクソ親共を見返してやる!今すぐサッカーボールを買ってくるぜ!」

 

「でもおにいちゃん。いまよるだよ?」

 

現在時刻、夜8時。子供は寝る時間である。前世だったらともかく、今の姿では夜に外を出るなど不可能だ。

 

「…今日は寝よう」

 

「わたしもいっしょにねるー」

 

塵山刃の人生は前途多難である。




Q.転生特典いる?いらなくない?

A.特典が常に役に立つものだと思ってはいけない。


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サッカーとの出会いと能力の使いどころ

Q.何で過去からなの?

A.何故現代である必要が?


次の日。刃は薫と共に商店街にいた。目的はサッカーボールを買うことである。前世と同じく腐る程金はあるのだ。また無視するなら好きなだけ使わせてもらおうという魂胆である。

 

「おにいちゃん。ひとがいっぱい」

 

「あぁ、そうだな。人がいっぱいだな」

 

側から見れば微笑ましい兄妹のはじめてのおつかいに見える。しかし、実際には実年齢23歳と5歳児の23歳児の私的な買い物である。

 

「よし。到着だ」

 

「とーちゃく!」

 

辿り着いたのはスポーツ用品店。目的であるサッカーボールを買う場所である。

 

「いらっしゃい。おや?塵山さんとこのお嬢ちゃんじゃないか」

 

スポーツ用品店の店長が薫に話しかける。薫曰くご近所さんらしい。

 

「おじさん、こんにちは!」

 

「おう、こんにちは。ところでそこの坊ちゃんは誰だい?」

 

両親からガン無視状態の刃を知る者はこの街には少ない。だからこそ、薫しか知らないのである。

 

「薫の兄の塵山刃です」

 

「へぇー!薫ちゃんのお兄さんか!ウチに何か用かな?」

 

スポーツ用品店なんだからスポーツ用品を買いに来た以外ないだろうと愚痴る刃をよそに、薫が目的を言う。

 

「さっかーぼーるをください!」

 

「あいよ!サッカーボールね。2000円だよ」

 

「じゃあ5千円で」

 

それなりに高いサッカーボールを受け取り、お金を払う。そして、3千円のお釣りを受け取る。

 

「毎度あり!じゃ、サッカー楽しめよ!」

 

「ありがとうございます」

 

「じゃあね、おじさん!」

 

遂に目的の物を手に入れた23歳児。そして、早速

 

「公園に行くぞ。今すぐサッカーをするんだ!」

 

「いっしょにいくー」

 

微笑ましい兄妹は公園へと向かう。遂に刃のサッカーが始まるのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まずはボールを蹴ってみるか。感覚を掴まなきゃな」

 

公園に辿り着き、感覚を掴もうと練習を始める。しかし、中々感覚が掴めない。

 

「あれ?中々難しいな。あ、待て何処に行く」

 

「がんばれおにいちゃん!」

 

苦戦する兄を応援する妹。かなり微笑ましい光景である。

そんな、兄妹に声を掛ける者がいた。

 

「次、右に逸れる」

 

「あ?うわ!ホントだ!?」

 

「次は左」

 

「ま、マジ!?」

 

突如、現れ声をかけた少年は白髪で目が髪に隠れていた。

 

「サッカーは初めて?俺は賽野一。いきなりごめんね?」

 

「いえ、こちらこそ。しかし、何でボールの行き先がわかったんだ?」

 

「わたしもきになるー。みらいよち?」

 

少年、一が言ったことが当たったことが気になり話を聞こうとする二人。対する一の答えは簡単だった。

 

「足捌きを見ればわかるよ。よければ上手くコントロールできるように教えてあげるよ」

 

「お願いします」

 

土下座。見事までな綺麗な土下座だ。当然である。彼にとってはネグレクト問題を解決する糸口である。

 

「そこまでしなくても…まぁいいや。じゃあ、まずはー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夕方の5時。子供は帰る時間。しかし、そんな中熱い攻防を繰り広げる二人の少年とそれを見守る少女。

 

「まさか、こんな短時間で上手くなるなんて。君、才能あるよ!」

 

「そりゃどうも!妹が見ていたら負けられないんでね!」

 

「……ドキドキ」

 

感情が口から飛び出しているが無理もない。小学生にも満たない少年少女だそんなこともある。

 

「けど今日はここまでだな。まぁ、県外から来てるから明日来れるかわからないんだけど」

 

「そりゃ残念。でも、もっと練習して上手くなってやる」

 

「その意気だよ。じゃあね!…そういえば君の名前は?」

 

名前言ってなかったなと思い出す。そんな大事なことを忘れるなんてアレだが、小学生未満の子供にはよくあることである。

 

「塵山刃だ。こっちが」

 

「ちりやまかおる!よろしく!」

 

「刃に薫ね。覚えたよ。今度こそじゃあね!」

 

一が後ろを向いて走り去っていく。それを見送ってから二人とも振り返る。

 

「さて、帰るか。薫、行くぞ」

 

「あっ!まってよおにいちゃん!」

 

サッカーと出会った刃と薫。そして、新たな人物賽野一。彼らのサッカーはこれからである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

4年後

 

「サッカー舐めてたわ。ネグレクト云々無くても楽しいしやる気が出るわ」

 

刃、まさかのサッカーにどハマりする。これはダンスにも見られた兆候である。

 

「それに能力も捨てたものじゃなかったな。お陰で必殺技を編み出せた」

 

彼は与えられた能力をどうにかして使おうとした。その結果が必殺技である。そもそも、ATK0で使えば良かったのではないかと言われそうだが、彼はそれを良しとしなかった。それは本当の意味で同じ土俵でサッカーをしていないそうだ。だからこそ必殺技に落とし込んだ。

 

ボーン(・・・)と突っ立てると怪我するぜ?骨だけに!」

 

「う、うわぁぁぁ!」

 

ちなみに、現在試合中である。彼は地元のサッカークラブに入ったのだ。両親からは反対されたが「いつも俺を放ったらかしてんのに、何言ってんだ?」の一言で一蹴した。

 

「試合終了です!塵山刃!期待の新星により、ゴールは守られ全国優勝だぁぁぁぁ!」

 

さらに言うならば全国大会の試合である。彼のポジションはMFなのだが、DFが怪我したのでDFとして出場していた。

 

「流石、刃!俺たちに出来ない事を平然とやってのける!」

 

「そこに痺れる憧れるゥ!」

 

チームメイトが刃を褒め称える。彼らも刃を信頼しているのだろう。しかし、刃にとって嬉しいのが

 

「私の自慢の兄さんだもの。これくらい出来るわよ。けど、凄いわ兄さん!」

 

家族が褒め称えてくれることである。彼が前世からずっと求めていたものでもあった。

 

「よう薫。コツコツと頑張っただろ?骨だけにさ?」

 

「兄さんくだらない冗談はやめて。でも、兄さんかっこよかったわ!私は兄さんを誇りに思うわ!」

 

「決意を抱けば何でも出来るんだよ薫。そのおかげさ」

 

決意を懐けば何でも出来る。彼の能力も影響しているが、前世から変わらない心情だった。

 

「ま、帰るか。家に」

 

「うん。帰ろう。家に」

 

二人のこんな日々が和やかに続く…筈だったのだ。




Q.手抜いた?

A.早く進めたかった。許してください。


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まさかの事態

Q.過去編はいつ終わるの?

A.この話とあと1話。


3年後、塵山刃12歳。クラブチームでの最後の全国大会であり、その決勝戦である。刃は今までのどの試合よりも決意に満ちていた。

 

「相手は前回も戦った強豪か腕がなるな刃」

 

「へっ。新田。サッカーなんだからなるのは腕じゃなくて脚じゃないか?」

 

刃が話している少年…新田秀人は刃のある技のパートナーである。しかし、新田の刃を見る表情は暗いものだった。

 

「お前そんな屁理屈言うなよ!」

 

「そんなに怒るなよ。俺の技の骨みたいにカルシウムとれよ。骨だけにな」

 

「ウガァァァァァァァァァ!!!」

 

刃のジョークに叫ぶ新田。3年前から続いている何時ものことである。

 

「お前ら、そろそろ試合だ。行くぞ」

 

「「ハイ!監督!!」

 

この時まではまだよかったのだ。まさか、あんなことになろうとは誰もわからなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

試合が始まってから一進一退の攻防が続き、後半ももう終わる頃。1対1の同点で試合は続いていた。

 

「行かせるか!」

 

「塵山!新田!行け!」

 

「何!?」

 

相手の選手が味方の選手からボールを奪おうとするが、それら刃へのパスに繋がり、それは通った。

 

「行くぞ新田!」

 

「おう!」

 

ボールを空中に蹴り上げ、そこからゆっくりと回転を加えながら飛びボールを思いっ切り蹴り抜く。その技の名は

 

「「『ディタミネーション』!!!!!」」

 

刃の持つ最強とも言える必殺技。2年前に開発し、その時から新田と共に放って来た。いつもなら大抵止まられずに決まる。そう、いつもなら。

「塵山と新田の必殺技!これは……あぁっと!これはゴールから逸れてしまったぁぁぁ!!」

 

いつもと違い、ゴールから逸れてしまったのである。

 

「あー外しちまったな。どうす…」

 

「グァァァァァァァァァァァァァァ!!?」

 

「新田!?おい!大丈夫か!?」

 

「おっと?どうやら負傷者が出たようです大丈夫でしょうか」

 

新田が必殺技を撃った後に脚を抱えながら叫び出したのだ。見るだけで怪我をしたのだとわかる。

 

「タイムが取られました。新田選手が運ばれていきます」

 

「…………」

 

刃はそれを呆然と見ることしか出来なかった。

 

その後試合は再開されたが、刃はプレイに身が入らずに2対1で負けてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、監督と共に刃は新田が運ばれた病院に向かった。そこで聞いた新田の症状は…

 

「「粉砕骨折!?」

 

「はい。綺麗に砕けてました。このままサッカーを続けられるかどうか…」

 

その言葉を聞いて刃には今まで感じたことのない罪悪感が溢れ出した。

 

「面会出来ますが…どうなさいますか?」

 

「お願いします。刃、行くぞ」

 

「…はい」

 

医師に案内され、新田の部屋に辿り着く。中に入るとベッドで横たわっている新田がいた。

 

「監督!………刃もか」

 

「新田!大丈夫なのか!?」

 

「粉砕骨折なんだろ……?」

 

「大丈夫なわけないじゃないですか!二度とサッカーが出来ないかもしれないんですよ!?そこにいる奴のせいで!」

 

その言葉は刃に重くのしかかる。罪悪感はさらに湧き上がる。

 

「新田。そういうのはあまりよくないぞ」

 

「監督!俺はこいつの考案した技のせいで怪我したんですよ!?それを糾弾して何が悪いんですか!」

 

新田の言うことは最もである。刃の考案した技を使って怪我をしたのだ。それを糾弾する権利は充分にある。

 

「刃………!この際だから言わせて貰うぞ……俺は3年前からお前のことが大っ嫌いだったよ!」

 

「!!」

 

「3年前に入った時、お前は俺と同じくらいの腕前だった!なのに、お前はドンドン俺より上に上がっていった!その結果!お前が入る前はみんな俺を頼っていたのに、お前を頼るようになった!」

 

新田の言葉は刃に次々と突き刺さる。彼の決意は今やボロボロだ。

 

「挙句の果てに今回の怪我だ!…なぁ、人から立場を奪って活躍するのは楽しいか!?人を怪我させてやるサッカーは楽しいか!?お前なんかサッカーをやる資格なんたなー「新田!それ以上はダメだ!どんな理由があろうとサッカーをやる資格が無いだのと言ってはならん!」…っ!」

 

新田の口撃から刃を庇う監督。しかし、刃は

 

「いいですよ。監督」

 

「何…?」

 

「確かに新田の言う通りですよ…。俺はあいつの立場を奪ってあいつを追い込んだ。そして、今回も俺のせいで怪我をさせた。……こんな俺にサッカーをやる資格なんてないですよ…」

 

「刃…」

 

彼のサッカーをするという決意はほぼ折れていた。あんなにもやる気を出していたサッカーを彼はやめようとしているのだ。

 

「監督…俺はチームをやめます。こんな俺じゃあ…チームの邪魔だから」

 

「おい刃?待て!」

 

彼は病室から走り去った。そんな彼は走っている時、確かに泣いていた。彼はこれからどうなるのだろうか?




