「ふたり」の「他愛のない」日々 (刃波海苔)
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好き合ってる変態な先輩君と変態な後輩ちゃんがダラダラくっちゃべるだけ


この作品は会話文のみとなります。
この作品には性的な仄めかしが含まれています。
この作品には下ネタとは別の意味で食事中の閲覧には適さない要素が含まれています。
この作品にはミーム的な表現が含まれます。
この作品と二人の会話に意味を求めることはPOPTEAMEPICに意味を求めることと同義です。
H30/11/27 意図した意味から180度変わってしまうとんでもないミスが有ったので修正。
H30/11/30 それぞれのシーンに寒いサブタイトルを設定。不評なら消す。


◯けものカップル

 

「先輩、私達ってどうしていつも……」

「こうなんだろうなあ……」

「普通の勉強会……をするはずだったんですよね、私たち」

「どうして大人の勉強会になるんだかなあ……」

「そうですよねぇ。……うーん、思春期だから、なんですかね?」

「あー、そっか……。身体が一番やりたいって思う時期だもんな。しょうがねーか……」

「しょうがねーですよ」

 

◯先輩学

 

「すんすん……ああー……。この匂い好きぃ……」

「お前、ほんとに俺のこと好きだよな……」

「好きですぅ……。すんすん……背中の匂いが一番好きぃ……」

「え、俺って部位ごとに匂い違うの?」

「背中は頼もしい匂いがして、胸元はセクシーな匂いが……します……すんすん」

「なにお前。俺を研究してる学者なの?」

「はい、先輩学を専攻して……すんすん……一年目にすんすん……なります……すんすん」

「え、じゃあ俺の何を知ってんの……?」

「ふふ……では、その立派なお手てを……。ふむ、ふむ……」

「手相占いやってんのね?」

「そんな半端じゃありませんよ先輩。ほれぺろりと」

「おおうっ、何故に舐める……」

「……最近、歯茎がちょっと痛いのでは? りんごを齧ったときにやりましたね?」

「えっ、言ってないよな?」

「あとは……足の爪……左中指を深爪しましたね?」

「なあ、お前は俺の手を見てるんだよな? なんで分かんの……」

「それと、今ちょっとお尻を掻きたいのでは?」

「怖い、怖いよ、お前……そのうち味を知りたいとか言い出すんじゃないよな?」

「それはまあ、今も知りたいです。じゅるり」

「…………」

「先輩? どこ行くんですか、先輩、せんぱーい!」

 

◯1白黒3/3と2白1/2

 

「本日は弁解を執り行いたいと思います。故に、この場の料金は私が持たせていただきます」

「いや、俺が奢るよ、そこは……。で、弁解って?」

「あのですねぇ、ワタクシ、先輩がムカつくことに二人きりのとき付け足すように、挨拶でもするみたいに気軽に言ってくるようにサイコパスでも人肉嗜好持ちでもなんでもなくてですねぇ、ただ単に……好奇心っ。あれは、その、先輩学を学ぶ学徒として至極真っ当な好奇心に因る発言なのですよ!」

「そっか……」

「アイエッ⁉ 無関心、無関心ナンデ⁉ そういう反応取られるとすごい悲しいんですけどぉ! 死因になるレベルのショックもらったんですけど、二点ダメージなんでけどぉ!」

「俺はお前が先輩学なんて胡散臭い学問を真剣に学んでることにショック受けたよ。ショックどころか……えーとあれだよ、稲妻だよ」

「でもですねぇ、昨日のアレは冗談でもあれだったかなあってワタクシ思ったんですよぉ! 実際あなたドン引きしてましたしぃ!」

「ジョークにはそれぞれに相応しい返しってもんが有るだろ。昨日のアレはそういうことだって。それともあれか、肉を削いで食わせてやれば良かったってか? 火でも焚いてうさぎみてーに飛び込めってか?」

「じゅるり……」

「まさかの正解かよ笑えねえよ」

「はっ、今のは……そう! ジョーク。イッツアジョーク! 口で言ってるジュルリなんてジョーク以外あり得ないでしょお⁉ だから行かないでぇ……」

 

◯TPO

 

「ええ……素直に認めましょう。この私には好奇心が有る。人肉の味、とりわけ好きな人のお肉の味に興味が有る……と」

「俺はこれから捕食者を隣に置きながら人生を送らなきゃいけないのか……」

「申し訳ありませんが、そうなります。ところで今のはジョークです。イッツア後輩ジョーク」

「うん、本当になんかこう……」

「でもですねぇ、もう一つ言わせてください。なんで私が人肉食をジョークのネタにしたかって、それは怪談レストランがいけないのです……」

「小学生向けの?」

「小学生向けのです。……そこにあった挿絵がいけないのです。こう、話の内容はあまり覚えてないんですけどね、食べさせられていたお肉が人肉だったとか、その辺りだったと思います。そこで人肉だって分かってしまったときの挿絵がですね、毛だらけの、不潔なふくらはぎを削がれた死体がぶら下がってるって絵でして」

「Oh」

「それからしばらくはお肉を食べれませんでしたし、今も夢に見た日はお肉を食べるのが辛いです。まあつまり、嫌な意味で凄く身近なんですよ、そういうネタが。だから猫を被ってないときはつい口をついて出ると言うか……」

「そーかー、辛かったなー」

「そうでしょう、そうでしょう!」

「そうだな。……でもそれってステーキ食ってるときにする話か、おい」

「ごめんちゃい」

 

◯乳首好きなんですよね?

 

「先輩って乳首好きですよね」

「なんだ、ヤブから棒に」

「だって吸うの長いじゃないですか。まあ比較対象はないですけど」

「長いかどうかは知んないけど……興奮するだろ。今は高校生なのにそのうち俺の子供産んで、母乳でその子を育てるって考えると」

「…………教室に戻りますね」

「おい、休み時間はまだ……、あ……」

 

◯根に持つタイプ。でも根っこはぷちっと切れる。

 

「弁解がしたい」

「どーしたんですか、孕ませ妄想マイスターさん」

「あのな、お前は俺のことを変態だと言ったな」

「言っては無いです。ワンランク上のド変態だとは思ってますがね、母乳先輩さん」

「男はな、みんな変態なんだよ」

「そうなんですか? オレノ・コドモ・ウンデさん」

「ああ、誰もが変態なんだよ。だからな、俺の考えはそこまで変態じゃない、むしろノーマルな部類に入る……っ!」

「ほえー」

「だからな、その……、まだ傍に居てくれ……。頼む……」

「そこは一生傍にいてくれって言ってくださいよ……大丈夫ですよ、ずっと、ずうっと好きですから」

「うっ、ありがとう、ありがとうっ!」

「ふふ、ちゃあんとお嫁さんになって上げますからね。孕ませ妄想マイスターのオレノ・コドモ・ウンデ母乳先輩さん」

「……この前は悪かった」

「これで一つ、あいこということに」

 

◯彼氏を付き合わせて再現する寿司構文は楽しいか?

 

「大変です、先輩! 風紀委員長が恋愛禁止にしたほうが良いのではって校長先生に提案してるみたいです!」

「なんだって⁉」

「なんでも『仲のいい男女を見ると風紀の乱れを感じて自分達の仕事は無意味なのかと感じて、涙が出てくる』なんて言ってるみたいっス!」

「風紀委員長め……自分がモテないからって腹いせで生徒から恋愛と親交の自由を奪うなんて、許せない……!」

 

◯楽しかったのね

 

「……これで良いのか?」

「はい! 文句無しです!」

 

◯レ○パー死すべし、慈悲はない。

 

「ぜんぱぁい、ぜんぱい……!」

「おうおう、泣け泣け。怖かったな……」

「ひぐ、ぐす、ぐず……っ! だって先輩、学歴が……!」

「なあに、お前を助けられりゃ高校中退になっても大したことねえよ。それより、大丈夫か? どっか痣になってないか? くそっ、風紀委員長の野郎……ぶっ殺してやるぞ」

「それじゃ退学どころか捕まっちゃいますよぉ……」

 

◯ゆうとうせい

 

「先輩、二週間ぶりですね!」

「おう、二週間ぶり。……風紀委員長はどうなった?」

「なんでも退学だとか……。しかし、校長先生も意外ですね……普通、庇い建てするものなんじゃ?」

「そうだよな。自分の息子だし、学校の評判落ちるしで良いこと無いだろうに……」

「風紀委員長、すっごい驚いた顔してましたからいつもはそうなんでしょうね」

「まあ、あれだな。真面目に生きてると良いこと有るってことだ。な、優等生」

「えへへ」

 

◯安心するのはまだ早いぜ!

 

「先輩、もし私がゴブリンに犯されて妊娠したらどうします?」

「ホント神経太いよな、お前……。まああれだ、皆殺しで」

「ゴブリンを?」

「ゴブリンが何か知らんけど……まあ、ゴブリンを」

「産まれてくる赤ちゃんもですか? 絶対ゴブリンが産まれるらしいんですけど」

「うーん……それ、は……」

「あ、因みにゴブリンの見た目と生態と性格がこちらになります」

「…………あー、ごめん。本当にごめん。たぶん殺す」

「ですよね。……つくづくファンタジーに生を受けなくて良かったです」

 

◯ふふふ……

 

「セックス!」

「ぶっ⁉ げほ、げほ……」

「セックス……セックス……みんなセックスし続けろ……!」

「え、なに、なんなの?」

「実験です」

「ええー……。なに、お前いじめられてんの? これはなにかのSOSなの? お兄さん心配になってきたよ……」

「実験と言ったでしょう! これによってセックスと叫べば先輩は大いに驚くという結果を得ることができました。有意義でロジカルです」

「何を言ってるか分からんが、とにかく凄い阿呆だ……」

「ふふふ……」

 

◯不毛なり……でも楽しい。

 

「寝ましょう」

「寝るか」

「と思ったけどしりとりスタートで」

「いいぞ」

「……からす」

「すいか」

「かす」

「……すか」

「カマス」

「…………すごか」

「ええーそれ有りですかー?」

「じゃあ無しで……すり身」

「ミス」

「すす」

「……スミス」

「えっ、人名かよ……」

「職人って意味も有りますから、多少はね?」

「そうなのか……。じゃあ、()

「くっ、『す』攻めなんて、卑怯な……!」

「お前から始めたことだぞ。さあ、どうする」

「……酢締め」

「めんこい」

「いかつい」

「いかがわしい」

「いがい」

「いい」

「い」

「いかい」

「いいんかい」

「いたい」

「……いこい」

「もうやめにしようぜ」

「やめましょうか」

 

◯責任を持ちましょう

 

「先輩、先輩。この後輩、この世で最も暖かい場所を見つけました」

「どこだ」

「貴方のアームです。腕の中です」

「そうか……」

「ふふ……ぎゅっ、てしてくれるともっと暖かいですね……」

「そうか……」

「うきゃーっ! 頭なでなでのコンボらめぇ、心がポカポカしちゃうのぉーっ!」

「そうか……」

「んむっ、きす、キスゥ⁉ もうこれはあれですよね、今からしっぽり……ってことですよねぇ⁉」

「寝るぞ……」

「ああん、いけずぅ……。もっかい、もっかい抱きしめてくださいよぉ……」

「おやすみ……」

「んもうっ、せんぱいの……えーと、えーと、堅物……?」

 

 

「なあ、俺さ、なんで下半身真っ裸なの?」

「……てへっ」

「……ゴムは」

「……ペロっ」

「お前なあ……! はあ……とりあえず産婦人科に電話すっか」

 

◯責任を持ちましょう「に」

 

「ごめんなさい先輩」

「なんだベソかいて。今度は何やらかし……っ、お前、これ……」

「うへ、うへへへへ……責任はとらなくても、だいじょぶ、です……。私が馬鹿やってこうなったんだから、そもそも先輩には責任無いですからっ……!」

「お前、次そんな事言ってみろ! 引っ叩く……のは痛そうだからやめて……とにかくなんかするぞ!」

「ぷふっ、なんか、なんかって……」

「ええい、とにかく俺はお前が好きなんだよ! どうしてそんな相手を引っ叩ける、捨てられる!」

「それにしてもなんか、なんかって……ひひっ、ひっ……」

「とにかくな、産みたいなら父親になる。産みたくないなら、その為の費用とかを全部持つ! 俺が蒔いた種なんだからな」

「……じゃあ私、先輩のお嫁さんになって良いですか?」

「当たり前だろ! 嫁に来い!」

「先輩……大好きです」

 

◯夢オチなんてサイテー!

 

「という夢を見ました」

「まさか起き抜けで下半身が脱げてないことに感謝する日が来るとは思わなかったわ」

 

◯けものカップル2

 

「で、結局こうなるのか……」

「こうなっちゃうんですよねえ……ほら、私達って思春期ですから」

「しょうがねえか……」

「しょうがねえですよ……」

 

◯ライアーゲーム

 

「せんぱいたいへんですせーりきません」

「良し、責任取る」

「嘘です」

 

◯グッドだー!

 

「やめ、許して……!」

「だめだって。サイコ染みた嘘つきを卒業するには嘘を本当にするしかないだろ? だからちゃんと妊娠しないと……」

 

◯でも結局大好き

 

「生理来ましたよ、鬼畜先輩」

「前は本当に悪かったな嘘付き後輩」

「でも、大人になったら本当に妊娠してあげますからね。大好きな先輩の赤ちゃん」

「そんときゃ頼むわ、よろしくな。……世界で一番可愛い後輩?」




ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
会話文だけで書いたのは初めてですが、非常に楽でした。今までの難易度をHabanori Must Dieとするなら今回はEASY AUTOMATICでしょうか。デビルメイクライやったことないですが。
ついでに書いてて……まあ恐らく楽しかったと思います。
ですが、もう書かないと思います。「らく」が過ぎたので。
あと、本文に問題が有るようならR18に移します。
以下どうでもいい設定

後輩ちゃん
変態。
神社生まれで由緒ある巫女の家計。次女。
母親似の姉が居るが、自分は父親似。性格も表面上はともかくあまり似てない。
初恋は中学二年生のときで、そのときは中二病系負けヒロインだった。
普段は猫を被っていて上品で清楚なお嬢様でいる。
本当の自分を曝け出せるのは先輩くんと二人きりの時だけ。
趣味の範囲は深く広い。まるで小坂か岡田の守備範囲みたいだあ……(直喩)。
ネットに強い。
先輩くんとの関係は家が決めた婚約者。
初めは好きでもなんでもなかったが家の都合で同居している内に好きになっていた。
先輩学の権威。

先輩くん
変態。
由緒ある鍛冶屋の家計。
初恋は小学生のときで後輩ちゃんの姉。
普段から割と本編みたいな感じ。
趣味の範囲は浅く狭い。無趣味。
結構いい身体してる。鍛冶屋として木刀振ったりでトレーニングしてるからね。
昔はサッカー選手になりたかったが鍛冶師になることが決定付けられていたので諦めた。
後輩ちゃんと婚約しているが、実は鍛冶屋で作っている物が原因だったりする。
冷めた鉄みたいな、と言われたりするけど後輩ちゃんのことは基本大好き。
というか先輩くんの心を温めることができるのは後輩ちゃんだけだったりする。
誰にも言わないどころか自覚も無いけど後輩学に精通している。


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好き合ってる変態な先輩君と変態な後輩ちゃんは今日も仲良し

