地球外生命体を宿した暗殺者 (蛇廻)
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第1話 日常

ビルドロス発症中にハイパームテキです・・・。

エボルトが出てくる作品が描きたくなったので作ってみました。

とりあえず第一話をどうぞ!


?side

 

 

俺が中学三年に進学した時、二つの事件に遭遇した。

 

一つは月の爆発。空にいつも通り浮かんでいた月が突如爆発し、三日月の状態になった。

 

もう一つは今、俺たち『椚ヶ丘中学(くぬぎがおかちゅうがく)3年E組』の生徒の目の前にいる存在との遭遇だ。

 

全身が黄色く、大きな丸い頭にタコのような触手を持っている生物。

 

明らかに人外だが、この生物こそが今に俺たちの担任の『殺せんせー』だ。

 

月が爆発した数週間後、こいつはいきなりここに現れた。

 

 

<回想中>

 

「初めまして、私が月を()った犯人です」

 

『・・・・・はっ?』

 

いきなり俺たちの前に現れてそう言った殺せんせー。

 

「来年には地球も()る予定です。君たちの担任になったのでどうぞよろしく」

 

((((まず5、6箇所ツッコマせろ!!))))

 

クラス全員がそう思ったことだろう。

 

そんなことを思っていると、殺せんせーの後ろにいた人が話し始めた。

 

「あー、防衛省の烏間(からすま)という者だ。まずは、ここからの話は国家機密だと理解いただきたい」

 

そう前置きをしながらその人、烏間さんは話し始めた。

 

「単刀直入に言う。この怪物を君たちに殺してほしい!」

 

全くもって予想していなかった言葉。クラス全員が目を見開いていた。

 

「詳しい話をできないのは申し訳ないが、こいつの言ったことは全て本当だ。月を壊したこの生物は、来年に地球をも破壊する。このことを知っているのは各国首脳だけ。世界がパニックになる前に、秘密裏にこいつを殺す必要がある。つまり・・・・暗殺だ」

 

烏間さんは懐からナイフを取り出し、それを殺せんせーに向けて振るった。

 

だが、殺せんせーはそれを目で追えない速さで避けた。

 

「だが、こいつはとにかく速い!!殺すどころか眉毛の手入れをされてる始末だ!丁寧にな!!」

 

烏間さんはしばらくナイフを振るっていたが、諦めたのかナイフをしまった。

 

「月を三日月に変えるほどのパワーを持つ超生物だ。最高速度は実にマッハ20!!つまり、こいつが本気で逃げれば、我々は破滅の時まで手も足も出ない」

 

「ま、それでは面白くないのでね。私から国に提案したのです。殺されるのはゴメンですが、椚ヶ丘中学校3年E組の担任ならやってもいいと」

 

((((何で!?))))

 

再びみんなの考えが一致したことだろう。それほど意味がわからなかった。

 

「こいつの狙いはわからん。だが、政府はやむなく承諾した。君たち生徒に危害を加えないことが条件だ。理由は二つ、教師として毎日教室に来るなら監視ができるし、何より30人もの人間がこいつを殺すチャンスを得られるからだ!」

 

烏間さんはそう言ったが、はっきり言ってそれは大人の都合だ。なんで自分たちがそんなことをしなくちゃいけないのか。どうして自分達なのか。そんなみんなの声は烏間さんのこの言葉によってかき消された。

 

「成功報酬は百億円!!」

 

その言葉でみんなの目の色が変わる。それもそうだろう。普通の過ごしていたら百億円なんて絶対に手に入らない額だ。

 

「当然の額だ。暗殺の成功は冗談抜きで地球を救うことなのだから」

 

そんなこんなで、俺たちの暗殺教室が始まった。

 

 

<回想終了>

 

 

暗殺教室が始まって既に数週間が経っていた。

 

今日までに色々な奴らが暗殺を仕掛けてきたが、殺せんせーには全く効いていなかった。

 

途中から停学が終わって学校に戻ってきた『赤羽業(あかばねかるま)』や、政府から派遣された殺し屋の『イリーナ・イェラビッチ』が先生になってともに暗殺をしている。

 

ま、俺は金には興味ないし、全然暗殺に参加していないけどな。そもそも俺には他にやることがあるし。

 

『確かにお前には他にやることがあるが、ちょっとぐらいはいいだろう。このままじゃ、お前友達なくすぞ?』

 

「余計なお世話だ、エボルト」

 

『はいはい』

 

こいつの名前は『エボルト』。昔から俺の中にいるもう一つの存在にして、殺せんせーと同じように地球を破壊できる地球外生命体だ。ま、本人にそのつもりは無いみたいだがな。

 

『だが、せめて授業ぐらいは受けろ惣一(そういち)。いくらテスト明けだからってな』

 

「いいんだよ。既に内容は分かってるんだ。受けてもつまらないだけだよ」

 

俺は今、校舎の屋根の上に寝っ転がっている。今は授業中、つまりサボりだ。

 

「ふわぁ〜あ・・・寝るか」

 

そう呟いて、俺は目を閉じた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「・・・ち君・・きて・・・惣一君!」

 

「ん・・・ふあ〜あ。なんだ、有希子か。どうしたんだ?」

 

「どうしたじゃないよ。もう放課後だよ?」

 

「あぁ、もうこんな時間か」

 

俺を起こしたのは『神崎有希子(かんざきゆきこ)』。俺の幼馴染であり、同じE組の生徒だ。

 

「エボルトさんも、どうして起こしてあげないの?」

 

『いや、いつもの事だろ?そもそも俺が起こしたところで惣一には意味ねぇよ』

 

「よく分かってるな、エボルト」

 

『一体何年の付き合いだと思ってやがる』

 

そして有希子は、数少ないエボルトの事を知っている人物でもある。

 

「とにかく、今日はもう帰ろ?」

 

「そうだな、帰るとすっか」

 

俺は有希子と一緒に屋根から降り、山を降りて帰宅する。

 

その途中だった。俺たちの耳に悲鳴が聞こえたのは。

 

「エボルト、今のは」

 

『あぁ、間違いなくスマッシュだ』

 

「行くの?二人とも」

 

「あぁ、行ってくる。お前は先に帰ってろ」

 

「・・・分かった・・気をつけてね」

 

「・・・あぁ」

 

俺は有希子に返事をすると、ポケットからコブラが描かれた紫色のボトル『コブラフルボトル』と黒い特殊な形をした拳銃『トランスチームガン』を取り出す。

 

左手に持ったコブラフルボトルを数回振り、キャップを前に合わせてからトランスチームガンに装填する。

 

『コブラ!』

 

装填と同時に鳴った不気味な音声と禍々しい音楽。

 

すでに俺たちには聞き慣れたものだ。

 

俺はトランスチームガンを顔の横まで持っていく。

 

蒸血(じょうけつ)・・・・」

 

『ミスト・マッチ・・・・』

 

トランスチームガンを下に向け、トリガーを引きながら銃口を再び上に向ける。

 

銃口から煙が撒かれ、俺の体を包んで行く。

 

『コッ・コブラ・・・・コブラ・・・・ファイヤー!!』

 

煙が晴れる頃には、俺の体は全く別のものになっていた。

 

胸や顔にはコブラの意匠が施され、色は血のようなワインレッドカラーをしている。

 

『さて、行くとするか』

 

俺は声をエボルトと同じ声に変え、悲鳴が聞こえたほうへと歩いて行く。

 

しばらく歩いて行くと、そこには白い体のしたスマッシュがいた。

 

『今回のスマッシュはあいつか、さっさと終わらせるか』

 

俺は早速トランスチームガンをスマッシュに向けて光弾を放つ。

 

光弾はスマッシュに直撃し、あっけなく吹き飛ばされる。

 

『なんだ?そんなもんか?』

 

俺は真ん中にバイブが付いている赤と黒の剣『スチームブレード』を取り出し、スマッシュに切りつける。

 

スマッシュはいきなりの攻撃に対応できなかったのか、直撃する。

 

『ま、こんなもんか』

 

スチームブレードについているバルブを回転させる。

 

『エレキスチーム!』

 

剣に先端部分についている銃口から煙を出してスマッシュを包み込む。

 

すると、その場所に電気が走る。

 

『さ、これで終わりだ』

 

トランスチームガンに再びコブラフルボトルをセットする。

 

『コブラ!スチームブレイク!コブラ!』

 

銃口からコブラの形をしたエネルギーが飛び出し、スマッシュに襲いかかる。

 

スマッシュに直撃したエネルギーはスマッシュもろとも爆発した。

 

『さてと、さっさと成分を回収するか』

 

俺はスマッシュにエンプティボトルを向ける。

 

すると、スマッシュから成分が抜けてエンプティボトルに入っていく。

 

エンプティボトルは丸く膨らみ、スマッシュがいたところには人が倒れていた。

 

『これでもう大丈夫だろう。これからは気をつける事だな。ま、どうせ聞こえてないだろうが』

 

そう言い残して、俺はトランスチームガンで煙をばらまいてその場からいつものように立ち去った。

 

 




とりあえず今回はここまでです。

感想、評価等宜しくお願いします。

それでは、チャオ!!


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第2話 惣一の目的

今回はサブタイトル通り惣一の目的が描かれています。

っていってもほんの1〜2行だけど・・・。

とりあえずあの言葉から始めましょう!

さてさてどうなる第2話!!


惣一side

 

 

スマッシュを倒した後、俺は転移で家に帰ってきた。

 

ま、家って言ってもカフェだけどな。しかも客は全く来ない。

 

『当たり前といえば当たり前だろう。こんな路地裏みたいな場所にあるカフェ。誰が来るんだよこんな場所』

 

「俺が知るわけないだろエボルト。ここに作ったのは父さんなんだから」

 

エボルトと話しながら入り、まっすぐ冷蔵庫に向かう。

 

何故冷蔵庫?と思うかもしれないが、この冷蔵庫はとある場所への入り口になっているんだ。

 

扉を開けると目に入るのは地下へと繋がる階段。

 

俺は階段を降りてそこそこ広い地下空間に入る。

 

地下には冷蔵庫や水道、ベットがあり、奥にはさらに広い空間が広がっている。

 

目立つのは真ん中にある巨大な装置。俺はバックを置くとその装置に近づき、先ほど採取したスマッシュの成分が入ったボトルを装置についている小窓から中にいれる。

 

『さて、今回はどんなボトルになるのかな?』

 

「俺たちが持っていないボトルはまだまだある。そもそもボトルを作った張本人が何でこんな事をしているんだよ」

 

『仕方ねぇだろ。まさかボトルの成分が抜けるなんて思ってなかったんだから。ていうか何で抜けたんだよ!しかもこの地球上に撒かれちまってるしよ!』

 

そう、俺が使ったコブラフルボトル以外のボトルはエボルトが『パンドラボックス』を使って作り上げたもの。

 

だが、俺がパンドラボックスに触った瞬間、パンドラボックスから6枚のパネルが外れ、中にあったボトルからは成分が抜けてなくなっていたのだ。

 

そもそもパンドラボックスが何かって?それは俺にもわからない。ある日、突然宇宙から飛来してきたかと思うと、以前の俺の家に落ちてきたんだから。

 

落ちてきたパンドラボックスに、俺が一番最初に触った。そしたら、中に入っていたエボルトの魂が俺に入ってきたんだ。

 

まぁ、その時はまだ気づいていなかったけどな。

 

その後、パンドラボックスは研究者である父さんと母さんが回収し、研究をしていた。

 

だが、研究を進めていくうちにパンドラボックスに宿る強大なエネルギーに、一緒に研究していた研究員の一人が気づいた。いや、気づいてしまったんだ。

 

そいつはパンドラボックスを独り占めしようとし、父さんと母さんを殺した。

 

その日、俺は母さんと父さんに呼ばれてその場所にいた。そして、見てしまったのだ。父さんと母さんが殺されるその瞬間を。

 

その時だ、俺とエボルトが初めて会話し、ブラッドスタークになったのは。

 

エボルトから受け取ったトランスチームガンとコブラフルボトルを使ってブラッドスタークになり、その研究員に襲い掛かった。

 

その研究員は逃がしてしまったが、無事にパンドラボックスは回収できた。だから、パンドラボックスは今俺の手元にある。

 

エボルトが言うには、どうやらボトルから抜けた成分はこの地球上に撒かれているらしく、時たま人間に入っている。

 

その成分が入った人間は先ほどのようなスマッシュに変わり、自我が消えて人を襲い始める。

 

俺はそんなスマッシュを倒して成分を回収し、成分が入っているフルボトルに戻すことが目的だ。

 

『おい、惣一!ボトルの浄化が終わったぞ!』

 

「あ?何だ、もう終わったのか」

 

『何考えてたんだ?そんな集中して』

 

「別に、特に意味はない」

 

そうエボルトに返事をしてから小窓を開け、ボトルを取り出す。

 

ボトルは先ほどと変わって動物の顔が描かれている白いボトルに変わっていた。

 

「エボルト、こいつは?」

 

『お、今回はハリネズミフルボトルか』

 

「ふ〜ん、ハリネズミねぇ」

 

ハリネズミフルボトルをパンドラボックスから外れた内の一つの緑の『パンドラパネル』にはめる。

 

パンドラパネルには他にも数本ボトルがはまっている。

 

エボルト曰く、ボトルには相性があって最も相性がいいボトル二本を、パネルで確かめることができるらしい。

 

だが、未だに見つかったことがなく、本当なのか怪しくなってきたがな。

 

『おい、今なんか失礼なこと考えなかったか?』

 

「いや、気のせいだろ」

 

『そうかぁ?』

 

たく、変に勘がいいんだよなこいつ。

 

「とにかく、ボトルの浄化も終わったし、今日はもう寝るぞ」

 

『さっきまで寝てたろ。まだ寝るのか』

 

「当たり前だ」

 

『せめて飯を食え。また有希子にあーだこーだ言われるぞ』

 

「んじゃ、パスタで」

 

『それは勘弁してくれ!』

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

翌朝、目が覚めた俺の前にはすでに朝食が用意されていた。

 

「・・・エボルト、また勝手に俺の体使ったな」

 

『こうでもしないとお前は飯を食わねえだろうが。いいから黙って食え!』

 

「・・・はぁ」

 

仕方なく、俺は朝食に手をつける。

 

エボルトが作る料理は決してまずくなく、むしろうまい。のだが・・・・

 

「・・・・・」

 

俺はゆっくりと視線を横に置かれているカップに移す。

 

カップの中にはコーヒーが入っているのだ。

 

コーヒーぐらい普通だろ?と思うかもしれないが、はっきり言ってこいつはコーヒーではない。ある意味殺人兵器だ。

 

『今回はかなり自信がある。騙されたと思って飲んでみろ!』

 

「そのセリフ、もう何十回と聞いたんだが。しかもうまかったことは一度もない」

 

俺は恐る恐るカップを手に取り、中を見る。

 

見た目は普通のコーヒーなのだが、どうしても躊躇ってしまう。

 

『さぁ、さぁ!』

 

「うぅ・・・・くそ!」

 

俺は覚悟を決め、コーヒーを口の中に入れる。

 

「・・・・・マッズ!!」

 

あまりの不味さに、俺は残りのコーヒーをすぐに捨てる。こんな不味いコーヒー誰が飲めるんだよ!

 

『っかしいなぁ。何がいけないんだ?』

 

「明らかにお前が原因だよ。ってかお前が俺の中にいるおかげで、俺の淹れるコーヒーも同じくらい不味くなっちまってるんだよ!」

 

『もう少し豆の量を多くしてみるか?いやそれとも・・・』

 

「・・聞いてねぇな」

 

俺がぼやいていると、店の扉が開く。この時間に、そもそもここに来るのはあいつぐらいしかいない。

 

「おはよう惣一君」

 

「おう有希子、お前もエボルトのコーヒー飲むか?」

 

「ううん、遠慮しとく」

 

ま、そうだろうな。有希子もエボルトの淹れたコーヒーの不味さは知っている。飲もうと思うわけがない。そもそも、もう捨てた後だけどな。

 

「そろそろ行かないと遅刻するよ?」

 

「どうせ行ったところで授業は受けないんだ。遅刻したところで問題はない」

 

「・・・なんで授業を受けないのか、って言いたいところだけど、惣一君は頭いいもんね。それこそなんでE組にいるのか不思議なくらい」

 

「だろ?だから俺が授業を受ける必要はないんだよ」

 

「・・・・はぁ、とにかく早く行くよ」

 

「あっ、おい!引っぱんなよ!」

 

有希子に連行されて、仕方なく学校に向かう。あ、バックは一応取りに戻ったけどな。

 

(『・・・・相変わらずだな、こいつら』)

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

学校に着き、さっさと教室から立ち去ろうとすると、クラス委員長の『磯貝悠馬(いそがいゆうま)』に話しかけられた。

 

「なぁ石動、班は決まったか?」

 

「あ?班?」

 

班と聞いて考えるが、なんのことだが全く思い出せない。

 

「なんだ、忘れたのか?修学旅行の班だよ。決まったら、俺か片岡(かたおか)のどっちかに知らせてくれよ」

 

そう言って磯貝は立ち去っていった。

 

そういえば修学旅行の話があったな。ほとんど聞いていなかったが。

 

「・・・ま、そのうち決めればいいか」

 

『お前な・・・』

 

エボルトがなんかぼやいているが気にしない。

 

結局、有希子に言われて『潮田渚(しおたなぎさ)』や『茅野(かやの)カエデ』と同じ班に入ることになった。

 

 

 

 




今回主人公のフルネームが出てきましたね。

といってもビルド本編に出て来る、エボルトに取り憑かれていたマスターと同じ名前ですが。

それと本編ではベルナージュが宿っている美空がいないと浄化できませんでしたが、この作品ではベルナージュがいなくても浄化できることにしました。

それでは次回からは修学旅行編です!楽しみにしていてください!

それでは、チャオ!!



ってか殺せんせーとか渚とか全く出てきてないんだけど!


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第3話 修学旅行

ついに平成最後の仮面ライダー『ジオウ』が始まりましたね!

第一話からビルドとクローズ、戦兎と龍我が出てきて一人ですごい盛り上がってました。

予告を見る限り次回も出てきそうですし、来週もすごい楽しみです!

あ、とりあえず第3話、どうぞ!


惣一side

 

 

修学旅行当日。

 

持ち物の中にトランスチームガンと数本のフルボトルを入れてから、集合場所である駅に有希子と向かう。

 

修学旅行先は有名なあの京都。もはや定番とも言えるだろう。

 

だが、俺たちは暗殺教室の生徒。当然向こうでも任務が待っている。

 

事前に烏間さん・・・いや、今は烏間先生か。に聞かされた話によると、今回政府は腕利きの殺し屋を雇ったらしく、俺たちはその殺し屋のサポートをしろとのことだ。

 

「ったく、めんどくせぇ」

 

『どうせお前は何もしてねぇだろうが』

 

「エボルトさんの言う通りだよ」

 

「反論はしないけどな。それで、俺たちは何をするんだ?」

 

「・・・昨日までに何回か確認したんだけど、覚えてないの?」

 

「・・・いや、全く」

 

「はぁ・・・・」

 

正直に答えたらため息を突かれた。だってしょうがないだろ。全くもって興味がないんだから。

 

「それじゃあ、ここでもう一回説明するから覚えてね?私たちが今回やることは、政府に雇われた殺し屋の人が、殺せんせーを暗殺しやすいよう、殺せんせーを誘導し、注意を引くこと」

 

「ほうほう」

 

「場所に関しては今回、私が色々調べてまとめておいたから。あとはその場所に殺せんせーを誘導すればいいの」

 

「なるほど、分かった」

 

「普段もこれくらい真面目に聞いてればいいのに・・・」

 

『全くだ』

 

ふ、そいつは無理な相談だな。

 

「さ、着いたぞ」

 

話しているうちに駅に到着する。駅前にはすでに俺たち以外の生徒が来ていた。

 

「あ、神崎さん!石動君も!」

 

「おはよう茅野さん」

 

その中にいた緑色の髪をした『茅野カエデ』がこちらに気づいて声をかけ、有希子がそれに返す。

 

俺?わざわざ返すわけがないだろ。

 

「もうそろそろ時間だよ、早く行こう!」

 

茅野に急かされ、俺たちは駅に入る。他のクラスはすでに車内に乗り込んでいたのだが・・・

 

「うわぁ〜、A組からD組までグリーン車だぜ?俺らは普通車なのによ」

 

クラスメートの菅谷(すがや)がそんな言葉を漏らす。羨ましい顔で見ているE組の生徒を、A組からD組の生徒や先生たちは俺たちをバカにした目で見て来る。

 

『いつもの奴か』

 

俺たちE組は学校内では『落ちこぼれの生徒』と言われている。だから、このような事なはっきり言って日常茶飯事だ。

 

そう思っていると、この場に似つかわしくない格好をした人物がやってきた。

 

「ごめんあそばせ」

 

俺たちE組の英語教師のビッチ先生だ。明らかに引率の教師の服装ではなく、どう考えてもおかしい。

 

『もはやこいつの価値観がわからん』

 

俺もエボルトに同感だ。全くわからんし、わかりたくもないがな。

 

と思っていると、ビッチ先生の後ろに鬼の形相を浮かべたE組の副担任が現れた。

 

「明らかに引接の教師の格好じゃない。着替えろ」

 

「固い事言ってんじゃないわよ、烏間!こういう時に・・・」

 

「脱げ、着替えろ」

 

烏間先生に言われ、ビッチ先生は一般的な服装に着替えてから車内に乗り込む。中ではかなりいじけていたが。

 

「あれ?そういえば殺せんせーは?」

 

そんな言葉が聞こえ、俺たちは車内を見渡す。あんな巨体、気付かないはずがないんだけ・・ど・・・。

 

『・・・なにやってんだ?あいつは』

 

「さぁ・・・」

 

俺たちの視線の先は窓。そして、その窓に外から張り付いている殺せんせーの姿。

 

「何やってんだよ、殺せんせー!?」

 

「にゅや、駅中スイーツを買っていたら乗り遅れまして、次の駅まではこのまま行きます。あぁ、ご心配なく。透明になっているのでただ荷物と服がついてるだけに見えますので」

 

「それはそれで不自然だよ!」

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

あれから時間が経ち、俺たちは今京都にある旅館の中にいた。

 

今現在、俺たちはその旅館のロビーに集まりソファーに座っているグロッキー状態の殺せんせーを見ていた。

 

「・・・乗り物酔いか?」

 

『なんで地球破壊ができる超生物が乗り物酔いしてんだよ』

 

ソファーの後ろには磯貝、片岡、岡野の3人が回り込み、グロッキー状態の殺せんせーに対先生用ナイフを突きさしている。

 

ま、全て躱されてるけどな。

 

「それで?そのメモは見つかったのか?有希子」

 

「ううん、確かにバックに入れてたんだけど・・・」

 

『・・・そのメモって惣一に説明するときに持ってた奴だよな。それなら確かにバックに戻してたぞ』

 

エボルトが他のみんなに気づかれないように、小声で言う。

 

エボルトの言う通り、あのメモは確かにバックに戻していた。

 

「神崎さんは真面目ですからね、独自にまとめていたとは感心です。ですがご安心を。先生が作ったこのしおりを持って入れば何も心配はいりません!」

 

そう言って殺せんせーが取り出したのはとてもしおりとは言い難い、とてつもなく分厚い物体だった。

 

「「「それを持ち歩きたくないからまとめてんだよ!!」」」

 

なんか殺せんせーが来てから意見が一致するようになった気がするんだが。

 

結局、有希子のメモは見つからずに一夜が明けた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

翌朝、俺と有希子に渚、茅野、赤羽、杉野、奥田は殺せんせーを暗殺するためのコースを歩きまわっていた。

 

その道中で渚が言っていたが、この京都には坂本龍馬が暗殺された『近江屋の跡地』や、織田信長が殺された『本能寺』などがある。

 

この二人以外にも、この京都では暗殺された人物はかなり多く、俺たち暗殺教室の生徒にとっては立派な暗殺旅行だとわかった。

 

それから場所を移動し、次は祇園。

 

「へぇ〜、祇園って奥に入ると人気ないんだね」

 

「一見さんお断りの店ばかりだから目的もなく来る人はいないし、見通しがいい必要もない、だから、私の希望コースにしてみたの。暗殺にピッタリなんじゃないかって」

 

茅野が言う通り、確かに回りに人の気配は全くしない。

 

『さすがは有希子、よく調べているな。惣一とは大違いだ』

 

「おいエボルト、お前あとで覚えてろよ」

 

「ん?石動なんか言ったか?」

 

「いや別に」

 

エボルトに言ったことを杉野に問われたが、適当にごまかす。別に知る必要のないことだしな。

 

それにしても・・・・

 

『おい、惣一。気付いてるか?この気配に・・・』

 

「あぁ、当然だ」

 

エボルトの質問に小声で返す。さっきまではなかった気配が俺たちを囲むようにしている。

 

「なんでこんな拉致りやすい場所来るかね君たち」

 

俺たちの後ろからかけられる声。後ろを見るといかにも不良って格好の奴らがぞろぞろと現れた。

 

「何?お兄さんら。観光が目的じゃないっぽいね」

 

そんな不良たちを見て赤羽が挑発する。

 

「男に用はねぇんだよ。女置いて帰れ」

 

不良の一人がそう言った瞬間、赤羽がそいつの顎に手の平を打ち込み、電柱に叩きつける。

 

「ほらね、渚君。目撃者がいなければ喧嘩しても問題ないでしょ」

 

そう言う赤羽の後ろに接近する男がいることに気づく。

 

俺はすぐさまその男に接近し、その胴体に蹴りを入れる。

 

「サンキュー、石動」

 

赤羽のお礼を聞いた後、すぐに次の不良に殴りかかろうとした瞬間、後ろから二人の女子の悲鳴が聞こえた。

 

急いで振り向くと、有希子と茅野の二人が捕まっていた。

 

「有希子!」

 

「チッ!」

 

赤羽が舌打ちをした瞬間、リーダー格と思われる不良が赤羽を頭を殴った。

 

「赤羽!」

 

『!惣一、後ろ!』

 

「っ!しまっ!」

 

エボルトに言われて後ろを向いた瞬間、俺の頭に衝撃が走った。

 

「ぐぅ・・・くそ・・・」

 

俺は意識を奪われ、その次に杉野、渚も倒れ込んだ。

 

「有希・・・・子・・・」

 

 

 

 




この作品でビルドに出てきた他のライダーも出そうかな?

とりあえず一人・二人は出すつもりですけど、他にも出して欲しいなどの要望がありましたら教えてください!

それでは、チャオ!!


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第4話 新たな敵

気づいたらお気に入り登録が40件近くになっていた・・・・。

こんな駄作ですが、ありがとうございます!!

これからもよろしくお願いします!!

それでは第4話、どうぞ!


惣一side

 

 

『・・・ち・・一・・・惣一!』

 

「う・・・こ、ここは・・?」

 

エボルトに名前を呼ばれ、目を覚ます俺。周りを見ると、見覚えのない場所だった。

 

確か修学旅行に来て・・・・有希子の案内で祇園に行って・・・それで・・・!?

 

「そうだ、有希子は!?」

 

『落ち着け、惣一。有希子はおそらく、あの廃工場の中だ。悪いな、お前が気を失ってる間に体を貸してもらったぜ』

 

「あ、あぁ・・・」

 

俺はエボルトが言っていた廃工場を見る。廃工場の前には少し大きめの車が止められていて、入り口には先ほどの不良の仲間と思われる男が立っている。

 

「・・・そういえば、どうやってここを見つけたんだ?」

 

『・・・・・知らない方がいいと思うぜ』

 

なんか怖いな。さて、どうするか・・・。

 

『お前ならあれぐらい余裕だろ?』

 

「連れ去られたのが有希子だけならともかく、茅野も連れ去られている。普段授業をサボっている俺が戦っているところを見せるわけにはいかない」

 

さっきの様に不良一人を蹴飛ばす程度なら問題無いだろうが、おそらく中にはそれなりの人数がいるはずだ。それはさすがにまずい。となると・・・・

 

『使うのか?人間相手に・・・』

 

「あぁ、ブラッドスタークならば声を変えられるし、俺だとは気づかれないはずだ。何、気絶程度に抑えるさ」

 

『・・・そうか、暴走しそうになったら俺が抑える』

 

「あぁ、頼むぜ」

 

俺はバックからトランスチームガンとコブラフルボトルを取り出し、数回振ってから装填する。

 

『コブラ!』

 

「蒸血・・・・」

 

『ミスト・マッチ!コッ・コブラ・・・・コブラ・・・・ファイヤー!』

 

『さて、入り口のあいつは無視して中に入るとするか』

 

トランスチームガンで煙を撒き散らし、外から中に一瞬で転移する。

 

 

惣一side out

・・・・・・・・・・

有希子side

 

 

どうしてこんな事になったんだろう・・・。

 

さっきまでみんなと一緒に祇園にいたんだけど、不良に私と茅野さんが連れ去られてしまった。

 

「どっかで見た事あると思ったけど、これさ、お前だろ」

 

リーダーと思われる不良が私に携帯を見せてくる。

 

そこには、茶髪でアクセサリーをつけた、紛れも無い私自身が写っていた。

 

「それは・・・」

 

「めぼしい女を見つけた連絡する様仲間に伝えててな、連れ去ろうと準備してたら見失っちまったてわけだ。まさか、あの名門中の生徒だったとはな」

 

そう言い残して、不良たちは離れていく。

 

すると、隣で捕まっている茅野さんが話しかけて来た。

 

「さっきの写真・・・・真面目な神崎さんも、あんな時期があったんだ」

 

「うん・・・うちね、親が厳しくて、良い肩書きばっか求めてきて。そんな肩書き生活から逃げたくて、誰も私を知らないところで遊んでたの。・・・バカだよね・・・」

 

あの頃は相談できる友達もいなくて・・・・惣一君とも再開していなくて・・・・ほんと、バカだよね・・・。

 

「もう・・・自分がどうしたいかわからないよ・・・」

 

「俺らの仲間になれば良いんだよ、綺麗に振舞っている女ほど、汚れたいって望んでいる。俺らそういう遊びたくさんして来たかたよぉ」

 

不良がそう言って来て、思わず体が震えた。怖い。助けて・・・惣一君・・・。

 

そう、思った時だった。

 

『予想通り、やはりここにいたか・・・』

 

 

 

有希子side out

・・・・・・・・・・

惣一side

 

 

 

 

廃工場の二階についた俺は手摺りの寄りかかって下を覗き込む。

 

一階には予想通り、5・6人の不良とロープで縛られている有希子と茅野がいた。

 

有希子を見ると、とても暗い表情をして、少し泣いている様に見える。あいつらが有希子をあんな表情にした思うと、無性に腹が立って来た。

 

『予想通り、やはりここにいたか・・・』

 

俺は全員に聞こえる様に声を発する。

 

いきなりの事に、不良たちは驚愕の表情を浮かべて俺を見てくる。有希子と茅野もだけどな。

 

「ば、化け物!?」

 

「なんだお前は!?」

 

『何、そいつらを連れ戻しにきた者だよ。さ、さっさと返してもらうぜ』

 

俺は一階に飛び降りて宣言する。ま、言ったところで大人しく返すわけ・・・・

 

「ふざけんな!舐めた格好しやがって!」

 

だよな〜・・・わかってたけど。さて、仕方ないが少し痛い目にあってもらうか・・・・。

 

俺は殴りかかって来た不良を避けて腹を思いっきり殴る。

 

「ごはっ!!」

 

『あぁ・・・やっぱり生身の人間には強すぎるか。ま、一撃で気絶させられるし、いいか』

 

気絶した不良を適当に放り投げ、次の不良に視線を移す。

 

まさか一撃でやられるとは思ってなかったらしく、その顔は驚愕に染まっていた。

 

「くっ・・・この化け物が!!」

 

次のやつは鉄パイプを持って殴りかかってくる。だが、ブラッドスタークになっている今の俺にはそんな物は全く効かない。

 

『ふん・・・その程度か』

 

俺はパイプを握りつぶす。すると、パイプは簡単に折れ曲がった。

 

「そ・・そんな・・・ぐわっ!」

 

不良は体が震えていたが、俺はかまわずその顔を横に払って吹き飛ばす。

 

今ので軽い脳震盪を起こしたかもしれねぇが、命に別状はないだろう。

 

そうして向かってくる不良を時には殴り、時には蹴り飛ばし、残りはリーダー格と思われる男だけになっていた。

 

『さ、あとはお前だけだぜ?どうする?』

 

「ひっ!」

 

男は後ずさりした。ま、残りはあいつ一人だけだし、まさに蛇に睨まれた蛙だな。

 

このぶんだと余裕だろうし、さっさと思わらせるか。

 

そう思い、俺が一歩前に踏み出した時だった。

 

『なるほど・・・それがトランスチームシステムの力か・・』

 

この場にいる誰でもない、そして聞いたことにない男の声が響いた。

 

声がした方を見ると、そこには黒い装甲に青い歯車がいくつもついている人型の存在だった。

 

『なんだ?お前』

 

『一応初めまして、かな?私の名は『カイザー』。ただの研究者さ』

 

『ただの研究者、ねぇ・・・』

 

『ま、信じられないだろうね』

 

『当然だ。いきなりそんな姿で現れたんだからよ。それで?何が目的だ?』

 

『今回はただのご挨拶、だけのつもりだったけど、何やら面白いことになっているようだね。一つ、実験をしていこうか・・・』

 

そいつ・・・カイザーは俺だけしか持っていないはずのスチームブレードを取り出し、パーツとバルブを動かした。

 

『デビルスチーム!』

 

『なんでお前がそれを持っていやがる・・・』

 

『教えるわけがないだろう?敵である君に・・・』

 

カイザーはそう返してから、足元に転がっていた不良に煙を浴びせた。

 

「ぐっ!あがぁあああああ!!」

 

不良は苦しみ出したが、やがて声が聞こえなくなり、煙が晴れるとそこには青と黄色の体で大きい腕を持っているスマッシュが立っていた。

 

『スマッシュだと!?』

 

『ふむ、どうやら実験は成功のようだな。さて私はこれで帰らせてもらうよ』

 

『なっ、待ちやがれ!?くっ・・・どけ!!』

 

帰ろうとするカイザーをトランスチームガンで撃とうとするが、スマッシュに邪魔をされ、みすみす逃してしまう。

 

『ちっ!めんどくせぇもん残していきやがって!おらっ!!』

 

そのスマッシュの腹に蹴りを入れるが、思った以上に装甲が厚かったらしく、衝撃によって俺も数歩下がってしまった。

 

『くっ・・・思った以上に装甲が厚いらしいな。なら、こいつを使って見るか!』

 

俺はこの間手に入れたハリネズミフルボトルを取り出し、数回振ってからトランスチームガンに装填する。

 

『フルボトル!スチームアタック!』

 

トリガーを引くと、棘状になっている光弾がいくつも発射され、スマッシュに直撃した。

 

『おぉ、こいつはなかなか使えるな。さて次は・・・』

 

俺は南京錠が描かれている『ロックフルボトル』を取り出して、数回振ってからハリネズミフルボトルと入れ替える。

 

『フルボトル!スチームアタック!』

 

『しばらく止まってろ!』

 

トリガーを引くと、今度は普通の光弾が出てきたが、先ほどの攻撃で怯んでいたスマッシュに直撃して動きが止まった。動きたいのに動けない、そんな感じだな。

 

『さ、これで終わりだ』

 

『コブラ!スチームブレイク!コブラ!』

 

コブラ型のエネルギーに飲み込まれスマッシュは爆発。俺はすぐに成分を回収して、残ったのはスマッシュにされた不良だった。

 

『ふぅ・・』

 

とりあえずスマッシュは倒せたことを確認したあと、俺はさっきから戦いを見ていた二人に近寄る。

 

「ひっ!」

 

「・・・・・」

 

茅野は怯えるが、有希子は黙って俺を見ている。ま、俺の正体も知ってるしな。

 

『どうやら怪我はないようだな、安心したぜ』

 

二人を縛っているロープを切ってから、俺はその場を立ち去ろうとする。そんな俺の視界に、ある物がよぎった。

 

『ん?』

 

おそらく不良の持ち物だろう。画面には茶髪てアクセサリーをつけている、俺のよく知っている人物が写っていた。

 

『これは・・・』

 

俺は思わず有希子の方を見てしまう。有希子は顔を伏せていた。

 

『・・・・・・』

 

俺は無言でメモリーカードを取り出して、思いっきり握りつぶす。メモリーカードはバラバラに砕け散った。

 

『さて、これで一件落着か・・』

 

「いいえ、まだですよ」

 

廃工場の入り口の方から声が聞こえた。遅かったか・・・。来る前に立ち去りたかったんだが。

 

「あなたには聞きたいことが色々あります。このまま返すつもりはありません」

 

入り口には渚や赤羽、杉野に奥田、そしてあいつらが呼んだであろう殺せんせーが立っていた。

 

 

 




今回はスマッシュ以外の敵が登場しましたね。

敵は最初どうしようかと考えていましたが、平ジェネFinalに出てきたカイザーにしました。

本来ならバグスターウイルスも必要でしたが、この作品ではバグスターウイルスがなくても変身できます。

一応変身者も決まってはいるけど・・・変身時の掛け声どうしよう。

感想、評価等よろしくお願いします。

それでは、チャオ!


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第5話 エボルトの考え

今回はサブタイからわかると思いますが、惣一ではなくエボルトがメインです!

前回は殺せんせーが現れて終わりましたが、エボルトはどうするのだろうか?

さてさてどうなる第5話!!


エボルトside

 

 

こうやって俺が話すのは初めてだな。

 

スマッシュを倒して有希子と茅野の二人を助けた惣一はこの場を離れようとしたが、入り口から奴の声が聞こえた。

 

「あなたには聞きたいことが色々あります。このまま返すつもりはありません」

 

入り口には渚や赤羽達と言った惣一と同じ班の生徒たち、さらに担任である殺せんせーが立っている。こちらとしては、奴が来る前に立ち去りたかったんだが、どうするか。別に無視することもできるが、奴はマッハ20を出せる。いつものようにトランスチームガンで立ち去ろうにも、煙を撒き散らす前に捕まるだろう。

 

おそらく、惣一もそれはわかっているはず。だが、解決策が見つからないのか先ほどから黙っている。

 

仕方がない・・・ここは俺が動くとするか。

 

『惣一、俺と代われ』

 

(はっ?うぉ!!)

 

俺は惣一の返事を聞く前に、体の主導権を握る。

 

『よぉ、お前が噂の殺せんせーか。一体いつから見ていたんだ?』

 

「先ほどついたばかりです。ですからあなたが何者なのか、ここで何をしていたのか、よければ教えていただけませんかね?答え次第では・・・・」

 

殺せんせーはそこで口を止め、触手を動かす。奴の攻撃力がどれほどの物なのかはわからないが、ここで試してみるのもいいかもな。

 

『さぁて、なんだろうな?そこに倒れている不良達で遊んでたのか、はたまたあんたの生徒で遊んでたのか・・・』

 

俺がそこまで言った瞬間、奴の触手が俺の顔も向かって来る。が、俺はそれを避ける。

 

『おっと!噂通りの速さだな!こいつは面白そうだ』

 

さすがはマッハ20といったところか。正直言ってギリギリだったぜ。

 

「避けた!?」

 

あいつらからしたらマッハ20を避けられたことは衝撃だろうな。奴も避けられるとは思ってなかったのか動揺してるのがわかる。

 

『おいおい、ぼさっとしてる暇はないぜ?』

 

『アイススチーム!』

 

俺は一気に奴に近づき、スチームブレードで足の触手を切りつける。

 

触手は綺麗に切り落とされ、切られたところから凍っていった。

 

「にゅやっ!?」

 

『おぉ、どうやら俺の武器は効くらしいな。安心したぜ。それなら・・・こいつはどうかな!』

 

今度はトランスチームガンを構え、今度は手の触手を狙う。以前聞いた話では、鉛の銃弾ではこいつの体内で溶けるから効かない。だが、このトランスチームガンで放たれるのは光弾。鉛の弾丸ではないし、そもそもしっかりとした形がないのはどうなるか・・・・。

 

「にゅやや!!」

 

『やはり、こいつも効くか。予想通りではあるがな。そんじゃ、次は・・・』

 

俺はガトリングが描かれている『ガトリングフルボトル』を取り出し、数回振ってからトランスチームガンに装填する。

 

『フルボトル!』

 

『こいつは避けられるかな?』

 

『スチームアタック!』

 

トリガーを引くと、ガトリングのように光弾が大量発射される。ま、こいつなら楽勝で避けられるだろうが・・・・。

 

『ん?』

 

だが、俺の予想は覆された。奴はその場を離れなかった。今の攻撃で足の氷は砕けたのにも関わらずだ。

 

『・・・なるほど、これは避けられない、いや、避けないって言った方が正しいか・・・』

 

奴の後ろには生徒がいる。ここで奴が避ければ、今の光弾は間違いなく生徒に当たってただろうな。

 

『生徒を傷つけないために、自ら攻撃を受けるか・・・』

 

「私は教師です。生徒を傷つけるわけにはいきません!」

 

普通は、教師でもそこまでしないと思うがな・・・・だが、それがこいつなのだろう。生徒が傷つくくらいなら、自らが傷つく方を選ぶ・・・。

 

『くっ・・・・・くっくっく・・・はーーーはっはっはっは!!!面白い!!面白いぜ殺せんせー!!まさかこんなに楽しめるとはな!!くっくっく・・・今回は楽しませてもらったお礼に、俺の名前と今回も目的を教えてやるよ』

 

「にゅや?」

 

『俺の名前はブラッドスターク。今回の目的は、お前に会い、その強さを確かめること・・・・と言いたいところだが、本当はあんたの生徒の二人を助けにきたんだよ』

 

「それはなぜ?あなたに何のメリットがあるんですか?」

 

『メリットか・・・そんなものはないな。あえて言うならただの自己満足だ』

 

俺は本当のことを言うが、奴は疑ってるのか怪訝そうに俺を見て来る。ま、それをそうか。

 

『信じるか信じないかはお前たち次第だ。ま、あんたの生徒が証言してくれるかもしれないがな』

 

俺はまだ動いていない有希子と茅野の二人を見る。茅野の方は少し驚いたが、有希子の方は安心したような目で見て来る。

 

『さて、俺もやることはもう終わった。これで帰らせてもうぜ。チャオ!』

 

俺はトランスチームガンから煙を撒き散らし、その場を立ち去る。触手を数本切り落としておいたし、そうすぐには動けないだろう。俺は体の主導権を惣一に返す。

 

『ほらよ、終わったぜ』

 

「はぁ・・・一体どうなるかと思ったが、なんとかなったな。だが、なんであんなことをした?」

 

『あんなことって?』

 

「とぼけんな。わざわざ殺せんせーと戦う必要はあったのか?」

 

『あぁ、そのことか。あいつの動きをお前の中から見たことは何回もあったが、実際どれくらいの強さなのか、何が効くのかとかは直接戦わなければわからなかったからな。今回はいい機会だったんだよ』

 

「はぁ・・・・せめて前もって相談しろよ」

 

『そんな暇があったか?』

 

「ちっ・・・・」

 

惣一はわかりやすいように舌打ちした。

 

「んで、このあとはどうすんだ?あいつらは全員一緒に行動してたけど、俺一人だけ別行動とっちまってるけどなんて言って合流するんだ?」

 

『そんなの不良を追いかけて、見失って、しらみつぶしに探してたとでも言っておけ。誰もお前を見てないんだから、騙せるだろ』

 

「んな適当な・・・・ん?」

 

話していると、惣一のスマホが鳴る。画面には有希子の名前が表示されていた。

 

「もしもし?どうした?」

 

『どうしたじゃないよ、今どこにいるの?今度は惣一君がいないって騒ぎになっちゃってるけど・・・』

 

「あぁ、悪い。みんなには不良を追いかけてたけど見失ったから、しらみつぶしに探してたとでも言っておいてくれ。これから合流する」

 

『う、うん・・わかった・・・』

 

聞く限りだといつも通りに思えるが、違う。いつもに比べて有希子の声が小さい。何かを恐れてるような・・・、やはり、あの写真が原因かな?

 

「とりあえず、さっさと合流しよう。有希子達は旅館に向かうらしいから、俺たちも向かうぞ」

 

惣一は電話を切ると、ライオンの顔が描かれている『ライオンフルボトル』を取り出してスマホにセットし、放り投げる。

 

『ビルドチェンジ!』

 

すると、スマホは空中で大きくなって変形、バイクの形になる。

 

『相変わらず便利だな。お前の発明は』

 

「さすがに旅館までは行けないけど、これで近くまで行くぞ」

 

バイクの座席にヘルメットを出現させ、それをかぶって走り始める。

 

これでやっと、一日目が終わったって感じだな。

 

 

 




そういえばまだ言ってませんでしたが、惣一は頭がよくて IQは戦兎とほぼ同じです!

ですので、この作品に出てくるアイテム(今回のビルドフォンやスチームブレードなど)はほとんど惣一の発明品です。まぁ、浄化装置に関してはエボルトが関わっていますが。

さて、次回は一日目の夜、旅館での話になります!

感想、評価等お願いします!!

それでは、チャオ!!


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第6話 殺せんせーの推理

殺せんせーの推理とは一体・・・。

どうなる第6話!!


惣一side

 

 

バイクを走らせ数分。旅館の近くで一旦止めて、バイクをスマホに戻す。さすがにバイクで旅館まで行くわけにはいかないからな。

 

歩いて旅館まで戻り、中に入るとすでに俺以外の全員揃っていた。

 

「あっ、惣一君!」

 

有希子が最初に俺に気づき、全員が俺の方を見てくる。

 

「石動君!大丈夫でしたか!?怪我はありませんね!?」

 

「うわ、うざ・・・」

 

「ガーーン!!」

 

俺にウザがられた殺せんせーは隅っこでいじけている。ま、反省はしないけどな。

 

「石動君、大丈夫だった?」

 

「ん?あぁ、渚。大丈夫だ、ちょっと迷ってただけだ。あんまし知らない土地を歩き回るもんじゃないな」

 

「そうそう、目覚ましたら男子は全員倒れているし、お前だけがいないし、どこ言ったのかと思ったぜ」

 

「実際はそれどころじゃなかったんじゃないか?俺がいないことよりも、有希子達が誘拐されたことの方が記憶に残っているだろうし」

 

「うっ・・・ま、まぁそれもそうだけど・・・」

 

「それよりも、有希子と茅野は大丈夫だったか?」

 

「う、うん・・・・そ・・助けてくれた人がいたの」

 

今、一瞬俺の名前言いかけたな。ま、今のやつ程度じゃバレないだろうが。

 

「助けてくれた人?」

 

「そうそう!胸にコブラの意匠がある赤い人!」

 

適当だな。一応あってるけど。

 

「あのコブラ男・・・・ブラッドスタークだっけ?相当強かったよな。殺せんせーをあそこまで圧倒するなんて・・・」

 

「でも、まだ本気じゃない、って感じだったよね。一体何者なんだろう・・・。なんか殺せんせーとまた違った怪物共戦ってたけど・・・」

 

「にゅや?私と違った怪物?」

 

「うん、あのコブラさんが最初に来て不良を後して言ってたんだけど、その後青い歯車が付いている人が来て、不良の一人に煙を撒いたの。そしたら、その不良が怪物に・・・」

 

そうだ・・・・あのカイザーっていうやつ、なんであいつはスチームブレードを持っていたんだ?あれは俺が作ったものだ。設計図等を作り上げたのは俺の父さんだが・・・・!まさか・・・、あいつは父さんの研究を知っている人物なのか?だとしたら誰だ?一体誰が・・・。

 

「惣一君?どうしたの?」

 

「っ!あ、あぁ・・なんでもない。とにかく、無事でよかった」

 

どうやら顔に出てたらしい、気をつけないとな。

 

「ちょっと疲れちまったから、部屋に戻って休んでるよ」

 

「あ、あぁ・・大丈夫か?」

 

「大丈夫だ、ちょっと休めば問題ない」

 

杉野に心配されたが、そう返して部屋に移動する。中には誰もいなく、大部屋に一人だけだ。

 

「はぁ・・・これから色々と大変そうだな・・・」

 

これからはスマッシュの対処だけでなく、カイザーのことも調べなければならない・・・・。

 

「・・・なぁ、エボルト。お前はどう思う?あのカイザーの事・・」

 

『大幅、お前の予想通りだろうな。奴は間違いなく、お前の父親・・・・石動健二(いするぎけんじ)の研究を知っているだろう。そうでもなければ、あの技術を持っているはずがないからな』

 

「やっぱりか・・・・」

 

カイザーの正体は父さんの研究の関係者、もうこれは間違いないだろう。だが、それでも数は多い。絞り込むにはまだ情報が足りないか・・・。

 

エボルトと話していると、いきなり部屋の扉が開いた。

 

「いや〜、今回は君のおかげでどうにかなりましたね」

 

「殺せんせーか・・・・一体何のことだ?」

 

「ヌルフフフ・・私が気づかないと思いましたか?石動君・・・・あなたがブラッドスタークですね?」

 

っ!・・まさか、気づかれるとはな。

 

「ブラッドスタークって有希子と茅野を助けた奴のことだろう?なんで俺だと思うんだ?」

 

「あなたがあの場にいない理由は神崎さんに聞きました。不良達を追いかけて迷子になり、しらみつぶしに探していたと。それはおかしい。私はあの廃工場に着く前に、君と同じように他の場所をしらみつぶしに探していました。にもかかわらず、私はその間に君を見ていない」

 

まさか・・・あの前にそんなことをしていたとはな。さすがはマッハ20といったところか・・・。

 

「さらにいうと、先ほどあなたは茅野さんの口から語られたブラッドスタークを聞いた時、大して反応はしませんでしたね。普通に考えれば『胸にコブラの意匠がある赤い人』なんて言われて、多少の反応は必ずあるものです。ですが、君は反応しなかった。まるで最初から知っていたかのように・そして・・・・」

 

殺せんせーはそこで一回口を閉じる。その顔は、とても穏やかだった。

 

「ブラッドスタークに対する神崎さんの視線です。いくら自分たちを助けてくれたとはいえ、外見は怪人そのもの。茅野さんのように怯えるのが普通ですが、彼女は怯えなかった。それどころかブラッドスタークに対して安心していて、それでいて心配している視線でした。そこまで考えると、おのずと答えは出て来ます。わざわざ自分が迷子になっていたといって嘘をつき、自分が何をしていたのか明かさなかった神崎さんにもっとも親しい人物、つまり石動君、あなたがブラッドスタークです」

 

・・・まさか有希子の視線でそこまでたどり着けるとはな。どうする?エボルト。

 

『さすがにそこまでバレちゃ、反論のしようがない。一旦俺に変われ』

 

今度は何する気だ?

 

『ただ話すだけさ、俺のことも含めて』

 

いいのか?仮にもお前は地球外生命体だぞ?

 

『この教師のことだ。俺のことを話しても、お前に危害を加えるはずがないさ』

 

そうか・・・わかった、一旦任せる。

 

『あぁ、任された』

 

 

 

惣一side out

・・・・・・・・

エボルトside

 

 

 

俺は惣一から体を借り、殺せんせーの前に立つ。

 

『お見事だよ、殺せんせー。まさか、それだけでブラッドスタークの正体にたどり着くとはな』

 

「その声は・・・・やはり、あなたがブラッドスターク・・・」

 

『だが、まだ足りない。確かにブラッドスタークの変身者は石動惣一だし、二人を助けたのは惣一の意思だ』

 

「足りない?どういうことですか?それにまるで自分であって自分でない方に言いますが・・・・」

 

やはり、俺の存在まではたどり着いていなかったか。だが、ブラッドスタークの正体がバレた以上、俺を隠す必要もない。

 

『その通りだよ、あくまでも二人を助けたのは惣一であり、俺ではない』

 

「まさか・・・二重人格!?」

 

『惜しい!!正解は、惣一の中にもう一つの存在が入っている、ってことだ。そしてその存在がこの俺だ。俺の名はエボルト。数年前から惣一の中に宿る地球外生命体だ』

 

「地球外・・生命体!?」

 

『お前とは前から話はしてみたかったんだよ。俺と同じで地球を破壊できるエネルギーを秘めていながら、教師をしているお前と。あぁ、安心しろ。俺は地球を破壊するつもりはないからな』

 

「・・・先ほど、あなたは『二人を助けたのは石動君の意思』と言いましたが、もしや私と戦ったのは・・」

 

『今度は正解だ!!あの時お前と戦ったのは、いまと同じように惣一の体を借りていた俺だ』

 

「私と同じように、地球を破壊できるのであればあそこまで強いのも頷けますね。エボルトさん、惣一君も。今日はありがとうございます」

 

『あぁ?』

 

いきなりお礼を言われて戸惑ってしまう。惣一はともかく、俺はこいつと戦ったぐらいだけどな・・・・。

 

「私の生徒を助けてくれて、エボルトさんもあの戦いで、あなたの後ろにいた二人を人質にすることもできた。にも関わらずしなかったのは、あなた自身も彼女たちを大事にしているからですね?」

 

『おいおい、いきなり何言ってんだ?俺の攻撃は下手したらお前の生徒に当たってたぞ?』

 

「その割には、あの時に私でも防げる程度に威力を抑えてましたね。あなたには余裕があったのに」

 

っ!・・・まさか、無意識とはいえそんなことを俺がしていたとはな。惣一や有希子と過ごして、俺にも情が湧いちまったってことか。

 

『・・・ま、ここは受け取っておいてやるよ。俺もこれからは、時々お前の暗殺に加わるから、そん時はよろしく頼むぜ』

 

「えぇ、いつでも」

 

ここでバレちまったのは想定外だが、おかげでこれから楽しくなりそうだぜ。

 

 

 

 

エボルトside out

・・・・・・・・・・・

惣一side

 

 

 

殺せんせーに正体がばれ、エボルトが存在を明かした後、旅館の風呂に入ったり、飯を食ったり、なんか殺せんせーの暗殺が始まったりと色々あった。よくもまぁそんな体力が残ってるよ・・・。

 

だが、そのあとはみんな疲れたのか泥のように眠っている。

 

俺は一人なかなか寝付けず、布団を抜け出して部屋をこっそり出る。ちなみにエボルトは寝ている。いつものことだが、地球外生命体にも寝る概念があるんだな。

 

「惣一君」

 

「ん?」

 

いきなり俺を呼ぶ声が聞こえ、そちらを見ると有希子がいた。

 

「なんだ、有希子。お前も寝付けないのか?」

 

「うん・・まぁ・・・」

 

有希子は曖昧な返事をすると、俺の隣に立つ。お互い口を開かず、沈黙が訪れた。

 

しばらくして有希子が話しかけてきた。

 

「今日・・・ありがとう、助けてくれて」

 

「・・そのぐらい、お安い御用だよ」

 

「これで、二回も助けてもらっちゃった」

 

確かに、俺が有希子を助けたのはこれで二回目だ。まぁ、その話はそのうちするとして・・・、

 

「そんなこと、俺は気にしないよ」

 

「そ、そう・・・・・・・」

 

再び沈黙が訪れる。

 

俺は人る気になることがある。このことは聞いてはいけないことなのかもしれない。だが、聞いておかなきゃいけない気がする。

 

「・・なぁ有希子、あの写真なんだけど・・・・」

 

『写真』という単語を聞いた瞬間、有希子が一瞬動揺した。やっぱり、触れて欲しく話題だったか・・・。そう思っていると、有希子が口を開いた。

 

「惣一君は知ってると思うけど・・うちって親が厳しいでしょ?良い肩書きばっか求めてきてね、そんな肩書き生活から逃げたくて、誰も私を知らない場所で、姿を変えて遊んでたの。それが、あの写真・・・」

 

まさか、有希子にそんな過去があったなんてな・・・。おそらく、俺と再会する前の話なのだろう。

 

「あの頃は相談できる人もいなくて・・・・バカだよね。それで遊んだ結果が『ENDのE組』。・・・・私、何がしたいんだろう・・・」

 

「・・・確かに、その時は相談できるやつはいなかったかもしれない。でも、今は違う」

 

「えっ?」

 

「俺がいるだろう?俺だけじゃない、エボルトだっている。なんかあるなら相談しにこい。何ができるかわからないけど、絶対に助けになってやるさ。・・・・もうお前は一人じゃない、そのことをしっかりと覚えておけ」

 

「惣一君・・・」

 

「お前の過去がどうだったとか、俺もエボルトも気にしないさ。俺たちにとって、お前が大切な存在であることに変わりはないからさ」

 

「えっ//」

 

?なんか有希子の顔が赤いけど、どうしたんだ?

 

「顔赤いけど、大丈夫か?」

 

「へっ!?あ、う、うん、大丈夫・・・大丈夫だよ」

 

いきなりどうしたんだ?こんなに慌てて・・・。

 

「そ、それじゃあ、そろそろ戻るね、おやすみ」

 

「あ、あぁ、おやすみ」

 

有希子はそう言って足早に戻って行った。本当に大丈夫か?

 

 

 

 




なんか主人公の性格が定まらないな・・・どうしよう。

次回はあの転校生が来る話ですが、その前に番外編で今回の話に出てきた惣一と有希子の再会の話を描こうと思います。

楽しみにしてくださってる方には申し訳有りませんが、転校生に話はしばらくお待ちください。

感想、評価等よろしくお願いします!

それでは、チャオ!!



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番外編 惣一と有希子の再会

今回は番外編です!

今までの話でも何回か出てきましたが、有希子がエボルトやブラッドスターク、スマッシュのことを知っているわけが明かされます!

では、番外編をどうぞ!!


惣一side

 

 

これは、まだ月が三日月ではなかった頃の話。つまり、俺たちが3年E組になるよりももっと前の事だ。

 

その頃、俺はもともと住んでいたこの町を離れて、エボルトと共にスマッシュを倒して成分の回収をしていた。フルボトルが多い方が戦いも有利になるし、俺自身の力量もあげられるって事でエボルトの指示の元で戦っていた。

 

そして、ある程度成分を回収したためこの町に戻り、家の地下室でボトルの浄化を行なっていた時だった。

 

『ん?』

 

「どうした?エボルト。まさか、またスマッシュか?」

 

『あぁ、それもかなり近いぞ』

 

「ちっ・・・・まだ浄化が終わってないんだがな」

 

『だが、放っておくわけにはいかないだろう?』

 

「あぁ、当然だ。すぐ行くぞ」

 

俺はエボルトにそういって、トランスチームガンとコブラフルボトル、さらに浄化ができている数本のフルボトルとエンプティボトルを持ち、コブラフルボトルをトランスチームガンに装填する。

 

『コブラ!』

 

「蒸血・・・」

 

『ミスト・マッチ!コッ・コブラ・・・・コブラ・・・ファイヤー!!』

 

『エボルト、場所はどこだ?』

 

そう聞くと、俺の頭に場所のイメージが浮かぶ。エボルトが送ってくれたみたいだ。

 

そのイメージの場所に向かって地下室から転移する。

 

煙が晴れると、そこには藍色の体に両手に剣を持っているスマッシュ、そしてそのスマッシュに迫られて腰を抜かしている少女だった。

 

『おらっ!』

 

俺はそのスマッシュに近づき、回し蹴りを決める。

 

『おい、お前大丈夫か?』

 

「えっ?あ・・あの・・・」

 

ん?こいつの顔・・・どっかで・・・。

 

『あぁ、驚かせちまったか。悪いな、こんな姿で。俺の目的はあくまでも奴であって、お前じゃない。動けるんなら、早く逃げるんだな』

 

「は、はい!」

 

彼女は返事をすると、ゆっくりではあるが逃げて行く。とりあえず、遠ざけれれば大丈夫だろう。

 

『おっと、行かせるわけがないだろう!!』

 

彼女を追おうとしていたスマッシュの肩を掴んで止め、その顔面を思いっきり殴る。

 

『思いの外簡単に吹っ飛んだな・・・。さて、こいつを使ってみるか・・』

 

スチームブレードを取り出し、二つに分解、トランスチームガンと合体させる。

 

『ライフルモード!』

 

すると、小型の拳銃から大型のライフルへと変わる。さらにロケットが描かれている『ロケットフルボトル』を数回振ってトランスチームガンに装填する。

 

『フルボトル!』

 

『さぁ、こいつはどんなボトルかな?』

 

『スチームショット!!』

 

トリガーを引くと、銃口からロケット型の弾丸が発射される。ロケットは真っ直ぐスマッシュに迫っていったが、それゆえか簡単に避けられてしまう。が、目標に避けられたロケットは軌道を変え、再びスマッシュに向かっていった。

 

『おぉ・・・誘導弾か。こいつはなかなか使えるな』

 

さすがにスマッシュもこれは想定外だったらしく、今度は直撃した。

 

立ち上がったスマッシュは不利だと思ったのか、今度は分身し始めた。

 

『ほう・・・・分身か。それならば、これが使えるかもな』

 

俺は電球が描かれている『ライトフルボトル』を取り出し、数回振ってロケットフルボトルと交換する。

 

『フルボトル!』

 

『ほらよ、こいつでもくらっとけ!』

 

『スチームショット!!』

 

上空に向けてトリガーを引くと、上に向かって光弾が発射されて爆発する。

 

すると、辺りが一気に照らされて分身が一気に消えた。

 

『閃光弾だ・・・お前のような分身を作る相手には使えるだろう。さて、これで終わりだ』

 

『コブラ!』

 

ライフルモードから戻したトランスチームガンにコブラフルボトルを装填し、トリガーを引く。

 

『スチームブレイク!!』

 

発射されたコブラ型のエネルギーに飲み込まれ爆発した。

 

倒れたスマッシュにエンプティボトルを向け、成分を回収する。

 

『こいつもあとで浄化しないとな』

 

スマッシュを無事に倒し、これで安全だと思い変身を解除した。

 

「えっ・・・・・惣一・・君?」

 

「はっ?」

 

声がした方を向くと、先ほどスマッシュに襲われていた少女が立っていた。まさか、まだ近くにいたとはな・・・。いや、それよりもだ・・・。

 

「お前・・なんで俺の名前を・・・」

 

彼女は近づいてくる。どうして俺の名前を知ってるんだ?いや・・・俺もこいつを知っている?どこだ・・・いつ、どこでだ?そもそも俺を名前で呼ぶ奴なんて・・・。

 

そこまで考えて、一人の少女が頭に浮かんだ。まだエボルトと会う前・・・よく一緒に遊んでいた唯一の幼馴染が。

 

「お前・・・まさか有希子か?」

 

「やっぱり、惣一君だよね!?」

 

有希子は驚きの声をあげながらも抱きついてきた。まさか、こんなところで会うなんてな・・・。

 

「今まで何やってたの!?急にいなくなって・・・心配したんだよ!?それに、今のは・・・」

 

「わ、わかった、わかったから落ち着いてくれ、しっかり説明するから」

 

そう言って有希子を落ち着かせ、トランスチームガンで有希子も一緒に地下室まで転移した。

 

「えっ!?こ・・ここって・・」

 

「俺の家の地下だ、ここなら落ちついて話せるからな」

 

そして、俺はスマッシュにフルボトル、ブラッドスタークのことと、エボルトの存在を教えた。

 

この時から、有希子はよくこの家に来るようになったし、よく一緒に行動するようになった。

 

その後、俺も有希子と同じ中学に編入したってのもあるけどな。

 

まぁ、これが有希子がスマッシュやエボルトのことを知ったときの話だ。

 

こうして、俺たちは再会することができたんだ。

 

 

 

 




惣一と有希子の再会はこんな感じでした!

これからもちょくちょく番外編を挟むかもしれませんが、それらも含めてよろしくお願いします!

次回は修学旅行のあと、あの転校生が登場します!

感想、評価等よろしくお願いします!!

それでは、チャオ!!


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第7話 転校生

予告通りあの転校生が登場します!

それでは第7話、どうぞ!

あ、今回はいつもより短いです。


惣一side

 

 

 

色々なことがあった修学旅行が終わり、一夜が明けた。

 

俺はいつも通り、有希子と学校に向かっていた。

 

「そういえば、惣一君。烏間先生からのメール見た?」

 

「ん?あぁ、転校生のやつか?」

 

昨日の夜に烏間先生からメールが届いた。その内容は転校生が今日から来るという事だったのだが・・・・

 

「あの内容、十中八九殺し屋だろうな」

 

「やっぱり、そうだよね」

 

『転校生ってことは、お前たちとはタメってことだよな。どんな奴なんだろうな、楽しみだ』

 

「面倒ごとは起こすなよ」

 

「ははは・・・・」

 

やはりエボルトも気になるらしく、学校に着くまでこの話題は絶えなかった。

 

校舎について教室に入ると、教室の隅に今までなかった四角い巨大な箱があった。

 

明らかに異様なその箱に、思わず教室に入る足を止めてしまった。

 

『・・・なんだ、あれ』

 

「俺に聞くな・・・」

 

その箱を見ていると、箱の液晶画面がパッとつき、ピンク色の髪の少女が映し出された。

 

「おはようございます。今日から転校してきました、『自律思考固定砲台(じりつしこうこていほうだい)』と申します。よろしくお願いします」

 

そう言って、その少女・・・えぇっと、自律思考固定砲台は液晶画面から再び姿を消した。

 

「『・・・・そう来たか!!」』

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「ノルウェーからやって来た、自律思考固定砲台さんだ・・・」

 

『あいつも大変そうだな・・・・』

 

顔をヒクつかせながらも転校生を紹介する烏間先生に、エボルトが同情する。正直俺も同情するね。

 

烏間先生によると、彼女は高度なAI(人工知能)を備えた新型兵器らしい。

 

『新型の兵器って言っても、トランスチームシステムに比べれば劣ってるだろうぜ』

 

まぁ、トランスチームシステムに関しては本来極秘事項。世界中を探しても内容を詳しく知っている人は両手で数えれる程度だろう。

 

そんなこんなで始まった一時間目、いつも通り殺せんせーが授業を進めている。

 

『いつも通りって、お前は普段サボってるだろうが』

 

確かに本来ならサボっているが、今日はあの転校生がどうやって暗殺をするのか気になるからな。それはお前も同じだろう?

 

『ま、確かにそうだが』

 

エボルトとそう話していると、転校生に動きがあった。

 

箱の横や後ろから様々な銃・・・というよりも砲台が出現した。

 

「うわっ!?」

 

それら全ての砲台から一気に発射される銃弾。だが、殺せんせーはそれらの弾丸を持ち前の速さで全て避けていき、最終的にはチョークでBB弾を弾いた。 

 

それを見た固定砲台は一旦銃をしまう。

 

殺せんせーの顔は黄色と緑のシマシマ模様になり、見るからに舐めてるのがわかる。だが、その表情は次の固定砲台の攻撃によって一気に変わる事となった。

 

床でビチビチ跳ねる殺せんせーの触手、とうの殺せんせーの方はその触手をじっと見つめていた。

 

『なるほどな・・・・一回目の砲撃は殺せんせーの回避パターンの分析が目的・・・そして二回目の砲撃で確実にダメージを与えるか・・・』

 

確かに、これならば卒業までには確実に殺せんせーを殺す事ができるだろうな。だが・・・・・これは幾ら何でも身勝手すぎる。殺せんせーを殺すためとはいえ、生徒たちからしてみればはっきり言って迷惑だ。

 

一時間目が終了し、床には先ほどのBB弾。だが、それを片付けるのは固定砲台ではなく生徒たちだった。目的である固定砲台の暗殺方法を確認できた俺は二時間目からいつも通りサボっていたが、その間も固定砲台による砲撃は続いていた。

 

『なぁ惣一、お前ならあいつの改良ぐらい楽にできるんじゃないか?』

 

「確かに、できなくもないだろう・・・だが、俺が勝手に改良するわけにもいかないだろう。下手したらあいつの持ち主から文句が飛んでくるぞ」

 

『だがな、お前は問題ないだろうが今のままだと生徒たちのストレスが溜まりまくるぞ。有希子も言ってたろうが、今のままだと授業に集中できないって』

 

家に帰宅してからエボルトと話していたが、帰りの時に有希子が言ってた通り確かに今のままでは授業は集中できないだろうしな。おそらく、あの暗殺はこれからも毎日続くだろう。

 

「・・・・はぁ〜、しょうがない、ちょっくら調べるか」

 

『調べる?何をだ?』

 

「あぁ・・・・あの固定砲台の持ち主をな・・・・」

 

後からエボルトに聞いたが、この時の俺はものすごく笑顔だったらしい。

 

 

 




一体持ち主を調べて何をする気なんだ惣一は・・・。

今回は短かったですが、次回はもう少し長くできると思います。

感想、評価等よろしくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第8話 惣一の企み

前回惣一が何かを企んでいるようでしたが、今回はその企みが明かされます!

さてさてどうなる第8話!!


惣一side

 

 

 

「ふぁ〜あ・・・・」

 

「惣一君・・・眠そうだけど、昨日何してたの?」

 

『ちょっと調べ物をな・・・。気づいたら朝になってて寝そびれちまったってわけだ』

 

昨日家に帰ってからずっとあの固定砲台の持ち主について調べていたんだが・・・思った以上に時間がかかって気づいたらもう朝になっていた。まぁ、なんとか持ち主を見つけることはできたがな・・・・。

 

「・・・・惣一君、何か企んでない?」

 

「え?」

 

「なんか・・・・不気味なくらい笑顔だよ」

 

「マジか」

 

う〜ん・・・・昨日もエボルトに言われたんだよな・・・・。俺ってこんなに顔に出やすかったけ?

 

「あ、そうだ。今日はちょっと用事があってな、途中から居なくなるけど、そのつもりでいてくれ」

 

「今日はって・・・・惣一君はいつもサボってるでしょ」

 

『それもそうだな』

 

うん、それについては反論しない。そもそもするつもりもない。

 

「いや、サボりとかじゃなくて、学校から離れるから。まぁ、放課後までには帰ってくるから」

 

「そう・・・・」

 

よし、とりあえず有希子には伝えたし、あとは状況に合わせて行動するだけだな。

 

『クックック・・・・楽しみだなぁ惣一』

 

あぁ・・・・お前も随分と楽しみみたいだな、エボルト。

 

『当然だ、むしろワクワクしない方がおかしいさ』

 

そうか、それなら学校に着いたら早速向かうとするか。

 

 

 

 

惣一side out

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

有希子side

 

 

 

学校に着くと、惣一君は宣言通りバックを置いて居なくなってしまった。どうしてわざわざバックは置いていくんだろう・・・。

 

昨日から来た転校生・・・えっと、自律思考固定砲台さんはガムテープでぐるぐる巻きにされていた。普通なら、かわいそうとか思うかもしれないけど、そうなっても仕方ないと思ってしまう自分がいる。他にも何人か来ているけど、誰一人としてカムテープを剥がそうとしていない。やっぱり、みんなも迷惑だと思っているだ。

 

それから時間が経ち、殺せんせーがやってくる。そのすぐあとに彼女も起動したが、ガムテープによって昨日のように砲台を展開できないでいた。

 

「殺せんせーこれはあなたが?明らかに生徒への危害であり、禁止されているはずですが・・・」

 

「ちげーよ」

 

殺せんせーに反抗していた彼女に、寺坂君が持っていたガムテープを投げつけた。

 

「俺だよ、どう見ても邪魔だろうが!常識くらい身につけてから来いよポンコツ!」

 

「ま、仕方ないよな」

 

寺坂君の文句に杉野君が同意し、みんなも頷く。

 

結局、彼女は今日一度も暗殺を仕掛けることはできなかった。

 

 

 

有希子side out

・・・・・・・・・・・・

惣一side

 

 

 

さてと、そろそろ向かうとするか。

 

『昨日得た情報によると、あの固定砲台の持ち主は今は日本にいるらしいからな。余計な体力を使わないで済むしわけだし、トランスチームガンで向かうぞ』

 

「わかってるよ、エボルト」

 

ん?どうやって情報を集めたかって?・・・・・・知らない方が良いと思うぜ。

 

とりあえず学校から離れないとな。トランスチームガンを使う以上、目撃されるわけにはいかないし。

 

校舎から離れ、山の奥へと進んでいく。うん、この辺りでいいだろう。

 

『コブラ!』

 

「蒸血」

 

『コブラ・・・・ファイヤー!』

 

ブラッドスタークに変身して、早速トランスチームガンから煙を撒く。

 

煙が晴れる頃には場所は変わっており、先ほどまでの山とは違い薄暗い建物の中だった。

 

しばらく建物の中を探索していると、今回の目的の人物とその取り巻きと思われる奴らを見つけた。そいつらは近くの部屋に入っていき、扉の前には一人だけ立っている。

 

『ビンゴだな・・・。んじゃ、まずはあいつからだな』

 

俺は早速扉の前に立っている奴に高速で近づく。まるで蛇のようにな。

 

『ふっ!』

 

「ぐぁっ!」

 

首元をちょっと叩いて気絶させる。この間不良でいつも通りは強すぎるとわかったからな。少しは威力を抑えている。

 

『よし、中に入るか』

 

だが、普通だとつまらないな・・・・。どうせなら派手にいきたいんだが・・・・。あ、そうだ。この間手に入れたこのボトルがあるじゃないか。

 

俺はゴリラの顔が描かれている『ゴリラフルボトル』を数回振ってトランスチームガンに装填する。

 

『フルボトル!』

 

トランスチームガンの銃口を扉に当てて、トリガーを引く。すると、ゴリラの手を模した光弾が発射され、扉は大きく音を立てて吹き飛んでいく。

 

「な、なんだ!?」

 

「何が起こった!」

 

『お〜お〜、慌ててるな。よいしょっと、お邪魔しますよっと』

 

「な、なんだ貴様は!?」

 

『ん?俺か?俺はブラッドスターク、今回はお前に用があって来たんだよ』

 

俺は真ん中で驚いている奴を指差す。あ〜、結構面白い顔になってるな。こりゃ笑えるぜ。

 

「き、貴様、あの超生物の仲間か・・!?」

 

『あ?違う違う。俺はむしろあいつの敵みたいなもんだ。さて、今回の目的だけど・・・・』

 

俺はゆっくりと歩いて近づく。ちなみに他の奴らはもう逃げ出していた。

 

『お前は所有物であるあのAI・・・・名前は確か自律思考固定砲台だったか?そいつの所有権を俺によこせ』

 

「な、何!?」

 

『お前からしたらどうでもいいことだろうが、あの教室からしたらあいつはただの迷惑な奴なんだよ。だから、この俺が改良してやるよ』

 

「何をバカなことを・・・そんなこと、できるわけがないだろう!あれは我々の最新兵器だぞ!」

 

『はぁ・・・ま、別にいいけどよ、・・・・あまり俺をイラつかせるなよ?思わず殺しちまうかもしれないぞ、お前をな』

 

俺は腕から『スティングヴァイパー』を取り出し、その先を向ける。

 

「ひっ!わ、わかった!わかったから、命だけは!!」

 

『ふっ、それでいいんだよ。んじゃ、早速頼むぞ』

 

すると、奴は先ほどまでは全く違うスピードで動き始める。待つこと5・6分。必要な書類やらを持って俺の前に戻って来た。

 

「あ、あとはこの書類にあんたの名前を書いてくれ。それでお前のものになる」

 

『おーおー、ご苦労さん。んじゃ、目的も終えたし退散するとしますか。・・・・あ、言い忘れてたが、このことは他言無用だ。もしバラシでもしたら・・・・』

 

俺は再びスティングヴァイパーを向ける。

 

『分かってるな?』

 

そう言い残して、俺はその部屋から転移する。去り際に奴の顔を見たが、めっちゃくちゃ冷や汗をかいてたな。

 

元の山に戻り、変身を解く。

 

「ふっふっふ・・・・はーーーはっはっはっは!!!!おい見たかエボルト!あいつのあの顔!」

 

『ハハハハハハハハ!!!めっちゃ焦ってたな、あいつ!!しかも面白いぐらいに冷や汗かいてよ!!』

 

「はーはー・・・・・とにかく、これで目的は達成した。あとは、あの固定砲台をどう改良するかだな」

 

『とりあえずはあいつの思考をどうにかするべきだろうな。あとで今日はどうだったか有希子にも聞かなくてはな』

 

「あぁ、まずは毎回銃弾ぶっ放すところを改良しないとな。あとは・・・・殺せんせーも何か考えてんだろ」

 

『うわっ、他人任せだな』

 

「ふっ、どうせ改良するのは俺なんだ。だったら、その程度は考えさせてもいいだろう」

 

さぁ、どう改良しようかな?あの固定砲台を・・・・。

 

 

 




以外とこの回が終わらない・・・・。

おそらく次回には終わると思います!

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第9話 アップグレード

今回でこの回は終わりです!

さぁ、どうなる第9話!


