艦隊これくしょん ー誰ガ為ノ戦争カー (霧雨鴉)
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第一章 平和で日常的な鎮守府
プロローグ


8年前、ある海難事故から始まった

 

太平洋を渡っている豪華客船が突如として襲われたのだ

最初はテロリストや海賊と思われた

だが、違っていた

人の形をしていたその『何か』によって船は襲われた

 

 

 

そして、それをきっかけに世界各国で商業船や旅客機が次々に事故にあった

ただ、それは整備の不調とかではない。

その『何か』襲われたのだ

 

 

 

世界各国が集まり緊急会議が行われ各国はどこの国の兵器かと疑った

だが、その『何か』は海の上を通るものを全て見境なく攻撃したのだ

 

 

そして、世界各国はその『何か』の事も全く分からなかったがこれ以上の被害を出すのは不味いと思い

各国は協力し反撃を開始した

 

 

 

空母

戦闘機

戦艦

海上で戦える物全てを尽くし戦った

だが、その『何か』には傷一つ付けられなかった。

そして、世界各国ご自慢の兵器は意図も容易く、その『何か』に破壊されたのだった………

 

 

 

世界各国で結成された研究チームは、何とかしてその『何か』の正体を探った

だが、分かった事と言えば

 

 

その『何か』は海溝の深い海より急浮上し、軍艦並みの装甲と火力を持ち合わせていると言うこと。

 

 

そして、研究チームはその『何か』を深海に棲む軍艦達をこう発表した

 

 

 

 

 

 

 

 

『深海棲艦』

 

 

 

 

と呼んだ

そして、人類はそれに対抗する兵器を作り出すことにした

戦艦や戦闘機より、俊敏に、かつ人間と変わらない動きをし、敵を殲滅する兵器

 

各国は総力を上げて、その開発に手をかけた。

 

 

だが、その間にも深海棲艦は、進行を続け、次々と島国を占拠していった

 

 

 

各国は、そろそろ手を打たないと駄目だと感じ最終手段として核兵器を持ち出そうとしたとき

研究チームは、ある『兵器』の開発に成功した

その名は

 

 

 

 

『艦娘』

 

 

 

唯一、深海棲艦を倒せる兵器

人間とそっくりな俊敏性

動き

思考力

そして見た目である

 

 

何もしてない状態なら、普通の人間とそう変わらないであろう。

だが、彼女達には人間が使う銃、ナイフ等の類いは一切利かなかった

 

 

そして、初運用の時に彼女達の真価を見せた

あの忌々しく海を支配していた深海棲艦を意図も容易く倒したのである

各国は喜びを隠せなかった

やっとあの忌々しい深海棲艦達に報いることが出来たのだ。

そして今では何人もの艦娘がこの世界各国に存在している

 

 

だが、戦況は芳しく無かった……

艦娘が現れ、力を貸してはくれるが深海棲艦側も新たな力を身に付け艦娘に立ちふさがる

 

そして、始まったのがこの大戦争である

 

 

果たしてこの戦争の勝者はいかに……

そして深海棲艦と艦娘どちらが勝つのかそれとも……

 

「と言う感じの物語だよ!!!」

 



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日常

「………ねぇ?それ私に向かって言ってるわけ?」

 

 

「以外無いでしょ?」

 

 

「…………あんた、そろそろ大本営の明石(あかし)さんに脳ミソ直してもらったら?」

 

 

「え?酷くない?」

 

 

書類作業をしながら二人は休憩がてらのんびりと会話をしていた

 

 

ここは、4ヶ月前に新たに提督が着任した鎮守府の一室

上の看板には、提督室と書かれ銀髪の女の子と20代後半の男が、机の上でのんびりとくつろいでいる

 

 

時期は4月の中旬、外で綺麗に桜が咲き乱れぽかぽか陽気である

 

 

「いやさ、叢雲(むらくも)先生?そっちがこの戦争の事を聞きたいって言ったんだよね?

違ったっけ?」

 

 

叢雲と呼ばれた少女は背丈は中学生位、長い銀髪の髪を腰まで伸ばす可愛らしい女の子

 

 

「そんなこと言ったかしら?私は、暇だから何か話しなさい頭お花畑司令官さんって言ったのよ?」

 

 

「待て待て、お前それを上司に言うセリフか!?」

 

 

「酸素魚雷当てるわよ?」

 

 

「スイマセンデシタ」

 

 

この中学生位の女の子に全く頭が上がらない提督と呼ばれた男

容姿は平凡髪は黒く短めでそこそこ整った顔をしている名を

 

「それとも、佐渡満(さわたりみつる)司令官様とでも呼べば良いのかしら」

 

 

叢雲がそう言うと佐渡は「はぁ」とため息を付く

そもそも何故にそんな女の子がこんな鎮守府で書類整理をしているかと言うと

 

 

「お前なぁ……普通『艦娘』は提督の事を本名で呼ばないぞ?」

 

 

そう、彼女は艦娘なのだ。

 

 

艦娘  唯一深海棲艦と戦える存在

彼女達の出生は不明正直分からないことだらけだ。

調べようにも艦娘の事は重要機密に指定されており調べようとすれば憲兵に捕まるほどである

 

故に誰も調べない

 

 

「あら?じゃあ普通に能無しクソ司令官が良いのかしら?」

 

 

「そうそう普通に能無し……ってだから能無しクソは余計だっての!!!」

 

 

二人が会話をしていると提督室の部屋が扉が開き、少女が入ってくる

 

 

「提督失礼致します!

鎮守府近辺の哨戒完了致しました!」

 

 

入ると同時に佐渡に見事なまでの敬礼をするこの少女もまた艦娘である

容姿は中性的な顔立ちで可愛らしくまた左目が義眼なのだがそれでも綺麗な黄銅色をしている

 

 

「古鷹(ふるたか)ぁぁぁー!!!また叢雲が苛めるんだよぉ!!」

 

 

そう言うと佐渡は敬礼をしている女の子に抱きつこうと席を立とうとするが

 

 

「座りなさい!!」

 

 

叢雲が机の近くにあった薙刀見たいな物を降るい佐渡の背中を叩く

 

 

「ぐっはぁ!!」

 

 

背中を叩かれると佐渡は机に倒れ机の上の書類が宙を舞う

 

 

「え、えっとぉ……提督大丈夫ですか?」

 

 

古鷹は敬礼を解き佐渡の倒れた机の側に行くすると

 

 

「おぉ!!古鷹ぁ!!君はやっぱり天使だよぉ!!!」

 

 

佐渡は勢いおく立ち上がり側に来た古鷹に抱き付く

 

 

 

「て、提督!?だ、駄目ですよ!!先程海に出ていましたから磯臭いですよぉ!!」

 

 

 

抱き付かれ流石に驚いた古鷹は佐渡の抱擁から離れようとする

 

 

 

「そんなこと無いぞぉ!!古鷹は良い香りがするぞぉ!!」

 

 

「う、うぅ~……」

 

 

 

佐渡が古鷹に抱き付いていると古鷹は佐渡の胸に顔を埋めながら耳まで真っ赤にしておりそれを見ていた叢雲が机の中から何かを取り出し静かに佐渡の背後に近付く

 

 

「古鷹さんお帰りなさい

お風呂の準備は出来てるわよ

とりあえずそいつに酸素魚雷撃つからちょっと離れて貰って良いかしら?」

 

 

満面の笑みを浮かべながら右手の艤装にある魚雷を佐渡の背中にグリグリと押し当てる

 

 

「……あ、あのぉ?叢雲様?これは一体…?」

 

 

全身から冷や汗をかきながら佐渡は頭だけ叢雲の方を向く

 



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日常 二

「あら?分からないの?こ れ が?」

 

 

叢雲は酸素魚雷を佐渡の背中にグリグリと押し当てながら満面の笑みを浮かべている

 

 

「ま、まて叢雲

話せばーー」

 

 

「話せば分かるとか言わないでよねぇ!!」

 

 

瞬間叢雲は佐渡の両足を蹴り体制を崩す

 

「いってぇ!」

 

 

佐渡は余りの痛さに抱き付いてる古鷹を離してしまう

そして叢雲は佐渡の襟を掴むとそのまま床に叩きつけその上に馬乗りになると魚雷を顔面に突きつける

 