今回から思考を書いていた()を「」内に治めるようにいたしました。
前回もそれに合わせて修正しています。
……いつもに増して後書きが長くなっています。
……これで設定厨だと分かってしまったなぁ!
この作品は会話文のみとなります。
この作品にはミーム的な表現が含まれます。
この作品と二人の会話に意味を求めることはPOPTEAMEPICに意味を求めることと同義です。
この作品はフィクションであり、実在する、人物・地名・団体とは一切関係ありません。


◯仲良し……じゃない

 

「えへへ、久しぶりに会ったけど、本当に綺麗でした……」

「そう、だな……」

「なんですか、アンニュイな顔して。……そういえば、先輩は初めてでしたっけ、私の姉さまに会うのって」

「……や、違う。何度か会ってる。……それだけだったけどな」

「むむ、なんとも引っかかる言い方をしますね……」

「なんでもねえよ。……なんでもないんだ」

「ふーん。……好きだったんですか?」

「……ああ。大好きだった」

「へー……そうだったんですか。……姉さまってば、昔っから綺麗ですもんねー」

「今はもっと綺麗になった……」

「そうですか。(うそ、こんな顔……、見たこと無いんですけど……)……先輩、未練タラタラだったりします?」

「どうなんだろうな……。自分にも良く分かんねえや。……大好きだったことは覚えてる。……優しい人だった。大好きだったんだ」

「……ふーん。いつから好きだったんですか?」

「小四に上がった辺り、だな……一目惚れだった」

「…………いつまで好きだったんです?」

「あの人が(あに)さんの子供を妊娠した辺りだから……高一の時か。……家同士の取り決めで決まったことだから、望まない結婚だと思い込んでた。だけどよ、子供ができたって会ったときにすごく幸せそうな顔で……俺はもう、ただの邪魔もんなんだなって」

「………………」

「……どうした?」

「いえ、なんでもないです。恋する男の顔で人の姉を語った先輩にはなんにも関係ないですから」

「いや、なんでも有るだろ、そういう態度じゃねえか」

「そういう態度ってどういう態度ですか説明してください」

「んなこと言われてもよ……」

「私は眠いのでちょっと寝ます邪魔されると困るので部屋に入って来ないでください」

「おい、いま寝ると夜困るぞ!」

「そうですかご忠告ありがとうごさいます」

「なんだよ、何が……」

「うっさい! 自分の気持ちにも気付かない鈍感クソ野郎! 未練タラオ! 死ねっ!」

「……なんかやっちゃったんわけね、俺……」

 

◯翌朝

 

「あのよ……昨日は本当に悪かった」

「……なにが悪いか分かってます?」

「それは……」

「何が悪いかも分かんないのに何を謝ろうって言うんですか!」

「その、本当に……」

「うるさい! 謝ってんじゃねーですよ! タラオ死ね!」

「……ごめん」

「う……とにかく私はもう出ますからっ!」

 

◯一人ぼっちの通学路

 

「(はは、はははは、み、醜い、本っ当に醜い……! 死ねとか、なにそれ……何言っちゃってんの私……。でも、でも……!)ひぐ、ぐず……、『お前のことしか考えられないって』、言ったくせに、あんな、あんな……顔するなんて……ひっく、ぐす……」

 

 

◯放課後

 

「(ライン、やっぱ既読すら付かねえ……)」

「――くん、――しが――の」

「(あれだよな、姉さんのこと話したからだよな……。未練がどうとか言ってたから、今も好きだって思わせたんだよな……。たぶん、そうだよな? 謝んなきゃな……でもどうすりゃいいんだ……)」

「――りか――くん、も――どくん?」

「(朝は怒らせちまったし……いや、実際いまの今まで分かんなかった訳だけど……ライン的に話を聞いてくれる感じでもねーし、ホントにどうすりゃ……!)」

「守門くんっ!」

「うおっと⁉ ……ああ、すいません……。えっと……」

「山下だよ、あたしの名前。覚えてないの? で、こっちのちゃらいのは海田」

「ちゃらいのはお前もだろぉ!」

「……すいません」

「ま、いいけど。それよりね、私達とカラオケ行かない?」

「……あー、誘って頂いたところ悪いんですけどね、用事が有って。大事なことでして……」

「なんだそりゃ。なに、彼女と約束とか? 連れてくりゃ良いべ?」

「いや、そんなんじゃないんですが……とにかく用事が有りましてねぇ……。では、これで……」

「……ちぇっ、遊んで無さそうだから誘ってやってんのに……」

「ねー」

「やめとけ! やめとけ! あいつは付き合いが悪いんだ」

「は? 誰?」

「守門……名前はなんだったかな? まあ良い、お前らは知ってるだろう。今年十七歳で彼女はいない。成績で見るとなんでもそつなくこなすが、口調とか態度だかが気怠い感じで、今ひとつ情熱のない男……」

「(こいつキモくね?)」

「(まじやばくね? いきなり出てきてさ)」

「なんか運動ができそうな見た目で顔も良いから女子にはモテるが、部活にも入らず放課後になると真っ先に帰ってるんだぜ」

「いこーぜ」

「うん」

「荷物運びとかを手伝ったりしてくれて、悪いやつじゃあないんだが、これといって特徴の無い、影のうすい男さ」

 

◯あっさり

 

「やっぱここだったか。……絶対そうだと思ったぜ」

「先輩……なんでここに?」

「なんで、だろうな……直感で分かった。お前のことだから、かな。……あのな、信じられないかもしれねえけど……俺はもう未練なんてねーんだよ」

「嘘です! 先輩は……男の人は、私みたいなペチャ女より姉さまみたいな身体の人の方が好みなはずです!」

「あのな、人が人を好きになる、好きでいる要素ってのは身体とか見た目だけじゃねーだろ……。少なくともお前にはそう教わった」

「……はい、そう……教えましたね」

「それに、……それにな、俺が姉さんのことを言ってる間、どんな顔してたかは分かんねえ。でもな、たぶんお前のことを語ってるときの方が……恋する男っぽい顔になると思う」

「でも、でも……! あんなに想われてたなんて……勝てるなんて思えませんよ……大好きだったって、何回も言って……」

「あー、確かに言ったな……。だけどそれは、もう過去のことなんだよ……ていうかな、お前の方が大好きだ」

「今の姉さんよりですか?」

「違う……好きだった頃のあの人よりも、だ」

「……それって」

「いくら遡ってもな、お前が一番なんだよ。これまでの人生でお前以上に好きになった人間はいない」

「……なら証明してくだ、んむッ⁉」

「…………好きだ。大好きだ、お前に夢中だ。……愛してる」

「……えへ、えへへ、私も、です……」

 

◯仲直り

 

「先輩、あの、ごめんなさい」

「なにが?」

「あの、あの……! ひぐ……」

「覚えてねぇ。そんな酷いこと言ってたか?」

「……っ! ありがど、ございばず……。ごめ゛んなざい……」

「それよりさ、仲直りってことで……カラオケとかどうよ?」

「ぐすっ、カラオケ……ですか?」

「うん、カラオケ。ほら、結構前に一回行ったきりだろ。そーゆーとこ。……気ぃ遣ってくれてたんだよな? あ、ティッシュ使う?」

「ずびっ、びーっ! ……ぐすっ、行きたいです、先輩とカラオケ」

 

◯カラオケで①

 

「先輩……」

「ん?」

「いつの間にこんなにレパートリーを……ていうか、歌いたい歌を見つけたんですか?」

「そりゃお前がいたからだよ」

「答えになってないけどとにかくすごく嬉しい……」

 

◯カラオケで②

 

(グルグルの『ハレルヤ』なんてどこで聴いたんだろ……)

「〜♪ 〜♪」

「(……待って、さっきから思ってたけど、先輩が入れる歌って……!)」

「〜♪」

「(ぜんぶ、全部! 誰かへの愛を歌ってる……!)」

 

カラオケで③

 

「先輩、あの今まで歌ってたのって……」

「ん、どうかしたか?」

「えと、その……ラブソングって言うか、なんていうか……」

「お前のこと考えてたらな、他の歌いたいのが全部どっか行っちまった。……ほら、次はお前の番だぜ」

「〜〜ッ!」

「……なんだ、悶えて。どっか苦しいのか?」

「いえっ! 愛される喜びを噛み締めていただけです! 鼻血出そうです!」

「お、おう……」

 

◯帰宅して

 

「あばっ、あばばばば、あばぶぁっ……」

「おい、怖いなら無理しないほうが……」

「いえ、漢なら……勇気を出さねばならないときも有るのです……!」

「いや女じゃん」

「せからしか! とりゃっ! ひえっ……!」

「……あっ」

「きやぁああぁぁあ! 指が、クランシーの指がぁぁぁぁ!」

「おおう、あらぬ方向に……」

 

◯後輩 〜可愛い婚約者はホラーが苦手

 

「憔悴してるなあ……」

「憔悴してます……。なので癒やしてください……」

「あいよ」

「ああ……っ! やばいです……先輩の腕の中やばいでふ、オーガニック的ななにかで満ち溢れてて、とっても温かいです……」

「なんだそりゃ」

「なんでも良いんです……。あ〜……やばい、先輩成分が心の傷を癒やしていくぅ……」

「……そうか」

「温かい……」

 

◯たぶん示現流。掛け声は創作? うるせーばか

 

「先輩、先輩、それは一体……?」

「ん……居合い切りとか見たことねえか?」

「ああ、あれですか、巻藁ですか……でも油とか、へんな汁とか、こんなドバーッと染み込ませるものでしたっけ?」

「いや、普通はしない。でも俺は、守門の鍛冶師はやる。……俺さ、土曜になると実家に戻ってたろ?」

「ええ。……今日は行かないんですか?」

「向こうでやってた用事をな、こっちでやることにした。……クソジジイに会いに行くよりお前との時間を増やしてーからな」

「えへへっ、そうですか、そうですよねえ!」

「うん……。ま、見とけ……」

「はい、刮目させていただきます!」

「……っ! ちぇっそぉぉぉぉぃっ!」

「〜〜ッ! み、耳が、耳がビリビリっ」

「あっ……」

 

○正座

 

「先輩……?」

「はい……」

「近所迷惑なので、掛け声は禁止です……いいですね?」

「いや、でも、アレをやんないと力の入り方がおかしく……」

「いいですね?」

「……」

「……いいですね」

「……はい」

 

◯ドヤァ……!

 

「でも凄いですね……。スパッ、と綺麗な断面です……」

「ああ。……しかもな、この軸の黒く染められた部分でな、剣筋にブレが無いか分かるようになってんだ」

「おお、ちゃんと真っ直ぐに切れてるんですね……」

「そうだろう。綺麗な剣筋だからこう切れるんだ」

「はえー……(ドヤ顔かわいいなぁ……)」

 

◯この作品はフィクションであり、実在する刀剣類の切れ味の如何とは一切関係有りません

 

「じゃあこの汁と油は……?」

「ああ、人の血と脂の代わりだな。それと軸は骨より硬い」

「……えっ?」

「うん、刀ってさ、人を何回か斬ると使えなくなるって聞いたこと無いか?」

「んー……お父さんが言ってた気がします」

「それな、俺に言わせりゃ下手な持ち主に相応しい、出来損ないのガラクタなんだよ」

「どういうことですか?」

「その俗説のテストケースに使われた刀ってのは、戦争のときの大量生産品だ。昭和新刀ってな。人一人を斬るとへにゃるんだ」

「えっ……」

「江戸時代とか、幕末みたいな刀が主武装だった時代の代物と比べればとんでもない粗悪品だ。使い手が良い刀を使えば百人切りだって伝説じゃねえのさ。……(うち)が作ってんのはそれができる刀だ。良い刀は、血と脂を弾く。……里見八犬伝の村雨みてーにな」

「……やっぱり、家の話に詳しいんですね」

「……ま、あのクズに詰め込まれた知識だけどな。……こんなことより、リフティングのコツとか知りたかったぜ」

 

◯ドヤァ……!②

 

「よしっ、これで五本目……。どうだ、刃毀れ見えるか?」

「い、いえ……。全然わかんないです」

「そうか……うし、そこの半紙とってくれ」

「あ、これですね。……拭くのに使うんですか?」

「いや、こうする」

「……っ! ふ、触れただけで……」

鬼留刃(くりゅうじん)、問題ねーみたいだな。どうだ、凄えだろ? 俺が打ったんだぜ、これ」

「ほえー……すごく綺麗な刀……(……あとドヤ顔凄くかわいい)」

 

◯ピクニック

 

「はいどーぞ、未来の愛妻が作ったお弁当です」

「さんきゅ……。うん、美味そうだな」

「えへへ。美味しそう、じゃなくて、美味しいんですよ?」

「ん、ホントに美味いなぁ……」

「美味しいです。むぐむぐ……ん、先輩、ほっぺたにお米付いてますよ」

「マジ? どこだ……?」

「とったげます……ちゅっ」

「え、ここ? 本当に?」

「嘘です。なんとなくほっぺにしたかっただけです」

「……お前なあ」

「んっ……頭なでなで好きです、幸せです……」

「ああ、幸せだなあ……」




ここまで読んでいただきありがとうございました。
今回から思考を本格的にぶち込むようにした訳ですが、これは果たして会話文なのか、ssなのか……。
もういっそやってることを「」の後ろに付け足すとかしたほうが良いのかもしれませんね(やけくそ)
こんなことになったのは偏に私の技量不足ですね。たぶんロングソードも扱えないんじゃないでしょうか。
ところで、お気に入り数、15人。
いやね、とても嬉しいですよ。非R18じゃ初めてです。
まあくだらない自分語りもここまでにしておきます。

以下どうでもいい設定

今回はあんまり変態じゃなかった後輩ちゃん
オタク系スレンダー美少女。
今回名前が出てくる予定だったが「……いらねーな!」と判断したので出なかった。
喧嘩した日は猫を被りきれず、様子が違ったのでクラスで心配されていた模様。
ある理由で三歳頃に本当の両親から引き離され、遠い親戚のもとで育った。そして数年前まで親戚を本当の両親だと思いこんでいた。
不幸に思えるかもしれないが、間違いなく幸運、幸福である。絶対に。そして、愛する人と一緒にいる今こそが逆に不幸と言えるかもしれない。
厨二病を患っていたときに「自分は退魔の巫女の末裔で強い霊力を持っている」と設定していたが、それが割と当たっていたと知ったときは愕然とした模様。
ちなみに妖がどうのとは知らず、ただ「犯罪レベルで厳しいところなんだな」と認識している。知っても信じない。
姉とは八歳頃から毎年会っていた。毎年の夏休みに家に一週間ほど泊まりに来る彼女を姉とは知らないまま姉さまと呼び、慕っていた。
性格が良くも悪くも非常に似ているので気が合ったのだろう。それこそ姉が彼女と同じ環境で育てば確実に趣味人になっていたであろうほどに。
先輩のことは大好きなので名前で呼びたいし自分の名前を耳元で囁いて欲しいが恥ずかしいので無理。