惣一side

 

 

今の時刻は22時、つまり夜中だ。そんな時間に、俺はE組の校舎へと足を運んでいた。

 

この時間であれば校舎には誰もいないだろうし、いるとしても殺せんせーぐらいだ。それならば問題ない。

 

「よし、入るぞ」

 

「おやおや、こん時間にどうしたんですか?予想はつきますけどねぇ」

 

教室に入ろうとした瞬間に声をかけられる。予想内ではあるけどな。

 

「よ、殺せんせー。今日はあの固定砲台の方に用があってね」

 

「やはり、君も考えていましたか。では、ともに手入れをしましょうか」

 

「俺にとっては手入れというよりも改良だけどな」

 

俺たちは中に入る。固定砲台はあの持ち主(今では俺だが)に連絡を取ろうとしていた。

 

「はーい、ストップ。その連絡はもうする必要ないぜ」

 

「あなたは・・・・確か、石動さん、それと殺せんせーも」

 

「正解、一時間ぐらいしかいなかったけど、よく覚えているな。さすがはAIって言ってところか」

 

あれ?ってか俺って自己紹介した覚えがないんだが・・・ま、いっか。

 

「有希子から聞いたが、今日は寺坂にガムテで縛られて暗殺ができなかったらしいな。その理由、お前はわかるか?」

 

彼女はしばらく考えていたが、答えが出ないらしい。

 

「それはな、お前の暗殺は他の生徒達にとっては何もメリットがないからだよ。たとえお前が暗殺に成功しても賞金は手に入らないし、受験生では身としては授業の邪魔に迷惑になるからな」

 

「なるほど、理解しました」

 

「ヌルフフフ、やはり君は頭がいい。今から私と彼の二人で君をアップグレードします」

 

「アップグレード?」

 

『安心しろ、これから行うアップグレードは生徒達との協調性と暗殺の制度を高めるものだ』

 

「!?今のは・・・・」

 

エボルトが固定砲台にも聞こえるよう声を出すと、さすがの固定砲台も驚いた。ま、知らなければ普通はそうなるよな。

 

『こうして話すのは初めましてだな、自律思考固定砲台。俺の名はエボルト。石動惣一の中に宿る地球外生命体だ』

 

「地球外・・・・・生命体・・・」

 

『あぁ、あと一つ言い忘れていたが、今のお前の持ち主・・・・お前風に言うならマスターだな・・・・はすでに変わっていて、俺たちがお前のマスターだ』

 

「え?」

 

「にゅや!?ど、どういうことですか、石動君!エボルトさん!」

 

「ふっ・・・・・知らない方がいいぜ、殺せんせー」

 

『そうそう、ちょっと話し合い(脅し)をしただけだ』

 

「あなたが・・・マスター?」

 

おっと、そこらへんはこれを見せないとな。

 

「そうだ、これを見てみればわかると思うがな。ほら、契約書だ」

 

俺はあの時名前を書いた書類を固定砲台に見せる。これで分かるだろう。

 

『理解できたか?』

 

エボルトが聞くと、彼女は頷く。これでよし。

 

「ま、俺がマスターといってもメンドくさいことはしたくないんでな、基本的にはお前は自由だ。時々手伝ってもらいたいこともあるがな」

 

「理解しました・・・ですが、なぜ殺せんせーまで?」

 

「そうですね・・・私は暗殺対象であると同時に教師ですからね、生徒同士で仲良くしてほしいと思ってるんですよ」

 

「さて、時間は無限じゃない。朝までには終わらせたいし、早速始めるか」

 

俺はUSBメモリを取り出し、それを固定砲台に差し込む。

 

「これは・・・」

 

『見ての通りだ、今のまま暗殺を続けるより、成功確率が格段に上がってるだろ』

 

「はい・・・・マスター、これから宜しくお願いします」

 

「あぁ、エボルト共々宜しくな。・・・・ん?何だこのナビ?スイーツナビ?いらないな」

 

「にゅや!?先生自作のスイーツナビがゴミのように捨てられた!?自腹なのに!!」

 

『何の必要があるんだよ、こんなの・・・』

 

「マスター、これは・・・」

 

「ん?あぁ、それか。さっき言ったやつだよ。手伝ってもらいたい時はそいつを使ってもらうからな」

 

「そうですか・・・わかりました」

 

「やっぱ物分かりいいな、お前・・・・そうだ、あとでお前の名前も考えるか。自律思考固定砲台じゃ、長いしな」

 

名前・・・何がいいか・・・・・、う〜ん・・・あとで有希子に相談するか。

 

それにしても余計な奴(殺せんせー自作ナビ)が多いな・・・・、どれもいらない奴ばかりだ。さっさと捨てるか。

 

「にゅやーーー!!!」

 

俺がナビを捨てるたびに泣き叫ぶ殺せんせー。正直何でいるんだよ・・・・。

 

結局、殺せんせーはいるだけ邪魔だとわかったので外に追い出し、俺一人で改良を行うことになった。

 

 

 

惣一side out

・・・・・・・・・・

有希子side

 

 

私は今日、いつもよりも早く学校に向かっていた。それも一人で。

 

理由は昨日の放課後だった。朝言った通り放課後には惣一君は戻ってきていて、いつも通り帰ったのだけど、その時に「明日の朝はいつもより早く来てくれないか?」って言って来たからだ。

 

それで、言われた通り早くに来たのだけれど・・・・。

 

教室につき、扉を開ける。そこには、どうしてか倒れている惣一君がいた。

 

「そ、惣一君!?どうしたの!?」

 

「お・・・おぉ?あぁ・・・・有希子か・・・」

 

「大丈夫?昨日なにしてたの?」

 

「あ、神崎さん!おはようございます!」

 

「え?」

 

今この教室には私と惣一君しかいないから、他の人の声が聞こえるはずがない。聞こえるとしても、エボルトさんの声のはず。だけど、今の声は明らかに女の人の声だった。

 

「気のせい・・・かな?」

 

「いいえ、気のせいではありませんよ」

 

「ま、また!・・・もしかして・・・」

 

私は一昨日から転校して来た固定砲台さんを見る。外見は今までと何も変わっていない。だから気づかなかったけど・・・彼女の顔が今までと違って表情があった。

 

「ど〜よ・・・・、一夜でこの変わりよう・・・徹夜したが頑張ったんだぜ」

 

「もしかして、惣一君が倒れてるのは徹夜のせい?」

 

「あぁ・・・・さすがに二日徹夜はするんじゃないな・・・・眠くて仕方がねぇよ・・・」

 

そう言って、惣一君は大きくあくびをした。確かにすごいけど・・・・

 

「どうして、こんなことを?」

 

「今までの暗殺が続いていたら、授業が行えないだろう?俺は問題ないけど、お前たちには問題大有りだ。それに、こいつに追加した機能の中に、俺にとってメリットのやつもあるからな」

 

「追加したって・・・そんなこと、勝手にしていいの?」

 

「大丈夫だよ、なんたって今のこいつのマスターは俺だからな」

 

「え?」

 

「昨日の昼間のうちに前マスターのところに行って交渉(脅し)して来たんだよ」

 

相変わらずすごいことするな、惣一君は。

 

「あぁ、そうだ。なぁ有希子、こいつの名前を考えてくれねぇか?」

 

「え?名前?」

 

「そうだよ、いつまでも自律思考固定砲台じゃ呼びにくいだろう?だから、呼びやすい名前を考えてくれ」

 

そんなこと急に言われたって・・・・えっと、自律思考固定砲台だから・・・・自律・・・・

 

「それじゃあ、『(りつ)』はどう?」

 

「律・・・・ですか?」

 

「うん、自律思考固定砲台からとって律。いやなら他の名前を考えるけど・・・」

 

「いえ!素敵な名前です!それでは、私のことは律と呼びください!」

 

「うん!よろしくね、律」

 

こうして、惣一君のおかげで律も私たちの仲間に加わった。ありがとう、惣一君。

 

 

 

 

 




惣一が律に追加した機能はビルド本編でも出て来たあれです!

まぁ、これだけじゃわからないかな?

いつ出るかはわかりませんけど、必ず出します!

感想、評価等よろしくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第10話 ナイトローグ

気づいたらお気に入りが100件を超えていた・・・・。

ありがとうございます!これからも『地球外生命体を宿した暗殺者』を宜しくお願いします!

今回の話はサブタイから分かる通り彼が登場します!

さぁ、どうなる第10話!!


惣一side

 

 

固定砲台・・・・いや、律が俺の改良によって生徒達と仲良くなってからすでに数日が経過していた。

 

みんな俺が律の改良をしたことを知った瞬間、結構驚いていたな。あんな驚くもんなのか?

 

『生徒達からしたら、普段授業をサボっている奴があそこまで機械をいじれるなんて夢にも思ってなかっただろうからな』

 

そんなもんか、有希子は前から知ってたからか大して驚かなかったしな。

 

『いや、初めてそのことを知ったときは驚いていたぜ。そのあとは慣れたのかもな』

 

「まじか」

 

「ん?石動なんか言ったか?」

 

「あぁ、いや、何でもない」

 

どうやら声に出てしまったらしく、前を歩いている磯貝に聞かれたが、適当にごまかした。

 

今、俺はクラスメートの磯貝、前原、渚、片岡、倉橋、茅野、そして有希子と一緒に街中を歩いていた。

 

なぜ、普段関わりもしない俺がこいつらと歩いているのかというと、今日の昼休みに遡る。

 

 

<回想中>

 

 

「カフェ?」

 

昼休み、俺がいつも通りエボルトが作った弁当を食べていると、隣で同じく弁当を食べている有希子が話しかけて来た。

 

「うん、駅の近くにこの間カフェができたでしょ?今日の放課後に行ってみない?」

 

駅近くにカフェ・・・・あったか?あんま覚えてねぇや。

 

「んで?どうして俺なんだ?」

 

「ほら、最近は律の改良とかで夜更かししてたでしょ?だから、息抜きも兼ねてどうかなって」

 

う〜ん・・・・それはすでに数日前の話であって、もう問題無いんだけどな・・・。

 

『行っとけよ、お前は普段あまりそういうところ行かないんだからさ』

 

「そりゃ、一応家はカフェだしな」

 

『せっかくの機会だ、有希子の誘いなんだし、たまには羽根を伸ばせ』

 

「ん〜・・ま、エボルトがそういうなら、行くとするか。いいぜ、行ってやるよ」

 

俺の返事を聞くと、有希子はホッとした。

 

「それで、他には誰か来るのか?」

 

「あ、うん。一応、渚君と茅野さん、あと磯貝君と片岡さんが来る予定で、四人も数人に声かけるって」

 

「ふ〜ん・・・ま、そのメンツなら問題ないか」

 

 

 

<回想終了>

 

 

 

とまぁ、こんなことがあった。昼休みに聞いたメンツから前原と倉橋が増えているが、まぁ大丈夫だろう。

 

「あ、ここだよ!」

 

倉橋がとある建物を指差して言う。その先には、確かに真新しい洋装のカフェがあった。

 

「こんなところにカフェなんてあったんだな」

 

『有希子は新しいって言ってたし、お前が知らなくても不思議じゃねぇさ』

 

他のみんなが中に入っていき、俺も着いていく。中も外見と同じく綺麗であり、客にそれなりに入っていた。

 

家とは大違いだよな・・・・。

 

『あんな場所にあるのが悪い。そもそもやってるのかすら分からん』

 

一応やってるさ、店員は俺一人だけど。しかもお前のせいでコーヒーは激マズだ。

 

『さて、何のことかな?』

 

誤魔化すな。

 

「惣一君?行くよ?」

 

「ん?あぁ、今行くよ」

 

有希子に言われて案内された席に移動する。テーブルに置かれているメニューを開いて注文を決める。つってもコーヒー一択だけど。

 

それぞれが注文を選び、店員に頼む。さて、コーヒーが来るまでどうするか・・・

 

「なぁ、石動。普段お前って何してんだ?」

 

「あ?何って?」

 

いきなり前原が話しかけて来た。何のことだ?

 

「ほら、お前って普段授業サボってるだろ?そん時に何してんのかなって」

 

「うんうん」

 

前原の言葉に倉橋が頷く。つってもなぁ・・・、

 

「何してるって言われても、寝るとか、寝るとか、寝るとか」

 

「寝てばっかかよ!」

 

ま、当然本当じゃない。確かに寝てる時もあるが、スマッシュを倒しているときもある。だけど、その事は言えないからなぁ・・。

 

「ま、そんなところかな」

 

「あ、そう言えば前から気になってたんだけどさ、石動君と神崎さんってお互い名前呼びだよね?」

 

「そう言えばそうよね」

 

「まぁ、そうだな」

 

「二人ってさ、どう言う関係なの?」

 

「はっ?どう言う関係って・・・」

 

横目に有希子を見ると、有希子の方もどう答えればいいのか分からないのか戸惑っていた。

 

まぁ、普通に答えればいいか。

 

「ただの幼馴染だよ。昔は俺もこの町に住んでいてな、その頃から有希子の事は知ってるんだ」

 

「へぇ〜」

 

「昔はってことは、一時期は違ったのか?」

 

「あぁ、小学校の途中からな。ま、中二あたりから戻って来たけどな」

 

そこまで話したところで、注文した品が届く。早速コーヒーを一口飲んで味を確かめる。うん、うまい。エボルトのコーヒーとは全く違うな。

 

『お前失礼だぞ!そこまでまずいか!』

 

まずいだろう、あのコーヒーは。有希子だって一回飲んだっきり、ずっと飲んでねぇじゃねぇか。まずいからだよ。

 

『こいつ・・・』

 

「それにしても驚いたよな。まさか石動があんなことできるなんてな」

 

「あ、それ思った」

 

「あんなこと?」

 

「ほら、この間律のアップグレードをしただろう?殺せんせーがしたならともかく、まさか石動がしたなんてな」

 

「あぁ、昔から機械関係は得意でな。気づいたら、できるようになっていたんだ」

 

「得意ってレベルじゃないだろう・・・」

 

「「「「「うんうん」」」」」

 

今度は有希子以外の全員が同意した。そんな驚くことか?

 

『だからな・・・』

 

エボルトがなんか呆れてるけど、まいっか。

 

その後は普通に日常的な会話をしながらそれぞれ注文した物を飲み終わらせて、店を出る。このカフェ結構良かったな。また来るか。

 

「にしても、石動が来てくれて良かったぜ」

 

「は?」

 

「ほら、お前って普段他の生徒とはほとんど関わらないだろう?だから俺たち、お前のこと全然知らなかったんだよ」

 

「でも、今回のことでほんの少しだけど、石動君のことを知れた気がする」

 

「そうそう、また明日もよろしくな!」

 

前原がそう言って俺に拳を突き出した時だった。

 

「!危ない!!」

 

「えっ?・・うわっ!?」

 

俺は急いで前原を押し出し、その場から離れさせる。その瞬間、先ほどまで前原がいた場所がスッパリと切れていた。

 

「な、なんだこれ・・・」

 

前原が驚いている。それはそうだろう、これは明らかに人間業じゃない。ってことは・・・

 

「スマッシュか・・・」

 

空間を切った斬撃が飛んで来た方向を見ると、頭には四角いブロック、異様に長い左手指、そして右手には長い剣を持っているスマッシュがいた。さっきの斬撃があの剣からか・・・・。

 

「な、なんだあの化け物・・・」

 

普通ならあんな化け物、しかも攻撃を受けてんだ。見た瞬間逃げ出すだろう。だけど、こいつらはあの教室の生徒、普段とは違えど化け物は見慣れている。しかも周りには隠れられそうな場所もない・・・・。

 

どうする?エボルト・・・。

 

『とにかく、まずはあのスマッシュとこいつらを引き離すんだ。なんにせよ、まずはブラッドスタークになれなきゃ勝ち目はない』

 

そうだよな・・・、よし。

 

「俺が注意を引く。その間にお前たちは逃げろ」

 

「お、おい!何言ってんだよ!うわっ!」

 

再びスマッシュが俺たちに向かって斬撃を飛ばして来た。だが、そこまでの速さはないため避けることはできる。

 

「このまま固まってても、全員やられるのがオチだ!いいから早く行け!」

 

そう叫んで、俺はスマッシュに向かっていく。途中振り返ってたけど、有希子も促してくれたらしく逃げ始めていた。

 

よし、これなら・・・・。

 

『コブラ!』

 

「蒸血!」

 

『ミスト・マッチ!コブラ・・・・ファイヤー!』

 

『ふっ!』

 

ブラッドスタークに変身した俺はスマッシュの剣を左手で受け止める。結構衝撃強いな・・・・。

 

『そっちが剣なら、こっちも剣だ』

 

スチームブレードを取り出し、スマッシュの剣に対抗する。それにこっちは・・・・

 

『アイススチーム!』

 

『はっ!』

 

バルブを回し、剣先に煙をまとわせてスマッシュの剣を受け止める。その瞬間、スマッシュは剣から凍っていく。

 

『相変わらず便利だよな、これ・・・。さすがは俺の発明品だ!』

 

俺はのんきに言ってるが、その間にもスマッシュはどんどん凍っていく。ひとまずこれで動きは封じれただろう・・・。

 

そう、思っていた。

 

俺の後ろからいきなり飛んで来た煙をまとった弾丸。それは凍っていたスマッシュに直撃し、スマッシュは巨大化した。

 

『なんだと・・・・』

 

『そのスマッシュには新しいガスを注入した』

 

『!?誰だ!』

 

『教えるわけがないだろう?さて、俺はここで帰るとするか』

 

それっきり、声は聞こえなくなった。おそらく本当に帰ったのだろう。

 

『くそっ!厄介なやつ残しやがって!』

 

前にも同じようなこと言った気がするが、それに関してはどうでもいい。とにかく、このスマッシュを止めないと!

 

だが、先ほどよりも巨大化した分、俺の攻撃が当たる前にスマッシュの攻撃が当たっちまう・・・。

 

トランスチームガンで攻撃しようにも、大して効いてもいない。

 

『くそっ・・・どうするか・・』

 

『困ってるようだな』

 

『!?』

 

いきなり上空から声をかけられ、思わず見上げる。そこには、大きな羽を生やし、コウモリの意匠とバイザーがある黒い姿のやつがいた。

 

『なんだ?お前・・・コウモリ男か?』

 

『ナイトローグだ』

 

そう言って、俺が持っているのと同じ銃・・・トランスチームガンを見せて来た。

 

『なぜお前がそれを・・・まぁいい、あとで詳しい事は聞かせてもらうぞ』

 

コウモリ男・・・じゃなかった、ナイトローグは俺の言葉を無視してさっさとスマッシュに向かっていく。

 

だが、やはりスマッシュに攻撃は届かず、ナイトローグは地上でも攻撃は諦めて空を飛んでスマッシュを翻弄させる。

 

『飛べるって便利だな・・・・あっ、今ならこいつを使って攻撃を当てられるな!』

 

『ライフルモード!』

 

トランスチームガンとスチームブレードを合体させてライフルモードにし、戦車が描かれている『タンクフルボトル』を数回振って装填する。

 

『フルボトル!』

 

『よいしょっと!!』

 

蛇のようにスライディングし、スマッシュに懐に潜り込む。そしてちょうど真下に来た瞬間、スマッシュ目掛けてトリガーを引いた。

 

『スチームショット!』

 

放たれた光弾はすぐにスマッシュに直撃し、大爆発を起こした。

 

『タンクフルボトルで普通よりも威力は高くなっている、そいつは効いたはずだぜ?』

 

『動きが止まったな。これならばいける』

 

『バット!』

 

『ふっ!』

 

『スチームブレイク!』

 

トランスチームガンから放たれたコウモリ型のエネルギーはスマッシュを飲み込み、爆発する。

 

スマッシュは元のサイズに戻り、俺は成分を回収、人間に戻す。

 

ナイトローグはその一連の行動を見てから、再び羽を広げて立ち去ろうとしたが、

 

『待てよ』

 

俺がそれを止める。こいつにも聞きたいことがあるからな。

 

『お前はどうしてそのトランスチームガンを持っている?そいつは俺しか持ってないはずだぜ?』

 

『それは教えられない。だが、一つだけ言うなら、俺は君の敵ではない』

 

ナイトローグはそう言い残して、去って行った。

 

『敵じゃないって・・・答えになってないんだけどな・・』

 

ま、過ぎたことを考えてもしょうがない。スマッシュは倒したし、誰か来る前に退散するか。

 

俺はそのまま家に帰り、いつも通りボトルを浄化していた。翌日、有希子達に怒られたが・・・・・。

 

 

 

 

惣一side out

・・・・・・・・・・

◎side

 

 

 

「ふふふ・・・これはいい実験結果が手に入った・・・」

 

日本のとある研究所。一人の男がブラッドスタークとナイトローグがスマッシュと戦っている映像を見ていた。

 

彼の手にはトランスチームガンとよく似た形をした紫の銃が握られていた。

 

「そろそろ私も動かなくてはな、イトナの調整もしなければいけない・・・・」

 

男は再び映像を・・・いや、映像に映っているブラッドスタークを見る。

 

「あの時の借りを返しにいくよ・・・・石動惣一君?」

 

 

 

 




最後に出て来た男・・・一体何者なんでしょうね?

それとナイトローグの正体ですが、しばらくは明かされない予定です。

一つだけ言うとすれば、すでにこの作品内で出ている人です。

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!



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第11話 殺し屋ロヴロ

今回のジオウを見て思ったこと、まさか戦兎としてではなく葛城巧として出てくるとは思わなかった!龍牙も名前で呼んでたし!次回はエグゼイドで永夢が出てくるそうだから楽しみですね!


あ、第11話どうぞ。


惣一side

 

 

 

「さぁ〜て、そろそろ帰るか」

 

放課後、いつものように屋根の上で起きたが、その時にはすでに夕方になっていた。

 

スマホを見ると、有希子からメッセージが入っており、今日は先に帰るとのことだった。

 

『一人で帰るのって、久しぶりじゃないか?』

 

「う〜ん・・・エボルトがいるからあまり一人って感覚じゃないんだよな」

 

とりあえず、バックを取りに行くか。屋根を降り、教室に入る。窓からな。

 

教室に入ってバックを取り、廊下に出ようとしたところで誰かの話し声が聞こえる。しかし、日本語ではない。

 

『この言葉・・・英語でもないな。一体誰だ?』

 

「さぁな・・・、とりあえず確認するか」

 

扉を少し開け、廊下の様子を見る。そこには、見覚えのない男、そしてワイヤーと思わしきもので吊るされているビッチ先生の姿だった。

 

それを見た俺はトランスチームガンを取り出し、その男に突きつける。

 

「おい・・・一体何してんだ?あんた・・・」

 

男は両手をあげる。だが、次の瞬間には俺の顔に拳が迫っていた。

 

「くっ!!」

 

俺は急いで両手でガードし、顔を守る。だが、それによってトランスチームガンを男から離してしまい、振り向きざまの攻撃を許してしまう。鋭い蹴りが俺を襲うが、瞬間エボルトが俺の体を乗っ取り、急いで後ろに回避する。

 

『無事か?惣一』

 

あぁ、おかげさまでな!

 

俺はスチームブレードを取り出し、男に迫る。男もナイフを取り出し、スチームブレードに対抗しようとしたが、あいにく俺に狙いはお前じゃない。

 

「ふっ!」

 

「なっ!」

 

俺は男の横を素通りし、ビッチ先生を吊るしているワイヤーを切る。これで大丈夫だろう。

 

「ふっ、まさか狙いがワイヤーだったとはな。騙されたよ」

 

「っ・・日本語も話せんのかよ・・・。一体何者なんだ?あんた」

 

「それはこちらのセリフでもあるんだがな・・・まぁいい。私はそこにいるイリーナ・イェラビッチをこの地に斡旋(あっせん)した者・・・殺し屋『ロヴロ』だ」

 

「殺し屋・・・・」

 

「こちらの質問にも答えてもらう。君は一体何者だ?私の攻撃をあぁも簡単に防ぎ、加えてあの避け方。明らかにただの中学生ではあるまい」

 

「っ!・・・・そうだな・・・トランスチームガンも見せちまったし、下手に隠すないか・・・」

 

『おい、惣一!』

 

「悪い、エボルト。この人には隠し事は通用しなそうでな」

 

エボルトが止めるよう言うが、今更だろう。俺はその言葉を無視してコブラフルボトルを装填する。

 

『コブラ!』

 

「蒸血!」

 

『ミスト・マッチ!コブラ・・・ファイヤー!』

 

『俺はブラッドスターク・・・スマッシュを狩る者だよ』

 

ブラッドスタークに変身し、改めて自己紹介する。ビッチ先生は驚いているが、男・・・いや、ロヴロの方は思ったよりも反応がなかった。

 

「ブラッドスターク・・・・君がそうだったか・・・」

 

『なんだ?知ってるか?』

 

「あぁ、仕事柄色々な国に行くが、そんなときにこんな噂が耳に入ってな。『怪物を狩る怪物』・・・・その者の名をブラッドスターク、と」

 

『あぁ、そんな噂があったとはね。日本じゃないから、油断してたな』

 

この町を離れた後、スマッシュを倒したり、修行のために日本国内はもちろん、海外にも足を運んでいた。おそらく、その時にできたんだろうな。

 

『それで?どこまで噂があるか知らないが、あんたはどうするんだ?』

 

「ふふ・・・・本来であればイリーナを撤収させるだけのつもりだったが・・・まずは君の実力を確かめておこう・・」

 

そう言って、ロヴロは手に持っていたナイフを構える。実力を確かめる、ねぇ・・・。

 

エボルト、今回は手を出すな。

 

『何?』

 

俺自身の実力がどうなってるのか、この手で確かめたいんだよ。

 

『そうか・・・わかった。今回は何もしねぇよ』

 

サンキュー、エボルト。さて・・・。

 

最初に動き出したのはロヴロの方だった。ナイフを最小限に大きさで振るい、攻撃してくる。ブラッドスタークの装甲ならばダメージを受けないが、それでは意味がない。これは俺自身の実力を確かめるための戦闘だ。

 

『ふっ!』

 

スチームブレードを取り出し、ナイフを受け止める。そのままナイフを弾き、今度は俺がスチームブレードを振るう。が、ロヴロには簡単に避けられてしまう。

 

『ふぅ・・・やっぱりちゃんとした知性がある分、スマッシュよりも厄介かもな』

 

今まで俺が戦ってきたのは基本はスマッシュのみ。修学旅行の時に不良とは戦ったが、あれは戦闘ではなくて喧嘩だ。その後の殺せんせーとの戦いも俺ではなくエボルトが戦った。だから、こうして知性を持っている相手との戦闘ははっきり言って今回が初めてだ。

 

「さすがの対処だ。これまで怪物を相手にしてきただけのことはある」

 

『お褒めに預かり光栄だ。ま、あんたもあんただけどな。俺の攻撃を躱すとは』

 

「あの速さであれば、十分見極められる。君の実力は、その程度か?」

 

『なにぶん、あんたのような奴との戦闘は今回が初めてでな』

 

「ふふ・・・なるほど。君には見所がある。どうだ?私の教え子にならないか?」

 

『教え子だ?』

 

「あぁ、君には私が直に戦闘を教えよう。君はまだ成長できる。君自身、その必要があるとわかっているはずだ」

 

その言葉に、俺の心に迷いが生じる。確かに、俺はまだ強くなる必要がなる。今まではなんとかなったが、これからの戦いにはおそらくあのカイザーも参戦してくるだろう。生身の人間相手に勝つことができてない以上、このままじゃおそらくカイザーには勝てないだろう。

 

「戦闘では、その一瞬の油断が命取りだ」

 

『!何!?』

 

俺の心に迷いが生じたその瞬間、ロヴロは俺の手からトランスチームガンを奪い取り、俺めがけてトリガーを引いた。いきなりのことに俺は対応ができず、もろに光弾を受け、後ろに吹き飛ぶ。

 

『ぐぅ・・』

 

壁に衝突し、変身が解ける。

 

「まさか、ブラッドスタークの状態で負けるとはな・・・」

 

「いや、君の攻撃や対処の仕方自体は素晴らしかった。どうする?私ならば君をもっと強くできるが・・・」

 

「強く・・ねぇ・・」

 

どうする?エボルト・・・・。

 

『こいつに悪意はない。敵になる可能性はないだろうし、今後のためにも、承諾した方がメリットが大きい』

 

やっぱ、そうだよな・・・・よし。

 

「受けるぜ、その提案。俺自身、今よりも強くなる必要があるからな」

 

「交渉成立だな。だが、今日はもう遅い。教えるのは明日からだ。さて・・・イリーナ、さっき言った通りだ。お前は今日限りで撤収しろ」

 

ロヴロは俺からビッチ先生に視線を移し、話しかける。そういえばさっきそんなこと言ってたな・・・・忘れてたわ。

 

「そんな!必ず殺れます!先生!私の力なら!」

 

「それならばイリーナ・・・お前に彼の攻撃を捌けるか?実際に戦った私だからわかるが、彼の戦闘に関しての力量はお前よりも上だ。さすがに怪物とやりあってきただけはある。・・・・・お前は正体を隠しての暗殺なら右に出る者はいないが、こうなっては話は別だ。相性の問題は誰にでもある。先ほど、お前は教室で発音を教えていたが、この教室こそが、お前にとって『L』と『R』ではないかね?」

 

「半分正解で、半分不正解です」

 

いきなり現れた殺せんせーがビッチ先生とロヴロの間に触手を入れ込む。顔は朱色と紫色に別れていた。

 

「相変わらずどうなってんだ、その皮膚・・・」

 

「彼女は確かに暗殺者しては未熟・・クソです」

 

「誰がクソだ!!」

 

俺の疑問は思いっきり無視された・・・・。殺せんせーにクソと言われたビッチ先生は声を荒げたが、まぁそれが普通だな。

 

「ですが、彼女はこの教室に必要な存在です。こうしてみてはどうでしょう。明日一日、一回でも烏間先生にナイフを当てられたら方が勝ちとし、イリーナ先生が勝った場合はこの教室に残り仕事を続ける。ロヴロさんが勝った場合は、イリーナ先生はこの教室から出て行くと」

 

「要するに模擬暗殺か・・・いいだろう」

 

ロヴロはそれを承諾し去って行った。今の話を聞いた限りだとまた明日もくるだろうし、詳しい話は明日聞こう。

 

「あっ、そうだ。ビッチ先生、さっきのことは他の奴らには内緒で頼むぜ。くれぐれも気づかれないようにしてくれ」

 

トランスチームガンを拾い、バックに入れてビッチ先生にそう言い残し、俺は校舎から立ち去って行く。

 

そういえば、烏間先生いなかったけど・・・・勝手に暗殺の対象(ターゲット)にしてよかったのか?

 

 

 




人間との戦いが一番難しい気がする・・・・。

しっかり書けたかな?

感想、評価等よろしくお願いします!

それでは、チャオ!


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第12話 模擬暗殺

今回は原作とそこまで変わりはありません。

ただ惣一が解説しているぐらいです。

さぁ、どうなる第12話!


惣一side

 

 

殺せんせーが提案した烏間先生が対象(ターゲット)の模擬暗殺。あの後、一応烏間先生に連絡を入れておいたのだが、特に連絡が帰ってくることはなかった。だが、今日学校に来てみると、いつもより不機嫌な烏間先生がいた。ありゃ、怒ってるな・・・。

 

「ね、ねぇ惣一君、なんであんなに烏間先生不機嫌なの?」

 

「あぁ〜・・・話すと長くなるんだが・・・」

 

有希子が不思議そうに聞いて来たので、長くなるが事情を説明することにした。

 

「・・・・ってことがあったんだよ」

 

「それで、勝手に指定されたから・・・」

 

「多分な」

 

その後の体育の授業、烏間先生から生徒へ模擬暗殺の件が説明された。俺が昨日話した内容だけど・・・。

 

校庭の向こう側・・・・山に生えている木を方を見ると、明らかに誰かがこちらを・・・いや、烏間先生を見ている(狙っている)。今日の模擬暗殺での暗殺者であるビッチ先生とロヴロ・・・いや、ロヴロさんだ。どうやら隙を伺っているらしく、烏間先生を観察していた。だけどロヴロさんの方はともかく、ビッチ先生は殺気がダダ漏れだ・・・・。現に生徒もほとんど、ってか全員気づいてる。

 

こりゃ、今日は寝る暇はなさそうだな。

 

『普段もねぇよ』

 

だけど、さすがに授業中は邪魔にならないためか、特に暗殺を仕掛けるようなことは二人ともしなかった。

 

『おいこら聞け!』

 

が、授業が終わってすぐにビッチ先生が動き出した。得意の色仕掛けで烏間先生に近づき、お茶を渡そうとしているのだが・・・・ぜってぇ何か入ってるな、あのお茶。

 

当然俺以外の全員気づいていて、烏間先生は受け取ろうとしない。次の瞬間、ビッチ先生は何を思ったかワザとらしく転んでおんぶをせがんだ。ま、烏間先生は無視して校舎に入って行ったがな。

 

普通に考えればこれは当たり前の事だよな。ビッチ先生は確かに色仕掛けが得意だし、殺せんせーに接近した時も色仕掛けをしていたが、それを知り合い・・・・ましてやあの烏間先生になんて効くはずがないんだよ。

 

あ、ロヴロさんもため息をついて呆れているし。

 

そんなロヴロさんはどんな暗殺を仕掛けるのかな?

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

あれから時間が経ち休み時間。職員室では烏間先生、ビッチ先生、殺せんせーの3人がいる。烏間先生はパソコンに何かをまとめており、その前にはビッチ先生が座っていた。隙を伺ってるんだろうなぁ・・。え?俺がどこにいるかって?俺は屋根の上から職員室を覗き込んでいるんだよ。

 

すると、いきなり職員室の扉が開いてロヴロさんが入ってくる。その手には対殺せんせー用ナイフが握られており、まっすぐ烏間先生に向かって行っている。

 

烏間先生は急いで立ち上がろうとしたが、ロヴロさんが床に細工をしていたらしく椅子が引っかかりうまく立ち上がれなかった。隙としては十分、どうやらこの模擬暗殺は、ロヴロさんの勝ちだな。そう思った次の瞬間、ナイフを持つロヴロさんの手を烏間先生が押さえつけ、顔面に向かって蹴りを放った。足は寸前のところで止められたから怪我などはないだろうが、はっきり言って驚くしかなかった。ロヴロさんにはブラッドスタークでも勝てなかった。そのロヴロさんをいとも簡単に止めるなんて・・・・。

 

『本当に人間か?あいつ・・・』

 

人間だと・・・・思いたい・・・。

 

烏間先生は職員室から立ち去り、しばらくしてからロヴロさんも立ち去って行った。その表情から、おそらく諦めたのだろう。さて、自らの師でも殺せないと知ったビッチ先生はどうするのかな?

 

・・・・そういやロヴロさん、さっき右手を抑えていたが怪我でもしたのか?これじゃ戦いを教わろうにも教われないな・・・・。どうしよう。

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

昼休み、いつも通りに弁当に食べていたら教室の中が騒がしくなった。

 

みんな窓の外を見ているので俺も見て見ると、木に寄りかかって座っている烏間先生にビッチ先生が近づいている。さっきので正面突破は通じないとわかったはずだが・・・。ここからじゃ何話してるかわからないな。お前はどうだ?エボルト。

 

『無茶言うな。いくら俺でもそんな技術(スキル)は持ってない』

 

だよねぇ・・・、おとなしく観戦するか。

 

しばらくビッチ先生と烏間先生は話していたが、やがてビッチ先生が動き始めた。ただ後ろに回り込んでいるだけだと思ったが、ビッチ先生はいきなり走り出して事前に仕掛けていたらしいワイヤートラップを使って烏間先生の隙を作り出した。それこそさっきのロヴロさん以上に。さすがの烏間先生もこれには対応できず、ビッチ先生に上を取られてしまった。

 

「すげえビッチ先生!」

 

「烏間先生の上をとった!」

 

教室からもビッチ先生への賞賛の声が上がる。あとはナイフを当てるだけ・・!

 

ビッチ先生がナイフを振り下ろす。だが、それは烏間先生に止められてしまった。あの状態になっても止めるか・・・。力勝負になってしまってはビッチ先生に勝ち目はない。だけど、しばらくして烏間先生が諦めて手を離し、ビッチ先生のナイフは烏間先生の体に当たった。無事、ビッチ先生はE組に残ることができた。

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

ビッチ先生にここで教しの仕事を続けるよう言ったあと、ロヴロさんは俺のところにやって来た。

 

「すまないな。私から戦闘に関して教えると言っておきながら、怪我を負ってしまって」

 

「ま、さすがにあれは俺も予想外でしたよ。まさかあの体勢から防御できるとは・・・」

 

「君に戦闘を教えるのはもう少し先になってしまいそうだ。そこで、君に頼みたいことがある」

 

「頼みたいこと?」

 

「あぁ、今すぐでなくてもいいが、行ってもらいたい場所がある。日本国内ではあるが、少々危険な場所でね。ブラッドスタークである君に頼みたいんだ」

 

「危険な場所に行くってことに関しては問題ありませんよ。過去にもそう言う場所には行ったことがありますから」

 

「感謝する。その場所というのが群馬県にあるとある山の奥地、そこにとある研究所があってな。あまり良くない噂が存在している。それを確かめてきてほしい」

 

ロヴロさんにそう頼まれ、俺はその研究所に向かうことにした。

 

その場所で、新たな出会いがあるとも知らずに・・・。

 

 

 




烏間先生が強すぎる・・・・。

次回は読んでの通り、暗殺教室から離れて潜入捜査!

言っておいてなんだけど、できるかな・・・・。

感想、評価等よろしくお願いします!

それでは、チャオ!


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第13話 龍との出会い

サブタイから分かると思いますが、今回からあの男が登場します!

さてさてどうなる第13話!!


惣一side

 

 

ロヴロさんから調査を頼まれた翌日。俺達は早速、例の研究所に向かっていた。今日は休日であり、学校に関しては気にする必要が全くない。

 

『学校があろうがなかろうが、お前は全く気にしないだろうが』

 

「そうですねぇ、確かに君は頭がいいですが、もっと授業に参加してもらいたいです」

 

「うん。一応学校に来てるんだしさ、授業にも参加しよう?」

 

「ってか、なんで有希子と殺せんせーもいるんだよ!」

 

頼まれたのは俺だけのはずだが、なぜこの二人も来ていた。

 

「ヌルフフフ、生徒一人を危険な場所に行かせるわけがないでしょう。話はこっそり聞いていたので、ついて来ました」

 

「勝手に盗み聞きするなよ・・・・じゃ、有希子の方は?」

 

「惣一君、昨日ロヴロさんが帰ったあとから様子がおかしかったでしょ?それで殺せんせーに相談したらこの話を聞いて・・・心配だから、殺せんせーに頼んでついて来たの」

 

心配だから・・・って言われてもね・・・。

 

「ついて来たら、何があるかわからないぞ?今からでも遅くないから帰るんだ」

 

「嫌だ」

 

「そうそう、嫌だ・・ってえ?」

 

「勝手も気になって落ち着けないもの。それに、惣一君なら守ってくれるでしょ?」

 

有希子の奴・・・相当俺のこと信頼してるな・・・。

 

「安心してください、石動君。この私だっているんですから、神崎さんには指一本触れさせませんよ」

 

「まだ何があるかわかってないんだが・・・・・はぁ、仕方ない。絶対に俺のそばから離れるなよ」

 

『てか、殺せんせー。お前は国家機密の存在だろ?ここにいていいのか?』

 

「エボルト、それは今更だぞ」

 

修学旅行とか、この国家機密は思いっきり外を出歩いていたぞ。

 

「それで石動君、件の研究所はどこに?」

 

「ロヴロさんから聞いた話だと、もう少し先だな。そもそも山奥つってたし、こんな山に入ったばっかのところにあるわけがないだろう」

 

歩いてもいいが、あまり時間もかけたくないしな・・・仕方がない、ここはトランスチームガンを使うか。

 

「ヌルフフフ、それでは先生が先に行って安全確認をして来ましょう!」

 

「え?いや、別にトランスチームガンで・・・・」

 

言い切る前に殺せんせーは消えていった。やっぱマッハ20って早いな・・・。

 

「まいっか。それじゃ有希子、トランスチームガンで転移するから近寄って」

 

有希子に近寄ってもらって、煙を撒き散らして転移する。どうやらうまくいったらしく、煙が晴れると目の前には怪しげな洞窟があった。

 

「ここが入り口?」

 

「みたいだな・・・・ここからが本番だ。絶対に離れるなよ」

 

「うん」

 

有希子の前に立ち、トランスチームガンを持って歩いていく。中は暗く、何か明かりが欲しいぐらいだ。そう思い、ライトフルボトルをトランスチームガンに装填する。

 

『フルボトル!スチームアタック!』

 

明かりを調整し、懐中電灯ぐらいの明るさにする。これで行動しやすくなったな。

 

「そのボトルって、こんなことも出たんだ」

 

「あぁ、普段はあまり使う必要がないけどな」

 

しばらく中を捜索する。だが、特に変化がなく洞窟が続いているだけだ。

 

「ね、ねぇ惣一君。その研究所って、本当にここにあるの?」

 

「だと思うんだけど・・・・エボルトはどう思う?」

 

『どう思うも何も、明らかにおかしいだろ。少なくとも、ここに何かあると思ってるぜ』

 

「だよな・・・・でも、一体どこまで行けばいいんだ?」

 

「?待って!」

 

「?どうした有希子?」

 

「何か、聞こえない?」

 

有希子がそういうので、静かにして耳をすましてみる。ん〜・・・・あ、確かに何か聞こえる。何かが高速で動いているような音だ・・・・って、この音もしかして・・・。

 

「にゅやーー!!ちょっと二人とも!!!先生を置いてかないでくださいよ!!!!!」

 

やっぱり殺せんせーだったか・・・・正直忘れてたわ。

 

「置いてくなって・・・勝手にいなくなったのは殺せんせーの方だろうが」

 

「だってまさかそんなに早く移動する手段があるとか聞いてないんだもん!!そんなこと言ってなかったじゃないですか!!」

 

「聞かなかったのが悪い」

 

「って、違うよ惣一君!殺せんせーの事じゃなくて!!」

 

え?音って殺せんせーの音速移動の音じゃないの?とりあえずもう一回耳をすます。・・・・・・・・あぁ、確かに別の音が聞こえた。この音は・・・誰かが急いで走ってるのか?数は一人だけ・・・、念のためにコブラフルボトルも持っておこう。俺は何かあったらすぐに蒸血できるよう、準備しておく。

 

やがて、その音がだんだん近づいて来て・・・・・

 

「うぉ!!」

 

「きゃ!!」

 

「にゅや!!」

 

俺たちの前に一人の少年が現れた。茶髪にエビフライのような形をした髪の毛、俺たちと同年代ぐらいだと思われるその少年は、かなり汚れている白いTシャツを着ていて、顔も同じように汚れている。

 

「お前は?」

 

「な、なんだよお前ら!!なんでこんなところに居んだよ!!」

 

こちらが先に質問したんだが、完全に無視された・・・・。

 

「俺たちはここにあると思われる研究所の調査だ。そういうお前は?お前こそ、なんでここにいるんだ?」

 

「お、俺は・・・・誘拐、されたんだ」

 

「誘拐・・だと?」

 

「あぁ、俺には親がいなくてな。たった一人の妹と一緒に、なんとか生きてるような状況だったんだ。そんなとき、いきなり連れ去られて・・・気がついたらここに」

 

・・・・怒りが湧いてくるのがわかる。確かに悪い噂しかなかったが、誘拐なんて事をしてたなんて・・・。

 

「そ、それで、あなたの妹さんはどうしたの?」

 

「!そうだ香澄(かすみ)!!香澄を見なかったか!?」

 

「一旦落ち着け、俺たちはここに着て、今初めて人と会ったんだ。ここにくるまでにはいなかったし、外に出るための出口があるだけだ」

 

「君の妹さんを探すのは私たちも手伝いましょう。まずは、君の名前を教えてくれませんか?」

 

「?・・!か、怪物!?しかも、喋ってるなんて・・・」

 

「あぁ・・・説明しないとな。とりあえずざっくりと説明するぞ。この怪物は月を破壊して超生物であり、同時に国家機密の存在でもある。詳しい事はまた今度教えてやる、それよりもお前の名前を教えてくれ」

 

「あ、あぁ・・・俺は龍我、『万丈龍我(ばんじょうりゅうが)』だ」

 

「そうか、俺は石動惣一だ。よろしくな、万丈」

 

「私は神崎有希子。よろしくね、万丈君」

 

「そして私が殺せんせーです。先ほどの紹介通り、月を破壊した本人であり、この二人の担任です」

 

「まずは万丈の妹・・・香澄ちゃんを探すところからだ。何があるかわからない以上、急いで行動するぞ」

 

とりあえず、この先に何かあることは間違いない。それを確かめないとな。

 

 

 




この作品では万丈の恋人の香澄は妹という設定です。

しばらく潜入捜査編が続くと思いますが、ご了承ください。

感想、評価等よろしくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第14話 もう一人のカイザー

今回は少し短いです。

それでは第14話、どうぞ!


惣一side

 

 

「ここがそうか?」

 

「あぁ、ここで間違いねぇ」

 

あの後、万丈の案内のもとで洞窟を進み、明らかに人の手が加えられている場所に出た。中は広く、四人で固まって動いては時間がかかると考えたため、俺と万丈、有希子と殺せんせーの二手に別れて中を捜索していた。本当だったら有希子と一緒に行動しようと思ったんだけどな・・・・こいつを殺せんせーと一緒に行動させるわけにもいかないしな。

 

「にしたって、なんだこの部屋?お前はなんでこの部屋に居たんだ?」

 

部屋の中央には大の大人がすっぽり入れるほどの大きさがあるガラスケースがあり、その中には枷のようなものと何かわからない液体が入っていた。

 

「さっきまでその中に入れられてたんだよ。手も足も拘束されて、周りにはガスマスクをつけている奴らが居て・・・でも、途中からなんか力が湧いてきたんだよな」

 

万丈の言葉を聞きながら、部屋の中を捜索する。他にもいくつかのベットがあり、その全てに枷が付いていたり、壁際にはパソコンもあった。

 

「律、ここのパソコンに侵入してデータを取れないか?」

 

俺はスマホを取り出し、律に話しかける。あの後、律は自らのデータをクラスメート全員のスマホにインストールしたため、こうしてスマホを通して話すことができる。

 

「お任せください!今からここのコンピューターベースに潜入します!」

 

律はそう言ってスマホから姿を消した。コンピューターベースに侵入したんだろう。とりあえずそっちに関しては律に任せるとして・・・・

 

「それで、お前の妹はどこに?」

 

「それが、いねぇんだよ」

 

「は?」

 

「だから、いねぇんだよ。香澄だけじゃなぇ、ここには他にも何人か居たってのに、誰も居なくなってる」

 

まさか、万丈の逃走をきっかけにここを捨てたのか?だとしたら、ここの捜索はほぼ意味がなくなってしまうが・・・・。

 

「・・・・一応、ほかのところも捜索しよう。もしかしたら別の部屋に移っただけかもしれないからな」

 

「お、おう・・・」

 

『いや、もう遅いさ』

 

「!誰だ!?」

 

俺が大声を出すと、部屋の奥から赤い歯車はついた人型の怪人が現れる。その姿はカイザーを彷彿させた。

 

「お前、カイザー・・・じゃないな」

 

『あぁ、そうだ。俺は『カイザー・リバース』っていう、よろしくブラッドスターク!』

 

「やっぱり正体はバレてんのか・・・」

 

『当然だ、むしろ正体がバレていないとでも思ってたのか?』

 

「まさか・・・」

 

『コブラ!』

 

「蒸血」

 

『ミスト・マッチ!コブラ・・・ファイヤー!』

 

『おいおい、戦う気満々ってか?だが、あいにくお前の相手は俺じゃない』

 

カイザー・リバース・・・・・長いからリバースでいいや・・・・・がそういうと、後ろで爆発が起こった。

 

後ろを向くと、そこには頭が丸い形をしている、右手がバーナーのようなものになっているスマッシュがいた。

 

『スマッシュか・・・』

 

『そこにいる男は逃走したから、急いで作った奴だ。ま、ハザードレベルは1だから、成分を抜いてもそのスマッシュになった女の子は助からないだろうな』

 

「女の子・・・だと・・まさか!」

 

『そうそう、確かそいつはお前の妹だったけか?』

 

「どういうことだよ・・・なんで香澄がこんなになってんだよ!!」

 

『!万丈避けろ!!』

 

「あ!?うわっ!!」

 

 

惣一side out

・・・・・・・・・・・

有希子side

 

 

 

惣一君と万丈君と別れたあと、私は殺せんせーと一緒にある部屋に入っていた。

 

中にはたくさんの機械やコンピューターが置かれていた。

 

「どうやら、ここで研究が行われていたみたいですね・・」

 

「でも、こんなところで一体何の研究を・・・」

 

「それはわかりません。ですが、何か手がかりがあるはず。手分けして探しましょう」

 

「は、はい!」

 

殺せんせーに言われて、部屋の中の捜索を始める。書類やら本やらがたくさん散らばっていて、とにかく手がかりになりそうなのを重点的に見ていく。そして、たくさんのコンピューターが置かれている机の引き出しを開けたとき、その中に入っているものが目に入った。

 

「これって・・・ USBメモリ?」

 

「にゅや?神崎さん、何か見つけましたか?」

 

「あ、はい。これはどうでしょうか、殺せんせー」

 

「USBメモリですか、確かに何かデータが入っていても不思議ではありませんね。先生の方もこんな書類を見つけました」

 

そう言って見せてきた書類には、レバーと大きい歯車が付いているドライバーのようなもの、そしてそれを腰につけている人型の存在が書かれていた。そして、何よりも気になったのはそこに書かれていたことだった。

 

「二本のフルボトルとビルドドライバーを使うことで変身する事ができるって・・・先生これ!」

 

「やはり神崎さんも気になりますよね。おそらくここではこの資料に書かれていること・・・『PROJECT BUILD』が行われていたんでしょうね・・」

 

その後、殺せんせーの考えでこの資料とUSBメモリは持ち帰り、惣一君達と合流することにした。

 

 




今回はカイザー・リバースとバーンスマッシュに登場してもらいました。

まぁ、もうどうなるかはバレてると思いますけど・・・。

感想、評価等よろしくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第15話 香澄の願い

潜入捜査は今回で終わりかな?

第15話、どうぞ!


惣一side

 

 

スマッシュの攻撃により壁に穴が開き、俺はそこから外に出た。スマッシュも俺を追って外に出てくる。それにしてもハザードレベルが1か・・・。しかも、よりによって万丈の妹が・・・。

 

エボルト、どうにか助け出す方法はないのか?

 

『無いな。残念だが、ハザードレベル1では助ける事は不可能だ』

 

やっぱそうだよな・・・・。

 

スマッシュは右手に炎をため、俺の方に投げてくる。俺はトランスチームガンで光弾を撃ち、相殺する。

 

『相手は炎か・・・。ちょうどいいフルボトルがあったな』

 

まだ使った事はなかったが、だいぶ前に手に入れていた消防車が描かれている『消防車フルボトル』を取り出してトランスチームガンに装填する。

 

『フルボトル!スチームアタック!』

 

再び放ってきた炎に向けてトリガーに引き、トランスチームガンから水流が放たれる。それにより、炎が消されそのままスマッシュにも当てる。思ったよりも水圧が強かったらしく、スマッシュは後退した。

 

『よし、このまま・・・』

 

「待ってくれ!!」

 

『!?』

 

このままスマッシュを倒そうとしたところ、突然万丈に邪魔された。

 

「あいつは・・・あいつは香澄なんだよ・・・」

 

『・・・・』

 

確かに、あのスマッシュはこいつの妹だ。だけど・・・・

 

『いいか、あのままだとお前の妹はずっとスマッシュのままだ。お前はそれでいいのか?』

 

「っ・・・だけど・・・」

 

俺が万丈に話していると、スマッシュが再び右手に炎をため始めた。そして、入れたちに向かって投げてくる・・・・かと思われた。

 

スマッシュはいきなり右手を下に向けると、炎を地面にぶつけた。なかなかの威力だったらしく、炎を放ったスマッシュにさえダメージが入っていた。なのに、スマッシュは攻撃を俺たちに向けてこない。

 

『まさか・・・・意識が残っているのか?ありえない・・・スマッシュになれば自我は失われるはずだ』

 

今までのスマッシュがそうだったように、スマッシュになってしまったら自我が失われるはず。にもかかわらず、自分が傷ついてでも攻撃してこない。そこまでして、万丈の事を・・・・。

 

『・・・いいか、よく聞け万丈。今彼女は、お前を傷つけないために自らの攻撃を受けている。だが、このままだと彼女は苦しみ続けることになってしまう・・・・それでいいのか!?このまま彼女を苦しみ続けさせるのか!?スマッシュのまま死なせるのか!?どうなんだ!!』

 

「っ・・・・・くっ・・・」

 

万丈が悩んでいる間にも、スマッシュは自らを傷つけている。先ほどまでは地面に炎をぶつけていたが、今では体、さらには顔にまでぶつけている。このままじゃ・・・・

 

「・・・頼む・・」

 

万丈が何かを呟いた。

 

「頼むから・・・あいつを・・香澄を元の姿に・・戻してくれ・・」

 

『・・・頼まれた』

 

万丈とスマッシュの間に立ち、ゴリラフルボトルを取り出してトランスチームガンに装填する。

 

『フルボトル!スチームアタック!』

 

ゴリラの手を模した光弾がスマッシュにあたり、スマッシュから成分が離れた。それにより、一時的だがスマッシュと香澄ちゃんが分離した。俺はすぐに掃除機が描かれている『掃除機フルボトル』と入れ替え、トリガーを引く。

 

『フルボトル!スチームアタック!』

 

銃口から風が巻き起こり、スマッシュを空中で留める。

 

『俺ができるのは、ここまでだ』

 

「香澄!!」

 

万丈は急いで香澄ちゃんに近づき、その体を抱き上げる。

 

「おい、しっかりしろよ!二人で一緒に生きるんだろ!?」

 

「・・お兄ちゃん・・・・ごめんね?もう・・私・・」

 

「言うな!・・・香澄・・俺はお前と一緒に過ごせて、最高に幸せだった・・・お前と一緒にいて、楽しかった・・」

 

「私も・・・だよ・・」

 

香澄ちゃんの体は今にも消えかかっている。むしろ、今消えてないのが不思議なくらいだ。

 

「お兄ちゃん・・・・・・私も楽しかった・・・もう、私は一緒にいられないけど・・これからも幸せに生きて?」

 

「あぁ・・・あぁ!」

 

「それじゃあね?お兄ちゃん・・・」

 

そう言い残して、香澄ちゃんは消滅した。体も残さずに・・・

 

『っ!うらっ!』

 

留めておいたスマッシュを吹っ飛ばし、コブラフルボトルを装填する。

 

『コブラ!』

 

『これで・・終わりだ・・』

 

『スチームブレイク!』

 

スマッシュはコブラ型のエネルギーに飲まれ爆発し、エンプティボトルで成分を回収する。

 

どうやらリバースはここを完全に立ち去っているらしく、特に何かが来ることはなかったため、変身を解除する。

 

「万丈・・・・」

 

万丈は先ほどと変わらない場所で泣いている。無理もない、たった一人の家族だった妹を失ったんだ・・・。

 

「惣一君」

 

「!有希子・・・殺せんせー・・」

 

「石動君・・一体何が・・・」

 

「聞かないでくれ・・・しばらく、そっとしておこう」

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

あれから少し時間が経ち、万丈もある程度落ち着いて来た。

 

「それで?万丈はこれからどうするんだ?」

 

「は?どうするって・・・」

 

「今まで通り、どうにか生きているような生活を続けるのか?」

 

「・・・さぁな、決まってねぇよ」

 

『決まってないんだったらよ』

 

「エボルトさん?何かいい考えでも?」

 

『あぁ、お前は俺たちの秘密を知った。それに殺せんせーのこともな。だったら、俺たちと一緒に来て仲間にならないか?』

 

「は?」

 

「おい、ちょっと待てエボルト」

 

予想外のエボルトの提案に、俺は思わずエボルトを止める。

 

『なんだ?惣一』

 

「なんだじゃねぇ。仲間にするたってどうすんだよ。こいつの住居に関しても・・・」

 

『それならうちのカフェにくればいいじゃないか。人一人増えたぐらい、問題ないだろう』

 

「いや、確かにそうだけど・・・」

 

『それに、こいつには色々と話も聞きたいしな』

 

「もう俺の意見は通らないな・・・ま、いっか」

 

「いいの?惣一君」

 

「あぁ、エボルトの意見も一理あるしな。あとは、お前の意思次第だぜ?」

 

「・・・・・いいのか?俺がいても・・」

 

「あぁ、どうせ俺は一人暮らしだしな。時々有希子が来るぐらいだし、カフェつっても客はこねぇから安心しろ」

 

「それは安心していいのか?」

 

万丈が何か呟いたが気にしない。実際問題はないしな。

 

「なら、頼めるか?どうせ行くあてもないしな」

 

「あぁ、これからよろしく頼むぞ、万丈」

 

俺が手を指す出すと、万丈も理解したのか手を握り返した。

 

「ヌルフフフ、それではこれからのこともある程度決まったところで、帰るとしましょう。こちらもこちらで得たものがありましたし」

 

「!それは本当か!?」

 

「うん、ここで行われてたと思われる研究の情報と、USBメモリが」

 

「よっしゃ!なら、帰って早速調べるか!!」

 

 

 




次回は地下室でPROJECT BUILDの話です!

感想、評価等よろしくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第16話 Project Build

早くエボルを出したい・・・・・。

とりあえず第16話、どうぞ。


惣一side

 

 

「それで、有希子達が見つけたUSBメモリってのは?」

 

地下室に一気に転移した俺たちは早速情報を共有することにした。まず始めに有希子と殺せんせーが見つけたというUSBメモリと書類の確認からだ。

 

「これ」

 

「よし、早速中を見てみるぞ」

 

受け取ったUSBメモリをコンピューターにつなげ、中のデータを開く。パソコンの画面には『PROJECT BUILD』という文字が出て、すぐにパスワードの入力画面が出て来る。

 

「プロジェクトビルド?」

 

「やはり、これですか・・」

 

「やはり?わかってたのか?」

 

「予想はしていました。我々が見つけた書類にも、同じくプロジェクトビルドの事が書かれていました」

 

殺せんせーのいうとおり、書類の方にもプロジェクトビルドと書かれている。おそらく、書類の方が詳細なデータが得られるだろう。だがまずは・・・

 

「プロジェクトビルドっと・・・・どうやら、中は動画が一本みたいだな」

 

パスワードにプロジェクトビルドと入力すると、一本の動画が表示された。早速再生する。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

動画と書類からわかったことは、このプロジェクトビルドはとある研究者が考案したものらしく、赤いレバーに歯車が付いている『ビルドドライバー』というベルトに二本のフルボトルを装填することで防衛システムである『仮面ライダー』に変身できる、という内容だった。しかもこの防衛システム、通称『ライダーシステム』はフルボトルを変えることで様々な姿になれるらしい。

 

「まさか・・・こんなものがあったとはな・・」

 

あの研究所は、このライダーシステムの研究を行っていたらしい。

 

「そういえばよ、このフルボトル?ってやつ、お前も持ってなかったか?」

 

「あぁ、確かにフルボトルは持っている。だが、全てではない」

 

「全てじゃない?フルボトルは一体幾つあるんですか?」

 

殺せんせーが聞いて来る。そういえばまだ言ってなかったな。

 

「ボトルの数は合計で60本だ。その内、俺たちが所有しているのは約34本・・・まだ半分近く持っていない」

 

「60本・・・そんなに・・」

 

ちょうどその時、浄化装置がから爆発音がした。

 

「うわっ!!いきなりなんだよ!?」

 

「おっ!ちょうどボトルの浄化が終わったみたいだな」

 

浄化装置からボトルを取り出す。ボトルにはドラゴンの顔が描かれていた。

 

「こいつは・・・『ドラゴンフルボトル』か。万丈!」

 

俺はそのフルボトルを万丈に投げ渡す。いきなりのことで万丈は慌てていたが、なんかキャッチしていた。

 

「そいつはお前の妹がなっていたスマッシュから採取した成分で生成されたボトルだ。・・・・そいつはお前が持っとけ」

 

「ヌルフフフ、万丈龍我君にドラゴンのフルボトルですか。いい組み合わせですね」

 

「そのフルボトル、香澄ちゃんの想いが詰まってる気がする」

 

「香澄の想いが・・?」

 

「うん!」

 

万丈は有希子の言葉を聞いて、ボトルを笑顔で見ながら大事そうに握る。

 

「ボトルのことはここら辺でいいだろう。次に・・・・律、手に入ったデータを教えてくれ」

 

「わかりました!」

 

律が返事をすると同時に、パソコンの画面に情報が映し出せた。

 

「どうやらあの場所では、『ネビュラガス』と呼ばれる気体を人間に注入したらどうなるか、という実験を行っていたらしいです」

 

「人間にってことは・・・」

 

「人体実験・・・・」

 

「そして、そのネビュラガスを注入された人間はとある存在に変わるみたいです。それが・・・」

 

「スマッシュ!?」

 

画面に映し出された文字を読んで有希子が驚愕の声を上げる。だが、やっぱりか・・・・。

 

「おそらく、今まで俺が戦ってきたスマッシュはほとんどがあの場所で誕生したやつだろう・・・」

 

「それともう一つ・・・・先ほどの動画に出てきたビルドドライバーの設計図です」

 

「!!」

 

「何かと使えるかと思い、一応コピーしておきました!」

 

「ありがとな、律!」

 

俺は律がコピーしてきたビルドドライバーの設計図を確認する。見た感じ、どうやら俺でも作れるみたいだ。まぁ、作ったところで使うことはないだろうけど・・・。

 

設計図を見ていると、ある名前が目に入った。どうやらこのプロジェクトビルドの考案者みたいだが・・・。

 

「・・・・・は?」

 

「?どうかしたの、惣一君?」

 

「あ、いや、なんでもない・・・」

 

「?」

 

有希子はイマイチ納得してなさそうだが、正直今の俺にはどうでもよかった。それほど、その名前は衝撃だったからだ。

 

設計図には確かに書かれていた。

 

 

 

 

 

 

『石動健二』と・・・・・・。

 




次回から原作に戻ります!

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!


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第17話 二人目の転校生、そして・・・・

久しぶりに原作が進んだな・・・・。

まぁ、最後の方は原作と変わってるけど!

それでは第17話、どうぞ!!


惣一side

 

 

潜入捜査が終わり数日、時期は梅雨に入り雨が降っていた。

 

いつものように教卓に立つ殺せんせー。だが、いつもと違う部分があった。

 

『デケェな・・・』

 

エボルトのいうとおり、明らかに巨大化している・・・頭が。

 

殺せんせー曰く、湿気でふやけたらしい。まぁ、ここ最近はずっと雨だったしな・・・。

 

「さて皆さん、烏間先生から連絡は言ってると思いますが、今日は新しい転校生がきますよ!」

 

「あぁ、うん、ぶっちゃけ殺し屋だろうね」

 

あっさりとそういうあたり、なんかもう慣れた感じがする。

 

「律さんの時は油断しましたからねぇ、今度は油断しませんよ。それに何より、このクラスにまた新しい仲間が加わるのが嬉しいです」

 

「なぁ、律はその転校生について何か知らないのか?」

 

殺せんせーが喜んでいるのを横目に見ながら、律に聞いてみる。律のことだから、何か知ってそうだが・・・・

 

「はい。当初は私と彼は同時投入の予定でした。私が遠距離で援護、彼がとどめをさすはずでしたが、二つの理由でキャンセルされました」

 

「その理由って?」

 

「一つは彼の調整が予定よりかかってしまったから、もう一つは私が彼より、暗殺者として圧倒的に劣っていたから・・・」

 

殺せんせーの指を簡単に吹き飛ばした律がその扱いか・・・・、一体どんな殺し屋なんだ?

 

教室に沈黙が訪れた時、扉が開いて白装束の格好をした奴が入ってきた。こいつが転校生?その白装束は右手を前に出し、そして・・・・・鳩を出してきた。

 

「は?」

 

「はっはっは!ごめんごめん、驚かせたね。私は転校生じゃなくてただの保護者だ。まぁ白いし、シロとでも呼んでくれ」

 

「いきなり白装束できてマジック披露なんて、誰でもビビるわ」

 

「ねぇ、殺せんせーじゃなければ誰でも・・・・」

 

クラス全員が殺せんせーへと視線を向けると、天井の角に液状化でくっついていた。

 

「ビビってんじゃねぇーよ殺せんせー!!」

 

「奥の手の液状化まで使ってよ!!」

 

「にゅや!!だ、だって律さんがおっかないこと言うんですもん!!」

 

だからって、超生物がビビるなよ・・・・。

 

「初めましてシロさん、それで肝心の転校生はどこに?」

 

「初めまして殺せんせー。色々と特殊な子でね、私が直に紹介させてもらおうと思いまして」

 

そう言ってシロは一度クラス全体を見渡したが、その際に目が合った。その時、たった数秒で合ったが、何か恐怖を感じた。だが、それもすぐに消え失せた。気のせい・・・か?

 

「どうかしましたか?」

 

「いや、皆良い子そうですなぁ。これならあの子も馴染めそうだ。お〜い、イトナ!入っておいで!!」

 

シロが扉の方を向いて読んだため、皆も扉に注目する。そして転校生が教室に入ってきた。・・・・・・・後ろの壁を突き破って・・・。

 

その転校生は何かつぶやきながらさも当然のように席に座ったが、俺たちは言いたいことがある。

 

「「「「ドアから入れよ!!!!」」」」

 

なぜわざわざ壁をぶち壊して入ってきた・・・!外は雨も降ってんのに!!

 

そこまで思って気づいた。この転校生、外から入ってきたのに濡れていない。手ぶらなのに、どう言うことだ・・・?

 

「ねぇ、イトナ君。今外から手ぶらで入ってきたよね?外土砂降りなのに、どうしてイトナ君、一滴の濡れてないの?」

 

イトナの隣の席であるカルマも同じ事を思ったらしく、早速聞いてくれた。だが、イトナは答えずにクラス全体を見渡した。そして、立ってカルマの頭を掴んだ。いや、あれは掴んだと言うよりのせたか?

 

「おそらく、お前はこのクラスで二番目に強い。だが安心しろ、俺より弱いから。俺はお前を殺さない」

 

なんかいきなり物騒なこと言ってんなぁ。あ、この教室じゃ普通か。

 

「俺が殺そうと思うのは、俺より強い奴だけ。この教室じゃ殺せんせーと、お前だけだ」

 

イトナは俺を見ながらそう言ってきた。・・・・え?俺?

 

「え、あ、おい、ちょっと!」

 

「強い弱いとは喧嘩のことですか?残念ながら君では私と同じ土俵に立つことはできませんよ」

 

「立てるさ」

 

俺の事はガン無視かよ・・!!なんかめんどくさいのに目をつけられたんだけど・・!!

 

『ま、仕方ない。実際あいつより強いだろうからな』

 

なんでお前はそうのんきなんだよ!!

 

エボルトにそう言ってたら、シロとイトナは出て行った。ん?皆そんな驚いた顔してどうしたんだ?

 

「おい!先生兄弟ってどう言う事!?」

 

「そもそも人とタコじゃん!!」

 

「し、知りません!先生、生まれも育ちも一人っ子です!!昔、両親に『弟が欲しい』とねだったら、家庭内が気まずくなりました!!」

 

話を聞いてもよくわからない。仕方ない、有希子に聞くか。

 

「なぁ有希子、なんで皆こんなに騒いでるんだ?」

 

「もしかして、聞いてなかったの?」

 

「うん」

 

「はぁ・・・・もう少し話は聞いてようよ。皆、あのイトナ君が殺せんせーの兄弟だって言ってたから、驚いて殺せんせーに問い詰めてるんだよ」

 

「へぇ〜、なるほど・・・・って兄弟!?」

 

「反応遅いよ・・・・」

 

「殺せんせーって兄弟いたんだ・・・・ま、良いや。あとで今日一日の事教えてくれ」

 

「えっ、惣一君!?」

 

有希子にそう言い残して、教室から出る。いつものところ行って寝るとするか。

 

あ、今日雨で使えないじゃん・・・・。

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

放課後、いつもなら家に帰るが、今日は全員教室に残っていた。

 

理由はただ一つ、教室内えイトナによる暗殺が行われるからだ。机によって作られたリング。その中で殺せんせーとイトナが相対していた。

 

「普通の暗殺は飽きただろう、殺せんせー。一つルールを決めないか?」

 

シロがリング外からそう言う。なんでこいつが仕切ってんだ?

 

「リングの外に足がついたら死刑、どうだい?」

 

そんなルール、誰が守るんだ?って言いたいところだけど、この手の縛りは殺せんせーにはよく効く。皆で前で決められたルールを破れば生徒たちの中で先生として死ぬから。

 

「・・・いいでしょう、ただしイトナ君、観客に危害を加えた場合も負けですよ?」

 

殺せんせーの言葉に、イトナは無言で頷いた。

 

「では、合図で始めようか」

 

シロが右手を上にあげ、思いっきり振り下ろした。

 

「暗殺、開始!」

 

その瞬間、殺せんせーの触手が宙を舞い、俺たちの視線はある一点に集中した。だが、それは切り落とされた触手ではなく、切り落としたものへ。イトナの頭から生えた数本の『触手』だった。

 

『なるほど・・・だから濡れなかったのか』

 

触手も持っているのであれば、雨粒全てを触手で弾ける。兄弟ってのは、血の繋がりではなく、同じ力を持っていたから・・・か。

 

「・・・・・・こだ・・・」

 

突然、教室内の空気が変わる。見ると、殺せんせーがワナワナ震えている。触手の色は黒、過去に一度だけ見せた『ど怒り』だ。

 

「どこで手に入れた!その触手を!!」

 

「君に言う義理は無いね、殺せんせー。でも、これで理解しただろう。両親も育ちも違うが、この子と君は兄弟だ」

 

殺気も混ざっていた殺せんせーの問いに、シロはなんでも無いように平然と返す。

 

「それにしても怖い顔するねぇ、殺せんせー。何か、嫌なことでも思い出したのかい?」

 

「・・・・どうやらシロさん、あなたにも話しを聞かなきゃならないようだ」

 

「聞けないよ。死ぬからね」

 

そう言った直後、シロは袖口から紫色の光を放った。その光を浴びた瞬間、殺せんせーの動きが止まった。

 

「全部知ってるんだよ、君の弱点はね」

 

「死ね、兄さん」

 

硬直した体に向けて、イトナは躊躇なく触手を放った。全ての触手が当たったように見えたが、そこにあったのは殺せんせーの抜け殻だ。

 

「脱皮か・・・・そういえばそんな手もあったっけ。でも、その脱皮にも弱点がある。脱皮、そして触手の再生には思ったより体力を使うんだ。さらに自慢のスピードも低下する。また、触手の扱いは精神状態に大きく左右される。イトナの触手を見て大きく動揺したね。この時点で君とイトナの実力はほぼ互角。さらには献身的な保護者のサポート」

 

シロは再び光を放ち、殺せんせーは硬直した。次から次へと出てくる殺せんせーの弱点、なんであいつはそこまで殺せんせーのことを知ってるんだ?このまま行けば確実に殺せんせーを殺せるだろうが・・・・気にくわねぇな。

 

『んじゃ、邪魔でもしますか』

 

賛成だ、エボルト。

 

「さてと、これで最後だ殺せんせー。次のラッシュに耐えきれるかな?」

 

再び光を放とうとするシロ。そんなシロに向かって俺は・・・・

 

「あらよっと!!」

 

飛び蹴りをかました。残念ながら避けられたけどな。

 

「一体何のつもりだい?」

 

「決まってんだろ?暗殺の邪魔だよ」

 

「やれやれ、あの怪物に情でも沸いたのかい?ここで奴を殺さなければ、三月に地球は滅びるんだよ?」

 

「別にあのタコに情が湧いたわけでもねぇし、イトナの暗殺を邪魔するつもりはない。俺が邪魔したのはあくまであんたのサポートだよ」

 

「何?」

 

「イトナは確かにこのクラスの生徒だし、殺せんせーを殺したって文句は言わねぇさ。だけど、あんたは別だ。ただ保護者ってだけの部外者が、暗殺に手を出すな」

 

「・・・どこまでも邪魔するか、石動惣一・・・・まぁいい。どうせこれで終わりだ。殺れイトナ」

 

シロが指示を出したと同時に、イトナは触手を放った。その触手は殺せんせーに当たる・・・・・前に触手が崩れ落ちた。

 

「おやおや、落し物を踏んでしまったようですね」

 

そう言う殺せんせーの手にはハンカチ、そして足元には数本の対殺せんせーナイフが。

 

「同じ触手なら対先生ナイフが効くのも同じ、触手を失うと動揺するのも同じです。ですが!先生はちょっとだけ老獪です!!」

 

殺せんせーはイトナを自らの抜け殻で包み、外を放り投げた。これにより、イトナの足は地面・・・リング外に出ている。

 

「先生の抜け殻で包んだのでダメージはないはずです。ですが、君の足は地面についている。ルールに照らせば君は死刑、二度と先生を殺せませんねぇ」

 

殺せんせーは緑と黄色の縞模様にし、舐めきってるのがわかる。さっきまでやばかったくせに・・・。

 

「生き返りたいのなら、このクラスで皆と一緒に学びなさい。この教室で先生の経験を盗まなければ、君は私には勝てませんよ」

 

その言葉に、イトナの様子が変わっていく。

 

「勝てない・・・この俺が・・・」

 

「!黒い触手!?」

 

イトナが出した触手は黒く染まっており、先ほどの殺せんせーと同じど怒りだ。

 

イトナは触手を使って再び殺せんせーに攻撃しようとする。だが、直後何かがイトナにあたり、意識を失った。

 

「すいませんねぇ殺せんせー、どうやらこの子はまだ登校できる精神状態じゃなかったみたいだ」

 

シロは左手を前に突き出し、袖口からは煙があがっている。他にも隠し持ってたのか・・・。

 

「殺せんせー、今日は君への暗殺は諦めましょう。イトナがこれでは、君の触手に対抗できませんからねぇ・・・」

 

「私への・・暗殺・・?」

 

「えぇ、確かに第一目標はあなただが、この教室には第二目標もいる」

 

シロはそう言って懐から何かを取り出した。紫色で、どことなくトランスチームガンと似ている銃を。

 

「今度は君の番だ・・・どうする?石動惣一・・・いや、ブラッドスターク!」

 

『ギアリモコン!』

 

シロはフルボトルに似た形のものを銃に装填し、トリガーを引いた。

 

『ファンキー!!』

 

すると、俺が蒸血の時と同じように煙が撒かれ、シロの体に青い歯車がついていく。その姿は修学旅行の時に俺たちの前に現れたカイザーだった。

 

 

 

 

 




カイザーの正体が判明しましたね!バレてたとは思うけど・・・。

ついでみたいに正体をバラされた主人公・・・ま、いっか!!

感想、評価等よろしくお願いします!!

それでは、チャオ!!


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第18話 カイザーとの戦い

前回正体をバラされた惣一。今回ではどうするんでしょう。

そして、ラストには・・・・

さてさてどうなる第18話!!


惣一side

 

 

「カイザー・・・!!」

 

まさか、シロがカイザーだったなんて・・・しかも、完全に俺を狙ってやがる!

 

「ブラッドスタークって・・・・」

 

「修学旅行の時の・・コブラ男だよな・・・」

 

「石動君が・・ブラッドスターク?」

 

教室内で、驚きの声が上がっている。修学旅行の際、ブラッドスタークの存在を認知した渚達だ。あの時のことはクラス全体に伝わっていたが、実際に見ていないメンバーは半信半疑だったのだろう。何がなんなのかわかっていないって感じだ。

 

「惣一君・・・・」

 

有希子の心配している声が聞こえる。こうなることは全く予想していなかったからな、仕方ないだろう・・。

 

『どうした?ブラッドスタークにならないのか?・・・・ならば、ならざるおえない状況にしてあげよう』

 

シロ・・・いや、カイザーはそう言って紫の銃を突き出し、光弾を有希子に向かって放った。

 

「え?」

 

いきなりのことで、有希子は反応することができない。俺はとっさにトランスチームガンを取り出し、光弾を放って相殺させた。だが、これでトランスチームガンを見せてしまった。

 

「・・・・最悪だ・・」

 

カイザーめ・・・・こうなるとわかってたな・・・・。

 

「お前の想定通りか・・・こうなったら、もはや隠すわけにはいかないな・・・」

 

『コブラ!』

 

「蒸血・・・・」

 

『ミスト・マッチ!コッ・コブラ・・・・コブラ・・・ファイヤー!!』

 

俺は皆が見ている前でブラッドスタークになる。当然皆驚き、特に渚達が一番驚いている。

 

『まだ、対人の訓練は受けてないんだがな・・・悪いが、俺も死ぬつもりはないんでな!!』

 

スチームブレードを取り出し、カイザーに斬りかかる。カイザーも同様にスチームブレードを取り出し、俺の攻撃を受け止めた。

 

『ほほう・・・それはいいことを聞いた』

 

カイザーは右手に紫の銃を手にし、がら空きになっている俺の腹に向けて光弾を数発放った。

 

『ぐぉっ!!』

 

当然俺は対応できず、壁を突き破って外に出てしまった。カイザーも俺を追って外に出てくる。

 

『君はまだ対人には慣れていない。それならばやはり今の内に、殺しておくとしよう』

 

『ライフルモード!アイススチーム!』

 

スチームブレードと紫の銃を合体させライフルモードにし、バルブを回した。

 

『くっ・・・』

 

『ライフルモード!アイススチーム!』

 

俺も同じようにライフルモードに、バルブを回す。これで、お互いの武器の力は同等のはず・・・!

 

そう、思っていた。だが、互いの武器をぶつけあった瞬間、俺だけが吹っ飛ばされた。

 

『あぁ、言い忘れていたが私が使うこの銃・・『ネビュラスチームガン』は君が使うそのトランスチームガンの後続機でね・・・当然、性能はこちらの方が上だ』

 

『っ!・・・マジかよ・・』

 

『まさか。同等の性能だと思ってたのか?もしそう思ってたのなら、実に愚かだ。私が自らの発明品の後続機、しかも自分が使う物の性能をグレードアップしないわけがないだろう?』

 

『自らの・・発明品?』

 

『あぁ、そうだ。あの日、私の研究所から貴様はそれを盗み出した。その時から私は決めたのだよ。何があろうと、何をしてでも貴様は殺すと・・・』

 

『どういうことだ・・・・盗み出したとは何のことだ・・』

 

『ん?何だ、記憶が欠落しているのか?まさか、あの日の事を忘れているとはな・・』

 

一体何を言ってんだ?こいつは・・・。俺が盗み出した?トランスチームガンはあいつの発明品?どういう事だ・・・これはエボルトからもらったものじゃ・・・

 

『惣一、変われ』

 

え、おい!

