オーバーロード The true end (やみ もとよし)
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第1話 100年の揺り返し

アインズ・ウール・ゴウン魔導国が世界征服を果たしてから90年。

 

この90年の間に魔導国の首都であるエ・ランテルは急速に発展を遂げ、元々あったアインズの自室は解体、新築され巨大な城を築き上げていた。その中にアルベドの一室はある。

 

アルベドは自室のベットに寝転がりながら自作のアインズ様抱き枕を抱えていた。

アインズ様の子を授かりたいという欲望は未だ消えず、

暇があれば自らの子を模した人形を作ったり、最新型アインズ様抱き枕を制作している。

 

アインズ・ウール・ゴウンが世界を治めた後、

アルベドは第一妃としてアインズに認められた。

しかしながら骨だけの身体であるアインズと子をもうける事は叶わなかった。

 

何かアインズと自身に繋がりがある命を作りたかったが

作り出せるのはアインズが作るしもべのみで、結局のところこれといった解決方法は見つかっていない。

だからこそ第一妃といってもアルベドの心は晴れない。

ちなみに第二妃はシャルティアだ。

 

「―アルベド様」

 

アルベドにメッセージが入る。

世界各地に散らばっているアルベド直轄の配下からだ。

 

内容は驚くべきことにナザリック地下大墳墓と瓜二つな遺跡を発見したとの事。

そこに出入りをする者は人間であるが強大な力を内包した者たちだと言う。現在確認できている人数は2人。

 

 

我々ナザリックがこの世界に転移してから今年でちょうど100年。

100年の揺り返しと呼ばれる節目の年。

 

この世界にはぷれいやーと呼ばれる強大な存在がおよそ100年ごとに現れる。

記録されている最も古いもので今から700年ほど前の六大神が始まりだ。

600年前には八欲王。

300年前の十三英雄の幾人かもぷれいやーだったそうだ。

 

(ついにこの時が来てしまったようね)

 

アルベドは考える。アインズ様に報告するべきかと。

もしその者達がアインズ様のお知り合い、つまり至高の41人だった場合、

そして御方々が姿を消された理由が私の想像する通りならば報告はできない

 

アルベドが想像する事それは・・

至高の御方々は我々に飽きたのではないか。いや我々というよりはこの世界自体に。

 

100年の揺り返しでお戻りになられたとしても

もはやこの世界に興味がなく、またすぐに姿を消すのではないだろうか。

アインズ様に辛く悲しい想いをさせた者達。

彼等のお帰りを待つアインズ様の悲しい背中を私は見てきた。

至高の御方々といえどもこの世界に生きるつもりがないのであれば。

 

それに私をお作りになられたあのタブラ・スマラグディナ様。

何度も何度も私は書き換えられ、何が悪かったのか、私は何か失態を犯したのか。

問いただす事もできず、自分を責める日々。あの地獄に戻りたくはない。

 

唯一最後まで残って下さっているアインズ様。

そんな慈悲深き至高の御方を愛するように命じられたわたくし。

私たちの邪魔になるようなら早急に始末する。

 

アインズ様にドリームチームの結成をお願いしたあの日、

私は初めてアインズ様に嘘をついた。

声が震えなかった事、崩れそうになる表情を隠し通せた事。

良くやったと自分を褒めてあげたいくらいだわ。

 

アインズ様、あの嘘とわたくしの最後のわがままをお許し下さい。

 

アルベドは己が願う世界の為に動き出す。



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第2話 アルベドチーム出立

エ・ランテルの玉座の間。

ナザリックほどではないがこの世界の城と比較すれば広く、赤を主色として豪華な調度品が置かれている。

 

「お早うございます、アインズ様。世界会議の予定日には少々早いですが、準備が必要なため明日出立いたします」

 

「おおそうかアルベド。例年の事とはいえ大陸中央ビーストマンの国は遠いからな、気を付けて行くんだぞ」

 

とは言ったものの今となっては転移魔法等で一瞬だ。

 

「はい!アインズ様のお心遣い感謝致します。それでパンドラズアクター、ルベドを含む私の配下を共に連れて行きたいと思います」

 

(ん?パンドラズアクターはともかく、もはや敵のいなくなった世界でなぜルベドを?)

 

アルベドの顔にはいつもの微笑が浮かんでいるがその胸の内はわからない。

 

「そうか、手が足りないというのであれば私も行こうか?その他にも・・」

 

慌てたアルベドに遮られる。

 

「い、いえ!アインズ様に動いて頂くほどの事ではありません。世界会議の案件で各方面に説明するために人数が必要なだけでございます」

 

「そうか・・、ならば構わないぞ。ただあまり力に頼った解決はしないようにな」

 

「はい。心得ております。アインズ様」

 

 

自室に戻ったアルベドはメッセージを起動させる。

「パンドラズアクター。私よ。例の件に進展があったわ。エランテルの私の自室まで来てくれる?」

 

ちなみに漆黒のモモンは世界統一をした翌年、エ・ランテル建国11周年の日に冒険の旅に戻ると言って旅に出た。出たという事にした。

 

力による支配を極力抑え属国にはアメを与え続けた結果、世界は驚くべき速度で魔導国の傘下となっていった。

と言っても法国や大陸中央連合軍との戦いは別だが。

 

結局のところ法国以外の国で武力行使をしたのは大陸中央の4ヶ国連合との戦いだけであった。

 

この世界の最強種族であるドラゴン達は―主に評議国だが―平和に統治されている魔導国を見て属国となる事をあっさり承諾した。

 

隠れ住んでいるドラゴン達はあえて無視だ。向こうも行動を起こさないところを見ると自らに火の粉が降りかからなければもはや関心がないのだろう。

 

モモンを演じる必要の無くなったパンドラズアクターは現在エ・ランテルのマジックアイテムの流通管理部門の長に就いている。

 

 

十数分後アルベドの部屋のドアがノックされる。

 

「パンドラズアクター参りました」

 

「入りなさい」

 

「失礼致します。・・・至高の御方わたくしの創造主である、んぁーいんず様のお妃であられるアルベド様には」

 

「そこに座りなさい」

 

「ぁ、はい」

 

「それでパンドラズアクター。以前に話していた、ぷれいやーとおぼしき存在を確認したわ。数は2人まで確認が取れているわ」

 

「2人ですか。それでどうなさるおつもりですか?アインズ様にご報告は?」

 

「しないわ。驚くべきことにこのぷれいやー達が出入りしている場所はナザリック地下大墳墓とそっくりな形状をしているそうよ。もしかしたら至高の御方々である可能性があるわ」

 

「なんとその様な事が・・・。なにゆえ同じものが存在するのでしょう?」

 

「わからないわ。転移についてはいまだ解明されてない事の方が多いの。

分かっていることは100年の間隔で強大な力を持った者達が転移してくるという事だけ。転移してくるぷれいやーが至高の御方々であった場合が最悪のパターンね」

 

「はい。承知しております。アインズ様には申し訳ないですが。予定通り協力させて頂きます」

 

「ありがとうパンドラズアクター。それであなたにはナザリックに戻って

宝物殿の中に2つある世界級アイテム二十のうちの一つを持って来てちょうだい」

 

「おぉ・・世界級アイテムとは。アインズ様のご許可はお取りで?」

 

「いいえ。でもあなただけは自由に宝物殿に出入りが可能でしょ?使う気はないけれどすぐに片づけて戻せばいいだけの事だわ」

 

「そうですか・・。畏まりました。しかし一つお聞きしたいのですが、我々が勝てない可能性は?」

 

「そうね・・。相手の戦力は2人という事しかわかっていないわ。内部にはまだ戦力が眠っている可能性もあって正直に言って未知数ね」

 

「仮にですが・・我々が負け世界級アイテム二十を奪われた場合。世界が混乱の渦に飲まれる事になるでしょう」

 