そして得意げな顔をしながら佐渡を見下ろす

 

 

「どう?前より様になってるでしょ?」

 

 

 

一瞬唖然とする佐渡だったがすぐに大声で笑う

 

 

「あっはっはっは!!流石だな!叢雲もうそれを覚えたのか?」

 

 

「当然よ?私を誰だと思ってるわけ?」

 

 

「すまんすまん、まだお前には無理だと思ったんだけどなぁ」

 

 

佐渡は身体を起こそうとすると叢雲も退き酸素魚雷を仕舞うために席に戻る

 

 

「いやぁ相変わらず上達が早いな

初期艦様?」

 

 

「と言うか普通艦娘に近接戦闘なんて教える?」

 

 

「何となくだ何となく

それに必要になるかもだぞぉ?」

 

 

叢雲と佐渡が笑いながら話しているのを見て古鷹は小さく「もぉ」と言い微笑むと思い出したかの様に佐渡に話しかける

 

 

「それよりも提督

そろそろ報告をしたいのですが……」

 

 

「あぁ!!すまんすまん

では頼む古鷹」

 

 

「はい!」

 

古鷹と佐渡は散らかった物を直すと近くのソファに移ろうとする

模擬艤装を机の中にしまった叢雲が戸棚からお茶菓子とお茶っ葉を取り出す 

 

 

「お茶入れるわね」

 

 

「あぁ、頼む

では古鷹聞こうか?」

 

 

「はい!!」

 

 

叢雲がお茶を入れている間古鷹の任務報告を佐渡へ話していく

 

 

「ーー以上が本日の報告になります」

 

 

「分かったありがとう」

 

 

佐渡はその報告を聞くと「ふぅ…」とため息を付きながら天井を見上げる

 

 

「………何も無しかぁ」

 

 

「ご、ごめんなさい!!何のお役にも立てなくて……」

 

 

「い、いやぁ!古鷹は悪くないよ!!

でも近海に深海棲艦の影すら無しか……」

 

 

実はこの小笠原鎮守府は三週間前に深海棲艦から大規模な攻撃を受けていた

大規模と言っても鎮守府を壊滅させ陸地への進行を考えた物ではない

 

 

明らかに鎮守府のみを狙った攻撃だ

 

 

幸いその時に叢雲 古鷹 佐渡は大本営に全員呼び出されており三人は無傷

だが、鎮守府はほぼ壊滅状態だった

 

「まぁあの攻撃でこの鎮守府には誰も居ないって向こうも気付いたんでしょ?良いことじゃない?はい、お茶」

 

 

「いやそうかも知れないけどさ…

ありがとさん」

 

 

佐渡は叢雲から貰ったお茶をすすりながら考えていた

 

 

(ここら近辺には、深海棲艦が居ないと思ってたのになぁ

 

こんな『辺境地』になんてさ)

 

 

お茶を飲みながら、佐渡は二人をみる

楽しく話ながら叢雲と古鷹はお茶菓子を頬張りながら談笑している姿を見ると微笑む

 

 

(でも、こいつらが笑顔ならいっか)

 

 

と考えながらボーっとしていると扉からノックが聞こえる

 

 

『佐渡提督殿 憲兵です

入ってもよろしいでしょうか?』

 

 

と話し声が聞こえた瞬間佐渡はお茶を吹き出す

 

 

 

 



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日常 三

 

 

「て、提督!?だ、大丈夫ですか?」

 

 

(え?え?何で憲兵??俺、何かしたっ………え?古鷹に抱き付いたの見られてた???嘘やろ?)

 

 

 

古鷹の心配を余所に佐渡は、滝のように汗をかきながら、思考を巡らせる。

その姿を見た叢雲がめんどくさそうため息を付き憲兵に話しかける

 

 

「入っても大丈夫よ」

 

 

「ちょ!!叢雲さんんん!?」

 

 

『では、失礼致します』

 

 

叢雲の合図を聞いた憲兵は、提督室の扉を開けソファーに寛ぐ佐渡に敬礼をする

 

 

「提督殿おはな」

 

 

「すいませんでしたぁぁぁぁ!!!!」

 

 

憲兵が言い終わる前に、佐渡はそれよりも早く立ち上がり憲兵にスライディング土下座をする

 

 

「……えっと?佐渡提督殿?」

 

 

「違うんです!!俺はやましい気持ち何て全く無いんですぅ!!!ただ、古鷹が可愛くて天使過ぎてやってしまったんです!!!許してくださいぃ!!」

 

 

佐渡は頭を床に擦りながら全力で土下座をする

それを聞いていた古鷹は、頬を赤らめながらお茶すすっている

 

 

「………何をしたかは後でじっくりとお話を聞かせて頂くとして、今は別の話しがございますので、よろしいですかね?」

 

 

「えっ?」

 

 

佐渡は予想外の憲兵の反応に頭を上げる

額は擦ったときに、どうやら力を込めすぎたらしく、デコに傷が出来てしまっている

 

 

「ち、違うんですか?古鷹に抱き付いた話ではないんですか?俺を牢屋に入れに来たんじゃないんですか?」

 

 

「そもそも、それは何の話ですか?毎回ですが、私を何だと思っているのですか?」

 

 

 

「艦娘へのセクハラしたら、絶対許さないどんなときでもの人では?」

 

 

「それは何ですか?私が貴方の全てを24時間監視してるとでも?」

 

 

「違うんですか!?」

 

 

「貴方ねぇ……」

 

 

憲兵は、はぁ、と溜め息を付くと佐渡に手を差し出す

 

 

「違います、大本営からの伝言です」

 

 

「あぁ、あのクソ野郎共の巣窟からですか」

 

 

憲兵の手を取り、佐渡は立ち上がり、汚れを落とし、ソファーに向かう

 

 

「あ、提督、額怪我してますね、少し待ってください」

 

 

「ありがと、古鷹」

 

 

古鷹は、救急箱を戸棚から取り出しに行くために立ち上がり、叢雲は憲兵の為にお茶を入れに行く

 

 

佐渡が座ると憲兵も続けて佐渡の正面に座ると、ネクタイを緩める

 

 

「どうぞ」

 

 

「おぉ、これはこれは叢雲殿、お構い無く、すぐに終わるお話ですから……」

 

 

叢雲が用意してくれたお茶をすすりながら、憲兵はふぅと一息付く

 

 

「んで?奴等は何て?」

 

 

「……申し上げにくいのですが、物資などの支援は出来ないと」

 

「やっぱりかぁ……

まぁ、当てにしては居ないけどね」

 

 

佐渡は、お茶をすすりながら、立ち上がり提督室の窓際へと向かい歩いていく

 

 

「まぁ、そりゃぁこんな辺境地じゃねぇ…」

 

 

「提督!傷、絆創膏貼りますよ!」

 

 

「お、すまんな、古鷹」

 

 

古鷹が、持ってきてくれた絆創膏を付けて貰い、佐渡は窓を開ける

窓からは心地良い、潮風が提督室に入り、佐渡はそれを堪能する

 

 

「申し訳ありません……

こちらからも、お願いしたのですが……」

 

 

「仕方ないって、憲兵さん、言って頂いた事でも嬉しい限りです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そりゃ、深海棲艦に『落とされた』島に何て物資何か送れませんって」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは、小笠原諸島の一つ

 

 

 

 

6年前、深海棲艦に敗北し、鎮守府共に、壊滅した街

 

 

 

崩壊した建物が建ち並ぶ、言わばゴーストタウン

 

 

小笠原鎮守府、通称

 

 

 

 

敗者の鎮守府



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敗者の鎮守府

「にしてもどうすっかなぁ~?」

 

 

憲兵はあのあと直ぐに迎えを呼び帰ってもらい佐渡は鎮守府の窓外で夕暮れをのんびりと眺めていた

 

 

敗者の鎮守府

 

 

使えない又は罪を犯した艦娘、海軍に反抗しクビにしたい目障りな提督などが送られる言わば島流しの行き着く底辺

 

 

 

 

