【アンコもどき小説】やる夫と叢雲とステンノは世界を渡りながら世界の危機を回避するようです (北部九州在住)
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テンプレ転生シーン 最初のサイコロ

暁でやってきた事を布教するためにこっちでも初めて見るテスト。
ここハーメルンでは初投稿です。


「いやまぁ、私だってプロジェクトが一通り成功したことについては文句は言いませんよ。

 けど、『じゃあ、今度はシェア獲得プロジェクトチームのリーダーは君ね』と上からの命令にブラックが確定しましてね。

 私なにか悪いことしましたか!?

 このプロジェクト、人気ジャンルだから他神様多いし、天国と地獄だけでなく多元世界の調整やらでブラック勤務一直線なんですけどぉーーーーーーーーーー!!!!」

 

 おかしい。

 死亡してうきうきとチート転生と思ったら、目の下にくま作った女神が涙目で愚痴ってやがる。

 

「大体おかしいと思いませんか?

 いくら人気世界だからって闇鍋よろしくぶちこんでも大体なんとかなるって。

 まだ綺麗に滅んでくれれば、こっちもお役ごめんで別の部署へ……」

 

 まて女神。

 自分の担当する世界ディスり始めたぞ。

 なんかいっちゃった目で天井見上げてぼやき出したし。

 

「しかもあれですよ。

 チートつけます。ハーレムつけますって言っても誰もこの世界にやってこないんですよ!

 なんですか!

 ほんのちょっと主神格と戦うことを強要するだけでみんなびびって!!

 死ぬ時は一瞬だから楽ですよって笑顔でアピールしても、ご活躍をお祈りしていますって!

 そんなにみんなSFいやですか!

 そんなにエルフがいいですか!

 出してあげましょーじゃないですかって言ってもみんな断りやがって!

 辞めてやる!

 今度こそ女神辞めてやるんだから!!」

 

 多分これそのまま去った方が良かったのだろう。

 だが、お人好しかつ少しスケベな俺は見た目だけは良い女神についつい声をかけてしまった。

 

「ちなみに、その世界ってどんなのです?」

 

「『女神転生』……って!居たの!?

 ちょっと待って!

 そのまま去らないで!!

 色々つけるから、茶菓子も用意するから、見捨てないでぇ!!!」

 

 

 

 

「そりゃ、あの世界どの結末行っても最終的には人間ろくな終わり方しないじゃないですか」

 

 女神必死の泣き落としに負けた俺は、女神相手に問題点を指摘する。

 神界大決戦ゆえのレベルインフレが、色々と問題を浮き彫りにする。

 

「まず主神をボコってオシマイならこんな事になっていませんよね。

 結局、その主神の座にその主人公が座ってしまうから論外です。

 女神様の仕事軽減を考えたら、終わりを考えないと結局オリ主がラスボスに成りかねない。

 それを解決するには一つしかありません」

 

 女神様が複数のレイヤーを画面に浮かべながらメモを取る。

 このレイヤー一つ一つが世界らしい。

 ホログラムよろしく綺麗に重なる世界は見ているだけでちょっと楽しい。

 

「多重クロス。

 重要なのは、今回システムの売り込みによるシェア獲得が目的だから、派手に重ねていざとなったら別世界に逃亡エンド。

 少なくともこれでいつでも打ち切れ(エタれ)ます」

 

 投げっぱなしジャーマンでも終わらせられるのが強みである。

 この物語は、新しいシステム(書き方)をここで売り込むという目的がある。

 それさえ達成するならば、終わりなんてぶっちゃけどうでもいい。

 最後神隠しエンドでも、隕石による人類滅亡エンドでもその過程こそが重要なのだ。

 

「ふむふむ。

 じゃあ、貴方、それで転生してみない?」

 

「は?」

 

 がっしりと肩を掴まれる。

 そのワガママバディのどこにそんな力があったのかと思うが、顔は女神でなく幽鬼である。

 ブラック業務イクナイ。

 

「チートつけるわよ。

 ハーレムつけるわよ。

 出来る限り、望みを叶えるから、どうかこのプロジェクトの生贄になってほしいのよ!

 ぶっちゃけ、途中でエタらせてもいいからさぁ」

 

 おかしい。

 女神の誘惑のはずだが、今の俺には悪魔の脅迫に聞こえる。

 エタっていいから好き勝手……なるほど。エタるのは制止力という訳だ。

 どっちにせよ、断れる状況に無かった。

 

「で、転生特典は。

 どうせ制限があるんだろう?」

 

「あらよく分かっているわね。

 歴史の改竄は、うまくやらないと制止力が働いて、つまり私が上に叱られてという訳。

 今回のプロジェクト、『多重世界におけるキャラクターの優劣の判定』。

 そこさえ気をつけてくれれば、力でも女でも金でもチートし放題」

 

 おい。

 力に溺れろと言ってないか?この女神?

 

「あら?

 英雄力と色を好むってね。

 それぐらい、今回のシステムが受けて他の神様(作者)が採用してくれたら構いはしないわよ。

 とりあえず、転生特典はこんなのでどうかしら?」

 

 すっと光の柱が二つ出てきて、一神と一隻が姿を表した。

 なるほど。

 俺がやっていたゲームという訳だ。

 

「女神特典として、貴方が生前提督業をしていた艦娘とマスターをしていたサーヴァントをつけてあげるわ。

 その方がやりがいがあるだろうし、まぁ、ボーナスみたいなものよ」

 

 それはちょっと心惹かれるな。

 頑張ってケッコンカッコカリしたあの艦娘や最初のサーヴァントに会えるのは悪くない。

 

「特型駆逐艦、5番艦の叢雲よ。

 あんたが司令官ね。

 ま、せいぜい頑張りなさい!」

 

 改二スタイルの彼女の左手の薬指に指輪を確認。

 デレ雲だった。

 

「うふふ……女神を現界させようだなんて……。

 面白くて憐れな人ね。貴方……お名前は?

 なんて嘘。

 二日に一度ぐらいランチを共にして、週に一度ぐらい、観光にでかける程度のお友達でしょ♪

 よろしくね」

 

 手に『女神のきらめき』を確認。

 デレンノというかジュリエットだった。

 

「二人共よろしく。

 で、女神」

「な、何よ……」

 

 俺の真顔に女神がたじろぐ。

 それを気にせずに淡々二人を指さした。

 

「この二人、女神転生に連れっていって大丈夫なのか?

 二人共LV100越えているんだが?」

 

 なお、ステンノは聖杯ぶちこんでLV100。

 嫁雲に至っては、LV175である。

 神様相手でも負ける気がしない。 

 

「だからここ最近流行しているアンコ神を使った、同期率というのを利用するわけ。

 それぞれの世界から、女神転生世界に連れてきた事になるから、それに合うかどうかで強くなったり弱くなったりするわけ。

 もちろん、長く居たり霊地を確保して体を馴染ませたら、レベルがあがる寸法よ」

 

「なんとなく理解ができてきた。

 多元世界という事は、ホーム世界が女神転生として、そこからFGO世界に行ったら、叢雲は更に修正を受けるけど、ステンノはLV100として使える訳だ」 

 

 こっちの言葉に頷きながら、女神は俺の目を見ずに説明を続ける。

 つまり、ボードの裏側を読むために顔をボードで隠しやがった。

 

「では、最初の女神転生世界における同期率を決めましょう。

 何がでるかな?何がでるかな?

 それはサイコロ任せよ♪」

 

 

叢雲   同期率71%   Lv175の71%=Lv124

ステンノ 同期率74%   Lv100の74%=Lv74

主人公 司令部LV2%  Lv120の2%=Lv2

      マスターLv76% Lv150の76%=Lv114

 

 

 出た数字が一つを除いてそこそこ高い。

 でこれについて女神が解説してくれる。

 

「艦娘とサーヴァントについては省いていいわね。

 貴方は、艦娘保持者としては新米、もしくは持っている事が奇跡って思われているわ。

 たしかに、そのレベルだとね」

 

 そりゃそうだ。

 女神転生においてレベル100越えは神をぶん殴れるレベルである。

 それでもハメ殺されかねないのがあの世界の怖い所なのだが。

 

「マスター。

 つまり魔術師としてはかなり名が通っているわね。

 ちなみに転生は赤ちゃんスタートがいい?」

 

「止めておこう。

 適当に経歴をでっちあげて、そこからスタートさせてくれ」

 

「そう。

 赤ちゃんからだと、同期率UPボーナスがあるけど今回はパスと。

 まずはホーム世界を設定し、そこを中心に動くといいわ。

 原作(イベント)に絡んだりして、体をその世界に合わせて、最後はその世界の危機を回避したらクリアって訳。

 ただ、深く他の世界に絡むと、他の世界の危機が逆流するから気をつけてね。

 つまり、女神転生世界だからこそ、深海棲艦が出てきたり、人類焼却されたりというのが女神転生世界でも発生するという訳」

 

 まて女神。

 という事は、この時点で三世界の危機をなんとかしろと言っていないか?

 

「………てへっ♪」

 

 なるほど。

 この女神が駄女神であると確信した瞬間である。

 

「これで転生の条件は終わりだけど最後、名前は何にする?」

 

 そりゃ決まっている。

 こんな荒唐無稽で、すちゃらか最低オレツエーのエター予定物語にふさわしい名前は一つしか無い。

 

「入即出やる夫」

 

 

 これは、駄女神様から任務を与えられたやる夫が、いろんな世界を渡りながら、世界の危機を乗り越える最低蹂躙物語である。

 その運命と未来は、サイコロだけが知っている。

 

 

 

 

 

 

 おまけ

 

「ちなみになんでマシュじゃなかったんだ?」

「デミ・サーヴァントだから、座からコピーするの面倒くさかったのよ」

 

 納得。




ネタ元
『艦隊これくしょん』
『FGO』
『水曜どうでしょう』
多分女神は『この素晴らしい世界に祝福を』のアクア様のイメージ。

やる夫スレベースの女神転生の予定。
証拠写真
https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1064103128025296896


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入即出やる夫の現状

サイコロシーン撮り忘れたorz


 目が覚めた。

 とりあえずお決まりの台詞を言ってみようと思う。

 

「……知らない天井だ」

 

「何、バカなこと言っているのよ」

 

 横から声がすると叢雲が。

 

「あら、こういうのも悪くはないわ」

 

 反対側に振り向けばステンノが。

 たしかにハーレムである。

 だが、そのハーレム云々を前に、俺は二人に声をかけた。

 

「おはよう」

「おはよう。やる夫」

「おはよう。マスター」

 

 挨拶は大事である。

 

 

 やる夫の社会的地位 76   100で高い

 やる夫の経済力    97   100でお金持ち

 やる夫の魔術      14   1で東洋100で西洋魔術

 

 

「あの駄女神、ここまでチート特典揃えてくれたのか……」

「あら?

 それは苦難に対する先払いじゃないの?」

「言わないでくれ。

 実はそうじゃないかと、疑っているんだから」

「で、どうするの?

 入即出『司令官』」

 

 日本の霊的護国組織ヤタガラス。

 そこの構成員で、海上自衛隊所属の二佐相当官。

 これ、海の悪魔は俺が出張るという事だな。きっと。

 

「叢雲。

 お前、メンタルモデルできるか?」

 

「もちろん♪

 というか、ここ、私の船の中」

 

 そこでやっと窓を見る。

 そこには横須賀の町並みが広がり、海上自衛隊の艦艇の中にちんまりと武装をつけずにこの船が桟橋に繋がれていた。

 

「うふふ。

 叢雲さん。

 貴方付喪神になっているわよ」

 

「えっ!?

 なにそれ?」

 

 公的身分が確保された結果、経歴まで作られていた。

 陰陽師の家系の出で家は太平洋戦争にて没落。

 一人で生き抜いた果てに修行した結果、叢雲とステンノを得て今の地位を得ると。

 既にこの時点で成功者である。

 数年後に東京に核ミサイルが飛んでこなければだが。

 

「うわっ!?

 やる夫ちょっと見なさいよ!!

 金庫にこんなに金塊が!!!」

 

 成功した結果、莫大な富が艦長室の金庫に眠っていた。

 というか、魔術素材やアイテムもたっぷりある。

 

「なんとなく分かってきたわ。

 因果が逆なのよ。

 私達という存在の後に、結果が逆算される。

 これが駄女神の言っていた、アンコ神の効果ね」

 

 とりあえず理解した。

 そして、その上で行動しなければならない。

 

「とりあえず飯を食べるとしよう。

 それから情報収集だ」

 

 制服は三人分用意されていた。

 叢雲は三佐相当官、ステンノは一尉相当官である。

 一応海上自衛隊の作法は頭に入ってるらしいが、皆の奇異の視線が集まってしまう。

 

「なるほどな。

 ここに配属されたのはつい最近で、それを横須賀司令部は知らないか、あまり良く思っていないと」

 

 三人共朝ごはんはカレーである。

 食べながら今度は己についたデメリットを確認する。

 

「国家組織についているのは強みであると同時に、弱みでもあるな。

 お上の命令には逆らえん」

 

 俺への命令系統は3つ。

 純粋にヤタガラスからの命令なら問題はない。

 もう一つの護国組織であるクズノハからの命令は筋違いではあるが、大体従ったほうが良いことがあるというか、そういう場合、ろくでもない悪魔と対峙している可能性が高い。

 問題はゲームで演出できないリアルな所だった。

 

『海上自衛隊からの命令については、協力できる限りにおいて協力すべし』

 

 これである。

 断ってもいいが、断るならばそれ相応の理由を用意しなければならない。

 組織の上の人間は、すべからく政治というものに巻き込まれるのだ。

 もっと厄介なのが、来る途中で見えた星条旗である。

 当たり前だが、この世界の日本は日米安保条約を結んでいる訳で。

 米軍の要請というのが実にめんどくさいのだ。

 米軍が直接言うならまだしも、海自経由でお願いされたら断れない。

 ありがたいというか、ありがたくないというか、俺は数年後に自衛隊のクーデターと米国大使がこの東京に核ミサイルをぶっ放すのを知っている。

 とりあえずそれの阻止をしなければならないのだが、下手したら加担命令すら来かねない。

 

「とりあえず、情報だ。

 地図と新聞を買うか」

 

 で、船に戻って地図を見て頭を抱える俺。

 駄女神への呪詛も忘れない。

 

「学園都市に麻帆良学園に冬木市に海鳴市もある。

 介入し放題だな……」

 

 そりゃたしかに有名所ではあるが、闇鍋のようにぶっこむのはどうだろうか?

 罵倒しながら俺は新聞の日付を見る。

 1993年、8月23日だった。

 つまり、ほとんどが原作開始前である。

 

「あら?

 関西呪術協会に名簿が乗っているわよ」

 

 調べれば調べるほど、世界が、設定が生えてゆく。

 その怖さを俺は味わいつつ今後の方針を考えることにした。




学園都市  『とある魔術の禁書目録』
麻帆良学園 『魔法先生ネギま!』
海鳴市    『魔法少女リリカルなのは』
冬木市    『Fate/stay night』

多分介入できるのは『Fate/Zero』だろうなぁ。
第四次聖杯戦争の時期を調べないと。


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鴨が葱を背負ってやってくる

なお、これらの☆10装備は一つしか作れていない。
ネジが……


 叢雲が船であるという事は、どこかに所属しないといけない訳で、当然横須賀地方隊に所属となった。

 で、問題は装備である。

 

「叢雲。

 お前の装備どんなのがついてる?」

 

「一応元の装備は全部ついているみたい。

 後は、艦娘の装備もついているわね。

 無理のない範囲で」

 

 これは、対空カットインと先制爆雷の装備の事で、今の叢雲の装備はこんな感じである。

 

 5inch単装砲 Mk.30 2基2門 ☆10

 13号対空電探改       ☆10

 25mm三連装機銃 集中配備   ☆10

 四式水中聴音機       ☆10

 3式爆雷投射機集中配備

 

「全部コントロールできるのか?」

「無理ね。

 多分4つまでしかコントロールできないみたい。

 単独でコントロールするにはこれが限界なんでしょうね」

 

 イベントの対空対潜装備の名残なのだろう。

 色々がんばった装備が残っているのは素直にありがたい。

 魚雷を載せない事でスペースの確保に努力する艦娘とメンタルモデルのすり合わせに感動すら覚えるが、単独で艦を運用できるということは単独で全てを管理しなければならない事を意味する。

 それは叢雲がどれだけ凄かろうとどうしても出来てしまう隙だ。

 とはいえ、メンタルモデル化して人が入れるスベースができた事の意味を考えると、こう考えてもいい。

 叢雲の手が足りない所を人がやっちゃってもいいんだと。

 そんな事を考えていたら、ある事に気づく。

 

「叢雲。

 お前の補給ってどうするんだ?」

 

「この身体なら普通の食事で大丈夫だけど……」

 

 そこで言葉を詰まらせる叢雲。

 船の運営、ましてや軍艦の運営にはそれ相応のお金がかかる。

 金庫の豊富な資産の理由をやっと理解した。

 

「あらあらたいへんね。

 私なんて、マスターからの魔力供給だけで十分なのに」

 

 fate世界の魔力供給には、性行為もある。

 気づいた叢雲が顔を真っ赤にして、いつもの決め台詞を言う。

 

「酸素魚雷をって、積んでないじゃない!!」

 

「失礼します。

 入即出二佐相当官。

 警備隊司令が挨拶に伺いたいとの事」

 

 無線から聞こえる声に俺はうかつを悟って舌打ちをする。

 丁寧なお願いは実質的な命令に等しいからだ。

 しかも、向こうの方が上である。

 

(早く挨拶に来やがれ!)

 

と、暗に言っている訳だ。

 俺は叢雲を通じて返事をした。

 

「今すぐにこちらから挨拶に向かうと伝えてくれ」

 

 

 

「警備隊司令の咲川海将補です。

 君たちの事は市ヶ谷から聞いています。

 邪魔はするつもりはないから、邪魔をしないでくれ。

 以上だ」

 

 案の定、サイコロの目が悪かった所がこう言う風に作用している。

 まあ、追い出されなかっただけよしとしよう。

 

「すいませんね。

 市ヶ谷がらみで、うちの司令ピリピリしちゃって」

 

 差し出した手を令呪を隠して手袋をした手で握って俺は挨拶をする。

 司令が悪い警官役なら、こっちは良い警官役なのだろう。

 

「幕僚の美野原一佐です。

 何かあったら私に言ってください」

 

「入即出二佐相当官です。

 こちらも上からできるだけ協力するように仰せつかっております」

 

「具体的にはどのような事が出来るので?」

 

「ゴジラのやられ役ですかな」

 

 俺の冗談に美野原一佐が笑う。

 受けてくれたみたいだが、その後の言葉は穏便ではなかった。

 

「何かが協力できるかについては、後日また話合いましょう。

 あなた方を見にお客さんも大勢来ているみたいですし」

 

「使い魔の存在があるわ。

 注目されているわね♪」

 

 ステンノが耳元で囁くと、叢雲も小声で呟く。

 

「私をガン見している米軍艦艇がいるんですけどー」

 

 叢雲の言葉に俺は頷きながら、ステンノに尋ねる。

 

「何処が来ている?」

 

「時計塔に関東魔法協会と関西呪術協会。

 米軍と一緒に居るのはメシア教かしら?

 十字教と聖堂教会も人を出しているみたいね」

 

 そんなやりとりを見ながら、美野原一佐が尋ねる。

 

「ちなみに、そちらの上とは何処を指せばいいのでしょうな?」

「ヤタガラスは宮内庁の秘密機関という位置づけですが、公的には宗教法人の一組織ですから。

 霊的なあれやこれやで、色々と闇が深いのは自覚していますよ」

 

 太平洋戦争の敗戦によって、日本の霊的守護は決定的なまでに弱められた。

 学園都市なり麻帆良学園なんかができているのはその影響と言ってもいい。

 そんな状況で、霊的組織的には弱小部類に入るヤタガラスに期待の大型新人発見である。

 他所がスカウトという名前の引き抜きを狙わない訳がない。

 地位の高さはこう言うデメリットがある訳だ。

 俺はため息をついて美野原一佐にお願いすることにした。

 

「美野原一佐。

 これのお披露目を何処かでしたいので、適当に出港できる理由を作ってくださいませんか?」

 




叢雲の元が2000トンちょっとしか無いので、できるだけ無理なくつけたつもり。
後部の主砲位置が機銃の集中配備場所にもなっていると妄想。

メンタルモデル
 元ネタは『蒼き鋼のアルペジオ』。

市ヶ谷
 防衛庁の隠語。
 まだこの頃は『庁』なんだよなぁ。

時計塔・聖堂教会 Fate
関東魔法協会・関西呪術協会 ネギま
十字教        とある
メシア教       メガテン


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PRタイムという名前の演習航海

メンタルモデル+気配遮断A+=ステルス艦
あれ?この組み合わせやばくね?


 この叢雲、元は吹雪型駆逐艦なのだが、大体2000トンほどある。

 で、この時期の海上自衛隊にはあぶくま型護衛艦があって、こいつと大体大きさが一緒らしい。

 

「じゃあ、出港しよう」

「!…出撃するわ!」

 

 早朝。

 まだ日も出きっていない。

 俺の声に叢雲が返事をし、彼女が動かすことで乗り込んでいた自衛隊員の皆様がおおっと声を上げる。

 

「いやいや。

 凄いものですな」

 

 副長代理として乗り込んできた、新島三佐が感嘆の声を出す。

 今回はデモンストレーション航海という事で、海上自衛隊の方をお誘いしたのだが、向こうからしたらこの船を叢雲が一人で動かすことがまだ信じられないらしく、かなりの人間を用意しての乗船である。

 その数副長以下砲雷科、船務科、航海科、機関科、補給科、衛生科の120名。

 つまり、あぶくま型駆逐艦の運用人員をなんとか確保してきたという訳だ。

 彼らの殆どは何もしなくていいことにびっくりしているが。

 

「間もなく浦賀水道に入ります」

 

 そんな中、お仕事をしているのが船務科と航海科。

 世界屈指の船舶過密地帯である浦賀水道だからこそ決まりごとは山ほどあるわけで、これを無視するわけにはいかなかったのである。

 このあたりの人員を借りるかなと思っていたが、まさか船一隻まるごと運用する人間を用意してくるとは思わなかった。

 叢雲曰く。

 

「最終的には、全部私一人でやってみせるわよ」

 

 らしいが、その叢雲は艦をコントロールしつつ各科隊員の動きをしっかり覚えようと奮闘中である。

 

「艦長。

 『よし』と言ってください」

 

「よし」

 

 副長の耳打ちに俺は慌てて艦長らしく振る舞う。

 後で聞いたのだが、ちょうどこの時期自衛艦同士の衝突事故があって、その修理中なので人が陸に余っていたらしい。

 で、腕が錆びないようにという事で俺の誘いに大挙して乗り込んだと。

 彼らは学園都市製造の全自動無人艦の実験という説明をしているらしい。

 色々あらはあるが、そのあたりはうまくごまかしてくれるだろう。誰かが。

 

「おうい。

 船長。

 この機関はえらく調子がいいじゃないか!

 こんなのは儂が乗った船ではとんと見なかったぞ!!」

 

 無線越しに機関長に任命された爺様が闊達な笑い声をあげる。

 機関だけは旧式なので、海軍に在籍していた元自衛官を引っ張り出してきたらしい。

 それに若い機関科員を足して万一に備えているとか。

 

「失礼しちゃうわ。

 私の機関がじゃじゃ馬みたいじゃないの!」

 

 叢雲の言い方に艦橋内で失笑が起こるが、副長とちらと目線を合わせた時に、互いの思惑が交差する。

 多分、俺に資格無しと判断されたら、俺からこの叢雲を乗っ取るつもりだったんだろうなぁと。

 これもある意味デメリットと言えよう。

 

「艦長。

 今回の航海を確認します。

 浦賀水道沖を出て、房総半島沖の訓練海域へ移動。

 そこで装備武装の訓練を行い、横須賀へ帰還。

 よろしいですね?」

 

「ああ。

 気楽に動かせるとばかり思っていたが、先は大変そうだ」

 

 

 

 元が旧海軍の駆逐艦なので、今の時代と合わない所も多い。

 その為、出港前にできるだけ準備という名の小改造が行われた。

 艦内伝達の通信機器等は海自が保管していたお古を急遽持ってきて備え付け、医療器具とかもやはり最新式の医薬品に替えられた。

 調理器具も新調し、何よりも大型冷蔵庫を備え付けそこに大量の食料が運び込まれた。

 もちろん、おやつのアイスクリームつきである。

 また、この時代ハンモックが当たり前だったのにとりあえず入れられるだけ兵員室にベッドをつけるあたり、自衛隊の隊員への福利厚生の高さを伺わせる。

 なお、叢雲の乗員は219人。

 今回乗り込んだ人員が120人である事を考えると、半分近くまで人が減らせているぐらい技術進歩が進んでいると言っていいだろう。

 そんな中で何がありがたかったかというと、神棚である。

 これは事情を知っているらしい美野原一佐が持たせてくれたものだ。

 おかげで、叢雲とステンノの霊格が上がったとか。

 何しろ、ステンノは種族『女神』であり、叢雲は種族『付喪神』である。

 人の崇められる霊地をもらったようなものなのだろう。

 このあたりの費用は後々の借りを作りたくないのでこちらが払うと言ったのだが、副長に押し切られてしまった。

 

「もらえるものはもらっておいて損はないですよ。

 その分こっちもお願いしますから」

 

「それが怖いんだよ」

 

 航海中に時間を見つけて、叢雲の士官室で各科の長を集めての親睦会の席のこと。

 副長以下幹部と共に、俺と叢雲とステンノが作ってもらった食事を頂く。

 ここまでほぼ自動で航海できているだけでなく、その叢雲がここに居て食事をしているのに、航海に問題が無いという時点で、ここに居る幹部自衛官たちも『この船やべえ』という認識は持ってくれたようだ。

 

「通信設備やレーダーがついていなくて最初はあせりましたよ」

 

 船務長が話題を切り出して話が広がってゆく。

 何しろ元が戦時の船だから、このあたりの技術進歩にはどうしてもついていけない。

 民間船舶用レーダーを急遽用意したというが、製造元を覗いてみたら学園都市製だった。

 

「なっとらんな!

 儂が戦争に出ていた頃はそんな船で戦ったもんだ」

 

 機関長は己の青春が蘇ったようで闊達としゃべる。

 声をかけた時は盆栽いじりしかしていなかったというのだから驚きである。

 

「装備は更新していきたいですね。

 CIWSやハープーンやアスロックも欲しい所ですよ」

 

 砲雷長が素直に言うが、俺は苦笑してその提案を断る。

 

「個人運営の実験艦扱いだからな。

 純粋な戦力化は勘弁してくれ」

 

「失礼ですが、市ヶ谷の方では真剣にこの船を欲しがっているみたいですよ」

 

 ぴくりと幹部自衛官たちに張り詰めた空気が流れる。

 話を振ったのは副長の新島三佐だった。

 あぶくま型の建造費用は250億円。

 近代装備とかの改造費用がかかるだろうが、100億もかからないと見ている。

 それでピカピカの無人運用可能なあぶくま型の護衛艦が手に入ると考えれば、その悪魔の誘惑をささやく人間も出てくるだろう。

 

「あら?

 私はやる夫から離れるつもりはないわよ」

 

 叢雲が俺に抱きついて拒否する。

 それを見せつけて、俺は彼らに言ってのける。

 

「これがこの船の難儀な所で、対象者、つまり艦長に依存するんだよ。

 俺から奪っても、この船はその時点で自沈するだろうな。

 お世話になる以上、そちらのお願いも無碍にはしないよ。

 とりあえずは腹を割って話そうじゃないか」

 

 まだ互いに疑心暗鬼の中である。

 話をして妥協点を見つけていけばいいという所で、叢雲がピクリと耳をそばだてる。

 

「艦長。

 近くに潜水艦が居るわ。

 二隻」

 

 その声にざわつく幹部自衛官たちをよそに、俺はゆっくりと食事をとっておちつく。

 この時点で潜水艦で探りにこれる勢力は二カ国しか無い。

 海上自衛隊と米海軍だ。

 

「ステンノ。

 こそこそついてくる人たちにいたずらできるかな?」

 

「やる夫を困らせるのも楽しいけど、そのやる夫を侮っている人たちが困るのはもっと楽しいわね。

 いいわ。

 やってあげる♪」

 

 この場の幹部自衛官たちは何をしたか分からなかったが、後日、そこから叢雲が完全に姿を消した事を追跡していた潜水艦から知らされることに事になる。




学園都市製
 何かあったら信頼と安心の学園都市製。
 30年ほど技術が進んでいる設定だから、今のカタログを見れるのが楽で楽で。

民間レーダー
 安いので20万円、高いので40万円。

CIWS
 近接防御火器システム 価格6億円

ハープーン
 対艦ミサイル 価格1発1億2千万円 システムまで入れても5億かからないかな?

アスロック
 艦載用対潜ミサイル 価格1発1億2千万円 ハープーンと同じぐらいらしい。

 これらの装備はあぶくま型護衛艦につけられていた。
 そして値段が高いのが、レーダーと射撃統制関係。
 このあたりを叢雲の艦娘パワーで補うという力技。


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チュートリアル準備編

勧誘の積極度 100ほど積極的

 

 時計塔            39

 聖堂教会          50

 関東魔法協会       83

 関西呪術協会       80

 十字教            75        

 メシア教           37

 自衛隊            88

 米軍             36

 

 

 演習航海の後、腹を割った話し合いの結果、叢雲に60人ほど自衛隊員が常駐する事になった。

 それと共に、生活が自衛隊風になってゆく。

 具体的に言うと、掃除の徹底。

 自衛隊員がすれば俺達もする日本人的同調圧力に負けたとも言うが、ステンノもしだしたのにはびっくりした。

 その理由を聞いてみたら、

 

「だってみんな掃除をしてかまってくれないんだもの。

 だったら、はやく済ませたほうがいいでしょう?」

 

 との事。

 装備についても本格的な改造について話が出る。

 対潜性能とステルス性能を見せた事で、攻撃力の強化の提案を受け入れることになった。

 魚雷をおろしたスペースに74式アスロックSUM8連装発射機とハープーンSSM4連装発射筒をそれぞれ1基載せる事になっている。

 なお、ファランクスを載せる予定だったが、叢雲につけた25mm三連装機銃集中配備の性能がいいので遠慮する事にした。

 射撃指揮システムとレーダーは近代戦の肝だけに工事時間と予算が跳ね上がるのだ。

 なお、アスロックもハープーンも基本ミサイルに誘導がついている。

 この件については海上自衛隊側がこだわった。

 何しろ探知距離が現代装備のレーダーが約200キロに対して、13号対空電探改の探知距離は約150キロであり、その精度も落ちるからだ。

 単艦運用の叢雲でなんとかするからというコンセプトに対して、その穴を最新機械と人間で埋めるようという海上自衛隊側の対立は、最後の最後で俺の方が折れることになった。

 冬木の聖杯戦争に介入するまでに工事が終わっているならそれでよし、ある意味一心同体の分霊である叢雲と叢雲船体はどちらかがやられても復活できるという事を叢雲から聞いたからに他ならない。

 その結果、かなり大規模な改修工事に入る事が決定している。

 なお、予算的にはかなりの金額がかかるらしいが、あぶくま型護衛艦を新造するよりははるかに安いらしい。

 

 

 

 次に食いついてきたのは関東魔術協会。

 考えてみれば自分たちの庭先で、関西の人間が怪しげな船を持ってうろついているのだから警戒するのもある意味納得と言えよう。

 そして、力を見せたので今度は取り込みにかかるという訳だ。

 今の所、ヤタガラスというお上に仕えている理由と、海上自衛隊の妨害で接触の試みは失敗しているみたいだが。

 もう一方の関西魔術協会も俺の出身経歴が関西の有名陰陽師である事を知って、関西に帰ってきてほしいという訳でアプローチをかけてきている。

 こちらも海上自衛隊の妨害で接触まで行っていないみたいだが。

 一方で不気味なのが、メシア教と米軍。

 メガテン世界だと核を撃っているからつるんでいる可能性が高く、その障害として排除という考えもできなくはないが、監視にとどめてこちらにちょっかいを出してきていない。

 聖堂教会と時計塔はおそらく俺の魔術師としてのデータを持っているだけに、やはり監視に留まっている。

 下手すりゃ封印指定な訳だが、ここまで堂々と国の庇護下に入ってしまうとそれも難しいという所か。

 意外だったのが十字教で、こっちに基盤がないことも合って魔術協会の次にアプローチを仕掛けていたり。

 

「手紙?

 俺宛に?」

 

 ヤタガラスからの指令という形でとりあえず最初の仕事がやってきた。

 ある意味女神転生らしい仕事の内容である。

 異界の調査だ。

 

 女神転生世界で重要な舞台の一つである異界。

 神隠しや怪奇現象の発生源とされ、そこには悪魔なり妖怪なりが隠れ住むと言われる場所なのだが、そんなものをこの国は祀って人に害を与えないようにと封じてきた。

 それが日本の霊的守護の決定的弱体化とバブルとその崩壊による区画整理等であちこちの封印されし異界の封印が緩みだしているという訳だ。

 もちろん、悪魔と取引して利益を得たい人もいるので、この手の悪事は基本無くなる訳がない。

 そんな異界の一つの封印がちゃんとされているかチェックし、問題があったら解決すべしという命令である。

 ありがたいことにアームターミナルもあったので、叢雲にせよ、ステンノにせよ管理はできるのだがこれにはデメリットもある。

 あの駄女神が言ったとおり、世界観の違う敵相手に補正が働くので、しくじってこの世界に核が落ちた時、逃げ出した時にどこまで弱体化がかかるかわからないのだ。

 今ならば、二人共高レベルなので弱体化がかかってもなんとかなる。

 

「じゃあ、これに何をいれるの?」

 

 興味津々なステンノの前で令呪がついた手にアームターミナルをはめる。

 多分学園都市製ならスマホ型ターミナルぐらいあるんだろうなぁなんて思いながら、ソフトをインストールする。

 

「弱い悪魔は今の所いらないから、それ以外の便利ソフトをいれるさ。

 『エネミー・ソナー』に、『ハニー・ビー』に『ムーン・アダルト』を入れておくか」

 

「やる夫の武器はどうするの?」

 

 叢雲の質問に俺は防弾チョッキをつけてサバイバルナイフと拳銃を手に取る。

 こういう時に自衛隊というのは強い。

 そういえば、自衛隊内部にも対悪魔部隊を作っている作品が有ったような。

 いつかそのあたりとも絡む事があるかもしれない。

 

「で、何処の異界を調査するの」

 

 ステンノの質問に俺は指を真下に指した。

 ある意味向こうもこちらもうってつけの依頼と言えよう。

 

「ここ。

 横須賀基地の異界だよ」




『エネミー・ソナー』
 出現する悪魔の強さをサマナーのレベルと比較して、画面上に色で表示。
 青は悪魔が出現せず、緑→黄→赤の順に強い悪魔が出現することを表示。
 なお、大体ぶっ飛ばされる模様。

『ハニー・ビー』
 オートマップで現在いる異界を表示。

『ムーン・アダルト』
 満月時の会話交渉成功率を上昇。
 基本的にメガテンでは満月時では会話が成り立たない。


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ある意味メガテンシナリオ進行中

証拠写真
https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1064735821071245312


LV74のステンノの気配遮断A+に気づくか?

 74以上で看破

 

 時計塔            16

 聖堂教会          27

 関東魔法協会       61

 関西呪術協会       42

 十字教            57        

 メシア教           59

 自衛隊            79

 米軍             3

 

 異界探索に気づいたのは自衛隊だけだった。

 もっとも、こっちが艦内で準備とかしていたからバレバレだったという事なんだろうが。

 なにか出来ることがあるかと言ってきてくれたが、かえって危ないので丁重にお断りした。

 そのかわりに車を貸してもらったが。

 

「で、具体的に何処に行くわけ?」

 

 俺が運転していると助手席から叢雲が質問するので、返事をする。

 バレたのできちんと手続きをして許可証をもらってきたので、基地内の移動も気にしなくていいのがありがたい。

 

「この世界では悪魔ってのは情報生命体なんだよ。

 Fateの英霊もそれに近い所があるけどな。

 人の噂が悪魔を生み出す。

 基地なんてのはその最たるもので、『戦争で死んだ兵士の怨念が』とか『軍隊の秘密実験を見た民間人が連れ去られた』なんて噂が長く蓄積して悪魔を生み出す訳だ。

 それを払拭するには、基地には秘密が多すぎる」

 

 そういう施設の異界化を防ぐためにこの国はどうしたか?

 なんの事はない。

 異界を生み出してそれを封じたのだ。

 変な所に異界ができるぐらいなら、そういうものが出来た所に神社を立てて祀ると同時に封じる。

 小さな神社とかの信仰でそれらの異界は封じれるのでお手軽でもある。

 この国の人間の知恵と言えよう。

 まぁ、バブルの区画整理とかでそのあたりもかなり緩くなっているみたいだが。

 

「ついた。

 さてと、エネミーソナーを起動してと。

 叢雲が前衛、俺が真ん中、ステンノが後衛だ」

 

「了解」

「わかったわ」

 

 基地内の小さな神社で、手入れも行き届いている。

 金比羅神社で祀神は、大物主と。

 という事は異界の主は大物主様で確定だろう。

 劣化分霊だろうが。日本神話に出てくる神様で異界の主である。

 敬意を払おうと珍味のおつまみと酒徳神のおちょこ、それに酒を用意する。

 

「あら、美味しそうね」

「飲むなら帰ってからな。

 出雲で作られた100%純米酒だ。

 口に合えばいいんだが」

 

 神社の中に隠されるようにあった異界の入り口。

 それはこの異界が正常に管理されている事の証拠である。

 

「よく来たな、人間。

 それは儂への貢物か?

 ははは。心得ているな」

 

 大物主は最初からごきげんだが、かれの逸話には女性にまつわる逸話も多い。

 つまり、ステンノの男性特攻の対象範囲。

 種族は鬼神で、レベルは38ベースの32%劣化分霊で、12。

 ある意味納得。

 

「まあお前らも飲め。

 儂はこうして海から来る神を出迎える役目も持っている。

 お主らみたいな外から来た神を迎えるのは仕事の一つよ」

 

 神様だからこそというかコミュニケーションというか、飲み二ケーションが試される。

 明日は胃薬と二日酔いの薬は確定だろう。

 ありがたい事に大物主は終始好意的だった。

 敬意を払ったのと、こちらのレベルを察したのだろう。

 問題は帰りにあった。

 異界と現世の出口。

 奇襲を受けたのだ。ピクシーに。

 ……百太郎をインストールしておこうと決意した瞬間である。

 

「ディア!」

 

 ピクシーの体力が回復した。

 

「……」

「……」

「……」

 

 あ。

 涙目になった。

 かわいい。

 

「やる夫。

 この、小さなの潰していい?」

 

 奇襲を受けてプライドを潰れたと思っているステンノの声は凄く低い。

 ピクシーのレベルは2である事を明記しておく。

 

「助けてください!

 何でもしますから!!」

 

「ん、今、何でもするって言ったよね?」

 

「はい!

 仲間になりますし、妖精メイドにもなります。

 だから命ばかりは!」

 

 そっか。

 あるのか。

 幻想郷……

 

「じゃあいいや。

 仲間になってもらおう」

 

「ありがとうございます。

 妖精ピクシーです。

 今後ともヨロシクおねがいします!」

 

 そう言ってピクシーは逃げるようにCOMPの中に入っていった。

 そこで気づく。

 

「今思ったんだが、悪魔合体で強い悪魔作って、冬木に行けば大体勝てるんじゃ?」

「私だけじゃ足りないと?」

「私じゃ駄目なの?」

 

 ぽつりと言った一言に、ジト目で俺を見て言い放つ二人。

 仲間の信頼が痛い。

 

 

 

 翌日。

 艦に戻った俺達だが、近隣の異界を回って悪魔の素材を集めたのは言うまでもない。

 3日後。

 集まった悪魔はこんな感じ。

 

 妖精 ピクシー     Lv2

 地霊 ノッカー      Lv4

 魔獣 カブソ       Lv6

 天使 エンジェル    Lv14

 妖精 ジャックフロスト Lv15

 鬼女 フグルマ     Lv12

 

 ノッカー・カブソ・エンジェルは近場の異界探索で仲間に。

 横須賀は米軍基地があるせいか十字教信者も多いので、こうして現れるのだろう。

 なお、その姿を最初に見た叢雲とステンノの第一声をここに記しておこう。

 

「うわ。

 痴女なのに天使なの?」

「やる夫、ああいうの好みなの?」

 

 二人の衣装的に色々言いたいこともあるが、ここでヤブを突く勇気は俺にはない。

 フグルマこと文車妖妃は、悪魔関連の資料集めで神田古本街をうろついていたら勝手についてきた。

 なんでも本が読みたくて立ち読みし続けた結果、魔力が枯渇したという実にらしい悪魔である。

 で、通りかかった俺に助けを求めたと。

 そのけしからん胸に騙された訳では決して無い。だぶんきっとメイビー。

 

「……最低」

「へぇ……」

 

 いかん。

 叢雲とステンノの俺を見る視線が、まるで豚を見るかのような目になっているから、この話はここでおしまい。

 ジャックフロストだが、叢雲の艦内冷蔵庫にいつの間にか居着いていた。

 ある意味、叢雲の艦内も異界みたいなものなのだろう。

 これらの悪魔をCOMPに入れて、悪魔合体をするのだが、悪魔合体のプログラムはこのCOMPに入っていない。

 

「じゃあ、何処でするの?」

 

 叢雲の質問に俺は地図で確認したある場所を指さした。

 メガテン世界、デビルサマナーの舞台であるその場所を。

 

「平崎市。

 ここのホテル業魔殿さ」

 

 

 

 こういう時のヤタガラスの公的身分というのは便利なもので、平崎市まで電車で向かいホテル業魔殿にチェックイン。

 その後、オーナーのヴィクトルに話を通して、悪魔合体を始める。

 

「天使エンジェルと妖精ジャックフロストを足して妖鳥コカクチョウを作り、それに地霊ノッカーを足して、妖精ジャックランタンを作る。

 これでいいかね?」

 

「ああ。

 やってくれ」

 

 悪魔合体の最中にヴィクトルが俺に声をかける。

 俺の後ろの二人を見ながら。

 

「解せないね。

 それだけ強い悪魔を持ちながら、どうしてこんな弱い悪魔を強くするのかな?」

 

「浪漫ってもんだ」

 

 その浪漫その1であるピクシーはなんかおどおどしている。

 なお浪漫その2の文車妖妃は資料収集等の情報処理を任せる予定である。

 戦闘で使えなくても便利な悪魔というのは居るのだ。

 そんなピクシーは自身の身に何が起こるか、まだ分かっていないらしい。

 

「ここでは悪魔も買えるんだったな」

「ああ。

 金さえ払えばだが」

 

 という訳で、小切手をぽんと差し出す。

 結構な0が並んでいるのを見せつけてからピクシーを指さす。

 

「あれに、精霊合体をして最強にしてやってくれ」

 

「え?え??え???」

 

 うろたえるピクシーに、呆れる叢雲とステンノ。

 ピクシーの肩を叩いて二人は交互に言った。

 

「諦めなさい。

 私達も同じなのよ」

 

「マスターって、最初に来た娘は徹底的に優遇しちゃうのよね」

 

 なお、何でかメギドラオンを覚えたハイピクシーになったが、これはこれでよしとする。




 wikiやネットでデータを確認したながらしているけど、基本は一番まとまっているソウルハッカーズベース。
 もちろん、それ以外の概念も適当に取り入れている。

金比羅神社
 神仏分離前まで金毘羅大権現だったのだが、大体この神様に変わっている。

珍味のおつまみと酒徳神のおちょこ
 ソウルハッカーズの悪魔用贈答品。

百太郎
 奇襲回避ソフト

妖精メイド 『東方紅魔郷』
 紅魔館で働いているやつら。
 あまり役に立たない。

エンジェルの姿
 グーグル先生で検索すればすぐに分かる。
 そんな格好で天使なんて無理でしょ。

文車妖妃
 多分真名は鷺沢文香。
 もしくは読子・リードマン。
 このあたりはやる夫メガテンのノリでもある。

ハイピクシー
 実際にはメギドラオンを覚えたハイピクシーはできない。
 スキルは、ジオ・羽ばたき・パララディ・メパトラ・誘惑・宝探し・トラフーリと使い勝手が良い上にメギドラオンである。
 浪漫から作った。
 チートである。


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世のメガテニスト達を尊敬するしかない仲魔集めと悪魔合体回

 現在俺達は平崎市に滞在しているが、実はこの街は俺達の拠点である横須賀から近い。

 というか横浜市の隣である。

 で、そこのホテル業魔殿に宿泊している訳だが、ここにマダム銀子が居るんだよなぁ。

 つまり、クズノハの連絡拠点がこの街にあるという事だ。

 メガテン世界もパラレル設定であり、ペルソナを外すとその分岐は『女神転生』ルートと『デビルサマナー』ルートに分かれる。

 最終的に人類社会が崩壊する『女神転生』ルートよりは人類社会が存続した『デビルサマナー』ルートの方が良いわけで、そのあたりの差異点を俺はメモに書き記してゆく。

 

 

『女神転生』ルート

 メシアVSガイアの戦争から人類社会崩壊。

 

『デビルサマナールート』

 基本はファントムソサエティーの陰謀をクズノハ等の悪魔召喚師が妨害する。

 人類社会は存続する。

 

 

 問題なのは、この世界が闇鍋多重クロスをやっている事で、このあたりも両方登場しているのだ。

 ありがたい事に偉い人の名前はちゃんと出てくるからこの国はありがたい。

 米国大使トルーマンは元気に米軍基地に親善訪問し、市ヶ谷駐屯地に駐屯している第32普通科連隊の連隊長が後藤一等陸佐となっている。

 で、通信行政を管轄する郵政省事務次官が西次官で情報環境モデル都市の天海市を建設中、この平崎市有力市議会議員の山城議員は現在都市再開発計画を強力に推進中と。

 

 ……駄目じゃね?この国……

 

 この時点でお腹いっぱいなのだが、これに他の物語世界が重なるのだから闇鍋感が凄いことに。

 『Fate/Zero』への介入をする前にホーム世界であるメガテン世界をなんとかする必要がある訳だ。

 これは同時に、『Fate/Zero』への介入時にクスノハ等のサポートを受けたいという下心もある。

 

「さて、問題はどうやってクズノハの信頼を得ることができるかだが……」

 

 詰まる所そこである。

 ヤタガラスの所属とは言え、俺の話を鵜呑みにするほどクズノハもお人好しではない。

 聞いてもらうには、最低限ギブ・アンド・テイクの関係ぐらいにまで持ってゆく必要がある。

 

「なら簡単じゃない。

 この地の事件を解決していけば、向こうから接触してくるでしょう♪」

 

 実に分かりやすい解決手段を叢雲が提唱し、俺は苦笑する。

 その苦笑に叢雲がちょっと機嫌を悪くする。

 

「なにか問題があるの?」

「いや。

 そっちじゃなくて、それをする為には準備が居るなと。

 この世界、呪殺や石化が洒落でなく怖いんだ」

「何それ?」

 

 叢雲の質問に俺はステンノの方を見て一言。

 

「ステンノの全対象宝具と思ってくれれば分かるだろう?」

 

「あら?

 そんなに怖いのなら、私マスターに守ってもらおうかしら?」

 

 ステンノの不機嫌そうな声に、俺と叢雲が笑う。

 なお、『デビルサマナー』のストーリーはあまり後味の良い終わり方ではない。

 せっかく女神のお墨付きがあるのだ。

 好き勝手して、ハッピーエンドを目指してみるとしよう。

 

 

 

「何か用か?」

 

 宿泊先であるホテル業魔殿の地下で、オーナーであるヴィクトルの前に叢雲の船体から持ってきたあるものを見せる。

 

「こっ、これこそ我の求めしドリー・カドモン、神の定めし法を破りしもの……」

「これは差し上げます。

 その代りお願いがあります」

「出来うる限り考慮しよう。

 何が望みだ?」

「大した事ではないですよ。

 ここに拠点を作りたいので、今の部屋を半永久的に借りたい。

 そして、パソコンとDDS-NETを繋げてください。

 それだけです」

 

 本腰を入れて『デビルサマナー』シナリオを攻略する。

 こっちを片付けた結果『女神転生』シナリオ突入というパターンもありえるが、クズノハとの信頼構築は他の世界シナリオでも有効だろう。

 ぶっちゃけると、葛葉ライドウの安心感はパない。

 

「それならば問題は無い。

 手配しよう」

 

「お願いします。

 俺達は少し出かけてきます」

 

「何処に行くんだ?」

 

 聞いてきたヴィクトルに俺はあっさりと言う。

 

「ちょっと悪魔退治に」

 

 俺達のパーティーはとにかく支援・回復要員が居ない。

 叢雲もステンノも俺も押し切れる戦力ではあると思うが、王道のバフの重ねがけができる仲魔を作る必要があった。

 そんな仲間を確保するのが目的である。

 ゲーム的には地下水道がそんな悪魔の湧く場所なのだが、叢雲とステンノの嫌そうな顔で全てを察する。

 で、仕方なく笠置山に向かう。

 いい感じで異界化しているから、物語が始まるのもそろそろなのかもしれない。

 

「がんばりましょう♪サマナー♪」

 

 宝石などを貢いで忠誠MAXとなったハイピクシーがやる気を出しているが、ある意味ちょろい悪魔である。

 こっちはそれがありがたいのだが。

 

「氷川神社には顔を出さなくていいの?」

 

「顔を出しておくか。

 土地神様に挨拶しておくのは大事だからな」

 

 という訳で、笠置山と氷川神社を巡って、こんな悪魔を仲間にできた。

 

 夜魔 ザントマン

 妖鬼 ヤマワロ

 龍王 ヤトノカミ

 

 アームターミナルの悪魔搭載の最大数は6体で、既に3体埋まっている。

 文車妖妃は情報収集で使うし、ハイピクシーは完成させたので合体させるつもりはない。

 で、ベースは妖精ジャックランタンとなる。

 

 妖精 ジャックランタン + 夜魔 ザンドマン   = 天使 プリンシパリティ

 龍王 ヤトノカミ    + 妖精 ジャックフロスト= 神樹 ナルキッソス

 妖鬼 ヤマワロ     + 地霊 ノッカー    = 鬼女 リャナンシー

 

 天使プリンシパリティは聖騎士風だからまだ連れて歩けない訳では無い。

 エンジェルに比べてだが。

 

「もうちょっときちんとした回復系が欲しいんだよなぁ。

 そうなると女神を探さないといけない訳だが……」

 

 悪魔辞典を使って買えるのでまだ助かっているが、ベースとなる悪魔にまだあまり出会っていないのでかネックになっている。

 そこでふと思いつく。

 

「なぁ。ヴィクトル。

 ちょっと聞きたいんだが……」

 

「あたしは女神アメノウズメ。

 今後ともヨロシクネ♪マスター♪」

 

「……」

「……」

 

 叢雲とステンノの視線がとても痛い。

 まぁ、この街の風俗街のストリップ劇場に突撃をかければこうなる訳で。

 案の定ナンバーワンの踊り子だったので契約時に劇場に支払う違約金が結構凄いことに。

 お金持ちで良かったとつくづく思い知る。

 

「ねえ。

 サマナー。契約してよ♪

 はやくはやくぅ♪」

 

 契約していないのについてきたおまけが夜魔リリム。

 そりゃ風俗街は彼女にとってうってつけの場所で、そんな所をサマナーがふらふらと歩いていれば、ほいほいついてくる訳で。

 叢雲とステンノの視線が本当に痛い。

 

「私達だけじゃ足りないのかしら」

「本当にこいつは……」

 

 ツンツンしているがしている事はしている訳で、そのデレは夜にならないと発揮されない訳で。

 今回は仕方ないとは言え、男が完全に悪い事例である。

 

 女神 アメノウズメ   + 神樹 ナルキッソス  + 鬼女 リャナンシー = 地母神 ズェラロンズ

 地母神 ズェラロンズ  + 天使 プリンシパリティ            = 大天使 イスラフィール

 大天使 イスラフィール + 夜魔 リリム     + 地母神 ズェラロンズ= 女神  ブリジッド

 

「私の名前は女神ブリジッド。

 今度ともよろしく。サマナー」

 

 ブリギッドとも言い、ケルトの女神である。

 単体全回復のディアラハンを覚えさせるのにこの苦労である。

 メガテン奥義のバフかけぶん殴りまでとても手が回らない。

 

「で、どうやって敵を引っ張り出すの?」

 

 まだ機嫌が悪い叢雲の質問に、俺はあっさりと答えた。

 行政が悪魔に乗っ取られ、警察も動かない、その為ヤクザがやりたい放題。

 だったら、一番叩きやすい所を叩くのみだ。

 

「天堂組を潰すのさ」




 巻いていきたい所だが、作者的にもこの物語の書き方を模索している所。

 『ソウルサマナー』に居ない悪魔の解釈
 悪魔が市政乗っ取っているよね>>封印壊して悪魔でているよね?>>じゃあそれにまつわる場所に行ったら悪魔いるんじゃね?
 そんな感じで緩くやっている。

 悪魔合体表とにらめっこして女神が居ないと詰むと絶望して、アメノウズメの存在を思い出した自分を褒めてやりたい。
 ついでにリリムもついてきたがご愛嬌。


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チートオリ主特権の悪の組織の潰し方

 市の上層部が敵で、警察も乗っ取られており、ヤクザが好き勝手している。

 ではどうするか?

 転生チートオリ主の最もチートな所以は、原作知識を持っているから、問題解決の最短ルートをとれる所にある。

 だからこそ、市議会議員・警察署長・組長をぶっ潰すのが正解なのだが、それをするとこっちが犯罪者である。

 

 泥をかぶってもらう人間が必要だった。

 

「ホテル業魔殿に聖堂教会のシスターさんが宿泊したそうよ」

 

 叢雲の言葉に俺はニヤリと笑う。

 一旦横須賀に帰った俺達は、その途中で匿名の手紙を冬木市の聖堂教会に送りつけた。

 『平崎市に吸血鬼が居て、人々を襲っている』という内容と証拠込みで。

 ステンノの気配遮断A+はまじで重宝する。

 組事務所での吸血活動などの写真と、平崎市の連続殺人事件の記事を送りつけたので彼らが動かない訳にはいかなかったのだ。

 聖堂教会は特に吸血鬼を目の敵にしている組織だったりする。

 

「宿帳の名前は知恵留美子ですって。

 その翌日、天童組組長宅が大火事に見舞われたって。

 何ででしょうねぇ?」

 

 ステンノの言葉に俺は納得する。

 そりゃ型月世界の闇鍋だからそっちからも来るよなぁ。

 『月姫』のシエル先輩である。

 で、さっそく天童組を粛清したと。

 

「で、よそ者が好き勝手暴れるのを現地のクズノハが黙って見ている訳もなく、双方いがみ合って、その仲裁を第三者に求める。

 国の機関であるヤタガラスに。

 悪党よね。そのあたり」

 

 叢雲の呆れ声に俺は手を広げて潔白をアピールする。

 こうして善意の第三者として堂々と出て行けるのだ。

 

「お役所仕事ってのはこんなもんさ」

 

 

 

 改めて平崎市に到着し、ホテル業魔殿にチェックインすると今度はちゃんと現地のクズノハに挨拶に行く。

 くずのは探偵事務所の主である、葛葉キョウジにだ。

 まだ殺人事件は起こっていないので、彼は葛葉キョウジ本人である。

 

「開いてるぜ。

 ヤタガラスのサマナーさんよ」

 

 ドアの前から声がして、事務所の中に入ると、葛葉キョウジとそのパートナーであるレイ・レイホゥが俺達を睨んでいる。

 

好感度判定 100ほど好意的 -10の修正つき

 葛葉キョウジ 17-10=7

 レイ・レイホゥ 4-10=-4

 

「あら?

 あまり好意的とも思えないわね」

「まぁ、こっちに義理なく好き勝手してくれたらそうなると思わないかい?」

 

 ステンノの皮肉に、葛葉キョウジも皮肉で返す。

 レイ・レイホゥに至っては敵意を隠そうとしない。

 

「ヤタガラスのサマナーである 入即出やる夫と申します。

 今回は、第三者として……」

 

 葛葉キョウジが机を叩く。

 ある意味実に彼らしい。

 多分、この有能な探偵は、こちらの仕掛けを全部見抜いているのだろう。

 

「御託は言い。

 さっさと情報を寄越せ。

 後はお前らよそ者でなく、俺達でやる」

 

「……こういうまどろっこしい手を使う意味を理解していただけると助かるのですがね。

 お話ししますが、天童組組長宅の火事、うちは隠蔽工作なんてしていないんですよ」

 

「何だと?」

 

 葛葉キョウジの目に探偵の火が灯る。

 たとえデビルサマナーをやっていても、探偵なんて職業を名乗っている以上、謎なんでものをぶら下げればいやでも食いつくのが探偵という人種なのだ。

 

「まさか、警察?」

 

 レイ・レイホゥの疑問系に俺はテーブルの上に書類を投げる。

 政府機関経由で申請した、銀行口座の金の流れである。

 

「悪魔と言えども、税務署をごまかすにはそれ相応の努力が必要なんですよ。

 平崎市の都市再開発は、天童組が莫大な資金を投じて地上げをかけているのに、市がそれを摂取した価格は適正価格になっている。

 おもしろいですよね。

 天童組は帳簿上では大赤字なんですよ。

 じゃあ、その赤字は誰が補填したんでしょうね?」

 

 金の流れは明確だ。

 そしてそれ以上に面白いのが人の流れである。

 

「平崎警察署ですが、神奈川県警の人事移動の特異点になっているんですよね。

 警察署長は癒着などを避けるために、ある程度のたらい回しをする慣例があります。

 神奈川県警は天童組と関係があるらしい中込敦署長を交代させたがっていたが、今までそれは成功していません。

 県警関係者が漏らしていましたよ。

 『藤原市長が県警本部に来て「彼は優秀な人材だ。離れられては困る」と陳情して回った』と。

 その意味をもう少し考えていただけたらこちらも助かるのですけどね」

 

 二人の顔から敵意が消える。

 二人が想像している以上にこれはでかいヤマなのだ。

 まぁ、市長の一存でどうこうものではないが、西郵政省次官あたりがお願いしたら通りそうなのが日本組織である。

 

「警察署長と市長がグル?」

「いや、市長は傀儡だ。

 彼を操っているのは市議会議員の山城誠一。

 そいつが今回の敵という訳だ」

 

 レイ・レイホゥの呟きに葛葉キョウジが核心を突く。

 ここまで来たら、後は大丈夫だろう。

 

「我々はお役所仕事ですからね。

 市長自らお願いに来られるようだと動けないんですよ。

 二人、およびクズノハのプライドを傷つけました事をここにお詫びさせていただきます」

 

 日本人固有スキル『謝罪』である。

 ぐっと90度近くまでかがめるのがポイント。

 

「わかった。

 腹は立つが、謝る人間を殴る趣味はねぇ。

 謝罪は受け入れよう」

 

 葛葉キョウジが謝罪を受け入れたのを確認して、俺は最後に一冊の本を二人に差し出した。

 この問題のきっかけとなった、『日本古代文明論』。

 文車妖妃を図書館に行かせて、確保しておいたのだ。

 貸出カードの名前は、葛葉キョウジにしている。

 後は二人にまかせて十分だろうと判断して、俺達はくずのは探偵事務所を後にした。

 

 

 

好感度判定 100ほど好意的 -10の修正つき

 知恵留美子        86-10=76

 

 俺達がホテル業魔殿に帰るとちょうど客人が待っていた。

 同じホテルに泊まっている、聖堂教会の知恵留美子と名乗った彼女は、かなり好意的にこちらと接してきた。

 

「聖堂教会より派遣された知恵留美子と申します。

 ヤタガラスの監視役さんにはこちらまで来ていただきお手数をおかけしています」

 

 冬木市で聖杯戦争なんてものが始まる前に降って湧いたような吸血鬼騒動である。

 裏工作に勤しんでいた、言峰璃正からすれば万全を期す為にも放置する訳にも行かず、最強の切り札を欧州から持ってきたという所だろうか。

 そんな状況もあって、彼女はとても下手に出ていた。

 

「ヤタガラスの入即出やる夫と申します。

 隠蔽工作までやってくださって、こちらとしても助かりましたよ」

 

「え?

 天童組の隠蔽工作はそちらがやったんじゃないんですか?」

 

「え?」

 

 沈黙がしばらく続くが、からくりを知っている俺からすれば、笑ってはいけない沈黙である。

 そして俺は情報を小出しに出してゆく。

 

「警察の発表でしたから聖堂教会が手を回したものだとてっきり」

「いえ。こちらはまったくその手のコネが無かったので、現地の退魔組織にお願いしたとばっかり」

「じゃあ、市の方から無事に片付いたという報告が来ていますが、これは?」

 

 葛葉キョウジと知恵留美子が合同で敵と当たる訳がないと踏んだ上での情報誘導。

 この手のポイントは嘘は言わないことと、重要な事は言わないことだ。

 

「ほら。

 ヤタガラス名義で市に確認をとったら、『火事なので問題なし』と」

「では、現地の退魔組織の方がやったのでは?」

「さっき会ってきましたが、『俺達をのけ者にしやがって』とカンカンでしたよ。

 ひたすら頭を下げていたんですから間違いがありません」

 

 そして俺達は黙り込む。

 これらのやり取りで、第三者の隠蔽工作が行われ、しかも警察や市内部に天童組の内通者が居るという情報が知恵留美子の中で組み立てられる訳だ。

 で、ここでわざと引く。

 

「それでも、吸血鬼は退治されました。

 現地の退魔組織も捜査をすると言っていますし、聖堂教会の方にこれ以上ご迷惑を……」

 

「いえ。

 私の仕事はまた終わっていないみたいですね」

 

「わかりました。

 我々は一度調査のため戻ります。

 何かありましたらこちらに連絡ください」

 

と、名刺を渡して、その夜の最終電車で横須賀に戻ることにした。

 

「悪党」

「ひどい人」

 

 叢雲とステンノ二人の感想に俺は沈黙で答えた。

 

 

 その後の展開

1 葛葉キョウジレイ・レイホゥ

2 知恵留美子単独

3 合同

 

シド・デイビス 1

警察署長    3

市議会議員  3

 

結果

 シド・デイビス 58 VS 葛葉キョウジ レイ・レイホゥ 36+22

 

 警察署長 87 VS 葛葉キョウジ レイ・レイホゥ 知恵留美子 1+64+74

 

 市議会議員 38 VS 葛葉キョウジ レイ・レイホゥ 知恵留美子 65+55+49

 

 

 結果だけ先に書こう。

 『日本古代文明論』を巡る戦いで、シド・デイビスにあわや敗北の所まで追い詰められた葛葉キョウジとレイ・レイホゥは、知恵留美子との合同捜査に切り替える。

 実際、警察署長が変化した悪魔との戦いでは、葛葉キョウジが一撃で沈められあわやという所まで追い込まれたが、なんとか撃破。

 慢心を戒めた三人は市議会議員が変化した悪魔との戦いも危なげなく撃破したのはいいが、

シド・デイビスは未だ姿を表していなかった。

 そして署長と有力市議会議員の失踪に平崎市政は大混乱となってしまい、他所からの介入を招いてしまう。

 

進出度 100でノリノリ

 時計塔            46

 聖堂教会          45

 関東魔法協会       23

 関西呪術協会       34

 十字教            51       

 メシア教           46

 ガイア教           79

 

 ノリノリで進出してきたのはガイア教である。

 この地に封じられた神の力はたしかに力を求めるガイア教には魅力的であり、他勢力の牽制を尻目に一気に乗り込んできて勢力を確保してしまっていた。

 そんなガイア教の新たな拠点はお寺でありその名前は命蓮寺。

 そこの住職は聖白蓮。

 

 イラン事をするとろくでもないしっぺ返しが来るという教訓に俺は頭を抱えるしか無かった。




今回は作者の練習会。
 サイコロを振る場合の補正のかけかたを考案中。

知恵留美子
 『月姫』のシエルの偽名だが、『ひぐらしのなく頃に』のキャラでもある。

聖白蓮
 『東方星蓮船』ボス。
 やる夫系メガテンではガイア教の大物として登場する事が多い。
 サイコロの結果、ガイア側強化という結果になったので、作者は頭を抱えている。
 多分、アストラル界に行った時に誰かが封印された白蓮を助けたんだろうなぁ……


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クロスオーバーは出汁を作るがごとく味をかけ合わせるべし

本格的にサイコロ運用を始めてゆく。

1 元世界ベースのレベル設定
2 現在世界に対するバフ・デバフ修正
3 サイコロでブースト

一応これでやってみる


人間キャラのベースレベルは、女神転生TRPGの概念を修正して使う予定
0-10   愚者
10-20  異能者
20-30 覚醒者・達人
30-40 転生者・導師・達人
40-50 超人


この手のレベルが設定されているキャラについては極力それを尊重する。


証拠写真
https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1065447430752063488


 平崎市の吸血鬼騒動は、その捜査を妨害していた行政・警察・ヤクザが壊滅したのはいいが、事件そのものの主犯であるシド・デイビスを取り逃がす結果となっていた。

 このままでは意味がないので、さらなるカオスを覚悟で、別勢力を呼び込むことを決断する。

 何でか伝が生えていた関西呪術協会である。

 

「いらっしゃいませ。やる夫様。

 お客様がお待ちになっておりますが?」

 

 ホテル業魔殿に着くと、いつの間にか居たメイドが俺達に挨拶をする。

 ヴィクトル……造魔のメアリを作れたんだなぁ……

 

「少し落ち着いたら、部屋に呼んでくれ。

 それで客人の名前は何て言うんだ?」

 

「たしか、天ヶ崎様とおっしゃっていましたが」

 

 予想通りだ。

 この時期、関西呪術協会の名前持ちで動ける人間は少ない。

 接触を試みたら、絶対出てくると思っていた。

 陰陽師の姿で入ってきた天ヶ崎千草はスーツ姿の俺を見て、軽く失望する。

 

「陰陽師の名のある家に生まれておきながら、あんたも西洋にかぶれはりましたか」

 

 彼女の第一声がこれである。

 軽い失望を隠そうともしない。

 

「西洋というより機械にかぶれたと言った方が正しいな。

 儀式、呪文、生贄。

 それらを間違えること無く常に安定して召喚できる。

 そういう所まで、この世界の科学は来てしまった。

 これからは、東洋も西洋も無く、科学と魔法が対決するだろうよ」

 

「なんや。

 あんた学園都市の方にかぶれはったんか。

 まぁ、関東にかぶれるよりはましやわ」

 

 互いの立ち位置を確認しながら、話を進めてゆく。

 まだ少女の天ヶ崎千草は将来有望ではあるが、ここではメッセンジャーでしかない。

 それでも立ち位置の違いを我慢して、交渉に臨もうとする心意気は気に入った。

 

「関西呪術協会では、あんさんに関西に戻ってきて欲しいと思うとります」

「知っているかどうかしらんが、俺が使役する付喪神の本体は横須賀港にいる駆逐艦だ。

 俺はそいつと別れるつもりは無いぞ」

「日本海の舞鶴ならどうどっしゃろ?

 あそこなら自衛隊の基地もありますえ」

「ヤタガラスの籍を持ったままでいいと?」

「もちろんどす。

 政府とのつながりは多いほうがよろしおすから」

 

 舞鶴港は冬木市の隣りにある。

 Fate/Zeroに介入するなら、関西呪術協会に筋を通しておく必要があるだろう。

 

「近く、訓練航海の名目で舞鶴港に寄港する。

 その時に更に条件を詰めてゆきたいがどうだろうか?」

 

「ええでっしゃろ」

 

 一応これで彼女の話はおしまいである。

 それで帰ってくれればいいが、彼女には両親を殺された復讐がある。

 力を持つ俺を取り込みたいなら、次の言葉は簡単に予想がつく。

 

「あんさんはこの街の事件に関わってはりますの?」

 

「現地勢力と外部勢力の調整をしている。

 事件を妨害していた組織を壊滅に追い込んだが、その主犯が未だ見つかっていないんだ」

 

「でしたら、うちがお手伝いしましょか?」

 

  

天ヶ崎千草

 ベースレベル                 34

 メガテン世界修正 ベースの94% =  31

 サイコロブースト  +27% =  39    問題なく魔法が使えるので+修正

 

 

 あ。

 この娘かなり強い。達人レベルだ。

 こそっとアナライズしたが、きっと復讐のために全てを捧げたのだろうなぁ。

 口には出さないが、じっと値踏みするような目で見て、白々しくため息をつく。

 

「借りを作るのは嫌なんですが、ここまで来た貴方に敬意を払いましょう」

 

 なお、俺が連れてきた叢雲とステンノを見てえらく驚いたのは言うまでもない。

 

 

 

知恵留美子

 ベースレベル                100     原作修正 

 メガテン世界修正 ベースの81% =  81

 サイコロブースト  +78% = 144     問題なく魔法が使えるので+修正

 

 

「どうも。

 聖堂教会によって派遣された知恵留美子と申します」

 

「関西呪術協会の天ヶ崎千草や。

 よろしゅうに」

 

 くずのは探偵事務所にて顔合わせと対策会議。

 改めてシエル先輩を見るとこの人洒落でなく強いな。

 ガチでは勝てないから、何か手を考えないといけない。

 そして、そんな彼女をもってしても勝てなかったアルクェイド・ブリュンスタッドの化物ぶりを思い知らされる。

 

 なお、葛葉キョウジのレベルは60。

 レイ・レイホゥのレベルは39である。

 

 そりゃ、シエル先輩天童組に単機特攻できる罠。

 叢雲とガチでステンノの男性特攻宝具が効かない相性最悪の敵になりかねん。

 

「ここの事務所の主の葛葉キョウジだ」

「レイ・レイホゥよ」

「ヤタガラスの入即出やる夫と申します。

 さて、挨拶も終わった所で、現状を確認したいと思います」

 

 俺は皆の前で現状を報告する。

 要するに、市政と警察が混乱して治安が悪化。

 自治組織が出来て、それがガイア教と結びついた。

 それを取りまとめたのが聖白蓮という人物であるという事を告げると、葛葉キョウジが「あいつか」と小さく呟く。

 

「ご存知で?」

「疑似アストラル界でそれに出会って、山城議員討伐に協力してもらったかわりに封印を解いた。

 悪いやつじゃなさそうだったからな」

 

 だろうなぁ。

 ある意味正しいが、先を考えると頭が痛くなる。

 そんな俺の心なんて知らずに、レイ・レイホゥが情報を出す。

  

「『日本古代文明論』にかかれていた結界の大部分が破壊されていたけど、聖白蓮さんが命蓮寺で結界を張り直してくれたおかげて、ギリギリ持っている感じ。

 主犯のシド・デイビスを倒すには、この命蓮寺を落とさないと無理ね」

 

 それだけでもわかったのは収穫である。

 

「ならば、手は一つだ。

 命蓮寺で待ち伏せる」

 

 

 

 という訳で、命蓮寺での待ち伏せを許可してもらうために、交渉役として出向いたのだが……

 

「何者です!?」

 

 という少女その1。

 

「何ですか!

 名を名乗りなさい!

 何で黙って見ているんです!!」

 

 と言っている少女その2。

 二人ともその胸は豊満であった。

 

「やる夫」

「マスター」

 

 いかん。

 叢雲とステンノの視線が豚を見るような目になっているので、そろそろ要件を口に出す。

 

「ヤタガラスの入即出やる夫と申します。

 ここの住職に取り次いでもらいたいのだが……失礼だがお名前を聞いてよろしいか?」

 

 どうみてもレオタードですな衣装にクナイを構えていた少女二人は、誇らしげに自己紹介をする。

 

「私は対魔忍の水城不知火!」

「私は対魔忍の井河アサギです!!

 後藤一等陸佐の紹介にて、ここにて修行をつけてもらっている身!!」

 

「……」

 

 そっかー。

 悪魔が出てるし、エロもありな女神転生だから『対魔忍アサギ』と繋がっていても何も問題はないな。

 こいつら、ガイア教っぽいし。

 

「こら。

 たとえ妖怪を連れていても、良い人と悪い人を見分けるように言ったじゃないですか。

 ようこそいらっしゃました。

 歓迎いたします」

 

 

水城不知火

 ベースレベル                 9 

 メガテン世界修正 ベースの71% =  6

 サイコロブースト  +99% =  11     問題なく魔法が使えるので+修正

 

井河アサギ

 ベースレベル                 10 

 メガテン世界修正 ベースの50% =  5

 サイコロブースト  +28% =  6     問題なく魔法が使えるので+修正

 

聖白蓮

 ベースレベル                 100    原作修正 

 メガテン世界修正 ベースの68% =  68

 サイコロブースト  +86% =  126     問題なく魔法が使えるので+修正

 

 

 この尼さん一人で大丈夫じゃないかなと思ったが、それをすると対魔忍コンビが死ぬのかと思い直し、シド・デイビス討伐の為の待ち伏せの許可をお願いし、快く了承された。

 




 冬木市が日本海側の都市である事。
 『氷室の天地』で彼女たちが修学旅行で500系新幹線(JR西日本)に乗っていた事から、京都の舞鶴の近くに作られた街とこの話では設定。
 また近くに由良川河口という冬木の地形によく似ている場所があってここにしようと。
 元が神戸ってのは知っているけど、日本海側って書かれているのがネックなんだよなぁ。

造魔のメアリ
 出て来るのは『ソウルハッカーズ』

天ヶ崎千草
 『魔法先生ネギま!』での敵の一人。
 年表で確認したけど、魔法世界の大分烈戦争が停戦したのが83年。
 この時、子供だったとしたら、93年時点で10+α歳。
 という事は、2003年で20+α歳という訳で。

水城不知火
 『退魔忍ユキカゼ』
 アサギより少し年上らしい。

井河アサギ
 『対魔忍アサギ』
 アサギ3で33歳なのだが、これの販売が2012年。
 2012-33=1979年生まれで93年だからこの時14歳。

補足
 もちろん二人は頭対魔忍設定


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ハメ殺しが確定しているので、尺稼ぎの方に苦労した話

スキルについては、100判定で、レベル以下で成功にする。
あっ……

ゲームで過小評価されているけど、このスキル群、二次創作だと凶悪すぎる。


証拠写真
 https://pbs.twimg.com/media/Dsq8RG2U8AEL95l.jpg


 命蓮寺で待ち伏せという事だが、念のためにチームを二つに分けることにした。

 ヒロインの一人である秦野久美子が狙われる可能性があったからで、彼女がここの封印の神様の子孫である事を伝えて、監視と保護を頼んだのである。

 そっちの方は葛葉キョウジとレイ・レイホゥとシエル先輩にお願いしている。

 

「ごめんください。

 宅配便ですけど、住所はこちらでよろしいですか?」

 

「?

 宅配便なんて頼んで……」

 

「はい。

 こちらで大丈夫です。

 本堂に運んでください」

 

 罠と思って露骨に警戒している井河アサギを押しのけて、俺が出ていってサインをする。

 もちろん主の聖白蓮の許可はもらっている。

 

「入即出さん。

 一体これは何なのですか?」

 

 水城不知火の言葉に俺達は降ろされた十数箱の中身を本堂で開ける。

 出できたのは大量の書類の束。

 平崎警察署警部の百地英雄に協力してもらって、平崎市と天童組の財務関連のデータのコピーをもらってきたのである。

 そんな箱の一つを開けて俺はニヤリと笑う。

 

「……ふぅん。

 平崎警察署の財務記録までつけてくれたのか。

 あの警部さん分かっているじゃないか」

 

 対魔忍コンビ二人が頭に『?』を浮かべたままなのに対して、俺はCOMPから文車妖妃を召喚する。

 

「この書類を調べて金の流れを追うぞ」

 

 一応組織人である天ヶ崎千草の方が理解して、文車妖妃の指示の元で書類の整理をはじめていた。

 叢雲も俺の秘書艦を長く努めていたので、この手の書類仕事はちゃんとできるようになっている。

 一方で対魔忍コンビは何をすればいいかというより、何をやっているのかすら分かっていなので、叢雲につけてその指導を任せることに。

 りっぱなお局ぶりに俺も……

 

「何考えているのかしら?司・令・官」

「何も」

 

 雉も鳴かずば撃たれまい。

 だまって書類を見続けること数時間。

 お目当てのものが見つかりだす。

 

 

「おうおう。

 出てくるわ出てくるわ。

 用途不明金の山だらけじゃないか。

 東京地検に引き渡したら涎が垂れるんだろうな。こいつ」

 

 天童組の不正経理までは掴んでいたが、平崎市から見ると更に新たな企業が追加される。

 その名前はアルゴン社。

 このゲームの続編である『ソウルハッカーズ』に出てきており、ファントムソサエティー側と協力関係にある。

 で、ここからが問題なんだが、この平崎市を通じて金の流れが複雑怪奇に入り乱れている。

 天童組の赤字状態の解消だが、平崎市ではなく天海市の方で金を得ていたのだ。

 からくりはこう。

 政府の『次期情報都市政策』において情報環境モデル都市に指定され、再開発された天海市は全面的に作り変えられたが、その開発を一手に引き受けていたのがこの天堂組という訳だ。

 ヤクザは地上げと同時に土建業も営むことが多いので、その土建で金を稼いでいたと。

 国の事業だけにその予算は桁違いであり、そこから適度に着服していただけで裏金の出来上がり。

 それで終わらないのがこの世界である。

 

「天童組を隠れ蓑に政界工作を派手になさっているみたい。

 その金を天童組に提供しているのがダミー会社を通じてですけど、その本体が多国籍複合企業体のノマド」

 

「「なんですって!?」」

 

 文車妖妃の報告にその世界出身の対魔忍コンビが慌てて駆け寄る。

 ある意味納得の配役であるが、それは政府がかなり悪魔というか魔族に買収されている事を示している。

 そりゃ、アメリカも核を撃つわけだ。

 納得はしないが。

 

「何でこいつらを処分しないんですか!」

「そうです!

 我ら対魔忍の力を以てすれば……」

 

 対魔忍コンビの憤慨に俺は水を差す。

 淡々と、だけどその言葉は重たく容赦ないように。

 

「けど、ノマドから遠慮なく資金をもらっているの、後藤一佐とその対魔忍だぞ。

 ほら」

 

「「え!?」」

 

 対魔忍コンビ二人が完全に固まる横で、戦災孤児である天ヶ崎千草。

 淡々と出る言葉にある種の諦めがある。

 

「ようある事どすな。

 この国は先の戦で負けてから、麻帆良と学園都市という二つの租界みたいなもんを作られて手足を縛られとりますからな。

 表は米国の、裏はこいつらの植民地という事どっしゃろ。

 それを打破するために悪魔の力も借りる。

 人というのは、哀れで滑稽な生き物どすなぁ」

 

 自分自身に全部跳ね返っているのをわかった上で天ヶ崎千草は自虐の笑みを浮かべる。

 二次創作でよく出ていた、麻帆良学園と学園都市へのスパイの元はこの世界ではこっちの方か。

 とはいえ、関西も間者は放っているのだろうが。

 笑うのが、麻帆良学園を中心とした彼らが正義を行使しているおかげで、この国は完全に悪魔に乗っ取られずに済んでいるという所だろうか。

 あと、このデータはシエル先輩に提供しておこう。

 これで彼女は、この国に長期滞在確定である。

 なぜならば、ノマドの創始者のエドウィン・ブラックは不死者にして真祖の吸血鬼なのだから。

 アヘ顔ビデオレターがやってくる事もあるかもしれないが、そこはエロゲヒロインだから大丈夫だろう。

 

「……うちの顔に何か?」

 

「いや。

 なんでもない」

 

 そういえば、麻帆良学園にも吸血鬼の真祖が居たなぁ。

 多分知っているから黙っていよう。

 二次創作系だと、彼女の抹殺目的の侵入者も結構居た覚えが。

 そんな事を考えていたら、ある企業と人物に目が行く。

 

「豪和インダストリーに西田啓か……」

 

 多分、後藤一佐の主導するクーデターの精神的支柱はここだろう。

 となると、TAことタクティカルアーマーは現在開発中と。

 あった。

 後藤一佐の幕僚に広川三佐の名前発見。

 それと北海道の陸自の帯広駐屯地にえらくセキュリティーレベルの高い実験中隊が作られていやがる。

 これが多分デモニカスーツの流れになると見た。

 あ。

 他にも、甲斐冽輝や柘植行人の名前を発見。

 おまけに彼らのセキュリティーのえらく高い計画、多分クーデターなんだろうがそのコードネームが『皇帝のいない八月』と来たもんだ。

 この計画にファントムソサエティーは大規模な支援を行っていた。

 彼らの本命は間違いなくマニトゥの方で、クーデターもこの平崎市も陽動という所か。

 メシアが、核ぶっぱの千年王国を目指しているから、ガイアも過激にやっているだろうと思ったが、出るわ出るわやばいぶつが。

 何よりもやばいのが、そのヤバさが作品世界で分断されているので、そのヤバさを俯瞰的に説明できるのが俺しかいないという所が特に。

 

「サマナー!

 シド・デイビスがやってきた!!

 今、聖白蓮さんが相手をしている!!!」

 

 ハイピクシーが慌てて部屋に入ってきたので、俺はステンノにこう言う。

 

「ステンノ。

 魅惑の美声Aと女神のきまぐれAをたのむ」

 

「はーい♪」

 

 霊体化したステンノが気配遮断A+で門のまえにこそっと近づいて、スキル発動。

 

「うふふふ。

 楽しいわ♪

 とってもね♪」

 

 『女神のきまぐれA』は、味方全体の攻撃力を20%アップ+『神性』特性の味方全体の攻撃力を20%アップするスキルである。

 さて問題だ。

 伝説の僧侶で聖の名持ちである彼女に神聖特性が無いのだろうか?

 そんな訳がない。

 つまり、

 

 聖白蓮 Lv126 × 20%UP × 20%UP =181

 

「じゃあ、これならどうかしら?」

 

 おまけに、ステンノの奇襲に近い魅惑の美声Aが発動。

 シド・デイビスはステンノの姿を見て思わず動きを止める。

 それを見逃す聖白蓮ではなかった。

 

「南無三!」

 

 

 

「サモナー。

 思ったのですが、支援要員が居ないとおっしゃられていましたが、あのお方が居れば、事足りるのでは……」

 

 さらっと『女神の気まぐれA』で特盛バフがちゃんと乗った『女神』ブリジッドのツッコミに俺はただ肩をすくめるだけで答えた。




多国籍複合企業体ノマド
 『対魔忍アサギ』世界の暗黒メガコーポ。
 大体こいつらが悪いでかたがつくので便利。

豪和インダストリーに西田啓
 『ガサラキ』。
 ゴトウのクーデターは、首謀者は居るがその精神的支柱がないなと思って探してきた。
 難民問題などかなり今に通じる設定に改めてびっくり。
 ゴトウは三島由紀夫のモチーフらしいが、彼が自衛隊内に居るよりもその精神的支柱が自衛隊外に居たほうが日本のクーデターらしいと思い設定。

甲斐冽輝や柘植行人
 『機動警察パトレイバー』。
 せっかく自衛隊にクーデターをさせるのならばと登場。
 後藤警部もこんな世界でカミソリを使わないといけないからかわいそうに……

『皇帝のいない八月』
 小林久三による小説。後に映画化された。
 改めて思ったけど、この頃の冷戦構造と自衛隊が軍隊で無いというトラウマは今の時代では多分理解できないのだろうなぁ。


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後始末と次の準備

 平崎市の後始末の話を語ろうと思う。

 藤原市長は生き残った。

 今ここで彼が失脚すると天海市の方まで飛び火するからと、ファントムソサエティーとガイア教の方で手打ちが結ばれたらしい。

 ガイア教はここに拠点を構築し、ファントムソサエティーはここから撤退する。

 警察の方は神奈川県警から署長を派遣するが、現場を知る百地警部を出世させて副署長扱いにしたとか。

 平崎市という市政については混乱はあったが、ともかくいままで通りという訳にもいかず、その穴はガイア教徒が埋めることになった。

 とはいえ、あれで穏健派なガイア教徒である聖白蓮は、自助努力による救済を掲げ、自治会や見回り活動を通じて悪魔討伐と市政再生を目指すらしい。

 そんな活動を支えるのが、現地勢力の葛葉キョウジとレイ・レイホゥ。

 それに修行中の対魔忍コンビの水城不知火と井河アサギである。

 せめて頭対魔忍が治って欲しい所だが、無理だろうなぁ。

 一方で、シエル先輩は後始末の見回りが終わったら、関東周辺の吸血鬼討伐を狙うらしい。

 となると、標的はデータをやったエドウィン・ブラックか、麻帆良学園のエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルなのだろう。

 俺達なのだが、拠点としてホテル業魔殿の部屋は残すことにしている。

 悪魔関係のオフィスとして、留守はメアリさんがやってくれるらしい。

 

「ほぉ。

 これがあんさんの船霊ですか」

 

 横須賀に戻った俺達に天ヶ崎千草はついてきた。

 籍がある関西呪術協会の連絡員としてであり、船の乗員としては従軍神官としてである。

 きちんと祀る事で叢雲やステンノをこの世界になじませる事ができるだろう。

 

「ああ。

 まだ改造中みたいだけどな」

 

 艦内に入ると、自衛隊員が敬礼して出迎えてくれる。

 自分が艦長という自覚が湧いてくるが、中に誰か自衛隊員以外の味方を入れたかったのも事実である。

 

「おかえりなさい。艦長。

 船の改造終了にはもう少し時間がかかりそうです。

 そちらの方は?」

 

「はじめまして。

 艦内神官としてこちらに厄介になる天ヶ崎千草と申します。

 どうぞよろしゅうに」

 

 副長代理の新島三佐と天ヶ崎千草が挨拶。

 そのまま、改造の進捗状況を聞く。

 

「艦橋下の無線室を取り払って、電子機器室を設置しました。

 設置するレーダーはあぶくま型と同じものを用意しています」

 

 そのまま図面を見せる新島三佐。

 少し図面が変更になっていた。

 

「で、お願いがあるのですが、後部の5inch砲を撤去できないでしょうか?