Q.何故同じ投稿日なの?

A.一気に書いたから。


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家出と始まり

Q.何故一つにまとめなかったの?

A.分けた方がしっくりきた。


その日家に帰った刃は刃を普段は無視し、ロクに相手もしない両親から酷いことを言われていた。

 

「だから、サッカーはやめろと言ったじゃない!全く…。こんなんだから貴方はグズなのよ!」

 

「貴様程度がサッカーなどと言ったときはヒヤッとしたよ。我々はあの時止めたからな?今回のは貴様だけの責任だ」

 

いつもはロクに世話もしない両親が自分たちは正しかったなどと言うことを延々とと言われ続けた。

 

(クソ親共が。普段は俺に構いやしない癖に。自分たちが正しかったみたいに振る舞いやがって……)

 

それを横から見ている黒髪赤目の少年…塵山灰飛。彼はそれを見ながら制止しようともしない。いや、刃のことを眼中にすら入れてない。

 

(お前は相変わらずガン無視かよ。可愛い弟だからって流石に限度があるぜ……)

 

このまま救いの手はないかと思われた。しかし、この塵山一家には良心がいる。

 

「母さん!父さん!五月蝿いわ!陽奈が泣いちゃったわよ!」

 

「ごめんねぇ、薫。今、あやしに行くわね。…明日覚悟しときなさい」

 

「ふむ。そうだな、陽奈の教育にも悪い。続きは明日にしよう」

 

救われた。刃は妹に心底感謝した。彼女がいなければこの家には帰ってなかったと言ってもいいくらいだ。

 

「兄さん…ちょっといい?」

 

「……あぁ」

 

二人は誰もいない部屋に入る。薫の用は刃には分かっていた。

 

「新田君…怪我させたんだってね」

 

「……あぁ」

 

薫の口調は新田を心配しているだけで、刃を責め立てるものではなかった。

 

「それはいいの…けど…チームをやめたんでしょ?確かに全国は最後だったけどまだ、卒業試合があったじゃない」

 

「俺に出る資格はない」

 

刃は言い切る。今の彼にはサッカーに対するやる気が微塵にも感じられなかった。

 

「……待って。サッカーをやめるつもりなの?」

 

「あぁ」

 

返答した瞬間、薫の表情は怒気を含むものに変わった。

 

「兄さん、貴方は7年前母さん達を見返すって言ってサッカーを始めたの覚えてる?」

 

「はっ。どうだったかな。もう覚えてねぇやそんなこと」

 

嘘である。彼は今でもその言葉をはっきりと覚えている。しかし、それを今、口に出来る精神状態ではなかった。

 

「………!兄さんのあの時の目は決意に満ちてた!あれから色んなことがあった!けれど、それでもあんな目をするのはサッカーくらいだった!いつもはやる気の無い兄さんが本気でやってる!私はそれがとても嬉しかったし、誇らしかった!それは兄さんにも言ってあった筈よ!」

 

「………ッ!」

 

薫の言葉は新田の言葉以上に刃に突き刺さる。当然である。最愛の妹からの言葉だ。

 

「それを兄さんは裏切った!決意があれば何でも出来るっていう心情も不意にした!私はもう……兄さんを信じられない!」

 

「なぁ、かお「五月蝿い!もう顔も見たくないわ!……………ぁ」…………」

 

刃の表情は固まり声は出なかった。薫も怒気を含む表情から怯えるような表情に変わる。

 

「に、兄さん今のは…「出てけ」で、でも「今すぐ出て行け!」……ッ!」

 

刃の左目は輝き、周囲から骨が生えて来る。刃の激情に呼応したかのように。それを見た薫は涙目で出て行ってしまった。

 

「…………悪いな。もうここにはいられない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、薫が刃を起こしに部屋に行くと…

 

「兄さん!早く起きて!休みだからって怠けるのは……あれ?」

 

もぬけの殻。誰もいなかった。ただ一つ。残された置き手紙があった。

 

『薫へ

よう。これを読んでるってことは俺はいなくなってるってことだな。あぁ、死んだ訳じゃあないぞ?けどな、俺はこの家にいるのが辛くなっちまったんだ。クソ親共は普段関わらないくせに、俺がしでかせば何もかもを俺のせいにする。灰飛は俺の事を相変わらずガン無視だ。その中でも、お前だけは味方だった。いつも俺に引っ付いて可愛い妹だった。でも、昨日の喧嘩で言われた、もう俺を信じられない。顔も見たくないは勢いで出た本心じゃなくても、流石に傷ついたぜ。…お前のせいではないんだ。けど、俺はこの家を出て行く。サッカーは…続けるよ。やる気が出るかはわからないけど、止めるよりはマシだから。最後に一つ。昨日の俺が部屋から追い出した時…怖かっただろ?ごめんな。本当にごめんな。こんなダメなお兄ちゃんで本当にごめんな。

刃より』

 

紙には涙の跡があった。彼にとっても薫から言われたことは本当に辛かったのだろう。けど、それ以上に薫と別れることと怖がらせた事が嫌だったのだろう。

 

「……兄さん。うわぁぁぁぁ!」

 

誰もいない部屋に泣き声だけが木霊した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、俺の家に来たのか」

 

「はい……」

 

刃は今、賽野一の家にいた。彼の家は県外にあるが、刃の能力を使えば一瞬でこれた。

 

「用件は分かるぞ。俺の家に住まわせて欲しいんだな?」

 

「はい…無理を承知で頼んでいます」

 

これを断られた場合彼は宿無しである。普通は断られる状況。しかし、一は違った。

 

「ウチの親は間違いなく良いって言うからな。お前の事気に入ってるみたいだし。それに、5歳頃からの付き合いだ。いいぜ、条件付で住まわせてやる」

 

「本当ですか!それで、条件ってのは?」

 

一が出した条件。それは思いもよらぬものだった。

 

「もう小学校卒業して中学生になるだろ?だから、ウチの中学校でサッカー部に入れ。数合わせでもいい。今は俺一人しかいないんだよ」

 

彼らの物語が今始まる。




Q.雷門じゃないの?

A.雷門じゃないよ。


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フットボールフロンティア編
部員がいないから勧誘しなきゃ。


本編。後書きの方にお知らせがあるよ。


そびえ立つ立派な校舎。かなりのお金を使っているのだろう。ここは私立臨界中学校。塵山刃が通う中学校である。

 

そこにある豪華とは言えないが質素とも言えない小さな部室。それが臨界中学校サッカー部の部室である。

 

「今年も始まったな新年度」

 

「今年もってまだ2年生だぞ俺たち?」

 

「龍牙の言う通りだな。刃、お前は年寄りか何かか?」

 

「刃が年寄りだったとして、仮面を四六時中付けてるお前は何なんだろうな斎」

 

その部室の中で何やら作業をしながら会話する4人の学生。話から察するに彼らは全員2年生のようだ。

 

一人は塵山刃。主人公にして転生者。家出した後は一の家に居候し、この学校に通っている。

 

刃に突っ込みを入れた血のように黒い赤髪と赤目もつ少年。彼は時雨龍牙。芸術家を目指す少年だが、サッカーに興味が湧きサッカー部に入った。

 

それに賛同し、もう一人の人物に突っ込みを入れられた少年、巫斎。彼の左目は重瞳と呼ばれる目をしており、それを隠す為に仮面をつけている。…今は外しているが。

 

最後の一人は黒髪で眼鏡をかけた少年、山本剛だ。この学園一の理系学生でマッドサイエンティストの一人。もう一人は斎である。

 

そして、この部活の部員最後の一人

 

「諸君!部活の時間だ!何をやっている!」

 

臨界中学校サッカー部部長兼キャプテン、賽野一。この部活唯一の三年生である。賭博とサッカーをこよなく愛するが、それ以外がポンコツである。

 

「新入部員用の練習メニューを考えてます」

 

「サッカー部の宣伝ポスターを描いています」

 

「救急箱の中身を確認しています」

 

「スポーツドリンクを調合しています」

 

上から刃、龍牙、斎、剛の順である。剛は何か危ないものでも作っているのだろうか。

 

「よろしい!では、練習「待て、ポンコツ部長」誰がポンコツだ龍牙ァァァ!」

 

練習に赴こうとしたポンコツを止める龍牙。そこから刃が続ける。

 

「一さん。部員5名はシャレになりません。監督が何故いるのか疑問なレベルです。さらに言うなら、今回11人揃わなければFFに貴方は出場出来ずに高校に行くことになります」

 

そもそも、今の2年生が入るまで一1人の部活である。4人も入ったことが奇跡に近い。

 

「うぐっ…確かに。なら、今年こそFFに出場できるに賭けよう!これなら「だから今すぐ勧誘を始めるんですよ。分かりました?」…はい」

 

大丈夫なのかこの部長という、不穏な空気が流れる中どうするか会議が始まる。

 

「まずは前回の反省から入ろうか。何かあるか?」

 

「「「「部長が勧誘してなかったこと」」」」

 

綺麗な一致である。部長が働いてないとは部活として大丈夫なのか。

 

「………その点は深く反省しています。他は?」

 

「勧誘対象が1年のみだったことだな。上級生も探せば何人か見つかったかもしれない」

 

「後は他の部活から流れてきた奴を探さなかったこともだ。現に俺は美術部から流れて来たし」

 

「そもそも、勧誘してたの刃だけじゃん。俺たちは部長と練習してたし」

 

「ならば、今回は全員でやればいいだろう?」

 

それも当然だとの事で早速行動に移そうとする5人。その時、部室のドアが叩かれる。

 

「すみませーん。誰かいませんかー?」

 

「ありゃ?誰だ?」

 

「ワオ。まさか来訪者が来るとは」

 

「斎、仮面…もうしたな」

 

「狐面で大丈夫かな…」

 

「待たせるのも悪い開けるぞ。あぁ、今行く!」

 

剛が部室のドアを開ける。そこには実に可愛らしい少年がいた。

 

「あ、こんにちは!1年生の狐野燐火です!サッカー部に入部したいんですけど…入部できますか?」

 

何という奇跡だろうか。勧誘を始めようとしたところで、まさかいきなり入部希望者が来るとは。

 

「もちろん!サッカー部は部員をいつでも募集してるよ!…まぁ、5人しかいないんだけど」

 

「それあんたのせいだからな?ポンコツ部長」

 

一の一言を龍牙が一蹴する。しかし、募集していると聞いた燐火は

 

「よかった!じゃあ入部届出して来ますね!」

 

スキップで離れていった。去り際に「あ、僕のポジションはFWです!」と言いながら。

 

「刃。とりあえず募集要項学校中に貼って来て」

 

「はい。じゃあ、他の人たちで学校中に知らせて来てください」

 

こうして彼らのFFへの挑戦が始まろうとしていた。




キャラ募集をします。詳しくは活動報告に書きますので見に来てください。


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入部希望者を探せ!