今回は剣の腕が変態だった先輩くん
仲良く無い人には敬語対応系美青年。母親似。
後輩ちゃんに夢中なので他の人の名前を覚えられない。
名字は守門くん。名前も決まっていたが「……いらねーな!」と判断したので出ない。
母子家庭で育ったが、彼が十歳の頃に母親が病死。血縁上の父親である守門の鍛冶師に引き取られ、すべてを奪われたうえで鍛冶修行に従事することになった。
後輩ちゃんと出会うまで自我が薄かった。というかもともと薄かったのに失恋やら何やらが重なって消えかかってた。
今の性格は、ほとんどが後輩ちゃんと出会ってから形成されたもの。
後輩ちゃんを名前で呼びたいが「鼻血の出過ぎで失血死する」と訴えられたため、心苦しいが自分が血縁上の父に呼ばれていたように「おい」とか「お前」と呼んでいる。
余談だが、討妖の家と巫の家と鍛冶の家の長男、及び長女は通常戸籍を作られない。しかし彼は母親が嫡外子として産み育てたため、一般人に近い育ち方をした。プロサッカー選手が夢だった。

先輩くんと後輩ちゃんの関係性
兄妹であり、親友であり、相棒であり、恋人であり、夫婦であり、そして母と息子でもある。

鬼留刃
鬼も留まって思わず目を見張る切れ味、という意味の名前。
先輩くんの血縁上の父親が名付けた。
本文では半紙を切ることてテストしていたが、本来は水面に浮かべた髪の毛に触れることでテストする。


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先輩くんと後輩ちゃんはやっぱり仲良し

単発の予定だったのに続けてしまったせいで微妙に不憫っぽい過去を背負わされた先輩と彼を愛する後輩のお話も三話目となりました。
そろそろマンネリズムに悩まされる頃です。
……ところでですね、(わたくし)他人(ひと)様の作品に影響を受けたり、感激しやすかったりする(たち)でして……それをね、自作に無意識的に反映しちゃったりとかも良くしちゃう人間でして……。
まあ何が言いたいかって、その、ねぇ?
……どうして投稿したんだ???? と言いたくなること請け合いです、はい。
今回は正直、見られたものでは無いので見てはいけません。

この作品は会話文のみとなります。
この作品には性的な仄めかしが含まれています。
この作品にはミーム的な表現が含まれます。
この作品と二人の会話に意味を求めることはPOPTEAMEPICに意味を求めることと同義です。
やっぱり投稿しないほうが良かったかもしれない


◯ピクニックの帰り道〜足を挫いて

 

「大丈夫ですか、重くないですか?」

「軽い。もっと飯を食え」

「……もっとぽっちゃりしてるほうが好みですか?」

「どんなんなっても好きだって、俺は。……でもよ、羽みてーに軽いとな、流石にちょっと不安になる」

「……ふふ、大丈夫ですよ。ボディマス指数的には普通体重ですから」

「つまり?」

「ぜんぜん平気ってことです。ほら、先輩は力持ちですから」

「そうか?」

「そうです。むしろ最近ちょっと食べ過ぎなんですよ? 先輩と食べるご飯、おいしいから……」

「……俺もさ、美味いと思ってるよ。お前と一緒に食う飯……」

「そうですか……そうですよね!」

 

◯過保護?

 

「あひい、冷たひ……いと冷たひ……。あとついでに圧迫感……これとっちゃダメですかぁ?」

「ダメに決まってんだろ……」

「むぅ……。でもたぶん軽傷ですよ?」

「ダメだっつーの。……油断してるとこの先、走んのがしんどくなるぞ」

「……はーい」

「晩飯は俺が作るから、ゆっくり休んどけ」

「えっ。……自分の分が異様に塩辛いとか無しですからね、あんなの食べてたら若死にしますからね」

「分かってる。足吊ったまま、部屋で食えるのが良いよな?」

「……そんな感じで鶏さんをボリューミーに食べたいです」

「あいよ。じゃ、作ってくるから」

「いってらっしゃーい。…………ずっと前もこんなこと、有ったっけ」

 

◯成長〜かいき(回帰)

 

「おお、唐揚げ丼……」

「この前一緒に作ったからな。揚げ焼きにして、キッチンペーパーで油を切ってる。野菜だけど、敷いてる葉野菜だけじゃちょっと厳しいか?」

「いえ、大丈夫です。――いただきます。……美味しいです」

「……お前が教えてくれた料理だからな、美味くて当然だろ」

「ふふふ、もっと褒め称えるがいいですよ。……それはそれとして一つ拝借!」

「あっ、てめ……!」

「……大丈夫ですね、ちゃんとした味加減ですね」

「ああ。俺はもう大丈夫だって……お前の料理が美味いのも嘘じゃねえ」

「えっ……!」

「気になってたんだろ? 俺がちゃんと味分かってるかって。……もう大丈夫だ、ありがとよ」

「っ、えへへ、そっか……。良かった……」

「お前の作るお浸しとかも好きだぜ、俺。……よっしゃ隙有り!」

「あっ、とんないでくださいよ、泥棒!」

「先にやったのはお前だろ?」

「復讐心は悲しみの連鎖を生むだけですよ、先輩」

「なら俺の丼に箸を伸ばすのをやめろっての!」

 

◯風呂へはお姫さま抱っこで運んでもらった

 

「先輩、背中流しますね」

「頼む」

「いつ見てもガッチリしてますね……。頼もしい背中……」

「そうだろ? 触ってて分かるだろうけど鍛えてるからな。……お前のことだって、軽く背負える」

「(ドヤ顔かわいい……)」

「……その、もっと頼ってくれてといいんだぞ? 一応年上なんだからよ」

「…………ああ。おぶってくれようとしたの、遠慮したのはですね、太っるの知られたくなかっただけですよ」

「本当か?」

「ええ。いっつも頼りにしてますよ、先輩」

「……ありがとう」

 

◯先輩学

 

「先輩の膝の上はなぜ落ち着けるのか……」

「その、お前を乗っけてるとな、ドキドキする」

「ふふ、それはきっと私達が好き合ってるからでしょうね? 先輩学と優秀な頭脳に基いてきゅーいーでぃー。証明終了です」

「……先輩学とやらは数学なのか、哲学なのか?」

「どっちかと言うと生態と心理ですね」

「どっちでも無いじゃねーか……」

 

◯お休み前

 

「明日は日曜日ですね……」

「そうだな……足、痛むか?」

「ですね、明日はちょっと家で……」

「そうか。まあ、お前と二人なら楽しいからな……」

「……いつでも?」

「どこでも」

「……言質は取りましたよ」

「へ?」

「…………(フフフ……)」

「……もう寝たのか」

 

◯作者がニコ生で見たからとかでは無い。決して。

 

「先輩、今日はゆっくりするついでにこれを見ましょう」

「なんだそれ? 消臭剤みてーなタイトルのアニメだな……」

「違います。先輩が馬鹿にしくさってくれたロボットが出るアニメです!」

「……バカにしたか? そんな覚えはねえが……」

「せからしか! 良いからね、ごちゃごちゃ言う前に見ましょうよ。私ね、これに結構なお金を使っちゃったんですよ……ごしょごしょごしょ……」

「いいっ!? そんなに……」

「だから、ねっ? 見ましょうよ……先輩に布教するために買ったんです。だから先輩が見なきゃこのBOXを買った意味が減ってしまうんですよ……それは精神衛生上いい事じゃないです……」

「そうなのか……」

「ええ。……これはいいぞぉ、ジョージィ……。感動の連続だぞぉ、ジョージィ……」

「……わあったよ。分かったからその地獄の底から響くような声をやめろ」

「さっすが先輩、愛してます!」

「お、おう……」

「(まあ今言った値段はシリーズ全部を合わせた値段なんですけどね!)」

 

◯Q.乗り気じゃない彼氏を誘って見るアニメは面白いか?

 A.面白かったです!

 

「いやさぁ、アニメなんて馬鹿にしてたさ。……がね? いや味わい深かったって感動したぁ……」

「なにを言ってるんだ、お前?」

「先輩学の権威として先輩の思考プロセスは把握しています。読心することなんて簡単です」

「なんかゲスっぽいし、馬鹿にしてなんかねえって。まあ感動したのは合ってるけどよ……。――帰ってこれたんだな」

「ええ……。歌の通り、帰ってこれたんです」

 

◯自分の名前をメニューに付ける……極めて傲慢かもしれないルールだ

 

「はい、今日のご飯はごろっと具沢山のカレーです。後輩カレーとでも呼んでください」

「いただきます。……っ! 旨味がすげえな……」

「ふふふ……まず具材を煮溶かして、それから別で炒めた具を投入して、味が染みるように、形が残るように煮込んでいるのです。自身作ですよ」

「すごいな……もしかして、今朝めっちゃ早起きしたって言ってたのって」

「フフフ……これのためです」

「たびたび抜け出してたのも……」

「フフフ……それもこれのためです」

「……買うほど楽しみにしてたアニメだったのにやってくれたんだな……」

「ふふん、まあ私は一回放送を見てますから。抜け出してたのは別に見逃してもって感じのときですし」

「……ありがとうな」

「えへへ……美味しく食べちゃってくださいな」

 

◯ルビーのように紅く、新雪のように白く

 

「カレー臭大丈夫ですか? 臭いませんか?」

「ああ、ねえな……俺も大丈夫か?」

「すんすん……大丈夫です、イッツオーライです」

「ん、そうか……その……」

「ガウン、するっとほどいちゃってください」

「……分かった。……っ!」

「どうですか? 気合入れて選んでみました」

「……すごく、綺麗だ。白さが際立って……」

「肌じゃなくて、下着です、下着! ……嬉しいですけど」

「あ、ああ。よく分からねえけど……すごく色っぽい。……透けてて、レースとかで……」

「ふふん、そうでしょう、そうでしょう! 生唾飲んじゃいます?」

「飲む。めっちゃ飲む」

「そうですか……とっても嬉しいです。……待たせちゃってごめんなさい……好きにしていいですよ。私の体……」

 

◯テクニカルな朝チュンを書いたまでだ

 

「ん……すずめさん、ちゅんちゅん……」

「起きたか」

「おはようございます……いまなんじですか?」

「七時四十七分だな」

「うにゅ……しちじ、よんじゅうななふん…………七時四十七分⁉」

「大丈夫だ。それよりベッドから降りるとき気を付けろよ?」

「いやいや、やばいですよ、まずいですよ! 急いでおべんと作らな、いだあっ⁉」

「大丈夫か⁉」

「腰が……バランス崩して足首が……! ギギギ……」

「……持ち上げるぞ」

「お願いします……」

 

◯一緒に食べよう

 

「お風呂浴びてきました……」

「カレー、温めといたぞ」

「……先輩は結構先に起きてたんですよね?」

「ああ。飯以外は全部済んでるし、弁当は作ってある」

「もう、起こしちゃってくださいよぉ」

「いや、昨日遅かったしあんまり気持ち良さそうに寝てたからよ……」

「むう、そうですか……。いいでしょう、気遣いに免じて、許してつかわす」

「ははー!」

 

◯「お前、どっか悪いのか?」

「勝手に触るな! ……ストレスによる胃酸の増加を抑える薬だ。……このアニメを視聴していると、胃が痛くなることがある……」 

 

「ただいま帰りましたーん」

「お帰り、どうだった」

「いつも通りです。……あ、足のことは心配されちゃいました」

「ん、そうか。もう大丈夫なのか?」

「ただ歩くぶんなら大丈夫です」

「そうか、良かった。……なあ、あれって……続編有るんだよな?」

「……見ちゃいます? 見ちゃうんですね……」

「……誰かがいなくなるのか」

「……」

「見るよ、それでも」

「……そうですね、見ましょうか。……先輩は知るでしょう。『対価を払えよ。そういう作品だぜ』という呟きの意味を」

「なんだそりゃ」

 

◯必ず傍に寄り添う

 

「なあ……」

「いなくなりませんよ」

「いや心読むなよ……」

「いいじゃないですか。二人で幸せを倍にする、そんな関係なんですから。どうせそのうちですね、つーとかーで分かり合えるようになるんですから」

「……それもそうだな」

「はい。……事故とか、そういうの気を付けますよ。あとは出来るだけ一人で帰らないようにとか、怪しいところとか物には近寄らないとか」

「……そうしてくれ」

「そういうのに気をつければいなくなりませんよ。世の中ドンパチやってる国に比べればずっと平和なんですから……ヨボヨボになっても一緒にいますから、覚悟しててくださいね?」

「……ありがとう」

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。
言いたいことは分かっています。ご覧のありさまです。ごめんなさい。
気が付いたときには取り返しの付かないことになっていました。
先輩後輩イチャラブ物……もとい、蒼穹のファフナーのテクニカルな宣伝をご覧いただきありがとうございました。面白いのでおすすめです。ついでにスーパーロボット大戦UXもおすすめです。
二度とこんなことは有りません、ごあんしんください。
オタク設定なんて付けないほうが良かった……
おっとぉ、お気に入り解除にカーソルか指を置こうとするそこの君!
拙作を楽しんでくれてるかは分からないが、次回は剣士さまと巫女さんパートだぞ!
今回みたいにオタッキーが過ぎるところなんて無いぞぉ!
良いのかぁ? 見逃してしまっても良いのかぁ!
……ごめんなさい、調子に乗りました。

以下どうでもいい設定

「今回胃に悪いアニメをむりやり見せられるという祝福を食らったがなんだかんだハマった先輩くん」
続編の開幕デスポエムで絶句した人。
好きなキャラは主人公の父親。こんな頼もしい父親がいれば母親も死なずに済んだと心の中で泣いている。
後輩ちゃんと今の家に移り住むまでテレビが家に無かったか見せてもらえなかったのであんまりアニメを見たことが無いし、知らない。
電気屋さんでディスプレイ表示してあるのを見たり、すごく小さい時に託児所的なところで見たことが有る程度。
ゲームも同じような感じなので学校ではイジメられたり、見下されてたかもしれない。
アニメとゲームに憧れてたので見たかったけど、もう高校生なのに変じゃないかと思って意識的に避けていた。
……バカにしていないと言っているが、実は結構前に「ひょろひょろねじくれた変なの」と言っている。
自我が再形成され始めた頃で精神的にもう少し幼い頃にROBOT魂で遊んでいる後輩ちゃんを見て『取られた』と嫉妬して放った言葉である。覚えていない。
料理は疲れて帰ってくる母のために頑張っていたのと血縁上の父親にやらされていたのでできる。


「バカにされてムカついたとは言うが、それは建前で本音は純粋にアニメを見せてあげたいと思っていた後輩」
かと言って胃を攻撃するアニメを見せるのは如何なものだろうか。
敵意を持たずに善意で攻撃するという部分で見ると奇しくも敵キャラそっくりである。
因みに見せた順番は時系列順。
先輩が大好きなので思考プロセスを想像(妄想)して読心できる。きもちわるい。
最近ほんのり太ってきたがまだまだ全然スレンダーである。
それどころか男目線で見ると寧ろ色っぽく見えるので正確には肉が付いてきたと言うべきだろう。
好きな色は深海を思わせる濃紺だが、ルビーのような赤が似合うとよく言われるので勝負下着はそんな色にしてる。
料理も平均以上にできる。得意料理は牛肉の赤ワイン煮込み。
足を怪我しているとみんなに心配されるくらいには人望が有る。
クラスのナード連中に「おっぱいがデカくてオタクだったらFGOのおっきーだよな」とヒソヒソ言われていてそれを聞くたびに胸に手を当てる。がんばれ。
……今回は作者に思考をやや侵食されてしまった被害者。次に登場したときは元に戻る、絶対に戻るので許して……。

先輩の認識

ガンダム:オルフェンズとかいうのがやってた気がする。話題にしようとすると後輩が怒る。
エヴァ:何それ。
マクロス:何それ。
ギアス:後輩が見てた気がする。おうぎ死ねとかなんとか。
蒼穹のファフナー:後輩と一緒に見たアニメ。アニメって子供じゃないと見ちゃいけないんだと思ってたけど、そうじゃないって言われた気がした。面白かった。


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後輩ちゃんの日記①

剣士さまと巫女さんのパートだと言ったばかりなのに……スマン ありゃウソだった

タイトル通り日記会となります。先輩との出会い前〜初期となります。
後輩ちゃん、少し荒みます。


◯10月1日

 

今日はすごく特別な日だった!高田くんをもっと好きになってしまった。きっとこの人と結婚するんだろうなあ。。。

 高田くーーーーーんっ!!! 愛してる!! あなたに夢中です!! 高田くーーーーーーん!!!!