 取り払えると、そこにヘリの着艦スペースが作れます」

 

「だそうだ。

 叢雲。頼む」

 

「いいわよ。

 やってあげる」

 

 元々叢雲の装備はナノマテリアルで固定化されているから、叢雲の意思で装備の取り付け取り外しが可能ではある。

 とはいえ、今の改造みたいに後からつける装備についてはナノマテリアル化ができないから一々ドックに入らないといけない不便さもあるのだが。

 これで後部の5inch砲が撤去され、そこにヘリ用の着艦スペースを設置。

 25mm三連装機銃集中配備は空いている魚雷発射管スペースに設置される事となった。

 

「それと、一つ困った事が」

「何だ?」

「見てもらったほうが分かると思うのですが、冷蔵庫に……」

 

 あっ……

 三人揃って館内に設置した大型冷蔵庫のドアを開けると、

 

「ヒーホー♪」

 

 また湧いたジャックフロストが叢雲のとっておきのアイスを食べていた。

 激怒した叢雲に恐れをなしたジャックフロストが、仲魔にしてくれと頼み込んだのは言うまでもない。

 艦内神官がいるという俺の言葉を新島三佐が納得してくれたおまけもついてきた事をついでに書いておこう。

 

 

 

「めずらしい客が来たものだ。

 とりあえず歓迎はするよ。

 ようこそ。

 『伽藍の堂』へ」

 

 挨拶と共に俺に握手をするのは『伽藍の堂』の主である蒼崎橙子。

 俺と叢雲とステンノの三人での訪問だが、結界がはってあったらしく入り口前で主自身が待ち構えていた。

 型月世界屈指の人形師なのだが、その視線はじっと叢雲に注がれていた。

 

「お前が付喪神を手に入れたとは聞いていたが、これは人間そのものじゃないのか?」

 

「さてな。

 そもそも何を人間とするか、その定義からこれからは揺らぐかもしれん。

 その前に、突然の訪問の侘びをかねてこんなのを持ってきた」

 

 俺が合図をすると、叢雲が紙袋から人形を取り出す。

 ヒーホーくん人形である。

 

「これはこれで中々愛嬌があるな。

 まぁ、いいだろう。

 詳しい話は中にはいってからしよう」

 

 しばらく他愛のない話をした後で、俺は本題に入る。

 

「人形を作って欲しい」

 

 そしてステンノが袋から取り出したのはドリー・カドモン。

 明らかに蒼崎橙子の目の色が変わる。

 

「何だこれは?」

「で、これから生まれたのがこれだ」

 

 俺はそう言って、ホテル業魔殿のメイドのメアリを見せる。

 それを見た彼女はメガネを外して俺に問い詰める。

 

「待て。貴様。

 こんなのは『私の世界』には無いはずだぞ。

 貴様第二魔法でも手に入れたか?」

 

 おお。

 そこに気づくのか。実に素晴らしい。

 頼みに来たかいがあったというものだ。

 

「手に入れたというより、押し付けられたというべきかな。

 これからどんどん貴方が知らない人形技術が世に出てくるだろう。

 それらの技術を知りうる限り教えることを約束しよう」

 

 おれはそこから冒頭転生シーンを話すと、彼女は大爆笑した。

 

「あははははははははは……

 転生に、ハルマゲドンに、千年王国だと!?

 だが、分かるぞ。

 聞けば聞くほど、その話が『当たり前の知識』として私の記憶に刻まれてゆくのが。

 つまりあれだ。

 お前は神か悪魔の遊びの駒という訳だ!

 そんなのに私を巻き込むという訳だ!!」

 

「ご明答。

 そして世界にはそれぞれ無数の人形技術がある。

 楽しいだろう?」

 

 俺がニヤリと笑えば、彼女もニヤリと笑う。

 魔術師の取引は等価交換だ。

 

「で、どんな人形を作れと?」

 

 俺は彼女の前でアームターミナルを操作する。

 悪魔召喚。

 それに気づいたからこそ目を見開いた。

 

「待て待て待て!

 今、何をした!?

 貴様、その機械で根源から情報を引き出したというのか!?」

 

「なるほど。

 『貴方の世界』ではそういう解釈になるわけだ」

 

「鬼女。

 文車妖妃と申します。

 何か御用でしょうか?サマナー」

 

「お前を人形の中に入れる」

 

 COMPが狭くて、戦闘外補助悪魔である彼女の枠がきついのだ。

 それを告げると文車妖妃は目をランランと輝かせて言い切る。

 

「まぁ。

 じゃあずっと一日中神田で本が読み続けられるという訳ですね♪」

 

「自重しろ。馬鹿。

 さて、人形師。

 人形制作の値段はいかほどか?

 制作期限は半年後。

 お聞かせ願いたい」

 

 蒼崎橙子はしばし考え込み、やがて結論を出す。

 

「一億。

 それと、このメイドを作った奴に会わせろ」

 

「了解だ。

 小切手でいいならこの場で支払おう」

 

 俺自身の金もあるが、天童組の壊滅時に彼らの隠し口座のいくつかをちょろまかしていたのである。

 ヒーホーくん人形はその時発見したものだったりする。

 ありがとう。

 ハイピクシーのスキル『宝探し』よ。

 

「半年後というのはあれか?

 冬木の聖杯戦争に乗り込むのか?」

 

 小切手を確認した蒼崎橙子に俺はわざとらしく肩をすくめた。

 さもいやいやという感じで。

 

「聖堂教会とは別の監視役さ。

 お役所仕事という奴でね」

 

 

 

 俺達が帰ってきた時、天ヶ崎千草は階段に塩をまいていた。

 

「今戻ったが、何やってんだ?」

「えろうすんまへんな。

 胸糞悪い客が来まして。

 関東魔術協会のシスター・シャークティと名乗らはったんで追い返した所ですわ」

 

 このあたり原作というか二次創作と言うか分からないが、とりあえずそのあたりの関係改善も進めておかないといけないなと、俺は心に誓った。




ヒーホーくん人形
 『デビルサマナー』のアイテムの一つ。
 コインロッカーで入手できるのだが、ネットにはついに何に使うか分からず。
 贈答品となった。

蒼崎橙子
 『空の境界』の人形師。
 やる夫がいける世界には、アリス・マーガトロイドや月村忍、エヴァンジェリン・A・K・マクダウェルや学園都市があるのでどんなメイド人形ができるか楽しみである。
 鹿角さんか武蔵さんまでの道は多元世界を渡り歩いても遠い。


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あの時代にやばいやつが居るのならばこの時代にもやばいやつは居る

「関東魔術協会のシスター・シャークティと申します」

「ヤタガラスの入即出やる夫と申します。

 私の留守中に、ご訪問いただいたとのことでお手数をおかけしました」

 

 平崎市のホテル業魔殿の俺の部屋にてシスター・シャークティとの会談が行われた。

 向こうはわざわざこちらに出向いたのだから、会わない訳にはいかないという判断である。

 後ろに控えている天ヶ崎千草が敵意むき出しでシスター・シャークティの方を見ているが、ここは無視することにする。

 

「この街での悪魔騒動を解決なさったとかで、麻帆良でも話題になっていますよ」

「そりゃ、自分の手を汚さんと己の庭先の掃除をしてもろたら礼ぐらい言いますわなぁ」

 

 うん。

 分かっていたが、本当に関東と関西の対立がひどい。

 シスター・シャークティは顔をひきつらせながら会話を進めようとする。

 

「我々関東魔術協会は、貴方を受け入れる用意があります」

「そない言わへんと、そちらの面子が立ちませんわな。

 シスター・シャークティほどのもんが、関東の悪魔騒ぎを解決しそこねたなんて無能を晒すようなもんどすからな」

 

 天ヶ崎千草のこの物言いは、ある意味計算されたものである。

 彼女の仕事の中には、関東からの引き抜きの阻止というのが入っているからだ。

 あえて棘のある言い草をする天ヶ崎千草を入れたのはこのためである。

 

「お気を悪くなさったら謝りますが、私も放浪していたおかげでこのあたりの確執を知らないのです。

 何故関東と関西は仲が悪いのでしょうか?

 関東から見た意見というのをお聞かせ願いたい」

 

 立ち位置の明確化という事で、この交渉は最初から関東に喧嘩を売る形になっている。

 それで失礼しますだったらこっちも楽なのだが、交渉に来たシスター・シャークティは顔を崩そうとせずに口を開く。

 

「魔法世界の大分烈戦争についてどれぐらいご存知で?」

「子供でしたので従軍はしていませんでしたよ。

 ただそういう戦争があったという事を知っている程度で」

「この戦争に関西呪術協会のもんがようさん出征してな。

 うちの両親を含め多くが帰ってこんかったんや……」

 

 天ヶ崎千草の涙声にシスター・シャークティが顔をそらす。

 天ヶ崎千草にはこういう相手を糾弾する場が必要だった。

 それすら出来なかった故に、彼女は最後まで復讐に走ることになる。

 これで復讐を止めるとも思えないが、それでもこれは必要な場所だと俺は思っている。

 

「我々には守らなければならないものがありました。

 そして、それを守るために、関西の人たちに助けを求めたんです」

 

「嘘や!

 関西に戦力を出させて、あんさんらは麻帆良の中でぬくぬくと結果を見とったやないか!!」

 

 なんとなく見えてきた。

 凄く嫌なものが。

 俺はそれを確認するために、口を開いた。

 

「シスター・シャークティ。

 一つお聞きしたい。

 麻帆良学園都市。

 その行政は何処に属しているのですか?」

 

 その質問の意味を理解できない彼女は、彼女の常識と共にその答えを導き出す。

 

「はい。

 本国元老院に」

 

 その一言を聞いた瞬間、俺は額に手をあてて天を仰いだ。

 概ねの流れが見えたからだ。

 そりゃ、二次創作で大活躍する訳だ。関西呪術協会は。

 

「わかりました。

 色々とありがとうこざいます。

 私は関西呪術協会に属していますが、今は護国機関ヤタガラスの一員です。

 何か手助けを求めたい時は、そちら経由で連絡をいただけると助かります」

 

「いえ。

 こちらも何か失礼があったかもしれませんが、それについては関東魔術協会を代表して謝らせていただきます。

 申し訳ございませんでした」

 

 互いに頭を下げる日本的光景だが、どうみてもシスター・シャークティは日本人ではない。

 念の為。

 彼女を丁重に見送ったあと、俺は泣き止んだ天ヶ崎千草に大きく大きくため息をついた。

 

「すんまへん。

 こないな形で話を乱すつもりは無かったんどす」

 

「いや。

 そっちの事はいいよ。

 君も吐き出す場は必要だっただろうからね。

 少し考えたいから下がってくれないかな?」

 

「……はい」

 

 天ヶ崎千草が部屋を去り、ステンノが姿をあらわす。

 また入れ違いでコーヒーと茶菓子を持ってきた叢雲が部屋に入ってくる。

 

「何かわかったの?

 やる夫」

「ああ。

 考えうる限り最悪の状況だ。

 この国はもはや、植民地に成り果てている」

 

 国家は基本的に国家内国家を認めない。

 ましてや、国家内において別国家の主権を主張するなんてことはありえない。

 今の日本は、独立独歩で好き勝手する学園都市に、メガロメセンブリア元老院の意向を尊重する麻帆良学園、日米安保条約下で軍を置いている米国と主権侵害どころではない状況に陥っていた。

 考えられる関西呪術協会の参戦理由は、戦時徴兵か傭兵、もしくはその両方か。

 そんな状況下で彼らの楔から逃れようとして悪魔の力に縋ったのだから本末転倒もはなはだしい。

 そりゃ、後藤一佐がクーデターを起こすわけだ。

 賛同する気は毛頭ないが。

 

「あらあら。

 じゃあどうする?

 逃げちゃう?」

 

「逃げた所で待っているのが核ミサイルだ。

 踏ん張るしか無いのさ」

 

 ステンノの誘惑を俺は笑顔で振り切る。

 本気で逃げようと思えば逃げられるのだろうが。

 そんな事を考えようとした時にドアを叩く音がした。

 

「失礼します。

 お客様がお見えになっていますが」

 

 ホテル業魔殿のメイドであるメアリさんの声で一旦思考を打ち切る。

 来客の名前を聞いて、最初に思ったのは『たしかにこの時代なら居るよな』だった。

 

「お通してくれ」

 

 しばらくしてドアがノックされて、美少年が俺の前に現れる。

 

「平崎市の怪異についてお話を聞きたい思ってまいりました」

「こちらも、高名な貴方に来てもらえるとは思いませんでしたよ」

 

 握手をする。

 令呪を隠す手袋と刻印を隠す革手袋が触れ合い、俺は彼の名前を告げた。

 

「皇家13代目当主。

 皇昴流さん」




皇昴流
 『東京BABYLON』。
 メガテン世界だと大体何でも出しても最後は滅亡エンドに持っていけるので楽だったり。
 出したかっただけなので時間軸の確認をしていない。
 北斗ちゃんが生きているか死んでいるかでその後のストーリーが大きく変わる予定。
 そのためにも書庫にしまってある『東京BABYLON』を引っ張り出さないと……


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タルカジャ!タルカジャ!!

 皇昴流との会話は差し障りない挨拶に終始し、とりあえず彼が出たという情報だけで終わった。

 どちらにせよ、さらにやべーやつが出て来る前に、こちらの戦力強化を急がせる必要があった。

 で、仲魔をどうやって強化するかを考える。

 

「という訳で、それを話し合いたい所なんだが」

「いや、真面目にお二方居ればいりませんよ。私」

 

 ホテル業魔殿の俺の部屋。

 一度悪魔を出しての会議で、女神ブリジッドのツッコミを俺は聞き流すことにする。

 そんな中、叢雲がアイスを食べているジャックフロストを軽くこづきながら意見を述べる。

 

「このCOMPってやつの枠が少ないのが問題なのよね。

 なんとかならないの?」

 

「できない訳ではないが、できる場所が多分学園都市なんだよなぁ。

 あっこ行きたくないんだよ」

 

「あら?

 どうして?」

 

 俺の否定的意見にステンノが乗っかる。

 俺は紅茶を飲みながら答えた。

 

「あっこのボス。

 つまり統括理事長がアレイスター・クロウリー」

 

 近代魔術の祖であり、科学側のトップである。

 色々突っ込みたいところではあるのだが、多分このCOMPを改造してくれる人間はあそこにしか居ない。

 下手すると、スティーブンあたりもいるかも知れない。

 

「その人がどうして行きたくない理由になるの?

 マスター?」

 

「あっこには滞空回線(アンダーライン)ってのが満ちているんだが、それでこっちの行動がそのアレイスターに筒抜け」

 

 それでちょっかいを出してこなければいいが、アレイスターの計画なんかに入れられたら目も当てられない。

 いずれ出てくるだろう上条当麻は、俺にとって相性最悪の敵の一人なのだから。

 

「じゃあどうするの?」

 

 叢雲の問いかけに俺は代替案を提示する。

 つまる所、この世は金なのだ。

 

「アイテムを買い漁ってごまかすしか無いだろう」

 

 ここの商店街にある金王屋という骨董品店がその手の護符を大量に扱っていた。

 また、歯車堂本舗は金丹とかまであるすぐれたお店である。

 そこで対魔法防御を整えるしか無いだろう。

 

「天ヶ崎さん。

 そういえばお聞きしたいのだけど、身代わりの護符とか作れる?」

 

「当たり前やないですか。

 うちら呪術扱うとるんや。

 人を呪わば穴二つ。

 穴に落ちんように真っ先に覚えさせられますよって」

 

「じゃあ、それを大量に用意しておいて。

 多分あっという間に無くなってゆくから」

 

「……あんさん。

 一体何に手ぇ出さはるおつもりで?」

 

「聖杯戦争」

 

 そんなやり取りにハイピクシーが割って入ると文車妖妃が突っ込む。

 なんだかんだで交流が持てていい感じである。

 

「じゃあじゃあじゃあ。

 もっと仲間を増やすべきだと思いまーす♪」

 

「だから、その枠が無いのが問題って言ったじゃない」

 

 ちょっとここで現在の仲魔を確認。

 

 

妖精 ハイピクシー lv10

鬼女 文車妖妃 lv12

妖精 ジャックフロスト lv15

女神 ブリジッド lv47

 

 

 あと枠が二つあるので、前衛の強化を考える。

 いくらレベルが高くても、人間である以上悪魔や英霊に負けるからだ。

 そんな前衛職でかつステンノの『女神の気まぐれA』のバフが乗る悪魔となると……

 

「……女神か大天使か地母神か邪神か破壊神か。

 まぁそのあたりなんだろうが」

 

 改めて口に出すと恐れ多い方々である。

 机に行きDDS-NETにアクセスすると、オークションページを閲覧する。

 この時代ではありえない液晶モニターはやはり学園都市製だった。

 

「うん。

 やっぱり枠が足りない。

 とはいえ学園都市には行きたくない。

 だったら手は一つだな」

 

 皆の方を振り向いて俺は言う。

 あまりファントムソサエティーの計画を潰すと、メシア教の暴走を止められなくなるのだがやむをえない。

 

「天海市に行く。

 あそこには凄腕のハッカーがいるから彼に会いに行こう」

 

 なお、これとは別にデビルオークションで以下のものを購入し、合体させた。

 

鬼女 キキーモラ Lv9

妖獣 イナバシロウサギ lv9

 

 

妖精 ジャックフロスト + 妖獣 イナバシロウサギ = 魔獣 カンフュール

魔獣 カンフュール + 鬼女 キキーモラ = 夜魔 ザントマン

 

 

 で、悪魔辞典を使って記録した悪魔を呼び出して、前と同じパターンで大天使イスラフィールを召喚。

 さらに天使エンジェルを呼び出して合体させる。

 

 大天使 イスラフィール + 天使 エンジェル = 霊鳥 サンダーバード

 霊鳥サンダーバード + 地母神 ズェラロンズ = 幻魔 クー・フーリン

 

 

「あっ……」

 

 そのヴィクトルの声は最後の合体時に俺の耳に聞こえた。

 合体事故りやがったなと察すると、

 

「やる夫下がって!」

 

 叢雲が俺を引っ張り、

 

「サマナーは私が守ります!」

「わ、私もっ!!」

 

 女神ブリジッドと妖精ハイピクシーがかわりに前に出て、

 

「あらあら、何か出てくるのかしら?」

 

 ステンノは興味のない風を装いながら魔力弾を放つ準備をしていた時、魔法陣から出てきたのはカードだった。

 それもとても良く馴染みのある。

 ランサーの銀色のカード。

 

「よう。サーヴァント・ランサー、召喚に応じ参上した。

 ま、気楽にやろうやマスター」

 

……種火って何処で手に入れるんだろうな?

 

 幻魔 クー・フーリン lv39

 FGOスキル+メガテンスキル所持。

 

 そんな彼は俺をまじまじと見て、こうのたまわった。

 

「どこかで会ったか?

 初見の気がしないんだが……

 ま、今後ともよろしくな!」

 

 あ。

 これ、俺のアカウントのやつだ。

 

 

 

おまけ

 

「待つが良い。

 前払いしていたハイピクシーの強化素材ができたからやってゆくといい」

 

 御霊合体で現在のハイピクシーの能力はlv50相当に強化された。

 けどレベルは10である。

 我ながらえぐいピクシーになったと思う。



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掛け金を釣り上げすぎて降りることができなくなったギャンブラーとそれを見てにやつくディーラー

「マスター。

 ちょっといいか?」

 

 召喚後、クー・フーリンが叢雲を見て、俺に声をかける。

 叢雲は、彼の視線を見て首をかしげる。

 

「何よ?」

「いや、この女、獲物使えるだろ?

 なんで何も持たせてねえんだ?」

 

 あ。

「あっ……」

 

 すっかり忘れていた。

 彼女の初期絵はアンテナを武器代わりにしていた絵だったのだ。

 

「とはいえ、私、重火器の方が得意だし」

「もったいねぇなぁ。

 せっかく使えるのならば、その手数は多いほうがいいだろうに」

 

「マスター。

 思ったんだけど……」

「言うなよ。

 俺も同じ事を思ってるんだ」

 

 クー・フーリンが横須賀基地の叢雲を見てやっと納得したのは言うまでもない。

 とはいえ、一理ある意見だったので、叢雲にタクヒのつえという槍を買ってやることにする。

 そのまま銃器も購入する。

 弾の制限があるが、銃器の強さは魅力的だからだ。

 とはいえ携帯は当然違法である。

 銃についてはひとまずおいといて付随効果のある特殊弾頭を購入する。

 小細工に近い形だが、手詰まり感がうっすらと漂ったまま俺達は一旦横須賀に帰ることになった。 

 

 

 

「ここ、いいかな?」

 

 横須賀に帰る途中、転換クロスシートに座っている俺達の前に、堂々と尋ねてくる声が一つ。

 むっとする叢雲がそれを拒否する。

 

「見てわからないの?

 座っているじゃない」

 

「うん。

 知っているよ。

 入即出やる夫くん」

 

 俺はじっと相手の顔を見る。

 帽子をかぶった彼女は女子大生か、それよりちょっと上か下か、まぁそのあたりの年頃の女性のように見えた。

 

「あんた何者だ?」

「臥煙伊豆湖。

 何でも知っているおねーさんだよ」

 

 こういうのまで出てくるのか。

 駄女神よ。

 あんた一体何をどれだけぶちこんだんだよ?

 

「君の状況についてはおおよそ知っている。

 そして、そのためにこれから天海市に行こうとしている事もね」

 

 満員電車の車内で堂々と話す話ではないのだが、彼女はそのあたりをまったく気にしない。

 まるで仕事の愚痴を言うかのごとく、臥煙伊豆湖は滔々と話す。

 

「で、おねーさんとしては、天海市に今行くのはおすすめしない。

 それを言いたくて、この満員電車に乗ってきたという訳だ」

 

「それはご苦労なことで。

 理由をお聞きしても?」

 

「君が学園都市を避けた理由と同じさ。

 全てがコンピュータで管理され、ネットワークで接続された情報環境モデル都市である天海市。

 その街に学園都市の技術が入っていないと何で言いきれるんだい?」

 

「っ!?」

 

 完全に失念していた。

 そりゃ、学園都市なんて科学の都があるのだから、そこからの技術移転という形で話が振れる訳で、ファントムソサエティーがそういう理由を作り上げて天海市でマニトゥ計画を進めたのは筋が通る。

 

「それ、おかしゅうあらしまへんか?

 科学が妖怪変化に力を貸すっちゅうんは、敵味方に分かれたもんが手を組むんと一緒でっしゃろ?」

 

 横から天ヶ崎千草が口を挟むが、臥煙伊豆湖はそれも見透かした目であっさりと反論する。

 

「簡単なことだよ。

 学園都市の統括理事長は、学園都市外の事に関知するつもりは無いのさ。

 いや、いずれ来る主人公の為に、ある程度の混乱状況は歓迎すると言った方がいいのかな?

 どっちにしろ、解決が約束されている物語だ。

 下手に手を出して、かえって状況が悪化する方がまずいと思うよ」

 

 さすが何でも知っている女。

 この分だと、俺の素性もこの物語も全部理解して接触してきたのだろう。

 

「なるほど。

 さりとて、このまま冬木に向かうのは少々怖い。

 あそこの争いはまだ圧倒できる戦力ではないからな」

 

「知っているよ。

 ついでに言うと、今、天海市に行くのは止めておけと言っているのであって、時が来れば君は天海市に行くべきだとも考えている」

 

 車窓を眺めながら、臥煙伊豆湖は笑顔を見せる。

 正直に言おう。

 この笑顔が今までで一番怖いと思った。

 

「そうだね。

 おねーさんからのアドバイスだ。

 あれと戦う組織があったはすだ。

 まずはそれを動かしなさい。

 次に学園都市に行きなさい。

 天海市で捕捉されるより、本拠の玄関を堂々と叩いた方がまだ救いがあるよ。

 最後は、君が平崎市を救った手法を天海市でも使うべきだ」

 

「なるほど。

 その天海市を牛耳っているのは平崎市より大物なんだが、それはどうするんだ?」

 

「それは君が考え給え。

 君の選択肢はデメリットを考えなかったらほぼ無限だ。

 毒が厄介ならば、もっと厄介な毒を用意するべきだな」

 

 駅に着き、臥煙伊豆湖はそこで降りる。

 彼女はその笑顔で手を振ってドアが閉まる前にこんな事を言った。

 

「じゃあ、頑張りたまえ。

 世界が滅ばないようにね」




タクヒのつえ
 女性専用槍でSLEEPの効果がつく

臥煙伊豆湖
 『物語シリーズ』の何でも知っている女。
 このあたりのキャラが回りだしてくると、話が楽で楽で。


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おいでませ学園都市

 学園都市内部のデバフ修正。
 メガテン世界の76%しか力が出せない。

 やる夫
  Lv114の76%=lv86
 叢雲
  Lv124の76%=lv94
 ステンノ
  Lv74の76%=lv56
 天ヶ崎千草
  lv34の76%=lv25


またやっちまった写真up忘れ……orz


「失礼します。

 身分証と滞在許可証を。

 ……海上自衛隊、横須賀基地警備隊所属、入即出やる夫二佐相当官。

 滞在目的は、第3学区の武器見本市への参加。

 護衛は副官の東雲叢雲三佐相当官と恵美ステンノ一尉相当官、あとは秘書の天ヶ崎千草海士長相当官の四人ですか。

 結構です。

 ようこそ学園都市に」

 

 考えてみたら当然で、日本政府と学園都市の仲はあまり良くはない。

 凄い科学力で結構なものを自給自足している学園都市だが、完全な自給自足体制ではない。

 230万人も住んでいる住民の殆どは学生であり消費者だからだ。

 その結果、脅威のバイオテクノロジーと完全機械化による食糧生産を行っているが、内陸地故に必然的に魚介類等は必ず輸入する事になっている。

 もちろん、それらの代金として優れた科学製品を日本に輸出する事で成り立っている訳だ。

 また、そういう交易が発生する為に、日本政府の代表者が学園都市に滞在して、日本人の保護を行っていたりする。

 実質的な大使館なのだが、学園都市はあくまで日本国内の一自治都市という事で、外務省の研修施設という体裁で大使館を設置している。

 今回は自衛隊経由で学園都市への滞在を申請し、それに学園都市側が異議を唱えなかったからこそ認められた。

 その際に叢雲とステンノの名字申請と、天ヶ崎千草への海士長待遇の付与も同時に行っている。

 なお、名目の兵器見本市はちゃんと行われており、第三世界を中心に学園都市の高性能武器は世界の戦場で猛威を奮っているのだ。

 実際買えるなら、ちょっと買ってみたいと思ったり。

 

「お待ちしておりました。

 入即出二佐相当官。

 車を用意しましたのでこちらへ」

 

 軍服姿でゲートをくぐると、出口に一台の車が待ち構えていた。

 堂々と身分を晒しての訪問は、裏を覗き見たりしない限りは安全が保証されるという訳だ。

 どうやら、学園都市側がつけたガイド兼監視らしい。

 

「今回の案内をさせていただきます、先進状況救助隊のテレスティーナ=木原=ライフラインと申します。

 何かありましたら、気軽に申し付けください」

 

 初っ端から原作キャラとエンカウント。

 よりにもよって木原一族である。

 身分が高くなり過ぎるというのも考えものである。

 

「入即出二佐相当官は、今回は何をお探しでこの街に来られたのでしょうか?」

「一応オフレコで頼むよ。

 実験艦に搭載する最新鋭イージスシステムのレーダーだ」

「たしか、海上自衛隊は、03中期防に基づいてイージス艦を建造していたと思いますが?」

 

 今回の訪問目的は、あくまで叢雲に積むためのイージスシステムという名目になっている。

 あったらあったに越したことは無いが、この街に侵入するための理由であって実際に買う予定はない。

 多分価格は数十億はするし。

 

「本格配備はその先の話になるだろうね。

 冷戦が終わったとは言え、東京と大阪にICBMが落ちたらこの国はおしまいだ。

 イージス艦の整備は今後も続けてゆく予定ではある。

 今回は、最新鋭の技術が何処まで進んでいるのかを見て、それを前提にした国防のプランの提出まで考えたいと思っている」

 

「つまり、次の中期防に向けての下調べと?」

「そんな所だ。

 すぐに購入という客でないのは申し訳ないが、滞在中はよろしく頼むよ」

「お気になさらず。

 今より優れた物を。

 未来より優れた物を提示するのが、学園都市ですわ」

 

 テレスティーナ=木原=ライフラインの連絡先を聞いて彼女と別れると、ホテルにチェックインして今日は自由時間となる。

 部屋でくつろごうとして、ステンノが苦笑する。

 

「何だか色んな所から見られているみたいね。

 人気者さん」

 

 もちろん暗部の監視者だろう。

 表向き手を出せないから、裏から監視をしなければならいのでご苦労な事である。

 

「で、やる夫。

 この後どうするの?」

 

「当てもなく探すよりも、目星をつけて探した方が何か見つかるだろうよ。

 あの臥煙伊豆湖のアドバイスで来たのだから、学園都市内部の魔法でも探すさ。

 となれば……ここかな」

 

 テーブルに地図を広げて、とある学区を指さす。

 

「多種各派の宗教施設が集中している第12学区だ」

 

 彼女と出会えたのは、駄女神様のお導きだろう。

 第12学区の宗教施設を適当にうろついていたら、端の方に古ぼけた社が一つ佇んでいた。

 そこを掃除している女子学生の髪は、見事なまでの緑色だった。

 

「き、君」

「……はい。

 何でしょう?」

「すまないが、この社は何を祀っているのかな?」

 

 既に社の回りの御柱で全てを察しているのだが。

 お前、長野県出身じゃねーのかよと突っ込みたい所なのだがぐっと我慢して彼女の言葉を待つ。

 

「はい!

 この社は守矢神社と言って、かなこ様とすわこ様を祀っているんですよ!!

 私、この社の風祝をやっています、東風谷早苗と申します!!!」

 

 諏訪の地の現人神は、神が理解できぬ周囲の人間に疎まれた上に、科学全盛の学園都市が原石としてこの学園都市に連れてこられていた。

 彼女のレベルは0。

 無能力者である。

 

東風谷早苗

 ベースlv66

 学園都市修正(デバフ)=Lv50

 

 魔法絡みだと、今のステンノと同じレベルという現人神は、俺達を見て元気いっぱいに笑った。

 多分、今監視している学園都市の暗部は、何が行われているか分からないのだろうなぁ。




 彼女が妙に古い知識をリアルタイムで知っているかのような発言があった事と、科学好きな設定からこんな話が生えてきた。


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学園都市一日目から二日目朝

学園都市デバフ
 他世界の76%しか力が出せない。


「結界をはってくれ」

「はいな」

 

 俺は天ヶ崎千草に命じて結界を張らせる。

 COMPを起動させると、その結界内に透明な八坂神奈子と洩矢諏訪子が姿を現す。

 

「おや。

 あたしらの姿を見れる人間がこの街に居たのかい?

 あたしの名前は八坂神奈子」

「私の名前は洩矢諏訪子。

 よろしくね。

 人間」

 

 ここまで姿が透けているという事は、ひたすらその力を東風谷早苗の為に使っていたのだろう。

 この学園都市ですら、彼女は現人神のままだったのだ。

 とある設定では、魔術師が超能力開発をしたら死ぬ設定があったから、それをさせないように努力したのだろう。

 よくぞ持ったと言うか、もたせたと言うべきか。

 駄女神の無駄な設定のすり合わせに涙が光る。

 

「とりあえず、こちらからマグネタイトを送ります。

 それでお二方はお力を回復させてください」

 

 アームターミナルを起動してマグネタイトをそれぞれ10000ほどぶちこむ。

 本来の力を取り戻した二柱の姿はこんな感じで、更にステンノの『女神のきまぐれA』をかけてやる。

 

 

八坂神奈子

 ベースレベル       81

 デバフ後レベル      61

 女神の気まぐれAバフ  87

 

洩矢諏訪子

 ベースレベル       57

 デバフ後レベル      43

 女神の気まぐれAバフ  61

 

 強いな。

 さすがこの国由来の土着信仰の神様だ。

 このバフが持つ間に二柱に俺は告げる。

 

「超能力開発されたら、この娘死にますよ。

 魔術と科学は相いれない事は既にわかっています」

 

「……やはりね。

 嫌な感じがしたから散々邪魔してやったけど、正解だった訳だ」

「けどどうやって出るの?

 当てはあるの?

 神奈子はそのあたり抜けている事が多いから……」

 

「とりあえず、学園都市から出た後の当てについては、平崎市のホテル業魔殿に宿泊すればいいでしょう。

 私の名前を出せばオーナーは何も言ってきません。

 また、何かあったらその商店街にあるくずのは探偵事務所を頼りなさい」

 

 東風谷早苗に俺の名刺と財布から10万円ほど抜いて押し付ける。

 そのついでに彼女の髪を一本引っ張って抜く。

 

「いたっ!

 何をするんですか!!」

 

「このまま消えたら、俺達に疑いの目が行くからね。

 身代わり人形を置くのさ。

 天ヶ崎さん。頼む」

 

「はいな」

 

 天ヶ崎千草が身代わり人形に東風谷早苗の髪を入れて術を発動させて身代わり人形を完成させる。

 アレイスターあたりにはバレバレだろうが、統括理事会あたりならば十分騙せるだろう。

 

「それを君の家に置いておけば、数日はごまかせるだろう。

 そこからは君が好きに決めると良い」

 

 幻想郷にまで神隠しで跳んでいけたのだ。

 学園都市の外に出るぐらいならばあの二柱の力を以てすれば簡単だろう。

 俺の言葉に東風谷早苗は元気いっぱいに笑った。

 その笑顔に涙が光っているのを俺は見ない事にした。

 

「はい!

 ありがとうこざいます!!」

 

 

 

 その日の夜。

 ホテルの部屋でくつろいでいたら、監視していた暗部の動きが慌ただしい。

 東風谷早苗の件がバレたにしては動きが早すぎる。

 とりあえず、ステンノを偵察に行かせる事にした。

 

「トラック二台で、二・三十人って所かしら。

 えらくガラの悪い人たちで、指示している人は顔に入れ墨みたいなのがあったわよ。

 あと、それを監視している人たちが数人ほど居たわよ」

 

 木原数多の猟犬部隊か。

 アレイスター直属の武装集団だから、東風谷早苗の報復……いや、こちらの力試しがメインだろう。

 俺があっさり殺されるようならそれまでと言う所か。

 窓側のカーテンと壁一面に物理反射の禁凝符をずらりと張る。

 COMPを起動して、クー・フーリン、ブリジッドを呼び出す。

 

「どうしたマスター。出番か?」

「お呼びでしょうか?サマナー?」

 

「敵襲だ。

 襲われる前に、こっちから奇襲をかける。

 クー・フーリン。

 行けるか?」

 

「最高じゃねえか!

 マスター。

 好きに暴れさせてもらうぜ!!」

 

 クー・フーリンはそう言って霊体化して消える。

 この奇襲は科学側が対処できるかどうかで戦略が変わってくる。

 

「ブリジッドは廊下に出て防衛。

 叢雲が援護射撃するので一歩も入れさせるな」

 

「分かりました」

 

「ステンノは天ヶ崎さんの部屋に行って、彼女の警護。

 こっちに来てもらうよう言ってくれ」

 

「はいはい。

 マスターの言うとおりにしますわ」

 

「サマナー。

 私は?私は?」

 

 勝手に出てきたハイピクシーに俺は少し考えて命じた。

 アレイスターへのサービスはこれぐらいでいいだろう。

 

「クー・フーリンの援護を頼む」

 

 

 

猟犬部隊戦力    36

 

クー・フーリンlv39×0.76= 27

ハイピクシーlv10×0.76=   7

 

 

 

「少しは楽しめそうじゃねぇか!」

 

 猟犬部隊が配置に付く前にクー・フーリンの奇襲が刺さる。

 武装集団とは言え人間のクズを使った替えのきく部隊だからこそ、たった一人で彼らは壊乱する。

 ただ一人。

 木原数多を除いて。

 

「うろたえるんじゃねえ!

 奴は一人だ。

 何のために銃を持ってやがる!!

 囲んで撃ち殺せ!」

「で、でもそれをしたら味方に……」

「じゃあ、奴の槍で死ぬか、味方の弾で死ぬか、俺の銃で死ぬか好きなのを選びな!」

「撃て!

 撃てぇ!!」

「ちっ!

 コイツラ、味方ごと始末する気かよ!!」

 

 英霊だったらまだしも、今のクー・フーリンはメガテン側の悪魔として召喚されていた。

 つまり、銃撃は効くのだ。

 かわし続けるのも限界があり、いつの間にか銃弾による傷が増えてゆく。

 そんな時に、この場にそぐわないかわいらしい声が響く。

 

「トラフーリ!」

 

「おかえり。

 クー・フーリン。

 戦ってみてどうだった?」

 

「この体だと数で押し負けるな。

 回復サンキューな」

 

 ブリジッドのディアラハンでクー・フーリンを回復させた時にドアがノックされる。

 叢雲が警戒したままドアを開けると、ステンノと共に天ヶ崎千草が入ってきた。

 

「ご無事みたいですな」

「ああ。

 申し訳ないが、今日はこのまま交代で見張りだ」

 

 外から警備員の集まってくる声が聞こえる。

 中々の歓迎ぶりに俺は苦笑するしか無かった。

 結局その日の襲撃はそれだけで終わった。

 

 

 

「おはようございます。

 ミズ、ライフライン。

 寝ていた時、この近くで何か騒動みたいなのがあったらしいのですが、何だったんですか?」

 

「おはようございます。

入即出二佐相当官。

 大したことではありませんわ」

 

 翌日の朝の挨拶。

 双方笑顔なのだが、目はまったく笑っていなかった。




木原数多
 「木ィィィ原くゥゥゥゥゥゥゥゥン!!」な人。
 敗因は、少人数のクズどもを武装させただけだった事。

猟犬部隊
 使い勝手が良いクズども。
 つまり何度でもいくらでも使える。
 なお、メガテン系やFate系みたいな個人無双系ととてつもなく相性が悪い。


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学園都市二日目朝から三日目朝

 学園都市二日目。

 今日は名目上の滞在目的である兵器見本市を見学する。

 実際に学園都市製造の兵器は優れているから、参考にはしておきたいらしい。

 海自からは今回の滞在許可と引き換えに、レポートの提出を求められている。

 

「さてと、レーダーだが……おりひめⅠ号を利用したシステムか」

 

 そもそも、イージスシステムというのは、第二次大戦時の日本軍の神風特攻で痛い目を見た米軍が、冷戦期におけるソ連の対艦ミサイル飽和攻撃にどう対処するかから始まっている。

 そのため、このシステムは、探知と迎撃に分かれている。

 つまり、『どうやって敵を見つけるか?』と『見つけた敵をどの武器で対処するか?』を突き詰めた結果としてのできたものなのだ。

 そんなイージスシステムだが、その広範囲探知機能と多様性のある迎撃手段により、ICBM迎撃の手段として注目されだす。

 冷戦時の最前線だった日本にとって、この盾は欲しくてたまらないものであり、学園都市は日本にこの技術を流出させる事で、米国の影響力の削減も狙ったのだろう。

 

「悪くないな。

 このシステムは」

 

 何しろメガテン世界では米国がICBMを撃ってくるのだ。

 米国由来のイージスシステムが使い物にならなくなる可能性は考慮しておいた方がいい。

 

「発見から、迎撃選択にミサイル誘導まで人工衛星がやって、こっちはミサイルキャリアーとしてそのICBMが迎撃できる所まで移動するだけというのがいい。

 この方式だと、今の護衛艦でも迎撃能力を大幅に向上できるのが更にいい」

 

 これも人工衛星、というか言ってしまおう。

 『樹形図の設計者』の恩恵である。

 これがある限り、科学を以てして学園都市を落とすのは難しいだろう。 

 

「そう言っていただけると、うれしいですわ」

 

 ガイドでもあるテレスティーナ=木原=ライフラインは営業スマイルを崩さない。

 そんな彼女からこんな提案が出る。

 

「これは統括理事会からの提案なのですが、日本政府の好意に報いたいという事で、この最新式イージスシステムのモニターになってみないかと」

 

 にっこり。

 にっこり。

 互いに目は笑っていない。

 つまり、昨日の夜の襲撃に対する侘びというやつなのだろう。

 それについてはひとまず保留して、他のシステムも見てみる。

 見逃せないものを見つけてしまう。

 

「……天海市の衛星回線ネットワークに協力……?」

「はい。

 政府の天海市二上門にある天海モノリスのアンテナから衛星通信ネットワークを用いたコンピューター回線を……」

 

 テレスティーナの言葉をもはや俺は聞いていなかった。

 ソウルハッカーズにおける根幹の仕掛けは、パソコンネットワークを用いた魂の収拾。

 そして、その魂を偉大な存在に捧げる事で神格を上げる事に使われる訳で……

 

(やべえ。これ絶対能力進化計画に直接絡めるやつだ……)

 

 頭を抱えたくなるのを俺はぐっと我慢する。

 そんな俺をテレスティーナが怪訝そうに見つめる。

 

「何か問題でも?」

「失礼。

 そちらの提案は、歓迎すべきものです。

 ただ、自衛隊では完全と言うものはないと叩きこまれていましてね。

 このシステムだとミサイルの更新だけで済みますから、元々用意していたスペースに何か積めないかと考えていたのです」

 

 『樹形図の設計者』はいずれ壊れるだろうしなんて言えず。

 俺のごまかしはどうやらテレスティーナにはバレなかったらしい。

 

「でしたら、こちらのシステムなどはいかがでしょうか?

 ここでしか実用化されていない未来の兵器。

 レールガンです」

 

 なるほど。

 その技術を機械で実用化できたからこそ、御坂美琴が出てきたのか。

 この超兵器はとにかく電力を大量に消費する。

 ジオ系悪魔に電力作ってもらって、撃てるかな?

 とりあえずカタログをもらって検討するという事にした。

 

 

 スティーブン探索判定 100で足取りが見つかる

  74

 

 学園都市監視度    100でしっかり監視

  43

 

 学園都市妨害度    100で攻撃まで含める妨害

  17

 

 この学園都市に来た本来の目的であるスティーブンの探索だが、なんとか足取りを捕まえることに成功した。

 学園都市内のネットワークにオカルト系のサイトがあり、スキルアウトのたまり場である第10学区に目撃情報が発見されたのだ。

 天ヶ崎千草に身代わり人形を作らせてホテルの監視を騙し、ステンノの『気配遮断A+』を駆使して、第10学区にお出かけ。

 適当に近づいてきたスキルアウト達を『魅惑の美声A』で魅了すれば、あとは第10学区内部のアンダーネットワーク端末まで一直線である。

 

「君は私が作った悪魔召喚プログラムを使ってるね。

 もし君が秩序にも混沌にも偏らず、中庸の道を往くのなら、私が僅かばかりだが協力してあげよう。

 人間が持つ価値を、可能性を、私に証明してくれ」

 

 この台詞を聞いた時の安堵感たるや。

 アームターミナルのCOMP内部の悪魔枠を倍の12に拡張してもらい、学園都市だからと当たり前に存在しているスマホに悪魔召喚プログラムが移せるようにも改造してもらった。

 その日の夜。

 学園都市側からの襲撃は無かった。

 

「おはようございます。

 短い間でしたが、ありがとうございました」

 

「こちらこそ、これからも良い関係を続けていきたいと思っておりますわ」

 

 テレスティーナと互いに握手を交わし、俺達は無事に学園都市を出ることができた。

 今回、イージスシステムとレールガンを入手した事で、海上自衛隊内部において俺の評価が高まったのは言うまでもない。

 それともう一つ。

 

「おかえりなさいませ。

 やる夫様。

 東風谷早苗と名乗るお方がお待ちになっていますよ」

 

 ホテル業魔殿からの電話報告を聞いて、彼女の戸籍と身分の再確認と場合によっては偽造をしなければならないなと俺は思いながら、とりあえず提出するレポートを書くことにした。




証拠写真
https://pbs.twimg.com/media/DtOzGKTVYAAZ2CV.jpg:large


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天海市攻略準備編 その1

シエル先輩無双


 天海市攻略、つまり『ソウルハッカーズ』をクリアするには、かなり面倒な手順で攻略しなければならない。

 天海市そのものをファントムソサエティーが完全に掌握しているからだ。

 そこで原作通りにまずはクズノハを動かす。

 掴んだ事を持って、マダム銀子に会いに行ったのだ。

 平崎市の矢来銀座にあるクラブ・クレティシャス。

 新月の夜にだけ会ってくれるので、レイ・レイホゥにアポをとった上での面会。

 こんな美人なんだが……男なんだよなぁ……

 

「あら?」

「ごほん」

 

 二人の声に不穏なものを感じたので、俺は手早く挨拶を済ませる。

 

「ヤタガラスのサマナーである 入即出やる夫と申します」

「はじめまして。

 私が銀子です。

 話はレイから聞いています」

 

 このイケボがまた困る。

 主に笑いのツボ的に。

 笑わないように俺は資料を手渡して状況を説明する。

 

「この平崎市で暗躍していた組織、ファントムソサエティーの新たなる陰謀を発見しました。

 平崎市より遙かに規模が大きく、政府事業な上に学園都市まで絡んで手が出せません」

 

 メガテン世界に対魔忍世界が絡んでもう何処から手をつけていいか分からない政府の腐敗ぶり。

 郵政省の西事務次官は悪魔であり、与党幹事長の矢崎宗一が黒幕になっている。

 

「そう言えば、こちらに滞在していたシスターさんはどうなりましたか?」

「ああ。

 彼女でしたら……」

 

 

知恵留美子

 ベースレベル                100     原作修正 

 メガテン世界修正 ベースの81% =  81

 対魔忍世界修正  補正後の183%= 148

 

ノマドのダメージ 100ほど痛い

 52

 

 

状況変化の介入度 100ほど積極的

 

 

 時計塔           84

 聖堂教会          26

 関東魔法協会       95

 関西呪術協会       25

 十字教            62        

 メシア教           19

 自衛隊            35

 米軍             75

 

 

「派手に暴れまくっていますよ。

 むしろそれで壊滅させられないノマドの凄さに私は驚いていますがね」

 

 よほど水があったのか、彼女は東京キングダムと地下都市ヨミハラで暴れまわっていた。

 下手な魔族より強い上に頭対魔忍でもないから、もはや無双ゲーの世界である。

 これは嬉しいことなのだが、同時に今彼女を引き抜く事ができない事を意味していた。

 この状況に乗っかる勢力が現れる。

 時計塔と関東魔法協会と米軍だ。

 関東魔法協会からすれば己の膝元にこんな魔都があるなんて許せる訳もなく、新たなる神秘の山であるこれらの都市から魔術的な何かを得ようと時計塔の魔術師が大挙して押し寄せることに。

 もちろん双方ともかなり食われたり孕まされたりしているのだろうが。

 そんな二者の陰に隠れて米軍も部隊を派遣していた。

 対魔族部隊の実験部隊という。

 そんな各勢力の間で十字教が監視のための人員を派遣しており、控え目に言ってカオスである。

 

「そうなると動かせそうなのは一つです。

 関東魔法協会」

 

「なるほど。

 こちらに話を持ってきたという事は、相手も決めているという訳ね」

 

 関東魔法協会に所属している人物に葛葉刀子という女性がいる。

 魔法先生だが、京都鳴神流の剣士であり、名前のとおり葛葉一族の出らしい。

 こうやって世界が重なると勝手に設定が生えるから困るが同時に助かりもする。

 

「けど、こっち方面で派手に介入しているのに動いてくれるのかしら?」

「だからですよ。

 ファントムソサエティーとノマドが繋がっている証拠は握っています。

 あげくに政府の実験都市が魂を集める悪魔召喚のシステムなんて分かったら、黙っていられないでしょう?」

「規模、人員共に関東魔法協会は大手です。

 連携できるだけでも大きく違ってくるでしょう」

 

 マダム銀子が色っぽく書類を叩く。

 けれどもその視線は俺を射抜いている。

 

「政府の方の退魔組織はもっと出張ってきていいんじゃないのかしら?」

 

 クズノハのお目付け役である彼女にならば明かしても大丈夫だろう。

 俺はある意味狂人ともとられかねない一言をゆっくりと静かに告げた。

 

「自衛隊内部でクーデターの動きがあります。

 退魔組織や退魔部隊がそのクーデター勢力に加わっている兆候があります」

 

 マダム銀子は優美に笑みを浮かべたまま俺を視線で射抜いたまま。

 俺はあくまで冷静を装いながら、続きを口にした。

 

「関東のこれらの混乱でそのあたりの退魔組織を呼ばれて常駐させられると、そのまま決起時にクーデター軍の戦力になり、鎮圧が難しくなるでしょう。

 俺としては、これ以上状況が混乱してほしくないんですよ」

 

「貴方はクーデターが発生した時にその軍勢に加わるのかしら?」

 

「加わりません」

 

 はっきりと告げる。

 メシア教とガイア教の殴り合いに付き合うのはまっぴら御免というのもあるが、せっかくイージス機能を得た叢雲を動かせるのだ。

 核ミサイルを迎撃する事でこの世界の崩壊を防ぐことが大事で、今更政府転覆どうこうは気にしていられないというのが本音である。

 

「いいでしょう。

 それならば、私達と手を繋げるわ。

 連絡はここを中心に、レイ・レイホゥを連絡役に」

 

 マダム銀子と握手をする。

 その手を握ってわかった。

 男の手。

 戦うことをためらわない男の手だった。

 

 

 

「おかえりなさいませ。

 いくつか報告が」

 

 情報収集に出していた文車妖妃から聞きたくない報告が。

 自衛隊の隊員情報を調べていて以下の人物の確認が取れたのだ。

 

東部方面隊朝霞駐屯地司令

 石馬雪緒陸将補

 

第1普通科連隊第1普通科中隊所属

 甘粕正彦一尉

 

第1普通科連隊第5普通科中隊所属

 加藤保憲二尉

 

 

 ……この国もう駄目かもしれん。

 そんな事を言いそうになるのをぐっとこらえると文車妖妃は更に来客を告げた。

 

「サマナーに来客が。

 命蓮寺で世話になるとかで、挨拶に来たそうで。

 甲河朧と名乗っています」

 

 そうか。

 シエル先輩のせいかしらんが、彼女まだ悪落ちしていないのか。




矢崎宗一
 『ユキカゼ』より登場。
 もちろん、魔族だけでなく悪魔ともべったりである。


石馬雪緒
 石馬戒厳の方が分かるかも。
 『刃鳴散らす』より。

甘粕正彦
 『相州戦神館學園八命陣』より。

この二者はやる夫系メガテン、及びやる夫系軍人として登場。
もちろんクーデターを企むが、後藤一佐と連携が取れるかどうかはサイコロ次第。

加藤保憲
 『帝都物語』
 ここまで闇鍋だと何を出してもいいや的気分で投下。
 真面目な話として、現状の政府腐敗と対麻帆良、対学園都市を考えるとこの当たりでないと勝てない。
 これで無理なら、シン・ゴジラの出番である。

甲河朧
 『対魔忍アサギ』。
 アサギのライバル。


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天海市攻略準備編 その2

証拠写真
https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1069074548346171393


 世界が重なるという事は、己の常識が揺らぐという事でもある。

 俺は甲河朧を見て、それを思い知った。

 

「対魔忍の甲河朧と申します。

 後輩二人がお世話になったそうで……あの、何か?」

 

「ああ。

 失礼。

 ヤタガラスのサマナーである 入即出やる夫と申します。

 後輩の方々とくらべて挨拶が丁寧だなと思いまして」

 

「まぁ。

 あの二人またやったのね。

 後でお説教しておかないと」

 

 誰だこいつ。

 そんな事言える訳もなく俺は朧と握手をする。

 とりあえず、状況を確認したい。

 

「こちらに朧さんがこられたのはどのような理由で?」

 

 俺の確認に、朧がちらりと牝の顔を出す。

 あー。

 これ色仕掛けで俺を落としに来たな。

 

「はい。

 色仕掛けでやる夫さんを落とせればと思いまして」

 

「ちょっと」

「へぇ……」

 

 こっちの内心を読んだ朧があっさりとぶっちゃけ、叢雲とステンノの目が好戦的になる。

 さすがエロゲ出身悪落ちくノ一。

 色仕掛けにためらいがない。

 

「真面目な話として、ここ最近一気に急増している魔物がらみの事件で関係者が足りないのです。

 そんな中、新星のように現れた、悪魔召喚師。

 何処も狙わないわけ無いじゃないですか?」

 

 おかしい。

 対魔忍なのに会話がまったくエロくない。

 試しに下ネタジョークをかましてみる。

 

「という事は、種付けおじさんとして人生を謳歌することも可能と?」

「もちろん。

 とはいえ、殿方にわかりやすく言うならば、お好きなAVやゲームよりも競馬と思っていただいた方が分かりやすいかと」

「俺はノーザンテーストという訳だ」

「どちらかといえば、サンデーサイレンスになると信じております」

 

 浪漫と言えば浪漫なのだが、こうもう少し何というか、あけっぴろげだと萎える。

 そんなことお構いなしに、甲河朧はぶっちゃけ続ける。

 

「あ。

 私だけでなく、こちらに来ている水城不知火と井河アサギもやっちゃっていいんで」

 

 本当にこの国もう駄目かもしれない。

 

 

甲河朧

 ベースレベル                 23 

 メガテン世界修正 ベースの56% =  12

 サイコロブースト  +60% =  19     問題なく魔法が使えるので+修正

 

 

 さすがアサギのライバルになるだけあって強い。

 何よりも悪落ち系だけあって頭が対魔忍でない(ここ強調)。

 なお、彼女の指導で八津紫や井川サクラもこっちに来ているらしい。

 もちろん手出しOKだそうだ。

 これで手を出せるならば喜んで出したい所ではあるのだが、これ明確な地雷である。

 

「どっちなんだろうな。

 ノマドが潰れると困るから、対魔忍側が俺に人身御供を差し出したか、俺を取り込んで魔族側に引き入れるつもりなのか」

 

 ホテル業魔殿にて朧との会談後。

 俺はコーヒーを飲みながら、考えを口にする。

 それを聞いていたのは、叢雲とステンノだけでなく、ここに逃れてきた東風谷早苗と八坂神奈子と洩矢諏訪子の三柱だった。

 

「どっちもあるだろうね。

 ここにいる間に色々見させてもらったが、ひどいもんじゃないか」

 

 どうやら政府中枢は対魔忍世界で固まったらしく、総理は朝井考次郎、官房長官は野々村広男と名前が出てきている。

 もちろん魔族と繋がっているのは言うまでもない。

 これで国民が苦しんでいるならばまだしも、笑ってしまうことにこの国は未だ史上空前の繁栄を謳歌しているのだった。

 理由は簡単。

 学園都市から流れる超技術に、東京キングダムや地下都市ヨミハラという快楽の都を抱え欲望が金を生み、金が金を生んでいた。

 そしてメガテン世界と繋がったことでマッカが流通するようになるとこの流れは更に加速する。

 バブルはフロンティアがある限りは破綻しない。

 日本はこの魔界という新たなるフロンティアを得て、欲に溺れ、金に溺れ、新たなるソドムとゴモラとして名をはせようとしていたのである。

 これで庶民が貧乏になるなら怒りもするが、金持ちが更に金持ちになっただけで、治安の悪化は夜一人で出歩かないようにレベルなのがまた、この国の治安組織と退魔組織の優秀さを物語っている。

 多分、日銀総裁以上に頭を抱えているのは、マッカ製造管理者の魔王ルキフグスなのだろうなぁ。

 多分、今円安マッカ高が進行していて、マッカ製造が追いつかないとか。

 

「なるほど」

「どうしたの?

 やる夫?」

「いや、一つ納得いく事があってな」

 

 ソウルハッカーズの魂収集システム、あれはマッカ製造の為の資源鉱山の役割を果たしている訳だ。

 そりゃ、ファントムソサエティーが本計画にするわな。

 

「で、私達を学園都市から助け出して、どうするつもりなのかな?」

「天海市攻略の為に助力をお願いしたい」

 

 洩矢諏訪子の質問に俺は即答する。

 今回動かすのはクズノハと関東魔法協会だが、彼らだけでは戦力が心もとない。

 囚われずに動ける遊撃戦力がどうしても欲しかったのだ。

 

「具体的には?」

 

 東風谷早苗を危ない目に合わせたくない八坂神奈子が俺の目を見つめて問い詰める。

 俺もこんな所で神様の機嫌は損ねたくないのであっさりと種を明かした。

 

「サポートして欲しいハッカー集団が居る。

 『スプーキーズ』って言って……」

 

 話し合いの後、洩矢諏訪子が俺の耳元でささやく。

 考えてみれば、彼女の子孫が東風谷早苗という設定だったっけ。

 

「早苗を孕ませてもいいけど大事にするんだよ。

 さもないと祟るから」

「あら?

 既に二人いるのにまだ欲しいのかしら?」

「へぇ……

 色々とお話が必要みたいね」

 

 あのカエル神。

 二人に聞こえるように言いやがった。

 ハーレムってのも楽じゃない。

 手出しOKでもその後ろにある地雷を見て、俺はハーレムのデメリットを学んだのだった。




朝井考次郎総理と野々村広男官房長官
 『アサギ3』より登場。
 別名クーデターのやられ役。

円安マッカ高
 多分世にあるメガテン小説でこんな経済用語を使ったのはうちぐらいなものと自称する。
 悪魔が人間を食うのではなく、人間が金を武器に悪魔を食いつつあるのがこの多重世界の特徴。
 つまり、マッカ貧乏の悪魔達に突き上げられている宰相が可哀想……

スプーキーズ
 『ソウルハッカーズ』主人公達が所属するハッカー集団。
 目指せリーダー生存ルート。


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天海市攻略準備編 その3

 アニメやゲームの世界においては基本『レベルを上げて物理で殴ればいい』というルールが適用される。

 だが、近代戦を経てハイテク戦に入るとそれが若干変わってくる。

 第二次世界大戦では科学と数というものが猛威を振るった。

 それは湾岸戦争を経て更に突き進み、今や兵隊というのものは高技能熟練者でないとハイテク武器を扱えないまでになってしまっていた。

 その先は機械による兵器管理である。

 まぁ、そこまで行くと『ターミネーター』の世界も……ありえるから困るんだよなぁ。

 あの駄女神様だと。

 話がそれたが、要するに横須賀基地で話題になっていたのは、俺が持って帰ってきたイージスミサイルとレールガンのセットであり、これの運用だった。

 

「ミサイルについてはそちらの艦に載せることは構わない。

 で、だ」

 

 警備隊司令の咲川海将補が頭を抱えながら言葉を選ぶ。

 学園都市が提供してくれたイージスミサイルはハープーンSSM4連装発射筒の4基分だから計16発。

 これは俺への襲撃の侘びだから遠慮なくもらうつもりである。

 問題はレールガンだった。

 大規模電力が必要で、その射程は200キロを超える化物兵器。

 学園都市製だから『樹形図の設計者』とリンクができるイージスシステムの鉾となりうるこれを持って帰ったことで、俺への評価はうなぎ登りと同時に、やっかいな問題を引き起こしていた。

 誰がこれを使うかである。

 

「私の船には積めませんので、使用については警備隊司令に一任いたします」

 

 いけしゃーしゃーと言い放つ俺に対して咲川司令の顔色は良くない。

 理由は、この化物を巡って『俺にくれ!』と醜い奪い合いが自衛隊内で起こったからである。

 

「市ヶ谷が強硬に欲しがっていてね。

 かと言ってはいそうですかと渡すわけにもいかないだろう?

 厄介なものを持って帰ってくれたものだよ。君は」

 

「こちらも押し付けられたようなものでして。

 そちらのいいようにお使いになればよろしいのでは?」

 

「それができないから困っているんだよ」

 

 咲坂司令クラスともなれば、自衛隊内の不穏な動きは大体察しているのだろう。

 陸自のゴタゴタに海自が巻き込まれたくないというのがよく分かるが、欲しがっているのがクーデター勢力だとすれば、クーデター後の米軍の介入と核攻撃を警戒しているという証拠だった。

 

「こいつは使用時に大規模電力を必要とします。

 使うとすれば、基地内部で砲台として運用するべきでは?」

 

「それしか無いだろうな。

 下がってよろしい」

 

 美野原一佐が折衷案を出し、咲坂司令が了承する。

 部屋を出た後で美野原一佐がぽつりと口を開く。

 

「あんな事を言ってますが、貴方が来てから隊の予算が増えて喜んでいるんです。

 自衛隊は金食い虫ですからな」

 

 要するに俺を取り込みたい海自側が優遇しているという事なのだろう。

 それでも足りないのが人である。

 

「あの大砲の運用人員に警備要員。

 頭が痛いですよ」

 

 だったら俺の船の自衛隊員を降ろせばと言いたい所を俺は我慢する。

 彼らにとってはあまりに大きすぎる個人武力を持っている俺が暴走するのが不安なのだろう。

 そんな人員を解決する手段があると言えず、俺は愛想笑いを浮かべるにとどめた。

 

 

 

「なんだ。

 ホムンクルスが欲しいのか?」

 

 電話での蒼崎橙子との情報交換で彼女は笑う。

 魔術師だとホムンクルスという選択が取れる事があるからだ。

 アインツベルンとかユグドミレニアと言った家門でないと作れない技術ではあるが。

 

「あった方がありがたいが、使い捨てのサイクルが短すぎる。

 せめて数年は持って欲しいところだよ」

 

 実はそれが可能な学園都市のクローン技術というのを狙っても居たのだが、こっちは訪問時に断念した経緯がある。

 あれも露骨に絶対能力進化計画に絡んでいるし。

 俺は電話口で蒼崎橙子相手に愚痴る。

 

「実際にクローンやホムンクルスが戦場に投入されてみろ。

 自立する合法的な肉壁。

 都市戦ががらりと変わるぞ」

 

「発展途上国で行われている少年兵と何が違うんだ?」

 

 分かっているくせに聞いてくるのだから蒼崎橙子はタチが悪い。

 俺もそれを理解しているので、自虐的に言い切る。

 

「こいつらの厄介な所は、教育によって最初から熟練兵の動きができる。

 短期間でプロが育成できるのは大きいぞ。

 そして、この国は魔界なんてものと繋がりつつあるから、兎に角裏の人間が足りない」

 

「神秘の秘匿もへったくれも無くなるな」

 

「それ以上の神秘がやってくるんだから、問題ないだろう?」

 

 二人して乾いた笑いをあげた後、蒼崎橙子は確定的に告げた。

 

 

「冬木の聖杯戦争が始まるぞ」

 

 

「何!?」

 

 

 俺はそれ以上の言葉が出ない。

 馬鹿な。早すぎる。

 あの聖杯戦争は冬に行われたのでなかったのか?

 今は、まだ初夏だぞ。

 

「むしろ何故予定通りに聖杯戦争が起こると錯覚していたのかな?

 順調に世界が混じっているのだから、予定が狂ってゆくのは当たり前じゃないか。

 時計塔からの情報で、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトとソラウ・ヌァザレ・ソフィアリの入国を確認したわよ」

 

 これは聖杯戦争が開始されるだろう。 

 きっと衛宮切嗣とアイリスフィール・フォン・アインツベルンと久宇舞弥も入国しているに違いない。

 

「もしもし?

 聞こえているか?」

 

「聞こえているよ。

 頼んでいた人形の制作だが、何処まで進んでいる?」

 

「事が事だから急いで仕立ててある。

 別料金を頂きたい所だがな」

 

 俺は受話器に安堵のため息を吐き出す。

 学園都市に行ってスティーブンによってCOMPの拡張ができたのは大きかったので急ぐ必要はないかもしれないが、造魔に等しい人形に補助職悪魔を入れて独立行動が取れるのは大きい。

 

「その分の請求書は改めて用意してくれ。

 支払おう」

 

「安心しろ。

 こっちの分は金よりも別のもので払って欲しい」

 

 その時の蒼崎橙子の声は悪魔の囁きに聞こえた。

 こうやって物語はさらに複雑化してゆく。

 

「学園都市へ入るための許可が欲しい。

 正規のやつだ」

 

 隠れて学園都市に入るぐらいはどうとでもなると思ったが、彼女が入る理由は一つしか無いと気づき、それだったらたしかに隠れて探るよりも堂々と入った方が色々やりやすい。

 

「クローン技術か」

「ご明察。

 日本政府正規の肩書があれば、ある程度は探らせてくれるだろうし、そこから奥は自己責任でするさ」

「ヤタガラスの協力者として申請を出しておく」

「ああ。

 近い内に人形は取りに来てくれ。

 では。

 良い聖杯戦争を」

 

 そう言って電話は途切れた。

 この言葉はやる夫スレでは見たけど、こうして聞くとは思わなかったな。

 

 

「やる夫。

 ちょっといいかしら?」

 

 戻った俺に叢雲が呆れた声で話しかける。

 何だと言おうとする前に、叢雲は手を引っ張って冷蔵庫の前に。

 あっ……

 

「またか」

「それだけじゃないのよ」

 

 ドアを開けた。

 

「ヒーホー♪」

「あたいったらさいきょうね!」

 

 ドアを閉めた。

 見なかった事に……

 

「待ちなさいよ!

 あれなんとかしなさいよ!!

 なんなの!?

 何で必ずあれが居るわけ!?

 しかも増えているし!!!

 わたしのアイス食べられているんですけど!!!!」

 

 叢雲の激昂の結果、妖精ジャックフロストと妖精チルノが仲間になった。

 あの冷蔵庫、完全に異界化しているな。




レールガン
 ここまで実用化されているらしい。
 https://toyokeizai.net/articles/-/60167

チルノ
 『東方紅魔郷』。
 大チルが俺のアイシクルフォール。


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世の中はうまくいかない上にさらに厄介事がやってくる

 冬木の聖杯戦争が始まりそうなので、天海市攻略を一時中断して先に冬木市に向かうことにする。

 約二週間で終わる予定の戦争だから、一月、最悪でも二月見ておけば大丈夫だろう。多分。

 

「弾薬に燃料は満タンにして頂戴!

 舞鶴港までの航海計画の提出を。

 乗員の非常招集はできている?」

 

「ご安心を。

 あと8時間で全部終わらせます。

 さらば日常、ようこそ非日常の世界へという所ですかね」

 

 出港準備に奔走する叢雲に副長代理の新島三佐が落ち着いて隊員に指示を出している。

 このあたり俺の仕事はないので、艦橋を出て俺の仕事に向かう。

 

「入即出はん。

 最低限のものは整えましたえ」

 

 天ヶ崎千草が巫女姿で俺に付きそう。

 叢雲のもう一つの体であるこの船体に対する魔術防衛は全部彼女に任せる予定なのだ。

 具体的に言うと、金にあかして買いまくったマジックアイテムの発動を彼女に任せる事に。

 また、残った悪魔達への指揮なども担当することになっている。

 

「じゃあ、そのあたりを含めてある程度レベルの低い悪魔を用意しておかないとな」

 

 COMPの中に12体入るので、数は置けるが指揮できる人間がいない。

 その手の指揮ができてある程度のレベルがある天ヶ崎千草の存在はかなり大きかった。

 追加で悪魔を補充という所で、また妙なものを見た。

 

「あ。

 入即出二佐相当官!」

 

 陸上自衛隊服姿の対魔忍達である。

 ビシッと敬礼してくれるけど、学徒動員に近い哀愁が漂って色々と痛い。

 で、もはやコスプレにしか見えない朧が俺に書類を差し出す。

 

「これが市ヶ谷からの正規の命令書です。

 特殊作戦第四中隊、第四小隊所属、甲河班以下七名。

 乗艦許可をお願いします」

 

「……」

 

 俺の知っている限り、特殊作戦群に第四中隊ってのは存在しないのだが、偽造なのか退魔組織なのか分からない上に書類は本物だった。

 こっちの動きに便乗しようというのその姿勢は評価するが、頭対魔忍でないとこうも的確に動けるのか。

 なお、甲河朧は三尉になっていた。

 

「入即出はん。

 使えるモンは使うべきどす」

 

 天ヶ崎千草のツッコミに俺は軽口を叩く。

 

「その使えるのが関東の人間だったら?」

「盾にしますな」

 

 おーけーわかった。

 好き嫌いはともかく、その姿勢は評価しよう。

 

「乗艦を許可する。

 誰か!

 陸自からのお客さんだ。

 船室を用意してやってくれ!!」

 

 朧と対魔忍達が部屋に連れて行かれるのを見ながら、俺は天ヶ崎千草に後を頼む。

 こうなるとやらないといけないことがあるからだ。

 

「ここは任せた。

 副長代理の指示に従ってくれ」

 

「はいな。

 で、入即出はんはどちらへ?」

 

「仲魔集めさ」

 

 

 

 今の仲間はこんな感じである。

 

妖精 ハイピクシー lv10

鬼女 文車妖妃 lv12

妖精 ジャックフロスト lv15

女神 ブリジッド lv47

幻魔 クー・フーリン lv43

妖精 チルノ lv9

 

 で、ホテル業魔殿に行って悪魔全書を使い、DDS-NETを起動して以下の悪魔を購入し合体する。

 

 

魔獣 オルトロス + 女神 ブリジッド = 神獣 ゲンブ

 

女神 ブリジッド + 鬼女 アチェリ + 天使 エンジェル = 魔神 ルーグ

邪龍 バジリスク + 夜魔 ザントマン = 魔王バロール

魔神 ルーグ + 魔王バロール = 威霊 ブラックマリア

威霊 ブラックマリア + 造魔 = 英雄 ジャンヌ・ダルク

 

 

 神獣ゲンブは、タル・ンダとラク・カジャが使えるサポート要員。

 英雄ジャンヌ・ダルクは完全にメガテン側の姿の回復要員だった。

 持ってなかったからなぁ……ルーラー……

 護衛用に大天使イスラフィールを買ってひとまず平崎市を出る。

 今度は人形を受け取りに、蒼崎橙子の所に行かねばならないからだ。

 彼女は東京にも隠れ家みたいなものを保有しており、そこでの受け取りとなっていたのだが……運が良かったと言うか悪かったというか……

 

 横浜から東海道線に乗って湘南新宿ラインで歌舞伎町へ。

 隠れるなら雑踏の中とはよく言ったもので、その大通りを……なんだあれ。

 何でいるのだろうな。赤王ちゃま。

 水着モードである。

 しかも『あかいいなずま』。

 色々見えているし。

 というか、歓楽街の連中ですら神々しくて近寄って行かないのですが。

 俺も見なかったことに……

 

「待て。サマナー。

 この体に、この美に言うことがあるだろうが!」

 

 捕まった。

 しかも思った以上に力が強い。

 これかなりレベルが高いぞ。

 

「もしもしポリスメン。

 露出痴女が一人」

 

「待たぬか馬鹿者!

 これだけ扇情的な格好で最初の一言がそれとは何事ぞ!

 このローマを魅了した体でぬしをとろけさせてやろうか?」

 

 あ。

 これ赤王ちゃまの皮をかぶった別の悪魔だ。

 凄く嫌な予感がする。

 

「あら。

 マスターには私達が居るから駄目よ」

「そうよ。

 引っ込んでいなさい」

 

 ステンノと叢雲の口撃に彼女は二人の胸を見て一言。

 

「慎ましいのと普通の胸が好みなのか?」

 

「「殺っていい?」」

 

 逆鱗を踏み抜くそのスタイルと胸は嫌いではない。

 完全戦闘態勢の二人を見て、赤王ちゃまは呵々と笑う。

 

「怒るな二神よ。

 それで、サマナーをとろけさせているのならば十分ではないか。

 余ほどの悪魔となると中々契約できるサマナーがおらぬでな。

 契約させてやってもいいぞ!」

 

 ドヤ顔を決めたので、そのまま放置して目的地に。

 この手のキャラは放置を一番嫌がるのだ。

 

「まてまてまて!

 こう見えても魔人だぞ!

 凄いんだぞ!!

 偉いんだぞ!!!」

 

 涙目で袖を掴む赤王ちゃま。

 皮に悪魔の性格まで引っ張られたか、それともこういう性格だからこの皮になったのか。

 

「いいじゃない♪

 契約してあげれば♪」

 

 ふいに耳元から囁かれて、俺達は慌ててその場を離れるが、そこには蛇を巻き付けた妖艶な痴女二号が。

 ……歌舞伎町だしなぁ。

 

「失礼ですが、東京キングダムあたりに巣食っていると思っていました」

「そうなのよ。

 なんかえらく強いシスターが暴れててこっちに避難してきたって訳♪」

 

 歌舞伎町の主になるのも時間の問題だろうな。

 夜魔リリスだし。

 

「おいっ!

 余の事忘れていないか?

 強いんだぞ!

 役に立つんだぞ!!

 契約してほしいんだぞ!!!」

 

 あ。

 涙目で懇願しだした。

 リリスからすればこんな所で赤王ちゃまが居ると営業妨害もはなはだしいから俺に押し付けたと。

 ここまで悪質なキャッチセールスは見たこと無い。

 ため息をついて赤王ちゃまと契約をする事にした。

 

「うむっ!

 余の名前は大淫婦バビロンだ。

 これからもよろしくな!!」

 

「良かったわね。

 だからこれ以上ここに居ないでね。

 私の餌が減るから」

 

 こんなのがほっつき歩いているぐらい、この街の危機は深刻化していると。

 

 

  

 出迎えた蒼崎橙子が大淫婦バビロンを見て大爆笑したのは言うまでもない。

 用意した人形は問答無用で彼女に奪われ、追加で人形をもう一体発注する事になる。




あかいいなずま
 ぐぐれば全てが分かる。

大淫婦バビロン
 その逸話から赤王ちゃまの皮はある意味当たり役。
 なお、悪魔データは別名のマザーハーロットを使う予定。


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この物語は監獄戦艦ではありません。念の為

「じゃあ、出港しよう」

「!…出撃するわ!」

 

 早朝。

 まだ日も出きっていない。

 俺の声に叢雲が返事をし、二回目の自衛隊員もはきはきと仕事をする。

 今回の目的地は海上自衛隊舞鶴基地で、改造後の訓練航海の名目になっている。

 浦賀水道を出て太平洋を北上し、津軽海峡に入って大湊基地にて一泊。

 その後日本海に入り、舞鶴基地にというおよそ5日の航海予定である。

 そんな今回の搭乗メンバーはこんな感じ。

 

船長

 入即出やる夫二佐相当官

 

副長

 東雲叢雲三佐相当官

 

副長補佐

 新島義則三佐

 

副官

 恵美ステンノ一尉相当官

 

従軍神官

 天ヶ崎千草海士長相当官

 

以下

 砲雷科、船務科、航海科、機関科、補給科、衛生科の長及び隊員120名。

 

 

陸上自衛隊特殊作戦第四中隊第四小隊所属甲河班

 甲河朧三尉

  水城不知火

  井河アサギ

  八津紫

  井川サクラ

  心願寺紅

  槇島あやめ

 

 

COMP内悪魔

 妖精  ハイピクシー lv10

 鬼女  文車妖妃 lv12

 妖精  ジャックフロスト lv15

 女神  ブリジッド lv47

 幻魔  クー・フーリン lv43

 妖精  チルノ lv9

 神獣  ゲンブ lv43

 大天使 イスラフィール lv42

 

COMP外悪魔

 英雄  ジャンヌ・ダルク lv54

 魔神  大淫婦バビロン lv69

 

 

 他の自衛艦と違って圧倒的に多い女性率である。

 それを見越した訳ではないが、色々と改造には気を使っていたりする。

 武器スペースが空いた場所には居住スペースを用意したり、トイレや浴室に食堂を追加で設置したり。

 なお、艦長特権でやったのが隣の部屋を潰してユニットバスを設置した事。

 これでやった後に浴室にという事が無くなるのがありがたい。

 

「それでは、今回の航海の本当の目的を説明する」

 

 太平洋に出た所で士官室に副長補佐以下幹部自衛官と甲河朧と天ヶ崎千草を呼んで、時計塔と聖堂教会から提出された聖杯戦争の資料を皆に見せる。

 神秘の秘匿から極力隠した描写を俺が遠慮なく改ざんして全部バラした形にしているが、この時点で神秘の秘匿も何もこっちは関係がない。

 自衛官側の目の色が変わったのは言うまでもない。

 

「何ですか!これは!!

 これを政府は許容していると言うのですか!!!」

 

 テーブルに書類を叩きつけた船務長に俺は肩をすくめてぼやく。

 

「許容していると言うよりも、許容せざるを得ないと言った所かな。

 諸君も感じていると思うが、超常現象による犯罪や事件は増加の一途を辿っていて、その対処には俺や彼らみたいな退魔組織が対処に当たっていた。

 それでも圧倒的に手が足りなくなっている。

 もはや、彼らの手を借りなければ、この手の事件は防ぎきれないというのが実情だ」

 

 資料を読み終えた新島副長補佐が胡散臭そうな目で俺を見る。

 まぁ、この戦力を以て聖杯戦争に参加すると勘ぐられても仕方がない訳で。

 

「それで、艦長はこの戦力を以て、聖杯戦争の監視を任務とすると?

 参加ではなくて?」

「ああ。

 先にばらしておくが、恵美ステンノ一尉相当官が実はこの聖杯戦争のサーヴァントの一騎だ。

 とはいえ、こんな艦を得て、こんなサーヴァントまで得た上で聖杯に願うことなんて無いよ」

「余もいるしな!」

 

 呼ばれてもないのに堂々と座っている赤王ちゃまは必死の懇願によって、パーカーを羽織っている。

 どうも秋葉原にでも寄ったらしいこの赤王ちゃまは、薄い本のHENTAIムダ知識を本当に無駄にインストールしていた。

 ある意味日本化した正しい大淫婦バビロンである。

 

「あの、そちらの方を含めて女性が多いこともあるので、風紀に関して問題が発生しないように対策を」

 

 補給長の意見の対象が己である事をまったく理解できない赤王ちゃまは堂々と己の存在意義を言い切る。

 

「安心せい。

 余は皆に等しく股を開くから、遠慮なく使うが良い」

 

「え?

 やっていいんですか?」

 

 乗っかるなよ。朧。

 それを言おうとして、朧のさすが対魔忍という凄惨な設定が炸裂する。

 

「ご安心を。

 乗艦した全員色事は習得させており、皆開通済みです」

 

「堂々と言うなし。

 自衛隊の皆様が額に手を当てて途方に暮れているじゃないか」

 

「とは言っても、魔物に使われて孕まされるぐらいなら、人間のほうが楽なわけで」

 

 そんな思考だから対魔忍は娼婦育成学校とか陰口を叩かれるんだろうに。

 言わないけど。

 

「……」

 

 天ヶ崎千草が赤くなっているが、生々し過ぎる話についていけなかったか。

 俺がパンと手を叩いて話を戻す。

 

「とにかく、超常現象が相手である聖杯戦争だが、基本は監視業務であり、同時に民間人に被害が出ないことを第一目的とする。

 また、この目的の為に、地元警察や舞鶴警護隊とも協力する事があると思うので、そのつもりで事にあたってもらいたい」

 

 舞鶴基地に叢雲を置いて冬木に参加するか、冬木の港に停泊してそこから介入するか。

 俺達だけならまだ身軽でいいのだが、120人もの自衛隊員という重りがあるので無理は厳禁である。

 

「基本的な活動は俺達でする。

 甲河三尉。

 君たちはどこまで協力してもらえるかな?」

 

「後藤一佐より、『入即出二佐相当官の指示に従え』と」

 

 平崎市でできた縁を徹底的に利用するつもりだな。これは。

 取り込んでしまいたいのが見え見えであるが、一般人より使えるのが彼女たち対魔忍である。

 ……頭対魔忍でない限り。

 

「あ」

「何か?」

「いや。

 その時が来たら頼りにさせてもらおう」

 

 あそこには虫爺様の間桐臓硯が居たんだよな。

 対魔忍なんか放ったら、格好の餌になる未来しか見えない。

 

「艦長。

 また潜水艦。

 それと空にも何かいる」

 

 叢雲が俺に告げて、その後スピーカーより報告が入る。

 

「上空に米軍の偵察機。

 『航海の無事を祈る』と通信が入っています」

 

 同盟国から挨拶されて隠れるという訳にも行かない。

 この船の性能を知りたくてこういう手を打ってくる当たりさすが超大国である。

 

「返事を返しておいてくれ。

 挨拶は任せる」

 

 

 

 なお大湊までの航海の間、赤王ちゃまや対魔忍に食べられた隊員がいたかどうかについては機密となった。




監獄戦艦
 LILITHの名物タイトルの一つ。
 米軍観戦武官で出せばよかったと今気づいた。

赤王ちゃまのHENTAI知識
 あの水着で海に来てチャラ男にナンパされてホイホイついていってというビッチ系薄い本。
 R-18で無いので書かないが、この作者ビッチ系大好きである。


12/7
 大天使 イスラフィールが抜けていたので修正


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叢雲航海日誌

「やぁっ!」

「遅い!!」

 

 ヘリ甲板にてフー・クーリンと対魔忍の戦いが繰り広げられている。

 もちろん訓練なのだが、暇を持て余していたクー・フーリンが出てきて胸を借りることに。

 七人がかりでやっと相手になるかなと言った所。

 そんな中で彼とタメを張れる朧の強さが光る。

 

「どうした!どうした!!

 そんなもん、師匠なら百回は死んでいるぞ!!!」

 

 その師匠、メガテンなら呼べるんだよなぁ……。

 今度呼んで、実際に話を聞いてみよう。

 なお、対魔忍どもは、例の衣装なので見物の自衛隊員が前かがみになったのは言うまでもない。

 

 

 

「『冬木市で連続殺人事件……』ねぇ……」

 

 学園都市で手に入れたスマホでニュースをチェック。

 アレイスターに履歴とかバレそうだが、この時代に衛星経由でネットにアクセスできるのだからありがたい事この上ない。

 雨生龍之介の犯行なんだろうな。

 発生時期がずれているのに、そのあたりをあわせてくれる女神様を罵倒しながら考える。

 第四次聖杯戦争の参加者は以下の通りだ。

 

 衛宮切嗣・セイバー

 言峰綺礼・アサシン

 間桐雁夜・バーサーカー

 ケイネス・ランサー

 雨生龍之介・キャスター

 遠坂時臣・アーチャー

 ウェイバー・ライダー

 

 空いた枠に誰が入るのか未定だったが、最悪俺がここに入る可能性があった。

 どうやらそれは無いらしい。

 便利な言葉である歴史の修正力というのを考えたいが、あの駄女神に限ってそんな便利な復元機能をつけているとは思えない。

 多分何かやらかしているのだ。

 悪い方に。

 それだけは確信しながら、俺は地元警察に雨生龍之介の指名手配を依頼した。

 

 

 

「ん?