「そうね。平和的に解決するのが一番なのだけど想定通りに事が運ばない場合は

私は文字通り全てを賭けるわ。

ぷれいやーの力は強大であるがゆえにすぐにアインズ様のお耳に入るでしょう。だからなんとしてもその前に片づける」

 

「そうですね・・。この身アルベド様、並びにナザリックの為全力で取り組むことを誓いまっす。」

 

「質問は以上かしら?では明日の0300にナザリック玉座の間に集合よ」

 

 

(さてと、次はルベドを起こしに行かなければ)

ナザリック第五階層にて氷漬けになって眠っているルベド。

アルベドの妹でありナザリック最強の個体である。

 

かつてアインズ・ウール・ゴウンに攻め入って来たぷれいやー連合との戦いで力を使い果たし眠っていたがこちらの世界に転移してきたときに起動は確認できた。

その後は第五階層にて眠らせたままであった。

 

なにぶん他の守護者達と違って制御が非常に難しい。

命令は聞くが放っておくといつ誰に襲い掛かるかわからない。

 

 

(もうエ・ランテルに用事はないわね)

アルベドはナザリック地表に転移する。

 

現在のナザリック地下大墳墓は、魔皇ヤルダバオトとして死んだ事になっているデミウルゴスを始め、異形の者が今も生活している。

 

アルベドはログハウスに入る。

ログハウスの今日の当番はシクススだった。シクススは深々とお辞儀をしていた。

かつてログハウス番を任せていた戦闘メイド、プレアデス達は現在各方面で働いてもらっている。

というのもナザリックは戦闘に関しては得意な者が多いが頭を使う事が得意な者は少ないからだ。

アインズが作り出すエルダーリッチも大量に生み出され働いてもらっているが教育には時間がかかる。まだまだ管理者は足りているとは言えない。

 

アルベドはシクススに目礼をすると転移門から中に入る。

 

アルベドは転移指輪を受け取り第五階層ルベドが凍っている近くに転移する。

ルベドの前まで来るとアルベドは黒いバルディッシュを取り出す。

 

バルディッシュを横向きに持ち、腹の部分でルベドごと凍っている氷塊に振り下ろす。

バキィン。綺麗に氷塊が砕け散る。多少力を入れてもルベドはLV100のNPC。ダメージは皆無だろう。

それよりも綺麗に氷を割る事を優先する。

 

「ルベド。起きなさい」

 

「・・・オ・ネエサマ」

 

ルベドは小柄の少女でアルベドの妹。真っ黒な髪で左右を三つ編みで結い胸のあたりまで下ろしている。

前髪は左目が隠れるように垂れ下がっている。

左腕、右脇腹、右足には縫った跡がありまるで人形のような印象を受ける。戦闘スタイルは肉弾戦特化だ。

 

「ルベド久しぶりね。最後に会ったのは100年前ね。ぁぁあれから100年経ったのよ」

 

「・・・こんど・・こそテキ、デスか」

 

「そうよ。あなたの力が必要なの。存分に暴れてちょうだい」

 

「たのしみ・・デス」

 

 

アルベドはルベドとアインズより借り受けたLV90にもなるシモベ達を玉座の間に集める。その数8体。

そこにパンドラズアクターがやって来た。全部で11人だ。3人と8体とも言う。

 

そこにデミウルゴスが通りかかる。

 

「おや、アルベドではないですか。それほどの戦力を集めてどちらに行かれるので?」

 

(面倒な奴に見つかったわね。集合場所をエ・ランテルにするべきだったかしら。

いえ無理ね。ルベドをあの都市の中に入れる訳には行かない。さてなんと言い繕ったものか)

 

「世界会議の前に色々と根回しが必要なの。もちろんアインズ様にご許可を頂いているわ」

 

「ほう、そうですか。・・しかし根回しにルベドが必要でしょうか。それにそのシモベ達。一体いくつの国を滅ぼす気なのですか?」

 

デミウルゴスが真剣な眼差しで問う。

 

「そんなことはしないわ。アインズ様にも暴力的解決は止められているもの。この子たちは私とパンドラズアクターの護衛よ」

 

「はぁ・・。そうですか。いずれにしてもアインズ様にご迷惑をおかけしないようにお願いしますね」

 

「もちろんよ。デミウルゴス」

 

デミウルゴスには何かしら感づかれているようだ。

とはいえこの計画は極秘であり、パンドラズアクター以外には言った事がない。

いかにナザリック随一の頭脳を持つデミウルゴスといえども私の、いえ私達の真の目的には気づけないでしょう。

 

「では私は失礼しますよ」

 

デミウルゴスが去った事を確認してからアルベドは再度確認をする

 

「さてパンドラズアクター。例の物も大丈夫ね?」

 

「えぇ、間違いなく」

 

「では行きましょう」




突拍子もない部分を改変。


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第3話 邂逅、至高の四十一人

少々話の流れに無理があったので改変。


出立の準備を整えたアルベド一行は転移アイテムを使い、ぷれいやー拠点とおぼしき墳墓から数km離れた都市近郊に転移する。

 

そこにはアルベドの配下が待機していた。

 

「お待ちしておりました。アルベド様」

 

「ええ準備は整っているわ。案内しなさい」

 

もう数刻で太陽がのぼる時刻、未だ暗闇が残る中パンドラズアクターはアインズに変身し完全不可知化を全員に掛ける。

暗闇と言っても平均レベルで90にもなるしもべ達だ。まるで昼間のように視界は拓けているだろう。

各々の飛行能力で移動を開始。地面すれすれを浮かびながら素早く移動する。

 

 

数分後、案内された先はまさにナザリック地下大墳墓だった。

地表部分を見渡してみると、こちらのナザリックでは1500人の大侵攻がなかったせいかいくつかの建造物が壊れていない。

しかしその違いだけであり全く同じ作りだと思われた。

 

「いいわね。基本的にはルベドをサポート。私とルベドが前衛を受け持つわ。

パンドラズアクターは後方で状況に応じたサポートをお願い。

シモベ達は接近はせず中距離以上で戦ってちょうだい」

 

「私はたっち・みー様の純白の装備一式を持って来ましたのでそれで戦う事もできますが?」

 

「いいえパンドラズアクター。あなたは臨機応変な戦いができる貴重な戦力よ。

まずはアインズ様の姿でサポートをお願いするわ。」

 

「さて準備はいいかしら?ルベドは私と来て。私があなたを呼ぶまでは動いちゃダメよ。じゃあ・・始めるわよ」

 

アルベド以外に完全不可知化をかけ直す。

 

アルベドは漆黒の鎧に身を包む。

更に世界級アイテム、ギンヌンガガプを取り出し墳墓に向けて歩き出す

墳墓に近づくとアルベドは助走をつけてから地面を蹴り宙に舞う。

ギンヌンガガプを右手で持ち・・着地と同時に振り下ろす。

強靭な筋力が可能とするしなりを加えた一撃だ。

 

「おっらぁっ!」

 

墳墓の地表部分がドッフォンッと音を立て土煙を上げる。直径にして50m深さは5mほどのへこみができた。

 

作戦はこうだ。アルベドの持つ対物最強の世界級アイテム、ギンヌンガガプで地表から墳墓を破壊、敵襲に対処するため出てきた相手を待ち受けるというもの。

相手拠点に侵入というのはあまりに危険が大きい。

 

「もう・・・いっぱぁーつ!」

 

アルベドが追撃とばかりに軽くジャンプしもう1撃叩きこむとドッボォンという音と共に地表部分は崩壊。

墳墓の第一から第三階層に広がる吹き抜けにまでその一撃は貫通した。

第三階層に墳墓地表部分の土砂や瓦礫が落ちてゆく。

 

その大穴から見える第一から第三階層は本当に我々のナザリック地下大墳墓と同じ作りのようだった。

となるとシャルティアがいるはずだがなぜか出ては来なかった。

 

(まるで蜂の巣をつついて蜂がでてこないかどきどきしている子供ね)

 

そんな事を考えていると

 

「うっひょー!なんっだこりゃあ」

 