通常艦娘がここに来る事に関しては、ここに『辿り着けさえしない』が叢雲と古鷹は違う

佐渡達は、最初からここに配属されているため二人は無事にたどり着いている

何故『辿り着けさえしない』と言うと、日本列島に行き帰りする際に必ずと言って深海棲艦の艦隊と交戦するからである

ほとんどの艦娘はここに送られるとき単艦で行かされるらしい

実際、ここに着任するときは横須賀の艦から力を借りて何とか来れたような物だ

 

 

 

幸いここには深海棲艦は住み着いておらず落とされた後にすぐに別の鎮守府がここを奪い返したのだ。

 

 

だが、最初は酷かった。

 

 

廊下のそこら辺に散らばる何か白骨や血の跡

入渠施設は酷すぎた

壁に穴が空いてあり艦娘が入る浴槽には幾つもの、骨

浴槽の中に穴があり完全に使い物にならなかった

崩壊した工癖

空爆を受け穴だらけの屋根

妙だったのはお風呂だけは綺麗にされていた

 

 

そもそも、ここには前任者や艦娘が居たのかと言うほどに酷い有り様だった

 

 

 

見たときここまでなのかと思うくらいに酷かった

だが、叢雲と古鷹のある活躍によって元帥からの報酬と明石さんの計らいで今はある程度直してもらい

艦隊運営が出来ている

 

 

 

 

幸いここはしばらく放置されてたらしく資材が十分にあり工厰は動かすことは出来る……

 

 

足りないのだ……あるものが徹底的に

 

 

「はぁ……あと一人は欲しいよな……

誰か……」

 

 

 

そう戦力含め諸々だ

 

 

家事は三人で交代でやるか、一緒にやっている

生活する分には構わないのだが

 

 

「ここは最前線だもんなぁ……

居ないとは言えど、また襲われたらひとたまりもないな…」

 

 

哨戒任務は二人に交代で行ってもらっているため問題ない

問題は戦闘だ、流石に二人だけなのは不味い

二人には哨戒だけで一切の戦闘をするなと命じてあり、万が一の時は鎮守府まで戻ってくるようにと伝えては居るが………

やはり、恐い

 

 

「また俺も哨戒に加わるか…?

そうすれば、戦闘になったとしてもあいつらが……」

 

 

「「駄目!!!!(です)」」

 

 

「うわっ!!ビックリしたぁ……」

 

 

佐渡は独り言を呟いていただけなのに隣から二人の大声で否定される

 

 

当然、声の主は古鷹と叢雲だ

 

 

「あんた!またろくでもない事考えてたでしょ!?私達だけで充分よ!!

あんな奴等、まとめて沈めてやるわよ!!」

 

 

「そ、そうですよ提督!深海棲艦なんて私達だけで倒せますよ!!

提督が出る必要何てないんですからね!!」

 

 

二人に気迫されたが佐渡は微笑むと二人の頭を撫でるご機嫌を取る

 

 

「ありがとな、二人とも……

頼もしいな、やっぱり

あ、そうだ、晩御飯何食べたい?」

 

 

「そうですね……私は提督の手料理なら何でも!!」

 

 

「同じくよ、あんたの料理、悔しいけど美味しいからね」

 

 

「オッケーそんじゃ考えとくよ。

二人ともそろそろお風呂入ってきなその間に作っておくよ」

 

 

「分かりました!」

 

 

「分かったわ」

 

 

二人は返事をして仲良くお風呂に向かう佐渡は窓を締め二人の後を追うように提督室を出る

 

 

(こうして、二人を見ているとただの女の子に見えて仕方ない

まぁ、最近近海には深海棲艦は居ないみたいだし良いかな……)

 

 

だが、そんな期待は簡単に裏切られる

 

 

 

ウウゥゥゥゥ!!!

 

 

 

けたたましい警報が鎮守府内に鳴り響く

 

 

「っ!叢雲!古鷹!!」

 

 

佐渡は前を歩いていた二人を呼び止める

二人は驚いては居るが分かりきったように頷く

 

 

「近海に深海棲艦だ!!出撃してくれ!!」

 

 

「「了解!!」」

 

 



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鎮守府近海防衛戦

二人は海に面したドッグから、自らの艤装を取り出し装着する

 

 

艤装(ぎそう)とは、艦娘が唯一装備することが出来る、対深海棲艦用の兵器である

その形は様々で、その艦娘にしか使えずそれぞれの使い方がある

人間が持つことが出来ないのは、この艤装はかなりの重量で一つ艤装を持ち上げようとすると20キロ以上の力が必要になる

 

 

 

叢雲は、腰周りに大きな鉄の塊と薙刀みたいのをドッグの艤装置き場から取り出す

鉄塊からは二本の鉄の管が伸びており、その先に主砲が両脇に来るように操作する

先程佐渡の背中に押し当てた魚雷を左手に付けると、手を握りしめ感覚を確かめる

そして、薙刀みたいのを右手に構え準備を整える

 

 

古鷹も同じように、ドッグから自らの艤装を取り出すが、こちらは全く違う

 

 

 

古鷹の艤装は、右腕全体に付ける物で、その艤装には叢雲とは違い多くの砲門が付いており、正に右腕だけで戦闘をするような物だ

 

 

 

古鷹は、艤装を右腕に通した瞬間、艤装がそれに反応するように古鷹の右腕にガッシリとくっ付く

そして、その右腕の艤装から二つの砲門が、左肩に回り正面を向く

最後に、二人は海上に浮くための脚の艤装を付け、海の上へと歩いていく

 

 

「あれ?叢雲?あれって艤装じゃなかったの?」

 

 

「あんたねぇ……流石に司令官を艤装持って殴らないわよ

模擬艤装よ」

 

 

「それもそうか、っと叢雲こっちこいこれ付けろ」

 

 

佐渡は、海の上に向かう叢雲の左目にあるものを付ける

 

 

それはまるでどこぞのドラ◯ンボールのスカウターの様な見た目をしたものである

 

 

「あんたねぇ……

大丈夫だって、言ったでしょ?」

 

 

叢雲は少し呆れながらも、そのスカウターの電源を入れる

スカウターは、電源が入ると何の映像も流れるわけは無いが、少し視界が見辛くはなった

 

 

「なら、俺もいくぞ?」

 

 

「………分かったわよ」

 

 

叢雲は、渋々理解し海上に向かって歩いていく

先に古鷹が、ドックの海上に立っており、叢雲を来るのを待ちながら、自分の艤装のチェックなのか右手を少し上下に降っていた

 

 

「何で、こんなものを……」

 

 

「提督も心配性なんですよ、それに少し頑固ですからね」

 

 

古鷹は、微笑みながら叢雲に言うとまるで仕方無いかと言いたげな顔をしながら、頭をポリポリとかきながらハッチが開くのを待つ

 

 

ハッチが完全に開くと二人は出撃体制をとる為少し中腰になる

 

 

「行ってこい!!!そして!!必ず帰ってこい!!!」

 

 

「はい!!提督!!」

 

 

「分かってるわよ!!!司令官!!」

 

 

 

そして、二人は各々出撃の合図であるかの様に叫ぶ

 

 

「重巡古鷹!!出撃します!!」

 

 

「特型駆逐艦叢雲!!!出撃するわ!!!」

 

 

そう叫ぶと、二人は海上を走行し、ドッグの外へと出撃していった

 

 

 

「……頼む、神様居るなら二人を無事に返してくれ……」

 

 

二人が居なくなったドッグで、小さく佐渡は呟くと、ドッグから離れ提督室へと走る



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鎮守府近海防衛戦 二

 

二人は、巡航を続けながら辺りの近海を哨戒していく

 

 

 

「…古鷹さん、水上偵察機の方は?」

 

 

「……飛ばしては居ますが居ませんね」

 

 

だが、警戒は解かない。

前の出撃で警戒を怠り被弾したことがあるのだ。

しかも、真後ろから唐突に

 

 

『あー、あー、二人とも聞こえる?』

 

 

叢雲や古鷹には、インカムを耳に装着しており、それから佐渡の声が聞こえる

 

 

「ええ、聞こえるわ」

 

 

「大丈夫ですよ、提督聞こえてます」

 

 

二人は、佐渡の声を聞くとどこか安心した気持ちになり、警戒を少し解いてしまう

 