 あんさん、胸大きゅうならはりましたな?」

 

「はい。

 業魔殿で合体してから大きくなって……」

 

 天ヶ崎千草とピクシーの会話を聞いていた叢雲の耳上の謎機械がピコピコと揺れる。

 叢雲は改二になってエロ衣装とともに胸もおっきくなったのだが、現在対魔忍を筆頭に爆乳戦隊が形成されて焦っているのが見え見えである。

 そんな彼女に俺はあっさりと言う。

 

「多分できるぞ。

 豊乳合体」

 

 我ながらろくでもない名前だが、要するに御霊合体である。

 叢雲だけでなく、ステンノも俺の方を見る。

 まぁ、あれだけよその女の乳をガン見していたら気にするか。

 反省。

 

「あら?

 じゃあ、しないの?」

 

 ステンノの声に俺はあっさりと言う。

 そのデメリットを。

 

「してもいいが、それで多分メガテン世界の叢雲とステンノになっちゃうんだよな。

 これから行く冬木でステンノが弱体化したり、今乗っている叢雲が弱くなって船が沈む事だってあるかもしれん。

 下手に動かせないんだよ」

 

 なお、メガテンで合体したらステンノの本質に近い地母神の方になるだろうと思っている。

 叢雲が、艦娘ではなく付喪神になったように。

 

「じゃあ、仕方ないわね♪」

「他の女に目が行かないぐらい、してあげるから覚悟しなさい♪」

 

 デレ雲とデレンノは朝まで頑張って、俺は寝坊した。

 副長補佐以下自衛隊員の目がとても痛かった。

 

 

 

 大湊到着。

 ここで一日休み、乗員に半舷上陸を許可する。

 一方で、最後のチェックをここでする事に。

 聖杯戦争の開始に伴って、他の勢力も動き出したらしい。

 

 

聖杯戦争の積極具合 100ほど積極的

 

 時計塔            自動参加

 聖堂教会          自動参加

 

 ファントムソサエティー  60

 クズノハ           61

 学園都市          45

 関東魔法協会       100

 関西魔法協会       31

 十字教            74

 メシア教           1

 ガイア教           95

 自衛隊            83

 米軍             15

 

 

 さすが正義の味方というか、規模がでかいだけあって、関東魔法協会は完全に介入して被害を阻止する腹を固めたらしい。

 送り出すのはタカミチ・T・高畑。

 最強カードの投入である。

 次にノリノリなのがガイア教で『サイバース・コミュニケーション』という会社が冬木に進出していた。

 これ中の連中皆ガイア教徒なのだろうなぁ。

 それに呼応する形で自衛隊も動いていた。

 北海道にいた機密の塊である実験中隊が既に本州に移動し、大湊の俺たちの所にも連携の要請が来るぐらい。

 どれぐらいの規模の人員が派遣されているのやら。

 

「思ったんだけど、これあんたの聖杯戦争のレポートを見れる連中よね」

 

 あっ……

 叢雲のツッコミに思わず納得してしまった俺。

 自衛隊経由でガイア教に情報が流れ、天海市攻略で提携していた関東魔法協会にはこれを理由に一時中断をお願いしている。

 クズノハとファントムソサエティーの動きが高いのもそれが理由だろう。

 

「思ったんだが、中途半端に関心が高い十字教はどんな立ち位置なんだろうな?」

 

 一連の事件で十字教は、介入する意思はあるが実際には監視要員を送るに留めるという中途半端な対応を繰り返していた。

 

「本拠がローマだから、指示待ちで機会を逃しているとか?」

 

「だったら、同じローマが本拠な聖堂教会がこうして動ける理由がつかなくなるだろう?

 待てよ?」

 

 ステンノの意見に返事をしたあとで気づく。

 そういえば、天草式十字凄教という分派が居たな。

 彼らには接触しておくか。

 

 

 

 そんなこんなで、冬木市の隣にある舞鶴基地に翌日夜半に到着した。




豊乳合体
 叢雲とステンノの胸を大きくするためだけに考え出された頭の悪い設定。
 なお作者はおっぱい星人でもある。

天草式十字凄教
 多分出てくるのは建宮斎字


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第四次聖杯戦争介入 その1

 舞鶴港到着の翌日。

 早速、聖堂教会の言峰璃正からお電話がやってくる。

 

「聖杯戦争は聖堂教会及び時計塔の管轄。

 その上でそちらが出向いてきた理由をお教え頂きたい」

 

「これはご丁寧に。

 こちらも、魔術師同士が殺し合うだけならばまだ我慢はしましょう。

 ですが、民間人を巻き込むのはいただけませんなぁ」

 

 知っている事のなんと強烈な事か。

 飛んで火に入る夏の虫状態の言峰璃正に俺は容赦なく王手を突きつけた。

 

「マスターの殺人事件を何時まで放置するおつもりか?

 現場に残された召喚陣が明確な証拠ではないですか。

 そちらがその気ならば、警察を介入させますよ」

 

「っ!?」

 

 日本の警察は優秀だ。

 雨生龍之介の指名手配要請を受けて彼の実家回りの捜査をしたら実家の蔵で彼の姉の死体がミイラ化して発見され、メディアを賑わせていた。

 そして、彼が冬木市内で行った殺人事件は儀式殺人で、明らかに召喚陣が書かれている。

 この時点で、言峰璃正は俺に対して何も言う資格が無くなった。

 

「ですが、神秘の秘匿……」

「神秘の秘匿が人の命より大事とおっしゃるか!

 なんなら、全部ばらして聖杯戦争を陳腐化させてぶち壊してもいいんですよ!!

 こっちは!!!」

 

 言峰璃正が時計塔の魔術師ならまだ言い逃れができただろうが、あくまで監督役の聖堂教会であった事が彼を詰みに追い込んだ。

 初撃で致命傷な彼に、実にわざとらしく救いの手を差し出す。

 

「もちろん、我々はお役所仕事ですから、上からの命令には逆らえません。

 そちらが我々の上と掛け合って、我々を止めるのならばそれを尊重しましょう。

 ですが、忘れないことですな。

 神秘の秘匿にかまけて事件を続発させたら、それを名目に我々が介入する事を。

 以上だ!」

 

 がちゃん。

 乱暴に電話を切る。

 向こうはこれでこっちが激怒している事と、介入を止めるために東京の政府を動かそうとするだろう。

 

「またえらく芝居がかった怒り方でしたな」

 

 この電話は会議室で参加者に聞かせるようにしていたから、俺の怒り方も芝居がかるのもしょうがない。

 とはいえ、民間人の犠牲を当たり前とするこの方法に怒りがない訳ではなかった。

 

「これも駆け引きの一つですからね。

 その前に事件としてこちらが片付けてしまえるならば、向こうは手を出せません。

 速川二佐」

 

 陸上自衛隊実験中隊隊長。速川保二佐。

 TA部隊を率いて舞鶴基地に到着していた。

 もちろん彼は駒でしかなく、その意思は市ヶ谷の後藤一佐や朝霞の石馬雪緒陸将補の影が見える。

 向こうからすれば、決起後の米軍介入は必然で、それを押し止めるためにも海自側のコネが欲しいのだろう。

 だから、迷うこと無く切り札を持ってきた。

 

「とはいえ、民間人に被害が出ているのは事実です。

 向こうが止められないなら、こちらが止めるまで」

 

 タカミチ・T・高畑がメガネを掛けなおして決意を述べる。

 雨生龍之介の殺人が次々と発覚している時点で、彼を捕らえることに一番に賛同してくれたお人好しでもある。

 

「そうなのよ。

 魔術を人殺しに使うのは許せないってのよ」

 

 天草式十字凄教の建宮斎字も賛同するが、妙に語尾が気になる。

 まぁどうでもいい事だが。

 

 個々に介入して各個撃破なんてアホな事態をさける為の調停会議である。

 地元魔術勢力の代表として天ヶ崎千草も参加させているが、関東への怒りより聖杯戦争の理不尽さの方に怒りが向いているらしい。

 未来の彼女の京都修学旅行編でのやらかしを知っている俺とすれば、壮大なブーメランを投げているようにしか見えないが言うほど愚かでもない。

 

「状況は既に始まっています。

 こちらを」

 

 俺は空自に頼んだ航空写真を皆に見せる。

 聖杯戦争のマスターの一人である遠坂時臣の屋敷の写真で、庭の一部が既に壊れていた。

 まるで爆発でもあったかのように。

 

「何らかの交戦が発生したものと考えられます。

 よって、夜間は彼らの時間です。

 移動及び連絡は昼に行うように徹底してください。

 魔術師以外の人間は、指示があるまで夜に決して出歩かないように」

 

「そうなると俺達は、ここで待機になるがいいのかい?」

 

 速川二佐の発言に俺は頷いた。

 自衛隊は、明確な国家権力の介入を意味するので見せるためにある。

 彼らが冬木の地に立てば、聖杯戦争そのものが完全に狂う。

 それこそが狙いだ。

 

「ええ。

 それとお願いが。

 爆発物処理班を待機させておいてください。

 残りの皆様は、異存がなければ、叢雲にて冬木に送ります」

 

「ああ。了解した」

「こっちも異存がないなのよ」

 

 さてと、準備は整った。

 こちらも聖杯戦争に介入するとしよう。

 

 

 

「聖杯に招かれし英霊は、今ここに集うがいい!

 なおも顔見せに応じぬような臆病者は、征服王イスカンダルの侮蔑を免れぬものと知れ!!!」

 

 征服王の雄叫びに次々と出てくるサーヴァント達。

 その声に英雄王が出て……

 

「そこの船から隠れ見ている雑種!

 王の御前であるぞ!!

 姿を現さぬか!!!」

 

 あ。

 英雄王が千里眼持ちだったのを忘れていた。

 艦橋にておれはステンノに声をかける。

 

「気配遮断を解いてくれ。

 総員、戦闘準備」

 

「総員戦闘準備!」

 

 新島副長補佐の声が響き、自衛隊員に緊張感が走る。

 隠れてだが、セイバーとランサーのあんな派手な戦闘を見ていたのだから当然である。

 とはいえ向こうも突如姿を現した駆逐艦に、マスターの驚く姿が目に浮かぶ。

 英霊たちの殺し合いから、一気に現代駆逐艦の登場である。

 主砲を彼らの方に向けながら、俺はマイクをとってスピーカー越しに話をする。

 

「あいにく、こちらは聖杯戦争を監視する側で、王の邪魔にならぬよう隠れていた無礼を詫びる。

 護国機関ヤタガラスの入即出やる夫二佐相当官だ」

 

 話しながらCOMPを操作して、甲板にクー・フーリンとジャンヌ・ダルクを立たせる。

 あ。

 大淫婦バビロンもあの格好で立っているが、気にしないことにしよう。

 

「おぅ!おおう!!!

 鉄の船に一騎当千の英霊たちよ!!

 余に降らぬか?

 待遇は要相談という事で」

 

 征服王が乗ってくるのでそのまま話を合わせる。

 英雄王が機嫌を損ねてこっちを攻撃したらたまらない。

 

「こちらとしてもその提案は魅力的なものだ。

 我々が、姿を現した理由は唯一つ。

 今回の聖杯戦争における召喚において、民間人が犠牲になっている。

 そのサーヴァントの討伐とマスターの逮捕にある」

 

 征服王が何か言おうとした所でバーサーカーが乱入し、英雄王と交戦。

 さらに派手に壊れる倉庫街だが、令呪にて英雄王が撤退するとバーサーカーは今度は騎士王にその対象を向けようとして……

 

「すまねぇな。

 父上に剣を向けるのは俺だ」

 

 見たことある白と赤の鎧がバーサーカーの剣を防ぐ。

 あ。

 こいつ見たことあるのだが。

 

「待ってください!

 モードレッドさん!!」

 

「待ち給え!

 この体にはなれていないんだ!!」

 

 慌てて駆け出てくる水着姿の盾持ち乙女とロリンチちゃん。

 これも困ったことに見た事があるぞ。

 

「面白いことになってるじゃねぇか……どれ、オレたちも行くか!」

「こっちです!

 あっ……」

「何なの、何なのコイツら!?

 なんだってわたしばっかりこんな目に遭わなくちゃいけないの!?

 もうイヤ、来て、助けてよレフ!

 いつだって貴方だけが助けてくれたじゃない!」

 

 そして飛び出す盾持ち乙女とドルイドに泣きながら走る銀髪の女性と、忘れるわけがない赤髪の女性マスター。

 

 

 

 駄女神め。

 特異点だからってまとめて世界線を重ねやがった。




現在の世界レイヤー

 メガテン世界ベースの冬木市でZERO時空
 +
 FGO世界の特異点F
 +
 FGO世界のFate/Accel Zero Order -LAP_2-


つまり

 現在のメガテン世界
 +
 選ばれなかった女主人公FGO世界線
 +
 やる夫がやっていたFGO世界線


モードレッド
 私のFGOで一番使ったセイバー。
 もうすぐ絆10なので登場。


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第四次聖杯戦争介入 その2

うわぁい大乱戦

型月世界線補正
それ以外のキャラクターは84%までしか力が出せない。


「マシュ?」

 

「「はい!」」

 

 あかん。

 二人かぶっているので俺は慌てて呼び方を変える。

 

「水着マシュ?」

「はい!

 先輩!!

 先輩の声ですね!!!」

 

 スピーカー越しなのにはっきりと見えるワンコみたいな笑顔。

 俺の知っているマシュならばこの質問に答えられるはずだ。

 

「最後の戦いで、どうしても勝てなかった俺は何をした?」

「はい!

 慌ててマタ・ハリさんを育てだしました!

 ステンノさんが最後ぶん殴る熱い戦いと共にいつもネタにしてました!!」

 

 うん。

 俺のマシュだ。

 なら話は早い。

 

「マシュはモーさんの支援!

 ロリンチちゃんはこっちに来て、今迎えをやるから!!」

 

 マイクを切り替えて艦内スピーカーに。

 

「高畑さん、建宮さんお願いします。

 あの杖を持った少女を艦に連れてきてください」

 

「わかった」

「了解なのよ」

 

 船から飛び出る二人だが水上を歩いているあたりさすが。

 もっとも、サーヴァント相手に通用するかはやってみないと分からない所なのだが。

 

「叢雲。

 クレーンと倉庫上に機銃掃射!」

 

「艦長!」

 

 新島副長補佐が発砲について意見を述べようとするので、俺は先に遮る。

 

「この状況ではもうテロで片付けるしか無いだろう?

 このあともっとひどくなるぞ。

 この聖杯戦争は」 

 

「追い詰めるわ!逃がしはしない!!」

 

 自動化された25mm三連装機銃の機銃掃射がクレーンや倉庫上部を当てずっぽうに狙う。

 これで、アサシンや衛宮切嗣、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトが退却してくれるならば御の字である。

 本命はモードレッド相手に暴れているバーサーカーなのだから。

 

 

「ジャンヌぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!!

 我が聖処女よぉぉぉぉ!!!!!」

 

 

 あまりの大音響にその方向を見たら、ふいに現れたキャスターのジル・ド・レェ。

 海に浮いたと思ったら、こっちに向けて海魔大生産である。

 何でと思ったら己の失態を悟る。

 こっちにジャンヌ・ダルク(メガテン版)が陣取っているの忘れていた。

 

「叢雲!

 目標変更!!

 あの海魔を近寄らせるな!」

 

「海の底に、消えろっ!」

 

「ステンノ!

 『女神の気まぐれ』頼む!」

 

「あらあら。

 こういうのでいいのかしら?」

 

 叢雲は25mm三連装機銃だけでなく5inch単装砲までぶっ放して海魔を沈めてゆく。

 更に、クー・フーリンやブリジッドや赤王ちゃまが船に海魔が近寄らないようにと叩き潰してゆく。

 まぁ、ジャンヌ・ダルクに群がっているから、集中して潰せるのだが。

 それでも数が多くて、しかも硬い。

 

「隔壁を封鎖して化物に備えろ!」

「何やってんだい。

 見てらんないねぇ。

 マスター」

「っ!?」

 

 ふいに艦橋に聞こえた艶のある声に一同が振り向くと、それは時代錯誤な女海賊が。

 新島副長補佐が何か言うのを手で押さえて、俺は彼女を見て笑う。

 彼女の顔が笑っているのは、海の上で船に乗って、この大戦闘だからに他ならない。

 

「いい男になったじゃないか。

 マスター」

「言ってなかったが、俺は元々司令なんだよ。

 船は任せる。

 船長」

「任された。

 船ってのはこう動かすもんなんだよ!!」

「ちょ、ちょっと!?」

 

 うろたえた叢雲だが、それでもすぐに彼女の舵に馴染む。

 そりゃ、世界最高峰の船乗りの一人だから。

 ドレイク船長は。

 

 

ジル・ド・レェ lv70

海魔lv67 ×19体

 

 

叢雲 lv124×0.84(型月世界デバフ)×1.2×1.2=lv149

ステンノ lv100(型月世界)×1.2×1.2=lv144

クー・フーリン lv43 (型月世界デバフ無し)×1.2=lv51

ブリジッド lv47×0.84(型月世界デバフ)×1.2×1.2=lv56

ゲンブ lv43×0.84(型月世界デバフ)×1.2×1.2=lv52

大淫婦バビロン lv69×0.84(型月世界デバフ)×1.2×1.2=lv83

ジャンヌ・ダルク lv54×0.84(型月世界デバフ)×1.2×1.2=lv65

天ヶ崎千草 lv34×0.84×1.2=lv34

ドレイク lv90×1.2=lv108

 

 勝敗は数で押す海魔と、近代兵器と悪魔で押す俺達の形となったが、最後にものを言ったのはこちらの女神の一言だった。

 

「スマイル・オブ・ザ・ステンノ♥」

 

 ジャンヌ・ダルクがラク・カジャとスク・カジャをかけ続け、 クー・フーリンがタル・カジャで攻撃力を上昇させ、ゲンブがタル・ンダをかけて敵攻撃力を低下させ、ブリジッドがディアラハンで悪魔を回復させる。

 天ヶ崎千草は護符を使いながら叢雲の艦内に海魔が入らないように結界を張り中を守る。

 これらのバフとデバフを前提に叢雲がドレイク船長の華麗な舵の元で近代兵器の射撃で海魔どもを貫通すれば、大淫婦バビロンは邪神の蛮声とマハジオダインの全体攻撃で叩き潰してゆく。

 本来ならば指揮に優れていたジル・ド・レェが指揮をとっていれば違った結果になったかも知れない。

 だが、その彼がジャンヌ・ダルクに目がくらみ、ステンノの宝具で誘惑された結果、この優れた海魔達は駆逐艦という鋼の船に侵入する事ができず、ついに掃討され尽くす事となった。

 

「おのれおのれおのれぇ………神よ。

 まだジャンヌの魂を弄ぶのですか!

 ジャンヌよ。

 愛しき聖処女よ。

 貴方に真の魂の開放を誓いますぞ………」

 

「違うのです!

 ジル!待って!!」

 

 ジャンヌの制止を聞かず、そう捨て台詞を吐いてキャスターは去ってゆく。

 この間に港の方も、決着が着く。

 というより、バーサーカーをモードレッドとマシュ二人とキャスター クー・フーリンが止めた結果、バーサーカーが撤退し残りは観戦モードに移行したのだ。

 そんな戦闘が終わって叢雲が接岸すると征服王が待ちかねたように近づいてゆく。

 

「すばらしいぞ!

 これが戦よ!!

 これが戦いぞ!!!」

 

「黙れ!黙れ!!

 勝手に近寄るなよぉぉぉ!!!」

 

 涙目のマスターが引っ張り戻そうとしているけど戻せるわけもなく。

 こっちはこっちで俺以外はこの大男征服王をどうすればいいのか考えあぐねているし。

 なお、モーさんは父上相手にちら見をするけど、俺に手を振っている。

 「二王に仕えない」って言っていたのは本当だったんだな。

 ランサーはいつの間にか撤退しており、セイバーとアイリスフィールがこちらを睨みつけている。

 あ。

 オルガマリー所長が座り込んで呆然としてやがる。

 

「上陸準備。

 対魔忍には働いてもらうぞ」

 

「ええ。

 待ちかねましたとも。

 それで何を?」

 

 無線越しに朧が返事をする。

 このために対魔忍を使わなかったのだ。

 

「この倉庫街の何処かにバーサーカーのマスターが死にかけている。

 見つけたら捕獲しろ。

 やばくなったら応援を出す」

 

「了解しました」

 

「艦は新島副長補佐に任せます。

 事情説明は後で。

 去るものは追わなくて結構です」

 

「分かりましたが、何をなさるので?」

 

 これで終わる夜ではない。

 というか、ここからが本番である。

 衛宮切嗣という男は、正義の味方であろうとしたテロリストだ。

 だからこそ、こんな無茶が出来る。

 

「速川二佐に連絡を。

 冬木ハイアットホテルの爆弾テロを未然に阻止します」




慌ててマタ・ハリさんを育てだした
 某1部ラスボス最後の初見殺し対策で攻略サイトを見て、この手があったかとやりだした。
 その結果、その所見殺しを潰してマタ・ハリが落ちたが一騎足りなくなったこちらは最後の戦いだからと置いておいたlv100ステンノがスマイル・オブ・ザ・ステンノをかけ続けながら、ラスボスをぶん殴り続けるという泥仕合に。

 この物語は、そんな可愛いステンノ様を自慢したいが為に書かれている。


ドレイク船長
 私のFGOで一番使ったライダー。
 もうすぐ絆10なので登場。
 この二人は本当に大活躍してくれているので出す予定だった。


冬木ハイアットホテルの爆弾テロ
 これを知っているからこそ、遠慮なくこんな無茶が出来る。
 この時点で聖杯戦争は詰み、テロとの戦いの名目で時計塔と聖堂教会が叩けるのだが、そこから先は……


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第四次聖杯戦争介入 その3

この日だけでやる事が多すぎる


 クーデターに必要なのは何か?

 一つは最低限の兵力。

 これは鎮圧されない戦力である事が望ましい。

 そしてその最低限の戦力でないといけない理由。

 速さである。

 

「こちら特殊作戦群甲河班。

 倉庫街にて死にかけた青年を発見。

 回収する」

 

「了解した。

 そいつ中に虫が居るから、注意するように。

 点滴と共に睡眠薬を打って眠らせておけ。

 彼の監視と拘束は、必ず悪魔と共に行うこと」

 

 間桐雁夜が目覚めて艦内がバイオハザードなんて事態は避けたいので、回収した対魔忍たちに注意を促してゆく。

 今の俺は出迎えのパトカーの中で、冬木ハイアットホテルに大急ぎで向かっている所なのだ。

 

「既に警察の爆弾処理班が爆発物を発見。

 広範囲に避難勧告を出して処理にあたっています。

 まもなく自衛隊の爆弾処理班も到着する予定です」

 

「爆弾の構造は携帯電話を使ったもので、既に電話会社に連絡し周囲の基地局を止めて電波が入らないようにしています。

 更に、二階以降の複数階にも爆発物が仕掛けられており……」

 

「警察発表にて、テロ組織に爆弾テロを公表。

 湾岸地区の爆発は、テロ組織とそれを阻止しようとした海上自衛隊の交戦によるものと発表……

 ホテルの爆弾が本命として周辺に避難勧告……」

 

「上層階にはトラップが仕掛けられているとの報告有り。

 陸自の爆弾処理班が到着するまで手を出すな……」

 

 無線機からの報告で入る情報が、聖堂教会と時計塔では状況をコントロールできない事を如実に物語っていた。

 上が腐っていても影で隠密に行われる魔術儀式だからこそ許されたのであって、テロ同然にビルを破壊するなんて許容できるほどこの国の人間は甘くない。

 

「先輩。

 お会いできて嬉しいです。

 ステンノさんはお久しぶりですが、もう片方の方は?」

 

「特型駆逐艦、5番艦の叢雲よ。

 え、知らないって?

 全く、ありえないわね。

 南方作戦や、古鷹の救援、数々の作戦に参加した名艦の私を知らないって、あんた、もぐりでしょ!」

 

 さすがに水着はまずいので、マシュには霊基再臨第三段階の姿になってもらっている。

 もうひとりのマシュとの区別は腰布で、実はこっちの方がエロ…げふんげふん。

 運転している警官の視線がバックミラー越しにとても厳しい。

 視線を合わせないように外を……

 うん。

 霊体化して楽しそうについてきているモーさんが手を振っている。

 こんだけ派手に暴れられるのだから実に楽しそうだ。

 で、後ろのパトカーなりタクシーなりに乗り込んでいるが、カルデアの面々とロリンチちゃん。

 彼らにとっては今頃情報収集に勤しんでいるだろう。

 知って頭を抱えているかも知れないが。

 なお、完全に放置されたセイバー陣営はそのまま立ち去った。

 テロリストの共犯として捕まえてもいいのだが、あそこで更に一戦するのは嫌だったのと、露骨にセイバー陣営を潰すのを嫌がった征服王の不満そうな顔を見て見逃したというのが本音である。

 その征服王はまだまだシナリオが続いているので霊体化してついてくるらしい。

 おかげで、彼のマスターは手配したタクシーの中でまだ気を失っている。

 かわいそうに。

 

「到着しました」

「ありがとう。

 今夜は大変な夜になるよ」

「でしょうね」

 

 海上自衛隊の制服姿で俺達はパトカーを降り、爆発物解除の手配をしている本部に入ると確保していた女性と面会する。

 なお、マシュの盾はパトカーの後ろにくくりつけてきた。

 

「ソラウ・ヌァザレ・ソフィアリ女史ですね?」

「それを知って私を拘束する事。

 覚悟はできているのでしょうね?」

 

 堂々たる女帝ぶりだが、こっちはここで喧嘩をしたい訳ではない。

 状況から衛宮切嗣やケイネス教授が隠れてここに来なければならないのに対して、こちらはパトカーという緊急車両で堂々とやってこれた速さの勝利である。

 

「むしろこちらがお聞きしたい。

 貴方方はこの国の主権をどう考えているのかとね。

 分かっていますか?

 貴方方を殺すためだけにこのホテルを敵は標的にしたのですよ」

 

「そこまでにして頂きたい」

 

 声は落ち着いたふりをしているが、吐く息と額の汗が隠しきれないケイネス教授。

 事を荒立てないように必死に警備の警官や避難者たちを避けるように魔術を行使してきたのだろう。

 婚約者が拘束されたので奪還をと考えているのだろうが、彼ならば気づいているはずだ。

 隣のステンノとマシュがサーヴァントである上に、霊体化したモードレッドがうきうきしてこっちを見ている事に。

 

「こちらからも尋ねさせてもらう。

 聖杯戦争のマスターよ。

 これは君たちの仕業か?」

 

「だったらこんな事をしませんよ。

 護国機関ヤタガラス所属。

 入即出やる夫二佐相当官と申します。

 今回の聖杯戦争において、監視を名目にこちらに来ております。

 一応確認しますが、この爆弾、そちらが自ら仕掛けたのではないでしょうね?」

 

「何をバカなことを!

 互いに秘術を尽くしての決闘が聖杯戦争だろうに。

 こんな神秘を侮辱するような事を誰が行うというか!!!」

 

 激高するケイネスに俺は頭を下げる。

 とはいえ、彼は状況が圧倒的に不利なのは理解している。

 ここで俺を殺して逃亡するにはリスクが高いし、彼ご自慢の魔術工房はこのままではビルごと爆破の危機にある。

 手出しができないからこそ、彼は怒ることで状況を改善しようとしていた。

 こちらの思惑のままに。

 

「失礼しました。

 こちらが求めるのは今夜だけの一時休戦です。

 あの爆弾を解除しないと、貴方方も安心して眠れないでしょう。

 そのためにも、そちらの魔術工房を一旦解除して頂きたい」

 

「……承知した」

 

「こちらはお詫びの品です。

 今のあなた達には必要でしょうからね」

 

 そう言って、俺はケイネスに菓子箱を手渡す。

 中に入っているのはディスチャーム。

 魅了解除アイテムである。

 ケイネスの目がじろりと俺を睨むがそれ以上は何も言わずに彼はその菓子箱を受け取った。

 

「せっかくですから、もう一つ詫びを入れましょう」

 

 

 

「ケイネス先生。

 ……申し訳ありませんでした」

 

 十数分後。 

 双方のサーヴァント立ち会いのもとで、ケイネスに頭を下げるウェイバー・ベルベットの姿が。

 目が覚めた彼に事情を聞き、当たり前の事である聖遺物の強奪に対する謝罪である。

 余興ではあるが、ケイネスのプライドを刺激するのに十分だし、征服王の侮辱で腹が立っていた後でマスターが頭を下げるのだから、気分が良くならない訳がない。

 かといって許すわけでもないが。

 

「ウェイバーくん。

 この聖杯戦争では未だ敵同士だ。

 その発言を私は取り消すつもりはない」

 

 ピクリと震えるウェイバーだが、だからこそケイネスはここで彼を殺さない。

 彼のプライドが元弟子であるウェイバーの謝罪を受け入れざるを得ないからだ。

 そして、既にセイバーモードレッドとアサシンステンノを抱えるイレギュラー陣営が、盤上で暴れまくっている。

 話がわかる、または脅して指揮下における可能性があるウェイバーとの関係改善という打算が、彼に寛容を強制させる。

 

「とはいえ、君の行いは恥ずべきものだが、このようにビルを爆破しようとする外道ではない。

 君にはそういう魔術師にはなってほしくないと思っている。

 無事に生き残り給え。

 罰は与えるが、名誉回復の機会も与えよう」

 

 ウェイバーの謝罪の後、当たり前のようについてくるイスカンダルが俺に声をかける。

 

「なぁ。

 あの謝罪必要だったのか?」

 

「征服王。

 あんたは過去の人だが、あの二人は人間で未来がある。

 元々は師匠と弟子の関係だ。

 要するに、あんたのマスターはあの師匠に認められたかったんだよ。

 本人は分かっていないふりをしているがな」

 

「なるほどな。

 余もあったな。

 アリストテレス先生に認められたくて」

 

 当たり前のように出てくる歴史上の偉人の名前に俺は苦笑し、彼の肩を俺は軽く叩く。

 そんな自分が少し嬉しいのを自覚しながら。

 

「あの若造死なせるなよ」

「当たり前だ。

 余を誰だと思っている」

 

「やぁ。マスター。

 この姿でははじめましてだな。

 それでも、面影で分かったかな?」

 

 そんなやり取りをしていたら、ホテルから出てきたロリンチちゃんに俺は笑いかける。

 全てはこの企みのためでもあった。

 

「あのホテルにあった魔術工房は全部見させてもらったよ。

 複製は可能だ。

 特に君が欲しがっていた魔力炉についてもね」

 

 さすが万能の人。

 俺の企みに気づいて征服王が笑い出す。

 

「貴様もやるではないか!

 ああいう事をする理由の真の狙いは、彼らの陣地偵察だったか!!」

 

「もちろん、口止め条件として彼女の見てきた工房の情報を提供するがいかがかな?」

 

 征服王は実にいい笑顔であっさりと俺の企みに乗った。

 そして、ついに冬木ハイアットホテルは爆破されなかった。




アリストテレス
 ギリシャの哲学者であり、征服王の家庭教師。
 なお、彼の師匠がプラトンというまた凄い知の巨人。
 この征服王、その見かけによらず超英才教育を受けていた事になる。


 これを書くために『Fate/ZERO』を見直してるが征服王がかっこいい。
 そして衛宮切嗣が外道すぎる。


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第四次聖杯戦争介入 その4

「さてと、移動中だが文句は言わないでくれよ。

 護国機関ヤタガラス所属の入即出やる夫二佐相当官だ」

 

「先輩。

 カルデアのマスターじゃなかったんですか!?」

 

 元水着マシュがびっくりした声をあげ、それにオルガマリー所長がびっくりする。

 彼女からすればマシュが二人居る時点で大混乱なのだろう。

 

「ちょっと待って!

 あなた何でカルデアの事を知っているのよ!?」

 

 なお、ここは陸自の用意したトラックの中。

 参加者はカルデアの面々にまだついてきているライダー陣営である。

 征服王の図体のせいで、結構狭い。

 

「まぁ、色々あってな。

 そのあたりを話すと長くなるんだが……」

 

「その長くなるのをこちらとしては知りたいんだけどね。

 やぁ。私。ずいぶんと小さくなったものだね」

 

「これはこれで中々いい体だよ。

 何しろ君が作ったのだからね。私」

 

 カルデアからの通信が開き、ダ・ヴィンチちゃんが姿を現す。

 一を聞いて十を知る天才ダ・ヴィンチちゃんとロリンチちゃんの挨拶だが、互いに目は笑っていない。

 

「まぁ、そのあたりはおいおい説明するとして、俺達はこのままキャスター討伐に向かう。

 元々、それが理由でこの冬木にやってきたんだよ」

 

 そんな訳で用意していた雨生龍之介の情報を見せる。

 彼の殺人経歴と現在十数人の子供が冬木市およびその周辺都市で行方不明である事を知ると皆の顔が一様に強ばる。

 

「で、そんな奴がなんの因果かしらないがキャスターを召喚し聖杯戦争で暴れている。

 こいつを討伐するために、俺達はやってきたという訳だ」

 

「何だ。

 聖杯戦争には参加せんのか?

 それだけ優れたサーヴァントを連れているというのに?」

 

「あいにく、これだけのものを得てなお聖杯に望む願いなんて無いよ」

 

 叢雲とステンノを抱きしめて俺は言い放つ。

 かっこいい事を言っているつもりだが、はたから見ればクズでしかない。

 

「というか、征服王なんでついてきた?

 ここからはこっちの都合だから来なくても良かったのに」

 

「たわけ。

 ここまで戦を見せておいて絡めぬとはもったいないではないか。

 それにこの外道を討伐するのは坊主に戦を教える良い機会だ」

 

 ついでとばかりに当たり前のようについて来ている野良サーヴァント状態のモードレッドにも確認をとる。

 

「野良だから改めてマスター探してもいいんだそ」

「二王に仕えないって言ったろ。

 それに、お前相手だとこっちも楽しく戦えるからな」

 

 知ってた。

 モードレッドとドレイクは俺のサーヴァントだからこそこっちに出てきたのだろう。

 だが、カルデアのバックアップ無くして、この二騎のサーヴァントと契約なんてすれば、干からびかねない。

 ロリンチちゃんに頼んだ、ケイネスの魔力炉はそのためにも必要だったのだ。

 そんなロリンチちゃんが爆弾発言をかます。

 

「で、マスター。

 君は何処まで知っているのかな?」

 

「知らないけど、君が出てくるという事は知っていたよ」

 

 ここでネタバラシをしよう。

 遅れてFGOをやり始めた俺は、一部攻略を終えた所で満足し、1.5部をちびちびとクリアしていた所で止まっていた。

 つまり、第二部の概要はなんとなく耳に入っていたけど、そこから先を知らない。

 だから、1.5部の水着マシュが出てくるのは予想はしていたが、第二部のロリンチちゃんが出てきたのは完全に想定外だった。

 あの魔力炉関連も実はここに居るカルデアの面子になんとかしてもらう予定だったし。

 

「なるほど。

 つまり君は2018年の我々を知らないのだな?」

 

「ああ。我々が知っているのは2017年だ」

 

 ぺたん。

 その言葉に荷台に座り込んだのがオルガマリー所長だ。

 目に涙を浮かべている。

 

「良かった……

 私達は間違っていなかったのね。

 良かった……」

 

 アイコンタクトで互いに確認する。

 あの人に真実を言うのはやめておこうと。

 成仏するならまだしも、恨まれて怨霊化でもしたら目も当てられない。

 そのまま俺は視線をカルデアの面々に向ける。

 

「そっちもだ。

 無理して戦う事もない。

 このままここに残ってくれて構わない」

 

「結構です。

 私達も戦います。

 こんな非道を見過ごすことなんてできない!」

 

 ああ。

 藤丸立香はこんなやつだった。

 こんなやつだからこそ、人類最後のマスターとして人類を救ったのだ。

 俺はCOMPを操作してクー・フーリンを召喚する。

 

「呼んだか?

 サマナー」

「って、俺じゃねえか!?」

「おぅ。

 そっちはドルイドか?」

 

 同キャラ同士の挨拶もそこそこにさせて、俺はクー・フーリンに命じた。

 

「せっかくのよしみだから、こいつらの護衛をしてやってくれ。

 着いたぞ」

 

 未遠川の水道地下に作られたキャスターの工房。

 もちろん探知されているだろうが、この数が力攻めを可能にした。

 

「じゃあ、任せた。

 サポートをつける。

 マシュは俺の護衛。

 多分、見ている連中がいるから、そいつらから俺を守ってくれ」

「おぅ!

 ぶっ潰してやるぜ!」

「はい!

 先輩!!」

「サマナーに感謝を。

 ジルを救うチャンスを私に与えてくれたことに」

 

 モードレッドにジャンヌ・ダルクをくっつけて送り出す。

 ジャンヌという最高の餌がある以上、消耗しているのにキャスターは出てこざるを得ない。

 マシュが警戒している中、残っている連中に一言付け加えておく。

 

「中に入るのはいいがあまりおすすめしないぞ。

 猟奇殺人の現場になってるからな」

 

 それでも力強く藤丸立香は前に進む。

 それを彼女のマシュが追いかけ、オルガマリーが慌てて続き、二人のクー・フーリンが警戒して中に入ってゆく。

 そして、そんな彼女を見て覚悟を決めたウェイバーが入り、征服王がその後に続いた。

 

「さてと、使い魔で見ている諸君。

 我々はキャスターの討伐を以て今回の介入を一時中断する事を宣言しよう。

 また何かあるようだったら、舞鶴基地の自衛隊に連絡を入れ……っ!?」

 

「先輩っ!」

 

 甲高い音とともにマシュが盾を構えていたがそのまま俺に近寄る。

 マシュが盾で一つ弾いたみたいだが、もうひとりの狙撃手から撃たれたらしい。

 たしかにこんな狙撃チャンスを逃さないか。

 それが、誘いの罠という事に気づかずに。

 

「大丈夫だよ」

 

 ポケットからあるものを取り出す。

 禁凝符の束が灰になって散った。

 物理反射の札は衛宮切嗣対策で大量に持っていたのが役に立った。

 さて、彼は手傷を受けているといいのだが。

 

 

「うっ……」

「おぇ……」

 

 キャスターとそのマスター討伐は消耗していた所を数で押し込まれて、見せ場もなく終わった。

 十数人の子供を救い出し、犠牲者をキャスタークー・フーリンの炎で焼いて成仏させる間、藤丸立香とウェイバーの吐き気が止まることは無かった。




キャスター出落ち。
 魔力回復の時間もなく速攻で潰したのが勝因。

世界観レイヤーの修正

 メガテン世界ベースの冬木市でZERO時空
 +
 FGO世界の特異点F
 +
 FGO世界のFate/Accel Zero Order -LAP_2- 1.5部水着マシュ
 +
 FGO第二部 ロリンチちゃん

つまり

 現在のメガテン世界
 +
 選ばれなかった女主人公FGO世界線
 +
 やる夫がやっていたFGO世界線
 +
 その先でやばいことになって逃げ出したロリンチちゃん


12/7
 ZEROを見て、衛宮切嗣と久宇舞弥が同時狙撃しているから、マシュが一つ弾いた事に修正。


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第四次聖杯戦争介入 その5

雁夜おじさん救済回


 冬木市にて爆弾テロ未遂事件が発生した翌日。

 やっと寝ようとしていた俺達を天ヶ崎千草が起こしに来る。

 

「倉庫街で倒れていた奴が目を覚ましましたえ」

 

 仕方ないので、着替えて間桐雁夜の元に。

 遅くまで起きていた理由は、間桐雁夜の体には蟲が巣食っていたので、まずはそれを取り出していたからだ。

 メガテンちっくに状態を確認した結果、何が何だか分からない状況なので、一番簡単な解決方法を取ることにした。

 

「一旦彼を仮死状態にしてそれから蘇生。

 その間に出てきた蟲を駆除して再度治療を施します」

 

 ということで空いている部屋に移して、ムドの効果のあるアイテム点穴針で間桐雁夜を仮死状態にする。

 その途端出てくるわ出てくるわの蟲の数々。

 なお、蟲は羽虫だけでなくエロゲ仕様の卑猥なやつまであって、某赤王ちゃまの目がランランとしていたので駆除から追い出すことに。

 そこから発生する魔力不足については、マグネタイトを間桐雁夜本人に渡すことで一時的にごまかすことにした。

 

「マグネタイトと呼ばれるものと魔力が同一であるか心配なのだろう?

 だったら簡単さ。

 その供給源である間桐雁夜にマグネタイトを渡す事で彼を擬似魔力交換炉にしたて上げればいい」 

 

 こういう事を言えるロリンチちゃんマジ天才。

 そして、ロリンチちゃんが逃げ出した虚数潜航艇シャドウ・ボーダーもちゃんと回収してきており、現在叢雲のヘリ甲板に積んである。

 派手に叢雲が機銃掃射したけど、港のクレーン機能が生きていた事に感謝。

 もちろん、オルガマリー所長が見てわめき出したのは言うまでもない。

 現在彼女は自衛隊所属の医師によって精神安定のためのカウンセリング中である。

 そんなロリンチちゃんは、現在徹夜で叢雲の機関室にこもって魔力炉の製造と設置をやっていたり。

 これで令呪がFGO式に一日に一つ回復するし、電力を魔力に変換し魔力供給をサポートするからモードレッドやドレイクと正規契約できるって訳だ。

 話がそれた。

 

「ここは?」

 

 まだ頭が混乱しているらしい間桐雁夜に俺は優しく声をかける。

 なお、暴れないように拘束具をつけさせている。

 

「舞鶴基地の病院の一室だ。

 君は倉庫街で倒れていたんだ」

 

「……聖杯戦争は……行かないと……」

 

 言うと思ったので、俺は用意していた台詞を言う。

 対バーサーカー対策に、モードレッドが霊体化して控えていたり。

 

「その聖杯戦争だが、大変なことになっている」

 

 病室のTVをつけてやると、国営放送のキャスターがずっと続く臨時ニュースを読み上げていた。

 

「……冬木市を襲った大規模テロについての続報です。

 自衛隊舞鶴基地の広報官の発表によると、冬木ハイアットホテルの爆弾は完全に解除。

 港に潜伏していたテロ組織とたまたま停泊していた護衛艦が交戦・戦闘に入ったとの事。

 テログループは逃走し、現在冬木市内では陸上自衛隊第3師団第7普通科連隊の第1・第5普通科中隊が京都府警と共に警護を行っています……」

 

「なんだこれは?」

「あれだけ派手に暴れて、何だこれはは無いだろう?」

 

 ナース服のジャンヌ・ダルクがメ・ディアラマをかけながら状態異常回復の鎮心符を張る。

 バーサーカーの狂化の影響下、精神が不安定になり、この札が面白いように消える消える。

 なお、間桐雁夜の仮死をサマリカームで治したのが彼女である。

 

「見ての通り、街には警察と自衛隊がいっぱい。

 聖杯戦争どころではないよ」

 

「聖杯戦争はどうなるんだ?」

 

「状況次第だろうが、続けられるだろうな。

 君も知っているだろう?

 彼らの根源への執着心を」

 

「ならば……行かないとっ!」

 

 やっとそこで拘束具に気づく間桐雁夜。

 また一枚鎮心符が破れて灰になった。

 

「まぁ、待ち給え。

 間桐雁夜くん。

 取引をしようじゃないか」

 

「……何で俺の名前を知っているんだ?」

「むしろ、この制服姿で察してほしいんだけどね。

 海上自衛隊入即出やる夫二佐相当官だ。

 護国組織ヤタガラスが本職なのだが、君にはこっちの方が理解しやすいだろう」

 

 その上で、彼に分かりやすいように、彼の理解できる現実を提示してやった。

 

「国家は、聖杯戦争をテロと断定した。

 少なくとも、これ以上被害が出るようならば、国家が介入する。

 あのTVの映像はそういう意味と捉えてもらいたい」

 

「……ははっ!

 ざまーみろ!!遠坂時臣め!!

 何が魔術だ!!!聖杯戦争だ!!!」

 

 涙を流してひとしきり笑う間桐雁夜。

 その間にも鎮心符がどんどん灰になってゆく。

 

「おちついたかね?」

「ああ。

 頼みがある」

「間桐桜くんの事だろう。

 こちらの取引の条件がそれだ」

「全部知っているって訳だ」

「国家を馬鹿にしてはいけない。

 いい教訓だろう?」

 

 俺は笑うが間桐雁夜は警戒する。

 してくれないと困るのでやっと話が進められる。

 

「彼女を助けるためには法が邪魔をする。

 遠坂家から間桐家への養子は正規の手続きを経ていたからね。

 そのために、一芝居打つ必要があるんだ」

「何をすればいい?」

 

 警戒したままの間桐雁夜に俺はあっさりとその手の内を明かす。

 シンプルだからこそ、間桐臓硯の手が出せない一手を。

 

「簡単な事だ。

 『昼間』に『間桐家』でバーサーカーを暴れさせればいい。

 その際に令呪を使い切って、バーサーカーが消滅してくれるとなおいいな。

 テロの犯人が分からなくなるからね」

 

「……ぁ……ああ!!」

 

 感づいたらしい間桐雁夜が叫び声をあげる。

 フリーのルポライターなんてやっていたから、表の感覚が残っていたのだろう。

 国家を敵に回すという事が、どれだけ恐ろしい事かを。

 

「間桐家のテロ事件の捜査という形で自衛隊を派遣して、桜ちゃんを保護する。

 感づいていると思うが、こちらでは体内にいる蟲の除去とかもできるからね。

 その上でカウンセリングをして、彼女自身から家庭内暴力と虐待の証拠が出れば、雁夜くん。

 君の願いは叶う」

 

「……ありがとう……ありがとうこざいます……さくら……」

 

 静かに泣く彼と看護するジャンヌ・ダルクを置いて、俺は部屋を出る。

 そして虚空に向けてつぶやいた。

 

「わざわざ使い魔を残して今の光景を見せてあげたんだ。

 何か言いたい事があるのならば、そこの電話にどうぞ。

 番号は……」

 

 ずっとアサシンがつけていたのは知っていたので、この光景を見せてやった。

 かかってくる電話を取ると、予想していた声がきこえる。

 

「どういうつもりかね?」

 

「こういうつもりですよ。

 良かった。

 電話が使えないかと心配していましたよ。

 遠坂時臣さん」

 

 初っ端から嫌味をぶつけてやる。

 この時点で彼は多分うっかりに気づいていない。

 敗退したはずのアサシンの報告で使い魔を放って電話に出たら、アサシンとアーチャーであるはずの彼が繋がっているという事が。

 まぁ、知っているからいいのだが。

 

「君は聖杯戦争をなんだと考えているのかね!」

「私はどちらかといえば間桐雁夜さんよりの人間でしてね。

 それで察していただけると嬉しいですなぁ」

 

 相手の顔から優雅さが剥がれるのが分かる。

 それでも優雅に取り繕おうとしているのが滑稽だった。

 

「貴様も魔道の尊さを理解できぬ者だったか」

「そんなものが無くても、こうやって科学は離れた俺達との会話を可能にしてくれる。

 所詮その程度のものなんですよ。

 魔導なんてものは」

「……」

 

 挑発は怒ったほうが負けである。

 『どんな時でも余裕を持って優雅たれ』をモットーとしている彼からすれば、これが安い挑発であるのは分かっているだろう。

 黙っている事で、彼が必死に考えを取り繕っているのが手に取るように分かる。

 あの倉庫街の決戦で、謎のイレギュラーサーヴァント数騎を俺が抱え込んでいるのが分かっているはすだ。

 その上で俺の討伐に英雄王を差し向けたら、セイバーやランサー陣営に横殴りをされる。

 しかも、俺が自衛隊に表向き所属していることが、彼の自制心を働かせていた。

 当然舞鶴基地への攻撃は完全なるテロ行為に当たる。

 外面がいいために、彼は衛宮切嗣みたいに成りきれない。

 その彼も銃の反射で負傷しているはずだか、多分諦めないのだろうな。

 

「なるほど。

 そちらの家訓は存じあげております。

 大変ですなぁ。

 怒るにも理由が要るとは」

 

「黙れ」

 

「言わせていただきましょう。

 魔術師。

 国を舐めるな。

 少なくとも、上はどうか知らないが、この国の現場は根源や聖杯なんてものの為に、ビルを爆破したり子供を生贄にする事を許容しない」

 

「……」

 

 結局の所、遠坂時臣も言峰璃正と同じく電話をかけた時点で詰んでいた。

 情報を制する者は戦場を制するが、知りすぎれば情報に溺れる。

 俺にも言えることである。

 注意しておかねば。

 

「しばらくは、テロ警戒の為に自衛隊が駐屯します。

 もちろん、そちらの庭の爆発についても警察がお話を聞くことになるでしょう。

 おとなしく屋敷で震えている事ですな。

 一 般 人 として。

 では」

 

 がちゃん。

 その後間桐雁夜の病室から響き渡る笑い声。

 今の会話、当然のように聞かせてあげていたのである。

 これで彼が取引に快くのってくれるだろう。

 

「ひとでなし」

 

 横で聞いていた叢雲がぽつりと言い、

 

「あら、マスターのそういう所、私は好きよ」

 

 同じく横で聞いていたステンノが俺に抱きついた。

 そのまま叢雲を抱き寄せて、廊下向こうから覗いていたアサシンに言う。

 

「この後俺達は寝るだけだから面白いところなんて何もないぞ。

 それとも、このままついてきて人の情事も遠坂時臣に報告するかね?」

 

 俺の皮肉にアサシンはそのまま消え失せた。




やる夫も実は結構愉悦部。


桜の家庭内暴力と虐待の証拠
 まぁ、膜の無しで多分黒判定が出る。
 


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Intermission その1

第三者視点


 衛宮切嗣の体の回復には時間がかかりそうだった。

 未遠川にて謎のマスターを狙撃した彼は銃が暴発し、両腕に大怪我を負ってしまったからである。

 アインツベルンの屋敷内に撤退した彼と久宇舞弥は、アヴァロンにて治癒を行わざるを得なかった。

 そんな彼が目を開けた時、彼の目に入ったのは愛する妻の顔だった。

 

「ああ。

 キリツグ。

 良かった。

 目が覚めたのね」

 

 抱きつくアイリスフィールを気にせず、彼は居るであろう久宇舞弥に声をかける。

 

「状況は?」

 

「考えうる限り最悪です。

 京都府警及び福井県警の機動隊、自衛隊第3師団第7普通科連隊の第1・第5普通科中隊が冬木市全域の警備に当たっています。

 夜間外出禁止令が発令され、街は実質的な戒厳令下に置かれています」

 

 まだ両腕が動かない衛宮切嗣の目に久宇舞弥は写真を見せてゆく。

 明確な武力。

 その象徴が威嚇である事を物々しく語っていた。

 

「戦車を持ち込まないかわりに、やっかいなものを持ち込んだものだ」

 

 鋼の巨人。

 TAことタクティカルアーマーの存在。

 さすがに舞鶴基地からは出していないが、その存在を誇らしげに見せつけていた。

 現代の戦場を知っているからこそ、衛宮切嗣は状況がまずいことを嫌でも理解する。

 現代戦において、ゲリラ側が正規軍に正面切って勝つ可能性は限りなく低い。

 

「未遠川の狙撃についても警察は調べだしています。

 いずれ辿られるのは時間の問題かと」

 

 狙撃失敗後、負傷した衛宮切嗣を連れて撤退した為に、現場の掃除ができなかったのが大失態だった。

 特に銃の暴発で広範囲に飛び散った部品と、負傷した衛宮切嗣の血は決定的な証拠になるだろう。

 

「あの倉庫街に現れたサーヴァントについては?」

 

「それだったら私の方から報告しよう。

 あの時、バーサーカーを抑えていたサーヴァントは私の息子のモードレッドだ」

 

 堂々と『父上』発言しているからセイバーが気づかない方がおかしい。

 そして、セイバーの直感は更に隠していたサーヴァントの存在を感じ取っていた。

 

「それと、あの鉄の船の中にサーヴァントが更に一体か二体。

 外に出ていたやつとは別のが居る可能性が」

「嘘!?

 この聖杯戦争はどうなっているというの?」

 

 アイリスフィールの悲鳴も今の衛宮切嗣には遠く聞こえる。

 三半規管もダメージを負ったらしい。

 セイバーが衛宮切嗣の傷の見立てを告げる。

 

「おそらく回復するのに二日。

 戦闘が行えるまでには三日かかるでしょう」

 

「そんなに待てない。

 今すぐにでも動かないと」

 

「駄目よ!キリツグ!!」

 

 起き上がろうとする衛宮切嗣をアイリスフィールが必死に止める。

 彼の体が戦闘できる体でないことは彼が一番わかっている。

 それ以上に正規軍が正規に法を行使して展開している状況で、三日が経過する事の意味を衛宮切嗣は嫌でも理解していた。

 キャスターに己の陣地に籠もられる方がまだましな状況。

 それなのに彼はアイリスフィールの魔術でまた眠らされる。

 

(駄目だ……奴に、奴らに三日の時間を与えるなんて……)

 

「安心してください。

 マスター。

 マスターとアイリスフィールは私が守ります」

 

 まったく安心できないセイバーの言葉を聞きながら、衛宮切嗣は意識を失った。

 

 

 

「はい。

 はい……ありがとうございます。

 では」

 

 冬木教会の言峰璃正は必死に状況改善のための手を打っていた。

 聖堂教会及び時計塔の政治力はこの時点では深く根を張っているからだ。

 それでも、発生したテロ未遂と港の戦闘が彼らの政治力行使を難しくしていた。

 

「そちらの言い分も分かる。

 だが、我々は魔術師同士が殺し合いをする事を黙認するとは言ったが、都市のど真ん中のホテルを爆破する事まで黙認した覚えは無いのだけどね」

 

 連絡をとった政治家の嫌味はまったくもって正しい。

 言峰璃正にとって致命的だったのは、爆弾テロ未遂の為に自衛隊が展開した事でそれが既成事実化されてしまった事である。

 現に展開したものを圧力で撤回するのは当然現場の自衛隊が泥を被ることを意味する。

 自衛隊の一部に不穏な動きがあると噂されている現状で、そのような命令を出すのは政治家にも躊躇われたのだ。

 彼らの保身と権益が時計塔と聖堂教会の買収という形で合意に達した結果はこのようになっていた。

 

「爆弾テロの犯人が逮捕された時点で自衛隊及び機動隊を撤退させる」

 

 犯人を用意してそれを血祭りにあげる事で、自衛隊撤退の言質をもらったに過ぎなかったのである。

 アインツベルンの莫大な金銭供与による買収にもかかわらず、ここまでしかできなかったというか、ここまで押し込まれていた戦況をなんとかひっくり返す算段がついたというべきか。

 

「父上」

 

 息子である言峰綺礼の声に言峰璃正は振り向く。

 笑顔を作ってその不安を払拭しようとしたが、状況は自衛隊のマスターに更に進められていた。

 

「アサシンからの報告です。

 近く確保したバーサーカーを昼間に間桐家へ特攻させて暴れさせるとの事。

 その件で間桐家に捜査の手が入るでしょう」

 

 言峰璃正は頭を抱えそうになるのをこらえるが、言峰綺礼は更に話を続ける。

 

「その際に令呪を全て消費する事をバーサーカーのマスターは承知しました。

 これで、キャスターに続いてバーサーカーが脱落する事になります」

 

 後始末を考えなければ、二騎目が勝手に自滅するだけの事。

 アーチャーの制御に難がある遠坂時臣を勝たせたい言峰璃正にとってはこの展開は悪くはないものである。

 間桐家で起こるテロ第二幕を見なければ。

 

「時臣くんは?」

「自衛隊のマスターに電話で挑発されていましたが、おちついてバーサーカーの自滅を待つようです」

「そうか」

 

 大丈夫だ。

 まだ戦いは序盤戦。

 地の利を得て時間をかけて準備した我々の勝利は揺るがない。

 そう思っていたのだ。

 言峰綺礼の次の発言を聞かなければ。

 

「自衛隊のマスターに保護されたサーヴァントを率いる者の中に、オルガマリー・アニムスフィアを名乗る者がおり、ケイネス・エルメロイ・アーチボルトと接触を……」

 

 

 

 聖杯戦争が全く違う盤上に変わる。

 その時、駒達はただ踊ることしかできない。



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Intermission その2

駄女神くおりてぃ


 あの一日。

 倉庫街の戦闘に、冬木ハイアットホテル爆破未遂に、未遠川でのキャスター討伐。

 あまりに多くのことが有りすぎたので、やる夫陣営すらも黙認せざるを得なかった事。

 カルデア同士の情報交換。

 天才ダ・ヴィンチが二人居る事が、彼らの現状把握を可能にした。

 

「時間が違う」

 

 モニターのダ・ヴィンチちゃんがあっさりと告げ、ここにいるロリンチちゃんがそれにとどめを刺す。

 それがどれほどの意味を持つか分かっている上で。

 

「過去改変が発生してる」

 

「どういうことなのよ?」

 

 カウンセリングを受けて少し気が楽になったオルガマリー・アニムスフィアが、怪訝な顔で尋ねる。

 それに答えずに、彼女は瓜二つのマシュをじっと見る。

 もちろん、元水着マシュこと霊基再臨第三段階のマシュの方をじっと見ていた。

 

「あの、何か?」

 

「もう一度確認させてくれ。

 君の先輩はカルデアを去ったと言ったのだね?」

 

「はい。

 終局特異点『冠位時間神殿ソロモン』攻略後、先輩は『後はAチームの仕事だ』と言ってカルデアを去って日本に帰ったのです。

 所長代理となったダ・ヴィンチちゃんは私にも選択肢を与えてくれて、先輩と一緒に日本で住む事になったんです。

 先輩の家は冬木市にあって、妙な胸騒ぎがして慌てて盾を持って倉庫街に行ったら……こうやってみんなと会えた訳でして」

 

 マシュが嘘を言うような人間ではないことを二人のダ・ヴィンチちゃんはよく理解している。

 そして、己の性別が変わったぐらいで天才は揺らがないなんて言いそうな天才であったダ・ヴィンチちゃんはたとえどの時間の自分だとしても自分が言いそうな事はちゃんと把握していた。

 

「亜種特異点が発生するのに君たちを手放した?

 ありえないだろう!?」

 

 ロリンチちゃんが断言すれば、ダ・ヴィンチちゃんがモニター上で頷く。

 

「カルデアの機密とか何やらを全部無視して君達を私が送り出した!?

 そんな馬鹿な!?」

 

 二人とも掛け値なしの天才だからこそ、駄女神が改ざんした世界線レイヤーの齟齬に気づいたのだ。

 2015年のダ・ヴィンチちゃんが居て、2018年のダ・ヴィンチちゃんが居るのに、2017年のダ・ヴィンチちゃんが居ない。

 名探偵ならずとも見つけたら不思議に思う、致命的な瑕疵をこの二人が見逃す訳がなかった。

 ミステリー事件解明の三要素というのがある。

 

 フーダニット 誰が?

 ハウダニット どうやって?

 ワイダニット 何故?

 

の3つだが、そのうちの二つはこの天才は当たりをつけていた。

 フーダニットとワイダニットは簡単だ。

 この状況において得をする人間で、ロリンチちゃんはあっさりとそれを尋ねた。

 

「で、マシュ。

 やる夫くんとはもうしたのかい?」

 

「……」

 

 赤くなるマシュの顔が全てを物語っていた。

 間違いなく、このマシュとマスターのやる夫が鍵であるという事をこの場の人間は嫌でも理解する。

 要するに、この状況はやる夫とマシュが出会う為に作られた。

 だが、ハウダニットだけが分からない。

 さすがの天才二人も上位存在の女神の駒としてやる夫が選ばれ、そのハーレムボーナスとしてマシュを引っ張るためにこんな無茶を行ったなんて分かるわけがない。

 

「待て!

 ああ!!

 こういう事か!!!

 私の過去がまた改ざんされたぞ!!!」

 

 先に今があって、その後に過去がでっち上げられる。

 いみじくも因果が逆なこの世界の理由付けをロリンチちゃんはたっぷりと味わう。

 今や彼女が探偵だった。

 

「おいおい。

 ドスケベ礼装全部持っていったか!

 君たちは」

 

「……」

 

 ロリンチちゃんの呆れ顔にマシュはもはや真っ赤を通り越して頭から湯気が出るかもという状況になっているが、他の面子は首をかしげるばかり。

 まぁ、名前からして察しているだろうが。

 

「やっと理解した。

 私は君たちを手放した世界線の私だったわけだ。

 どうりであの船に一人で逃れた訳だ」

 

 一人苦笑するロリンチちゃんに、黙って聞いていた藤丸立香が声をあげた。

 

「そろそろ、みんなに分かるような説明をお願いしていいかな?」

 

「ああ。

 そうだね。

 その前に頼みがある。

 ロマニをモニターに出してくれないかい?」

 

「……少し待ってくれ」

 

 察したダ・ヴィンチちゃんの姿が消えて、ロマニ・アーキマンが姿を現す。

 その顔を見たロリンチちゃんだけでなく、赤くなっていたマシュが涙目で彼を見た事で、藤丸立香は察してしまった。

 彼女の旅の結末の一つを。

 仲間の一人が帰らぬ事を。

 それはモニターのロマニも同じだったのだろうが、彼はいつもの穏やかな笑みでこう言ったのである。

 

「ああ。

 僕達の長い旅はちゃんと終わったんだね」

 

と。

 

 

 

 愁嘆場が終わり状況を整理すると、出てくる爆弾発言に頭を抱える2016年カルデア組の面々。

 

「レフが裏切り者!?

 嘘でしょ!!!」

 

 現実逃避をして叫ぶオルガマリー所長に突っ込む人間は居ない。

 だって、貴方死んでるんですよってその前にロリンチちゃんとマシュが言いましたよね。

 聞いてなかったのか聞きたくなかったのか知らないが。

 

「亜種特異点に異聞帯だと!?

 そっちでは何が起こっているんだ!?」

 

 同じく頭を抱えるダ・ヴィンチちゃんとドクターロマン。

 特異点の先のさらなる厄介事の露見だが、ロリンチちゃんはさらなる爆弾を投げつける。

 

「この場所そのものが異聞帯になっている可能性がある」

 

 モードレッドとドレイクとクー・フーリンはカルデアの霊基と一致したから分かったが、明らかにジャンヌ・ダルクはカルデアの霊基と違っていた。

 ついでに言うと、クー・フーリンは霊基が一致はしたが、カルデアの知らない情報が混在している。

 

「まぁ、マスターのやる夫に話を聞くしかないだろうね。

 少なくとも、彼は今の私達を切る選択はしないよ」

 

「ああ。

 彼のマシュがここに居るのに彼女を悲しませる男じゃなかったよ。

 女泣かせなのは否定しないが」

 

 そりゃ、彼と同じ制服を着たステンノともうひとりの女性を見て察せられる程度にはダ・ヴィンチちゃんは女人生を謳歌していた。

 それでもマシュの先輩への思いを考えると、一発ぐらい殴ってもバチは当たらないと思っていたが。

 

「あの、いいかしら?」

 

 そんな中、オルガマリーが声を出す。

 当人死んでいるのだが、未だその自覚は無いらしい。

 

「会ってみたい人がいるの。

 時計塔鉱石科の君主で、敗退したロード・エルメロイに」

 

「どうしてだい?」

 

 ダ・ヴィンチちゃんの質問にオルガマリーは少し考えて答えた。

 それが何を意味しているのか理解せず。

 

「ホテルの前で何かやっていたのをちらっと見ただけだけど、悪い人じゃなさそうだと思ったから。

 それと、知りたいのよ。

 名声もあって、将来も開けていた彼がどうして聖杯戦争に出たのかを」

 

 

 

 なお、徹夜になった翌日の朝、やる夫の部屋に突貫したマシュはステンノと叢雲との間で修羅場となったが、ドスケベ礼装が3つあったために結局三人共やる夫のベッドで寝ることになった。

 その時の台詞をここに残しておこう。

 

「仕方ないわね。

 マシュだし」

「仕方ないわね。

 浜風だし」




駄女神クオリティ
 某赤いハマのあんちくしょうよろしく、世界線を逝っとけダイヤで運営する運営主任さんが駄女神の正体。
 なお、実際は小竹向原ルーレットをやっているだけだったりする。

ドスケベ礼装
 名の通りのもの。
 エロい。

浜風
 外の人つながり。
 やる夫スレでは、マシュ風なんて呼ばれることも。
 


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聖杯戦争拡大 その1

レイヤー重ねた副作用


「令呪を以て命じる!

 間桐臓硯を殺せ!!

 重ねて令呪を以て命じる!

 間桐の地下工房を滅ぼせ!!

 最後の令呪を以て命じる!

 全ての魔力を使い切って桜ちゃんを助け出してくれ……」

 

 病室での令呪使用にバーサーカーが吠えること無く消えた。

 まるで最後の意思を尊重するかのように。

 

「これでいいか?」

「ああ。

 取引については約束しよう。

 それと君の体についてだが……」

 

 医者の見立てだと生きているのが不思議なレベルにまで体が壊れていた。

 それ以上に、魂がバーサーカーの精神汚染で消耗しきっていた。

 生かそうと思えばなんとかできるが、それをする前に言峰綺礼が手を出さない訳がなかった。

 

「知っている。

 もう長くはないのだろう?」

 

「多分、この襲撃を以て、君は冬木市のテロ事件の犯人にされるだろうな。

 こちらとしては逮捕という形にした上で、君を別人にする事を考えているがどうだろうか?」

 

 遠坂・言峰陣営が主導権を奪回するためには、冬木市に展開した自衛隊を撤退させる必要があった。

 その犯人を捕まえたら事件解決なので自衛隊は撤収する。

 だったらその犯人を用意するのが手っ取り早い。

 その犯人候補としては倉庫街で暴れ、保護された間桐雁夜に目をつけるのは分かっていた。

 間桐家を潰す以上、彼を保護する人間がいなくなるのも大きい。

 多分、雨生龍之介と合わせてテロ組織メンバーとしてでっち上げられるだろう。

 衛宮切嗣を入れるかどうかで俺は迷ったが、この時点で彼を表向きに叩くのは無理だと判断していた。

 理由は、彼ではなく彼のスポンサーであるアインツベルンの金だ。

 聖堂教会と時計塔が買収と隠蔽を行う資金のほぼ全てがアインツベルンから出ている。

 聖杯戦争の敗退ならともかく、テロ組織メンバーとして逮捕して聖杯戦争を背後から参加させないような形にして、アインツベルンの機嫌を損ねたら、彼らの買収資金が途切れる可能性が高かった。

 もっとも、そんな事は既に捜査している警察は知ったことではない。

 衛宮切嗣の名前までたどりつくのは時間の問題であり、アインツベルンの屋敷に捜査令状を持って踏み込むのは時間の問題だろう。

 間桐雁夜の返答を待っている間、そんな事を考えていたが彼は俺の沈黙を気にすること無く答えを口にした。

 

「いや。

 いい。

 魔術だとあるかも知れないが、表では死人に口なしだ。

 この大騒ぎは誰かが泥をかぶらないといけない」

 

 間桐雁夜はただ静かに首を横に振った。

 バーサーカーと繋がったので、彼の正体とその思いも知ったのだろう。

 

「あいつも罪を犯したのに裁いてもらえなかった。

 俺も、罪を知っていながら逃げ出した。

 結局、俺達は同じなんだよ。

 頼む。

 救いである裁きを俺達から取り上げないでくれ」

 

「桜ちゃんはどうする?

 このままだと施設に行くことになるぞ?」

 

「それをなんとかするのがお前なんだろう?

 それも取引の範疇さ。

 TVをつけてくれないか?

 最後はあの屋敷が崩れる所を見ながら逝きたいんだ」

 

 俺はTVをつけて病室を出てゆく。

 部屋の外には自衛隊服の叢雲とステンノと自衛隊服なのに盾持ちのマシュが待っていた。

 地味に隊員の視線が痛いが気にしたら負けである。 

 

「で、段取りは?」

 

「既に間桐家の屋敷の周囲に警官と自衛隊は配備済み。

 周囲の人間もこっそりと避難させたわ。

 礼状も用意して、万一に備えて天ヶ崎千草、タカミチ・T・高畑、建宮斎字の三人が待機済み。

 カルデアのマスターとマシュ達もついていっているみたいね。

 桜ちゃんの安全と周囲の避難を優先させているけど、間桐臓硯はいいの?」

 

 叢雲の言葉に俺はただ目を閉じて、後ろのドアの人物へ黙祷を捧げた。

 数秒の沈黙の後、口を開く。

 

「放っておけ。

 彼が桜ちゃんの中に入っているなら詰みだし、工房が破壊された後ならキャスタークー・フーリンで焼ける。

 こっちは宣言した通り、動かないでおこうじゃないか」

 

 基地内に警報が鳴ったのはその時だった。

 それが敵襲であるのを分かっていたから俺は慌てて叢雲に戻ろうとする前に、叢雲に陣取っていたドレイクがパスで告げる。

 

(ミサイル!

 こっちに向かってる!!

 迎撃するよ!!!)

 

(わかった。

 好きにやってくれ)

 

 轟音とともに学園都市製のイージスミサイルが飛び立ち、しばらくして派手な爆発音が轟く。

 爆発地点は、舞鶴湾出口付近だった。

 警報が鳴り続き、俺達が戻った時にドレイクを含めた艦橋の全員が敬礼をする。

 

「状況を」

 

「対岸の伊根町付近よりこちらに向けてミサイルによる攻撃。

 迎撃可能だったのが本艦しかない為に艦長の許可をえた上で、イージスミサイル一発を発射。

 迎撃に成功」

 

 新島副長補佐が報告する。

 次々と錨をあげて撃墜したミサイル付近に向かう海上自衛隊の艦を尻目に俺はため息をつく。

 急場とはいえ、このミサイル発射は指揮系統云々で後々揉めることになるだろう。

 

「聖杯戦争をしている人たちの仕業かしら?」

 

「衛宮切嗣以外で対艦ミサイルを撃ってくる人間は居ないだろうよ。

 そして、衛宮切嗣が撃ったにしては杜撰すぎる」

 

 叢雲を狙うために対艦ミサイルを撃った。

 分からないではないが、見ての通り自衛隊を完全に敵に回す。

 それを理解できない彼ではないだろうに。

 

「いや。

 間桐雁夜を犯人に仕立て上げようとする話がこれで潰れたか」

 

 間桐家襲撃後に発表すれば、間桐家襲撃が彼の確保にあったという情報工作を経て、テロ事件の犯人として自衛隊撤退の手打ちに出来ただろう。

 けど、冬木市ではない離れた伊根町からのミサイル発射はいやでも共犯者の存在を浮かび上がらせる。

 結局、そのミサイル一発が状況を更に混迷化させた。

 

 間桐家襲撃はバーサーカーの消滅まで続き、それで工房が破壊された結果、キャスタークー・フーリンの宝具『灼き尽くす炎の檻』にて蟲たちは間桐臓硯と共に消え失せる結果となった。

 なお、この火でボヤ騒ぎとなったが消防が出て火を消してそれでおしまい。

 すべての目は若狭湾で爆発したミサイルに注がれていた。

 桜ちゃんは保護され、舞鶴基地の病院に入院し、蟲の摘出手術の後間桐雁夜が居た病室で休んでいる。

 間桐雁夜は桜ちゃんが来るまで持たず、今は霊安室に安置しているがその笑顔は穏やかなものだった。

 

 一方で発射されたミサイルは米国製ハープーンミサイルで、伊根町に発射管が残っていた事から米軍の正規品である事が発覚。

 外交問題にまで発展する。

 警察の捜査の結果、数日前から何か作っていたのを地元住民や観光客が見ており、そこから得られた写真を見て絶句する。

 

「……ボブミヤじゃねーか……」

 

 そこで何か引っかかった。

 ステンノを見て、モードレッドを見て、ドレイクを見て、マシュを見て、俺は彼らの見ている前でメモを書き出す。

 

 

セイバー    モードレッド    野良 やる夫

アーチャー   ボブミヤ          ?

ランサー    クー・フーリン       やる夫

キャスター   クー・フーリン   野良 藤丸立香

        ロリンチちゃん  野良 やる夫

アサシン    ステンノ           やる夫

ライダー    ドレイク       野良 やる夫

バーサーカー  ?

シールダー   マシュ        野良 やる夫

        マシュ             藤丸立香

 

 

 あっ。

 これ聖杯大戦始まるわ。

 そうなると、ルーラーが出てくる訳で……

 ここだと出るよなぁ。

 天草四郎が。



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聖杯戦争拡大 その2

証拠写真


聖杯戦争の積極具合 100ほど積極的

 

 

 

 時計塔            自動参加

 

 聖堂教会          自動参加

 

 

 

 ファントムソサエティー  60+41

 

 クズノハ           61+20

 

 学園都市          45+12

 

 関東魔法協会       100なので自動参加

 

 関西魔法協会       31+31

 

 十字教            74+42

 

 メシア教           1+35

 

 ガイア教           95+50

 

 自衛隊            83+47

 

 米軍             15+13

 

 

 

 この若狭湾ミサイル発射テロによって日本の裏社会は激震を受けた。

 というより秘匿されていた聖杯戦争の情報が何者かによってばら撒かれたのである。

 時計塔と聖堂教会は激怒してその首謀者を探そうとしたが時すでに遅し。

 他組織の『お前ら何勝手にやってんじゃ!』という抗議と観察団の派遣がなし崩し的に行われる事になった。

 激怒しているのは自衛隊も同じで、仮にも所属している護衛艦に対艦ミサイルをぶっ放されて怒らない方がおかしい。

 命令系統から俺のミサイル発射は海自内部でも問題になり査問会と無罪放免を勝ち取るまで三日、貴重な三日を俺は失う羽目になった。

 逆に米軍は証拠である対艦ミサイルの発射筒が見つけられた事から動きを封じられ、米軍第7艦隊ではあのハープーンミサイルの出処を必死に探す羽目に。

 そんな訳で、あのミサイル事件から三日後、新たな駒が冬木市に姿を見せる。

 

「クルト・ゲーデルと申します。

 よろしくおねがいします」

 

 タカミチ・T・高畑に連れられてやってきたのがまさかの大物である。

 そうだよな。

 あらゆる願いを叶えるという願望機なんて触れ込みを知ったら、嫌でも出てくるわな。彼ならば。

 

「ヤタガラスの入即出やる夫と申します。

 失礼ですが、お一人でここに?」

 

「いえ。

 ある程度連れてきています。

 挨拶を」

 

 クルト・ゲーデルが促すと、日本人にしか見えない女性が頭を下げる。

 

「明石夕子と申します。

 今回の派遣団の副長に任じられております。

 よろしくおねがいします」

 

「こちらとしては何よりも民間人への被害を出さないことを第一に動いて頂きたい。

 既に状況は混沌としていますから」

 

 個人的にやばいのは天海市のマニトゥ計画なのだが、聖杯の分かりやすい機能に食らいついた彼らと手を組んだ以上は最低限の仕事はする。

 俺はいくつかの書類をクルト・ゲーデルに渡し、彼はそれを明石夕子に手渡す。

 

「ファントムソサエティーのサマナーを確認しました。

 キャロルJとマヨーネと呼ばれています。

 目的は聖杯の奪取でしょう。

 彼ら二人は、デビルサマナー。

 悪魔使いです」

 

「拘束は?」

 

「普通の警察や自衛隊員が手を出しても、政府から圧力がかかって釈放されるでしょうし、身分も用意されているはすです。

 監視カメラに映ったのを最後に足取りは消えております」

 

「ならば、彼らの拘束は我々がするとしよう。

 他に気をつけないといけない勢力は?」

 

 成田の入国管理局からの情報を整合してチェックしたものが既に俺の手元にはある。

 こういうお役所仕事がこの国は強い。

 

「十字教のローマ正教十三騎士団が入国した。

 こっちは都内で足取りが消えたけど、近く冬木市に入るだろう。

 聖堂教会に教えてやったら、奴らいい感じで激怒していたよ」

 

「なるほど。

 貴方も人が悪い」

 

 他にも十字教のやばい連中のリストを俺はクルト・ゲーデルに渡す。

 ローマ正教十三騎士団を率いるビットリオ=カゼラに、司教兼宣教師のリドヴィア=ロレンツェッティ、そして雇われているのだろうフリーの魔術師であるオリアナ=トムソンとガチで攻めに来ている。

 何も日本の地方都市で代理戦争をせんでもいいものをと言ったらいけない。

 眼の前のクルト・ゲーデルにもそのブーメランは刺さる。

 

「ガイア教も新しい人間を用意したらしい。

 一番来てほしくない人間の名前を見たよ」

 

 そのファイルには写真は無いが、書かれている事だけでクルト・ゲーデルの顔が歪む。

 多分俺も同じ顔をしているだろう。

 

「桜塚星史郎。

 人を殺めるために陰陽術を使う伝説の暗殺者集団『桜塚護』の当代ですよ。

 お気をつけを」

 

 聖杯の奪取というよりも、奴の設定を考えたら多分その目的は俺の抹殺だろう。

 俺の笑顔に何か感じたのか、クルト・ゲーデルが一歩退いたのを俺は見なかったことにした。

 

 

 

 艦に戻ろうとした俺の目に、俺の艦を見ている陸自の士官が映る。

 その特徴的な姿に見当がついたので、おれは声をかける事にした。

 

「うちの艦に何か?」

「ああ。

 さっきまでヘリ甲板にて益荒男が剣を振っていたのが見えてな。

 見とれていたのよ」

 

 後で聞いたが、その時暇だったとかで、モードレッドとクー・フーリンが手合わせをしていたらしい。

 対魔忍だけでなく自衛隊員すら見とれた剣技だったらしいから、彼も魅入っていたのだろう。

 

「むかしむかし。

 おとぎ話の果てにあった剣技だよ。あれは」

 

「それは羨ましい。

 もちろん、この世界が素晴らしくはないとは言わないが、それでもあのような剣技が必要だった時代を見せられたら、武人として羨ましくありますな」

 

 悪い人間ではないのだ。

 はた迷惑なだけで。

 こっちの思惑を知ってかしらすが、彼は俺にきちんと敬礼して挨拶をした。

 

「第1普通科連隊第1普通科中隊、中隊長の甘粕正彦一尉と申します。

 今回のテロ事件の増援として、こちらの警護をする事に相成りました。

 よろしくおねがいします」

 

 駄女神よ。

 これ収拾つくんだろうな?




クルト・ゲーデル
 『ネギま!』
 彼が来たということはかなりガチで聖杯を取りに来ている。
 なお、年表で確認したら、まだネギの村は襲撃されていない。

明石夕子
 『ネギま!』
 明石祐奈の母親。
 魔法使いでエージェントだった彼女は任務中に死亡したそうな。
 下手するとここが彼女の墓場になるかも……

キャロルJとマーヨネ
 『ソウルハッカーズ』
 ファントムソサエティーのサマナー。
 連れている悪魔はそこそこ強い。

ローマ正教十三騎士団
 『とある魔術の禁書目録』 三沢塾編にて全滅した騎士団。
 そこの団長がビットリオ=カゼラ。

リドヴィア=ロレンツェッティ
 『とある魔術の禁書目録』 大覇星祭編で学園都市攻略を狙ったお方。
 今回の狙いは学園都市ではなく冬木市である。
 もちろん成功したら補正バフが乗る。

オリアナ=トムソン
 『とある魔術の禁書目録』 大覇星祭編にて十字教の雇われ魔術師。
 この話では、リドヴィア=ロレンツェッティ指揮下でオリアナと十三騎士団が動く。

桜塚星史郎
 『東京BABYLON』のやべーやつ。
 やる夫は陰陽師設定だから、一番当たりたくない人物の一人。
 迷うこと無くやる夫を狙いに来る。

甘粕正彦
 喜べ甘粕よ。
 聖杯があれば君の願いである『魔王になりたい』が叶うぞ。


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聖杯戦争拡大 その3

型月世界線補正
それ以外のキャラクターは84%までしか力が出せない。


【悲報】FGOクリスマスイベ。
ルーラーなので、剣豪とセイレムを飛ばして二部をする事を決意。
……☆4ルーラー宝具5は駄目だろうに……


証拠写真
https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1071616962881449984


各勢力の行動

 

 1 情報収集

 2 情報収集

 3 同盟交渉

 4 同盟交渉

 5 拠点作成

 6 拠点作成

 7 拠点作成

 8 敵勢力攻撃

 9 敵勢力攻撃

 10 熱烈歓迎

 

 

聖杯戦争正規組

 

 

 時計塔    (遠坂陣営 聖堂教会と同盟中 アーチャー) 8

 

 聖堂教会   (言峰陣営 言峰綺礼はこっち アサシン) 1

 

 セイバー陣営 6

 

 ランサー陣営 3

 

 ライダー陣営 6

 

 

聖杯戦争非正規組

 

 

 ファントムソサエティー 9

 

 関東魔法協会 1

 

 十字教 3

 

 ガイア教 2

 

 自衛隊 7

 

 カルデア 2

 

 桜塚護 9

 

 

 

 何かが割れる音がして俺は目を覚ます。

 部屋に貼ってあった身代わり符が容赦なく灰になっていた。

 その灰の中に落ちていた桜の花びら。

 さすが桜塚護。

 挨拶がてらの呪殺攻撃に感心するしかない。

 これからは、身代わり符は倍以上貼らないと。

 

「柳洞寺周辺で小規模な地震が発生したらしい」

 

 舞鶴基地での連絡会議。

 居るのは、クルト・ゲーデルに、カルデアの面々に、甘粕正彦。

 改めて見ると濃いな。この面子。

 地震発生報告をくれたのは甘粕正彦である。

 

「一応地震という事にしておくが、最近の科学は便利なもので、地震の波形と爆発の波形は違う。

 これは爆発の波形だよ。

 で、警戒中の空自に頼んで柳洞寺周辺を写してもらったが、それらしい爆発の後は無い。

 つまり、柳洞寺の地下で何か、いや、はっきり言うか。

 戦闘があったという事だ」

 

「たしか、その柳洞寺には大聖杯というものが眠っているはずでは?」

 

 こちらの情報を大体出しているので、ここの面子は柳洞寺に大聖杯がある事を知っている。

 そのため、クルト・ゲーデルは関東魔法協会だけでなく、メガロメセンブリアの手駒まで使って聖杯を回収しようと提案していた。

 まぁ、中がニトログリセリンが一杯詰まった樽みたいなものだから、今動かすと大爆発するのが目に見えているので敵対勢力を掃討したらお好きにとは言っておいたが、はやくも誰かが動いた事に彼の声に焦りが見える。

 

「ええ。

 というわけで、状況を聞いてみましょうか?」

 

 叢雲に電話を持ってこさせて、俺は電話をかける。

 冬木教会の言峰神父に。

 

「はい。冬木教会です」

 

 出たのは言峰綺礼の方だった。

 こっちはアサシン見たから敗退設定なんて知ったことではないが、その芝居は尊重しよう。

 

「どうもヤタガラスの入即出やる夫と申します。

 地震計で柳洞寺周辺で爆発があったみたいですが、そちらは大丈夫ですか?」

 

「……問題ない」

 

 見え見えの嘘をつく。

 ならばもう少しつついて見るかと思ったら、電話が替わり傲慢かつ高貴な声が聞こえてくる。

 

「答えよ道化!

 あれは何だ?

 あれがこの星の意思というのか!?」

 

 聖杯を守る英雄王と交戦したのは桜塚星史郎だったか。

 最高の霊地だから術を使うのも最適ではあるが、そんな呪いを使って気づかない遠坂陣営ではない訳で、きっとまた令呪を消費して迎撃にあてたのだろうなぁ。

 千里眼持ちならば見えるだろう。

 彼の未来とその先が。

 

「英雄王自ら剪定とはご苦労さまでございます。

 とはいえ、王も考えていた事ではないですか?」

 

「世辞は良い。

 王には王の責務というものがある。

 民を選び、庇護した民を良い方に導くのは王の責務の一つよ。

 だが、気に食わんのは、奴は我を雑種と同じに扱いおった!!