 

◯10月2日(文字はところどころ震え、漢字を書き損ね、涙で滲んだ跡がついている)

 

よく分からない内に失恋した。昨日初めてもあげたし、中二ムーブも嫌だって言われて卒業した。

なのにじゅんちょうな感じだったのに一方的に捨てられた。きいたらもっと好きになってしまった人がいるからそっちにするらしい。私が大好きな真けんな眼差しでそう訴えられた。へんじはいらないらしい。

しにたいしころしたい だいすきだったのに

 

◯10月3日(筆圧が強い。ところどころに涙の跡が見える)

 

今日は学校を休んだ。そして色々と衝撃の真実を明かされた。そのせいでむりやり元気にされてしまった気がする。

曰く、私は本来この家の……パパとママの子供では無いということ。なら遺産が来ないってことなの……?(ゲス)

曰く、年に一回は遊びに来た親戚のお姉さまは私の実の姉であるとか。

曰く、そこそこの名家の息女という肩書は仮の姿で、本来は由緒ある巫師の家系であるとか。設定に似ている。パクリだ!(混乱)

曰く、私には数年前から鍛冶師の家計の婚約者がいたとか。いや知らないんですけど。

そして明日その婚約者と会うらしい。と言うか今後(婚後?)に備えて会ったその日から新居で同棲生活スタートらしい。ふざけるなーっ!!

もしや高田くんがらしくないことを言って別れを告げたのはこれ関連の「工作」が原因なのでは、とダディに聞いたところ、「それは高田くんが善からぬ人間だっただけだな(キリッ)これを教訓にして眼力を磨くといい、それが若者の特権だ(キリッ)」と澄ました顔でオウヨウにうなずいていたのでフィジカル去勢脚をお見舞いして綺麗な顔を悶絶させてやった。面白かった。

 

高田くん、いまでもすきなんだけどな

 

◯10月4日

 

疲れた。転校先の学園は明日から秋休みらしいので助かった。

新しい家だけど実家に比べるとちょっと狭い(でもお手伝いさんは雇わなくても良さそうだから、丁度いいかも知れない)。

二階建てで、上は三部屋。二部屋住むのに使って一つは荷解きしてない荷物の置き場にしてる。

下はちょい狭リビングに実家とは違う、いわゆる普通のキッチン。

それに少しダウングレードしたバスルーム。トイレもちょっと……。

なによりも新居と新しい同居人の無機質さがすごく辛い。私特有の感性かもしれないけど、新居ってどんなに家具を置いてみても、どこか味気無いというか、寒々しいような、そんな感じがする。親戚のお兄さんの引っ越しを手伝ったときもそう感じた。

たぶんだけど、人の熱がまだ染み渡って無いからだと思う。

新しい同居人、もとい婚約者さんは人形のように綺麗な顔だけど、性格まで人形みたいで会話が続かないし、こっちが歩み寄ろうとするのも辛い。あまりにも虚ろな目だからガラス玉を嵌めてるようにしか見えなくて、とても不気味だから。

ところで、この新居に連れてきてくれた婚約者さんのお父さん、死ねば良いと思う。

セクハラが酷かったし舐め回すような目で見られたし太もも辺りに手を伸ばしてきたし本当に死ねばいいと思う。死ね。

なにが「おめえさんが俺の息子の子供を五年以内に産めなかったら俺のこっちの息子がお前さんを孕ませっからよ」だ。その前に死ね。上手いとか抜かしやがって、お前のテクニックなんて興味無いんだよ。

迎えが来る前にママとパパには「あのおっさんはクソだし信用できないから婚約破棄されるようなことやらかしてさっさと戻って来い」って言われてたけど、その判断、正解でした。まあ私が戻ったりすると政治的な意味で困ったことになりそうだから帰れないんだけどネ!

 

◯10月5日

 

婚約者サマにご飯を作って上げたけど味の感想はもちろん、お礼の一言も無い。いただきますもごちそうさまも言わない。ムカつく。

マークザインとかダイガードをいじったり、ダイガードを見たりして気晴らしをしたけどこれを書いてる内にまたムカムカを思い出してきた。

ええい、寝ちゃえ寝ちゃえ。

 

◯10月6日

 

婚約者さんは食事の時だけ上から降りてきて、終わると上に戻るのでが何をしているのか気になったので聞いてみた。

「時計を見ている」らしい。楽しいのか聞いてみた。

「分からない」らしい。なんでそうしてるのか聞いてみた。

「何も言われていないから」らしい。ちょっと怖い。AIと話してるみたいだった。頼んだら何かしてくれるのか聞いてみた。

「できることはなんでもする」らしい。(今までもそうだけど)棒読み&真顔なのでいまいち信用できない。

できないのでいただきますとごちそうさまを言うように頼んでみたら「わかった」と頷いてくれたので悪い人では無いのかもしれない。

今まであなた、とか、あの、とか呼びかけてたけど同じ学園に通っているので先輩と呼ぶことにした。変わらないマシーンぶりだったけど許可してくれた。

なんとなく、今までのことを聞いてみようと思った。

 

◯10月7日(ところどころに涙でふやけた跡が有る)

 

天国(という名の実家)お父様、お母様。私がこの家に行くとき、「あのおっさんはクソだし信用できないので婚約破棄されることやらかしてさっさと戻って来い」とこっそりおっしゃられましたね。

ですが私は戻ることはできません。私は自分より年上の、大きな背中のこの人の母にならなければならないからです。

今までの辛い気持ちをずっと我慢していたのでしょう。「母さん、母さん」と何度も何度も繰り返し泣いていました。彼から聞いたいままでを忘れないように書こうと思うのですが、いま一気に書こうとすると、このページは涙でふやふやになって使い物にならなくなってしまうでしょうから、断片的に書くことにしようと思います。

とりあえず、彼はとても苦しんできました。笑顔を作って、飄々と生きてきたと語っているのですが、今はそれすらできなくなるほど傷ついているようなのです。

それこそ、このまま消えてしまいそうな程に。

 

◯10月8日

 

先輩に好きと言ってみた。一目惚れしたとも。無理に笑おうとするので、ありったけの愛を込めて抱き締めてからやらなくていいんだと教えたりした。

本当に好きかと言われると、たぶん無い。可哀想だし凄く美形なのは分かるけど、ママとパパで見慣れて食傷気味なのか高田くんみたいに素朴で誠実そうな人が好みだし。

でも好きって言ったり行動に移したりするのは先輩を肯定するため。

あの人は小さい頃にお母さんと死に別れてから実の父親に全部を、それこそ自分を持つことすら否定されて生きてきた。それはきっと、地獄のような六年間だったと思う。

その果てに氷か機械のような先輩になってしまったなら、反対に肯定してあげないといけない。そして最上位の肯定は、好きだと表現すること。。。だと思う。

ちなみに先輩はすごく混乱してた。あと泣いてた。私もホンのちょっぴりだけど泣いた。

 

◯10月9日

 

明日から学校だけど準備はもう終わってるのでゆっくりした。

オタクバレしたときの反応が怖いのでこっそりと旧アニメ版のグルグルを見た。

OPのせいでちょっとだけ鬱になった。高田くん、どうしてなの。

でも飛ばせなかった。好きな曲だから。

それと今日から先輩と一緒に寝ることにした。するっと忍び込んで人肌(パジャマ越し)で温める、名付けて人間ハンギングピロー作戦。

 

◯10月10日

 

大変だった。中学デビュー以来、中二キャラで通していたせいでなにかを演じないと酷いレベルのコミュ障になることが判明した。

おかげで私のイメージが「清楚な令嬢」になってしまった。教室の雰囲気的にオタバレでもすればムラハチの憂き目に合いそうなので逆に良いかもしれないけどしんどい。

 

◯10月11日

 

今日はちょっと泣いた。

先輩が料理を作ってくれていた。ちょっとしょっぱいけど普通に美味しくて助かった。ここまでは問題無かった。ここまでは。

別の鍋に作ってあったやつを味見したらさあ大変、悶絶するほどしょっぱいじゃあ有りませんか。

聞くと、鍛冶仕事で汗をかくからそのぶん塩分補給をしなくちゃいけないせいらしい。

だから味を度外視した異常にしょっぱい料理(=塩分豊富)を作らされ、食べさせられてきた。

そのせいで「味覚がね。。。駄目なんだよ。。。」ということらしい。

正直、私が今までよりにかけて作ってきた料理もよく分かって無かったと思うと悔しいけど、それ以上に悲しくなった。

だって、食事が単なる栄養補給に成り果ててしまっているということだから。

とりあえず先輩の分は濃いめに作り分けて、だんだん味を薄くすることにした。

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。
すまない、本当にすまない……。
剣士さまと巫女さんは地の文付きで発表するのが適切な感じなものしか思い付けない故、まだ書けんのだ……。
期待を裏切ることに定評のある男として罵ってくれて構わぬ……。
いや、期待をかけられているのか……?
まあいい。今は書くのだ、ただひたすら……。

以下どうでもいい設定。

「後輩ちゃんの日記」
名前が書かれている鍵付きの日記帳。
黒歴史ノートは別に有る。というか中二病は昔はともかく今は引っ込みがつかずに演じ続けているだけのエセ中二病なのでこっちでは普通に(オタクの)乙女。
毎日書くことが目的なので割と適当だったりする。
でもその日の喜怒哀楽と他のいろいろが詰まっている。基本的丸文字。荒んでいるときは殴り書き。

「中二病時代の後輩ちゃんの設定」
由緒正しき陰陽師の子孫にして大妖怪牛鬼を祖に持つ。普段名乗る名前は仮のもので、真名は
五行(ごぎょう)(まどか)
闇に潜む変幻自在の天魔外道、妖魔、怪魔共を牛鬼の怪力と不思議な力、現力(うつつぢから)を使って討つ、闇の住人。
学校生活ではその現力を発揮しないが、それは無駄遣いを抑えるため。
現力は使い過ぎると牛鬼としての力を一時的に失って弱体化してしまうので。

「高田くん」
名前は適当に決めた。サイコパス。初めから体目当てなのでたぶん貧乳好き。思ったより思ったほどじゃなかったのでフッた。

「先輩の父親」
汚物。いろいろなところから嫌われてる。でも汚物が肥料として役に立つように彼も鍛冶師としては役に立つので……。

「失恋してからの怒涛の展開の果てに母性に目覚めた後輩」
実はチョロイン。
ジーベック好きのオタクの姉ちゃんとも言う。父親の影響。
中学上がりたてで陰陽師の使命と血に目覚めた。一年半も経つと気のせいだと分かったけど周りの認識的にはもう遅かったのでそのままやり通し、今度は清楚系お嬢様を演じることになった。
実は先輩が失恋しているとはこの時点では知らない。
怒ると少々荒っぽくなったりするけど生まれも育ちも結構なお嬢様。父親の仕業でロボット中心にクソオタクだけど。
今は未練たらたらだけど忘れる。

「鍛冶をするだけの機械になりかけていた先輩」
大好きな母が死んでから氷結地獄のような環境で心を凍えさせながら育った。
母から教わった「笑顔の魔法」と親戚のお姉さんへの恋心を支えに生きていた。
しかし支えを一つ失い、笑顔を作れなくなり、ついに凍え死んだ。
精神的には母を亡くした頃よりほとんど成長していない。だって成長するようなことなんて殆ど無かったからね、しょうがないね。


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先輩と変態な後輩ちゃんがイチャイチャラブラブ

前回投稿した作品の後書きに記載した巫師に関する設定をやや修正しました。
章設定をやめたほうが良いような気がする今日この頃。
ところで朝になって、そう言えば今日はクリスマスイブだ……と愕然としました。
急遽それっぽいのを追加したりして。
間に合って良かったです。
それと今回、後輩ちゃんの名前が出てしまっています。
ここはやらないほうが良かったかなと思いますが……遅かれ早かれ出してしまっていたでしょうから……ね?


今回は会話文のみとなります。
今回は過度の性的な仄めかしが含まれています。
今回ははミーム的な表現が含まれます。
この作品と二人の会話に意味を求めることはPOPTEAMEPICに意味を求めることと同義です。


◯クリスマス

 

「ローストビーフにグラタンにビーフシチュー! それにフライドチキンは普通のやつと衣がコーンフレークのやつで二種類か……!」

「ふふ、クリスマスケーキ以外は手作りです! あ、フレークのフライドチキンはですね、クリスピーチキンって言うんです。あとはこれ、赤と白の炭酸ぶどうジュースもどうぞ」

「すごい、すごいよ! 昔イメージしてたクリスマスそのまんまだ……! これ全部食ってもいいんだよな⁉」

「もちろんですよ。サラダもちゃんと食べてくださいね?」

「分かってるって! ……美味いっ!」

「ふふ、良かったです。――去年はいろいろごたごたしてて禄に食べれませんでしたからね……。三が日過ぎてからでしたよね、ここに戻れたの」

「ああ……。大変だったな、あの一週間……」

「大変でしたね……(でも、あれが有ったから今の私達が有る訳んですよね……)」

 

 

◯彼はずっと、待ってた

 

「ふう……食ったな」

「食べましたね……あの、先輩」

「なんだ?」

「その、クリスマスプレゼント……」

「ああ、用意してる」

「いえ、違うんです、そうじゃなくて……その、これ……」

「おお、でかいな……開けて良いか?」

「はい」

「……これって」

「あの、気に入らなかったら別のを……」

「いや、嬉しい」

「きゃっ」

「ありがとう……本当に。思わず抱きしめるぐらいには嬉しい……」

「はい……」

 

◯これはマッサージ、マッサージだから……!(大嘘)

 

「せんぱい、ひゃっ……あっ……! だめぇ……♡」

「なにがダメなんだ? ……言って、みろよ」

「あうう……い、言えませんよう……。ひうっ……♡」

「じゃあっ、やめられないな……! だって何がダメなのか分かんないだから、よっ!」

「あっっ! あ、はっ……♡」

 

◯割と幸せな葛藤

 

「うう……腰が……!」

「ん、んん……」

「……くうう!(……呑気にすうすうすうすう寝息立てて……! タオルが役目を果たせずにシーツはめちゃくちゃ……! こっちは腰がズキズキ、それに、ごにょごにょ……と、とにかくめっちゃヒリヒリするって言うのに……! ……あ、でもめっちゃ幸せそう……尊い……。でも腰が……!)うぬぬぬ……食らわしてやらねばならんッ! しかるべき報いを……!」