 

『古鷹、水上偵察機はどうだ?引っ掛かったか?』

 

 

「いえ……今のところは」

 

 

『叢雲、今どこらへんを巡航してるんだ?』

 

 

「そうね……」

 

 

叢雲は、辺りを見渡し、それらしいものを探すが生憎、海上故に全く分からない

鎮守府は見えるからそこまで遠くでは無いということだけは辛うじて分かる

 

 

「鎮守府がまだ見えるからそんな遠くでもないわね。

大体、島の入り口かしらね?」

 

 

『そうか……』

 

 

佐渡は、提督室で小笠原鎮守府近海の海図を広げながら、叢雲達の現在地を割り出す

 

 

大体入り口……となると、ここら辺か

 

 

大体の位置が分かった佐渡は、二人に指示を出す

 

 

『叢雲、古鷹もう少し鎮守府から離れて偵察を行ってくれ。さっきの警報からはまだ時間が経ってないから、恐らく奴等の居場所は、そこから約4キロ圏内

こちら側に向かっているなら恐らく3キロ圏内には居る

もう少し走ればそいつと御対面だな

戦闘準備をしておけ』

 

 

佐渡の正確な指示を聞いていた二人は、顔を見合せ相変わらずだなと言う感じになり、指示通りに進んでいく

 

 

「ねぇ?司令官」

 

 

『ん?何だ叢雲』

 

 

「あんた……『あんなこと』しなかったらもっと良い所の司令官になってたんじゃない?」

 

 

叢雲は、半笑いになりながら佐渡を茶化す、それを聞いた古鷹もフフフと微笑みながら、佐渡と話す

 

 

「そうですね、私何かを助けなければ……」

 

 

そう、古鷹が言いかけた瞬間

 

 

『ふざけるな!!!!』

 

 

インカムから割れんばかりの声量の佐渡の怒号が聞こえる

二人はあまりの大きさにインカムから耳を外してしまう

 

 

『あんな奴等みたいになるんだったら!!俺は提督なんてやってたまるか!!!

艦娘に責任を押し付け!!!自分の昇進の為に使ってるクズ共と一緒になってたまるか!!!

良いか!!俺はお前達と歩んで行きたいんだ!!!

それを邪魔するなら誰だろうが許さねぇ!!!』

 

 

いつも温厚な佐渡が、声を荒げて叫んでいると、インカムから二人の笑い声か聞こえてくる

 

 

「アハハハ!冗談よ!

悪かったわね司令官」

 

 

「フフフ、ごめんなさい、提督

悪ふざけが過ぎましたね」

 

 

二人が笑っているのを聞いた佐渡は、へなへなと力が抜けて椅子に腰かける

 

 

『……叢雲、今日ピーマンの肉詰めな

古鷹は、納豆オムレツな』

 

 



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鎮守府近海防衛戦 三

 

その声を聞いた二人は飛び上がる様な反応を見せる

 

 

「ちょ、ちょっと司令官!!

嘘だってば!!お願いだからピーマンの肉詰めは辞めてよ!!」

 

 

「そうですよ提督!!

そ、そんな怒らないでください!!」

 

 

二人がおろおろしながら、佐渡に謝罪をしていると佐渡は微笑みながら一言言う

 

 

『嫌なら、帰ってきて、きちんと俺に直接謝れよ?

早くしないと、作り始めちゃうぞ?』

 

 

佐渡は、海図を見ながら二人に話しかける

違和感を感じながら

 

 

「…仕方無いわね!!

やってやろうじゃないの!!」

 

 

「えぇ!早く終わらせて帰りましょう!!」

 

 

二人は、速度を上げながら、走らせて行く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、佐渡は海図とこの前の襲撃と今回の襲撃を考えていた

 

 

「……何故、こんな短期間にこんなに来るんだ? 」

 

 

インカムを外し、叢雲が付けているスカウターを右目に付け、電源を入れると、叢雲が見ている景色がスカウターから見えてくる

 

 

「よし、正常だな」

 

 

佐渡は、スカウターの確認が済むと、海図を再び見直し、今回とこの前の比較をする

 

 

「今回、現れたのはここ……

前回、襲撃がされたのはわかる……

だが、なぁ……」

 

 

海図と同時に島の地図を取り出し、確認をしながら、警報装置の履歴を見る

 

 

「前回の襲撃は、警報がなってなかった……

つまり、奴等はこの一番遠い海岸から陸路を使ったってことか?

嫌でも、攻撃を受けたのは海に面した側だった……

そもそも、陸路を奴等は長時間移動出来る…?

いやそれよりも、警報の事を知っていた……

陸路なら警報がならないと言うことも……」

 

 

佐渡は、そこまで考えるとコーヒーを入れ、飲みながら、廊下に出て島の陸側を見る

 

 

島は廃墟となっており、確かに隠れて動くには最適だ

 

 

「……なら、今回の襲撃は何が目的なんだ…」

 

 

佐渡が考えていると、携帯の電話が不意になりだす

着信主は、大淀

 

 

「はいはい、大淀さん、こちらメガネセンター」

 

 

 

佐渡は携帯を取り電話に出ると、大淀さんは慌てた様子で声を荒げる

 

 

 

 

 

 

『佐渡さん!!そちらに《流された》艦娘は無事に着きましたか!?』

 

 

 

大淀からの会話に佐渡は、思考を停止する

 

 

え?大淀さん何て言った?

流された艦娘?

 

…流された艦娘……深海棲艦襲撃……

 

 

 

佐渡は、大声を出しながら大淀の電話に出る

 

 

「大淀さん!!!その艦娘は!!まさかっ!!」

 

 

『そのまさかです!!!』

 

 

「クソッ!!!」

 

 

佐渡は、携帯を握りしめ、提督室に走って戻り、インカムを耳に付ける

スカウターの映像にはただの海原しか見えない

 

 

「緊急伝達!!!!

その深海棲艦は、艦娘を襲っている可能性有り!!!

急いでその子を保護しろ!!!」

 

 



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鎮守府近海防衛戦 四

 

佐渡から、伝達を受けた二人は先程より速度を上げて、深海棲艦改め、島流しにあった艦娘を探す

 

 

「大本営!!本当に私達(艦娘)をただの兵器と思ってるみたいね!!」

 

 

「叢雲!!急ぎましょう!!その子が危ないです!!」

 

 

二人は焦りながらも、速度を上げ海を航行する

すると、古鷹が何かを見付けた様に叫ぶ

 

 

「敵影確認!!、もうすぐです!!」

 

 

すると、海原の向こうから砲撃音が聞こえてくる

 

 

「お願い……間に合って!!」

 

 

叢雲は、更に速度を上げ、その砲撃音に向かっていく

すると、確かに敵は確認できた

 

 

だが、その敵は一人の少女を集中的に狙っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘っ……魚雷発射管が……」

 

 

少女の目の前には、戦艦ル級一体重巡リ級二体、軽巡ヘ級二体、駆逐ハ級二体が少女に向けて砲門を向けていた

 

 

「私もここまでね……

ごめんなさい…」

 

 

少女は目の前の死を受け入れていた、自慢の魚雷が使い物にならなくなっては私は何にもないのだから

 

 

「最後に北上さんに……

会いたかったなぁ……」

 

 

だが、自らの行いに悔いはない、あんなクソ男にヤられる位なら、自らの死を選ぶ

それが、出来ないからここ(小笠原鎮守府)に飛ばされた

力が抜け、少女は海面に倒れ込む

 

 

「さようなら……

北上さん…」

 

 

少女は涙を流し、その時を待つ

そして、深海棲艦達は一斉砲撃をする瞬間

 

 

 

 

 

 

 

駆逐ハ級二体と軽巡ヘ級が一体突如としてきた雷撃によって一撃で激沈したのだった

 

 

 

「……え?」

 

 

少女は横たわりながら、その光景に驚いていた

自らが戦っても全く歯が立たなかった相手を一撃で……

一体誰が……

 

 

「私の縄張りで何してやがるのよぉ!!!!」

 

 