 その罪万死に値する……!!」

 

 

 英雄王VS桜塚星史郎

 

 桜塚星史郎

  ベースレベル      77

  メガテン世界デバフ  ベースの76%しか出せない 58

  型月世界デバフ    84%しか出せない       48

  サイコロ補正      12%バフ             53

 

 英雄王ギルガメッシュ

  レベル          90

  カリスマA+       21%バフ             108

 

 

1 桜塚勝利

2 桜塚勝利

3 桜塚勝利

4 英雄王勝利

5 英雄王勝利

6 英雄王勝利

7 英雄王勝利

8 英雄王勝利

9 英雄王勝利

10 熱烈歓迎

 

 結果……7

 

 

「あれは我の宝具の雨を受けて花となって散ったが、あの手の者はあれでくたばるようなものでもあるまい!

 その後来た連中も追い払ってやったが、今我は気分が悪い。

 吐かねば我の宝具の雨を受けると思え!!」

 

「怒りを鎮め給え。英雄王。

 こちらの知る事は全てお教えしましょう」

 

 電話口なので他の面子が聞いているのに、俺は桜塚星史郎の事を今朝の呪殺攻撃まで含めて全部話す。

 もちろん他の面子の顔色は約一人を除いて真っ青だ。

 某一尉よ。

 『その手があったか!?』なんて顔をしないでくれ。頼むから。

 

「……なるほど。

 よくわかった」

 

 恐ろしく冷徹な声に、俺は英雄王が激怒していることを察して背筋が寒くなった。

 世界の命運を自分以外の所で決められるなんて、かの英雄王にとって許せるものでもないだろうからな。

 

「もしもし?」

 

 電話の声が言峰綺礼に替わる。

 ため息を一つ漏らして俺は口を開いた。

 

「聞いたとおり、これからはマスターの直接攻撃に呪殺というものが来るかも知れません。

 お気をつけを」

 

「わかった。伝えておこう」

 

 あ。

 これ遠坂時臣に伝える気は無いな。

 電話を置いて、皆に改めて告げる。

 

「という訳で、各自呪殺対策をお忘れにならないように」

 

 そんな対呪殺のプロである天ヶ崎千草は、対魔忍たちをパートに雇って身代わり符の大量生産に追われることになる。

 

 

 

「衛宮切嗣はアインツベルンの屋敷から逃げ出したらしい」

 

 ついに警察が衛宮切嗣にたどり着いて、アインツベルンの屋敷に訪ねていったらしい。

 アイリスフィールとセイバーは居たが、その前に衛宮切嗣と久宇舞弥は姿を消していた。

 今も捜査員が森の側で張り付いているらしいが、まず出てこないだろうな。

 こっちが、ミサイル発射で時間をとられた三日間が無ければ、拘束まで持っていけたのだが。

 

「手を組もうとしている連中がいるみたいね」 

 

 俺の言葉にステンノがなげやり気味に言う。

 状況が混沌とし過ぎていて、籠もる事しかできなくなっていたのだ。

 何しろ、ルーラーとバーサーカーがまだこの場に出ていない。

 

「ケイネスと十字教がねぇ……」

 

 冬木ハイアットホテルに十字教の陣営が泊まったことは宿泊データからも確認が取れた。

 同盟なのか、盾がわりなのかは分からないが、ここを攻めたら両者迎撃をするのは間違いがない。

 

「その結果じゃないでしょうけど、どうしてあなた達ここにいるのよ?」

 

「戦場が混沌としておるなら、分かる場所に出向くのが一番だからな!

 此度の戦の核になっておるのはお主よ。

 だから張り付かせてもらおうと思ってな」

 

 さすが征服王。

 戦場の勘所を見極める力は優れていやがる。

 

「……ここなら、ゲームの兵器が生で見れるって言って僕を引っ張ったのは誰だったっけ?」

「お主とて、あの夫妻を戦火から遠ざけようと新たな場所を探しておっただろうが!」

 

 夫婦喧嘩は他所でやってくれませんかね。お二方。

 言うつもりはないが。

 せっかくだから部屋を用意するついでに試しに聞いてみた。

 

「なぁ。征服王。

 裏でこそこそやっている奴が居て、そいつの場所が分からない。

 考えられるとしたら何処に居ると思う?」

 

「簡単な話だろう。

 これだけ場が混沌としてれば、中で状況の把握はできまい。

 我らと同じ選択をしているのだろうよ」

 

 あっさりと言ってくれたからこそ、その意味に気づくのに時間がかかった。

 

「ああ。

 ありがとう。征服王」

 

「気にするな。

 あと、飯については期待して良いのだろうな?」

 

「馬鹿!

 何処まで図々しいんだ!

 お前は……」

 

 二人が部屋から出た後、叢雲とステンノを呼び寄せて告げる。

 地図を広げて俺は冬木市から外に丸をつくって。

 

「冬木市以外の霊地について調査するぞ。

 多分ルーラーとアーチャーとバーサーカーはそこに居る」

 

 大聖杯には誰も居なかった。

 多分、出てきたのはヘラクレスだろう。

 ルーラーが率いる、アーチャーとバーサーカーをどう潰すのか?

 まだ俺はその手を思いついていなかった。




大乱戦でサイコロの処理が結構大変。
前の作品でも面倒になった所なので、気をつける。


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ありがとうクリプター人類が忘れても俺は君たちの偉業を忘れない

FGOクリスマスイベのために二部はじめました



「容態はどうかね?

 間桐桜ちゃん」

 

 舞鶴基地の病院で横になっていた間桐桜に俺は声をかける。

 この病室の前の住人は今や霊安室で静かに眠っている。

 それを伝えることはまだ早いと思って、俺は最低限のことだけ告げた。

 

「君の中の蟲はとったよ。

 後のことは、おいおい決めてゆくことにしよう。

 今はとにかくゆっくり休みなさい」

 

 彼女の顔には表情が無かった。

 カウンセラーによると典型的な児童虐待の症状の一つだという。

 証拠はそろっているので、彼女の虐待は認められるだろう。

 そこから先は、あの遠坂家とも話さないといけない訳だが、さて、その当主が生き残ることはできるのだろうか?

 ……無理だろうなぁ……

 

 

 

 桜ちゃんの病室を出ると、ロリンチちゃんが待っていた。

 

「話があるんだ」

「丁度良かった。

 こっちもだよ」

 

 病院を出て舞鶴基地を歩く。

 これから夏に入ろうという時期。

 人の騒ぎなど気にせず、空はただ青い。

 

「とりあえずだ。

 隠れているのは頂けないと思うな。

 ホームズくん」

 

「……おや。

 居ない事が当たり前と、君は思っていたのだがね」

 

 実際俺は気づいていなかった。

 だが、ふいに『ホームズが居ないとおかしい』という思考が俺の中に生えた。

 なるほど。

 こうやって、駄女神は舞台とシナリオをごまかし続けた訳だ。

 俺の台詞のあと、ロリンチちゃんの後ろから名探偵ホームズが現れる。

 俺はそんな彼にタバコを渡してやる。

 

「薬については勘弁してくれ。

 この世界のこの国ではご法度だ」

 

「この姿になって、あれの副作用を感じなくていいと思ったが、世間は厳しいものだ」

「もう少し先の未来だと、電子タバコなるものが出てくるぞ」

「それはそれで素晴らしいというか、味気ないと言うか。

 あの煙と火のきらめきは、思考を整理する際に良いものだったからね」

 

 世界は名探偵の事情より健康をとったのだ。 

 ホームズがタバコをふかしている間に、先にロリンチちゃんが口を開く。

 

「ホームズの事に気づいたということは、こっちの話も知った上でかな?」

「ああ。

 俺は、そっちの異聞帯には行かないよ」

「地球最後のマスターなのに?」

「ああ。

 何百万と居た地球最後のマスターでしかないよ。俺は。

 ホームズが出たという事は、感づいているだろう?

 この世界では人理漂白は起きないという事に」

 

 俺の指摘にホームズは肩をすくめた。

 つまるところ、俺の話と彼らの話は同じだった訳だ。

 

「もし、異聞帯に行く未来があるとすれば、あのカルデアの人たちだよ。

 懐かしい、オルガマリー所長とロマニ……」

 

「止めてくれないか。

 この体だけど、記憶は引き継いでいるんだ」

 

「……そうだったね。

 失礼」

 

 少しだけ黙った後、俺は意を決して口を開く。

 

「この世界ではやり直しがきくんだ。

 誰もが幸せになれる未来というのはおこがましいが、あの人理焼却をもう少しましな形で回避できる未来も選ぶ事ができる。

 ここは世界の闇鍋なんだよ」

 

「それを提示したのは誰だい?」

 

 当たり前のようにホームズが問いかけるので、俺は答えてやる。

 駄女神のブラック勤務と、その派遣社員と化した俺の滑稽な物語を。

 二人は、俺の告白を黙って聞いた後、ホームズが口を開いた。

 

「なにかわからないものに滅ぼされるよりはましなのかな?」

「さあな。

 だが、そのましな未来なるもののために俺は一応動いている。

 そして、カルデアの未来は俺ではなく、藤丸立香が担うだろうよ。

 大冒険と別れの果てにね。

 情報交換はしたのだろう?」

 

 俺の言葉にロリンチちゃんが頷く。

 このあたり彼らも抜け目がない。 

 

「舞台を降りたければ降りればいい。

 君たちにはその権利があるし、手段もある」

 

 カルデア組は放って置けばレイシフトでカルデアに帰還する。

 途中でレフ・ライノールに所長を殺されるかもしれん……あっ。忘れていた。

 

「そうだ。

 蒼崎橙子の工房の連絡先だ。

 あの所長の魂の器にふさわしいものが作られているから、持ってゆくといい」

 

「何処まで見通しているのか恐ろしくなるね」

「たいした事じゃない。

 君たちが初見なのに対して、俺は二周目だったというだけさ。

 一応億の金のかかっている特注品だ。

 魔力炉制作のお礼だとおつりが来るかな?」

 

 はったりもここまでくると清々しい。

 文車妖妃を入れるために作ったのに、大淫婦バビロンに乗っ取られ、出費がかさんだと嘆いた事はきれいに忘れることにする。

 本当にそれだけの事をこの二人はしてくれたのだ。

 感謝こそすれ、害を成すつもりは毛頭なかった。

 

「もしかしたら、この世界も人類が漂白されるかもしれないのに?」

「ああ。

 時間と空間というものは、きっちりと流れている訳ではない。

 それは我々という観測者が観測していて、そう見えているという事が大きい。

 この瞬間、時が止まり、世界が漂白されるかも知れない。

 だが、それがどうした?」

 

 駄女神は最初から言っている。

 この物語は過程こそが大事だと。

 

「その物語で人々を引きつけ、惹きつけ、魅せつけ続けて、続きがぱたっと出なくなって、誰かが

 『じゃあわかった!俺が続きを書いてやる!!』とまで言ったら俺と女神の勝利だ。

 そして、二人共感づいているだろう?

 このシステムはものすごく古い手法だという事に」

 

「神話創生」

 

 ロリンチちゃんがぽつりと告げる。

 そう。

 この物語は駄女神とアンコ神の神話の一ページでしかない。

 そんな逸話としての終わりがあるだろうが、多くの神話の多くは終わりが曖昧になっている。

 これはそういう物語である。

 

「こんな話は彼女には聞かせられないな。

 気づいている連中は?」

 

 ホームズの質問におれはあっさりと告げる。

 これからもこうして天才や賢者がこの世界の理を知って、発狂するか笑い転げてゆくのだろう。

 それもこの物語の醍醐味ということで。

 

「何人か居る。

 蒼崎橙子は笑ってくれたよ。

 で、どうする二人共?

 ここからは君たちが決めるといい」

 

 俺の振りに二人は同時に肩をすくめた。

 

「タイムパラドックスで消えるかも知れないが、消えたほうがいい存在と未来ってのはあると思うんだ。私は」

 

 過去が疼くからこそ、ロリンチちゃんは苦笑し。

 

「この世界は謎だらけじゃないか。

 それに手を出すななんて探偵にとって、死ねと言ってくれるようなものだ」

 

 ホームズは煙草を投げ捨てようとして、俺が差し出した携帯灰皿にその煙草を入れた。

 環境は、格好つけすら悪にする。

 

「じゃあ、今後ともヨロシクという事で。

 工房は艦の中に作ってくれ。

 ロリンチちゃんなら分かるだろうが、あの艦まるごとシャドウ・ボーダーみたいなものだよ」

 

 俺の差し出した手をロリンチちゃんは握る。

 目は既に研究者のそれである。

 

「それは凄いな。

 遠慮なく解析させてもらうとしよう」

 

「じゃあ、私は一旦離れて冬木ではなく東京の方に行かせてもらうとしよう。

 君の目的である、東京の危機は解きがいのある謎になりそうだ」

 

 ロリンチちゃんの後に俺の手を握ったホームズは俺に告げる。

 その視線は、俺ではなく東に、東京に向けられていた。

 

「だったら、横浜の隣の平崎市というところにあるホテル業魔殿というホテルを使うといい。

 俺の名前を出せば使わせてくれるはずだ」

 

「それで、君はどうするんだい?」

 

 新たな情報が生えた結果、回収しないといけないものができた。

 マシュと俺がこっちで暮らしたという設定ならば、ここにあれがないとおかしいのだ。

 

「『今まで契約したサーヴァントたちの霊基グラフデータ』。

 スーツケース型のあれを回収しておかないと。

 ルーラーの天草四郎あたりに渡ったら、目も当てられないからな。あれは」




つまり


 エタったらクリプターって奴が漂白しちゃったんだ!!!!!


 いやまじで途中だけどそれしか感想が出てこない。
 二次創作やっていると、こんな便利な打ち切り装置はそうもない。まじで。



メタ視点
 第二部やりだしたので、女神が使えそうな設定を急遽闇鍋に打ち込んだ。


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人類救済?そんなことより潰しあいだ!

 今まで契約したサーヴァントたちの霊基グラフデータの回収だが、マシュといちゃいちゃしていた俺は結構真面目にあれの保管を考えていたらしい。

 新都の銀行の貸金庫に保管しているという。

 マシュと話すことで、それまでのマシュとの思い出が記憶に付け足されてゆく。

 というか、預金が九桁ある事をいい事に、散々爛れた生活を送っていたらしい。

 まぁ、その記憶も体感も俺の中に湧いてきたから今は良しとしよう。

 

「で、マスター。

 これからどうするんだ?」

 

 魔力炉を増築した叢雲のおかげで契約したモードレッドとドレイクを交えて、叢雲艦内での会議。

 モードレッドは戦いたくてウズウズしているらしい。

 こっちも、ここで待ちをしている余裕はない。

 

「ちょっと、新都の銀行に出かける事になる。

 襲ってくるとしたらここだから、気を引き締めてくれ。

 マシュと俺と叢雲とステンノは車で新都に。

 モードレッドは霊体化してついてくる。

 OK?」

 

「そうこなくっちゃ!」

「あたしはまたお留守番かい?」

 

 喜ぶモードレッドに対して、がっくりするドレイク。

 ステンノと同じく海自の一尉相当官の制服を着させられている。

 嫌うどころか海自内部のドレイク人気はすごいものがあるのは、海自も船乗りたちの末裔という事だろう。

 

「勉強会だの交流会だので基地から出られないだろうが。お前。

 それにまたミサイルを撃たれたら困る」

 

「しかたないねぇ」

 

 嘆き節のドレイクだが、本性は叢雲を思いっきり走らせたいのだろう。

 彼女はこの舞鶴基地に着いてから、他の艦を見て喜んでいたのだから。

 分からないではない。 

 

「さてと。

 基地で車を借りると……」

 

 という所まで俺が言った所でクラクションが鳴られる。

 車から黒スーツ姿の眼鏡の男が手をふる。

 

「入即出やる夫さんですか?

 お会いしたかったんですよ」

 

 ジャパニーズビジネスマンらしい挨拶&名刺攻撃でいつの間にか俺の手には名刺が。

 その名刺を読み上げる。

 中々珍しい部署だったからだ。

 

「大蔵省特殊査察部第二課執行官の入江省三さん?」

 

「はい。

 貴方の置かれている状況と、それにまつわるお金の話で色々とお話が」

 

 色々と思い当たるフシがあるが、今この状況で敵対する理由もない。

 彼の伝説にはこんなのがあるのだから。

 

「彼の行動を妨げてはならない。

 君がトラブルを抱えているのならば特にだ。

 彼の行動を理解しようとしてはならない。

 俺は、貴方になにか恨まれるような事をしたのかね?」

 

「とりあえずそれは車の中で。

 何処に行くかは知りませんが、お送りしますよ」

 

 ドアが開けられて、俺達はそれに乗り込むことにした。

 さすがの政府の非公式活動用員と言えども、霊体化したモーさんに気づいていないといいのだけど。

 ……厚生省だったらやばいかも知れないが。

 

 

 

 舞鶴基地から冬木市の新都まで車で一時間程度。

 速くも遅くもないセダンを走らせながら、入江省三は話し出す。

 

「現在の政府の状況については?」

「まぁ、ある程度は。

 その流れで俺はここに居るという認識なのですがね」

「その前提で話をしましょう。

 自衛隊内部において、不可思議な金の流れが発生しています。

 国民の税金を使っているなら、問題なのは分かると思いますが、使っていないのに装備が増えているというのもまた問題なんですよ」

 

 さすが日本最強の官庁である大蔵省。

 言い方も中々イヤミが効いている。

 

「つまり、俺の扱いが大蔵で問題になってきたと?」

「金の流れってごまかしがきかないんですよ」

 

 俺も同じことを言った覚えがあるから、因果応報である。

 俺の苦々しい顔を知ってか知らずが、入江省三は言葉を続ける。

 

「で、こちらとしましても、その解決にご協力をと」

「何?

 税金でも払えっていうの?」

 

 叢雲が喧嘩腰で威嚇するが、金云々は要するに脅迫の枕詞だ。

 要するに、この非公式エージェントはそれに近い俺達に何かをさせたいのだろう。

 

「聖堂教会および時計塔から政府に流れる金の流れを止めて頂きたい」

 

 この手の脅迫は、俺にもメリットがある提案をするのがポイントである。

 聖堂教会および時計塔の金の流れを止める事の意味を、俺はやっと理解した。

 

「政府だけでなくて自衛隊側にも、時計塔と聖堂教会から金が流れていた。

 そう言うわけか?」

 

「ご想像におまかせします」

 

 俺は額に手を当ててうめく。

 事態の収集。

 その最終局面にて自衛隊の果たす役割は大きい。

 実際、原作の『Fate/ZERO』では自衛隊機墜落を強引に金でごまかした経歴があったのを忘れていた。

   

「これは公安からの情報なのですが、内密にお願いしますよ。

 衛宮切嗣への逮捕請求が、途中で潰されたそうです」

 

 話を聞くと、警察がほぼ黒と判定した衛宮切嗣の逮捕だが、その前に共犯者としてアイリスフィールを任意同行からの逮捕で調べる所を魔術協会と聖堂教会が強引なんてものじゃない強硬さで撤回させたという。

 地元の先生総動員の他に某国大使館からの外交官免責特権の付与、あげくに京都府警本部長直々の調査中止命令と捜査本部の解散命令とすさまじい圧力を受けたそうだ。

 あー。

 これは警察側の失敗だわ。

 普通の捜査ならば当たり前の共犯者逮捕だけど、セイバーが残っている状況で聖杯戦争御三家のアインツベルンに手を出そうとしたから、全力で守りに行かざるを得なくなったと。

 しかし、外交官特権ときたか。

 こっちが表のルールに縛られるから、うまい絡め手を出してきたもんだ。

 

「ならば、国外退去命令が出るはずでは?」

「出るでしょうな。

 問題は、その国外退去命令は今すぐではない。

 そして、アインツベルンはその退去命令前に事をなさねばならなくなった」

 

 手負いのセイバー陣営が、なりふり構わず暴れることを意味する。

 

「止めろと言われても、聖堂教会と時計塔の金の流れをどう止めろと?」

 

「それは、そちらの選択を尊重しましょう。

 金の流れは止められるけど、それ以外の流れを我々は掴めない。

 協力者が必要なんです」

 

「その見返りは?」

「まぁ、色々と。

 一応国家組織ですので」

 

 冬木市新都に入り、目当ての金融機関の前で入江省三は車を停める。

 ドアを開けて降りて、了承と言おうとした時に、爆風が俺の顔を叩く。

 

「先輩!」

 

「マシュは防御!

 モードレッドはまだ動くな!!

 畜生!

 何が起こってやがる!?」

 

 派手な銃撃と爆発音。

 その視線の先には、派手に暴れるオリアナ=トムソンと、回りを気にせずに攻撃するキャロルJとマヨーネ、それを取り押さえようとするタカミチ・T・高畑の姿があった。




入江省三
 『LAWMAN』。
 さぁ、昼は魔術と科学と銃撃戦だ!


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ですぺらーど

型月世界線補正
それ以外のキャラクターは84%までしか力が出せない。


データだけで一話終わる結果に………


「で、どっちにつくんです?」

「女って言えないんだよな。

 泥棒じゃないし。

 眼鏡はこっちの味方」

「わかりましたっ!」

 

 どこから取り出したそのシグザウエルP220を眼鏡以外にブッパなす。

 新都のビジネス街というのに、まぁ見事なまでに人が居ない。

 人払いの結界を張っているのだろう。オリアナ=トムソンが。

 キャロルJは悪魔を出さずに銃で支援しており、マヨーネの出した魔獣カソ二体と龍王ミズチ、怪異むらさきカガミと幽鬼ヴェータラがオリアナ=トムソンとタカミチ・T・高畑に猛攻をしかけていた。

 

「マシュはデータの確保!

 モーさんはマシュのサポート!!

 叢雲とステンノは俺と共にここで死守!

 あんたはどうする?」

 

 入江省三は無言で車のトランクを開ける。

 中を見ると、武器庫の中央にでんと置かれるミルコーMGLが。

 

「それ私に貸しなさい!

 あんたははやく仲魔を呼んで!!」

 

 叢雲がミルコーMGLをぶっ放せば、キャロルJがこっちに銃弾を向けてくる。

 俺は車に隠れて、女神ブリジッドと大天使イスラフィールとクー・フーリンを呼び出すと、敵を連れてタカミチ・T・高畑がこっちに逃げ込んでくる。

 

「共闘しているように見えないな」

「完全に第三者ですよ。

 被害を抑えようとして、巻き込まれました。

 貴方からもらった身代わり符が何枚か灰になりましたよ」

「っ!?

 気をつけろ!

 やつら呪殺を使ってくるぞ!!」

 

 叫びながら、俺は禁凝符の束をばらまくとその数枚が即座に灰となる。

 やっぱりタイミングを狙っていがったか。

 ボブミヤよ。

 

「だけじゃない!

 何よあいつ!!」

 

 あ。

 バーサーカーのヘラクレス発見。

 大乱闘確定じゃねーか。

 

 

 

オリアナ=トムソン

 ベースレベル               35

 メガテン世界修正 155%        54

 型月世界デバフ  84%         45

 サイコロ補正    163%        73

 

キャロルJ

 ベースレベル                20

 メガテン世界修正 なし

 型月世界デバフ  84%          16

 サイコロ補正    67%          10

 

マヨーネ

 ベースレベル                 43

 メガテン世界修正 なし

 型月世界デバフ  84%          36

 サイコロ補正    21%      7

 

マヨーネの召喚悪魔

 魔獣カソ二体と龍王ミズチ、怪異むらさきカガミと幽鬼ヴェータラ

 レベル37×2+43+49+57=223

 型月世界デバフ   84%         187

 サイコロ補正     83%         155

 

入江省三

 ベースレベル                  9

 メガテン世界補正  145%   13

 型月世界デバフ   84%          10

 サイコロ補正     26%          2

 

タカミチ・T・高畑

 ベースレベル                 192

 メガテン世界補正  21%          40

 型月世界デバフ  84%           33

 サイコロ補正    177%          58

 

ボブミヤ

 ベースレベル                  80

 

ヘラクレス

 ベースレベル                  80

 

 

入即出やる夫

 メガテン世界補正レベル           144

 型月世界修正    84% 120

 サイコロ補正    147% 176

 

ステンノ

 ベースレベル                 100

 型月世界修正 なし

 女神の気まぐれA 144

 

叢雲

 メガテン世界補正レベル          124

 型月世界デバフ  84%          104

 女神の気まぐれA 149

 

やる夫の召喚悪魔

 女神ブリジッド、大天使イスラフィール、幻魔クー・フーリン

47×0.84×1.2×1.2=56

42×0.84×1.2×1.2=52

43×0.84=36

 

 

マヨーネ・キャロルJ勢力合計

 172

 

オリアナ=トムソン

 73

 

ボブミヤ・ヘラクレス

 160

 

やる夫達

 673

 

 

「あんたっ!

 役人なんだから、もっとしっかり攻撃できないのっ!!」

 

「役人なんだから、武器でごまかしているんじゃないですか!

 国家公務員を何だと思っているんですか!!」

 

 防弾仕様のセダンを盾に入江省三が銃を撃ち、叢雲がグレネードランチャーをぶっ放す。

 その反撃は、悪魔たちのファイアブレスに、アイスブレスで乗ってきたセダンがぶっ飛ぶ。

 こっちの悪魔が相手の悪魔を排除する間、ヘラクレスとボブミヤを止めるのは俺とステンノの役目であり、

 

「スマイル・オブ・ザ・ステンノ♥」

 

 魅惑の美声Aと宝具女神の微笑で弱体化と足止めをかけ、入江省三の武器庫から拝借した銃でボブミヤを牽制し続ける。

 

「オリアナが逃げる!」

「タカミチさん!

 行って!!」

「わかった」

 

 戦力値が圧倒的なのにどうしてここまで追い詰められているのか?

 ある意味当たり前だが、数って偉大である。

 そして、ボブミヤの壁となっているヘラクレスの邪魔なこと邪魔なこと。

 ヘラクレスが壁になっているから、ボブミヤが仕留められず、俺や叢雲やステンノという最強戦力がそっちに拘束される。

 出した仲魔はマヨーネの悪魔相手に優位に戦っているが排除に時間がかかり、その間にオリアナ=トムソンが逃げようとするので、それを拘束しないといけない。

 見事なまでの戦力分散だった。

 

 

結果

 

1 オリアナ逃亡、キャロルJ、マヨーネ逃亡、ボブミヤ・ヘラクレス逃亡

2 オリアナ逃亡、キャロルJ、マヨーネ捕縛、ボブミヤ・ヘラクレス逃亡

3 オリアナ逃亡、キャロルJ、マヨーネ捕縛、ボブミヤ逃亡、ヘラクレス消滅

4 オリアナ捕縛、キャロルJ、マヨーネ捕縛、ボブミヤ・ヘラクレス消滅

5 オリアナ捕縛、キャロルJ、マヨーネ捕縛、ボブミヤ・ヘラクレス消滅

6 オリアナ捕縛、キャロルJ、マヨーネ捕縛、ボブミヤ・ヘラクレス消滅

7 オリアナ捕縛、キャロルJ、マヨーネ捕縛、ボブミヤ・ヘラクレス消滅

8 オリアナ捕縛、キャロルJ、マヨーネ捕縛、ボブミヤ・ヘラクレス消滅

9 オリアナ捕縛、キャロルJ、マヨーネ捕縛、ボブミヤ・ヘラクレス消滅

10 熱烈歓迎

 

 

 とはいえ、自力はこっちが勝っている。

 距離を取りながらヘラクレスとボブミヤに銃撃を浴びせつつ、キャロルJ、マヨーネの悪魔を排除した段階でそれは発生した。

 

「RPG!!!」

 

 入江省三の声でその方向を向くと、ランチャーを構えた衛宮切嗣の姿が。

 慌てて手近なビルに入ったと同時に爆風が俺達を吹き飛ばした。

 

「先輩!」

 

 死にかかった俺をマシュが抱えて起こし、俺と入江省三に戻った女神ブリジッドが、ディアラハンをかけて回復させてゆく。

 考えやがったな。衛宮切嗣。

 銃が反射するならば、近くで爆発させて爆風で俺を殺そうってか。

 意識があるならこうして全快まで持っていけるのだから、魔法ってのはありがたい。

 同時に、聖杯戦争以上にマスター狙いが大事になってくるのだが。

 

「で、結果は?」

 

「駄目だ。

 オリアナ=トムソンもキャロルJとマヨーネにも逃げられた。

 聞こえるかい?

 人払いの結界が解除されたみたいで、警察から消防から自衛隊までこのあたりに殺到して、かえって見失った」

 

 戻ったタカミチが申し訳なさそうに告げる。

 俺はステンノに尋ねる。

 ステンノは盾にはなれるが、鉾としては弱い。

 

「あの二騎のサーヴァントは落とせるわけ無いか」

「私じゃなくて、モードレッドに頼みなさいな。

 そんな事」

「まったくだ」

 

 

 

「おーい!

 こっちだ!!

 こっちに人がいるぞ!!!」

 

「負傷者だ!

 誰か担架を持ってこい!!」

 

 これだけ過剰戦力を用意してなお負ける。

 今回の敗因は、周囲の状況を確認せずに介入したあげく、霊基データの確保の為にマシュとモードレッドを分散させた事だ。

 勝てると思って分けた戦力を、衛宮切嗣が見逃すわけが無かったと。

 入江省三と共に救急車に運ばれながら、俺はこの顛末を説明するために頭を抱えるしか無かった。




女神様は居るもんだなぁ………(10のサイコロを見て頭を抱えつつ)



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反省会

「よし。反省会だ」

 

 冬木市新都聖堂病院。

 傷などは魔法で回復させたが、かといってそれを警察や救急隊が信じてくれるわけもなく。

 結局、救急病院に指定されている聖堂病院に押し込まれる事になった。

 唯一の収穫は、マシュが霊基データを確保してこっちに持ってきた事ぐらいだが。

 

「戦力はあったのに負けたのはどうしてか?

 簡単な事だ。

 バトルロイヤルで周囲に気を払っていなかった。

 これに尽きる」

 

 検査が終わったら破れた制服を着替えて退院して良かったが、既に夕方。

 下手に移動して再度襲撃を受けるのを避けて、叢雲を舞鶴基地から冬木港に持ってこさせることにした。

 到着後にそちらに移動する手はずになっている。

 

「個々の戦力では勝っていたけど、手数ではこちらが負けていた。

 特に、マヨーネの出した悪魔の排除に時間がとられたのが痛かった」

 

 マヨーネの悪魔が5体。

 こっちが3体で攻撃を防ぎ排除に成功したが、ここで悪魔を拘束されたのが痛かった。

 そして、霊基データが破壊・もしくは奪取される事を恐れた俺は、マシュとモードレッドを確保に走らせたのが致命傷。

 この時点で、俺の壁は叢雲とステンノでボブミヤとヘラクレスを防ぐことに。

 そこでじっと潜んでいた衛宮切嗣にぶん殴られた。

 

「少しレベルの低い他の悪魔も出して叩くべきだった?」

 

 叢雲の指摘に俺は顎に手を当てて否定的に言う。

 可能性だが、こういう時には最悪のケースで想定していた方がいいだろう。

 

「キャロルJが悪魔を出していなかった。

 あの場で全滅していた可能性が高いけど、場の悪魔のレベルが高かったから出さなかった可能性もある。

 サマナーは悪魔が全滅すると戦力が一気に使い物にならなくなる。

 あと一体ぐらいは出せただろうよ」

 

 COMPの未拡張だと入る悪魔は6体。

 という事は、マヨーネすら最後の一体を出していなかった可能性がある。

 

「そして、戦力があったのだから、戦場に突入する前に低レベル悪魔を散らして偵察をするべきだった。

 つまる所、今回の反省点はそこさ」

 

 タカミチ・T・高畑が戦場に巻き込まれていたからと、即座に介入してしまった点が反省する所だろう。

 とはいえ、生き残ったし霊基データは確保している。

 とりあえずは良しとしよう。

 問題は、この霊基データの価値がバレたらとたんに戦争勃発という所だろうが。

 ノックがされてその後でタカミチが入ってくる。

 

「入即出さん。

 来客だ。

 聖堂教会の言峰神父が会いたがっている」

 

 そうくるか。

 ここは聖堂教会にゆかりの深い場所だ。

 会って情報収集という所だろう。

 ついでに嫌味の一つぐらい言われるかもしれんが、それは敗北という失敗のペナルティーとして受け止めよう。

 

「いいよ。

 入れてくれ」

 

 なお、この病院には入江省三も入院している。

 彼もタカミチも傷は悪魔の魔法で治している。

 魔法バンザイ。

 

「おや。

 お元気そうですな?」

 

「まあな。

 死ななければ、なんとかなるのが聖杯戦争のありがたい所だ。

 で、下手を打った俺に何のようだい?」

 

 冒頭からこちらの自虐のジョークを鼻で笑った言峰綺礼は要件を口にした。

 

「あなた達が戦ったサーヴァントについての情報を監督役としてお聞きしたい」

 

「監督役……ねぇ。

 まぁ、話せる所は話しておこうか」

 

 ここで話す事と話さない事を考える。

 それで相手側が何を知って、何を知らないかが分かるからだ。

 

「とりあえず、襲ってきたのはアーチャーとバーサーカーの二体。

 なんとか食い止めたけど、このざまだ」

 

「バーサーカーとアーチャー。

 ふむふむ。

 こちらが把握しているバーサーカーとアーチャーと違ったみたいだが、何か知っていると?

 それに、そちらのアサシンともう一人、エクストラクラスの彼女についても話して頂けるとありがたいのだが?」

 

 当たり前の追求だよな。

 同時に、モードレッドについて触れていないのは、あえて触れないのかそれとも……

 

「このアサシンとこっちのシールダーが俺のサーヴァントだ。

 二騎抱えている事については秘密という事にさせてもらおう」

 

「なるほど。

 そちらのエクストラクラスはシールダーと言うのか。

 それで、このような状況になった事について何か知っているかね?」

 

 これも当然の追求だろう。

 それを俺は笑ってごまかす。

 

「そうさな。

 理由は推測できるが、それをそちらに話す根拠を提示してくれるとこちらとしても話しやすいな」

 

「監督役の指名では駄目かね?」

「駄目だね。

 聖杯は聖堂教会の監督役を否定した」

 

 使い魔か控えているアサシンのハサン経由で聞いているだろう言峰璃正と遠坂時臣に言ってやる。

 こちらが敗者でも、情報戦では圧勝している事がこの状況を有利に持って行ける。

 

「大聖杯に仕組まれた隠しコードが発動している。

 今回の事態の理由はそれさ。

 そっちの資料を漁ってみるといい。

 残っていたらの話だがな」

 

 聖杯戦争において異常事態が発生している事は理解しただろう。

 そこから、聖杯大戦のシステムに気づいてルーラーと話ができて再度聖堂教会が監視役に返り咲けるか?

 向こうからすれば、大量にある言峰璃正の令呪が切り札となるだろう。

 

「この異常事態に共に協力するという選択は可能かな?」

 

 このままバトルロイヤルが進行すると、真っ先に落とされるのが場所が分かっていて令呪が一つしか残っていないだろう遠坂時臣だ。

 同じく場所が分かっているケイネスや、解除されたとは言え警察や自衛隊に見張られているアインツベルンを攻めるよりも遠坂を攻めた方が楽なのだ。

 そして、十字教と同盟を組んだ事がここで効いてくる。

 拠点である冬木ハイアットホテルの防衛を彼らに任せることができるからだ。

 

「できなくはないが、条件があるな」

 

 こちらからすれば状況の整理は絶対条件だ。

 そのため、俺は当然の要求をする。

 

「サーヴァントを持っていない勢力について、何らかの話し合いの場を作って頂きたい。

 それが協力、および情報開示の条件だ」



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サーヴァントドラフト会議……の予定だった

このあたり全部オリ解釈。
10 熱烈歓迎 は出た後にグッドイベントかバッドイベントか再度サイコロで判定します


 現在聖杯戦争に介入している勢力でサーヴァントを持っていない勢力は以下の通り。

 

 ファントムソサエティー

 関東魔法協会

 十字教

 ガイア教

 自衛隊

 桜塚護

 大蔵省

 

 そんな状況でこの病院に聖堂教会の呼びかけに応じて来たのは以下の通り。

 

 ファントムソサエティー 3

 関東魔法協会 3

 十字教 3

 ガイア教 2

 自衛隊 2

 桜塚護 3

 大蔵省 2

 

 

1 参加  2 不参加  3 不参加だけど情報入手

 

 

「誰も来やしねぇ……」

 

 聖堂教会の人気の無さにある意味清々しさを覚える。

 タカミチ・T・高畑と入江省三はこの病院にいるのに不参加を言ってきたあたりその嫌われぶりは感心するしかない。

 まぁ、俺が流した情報を再度徹底させるだけのはずだから来なくていいという選択は間違ってもないわけだが。

 

「これは我らの不徳と致す所。

 お手数をかけて申し訳ない」

 

 まったく読ませない表情で言峰綺礼が謝罪する。

 こうなると話さないのもバカバカしいので、迎えが来るまで最低限の情報開示を行っておこう。

 

「で、聖杯戦争の隠しコードは見つかったかな?」

 

「あいにく。

 本当にそんなのがあるのか我らは疑っているがね」

 

 まだ調べだして数時間も経過していない。

 それで出てきたらこっちがびっくりである。

 心の中で少し安堵しながら、ソース元を偽装して俺は口を開く。

 

「間桐家の資料からの情報だ。

 バーサーカーが暴れたあとの現場検証で入手したという事にしておいてくれ。

 聖杯戦争は、七人の魔術師と七騎のサーヴァントによる殺し合いだ。

 では質問。

 一人の魔術師が七騎のサーヴァントを使役できた場合、そのシステムはどうなるのかな?」

 

「それは不可能だ。

 そもそも、英霊を使役するそれ自体が莫大な魔力を使うからこそ、一人一騎……」

 

 そこで言峰綺礼は口を閉ざす。

 彼の情報だと二騎、実際はそれ以上のサーヴァントを抱えている俺の特異性に気づいたからだ。

 

「そう。

 気づいたみたいだが、一人一騎という訳ではなく抜け道や裏道がある。

 これだと聖杯戦争はサーヴァントの殺し合いで事が済むのにそうならなかった」

 

 こういう風に考えると、聖杯の意味が少し違って見えてくる。

 願望機ではあるが、その願望は本来サーヴァントの為にあったのだろう。

 まさかマスター側の魔術師が独占を図って殺し合いをするなんて事を始めるとは思っていなかったあたり、始まりの御三家は魔術師の割にはお人好しでどこか抜けているというか。

 話がそれた。

 

「で、いつか知らんが予備システムがつけられた。

 同一勢力による七騎独占状況が発生した場合、更に七騎の召喚が行われてサーヴァントの殺し合いを行う。

 ここからが面白いんだ。

 聖杯の発動条件は相変わらず、6騎が聖杯にくべられた時で、一組の願いを叶える。

 つまり、残った8騎でその願いの奪い合いが発生する」

 

「思ったのだが、それだともう1組聖杯に願いが望める事にならないか?」

 

「そのとおりだ。

 もうこうなると外部監督者では管理運営ができなくなるから、聖杯自らが管理サーヴァントを発生させて、聖杯自ら聖杯戦争を管理する。

 そのサーヴァントがエクストラクラス。

 ルーラーだ」

 

 語れる事と語らない事を分けながら、俺は話を慎重に進める。

 相変わらず言峰綺礼の表情は読めない。

 

「厄介なのが、聖堂教会がやっている外部監督と違って、ルーラーは聖杯戦争の終結において人類社会をあまり気にしない。

 化物揃いの英霊達が闊歩してる異常を放置するぐらいならば、その英霊を討伐してさっさと終わらせる方に行動指針が行きやすいのは注意しておくことだ。

 俺から言えるのはそれぐらいかな」

 

 入ってきた叢雲が俺に報告する。

 

「迎えが来たわよ。

 甘粕一尉が玄関で待っているわ」

 

 仲間への攻撃には容赦がない自衛隊である。

 衛宮切嗣による俺へのダイレクトアタックは二度目だから、道中を心配してという事なのだろう。

 

「じゃあ、そろそろ失礼させてもらうよ。

 良き聖杯戦争を」

 

 俺の挨拶に言峰綺礼は何も返事をよこさなかった。

 

 

 

各勢力の行動

 

 

 1 情報収集

 2 情報収集

 3 同盟交渉

 4 同盟交渉

 5 拠点作成

 6 拠点作成

 7 拠点作成

 8 敵勢力攻撃

 9 敵勢力攻撃

 10 熱烈歓迎

 

 

 

聖杯戦争正規組

 

 

 時計塔    (遠坂陣営 聖堂教会と同盟中 アーチャー) 3

 聖堂教会   (言峰陣営 言峰綺礼はこっち アサシン) 10

  グッド 1  バッド 2

  結果 1

 セイバー陣営 7

 ランサー陣営 7

 ライダー陣営 10

  グッド 1  バッド 2

  結果 2

 

 

聖杯戦争非正規組

 

 

 ファントムソサエティー 6

 関東魔法協会 5

 十字教 9

 ガイア教 2

 自衛隊 7

 カルデア 2

 桜塚護 8

 

 ルーラー 8

 

 

 

攻撃対象 (自分が対象の場合1下にずらす)

1  時計塔    (遠坂陣営 聖堂教会と同盟中 アーチャー) 

2  聖堂教会   (言峰陣営 言峰綺礼はこっち アサシン)

3  セイバー陣営 

4  ランサー陣営

5  ライダー陣営

6  ファントムソサエティー

7  関東魔法協会

8  十字教

9  ガイア教

10  自衛隊

11  カルデア

12  桜塚護

13  ルーラー

 

十字教  6

桜塚護  4

ルーラー 1

 

 

 

「思ったよりお元気そうで」

「魔法ってのは便利で、死ななければ大体治してしまう。

 とはいえ、焼けた服は元には戻らないがね。

 また大仰な出迎えだな」

 

 病院玄関前に居たのは82式指揮通信車で、後ろに73式中型トラックが二台。

 対魔忍だけでなく普通科の分隊まで連れてきている。

 

「二度も襲撃を受けて警戒しない方がおかしい」

「それもそうだ」

「港まで送って、その後我々は冬木市内を第7普通科連隊と共に警備する予定です」

「なるほどね。

 とりあえず港までよろしく頼みます」

 

 そう言って俺達が車に乗ろうとした時に、言峰綺礼が玄関に現れる。

 見送りなんて殊勝なことをする輩ではないなと思っていたら、彼からこんな事が告げられた。

 

「お待ちを。

 よければ私も乗せて、遠坂邸に向かって欲しい」

 

「……何かあったので?」

「遠坂氏から緊急の要件だ。

 ルーラーとおぼしきサーヴァントに、アーチャーを強奪されたと」




残りの判定は次話に。
ライターのファンブルは何かして令呪を一つ失った事で処理する予定。

証拠写真
https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1073984588219707392


サーヴァントを持ってない勢力にサーヴァントの有用性を伝えて持たせよう。
>>誰一人来やしねぇ……


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優雅の代償

遠坂時臣ざまぁ回


 遠坂家に向かう際に、強奪の顛末を聞くとこんな感じになる。

 ルーラーと名乗るサーヴァントが遠坂家に襲撃し英雄王が迎撃。

 ここでルーラースキル神明裁決が炸裂し、『ルーラーの下につけ』という命令を令呪にて受けてしまう。

 英雄王は遠坂時臣に令呪を切ってこれに対抗するように命令するが、最後の令呪を切って英雄王を自害させる事ができなくなる事を恐れてこれを拒否。

 元々仲の悪かった事もあって、英雄王は完全に遠坂時臣を見限ってルーラーと共に去ってしまったらしい。

 

「優雅たれ……か。

 それで負けたら元も子もないでしょうに……」

 

 思わず出た俺のため息に言峰綺礼は何も言わない。

 かわりに返事をしたのは甘粕正彦である。

 

「そうはいいますが、人には譲れないものがあるでしょう」

「否定はしないけどな。

 魔術師ってのはその譲れないものが、『根源への到達』だったはずなんだよなぁ」

 

 遠坂家のもう一つの遺伝子レベルの宿命『うっかり』も絡んでいるのだろうが、遠坂時臣は魔術師としてかなり破綻している。

 いや、この言い方はおかしいか。

 人のふりをし過ぎている。

 本気で獲りに行くのならば、間桐よろしく当主不死化というのも、アインツベルンよろしくホムンクルス量産というのも間違ってはいない。

 けど、遠坂はそこまで人間を辞めていない。

 その甘さが結局彼らを聖杯から遠ざけた。

 

「何かを手に入れる人間って、天才でなければどこか突き抜けていないといけないんだよ」

「ほう。

 貴方もそうだったのですか?」

「それを狂気というか努力というかは別として、その最後の一線みたいなものを越えないとその天才の域に行けない」

「当代最高の陰陽師と名高い貴方のお言葉ならば、そうなのでしょうな」

 

 は?

 当代最高の陰陽師?

 初耳なんだが?

 

「滅んだと思った陰陽師の家を出たと思ったら、西洋魔術にも長け、式神召喚すらおこなって、付喪神と女神を使役している時点で、こっちではそういう評価になっておりますよ。

 クズノハでは適当な女子をあてがって、当代の葛葉ライドウにという声もあるぐらい」

 

 俺がなんて言おうか困っている中、やはり言峰綺礼は何も言わなかった。

 

 

 

 遠坂家は破壊されておらず、遠坂時臣も無事だった。

 つまり、英雄王にとっては破壊する価値すら無いものだったのだろう。

 そんな屋敷の中で、敗者となった遠坂時臣は優雅な椅子に似合わぬ姿でうなだれていた。

 

「ああ。

 君か。

 負けた私を笑いに来たのかね?」

 

 ちらりと言峰綺礼の顔を伺うが、やはり奴の表情は読めない。

 そんな彼は弟子らしく、師の遠坂時臣を気遣う声をかける。

 

「ご無事で何よりです。

 まだ令呪は残っております。

 野良サーヴァントを見つけて再契約するのならば、聖杯戦争に戻る事ができるではないですか?」

 

「それを俺の前で言うあたり、神父もなかなか人が悪いよな」

 

「はて?

 何のことですかな?」

 

 俺のツッコミと言峰綺礼のやり取りに気づいた遠坂時臣が俺の方を見てすがりつく。

 その姿は優雅のかけらも無かった。

 

「頼む!

 君のサーヴァントを譲ってくれ!!

 出せるものは何でも出す!!!」

 

 言峰綺礼の口元が歪みそうになったのを俺は見逃さなかった。

 愉悦をする為には、希望を与えよときたか。

 英雄王とのやり取りで自覚したのかしていないのかわからないが、その傾向は既にこうして出ていると。

 

「何で、正式参加者になるつもりもない俺に縋っているのかな?

 遠坂時臣さん」

 

 この姿を間桐雁夜が見たら、さぞ溜飲を下げる事だろう。

 『この顔が見たかったのだ』と。

 俺は遠坂時臣を突き放す。

 

「それよりも、あなたの子供だった桜ちゃんの一件、児童相談所に通報しておきました。

 何らかの説明を求められ……」

 

「それが今必要なことなのかね?

 間桐家と遠坂家の合意に基づいて行われた問題のない行為のはすだ。

 そんな事は今話す事ではないだろうが!」

 

 遠坂時臣の言動は魔術師としては正しい。

 人の親としてはどうかと思うが。

 詰まる所、彼の人格構成の根底は魔術師であり、その次が優雅であり、最後が人の親というだけで、追い詰められた彼は人の親と優雅という仮面を投げ捨てて魔術師として俺に縋っている。

 滑稽で哀れで、その狂気にやっと彼が聖杯戦争の参加者たり得たと納得した俺が居た。

 

「こちらとしてはこれ以上何も話すことはない。

 失礼させてもらおう。

 言峰神父。

 彼を落ち着かせて後日また話を」

 

「承知した」

 

 ドアを開けて去ろうとする俺達に遠坂時臣の声が追いすがる。

 その声を供養に俺は間桐雁夜の為に立ち止まって目を閉じるが、遠坂時臣にはその意味がわからないし、わかろうともしないのだろう。

 

「待ってくれ!

 私は何を間違えたのだ!?

 準備をし、万全の体制を整えていたのに……

 待ってくれ………待て……」

 

「師よ。

 とりあえず聖堂教会へ……」

 

 その声もドアが閉まれば聞こえなくなる。

 屋敷を出る間、ついてきていたステンノが楽しそうに笑う。

 

「私、ああなった人たちをたくさん見てきたわ。

 知ってる?

 彼らって最後は似たり寄ったりの道を辿って破滅するのよ」

 

 くすくすくす。

 考えてみれば、彼女も愉悦部員だったか。

 

「入即出二佐相当官。

 よろしいか?

 冬木ハイアットホテルで戦闘が発生した。

 火災が起こったらしく、ホテルの人間が避難している」

 

 甘粕正彦の報告に俺はため息を深く深くついた。

 叢雲の船に戻るのはまだ無理そうだ。



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やばいやつにやばいものを渡すとやばい事態しか引き起こさない

キアラ「はっ!同業者の気配!!」


 爆弾テロ未遂が起こった冬木ハイアットホテルだが、客の殆どが当然のようにチェックアウトをしてほとんどの客が居なくなる羽目に陥っていた。

 そんな赤字必至のホテルを買ったのが十字教である。

 さすが世界宗教。お金持ちである。

 で、そのままこの冬木の地における拠点としてビットリオ=カゼラが率いるローマ正教十三騎士団とリドヴィア=ロレンツェッティ、雇われ魔術師のオリアナ=トムソンが住み着くことに。

 この段階で、ここを拠点とし工房を構えていたケイネス・エルメロイ・アーチボルトと何らかの取引が結ばれたらしく、この共存は今の所破綻していない。

 

「で、状況はどうなっている?」

 

「近くで警護していた自衛隊員の報告では、何か書かれた紙の群れがホテルの中に入っていったのを見たらしい。

 その後、戦闘らしいものが発生し、ホテルで火災がという報告が入っている」

 

 甘粕正彦の報告に俺は考え込む。

 式神だろう。

 そして嫌なことを思い出す。

 舞鶴や冬木は京都府に一応属している訳で。

 京都からはそこそこ近い距離にある訳で。

 

「魔都京都から百鬼夜行呼び出し放題だよなぁ」

「それは大変ですな。

 こちらは対策はできないので、入即出二佐相当官におまかせするしか無いというのが実情ですが」

 

 嘘つけと俺は心の中で突っ込む。

 御札なり護符なりと対魔アイテムはしっかり装備しているくせに。

 そんな事をおくびにも出さずに俺は甘粕正彦に命じる。

 

「俺達が来るまで自衛隊員の突入は無しだ。

 冗談抜きで祟り殺されるぞ」

 

 祟りの怖い所というか、式神を用いた祟りの要点は、その祟の正体が何なのか分からない所にある。

 あげく、その術者は陰陽術を用いて暗殺をしかける桜塚護の当代と来たもんだ。

 

「そういえばやる……艦長は陰陽師らしいけど、何を極めたの?」

 

 生えた設定だけにその奥を知らない叢雲が何気なしに訪ね、俺もそういえばと気になったので思い出すというか記憶に検索をかけるとろくでもない言葉が出てきて頭を抱える。

 

「あの駄女神め……」

 

 陰陽師の概念には陰と陽というのがあるのだが、それを性に当てはめた術もあったりする。

 その流れと仏教や山岳宗教がマゼマゼされてできあがったのが立川真言流。

 密教系のそっちが叩き潰された結果、残った残党が陰陽師側に帰ったというのが陰陽師入即出家の流れらしい。

 こまった事に、あの時代からその手の術は需要があった。

 何しろお家大事の時代だから後継者ができるかできないかに直結したからだ。

 陰陽師という貧乏公家の仮面をかぶってほそぼそと、その内実はかなり裕福に家を続けていた入即出家は、維新後の文明開化に合わせて時代の影に消える。

 そんな中、家を畳んだと思われた俺が西洋魔術まで修めて帰国してきたのだから、そりゃそっち方面の人々は目の色を変えるわけだ。

 なお、俺の西洋魔術もそっち方面に特化しているらしく、英国古代のケルトよりも古い女神信仰あたりがベースになっている。

 

「……ぇ?……ちょっと…!」

「あらあらまあまあ」

「先輩最低です」

 

 耳打ちして話してやると叢雲は顔を赤め、ステンノは面白そうに、マシュは恥じらいながらも二次創作でできた言葉を面と向かって俺にいう。

 そりゃそうなるわな。

 

 

時計塔のコネ 1

 1 ある

 2 ない

 

イギリス清教とのコネ 1

 1 ある

 2 ない

 

魔法省とのコネ 1

 1 ある

 2 ない

 

ヘルシング機関とのコネ 2

 1 ある

 2 ない

 

 

 あ。

 がっつりと英国のコネが生えた。

 というか、すばらしい蝙蝠ぶりである。

 英国で便利屋として暮らして、母国に錦を飾って帰ってみたらという所だろうか。

 コネはないけど『第二次あしか作戦』発動したら呼ばれるな。これは。

 

「お取り込み中の所悪いのですが、話をもとに戻しても?」

「ああ。すまない。

 たしか十字教の連中、ファントムソサエティーと一戦していたが桜塚護と組んだ?

 いや、それは無いな。

 桜塚護は基本一人だ」

「そっちも戦闘が発生しています。

 結果は……」

 

1 ファントムソサエティー勝利

2 1+オリアナ死亡

3 1+オリアナ捕縛

4 1+オリアナ逃亡

5 十字教勝利

6 5+キャロルJ、マヨーネ捕縛

7 5+キャロルJ、マヨーネ死亡

8 5+キャロルJ捕縛、マヨーネ逃亡

9 5+キャロルJ逃亡、マヨーネ捕縛

10 熱烈歓迎

 

結果 8

 

「……十字教側が勝ったらしく、キャロルJを捕縛したそうです。

 交戦にあたって、オリアナ=トムソンは駆けつけた自衛隊に投降しています」

 

 こっちが釈放せざるを得ない圧力を後でかけるつもりなのだろう。

 おまけに切り捨てOKのフリー魔術師の使い方として実に正しい。

 まさか穴熊を決め込んだ拠点に突っ込んでくる奴が居るとは思わなかったのだろうか。

 車が止まり、ドアを開ける。

 見た限り冬木ハイアットホテルは壊れているようには見えないが、濃厚な死の瘴気が俺の背筋を凍らせた。

 

「あの桜塚護何を呼びやがった!?」

 

 たまらず俺は叫ぶ。

 十字教の主力騎士団とランサーを従えたケイネス・エルメロイ・アーチボルト相手に特攻できる相手なのは間違いが無い。

 

「ひっ!」

 

 対魔忍の井川サクラの近くにはっていた蜘蛛を俺は慌てて踏み潰す。

 その蜘蛛は靴をのけると式神の札と数枚の桜の花びらに変わる。

 

「人払いの結界を張るから、対魔忍は手伝ってくれ。

 出てくる蜘蛛は一匹たりとも外に出すな。

 自衛隊員は下がって、周辺の避難誘導を頼む」

 

 叫びながら、俺は舌打ちをする。

 出した正体が分かってしまった。

 

「艦長。

 何だかわかったの?」

 

「ああ。

 考えられる限り最悪のものを出してきやがった。

 土蜘蛛だよ」

 

 古のまつろわぬ民たちの総称であり、その怨念が妖怪化したもの。

 祟り華やかなりし頃、鬼と共によく使われた悪魔である。

 

「あら?

 何が最悪なのかしら?」

 

 ステンノの疑問に俺はホテルの方を見ながらぼやく。

 桜塚星史郎の狙いが分かったからだ。

 

「聖杯戦争のサーヴァントは一応西洋魔術に基づいてサーヴァントを選んでいるんだが、あれを魔力の塊として別術式で呼び出すならば、この国の妖怪とて呼び出せるんだよ」

 

 彼がどうして大聖杯の前で呪術をやろうとしたか、やっと理解する。

 彼にとって汚染された聖杯の魔力なんてとっておきのごちそうにしか見えないだろう。

 そして、己の術式で遠慮なく祟り神を呼び出した。 

 タイミングも彼にとって最高だった。

 大聖杯を守っていたアーチャーはもはやいない。

 

「こうなるとただの土蜘蛛ではなく、地域補正ってのが加わる。

 何しろ大和朝廷に弓引いた方々の怨念だ。

 名無しの土蜘蛛ではなく、ご当地の怨念たっぷりの土蜘蛛だ。

 さぞ使いやすいだろうな」

 

 悪魔たっぷりのメガテン世界だからこそ、地域伝承や風俗はちゃんと頭に入れてきている。

 この地にもよりにもよってという土蜘蛛さんがいらっしゃったので多分その方だろう。

 

「陸耳御笠。

 この地にて大和朝廷に抵抗し続けた土蜘蛛の大将だよ。多分」




 やる夫にまじかる○○○をつけたげよう。
 コネもたっぷりついたよ。やったね♪
 これを泥沼と言う。

魔法省
 『ハリー・ポッター』。
 多分この省が無いと、あの国の魔法界制御できない。

陸耳御笠
 サーヴァント二騎分の魔力を使って呼び出している。
 宝具とかまでは考えるつもりはない。



証拠写真
 https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1075637192062464000


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羹に懲りて膾を吹く

証拠写真
 https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1076679595280150528

 楽がしたいから簡易戦闘にしたら容赦なく致命傷を踏んでゆくスタイル


1 桜塚護勝利

2 1+ランサー消滅

3 1+ケイネス・ソラウ死亡

4 3+十字教全滅

5 ランサー勝利

6 5+陸耳御笠消滅

7 5+陸耳御笠逃亡、桜塚星史郎場所確認

8 5+桜塚星史郎場所確認

9 5+陸耳御笠逃亡

10 熱烈歓迎

 

結果 4

 

 

 俺は冬木ハイアットホテルに誰も踏み込ませなかった。

 前になし崩しに介入して衛宮切嗣に横っ面を引っ叩かれたのは今日の昼なのだから、警戒し過ぎる事はない。

 その声が周囲に轟いたのは遠巻きに囲んだのが終了した後の事だった。

 

 

「ここまでか……マスター、どうか……!」

 

 

 この声はランサー敗北の声。

 負けたか。

 捜索隊を編成する為に、クー・フーリンとゲンブとイスラフィールをCOMPから出す。

 こいつらならば、たとえやられてもCOMPに戻る事ができるからだ。

 

「生存者が居たら報告しろ。

 陸耳御笠が居たら、交戦せずに帰ってこい。

 サーヴァント一騎と魔術礼装万全の十字教騎士団が負けた相手だ」

 

 二手に分けて、クー・フーリンとゲンブは入り口から。

 イスラフィールは羽を使って空からホテルの中を覗くことに。

 結果はすぐにわかった。

 ホテル室内全体にばら撒かれた桜の花びらの中、ホテル内部に居た全員が苦悶の表情で事切れていたのだから。

 これが桜塚護の当代である桜塚星史郎の力である。

 こうなると後は俺達が手を出す必要が無く、警察に任せることになるだろう。

 引き上げを命じようとした所、思いついた事があって、ハイピクシーを呼び出す。

 彼女の宝探しで漁った結果、案の定あったのは使徒十字。

 やばくなったら使うつもりだったのだろうが、その切り札を切る前にリドヴィア=ロレンツェッティ以下十字教全員はケイネス・エルメロイ・アーチボルトとソラウ・ヌァザレ・ソフィアリの巻き添えを食う形で全員殺される結果となった。

 別宗派である聖堂教会あたりは祝杯をあげているかもしれないな、なんて思いながら、使徒十字を回収して俺達は冬木港にやってきている叢雲に帰ることにした。

 

 

 夜が明けた朝、この冬木ハイアットホテルの一件は報道管制が敷かれたおかげで表に出ることは無かった。

 とはいえ、百人近い死体がホテルから運び出される訳だから気づかないわけもなく、市民は更に怯える結果になる。

 

「なんだ。

 そんな面白い事になっておったのか」

 

 戻った舞鶴基地の食堂にて征服王が笑いながら飯を食べている。

 昨日だけで盤面は派手に動いた。

 ファントムソサエティーが攻撃を受けて打撃を受け、現場で介入しようとした俺達が衛宮切嗣の横殴りをくらい、アーチャーがルーラーに強奪され、ランサーがマスターごと潰されたのだから聖杯戦争中盤の動きとしてある意味当然なのかも知れない。

 

「そういえば、お前ら何か騒ぎを起こしたって聞いたが?」

 

 俺が味噌汁を飲みながら話を振ると、征服王が申し訳なさそうに頭をかく。

 いかつい体だが、その本心は子供のように純粋なのがこの征服王である。

 

「うむ。

 陸自が持ち込んだTAなるものを見てついつい興奮してしまってな。

 ぜひ譲ってもらおうと押し問答をしていたら坊主が令呪をもって叱ってな。

 反省はしている。今は」

 

 その言い草にとなりのウェイバー・ベルベットの顔は暗い。

 ランサー陣営全滅の報告を聞いて思う所があったのだろう。

 

「ケイネス先生の遺体は?」

「臨時の遺体安置所を用意して司法解剖の後、英国に送られることになるだろう。

 報告は俺がしよう。

 時計塔にもコネはあるから、君に迷惑はかけないよ」

 

コネの強度 100ほど強い

 

 時計塔のコネ       8

 イギリス清教とのコネ  43

 魔法省とのコネ      39

 

 外様の便利屋なので本当に下のコネしか無いが、ある意味だからこそこっちに帰ってこれたとも言う。

 そんなのでも組織からすれば報告をあげる分には苦労はしないだろう。

 

「すいません!

 ケイネス・エルメロイ・アーチボルトが死んだって本当ですか?」

 

 そんな場所に乗り込んできて俺に問いかけてくるのはオルガマリー・アニムスフィア。

 霊体なのに無茶をするなぁなんて思っていたら、後ろに藤丸立香と向こうのマシュがやって来るのが見えた。

 

「事実だ。

 遺体を確認したよ」

 

 俺がそれだけと言うと、オルガマリー・アニムスフィアは呆然とした顔で床にへたり込む。

 向こうのマシュが彼女を椅子に座らせようとしているのを見ていたら、藤丸立香が俺にその理由を告げた。

 

「オルガマリー所長。

 使い魔でケイネスさんと手紙のやり取りをしていたみたいで。

 悩んでいた所を励ましてくれたとかで心の支えになっていたんです」

 

 カルデアが攻撃を受けて、レフが裏切って、己の体が死んでいる中で、縋った糸も切れたと。

 それでもまだ彼女には救いがあるあたり、色々と思う所はあるのだが。

 

「こっちのロリンチちゃんには話したが、人形師の蒼崎橙子の工房の連絡先だ。

 彼女の魂も入れる器を作っているから、まずはそのあたりから解決すると良い」

 

 カルデア組が動かない理由の一つに、オルガマリー所長の存在がある。

 レフが裏切った事実だけでなく、彼女が霊体であるという事も本格的な行動に踏み出すのに躊躇するのに十分な理由だった。

 まずはそれを解消してやる必要がある。

 

「器そのものの作成にはもうしばらく時間がかかるだろうから、その間はここを離れて東京の方でゆっくりしてもいいかもしれない。

 これから数日、ここは戦場になるだろうからね」

 

 ある意味正しい聖杯戦争が始まったとも言える。

 だが、藤丸立香は首を横に振った。

 

「いえ。

 それならば、私達もここに居て悲劇を防がないと」

 

 そういえばこんな奴だったな。

 この最後のマスターは。

 一応念を押す。

 

「相手はサーヴァントだけでなく百人近い魔術師クラスを全滅させる事のできるひとでなしだぞ?」

「それでも、人理焼却するろくでなしよりマシでしょう?」

「たしかにそうだ」

 

 静かに闘志をみなぎらせる藤丸立香に刺激されたか、ウェイバー・ベルベットも立ち上がる。

 

「僕も何かできる事があったら手伝わせてほしい!」

「よく言った坊主!!」

「っ!叩くなライダー!!」

 

 対魔忍の朧を呼んで、対魔忍を護衛にオルガマリー所長を蒼崎橙子の工房に送り届ける事を命じる。

 征服王がその後で俺に尋ねてきた。

 

「で、お主はこの戦をどう立て直すのだ?」

「我々が失っているのは主導権だ。

 これを奪回しないと、好き勝手に暴れられる」

 

 最大勢力を保持しているのに後手後手に回っているのはそれが理由である。

 その主導権奪回の為にはやらねばならない事がいくつかあった。

 

「円蔵山にある大聖杯の確保。

 ここを押さえないと、桜塚星史郎の呪殺攻勢を完全に防ぐのは無理だ。

 で、式神の陸耳御笠を抑えるには、地元補正から陰陽師の力を借りるしか無い」

 

 俺はそのまま藤丸立香を見る。

 彼女がマシュとキャスタークー・フーリンしか居ないという事は、あと一騎レアサーヴァントが出るはずなのだ。

 源頼光や坂田金時あたりが出たら、冬木については勝利確定なんだが、彼女の長い旅を考えたら、彼女が納得できるサーヴァントを引いてくれた方がいいので俺はあえて黙っている事にした。

 

「ならば、あれに匹敵する陰陽師を呼んでくるさ」

 

 安倍晴明か芦屋道満か。

 それが無理ならば鈴の木無山あたりを。

 皇昴あたりを呼びたいが、彼の戦場は東京だからなぁ。

 桜塚星史郎も東京が主戦場だからとっとと帰ればいいのにと思ったが、口に出すことは控えた。




鈴の木無山
 『魔法使いの娘』。
 多分桜塚星史郎相手に嬉々として術を撃ち合える桜塚星史郎よりの人物。


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一手遅らせ一駒入手

「ああ。

 それはこっちに入れておいてくれ。

 それもだ。

 貴重品だから大事に扱えよ」

 

 ご丁寧に、桜塚星史郎はサーヴァントと人だけを殺していったので、魔力炉だの礼装だのがまるまる残っていた。

 それらを保管するという名目でありがたく接収する。

 特に二十四層の結界と三基の魔力炉は有効に活用させてもらうことにする。

 なお、悪霊と魍魎はしっかり殺され、トラップは綺麗に破壊されていた。

 

「えー?

 異界化させちゃ駄目なのかい?」

 

 魔力炉の設置にロリンチちゃんがぶーたれる。

 異界化については、自衛隊側からの反対が理由である。

 

「魔術とやらで広いスペースをつくってそこに物をおくのは分かります。

 では、その魔術が切れた場合、そこに置いていたものはどうなるので?

 炉というからには何かのエネルギー源なのでしょう?

 そういう危ない事をせずにスペースの確保をお願いします」

 

 新島副長補佐の反対にロリンチちゃんは、

 

「私がそんなヘマをすると思うの!?」

 

と激怒するが、新島副長補佐はにべもない。

 この時期流行しようとしていたある本の一節を天才に言い放った。

 

「失敗する可能性のあるものは失敗するのです。

 我々はその失敗を許容できません」

 

 なお、海上自衛隊の前身たる大日本帝国海軍は、天才という綺羅星の連中を使って開戦初頭破竹の進撃を進めていたが、彼らを消耗し尽くした後に米国の物量に押しつぶされたという過去を持つ。

 結局、後部主砲を取っ払ったので不要になった後部弾薬庫跡に魔力炉を一基設置することになった。

 これは叢雲の機関から生まれる電力を魔力に変換するようにロリンチちゃんお手製の改造がなされているのがポイント。

 魔力炉のもう一基は、ロリンチちゃんの居城であるシャドウ・ボーターに搭載され、最後の一基と結界はカルデアにレイシフトで回収されることになった。

 

「うちが払うわよ。

 請求書を時計塔のお父様の所に送って頂戴!」

 

 ありがたく横領する事になった魔力炉と礼装だが、エルメロイ家への支払いとしてオルガマリー所長がまた勝手にアニムスフィア家にツケるという荒業で合法化することに。

 別世界線とは言え、アニムスフィア家を継承して何処にどれだけの財産があるか知っているのが彼女の強みであり、アニムスフィア家が騒いだ時には既にカルデアに帰っているという寸法。

 たくましくなったと言うか、可哀想にと言うべきか。

 そんな彼女が切った俺の人形代の数億円の小切手はしっかりと引き落とされたから、ロードと呼ばれる連中の財の凄さを思い知る。

 まぁ、その後で苦労するのは俺なんだろうが。

 

 

 

 徹夜後叢雲に戻った俺達は仮眠を取り、起きたのは午後三時。

 今度は舞鶴基地に連れてこられたキャロルJとオリアナ=トムソンに面会に行く。

 

「護国組織のサマナーが何か用か?」

 

 キャロルJは警戒の色を隠さない。

 平崎市の一件に関わっているぐらいは情報として入手しているのだろう。

 下っ端なだけに切り捨てられたかなと思って、探りを入れてみる。

 

「これもお役所仕事でな。

 どうせお偉方あたりが手を回すんだろう?

 おとなしくしているんだな」

 

「まぁ、仕事はしたと思うがな。

 相手がちゃんと逃げたかどうか心配だけどな。

 この仕事が終わったら、足でも洗うさ」 

 

 下っ端ゆえに切り捨てられて、それゆえにある意味生き残り成功するのがこのキャロルJだ。

 どうやら捨て駒として送り込まれ、深いことは何も知らないらしい。

 ならば、事が終わるまで三食昼寝監視つきのバカンスを楽しんでもらおう。

 

 

「あら?

 この国の軍人さんかしら?

 尋問でもするの?

 それとも、体に聞いちゃう♥」

 

 オリアナ=トムソンはこんなエロエロキャラだが、同時に目的のためなら平気で体を使うという思考の持ち主でもある。

 ついてきた叢雲とステンノとマシュの視線がきつくなったのを感じて、俺はさっさと要件を切り出した。

 

「お前の雇い主である十字教の騎士団と司祭、全員殺されたぞ。

 組んでいた魔術師ごと」

 

 俺を誘っていたオリアナ=トムソンの表情が消えた。

 俺は椅子に座って、契約書を机に置く。

 

「で、雇い主が消えたお前をこちらは雇いたい。

 何も人を殺せとか悪を成せなんて言うつもりはない。

 そちらの仕事を引き続きして欲しいだけだ。

 要するに、雇い主は変わるけど、君の仕事は変わらないという訳だ」

 

 一旦言葉を切るとオリアナ=トムソンが机に胸を置いて挑発する。

 

「断ったら?」

「国外退去処分。

 穏便だろう?」

 

 盤上の駒が多すぎて状況把握が出来ずに、こちらが後手に回るのが一番まずい。

 国外退去処分で盤上から出ていってくれるならば、何も言うことは無い。

 

「何をさせたい訳?」

「君が戦った相手であるファントムソサエティー。

 その本拠はここではなくてね、天海市にあるんだ。

 そこで好き勝手に暴れてもらいたい」

 

 マヨーネが残っているファントムソサエティーの排除が目的だ。

 この痴女がマニトゥ計画が進んでいる天海市で暴れたら、いやでもマヨーネは帰るし、増援が送られることも無いだろう。

 その間にこっちは終わっているはずだ。多分。

 

1 提案を受ける

2 提案を受ける

3 提案を受ける

4 提案を受ける

5 提案を拒否する

6 熱烈歓迎

 

 

結果 3

 

「いいわ。

 あいつらとは因縁があるし、乗ってあげる」

 

「良かった。

 向こうには東風谷早苗という知り合いが居るから、彼女と合流するといい。

 関東の拠点として横浜の隣にある平崎市のホテル業魔殿を使ってくれ。

 俺の名前を出せば問題ないはずだ」

 

 ドアの鍵を開けたまま俺は出ようとし、オリアナ=トムソンは後ろから声をかけた。

 

「あんた。

 結局何がしたいわけ?」

 

 立ち止まって、彼女を見ずに俺は茶化した。

 窓の外はもう黄昏れており、また夜がやってくる。

 

「強いて言うならば、悪党の敵ってやつをやっているだけさ」




マーフィーの法則
 日本語版は1993年7月発売だが、ネタそのものは前々からあった。

アニムスフィア家のツケ
 欧州のプライベート・バンクには、本人認証では無く、相手担当者にパスワードを言うことで開かれる口座というのもある。
 もちろん、そんな口座はやばい金が眠っているわけで、当主となったオルガマリーはそんなパスワードを知っていたという設定。
 体を得たオルガマリーがそのままスイスのプライベート・バンクに行って、オルガマリー家の魔術刻印を見せてその秘密口座を開けたという流れに持っていってもいいかもしれない。


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藤丸立香のレア鯖

福袋ガチャがあったので、それを利用する事にした。
証拠写真
https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1080082794255024128


 カルデア陣営はマシュの他に野良サーヴァントだったクー・フーリンしか無く、ゲーム的に言う所のリセマラ鯖が居ない。

 という事は、ガチャの時間である。

 

「いいのかい?

 霊基データを使わせてもらって?」

 

「構わないさ。

 元々これはそっちの技術だ。

 データそのものはロリンチちゃんがバックアップを取っているしね

 彼女の旅はこれからなんだから」

 

「ありがとうございます」

 

 モニターしていたダ・ヴィンチちゃんに霊基データのコピーを渡し、カルデア式の召喚システムに組み込む。

 冬木式とカルデア式の英霊召喚の違いは、カルデア式は英霊のエネルギーを外部に任せていることで、英霊の長期存続を可能にしたという所にあるだろう。

 その為、マスターだけでなく英霊の存在を維持し続ける為にカルデアのオペレーションルームは常に修羅場っているのだが……まぁそれは置いておこう。

 もう少し補足すると、野良サーヴァントは基本そのエリアで発生した抑止力、今回の場合は冬木の聖杯戦争がめちゃくちゃになったのでそれを何とかするために抑止力が座から英霊を引っ張り出したという形になっているので、冬木の聖杯戦争が終結したら彼らは座に帰る事になる。

 その流れでいうと元が野良サーヴァントだったモードレッドとドレイクも一旦帰る訳だ。

 カルデア式の場合は使い魔、もっとぶっちゃけると今俺達の居るメガテン世界の悪魔召喚に近く、術者の使役という形で契約が行われるのでそちらで再召喚すると経験や記憶を持って、契約を解除するまで存続する事になる。

 そういう意味からも、カルデア式召喚の中核である霊基データと、その維持に必要な魔力炉は絶対に必要だったのだ。

 

「それでやる夫先輩。

 具体的にどうするんですか?」

 

 先輩。

 中々いい響きであるが、藤丸立香から言われると色々と考えるものがある。

 マシュとかぶるからと名前をつけて先輩と呼んでもらうようにした。

 それはさておいて、彼女の質問に俺は少し困る。

 召喚陣は叢雲のヘリポート。

 カルデアの設備だったシャドウ・ボーダーがまだ乗っているのでそれを中継してカルデアとラインが繋げるというのと、叢雲に搭載された魔力炉を補助として使えるというのが理由である。

 その為、魔術の秘匿はガン無視で進められている。

 

「呪文とか儀式とか全部機械に任せているから、召喚陣の前で祈っていればいいんじゃね?」

 

 適当に俺が答えたら、異を唱えたのがウェイバー・ベルベット。

 ちゃんと儀式で征服王を召喚しただけにこの面子で一番説得力があったりする。

 

「待てよ!

 召喚に際しての触媒は?

 呪文すら言わないのか!?」

 

 当たり前のように見物に来ていた征服王コンビだが、正当な魔術師を目指しているウェイバーはこのカルデア式召喚に疑念を呈す。

 確かに一理あるなと思って俺はふと考えた。

 

「触媒は、こっちの霊基データ。

 呪文は正直言わない方が安定するんだよなぁ」

 

「安定?」

 

 このあたりは女神転生の概念だ。

 向こうも悪魔召喚という形がある。

 

「呪文や儀式を正確に間違いなく言い続けるのが人には難しく、その使い魔との契約は文字通り悪魔との契約だ。

 だったら、それを機械に任せてしまった方が間違いないんだよ。

 科学はそういう方向で魔術すら取り込んだ」

 

「……」

 

 そりゃ、メガテン世界だとFate世界は唖然とするだろう。

 召喚するものは似たようなものであるが、明らかに安定性が違う。

 魔術師というのは本質的に孤独なものだ。

 しかも力の根源が神秘の秘蔵と絡んでいるから、必然的に一人でなんとかする形でしか大成しない。

 現代科学文明は、情報化と機械化を前提にした組織化でこの人間という種を覇者に押し上げた。

 

「聖杯戦争のクラスの概念はまさにそれだ。

 英霊そのものをフルに使えないから、クラスというものに押し込める」

 

「いいですか?やる夫先輩。

 今、ウェイバーさんから召喚呪文のメモを見せてもらったのですが、私、祖が分からないのですけど?」

 

 数合わせの素人魔術師としてカルデアに呼ばれた彼女だから、祖なんて呼べる一族はないわけで。

 ここに来てカルデア陣営が確保している聖晶石は6つ。

 ならば召喚は二回出来る計算になる。

 

「せっかくだから、最初は藤丸さんが呪文を読んでやってみようか。

 祖はありがたい事に、俺たち共通のお方がいらっしゃるし」

 

「誰です?先輩?」

 

 俺のマシュが首をかしげて尋ねたので、俺はいたずらっぽくその御方の名前を告げた。

 

「我ら日本人の総氏神様たる天照大神様さ」

 

 

 

「素に銀と鉄。 礎に石と契約の大公。 祖には我らが氏神天照大神様。

 降り立つ風には壁を。 四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ」

 

「閉じよ(みたせ)。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。

 繰り返すつどに五度。

 ただ、満たされる刻を破却する」

 

「―――――Anfang(セット)」

 

「――――――告げる」

 

「――――告げる。

 汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。

 聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ」

 

「誓いを此処に。

 我は常世総ての善と成る者、

 我は常世総ての悪を敷く者。

 

 汝三大の言霊を纏う七天、

 抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!」

 

 

 

 召喚陣が光る。

 おお。

 虹色。

 星5レア来たこれ。

 

「新選組一番隊組長。

 沖田総司、推参。

 あなたが私のマスターですか……え、羽織?

 それが何処かにいってしまいまして……」

 

 藤丸立香は見事に日本鯖を引っ張ってきた。

 桜セイバーである。

 あ。

 笑顔のくせに眺めていた連中の何人かに即座にガン飛ばしてやがる。

 さすが新選組。

 

「もう一個あるけど、こっちは呪文を唱えずにやってみるか」

 

 さて、なにが出て来るか……

 

 

「サーヴァント・アーチャー。

 召喚に応じ参上した」

 

 あ。

 これ、地縁で出てきたな。間違いなく。




藤丸立香強化イベント

桜セイバーは福袋
エミヤは、ギル様狙いで出てきたので小説に使うことにした。
少し反省している。


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状況整理

 夜が近づくに連れて、どう動くかの選択に迫られる。

 ここで穴熊は悪手だ。

 最大戦力ゆえに、標的になるのは目に見えているからだ。

 無理しても攻めないといけない。

 という訳で、状況を再整理する。

 

 

聖杯戦争正規残存鯖

 セイバー

 アーチャー

 アサシン

 ライダー

 

 

 ランサーが脱落したので、残り四騎。

 序盤戦から中盤戦に移ろうかという所だろう。

 

「征服王。

 あんたならどこから叩く?」

 

「そうさな。

 勝つだけならば、もうしばらく共倒れを狙いたいところだが、そうもいかんだろう。

 叩くならばセイバーだろうよ」

 

「その理由は?」

 

「奴らが陣を構えているからだ。

 このアインツベルンの森を落とす事で、セイバー陣営を引きずり出す。

 こちらがここを戦場にすることで、戦場を選べるというのが大きいな」

 

 当たり前のように会議室に陣取る征服王に話を振り、征服王はがははと笑いながらこちらの考えを読み切った。

 そう。

 先攻だからこそできる主導権の確保である。

 

「この基地に誰かが攻めてくるかどうかは正直半々という所だろう。

 だが、こっちがわざわざ出向いたならば、横殴りをしかける連中はきっと現れる。

 街から離れているというのも都合がいい」

 

 そこまで言って、征服王は俺にいたずらっぽく笑いかけた。

 

「ところでだ。

 攻める前の余興で酒宴を開きたいのだが、樽で酒を都合できぬか?」

 

 あ。

 こいつ聖杯問答をするつもりだ。

 

 

聖杯戦争不正規残存鯖

 セイバー   モードレッド          やる夫

 アーチャー  ボブミヤ            ルーラー

 ランサー   クー・フーリン (悪魔化)    やる夫

 キャスター  クー・フーリン         藤丸立香

 ライダー   ドレイク             やる夫

 アサシン   ステンノ             やる夫

 バーサーカーヘラクレス            ルーラー

 ルーラー   天草四郎?

 シールダー  マシュ              藤丸立香

        マシュ              やる夫

 

 

 問題はこっちの不正規鯖だが、丸々残っているのが厄介である。

 とはいえ、元が野良鯖が多いから、聖杯戦争が解決したならば帰ってゆく連中も多いわけで。

 むしろ、中盤戦の山場は俺たちを含めた不正規鯖のつぶしあいこそ本題だと、判断したほうがいいだろう。

 

「やっぱり狙うとしたら俺だよな。

 俺を落とせば5騎叩き落とせる計算になるのだから」

 

 悪魔化しているクー・フーリンやデミサーヴァントのマシュの扱いなど不確定要素もあるが、それでも三騎が聖杯に帰る計算になる。

 ルーラーが聖杯に願うのならば、俺の攻略で上がりだ。

 第三勢力の妨害がなければだが。

 

「ここで桜塚星史郎の存在がルーラーにとっても邪魔になってくるわけだ」

 

 俺が呟く。

 彼の式神である陸耳御笠は大聖杯の魔力を使って動いている。

 ランサーが落ちたから、今は三騎分の魔力で動く大妖怪と言っていいだろう。

 聖杯から呼ばれたルーラーである天草四郎はそれを知る立場に居るから、俺を落として桜塚星史郎が強大化する事を許容できない。

 俺とルーラーに一時的共闘関係が発生する条件がここに成立している。

 

「問題は、あの陰陽師に対抗できる法力者が居ないことなんだよなぁ」

「あなたが出ればいいじゃない♪」

 

 俺のボヤキにステンノが突っ込むが、あんな対人類最終決戦兵器相手にサシで戦うつもりはない。

 

「やつが聖杯から出た正規ルーラーってのがポイントさ。

 聖杯の現状を奴は把握できる」

 

 もし天草四郎ならば、別世界で聖杯戦争に勝ちながらもその願いが叶わなかった事を知っているだろう。

 という事は、最後の一人になるまで手を止めるつもりはない。

 ここも俺たちにとって大きなポイントになる。

 

「カルデアの人たちには何も指示を与えなくていいの?」

 

 叢雲の言葉に俺はあっさりと言った。

 ある意味藤丸立香を信じて。

 

「いいさ。

 彼女は主人公だ。

 レア鯖もついたし、それぐらいできないと先の戦いはきついだろう?」

 

 

聖杯戦争鯖未所持介入勢力

 関東魔法協会

 天草式十字凄教

 ガイア教

 自衛隊

 桜塚護

 大蔵省

 

 ファントムソサエティーはオリアナ=トムソンを天海市に送ったので撤退するだろう。

 今日明日はともかく数日後には居なくなるだろうから、ひとまず除外する。

 桜塚護はともかく、関東魔法協会と自衛隊と大蔵省と天草式十字凄教は組織的にはともかく舞鶴基地で繋がっているのが大きい。

 問題は、それで桜塚星史郎相手に勝てるかという所なのだが……甘粕正彦が覚醒すれば勝てるが、藪をつついて蛇を出すようなものであまりしたくはない。

 

「彼らについては冬木の治安維持があるから大っぴらに動けないってのもあるんだよなぁ。

 しばらくは後手でいいだろう。

 やっぱり、陰陽師は要るな。

 俺以外に」

 

 

1で見つからず、100で見つかる

 

 鈴の木無山 9

 矢部野彦麿 35

 忍野メメ   63

 役小角    93

 宮本武蔵  65

 的場静司  47

 

 考えてみればメガテン世界だから役小角は居るな。協力を頼めるかはまた別だが。

 臥煙伊豆湖も居るなら、忍野メメもいるよなぁ。

 そして、世界転移者の宮本武蔵も捕まえられるかも知れない。

 

「よし。

 この三人に的をしぼって捜索をかけてみるか」

 

捜索判定 上の数値より以下なら発見

 

 忍野メメ   27

 役小角    24

 宮本武蔵  70

 

 探せば見つかるもので、なんとか忍野メメと役小角を見つけることができた。

 臥煙伊豆湖に言われたらしく、忍野メメについては舞鶴基地まで尋ねてきてくれたのである。

 

「やあ。

 待ちかねたよ。軍人さん。

 いや、同業者とは呼びたくないな。

 ストレンジャーと呼びたいのだけどどうかな?」




矢部野彦麿
 『豪血寺一族』 『レッツゴー!陰陽師』の方がしっている人は多いかも知れない。
 桜塚星史郎相手に何かできるか怪しいが、出できたらサイコロ勝負なので勝てるかも知れないのが怖い所。

的場静司
 『夏目友人帳』の払い屋。
 問題は九州まで行かないとアクセスできない所

役小角
 『女神転生』 金剛神界の案内役みたいな立ち位置キャラ。
 その金剛神界にどうやって行くかだが、そこにシャドウ・ボーダーがあるじゃろ?