Q.初期メンバー(最初の5人)変人多いけど大丈夫?
A.大丈夫(震え声)


「しまった…。一さんの言うことを安請け合いするんじゃあなかった…」

 

あの後、募集要項を書いた紙を持って、校舎の中に入った刃。しかし、ある事を忘れていた。この学校が無駄に広いことである。

 

「地道にやっていくしかないか。入部してくれる奴が居てくれればいいが」

 

ぶつくさと言いながら壁や窓に募集要項を貼り付けていく。去年も同じことをやった甲斐があったのか、手慣れたものだった。

 

「これで一さんたちがサボってたらタダじゃおかない。やる気のない俺ですら危機感を抱いてるというのに」

 

一達が場合によっては危機的状況に陥るかもしれないが、残念でもないし当然である。そんなことをぶつくさと言いながら仕事をしている怪しい人物である刃に話しかける者がいた。

 

「よぉ、塵山!何やってんだ?」

 

刃に話しかけた少年は紅宮玲。黒髪をゴムで束ねた、目つきの悪い中性的な容貌をしている少年である。

 

「紅宮か。部員の募集要項を貼ってるんだよ。俺の部活は人数的にピンチでね。ところで紅宮、後ろの女の子は誰だ?」

 

刃が振り返って紅宮の方向を見ると、彼の後ろには髪、肌、その全てが白く赤い目を綺麗に輝かせる少女がいた。

 

「み、澪!?いつからいた!?」

 

「さっきからずっといたよお兄ちゃん。あ、紅宮澪です。よろしくお願いします、先輩」

 

礼儀正しく自己紹介をする澪。しかし、刃はこの紅宮兄妹を見て少し複雑な感情を抱いていた。

 

(仲のいい兄妹なことで。…昔は俺たちもあんな風に仲良かったんだけどな)「お前に妹なんていたのか。そいつは意外だな」

 

「話してなかったからな。そういえば何の部活だ?」

 

「サッカー部だ。今は5人しかいなくてね」

 

刃がサッカー部であることを伝えると玲が目を丸くした。何故と疑問に思っていると

 

「こ、この学校にサッカー部なんてあったのか!?」

 

「結構前からあったし、去年も募集してたぞ?何でその時入らなかったんだ?」

 

「こうしちゃいられねぇ!今すぐ入部してくるぜ!」

 

と走って行ってしまった。しかし、

 

「入部届を書かなきゃ入部出来ないぞ…。俺が持ってるのに」

 

「…ごめんなさい。お兄ちゃんは昔から少し抜けてるんです。去年はサッカー部の情報を聞いてなかったんだと思います」

 

うっかり癖により入部者を逃していたとは酷い話である。

 

「入部届を2枚ください。お兄ちゃんと一緒に私もマネージャーとしてサッカー部に入ります。」

 

「わかったよ。ほら持ってきな」

 

刃が入部届を2枚渡すと、ありがとうございますと礼を言って玲を追いに行った澪。

 

「あの二人、筆記用具持ってる様には見えなかったけど大丈夫か?職員室に行けばあると思うが…」

 

兄のうっかり癖を引き継いでいるところを見て、血の繋がった兄妹なんだなぁと思った刃。

 

「しかし、アルビノとは珍しいな。…いや、斎の重瞳の方が珍しいか」

 

刃は彼女の肌の秘密に気づいていた。アルビノ。細胞の色素が少なく日の光に弱くなってしまう病気である。

 

「さて、仕事を続けるかな」

 

入部者を得た刃は先程よりもやる気を出して仕事に励んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方その頃

 

「部長。入部希望者を探すと言っても、アテはあるんですか?」

 

「一応3年にある。入ってくれるかは分からない」

 

斎と一は3年生の教室があるフロアに来ていた。何やら一に考えがあるらしい。

 

「字!祐輔!二人ともいるか!」

 

一が教室を開けて二人の名前を呼ぶと、その名前を持つであろう二人が立ち上がる。

 

「私に何か用かしら一」

 

墨のように黒い長髪を持つ美しい少女。名前は一色字。一のクラスメイトである。

 

「あれ?一じゃん。何してるんだ?」

 

もう一人は短い茶髪で緑の目持つ少年で、名前を相羽祐輔。こちらも一のクラスメイトである。

 

「サッカー部の勧誘に来た。二人共サッカー部に入ってくれ」

 

彼らは3年生である。部活動引退前と言っても彼らは受験生である。本来なら部活動に励んでいる暇はないと断るところだが…

 

「サッカー!?やるぜ一!ここでサッカー出来るなんてワクワクしするぜ!」

 

相羽祐輔はサッカーバカである。何故、サッカー部に入っていなかったというと、彼は去年まで地元のサッカー教室で色々叩き込まれながら、小さな子供達にサッカーを教えていたのだ。今年から教室を卒業したため、学校でサッカーをすることができるようになったのだ。

 

「相羽先輩は確か去年まではサッカー部に参加する暇ありませんでしたし、勧誘できなかったのは仕方ありませね部長」

 

「ようやく裕輔とサッカーが出来る。お前はどうする字」

 

斎が納得し、裕輔が喜びを噛み締めている間に一が聞く。

 

「いいわよ。麻雀同好会も潰れちゃったし」

 

あっさりと入部を認める字。しかし、斎が彼女に対して疑問を覚える。

 

「一色先輩がサッカーをしてたなんて聞いてませんが…」

 

「字は体育のサッカーのとき手加減していたとはいえ、DFの俺を突破した。そのポテンシャルを見て勧誘したんだ」

 

「あら、嬉しいわ。そこまで評価してくれるなんて」

 

柔和な微笑みを浮かべる字。しかし、斎は別の事を考える。

 

(体育のサッカーということは部長は一昨年か去年のどちらかにそれを知ったということ。…一昨年知ってたとして何故勧誘しなかったんだ?)

 

彼女が潰れたと言っていた麻雀同好会は去年設立されたものである。一昨年から知っていたとすれば、設立前に勧誘出来たはずである。

 

(サボったなこの人。龍牙が知ったらヤバイぞ)

 

「ともあれ、これで二人は確保できた。これが入部届だ。書いて出してきてくれ」

 

「よしっ!さっさと書いて出してくる」

 

「裕輔。時間はたっぷりあるわ。慌てる必要はないわよ」

 

早くサッカーをしたい祐輔と焦らずゆっくりとしている字。二人も確保できたことに喜ぶ一。しかし、斎だけは

 

(部長。無事であることを先に祈っておきます)

 

一の心配をしていた。



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『殺戮兵器』と『猟奇画家』

タイトルがサッカーにあるまじきタイトルしてるけど気にしてはいけない。


龍牙は2年生の教室があるフロアにいた。入部してくれそうな、人物に心当たりがあるらしい。

 

(あいつサッカーに興味があるって言ってたから入ってくれるとは思うが…)

 

教室の扉を開けてまだ帰っていないかを確認する。放課後すぐなこともあってか探している人物は見つかったようだ。

 

「よう、伊佐奈。話があるんだ」

 

「……何の用だ?時雨」

 

龍牙が話しかけた青い短髪を持ち眼鏡を掛けた少年、伊佐奈慈朗。この二人が話し始めた瞬間、周りが静まり返る。彼らにはある異名があった。

 

「お、おい先生呼んだほうがいーんじゃねえのか?」

 

「そ、それで俺たちに被害が来たらどうするんだよ!?『殺戮兵器』と『猟奇画家』だぞ!?」

 

『臨界の殺戮兵器』伊佐奈慈郞と『臨界の猟奇画家』時雨龍牙。この異名を持つ二人は学校では何かと問題児扱いされている。そもそも、この二人がこの異名で呼ばれるようになったのは、たまたま伊佐奈が不良達に絡まれてる学生を見つけ、そいつらを撃退する。しかし、すぐに数を増やして戻ってきたところに龍牙が加勢。その時に必要以上にやり過ぎてしまったことから『殺戮兵器』と呼ばれている。龍牙はその事件の後血塗れのまま、その血で絵を描こうとしたことで『猟奇画家』と呼ばれるようになったのだ。

 

「いつも通り好き放題呼ばれてるな俺たち」

 

「そうだな。お前のはとても擁護できないが」

 

「ぐうの音もでない正論だよ。まったく」

 

当時、龍牙は血で描かれた絵という存在を知って、自らも描きたいと思っていたらしい。その結果美術部を追放されたのだが。

 

「お前サッカーに興味あるって言ってたよな?」

 

「言ったな。それがどうした」

 

「この紙に必要事項を書いて職員室に出して来てくれ」

 

龍牙が伊佐奈にサッカー部の入部届を見せる。それを見て目を見開く伊佐奈。

 

「この学校サッカー部なんてあったのか」

 

「いや、そこかよ!?どんだけ知名度低いんだサッカー部!?」

 

そりゃ部員が5名しかいない部活である。むしろ、何故知名度があると思っていたのか。

 

「まぁ、いいだろう。入ってやるよ、サッカー部」

 

「よし!助かったぜ伊佐奈!」

 

お互いに手を組み合う龍牙と伊佐奈。その光景を見た周りの生徒たちは何かヤバいことが起きると思ったそうな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

下校時刻まで部員を探したが流石に1日では11人も集まるわけがない。今日入部してくれた部員たちがサッカー部部室に集まる。

 

「紅宮玲だ。不良じゃねーぞ?そこんところ間違えないでくれ」

 

「妹の紅宮澪です。よろしくお願いします。私はマネージャーを務めさせてもらいます」

 

まず、最初に来たのは紅宮兄妹であった。入部届は無事に出せたらしい。

 

「改めて…狐野燐火です!ポジションはFWで小学校からサッカーをやっていました!これからよろしくお願いします!」

 

金髪で一部が狐の耳のような形をしている、人懐っこい表情が特徴の少年である燐火。よく見なければ女の子のようである。

 

「相羽裕輔だ!今年からようやくサッカー部に入ることが出来た!これからの試合を考えると超ワクワクするぜ!」

 

事情がありサッカー部に参加することが出来なかった裕輔は、勧誘された時と同じ様に喜んでいる。

 

「伊佐奈慈朗だ。時雨に誘われて来た。サッカーは初めてだがよろしく頼む」

 

伊佐奈も落ち着いた口調で自己紹介をこなし、何の問題も起こさなかった。一応、彼は優等生の部類に入っているからだろうか?

 

「一色字よ。一に誘われたから来たわ。これからよろしくね?」

 

一に才能を見出され勧誘された字も柔和な微笑みで彼らと会話している。

 

「まさか、6人も1日で集まるなんて…」

 

「そもそも、一さんが去年中に勧誘していればよかったとおもうんですけど」

 

刃の言う通りである。去年は一人で勧誘していたのだから人数も集まるはずがない。

 

「そういや剛は何してたんだ?」

 

「部室の掃除だ。明らかに私物が多かったからな」

 

「確かに筆とか試験管とか多かったね」

 

本当にそれはサッカー部の部室だったなのか。お前らサッカーしろよ。

 

「今日は顔合わせだけだが、明日も勧誘をして部員が集まったら練習開始だ!今日のミーティングは終わり帰っていいよ!」

 

一が部活を終わらせようとしたとき、斎が質問する。

 

「そういえば部長。一色先輩のことはいつ知ったんですか?サッカーの授業だったて言ってましたけど」

 

「ん?あー一昨年から知ってたよ?」

 

一昨年から知っていた。つまり、一が真面目に勧誘していれば去年から部員が増えていた可能性もあったということだ。

 

「…おいポンコツ。ちょっと部室裏まで行こうか」

 

「ま、待って龍牙!怒らないで!許して!」

 

「痛みは一瞬だ」

 

「助けてーーー!」

 

龍牙に引き摺られて、部室裏まで連行される一。この時みんな一斉にこう思ったという。この人が部長で大丈夫なのか?と。



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勧誘二日目。転校生も来たぞ!