その声を聞いた戦艦ル級達は一斉にその声に振り向く、少女も最後の力を振り絞り、その方を向くと凄い形相と剣幕でこちらに向かってくる、自分より一回り小さい女の子だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「軽巡1!駆逐撃破!!!後、四体!!」

 

 

叢雲は、自らより早いと確信していた酸素魚雷を撃っており、それを見事三体に直撃させ、撃破していた

 

 

「叢雲!!援護するよ!!」

 

 

古鷹も叢雲に追い付き、右腕を戦艦ル級に標準を合わせ

 

 

「よぉぉく狙って……撃てぇ!!!」

 

 

唐突に来た援軍に、深海棲艦達は驚き、一瞬動きが遅くなる。

その隙に、古鷹は重巡リ級目掛けて主砲を撃つ

撃たれた砲撃は、見事リ級を直撃、当たり所が悪かったのか、これも一撃で沈めてしまった

 

 

「ガァ!!!」

 

残された三体の深海棲艦は、援軍の二人に向けて航路を変更し、突っ込んでいく

 

 

少女は、それを見て安心からかそれとも、疲労と傷からかそこで意識が途絶えてしまった

 

 



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鎮守府近海防衛戦 伍

「古鷹!!あの三体は任せて!!彼女をお願い!!」

 

 

「了解って大丈夫なの!?」

 

 

「任せなさい!!

あんなの楽勝よ!!」

 

 

すると、叢雲は腰の二つの主砲を二体に向けて数発撃ち注意をそらす

その砲弾は三体に直撃。

だが、撃破とはいかず、軽い損傷だけだ

 

 

「こっちよ!!

ほら!!あんた達の仲間三体を沈めたのは私よ!!」

 

 

 

当てられた三体は、叢雲に振り向き、砲門を向け撃ってくる

叢雲を、それを軽々と交わし、古鷹に注意が行かないように別方向へと航行していく

 

 

一瞬、リ級が古鷹を捉えるが、叢雲は続けてリ級を撃ち、注意を向ける

その砲撃は、リ級を直撃させ先程より大きなダメージを与えた

 

 

「あんたらの相手は私よ!!!

ほらほら!!こっちに来なさい!!!」

 

 

「ガァ!!!」

 

 

先程の攻撃が、リ級の感に触れたのか古鷹を忘れ叢雲目掛けて突っ込んでいく

その隙に古鷹は、傷付いた少女へと向かう

 

 

「大丈夫ですか!?しっかりしてください!!」

 

 

古鷹が、呼び掛けると少女は力無くうっすらと眼を開け反応を示す

 

 

「良し!息はあるみたい!!捕まって!」

 

 

古鷹は、少女の腕を左肩に乗せ帰航しようとすると少女から小さく消え入りそうな声で

 

 

「ありがとう……」

 

 

と聞こえると、古鷹は微笑みながら、

 

「お礼は私じゃなくて、あの子に言ってあげて?」

 

 

古鷹は、今丁度三体を相手している叢雲の方を向く

 

 

「叢雲!!彼女は無事よ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方叢雲は、少しばかり手を妬いていた。

 

 

「この戦艦と軽巡、重巡めんどくさいわね……」

 

 

それもそのはず、そもそも駆逐艦の砲撃では二人を倒すのは到底難しい

上手く急所を狙いたいがひっきりなしに動き、しかも連携が上手い

叢雲が撃った砲撃を、ル級の盾で防ぎ、次にヘ級とリ級が砲撃をしてくる

 

 

「チッ!!またか!!」

 

 

雷撃を撃とうにも、下手に撃って外せば後ろの古鷹に当たる……

そうこう、考えてる間にも三体の攻撃は止まない

 

 

『叢雲!!聞こえるか!?』

 

 

突如として、聞こえた佐渡の声にびくつきながらも、叢雲は応答する

 

 

「何よ!!今戦闘中!!」

 

 

『分かってるよ!落ち着け叢雲、相手を良くみろ』

 

 

「はぁ!?こんなときに何言ってるのよ!?」

 

 

『良いから!!』

 

 

叢雲は、イラつきながらも三体の様子を見る、するとあることに気が付いた

 

 

「………ル級が撃ってこない?」

 

 

そう、ル級からは砲撃が飛んでこないのだ、たまに機銃を撃って来るぐらい

 

 

『そうだ、訳は分からんが、ル級は弾切れを起こしている状態だ。

それを利用するぞ、確か、アレを持たせていたよな?』

 

 

「……あれってどう使うのよ?」

 

 

佐渡は、叢雲に有るものを持たせていた。

通常ではあり得ない物を、背中の艤装に

 

 



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鎮守府近海防衛戦 六

『そいつはな………』

 

 

佐渡は、叢雲に簡単だけど、かなりの難題を出す

 

 

 

「はぁ!?あんた正気!?」

 

 

『だが、これなら確実に奴等を沈められるぞ?』

 

 

「私に出来るとでも?」

 

 

 

『大丈夫、お前なら出来る』

 

 

 

佐渡の出した作戦を聞いた叢雲は、一瞬悩むがため息を付き、ほっぺを叩いて気合いを入れる

 

 

「良いわ、乗ってあげる!あんたを信じるわ!!」

 

 

 

『安心しろ!!失敗しても別の方法を考えるさ!!』

 

 

 

そう言うと叢雲は、ル級達に向かい走り出す魚雷と主砲を何発も撃ちながら

 

 

「はぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

流石に驚いたのか、ル級達は一瞬怯むが、関係なく叢雲目掛けて撃ってくる

叢雲は、寸前の所で砲撃を避けながら、ル級達に近付く

 

 

こんな砲撃……あいつの撃ってくる銃よりは遅い!!

 

 

「きゃぁ!!」

 

 

だが、叢雲は油断をしてしまい、左の主砲に直撃してしまい、体勢を少し崩す

しかし、叢雲は、進むのを辞めない

 

 

私は……アイツを信じるわ!!!

 

 

そして、叢雲は、ル級の目の前に辿り着くと、背中の艤装から『なにか』をその場に落とし、主砲をヘ級へと軽く当て、その場を通り過ぎる

 

 

 

ル級は、直ぐ様、叢雲に反撃をするが、叢雲はひらりと躱し、向き直る。

 

 

そして、叢雲は、通り抜けた後損傷した艤装のせいで、少しふらつき、倒れ込む

 

 

「叢雲!!」

 

 

古鷹は、叫びながら少女と共に叢雲の応戦に向かうが間に合う訳がない

ル級達はその間にもゆっくりと標準合わせる

まるで、勝利を確信し、獲物をじっくりと確実に殺すように

 

 

 

だが、叢雲はニヤリと笑っていた

 

 

「あんた達が、どんな装甲が固くても、連携が上手くともね

 

その数の雷撃に耐えられるか見物ね」

 

 

 

ル級は、ここで気付いた、自らの両端からどこからか撃たれたか分からない雷撃が迫っていることを

 

 

だが、この程度ならそんな、ダメージにもならないとばかりに、ル級は、盾を水面に向けるが見えてしまった

 

 

海中に漂う、かなりの数の魚雷に 

起爆せず、まるでそこに漂うクラゲの様に

 

 

「!?」

 

 

「両端から来てるのはさっきあんたに撃った雷撃よ

何発か撃った雷撃のうち、二発だけを大外回りに貴方の所に撃ち込んでおいたのよ

それとその浮遊してる魚雷でしょ?