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アサシン掃討戦

このタイミングで振るかよ……


「さてと、とりあえず僕を探したという事は、桜塚護にぶつけるつもりなのだろうが、あいにく僕一人であの桜塚護をどうにかできると思ってもらっては困る」

 

 自衛隊基地にもかかわらず、ゆるいアロハシャツ姿の彼は、さも気楽に己の無力を言ってのけた。

 かといって、それで本当に無力ならば彼はこんな所に出てくる訳もなく、その目は達観しているようで諦めていない意思が宿っている。

 

「そっちの仕事については臥煙さんから話を聞いている。

 で、穏便に事を進めたいというのは僕たちも一緒だ。

 その上で、桜塚護をなんとかしようという話になるわけだ」

 

「そのなんとかできる手段がないから、貴方を探したんだがなぁ。

 忍野メメさん」

 

「臥煙さんの見立てによれば、なんとかなるのは貴方だけで、それもサイコロ片手の博打に等しいと来たものだ。

 それを避けたいから、こうして僕なんかまで呼んだと。

 ある意味正しいが、ある点を見逃している。

 僕ができるのはそれを教えることぐらいさ」

 

「ある点?」

 

 何を見逃したと俺が考える中、忍野メメはあっさりとそれを告げた。

 たしかにそれは盲点だった。

 

「彼、ガイア教の雇われだろう?

 なんでそっちの方から手を回さないのかい?」

 

 そして、それは自衛隊とガイア教の繋がり、つまり自衛隊のクーデター計画という政治的にやばい話を意味している。

 それを忍野メメは、いや臥煙伊豆湖は知った上で俺に話をふったと見ていいだろう。

 

「その話をするのならば、忍野さんの立ち位置を一度確認しておきたい。

 貴方はどの未来を選ぶおつもりか?」

 

 俺の質問に忍野メメはニヤリと笑った。

 当たり前のことを聞くなよと言いたげな表情で。

 

「どっちの未来が正しいなんて、判断する方法は本来は無い。

 自分の正しさを証明するなんて、この世には存在しないんだ。

 その上で、そんな事を僕に尋ねるのかい?」

 

「それもそうだ。

 忘れてくれ」

 

 俺は頭を下げて忍野メメに謝罪する。

 その上で再度、彼に協力を求めた。

 

「冬木における被害を減らしたい。

 協力してくれ」

 

「それで僕は具体的に何をすればいいのかい?」

 

「舞鶴基地の防衛と、冬木の霊的災害における救助。

 あとは、ここの人間達にこの国の神様について語ってやってくれ」

 

 片手を上げて俺は部屋を出る。

 そして、一言。

 

「モーさん。

 殺れ」

 

 その一言で、俺を監視していたアサシンがモードレッドの一刀によって殺される。

 方針は決まった。

 

「で、マスター。

 全部殺っちゃっていいのか?」

 

「ああ。

 冬木市内に配置されているアサシンを全員殺してこい」

 

「そうこなくっちゃ!」

 

 それだけ言ってモードレッドは消える。

 こっちがアサシンを聖杯に落とせばそれは桜塚星史郎の戦力強化につながる。

 放置してもセイバーかライダーが近く聖杯に落ちるからシャレにならない事になる。

 天草四郎はそれを許容できないから俺への攻撃ではなく、桜塚星史郎への攻撃を決意せざるを得ない。

 

「やる夫先輩!」

 

 俺の決意を察した藤丸立香が近づいてくる。

 後ろに居た桜セイバーがさっきの一撃を見たらしく、人斬りの顔に戻っていた。

 

「君たちは好きに動くといい。

 俺たちは、今夜聖堂教会に乗り込んで、アサシンを落とす!」

 

「お供します。やる夫先輩」

 

 ちょっとうれしいと思ってしまった自分が居た。

 それを察したのか、俺のマシュが盾を持ってアピールする。

 

「先輩の体は私が守ります!」

 

「っ!?」

 

 両方の脇腹に良い肘が入った。

 叢雲とステンノの仕業である。

 

「あらあら。

モテる男はつらいわね」

 

「本当。

 真っ先に思い浮かべないといけない人を忘れているんだから」

 

 笑顔で言い放った二人の一言に藤丸立香とマシュが一歩退いた。

 

 

 

アサシン掃討戦

 50%以上で成功

 

 やる夫

 やる夫の仲魔  18%

 ステンノ  1%

 叢雲  2%

 モードレッド 10%

 マシュ  6%

 

 藤丸立香

 沖田総司  6%

 エミヤ  7%

 クー・フーリン キャスター 6%

 マシュ  3%

 

 合計 59%

 

 

 深夜にかけて冬木市全域で行われたアサシン掃討戦は数の暴力を持つアサシンと、それ以上の数の暴力を持つ俺たちとの戦いとなって、順当に俺たちが勝つ結果になった。

 冬木港に接岸した叢雲を司令部に、各所にサーヴァントを展開し、偵察・監視任務についていたアサシン達を掃討する。

 モードレッドが暴れ、沖田総司がそれに刺激を受け、地の利を得ているエミヤが確実に仕留めてゆく中、逃げるアサシン相手にステンノは追う機動力がなく、叢雲は民間への被害が出ないように考慮した結果、不調な結果に終わる。

 かくして、半分近くを叩き潰した結果、アサシン達は消えて本拠である聖堂教会に集結している事が確認される。

 数を頼みにした彼らが一箇所に集まった時点で彼らの勝ちは無くなった。

 最後の一人が、沖田総司の無明三段突きで消えた時、東の空が明るくなってきた所だった。

 

「これはどういう了見かね!?」

 

 アサシンの消滅を確認してから、聖堂教会を取り囲むと主である言峰璃正が声を荒げて出てくる。

 その後ろに保護されている体裁をとっている、言峰綺礼と遠坂時臣の二人が居る。

 

「どうもこうも、最初に脱落したはずのアサシンのサーヴァントが残っていたから処理したまでですが?

 おまけにずっと、自衛隊基地に入って偵察をしていた。

 掃討されて当然でしょう?」

 

 アサシンのマスターであった言峰綺礼が敗退したという設定は未だ生きていた。

 そこを誰も突かなかったというのもあるが。

 だが、圧倒的不利な状況でそこを突かれると聖堂教会の立場が完全になくなる。

 中立の監督役の立場が崩れるからだ。

 そこで遠坂時臣が一歩前に出る。

 貴族らしく優雅な物言いで俺たちを非難した。

 

「あのアサシンは私が再契約したものだ。

 その契約は令呪によってなされており、正当なものだ。

 それを掃討したのだから厳重に抗議せざるを得ない」

 

 その抗議であわよくばこちらのサーヴァントを一騎よこせと言ってくるのだろう。

 もしくは、カルデアの召喚システムの利用か。

 けど、俺はその言葉を待っていた。

 

「なるほど。

 では、サーヴァントを自衛隊基地に侵入させた罪は、遠坂時臣さん。

 貴方が背負うんですね?」

 

「え?」

 

 こんな時のために散々アサシンを見逃していたのだ。

 遠坂家の遺伝子に刻まれたうっかりは見事なまでに発動した。

 遠坂時臣の手に手錠がかけられる。

 聖杯知識だろうが、実に手早くそれをやったのは、元新選組の沖田総司だった。

 

「基地侵入およびスパイ行為で貴方を逮捕します。

 連れてゆけ」

 

「待ってくれ!」

 

 状況が理解できない言峰璃正の前に現れたのは、大蔵省の入江省三だった。

 その笑顔に言峰璃正がたじろぐが遅かった。

 

「大蔵省特殊査察部第二課執行官の入江と申します。

 あなた方が政府や先生がたにばらまかれたお金についてお話が……」

 

 かくして、彼もまた拘束された。

 残るは言峰綺礼のみだが、彼を捕まえる理由も必要性も無かった。

 対衛宮切嗣の駒として働いてくれるならそれにこした事はないからだ。

 それら一連の捕物でも、言峰綺礼は表情なく動こうとはしなかった。

 

 

 帰る途中で連絡が入る。

 大聖杯のある場所でルーラーと桜塚星史郎が戦ったらしい。

 

1 ルーラー勝利

2 同上 桜塚星史郎撤退

3 同上 桜塚星史郎死亡

4 同上 陸耳御笠消滅

5 同上 桜塚星史郎死亡 陸耳御笠消滅

6 桜塚星史郎勝利

7 同上 ルーラー撤退

8 同上 アーチャー消滅

9 同上 ルーラー消滅

10 熱烈歓迎

 

結果 10

 グッド 1

 バッド 2

結果 2

 

 大地が揺れる。

 その地震かと思える振動の理由を俺たちは大聖杯のあった山から見ることができた。

 

「山が……吹き飛んだ……」

 

 まずい!

 下手したら、大聖杯の泥が冬木を飲み込みかねない。

 ここで、この話はアクション伝記ものから、パニック災害ものに変わることが余儀なくされることになった。




証拠写真
https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1084854204101873667


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冬木市の一番長い夜 その1

 冬木市にとって幸いだったのが、爆発が人気のない郊外で起こった事と、非常事態に対処できる自衛隊が冬木市に展開していた事、そして現場指揮を俺が執った事である。

 

「住民の避難を優先させろ!

 周辺には誰も近づけさせるな!!

 起こっているのは火山の溶岩噴出と似たようなものだと考えろ!!!」

 

 正しくは聖杯の泥なのだが、そこまで言う時間も惜しい。

 まずは現地司令部を立ち上げる。

 ありがたいことにそんなうってつけの場所が近くにあったのでそこを使わせてもらう。

 穂群原学園である。

 いろいろと手続きが面倒だが、現場の判断で押し通す。

 

「門を開けろ!」

 

「了解!」

 

 藤丸立香と沖田総司が校門の扉を押して開けて、車を学園の中に入れる。

 無線を使って、自衛隊基地と連絡を取る。

 向こうもこの爆発を感知しており、状況把握に奔走していた。

 

「入即出二佐相当官。

 何が起こっている?」

 

 こちらの状況報告に問い返してくるのは舞鶴地方総監。

 舞鶴基地の一番偉い人である。

 さすが自衛隊。

 即応体制が速い。

 

「こっちの業界の馬鹿が火薬庫のそばで火遊びした成れの果てです。

 深山町全域に避難指示を出してください。

 溢れ出ているものは溶岩並みに危険なものです!」

 

「わかった。

 市長にはそのように連絡して、避難指示を出してもらうように要請する。

 あと何か必要なことは?」

 

「ヘリを飛ばして、流れ出る溶岩みたいなものがどの方向に行くか常に監視をお願いします。

 これから我々は、その溶岩の元を止めに行くつもりです!」

 

「待ち給え!

 今、状況を一番把握している現場の最上位指揮官は君だ!

 君がそれを行って失敗したら、誰が現場の指揮を執ると言うのだ?」

 

 舞鶴地方総監の言い分にも理がある為に、俺も押し黙るしかない。

 偉くなるデメリット、国に属するデメリットがここに来て俺の足を引っ張っていた。

 

「やる夫先輩!

 私が行きます!!」

 

 その声に意識が飛ぶ。

 凛とした声を発したのはカルデアの制服を着た藤丸立香から出ていた。

 ああ。

 彼女はこの危機にためらわずに突っ込んでいけるだろう。

 

「わかった。

 うちのモーさんとジャンヌ。あと痴女を連れて行け」

 

「はい!」

 

「わらわは痴女ではないぞ!

 大淫婦バビロンという立派な名前が……」

 

 なんか痴女が抗議するが、モーさんに抱きかかえられて連れて行かれた。

 あいつらならば、引き時はわかるだろう。

 

「カルデア。

 モニターしているか?」

 

(ああ)

 

 虚空に浮かぶ半透明な人の姿というのも、あまりよろしくはない。

 夜だからドクターロマンの姿が幽霊にしか見えない。

 

「おそらく特異点F。

 そのきっかけの可能性がいまのアレだ。

 こっちは、大聖杯もろとも叩き潰すつもりだが、その準備に時間がかかる。

 藤丸の嬢ちゃんを行かせたが、やばくなったらそっちが手綱を握って逃がせ」

 

(ああ。

 けど、その大聖杯を叩き潰す算段はあるのかい?)

 

 俺は大炎上を続けている円蔵山を眺めながら言い放った。

 柳洞寺は無事だろうか?

 そこも確認をとっておかないと。

 

「科学をなめんなファンタジー」

 

 

 

 災害からの三十分は、その対処において決定的に貴重な時間だった。

 その貴重な時間を俺は穂群原学園の現地司令部で徹底的に活用した。

 爆発によって起こった、マグニチュード4相当の地震で冬木市や舞鶴市だけなく周辺からも被害報告が上がっていた事もあって、最前線の俺達はなし崩し的に逐次投入された警察や消防に自衛隊を巻き込んで、救助に奔走する事になった。

 

「慌てないで並んでください!

 まだ体育館や教室には余裕があります!!」

 

「まだ溶岩はこっちに来ていません!

 おちついて避難をお願いします!」

 

「子供や病人を優先して運べ!

 新都の聖堂病院にヘリで送り届けろ!!」

 

 悪魔たちも姿を隠してフルで活躍させた。

 ハイピクシーが、宝探しで迷子になった子供や独り身の老人たちを見つけ出して報告し、文車妖妃が情報を整理して、優先者リストを作成する。

 俺がそれを元に救助隊員に指示を飛ばす。

 ジャックフロストとチルノは火災現場近くの木々や可燃物を凍結させて、延焼を防がせている。

 ブリジッドがディアラハンで軽症者を癒やしでゆき、大天使イスラフィールは外国人が多いこの街の外国人避難民に姿を見せて天使の啓示という形で避難を勧めていた。

 人間だって負けていない。

 

「取り残されたもんはおらんのよ」

「わかりました。

 では、次の捜索範囲を……」

 

 建宮斎字達が広範囲に探索をかけて逃げ遅れた避難民を救助すると、明石夕子やタカミチ・T・高畑がそれを保護して救助隊員たちに渡してゆく。

 クルト・ゲーデルは舞鶴基地において、俺を含めて裏の連中の救助活動の合法化に日本政府あいてに腹黒交渉を行っているらしい。

 もちろん、彼と彼の派閥の権益拡大も下心としてはあるのだろうが、

 

「皆、全力で救助活動をしてくれ!

 裏についてのもろもろの責任はこのクルト・ゲーデルが全部とる!!」

 

 こう言い切れる人間に人はついてゆくものだ。

 だからこそ、俺は全力を出し、その結果としての死傷者0という数字に安堵する。

 

「入即出二佐相当官。

 舞鶴基地より、陸自の実験中隊が到着しました。

 作業終了は30分後との事」

 

 情報整理と命令発令にはある程度の階級が必要になる。

 陸自・海自・警察・消防に裏組織というごちゃまぜ混成部隊をまとめる為に俺は残ったが、俺の口は一つしかないわけで。

 軍事知識があり俺の次に階級が高い叢雲が臨時副司令として俺以上に命令を飛ばし、この大騒動で当然やってくるマスコミ以下野次馬の連中を対男性特攻を持つステンノがあしらう。

 天ヶ崎千草は叢雲艦内でひたすら身代わり札量産に精を出し続けているので、そうなると副官ポジに入ったのはこの甲河朧三尉である。

 こんな時でも色気は忘れないあたりさすが対魔忍。

 

「だって、こんな後に人は燃えるじゃないですか♥」

 

 俺の心を読んだか、あっさりと言い放つあたり度胸があるというかなんというか。

 もちろんここでしないのはわかっているけど、こういうジョークで気が紛れるのも事実だから彼女なりの気遣いと受け取っておこう。

 

「叢雲に載せていた、シャドウ・ボーダーも到着した。

 実験中隊と共に作業に入るが、あのちびっこいわく、向こうの準備より先に終わらせるそうだぞ」

 

 俺の護衛任務なのを良いことにお願いしてシャドウ・ボーダーとロリンチちゃんを連れてきてもらった甘粕正彦一尉が報告する。

 これで準備が整ったら、ちょうど上空を高高度で飛び去った超音速飛行機がこの校庭めがけて何か投下したらしく、パラシュートがこちらの用意した投下ポイントめがけてゆっくりと落ちてゆく。

 

「で、この災害をどのように解決するので?」

 

 面白そうな、実際面白いのだろう。

 災害にこそ、人の本性というのは嫌でも見える。

 その命の煌きはこの三十分間にあちこちで光り輝いていた。

 それを堪能し恍惚顔の甘粕一尉に俺はその答えを告げる。

 学園都市の超科学にマジモンの超天才であるロリンチちゃん、そして若狭湾という地の理がこの発想を可能にした。

 若狭湾は原発銀座としても名高い。

 つまり、レールガン用の電力確保に困らない。

 

「電力を上げて、レールガンという物理でぶん殴るのさ」




現場の判断
 『パトレイバー』の太田巡査。
 あれ、よく始末書だけで片付いたなと今でも思っていたり。

科学をなめんなファンタジー
 『ゼロの使い魔』。
 元は「地球なめんなファンタジー」。

責任は全部とる
 『踊る大捜査線』の室井管理官。
 下心はあれどもこれか言えるからこそ、彼は魅力ある悪役なのだ。



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冬木市の一番長い夜 その2

 準備作業に没頭していると作業を終わらせたらしいロリンチちゃんが怒り顔でずんずんとこっちにやってくる。

 さて、何かやらかしたかなと思っていたら、ぐいっと頭を引っ張られて睨みつけられる。

 

「マスターくん。

 何アレ?」

 

「大聖杯を撃ち抜く弾丸」

 

「そうじゃない!!!」

 

 激怒しているみたいだが、子供なのでその怒り方もかわいい。

 こっちの思惑など知ったことではないロリンチちゃんは、怒り顔でその怒りの正体を告げる。

 

「オリハルコンじゃないか!あれは!!

 何でこんな所にあるのさ!!!」

 

 そっかー。

 そういう説もあったな。あれは。

 ロリンチちゃんが激怒し、忍野メメと天ヶ崎千草が絶句したオリハルコンの正式名称を俺はあっさりと言った。

 

「この国ではあれをヒヒイロカネと言うんだよ」

 

 女神転生にはかの将門公の武具を作るイベントが有り、その素材として登場していた。

 財力クリティカルしている俺の所にその素材が無いわけがなく、俺が言って叢雲の素材金庫の中を探した結果三人が絶句したという訳だ。

 そんな中、組み立て途中のレールガンをタクティカルアーマーが持てるように改造が続けられていた。

 

「若狭湾の原発の全電力を使ったレールガンで、天上の『樹形図の設計者』を使って大聖杯を狙い、柔軟な照準修正ができるタクティカルアーマーで撃ち抜く。

 どうやってそんな荒唐無稽な作戦を思いついたんだい?」

 

 まだ憮然とするロリンチちゃんに俺は苦笑して言った。

 カレンダーを思い出して、まだ原作は出ていなかったなと思いながら作戦名を告げる。

 

「作戦名は『ヨイチ作戦』だ。

 屋島の扇よろしく、見事撃ち抜いてくれよ」

 

 

 

 さて、大聖杯を撃ち抜く算段は整いつつあったのだが、その大聖杯周辺の状況が分からない。

 こればっかりは、先行して出した藤丸立香の報告に任せるしか無い。

 その彼女からの報告は想定していないものだった。

 

「こちら藤丸立香。

 映像送ります!」

 

 待っていた映像に絶句する。

 溶岩よろしくたぎっている聖杯の泥の中心に、大聖杯らしきものが禍々しく鎮座している。

 そして、そんな大聖杯を背後に敵を近づかせまいと佇む紳士が一人。

 

「あ。レフ教授。

 まぁ、ここなら出てくるわな」

 

「よく聞け。道化。

 あの雑種の操るできそこないの怨霊を令呪を使われて我が宝具で潰したまでは良かったが、その後あれからこの泥が出てこの様よ。

 あのルーラーは知らんが、こちらのバーサーカーと我とは別のアーチャーは飲まれた」

 

 何で後輩と仲良くなっているんですかねぇ。英雄王よ。

 まぁ、彼の行動を理解できるとは思えないし、敵対しないなら大歓迎である。

 おかげで、状況が理解できた。

 

 大聖杯に落ちたのが、キャスター・バーサーカー・ランサーで、ルーラーが抱えていたボブミヤとヘラクレスと英雄王で六体。

 英雄王が宝具を撃たされて魔力切れの消滅を狙い、ボブミヤとヘラクレスをサクリファイスした結果、聖杯の発動条件が揃ったのだ。

 で、めでたく泥が噴出して今に至ると。

 英雄王は受肉して吐き出された所を藤丸立香に拾われたという所か。

 桜塚星史郎とルーラーの行方が分からないのが怖いが、おおよそ状況は分かった。

 

「藤丸立香。

 今から命令する。

 そこで陣取っているレフ教授を排除しろ。

 排除したら全力でこっちに逃げろ。

 大聖杯についてはこっちで何とかする」

 

「ほう。

 道化の分際で大きく出たな」

 

 さらりと口を挟んでくる英雄王だが、そりゃ貴方ぐだ子お気に入りですからなぁ。

 彼がついているのならば、ルーラーと桜塚星史郎については安心していいだろう。

 

「王を楽しませるのが道化というもの。

 どうか楽しみにしてください」

 

「私を排除すると言ったか。

 大きく出たな。クズが」

 

 聞こえていたらしいレフ教授が声を投げかける。

 先を知っているだけに、彼の中ボス感が哀れに聞こえる。

 もっとも、警戒しなければならない敵である事は間違いがないのだが。

 

「お久しぶりですね。

 レフ教授。

 貴方共々、魔術王にお世話になった者です」

 

 あえて俺はマイク越しに彼に声をかける。

 精神攻撃は基本である。

 レフ教授の嘲笑が消えた。

 

「貴様、何を知っている?」

「何でもは知らないですよ。

 精々、あなた方の計画が、めでたく頓挫した事ぐらいしか」

 

 特異点Fの冬木市大炎上を起こそうとするには、この世界のレフ教授はどうしてもこの世界に張り付いていないといけない。

 FGOは人類史という一つの時間軸から人理焼却を計画しているので、俺みたいな多元世界の放浪者の介入に致命的に弱いという欠点がある。

 観測者である以上はその世界線に縛られるからだ。

 

「何を馬鹿な!

 私が、あの偉大なお方が敗れるわけがない!!」

 

 声が震えている。

 このまま押し切っても勝てると思っていたが、その結果聖杯の泥が冬木市に流れ出る事だけは避けないといけなかった。

 おおよその避難は完了しているとはいえ、ものがものだけに慎重に詰めていかざるを得ない。

 

「フランス。ローマ。オケアノス」

 

 レフ教授の罵声が止まった。

 気分は証拠をつきつける探偵のごとし。

 ホームズはこんな気持ちいい事をいつもしていたのか。

 これは探偵は止められないわ。

 

「ロンドン、北米大陸、エルサレム、バビロニア」

 

 

「黙れ!黙れ!!黙れ!!!」

 

 

 怒った。

 こちらの予定通りに。

 逃げられると厄介なので、とりあえずこいつはここで潰しておこう。

 

「人理焼却は失敗する。

 もっとも、別の脅威に人類は滅ぶかもしれないけどね。

 まぁ、君たち三千年の努力は、徒労に終わった」

 

 

「だまれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

 

 激高し、ついに正体を表す魔神柱。

 これを待っていた。

 

「バカだなぁ。

 レフ君。

 君は本当にバカだなぁ」

 

 まるで猫型と称するタヌキっぽいロボットがその持ち主の少年をバカにするように俺は優しくレフ教授の神経を逆撫でする。

 そして、俺は召喚の呪文をマイク越し告げた。

 

「おーい。

 ここに魔神柱がいるぞー」

 

 

 

「素材よこしやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

 

 カメラ越しにあの巨大な魔神柱がぶっ飛ばされるのが見える。

 そのぶっ飛ばした奴は藤丸立香の姿をしていた。

 

「わ、私?」

「せ、先輩が二人?」

 

 マシュと藤丸立香(CV 悠木碧)の前で藤丸立香(CV 金田朋子)が一心不乱に魔神柱をぶん殴っている。

 ビクビク痙攣しているのがまた惨たらしい。

 これだけ闇鍋になっていて、聖杯の泥が溢れていて、一万二千年も頑張って生きていける人類悪が居ない訳がないだろうに。

 さすが人類悪。

 『殺したいだけで死んでほしくはなかった』なんて迷言が生まれる訳だ。

 

「何だ!?

 消える…やめろ……やめてくれ……

 たすけ…………て……」

 

 動かなくなった魔神柱を前に、聖杯の泥まみれリヨぐだ子はただ一言。

 

「ちっ!

 フラウロスだったか。

 しけてやがる」

 

 派遣した藤丸立香(CV 悠木碧)一行はドン引き。

 一人英雄王が大爆笑していたという。

 なお、彼女は学園都市製のアイドルがシャンシャンするゲームをあげた結果、無事にこっちについてきてくれた。




神秘うんぬん
 メガテン世界ベースだから、神秘なんぞ無駄にあるのがポイント。
 この国はそういう意味で神秘大国でもある。

ヨイチ作戦
 もちろん元ネタは『新世紀エヴァンゲリオン』のヤシマ作戦。
 95年だから、まだ原作は登場していない。

藤丸立香のCV
 年末に出たアニメ版『マンガで分かる!Fate/Grand Order』でめでたくリヨくだ子の声優が決まったのでできるネタ。
 『ハロウィン・カムバック!_超極☆大かぼちゃ村』で酒呑童子の声真似ネタからもうひとりの声優も決まった……あれ?沖田さんと同じ声では?


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冬木市の一番長い夜 その3

「楽しそうなことになっているじゃないか」

 

 アインツベルンの屋敷で聖杯問答をやっていただろう征服王がウェイバーをつれて俺の所にやってくる。

 そういえば、聖杯が発動して泥が出たという事は、小聖杯のアイリスフィール・フォン・アインツベルンの方も出ていると思ったのだが、案の定聖杯の泥がそっちにも出たらしい。

 

「アインツベルンの館で、セイバーとアーチャーと楽しく飲んでいたら、アーチャーが中座してその後セイバーのマスターが倒れた。

 それをセイバーが抱きかかえたら、いきなり泥が吹き出てセイバーが飲まれた。

 やばそうだったから坊主を連れてこっちに来た訳だが、あれは何だ?」

 

 そっちにも出たか。

 聖杯の泥。

 慌てて上空のヘリに指示を飛ばす。

 

「上空のヘリへ。

 溶岩の噴出が別の場所でも発生した。

 場所は私有地だが、上空から確認できるか?」

 

「こちら上空のヘリ。

 確認しました。

 屋敷が炎上しており、溶岩らしきものが流れ出ています」

 

「わかった。

 そこは今から第二噴出口と命名する。

 別の者を偵察に向かわせるから、ヘリは第一噴出口の監視に戻ってくれ」

 

 結界が壊れたらしく、災害が発見される。

 アインツベルンの屋敷が山奥なのが助かった。

 もっとも、セイバーがオルタ化しているだろうからヘリをさっさと逃したが。

 とりあえず叢雲にそっちに備えるよう指示して征服王と向き合う。

 

「大聖杯から出た何かだよ。

 ある程度、憶測込みになるが構わないか?」

 

 そう言って俺は、起こった事を説明する。

 ウェイバーの目が俺に疑心を向けているがとりあえずは口を挟まないみたいなので、大聖杯で起こった事を説明してやる。

 

「という事は、聖杯の勝者は決まったのか?

 余はまだこうしているのに?」

 

「残っているサーヴァントを全部潰せばもう一回ぐらい願いは叶うかもしれんが、もはやあの聖杯は猿の手と化している。

 受肉したはいいが、狂化されてマスターや己の記憶など忘れさせられる可能性も十二分にある。

 あまりおすすめはしないけどな」

 

「待てよ!

 じゃあ、あの聖杯は今、誰の願いを叶えようとしているんだよ!?」

 

 ウェイバーのツッコミに、俺は嘲笑って用意していた答えを告げる。

 当たらずとも遠からずの答えに俺自身納得したのは内緒だ。

 

「ルーラーの本当の願いである、『全人類の救済』を叶えようとしているんだろう?

 その願いに対する聖杯の回答は、『全人類の殺害』なんだろうが。

 つまり、あの泥はそういうものなんだよ。

 聖杯の出力が足りないからこんな形になっているみたいだがな」

 

「……あんた。

 こうなる事を知っていたな!」

 

 俺を睨みながら叫んだウェイバーの一言にさすが名探偵と手を叩いて降参する。

 そして、彼に俺の限界を告げた。

 

「可能性はあったから、対処していたまでだ。

 だが、それを知っても魔術師は聖杯戦争を続行するだろうが」

 

 こう言われてウェイバーも黙る。

 アインツベルンは元より己の悲願のために冬木の被害なんて気にしていないだろうし、時計塔の連中だって本拠の欧州とは無関係だから、心を痛めはするがそれでおしまいだろう。

 何よりも猿の手とはいえ聖杯が機能した事を知れば、遠慮なくそれを使おうとする輩が出るのが魔術師という連中の生き様である。

 

「せっかくだ。

 一つ、それを証明してみせよう」

 

 臨時に引かれた電話を手に取り、警察にかける。

 しばらくして出た声は不機嫌の極みだった。

 

「少しの間とは言え留置場の中は快適でしたかな?

 遠坂時臣さん?」

 

 俺の皮肉に遠坂時臣は何も答えないが、敵意と殺意は電話越しに感じることができる。

 さて、スピーカー越しに聞いているウェイバー君に魔術師たる遠坂氏の優雅な選択を見せてやろう。

 

「本題に入りましょう。

 聖杯戦争が終結しましたが、その戦闘で大聖杯周辺で災害が発生しています」

 

「本当かね!?」

 

 極限状況だからこそ、彼の選択は優雅さも無い魔術師としてのもの。

 そこに罠があるなんて今の彼に気づけと言うのが無理だろう。

 

「現在、その災害に対処しているのですが、願望機である聖杯はアインツベルンの森にあって、我々は手が回らない。

 我々は聖杯はいりません。

 我々は市街地に近い大聖杯周辺の災害に対処するので、遠坂さん。

 聖杯の回収をお願いして構いませんか?」

 

 罠でもあり、慈悲でもある。

 彼がここでこちらに来るのならば、伏せていた情報を開示するつもりだった。

 こっちはただでさえ手が足りないのだから。

 だが、遠坂時臣は正しく魔術師であった。

 

「聖杯の願いはまだ使われていないのか?」

 

「さぁ。

 私には分かりませんな。

 無駄骨かもしれませんよ」

 

 ウェイバーが遠坂時臣の声を聞いてスピーカーを汚物でも見るような目で見る。

 これが魔術師で、彼もそんな魔術師であるというのをいやでもつきつけているからだ。

 

「この街を守るためです。

 聖杯の回収に協力しましょう」

 

 自らの死刑執行書にサインをしたなんて知らず、遠坂時臣の声は楽しそうだった。

 使われていない可能性がある。

 つまり、彼の家の悲願である根源への到達ができるかもしれないのだから。

 

「一緒に捕らえられた言峰璃正神父も釈放しましょう。

 パトカーも一台お貸ししますので、どうか回収を急いで下さい。

 何かありましたら、パトカーの無線で連絡を」

 

「わかった」

 

 その言葉を聞いて俺は受話器を置いた。

 俺の顔が嘲笑っている自覚がある。

 その顔のまま、魔術師であるウェイバーにただ一言だけ告げた。

 

「な。

 ああいう連中なんだよ。

 お前も。俺も」




猿の手
 イギリスの小説家W・W・ジェイコブズによる怪奇小説。
 猿の手のミイラに魔力が込められていて、3つの願いが叶うと言われている。
 ただ、その願いを叶える為には、高い代償がつく。


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冬木市の一番長い夜 その4

 時間は少し遡る。

 忍野メメと俺はこんな会話をしていた。

 

「そもそも怪異って何だと思うかい?」

「また、いきなりの話だが、人にとって理解出来ないモノって線じゃないのか?」

「だったらこんな話を振らないさ。

 怪異ってのは、理解できないモノを『人が納得できるようにした』モノの総称なんだよ。

 たとえば、寝ていたら枕が返っていた。

 これは妖怪の仕業だと人間が『納得』する。

 そうやって昔の人達は、ありとあらゆるわけのわからないモノを怪異として、または神様としてカテゴライズしていったという訳だ」

 

 そこで忍野メメは火のついていないタバコを灰皿に捨てる。

 その目は窓の外の特大の怪異になるだろう叢雲の船体に向けられていた。

 

「つまり、西洋魔術だろうが異世界魔術だろうが、ことこの国では怪異としてカテゴリーされたが最後、大体対処できるよねという訳だ。

 ありがたい事に、神様だけで八百万も居るからね。この国は」

 

 大聖杯をぶっ飛ばすのはいい。

 問題は、大聖杯から出た泥と大聖杯に残っている魔力だ。

 これを日本の『怪異』として処理する。

 やろうとしているのは桜塚星史郎が陸耳御笠を召喚した事と実は変わらないのは内緒だ。

 

「弾は?」

 

「注文通り二発。

 なんであんな形なのかい?」

 

 ロリンチちゃんがタクティカルアーマーを眺めながら疑問を口にした。

 ロリンチちゃんによる魔術加工が無ければ、あの形にはできなかったからこちらとしては大助かりである。

 

「怪異封じの基本は、『類似』と『対抗』なんだよ。

 怪異の正体は何であれ、それによる現象は現実として発生している。

 その発生した現象から、怪異の正体はこれだと決めつけて、怪異そのものを用意した物の怪なり神様なりに当てはめるのさ。

 そうなったら、あとはもうこっちのもの。

 八百万と無駄にある神様の方程式の中からそれに対抗する式を用意して、退治するなり封じてしまえばおしまいという訳だ」

 

 俺は遠目で炎上する円蔵山を眺める。

 この国にはその土地土地の逸話があり、神話があり、神様がある。

 冬木市がこの場所にある事がこのインチキを可能にする。

 

「これは藤丸立香が撮影した大聖杯の映像写真。

 飾りにどういう意味があるかしらんが、女性像をつけてくれたのはこちらとしては大助かりだ。

 女性の神様として扱えるからな」

 

「女性神……あの形……あっ!」

 

 聖杯からの知識から該当するものに気づいたロリンチちゃんが絶句する。

 というわけで、ネタバラシタイムとしよう。

 

「この冬木市の隣には、宮津市というのがあってだな。

 そこの観光名所に天の橋立ってのがあるんだな。

 この観光名所、日本神話においてはかなり大事なところでな。

 イザナギとイザナミの国生みは、天の浮橋に立って天の沼矛をまだ何も出来ていない泥をかき混ぜてこの国を作り上げた訳だ。

 一発目は天の沼矛を模しているんだ」

 

 もちろん、それだけで術を終わらせるのは『もったいない』。

 日本神話を舐めたらいけない。

 類似と対抗で繰り返された対処式はほぼ無数にある。

 

「他にもある。

 今度は仏教伝来後の話だ。

 海に住む龍神様が暴れて困ると言うわけでこの二柱が文殊菩薩に頼み、この龍神を鎮めたとある。

 二発目の弾が如意を模しているのもこの逸話が原因さ。

 で、この龍神様に模された神様の一柱が瀬織津姫と言ってな」

 

 ここでタクティカルアーマーの方の準備ができたらしい。

 無線からパイロットの声が入る。

 

「司令部へ。

 こちら豪和一尉。

 タクティカルアーマー及び、レールガンの準備は終了した」

 

「了解した。

 始めてくれ。

 全員サングラスをつけろ。

 目をやられるぞ」

 

 サングラスをかけてそのままロリンチちゃんに向けて微笑む。

 はたから見ると、幼女に媚びを売るようで通報案件である。

 

「あとは結果を見てくれ」

 

 若狭湾には3つの原子力発電所がある。

 関西電力美浜原発、大飯原発、高浜原発で、そこから作られる電力は数百万キロワットにも及ぶ。

 他の地域で停電しないようによその電力をかき集めたり他の発電所を動かしてこの瞬間だけ何とか電力を確保し、その電力を容赦なくこのレールガンにぶち込む。

 狙いは大聖杯の女体像の下腹部。

 卑猥な気もするがこの国の神話だから仕方ない。

 大聖杯をイザナミに、こちらのタクティカルアーマーをイザナギに例えての国生み作業だ。

 

「発射カウントします。

 10、9、8……」

 

 実験中隊の村井沙生二尉の声が聞こえる。

 なんかうちの痴女と声が似ているような気もしないではないが、空似だろう。

 

「3、2、1、0!!」 

 

「発射」

 

 豪和一尉の淡々とした声の後、ものすごい豪音と閃光が一直線に円蔵山中腹に突き刺さり、鈍い轟音がしばらくしてからこちらに届く。

 さすが学園都市製のレールガン。

 破壊力なら桁違いだ。

 

「二発目発射」

 

 淡々とした声の後、また先程の閃光と轟音が轟く。

 

「こちら上空のヘリ。

 溶岩が!

 あの炎上した溶岩が消えたぞ!!」

 

 うまく行ったらしい。

 呆然とするロリンチちゃんにネタバラシの続きをするとしよう。

 

「国生みの神話だが、最初にできた子供はヒルコとして流された。

 この神様は一説では卑弥呼の別称ではないかという説がある。

 そして、卑弥呼が神格化した神様が、この国の三貴子の一柱。

 もちろん、強引なこじつけだから、その強引さをきっちりと結びつける必要があった。

 龍神様でもある瀬織津姫は、この神様と関係が深い。

 ついでに言うと、龍神様のご利益には浄化ってものがある。

 一発目で、ヒルコとして生まれたお方は二発目によって、自分がヒルコではなくあのお方だと認識、正確には誤認した訳だ。

 これが日本式怪異の祭り方という奴だな」

 

 俺の言葉をロリンチちゃんどころか誰も聞いていないのはある意味当然だろう。

 今、俺たちはこの地に神が降りてくるのを目の当たりにしているのだから。

 朝焼けと共に降りてきたそのお姿は幻想的で神秘的であり、光り輝く古代の巫女姿でその女神はこの地に降り立ち、俺に向かってこう言った。

 

「我が名はアマテラス。

 我を呼んだのはお前か?

 人の子よ」

 

 あ。

 これ高位分霊だ。

 俺でも制御できん。




証拠写真
 https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1088294560340402177

とりあえず能力はあとで考えよう。
 所属は天津神だよなぁ。これ。

アマテラスのレベル173。
 これ裏ボスレベルだよなぁ……


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冬木市の一番長い夜 あとしまつ

時計塔と聖堂協会の本気

証拠写真
https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1088850205686943744


 時計塔および聖堂協会の隠蔽工作 100なら完璧

 結果 94

 かかった費用 68 百億円

 

 

 翌日の朝。

 この冬木市の聖杯戦争は裏の世界で核爆発なみの衝撃をもって迎え入れられた。

 考えてみれば当たり前で、裏技チート込とは言え全く別系統の術式を駆使して、その国の最高神の一人を降臨させることに成功したのだから。

 人類史における過去最大級の奇跡と言っていいだろう。

 そして、その奇跡を隠蔽するために、聖杯戦争の実質的なスポンサーである時計塔と聖堂教会は全力で隠蔽に入った。

 具体的に言うと、政府関係各所を札束でぶん殴った。

 流れた金の額は五千億円を超えたという。

 経済大国日本の政治中枢を動かすのならばそれぐらいの金は必要だったし、時計塔も聖堂教会もそれだけの金を持っていた。

 なお、この買収についてはメシア教も十字教も金を出したらしい。

 その買収は現場指揮官である俺にまで及んだ。

 

「好きな金額を書いてほしいそうだ。

 入即出海将補相当官」

 

 言峰綺礼神父が白紙の小切手を差し出すが、さらりと階級が上がっている所を俺は突っ込む。

 

「俺は戦死した覚えはないのだがな。

 何で二階級特進をしているのやら」

 

「それは貴方の隣のお方のせいだと思うがいかがかな?」

 

 俺たちのやり取りに天津神アマテラスは食べていたコンビニのおにぎりの手を止めて目をパチクリ。

 下界の食べ物に興味津々だったこの御方は既に五個目のおにぎりにチャレンジしている。

 餌付けと言ってはいけない。

 高位分霊という事は、低位分霊から情報をもらってこっちにやってきた上位種である。

 つまり、犬のアマテラスも、狐のアマテラスも、メガテンのアマテラスの情報も持ってやって来た訳で。

 

「良かったじゃないですか♪

 我としてはそなたが偉くなるのはうれしい限りです♪」

 

 大聖杯からアマテラスを強引に作り出したから、見事なまでに情報にバグが紛れ込んでいた。

 キャス狐でいけば良いものを聖杯に入っていたのはルーラーで、アマテラスの神性にあった事から、この顛末は始まっている。

 なお、キャス狐は中立・悪で女性、天草四郎は秩序・善で男性で女性化しなければならず、アマテラスは三貴子の長女な訳でおねーちゃんである。

 そこから多分霊基と性別が近いジャンヌあたりで用意して体を作ったのだろう。

 で、ジャンヌの体に、キャス狐の情報とアマ公の情報が、元の神話と混ざってできあがった性格は、

 

 

『おちゃめな天然腹ペコのほほんおねーちゃん下界バカンスモード』

 

 

 で、威厳たっぷりの登場は良かったが、俺のサマナーレベルが足りないと分かると俺の姉ポジションにちゃっかり収まっている。

 縁もあるし敬意もあるが、どこかよそよそしい関係が今の俺と天津神アマテラスとの関係である。

 

「つまり義理姉ですね?」

 

 ……誰だこの女神様に無駄な日本のHENTAI知識をつけたのは……あ、この御方日本神話の頂点の一柱だし、近年ニートの祖と崇められていたから仕入先は無駄にあるのか。

 どうしてこうなった。

 これで神格は間違いなくあるのだから困る。

 まぁ、ハーレムライフ満喫中の俺的に、一夫多妻去勢拳を喰らわなくてほっとしたのだが。

 というか、貴方が歩くと花が咲くわ草が萌えたりと大変なのですが。

 そして、ちゃんと神様をしているあたり始末に負えない。

 既に宮内庁とヤタガラスと神社本庁と関西呪術協会が蜂の巣を突いたような大騒ぎになり、このお方の対処に頭を悩めているとか。

 さもありなん。

 

「俺は二佐相当官だったんだがなぁ。

 一佐はどこに行ったのやら……」

 

「聞いた所では、書類上では段階を踏んで遡って処理をした形になるとか。

 この冬木に来た時から、海将補という事になるでしょうな」

 

 聞きたくなかったそんな事実。

 なお、大蔵省からやってきた入江省三が言峰神父が来る前に嘲笑って報告してくれた。

 

「彼らの本気を見せつけられましたよ。

 ちょっとの買収ならまだどうとでも防げたのですが、数千億ならばもうお手上げです。

 まさか、マイナス金利国債の全額引受という特大の飴で大蔵省中枢まで買収してくるなんて……」

 

 そりゃそうだ。

 この国、政府中枢が対魔忍世界だから、買収とかにとても弱い。

 そんな所を数千億の金でぶん殴られれば、誰も文句は言えないし言わない。

 今回の冬木の一件は、あくまで『災害』として片付けられ、テロ事件については災害にかこつけて迷宮入りが確定。

 また、アマテラス降臨という『功績』の為に、アインツベルン・間桐・遠坂の三家は時計塔と聖堂協会から徹底的に擁護の手が入る。

 彼らにかかった容疑や事件性は全部闇に葬られ、俺を含めた現場が泣きを見る事になった。

 その現場にまで金をばらまいて黙らせるあたり、彼ら世界宗教の本気が見える。

 そして、泥をかぶる事になる自衛隊のクーデターフラグがさらに進むことになる。

 

「現金より、こちらの条件は保護している間桐桜の身柄だ。

 少なくともこっちは彼女を魔術師として育てるつもりはない」

 

「間桐家の次期後継者は時計塔では既に注目されているそうで。

 その無理を通すだけの道理は用意していただけるのでしょうな?」

 

 ため息をつくが今更の交渉である。

 既にこちらには天津神アマテラスという巨大な勝ち確定の御方がいらっしゃるので大体の要求は通る。

 

「間桐家のご隠居は死亡で、一族に彼女以外ろくな後継者が居ない。

 俺の下で学ばせた方が、第二の俺になる可能性を孕んでいるかもしれんぞ」

 

「児童虐待あたりで責められるのはこちらとしても面倒だ。

 そちらにお預けしましょう。

 間桐家の遺産や魔術はこれで分散することになるでしょうな」

 

「間桐の没落は確定で遠坂は立て直しに時間がかかり、アインツベルンの一人勝ちですか」

 

 

 

 遠坂時臣と言峰璃正の結果

  

1 セイバーオルタに殺される 小聖杯はセイバーオルタが保持

2 同上

3 同上

4 同上

5 同上

6 同上

7 道中衛宮切嗣に狙われて殺害 小聖杯は衛宮切嗣が令呪を使って奪取

8 同上

9 セイバーオルタと契約 小聖杯を持って帰還

10 熱烈歓迎

 

結果 7

 

 

 

 アインツベルンの館にあるはずだった小聖杯の回収に向かった遠坂時臣と言峰璃正だが、そもそもそのアインツベルンの屋敷に行く前に殺された。

 途中の道で狙撃され、車ごと崖に突っ込んだらしい。

 遠坂葵が生きているので遠坂家の維持はできるだろうが、魔術師としては後継者である遠坂凛の登場を待たねばならず、弟子でもあった言峰綺礼と共に傾いた遠坂家を支えることに。

 魔術刻印がどれだけ残っているのやらと思ったが、二人共綺麗に頭を撃ち抜かれていたから回収可能な状態だったという。

 魔術師なんてやらずに傭兵として生きてゆけばいいのに。

 そんな衛宮切嗣と久宇舞弥はすべての罪を買収でなかった事にされ、国外脱出を果たしたらしい。

 らしいというのは、時間にしてちょうど今頃の飛行機で成田に向かい、そのままドイツ行きの飛行機に乗るからだ。

 

「アインツベルンからすれば、勝てはしなかったが入即出海将補相当官が第三魔法を再現してみせたようなものです。

 そのデータが残っているであろう小聖杯は是が非でも回収したかったのでしょうな」

 

「その理論で行けば、俺は魔法使いですか?」

 

 俺の冗談にまったく笑わない言峰神父。

 つまり、俺の二階級特進は彼らからの封印指定を避けるためでもあると。

 俺のため息をペットボトルお茶を美味しそうに飲んでいる天津神アマテラス様は、首をかしげて理解できなかった事をアピールした。

 

 

 

 言峰神父との打ち合わせを終えると、英雄王と征服王が二人して待っていた。

 二人共後ろのアマテラス相手に警戒バリバリである。

 知名度補正ならこの国最強の一柱なだけあって、サーヴァントという拘束を受ける二人の王と神霊になってしまったアマテラスの差は歴然としているというか。

 多分、英雄王はその千里眼で某ティアマト戦あたりを思い出していると見た。

 

「お二方も協力に感謝します」

 

「なんの。

 終わった戦の落ち穂拾いのようなものよ!」

 

 征服王が豪快に笑えば、

 

「雑念に落ちたセイバーに引導を渡してやったまでのこと」

 

と英雄王はにべもない。

 残ったセイバーオルタの掃討を藤丸立香に頼み、その援軍を英雄王と征服王に頼んたのだ。

 藤丸立香のサーヴァントである沖田総司とエミヤとマシュ、キャスタークー・フーリンならば勝てると思ったが、万一を考えての配慮である。

 もちろん、俺から派遣したジャンヌと大淫婦バビロンはそのままつけている。

 ある意味勝者になった征服王だが、俺のアマテラス降臨という尋常ではない事態で戦い足りずこの提案を受け、英雄王は藤丸立香のお願いとアーチャーエミヤへの対抗心と彼自身の言ったセイバーオルタへ引導を渡すために参加し、危なくなくセイバーオルタは座に帰った。

 その段階で小聖杯が衛宮切嗣に流れたのが判明したのである。

 それでも聖杯戦争は終わり、受肉化した英雄王はともかく、魔力が切れれば征服王は座に帰る事になるだろう。

 なお、戦い足りない彼は藤丸立香や俺を交えた模擬戦を提案してくれており、藤丸立香強化のためにもこの提案に乗ることになる。

 

「気になったのだが、あの大聖杯なるものは結局どうなったのだ?」

 

 

大聖杯の今後

 

1 日本政府管理下

2 同上

3 同上

4 魔術協会管理下 英国回収

5 同上

6 同上

7 アインツベルン管理下 ドイツ回収

8 同上

9 同上

10 熱烈歓迎

 

結果 1

 

 

「後ろの御方のおかげで日本政府管理下に移ることになります。

 時計塔や聖堂協会が莫大な金を持って政府を買収したのはこれが理由です」

 

「ふん。

 己が腐っているのを見ぬふりをして、さらに強欲に金を集めるか」

 

「それでも、彼らは私の子孫たちです。

 守り導くのが私の役目でしょう」

 

 英雄王が吐き捨てるが、天津神アマテラスは微笑を浮かべて淡々と己の存在意義を言い切る。

 ほんわか幸せオーラまで出すから、英雄王も地味にやりにくそうに見えるのは気のせいだろうか?

 

「征服王はともかく、英雄王はこれからどうなさるおつもりで?」

 

「あの雑種がこの国の都に帰って何か企んでいるのは分かっている。

 あれは我が手にて潰さねば気がすまぬ」

 

 英雄王にとって桜塚星史郎との出会いはある種の運命だったのだろう。

 受肉した今、今度こそ完全に彼を滅ぼしに行くつもりなのだ。

 ならばと俺は英雄王に一枚の紙を差し出す。

 

「何だこれは?」

 

「御身の維持に必要な魔力を作る魔力炉とそれを可動させる発電施設の設計図でございます。

 全力で事に当たるのならば、ぜひこれを用意して頂きたく」

 

 やる夫スレメガテンの定番でもあったが、英雄王はガイア教の大物として書かれることが多い。

 自衛隊のクーデターフラグがたった今、国家を意のままに操る力を持つメシア教に対抗するためにも、魔力万全のギル様というのは絶対に必要だった。

 なお、この設計図はカルデアの施設の流用であり、原発はまずいので火力発電に変わっている。

 

「そのような些事で我に恩を売るつもりか?道化」

 

「まさか。

 桜塚星史郎を潰してほしいだけの事。

 あれは放置しておくと藤丸立香にまで手をかけます故」

 

 英雄王の冷たい目が俺を見るが、俺も絶対魔獣戦線バビロニア経験者。

 彼の機嫌取りと王の心の先は見抜いている。

 

「道化の戯言を許す。

 その施設作ってみせよ」

 

「既に建設準備を始めております」

 

 言峰綺礼にもらった小切手に書いた金額は1000億円。

 本当に払われるかどうか知らんが、この王は必要な財に関してケチではない。

 それを分かっているからこそ、先に計画を立てて王に裁可を仰ぐ形にしている。

 カテドラルができるだろう埋立地に、数百万キロワットの発電所が建設され、その電力の殆どが魔力炉に変換されてこの英雄王のためだけに使われる。

 メシア教にとってはたまったものではないだろう。

 既に今回の一件で自衛隊のクーデターは不回避と判断した俺は次善の策に切り替えたのだ。

 クーデターには参加するつもりはないが、メシア教の排除と米軍からの核ミサイル撃墜に。

 

「よかろう。

 できたら我を呼べ。

 褒美を取らせてやる」

 

 そう言って、英雄王は立ち去る。

 彼のことだ。

 必要な時にちゃんと現れて、ちゃんと活躍してくれるだろう。

 

「司令官。

 そちらの女神様に面会が来ているわよ」

 

 話が終わった事を見計らって、叢雲が入ってくる。

 強引な二階級特進により俺のことを『司令官』と呼べるのがとても嬉しそうだ。

 

「通してくれ」

 

 しばらくすると入ってきたのは二人の巫女。

 両方とも気の強そうな美女である。

 

「天津神アマテラス様のお世話をするために参りました。

 鬼咒嵐と申します。

 どうぞよろしくおねがいします」

 

「同じく、天津神アマテラス様のお世話をするために参りました。

 皇北都と申します。

 どうぞよろしくおねがいします」




数千億の買収
 それで己の宗教の主神降臨できますよと言ったら世界宗教は金を出すわな。
 なお、カトリックの献金は信者一人が一日一円出すだけで、年3000億ほどあるらしい。
 これに長年の金融財産とかマネーロンダリングとかで流れ込む資金があるので欧州の闇の一つと言われていたり。

アマテラス様の性格
 某水着ジャンヌネタの『お前も姉弟だ』から『お前も子孫だ』なるパワーワードが爆誕しああなった。
 神話的には間違っていないから困る。
 なお、作者敵に頭を捻ったのは、やる夫が一夫多妻去勢拳を喰らわなくする方法だったりする。

海将補
 軍隊の階級で言うと少将。
 中佐から二階級特進である。

マイナス金利国債
 -10%だと、100円借りたら90円の返済で良いという借り手に都合の良い国債。
 もちろん、それだとけ誰も買わないので、国債購入分の税金免除などの税金の前払いみたいな形のメリットを付与する形になるが未だ実現していない。

1000億円の小切手
 ちゃんと支払われた模様。
 その金のほとんどは英雄王維持の火力発電所建設に使われた。

鬼咒嵐
 『X』伊勢神宮の隠し巫女。
 アマテラス様のお世話にうってつけの存在。

皇北都
 『東京BABYLON』
 時間軸確認して生存が確定したので登場。
 これで昴が葛藤しながら桜塚星史郎と対峙する事が確定。


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第四次聖杯戦争あとしまつ その1

 結局の所第四次聖杯戦争は約一週間という速さで終わった。

 原作と違ってプレイヤーとしての人間のゲーム思考が、早期の同盟や襲撃を発生させると書いていたのはどのやる夫スレだったか。

 準備と後始末に莫大な時間がかかり、イベントは僅か一瞬の花火のよう。

 そんな聖杯戦争の後始末の時間である。

 

「書類。

 書類。

 書類……」

 

「ハンコ。

 ハンコ。

 ハンコ……」

 

「報連相。

 報連相。

 ホウレンソウ……」

 

 舞鶴基地に与えられた一室にて、膨大な後始末に追われる俺たち。

 穏便に片付けたと言っても、関係各所に出す書類は山のように発生し、俺と叢雲とステンノは末期戦よろしくその戦いに無駄な抵抗を続けることに。

 でっちあげるにしても、現場最上位指揮官だった俺がストーリーを作らないと齟齬が発生しかねないし、その齟齬でこの修羅場をきょとんと眺めているアマテラス様が露見したら目も当てられない。

 

「あ!

 それを持ってゆくのならば、我が……」

 

「私が持っていきますのでお座りください」

 

「はい……」

 

 立ち上がったはいいが、鬼咒嵐のインターセプトによって今日何度目かの天津神様のしょんぼりおすわりシーンを横目に、後始末という名前のでっちあげに奔走する俺。

 

「とりあえず、火山の噴火で片付けるとして、学者の調査とかはさせないように文部省に通達を」

「テロ事件については、間桐雁夜と雨生龍之介を犯人として公表して警察と話をつけるように」

「今回の出動にかかった経費のごまかし?

 大蔵省の入江執行官に聞いてくれ!!」

 

「海将補相当官。

 済まないが少しよろしいか?」

 

 こういう時に堂々と入ってくる甘粕正彦は度胸があると言うか、ある種納得すると言うか。

 書類から視線を上げて彼を見るとちょいちょいと指を振って俺を外に連れ出す。

 話すのは男子トイレ。

 個室にも誰も居ないのを確認した甘粕正彦は、要件を切り出した。

 

「上からの情報です。

 市ヶ谷が政府に激怒している」

 

 知ってた。

 ここまで現場に泥をぶっかけたのだから、むしろ怒らない方がおかしい。

 となると、先の話も大体見当がつく。

 

「一つ現地部隊を宥める策がある。

 基地祭の訓練と称して、栄誉礼を考えている。

 もちろん、あの神様へだ」

 

 この提案は既に舞鶴地方総監に伝えており、海自だけでなく展開していた陸自や空自、救助活動に参加した警察や消防も参加したがっているとか。

 あの降臨シーンを生で見たらそうなるだろうなぁ。

 ガス抜きにはちょうどいいイベントだろう。

 

「甘粕一尉。

 貴官が何を言いたいか、何に誘いたいかは薄々知っているが、それに参加するつもりはないし止めておけと言っておこう」

 

「分かっていて、告発しないのは?」

 

「あの政府の事だ。

 多分自壊する」

 

 人の悪いところと言うか、人の宿痾というか、腐れば腐るほどその腐臭に気づかずに立ち枯れてゆくのだ。

 それはもう自業自得だが、問題はその先だ。

 

「問題は米軍だ。

 俺の所にまで漏れている話がこうして放置されているのは何でだと思う?

 米軍はこれを機会に介入を企んでいる。

 そっちの方が目も当てられん」

 

 国家に真の友人は居ない。

 ましてやあの政府ならばそれこそ金がある間のみで、助けの手を差し出す国がどれだけあるのやら。

 そっちの対処だけで精一杯なのだ。

 

「……惜しいな。

 共に理想を目指して進んでいけると思ったのだが」

 

「それでも、この聖杯戦争では友であり共に戦った。

 それを俺は忘れるつもりはない」

 

 甘粕正彦は俺の言葉に少しだけ視線を反らせて、嬉しそうに笑った。

 

「それは嬉しい事だな」

 

 

 

「だから、アマテラス様の寝所をどうするか聞いているのよ!」

 

 長いトイレから帰ってきたら、皇北都がエキサイトしていた。

 その後ろでアマテラス様が意味もわからずオロオロしているのがかわいい。

 

「何だ騒がしいな?」

 

「ちょっと!

 いくら、アマテラス様をお呼びになったとは言え、その後を考えていないってどういうつもりよ!?

 寝所も決まっていないって、最高級ホテルぐらい取っておきなさいよ!」

 

 あ。

 キレイに忘れていた。

 何しろ呼び出した事が目的であって、呼んだ後の事は考えていなかったからだ。

 オロオロしていた当人の手にあるのは観光ガイドブック。

 見事なまでにバカンスモードである。

 

「寝所については伊勢に動座して頂きたく」

 

 何を当たり前のことをという顔で鬼咒嵐が言い切る。

 これはどうも宮内庁なり神社本庁なりヤタガラスなり関西呪術協会の既定路線みたいだ。

 こちらとしてもそれに異存はないが、アマテラス様の持っている観光ガイドブックのタイトルを口に出す。

 

「『初夏のグルメを独り占め!若狭湾の海の幸を堪能する旅行……』」

 

「口に出して読まないでください!」

 

 神様も一応こういう所は恥ずかしいらしい。

 なお、そのガイドブック、たっぷり付箋がつけられているのだが、全部食べるきなのだろうか?

 

「若狭グジ……鯵……太刀魚……越前うに……夏牡蠣……スズキ……」

 

 ごくりと叢雲の喉が鳴った。

 

「但馬牛……舞鶴の肉じゃが……海軍カレー……」

 

 ステンノも手を止めて神様が持っているガイドブックを見ている。

 

「地酒……丹波ワイン……山崎のウィスキー……」

 

 皇北都がうんうんと満面の笑みで策にハマった俺たちを見ている。

 けど、さすが伊勢の巫女は動じない。

 

「今日中にヘリの手配をお願いします」

 

「貴方には人の心ってのが無いの!!!」

 

 夕方、泣きながらヘリに乗る皇北都と天津神アマテラス様、その二人をヘリに押し込めようとする鬼咒嵐の姿が舞鶴基地にて確認された。

 その日の晩ごはんは宮津市まで出かけて、但馬牛のステーキと山崎のウィスキーという実に豪勢な夕食となり、当たり前のようについてきた征服王とウェイバー、モードレッドとドレイク船長の代金も俺持ちとなった。




Q アマテラス様伊勢神宮に行かないの?
A そこまで行かせるまでで力尽きた

栄誉礼
 ノリは一日基地司令。
 神様相手の規定なんて当然無いので、それで押し通す予定。

若狭グジ
 アマダイの事で和の最高級食材の一つらしい。
 ぐぐって出てきたのを出しているので、私は食べたことはない。
 けど美味しそうだな。


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第四次聖杯戦争あとしまつ その2

 舞鶴基地グラウンド。

 

「がはは。

 良い戦であった。

 またどこかの場所でまみえる事を楽しみにしておるぞ!」

 

 戦闘訓練と称するガチ死合に征服王は良い笑顔のまま座に帰っていった。

 沖田さんとモーさんが獅子奮迅の活躍をするも数には勝てず、エミヤが『無限の剣製』で投射しても一騎当千の英霊たちは最低一撃はそれを弾き飛ばし、エミヤに殺到する。

 一方でこっちの仲魔たちも参戦させたが、こっちも数に押された。

 クー・フーリン二人は元々同じ英霊という事でコンビネーションも合ったが、レベルの低さに足を引っ張られ、大淫婦バビロンやジャンヌ・ダルク、ゲンブやイスラフィール、ブリジッドも数に押されて大苦戦。

 死ぬかもしれないというのに参戦を決めたタカミチ・T・高畑が生き残れたのも彼が元英雄というのがあるのかもしれない。

 というか、征服王の軍勢に軍師として見事な采配を見せたウェイバーの才能が光る。

 それでも征服王が勝てなかったのは、唯一つ。

 

「勝ったから約束のマネーカードおくれ!」

 

 万の英霊たちも人類悪には勝てなかったらしい。

 この人類悪に渡したマネーカードは10万円ちょっとである。

 その全てが多分学園都市謹製のアイドルソシャゲに消えるのだろう。

 なお、横須賀帰港後、ホテル業魔殿にてバイトをしている所が発見された。

 衣食住つきで、給料の全てをガチャにつぎ込んでいるらしい。

 

「そうだ。

 君の持つライダーとアサシンを貸してくれるなら、これからも定期的にマネーカードを……」

 

「わかった!!」

 

 速攻で押し付けられるリヨライダーとリヨアサシン。

 星1だが、この世界に置いてこの二騎は絶大な影響力を持つ。

 

「私みたいな星1サーヴァント役に立たないと思いますよ」

 

 実に美しい演技の笑顔を張り付かせたままリヨライダーは謙遜するが、俺が朧からもらったスマホである動画を見せるとその笑顔にヒビが入る。

 定期的に送られてくるらしい、名もなき対魔忍のアヘ顔ビデオレターである。

 

「ストーリーのかけらも無いですね。これ」

 

「で、君の出番という訳だ。

 これを制作している所に行って、ぜひとも素晴らしいものを作って欲しい。

 アサシンは彼女の護衛としてついてくれると嬉しい」

 

 横から見ていたリヨアサシンが口を挟む。

 スケスケネグリジェのみのニューフェイス痴女である。

 

「その場合、私がタチ役なりネコ役をしても?」

 

「お好きにどうぞ。

 場所は地下都市ヨミハラ。これはそこまで行く交通費だ。

 必要ならば、服も用意しよう」

 

 俺の顔もきっとリヨライダーと同じく笑顔になっている。

 腐れきっている政府中枢の暗部を調べるのに、リヨアサシンほどうってつけなのはない。

 それを俺は利用しない。

 だが、それを見て自分が利用しようと考える輩は出るだろう。

 それが狙いである。

 

「わかりました。

 こいつらに映像という物語のなんたるかを教えて差し上げましょう」

 

 二騎がヨミハラに行ってから、アダルトビデオのストーリー性が急上昇し、そこの女優陣が世界的ポルノスターとしてもてはやされるようになるのは後の話。

 そんな世界的ポルノスターの大部分が元対魔忍であるというのは公然の秘密となっている。 

 

 

 

「あー。

 戦った。戦った。

 マスター。また呼んでくれよな!絶対だぞ!!」

 

 キラキラしながらモードレッドも座に帰ってゆく。

 元々野良サーヴァントとして出たから、ある意味帰還は当然であり、ドレイク船長が帰りに叢雲を操りたいので、先に帰る事を決めたそうだ。

 同じ野良サーヴァントのドレイク船長も横須賀帰港後に帰ることになる。

 どこかでまた召喚ガチャをして二人を呼ばねばならない。

 

「どうだった?

 英霊同士の大合戦という奴は?」

 

 自衛隊の観戦武官達と共に隣りにいた 藤丸立香に尋ねる。

 興奮しているのか両手が強く握られていた。

 

「凄いです」

 

「いずれ、あの大軍勢を打ち倒す英霊たちを君が従える事になるだろう。

 というか、従えなければ君の、カルデアの目指す人理救済はできないよ」

 

 俺は諭すように言う。

 藤丸立香の成長に繋がればいいのだがと思って、メモにとある住所を書く。

 

「君の成長に役立ちそうな人物の住所だ。

 行ってみると良い」

 

「ありがとうございます」

 

 役小角による金剛神界での修行だ。

 精神と時の部屋みたいな所で遠慮なく時間を気にせずに鍛えると良い。

 君にはそれだけの運命が待ち構えているのだから。

 

「あと、俺の権限で食料・医薬品・衣服等の物資を用意してある。

 ダ・ヴィンチちゃんに空のコフィンを飛ばしてもらって積み込むといい」

 

 横に居た叢雲がジュラルミンケースを藤丸立香の前に置く。

 同じく横に居たステンノもジュラルミンケースをその隣に置いた。

 

「この二つについては君が受け取るか受け取らないかを決めるといい。

 一つは宝玉。

 体力を全快にするアイテムだ。

 もう一つは、金丹。

 死んだ人間を生き返らせる。

 さすがに仮死状態ぐらいしか効果は無いと思うけどね」

 

 ピクリと藤丸立香の体が震えた。

 その意味を理解したからだ。

 

「これがあれば、カルデアのスタッフを助けられるかもしれない。

 君以外のマスターが人理を救うかもしれない」

 

 そういえば、悪魔は本来優しいと言ったのは誰だったか?

 その意味ならば、俺も立派な悪魔なのだろう。

 

「助けられるんだ。

 そして戻れるんだ。

 期待されていなかった、かつての自分に。

 何も気にしなくていい自分に」

 

 藤丸立香は、現場指揮に奔走している俺を見ている。

 現場に出て真っ先に対処したかったのに、それを止められた俺を見ている。

 偉くなること、英雄になる事のデメリットを見ている。

 俺が知っているあの物語が奇跡である事を俺が一番知っている。

 その奇跡をあてにするほど、俺は楽観的な人間ではなかった。

 

「君の旅路はまだ長い。

 その重荷を一人で持つことも無いだろう。

 助けあって行くといい」

 

「その旅路にやる夫先輩は助けてくれないのですか?」

 

 その質問は分かっていたので、俺は少しだけ目を閉じる。

 どっちのマシュかわからないけど、『先輩』という声が聞こえた。

 

「この世界は俺の物語だ。

 ここを見捨てることはできないよ。

 けど、ここに居るから、辛くなったらいつでも俺に愚痴を言いにくるといい」

 

 真っ直ぐな目でジュラルミンケースを藤丸立香は受け取る。

 少しだけ顔をこわばらせて俺は笑った。

 

「何しろ俺は、君の旅路の完走者だからな」

 

「……はい」

 

 藤丸立香。

 君の旅路の幸運をこの世界から祈らせてもらうよ。




リヨライダーとリヨアサシン
 この世界だと格段に重要度が上がる、社会的スキル持ちの二騎。
 星1という所もポイント。

 なお、彼らのレンタル料もリヨぐだ子のガチャに消える予定。

金丹
 『ソウルサマナー』での蘇生アイテム。
 後に返魂香になるが、もちろんそっちもある。


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第四次聖杯戦争あとしまつ その3

私の作る設定は『ほのぼのダークネス』と読者に言われたことがあったり

証拠写真
https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1090915242421317632


 間桐雁夜との約束から預かった間桐桜だが、重大な問題が発覚した。

 彼女にとって、育児環境がとてつもなく悪いという事だ。

 

 

「わたし、初めて無くなっちゃった……」

「え?

 そんなのすぐ再生できますよ。

 処女膜ぐらい」

 

 

 誰だこの対魔忍を桜ちゃんの看護につけた馬鹿は?

 すっ飛んで行った先では、朧主演対魔忍AV上映会が盛り上がっていたので慌ててTVを切る。

 こっちの怒りが分からない朧はいけしゃーしゃーと言い切る。

 

「ですから、対魔忍になると気持ちよくなってお金も稼げて、若さも維持できるといい事ずくめ!

 桜ちゃんも対魔忍に……あ、ちょっと引っ張らないで……」

 

 なお、朧主演AVタイトルは既に951本ほどあり、対魔忍の主要収入源として大活躍しているとか。 

 そこまでされると俺も桜ちゃんも唖然とするしかない。

 で、素敵な対魔忍設定が遠慮なく炸裂する。

 

「魔界だと既にクローン技術が完成していますし、私、肉体間の魂の移動可能なので、クローン作ってAV出てアヘって、クローン作って対魔忍やって任務失敗してアヘってを繰り返してそこそこ強くなりまして」

 

「ちなみに、残った肉体に魂はあるのか?」

 

「あるみたいですね。

 自立した行動を取る体もあって、そういう肉体を処分した事もありましたし。

 けど、概ねその肉体の情報は私の魂に全部記憶されていますのでご安心を」

 

 あー。

 これ、『NARUTO』の多重影分身の術の応用のハーレムの術の究極系だ。

 俺の所に遠慮なく色仕掛けしてくる理由がはっきりと分かった。

 多分バックアップ体もあるな。これは。

 

「だから、桜ちゃんも対魔忍になれば、処女膜の一枚や二枚なんでどうって事ありませんし、世の男のロマンである『処女で床上手』という体でどんな男も……きゃんっ!」

 

 それ以上の朧の戯言はげんこつで封じざるを得なかった。

 

 

 

「わたし、よくわからないものに体を触られ続けて……」

「いいんじゃない?

 自分の産んだ子供相手に殺し合いをするよりは」

 

 

 誰だあの艦娘を桜ちゃんの看護につけた馬鹿は。

 すっ飛んで行った先では、叢雲がずんと落ち込んでいて、桜ちゃんが気を使うという本末転倒の光景が。

 

「そうよ。

 深海棲艦の数を考えると、明らかに数が合わないのよ。

 その数をどうやって満たしたの?

 やっぱり私達しか居ないわよね……ぁぁ……」

 

 見事にトラウマ入っている。

 艦これウス異本設定の王道だが、艦娘と毎日倒される深海棲艦の数が合わないという問題がある。

 魂の細分化というごまかしも無いわけではないが、薄い本界隈では捕まったり沈められたらそのまま悪落ち調教のついでに孕まされて産まされてというのは王道パターンである。

 なまじ艦娘と深海棲艦が対になる設定が公開されたから、かえってこの数の問題がクローズアップされて妙な説得力を持ってしまい、この闇鍋世界にスパイスよろしく入ってしまったという訳だ。

 

「安心しろ。叢雲。

 俺はここに居る。

 最後に俺のそばに居るなら、何も問題はない」

 

「やる夫。

 離さないでね。

 何でもするから。いつまでも一緒にいるから、絶対に離さないでね……!」

 

 泣き顔の叢雲をあやしながら、なんかかっこいいと思っている桜ちゃんにネタバラシをする。

 

「実は、これは元ネタが合ってね……」

 

 しばらくして、一心不乱に『北斗の拳』を読む桜ちゃんの姿があった。

 桜ちゃんがユリアになれるかどうかは神のみぞ知る。

 

 

 

「わたしはお姉ちゃんが羨ましかった……」

「妹のものは姉のもの、姉のものは姉のものだと何度言えば分かるのでしょう?」

 

 誰だあの女神様を桜ちゃんの看護につけた馬鹿は。

 すっ飛んでいくと、女神さまは優雅にジャイアニズムを語る。

 

「だって当然でしょう?

 愛しているのだもの。

 愛しているからこそ、かまってあげたいし、甘えたいのよ♪」

 

 何故か具合の悪そうな顔でこくこく頷く桜ちゃん。

 あー。

 後に彼女につくメデューサは、ステンノの妹だったか。

 ある意味桜ちゃんにとっての天敵である。

 

「貴方は幸せよ。

 だって選択肢があるもの」

 

「幸せですか?

 こんな目にあったのに?」

 

 少し恨みがこもった目で桜ちゃんはステンノを睨むけど、この女神様にそんな視線が効くわけもなく。

 

「だって、何も知らずに選べるじゃない。

 パンドラも良いことをしたわね。

 神様だと分かって選ばないといけないのだから」

 

「……?」

 

 その意味が分からない桜ちゃんに俺が補足する。

 その意味を知らないという事の幸せを。

 

「パンドラの箱は知っているかい?

 開けちゃいけない箱をパンドラが開けてしまって、閉めたときには『希望』しか残っていなかった。

 だから人は、希望を信じて未来へ進んでいけるという話だ」

 

 なお、最悪の箱なのに何で希望が入っているのやら。

 これ、『希望』じゃなくて『先がわかる呪い』じゃね?なんてのは昔から言われていた話。

 今の桜ちゃんに言うつもりはないが。

 

「桜ちゃん。

 この女神様は末妹に自分が食べられるのを分かって、それでも彼女と一緒にいる事を望んだのだよ。

 桜ちゃんは、未来を知っていてその選択ができるかい?」

 

「……」

 

 黙る桜ちゃんにステンノは微笑む。

 後に妹がつくかもしれない桜ちゃんは、既に彼女的には妹みたいなものである。

 最初から桜ちゃんを励まそうと、助けようとしていた事は間違いがない。

 その手段については色々と言いたいことがあるが。

 

「女神ステンノが断言してあげるわ。

 たとえ、処女を失っても、虫に体を嬲られても、貴方にはきっと素敵な人が隣につくわ♪

 こう見えても私、姉ですから、貴方の痛みや苦しみぐらい、昔々に済ませてきて、なおこんなに素敵な人に巡り合ったのよ♪」

 

 そう言って俺に抱きついて甘える。

 これ、桜ちゃんを出しに甘えているだけ……そんな言葉はステンノの笑顔の前に言わずに終る。

 キジも鳴かねば撃たれまい。

 

「本当なんですか?」

 

 半信半疑の桜ちゃんが俺に確認を取るが、困った事に嘘はいっていないのだ。

 このステンノ様は。

 

「彼女は地母神の系譜の古い女神様でね。

 聖娼と呼ばれる神と交わる巫女の古い祖先でもあるんだよ。

 この手の巫女はセックスからのトランスを予言などに使うから、処女である筈が無い。

 むしろ処女であると使えないと言われた時代の女神様なんだよ」

 

 その女神様が良い男に出会えると予言した。

 いや呪いをかけたというべきか。

 

「桜ちゃん。

 君はきっと運命の人に出会う。

 その時、その人を捕まえて、幸せになるかどうかは君次第だ」

 

「……はい」

 

 桜ちゃんの声は、少なくとも落ち込んでは居なかった。

 

 

 

「痛い!痛い!!いたいって!!!

 ちゃんと気をきかせたつもりだったんだよぉぉぉ!!!」

 

 元凶であるロリンチちゃんをげんこつグリグリ攻撃で説教。

 涙目のロリンチちゃんだが、ヘリポートに置いてあったシャドウボーダーが邪魔になるからとこそっと艦尾を伸ばして据え付けるという無許可改造の罰も兼ねている。

 水陸両用だから、再装着は難しいけど上陸などはずいぶん楽になるだろう。

 

「というか、モニターさせてもらったけど、みんな基本重たくないかい?設定?」

 

「TSFロリ化している超天才様に言われたくはないですな。

 今日はもう桜ちゃんへは看護婦しか通さないように通達したから、こんな愉快なことはもうおしまいだ」

 

「へ?

 じゃあアレは何なのさ?」

 

 

 

「任せてください!

 道に迷った子孫を慰めることも神様の務め……」

 

 大慌ててすっ飛んでいって、鬼咒嵐と共にアマテラス様を伊勢神宮に強制送還したのは言うまでもない。

 その後、タカミチ・T・高畑に相談して桜ちゃんは麻帆良学園に預けることにした。




2012年のAVタイトル数のデータなるものがネットの海に落ちていた。

114 : 風吹けば名無し : 2012/02/20(月) 19:41:04.73
DMMにあるのはオムニバス込みで

つぼみ 892タイトル
大沢佑香 731タイトル
ゆまちん(24) 582タイトル
及川奈央 456タイトル

らしい


ある意味対魔忍らしくて納得したのは内緒。



北斗の拳ネタ
 正しくは、

『誰を愛そうがどんなに汚れようがかまわぬ。
 最後にこのラオウの横におればよい!!』

 うちのビッチの根底はこれがあるから最後はハッヒーエンドとほざく私。


聖娼
 バビロニア時代にあった巫女達で、英雄王とその友人の話に絡んでいたり。
 型月wikiの『男に奪われ、犯されることを運命付けられていた女神』から、あ、この地母神聖娼の系譜だと捏造。


麻帆良学園の間桐桜
 ちゃんとした時間軸確認はしていないけど、高音・D・グッドマンと同年代になるのかな?


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第四次聖杯戦争あとしまつ その4

忘れていたワカメの将来

 

1 冬木残留

2 同上

3 同上

4 海外留学

5 海外留学

6 桜と共に麻帆良学園へ

 

結果 4

 

 魔術師としての間桐家は終わっていたが残っていた人も居るわけで。

 そんな中、間桐雁夜がテロの容疑者として逮捕されたと発表された後、名家としての間桐家も完全に終わりを告げた。

 とはいえ地主として資産家であった間桐家だから食うには困らず、アフターフォローとして別戸籍の用意などで、彼らは沈んだ船から逃げるネズミよろしく冬木市を次々と後にした。

 そんな中に、間桐慎二の名前を見つける。

 魔術師の家に生まれながら魔術の才能を持たなかったが故に不幸になった彼は、冬木の地を離れた方が幸せになれるだろう。

 間桐家の魔術資料については国が押収した後に売却という形を取るが、その間にヤタガラスや関東魔法協会などが徹底的に調べるという。

 後は時間が、次の世代がここでの物語を進めてゆくだろう。

 

 

 

「こっちです」

 

 大聖杯が置かれている鍾乳洞周辺は噴火口として国の管理下に置かれ、冬木市を騒がせたテロ組織が溶岩を冬木市に流そうとしたというカバーストーリーを作ることで周辺を自衛隊と魔法組織が警戒する中、それは俺の目の前にあった。

 国の嘱託として雇われた明石夕子がこれの説明をする。

 

「発見されたのが今日の早朝。

 警戒及び観測していますが、今の所動きはありません。

 こちらの持つマジックアイテムや魔法で調査した結果、ゲートの可能性があるみたいです」

 

 色々な裏技で高位分霊のアマテラス様を召喚したので、その歪みが出たのだろう。

 何処かに繋がるゲートができたとしても分からないではない。

 ただでさえ冬木市はパラレル世界設定があまりにも多すぎるから、世界線の絡みが解けていないのだろう。

 

「データで見ると、安定はしているみたいだけどね。

 多分私のシャドウ・ボーダーなら、行けると思うけど……」

 

 ついてきてもらったロリンチちゃんは興味深そうに眺める。

 あれの性能も知っているから俺は突っ込まざるを得ない。

 

「成功確率は?」

「三割ちょっと」

 

 首を振ってチャレンジ断念を体でアピールする。

 ここでギャンブルをするほど戦力が足りていない訳ではない。

 

「封印でいいさ。

 大聖杯ともども異界化させて、神様を祀って封じてもらおう」

 

 いずれ解ける結界だが、東京でのハルマゲドンまで持ってくれるなら問題は無い。

 

「はい!はい!!はい!!!

 おねーちゃんに任せてください!!!!」

 

 フリーダムアマテラス様は今日も元気である。

 日本の信仰と地脈の全てをほぼ全行使できるので、魔力切れを心配しなくていいというのが厄介……げふんげふん。素敵な所である。

 このフリーダムぶりに叢雲は呆れて、同じ姉であるステンノはああいう姉もありなのかという顔をしているが見ないでおこう。

 

「しめ縄で結界作って、入り口に地蔵様を置いて、祝詞をあげるだけの簡単な作業にアマテラス様のお手を借りることなんて恐れ多く」

 

「この異界に置く神様はおねーちゃんが用意してあげようと言っているのです!

 そして、その功を讃えておねーちゃんをディナーに招待する事を要求します!!」

 

 さり気なく一人称が『おねーちゃん』になっているあたり、フリーダムぶりに磨きがかかって……待てよ。

 この神様、俺をスサノオ扱いしているんじゃないだろうな?

 ありえる。

 俺で扱いきれないバグ込みの高位分霊でサマナー契約ができなかったアマテラス様は、『子孫守護』と『サマナー』の扱いに論理矛盾を起こさないように俺を疑似スサノオとして定義した。

 情報生命体であるから、俺の魂のデータをスサノオにあげちまえで俺がスサノオ化という事ができるのがタチが悪い。

 ついでにいうと、スサノオとアマテラスの近親相姦物という異伝もあったりするから困る。

 イザナミとイザナギがあれだからなぁ……

 

 

「……畏み畏み白す」

 

 

 こっちが考えている間にアマテラス様はさっさと祝詞をあげて召喚を始めていた。

 明石夕子やついてきていた天ヶ崎千草に目で文句を言うが、『止められると思っているんですか?』と目で文句を言い返された。

 何も言い返せない。

 

 光が満ちたと思ったら、見慣れたストリッパーが……あれ?