驚きと笑いが交じり合った声が第三階層から聞こえる。

 

アルベドには聞き覚えのある声だ。シャルティアに縁のある人物。

それに気づいたアルベドは素早いバックステップで墳墓から離れ距離を取る。

 

その人物は羽を広げると不用心にもバッサバッサと羽をはばたかせ地表に出てくる。

この程度の攻撃など意にも介さないと言うのだろうか。

 

その姿はまさに至高の御方、ペロロンチーノ様だった。

 

パンドラズアクターが思わず不可知化を解除し声をあげる。

 

「おぉなんという事でしょう。至高の御方ペロロンチーノ様」

 

「おおわが友!モモンガさん!おひさしぶ・・いや違うなぁ・・。様ってw」

 

するとパンドラズアクターが変身を解除する。

 

「おー、確かモモンガさんが作った・・・アレだな」

 

「はい。わたくし至高のおぉーん方モモンガ様に作られしパンドラズアクターと申しまっす」

 

「そうかそうか。てかお前達が動いてしゃべっているなんてびっくりだなぁ。

あれ?もしかしてシャルティアもいるの?」

 

「おります・・。ですがその前にいくつかお聞かせ下さいますか?」

 

「いいけど俺達も色々知りたいんだよね」

「その話、我々もまぜて頂けますか?」

 

ペロロンチーノの背後の大穴から現れたのはかつてナザリックに君臨した

至高の御方、たっち・みーとタブラ・スマラグディナだ。

 

タブラの登場にアルベドは憤怒の炎が湧きおこったが表情に出さないように何とか堪える。

(しかしよりにもよってタブラ様とたっち・みー様とは。たっち・みー様はアインズ・ウール・ゴウンの中でも最強の戦士。戦闘になった場合非常にやっかいね)

 

「おや。これはかつてのナザリックにいたNPCのお二人・・ですね?」

 

たっち・みーは記憶も朧気なのだろう。記憶を呼び起こしながら確認する

 

「左様でございます。たっち・みー様。ナザリック地下大墳墓守護者統括、アルベドでございます」

 

「アルベド、ぁぁそうだアルベドだ。色々と弄っていたな。今ならば更に洗練された設定に上書きしてやれるぞ?」

 

「いいえタブラ様。それには及びません。わたくしはこの世界で100年の時を過ごし

自らの力で学び成長してまいりました。もはやあなた様の想像されたアルベドではございません」

 

「ほほーそれはどのような設定になっているのか見てみたいものだ。くふふふ」

 

…ダメだ。もしタブラを受け入れれば私は私でなくなってしまう。やるしかない。

 

「僭越ながらお聞き申し上げます。皆様は3名様でございますか?」

「そうなんだよ。俺達3人だけ。NPCも誰もいないしな」

 

つまり部下が確認した人間とはタブラの幻術で変装していたこの3名の事。

3名のみこれは良い情報だ。ペロロンチーノ様は全く警戒していない様子。

 

「それで君達は我々を迎えに来てくれたのかな?まぁこの惨状を見ると歓迎されているとはとても言い難いですが。」

 

「たっち・みー様。それにお答えする前に、至高の御方々に失礼ながらお聞かせ願いたい事があります。現在皆様の意識はどちらにあるのでしょうか?」

 

「というのは?」

たっち・みーが聞き返す。

 

「はい。我々は今生きているこの世界が全てです。至高の御方々は今どちらの世界に生きていらっしゃるのか。という事をお聞きしたく思います」

 

たっちみーが答える。

「なるほど・・。正直に言いましょう。私は元の世界に妻と娘がいるのでその世界に戻る事しか考えていません」

 

「俺もエロゲの無いこの世界はなぁ、今はまってるゲームもいっぱいあるし、今頃俺が居なくなったって大騒ぎしてるだろうし元の世界に帰るよ」

 

タブラは何も答えず、何かブツブツしゃべっている。

 

「有難うございます。よくわかりました。まずはたっち・みー様のご質問ですが、答えはいいえでございます。我々がこの世界に来てから100年が経ちました。今回転移されたあなた方の守護者とはまた別の存在なのです。

そしてペロロンチーノ様。先ほどのシャルティアに会わせられない理由ですが、それはあなた方はこの世界に生きていらっしゃらないからです」

 

「どういうこと?」

 

「あの頃ナザリックに来られなくなったのはもはやこの世界に興味が無くなったという事ですね。今回この世界にお戻りになられたが、それはご自分の意志ではない。この世界に生きたいという事ではない。であればシャルティアに会わせる事はできません」

 

「おいおいおいまじかよー、確かに望んで来たわけじゃないけどせっかくだから一目会ったっていいじゃーん」

 

「それにアインズ様、いえモモンガ様もいらっしゃいます。モモンガ様は皆様方が来られなくなってからもお一人でナザリックを運営されていました。

モモンガ様はいつまでも至高の御方々をお待ちになっていました。それは今でもです」

 

「モモンガさん居るの?!まじか、久しぶりに会いたいなぁ。モモンガさんも会いたいって言ってるんでしょ?じゃあいいじゃんw会いに行こう今すぐにw」

 

「いいえペロロンチーノ様。モモンガ様があなた方と出会ってしまえば、慈悲深きモモンガ様の事。あなた方と一緒に元の世界に戻る方法をお探しになるでしょう。

そしてアインズ様も我々を置いてあなた方と共にそちらの世界に行ってしまわれるかもしれない。我々にとってアインズ様こそが全てなのです」

 

(これは私のエゴ。アインズ様の真意は図りかねる。アインズ様はどうお考えになら

れるのかしら?)

 

黙って聞いていたたっち・みーが口を挟む。

「だとすれば君たちはなにゆえ私達に会いに来たのかな?

いきなり墳墓を攻撃するからには良い理由ではないのだろうけど」

 

「はい。申し訳ございませんが。アインズ様とあなた方が会う事がないようにここで消えてもらいます」

 

「おいおいいきなり物騒な話しだな」

ペロロンチーノが両手を広げて肩をすくめる。

 

「やれやれ参ったな。私達は元の世界に帰りたいだけなんだが、ほっといてはくれないのかな?」

 

「アインズ様はこの世界を統治されています。あなた方の事もいずれお耳に挟む事でしょう。そうなってしまっては遅いのです」

 

「世界の王か、さすがモモンガさんやるときはやるね」

 

「そうですか、残念ですがわかりました。ならば我々のどちらかが消えるしかないということですね?しかし私たちは君たちの創造主。そう思い通りに行きますかね?」

たっち・みーの武器を持つ手に力が入る。

 

「まさか俺たちが作ったNPCと戦う事になるとはな」

ペロロンチーノの顔が先ほどまでと違い真剣な表情に変わり・・、

そのまますーっと宙に浮いていく。

 

「もとより簡単にすむとは思っていません。ルベド!」



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第4話 対決、至高の三人

「ルベド!」

アルベドの真後ろに完全不可知化で潜んでいたルベドが姿を現し、たっち・みーの左手側にいるタブラに襲い掛かる。

「テキ・・テキィィーーッ!」

 

たっち・みーがタブラの前に出て盾でルベドの拳を受け止める。たっち・みーが後方にふき飛ばされる

タブラは既に大穴の空いたナザリックを挟んで後方に転移していた。

 

ルベドが両の拳を握り力を貯めると、周辺に緑色の光が発生し腹部に収束されていく。

 

「鎧強化(リーンフォース・アーマー)、竜の力(ドラゴニックパワー)」

 

同時にパンドラズアクターからルベド、アルベドに強化魔法が飛ぶ。

 

ルベドにはたっち・みー様を抑えてもらって私はタブラ様を相手するべきね。

残ったペロロンチーノ様はパンドラズアクターとシモベ達で。

 

「光輝緑の体(ボディ・オブ・イファルジェントベリル)」

 

既にタブラも強化魔法を味方にかけ始めている。

 