そいつはね、発射しないタイプの特殊魚雷よ、通常では使える奴が居ないから見ないのも無理はないわね

でもそれに気づかないとはね貴女たち愚かね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沈みなさい」

 

 

ル級達はその場を一目散に離れようとするが、当然間に合わず

 

 

 

直ぐに立ち上がった叢雲が、古鷹の方を振り替える瞬間、通常ではあり得ない程の巨大な水柱があがりル級達を三体をまとめて木っ端微塵に吹き飛ばす

そして、傷付いた艤装を見ながら、叢雲はのんびりと目の前の古鷹に近付いていく

 

 

「そう言えば、さっき私の名前を呼んでたわね?何か用?古鷹?」

 

 

古鷹はそんな叢雲の姿を見てあははと乾いた笑いをしながら、少女を肩で抱えながら叢雲に近付く

 

 

「流石は、最強の駆逐艦ですね……」

 

 

 

その後、気絶した少女改め、新しく来た鎮守府の仲間を二人で運ぶ

 

 

 

「司令官、任務完了よ、帰投するわ」

 

 

『あぁ、お疲れ様、無事に帰ってこい』

 

 

佐渡は、微笑みながら、スカウターとインカムを外し、椅子に倒れ込む

 

持っている携帯からは大淀さんから『提督!!』と声が聞こえる

 

 

「あぁ、大淀さんごめんごめん」

 

 

『そ、それで彼女は!?』

 

 

「大丈夫だよ、うちのエースが助けてくれたってさ」

 

 

佐渡は、そう言うと、電話を切り、のんびりとした様子でドッグへと向かう

 

 

 

「今晩は、ご馳走準備しておかねぇとなぁ…」

 

 



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食事は、皆で楽しくね?
鎮守府近海防衛戦 後日談


ここは入渠(にゅうきょ)施設又の名を艦娘専用お風呂

一つ一つお風呂の浴槽になっており直ぐに入れる様に個室見たいに一人ずつ入るのだ

 

 

そこには二人の少女が特殊な液体に浸かっていた

先程まで深海棲艦と戦っていた勇気ある兵器改めて女の子達

 

 

「はぁ~……久しぶりに入った気がするわぁ……」

 

 

そう液体に浸かりながらのんびりと寛いで居るのは、深海棲艦を一人で五体撃破した少女叢雲だ

 

 

「そうだよねぇ……最近戦闘なんてなかったもんね~……」

 

 

その隣で叢雲と一緒に浸かる女の子も先程深海棲艦を一体撃破した古鷹である

 

 

「あぁ~……癒されるわぁ……」

 

 

「そうだねぇ……」

 

 

二人は「ふぅ~…」と息を吐きゆっくりとしている

古鷹はふと入渠施設の奥を見る

そこには立ち入り禁止の暖簾(のれん)が掛けてあり妖精さんがひっきりなしに出入りしている

 

 

妖精、それは艦娘とある一定の人間のみが見える存在

彼等と会話は出来るが存在自体は謎に包まれている

唯一分かることと言えば甘いものが好き艤装を作り出し整備が出来る者そして艦娘の傷を治す事が出来ると言うことだけ

彼等の性別は分からず人の手のひらに収まる程の大きさでいつもその姿に似合わない程の仕事量をこなす

 

 

「あの子、大丈夫かな?」

 

 

古鷹達は先程助けた少女をその先に担ぎ込んでいた

その時妖精さん達に古鷹達も入るように促された為に入っていると言う状態である

 

 

「妖精さんは、明日の朝までかかるって言ってたからねぇ~……

ゆっくり待ってましょ?」

 

 

「そうだね……」

 

 

古鷹が心配そうに奥を見つめていると入渠施設の扉から声が聞こえる

 

 

『あー……二人とも大丈夫か?』

 

 

その声を聞いた瞬間二人はお風呂の中に全身を入れ湯船に隠す

すると叢雲が怒鳴り声で佐渡に言う

 

 

「あ、あんた!?ここどこだかわかってるの!?

変態!!覗き魔!!」

 

 

『待て待て!!!覗いてない!!叢雲の下着なんて……

いや何でも』

 

 

「今なんていった!!!変態司令官!!」

 

 

叢雲はその話を聞いた瞬間風呂から立ち上がり、佐渡が居る扉に歩いていこうとする

 

 

「む、叢雲!!待って待って!!

そのまま出たら見えちゃうから!!」

 

 

古鷹の言葉に叢雲は「あ…」と言う顔をした後真っ赤になり再び風呂に飛び込む

次は顔半分まで浸かり、ブクブクと泡を吹く

 

 

 

「そ、そんなことより!!提督何のご用ですか?

まさか本当に私達の身体と下着を……」

 

 

古鷹の質問に佐渡は焦りながら答える

 

 

 

 

『ち、違う!!断じて!!

大破していた彼女は、どうだ?』

 

 

佐渡の答えに古鷹はやっぱりかと言う顔をすると質問に答える

 

 

「大丈夫ですよ、身体の傷は明日には良くなるそうですご心配なさらずに」

 

 

古鷹の話を聞いた、佐渡は安心したようにはぁとため息を付く、

 

 

『分かった二人とも晩御飯作っておくから入渠が終わったら食堂に来なさい。

あと叢雲お前の艤装は工厰に修理出しといたから明日の朝には取りに行けよ? 

じゃ、また後でな』

 

 

佐渡は用件を言うと入渠施設を出て食堂へと向かうと入渠施設から叢雲の声が聞こえる

 

 

「分かったわよ……

変態司令官」

 

 



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鎮守府近海防衛戦 後日談二

佐渡は廊下を歩きとある場所に向かっていた

先程二人には食堂にと言っていたのに別の方向に向かっている

それは、工厰

 

 

 

工厰(こうしょう)基本的に艦娘の艤装の手入れや武器の製造を行う場所

その他にも 艤装の製造 解体等を行う言わば小さな工房である。

一昔前までは実はここで艦娘の製造が行われていたらしいが、今はもう出来なくなっている

理由と言うのも艦娘の製造には莫大な資材が必要なのと、『同じ種類の艦娘』を製造する提督が多く日本各地の妖精が嫌がったのである

 

 

 

佐渡はしばらく歩いていると一階にある左端の廊下の扉を開き外に出ると屋根だけがある渡り廊下を歩く

外はすっかり暗くなっており街灯が付いているのが見える

この鎮守府の工厰は外に別の建物として置いてある

ドッグからは少し遠いがそこは仕方ないと感じている

 

 

渡り廊下を歩き終えると目の前に工厰の扉が見え右へ引き扉を開く

 

 

 

「おっじゃましまーす!!

親方さーんいっまーすーかー!?」

 

 

佐渡は元気よくこの工厰の責任者親方妖精を呼ぶ

 

 

「おう、提督さんじゃねえか、どした?

何か用かい?」

 

 

佐渡が入った扉のすぐ横にドラム缶が置いてありそこには、まるで職人見たいな感じの風貌の小さな手のひらサイズの妖精が佐渡を見上げていた

 

 

親方妖精、この工厰の全責任者

佐渡がここに着任したときには、既にいた『前任者』の世話もしていた妖精

最初は提督を嫌っており 製造 整備を嫌がっていたが佐渡の懸命な説得とその行動に心を開いてくれた

 

 

工厰はそこそこに広い鎮守府の半分位の大きさがありそこには艦娘の武器を作るための特殊な機材が立ち並び、その奥には個別化した部屋三つがある

その上にはプレートが挟んであり、そこには

分解室

製造室

改装室

と書いてあり、妖精以外立ち入り禁止!と扉に書いてある

だが丁度製造室だけ使用中の看板が下がっており、その奥から鉄と鉄が当たる音が聞こえる

 

 

そして佐渡の目の前には先程の戦闘で損傷した艤装が置いてありそれを他の妖精さん達が必死に直してくれている

 

 

「ごめんなさいね、今回の出撃で艤装結構損傷させて仕事増やしてしまって……」

 

 

「良いってことよぉ!!これが俺達の仕事なんだからよぉ!!」

 

 

佐渡が申し訳なさそうに言うが、親方妖精は「ガハハ」と笑いながら答えてくれる

 

 

相変わらず頼もしいなと思う佐渡だったが、それだけを言いに来たわけではない

 

 

「艤装の修復かい?」

 

 

不意に親方妖精に心を読まれたのか?と佐渡は一瞬焦るがその通りであり話を続け修理をしている他の妖精達を見る

 

 

「えぇ、どれくらいかかりそうですか?」

 

 

親方妖精は、うーんと唸るが、ばつが悪そうに話し出す

 

 

「叢雲ちゃんの主砲は、特に問題ない

砲塔が、流石にやられているが発射菅事態に損傷は無かったからな

多分、今晩中には終わるだろう……

問題は……あの流されてきた新人の艤装だね

ありゃ、かなり時間かかるぞ?」

 

 

佐渡はやっぱりかぁと頭を掻きながら親方妖精に向き直る

 

 



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鎮守府近海防衛戦 後日談三

「あと、例のアレ、また作って頂けませんかね……?」

 

 

佐渡が、腰を低くしながら、親方妖精に先程の戦闘で叢雲が消費した魚雷の話を持ちかける

 

 

「お?また使ったんかいあれを?