 

 俺の知っているアメノウズメより明らかに霊格が違う。

 ついでにエロい。

 

「八衢比売神。

 呼ばれて参りました。

 天照大御神様におかれましては、ご機嫌麗しく」

 

 そのエロ格好で真顔で挨拶されると色々と困るのですが。

 明石夕子や天ヶ崎千草も視線そらしているし。

 けど納得した。

 道祖神の一柱である八衢比売神と八衢比古神は、そのまま天宇受売命と猿田彦と同一視さたという。

 天宇受売命の体を借りて、道祖神としての八衢比売神を呼び出したのだろう。

 

 

天津神 八衢比売神 レベル97 高位分霊

 

 

「この地の封印をお願いします。

 決して、中のものを外に出してはいけませんよ」

 

「かしこまりました」

 

 今は『外からの悪いものを防ぐ』面ばかりクローズアップされる道祖神だが、もう一つの側面として『中に封じた悪いものを出さない』という面がある。

 今回はそっちの仕事がメインとなるだろう。

 異界の核である神様も用意したので、あとは入り口にでも小さな社を置いて奥に入らせないようにすれば完成である。

 

「じゃあ、異界維持の為に俺と契約……」

 

 俺の口が止まったのは、恨めしそうに俺を見るアマテラス様のせいである。

 その口からこんな言葉が出てきた。

 

「天宇受売命だけ弟くんと契約するのずるくない?」

 

 

 

アマテラス様のおねーちゃん度

 100ほどエロゲ系おねーちゃん

 

 結果 97

 

 

その日の夜の俺の寝室でのピロートーク。

 

「あれ、私達のベッドに潜り込んでくるのは近いわね」

「同感」

「え?そうなんですか?」

「そうなんですよ」

 

「「「「っ!?」」」」

 

 

 後日、平成日本のHENTAI文化を某天津神様に丁寧に教えた罪で、皇北都が鬼咒嵐と明石夕子や天ヶ崎千草に正座させられるという事件が発生したが、記録に残さないことにした。




アマテラス様。エロゲ系おねーちゃんに進化。
神話的には問題ない(遠い目)

証拠写真
https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1092980797911359489


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CPOでの雑談

 『亡国のイージス』を入手して艦内の生活が書かれていたので、それをベースにそのあたりを足してみる。
 DAIS?
 出るかもしれないなぁ……


 叢雲のCPO(先任海曹室)。

 別名『兵隊元帥』のたまり場で、生粋の海の男達が雑談を交わす。

 

「あれよあれよという間に、艦長様から司令官様にご出世なさったのだからこの国はもう駄目かもしれんな」

「今更だろうよ」

 

 乾いた笑いが続くが、話はそれで終わらない。

 彼らはこの船の持ち主が不適格であるならば、その持ち主から船を奪うことを内々に申し付けられていた連中でもあったのだ。

 計画を立てたのは市ヶ谷の防衛庁だし、指揮は副長補佐以下の士官だろうが、実際に兵を動かすのは彼らである。

 

「正直、色々な船に乗ったがこの船ほど規律が緩んでいるのは見たことが無い。

 司令のイロ達が乗る時点で大概だが、ガキまで乗り込んでくるなんてな」

 

 チルノと大妖精化したハイピクシーとロリンチちゃんの事らしい。

 妖精二人はその悪戯心で隊員にいたずらをしかけては彼らの説教対象となるが、兵士を叱るのと違って見た目がお子様だからタチが悪い。

 なお、叱られると泣く。これが心に来る。

 彼らとて陸に上がれば家族がいるし、子供も居るのだ。

 かくして、叱るから手懐ける方向に必然的に話が進み、子供の躾なんて妻に任せていた事がいかに大変であるかを今更ながら知ることに。

 横須賀に帰ったら妻と子供に何かサービスをしようと決意した者も何人か居る。

 一方で、掛け値なしの天才であるロリンチちゃんは当たり前のように軍事機密に触り、そして理解してしまうあたりたちが悪かった。

 叢雲に備え付けられたレーダーから舞鶴基地の隊舎で壊れたエアコンまでロリンチちゃんは触り、理解してしまい、分解修理改修してしまう。

 『万能の人』の面目躍如だったが、だからといって喜んで良いモノではない。

 部署が違う陸自のタクティカルアーマーについてはついに触ることができずに泣きべそをかいていたし、学園都市から供与されたリニアレールガンを改造してこの叢雲に載せようと企んでいたのが発覚したのはついさっきのことである。

 『マスターくん』とロリンチちゃんが呼ぶ入即出やる夫海将補相当官のげんこつぐりぐり攻撃でその企みは潰えたが、そういう事を含めても、この船は他の護衛艦と比べて格段に風紀が乱れている。

 何しろトップが女連れて毎日毎夜盛っているのだから、ある意味当然とも言えるだろう。

 

「知っているか?

 そもそも、この船あの司令官の私物らしい」

「最初聞いて何を馬鹿なと思ったが、こういう事がまかり通るという事は本当なのかもしれんな」

「知り合いの情報だと、これは学園都市で無人艦として作られたらしい」

「米海軍が考えているアーセナルシップ構想か。

 さすが学園都市」

 

 事実、艦の運営は基本叢雲一人で何でもできるようになっており、それを人で代行した結果かえって効率が落ちるという所もあったのだ。

 もっとも、ダメージ・コントロール要員も居ないので、損害を受けた後の継戦能力に不安がある事も分かってきている。

 この叢雲のデータを入即出海将補相当官は市ヶ谷に出し惜しみを全くしなかった。

 この当たりも、彼からこの船を取り上げられない理由の一つになっていた。

 

「とりあえず、横須賀に戻ったら皆入れ替えだろう?」

「だろうな。

 俺たちも含めて、この船に長く乗り続けたら腑抜けてしまう。

 ただでさえ人不足なんだから、市ヶ谷の命令を聞く限りは放置されるだろうよ」

 

 元々この船に乗り込んだ自衛隊員達は、乗艦が衝突事故でドック入りしている連中である。

 元々の船があるし、ここでの緩さを元の船で締め付けないといざという時に使い物にならない。

 今や株価は40000円を超えて、平成元禄の真っ只中。

 海上自衛隊は装備面では急拡大していたが、人員は定数割れを続けており、とにかく人が居なかった。

 

「そういえば、この船を狙ったミサイル。

 あれどうなった?」

「どうやら米軍横須賀基地から流れたものだと断定されて、在日米軍は今大混乱中だ。

 第7艦隊全部署に装備確認命令が出て、使い物にならん」

 

 聖杯戦争の事が話せない以上、冬木市とその周辺で起こった一連の出来事は、テロとして処理せざるを得なかった。

 そのため、この叢雲を狙ったミサイルはテロ組織が米軍基地から流したものという事が嫌でもクローズアップされて、外交問題に発展したのである。

 在日米国大使が首相官邸に来て陳謝し再発防止に務めると約束させられたが、米軍も聖杯戦争の事を掴んでいたので介入しそこなって歯ぎしりを隠そうとしない。

 日米同盟に波風が立っていても、ソ連は崩壊し今の日本に注視する敵もない。

 

「そういえば、一部の連中が不穏な動きをしているって話、あれ本当か?」

「冗談だろうよ。

 まぁ、あれだけ現場に泥ぶっかけてくれる政府に、バカヤローと罵声を浴びせられるのは自由主義国家である我が国の良い所だな」

「そんな不穏な連中だが、我らが司令官に粉かけているとか」

「ああ。

 あの連中、明らかにそれ要員だもんな」

「けどまだ司令官は手を出してないらしいぞ。

 当人から聞いたから間違いない」

「てめぇ、アレだけ色仕掛けに騙されるなって言っただろうか!」

「そう言うなよ。兄弟」

 

 最後は馬鹿話で夜が更けてゆく。

 彼らもしっかりと叢雲の風紀の緩みの毒に染まっていた。




アーセナル・シップ
 訳すなら『武器庫艦』。
 イージス艦の周囲を囲んで、そこの指揮を元に武器をぶっ放す。
 単身で船をコントロールできる艦娘はアーセナル・シップの究極系と言えなくもない。


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冬木市災害対策訓練

 第四次聖杯戦争から一週間後。

 冬木市にて、警察・消防・自衛隊等が関わる災害対策訓練が行われた。

 実際には、その名目で集まったこれらの組織へのアマテラス様の閲兵式であり、一日司令官となったアマテラス様の前で、それぞれの組織の士気高揚は凄いものになった。

 

 士気高揚効果 100ほどノリノリ

 結果 91

 

 さすがアマテラス様であり、その神々しさに各組織・マスコミ・市民を魅了しての大盛況。

 不満も費用もこの天津神様の笑顔が見れるならばとみなが言うぐらい。

 だよなぁ。

 高位分霊だし。

 そんな俺は貴賓席にて、海将補の制服を貴賓席にてその光景を眺めているぐらいしか仕事がない。

 少なくともこのあたりの現場レベルで自衛隊が反乱を起こすことは多分無くなっただろう。

 

「しかしまぁ、とんでもないものを呼び出してくれましたな」

 

 貴賓席近くの喫煙場にて神官服姿の忍野メメがタバコを咥えて俺にぼやく。

 そのタバコには火がついていない。

 彼がここに引っ張り出されたのもアマテラス様召喚に一役買ったからで、実に似合わない神官服を着ているのも鬼咒嵐の手から逃れられなかったからだとか。

 

「上手く行けばいいと思っていたが、上手く行き過ぎる事は考えていなかった」

「次からは考えることをおすすめしますよ。

 本命は東京だ。

 あのお方以上のものが出ても俺は驚きませんよ」

「違いない。

 悪魔だけでも頭がいたいのに、人同士でいざこざまであるのだから救いがない」

「それでも、救われるんですよ。

 救われるやつは一人で。勝手に」

 

 彼がこんな格好をしてここに居るのも、俺と最後に話をしたかったからだろう。

 世は怪異で満ちており、またいずれ道が交わることはあるだろうが、この冬木での出会いはこれにて終わりという事になるだろう。

 

「貴方は貴方だ。

 それさえ忘れなければ、最後は落ち着く所に落ち着くでしょうな。

 うちの先輩からの伝言です」

「貴重なアドバイス感謝するよ。

 臥煙さんによろしく言っておいてくれ」

 

 俺の声に忍野メメは返事をせずに後ろを向いて歩きだす。

 片手を上げて消えた彼を見て、彼らしいなと苦笑していたら別の来客が来る。

 

「よろしいかな?」

「どうぞ」

 

 同じく貴賓席に座っていたクルト・ゲーデルがタカミチ・T・高畑を連れてテントに入る。

 タバコに火をつけながら彼は本題を切り出した。

 

「君を正式にスカウトしたい。

 待遇は今の地位以上のものを約束しよう。

 望むならば、メガロメセンブリア元老院に席を持つことも可能だろう」

 

「お断りします。

 この国はそれ相応の待遇を一応くれましたからね。

 それなりの恩返しはするつもりですよ」

 

「それ相応の待遇ねぇ。

 鎖の間違いじゃないかな?」

 

「それを言ったら、そちらの提案も同じでしょう?」

 

「違いない」

 

 聞いていたタカミチが吹き出し、三人して笑う。

 天海市の件があるので、関東魔法協会とかこれからも友好的な関係を維持しなければいけないのだ。

 あくまで最初の勧誘は冗談という事にして、クルト・ゲーテルは次の話に移る。

 

「冬木市には明石君とそのチームを残す事にする。

 関西呪術協会も人を派遣するが、時計塔および聖堂協会は完全に遮断する。

 少なくとも敗者である彼らに流す情報は無しだ」

 

「それでもやつらの財力と政治力にはご注意を。

 俺が日の丸の旗に留まっている理由でもありますから」

 

「……肝に銘じておこう」

 

 大聖杯絡みの巻き返しは必ず発生するだろう。

 これだけの大奇跡を顕現させたのだ。

 時計塔も聖堂教会もついでに十字教もそれを座視なんてしないだろう。

 メガロメセンブリアを以て、時計塔や聖堂教会や十字教を制す。

 彼らがここでごちゃごちゃしてくれれば、東京でのメシア教とガイア教の争いに関与できないだろう。

 東京という舞台からどんどん役者を降ろしていかないと、こちらが制御できない。

 

 

 

「そんなところに隠れていないで、よければおごりますよ。

 言峰神父」 

 

 自販機でコーヒーを買って物陰に隠れている言峰神父に声をかける。

 何で分かったかと言うと、霊体化してステンノがついているからである。

 言峰綺礼神父は俺の声にあっさりと出てきたので、缶コーヒーを投げたらそれを片手で受け取った。

 

「感謝を」

「どういたしまして。

 お父上の不幸にお悔やみ申し上げます」

 

 色々あったとはいえ、死ねば水に流してお悔やみの言葉の一つぐらい口にだすのが日本人である。

 俺も言峰綺礼も言葉の穏やかさと裏腹に目がまったく笑っていない。

 

「先程のクルト氏との話ですが、色々とこちらにも交渉の機会をと思いまして」

 

 ちゃっかりと聞いていたらしい。

 おそらくクルト氏やタカミチもそれに気づいて流したのだろう。

 

「こちらは去る身です。

 私に言うよりも向こうに言ってくださいよ」

 

「そうでしたな。

 明日、出港でしたか。

 今でもあの日々が本当にあったのか疑ってしまうのです」

 

 

言峰綺礼チェック

 1で愉悦部員10で綺麗な綺礼

 結果 4

 

 

「あの勝者は今頃英国行きの飛行機の中でしょうな」

 

 聖杯戦争の生存者として時計塔へ報告をする役目を自ら申し出たウェイバー・ベルベットの事だ。

 俺が聖杯戦争全体の隠蔽などで動けなかった代わりに、色々あった彼の後始末をしたのがこの言峰綺礼である。

 愉悦部として目覚めているような目覚めていないような、そのあたり彼の顔からは読み取れなかった。

 

「こちらに残った被害者のケアなどをお願いします」

「わかりました」

 

 とりあえずがんばれ。遠坂凛。

 

 

 

「さあ!

 出航するよ!!」

 

 こうして、俺たちは舞鶴基地を後にする。

 海自服のドレイク船長というのも似合うもので、航海中にあっさりと士官を含めた海自乗員を掌握したのはさすがというかなんというか。

 

「悔しいけど、自分で動かすのより上手いのよ。

 いやになっちゃう!」

 

とは叢雲の言葉。

 いつの間にか覚えたらしい航海中の叢雲の訓練とかも、だらけ気味の乗員が見違えるようにきびきびと動いている。

 

「司令官。

 ちょっといい?

 妙な声がするのよ」

 

 航海中に叢雲が俺に声をかける。

 俺は、新島副長補佐の方を向くと彼にも話をしたらしく即座に返事が返る。

 

「通信室からはそんなものは聞こえないと報告が来ております」

 

「けど、たしかに呼んでいるのよ。

 『助けてくれ』って」

 

 叢雲の言葉に俺は地図を持ってこさせる。

 とにかく場所がわからないと話にならない。

 

「何処からだ?」

「多分、富山県と新潟県の県境あたり」

「今、あのあたり霧が濃くなっていますから、あまり近寄りたくは無いですな」

 

 状況が動いたのはその後だった。

 

「こちら無線室。

 この船に積んでいた古い無線機から助けを求める無線が!

 相手は伊庭義明三等陸尉と名乗っており、『演習に参加する予定の小隊が移動中に騎馬武者に襲われたから助けてくれ』と」

 

「騎馬武者ぁ!?」

 

「マスターくん。

 ちょっといいかな?

 あの霧の中、時空が狂っている可能性がある。

 近寄らない事をオススメするよ」

 

 ひょっこりと現れたロリンチちゃん説明ありがとう。

 俺たちの存在が特異な物だから、この手の特異も起こるものだと覚悟を決める。

 

「こちら海上自衛隊護衛艦『叢雲』。

 こちらに来ることは可能か?」

 

「ヘリがあるから誘導してくれるならば可能だ。

 装備はほとんど置いてゆくことになるか……」

 

「構わない。

 責任はこちらで取るから、ヘリにて離脱を。

 誘導する」

 

 またわからん事態にと頭を抱えそうになった時に正解を出してくれたのは、新島副長補佐だった。

 

「侍に自衛官が襲われるって『戦国自衛隊』じゃないですし」

 

 ……それかよ。

 霧の中から唐突に出たV-107に小松基地が大騒ぎをする事になる数分前の出来事である。




証拠写真
 https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1096144498176839680

『戦国自衛隊』
 半村良のSF小説およびそれを原作とした映画など。
 場所が新潟県と富山県の県境だから出してみることに。
 彼らが遭難者全員が乗れるヘリを持っていたのでタイムスリップはなしとなった。
 なお原作が75年だから、およそ20年ほど未来にタイムスリップしたことになる。


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みらいからの使者 その1

 霧が晴れて何処からともなくやってきたV-107が小松基地に着陸した頃、俺たちは富山県と新潟県の県境、具体的に言うと親不知・子不知の沖合に停泊していた。

 空を飛べる悪魔、大天使イスラフィールと妖精ハイピクシーの二体で、小松基地からの連絡を受けて彼らが居た場所の偵察に出したのだ。

 

残り物チェック

1 何もなかった

2 何もなかった

3 2トン半トラック一台に物資沢山

4 2トン半トラック一台に物資沢山

5 上の他に60式装甲車一両

6 上の他に60式装甲車一両

7 上の他に19号型哨戒艇一隻

8 上の他に19号型哨戒艇一隻

9 上の他に61式戦車一両

10 熱烈歓迎

 

結果 4

 

「サマナー。

 それらしいトラックを発見した。

 中に彼らの物資らしい物が手付かずに残っている」

 

「よし。

 戻ってこい。

 あとは現地の警察と近くの自衛隊に任せよう」

 

 トラックが発見された事を報告したが、小松基地と市ヶ谷の防衛庁はそれどころではないだろう。

 まさかのタイムトラベラーである。

 悪魔とか魔法とか超能力とか科学もごちゃまぜになったこの世界において、時間旅行者として自衛隊員がやってきてしまった。

 立派なヤタガラス案件だが、これに俺が絡むのは難しい。

 元々舞鶴に行ったのは訓練航海という建前なので、横須賀に帰らねばならないのだ。

 そして、天海市で進められているファントムソサエティーの陰謀を阻止しなくてはならない。

 

「ロリンチちゃん。

 やっぱりあれは聖杯戦争の副作用で片付けた方が楽だろうなぁ」

 

「だと思うね。

 原因不明だけど、近くで原因不明なわからないことが発生していたのだから、これが理由だと皆が最低限の納得する。

 何より舞鶴にもとんぼ返りをしなくていい」

 

 その方向で報告書の作成をロリンチちゃんにお願いする。

 まさかその後でああなるとは思っていなかったのだ……

 

 

 

 帰りの航海も基本同じで、大湊基地に翌日入港。

 一日停泊してさあ出港という時に、その報告が飛び込んできた。

 

「正体不明の護衛艦が助けを求めているって!?」

 

 大湊基地の司令部からの報告に、俺は新島副長補佐に確認を取ると彼は頷いて地図で場所を示した。

 

「太平洋上、南鳥島の近くか。

 それで、その護衛艦は何を言ってきているんだ?」

 

「はい。

 彼らはゆきなみ型護衛艦『みらい』と名乗っており、エクアドルの海外派遣に向かう途中に嵐に合い僚艦とはぐれ、帰国する途中まで衛星通信が使えなくなっていたとか。

 現在の海上自衛隊にゆきなみ型護衛艦も『みらい』という艦も存在していません。

 一応第43護衛隊の『いそゆき』と『はるゆき』が南鳥島に出動するみたいですが、先日のタイムトラベル騒動があったばかりで市ヶ谷も横須賀も浮き足立っているんですわ」

 

 俺は頭を抱える。

 『みらい』が何処からやってきたかなんとなく分かったからだ。

 大きさなり時間なりの差異はあるが、過去からやってきたもののカウンターとして未来から何かを引っ張ってきたと。

 両方共自衛隊というのがポイントだろう。

 いずれ起こる自衛隊のクーデター。

 それの海自側の混乱要因がおそらくこの『みらい』なのだと。

 

「それで、司令部はなんて言ってきているんだ?」

「はい。

 これは要請だそうですが、横須賀帰港時に第43護衛隊と合流して欲しいそうです」

 

 『みらい』が東京湾に近づいた時、ちょうど俺たちも帰り着く計算である。

 その時に何かあったならば、その阻止戦力にという事なのだろう。

 とはいえ、命令でなく要請という所に防衛庁の葛藤が見える。

 

「合流そのものは異存はないと伝えてくれ。

 ついでに副長補佐に言っておく。

 諸君らがここで降りてくれると、数時間後には俺たちは横須賀から出港できるぞ」

 

「どんな魔法を使うんですか?」

 

 さすがに冬木での奇妙奇天烈な出来事に慣れてきたのか新島副長補佐も動じない。

 それを確認してから、俺は手品の種を明かす。

 

「この船は叢雲だけならば消せるんだよ」

「消せる?」

「まぁ、あのアマテラス様と同じと思ってほしい」

 

 そして一斉に視線を逸らす自衛隊の士官たち。

 何処からともなく現れては、連れて帰られるアマテラス様はもはや様式美となっていた。

 この航海でアマテラス様が現れないのは、訓練もするという事でアマテラス様に自重を願ったからである。

 

「神棚がおそらく、あの御方の目印になっとるんでしょうなぁ。

 この間、何や勾玉みたいなん入れてはるの見てましたし」

 

 天ヶ崎千草の一言にそれ八尺瓊勾玉じゃねと思ったが、それを確認する勇気は俺も天ヶ崎千草にも無かった。

 閑話休題。

 

「人間降ろして俺と叢雲だけ飛行機で横須賀に戻れば、その日のうちに出港できるぞ」

 

 俺と叢雲とマシュとロリンチちゃんとジャンヌ・ダルクと大淫婦バビロンの六人が飛行機メンバーとなる。

 ステンノとドレイク船長は霊体化できるし、残りの悪魔はCOMPの中だ。

 そして俺たちだけでも叢雲は動ける。

 だが、それは俺たちにフリーハンドを与えることを意味する。

 

「司令官。

 できれば我々もご一緒させていただけると嬉しいのですが」

 

 新島副長補佐は、同じ船に乗る仲間として、俺に対する監視としての半々の声でそれを口にし、それからしばらくして陸奥湾から出た叢雲は太平洋を全速力で南下する事になる。

 




『みらい』
 『ジパング』。
 この物語時間93年なのだが、200x年の護衛艦が現れるのだからそりゃパニックだろうなぁ。
 この船、こんごう型護衛艦ベースに、ラファイエット級フリゲートの内火艇格納庫とむらさめ型護衛艦のヘリ運用施設を継ぎ合わせ、若干のアレンジを加えて作られている。
 なお、こんごう型護衛艦『こんごう』がやっと完成し、現在は慣熟訓練中。

証拠写真 
https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1097588526755938304


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みらいからの使者 その2

『みらい』の警戒ぶり 100でバリバリ警戒

 結果 48

 

自衛隊の警戒ぶり  100でバリバリ警戒

 結果 9

 

 みらいにとっては運が良かったというのだろうか。

 冬木の聖杯戦争後で魔術を始めとしたオカルトを自衛隊及び政府が許容しており、富山と新潟の県境で発生したタイムトラベル事件もあった事で『みらい』の遭難と救援もありえるよなという空気で現場に向かっていたというところだろう。

 一方の『みらい』側だが、遭難して戻ったと思ったら自分たちの違う日本の上に微妙に時間がずれているので、警戒しているのは仕方ないのだろう。

 結果、不信感のある『みらい』に対して、あくまで身内の救援という姿勢を崩さないこちらの海自という形で事態が推移する。

 俺たちが房総半島沖で第43護衛隊の『いそゆき』と『はるゆき』に合流したのはそんな状況だった。

 

「状況は?」

 

 叢雲とステンノとマシュを伴って艦橋にやってきた俺は、新島副長補佐の報告を受ける。

 他の護衛艦との連携なんて俺には無理だから、新島副長補佐に丸投げである。

 なお、ドレイク船長は聖杯知識なのか新島副長補佐の手ほどきを受けたのか適応しているのが凄い。さすが伝説の船乗りである。

 

「現在位置は房総半島の南方200キロ沖を南東方向に単縦陣を組んで進んでいます。

 先頭が『いそゆき』で次が『はるゆき』。この『叢雲』が一番最後ですな。

 『みらい』は南鳥島の北西200キロを北西方向に単艦で進んでいます。

 おそらく明日には会合できると思われます。

 また、『みらい』の上空には硫黄島からP-3Cを飛ばして、上に張り付かせて何かあった時のために備えています」

 

「向こうからは何か言ってきたか?」

 

「状況の説明と、補給を求めています。

 あと、負傷者が居るらしく、帰港後の検査および入院を求めてきました」

 

「?

 あの船、ヘリが降りれる場所はあるのか?

 無くてもヘリのピックアップで南鳥島なり硫黄島に搬送して、飛行機で本土に送れば良いんじゃないか?」

 

「それが、なんだか特殊な患者らしく、大日本帝国海軍の軍人を名乗っているとかで。

 今、政府も自衛隊も摩訶不思議を受け入れざるを得ないという事で、そのあたりを入即出司令より説明していただけると助かるのですが」

 

 あー。

 つまり、1942年のミッドウェーからの帰りという訳だ。

 それだったら元の時代に帰れば良いものを。

 このオカルト絡みの色々を説明できる高官に俺はいつの間にかなってしまったらしい。

 

「それについては了解したが、今の俺の立ち位置はどうなっているんだ?」

「第一護衛隊群の隊司令扱いだと思いますが、市ヶ谷の横槍で内局の参事官になるという話もあるとか」

「つまり、何も決まっていない訳だ」

「そうとも言いますな」

 

 あの聖杯戦争のおかげで、よほど色々と揉めたらしい。

 内局の参事官というのは、防衛庁の自衛官でない高級官僚達の牙城であり、正規自衛官ではない俺からすれば、ある意味一番説得力がある場所ではある。

 これで時計塔の事を隠した英国留学経歴あたりが色々と邪魔になるのだが。

 日本の官僚の学閥の主流は東大だからだ。

 それで参事官というのは強烈に他の官僚を刺激する。

 まぁ、叢雲がいるから現場の方が都合がいいのだが。

 

「立ち位置についても了解した。

 向こうも本土に着いてしまえば、いやでも納得するだろうな」

 

 俺は考えるのをやめることにした。

 組織的ごたごたに絡んで最大の目的である核ミサイル阻止ができないなんて事だけは避けたいのだが。

 

「そういえば、帰り道で見つけた戦国時代からの遭難者。

 あれどうなったの?」

 

 あの連中も帰せる可能性が無いわけではない。

 多分、冬木の大聖杯近くで見つかったゲートが鍵なのだろう。

 カルデアのコフィンで送れるならばそれが一番手っ取り早いのだが、あれは魔術師限定なんだよなぁ。

 俺がそんな事を考えている間、叢雲の疑問にも新島副長補佐はすらすらと応える。

 

「検査と事情聴取中ですね。

 この件もそうですが、色々あり過ぎで政府もてんてこ舞いなのでしょうな。

 米軍は若狭湾のテロ事件のミサイル流出で動けず、向こうの大企業が私兵を日本に送ったとかで、内調が大慌てだとか」

 

「どこだ?

 その私兵を送りつけた連中は?」

 

 メシア教徒の尖兵かと思った俺の思惑は大きくハズレたが、もっとやばい名前が出てきた。

 

「世界的製薬大企業のアンブレラ社ですよ。

 冬木のテロに対して医療支援を行うという名目で、アンブレラ社の日本法人の要請という名目で実際支援物資も送ってきたのですが、その輸送スタッフが明らかにカタギでなかったとか」

 

 バイオハザードも混ぜたのかよ。あの駄女神。

 わからない風を装って全部理解したステンノが微笑む。

 

「がんばれ♥」

 

 これほど嬉しくないがんばれはなかった。

 『みらい』との合流は何事も問題なく進み、『みらい』は叢雲の後ろについて横須賀を目指すことになった。




この世界の世紀末予定
 英国   第二次アシカ作戦
 米国   バイオハザード
 日本   女神転生

 基本逃げ場は無い。


『いそゆき』『はるゆき』
 はつゆき型護衛艦。
 この時期の汎用護衛艦の二隻。
 叢雲より大きいが、『みらい』より小さい。

内局の参事官
 防衛庁長官官房参事官。
 課長級だが、現場から市ヶ谷詰めになる。
 最終的には、自衛隊のオカルト部署の初代局長にというオファー。 


証拠写真
https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1099412183748771840


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みらいからの使者 その3

 何事もなく俺たちは『みらい』を連れて横須賀基地に帰港する。

 それはドレイク船長との別れを意味していた。

 

「楽しかったねー。

 今度はこの船を使って派手な戦をしたいもんさね」

 

「その時は呼ぶよ。

 どうせその時はすぐにやってくるのだから」

 

「楽しみにしているよ。

 マスター。いや、司令官」

 

 そう言って笑ってドレイク船長は座に帰っていった。

 戦闘に出ることは殆ど無かったけど、海自の将兵の心をがっちりと掴んだ稀代の船乗りはその短い時を全力で走ったに違いない。

 その証拠に、叢雲に乗った士官や乗員から、

 

「ドレイク船長が来たら是非自分を呼んでください!」

 

という声を次々と受けたのだから。

 この叢雲の乗員も元々借り物なだけに、彼らの多くは元の船に帰る事になる。

 錨をおろしてもやいを護岸と繋いだら、航海は終わり一応の所属である横須賀地方隊に報告に行く。

 叢雲の隣には、検疫検査も終わった『みらい』から一人患者が運ばれていた。

 草加拓海少佐。

 大日本帝国海軍のエリート様である。

 そんな彼を横目に制服姿の叢雲とステンノとマシュを連れて横須賀地方総監部の建物に入ると、つつつと寄って来る巫女姿のアマテラス様。

 おそらく皇北都のチョイスだろう。

 コスプレ臭が強くエロい。

 

「もぉ、おそいです」

「そう言わないでください。

 色々あったのです」

 

 この傍若無人な天津神様の行方を遮れる自衛隊員は居ない。

 なお、結構待っていたらしく、周囲の草がえらく萌えていたのは見ないことにする。

 

「よく戻ってくれた。

 入即出海将補相当官。

 冬木市での報告は受けている」

 

 警備隊司令の咲川海将補は何かを我慢しているような声でそう告げる。

 幕僚の美野原一佐は明らかに笑いを噛み殺しているが見ないであげよう。

 俺の後ろできょとんとしているアマテラス様は気づいていないし。

 

「今回の災害に対して、政府は参加部隊と隊員に以下の表彰が行われる予定です」

 

 少し長くなるので抜粋する。

 舞鶴地方総監に第1級賞詞。

 各級指揮官に第2級賞詞。

 その他の派遣隊員総員に第3級から第5級までの賞詞。

 派遣部隊隊員総員に大規模災害派遣の防衛記念章授与。

 ……等々。

 政府は腐っているが、腐っているからこそ、この手の実利に繋がらないものは遠慮なくばら撒いていた。

 政府にばら撒かれた数千億円もの金はどこに行くのやら……

 話がそれた。

 

「それで、私は未だこの横須賀地方隊のままなのでしょうか?」

 

「追って市ヶ谷より指示が出ることになっています。

 最初からここに居なかったという事すらありえるから困る所です」

 

 咲川司令は俺から視線を逸らす。

 その上でため息とともにそれを吐き出した。

 

「永田町の方では、冷戦終結に伴う新たな危機に対処するという事で、防衛庁の省昇格の動きがあるそうです。

 君はその流れの大きな駒になっているみたいですね」

 

 湾岸戦争で中東に自衛隊を直接派遣できなかった日本はその後『金だけしか出さなかった』と国際社会からの非難を浴びて、ペルシャ湾への掃海艇派遣に繋がってゆく。

 現在の自衛隊のクーデターの動きはこれとも絡んで、軍隊ではない自衛隊をきちんとした軍にすることで、自主防衛・対米追随外交の脱却を目指すというのが表向きの話。

 実際は、省昇格に伴う大規模人事異動でクーデター派を飛ばす為なのだろう。

 クーデターに参加する連中を減らすために、彼らの大義名分を受け入れた上で、過激派をこれを機会に排除するなんて力業を誰が考えたのやら。

 

「光栄と言うべきなのでしょうな」

 

「そう言ってくれると助かる。

 こちらは、君たちの他にもあの『みらい』の相手をしないといけないのだからね」

 

 俺の叢雲は完全な異物なのでまだ対処ができたのだろうが、叢雲の隣に停泊した『みらい』はなまじ護衛艦であり、自衛官が操作している事もあって俺の時以上に壮絶に揉めていた。

 何しろ10年先の兵器という事もあって、米軍も注目しているに違いない。

 

「『みらい』についてはどうなるのでしょうな?」

 

「過去に戻った事を説明し、その上で帰属してもらわないといけない。

 彼らがここを過去の故郷と認識してくれると良いのだが」

 

 そうならないだろうな。

 大体事情を知っている俺はその言葉を言わずに愛想笑いを浮かべるに留めた。

 なお、この超常現象の説明をするのが俺なのはすでに決まっていた。

 

 

 

「護衛艦『叢雲』艦長兼護国機関ヤタガラスの入即出やる夫海将補相当官と申します」

「『みらい』艦長。

 梅津三郎一佐です。

 色々とお聞きしたい事があるのですが、まずは負傷者の受け入れに感謝を」

 

 叢雲とステンノとマシュを連れての『みらい』訪問。

 この時点で、『こいつら自衛官じゃない』とわかる形での訪問である。

 さっきもらった徽章を皆制服につけての訪問なので、案内する隊員は口には出さなかったが。

 アマテラス様?

 さすがに置いてきた。

 

「まずは貴艦のおかれている状況について説明します」

 

 『みらい』食堂で多くの幹部を前に説明をする。

 さすがに自分たちの知っている日本ではない事に落胆をする顔が多く見られたが、1942年の大日本帝国よりましだという空気は俺にも感じられた。

 

「それで、自分たちは元の時代に帰れるのでしょうか?」

 

 『みらい』副長角松二佐が俺に質問をする。

 それに俺は帰る手段を探す努力をすると続けた後で、その問題点を告げる。

 

「問題は、帰れるとしても帰れるのは人のみで、船を送るというのは不可能に近いという事です。

 もちろん『みらい』がタイムトラベルをしたケースを当てにするというのもありますが、あれだとどの時代に飛ぶか分かりません。

 帰還手段が見つかったとしても、この『みらい』を置いてゆく可能性が高いことを覚悟しておいてください」

 

 黙り込む一同に俺は、メッセンジャーとして最後の言葉を告げる。

 後は彼らの選択に任せる事にしよう。

 

「このまま残る場合、階級及び役職をそのまま追認するという言質を頂いております。

 また、その決断までの補給および休養ですが、できる限りの配慮をするという事です。

 まずはこの地にてゆっくりと休養してください」




永田町
 政界。国会議事堂、首相官邸、衆議院議長・参議院議長公邸などがある。

表彰の参考
 自衛隊ペルシャ湾派遣より。

災害派遣の防衛記念章
 制定されたのは2011年。


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大天使ミカエルの陰謀

リヨアサシン台詞を見る限り男性口調なのだが、しっくりこないので女性口調に改変している。


「ねぇ。旦那。

 いいネタがありますぜ」

 

 ホテル業魔殿に宿泊した俺達の所にやってきたのがメイド姿のリヨぐだ子。

 明らかに口調が歓楽街の客引きなのだが、乗ってやらないと何をされるか分からないので、彼女用に準備していた十枚ほどのマネーカードを手渡してやるとある部屋に通される。

 そこで待っていたのはリヨアサシンだった。

 

「何だ君か。

 代金はマスターに払ったが」

「……ちっ!」

 

 舌打ちした当たり、後で揉めるのだろう。

 それをされても困るので、叢雲を俺たちの部屋に行かせて、札束の入った封筒を手渡してやる。

 

「値切ると思いましたが、金払いは良いのですね」

「この手の取引の基本だろう?

 変にケチるとろくな事がない。

 で、売りつけるつもりの情報とは何だい?」

 

 リヨアサシンはネグリジェだからこのままエロエロという流れもありえなくはないが、諜報員と化している彼女にそれをするのは鴨が葱を背負ってくるのと同義語である。

 そんな訳で、抑えとしてマシュとステンノは外せない。

 

「まずは最初の挨拶代わりに。

 貴方つけられていますよ」

 

 知っていた。

 事、ここまで目立っていると、つけられない方がおかしい。

 問題は、何処がつけているかだ。

 

「で、何処がつけていると?」

 

「防衛庁情報局。

 監視と護衛を兼ねているのでしょうね。

 それとカンパニーの連中」

 

 ミサイル流出事件で在日米軍が大変なことになっているのに、CIAもご苦労さまである。

 ふと疑問に思ったことを俺は口に出す。

 

「内調はつけていないのだな?」

「政府が真っ黒ですからね。

 真っ先に無力化させられましたよ。

 防衛庁情報局が動いているのも、組織防衛という所からでしょうね」

 

 順調にフラグが進む自衛隊のクーデター計画。

 俺はそれに対処する大きな餌なのだろうな。

 実際に対魔忍や甘粕正彦は接触してきたし。

 

「分かった。

 そろそろ本題に入ろう。

 売りたいネタとは何だ?」

 

 リヨアサシンはテーブルの上にレポートを置く。

 ご丁寧に一枚目に『O&C』の文字が記されている。

 

「……うわぁ」

 

 読み進めて出た声がこれである。

 『女神転生』的には正しいのだが、こうやって理路整然と背後関係を見せられるとこの世界は実に終わっている。

 『真・女神転生』は基本何をやっても最後は大洪水が発生し、神の千年王国に行き着く。

 問題はその過程なのだが、当然世界の秩序が崩壊していないとリセットである大洪水は発生しない訳で。

 かくして、メシア教こと大天使ミカエルの暗躍は始まる。

 日本は物語の舞台ではあるが基本的に脇役であり、メインは欧州であり米国である。

 で、都合の良い、本当に都合の良い配役が一人いた。

 

 

 モンティナ・マックス。

 

 

 分かる人には分かる、『少佐』とか『総統代行』とか呼ばれているあの人である。

 

「戦争の歓喜を無限に味わうために。

 次の戦争のために。

 次の次の戦争のために」

 

 なるほどな。

 次の次の戦争とは悪魔相手のハルマゲドンだったという訳だ。

 そして、メシア教こと大天使ミカエルの加護にカトリック欧州総局は喜んで彼に手を貸したと。

 これは言えんよなぁ。

 あの司祭、死ぬ間際でも大天使ミカエルの名前は出さなかったと考えると、なんかただの俗物が狂信的殉教者に見えるから不思議だ。

 更に読み進めてゆくと、こいつがやっていた吸血鬼製造計画を叩き潰した後、それをベースとした製薬会社が欧州に誕生する。

 それがアンブレラ社。

 アンブレラ社は生物兵器製造を目的とした製薬会社で時は冷戦の真っ只中。

 『死なない兵士』はワルシャワ条約機構軍の兵士の津波を押し留めるのに絶大な効果を発揮する事を期待され、世界的ガリバー企業に躍り出る。

 闇鍋世界のくせに微妙に整合性があるのが妙に腹が立つ。

 当然、少佐率いる『ミレニアム』とアンブレラ社が繋がるのは時間の問題だった。

 『ミレミアム』は非人道実験でどんどんデータをアンブレラ社に提供し、アンブレラ社はそのデータを元にした製薬商品でどんどん金を『ミレニアム』に提供すると。

 その背後で、東側の恐怖から西側首脳がこの動きを黙認していた事まで記されていた。

 問題は、ベルリンの壁崩壊でソ連を始めとした東側諸国が崩壊した事だ。

 『狡兎死して走狗烹らる』とはよく言ったもので、非人道実験を今でも続けている『ミレニアム』を西側首脳は邪魔に思い出していたと。

 これでも99年の決起まで尻尾を掴ませなかったのだからすげぇというか、それを背後関係までぶっこ抜いてきたリヨアサシンがすげぇというべきか。

 かくして、東京ではクーデターの後核投下、米国ではバイオハザード、英国では第二次アシカ作戦と世界秩序の崩壊と既存宗教の失墜を起こし、大洪水の果てに神の千年王国へ人々を導くメシア教が一気に世界をという筋書きに見事だと感心するしか無い。

 問題は、対吸血鬼に特化している型月世界の聖堂教会や、魔術と科学で彼の陰謀を叩き潰せる武力を持っている『とある』世界の十字教やイギリス清教、もっと容赦ないちゃぶ台返しが可能なねぎマ!世界と繋がっている事なんだが……

 まあ、あの少佐にとって戦争こそが大事で、プレイヤーの増加は喜ぶことであり悲しむことではないだろうな。

 

「で、そんな素敵な状況に我が国の果たす役割は……うわぁ……」

 

 対魔忍世界と繋がるという事は、オークが出せるという訳で。

 弾除け歩兵としての生産供給地が我が国というか、地下都市ヨミハラだった。

 そして、対魔忍というオーク生産孕み袋も用意されている。

 最も、それだけではないのがあの戦争狂の少佐らしい所だった。

 国内防衛企業から、少なくない中古潜水艦部品が南米諸国政府に流れている。

 南米諸国の持つ潜水艦なんて70年台あたりまで第二次大戦期のものを使っていた。

 それゆえに、枯れた技術となって西側情報機関が見逃していた盲点。

 

「たしかに、あの時は格好のチャンスなんだよなぁ」

 

 某吸血鬼が乗っ取られた英空母に特攻をかけた時、その空母を沈められるのならばかの吸血鬼の足止めとしては最高である。

 流水である海に落ちて残機は減るけど動けないから、兵糧攻めになるだろうし。

 で、『最後の大隊』にはヴェアヴォルフが居るんだよなぁ。

 南米に逃れた際のUボートも多分残っているだろうし。

 群狼作戦はドイツUボートのお家芸である。

 ヴェアヴォルフの艦長にオークの水兵でUボートを動かしての空母撃沈狙い。

 

「……ん?

 何で私を見るのよ?」

 

 叢雲の声を気にせず、安堵のため息をつく。

 つまり、起こるだろう英国での死闘において、自分たちの役割が確定したのだから。




大天使ミカエル
 『真・女神転生』のミカエルがCHAOS・NEUTRALルートにおけるラスボス。
 問題はこの世界ミカエルが一体だけじゃない訳で、何人ミカエルが居るのやら……

あの司祭
 『HELLSING』四巻の宗教裁判の被告人。


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猫の手の確保 その1

ノマドを忘れていたので付け足す回


 ミレニアム相手に対潜水艦戦をする場合、足りないものがある。

 艦船と人員だ。

 メンタルモデル形式なので叢雲一人で十分ではあるのだが、ダメコンの事とミレニアムの裏切り者は自衛隊内にも居るだろうから、どうしても裏切らない人員が必要になる。

 まずその当てに電話をかける事にした。

 

「君の専属になった覚えはないのだけどなぁ」

「上が国だから金払いは良いだろうが。

 またお仕事だぞ。

 今度はホムンクルスを作れる限り」

「私の作るものは手間暇かかっているのが分かってそういうのだろうな?」

 

 軽口の応酬の後事情を説明しだすと電話向こうの蒼崎橙子は笑い出す。

 

「本当に救いがないな!

 人間が信用できないから、人形を用意するなんて本末転倒じゃないか!!」

 

「まったくだ。

 だが、吸血鬼やグール相手に艦内で反乱なんて起こされたらたまらん。

 この際、短命のホムンクルスでも妥協するよ」

 

「そうだな。

 学園都市絡みでクローン技術を入手したし、洗脳装置による教育詰め込みもあるから短期間の戦力化は可能といえば可能だ」

 

 電話口の蒼崎橙子はそこで言葉を切って確認をとる。

 

「率直に言って、入即出やる夫よ。

 ホムンクルス兵士は必要なのか?

 これは魔術の徒としての質問だ。

 その船は彼女一人でコントロールできるのだろう?

 そっちから考えると、これにかけるコストがバカバカしく思えてならん。

 科学側から見ても怪しい所だ。

 戦闘単位としてどんなに優秀でも、同じ規格品で構成されたシステムには、どこかに致命的な欠陥を持つことになる」

 

 さすが人形師。

 クローンやホムンクルスの欠陥をよく理解している。

 自然と俺の顔も笑みで歪む。

 

「政治だよ。政治。

 構造上の欠陥も政治的妥協によって許容範囲ならば許容される。

 海上自衛隊はただでさえ定数割れを起こして俺の怪しい船に乗る連中すら確保がおぼつかない。

 挙句の果てに、自衛隊のクーデターの動きは止まるどころか更に加速している。

 裏切らない上に、最低限の戦闘力を持つ兵隊は今の海自に絶対に必要なんだ。

 割に合わないのは分かっているさ」

 

「だったら、学園都市から買ったらどうだ?」

 

 蒼崎橙子の切り返しに俺は即答する。

 無駄に闇鍋世界になっているおかけで、そういう選択肢もある訳で。

 

「もちろんそのつもりだ。

 お前自身が言っただろうが。

 戦闘単位としてどんなに優秀でも、同じ規格品として構成されたシステムには、どこかに致命的な欠陥があるって。

 そっちのホムンクルスをハイエンド、学園都市のクローンをローエンドのハイ&ローミックス。

 よく戦闘機の導入なんかで使われている方法さ」

 

 もう一つあったなと思い出して、俺はそれも口にした。

 電話越しの会話で盗聴されている可能性もあるが、この際時間が足りない。

 

「麻帆良学園には行ったか?」

 

「いや。

 あいにくまだだがそれがどうした?」

 

「あそこに始祖吸血鬼の人形師が居る。

 エヴァンジェリン・A・K・マクダウェル。

 紹介状を書いてやるから、会いに行くと良い」

 

「……狙いは何だ?」

 

「アンドロイドさ」

 

 これが90年後半だったら良かったのだが。

 そうしたら、マルチやセリオが出てきて、遠慮なく投入できるのだが。

 

「何のために、貴方にこの手の話を振っていると思っている?

 貴方をこの手の特異点にする為に決まっているだろうに」

 

「あははははは………また魅力的な誘いで断れないじゃないか!

 そうだ。

 お前が連れてきたアニムスフィアの娘、まだこちらに居るぞ」

 

 あ。

 すっかり忘れていた。

 まだ居たのかと言おうとしたら、その理由を蒼崎橙子が先に話す。

 

「情報生命体である悪魔と違って、人間の魂ってのは繊細なんだよ。

 先程の注文の答えにもなるが、彼女の器ができるまではこちらは注文を受け付けられん」

 

 舌打ちをしそうになる所をぐっと堪える。

 こちらが助けた命である以上、因果応報である。

 

「わかった。

 彼女の器ができたら一度報告をくれ」

 

「ああ」

 

 とりあえず学園都市からクローンを買うのは確定。

 御坂美琴はできているかどうか微妙なので、確実に抑えられるところから抑えてゆくと……

 

「対魔忍しかないよなぁ……いやな事に」

「あら?

 ついに彼女たちを抱く気になったの?」

 

 ステンノのツッコミに俺は首を横に振る。

 頭が対魔忍なだけで、彼女たちの身体能力は高いのだ。

 頭が対魔忍なだけで。

 大事なことだから二回繰り返して言ってみた。

 

「確定でクローンがあるのが多分朧とアサギと不知火と紅あたりかなぁ……待てよ?」

 

 俺は思いついた事を確認するためにリヨアサシンのレポートを再度読み直す。

 対魔忍世界の多国籍複合企業体ノマドとの繋がりを確認するためだ。

 ミレニアムと協力関係にあるのはわかったが、その創始者であるエドウィン・ブラックとは敵対している事実が浮かび上がる。

 これは、エドウィンが始祖吸血鬼だからで、ミレニアムにとっては格好のサンプルという訳だ。

 ミレニアムはノマドと協力しながらエドウィン・ブラックの排除と捕獲を狙い、エドウィン・ブラックはミレニアムの狙いを知りながら自衛しつつ支援を受け続けた。

 もちろん、これには米国本拠のアンブレラ社も絡んで素敵なことに。

 

「そんなクローンの研究生産施設は……ここだよなぁ……」

 

 学園都市。

 アンブレラ社。学園都市研究所。

 ノマド。学園都市廃棄研究所。

 

 バイオハザードが発生してもどうにでもなりそうなその研究所の名前を見て、俺はため息をついた。




洗脳装置
 テスタメント。
 学習装置はこれをベースに布束砥信の監修。
 表記ゆれなのかもしれないが、両方ともテスタメントと読む。


戦闘単位としてどんなに優秀でも……
 攻殻機動隊。
 それでもマテバが好きな刑事はあの面子の中で人間臭くて好き。


マルチとセリオ
 『To Heart』。
 日本のロボット工学に多大な影響を与えたエロゲーの一つ。
 あの世代の何人かはこれを作りたくて、ロボット工学に進んだそうな。


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猫の手の確保 その2

証拠写真
 https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1104395960782737408


知恵留美子の暴れっぷり

 100で無双、1でアヘ顔。

 結果 86

 

 

 地下都市ヨミハラ。

 東京の地下300メートルに作られた、無法地帯は今は昔。

 吸血鬼殲滅に命をかかげる一人のシスターのおかげで、その治安は急回復していた。

 それは同時にノマドの勢力減少と、他勢力の介入に繋がる訳で。

 『東京ジオフロント』と名前を変えたこの街は諸勢力の奪い合いが始まっていた。

 なお、『東京キングダム』を買い取ったのは俺であり、現在かの地にて英雄王の為の火力発電所建設が始まっている。 

 

 

状況変化の介入度 100ほど積極的

 

 

 時計塔           84+40=124

 

 聖堂教会          26+74=100

 

 関東魔法協会       95+44=139

 

 関西呪術協会       25+25=50

 

 十字教            62+95=157

 

 メシア教           19+7=26

 

 自衛隊            35+26=61

 

 米軍             75+59=134

 

 アンプレラ社        11

 

 ミレニアム          14

 

 

 

 第四次聖杯戦争によって日本における有力な拠点であった冬木市での影響力を失った時計塔と聖堂教会はここに新しい拠点をと目論見、多くの人員と資源を送り込んでいた。

 それは、満を持して冬木に人員を送り込んで全滅した十字教も同じで、己の本拠地である麻帆良学園都市の近くに出島よろしく他勢力の拠点ができるのを嫌った関東魔法協会も介入。

 更に、魔界や魔法というものの調査と実用化に興味を示した米軍がここを研究拠点にという動きを見せたことで治安は守られているが、激しい暗闘が水面下にて行われていた。

 そんな中、主導権を握ったのは十字教。

 ローマ正教の最暗部の一人である後方のアックアが投入されたのが大きい。

 そんな主導権争いの結果、東京ジオフロント連絡会なるものが組織され、十字教・関東魔法協会・米軍・時計塔・聖堂教会の五者で、この街を運営する事が決まっていた。

 なお、その連絡会議長に選ばれたのは、時計塔から推薦された魔術師でダーニック・プレストーン・ユグドミレニア。

 『生きていたのかよ!』とツッコミ半分、『ミレニアムがあるなら、そりゃ繋がっているよなぁ』と納得半分の感想だったのを覚えている。

 彼にとっては左遷なのか因縁の地でのリベンジなのかそれは当人にしかわからないだろう。

 

「失礼します。

 通行証を拝見します」

 

 自衛隊の服装で俺は防弾仕様のキャデラック越しに通行証を見せる。

 マシュ・ステンノ・叢雲・アマテラス様も当然同乗しており、このキャデラックの運転手は同じく自衛隊の服装の朧である。

 また、俺の車前後の車も護衛の自衛隊員が乗り込んでいるはすである。

 防衛庁情報局から来た彼らは、同時に俺の監視を兼ねているのは言うまでもない。

 

「今の検問の護衛の顔、同じだったわね。

 あれが司令官が言っていたクローンってやつ?」

 

 叢雲の質問に俺は苦笑して頷いた。

 初見で新たな知識が俺の頭にも刻まれる。

 

「ああ。

 国内大手製薬会社ヨロシサン製薬が裏で作り出した、クローンヤクザって奴だな」

 

 もちろん、アンブレラ社やノマドと業務提携済。

 そんな所から、クローン兵を買うというのが今回の訪問の目的の一つである。

 広大な地下都市ヨミハラをゆっくりとキャデラックが走る。

 無法地帯であり快楽の街でもあったこの街だが、完全にその快楽を消し去ることはできず、秩序が入った結果、ロアナプラと化したというのが俺の感想だったりする。

 ここに一般人は住めないだろうに。

 なお、まだ未制圧だが最深部に魔界の門があり、そこから魔界に繋がっている事で、この国の狂った繁栄は支えられている。

 中央の大きなビルの入口に着くと、ドアが開き交渉相手が出迎える。

 

「さぁ、取り引き開始だ。

 きみの欲しいものを言ってくれ。

 金さえあれば、なんだって揃えてみせるよ」

 

 ヴィクトリア・ザハロフ。

 対魔忍世界の武器商人で言葉通り金さえアレば何だって揃えてくれる人である。

 彼女に朧経由でコンタクトをとったのだ。

 俺も握手をして自己紹介をする。

 

「護国組織ヤタガラスの入即出やる夫だ。

 良いビジネスができるようよろしく頼む」

 

 こういうビジネスでは第一印象がものを言う。

 ヴィクトリア・ザハロフは、商品であるクローンヤクザや枕営業用の娼婦達を並べるが、こっちもマシュに叢雲にステンノを連れてきている。

 もっとも、ただ一人の御方に全部持っていかれるのだが。

 

「ちょっとこの場所暗いですね……えいっ!」

 

 アマテラス様。

 太陽の化身だからといって、ヨミハラ全体を己の日光で輝かせないでください。

 できの悪い吸血鬼はそれで灰に………あれ?

 もしかして、ミレニアムの天敵じゃないのか?

 この御方。

 そんな愉快な挨拶の後、ビジネスが本格的に始まる。

 まずはこちらの手持ちのアイテムを彼女に売る事にする。

 

「という訳で、こいつの売却をお願いしたい。

 各勢力に通達しているから、いずれオークションが開かれるだろう。

 保管と取引終了まで、手数料は売却価格の一割」

 

 部屋に運び込んだのは、リドヴィア=ロレンツェッティがこの国に持ってきて俺が回収した『使徒十字』。

 こいつを使うと、突き刺した土地をローマ正教の支配下に置くというとんでもないしろもので、その効果範囲は47000平方キロメートル。

 なお、九州の面積が36750平方キロメートル。

 それぐらい広大な土地を支配下に置く上に効果が長く続くと来たのだから、買収されたとは言えもちろん日本政府は大激怒。

 その間でどのような交渉があったか知りたくはないが、この地にて俺個人の私物扱いでの売却という形でこの問題を俺に丸投げしてきた。

 頭を抱えた俺は、この諸勢力が入り混じっているこの地でのオークションを企み、その代理人として彼女を指名したのである。

 

「ちなみに、ローマ正教が暴力を持って奪還に来た場合は?」

「返してやれ。

 一部始終が他勢力に流れるようになっているから、その後のゴタゴタで彼らがぶん殴られるだけさ。

 金で解決しようという穏便な手段すら取れないような相手が、この国の魑魅魍魎を相手にその勢力を維持できるとは思えんしな」

「それを誰かが使う事を考えないの?」

 

 ヴィクトリア・ザハロフの質問に俺はただある方を指さした。

 

「どうです?

 これ、なかなか似合っていますか?」

「……悪くないわ」

「へぇ。

 こういうのが好きなんだ」

「カルデアの服とあまり変わらない気が……」

 

 暇を持て余した女性陣による対魔忍コスプレ会場で一番浮かれている天津神様を指さして俺はハッタリをかます。

 なお、朧が本気で対応に困って目で俺に助けを求めているが、俺は見捨てることにした。

 

「あのお方がそれを許すと思うか?」

「……確かに」

 

 ごほんをわざとらしく咳き込んで、ヴィクトリア・ザハロフは話を続ける。

 カタログを広げて今、入手可能なクローンのリストを並べる。

 

「海上自衛隊員の定数割れは深刻な状況に達している。

 船は増えているのに、それを操る人間が追いついていない。

 急場しのぎだが、末端の人員をクローンやドロイドに任せたいと思っている。

 まずは試験的に、うちの艦を前提に、500人ばかり」

 

「結構な数だね。

 試験的の割には数が多い。

 まぁ、金さえもらえるのならば、文句は言わないけどね」

 

 俺の船である叢雲の現在の定員が大体120人。

 三交代(出撃・休息・訓練)に欠員が出ることを見越してというのが建前、海将補相当官で持てる護衛隊編成でもう一隻艦娘を確保しよういうのが本音である。

 そんな事はおくびに出さず、俺はカタログを手にとり、ヴィクトリア・ザハロフが説明を続けた。

 

「ヨロシサン製薬のクローンヤクザをベースにしたハイデッカータイプが、お客様の要求を満たして一番お安くなっています。

 洗脳と教育でこれぐらいの価格で」

 

 実際安い。

 もちろん、裏があるのでそれを確認する。

 

「バックドアについてはどうなっている?」

 

 つまり、ハッキングからの裏切りだ。

 その手の入口の事をバックドアと呼ぶ。

 

「ヨロシサン側からのアクセスについては確実についていますが、それを塞ぐのは当然そちらでやってもらう事になります。

 また、それをした際のヨロシサン側からのサポートは一切受けられなくなるのでご注意を」

 

 このあたりはロリンチちゃんにさせることにしようと決意する。

 次のカタログは露骨な肌色のオイランが目に入る。

 そりゃ、ヨロシサン製薬があればこっちもあるのは当然か。

 

「……こっちは、オムラ・インダストリーのオイランロイドか」

「便利ですよ。

 オイランロイド。

 何しろ、生理もないし、妊娠しない。

 長い航海において少数でも異性が居ることは艦内のモラルの向上に繋がります。

 最近、オイランロイドの性能を落とさずに戦闘力を向上させたタイプも登場しました」

 

 その話にコスプレショーから逃れてきた朧が参加する。

 何しろ、クローンを買いに来て、そっち系の用途を満たすならば、対魔忍が一番というか私を使えよと目で訴えているが無視することにした。

 

「若干値は張りますが、戦闘力と性処理能力を考えるのならば、対魔忍のクローンが一番ですよ♪

 というか、私達を使えばクローンいりませんよ♪」

 

 こいつ、口に出しやがった。

 

 

この日のお買い物結果

 

 ヨロシサン製薬      ハイデッカークローン       400体

 オムラ・インダストリー  オイランロイド戦闘強化タイプ   80体

 ノマド            娼婦兼戦闘用対魔忍        20人

 

 

 『使徒十字』売却価格942億円。

 売却先

 

123 ローマ正教

4  イギリス清教

5  ロシア成教

6  聖堂教会

7  時計塔

8  メシア教

9  関東魔術教会

10 ノマド

 

結果 1

 

 

 帰り道。

 俺はマシュに顔を向けた。

 

「先輩。

 どうしました?」

 

「マシュ、共に戦えるとしたらどうする?」

 

 FGOは途中で終わっているのが、マシュがオルテナウス化する事は知っている。

 現在のマシュは戦うのがきつい状況なのだと。

 それにもかかわらず、マシュははっきりと告げた。

 

「もちろん、先輩と一緒に戦います」

 

 彼女にとって、あの旅はかけがえのないものであり、それを駈けた俺と戦うのは当然のことと言わんばかりに決意の目を俺に見せる。

 俺は手を組んで目を閉じて、マシュにその決意を告げる。

 

「君の助けが必要だ。

 どうか、艦娘になって俺を助けてくれないだろうか?」

 

と。




ヨロシサン製薬
 『ニンジャスレイヤー』
 悪魔が居て対魔忍が居るのなら、ニンジャが居ても問題ない。
 いいね?
 なお、サイバーニンジャの母体は当然対魔忍。
 ツヨイ。


ヴィクトリア・ザハロフ
 『決戦アリーナ』。
 その胸は豊満だった。
 


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猫の手の確保 その3

約束された茶番
 証拠写真
 https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1104587765872656385

 https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1104596674410758146


「たしかここに……あったあった」

 

 平崎市のホテル業魔殿に戻った俺たちは、マシュ艦娘化に向けたアイテムを持っていた素材から探し出す。

 多分これだろうと思っていたから、あったのは大助かりだった。

 

 甲勲章 10個

 

 つまりその気になれば、最大10隻まで艦娘にコンバートできるみたいだ。

 連合艦隊を組むにはあと二隻足りないが、そこは造れという事なのだろう。

 

「じゃあ君はこっちの方に入り給え。

 その素材はこっちに」

 

 ヴィクトルに言われて悪魔合体の装置の片方にマシュが入り、もう一方に甲勲章を置く。

 俺は念のために最後の確認をとる。

 

「マシュ。

 良いんだな?」

 

「もちろんです。先輩。

 マシュ・キリエライト。

 どんな姿になっても、先輩と共に戦います」

 

「……わかった。

 ヴィクトル。

 やってくれ」

 

 ゲームでは何度も見た光景だが、自然に祈る俺が居た。

 マシュの姿が甲勲章と共に消え、中央の魔法陣にマシュらしき姿が出てきたのに安堵する。

 

1 浜風

2 浜風

3 浜風

4 マシュ風

5 マシュ風

6 マシュ風

7 マシュ風

8 羽黒

9 祥鳳

10 烈々歓迎

 

結果 5

 

レベル 72 

 

「浜風であり、マシュ・キリエライトでもあります。

 戦力向上しました。

 これなら、やれます!」

 

 あ。

 浜風乙改になってる。

 マシュの能力も使える当たり良い便利キャラになったと言わざるを得ない。

 ちなみに装備は、10cm連装高角砲、13号対空電探改、25mm三連装機銃の3つで星はついていない。

 ミレニアム相手だから、対潜セットを用意しておかないとなぁ。

 

「やる夫。

 ちょっと良いかしら?」

 

 叢雲が俺の脇腹を引っ張る。

 何か妙に顔が赤い。

 

「私もそろそろ、あの合体をしてほしいなって」

 

 あの合体?

 何かあったかと首を捻ったら、叢雲がキレた。

 

「あれよ!

 あれ!!

 ……この世界に馴染むやつ」

 

「え?するの?」

 

 俺の声に叢雲は理路整然と理由を言う。

 その言葉に迷いはない。

 

「これから戦う敵は、強大なんでしょう?

 だったら、万全の姿で戦っておかないと」

 

 そんな叢雲にステンノが突っ込む。

 さすが女神様。

 心の隙間に入り込むのが上手い。

 

「本音は?」

 

「だって!

 どんどん胸の大きな子がやってくるじゃない!!」

 

 知ってた。

 とはいえ、メリットが無い訳ではない。

 メガテン世界に叢雲を移せば、MAXレベルの175になるのだから。

 

「……どうしたんです?

 じっと私の方を見て?」

 

 この傍若無人な天津神様を抑えることができるのは魅力である。

 悪意がないぶんタチが悪いので、毎度毎度伊勢の裏巫女が叱りに来る回数も減るだろう。

 

「まぁ、いいか。

 叢雲の戦力強化も必要だし」

 

 そんなこんなで数分後。

 

「悪くないわ。

 私の魅力が増すのね」

 

 そこには魅力というか胸の増した叢雲の姿が。

 叢雲というか、ムラ雲というか、ムチ雲というか。

 大好きだ。

 もちろん彼女は願いがかなってキラキラ状態である。

 ん?

 

「あれ?

 お前そんな装備だったか?」

 

「……?

 あれじゃない。

 横須賀でくっつけたのがそのまま残ったとか」

 

 ちと気になることがあったので、そのまま叢雲にそれをぶつけてみた。

 

「ちょっと自己紹介をしてみろ」

 

「何よ。

 私はみねぐも型護衛艦の三番艦に決っているじゃない……っ!?」

 

 女神転生には、御霊合体というのがある。

 パラメータの強化を目的にしたもので、今回やったのはこれのはすだ。

 問題なのはその御霊の元である精霊を使った精霊合体というやつで、これを使うとその悪魔のランクを上げたり下げたりできるのだ。

 先に現代武器をくっつけたのでそれに合わせて艦を現代に合わせたのかもしれんが、深く考えてもわからないから、俺はそこで考えるのを止めた。

 

「さてと、マシュ風の為にもドレイク船長を再度召喚しないとな」

 

 という事で、ここで働くリヨくだ子を呼んで聖晶石を購入。

 ドレイク船長が出るまでぶん回すことにした。

 

「セイバー、モードレッド推参だ。

 久しぶりだな。マスター」

 

 君、この世界大好きだろう?

 とはいえ、こちらとしては大歓迎なので何も問題はないのだが。

 

 

ドレイク船長が来るまで何連かかった?

 738連。

 738×聖晶石3つ=聖晶石=2214個。

 石の価格120円×2214個=265680円。

 

 

「つくづくあんたとは縁があるねぇ?

 アタシはフランシス・ドレイク。

 まあ、仲良くやろうじゃないか!」

 

 国家戦争規模だと、26万円もはした金である。

 リヨぐだ子が何か殺意を込めた目でこっちを見ているのだが、残った石を全部あげると言ったら途端に機嫌を直してくれた。

 ちょろい。

 

 

 

 横須賀基地に帰ると、叢雲の姿がちゃんと吹雪型からみねぐも型に変わっていた。

 艦内とかどうなっているのか気になったが、そのあたりは駄女神様ががんばったらしく、人的被害もなく全員無事らしい。

 最も、基地内では、突如叢雲の姿が変わったと大騒ぎになっているのだが。

 さて、今日のメインイベントだ。

 

「じゃあ、マシュ。

 やってみろ」

 

「はい!

 マシュ風こと、マシュ・キリエライト、行きます!!」

 

「真名、ナノマテリアル展開。

 これは多くの道、多くの願いを受けた幻想の船。

 呼応せよ、『駆逐艦浜風』!!」

 

 どん!!と、大気が震え、何もない護岸に陽炎型駆逐艦『浜風』が姿を現す。

 その光景に周囲の人間が唖然とする中、マシュは嬉しそうに笑ってみせた。

 

「展開。想定内です。

 何とかなりました。先輩」

 

基地での騒動の処分

 1で査問会。100で見なかったことにした。

 結果 79

 

 これだけの大騒動だが、基地では『ああ。またこいつらか』で済まされたあたり、順調に常識がずれていっているらしい。

 一応俺の上司だろう横須賀地方隊の警備隊司令の咲川海将補からお小言をもらって開放されたが、その理由は美野原一佐がこそっと教えてくれた。

 

「舞鶴の知り合いから聞いたのですが、もし、ドレイク船長がここに滞在するのなら、舞鶴と同じように研修会とかやってくれませんかね?

 お隣の米太平洋艦隊からも出席したいとお願いが」

 

 ドレイク船長。

 あんた世界の海軍軍人に愛されすぎだろう……




むらくも
 みねぐも型護衛艦。
 このタイプがあったので、この茶番が作られた。
 対魔忍とタメを張れる胸と武装に叢雲もご満悦である。


外の人繋がり
 作品は無関係だが外見が似ているキャラクター同士のこと。
 今回のマシュと浜風はこれ。

中の人繋がり
 中の人(声優)繋がりのキャラクターの事。
 初代マシュ声優の種田梨沙さんのキャラクターから選ばれる予定だった。


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猫の手の確保 その4

 戦力が強化されてもそれを運用できる体制にないと意味がない。

 かくして、叢雲とマシュ風の戦力化の為のあれやこれやを急ピッチで行う事になった。

 

「という訳で、マシュ風は近代化改修を行うわよ」

「はい」

 

 先輩風を吹かす叢雲に言われて、興味津々のマシュ。

 叢雲がした事をこっちでもするだけだが、装備の更新は今後の戦いにも関わる。 

 艦内伝達の通信機器等は海自が保管していたお古を急遽持ってきて備え付け、医療器具とかもやはり最新式の医薬品に替えられた。

 調理器具も新調し、何よりも大型冷蔵庫を備え付けそこに大量の食料が運び込まれ、兵員室にベッドをつけてゆく。

 あと、叢雲と同じく神棚が設置された。

 

「いずれは、CIWSやハープーンやアスロックもつけたい所ですけどね」

 

 視察に来た美野原一佐がつぶやくが、その時間があればいいのだが。

 装備の更新だけでなく動かす人間が居ないと動けない。

 いや、動かそうと思えば動かせるのだが、海上自衛隊という身分を持っているので、中にその隊員をいれるという政治的配慮が思いっきり足を引っ張っているだけである。

 

「とりあえずは対潜用のソナーと爆雷を何とかしないとな。

 叢雲が対潜に特化しているから、浜風は対空に特化させるのもありかなと考えている」

 

 ミレニアムのUボート相手だから対潜装備は必須。

 さすがに人前でマシュ風と呼ぶのは恥ずかしいものがあるので、ここでは浜風で通す。

 そんなことより、問題の一つを美野原一佐と話す。

 

「で、事後承諾になったけど、あれについてはOKなのかい?」

 

 基地内に並んだヨロシサン製薬とオムラ・インダストリーの巨大トラック。

 そこから出てくるクローン人間事ハイデッカー達とオイランロイド達は海自隊員服を来て、自衛官の見守る中グラウンドを走って体力テストをしていた。

 

「良くはないでしょうが、定数不足は本当に深刻なんです。

 この叢雲に貼り付けた60人すら用意するのに手一杯だったんですから」

 

 海自内部でもこの手の計画が上がっては、機密の壁から断念した経緯がある。

 とはいえ、最低限の知識を即席で用意できるのは、人手不足に悩む海自にとって喉から手が出るほど欲しかったのだ。

 

「こっちもレポートを出そう。

 何体かはそちらに引き渡してもいい」

 

「協力に感謝します。

 これは、咲川司令がぼやいていた事なのですが」

 

 こういう噂話にかこつけて伝言を渡すのは、それだけやばい話である。

 自衛隊のクーデターの噂がまことしやかに語られるようになって、こういう形で上の人間は情報交換を行っていた。

 

「総理がクーデターに備えて直属の神田旅団を首都圏に呼んだという噂があります」

「神田旅団?」

 

 聞き慣れない言葉に俺が首をかしげると、美野原一佐が説明をしてくれる。

 

「この国の海兵隊ですよ。

 構想は昔からありましたが、近年西部方面隊内部に発足したそうで。

 総理直轄なので、こちらも噂以上の話は知りませんがね。

 司令官の神田一佐の名前をとって神田旅団」

 

「つまり、あまり派手に動いているとそいつらにクーデター側と判断されて粛清されるぞという忠告な訳ですな?」

 

 お互い笑顔なのは崩さないが、同時に目が笑っていない。

 上に立つというのはこんな腹芸も大事になってくる。

 

「上は貴方が仕入れたヨロシサン製薬やオムラ・インダストリーと仲が良い。

 神田旅団の兵員、アレじゃないかと私は見ているのですけどね」

 

「だとしたら喜ばしい事だろうな。

 ついに人間は人殺しに人すら使わなくなったという訳だ」

 

 こういう時にタバコが吸えたらと思った。

 それで口が塞げるのに。

 

 

 

「では、中世海戦研究の研究会を開きたいと思います。

 講師はフランシス・ドレイク三佐相当官」

 

 基地講堂内は満員御礼だった。

 手の空いている士官連中は大体来ているし、それ以上に熱心だっのたが米軍の奴らで、ビデオカメラまで持ち込んでいる。

 ドレイク船長の公演は実体験と当時の思考や文化習慣もまじえての話に会場は大受け。

 当人は嫌がるだろうが、公演だけで食っていけるだろう。

 そんな事を思いながら、参加者名簿を確認。

 あ、リエリ・ビショップ中佐とナオミ・エヴァンス少佐発見。

 若狭湾ミサイル発射事件で、ミサイルが流出した責任からかなりの幹部の首が飛んだらしいからその後釜なのだろう。

 そんな事を考えていたら、質問にこんな声が聞こえてきた。

 

「失礼ですが、フランシス・ドレイク提督は男であるという説がありますが?」

 

「たしかにそういう話もあるさ。

 けど、」

 

 そこでドレイク船長は己の胸を揺らして一言。

 

「これでも私が男に見えるかい?」

 

 会場大爆笑の中、俺は慌てて発言者の名前を確認する。

 米海軍少将。

 ターニャ・デグレチャフ。

 駄女神よ。

 これは混ぜたら駄目なものじゃないのかな?

 

 

 

 案の定、例の質問は俺を見つけるためのもので、接触して情報交換すると出てくるわ出てくるわの存在Xへの罵倒の嵐。

 そんな彼女の今回の試練は悪魔ときたのだから罵倒も力が入る。

 しかも、それを行うのが彼女の居る米国からの核攻撃で、その成れの果てが神の千年王国という俺の説明を聞いた後の彼女の笑みは、壮絶であり狂気に満ちていた。

 なお、リエリ中佐とナオミ少佐は彼女の部下らしい。

 

「ところで、貴国とは同盟国だったと思うが?」

「国家に真の友人は居ないと思いますが、同盟国ですな」

「私が偉くなれば、クーデター後の核攻撃を防げるかもしれんぞ。

 少なくとも、この国と我が国の経済的共存共栄を維持し、核で焼くなんて馬鹿なことはしないと断言しよう」

 

 やっぱり米軍はクーデターに介入の準備を進めていたか。

 上が腐っているから、最悪第二の戦後も許容してでも核攻撃を防げるならベストなのかもしれない。

 少なくとも俺も彼女も神の千年王国を望んでいない以上、そこで妥協が成立する。

 

「で、何がお望みで?」

「貴官が使う艦娘のデータが欲しい」

「何だそんな事ですか」

 

 そこで俺のいたずら心に火がつく。

 彼女の魔力は前世で折り紙つきだ。

 だったら艦娘ぐらいは呼べるだろう。 

 

「多分貴方なら呼べますよ。

 何なら呼んでみますか?

 呼べなくても、中二病の黒歴史が増えるだけですし」

 

「ちょっと待て!

 何だその中二病の黒歴史って!?」

 

「聖杯戦争召喚呪文」

 

 このデグ様、どれぐらい転生したのだろう?

 その一言で察して、存在Xに罵倒の呪文を呟き出したのて、俺は見なかったことにした。

 

 

デグ様が呼んだ艦娘

 

1 サミュエル・B・ロバーツ

2 サミュエル・B・ロバーツ

3 サミュエル・B・ロバーツ

4 ジョンストン

5 ジョンストン

6 ジョンストン

7 ガンビア・ベイ

8 サラトガ

9 アイオワ

10 イントレピッド

 

結果 10

 

 

「Hi!

  Essex class航空母艦、5番艦。

 Intrepidよ!

 貴方がAdmiralなのね?

 素敵ね。さァ、一緒に行きましょう?

 いいかナ?」

 

 

「……」

「……」

 

 その顔が見たかった。

 言わないけど。

 なお、彼女は最終形態、つまりベトナム戦投入時のスカイママ仕様になっていた。

 さすデグ。




神田旅団
 『対魔忍アサギ3』。
 海兵自衛軍なる組織が登場するが、これをできるだけ現実にすり合わせて、この間できた水陸機動団に設定変更。
 けど、総理直轄の傭兵部隊の所は変えていない。

リエリ・ビショップ、ナオミ・エヴァンス
 『監獄戦艦』。
 米海軍の士官として登場。
 サイコロ次第ではアヘる。

デグ様
 やる夫スレでも顔芸を披露する御方。
 大体酷い目に遭う。
 彼女は最初から転生設定があるので、入れるのが楽。


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猫の手の確保 その5

 横須賀港に突如現れた空母だが、関係各所が大騒ぎしても米軍は『機密』の一言で沈黙を続けた。

 なお、海自側には一部始終を伝えて上が頭を抱えているのだが、

 

「自分みたいに付喪神を召喚できるなら、他国でもそれを召喚しようと考えるのは当然でしょう。

 それに相手は米海軍の少将。

 どうして自分が断れると?」

 

の一言で上は沈黙する。

 この手の接触防止は市ヶ谷側のミスであると言えば事実なので向こうもそれ以上怒れないのだ。

 一方で、さすがデグ様とばかり在日米軍司令部経由で、

 

「今回の貴国の判断による軍事技術供与に感謝します」

 

と正規ルートで謝辞を伝えて借りを明確にしたので、それ以上のツッコミもできずに無罪放免となった。

 米ミサイル流出誤射事件に次いで大きな借りをどう使うのか、この腐った政府はまだ思いついていないのが色々と救いがないのだが。

 

「しかしでかいな」

 

 艦娘なので全自動なのだが、もちろんそれをさせるつもりはデグ様にも無く、即座に人員をかき集めたあたり、さすがデグ様。

 パイロットは岩国基地から連れてきただけでなく、ベトナム戦時の空母航空団編成だった事でA-4EやA-4Cに乗りたいという現役および退役軍人が押しかけているという。

 なお、同じ理由で、

 

「『Fighting"I"』にまた乗れるなら乗せてくれ!」

 

とやってくる連中が大挙して……こいつらはベトナム戦時の連中だからみんな偉くなって断るのが苦労するなんて笑い話も。

 とにかく日本では護衛艦に乗せる人間がおらず、クローンやアンドロイドを使おうという所に追い込まれていたのにマンパワーを確保してみせるあたり世界の超大国の面目躍如というところだろうか。

 そんな米軍横須賀基地にて米兵が空母イントレピットに調査搬入の作業を叢雲とステンノを連れて眺めていると、後ろから声がかかる。

 その声の主にお呼ばれされたのが俺がここに居る理由である。

 

「これでも小さい方だ。

 今や原子力空母の時代で、そいつらは80000トンを超えるからな。

 来てもらって感謝する」

 

 ターニャ・デグレチャフ少将の後ろに控える艦娘イントレピット、その左右にはリエリ・ビショップ中佐とナオミ・エヴァンス少佐が居る。

 この四人が実質的にこの空母を動かしてゆくことになるのだろう。

 

「で、だ。

 来てもらった理由だ」

 

 リエリ・ビショップ中佐がえらく大きな軍用無線電話を俺に差し出す。

 受け取ると、テレビで聞いたことのある声が聞こえてきた。

 

「米軍の空母の所在というのは、歴代大統領が常に頭に入れておかないといけない事項の一つでね。

 同盟国の技術供与のおかげで、新しい……というには少し古いが、彼女が舞台に立てたのならばお礼の一つぐらい言わないと非礼にあたるだろう?」

 

 俺が睨みつけてもデグ様は知らん顔。

 声は穏やかに、流暢なクイーンズ・イングリッシュで返事を返す。

 

「同盟国としてできる事をしたまでです。

 大統領閣下」

 

 おそらくワシントンとのコネ作りに俺を売ったな。

 さすデグ。

 やることにそつがない。

 

「冷戦終結と湾岸戦争の後、国際秩序は我が国が守らなければならない。

 その時に頼れる同盟国が共にいると嬉しい。

 ワシントンに来た時には、ぜひホワイトハウスに来てくれ。

 歓迎しよう」

 

 当たり障りのない会話を終えて電話を返すと、デグ様がネタバラシをする。

 彼女もとてもいい笑顔だ。

 

「当たり前の事だが、この国でCIAが動いているのは知っているだろう?

 この国で進みつつある陰謀について、ホワイトハウスとペンタゴンは重大な懸念を持っている。

 で、この間のミサイル流出誤射事件だ。

 私の仕事は、その経路の解明と再発防止にあった。

 だが、しゃれにならんぞ。これは」

 

 突き出された英語のレポートには『トップ・シークレット』の赤判子がでかでかと押されている。

 機密流出にならんのかと思ったが、デグ様が笑う。

 

「安心しろ。

 まだ提出していないものだ。

 判子はお前に見せつけるために私が押したが、ペンタゴンでも押されるのは間違いないだろうよ」

 

 同じ転生者のよしみというより、使えるなら大事にコキ使おうという意図も入っているのだろうな。

 その結果、こちらも大統領とのコネなんてものができて、さすデグとなるから彼女はいつもの泥沼に落ちてゆくのだが、言わぬが花だろう。

 そんなレポートを読み進めると、俺の顔も真顔になる。

 

「これは本当か?」

「嘘だったら良かったんだがな」

 

 それは湾岸戦争後の闇の暴露に近かった。

 戦争そのものは米軍をはじめとした多国籍軍の勝利に終わったが、兵士達にはそんなことはどうでもよくPTSDによる薬物依存や生活崩壊でホームレスに落ちている実態が浮かび上がる。

 そして、そんな彼らを救済し生活再建をしていたのがメシア教だった。

 ミサイル流出事件はそんなメシア教徒が引き起こした事が書かれていた。

 ルーラーの天草四郎、歪んでいるかもしれないが間違いなく聖人で救世主だろうからなぁ。

 そして、この事件で彼らの存在が明るみに出た事実に俺は頭を抱えたくなる。

 

「内部調査だと、現在ホームレスになった退役軍人は50万は居ると言われている。

 かれらの救済を一手に引き受けている事で、軍内部に急速に支持者が増えている。

 そんな奴らの聖女がこいつだ」

 

 デグ様は数日前のワシントン・ポストを差し出す。

 その一面に『ソマリアの聖女』というタイトルで紙面を飾ったのは、国連のソマリア支援活動で米軍のプロパガンダとして華々しく活躍する一人のヘリパイロットの姿だった。

 

「メアリー・スー少佐。

 多分、こいつがメシアの聖女の一人だ」

 

 なるほどな。

 彼女を知っていたからこそ、デグ様はなりふり構わず手駒を集めにきた訳だ。

 存在Xの力で俺たちが向こうについたら洒落にならんだろうからな。

 

「一週間後、こいつの試験航海をするにあたって、臨時編成の任務群を作ることになる。

 もちろん、こちらでもエスコートはつけるが、その時に貴官の船である『叢雲』と『浜風』、それと『みらい』にも来てもらいたい。

 ちゃんと正規ルートで要請するので外交上の問題は無いぞ」

 

「多分中にスパイが居ますよ」

 

 どう考えても『監獄戦艦』コースだろうとやんわりと指摘したら、デグ様は獰猛な笑みを見せてあっさりと言い放った。

 

「知っているよ。

 この航海はそいつらを狩り出す為だからな」

 

 デグ様は顔芸芸人ではあるけど、戦場を渡り歩いた化物の一面もある。

 そんな彼女の狩りの顔を見て、俺は言葉を出せず目の前のイントレピットを見てごまかすことにした。




米軍横須賀基地
 この時期配備されている空母はインディペンデンス。
 92年イラク飛行禁止空域監視任務とソマリア支援活動で横須賀を離れている設定。
 なお、ソマリアの支援活動に留まっているのは、メアリー・スーの聖女運命力のおかげ。


スカイママに乗っていた飛行機達
感想より転載

VA-106(A-4E)16機、VA-66(A-4C)16機、VA-36(A-4C)16機、VF-111 DET.11(F-8C)6機、VFP-63 DET.11(RF-8G)4機、VAQ-33 DET.11(EA-1F)3機、VAW-11 DET.11(E-1B)4機、HC-2 DET.11(UH-2B)3機、COD(C-1A)1機
これを妖精さんで動かせるスカイママ。
つよい。


大統領
 現実ならクリントン大統領なのだが、『Twelve Y. O.』あたりのネタをいれるかなと思っているのであえて名前は出さない方向に。


ソマリア
 なろうの小説でも出したけど、ここは湾岸戦争に並ぶターニング・ポイントのような気がする。
 こうやってネタにすると美味しすぎるのだから。


メアリー・スー
 デグ様ライバル兼メシアの聖女。
 もちろん聖女なのでとある世界でも超有効なチートキャラ。
 元ネタが元ネタだし……


任務群
 米海軍で空母を動かす際の編成形態。
 多分、第5艦隊が前倒しで編成されるから、デグ様の部隊は第50任務部隊になるのかなぁ?


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洋上人狼 その1

意図的に色々なところから持ってきた。

証拠写真
https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1106219800496267264



湾岸戦争

 100ほど史実よりめちゃくちゃ

 

 結果 82

 

ミレニアムの関与

 100ほどバリバリ

 

 結果 63

 

 

デグ様の頑張り

 100ほどさすデグ

 

 結果 86

 

 

 この世界における湾岸戦争は多国籍軍の圧勝ではなく、中東の地獄の釜が開いた最悪の戦いだった。

 これにミレニアムが関与していたらしく、イラクが撃ち込んだスカッドミサイルにイスラエルが反撃してしまい、中東戦争がリンクしてしまったのだ。

 地獄の釜が開いた大戦争において『湾岸の英雄』の一人として名をはせたデグ様は、当然のように政治工作にも長けている。

 彼女は俺たちを演習航海に連れてゆくついでにこんな事をやってくれやがりました。

 

「我が合衆国において、入即出やる夫海将補相当官は、海軍少将として扱うのでそのつもりで」

 

 正規ルートで堂々と言ってのけたこれは米国による俺の取り込みにほかならない。

 市ヶ谷の抗議もどこ吹く風で彼女は出港準備を続けるが、市ヶ谷及び政府上層部が黙ったのは、例の聖杯戦争のもみ消しで多額の金で買収された事をちらつかせたとか。

 さすデグ。

 CIAにもパイプ持っているな。これは。

 なお、俺の辞退で一応なかったことになったが、米海軍はこの通達を取り消すつもりはないらしい。

 つまり、米海軍作戦行動において、俺は海軍少将として振る舞える。

 

「感謝はしていますが、もう少し穏便になんとかできなかったものですかね?」

 

 横須賀米軍司令部で臨時任務部隊編成で修羅場になっている俺が俺以上に修羅場になっているデグ様に嫌味を言う。

 なお、俺は判子を押す機械と化しており、実務はレベルキャップが解放された敏腕艦娘叢雲と事務エキスパートの文車妖妃によって回っている。

 

「腐りきっている上を相手に妥協や交渉をしても無駄だろう?