ペロロンチーノがパンドラズアクターと後方に配置していたシモベ達に牽制攻撃を仕掛ける。

(完全不可知化など御方々の前では無意味ね。)

 

パンドラズアクターは弓が向けられたと同時に詠唱を中断しすんでのところで攻撃を躱す。

シモベ達は2体が逃げ遅れたが障壁を展開しダメージを軽減したようだ。

 

ルベドが地面を蹴り再びたっち・みーに突進する。1足でたっち・みーの間合いに踏み込むと

両拳の連打を繰り出す。たっち・みーは全ての攻撃を盾と剣で防いではいるが、

反撃に転じる余裕はないように見える。

 

ルベドを盾としてアルベドは後方に控えるタブラに接近する。

ギュン、ギュンとたった2歩、稲妻のような動きでタブラを射程に捉える。

しかしタブラはすぐさま転移で更に距離を取り魔法を放ってくる。

 

「時間停止(タイムストップ)」

 

アルベドは一瞬動きが止まるがアルベドを含むこの場にいる者たちは時間対策済みだ。

時間対策は必須だとアインズ様に口を酸っぱく言われている。

 

とはいえ転移が厄介ね。

転移妨害もできるがパンドラズアクター扮するアインズ様とシモベ達も使えなくなるので現時点で封じるべきではないわね。

それなら。

 

アルベドは世界級アイテム、ギンヌンガガプを形態変化させる。

それは背丈を越えるほど巨大な鎌であった。漆黒の柄と刀身、その腹には紫色にぬらぬらと光る溝が血管のように脈動している。

 

「魔法三重化大溶岩流(トリプレットマジック、ストリーム・オブ・ラヴァ)」

タブラの唱えるそれは信仰系の第10位階魔法だ。

アルベドの正面、左右から溶岩流が飛んでくる。

アルベドは大きく飛びあがり回避。

 

溶岩はナザリック地下内に流れ込み、あらゆる物を飲み込んでいく。

 

「魔法最強化現断(マキシマイズマジック、リアリティ・スラッシュ)」

空中のアルベドを最強化された魔法が襲う。

リアリティ・スラッシュはMP消費は大きいが魔法防御軽減などをほぼ無効化する強力な魔法だ。

空中のアルベドは回避できずにダメージを負う。

 

着地したアルベドは鎌を大きく振りかぶりタブラに向かって横なぎに払う。

空気を切り裂いた真空の刃がタブラに放たれる。

 

生物に対する威力はそれほど高くないが広範囲で速度が速く。タブラに当たる。

 

空気を切り裂いた刃はそのまま墳墓の周りに広がる木々を薙ぎ倒していく。

 

タブラは転移で空中に逃げると同時に飛行(フライ)で浮かぶ。

【線】で攻撃される地面よりは【点】で攻撃される空中の方が有利だ。

 

魔法効果範囲拡大化現断(ワイデンマジック、リアリティ・スラッシュ)

 

宙にいるタブラとペロロンチーノに向けてパンドラズアクターから魔法が飛ぶ。

二人は回避のためばらける。

そこにシモベ達から一斉に攻撃魔法が飛ぶ。

 

朱の新星(ヴァーミリオンノヴァ)

道徳歪曲(ディストーテッド・モラル)

魔法二重抵抗突破化連鎖する龍雷(ツインペネトレートマジック、チェイン・ドラゴン・ライトニング)

 

数というのは力だ。平均レベル90のシモベ達の魔法は至高の御方といえども当たれば着実にダメージを蓄積させていく。

 

「おほーこりゃ堪らん。全力で行かないとまずいな」

 

ペロロンチーノは地上に背中を向け加速。更に上空に舞い上がる。

 

その間もペロロンチーノに向けて魔法が連続で飛ぶ。

 

しかしペロロンチーノはそれを避けながら隙を見つけては振り返り反撃。シモベ達の体力を削っていく。

 

「たっち・みーさん!」

ペロロンチーノが叫ぶ。

アルベドはちらりと上空を見上げる。

 

ペロロンチーノが構えた弓の先に燈色の小さな光が発生した。

周囲から同じ色の玉が集まるように徐々にその光が大きくなる。

 

強力な力を感じたアルベドは声を上げる。

 

「一旦引きなさい!」

 

そして極限まで引き絞られた弓から光球が放たれる。

 

直径50cmほどの燈色の玉は音速を超え、あっという間に戦場に到達、着弾。

カッと白い閃光を引き起こすと同時に大爆発を起こす。

 

着弾点から直径100mが吹き飛ばされ

―別の世界の―ナザリック地下大墳墓の第6階層まで貫通した。

 

これは2日に1度しか使えない、ペロロンチーノの切り札だった。

 

アルベドは3回まで耐えられる鎧の効果を1回使い、パンドラズアクターは転移で逃げていた。

ルベドは一旦引いたたっち・みーを追っていたため無事だった。

しかしシモベ達のうち転移が使えない4体が直撃を食らい息絶えていた。

 

 

「アルベドさん。まだ続けますか?」

 

『もちろんよ。しかしながら至高の御方々自らがお作りになられたナザリック地下大墳墓が大破しておりますが構わないのですか?』

 

「えぇ、まぁ住むところが無くなりますが、宿を借りれば済む事ですから。

幸いなことにナザリック内にはそれなりの金貨が保管されておりますので」

 

(そのナザリックを維持してきたのは誰だと思っている・・。ナザリックは黙っていても金貨等の物資を消費する。

その維持費を稼ぐ為アインズ様は来る日も来る日もたったお一人で物資を補給されていた)

 

アルベドには憤怒が湧きおこるが表情には出さない。いや出しても構わないのだが

忠義はないとはいえ至高の御方に失礼な態度をとるのは彼等に作り出された存在として憚られる。

 

「再開する前にタブラ様。聞いておきたい事がございます」

 

「ほぉ」

 

「なぜ私をビッチとしておつくりになられたのでしょうか・・?」

 

「そんな事か。サキュバスというのはビッチなものだとペロロチーノから聞いたのだ。

たしかこんな事を言っていたな。サキュバスでビッチって最強じゃね?と」

 

(なるほど。元凶はペロロンチーノ様だったのね。でも今となっては感謝ね。あれがなければ私のアインズ様への気持ちが違った物となっていたしれない)

 

「お答え頂きありがとうございます。お聞きすることは以上です」

 

「パンドラズアクター」

 

「はっ」

 

「(一気に決めるわ。転移阻害を使いなさい)」

 

上空にいるペロロンチーノは地表の様子を眺める。

地上では一時戦闘が停止しているようだが詳細は分からない。

いずれにしても戦闘が開始されれば即座に射撃を開始するつもりだ。

 

「お待たせしました。続きを始めましょう」

 




戦闘表現は非常に難しいですね。
子供が人形を操ってバキューンバキューンと戦わせるものに似ています。

稚拙で恥ずかしいですが始めてしまったものはしょうがない。投稿します。


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第5話 アルベドの決意

「次元封鎖(ディメンジョナル・ロック)」

パンドラズアクターはデミウルゴスに変化し転移阻害スキルを発動させる。

 

「ペロロンチーノさん!」

「ルベド!」

 

たっち・みーとアルベドが同時に叫ぶ。

 

ペロロンチーノの射撃が即座に開始される。

 

ルベドはたっち・みーへ突進。

 

アルベドのシモベ達からペロロンチーノに向け魔法が乱れ飛ぶ。

 

「飛行(フライ)」

 

パンドラクズアクターがシモベを除く3人に魔法を掛ける。

 

アルベドの狙いはタブラ・スマラグディナだ。

タブラは信仰系魔法詠唱者。復活の魔法を使われると非常に厄介だ。

なんとしても最初に落とさねばならない。

 

アルベドは鎌で真空の刃を飛ばしながらタブラに突進する。

タブラはそれらを避けながらも距離を取ろうとするが、

戦士職と魔法詠唱者では動きに圧倒的な差がある。

あっと言う間に鎌の間合いに詰め寄りタブラに直接攻撃を仕掛ける。

 