 

 

 

惣一side out

・・・・・・・・

エボルトside

 

 

 

惣一から無理やり体の主導権を奪い、俺がカイザーと相対する。

 

『人が苦労して封じた事を、よくもまぁベラベラと喋ってくれるな。カイザー』

 

『ん?・・・あぁ、石動惣一の中にいた地球外生命体か』

 

『やはり俺の存在は知っていたか・・』

 

『当然だ。君たちのことは何回か監視したからね。ま、気づいていなかっただろうが・・・』

 

まさか監視されてたとは・・・全く気づかなかったなぁ。

 

『その言い方からすると、石動惣一からあの日の記憶を奪ったのは貴様のようだな』

 

『あぁ、そうさ。もし、今もこいつのあの記憶が残ってたら、こいつの心はとうの昔に壊れてたろうよ』

 

『それを今ここで言ってもいいのかな?』

 

『問題ない、惣一にはちょっと眠ってもらってるからな。あとは、お前を倒すだけだ!!』

 

俺は蛇のようにスライディングし、カイザーに迫って足を切りつける。スチームブレードによってカイザーの足が凍る。

 

『なに!?』

 

『遅い!!』

 

『フルボトル!スチームアタック!』

 

カイザーが動きだした時にはすでにガトリングフルボトルを装填していた。奴が行動を起こすよりも前に光弾を放つ。それも、ガトリングフルボトルによって大量のな。

 

『うっ・・くぅ!』

 

しかもこの光弾はスチームブレードによって、当たると凍っていく仕様だ。

 

『フルボトル!スチームアタック!』

 

懐からロケットフルボトルを取り出し、ガトリングフルボトルと入れ替える。カイザーに標準を合わせ、トリガーを引く。

 

『くっ・・誘導弾か・・』

 

『エレキスチーム!』

 

どうやら避けても意味がないことは知っているみたいだな。カイザーはスチームブレードのバルブを回して誘導弾を迎え撃とうとしている。だが、俺から見ればそれは隙だらけの状態だ。

 

『コブラ!スチームブレイク!』

 

誘導弾の方に集中しているカイザーに、コブラ型のエネルギーが襲う。これは避けられないはずだ。

 

『スクラップフィニッシュ!』

 

突如横から黒と金の何かがコブラ型のエネルギーに当たった。それにより、コブラ型のエネルギーはカイザーに当たる前に爆発した。

 

『何だ?』

 

煙が晴れると、その何かが姿を表す。金色のボディに半透明な黒の装甲、そして肩部分にはロボットのマークが描かれている水色のベルトをつけた存在だった。

 

その姿は、この間初めて知った『仮面ライダー』を彷彿させた。

 

 




やっぱりエボルトは強いな〜・・・・。

最後に出てきたのは皆さんご存知のあのライダーです!

感想、評価等宜しくお願いします!

それは、チャオ!!


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第19話 グリスの実力

今回は久しぶりに彼が出ます!

まぁ、出番は全然無いけどね。

それでは第19話、どうぞ!


エボルトside

 

 

『何だ?お前』

 

「・・仮面ライダー・・・グリス」

 

俺が聞くと、そいつはそう答えた。仮面ライダー・・・例のライダーシステムか・・。

 

「ふっ!」

 

『っ!なるほど・・・ハザードレベル4.2か・・こいつは一筋縄じゃいかないな・・』

 

ハザードレベルは高ければ高いほど強くなる。ハザードレベル4.0を超えているこいつは、人間の中でも強い部類に入る。それにしてもこの声・・・俺はグリスの攻撃を腕で防ぎながら、チラッと校舎の方を見る。・・・やっぱり、イトナがいなくなっていやがる。ってことは、こいつの正体は、イトナか!

 

『ふん!・・・やっぱ、ハザードレベルが4.0を超えているだけはある・・・しかも、随分と戦闘慣れしてるな。正直、カイザーよりもよっぽど手強いよ』

 

「当然だ、俺は強いからな」

 

グリスは大きく腕を振って殴ってくるが、俺はその腕を掴む。

 

「何?」

 

『ふっ!はっ!!』

 

空いている左手にスチームブレードを掴み、グリスに二・三回切りつける。

 

「くっ!」

 

『ちっ・・大してダメージを与えられなかったか・・・』

 

グリスは後退し、すぐに体勢を立て直している。立ち上がったグリスは左手を前に突き出す。すると、左手の平からゼリー状の物体が出てきて、形を作り出す。ゼリーが弾けると、そこには水色のバイルバンカーのような武器が現れた。

 

『ツインブレイカー!』

 

「ふん!はっ!!」

 

グリスはその武器・・・ツインブレイカーつったか?・・・を使って殴ってくる。さっきは拳だったから掴むことができたが、今回は流石にできないな・・。

 

『くっ!』

 

俺は攻撃を受け、グリスとの間に距離を開ける。あの形状から、遠距離はできないはずだ・・・・。そんな俺の考えとは裏腹に、グリスはツインブレイカーを変形させ、二連装ビームガンに変えた。

 

『ビームモード!!』

 

『ビームモードってことぁ・・・』

 

予想通り、イトナは光弾を放ってきた。やっぱり遠距離もできるのかよ!!

 

『たく、遠距離も近距離もできるってズルイにもほどがあんだろ!!』

 

グリスからの攻撃を避けていると、突然別の方向から光弾が迫ってきた。何とか避けることができたが、今のは・・・・

 

『私の事忘れられては困るな、ブラッドスターク』

 

『カイザー・・・普通に忘れてたわ』

 

「「「「おい!!」」」」

 

なんか教室の方からツッコミが飛んできたな。ま、いいけど。

 

『二対一か・・・・しょうがない、あまり使いたくなかったけど・・・』

 

俺は胸部分にエネルギーをため、そして・・・・・

 

「っ!ぐぅ!!」

 

『何!?ぐわっ!』

 

そのエネルギーを放出しようとした時、何かがグリスとカイザーに当たった。一体何が?

 

『二対一か・・・俺も手を貸そう』

 

『っ!?お前は・・・ナイトローグ!』

 

声がした方を見ると、校舎の上にナイトローグが立っていた。その手にはトランスチームガンがあり、今の攻撃もナイトローグによるものだろう。

 

『いなくても問題ないんだが・・・ま、助かる。それじゃ、カイザーの方は頼んだぜ』

 

カイザーの方はナイトローグに任せ、俺はグリスと相対する。

 

『さて、お前の相手は俺がしてやるよ』

 

『フルボトル!スチームアタック!』

 

ハリネズミフルボトルをトランスチームガンに装填し、針状になっている光弾を放つ。それをグリスはツインブレイカーから放つ光弾で相殺する。そして、グリスは懐からある物を取り出した。

 

『フルボトル・・・やはりお前たちも持っていたか』

 

グリスが取り出したのはタコが描かれている『オクトパスフルボトル』だ。それをドライバーに装填し、横に付いていたレンチ型のレバーを倒した。

 

『チャージボトル!潰れな〜い!チャージクラッシュ!』

 

「ふっ!!はぁっ!!」

 

グリスの両手にタコの触手のようなエネルギーが形成され、グリスはそれを操ってくる。

 

『くっ・・・さすがに触手持ちなだけあって扱いが上手いな・・・ってか、俺タコ嫌いなんだよ!!』

 

「にゅや!!そうなんですか!?」

 

なんか後ろでタコが騒いでるな・・・あいつは正直言ってギリギリセーフだ。

 

『くぅ・・ぐわっ!』

 

触手に弾かれ、俺は吹き飛ばされる。その際に、数本のボトルを落としてしまった。

 

「タンクにガトリング・・・それとライトか。他のボトルも回収しておこう」

 

グリスはそれらのボトルを拾って近づいてくる。まだだ・・・もっと近くによれ・・・今だ!

 

『おらっ!!』

 

すぐ近くまできたその瞬間、起き上がってトランスチームガンを腹に当てる。トランスチームガンにはすでにゴリラフルボトルが装填されている。

 

『スチームアタック!』

 

「グワァァ!!」

 

完全に油断していたグリスの腹に、0距離から放たれたゴリラの腕をもした光弾が直撃する。あれはさすがに効いただろ!

 

『さぁ、これで終わりにしようぜ』

 

『コブラ!』

 

「くっ・・なめるなぁ!!」

 

『スクラップフィニッシュ!!』

 

俺はトランスチームガンにコブラフルボトルを装填、グリスはレバーを倒した。

 

『スチームブレイク!!』

 

トリガーを引き、再びコブラ型のエネルギーを発射、グリスは肩アーマーの向きが変わり、黒い液体が溢れ出てくる。右足にも黒いエネルギーが溜まり始めた。グリスはその勢いを使い、コブラ型エネルギーに向かって飛び蹴りをしてきた。

 

二つのエネルギーが衝突した瞬間、爆発が起こり煙が上がった。それによって、俺の視界からグリスが消えた。そのため、何をやっているのかわからなかった。

 

『シングル!ツイン!ツインブレイク!!』

 

「ハァァァァァ!!!」

 

煙の中からグリスが姿を現した。ツインブレイカーのバイルの先端にはエネルギーが集中し、高速回転している。

 

『何ッ!!くっ!!グアァァァァァアア!!!!』

 

とっさに腕を前に交差させたが、大して意味をなさずにそのまま吹き飛ばされ、変身が解除された。

 

『っ!まさか・・・この俺が負けるとはな・・』

 

「はぁ・・はぁ・・・残りのボトルも回収させてもらう」

 

満身創痍で動けない俺に、グリスは近づいてくる。こいつはヤベェな・・・あいつのことだから、俺を殺しかねない・・・。

 

「だめっ!!」

 

『有希子!?』

 

グリスと俺の間に、有希子が立った。

 

『何してる!早く逃げろ!!』

 

俺が叫ぶも、有希子は動かない。まずいぞ・・・このままじゃ有希子まで・・!

 

そう思っていたが、グリスは有希子を見た瞬間、振り返って歩き出した。

 

『なっ・・・なんでだ!?』

 

「俺は俺より弱いやつは殺さない・・・そいつを殺すつもりはない」

 

そう言い残して、カイザーの方に歩いて行った。どうやら向こうの戦いも終わったらしく、向こうはナイトローグが立っていて、カイザーが倒れていた。

 

倒れているカイザーを担ぐと、ドライバーに消しゴムが描かれている『消しゴムフルボトル』を装填した。

 

『ディスチャージボトル!潰れな〜い!ディスチャージクラッシュ!!』

 

左手に消しゴム型のエネルギーが形成され、それを文字を消すように動かすとグリスとカイザーの姿が消えた。・・・透明になる力を持っているのか・・・。

 

その後も奇襲が来ることもなく、奴らは去って行ったらしい。

 

『どうやらそちらの相手はなかなかの相手だったらしいな』

 

ナイトローグが俺に話しかけて来る。その手にはライフルモードになっているトランスチームガンが握られていた。

 

『そのスチームブレード・・・そうか、カイザーから奪ったのか』

 

『あぁ、君が使っているのは知っていたからな。試しに奪ってみたが、かなり使いやすい』

 

ナイトローグはスチームブレードを見ながらそう言った。戦いながら奪うって・・・・そんなことよくできたな。しかももう使いこなしてそうだし・・・。

 

『それに、奴は戦い慣れはしていない。普段相手にしている彼らの方が、今となっては手強いと感じるほどにな』

 

『つーことは、最初惣一が圧倒されてたのはただの経験値不足ってことか・・・やっぱ修行は必要だな・・』

 

まぁ、どちらにせよもうここには入られなくなるだろうが・・・。

 

『さて、帰るとするか』

 

「大丈夫ですか?石動君・・いや、エボルトさん」

 

『そうだなぁ・・・大丈夫かどうかは正直微妙なところだが・・まぁ大丈夫だろう。それはそうと殺せんせー、言っておかなければならないことがある』

 

「にゅ?それはなんですか?」

 

『俺達はもう・・・ここにはいられない』

 

 

 

 




グリス・・・てかイトナってこんなキャラだったっけ?

今回エボルトが戦って負けてましたが、ブラッドスタークでの戦いであったのと、エボルト自身はまだ本気を出していないからです。原作でもラビットタンクスパークリングには初見では負けてましたし、いいよね!

それとナイトローグのことですが、今回の話に少しだけ正体に関してのヒントが出ていますので、考えて見てください。

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第20話 E組の想い

今回は前半は惣一とエボルトの会話、後半にはE組での話し合い(?)になっています!

さてさてどうなる第20話!


有希子side

 

 

『俺たちはもう・・・ここにはいられない』

 

「・・・え?」

 

イトナ君が変身した仮面ライダー・・・グリスとの戦いが終わった後、エボルトさんは突然そう言った。それには当然私も、隣に立っている殺せんせーも驚いている。

 

「・・・・どうして・・?」

 

『・・今回の一件で、生徒達には俺たちが・・・惣一がブラッドスタークであることがバレ、さらにはその中には俺という地球外生命体が存在していることまで知られてしまった。得体のしれない存在がすぐ近くにいた。今までは隠し続けてきたが、バレてしまった以上、これからあいつらは俺を・・・惣一を恐れ、離れていくだろう』

 

「で、ですが、あなたは生徒達を守りました!相手がライダーシステムを使う以上、おそらく私一人では敵わないでしょう。あなたは私の代わりに、生徒達を守ってくれたんです!」

 

『それはどうかな・・・確かにお前ではライダーシステムには敵わないだろうが・・・代わりに俺が戦った結果、生徒である惣一を傷つけてしまっている。それで、生徒を守れていると言えるか?』

 

殺せんせーの言葉に反論するエボルトさん。でも・・だからって・・

 

「どうして、いなくなる必要があるの?」

 

『さっきの言っただろ有希子、俺の存在がある以上、彼らは俺を、惣一を恐れ続ける。生徒が安心できるようにするには、俺たちがここからいなくなる必要がある』

 

「でも!本当に恐れるかなんて・・・」

 

『だったらあいつらを見ていろ』

 

「え?」

 

エボルトさんに言われ、私は振り返って校舎を見る。そこからはクラスの皆がこっちを見ていた。けど、その顔からは恐怖、衝撃、色々な感情が読み取れた。

 

『これでわかっただろう。今すでに、あいつらは俺たちを恐れている。殺せんせーのような存在ではなく、まさしく怪人と言える姿になった俺のことを。守られたかどうかなんて関係ないんだよ。もともと俺たちは他の生徒との関わりは少なかったからな。ほとんどが惣一がどんなやつかなんて知らない。もしかしたら、自分があの力の餌食になる。そう考えてるやつもいるだろう』

 

エボルトさんはそこまで言って歩き出した。

 

「どこに!?」

 

『決まってるだろう、帰るんだよ。まぁ、もう登校することはないだろう』

 

エボルトさんはトランスチームガンを取り出して、煙を撒いてこの場を去って行った・・・・・。

 

 

 

有希子side out

・・・・・・・・・・

惣一side

 

 

 

目が覚めると、見覚えのある天井。今は地下室のベットで寝ていたらしい。時間を確認すると、午後6時ぐらいだ。

 

「いっ!」

 

起き上がろうとしたが、体がズキズキと痛む。それにより、今日の戦いが頭に浮かんできた。

 

「・・・あぁ・・そういえば、バレたんだったな・・・」

 

シロのおかげで俺がブラッドスタークであることがバレ、俺はみんなの前で蒸血したんだよな・・・途中から記憶がないが・・・。

 

『目覚めたか、惣一』

 

「エボルト・・・戦いはどうなった?」

 

『カイザーだけでなく、イトナが仮面ライダーグリスになった。二対一を余儀亡くされたと思ったが、突然現れたナイトローグがカイザーを引き受けてくれたおかげで、グリスだけに集中できた。まぁ、負けちまったし、ボトルも三本取られちまった』

 

「そうか・・・・奴らの狙いは最初っからボトルだったのか?」

 

『いや、グリスも最初は俺たちを殺すつもりだったぞ。ボトルはおそらくついでだ。今こうしていられるのは、有希子のおかげだ』

 

「有希子の?」

 

『あいつが俺とグリスの間に立って、守ってくれたんだよ。グリスも『弱い奴は殺さない』つって見逃してくれた』

 

「弱い奴は殺さない・・・か、そんなこと言ってたな」

 

結局・・俺は何もできなかったか・・・。

 

「なぁ、エボルト・・・他の奴らは、どうなってた・・」

 

『・・・・・・』

 

エボルトから返事が返ってこない。やっぱり、思ってた通りか・・・。

 

「はぁ・・・・もう学校には行けないか・・・」

 

みんなを怖がらすわけにはいかないからな・・・。

 

「おう、惣一帰ってたのか!」

 

「・・万丈か・・・何処行ってたんだ?」

 

「ちょっと走ってきてた。それよりどうかしたのか?なんか暗いが」

 

「・・・いや、気にするな」

 

こんなときは鋭いんだよな、こいつ・・・。

 

「・・・はぁ、なんか作るか・・」

 

気分を晴らすために、俺は机に向かう。机の上には小さいドラゴンのような青い機械が、中身が見えている状態で置かれていた。

 

 

 

惣一side out

・・・・・・・・・・・・

有希子side

 

 

 

エボルトさんが教室を立ち去った後、教室内は暗い空気になっていた。さすがの殺せんせーも、この空気の中ではふざけられないみたいで、静かにしていた。

 

「・・・・殺せんせーや神崎は知っていたのか?あいつが・・・・石動がブラッドスタークだったって・・・」

 

前原君が口を開いた。その質問に、なんて答えればいいのかわからず、言葉に詰まってしまう。

 

「・・・えぇ、知ってました」

 

殺せんせーが先に口を開いた。みんなの視線が殺せんせーに集中した。

 

「私が知ったのは修学旅行のとき・・・石動君の中にいる地球外生命体、エボルトさんと戦った後でした。彼の言葉と行動の違いに気づいた私は彼と話し、彼がブラッドスタークであることを知りました」

 

その話は私は前に聞いていた。その時の私の視線も、殺せんせーにバレる要因になったらしい。

 

「神崎さんはいつから知ってたの?」

 

茅野さんが私を見ながら聞いてきた。それと同時に、みんなの視線が私に集まる。

 

「・・・中学一年生の頃・・・惣一君がこの町に帰ってきた時から・・」

 

「そんな前から・・・」

 

「うん、スマッシュに襲われていた私を、ブラッドスタークになっていた惣一君が助けてくれたの。その時から、私は惣一君がブラッドスタークであること、彼の中にエボルトさんがいる事を知ったの」

 

「スマッシュ?なんだそれは?」

 

「スマッシュとは、彼らが使っていたフルボトルの中に入っていた成分が抜け出て、人に入ったときにその人がなってしまう怪物の事です」

 

磯貝君の質問に、律が先に答えてくれた。

 

「律、知ってるのか?」

 

「はい、私が実際に見た事は一度だけですが、マスターが入れてくれたデータの中に、スマッシュに関連する情報が入っていますので」

 

「マスター?なんで律のマスターがそのスマッシュ?のことを?」

 

「それは、今の私のマスターは惣一さんですから!」

 

「「「「「えぇーーーーー!!!?」」」」」

 

突然の律のカミングアウトに、クラス全員が驚いた。まぁ、普通に考えればそうだよね。だから今まで黙ってたんだけど・・・。

 

「だからあいつが律のグレードアップをしてたのか!」

 

「あいつがマスターなら、勝手にグレードアップしても誰にも文句言われないもんな!」

 

「彼がわざわざ律さんのマスターになったのは、皆さんのことを考えてのことでした」

 

「え?」

 

「皆さん、律さんがこのクラスに転校してきた日、どうなったか覚えていますか?」

 

殺せんせーがそう聞いてきた。律が転校してきた日って、確か・・・・

 

「あの時はまだ律が暗殺が目的だったから、授業中でも弾幕張りまくってたよな」

 

「すいません・・・・」

 

「あぁ、いや、責めてるわけじゃないさ」

 

「そう、あの時の律さんは協調のことを考えず、一人での暗殺を行なっていました。ですが、それにより授業はままならず、君達の不満は溜まるばかりでしたね」

 

「は、はい・・・」

 

「そんな時、真っ先に現状を変えようとしたのが石動君でした。普段彼は授業を受けていない。ですが、だからこそ昼間いなくても違和感がない。君たちが知らないところで、彼は君たちのために行動していました」

 

「私にグレードアップした理由の一つに、皆さんの勉強の邪魔をしてしまっているから、と言っていました。惣一さんは関わらないように見えて、裏では皆さんのことを思っていました」

 

「・・・俺たち、あいつに悪いことしちまったのかな・・・」

 

律と殺せんせーの言葉を聞いて、杉野くんがそう口にした。

 

「・・私、石動君のこと、信じられる気がする」

 

「茅野?」

 

「私もさ、修学旅行のときに助けてもらったし、それに、私たちのことがどうでもいいなら街中でスマッシュに会った時に囮になって逃げろなんて言わないよ」

 

以前、茅野さん達と駅近くのカフェに行ったときの帰りに遭遇してしまったスマッシュ。あの時は惣一君が真っ先に囮になって、私たちに逃げるよう言ってきた。多分、その時のことだろう。

 

「・・確かに、そう考えると僕も助けてもらってるなぁ」

 

「そうだな、俺もだ」

 

「そもそも、怪物なんてこの教室には前からいたんだ!今更怖がるわけがねぇぜ!」

 

「そうだね!」

 

茅野さんの言葉を聞いた渚君と磯貝君が同意し、それを始めとしてクラスのいたるところで二人を受け入れる声が上がっていき、教室内の空気が変わっていった。

 

「殺せんせー、石動やあいつの中にいる地球外生命体・・・エボルトさんがどんなやつにしろ、あいつは俺たちE組の仲間です。・・・俺たちが今するべきことは、あいつを再びE組に連れ戻すこと。あいつらを受け入れることです!」

 

磯貝君が代表して宣言した。その言葉に私も殺せんせーも驚いてしまったが、それと同時に嬉しかった。

 

惣一君も、エボルトさんも、このE組にみんなは受け入れてくれる。そう思うと、嬉しくてたまらなかった。

 

「それが、君たちの答えですね?」

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

「それでしたら、まずはしっかりと彼らと話しましょう。そのためにも、彼を連れ戻しましょう!」

 

殺せんせーがそう宣言し、みんなが動き出そうとした瞬間だった。

 

後ろの壁が地響きとともに壊され、外からプレス機構が全身についているスマッシュが姿を現した。

 

 

 

 




次回でこの回は終わりですね。

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第21話 気持ちの整理

前回、この回は次回で終わりと言ったな?あれは嘘だ。

・・・・すいません、予想以上になぐなってしまったので、二、三話に分けます。

あと、今回で律に施された機能が判明します!

とりあえず第21話、どうぞ!


有希子side

 

 

「スマッシュ!!」

 

「あれが、スマッシュ・・!」

 

「皆さん、下がってください!!」

 

いきなり現れたスマッシュに、殺せんせーが急いで前に出た。でも、殺せんせーでもスマッシュには・・・

 

「殺せんせー、惣一さんに連絡を入れました!私も手伝いますので、足止めを!」

 

「そうですか、なら、行きますよ!」

 

「はい!」

 

律がそういうと、すぐ近くに不良がなったスマッシュが黒い体になって現れた。

 

「こ、こっちにもスマッシュ!?」

 

「いえ、こちらのスマッシュは惣一さんが私に加えた機能に一つで、今まで惣一さんが戦ってきたスマッシュのデータを元に作り出した存在です。本物とまでは行きませんが、それでも足止めには十分の戦闘能力を持っています」

 

惣一君が律に施した機能の一つ、スマッシュの製造。あくまでもデータをもとにしたホログラムみたいなものだけれど、実体があるように殴ったりもできるし、足止めや囮にもできる。このスマッシュを動かせるのは作り出した本人である律と、マスターである惣一君だけで、私たちの方に来ることはないらしい。

 

「皆、今の内に避難しよう。ここじゃ追い詰められた終わりだ!」

 

磯貝君が言葉に皆同意して教室から校庭に出た。中よりも広いから、逃げ場もたくさんある。その時、地面に大きな羽を広げた影が映り、上を見るとナイトローグさんが飛んでいた。

 

『アイススチーム!』

 

『ふっ!!』

 

カイザーから奪ったらしいスチームブレードのバルブを回して煙を撒く。それに合わせて殺せんせーとホログラムスマッシュがスマッシュを吹き飛ばし、煙の中に入れた。煙に触れたスマッシュは凍り始め、やがて全身が凍りついた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・助かりました、ナイトローグさん・・・」

 

『・・・俺はあくまでスマッシュを倒しにきただけだ、お前も助けたつもりもないし、今は無理でもいつかはお前も殺す』

 

「おy、あなたも殺し屋ですか?」

 

『いや、俺は殺し屋ではない。だが・・・』

 

ナイトローグさんがそこまでいったところで、スマッシュを包んでいた氷に変化があった。徐々に真ん中からヒビが入っていき、最後には粉々に砕けてしまった。中にいたスマッシュも出てきて、その衝撃で砕けた氷が周りに弾け飛び、その内のいくつかは私たちの方に向かってきた。

 

「皆さん!!」

 

殺せんせーがそれに気づいて動こうとしたが、まるで狙ったかのように殺せんせーのところにも氷が飛んだ。殺せんせーは簡単に避けるが、いくつもの破片が殺せんせーへと飛んでいった。

 

「にゅや!!」

 

殺せんせーも自分のところに飛んできた破片を避けるのに精一杯で、私の方まで手が回らなくなっている。その間にも、氷の破片が私たちのところに飛んできて、ひときわ大きい破片が飛んできた。当たったら怪我どころじゃすまないぐらいの。

 

『!まずい!!』

 

「皆さん!!」

 

殺せんせーもナイトローグさんも今からじゃ間に合わない。私たちは思わず目をつぶってしまった。だけど、いつまでたっても衝撃は来ない、その代わりに・・・・

 

『フルボトル!スチームアタック!』

 

私にとっては、もう聞き慣れた音だった。この音を出せるのは私が知ってる中では一人しかいない。ゆっくりと目を開け、前を見る。飛んでいていた氷は跡形もなくなくなっていて、代わりに私たちの前にはトランスチームガンを持っている、血のようなワインレッドカラーの怪人が立っていた。

 

「惣一・・君?」

 

『・・・無事か、なら下がっていろ!』

 

ブラッドスターク・・・・惣一君はそう言って、スマッシュに向かっていった。

 

 

有希子side out

・・・・・・・・・

惣一side

 

 

 

俺は気持ちを紛らわすために、あるものの開発を続けていた。後ろでは万丈が腕立て伏せをしている。

 

そんなとき、スマホにメッセージが届き、確認すると律からだった。

 

「・・・」

 

内容は『学校にてスマッシュが出現した』とのことで、今は殺せんせーが足止めをしているらしい。

 

俺は学校に転移するためにトランスチームガンを持って、そこで動きを止めてしまった。

 

『・・・行かないのか?』

 

「・・・わかってるくせに、聞くなよ・・」

 

俺の気持ちはまだ整理がついていない。今また学校に行けば、どんなことをいなれるのか想像ができてないからだ。

 

『あのタコだけじゃ、スマッシュを倒すまでは行かないぞ』

 

「そんなことは分かってる・・・けど・・・」

 

「やっぱりなんかあったんじゃねぇか」

 

後ろを見ると、万丈は腕立てをやめて俺の方を見ていた。その顔は真剣そのもので、ごまかしは意味ないだろう。

 

「・・・・バレたんだよ、俺がブラッドスタークであること、俺の中にエボルトという存在がいること、それらがE組のみんなにな」

 

「ふ〜ん・・・・それで?」

 

「それでって・・・」

 

「それで、なんでそんなに悩んでんだ?」

 

「は?お前マジでいってんのか?」

 

「おう」

 

そうだった・・・・こいつは超がつくほどのバカなんだ・・・。

 

「・・・・怖いんだよ。あいつらになんて思われているのか、次会ったらなんて言われるのか、それを想像したら、怖くて仕方がねぇんだよ」

 

俺の、正直な気持ちだった。なんで素直を言えたのかわからないが、俺は恐れている。いや、恐れていたんだ、こうなってしまうのを。だから隠していた。先生たちならともかく、同級生であるあいつらにバレたら、あの時のようになってしまうと思ったから・・・。

 

「・・・俺はバカだからよ、なんでそんな悩んでのかわかんねぇ。だけどよ、そんな恐れる必要はないと思うぜ?」

 

「・・なんで、そう思うんだ?」

 

「簡単だよ、お前は優しい奴だからだよ」

 

「は?」

 

俺が、優しい?こいつは何言ってんだ?

 

「なんかの間違いだろ、俺が優しいわけがない」

 

「だったらよ、なんでスマッシュを倒してきたんだ?」

 

「それは、フルボトルを集めるために・・・」

 

「それだけじゃねぇだろ、この間有希子が教えてくれたが、スマッシュが現れたら何よりも優先して倒しに行くんだろ?誰かがスマッシュに襲われてしまう前に」

 

「・・・・」

 

俺はそのことに何も言えなかった。まさか、有希子にバレてるとは思わなかった。今まで誰かにそのことを言った覚えはないんだが・・・。

 

『有希子は思ってた以上にお前のことをよく見ていた。ただ、それだけだろ』

 

「それだけじゃねぇ。香澄がスマッシュにされて、成分を抜いても助からないってのに、お前は最後に俺とあいつを会わせてくれた、話させてくれたじゃねぇか。優しくないってんなら、そんなことせずにさっさとスマッシュを倒してたはずだぜ」

 

万丈の言葉を聞いていると、自然に気持ちが落ち着いてきた。俺が・・・優しい、か・・。

 

「お前のクラスの奴らがどんな奴らなのかはしらねぇけどよ、バカの俺では気づいたんだ。そいつらだって、分かってくれるさ!」

 

「・・・・最悪だ・・」

 

「あ?」

 

「まさか、お前に気づかされるなんてな。・・・あいつらと一回、しっかり話すか!」

 

『よし、なら早速向かうか!!』

 

「あぁ、まずはスマッシュをぶっ潰す!」

 

『コブラ!』

 

「蒸血!」

 

『ミスト・マッチ!コブラ・・・・ファイヤー!!』

 

『お前も行くか?万丈』

 

「あぁ、行ってやるぜ!」

 

トランスチームガンを使い、万丈も一緒に学校に転移する。煙が晴れると後ろにはクラスのみんな、前からはそこそこ大きい氷が迫ってきていた。俺は慌てずに、ドライヤーが描かれている『ドライヤーフルボトル』をトランスチームガンに装填し、氷に向けてトリガーを引いた。

 

『フルボトル!スチームアタック!』

 

すると、銃口から熱風が吹き始め、氷を溶かしていき、俺たちに当たる前に溶けきった。

 

「惣一・・君?」

 

後ろから有希子の声が聞こえた。後ろに振り返って確認したが、特に怪我をした様子はないな。

 

『・・・無事か、なら下がっていろ!』

 

有希子にそう言い残して、俺はスマッシュに向かって行く。

 

 




万丈よ・・・お前いいこと言うな。

次回は戦闘、場合によっては戦闘後まで描きたいですが、分けるかもしれません。

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第22話 E組の答え

前半に戦闘、後半に惣一とE組の話です。

いつも以上に駄文かもしれませんが・・・・。

とりあえず第22話、どうぞ!!


惣一side

 

 

このスマッシュは全身にプレス機構がある。おそらく捕まったら潰されるな。それなら・・・・

 

『フルボトル!スチームアタック!』

 

ライオンフルボトルを装填し、トリガーを引く。銃口からライオンの顔の形をしたエネルギーがスマッシュに向かう。スマッシュはそのエネルギーを潰そうとし、両手を前に出す。だが、それは本命じゃない。

 

『エレキスチーム!』

 

『はっ!』

 

スライディングでスマッシュの懐に滑り込み、その体にスチームブレードを突き刺す。エレキスチームにしておいたから、これだけで体に電気が流れるはずだ。

 

そのまま反対側に回り込み、クジラが描かれている『クジラフルボトル』を装填し、トリガーを引く。

 

『フルボトル!スチームアタック!』

 

銃口から高水圧の水流が流れ、スマッシュを濡らしていく。

 

『これで、さらに電気が通りやすくなっただろ』

 

予想通り、さっきよりも電気がよく流れた。だが、それによりスマッシュが暴れ出し、それによりスチームブレードが落ちてしまった。

 

『ちっ・・・もう少しダメージを与えておきたかったが、仕方ない』

 

スマッシュは腕を大きく振って殴ってきた。それを俺は掴み、がら空きの胴体に蹴りを入れる。それにより、スマッシュは大きく後退した。

 

「ふん・・・カイザーのように知性がある奴ならともかく、今更お前のようなスマッシュに負けるつもりはない!』

 

腕からスティングヴァイパーを伸ばし、スマッシュの体を縛る。これだけで動きは制限させるはずだ・・・。だが、思ったよりも力が強く、縛るのが限界でこれ以上は何もできそうにない。どうするか・・・・。

 

そう思っていると、スマッシュの足が凍りついた。見ると、有希子がスチームブレードを拾ってスマッシュの足元に煙を履いており、それに触れたところから凍っていっていた。

 

そこに万丈がフルボトルを振りまくって、スマッシュを思いっきり殴り、さらにもう一発食らわせて上空に飛ばした。てか、生身でスマッシュをあんだけ殴れるって、どんなパンチ力だよ・・・。

 

「おい!今だぞ!!」

 

『あぁ・・これで、終わりだ!』

 

『コブラ!スチームブレイク!』

 

上空に向けてトリガーを引き、コブラ型のエネルギーがスマッシュを飲み込んで爆発した。その後、スマッシュが落ちてきて動かなくなった。

 

俺はそんなスマッシュにエンプティボトルを向け、成分を回収。その場にスマッシュにされていた男が倒れていた。

 

『・・・どうやら、スマッシュの方は君に任せた方がいいのかもな』

 

俺がここに来る前に来ていたナイトローグが、そう言ってきた。

 

『いやいや、俺一人でも限界がある。だから、あんたも一緒に戦ってくれよ。ナイトローグ』

 

『・・・いいだろう』

 

ナイトローグはそう言うと、肩の装甲から煙が出て、晴れるとそこには誰もいなかった。トランスチームガンと同じことを、トランスチームガンを使わずにできるのか・・・いいな、それ。

 

蒸血をみんなの前で解く。さて、どうするか・・・・。

 

『まずはみんなと話すんだろ?』

 

そうなんだけど・・・何を話せばいいのかわからない・・・。

 

『こんなときにかよ・・・』

 

マジでどうしよう・・・一体何を話せばいいんだ!?

 

「石動・・・ちょっといいか?話がしたいんだ」

 

俺が悩んでいると、磯貝がそう言ってきた。話・・・か・・・。

 

『ちょうどいいじゃねぇか。向こうから話しかけてくれてよ』

 

いや、そうだけど!!何の話かわからないから怖いんだよ!!

 

『お前・・・こんなヘタレだったか?』

 

ウルセェ!!!

 

と、とにかく返事をしなきゃな。

 

「あぁ、いいぜ」

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

磯貝に言われ、俺たちは教室に移動した。なんか後ろの壁が壊れているけど・・・・穴が二つもある。

 

「石動、俺たちは今回、お前がブラッドスタークであること、お前の中にエボルトという存在がいるがわかった」

 

磯貝が話し始めた。やっぱ代表してなのかな?

 

『お前はこんなときに何を考えているんだ』

 

怖いんだよ、現実逃避ぐらいさせろ。

 

「俺たちはブラッドスタークになったお前を見て、恐怖してしまったんだ」

 

恐怖・・・か、やっぱりそうだよな。事情を知らないであの姿を見て怖いと思わない人はそういないだろう。

 

「まず、そのことを謝らせてくれ。すまない!!」

 

ん?どういうことだ?磯貝が最初に謝り、それにクラスのほぼ全員が続いた。

 

「ちょ、ちょっと待ってくれ!なんで謝ってるんだ?」

 

「俺たち、お前のことを何も知らなかった。今まで、どんな思いでここにいたのか、どんな思いで戦ってきていたのか。それを考えずに、お前を怖がったんだ。だから、謝っておかなきゃいけないんだ」

 

「・・・・」

 

予想外の展開に、俺は何も言えなかった。まさか、謝られるなんて・・・・。

 

「それでさ、頼みがあるんだ。これからも、俺たちと一緒にいてくれないか?」

 

「え?」

 

「石動も俺たちE組の・・・暗殺教室の仲間なんだ。今までも・・そしてこれからも!」

 

「さすがに、スマッシュとかシロの奴らが相手だと俺たちは何もできないけどさ、それでも信じてるんだ。今日みたいに、お前が守ってくれるって!」

 

「それにさ、石動が怪物になったから怖いって思ったって言ったけどさ、よくよく考えればこの教室、普段から怪物と一緒にいたんだよね」

 

「そう考えたらさ、石動君の事なんて、怖くないよ」

 

磯貝、前原、カルマ、渚が順番にそう言ってきた。まぁ、確かに怪物はいつもいるけど・・・!

 

「惣一君」

 

「有希子・・・」

 

「これが、私たちE組の答え。惣一君は私たちの大事な仲間なんだよ。私たちは惣一君が何者だろうと、中にエボルトさんがいようと、受け入れる。・・・惣一君は、どうする?」

 

受け入れる・・・か・・・。

 

「・・居ていいのか?怪物の俺が・・・」

 

「うん!」

 

「あぁ!!」

 

「当然だ!!」

 

『・・・俺たちが思ってた以上に、お前とあいつらの間には確かな絆があったって事だな』

 

エボルト・・・・。

 

『もう答えは決まってるだろ?・・・答えてやれよ』

 

「・・・あぁ・・・・これからもよろしく頼む、皆!!」

 

「「「よろしく!!」」」

 

全く想像していなかったが、こうして俺とエボルトは、改めてE組に・・・暗殺教室に戻ってきた!!

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

「ところでさ、石動」

 

「ん?どうした前原?」

 

「あいつは誰なんだ?」

 

そう言って前原が指差した先には無言で腕立てを続けている万丈が。そう言えば、説明していなかったな。

 

「そうだった。おい万丈!一旦自己紹介しろ!」

 

「んあ?そっちはもう終わったのか?」

 

「お前いつから話聞いてなかったんだよ・・・」

 

「いや、俺がいいてても仕方がなかったからよ、途中からずっと腕立てしてたわ」

 

「・・・・まぁいい、とりあえず自己紹介からだ・・」

 

「あぁ、俺は万丈龍我だ。色々あって、惣一の家に居候させてもらっている」

 

「へぇ〜・・・・・って、おい石動!!なんで連れてきてんだよ!!殺せんせーのことバレんだろ!!」

 

「いや、もうとっくのとうにバレてるから問題ない。まぁ、そこらへんのことはまた追々説明するよ」

 

ま、とりあえず万丈もE組のみんなと知り合った。意味あるかは知らんけどな!

 

 

 

 




万丈とE組の会合、自分で言うのもあれだけど適当だなぁ・・・・。

次回は球技大会の回ですね。

感想、評価等よろしくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第23話 惣一の苦労

今回はオリジナル回で、球技大会は次回ですね!

楽しみにしてた方は申し訳ない!反省はしていないがな!!

とりあえず第23話、どうぞ!!


惣一side

 

 

「だから、この場合はこいつが・・・」

 

「あ?なんでそうなんだよ?」

 

「だから・・・」

 

俺とエボルトがE組のみんなに受け入れられて早数日が経過していた。俺は地下室にて、万丈に勉強を教えている。なのだが、あまりにもバカすぎる。始めてすでに一時間が経過しているが、まだ二・三ページぐらいしか進んでいない。

 

「そうか!!じゃあここの答えはこれだ!!」

 

「違ぇよバカ」

 

「誰がバカだよ!」

 

「お前以外誰がいるんだよ・・・」

 

そもそもなんで俺がこいつに勉強を教えているのか、二日前に遡る。

 

 

<回想中>

 

 

「なぁ、万丈って俺たちと同い年なんだよな?」

 

始まりは前原のこの言葉だった。あの一件で万丈とも知り合い、どうせなら万丈とも仲良く、と考えて暇な奴らと家のカフェでお茶をしていた。つっても俺が出したのは料理ぐらいで、飲み物・・・・特にコーヒー・・・・は持参してもらった。俺以外飲んでなかったが・・・・。

 

「あぁ、そうだな」

 

「学校はどこ通ってんだ?色々あったって言ってたけど、通ってはいるんだろ?」

 

「は?なんのことだ?」

 

「え?」

 

「そういえばまだ説明していなかったな・・」

 

万丈は今まで香澄ちゃんと一緒になんとか生きているような生活を続けていたし、ここに来たのだってほんの数日前の話。当然学校になんて通っていない。だが、この時はまだその事を説明していなかったため、みんなは学校に通ってると思い込んでいたらしい。

 

「実はだな・・・・」

 

説明する事数分、万丈のことを来ていたみんなに説明した。

 

「万丈・・・お前、大変だったんだな・・・」

 

「なんかあったら、なんでも言って?力になれると思うから・・」

 

「お、おぅ・・・?分かった・・」

 

今まで普通の生活を送って来た人が聞いたら、万丈が送って来た生活はそう簡単に想像ができない。ビッチ先生辺りならできるだろうが・・・。みんな当然のごとく同情し、万丈に声をかけていた。当の本人はなんでこんな事言われてるのかいまいち分かってなさそうだったが・・・・。

 

「それだったらさ、万丈君も椚ヶ丘に通わない?」

 

片岡がそう提案した。確かにそれはいい考えかもしれないが・・・・。

 

「いや、そう簡単にはいかないぞ・・・」

 

「石動君?どうして?」

 

「理由は単純・・・こいつがとてつもなくバカだからだ」

 

「誰がバカだよ!!」

 

「お前だよ・・・」

 

他のみんなは万丈と知り合ってまだそんなに経ってないし、そこまで多く話した訳ではない。だから知らないんだ、こいつがどれほどバカなのかを・・・。

 

「そ、そんなにバカなのか・・・?」

 

「あぁ、正直言って恐ろしいくらいにバカだ」

 

「お前さっきから失礼だぞ!!」

 

「しょうがないだろ、本当のことなんだから」

 

俺と万丈の言い合いが続こうとしたとき、矢田がこんな提案をして来た。

 

「だ、だったらさ!石動君が教えてあげたら?」

 

「は?俺が?」

 

「うん!だって石動君、頭いいでしょ?中間テストでも学年二位だったじゃない!しかも一位と一点差で!!」

 

あぁ・・・中間テストか・・・理数は満点取れたけど、社会がちょっと苦手なんだよなぁ・・・それで二位になったようなものだし。

 

『それは十分じゃないのか?』

 

いや、俺が納得いかん。

 

「確かに、それはいい案かもね」

 

「そうだな、何かあれば俺たちも手伝えばいいんだ。どうだ?石動」

 

「まぁ、やってみてもいいか」

 

「よっしゃ!決まりだな!!」

 

 

 

<回想終了>

 

 

 

とまぁ、こんな事があったんだ。それでこの二日間、俺がこうして勉強を教えているんだけど・・・・。

 

「あーーーー!!なんでそんなになるんだよ、意味わかんねぇ!!」

 

「逆になんで分からないのかがわからねぇよ!」

 

本気(マジ)でこいつの頭の中どうなってんだよ!!理解に苦しむ!!

 

『てか、理解できる方がおかしいと思うが・・・』

 

あーー疲れた!!エボルト変わってくれ!!

 

『無茶言うな!!俺が教えるなんて事できると思っているのか!!』

 

頑張れよそこは!!

 

『お前が頑張れ!!』

 

うるせぇ!!

 

エボルトと言い合っていたら、ガチャっと地下室の入り口である冷蔵庫の扉が空いた。

 

「二人とも、いる?」

 

「有希子、どうしたんだ?こんな時間に」

 

「勉強で疲れてるかなって思って。まだご飯も食べてないでしょ?」

 

そう言われて時計を見ると、すでに午後8時を回っていた。もうこんな時間になってたのか・・・。

 

「しょうがない、一旦休憩に入って飯でも食うか。すぐに作ってくるから座っててくれ」

 

「あぁ、惣一君も座ってて?私が作るから」

 

「え?いや、でも・・・」

 

「いいからいいから。店の中のものなら場所とかも分かってるし、ゆっくり休んでて」

 

「そうか・・?」

 

有希子に言われ、おとなしく座る。まぁ、ここはおとなしく待つか・・・・。

 

 

・・・・・・・・・

 

 

待つ事数分。有希子がお盆を持って戻って来た。お盆の上には人数分のチャーハンが。しかもかなり美味そうだ。

 

「とりあえず、あった材料で作ってみたの。美味しいかどうかは分からないけどね?」

 

「いや、スッゲェ美味そうだ!早速いただきます!!」

 

「もうちょっと落ち着け万丈。いただきます」

 

早速口に運ぶ。ん、うまい!!

 

「うめぇ!!」

 

「確かに、エボルトが作る味とはまた別の味で美味い。俺的にはこっちの方が好きだな」

 

「ふふ、良かった」

 

俺も万丈もかなり腹が空いていたらしく、有希子が作ってくれたチャーハンは一瞬でなくなった。

 

「ふー、食った食った」

 

「ありがとな、有希子。こんな時間なのに・・」

 

「ううん、私にできる事はそんなにないから。このぐらいやらせて」

 

「・・そっか・・」

 

「zzz・・・・」

 

って、万丈の奴もう寝たのか。もう休憩じゃねぇなこれ。

 

「しょうがない、今日はもう終わりにするか。これから帰るんだろ?送ってくよ」

 

「え?あ、うん」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

「調子はどう?」

 

「いや、あまりよくはないかな。全然進まない・・」

 

「ははは・・・やっぱり、大変みたいだね」

 

帰り道、有希子と現状を話す。万丈がバカなのは有希子も知っているから、こうなるのは予想していたんだろうな。

 

「さっきも言った通り、私ができることはそんなにないから・・・それでも、国語だったら私でも教えられると思うよ」

 

「国語か・・・俺も特別得意ってわけじゃねぇしな。そのときは頼めるか?」

 

「うん!任せて!」

 

それから少しだけ歩き、有希子の家に到着した。

 

「それじゃ、有希子。また明日な」

 

「うん、おやすみ!」

 

有希子はそう返事をして家に入っていった。さて、無事に送れたし、さっさと帰るか。俺はトランスチームガンを使って家に転移する。え?さっきも使えば良かったじゃんって?それじゃあ送ることにならないだろう。

 

さて、俺も今日は寝るか・・・。また明日、どう教えるか・・・・。

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

あれから約2週間経った。俺は今E組の校舎にいて、教室の前には万丈が立っていた。

 

あれから2週間、俺は毎日万丈に勉強を教え、時には有希子が国語を、磯貝が社会をといった風に、他のみんなも手伝ってくれたおかげで万丈はなんとかD組に入ることができた。・・・・はずだったのだが・・

 

「烏間先生・・・説明願います」

 

「あぁ・・・今日D組に編入した万丈君だが、初日から暴力騒動を起こし、E組行きになったらしい」

 

「はぁ・・・・・」

 

その説明に、俺は思わずため息をついてしまう。なにやってんだこのバカは・・!!

 

「しょうがねぇだろ!あいつらお前らのことバカにするしよ!!」

 

「ま、まぁまぁ落ち着いて。とりあえず、万丈君もE組の仲間になった、ってことでいいんだよね?」

 

「あぁ、そのはずだ。今日からよろしく頼むぜ!!殺せんせーもな!」

 

「えぇ、万丈君。君をこのE組に歓迎します!!」

 

まぁ、一応学校には通えているし、いいか。

 

こうして、俺たちE組に新しい仲間が加わった。バカだけど。

 

「バカバカうるせぇ!!」

 

 




万丈が加わったことにより惣一が苦労人になっていってる気がするが・・・ま、いっか!!

これで万丈も出しやすくなったしね!

感想、評価等よろしくお願いします!!

それでは、チャオ!!


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第24話 球技大会

今回は予告通り球技大会です!途中までだけどね。

さぁ、どうなる第24話!!


惣一side

 

 

 

万丈がこの学校、そして俺たちが通っているE組に編入してから、数日が経った。

 

いつもどおり地下室に俺と万丈と有希子が集まっていたが、俺たちの話題はある事に持ちきりになっていた。

 

「球技大会?」

 

「そう。この時期にやるんだよ、この学校では」

 

「でもよ、球技大会つっても何やるんだ?」

 

「男子は野球、女子はバスケだ」

 

「でも、私たちE組は大会に出られないの」

 

有希子の言葉に、万丈は不思議そうに首を傾げた。

 

「なんでだよ?」

 

「あの学校では、俺たちE組はそういう扱いなんだよ。これからも嫌になる程あるだろうから、早めに慣れる事だな」

 

「万丈君がE組に落とされたのは、私たちE組を悪く言ってた人を殴ったりしたからなんでしょ?本校舎の方では、先生も含めて私たちを庇う人は一人もいないの」

 

『だから、E組を庇い、なおかつ暴力を振るったお前は問答無用でE組行きになったわけだ』

 

「お、おぉ・・・でも、なんでだ?」

 

「一部の生徒を大きく差別する事で、大半の生徒は優越感に浸りながらやる気を引き出す。『あいつらのようにならないために』ってな。それがあの学校の理事長の教育方針だ」

 

全く、あの人らしい合理的な仕組みだよな。

 

「ふ〜ん・・・・なんか難しいな」

 

「ま、俺たちE組がその差別される対象、だって事は分かっておけ」

 

って、あれ?なんでこんな話になったんだ?

 

『とりあえず、話を戻そうぜ。お前たちは球技大会では何をするんだ?』

 

「何するって、大会には出られないんだろ?何もできねぇだろ」

 

「ところが、そうでもないんだな」

 

「は?」

 

「確かに、私たちは大会には出られない。でも、その代わりに大会の最後に行われるエキシビジョンマッチに出ないといけないの」

 

「え?エキシビ・・・なんだって?」

 

「エキシビジョンマッチ、つったら聞こえはいいが内容はそうでもない。簡単にいえば俺たちは晒し者だ」

 

「男子は野球部と、女子はバスケ部と試合をしないといけないの」

 

『んな無茶な』

 

「おそらく、明日辺りに詳しい話をするだろう」

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

翌日、予想通り球技大会の話が出た。が、寺坂組は晒し者は勘弁と言って辞退していた。

 

「野球といえば、頼れるのは杉野だけど・・・」

 

菅谷の一言に、みんなの視線が杉野に集まった。当然俺も杉野に視線を向けている。

 

「・・・・無理だよ、強いんだうちの野球部・・・でもさ、勝ちたい。好きなもので負けたくない!みんなで勝ちたいんだ!!」

 

杉野が強く意思表現し、前を見る。それにつられて俺たちも前を見るが、そこには・・・・

 

「ワクワク!ワクワク!!」

 

野球のユニホームを着て、顔を野球ボールにしているタコがいた。

 

「お、おぉ・・・殺せんせーも楽しみなのは、よく伝わったよ・・・」

 

「ヌルフフフ、最近の君たちはよく意思表現をするようになりましたね。任せてください!」

 

そう言って殺せんせーは何かを取り出した。あれは・・・ちゃぶ台?

 

「先生、一度いいから熱血鬼監督をやってみたかったんです。ちゃんとひっくり返すようのちゃぶ台も用意しました!!」

 

『「「「「無駄に準備いいな!!」」」」』

 

生徒全員、プラスしてエボルトも一緒にツッコむ。相変わらずこの先生は・・・・。

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

あれから1週間経ち、今日は球技大会当日。すでに大会はA組の勝利で終了しており、残りはE組と野球部のエキシビジョンマッチだけだ。

 

「それじゃあ、私たちは体育館に向かうね?頑張って!」

 

「あぁ!」

 

「おう!そっちも頑張れよ!!」

 

『怪我すんなよ』

 

エボルト、お前は母親か。

 

『まぁいいじゃねぇか』

 

「そういえば渚、殺せんせーはどこにいんだ?」

 

周りを見渡していた万丈が渚にそう聞いていた。確かにこの位置からだとわかりづらいが・・・・

 

「あそこだよ。烏間先生に目立つなって言われてるから、遠近法でボールに紛れてる。顔色とかで指示を出すんだって」

 

「あぁ、あれか!」

 

渚が指差した先には野球ボールにしている顔だけを地面から出している殺せんせー・・・・いや、殺監督の姿がある。

 

「てかバレんだろあれ!!」

 

遠近法は遠く見る分には構わないが、近くから見たらおかしいだろう・・・。当の殺監督は頭を閉まっては出している。そのたびに顔の色や表情を変えているが・・・。

 

「なんて?」

 

「えっと・・・『殺す気で勝て』ってさ」

 

その一言に、全員の顔が引き締まる。

 

「確かに、俺たちにはもっとデカイ目標(ターゲット)がいるんだ。あいつらぐらい倒せなきゃ、あの先生は殺せないよな!」

 

「・・・よし!行くぞ!」

 

「「「「「おぉ!!」」」」」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

そうして始まったエキシビジョンマッチ。トップバッターはE組1の俊足である木村だ。対するピッチャーは野球部のエースである進藤だ。進藤の球は時速140km出ているらしく、杉野曰く中学生レベル相手ではストレート一本で十分らしい。

 

進藤が第1投を投げる。ボールはそのままキャッチャーミットに吸い込まれた。

 

「ストライク!!」

 

『なるほど、確かに中学生にしては早いな』

 

「でもエボルト、お前にとってはどうとでもないだろ」

 

『当たり前だろ。だが、今回は俺は何も手助けしない。お前の・・・お前たちの力であいつらに勝つんだ』

 

「わかってるさ。スマッシュやカイザーとの戦いならともかく、人間相手なんだから正々堂々戦ってやるさ」

 

再び進藤がボールを投げる。先ほどと同じようにストライクかと思われたが、木村がバントの構えを取るとボールはバットの中心に当たって一塁側に転がっていった。

 

「何っ!?」

 

進藤のやつ、驚いてるな。ま、奴らからしたら予想外だろうしな。

 

予想していなかった展開に野球部は動き出しに少し遅れた。だが、隙としては十分すぎる。その間に木村は楽々一塁へとたどり着いていた。

 

二番バッターは渚だ。渚も木村と同じようにバントでボールを転がし、一塁へと走る。

 

『強豪とはいえど、所詮は中学生。バント処理はプロ並みとはいえないな』

 

「とはいっても、普通なら時速140kmの球をバントとはいえ狙った場所に転がすのは至難の技だぜ?」

 

『それは普通なら、の話だろ?』

 

「エボルトの言う通りだぜ、石動。俺たちはあれ相手に練習したんだ!」

 

前原がそういって指差す先には殺監督。俺たちの練習には殺監督が分身を使って相手をしてくれた。だが、その練習が普通じゃなかった。時速300kmの球とか、バッターの恥ずかしい話で集中を途切れさせたりとか、練習と言える練習ではなかった気がするが。だが、それを続けたことが良かった。時速300kmのバカみたいなスピードで投げられたボールを見た後だと、時速140kmなんて遅すぎる。俺たちに目にはあの球は止まって見えているようなもんだ。

 

『球を捉えればこっちのもん。普通に打つのは無理でも、バントだけなら十分習得できる』

 

磯貝もバントでボールを打ち返し、一塁へ。そして四番手に杉野がバッターボックスに立った。そして、バントの構え。それも殺気を放ってるな。

 

『あのピッチャーも思ってるだろうよ。『これは野球なのか?』ってな!』

 

進藤がボールを投げた。杉野はボールが到着する前にバントの構えをとき、そして・・・・・

 

『打った!!』

 

ボールはバットの中心にあたり、ライト深くまで飛んでいった。結構飛んだな〜。

 

その間に木村、渚、磯貝はホームに戻り、杉野も三塁まで移動、俺たちが3点先取した。

 

 

 

 

 




決着は次回に持ち越しですね。みんな知ってると思うけど。

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第25話 秘策

球技大会、決着!!(そりゃそうだろ)

しっかりと万丈も活躍する第25話、どうぞ!!


有希子side

 

 

「いや〜惜しかったね、次リベンジ!」

 

私たち女子はバスケ部との試合を終え、男子たちのいるグラウンドに向かっている。バスケの結果は惜しくも負けてしまったけど、それでも善戦はしたと思う。

 

「ごめんね、私が何度もミスしたから・・・」

 

「そんなことないよ、茅野さん」

 

茅野さんが途中で何度かミスをしてしまっていた。けど、だからってみんな責めたりはしない。

 

「バスケ部の揺れる胸が目に入ったら、目の前が殺意で真っ赤に染まっちゃって・・・」

 

「茅野っちのその巨乳に対する憎悪はなんなの!?」

 

茅野さんの理由に思わず岡野さんがツッコんでしまっている。それを聞いてみんな笑っている。

 

「さて、男子の方はどうなったのかな?」

 

 

 

有希子side out

・・・・・・・・・・・

惣一side

 

 

 

「惣一君、万丈君」

 

「お、有希子。そっちは終わったのか?」

 

「うん、負けちゃったけどね」

 

「ま、しょうがねぇだろ」

 

「そっちはどう?勝てそう?」

 

「どうかな、今は勝ってるけどまだ一回表だ。それに・・・・ラスボスの登場だぜ」

 

有希子に返事をしながら野球部のベンチに視線を移す。そこからはこの学校の理事長、『浅野學峯(あさのがくほう)』が歩いていきている。

 

「いきなりかよ・・・・・」

 

『あいつが監督をするとなっちゃ、今まで通りにはいかないだろうな』

 

エボルトの言う通りだな。あの人は勝つためならなんでもしそうだしな・・・。

 

しばらくして試合が再開した。だが・・・・

 

「おいおい、アリかよあんなの・・」

 

野球部は全員内野守備、ありゃバントしかないって見抜かれてるな・・・。

 

「あんなのズリィだろ!」

 

「いや、ルール上では野手はどこを守ろうと自由だ。審判が違反と認めたら別だろうけど・・・・審判の先生はあっち側だ。期待できない・・」

 

『あの審判、ニヤニヤ笑ってやがる』

 

性格悪っ!!いつものことだけど。

 

5番バッターである岡島がバッターボックスに立つが、不安そうだ。殺監督に視線を向けてどうするのか聞こうとしているが・・・・

 

『1!2!3・・・・・』

 

「打つ手なしかよ!!」

 

殺監督の表情と顔の色は変わらず、だんだんと落ち込んでいっている。全く打つ手なしってな・・・・。

 

当然バントじゃ抜けず、六番バッターの前原も抜けれないでアウト。攻守チェンジとなった。

 

こちらのピッチャーは杉野。E組の中で一番野球ができる奴で、初めの頃は野球での暗殺も行なっていた。

 

杉野がボールを投げる。ボールは野球部が振ったバットに当たるかと思ったが、その直前でカーブしキャッチャーミットに吸い込まれた。

 

『変化球か・・・あんなの習得していたとはな』

 

「打たせるなよ、俺ら取れる気しないから」

 

「はは、わかってらい!」

 

初見の変化球に野球部は対応できず、なんとかそのまま二回表に突入できた。が、やはり野球部は全員内野守備、今回も取れないかもな・・・。

 

次にバッターはカルマからだが・・・あいつ何やってんだ?当の本人はいつまでもバッターボックスに立たないでいる。

 

「君、早くバッターボックスに立ちなさい!」

 

「ねぇ、理事長先生〜これずるくない?全員で内野守備とかさぁ〜。お前らもそう思うでしょ?あ、そっか!お前らバカだから、守備位置とか理解してないんだね!」

 

こ、ここで煽るか!!当然観客であった本校舎生徒は怒り出し、色々と野次を飛ばしてきた。『たかだかエキシビジョンで守備に文句言うな!』とかな。

 

カルマも抜けず、俺の番が回ってきた。つっても、俺も力があるわけじゃねぇし、野球もほとんどやったことないから抜けれる気はしないんだが・・・・。バッターボックスに立って進藤が投げるボールを見る。あれ?これって俺は行けなくても、あいつならいけんじゃね?

 

俺は抜けれずアウトになり、次の奴もアウト。一点も取れずに二回裏に突入した。

 

杉野が先ほどと同じように投げる。が、そのボールは野球部のバントによってバットに当たってしまった。

 

「マジか・・・」

 

『こいつはやられたな。野球部が素人相手にバントなど、普通ならクレームもんだが、お前たちが先にやったことで大義名分ができた。『手本を見せてやる』ってな』

 

俺たちもバントは練習してきたが、バント処理まではできていない。さっきとは完全に立場が逆になってしまったか・・・。

 

結局、野球部に二点許してしまい、三回表に突入した。確か次のバッターは万丈からだったな・・・。

 

「おい、万丈。今から言うことをよく聞けよ」

 

「?おぉ・・なんかあんのか?」

 

俺は万丈にあることを言ってからバッターボックスに送り出す。言ったことはとても簡単なことだから、万丈でも理解できたはずだ。

 

「ねぇ、石動君。さっき万丈君になんて言ったの?」

 

「別に、なんも難しいことは言ってない。だが、万丈だからこそできることだ」

 

俺が有希子に説明している間にも万丈はバッターボックスに立つ。だが、構えはバントではない。

 

「あいつはバカで単純思考だ。しかも、身体能力はネビュラガスが注入されている分、俺たちの中でもトップクラスだ」

 

「う、うん・・でもそれで?」

 

進藤がボールを投げる。だが、それは俺たちにとっては遅く、万丈はバットを思いっきり振ってボールを吹っ飛ばした。

 

「俺たちはあんな球ぐらいは見切ることができる。バントで抜けられないなら、吹っ飛ばせばいい。だから万丈に言ったんだよ。『投げられたボールを思いっきり吹っ飛ばせ』ってな!」

 

『あいつらはバントで来ると考え全員内野守備だ。いきなり遠くに飛ばされたボールになんて、対処できるはずがない』

 

「ま、それも関係ないみたいだったがな」

 

万丈が打ったボールはかなり上空まで行き、フェンスを越えていった。つまり、ホームランを打ったことになる。

 

「よっしゃーーー!どうよ、俺の「はいはい、いいからさっさと走れ!」途切らすなよ!!」

 

万丈がなんか文句を言っているがそれでも走り出し、ホームに戻って来る。ふっ、これだけでもあいつらに衝撃を与えただろうな。あとは・・・・

 

その後も試合は進んで3回裏。このゲームの最終局面だ。杉野のおかげでなんとかツーアウトを取ることはできたが、次のバッターは野球部エースの進藤。どう考えても打たれるだろうな・・・。

 

「やっぱり、進藤は敬遠するしか・・・・」

 

杉野の意見はもっともだ。あいつに打たれるなら、そうした方がいい。

 

『いや、そうでもないかもしれないぜ?』

 

「は?どう言うことだ、エボルト」

 

『簡単だよ、お前たちの監督が何か思いついたようだ』

 

「お〜い、監督から指令!」

 

そう言って走ってきたのはカルマ。指令って、何をやらす気だ?

 

カルマの指示を聞いて、思わず驚いてしまう。その指示は・・・・・・

 

「えっ!?前進守備!?」

 

観客からそんな声が聞こえてきた。そう、殺監督の指示は俺とカルマの前進守備だ。今俺たちはバッターのすぐ近くに立っている。

 

「さっきそっちがやった時、審判は何も言わなかった・・・文句ないよね?理事長」

 

「・・・ご自由に、選ばれし者は守備位置程度で心を乱さない」

 

「へぇ〜、言ったね?じゃ、遠慮なく・・・」

 

「はぁ・・・・最悪だ・・」

 

カルマがさらに前進したので俺も前進する。位置はバッターの目の前、振ればバットが当たる位置だ。

 

「ピッチャーの球は邪魔しないから安心しろ」

 

「構わず振りなよ」

 

杉野がボールを投げ、進藤がバットを振った。だが、俺とカルマはそれをほとんど動かずに避ける。

 

『お前らはE組の中でも動体視力はいい方だ。避ける程度、バントよりも簡単だろ?』

 

ふっ、そうだな。見てみろよ、エボルト。進藤のやつ、冷や汗めっちゃかいてるぞ。

 

『もう気づいているだろうな。これは野球ではないと・・・野球の形をしているだけの別の何かだと』

 

再び杉野がボールを投げた。

 

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

進藤は叫びながらバットを振る。ボールは当たりはしたが真上に上がり、カルマが掴んで渚に渡す。

 

「渚、次三塁!」

 

「う、うん!」

 

渚がすぐに三塁へと投げる。二塁にいた奴は走り出すのに遅れていたため、普通に間に合った。

 

「次、一塁!走ってないから、焦んなくていいぞ!」

 

「了解!」

 

そのまま余裕で一塁でボールを取り、スリーアウト。試合は終了した。

 

結果は4対2、俺たちE組の勝利だった。

 

 




いや〜、球技大会終わったー!

万丈ならホームラン出せそうですよね?ね?

そしてあまり活躍していない主人公。

次回は活躍できるといいな!

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第26話 新任教師

今回のジオウも面白かったですね!永夢の「そうじゃないんだけどな・・」で笑ってしまいました。

次回はフォーゼ編であり、ファイズの巧が出るみたいなので楽しみです!!

あ、第26話どうぞ。


惣一side

 

 

7月に入り、気温も高くなり始めた頃。烏間先生指導の元で体育をやっていた。だが、俺と万丈だけはみんなとは離れた場所で模擬戦をしていた。

 

「やはり、石動君の方は力が少々足りないな。特訓に筋トレも混ぜてみた方がいい。万丈君は逆に力は申し分ない。だが、攻撃が単純すぎる。もう少し考えて攻撃をしなさい」

 

「んな難しいこと言われたって・・・」

 

そんな俺たちの模擬戦を観戦して助言を出してくれているのはビッチ先生の師匠であるロヴロさんだ。怪我は完全に治ったらしく、こうして俺たちを教えにここに来てくれたらしい。

 

ちなみになんで万丈もかというと、あの研究所のことを話したからだ。もともとはロヴロさんに頼まれて行ったからな、報告はしないといけなかった。その時に万丈のことを話したら、俺と一緒に戦闘を教えてくれることになった。それでまずは万丈がどれくらい戦えるか確かめる時に模擬戦をしている。

 

『やっぱ筋トレか・・・・この間の球技大会でもわかったけど、お前力無いもんな』

 

「うっせぇエボルト・・・」

 

「あー、考えながら攻撃ってどうやるんだよ!!」

 

「お前もうるさいよ・・・」

 

万丈がバカなことを叫んでいるが、そんな難しいことか?そう思った時、後ろの方で何かが思いっきり地面にぶつかった音がした。振り向くと、渚が地面に倒れていた。そんな大した事もないのかすぐに立ち上がったが・・・大丈夫か?

 

「すまない!少し強く防ぎ過ぎてしまった!」

 

「あぁ、いえ、大丈夫です!」

 

烏間先生がそんな失敗するなんて珍しいな・・・、普段はそんな事全くないのに・・・・。

 

『サボりながらな』

 

黙れエボルト。

 

その後すぐにチャイムが鳴り、授業は終了した。

 

「ありがとうございました、ロヴロさん。ほら、お前もお礼言え」

 

「おぉ、ありがとな!」

 

「もっと礼儀をもって言えよ!!」

 

「いや、別に構わない。そのままでいいさ」

 

『おぉ、これが大人か』

 

「いや、うん、まぁ・・・・それでいいや」

 

ロヴロさんはそれで立ち去り、俺たちも校舎に戻ろうとする。そこで、階段の上に見覚えのない人が立っていた。

 

「太ってんな」

 

「お前はもう少し遠慮という事を知りなさい」

 

「あ?」

 

まぁ、万丈が言った通り確かに太っている。両手に大量の段ボールを抱えているが、何者なんだ?あいつは・・・・それに・・・

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

その男・・・・名前は『鷹岡明(たかおかあきら)』らしい・・・・・は校庭に抱えていた段ボールを置き、中身を出していた。出したのは大量のスイーツ。それをみんなに渡していた。

 

どうやら、あいつは国が送り出して来た防衛省の人間らしく、烏間先生の補任として来たらしい。んで、まずは挨拶がてらみんなにスイーツを奢ってるみたいだ。ちなみに俺は甘いのは嫌いってわけじゃないけどそこまで食わないから遠慮している。万丈はばくばく食っているが・・・・。

 

「お!お前は食いっぷりがいいな!!ほら、そこのお前もこっち来て食えよ!!!」

 

「いや、別にいいです・・」

 

「遠慮しなくていいんだぞ!」

 

いや、別に遠慮してるわけじゃねぇんだけどな・・・・。

 

どうやらこれからの体育はこいつが受け持つらしい。だけどな・・・・・信用できないんだよな、あいつ。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

翌日、昨日聞いた通り体育は鷹岡が指導するため校庭に来ていた。

 

「惣一君、珍しいね?授業に出席するなんて・・・」

 

「あぁ、あいつがどんな授業をするのか気になるからな。・・・・・なぁ、有希子。お前から見てあいつはどう思う?」

 

「あいつって・・・鷹岡先生の事?普通にいい先生だと思うけど・・・」

 

「そうか・・・」

 

有希子に言った事も正しいが、俺が授業に出席しているのはなんか嫌な予感がするからだ。何があってもいいようにしないと・・・・。

 

「さて、今日から俺が体育を教える。それに伴って時間割を変更した。今までよりきつくなるかもしれないが、終わったらまたうまいもん食わせてやるからな!」

 

そう言って鷹岡が配ったのは時間割表だった。だが、その時間割表は明らかに以上で、本来ありえない十時間目が存在し、夜の9時まで訓練するよう書かれていた。

 

「な、なんだよこれ・・・」

 

隣で万丈がそう呟いたのが聞こえる。正直俺もそう思うよ。

 

「世界も救うならこれぐらいしないとな、それじゃ、早速・・・」

 

「冗談じゃねーよ!こんなのできるわけがねぇよ!勉強の時間も少ないし、遊ぶ時間だって!」

 

前原が立ち上がって抗議し始めたが、その瞬間鷹岡の様子が変わった。前原の肩を掴み、腹に思いっきり膝蹴りを入れた。

 

「がぁっ!!」

 

「出来ないんじゃない、やるんだよ」

 

崩れ落ちた前原に磯貝たちが駆け寄る。が、それを見る鷹岡の目はとても冷たかった。

 

これがあいつの本性ってことかよ・・・・!

 

「これは地球を救うための訓練なんだぜ?これくらい当然だ。やめたい奴はやめてもいいぜ?その時は俺の権限で新しい生徒を補充する!・・・だけどな、俺はそんなことしたくないんだ・・・ここにいるのは家族なんだから!な、お前は父ちゃんについて来てくれるよな?」

 

鷹岡は歩き出し、有希子と三村の二人に腕を回した。この時に鷹岡の顔は、笑顔だが何かを企んでいるのがわかる。そんな顔だった。

 

「は、はい・・・あの・・・」

 

有希子がゆっくりと立ち上がって鷹岡に向かい合った。

 

『惣一、すぐに動けるようにしておけ』

 

あぁ、わかってるさ・・・・。

 

「私は嫌です。烏間先生の授業を希望します」

 

有希子が笑顔で、そうはっきりと告げた。次の瞬間、鷹岡の腕が動いていた。

 

「ふっ!!」

 

「何?」

 

その腕が有希子に当たる前に、俺が間に入って腕を止める。くっ・・・力が強い・・!

 

「やめてもらおうか?そうやってすぐに暴力を振るうのは・・・!」

 

「おいおい、何を勘違いしてんだ?これは暴力じゃなくてお仕置きだ。父ちゃんの言うことを聞かない子にな!!」

 

「うぉ!!」

 

空いていた鷹岡の腕が振るわれ、俺は吹き飛ばされてしまった。やっぱ力が足りねぇ・・!

 

「惣一君!!」

 

「惣一!テメェ!!」

 

万丈がドラゴンフルボトルを振って鷹岡に殴りかかった。鷹岡は片手で止めようとしたが、フルボトルによってパンチ力が高められている万丈を抑えることはできずに後ろに後退していた。

 

「ちっ・・・お前はなかなか強いな。教えがいがありそうだ」

 

「うるせぇ!!誰がお前なんかに従うかよ!!」

 

「それだったら殴り合いでもするか?父ちゃん、そっちの方が得意だぞ?」

 

「やめろ鷹岡!!」

 

鷹岡が腕を振りながらそう言った時、烏間先生が校舎から走って来た。

 

「大丈夫か?石動君。前原君も!!」

 

「これくらい、大丈夫ですよ」

 

「平気っす・・!!」

 

「おいおい、邪魔するなよ烏間。俺の子供なんだし、手加減はしてるさ」

 

「あなたの子供ではない、私の生徒です!!」

 

そんな鷹岡の後ろには顔を真っ赤に染めて怒っているのがわかる殺せんせーが立っていた。

 

「私が見ていない隙に、何をしている!!」

 

「ふん、文句があるのかモンスター。これはお前を殺すための訓練であり、俺は訓練内容を決める権限があるんだぜ?それとも何か?教育方針が違うだけで、俺に攻撃するのか?」

 

そう言われてしまっては殺せんせーは何もできない。それをわかって言ってるんだ、こいつは!!

 

結局、殺せんせーは何もできず、鷹岡が指導する体育が始まった。

 

 




これ書いてて思った・・・・今回主人公活躍ほとんどないかも!

て言うか、あるかな?ま、いっか!(良くない)

・・・すいません、この回では別の人を活躍させようと思っているので、主人公はプール回で活躍してもらいます。

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第27話 ナイトローグの正体

サブタイ通りナイトローグの正体が判明します。

いきなりだけどね・・・。

とりあえず第27話、どうぞ!


惣一side

 

 

鷹岡の授業が始まった。最初からかなり辛いことで、屈伸を500回やっていた。屈伸自体はそこまで大してことはないが、それを500回も続けられるほど俺たちは体力がない。万丈ならできるだろうが、あいつは普段の俺のようにサボっている。『あいつに従うつもりはない』つってな。俺もできることならサボりたいが、この状態をほっとくわけにもいかないから、仕方がなく授業を受けている。

 

『だけどな・・・こんなの続けたら生徒が壊れちまうぞ』

 

そうなんだよなぁ・・・・でも、俺に何ができるってわけじゃないし・・・・。なんかいい案ないか?

 

『前にも言ったが、俺は教育に関してはほとんど知らないぞ?』

 

うん、最初から期待してない。

 

『じゃ聞くな!』

 

心の中でこっそりとエボルトとこんな会話をしていると、さすがに限界なのか倉橋が座り込んだ。

 

「烏間先生・・・」

 

「おい、烏間は俺たちの家族じゃないぞ?お仕置きだな・・・・父ちゃんを頼ろうとしない子は!!」

 

倉橋が呟いた言葉に鷹岡が反応し、また殴ろうとする。だが、その腕はすぐに止められた。

 

「・・・いい加減にしろ鷹岡。これ以上生徒に危害を加えると言うなら、俺が相手になるぞ」

 

「烏間・・・・そろそろ横槍を入れてくる頃だと思ったよ・・」

 

鷹岡は大人しく腕を下ろしたが、また何かを企んでいる顔をしている。今度は何をさせる気だ?

 

「んじゃこうしよう。お前が育ててきたこの生徒たちの中から、一人選んで俺と戦わせる。もしも俺に勝てたらお前の教育は俺より優れていたと認めて出て行ってやる。だけど、使うナイフはこれじゃあない」

 

鷹岡は持ってきていたバックから対殺せんせーナイフを取り出すが、そう言って投げ捨てた。

 

『まさか・・・使うナイフってのは・・・』

 

鷹岡がすぐに振り向き、さっき投げ捨てた対殺せんせーナイフに本物のナイフを突き刺した。

 

「殺す相手は俺なんだぁ。使う刃物も、本物じゃなくっちゃなぁ・・・・」

 

「本物の・・・ナイフ・・・」

 

「よせ!彼らは人間を殺す訓練も、準備もしていない!!」

 

烏間先生の言う通りだ。確かに俺たちは暗殺の訓練は積んできたが、あくまでも標的(ターゲット)は殺せんせー、人間相手じゃない。

 

「安心しな、寸止めでも当たったことにしてやるよ。嫌なら無条件で俺に服従だ!」

 

鷹岡はそう言って烏間先生の足元にナイフを投げ捨てた。これじゃ、嫌が応でも誰かを選ばなければならないぞ・・・。

 

『お前らは本物のナイフを握ったことがない。あえて言うなら、惣一なら問題なくナイフを振れるだろう。だが・・・・』

 

当てられる自信がない・・・。振れてもそれじゃあ意味がないだろう。それに決めるのは烏間先生だ。対して授業を受けていない俺が選ばれる可能性は低いさ。

 

『だが、それじゃあ誰が・・・・』

 

一人だけ、可能性がある奴がいる。烏間先生をそれに気づいているだろうさ。

 

『何?そいつは誰だ?』

 

あいつだよ、昨日の体育で烏間先生が思わず強く防いでしまった相手・・・・渚だ。

 

案の定、烏間先生はまっすぐ渚の元に行き、ナイフを差し出している。他のみんなは予想外の人選に驚いているな。

 

数秒の思考のうち、渚はそのナイフを受け取った。そしてナイフを口に咥えると、ストレッチを始める。

 

「おいおい、お前の目も曇ったなぁ烏間」

 

鷹岡がそう言っているが、あいつはただ気づいていないだけだろう。この中では渚が一番最適解だと。

 

『いや、俺もわからないんだが』

 

まぁ、見てろって。すぐにわかるだろうから。

 

渚は前に出て、ナイフを前方に突き出して構える。これが渚以外の生徒であったなら、ここで動きを止めてしまっただろうな。

 

『?・・渚の奴・・笑ってるのか?』

 

エボルトの言う通り、渚は構えを解くと笑って歩き出した。早歩きでもなんでもない、通学路を歩くように、普通にだ。そのまままっすぐ前に行き、とうとう鷹岡とぶつかった。その次の瞬間、ナイフを思いっきり振るわれた。もう数秒気づくのが遅かったら、ナイフは確実に鷹岡の顔に当たってただろうな。鷹岡はギョッとし、体勢を崩した。渚はそれを見逃さず、服を掴んで後ろに転ばす。そしてすぐに後ろに回り込み、邪魔されないように、確実に仕留めに行った。

 

「捕まえた・・・!」

 

『おいおい・・マジかよ・・・』

 

たった数秒のことだった。渚が動き出してから10秒も経ってないだろう。だが、ナイフは今確実に鷹岡の首元にある。当たってはいないから傷が付いていることはないだろう。だけど、正直予想を遥かに上回ったな。

 

『普段の生活では、絶対に発掘させることはないであろう才能・・・殺気を隠して近づく才能・・・・殺気で相手を怯ませる才能・・・・そして、本番に物怖じしない才能・・・だから烏間は強く防いでしまったのか・・本能で危険を察知したから』

 

もしろそれは当たり前のことだ。どれだけ強くても、誰だって危険を感じたら強く防いでしまう。

 

『渚には・・・暗殺の才能があったのか・・・。だが惣一、お前はよく気づいたな。俺だって気づいていなかったんだぞ?』

 

勘だよ、ただのな。確証はなかったさ。

 

予想を覆す結果に、生徒たちは驚きながらも歓喜の声をあげて渚に駆け寄った。ちなみにナイフの方はさっき殺せんせーが食べていた。

 

とりあえず俺も一声かけておくか。

 

「お疲れ渚」

 

「石動君・・ありがとう」

 

渚がそう言った時、突然前原が渚を引っ叩いた。

 

「なんで打つの!?」

 

「あぁ、悪りぃ。ちょっと信じられなくて・・・・でもサンキュー!!おかげでスカッとしたわ!!」

 

前原は笑顔で渚に肩を組みながらそう言った。確かにスカッとするわな。

 

『・・おい、惣一。あいつ、まだやるつもりだぞ』

 

「は?・・・うわ、迷惑な奴だな・・・」

 

エボルトがそう言うので見てみると、鷹岡がめちゃくちゃ怒りながら立っていた。負けたんだから、大人しく立ち去れよ・・・。

 

「このガキ・・・まぐれの勝ちがそんなに嬉しいか!?もう一度だ・・・心も体も全部残らずへし折ってやる!!」

 

『うわ、めんどくせぇ・・』

 

でもどうするか・・・ブラッドスタークになって毒でも入れるか?そんで麻痺させて・・・・

 

そう考えていると、渚が一歩前に出てはっきりとこう告げた。

 

「確かに、次やったら僕は間違いなく負けます。でもはっきりしたのは、僕らの担任は殺せんせーで、僕らの教官は烏間先生です。これは絶対譲れません。父親を押し付ける鷹岡先生より、プロに徹する烏間先生の方が、僕はあったかく感じます。・・・・・本気で僕らを強くしようとしてくれた事には感謝します。ですが、ごめんなさい。出ていってください」

 

『こいつに謝る必要はないと思うがな』

 

ま、渚だからな。だが、このだけじゃこいつはおとなしく引かないだろう。

 

案の定、鷹岡は逆上して渚に殴りかかってきた。やっぱりか・・!