 やつらは、日米安保の意味を分かっているから、文句は言えどもそれ以上の事はしてこないさ」

 

「そういう連中ばかりだったら……」

 

と言おうとして俺の言葉が止まるのは、目の前の臨時上司が狩人の顔をしていたからだ。

 つまり、米軍内部のスパイだけでなく、海自内部のやばい連中もこれを機会に俺に狩れと言っているらしい。

 少将の地位はその前払いという訳だ。

 暗にしゃべるなと言われた理由に、内部のスパイの存在がある。

 米軍にも海自にもスパイが居る訳で、そのスパイがミレニアムと繋がっている可能性は捨てきれない。

 どこに盗聴器や集音器がしかけられているのか分からないのだ。

 

「こちらの編成ができたわ。

 確認して」

 

 横で仕事をしていた叢雲が海自参加艦艇を確認する。

 『叢雲』『浜風』『みらい』の三隻の他に、俺たちへの監視として『たかつき』と『たちかぜ』の第1護衛隊を送り出す事にした。

 ここで問題になったのが指揮系統。

 こっちは素人に毛が生えたようなものなのに、少将こと海将補待遇だから第一護衛隊司令の衣笠一佐より立場が上になってしまうという食い違いが起きている。

 そのくせ、デグ様は海自のまとめ役を俺に委任しているというこのややこしさ。

 この航海が海軍の仕事ではなく、裏のある事がミエミエなのだが、俺は自分たちの船も含めた海自艦艇の指揮を迷うこと無く衣笠一佐に丸投げすることにした。 

 『みらい』の待遇も問題だった。

 俺の所で抱えるのは論外。

 かといって、衣笠一佐との信頼がまだできていない状況で指揮下に入れるのは軋轢が生じかねない。

 俺の叢雲と浜風の為に急遽作られた第70護衛隊に続いて第71護衛隊も新設し、ある程度の自由裁量を与えることでごまかすことにした。

 またこの航海に際し、取り込みを兼ねて一階級昇進をさせている。

 このあたりの調整に奔走したのが、横須賀地方隊からの付き合いである美野原一佐。

 臨時部隊の主席幕僚を押し付けられて、なんとかまとめ上げたその調整力に素直に驚くしかない。

 かくして編成はこんな感じになった。

 

第50任務部隊参加艦艇

 司令官 入即出やる夫海将補相当官

   副官 恵美ステンノ三佐相当官

   主席幕僚 美野原信弘一佐   

 

  第70護衛隊 司令官直属 

   『叢雲』 艦長 東雲叢雲二佐相当官

         副長補佐  新島義則三佐

 

   『浜風』 艦長 マシュ・キリエライト二佐相当官

         副長補佐 フランシス・ドレイク三佐相当官

 

  第71護衛隊 梅津三郎海将補

   『みらい』 艦長 各松洋介一佐

 

  第1護衛隊  衣笠秀明一佐

   『たかつき』 艦長 宮津弘隆二佐

   『たちかぜ』 艦長 阿久津徹男二佐

 

 

 ……揉めるよなぁ。

 これ、絶対に揉める。

 生え抜きの方が階級が低く、外様引き抜き組の方が階級が高いのだから、生え抜き組が面白い訳がない。

 クーデター前の海自内部の不満分子の排除が目的だから、ある意味正しいと言えば正しいのだが。

 ため息をついて判子……こっちはサインか。

 サインを書いて、デグ様に手渡す。

 と、同時にデク様から米軍参加艦艇の編成を見せられる。

 

 

第50臨時空母打撃群

 司令官 ターニャ・デグレチャフ少将

 参謀長 エーリッヒ・フォン・レルゲン大佐

 副官  ヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ少佐

 

 エセックス級航空母艦 『イントレピット』

  艦長 F・D・イントレピット大佐相当官

  副長 リエリ・ビショップ中佐

  参謀 ナオミ・エヴァンス少佐

  空母航空隊司令 マテウス・ヨハン・ヴァイス中佐

 

 タイコンデロガ級ミサイル巡洋艦 『ヴィンセンス』

  艦長 ユーリア・ブラッドストーン大佐

 

 スプルーアンス級駆逐艦『イェルケル』

  艦長 ディノ・ディラッソ中佐

 

 ロサンゼルス級原子力潜水艦『セント・バージニア』

  艦長 ジョン・アレキサンダー・ベイツ大佐

 

 ウィチタ級給油艦『ウィチタ』

 キラウエア級給兵艦『キラウェア』

 

 

「裏がある演習にしては、力が入っていますな」

 

「だからじゃないか。

 色々見られているのは承知の上だ。

 表も、裏も。

 だからこそ、手を抜けん」

 

 デグ様はそう言って、西太平洋の海図を眺める。

 この航海は10日から二週間を予定し、硫黄島近海にて訓練を行うというのが表向きの名目だ。

 

「そうだ。

 入即出少将が買った連中、足は用意させるので密かに硫黄島に上げておいてくれ。

 メディカルチェックで、全員の遺伝子データは現在収集中だ」

 

 その冷酷な声にデグ様の意図を悟る。

 魔法に洗脳なんでもアリのこの闇鍋世界だからこそ、死亡という欠員すらクローンでごまかす腹積もりらしい。

 それだけの闇がこの作戦の背後にある。

 そうなれば、こちらも保険をかけておくか。

 

「一人、そちらの人間で推薦したい人物が居ます」

 

 デグ様が興味そうな目で俺を見る。

 その推薦員の職業を聞いて唖然とする五秒前。

 

「ケイシー・ライバック上等兵曹。

 コックです」

 

「コックだと!?」

 

「ええ。

 戦艦『ミズーリ』のコックだそうで、なかなかの腕だとか」

 

 それでこの人はピンとくるからここまで登ってこれるのだ。

 同時に絡んでいないらしいというか、絡んでいたら俺のほうが困る。

 

「あの一件、ペンタゴンの上の方しか知らない話なのだがな」

「こちらにも伝手はあると言っておきましょう。

 『イントレピット』艦内で彼の料理を食べるのを楽しみに……思い出した。

 そのあたりの設備の更新はしておいた方が良いですよ」

「我が国を舐めてもらってはこまる。

 物量と兵站で世界の覇者になった国がそんな所見逃す訳無いだろうが」

 

 書類を置いて互いに苦笑していた所に、デグ様の副官であるヴィクトーリヤ・イヴァーノヴナ・セレブリャコーフ少佐が入ってくる。

 

「失礼します。

 外交案件でトラブルが発生しました。

 英国がこの訓練航海に観戦武官を送り込みたいと申し出ており、外交筋だけでなくワシントンサイドからも圧力が」

 

「何処のどいつだ!

 この忙しい時にお客様等……」

 

 書類を見たデグ様が笑い出す。

 それを俺に差し出してくれたので、俺も拝見し爆笑する。

 デグ様は上は知らないのかもしれないが、俺は上も下も知っていた。

 

 英海軍観戦武官

  シェルビー・M・ペンウッド少将

  副官 ジェームズ・ボンド中佐

 

 理由が分からない叢雲とヴィーシャ少佐が俺達の爆笑を理解できずに首をかしげる事になった。




意図的に史実艦と架空艦を混ぜている。
給油艦と給兵艦の人事は力尽きた。


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洋上人狼 その2

学園都市があるので、技術は史実時代より進んでいる設定。
だから、こんな初手になった。


「!……出撃するわ!」

「駆逐艦、浜風、出ます!」

 

 日米合同の第50任務部隊の出撃日。

 俺たちの叢雲と浜風を先頭に次々と参加艦艇が出撃してゆく。

 一週間の準備では大規模な改造はできずに、後部甲板の武装を取っ払ってヘリ甲板を用意したぐらいだろう。

 叢雲とマシュ風の装備はこんな感じ。

 

 

 叢雲

   5inch単装砲 Mk.30 2基2門 ☆10

   25mm三連装機銃 集中配備 ☆10

   74式アスロック8連装発射機 × 1基

   ボフォース対潜ロケット4連装発射機 × 1基

   68式3連装短魚雷発射管 × 2基

   OPS-11B 対空レーダー

   OPS-17 水上レーダー

   81式射撃指揮装置

   66式探信儀 OQS-3

   SQS-35 可変深度式ソナー

   NOLR-6

 

 

 浜風

   10cm連装高角砲

   13号対空電探改

   25mm三連装機銃

   四式水中聴音機       ☆10

   3式爆雷投射機集中配備

 

 

 みねぐも型になった叢雲は大部分の装備を近代化させたので、いくつかの装備をマシュ風に渡すことにした。

 通信機や生活必需品などの更新でマシュ風は精一杯だが、後部甲板の装備は外してヘリ着艦スペースだけは用意させている。

 万一艦内がバイオハザードとなったら、ヘリで英霊を送り込む予定だからだ。

 硫黄島まで二日、訓練一週間、帰り二日に予備日三日の計二週間の演習航海である。

 艦橋を見ると、ヨロシサン製薬のハイデッカータイプの隊員が艦橋に数人居る。

 士官や下士官は前からの引き継ぎでかなり残せたのだが、隊員は浜風の方にも割かないといけないのでこのクローンを投入せざるを得なかったのだ。

 体力は十分で言われたことはこなす、最低限の兵士の練度は満たしていた。

 

「こんなのを投入せざるを得ないとは、世も末ですな……」

 

 美野原主席幕僚が嘆くが、短期間の戦力化は定数不足の海自にとって手放せないものになるだろう。

 ましてや、悪魔とかの訳が分からない連中が表に出ようとしているこのご時世では。

 

「浦賀水道を出たら幹部連中を集めてくれ。

 今回の航海の目的を説明する」

 

 知らず知らずのうちにため息をつく。

 内部の反乱分子のあぶり出しと粛清が目的なんてこの時点で言えるわけもないので、訓練航海で押し切るしかないだろう。

 できれば、反乱分子が居ない事を祈るしかなかったが、多分無理だろうなとも思っている俺が居た。

 

「今回の航海の目的だが、訓練航海であると同時に、実験航海でもある。

 ヨロシサン製薬とオムラ・インダストリーから送られたハイデッカーとオイランロイドのカタログスペックは以下の通りだから確認しておいてくれ」

 

 幹部士官達が、資料を見てため息をつく。

 美野原主席幕僚と同じく、こんなものを投入する事に対する怒りとも嘆きともつかない声が漏れる。

 規程乗員220人の内、人間は60人で残りは皆クローンとオイランロイドと悪魔と英霊と対魔忍である。

 後半に行くほどなんかなぁなのは言うまでもない。

 浜風の方はもっとひどく、239人の内、人間は幹部連中の30人ちょっとしか用意できなかった。

 いかに、海軍軍人が技術者であり、即席育成が難しいかを端的に示していると言えよう。

 

「質問があるのだが」

 

 第71護衛隊司令の梅津海将補がモニターから声をだす。

 学園都市の通信技術を駆使した結果、この時代なのにTV会議が可能になっている。

 さすが学園都市。

 

「どうぞ」

「こちらの艦に送られてきた船員についてだ。

 どういう意図があるのかご説明頂きたいのだが?」

 

 梅津海将補の言葉に、隣のモニターの第一護衛隊の衣笠一佐も頷く。

 送り込んだのは、クローン対魔忍である。

 もちろん慰安要員なんて言えるわけもないので、カバーストーリーが必要になる。

 

「端的に言えば、お目付けですな。

 そこからは、彼女に説明させましょう」

 

 俺がまず衝撃を与えて、次が細かな言葉で撹乱しはぐらかす。

 かくして、カメラは俺の隣の陸自制服姿の朧に向けられる。

 

「陸上自衛隊特殊作戦第四中隊の甲賀朧三尉と申します。

 今回の実験航海に便乗してこちらの実験も行えるようにと入即出海将補相当官に交渉させて頂きました。

 また、こちらの実験も市ヶ谷の承認済みです」

 

 こうしてみると陸自士官に見えなくもない。

 その胸がどう見てもハニトラ要員であると主張しているのだが。

 

「我々特殊作戦群は、その作戦において敵地への隠密理の上陸等も行います。

 今回は、その上陸の実地試験を目的としています。

 米海軍にもお願いして各艦に戦闘班を分乗させ、それぞれを上陸させて、最終的には小隊規模の作戦行動を行う。

 そういう訓練計画です」

 

 20人のクローン対魔忍の指揮の元、80体のオイランロイドが上陸して工作活動を行う。

 これが色気ムンムンの連中しかいないのだから、色々と無理があるのは承知の上だが、対魔忍の戦闘力はお飾りではないから本当に困る。

 

「……こっちの世界ではこういう作戦が当たり前なのですか?」

「……少し前までは違っていたのですよ……」

 

 梅津海将補の唖然とした声に、衣笠一佐の諦めともつかない声が続く。

 その少し前とは聖杯戦争の事なのは言うまでもない。

 俺はわざとらしく咳をして話を元に戻すことにした。

 

「なお、お目付けというのも本当だ。

 昨今、自衛隊に流れる不穏な噂の払拭も彼女たちは兼ねている。

 くれぐれも行動には注意をしてもらいたい」

 

 梅津海将補の顔が強ばるのが分かる。

 彼らの世界では自衛隊のクーデターなんてありえないだろうからな。

 

 

 

 叢雲艦内後部。

 くっつけられたシャドウ・ボーダーのあたりはロリンチちゃんの居城と化していた。

 叢雲がみねぐも型になったのを良いことに、異界化をこっそりと進めるあたり確信犯だが、そんな異界化された一室に今回の助っ人の部屋があった。

 

「呼んでいただければ、こちらから参りましたのに」

 

 シスター・シャークティは麻帆良学園より持ち込まれた大量の吸血鬼治療薬を背後ににっこりと微笑む。

 天ヶ崎千草との関係はぎくしゃくしているが、とげとげしいものはだいぶ薄れている。

 

「あいにく、この船にも盗聴器や集音器がとりつけられているみたいでね。

 腹を割った話し合いをするにはここが一番安全という訳だ」

 

「俗世というのは難儀なものだな。

 身内にも監視されるとは」

 

 シスター・シャークティの隣でたばこを吸っていた女性が苦笑し、俺が実にわざとらしくつっこむ。

 身内たる時計塔から封印指定を受けて、身を隠さざるをえなくなった女魔術師に。

 

「貴方がそれを言いますか?

 とはいえ、来てくださったことには感謝しますが」

 

「当たり前だ。

 超天才の英霊に会える上に、こんな素晴らしい技術を直に見て触れていじれるのだぞ!

 来ないわけがないだろうが!!」

 

 オルガマリー・アニムスフィアの調整が一区切りついたというかつけた彼女は、出港ギリギリの乗船となった。

 おかげでこちらはかなりの手が打てる。

 

「とはいえ助かった。

 ロリンチちゃんだけでは手が足りなくてね」

 

 実際、叢雲艦内のオイランロイドのバックドア削除すらまだ追いつかず、ハイデッカーの方は手すらつけていない状態。

 悪魔たちだけでなくモードレッドが居なかったら最悪艦内制圧もありえたから、蒼崎橙子の参加は本当に助かる。

 

「で、ナチの残党がこの艦隊を狙っているという話だが本当なのか?」

「狙っているというよりも、奴らが起こそうとする作戦に俺たちが邪魔だから排除するというのが正しいでしょうね。

 仕掛けるとしたら……」

 

 そこで艦内放送が響く。

 叢雲の切羽詰まった声が事態を明確に物語っていた。

 

「やる……司令官!

 大急ぎで艦橋に来て!!

 緊急事態よ!」

 

 ステンノと共に艦橋に来た時、艦隊は既に大混乱に陥っていた。

 床に片膝をついた叢雲を抱きしめてあたりを見ると、無線が輻輳し発光信号や手旗信号まで使われている始末。

 

「何が起こった?」

 

「『ヴィンセンス』、『たかつき』、『たちかぜ』の海軍戦術情報システムが途絶。

 この船の海軍戦術情報システムも止まりましたが、艦長が全権を掌握して強引に動かしている状態です」

 

 美野原主席幕僚の声に言葉を失う俺。

 艦娘化の恩恵がこんな所にと苦悶の汗を浮かべる叢雲を労おうとしたら、続きの言葉に俺も言葉を失った。

 

「戦術情報システムは横須賀基地ともリンクしており、そっちも止まって大混乱になっています。

 米海軍の方は厚木や横田まで止まったらしく、被害がどこまで行っているのか見当も付きません」




『イントレピット』
 叢雲と同じで艦娘が全権掌握で強引に回復。

『浜風』
 そもそもシステムを積んでいないし、積む時間もなかった。

『みらい』
 こうなる事を恐れて、システムを繋いでいなかった。



初手のコンピューターウイルステロ
 『Twelve Y. O.』のアポトーシスII。
 ちょっと便利すぎませんかね。このウイルスと読んだ時思ったけど、使う側になるとこれまじで便利と手のひら返し(笑)


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洋上人狼 その3

「報告を頼む」

 

 八丈島沖合。

 そこで起こった海軍戦術情報システムのシャットダウン。

 リンクしている在日米軍横須賀・厚木・横田基地のシステムまで落ちるという大騒ぎにモニター向こうのデグ様の視線は凄みがある。

 海軍戦術情報システムのダウンは航行するだけなら大きな問題はないが、戦闘には多大な支障が出る。

 そのため、現在上空ではヘリどころかイントレピットからE-1Bを出して索敵に当たらせていた。

 もちろん、各艦とも第一級戦闘配備なのは言うまでもない。

 

「『ヴィンセンス』の海軍戦術情報システムは使い物になりません。

 データそのものが消えています。

 横須賀に帰らないと復旧は無理です」

 

 『ヴィンセンス』艦長ユーリア・ブラッドストーン大佐が悔しそうな声で告げる。

 同じような顔で第1護衛隊の衣笠一佐も報告した。

 

「『たかつき』と『たちかぜ』も同じく海軍戦術情報システムが使い物になりません。

 おそらくは、『ヴィンセンス』と同じ状況だと思います。

 我々の方も復旧は横須賀に帰ってからになるでしょう」

 

 そして、次の報告が続く。

 その声は屈辱に満ちていた。

 

「『セント・バージニア』の海軍戦術情報システムもやられていた。

 我々は作戦行動が行えない為、横須賀に帰還したい」

 

 作戦行動中の潜水艦が浮上するというのはトラブルを起こしたと言っているようなもので減点対象になる。

 というか、出港したての任務部隊の1/3の船が戦闘時に使い物にならないという被害は俺を含めた皆の顔色が悪くなるのにふさわしいものだった。

 

「最初に言っておく。

 今回のトラブルの責任はこの私にある」

 

 こういう事が言えるからさすデグが広がるんだよなぁ。

 気づいていないみたいだが。

 

「と、同時にトラブルの発生そのものは今回の訓練航海において起こりうる物と想定している。

 よって、訓練航海そのものは行うが……何だ?」

 

 モニター向こうのデグ様の顔が横を向く。

 なんだかの報告を受け取ったらしい彼女は「十五分待て」と言ってモニターを消す。

 そのすきに、海自内部での確認をする。

 

「で、うちの方の損害は『たかつき』と『たちかぜ』だけかい?」

「横須賀基地は在日米軍と回線が繋がっていたため、被害が発生しています。

 市ヶ谷のシステムにも潜り込まれたらしく、被害報告が上がっています。

 また、在日米軍のネットワークによると真珠湾の太平洋艦隊司令部にも被害が出ているようです」

 

 美野原主席幕僚の報告に顔をしかめざるを得ない。

 こういう事をするという以上、必ず次がある。

 それが俺たちなのか、デグ様なのか絞れないのがこの硬直を発生させていた。

 

「仕掛けるとしたらどういう手がある?」

 

「洋上艦艇は米軍の監視衛星から見られる以上、仕掛けは潜水艦でしょう。

 既に、こちらも厚木と硫黄島からそれぞれP-3Cを出して哨戒をさせています。

 それと、第4護衛隊群直轄艦『ひえい』と第43護衛隊の『いそゆき』と『はるゆき』が出港準備に入ったそうです」

 

 過剰なとも思ったが、この手のトラブルでの逐次投入は百害あって一利なしだ。

 何も言わずに頷いておくことにした。

 デグ様の顔がモニターに戻ると同時に、その隣に英海軍観戦武官のシェルビー・M・ペンウッド少将の顔が見える。

 

「諸君。

 英海軍観戦武官のシェルビー・M・ペンウッド少将から貴重な情報がもたらされた。

 よってここで公開したいと思う」

 

「我々の情報部は、近年の戦争の背後において暗躍している秘密組織を追いかけていました。

 その組織はミレニアムと称し、西側世界の政財界に多大な影響を与えております。

 そんな組織が、極東方面において暗躍しているとの情報を掴み、ここにやってきた次第であります。

 これがミレニアムの工作であるならば、必ず次が来るだろうと考えて間違いがありません」

 

 ペンウッド少将からもたらされた貴重な情報にモニター越しの皆がざわめく。

 それならば、まず間違いなく潜水艦による攻撃。

 狙うならば、俺の叢雲とマシュ風とあのイントレピットの三隻。

 ここで俺は疑問が出て、モニター外でメモを書き美野原主席幕僚の意見を聞く。

 

『潜水艦で襲ってくるとしよう。

 だが、それを出撃から攻撃まで隠蔽できるのか?』

 

 美野原主席幕僚は首を横に振る。

 このタイミンクで仕掛ける理由は何か?

 

「この組織はナチスの残党によって構成されています。ただ、我が国だけでなくイスラエルのモサドも追っておりますが、南米に拠点を築いた事以上の事はまだ掴めておらず……」

 

 ナチス残党の南米逃亡は結構有名な話で、敗戦寸前のドイツからUボートで逃れた……すごく嫌な予想が頭をよぎった。

 駄女神が闇鍋で設定を足してゆくから、その思いつきが多分実現化してしまうこの世界の悪夢を心の中で罵倒しながら、デグ様たちが見ている中俺は美野原主席幕僚に漏らす。

 

「タンカーだ。

 多分シージャックされているタンカーがある。

 マラッカ海峡あたりで取り替えられたら、こっちでは確認のしようがない盲点を突いてきやがった!」

 

「おい!

 入即出少将!

 皆に分かるように説明しろ!」

 

 モニター越しのデク様に俺は苦笑しながらその説明をする。

 

「空のタンカー内部にドックを用意して、そこに潜水艦を隠すんです。

 密閉空間だと空気が下から逃げないので、船底に穴が開けられるのがこのドックの優れた所です。タンカーの出入りが疑問に思われない東京湾南方の八丈島近海で仕掛けてきたのも理由が通ります」

 

 海軍戦術情報システムを潰したのもこれが理由だ。

 派手に仕掛けたのは、森のなかに木を隠すため。

 つまり、最大の脅威である攻撃型原子力潜水艦を無力化するため。

 だからこそ、俺はその荒唐無稽な結論を皆に告げた。

 

「つまり、敵は、Uボートで俺たちを沈めに来たんです」




「艦娘でUボートをヒャッハーするぜ!」
「UボートXXI型だときついよ」

という会話から生まれた今回の話。
 なお、その後でデグ様がイントレピットを神引きする奇跡を見せたので、こんな展開に。


ユーリア・ブラッドストーン大佐
 『監獄アカデミア』。
 デグ様の出世の調整からか、湾岸戦争が地獄の釜になったからなのか知らぬが28歳の大佐である。
 デク様の年齢はこのあたりから察して欲しい。
 どうせエロゲー美魔女だし。


空のタンカーに潜水艦のドック
 『沈黙の艦隊』。サザンクロス号。
 たった一回の補給で沈められ、その沈没にまぎれて『やまと』は脱出した。 


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洋上人狼 その4

「ありました!

 海保からの連絡で、交信に反応しないタンカーが一隻!

 帝国原油輸送所属『ムーンライト・エンプレス』。

 25万トンタンカーで、ペルシャ湾からの原油を積んで鹿島臨海工業地帯に向かうとの事。

 マラッカ海峡で海賊に襲われたそうですが、半年の交渉の後身代金を払って開放されたと……」

 

 その時点で入れ替わっていたんだろうよ。

 状況が切羽詰まっていたのに政治が邪魔をする。

 

「海保からの呼びかけに応じない場合、臨検を経て……」

「その間に、攻撃を受けたらどうするんだ?

 攻撃を受けるまで待てと?」

 

 梅津海将補が常識的段階を踏んだ対処を説明するが、デグ様はにべもない。

 眼の前で己の命まで危険にさらされているのに法も何もあったものじゃないだろうにという意見なのだろうが、梅津海将補の断言にさすがに毒を抜かれる。

 

「そうです!

 我々は、何があっても先に手を出してはいけないのです!!」

 

 正しくもあり間違ってもいる。

 それを頭ごなしに否定する気にはなれない。

 そう仕向けたのは、デグ様の背後にある星条旗であり、それを追認したのは民主国家である日本国民の総意なのだから。

 俺が横から口を挟んで場をかき混ぜる。

 

「真珠湾のお仕置きがキツすぎましたな。

 若狭湾に次いでこれです。

 半世紀かけて寝た子を起こしますよ」

 

「起こさないと、我々が死ぬのならば遠慮なく起こすさ。

 入即出少将。

 責任は私が取るから、貴官は貴官の最善となる行動をとり給え」

 

 さすデグ。

 この人のことだから、失敗でも成功でもうまく立ち回れるのだろうな。

 問題は、この瞬間俺が生き延びれるかどうかだ。

 

「その言葉、録画しましたからな」

 

「生きていたら、サインまでつけてやる。

 私は死にたくないから、対潜ヘリは出した!

 現時点を持って、『ムーンライト・エンプレス』とそこに隠れる潜水艦を敵対勢力と認定し、これを排除する」

 

 だが、敵の手の方が早かった。

 

「レーダーに飛翔体反応!

 ミサイルです!!

 目標は我が艦隊!!!」

 

「オールウェポンズフリー!

 全て叩き落とせ!!」

 

「ミサイルの画像出ました……

 ……これは、V-1です!

 二次大戦でドイツが使っていたV-1ミサイルです!!!」

 

 

発射されたミサイル          47発

途中墜落したミサイル         5発

遠距離で撃墜したミサイル      13発

近距離で撃墜したミサイル      26発

残りミサイル               3発

 

 

 V-1ミサイルの射程はおよそ250キロ。

 現代戦においてはほぼ至近距離からのミサイル飽和攻撃に1/3の艦の海軍戦術情報システムが潰されたのにも関わらず、できうる限りの防戦に努めたのは特筆に値する。

 特に、『みらい』の防戦は凄まじく、叩き落としたミサイルの大部分はこの艦の活躍無くしては語れない。

 太平洋戦争の神風攻撃の恐怖から始まり、冷戦時ソ連のミサイル飽和攻撃を迎撃する為に開発されたイージスシステムはその機能を十全に発揮していた。

 それでも、残ったミサイルは3発。

 これの1発でも空母イントレピットに当ててはまずいと覚悟を決めた俺はマシュ風に通信する。

 

「マシュ。

 頼む」

 

「はい。先輩」

 

 スキル『アマルガムコードD』発動。

 ミサイルのターゲットをマシュに。

 これでマシュの方にV-1ミサイルが向かう。

 そこで浜風の対空カットイン発動。

 

「これが駆逐艦の本分です!」

 

 それで何とか叩き落としたのが1発。

 残り2発。

 だから俺は、最後の切り札を切る。

 

「令呪を持って命ず。

 モーさん。

 宝具発動。

 ミサイルを全部叩き落とせ!」

 

「待ってました!マスター!

 此れこそは、我が父を滅ぼし邪剣。

 『我が麗しき父への叛逆』!!」

 

「ミサイル反応全て消失しました!」

 

 現在社会において実用化されていないビーム兵器まで使ってミサイルを全て処理。

 現代戦のスピードの速さを思い知る。

 

「諸君。

 気を抜くな。

 おそらく、この騒動に乗じて潜水艦が出た。

 タンカーへの攻撃および、潜水艦の排除に全力をあげよ!」

 

 デグ様の通信によって、引き締まる艦内。

 その間疑問が湧く。

 こちらの艦隊に手を出す場合、あのミサイルが本命?

 違う。

 実際艦隊には一隻も当たっていない。

 では、隠れて潜伏している潜水艦が本命?

 違う。

 自衛隊の対潜スキルは世界有数レベルだし、米海軍も対潜に手を抜く連中ではない。

 じゃあ、奴らの本命は何だ?

 

「陸じゃ大騒ぎになっているでしょうな。

 東京湾の真南で起こった海戦ですから。

 頭が痛いです」

 

 この状況そのものが奴らの狙いとしたら、現状は大成功と言ったところだろうか。

 また一つ、日米安保にヒビが入る結果となったのだから。

 

「こちら『イェルケル』。

 ターゲットのタンカーに向けてミサイルを発射する。

 5,4,3……緊急事態!

 戦術コンピューターシステムダウン!!」

 

「待て!

 ミサイルは発射されているぞ!

 目標は『叢雲』!!」

 

 そう来やがったか。

 潜った潜水艦が活躍するには、邪魔なのが俺の二隻という訳だ。

 潜った潜水艦は対潜ヘリの連中にまかせて、今はこのミサイルをなんとかしないと。

 

「ミサイルを叩き落とせ!」

 

「邪魔よっ!」

 

 まさかの味方からミサイル誤射だが、一発だけなら艦娘である叢雲が対処できない訳がなかった。

 最高レベルの叢雲の25mm三連装機銃集中配備☆10の銃撃は正確にミサイルを撃ち抜き、爆風を艦に叩きつけ衝撃が艦を揺らす。

 手近な物にしがみついた俺の耳に新島副長補佐が叫ぶ。

 

「損害報告!」

 

「各部異常なし。

 衝撃で何体かのハイデッカーが負傷。

 救護班が救護に向かっています」

 

「こりゃ、コンピューターシステムは全部やられていると考えるべきだろうな」

 

 俺のボヤキに、美野原主席幕僚が続く。

 まだ目の前の光景が信じられない顔をしているが幕僚の仕事は忘れていない。

 

「まともな戦闘行動が取れるのは本艦と僚艦のみと思われます」

 

 ならば、動ける俺たちで仕留めるべきと俺が口を開こうとして止まる。

 通信士が敵艦からの通信を報告してくれたからだ。

 

「敵艦から通信!

 今より本艦に攻撃を行った場合、東京にミサイルを発射する。

 なお、これは通常弾頭にあらず。

 繰り返す。

 これは通常弾頭にあらず」




証拠写真
 https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1107947029836103680


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洋上人狼 その5

祝!再アニメ化


『ここで、学園都市放送委員会所有の人工衛星から捉えた衝撃の瞬間を御覧ください。

 米軍艦が護衛艦に攻撃する決定的瞬間です』

 

『……この誤射事件について横田の在日米軍司令部は沈黙を続けており、外務省と防衛庁は「現在調査中」のコメントを……』

 

『ですから、若狭湾のミサイル誤射事件もそうですけど、戦後日米安保条約の矛盾点が今ここに出てきた訳ですよ。

 かつて我が国は米国に子供と揶揄されましたが、そろそろ大人として自主独立の……』

 

 学園都市に拠点を置く学園都市放送委員会。

 その衛星放送を眺めて俺は頭を抱える。

 およそ状況は最低ではあるが、ある一点を隠している事で最悪ではないと言えるだろう。

 

「あのミレニアムの連中の狙いが冬木の大聖杯とはねぇ……」

 

『24時間以内に冬木市の大聖杯を譲渡せよ。

 さもなければ、東京にミサイルを撃ち込む』

 

 これが敵の要求だった。

 ある意味当然といえば当然なのかもしれない。

 あまりに衝撃が強すぎた、聖杯戦争でのアマテラス様召喚。

 それができるのならば、神々以外でも召喚できるのではと考えるのはある意味当然だろう。

 たとえば、英霊というか反英霊での彼らのボスである総統を召喚するとか。

 

「既に横須賀基地に設置されたレールガンによる迎撃体制は完了しています。

 学園都市は今回の事件を憂慮しており、迎撃においては上空の人工衛星『おりひめ1号』の提供を申し出ているとか。

 また、入間基地の第一高射群が首都圏に展開を始めており、横田基地や厚木基地の米軍もパトリオット・ミサイルの展開を始めています。

 落とせるかと言えば落とせるでしょう。

 ですが……」

 

 美野原主席幕僚の声は硬い。

 敵の声明である『通常弾頭ではない』が問題なのだ。

 

「で、どうするのかしら?」

 

 ステンノの言葉に返事をせず、一旦艦と指揮を新島副長補佐と美野原主席幕僚に預けて俺と叢雲とステンノの三人は艦後部のロリンチちゃんの工房へ。

 事が事だけに、そろそろ片付けないといけない事を片付ける。

 艦内のスパイの処理である。

 

「モーさん。

 捕らえろ」

 

「よっしゃ!」

 

 霊体化からの不意打ちにスパイは対応した。

 さすが現役工作員。

 とはいえ、人間対英霊では人間がかなう訳もなく、モーさんに取り押さえられる海自隊員のネームプレートを確認する。

 

「砲雷科第一分隊一等海士。如月行。

 さて、元の所属は防衛庁情報局か、CIAか」

 

「……」

 

「まぁ、いい。

 ここからはオカルトな話でね。

 お引取り願おう」

 

 COMPを操作してクー・フーリンを召喚し、後部の異界化した部屋の一室に閉じ込めておく。

 殺しはしないし、殺すのももったいない貴重な人材なので丁寧に扱うよう伝えて、ロリンチちゃんの工房へ。

 ロリンチちゃんと蒼崎橙子とシスター・シャークティーと天ヶ崎千草とオカルト勢全員集合である。

 

「とりあえず、状況を説明しよう。

 東京にミサイルを撃ち込むと脅すミレニアムの連中の狙いは冬木市の聖杯だ。

 政府は現在混乱中でこちらには何も言っていない」

 

「案外自分たちだけ逃げ出す準備をしていたりしてね」

 

 叢雲の冗談にありそうだと苦笑する俺が居た。

 対魔忍世界の政府だからきっちりと腐っているし、安心して逃げ込めるシェルターとして地下都市ヨミハラ、今は東京ジオフロントがある訳で。

 政府の混乱は、現場の判断という先手がとれる事を意味する。

 

「大きな問題は2つ。

 一つは艦内の裏切り者の対処だが、ハイデッカーとオイランロイドのバックドアの排除は済んでいるか?」

 

 

バックドアの排除率

 ハイデッカー    72%排除

 オイランロイド   52%排除

 対魔忍クローン  88%排除

 残りの排除     4時間後

 

 

 皆を代表してロリンチちゃんが報告する。

 その幼い顔には疲労の色が残っていた。

 

「ハイデッカーのバックドアは七割。

 オイランロイドは半分。

 対魔忍クローンはほとんど排除している。

 あと四時間って所かな」

 

「よし。

 それに合わせて艦内を掌握する。

 艦内主要区画のハイデッカーとオイランロイドは即座に入れ替える。

 それは天ヶ崎さんがやってくれ。

 艦内鎮圧用の対魔忍部隊の指揮はシスター・シャークティに預ける。

 ロリンチちゃんと青崎さんはそのままバックドア排除の作業を続けてくれ」

 

 俺の言葉に皆が頷くのを見て、その次を考える。

 シージャックしているタンカーへの対処は実は簡単だったりする。

 ステンノの能力で叢雲をステルス化してタンカーに接岸し、英霊と悪魔を先頭に制圧する。

 それはいい。

 問題はその制圧時に、海中のUボートが悪さをしないかと、ミサイルが都心に発射されないかの2つのみ。

 

「もう一つは米軍との連携だ。

 という訳で頼む」

 

「はいな」

 

 天ヶ崎千草が式神を使った連絡術を使い、数十キロ離れた空母イントレピットのデグ様に連絡をとる。

 式からの反応を待つこと数分。

 デグ様の声が式を通じて帰ってくる。

 

(待っていたよ。

 入即出少将)

 

 さすがデグ様。

 この手の術の対応力が高い。

 

「確認ですが、掃除は?」

 

(最低限しているはずだ。

 彼女、イントレピットのお墨付きの部屋だからな。

 こっちの状況を話そう。

 ミサイル迎撃時にリエミ・ビショップ中佐とナオミ・エヴァンス少佐が襲われた。

 コックと観戦武官の副官が防いでくれたけどな。

 犯人の船員達には共通点があった)

 

 どうやら保険はちゃんと機能したらしい。

 彼女たちのアヘ顔は見なくて良さそうだ。

 

(その船員達は、元ディノ・ディラッソ中佐の部下だった。

 それと、ダウンした海軍戦術情報システムには外部からの侵入は今の所発見されていない。

 内部犯、それも高いセキュリティーコードを持つ、たとえば艦長クラスが仕掛けたならば簡単にダウンさせられるかもしれんな)

 

 犯人をそれとなく示唆したデグ様だが、それは厄介事の提示でもあった。

 俺はその厄介事を口に出す。

 

「つまり、『イェルケル』のミサイル誤射、あれは誤射ではない可能性があると?」

 

(艦内への物理的な工作の痕もあった。

 私がUボートへの攻撃ができなかった理由がそれだ。

 あの時、入即出少将の浜風がミサイルを引き受けてくれなかったらと思うとゾッとする)

 

 だから、潜水艦への攻撃ができなかったのか。

 こちらも誤算があったが、敵も誤算があったという訳だ。

 

(それと、敵が通告してきたミサイルの弾頭が分かった。

 核ではないが、もっと厄介なものだ)

 

 聞きたくないが、聞かない選択肢はない。

 出てきた名前はとんでもないものだった。

 

(沖縄の辺野古基地で作成されていた『GUSOH』。

 1リットルで東京を死の都にできる毒ガスだ。

 学園都市から流出した技術を沖縄で研究していたらしいが、その実験施設のあった辺野古基地が何者かに襲われ、多大な被害と共にそれの紛失が確認された)

 

 化学兵器ときたか。

 頭を抱えようとしたらデグ様の声がまだ続いていた。

 

(もう一つあってな。

 『テルミット・プラス』。

 あまりに毒性が強い『GUSOH』を焼却処分する為に用いる特殊焼却弾だ。

 一瞬にして直径3キロの区域を6000度の熱で焼く、まあ放射能のない戦術核爆弾と思えばいいだろう。

 こいつも消えて無くなっていた)

 

「なるほどな。

 あのタンカーは沖縄近海を通っていた。

 Uボートでそれらを運んで、タンカーで回収という訳ですか」

 

 厄介事はどんどん増えていた。

 それでも時間は敵の味方である。

 

「時間が惜しいので、すばやく片付けましょう。

 こっちは、艦内の不審者を拘束しています。

 入れたクローンとオイランロイドのバックドアの排除は、四時間後に終了します。

 怪しげな手ですが、タンカーの排除は可能です。

 問題は、Uボートとミサイルと『イェルケル』です」

 

(現在、空母艦内の内通者の排除に時間がかかっている。

 その手のプロらしい英国観戦武官の言葉を信じるならば、あと7時間は欲しいらしい。

 その間、敵がおとなしくしてくれるかだな?)

 

「するでしょう。

 時間は敵の味方です。

 時間が経てば経つほど、日米安保にヒビが入ります。

 多分ミレニアムにとって、この作戦は陽動作戦でしかありません。

 向こうからすれば、俺やあなたが相互に相打ちしてくれれば最高。

 日米安保が無くなって、大西洋にこれなくなったら次善という所でしょうね。

 さすがに貴方が空母の艦娘を持つなんて想定外もいい所でしょうが」

 

 目的は一致しているのに、所属国家が違うだけでここまで意思疎通に齟齬が出る。

 それがたまらなくもどかしかった。

 

(では、八時間後にタンカーとUボートに対する作戦を開始する。

 タンカーの方は任せた。

 こっちはUボートを叩く)

 

「『イェルケル』は?」

 

(放っておけ。

 姑息ではあるが姑息だからこそ、尻尾を出さない限り決定的に裏切らない。

 ウイルスにやられたふりをしてのミサイル誤射がやつにとってのギリギリの線だろう。

 奴はまだ艦内の内通者が排除された事を知らない。

 その前に敵を潰してしまえは、後はどうとでもなるよ)

 

 細々とした作戦手続を確認し終えると、デグ様は実に嫌そうな声でそれを告げた。

 

(あと、うちの上を動かしたお人好しの馬鹿どもが多分こっちに着くだろう。

 邪魔はさせないつもりだが、何か言ってきたらこっちに回せ)

 

「お人好しの馬鹿ども?」

 

 とてもいい感じで闇鍋が極まっているのに、また入るらしい。

 なんかここまで来ると、もう笑えてくる。

 

(ああ。

 我が国の誇る巨大財閥の一つ。

 アーカムが協力を申し出てきている。

 私の方で断っておいたが、日本政府があのざまだと、そっちに押しかけるかもな。

 犯人の奴らが冬木の大聖杯をご所望ならば、アーカムがあの聖杯を封印しあらゆる権力からあれを守ろうとするのは同然だろう?)




 『GUSOH』 『テルミット・プラス』
 『亡国のイージス』
 福井晴敏作品にはこの手のギミックが多くあるので使いやすい。


 アーカム
『スプリガン』
 再アニメ化のニュースを見て、「あ、これ出せる」とぶち込みを決意。


証拠写真
 https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1109048267206082560


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洋上人狼 その6

 8時間というのは結構待たされる時間である。

 同時に、敵タンカー突入の準備は着々と整ってゆく。

 交代で仮眠をとっていたら、叢雲からヘリの着艦許可の報告が来る。

 

「で、相手は?」

 

「二機あって、一機はイントレピット所属UH-2B。

 タンカー制圧作戦の乗員を送ってくるって。

 英海軍のジェームズ・ボンド中佐とケイシー・ライバック大尉が率いる4人。

 ライバック大尉率いる4人は全員元Navy SEALs」

 

 そりゃデグ様だから海軍特殊部隊とのコネぐらいあるだろう。

 実は突入作戦に際して一悶着あったのだ。

 誰が指揮を執るかというやつで、俺は出れないので朧をリーダーにして突入班を編成する予定だった。

 ここで政治が邪魔をする。

 

「海の事件なのに、何で陸自が出てくるんだ?」

 

 ある意味当然の市ヶ谷からのツッコミである。

 もちろんこの手の介入が大嫌いなデグ様が拒否をするが、じゃあそのためには米軍からも突入要員を用意しないといけない訳で。

 これはコックであるケイシー・ライバックでいいだろうと俺たち二人共一致したまでは良かった。

 上官とトラブルを起こして左遷された結果、彼の現階級が上等兵曹なのが問題だった。

 パナマ侵攻の英雄で対テロ部隊の指揮官を下士官までに左遷させたあげく、戦艦ミズーリでの功績で戻さなかったのか戻せなかったのか知らないが、突入部隊の指揮官が上等兵曹なのはまずい。

 何しろ陸自の突入班の朧は三尉、つまり少尉なのだから。

 デグ様は野戦任官でとりあえずライバック上等兵曹を元の大尉にまで戻したはいいが、今度は首相官邸がいらない事をする。

 

「突入作戦において、神田旅団の隊員を送るので突入班は彼らの指揮下に入るべし」

 

 俺とデグ様が頭を抱えたのは言うまでもない。

 神田旅団は腐れきった対魔忍世界の首相直轄部隊で、その武力の行使においては秘密警察的な動きを平然とする連中である。

 自衛隊からの動きはまだ日米安保を盾に言い逃れはできるが、首相自らの要請にはさすがのデグ様もお断りがしにくい。

 何しろ、若狭湾ミサイル流出誤射事件に次いで、今度は米艦から護衛艦にミサイルが撃たれたのだ。

 既に外交問題に発展しており、デグ様の政治力では何とかできるレベルを超えていた。

 この事件解決に際して、神田旅団の隊員がそのまま俺を拘束粛清というシナリオもないわけではない。

 ここで、俺が日米安保協調路線でなく、自主独立路線の人間だった場合、度重なる在日米軍の失策に付け込んで色々できるのだ。

 首相官邸の動きは、その色々を首相に吹き込んだ誰かがいる事を確信させた。

 ここで助け舟を出してくれたのがボンド中佐である。

 

「でしたら、私が突入部隊の指揮を執りましょう。

 海軍の中佐が指揮を執るのですから、そちらの政府も文句は言わないでしょうし、言う場合は英国政府にです。

 今の彼らが英国政府に物を言えるかどうか楽しみですな」

 

 さすが稀代のスパイ。

 聖杯戦争絡みでうちの国が買収された事をしっかり掴んでやがる。

 この世界、時計塔なりイギリス清教なり魔法省なりHELLSINGなり魔法ゲートなり英国に色々集まっているから、かなり英国の地位が高い。

 我が国の腐敗と米国の失態に喜ぶ英国という図も無いわけではないが、その英国は第二次アシカ作戦待ったなしだからなぁ。言わないけど。

 

「もう一機は?」

 

「海自のS-61A。

 神田旅団の隊員を乗せているそうよ」

 

「先にUH-2Bを降ろす。

 その後でS-61Aだ」

 

 UH-2Bから5人の人間が降りてヘリが飛び去ってゆく。

 その中で中佐の階級章をつけた色男に俺は手を差し出し、相手も笑顔のまま握り返す。

 

「入即出やる夫海将補相当官です。

 護衛艦叢雲へようこそ」

 

「ジェームズ・ボンド中佐と申します。

 私も結構遊んできたのですが、少将も中々色男ですな」

 

 諧謔と皮肉はイギリスのDNAなのだろう。

 とはいえ稀代の色男にそう言われるのも悪くない。

 

「おかげさまで、良い女を捕まえられたのでこうして司令官の真似事をしていますよ。

 少し休憩してください。

 もう一機到着したら、ブリーフィングを行いましょう」

 

 そのまま今度はケイシー・ライバック大尉に手を差し出す。

 ライバック大尉は流暢な日本語の挨拶と共に俺の手を握ってくれた。

 

「ターニャ・デグレチャフ少将から聞いている。

 あんたが、俺を呼び寄せたそうだな」

 

「ああ。

 うまい料理が食べたくてな。

 得意なのだろう?」

 

「ああ。

 どうせ作戦開始まで時間がある。

 食堂を貸していただけるならば、それ相応のものをお出ししますが?」

 

「それは楽しみだ。

 食堂の利用許可を出すから、美味しいものを頼むよ」

 

 冗談で言ったのだが、本当に作り出すとは思わなかった。

 なお、うちの食材で作ったブイヤベースは本当に美味しくて、叢雲とステンノが完食する出来だった事をここに記しておこう。

 それからしばらくして、S-61Aが着艦し十数名の隊員が乗艦する。

 

「入即出やる夫海将補相当官です。

 護衛艦叢雲へようこそ」

 

「的場毅二佐です。

 入即出海将補相当官。

 あな……」

 

「じゃあ……これならどうかしら♥」

 

 的場二佐がステンノに魅了されて言葉を失う。

 何かアクションを起こそうとした隊員達も動きを止めざるを得ない。

 

「ヘリに揺られてお疲れでしょう。

 ブリーフィングまで時間があります。

 食堂にて少しお休みください」

 

 かくして、的場二佐と隊員達を送り出して、後部甲板のヘリポートに残ったのは一人だけ。

 あきらかに自衛隊員でないその姿は少年兵のように見えるし、歴戦の兵士にも見えた。

 

「……あんた、一体何をした?」

 

「ちょっとした魔法さ。

 官邸が作戦の主導権を求めて俺を拘束する可能性は考えていたからな。

 予防させてもらった」

 

 殺しはしないだろうが、拘束・監禁して指揮を官邸に一元化させる。

 成功したら官邸の功績、失敗したら俺に押し付けて米軍と自衛隊を叩くという感じなのだろう。

 首相官邸と自衛隊の間を察することができるならこの相互不信が何を意味するか言うまでもない。

 自衛隊のクーデターフラグが順調に進んでいるという訳だ。

 

「あんたに貼り付けと言った山本さんの理由が今理解できたよ。

 御神苗優だ。

 あんた、何をやったんだ?」

 

 アーカムの影響力の一端をさらりと見せてくれるスプリガンの派遣。

 俺は苦笑して、真実を茶化して伝えることにした。

 

「強いて言うなら、女神様の尻拭いかな?」 




最強のコックの元の地位。
 今の上等兵曹は左遷された結果で、対テロ部隊の指揮官やっているのだからと階級を探すが不明。
 よって類似作戦から探してみると、レッド・ウィング作戦(アフガニスタン)を見つけて、そこから大尉に設定。


官邸の思惑
 自衛隊不審+自主独立路線議員と官僚の圧力+後ろで囁く警察官僚+『やる夫掣肘した方がよくね?』という関係者の嫉妬+事件は会議室で起こっている=クーデターフラグは順調に進行中


的場毅
 『戦国自衛隊1549』。
 福井晴敏作品の海兵旅団の生みの親。
 この作品では、海兵旅団は生まれたけど権力闘争に負けて、神田旅団の幹部の一人なっている設定。


御神苗優
 『スプリガン』。
 聖杯がらみで派遣。
 当事者の一人であるやる夫の調査が目的であり、最終目的は、冬木の大聖杯の保護なのは言うまでもない。


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洋上人狼 その7

 作戦は簡単だ。

 ステンノの『気配遮断A+』で叢雲ごと接近し、タンカーに接舷し制圧。

 下の潜水艦の方は、デグ様のイントレピッドの対潜部隊に任せる。

 なお、自衛隊の方からも対潜フル装備のP-3Cが二機常時飛んでおり、潜水艦を取り逃すことは無いだろう

 

「先に潜水艦を沈めてしまわないの?」

 

 作戦前ブリーフィングで叢雲の質問に指揮官のボンド中佐が答える。

 さすがにいつもの伊達男ではなく軍人の顔をしていた。

 

「日本政府からのオーダーは、『ミサイルを撃たせるな』です。

 下の潜水艦を沈めたら、タンカーの連中は首都圏に向けてミサイルを発射するでしょう。

 それの撃墜自体は難しくはありませんが、彼らの言う通りにその弾頭が通常弾ではなかった場合、撃墜後が問題になります」

 

 ここでデグ様情報を俺は開示する。

 その通常弾頭ではない『GUSOH』と『テルミット・プラス』の説明を聞いて、頭を抱える突入班の面々。

 

「つまり、どっちが搭載されているかもわからないという訳だな?」

 

 どういう立ち位置でここに居るのかイマイチ分からないが、突入班に加わるつもりらしい御神苗優が俺に念を押す。

 面倒だから朧に預けよう。

 俺も頭を抱えたいのだが、この場の最上位指揮官として飄々と振る舞おうとした。

 

「俺なら、撃ち落とされる事を考えた上で、『GUSOH』の方を搭載するね。

 落としても風向き次第では房総半島まで毒ガスが広がりかねないしな。

 その理由から、タンカー撃沈も無しだ。

 この海域が毒ガスでどれ位使い物にならなくなるかわからない以上、経済的ダメージの方が大きい」

 

 事件の場所が八丈島の沖合という事はそのすぐ北が東京湾な訳で、多くの船舶が行き交っている訳だ。

 今回の事件発覚から船舶も避難を始めていたが、海上物流の停止は都内に不安をもたらすことになる。

 それは絶対に避けなければならなかった。

 

「接敵するのもそれが理由だ。

 ミサイルの発射口は既に衛星で判明しているから、発射口を叢雲で塞いで真っ先にミサイルを確保してもらいたい。

 ミサイルの工作と弾頭確保については、ボンド中佐とライバック大尉たちに任せる」

 

「了解した」

 

 さっきまでブイヤベースを作っていたライバック大尉がいい匂いをさせて返事をする。

 彼らを睨んでいた連中に俺は声をかける。

 

「そして、艦内の制圧は的場二佐におまかせする。

 甲河三尉とその配下をつけるので、存分に暴れてもらいたい」

 

「………了解した」

 

 初っ端の俺の拘束が失敗してから的場二佐とその隊員達は表向きにはおとなしい。

 なお、ロリンチちゃんの報告では、排除したバックドアを使って乗っ取りを企もうとした形跡があるので先手を打てたというのもあるのだろう。

 なお、捕まえていた如月行も釈放させて朧の下につけている。

 使える工作員は今は一人でも貴重なのだ。

 

「で、マスター。

 俺たちも暴れていいんだろう?」

 

 呼ばれもしないのだが、ワクワク顔で俺に尋ねるモーさん。

 その隣で同じく口に出さないがクー・フーリンが俺をじっと見ている。

 

「当たり前だ。

 お前らが今回の突入の華なんだからな。

 米軍と自衛隊連中がミサイルの確保している間、敵を防ぐのはお前らの役目なんだからしっかりやってくれよ」

 

 仲魔とサーヴァントは基本俺の命令しか受け付けない。

 ある程度の妥協はできるが、それでロスが出ることを恐れ、ボンド中佐はこれらを指揮下に入れるのを諦め、代わりに陽動作戦として放置する事を選んだ。

 かくして、突入班はこんな感じとなった。

 

 

タンカー突入班

 ジェームズ・ボンド中佐

  ケイシー・ライバック大尉 ミサイル無力化と弾頭の確保

   Navy SEALs 4人

   

  的場毅二佐 艦内制圧

   神田旅団隊員 十数人

 

   甲河朧三尉

    対魔忍 十数人(クローンこみ)

    オイランロイド 二十体

    如月行海士

    御神苗優

   

 

陽動班

 モードレッド

 幻魔 クー・フーリン

 魔神 大淫婦バビロン

 

予備・後方人員

 大天使 イスラフィール

 英雄  ジャンヌ・ダルク

 女神  ブリジッド

 

 

ステンノの気配遮断 68

敵の対処能力 79

 

ミサイル確保工作 96

ミサイル発射準備 22

 

対潜攻撃 28

敵潜水艦魚雷発射準備 4

 

 作戦は接舷するまでは上手く運んだ。

 陽動班が甲板に上がり、突入班が側面を爆破して突入する。

 だが、こちらの姿は見えていなかったのに、相手の迎撃はこちらを完全に想定していた。

 

「こちら突入班!

 豚の化物が武装してこっちを撃ってきやがる!!」

 

「こちら朧。

 敵はオークと思われます。

 銃撃で死ぬ相手ですので、おちついて対処を」

 

「こっちも化物だ!

 緑色の化物がこっちを襲ってきやがる!!

 銃は効くが弾の消費が激しい!」

 

「こちら、ボンド中佐。

 ミサイルの発射阻止に成功。

 『GUSOH』弾頭を確保した」

 

 轟音が聞こえる。

 作戦開始と共にP-3CとS-2の対潜飽和攻撃によって、Uボートは何もリアクションを起こすこと無く沈められた。

 これであとはどうとでもなる。

 そんな状況下で甲板では大決戦が発生していた。

 小型ミサイルと銃弾が暴れ、モーさんが押されていた。

 

「サーヴァントだ!

 サーヴァントが居るぞ!!」

 

 モーさんの叫び声にジャックフロストにカメラを持たせて偵察させると、モーさんと大淫婦バビロンを寄せ付けずに射撃を浴びせるアラフィフが一人。

 クー・フーリンが隙を狙うが、緑の化物ことアンブレラ社製のハンター数体に阻まれて近づけない。

 

「素晴らしい!!

 世界は破滅に満ちている!

 あっはははははははは!」

 

 実に楽しそうなアラフィフの声を聞きながら、俺の頭には疑問が浮かんで警鐘を鳴らしてきた。

 敵はこちらの接舷をほぼ読んでいた。

 にもかかわらず、ミサイルは発射されなかった。

 それならば、敵の狙いは何だ?




証拠写真
 https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1111160336395038720

 アラフィフ登場の理由はこの後の話で。
 いよいよ大詰め。

オーク兵
 『対魔忍 決戦アリーナ』
 こいつら銃とアーマーをつけているたちのわるい兵士である。
 もちろん性欲はたっぷりある。

ハンター
 『バイオハザード』トラウマの一つ。
 とはいえ、完全武装の兵士たちにって倒せない相手ではない。


4/3
 読者の方より情報提供をして頂き、S-2に変更。
 英語だけどイントレピッドさんのデータがこんなに!

http://www.wa3key.com/cvsdata.html#airgroup


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洋上人狼 その8

『女神の気まぐれ』がエグすぎる……


「応援を出す!

 イスラフィールとブリジッドは甲板に上がって援護を!」

 

 そのまま俺は隣りにいるステンノにも頼む。

 対男性サーヴァントならば、こちらには切り札がある。

 

「という訳で、わが女神様。

 そのお姿で魅了して頂きたく」

 

「私、働くの嫌いなのよね。

 けど、いいわ。

 貴方の頼みなのですから」

 

 自衛隊の服装に身を包んだステンノというのも凛々しい。

 新たな魅力にアラフィフもメロメロだろう。

 

「あら?

 私には声をかけないのかしら?」

 

 むっとする叢雲に俺は実にわざとらしく挑発する。

 ツンデレな掛け合いも長い付き合いだからこそ楽しい。

 

「言わなくても、手伝ってくれるだろう?

 一番長い付き合いで、俺を知っているだろうからな」

 

「そうだけど、私だってちやほやされたいのよ……」

 

「はいはい。

 叢雲。

 頼む。

 君の助けが必要なんだ」

 

「分かっているわ!

 ここからが、私の本番なのよ!!」

 

 

 

新宿のアーチャー レベル90 有利クラス補正不利クラス補正打ち消し レベル90

アンブレラ社 ハンター レベル22 邪智のカリスマバフ×1.2 ×9体=237

合計327

 

セイバー モードレッド レベル90

 不利クラス補正1/2×女神の気まぐれバフ×1.2=54

魔神 大淫婦バビロン レベル69 女神の気まぐれバフ×1.2×1.2=99

幻魔 クー・フーリン レベル43

 有利クラス補正二倍×女神の気まぐれバフ1.2×1.2=123

大天使 イスラフィール レベル42 女神の気まぐれバフ×1.2×1.2=60

女神 ブリジッド レベル47 女神の気まぐれバフ×1.2×1.2=67

アサシン ステンノ レベル100 女神の気まぐれバフ×1.2×1.2=144

付喪神 叢雲 レベル175 女神の気まぐれバフ×1.2×1.2=252

 

合計889

 

 

1 新宿のアーチャー勝利

2 同上

3 モードレッド勝利

4 同上

5 同上

6 同上

7 同上

8 同上

9 同上

10 熱烈歓迎

 

結果 9

 

 

 勝負はこちらの増援が戦闘に参加する前に、新宿のアーチャーがモードレッドを落とせるかどうかにかかっていた。

 その時間をこちら側はきっちりと稼ぎきった。

 

「追い詰めるわ!逃がしはしない!!」

 

 相手が見逃していたこちら側の盲点。

 メンタルモデルの叢雲の攻撃力である。

 バフがかかっていたとはいえハンターの知能では敵を追ってしまい、甲板から降りた所を叢雲の25ミリ機銃の集中砲火を食らって肉塊に変わると、大淫婦バビロンが『女帝のリビドー』で魅了を付与してハンターを甲板から叢雲の方に誘導してゆく。

 潰しきれなかったハンターは叢雲の甲板上で女神ブリジッドが掃討してくれるので問題がない。

 こうして、アラフィフアーチャーとモーさんの一騎打ちとなる。

 

「汚えぞ!

 撃ってばかりいないで剣で勝負しろ!

 剣で!!」

 

「何を言っているのかね?

 悪人が正々堂々なんてそっちがおかしいだろう?」

 

 その立ち回りはチェス・プロブレムのごとくモーさんが追い詰められてゆく。

 『蜘蛛糸の果てA+++』を使われた時、チェックメイトとなるはずだった。

 

「優雅に舞い、冷酷に絡め取る。

 私は蜘蛛であり、蝶であり、しがない教授であり、悪のボスなのさ」

 

 あとは宝具を放つだけ。

 その手を止めたのは、大天使イスラフィールの背に乗って微笑む魅惑の美声だった。

 

「あら……つい。ごめんなさいね♪」

 

 アサシンの真価は殺すことではない。

 その殺す隙を作ること。

 そう言う意味で、この女神様は特化していた。

 殺すのは、別の誰かに任せてしまえばいい。

 その誰かも、既に準備が整っていた。

 

「その心臓貰い受ける!

 『 刺し穿つ死棘の槍』!!」

 

 クー・フーリンの宝具が新宿のアーチャーの霊核を貫いた。

 それでもアラフィフは悪党の笑みを崩さない。

 

「君たちの勝ちだ……誇るがいい!

 だが、あの少佐は手強いぞ……」

 

 やっぱりあの少佐の仕掛けだったか。

 そう思った瞬間、艦内から報告が入る。

 

「こちら朧。

 オークに嬲られていた女性たちを保護した。

 救援班を頼む」

 

「こちらボンド。

 敵の計画書を入手した。

 奴らの狙いは叢雲だ!

 テルミットプラスをこのタンカーに仕掛けて叢雲を爆沈させるつもりだったらしい!

 すぐに退避を!!」

 

 真っ青になる俺たちを見ている訳ではないだろうが、新宿のアーチャーことジェームス・モリアーティは微笑って消えてゆく。

 

「爆発オチなんて最低と思うだろう?

 だが、王道もたまには良いものだよ。

 堪能してくれたまえ。マスター……」

 

「ボンド中佐!

 爆弾の解除は可能か?」

 

「無理だ!

 まだ爆弾が見つかっていないし、解除の時間もある。

 この戦闘そのものが時間稼ぎなら、いつ爆発してもおかしくない!」

 

 朧が見つけた女性たちというのも俺たちを足止めする罠か。

 見事に蜘蛛の糸に絡まっているので苦笑するしか無い。

 

「いや。

 爆弾の場所なら分かっている」

 

 その声にどれだけ安心できるだろう。

 あの教授が出てきたならば、ホームズが出てこない訳が無いのだ。

 ロリンチちゃんが持ってきた通信機を握りしめて、俺はホームズに尋ねる。

 

「時間が無い。

 ホームズ。

 爆弾の場所を教えてくれ」

 

「簡単な推理さ。ワトソンくん。

 あの教授が、何でタンカーの甲板で戦ったか考えてみたまえ。

 教授の目的がこの船の爆破にあるのならば、わざわざ甲板なんかで戦う必要すら無かった。

 それにマスターは忘れている事が一つある。

 彼 の マ ス タ ー は 何 処 に 居 る の か な ?」

 

 その言葉に俺は気付かされる。

 マスターとサーヴァントは基本一人と一騎で構成される訳で、マスター側に攻撃があったらサーヴァントは令呪を使うだろうマスターの援護に走らざるを得ない。

 それを考えたら、マスターは信頼できないならばサーヴァントを近くに置きたがる。

 そうなると場所は一つに絞られる。

 

「艦橋だ!

 そこにマスターが居るし、起爆装置は艦橋にある!!」

 

 爆弾の残り時間 70

 解除時間70以下で成功 64

 

 場所がわかれば、あとはどうにでもなった。

 何しろライバック大尉やボンド中佐や御神苗優というプロフェッショナルが居るし、ロリンチちゃんやホームズという天才がバックアップに入っているのだから。

 爆弾というか、時限装置は無事に解除された。

 現在は、自衛隊や米軍や海上保安庁の船やヘリが頻繁にタンカーを囲んで現場検証をやっている。

 

「まさかタンカーそのものが爆弾の構造になっているとは気づかなかったなぁ……」

 

 俺は艦橋からタンカーを眺めてぼやく。

 テルミット・プラスはテルミット焼夷薬に燃焼を倍化させる特殊溶液を加えた二液混合式爆薬で、それぞれをタンカーのタンクに分けて保存していた。

 そのため、時限装置というより、タンク内の弁を開放してこの2つを混ぜるタイマーを艦橋から操作していたというわかりやすいものだったのも幸いだった。

 で、マスターだが、艦橋にて死体で発見された。

 現場を検証したボンド中佐の報告だと、ハンターに殺されていたらしい。

 つまり、あのアラフィフは最初からマスターを守る気が無かったという事だ。

 そのマスターの名前も、救助された女性から判明する。

 相良豹馬。

 この名前を出した女性の名前は六導玲霞という。

 なるほど。

 この世界線ではこういう形で彼らはやってきた訳だ。

 

 

 その夜。

 叢雲の医務室で寝ていた女が一人起き上がって、ふらふらと艦内を歩く。

 目指すは、艦内後部にあるロリンチちゃんの魔術工房。

 

「何処に行く?」

「迷ってしまいまして」

 

 立ちふさがる御神苗優に女は悪びれずに言うが、御神苗優は姿勢を崩さない。

 そんなやり取りを俺はステンノの気配遮断を使って隠れてみている。

 

「アーカムの記録では、アステカの遺跡を巡って1935年にナチスが動いた形跡がある。

 その時の指揮官がグルマンキン・フォン・シュティーベル大佐」

 

 轟音と共に彼女が隠し持っていた拳銃が御神苗優に当たるが、AMスーツにて弾かれる。

 アーカムが俺の所に来た真の理由が分かった。

 

「狙いは、聖杯を用いた古代神ククルカンの召喚か?」

 

「あの坊やの下についている訳じゃないわ。

 協力はしているけど」

 

 廊下にどこからともなく白煙筒が置かれてあたりが煙に包まれる。

 霊体化して控えていたモーさんがその煙の中に突っ込むが、彼女の姿は既になく、煙が消えた後に何処からか猫の鳴き声が聞こえたような気がした。 




グルマンキン・フォン・シュティーベル
 『翡翠峡奇譚』。
 あの少佐を『坊や』と呼べるだろう数百年生きる魔女。
 こんなのが大佐やっているナチスってすげー。

 なお、やる夫系だと、あの少佐を顎で使える地位と力を持つ獣殿こと聖槍十三騎士団首領ラインハルト・ハイドリヒSS大将というお方がいらっしゃってだな。
 出すために資料をあさっているのだが、何処から手をつけるべきかと途方に暮れている。


証拠写真
 https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1113699320836972544


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洋上人狼 あとしまつ

『アズールレーン』まで入れるとどんどん増える英艦娘。
作者は『アズールレーン』はやっていないので今回は除外。



 アポトーシス2の破壊力 75

 パラダイムXのセキュリティ 46

 学園都市セキュリティー 56

 話題性 40

 

 

『パラダイムX 大規模障害発生。復旧時期分からず』

『パラダイムX障害、提携先の学園都市にも波及。 『おりひめ1号』使用不能に』

『西次官、引責辞任へ。パラダイムXの大規模障害の責任を……』

『アルゴン社経営危機。アーカムグループと業務提携へ。門倉社長は辞任……』

 

 

 横須賀帰港後の政治面がタンカージャック事件だとすれば、社会面は天海市で行われていた『パラダイムX』の大規模障害だった。

 まぁ、アポトーシス2を提供したのは俺なのだが。

 帰港後スパイ容疑で拘束された『イェルケル』艦長ディノ・ディラッソ中佐は小悪党らしく、使用した『アポトーシス2』のコピーを隠し持っていたのである。

 ネミッサという電霊が居て、ハッカー集団スプーキーズにこれが渡った時点でこの結果はある意味当然だったと言えよう。

 アーカムが救済に動いたのはある意味当然で、タンカージャック事件の対処に追われる政府は、喜んで西次官と門倉社長の首を切り、後始末を押し付けたのである。

 想定外だったのは学園都市で、パラダイムXは学園都市の『おりひめ1号』を使って世界中から魂を集める予定だった為に、ウイルスが『おりひめ1号』にまで侵入して学園都市側にもダメージが波及した事だろう。

 守護神こと初春飾利が居ればまた別だったのかもしれないが、この時代だと彼女はまだ生まれて間もない時期なのでパソコンにすら触れないのがありがたかった。

 

「で、一国の政策を非合法に変更させた理由を教えていただけるのでしょうな?」

 

 もちろん、アポトーシス2の使用はデグ様・ボンド中佐・御神苗優が見ている所で使用される訳なので、俺は最初から彼らを仲間に引きずり込むことにしたのである。

 パラダイムXの真の目的である『魂の収集』とそれに関与する学園都市の『絶対能力進化計画』、それを後押ししている政府の一部始終を。

 俺以外の面子が最初呆れ、次に真顔に成り、最後には罵倒すらしたこの計画もオークや英霊や艦娘なんてのが跋扈するこの世界だからこそ最終的にはおちついてくれた。

 

「自衛隊内にクーデターの動きがあるとは聞いていたが、これではクーデター側につけといいたくなるぞ」

 

「それを学園都市だけでなく諸勢力が見逃してくれるのでしたらな。

 私は、私の叢雲と浜風はクーデター側にはつきませんよ。

 そんなことよりもやらねばならない事がありますから」

 

 デグ様と俺の会話はあえてボンド中佐と御神苗優に聞かせる為にやっている。

 というか、この二人をこちら側に引き込むために俺たちがあえてこの場を作ったと言った方が良いだろう。

 

「タンカージャックの一件では、米艦船が護衛艦にミサイルを誤射している。

 パラダイムXの障害はそれを覆い隠す意図もあった。

 ワシントンでは今頃、粛清という名前の椅子取りゲームが行われているが、今の私達には関係がない」

 

 デグ様の素晴らしくかつ抜けている所は、当人が安全な後方に行きたがるくせに、現場対応力が図抜けている所にある。

 今回の一連の事件はワシントンではデグ様の責任を問う声が無かったと言えば嘘になる。

 だが、内部スパイであるディノ・ディラッソ中佐の拘束と艦娘イントレピッドの存在、そして俺が立案したパラダイムX障害で事件そのものを隠す形で恩を売ったので、デグ様を切る事ができなくなっていた。

 逆に言えば、イントレピッドある限り提督として前線に立つ事になるのだが、彼女はまだそれに気づいていない。

 

「アーカムとすれば、冬木の大聖杯を保護下におきたい所だ。

 アレのヤバさは、聖杯そのものじゃない。

 聖杯から出る英霊の方にある」

 

 御神苗優の言葉に渋い顔をするボンド中佐。

 だから、そろそろ彼に突きつけてみよう。

 

「どうしました?ボンド中佐。

 大聖杯の回収と私の封印指定の任務が無理と顔に書いているようですよ」

 

 さすがスパイ。

 これぐらいで顔色を変えるような輩ではないか。

 やっぱりアマテラス様召喚が決定打だろう。

 ボンド中佐派遣の黒幕は時計塔だろうとうっすらと当たりは最初からつけていた。

 封印指定執行者を送りたい所だが、海上自衛隊海将補相当官という地位がこれを邪魔しているのだ。

 あげくに、デグ様によって米海軍との共同作戦において海軍少将として扱われている。

 強引に事を進めたら日米両軍から敵認定されるに等しい。

 そのあたりから、表のボンド中佐を送って、情報収集とできれば俺の階級剥奪ぐらいまでは狙っていたのだろう。

 

「まぁ、しばらくは私ごときをどうこうする暇なんて、そちらには無いでしょうからな。

 先にそれの掃除をしておくことをお勧めしますよ」

 

「それとは?」

 

 ボンド中佐はわざと尋ね、俺もそれを答える。

 俺の視線の先にはタンカーに残ったV-1ロケットの写真が置かれていた。

 

「ナチスの残党は南米を中心に跳梁跋扈している。

 今回の事件は結局の所、彼らが『GUSOH』を持ち出し行方不明となった。

 そして、それを使うのは貴国を始めとした欧州の可能性が高い」

 

 弾頭に搭載されていた『GUSOH』を米軍研究機関が調べた所、ダミーだった事が発覚した。

 つまり、奴らは沖縄からタンカーに持ち出したように見せかけて、この事件を陽動作戦として『GUSOH』をどこかに持ち出してしまったという訳だ。

 もちろん、この一件でもワシントンでは担当だったCIAを中心に粛清の嵐が吹き荒れるだろう。

 事がオカルトという裏の方に話が行くと、オカルト大国である大英帝国は嫌でも叩かないといけない目標になる。

 戦力的にも、第三帝国復活を狙う政治的な意味合いでも。

 

「こちらは取引材料として、艦娘を提供する用意があります。

 今回の所は、これでお引取りを」

 

 表の階級剥奪が日米の政治力によって無理であった事を理解しているボンド中佐は、俺の提案に手を差し出して了承した。

 握手をして俺はとりあえず危機を逃れた事に安堵したのだった。

 

出てきた英艦艇娘 2

 

1 アークロイヤル

2 ウォースパイト

3 ネルソン

4 ジャーヴィス

5 ジャーヴィス

6 ジャーヴィス

 

 

「我が名は、Queen Elizabeth class Battleship Warspite!

 Admiral……よろしく、頼むわね」

 

 出てきた英艦娘に呆然とするペンウッド卿。

 いや、ある意味ふさわしいなとなんとなく思った。

 

「何で俺には出てこなかったのだろう?」

 

 そんな事をつぶやくボンド中佐に俺は心の中で突っ込んだ。

 多分これだろうなという理由を。

 

(そりゃあんた、その女癖で出てくる方がおかしくないかい?)

 

 帰国後、『ペンウッド卿に愛人ができた』と円卓内で騒がれたが、その噂もウォー様の高貴さと相まって自然鎮火したのもさもありなん。

 なんでも、実体化ウォー様に女王陛下御自ら足を運んだとかなんとか。




ウォー様
 ヴァリアント級原子力潜水艦でもいいかなと思ったが、ペンウッド卿なので戦艦でいいかという流れに。
 あれ?
 これ、ペンウッド卿海軍基地常駐確定だから、英国無双フラグ消えてね?


英国女王
 ここの女王様は『とある』世界の女王様。
 つまり、王女様がやらかす訳で……


証拠写真
 https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1115130711483142144


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大英帝国円卓会議 その1

よくまとまっているな。この国……


 この世界の大英帝国の円卓は以下のメンバーが出席する。

 

 エリザード女王

 リエリア第一王女

 キャーリサ第二王女

 

 

 円卓会議議長 ヒュー・アイランズ卿

 

 ロブ・ウォルシュ陸軍中将

 

 海軍中将 シェルビー・M・ペンウッド卿

 

 騎士団長

 

 ローラ=スチュアートイギリス清教総大主教

 

 フランシス・アーカート第一大蔵卿 (保守党)

 

 コーネリウス・オズワルド・ファッジ魔法大臣

 

 ヘルシング機関 インテグラル・ファルブルケ・ウィンゲーツ・ヘルシング卿

 

 時計塔院長補佐 バルトメロイ・ローレライ魔導元帥

 

 ホグワーツ魔法魔術学校校長 アルバス・ダンブルドア

 

 

オブザーバー参加

 メガロメセンブリア元老院議員 ジャン=リュック・リカード 主席外交官

 

 

 

 後にこの円卓を評した関係者曰く、

 

「つまり、大英帝国という看板以外はすべて違う連中の集まり」

 

と言い放つぐらい利害も打算も違う連中が集まって国難に対処するというのがこの円卓会議である。

 これでも第一次・第二次世界大戦等で一致して戦争を乗り切ったからこうして存在しているのだろうが。

 そんな会議の最初は、オールドレディと女王陛下の謁見から始まった。

 

「我が名は、Queen Elizabeth-class battleship Warspite。

 女王陛下。

 貴方に出会えたことを光栄に思います」

 

「大戦の武勲艦にこうして出会えた事に感謝を。

 後で色々とあの時の話を聞かせてくださいね」

 

 謁見が終わると現実的な、つまり金の話に入る。

 艦娘は一人で運営できるのが強みだが、それゆえのデメリットを塞ぐ為の金の話である。

 ウォースパイトはペンウッド卿の後ろに控えて成り行きを見守る。

 

「しかし、戦艦か。

 その金を誰が用意するのかね?」

 

 フランシス・アーカート第一大蔵卿が皮肉っぽく口火を切る。

 この役職よりも世間では知られている役職に『英国首相』というのがある。

 表の英国首相と裏の魔法大臣が並立しているからこそ、この国は嫌でも王室という仲裁機関を用意せねばならなかったわけで。

 『君臨すれども統治せず』どころか、『君臨も統治もせねば国が回らぬ』というのがこの大英帝国の構造的宿痾と言えよう。

 第一大蔵卿のこの言い方、『表からは金を出さんぞ』と言っているに等しい。

 

「表はユーゴで忙しいからでしょうからな。

 必要ならば、こちらから出してもいいですが」

 

 ファッジ魔法大臣が費用について裏からの支出を口にする。

 このあたりはもちろん、表と裏の首相が先に話し合ったからこその流れだ。

 それにアイランズ卿とウォルシュ陸軍中将が噛み付く。

 

「なるほど。

 費用はそちらが持つのですか。

 では、彼女の近代化改修についてもそちらが出すのですね?

 レーダー、通信、対艦・対空兵装の更新だけで、いくらかかるか分かってその発言を言っておられるのですかな?」

 

「人員はどうする?

 人を乗せた場合、最低千人ほどの人員が必要になる。

 彼女について先に運用を行っている日本の海上自衛隊は定数割れが解決できずに、ついにクローンやドロイドを投入したと聞く。

 ペンウッド卿一人乗せる訳にもいかんだろう?」

 

 このあたりの認識の違いは表と裏の認識の違いでもあった。

 魔法や魔術関係者は、艦娘を『使い魔』の亜種として見ていた訳で、それ以上の価値を認めていなかった。

 一方で表側の軍人達は艦娘を『兵器』として認識していた。

 湾岸・ユーゴと戦火が続く中、その可能性にやる夫以外に感づいたのは、彼らが生粋の軍人である事が大きい。

 

「諸君。

 このお嬢様の価値をちゃんと認識しておられるのかな?

 このオールドレディは、現在の戦場における諸問題を解決できる魅力を秘めているのですぞ!」

 

「ほほう。

 その可能性とやらについて、是非ご教授して頂きたい」

 

 アイランズ卿の大見得にアーカート第一大蔵卿が皮肉を言い、それに返事をしたのはキャーリサ第二王女だった。

 

「移動要塞だし」

 

「さすがはプリンセス。

 彼女の価値をよく理解しておられる」

 

 艦娘姿だけでなく実体艦が出し入れ可能という事は、川や湖に彼女を簡単に浮かべることが可能だという事だ。

 川や湖の拡張は必要かもしれないが、現代工兵の能力はそれを可能にする。

 そして一度浮かべてしまえば、38.1cm42口径MkI連装砲 4基が猛威を振るう。

 たとえ、敵が排除に来たとしても、

 

10.2cm45口径MkXVI連装高角砲 4基

2ポンド8連装ポンポン砲 4基

20㎜連装機銃 2基

20㎜単装機銃 27基

 

 これらの武装が敵を歓迎することになる。

 戦場の要地に即席で砲撃陣地と要塞を作れる意味を、まだ十代のお姫様は的確に理解していた。

 

「だからこそ、詰める兵士が必要という訳だ」

「そのあたりは、日本の入即出海将補相当官が気前よくレポートを提供してくれましたよ。

 艦娘は艦の全てのコントロールができる代わりに、タスク処理でオーバーフローを起こす可能性があると。

 そういう意味でも人間は必要だ」

「その人間を自前で用意できるのは、今や合衆国しか無いというのは悲しい所ですな」

 

 アイランズ卿とウォルシュ陸軍中将がまとめるが、アーカート第一大蔵卿が皮肉しか言わない。

 ここからは彼の舞台である。

 

「結構。

 このオールドレディに有効性がある事は認めましょう。

 では、彼女を投入する戦場は何処にあるのですかな?

 ユーゴはNATOで対処しており、現状は空爆が中心だ。

 入即出海将補相当官が警告してくれたナチスの残党相手に彼女を投入するにも、まだその正確な場所すらわからない状況だ」

 

「乗船してもらう人員にも問題がある。

 ホムンクルスでは寿命が短すぎるし、ホムンクルスやゴレームではマスター側に魔術師が必要になる。

 何よりもその手の技術に長けている時計塔が協力をしてくれるのか?」

 

 ファッジ魔法大臣の物言いに棘があるのも、バルトメロイ・ローレライの傲岸不遜な態度もあるのだろう。

 彼女は時計塔代表として、彼の質問にこう言い放った。

 

「この国が非常時にあり、女王陛下のご下命がございますれば」

 

 予想された実質的なゼロ回答にファッジ魔法大臣はさも興味が無いように続きを口にした。

 

「日本のクローンやドロイドを買うのは一つの手だが、それを君たちは納得できるのかな?

 学園都市製のクローンやドロイドは高性能ではあるが、バックドアの存在も報告されているが?」

 

「少ないが、人材はこちらから提供しよう」

 

 不意に聞こえた声に皆が注目すると、騎士団長だった。

 さも当然といった感じで、彼は話を続けた。

 

「彼女が大英帝国にとって有用であるならば、それに何の問題がある?」

 

 こう言われると、皆黙らざるを得ない。

 そこに、アルバス・ダンブルドアが続ける。

 

「ならば、儂も推薦したい者がおる。

 提督のお役に立てるだろう」

 

 ちょうどこの頃、リーマス・ジョン・ルーピンが職を失い、シリウス・ブラックは無実がわかったがそれを証明できずに逃亡をしていた。

 この二人を限りなく表に近いここに置こうというダンブルドアの思惑は当のペンウッド中将には分からず、ただ感謝の顔を浮かべていた。

 

「でしたら、傭兵はいかがでしょう?

 必要なのは城塞に籠もる守備兵です。

 裏の人員はお二方の協力でなんとかできたのなら、今度は表の人間の確保でしょう。

 何よりも傭兵は、金が払われている限り裏切りませんし、使い捨てにできます」

 

 インテグラ卿の発言にバルトメロイ・ローレライが殺気を飛ばすが、インテグラ卿は表情を変えない。

 だが、その耳にイヤホンがついている当たり、発言のネタ元は彼女の執事なのかもしれない。

 

「わかりました。

 でしたら、この一件については、王室財産にて処理します」

 

 第一王女、つまり次期英国女王予定者のリエリア王女の一声で、会議は決する。

 これで、ウォースパイトとペンウッド卿が王室直轄の戦力になった事を意味するのだが、当の本人たちは、プリマスのデヴォンポート海軍基地の一室にてのんびりと茶を楽しむ姿を見かけることになる。

 そして、第二次アシカ作戦時に彼と彼女が皆の予想に反して英雄的な活躍をする事になると知るものは少ない。




ここの女王
 50代前半という事らしいので、第二次大戦後即位になる。

ペンウッド中将
 めでたく出世した。

フランシス・アーカート
『ハウス・オブ・カード』英国版。
 かっこいい爺様なのですよ。この御方。
 そして権謀術数に長けて、最後があれなところも私的どストライクである。
 なお、現実だとメージャー政権下。

お金
 『とある』世界ベースだが核を廃絶する訳もなく、核戦力の維持に資金が吸い取られている現状。
 なお人口は『とある』ベースで9000万人。
 多分魔法世界あたりの国籍も適度に入っている設定。

ハリポタ時間
 3巻あたり。

バルトメロイ・ローレライとインテグラ
 時計塔院長補佐だから出したけど、この人大の吸血鬼嫌い。
 英国王女のやらかしで、多分インテグラと敵対する方についてアーカードの殲滅を狙うと見た。
 その時の対決はサイコロ次第。


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大英帝国円卓会議 その2

時計塔フルボッコ回


 会議は踊る。

 進むなのだろうが、この円卓会議では踊るの表現の方がふさわしい。

 今はボンド中佐による入即出やる夫の調査の報告が行われていた。

 

「彼が使役している艦娘は、旗艦にしている叢雲と浜風の二隻。

 また、サーヴァントについては、円卓の騎士モードレッドとフランシス・ドレイク提督、それに女神ステンノの存在を確認しています。

 他にも、シャーロック・ホームズやレオナルド・ダ・ヴィンチが協力をしており、彼の周囲に居る悪魔及び神様ですが、以下の通りになります」

 

 リストが提示されるとしばらく円卓のメンバーは誰も喋らない。

 また、聖杯戦争勝者であるウェイバー・ベルベットの報告書も机に置かれていた。

 そんなメンバーの視線は、バルトメロイ・ローレライに向けられている。

 針の筵のはずなのだが、彼女はその視線を気にしない。

 

「説明していただけるのでしょうな?」

 

 神秘の秘匿を名目にほとんど黒塗りで提出されたウェイバーの報告書だが、ボンド中佐はやる夫から彼の報告書を入手していたのである。

 つまり、聖杯戦争のシステムとその歴史、やらかしの全てである。

 フランシス・アーカート第一大蔵卿の嫌味たっぷりな確認にバルトメロイ・ローレライは涼しそうな顔で言い切る。

 

「神秘は秘匿されるべきものです。

 そういう意味からすれば、彼は時計塔の処罰対象になりかねないとでも返答すればご満足でしょうか?」

 

「そちらの論理ではそれでよしといたしますことよ。

 ですが、この円卓の席で隠し事をすれば袋叩きに会うリスクを踏まえてなおその姿勢を貫くのであるならば、それは偉大というより愚行と言うべきこと」

 

 ローラ=スチュワートは怪しげな口調で、入即出やる夫が日本国に提出していた聖杯戦争絡みの調査報告書を持って仰ぐ。

 日本政府を買収した時、やる夫の聖杯戦争の報告書も可能な限り回収がされていた。

 その後やる夫の処遇を決めるためにもボンド中佐を派遣したはずなのだが、そこで起こったのはナチス残党によるタンカージャック事件。

 時計塔は艦娘とアマテラス召喚の時点で封印指定を望み、他勢力と激しく対立していた。

 インテグラ卿が低い声でバルトメロイ・ローレライに詰問する。

 

「彼をその封印指定する為に経済大国日本を敵に回す事も?」

 

「神秘の秘匿のためです」

 

「それによる悪魔の暴走に対処できると?」

 

「時計塔及び、私のクロムの大隊ならば対処できるとお約束しましょう」

 

 ニヤリと笑うインテグラ卿。

 この席でもっとも孤立主義をとっていた時計塔はこういう時に集中砲火を浴びる。

 それを秘密主義とそのヴェールで隠した力によって防いでいた訳だが、それが通用しないのならばという良い見本だろう。

 

「ボンド中佐。

 この報告書に上げていない事を話してくれないか?」

 

「まぁ、横須賀であの人と親しくさせていただいたのですが、食事の席で色々と面白い話を聞かせていただきましたよ。

 酒の席だからと報告書に上げないでくれと言われたのですが、スパイは辛いですな」

 

 そんな事を言いながら、彼は小型レコーダーを取り出して再生する。

 たしかに酒の席だろう、陽気な宴会の背景と共に、やる夫の声が聞こえてくる。

 

「……英霊には地域補正ってのもあって、英国ではアーサー王や円卓の騎士あたりが出てくるとほぼ無双状態になるだろうな」

「なるほど。

 ちなみに入即出海将補相当官はアーサー王とか出せるので?」

「出せるけど、燃費悪いんだよ。

 あの御方。

 大食いだし」

 

 バルトメロイ・ローレライの顔にヒビが入る。

 それを楽しそうに確認した上でインテグラ卿が確認を取る。

 

「では、もう一度お願いしたい。

 時計塔院長補佐、バルトメロイ・ローレライ魔導元帥。

 時計塔と貴方の配下は、ドレイク提督率いる艦娘とアーサー王とその円卓騎士団を相手に事態を収拾できると?