「損傷移行トランスロケーション・ダメージ」

 

タブラは体力ダメージを魔力ダメージに変換。

叩きつけらえる暴風のような連撃のうち1発をタブラは杖でガードすることに成功するが、相手は対物最強の世界級アイテム。1撃で杖は破壊される。

転移阻害により一気にタブラの形成が悪くなった。

 

パンドラズアクターは全体の状況を見て各戦線にサポート魔法を飛ばしている。

 

「ふむ、私の作りしアルベドよ。良い。とても良いぞ」

 

劣勢に立たされながらもタブラは呟く。

その平坦な声にはどういった感情が含まれているのかわからない

 

たっちみーとルベドは激しく斬りあっているがルベドの方がじりじりと削られる。

自力でたっち・みーが勝っているのだろう。

シモベたちもペロロンチーノに削られている。

アルベドとパンドラクズアクターも爆撃で少しづつ削られる。

最も消耗しているのはタブラだ。

タブラは新たな杖を取り出し

 

「超位魔法。終焉の大地(エンド・アース)」

 

突如タブラを中心に10メートルにもなろうかという円球状の魔法陣が展開された。

青白い光を放ち、半透明の文字が円の表面を駆け巡っている。

 

これは。アインズ様がシャルティア戦のときにお使いになられた超位魔法!

発動まで時間がかかるはず・・。

でもアインズ様がそうだったようにタブラ様も課金アイテムという物をお持ちだとしたら・・!?

 

「逃げなさいパンドラズアクター!」

この距離では自身は逃げられない。そう判断したアルベドはタブラに切り掛かるが・・

超位魔法の発動阻害までは至らない。

 

タブラはすっと砂時計を取り出し、即座に破壊する。

周辺一帯の地面が赤黒く変化し熱を帯びる。

中心から発生した赤い閃光が一気に膨れ上がり周囲を飲み込む。

効果範囲内に特大ダメージを与える超高熱を帯びた破壊魔法だ。

 

 

 

・・・視界が晴れるとアルベドの漆黒の鎧がひび割れ崩れ落ちた。

 

たっち・みーは純白の装備で軽傷。ルベドは大分削られたようだ。

パンドラズアクターもたっち・みーの装備に着替え軽傷だ。

シモベたち4匹は巻き込まれ姿は見当たらない。

ペロロンチーノは遠距離におり余裕で回避している。

 

(まずい。タブラ様は超位魔法をあと何回使えるの?

タブラ様もダメージを受けているはずだが魔法防御力の高さに加え装備で耐性を

上げているかもしれない。このままではルベドがもたない・・。)

 

そう考えたアルベドは作戦を変更、指示を出す。

 

「パンドラクズアクターはペロロンチーノ様を」

 

「はっ、しかしそう長くは持ちませんよ。」

 

「わかっているわ。少し時間を稼いでちょうだい」

 

パンドラクズアクターはびしっと敬礼するとフライで上空に上がって行く。

 

「やりなさい。ルベド」

 

ルベドは頭だけを動かしぎょろんとタブラを見ると右こぶしにエネルギーを貯めていく

 

「そうはさせませんよ。」

たっち・みーがタブラの前に立ち塞がる。

 

ルベドはそのまま突進、たっち・みーに大技が炸裂する

 

「超新星爆発(スーパーノヴァ)」

 

ルベドの拳が物に触れるとその物自体が爆発し大ダメージを与えるという

武器、防具破壊を含んだ反則技だ。

 

「次元断層(ワールド・フォールト)」

 

ワールドチャンピオンの固有防御スキルが発動。

タイミング良く発動すれば世界級アイテムさえ防げると言われる究極の防御スキルだ。

 

何も起こらない事に驚いたルベドが下がりガルルルと唸っている。

 

(そんな・・、これがワールドチャンピオンの力だというの・・。この1手は非常に痛いわ)

 

「そろそろ終わらせます。」

 

たっち・みーが盾をしまい両の手で剣を握り構える。

 

「次元断切(ワールド・ブレイク)」

 

大上段から振り下ろされたそれは

ワールドチャンピオンのクラス、最終レベルで習得できる超弩級スキルであり、

その一撃は次元を切り裂くと言われる。

 

「ルベドッ!」

 

アルベドがルベドを後ろに跳ねのけ庇う。

 

たっち・みーの放った一撃は地平線の彼方まで切り裂く。

アルベドを切り裂き、ルベドも強大な亀裂に引き裂かれる。

アルベドの鎧が弾け飛ぶ。

 

ルベドは大きく吹き飛ばされ、ぴくりとも動かない。

 

(次元断切(ワールド・ブレイク)を私が受けるのは予定通りだけど想像以上の威力・・。ルベドごめんなさいね・・。)

 

「・・・さてこれで3対2です。我々には課金アイテムもあります。勝敗は決したと思うのですが?」

たっち・みーが相変わらず冷静に問う。

 

「そうですね。さすがは至高の御方々。想像以上です。でも・・」

 

アルベドはナザリックから持ち出した、二十と呼ばれる世界級アイテムを取り出す。

 

取り出したのは聖者殺しの槍(ロンギヌス)

自分の命と引き換えに範囲内の全ての生命を消滅させる対生命では究極のアイテム。

デメリットも強力でこのロンギヌスを使用した者の復活にはワールドアイテムが必要だ。

 

ナザリックでもこの世界級アイテムを手に入れたものの

こんなの使えないよね~。と言われていた。

 

「それは・・・。それを使用してしまえばあなたはもう二度と復活することはできないのですよ」

 

「構いません。この戦いに敗北した場合私にはアインズ様に合わせる顔がありません」

 

アルベドが本気であると判断したたっち・みーがじりっと後ずさる。

「一旦引きましょう。タブラさん」

初めてたっち・みーが焦ったようだ。兜を被っており顔は見えないのだが。

 

「恐らく逃げられないでしょう。たっちさんは先に逃げて下さい。

魔法三重化音速の風(トリプレッドマジック・ニアソニック)」

 

タブラが使用した魔法でたっち・みーがふき飛ばされる。

 

「タブラさんっ!」

(仲間を見捨てるなんてしたくない・・しかし・・。)

 

「逃がしません。聖者殺しの槍(ロンギヌス)」

 

アルベドがロンギヌスを掲げると空が割れ、数多の巨大な槍が姿を見せる。

 

(ペロロンチーノ様には届かないかもしれないけれどパンドラクズアクターが勝つことにかけるしかないわ。アインズ様。共に生きられない事。お許し下さい。)

 

「アルベドよ。お前は私が作った人形。

しかしその人形が意思を持ち、その結果私を殺すという発想に行き着いたのなら

それは私の意志とも言える。良い・・。これで良いのだ。」

 

「タブラ様・・。」

 

雹のように槍が降り注ぎ周囲一帯の全ての生命に突き刺さる。

 

二十を使用したアルベドは透明になっていく。

 

 

―――――アルベドはかつての記憶を蘇らせる。

 

それはアインズ第一の嫁が決定した日であった。

 

「シャルティア。あなたの身長ではまるで大人と子供じゃない。その点、わたくしならキスをして頂く際にもアインズ様にご不便をお掛けする事はないわ」

 

シャルティアの精神に大ダメージ。

それは以前から考えていた事だ。アインズ様にキスをするのであれば飛行(フライ)で飛ぶか抱っこしてもらうしかない。これに反論しても分が悪い。

シャルティアは別の切り口で返す。

 

「そんな事は些末な問題でありんす。大事な事はどれだけアインズ様を愛しているかでありんすよ」

 

「くふふふ、シャルティア。墓穴を掘ったわね。わたくしはアインズ様直々に愛するように仰せつかった身。ナザリック広しといえどもわたくしだけ。わたくしの愛に偽りなし。言ってしまえば相思相愛なのよ。くふふふふっ」

 