 

俺が渚の前に立つその前に、烏間先生が向かって鷹岡をなぎ倒した。やっぱ強ぇ・・・。

 

「身内が迷惑をかけた。これからも俺が指導できるよう、上に掛けあおう」

 

「烏間先生・・・」

 

「また邪魔するのか・・・烏間!!」

 

再び鷹岡が立ち上がった。どんだけ執念深いんだよ・・・・。

 

「もう邪魔はさせない・・・今度こそお前をぶっ倒してやる!!」

 

そう言って鷹岡は何かを取り出した。それは少し丸みを帯びた、筒状の物体。俺には見覚えのありすぎるものだった。

 

「フルボトル!?なんでお前が!!」

 

「うぉおおおおお!!」

 

鷹岡はキャップを前に合わせて中の成分を自分に振りかけた。

 

成分はすぐに鷹岡の中に入っていき、鷹岡の体はスマッシュに変わっていった。そのスマッシュは、両手が翼のような形状をしている。ってことは・・・・

 

「飛行型かよ・・・」

 

俺の呟きに答えるようにスマッシュは翼を広げて空を飛び始めた。

 

『ちっ・・・部が悪いがやるしかない。惣一!!』

 

「あぁ・・・」

 

「待ってくれ」

 

俺がトランスチームガンを取り出そうとした時、烏間先生が止めてきた。

 

「烏間先生・・?」

 

「今回、俺は君たちに迷惑をかけてしまった。まさか、防衛省にまで奴らの手が及んでいるなんてな・・・・。本来、スマッシュが相手ならば君の方がいいのだろう。だが、これは俺の問題でもある。だから・・俺にやらせてくれ」

 

烏間先生はそう言って懐からあるものを取り出した。俺にはフルボトルと同じくらい見覚えのある黒い銃だった。

 

「トランスチームガン!?」

 

「な、なんで烏間先生が・・・」

 

驚く俺たちを尻目に、烏間先生はコウモリの顔が描かれている『バットフルボトル』を振ってトランスチームガンに装填した。

 

『バット!』

 

俺のトランスチームガンと同じ音が鳴る中、烏間先生はトランスチームガンを左側に構え、煙を撒きながら一気に右側に持っていった。

 

「蒸血!!」

 

『ミスト・マッチ!バット・・・バッ・バット・・・・ファイヤー!!』

 

煙が晴れ、そこにはナイトローグが立っていた。

 

『烏間が、ナイトローグだったとはな・・』

 

全く気づかなかったよ・・・・、どうりで強いわけだ。

 

ナイトローグは翼を広げ、スマッシュを追っていった。

 

 




烏間先生がナイトローグ・・・あれ?強すぎね?

次回はナイトローグの戦闘回ですね、楽しみにしていてください。

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第28話 教師の仕事

今回は初烏間先生視点です!

それでは第28話、どうぞ!!


烏間side

 

 

ナイトローグに変身した俺は、翼を広げ鷹岡がが変化したスマッシュを追っている。相手は飛行型だから、石動君よりも俺の方がいいだろう。

 

・・・・正直、ここで正体がバレたのは誤算ではあった。だが、後悔するつもりはない。今回、俺はほとんど何もできていない。危険な事を生徒である渚君にさせてしまった。スマッシュに関してもそうだ。俺は戦う力を持っていながらも、今まで石動君が戦ってきた。だからこそ、今回は俺が生徒を守ってみせる!

 

『エレキスチーム!』

 

俺は以前カイザーから奪ったスチームブレードを取り出し、バルブを回転させる。電気を帯びた煙を刀身に纏わせ、すれ違いざまにスマッシュの翼を切る。

 

『ふん!』

 

ちっ・・・あまり深くなかったか・・・。だが、それでも多少は効いたようだな。現にさっきまでよりもスピードが落ちている。

 

『次はこれだ!』

 

俺はトランスチームガンを取り出してスマッシュに向けて撃つ。光弾はスマッシュの背中に当たって地面に落ちていった。土煙が上がっている場所を見ながら、俺はゆっくりと降下する。

 

「・・烏間先生!!避けろ!!」

 

『何?・・ぐぅ!!』

 

石動君が叫んだその直後、土煙の中からスマッシュが高速で出てきた。いきなりのことに俺は対応できず、まともに攻撃を食らってしまう。

 

「「「烏間先生!!」」」

 

『くぅ・・・こっちに来るな!』

 

スマッシュは上空を旋回し、再びこっちに向かってきた。あのタコよりは遅いが・・・それでも早い・・。避けるのも間に合わないぞ!

 

『フルボトル!スチームアタック!』

 

そんな音声が鳴り響くと、次の瞬間にはスマッシュに蜘蛛の巣のような物が絡まっていた。見ると、石動君がトランスチームガンをこちらに向けていた。

 

「悪いな、任せろって言われたがやばそうだったからな。烏間先生!こいつを使え!!」

 

石動君はそういって一本のフルボトルを投げてきた。それを掴んで確認すると、掃除機が描かれていた。

 

『掃除機フルボトルか・・・・確かにこれなら!』

 

スマッシュは蜘蛛の巣を翼で切り裂いて再び飛び出そうとしていた。俺のフルボトルを数回振ってトランスチームガンに装填し、飛び出したスマッシュに向けてトリガーを引いた。

 

『フルボトル!スチームアタック!』

 

銃口から風が巻き起こり、スマッシュを捉えた。スマッシュは抜け出そうとするが、そんなことはさせない。

 

『アイススチーム!』

 

俺は空いている方の手でスチームブレードを操作し、スマッシュに向けて煙を出す。アイススチームの効果により、スマッシュの下半身が凍っていった。これで飛ぶことはできないだろう。

 

『これで終わりだ』

 

『バット!』

 

俺は再びトランスチームガンにバットフルボトルを装填し、スマッシュに向けてトリガーを引く。コウモリの形をしたエネルギーが放たれ、スマッシュを飲み込み爆発を起こした。煙が晴れると、そこには動かなくなったスマッシュの姿があった。

 

「烏間先生、これをスマッシュに向けてください。成分を回収できます」

 

石動君がそういって俺に成分が入っていないフルボトルを渡してきた。俺はフルボトルのキャップを前に合わせ、スマッシュに向ける。すると、成分がフルボトルに回収され、スマッシュは鷹岡に戻った。

 

「そのボトルは、後で俺が浄化しておきます」

 

『そうか、すまない』

 

石動君がそういってきたので、成分を回収したフルボトルを返す。その時、鷹岡が立ち上がった。

 

「う・・くぅ・・・俺は、負けたのか・・」

 

『もう終わりだ、鷹岡。すぐにこの校舎から立ち去れ」

 

俺はナイトローグの変身を解きながら、鷹岡に言う。

 

「どちらにせよ、今回のことは俺が上に報告する。お前はもうここにはいられないさ」

 

「そんなこと、させるか・・俺が先に掛け合って・・」

 

「その必要はありません」

 

突然校舎の方からそんな声が聞こえた。あれは、理事長!?何故ここに・・・。

 

「新任の教師の手腕に興味がありましてね、見学させてもらいました。鷹岡先生、あなたの授業はつまらなかった」

 

理事長は鷹岡の近づいてその顔を掴むと、自分と目を合わせる。

 

「教育に恐怖は必要です。が、暴力でしか恐怖を与えられないのならば、その教師は三流以下だ」

 

そういって紙を鷹岡の口に入れていった。あれは・・・・

 

「解雇通知です。この学校の教師を決めるのはあなた方防衛省ではなく私です。そのことをお忘れなく」

 

理事長はそう言い残して本校舎に向けて歩いていった。当の鷹岡は紙を噛みながら悔しそうにし、バックを持って走ってこの場を去っていった。あいつ・・・今紙を食ったよな・・・・。

 

「鷹岡・・・クビ・・・」

 

「ってことは、今まで通り烏間先生が・・・・」

 

「「「「よっしゃーー!!」」」」

 

後ろで生徒たちが歓喜の声をあげた。それほどまでに嬉しかったのだろう。

 

「今回は随分迷ってましたね?烏間先生」

 

「悪いか」

 

「いえいえ」

 

俺の肩にタコは顔を乗せてそう聞いてきた。・・・この状態でも、こいつは余裕で俺の攻撃を躱すのだろうな。

 

「・・・例えば彼が・・・渚君が将来殺し屋になりたいといったら、お前は迷わずその道を教えるのか?」

 

「・・・・答えに迷うでしょうね。ですが、迷わね教師などいない。自分が出した答えは本当にあっているのか、不安になりながらもそれを悟らねぬよう教える。だからこそかっこいいんです!教師って仕事は!!」

 

「・・そうか・・・」

 

人に教えるなんて、俺はこの教室が初めてだ。だが、だからこそ俺は・・・・・

 

「烏間先生!」

 

「ん?」

 

前を向くと、生徒のみんなが集まっていた。なんだ?

 

「生徒のおかげで先生に返り咲いたんだし、なんかご褒美があったもいいんじゃない?」

 

「そうそう!鷹岡先生そういうところだけは充実してたよね!!」

 

「現金だなお前ら・・・」

 

石動君がそういったが、全くその通りだと思う。だが、それもいいかもな。

 

「甘いものなど、俺は知らん。金は出すから、これで好きな・・・」

 

「シュバ!」

 

財布を出すと、瞬間的に奪われた見るとイリーナが俺の財布を持っている。こういうことだけは動きが早いな。

 

「にゅや!先生にもその報酬を・・・」

 

「え〜?殺せんせーはどうなの?」

 

「今回活躍したのは渚と烏間先生だよねぇ〜!」

 

「いや、烏間先生に教師のやりがいを教えよとあえて静観していたんですよ!そうあえて・・」

 

「殺せんせーは放っておいて行こ行こ、烏間先生!」

 

倉橋さんが俺の右手を掴んで進み出す。俺もそれに合わせて足を動かす。

 

俺も・・・・嵌っているのかもな。この教師の仕事に・・・・。

 

 




初烏間先生視点を書いたけど、うまくできたかな?

感想等で教えていただけると助かります!

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第29話 経緯

今回は烏間先生がトランスチームガンを手に入れた経緯の説明ですね。つってもすごい短いけど・・・・。

とりあえず第29話、どうぞ。


惣一side

 

 

烏間先生がスマッシュを倒し、生徒の要望によってそれぞれの食べたいものを奢らせた後、もはや存在を忘れていた万丈と合流して家に向かっている。

 

「んで?お前は肝心な時にどこで何をやってたんだ?」

 

「あ?どこでって・・・・裏山の中を走り回ってた!」

 

「・・・・・」

 

「なんか言えよ!!」

 

なんとも万丈らしい答えに、何も言う気が起きなかった。ま、いっか。

 

「とにかく早く帰るぞ。今日は人を呼んでるからな」

 

「は?人呼んでるって・・・」

 

「安心しろ、お前も知ってる人だし、有希子も来るらしいから」

 

「?」

 

万丈が不思議そうにしているが、とりあえず無視して家に向かう。時間的にも夕飯も作った方がいいか・・・。

 

『コーヒーは俺に・・・』

 

「却下」

 

『はや!?別にいいだろ!!』

 

「駄目に決まってんだろ。お前のコーヒーは」

 

『いや、あの人外のことだしワンチャン・・・』

 

「いやいや人外じゃないから。あの人はちゃんとした人間?だから」

 

『なぜ疑問形』

 

「断言できない・・・」

 

「なぁ、誰が来るんだ?」

 

今の会話の流れで気づかないのかよ・・・・、万丈だし無理か。

 

家に着き、荷物を置いて早速準備を開始する。えーと、今家にあるものでは・・・・足りないな。

 

「万丈、買い物行ってきてくれ」

 

「はぁ!?なんで俺が!」

 

「プロテインも買ってきていいから」

 

「・・・・・OK」

 

「んじゃ、頼むぜ。これがリストだから」

 

買ってきてもらう物をメモに書き、万丈に金と共に渡して行かせる。とりあえず今できる物でっと・・・・・

 

『お前、だんだん万丈の扱い方わかってきたよな』

 

「うん、まぁ。単純だしな、あいつ」

 

一応今の内にできることをやろうと手を動かしていると、カフェの扉が開いた。

 

「有希子か、早いな」

 

「うん、何か手伝うことがあるかなっと思って」

 

「助かるよ、ありがとう。でも、今のところはないかな。万丈に買い物に行かせたし」

 

「そうだったの?言ってくれれば、私が買ってきたのに・・・」

 

「さすがにそこまでやらせるわけにはいかないだろ。万丈も暇そうだったから、大丈夫さ」

 

とりあえず有希子は席に座ってもらう。一応カフェだし、椅子もテーブルもまだまだある。

 

「何か飲むか?コーヒー以外で」

 

「カフェなのにコーヒーないんだね・・・あっても遠慮するけど」

 

「だろ?」

 

『なぜだ!!』

 

「「お前(あなた)のせいだろ(でしょ)!!」」

 

『解せぬ・・・』

 

とりあえずオレンジジュースでも出しておこう。何も出さないわけにはいかないからな。

 

「ほら、オレンジジュースだ」

 

「ありがとう」

 

「失礼する」

 

俺が有希子にオレンジジュースを出すと、ほぼ同時にカフェの扉が開いた。思ったよりも早かったな・・・・。

 

「お待ちしてましたよ、烏間先生」

 

「すまないな、石動君。こんな時間に・・」

 

「いえいえ、呼んだのはこっちですから。気にせずに。何か飲みますか?コーヒー以外でお願いします」

 

「カフェじゃないのか?」

 

「諸事情でコーヒーはありません」

 

「ウンウン」

 

後ろで有希子も頷いている。エボルト作のコーヒーの俺以外の被害者だしな。

 

「そ、そうか・・・とりあえず、水をくれないか?」

 

「水ですね、わかりました」

 

コップに氷と水を入れ、烏間先生のところに持っていく。烏間先生はすでに有希子と話していた。この瞬間って、地味にレアな気が・・・・。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「なんでこうなった・・・・」

 

本来、俺は烏間先生から話を聞くためにここに呼んだんだ。まぁ、有希子は元から事情を知っていた分、俺と同じぐらい気になっていただろうから来るって言っても止めなかったが・・・・

 

「なんで・・・なんで殺せんせーまでいるんだよ!」

 

「ヌルフフフ!私も烏間先生がナイトローグだとは気づいていませんでしたからねぇ、気になってるんですよ。それに、以前来たときは時間がありませんでしたが、ここのスイーツを食べるいい機会ですので!!」

 

「後者が目的だろ・・・・」

 

あの後、いきなり現れた殺せんせーに頼まれ、俺は今パンケーキを作っていた。それ自体はとくに問題はないが、時間がなぁ・・・。とにかく、さっさとパンケーキを作り終わるか。

 

パンケーキを三枚焼き、皿に乗せてその上にアイスとストロベリーソースをかけて完成だ。そんなに難しくもないが、久しぶりなんだよな・・・うまくできたのか?

 

「はい、殺せんせー。注文の品のパンケーキだ」

 

「ニュ、ありがとうございます石動君。それでは早速・・・おぉ!美味しいですね!」

 

「それなら良かったよ。普段は作らないからな」

 

「にゅや、そうなんですか?」

 

「客が来ないんだよ。別に問題はないがな」

 

「帰ったぞ!!」

 

言った直後に扉が開いて万丈が帰って来た。やっとか・・・・。

 

「サンキュー万丈。んじゃ、早速飯を作り始めるか」

 

『ん?惣一・・まさかお前・・・』

 

おぉ、気づいたか?今日の夕飯はペペロンチーノだ。

 

『何ぃ!!!!』

 

メモの時点で気づかなかったお前が悪い。さて、作り始めるか。

 

『やめろぉ!!俺はスパゲッティは苦手なんだよぉ!!』

 

はいはい、わかったわかった。

 

スパゲッティを茹でている間にニンニクなどを炒め、オリーブオイルと和える。どうせ殺せんせーは食わないだろうし、4人分でいいよな。

 

「万丈、できたから運べ!」

 

「おぉ」

 

万丈に二つ運ばせ、俺も二つ運ぶ。パンケーキと違ってこっちは作ることも何回かあったから大丈夫だろう。

 

「それじゃ烏間先生、食べながらでもいいんで話を聞かせてもらえませんか?」

 

「あぁ、構わない。と言っても、私も詳しい事までは知らないぞ」

 

「それでも構いません」

 

「そうか、わかった。俺がナイトローグになったのは、国の意向だ」

 

「国の・・・・ですか?」

 

「あぁ、このトランスチームガンを作っていた研究者が居たんだがな、その研究者は最先端の整備が整っている場所や、資金を手に入れるために国にトランスチームガンとこのバットフルボトルを提供したんだ」

 

「それで、国側から所有者として烏間先生が選ばれたと・・・」

 

「そういう事だ」

 

「でも、その研究者って・・・」

 

「おそらく・・っていうか十中八九シロだろうな」

 

あの時、シロはトランスチームガンを自分の発明品と言っていた。俺の記憶ではこれはエボルトがくれたものだが、何かが違うのか?エボルトに聞いても適当に流されるからな・・・・。

 

そこで、さっきまで黙って飯を食っていた万丈が口を開いた。

 

「ん〜、難しい事は分かんねぇけどさ、これからは一緒に戦ってくれんだろ?それでいいじゃねぇか」

 

分かってねぇのかよ・・・・さすがはバカだ。

 

「ま、万丈の言う通りだな。烏間先生、念のためにフルボトルを渡しておきます」

 

『いいのか?』

 

「あぁ、烏間先生なら信用できるしな」

 

俺は一度地下室に行き、先ほど浄化を終えたばっかりのフルボトルを持って上に戻る。

 

「これを」

 

「これは・・・」

 

「今日烏間先生が採取した成分を浄化したボトルです。見た感じ、『フェニックスフルボトル』でしょう」

 

「フェニックス・・・不死鳥か」

 

「何に使えるかはわかりませんが、フルボトルが一本あるだけで戦いの幅は広がります。持ってて損はないはずです」

 

「そうか、ありがとう石動君」

 

とにかく、烏間先生から聞いて分かったことはトランスチームガンはシロが作り上げた物であると言う事だ。俺の記憶と一致しないが、追々調べるとしよう。それに、これからは烏間先生もともに戦ってくれるからな、かなり心強い。

 

「これからもよろしくお願いします、烏間先生」

 

「あぁ、こちらもよろしく頼む」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「あぁ、殺せんせー。代金1200円だから、ちゃんと払えよ」

 

「にゅや!?お金取るんですか!?」

 

「当たり前だろ、仮にもカフェだぞ。烏間先生は俺自身が呼んだからともかく、殺せんせーは違うからな」

 

「そ、そんなぁ・・・ひどいですよ石動君」

 

「ひどいもくそもねぇ。これも商売だからな。それと烏間先生」

 

「ん?」

 

「スチームブレードやトランスチームガンは殺せんせーに有効ですよ。すでに実験済みです」

 

「そうか、それはいいことを聞いた!」

 

「にゅやああ!!石動君それを言わないでください!!」

 

「覚悟しろ・・・タコ・・・今ここで殺!」

 

「さないでくださいね?ここ、店の中なんで」

 

 

 

 

 




お知らせですが、こちらの事情によりしばらく投稿ができません。おそらく次に投稿できるのは週末辺りになると思いますのでご了承ください。楽しみにしてくださってる方々には申し訳ありませんが、次に投稿されるまで楽しみにしていて下さい。

感想、評価等よろしくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第30話 プール開き

お久しぶりです。

こちらの用事も終わりましたので、今日から投稿を再開します。

とりあえず第30話、どうぞ!


惣一side

 

 

烏間先生の活躍で鷹岡をこの教室から立ち去らせて数日、俺たちはプール開きを迎えた。だが、プールは本校舎にしかないため、俺たちE組の生徒は暑い中本校舎まで山道を歩かなければならない。そのはずなのだが・・・・

 

『なぁ、惣一。これって方向違くないか?』

 

エボルトも気づいていたか。確かに方向が違って本校舎は真逆なんだよ。どこに向かってんだ?

 

「殺せんせー、プールがある本校舎は逆方向だよね?今、どこに向かってるの?」

 

渚も同じことを思ったらsく、殺せんせーに聞いていた。

 

「ヌルフフフ、プールに入るのに本校舎に行く必要はありません。なぜなら・・・・ここにプールがあるのですから!」

 

殺せんせーがそう言った先には、確かにプールがあった。しかもそこそこの大きさがある。

 

『こんなところにプールなんてなかったはずだが・・・・まさか、作ったのか?』

 

「えぇ、昨日の内に周りの整備を終わらせ、一晩かけて水を貯めました」

 

相変わらずありえないことするな、この先生は・・・。だからこそ、殺しづらいんだよ!

 

俺や他の生徒たちは早速プールに飛び込む。ここに来るまでに大量に汗をかいた体に、冷たい水が心地いい。

 

プールに飛び込んだ他の生徒たちは思い思いに遊び始めていた。まぁ、なんかカメラ持ってるやつもいるが・・・・。

 

そう思っていると、ピピーっという音がこの場に鳴り響いた。見ると、殺せんせーが足の長い椅子に座って笛を吹いている。手にはビート板が。

 

「岡島君!プール内は撮影禁止です!木村君!プールサイドは走らない!転んだら危ないですよ!」

 

殺せんせーは触手を伸ばして岡島のカメラをとったり、木村に注意する。さらには潜水勝負をしていた中村と原、泳がずに本を読んでいる狭間に泳ぐよう言ったりと、色々言って来る殺せんせーに俺らは全員一致でこう思った。

 

((((う、うぜぇ・・・・・))))

 

上機嫌に笛を鳴らす殺せんせーとは対象に、俺たちの気分は少し下がった。当の本人はそれに気づいていないが。

 

「そう堅いこと言うなよ殺せんせー。ってか、先生も一緒に遊ぼうぜ!」

 

万丈が殺せんせーに近づいて、殺せんせーに向けて水をかけた。一応授業なんだけどな・・・まぁ、俺も遊んでたしいいか。

 

「きゃあん!!」

 

「・・・・・ん?」

 

なんだ?今の声は・・・エボルト、気のせいかな?

 

『いや、気のせいじゃない。現に殺せんせーの様子がおかしいし、万丈に水をかけられたところをみてみろ』

 

エボルトがそう言うので、さっき万丈が水をかけた部分を見る。その部分は明らかにふやけていた。そういえば、前は湿気で顔が膨らんでいたな・・・てことはまさか・・・

 

「い、いや、別に水を浴びると触手がふやけるとか、そんなのはないですしぃ〜」

 

殺せんせーのみえみえな嘘を聞いて、俺の考えは確信に変わった。殺せんせー・・・・水が苦手なんだな。

 

これはいいことを知れた。今この時期ならば、殺せんせーを水辺に連れて行くことはとても簡単だ。うまくいけば、この夏の間に殺せるかもな。

 

 

 

惣一side out

・・・・・・・・・・

寺坂side

 

 

 

俺は今、猛烈にイラついている。俺の前には村松がいて、その手にはそこそこ点数のいいテストが握られていた。

 

こいつが言うにはあのタコの放課後ヌルヌル強化学習を受けたらしく、それによって成績も上がったと喜んでいる。

 

他の奴らもそうだ。あのタコの授業を受けて、成績が上がってる奴は少なくない。むしろ多い。

 

俺はこのイライラを村松に八つ当たり気味にぶつけ、教室に戻る。中に入ると、吉田が例のタコとなにやら盛り上がっていた。

 

「・・・なにやってんだよ」

 

「お、おう、寺坂。いやな、この間このタコとバイクも話で盛り上がってよ。うちの学校じゃ、そういう話をする奴はいないと思ってたから・・・」

 

「バイクなら俺も持ってるぞ」

 

「マジか、石動!今度、見せてくれないか?」

 

「いや、別に今見せれるけど」

 

話に加わってきたのは、ここ最近怪物騒ぎでまさにその怪物になっていた石動だ。周りの奴らは自分たちを守ってくれたとか言って受け入れているが、俺はそんな気にははっきり言って全くなれない。

 

石動はポケットからスマホとフルボトルっつーやつを取り出してセットして、空中に放り投げた。

 

『ビルドチェンジ!』

 

すると、スマホは空中に変形して大きくなり、バイクに変形して床に着地した。

 

「おぉ!!まじかよ!スマホがバイクになった!!」

 

「ふっ、どうだ?俺の発明品は。フルボトルは一本だから、同じやつは作れないけどな」

 

「な、なぁ、乗ってみてもいいか?」

 

「あぁ、乗るぐらいなら構わないぞ」

 

「よっしゃ!サンキュー!」

 

石動の返事を聞いた吉田は喜んでバイクに乗った。ちっ・・・何奴も此奴も・・・・。

 

俺は石動が出したバイクを思いっきり蹴りとばした。当然バイクは倒れる。

 

「おい、何すんだよ寺坂!!」

 

「そうだよ!石動に謝んなさいよ!」

 

「いや、別にこれぐらいはいいよ」

 

石動は倒れたバイクに近づいて何やら操作すると、バイクはスマホに戻った。だが、それでも周りの奴らはうるさく喚き散らす。

 

「うっせ〜んだよ、何奴も此奴も!!」

 

俺はポケットから缶を取り出し、それを床に叩きつける。すると、缶の中から黄色の煙が出てきて教室内に充満した。

 

「寺坂くん!幾ら何でもやりすぎです!!」

 

「うっせー!いきなり現れやがって気持ち悪いんだよ!てめーも!仲良しこよしのてめーらも!!」

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

俺は昔からこの体を利用して弱いやつを自分の支配下に置いていた。小学校の頃はそれで十分だったが、この学校に入ってからは違った。ここでは俺のような生き方は通用しなかった。E組に入って同じように目標が無い奴らといられると思ったら、そこでも違った。いきなり化け物が現れてクラスにでっかい目標を与えちまった。さらに最近ではスマッシュとかいう怪物が現れて、それと戦ってた石動がこのクラスの思いを一つにしちまった。今にE組は、俺にとって生きづらい環境になっちまった。

 

「ご苦労様、寺坂くん。君のおかげで作戦の一つを成し遂げられたよ。これが報酬だ」

 

俺は教室でぶちまけた缶を渡した張本人のシロから報酬の金を受け取る。俺には、こっちの方がやりやすいな。

 

「これで、あの怪物を殺せる可能性が高まったよ。あともう一働きしてもらうけどね」

 

「どうせならよぉ、あの石動の殺してくれよ。あいつも怪物だろうが」

 

「あぁ、もちろんだ。そもそも私の本当の狙いは・・・・おっと、これは君には関係の無い話だね。とにかく、さっさとあの怪物どもを殺して元のE組に戻してあげるよ」

 

シロはなんかごまかしたが、さっさと殺してくれるんならどうでもいい。そう思っていると、近くにいたイトナが近づいてきた。

 

「お前はあの赤髪やブラッドスタークよりも体がでかい。けど奴らより弱い。なんでかわかるか?お前には勝利のビジョンがないからだ。勝利のビジョンがないやつは弱いままだ」

 

イトナはそう言って奥に消えていった。あんにゃろぉ・・・・

 

「まぁまぁ。落ち着いて、寺坂くん。そうだ、どうせなら他にも頼もう。やりたいことがあるんだ」

 

「やりたいことだぁ?」

 

「あぁ。安心したまえ、もしかしたら、君も我々のようになれるかもしれないよ・・・・」

 

 




久しぶりにイトナとシロが登場しましたね。

もちろん次回では変身してもらう予定です!

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第31話 新たな仲間

今回とくに戦闘はありません。その代わり・・・・


さてさてどうなる第31話!!


惣一side

 

 

 

「グス・・・うぅ〜・・・」

 

「・・・大丈夫?殺せんせー」

 

昨日の寺坂騒ぎから丸一日経ち、今は昼飯を食べている。だが、今日一日殺せんせーの様子がおかしく、ずっと泣いていた。

 

『なんで泣いてんだ?』

 

「いえ、これは涙ではなく鼻水です。どうも昨日から止まらず・・・」

 

よく見ると、目の横に小さな穴があり、涙だと思っていた液体はその穴から出てきていた。

 

『紛らわしいな!!』

 

ナイスツッコミだな、エボルト。ちょうどその時、扉が開いて来ていなかった寺坂が入って来た。その瞬間、殺せんせーがマッハで寺坂のところまで行って肩を掴んだ。

 

「寺坂くん!よく来てくれました!もう来てくれないかと思って先生不安で不安で!!」

 

殺せんせーはそう言うが、体を揺らしながら言うので寺坂の顔がどんどん鼻水まみれになっていく。あれ、大丈夫か?だが、寺坂は昨日のように起こるようなことはせず、代わりに肩を掴んでいた触手をどかして銃を突きつけた。

 

「もうお前の教師ごっこは終わりだ。覚悟しろよバケモン。これから殺してやるよ。お前らも手伝え!」

 

「寺坂、お前今まで俺たちの暗殺に協力してこなかっただろ。それなのに手伝えって言われて、はい行きますって言うわけないだろ」

 

「・・・それならそれで構わないさ。そんときゃ賞金100億は独り占めだ!」

 

寺坂はそう言い残して教室から出て行った。ったく、暴君野郎が・・・。

 

『んで、どうするんだ?行くのか?』

 

「いや、その必要はないだろ。どうせ殺せないだろうし、俺はいかねぇ」

 

「私も行かない」

 

「俺もだ」

 

みんなも俺と同意見らしく、寺坂の暗殺には協力しないつもりだ。しかし・・・・

 

「みんな行きましょうよ!せっかく寺坂くんが私を殺すつもりになってくれたのにぃ!」

 

「うわ、なんだこれ!?」

 

「粘液に捕まって動けねぇ!!」

 

殺せんせーがさっきから出していた鼻水が俺たちの足を捕まえ、動けなくなってしまった。結局、俺たちは無理やり寺坂の暗殺に加わることになってしまった。俺はトランスチームガンで脱出させてもらったがな。

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

「おう、カルマ。ここにいたのか」

 

「ん?あぁ、石動か。何かあったの?」

 

移動した先にはカルマがいた。カルマも俺と同じようによくサボっているし、ここにいてもなんも不思議ではない。

 

「いや、さっき寺坂が来てな。殺せんせーを殺すからお前ら協力しろって」

 

「ふ〜ん、それで他のみんなは協力するの?」

 

「協力するつもりはないんだがな。殺せんせーの粘液に捕まって協力せざるおえない状態になっちまったからさっさと脱出させてもらった」

 

「なるほどね。にしても、どうやって殺すつもりだろうね、寺坂のやつ」

 

「さーな。どちらにせよ、殺せないだろ」

 

水を使うにしたって、まだ詳しいことはわかってないんだ。寺坂の考えたであろう暗殺だし、今回も失敗だろうな。

 

『どうせなら見てみないか?どんな暗殺をするか』

 

「見るって、どうやってだ?近くまでいったら殺せんせーに捕まって参加させられるだろうし・・・」

 

『ちょうどいいフルボトルがあるだろ?使ってみるいい機会だ』

 

遠くの光景を見るフルボトル?え〜と・・・・あぁ、確かにあったな。俺はテレビが描かれた『テレビフルボトル』を取り出し、数回振ってからトランスチームガンに装填する。

 

『フルボトル!スチームアタック!』

 

トリガーを引くと、空中に画面が映し出された。そこにはプールでみんなに指示を出している寺坂の姿が映っていた。

 

「やっぱ水を使うのか・・・」

 

「あの状態じゃ、寺坂が殺せんせーを突き落としてみんなが殺すって感じかな?」

 

「多分な。だが、どうやって落とすつもりだ?」

 

みていると、殺せんせーがやって来て寺坂が銃を突きつけた。それでも殺せんせーには意味がないことぐらい、あいつでもわかるだろうが・・・・・そう思っていると、寺坂が引き金を引いた。だが、それによって起こったのは発砲ではなく、プールの水をせき止めていた扉の破壊だった。

 

「何!?」

 

『まずいぞ、このままじゃ生徒たちが!!』

 

エボルトの言う通り、今の爆発でプールの水は川に流れて行き、プールに入っていたみんなは勢いに逆らえず流されていってる。

 

「急いで向かおう!」

 

「あぁ!!」

 

ほとんどすぐにプールへ移動したが、すでにそこには何もなく、寺坂が立ちすくんでいるだけだった。

 

「おい・・・聞いてねぇよ・・・イトナを呼ぶための銃だって言ってたじゃねぇか・・」

 

「っ!!・・・なるほどね・・・最初から自分で考えた作戦じゃなかったってことか・・・」

 

すると、寺坂は近くにいたカルマの肩を掴んだ。

 

「言っとくけどよぉ、俺は悪くねぇぞ!全部騙したあいつが悪・・」

 

「ふん!」

 

だが、すぐにカルマが寺坂を殴り飛ばした。寺坂はその勢いに勝てずに倒れる。

 

「流されたのはみんなじゃなくてお前じゃん!そんなこと言う暇あったら、何するべきか自分で考えたら!?」

 

「カルマ、みんなの救出に向かうぞ」

 

『コブラ!』

 

「蒸血!」

 

『ミスト・マッチ!コブラ・・・・ファイヤー!!』

 

『先に向かってるぞ!ふっ!』

 

蛇のように地面に這い蹲り、川沿いを移動していく。しばらくすると、生徒を救出している殺せんせーが視界に入った。

 

『フルボトル!スチームアタック!』

 

薔薇が描かれている『ローズフルボトル』をトランスチームガンに装填し、薔薇の蔦を使って殺せんせーと同様に生徒たちを救出していく。

 

「石動君!」

 

『俺も手伝うぜ!』

 

どんどん蔦で生徒たちを救出し、残り二、三人になったところで流れに逆らって泳いでいる万丈を見つけた。とりあえず救出したが、何やってたのか気になったので聞いてみる。

 

『・・・・・何やってんだ?』

 

「いや・・・あのままじゃ流されるから・・・流れに逆らって泳いでいた・・・めっちゃ疲れた」

 

『当たり前だろ!この脳筋が!!』

 

とりあえずバカなことをやっていた万丈をそこら辺に放り捨て、次の生徒を助けようと前を見たとき殺せんせーが白い触手に捕まって崖下に引っ張られているのが見えた。

 

『くっ・・・イトナとシロか!!』

 

急いで崖下を覗き込むと、すでにイトナの猛攻が始まっていた。殺せんせーもなんとか弾いてはいるものの、どこか様子がおかしい。

 

『・・・そうか!あそこに原がいるからか!!』

 

殺せんせーの背後、崖から伸びている枝に捕まっている原がいた。あそこに生徒がいるからには、殺せんせーは守ることもしなければならない。だからイトナに押されているんだ。

 

「それだけじゃねぇさ・・」

 

『寺坂・・・・』

 

「昨日俺が撒いた煙には対タコの物質が含まれている。あいつが作ったな・・・」

 

「まさか寺坂、お前!」

 

「あぁ、全部あいつらに操られてたんだよ!俺のような未来のビジョンがないやつは、あいつのようなやつに操られるもんなんだよ!・・・けどよぉ、操られるやつぐらいは選びてぇ・・・だからよ、カルマ!石動!お前たちが俺を操ってみせろ!!」

 

『・・・操れって言われてもねぇ・・・・』

 

「いいの?最悪死ぬよ?」

 

「問題ねぇ、こちとら実績持った実行犯だぞ。それに、今の俺にはこいつもある」

 

そう言って寺坂がポケットから取り出したのは俺や烏間先生が使ってるのと同じような紫のフルボトルだった。

 

『フルボトル・・・なんでお前が・・・』

 

「シロの奴から渡されたんだよ・・・これでお前やあいつらと同じような力を手に入れられるってな!」

 

『・・まさか、人体実験を受けたのか?後で詳しいことは教えてもらうからな!』

 

「とりあえず、作戦を考えたから。寺坂、よく聞いて」

 

カルマが考えた作戦を聞いて、寺坂は来ていたシャツを脱いで下に流れている川に飛び込む。当然その音にシロが反応し、寺坂の方を見た。

 

「やぁ、寺坂くん。君のおかげでここまで来れたよ。協力してくれた君に危害を加えるつもりはないし、下がってた方がいいよ」

 

「ウルセェ!!俺を騙しやがって!!」

 

「あぁ、それに関しては済まないね。だが、そうでもしなければここまで計画を進めることもできなかったんだ」

 

「クソが・・おいイトナ!俺と勝負しやがれ!!」

 

「全く・・・君は貴重あ存在だからあまり傷つけたくないのだけどね。仕方ない・・・イトナ!やれ!」

 

シロの指示を受けたイトナが触手を寺坂に向けて振るった直後、寺坂は持っていたフルボトルを自分の腕に突き刺した。すると、フルボトルは寺坂の中に入っていき、その体を異形の姿へと変えた。上半身が赤く、両肩には大きい盾のようなものがくっついており、左腕には先ほど寺坂が自身に差し込んだボトル・・・・『キャッスルフルボトル』がはまっていた。

 

そんな姿になった寺坂は持っていたシャツを使って触手を包み、うまく捕まえていた。

 

「ハードスマッシュ・・・どうやら実験は成功だったようだね。だが・・・」

 

「へへっ・・どうよ!自分が渡した力で邪魔された気分は!」

 

どうやらあの姿はハードスマッシュというらしいな。今までのスマッシュと違って自我も残ってるみたいだし。そのハードスマッシュになった寺坂は自慢気に言っている。多分ドヤ顔でもしてるんだろうな。

 

「まぁいい。イトナ!グリスになって彼を・・・「クシュン!!」・・なに?」

 

急にイトナがくしゃみをしだし、シロは何が起こったかわかってないな。それも仕方ないだろうが。

 

「寺坂のあのシャツ、昨日と同じ奴なんだよね。つまりあの煙を最も間近で浴びたシャツってことだ」

 

『同じ触手なら殺せんせーと同じようなことになる。さらに・・・』

 

俺が川に向けて指を指すと、それだけでみんな意図を察して川に飛び込んでいった。同じ触手なら水が弱点なのも同じだろうから、大量に水を吸い込ませればいい。そうすれば殺せんせーへのハンデもなくなる。

 

「くっ・・・ならば私も・・・」

 

『おっと、させないぜ!』

 

シロがネビュラスチームガンを取り出してカイザーになろうとしたが、俺が邪魔をする。カイザーになられると厄介だしな。

 

「石動惣一・・・!!」

 

『んで?どうするんだ、シロ・・・俺たち生徒を巻き込んだお前の作戦は頓挫するぞ?』

 

「それでも引かないっていうならまだ水遊びを続けさせてもらうよ?賞金持ってかれるのは嫌だしね」

 

俺とカルマの言い分を聞いた後、シロはしばらく黙っていたが、やがて諦めたように息を吐いた。

 

「はぁ〜・・・仕方ない。確かにその通りのようだ。寺坂くん!そのボトルは君に預けるとするよ。撤退するよ、イトナ」

 

そういって、シロはイトナを連れて立ち去っていった。ふー・・・・なんとかなったな。

 

「なぁ、惣一。あいつらなんだったんだ?」

 

『あぁ、そういや万丈は知らなかったな。後で説明してやるよ』

 

「何すんだよ、上司に向かって!!」

 

「何が上司だ!!触手受けさせる行かれた上司がどこにいんだよ!!俺がハードスマッシュになれたからよかったものの!!」

 

『なんだぁ?』

 

急に騒がしくなり、見てみるとハードスマッシュから人間に戻った寺坂が岩に座っていたカルマを川に落としていた。

 

「だいたいお前は偉そうにしといて、いつも美味しい所だけ持っていきやがって!!」

 

「あぁ、それ私も思った」

 

「この際、たっぷり泥水飲ませておこうか」

 

寺坂の文句にほかの生徒も賛同し、再び水遊びが開始した。その時にみんなの、そして寺坂の顔はとても晴れやかな笑顔だった。

 

 

 




ハードスマッシュを出せたー!!(ほかのハードスマッシュは出す予定今のところ無し)

後はクローズだけど、どうやって出そう。あぁ、あとエボルのか。

まぁ必ず出しますので気長にお待ちください!

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第32話 惣一の苦労、再び

期末テストの時間ですねぇ・・・・戦兎とIQが同じ惣一をどのようにするか大変です。

とりあえず第32話、どうぞ!


惣一side

 

 

 

「だからそこは・・・」

 

「だーくそ!!わけわかんねぇ!!」

 

「なんでだよ!!こんなにわかりやすく説明してるだろ!!」

 

「んな難しいこと俺がわかるわけないだろ!!」

 

「だからわかりやすく説明してるんだろ!!」

 

「ふ、二人とも、落ち着いて・・・」

 

『なんか前にもあった気がするんだが・・・デジャブか?』

 

俺たちは今、いつかのように地下室に集まって勉強をしていた。万丈が学校に編入して早数週間。季節は夏に入り、夏休みの近くなってきた。だが、学生にはその前にやるべきことがある。そう、期末テストだ。すでに学校でもテストに向けての勉強も開始していて、俺たち自身もこうして地下室に集まり勉強をしているわけだが・・・・

 

「いいか?もう一度説明するぞ?この三角形のこの辺を求める公式は・・・・」

 

「ふんふん」

 

「だからここにこれらの数字を代入して・・・・」

 

「ほんほん」

 

「んで、この式を計算して、答えはこうなる!」

 

「なるほど!わかった!」

 

「よし、それならこの同じような問題を解いてみろ。やり方は同じだ」

 

「よっしゃ!任せろ!」

 

本当に任せて平気なのだろうか・・・いや、任せるしかないんだが。とりあえず自分の勉強を進めるか。

 

そうして待つこと数分。万丈が問題を解き終えたらしい。

 

「よし!できたぞ!」

 

「んじゃ、丸つけするぞ・・・・・おい」

 

「ん?どうした?」

 

「見事に全問不正解だ!なんでできてねぇんだよ!」

 

「はぁ!?おかしいだろ!なんでだよ!!」

 

「こっちのセリフだ!!」

 

「だから二人とも、喧嘩しないで・・・」

 

『無駄だぜ、有希子。こいつらの耳には入ってないから』

 

「・・・はぁ・・・」

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「石動!万丈!今日の放課後空いてるか?」

 

次の日、朝登校すると磯貝がそう聞いてきた。今日の放課後か・・・。

 

「まぁ、勉強するぐらいだが・・・なんかあんのか?」

 

「前々から本校舎の図書室を予約してたんだよ。俺たちE組は優先度が低いからな。何人かで集まって勉強しないか?」

 

なるほど、図書室か。勉強することに変わりはないし、環境が変わることで何か変わることがあるかもな・・・よし。

 

「いいぜ、一緒に勉強しようか」

 

「よし!あ、後神崎も誘えたら誘ってくれ。人数は多い方がいいからな」

 

「あぁ、わかった」

 

「頼んだ!それじゃ、また後でな!」

 

図書室か・・・・随分久しぶりだな。

 

「なぁ、惣一」

 

「なんだ万丈?まさか図書室は何かとか聞かないよな?」

 

「んなわけないだろ!流石に図書室くらい知ってるわ!!」

 

「んじゃなんだよ」

 

「いや、この学校に図書室ってあったんだな」

 

「あるに決まってるだろ!学校だぞ!」

 

まぁ、とりあえずこのバカは置いといて、教室を見渡すと今回はやる気の生徒が何人もいる。それもそうか、今回は殺せんせーの提案により、各教科で学年一位を取った分、触手を一本破壊できる権利を手に入れられる。普段暗殺に積極的ではないやつも、自分の得意教科ならとやる気を出しているわけだ。全く、あの先生は本当に生徒のやる気を出すのがうまい。

 

『当然、お前も一位を狙っていくんだろ?』

 

当たり前だ。普段はあまり暗殺に参加しないが、一位を取ればそれが暗殺に繋がるんだ。俺も得意教科の数学と理科で一位を狙う。

 

『お前はやろうと思えば全教科一位も行けんだろ』

 

その必要は今はないだろう。それに、今はそれよりも万丈の方をどうにかするべきだろうが。

 

『それもそうだな・・・お、有希子がきたぞ』

 

「惣一君、万丈君、おはよう」

 

「おう、おはよう」

 

「よう、有希子」

 

「有希子、今日の放課後空いてるか?」

 

「放課後?空いてるけど・・・」

 

「さっき磯貝に声をかけられてな。図書室の予約をしておいたから、今日の放課後に集まって勉強しないかって」

 

「うん、いいよ」

 

「それじゃ、後で磯貝に伝えておくよ」

 

「わかった」

 

それにしても万丈にはどう勉強を教えるか・・・殺せんせーに聞いてみるか。

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

放課後、磯貝の呼びかけで俺と万丈、有希子以外には渚と茅野、中村、奥田が集まった。図書室内の机を使いそれぞれ自分のやり方で勉強をする。・・・・万丈は俺が教えているが。

 

そこでしばらく勉強していると、俺たちに話しかけてくるやつらがいた。

 

「おや、おやおや、これはE組の皆さんではないですか」

 

こいつらは・・・・確かA組の奴らだったな。それも五英傑って呼ばれている・・・・。

 

「君たちにここは豚に真珠がないのかな?」

 

「そこは俺らが使うからさっさとどけよ」

 

最初に五英傑の、え〜と・・・・・確か荒木鉄平(あらきてっぺい)だったな・・・と瀬尾智也(せおともや)がうざいことを言ってきた。

 

「ここは俺らが予約してとった席だぞ!」

 

「おいおい、忘れたのか?ここじゃ成績不振のお前らE組は俺たちに逆らえないってことを」

 

「さ、逆らえます!!」

 

「ん?」

 

眼鏡をかけた(荒木のだが)変な顔のやつ・・・確か小山夏彦(こやまなつひこ)だったな・・・の言い分に奥田が立ち上がって文句を言った。勇気あるな。

 

「わ、私たち、期末テストで全教科学年一位を狙ってます!そしたらもう大きい顔なんてさせませんから!」

 

「・・・なぁ、惣一」

 

「ん?今度はなんだ?」

 

「このバカっぽい奴ら誰だ?」

 

万丈がそういった瞬間、図書室内の空気が凍りついた。さすがバカ・・・空気読まないにもほどがあるだろ。まぁ今回はいいけど。

 

「いいか、万丈。こいつらは五英傑と言ってな?この学校のA組でも上の位にいる奴らなんだよ。確かにバカっぽいけど」

 

「おいこらお前ら」

 

「だけどな、お前よりは明らかに頭いいから。そこら辺はわかっておけ」

 

「おい」

 

「へー、こんなバカっぽいのにな。それじゃ惣一とは?」

 

「それは当然俺の方が上に決まってるだろ。俺が天才なのはお前もよく知ってるだろ?」

 

「おい無視すんな!!」

 

ちっ、うるせぇから無視してたのによ。しょうがねぇ、反応してやっか。

 

「なんだ?」

 

「なんだじゃねぇ!さっきから聞いてりゃ偉そうに!!」

 

「いや、だって実際そうだろ?成績に関して言えば俺はお前らよりも上なんだが」

 

「まぁ・・確かにそうだが・・・」

 

磯貝がなんか曖昧な返事をするが、とくに気にする必要はないな。

 

「まぁまぁ落ち着いて。ごらん、E組じゃなければ僕と釣り合う容姿なのに・・・せめて本校舎に来ない?」

 

「い、いえ、私は・・・」

 

有希子の声が聞こえたので見てみると、確か榊原蓮(さかきばられん)って奴が有希子に顔を近づけて髪を触っていた。・・・っておいこら。

 

「おいテメェ、何やってんだ?」

 

「ん?何だい?何か文句でも?」

 

「あるに決まってんだろ、その汚い手を有希子から離せよ」

 

「汚い手とは失礼な。君のよりもずっと綺麗だと思うが?」

 

こいつ・・・いちいちウゼェ・・・・なぁエボルト。

 

『なんとなく言いたいことはわかるし、同感だが言ってみろ』

 

こいつ消滅させていいか?

 

『うん、俺もさせたいがやめろ。やったらめんどくさいからな!』

 

ちっ!!

 

「まぁとりあえずこうしよう。僕らA組と君らE組で、5教科でより多く学年一位を取れたクラスが負けたクラスになんでも好きなことを命令できるってのは」

 

荒木が突然そんな提案をしてきた。すると瀬尾が渚の肩をバンバン叩いてこう言った。

 

「所詮は口だけか?俺たちは命をかけたっていいんだぞ」

 

瞬間だった。渚は瀬尾の喉元に、有希子は榊原の目に、磯貝は指を銃の形にして荒木の喉元に、万丈は立ち上がって奥田の前に立っていた小山の顔面に向けて拳を放ち、それぞれ寸止めで止めた。

 

「・・命は簡単にかけないほうがいいと思うよ」

 

渚がそう言い放ち、四人は雑魚キャラのようなセリフを言い残して図書室から去っていった。当然この話はすぐに学校中に伝わり、A組とE組の戦いは行われることとなった。

 

さてと、俺は・・・・

 

『とにかく数学と理科か?』

 

いや、その二つは勉強はある程度でどうにかなる。それよりも国語だ。実際に殺せない代わりに、テストで殺してやるよ、あの野郎(榊原)を!!

 

『ふっ・・・そうだな、俺もとことん付き合うぞ!!』

 

 

 




榊原・・・お前地球外生命体にも狙われることになったぞ・・・。死なないように頑張れ!

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第33話 期末テスト

惣一の点数が難しい・・・・多分こんな感じで大丈夫だと思うんだが。

とりあえず第33話、どうぞ!


惣一side

 

 

 

「というわけで有希子、国語を教えてくれ」

 

「・・・・うん、なんでそうなったのかはわからないけど分かった」

 

よし、これで国語はまだどうにかできるな。あとは万丈だが・・・

 

「ヌルフフフ、いいですか万丈くん。この問題を解くにはまずはこの公式を覚えましょう」

 

「あぁ、それは今まで何回も惣一に言われたぜ。全然覚えられねぇけど」

 

「ご安心を、そうだと思ったので先生、万丈くんで覚えられるようにまとめて来ました!」

 

万丈の方は殺せんせーが直接教えている。ちなみに今は地下室にいるが、殺せんせーがここに来てくれた。

 

「・・・・よし、万丈の方は殺せんせーに任せよう。俺たちは俺たちで勉強だ」

 

「そうだね。まずは何からする?」

 

「まずは、自分が不得意のやつからだ。俺の場合は国語や社会。有希子は確か数学と理科が苦手だったよな?その二つは俺ができるから、わからないところがあったら聞いてくれ」

 

「うん、ありがとう。惣一君の方も国語で質問があったら聞いてね」

 

「あぁ、頼む」

 

こうして、俺たちはお互いが得意、不得意のところを質問しあって理解していき、テスト勉強をしていった。・・・・・万丈は一人殺せんせーの授業を受けていたが。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

テスト当日。普段旧校舎で授業を受けている俺たちだが、この日は本校舎に行ってテストを受ける必要がある。そのため、俺たちは今本校舎を歩いていた。

 

「今日がテスト当日な訳だが、自信の方はどうだ、二人とも?」

 

「うん、理科や数学もわからないところは惣一君や殺せんせーに聞いたし、学年一位は無理でもある程度は行けると思う」

 

「おう、俺は完璧だ!」

 

「お前の完璧ほど信用できないものはないな」

 

「なんでだよ!!」

 

なんでって言われてもなぁ・・・・エボルトもそう思うだろ?

 

『あぁ、正直言って俺も信用できねぇ』

 

「ふふふ・・・・あれ?渚君と中村さん?」

 

テストを受ける教室に着くと、その教室の入り口に渚と中村が立っていた。だが、なぜか中に入らず立ち止まっている。

 

「渚、どうしたんだ?」

 

「あ、あぁ・・石動君・・・いや、あれ・・・」

 

「ん?」

 

渚が指差す先には、一つの人影が。ピンク色の髪の毛を束ね、二つに分けている。どことなく見覚えがある髪型だが、俺たちの気持ちは一つだった。

 

「「「・・・・・誰!?」」」

 

「律役だ」

 

「あ、烏間先生」

 

後ろから声をかけられたかと思うと、そこには烏間先生が壁に寄りかかって立っていた。その顔からは、どことなく疲れたような表情が伺えた。

 

「さすがに人工知能の参加は認められず、律が勉強を教えた替え玉で決着がついた。交渉する際の、『大変だな、こいつも』と哀れみの目を理事長に向けられた俺の気持ちが、君たちにわかるか?」

 

「「「「いや、ほんと頭下がります!!」」」」

 

『お疲れ、烏間』

 

ほんと大変だなこの人!よくそんなことをできるよ・・・さすがは防衛省の人間ってことか?いや、この人がすごいだけか。

 

「律の伝言と合わせて俺からも。・・・頑張れよ」

 

「はい!」

 

烏間先生の応援に、渚が元気よく頷いた。最初は英語、その次に国語、社会、理科ときて最後に数学。俺が苦手とする教科はどちらかというと最後の方だが、とにかくやるだけだ。万丈も心配だが、テストが始まっては何もできない。とにかく俺は自分のことに集中しよう。

 

そして時間が経ち、テストという名の戦いのゴングが鳴り響いた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

テストから数日が経過した。窓際では不破が紙を用意している。どうもそこに学年一位の数を記していき、A組とE組の戦いの結果をまとめるんだと。そうそう、言い忘れていたがあの後戦いの報酬についてA組から詳しく伝えられてな。勝っても要求できることは一つだけだって言われたんだ。ちなみに俺たちの要求はすでに決まっているため、あとは勝つだけだ。

 

「さて皆さん、テストの結果が届きました。・・・それでは、発表します」

 

殺せんせーが最初に出したのは英語。どうやら受けた順番に返すらしい。

 

「まずは英語から・・・E組の一位・・・・そして学年でも一位!中村莉緒!」

 

「「「「おぉーー!!」」」」

 

さすがは中村・・・・英語はバッチリだな。すぐに全員も英語は返却され、確認する。うん・・・・97点か、惜しかったな。だがま、とりあえずこれで触手一本とA組との戦いではリードだな。

 

「それでは次は国語です・・・・E組一位は・・・・・神崎有希子と石動惣一!!・・・・ですが残念、学年一位は浅野学秀!」

 

「「「「あぁ〜・・・」」」」

 

ちっ・・・学年一位は取れなかったか。ま、あの野郎(榊原)は潰せたしよしとするか。

 

『てか、お前国語もやればできるんだな』

 

失礼な、仮にも俺は天才なんだぞ?今までは必要ないから取ってなかっただけだ。

 

『嘘つけ、今回は有希子に教わったからだろ?じゃなければおかしい』

 

「次は社会です。E組一位、そして学年一位は・・・磯貝悠馬!!」

 

「よっしゃ!!」

 

おぉ〜・・・よく社会で一位を取れたな。今回はアメリカの会談の回数とか、知るわけがないような問題があったけど、すげぇな。これで触手は二本、ポイントも二点で今のところは勝ってる。次は・・・

 

「次は理科です。E組一位は奥田愛美と石動惣一!そして・・・・・素晴らしい!!学年一位も奥田愛美と石動惣一!!」

 

「よし!!」

 

やっと一位を取れた!まぁ、理科だったら取れると思ってはいたが・・・やっぱ取れると嬉しいな!!

 

『ふぁ〜あ・・・・これで触手は計4本か・・・そこそこいけたな』

 

おいエボルト、なんかいうことはないのか?

 

『いや、んなこと言われたって・・・理科と数学に関してはむしろお前が一位を取れてない方が驚きだしな・・・ってか、なんで理科と数学は毎回一位を取れるんだ?』

 

いや、特に難しくもないし・・・・普通にやってて解けちまうんだよ。

 

『普通に考えたら相当羨ましいことだぞ、それ・・・』

 

まぁいいじゃねぇか。とりあえずこれで賭けの方は数学の結果を待たずに勝ち越し決定だな。

 

『数学の結果だってわからなくてもどうせお前は一位だろうが』

 

多分な。俺以外はあとは・・・カルマか。

 

「さて、最後に数学ですが・・・・・」

 

そうして、全てのテストが返された。結果は数学のE組一位は俺、学年一位は俺と浅野の二人だった。

 

 

 




ちなみに惣一の順位は二位です。一位とは三点差で。

何かアドバイスをいただけるとありがたいです。

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第34話 一学期の終了

今回はちょっとだけシリアスがありますね。わかりづらい部分がありますが、ご了承ください。

それでは第34話、どうぞ!


惣一side

 

 

 

全てのテストが返却された。結果は中間と同じく学年二位と、惜しくも一位は取れなかった。

 

『つっても気にしてねぇだろ』

 

そりゃな。気にしてもしょがないだろ、過ぎたことだし。にしてもカルマのやつ・・・どうしたんだ?

 

『全てのテストの成績が落ちている・・・・惣一が今までと変わらない以上、テストの難易度があいつでもできないくらい上がったわけじゃない。しっかりと勉強をしていればもっと点数は取れたはずだ。と考えると・・・努力を怠ったか』

 

そう考えるのが妥当か・・・・たく、あいつがそれでどうするんだよ。

 

『ま、それに関しては殺せんせーの方がどうにかするだろう。俺たちが気にしてもしょうがない。・・・それで?万丈の方はどうだったんだ?』

 

あ〜・・・・まぁ、全体で見たらいい方じゃないか?このクラスだとビリだが、全体で見れば中間ぐらいの順位・・・・前日まで殺せんせーがあそこまで教えていたのが功を相違したかな?

 

『当の本人は筋トレさせろって、騒いでいたがな』

 

確かに、てかなんで筋トレなんだ?もっと他にもあるだろ、息抜きには。

 

『別にいんじゃねぇか?筋トレしてる間はあいつも静かだし。そういえば、あれはどうだ?』

 

あれ?・・・・あぁ、あれか。最近は勉強で手付かずだったからな。夏休み中には完成させたい。今日から専念するか。

 

『今日はこれで終わりだしな。さっさと帰ろうぜ』

 

そうだな。まぁ、今日から専念つっても、明日は修了式だし、早めに寝るか。最近は寝るの遅かったし。

 

『そういえば万丈は?』

 

万丈?確か走りに行くつってさっさといなくなったぞ。心配する必要はないだろ、バカとはいえガキではないし。

 

教室を出て歩き出し、本校舎に入ったところで見知った顔があった。

 

「・・・なんでこんなところにいるんだ?浅野」

 

「いや、君と話しをしたくてね」

 

A組、そして五英傑のトップであり、この学校の理事長の一人息子の浅野学秀だ。

 

「話?俺はとくにないんだが。早く帰ってやりたいことあるし」

 

「まぁそういうな。あまり時間は取らないさ」

 

「はぁ・・・しょうがねぇ。さっさと要件を言え」

 

全く・・・さっさと帰ってあれの制作を再開したいってのに・・・・。

 

「前回もだが、君はなぜ本気を出さない?」

 

「本気?・・・・・あぁ、テストのことか?」

 

「それ以外に何があるというんだ?君はあの事件さえなければA組・・・しかも僕とタメを張るほどの人間のはず。なのになぜ学年二位という結果なんだ?」

 

それ・・・・わざわざ言わないとダメなのか?てか、あのことを口にしやがって・・・・。

 

「別になんでもいいだろ。一位を取ったからって何があるというんだ?今回はお前らA組との賭けがあったし、個人的にも国語はいつも以上にさせてもらったが・・・・特に一位を取ろうとは思ってない。・・・これでいいか?たったそれだけとはいえ、あのことを口にされて俺は不機嫌なんだよ」

 

「っ・・・・だが!」

 

「まだ何かあるというなら・・・・お前も同じ目に合わせるぞ?」

 

俺は殺気も混ぜて浅野を睨みつける。普段は滅多に出さないが、やろうと思えばこれぐらいはできる。

 

「くっ・・・・いや、やめておこう。さすがに死にたくはないからね・・」

 

浅野はそう言って立ち去って行った。ったく・・・あいつのせいでやる気が失せたな・・・今日はもう寝るか。人目につかない場所に移動し、トランスチームガンで家に転移する。バックをそこら辺に放り投げ、ベットに横になる。案外すぐに眠くなって、俺の意識は途絶えた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

・・・・い・・・めろ!そ・・・・!

 

だま・・・・!おま・・・をき・・けた!!・・・が!!!

 

う・・・・ぁあ!!

 

黒いアンダースーツに赤や金で装飾されている、腰にベルトを装着している所々宇宙を彷彿とさせる姿をしている存在が、一人の男の首を掴んで持ち上げていた。これは・・・・・

 

おま・・・さ・・い!ぜっ・・・・に!!

 

た・・・けて・・・た・・・・・・れ!!

 

ベルトをつけている存在の腕からブラッドスタークと同じようなスティングヴァイパーが伸び、持ち上げていた男に突き刺した。

 

うあぁ・・・・・あああ!!!

 

男は悲鳴をあげ、その体を消滅させる。文字通り、体を残さず・・・・。

 

いす・・・くん。き・・・・E・・・きだ。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「っ!!・・・はぁ・・・はぁ・・・夢か・・・」

 

俺は目を覚ました。部屋の中は暗く、時間を確認すると深夜の1時だった。

 

「ちっ・・・・いやな夢を見ちまった・・・・やっぱあれが原因か?」

 

まさか、あれだけでもこんな夢を見ることになっちまうなんてな・・・・・最悪だ・・・・。

 

「はぁ・・・もう一度寝る気にもなれないな・・・・しょうがない、制作の再開とするか・・・」

 

ベットから立ち上がり、机に向かって歩き出す。机の上は綺麗とは言えず、いろいろなものが散乱している。その真ん中には、中の機械が見えている状態の機械が置かれている。

 

俺は椅子に座り、その機械をいじり出す。やっぱ、多少は気を紛らわせるな・・・・・。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

気づいたら朝になっていた。結局あの後一度も寝ることはなく、これも今回でだいぶ完成に近づいた。完成までは後1週間必要かどうかくらいだな。

 

「・・・・学校行くか・・・」

 

まだ時間は早いが、特に問題はないだろう。昨夜は気づかなかったが、床には万丈が寝ていた。・・・・・ほっとくか。

 

万丈はそのまま放っておいて、俺は一人学校に向かう。確か、修了式は四時間目からだったな・・・・。

 

はぁ・・・・あの夢のせいで驚くほどやる気が出ねぇ・・・・テスト前じゃなかっただけマシか。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「さて皆さん、今回のテストではよく頑張りました。それでは、早速暗殺の方を始めましょう。一位をとった4名は前へ(5本ぐらい余裕でしょう。六本はさすがにまずかったですが)」

 

殺せんせーが触手を5本前に出し、破壊を促してくる。だが、俺たちはまだ暗殺をする気はない。

 

「おい、待てよ」

 

「ニュ?」

 

そう思ってると、寺坂組の4人が殺せんせーの前に立った。なんだ?

 

「五教科トップは4人じゃねぇぞ」

 

「にゅや?4人ですよ寺坂くん。国、英、社、理、数で」

 

「アホ抜かせ、五教科つったら国、英、社、理、後・・・家だろ!」

 

そう言って寺坂が取り出したのは100点に家庭科テスト四枚だった。

 

「か、家庭科〜!!!??」

 

「誰もどの教科とは言ってなかったからな!」

 

「クックック・・・クラス全員でやればよかった、この作戦」

 

まさか家庭科で満点を取るなんてな・・・・予想外だ。

 

「で、でもいいの?惣一君は・・・・」

 

「ん?あぁ、別に構わないぜ。こっちの方が人数増えるし。それに、仮にも俺はカフェの経営者だぞ?飲食店のマスターを、舐めないでほしいな」

 

そう言って俺も家庭科のテストを教卓に置く。そこには他の四枚と同じように、100の文字が書かれていた。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!!家庭科なんて・・・・」

 

「家庭科なんてって・・・・失礼じゃない、殺せんせー?五教科最強の家庭科さんにさ!」

 

殺せんせーが反論する前に、カルマが殺せんせーを煽った。調子戻ってきたみたいだな。

 

「そうだぜ殺せんせー!」

 

「五教科最強の家庭科で、五人がトップ!!」

 

「合計触手9本!!」

 

「9本!?ヒエェエエエエ!!!」

 

「それと殺せんせー、この暗殺にはA組との賭けの戦利品も使わせてもらいます!」

 

「え?」

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

 

A組との賭けの戦利品、それは二泊三日の沖縄離島リゾート旅行。本来は成績優秀者であるA組が行くものだが、今回のテストは俺たちE組の上位に食い込んでいる、よって俺たちももらう権利がある、という殺せんせーの言い分に皆が賛同し、A組からこの権利を奪ったのだ。

 

この島は周囲が水で囲まれているため、水が苦手の殺せんせーを追い込もう。と考えている。

 

「正直に認めます・・・・君たちは侮れない暗殺者にやった・・・」

 

殺せんせーは困ったように、それでも嬉しそうにしている。すると殺せんせーはどこからか大量の紙を取り出した。

 

「親御さんに渡す成績表は先ほど渡しました・・・・これは、私から君たちへの成績表です!!」

 

そう言って殺せんせーはその紙を空中に放った。そこには紙一杯に花丸が描かれていた。

 

『こいつは、なかなか嬉しいんじゃないか?』

 

そうだな・・・・今までこんなことはなかったからな!

 

 

 

 

「暗殺教室!基礎の一学期!!これにて終了!!」

 

 

 




これで一学期が終了しましたね。

もしかしたらしばらくオリジナル回になる可能性があります。早くクローズやエボルを出したいな・・・。

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第35話 クローズドラゴン

サブタイ通り、クローズドラゴンが出ます!と言っても最初の方にだけですが。

今回はシリアスはないです。

それでは第35話、どうぞ!


◎side

 

 

 

とある研究所、そこでは一人の男が何かを作っていた。すぐ近くには様々な実験器具が一つに繋がれており、その内の一つには二本のフルボトルが装填されている。二本の内一本は、以前グリス・・・イトナが惣一から奪ったタンクフルボトルだった。

 

「ふむ・・・・ラビットとタンクだったか。どうりで見つからなかったわけだ」

 

その男は顎に手をやり、納得したように言った。

 

「さて・・・私もそろそろ動くとするか」

 

男は実験器具から二本のボトルを、さらに机の上に置かれていた数本のフルボトルと黒いベルトのバックルのような物を手の取り、立ち上がった。その男の顔は、どことなく惣一と似ていた。

 

 

 

◎side out

・・・・・・・・・・

惣一side

 

 

一学期が終了し、夏休みに入ってから四日が経過した。その間というもの、俺はずっと研究に専念していた。カフェ?どうせ客来ないから大丈夫だ。だが、そのおかげで予定よりも早く完成した。しかもタイミング的にはちょうどいい!

 

「よし、万丈!ちょっときてくれ!」

 

俺は早速万丈を呼ぶ。ちなみにあいつは今宿題をさせていた。のだが、あいつサボってんな。ん?俺は宿題どうしたって?んなもん渡された日に終わらせたわ。

 

「んだよ・・・こっちは疲れてるっとのに・・・」

 

「サボってたやつが言うなよ。お前のために作ってたやつが完成したんだよ」

 

「は?俺の?」

 

万丈がそう呟いた瞬間、俺の後ろから青い影が飛び出した。

 

『ギャオオン!!』

 

「うお!?なんだこいつ!?」

 

「そいつは『クローズドラゴン』。お前のお目付役として俺が作ったドラゴン型自立行動メカだ」

 

そう言ってる間にも、クローズドラゴンは空中を飛び回ってる。万丈がなんとか捕まえようとしているが、ジャンプ力が低く捕まえられない。

 

「簡単に言えば監視役だ」

 

「監視?なんのために」

 

「今さっきのようにお前がサボらないようにだよ。もしサボったりしたら・・・・」

 

『ギャオオン!!』

 

「うわっ!!あっち!!」

 

「・・・こんな風に炎を吐くから」

 

ちょうどいいタイミングでクローズドラゴンが青い炎を万丈目掛けて吐いた。あー・・・ちょっと焦げてんな。どうでもいいか。

 

『しかもそのクローズドラゴン、背中にフルボトルを装填できてな、装填したフルボトルに応じて様々な攻撃ができるんだ』

 

「説明サンキュ、エボルト。さらに言うとカメラ機能も搭載されているから、何かあったらクローズドラゴンを通じて俺に連絡がいくようになっている」

 

「なんの意味があるんだよ、その機能!!」

 

なんのためにって・・・そんなの決まってるだろ。

 

「お前のことだから勝手に何かしそうだろ。だからだよ」

 

「何かってなんだよ!」

 

「そんぐらい分かるだろ」

 

全く、全部説明しなきゃいけないのか?こいつは・・・。

 

『ん?おい、惣一。誰か来たぞ』

 

「は?誰か来たって・・・誰が?」

 

『この感じは客だな。3人いる。1人はわかるが・・あと2人は誰だ?』

 

「客?珍しいな・・・・ってかエボルト、お前なんでわかるんだ?」

 

純粋に疑問に思った。ここからは見えないはずだが・・・・

 

『あぁ、言ってなかった?気配をなんとなく感じれるんだよ』

 

「気配?」

 

『あぁ。E組の生徒の気配だったら覚えたからな、この距離なら感じれるし、今来たのは1人は少なくともE組の生徒だよ』

 

ふ〜ん、E組の生徒か・・・とりあえず接客だな。

 

「は〜い、いらっしゃ・・・あれ?磯貝じゃん」

 

「お、よう!石動!」

 

カフェに行って挨拶すると、そこには磯貝がいた。なるほど、エボルトが言ってたのは磯貝だったのか。んで、あと二人は・・・・

 

「「こんにちは!!」」

 

「お、おう、こんにちは」

 

よく見ると子供が二人いた。磯貝とかなり似てるし、妹と弟かな?

 

「悪いな、いきなり来て」

 

「いや、別に構わないさ。一応カフェんだしな。それで、どうしたんだ?」

 

俺が聞くと、磯貝は困ったような顔をした。なんでだ?

 

「それが・・・この間さ、前原たちと一緒にここに来たろ?」

 

「あぁ、そうだな」

 

「その時のことを二人に話したんだけどさ、そしたら行きたいって言うこと聞かなくて・・・」

 

「なるほどな。・・・・あれ?でもお前の家って確か・・・」

 

「あぁ、その通りだ」

 

だよな。確か磯貝の家は貧乏だったはずだ。だからこの間来た時も何も頼まなかったし。

 

「なぁ、石動。一番安いのってなんだ?それを二つ・・・・」

 

「ん〜・・・・一番安いのか・・・・それならサンドウィッチがあるけど」

 

「それを二つ頼む」

 

「わかった。少し時間がかかるが、待っててくれ」

 

俺はそう言いながら水を3人の前に出す。さてと・・・・

 

「そういえば万丈は?」

 

「あいつなら地下で宿題させてるぜ。さっさと終わらせたほうが後が楽だからな」

 

「それ、見てなくていいのか?」

 

「大丈夫だ。お目付役を作ったから」

 

「お目付役?」

 

「あぁ、まぁそれはまた今度見せるよ」

 

「そうか・・・ちなみに石動は宿題どうした?」

 

「もう終わってるさ、配られたその日の内にな」

 

「流石だな・・・」

 

まぁ、あえて言うなら日記って奴が残ってるが・・・それは適当に書けばいいだろう。っと、サンドウィッチが完成したな。あとは・・・・

 

「お、いい匂いがして来たな」

 

「だろ?ウチはコーヒー以外は自信があるからな」

 

「カフェなのにコーヒーは自信ないのかよ」

 

いや、あのコーヒーはコーヒーじゃねぇからな。下手したら人を殺せると思うぜ?

 

「っと、完成だ。はい、注文の品のサンドウィッチ三つとスクランブルエッグだ」

 

「わーい!!」

 

「えっ?ちょっと待て石動!サンドウィッチは二つのはずだし、スクランブルエッグは頼んだ覚えないぞ!」

 

「いいんだよ、これぐらい。お前には借りがあるし、ご馳走してやるよ」

 

「いや、でも・・・」

 

「気にすんなよ。俺よりもお前の方が大変だろうしな。これからも困ったらいつでもここに来い」

 

「・・・・そうか、悪いな。ありがとう」

 

「どういたしまして」

 

「おいし〜!」

 

子供達は早速サンドウィッチにかぶりついている。こんなにうまそうに喰われると、作った身としても嬉しいな。

 

「あ、そうだ石動。今度のリゾート旅行の前に、学校に集まれるか?」

 

「ん?それぐらいは全然問題ないけど・・・・・あぁ、訓練と会議か」

 

「そうだ、詳しいことはまた後で教えるが、一応万丈にも伝えておいてくれ」

 

「了解、伝えておくよ」

 

この時は思っていなかった。まさかこのリゾート旅行で・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

あんな事件が、そしてあの男と会うことになるなんて・・・・・

 

 

 




ちなみに僕は宿題は最後の方にやるタイプです。で、いつも辛い思いをするって言う・・・・同じ人いる?いるよね!?

次回は多分訓練回ですね。

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第36話 学校で虫取り

いや〜、訓練はまた次回ですね!

今回は主人公は全く出てきません!!

そんな第36話、どうぞ!!


万丈side

 

 

よっ!俺視点なのはこれが初めてだな!

 

どうして突然俺視点なのかと言うと、今ここに惣一がいないからだ。あいつは地下でやることがあるっつってな、出てこなかったんだ。え?そう言うお前はどこで何をしてるかって?そんなのは決まってるだろ!夏で俺たち学生がやることといえば!

 

「おっ、クワガタ発見!」

 

「マジか!俺にも見せてくれ!」

 

学校の裏山で虫取りだ!!これぞ夏!!宿題もほとんど終わらせたし(半ば強制的に)、俺は自由なんだ!!

 

「・・・・なんで僕ら学校に来てるの?」

 

「お?なんだ、渚。楽しくねぇのか?」

 

「いや、そういうわけじゃないけど・・・なんで夏休みなのに学校?って思って・・」

 

「ははは・・・ほら、俺は町育ちだからさ。こういうのに憧れてたんだよ」

 

渚の疑問に、杉野がそう返した。今回は杉野が誘ってくれてな、楽しそうだからついて来たんだ!

 

『ギャオオン』

 

「あ?なんだ、ドラゴン?」

 

ちなみにドラゴンは俺について来ている。まぁ惣一も俺のお目付役?って言ってたしな。・・・・・それにしてもお目付役ってなんだ?後で惣一に聞くか。

 

「それにしても、石動って何気にすごいよな。色々と」

 

「惣一がどうした?」

 

「いや、そのドラゴンを作ったのだって石動なんだろ?確か律をグレードアップしたのも石動だったし、普通なそんなことできないと思うから・・・」

 

「それに頭もいいしね。テストだって学年で二位なんだよ。なんでE組にいるのか不思議なくらい」

 

ん?そうなのか?よく分かんねぇや。

 

『ギャオオン!!』

 

「うぉっ!!あっち!!いきなり何すんだよ!!」

 

『ギャオオン!!』

 

いきなり炎を吐かれたので文句を言ったが、相変わらず何を言ってんのか分からん。惣一の奴、なんで喋れるようにしなかったんだよ!

 

「それにしても以外だったな。前原まで来るなんて・・・」

 

「ふっふっふ・・・今度俺たちは南の島に行くんだろ?だったら足りな「おい待てドラゴン!!」・・・いや、話聞けよ!!」

 

『ギャオオン!』

 

あ?なんか言ったか?まぁいいや、とりあえずドラゴンを・・・あ!あいつあんな高いところに行きやがって!!飛べるのが羨ましいぞ!!