 サポートに名探偵ホームズと大天才ダ・ヴィンチがついているのをお忘れなく」

 

 聖杯戦争のアーサー王のデータは時計塔も把握していた。

 モードレッドのデータもボンド中佐が確保してくれた。

 英霊には英霊をぶつけないときついという結論をこの場にて真っ先に知ったのは彼女なのだから。

 そして、大聖杯は冬木市の地下で時計塔の手の届かない場所にて眠っている。

 

「インテグラ卿。

 そのぐらいにしておきたまえ。

 幸いにも彼は我々にも友好的だ。

 何しろペンウッド卿に艦娘を提供してくれたぐらいなのだからな」

 

 円卓議長のヒュー・アイランズ卿がインテグラ卿をたしなめるが、ペンウッド卿の艦娘ウォースパイトを神秘秘匿を名目に真っ先に接収しようとしたのが時計塔である。

 アイランズ卿以下が激怒してウォースパイトのお目見えの席をこの場で作った原因にもなっている。

 彼が助け舟を出したのは、バルトメロイ・ローレライを助けるためではない。

 とどめを刺す為だ。

 

「聖杯戦争と英霊の一件については、円卓会議の専任事項とする。

 入即出やる夫海将補相当官との友好的関係を維持し彼から情報を適時入手する事を、ペンウッド卿に任せることにする。

 また、この件の情報提供を時計塔に求め、魔法省から監査を送ることを要請する」

 

 ここにバルトメロイ・ローレライの味方は誰も居なかった。

 居なくてもそれを覆せる力を魔導は持っていたはずなのに、この場の魑魅魍魎はそれをいともたやすく崩し去ってしまった。

 少なくとも彼女は自分の持つ常識とこの場の結論の差異に気づいて黙るだけの我慢はあり、それを肯定と捉えた円卓の面々は更に追撃をかける。

 

「そういえば、そちらの現代魔術科にて講演を頼まれておったな。

 監査を送るなら、ついでに儂がやっておこう」

 

「助かります」

 

 ダンブルドアの善意にファッジ魔法大臣が乗っかる。

 更にローラ=スチュワートも追随するあたり、落ちた犬は容赦なく叩く。

 

「時計塔内の教会について、こちらも人員を送りたいことよ。

 神の声は平等なるものゆえ。

 インテグラ卿。

 現状、色々な事件が発生しており、ヘルシング機関は早急な規模の拡大を求められていると私は愚考するのだわ。

 必要悪の教会と共に事を当たりたいのだけどいかが?」

 

「騎士団も、英国内の変事に対処する力はある。

 なにかあるのならば、遠慮なく助けを求めてくるといい」

 

 この場での最大の敗北者がバルトメロイ・ローレライならば、その次の敗北者がインテグラ卿である。

 彼女は若輩だから負けたのではなく、実戦力がアーカードと執事しかない為に負けたのだ。

 だからこうして、大勢力からの誘いを断れない。

 

「ええ。

 協定は魔法省の仲介の元、取り決めましょう」

 

 魔法省の存在はここにある。

 強すぎる個に、複数の行政機関の存在、王室だけでは到底手が足りない以上、表と同じく裏でも官僚が働き、書類が飛び交い、ルールが決められ、ゲームが整えられてゆく。

 バルトメロイ・ローレライとインテグラ卿はそれを思い知りながらもそれを顔に出すことは我慢した。




この話を書くためにFGOを起動して確認したやる夫のアーサー王。
 青王
 オルタ
 水着王
 メイド王
 騎士王

 この5人でも十分な気がする……


ヴィリアン王女は10代前半の可能性が高いので外している。


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大英帝国円卓会議 その3

この時期、『スプリガン』は連載中なんだよなぁ……


 会議はまだまだ踊っている。

 さっきの勝者が今の敗者になるのがこの円卓会議。

 次の議題では、新たな敗者が集中砲火を浴びていた。

 

「テロでごまかしたが、我が国は本当のテロ組織と戦っている事を忘れてもらっては困る。

 水面下で進んでいた和平の流れが壊されて血を流すのは君たちなのだぞ」

 

 フランシス・アーカート第一大蔵卿の淡々とした皮肉に何も言い返せない軍関係者の面々。

 古代遺跡の発掘に纏わる実験で基地一つとSASの人員に多大な被害を出したばかりでなく、テロ組織の犯行で片付けた為に本物のテロ組織であるIRAが態度を硬化させていたのである。

 時計塔補佐のバルトメロイ・ローレライが嘲笑を浮かべるが、口に出すことなくこの話の本題を聞くことにした。

 

「で、だ。

 我々を助けたアーカム財閥についてだが、彼らをどうするべきか考えなければならない」

 

 フランシス・アーカート第一大蔵卿は皆に問う。

 アーカム財閥は超古代文明からのメッセージに従い、超古代文明の遺産を封印しあらゆる権力から守護することを目的としている。

 問題は、超古代文明だからこの魔法や魔導世界では超一級の神秘であり、冷戦終結に伴う新たな世界秩序構築が進んでいる現在、各国は科学の進歩と同時に古代科学の復興を裏で進めていた。

 その最たるものが日本にある学園都市だろう。

 

 オブザーバーで呼ばれたメガロメセンブリア元老院議員であるジャン=リュック・リカード主席外交官がここで始めて口を開いた。

 

「我々は、アーカムのこの動きについて懸念を表明します」

 

 『ネギま』魔法世界からすればある意味当然で、超古代文明の塊みたいな世界で星すら別れて生活しているのだ。

 何よりもこの魔法世界は10年前に『大分裂戦争』という大戦を経験しており、その復興にはこちらの世界の支援は必要だった。

 その彼らが出せる切り札を、アーカムの主張に従えば持ち出すことができなくなる可能性が高い。

 また、アーカムが米国に本拠を置く財閥であるという所にも、リカード主席外交官は懸念を持っていた。

 国家対国家ならば、まだ条約なりで落とし所が探れる。

 だが、アーカムの主張は米国の利益となりかねず、それはこの裏の世界すら米国が牛耳るという可能性を否定できなかったのである。

 

「かといって、かの財閥と事を構えるのは我が国としてもきつい。

 そこで、こんな提案が来ている」

 

 ファッジ魔法大臣が用意した書類を皆に見せる。

 アーカムと敵対する巨大軍産複合体である『トライデント』の欧州企業であるキャンベルカンパニーからの提案である。

 具体的な内容は、『急増する魔法絡みのトラブルに対しての自社実行部隊の提供』。

 事実、『ハリポタ』世界では、ヴォルデモート卿の復活騒ぎが起こっており、闇の魔法使い達がざわついていた時期だった。

 闇鍋世界の結果、急増するトラブルの処理に魔法省単体では追いつかなくなっており、かといって騎士団や時計塔やヘルシング機関ですらも駒が足りない。

 

「つまり、彼らにとっては新型兵器の実戦テストの場所が欲しい訳だ」

 

 意図に気づいたアイランズ卿が吐き捨てるが、フランシス・アーカート第一大蔵卿は淡々と事実を告げる。

 それに返事ができないことを見越した上で。

 

「そのとおり。

 だが、彼らはその利益を得るために、こちらの治安維持活動を格安で請け負ってくれるそうだ。

 先程のオールドレディの傭兵もこれにすれば王室財産の倹約になるがいかがかな?」

 

「悪くない提案だし。

 とはいえ、全てを委ねるには不安だし」

 

 キャリーサ王女が懸念を表明する。

 つまるところ格安の傭兵な訳だ。

 傭兵は金が払われている限りは裏切らない。

 ただし、格安の傭兵はその時点で寝返りのリスクが発生するのも事実だ。

 

「ですから、意図的に分けたではありませんか。

 かのオールドレディは王室直轄に。

 ヘルシング機関には騎士団を始めとした人員の補充が決定したばかり。

 それでも現状の治安維持が追いつかないからこそ、この提案がここで討議される事になったのです」

 

 フランシス・アーカート第一大蔵卿はにべもない。

 これについては米国のアンブレラ社の生物兵器でもいいし、日本のドロイドなども候補に上がっていた。

 それでもトライデントを選んだのは欧州企業であると同時に、多くの議員の懐に色々な心付けがなされていた事に触れる人間はこの場には居ない。

 

「この治安維持機関は魔法警察及び闇払い局の下部に起き、魔法世界の広範囲の治安維持活動に従事させたいと考えている。

 また、複数の治安維持機関の上位機関として円卓会議を指定し、相互の連携を強化したい」

 

 ファッジ魔法大臣の言葉に、フランシス・アーカート第一大蔵卿が続く。

 こういう時に政治家は強い。

 

「こちらも軍だけでなく治安機関及び情報機関等の上位機関として円卓を指定したい。

 つまり、名実ともにこの場の席がこの大英帝国の意思となる事を諸君は肝に銘じて欲しい」

 

 それでもこの円卓会議を最高意思決定会議に指定するあたり、大英帝国は必死にこの世界を生き延びるために意思の統一を図ろうとしていた。

 それが野心のためか、責任逃れのためか、はたまた何か別の意思があるのかもしれないが、政治家が政治家たる理由でその意思統一に成功した事は、大英帝国にとって良いことなのだろう。

 代償もあったが。

 

「入即出海将補相当官が警告してくれたナチス残党については?」

 

 会議も終わりと皆が立ち上がろうとする中、発言権があるペンウッド卿が確認するが、フランシス・アーカート第一大蔵卿はにべもない。

 

「南米は米国の裏庭だ。

 ネオナチはイスラエルのモサドが執念深く追いかけている。

 彼らの報告を待ってからでも遅くはないだろう?

 ペンウッド卿。

 いくら火事と叫んでも、水が無ければ火は消せないのだよ」

 

 つまり、彼らにとってそれはその程度の事でしかなかった。




英国基地壊滅
 ここで出たマリア・クレメンティは辞表を提出するが、機密を知りすぎた彼女が辞めれる訳もなくペンウッド卿の所に参謀として島流しに。


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ザ・ライト・スタッフ

ココ最近、私の小説でフリー素材よろしく便利に使われているソマリア内戦よ……


 プリマスのデヴォンポート海軍基地

 そこに最近配属された戦艦は市民の話題の的になった。

 

「あの船、オールドレディのような気がするが?」

「多分そうなのでしょうな」

「ミサイルが飛び交う現代の戦場において戦艦?」

「あの船は、NATOが構想しているアーセナル・シップのテスト艦として建造された。

 英海軍に一応属するが、英国王室の私有財産である」

「金の無駄遣いじゃね?」

「そう言われるのが分かっていたからこそ、あの船は英国王室の私有船なのだ」

「実際に動くの?」

「動く。

 ついでに砲も機能する。

 近くこの船に乗り込む乗員がやってくる予定だ」

 

 

 そんなやりとりがマスコミと軍広報官との間であったとかなかったとか。

 基地の一番奥にでんと鎮座する全長195.3メートル、基準排水量32,468トンの巨体が名物になるのはある意味当然と言えよう。

 そんな巨艦に参謀として乗り込むことになったマリア・クレメンティ中佐は、この艦の主である艦娘ウォースパイトと、提督であるペンウッド卿に挨拶をする。

 彼女も裏のことを知って裏で痛い目を見た人間ではあるが、高貴を絵で書いたようなウォースパイトと『この人を支えないと』と思わせるペンウッド卿を見て、懐に入れた辞表提出を我慢しようと思う。

 また、他のスタッフと話をするとこの船の特異性がいやでも浮き彫りになってくる。

 騎士団と共に派遣されたリーマス・ジョン・ルーピンとシリウス・ブラックは魔法側の人間で騎士団を中心とした魔法部隊の指揮官と副指揮官である。

 傭兵部隊『ワイルド・ギース』隊長のピップ・ベルナドットも10代後半の若手であり、この艦には軍周りのエリートがペンウッド卿以外には誰も居なかった。

 なお、魔法部隊と傭兵部隊を合わせても、乗員は百人ちょっとである。

 

「どうやって船を動かすのですか!?」

 

 嘆くマリア中佐にきょとんとするウォースパイト。

 その意味を理解していない。

 

「この装備なら全部私が動かせますけど?」

「そう彼女も言っているしね」

 

 違うそうじゃない。

 そう言いたいのを堪えて頭を抱える。

 正しく自分が島流しにあったことを的確に理解した。

 辞表を受理されない以上、ここで飼い殺しという訳だろうが、それならばそれで放置すればいいのにこの人の良さそうな提督を見るになんとかしてあげたいと思ってしまうのである。

 なお、そんな人間は英海軍内に結構多いらしく、転属希望を出しているがはねられているという事をこの時の彼女は知らない。

 だが、頭脳は優秀なので解決策を見つけることはできた。

 ペンウッド卿が日本で作ってきたコネであるターニャ・デグレチャフ米海軍少将に嘆願したのである。

 唐突な電話に受話器向こうのデグレチャフ少将は少し考える。

 デグレチャフ少将にとって、無駄は怨敵みたいなものである。

 

「一介の海軍少将に期待されても困るのだが」

「湾岸の英雄であり、NATOの拡大に尽力なされていた少将が一介の少将とはとても言えませんね」

「私はただ単にコミュニストが大嫌いなだけだが。

 ……なるほどな。

 拡大するNATOの象徴として売り込む腹か。

 それならばNATOの予備費から支出できるロジックもできるな」

 

 NATOの拡大はソ連の崩壊と共にかえって進むようになった。

 これは混乱するロシアから米国に旗を変えたいポーランド以下中欧諸国の流れであり、ECがEUに変わる過程でもあった。

 そんなNATOの象徴としてウォースパイトは十二分に広告費用分のリターンを弾けると計算したデグレチャフ少将は確認を取る。

 

「で、具体的には何を望むんだ?」

「海軍軍人二百人の確保を。

 少将も艦娘の提督ならばおわかりかと思いますが、最低限のバックアップ人員がこの人数です。

 我が国では緊縮財政により海軍では合理化を続けており、多くの退役者を出しています。

 彼らを再度雇い入れる費用の負担をお願いしたい」

「上に掛け合うにはもう少し政治材料がほしいな。

 日本の件で、ペンタゴンでは色々とあってな」

 

 頭のいい人間は最初から詰めまで用意して話をするから話が早い。

 マリア中佐はその切り札をここで切る。

 

「ソマリア。

 苦労しているみたいじゃないですか?」

「おかげで、次はソマリア沖だよ」

「戦場では砲兵は女神です。

 女神の加護、欲しくありませんか?」

 

 兵員と共に艦娘が飛行機で移動できるのも艦娘の強みである。

 それを理解しているデグレチャフ少将は、次の戦場を国連安保理の決議に基づいて多国籍軍を展開しているソマリアに求めた。

 安全に艦娘を出すため、現在は英領ジブラルタル基地に居るからこそこうして電話をかける事ができたのだ。

 

「良いだろう。

 上に掛け合って大統領に話してみよう。

 あと、定員を定数に満たしたいなら、日本の入即出少将にも声をかけるといい。

 あれは悪いようにはしないはずだ」

 

 マリア中佐は賭けに勝った。

 10月の戦闘において、米国からの要請という形でソマリア沖に派遣されたウォースパイトの38.1cm42口径MkI連装砲4基が火を吹いて支援し、『ワイルド・ギース』が米軍を窮地から救う事で艦娘ウォースパイトの有用性を国内外に見せつけることに成功する。

 その後の定数充足化と近代化改修が無ければ、英雄的行動を讃えるに足る十全な動きができなかっただろうから。

 だが、この功績をマリア少佐が誇ることは無く、彼女が辞表を出すことも無かった。




タイトル
 知ったのは『パトレイバー』だけど元ネタはアポロ計画の小説。

NATO
 北大西洋条約機構。
 アメリカを盟主とした西側の多国間軍事同盟。
 デグ様がアカ潰しに奔走する以上、キャリア的にはここが一番深いと設定。
 今のデグ様はさすデグ状態なのでそこそこの無理がきくかわりにソマリアにて航空支援のお仕事に行く事に。

ソマリア
 『ブラックホーク・ダウン』。
 この戦闘に間に合うと感づいた為にこの話がでっちあげられた。
 ネオナチの前にソマリア民兵を吹き飛ばさないと装備が整えられない現実の世知辛さよ……


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第○回カルデア連絡会議 その1

カルデアサイドの話

証拠写真
https://twitter.com/hokubukyuushuu/status/1118716550863671296


 オルガマリー・アニムスフィアは蒼崎橙子によって体を得たとは言え、未だこの地にとどまっているのは、その蒼崎橙子に止められたからである。

 

「人の体というのは繊細だ。

 それを霊子化して転送するには危険が伴う。

 もう少しだけ、留まっていたほうがいいんじゃないか?」

 

 ある意味当然といえば当然で、カルデアとの往来を確認するために現在は蒼崎橙子の協力の元で人形を送り込む実験を考えている。

 その蒼崎橙子が海自の横須賀基地に行ったので、時間ができた彼女は蒼崎橙子の工房でおとなしくしている訳もなく、カルデアと連絡をとっていた。

 

「じゃあ、報告して頂戴」

 

「ああ。

 入即出やる夫氏の提供でこちらのスタッフの77%が回復した。

 現在、必要な物資・食料・医薬品・魔術素材の確保に専念している。

 回復したスタッフの手を借りて、施設の復旧も始めている所だ」

 

 ロマニ・アーキマンの映像がデータと共に報告する。

 約八割のスタッフの回復というのは、レイシフトを行う連中以外はほぼ回復させたという事だ。

 その意図的な回復についてオルガマリーは質問する。

 

「レイシフトを行うチームを回復させていないのは?」

 

「純粋にダメージがひどくて時間がかかっているのが一つ。

 もう一つは所長である君の判断を仰ぎたかったんだ」

 

 ロマニの言葉にオルガマリーは顔をしかめる。

 そこには、ロリンチちゃんから提供された入即出やる夫が歩いた、魔術王打倒の記録が記されている。

 

「こんな奇跡と偶然の結果を再現なんて無理じゃない!?」

 

と、オルガマリーは叫び、実際やる夫も無理だろうと思ったからこそ、スタッフ回復の支援を行い数で押す戦略をとらせたのである。

 だが、その戦略を止めたのが隣に映ったダ・ヴィンチちゃんである。

 

「現在唯一のマスターである藤丸立香は、セイバー沖田総司、アーチャーエミヤ、キャスタークー・フーリンを得ただけでなく、入即出氏の勧めで金剛神界で修行した後、バーサーカー茨木童子とアサシン酒呑童子と契約した」

 

「戦力が強化できてよかったじゃない。

 何が言いたいの?」

 

「彼女の戦力強化に、疑念と嫉妬の声が上がっている。

 予備マスターである事を理由に、彼女からサーヴァントを取り上げて、正規マスターにわたすべきだという意見すら出た」

 

 入即出やる夫がグランドマスターになってしまった理由は尽きる所、『それしか選択肢がなかった』からだ。

 人員が増えて選択肢があるのならば、当然利害ができて派閥ができる。

 藤丸立香を中心に据えなくていいのだ。

 

「もちろん、この意見は却下した。

 入即出氏の資料提供で判明したけど、マスターとサーヴァントとの間に強い絆が結ばれるとその分攻撃力とかは上がるんだ。

 つまり、新規のマスターは自分でサーヴァントを用意しなければならない。

 待っているのは嫉妬と怨嗟さ。

 『何で俺の所はこれなのに、あいつにはあんなにサーヴァントが居るんだ』とね」

 

 こう考えると、レフの仕掛けは二重三重に渡って構築されていたと言わざるを得ない。

 そのまま進めても待っていたのは、格差と嫉妬と疑心暗鬼によるカルデア崩壊。

 それを乗り越えて人理が修復できたのは、それが起こらない程度まで人員が減り、藤丸立香しかマスターが居なかったという天の采配、いや、抑止力の干渉だろうか。

 

「少なくとも、次のオルレアンまでは藤丸立香の一人マスター体制をとらざるを得ない。

 明確な格差と功績を以て彼女を保護しておかないと、他のマスターを働かせるのは無理だと判断している」

 

 ロマニとダ・ヴィンチちゃんが言わなかったことが一つある。

 カルデア内復興に際して、多くのスタッフから『入即出やる夫を所長にしたらどうか?』という声が出たことを。

 当人がやらないだろうと却下したが。

 

「わかりました。

 そちらの判断を尊重します」

 

 オルガマリーはその件をそれで片付けた。

 次の報告もとんでもないものだったからだ。

 

「マシュ・キリエライトのバイタルデータが急激に回復かつ向上しています。

 当人に問いただした結果、金剛神界から帰った時に待っていたアマテラス様からもらった桃を食べたと」

 

 ロマニもダ・ヴィンチちゃんも苦笑を隠さない。

 良いことではあるのだが、それがどういう意味を持つか分かるオルガマリーは叫ばざるを得ない。

 

「神様からの桃ぉ!?

 それとんでもないやつじゃない!?」

 

「彼女の体は元が元だからね。

 これも、入即出やる夫氏の支援だそうだ」

 

 やる夫のマシュから話を聞いたアマテラス様が可哀想だと彼女に桃をあげたらしい。

 フリーダムだが善人でもあるアマテラス様らしいエピソードである。

 あと、やる夫のマシュから話を聞いて自分の中に何が居るか分かったので、『今は遥か理想の城』が使えるマシュとして元気に種火と素材を集める日々を送っている。

 ついでにいうと、桃を食べたマシュに釣られて近くの大江山から鬼がやってきてゲットされたという経緯がある。

 なお、入即出氏が等価交換として提供を求めたのがこの種火だったりするが、あまりにも向こうの提供が大きすぎるので何時返せばいいのかわからないとこの三人が頭を抱えたりするのだがそれは別の話。

 

「いいわ。

 これもいずれ返すものとして記憶しておきます。

 で、最後の話は何?」

 

 ここまで聞くと頭を抱えそうになるがオルガマリーはそれを己のプライドで耐えた。

 それでも、ロマニに最後の報告にそのプライドを粉々に打ち砕かれる事になる。

 

「カルデアが、いや、僕たちの世界がこの世界から見て特異点になっている可能性がある」

 

と。




鬼二人
 冬木市を舞鶴の近くにおいたので、大江山に行って鬼をゲットしようと当初考えていたがサイコロによってなくなったので、藤丸立香にわたすことに。


 神聖かつ不老不死の象徴。
 ついでにいうと、食べたのは意富加牟豆美命(レベル53)で、この時点でマシュはこの世界において分類が『天津神』になっていたりするが当人及び周りは気づいていない。
 つまり、「助けてください」と言えば「おねーちゃんにお任せっ♪」とおねーちゃんアマテラス様レベル173がやってくるという……

種火
 狙いはランサークー・フーリンのレベル上げ。


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第○回カルデア連絡会議 その2

長かったので分割


「私達が、私達の世界が特異点?

 冗談でしょ!?」

 

 オルガマリーの言葉にロマニもダ・ヴィンチちゃんも返事を返さない。

 その沈黙が、事実となって三人を打ちのめすが、口を開いたのはダ・ヴィンチちゃんだった。

 

「入即出やる夫氏の存在がそれを証明しているんだ。

 この世界は、人理修復された世界だ。

 にもかかわらず、私達が来た事で再度魔術王が動き出した。

 これは、私達の世界の魔術王が、私達を起点にこの世界も焼却しようとしていると考えるべきだと思う」

 

「それを防ぐことはできないの?」

 

 オルガマリーの質問にダ・ヴィンチちゃんはあっさりとその答えを言う。

 簡単かつそれをするにはかなりの抵抗のある答えを。

 

「簡単な話だ。

 この世界とカルデアのレイシフトデータを破棄してしまえばいい。

 現在、この世界とカルデアはレイシフトで繋がっているから、それを解除すれば2つの世界は自然と離れてこの世界は助かるだろう」

 

 この会談の前にロリンチちゃんとホームズを交えた話し合いが行われており、世界決定の観測者が藤丸立香と入即出やる夫である事が確認できていた。

 現在の状況は、入即出やる夫側の事情であり、藤丸立香側は巻き込まれた側なので、レイシフトデータの破棄によるこの世界との切り離しでおそらく、この世界の魔術王の手はそれ以上は伸びてこないだろう。

 

「けど、この世界が無いと今のカルデアは存続できないじゃない!?」

 

 現在修復途中のカルデアは、食料および物資をこの世界から調達している。

 莫大な魔術素材、信じられない神秘の量、そしてスタッフの多くを回復させたマジックアイテムなどはこの世界無くしてはありえない。

 それを破棄するという意味を考えて、オルガマリーの顔に汗が吹き出る。

 この世界でなかったら、彼女は死んでいたという事実をつきつけられたからだ。

 

「そうだ。

 その上で、向こうのダ・ヴィンチちゃんから提案があった。

 『カルデアをこの世界に固定させないか?』だ」

 

 つまり、観測者を入即出やる夫一人に固定させる。

 そうすれば、観測者の視点は入即出やる夫一人に絞られて、おそらく記憶から何まで全部この世界に固定された瞬間から改変が始まり、この世界の一部となるだろうと。

 ダ・ヴィンチちゃんは話を続ける。

 その声に憂いがあるのは、ロリンチちゃんの提案が魅力的だからだ。

 

「その場合、人理修復はどうなるの?」

「この世界では人理修復は既に終わっている。

 私達は終わった物語の主人公としてめでたしめでたしの後の生活を送ればいいという訳だ。

 多分、記憶の改変の段階で、そのあたりも都合よく再設定してくれるのだろうね」

 

 オルガマリーの声がダ・ヴィンチちゃんの声を止める。

 それがこの提案をためらう最大の理由だった。

 

 

「わ た し た ち の せ か い は ?」

 

 

 ロマニとダ・ヴィンチちゃんは何も言わない。

 それが答えを物語っていた。

 

「この件は、藤丸立香くんを除いて知っているのは我々だけだ。

 そして、藤丸立香くんに打ち明けた結果、彼女はこう言ったよ」

 

 しばらくしてロマニは苦笑する。

 モニターにその時の藤丸立香を映す。

 

 

「やる夫先輩は私達の旅路を応援してくれています。

 私達の旅が成功する事をやる夫先輩の存在が示しています。

 なぜ私達の旅を諦めるのですか?

 ゴールはそこにあるのに、人理は修復されるのに。

 私は、私の未来を、私の世界を諦めません!」

 

 

 その旅路を続けるならば、いずれカルデアとこの世界は離れることになる。

 それでも、藤丸立香は自らの世界を守るために旅立つという。

 その時には、この世界を特異点として切り捨てる事を承知した上で。

 

「さっきの派閥云々の話はここに繋がるのね」

 

 オルガマリーはため息をつく。

 人は弱い。

 困難な道があって、後ろに退路があるのならば、多くの人はその退路を選んでしまうだろう。

 それでも、現在唯一のマスターは己の世界を守ると決めたのだ。

 

「実際、どれぐらいまでこの世界に滞在できそうなの?」

「正直、わからないというのが結論だ。

 現在のカルデアは第一特異点オルレアンに向けて準備を進めている。

 いつ状況が変化するのか分からないので、所長も早い帰還をお願いしたいが、所長がそちらに居るのと居ないのでは、支援体制が格段に違う」

 

 カルデアへの物資供給はオルガマリー・アニムスフィア無しでは語れない。

 アニムスフィアという魔術協会に通じる名前、現地にいる事での物資調達、彼女を起点としたコフィンの往還等彼女はカルデアの為に多大な尽力をしていた。

 

「最悪、私の切り捨ても視野に入っているという訳ね……」

 

 画面向こうの二人が言わなかった事にオルガマリーは自ら口にした。

 彼女の帰還とこの世界との分離が間に合わない事があるという事実をオルガマリーは表向きは受け入れた。

 それは、彼女が人理継続保障機関フィニス・カルデアの所長だからにほかならない。

 

「わかりました。

 万一のときには、所長権限をロマニ・アーキマンに委譲する事をここに明言します。

 貴方の、いや、藤丸立香の為にできる事は全て行ってください」

 

 オルガマリーは、この世界で上に立つ人間というものを多く見てきた。

 入即出やる夫みたいに現場に行けずに歯噛みした姿も、クルト・ゲーデルみたいにすべての責任を取ると明言してやる夫達を支援したことも。

 レフが居なくなった今、彼女はそんな上に立つ者としての振る舞いが求められていた。

 会議が終わり、オルガマリーはそのままベッドに倒れ込む。

 小さな呟きは誰にも聞こえることはなく。

 

「助けてよ……」

 

 誰に助けを求めたのかを言わなかった事で、彼女が成長しているなんて彼女自身分かるわけがなかった。

 




どのタイミンクで離れるかはやっぱりサイコロで決める予定。
各特異点の定礎復元後にサイコロを振って決めようかなと思っている。


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査問会

「以上をもって、査問会を終了する」

 

 その一言を敬礼して受け止めると市ヶ谷から来た査問委員たちが部屋を出てゆく。

 それを見送って、俺は隣で弁護をしてくれたユーリア・ブラッドストーン大佐に握手する。

 

「助かりました。大佐」

「向こうも本気でないのは分かっていましたら。

 儀礼的なものですよ。少将」

 

 タンカージャック事件は世間を多いに賑わせて国会でも話題になっていたが、事が事だけに機密にしなければならないことが多く、公に発表できる情報は限られていた。それでいて、米艦の誤射ミサイルを俺の叢雲が叩き落としたシーンはTVに何度も放映されたので、反米感情が高まりつつあった。

 それを機密でごまかすためにも、査問会を開いて落とし前をつける筋書きに俺が自ら志願したのである。

 順調に進む自衛隊クーデターに際して、自衛隊側に恩を売るという訳だ。

 この査問会で問題になったのは以下の箇所だ。

 

1) タンカージャック鎮圧作戦において、米国および英国との指揮連携は適切だったか?

2) 鎮圧作戦時に政府からの指示に従わなかったがそれはどういう理由なのか?

3) あの時自衛隊側の指揮命令系統は適切だったのか?

 

 これに対して俺とブラッドストーン大佐は以下のように論陣を張った。

 

1)

 あの作戦の指揮官はターニャ・デグレチャフ少将であり、彼女の最終決定及び自衛隊への要請に従ったまでである。

 この件については、ターニャ・デグレチャフ少将の報告書を米軍より提出する。

 

2)

 日本国排他的経済水域内で発生した今回の事件は、日本国の主導による事態の解決が望ましかったが、同時に日米安全保障条約の範疇に入ると米国は解釈している。

 また、シージャックされたタンカーが第50任務部隊に攻撃を加えた時点で米国も当事者となった事を強調しておきたい。

 とはいえ、日米間の連絡について問題があることは事実であり、これについては後日実務者協議を行う事を米国より提案したい。

 

3)

 第50任務部隊は日米合同演習を行うために臨時編成された艦隊であり、それに参加した自衛隊艦艇はヤタガラス所属の入即出やる夫海将補相当官が指揮を執るといういびつな構成だった。

 また、梅津三郎海将補に指揮を執らせるには国内事情による問題があり、第1護衛隊司令の衣笠秀明一佐も階級の都合上指揮を執る訳にはいかなかった。

 そして、海将を出した場合は第50任務部隊のターニャ・デグレチャフ少将の権限を越えてしまうことになるため、任務部隊編成の最終指揮権がターニャ・デグレチャフ少将にある都合上、今回の措置は適切であったと主張する。

 なお、米軍は任務部隊編成時にこの問題を考慮して入即出やる夫海将補相当官を少将として扱うと通達しており、次席指揮官として命令の混乱がないように配慮している事を強調しておきたい。 

 

 

 このような主張が認められたことで、無罪放免と相成った。

 さすデグである。

 本当に感謝するしか無い。

 

「ターニャ・デグレチャフ提督は今はソマリアですか?」

「ええ。

 現地民兵を英戦艦ウォースパイトと共に吹き飛ばしている最中かと」

「お礼が言いたかったのですが、常に戦線に立っていますな」

「それこそ最高の褒め言葉です」

 

 ブラッドストーン大佐は褒め言葉と取っているけど、皮肉だから今のは。

 当人の哀れさを一端脇において、雑談という名前の情報交換を行う。

 

「ちなみに、話せる程度でいいのですが、海軍戦術システム、何処まで復旧しました?」

「横須賀に戻ってバックアップを入れ直した所まで。

 何処に穴があったかは現在捜査中です」

「こちらも同じようなものです。

 現在全艦艇のチェックに大忙しですよ」

 

 戦闘時におけるクラッキングという最悪の事態が発生した今回の事件で、日米のシステム担当が悲鳴をあげたのは言うまでもない。

 基地のコンピューターにすらダメージが出た今回の事件を契機に、慌てて全システムのチェックをやっている最中だった。

 なお、そんなチェックにうってつけのハッカー集団であるスプーキーズを俺が手放す訳もなく、彼らを雇ってシステムのチェックに送り込んでいたりする。

 という訳で、現在の横須賀基地で何かあった時に安心して即座に動けるのは『みらい』、『叢雲』、『浜風』の三隻だけという現状で、査問会で俺を切る事ができないという裏事情もあった。

 

「これは独り言ですが、ディノ・ディラッソ中佐の件、かなり闇が深くまだまだ広がりそうです」

 

 ディノ・ディラッソ中佐は小悪党であるが、同時にその小悪党にこういう事を頼んだ誰かの所まで米国諜報機関はたどり着いていなかった。

 何しろ、沖縄で秘密製造されていた『GUSOH』が奪われた件でCIAを始めとした米国諜報機関に粛清の嵐が吹き荒れている。

 『GUSOH』が何処で使われるかわからない以上、未だ警戒は続けなければならなかったのだが、ミレニアムまで届いているのは俺とデグ様しか居ない。

 そして、それを証明する証拠を見つけたいのだが、それを頼みたい諜報機関が……という訳だ。

 完全に後手後手に回っている。

 

「動きたい所だが、こんな状況では動けんよ」

 

「無理に動く必要はないと少将はおっしゃっていました。

 『ナチなら米国か英国だろうし、まずは自国は自国民で守るべきだ。

 君は君の国を守りたまえ』とも」

 

 そういう事をサラリと言えるからさすデグ信者が増えるのが分かっているのだろうか?あのお方。

 会議室を出ると、場違いな少女が一人。

 エルフ耳、麻呂眉、厚底ブーツの和服スカートというフェチズム極まる衣装で護衛を伴って待っていた。

 

(マスター。あれ、できるぞ)

 

 霊体化してついてきていたモーさんが警戒する。

 なお、副官のステンノは実体化してついてきているので、その少女に笑顔でガンを飛ばしていた。

 なるほど。

 ステンノ様と同系統のお方か。

 

「はじめまして。

 ヨロシサン製薬の役員をやっております、古奈牙柳魅と申します。

 この度は弊社商品を大量購入して頂き深く感謝申し上げます。

 つきましては、自衛隊におけるハイデッカータイプ導入におけるお話を……」

 

 いつの間にか、こういう接待を受ける側に立ってしまった自分に苦笑するしか無かった。




古奈牙柳魅
 こなきば・やいみ。漢字は適当に当てた。
 『ニンジャスレイヤー』
 属性バーゲンセールだからこそ、迷わず登場。


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接待風景

 さいたま新都心。

 新しくできた開発地区で、高層ビルが立ち並ぶ場所ではあるが、さすが闇鍋世界。

 アーコロジーが建っているとは思わなかった。

 ヨロシサン製薬の出迎えのヘリに揺られて上層階のヘリポートに到着する。

 空気が綺麗なのにびっくりである。

 

「我が社は環境にも配慮しておりまして」

 

 認識阻害の先にそびえる麻帆良学園都市の世界樹を眺めながら古奈牙柳魅は苦笑する。

 メガコーポは真っ白ではないが、かと言って真っ黒でもない。

 暗黒メガコーポと名を馳せていたこの両社だが、こっちに来たときにそれ相応に綺麗にはなったのだろう。

 叩けば出る埃はメガコーポの必要経費である。

 

「ようこそいらっしゃいました」

 

 ずらりと並ぶ美女達が俺にお辞儀をする。

 こー言う所は名残として残っているのが中々面白い。

 

「なに笑っているのよ?」

 

 自衛隊服の叢雲が突っ込み、同じく自衛隊服のマシュが白い目でこっちを見ている。

 まぁ、暗黒メガコーポの接待なんて受けたら、それはそれで色々問題なのだろうが、こっちもこの社とくっつかねばならない事情がある。

 実際にハイデッカーは対悪魔戦における切り札の一つになりえるのだ。

 そんなアーコロジー最上階の和室で、オイラン達を侍らせながら盃を交わす。

 

「では、お近づきを祝して」

「乾杯」

 

 高級酒を口にして盃を置く。

 ふらりとした所をステンノに支えられる。

 

「お酒弱いのに無理するから」

「これも仕事さ」

 

 その際にステンノが気遣うふりをして警戒する。

 彼女から何度か魅了がかけられた事を目で告げていた。

 概念礼装『ムーニー・ジュエル』を装備していなかったら危なかった所だ。

 こういう所も暗黒メガコーポらしくて苦笑するしかない。

 

「これは失礼を。

 何か別のものを用意させましよう」

 

 古奈牙柳魅が軽く手を叩くと、オイラン達が下がり、障子が開けられるとそこに巨大モニターが現れる。

 出て来たのは、魔界バブル真っ只中における日本の自衛隊の充足状況だった。

 

「湾岸戦争以降、戦争はハイテク兵器が戦場の中心になりました。

 それは、大量動員された兵士よりも専門職のエキスパートである兵士が必要になった事を意味しています。

 そのエキスパートの兵士の育成には、多額の費用と時間がかかります。

 弊社商品はそれを解決できると思っております」

 

「たしかに。

 とはいえ、それを一介の国家公務員に言うのは筋違いと思うのだけどね」

 

「そうでもありません。

 入即出様が購入なされた弊社商品は、自衛隊における初の採用になります。

 その有効性はいずれ正規採用に繋がると思っており、弊社といたしましては最大限の協力をと思いまして、このような席を用意した次第で」

 

 実際、海自の定数不足は深刻だった。

 現在作成中のレポートでは、バブルの夢を未だ見ているこの国の海自隊員の充足率は八割を切ろうとしており、私物購入扱いだったハイデッカー達については予算をつけて正規隊員化もという市ヶ谷の思惑がレポート提出後に出てきたのは笑うしか無い。

 なお、陸自や空自まで導入をするとなれば、その購入人員は余裕で万を超えるし、警察や消防にまで導入が始まれば桁が更に一つ上がる。

 

「貴社の商品だけが採用される訳ではない。

 ライバルは多くいるからな。

 オムラ・インダストリーにノマド、学園都市や麻帆良学園都市も研究を進めている。

 戦闘機導入と同じように、ハイ・ローミックスでの採用になると思っている」

 

「もちろん、利益の独占が理想ですが、蹴落とす相手は少なければ少ないほど楽なもの。

 今回、入即出様がヴィクトリア・ザハロフに支払った金額、全て弊社にて負担いたします」

 

 そう言って、古奈牙柳魅は小切手を差し出す。

 調達したハイデッカーの値段は一体1000万円。

 それの400体だから40億円だったりする。

 なお、オムラのオイランロイドの価格は一体一億円で80億円。

 対魔忍クローンは一体三億円で60億円で、合計180億円ものビッグビジネスだったりする。

 小切手の金額は200億円だった。

 

「また豪儀なことですな」

 

「軍事関連はこれぐらいのお金は常に動いていますから。

 リベートとでも思ってください。

 正直な所、これでもまだ可愛いものです」

 

 ハイデッカー一体1000万円が自衛隊全部に採用されると、一万体は配備される計算になるので一千億円のビッグビジネスになるからだ。

 おまけにハイデッカーの寿命は三年。

 三年ごとに一千億円の売上があると考えるならば、200億円のリベートは先行投資と割り切る覚悟が古奈牙柳魅の笑みから見えた。

 

「受け取りたい所ですが、査問会から開放された身。

 ここでそれを受け取れば、また査問会に呼ばれるので、それはおしまいください」

 

 古奈牙柳魅の眉がぴくりと動く。

 オイランの接待だけでなく、現金受け取りも拒否すれば向こうの面目が潰れるので、ある程度のお礼は返す必要があった。

 

「あくまで私個人の私用という形で、ハイデッカーを追加購入しておきたい。

 400体分。

 なんなら、この場で契約書を書いても構わないがどうかな?」

 

 デグ様経由で、ウォースパイトの乗員の不足についての報告は届いていた。

 あの人の良い提督を救国の英雄として殉死させるのは忍びなく、せめて彼の手元に最低限の戦力を送るぐらいはしてあげようという訳だ。

 購入費用はNATO軍予備費、購入は俺で、送り先はデグ様の所。

 デグ様の所で経歴ロンダリングをして、NATO軍兵士としてウォースパイトに乗船という手はずだ。

 さすがにバックドアまで手が回らないが、ボンド中佐には話しているから後はMI6の技術部が外してくれるだろう。多分。

 古奈牙柳魅は、ぽんぽんと優美に手を叩くとオイランたちが契約書一式を用意してくれる。

 笑みを崩さず、雅な口調でこの会談を終わらせた。

 

「これからも弊社商品をご贔屓によろしくおねがいします」




アーコロジー
 シムシティーで見かける超高層建築。
 この中だけで生活ができるのでサイバーパンクではよく出てくる。
 ヨロシサン製薬とオムラ・インダストリーはこのさいたま新都心にアーコロジーを建てている設定。

ムーニー・ジュエル
 彼女は手を触れた相手を治療するかわりにニューロンに楔を打ち込み、奴隷化するジツを用いる。
 4凸で魅了耐性+100%なので、完全に防いでいる。


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横須賀基地食堂の一コマ

「私って、魅力ないんでしょうか?」

 

 横須賀基地の食堂にてそんな事を言いだしたのは、東風谷早苗。

 入即出やる夫によって助け出された現人神の学生である。

 そんな発言に天ヶ崎千草が食べていた醤油ラーメンを喉につまらせるが、当の本人はまったく気づいていない。

 

「神奈子様も諏訪子様も『さっさと押し倒してしまえ!』って言うんですけど、なんと言いますか、周りの女性達のあれやそれがが……」

 

 ランチの鶏肉ステーキを箸でつつきながら、最後の方はごにょごにょになっているあたり東風谷早苗にも思うところはあるのだろう。

 むせながらも天ヶ崎千草はあくまで大人としてアドバイスを送った。

 

「十分魅力は持ってはると思いますけど、大人にはしがらみがあるんどす」

 

「たとえば、どんなしがらみなんですか?」

 

 天ヶ崎千草はとある方向を指差す。

 そのしがらみの最たるものが、カレーうどんの悲劇を今嘆いている所だった。

 

「あっ……あーあーーーーあーーーーー!」

 

「あれ落ちないんですよねぇ……」

「いや、突っ込む所はそこやあらしまへんわ」

 

 近代設備になった事で、叢雲での食事のレパートリーはかなり広がっていた。

 おまけに異界化した倉庫に保存食を大量に買い込んだので、長期間の航海でも問題ないという状況になっている。

 とはいえ、食事は基地の食堂でした方がレパートリーも多いので、多くの隊員と共にこっちに出向いて食事をする事に。

 周囲の自衛隊員の視線ももう慣れた。

 

「当たり前のように居てはりますな。あのお方」

「神奈子様と諏訪子様は露骨に避けていますけど……」

「そりゃそうどっしゃろ」

 

 因縁が日本神話レベルなだけに、深いというかなんというか。

 そんなアマテラス様は妖精三人に絡まれる。

 

「アマテラスおねーちゃん!

 一緒にアイス食べよ♪」

「ひーほー♪」

「だめだよ。

 チルノちゃん。

 ごめんなさい」

「いいですよ。

 一緒に食べましょうね」

「「「わーい!」」」

 

 微笑ましい光景を眺めていた二人のうち天ヶ崎千草がぽつり。

 

「なんぼ食べても太らへんて羨ましおすな」

「私もあまり気にしていませんけど?」

「そないな事が言えるんは、十代の間だけどす」

 

 今までで一番真剣な口調で天ヶ崎千草が言い放ち、東風谷早苗はその後の言葉を失う。

 そんな空気を打ち払ったのは、隣の席に座った定食を持った女性のおかげである。

 

「隣失礼しますね。

 どうも楽しそうなお話をしていたみたいなので」

 

 そう言って朧は手を合わせてアジのフライに箸をつける。

 不思議なもので、人が食べるのを見ると食べたくなるのが世の常で、明日の昼食は定食にしようと二人は心に決める。

 

「あ。そうそう。

 夜這いの話なんですよ!

 私って、魅力ないのかなって……」

 

 結構大きな声で夜這いなんて堂々という東風谷早苗。

 当たり前だが、この食堂には男子自衛隊員の方が多い。

 

「そりゃ、魅力云々でいうと、相手が神様ですからね。

 そこを何とかアプローチをしてというのが我々の立場です」

 

 やる夫の寝室のライバルは、基本全員神様である。

 その時点で色々突っ込む所なのだが、そのやる夫の子供からどれだけのものができるかという訳で、彼に抱かれて子供を孕みたいという女子は結構多い。

 その後の世話は、所属する組織が見てくれる。

 

「あの人結構義理堅いんですよ。

 手を出した人たちってアマテラス様を除けば、全員長い付き合いの人達ばかりだとか」

 

「そうなんですか」

 

 朧の言葉にへーという顔をする東風谷早苗。

 叢雲・マシュ・ステンノの三人は死線をくぐった仲で、それぞれ微妙に付き合い方が違う。

 叢雲の場合は自衛隊員に分かりやすい古参下士官と新米士官との関係で、それが公私に渡って広がったケース。

 だから、必要なら遠慮なく私の時間でも公の話を振るのが叢雲。

 一方で、マシュは後輩としてやる夫の指示に付き従った関係で、先輩後輩の関係がそのまま公私に使われている。

 そのため、基本的な所ではやる夫の指示待ちになるのがマシュだった。

 またステンノとの関係はマスターとサーヴァントではあるが、親しさと他人行儀な所は神様と崇拝者でなく、少しわがままな幼馴染とそれを受け入れる友人ポジと言った所。

 双方体を重ねる関係なのに、最後までどこか他人行儀な所があったりする。

 そんな事を朧はアジのフライをつまみながら話す。

 

「よう見てはりますな」

「それがお仕事ですし。

 そういう所から、自分の立ち位置を作らないといけない訳です」

「で、あのお方は?」

「当人曰く、姉と弟だそうで」

「それ、スサノ……」

 

 東風谷早苗の口を自らの口に指を当てて閉じさせる朧。

 言霊はこの世界は命取りになりかねない。

 

「まぁ、ぶっちゃけると、愛がなくても私はいいのですけどね」

 

 監視と勧誘が目的の朧はそのあたり割り切れていた。

 一方の東風谷早苗は自分の心が分かっていない。

 

「私は何なのかなぁ?

 助けてもらった恩はあるけど、じゃあ恋を飛ばして愛に行くのもどうかなって感じで。

 かといって今のままだとなぁというのも分かっているし」

 

 天ヶ崎千草は復讐のために動いてこの躰を差し出してもと思っていたのに、シスターシャークティをはじめクルト・ゲーデルやタカミチ・T・高畑みたいな人間を知ってしまうと彼らを憎めない。

 復讐を続けるのも力が居る。

 そして、その力が揺らぐ程度には時は経っており、少女は大人になっていた。

 

「天ヶ崎さんはどう思います?」

「ん?」

 

 天ヶ崎千草は残っていた漬物を口に入れることで、東風谷早苗の質問を拒否することにした。

 朧はそれを見ていたがなにも言わず、こうして三人の昼食は終わった。




東風谷早苗 JC
天ヶ崎千種 20代中盤
朧       躰は10代心は30代


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船頭多くして船山に登る その1

こんなにあった日本の退魔組織


 日本の公的退魔組織は闇鍋世界のおかげでこんなにある。

 

 デビル・バスターズ (内閣調査局)

 内務省公共安全庁 調査第三部 (内務省)

 警視庁特別資料室 (警視庁)

 防衛庁特殊二課 (防衛庁)

 宮内庁陰陽課 (宮内庁)

 科学技術庁超常現象研究所 (科学技術庁)

 文化庁調査局独立7課 (文化庁)

 国土庁総務部典礼課 (国土庁)

 ジプス JPS 正式名称 気象庁・指定地磁気調査部 (気象庁)

 陸上自衛隊538部隊 (陸上自衛隊)

 護国機関ヤタガラス (宮内庁)

 

 

 これに民間組織で協力的な所も入れてみるとこうなる。

 

 神社庁特別調査部 (神社本庁)

 クズノハ (葛葉)

 関東魔法協会 (メガロセンブリアの紐付きだが関東に多大な影響がある)

 関西呪術協会

 退魔四家 (浅神・巫淨・両儀・七夜)

 対魔忍 (ふうま一族)

 

 

 これらの組織は縦割り行政のおかげで規模が小さかったり、権限が限られていたりと、横の連携が殆ど無かったのだが、さすがにまずいだろうという事で組織再編の動きが始まっていた。

 その原因は言うまでもなく俺とアマテラス様。

 要するに海自にこれ以上俺の身柄を預けるつもりはないという意思で、当然海自は市ヶ谷共々大反発をしていたりする。

 とはいえ、昨今の状況は繁栄の裏でテロだの悪魔だのが跋扈している訳で、状況の改善は待ったなしの所まで来ていた。

 というか、闇鍋結果でできていたのかよ。内務省……

 これのおかげで、組織再編が一気に加速した。

 大蔵省が官僚オブ官僚なんて言われるのは戦後の話であり、それまでの官僚の王道オブ王道は警察を抱えていた内務省である。

 防衛庁の省再編に絡む動きと合わせて、大蔵省とのバトルの餌にされたという側面があったりする訳で。

 という訳で、このあたりの組織再編の話をしようと思う。

 内務省があったおかげで、組織再編に実に都合が良い器が一つ使えるようになった。

 神祇院である。

 戦後には消えた内務省の外局だが、解体に際しその仕事は民間となった神社庁に引き継がれていた。

 そんな神道系の器だが、アマテラス様バカンス中の昨今、民間に置いておける訳もなく。

 宮内庁陰陽課と神社庁と関西呪術協会とヤタガラスがここに集約された上で、宮内『省』外局として再建させられる事になった。

 ここに連絡会議が設置されて、横のつながりを作ろうという訳だ

 組織的にはこんな感じになる。

 

 宮内省-神祇院-特別調査連絡会議

                  -護国機関ヤタガラス-クズノハ

                  -特別調査部

                  -陰陽課-関西呪術協会

                  -退魔四家

                  -対魔忍

                  -デビル・バスターズ

 

 

 内調下で弱体化させられきっていたデビル・バスターズは早急な戦力化を求められてこちらに移され、内務省から依頼を受けていた対魔忍もこちらに回された。

 組織を眺めていやな想像が頭に湧く。

 対魔忍は娼婦育成機関なんて陰口を叩かれているが、本当にそれが目的なのかもしれないと。

 何しろ、この手のエキスパートは伝統と血の継承がとにかく物を言う。

 そして、それにふさわしい母体は常に不足する。

 そう考えると、この腐れきった国の冷徹かつ合理的な政策の一端が見えてくるから、納得すると同時におぞましくもなる訳で。

 彼女たちはその母体のみが必要な訳で、そこから生まれた子どもたちは再度育成されて……考えるのはやめよう。気分が悪くなる。

 なお、型月世界の退魔四家がこっちにまとめられたのは、クズノハや対魔忍と同じ扱いをされたからである。

 

 

 

 次に省庁再編で文部科学庁と国土交通省が誕生することになり、その巨大官庁下でも退魔組織がまとめられる事になった。

 

 文部科学省-文化庁-調査局-超常現象研究所+独立7課

               -超常現象連絡会議-関東魔法協会+他

 

 麻帆良学園都市にせよ、学園都市にせよ、学園都市であるために管轄は文部科学省である。

 そして宗教関連を管理しているのもここである。

 結果、最も多くの退魔組織の人数を抱えているのが文部科学省である。 

 なお、天海市の情報環境モデル都市の失敗で対処に追われてアーカムの支援を受けているのもここだったりする。

 

 

 国土交通省-気象庁・指定地磁気調査部+総務部典礼課

 

 こっちは、ジプスこと気象庁・指定地磁気調査部が総務部典礼課を吸収する形になった。

 ジプスを実質的に支配している峰津院家の力が強かったというのもあるが、こっちもアーカムが龍脈絡みで接触していたりする。

 退魔組織の再編である意味一番動かなかったのがここである。

 

 

 内務省-公共安全庁-調査第三部

      -警視庁特別資料室

 

 内務省があるという事は、国家公安委員会が無い訳で。

 総務省ができずに内務省に吸収されるのか総務省と内務省に分かれるのかまではさすがにわからない。

 とはいえ、この腐れきった国をまがりなりにも繁栄に導いた治安維持を一手に握っていた事もあって、むしろ油断できないと言っていいだろう。

 むしろ、ここの特殊性は表を書いた方が分かりやすい。

 

 内務省-公共安全庁-調査第三部

      -警察庁-自治体警察-警視庁特別資料室

      -首都警

 

 首都警あるのかいと突っ込んだのを誰が責められようか。

 自衛隊のクーデターがカウントダウンに入った現在、それを防ぐために警察軍の創設は悪くはないが、同時に警察側が俺を逮捕するという可能性を否定できなくなる。

 少なくとも、警察はクーデターを許容しない。

 それがわかっただけでも良しとしよう。うん。

 で、その自衛隊である。

 

 

 防衛省-特殊二課-陸上自衛隊538部隊

 

 一応上位機関の特殊二課と実務部隊538部隊という形に収まりはした。

 とはいえ、ここにこんな動きがあった事は載っていない。

 

 

 海上自衛隊特殊任務群編成案

 

 つまり、俺の所属先を作る動きだ。

 それが没になった理由が、現在俺の前に座っていた。

 

「今回は、お誘いに応じて頂いてどうも」

 

「色々とお話を聞きたいとは思っていましたので。

 内務省公安部の荒巻大輔さんに、警保局の室戸文明さん。

 どういうお話を聞かせてもらえるか楽しみですよ」




 『女神転生TRPG覚醒編』 (1998年 アスペクト)を書庫から発掘できたので、そこの主だった組織を載せて再編成してみた。
 組織のいくつかは意図的に変更している。

首都警 『赤い眼鏡』
 ケルベロス・サーガが確立する前はケルベロスって警視庁の対凶悪犯罪特殊武装機動捜査班だったりする。
 これがそのままデモニカスーツの流れにできるわという事で今回の話に。

内務省
 『対魔忍』世界は内務省なんだよ。
 という事は色々できてだな。
 でっちあげと時間軸確認で持ってきたのが下の二人。

荒巻大輔
 『攻殻機動隊』。
 内務省公安局の公安9課課長。
 自衛隊から公安に移った経緯があるので、色々しがらみがあったんだろうなぁ。この人。

室戸文明
 『ケルベロス・サーガ』。
 押井監督作品で、よく出てくる人。
 この人も内務省警保局出身というバリバリの警察官僚。


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船頭多くして船山に登る その2

「知っての通り、海上自衛隊特殊任務群編成案を葬ったのは我々だ。

 入即出やる夫宮内省技術総括審議官」

 

「まだできていない省の役職で呼ばれるのは妙な感じですな」

 

「慣れておきたまえ。

 少なくとも、この国の神道系退魔組織の最上位現場指揮官として我々は扱うつもりではいる」

 

 俺の突っ込みなど室戸文明は気にする様子もない。

 俺が何か言う前に荒巻大輔が補足説明を加える。

 

「室戸さんは、省庁再編後、宮内省の事務次官となる予定になっている。

 今回の技術統括審議官のポストは室戸さんが強烈に推した結果という事を理解して欲しい」

 

 技術統括審議官は技官の最高位のポストであり、局長級の扱いとなる。

 今の自衛隊で同じポストを探すと舞鶴や大湊の地方総監となるから、感覚で行けば少将である海将補より一つ上という所だろうか。

 本人のあずかり知らぬ所でまた出世したものである。

 

「ただの護国組織の構成員が宮内省の技術統括審議官ですか。

 あちこちから妬まれそうですな」

 

「闇に隠れて生きているならばそれもまた良しだが、表に出た以上は表のルールに従ってもらおう。

 君は君が使役している艦娘との関係から、必然的に海自との関係を深めており、それを海自も歓迎する事については別に問題はない。

 とはいえ、君の本籍がヤタガラスであるならば、そちらを忘れないようにしてほしいという訳だよ」

 

 国を影から守っていた故に、そもそも公務員という意識すら無い護国組織ヤタガラス。

 その上に宮内庁というか日本神話の守護という名目からの退魔組織でしかないから、個人の力に依存して組織としての体を成していなかった。

 結果、クズノハみたいな血統と伝統のある退魔一族に依存せざるを得ないという状況に陥っていた。

 

「宮内省を警察の植民地にできたという所ですか。

 その段階で俺は自衛隊に傾きすぎている。

 排除は問題外である以上、俺の引き戻しに走ったという所ですかな?」

 

 俺の皮肉に室戸文明の荒巻大輔も動じない。

 そういう政治的寝技を駆使してこの国を守ってきた悪魔とは別の妖怪達が俺の目の前にいる二人なのだ。

 

「隠すつもりもないが、自衛隊内の一部組織に置いてクーデターの動きがある。

 自衛隊内でもその粛清に手間取っており、決起が発生した時に君が同調されると困るというのもある」

 

「俺はクーデターには参加しませんよ」

 

「米軍の介入を警戒しているからか。

 悪くない理由だがそれだけでは信用できないからこうして君を呼んだ。

 君は米軍の何を警戒しているのかね?」

 

 さすが警察官僚の頂点の一人。

 寝技も事前情報も全部準備してこちらを詰めに来ている。

 自然と苦笑していたらしく俺の唇が笑っていたのに気づいて戻す。

 

「米軍の核攻撃と言ったら信用しますか?」

 

「少し前だったら鼻で笑った所だが、ミサイルの誤射事件から日米安保が揺らいでいるのも事実だ。

 可能性は排除できないが、君はその米軍ともパイプを作っているはずだ。

 改めて聞こう。

 米軍の核攻撃。

 それはどのようなプロセスで発生すると思っているのかね?」

 

 荒巻大輔の質問に、原作とも絡みがあるなと気づいて俺は悪魔の話を振る。

 

「悪魔というのが情報生命体であるという理論が近年発見されて、その理論を元に悪魔召喚が飛躍的に容易になりました。

 荒巻さんの担当の言葉で言うのならば、悪魔もまた自立し実体化するプログラムであるという所でしょうか」

 

 荒巻大輔の顔色がはっきりと変わった。

 俺の言葉の意味を理解したからに他ならない。

 

「まさか、あのミサイル誤射が悪魔の仕業というのか?」

 

「残念ながら、あれは正真正銘のウイルスですよ。

 ですが、学園都市の人工衛星まで使用不能にしたパラダイムXの障害は悪魔の仕業です」

 

 あれを主導したのは俺なのだが、当然二人はそれを知っているだろう。

 だが、その過程で大活躍をした電霊ネミッサのことなどまでは彼らは知らない。

 

「あのタンカージャック事件では、ウイルスのせいで横須賀基地から市ヶ谷、挙げ句にはハワイ真珠湾にまで被害が及びました。

 そのウイルスが自立し進化し思考する。

 現在の悪魔というのはそういうものなのです」

 

 俺の言葉に二の句がつげない二人。

 愛国心もあるし権勢欲も無いわけではないだろう。

 とはいえ、この退魔組織というのがブラック確定の組織の体をなしていないと知っていたかどうかは怪しいところである。

 今更遅いと言えば遅いのだろうが。

 

「わかった。

 今から君の仕事は、そういう情報を整理しマニュアル化して、最低限神祇院だけでも戦力化させる事だ。

 くり返し言うが、我々は自衛隊のクーデターを許容しない。

 その上で君がこちらにつくのならば、それ相応の地位を約束しよう」

 

 現状技官最上位の技術総括審議官なのにまだ上があると申すか。

 顔に出ていたらしい俺に室戸文明は笑う。

 

「クーデターが起きない事が理想だが、起きても起きなくても上の椅子は大量に空く。

 その時、君がこちらに居たならば、好きな所に座り給え」

 

「えらく俺を買っていますね?」

 

 俺の苦笑に室戸文明は皮肉を含めてその理由を告げた。

 分かりやすい理由を。

 

「この手の政治的駆け引きができてかつ実力がある上に、政治的色がまだ比較的ついていないのが君しか残っていなかったというだけだよ」



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船頭多くして船山に登る その3

基本は『女神転生TRPG覚醒編』
それ以外はサイコロである。


 新設される宮内省にまとめられた退魔組織人員構成はこんな感じである。

 

 

 ヤタガラス

  30人 平均レベル18 全国の退魔組織との連絡役

 

 クズノハ

  16人 平均レベル60 基本2人で行動

 

 陰陽課

  4人 平均レベル4 東京守護任務がメインなので東京から動かず

 

 関西呪術協会

  110人 平均レベル30 畿内を始めとした西日本の寺社仏閣の警護

 

 退魔四家

  17人 平均レベル72 個々で動いている。遠野家はこの枠。

 

 対魔忍

  72人 平均レベル15 単独行動及び複数で任務に当たるが未帰還者多し

 

 デビルバスターズ

  40人 平均レベル5 4-5人のチームで活動

 

 

 見事にというかなんというか言葉にしにくい。

 ヤタガラスは基本全国を飛び回る連絡員という扱いなので、この人員とレベルは納得ができる。

 クズノハは少数精鋭主義で一族として事にあたってなおこの練度を維持できているのがすごい。

 一方で陰陽課は関東魔法協会との兼ね合いで見事なまで弱体化させられていた。

 ここは、関西に多くの霊地を抱えている関西呪術協会に協力を仰いで早急な戦力化を急ぐ必要がある。

 退魔四家のレベルが異常な程に高いのは、クズノハと同じく尖った個人がレベルを押し上げている結果だろう。

 遠野兄妹とか、両儀式とかあのあたりだ。

 思った以上に人数がいるのが対魔忍だが、ここは設定が設定だから人数とレベルがある程度あるのは大助かりである。

 無駄に送り込んで未帰還者アヘ顔ビデオレターの届く率を抑えないといけない。

 デビルバスターズは内閣調査局の弱体化にさらされて陰陽課と同じような感じに。

 このあたりの人員を動かせるのが俺の立場となる訳だ。

 宮内省技術総括審議官。

 実務組織となる予定の神祇院特別調査連絡会議の更に上の椅子だから困る。

 ボスが復活する内大臣で、宮内省事務次官・宮内審議官に次ぐ内局局長扱い。

 こういう扱いなのは、外局である神祇院のトップである総裁に変わって神祇院を動かす為の搦手なのは言うまでもない。

 

「さてと。

 どこから手をつけるかね」

 

 皇居。皇宮警察本部地下に作られた準備室にて俺と叢雲とステンノは頭を抱える。

 神祇院は皇居防衛の必要と隠密性から皇居地下にその施設の大部分を建設する秘密基地に近いかたちになる予定だ。

 

「まずは、何を守るべきかから始めた方がいいんじゃない?」

 

 叢雲の指摘に、俺はCOMP絡みの資料を確認する。

 意外と思うが、COMP流出にともなう悪魔の出現事件は、まだ許容範囲内に収まっていた。

 それは時代が93年。

 つまり日本のITブームを一気に加速させたパソコンの爆発的普及前という事があげられる。

 まだ、パソコンは持つ人が限られる物だったのだ。

 もちろん、学園都市の最先端科学によってそのあたりの発展も進んではいるが、学園都市製の技術をデファクト・スタンダードにしたくない国家側の規制がこのバランスを作り出したと言えるだろう。

 アルゴンソフトのパソコンが世界基準となり、その先駆けとして天海情報都市があった。

 表向きの政策が潰れたので、まだ治安の悪化に対処できる時間が作れたのは運が良かったと言えるだろう。

 

「治安の維持。

 そのためにも、警察側の組織とも提携しないと」

 

 対魔忍を使っていた内務省公共安全庁調査第三部および、警視庁特別資料室と連携を取るための話し合いを申し込む。

 ちなみに、警視庁特別資料室の人員は数人でレベルは3というやはり使えない状況だったので、室戸文明次官に頼んでここも強化させる事にする。

 その調査第三部部長である山本信繁は電話向こうから苦悩な声を聞かせながら、対魔忍使い捨ての窮状を語る。

 

「問題の本質は、悪魔が暴れることではないのです。

 暴れたことによる恐怖の感染が一番やっかいなんです」

 

 神様クラスの悪魔はひとまず放おっておくとして、大体の雑魚悪魔は核の熱と衝撃に耐えられない。

 これは人が悪魔に刺し違え覚悟である程度対抗できる事を示している。

 とはいえ、そんな勝利を人も悪魔も基本望んていない。

 悪魔にとって、人は存在を固定できると同時に全滅すれば現界できなくなる基礎みたいなものだ。

 だからこそ、悪魔と人は古より境界線を決めて、その中でつつましく共存していたのだ。

 それが近年の経済発展で狂いだした。

 悪魔は人に快楽を与え、人は悪魔に心を捧げ、繁栄と共に悪魔の顕在化は加速度的に進んだ。

 それでも、まだ治安悪化に行き着いていないのは対魔忍を使い捨て、悪魔と人の欲望の生贄とする事で、満足させていたという側面に俺は頭を抱えざるを得ない。

 

「つまり、クローン対魔忍。

 あれは政府の主導もしくは黙認によって、生み出されたものだと考えてよろしいのですね?」

 

 山本信繁の沈黙が全てを物語っていた。

 対魔忍の尊い犠牲によってこの国は魔界バブルに酔いしれ、未だ空前の繁栄を続けているのだから。

 この国が何を差し出し、何を失ったのか、それを究極的には部外者である俺は問うことはできなかった。

 そして、その流れに俺も基本乗らざるを得ない。

 

「退魔組織における人材不足は致命的な所にまで来ています。

 対魔忍クローン、オムラのオイランロイド、ヨロシサンのハイデッカーをベースに、各部署に人員を割り振ることになりそうです」

 

 首都圏だけでなく霊脈のパワースポット地帯であるこの国の霊的防衛には、最低でも連隊規模の人員は欲しい。

 それを確保できるのはその手段しか無かった。

 

「自衛隊が大量導入をするという話に便乗する事になるでしょう。

 それで今の治安が維持できることを信じていますよ」

 

 おそらく、このハイデッカーを始めとした大量導入に紛れて、かなりの数がクーデター側に渡るだろう。

 それでも、そのクーデター後の治安維持には面制圧ができる戦力がどうしても必要だった。

 警察にも、俺にも。

 山本信繁との電話を切った後に、ステンノが言い放つ。

 とても綺麗な笑みで。

 

「人間って不思議ね。

 貴方も彼も、まったく信じていないのに」

 

 その言葉に俺は何も返事をする事無く、ステンノに笑みを返すことで答えた。




山本信繁
 『対魔忍アサギ』。
 対魔忍世界の数少ない常識人。


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船頭多くして船山に登る その4

 退魔組織と治安維持組織の問題点を室戸次官(なお省庁再編で宮内省ができるのは来年1月1日からである)や荒巻公安課長側(彼は案の定内務省公安局の課長だった)から見ると、管轄と実戦力が内務省側から離れている点にある。

 悪魔絡みの事件は必然的に宗教が絡み、それは来年できる文部科学省の管轄という訳だ。

 宮内省昇格とその外局である神祇院は内務省がやっと悪魔絡みで実戦力を得たという見方もできなくはない。

 そして、実戦力を得た事で表の法の執行ができる体制が用意できる事になる。

 

「基本、悪魔がらみの事件については、以下の編成で行う」

 

 室戸次官の説明に神祇院特別調査連絡会議に参加した俺を含めた面々はその資料を確認する。

 

「事件そのものの一報は110番通報で警察に届く事が多く、最初の対処は警察が行う事になる。

 その後、悪魔絡みの事件であるという事が確認された後に、神祇院に権限が移管される」

 

 とはいえ、発生時の警察への被害が馬鹿にならないので、警察側も治安維持の為にハイデッカーを投入する事でこれに対処する事になる。

 大事件の一報で動ける人員と盾が増えたことで、被害を軽減する仕組みだ。

 警官2人にハイデッカー2体がつく形で初動チームを編成する。

 とはいえ、彼らの装備は対悪魔用ではなく、対事件用の軽装備なので注意。

 

「権限移管後に神祇院が出動する事になる。

 編成は、ハイデッカー16人に執行官4人を基本に管理官をつける。

 管理官は基本警察から出向してもらい、警視以上の者をこれに当てる」

 

 悪魔絡みの事件はその異様性からどのように法を当てはめるかで確実に揉める。

 そのため、警視以上の警察官を管理官として事件解決と法の執行の整合性を取らせるために上に据えるという訳だ。

 このあたりからも、この神祇院が警察の植民地であると正しく認識できた。

 

「つまり、現在集まっている面々は基本執行官として事件解決に当たり、管理官の助言のもと事件解決に当たる訳だ」

 

 俺が横から口を挟むがイマイチ分かっていない現場組である会議の参加メンバー。

 手を上げて質問を求めたのは上京してきた関西呪術協会会長の近衛詠春。

 

「関西呪術協会は地域に根ざし、現地警察と協力してこの手の事件を秘密裏に解決してきました。

 中央から管理官が出てくると、現地警察との軋轢が発生すると思うのですが、そのあたりについてお伺いしたい」

 

「もちろん、現在の案はまだ机上の空論で、省庁再編後に本格化するためのたたき台とでも思っていただけると助かる。

 ただ、昨今の悪魔事件の発生はまだ許容範囲内とはいえ増加傾向に有り、いずれ現地だけで対処できる規模を越えることが予想される。

 この案の狙いは、全国規模で頻発する悪魔事件において、増援を送る際のケースも想定しており、増援部隊と現地部隊の協力で事件解決をする事が望ましい」

 

 互いに装飾しているが、要するに、

 

『地方の事に中央が出しゃばるんじゃねえ!』

『手が足りなくなるだろうが!

 増援送って責任は取るから、指揮権よこしやがれ!!』

 

という官僚的な殴り合いである。

 困ったことに、その手の指揮権の奪い合いを警察は前例としてちゃんと学んでいた。

 連合赤軍あさま山荘事件における機動隊派遣である。

 

「新組織の戦力化については疑問を挟みませんが、対魔忍のクローン導入だけでなく、オムラ・インダストリーのオイランロイドまで導入する意図を教えていただけないでしょうか?」

 

 対魔忍代表として陸自の服を着た甲河朧の質問に俺が答える。

 いつもの海自の制服でなくスーツを着ている事で、立場の違いアピールも忘れない。

 なお、叢雲は海自制服のままだが、ステンノはスーツ姿に変わっている。

 

「現在の人員で悪魔事件に対処できるのは100人ちょっと。

 訓練と休息を考えたら、実数で動けるのは30人が良い所だろう。

 4人でチームを組ませたら7チーム。

 西日本は関西呪術協会が見てくれるが、この数だと東日本どころか首都圏でも手が足りない。

 対悪魔に対してある程度の戦力が期待できる対魔忍のクローンは、この国の治安維持の切り札になるだろう。

 同時に、そんな対魔忍の消耗は避けないといけない。

 オムラ・インダストリーのオイランロイドは、対魔忍を守る盾として導入する」

 

 この導入については、実戦までさせた俺の意向がものを言った。

 クローンは疲弊したノマドからの購入ゆえ、ヴィクトリア・ザハロフ相手に300億円を支払い、割引込みで150人の対魔忍を確保して五車学園に送り込んで再教育をしているからこそ、こういったチーム編成までの話ができるのだ。

 なお、オイランロイドは100体購入、ハイデッカーも1000体購入し既に納入が終わっている。

 これらの費用を首都警設立の資金経由の裏金から出せるのも、この国が未だバブルに酔っているおかげだろう。

 話はそれるが、首都警もハイデッカー2000体と装甲車両、機関銃装備でプロテクトギアをつけさせて戦力化を進めているのだから、この導入は技術のブレイクスルーとして記録されるだろう。

 もちろん、自衛隊も万体規模で導入を決定したので、ヨロシサン製薬の株価はうなぎ登りで、いらんと断った200億の小切手が再度送られてくる始末。

 

「東京と京都を中心に近く人員の再編成を行う。

 現状の危機的状況だが、最低限の対処ができるように手は打っているので安心して欲しい。

 希望などがあるのならば、私か入即出技術統括審議官に言い給え。

 以上だ」

 

 室戸次官の声と共に皆が立ち上がる。

 俺が立ち上がろうとした時に、意図的に低い声でマダム銀子がこんな事を言った。

 

「悪魔相手ならこちらも問題はありません。

 ですが、悪魔に魂を売った人間や、悪魔側についた人間を相手にした場合、どうしたらいいのでしょうね?」

 

 何を当たり前の事をという感じで室戸次官は笑って出てゆく。

 後ろ姿からこんな声を残して。

 

「我々の正義はこの国の法が保証している。

 それを信じられないならば、この国の神様でも信じてみるといい。

 最近降臨したそうだから、聞けば答えてくれるかもしれんぞ」

 

と。

 

 

 会議室を出た所で、一人の官僚が俺を待っていた。

 次から次へと厄介事がやってくる気がしたが、これも偉くなった宿命だろう。

 

「超常現象研究所の木林と申します。

 冬木市で見つけられたゲートの開放についてお話が……」




あさま山荘事件
 警視庁の指揮監督に反抗する長野県警及び、警視庁内の反対勢力というすばらしい足の引っ張り合いは佐々淳行『連合赤軍「あさま山荘」事件』(文春文庫)に詳しく書かれている。

木林
 『MMRマガジンミステリー調査班』。
 こんな研究所があったらこの人達居るでしょうという事で。

「「「な……なんだってー!!」」」

 他の候補者として、上田次郎も考えていた。


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ターミナル開発 その1

 女神転生には『ターミナルシステム』というものがある。

 開発者の一人であるスティーブン曰く、離れた場所をワープで繋ぐ転送装置の事なのだが、これが魔界につながってしまって、というのが物語の背景にある。

 その技術を応用して作られたのが『悪魔召喚プログラム』という訳だ。

 そんな技術も闇鍋世界と時間経過によって、ついにある種のタイムマシンにまで進化した。

 FGOが使っているコフィンシステムがそれだ。

 もちろん、このあたりがバレると色々とまずいので俺ですら口を噤んだ一件だが、この木林はそれによりにもよって触れようとしているらしい。

 

「ご存じかと思いますが、悪魔と呼ばれる存在が情報生命体であるという理論によって、悪魔召喚は飛躍的に進歩し、悪魔絡みの犯罪も多発しております。

 ですが、我々はこの理論から次の疑問を感じざるを得ませんでした。

 つまり、『人は情報生命体になれるのか?』という点です」

 

 根が同じ技術だから、その疑問はある意味当然と言えよう。

 そして、ワープ技術が実現化すれば、一気に世界の覇権を握ることも可能になるだろう。

 この技術は本気でパンドラの箱なのだ。

 

「おっしゃることは分かります。

 それが冬木市のゲートとどう話が繋がるのですか?」

 

 己がつけている眼鏡に手をかけながら木林は続きを話す。

 この木林ノリノリである。

 

「はい。

 現在、この理論は悪魔召喚プログラムの実現まで進みましたが、次の段階である『人間の情報生命体化』の目処が立っていませんでした。

 ですが、冬木で見つかり封印されたゲートは、現在世界唯一の時空移動が可能な次元の歪みであると私は考えています」

 

 俺は黙り込む。

 この人、IQ170の天才だったな。

 その才能を超理論にばっかり使っていたが、その超理論が跋扈するこの闇鍋世界だと水を得た魚のように活き活きしてやがる。

 

「このゲート理論が確立するならば、人類は新たな段階に歩みを進めます。

 私は、このチャンスを逃したくはないのです」

 

「ですから、その話に私がどう絡むのか、おっしゃって頂かないと」

 

 仕方ないので、俺の方から話を振る。

 木林はそれを待っていた。

 

「あのゲートの封印、その責任者は貴方じゃないですか?

 だから、私は貴方の許可をもらいに来ているのです」

 

 なにそれ初耳である。

 あのゲート封印は、アマテラス様が呼び出した八衢比売神を俺と契約し……あ。

 たしかに責任者俺になるわ。

 

「私としては、わざわざ開けて危険を招く必要はないと思っているのですけどね」

「入即出さん。

 貴方をはじめとした上のお歴々が、何かに怯えるかのように早急に軍備を整えているのは理解しています」

 

 汗が頬を垂れる。

 この人は何処まで掴んでいるのだ?

 それがわからないから、俺は黙らざるを得ない。

 

「人間相手だったら、ここまで急ぐ必要はない。

 ハルマゲドンが迫っているのでしょう?」

 

 言葉に詰まる。

「「「な、なんだってー!」」」と言えたらどれほど楽なことか。

 彼のとんでも理論はこっちの隠していたことを完璧に見抜いていた。

 時は世紀末一歩手前。

 ノストラダムスが華やかなりし時である。

 

「そのお話は誰かにしましたか?」

「鼻で笑われますよ。

 まだ、囁かれている自衛隊の不穏な動きの方が信憑性があるでしょうな。

 ですが、そういう混乱が発生した後ではもうあのゲートは調べることはできないでしょう」

 

 木林は力説する。

 その言葉の力に飲まれなかったと言えば嘘になる。

 

「今しかないのです!

 今ならば、まだなんとかなります。

 ハルマゲドンが発生した時に、あのゲートを開けるのはそれぞ不可能だ。

 政府組織が機能して、各勢力からのフォローが期待できる今しかあのゲートを調査する時間は無いのです!!」

 

「それがパンドラよろしく災厄を撒き散らすものだとしても?」

 

 俺の確認に木林は嗤う。

 それは自説を顧みられなかった皮肉からか、それが現実になろうとしている世界へか。

 

「現在、世界的大財閥のアーカムが日本の龍脈について調査しているのはご存知ですか?

 アーカムは貴方が関与した聖杯戦争に重大な関心をよせています。

 ワープによる転送には莫大なエネルギーが必要で、そのエネルギー源として龍脈を考えているのではと私は考えているのです」

 

 若狭湾の原発を利用したレールガン規模のエネルギーを常時維持できるのならば、あのゲートが安定化したのもある意味納得がいく。

 天橋立というパワースポットのあるあの場所は、日本の霊脈のラインの一つが走っている。

 そんな事を考えていたら木林が冗談を言う。

 

「それに、パンドラの箱ですら希望は残っていた。

 未来がハルマゲドンならば、希望に縋っても人類存続を願うのは間違っているのでしょうか?」

 

 彼を放置するという選択も無い訳ではない。

 だが、それで待っているのは、彼の身の危険だろう。

 ゲート転送システムは魔法側ではほぼ完成しているし、この世界にもスティーブンが居るのは俺自身が接触している。

 できることがわかっているものを止めることはできない。

 

「分かりました。

 私の管理下という条件でプロジェクトチームを発足させましょう。

 ですが、これを行うともう戻れませんよ?」

 

 俺の脅しにも木林は通じなかった。

 代わりに彼は俺に手を差し出す。

 

「戻れない?

 人は前に進むことしかできないんですよ。

 そうやって未来を切り開いていったんです」

 

 木林の手を握り、俺は苦笑する事で彼の言葉に応えた。




女神転生のターミナルシステム ワープ  スティーブン
ネギまのゲート 惑星間ワープ 及びタイムマシン 超鈴音
FGOのコフィン タイムマシン ダヴィンチちゃん

 開発者や関係者達がいるのも強み。


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ターミナル開発 その2

何も考えていない時に出るあんこスレあるある


「君も中々の厄介事を持ってきたものだ」

 

 室戸次官は、木林の持ってきたプロジェクトチーム案を見て苦笑する。

 それがどれだけ厄介なのかを理解しているからの苦笑である。

 俺も同じ顔をしていた。

 魔法側のゲートシステム及び、ターミナルシステムの全資料をこの場で見せられた隣りにいる木林は今更顔が青くなっているが、知ったことではない。

 

「どうせ誰かが開けるパンドラの箱です。

 我々が開けても問題はないでしょう?」

 

「開けて貧乏くじを引いた場合は?」

 

「誰が開けても世界情勢が変わります。

 それなら、開けたほうがいいでしょう?」

 

 説得材料はあった。

 ターミナルシステムの持つ特性は、そのまま管轄の違いをあらわしていた。

 

「このまま木林さんが開けたら、文部科学省が手柄を持っていきます。

 そして、ターミナルシステムは通信だから、絡むのは現郵政省の管轄。

 通信行政は内務省が狙っていた場所ですよね?

 ゲートシステムは英国に現物があり、その前段階のレイシフトは理論がほぼ完成しています。

 この動きを現覇権国家の米国が座視するとお思いで?」

 

「英国や米国と組むという選択は?」

 

「ありでしょうが、ただ頭を下げるのは芸がないでしょう?

 このプロジェクトは米国及び英国との覇権争いに我が国が勝つ為のプロジェクトではなく、両国と手を組む為の材料として外交的に提供する事を目的としています。

 それに手を組んだら外務省が出しゃばってきますよ」

 

 室戸次官はため息をつく。

 デメリットが甚大過ぎて、手を引いても自分にダメージが出る。

 だったら、こっちで手を出して主導権を握ってしまう方がまだメリットが発生する。

 

「好きにしたまえ。

 とはいえ、定期的な報告は届けるように」

 

 そう言って、承認の判子を押したのだった。

 

 

 

「で、何時冬木に向かうのですか?」

 

 室戸次官の部屋を出た後、額の汗をハンカチで拭きながら俺に尋ねる。

 俺は承認の判子が押された書類をひらひらさせながら木林に言う。

 

「その前に、できる事はしておいておこう。

 怪しいプロジェクトだから、良い報告は早いうちに次官にあげておきたいからな」

 

 という訳で横須賀港。

 久しぶりに海自服を着た感じを堪能しながら俺は叢雲に告げた。

 

「じゃあ、やってくれ」

 

「わかったわ。

 いくわよ!」

 

 叢雲のメンタルモデルの解除と再展開。

 中の乗員等は避難させている。

 その上で再展開時に何が残り、何が消えているのかを確認するのがその良い報告の正体だ。

 なお、試験用にハイデッカーとオイランロイドを乗せている

 

 

1 基本装備のみそれ以外は消失

2 基本装備に追加兵装も残る燃料・物資・弾薬はそのまま

3 ↑+人員も残るが、艦内時間は外と同じ

4 同上

5 同上

6 同上

7 基本装備と追加兵装が残り、燃料弾薬は初期満タン状態に回復。

8 ↑+人員も残る、艦内時間は同じ

9 ↑+人員も残る、艦内時間は停止

10 何か増えてる

 

結果 10    何か増えてる

 

 

「マスターくん。

 ちょっといいかな?」

 

 万一のことを考えて、艦内にセンサーを仕掛けていたダ・ヴィンチちゃんが呆れ声をだす。

 叢雲と木林を連れてそのモニターを見てみると、何か反応が増えていた。</