「そ、それはあなたの勘違い、という事もありんすことよ。

ア、アインズ様はどちらを第一妃とされるのでありんすか?」

 

「アインズ様のお傍により長く使仕えてきたわたくしですよね?アインズ様』

主人が一度決定してしまえば覆すのは困難だ。

あーでもないこーでもないと2人は姦しくまくしたてる。

 

(こうやってこの二人が嫁論争で喧嘩する事も最後か・・。しかしアルベドは設定からして完璧な女性として作られている。シャルティアは分が悪いな。これは創造主の差とも言えるか。・・タブラさん、ペロロンチーノさん)

 

「う、うむ。第一妃を決定する。どちらになったとしても従うように。

だが私は二人とも同じくらい愛しているぞ。その事に嘘偽りはない。

 

では発表する。第一妃は・・アルベド。お前だ。」

 

「きゃーっ、やっぱりアインズ様は私を一番に愛してくださっていたのですね」

 

「そ、そんなアインズ様は胸が大きい方がお好きなのですか・・?」

 

「お、おほん。ま、まぁどちらかと言うとだな。そうなのかもしれないな」

 

両膝をついてがっくりとうなだれるシャルティア。

「うっ、うぅ・・。この胸はなにゆえに小さいの・・。ペ、ペロロンチーノさまあああああああああうわーん」

 

 

――――――「さようならアインズ様。私は幸せでした・・」

アルベドは跡形もなく消滅した。

 

降り注ぐ槍は2人に突き刺さりタブラとルベドはその後消滅。

 

たっち・みーは・・

無事だった。

ワールドクラスの装備は世界級アイテムの効果を打ち消したようだ。

身に纏う装備自体が世界級アイテムと認識されているのか、まさに生きる伝説。チートである。

 

何かが起こった事を感じたペロロンチーノとパンドラクズアクターは地上に戻る。

辺り一帯の植物を含む全ての生命が消滅していた。

 

膝を折って呆然としているたっち・みー。

 

「たっちさん、これは一体?」

 

「すみません。タブラさんが・・。私だけが残りました・・。」

 

「そう・・ですか。」

 

 

「アルベド様、あれを使ったのですね・・。」

 

パンドラクズアクターはどうするべきか考える。

きっとアルベド様は私がペロロンチーノ様に勝つことを期待して逝ったのだ。

敗北濃厚になった時点でアインズ様の元には帰らないという不退転の覚悟を持って。

 

しかしたっち・みー様が生き残る事は恐らく計算されていないでしょう。

2体1ではもはやこれまで。

 

我々がナザリックに戻らなければアインズ様は必死の捜索をして

いずれはこの至高の御方々に辿り着くでしょう。

ならば私のするべきことは。

 

「ペロロンチーノ様、たっち・みー様。まことに勝手ながらわたくしめは引かせて頂きます」

 

「おー。別に俺らはお前たちを殺したいわけじゃないからな。

・・タブラさんは蘇生できるんだよな。」

 

「はい。生き返る意思がお有りでしたら、恐らく復活はできます」

 

「じゃあ問題はないな。な、たっちさん」

 

「ぁ、はい・・」

 

たっち・みーは死にかけた事で放心状態のようだ。

 

「転移阻害(ディメンジョナルロック)解除」

 

「いずれまたお会いすることになると思います。その時はアインズ様と共に」

 

「おーそうか。こんな事はもうごめんだぜ。モモンガさんによろしくな」

 

「はい。間違いなくお伝え致します。それでは。テレポーテーション」

 

パンドラクズアクターはいつもの大げさなアクションはせずに転移していった。




アルベド走馬燈追加。
シャルティアとアルベドの口喧嘩でシャルティアがアルベドより勝っている部分を探しましたが、無理でした。シャルティアごめん!

――次回
アインズ様に主人公交代。
アルベドを失い。かつての仲間の転移報告を受けるアインズ様。
アインズ様はどう考えどう動くのか。

――
聖者殺しの槍(ロンギヌス)は本来ナザリックは入手していません。
効果も敵と味方を1人ずつ完全消滅させる効果ですが改変しています。


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第6話 伝わる嫁の想い

アルベドからアインズへ主人公が代わる。


ナザリックに帰還したパンドラクズアクターは宝物庫にアイテムを戻しに行く。

 

(どうしたものか。今回の一件、報告することは多岐に渡る。

ぷれいやー、―それも至高の御方々―が現れたこと。

我々がアインズ様に報告せずに向かった事。

アインズ様から頂いたしもべ達、ルベドの損失。二十の消滅。そしてアルベドの【消滅】

失ったものはあまりにも大きい。

全てを報告した後、自害。しかし私一人の命で許されるものだろうか)

 

パンドラクズアクターは意を決してメッセージを起動する

「―アインズ様」

 

そこから報告される驚くべき事実はアインズの心を幾度となく揺さぶりその後沈静化される。

喜び、悲しみ、怒り。様々な感情がアインズの心を駆け巡る。

(何という事だ。ペロロンチーノさん、たっちさん、タブラさん。

何故アルベドは戦いを挑んだのか。二十まで使い、消滅だと・・?もう会う事さえできないのかアルベド・・。)

 

何度目の沈静化だろう。片手では数えきれないほどの沈静化を繰り返した後やっとアインズから一つ指示が出る。

 

「待てパンドラクズアクター。デミウルゴスを呼びそこで改めて聞こう・・・」

(転移から100年。上に立つ者としてそれなりに成長してきた自負はある。しかしこれは私だけで考えるには大きすぎる問題だ。デミウルゴスを交えて考えを聞かなくてはまずい)

 

 

そこはナザリック第九階層玉座の間。

絢爛豪華な調度品で飾られたその空間は神々の間という名前が相応しい。

そこにいるのはアインズ、デミウルゴス、パンドラクズアクターの3名だけだ。

玉座にアインズ、玉座に向かって右手前にデミウルゴスが立っている。

2人に向かって片膝をついているのがパンドラクズアクターだ。

 

ここでの話は公式なものではなく、内密に話さなくてはならない。

そのためメイドはおろかエイトエッジアサシン、入り口の門の前さえ人払いをしている。

 

「さて、パンドラクズアクターよ。デミウルゴスには一通り話はした。しかし改めて嘘偽りなく全てを報告せよ」

 

「はっ。我々はぷれいやーの捜索を続けておりました。かつてアルベド様がアインズ様よりお借りした配下を使ってです。」

 

「あぁ覚えているぞ」

(あのときは奮発したからな。随分昔の事だけどはっきりと覚えているのはこの体のせいか?記憶が薄れる事はないんだな)

 

「2日前の事です。アルベド様配下の者よりぷれいやーらしき人物を発見したと報告が上がってまいりました。

アルベド様は我々を集め戦闘になる事も視野に入れ準備、接触を試みました。」

 

「そこだ。パンドラクズアクターよ。出発の前に何故私に報告をしなかった?ぷれいやーを探すことは私が命じた事でもある。

はっきり言って不快だぞ。お前たちは私の命令を無視したのか?」

 

「・・・アインズ様のご命令に従わなかった事、弁解の余地もありません。

このご報告が終わりましたら如何なる処分も受け入れます」

 

「それは後ほどだ。それで?」

 

「はい。アルベド様はアインズ様に捨てられる事を最も恐れていらっしゃいました。だからこそご報告を致しませんでした。それは私も同じ気持ちです」

 

(ぷれいやーが出現したからって何故俺がアルベドを捨てる事になるんだ?)