 

「・・・はぁ、とりあえず万丈は放っておくか。それで、どこまで話したっけ?」

 

「えぇと・・・なんかが足りないとかなんとか・・・」

 

「あぁそうそう、金だよ金!!その程度じゃ駄目だろうけどよ?オオクワガタ?あれとかうん万円するとか言うじゃん!!それで金を稼いでチャンねぇを・・・「あれ?倉橋じゃん。そこで何してんだ?」・・・途切らすな!!てか話を聞け!!!」

 

あ?前原またなんか言ったか?まぁいいや。俺はドラゴンを追いかけていると、木の上にいた倉橋を見つけた。あんなところでなにやってんだ?

 

「ヤッホ〜!みんなもお小遣い稼ぎに来たんだね」

 

倉橋が上から俺を見下ろす。あれ?なんでドラゴンあいつの周りを飛んでいるんだ?

 

『ギャオオン!』

 

「あれ?この子・・・・」

 

「倉橋、ちょっとそのドラゴンを・・・「可愛い!!」・・・は?」

 

「この子可愛い!!」

 

えっ?可愛い?あいつが?・・・・いや、なんかの間違いだろ。なんであいつが可愛いって思うんだよ、ロボだぞロボ。

 

「ほらほらおいで〜!」

 

『ギャオオン!!』

 

って、懐くの早!?なんでだよ!?俺なんていつも炎吐かれるのに!!

 

「あ、そうだ!今じゃオオクワガタそんな高くないよ」

 

「マジで!?なんでだよ!?」

 

「昔は繁殖が難しくて希少だったんだけど、今じゃ繁殖もそんな難しくなくて希少価値が下がったんだ」

 

「ま、まさかのオオクワガタ大暴落かよ・・・・一クワ一チャンねぇぐらいだと思ってたのに・・・」

 

「ないない!今はチャンねぇの方が高いと思うよ?」

 

う〜ん・・・・よく分かんねぇな。チャンねぇとか、大暴落ってなんだ?

 

「万丈君、大丈夫?話についていけてる?」

 

「いや、さっぱり分からん」

 

「やっぱり・・・・」

 

むしろなんで分かるんだ?あんな訳わかんねぇ事を。

 

「私、この山の中に罠を仕掛けておいたから手伝って!うまくいけば一人千円は稼げるよ?」

 

「へっ。そんなチマチマ稼いで、お前らそれでもE組か?」

 

再び上から声がした。そっちを見ると、木の上に・・・え〜と・・・・名前なんだっけ?なんかエロ本読んでる奴がいた。

 

「岡島、それってどういう事だ?」

 

「俺もこの山に罠を仕掛けたんだよ。目標は当然100億!!」

 

「ひゃ、100億って・・・まさか!?」

 

あぁ、そうだ。岡島だ。すっかり忘れてたぜ!

 

『ギャオオン』

 

「あれ?ドラちゃんどこ行くの?」

 

突然ドラゴンがどこかに行き、倉橋はそれに付いて行く。ドラちゃんって・・・・。

 

俺たちもそれを追いかけ、しばらくするとひらけた場所に出た。岡島に言われ、俺たちはそこに出る直前で止まる。当然ドラゴンも止めた。あれは・・・殺せんせーか?ここで何してんだ?

 

「クックック・・・かかってるかかってる、俺のエロ本(トラップ)に!」

 

よく見ると、殺せんせーはエロ本を持っていた。さらにその下には大量のエロ本が敷かれている。

 

「ってか、なんだよあの格好・・・」

 

「クワガタに擬態してるつもりか?てか、すげぇな。マッハ20の殺せんせーが微動だにせずに見入ってやがる」

 

「よほど好みのエロ本なのか・・・」

 

「苦労したんだぜ?あそこまで調べるの。俺だって買えないから拾い集めてな!」

 

岡島が携帯を取り出し、ある写真を見せて来た。そこには今のようにエロ本を読みあさっている殺せんせーの姿が写っている。

 

「す、すごいよ岡島君!この一ヶ月、つぶたにエロ本を変えて観察してる!!」

 

「つーか大の大人が一ヶ月もエロ本拾い読みするなよ、なげがわしい」

 

う〜ん・・・・すごいようなすごくないような・・・やっぱわかんねぇな。

 

岡島の作戦は次の通りだ。あのエロ本の下には対先生物質の弾が入っているらしく、網がロープで繋がっている。誰かがここでロープを切り、動揺している隙に岡島が飛び出してトドメを刺す。普段なら簡単に避けられるだろうが・・・・今ならもしかしたら・・・。

 

そう思った瞬間だった。殺せんせーの顔・・・ってか目だな、あれは。がいきなりみょーんって伸びた。みょーんって。

 

「な、なんだあの顔は!?データにないぞ!?」

 

どうやら他の奴らも初めて見たらしく、突然の展開に驚いている。その時、殺せんせーが触手を伸ばし、何かを掴んだ。あれは・・・クワガタだよな?でも目が白い・・・。

 

「ヌルフフフ、ミヤマクワガタですね。しかもこの目の色は!」

 

「白なの!?殺せんせー!!」

 

「おや、倉橋さん」

 

殺せんせーの言葉が聞こえた瞬間、倉橋が飛び出してしまった。あ〜あ・・・・こりゃ失敗だな。てかなんであんなに喜んでんだ?

 

「なぁ、なんであんなに喜んでんだ?」

 

「さ、さぁ・・・・それは分からないが・・・」

 

「クワガタの姿をした巨大タコと女子中学生が、エロ本の上で飛び跳ねてるのって、何気にすごい光景だ・・・」

 

ふ〜ん・・・・これってすごい光景なんだな。あっ、殺せんせーが叫んだ。

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

「面目ない・・・・教師としてあるまじき姿・・・本の下に罠がある事は知ってましたが、どんどん先生好みになる本の誘惑に耐えきれず!!」

 

「すんなりバレてた!?」

 

「ははは・・・」

 

恥ずかしがる殺せんせーと驚きショックを隠せない岡島。大変だな。

 

『ギャオオン』

 

ドラゴンの声が聞こえ、そっちを見るとさっき殺せんせーが捕まえたクワガタがいた。ミヤマクワガタって言ってたよな。どんくらいの価値なんだ?

 

「なぁ、倉橋。このクワガタってすげぇのか?」

 

「うん、オオクワガタと違ってまだ繁殖方法が見つかってないからね。このサイズだったら二万は行くかも」

 

「二万!?」

 

「えぇ、それに目を見てください。白いでしょう?生物の授業でアルビノについて教えましたが、ミヤマクワガタのアルビノの目に出ます。アルビノのミヤマはとても希少であるため、売れば数十万はくだらない」

 

「数!!?」

 

いつのまにか復活していた殺せんせーがそう教えてくれた。アルビノ・・・アルビノ・・・そんなのあったか?

 

「一度見てみたいって殺せんせーに相談したらさ、ズーム目で探してくれるって!」

 

「ズーム、ズーム」

 

その目をズーム目っていうんだな。てか倉橋は知ってたのかよ。

 

「ゲスのみんなぁ!これ欲しい人手挙げて!」

 

「「「「欲しい!!」」」」

 

「あはは、どうしようかなぁ♪」

 

「あ、見つけたの先生なんですけど!?」

 

倉橋はミヤマクワガタを持ってどっかに行き、他の奴らはそれを追いかけていった。え〜と・・・・よく分かんねぇけど、楽しかったしいいか!!

 

 

 




万丈視点って初めて書いたけど、こんな感じでいいのか?

何か思うところがあれば教えてください。

感想、評価等宜しくお願いします!!

それでは、チャオ!!


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第37話 暗殺計画

今回はいつもより短めです。しかもあまり進みません。

とりあえず第37話、どうぞ!




惣一side

 

 

A組との賭けで手に入れたリゾード旅行兼暗殺を間近に控えたとある日。俺たちE組は学校に集まって訓練、作戦会議をしていた。

 

「ふん、この暑い中ご苦労なこったね」

 

そう言ったのはビッチ先生。俺たちが訓練で射撃をしている中、一人くつろいでいる。ウゼェ・・・・・。

 

「ビッチ先生も訓練しろよ、射撃じゃ俺たちと大差ないだろうに」

 

「大人は卑怯なのよ、ほとんどあんた達に任せて美味しいところだけ持っていくわ「ほほう・・・・随分えらくなったな、イリーナ」・・・ロ、ロヴロ先生!?」

 

偉そうに語ってたビッチ先生の後ろに現れたのはビッチ先生の師であり、俺と万丈の戦闘の師でもあるロヴロさんだ。突然の師の登場にビッチ先生は見るからに慌てている。ざまぁ。

 

「1日休めば腕や体は殺しを忘れる・・・・・落第が嫌ならさっさと着替えろ!!!」

 

「へ、へい!喜んで!!」

 

ロヴロさんに怒鳴られたビッチ先生はすぐに立ち上がって校舎に向かっていく。ビッチ先生もあの人には頭上がらないもんな。

 

「よっ、ロヴロさん!」

 

『ギャオオン!!』

 

「万丈君か・・・それと?」

 

「あぁ、こいつはクローズドラゴンだ。惣一が俺のお目付役に作ったんだよ」

 

『ギャオオン!!』

 

「そうか、大事にするといい」

 

ロヴロさんはまだドラゴンのことは知らなかったな。万丈がドラゴンの事をロヴロさんに紹介した。

 

『にしても、随分久しぶりだな。何かあったのか?』

 

「あぁ、困ったことが続いてな」

 

「困ったこと、ですか?」

 

「有能な殺し屋達と連絡が取れなくなったんだ」

 

『プロが次々に失敗しているのを聞いて、怖気付いたとかか?』

 

「かもな。今は、君たちに託すしかないんだが・・・ふむ」

 

ロヴロさんが紙の束を取り出す。そこには南の島で俺たちが行う予定の暗殺計画が書かれている。しかも、万丈でもわかるように絵付きだ。

 

「おい、なんか今バカにしなかったか?」

 

「何のことだ?」

 

咄嗟に誤魔化す。万丈の奴、変に勘が鋭いんだよな。

 

「なるほど・・・先に約束の触手9本を破壊、間髪入れずに一斉射撃か。それはわかるのだが・・・・この最初の精神攻撃とは何だ?」

 

書類の一番上には精神攻撃と書かれており、ロヴロさんはそれがわからずに聞いてきた。あ〜、それか。

 

「どうやら触手の扱いには精神が大きく左右されるらしいんです」

 

『そこでだ。まずは奴の恥ずかしいところを大量に見せ、精神を乱すことにしたんだ』

 

「この間なんかよ、山の中でエロ本拾い読みしてたぜ!」

 

「そうそう、『みなさんには内緒ですよ!』って、アイス一本配られたけど、今時アイス一本で口止めできるわけないだろう!!」

 

「「「「クラス皆で散々いびってやるぜ!!!」」」」

 

「他にも揺するネタはいくつか抑えていますので、まずはこれで追い込みます」

 

「・・・・・・残酷な暗殺方法だ・・」

 

そうか?まぁ、確かにこんな事しないだろうけどな。マッハ20が相手なんだからこんぐらいしてもいいだろう。あっ、そうだ。どうせだったら飲み物にコーヒーでも出すか。

 

『お、そりゃいいな!俺に淹れさせろよ!』

 

はいはい、分かった。任せるぞ、とびきり不味いのをな。

 

次にロヴロさんが注目したのは、E組の射撃能力だった。だが、プロの目線から見てもなかなかのものらしく、特に千葉と速水の二人に注目していた。教え子に欲しいくらいだと。

 

その後、ロヴロさんの指導のもと射撃を行ったり、渚がロヴロさんから何かを教わってたり、俺と万丈対ロヴロさんと烏間先生の模擬戦を行ったりした。え?結果?んなもの言わなくてもわかるだろ、ボロ負けだったよ。途中でエボルトに体奪われたしな。

 

『まぁいいじゃねぇか!』

 

何がいいんだよ、それじゃ意味ねぇだろ!!そんなこんなで、暗殺決行の日を迎えた。

 

 

 

 




次回から南の島編に突入ですね!どう変えるか決まってないけど。

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第38話 エボルトコーヒーの恐怖

エボルトコーヒーの恐怖・・・・なんのこっちゃ!!

第38話で確認して!!


惣一side

 

 

 

「あ!見えてきたよ!」

 

船の上で、倉橋がそう叫ぶ。それと同時に皆して船から乗り出してある一点を集中して見た。そこには、今回の目的地である離島、普久間島が確認できた。

 

「「「「島だぁ!!!」」」」

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

「普久間島へようこそ!こちら、サービスのトロピカルジュースです!」

 

島に到着し、俺たちは三日間世話になる予定のホテルに直行した。メインである暗殺は今日の夜、夕食の後に控えており、それまでは自由時間という感じだ。

 

「うぉ!このジュースうめぇ!!」

 

「もうちょっと静かに飲めないのか、万丈?」

 

「惣一も飲んでみろよ!」

 

「聞いてないな・・・」

 

「ははは・・・・」

 

たく、このバカは・・・。有希子の苦笑いしてるぜ。そんな俺は何を飲んでいるかというと自分で持ってきたコーヒーだ。缶だけどな。あぁ、安心しろ。しっかりと豆とミルを持ってきたから。あとでエボルトに淹れさせるさ。

 

『楽しみだな!どんな風になるか!!』

 

今回はとびきり不味くしろよ?じゃないと意味ないからな。

 

『分かってるって!んじゃ惣一、味見を頼むぞ』

 

・・・・・は?

 

『いや、普段ならともかく今回は暗殺に使うんだぞ?それだったら味を確かめておく必要があるだろ!』

 

いやいやいや!!それでなんで俺が飲まなくちゃいけないんだよ!!万丈に任せろよ!!

 

『別にいいだろ?死ぬもんじゃないんだ』

 

最悪死ぬだろ!俺はまだ死にたくないんだ!!!

 

『おいおいなに言ってんだ惣一、お前に拒否権はない!!』

 

ふざけんなぁぁぁぁ!!!!!!

 

「そ、惣一君?大丈夫?」

 

「・・・・・・・」

 

様子がおかしくなった俺を心配してくれたのだろう、有希子がそう聞いてきたが、正直今の俺に返事をする気力はない。そりゃそうだろ、エボルトのコーヒー・・・しかも今回持ってきたのは今までエボルトが淹れたコーヒーの中でも一番まずかった豆だ・・・・それを飲まされるって事は、言ってしまえば死刑宣告されてるようなものなんだ。くそ・・・・暗殺のためにとエボルトが入れるコーヒーの中でも一番不味いやつを持ってきたのが悪かったか・・・・。

 

「なぁ有希子、なんで惣一のやつが死にそうな顔になってんだ?」

 

「さ、さぁ・・・・」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

ホテルで一休みしたあと、俺たちは動き出した。修学旅行のときにように班別行動をし、殺せんせーが時間ごとに一つの班と一緒に行動していて、その間他の班は暗殺の準備を、殺せんせーと一緒に行動している班は他の班に目がいかないようにしていた、はずだ。はずなのだが・・・・・ほとんど覚えてないし正直どうでもいい。今現在エボルトが鼻歌交じりにコーヒーを淹れているんだ。体はエボルトが使ってるため逃げることもできず、俺はただ待つ事しかできなかった。

 

『ふんふふ〜ん♪』

 

なんでこいつこんなご機嫌なんだよ・・・・俺はむしろ最悪な気分だよ・・・・。

 

『よっしゃできた!!んじゃ惣一、味見を頼むぜ?』

 

うっ!ついにきてしまったか・・・・体の主導権が俺に戻ってくる・・・のだが、なぜか顔しか動かせない。なんでだよ!?

 

『そりゃそうだ。顔のコントロールしか返してないからな』

 

「はぁ!?どういう事だよ!!」

 

『そのままの意味だ。顔のコントロールだけ返し、他はまだ俺が動かせるんだ。こんな風にな』

 

エボルトがそう言うと、俺の意思で動かせなかった右手が勝手に動き出した。こいつ・・・・なんて器用なことを!!!

 

『言っただろ?お前に拒否権はないってな・・・・さぁ、飲んでもらうぞ!!』

 

勝手に・・・て言うかエボルトが動かした右手はコーヒーを取り、ゆっくりと俺の口に近づけてくる。くっ・・・・なんだこの怖さは!?戦いなんかよりも何十倍も怖いぞ!!

 

『さぁ・・・さぁ・・・さぁ!!!』

 

「くっ・・・・・クソォォォオオ!!!」

 

 

 

 

 

 

数時間後、夕食のために俺を呼びにきた有希子と万丈に倒れているところを発見されるのだった。

 

 

 

 

 




実際エボルトのコーヒーってどのくらい不味かったんだろう?

一応戦兎は飲めてはいたからここまで酷くはないだろうけど・・・・。

暗殺は次回です。

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!



あ、もしかしたら次回あたりから前書きが変わるかもしれませんので。


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第39話 暗殺の決行

惣「A組との賭けで手にいれたリゾート旅行、その目的地である普久間島についた俺たちは小休憩の後、殺せんせーと楽しみながらも暗殺の準備をしていた。そんな中・・・」

万「いや、ちょっと待てよ」

惣「どうした?」

万「いや、どうしたじゃねぇよ!!いきなりなんだよこれ!?」

惣「なんだって、あらすじだが?」

万「今までなかっただろ!なんでいきなり!」

惣「そんなこと気にすんなよ。ほら、お前も早く」

万「お、おぉ・・・・そんな中、エボルトが作ったコーヒーを強制的に飲まされた惣一は倒れ、数時間後に万丈と有希子に発見されるのだった・・・・なぁ、エボルトのコーヒーってそんなに不味いのか?ってか、殺せんせーに効くのか?」

惣「あぁ、とびっきり不味いぞ。んで、殺せんせーに効くのかどうかは・・・・・第39話で確かめるぞ!」

万「分かんねぇのかよ・・・・」



惣一side

 

 

 

「うっ・・・・・・」

 

「だ、大丈夫?」

 

場所を移動して船上レストラン。乗り物が苦手のここで夕食をとって殺せんせーを酔わせると言う俺たちの計画だ。なのだが・・・・・今現在、その被害は俺にも及んでいる。

 

おかしい・・・・最後に時間を確認した時は少なくとも3時ぐらいだったはずなのに・・・・気がついたらもう夜だぞ・・・。その間の記憶がなにもない。覚えてるのはただ一つ、とんでもなく不味いコーヒーを飲んだことだ。あの後から記憶がない。

 

「なんか飲むか?持ってくるぞ」

 

「悪い、万丈・・・頼む」

 

俺が頼むと万丈は飲み物を取りにどこかに行った。万丈が戻ってくるまでの間、俺はなぜか真っ黒の殺せんせーを見る。なんであんな黒いんだ?

 

「「「「だから黒いよ!!!」」」」

 

あ、他の皆からも言われてる。まぁそうだよな。

 

「そんなに黒いですか?」

 

「表情どころか、前も後ろもわからないよ」

 

「ややこしいからなんとかして」

 

「ヌルフフフ、お忘れですか皆さん?先生には脱皮があることを!!」

 

殺せんせーは一瞬で黒い皮を脱ぎ去り、いつもの黄色い姿に戻った。あれ?脱皮って確か・・・・

 

「あっ、月一回の脱皮だ!」

 

「こういう使い方もあるんですよ。本来はやばい時のための奥の手ですが・・・・あ・・・」

 

そうだよな、脱皮は月一回だったはずだ。それでやばい時の奥の手って・・・この後暗殺があるんだけど。

 

「ばっかでぇ・・・・自分から戦力減らしてやんよ」

 

「どうしてこんなドジ未だに殺せないんだろう・・・・」

 

やってしまったと言わんばかりに落ち込む先生に対し、生徒たちは呆れてしまう。何やってんだか・・・・。

 

「ほら、惣一。水だけど」

 

「サンキュ」

 

ちょうど万丈が水を持って戻ってきたため、その水を受け取って一気に飲み干す。あ〜・・・これで多少は楽になったな。

 

さてこの後は、この旅行一番の目的の暗殺だな。

 

 

・・・・あ、ここの料理美味しい。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

夕食が終わり、船上レストランを出た俺たちはホテルの備え付けてあるチャペルの一つに移動した。その中にはそこそこ大きめのテレビが一台と三村がいた。

 

「楽しい暗殺、まずは映画鑑賞から始めようぜ?」

 

殺せんせーをテレビに一番近い椅子に座らせ、俺たちはその後ろの席に座る。三村がリモコンを操作して、彼が編集した動画が始まった。

 

『なぁ、惣一。俺と変わってくれないか?』

 

は?なんでだ?

 

『いや、俺も楽しみたいなって』

 

楽しむって、何をだよ。てか俺がやること全然ないじゃん。別にいいけどさ。

 

『よっしゃ!』

 

喜ぶエボルトに体の主導権を渡す。なんか楽しむことあったか?

 

標的(ターゲット)の殺せんせーは動画を見ていながらも、このチャペル唯一の入り口に注意を向けてるのがわかる。こりゃ、スナイパーの位置がばれちまったか?この場に千葉と速水がいないのはわかってるだろうし。

 

「にしてもよくできている。編集は三村君ですか、カット割りといい編曲といい良いセンス。ついつい引き込まれ・・・にゅ?」

 

殺せんせーが画面を見ながらそう言ったが、画面に映った前原と岡島、万丈の3人を見て様子が変わった。

 

『今回、情報を頂いた方々にお越しいただきました。お話を聞く前に、続きをご覧ください』

 

三村の紹介の後、再び画面が変わった。そこにはカブト虫のコスプレをし、エロ本を拾い読みしている殺せんせーが映し出された。

 

『買収は・・・失敗した』

 

「失敗したぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!?」

 

殺せんせーにとっては驚愕の真実に、ひどく驚く。だが、これで終わるわけがない。

 

『ケーキバイキングに並ぶ巨影・・・誰であろう、奴である』

 

次に映し出されたのは、女装をしてケーキバイキングの行列に並ぶ殺せんせーの姿。すぐにつまみ出されてたが。

 

『バレないはずがない!女装以前に、人間だとバレなかっただけ奇跡である!』

 

その後にも無料配布のポケットティッシュを大量にもらって揚げて食べたりしている恥ずかしい姿が映し出され、その後も次々と暴露されていく。

 

「クックック・・・エロ本拾い読みに女装に恥ずかしくないの?このど変態」

 

『まぁまぁ狭間、あんまり言うと殺せんせーが可哀想だろ?ほら殺せんせー、コーヒーを用意したから、これでも飲んで落ち着け』

 

「ウゥ・・・ありがとうございますエボルトさん・・・・・・・って、まっずぅううううううう!!!!!」

 

エボルトの手によって直接渡されたコーヒーを殺せんせーはそれを一口飲み、そして思いっきり吹き出した。

 

「な、なんですかこれは!?本当にコーヒーですか!?」

 

『コーヒーに決まってるだろ?それよりもっと飲むだろ?』

 

「いいです!!もう結構です!!」

 

『遠慮すんな、まだまだあるんだからな!!』

 

エボルト・・・楽しんでんな。てか以外と効果あったな。まぁないと困るんだが。

 

『ほら!ほら!』

 

「石動君!!エボルトさんを止めてください!!」

 

殺せんせーが俺に助けを求めてきた。はぁ・・・・

 

「分かったよ、殺せんせー・・・・・俺と同じ苦しみを受けろ!!」

 

「見捨てられたぁぁぁああああ!!!!」

 

見捨てられた?なに当然のことを言ってるんだ。そうじゃなきゃ俺が飲んだ意味がないじゃないか。

 

『こんなものでは終わらない!この教師の恥ずかしいところを、一時間たっぷりとお見せしよう!』

 

「あと一時間もぉ!!?」

 

『さぁ殺せんせー、コーヒーはまだあるぞ!』

 

「もうやめてぇーーーー!!」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

一時間後、エボルトが用意したコーヒーもだいぶ数が減り(エボルトがほとんど強制的に飲ませてたからな)、殺せんせーの恥ずかしいところも見せ終えた。そんな精神攻撃を受けた殺せんせーはすでに死んでいるような顔をしていた。

 

『さて、これで動画は終わりだが・・・・・・何かお気づきじゃないだろうか、殺せんせー?』

 

「うぅ・・・・・にゅ?」

 

そこで殺せんせーは初めて気づいた。チャペルの中に水が流れていることを。

 

「水が!?流す気配なんてなかったのに!まさか・・・満潮!?」

 

さすがは先生、すぐにそこにたどり着いたか。だけど、もう遅いぜ?

 

「誰かが小屋の主柱でも短くしたんだろ」

 

「船で酔って、恥ずかしい思いして、不味いコーヒー飲んで、水を吸って・・・だいぶ動きが鈍ったはずよね」

 

「さぁ殺せんせー・・・暗殺の開始だ。約束なんだ・・・避けるなよ」

 

磯貝、中村、奥田、寺坂、村松、吉田、狭間が一本ずつ、俺が二本触手を破壊。次の瞬間、チャペルの壁が破壊されて外で待機していた奴らがフライボードで水の檻を作り出した。渚のおかげで、殺せんせーが突然の環境変化に弱いことはわかっている。そこに触手を破壊した俺たちと律が殺せんせーの周囲1cmの範囲に弾幕を張る。

 

「殺せんせーは自分に当たる銃弾に敏感だ!」

 

「だから、あえて先生を狙わない!!」

 

俺たちの予想通り、自分が狙われない弾幕に殺せんせーは慌てている。そこに・・・トドメの二人、千葉と速水だ。二人は今海に入っており、水面からライフルを構えていた。最初、殺せんせーは入り口の先にある山の方に注意を向けていたが、それはスナイパーである千葉と速水の匂いが染み込んだダミー。チャペルを破壊し、水の檻を作り出すことで全く別の新たな狙撃ポイントを作り上げたんだ。

 

『ここまでされちゃ、さすがに何もできないだろう?これで・・・ゲームオーバーだ』

 

エボルトのその言葉を合図に、千葉と速水がライフルの引き金を引いた。その二つの弾は水の檻の隙間を通り抜け、殺せんせーに一直線に向かっていった。その瞬間、凄まじい光と衝撃と共に、大爆発を起こした。

 

 

 




今回から前書きではあらすじを書いていこうと思います!ビルドのようにね!!

あらすじではセリフの前に名前の一文字目を書いていますが、今回だけかもしれません。

あった方がわかりやすくていいという場合は教えてください。

感想、評価等宜しくお願いします!!

それでは、チャオ!!


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第40話 第三者の影

惣「普久間島での暗殺がついに開始した。俺たちが生徒が計画した作戦通り最初に三村が作った動画で精神を・・・・」

万「俺、初めて知ったけど殺せんせーってあんなに精神攻撃が効くんだな!!ってかめちゃくちゃ恥ずかしいところあったし!!」

惣「あらすじ紹介の最中に入ってくるなよ。お前もあらすじ紹介しろ」

万「おう!えぇっと・・・・テストで学年一位をとった8人が触手を破壊、チャペルを破壊し水の檻を・・・・なぁ、いくら暗殺のためとはいえ壊して大丈夫だったのか?ホテルの私物だろ?」

惣「そこらへんは烏間先生がどうにかするでしょ。そのためにいるようなもんだし」

万「ふ〜ん・・・・・んで、水の檻を作ったことで新たな狙撃ポイントを作り出し、スナイパーである千葉と速水が銃弾を放った」

惣「その瞬間、眩しい光と衝撃が俺たちを襲った!さぁ、どうなる第40話!」

万「一人で言うなよ!俺にも言わせろ!!」

惣「主役俺だし良いだろ?」



惣一side

 

 

 

「ぷはぁ!」

 

『すごい爆発だったな。大丈夫か?』

 

「あぁ、特に問題はない」

 

俺たちが計画した暗殺、その結果は明らかに普段とは違い、殺った手応えを感じた。その証拠と言ってはなんだが、殺せんせーは大きな爆発を起こしている。

 

「気を抜くな!周囲を警戒しろ!」

 

烏間先生がすぐに駆け寄り、指示を出した。それに従い、磯貝と片岡が中心となって周囲に気を配る。その時、円のように広がっていた俺たちの中心に気泡が出てきた。

 

『あれは・・・・』

 

「まさか、殺せんせーか?いや、だが・・・」

 

中心に出てきた気泡、俺たちはその気泡に警戒心をあらわにし、中には銃を向けている奴もいた。気泡はだんだん多くなり、そして・・・・・

 

「ふぅううう!」

 

透明なボール状の何かに包まれた殺せんせーの顔が出てきた。・・・・・は?

 

『なんだ?あれ・・・・』

 

周りの奴らも、俺やエボルトと同じ反応をしている。いや、むしろそれが自然だけど・・・・・。

 

「ヌルフフフ!これぞ、先生の奥の手中の奥の手!!『完全防御形態』!!!」

 

「「「「完全防御形態!?」」」」

 

殺せんせー曰く、あの殺せんせーの顔を包んでいる透明なボール状の物体はエネルギーの結晶体らしく、あらゆる武器や物質が何も効かないらしい。それが例え対殺せんせー物質でもだ。寺坂がレンチで叩いたり、俺がトランスチームガンで光弾を当てたりしたが傷一つつかなかった。のだが・・・

 

「へ〜、傷一つつかないんじゃ意味ないねぇ」

 

カルマが地上から殺せんせーを渡すようジェスチャーしてきたので、投げて渡す。するとカルマは殺せんせーを地面に置くと、その目の前にスマホを置いた。画面に殺せんせーの恥ずかしい姿を映して。

 

「にゅやあぁぁぁああああ!!やめて!手もないから顔を隠せないんです!!」

 

「あぁごめんごめん!とりあえず、そこらへんでウミムシ見つけたからくっつけとくね♪」

 

「うわっ!気持ちわる!!」

 

動きねぇから弄り放題ってか?こんなときのカルマは相変わらずだな。

 

結局、殺せんせーは烏間先生が預かることとなり、俺たちは大掛かりな暗殺は失敗という結果に終わった。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「エボルトから見て・・・どう思った?」

 

『・・・どうって?』

 

「とぼけるな。暗殺に決まってるだろ」

 

『・・・・そうだな。俺から見てもこれはいけると思った。だが、奴はあの完全防御形態を隠していたんだ。今までその情報がなかった以上、それを使わせただけ十分だと思うがな』

 

「・・・そうか・・・」

 

暗殺の後、俺たちはホテルに戻った。みんなは来た時に小休憩した場所と同じ場所で休んでいるが、俺は部屋に戻り律が撮った映像を確認していた。それからあの形態になるまでどのくらい時間がかかるのか、調べようとしたがあの時の爆発の時に生じた光によって測定ができなかった。

 

「ちっ・・・・測定不能か」

 

『ここまで計算してたのか、はたまたただの偶然か・・・どちらにせよ、殺せんせーには一本取られたな』

 

ここまで大掛かりな作戦をしても失敗したんだ・・・・俺だけじゃなく、他のみんなも悔しいだろう。だが、いつまで悩んでてもしょうがない、か。

 

『とりあえず、みんなのところに行こうぜ。なんか話せば気持ちも変わるだろ』

 

「それもそうだな」

 

失敗したのはしょうがない。エボルトの言う通り、完全防御形態のことを知れただけでも良しとしよう。そう思って席を立ち、みんなのいる場所に向かった。だが、一階についたところで何か慌ただしい事に気づいた。

 

「なんだ?」

 

『何かあったのか?・・・とにかく、みんなのところに向かうぞ』

 

「あぁ・・・・」

 

何があったのか気になりつつも、俺はみんなのいるところに向かう。だが、そこで何があったのか知ることになった。

 

「は?」

 

『おいおい・・・なんだよ、これは・・』

 

そこでは、生徒の内の何人かが顔を赤くして倒れている光景が広がっていた。

 

「惣一!」

 

「万丈!一体何が・・・有希子!!」

 

万丈の声がし、そっちを見て何があった聞こうとしたが、その前に有希子が倒れているのが見えた。俺はすぐに駆け寄る。

 

「有希子!おい!」

 

『万丈!何があったか説明しろ!』

 

「それがよ、ウイルスに感染したみたいなんだ」

 

『ウイルスだぁ?』

 

「あぁ。んで、さっきそのウイルスを感染させたらしい奴から電話があってな。ワクチンは今そいつが持ってる分しかないらしく、殺せんせーと引き換えに渡してやるって」

 

『殺せんせーが目的・・・・こんな時に第三者かよ!!』

 

「しかも、ワクチンが欲しけりゃ動ける中で背が小さい男女二人に、この島の頂上にあるホテルまで殺せんせーを持ってこいだとよ」

 

「動ける中で背が小さい男女って・・・渚と茅野か!?」

 

『最悪人質増やすみたいなもんじゃねぇか!』

 

「それで、今どうするか考えてる最中なんだが・・・」

 

さっきホテルの中を見たが、従業員の中で同じ症状が出た人は居なそうだった。ってことは、完全に俺たちに目的を絞ってる。この時点で空気感染じゃなく経口感染なのはわかるが・・・・なんだ?何にウイルスが混じっていた?

 

その時、スマホが鳴り律が映った。

 

「殺せんせー、OKです!」

 

「ヌルフフフ、律さんに頼んだ調べごとも終わったみたいですし、動ける人は動きやすい服装に着替えてきてください。あぁ、汚れてもいい格好でね」

 

なんだ?なんか良い案でも浮かんだのか?

 

 

・・・・・・・・・

 

 

殺せんせーの指示で動きやすい服装に着替えて車でとある場所に向かう。外は見えないが、だんだんと上がっていってるのは分かる。

 

やがて車が止まり、外に出る。目の前にはそこそこの高さがある崖がそびえ立って居た。これは、例のホテルの裏側か?

 

「どうやらホテル周辺には大量の監視がいるみたいです。ですが、ある一点だけ、ここを上がった先にある裏口には監視がいません」

 

「なるほどな。ってことは・・・」

 

「石動君が思っている通りです。今からここを登り、患者と看病に残した二人を除いて動ける全員で突入し、ワクチンを奪取します!」

 

 




次回から普久間殿上ホテルに潜入!イェーイ!!

特に何も決まってないけどね!!主人公たちに何させよう!

感想、評価等宜しくお願いします!!

それでは、チャオ!!



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第41話 潜入

惣「自分たちが計画した渾身の暗殺が失敗に終わり、生徒たちはやる気を無くしていた。そんな中、中村と岡島を始め何人かの様子がおかしく・・・・・」

万「なぁ、これって実際書かれてなかったよな。あらすじになってるのか?」

惣「大丈夫だろ。それに何があったか説明しとかないと読んでいる人たちもわかんないだろうし」

万「今までやってなかったくそによく言うよ」

惣「さぁ、どうなる第41話!!」

万「いきなりだな!」


惣一side

 

 

 

「にしても・・・結構高いな」

 

「本当に登るのか?」

 

崖を前にして、その高さを改めて実感する。結構高いが、ここを命綱なしか・・・・・。

 

「トランスチームガンで行くことはできないのか?」

 

「無理だな。トランスチームガンで転移するにはその場所のイメージを持ってなくちゃいけないし、この数を一気に転移させたら何かが原因でバレるかもしれない」

 

以前律の前マスター(笑)の所に行った時はエボルトが場所のイメージを教えてくれたからいけたが、今回は調べてるわけでもないから不可能だ。てか、そもそも使う必要もないだろう。

 

先生たちが見てないが、すでに生徒達は崖に手をかけ登り始めていた。これぐらいはな。

 

「渚君、茅野さん、すまないが・・・・・何っ!?」

 

ここで初めて気づいた。俺たちがすでに登り始めていることに。

 

「崖ぐらいなら楽勝だよな!」

 

「普段の訓練に比べたらねぇ」

 

「だね」

 

烏間先生の指導の元、俺たちは普段からクライミングはやっているし、俺は昔エボルトの指導でやったことがある。結構の高さはあるが、この崖はそれだけ。俺たちにとってここを登るのはテストで学年一位を取るよりも簡単なことだ。

 

「でも、未知の場所で未知の敵と戦う訓練は受けてないので、烏間先生!難しいけど、指揮頼みます!」

 

磯貝が止まって後ろを向いたため、俺たちも止まって後ろを向く。そこでは烏間先生がこっちを見上げていた。

 

「・・・・・わかった。ハンドサイン等は訓練のものをそのまま使用する。3分でマップを叩き込め!20:58!作戦開始!!」

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

言われた通り3分でマップを覚え(エボルトが)、再び崖を登り始めた。にしても・・・・・

 

「遅ぇぞ、お前ら!」

 

「置いとくよぉ〜」

 

万丈と岡野・・・相変わらず早いな。こんなことさせたらE組で一番だ。

 

『それに引き換え・・・・』

 

下を見ると烏間先生も登っている。ビッチ先生と殺せんせーを持って・・・・。

 

『なんでビッチの奴まで来てんだ?』

 

「除け者みたいでいやなんだとよ」

 

『ただの我が儘か』

 

とりあえずあの二人は烏間先生に任せて、さっさと登るぞ。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

崖を登り、もう一度マップを確認してからホテルに入る。裏口は鍵がかかっていたが、律のおかげで難なく入れた。そのままエントランスまで行ったのだが、そこで大量の監視がいることがわかった。

 

『おいおい、こんなのどうやって突破するんだ?』

 

「んなこと言われても・・・・人数を減らして行くか?」

 

『だが、それはそれで危険だぞ』

 

そうなんだよな・・・・おそらく烏間先生も同じ考えだろう。トランスチームガンが使えないのがかなり辛いな・・・・。

 

「何よ、普通に通ればいいじゃない」

 

「・・・・は?」

 

俺たちがどうやって通るか考えてる中、そう行ったのはビッチ先生だった。普通にって・・・どうやってだ?

 

ビッチ先生は入り口から中の様子を確認し、堂々と中に入って行った。だが、その瞬間から体の動きが変わり、なんか酔ってるみたいな動きをし始め、中にいた監視の一人にわざとらしくぶつかり、二言三言交わしてからピアノを指差した。ピアノで何をするんだ?ビッチ先生はそのピアノに手をかけ、ゆっくりと演奏を始める。なのだが・・・・

 

『うまいな』

 

「幻想即興曲・・・・・」

 

弾き始めた曲は幻想即興曲だった。それも相当うまい。ハンドサインで20分稼ぐといい、その間に俺たちはエントランスを突破することができた。

 

『あいつ、ピアノ弾けたんだな』

 

「初めて知ったよ、そんな素振り今まで見せてなかったから」

 

「普段の彼女から侮らないことだ。優れた殺し屋ほど万に通じる・・・・・君たちに外国語を教えているのは、世界でも一位二位を争うハニートラップの達人なのだ」

 

万に通じる・・・・か。すごいんだな、殺し屋って。

 

ビッチ先生の活躍により先に進むことができた俺たちはさらに上に登って行く。

 

 

 

 




・・・・最後の方適当じゃね?ま、いっか(よくない)。

感想、評価等宜しくお願いします。

それでは、チャオ。


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第42話 毒ガス使い

惣「ワクチン奪取のために普久間殿上ホテルに潜入した俺たち」

万「エントランスにいた大量の監視をビッチ先生が引きつけてくれたおかげで無事に入ることができ、俺たちは次の階へと進んだ」

惣・万「さぁ、どうなる第42話!!」」

惣「・・・なんかスッゲェまともなあらすじだな」

万「やっと言えたぜ!」

惣「聞いてねぇし・・・・」


惣一side

 

 

 

「さて、入り口のチェックを抜けた今、ここからは客のフリができる」

 

エントランスを通り、階段を登った先で烏間先生がそう言った。

 

『客?こんなところに中学生の客がいるのか?』

 

「聞いた限り、結構いる。金持ちのところのボンボン達だ」

 

『へ〜・・』

 

聞いといてなんだその言い草。興味ねぇじゃねぇか。

 

『そりゃな』

 

「だが、敵も客のフリをしてるかもしれない。十分注意して進むぞ」

 

 

・・・・・・・・・

 

 

しばらく歩いていたが、その間にとくにトラブルはなかった。何回かホテル客とすれ違いはしたが、何奴も目すら合わせようとしなかった。トラブルを避けたいのは向こうも同じってことか?

 

そこからさらに歩き、広間に到着した。俺たちが来た方向とは逆側から男が一人こっちに向かって来ている。・・・・あれ?あいつどっかで・・・・

 

「へっ!入ってみりゃ楽勝じゃねぇか!時間もねぇんだし、さっさと進もうぜ!!」

 

寺坂と吉田がそう言って烏間先生よりも前を歩き出す。その瞬間、反対側から男が懐に手を入れるのが見えた。

 

「寺坂くん!そいつ危ない!」

 

『後ろに下がれ!!』

 

「えっ?・・・うわっ!!」

 

一瞬の出来事だった。前を動いていた寺坂と吉田を烏間先生が後ろに引っ張り、男が取り出した筒状の物体から撒かれた黄色と紫色が混ざったような煙から助け出した。だが、その代わりに烏間先生がその煙を吸うことになってしまった。この煙は・・・・・・毒ガスか?もう空気に気化したから調べることもできないか・・・・。

 

「なんで気づいた?殺気を隠して近づけざまに殺る。俺の十八番だったんだけどな?おかっぱちゃん」

 

男はつけていたマスクを下ろし、自分のことに気づいた不破に聞いて来た。確かに・・・殺気なんて感じられなかったけどな。

 

「だっておじさん、最初にホテルでサービスドリンクを配った人でしょ?」

 

「ん?・・・・あぁ!だから見覚えはあったのか!」

 

不破の言葉にもう一度男を見ると、確かに今日サービスドリンクを配った人と同じ顔だった。よく気づいたな。

 

『むしろお前は最初に気づけ』

 

うるさいよ、エボルト。ってことは・・・・

 

「ウイルスに感染させたのもおっさんだな」

 

「おいおい、断定するには証拠がやわいぜ?ドリンクじゃなくても盛る機会はたくさんあるだろ?」

 

「いや、そうでもないぜ?だろ、不破」

 

「えぇ。みんなが同じものを口にしたのは来た時のサービスドリンクと船上レストランのディナーの時だけ。でも、編集作業でディナーを食べていない三村君にも発症したことから、感染源はサービスドリンクに絞られる。したがって・・・・・犯人はあなたよ!」

 

おぉー、すごい名推理だな。

 

『棒読みだな。わかってなかったくせに』

 

しょうがねぇだろ、推理なんてしたことないんだから。

 

『仮にも天才のくせに・・・』

 

発明に関してはな。理数は得意だ。

 

『知ってる。つか理数じゃなくてもできるだろ』

 

さて、話戻すか。

 

『おいこら!』

 

男は見破られたことに動揺するかと思ったが、意外と余裕そうだ。まだ何かあんのか?

 

「ククク・・バレるとは思ってなかったが、まぁいい」

 

「何?」

 

男がそう言った瞬間、ドサッと何かが倒れる音がした。見ると、烏間先生が膝を付き倒れていた。

 

「「「烏間先生!!」」」

 

『おいおい、烏間に効くって、一体どんな毒ガスだよ』

 

エボルトの言う通りだな。あの烏間先生だぞ?あの人に効く毒ガスがあるのか・・・・。

 

「俺が撒いたのは俺自身が作り出した毒ガスだ。だが、それだけじゃない」

 

「どう言うことだ?」

 

「ボスと一緒にいたやつに渡された特殊なガス・・・名前は確か『ネビュラガス』だったか?それを俺が作った毒ガスと混ぜてみたんだよ。本来なら気化されないが、それをした結果はこの通り。すぐに空気に気化されてなくなる」

 

「ネビュラガス・・・・だと?」

 

「おい惣一・・・ネビュラガスって確か・・・・」

 

「あぁ・・・人間をスマッシュに変えるガスだ」

 

なんでこいつが・・・・・いや、渡されたつったな。んじゃなんでそいつはネビュラガスを・・・・。どうやら・・・詳しく聞かなくちゃいけないみたいだな。

 

「さて、お前たちに取引に応じるつもりがないことはよくわかった。ボスに連絡するとするか」

 

「させるわけがないだろ?」

 

「何?・・・・っ!早い・・・いつの間に出口を!?」

 

男が帰ろうとするが、その時にはすでに遅い。通路はすでに全て塞げさせてもらった。

 

「お前は俺たちをみた瞬間、攻撃せずに報告に帰るべきだったな。万丈!」

 

「おう!」

 

唯一塞ぐのに参加していなかった万丈はフルボトルを振っていた。俺の合図と同時に男に攻撃できるように。そして俺は今合図を出した。よって・・・・

 

「おらっ!」

 

「グオ!!」

 

一発で気絶したか・・・・。って、

 

「おいこら万丈!なんで気絶させてんだよ!!」

 

「あ?殴れつったのはお前だろ!!」

 

「気絶させろとは言ってねぇだろ!!手加減しろよ!!」

 

「うるせぇ!!俺にそんな難しいことできるか!!」

 

「二人とも、喧嘩してねぇで縛るの手伝え」

 

「「うるせぇ!!」」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

そこから数分、しばらく俺と万丈は言い合ってたがやっと落ち着いた。

 

『やっとか・・・』

 

「とりあえずまず烏間先生を起こすぞ。烏間先生、大丈夫ですか?」

 

ネビュラガスだってわかってないことの方が多いんだ。無事だといいんだが・・・お、起きた。

 

「うっ・・・・ここは・・・」

 

「普久間殿上ホテルです。覚えてないんですか?」

 

「・・・悪い、わからない」

 

「そうですか・・・」

 

ん〜・・・ネビュラガスを体内に入れてしまうとその直前の記憶を失ってしまうのか?見た感じ自分が誰かなのかはわかってるようだし、俺たちのこともわかっている。

 

にしても、この男にネビュラガスを渡したのは誰なんだ?つっても十中八九カイザー、もしくはその仲間だろうが・・・・プール開き以降なにもしてこなかったが、まさかこんな時に動き出すとはな・・・・。

 

「惣一、さっさと行くぞ!」

 

「お、おぉ」

 

 

 

惣一side out

・・・・・・・・・・・

?side

 

 

 

「スモッグがやられたか・・・・まぁいい。雇った殺し屋はまだいるしな。にしても・・・いいなぁ、中学生が苦しむ顔。賞金手に入れたら・・・クックック・・・中学生たくさん買って、毎日ウイルス飲まそうかなぁ?」

 

「悪趣味なやつだな」

 

「あんたには言われたくないぜ?実の息子を騙して悪い組織に入ってるあんたにはな」

 

「ふっ・・・・かもな。にしても・・・まさかネビュラガスを気化させるようにするとは」

 

「おいおい、どこに行くってんだ?」

 

「私は私の目的がある。それを行なってくるだけさ」

 

 

 

 

 

 




ん〜、なんか怪しい人が動き出してますねぇ。(すっとぼけ)

てかネビュラガスにこんなことしてよかったのだろうか?気にしたら負けだろうけど。

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第43話 カルマの戦い

惣「ホテルに潜入して二階に上がることに成功した俺たち、そこで第三者が雇ったであろう殺し屋と遭遇する」

万「最初はただの客だと思ったが、不破のおかげでそいつが殺し屋だとわかり、烏間先生がやられたが俺のおかげで殺し屋を撃破!!」

惣「でも気絶はやりすぎだろ・・・・そういえば一つ思ったんだけどさ、お前もジュース飲んでたよな?なんで大丈夫なんだ?」

万「あ?知らねぇよ!俺がすげぇんじゃねぇか!?」

惣「そんなわけないだろ・・・・ま、いっか」

万「さぁ、どうなる第43話!!」

惣「勝手に言うなよ!?」



惣一side

 

 

毒使いの男を倒して烏間先生も目を覚まし、さらに登って5階。そこは展望台のようになっていて、外が見渡せるようになっている。そんな展望台に、一人の男がガラスに寄りかかっていた。あ〜・・・・二人目か。

 

「雰囲気でわかるようになってきたわ・・・・どう見ても殺る側の人間だ」

 

吉田がそう言ったが、おそらく吉田以外の全員も気づいているだろう。てか、だったら隠れてても意味ないんじゃ・・・・・。そう思っていると、男が手だけでガラスに大きなひびを入れた。

 

「・・・・つまらぬ。足音を聞く限り手強いと思える者が誰もおらぬ。精鋭部隊出身の引率教師がいるはずなのにぬ。・・・どうやらスモッグの毒にやられたようだぬ。相打ちってとこかぬ・・・出てこいぬ」

 

やっぱ気づかれてたか・・・・。俺たちはおとなしく隠れるのをやめて出て行く。なんだが・・・うん・・・その・・・・。

 

「なぁ、惣一」

 

「なんだ、万丈?なんとなく言いたことはわかるが言ってみろ」

 

「ぬ、多くねぇか?あのおっさん」

 

((((言った!よかった万丈(バカ)がいて!!))))

 

久しぶりにみんなの意見が一致したな・・・・。それにしてもさすがだ、万丈。お前じゃなきゃ言えないことだぜ。あ、カルマがいたか。

 

「ぬ、をつければ侍っぽくてかっこいいと聞いたことがあるぬ」

 

「あぁ、外国人か」

 

「別に間違ってるならそれでもいいぬ。ここにいる奴らを全員殺してからぬをとれば恥にもならぬ」

 

その男はそう言いながら手をポキポキと鳴らしている。

 

「素手・・・それがあなたの武器ですか」

 

「こう見えても需要があるぬ。身体検査に引っかからない利点は大きいぬ。・・・・・だががっかりぬ。お目当の相手がこのざまじゃ殺る気も失せたぬ。ボスと仲間を呼んで皆殺しぬ」

 

男がトランシーバーを取り出すと、カルマが近くにあった植木鉢を掴んでトランシーバーを粉々に壊した。・・・あいつ、万丈じゃないよね?

 

「ねぇおじさんぬ、速攻仲間呼んじゃうあたり、中坊とタイマン張るのも怖い人?」

 

『おいおい・・・あんな挑発して大丈夫なのか?』

 

いや、問題ないだろう。顎が引けてるしな。

 

『顎だ?』

 

あぁ、今まであいつは人を挑発するときに顎を突き出し人を見下ろすような姿勢をしていた。だが、あいつは今しっかりと相手を見ている。どうやら、この間のテストで学んだようだな。

 

さて・・・・・この狭い空間、奇襲もできない相手に、どう戦うんだ?

 

最初にカルマが植木鉢を男に向かって振るが、すぐに掴まれ簡単に握りつぶされる。武器を失ったカルマはすぐに後退し、それを追うように男も前に出た。カルマの頭を掴もうと手を前に突き出すが、カルマはその手を避け、もしくは逸らしたりしながら掴まれるのを避けている。

 

『・・・・おい、あの動き見覚えがあるんだが』

 

「えぇ、烏間先生の防御テクニックですね」

 

「授業で受けてた覚えはないんだが・・・・目で見て盗んだのか。すげぇ」

 

『だが、避けてばかりじゃ意味がないぞ』

 

「それはカルマも承知の上だろう。さぁ、どうするんだ?」

 

こちらが話したことを相手も話した。それに対してカルマの答えは・・・・

 

「そうかな?俺があんたを引きつけている隙にみんながちょっとずつ抜けるのもアリかと思ったんだけど・・・・・・安心しなよ、そんなセコイことは無しだ。あんたに合わせて正々堂々、素手のタイマンで決着をつけるよ」

 

・・・・・・いや、あいつが正々堂々って・・・・ありえないだろ。

 

だが、カルマは宣言通り正面から立ち向かって行く。数回拳を突き出し、その内の一発が男に当たる。ブロックが間に合わず、男は膝に蹴りをくらい、カルマに背中を見せた。それをチャンスとみて、カルマは男に向かって行ったが・・・・

 

「なっ!?」

 

「それはあの毒使いの・・・・」

 

男はカルマに向けて毒使いが使っていたガスを噴射した。紫色の煙だったし、ネビュラガスはなかったみたいだが・・・・・

 

「おい!卑怯だろ!!」

 

「俺は一度も素手だけとは言ってないぬ。こだわることにこだわりすぎない。これもこの業界を長くやって行く秘訣ぬ。至近距離のガス噴射、予期していなければ避けることなど絶対に・・!」

 

『あっ・・・・』

 

目には目を、歯には歯を・・・・・ガスにはガスってか?カルマのガス噴射を予期できていなかった男は至近距離でガスを食らってしまった。・・・・これもネビュラガスは無しか、あの一本だけだったのか?

 

男は驚きながらも最後の力を振り絞ってナイフを取り出したが、今の状態はカルマでも簡単に対処ができ、手を掴んで倒れさせた。

 

「ほらほら、寺坂早く早く!」

 

カルマは男を捕まえながら寺坂を呼ぶ。

 

「こんな相手、ガムテと人数使わなきゃ勝てないって!!」

 

「あ・・・・・へっ!そうだな、テメェが素手のタイマンの約束とか、もっとねぇわな!!」

 

「ぬぉおおおおお!!?」

 

寺坂のその言葉を合図に、俺と渚以外の来ていた男子全員が男に乗りかかり、ガムテが拘束していく。結局、男は何もできずに拘束された。

 

「何故・・・俺の攻撃を読んでいたぬ・・・・お前は読んでいたからガスを吸わなかったぬ・・・・何故ぬ!?俺は素手しか使ってなかったのにぬ!」

 

「当然っしょ?素手以外の全部を警戒してたよ」

 

「ぬ?」

 

「おじさんぬが素手のタイマンをしたかったのは本当だろうけど、ここで俺たちを止めるにはどんな手も使わなくちゃいけない。あんたのプロ意識を信じたんだよ。信じたから警戒してた」

 

『ふっ・・・なるほどな』

 

あいつ・・・変わったな。いい感じに。

 

男もカルマの言葉に納得したのか、男は体から力を抜いた。

 

「ふっ・・・大した奴だぬ、少年戦士よ。負けはしたが、楽しい時間を過ごせたぬ「え?何言ってんの?」・・・ぬ?」

 

「これからじゃん楽しいのは」

 

これで終わったかと思ったが、カルマが取り出したのはチューブのわさびとからしだった。・・・・え?

 

「な、なんだぬ?それは?」

 

「わさび&からし、おじさんぬの鼻の穴にねじ込むの♪」

 

「なぬぅ!?」

 

「「「「ヒィ!!」」」」

 

そこからカルマの動きは早かった。開口器で口を開かせ、鼻フックで鼻を広げ、拘束されて何もできない男に拷問のようなことをしていく。

 

『・・・・惣一。あいつ、何も変わってなくないか?』

 

あぁ・・・・あいつ将来大丈夫か?

 

それから数時間後、男は悲惨な状態で発見されたらしい。

 

 




なんか久しぶりにこんな戦闘シーンを書いた気がする。主人公じゃないけど。

万丈にここをやらせてもよかったかもね。まぁ、万丈には他にやってもらいたいこともあるし・・・・いっか!

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第44話 エボルトの能力

惣「ワクチン奪取のために普久間殿上ホテルに潜入した俺たち。敵が雇った殺し屋を突破した俺たちに待っていたのは、二人目の殺し屋だった」

万「ぬ、多かったよな。あのおっさん」

惣「その事に関しては本人が言ってただろ?そんな殺し屋はカルマの活躍で無事撃破!俺たちは次の階に進むのだった」

万「なぁ、今回のサブタイ『エボルトの能力』だけどよ、そんなのあったのか?」

惣「さぁな、俺も今まで知らなかったし、早く本編見て確認するぞ。てな訳でどうなる第44話!」


惣一side

 

 

 

二人目の殺し屋を突破し、俺たちは次の階へと進んだ。だが、そこで新たな問題が出て来た。その階はテラスラウンジになっていて、階段を登るには中から扉を開けなくちゃいけないんだ。んで、こんな大人数で入るわけにも行かず、片岡の案で女子だけで潜入することになったのだが・・・・

 

「だけど、女子だけで大丈夫なのか?」

 

問題は女子だけで中に入るということだ。確かにこいつらなら大丈夫かもしれないが、何があるとも限らない。いざとなったら男手も必要だろうが・・・・

 

「あぁ〜、それだったら!」

 

カルマが何か思いつき、渚の方を見る。それによって全員の視線が渚に集中し、本人は困惑している。あぁ・・・・なるほど。

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

数分後、女子が入手して来た女性の服を着ている渚が誕生した。その顔もあいまわって、全く違和感がないな。

 

『だが、渚だけで大丈夫なのか?』

 

「でもエボルトさん、渚以外に女装で他人を騙せる人なんて・・・」

 

『ふっ、俺に任せろ。惣一、ちょっと体借りるぞ』

 

「えっ?あ、おう・・・」

 

エボルトの言われ体の主導権を渡す。何かあんのか?

 

 

 

惣一side out

・・・・・・・・・・・・

万丈side

 

 

 

エボルトがなんか考えがあんのか惣一と入れ替わった。にしても渚の奴、めちゃくちゃ似合ってんな。

 

『さて、久しぶりに俺の能力でも使うか』

 

「能力?」

 

『あぁ』

 

エボルトがそう言うと手を顔にかざした。すると、手から煙?蒸気?・・・どっちでもいいか。が出て来て惣一の顔を包み込んだ。だが、それも

すぐに終わり、エボルトが顔から手を離すと、そこには惣一では無い顔があった。

 

「は?・・・有希子!?」

 

「な、なんで神崎さんが!?」

 

『これが俺の能力だ。手から出す煙で対象の顔を別の顔に変えることができる。もちろん、元に戻せるぜ』

 

んな能力あったんだな・・・・どうなってんだ?まぁ考えてもわかるわけないか。

 

『とりあえず有希子の顔を使わせてもらうが・・・・』

 

「ね、ねぇ・・・その声はどうにかならないの?」

 

『ん?』

 

「その顔でその声は・・・ちょっと・・・」

 

確かに・・・・顔は有希子なのに声がエボルト・・・つまりおっさんの声だ。全く可愛くねぇ!!

 

『あぁ、声か。ちょっと待てよ・・ん、んん・・・・っと、これで大丈夫?」

 

「おぉ!有希子の声だ!」

 

すっげ!!声も変えられるのかよ!!服装が変われば本物かと思うぞ!!

 

「これで問題ないんじゃないかな?あとは私が演技すれば・・・」

 

「てか演技うまくね?」

 

「そう?ありがとう」

 

有希子(の顔したエボルト)が笑顔で言ってくる。これで本物じゃねぇんだよな。

 

「これで心配はなさそうですね。女子の皆さんと渚君、エボルトさん、頼みましたよ。

 

「「「はい!」」」

 

「は・・・はい・・」

 

そう言って女子たち+αはラウンジに入っていった。しばらくは何もできないか・・・・。

 

『ギャオオン』

 

「あ?ドラゴンどうした?・・・っておい、どこ行くんだよ!?」

 

『ギャオオン!』

 

「おい!」

 

ドラゴンが俺の言葉を聞かずに何処かに行こうとする。・・・たく、仕方ねぇ・・。俺はドラゴンを追うことにした。

 

 

 

万丈side out

・・・・・・・・・・

エボルトside

 

 

 

有希子の顔を借りて服も渚と同じように女物の服装に変えてからラウンジに潜入する。あ〜・・・騒がしいなここ。

 

「うぅ・・・・どうしてこんな・・・」

 

「いい加減諦めなよ、渚君」

 

「むしろなんでエボルトさんはそんなにノリノリなの?」

 

なんでって・・・俺人間じゃねぇしな。楽しそうだしいいじゃん。

 

「石動君はそれでいいの?」

 

『別に・・・・顔は俺じゃねぇし、演技してるのもエボルトだから、恥にもならん』

 

「そ・・そんな・・」

 

残念だったな、渚。お前に共感できる奴はいないぜ。

 

「ねぇ、どっから来たの、君たち?俺と一緒に飲まない?」

 

「ん?」

 

なんだ、こいつ?・・・邪魔だな。

 

「渚君、相手お願いね?」

 

「え、えぇ!?ぼ・・・私!?」

 

とりあえず渚に相手をさせておこう。これで楽になる。

 

「さて、行こう」

 

「う、うん・・・結構あっさりと渚君を売ったね」

 

「うん、だってあのまま相手してたら時間がかかりそうだったし」

 

『いい性格してるわ・・こいつ』

 

お前には言われたくない。惣一だって同じだろうが。

 

そこからしばらく歩き、また別の場所。今度はヤンキー二人に絡まれた。ったく、次から次へと・・・・

 

「あの、すいませんが・・・」

 

「待って」

 

「矢田?」

 

俺がヤンキー共に文句を言おうとしたが、その前に矢田に止められた。何すんだ?

 

「お兄さんたち、カッコいいから遊びたいけど・・・あいにく私たち、今日はパパ同伴なの。うちのパパ、ちょっと怖いから・・・やめとこ?」

 

そう言って矢田が取り出したのはエンブレムのようなものだった。なんだあれ?『凶』って書かれてるな。

 

「そ!そいつは!」

 

「あ、あの有名な・・・凶悪の・・・」

 

「「し、失礼しました!!」」

 

「意気地なし、借り物に決まってるのにね?」

 

「で、それどうしたの?」

 

「ビッチ先生から借りてたの。何かに使えるだろうって」

 

「ふ〜ん」

 

そういえばこいつはあのビッチの授業をよく聞いてるな。・・・・まさか本当に役立つとは・・。

 

「さて、店の奥までたどり着いたけど・・・」

 

やっぱり見張りがいたか・・・・・あまり暴力沙汰は起こしたくないし、どう突破するか。

 

「場合によっては男手が必要ね・・・茅野さん、渚呼んで来て」

 

「うん」

 

それから数分後、ある程度作戦も決まったところで渚と茅野が戻って来た。までは良かったんだが・・・・・

 

「待ってくれよ彼女ら!大サービスだ!俺のダンスを見せてやるよ!」

 

邪魔な奴まで付いて来た・・・・いや、超絶邪魔なんだけど。誰もダンスやれなんて言ってねぇし。消滅させてやろうか?あ、ヤクザに当たった。あ〜あ、怒られてやんの。自業自得だし助ける必要もねぇか。そう思ってたが、岡野がヤクザに回し蹴りをして気絶させた。なんでわざわざそんなことをと思ったが、気絶したヤクザを少し移動させ、見張りに声をかけて連れて行かせた。その間見張りがいなくなるから、その隙に扉を突破。俺たちにミッションは完了だ。

 

『・・・・これ、男子が行った意味なくね?』

 

 

 




エボルトの能力、あと何があったっけ?とりあえずその内出すと思います。

そういえば最近主人公の活躍があまり・・・・しかもしばらくない気が・・・。

早く戦闘シーンを書きたいな。

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第45話 新たな武器

惣「ワクチン奪取のために普久間殿上ホテルの潜入した俺たち。6階のテラスラウンジにて、怪しまれないように女子全員と+αが潜入した」

万「+αじゃ分かんねぇだろ、ちゃんと説明しろよ!」

惣「仕方ねぇな、女装した渚とエボルトの能力で顔を有希子にした俺が女子と一緒に潜入した。ま、俺の方はエボルトが体をコントロールしてたけど」

万「んで、中で色々あったけどなんとかミッションをクリアできた!だよな?」

惣「まぁそうだけど・・・ってかお前はどこに行ってんだよ。勝手に行動すんなよ」

万「しょうがねぇだろ!ドラゴンが勝手に・・・」

『ギャオオン!!』

万「うお!!あっち、あっち!!」

惣「はぁ・・・こんなバカは放っておいて、第45話どうぞ」

万「あっち、あっち!!」



万丈side

 

 

『ギャオオン!!』

 

「おい待てって!!ドラゴン!」

 

俺はドラゴンを追いかけてみんなとは別行動をとっている。・・・・そういえば誰にも言わなかったな。

 

『ギャオオン!』

 

「ったく、どこに向かってんだ?」

 

ドラゴンは俺の言葉を無視してどんどん奥へと進んでいる。にしても、なんでいきなり?そこからさらに進み、ドラゴンはある扉の前で飛び回っていた。

 

「ここになんかあんのか?」

 

『ギャオオン』

 

ちっくしょー、やっぱ何言ってんのか分かんねぇ!とりあえず入ってみっか!!

 

「失礼しま〜す・・・・」

 

『ギャオオン・・・』

 

扉を開けて入るとドラゴンもついてくる。・・・・なんだここ?ホテルの中のはずだよな。なんでこんな研究所みたいになってんだ?・・・・・・まいっか。

 

「ここに何があんだ、ドラゴン?」

 

中にはなんかの書類が散らばってるようにしか見えず、あとは机の上に黒いベルトのバックルのようなもの・・・・・って、あれ?

 

「これ・・・・なんか見覚えがあんな?なんだっけ?」

 

俺はそのバックルみたいなやつを手に取って記憶を探る。う〜ん・・・・やっぱどっかで見た事あるはずなんだが・・・・あー!!思い出せねぇ!!

 

『ギャオオン!』

 

「ん?どうした、ドラゴン?」

 

見ると、ドラゴンがなんかの書類を咥えて飛び回っていた。あいつ、手がないのに器用だよな。

 

「この書類がどうかしたか?」

 

『ギャオオン!』

 

「うぉ!あっち!!わかったよ、読めばいいんだろ!読めば!!」

 

こいつ、すぐに火吐きやがって!ったく・・・え〜と、なになに?

 

「『プロジェクトビルドによって誕生したライダーシステムの一つ・・・・仮面ライダークローズ』・・か」

 

プロジェクトビルドって確かあれだよな?初めて惣一達と会った時に回収したメモリの中にあったやつだよな。ってことはまさか、ここってあいつらの?

 

「・・・・とにかく、続きを読むか。え〜と・・・・・『石動惣一が作り出したクローズドラゴン、ビルドドライバー、さらにドラゴンフルボトルを使うことによって変身が可能』・・・・なんであいつの名前が書かれてんだよ・・・・それにドラゴンのことまで」

 

その書類には惣一の名前とあいつが作ったドラゴン、さらにドラゴンの詳しい事まで書かれていた。なんでドラゴンのことがこんな詳細に書かれてんだよ・・・・・俺が考えても分かんねぇか!

 

「待てよ・・・・仮面ライダーって、確か防衛システムってやつだったよな。必要なのはドラゴンとドラゴンフルボトル、あとはビルドドライバーってやつか。・・・・・このビルドドライバーってこれのことか!!」

 

俺はさっき手に取ってからずっと持っていた黒いバックルのようなものをもう一度見る。必要なものは全部揃ってる、つーことは、俺がこのクローズになれるのか?

 

「・・・・・よし、試してみっか!!」

 

『ギャオオン!』

 

バックル・・・・もといビルドドライバーを書類に書かれてる通りに腰に当てると、ベルトが出現して自動的に腰に巻かれた。おぉ、すげぇ!!

 

「え〜と、次にドラゴンフルボトルを振ってと・・・」

 

ポケットからボトルを取り出し、数回振る。んで、これをドラゴンにセットしてっと・・・・

 

「行くぜ、ドラゴン!」

 

俺の掛け声とともにドラゴンは首と尻尾が折りたたまれた形になり、背中に空いている部分にフルボトルをセット!!・・・・しようとしたのだが・・・

 

「うわっ!!いって!!」

 

『ギャオオン!!』

 

ボトルは入らずに弾かれ、さらには電気まで流れやがった。んでだよ!!

 

 

 

万丈side out

・・・・・・・・・・・・・

惣一side

 

 

 

 

「なぁ、万丈はどこに行ったんだ?」

 

「え?」

 

ラウンジから戻り、渚と一緒にさっさと元の服装に戻って顔を戻してもらい、再びみんなと合流した。のだが、万丈の姿が見当たらない。

 

「あれ?さっきまでいたはずだが・・・」

 

「誰もどこにいるのか知らないのか?・・・・・しょうがねぇ、確認するか」

 

たく、勝手に行動しやがって。まぁいい。こんな時のためのドラゴンだ。ビルドフォンでドラゴンが見ているものを写す。

 

『うぉ!あっち!!わかったよ、読めばいいんだろ!読めば!!』

 

「・・・・あいつ、何やってんだ?」

 

なんかの書類を持っているのはわかるが・・・さすがにこれじゃ読めないか。とりあえず無事なのはわかったし、よしとしよう。

 

「時間もないし、あのバカは放っておいて先に向かおう。何かあっても、ドラゴンが連絡を入れるはずだ」

 

「お、おい、大丈夫なのか?」

 

『大丈夫だろ、あのバカなら』

 

俺もエボルトに同意だな。あいつならどうにかなんだろ。

 

とりあえず万丈のことは放っておいて先に進む。次は7階だが、こっから先はVIPフロアらしい。どうりで人が少なくなったわけだ。

 

『ん?・・・止まれ!』

 

エボルトの声にみんなが止まる。物陰から見ると、客が雇ったであろうガタイのいい男が二人、階段の前を陣取って見張りをしていた。

 

「ちっ・・・どうやって突破する?殺せんせー?」

 

「ヌルフフフ、それには寺坂君が持っている武器が有効ですね」

 

寺坂が持ってる武器?何持ってんだ?

 

「ちっ・・・・透視能力でもあんのか?てめー」

 

どうやら隠してたらしいが、諦めたのか出すことにしたらしい。

 

「おい、木村!あいつらちょっとおびき寄せろ!!」

 

「俺が!?どうやって!?」

 

「知るか!」

 

寺坂・・・・そこは他人任せかよ・・・。まぁ、カルマがなんか案があるらしいし大丈夫か?なんか悪い笑顔浮かべてるけど。カルマの案を聞いた木村は一人見張りのところまで行った。

 

「ん?なんだ坊主?」

 

見張りも当然気づき、木村に聞いてきた。が、次の瞬間木村が言ったのは・・・・

 

「あっれ〜?脳みそくんがいないなぁ〜?こいつら頭の中まで筋肉だしぃ!・・・・・・人の形してんじゃねぇよ、豚肉どもが」

 

・・・・・うん、それに怒らないやつっているの?てか一瞬万丈が頭に浮かんだわ。

 

「おい・・・・待てや、ゴラ!」

 

「そりゃ怒るわ!!」

 

おぉ〜、さすがE組一の俊足、速いねぇ〜。てかまんまと引っかかってくれたな、あいつら。

 

「いまだ!!」

 

「おら!!」

 

「何!?・・・ぐわぁぁああああ!!」

 

「ス、スタンガン!?」

 

木村を追いかけてきた見張りを物陰から飛び出した寺坂と吉田がなぎ倒し、首元にスタンガンを当てて電気を大量に流した。・・・・・それってスチームブレードでも良かったんじゃ・・・・こっちは煙を撒けばいいだけだし・・・・。

 

「タコに電気が効くかどうか確かめようと買っておいたんだよ。まさか、こんなところでお披露目になるとわな」

 

「買ったって・・・・高かったんじゃ!」

 

「ん?いや、まぁ・・・・最近、臨時収入があったもんでよ・・・」

 

臨時収入?なんじゃそりゃ。

 

「いい武器です、寺坂君。ですが、その男たちの胸元を確認してください。・・・もっといい武器が手に入るはずです」

 

「どれどれ?・・・・っと、これは・・・本物の拳銃だな」

 

殺せんせーの言う通り胸元を探ると、出てきたのは本物の拳銃だった。それも二丁。

 

「問題は誰が持つかだけど・・・・」

 

「それは決まってます。千葉君、速水さん、君たちが持ちなさい」

 

「まっ、だよな」

 

名前を出された二人は驚いてんな。普通に考えたら妥当だと思うんだが。

 

「烏間先生は精密な射撃ができるところまで回復していません。現時点で一番それらを扱えるのは君たちです。ただし、先生は殺すことは許しません。君たちの腕なら、殺さずに倒す方法はたくさんあるはずです」

 

俺は千葉と速水の二人に拳銃を一丁ずつ渡す。・・・・見るからに緊張してんな。

 

『それは二人の問題だからな。俺たちじゃどうすることもできねぇ。さっ、さっさと進もうぜ』

 

「そうだな・・・よし、行くか」

 

 

 




そろそろクローズを出そうと思ったが、確認したら万丈が初登場したのが第13話だった。約32話前・・・・結構前だった。てかもうすぐ50話じゃん!!エボルも出てないのに!!

あ〜、早くエボルとかビルドとか出したい!!

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第46話 銃撃

惣「ワクチン奪取のために普久間殿上ホテルの潜入した俺たち・・・」

万「なぁ、この説明毎回すんのか?ここ最近ずっと聞いてるけど」

惣「あらすじの始めに使いやすいんだよ。ってかお前は何やってんだよ。俺が苦労している時に」

万「何が苦労だ!全てエボルトにやらせてただろ!そもそも最近何も活躍してねぇだろうが!」

惣「おまっ、人が気にしてるところを!!」

万「こんな奴放っておいて、第46話どうぞ!!!」

惣「あっ、おいこら!お前勝手に!!」


惣一side

 

 

 

見張りのやつを倒して本物の銃を手に入れた後、俺たちが来たのはコンサートホールだ。そこで、俺たちはバラバラに散らばって隠れている。理由はステージ上にいる男だ。銃を咥えている以上、あいつも殺し屋だろう。・・・・・ってか、なんで咥えてんだ?

 

「15?・・・・いや、16か。呼吸も若い、ほとんどが10代半ばか。驚いたな、動ける全員で乗り込んで来たのか」

 

おいおい・・・・・この広い空間でそんなこと分かんのかよ・・・纏ってる雰囲気も、今までのやつらとは違うな・・。男は咥えていた銃を自分の後ろにある照明に発砲した。

 

「言っとくが、このホールは完全防音だ。全員殺し終わるまで誰もこねぇ。お前ら人殺す準備なんてしてねぇだろ?おとなしくボスに頭下げ!」

 

男がそこまで言ったところで、再び銃声が鳴り響いた。だが、発砲したのは男ではない。・・・・・速水の方か。速水が撃った弾は男から外れ、後ろの照明に当たった。

 

「実弾!?しかも今の発砲音は・・・・・手下のM60を奪ったのか!?」

 

男は驚いているが・・・・・ありゃ、危険を感じてねぇな。

 

『あぁ・・・むしろ喜んでやがる』

 

ってかあいつ、銃弾が入ってる銃を咥えてたのかよ。危ねぇな・・・・・・ってまぶ!!あいつ、照明つけやがった!!

 

「意外と、美味い仕事じゃねぇか!!」

 

クッソ・・・・・反射でうまく見えない!!何をしてんだ、あいつは!!

 

「今日も元気だ、銃がウメェ!!」

 

次の瞬間鳴り響いたのは銃声。どうやら男が撃ったらしい。・・・・・まさか、速水がいるところを?たったあれだけで速水の居場所を見つけたってのかよ!!

 

「一度発砲した敵の位置は絶対忘れねぇ!!俺は軍人上がりだ、これ以上の一対多なんていやってほどやって来たし、その時の銃の調子を味が確認する感覚を身につけた」

 

なるほど・・・・・道理で纏っている雰囲気が違うわけだ。超えて来た修羅場の数が違いすぎる。

 

『惣一も似たようなもんだろ。怪物と戦って来たなんて、普通に考えたら十分修羅場を越えてるさ』

 

そんなもんかねぇ・・・・とりあえず、今はこの状況をどうするかだ。ブラッドスタークになろうにも、音でバレちまうからなぁ・・・・・。

 

「速水さんはそのまま待機!今撃たなかったのは懸命です、千葉君!君はまだ敵に位置を知られていない。先生が敵を見ながら指示するので、ここぞという時まで待つんです」

 

「なっ!どこから喋って・・・・ん?」

 

この声・・・殺せんせーか、どこにいんだ?え〜と・・・・・・あ、敵の目の前か。

 

「てめぇ!!なに齧り付きで見てやがんだ!!」

 

そりゃそうなるよな・・・・俺でもイラつくし。でも、さすがは完全防御形態。あんだけ銃弾くらってんのに大丈夫そうだな。

 

「ヌルフフフ、熟練の兵士に中学生が挑むんです。このぐらいの視覚ハンデはいいでしょう」

 

「ちっ・・・・」

 

「では木村君!五列左にダッシュ!!」

 

なるほど・・・シャッフルか。これなら、俺たちが男を見なくても行動できる。

 

「寺坂君と吉田君はそれぞれ左右に三列!」

 

木村に続いて、寺坂と吉田も移動する。

 

「死角ができた!この隙に茅野さんは二列前進!!」

 

『だが、奴も手練れだ。下手したら、名前を覚えられちまうぜ?』

 

「カルマ君と不破さんは同時に右八!!磯貝君、左に五!!」

 

そうだよなぁ・・・・・実際、最初は慌てていた奴も落ち着きを取り戻している・・・・どうすんだ、殺せんせー?