Q.展開早いっすね
A.早く練習させたい


サッカー部の部員が増えた次の日、狐野燐火は上機嫌に学校へと登校していた。

 

「〜♪〜♪」

 

「朝から機嫌がいいですね、狐野君」

 

「あ、壬生さん!おはようございます!」

 

水色の髪を持つ少女壬生桜。燐火とは入学式の日に知り合い、通学路も同じだったため、たまに会って会話するくらいの仲である。

 

「おはようございます。何か良いことでもあったのですか?」

 

「うん!サッカー部に入部したんだ!これからが楽しみだよ!」

 

「サッカー部…この学校にあったんですか」

 

臨界サッカー部は存在が薄すぎて忘れられることが多いようだ。あの部長が宣伝しなかったこともあるが。

 

「?サッカー部に何かあるの?」

 

「友人がサッカーをしていたので。私もその影響でサッカーをやっていました」

 

「なら、サッカー部に入らない?絶賛部員募集中だよ!」

 

燐火は目を輝かせて桜を見つめる。その目を見ながら桜は答えた。

 

「いいですよ。私もサッカーはしたいですから」

 

「ホント!?これが入部届だから後で出しておいてね!」

 

「はい、わかりました。出したら部室に行けばいいですね?」

 

「それでいいと思うよ?一応、先輩たちに伝えておくよ!」

 

燐火、入部2日目にして部員を確保。これは今までの部員たちとは大違いである。

 

そんなこんなで学校に着き、教室が違うので別れる二人。燐火は教室に入って席に座る。しばらくしてから担任の先生がやって来て話を始める。

 

「皆さん、おはようございます。早速ですが、今日は転校生が来ています」

 

(転校生?珍しいなぁ。どんな人なんだろ?)

 

まだ学校は始まったばかりである。そんな時期に転校生というのは珍しいのかもしれない。

 

「じゃあ入ってきてもらうわね」

 

先生が呼びかけると扉を開けて入ってきたのは、茶色の目を持ち、オレンジ色の髪に一般的にアホ毛と呼ばれるものが立っている少女だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、2年生の教室でも騒ぎが起きていた。

 

「昨日の帰り道によった神社にいた奴を勧誘した!?」

 

「あぁ。隣のクラスにいる博麗って奴だ。今日、部室に行くと言っていた」

 

話しているのは玲と伊佐奈である。伊佐奈が、たまたま興味を持ったために立ち寄った、神社でサッカーの練習をしている奴を目撃したためサッカー部の話をして、入部を取り付けたと言う。

 

「しかし、よくウチの学校だってわかったな」

 

「…私立とはいえこの辺の地区に住んでいるんだ。可能性は高いだろ」

 

伊佐奈の返答に頭に?を浮かべる玲。どうやら頭は弱い方らしい。

 

「とりあえず塵山には伝えておいた。クラスは同じだから今頃話してるだろ」

 

伊佐奈が言った通り隣のクラスでは、刃と癖のある黒髪を持つ中性的な少年博麗霊二が話していた。

 

「へぇ。伊佐奈が誘ったのか。入ったばかりなのに早速勧誘か。一さんも見習って欲しいよ」

 

「俺もあの有名人がサッカー部の勧誘をしてくるなんて思わなくてさ。びっくりしたよ」

 

『殺戮兵器』と呼ばれるくらいには有名な人物に勧誘などされたら、誰だって驚くだろう。

 

「で、入ってくれるんだな?博麗」

 

「霊二でいいよ。あぁ、入るぜ!昔からサッカーをしてきたんだ。サッカー部があるなら入るに決まってるだろ?」

 

最もサッカー部はほとんどの生徒から忘れられているのだが。

 

「よし。放課後部室に集まるからな。その後、今日も勧誘だ」

 

「わかった。昼休みには入部届けを出しに行く」

 

こうしてまた一人、部員が増えていくのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話を1年生の教室に戻そう。やってきた転校生の少女。その名は

 

「始めまして!迅雷楓花です!これからよろしくお願いします!」

 

「では、迅雷さんは…狐野君の隣が空いてますね。そこに座ってください」

 

はいと元気よく返事をした楓花は燐火の隣の席に座る。

 

「それでは、1時間目の準備をしておいてくださいね」

 

先生が教室から出て行く。その瞬間、転校生である楓花に生徒たちが殺到する。転校生が受ける洗礼である。巻き込まれた燐火はなぜか楽しそうな表情をしているが。

 

そして、楓花に対して様々な質問が飛んでくる。何処から来たのか?兄弟姉妹はいるのか?好きなものはなにか。転校生が最初に聞かれるであろう質問ばかりである。しかし、ある質問に答えたとき周りは一気に静まる。

 

「迅雷さんは何か部活に入るの?」

 

「うん!サッカー部に入部したいんだ!」

 

サッカー部。その単語を聞いた瞬間、周りの人々は?を浮かべる。

 

「この学校サッカー部なんてあったけ…?」

 

「…え?ないの?」

 

「あるよ!?本当に影薄かったんだね!?」

 

燐火も流石に反論する。そりゃそうだろう。自分が真っ先に入部した部活が否定されたのである。

 

「やっぱりあるんだ!初心者でも大丈夫?」

 

「大丈夫だよ!むしろ、先輩方が初心者だしね!これが入部届だよ!」

 

事実である。本当に大丈夫かこのサッカー部。

 

「やったぁ!これを書いて出せばいいんだよね?」

 

「そうだよ、部活の時間になったら部室に案内するよ!」

 

こうしてまた、燐火の活躍により部員が増えるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3年生

 

「一?あなたは勧誘しなくていいの?」

 

「後輩たちがやってくれるよ」

 

((成る程。部員が増えるわけがないぜ(わ)))

 




Q.サッカー部の影が薄いとかそういうレベルじゃない

A.賽野一とかいうポンコツのせい。元々ポンコツキャラの予定ではなかったのに何でこうなった。


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遂に揃う部員たち

ようやく揃ったぞ!…口調とか合ってるか分からないけどな!


昼休み。何やら紙の束を眺めている刃。それに気づいた霊二が話しかける。

 

「刃、その紙は?」

 

「この学校の生徒の名簿だ。生徒会から借りて来た」

 

刃はこの学校内にかつて戦ったことのある奴がいるのではないかと思い、名簿を借りて来た。そして、狙い通りその名前を見つけた。

 

「榊影人。こいつは戦ったことがある」

 

「小学生の時にか?だとしたら、こいつもサッカー部の影が薄くて見つけられなかったのかもしれないな」

 

何もかも賽野一っていう奴の仕業である。キャプテン交代した方がいいのかもしれない。

 

「2年3組か。ちょっと勧誘してくる」

 

「俺は名簿を見て知り合いがいないか探してみる」

 

刃が教室を出て行くと同時に霊二も名簿を見る。刃は2年3組の教室に辿り着くと扉を開けて、件の人物を呼んだ。

 

「榊影人に用があって来たんだが…いるか?」

 

「いるよー。僕に何か用?」

 

刃の声に答えたのは緑色混じりの黒髪を持つ猫背の少年だった。

 

「お前、サッカーやってただろ?だから、サッカー部に入る気はないかどうか聞きに来た」

 

「うん、やってたよ。サッカー部あったんだね。もちろん入るよ」

 

即決である。そして、サッカー部忘れられすぎである。

 

「よし。部室の場所は…同じクラスの山本剛に聞いてくれ。今はいないみたいだが」

 

「わかったよ。それじゃまt「ちょっと待った!」」

 

刃と影人の会話を遮る紫がかった黒髪の少女。名前は影縫閃里という。

 

「サッカー部だって!?あたいも入れてくれ!サッカーが好きなんだ!」

 

「いいぞ。ほら入部届だ。これを書いてくれ、えーと…」

 

「あたいは影縫閃里だ!よろしく!」

 

影人を勧誘しに行ったらもう一人ついてくるというラッキーに見舞われ、心の中でガッツポーズをする刃。

 

「僕は榊影人だよ。よろしくー」

 

「あぁ、よろしく!榊と」

 

「塵山刃だ。よろしく頼むぜ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、2年2組の玲、龍牙、伊佐奈は

 

「部員の候補が一人だけいる」

 

「マジ?何で昨日言わなかったんだ?」

 

「確かにな。幾らでも言う時間はあっただろうし、そのまま勧誘すればよかったのにな」

 

こちらも玲が部員の候補になる人物を思いついたらしい。

 

「うっかりしてたんだよ…。今日になってそうすればよかったと思った」

 

「お前うっかり多くねぇか!?ポンコツ部長よりはマシだけど」

 

「そのうっかりをサッカーでやらなければいいがな」

 

玲の弱点が早速露呈する。あと、一は結構意図的にやってるのでポンコツ部分差し引いても酷い。

 

「善処するぜ…。話は戻すが蒼葉楓っていう奴が入ってくれるかもしれねぇ」

 

「蒼葉…?あまり関わりないな」

 

「2年1組の奴だな。しかし、紅宮兄。何故、彼女が入ってくれると思うんだ」

 

「長い付き合いなんだよ。スポーツも好きだった気がするし」

 

そう言って立ち上がり、2年1組に向かおうとする玲。それに続いて龍牙も立ち上がる。伊佐奈はここに残るようだ。

 

「長い付き合いって幼馴染か何か?」

 

「そうなるな。蒼葉いるかー?」

 

2年1組の扉を開けて目的の人物を呼ぶ玲。その声に反応して、蒼い髪をポニーテールにしている、凛々しい黄色の目を持つ少女が立ち上がる。

 

「紅宮、私に何か用か?」

 

「そうだぜ。蒼葉サッカーに興味はないか?」

 

玲の言葉を聞き、少し考え込む楓。しかし、すぐに答えた。

 

「そうだな…。興味はあるな。しかし、何故だ?」

 

「隣にいる時雨もそうなんだが、サッカー部に所属してるからよ。お前も入部しないかって誘いに来たんだ」

 

「いいだろう。スポーツは好きだからな。それにお前の誘いだ。あまり断りたくない」

 

玲の見込んだ通り、楓はサッカー部に入部することになった。一は彼らの勧誘する姿を見習った方がいい。

 

「助かるぜ蒼葉。じゃあ入部届を…やべ、教室に置いてきた」

 

「そんなことだろうと思ったぜ。ほら、これが入部届だ」

 

「ありがとう。確か時雨だったな。出した後は部室に行けばいいのか?」

 

「それでいいと思うぜ?…場所はわかるのか?」

 

「わかるぞ。結構見る機会があったからな」

 

まさか、サッカー部の存在を知っているとは誰が思うだろうか。

 

「ならいいんだ。じゃあ放課後にな」

 

「またな蒼葉。後で会おうぜ」

 

「あぁ。楽しみにしているぞ紅宮」

 

遂に部員が揃った。臨界サッカー部の物語は漸くスタートラインに立てたのだった。

 

 




練習終わったら監督登場の予定


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練習風景

練習まで漕ぎ着けた。後は監督出して練習試合だ。


「まさか2日で集まるとは思ってなかった」

 

「あんたが去年も勧誘していれば集まってたよポンコツ部長!」

 

放課後、サッカー部部室に集まる16人の少年少女。既に各々の自己紹介を済ませている。

 

「………。改めて自己紹介しよう。俺が部長兼キャプテンの賽野一だ。早速だがサッカーの試合経験がある奴は手を挙げてくれ」

 

一の質問に手を挙げたのは燐火、桜、玲、影人、刃、霊二、裕輔のみだった。勿論一も経験者である。

 

「じゃあ、試合経験はないが練習くらいならやったことあるって奴はどのくらいいる?」

 

次の質問に手を挙げたのは龍牙、斎、剛、閃里だった。

 

「つまり、残りの4人は初心者か…。今日は経験者主体でポジションごとに練習しようか」

 

「一さん。練習するのはいいんですけどグラウンドはどうするんですか」

 

現在、グラウンドはラグビー部に奪取されている。この学校のサッカー部である。勿論、影が薄くて忘れられているであろう。

 

「刃。その問題は俺と伊佐奈で解決してきた」

 

「あぁ、楽勝だったな」

 

なんと、龍牙と伊佐奈がその問題を解決していた。しかし、どうやったのだろうか。

 

「いやーサッカー部に使わせてもらえるように交渉に行ったら、即座に土下座されたからなぁ」

 

「全く…俺たちは交渉に来ただけだと言うのにな」

 