 

「ふむ、デミウルゴス・・」

 

「はい。アインズ様。アルベドの考えはこのように推測できます。

ぷれいやーはこことは違う別の世界からこちらに転移してくるものと考えられています。そして我々がいた世界から転移してくる者もいる。

つまりぷれいやーはアインズ様のお知り合いという可能性がある。という事です。」

 

アインズは先を続けるように顎をしゃくる。

 

「可能性は低いでしょうが、至高の四十一人の方々も転移してくる可能性があるのです。実際に今回の転移では至高の御方々が転移された。そうですね?パンドラクズアクター」

 

「はい。我々が接触したあの方々は間違いなく至高の四十一人。ですが我々のいた世界の御方々と同一かはわかりかねます」

 

「ほう。詳しく話せ」

 

「はい。我々が向かった先には至高の御方3名とナザリック地下大墳墓もございました。

内部までは潜入していませんが、ナザリックの地表部分に少々違いがあり、また階層守護者の姿も見当たりませんでした。実際ペロロンチーノ様はシャルティアがいないとおっしゃっていました」

 

「隠しているだけという可能性もあるのではないか?」

 

「我々は御方々を多少なりとも追い詰めました。タブラ様を倒した事からもお分かりになるかと思います。しかし1人たりとも確認できませんでした」

 

「そうか・・色々と確認が必要だな。それでデミウルゴス」

 

「はい。アインズ様ならもうお分かりかと存じますが、アルベドは至高の御方とアインズ様がお会いした場合を考えたのです。

そうなると慈悲深いアインズ様の事です。至高の御方が元の世界に戻りたいとおっしゃられた場合一緒に帰還方法をお探しになられるでしょう。そして帰還する方法が見つかった場合を想像したのです。

アインズ様が御方々と一緒に居なくなってしまうのではないか?と」

 

アインズに衝撃が走り、即座に沈静化される。

(アルベドはぷれいやーの出現から俺がどういった行動にでるかまで見通したのか。俺以上に俺の事を理解しているな・・。アルベド・・。)

しばらく沈黙が続く。

(このアルベドの行動は私を愛するように書き換えてしまった影響なのかもしれない。他の者はどう考えるのだろう?)

 

「ならばパンドラクズアクター、お前もそのように考えたという事か?」

 

「はい。私はアインズ様がどのような行動を取られるかまでは想像できませんでしたが、アルベド様の考えを聞き納得し、協力しました」

 

(なるほど)

 

「デミウルゴスならばどう考える?」

 

「私もアルベドと同じように考えます。アインズ様に居なくなられることは我々にとって絶望を意味します。

お仕えする主人がいらっしゃらないというのは生きる意味を失う事と同義です。

ですがアインズ様がお帰りになられる事につきましては私の考えは違います。

アインズ様の御心のままに行動されるのが良いと思います」

 

「ふむ。仮にだが私が居なくなった後はどうする?」

 

「アインズ様の御許可を頂ければ私なりの統治をさせて頂きます」

 

(あーデミウルゴスに任せるととんでもない事になるな。しっかり言い聞かせておけば大丈夫だろうが数百年も先はどうなるかわからない。

それと私に黙って行動したアルベドはやはり書き換えの影響である可能性が高まったな。そうなるとこの責任は私にあると言える)

 

「わかった。さて次の話だ。パンドラクズアクター、お前たちは準備を整え彼等の元に向かった。その時の話を聞かせよ」

 

「はい。お話しした通り、ペロロンチーノ様、たっち・みー様、タブラ・スマラグディナ様が出迎えて下さいました。

そこで交わされた会話は御方々は元の世界に帰りたいという事でした。

その結果アルベド様は御方々をアインズ様と会わせる訳にはいかないと判断し戦いへと発展致しました」

 

「なるほど。その結果しもべ達とルベドが死亡。アルベドは二十を使い消滅。

タブラさんが巻き込まれ死亡。ペロロンチーノさんとたっちさんが存命という事だな」

 

「はっそうなります」

 

(一通り聞いてアインズは頭を回転させる。考える事は多い。

命令無視への罰。二十の消滅。ルベドの死亡。そしてアルベドの消滅。

タブラさんの死亡。ペロロンチーノさんにたっちさん。そうだペロロンチーノさんとたっちさん)

 

「パンドラクズアクターよ。ペロロンチーノさんとたっちさんは何か言っていなかったか?」

 

「ペロロンチーノ様はモモンガ様によろしくとおっしゃっていました。」

 

「それはどういった意味を含む?」

 

「・・私にはわかりかねます」

(アルベド様の決意を無駄にしたくない)

 

室内に冷たい空気が流れる。

 

「パンドラクズアクターよ。私が最初に述べた嘘偽りなく報告せよという言葉を忘れたのか?」

 

(パンドラクズアクターの胸がドキリと音を立てる)

 

「あの二人がどのような考えなのかを知る事は非常に重要だ。

それを隠し立てする事は私への裏切りだ。貴様は創造者たる私に従う者か?それとも己の意思が正しいと信じる者か?」

 

見ればデミウルゴスの冷たい視線が突き刺さる。

 

一瞬迷うがこの二人を前に隠し立ては不可能。次の言葉を間違えばこの場で処分という事もありえる。

もはやこれまでかとパンドラクズアクターは決断する。

 

「大変申し訳ございませんでした。ペロロンチーノ様はこんなことはもうごめんだぜ。

それとモモンガ様、シャルティア様に会いたい。とおっしゃっていました」

 

「・・なるほど。わかった」

 

(戦いを挑まれやむを得ず戦った。パンドラクズアクターは見逃してくれた。そういった感じだな)

 

「デミウルゴス。どうするべきだと思う?」

 

「アインズ様、私にはあまりにも荷が重い問題です。・・・ですがそれではお答えにならないと思いますので・・。そうですね。まずは至高の御方とお会いしてそれから考えるというのはどうでしょう?幸いパンドラクズアクターの話では至高の御方々と完全な敵対関係とはならなかった様子。まだ関係の修復も可能でしょう」

 

「そうだな、私もそう考えていた。ならば方針を決定しよう。パンドラクズアクター。お前の処分はあとだ。ペロロンチーノさんとたっちさんを連れてこい。客人として丁重にな。

デミウルゴスはナザリック関係者にこのことを周知しろ。それと・・」




アルベド編がひと段落しアインズ編が開幕。
これまでの投稿もちょこちょこ直してます。
3話~6話が書きたかったアルベドの気持ちです。
感想、評価お待ちしております。


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終幕 かつての友

パンドラズアクター「お連れ致しました。アインズ様」

 

 

ペロロンチーノ「モモンガさん!・・・だよな?」

 

アインズ「お久しぶりですね。ペロロンさん。たっちさんも!」

 

たっち「えぇお久しぶりです。さっそくですが一体何があったのですか?

今回の襲撃と私達の身に何が起こったのか、ご説明を願えますか?」

 

アインズ「長い話になります。しかしその前にお二人が私が知っているお二人だと証明をしてもらいたいのですが、可能ですか?」

 

ペロロン「えーモモンガさん俺達の事疑ってるの?心外だなぁ。

まいっか。じゃあシャルティアの設定について昔語った事でいいかな?シャルティアはさぁ こういう設定の少女が居たら最高じゃん・・・でさぁ・・・」

 

たっち「そうですね。モモンガさんとの初めての出会いは、、私がPK狩りをしていたときですね。正義光臨のアイコンとポーズが見事に決まったのを見て、モモンガさんが感動に打ち震えている姿を今でも覚えていますよ」

 

中略

 

アインズ「あぁ、本物だ。間違いなくお二人は本物ですよ」

 

感動したのもつかの間、意識が沈静化される。

 

 

アインズ「では、確認が取れたのでタブラさんも復活させて4人でかつての話しとこれからの話をしましょう」

 

 中略

 

アインズ「タブラさんもお久しぶりです。今回の件は申し訳ありません。この世界のNPC達は自我を持ったのです。それでこのような事になってしまいました」

 

タブラ「いや構わない。私の作ったアルベドが自らの意思で私に向かってきたのだ。これほど創造主として嬉しい事は無い」

 

 

アインズ「そうですか。それは良かった。では場所を移しましょう。歓迎の準備をしていました。私は食べた事がないのですがこの世界の美味と言われる食べ物を取り揃えてありますよ」

 

 