 

「出席番号12番!!右に一で準備しつつそのまま待機!」

 

「へ?」

 

『なるほど、出席番号か!これなら奴は誰だかわからない!』

 

「四番と六番は椅子の間からターゲットを撮影!舞台上の様子を、律さんを通して千葉君に伝達!!」

 

これでさらに混乱させられるな。

 

「漫画好きとポニーテールは左前に前進!!」

 

おまけに特徴もかよ、俺が混乱しそうなんだけど。

 

「コブラは斜め右に前進!!」

 

『惣一、お前だ!』

 

あっ、俺か!えーと、右斜め前っと・・・・・。

 

「最近竹林君イチオシのメイド喫茶に興味本位で行ったらちょっとハマりそうで怖かった人!錯乱のため大きな音を立てる!!」

 

「ウルセェーー!!俺もキャッスルって呼べや!!てかなんで行ったの知ってんだてめぇえええ!!!」

 

おぉ、怒りも混ざって結構でかい音が響いたな。

 

『あのタコ・・・・生徒の秘密をどんだけ掴んでんだ?』

 

さぁな。でも、おかげで十分混乱させられたぜ。そろそろ頃合いだろ。

 

「さて千葉君、いよいよ狙撃です。次の先生の指示の後、君のタイミングで撃ちなさい。速水さんは状況に応じて彼のフォロー。敵の行動を封じるのが目的です。・・・・・が、その前に表情を表に出すことの少ないあなたたちにアドバイスです」

 

アドバイス・・・か、あの二人は今暗殺の失敗で自分の腕に迷いを生じてるはずだ。

 

「言い訳や弱音を吐かない君たちは、『あいつだったら大丈夫だろう』と勝手な信頼を押し付けられたり、苦悩していても誰にも気づいてもらえないこともあったでしょう」

 

二人から返事はない。だが、何か思うところがあるだろう。

 

「でも大丈夫。君たちには同じ経験を持つ仲間がいます。プレッシャーを一人で抱える必要はない。安心して引き金を引きなさい」

 

『・・・・惣一、あの野郎場所に検討をつけてやがるぞ』

 

何?・・・・確かに、ある一点を見てるな。あの場所は・・・・

 

「出席番号12番!立って狙撃!!」

 

「そこだぁ!!」

 

椅子の後ろから人影が飛び出し、その人影の額を銃弾が貫いた。・・・・まんまと引っかかったな。

 

「なっ!?人形!?」

 

あの場所にいた出席番号12番は菅谷だ。千葉じゃない。おまけに今額を貫かれたのは菅谷があの椅子の後ろで作った人形。あいつを騙せたし、かなりの隙を作り出せたな。

 

「分析の結果、狙うならあの一点です!」

 

「OK!」

 

この隙に千葉も飛び出し、発砲する。

 

「・・・へ、へへ・・・外したな。これで二人目も、場所が!!」

 

自分が無事なことから外したと思ったらしく、奴は千葉に銃口を向けた。が、その背中を照明が襲った。千葉が狙ったのは男じゃない。吊り照明の金具だ。

 

「く・・・そがぁ!!」

 

どうやら倒しきれなかったらしく、千葉に向けて再び銃口を向けた。が、その銃も別のところから放たれた弾丸に弾き飛ばされた。

 

『速水か・・・やっと当たったな』

 

それ、本人に言うなよ?にしても、なんとか倒せたな。すでに男子組がガムテでぐるぐる巻きにしている。これで3人目だな。

 

「ふぅ・・・音立てずに作ってたから疲れたぜ」

 

「お、お疲れ様菅谷」

 

「おぉ・・サンキュー」

 

菅谷は大変な役割だったからな。

 

『しっかし、音立てずに作れるもんなんだな』

 

「あぁ、それ思った。実際気づかなかったし」

 

「気づかれたらアウトだろ」

 

『そりゃそうだな』

 

とにかく、これで八階はクリアだな。最上階まで後もう少しだ。

 

 




本気でそろそろ主人公を活躍させないと・・・・ただの進行役になりつつある・・・。

なんとかこの潜入の間に活躍させる場面を作ります!(ただの意気込み)

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第47話 狂気のボス

惣「八階に進みコンサートホールにたどり着いた俺たち!そこでは、雇われた3人目の殺し屋が立ちはだかっていた・・・」

万「なぁ、そいつ銃を咥えてたんだよな?怖くないのかな?」

惣「怖かったらやってねぇだろ。つーかお前はさっさと合流しろよ」

万「お前らが早すぎんだよ!!少しぐらい待ってくれてもいいだろ!!」

惣「あのな、今俺たちはお前のようなバカを待ってるほど余裕がないんだよ。分かるだろ?分かったらさっさとお前が合流しろ」

万「合流しろって、今お前ら何処にいんだよ!!」

惣「それは本編を確認しなさいよ。と言うわけで、第47話どうぞ!」

万「説明しろよ!!」




惣一side

 

 

3人の殺し屋を撃破し、この潜入も終盤に差し掛かった。俺たちが今いるのは9階。10階に行くにはカードキーが必要だが、それは9階にいた見張りが所持していた。ここまでで烏間先生のだいぶ回復してきたらしく、これならラスボスも倒せんだろ。

 

『ん?・・・・おい惣一、寺坂のやつ・・』

 

寺坂がどうかしたか?

 

『いいから見てみろ』

 

エボルトの言われた通り寺坂を見てみると、様子がおかしいのがわかった。どうしたんだ、あいつ?・・・・・まさか、毒を?

 

「ねぇ寺坂君、様子がおかしいよ?」

 

渚も気づいたようだな。

 

「お前、まさか毒を・・・・」

 

「黙ってろ、渚!石動!これ以上みんなに迷惑かけたくねぇんだ!俺が先走ったから烏間の先公も毒とガスにやられちまったし、それ以前にクラスの連中を殺しかけたこともある!こンなところでリタイヤなんて、できるわけねぇだろ!」

 

「・・・・何かあったら絶対に言えよ」

 

寺坂のことだ、俺たちの言うことなんて聞くわけがない。なら、なんかあった時にすぐに行動できるようにしないとな。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

とうとう10階に到達した。部屋の中の様子を律を通して確認したが、わかるのは一人の男がモニターで毒にやられて倒れたみんなを見ていると言うことだけ。

 

『趣味の悪いやつだ・・・・苦しんでやつらの見ているなんて・・』

 

あぁ・・・・・怒りが湧いてくる・・・・久しぶりだよ、この感覚・・・・

 

『やめろよ、惣一。あの時の二の舞などごめんだからな』

 

わかってるさ。俺だってごめんだ。そもそもあのドライバーがないだろ。

 

『だとしてもだ。あのドライバー・・・・『究極のドライバー』がなくてもトランスチームガンがあるだろ。・・・・同じように人を消滅させられる』

 

・・・・だとしてもだ、俺はもう二度とあんな思いはしたくないんでな。

 

『ならいい』

 

みんながナンバ歩行で歩き出す。見ると、烏間先生が指示を出していた。よし・・・俺も行くか。

 

部屋の中は広く、遮蔽物が多い。奥の方では例の奴がモニターを見ていた。側には爆弾が巻かれたスーツケース、男の手元には爆弾の起動スイッチと思われるものが置かれている。あのスイッチを奪えば・・・・・

 

「痒い」

 

その瞬間、全員の動きが止まった。気づかれたことに驚いて止まったわけじゃない、その声に聞き覚えがあったからだ。それも、以前よりもずっと邪気を孕んで・・・・。

 

「でも、そのせいかな・・・・いつも傷口が空気に触れているから感覚が鋭敏になっているんだ・・」

 

男がそう言って放り投げたのは起動スイッチと全く同じものだった。それがいくつも。

 

「3人の殺し屋の他に、消息を絶った人物はもう一人いる。内部の人間で、暗殺のための資金を盗んで行った人物・・・」

 

烏間先生がそこまで言ったところで、男は立ち上がる。いや・・・・・・男という表現は違うか。

 

「どういうつもりだ・・・・・鷹岡!!」

 

以前E組の体育教師として学校に来て、渚に負けた人物・・・鷹岡が悪い奴がするような笑顔を浮かべている。

 

「悪い子たちだぁ・・・・・恩師に会うのに裏口から来る。父ちゃんそんな子に育てた覚えはないぞ?仕方がない・・・・・夏休みの補修をしてやろう」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

鷹岡に連れられ、俺たちが移動したのは屋上のヘリポート。そこで鷹岡と対峙していた。

 

「防衛省から盗んだ金で殺し屋を雇い、生徒たちをウイルスで脅すこの凶行・・・・・血迷ったか、鷹岡!」

 

「おいおい、俺は至極まともだぜ?お前らが俺にした非人道的は仕打ちに比べりゃあなぁ!!」

 

何が非人道的だ・・・・・お前の方がよっぽど非人道的だよ。鷹岡が言うには、最初に指定した背の低い男女二人・・・・渚と茅野の内、茅野の方を動けない殺せんせーと一緒にセメントで生き埋めにするつもりだったらしい。殺せんせーが助かるには、茅野ごと爆発しなきゃいけない寸法ってことか・・・・・。

 

「・・・・・許させると思いますか?そんな真似が・・・・」

 

鷹岡がこうなったのには経緯が存在する。あの時の任務失敗に対する職場からの非難の声や、渚に植え付けられた屈辱的な敗北。それらが合わさってこいつをここまで狂気にしてしまったのだ。もともと背の低い生徒を要求したのは渚を狙っていたらしい。

 

「へ〜、つまり渚君はあんたの恨みを晴らすために呼ばれたってわけ。その体格差で勝って、本当に嬉しい?俺だったらもーちょっと楽しませてやれるけど」

 

「イカれやがって!てめーが作ったルールの中で渚に負けただけじゃねぇか!言っとくけどよ、あの時てめーが勝ってようが負けてようが、俺らてめーの事大っ嫌いだからよ!!」

 

「誰にもの言ってんだジャリが!!!俺の指先一つでジャリが半分減るってこと忘れんな!!!」

 

まずいな・・・・今のあいつに何を言っても刺激するだけだ。何をするかわかんねぇぞ・・・。

 

「・・・チビ、お前一人で来い」

 

おそらく鷹岡が言ってるのは渚のことだろう。鷹岡は先にヘリポートに登り始めている。

 

「渚、行っちゃ駄目!」

 

「行きたくないけど、行くよ」

 

渚は持っていた殺せんせーを茅野に預け、鷹岡と同じようにヘリポートに登った。・・・大丈夫か、あいつ?

 

『念のため、いつでも撃てるようにしておけ』

 

だがエボルト、トランスチームガンは生身の人間相手には威力が強すぎるぞ。

 

『それでもだ。そうじゃなきゃ、最悪渚が死ぬぞ。・・・・大丈夫だ。確かに威力は強いが、急所を外せば気絶が済ませられる』

 

・・・・・分かった。俺はエボルトに言われた通り、いつでも撃てるようトランスチームガンを握っておく。ヘリポートへ続く梯子は鷹岡が爆弾で壊したため、俺たちはあそこに乱入できない。そもそも乱入したら何をするか分からない。・・・・・頼んだぞ、渚!

 

 

 

 

惣一side out

・・・・・・・・・・

◎side

 

 

 

惣一達がヘリポートで鷹岡と対峙しているその頃、万丈は・・・・

 

「・・・・これ、あいつらがやったんだよな」

 

『ギャオオン』

 

八階にコンサートホールでぐるぐる巻きにされた男、ガストロを発見していた。

 

「・・・よし!放っておいて行くか!!」

 

『ギャオオン!!』

 

状況を理解できず、諦めて進むことにしたらしい。

 

 




いや、本当に主人公の活躍がないな!最後に活躍したのっていつだ?

・・・すいません、なんとか近いうちに活躍させますので・・・・。

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第48話 必殺技

惣「ついに最上階に辿りついた俺たち。倒れたみんなをモニターで見ている男を捕まえようとナンバ歩行で歩み寄った俺たちだが、その前に椅子から立ち上がった男は、以前よりも狂気に満たされた鷹岡だった・・・・」

万「あいつ、前よりもめっちゃヤベェ状態になってんじゃんか!!どうすんだよ!!」

惣「そんなこと俺に聞かないでよ。指名されたのは渚なんだから」

万「なんだよそれ・・・・渚どうやって勝つんだよ!!」

惣「だから俺に聞くなって!気になるから、早く第48話読むよ!!」




惣一side

 

 

 

ヘリポートの上では渚と鷹岡が対峙している。そこには、本物のナイフが置かれていた。

 

「分かっているな。この間のリターンマッチだ」

 

「待ってください、鷹岡先生。戦いにきたわけじゃないんです」

 

「だろうな。この間みたいな卑怯な手はもう通じねぇ。一瞬で終わるのは目に見えてる」

 

そこは反論できねぇな・・・・・実際、あの時渚が勝てたのは鷹岡が油断していたからだ。

 

「だが、すぐに終わっちゃ俺も気が晴れねぇ。だから、謝罪しろ。土下座だ」

 

なんであんな野郎に土下座なんて・・・・・そう思うが、口には出せない。渚も逆らわずに膝をつく。

 

「それが土下座かぁ!?頭擦り付けて謝んだよぉ!!」

 

「・・・・僕は、実力がないから卑怯な手で奇襲しました。ごめんなさい」

 

「おう、その後で偉そうな口も叩いてたよなぁ。「出て行け」とか。ガキの分際で大人に向かって、生徒が教師に対してだぞ!!」

 

鷹岡は下げている渚の頭を踏みつける。だが、渚は顔色を全く変えずに言葉を続ける。

 

「・・・・ガキのくせに、生徒のくせに、先生に生意気な口を叩いてしまい、すいませんでした。本当にごめんなさい」

 

渚の言葉に、鷹岡は満足したのか頭から足を退ける。

 

「よーし、やっと本心を言ってくれたな。父ちゃんは嬉しいぞ?」

 

鷹岡は渚から離れ、置いていたスーツケースのところまで戻る。これで渡してくれればいいんだが・・・・・。

 

「褒美にいいことを教えてやろう。ウイルスに感染したやつがどうなるか、スモッグのやつに見せてもらったんだが笑えるぜ?顔が干しぶどうみたいになっていたんだ。君もみたいだろ?渚くん!!」

 

鷹岡はスーツケースを空中に放り投げ、そしてスイッチを取り出した。・・って、まさか!!

 

「やめろーーー!!」

 

烏間先生が叫ぶ。だが、スーツケースは粉々に爆発した。中身にワクチンもろとも。

 

「あははははははは!!そう!その顔が見たかった!!」

 

「・・・あんにゃろ・・・!!」

 

『狂ってやがる・・!!』

 

鷹岡は絶望する俺たちの顔を見て大声で笑ってやがる。・・・・こっちの気持ちを考えずに!!

 

そんな時、いつもよりも強い殺気を感じた。場所はヘリポートの上から。・・・・渚だ。地面に置かれていたナイフを拾って、鷹岡を睨みつけている。

 

「ころ・・・してやる・・!よくもみんなを!!」

 

『まずい!今の渚は本気で殺しかねない!!』

 

なっ!急いで止めないと・・・!!そう思ったが、俺が動くよりも早く、寺坂が投げたスタンガンが渚の背中に当たった。

 

「はぁ・・・はぁ・・・チョーシこいてんじゃねぇーぞ渚!!薬が爆破された時、お前俺を哀れむような目で見たろ。いっちょまえに他人の気遣いしてんじゃねぇ!!ウイルスなんざなぁ、寝てりゃ余裕で治せんだよ!!」

 

「寺坂、お前!!」

 

そこまで言ったところで、寺坂は耐えきれずに倒れてしまった。だが今は・・・・

 

「寺坂の言う通りだぞ、渚!!そんなクズでも息の根止めたら、それは立派な殺人だ!!お前はそんなことするためにここにいるんじゃないだろ!!・・・お前は、俺と同じ道を辿るな!」

 

『惣一、お前・・・』

 

こうでも言わなきゃ止まらなそうだろ?・・・今の俺にとって、自分の過去がバレるよりも、あいつが俺と同じようになる方が嫌なんだ。

 

『そうか・・・』

 

「渚くん、寺坂くんのスタンガンを拾いなさい!その男の命と先生の命、その男の言葉と寺坂くん、石動くんの言葉。それぞれどちらに価値があるか考えるんです!!」

 

殺せんせーの言葉に、渚の動きが止まる。届いていればいいんだが・・・・。

 

「やれ、渚。死なねぇ範囲でぶっ殺せ!!」

 

寺坂の言葉を聞いた渚は、スタンガンを拾う。だが、それをしまってナイフを持ち、来ていた上着を脱ぎ捨てた。

 

「おーおー、カッコいいね!!ナイフ使う気満々だな、安心したぜ?あ、一応言っとくが、ここに薬の予備がある。人数分には足りないが、最後の希望だぜ?」

 

「・・・・・・・」

 

その言葉に、渚は何も答えない。だが、誰の目から見てもこれはまずい。今の鷹岡は狂気に満たされた先鋭軍人。最初から隙がなく、完全に戦闘モードだ。ここに来るまでの3人の殺し屋は暗殺に持ち込んで倒したが、今回は立場が完全に逆・・・・・渚が暗殺に持ち込もうとしても戦闘に戻されてしまう。

 

「あぐっ!」

 

「おら・・・どうしたんだ。殺すんじゃなかったのか」

 

戦闘開始から、まだ数十秒しか経ってない。だが、すでに渚の体はボロボロに傷ついていた。ナイフを振るってもいなされ、拳で叩きつけられたり膝蹴りをされたり・・・・このままでは、渚が倒れるのは時間の問題だ。

 

「さぁて・・・俺もそろそろ使うか」

 

そう言って鷹岡が取り出したのは本物のナイフ。おいおい・・・渚を殺す気か!?

 

「烏間先生、もう撃ってください!渚、死んじゃうよあんなの!!」

 

『惣一、お前もだ!!どう考えてもまずい!!』

 

「待て・・・・手出しすんじゃねー」

 

トランスチームガンを取り出そうとした時、寺坂が止めてきた。手を出すなって、この状況でか?

 

「まだ放っておけって寺坂?そろそろ俺も参戦したいんだけど・・!」

 

「カルマ、てめーはサボってばっかで知らないだろうが、渚のやつ・・・・・まだ何か隠し球持ってるようだぜ?」

 

 

 

 

惣一side out

・・・・・・・・・・・・

渚side

 

 

 

 

この旅行の前、僕はロヴロさんからある技を教えてもらった。それの発動に必要な条件は全部で3つ・・・・。

 

1つ、武器を二本持ってること。

 

2つ、敵が手練れであること。

 

3つ、敵が殺させる恐怖を知ってること。

 

・・・・・よかった、全部揃ってる。

 

僕はあの時と同じように歩いていく。鷹岡先生・・・・実験台になってください。

 

一歩一歩鷹岡先生に近づいていく。タイミングは間合いのわずか外。接近するごとに敵の意識はナイフに集まる。だから、ナイフを空中に置くように捨てて、そのまま・・・・・

 

パァン!!

 

「(な・・・・何が・・・おこ・・・!!)」

 

鷹岡先生は体勢を崩す。暗殺者は、この一瞬の隙を逃さない。流れるように二本目の刃を抜く。スタンガンを鷹岡先生の脇にあてて電気を流す。

 

「(そ・・・んな・・!こんな・・ガキに・・・二度・・も・・!!)」

 

鷹岡先生は膝をつく。・・・うまく、いったの・・?

 

「トドメをさせ、渚!首元に流せば、気絶する!」

 

寺坂くんの声が聞こえた。その言葉通りに、僕はスタンガンを鷹岡先生の首元に当てる。だけど、電流を流す前に言わなきゃいけないことがある。・・・・殺意を教わった。抱いちゃいけない殺意があること。その殺意から引き戻してくれる友達の大切さ。殴られる痛みを、実戦の恐怖を、この人からたくさん教わった。

 

ひどいことをした人だけど、

 

「やめろぉ・・・・」

 

それとは別に授業のお礼をしなくちゃいけない。

 

「その顔だけはやめてくれぇ・・!」

 

それならそういう顔をするべきだろう。

 

「もう一生、その顔が悪夢の中から離れなくなるぅ・・・・!!」

 

僕は笑顔を浮かべ、鷹岡先生にお礼をする。

 

「鷹岡先生・・・ありがとうございました」

 

バチィ!!

 

再び流れた電気。首元に流された鷹岡先生は気絶し、そのまま倒れた。

 

「・・・・渚が・・勝った・・」

 

「いぃぃぃぃぃよっしゃーーーーー!!ボス撃破!!」

 

「「「「やったーーーー!!!」」」」

 

僕が勝ったことに、みんなが喜びの声を上げる。これで、一件落着だね。

 

 

 

そう思っていた。

 

 

 

「同じ少年に負けるとは・・・・せっかくボトルを渡したのに使えない男だ」

 

 




初めての渚視点だ!イェーイ!!何かアドバイス等がありましたら教えてください!

あと二、三話ぐらいかな?それで潜入は終わりにします。(シリアスあるかも・・・)

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第49話 現れるラスボス

惣「今回の事件の首謀者である鷹岡と、以前鷹岡を倒した渚の戦いが行われた。最初は渚が圧倒されていたが、ロヴロさんから教わった必殺技を使い、無事に倒すことができた」

万「渚の奴すごかったな!!こう手をパンってやって、バリバリって!!」

惣「てか、お前はいつになったら合流すんだよ。早くしろよ」

万「お前たちが早すぎんだよ!!」

惣「あぁもうほら!鷹岡よりもやばそうな奴が来ちゃったよ!!どうなる第49話!!」


惣一side

 

 

渚が鷹岡を無事に倒し、そのことにみんなが喜んだ直後だった。

 

「同じ少年に負けるとは・・・・せっかくボトルを渡したのに使えない男だ」

 

そんな声とともに、オレンジと黒の二色の体を持った何かがヘリポートに降り立った。いきなりのことに全員が戸惑うが、それよりも俺はそいつが腰につけているベルトに目がいった。大きな歯車と赤いレバーが付いている黒いベルト、そしてそのベルトに装填されているオレンジと黒の二本のフルボトル。特に黒い方のフルボトルには見覚えがあった。

 

「ガトリングフルボトル・・・・」

 

あのボトルは以前イトナ・・・・グリスに奪われたボトルだ。それをあいつが持っているってことは・・・

 

『間違いない。奴はカイザー共と繋がっている』

 

やっぱそうだよな。てかあの姿、データにあった『仮面ライダービルド』にそっくりなんだけど。

 

『確かビルドはボトルによって姿を変えるはず。あの姿はその内の一つなのだろう』

 

そういえばそうだったな。ボトルによってってことは・・・・形態多くね?

 

「ん?・・・・そういえばカイザーが言っていたな。あいつが言ったことは本当だったか」

 

そいつ・・・・おそらくビルドでいいのだろう。ビルドは俺を見ると、そんなことを言った。

 

「やっぱ知られてるか・・・」

 

「知らないわけがないだろう?・・・久しぶりだな、惣一」

 

「は?久しぶり?・・・・・どういうわけだ」

 

「あぁ、そういえば変身を解いていなかったな」

 

ビルドはそう言ってベルトからボトルを二本抜いた。・・・・・まさか・・・・

 

「これでわかるだろう?私が誰なのか」

 

「・・・・・・父・・・さん・・」

 

「「「「父さん!!?」」」」

 

俺の言葉にみんなが驚く。・・・・やっぱり、生きていたのか・・・・。

 

「・・・なんで・・・・」

 

「ん?」

 

「なんで、俺を騙したりなんかした・・・・なんでカイザーと手を組んでんだ!!」

 

「なんで、か・・・・・簡単だ。人類を救うためだ」

 

「人類を・・・救うため・・だと?なに言ってんだ!!あいつのせいで余計な被害が出てんだぞ!!それのどこが人類を救うためだ!!」

 

正直、父さんが何を言ってるのか理解できなかった。人類を救うため・・・・・本当にそうだとしても、カイザーのせいでスマッシュが誕生したようなものだ。そのスマッシュが人々に被害をもたらしてるのに、人類を救うことに繋がるとは思えなかった。

 

「それはお前が何も知らないからだ」

 

「なんだと・・・・!」

 

「来るべき脅威から人類を救うには、必要なことなのだよ。・・・・邪魔するというなら、私がお前を倒そう」

 

「・・・・・やってやるよ!」

 

『コブラ!』

 

「蒸血!!」

 

『ミスト・マッチ!コブラ・・・・・ファイヤー!!』

 

「ふ・・・・」

 

俺がブラッドスタークになってヘリポートに転移したのを見た後、父さんは今度は赤と青の二本のボトルを取り出した。・・・あれは、タンクフルボトル・・・。

 

「さぁ、実験を始めよう」

 

『ラビット!タンク!』

 

父さんがボトルをベルトに装填すると、そんな音声が鳴り響いた。鳴り終わった後、父さんは赤いレバーを回し始め、今度は何かを建設するような音がする。そして、父さんの周りに透明なパイプが張り巡らされ、そこに赤色の液体と青色に液体が流れる。やがて赤と青のパイプは形を形成しはじめ、赤と青の二つの半身が完成した。

 

『Are you ready?』

 

「変身」

 

『ラビットタンク!!』

 

それらの半身が父さんを挟むように閉じ、蒸気が噴射される。その姿は、データに描かれていた姿と一致した。

 

『それが・・・仮面ライダービルド・・・・か』

 

「そうだ。二つのボトルを組み合わせて変身する、私が作ったライダーシステムだ。さて・・・・こいつにもまだやってもらうの事があるのでな」

 

父さんは足元で気絶している鷹岡のポケットの中から何かを取り出した。あれは・・・ボトル!?

 

「これはパンドラボックスから作られた60本もボトルの中には含まれない、私が作ったボトルの内に一本だ。このボトルをこうすると・・・・」

 

ボトルを数回振った後、父さんはそれを鷹岡に突き刺すように当てた。すると、鷹岡の姿が人間の姿からスマッシュの姿に変わった。そのスマッシュは両手と頭の部分がハンマーのような形をしていて、全身が黒い。

 

「ハードスマッシュ。従来のスマッシュとは違い、自我が存在している。そこにいる少年と同じスマッシュだ」

 

父さんが指差した先には寺坂がいた。・・・あの姿のことか。

 

「だが、このハードスマッシュは彼とはまた違う。その証拠に、体が黒いだろう?」

 

『それがなんだ』

 

「彼にネビュラガスを注入した際、これを使ったのだよ」

 

そう言って取り出したのは、赤いトリガーと思われるようなものだった。

 

「『ハザードトリガー』。また、禁断のアイテムとも呼ばれているこのアイテム。これを使用したため、彼のハザードレベルは3.9・・・・お前よりも高いし、ハードスマッシュよりも戦闘能力も高い。その名も『ハザードスマッシュ』だ」

 

ハザードレベルが3.9・・・か、確かに俺よりも高い。

 

『今のお前のハザードレベルは3.7だからな。勝てるか?』

 

どちらにせよ、やるしかないだろ!!

 

『ふっ!!』

 

「はぁ・・・正面から向かってくるだけか・・・」

 

俺は真っ先に父さんが変身しているビルドに目標を定め殴りにかかったが、右手で簡単に止められてしまった。

 

『なっ!くっ・・・』

 

「言っておくが、私のハザードレベルも3.9・・・・対してお前は3.7だ。その程度のハザードレベルで勝てると思っているのか?」

 

『そんなの・・・・やって見なくちゃわからないだろ!!』

 

殴った手は掴まれたままだが、俺はその体勢からビルドの腹に蹴りを放つ。近距離だったこともあり、父さんは今の攻撃を交わすこともできず、防ぐこともできなかった。

 

「くっ!・・・・まさか、今の体勢のまま攻撃をしてくるとは」

 

『おらっ!!』

 

ハザードレベルが向こうのほうが高い以上、隙を見逃すつもりはない。攻撃をしたすぐ後は休むことなく追撃を加える。が・・・・

 

「誰か忘れてないか?」

 

『!何!?』

 

俺の攻撃を横からの攻撃で阻まれた。今のは・・・

 

『ハザードスマッシュだ』

 

エボルトの言う通り、父さんの横にはハザードスマッシュが立っている。

 

『2対1かよ・・・』

 

『いや、2対2だ』

 

俺の横に煙が発生し、晴れるとナイトローグが姿を現した。

 

『烏間先生・・・』

 

『俺も完全に回復した。一緒に戦うぞ』

 

『っ・・・・あぁ』

 

 

 

 




なんか色々盛り込みすぎたかな?ビルド初登場にハザードスマッシュにハザードトリガーに。

次回は久しぶりの戦闘回ですね。お楽しみに!

感想、評価等宜しくお願いします!

それでは、チャオ!!


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第50話 ビルドの力

万「なぁ、惣一・・・・」

惣「?なんだ、万丈」

万「なんだじゃねぇよ!!んでこんなに遅れてんだよ!!」

惣「そんなん俺が知るわけないだろ。作者に聞けよ」

万「作者って誰だよ」

惣「はぁ・・・・自分で調べろ。さて、だいぶ遅れてしまったから軽くあらすじ紹介をしよう。前回は俺の父親、石動健二がホテルの屋上に姿を現した。父さんが変身した仮面ライダービルドと、鷹岡が変身したハザードスマッシュとの交戦が始まった。ま、だいたいこんな感じかな」

万「おいおい、何落ち着いてあらすじ紹介してんだよ!てか、俺の分は!?」

惣「あ?んなのもう無いに決まってんだろ。さて、俺たちの戦いの行方は第50話で確認してくれ・・・・っと、その前に、万丈!」

万「あ?」

惣「あじゃないよ、ほら一緒に」

万「お、おぉ・・・んじゃ、せーの!」

惣・万「「新年明けましておめでとう!!2019年も『地球外生命体を宿して暗殺者』をよろしく!!」」

エ『俺のこともな♪それじゃ、第50話をどうぞ♪』

惣「おいエボルト!最後勝手にしめるなよ!!」



烏間side

 

 

 

俺は今、鷹岡がなっているスマッシュ・・・確か、ハザードスマッシュと言っていたな。と対面している。ビルドの方は石動君に任せるとするが・・・・まさか、またこいつと戦うことになるとわな。

 

『悪いが時間をかけるつもりはない・・・・さっさと倒して薬を回収させてもらう』

 

俺がそう言った瞬間、動き出したのはハザードスマッシュの方からだった。ハンマーのような形状をしている手を大きく振るい、攻撃してくる。

 

『ふっ!!』

 

その振りはかなり大きいため、避けるのは簡単だ。振られた腕をしゃがんで避け、スマッシュに接近する。腕が重いのか、スマッシュはすぐに動かない。俺はその隙を逃さず、トランスチームガンで腹を撃つ。

 

『はっ!』

 

近距離で光弾を受けたスマッシュは大きく後退した。だが、これだけじゃ流石に倒せないか・・・・ここは、まず動きを止めるか。

 

『アイススチーム!』

 

スチームブレードのバルブを回転させ、煙を撒く。スマッシュの煙に当たった所から凍っていき、やがて全身が凍りつく。これで時間が稼げるだろう。今のうちに、石動君の方は・・・・・。

 

次の瞬間、横から氷の塊が飛んできた。

 

『なっ!?くっ!!』

 

なんとか避けることができたが、正直ギリギリではあった。見ると、先ほど凍らせたはずのスマッシュが氷を砕いて動いていた。おい・・・・幾ら何でも早すぎないか?

 

『・・・・くっ・・・烏・・間か・・』

 

『っ!・・・鷹岡・・・』

 

スマッシュから声が発せられる。おそらく鷹岡だろう。以前ハードスマッシュになった寺坂君も声を発せたらしいからな。ハードスマッシュの強化体とも言えるハザードスマッシュが声を発せてもおかしくない、か。

 

『・・・だいぶ意識も戻ってきたぜ・・・・体もコントロールできるようになったしな』

 

くっ・・・・・ここからは鷹岡の意思があるのか・・・・。

 

『おらっ!!』

 

『ふっ!・・・・はぁ!!』

 

再び振られた腕を避け、同じようにトランスチームガンで腹を撃とうとする。倒すまではいかなくても、ダメージは受けてもらう!

 

『・・・さっきまでと同じと思うな!!』

 

『!な、何!?』

 

だが、鷹岡はそのままに勢いで一回転し、反対の手で殴ってきた。その攻撃は直撃し、俺は吹き飛ばされてしまう。

 

『今は俺の意思で動いているんだ。さっきまでのような意思のない攻撃とは違うぜ?』

 

っ!・・・・そうか、さっきまでとは違って今は意思が存在している。・・・・さっきとは別人だと考えた方がいいな。

 

『そうか・・・・・ならば!!』

 

背中から翼を出し、空を飛ぶ。あの形状からは空を飛ぶことはできないだろう。これで多少は俺が有利に・・・・

 

『その程度で、有利になったと思ったか!!』

 

『っ!!くあ!!』

 

鷹岡はそのハンマー状の腕にエネルギーを集め、巨大なハンマーを作り出して振るってきた。予想外の攻撃に避けることができず、直撃を食らってしまう。

 

『へへ・・・どうだ、烏間?俺の力は』

 

『これが・・・ハザードスマッシュの力ということか・・・』

 

『お前が変身するナイトローグとはわけが違うんだよ!それに加え、ハザードレベルは俺の方が上だ!!お前が勝てるわけがないんだよぉ!!』

 

くっ・・・・だが、鷹岡の言う通りだ・・・・・。実際ハザードレベルは鷹岡の方が上回っている・・・だからといって引くわけにも行かない・・・・・どうするか・・・・。

 

そんな時、俺に手がある物に触れた。これは・・・あの時の・・・。

 

『・・・使ってみるか』

 

『あぁ?』

 

俺は以前鷹岡が変身した時に採取した成分からできたボトル・・・・・『フェニックスフルボトル』を振り、トランスチームガンに装填する。

 

『フルボトル!』

 

『俺もまだ使った事はないが、どうなるか・・・・・実験だな』

 

『スチームアタック!!』

 

トリーがーを引くと、俺の体が炎に包まれる。羽を動かすと、それに合わせて炎も動く。

 

『これがフェニックスフルボトルの力か。・・・なるほど、確かに不死鳥のようだな』

 

いつものように、空を飛ぶ。そしてそのまま鷹岡に突っ込む。

 

『なっ!?くわ!!』

 

『ふっ!!はぁ!!』

 

鷹岡にぶつかり離れると、旋回し再び鷹岡に向かっていく。これで・・・終わりだ!!

 

『バット!!スチームブレイク!!』

 

トランスチームガンにバットフルボトルを装填し、鷹岡に衝突する瞬間にトリガーを引く。銃口から放たれた蝙蝠型のエネルギーが鷹岡の体に直撃する。

 

『ぬおぉぉぉぉぉ!!』

 

『うっ・・・・ぐあぁあ!』

 

だが、衝撃は俺にも伝わり、吹っ飛ばされ変身も解除される。鷹岡は・・・・・

 

「うっ・・・ぐぅうう・・・」

 

鷹岡も人間の姿に戻り、倒れている。どうやら、なんとかなったようだな・・・・・。

 

「くっ・・・流石に、俺でもこれは・・・」

 

きつい。そう言おうとした瞬間、俺に横に赤い人影が吹き飛んで来た。その赤い影が光り、次の瞬間にはそこに石動君が横たわっていた。

 

「!石動君!!」

 

「うっ・・くぅ・・・・」

 

まさか、石動君が負けるとは・・・・いったい何が?

 

 

 

 

烏間side out

・・・・・・・・・・・・

◎side

 

 

 

 

時間は少し戻り、烏間が変身したナイトローグと鷹岡が変身したハザードスマッシュが戦い始めた頃。惣一が変身するブラッドスタークと彼の父親が変身する仮面ライダービルドも、戦いを再開していた。

 

『おらっ!!』

 

「ふん」

 

ブラッドスタークが先に動き出し、先制攻撃を仕掛ける。が、その攻撃はビルドによって簡単に止められてしまった。

 

「その程度か、お前の力は」

 

『くっ・・なめやがって・・!』

 

スタークはいつものように、その状況から蹴りを放とうとしたが、ビルドはそれを予測していたかのように足払いをして防いだ。

 

『何!?』

 

「お前の戦闘スタイルの分析はすでに完了している。今までと同じ戦い方で、勝てると思わない事だ」

 

『っ・・・んだと・・・』

 

今まで、惣一はスタークとして幾度となく戦ってきた。ビルドは映像からそれらの戦いを分析し、惣一の戦い方を学んでいた。そのため、惣一がどのように戦うのか、どのような動きをするのか、ビルドは事前に予測して行動することができたのだ。

 

「さて、あれを使ってみるか・・・・・ドリルクラッシャー」

 

ビルドがそう呟くと、ドライバーからパイプが伸びて形を作り、剣先がドリルのような形の剣が出現した。ビルドは空いている手でドリルクラッシャーを掴むと、それでスタークを切り裂いた。

 

『グォ!!』

 

切り裂かれた瞬間、ビルドはスタークの手を離したため、スタークは後方に吹き飛ぶ。

 

「ふむ、距離が開いてしまったな。ならば・・・」

 

ビルドはドリルクラッシャーの剣先を掴んで分割し、横に取り付けて銃のような形に変える。ビルドは銃口を倒れているスタークの方に向けて、躊躇なくトリガーを引いた。

 

『ぐっ・・・クォ!グアア!!』

 

スタークはさらに後方に吹き飛び、その際にハリネズミのボトルを落としてしまう。ビルドはそのボトルを拾うと、数回振ってからドリルクラッシャーに装填した。

 

『Ready go!』

 

そして銃口をスタークに向け、再びトリガーを引いた。

 

『ボルテックブレイク!!』

 

銃口から鋭い針の形をした光弾が高速で連射され、何発もスタークに当たる。

 

『うっ!くっ!くぅぅ・・・・ぐわぁぁぁああああ!!』

 

そして、スタークは後方に飛ばされ、変身は解除されてしまった。

 

 

 

◎side out

・・・・・・・・・

惣一side

 

 

 

「うっ・・・くぅ・・・・」

 

「石動くん!」

 

父さんの攻撃を受け、俺は烏間先生の所にまで飛ばされてしまった。この力・・・強い・・!

 

『大丈夫か?惣一』

 

これで・・・大丈夫に見えるのか?対して何もできてないってのに・・・・もう戦う力が残ってないぞ・・・・。

 

「くっ・・・石動くんは休んでてくれ。ここは・・・俺が!」

 

『いや、辞めておけ。例え烏間と言えど、今のその状態じゃやられるのがオチだ。かと言って、惣一の体もこの状態じゃ俺も戦えない。あのドライバーがあれば別だが・・・・』

 

「あのドライバー・・?」

 

『いや、気にするな。それで、どうする?このままじゃあいつに捕まるぞ?』

 

「かと言って戦うこともできない・・・・」

 

トランスチームガンで逃げようにも、そんな隙もないしな・・・・これヤバくね?

 

「さて、お前たちが持つ残りのフルボトルも回収しておこう」

 

そう言いながらビルドはドリルクラッシャーをブレードモードに変えて持ち、惣一と烏間の元に近づいていく。そして、その手を振りかざした瞬間・・・・

 

「おぉぉぉらぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

 

 




遅れてしまい申し訳ございません・・・・

なかなかモチベが上がらず、こんなに遅くなってしまいました。

2019年もまだまだ続けていきますので、これからもよろしくお願いします!!

Happy New Year!!


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第51話 蒼い龍

?「この本によれば、ブラッドスタークである石動惣一は仮面ライダービルドと、ナイトローグである烏間惟臣はハザードスマッシュとそれぞれ戦った。ナイトローグは勝利することができたが、ブラッドスタークはビルドに圧倒され敗北してしまう。そこに万丈龍我が現れ、新たなライダーに・・・・おっと、ここから先は未来の話でしたね」

万「・・・・今の誰だ?」

惣「さぁ・・・・」


◎side

 

 

 

スタークがビルドに負け、変身が解除された時まで遡る。周りで戦いの様子を見守っていた生徒たちの耳に、荒々しく走る音が届いた。

 

「万丈!!」

 

「お前、今までどこに!!」

 

「あぁ・・悪りぃ!ちょっと、色々あってな。それで、今どういう状況だ?」

 

万丈のその言葉に、みんなの視線がある一箇所に集まる。それにつられ、万丈もそちらに視線を移した。

 

「・・・おいおい・・・何がどうなってんだよ・・」

 

そんな万丈の目に飛び込んできたのは、変身が解除されて動けないでいる惣一と烏間、そしてそんな二人に迫るビルドの姿だった。

 

「おい!なんで逃げねぇんだよ!!」

 

「逃げたくても動けないんだよ・・・」

 

「は?」

 

万丈の疑問に茅野が答え、殺せんせーが口を開く。

 

「先ほどまで、二人はそれぞれ強敵と戦っていました。結果、烏間先生は相打ちも同様、石動君は敗北してしまっています。もう二人には、あの場から逃げる体力が残っていないんです」

 

「・・・んだよそれ・・・・」

 

殺せんせーの言葉を聞いた万丈は、再び惣一達の方を見る。すでにビルドは惣一達のすぐ近くまで来ていた。

 

「っ!・・・・こうしちゃいられねぇ!!」

 

「お、おい万丈!!」

 

磯貝が声をかけるが、万丈は聞かずにドラゴンフルボトルを振って大ジャンプをした。

 

「ええぇぇぇ!?」

 

「こ、この距離を飛べんのかよ!?」

 

木村や菅谷が驚くが、無理もない。彼らがいる場所から惣一達のいるヘリポートまではかなりの距離があり、その間にはそれなりに大きい溝がある。本来なら渡るための梯子があるが、それは最初に鷹岡に破壊されてしまったのだ。にも関わらず、万丈はその大きな溝をたった一回のジャンプで飛び越えたのだ。

 

「おぉぉぉらぁぁぁぁぁぁ!!」

 

「っ!」

 

万丈はそのままの勢いでビルドに殴りかかる。その気配に気づいたビルドは少し後退してその攻撃を避けた。

 

「ふぅ・・・誰かと思えば、万丈龍我か」

 

「ちっ・・・・避けられたか」

 

万丈は再びボトルを振る。その状態のまま、万丈は惣一の方に視線を移す。

 

「大丈夫か?惣一、烏間先生」

 

「万丈・・・・・そういえばいたな。忘れてたわ」

 

「うわ、ひで!!なんだこいつ!!」

 

「途中からいなかったお前が悪い」

 

「仮にもお前を助けたんだぞ!なんだよこの仕打ち!!」

 

『あー・・・・・お前ら、今そんな事してる場合じゃないと思うんだが・・・』

 

「「えっ?・・・あー、そういえばそうだったな」」

 

『忘れてたんかい!!』

 

このような状況でも相変わらずのやりとり。案外余裕があるようだ。

 

「てか、案外律儀だな。攻撃せずに待ってくれるなんて」

 

「ふっ、そこまで卑怯者じゃないさ。それに、そんな事する必要もないしね」

 

「あぁ、そうかよ!!」

 

そんな事は関係ないとばかりに拳を振るう万丈。案の定、それは容易く避けられる。

 

だが、それでも万丈は攻撃の手を止めない。何度避けられても、その拳を振るい続けた。

 

「・・・・はぁ」

 

やがて、避け続けるのも面倒だと感じたのか、ビルドが動きを止めてその拳を真正面から受け止めた。だが、万丈の拳はビルドの装甲に受け止められ、ダメージが全く通らない。むしろ、殴った万丈の方がダメージが大きかった。

 

「っ〜・・・・・いってぇ!!」

 

「当たり前だろ、馬鹿」

 

いくらネビュラガスを注入されているとはいえ、万丈は生身なのだ。全身が装甲で覆われているビルドに攻撃してもダメージが通る事もないだろう。

 

「これで分かっただろう。君の攻撃で私が倒される事はない」

 

「ンなの、やってみなきゃ分かんねぇだろ!!」

 

ビルド自身にも言われたが、万丈は攻撃の手を止める事はなかった。ビルドはもう避ける事すらしない。ただ立っているだけだ。

 

「おら!おら!おら!!」

 

「はぁ・・・・・ふん!」

 

「おわっ!?」

 

万丈の攻撃をしばらく受け続けていたビルドだったが、やがてその拳を手で受け止めて惣一の所まで放り投げた。

 

「万丈!」

 

「っ〜・・・」

 

「もうやめておけ、貴様がやってることは無駄でしかない」

 

ビルドにそう言われるが、万丈は再び立ち上がった。

 

「だとしても、止めるわけには行かねぇだろ!」

 

ボトルを振り、三度殴りかかる。先ほどと変わらず、避けずに受けきる。

 

「はぁ・・・・なぜやめない?ただ自ら体力を減らしていくだけなのに」

 

「うるせぇ!」

 

何度もビルドの装甲を殴り続けたためか、その拳からは血が流れ始めた。

 

「はぁ・・はぁ・・・例え、俺の攻撃が効かなくても・・・・今、お前と戦えるのは・・・あいつを助けられんのは、俺しかいねぇだろ!!」

 

万丈がボトルを握った手を大きく振りかぶった。その瞬間、その手が蒼い炎に包まれる。

 

「何!?ぐわあぁ!!」

 

突然の出来事に、ビルドは対応出来ず大きく後退させられる。一方、万丈は何が起こったのか理解ができていなかった。

 

「まさか・・・・万丈!ちょっと来い!」

 

「え?あ、あぁ」

 

惣一の呼び声に答え、万丈は駆け寄る。駆け寄った万丈の手に惣一が触れると、確信したような顔をする。

 

「やっぱり・・・ハザードレベル3.0・・!」

 

『遂に覚醒したか!!万丈ーーー!!』

 

「あ?どういうことだ?」

 

「ハザードレベル3.0に到達したって事は、ビルドのようなライダーシステムや、俺や烏間先生と同じようにトランスチームシステムが扱えるようになった、て事だ」

 

「・・・・つーこたぁ、こいつが使えるってことか?」

 

そういって万丈が取り出したのは、ホテルの中で見つけたビルドドライバーだった。

 

「おま、それをどこで!?」

 

「さっき見つけたのを持ってきた!!」

 

「だからどこでだよ!!」

 

「よし!それじゃあ早速!!」

 

「聞け!!」

 

「あ、でもさっき試した時は使えなかったぞ?」

 

「はぁ・・・・もういいや。それはお前がハザードレベル3.0に到達してなかったからだろう」

 

「え〜と・・・つまり?」

 

「そのベルトを使うライダーシステムにしろ、トランスチームシステムにしろ、ハザードレベルは3.0以上じゃなければならない。そして、お前は今3.0に到達したんだ。さっきは無理でも今なら使えるはずだ」

 

「ん〜・・・よく分かんねぇけど、今なら使えるってことだな!ドラゴン!!」

 

「おい!!」

 

惣一の説明を半分も理解できていないが、このまま聞いてても意味無いと考えてドラゴンを呼ぶ万丈。

 

『ギャオオン!!』

 

ドラゴンの首と尻尾が折りたたまれ、四角いガジェットに変形する。万丈はビルドドライバーを腰に巻き、ガジェットを手に取る。持っていたドラゴンフルボトルを数回振り、キャップを前に合わせてガジェットの窪みに装填する。

 

『ウェイクアップ!』

 

そして、今度はガジェットをビルドドライバーに装填する。

 

『クローズドラゴン!』

 

ドライバーについているレバーを回し始めると、万丈の周りにビルドと同じ透明なパイプが形成される。だが、ビルドと違い蒼い液体だけが流れ、横側には翼を広げた龍のような装甲も形成された。

 

『Are you ready?』

 

拳を反対の手の平に打ち付け、前方に構える。

 

「変身!!」

 

『Wake up burning!Get CROSS-Z DRAGON!Yeah!』

 

形成された装甲が万丈を挟むように閉じ、さらに後ろから翼を広げた龍の装甲が万丈を包み込むように装着される。

 

蒸気が吹き出した後、そこには蒼い龍のようなライダーが立っていた。

 

 

 

 




やっとクローズを出せたぞーー!!まだ変身しただけだけど。

次回はクローズの戦闘回です!

感想、評価よろしくお願いします!

それでは、チャオ♪


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第52話 蒼き龍の力

惣「はぁ・・・また長かったな」

万「なんでこんな長いんだよ!前回から4ヶ月ぐらい経ってんぞ!!」

エ『どうやら、作者がジオウの方に気がいってたらしいな。そのお陰でこれとは別の作品を出してやがる』

万「はぁ!?こっち放り出してか!?」

惣「どうやらそのようだな。とにかく、前回のあらすじをするぞ。突如現れたビルドによって俺と烏間先生はピンチに陥る。変身解除まで追い込まれ、絶対絶命のピンチに陥ってしまった」

万「そんな時!この俺万丈龍我が駆けつけた!俺はビルドに立ち向かっていき、余裕でビルドを殴り飛ばした!」

惣「嘘つくんじゃないよ!本当は最初は劣勢、ビルドになすすべなかったが、途中で万丈のハザードレベルが上昇。ライダーシステムを扱える3.0に到達した」

エ『何処で手に入れたかはしらねぇが、万丈は持っていたビルドドライバーとクローズドラゴン、ドラゴンフルボトルを使って変身、その身を仮面ライダーへと変えたのだった!さぁ、どうなる第52話!!』

惣「最後まで言うな!!」


「それは・・・・」

 

先ほど手に入れたビルドドライバーと、惣一が造ったクローズドラゴン、そして妹の香澄がなったスマッシュから採取した成分を浄化してできたドラゴンフルボトル。これら三つのアイテムを使い、万丈は蒼い龍を模したライダーへと変身を遂げた。

 

「おぉ・・・・なんだこれ・・・・スッゲェ!!」

 

周りが驚いている中、当の万丈本人は変身できた喜びと嬉しさに興奮していた。今が戦いの場だというのに。

 

「万丈!前!前!」

 

「あ?・・・・うぉっ!?」

 

惣一の言葉に前を向く万丈だったが、そんな万丈を襲ったのはビルドによって放たれた光弾だった。

 

「危ねぇだろ!!声ぐらいかけろよ!」

 

「敵に声をかける奴がいるか?」

 

「・・・・・あぁ!」

 

ビルドの言葉に納得したように手を叩く万丈。そのあまりの馬鹿さに惣一は思わずため息をつく。

 

「よっしゃ!とにかく行くぜ!!」

 

万丈は拳を手の平で叩き、ビルドに向かって走り出す。そんな万丈に対し、ビルドはラビットの跳躍力でクローズの頭上を飛び越える。

 

「うぉっとっとっと・・・・!」

 

避けられるとは思ってなかったのか、万丈は止まる事が出来ずにそのまま前に進み、危うくヘリポートから落ちてしまう所だった。

 

「あっ、あっぶねぇ!?」

 

「何やってんだよ、万丈!」

 

「うるせぇ!こっちはこうやって戦うのは初めてなんだよ!」

 

「普段と同じようにやれば良いんだよ!」

 

「だぁもう!!」

 

再び万丈はビルドの方に向き直り、再び走り出していく。

 

「はぁ・・・また同じ事をするか・・・ならば」

 

向かってきた万丈を、体を横にずらす事で避けたビルドは新たに二本のフルボトルを取り出し、何回か振る。

 

『タートル!ロボット!』

 

ビルドの周りに変身時と同じように透明なパイプがドライバーから出現し、そこに緑と黒の液体が流れる。

 

『Are you ready?』

 

「そっちが力技と来るのならば、これはどうだ?」

 

『♪〜!』

 

ビルドの装甲が赤と青から緑と黒に変わり、複眼は亀とロボットの形に変わる。右肩には亀の甲羅のような装甲が付き、左手はロボットのアームのようになっていた。

 

「うぉっ!?姿変えられんのかよ!!」

 

突然の事に万丈は驚くが、結局は突っ込んでいく。

 

「どりゃあ!」

 

万丈はビルドに向かって殴りかかり、ビルドは今度は避けない。が、その代わりに右腕を前に出す。すると、ビルドの前に亀の甲羅を模したエネルギーが出現し、万丈の拳はそれによって止められる。

 

「何!?」

 

「ふん!」

 

「ぐぁ!」

 

動きを止めた万丈を、ビルドは左手のアームで殴りつける。その威力は普通のパンチよりも威力が高かった。そのため、万丈は吹っ飛ばされる。

 

「いっつつつ・・・あんなのアリかよ!?」

 

「ルールなんてないからな、なんでもアリなんだよ」

 

「マジかよ!んじゃどうすりゃいんだよ!!」

 

「お前は馬鹿なんだから難しい事なんか考えずにとにかく行け!!」

 

「はぁ!?」

 

起き上がった万丈の背中を蹴り飛ばす惣一。作戦なんてものは特に無いまま、万丈は3度目の突撃を試みる。

 

「くっそ!こうなりゃやってやるよ!!うぉおおおおお!!」

 

「・・・・・少しは学んだらどうだ?」

 

ビルドは再び右手で甲羅のエネルギーを出す。このままでは先ほどと同じ展開になってしまう。

 

「おりゃあああああ!!」

 

万丈は先ほどと同じようにエネルギーを殴る。当然それは止められる。だが、万丈の攻撃はこれで終わらなかった。

 

「オラッ!オラッ!オラッ!」

 

「・・・何をしている?」

 

万丈はそのエネルギーを何度も何度も殴り続ける。その行動に、ビルドは疑問を覚える。

 

「君が何をしようがこのエネルギーを破る事は出来ないし、私を倒す事など出来ない。無駄な行動なやめた方がいいぞ」

 

「うるせぇ!破れねぇなら、破れるまで殴り続けるだけだ!おぉおおおおおおお!!」

 

そう言ってエネルギーを殴り続ける万丈。その行動に、ビルドは思わずため息をついてしまう。

 

「全く、無駄だというのに・・・・・ん?」

 

そこで、ビルドはある異変に気付く。見た所様子は何も変わってない。満身創痍でいる烏間と惣一、この戦いを見守り続けているE組の生徒と殺せんせー、烏間に敗れて気絶している鷹岡、そして自身が出したエネルギーを殴り続けている万丈。そのエネルギーが徐々に崩れ出してきている。

 

「何!?馬鹿な、なぜ・・・・・!ハザードレベル・・・3.1、3.2、3.3・・・・まさか、この状況からハザードレベルが上昇していくだと!?」

 

「やってやるぜ!俺は・・・仮面ライダークローズだぁああああ!!!どりゃあああああああああ!!!」

 

「ぐぉおおおおお!」

 

徐々にヒビ割れていくエネルギー、そこに一撃を叩きこむ万丈。その一撃はエネルギーを完全に破壊し、その勢いのままビルドを殴りつける。予想外の事態にビルドは対応が出来ずに吹き飛ばされてしまう。

 

「くっ・・・まさか、破られるとは・・・」

 

「今だ万丈!!レバーを回せ!!」

 

「よっしゃ!!」

 

戦いを見ていた惣一の指示に合わせ、ビルドの態勢が戻る前にレバーを回す。

 

『Ready go!』

 

「はぁあああああ・・・・・・」

 

万丈の後ろに蒼い体をした龍が現れ、万丈の周りを飛び回る。万丈は腰を低くし、右足に蒼いエネルギーを貯めていく。

 

『ドラゴニックフィニッシュ!!』

 

「おりゃああああああああ!!」

 

「くっ・・・・ぐわぁああああああ!!!」

 

その態勢のままジャンプし、ビルドへと回し蹴りを放った。そのキックはビルドに直撃し、吹き飛ばす。ビルドはそれにより、変身解除してしまった。

 

「くっ・・・まさかこの私が・・・ふん!」

 

何処からか取り出したネビュラスチームガンから蒸気を出し、蒸気が晴れるころにはそこには誰もいなくなっていた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・」

 

「あいつが・・・いなくなった・・」

 

「鷹岡も倒したし・・・・ってことは・・」

 

「「「「やったぁあああああああ!!!」」」」

 

「ボス撃破!!」

 

無事にビルド、鷹岡の撃退、退却まで追い込むことができ、生徒達は歓声をあげる。殺せんせーは無事に終わったことに安堵し、息を吐く。その後、ある程度回復した烏間先生とまだ体力が残っている万丈の手によって橋が架けられ、全員がヘリポートに足を運ぶ。

 

「よくやってくれましたね、皆さん」

 

ヘリポートで戦った惣一、万丈、渚の元にカルマと磯貝、殺せんせーを抱えた茅野がやってくる。

 

『俺と惣一はほぼ何も出来てないけどな、あいつで撤退したのは万丈のおかげだ』

 

「・・・確かにな、万丈のハザードレベルが3.0を超え、ライダーシステムを使えるようになったおかげだ。サンキューな」

 

「ん?お、おう!感謝しろよ!!」

 

「それはどうかな」

 

「んだと〜!?」

 

さっきサンキューって言ってたじゃん。と惣一と万丈のやり取りを見ていた皆は思う。ちなみに3人と同じように戦っていた烏間先生は鷹岡を連行するために本部へ連絡をいれていた。

 

「皆はここにいてくれ。俺は毒使いの男を連れてくる」

 

そもそもこのホテルに潜入したのは鷹岡によってウイルスに感染した皆のためにワクチンを入手すること。ほとんどは鷹岡の手によって破壊されてしまい、残ったのは鷹岡が持っていた予備の数本だけだった。そのため、ウイルスに詳しいであろう毒使いの男を捉えようと考えたのだが・・・

 

「へっ!お前らに、薬なんか必要ねぇ!!」

 

ヘリポートに響く声。生徒達とは離れたところに、ここに来るまでに戦った殺し屋の3人が揃っていた。

 

「ガキども・・・ただで済むと思うなよ?」

 

「まだやるつもりか?」

 

「お前達の雇い主は倒した!俺は完全に回復し、生徒達も十分に強い!もうお互いに不利益な事はやめにしないか!」

 

「おぉ、いいよ」

 

「諦めがわり・・・・え?いいよ?」

 

烏間先生の話し合いにあっさりと了承する殺し屋達。まさかそんなあっさりと通るとは思っていなかった吉田が声を上げるが、すぐに冷静になる。

 

「俺達の契約の中に、ボスの敵討ちは入ってねぇ。それに言ったろ、そもそもお前達に薬は必要ねぇって」

 

「は?」

 

「どういう事だ?」

 

「お前達に盛ったのはこっち、食中毒菌を改良したものだ。数時間は猛威を振るうが、やがて急速に活動を停止し無毒になる。ボスが盛れと言ったのはこっち、これを盛ってたらまじでヤバかったけどな」

 

毒使いの男はそう言って二本の試験管を取り出す。

 

「そのウイルスを使う前に3人で話し合ったぬ。ボスが設定した時間は一時間ぬ。だったらわざわざ殺すウイルスを使わなくても取引はできるぬ」

 

「お前達が命の危険を感じるには、十分だっただろ?」

 

まるで当たり前とでも言う通りに話殺し屋達に、岡野は疑問を覚える。

 

「あいつの指示に逆らったって事?お金貰ってるのにそんな事していいの?」

 

「アホか、プロがなんでも金で動くと思ったら大間違いだ。確かにクライアントの意思に沿うよう最前は尽くすが・・・・ボスは初めから薬を渡すつもりは無かったようだった。中学生を大量に殺した実行犯になるか、プロとしての評価を落とすか、どちらが今後の俺らにとってリスクが大きいか、冷静に秤に掛けたまでよ」

 

「まぁそんなわけで、お前等は残念ながら誰も死なねぇ。ほれ」

 

毒使いの男は加えて何かが錠剤のような物が入っている容器を取り出し、それを渚に向かって投げる。

 

「その栄養剤を患者に飲ませてやんな。倒れる前よりも元気になったって手紙が届くほどだ」

 

「・・・・それは生徒達の無事を確認してからだ。しばらくの間、お前達の身柄も拘束させてもらう」

 

「仕方ねぇな、来週には次の依頼があるから、それまでにな」

 

ヘリポートへとやって来たヘリに拘束した鷹岡を積み込み、その次に殺し屋達も乗り込んでいく。

 

「リベンジマッチやらないの、おじさんぬ?俺のこと、死ぬほど恨んでない?」

 

カルマは自身と戦った殺し屋の前に立ち、両手の辛子とわさびを見せる。

 

「・・・・殺したいのは山々だが、俺は私怨で人を殺した事はないぬ。だから、誰かがお前を殺す依頼を持ってくるのを待つぬ。だから狙われるぐらいの大物になるぬ」

 

男はそう言ってカルマに頭を叩き、ヘリに乗り込んでいく。

 

「そう言うこった、ガキども!本気で殺しに来て欲しければ、偉くなれ!そんときゃ、プロの殺し屋のフルコースを教えてやるよ!!」

 

殺し屋達はヘリに乗って去っていった。彼らなりの激励を残して。その後、生徒達もヘリに乗り込んでホテルに戻り、全員の無事が確認された。

 

 

 

 

 

 




長らくお待たせしました!!久しぶりにビルド関連の動画を見てこっちの話を進めました!

前書きで話した通り、新たに仮面ライダージオウと暗殺教室のクロスオーバー作品を書き始めました。よろしければそちらもよろしくお願いします。

感想、評価等よろしくお願いします!

それでは、チャオ♪


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第53話 肝試し

惣「よっ!久しぶりだな!」

エ『前回からほぼ1年ぶりぐらいの投稿だ。前回までの話のことなんてもう記憶に残ってねぇじゃねぇか?そんなお前らのために、今から俺たちがしっかりと教えてやる!』

万「よし、俺に任せろ!俺たち三年E組は学校の中だと超底辺のクラス!他の生徒や先生からの扱いもひどいんだが、俺たちには話す事はできない・・・・え〜、惣一、これなんて読むんだ?」

惣「それはひみつな。てかお前それ何話のあらすじ紹介だよ。・・・おい、誰が第1話のあらすじ紹介しろつったよ!」

万「んな細けぇこと俺が知るわけねぇだろ!渡されたやつを読んだだけだ!」

惣「渡されたって誰にだよ?・・・おいカルマ、お前そこで何やってる。あ、おい待て!!」

有「それでは第53話、どうぞ」


無事に鷹岡、ビルドの二人を倒し、麓のホテルに帰還した生徒達。倒れた生徒達を看病していた奥田と竹林の二人が皆を出迎え、全員が助かる事を伝えた。その後は流石に疲れたのか、全員が泥のように眠り、目が覚めたのは翌日の夕方だった。

 

「おはよう」

 

「おはよう、元気になった?」

 

「お陰様で」

 

倒れていた生徒達も無事に回復し、全員が浜辺に集合していた。理由は浜辺に建設された一つの建物だ。その中には、完全防御形態になって身動きが出来ない殺せんせーが閉じ込められている。指揮をとっているのは当然烏間先生だ。昨夜から一睡もせずに働き続けている。

 

「やっぱすげぇな、あの先生は」

 

「後十年とかで、俺達あんな風になれるのか?」

 

「かと思えば、鷹岡のようにこうはなりたくないって奴もいたり・・・」

 

「良いと思った人は追いかけて、悪いと思った人は追い越して」

 

『それが大人になるって事なんだよ』

 

「地球外生命体のくせに、わかってる感じだな?」

 

『お前達に比べたら、俺は大人だよ』

 

惣一と万丈、エボルトに渚や杉野が話している最中、殺せんせーが閉じ込められている建物から爆発音がした。見ると、煙が上がっている。

 

「やったか!?」

 

「ここからじゃよく分からねぇ!」

 

とは言ってるものの、全員が薄々気づいている。こんなんじゃあの先生は殺せないって。その証拠に、殺せんせーはすでに着替えを済ませて渚達と話し始めていた。

 

「今回は先生が不甲斐ないばかりに、大変な目に合わせてしまいましてねぇ」

 

「ほんとだぜ、まったく・・」

 

『ま、なんとかなったし、良しとしようぜ』

 

「そうですね、それでは早速遊ぶとしましょう!」

 

「遊ぶって・・・これから?」

 

「もう夕方だぜ?すぐに日も沈むぞ」

 

「ご安心を、しっかりと考えてありますから。それでは、30分後に皆さんを連れて島の南にある洞穴まで来てください。それでは!!」

 

惣一達にそう言い残した殺せんせーは、さっさとその洞穴に向かってしまう。

 

「・・・なんだったんだ?」

 

「さぁな?」

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

それから30分後、惣一達は言われた通り全員を連れてきて洞穴に来ていた。

 

「肝試し?」

 

「はい!今から皆さんには男女でペアになってもらって順番に洞穴を一周してもらいます。中には先生が様々な手で驚かしにいきますよ?あ、もちろん肝試し中に暗殺を仕掛けるのもOKですので!」

 

殺せんせーの説明を聞きながらこの旅行の日々を思い出す生徒達。よく考えたらこの旅行のほとんどの時間を暗殺とホテル潜入に費やし、気がついたら帰るまで後一晩。暗殺も失敗に終わっているため、良い思い出は何も無かった。

 

「よし!面白そうだし、やってみるか!」

 

「「「おぉ〜!」」」

 

磯貝の言葉にみんなが賛成の声を上げる。せっかくの旅行、最後ぐらいは楽しい思い出で終わらせたい。そう思ってみんなのテンションは上がっていく。だからこそ気づけなかった、殺せんせーの背後に隠された『祝!カップル成立!』と書かれたプラカードに・・・・・。

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

渚・茅野ペア

 

 

「渚、こう言うのって平気だっけ?」

 

「う〜ん・・・・ゾクゾク系は大丈夫、いきなり系は駄目かな・・・・殺せんせーが脅かし役だし、あのスピードで本気で驚かしに来られたら、結構ヤバイかも・・・」

 

左手には懐中電灯、右手には対殺せんせーナイフを持った渚が両手で銃を握っている茅野にそう返す。そんな時、奥の方から沖縄の三線の音が聞こえ出した。二人がそれに気づき、音がする方へと光を向ける。すると、そこから琉球の衣装を着た殺せんせーがゆっくりと姿を現した。

 

「「出たぁ〜!!」」

 

「ここは・・・血塗られた悲劇の洞窟・・・琉球・・・ここには彷徨える魂達が住んでいる・・・・」

 

そう言い残して姿を消す殺せんせー。

 

「い、今のって本当かな?」

 

「た、多分雰囲気づくりの為の作り話だよ!」

 

二人は自分たちに言い聞かせるように話す。だが、そんな二人の後ろに再び殺せんせーが姿を現す。

 

「「ヒッ!?」」

 

「決して手を離さぬように・・・・もし一人になってしまったら、彷徨える亡霊の魂に体を乗っ取られてしまう・・・!」

 

二人が急いで後ろを振り向くが、そこにはもう何も居ない。

 

「け、結構本格的かも・・・・はやく行こう、渚!」

 

「う、うん!」

 

そこそこ本格的な肝試しに茅野は怖くなってきたのか、はやく出ようと提案して渚も同意する。歩き出す二人の後ろから、再び三線の音と先ほどのセリフが聞こえてきた。

 

「次のペアへの同じ語りとか・・・・無駄にリアルだ・・・」

 

「はは・・・」

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

カルマ・奥田ペア

 

 

 

「怖くない事が・・・怖い?」

 

一方カルマと奥田のペア。肝試しという事なのでどういうのが怖いのかを話していたようだが、カルマはまるで矛盾している答えを出す。

 

「うん、今回の一件で渚君と鷹岡が戦っているのを見てたけどさ、怖くないんだよ、全然。ブラッドスタークとか、地球外生命体とか言ってるエボルトも、味方だと分かってるから怖くない。けど、それよりも怖くなかった。別に鷹岡を倒したからとかじゃない。けど、確かに恐怖がそこにはあった。喧嘩なんかとは土俵が違う。まったく違うものだから。・・・・怖くないって、実は一番怖いんだなって思った」

 

「・・・・・」

 

カルマの話を静かに聞く奥田。彼女は実際にその場にはいなかったが、過去にあった鷹岡と渚の戦いから想像する事は出来た。

 

「けど・・・」

 

「?」

 

「負けないよ、俺は。喧嘩とか暗殺とか関係無い。最後に勝つのは俺だ」

 

「・・・はい!どっちが勝つのか、楽しみです!」

 

「ところで〜」

 

「はい?」

 

カルマが光を向けた先、そこにはスピーカーと赤と青の丸が正方形に置かれている・・・・俗にいうツイスターゲームというやつだ。

 

「肝試しとか言っときながら実はくっだらねぇ〜事考えてるみたいなんだけど」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

その頃、脅かし役の殺せんせー。次のペアを脅かしたあと、満足そうにその後ろ姿を眺めていた。

 

「君たちはしっかりち成長している、今回の一件で、それをはっきりと知りました。が、足りない事がある。それは・・・・・恋愛スキャンダル!!」

 

殺せんせーに後ろに浮かべ上がりカップル成立とハートマーク。殺せんせーの狙いは最初っからこれだけだった。

 

「夏辺りにはカップルもぼちぼち誕生すると踏んでいましたが、君たちは暗殺に夢中でそんな話がまったく無い!!ここは一つ、先生がその背中を押してあげましょう・・・そしてそれをネタにひやかしたり、実録小説を書くのです!これぞ、担任教師の息の計らい!ヌルフフフ!!」

 

完全に下世話。これに付き合わされる生徒達も溜まったもんじゃ無い。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

惣一・有希子ペア

 

 

この二人は渚・茅野ペア、カルマ・奥田ペアと違って静かだった。会話がまったく無いのだ。やがてこの沈黙に耐えかねたエボルトが口を開く。

 

『そ、そういえば惣一はなんか怖いものとかはあんのか?』

 

「特に無い」

 

『・・・・そ、それなら有希子の方はどうだ?どう言った系のが怖いんだ?』

 

「私も特には・・・」

 

『・・・・・』

 

さっきからこれの繰り返し、惣一と有希子が一向に喋らず、沈黙に耐えかねたエボルトが話題を振るも一言二言で会話は終わってしまう。

 

『(だぁ〜こいつら!ちっとは話せよ!俺が話題を振ってるだろうが!!それともなんだ?昨日の事をまだ引きずってやがんのか?いや、それは有希子の方はまだ知らない筈だし・・・・くそっ!これと言った原因も浮かばねぇ!とにかく、どうにかしてこの場を盛り上げないと・・・)』

 

一人で色々と考えているエボルト。だが、これと言った方法も思いつかずに悩んでいるところで有希子が口を開いた。

 

「おじさん・・・昨日会ったんでしょ?」

 

その言葉に、惣一は動かしていた足を止める。有希子が言うおじさんとは、惣一の父親・・・つまり石動健二の事だ。

 

『ちょっと待て!なんで有希子がそれを知ってんだ!?』

 

「万丈君から聞いた。昨日帰ってきてからの惣一の様子がいつもと違ったから」

 

『(万丈ーーーーーー!!!)』

 

エボルトが心の中で叫ぶ。まさか万丈が教えていたとは・・・・余計な事を。

 

「惣一はどう思ってるの?おじさんが敵だって事・・・・」

 

「・・・・・」

 

惣一は答えない。しばらく沈黙が訪れる。やがて、エボルトが口を開いた。

 

『惣一、言ってやれ。有希子には言ってやるべきだ。お前の口からな』

 

「・・・・・・はぁ」

 

エボルトにまで言われ、観念したのかやっと口を開いた惣一。止めていた足を動かしながら自身の思いを語り始める。

 

「正直、よく分からない。父さんが敵だったと言うよりも、今までどこで何をしてたのか知らないし・・・・あの時は有希子や皆が倒れている最中だったし、なるべく冷静になろうとしてたけど、案外焦ってたのかもな・・・・・カイザーの味方をしている父さんを責める事しかできなかった。でも、冷静になって考えれば父さんには何か事情があるんじゃないかって思うんだ。俺にも言えないような。だから、父さんを信じたいって思ってしまう・・」

 

「・・・・・それが惣一の気持ちなんだね」

 

「あぁ、信じたいし信じられない。矛盾してるよな・・」

 

「それでいいんじゃないかな」

 

「え?」

 

有希子の言葉に、惣一は振り返る。そこには有希子が笑顔を浮かべながら惣一を見ていた。

 

「おじさんが何を思ってあの人達の仲間になってるのかなんて、今の私達には知るよしもない。でも、信じればいいのか信じちゃダメなのか、それはすぐに決めなくちゃいけない事じゃないから」

 

「・・・・・」

 

「今はゆっくり休んで、その事はまた後で考えよ?」

 

「・・・そうだな、それもそうか」

 

暫く顔を伏せていた惣一だったが、ゆっくりと顔をあげてそう呟く。その顔からは迷いは消えていた。

 

「ったく、こうやって深く考え込んじまうのは俺の悪い癖だな。大分ここに長居しちまった。有希子、行こう」

 

「うん」

 

止めていた足を動かし、出口に向かって進み始める二人。途中明らかに場違いなベンチやら旗やらがあったが、それらはスルーしていく。

 

『(やれやれ、やっぱこういうのは俺じゃなくて有希子の方が適任だな。にしても・・・・・そろそろあのドライバーを使うべきなのかもな)』

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

一方その頃の殺せんせーはというと・・・・

 

「ここは血塗られた悲劇の洞窟、りゅうきゅ・・ぎゃぁああああああ!!?なんか出た〜〜!!!!」

 

脅かす側のはずがなぜか逆に生徒に脅かされ。

 

「ひぇええええ!目が無い!!!」

 

今度は勝手に驚き。

 

「うぅ・・・あぁああああああ!?なんかヌルヌルに触れられた!!」

 

自分で仕掛けた糸こんにゃくに引っかかり。

 

「ひぇええ!日本人形!?あぁああ!水木しげる大先生!?あぁ〜!うわぁああ!ぎゃあああ!」

 

結局自分が一番恐怖を味わう事となり、洞窟中に叫び声が響き渡る結果で肝試しは終わりを告げる事となった。

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

「よーするに、怖がらせて吊り橋効果でカップル成立を狙ってたと」

 

「怖がらせる前に狙いがバレバレ!」

 

「だ、だって見たかったんだもん!手繋いで出てくる二人とか見てニヤニヤしたいじゃないですか!不純異性行為とかしちゃダメですか!」

 

「泣きギレ入った」

 

「ゲスい大人だ」

 

結論をいうと殺せんせーの企みは失敗。最初こそ雰囲気はあったものの、途中からそれすらも消え去り全く恐怖を感じる事のない肝試しとなってしまった。

 

「そーいうのはそっとしておきなよ。ウチらぐらいだと色恋沙汰とか突っつかれるの、嫌がる子多いよ?皆が皆、ゲスいわけじゃないんだから」

 

「中村さん・・・分かりました・・・」

 

殺せんせーとの話も終わり、これで肝試しも終了としたその時、洞窟から最後のペアが出てきた。

 

「何よ、肝試したって何もいないじゃない!怖がって損したわ!」

 

「だからくっつくだけ無駄だといっただろ!徹夜明けにはいいお荷物だ」

 

「うるさいわね、男でしょ!美女がいたら優しくエスコートしなさいよ!」

 

「はぁ・・・」

 

そこまで言って、やっと生徒達の視線が集まってることに気づいたのかそそくさと離れていくビッチ先生。だがすでに時遅し。

 

「なぁ・・・薄々思ってたけど」

 

「ビッチ先生って・・・」

 

「うん」

 

「どうする?」

 

「明日の朝帰るまでに時間あるし・・・」

 

「「「くっつけちゃいますか!!」」」

 

結局、皆ゲスかったらしい。

 

 

 

 




久しぶりに投稿したなこの作品。

暫くはこれ優先で投稿しようかな?

あ、感想とかお待ちしてまーす。


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第54話 恐怖の再来

惣「殺せんせー企画『暗殺肝試し』という名のカップル成立作戦は無事失敗に終わった。が、そんな時俺たちの目の前に現れたのは烏間先生の腕に抱きつくビッチ先生の姿。それを俺たちが見逃すわけがなく、この旅行最後の作戦が開始する」

万「なぁ惣一」

惣「なんだ万丈」

万「今回のサブタイトルなんだけどよ、『恐怖の再来』ってなんだ?何が来んだ?」

惣「そりゃお前・・・・うっぷ・・」

万「あ?どうした?」

惣「ヤベェ吐きそう・・・・ひとまず第54話に進んでくれ・・おぇ・・」

万「うわ汚ねぇ!?」


「もぉ〜、やってらんない!鈍感にも程があるわ!!」

 

肝試しの会場だった洞窟からホテルへと戻ってきたE組の一同は、早速ビッチ先生を取り囲んでいた。

 

「ビッチ先生意外だなぁ、あんな男を自由自在に操れるのに」

 

「自分の恋愛はてんで奥手なんだね」

 

「恋愛?はっ!冗談じゃない!」

 

「え、違うんすか?」

 

「あいつが世界クラスの堅物だったから珍しかっただけよ!!それで・・ムキになって本気にさせようとしているうちに・・・その内・・こっちが・・・」

 

そう顔を赤らめながら話すビッチ先生を見て、数人の男子生徒が息を飲む。

 

「可愛いと思っちまった・・」

 

「なんか屈辱」

 

「なんでよ!!」

 

普段のビッチ先生を見ていると器用だと思いがちだが、実際は不器用なのだ。それに加え今までの経験が邪魔をしているのか、自分の気持ちの正直になれないと言った所だろう。

 

「よし!俺たちに任せろって!」

 

「え?」

 

「二人のためにセッティングしてやるぜ!」

 

「い〜ね!」

 

「あぁ!」

 

「あ、あんた達・・・」

 

ビッチ先生の話を聞いてやる気に満ちる生徒一同。そして、この話を聞いてあのタコが黙っているはずがない。

 

「では、恋愛コンサルタント3年E組の会議を始めます」

 

一体なんのために用意していたのか、眼鏡までかけて仕切り始める殺せんせー。

 

「ノリノリね、タコ」

 

「同僚の恋を応援するのは当然です。女教師が男と溺れる愛欲の日々・・・甘酸っぱい純愛小説が書けそうです!」

 

『このタコ何を想像してんだ?』

 

「いつものことだろ」

 

顔をほのかにピンク色に染める殺せんせー。明らかに18禁ものを想像しているだろう。

 

「まずさビッチ先生、服の系統が悪いんだよ!」

 

「そうそう!とりあえず露出しとけばいいや的な?烏間先生みたいなお堅い日本人好みじゃないよ?もっとこう・・・清楚な感じで攻めないと」

 

『清楚つったら・・・有希子がそうじゃねぇか?』

 

「清楚ってなんだ?」

 

「お前はそこからか・・・」

 

「神崎ちゃん!昨日着てた服、乾いてたら貸してくんない?」

 

「あっ、うん!」

 

相変わらずのバカ発言をする万丈に呆れる惣一だったが、そんなやりとりをする二人は放っておいて話を進める中村。頼まれた有希子は部屋に服を取りに行き、暫くして戻ってきた。

 

「よし!これを着れば少しは清楚に・・・清楚・・・・・」

 

「「「ならない!!なんか逆にエロい!!」」」

 

「そもそも服のサイズが合わないっての・・・」

 

「神崎さんがあんなエロい服を着てたと思うと・・」

 

「ふん!」

 

「おぶら!?」

 

鼻血を垂らしていた岡島は惣一の手によって制裁された。

 

「この際エロいのはしょうがないんじゃないか?それよりも大切なのは人同士の相性だろ。誰か烏間先生の好みとか知らないのか?」

 

岡島の血がついてしまった手をハンカチで拭いながら提案する。

 

「あっ!そういえば以前、テレビのCMのあの人のこと、ベタ褒めしてたよ。俺の理想のタイプだって!」

 

 

 

<回想>

 

職員室にて。矢田がダンボールを持って行こうとした時、烏間があるCMを見ながら呟いていた。

 

『彼女はいいぞぉ・・・顔つきも体つきも理想的だ!おまけに三人もいる!!』

 

画面には胸に『ASLOK』と書かれたものを着ている3人の女性が写っていた。

 

<回想終了>

 

 

「いや、それ理想の戦力だろ!他は誰かいないのか!」

 

「「・・・・・・」」

 

「誰もいないのかよ!!」

 

「じゃ、じゃあ手料理とかどうでしょうか?ホテルのディナーも豪華だけど、そこをあえて二人だけ烏間先生の好物で」

 

「烏間先生、ハンバーガーかカップ麺しか食ってるとこ見たことないぞ?」

 

「なんかそれだと二人だけ不便すぎる・・・石動くんは何か知らないの?カフェ経営してるんだし、前に烏間先生呼んでたでしょ?」

 

「いや、生憎だが知らない。あの時も水を頼まれたぐらいだし・・・」

 

「ぬぅう、介いる隙が無さすぎる!!」

 

「なんか、烏間先生に問題がある気がしてきたぞ・・?」

 

「でしょでしょ!!」

 

「先生のおふざけだって、何度無常に流されたことか!!」

 

『こいつら・・・打つ手無くなってディスり始めやがった』

 

思った以上に情報がなく、もはや作戦の立てようが無くなってしまった。

 

「とにかく!ディナーまでにできることは整えましょう!女子はスタイリングの手伝い、男子は二人の席をムード良くセッティングです!」

 

「「「はーい!!」」」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

そんなこんなで始まった『烏間先生とビッチ先生をくっつけよう作戦』。無事にセッティングは終わり、ディナーの時間を迎えていた。まず最初にすること、烏間先生をビッチ先生が待機しているテーブルへと誘導しなければならない。そこでまずは中村と岡村が動く。

 

「なんだこれは・・・」

 

「烏間先生の席はありませーん!」

 

「E組名物の先生いびりでーす!」

 

余っている座席を全て寄せて、二人でそれら全てを使って使える座席をなくしたのだ。

 

「先生方は邪魔なんで、外の席でどうぞ!」

 

そう言って岡村が指さした先には男子勢がセッティングしたテーブル席が。烏間先生は戸惑いながらその席へと向かう。

 

「最近の中学生は分からん・・・」

 

烏間先生が外へ出てった瞬間、全員一斉に窓際に集まる。すでに席にはビッチ先生が待機状態だ。

 

「なんで俺たちだけ追い出された?」

 

「さ、さぁ?」

 

理由が分からないまま食事を始める烏間先生。それに続くようにビッチ先生も食事を始める。ちなみに最初に議論していた服の問題だが、結局原がショールを売店で買い、ミシンを借りてブランド風にアレンジをしたものを着ている。

 

(こんなショール、社交界じゃ使い物にならないし、テーブルセッティングも素人仕事・・・私が仕事で使ってきた一流店とは雲泥の差。しかもプライバシーもへったくれも無い野次馬ども・・・・何よこれ、楽しいじゃない!!ちょっとだけ大好きよアンタ達!ヤッてやろうじゃない!この堅物、オトしてみせるわ!!)