どうやら向こう側が勝手に譲ってくれたらしい。異名持ちは格が違った。

 

「なら、早速グラウンドに向かおうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

グラウンドに辿り着き、各々ポジションごとに練習を始める。

 

「よーし!一色先輩のために僕たちがFWの基礎シュートを教えよう!」

 

「うふふ。お手柔らかにね?」

 

まずはFW陣。字を除いた全員が経験者なので、字に稽古をつける形になっている。しかし、字は初心者。どうシュートを打てばいいのか分からない。そこで桜から提案が出る。

 

「狐野君、まずは見本を見せましょう。そうすれば一色先輩も分かりやすいはずです」

 

「確かに!えーと……榊先輩!お願いします!」

 

「いいよ。…そら!」

 

影人の放った勢いのあるシュートはゴールの角に飛んでいき、そのままネットに突き刺さった。

 

「今のがシュートです!まずはボールを見ながら真っ直ぐ飛ぶように練習しましょう!」

 

「わかったわ。………!」

 

字の放ったシュートは勢いはあるもののゴールから大きく逸れてしまった。

 

「今のは力の入れすぎだな。軸足がしっかりしてたのはよかったけどよ」

 

「でも、お兄ちゃんもたまにシュート外すよね」

 

「…それは言わないでくれ」

 

玲が字のシュートの問題点を言うが澪により自分もシュートを外す時があると、ツッコまれてしまう。

 

「あら?経験者にもそんなことがあるのね」

 

「あ、あはは…。けど威力はあったからコントロールさえものにできれば即戦力になるぜ」

 

「そうですね紅宮先輩!それじゃあ一色先輩、練習を続けましょう!」

 

FW4人による字への指導は下校時間になるまで続くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、MF陣。こちらはドリブル練習を中心に行なっていた。

 

「チッ!中々上手くいかねぇな」

 

初心者である伊佐奈はボールをキープしながらドリブルすることが、中々上手くいかないようだ。

 

「いや、始めたばっかの龍牙もそんなもんだったから気にしない方がいいぜ?」

 

「そうだぜ。刃とポンコツ部長のお陰でここまでにはなったけどな」

 

「確かに始めて1年とは思えないな」

 

始めて1年だという龍牙が安定性のあるドリブルをしているという事実に、驚いている霊二。

 

「そうか。なら、地道にやっていくしかないか」

 

「あぁ、その方がいい。焦ると上達しないからな。MFは前線にボールを繋ぐことや、DFの様に守りに入ること、そしてFWの様に攻撃することも求められちまう。まさに粉骨砕身の思いでやらなきゃいけない。…この骨のようにな!」

 

この中でも試合経験のある刃と霊二は交代で攻めと守りの練習をしていた。その対戦の中で刃が最も使用してきた必殺技を使う。

 

「スパインシャッター!」

 

「な、何だって!?うわっ!?」

 

刃が片腕を挙げると地面から無数の骨が突き上げてくる。スパインシャッター。それはまさに骨の壁である。

 

「中々やるな刃!俺も負けてられないぜ!」

 

「…ん?粉骨砕身に骨のように?また、変なジョークを…」

 

「必殺技なんてあるのか。やはり、興味深いなサッカーは」

 

刃の必殺技を見て各々思うところがあったようだ。その後も練習は続き、終わる頃には伊佐奈のドリブルはかなりマシなものになったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、最も初心者が多いDF陣。試合経験者も一しかいない。

 

「DFにおいて重要なことは相手のボールを奪うことだ!というわけでだ。俺からボールを奪ってみろ」

 

一がとった方法は4人全員で協力し、一からボールを奪うというものだ。

 

「じゃあ、早速行きますよ部長」

 

まずは斎が一にスライディングを仕掛ける。しかし、これは軽々と躱されてしまう。

 

「あたいに任せな!そらよ!」

 

次に閃里がチャージをかける。これも一は突破する。

 

「あたしが止める!」

 

すかさず、楓花が一の前に立ち塞がる。これを見た一は楓花の飛び越えるようにボールを蹴り抜かそうとする。

 

「私が取る!はぁ!」

 

しかし、一が追いつく前に素早い動きで楓がボールを奪う。これを見た一は満面の笑みで各々を評価する。

 

「うん。斎は1年前と比べると本当に上達したね。影縫は力あるチャージが良かったよ。迅雷は間髪入れずに俺の前立ち塞がって行動させなかったね。蒼葉はそれに合わせた俺の行動について来てボールを奪ったのが良かったよ」

 

一は4人が何の作戦も考えずにこの行動を取れたことを考えると、かなりの逸材であるという事を認識した。初心者にしてはよくやる二人と、練習のみとはいえそれなりの腕前を持つ二人。そして、こう決断する。

 

「よし。じゃあ次は少し本気でやるよ。覚悟はいいか?」

 

「「「「え」」」」

 

この後、少し本気を出した一に4人は翻弄され一人、また一人と倒れていった。しかし、最後まで諦めなかった人物が一人だけいたらしい。ちなみに運動量が最も多かったのはこの5人だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

残るGK陣はお互いにシュートを打ち合い、それを止めるという方法で練習していた。

 

「バーニングキャッチ!」

 

燃える手で回転してボールを止めるバーニングキャッチで剛のシュートを止める裕輔。

 

「やっぱり必殺技は必要ですか」

 

「そうだな。全国にいる奴のシュートを止めるには必殺技は絶対に必要だな」

 

裕輔の言うことは最もでこの世界では必殺技を持っていなければ、やっていけないくらいの超次元ぶりである。無かったらシュート技は殆ど止められないだろう。

 

「なら、開発するしかないか…。相羽先輩お願いします」

 

「おう!何度でも打ち込んでやる!」

 

その後は裕輔による必殺技講義を受けながら必殺技開発に挑む剛を主体とした練習となった。必殺技を開発出来たのかは秘密らしい。

 

それぞれが有意義に練習をして、下校時間を迎え帰路につく。そんな様子を練習開始から物陰で見ている人物がいた。

 

「ほう…。16人揃えたのか。しかも、4人は初心者…。これは扱きがいがある」

 

そう言うと男も帰路につく。そして、次の日この男の正体が明かされることになるのだった。

 

 

 




ちなみにまた募集を始めました。


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現れてしまった監督

全員が集まるとやっぱり話さない人が出て来てしまう。なんとか全員喋れるようにはしたかったが…燐火と影人君も霊二が喋ってないですね。ごめんなさい。


次の日の放課後。昨日の様に部室に集まる部員たち。

 

「よし。今日も昨日と同じように練習しようか」

 

一の一言でそれぞれの場所に行こうとする。しかし、それを引き止めたのは剛の言葉だった。

 

「…みんなに非常に残念なお知らせがある」

 

その言葉に廃部という言葉がよぎる。剛から出た言葉は意外なことだった。

 

「監督が帰って来てしまった…!」

 

その言葉に初期の5人以外が首を傾げる。

 

「?監督が帰って来たのはいいことなんじゃないんですか??」

 

「そうですね。山本先輩の言っていることは矛盾している気がします」

 

楓花と桜は監督が帰って来たことを喜んでいないことに苦言を呈した。

 

「普通はそう思うだろうな。だが、あいつは違う」

 

「正直…ちょっとアレだな」

 

「何度殴ってやろうかと思ったことか」

 

「仮面を外すのを強要してくるのは本当にやめて…」

 

「1年でここまで上達したのは確かだが恨みしかない」

 

初期メンバー5人は監督に対して並々ならぬ恨みがあるようだ。

 

「いったいどんな奴なんだ?その監督」

 

「こんな奴だよ。2年2組紅宮玲」

 

玲が監督がどんな奴なのかを聞こうとしたとき、後ろから声が聞こえた。その声の方向に全員が目を向ける。そこに立っていたのは黒髪の桜色の目をもつ壮年の男だった。

 

「私が私立臨界中学校サッカー部顧問兼監督の桜花・ハルトマンだ」

 

(結構いい人そうに見えるけど…どこがダメなのかしら)

 

(桜花・ハルトマン!?あのプロ選手がここに!?…ってことは)

 

見た目からいい人と判断した字。サッカーバカ故にプロ選手の情報を集めている祐輔は何かを察したらしい。

 

「さて、昨日の練習を見させてもらったが実に酷いものだった。初心者がいるのにも関わらず一があのような練習をさせていたのは理解に苦しむな」

 

昨日の練習を見ていた監督は一がやらせた練習方法を真っ先に否定した。

 

「初心者だからこそサッカーの基本的なことを教えるために練習させたんだろうが!」

 

「時雨の言う通りだな。あの練習のお陰でドリブルは出来るようになった。あれの何処が悪かったというんだ?」

 

龍牙の言い分は最もである。それに同調する伊佐奈。しかし、監督はそれを分かっている。

 

「ふむ、確かにその通りだ。だが……経験者以外の者たちは体力は最後まで持ったかね?」

 

その言葉に初心者組や実戦経験無し組は昨日のことを振り返る。

 

「毎日練習しているあたいでもキツかった…」

 

「私もスポーツは好きだが、本格的にやるのは初めてだったからな…」

 

閃里と楓が昨日の練習はキツかったことを言うと監督は溜息をつく。

 

「…まずは体力の増強から始めなければならないか。まぁ、ご覧の有様だ。現状においてFF優勝など不可能だろう。そもそも、初心者がついていけないような練習を行うとはキャプテンとしてどうかね?」

 

(は、話に聞いていた通りだ。桜花・ハルトマン。ドイツ人とのハーフでドイツでプレイをしていたプロ選手。しかし、その性格と正論を言うが言い方の問題によりウザったい人物だったていうのも本当だった!)

 

祐輔は監督である桜花の情報を知っていた。彼は度々その性格と言動で同僚と揉め事を起こすことで有名な選手だった。しかも、プレイが実際上手なのと、言っていることが大体正論のため更に相手をイラつかせる。

 

(た、確かにこれは一も苦い顔をするわ。でも、今回は一に責任があるし…)

 

実際問題、初心者がついていけない練習を行った一に問題があるので何も言い返す事が出来ない。…もう少し言い方を変えれることさえ出来ればまともになるのだが。

 

「しかしだ…。昨日の練習で唯一良かったことがある。それは君たちが逸材であるということが分かったことだ」

 

その発言には全員が目を丸くする。桜花の性格には少々の問題があるが、人をこき下ろしている最中に唐突にベタ褒めを始めるということもその一端である。

 

「澪君。例の物をみんなに渡してくれ」

 

「はい。わかりました」

 

澪が荷台を使って持って来たのはダンボール箱。その中には大量のリストバンドが入っていた。

 

「今からそれを両足に付けてグラウンドを10周してもらう。何分かかってもいい。ただし、歩かずに絶対に完走しろ。走り終わったら20分ほど休憩してもう一度10周だ。それを今日はずっとやってもらう」

 

桜花の練習は単純な走り込みだった。誰もがそれくらいなら出来ると思うだろう。しかし、こいつは性格に難のある監督であるということを忘れてはいけない。

 

「ただし…そのリストバンドは一つ1kgだ。さぁ、走り抜きたまえ」

 

桜花は普通の練習はさせない。彼はそういう性格なのだ。そして、全員こう思ったという。こいつは鬼だと。

 

「そして、もう一つ連絡がある。今週の土曜日は練習試合だ。覚悟しておけ」

 

帰ってきたと思ったら罵倒され勝手に練習試合の日程を決められたサッカー部。本当にこんな監督で大丈夫なのだろうか?…それは神のみぞ知るのかもしれない。

 

 

 

 

 




まだ募集は続いてます。


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練習試合前日

試合ではない。試合は次回です。


あれから3日たち、各選手たちの体力も向上した。その結果ある程度の連携の練習を行っていた時のこと。

 

「一。こっちに来い」

 

桜花に呼ばれる一。…行くとき思いっきり睨みつけてるが残念ながら自分の髪の毛で目が隠れていて意味がない。

 