 

◯「貴様のような奴は額に肉と書いてバカにしてやるー!」

 

「ん……」

「ふう……これでよし、と」

「ん、ぐ……」

「……へ、屁のつっぱりはいらない人がマスクを脱いだときよりも、綺麗なお顔、が……ぷっ、ぶふぅ! ひっひ、やばい、やばい、腹筋が……ひひっ、いひ、えひひっ! やばいでふ、これはもう緊急避難的にごみ捨て行かなきゃ……! ひひ、あは、あーひゃっはっひゃっひゃっ……!」

 

◯後輩、綺麗なお姉さんと会う

 

「んしょ、んしょ、どっこいしょおっ! ふうーっ……(この腰じゃゴミ捨ても一苦労ですよ、まったく……)」

「あの、すみません、ちょっと良いですか?」

「は……い……?」

「どうかいたしましたか?」

「あ……い、いえ、なんでも! えっと……(やっべなにこの人綺麗過ぎるでしょやばいやばいやばい)」

「その、今から話す住所がどこか教えていただきたいのですが……」

「……ええ、大丈夫です。どうぞ仰ってください(あれ、さっきの見られてたかな見られてたよね猫被っても遅いよねうっわ恥ずかしー)」

 

◯後輩、親戚だと断定する

 

「ええと、いま仰った住所なんですが、その……(なんで……うちのじゅうしょなんでしってるの⁉ )」

「あ、知らないなら大丈夫です……ありがとうございました」

「い、いえ、知ってはいる、のですが……」

「! 本当ですか⁉」

「ええ。……その、どこでこの住所を?」

「マトウ、と言う方から教えて頂いたのですが……」

「はあ……(マトウ、まとう、間桐、それともマキリ……? もしかして麻灯⁉ 姉様の新しい姓……ってことはこの人、親戚の……)……大変失礼いたしました。その、ワタクシの住む家でしたから少々驚いてしまいまして……」

「それじゃ、貴方があの子の……?」

「ええ、その……はい。将来契りを結ぶことに……その、家まで案内させていただいてもよろしいですか?」

「ええ、よろしくお願いします」

「ではこちらへ……(やらかせば……やらかしちゃったなら先輩との婚約が危ないじゃあないですか……! なんとしてもリカバリーをしなくてはッ……!)」

 

◯後輩、家に上げる

 

「ええと……つまり千尋様は、あの方の御様子を見にいらっしゃった、ということですよね……?(アイエエエ……このタイミングで様子見、様子見ナンデ……? しゅごいピンチ……)」

「はい……その、元気にしていますか?」

「ええ……それはもう、すこぶる……まるで暴れ馬のようです(昨夜は特に)」

「そう…………良かった……。本当に、良かった……! うっ、うう……」

「……こちらティッシュとなります(……泣くほど気にかけてたんですね、先輩のこと……)」

「あ……ありがとう……う、うっ、うう……」

「……(そんなに気にかけてる人が傍に付けないって、やっぱ親戚の闇は深いですね、これは……)」

 

◯後輩、勘違いする

 

「ありがとうね、その……」

「……秋葉(あきは)です、姓はまだ音重(おとかさ)を名乗っています」

「ありがとう、秋葉さん……その、あの子の顔を見て行きたいのですけど……」

「え゛っ(あばばばばばば)」

「? その、何か……」

「い、いえいえ……その、昨日夜更かしなさったみたいでまだ就寝中でして(嘘はついてないです、嘘は! ただほんのちょっぴり事情を省いてるだけで!)」

「……そうなの」

「(う゛っ! び、美人さんがしゅんとしやがってぇ……! すごい罪悪感……)ええ、そうなのですよ。……では、紅茶を淹れ直して参りますので少々お待ちを……うぐっ!」

「どうしたの⁉」

「だ、大丈夫です……腰をちょっと……。とにかく大丈夫ですので……」

「……手伝います、秋葉さん」

「い、いえ、大丈夫ですから……」

「それに……あまり肩肘を張らないでください。その、貴女は娘のようなものですから、こうも堅苦しいと少し寂しくて……」

「は、はあ……?」

「あまりピンと来ませんか?」

「え、と……?(娘、ってこの人お母さんみたいな立場だったってことなの……? 乳母さんみたいな……でもあの変態と女の人が一緒にいて無事でいるとは思えないし、そもそも先輩の話には……はっ、そうか!)」

「秋葉さん? やっぱり腰が……?」

「その、千尋様は男性だったんですね?」

「へ?」

「へ? ……え、あのアレと一緒に居て何もされなかったんですか⁉」

「どういうことですか……?」

 

◯後輩、素が出る

 

「へえ……そうなんですか。あの子のお父さんはそんな……」

「ええ、そうなんですよ! あの人と血が繋がってるなんてまるで実感できない気持ち悪いドクズですよ、こんちくしょー!」

「そうなんですか……。うふふふ……」

「……はあ、はあ、し、失礼しました」

「うふふ……もう今更ですよ、それ。素で話していただいても構いません。……私は別に婚約をどうこうすることはできませんから」

「え、そうなんですか? じゃ、じゃあお言葉に甘えて……」

「……ところで、あの子と会うことは……?」

「え゛っ……!」

「ダメ、なんですね……」

「……その、どこかに告げ口とかしないなら……」

「私にそんな相手はいません。だから安心してくださいな」

「あと、その…………怒らないでくれませうか?」

「秋葉さんは涙目になるような何かをやったのですか……?」

 

◯後輩、親戚(?)に事後の現場を見られて死ぬ

 

「これは……油性……?」

「……一応、水性です。起きる前に証拠隠滅できるように。……その、事情が有るんです、事情が……あっ、お布団はめくらないでくださいね、ってフリじゃないですよぉっ!」

「えと……事情はだいたい理解しました……」

「い、いやぁぁぁぁぁぁー!」

「……避妊はしっかりしてくださいね?」

 

◯恥ずかし乙女

 

「う、うう……」

「ごめんなさい……。でも、仲良いんですね……」

「は、はひ……。大好きです……」

「そうですか……。とっても安心しました……あの、あの子のお話を聞かせてもらっても良いですか?」

「はい……あ、あうう……!」

「もうちょっと待ってからの方が良いみたいですね……」

 

◯秘密です。作劇的にも

 

「いろいろ聞かせてくれてありがとう、秋葉さん」

「いえ……私の方こそありがとうございます! ……その、父と母は私が彼といることに反対していて、こういう惚気と愚痴も話させてくれないんです。周りにも秘密ですから、なかなか話せなくて……」

「……それは」

「ですから、千尋さんに話せて良かったです。……幸せだって実感できたし……先輩に謝らなきゃいけないことが有るって気付けましたから。……先輩が起きるのは待たなくてもいいんですか?」

「……いいんです。私は、本当は来るべきじゃなかったんです……」

「どうしてですか?」

「それは……秘密です」

「秘密ですか」

「秘密です」

 

◯オタッシャデー!

 

「だから、顔を見るだけのほうが却って良かったんです。……落書きまみれでしたけどね」

「うぐっ……!」

「……でも、近いうちに落書きの無い顔を見ることになると思います。きっと」

「っ、それって……!」

「では、私は行きますね……あの子には私のことは言わないでおいてください」

「……千尋さん、またいつかー!」

 

◯先輩、血の罪業が出てた

 

「先輩、先輩」

「んん……。いま何時だ……」

「十二時ちょうどですよ。ところで先輩……」

「あっ、き、昨日は……悪かった。ほんっとに悪かった」

「……ま、一週間もお預けでしたから、くどくど言うのは無しです」

「……いい事有ったのか?」

「いいえ? ……私、すごく幸せなんだなーって。ね、明日は公園とかでサッカーしてみませんか? プレゼントしたやつで!」

「本当か⁉ ……でもなんで今日じゃ、ってそうか……」

「腰がですね……」

「ごめん、四時までやってて……」

「……それについては後で詳しく聞かせてもらいますね」

「藪蛇だったか……!」

 

◯人の顔に向かってボールを蹴るやつは最低だこんちくしょー!

 

「行きますよぉ、まずは軽ーく……死ねえっ!」

「うおっとぉ⁉ どこ蹴ってんだよ……」

「お、追い付いてるんだから良いじゃないですかっ……」

「たくっ、慣れてないんだから軽い感じからならせって……ほいっと」

「おととっ。ほら、先輩の手腕ってものを信じて蹴ったんです!」

「あ、そう? そう?」

「そうです」

「よっしゃ、どんどん来い!」

「へいパース!(ちょろかわいい……)」

 

◯先輩、素が出る。後輩、欲情する。

 

「ふう……体育以外でやったの、久しぶりだ……でも運動あんま好きじゃないだろ、お前。なんで付き合ってくれたんだ?」

「んと、先輩って私に合わせてばっかりじゃないですか。それに、自分から何したいどうしたいって言うこと、少ないですもん」

「……そうかな?」

「そうですよ。……だから私がやりたいことを汲み取らなきゃなのに、なにも言わないのに甘えてたんです。……本当に、ごめんなさい……っむ⁉」

「んっ……俺、たぶんお前と一緒にいたり、触れたり、触れてもらったりすることが、一番やりたいことなんだ……だから謝んならないで。俺が一番以外を言ってないだけなんだから……」

「じゃあ、今日のサッカーは?」

「それは一番ってわけじゃ無いけど、やりたいことだった。ずっとやりたかった……。だから、ありがとう。俺のしたいこと、考えてくれて、本当にありがとう」

「……先輩の私好き。――大好きです」

「俺も好きだ……秋葉」

「……っ! せ、先輩っ、名前呼びは、耳元で囁くのっ、ダメ、です……その気に、なっちゃう……から……」

「あ……、ごめん……」

「っ〜〜⁉ (さっきから素が割と出てるなーって思ってたけど、思ってたけどぉぉぉぉ!)」

「その、家に帰ろう。じゃないと大変なんだよな?」

「う゛っ(小動物、おっきい小動物がいるぅ……! 鼻血出たぁ……うう、〈素〉の先輩、破壊力が……!)」

「歩くのがキツいならおぶるから……おいで、秋葉」

「……無理(秋葉って、その言い方、言い方なんですよぉ! 綺麗な感情を目一杯詰め込んだ呼びかけを好きな人にされて……)」

「っ! 大丈夫か、ごめん……」

「う、ううう……!(お姫様抱っこまでされてエッチな気分にならなきゃ人間じゃねえ!)降ろしてください……ここでしましょ?」

「…………え? ここ、外だぞ」

「でもしましょ、そうしましょ……家まで我慢できませんからっ……はむっ!」

「……ん、ぐ……ん……だ、駄目だって……今のキスも、あんな舌絡めてるのも誰かに見られたら……」

「じゃトイレ行きましょうよ、共用のやつ。……大丈夫ですよ天井のシミ数えてる間に終わりますから」

「ひっ……!」

 

◯ある意味催眠シチュ(違う)

 

「あ゛ー……やばいです。心臓がまだバクバク言ってます……」

「なんだろうな、何かに目覚めそうだった……」

「目覚めなくていいです。目覚めないでください。目覚めるんじゃねーです」

「……その、ごめんな」

「……私の方こそ謝らなきゃですよ」

「なんでだ?」

「……私が先輩にお願いしてるのって、先輩が辛かったときに自分でやってたことと同じですもん。本当に……ごめんなさい」

「……そんなんじゃないだろ。今は口調だけだし、やむを得ない事情が有るんだし……」

「……先輩に呼ばれるあの日を思い出しちゃって、催眠術にかかったみたいにぞくぞくーって、発情、しちゃいますから……でも、そうならないようにしないと頑張らないといけないんです、本当は」

「そんなに気負わなくても……」

「だからたまに呼んでくれると慣れるかなって……」

「……分かった。その、ありがとうな」

「絶対に先輩がありのままで居れるようにしますからね。絶対……」

 

◯ヒロインを巻き込まないために人知れず戦う系ヒーロー

 

「(寝てるよな……)」

「ん……先輩、だめですよぉう……えへへへ……」

「(……寝てるな)ごめん、秋葉……行ってくる」

「んっ、せんぱぁい……」

 

◯秘密その二

 

「ん……(間違いじゃない、残り香だ……奴等の、妖の残り香……!)」

『あら、お兄さん、においふぇちってやつなん?』

「……お前は」

『うちは……そやね、むっちゃんとでもお呼び』

「……っ!(妖に関わることなのに六刀も持たずに出た……なんて間抜けなんだよ、俺は!)」

『ああ、そないに緊張せいで……今はなにもせんわ……今は』

「……信じろって言うのか」

『うん』

「断る」

『秋葉ちゃん殺すで。呪いでころっとな』

「お前っ……!」

『ま、お互い見なかったことに……な? そうしてくれれば細やかな贈り物やるわ。一日遅れやけど、クリスマスプレゼント? っちゅう奴を』

「……何が目的なんだ」

『ふふ、秘密や』

「秘密か」

「秘密や」

 

◯天候操作

 

「先輩、先輩! 起きてくださいよ!」

「ん、どうした……」

「ゆき! 雪ですよ、先輩! 今は止んでますけど、そこそこ積もってます!」

「おお、すごいな……」

「ねね、やろうと思えばすぐに除雪できますけど……カマクラ作りましょうよ!」

「でもこんくらいの量で作れるのか?」

「経験者の目からするといけます。よゆーです」

「……じゃ、やるか」

「やったあ!」

「……(尻尾が六本、むっちゃん、狐……もしかして秋葉が好きなゲームとかそのへんに出てくる九尾、なのか)」

「先輩、行きましょうよ!」

「ん……ああ、行くか」

「ふふーんちょっと早いけどお餅とか食べましょうねー!」

「ああ(……どんなに相手でも関係ない。秋葉は絶対に守る、絶対に……)」

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。
クリスマスが今年もやってまいりましたね。
まあ私にはあまり縁のないことですが、先輩くんと後輩ちゃんはエンジョイしたようですね。めでたい。
ところで、ぶっちゃけ各シーンのタイトル要らないような気がしてきました。ほら、センスが無いからね……。

以下どうでもいい設定

「後輩ちゃん、改め音重秋葉ちゃん」
くろひーとおっきーが悪魔合体してしまった系スレンダー美少女。
今回名前を出してしまった人。裏設定的に決まってたけど公開することは無いだろうと思ってたら書いてた。
境遇に同情して先輩を気遣おうと色々頑張ってる。頑張ってるけどまだ子供だからか『大人っぽくて我慢強い』先輩に色んな意味で甘え気味だった。
先輩に恋心を持ち始めたのは去年のクリスマスだったり。
〈素〉の先輩に名前を呼ばれると急激に昂ぶってしまう。いつからかそんな体質になってた。理由? ……なんででしょうね(ニッコリ)。
避妊はぶっちゃけしっかりしてない、というよりやや知識不足。