 それからアインズがこの世界に転移したこと、モモンとして冒険をしたこと、世界統一を果たし、今も王として統治している事、そしてかつてのユグドラシルの話等で宴は大いに盛り上がった。

 

 話題はアルベドの襲撃の話へ。

アインズ「なぜアルベドが皆さんを攻撃したのかですが。憶測ですが聞いて下さい。これは私とナザリック随一の頭脳を持つデミウルゴスの共同見解です」

 

アインズ「結論から言うと、私、モモンガを失いたくない。という気持ちからです。彼女は私が皆さんと出会ってしまえば、一緒にどこかへ消えてしまう。そう思っていたようです」

 

たっち「なるほど。我々も聞かれました。あなた方はどちらの世界で生きているのですか、とね。元の世界へ帰ると答えると雰囲気が変わり、あとは話した通りです」

 

アインズ「そうでしたか、それを聞いてやはり私の想像通りだったと確信しました」

(アルベド・・・。俺は、俺はお前達を置いて元の世界に帰ったりなど・・・。)

 

 

 アインズ「では今後の事をお話ししましょう。まず元の世界への帰還方法は私にもわかりません。ですが方法はあると思っています。それを世界をあげて探しましょう。それまでナザリックに、そしてエランテルに住まわれてください。それとNPC達にも会われて下さい。皆喜びます」

 

ペロロン「そうだよシャルティアー!」

 

シャルティア「うぶぶ、ペロロン様ぁ~ お帰りなさい。どうしてどうして私を置いていなくなられたんですか?私もう寂しくて寂しくて・・うぅ。」

 

ペロロン「ごめんなぁ。俺達ぷれいやーは元々別の世界の住人なんだ。こっちの世界にいられるのはごく短い時間だけ。大半は元の世界で過ごさなくてはならないんだ。でもしばらくはこっちの世界にいる。色々な事があったらしいな。是非聞かせてくれ」

シャルティア「はい!ペロロン様の事もお聞かせ下さい」

 

 

 

場所が変わり、アインズの寝室。

アインズ「デミウルゴスよ。どう思う?」

 

デミウルゴス「はっ。アインズ様のご判断の通り、プランBになりました。予定通りです」

 

アインズ「ふむ、彼等を元の世界に戻す方法についてはどうだ?」

 

デミウルゴス「全く聞いた事が無いですが、未だこの世界に眠る世界級アイテムの中にはそういったものが存在するやもしれません」

 

アインズ「やはりそうか」

 

デミウルゴス「恐れながらアインズ様、もしやアインズ様も至高の御方々と共にその、元の世界へお戻りになられるのでしょうか・・・」

 デミウルゴスがこの世で最も恐れていた事を聞く。

 

アインズ「ふむ、それも良いか、とも思ったのだがな…。

私がこの世界で何年過ごしたと思う?100年だ。その間にあらゆることを経験した。私の元の世界はな、上に立つ者が下の者を虐げ搾取し自らの権利の為にルールを破り創り出す。そういう腐った世界だった。つまりだ。私はそんな世界には戻らない。私が作り上げたこの世界を守っていく。そのつもりだ」

 

デミウルゴス「ぉぉ」

 

アインズ「この世界は私の理想そのものだ。私に寿命があるかはわからないが、その次はな、デミウルゴス。お前に任せたいと思っているのだよ」

 

デミウルゴス「おぉぉお・・なんという、なんというお言葉。身に余る光栄でございます、アインズ様。わたくしめの事を後継ぎにご指名下さるのですね」

 

アインズ「そうだ。だが心得よ。私の理想を理解し、心から納得してもらわねば困るぞ。そしてその際には守護者統括にはセバスを指名する」

デミウルゴス「はっ畏まりました」

 

アインズ(折り合いをつけるのは難しいとは思うが、私が間に入ってセバスの考え、デミウルゴスの考えを根気よく説明していくしかあるまい。お互いに少しづつ歩み寄る事ができればこの世界はうまくいく。そうもしかしたら俺が統治していたこの100年よりも…)

 

 

 

・・・時は流れ数年後。

 

ペロロン「本当にこの世界級アイテムを使えば元の世界に帰れるんだな?」

 

デミウルゴス「はい。ぷれいやーのみが使えると言われ、別の世界へと帰還できるアイテムと記録が残っております。かつてのぷれいやーのごく一部が使用し、煙のように消えたと」

 

アインズ「皆さんお元気で、皆さんと過ごしたこの数年間は本当に充実していました。またどこかで会いましょう。とは言いませんよ。会わない事がそれぞれの望みなのですから。生きる世界は違えど皆さんの幸せを願っています」

 

ペロロン「モモンガさん。本当に楽しかった。一回りも二回りも成長したモモンガさんには驚きと新鮮さを感じたよ。人はこれほどに変われるんだなって思った。ありがとう、世界は違うけどモモンガさんの人生を精一杯楽しんでくれよ」

 

たっち「モモンガさん、あなたの正義しかと見届けました。本当に良い世界です。私の世界も変えられるようできる限り足掻いてみます。任せて下さい。正義再光臨!」

 

タブラ「モモン君、アルベドをよろしくな。アレは誠にお主の事を愛しておった。自身の存在そのものをかけるほどにな」

 

鈴木悟「そうです…ね。俺以上に俺の事を理解してくれていました。ですがもう彼女の声を聴く事はありません」

 

 

タブラ「ほっほっほ、アレにはあらゆる設定を盛り込んである。生まれ変わってまた逢いに来ることもあろうて」

 

鈴木悟「本当ですか?!はは・創造者に言われると期待しちゃいますね」

 

「達者でな」

「バイバイモモンガさん、シャルティア、皆~」

「さようならモモンガさん」

 

そして3人は直径2メートルほどに空いた黒い空間へと姿を消していった。

 

 

 アインズ「行ったか…」デミウルゴス「行かれましたね」

 

鈴木悟「本当に、楽しかったんだ。元の世界を忘れて彼等と未知を旅した事。元の世界が最悪だったからこそ余計にね」

 

デミウルゴス「左様でしたか。ですが我々の世界はここです。今までもこれからも我々を導いて下さいますか?アインズ様」

 

アインズ「あぁ任せよ。びしびし行くぞデミウルゴス。覚悟しておけ」

デミウルゴス「光栄でございます、アインズ様」

 

FIN




後書き
数年ぶりに帰還。完結させる事だけを考えて書きました。
 そもそも書き始めたきっかけは本編のオーバーロードの完結にあまりにも時間がかかりそうな事から。

 結論から言うと
 【オーバーロードの終わりはかつての仲間からの決別】
だと推察しました。

 かつてのギルド仲間に執着しすぎているアインズウールゴウン。
本人が望んだことはかつての仲間を探す事。そう名言しています。デミウルゴスが世界征服と言い出してしまいましたが、本来は仲間探し。

 そして仲間に出会える可能性があるのは100年毎にある揺り返しと言われるぷれいやー召喚の時のみ。それか隠れ住んでいるか。

 いずれにせよなにがしかで出会って、執着していたギルド仲間と決別する事でこの世界で生きていく覚悟を決める。そういう終わりを迎えると思いました。

 ちなみにプランAはバトルになりたっちみーペロロンの殺害。プランBは和解。
数年前はバトルにしようと思いましたが、どう考えても戦闘は無理でした。アインズの性格を考えれば戦う選択はなかった。

 決別方法としてはかつての仲間は元の世界への帰還。しかしアインズは残るという形がベストと判断、こうなりました。
 アインズは仲間への執着を断ち切り、前を向く。自分の人生を生きるという方法としてはこれで十分。
 原作はまだまだ完結まで時間がかかりそうです。法国とのバトルはしっかり描いてほしいな。法国、中央大陸、空に浮かぶ元ギルド要塞とのバトルをやってもらって、ツアーは話が通じるタイプだろうから友好関係になって終わりかな。
 最後にギルド仲間と出会いそして別れ、しがらみを断ち切ってエンド。
完結まで描ききって下さる事を切に願っております。


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