 

随分と楽しそうな笑顔でそう思うビッチ先生。そうしている内に、烏間先生は今回の旅行を思い返していた。

 

「色々あったな、今回の旅行は・・・だが、収穫もあった。思わぬ形ではあったが、基礎が生徒達に身についているのが証明できた。この調子で、二学期中に必ず殺す。イリーナ、お前の力も頼りにしてるぞ」

 

「・・・・・・」

 

その話を聞いて、ビッチ先生の脳裏に思い浮かぶのは初めて人を殺した時の事。今でもはっきりと思い出す事ができるその記憶によって先程の笑顔が消えていく。テーブルの上に置いてあったナイフを手に取り、後ろに髪を束ねていたゴムを切る。

 

「・・・ねぇ、烏間・・・・・『殺す』ってどういう事か、本当に分かってる?」

 

突然の質問に烏間先生は何も答えない。そうこうしている内に、ビッチ先生が心を落ち着かせようと思ったのか、テーブル上に置かれていたコーヒーを手に取る。

 

「湿っぽい話になっちゃったわね・・・・・」

 

そう呟き、コーヒーを口へと運ぶ。そして立ち上がろうとし・・・・

 

「ぶーーーーー!?」

 

「「「「何事!?」」」」

 

コーヒーを吹き出してぐったりと倒れるビッチ先生。突然の出来事に見ていた一同全員が何事かと立ち上がる。

 

『あ〜勿体ねぇ!せっかく俺が淹れたコーヒーを出してやったのに・・・』

 

「は?おい待てエボルト、お前今なんて言った?」

 

『あ?だから俺が淹れたコーヒーを』

 

「お前何やってんだよ!?」

 

『いや、一昨日の暗殺でコーヒーを用意しただろ?だけど余っててな、わざわざ持ってきて淹れたのにこのまま捨てるのも勿体ねぇって思ってたらなんか面白そうな事計画してるじゃん?それでせっかくだから俺も一枚噛んでやろうと・・・』

 

「何余計な事してんだよ、このアホルト!!」

 

『アホルトってなんだアホルトって!!それに余計な事じゃねぇだろ、俺はただコーヒーを提供しただけで』

 

「それが余計なことなんだよ!ビッチ先生が倒れたのはそれが理由か!!」

 

『いやいやそんなわけないだろ』

 

「そんなわけある!!そんなわけあるんだよ!!」

 

実際にそのコーヒーの味見をして倒れた経験のある惣一は声を荒げる。結局、今日の内にビッチ先生が回復する事はなく、二泊三日の旅行は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後日、惣一はビッチ先生に土下座をして謝っている姿が目撃されたとさ。(エボルトは何を言ってない)

 

 

 

 

 




再びのエボルトコーヒーの恐怖(笑)

ちなみに今現在のエボルトコーヒーの被害者は惣一と殺せんせー、そしてビッチ先生の3人だけです。

さぁ、次回は夏祭りだ!!

感想よろしくおねがします!!


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第55話 夏祭り

エ『無事に旅行も終わり、気付いたら夏休みは後1日・・・お前ら、ちゃんと宿題はやったのか?』

惣「やったに決まってんだろ、俺を誰だと思ってやがる」

有「私も。分からない所も惣一君に聞いたし大丈夫」

エ『まぁお前らはそうだろうな。おい万丈、お前はどうだ?』

万「・・・・・・」

惣「?おい万丈、何黙ってんだお前?」

有「もしかして、宿題・・・・終わって」

万「あーーーあーーーーあーーー!!」

エ『あっ(察し)』

惣「お前、旅行前にほとんど終わらせたよな?後は読書感想文とかだったよな?」

万「ウルセェ!!俺だってやろうとしたよ!!でもな、気付いたら寝ちまってるんだよ!!」

惣「それお前の責任だろ!!」

万「頼む惣一!宿題見せてくれ!!」

惣「できるわけねぇだろ!!すぐにバレて終わりだわ!!」

万「そこをどうにか!!」

有「・・・はぁ。この二人は放っておいて、第55話をどうぞ」



色々な事があった旅行から帰還し、今日は夏休み最終日。生徒達は思い思いに過ごしていた。

 

「あっち〜・・・・」

 

それはこの男も同じ。暇を持て余していた万丈はランニングをしていた。・・・のだが、予想よりも暑かったために今はベンチに座って休んでいる。

 

「今日で夏休みは終わりか・・・なんか短く感じんな」

 

「夏休みとはそういうものですよ」

 

「あ、そうなのか?・・・・うぉ!?」

 

あまりにしぜんだったから普通に会話をしていたが、ふと横を見るとそこにはついさっきまでいなかったはずの殺せんせーが下手な変装をして座っていた。

 

「こ、殺せんせー?何やってんだ?」

 

「今日思い立って、クラスの皆んなに声をかけているんです。万丈君もどうですか?夏祭り!!」

 

「夏祭りだぁ?」

 

「今日で夏休みも終わりですし、最後の一日ぐらい何も考えずに遊びましょう!」

 

「おぉ・・・・いいな!!よし、俺は行くぜ!!」

 

「それはよかった、用事で断る人が意外と多くて・・・・それでは次は渚君のところに行ってくるので!今晩7時ですからね!!」

 

そう言って、殺せんせーはその場から瞬時にいなくなる。

 

「・・・・・さって、そろそろ帰るか。あ、ついでに惣一も誘ってやるか!!」

 

休憩も十分済み、万丈はnascitaに向けて再び走り出した。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

一方その頃のnascitaの地下室。そこにあるフルボトル浄化装置の扉を開け、中から何かを取り出している惣一の姿があった。

 

「確かこの辺だったと思うんだけどなぁ・・・」

 

『取り出したらまずは修復だな』

 

「こいつに組み込む際に二つに分けたからな・・・にしても、本当にあれを使うのか?」

 

『あぁ。今まではスマッシュやらカイザーやらで済んでいたからブラッドスタークでもどうにかなったが、敵もカイザーやグリス、さらにはビルドまで現れた。さすがに、ここまで来たらブラッドスタークでは耐え切れないだろう。だからこそ・・・こいつを使うしかない』

 

中に張り巡らされている大量のコードを掻き分け、目的の物を見つける。ブラッドスタークの体と同じような紅い色をしているパーツと、青いレバーがついている天盤のパーツ。惣一はそれら二つを取り出し、机の上に並べる。その形状は、さながらビルドやクローズに変身する際に使用するビルドドライバーのようだった。

 

「惣一君、いる?」

 

「有希子、どうした?」

 

冷蔵庫から地下室へと入ってくる有希子。

 

「さっき殺せんせーが家に来たんだけどね、今日の夏祭りにクラスのみんなで行かないかって」

 

「夏祭り?・・・・あぁ、もうそんな時期か」

 

「惣一君、ここ最近ずっと地下室に篭ってるでしょ?万丈くんが言ってたよ」

 

(万丈・・・余計な事を・・)

 

事実、惣一は旅行から帰ってきてからほとんど外に出ていない。万丈用の新武器の開発をしていて、それをなんとか終わってやっと自分の強化をしようと浄化装置を分解していたのだ。だが、地下室に篭っていたのは事実のために反論もできない。

 

「もう夏休みも最後なんだから、今日ぐらい開発から離れて楽しもう?」

 

「・・・でもなぁ・・」

 

『・・・いや、夏祭りに行くか』

 

「は?何言ってんだよエボルト!」

 

『有希子の言うとおり、確かにお前はここ最近ずっと地下室に篭っている。研究をするにせよ、たまの休息は必要だ。せっかくの機会だし、遊んでこいよ』

 

「・・・・そう言って、本当は自分が遊びたいだけじゃないのか?」

 

『あ、バレた?ハハハハハ!!』

 

全く悪びれた様子もなく楽しそうに笑うエボルト。それを聞いて怒る気も失せてしまった惣一は頭を掻くと、口を開く。

 

「はぁ・・・分かった、俺も行くよ。夏祭り」

 

「よかった、それじゃあ今日の午後7時に椚ヶ丘駅前に集合ね。そこに他のみんなもいると思うから」

 

「おう、分かった」

 

「それじゃあまた後で」

 

そう言って有希子は地下室から出ていく。時間はまだ昼を少し回ったぐらいであり、家を出るには早すぎる。

 

(・・・ま、先に準備ぐらいはしておくか)

 

席を立ち、荷物の準備を始める惣一。それをしてる最中に万丈が帰ってきて夏祭りの話をするが、すでに惣一が知っていると分かり落胆しながらベットに寝転んだ。汗だくのままで。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

そして時間は過ぎ、場所は夏祭りの会場に移る。

 

「いやぁ、思いの外集まってくれて良かった良かった!誰も来なかったら先生、自殺しようかと思いました」

 

「じゃあ、来ない方が正解だったか」

 

用事で来れなかったメンバーもいたが、それでもクラスの半数近くの人数が呼びかけに応じてきてくれた事に殺せんせーは喜ぶ。

 

「お、千葉と速水じゃん!どうした?」

 

万丈が両手にぬいぐるみやおもちゃを抱えた千葉と速水の二人を見つけ、声をかける。

 

「射的で出禁くらった」

 

「イージーすぎて調子乗った・・・これどうしよう・・・」

 

普段マッハ20に相手を狙撃しようとしている二人にとって、動かない的を射抜くのは蠅を叩くよりも簡単な事だろう。とはいえ取りすぎではあるが。

 

「俺今五千円使って全部五等以下じゃん♪糸と商品の残り数から4等以上が一回も出ない確率を計算すると、なんと0.05%!ホントに当たりの糸あるのかな〜、おまわりさん呼んで確かめてもらおっか♪」

 

「わ、分かった!金返すから、黙ってろ坊主、な?」

 

「いやいや、返金のために五千円投資したんじゃないのよ、ゲーム機欲しいなぁ〜♪」

 

『相変わらずあいつはねちっこいな』

 

「あぁ、最初から当たりなんて入ってないって分かってたな、ありゃ。・・・・お、たこ焼きウマ」

 

『惣一、俺わたがし食いてぇ』

 

「はいはい、後でな」

 

「惣一!これ美味いぞ!!」

 

「おぉ万丈・・・・お前どんだけ買ってんだよ」

 

合流した万丈の両手にはイカ焼きやら焼きそばやらりんご飴やら・・・・とにかく大量の食べ物が抱えられていた。

 

「いいじゃんいいじゃん、ウメェんだし」

 

『万丈、後でそのりんご飴くれ』

 

「これは俺のだ」

 

『ケチ!!』

 

「はいはい、それも後で買ってやるよ」

 

「いたいた、二人とも」

 

ここで有希子とも合流。

 

「お、有希子」

 

「よ、有希子!」

 

「万丈君、すごい量だね」

 

「そうか?」

 

次々と食べ物を口へと運んでいく万丈。とても満足そうだ。

 

「惣一君はどう?楽しんでる?」

 

「楽しんでるよ。万丈やエボルトのせいで疲れも感じてるけど」

 

『なんでだ!?』

 

「ははは・・・」

 

惣一とエボルトのやりとりに苦笑を漏らす有希子。

 

「にしても・・・祭りなんて最後に行ったのはいつだったかな?随分と久しぶりな気がするよ」

 

「もしかして、この町を離れる前に行ったのが最後だったりする?」

 

「あ〜、かも。誘ってくれてありがとな」

 

「ううん、最初に言い出したのは殺せんせーだから」

 

「そっか・・・そういやその殺せんせーはどこにいんだ?」

 

「あそこ」

 

「ん?」

 

有希子が指さした先には屋台がある。だが、それらの屋台の内いくつかはE組の生徒によって早仕舞いする事になってしまっている。のだが、殺せんせーはそれらの屋台を使って焼きそばやらかき氷やら作っていた。

 

「茅野さんから聞いたんだけど、殺せんせー月末はいつも金欠なんだって」

 

「なるほど・・・俺らは殺せんせーの小遣い稼ぎの片棒を担いでしまったってことか」

 

『まんまと乗せられたな。・・・・おっ、二人とも空を見ろ』

 

「空?・・・・あ、花火か」

 

エボルトに言われ空を見上げると、ドーンと一発、花火が打ち上げられた。その後の次々と上がっていく花火を、人々は様々な場所から見ていた。

 

「だいぶ濃い夏休みだったな」

 

『二学期は平穏に過ごせるといいな』

 

「だな。ま、そんな期待はできないけど」

 

これから訪れる未来に思いを馳せる惣一。案の定、彼の言うとおり二学期も波乱の幕開けとなる。

 




これにて夏休み編は終了!次回から二学期です!!

感想等よろしくお願いします!


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第56話 呪い

惣「久しぶりだな、こりゃまた随分と長い期間が開いたものだ」

万「なぁ、なんでまたこんか期間が開いたんだ?」

惣「さぁな、大方作者のモチベーションが下がってたとかそんなところだろ」

エ『それがよ、他にも幾つか作品を投稿していたら、どんだけ放置作品あるんだってお叱りいけたんだってwww』

惣「それで久しぶりにこの作品に手をかけたってわけか・・・・馬鹿だろ」

万「あ?」

惣「お前じゃねぇ。・・・・とにかく、前回のあらすじ紹介するぞ。期間が開いてるし、読者のみんなも忘れてしまってるだろ。ほれ、万丈」

万「え〜と・・・・夏休み最終日!俺たちE組生徒は殺せんせーの企画で夏祭りに行くことになった!」

惣「・・・・ん?それで終わりか?」

万「おう、読みやすかったぜ!」

エ『まぁ、前回は夏祭りに行って遊んだだけだし、そんなところだろ。それじゃあ、第56話!どうぞ〜』




二学期の始業式。長かった夏休みも終わり、椚ヶ丘のほとんどの生徒は体育館に集合している。

 

「ふぁああ〜・・・」

 

「二学期早々眠そうだね」

 

「しょうがないだろ。新たな発明・・・ってわけじゃないけど、あれを元に戻してるんだから」

 

「あれ?」

 

「あぁ・・・・本当は二度と使いたくなかったんだがな」

 

小声で話す惣一と有希子。惣一の言葉に首を傾げる有希子だったが、始業式を進行していた荒木の言葉に壇上へと顔を向ける。

 

『今日から、3年A組に新たな仲間が加わります。彼は、昨日までE組にいました』

 

その言葉に、E組に全員が顔を驚きに染めて壇上に注目する。やがて、脇から姿を現したのは竹林だった。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

始業式も終わり、E組も旧校舎へと戻ってきていた。本来ならばHRが始まるはずだったのだが、竹林のE組を抜ける話を聞いた直後のために中々荒れている。

 

「なんなんだよあいつ!!百億のチャンス捨ててまで脱けるとか信じらんねー!!」

 

「しかも、ここの事地獄とかほざきやがった!」

 

「言わされたにしたってあれは無いよね」

 

先ほどの始業式にて、壇上に現れた竹林は演説を行った。その内容はE組の酷評するもので、本校舎の生徒からは歓迎されていたが、E組の生徒達からは蔑まされる結果となった。

 

「竹林君の成績が急上昇したのは確かだけど、それは殺せんせーに教えられてこそだと思う。それさえ忘れちゃったのなら・・・私は彼を軽蔑するな」

 

「とにかく!あぁまで言われちゃ黙ってらんねぇーー!!放課後一言言いに行くぞ!!」

 

そんな前原の提案に乗り、放課後にE組のみんなで竹林の元へ行く事になった。当然その日の授業は耳に入るわけがなく、皆落ち着きが無い一日を過ごす事となった。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

放課後、早速E組生徒一同は山を降り、竹林の通学路にて彼が通るのを待っている。

 

「にしても惣一の奴、なんで来なかったんだ?」

 

「どこか寄るところがあるって言ってたけど、万丈君聞いてないの?」

 

「いやなんも」

 

惣一だけ用事があるとのことで、今この場にいない。とはいえ、惣一を追いかけてるわけにもいかず、詳しい事情を聞かぬままここで待機しているのだ。

 

「おい、来たぞ」

 

前原の一言により、集合している全員が前方を確認する。見ると、竹林が一人で歩いているのが分かる。

 

「おい、竹林!」

 

彼の行手を阻むように、全員姿を見せる。

 

「・・・説明してくれるか?なんで一言も相談しないんだ、竹林?」

 

「何か事情があるんですよね?夏休み旅行でも、竹林君がいてくれてすごく助かったし、普段も一緒に楽しく過ごしていたじゃないですか!」

 

彼らの脳裏に竹林との思い出が蘇る。夏休み旅行の際に多くの生徒が倒れた中、彼は奥田と二人で看病に謹んでいた。他にもメイドの書き方のみんなに分かりやすく説明したり、律にメイドの事を教えたり、寺坂にメイド喫茶の素晴らしさを教え解いたり・・・・・・ほとんどメイドだった。

 

「賞金百億。場合によっちゃ上乗せされるらしいよ?分け前いらないんだ、竹林。無欲だね〜」

 

賞金の変動。夏休みの一件で集団戦術が殺せんせーを追い詰めたことを考慮し、団体での暗殺に成功した場合はさらに上乗せされることとなった。これはつい先日、新たなに決定された事項であり彼らに伝えられたのも今日だった。今日からA組に移動した竹林は知らない情報を開示するカルマだったが、竹林は特に反応を示さない。

 

「・・・・・せいぜい十億円」

 

「「「?」」」

 

数秒の沈黙の後、竹林が口を開く。

 

「僕単独で百億GETはまず無理だ。上手いこと集団で殺す手伝いができたとしても、僕の力で担える役割じゃ・・・分け前は十億がいいところだね。僕の家は、代々病院を経営している。兄二人も揃って東大医学部・・・・十億って金は、うちの家族には働いて稼げる額なんだ。『出来て当たり前』の家、出来ない僕は家族として扱われていない」

 

他の誰かには無い、竹林だからこその悩み。それは、聞いただけで解決できるようなものでは到底無かった。

 

「僕が十億手に入れたとしても、家族が僕を認めるなんてあり得ない。『良かったな』『家一番の出来損ないがラッキーで人生救われて(笑)』・・・・それで終わりだ」

 

「「「・・・・・・」」」

 

「昨日、初めて親に成績の報告が出来たよ。トップクラスの成績をとって、E組から抜けられること」

 

親に報告をした竹林。その返事は、『頑張ったじゃないか、首の皮一枚繋がったな』だった。

 

その(・・)一言をもらうために、どれだけ血を吐く思いで勉強したか・・・!!」

 

今の竹林は、彼の家族・・・彼の親という名の鎖によって強く縛られてしまっている。そして、それを解くことが出来ないでいるのだ。

 

「僕にとっては、地球の終わりや百億よりも、家族に認められる方が大事なんだ。裏切りも恩知らずも分かってる。君たちの暗殺が上手くいくことを祈ってるよ」

 

そう言って再び歩き出す竹林。彼の話を聞いてほぼ全ての生徒はすぐに動き出すことが出来ずにいた。唯一すぐに追いかけようとした渚も、有希子によって止められる。

 

E組の生徒の中には、『呪い』をかけられている者が数人いる。それは、竹林も同様だった。しかし、その『呪い』を解き方を学校は教えてくれない。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・

 

 

 

『なぁ惣一、本当に行くのか?』

 

「・・あぁ、あの人に直接話せる人なんて、うちのクラスは教師を除けば俺ぐらいだしな」

 

一人、別行動をとっていた惣一は未だに学校内にいた。とは言っても、いつもの旧校舎じゃない。本来であればE組生徒が入ることはほとんど無いはずの本校舎の一角に来ていた。

 

彼の目の前にあるのは一つの扉。他の部屋に使われている扉とは違う、木で出来た両開きの扉だった。

 

「・・・ふぅ」

 

一呼吸吐いた惣一は覚悟を決めた表情をして、目の前の扉をノックする。それから数秒後、中から声がする。

 

『どうぞ』

 

「・・失礼します」

 

ゆっくりと扉を開ける惣一。中にいた人物ーーーーー浅野理事長は不敵な笑みを浮かべていた。

 

 



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第57話 強者を目指す世界

惣「万丈、最初に言っておく。今回俺たちの出番ほとんどない」

万「はぁ?」

惣「さらにいうと、おそらく次回も出番がない恐れがある」

万「なんでだよ、主人公だろうが!!」

惣「正確には俺が主人公でお前はサブキャラだ」

万「んだとぉ!?」

惣「あ、やんのか、こら?」

万「上等だよ、やってやるよ!!」

有「二人とも、ここで喧嘩しないでね〜」

エ『出番に関しては仕方ないだろ。今は竹林回なんだからよ』

惣「こいつ〜!!」

万「コンニャロ〜!!」

エ『聞いてねぇな・・・・』

有「しょうがない、今回は私達であらすじをしよっか」

エ『まぁあらすじって言っても、前回あったことは二学期が始まって竹林がE組を抜けたぐらいだろう。俺たちが何かをしたわけじゃないし』

有「それじゃあ今回は、竹林君のA組での様子だね。第57話どうぞ!」

『ドラゴニック・フィニッシュ!』

『スチームブレイク!コブラ!』

「「どりゃあああああああ!!!」」

有・エ「『・・・はぁ』」


翌日、E組の教室は重い空気に包まれていたーーーーーーーはずだった。

 

「なぁ殺せんせー、なんかめっちゃ黒くね?」

 

みんなの心情を察しーーーーーーれるほど器用な奴じゃないな、単純に自分が思ったことを口にしただけだろう、この筋肉バカは。

 

「急遽アフリカに行って日焼けしました。ついでにマサイ族とドライブしてメアド交換も」

 

(((ローテクかハイテクかわからん旅行だ・・・・)))

 

『てか最早日焼けのレベルじゃねぇだろ』

 

日焼けと呼称するにはあまりにも黒く、てかむしろ真っ黒。普段の黄色なんて何処に行ったレベルでの黒一色だ。

 

「これで先生は完全に忍者!!人混みで行動しても目立ちません!!」

 

「「「「恐ろしく目立つわ!!」」」」

 

「だが、何のためにだ?」

 

一人冷静でいた惣一がそもそもの目的を問う。わざわざアフリカに行ったのだ、それ相応の理由があるのだろう。なければ躊躇なく殺しにかかるつもりだが。

 

「もちろん、竹林君のアフターケアです」

 

「・・・・アフターケア?」

 

「自分の意思で出て行った彼を引き止めることは出来ません。ですが、新しい環境に彼が慣れているかどうか、先生にはしばし見守る義務がある。あぁ、もちろんこれは先生の仕事ですので、君達はいつもと同じように過ごしてください」

 

「・・・断る」

 

「にゅや?」

 

思わぬ返事に目を点とする殺せんせー。答えたのは万丈だけだが、クラスにいる全員が同じ顔つきをしていた。

 

「俺らもちょっと様子を見にいくぜ。暗殺も含め、色々と危なっかしいんだよ、あのオタクは」

 

「なんだかんだ、同じ相手を殺しに行ってた仲間だしな」

 

「竹ちゃんが抜けるのはしょーがないけど、理事長に洗脳されてヤな奴になったら嫌だしな〜」

 

誰かが反論を唱えることはない。ここにいる全員が、今でも彼のことを暗殺仲間だと思っている証拠だ。まさに、殺意が結び絆。E組だからこその友情だ。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

一方本校舎にあるA組の教室。そこでは、E組の授業とはかなり異なった授業が展開されていた。生徒の中には、A組に復帰した竹林の様子を見ようと振り返っている者もいる。

 

肝心の竹林はと言うと、完全に動きを止めていた。机の上には開かれているノートが一冊あるが、そこには何も書かれていない。ペンを持っている手を全く動かす気配がない。

 

その理由は当然、E組の授業の差に驚愕していたからだ。まさかA組で行われている授業が、E組では一学期に終わらせたところ(・・・・・・・・・・・・)だとは思いもしてなかったのである。

 

しかもかなり非効率的であり、教師は早口の説明、黒板には書いては消し書いては消しましたの繰り返し、生徒の都合なんて一切無視したふるい落とすための授業だった。

 

 

 

竹林の脳裏に、ある日の放課後が思い起こされる。

 

『竹林君がイチオシのアニメ「俺の妹が突然広島ファンになったのは彼氏の影響に違いない件について」、見ましたが面白いですねぇ』

 

『萌え化ネタは掘り尽くされたと思ってたね』

 

『えぇ、まさかのプロ野球選手美少女化とは・・・・・そこで!!竹林君の苦手な加法定理の解法を二期オープニングの替え歌にしました!!』

 

『二期とは分かってるじゃないですか、殺せんせー!』

 

『ヌルフフフ、生徒の二次元の好みを知らずして先生が務まりますか。さぁ歌って憶えますよ!!君イチオシの大野ちゃんのカットイン部分に最重要ポイントが含まれています!!』

 

 

 

 

 

まぁ、こんなことがあったのだ。とは言えかなりの音痴だったらしく、あれはあれで覚えづらかったと思わず苦笑を漏らしてしまう。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

授業も終わり、放課後。竹林は帰り支度をしている生徒に話しかける。

 

「なぁ、放課後・・・何処かでお茶でして行かないか?」

 

「え、あ、馴染もうとして気ぃ遣わなくて良いぜ、竹林」

 

「俺らすぐ塾だからよ、お前もそうだろ?じゃーな!」

 

そう言ってさっさと教室から出て行ってしまう。A組の生徒は、勉強ができてE組じゃない人間には普通に接してくれるが、誰もが勉強に追われている。余裕があるのは五英傑のようなトップ陣ぐらいであり、E組とはえらい違いだ。

 

以前、寺坂とメイド喫茶に行った時のことを思い出す。色々と文句を言ってはいたが、なんだかんだ言いつつ気に入ってたようだった。ちょっと後ろにメイド服を着たタコもいたが・・・・。

 

やたら貪欲に生徒の情報を集める先生。寺坂も、寺坂なりに竹林を知ろうとしていたのだろう。もう味わえないであろう幸福だった日々に思いを馳せる。

 

 

 

ふと、視線を感じて外をちらりと確認する。ーーーーーーーーーーなんかいる。烏間先生が教えたカモフラージュ技術を使っているようだが、残念ながらE組と本校舎じゃ生えている植物が違いため、見る人が見れば一目瞭然である。特にツヤツヤの真っ黒い物体!カモフラージュできていると本当に思っているのか!!

 

なぜまだ知ろうとするのか。A組(たにん)になった以上、最早彼らにとって自分は関係無い存在、何も学ぶ価値はないはずなのだ。ーーーーーーそもそも、自分は本校舎に何を学ぶために戻ってきたんだ?

 

 

 

「どうだい、竹林君?A組には馴染んだかい?」

 

「っ・・・まぁ、ね・・・」

 

突然浅野の話しかけられ、一瞬驚くがなんとか返事をする。

 

「突然だけど、理事長が君を呼んでるよ。逆境に勝ったヒーローの君を、必要としているようだ」

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「あ、理事長室に入った」

 

「くそ、カーテンで見えねぇ!」

 

「さすがにここまでかねぇ」

 

外から竹林の様子を見ていたE組一同だったが、理事長室にはカーテンがかけられていたため中の様子を確認できない。さすがにこれ以上は他の生徒にもバレてしまう恐れがあるため、今日はここまでということになり、それぞれが帰路に着いた。

 

「思ったよりも馴染めてたな、竹林の奴」

 

「そうか?なんか思い悩んでるように見えたんだが・・・」

 

『何かを感じたんだろうな、あの場所で』

 

「何かって、なんだ?」

 

「さぁな、それは本人しか知り得ない」

 

nascitaへと向かいながら話す惣一と万丈、+エボルト。

 

「だが、少し心配だな。あの人のことだ、おそらくまだ何かしてくる」

 

『とは言っても、俺たちにできることなんて何もないぞ。唯一あるとすれば、あいつを信じるぐらいだ』

 

「信じるねぇ・・・」

 

何をしてくるかは分からない。だが、その内容は彼をさらに縛り付けてしまうだろうことは想像がつく。

 

「どうなることやら・・・・」

 

 

 

 




次回で竹林回は最後ですね。主人公たちが何もできない・・・・・。


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第58話 決断

惣「・・・・・・」

有「そ、惣一君?一体どうしたの?」

エ『前回の前書きの時に主人公なのに出番が無いって話があっただろ?んで今回、実際に出番がなくてちょっと凹んでるんだよ』

有「分かってたんじゃ無かったの?・・・・万丈君もいないけど、もしかして・・・」

エ『いや、あいつはまだ寝てる。まだちょっと時間早いからな』

有「えー・・・・・」

エ『まぁ、今回で竹林回は終了なんだ。次回には立ち直ってるだろうさ。んじゃ有希子、いつもあれ、頼むぜ』

有「はいはい・・・・それじゃあ最新の第58話、どうぞ!」


翌日、再び開かれた全校集会にために、全校生徒が体育館に集合していた。壇上には竹林の姿があり、アナウンスで彼のスピーチが行われると知らされる。

 

「また竹林のスピーチ?」

 

つい先日スピーチを行った竹林が再びスピーチを行うということで、E組はもちろんのこと他の生徒達も騒つく。

 

「なんか・・・嫌な予感がする」

 

「同感だ」

 

「え?」

 

「この感じ・・・・殺気だ。あいつは、何かを壊そうとしている」

 

「それも、大事な何かを」

 

「それって・・・大丈夫なのか?」

 

「さぁな・・・・俺たちにできるのは、見守ることだけだ」

 

E組のみんなが、二人の言葉を聞いたからか不安そうな視線を竹林に送る。それに気付いているのかいないのか、竹林が反応を示すことはない。

 

そうこうしている内に、竹林のスピーチが始まる。

 

『僕の、やりたいことを聞いてください』

 

手に持った紙を開いて話始める竹林。その様子を舞台裏からは浅野が、理事長室ではモニターを通して理事長が見ていた。

 

『僕のいたE組は、弱い人たちの集まりです。学力という強さが無かったために、本校舎の皆さんから差別待遇を受けています』

 

開いていた口を一度閉じる。そして、覚悟を決めた表情を浮かべて再び口を開いた。

 

『でも僕は、そんなE組が、メイド喫茶の次ぐらいに居心地いいです』

 

全員が目を見開く。このような場で、ましてや壇上に上っている者の口から出るような内容では無かった。驚愕をあらわにする彼らのことは目にも止めず、竹林はスピーチを続行する。

 

『僕は嘘をついていました。強くなりたくて、認められたくてーーーーーーーでも、E組の中で役立たずだった上に裏切った僕を、級友(クラスメイト)達は何度も様子を見に来てくれた。先生は、僕のような要領の悪い生徒でもわかるよう、手を替え品を替え、工夫して教えてくれた。家族や皆さんが認めなかった僕のことを、E組のみんなは同じ目線で接してくれた』

 

何か縛られることのない、彼自身の本当の気持ち。ついこの間は聞くことができなかった言葉を紡いでいく彼を見て、E組のみんなはそれぞれ顔を見合わせて微笑む。

 

一方理事長室では、流石に彼以上は看過できないのか、理事長は近くにいた教師に竹林を壇上から下ろすよう指示する。しかし、その教師が集会が行われている体育館に到着するまではまだしばらく掛かる。その間にも竹林の話は続いていく。

 

『世間が認める明確な強者を目指す皆さんを、正しいと思うし尊敬します。でも・・・・・・もうしばらく僕は弱者でいい。弱いことに耐え、弱いことを楽しみながら、強い者の首を狙う生活に戻ります』

 

「・・・イカれたか雑魚が・・!!撤回して謝罪しろ、竹林!!さもないと・・・」

 

たまらず舞台裏から姿を見せた止めにかかった浅野だったが、そんな彼に見せつけるように竹林は隠していた物を取り出して掲げた。それは半透明なガラスの盾。中央部位には『浅野學峯』という文字が、その盾の本来の持ち主を物語っている。

 

『理事長室からくすねて来ました。私立学校のベスト経営者を表彰する盾みたいです』

 

それに加えて懐から木で作られた簡易的なナイフを取り出す。刃先が鉄製で出て来ているそれを掲げーーーーーーー

 

『理事長は本当に強い人です。全ての行動が合理的だ』

 

思いっきり振り下ろす。一切の躊躇もなく振り下ろされたそれは、軌道上に持ってかれていた盾を粉々に砕いた。壇上に散らばる盾の破片、それを見つめながら、竹林はスピーチを締めくくる。

 

『浅野君が言うには、過去これと同じことをした生徒がいたとか。前例から合理的に考えれば・・・・・・E組行きですね、僕も』

 

過去に見せたことがないであろうほどの晴れやかな笑顔。竹林は突然の事態についていけずポカーンとしている生徒達を無視し、さっさと壇上からいなくなった。

 

「待てよ、救えないな君も。せっかく強者になるチャンスを与えてやったっていうのに」

 

「強者?怖がってるだけの人に見えたけどね、君も皆も」

 

肩を掴んで呼び止める浅野だったが、覚悟を決めた竹林には何も通じない。余裕綽々といった態度を取る竹林に唖然とする浅野はその場に取り残されるのだった。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

あれから数日、今日も今日とて暗殺の訓練を行なっていたE組だったが、今回から新たな要素が加えられた。『火薬』である。

 

火薬を組み込むことで暗殺の方法は大幅に広がる。だが、火薬が危険な代物であることは周知の事実。下手な扱い方をすると、怪我程度では済まない者が出てくる可能性がある。そこで、烏間先生は生徒の中から一人、火薬の扱いを完璧に覚えてもらおうと、大量の分厚い冊子を取り出した。火薬を扱う暗殺をする場合、烏間先生とその生徒の許可が必要になるのだ。

 

中学生の勉強の範囲など優に超えている国家資格の勉強だ。当然進んで取り組もうとする生徒なんて出てこない。仕方ないか、と惣一が思って手をあげようとしたところで、先に本を手にとった者がいた。

 

「勉強の役に立たない知識ですが、まぁこれもどこかで役に立つかもね」

 

「暗記できるか?・・・・・竹林君」

 

「ええ、二期OPの替え歌にすればすぐですよ」

 

なんやかんやありつつ無事にE組へと帰還した竹林は、今まで以上にクラスと関わり合おうと努力していた。

 

 



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第59話 プリン爆発計画!!

惣「理事長の手によってE組を抜けた竹林。しかし、そんな彼はA組に馴染めずにいた」

エ『それによって自分にとって何が大切なのか気づいた竹林は、全校集会の場にてそれを曝け出し、自らの意思でE組に戻ってくるのだった!』

有「なんか・・・・すごい久しぶりのまともなあらすじ紹介だね」

惣「いや〜、竹林回も一段落ついたからな。一応まとめとこうと思って」

有「それじゃあ今回の話は?」

エ『今回の話はプリンだ』

有「・・・プリン?」

惣「プリンがどう関わってくるか、それは最新話で確認してくれ!」



シルバーウィーク・・・・・多くの人が自宅で羽を伸ばしていたり、友人と出かけたりする秋の連休。当然椚ヶ丘も休日であるーーーーーーのだが、あるクラスだけ担任を除く全員が集結していた。無論、E組である。

 

教卓に立って指揮をとっているのは、随分と珍しい、茅野だった。今回、シルバーウィークであるにも関わらずE組に全員が集結しているのは、彼女が呼んだからだ。

 

黒板にはくり抜かれた新聞の記事が。どれも供給過多によって廃棄処分されることとなった卵についての記事だった。ニュースでもやっている内容なので、クラスのほとんどがそのことを知っている。特に家庭が貧しい磯貝にとっては勿体無くて仕方ないといった風だ。

 

そこで、茅野はある作戦を立案する。

 

「どうせ飯作って、その中に対殺せんせー用BB弾を混ぜるだけだろ?そっこーで気付かれるだろ」

 

寺坂の言い分も確かである。鼻が良い殺せんせーには、いくら卵を使った飯を作ったとしても中の異物を嗅ぎとってしまうだろう。しかし、そんな問題も何のその。すでに必要な準備や材料は校庭に出揃っているらしく、早速校庭へと出される。

 

「卵を使った暗殺か・・・・どんな作戦だ?」

 

「俺も聞いた時は、耳を疑ったよ。正直中学生だからこそ思いつくような作戦だった」

 

『烏間はもう知っているんだったな、どういう作戦なんだ?』

 

「それは・・・すぐに分かるだろうさ」

 

思わず頭に?を浮かべてしまうが、烏間先生の言ったとおり、校庭に出た瞬間に何を作るつもりなのかがすぐに判明した。オレンジのシートで囲われた台形に近い形。この形で卵・・・・思いつかない方がおかしい。

 

「まさか・・・」

 

「そう!今からみんなで、巨大プリンを作ろうと思います!名付けて・・・・『プリン爆殺計画』!!」

 

『規模の割には普通の命名だな』

 

「エボルトさんうるさい!」

 

「つっても茅野、本当に上手くいくのか?」

 

「確かに殺せんせーはスイーツが好きだが・・・・」

 

生徒の中にが多少の不安が残る。が、それすらの問題無い。すでに茅野は、殺せんせー自身からある言質を取っている。

 

 

 

『いつか自分よりでっかいプリンに飛び込んでみたいものです!ま、お金無いので無理ですけど』

 

 

 

「えぇ叶えましょう、その夢とロマン!ぶっちゃけ私もやりたい!!」

 

「それが本音だろ」

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

作戦概要はこうだ。巨大プリンの底に爆弾及び対殺せんせーBB弾を密閉し、殺せんせーが底の方まで食べ進めたところでポチッとする。

 

早速持参したエプロンを身につけプリンの元の製作に入る。唯一溶き卵に関してはマヨネーズ工場の休止ラインを借りて完了しているらしいが、その以外の工程は全て自分たちでやらなければならない。

 

「だが茅野、これだけの大きさのプリンとなると、質量の問題から潰れちまうぞ?」

 

「それは大丈夫!対策として凝固剤にはゼラチンの他に、寒天も混ぜるの。寒天の繊維で強度が増すから!しかも、寒天はゼラチンより融点が高くて熱で溶けにくいから、九月の屋外でも問題ない!」

 

「ほ〜」

 

茅野の指示で溶き卵に砂糖、牛乳を混ぜ、そこにバニラエッセンスを加えることで香りつけも行う。

 

「第一プリン液、注入!」

 

巨大容器に四方からプリン液を注入する。上からも万丈達が協力してプリン液を入れていく。

 

「その調子〜!入れきったら第二プリン液の二班と交代!基本寒天で強度を保ちつつ、上層部は生クリーム含有率を上げ、ふんわりと!」

 

「ねぇ茅野さん、これは?」

 

片岡が持ってきたプレートには彩豊かな四角い物体。あまり見覚えのない物体なので、持っている本人は疑問に思う。

 

「これはフルーツソースやムースソースをオブラートで包んだ味変わり。ずっと同じ味ばっかじゃ、飽きちゃうでしょ?これを時々投入して、味に変化が出るようにするの!」

 

『味の変化・・・・・そういや惣一、なんかそういうボトルなかったか?』

 

「は?味を変化させるボトルなんて・・・・・あ、そういやスイーツ関連のボトルがあったな」

 

ポケットからケーキが描かれているボトル『ケーキフルボトル』を取り出す。まぁ使うかどうかの話は別だが。

 

「ケーキフルボトル?そんなボトルもあるの?」

 

「使い所が分かんなくて今まで放置してたが・・・・試しに使ってみるか?」

 

「ちなみにどんな効果なの?」

 

「・・・・さぁ?」

 

手元でフルボトルを弄びながら首を傾げる。実を言うと、以前実験として一度だけ実戦で使用したことがあったのだが、不発に終わってしまったのだ。その時は他のボトルを使ってどうにかしたのだが・・・・結局ケーキフルボトルの実験はそれ以降行っていないので何が出来るのか惣一も把握していない。

 

「そんな実験みたいなこと、今しないで」

 

「・・・なんか最近俺への当たり強くないか?」

 

「気のせいだよ」

 

「神崎さん!石動くん!手を止めないで!」

 

「「は〜い」」

 

それからも順調に第二プリン液、第三プリン液と注入していき、容器の内側がプリン液で完全に満たされる。満たされたところで天井を乗せて冷却を開始する。型の外壁には冷却装置が内蔵されているらしく、さらに内部に張り巡らされたパイプには冷却水が流される。茅野曰く、これだけの大きさのプリンは内と外の両方から冷さなければいけないらしい。

 

「すげーな、茅野」

 

「あぁ、まさかここまでプリンの特性を熟知しているとは・・・・」

 

『しかもちゃんと科学的根拠もあるし、その上で味の研究までしてる。何大抵の奴じゃそこまでできねぇぞ』

 

持ってきた缶コーヒーを口にしつつ、普段は後方支援的役割を果たしていた茅野の凄まじいプリン愛に舌を巻く。とりあえず今日の工程は終了ということで、一応職員室で何やら唸っている烏間先生に挨拶してから帰宅することにした。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

翌日、巨大プリン製作の続き。一晩冷やしたことでプリンはしっかりと固まっていた。内側に張り巡らされたパイプを抜き取り、さらに上部の密閉ボルトを抜き取って空気を送り込む。

 

「外ブロック解除!」

 

茅野の指示とともに型を外していく。因みに人力だ。二人の男子が協力して型を動かしている。

 

「プリンの外壁を緩めのゼラチン・寒天で滑らかに整え、別に作ってたカラメルソースをかける!次にカラメルソースをカリッとするまで炙るんだけど・・・石動くん!」

 

「はいはい、何に使うのかと思ったけど、そういうことね」

 

『コブラ!』

 

「烝血」

 

『ミストマッチ!コブラ!ファイヤー!』

 

「んで、消防車フルボトルっと」

 

『フルボトル!スチームアタック!』

 

昨日の内に火を扱えるボトルを持ってくるように言われていたため何か使うのか疑問に思ってたが、ようやく合点がいった。消防車フルボトルを使うことでカラメルソース全体を一気に炙っていく。・・・・・こんなことにボトルを使って良いのだろうか。

 

「『良いんです』」

 

まさか二人に返されるとは・・・・・・・。

 

 

 

「おぉ・・・・!」

 

「ごくっ・・!」

 

「「「できた〜!!」」」

 

休み返上のE組超大作、対殺せんせー用巨大プリンが見事に完成した。重さに潰れるようなこともなく、プリンらしい弾力性を備えている。見事と評する他あるまい。

 

後は殺せんせーに食べさせるだけなのだが・・・・・

 

「殺せんせー今どこにいんだ?」

 

「避暑地でバカンス中だ。部下が今も確認しているから間違いない」

 

「・・・・それいつ帰ってくんの?」

 

全員が顔を見合わせる。一拍置き、誰もが首を傾げる。つまりは全員知らないということ。下手したらシルバーウィーク終了まで帰ってこないかもしれない。いくら屋外においても大丈夫な作り方をしたとはいえ、流石にあと一〜二日もこのまんまなのはやばい。危険だ。できれば今日中に作戦を実行まで移したい。

 

というわけで、再び惣一の出番が訪れる。

 

「烏間先生、その避暑地ってどこですか?」

 

「ちょっと待て、今から携帯に転送する」

 

すぐに携帯に送られた資料に目を通し、殺せんせーの所在地を確認した惣一はトランスチームガンの機能を使って空間転移を実行、2秒後には殺せんせーを連れて戻ってきた。

 

「にゅや!?な、なんですかいきなり!?」

 

よくもまぁ逃げられずに連れてこれたものだ。一応、殺意を向けたわけじゃなかったからだろうが。ちなみに殺せんせーがいた避暑地では、突如消えた標的(ターゲット)に慌てふためく部下さんの姿が確認されたとかないとか。

 

「にゅ?・・・・おぉ、おおおおおおおああああああ!?」

 

目の前に広がる夢の光景(巨大プリン)に、殺せんせーは口は大きく開けて涎を垂らしまくる。

 

「先生のために茅野が考えて作ったんだ」

 

「廃棄卵を救うためってのもあるけどな」

 

「こ、これ全て先生が食べて良いんですか!?」

 

「「どうぞどうぞ」」

 

「夢が叶った〜〜!!」

 

何処からか取り出したスコップを両手に、号泣しながら巨大プリンへと飛びかかる殺せんせー。それを見届け、生徒達は教室内へと入っていく。

 

「茅野、教室で起爆を見届けるぞ」

 

「うん・・・・・」

 

 

 

プリンの底に設置されている爆弾には小型カメラが内蔵されている。殺せんせーが底に辿りついた際に光が差し込み、それに合わせて竹林が爆弾を起爆する手筈だ。

 

「・・・・・すげぇ速さで無くなってるんだが」

 

「こりゃ底に到達するのも時間の問題かね」

 

「でも、今のところは順調だね。・・・・茅野さん?」

 

窓から次々に無くなっていく巨大プリンの様子を見守る惣一達。他のメンバーは竹林の前に設置されているパソコンの画面を見ている中、茅野だけは有希子の隣で巨大プリンを見ていた。

 

「プリン・・・・・爆発・・・・・」

 

「茅野さん?どうしたの?」

 

「ダメだーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」

 

「「『うぉ!?』」」

 

「愛情込めて作ったプリンを爆破なんてダメだーーーー!!あぁ、あぁ、あぁ!!」

 

「ちょ、茅野さん!?落ち着いて!!」

 

「おい茅野何プリンに感情移入してんだよ!吹っ飛ばすために作ったんだろ!?」

 

「あーーー、ダメだ!!ず〜っとこのまま、校庭にオブジェクトとして飾るんだ〜〜!!」

 

「「「「「「「『腐るわ!!』」」」」」」」

 

頭か窓か。どっちか先に壊れるか分からない勢いで頭をぶつけまくる茅野。慌てて万丈が取り押さえるが、その勢いが殺されることはない。

 

「ふ〜、ちょっと休憩」

 

「「『!?』」」

 

そんな茅野に気を取られていると、いつの間にか殺せんせーが口を拭きながら教室へと戻ってきていた。その手には巨大プリンの底に設置していたはずの竹林作の爆弾が。

 

「異物混入を嗅ぎ取ったのでねぇ、土を食べて地中に潜って外してきました」

 

プリン→土→爆弾といった風に食べ進めていった殺せんせー。ご丁寧に校舎からは見えない反対側へ向ったらしい。茅野のこともあり、誰も気づくことができなかった。

 

「プラスチック爆弾の材料には独特な匂いを発するものがある。竹林くん、先生の鼻にかからない成分も研究してみてください」

 

「・・・はい」

 

悔しいというか、何というか・・・・・みんな何処かでこうなるとは思っていたのだろう。誰もが『やっぱり』と言った表情を浮かべている。

 

「そしてプリンはみんなで食べるものですよ。きれいな部分を寄り分けておきました」

 

いつの間に用意されていたのか・・・・そんなことは考えるだけ無駄だ。生徒たちは取り分けられた容器を各々手に取り、二日かけて苦労して作り上げたプリンの味を噛み締める。

 

「やっぱりこうなるのか」

 

「惜しかったね、茅野・・・・むしろ安心した?」

 

「あはは・・・・」

 

『なぁ惣一、俺に一口・・・』

 

「働かざるもの食うべからず、ってな。やなこった!」

 

『何でだよ!?』

 

「でも、茅野さんがここまで積極的にやるとは思わなかったよ」

 

「ふふふ、本当の刃は親しい友達にも見せないものよ!!」

 

これにて、茅野の暗殺はひとまず終了。次の刃を見せるのは一体誰になるのか・・・。

 



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第60話 暗殺ケイドロ、開幕!!

惣「ふぅ・・・・よし、こっちは準備いいぞ」

有「じゃあ行くよ?よ〜い・・・・・スタート!」

惣「さぁ前回のあらすじ!俺たちE組はシルバーウィークの連休も返上して茅野発案の巨大プリン爆殺計画を決行!茅野の持つプリンに関する知識に驚きながらも巨大プリンを完成させたが、作戦は失敗に終わるのだった!!さぁ今回は何が起こるのか!!ーーーーっ、はぁ・・はぁ・・・タ、タイムは・・?」

有「え〜と、14秒だね」

万「・・・何やってんだ?」

惣「タイムアタックあらすじ紹介(息継ぎ無し)。次回はお前がやるんだからな」

万「え、俺もやるの!?」


「はぁ・・はぁ・・・くそ、あれでネビュラガス注入してないとか、まじで化け物だろあの先生は!」

 

『同感だ・・・・・さて、どうやってあいつらを助ける?』

 

「ひとまず、有希子達とどうにか合流を・・・・・っ、来た!」

 

『おいおい、こんな早くバレんのかよ!』

 

すぐ近くに警察の気配を感じ、惣一は急ぎその場を離れる。やるべきことはただ一つ、生き残っている仲間と合流し、囚われた者達を助けることだ。

 

そもそもどうしてこんなことになったのか、それは数時間ほど遡る。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

「ふぁああ〜・・・・」

 

「今日も眠そうだね、また発明?」

 

「あともうちょっとで完成なんだけど・・・・なかなか難航しててな」

 

『それよりもお前ら、こんなゆっくり歩いてていいのか?結構ギリギリだぞ』

 

裏山を登って校舎に向かう惣一と有希子に、時間の心配をしたエボルトが一応声をかける。それでも眠そうに目を擦る惣一は全く急ごうとしない。

 

「多少の遅れなんて今更だろ。それに、校舎に着いたら早々寝させてもらうしな」

 

「駄目だよ、惣一君」

 

そんなことを話しながら校舎に到着した二人は迷わず教室へと入りーーーーーーー手首に手錠が巻かれた。

 

「「『・・・・え?』」」

 

「遅刻ですねぇ、逮捕する」

 

惚ける二人の目の前には何故か警官の服装をしている殺せんせーが。ご丁寧にサングラスまでかけて噛んでいるガムを膨らませている。

 

『何してんだ、殺せんせー?朝っぱらから悪徳警官みたいな格好までしてよ』

 

「ヌルフフフ、最近みなさんはフリーランニングをやっていますね?せっかくだから、それを使った遊びをしませんか?」

 

「遊び、ですか?」

 

横でどうにか手錠を外そうと試行錯誤している惣一を尻目に有希子は首を傾げる。

 

「それはケイドロ!!裏山を全て使った3D鬼ごっこ!!」

 

「ケイドロ?また随分と懐かしいな」

 

「うちはドロケーだった」

 

「俺のとこはケイドロだったぜ」

 

殺せんせーの説明はこうだ。生徒は全員が泥棒役になり、今まで教わってきた技術を使って裏山を逃げ回る。警察は殺せんせーと烏間先生の二人組で、一時間目の間に全員を逮捕(タッチ)できなかった場合は烏間先生の金で全員分のケーキが買われる。逆に時間内に全員逮捕(タッチ)された場合は本日の宿題が二倍になる。

 

とはいえ殺せんせー相手に一時間も逃げれるわけがない。そこはしっかりと考慮され、殺せんせーは残り1分になるまで牢屋の前で待機することになった。

 

まだ自分たちにも勝機があり、上手くいけばタダでケーキが手に入る。生徒達は全員がやる気に満ち溢れ、本日の一時間目は裏山でのケイドロになったのだ。

 

「いや〜、遅れちまったぜ!」

 

「おぉ万丈、お前どこ行ってたんだ?・・・・・まぁいいや、遅刻してるし逮捕で」

 

「あ?おいなんだよこれ!?ふん!!」

 

「にゅや!?ちょっと万丈君それ壊さないで!!地味に高かったんですから!!」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

そんなこんなで始まった暗殺ケイドロ。生徒はそれぞれ好きな場所へ逃げたり、集団で行動したりと各々自由に行動をとっていた。

 

「ケイドロなんて久しぶりだな」

 

「私も、最後にやったのはまだ惣一君がいた頃だった気がする」

 

「それにしても裏山全体使えるなんて、いくら烏間先生でも無理じゃねぇか?」

 

いつものメンバーで行動する惣一達。裏山という相当広い場所でのケイドロとあっては、いくら烏間先生といえど全員捕まえるのは不可能だという万丈の考えに惣一も有希子も頷く。流石にトランスチームガンやフルボトルの使用はズルではないかということになり、惣一も万丈も、烏間先生も校舎に置いてきている。つまりこのケイドロは、個々の身体能力が鍵となるのだ。

 

いくら烏間先生といえど、トランスチームシステムを使えなければただの人間。万丈のようにネビュラガスを注入しているわけでもないため、その身体能力もあくまで人間の範疇だ。この裏山で捕まえられる人数はいいとこ3人だろう。それが惣一の見解だった。そのためどうやって残り1分で動き出す殺せんせーから逃げ切るかを考えていたのだがーーーーーー開始から約3分後、その見解は裏切られることとなった。

 

「岡島君、速水さん、不破さん、千葉君、アウト〜♪」

 

「「「『え?』」」」

 

思わず立ち止まってスマホを取り出す。画面には警官の格好をした律が写っており、その横には先ほど名前が挙げられた人物の顔写真に赤いバッテンが付いていた。

 

『いや、まだ開始からそんな経ってねぇぞ。それなのにもう四人も捕まったってか?』

 

「集団で動いていたとか?それだったら纏まって捕まったってことも・・・・」

 

「だったらしばらくは誰かが捕まることもないんじゃねぇか?纏まって捕まったんなら、一人だけ逃げ切れてるなんて考えられねぇし」

 

「だが、だとしたら集団で動くのは少し危険だな。個々で動いた方が一気に捕まることも無くなるしーーーーー」

 

「菅谷君、ビッチ先生、アウト〜」

 

「「「『・・・・・・』」」」

 

再びスマホより聞こえる律の声。画面には二人の顔写真が追加されていた。

 

「・・・これ、もしかしなくてもやばくね?」

 

「ど、どうする・・・?」

 

「どうするって言われても・・・・・・っ!二人とも、来たぞ!!」

 

「え!?」

 

「おいマジかよ!!」

 

かなりの速度で近づいてくる気配を感じ、急いでバラバラになって逃げ出す3人。決して振り返ることなくその場を離れる。

 

「はぁ・・・・はぁ・・」

 

『気配も遠くなったな。どうやら二人のどっちかを追いに行ったらしい』

 

「咄嗟に三手に別れたが・・・・ひとまずは正解だったようだな」

 

しばらく走り続けて気配が遠のいたため、休息も兼ねて立ち止まる。一応は周りから見つけられにくくするために岩陰に隠れ、作戦会議を始める。

 

「けど、おかげであいつらとは逸れちまったな・・・・」

 

『この後どうする?他の奴らと合流するか?』

 

「いや、それもこの裏山じゃ簡単なことじゃない。まずは烏間先生から見つからないようにーーーーーー」

 

「万丈さん、アウト〜」

 

律が万丈が捕まったことを告げる。

 

「嘘だろ・・・・・いくら筋肉バカとはいえ万丈だぞ?ネビュラガスを注入している分、普通の人間よりも身体能力は高いんだぞ?」

 

『なぁ、あいつ俺たちに内緒でネビュラガスを体内に注入してたりしないよな?もしくはトランスチームシステムを使ってるとか・・・』

 

「いや、あの烏間先生がルールを破るわけがない。それにトランスチームシステムを使ってたらもっと大勢捕まっているはずだ。ネビュラガスについては、可能性は低いと思うが・・・・・」

 

「安心しろ、そんなことはしていない」

 

「『っ!?』」

 

隠れていた岩陰から跳躍し、声がした方へ顔を向ける。そこには予想通りの、そして外れて欲しかった人物が立っていた。

 

「・・・さっき万丈を捕まえたばっかでしょう。いくらなんでも早すぎませんか、烏間先生?」

 

「まだまだ甘いということだ。さ、君もさっさと逮捕しよう」

 

「そう簡単にやられるつもりもないけど!」

 

二学期に入ってから教わり始めたフリーランニングを使い、木の枝から枝へと飛び移る。そのまま近くの崖を飛び降り、真下の茂みをクッション代わりに用いる。幸いにも裏山の土は柔らかい。このぐらいの無茶は生身でも平然といられる。すぐ近くの茂みから茂みへと身を隠しながら移動し、時には枝を使って距離を開こうとする。

 

そんなこんなで、冒頭の場面へと戻る。

 

「はぁ・・はぁ・・・くそ、あれでネビュラガス注入してないとか、まじで化け物だろあの先生は!」

 

『同感だ・・・・・さて、どうやってあいつらを助ける?』

 

「ひとまず、有希子達とどうにか合流を・・・・・っ、来た!」

 

『おいおい、こんな早くバレんのかよ!』

 

再び走り出す惣一。そのまましばらく二人の攻防が続くのだった。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

一方惣一達と別れて逃げていた有希子は、道中で渚達一行と合流していた。次々とやられていく仲間達から烏間先生の本気を思い知り、戦慄が走る。

 

「次々と殺られていく・・・・殺戮の裏山だ」

 

「逮捕じゃなかったっけ?」

 

「まさか万丈君が捕まるなんて・・・・ついさっきまで一緒に行動してたんだけれど」

 

「それって、この近くにいるってことですか?」

 

奥田のその言葉に、思わず黙り込む一同。慌てて周囲を見渡すが、幸いにも烏間先生の姿も、足元の聞こえてこない。

 

「・・・近くには、いないみたいだね」

 

「よかったです・・・・・・あ、そういえばこれケイドロですよね?でしたら捕まった人達は・・・」

 

「そうだよ!タッチしたら解放できる!!」

 

奥田の呟きによりやることを定めた杉野が駆け出し、校庭に作られている牢屋スペースへと向かう。急いでその後を追いかける有希子達だったが、一つ大事なことを忘れていることをカルマが口にする。

 

「バカだねぇ〜杉野は。誰があの音速タコの目を盗んでタッチできるよ。そんなことができるぐらいなら、とっくに殺してるって」

 

「「「「ですよねぇ〜・・・・」」」」

 

声を揃えて納得する有希子達。烏間先生が逮捕し、殺せんせーが牢屋で監視。隙など存在しないかのような二人の連携に、舌を巻くしかない。

 

最強の生物(殺せんせー)最強の人間(烏間先生)が、生徒の宿題を二倍にするために襲いかかって来ているのだ。

 

 




久しぶりに鎧武を見た。

・・・・・やっぱり3150だった。


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第61話 決着、暗殺ケイドロ!

惣「あっれ〜?あいつどこ行った?」

有「どうしたの、惣一君?」

惣「おぉ有希子、万丈見なかった?」

有「万丈君?見てないけど・・・」

エ『ほら、前回のあらすじで惣一がタイムアタックあらすじ紹介をやってただろ?それを今回は万丈にやらせようって話だったんだが・・・・』

惣「あのやろぉ・・・逃げやがったな!!」

エ『なぁ、惣一・・・そんなことしている間に本編始まるぞ?』

惣「え、ちょっと待・・」




殺せんせーの発案で開始された『暗殺ケイドロ』。生徒は裏山を使って個人で、あるいはグループになって逃げていたが、仲間が次々と捕まっていく事態に戦慄する。

 

捕まってしまった仲間を助けようと牢屋に向かう彼らの目に飛び込んでくるのは、音速タコによってドリルをやらされている仲間の姿!

 

「ヌルフフフ、泥棒どもが悔しそうに見てますねぇ。本官がここにいれば救出も出来まいて」

 

「くっそ〜・・・・警官のカッコした途端に高圧的になりやがって・・・」

 

「黙らっしゃい囚人ども!!大人しく警務作業に没頭したまえ!!」

 

「警務作業って・・・・」

 

「要はドリルで勉強させたいだけだろーが」

 

牢屋内でこんなやりとりが行われている間にも次々と捕まっていく生徒。渚や杉野がすぐ近くに待機して機会を窺っているが、殺せんせーがいる以上救出は困難を極める。

 

「どうにかして隙が出来れば・・」

 

「つっても、どうするよ?こうしてる間にもどんどん捕まっていってるぞ」

 

万丈の言う通り、スマホからは律による確保情報が次々と舞い込んでくる。このままの速度で捕まっていけば、30分もしたら全滅してしまうぐらいの勢いだ。なんせ鬼ごっこと言えど、烏間先生も手加減など一切無しの本気なのだから!

 

全滅を阻止するためには牢屋にいる生徒をタッチして解放しなければならない。しかし、その牢屋には殺せんせーが。どうにかしてマッハ20を越えるか、はたまた殺せんせーを無力化しない限り、助け出すことは0%に近い。

 

「・・そうだ!」

 

「お、何か思い浮かんだのか岡島?」

 

「まぁ見てろ」

 

そう言って立ち上がった岡島はポケットに仕舞っていたある物を取り出した。それは、水着姿の女性の写真。それも一枚では無く、何枚かの束で殺せんせーの前にチラつかせた。

 

「にゅや?」

 

それに気づいた殺せんせーは、無言でそれを受け取ると胸ポケットの中へと仕舞い込み・・・・・・

 

「一回だけだぞ」

 

「今だ渚、杉野〜!!」

 

不祥事①・収賄。殺せんせーが水着写真を見入っている間に近くにいた渚と杉野の2人が牢屋で捕まっている生徒達にタッチし、解放していく。そしてその情報は、律を通して烏間先生へと伝えられた。

 

驚愕し、額に青筋マークが浮かぶ烏間先生。牢屋には殺せんせーがいる以上絶対にありえない泥棒(生徒)の脱走に、確実に原因である存在へと電話をかける。

 

『おい、どうして捉えた泥棒が逃げてるんだ・・・?』

 

「いや〜、思いの外奴らやり手でヌっひょ〜この乳ヤッベェ!!」

 

『物で釣られたな!!次に送る連中は、絶対に逃すんじゃないぞ!!』

 

そう念を押してから通話は切れる。程なくして烏間先生に捕まった矢田、寺坂、吉田達が牢屋へとやってくる。のだが・・・・・

 

「実はね、殺せんせー・・・弟が重い病気で寝込んでるの・・・」

 

突然そんなことを話し始める矢田。誰も妨害することなく、その話に聞き入る。

 

「ケイドロやるってメールしたら、絶対・・・勝ってねって・・・・・・捕まったって知ったら、あの子、きっとショックで・・・!」

 

「行け」

 

「え?」

 

「本官は泥棒なんて見なかった・・・・行け!」

 

「わ〜いありがと〜♪」

 

不祥事②・純情派。仲間にタッチされたわけでもないが、殺せんせーに一言で牢屋にいた生徒はみんな逃げていく。無論、殺せんせーに捕まることなく難なくと。

 

『烏間さん、聞こえるか?どうして犯人が牢屋から脱走するんだ!?』

 

「こっちのセリフだザル警官!!」

 

「・・・何やってんのあの人達・・・」

 

『さぁな・・・・』

 

その後もケイドロは続くが、同じように殺せんせーの汚職も続いていく。賄賂やサボりで次々と生徒達を逃がしてしまうのだ。あまりにもそれが続いたため、とうとう烏間先生の標的が生徒(泥棒)から殺せんせー(同僚)へと変わってしまった。

 

「あのバカタコはどこにいる!出てこい!!」

 

「ヒマだからって長野まで信州そば食べに行きましたよ」

 

両手に銃を携えて裏山から牢屋へとやって来た烏間先生だったが、残念ながら目的の殺せんせーは長野県に行ってるらしい。忘れてはいけない、一応今は授業中である。

 

結局ケイドロは一時中断、程なくして戻ってきた殺せんせーに烏間先生に雷が炸裂してしまう。

 

「これじゃあゲームとしても授業としても成り立たない!次逃したら、俺は降りるぞ!!」

 

「えぇ、もう逃したりしませんよ。・・・でもね烏間先生、ここからは泥棒の性能も上がっていますよ」

 

「・・・何?」

 

再開する暗殺ケイドロ。しかし一体どうしたことか、先ほどまでと違い生徒が捕まる確率が格段に減っていた。それもそのはず、烏間先生が生徒の気配を捉えにくくなったからだ。

 

実を言うと、牢屋から逃げる直前に、殺せんせーからあるアドバイスを受けていた。

 

『烏間先生は君たちの痕跡を追っているはずですよ』

 

逆に言えば、その痕跡・・・・足跡や植物の乱れなどが確認出来なければ、烏間先生に見つかる確率が減る。そこでさらに、授業で習ったフリーランニングの基礎的な動きである縦移動や横移動、ロングジャンプ等を駆使すれば、その確率もさらに減る。さらには四人小隊を組んで、烏間先生の接近にはいち早く察知する動き。明らかに開始直後とは違い、烏間先生一人では全員を時間内に捕まえることは不可能と思わせるところまでいくことに成功した。

 

「まさか足跡を隠したりするだけで、こうも変わるとはな」

 

『だが、今のままじゃ”烏間には捕まらない”程度。残り1分になってあのタコが動き出せば、結局は全員捕まって終わりだぞ?』

 

「・・・・・よし、ひとまず有希子達と合流しよう。話はそれからだ」

 

『お?何か策があんのか?』

 

「あるにはあるが・・・・一人じゃ不可能だ。まずは・・・・・・」

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

生徒を探すこと数分。何人かは捕まえることに成功するが、やはり全員には程遠い。そんな折、彼らを見つけた。E組の中でも機動力に最も優れている5人組、惣一・木村・前原・岡野・片岡だ。挑戦か、はたまた挑発か・・・・・どちらにせよ、多少は燃える烏間先生である。

 

「左前方の崖は危ないから立ち入るな。そこ以外で勝負だ」

 

「「「「「はい!」」」」」

 

散り散りになって逃げ出す5人。こうしてしっかりと動いているところを見ると改めて実感する。自らの教えは確かに生徒達の中に染みつき始めていると。とはいえ・・・・・まだまだではある。多少の時間はかかってしまうが、烏間先生は岡野、木村、前原、片岡と次々と捕まえていく。

 

『おい!もう他の四人は捕まっちまったぞ!!』

 

「もっとスピードを上げる!!ここで捕まるわけにはいかない!!」

 

「逃がさん!!」

 

逃げる惣一、追う烏間先生。殺せんせーとはまた別の二人の怪物の追いかけっこが始まる。ステージは山全体。上下左右の360度全てを生かしての戦いだ。

 

崖があったら跳び、木の枝を飛び移ってどんどん奥まで駆けていく。普通に地面を走るよりも、圧倒的に速い。しかし、やはり上はいるものだ。すでにある程度も動きの予測をしていた烏間先生は別ルートで先へと回り込んでしまっている。

 

「うおっ!?」

 

「これで終わりだ!」

 

突然のことに、瞬時に引き返したりすることができない。残念ながら吸い込まれるように、惣一も確保されることとなった。

 

「クッソ!!もうちょっと逃げられると思ったのに!!」

 

「いや、俺の想像以上に遠くまで逃げられてしまったよ。これだけ逃げられれば十分ではある、しっかりと基礎も出来てるようだしな。・・・・・だが、もうすぐラスト1分。奴が動けば、このケイドロは君たちの負けだ」

 

「・・・ははっ、俺がただ逃げただけだと思いますか?」

 

「何?」

 

『烏間よぉ、お前さんはあのタコに乗って飛んだりはしないだろう?』

 

「?当然だ、そんな暇があれば刺している!」

 

「だったら烏間先生・・・・いくらあんたでも、ここから1分でプールまで(・・・・・)は戻れないですね」

 

「・・・しまった!!」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

烏間先生が惣一を捕まえて数秒、残り時間が1分になり殺せんせーが牢屋から動き出した。マッハ20を持ってすれば、1分以内に残りの全員を捕まえるなんて容易い・・・・・・その考えのもと動き出した殺せんせーは、捕まえる前にある場所で動きを止める。そう・・・・プールである。

 

プールの底には万丈、渚、カルマ、杉野の四人が潜っている。水が弱点の殺せんせーでは残りの一分間水の底に居続ける四人を確保することができない。そして当然、烏間先生を連れてくることも。まさになす術なし、あれよあれよと言う間に時間は過ぎていき、律によるタイムアップの合図が鳴り響いた。

 

「タイムアップ!全員逮捕ならず、泥棒側の勝利です!!」

 

「よっしゃ!!やったな惣一!!」

 

「なんとか烏間先生を惹きつけられて良かったよ」

 

「お疲れ様、惣一君」

 

『見てるこっちはハラハラしたぜ?』

 

全員校舎に集合し、そんなことを話す惣一達。兎にも角にも、暗殺ケイドロは無事に生徒達の勝利、景品のケーキも無事に手に入り、宿題二倍も回避し、二学期の滑り出しとしては順調そのものであったと言えるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・あの記事を見つけるまでは。

 

 

 

 

 

 



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第62話 犯罪発覚?