「性欲と精力が強い先輩くん」
でも自分からはあまり望まない。あまり、ってところがミソ。
討妖の鍛冶士としては力はでかいが制御が微妙。
普通の鍛冶士としては放置されて見様見真似でやってもかなり優秀に育った天才。
精神的には基本的に後輩ちゃんのほうが大人。
戦闘能力に関しては血縁上の父方の祖父と祖母が一級の討妖の剣士だったのでその血を受け継いでいるので実際ヤバイ。
秋葉ちゃんは彼にとって神様みたい、というかそれ以上の存在なので素でいると名前で呼ばずにはいられないらしい。
しかも好意的な感情が溢れんばかりに籠もっているので名前を呼んでいるだけなのになんか凄い。
我慢ばかりしてきたので自分からアレをしたい、コレをしたいとはあまり言わない。言えない。
慰めたり、喜ばせるためなら言ったりするが、自分の願望を押し出すことはあんまり無い。性的なことは別として。
――彼が今まで過ごしてきたクリスマスは酷く質素なものと絶望か、虚無そのものだった。

「素」
口調的な意味での先輩の素。全体的に血縁上の父親の口調を真似してるときより優しげ。

真似時「そんなに気負うんじゃねえよ……」
素時「そんなに気負わなくてもいいんだ……」

「破魔の気いろいろ(鍛冶中心)」
人の生命の炎とも言えるもの。だからみんな持っているし、人が触れると温かい。治癒にも使える。
討妖の剣士と巫女はこれを戦闘に使い、巫女と鍛冶士はこれを素材に練り込み強い武具を作り上げる。
鍛冶士による気の練り込みは、古い言い方では身分け、俗世に染まった者はエンチャントと呼ぶ。
気を練り込まれた素材は特殊な性質を得る。
例えばあり得ないほど頑強になったり、軽くなったり、異常な切れ味を手に入れたり……持ち主に呼応して様々な超常現象を引き起こしたりする。
ただしそれらの効果から特定のものを選んで与えるには高い制御能力が必要。
ちなみに身分けは生き物にも可能(気を使った治癒とは別)で、未熟な鍛冶士はうっかり握手の拍子に身分けしてしまったり、それに気付かなかった例も多々有る。
生き物に見分けされても当然影響が出るので、元の持ち主の「強いプラスの感情」に呼応して身分けされた側を「強制的に発情」させても不思議ではない。
力の強い者が身分けしたなら尚更である。

「祝福」
巫女の浄化の力を練り込むこと。浄弱い妖相手なら割と持つが強い相手だとすぐに無くなる。
浄化は消しゴムみたいなものなので。

「千尋さん」
親戚っぽい人。すごい美人。先輩くんを気にかけてたっぽい。
こんな人が傍にいて面倒見てあげられないなんて不思議だなー。
闇が深いなー。

「六尾」
すごい美人。しかし先輩は全く興味なかった。
クリスマスプレゼントに雪を降らせた。つまりは天候をある程度いじれるということ。
飛べる。
どうやって倒すんだよこの化け物……(フラグ)

「あの日」
秘密。ただおぞましいとだけ。

「サッカーボール」
先輩くんの宝物。一代目はいつもはお菓子を置いていくサンタさんが珍しくプレゼントしてくれた安物。友達でもあったが、血縁上の父に引き取られて程無くして捨てられた。
二代目は秋葉からプレゼントしてもらった高級品。
庭が広いので公園に行かなくても遊べたり。
サッカーボールで遊ぶ姿はどことなく犬っぽい。つまり年甲斐なくはしゃいでいる。

「公園」
なんの変哲もない公園。不自然に人気(ひとけ)が少なかったりするけど至って普通の公園。
啓蒙は別に高めなくてもいい。いいから……やめろ、やめろって言ってるんだ!
そんなことしてなんになる……。いいか、ここには何もいない、そう……なにも。
それでいいじゃないか、それで……いひっ、ひひひひ、いひひひひひひ……!


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先輩と後輩の正月

明けましておめでとうございます。
それそれとして遅刻。
今回は地の文多めですが全体的な文字数は少ないです。


◯除夜の鐘

 

「明けましておめでとうございます」

「今年もよろしくお願いします……しかし、蕎麦美味えな」

「ふふん、母直伝の特性鶏だしつゆですからね」

「……来年もこれ頼んで良いか? すごく気に入った」

「もちろんです! ていうか、好きならいつでも作ってあげますよ」

「なら、今度頼む……うん、美味い……」

「らじゃーです! ふふ……おいしい」

 

◯参拝

 

 ざわざわ、ざわざわ。日を跨ぐような時間にそんなふうって、なんだか良くないイメージが有るかと思います。

 でも、今日は違います。めでたい日ですから、いろいろな人が「一年」について話してます。

 ありがとうと言い合ったり、いろんなことが有ったって振り返ってたり、よろしくお願いしますだったり、とにかくほんわかで、和やかで、賑やかに。

 そして当の私、音重秋葉はそれはもう焦っていたりします。だって、ありがとうって言い合うとか、一年を振り返ったりするとか、来年もどうぞよろしくねって言う相手がこの場にいないからです。

 彼氏ができてないから焦っている? ぶち転がしますよボケナス。彼氏どころか最面白カッコカワイイ婚約者がいるんですよ。

 じゃあなんでその人が隣にいないかって言うと、云々の事情で私より先に出て、待ち合わせた場所に来ないからですね。

 遅れることぐらいでそんなに心配することないじゃない、と思うかもしれませんが、私の最面白カッコカワイイ婚約者は……諸々の事情で良い意味でも悪い意味でも精神的に幼かったりするのです。なのでたまに凄いお人好しになったりします。

 あとは私関係以外だと性の事情に疎かったり。

 故にこう、何か如何わしいキャッチに引っかかったりとかしてないかと心配になるわけですよ。ほら、めでたい日で子供も割と出歩いているとはいえ、夜中ですから。

 精神的に幼い理由ですが、別に何者かに強制的に成長させられたとか、肉体的な成長が人間より早い種族だとか、そんな鏡の世界と同じレベルのメルヒェンでファンタジーな事情では有りません。

 とてもリアルで、だからこそ悲しくて恐ろしい事情が有るのです。あなたは……好き嫌いも、意思も時間も、なにもかもを奪われて奴隷のように生きてきた子供が成長できると思いますか?

 まあちょっと涙が出てきたのでこの件に思いを巡らせるのはやめます。……辛いことを忘れられなくたって、代わりにたっぷり甘やかしてあげるんです。そうするって決めましたから。

「おーい!」

 っと、噂をすればってやつですね。手を振る方とは別の片手に提げたビニール袋には……湯気から察するに何やら美味しそうなものが入っているようです。

「せんぱーい!」

 と手を振り返しながら走り寄ると腕を広げて待ち構えてくれるので脱ぐと男らしいんだって分かる体にダイブします!

「わりいな、遅れちまって」

「なにごとも無かったみたいで良かったです……ところで、それは?」

「箸巻きってんだ。九州とか、そっちの方では良く食われるんだってよ」

「ハシマキ!」

 おお、おお、この後輩、知っていますとも! お好み焼きを割り箸に巻いた、名前そのものの美味しいものだと!

「すごく美味しいんですよ、冷めない内に食べちゃいましょ! ね、ね!」

「わあってるって。ちょっと工夫してるらしいから、お前が思ってるのと違うかもしれないけどな」

 ふむ、確かにあれはトッピングも重要……ですがドバドバ掛けるとなると、パック詰めで袋にってことは難しい――と言うことは。

「ん……美味えな、トッピングは全部をそこそこって注文したんだが……」

「なるほど……ソースとかも纏めて中に巻く方式なんですね、美味しいです」

 まあ、こうですよね。でもこれって、トッピングを細かく調整できないって欠点がどうしても出ますよね……。

 それと……一つにかかる時間だって増えてしまう。いや、実際最適解でしょうし、食べやすい上に美味しいから文句のつもりは無いですけど。

「これ、どこで?」

 帰りにもう一本いただきましょう。次は沢庵と紅生姜少なめで。

「なんかさ、出店の売上で勝負してるんだってよ。子供と大人がどっちも箸巻き出しててさ……これは大人の方が出してた箸巻き」

 あっ、ふーん。

 

◯男の願い

 

「先輩は何をお願いしましたか?」

 礼拝のあと、秋葉はこっちに軽くもたれながらそう聞いてきたので、俺は秋葉の手を手袋越しに握って、こそこそ話をするようにして言う。

「末永く一緒にってな」

「も、もう、先輩ってばぁ! そんなの当たり前じゃないですか! ……嬉しいですけど」

 いつもは白いほっぺたをさくらんぼのように赤くして喜んでくれているけど、俺の答えは本当のことじゃない。

 本当は、『彼女が母でいなくても一人前の男でいられるよう』に、そう願った。

 俺がやりたいことをもっと感じ取れるようにならなきゃいけないって秋葉は言ってたけど、それは本当は問題にしなくても良いし、気に病むことも無くて良いはずなんだ。

 なのに、俺が親離れできない子供みたいな人間だから秋葉は自分を責めてる。

 ……きっとこの関係は良いものじゃない。年上の男が小さい女の子に寄っかかるようにして生きてるってことなんだから。

 末永く……。そう言えるのは一人前の男になってからなんだ。

 

◯秘密です

 

「先輩、おみくじどうでしたか?」

「吉だった」

「私はですね、大吉でした!」

「おお! で、どんな一年になるって書いてあった?」

「ふふふ、秘密です」

「秘密か」

「秘密です」

 

◯血の「絆」

 

「先輩も今年から就活なんですよね……」

「……俺は、家業を継がなくきゃいけないから」

「ダメです。絶っっっっ対にダメです!」

「でも、それで困る人がたくさんいるんだし……」

「それ、すぐに継がなきゃダメなんですか?」

「一応、あいつはまだ若いからできると思うけど……」

「じゃあアレが死んでからで良いじゃないですか!」

「でも……俺って鍛冶屋仕事しかできないぜ? 頭良くないし……」

「だったら別の鍛冶屋さんに行けば良いんですよ。そうすれば、先輩は傷付かないで済むじゃないですか、嫌な記憶と向き合わないで済むじゃないですか、たかが血の繋がりに囚われずに済むじゃないですか!」

「お前……」

「だからそうしましょうよ、ね?」

「……それはできない」

「〜⁉ ドアホッ!」

 

◯こたつで項垂れて

 

「あの、さっきはごめんなさい……」

「お前は俺のこと考えてくれてるだけだろ? ……実際な、他のところで鍛冶をやるって発想、言われるまで思い浮かばなかった」

「……なにか、どうにもならない事情が有るんですよね。私と先輩が婚約したのと同じような事情が」

「……」

「なのに私、それも考えないで怒鳴って……!」

「……手は有る」

「えっ、本当に?」

「ああ。……俺だって、あんな奴と一緒に――それこそお前も住むなんて絶対に嫌だ。だからなんとかしてみる」

「先輩……!」

「泣くなよ……たぶん俺は、人に比べりゃ苦しい思いしてないっての」

「人がどうとかじゃないです、苦しみの事実は相対評価したからって、辛さがマシになるものじゃないんですから! だから、先輩が心が疲れ切っちゃうほど苦しい思いをしてきたってことは変わりないんですよ! ……だから、言わないでください。他人よりとか」

「……そうか」

「そうです!」

「……ありがとうな」

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。
ところで今作ですが、打ち切ってリニューアルすることにしました。
理由? 才能も無いのに無軌道にやり過ぎて(才能が無いから無軌道にやり過ぎるのか?)設定と描写の矛盾とか違和感が出まくりだからですね。
て言うか今作に限らないことですが、私は未熟故に「次の一文字は一秒後の自分に任せる」方式でしか書けない人間でして、連載はそもそも無謀だったのだなと。
というわけで未完、となります。
評価投票、お気に入り登録してくれた皆様、ありがとうございました。

以下矛盾塊とかした設定。

「先輩」
本名、守門(もりかど)(はる)
実は自分の境遇に同情してれた人は秋葉ちゃんだけ。

「後輩、改め音重秋葉」
牛肉の赤ワイン煮込みをビーフシチューと言われてもスルーする人。


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剣士さまと巫女さんがほのぼの新婚生活


(あやかし)殺しの剣士さんと巫女さんがほのぼのするだけです。
この作品は会話文のみとなります。
この作品には性的な仄めかしが含まれています。
この作品には下ネタとは別の意味で食事中の閲覧には適さない要素が含まれています。
この作品と二人の会話に意味を求めることはPOPTEAMEPICに意味を求めることと同義です。
12/4 思考を表記していた()を各キャラの「」内に移動。
……これってやって良いんでしょうか。


◯縁側で

 

「剣士さま、お茶が入りました」

「すまないな、ありがたくいただこう。…………うん、美味い」

「ふふっ、お褒めに預かり光栄です。あ、これ……お茶請けにどうぞ」

「うむ……きんつばか。それも丸い……」

「はい。いい小豆をいただきましたので、作らせていただきました」

「んぐ……。うん、これも美味い……」

「それは良かったです。あむ……。ふふ、おいひい……」

「(昼下がりの縁側で愛する者と茶に興じる……これほどに幸せなことなど有るのだろうか)」

 

◯昔の話

 

『ねーねー! お兄ちゃんがあたしの“こんやくしゃさん”なの?』

『……父上からはそう聞かされている』

『そうなんだ。……ふーん』

『…………どうした、俺の顔に何か付いているのか?』

『んとね……。うん、合格!』

『なんの話だ……?』

『あたしね、結婚するならかっこいい人が良いなって思ってたの』

『そうか……俺は希望に添えているのか?』

『お兄ちゃんはね、ぱっと見悪者みたいに怖いけど……よっっく見るとかっこいいよ! だからね、合格』

『そうか……』

『だからね、だからね、お兄ちゃんそんなに気にしなくて良いんだよ』

『むっ……俺は別に、何も……』

『うそ。だって、お兄ちゃんが私を見る目、なんだかごめんなさい、って言ってるみたいだもん。……もしかして、私がちんまいから?』

『むう、確かにその、君のような幼い子を婚約者にすることは……その、少しばかり躊躇いは有るが……』

『ふふーん、今はまだぺちゃだけどね、私お母さん似だって良く言われるんだー』

『……っ!』

『だからね、きっと胸もお尻も大っきくなるよ!』

『ごくっ……はっ! いや、その、躊躇いを覚えたというのは、そんな破廉恥な意味では無くてだな……』

『えへへ、分かってるよ? からかってみただけ。……優しい人なんだね、お兄ちゃんは』

『くっ、年上をからかうものじゃない! それに、俺は君の兄では無い』

『ふーん。じゃあなんてお兄ちゃんはなんてお名前なの?』

『だから俺は君の兄では無い!……俺の名前は――』

 

◯ダム決壊

 

「ん……」

「すまない、起こしてしまったか?」

「いいえ。……ねえ剣士さま、私の胸、大きくなったでしょう? あと、お尻も」

「っ、な、なんだいきなり」

「ふふ、懐かしい夢を見ましたから、つい……よいしょ」

「ま、待て、巫女殿! まだ朝だぞ……」

「良いではないですか……朝は朝でも日が昇ったばかりなのですから……ね?」

「だ、だが……昨夜の疲れが、その……むぐっ⁉」

「口では嫌がっていても、剣士さまの“御剣”は、それはそれは猛っておられますよ?」

「う、ぐ……」

「ね? 結婚するまで接吻も無かったのですから……ね?」

「う、うう……!」

 

◯人間って生き物は、増えることすら娯楽にしちまうんだよな……

 

「俺は、破廉恥な男だ……」

「そんなことはありませんよ」

「そうだろうか……」

「だって、私から望んだことですもの。だから、恥を知らないのは私です。……気持ち良かったですか?」

「最高だった……。あっ、いやっ、今のは違うっ」

「いいえ。女冥利に尽きるというものですから……」

 

◯寄り添い歩こう

 

「ごちそうさまでした」

「はい、お粗末様です」

「……君の料理はなんでも美味いが、味噌汁は特に良い……五臓六腑に染み渡る、というやつだ」

「ええ。お味噌から丹精込めて作っていますもの」

「いつもありがたく思っている。……その、不満が有ったらいつでも言ってくれ」

「あら、どうしたんですか?」

「俺には亭主関白でいる以外にやり方が分からない……だから一緒に住み始めてから、君を働かせてばかりになっている。……それこそ召使か何かのように」

「大丈夫ですよ、剣士さま」

「しかし……」

「だって、私は剣士さまのことが大好きですから。……それに亭主関白でいるつもりでしょうけど、それよりずっと優しいですもの。きっと」

「そう……だろうか」

「ええ、そうですよ。それに、それ以外を知らないなら一緒に知っていきましょう? 私達は……その……夫婦(めおと)、なのですから……」

「ッ……。そうだな、俺達は愛し合っている二人なんだったな……。なら……寄り添って歩いて行こうか、二人で」

「はい……。これからも、どうぞよろしくお願いします……」

「…………人の温もりとは、温かいものなんだな」

 

○あやかしふぁんたじー(これはほのぼのだ……誰がなんと言おうとほのぼのなんだ!)