「明日の練習試合…」

 

「…あんたマジで言ってんの?」

 

何やら一悶着ありそうなことになっているが、そのまま練習に戻される。各々の練習を見て行こう。

 

「一色先輩。こちらにパスを!」

 

「お願いね壬生ちゃん!」

 

FW女性陣はいい連携を見せており、初心者だった字もそのポテンシャルを少しずつ発揮して来ている。

 

「おい榊!?お前突っ込みすぎだ!こっちパスだ!」

 

「っごめん。頼んだよ」

 

「トラップミスしないでくださいねー!」

 

「任せろ!よっ…と!」

 

一方のFW男性陣は何だかんだ個性の強い影人や玲のプレイが目立つがこにらも良い連携を見せている。

 

「俺を突破してみろ伊佐奈ァ!」

 

「余裕だ」

 

「何だと!?」

 

MF陣、1年間練習してきた龍牙をあっさり抜き去る伊佐奈。龍牙はDFが苦手である。なのでしょうがないと言えよう。強化はしなければならないが。

 

「スピニング…カット!」

 

「…ッ!必殺技はズルいな博麗」

 

「必殺技なしでも必殺技を超えていく奴らだっているぞ?だからもっと基礎を覚えなきゃな」

 

龍牙を抜いたはいいが霊二のスピニングカットでボールを奪われてしまう伊佐奈。それを非難するがある意味正論を言われてしまう。

 

「へっ。まぁ、もっと頑張るんだな」

 

「「「お前も練習するんだよ」」」

 

刃、何と練習をサボってやがる。それを3人に咎められようやく参加するが、いまいちやる気が感じられない。…ここが一番心配である。

 

「通しませんよ賽野先輩!」

 

「そうか。でも、上がお留守だ!」

 

DF陣の恒例となってきた4対1の一戦。みんな初期の一からは取れるようになってきたが、今の一からは全く取れない。

 

「そうは問屋が」

 

「おろさないよォ!」

 

楓と閃里がスライディングで一からボールを奪おうとするがこれも避けられる。

 

「貰った!」

 

斎も着地の隙を狙って一に相対するが、一に軽々と避けられてしまう。

 

「あぁぁぁぁ!また負けたぁぁぁ!」

 

「クソッ!だが諦めなければいつか勝てる!続けるぞ迅雷!」

 

「はい姉御!」

 

楓花と閃里がまた負けたことを悔しがる。…楓花は閃里を姉御と呼んでいるようだ。

 

「しかし、普段はその…お粗末なのに何故サッカーだとこうも上手くなるんだ?」

 

「知らないよ…。ホント部長は何でサッカーはそんなに強いんですか。ポンコツなのに」

 

楓と斎は普段のポンコツな一とは似つかない強さに苦言を呈している。

 

「迅雷と影縫はその域で向かって来てくれ。あと蒼葉と斎。オレはポンコツじゃない!」

 

「「いやそれはない(です)」」

 

「そんなバカな!?」

 

閃里と楓花にもポンコツだと言われ膝から崩れ落ちる一。お前普段の態度を見つめ直せよ。…何だかんだでここが一番仲がいいのかもしれない。

 

「カウンター…ドライブ!」

 

剛が裕輔のシュートを殴りつける。そのままボールは地面に落ち、ゴールに入るか否かという寸前で止まる。

 

「やったな剛!必殺技の完成だ!」

 

「相羽先輩。やりましたよ俺」

 

剛は必殺技を取得するまでに成長していた。初期メンバーの初心者3人組の中では上達は一番早い方である。

 

「俺も負けてられないぜ!…剛?お前何やってるんだ?」

 

「ボールがどの位置に来た時に必殺技を使えばいいか計算してます」

 

「そんなことしなくてもいいんだよ!必殺技ってのは気合でどうにかなるんだから!」

 

しかし、この二人致命的なまでにタイプが違う。サッカー馬鹿である裕輔は気合でどうにかなる理論を進めるが剛は計算して使うというタイプである。…つまり相性は最悪のはずなのである。

 

「…一理ある。では、その気合も計算に入れましょう」

 

「そうそうそれで…って違ぁぁぁぁう!」

 

しかし、凹凸コンビだからかコントのようなやり取りになってしまう。このGK達、いいコンビである。

 

「皆さん、監督が呼んでいます。至急集合してください」

 

近くでそれぞれの練習を見ていた澪が拡声器を使い、全員を呼ぶ。ちなみに日傘を使っているので外にいてもある程度は安心である。

 

「全員来たな?呼んだのは明日の練習試合についてだ」

 

臨界初となる試合の話。全員が固唾を飲んで桜花の話を聞く。

 

「明日の相手は模無中学校だ。言ってしまえば弱小…。だが、お前たちはまだそのレベルにすらいたっていない!」

 

その言葉を聞き、全員が悔しそうに顔を歪める。…何人か睨みつけているが。

 

「悔しいならば勝て!その為に練習をしてきた!明日のフォーメーションはこれだ!」

 

桜花がフォーメーションを書いた紙をみんなに見せる。

 

 

【挿絵表示】

 

 

このフォーメーションを見て刃が一言物申した。

 

「これ霊二と壬生以外経験者いねぇじゃねぇか」

 

「むしろ、経験者を入れただけ感謝して欲しいものだね。経験者に頼ってるだけでは話にならん」

 

「やっぱ、マジでやるのかよ…」

 

一はこの事実を事前に聞かされていたようだ。刃は心無しか喜んでいる(・・・・・)ように見える。

 

(それもあるが一年のと練習のみでやってきた奴らの実力を見たいというのもある)

 

桜花はこれからの為に彼らの実力を改めて把握するためにこのメンバーにしたようだ。お前それを口に出して言え。

 

「まぁ、精々頑張りたまえ。私はたまに指示を出しながら応援することくらいしか出来ないからねぇ?」

 

「私も応援しか出来ませんが皆さん頑張ってください」

 

明日の試合…どうなるか楽しみである。




募集枠後二人残ってるから参加してくれると嬉しいです。


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初めての試合!VS模無中学校

本当に本当に申し訳ない。ようやく投稿です。
試合描写本当に難しい…。

模無中フォーメーション

【挿絵表示】



「いやー!2年振りの試合だ!」

 

「あんた試合に出ないだろ」

 

試合当日。場所は臨界中学校で行われる。刃と一以外の人間は先にグラウンドに行っていた。

 

「そうなんだけどさ。一昨年のあの試合からずっと試合してなかったから」

 

「…一さん。俺は」

 

「数合わせだろ?その事は監督と俺以外は知らない。けど、俺たちは待ってるからな?」

 

一が部室から出て行く。刃はそれを見ていることしか出来なかった。しばらくして、刃も部室から出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『皆さん!これから臨界中サッカー部初めての試合、臨界中対模無中がまもなく始まります!』

 

『見てる人少ないけどね…あはは…。あ、解説は僕、潺斗真が。実況は隣にいる本庄冬斗がお送りします』

 

グラウンドでは既に練習試合の準備は出来ていた。…しかし、つい最近まで存在を忘れられていたのに実況と解説がいるのはどういうことなのだろうか。

 

「へぇ、もう準備できてんのか」

 

「そうみたいだな。あ、模無中のキャプテンがいる」

 

刃と一の見つめる先には模無中のキャプテン、山田太郎がいた。山田は一たちに気がつくと近づいてきて、手を差し出す。

 

「初めまして。臨界中のキャプテンですね?山田太郎です。本日はよろしくお願いします」

 

「こちらこそよろしく。賽野一です」

 

二人のキャプテンが握手し、その後お互いのチームがポジションにつく。そして、審判のホイッスルが鳴る。臨界中初めての試合の始まりである。

 

『さぁ、臨界中ボールから今キックオフです!』

 

ホイッスルと同時に燐火は桜にパス、そのまま桜がドリブルで突き進んでいく。

 

「ここは通さない!」

 

模無中のMF高橋が前に立ち塞がるが、桜は無理をせずに後ろにいた龍牙にパスをする。

 

「よし!いくぜ俺の初陣だ!」

 

龍牙も経験者の桜にも劣らないドリブルを見せ、あっという間にゴール前に辿り着く。

 

『りゅ…時雨選手何という突破力でしょうか!1年前にサッカーを始めた人物とは思えません!』

 

『時雨選手の突破も見事ですが、無理をせずにパスを出した壬生選手も見事でした』

 

ゴール前に辿り着いた龍牙はシュートするが、これはキーパーの山田に簡単に防がれてしまう。山田がボールを前線に上げ、今度は模無中の攻勢となった。

 

「そんなのありかよ!?クソがっ!」

 

「そんなこと言ってないで早く戻ってください時雨先輩」

 

いとも簡単にカウンターされ困惑する龍牙に桜が冷静に指示を出す。まだまだ経験者には及ばないようだ。

 

『鈴木選手!既に臨界のDF陣に切り込んで行く!』

 

『うーん。やっぱり初心者が多めだからカウンターとかやられますよね…』

 

鈴木はDFの斎を突破しようとする。しかし、一との特訓を繰り返してきた斎にとって鈴木のドリブルは生易しいものだった。

 

「まさか、部長との特訓が役に立つなんて…」

 

鈴木の持っているボールを奪い、すぐさま霊二にパスする。しかし、そのパスは少し逸れてしまい、佐藤にボールが渡ってしまう。

 

「し、しまった!」

 

「ドンマイだ斎!たまにはこういうこともある!」

 

斎のミスを励ます霊二だが、その間に佐藤が鈴木にパス。近くにいた楓花がパスをカットしようとするも失敗してしまう。

 

「あ、あれ?上手く出来ないなぁ…」

 

そのまま鈴木は迅雷を振り切り、遂に剛との一騎討ちになる。

 

「グレネード…ショット!」

 

鈴木の必殺技…ただのシュートのようにも見えるがグレネードショットが放たれる。

 

「カウンタードライブ!…計算通りだ」

 

しかし、剛はすでに必殺技を完成させていた。ボールにアッパーカットを叩き込み、ボールに逆回転を掛けて地面に落とす。ボールはそのまま直進するがゴールギリギリで止まった。

 

『臨界中キーパー山本選手必殺技で見事に止めました!』

 

『今のは止められてよかったですね。けど、パスのミスなど不安が残るプレーが見られたのでちょっと厳しいですね』

 

実況と言う通り、今のはパスミスが招いたシュートチャンスである。これが続いてしまった場合、臨界中は負ける可能性が出てくる。

 

「頼むぞ博麗!」

 

剛がボールを蹴って霊二にパス。今度はパスミスも無く綺麗に渡る。

 

「おう任せろ!」

 

「「そう簡単に通すかよ!」」

 

「悪いけど通させてもらう!」

 

斎藤と田中の二人が霊二を止めようとするが、霊二はいとも簡単に抜いてしまう。流石経験者といったところか。

 

「伊佐奈!頼むぜ!」

 

「任せろ。そう簡単に取られやしない」

 

ボールを伊佐奈に渡す。伊佐奈も霊二との特訓の成果か、模無中選手を寄せ付けない。

 

「狐野…!」

 

「はーい!じゃ行くよ!」

 

燐火がパスを受け取り、ボールに縦回転をかける。ボールは摩擦からか発火する。そしてそのボールを燐火は蹴った。

 

「フリクショナルヒート!」

 

「必殺技!?ムーンサルトスタンプ!」

 

地面を這うように進むボールを山田が必殺技で止めようとするものの、間に合わずそのままゴール。臨界の初得点である。

 

『ゴォォォォォォォル!狐野選手!必殺技で模無中キーパー山田を破ったァァァァァァ!』

 

「博麗選手から伊佐奈選手。伊佐奈選手から狐野選手という繋ぎはほぼ初心者チームという点からすると、非常にいいものでしたね。後叫び過ぎると喉潰れますよ

 

少ない観客も燐火のシュートによる得点で盛り上がる。

 