提督も物好きだねぇ、あんな『失敗作』を

まぁ、別にあれに関しては予備があるし、何時でも用意できるぜ?」

 

 

 

「お、それは助かります!

あと、誘導性魚雷は……」

 

 

「大丈夫だぜ、あれも作りおきがあるからな

ここ最近暇だったからなぁ」

 

 

「流石親方!!」

 

 

 

 

失敗作、先程親方妖精が言った言葉に嘘は無い

通常、魚雷と言うものは、射出されれば真っ直ぐに飛んでいく物なのだから

だが、作る過程でどうやら親方達の設計ミスで作られたのが、あの特殊魚雷だ

 

 

どうやら、途中で構造を間違えたらしく、射出しても、真っ直ぐに飛ばず、そのままある程度の深さの水中に浮くようになってしまったらしい

しかも、誘爆がしやすく、火力も通常の酸素魚雷より高いらしく、普通は絶対に使用されない

一歩間違えれば、自爆の危険性が高い

危険な武器である

 

 

 

正式名  誘導性酸素四連性魚雷(ゆうどうせいよんれんせいぎょらい)

実はこれは、佐渡が親方妖精に特別に依頼している酸素魚雷

通常の魚雷とは違い、先頭に磁力を感知する特殊な機材が入っており、ある一つの物に向かっていく特殊魚雷

その分火力と速度は、通常の四連性魚雷より落ちており、運用するのは難しい

 

 

「にしても、良くこんな使い方を思い付くねぇ、提督さんは?

叢雲ちゃんが、可愛くないのかねぇ?」

 

 

親方妖精は、頭を掻きながら佐渡に向かい皮肉じみた口調で言う

言われた佐渡の方が頬を掻きながら、親方妖精に言う

 

 

「あはは……

そんなこと無いですよ…

叢雲だから、信じて持たせてるんですよ」

 

 

 

親方妖精は、ふーんと言うと、ドラム缶から飛び降り、妖精達に渇を入れる

 

 

「お前達!!艤装の修理と開発!!明日中には、仕上げるぞ!!」

 

 

工厰に親方妖精の声が響き渡り、それを聞いた妖精達は、各々持っていた工具を上に掲げながら、おぉー!と気合いを入れ直す

 

 

「と、気合いを入れてくれたのは良いのですが、そろそろ晩御飯にしませんか?」

 

 

佐渡の声に、働いていた妖精達の手が一瞬で止まる

だが、親方妖精は申し訳なさそうに頭を掻きながら佐渡に言う

 

 

「いやぁ、提督よそれは嬉しいんだが仕事が」

 

 

「飯だぁぁ!!!」

 

 

「提督飯だぁぁぁ!!ヤッホォ!!」

 

 

だが、それを他所に仕事をしていた妖精達は持っていた工具をそこらへんに投げ捨て、工厰の入り口にあった小さい車に走っていく

製造室の下にある、小さな扉からも妖精が出てきて、みんな一斉に妖精専用の車に向かっていく

 

 

「お、おい!お前ら!!」

 

 

「まぁまぁ、ほら親方も行きましょ?」

 

 

佐渡は、親方妖精に手を差し伸べると、親方妖精は溜め息を付きながら、佐渡の手に乗ると、手を肩の方に動かす

すると、親方妖精はジャンプして、肩に移る

 

 

「晩飯は、何なんだい?」

 

 

「んー、今日は中華系にしようかと思いましてね…」

 

 

工厰の扉を開けると妖精達が乗ってる車のエンジンがなり動き始める

 

 

「出発ー!!目的地、食堂!!」

 

 

妖精達が乗った車が、エンジン音と共に廊下を走り始める

それを見た、佐渡は微笑みながら、後を付いていく



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鎮守府近海防衛戦 後日談 四

どうも、作者です(バーン!!)
艦これをつい最近始めた初心者故か、色々と間違えますが暖かい目で見守ってください(土下座)

古鷹のクリスマスボイス……良い…(昇天)


佐渡が、食堂の引き戸を開け、入ると既に先を走っていた妖精達が、テーブルの上に乗ってご飯を待っていた

何台か、食堂の引き戸の隣に妖精専用の車が綺麗に駐車してある

 

 

 

食堂と言ってもそんなに広くなく、六人程がある座れる縦長テーブルと椅子が置いてあり、奥に飲食店みたいな台所が有り、そこには業務用みたいな大きい冷蔵庫が置かれてあるだけである

 

 

 

「ごっはん!ごっはん!!」

 

 

「提督ーはーやーくー!」

 

 

晩飯を待っている妖精達が、自分達用の小さいナイフとフォークを両手に持ち、佐渡へ作るのを催促してくる

 

 

「今作るから待っててな?」

 

 

佐渡は、親方妖精を肩に乗せながら、台所に入っていき、冷蔵庫から、佐渡特性の醤油タレに付けてあり一口サイズに切り分けてある鶏肉のトレーを取り出し、揚げ物用の底の深い鉄鍋にたっぷりと油を入れ火をかけるすると、親方妖精が待っている妖精達に呼び出す

 

 

「お前ら!!暇してるなら!提督の手伝いをしやがれ!!!」

 

 

「「「はーい!!親方ぁ!!」」」

 

 

妖精達は、ナイフとフォークをその場に置き、半分は佐渡の居る台所に

半分は食器棚の方に行き、食事の準備をする

 

 

佐渡は、下の棚から片栗粉を取り出し、ボール中に入れ先程の鶏肉を片栗粉にまぶすと、油に手をかざし、温度を確かめる

 

 

「良し、暖まったな」

 

 

油が暖まったのを確認すると、上の棚から業務用の揚げ物篭を取り出し、鉄鍋に入れ、ゆっくりと鶏肉を入れていく

じゅう~と静かに泡を出しながら鶏肉が揚がっていく

 

 

「おぉ?提督、今日は唐揚げかい?」

 

 

親方妖精は、佐渡の肩に座りながら、油に入っている鶏肉を眺める

その間に、佐渡は冷蔵庫からピーマン、人参、玉ねぎを取り出し一口サイズに切っていき、それと同時に、別のフライパンに油をひく

 

 

「んー?どうだろうねぇ?

あ、親方、申し訳ないんだけど、油見ていてくれないか?」

 

 

「よしきた、任せろぉ!!」

 

 

佐渡は、そう言うと鉄鍋の隣に妖精が見れる専用の少し高めの監視台みたいのを置き、親方妖精をそこに行かせる

 

 

それが終わると、油をひいたフライパンに一口サイズの野菜を入れると中火で炒めていく

辺りに、野菜の焼ける香ばしい香りと、唐揚げの香りが混ざり、食事の準備をしていた妖精達もごくりと喉を鳴らす

 

 

「親方~、唐揚げはどうだい?」

 

 

「あぁ!いい感じに揚がってるぜ!!」

 

 

 

親方妖精の話を聞き、玉葱が飴色になっているのを確認すると、佐渡は火を止め、唐揚げが入っている揚げ物篭を取り出し、少し上下に細かく振る

唐揚げの香ばしい香りに、親方妖精も喉を鳴らす

 

 

「分かったぞぉ!!