 

「ふっ……疾ッ!」

(いくら幸せに浸ろうと、俺は(つるぎ)の重さを忘れる訳にはいかん、それだけは、有ってはならんのだ……)

「剣士さま……お客様からお電話です」

「ン! 分かった、すぐに行こう」

「(そう……彼女が魔縛りの術を忘れることが無いように……)」

 

◯あやかしそうる

 

「貴方様が討魔の剣士ですかな……?」

「ええ。……そちらが胡乱な目で見るように、先代から相伝したばかりの若輩では有りますが」

「むう……本当に大丈夫なのでしょうな?」

「無論。……先代の眼力を、どうか信じていただきたい。私がこうして貴方と話しているということは、あの方が私を認めたということなのですから」

「うむう……分かった、この長谷部源太郎、剣士殿を信じましょう」

「……ありがとうございます」

「それで、妖の害を受けているのは……?」

「ああ、こちらです、巫女様……」

「むうっ……! これは……」

「剣士さま……!」

「ええ。ご覧いただいたように、全身が爛れ、膿、熱に魘されているのです……まだ年頃の娘だというのに……」

「この様は、やはり……」

「ああ、爛れ広げの仕業に違い無いだろう」

「爛れ広げ……? それはどのような化物で?」

「その名の通り、爛れを広げる……下衆な妖です」

「彼奴等はキノコのような増え方をするのです……。胞子を飛ばすのですが、それが人に寄生すると御息女のように爛れに包まれ……やがて彼奴等の一員となってしまうのです」

「なんですと⁉ では、紀美子も……」

「安心してください。……今ならまだ、間に合います」

「だが、急ぐに越したことは無い。行くぞ、我が嫁巫女よ」

 

◯ハードボイルドっぽい

 

「妖は滅びました。どうか安心してください、源五郎さま」

「ありがとうございます、巫女様……剣士様も……ありがとうございました……」

「礼には及びません。これは我々が子々孫々受け継いで来た、使命なのですから……」

 

◯ハンサムのお約束

 

「パパ、紀美子を治してくれたのって、あなた達?」

「おお、紀美子! 歩けるようになったのか?」

「(むっ、こ、これは……!)ごくっ……。うぐっ!」

「ど、どうされましたかな、剣士殿?」

「剣士さまは、どうやら傷が開いてしまったようです。その、なにぶん激しい戦いでしたから……オホホホホ」

「はあ……」

 

◯ハンサムマンはプレイボーイでも根っこは一途な気がする

 

「……なあ、その、すまなかった」

「…………」

「許してくれ……」

「…………剣士さまは、本当に私を愛しているのですか? 恋をしているのですか?」

「当たり前だろう。こうして君と暮らすことをずっと夢見ていた!」

「なのに、目移りしてしまうんですか?」

「っ! それは……」

「……剣士さまはいつから私を好きになってくれたのですか?」

「君が覚えているかは分からないが……修行の途上で俺は挫けていただろう?」

「はい、覚えていますよ」

「もう十八になるというのに、あの剣を扱うこともできなくて……後継者として失格だと泣き腫らしていた頃だ……。使命も果たせない討妖剣士に価値は無いと悩んでいた……その時に君は俺を抱きしめて言ってくれたじゃないか」

「……『誰もが貴方の価値を否定しようと、私にとって一番価値が有るのは剣士さまだよ』……。ええ、言いました……今でも変わりません」

「本当に嬉しかった。それで、俺は君を一生愛し抜こうと……そう決めたんだ」

「……それ、胸が大きくなってきた頃の話ですよね?」

「ヴっ⁉ それ、は……」

「ねえ。紀美子様もなかなかのモノをお持ちでしたものねぇ?」

「あっ、えっ……その、雄の本能として目線をやってしまうのはしょうがないと言うか……」

「……我慢不足で浮気が許されるんですか?」

「……」

「……」

「…………」

「…………子供を作りましょう。なるたけ早く」

「うっ、やめろ、よすんだ! 君は子供を鎹にしようなどと、そんなことを考える人では……!」

「貴方が私をそうさせたのですよ、剣士さま。……大人しくしていてください。大丈夫です。どうせいつかパパになるんですから、それが早くなるだけですから……!」

 

◯朝チュン

 

「ふふっ、もう朝ですね……」

「……」

「私、あなたのことが大好きですからね……」

「……」

「……お兄ちゃん」




ここまで読んでいただきありがとうございました。
この形式ではもう書かないと言ったな……あれは嘘だ。
たぶんお気に入り登録取り消す人が出るだろうなと思いながらぶん投げる私の度胸を褒めてくれ給え。
この形式でやるときは登場人物は二人って縛りを密かにやっていたのですが二回目にして早くもぶち破りました。
理由はなんとなくです。
ところで、途中途中の寒いサブタイトルは見なかったことに……前回にも入れちゃったんですけどね!

以下どうでもいい設定。

巫女さん
いつもニコニコアルカイックスマイル。
剣士さまの家系と長いこと協力関係にある巫の家系の女の子。
母親似。
表向きは清楚で世間知らずなお嬢様だけど思春期を殺された関係で性欲が強い。
嫉妬深いところがあるけど基本的には尽くす女。
剣士さまの為なら普通に死ねるくらいには好き。
父方の血筋が色濃い見た目の妹がいる。接した時間は少ないし境遇も全く違うけど仲良し。
戸籍が存在せず、本来なら学校で友達と話したりするような時間は修行に使わされてきた。それは剣士さまも同じ。
実は剣士さまと恋人繋ぎをしたことが無い。知らないから。

(あやかし)
この世には……目には見えない闇の住人達がいる。
奴らは時として牙をむき、君達を襲ってくるかもしれない。
そんな奴ら。地獄の怨念が這い上がり実体化した存在。
呪いという形で牙をむいてくる。有害。極めて有害。ただし名前を知らない相手には呪えない。
閻魔様だって名前が分からなきゃ裁きにかけられないでしょ?(謎理論)
たまに協力的な奴もいるが某シリーズの報酬先払いの依頼くらい信用してはいけない。

剣士さま
彼はそんなやつらから君達を守る為に地獄の底からやってきた正義の使者……なのかもしれない。
いつもムッツリへの字口。
妖と呼ばれる化物を相手にしてきた剣士の家計。
堅物っぽいし実際真面目な人間だけど性欲を持て余しているのでムッツリスケベ。
普通思春期ってなるとこっそりアイドルのグラビアなんかを見たりしてなにかするものだけどそんなこともできなかったので大いに持て余している。
思春期は修行と一対一の座学で過ごしたから仕方ない。許されるとは言わない。
仲の良い従兄弟に一時期一方的に嫌われていた。因みに従兄弟は鍛冶師の家計だとかなんとか。
巫女さんが大好きだけど名前では呼ばないし呼ばせない。何故ならそれを妖に聞かれれば呪いの餌食となるから。


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剣士さんと巫女さんの日常

はい今回は前回と前々回の予告通り剣士さんと巫女さんの話となっております。正直イチャラブ成分は薄いですが。
他に、安易なキャラ付けとして廓言葉と京言葉を使っています。正直言って自信が無いので誰か取締りに来て……。誤字脱字報告で教えていただけると幸いです。ついでに誤字脱字も。
あ、それと今回は地の文無し縛りを一つのエピソード限定で解きました。技量不足が原因ですね、大変申し訳無い。
ていうか人が求めるものにはなってないかもです、はい。
更に設定がいつも以上に長いです。なにやってんだ。

今回は下ネタとは別の意味で食事中の閲覧には適さない要素が含まれています。
今回は過度の罵倒が含まれます。
今回は胸糞注意です。
今回は残酷な描写が有ります。


◯日常回

 

『焼け死ねっ、しねしねしねしねぇーっ! あひゃっ、ひゃーはっはっはっ!』

「ぐっ、うおおっ!」

「剣士さま!」

「くっ……! 大丈夫だ……」

「! そんな、足が……」

『おいおいおいおい、人様の目の前でいちゃつくなんて、随分と余裕みてぇだな……。まさかおいらの鬼火で焼け死んでねえからって良い気になって慢心してんのかぁ? 今のはとろ火なんだ……本気で焼こうと思えばお前らなんて炭にできらあ……』

「ふん……。その言葉、そっくり貴様に返すぞ」

『なにい……?』

「……(剣士さま、こういうことですよね……!)」

「敵の目の前でベラベラと講釈を垂れる。如何にもお前のような雑魚がやりそうなことだ」

『なんだと……! おいらが雑魚だと……!』

「貴様以外の誰が雑魚だと? それすら分からないのか……雑魚めが」

『てめぇ……!』

「どうした、腹が立ったか? 図星を付いてしまったか?」

『楽に死ねると思うんじゃねえぞ!』

「吠えるな、実に。……ならさっさとかかって来い、腰抜けの雑魚が」

『死ねぇーっ!』

「今だ!」

「封結!」

『な、な、なんだ、こりゃ!』

「貴様のような雑魚には良く効く檻だ、人喰い狐」

『こんなもんおいらの炎で、うおおおお……ぎゃあぁぁぁ!』

「この結界がそんな炎で破れると思いましたか!」

『熱い、熱いぃ……』

「楽に死なせてやる」

『ひっ、い、嫌だ! 地獄はもう、嫌だ……!』

「ぬんっ!」

『(親方様、おいらは、おいらは……!)ぎぇっ!』

 

◯非日常回

 

「まーま」

「どうしたの、なっちゃ、っ! 剣士さま、大変です!」

「っ! どうした⁉」

「夏花が支えも無く立っています、歩いているのですよ!」

「なにっ、お……おおお……!」

「なっちゃん、ママはこっち、こっちですよ!」

「まーま!」

「おおおお……!」

 

◯非日常回その二

 

「ふふ、可愛い……」

「ああ……。しかし、ついこの間まで這っていると思ったのに、もう歩きだすとは……未だ乳飲み子とはいえ、凄まじいな」

「そうですね……言葉を話すようになったのだって結構最近な気がします」

「それは確かに最近のことじゃなかったか?」

「そう、でしたか?」

「そうだったはずだ」

「そうでしたか……」

「成長が早い、ということだ……夏花、夏花よ」

「なっちゃん、パパのおてて握ってあげて?」

「ん、ぱーぱ!」

「おおおお……!」

 

◯日常回その二

 

「ふむ、夜な夜な墓場で啜り泣く声がする、と……?」

「ええ、その通りでございます、剣士様……」

「あの……つかぬ事をお聞きいたしますが、最近、どなたか亡くなられましたか?」

「ええ、巫女様。……とても気立ての良い娘でした。しかし、事故から弟を庇って……」

「なるほど……。引き受けよう」

「おお、やっていただけますか!」

「無論、任せると良い……ン、鐘の音か?」

「ええ、良い音色でしょう? 五時の時報として鳴るようにしているのです」

「確かに……なんだかとっても清らかな音色ですね……」

 

◯日常と非日常の狭間

 

『そっか……あたし、もう死んでたんですね……だからみんな無視したんだ、だから家じゃなくて自分のお墓に帰ってたんだ……。うん、だんだん思い出してきた。……あの子は、うちのリクは?』

「無事だ。貴方が亡くなって悲しみ、落ち込んでいるが、身体には傷一つ無い」

『本当? ……よかった。……本当に、よかった……』

「どうする、あの子と顔を合わせてから逝くか? ……巫女の力があれば、只人にも見えるようになる」

『……なら、会いたいです。お母さんとお父さんの代わりに一緒に居るって約束を破っちゃったこと、謝ってから成仏したいですから』

 

◯日常回その三

 

「……往くぞ、彼女の仇を討つんだ」

「はい……!」

「事故とはよく言ったものだな、町長……妖と手を組む、畜生にも劣る下衆が……!」

「……生かしておくわけにはいきません」

 

◯日常回その四

 

「どうなっている?」

「はい、これを……」

「なるほど……」

「ええ、記憶と認識を操る呪具です。……音に効果を乗せることができるタイプの」

「それで妖に襲われた人々の被害を事故だとまやかしていたということだな、町長?」

「むー、むーっ!」

「妖の居場所を言いなさい。言えば慈悲を与えます……嘘偽り無く明かすと誓えますか?」

「むうっ、むうっ! ぶはっ……!」

「言え」

「ひっ! 言います、言います! ですから剣を……」

「早く言いなさい、私はあなたが思っているほど気の長い人間ではありませんから」

「ひいっ……。お、御狐様は……いえ、奴はマンション建設予定地に潜んでおります……はい」

「ふうん、だがあれはどうやら何年も建設予定のままのようだな、え?」

「それをこの呪具で誤魔化していたのですね、あなたは」

「……い、命は助けていただけるのですよね⁉」

「……私、そんなこと一言でも言いましたか?」

「えっ」

「貴様のような下衆は首を晒すが似合いの末路よ」

 

◯狐火(地の文注意)

 

「異界を作っている……それなりの力は持っているようだな、御狐とやらは」

「なんという妖気……!」

 結界を解除し、横断幕をくぐり抜けた二人の視界には、異様な風景が広がっていた。

 炎と血に沈む町。あえて呼ぶなら、恐らくそれが尤も適切だろう。空襲を受けた町並みにも似ているかもしれない。

「……急ぐぞ」

「はいっ」

 鼻を刺す、鉄分とタンパク質が焦げた煙の香りを堪え、犠牲者の魂が素になっているであろう動死体を剣と術で蹴散らしながら奥へ、奥へと走る。

 ――二人が邪悪な妖気を放つ小さな祭壇を見つけたのは、揃って返り血(まみ)れになった頃だった。

「これが源になっているようだな」

「はい、間違い有りません……結界、始動しました!」

 剣士は手にした打刀に、包むように〈破魔の気〉を纏わせる。高度に練られた〈破魔の気〉は物理的な破壊力を有し、鉄槌にも似た威力を発揮するということは、彼とその界隈にとって常識だった。

 剣士は、それによって祭壇を木っ端微塵にするつもりで剣を振りかぶる……!