万「クッソ離せぇ〜!!」

惣「いいや離さないね!今回はちゃんとあらすじ紹介してもらうぞ万丈!!」

有「えぇっと・・・これは、どう言う状況なのかな・・?」

惣「おぉ有希子、ほれ!」

有「あっと・・・・ストップウォッチ?・・・ってことはもしかして・・」

惣「前回は逃げられたからな!今回は逃げられないように先に捕獲しておいた!」

有「でも、あれぐらいだったら万丈なら簡単に抜け出せそうだけど・・・」

惣「あぁその点は大丈夫だ、なぜならロックフルボトルを使ったからな」

有「・・・え?」

惣「いくら筋肉バカといえどフルボトルの力にはそうそう抗えねぇからな」

有「いや、あの・・・惣一君・・・・」

惣「ん?どうした有希・・・・・万丈が居ない!!?」

有「フルボトルを使っても、逃げられるみたいだね・・・」



「ふっふ〜ん♪二学期も滑り出し順調!生徒達との信頼関係もますます強固なものになっていきますね〜♪」

 

職員室にて、授業の準備を持って教室へと向かう上機嫌な殺せんせー。教師としても一個人としても、生徒と仲良くなっていくことに喜びを覚えるのは普通だろう。

 

「さぁ、今日も生徒達は尊敬の目で私を見・・・・・・汚物を見る目〜〜〜!!!?」

 

残念、どうやら生徒との信頼関係は強固なものではなかったようだ♪

 

彼ら生徒達が見ていたのはとある記事、それが殺せんせーに対してまるで汚物に対して向けるような視線を浴びさせる原因だった。内容はただ一つ、”多発する巨乳専門の下着ドロ”だ。すでに目撃情報も出回っているようで、犯人の特徴も細かく記されている。曰く、犯人は黄色い頭の大男。曰く、ヌルフフフ・・・という不気味な笑いを発する。曰く、現場には謎の粘液が残っている。

 

『こんな特徴の奴なんて、お前ぐらいしかいないんだよ、殺せんせー』

 

「特徴が何もかも合致しちまってるしな」

 

「正直がっかりだよ」

 

「こんなことしてたなんて・・・・」

 

完全に信用はガタ落ち、殺せんせーは慌てて弁明を図る。

 

「ま、待ってください!!先生、全く身に覚えがありません!!」

 

「じゃ、アリバイは?」

 

「アリバイ?」

 

「この事件の発生時刻、先生は何処で何してた?」

 

「何ってそりゃ・・・・・・高度一万m〜三万mの間を上がったり下がったりしながらシャカシャカポテトを振ってましたが」

 

「誰が証明出来んだよそれを!!」

 

「アリバイは無し・・っと」

 

「そもそもアリバイなんて意味ないだろ」

 

「何処にいようと、大体一瞬でこの街に戻ってこれるしね」

 

「ちょ・・」

 

「待てよ皆!!」

 

どうやら、まだ殺せんせーを信じてくれる生徒は残ってたらしい。磯貝は殺せんせーを庇うように、反論を口にする。

 

「殺せんせーは確かに小さい煩悩の塊だ!けど、今までやったことと言えば精々・・・・・・・エロ本拾い読みしたり・・・・水着生写真で買収されたり・・・・・・休み時間中狂ったようにグラビアに見入ったり・・・・”手ぶらじゃ生ぬるい、私に触手ブラをさせてください”と要望ハガキを出したり・・・・」

 

「磯貝・・・・・それ、フォローになってないぞ」

 

「先生・・・・・自首してください・・!!」

 

「磯貝君まで〜!?」

 

とうとうほぼ全員の生徒から見放されてしまった殺せんせー。何がなんでも信頼を取り戻すためにも、自らのコレクションであるグラビア雑誌などを全て処分することを宣言し、すぐさま実行に移す。その光景をしっかり確かめるために生徒もほぼ皆職員室へと駆けつける。

 

次々と自身の机からこれでもかというほどの大量のグラビア雑誌を取り出していく殺せんせー。二十を超えるほどの冊数を取り出した時、あるものが引き出しから飛び出る。それは紛れもなく、ブラであった。

 

「おいおい・・・・」

 

「マジか・・」

 

そんな折、岡野が何かを発見したのか殺せんせーが教室に持っていっていた出席簿を持って職員室へと駆けつける。

 

「ちょっと、みんな見てクラスの出席簿!!女子の横に書いてあるアルファベット・・・・全員のカップ数だよ!!」

 

「ちょっ、私だけ”永遠の0”って何よこれ!!」

 

憤慨する茅野を尻目に、出席簿を受け取って中を確認した惣一は最後のページに書かれている内容を告発する。書かれているのはこのクラス所か学校にはいない女性の名前に加え、それぞれに付随するように書かれているアルファベットの数々。

 

「この最後のページ・・・・町中のFカップ以上のリストか・・・」

 

「ちょ、ま、そんなはずが・・・・そ、そうだ!い、今からバーベキューしましょう皆さん!!放課後やろうと準備しておいたんです!ほら美味しそうで・・・はぁ!?」

 

慌てて話題を逸らすようにクーラーボックスから串を取り出したが、残念ながら刺さっていたのは肉でも野菜でもなく、先ほどと同じくブラであった。しかも一つでは三つ四つと。

 

「うわ・・・・・」

 

「やっべぇ・・・」

 

「不潔・・・」

 

突如として発生した殺せんせード変態容疑。この空気は払拭されることのないまま時間は過ぎていき、本日の授業は終了を迎えてしまった。すごすごと教室を出ていく殺せんせー。生徒達が声をかけることも、追いかけることもない。

 

「今日一日中針のムシロだったね〜。居づらくなってこの教室から逃げ出すんじゃね?」

 

「でも・・・・殺せんせー、本当に犯ったのかな?こんな洒落にならない犯罪・・・」

 

「地球爆破に比べたら、可愛いもんでしょ」

 

「そりゃ・・そうだけど・・・」

 

「とはいえ、不自然といえば不自然だぞ」

 

「どう言うこと、惣一君?」

 

「記事によれば、下着ドロ自体は少し前から発生していたらしい。にも関わらず、俺たちはあまり関心を向けることはなかった。どうしてだと思う?」

 

「どうしてって・・・・自分たちにはあまり関係ないから、かな?」

 

「そう・・・・・だが今回、俺たちはこの記事を迷わず読んだ。それはここに書かれている犯人の特徴にあまりにも見覚えがあるからだ」

 

「・・だからあぁやって殺せんせーに直接問い詰めたんだろ?何が言いたいんだよ惣一?」

 

「問題はそこじゃない。俺たちが気づいたと同時にボロボロと証拠が出てきたと言う点だ」

 

「あ?どう言うことだ?」

 

「机の中はともかく、出席簿の中だったり・・・・さっきカルマが体育倉庫で見つけたこれだったり、俺たちの目が届きやすい場所にこんな証拠となるものを、まるで見つけてくれと言わんばかりに置くわけがないってことだ」

 

そう言って惣一が投げたのは体育倉庫に置いてあったボールだ。普通と違うのは、なぜかブラが付けられているということ。

 

「今まで接してきたから分かるだろ。あのタコからすれば、俺たちの信頼を失うことは暗殺の次に回避したい事項だ。こんなことしてたら、信頼を失うなんて明白だろ?」

 

「・・あぁ!」

 

「で、でも・・・だったら一体誰が・・・」

 

「殺せんせーじゃないとすると、考えられることはただ一つ・・・・・に」

 

「偽殺せんせーよ!!」

 

「あちょ俺のセリフ・・・・」

 

「ヒーローもののお約束!偽物悪役の仕業だわ!!」

 

漫画大好きな不破によってセリフを取られてしまった惣一、ちょっとしょんぼりとする。

 

「殺せ・・・・」

 

「殺せんせーの体色や笑い方を真似していることから察するに、真犯人はそれなりの情報を持っているに違いない!」

 

「その・・」

 

「その線だろうねぇ。何の目的でこんなことするのか分かんないけど・・・いずれにせよ、こんな噂が広がることによって賞金首がこの街に居られなくなったら元も子もない。俺らの手で真犯人ボコって、タコに貸しつくろーじゃん!」

 

こうして、下着ドロの真犯人を捕まえるために渚、カルマ、不破、カルマによって強制的に参加させられた寺坂、あまり意味は理解していないがとりあえずやる気も万丈、そして自分を永遠の0と称した輩に対する怒りに燃える茅野が動き出すこととなった。

 

 

「・・・・あれ、惣一は?」

 

「惣一君なら・・・・あそこ」

 

「俺のセリフ・・・・取られた・・・・・」

 

『あぁ〜、こいつこういうのめんどくせぇ〜んだよなぁ〜』

 

 



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第63話 事件の真相

惣「突如としてE組に舞い込んできた衝撃ニュース、殺せんせーど変態疑惑により、殺せんせーは生徒からの信用を失ってしまう。しかし、どうにも様子がおかしいと感じた俺やカルマ、渚によって意が唱えられる」

エ『あれ?前回までの流れはどうしたんだ?』

惣「あぁあれ?万丈がどうしようもなく逃げまくるから諦めた。前回なんて鎖で縛り付けてロックフルボトルを使ったのに・・・それをぶち壊しやがったんだぜ?」

エ『まぁ、あの筋肉バカだからなぁ・・・そんで久しぶりに普通のあらすじか。なんか物足りねぇな』

惣「あぁそれだが・・・・”そんなあらすじでのネタが思いつかない”って、作者が」

エ『おぉメタいメタい・・ま、うちの作者の頭じゃな』

惣「そうそう、仕方ねぇって」

エ『んじゃま、それはともかく・・・どうなる第63話!!』

惣「あ、おい最後だけ取るんじゃねぇ!!」




時刻は夜中・・・・・街中にはある一つの住居に忍び込む六つの人影が。そう、万丈達だ。授業で教わったフリーランニングを早速活用し、難なく塀を飛び越えて侵入に成功する。

 

「ふっふっふ・・・体も頭脳もそこそこ大人な名探偵、参上!」

 

「やってることは、フリーランニングを使って住居侵入だよね・・・・」

 

「なぁ不破、なんでこの建物に来たんだ?」

 

「なんで真犯人はこの建物に来ると思ったんだよ」

 

もちろん、ただ闇雲にこの場所に来たわけじゃない。律の情報収集をもとに、確かな確信を持って不破はこの建物を選んだ。

 

「ここはね、某芸能プロの合宿施設なの。この二週間、巨乳ばかりを集めたアイドルグループが新曲のダンスの練習をしてるって。それも明日まで!真犯人なら、この極上の洗濯物を逃すはずないわ!!」

 

「な、なるほど・・・」

 

「・・・あれ?なぁおい、あれ殺せんせーじゃねぇか?」

 

ひとまず様子見、茂みや車の影などで姿を隠しながら様子を伺っていたところで、万丈が少し先の茂みの中に、頬被りをしてサングラスをつけている殺せんせーの姿が確かにあった。

 

「なんだ、殺せんせーも考えることは同じか」

 

「ってかどう見ても盗ぬ側の格好だろあれ・・・」

 

「見て!!真犯人への怒りのあまり下着を見ながら興奮している!!」

 

「あいつが真犯人にしか見えねーぞ!!」

 

さて、そんなことはさておき、対して時間も経過しない内に目的の人物がこの場に姿を表した。黄色いヘルメットを被ってその顔を隠しており、確かに暗闇であれば黄色い頭の大男に見えてしまうだろう。明らかな一般人とはかけ離れた身のこなしで優々と住居を侵入、そのまま干されていた下着が持っていかれそうになる。

 

「捕まえたーー!!」

 

当然、殺せんせーがそれを許すはずがない。どれほど軽い身のこなしをしていようとマッハ20のタコ相手に逃げられるわけがない。あっという間に捕まり、押し倒される。

 

「よくもナメたマネしてくれましたね!?押し倒して隅から隅まで手入れしてやるヌルフフフ・・!!」

 

「なんか・・・下着ドロより危ないことしているみたい・・」

 

「笑い方も報道通りだしね」

 

兎にも角にも真犯人は無事に捕らえた。殺せんせーはその面を拝むべく、大男が被っているヘルメットを放ったくる。露わになる真犯人の顔、それは彼らE組にとって見知った相手であった。

 

「あれ?あの人・・・・烏間先生の部下の人じゃない?」

 

「確か・・・鶴田さん、だっけ?」

 

渚達が驚愕し、それは殺せんせーも同様だった。予想外の人物であったことに驚き、思わず掴んでいた触手を離してしまう。

 

「なんで・・・あなたがこんな・・・」

 

そちらに気を取られてしまったからか、殺せんせーは反応出来なかった。一体どこに隠されていたのか、巨大なシートが殺せんせーの周囲を囲ってしまった。それと同時に姿を現す、あの男。

 

「国に掛け合って烏間先生の部下をお借りしてね。この対先生シートの檻の中まで誘ってもらった」

 

「この声は・・・・」

 

「テメェ・・・シロ!!」

 

「君の生徒が南の島でやった方法だ。当てるより、まずは囲うべし・・・・・さぁ殺せんせー、最後のデスマッチを始めようか」

 

四方がシートで囲まれている中の唯一の脱出口である上の穴。そこから、殺せんせーと同じく触手を所有しているイトナが飛来する。腰にはスクラッシュドライバーが装着されており、頭から伸びる触手に先にはシートと同様の対殺せんせー物質で作られた蛇腹の刃が備え付けられていた。

 

「イトナ!!」

 

「まずは劇的にフィールドを変化させ、それから襲う。当てるよりまずは囲うが易し・・・・君たちの戦法を使わせてもらったよ」

 

「シロ、これ全部テメーの計画か!?」

 

「そう言うことさ。街で下着ドロを重ねたのも、殺せんせーの周囲に盗んだ下着やら色々仕込んだのもね。あぁそうそう、彼を責めてはいけない。仕上げとなるこの場所だけは、下着ドロの代役が必要だったものでね」

 

「・・すまない・・・烏間さんの、さらに上司からの指示だ・・・・やりたくないが、断れなかった・・」

 

「っ・・・!!」

 

中学生にはまだない、大人だからこその事情。当然責められるわけもない。

 

「生徒の信頼を失えば、あの怪物は慌てて動く。そこに来て巨乳アイドルの合宿という嘘情報・・・・多少不自然でも飛び込んでしまう辺り、間抜けだねぇ」

 

途切れることなく殺せんせーを襲う、イトナの触手の猛攻。対殺せんせー物質による体の一部一部が徐々に溶け出しているが、防戦一方となってしまっている。

 

「クソ・・・俺らの獲物だぞ・・!」

 

「いっつも汚い場所から手ぇ回して・・・!!」

 

「それが大人というものさ。さてイトナ、ボトルも使いなさい」

 

『オクトパス!チャージボトル!潰れな〜い!チャージクラッシュ!』

 

「生身でドライバーを・・!?」

 

「あのスクラッシュドライバーを少々改造してね・・・・わざわざグリスにならなくとも、ある程度はボトルの力を引き出せるようにしたんだ。ただ振るよりもボトルの性能を引き出せ、同時に触手も使える・・・・これで仕留められないようではね・・・」

 

殺せんせーの触手に対応できる対殺せんせー物質の武装が施された触手にフルボトル。躱そうにも周りは対殺せんせー物質でコーテイングされているシートがあり、弾こうにも対殺せんせー物質の武装がジワジワとダメージを与え続ける。そろそろトドメの一撃を・・・・・イトナが全触手を、全エネルギーを、殺せんせーへと集中させる。

 

「俺の勝ちだ・・・・兄さん。お前を殺して、たった一つの問題を解く。即ち・・・最強の証明!!」

 

降り注ぐ触手とボトルのエネルギー。防ぐことなど到底出来ないはずのそれを・・・・殺せんせーはニュルンと躱した。

 

「!?」

 

先ほどまでの優勢具合が嘘のように、イトナの触手はその全てが悉く躱されていく。さっきまで触手を受け続けたからこそ、その動きに順応出来ていた。

 

「見事です、イトナ君。一学期までの先生ならば殺られていたかもしれません。でもね・・・・君の攻撃パターンは単純です。いかに速くても、いかに強くても、いかに保護者が策を積み上げても、いかにテンパリやすい先生でも、三回目ともなればすぐに順応して見切ることが出来るのです」

 

「バカな・・・・こんなはずでは・・・・」

 

「イトナ君、先生だって学習するんです」

 

イトナの触手を全て掴む。触手で触れば溶けてしまうが、服ごしであれば問題無く掴みかかれる。

 

「先生が日々成長せず、どうして生徒に教えることが出来るでしょうか?」

 

しかし、このままでは殺せんせーは身動き出来ないままだが・・・・・・こんな弱点で囲まれている現状を打破する方法を、すでに殺せんせーは編み出していた。

 

「さて・・・厄介な布の檻を始末しますか。夏休みの完全防御形態の経験を通して、先生も一つ技を学習しました。全身ではなく、触手の一部だけを圧縮してエネルギーを取り出す方法」

 

エネルギーが触手の先へと集まり、それを証明するかのような光が布を通り越して外まで漏れ出していく。

 

「覚えておきなさいイトナ君、先生にとって暗殺は教育・・・暗殺教室の先生は、教えるたびに強くなる・・!!」

 

放たれる高エネルギー。布の檻ごとイトナを飲み込み、その衝撃で建物にガラスさえも砕け散っていく。

 

「なんだよこれ!?」

 

「わ、分かんないけど・・・・多分、いや間違いなく、殺せんせーだよ・・!!」

 

「うっ・・・くぅ・・・・・ぁぁあああ!!」

 

『潰れる!流れる!溢れ出る!ロボットイングリス!!ブラァ!!』

 

ほとんど怒りに任せるまま、瞬時にグリスへと変身したイトナ。ツインブレイカーのアタックモードを右手に、殺せんせーへの特攻を仕掛けてくる。

 

「変身!!」

 

『Wake up burning!Get CROO-Z Dragon!Yeah!』

 

「オラァ!!」

 

割り込むように、クローズへと変身を遂げた万丈がグリスの前方に出てその腕を受け止める。

 

「退け、邪魔だ!!」

 

「退くわきゃねぇだろ!!オラ!」

 

クローズとグリス、二人の仮面ライダーの拳が衝突する。その度に周りには衝撃が伝わっていき、徐々にその威力が上がっていく。

 

『スクラップフィニッシュ!』

 

『ドラゴニックフィニッシュ!』

 

「「はぁああああああああ!!」」

 

目の前を倒す、その思いが込められた二つの拳の衝突、一見互角のように見え、拮抗している・・・・・・・・はずだった。

 

「俺は強い・・・俺は強い・・・俺は強い・・・・」

 

「あ?お前何言って・・・」

 

「俺は強い!兄さんを殺し、最強だと証明する!!」

 

「うぉおお!?」

 

グリスの攻撃力が増し、段々と押され始めるクローズ。突然のグリスの攻撃力の上昇に、実際にその拳を受けているクローズは困惑する。

 

「ど、どうなってんだこれ・・?ってかまずい、このままじゃ・・!!」

 

『スチームブレイク!コブラ!』

 

押し負ける。そう思った瞬間、クローズの背後より放たれた一撃がグリスを貫く。突如訪れた予想外の一撃にグリスはなすすべなく貫かれ、その装甲が解除された。

 

『殺せんせーを殺せなかったこと、並びに邪魔をする万丈に対する怒りでハザードレベルが上がったか・・・今のお前とグリスの間じゃ、ハザードレベルは天と地ほどの差があるぜ?』

 

「おぉ、惣一!」

 

『まぁ、今の俺があのまま戦闘に加わっても結果は同じだったろうがな・・・・今のような不意打ちじゃなきゃこいつを倒すのは不可能だった』

 

「お、おぉ・・?よく分かんねぇけど、とにかく倒せたしいっか!」

 

『・・・やはり、これ(・・)を使わないとか・・・・』

 

「お?何か言ったか?」

 

『いや、なんでも・・・・とにかく、そういうことだ、シロ』

 

ここまでイトナの勝手なグリスへの変身並びに戦闘を黙認していたシロ。表情は全く分からないが、その身に醸し出す雰囲気からどことなく呆れているようにも感じる。

 

「シロさん、あのような奇襲が私に通用しないことも分かったでしょう。彼をE組に預けて去りなさい。あと・・・・・・・私が下着ドロじゃないという正しい情報を広めてください!!」

 

「私も正しくはB、Bだから!!」

 

イトナのことよりもそっちの方が重要らしい殺せんせーと茅野が、正しい情報の修正を乞う。まぁ茅野はともかく、殺せんせーはそれは目的でこの場に赴いているのだから当然だろう。

 

しかし、その返事が来ることはなかった。

 

「グッ、ガァああああアアああアアアアああ!?」

 

「い、イトナ君!?」

 

「お、おいどうしたんだよ!?」

 

「あ、頭が・・・脳みそが・・裂ける・・・!!」

 

突然頭を抱えて苦しみ出すイトナ。その苦しみ様は尋常ではなく、体は痙攣を起こし、汗も止まらず、目の焦点も合っていないようにも見える。

 

『・・・ネビュラガスを注入する瞬間はともかく、その後にここまでの拒絶反応を起こすことはないはずだ。ましてやライダーシステムを扱え、ハザードレベルが4.0を超えてるなら尚の事・・・・・この苦しみは、触手が原因か?』

 

「度重なる敗北のショックで、触手が精神を蝕み始めたんだろう。ここいらがこの子の限界か・・・・・これだけの私の術策を活かせないようではね」

 

イトナの苦しみように反し、シロは異様なほどに落ち着いていた。まるでこうなることは予想の範疇だったかのように。

 

「イトナ、これだけ結果を出せないようでは、組織も金を出せなくなるよ。君に情がないわけじゃないんだ・・・・次の素体を運用するためにも、どこかで見切りをつけないと・・・・・。さよならだ、イトナ。あとは一人でやりなさい」

 

情がある。そう言った割にもかなりあっさりとイトナを切り捨てたシロ。彼にとって、イトナとはあくまでも自らの目的を達成するためだけの駒でしかなかったらしい。

 

『シロ、テメェ!!』

 

「待ちなさい!あなたそれでも保護者ですか!!」

 

「教育者ごっこしてんじゃないよモンスター。なんでもかんでも壊す事しかできないくせに・・・・私は許さない、お前達の存在そのものを。どんな犠牲を払ってもいい。お前らが死ぬ結果だけが私の望みさ。・・・それよりいいのかい?大事な生徒を放っておいて」

 

「っ!」

 

『・・・殺せんせー、イトナは任せる。俺はシロを追う』

 

「あ、ちょっと石動君!?」

 

立ち去ったシロを追いかけるために、イトナのことは殺せんせーに託し、すぐに飛び去る惣一。それとほぼ同時に、イトナもそこから飛び去っていった。

 



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第64話 イトナの救出

惣「イトナの襲撃を無事に乗り切った殺せんせー。しかし、シロは触手に苛まれるイトナを見捨ててしまった。そんなイトナを救うべく殺せんせーは・・・」

有「あれ?惣一、何持ってるの?」

惣「あぁこれ?」

有「ボトル・・・・・とはちょっと違うっぽいけど・・」

惣「こいつもちゃんとしたボトルだよ。ただフルボトルじゃないってだけで。まぁこいつがなんなのかは・・・・第64話で確認してみよう」

有「え、今回で本当に分かるの?」

惣「さぁ?」

有「えぇ・・・・」



イトナが飛び去って数分後、ネット上ではあるニュースが飛び交っていた。それが”携帯ショップ襲撃事件”。一つでもなく複数の携帯ショップが突然前触れもなく発生したことから様々な憶測が飛び交っており、携帯機器に使用されていた電子部品の暴発だのテロだの騒がれているが、このニュースを見ている殺せんせーや渚達には確信があった。これは間違いなく、イトナの仕業であると。スマホの画面に映る携帯ショップはかなり荒らされていて、見るも杜撰な姿へと成り代わっている。ここまで出来るのは、触手しかないと、全身触手の生物である殺せんせーは言う。

 

「これが全部・・・・イトナの仕業・・・」

 

「間違いなく、そうでしょうね。このような壊し方、触手じゃなければまず不可能・・」

 

「でも、どうして携帯ショップばっかり・・・?」

 

「どうしようね、せんせー?」

 

「担任として、責任を持って彼を止めます。探して、保護しなければ」

 

ひとまずイトナを探し出すことを最優先事項とする殺せんせー。シロという不確定要素はあるが、おそらく惣一が追いかけている以上、簡単に横槍を入れられないはずだ。

 

「つっても、どうやって探す?」

 

「ひとまず襲撃された携帯ショップに向かいましょう。まだ近くにいるはずです」

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

探すこと数分、目的の人物はそこまで苦労することなく探し出すことができた。案の定携帯ショップ付近に隠れており、真っ黒に染まったその触手には数台のスマホが握りつぶされている。イトナの顔はとても苦しそうで、それでいて何かに思い悩んでいる様な表情で染まっていた。

 

「やっと人間らしい顔で見れました、イトナ君」

 

「・・兄さん・・・」

 

「殺せんせーと呼んでください。私は君の担任ですから」

 

「拗ねて暴れてんじゃねぇ〜ぞ、イトナ。テメーにゃ色んなことされたがよ、水に流してやっから大人しくついてこいや」

 

「うるさい・・!勝負だ・・・・今度は・・勝つ・・!」

 

「もちろん勝負してもいいのですが、お互い国家機密の身・・・・・どこかの空き地でやりませんか?それが終わったら、そこでバーベキューでも食べながら、皆でせんせーの殺し方でも勉強しましょう」

 

「そのタコしつこいよ〜?一度担任になったら地獄の果てまで教えに来るから」

 

「ヌルフフフ!当然ですよ、目の前に生徒がいるのだから、教えたくなるのが先生の本能です」

 

 

瞬間、突如として巻き起こった煙がその場を覆った。それもただの煙ではなく、対殺せんせー物質のパウダー。殺せんせーやイトナの触手が溶け始める。

 

「やれやれ・・・・・随分と好きに暴れたみたいだな。イトナ君」

 

「あ!テメーは!!」

 

「夏休み以来だな、万丈龍我君。そしてE組の生徒達と殺せんせー」

 

「あなたは・・・ビルド・・!」

 

同時に姿を表したのはビルド・ラビットタンク。その手にはすでにドリルクラッシャーが握られており、銃口を生徒達に向けている。

 

「な、なぜあなたが・・!」

 

「カイザー・・・・・シロとは協力関係なのは知っているだろう?本来であればこの場には彼が赴くはずだったのだが、惣一とエボルトが邪魔をしているとのことでね、代わりに私が彼を回収しに来たんだ」

 

「回収だと・・!?」

 

「彼を泳がせたのも、計算の内ということさ」

 

どこからか取り出したスイッチを起動した瞬間、ビルドの背後にあった貨物車から網が飛び出し、イトナを確保する。それと同時に車は動き出し、イトナが連れ去られてしまう。

 

「さて、私の役割もここまで・・・・あとは君たちの好きにするといいさ」

 

『忍者!コミック!ベストマッチ!』

 

「どう言うことです?」

 

「頼まれた以上、最低限のことはするだけさ・・・それよりいいのか?さっきイトナ君を確保したのは先ほどのパウダーと同じ、対殺せんせー物質で出来ている。このままだと彼の触手は溶かされ続けるぞ?」

 

『Are you Ready?ニンニンコミック!』

 

『四コマ忍法刀!』

 

「それではこれで、惣一によろしく伝えておいてくれ」

 

『隠れ身の術!ドロン!』

 

ビルドを中心に再び巻かれる煙。先ほどと違うのは、この煙は対殺せんせー物質ではないということ。煙が晴れる頃には、ビルドの姿は跡形もなく消えていた。

 

「・・・皆さんは大丈夫ですか?」

 

「う、うん・・・」

 

「それでしたら、先生はイトナ君を助けに行きます!」

 

ビルドの目的はなんであれ、やることは変わらない。殺せんせーは渚達の無事を確認すると、すぐさまイトナ救出のために飛んでいった。残された生徒達は、怒涛の展開に少し置いてけぼり状態になりつつあったが、それでもはっきりとしていることがあった。ビルドの目的がなんであろうと、シロの差金なのは動かぬ事実。再び駒にされたことへ静かな怒りを宿していた。

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

イトナを救出するために飛び出した殺せんせーは、すぐにその車を発見する。案の定イトナの触手は溶かされ始めており、助け出そうにも触ることができない。ならばと車へ向かおうとした瞬間、近くの木々からいつかの紫色の圧力光線が放たれる。殺せんせーの動きを一瞬でも止めるこの圧力光線によって動きが鈍ってしまう。

 

「やれ、狙いはイトナだ」

 

イトナに向かって放たれる対殺せんせー弾。殺せんせーはイトナを守るために、その弾をあえて受ける。服や風圧で弾くことによって致命傷は避けつつ、指示をした男を確認する。

 

「あなたは・・シロさん!なぜここに!!」

 

「石動惣一のことかい?彼なら軽くいなしておいたよ。今頃・・・・ふふ」

 

そんな話を聞きながら、しかし何もできずにいるイトナ。意識も朦朧とし、グリスに変身しようにも右手が動かない。せめて変身できればライダーシステムの装甲が体を覆って触手を守れるも、それもままならない。イトナは痛いほどに、自らの無力感を味わってしまう。協力者には見捨てられ、殺すべき相手には守られ、自分はそれを黙って見ているしかできない。このまま何もかも終わってしまうのか・・・・・そんな考えは、彼ら(・・)によって覆された。

 

「はっはははは!!」

 

「ふっ、ほっ、よいしょ!!」

 

どこからか現れたカルマ、前原の二人が木の上から撃っていた男達を蹴り落とし、それをしたで待機していた杉野や矢田達が布で確保、そのまま簀巻きに拘束する。

 

突然の想定外のことに固まっている他の男の元へは岡野が襲来、足で顔を挟んで男だけを木から落とす。さらに別の男の元へは寺坂が現れる。

 

「これ、対タコの布の服だろ?おかげでタコに変わって俺らが落とさなきゃなんねーだろうが!」

 

「寺坂!木の上のライト頼む!」

 

「お〜う!」

 

渚やカルマ達が呼んだのだろう、いつの間にか惣一以外のE組全員が集結し、シロの邪魔を決行していた。

 

「お前ら・・なんで・・・」

 

「勘違いしないでよね。シロの奴にムカついてただけなんだから・・・殺せんせーが行かなきゃ、私達だって放っておいたし」

 

「速水が”勘違いしないでよね”って言ったぞ」

 

「生ツンデレはいいものだ」

 

さて、突然の生徒達の襲来により、シロは呆気に取られそちらに意識を持っていかれてしまう。それは大きな隙になってしまい、殺せんせーがイトナを捕獲している網を根本ごと外してしまう。

 

「去りなさい、シロさん。イトナ君はこちらで引き取ります。あなたはいつも周到な計画を練りますが・・・生徒達を巻き込めばその計画は台無しになる。当たり前のことに早く気づいた方がいい」

 

「・・モンスターに小蝿達が群がるクラス・・・・大層うざったいねぇ。仕方ない、ここはこれを使って・・・・」

 

シロがネビュラスチームガンを取り出したのに反応し、生徒はそれぞれ身構え、万丈はドライバーを装着する。

 

「万丈君・・・惣一君は・・?」

 

「わっかんねぇ・・・シロのヤローを追いかけていったんだが・・・」

 

「おいそれってまさか・・・」

 

「そんな・・・エボルトさんもいるのに・・・」

 

「ブラッドスタークとナイトローグがいない以上、脅威となるいるのはクローズのみ・・・・・だがハザードレベル3.0を超えたばかりの中学生など、私の敵では・・・・・」

 

その言葉は、突如その場に何者かが放り込まれたことによって遮られた。右半身に赤い歯車が装着されている、クローズやグリスよりもブラッドスタークやナイトローグの怪人の方が容姿が近い、かつてシロが一度だけ見せたカイザーと呼ばれた姿に酷似しているそいつは、火花が飛び散り始めている体を抑えながら苦しそうに立ち上がる。

 

「あ〜!テメーは確か・・・・カイザーリバース!!」

 

「馬鹿な!?なぜお前がここに・・!?」

 

「おい・・・こんな話聞いてねぇぞ、なんだよあのバケモンは!!」

 

『スチームブレイク!コブラ!』

 

E組にとって聞き慣れ始めているその音は、正しく彼の存在を示していた。しかし、そこにいたのは彼らが想像していた姿ではなく、宇宙の様なアンダースーツに紅と金の装甲が付いており、腰には紅いビルドドライバーが装着されている。そこには2本の見たことがないボトルが嵌められているが、少なくとも彼の代名詞と言えるコブラが使われているであろうことは理解できた。

 

「お、お前・・・・」

 

「惣一君・・・なの?」

 

「貴様・・・・・その姿は、まさか・・・」

 

シロの言葉に、その存在ははっきりとこう答えた。

 

 

 

『エボル・フェーズ1・・・』

 

と。

 



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第65話 エボル・フェーズ1

惣「ビルドに連れ去られてしまったイトナを救うために追いかけた殺せんせー。しかし、それはシロの策略だった」

エ『てかどう考えても罠だろ。まぁ、あのタコが放置するわけがないだろうけどさ』

惣「餌が分かりやすすぎるんだよ、あの担任は!だから俺たち生徒も動かないと・・・」

万「いやいやいやいや!もっと大事なことあんだろ!!」

惣「あ?どした万丈?」

有「私達からしたら、そっちよりも最後に出てきたエボルの方が気になるんだけど・・・・」

エ『お、なんだ気になるのか?それじゃあしょうがない!俺が直々に教えて・・・・』

惣「説明より本編見た方が早い、というわけで第65話スタート!!」

エ『あ、おい惣一テメェ!!』


時間は惣一がシロを追いかけているところまで戻ろう。イトナのことを殺せんせーや万丈達に任せ単身シロの追跡をしたのは、シロがこんなあっさりと手を引くわけがないという確信があったから。

 

『待てシロ!!』

 

今現在シロは生身、対して自分は烝血済み。力の差は歴然であり、今なら追いつくことも取り押さえることも容易いはず。とにかく、奴がネビュラスチームガンを取り出したらそれを撃ち抜くぐらいのつもりでトランスチームガンの銃口をシロへと向ける。

 

「・・・石動惣一か・・・イトナは放っておいていいのかい?」

 

『あいつのことは他の奴らやうちの担任に任せたさ。少なくともあいつに関して俺がやれることは少ねぇ・・・・それよりも、あんたの話を聞く方が重要だ』

 

「話ね・・・確かに君の誘いに乗るのはやぶさかではないが・・・・生憎だが今は時間が無くてね」

 

『イトナを使ってまだ何か企んでるんだろ?』

 

「なんだ、気づいていたのか?」

 

『お前があんなあっさりと手を引くわけがねぇからな』

 

「お見通し、か・・・・ふふふ。だが、先ほど言ったように今君の相手をしている暇は無くてね。代わりと言ってはなんだが・・・・彼らに相手してもらいなさい」

 

『あ?』

 

惣一がシロを撃つ前に横からの襲撃が来る。そこにいたのは一体のスマッシュと、何時ぞやの赤いカイザー、カイザーリバースであった。

 

『テメェは確か・・・カイザーリバースか』

 

「何時ぞやの研究所以来だな。会えて嬉しいぞ?」

 

「されではこの場は頼んだよ、カイザーリバース」

 

『待て・・』

 

「おぉっと!君の相手は俺たちさ!!」

 

立ち去ろうとするシロ。慌てて銃口を向けるも、カイザーリバースに邪魔をされてみすみす逃してしまう。

 

『クソが!邪魔しやがって!』

 

「それが我々に与えられた指示だからな。ひとまず、こいつでお相手しよう」

 

カイザーリバースの声に合わせて前に出てくるスマッシュ。それは惣一にとって、嫌でもあの子を(・・・・・・・)連想させてしまう。

 

『そのスマッシュ・・・』

 

「当然覚えているだろう。君の今の相棒の妹だったものだ。最も、中身は違うがな』

 

『・・相棒じゃねぇよ、精々助手だ』

 

「そうか、それは失礼。・・・・・やれ」

 

指示を受けるや否やスマッシュは動き出す。自らの特性を活かして炎をその身に纏い、格闘戦へと待ち込もうとする。その攻撃を腕を横に逸らすが、どう言うわけか攻撃を仕掛けない惣一。どうしても、彼女の存在が脳裏に浮かんでしまう。中身が違うと分かっていても、どうしても。

 

「ははは!!攻撃できないか!!中身が違うと分かっていても尚!!はっはは!!」

 

笑われても、それでも惣一に変化は無い。むしろ逸らすことすらしなくなり、スマッシュの攻撃を受け始める。やがてブラッドスタークの装甲が耐えきれず、消失してしまった。

 

「それもそうか!そのスマッシュとの戦いは貴様の人生の変換点・・・いわばターニングポイントだもんなぁ!!そいつとの戦いがあったからお前は万丈龍我と共に歩く道を選んだ!!万丈龍我と出会ったからお前の日々は大きく変わった!!お前は!万丈龍我の妹を犠牲に自分の日常を変えたんだ!!・・・・・・・さて、あまり時間をかけても仕方ない。そろそろ終わりにしよう」

 

膝をつく惣一。そんな惣一を見て、カイザーリバースは大声をあげて笑う飛ばし、スチームブレードを取り出す。

 

『・・・変わるか、惣一?あいつには俺もキレてきた』

 

「いや・・・必要無いさ、エボルト・・・・あいつも、あのスマッシュも、俺が倒す」

 

「倒す?その体たらくで?・・・・・・・お生憎様、そんな戦い方で勝てるほど、私たちは弱くないわよ」

 

「ごちゃごちゃうるせぇ、それと気持ち悪いこと言ってんじゃねぇ。俺が万丈と共に歩く道を選んだ?とんだ勘違いだな、そんなつもりはさらさら無い」

 

「・・・・」

 

「確かに俺の日常は変わったさ。有希子と再会し、万丈と出会い・・・・・・だが、それだけじゃない。今俺が、こうしてここに居れるのは、あいつらが・・・・E組のみんなが居たからだ。決して俺一人でこの道を手にしたんじゃない・・・・あいつらが居たからこそ、俺はこの道を歩めているんだ!」

 

『惣一・・・・』

 

「まだあの教室でやるべきことが・・やらなきゃいけないことが大量に残ってるんだ。こんなところでやられるつもりは毛頭無い!!」

 

その宣言と共に惣一が取り出したのは、本来の黒の要素が一切無い紅いビルドドライバー。より正確に表すのならば、ビルドドライバーの原形(・・・・・・・・・・・)となったドライバー。それこそブラッドスタークとは比べ物にならないほどの強大な力をもたらすエボルトのドライバーだ。

 

『エボルドライバー!』

 

普段の変身アイテムであるトランスチームガンとは違うそれを、惣一は腰に充てがう。その瞬間にドライバーより排出されたベルトが自動的に惣一の腰へと巻きつく。

 

続けて取り出したのは2本のボトル。彼らが”エボルボトル”と呼称するフルボトルとは些か異なる形状のそれを、かつて見たビルドのようにドライバーへと装填する。

 

『コブラ!ライダーシステム!エボリューション!!』

 

エボルドライバーのレバーを回すことにより、ビルドドライバーと同様ドライバーから伸びたパイプがエボルの装甲を作り出す。しかし、その姿は靄がかかってはっきりとしない。

 

『Are you Ready?』

 

「・・・変身!」

 

『コブラ!コブラ!エボルコブラ!!フッハッハッハッハ!!』

 

ビルドと似たような変身プロセスにも関わらず、その姿は全く違う。全身には金の派手な装飾が施され、至る所に宇宙を彷彿とさせるような装甲を身に纏っている。

 

「・・その姿は・・・」

 

刹那、カイザーリバースは背後からの攻撃によって飛ばされた。慌てて確認するも、そこに居たのは今さっきまで目前にいたはずの、新たな姿へと変身した惣一。その情報を取り入れた瞬間、再び横からの攻撃を喰らう。反撃の隙が一向に来ない。やられるがままに攻撃を喰らい、ついには宙を舞うカイザーリバース。いつの間にか、戦いの場はE組とシロが対面している場に移されていた。

上空から地面に叩きつけられるカイザーリバース。突然のことにその場にいた全員が驚くが、攻撃の手は緩まれない。

 

『スチームブレイク!コブラ!』

 

ドライバーに装填していたコブラエボルボトルをトランスチームガンに装填、放たれるコブラを模した光弾がカイザーリバースを襲う。

 

「貴様・・・その姿は、まさか・・・・」

 

『エボル・フェーズ1・・・』

 

全員の視線が集中する。見慣れてきたブラッドスタークとは全く異なる姿。人によっては恐怖すら感じるであろうその姿に、視線を外せなくなる。そして、それはシロも同様だ。ブラッドスターク・・・石動惣一はカイザーリバースが抑えた、だから自分は超生物(殺せんせー)の暗殺に集中できるはずだった。クローズはいるが、最悪自分でも対処できる・・・・・。とにかく石動惣一だけでも抑えておくことができたら、目的の半分ほどは達成できるだろう。そう考えていた。

 

しかし、その目論見は大きく外れることとなった。あくまでもブラッドスタークの石動惣一(・・・・・・・・・・・・・)相手なら今のカイザーリバースでも十分に相手取れた。まさか石動惣一があのエボルドライバー・・・・しかもそのオリジナルを用意しているとは夢にも思っていなかったのだ。

 

事実上、仮面ライダーエボルは自分が作ったあらゆるシステムのスペックを凌駕する。トランスチームシステムのブラッドスタークとナイトローグ、ネヴュラスチームシステムのカイザーとカイザーリバース、ライダーシステムのクローズとグリス・・・・そしてビルド、その全てのスペックを大きく上回っている。

 

少なくとも確定なのは、ここで自分がカイザーになっても敵う相手ではないということ。

 

「・・・・ここいらで撤退か・・・・・まさか君がエボルの力を扱えるようになっていたとはね。君に免じて、ここは撤収することにするよ。・・・・・・イトナは君たちにくれてやるよ」

 

そういうと、シロはカイザーリバースを回収、宣言通りイトナを置いてさっさと撤収していった。

 

残されたのはE組生徒一同と殺せんせー、そして弱ったイトナ。エボルはドライバーからボトルを抜き取り、装甲が消え去る。

 

「惣一君・・・」

 

「惣一・・・・さっきのは・・・」

 

「・・・話は後だ、今最優先にしなきゃいけないのはイトナだろう?」

 

((((((いや、そう言われても気になるよ・・・!!))))))

 

しかし、惣一の言い分も最もだ。惣一の話を聞く分には時間制限は一切無いが、イトナを救うにはそこまで時間があるわけではない。どちらを優先するかなど、分かりきっている。

 

「殺せんせー、イトナはどういう状況なんだ?」

 

「ニュウ・・・・・触手は、意思の強さで動かすものです。イトナ君に力や勝利への病的な執着がある限り、触手細胞は強く癒着して離れません。そうこうしているうちに、肉体は強い負荷を受け続けて衰弱していき、最後は触手諸共蒸発して死んでしまう」

 

「それは・・・いくらなんでもかわいそーだな・・・」

 

「イトナはねびゅ・・・ねびゅ・・・えー・・・」

 

「ネビュラガスか?」

 

「そうそれ!そいつを注入しているんだろ?だったら普通の人間より肉体は頑丈じゃねぇのか?」

 

「いや・・・ネビュラガスは人の体に大きな影響を及ぼす。それこそスマッシュのように、場合によっては肉体の細胞を大きく変質させてしまう。そんなネビュラガスが、触手細胞と組み合わされた場合肉体にどんな影響を及ぼすか計り知れない。タイムリミットが長くなるのか・・・・それとも短くなるのか・・・・さっぱり分からない」

 

「でも、今までは大丈夫だったんだよね・・?だったら、そこまで大きな影響は出ないんじゃ・・・」

 

「殺せんせー、なんでイトナは、急にこんなに苦しみ出したんだ?」

 

「私のように全身に触手細胞があるのと違い、イトナ君のように人間の肉体の一部に植えた場合、定期的なメンテが必要のはずです。しかし、それを担っていたのは・・・」

 

「シロの野郎か・・・」

 

「今まではメンテナンスされてたから平気だったかもしれないが、それが出来なくなった今、どうなるかなんて誰にも分からない」

 

「殺せんせーは、そのメンテナンスって出来ないの?」

 

「むむ無理です!!先生はあくまでも全身が触手ってだけでそんなメンテナンスなんて・・!」

 

「あぁうん、分かった分かった」

 

「惣一君はどう?」

 

「ライダーシステムやネビュラガスの方はともかく、触手に関する知識を俺は持ち合わせていない」

 

「んだよ天才って割には大したことないな」

 

「んだとおいこら筋肉バカ」

 

「んだよ」

 

「はいはい、今喧嘩しない」

 

『んで?結局どうすりゃいいんだ?』

 

なんか話が脱線し始めたので、エボルトがほぼ無理矢理路線を元に戻す。こうでもしないと話が進まない。

 

「彼から触手を切り離せば・・・・。しかし、それには彼の力への執着を消さなければいけません。そのためにも、そうなった原因(・・・・・・・)をもっと知らなければ・・・」

 

「原因ねぇ・・・」

 

「本人に聞きゃ良いじゃねぇか」

 

「そう簡単に話すとは思えねぇけどな」

 

『どうする?俺が無理矢理だがこいつの記憶を覗こうか?』

 

「いやいやいや、流石にそれは酷いっしょ」

 

「無理矢理はねぇ・・」

 

今更かもしれないが、流石に勝手に記憶を覗くのは少し非人道的かもしれない。このクラスの中にそれを良しとする人物は一人もいない。

 

「となると・・・」

 

「ねぇちょっといい?」

 

「ん?どうした不破?」

 

「気になってたんだ。どうしてイトナ君は携帯ショップを襲っていたのか。で、さっきまで律と何度かやり取りしてたんだ、機種とか戸籍とか、彼に繋がりそうなものを調べてもらって。そしたら・・・・堀部イトナって、ここの社長の息子だった」

 

律によって、全員の携帯に不破が見ているのと同じ画面が表示される。表示されているのは”堀部電子製作所”。以前は世界的にスマホの電子部品を提供していた小さな町工場だったのだが、一昨年負債を抱えて倒産、社長夫婦は息子を残して雲隠れしたらしい。

 

この情報だけでも、全員がなんとなく想像できた。イトナが力や勝利に固執する理由が。

 

「け、つまんねー。それでグレたってだけの話か」

 

「寺坂!!」

 

「皆それぞれ悩みはあんだよ。重い軽いはあんだろーがよ。でもよ、悩みとか苦労とか・・・案外どーでもよくなったりすんだわ」

 

寺坂はそういうと、イトナの襟首をつかみ上げる。

 

「俺らんとこでこいつの面倒見させろや。それで死んだら、そこまでだろ」

 

イトナを救うため、寺坂組が動き出した。



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第66話 消える力、得る力

惣「イトナを連れ去ったシロを追跡した俺とエボルトだったが、その前にカイザーリバースが立ち塞がった」

エ『ブラッドスタークとなりカイザーリバースの呼んだスマッシュとの戦闘を繰り広げた惣一だったが、精神を揺さぶられ何も出来なくなってしまった。・・・・・ったく、情けねぇな』

惣「仕方ねぇだろ、色々と思うところがあったんだから」

万「それよりも何だよあのエボルとかいうの!強すぎだろ!!」

エ『お、やっぱそう思うか?いや〜、やっぱいいねぇ、エボルは!!』

惣「自画自賛か?そもそも戦ってるのは俺だ!」

有「ねぇ、それよりもあのカイザーリバースっていう人・・・・・なんかおかしくない?」

万「え?そうか?特に何も思わなかったけど・・・」

惣「お前はバカだからな」

万「あ?」

惣「あ?」

有「二人とも、いい加減にして」

エ『喧嘩してる二人は放っておいて、イトナ救出の最新話をどうぞ!!』


イトナを救うために動き出した寺坂組の4人。しかし、とうの言い出しっぺである寺坂は完全に見切り発射だったようで、いきなり躓き出すところから始まった。

 

『おい・・・大丈夫か、あいつら?』

 

「任せるしかないだろ・・・・念のためイトナのライダーシステムは俺が預かってるし、対殺せんせー用のネットを加工したバンダナを付けてるから、大丈夫だろうけど・・・」

 

「いやいや、あんなの気休め程度だから!また発作が出て暴走したら、あんなんじゃ止められねーよ」

 

「とにかく、今は様子を見守るしか無いってことか・・・・」

 

ひとまず今は寺坂組の4人に任せるしかない。いざとなればすぐに駆けつけられる位置から見守りつつ、四人が村松の実家であるラーメン屋に入っていくのを確認する。

 

『おぉ、ラーメンか。そういやここ最近は食べてないな。おい惣一、今度ラーメン食いにいくぞ』

 

「・・・前から思ってたけどさ、エボルトってなんでラーメンは平気でパスタはダメなんだ?あれか、スープがないとダメとか?」

 

『んなの今はどうでもいいだろ、ほら、見てみろあのラーメンを。美味そうだろ?』

 

こいつ、はぐらかしやがった。まるで意識をラーメンに持っていこうとしているかのように、エボルトはイトナの前に置かれたラーメンを見るようにする。あ、因みに中を覗いたりしてたらあの四人に任せた意味が何もなくなるので、今はテレビフルボトルを使って中継映像を見ている。

 

「不味い」

 

次の瞬間、俺たちの耳に届いたのはイトナのその一言だった。あ、エボルトが固まった。

 

イトナ曰く、村松の家のラーメンは”一昔前の昭和のラーメン”とのこと。・・・・・なるほど、確かに今の俺たちはあまり好まないラーメンかもな。

 

しかし、不味くても取り敢えず腹を膨らますことには成功したらしい。そうしてやって来たのは吉田の家。そこに隣接しているバイクのサーキットコースだ。イトナを後ろに乗せ、吉田がバイクを爆走させる。

 

「いいの?中学生が無免で」

 

「まぁ、吉田ん家だし・・・・」

 

「そういえば、バイクって惣一も持ってるよな?お前もその・・免許?ってどうしてんだ?」

 

「・・・・・まぁ、知らない方がいいことって、あるよな」

 

「いや、どういう意味だよ!?」

 

そのまんまだ。そもそも確かにバイクは持っているが、そこまで多用はしていない。トランスチームガンの転移機能の方が便利だし早いからな。逆に少し時間を稼ぎたかったらバイクを使うけど。

 

そんなことを話していると、バイクだけじゃなく調子にも乗った吉田がドリフトをかまし、その遠心力によってイトナが吹っ飛んでしまった。あ、植木に頭から突っ込んだ。

 

「おいばか!早く助けだせ!これで暴走したらどうすんだ!?」

 

「いやいや、このぐらいじゃ大丈夫じゃね?」

 

とはいえ、万が一暴走したら吉田ん家は被害を免れないだろうな。慌ててイトナを助け出したが、むしろ放心状態で暴走の心配はなさそうだ。

 

『・・・なんだかんだ、案外あいつらと相性はいいのかもな』

 

「そうか?ただ馬鹿騒ぎしてるだけに見えるけど」

 

『だから良いんだろ、あいつには小難しいことを考えるんじゃなくて、ああやって馬鹿騒ぎした方が精神的に大事だってことだ』

 

そんなもんか・・・?あいにく俺にその考えはよく分からないからなぁ。

 

「まぁ、ちょっと馬鹿騒ぎしすぎなような気もするけど・・・・」

 

「あ、でも狭間さんなら頭もいいですし!」

 

とこちら側では期待値が上がってしまった狭間だが、当の本人は一体いつから持っていたのかある本をイトナに手渡した。

 

「復讐したいでしょ?シロの奴に・・・・・・名作復讐小説、モンテ・クリスト伯!全2500ページ・・・・・これを読んで暗い感情を増幅させなさい。最後は復讐止めるから、読まなくていいわ」

 

「難しいわ!!」

 

俺ほどではないにせよ、確かに狭間は頭は良い方のはずだ。しかし、少し暗い。しかも狭間はそれを嬉々として受け入れているから、それが変わることはないだろう。

 

「何よ、心の闇は大事にしなきゃ」

 

「狭間、お前は暗い上に小難しいんだよ!こいつ、見るからに頭悪そうじゃ・・・」

 

なんて寺坂と狭間が言い合っている中で、何やら様子がおかしくなるイトナ。次第に体を増えさせ、呼吸も荒い。

 

「やべ・・・なんか震えてね?」

 

「そりゃあ、寺坂にバカなんて言われたら怒りたくもなるだろ」

 

「いや、違う・・・・・触手が暴走し始めてる!」

 

何がきっかけか、イトナの触手が再び暴走を始めてしまう。・・・・・・・いや、どう考えてもきっかけは狭間の言葉だろうけど。しかし不味いな、いくらライダーシステムやフルボトルは俺が持っているとはいえ、触手だけでも生身には危険すぎる。

 

『どうする、介入するか?』

 

「いやするべきだろ!!このままじゃ携帯ショップの二の舞だぞ!!」

 

「万丈、お前二の舞なんて言葉知ってたのか?」

 

「いやバカにしすぎだ!!」

 

「二人とも、今はそんなこと言ってる場合じゃないよ!!」

 

と、怒られてしまった。しかし、どうするべきか。介入することは容易いが、かといって暴走を絶対に止められる訳じゃない。ただ介入するだけでは意味がないからな・・・・・。

 

どうするべきか迷っていると、何を思ったのか寺坂は立ち止まり、あろうことか触手を暴走させるイトナの前に立ち塞がった。あいつ、何を考えてんだ・・?

 

「おいイトナ、俺も考えたよ・・・あんな教師、今日にでも殺してぇって・・・・・けど、テメェに今すぐあいつを殺すなんて無理なんだよ。無理なヴィジョンなんて捨てちまいな!楽になるぜ?」

 

「うるさい!!」

 

「っ!!」

 

寺坂は予想外の行動に出た。まさかイトナを煽ったと思ったら、自身に向かってきた触手を掴み取るなんて。あぁでも、前に一回やらせたか。あん時は寺坂スマッシュになってたけど。

 

「へへ、前より弱ってる分、スマッシュにならなくても余裕で止められるわ!吐きそうな位いてぇけどな!」

 

むしろ、吐きそうな位程度で済んでるだけかなりマシだろう。場合によって吹っ飛ばされたり、最悪死んでいてもおかしくない。触手を真正面から掴みかかるなんて、それと同等だ。

 

「吐きそうといや、村松ん家のラーメン思い出したわ」

 

「あぁ!?」

 

『え、そのレベルで不味いの?あのラーメン・・・』

 

エボルト、ちょっと黙れ。

 

「あいつは、あのタコから経営の勉強勧められてんだ。今は不味いラーメンでいい・・・・いつか店を継ぐ時が来たら新しい味と経営手腕で店を繁盛させてやれってよ。吉田も同じこと言われてた、いつか役に立つかもしれないって・・・・・なぁイトナ!」

 

イトナの頭に拳を振りかざす。しかし、イトナの触手が動く気配はない。寺坂の言葉が、イトナの心に変化をもたらしかけているのだろう。

 

「一度や二度負けたぐらいでグレてんじゃねぇ!いつか勝てりゃいいじゃねぇか!!あのタコ殺すにしたってなぁ、いや殺れなくったっていい、100回失敗したっていい!三月までにたった一回殺せりゃ、それだけで俺たちの勝ちよ!!親の工場なんざ、そん時の賞金で買い戻しゃ済むだろうが!そしたら親も戻ってくる!!」

 

「・・・・・耐えられない・・・・・次のヴィジョンが見つかるまで、俺は何をして過ごせばいい・・・!」

 

「あぁ?今日みたいに馬鹿やればいいんだよ!そのために俺らがいるんだろうが!!」

 

はっきり言って、寺坂は馬鹿だ。おそらく万丈にも引けを取らないだろう。おそらく今の言葉も、わざわざ考えていたわけじゃない。でも、だからこそ、心に響く言葉を言ってくれる。

 

「万丈もあれぐらい心に響く言葉を言ってくれりゃあな」

 

「おい、それどういう意味だよ」

 

「はいはい、二人はいちいち喧嘩しないで」

 

いや別に喧嘩しているつもりはないんだけど・・・・。まぁ、さすがに今は場にそぐわないのは確かだな。イトナの方を見てみると、先ほど暴れ回っていたのが嘘のように力を失っていく触手の姿が。

 

「目から執着の色が消えましたね、イトナ君。今なら君を苦しめる触手細胞を取り除けます。一つの大きな力を失う代わりに、君は多くの仲間を得る。殺しに来てくれますね?明日から!」

 

イトナにとって、触手がどんなものだったのかは俺たちには分からない。しかし、あいつにはもう不要な力なのだろう。それはあいつの目を見れば明らかだ。

 

「・・・勝手にしろ。この力も、兄弟設定も、もう飽きた・・・」

 

こうして、二人目の転校生であるイトナは、無事にE組の仲間入りを果たしたのだ。

 

 

 

・・・・因みに補足しておくと、寺坂組だ。

 

 

 

 

 

 

 



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第67話 賭ける思い

惣「寺坂組の活躍により、無事に触手を抜くことができたイトナはE組への仲間入りを果たした」

万「なんだってあんなに力に執着してたんだろうな?確かに力はあったほうがいいと思うけど」

惣「色々と事情ってもんがあるだろ。とりあえずお前は筋トレやめろ」

エ『しかし、仲間になったとはいえ今までは敵のようなもんだったんだぞ?いくらE組の連中だからって、馴染めるのか?』

惣「それは・・・・・・・今回の話で確認してくれ!!」




惣一side

 

 

nascitaの地下に存在する研究所、俺はそこで有希子と万丈の二人に問い詰められていた。

 

「・・・・・・」

 

「おい、あのエボルとかいうの、なんなんだよ!!」

 

「お願い惣一君、ちゃんと説明して」

 

俺は手元ではイトナの持っていたライダーシステム、”スクラッシュドライバー”の解析を進めていた。イトナが仲間に加わった以上必要はないかもしれないが・・・・もしもの時のためだ。

 

「おい惣一!!」

 

『ちょっと落ち着けよ、万丈。何も説明をしないっていってるわけじゃない。というよりも、エボルに関しては惣一よりも俺の方が詳しいんだ』

 

「エボルトさんの方が?」

 

『あぁ。簡潔に言えば、エボルは惣一が開発したものじゃない。元々俺が持っていた力だ』

 

そう。仮面ライダーエボルは元々エボルトが所持していた力。今現在地球上に存在するライダーシステム、その源とも言える力だ。そのため、エボルに関しては俺よりもエボルトに任せた方がいいと考え、説明はエボルトに一任。その間に俺はスクラッシュシステムの解析を進める。

 

『この地球に来た際にエボルドライバーが故障してしまってな・・・・・お陰で俺は自分の肉体を保つことが出来ずに、近くにいた惣一の体の中に潜り込んだ。エボルドライバーはしばらく使えない状態になっていたんだが、この間惣一がそれを修復、ようやっとフェーズ1に変身することが出来たってわけだ』

 

「はぁ〜・・・?」

 

「フェーズ1・・・・ということは、あの姿にはまだ上があるの?」

 

『当然だ、フェーズ1は俺の力を約2%しか引き出すことが出来ない。俺の力を完全に取り戻すには・・・・まだまだ時間が必要だし、大事なアイテムを取り戻す必要がある』

 

「大事なアイテム?」

 

『・・・まぁ、それは今はいい。手元にない以上、存在しないも同然だからな。とにかく、エボルの力はそういうわけだ。形がビルドドライバーと同じなのは、あっちがエボルドライバーを元に作り出されたからだろうな・・・・・・・おい万丈、話を聞け、筋トレすんな』

 

スクラッシュドライバーの解析を終わらせた俺は、それを元に設計図を作成する。とはいえ、こいつを使うにはこれに反応するボトルが必要らしいが・・・・手元にあるか?場合によっては別の方法を模索しなければな。

 

「つまりエボルの力は、惣一君が作ったものじゃなくてエボルトさんが持っていた力・・・元々故障したものを修復したけど、今のままではエボルトさんの力の2%ほどしか引き出せない・・・っていうこと?」

 

『おぉ、まぁざっとそんなところだ。仲間に加わったグリスはともかく、相手にはスマッシュにビルド、二体のカイザーが存在しているからな。ちょっとトランスチームシステムじゃキツイと判断したんだ』

 

「いや俺がいるだろ」

 

『なおさら不安だよ』

 

「あぁ?」

 

なぜか喧嘩腰のエボルトと万丈。なるほど、側から見れば普段の俺と万丈はこんな感じなのか。覚えておこう。

 

「エボルトさんの本来の力って・・・・それって、惣一君が使っても大丈夫なの?」

 

「ん?あぁ、俺は大丈夫だよ。エボルの装甲の能力でむしろブラッドスタークの時より安全だ」

 

「・・・・なら、いいけど・・・・・」

 

「・・・とにかく、エボルの話は以上だろう。学校行くぞ。こいつも、イトナに返さないとだしな」

 

すでに解析が終了したスクラッシュドライバーを鞄に詰め込み、立ち上がる。しかし、イトナの奴はちゃんと学校に来るのか?

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

どうやら心配は不要だったようで、イトナは朝から学校に来ていた。とはいっても真面目に授業を受けている、というわけでは無さそうだが。あ、それは俺も同じか。

 

『おぉ、自覚していたのか』

 

うるせぇぞエボルト。まぁとにかく、スクラッシュドライバーは放課後にでも返すか。それまで俺は寝てる。おやすみ〜。

 

『自覚はしてても変化はしないわけだな・・・』

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

というわけで放課後、一日の授業を無事にこなし・・・・『お前は寝てるだけだったろうが』・・・黙れ。スクラッシュドライバーを返そうとイトナの机に向かうと、イトナは何やら熱心に機械部品を弄っていた。

 

「イトナくん、何してるの?」

 

「昨日一日あのタコに勉強させられた。ムカついたからこれで殺す」

 

どうやらそれは戦車のオモチャ・・・・のようなものと捉えてもいいだろうか。しかしオモチャにしてはかなりの高性能と言える代物であった。リモコンでの操作式、カメラを搭載することで遠隔での操作を可能とし、なおかつ砲台部位から対殺せんせー弾を発射可能。確かに理論上は製造可能だろうし、ある程度の知識があれば製造出来るだろう。しかし、まさかイトナがそれを出来るとは思ってもみなかった。まぁ実家が携帯工場って話だったし、機械工作の知識はそこで得たのだろう。え?俺?あの程度であればちょちょいのちょいで再現可能よ。

 

しかし、他の男子はそういうわけでもない。普段俺は家の研究所で機械工作を行なっているから、実際にあのような光景を見ることは初めての奴が多いんだろう。見る見る内にイトナの周りには男子が群がり始めた。

 

「つってもイトナ、これで殺せんせーのどこを狙うんだ」

 

「お前たちに一つ教えてやる。シロが言っていた奴の最大の弱点・・・・・場所はネクタイの真下、そこに奴の心臓がある」

 

心臓。地球上の生物であればそのほとんどが所持している弱点。今までの生活の中では全く知り得なかったが、イトナが加わったことによって俺たちは新たな情報を得ることができた。

 

『あのタコには心臓があるのか。なるほど・・・・』

 

しかし、あそこまで盛り上がっていると返そうにも返せないな。まぁ、しばらくスクラッシュドライバーを使うこともないだろうし、また明日にするか。

 

 

 

惣一side out

 

・・・・・・・・・・・・・

 

万丈side

 

 

 

こうして話すのはなんか久しぶりだな!俺は今、教室でイトナが戦車を作っている光景を眺めている最中だ。普段あんなことを惣一は毎日やっているけど、やっぱり何やってんのかはさっぱり分かんねぇ!とにかくすげぇってことは分かるぜ!!あれ、惣一どこ行った?

 

「よし、出来た。まずは試運転だ」

 

とか言っているうちに完成したらしい。イトナは戦車を床に置くと、リモコンを操作してそれを動かす。お、画面が映った。

 

試しに前後、右曲がり、左曲がりと試していき、動かすのには何も問題無さそうなのを確認する。惣一ってこういうこと何もやってなくねぇか?イトナはちゃんとやってんのに。大丈夫か、あいつ?しょうがねえ、後であいつに教えてやるか!!

 

と、そうこうしているうちにイトナの戦車・・・・え〜・・・名前なんだろう?まぁいっか、それは教室を飛び出していく。向かう先は当然職員室!これで殺せんせーを暗殺だ!!・・・・・しようとした手前で、戦車は止まる。職員室の扉が開いて、そこから数人の女子が出てきた。聞こえる声的に、なんかビッチ先生と話してたらしい。女子達は足元の戦車には気づかず、そのまま下駄箱の方に向かう。

 

「・・・・・おい、今の見えたか?」

 

「いや見えなかった・・・・・視野が狭すぎるんだ!」

 

「カメラもっと大きくできないのか!!」

 

「重量が嵩む。機動力が落ちて標的の補足が難しくなる」

 

「なら・・・・カメラを魚眼レンズにしてみればどうだろうか?」

 

「「「竹林!!」」」

 

お?お?お?なんだこのノリ?

 

「送られた画像をCPUを通して歪み補正すれば広い視野を確保することが出来る・・・・律!」

 

「はい!」

 

「魚眼レンズの歪み補正プログラムを組むことは可能か?」

 

「はい!用途は分かりませんが・・・・お任せください!」

 

「よし、軽量系の魚眼レンズだな!俺が調達しよう!」

 

え〜と・・・・カメラ担当は岡島、と。

 

「録画機能も必要だな」

 

「あぁ、効率的な改良の分析には必要不可欠だ」

 

なんか段々と暗殺が関係なくなってきたような・・・・・あれ?そんなことはないのか?んん?

 

「よっしゃ!それじゃあ今度は外に出ようぜ!行け!!えっと・・・・・試作品0号機!!」

 

あんまり理解できないまま戦車は再び動き出し、外へと向かう。そして動画が反転した。なんかでひっくり返ったのか?

 

「「「「「あ」」」」」

 

「復帰させてくる」

 

走り出す木村。

 

「段差に強い足回りも必要じゃないか?」

 

「よし、俺が開発する。駆動系や金属加工には覚えがある」

 

なんかやる気に満ちている吉田。

 

「車体が薄いカーキなのも目立ちすぎるな」

 

「これは戦場迷彩だから、学校の景色に紛れないとターゲットに気づかれるぞ」

 

「引き受けた。学校迷彩・・・・・俺が塗ろう」

 

どっかから取り出した筆とかを掲げる菅谷。あぁ、こいつ美術が得意なんだっけ・・・?

 

「ラジコンは人間とはサイズが違う。快適に走れるように・・・俺が地図を作ろう」

 

やる気に満ちた人二人目、前原。

 

「みんな・・・・エロの事になると我を失うな」

 

「本当にゲスいね・・・」

 

ん〜と・・・・なんかよく分からないけど、楽しそうだしいっか!

 

 



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第68話 男子たちの戦い

惣「イトナが無事にE組に加入したが、その心は盛大に荒れていた。言わずもがな、殺せんせーの個別授業が原因だった」

エ『それにムカついたイトナが殺せんせー暗殺用の戦車を作っていたところに、他の男子共が群がり始めたと・・・・途中からいなかったが、どうだったんだ万丈?』

万「どうって言われても・・・・別に普通だったぜ?イトナが戦車作って、他の男子共が楽しそうに群がって、試運転してたら戦車の目の前を女子が通ったくらいか?」

惣「あぁ、それで暗殺よりも下心が表に出てしまったと・・・」

エ『そんな下心満載となってしまった男子共にイトナは馴染めるのか、しっかり続きを見てくれ!』

惣「いや、でもあいつも結構エロい奴だった気が・・・・」


惣一side

 

 

「・・・・・っていうことがあってよ、なんか皆すげ〜張り切ってたぜ」

 

「・・・・・・・は?」

 

万丈の話を聞いて、思わず掴んでいたおかずを落としてしまう。勿体無い・・・・・って違うそうじゃない!

 

「お前ら何やってんだよ!!」

 

「何って・・・・殺せんせーの暗殺じゃねぇの?なんか途中から話についていけなくなったけど」

 

「あぁお前は馬鹿だからそういう下心はねぇんだな・・・」

 

「下心?なんだそれ?」

 

「なんでもない」

 

おかしい・・・・俺が見ていた時はマジで殺せんせー暗殺のための戦車を作っていたはずだ。周りの連中もそれを理解した上で群がっていたと俺は認識している・・・。何がどうなってそんな下心満載の結論へと至ったんだ・・・?

 

『んなの原因は分かりきってるだろ』

 

言うな、現実逃避してるんだから。

 

『にしても、また面白い連中だなぁ、あいつらは!!話を聞く限りじゃ、お前一人で出来ることをあいつらは手を取り合ってやっている感じだぞ!』

 

まぁ、確かにそこには驚かされた。まさかイトナが加わることで、俺に匹敵・・・・とまでは行かなくともある程度までのレベルの発明を行うことが出来るようなになるとはな。

 

「本当、イトナはイトナで予想外だよ・・・」

 

「んで、それで明日は朝早くに集合だとよ。女子には勘付かれないようにって言ってたけど・・・よく分かんねぇし、とりあえず行こうぜ」

 

「・・・・いや、俺はパス。お前一人で行け」

 

「なんでだよ?」

 

なんでだよって言われても・・・・どうにも嫌な予感がするんだよなぁ。まぁ、まだ微笑ましい程度だが。

 

とにかく、自らの保身のためだ。俺は明日は遅く登校することにしよう。え、万丈?知らん。勝手に名誉でもなんでも傷つけとけばいいんだ。

 

 

 

惣一side out

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

万丈side

 

 

 

 

俺は昨日言われた通りに朝早くにE組校舎へと来ていた。すでに何人かの姿も見えているが、なんか表情がやたら険しい。なんで惣一の奴来なかったんだ?こういうこと発明とか好きそうなのに。

 

「皆、飯持ってきたぞ」

 

そう言って教室に入ってきたのは村松。ん〜・・・・でもあいつの料理は不味いって、この間イトナが言ってなかったか?

 

 

 

 

<一方その頃・・・・・・>

 

 

「ぶぅぅううう!?ゲホっ、ゲホっ・・・・・エボルト、テメェ!!また勝手にコーヒー淹れたな!?」

 

『あぁ勿体ない!?』

 

「テメェがコーヒー淹れるせいで消費される豆の方が勿体ないわ!!」

 

 

<そんなやりとりがあったとかなかったとか・・・・>

 

 

 

 

「学校迷彩、こんな感じでどうだ?」

 

昨日とはだいぶ印象が変わった戦車を持ってきた菅谷。おぉ、一夜でこんなに・・。

 

「分かっているのか皆、これは暗殺のためのプランなんだからな」

 

「分かってる分かってる!よっしゃ、女子が来る前にテスト走行だ!!」

 

なんで女子が来る前なんだ?その理由は分からないが、早速戦車を動かすための準備を始める。

 

「こういう時は誰も遅刻しないんだね・・・・」

 

「なぁ渚、何で女子が来る前に何だ?」

 

「え?」

 

「え?」

 

なんか驚かれた。何でだよ・・・・俺別に変なこと言ってないだろ・・・・。

 

「律が起動するのは8時ちょうど・・・・できれば彼女を傷つけたくない」

 

「あ、うん・・」

 

というわけで出発した戦車は、校舎を出て裏山へと向かった。最初は何も問題もなく、山道を進んでいく様子が映像に映る。

 

「あーバカ!!」

 

「慎重に進まないと、また転ぶぞ!」

 

「下手くそ、俺がやる!!」

 

和気藹々、っていうんだっけ。クラスの男子はかなり楽しそうで、その中心にいるイトナはそこまで表情は変わっていないように見えるけど、それでもどこか明るい気がする。

 

「イトナ、これだけ皆で改良したんだ。開発ネームでもつけたらどうだ?」

 

「・・・・・・考えておく」

 

さて、運転はイトナと変わって寺坂。戦車は先ほどと違って岩にぶつかっている。

 

「寺坂全然下手じゃん!!」

 

「んだと!?おいイトナ!調整が甘いんじゃないか!?」

 

「あ、おい、寺坂前!!」

 

「え?」

 

戦車より送られてくる映像が突然暗くなる。映像が途切れた訳ではなさそうだ、暗くなった原因、巨大な影は戦車を見下ろす。

 

「「「「「ば、化け物だーーーーーーーー!!!!?」」」」」

 

いや、お前らもっと化け物見たことあるだろ。そんなことを思ったけど、まぁいいや。

 

「逃げろ!?」

 

「いや撃て!!!」

 

「主砲の威力がまるで足りてねぇ!?」

 

「ここも要改造だ!!」

 

「「「「「「「わぁああああああ!!!!!?」」」」」」

 

 

 

万丈side out

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

惣一side

 

 

 

「おはよ〜・・・・・・どうした?」

 

「お、惣一やっと来たか」

 

万丈とはだいぶ遅れて学校に到着、教室に入ってみると、何かイトナの机の周りの男どもが集結している。試しに覗き込んでみると、何とも言えない具合に壊された戦車の姿が。

 

「どうしてこうなったんだ?」

 

「いや〜、それが化け物が現れてさぁ・・・」

 

『化け物?スマッシュでも出たんか?』

 

いや、仮にスマッシュだったら原型止まりすぎだろ、この戦車。大方、裏山に住んでる野生動物が映像だと化け物に見えたことだろ。

 

「くっそ・・・・まさかイタチにやられるとは」

 

あ、イタチだったんだ。まぁイタチだったら確かにこの裏山に生息しているか。

 

「次からはドライバーとガンナーを分担するぞ・・・・・射撃は頼んだぞ、千葉!!」

 

「え?あ、おう・・・」

 

「嫌なら断っていいんだぞ、千葉」

 

にしても、こいつら全く懲りてねぇな・・・・・・あ、女子達が来始めたか。そんなことを外を見ながら思っていると、イトナはバラバラになった戦車の胴体部位に大きな×印をつけた。

 

「開発にミスは付き物・・・・イトナ1号は失敗だ。だが、ここから紡いで強くする・・・・・・100回失敗してでもいい、最後には必ず殺す。よろしくな、お前ら」

 

・・・・・どうやらこの一晩で、イトナは十分クラスに馴染めたらしい。相変わらず無愛想ではあるが、ガッツリと男子共の心を掴んでいるようだ。

 

「よ〜し、3月までにこいつで女子全員のスカートの中を偵察するぜ!!」

 

やっぱ目的はそれか。万丈の話を聞いた時からそんな気はしてたんだよな・・・・・。まぁ、もう俺がとやかくいう必要はなさそうだ。

 

「スカートの中が何ですって?」

 

「へ?・・・・・か、片岡〜!!?」

 

『馬鹿だなあいつ・・・・女子が来てる気配ぐらいしてただろうに』

 

まぁ、岡島だし・・・・・・・。

 

「いや、何でもない!!これは・・・・・・そう、カースト制度の話をしてたんだ!!」

 

「いや、どうせ覗き目的だったんだろ?」

 

「い、石動!!」

 

「「「「「男子最低・・・」」」」」

 

次々と教室へと入ってくる女子達。岡島とか前原がなんか睨みつけてるけど、知ったことじゃない。

 

「誰が言い出しっぺ!?・・・・まさか、イトナくん!?」

 

「岡島」

 

「おぃい!!」

 

イトナの奴、速攻で岡島を売ったな。まぁ、元々暗殺用に作ってたんだし、実際に覗きを言い出したのは岡島だろうしな。

 

「おはようございます!あ、岡島さん!魚眼レンズで撮影した映像の補正プログラム、お渡しできますよ!」

 

「律、それ削除しちゃっていいぞ」

 

「え?しかし・・・・」

 

「大丈夫大丈夫、あいつに渡したところでもう使う機会はなさそうだしな」

 

「そうですか?」

 

にしても、魚眼レンズの補正プログラムか・・・・・確かにカメラの視野角を広く確保するには最適な方法だな。あるいは、何か別の用途で使える時が来るかもな。・・・・・・・・エロ目的以外で。

 

「何何どうしたの?」

 

「ようカルマ」

 

「ちょっと痴情のもつれが・・・」

 

「赤羽、石動、俺は今日サボる。いい場所を教えろ」

 

「お、話せるじゃん!いいよ、ついてきな」

 

「あ、俺も行く」

 

ついでにスクラッシュドライバーも返すか。後ろから聞こえてくる岡島やら前原やらの叫びを無視しながら、俺はカルマとイトナの後を追いかけていった。

 

 

 

 



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第69話 万丈のデート(?)

惣「個別授業にむかついた。そんな動機から始まったイトナの暗殺計画だったが、その内容は見事なまでに男どもの心を鷲掴みにした」

エ『そのおかげでイトナは無事にE組に馴染めたようだったな。良かった良かった・・・・・そんで、今回は万丈がデートをすると・・・・え、デート?』

惣「は?」

万「ん?どうかしたか?」

惣「嘘だろ・・・・・万丈にそんな浮ついた話あったのかよ・・・急過ぎだろ」

万「いやいや、デートでもなんでもねぇって。ただ買い物に付き合うだけだっての」

エ『因みにお相手は?どこの誰だ?』

万「ユイは確か・・・D組だったぞ」

惣「嘘だろ!?この単細胞でプロテイン大好きな筋肉馬鹿と、本校舎の生徒が関わってるだと!?」

エ『こうしちゃいられねぇ!!惣一、さっさとあらすじ終えて本編行くぞ!!』

惣「おう!」

万「急にどうしたんだよ・・・・」



惣一side

 

 

 

時刻は真夜中、俺は机の灯りだけをつけて手元を動かしていた。目の前のパソコン上に映るのはイトナのスクラッシュドライバーから得たデータ、それを元に描いた設計図だ。

 

「・・・・・後は、ここを・・・・・・よし、出来た」

 

動かしていた手を止め、一息つく。

 

『お、出来たのか?』

 

「あぁ、新しいスクラッシュドライバーだ」

 

『お疲れさん、しかし、問題はこの後だろう?このドライバーに反応するボトルが果たしてあるのか・・・・』

 

「まぁ、それを一つずつ試していくさ。まずはコブラから・・・・」

 

スクラッシュドライバーが完成しても、やる事が全て終わった訳ではない。俺はボトルを一本一本ドライバーに近づけ、反応を確かめていく。どうやら、寝るにはまだ時間がかかりそうだ・・・・・・。

 

 

 

 

惣一side out

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

万丈side

 

 

 

「おはよう、万丈君」

 

「お、有希子!おはよう!」

 

朝、いつものように朝食を食べていると、有希子が入ってくる。まぁ、有希子が来るのはいつものことだしな。学校があろうとなかろうと、有希子がここに来ることは変わらない。

 

「惣一君は?」

 

「それがよ、惣一の奴、何か作ってる最中に寝落ちしちまったらしいんだよ。今も机で寝てるぜ」

 

一旦朝食を置き、有希子と一緒に地下室へと入る。そこには机に顔を埋めた惣一が眠っている。その姿はさっきまでと何も変わっていない。

 

「普段はこういうときってエボルトさんが勝手に体を動かしてるけど・・・・」

 

「今日はその様子もないんだよ。一体何を作ってたんだか・・・・・ん?」

 

「それって・・・イトナくんが持っていたスクラッシュドライバーじゃ・・・・」

 

「これを作ってたのか?」

 

机の上に置いてあったのはイトナが使っていたドライバーと、ボトルとは違う、表面にドラゴンが書かれた何か。

 

「んだこれ?」

 

「それ、イトナくんが変身する時に使ってたものに似てる」

 

「ん?そうだっけ?」

 

そういやなんか似たようなの使ってたような・・・・・・正直一回しか見たことがないし、あんま記憶に残ってないんだよなぁ・・・・。

 

「てか、ドラゴンってことは、これ俺のか!」

 

「え?いや、それは・・・どうだろう・・・」

 

「よっしゃ!!後で早速試すか!!・・・・・・・って、あ〜〜〜!!」

 

「ど、どうしたの?」

 

「ヤベェもう時間だ!!ちょっと俺は行ってくる!!」

 

「え?え?」

 

気づいたら時間は9時半を回っていた。やばいやばい、10時に駅集合って言われてたんだった。急がないと!!

 

「い・・・・いってらっしゃい・・・・?」

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

全力で走り続け、何とか俺は10時直前に駅に到着することが出来た。疲れた・・・・・これだったら惣一からバイク借りてくりゃ良かったぜ。

 

「え〜と、あいつは・・・・・・」

 

「龍我、遅い!!」

 

「いって!?」

 

きょろきょろと見回していると、後ろから思いっきり頭を叩かれる。いや、本当にいてぇんだけど!?

 

「何すんだよ、ユイ!?」

 

「あんたが来るのが遅いのが悪い!」

 

「遅いって、時間には間に合ってるだろ!!」

 

「男なんだから私が来る30分前から待ってなさいよ!」

 

「はぁ!?理不尽だろそれ!!」

 

さっきから俺と言い合ってるこいつは『間中ユイ』。椚ヶ丘の3年D組の生徒だ。俺が学校に通い始めた当初、最初はD組に通う予定だったんだが、初日に問題を起こしてE組に行くことになった。まぁ俺的にはそれで良かったんだが、その時にちょっとだけD組に居たからな、こいつとはそこで会ったんだ。

 

俺はすぐにE組に落ちたからD組の奴らと関わることはあまりないと思っていたんだけど、どういうわけかこいつとはE組に落ちてからも何回か会うことになった。なんでかって?さぁ、それは俺にも分からない。とにかくこいつが声をかけてくるんだ。

 

「全く・・・・まぁいいわ、行きましょう」

 

「そういやどこに行くんだ?何も聞かされてねぇけど」

 

「とにかくついてきなさい!!」

 

「っておい待てよ!!」

 

結局どこに行くのか何も知らないまま、俺はついていくしかない。まぁ、どーせ荷物持ちとかだろうけどさ。それだったら筋トレにちょうどいいか。

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

案の定俺に待っていたのは荷物持ちとしての役割だった。それ自体ははっきり言って予想していたし、俺としてもありがたい限りだからいいんだが・・・・持たされているものは少々予想外だった。

 

「これって食材じゃねぇのか?」

 

「何よ、悪い?」

 

「いや、そういうわけじゃねぇけど・・・・普通もっと服とか靴とか、そういうもんじゃねぇのか?」

 

たまにクラスの女子達が雑誌を見てビッチ先生と話たりしてるのを聞いたことがある。結構あれが可愛いこれが可愛いとか、これ動きやすそうとかこれ景色に紛れられそうとかこれ殺せんせー釣れそうとか・・・・・・・ん?途中から暗殺の話題に変わってないか?一体どんな雑誌だったんだろ・・・・。とにかく、てっきり持たされるのはそう言った服とかだと思ってたんだけど、そういったものははっきり言って全く無かった。

 

「仕方ないじゃない、そういったものに感けている暇がないんだもの」

 

「・・・・・あぁ、本校舎は大変だな」

 

「ううん、そうじゃないの。勿論それもあるけど、私、弟が二人いてね。親は働きに出てるから、私が世話をしないといけないのよ。そうなると、そっちに時間を裂かなくちゃいけなくて、服とか、そっち系統に感けている時間は全く無いのよ」

 

・・・・・・・なるほど、要は磯貝のような感じか。あいつも兄妹の世話をしてるって言ってたよな〜。

 

「昔はもうちょっと時間もあって、友達と趣味の話だったりしてたけど、いつしかそれも出来なくなっちゃって・・・・・」

 

「ふ〜ん・・・・・なぁ、お前の趣味ってなんだ?」

 

「へ?何でよ?」

 

「俺に何が出来るかは分かんねぇけどよ、折角休みなんだし、今日は楽しもうぜ」

 

「龍我・・・・・」

 

「そんでお前の趣味って?それ関連の店にでも行こうぜ」

 

「おやおや、そこにいるのは間中さんじゃないか?」

 

荷物を抱えて早速ユイが好きそうな店を聞いてそこに行こうと思ったところで、何かどこかで聞いたことがあるようなないような声が聞こえてくる。明らかにユイにかけられているその声の主は、え〜と・・・・・・。

 

「ん?おいおい・・・何でE組の奴がいるんだぁ?」

 

俺のこと見てE組って言うってことは、椚ヶ丘の奴ってことだよな。この顔どこで見たんだか・・・・・。

 

「こ、これは・・・・その・・・・」

 

「そんなE組のクズ野郎は放っておいてさ、ちょっと俺と遊ぼうぜ?」

 

「ちょ、離して!」

 

「っておいちょっと待てよ!!」

 

「んだよ、E組のクズ野郎が。俺に触んじゃねぇよ」

 

「ユイが嫌がってんだろうが。その手離せよ」

 

「んだとこの野郎」

 

「やんのか?」

 

「ちょっと龍我・・・・」

 

ユイを連れて行こうとしたこいつは俺を睨みつけてくるが、はっきり言って全く迫力がねぇ。この程度なら楽勝だぜ。

 

 

 

龍我side out

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

◎side

 

 

 

 

 

「見つけた、万丈龍我・・・・・」

 

街中で今にも乱闘を始めそうになっている万丈をどこからか見ている影が一つ。半身に赤い歯車がついたそいつ、カイザーリバースは万丈を探していたのか、その姿を視界に収めると嬉しそうにする。

 

「さぁ、行きなさい」

 

カイザーリバースの背後より現れたのは一体のスマッシュ。カイザーリバースの指示を受けてか、はたまた本能的にか、スマッシュは街中に降り立つと所構わず暴れ出す。

 

「ふふふ・・・・さぁ、あなたの実力を見せてもらうわよ、万丈龍我」

 

 

 

◎side out

 

 



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