「やった!僕が一番最初に得点だ!」

 

「狐野君、はしゃぐのは後にしてください。早くポジションに戻りますよ」

 

「あらあら。いいじゃない。嬉しいのだからはしゃがせてあげても」

 

「一色先輩も狐野君を撫でないでください。余計はしゃぎますよ」

 

シュートを決めてはしゃぐ燐火を諌める桜だが、字が撫でているため更に収拾がつかなくなっている。桜はこのチームで苦労するかもしれない。

 

その後、審判に二人とも注意されて試合再開。鈴木から佐藤。佐藤から田中にボールが渡る。

 

「時雨!そっちに行ったぞ!」

 

「待てよ伊佐奈!俺ディフェンスは苦手…あぁ!?」

 

龍牙、フェイントも無しに田中に軽々しく突破される。霊二も田中を止めようとするが、斎藤にパスを出され止められず。

 

「っし!あたいの出番だなァ!」

 

「う、うわっ!?」

 

しかし、斎藤の前にいた閃里がスライディングをかける。斎藤は何とか回避するが、ボールをキープしきれずこぼしてしまう。

 

「ふむ。いらないならボールは貰っていくぞ」

 

このこぼれ球を楓が取る。そして、前線にいる伊佐奈にパス。伊佐奈もそれを受け取ることが出来た。しかし、敵DFの加藤に阻まれる。

 

「悪いが通させて貰う!」

 

「そうはいくか!クイックドロウ!」

 

「!?しまった!必殺技か!」

 

加藤の必殺技クイックドロウでボールを奪われる伊佐奈。ボールは吉田に渡る。

 

「行かせるか!スピニングカット!」

 

「ッ!!」

 

衝撃波の壁が吉田を弾き飛ばし、霊二がボールを奪う。すぐさまフリーの桜にパスを出す。

 

「しまった!だが通さん!」

 

「甘いですね。そよ風ステップ!」

 

立ち塞がる中村をそよ風ステップで突破してシュートを撃つ。

 

「そう簡単に点はやらない!」

 

しかし、これは山田に取られてしまう。

 

『壬生選手のシュートは惜しくも山田選手にとられてしまいました!これは反撃されてしまうかーッ!?』

 

『臨界中はカウンターをされると崩れる可能性がありますからね。どう対応するのか気になりますね』

 

山田は前線の鈴木に向けてロングスロー。そのボールを奪おうとするも、パスカットの練習をしていないDFたちでは流石に無理があったのか、ボールは鈴木に渡ってしまう。

 

「もう一度…!グレネードショット!」

 

青い弾丸がゴールの隅に向かって進み出す。剛は冷静に再びカウンタードライブで止めようとするが

 

「あびせげり!」

 

近くにいた佐藤のあびせげりでシュートコースを変えられてしまう。

 

「な、なんだと!?クッ!!」

 

突然の出来事に対応できず、シュートはそのままゴールに突き刺さってしまった。

 

『ゴォォォォォォル!!模無中!一点を返しました!!これで同点です!!』

 

『シュートチェインでシュートコースを変えることで、山本選手に必殺技を使わせませんでした。臨界中にとってこの一点がどう響くかわかりませんね』

 

そして、前半終了のホイッスルが鳴り響く。それぞれの選手がベンチに戻って行った。

 

『ここで前半終了です!解説の潺さんここまでの試合はどう思いますか?』

 

『1対1の同点…ですが、臨界有利ですね。主力である賽野選手などの経験者が控えてますからね。一方の模無中は少々不利ですね。グレネードショット以上の必殺技はないでしょうから。さっきの荒技はそうな何度も通用する物でもないですし』

 

『成る程…僕はサッカーのことほぼわからないけど。それでは10分のハーフタイムを挟んで後半戦に期待しましょう!』

 

『…今の小声で色々台無しですよ』

 

試合はまだ始まったばかり。後半どう戦うかでこれからの臨界の未来は決まっていくだろう。

 

「一…?君はパスカットの練習はさせたのかね?」

 

「え、えーと…」

 

「………試合が終わったらグラウンド10周だ」

 

…やはり、前途多難である。臨界の明日はどっちだ。




必殺技(オリジナルのみ抜粋)
・フリクショナルヒート
ボールを地面で縦回転させて摩擦熱を発生させる。その摩擦熱で発火したボールをシュートする。燐火の小学校時代の主力シュート技。

登場人物
本庄 冬斗(ほんじょう ふゆと)
龍牙の幼馴染。龍牙が試合をすると聞いて放送部から機材を借りて、勝手に実況している。銀髪のポニーテールの少女である。サッカーのことはあまり知らない。

潺 斗真(せせらぎ とうま)
剛の友達。冬斗の実況に便乗する形で解説に参加している。緑髪の気弱そうな顔な少年。剛の暴走(実験)を止めるストッパーでもある。

山田 太郎(やまだ たろう)
模無中キャプテンのキーパー。何処にでもいる一般人Aなので、顔が覚えられない。というか模無中はそういった連中の集まりである。なお、ゲーム的要素を加えるとLv55くらいでトリプルディフェンスを覚える模様。

あと、この小説ではUNDERTALE要素はあっても、DELTARUNE要素は多分ないです。作者まだ見てすらないからね。しょうがないね。でも、希望と夢の草原好き。


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初勝利へ!!

難産だった…自分で作っといてあれだけど、模無中特徴無さすぎない…?


「皆さんお疲れ様です」

 

ベンチに戻ってきたメンバーをスポーツドリンクを渡しながら労う澪。

 

「…なるほど。これならあるいは…」

 

監督である桜花は何やら考え込んでいる。さて他のベンチのメンバーはというと。

 

「剛!最後のあれは仕方ない!切り替えていけよ!」

 

「わかりました。あの速度計算上なら必殺技は使えました。次は止めます」

 

「グラウンド10周…10周ならまだ…」

 

「一元気出して、ね?あなたはまだまだ頑張れるわ」

 

「狐野!お前あんな技持ってたのか!」

 

「使うのは初試合って決めてたんです!いいサプライズでしたよね?」

 

「必殺技は僕たちも使えるからなー。でも、他の人たちは驚いたと思うよ?」

 

剛を励ます裕輔。何故かへこんでいる一を元気づけようとする字。狐野の必殺技に反応した玲と影人。そんな中刃はというと…

 

「塵山先輩起きてください!」

 

「おい刃!?何で寝てるんだよお前!?」

 

寝てやがる。楓花と龍牙が起こそうとするが起きる気配が一向に無い。やる気ないにも程があるだろう。

 

「…放っておけ。後半もメンバーを変えずにいく。私からは以上だ」

 

思考の海から帰ってきた監督により、後半戦もメンバーを変えないことが決まり、全員気を引き締める。…寝ている刃を除けばだが。

 

『さぁ!後半戦の始まりです!臨界中模無中ともにメンバーの入れ替えは無い模様です!!」

 

『臨界中は今日の試合を今のメンバーで勝つつもりなんですかね。となると模無中にある程度有利になってしまいますが…』

 

解説が何かを言っている最中にホイッスルが鳴り後半戦がスタートする。

 

ホイッスルと同時に鈴木が臨界陣営に切り込んでいく。

 

「そう何度も通すかったんだ!…あれ?」

 

龍牙が鈴木から奪おうとするが、これまた簡単に抜かれてしまう。しかし、今回は霊二のカバーにより鈴木からボールを奪うことに成功する。

 

「すまねぇ!助かったぜ霊二!」

 

「感謝してる暇があるならさっさと攻めろ!」

 

霊二からパスを受け、前線に切り込む龍牙。しかし、その前に高橋が立ちはだかる。だが、龍牙には奥の手があった。

 

「いくぜこっそり練習してた必殺技!『マッドジャグラー』!」

 

「え?ちょ…うわぁぁぁ!!」

 

何と相手にボール越しに連続で膝蹴りをした上に最後に明確に蹴りを加えている。普通ならファールとなるところだが…

 

『りゅ…時雨選手のプレーはファールにはならないんですか?』

 

『必殺技ですので何の問題もありません。世界公認のルールブックにもそう示されています。但し、まれにファールを取られる可能性もあります』

 

何の問題もない。流石は超次元サッカーである。…絶対そういう問題では無い。

 

「このまま一気に切り込んでやるぜ!攻めるのは得意だからな!!」

 

そのまま、敵陣に切り込んでいく龍牙。模無中のDFである中村が前に立ち塞がるが、喋る事もなく吹き飛ばされる。そのまま、キーパーとの1対1に持ち込むことに成功する。

 

『な、何て強引なドリブル何でしょうか!!相手を寄せ付けないドリブルであっという間に1対1だーッ!!流石、龍牙!!』

 

『あれが時雨選手の持ち味何でしょう。あと名前で呼んじゃってますよ本庄さん』

 

…実況が公正さを失っているが気にしてはいけない。

 

1対1になった龍牙は迷わずシュートを選択する。…しかし、ノーコンだったためにこのシュートは外れてしまい、ゴールキックになってしまう。

 

「あ、あれ?上手くいかないもんだな……」

 

「私にパスを出せばよかったじゃないですか。少なくとも先輩よりコントロールはいいです」

 

「うっ……すまん……」

 

龍牙が怒られている間にも試合は続いていく。山田が蹴ったボールは前線の鈴木たちの元に向かう。

 

「そう簡単にいくか!…って距離感が掴めない!?」

 

近くにいた斎がカットしようとするも、仮面を付けているがために視野が狭くなり、距離感がつかめずに空振ってしまう。しかし、すぐに近くにいた楓花がカバーしたため、難は逃れる。

 

楓花はすぐに前線にいる霊二にパスを出す。霊二は難なくそのパスを受けとり、一人二人とドリブルで抜き去っていく。

 

『博麗選手!凄まじいドリブルだーーッ!!模無中の選手たちを一切寄せつけない!!』

『博麗選手は、臨界中では数少ない経験者ですからね。模無中の選手たちでは、彼を止めるのは難しいです』

 

更にDFも抜き去り、キーパーと1対1に持ち込む。しかし、霊二は燐火に向けてバックパス。燐火もパスを受け取り、シュート体制に入る。それを見て山田も身構えるが——

 

「なーんてね!」

 

「な!?ここで更にパスだと!?」

 

燐火の選択はシュートではなくパス。そのパスの先には字がいた。

 

「私も頑張らないと…ね?シュートは確か…こう!!」

 

字のシュートは枠内から少し逸れてしまい、ゴールポストにぶつかり跳ね返る。山田はそれを見て安堵したのか、構えを解いてしまう。

 

「油断しましたね。ゴールは貰います!」

 

「ッ!カバーが早い…!間に合わない!」

 

既にカバーに入っていた桜によって、そのボールはゴールにねじ込まれる。臨界中2点目である。

 

『ゴォォォォォォォォォォル!!臨界中2点目ェェェェェェェ!!霊二選手の見事な突破劇から、狐野選手の騙し討ち!!それに合わせた一色選手と、最後にボールをねじ込んだ壬生選手も素晴らしいプレーでしたッ!!…けほっ』

 

『確か狐野選手はクラブチームに所属していた時から、騙し討ちが得意だったと聞いています。情報源は……臨界中の監督ですね。選手の情報を漏らしてもいいのでしょうか?』

 

桜花からすれば、少し調べればバレることなので、バラしてもいいだろうということなのだろう。…心配する気持ちもわかるけれども。

 

「壬生ちゃんごめんね〜?私が入れられれば、苦労をかけずに済んだのに……」

 

「気にしないでください。一色先輩はまだ始めたばかりですしね」

 

他愛もない会話をしながら、所定の位置に戻る。鈴木がボールを蹴って、試合再開。しかし、鈴木はここで予想外なことを行う。

 

「グレネードショット!!」

 

なんと、上空に向かって必殺技を放ったのである。放った先には佐藤がいた。

 

「あびせげり!!」

 