「終わりだ、御狐とやら……!」

『おやおや……人間風情が。戯言を言いなんすな……』

 少女のように愛らしい、しかし遠くから響くような異質な声が場を支配したのは、今まさに鉄槌をくださんとした剣が不自然に静止させられたのと殆ど同じタイミングだった。

「お前は……!」

「っ!」

 息を、呑む。まさかこれほどの存在だとは……! 夫妻は目の前の豪奢な着物を艶やかに着崩した、見目麗しい少女を見てそう思った。

『あきちはお紺。ほんの短い一瞬(ひととき)ですが、どうぞよろしゅう……』

 炎が舞う。全てを焼き焦がすように、激しく。外から内までを舐め溶かすように、艶やかに。

「あ……! ぐっ、げほ、けほっ!」

「すまない!」

「だい、丈夫です、やれます……から」

 人間離れした身体能力を持つ剣士は巫女を抱えたまま大きな跳躍を繰り出すことで高波のような形で放たれた炎を回避していた。

 だが咄嗟であったから、巫女へ警句を発するといったことができず、急激な加重を与えることになってしまったのだった。

『ほほ、やりますなぁ……その犬畜生の吐瀉にも劣る好かねえ臭いに、あきちらのような動き、主さん討妖の剣士でござりんすか。それも面倒を見てる男衆が世話んなった……』

 臭いと言わんばかりの仕草をする御狐に、剣士は呆れた風に言葉を返す。

「だったらどうした? 肥溜め以下の汚臭を撒き散らす、汚らわしい妖が」

「それがわかったところであなたが私達に敗れ、地獄に還ることに変わりありません」

『ほほ……冗談は顔だけにしておくんなんし?』

 罵倒の応酬の末、狐は炎を舞わせ、剣士は剣を構え、巫女はしゃらんと手鈴を鳴らす。

 ……人知を超えた超自然の戦いが始まろうとしていた。

「封!」

 誰よりも先に動いたのは巫女だった。掛け声に連動して現れた板のような結界が押し潰さんと前後左右から御狐に迫るが、それは御狐が発した炎の嵐に焼かれ、ガラスのように砕け散る。

「もらった!」

 しかし本命は巫女の巫術で更に強化された剣士の剣閃である。跳躍で炎を一息に駆け抜けると、肩がけに振り切り――空振る。御狐が身を反らしたからだ。

『ふふ……おっと!』

 返す刀で横に薙ぐ。しかし、それも小刀を思わせる爪で止められる。

「っ、破っ!」

 反撃を予感した剣士は飛び退くと同時に破魔の光弾を撃ち込む。が、お狐は高速で飛来する鉄球に等しい威力を持つそれを、貫手の一撃で四散させた。

 それでむわりと拡がった破魔の気が煙幕として機能し、御狐の動作、剣士へと飛びかかる準備を隠す。

「ぐっ……!」

『あらら、止められてもうた……』

 剣士は襲いかかった爪――剥がして逆手に構えている――を先に自分が防がれたように受け止め、弾く。

『ちょっとばかし付き合っておくんなんし?』

「う、ぐっ! ぬおおっ!」

「剣士さま!」

 目鼻耳、喉胸腹。剣士のそれらを狙った高速の斬撃が何度も放たれ、その度に刀で弾く。

 悲鳴染みた叫びを上げながら見守る巫女の目には火花が何度も散っているとしか見えない、激しい剣戟。それは唐突に終わった。

『おい、しょと』

「なにをっ⁉」

 剣士がまさか、と思ったとおり、巫女に向かってなにかが飛んでいた。剣閃を空いていた片手で握り込んで止めてから投げたのだ。その手に握った鋭い、小刀のような爪を。

「避けろーっ!」

「あっ……」

 反応は――間に合わない。空気を裂いて殺到したそれは、巫女の右腕を骨ごと切り落とした。

「あぐっ、うああああッ!」

「貴様ぁぁぁぁーっ!」

『ああ、ああ……! なんて、なんて素敵な悲鳴、なんて心地良い憎悪……!』

 気絶した巫女の腕からは鮮血が、剣士から怒りに満ちた破魔の気が、御狐からは悦びの炎が迸る。

「貴様っ、貴様ァッ!」

『ああん……澄ましてばかりのさっきより、ずうっといい男になりんした……♡ 素敵……♡』

 大切な人を傷付けられた怒りと、失う恐怖に動かされて振るう剣は、閃きとは言えないほど出鱈目で、先程まで発揮されていた技巧は欠片も存在していなかった。

 その様子は、ほう……、と恍惚とした息を漏らしながら、余裕を持って剣を捌く御狐とは対照的で、それが二人の間に有る力の差を顕著にしているようだった。

『では……そろそろお開きにしなんす』

「おぐっ⁉」

 腹への拳打。その一撃で剣士は呆気なく意識を刈り取られ、倒れ伏す。

 ――そして、炎が豪、と音を立てた。夫妻を灰燼として尚燃え続けるであろう炎獄が、上げた手にならってか天高く……さながら竜巻のように燃え盛る。

『おさらばえ……』

 手が振り下ろされると同時に若い夫婦は子を残して天に召される――はずだった。

 ひゅっ、と風が吹く。一度では無い。二度、三度、四度。何度も、幾度も。

 ――風……否、剣圧によって炎の竜巻が消えたあとには初老の男が一人佇んでいた。

『……麻灯(まとう)の? 退いたんじゃ……まさか』

「左様……。久しいな、九尾……いや、今は六尾か……。まさかここまで早く復活しているとは……どうだ、ここは一つ、儂と盃でも傾けんか?」

 怒りを顕にする御狐と、提案とは反対に剣呑な雰囲気を放つ男の様子が二人の間に横たわる遺恨を物語っていた。

 

◯ダディグランパと六尾とときどき誰かのおかん

 

「ふむぅ、安酒と侮っていたが……これはなかなか!」

『……良い味』

「どうだ、この酒に免じてあの二人は見逃してやってくれんか」

『それはあちきの気分しだいでありんす。……手当をさせてやっただけありがたく思っておくんなんし』

「……お前さん、なんで慣れない廓言葉なんて使ってるんだ? 」

『あきちの〈一部〉……主さんも知ってるあの子が……昔で言う、遊女のようなことまでして子供を育てていたからでありんす。……ウチには理解でけへん、好きでもない男に身体を弄ばれる……そないな屈辱、耐えられへん』

「なら、なぜ使っておる」

『……子供』

「子供ぉ?」

『ウチの尻尾に選ばれたあの子は、そうまでして子供を……これまたどうしようもない下衆に乱暴されて孕んだ子供を育てようと頑張っとった。……その気持ちがな……ちびっっとだけ気になって、だから真似した。……それだけの話や』

「なにか方向性を間違えとらんか、お前……」

『そうかもしらんね。でもな、初めてなんや……母親だった娘がウチの一部になるなんて……そやしね、むちゃ気になってん。あのな……あの子、聞きたいことが有るっぽいから変わるわ』

「ン、相分かった」

『……あの子は、ハルくんはどうしてますか?』

「ン……(入れ替わった、か)ああ、生きている。少なくとも死んではいないとも」

『その、どういう様子ですか?』

「そうさな……前に合った様子だとヘラヘラと頼りない男だった……今は知らん。こちらで決めた婚約者と住ませているがな」

『元気……でしたか?』

「知らん」

『…………そうですか』

「だが住所は知っている。教えてやるから、会いにいったらどうだ?」

『ほ、本当ですか⁉』

「嘘を言って、儂になんの得が有る……」

 

◯討妖の御三家には屑しかいないのか……(絶句)

 

『見逃せっちゅう話、まあ乗ったる。あの子が元気で機嫌良いからな』

「そうか。なら疾く消えろ……斬りたくてしょうがないのでな」

『……一つ聞いてもええか?』

「なんだ」

『ウチがあの子の子供を……あのクズの跡取り息子を婚約者ごと殺したらって、かんがえなかったん?』

「……そんな話か」

『どうなん、実際』

「かかかっ。別に、奴の息子が死んだところで問題は無い。婚約者に充てがっているのも巫女の素質が薄い、出来損ないのカスよ……お前の手にかかったところで誰も痛くも痒くも無いわ」

『ふぅん……やっぱり人間ってさっさと消えたほうがええわ。じゃ、ウチは行くから』

「ああ、儂もな、我々が手を下すことなくお前が滅ぶことを祈っているぞ」

『いなくならんよ。あんたら人間がいる限り、ウチは何度でも蘇る……ふふ、うふふふふふ……あははははは!』

「……消えたか(しかし、奴の戦い方……明らかに手心が有った。いたぶるような余裕が有るならばあっさりと殺し、断末魔を楽しむあいつが……。気にかけているらしい、〈あの子〉とやらの影響を受けているのは確かか……ふふ、面白い)

「ぐ……」

「(おっと、いかんいかん。小童どもを連れて帰らねば……。しかし、獅子身中の虫だとばかり思っていたが、あいつも鍛冶仕事以外でもたまには役に立つか。まさか九尾に甘さができるとはな……格段に与しやすい……!)ふ、ふ、ふ……くく、く、……かっかっかっかっ!」

 




ここまで読んでいただきありがとうございました。
いやね、久しぶりに書きました、地の文。だからなんだって話ですが。
劣化するほどの腕前が無くて良かったです。下手糞であることに感謝。
スマブラでは敗北者。
お寒い自分語りはここまでにしておきます。

以下どうでも良い設定

「開幕で雑魚にあんよをこんがりされたくせにイキってた剣士さん」
実際大したダメージになってないのでイキっても問題無い。
前まで巫女さんだけが大好きだったけど自分の娘のことも産まれたときから大好きになった。
妖とそれに味方するものに対して尋常じゃないSっ気を発揮してるのはそういう教育を受けてきたから。これは巫女さんも一緒。
強さで語ると普通に強キャラだけど相手が悪過ぎた感じ。強者は戦う前からどんだけ強いか計れるんじゃ無いの? と思うかもですが、分かってても退くという選択肢は無い感じです。そういう教育を受けてきましたから。

「自分の子供を抱きしめるのが大好きな巫女さん」
切り飛ばされた腕は治ります。大丈夫。
幸せの絶頂期にいます。でも戦場に立たねばならない。風習なので。
下世話な話をすると子供の関係でFからGになったとか。何がとは言わない。ちなみに妹はA。格差社会。世知辛い。

「夏花」
剣士さまと巫女さんの子供。無論赤ん坊。最近パパ、ママと言うようになった。
可愛い女の子。父親似なのでクールビューティーな女の子に育つっぽい。
長女なので五つになると親元から離れて暮らすことになる。悲しい。

「九尾もとい六尾」
強い。
地獄上がりではないので正確には妖では無い。でもそれ以外はあんまり変わらないので妖扱い。
尻尾が多いほど強くなるので九尾になると最強になる。ちょっと世界が危ない。Keter。
他にも色々語ることは有るけど今回は元は人間だったことを明言するに留める。

「先代討妖の剣士」
強い。前回復活した九尾を倒したのはこの人。ただし妻に迎えるはずだった恋人と引き換え。
酒が好き。
割とろくでなし。

「あの子」
色々悲しい人生を送ってきた人。たぶん今作でも屈指の不幸っぷり。

「鍛冶士」
今回かなりディスられた人。下衆で屑。鍛冶に関しては自分でやるぶんには神。
でもそれ以外だとネグレクトとDVも上等な人。
なにやら怪しい動きが有るらしい。

「妖のいろいろ」
身体能力がやばい。これだけでも脅威なのに耐性が無い人=常人が目にすると恐怖で発狂するか、防衛反応で魅了されたり心酔したりする。
ニンジャか神話生物かな?

「妖と地獄」
地獄……生きてる間に悪いことをした人達が行くところだね。
妖……の元になる魂たちはみんな地獄が嫌い。だって熱いから。生きてるだけで外から中まで大火傷。でも死ねない。
だから地上まで出てきて、妖としての形を得るんだけど……そのままだとせっかく手にした体が霧散してしまう。
魂だけだと現世に存在することは難しくて、結局地獄に逆戻り。それを防ぐためには各々色々しなくちゃいけないんだけど……揃いも揃って人畜の害になるので討伐されてしまう。
例えば爛れ広げさんはどうしようとしたかと言うと、人を元に自分の新しい体を作ってそっちに意識を移すことで生き続けようとしたんですね。
うん、害だね!

「破魔の気」
妖に特効の生体エネルギー。人なら誰しも持ってる。死ぬと身体に妖の養分になる残り滓を残して消える。
これが強いと死んでから幽霊になったりする。
人が触れてもほんのり暖かい程度だけど妖が触れると焼けた鉄の如く熱い。だから妖が触れると地獄を思い出して凄く辛いし、何より大ダメージ。
ちなみに妖は普通に熱を感じる能力を自分で消すので普通の炎ではダメージを受けない。
破魔の気だけが地獄を思いださせることができる。

「討妖の御三家」
結構昔からいる妖を殺す人達。ヨウカイスレイヤー=サン。
剣士と巫女と鍛冶士を合わせてそう呼ぶ。
人員はあちこちで天狗の如く拉致……もとい事務所まで連れて行って勧誘したりして補充する。
日本各地に割といる。ひっそりと。
破魔の気が常人より多くて常人より扱える人たち。スポンサーは国。
実は実働開始後の数年も修行の一部で九尾とかの一部の強い妖のことを教えてもらってない状態で頑張ることになってる。
バカか?

「討妖の剣士」
実は必ず剣士という訳では無い。
大元の血筋の影響で身体能力が異常に高い。更に破魔の気も強いのでそれと相性の良い剣術とか武術を学んだりする。
今作の剣士さまは治めていないが界隈だと、身神流星辰剣術とか杜主流鞭術が有名。

「討妖の巫師」
実は必ず女性という訳では無い。
破魔の気の強さより扱いの上手さと妖にとどめをさせる特殊な素質、浄化性が求められる。
身体能力は求められないが先述した特殊な素質は血で受け継がれるので特に血筋を求められる。
使う巫術は相手の逃亡を防ぐ結界を始めとして、妖相手に絶大な効果を発揮するけど高速戦闘に使うには難しく、レベルが高い戦いでは剣士の武器に浄化性を与える係になりがち。
頭の中で祝詞を紡いだりとか座標を指定したりとかが必要なので。
……やっぱり身体能力が有ったほうが良いのでは?

「討妖の鍛冶士」
槌を通して破魔の気を鉄に練り込むという高等とも下等とも言えない、ただただ特殊なセンスが必要な技術が求められる。
作ったものをテストする為にみんな剣術を収めている。
剣士に比べて破魔の気を戦闘に使う技術は治めていないので総合力では劣るが近接戦ではそこまで引けを取らないらしい。
しかし何故か戦いにはあんまり出ない。まあ最終防衛ラインなんでしょ。

「剣士さまと巫女さんと先輩と後輩の御三家」
由緒正しい、閉じた家計。親族同士で契りを結ぶけど閉じ過ぎて血が濃くなり過ぎないように見込みがある人を見つけて外の血を入れたりしてる。
この四人の母親は外の人。漏れなく故人。


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