ここまでは前半の最後と同じようなシュートチェインである。しかし、あびせげりが放たれた場所には田中の姿が。

 

「スピニングシュート!!」

 

何と更にシュートを重ねたのである。弱小校として勝つ方法を考えてきたのだろう。その結果がこのシュートチェイン戦法だった。

 

「まずいぞ…!必殺技があるとはいえ、3つも重ねられたら剛じゃ「あたしに任せてください!!」って迅雷!?何をする気だ!?」

 

このシュートを目の前にしても、怯まずに突っ込む楓花。彼女のとった行動は——

 

「これでどうだぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 

何とシュートに対して頭で対抗したのである。…しかし、弱いとはいえ3つのシュート技が合わさっているのである。そう簡単に止められるわけも無い。少し持ちこたえたが、弾き飛ばされてしまう。

 

「山本先輩!後はお願いします!!」

 

「あぁ…任せろ。『カウンタードライブ』!!」

 

楓花の体を張ったディフェンスを無駄にはしないと、全力の必殺技をボールに叩き込む剛。そのかいあって、ボールはゴールラインを割るギリギリで止まった。そして——

 

『ここでホイッスルです!!結果は2対1!!臨界中の勝利です!!潺さん!最後のプレーはいかがでしたか!』

 

『模無中の最後の作戦にも驚きましたが、あれに真正面から立ち向かっていく迅雷選手にはもっと驚きました。これからの活躍に注目していきたいですね』

 

『ありがとうございます!!本日の試合の実況は本庄冬斗、解説は潺斗真さんでした!!』

 

実況が締めのコメントを言っている間に挨拶を済ませ、臨界中の選手たちはミーティングに入る。

 

「さて…よく勝利した!!これで我々はようやく弱小校という一歩を踏み出した!!」

 

桜花にしては随分と甘い言葉である。彼も勝ったことは嬉しいのだろう。

 

「だが、これで満足するな!更なる高見を目指せ!!私からはそれだけだ!!では解散!!」

 

その言葉を聞き届け、それぞれが帰る準備をしはじめる。キャプテンである一も帰ろうとするが——

 

「一、君はグラウンド10周を忘れずにだ」

 

「げっ!?覚えてたのか!?」

 

結局、グラウンド10周をさせられて帰ることになった。大丈夫かこのキャプテン。

 

その様子を見ながら桜花はあることを考えていた。

 

(次の試合は……あそこがよかろう。試合の結果はどうであれ……精神の強さも見たいからな)

 

…不安しかないが大丈夫なのだろうか。




試合描写が難しい…精進を続けます…


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連携補強のために

雑になった感が否めない……。早く先に進めたいと思うほどにこうなりそうで怖い……。



休みである日曜日を挟んで月曜日。模無中と練習試合を行なってから行う、初の練習である。

 

しかし、まだ部活の時間になっていないためか、部室にいるのは楓花、一、字、龍牙、刃の5人だけである。部室で何をやっているのかというと——

 

「えーと…全然わかりません!!」

 

「迅雷ちゃん。これが平和(ピンフ)でこっちが断么(タンヤオ)よ?」

 

「で、こっちが混一色(ホンイツ)でこれが混老頭(ホンロウ)だ」

 

「アンタらは何で迅雷に麻雀を教えてんだよ!?」

 

何故か一と字が楓花に麻雀を教えている。中学生に何教えてんだ。…最も全然理解できていないようだが。それにツッコミを入れる龍牙。こんな状況にも関わらず、黙り込んでいる刃。このまま眺めているだけかと思いきや、ついに口を開く。

 

「迅雷——お前兄弟いるだろ」

 

「え?いますけど…どうかしました?」

 

その返答を聞いて、顔を嫌そうに歪める。そして、忌々しげに告げる。

 

「……もしかして、その兄弟の名前は迅雷誠次か?」

 

「え!?誠次兄さんのことを知ってるんですかっ!?」

 

……チッ。マジかよ。あの自己中野郎に妹がいたなんてな。あぁ、知ってる。よく…な…」

 

その言葉にイラつきを隠そうともしない刃。その様子に不思議がる一以外の3人。

 

「せ、誠次兄さんと何かあったんですか…?」

 

「まぁ……色…々…と…。すまん。この話はなかったことにしてくれ」

 

「それはないですっ!気になるじゃないですかっ!」

 

「ホントそれは無いぜ刃。俺も気になるぜ」

 

「まぁまぁ。塵山くんにも話したくないことくらいあるわよ」

 

(うん……。俺は知ってるから分かるぞ刃。…でも、そこまで話しといて話さないのは無いぞ!)

 

刃が口を噤んだので、問い正そうとする楓花と龍牙。それを止める字。唯一事情を知っている一も苦笑いしている。

 

そんなことをしている内に、他の部員たちも集まり、今日の練習が開始される。

 

「さて……この前の試合で分かったと思うが、我々には連携が足りん。特に斎。パスミスが目立っていたぞ」

 

その一言に返す言葉も無いと項垂れる斎。仮面のせいで距離感が掴めないこともあるが、どうもパスが苦手なようだ。

 

「そこで今日はパス練習を重点的に行う。連携の補強をするためには、基礎からやらねばな。何せ我々には経験が足りんのだからな」

 

監督の桜花の言う通りで、臨界の殆どが試合経験が無かったか、初心者である。他の学校とは違い、経験が圧倒的に足りない。

 

「さぁ、さっさと始めるんだ。時間はいくらあっても足りんからな」

 

この一言で練習がスタートした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「霊二!頼む!」

 

「よっ…と。よく通るようになったな斎!!」

 

結果的に言えば、練習の時はパスが全体的によく通るようにはなった。斎もどうにかパスを通せるようになっている。しかし、中々上手くいかない人物もいた。

 

「字さん!どうしてパスを出さないんですか!?」

 

「うーん…タイミングが掴めないのよねぇ…。どうしてかしら?」

 

パスのタイミングが分からず、中々パスが通らない字。一緒に練習をしていた狐野も困惑気味である。

 

「ふむ……。一、こっちに来い」

 

「またですか監督っ!?俺、もう走りたくないんですけどーッ!?」

 

一人走り込みをしている一。今日のパス練はペアワークなので、余りが出てしまう。なので1番の経験者である一を外して練習していた。外した理由は経験者ばかりを当てにしても困るということと、パスに関しては刃や霊二といった、MFに任せた方がいいと判断したからだ。

 

「で、何ですか——ってこれは……」

 

桜花に一枚の紙を渡される一。そして、その紙を読み終わった瞬間——

 

「ついにそこまで耄碌しましたか監t…待って!冗談!冗談ですから!」

 

「………。耄碌などしていない。それに私は勝つことなぞ望んでいない。見たいのは彼らの精神力だ。…全員集合!」

 

練習を切り上げるために集合をかける桜花。そして、とんでもないことを告げる。

 

「今日の練習はここまでだ!!そして————今週の土曜日に『青藍中』との練習試合を行う!!」

 

地区の強豪との練習試合という宣言を——まだ、弱小校になったばかりの臨界サッカー部に告げた。

 

 




何故、楓花ちゃんに麻雀を教えようとしたか?特に理由はない。その日一緒にいたのが彼女だったからだ。
日によっては別の人にも教えてます。…何て迷惑な3年生だ。


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作戦会議

色々あって投稿が遅れました。申し訳ない。
ゆっくりと投稿は続けます……頑張ります。


青藍中との練習試合を告げられた次の日。臨界サッカー部の面々は急遽作戦会議を行うことになった。というのも全国常連と言っても過言ではない強豪である青藍に勝つにはそうするしかないのだ。

 

「というわけでだ。今から青藍中の情報を整理するぞ」

 

監督は出張で不在のため、一応部長である一が会議の始まりを宣言する。しかし、この部活は初心者の集まりである。情報を整理しろと言われても分からないのが初心者である。

 

「取り敢えず紅宮の妹が去年の青藍のデータを持ってきてくれたから、それを見ようか」

 

「今、用意しますね……えぇと……映ってますか?」

 

「あぁ、ちゃんと映ってるぞ。これは去年の地区決勝か」

 

モニターに映像が映し出される。その内容は去年のFF地区予選の決勝試合だった。

 

その試合内容は『圧倒的』としか言いようがなかった。青藍中の相手である、月影中も決して弱い相手では無い。しかし、その結果は7対0。青藍中の圧勝であった。

 

「お、おい……こんな所とやるのか……?」

 

「自分で言うのもアレだが初心者集団なんだぞ俺たち…?」

 

斎と龍牙はもはや諦めムードである。しかし、そうなってしまっても仕方ないとも言える。彼らはまだサッカーを始めて1年である。急成長しているとはいえ、こんな圧倒的なものを見せられたら誰だってこうなるだろう。

 

「それをどうにかするための作戦会議だろう。まず要注意人物は今年2年でFWの『明原真(あけはら まこと)』だ。天才って呼ばれるほどの才能を持ってると言われている」

 

剛が要注意人物としてあげた少年がスクリーンに映し出される。相手を華麗に抜き去る卓越したテクニックと、破壊力抜群のシュートを放つそのプレーはまさしく天才に相応しいだろう。

 

「次は青藍一のドリブル能力を持つと言われる"自称"『青藍の秘密兵器』こと『松風灯馬(まつかぜ とうま)』だ。彼については個人的に興味がある。サッカー擬人法と呼ばれ———」

 

剛の長い説明を無視して映像が切り替わる。そこには茶髪の少年が映されていた。そのドリブル技術は先程の明原以上のものであった。まさに生粋のドリブラーと言えるだろう。

 

「……山本先輩がトリップしてるので私が説明します。最後の要注意人物は"自称"『美少女DF』の『菜花美月(なのはな みつき)』さんです。DFですが、前線に上がってくることもあるので注意です」

 

剛が未だに何かを語っている中、持っていた資料を取り上げて情報を代わりに読み上げる澪。それと同時に映像も切り替わる。今度はどこか全体的にふわふわしている少女が映し出される。DFとは言うものの実際にはどこでも出来ると言ってもいい、その技量は上の二人にも劣らないだろう。

 

「よくわかんねぇけどそいつらに注意すればいいんだろ?」

 

「そんなわけないよ。……それにもう一人注意すべき奴がいる」

 

玲の楽観的な思考を否定する一。普段、いつも楽観的な彼が口調を強めて言うほどである。

 

「もう一人……ですか?」

 

「うん。キャプテンの『氷上美奈野(ひかみ みなの)』。あいつは強いよ。何せ最後まで諦めないからね」

 

映像が切り替わり、水色の髪の少女が写される。先に挙げられた3名と比べると劣っているかもしれない。しかし、映像からでも伝わってくる決して諦めることのない熱い情熱は、彼女を強いと言わせるには十分であった。

 

「それに今挙げた奴ら以外も当然だけど上手いよ。だから、要注意人物だけ気にしてればいいとか考えないことだね。また、俺試合出れないし」

 

また!?と部室内に大きな声が響く。キャプテンである一がよりによって強豪との試合に出れないのである。叫びたくなるのも当然だ。

 

「文句は監督に言ってよ?俺だって試合に出たいからね。あ、そうだ刃——次、スタメンね」

 

「はい!?スタメン!?」

 

一から告げられた刃にとっての処刑宣告。正直な話、今の刃にはやる気がない。だからか、決して試合に出ようとはしないのだが——

 

「一応監督命令だから従ってね。それで、作戦なんだけど——」

 

いつになく真面目な一を中心に作戦を立てていく臨界イレブン。

 

「俺が……スタメン?なんで……」

 

しかし、刃だけは困惑していてそれどころではなかった。一体監督は自分をどうしたいのだろうか?と疑問にすら思った。

 

結局よい作戦も浮かばず、刃の疑問も解消されず、今日は解散となった。———青藍中との試合まであと3日。




あと2話くらいで試合の予定です。
そろそろFF予選まで行けそうな気がする。


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