酢豚だな!!」

 

 

「正解!!」

 

 

佐渡は、油をきった唐揚げを野菜を炒めたフライパンに中に唐揚げを入れ、戸棚から、作り置きしておいた、酢豚と書かれたタレの入れ物を取り出し、フライパンの中に入るとタレがかかった、フライパンが軽くじゅわっと音を立てるが、再び火をかける 

少しすると、タレを入れたフライパンの上で泡が弾け、先程とは違った甘酸っぱい香りがする

 

 

「妖精さーん!大皿出してー?」

 

 

「はーい!!」

 

 

妖精さん達は、戸棚を開けると、右側のボタンを押すと、大皿がある棚が自動的に、まるでエレベーターの様に妖精さん達の前に下へと動く

そして、棚のエレベーターが止まると自分達の四倍もある大皿を取り出す為に皆で運ぶ

 

 

「いっせーのせ!!」

 

 

合図と共に、大皿を持ち上げ、四人で大皿を囲い、物に当たらないように誘導しながら他の妖精さん達は一生懸命持ち上げ、佐渡の所まで向かう

 

 

その間、佐渡はフライパンを弱火に変え、軽く具材をタレに絡ませており、具材全体にタレが絡んだことを確認すると火を止める

 

 

「提督ー!持ってきたよー!」

 

 

妖精達は持ってきた大皿を置くと佐渡にはなしかける

 

 

「お、ありがと皆!じゃあ、危ないから離れててね」

 

 

妖精達が持ってきた、大皿に完成した酢豚を入れようとすると、妖精達が「わー!!」と言い蜘蛛の子見たいに散っていく

居なくなったのを確認すると、酢豚を大皿に移し、完成する

 

 

「良し完成!さてと、味見味見っと……

親方、妖精さん達の分はこれね」

 

 

そして、味見の為に小皿を二つ取り出し、二つに軽く酢豚を盛り付け妖精達へと渡す

 

 

「お、んじゃ、頂くぜ……」

 

 

 

佐渡は盛り付けた酢豚から人参を取り出し、冷ましながらヒョイっと口に放り込む

 

 

「んー、こんなもんかな?どうかな?」

 

 

親方妖精と妖精さん達は、はふはふしながら、食べており、皆で佐渡に向けてぐっと親指を上げる

 

 

「相変わらず旨いぜ!」

 

 

「良し、んじゃ、運びますか……」

 

 

「美味しそうな香りね?何作ってるのかしら?」

 

 

「この香りは、酢豚ですか?提督?」

 

 

佐渡が、大皿を運ぼうとすると、食堂の扉が開き、入渠していた二人が顔を見せる

 

 

 




空腹時に書くんじゃなかったと後悔しています()


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鎮守府近海防衛戦 後日談 五

「お?来たな、二人とも手伝ってくれ。

あと二品作りたいからな、叢雲、酢豚運んでくれ」

 

 

「はいはい、わかったわよ」

 

 

「じゃあ、私はご飯よそいますね」

 

 

 

「あぁ、頼む」

 

 

 

叢雲は、引き戸を閉めると佐渡の所に行き、出来上がってる酢豚を取りに行き、古鷹は、妖精さんが用意してくれた茶碗にご飯をよそう

 

 

「ほれ、そこの奴だ頼む」

 

 

「分かったわ」

 

 

佐渡は既に別の料理に手を回しており、酢豚の出来た皿が、台所に置いてあり、叢雲はそれを両手で持ち上げ香りを堪能する

 

 

「ん、美味しそう」

 

香りを堪能した、叢雲はそれを食堂のテーブルに持っていこうとすると妖精さん達が叢雲の腕や肩に掴まり、叢雲と共に向かう

 

 

「やっぱり、酢豚だったんだね?美味しそう!」

 

 

ご飯を茶碗によそい終わった、古鷹が叢雲の持ってきた大皿を見ながら、ご飯茶碗をそれぞれの場所に置く

香りに我慢出来なかった叢雲は、つい酢豚の唐揚げを一つだけ口に運ぶ

 

 

「………ん」

 

 

「あー!叢雲!つまみ食いー!

なら私も」

 

 

叢雲のつまみ食いを見た、古鷹はそれに続けて、酢豚を一口だけ食べる

 

 

「んー!美味しい!!」

 

 

「甘酸っぱくて、唐揚げもジューシーだね!!」

 

 

二人が美味しそうにしていると、妖精さん達も「ずるい~!」と不平を上げていた

 

 

「こら!二人とも、お腹空いてるからってつまみ食いは行儀悪いぞ!!」

 

 

佐渡は、皿を両手に台所から出てくると二人の前に二つの料理を出す

 

 

「これはエビチリね!こっちも美味しそう!」

 

 

「回鍋肉も作ったんですね!流石は提督です!」

 

 

料理を見ていた二人は、更に手をのばしてつまみ食いをしようとするが、提督にその手を弾かれる

 

 

「こらっ!つまみ食いは駄目だって言ってるだろうが!

はい、席につく!」

 

 

佐渡は、そう言うと席に座ると二人は渋々はーいと言いながら席に座る

 

 

因みに、佐渡が縦長の縦で二人はその両端に座り、後は妖精達がテーブルに立っている

 

 

「では、皆で手を合わせて頂きます!!」

 

 

佐渡がいつもの挨拶の様に手を合わせ、全員を見ながら言うと皆もそれに合わせ、手を合わせる

 

 

 

「「「頂きます!」」」

 

 

こうして、この鎮守府最大の煩さを誇る、晩飯が始まるのであった

 

 

「んー!!この回鍋肉美味しい!!

この甘辛の味付け最高!!」

 

 

「叢雲!こっちのエビチリも美味しいよ!!」

 

 

「本当?どれどれ……んー!こっちも少し辛いけど、ご飯に良く合うわね!!

ほら、古鷹もこっちの回鍋肉も食べてみなさいよ!

美味しいわよ!」

 

 

「酢豚のお肉おいしー!」

 

 

「人参も玉ねぎも柔らかくておいしーよー!」

 

 

 

それぞれ、料理の感想を言いながら、笑みを浮かべながら、楽しい晩御飯を堪能する

佐渡は、それを微笑ましく思いながら、自分の作った料理を頬ぼる

 

 

「相変わらず、あんたの腕は確かだな

提督!」

 

 

親方妖精も、佐渡の隣で、酢豚の唐揚げを頬張りながら、ご満悦な表情をしながら、佐渡を見上げる

 

 

「ふふ、皆の口に合って良かったよ

作ったかいがあったもんさ」

 

 

 



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鎮守府近海防衛戦 後日談 六

「そう言えば、叢雲?頭の上にいつも浮かせてる艤装はどうした?

今日、出撃時に付けてなかったよな?」

 

 

叢雲の艤装は、身体に付ける物と持っていく物、そして、最後に頭より少し上の両端にウサギ耳の様な艤装が付いているのだが、今日の出撃で付けて居ないのを不思議がり佐渡は叢雲に尋ねる

 

 

「あぁ、あれ?この前の戦闘で壊れてね

今、明石さんに直して貰ってるのよ

別に戦闘には影響無いし、大丈夫よ?」

 

 

「そっか」

 

 

明石さん

正式名 工作艦娘 明石(あかし)

艦娘唯一の、工作艦として知られている

所属は、大本営の工厰におり、艦娘の精密艤装や艦娘の製造に手をかけている人物だ

彼女も女性であり艦娘なのだが、戦闘能力が低く、戦闘には不向きで有るが、その変わり工具や機材を扱うのに長けており、自らサポート役へと回っている

 

 

彼女も艦娘ではあるため、昔は全鎮守府に一人は配置されていたのだが、これもまた妖精さん達が製造を嫌がり、今は貴重な人材として、大本営のみに雇われている

 

 

そして、この小笠原鎮守府を味方してくれる数少ない人であり、錆び付いた工廠を直してくれた恩人でもある

 

 

また、今度大本営に呼び出されたら、何か作って持っていこうかな?

 

 

 

「そう言えば、提督!聞いてくださいよ!!

叢雲ってば凄かったんですよ!?

一人で五体も撃破しちゃうんだから!」

 

 

佐渡が、そんなことを考えていると古鷹が今日の戦闘結果を報告する

それを聞いた叢雲は、少し照れながらそっぽを向く

 

 

「そ、そんなこと無いわよ……

あれぐらい、ふ、普通よ!」

 

 

「そんなことないよ!!

流石、叢雲!鎮守府最強!」

 

 

古鷹が叢雲を持ち上げる様に話していると叢雲が顔を真っ赤にしながら照れている

 

 

「あぁ、流石だな叢雲

我が鎮守府最強の駆逐艦だな」

 

 

更に追加で佐渡が言うと、叢雲の顔が更に赤くなり、ゆでダコみたいな感じになると気を反らす様に佐渡へとご飯茶碗を差し出す

 

 

「お、おかわり!!!」

 

 

「ふふ、分かったよ」

 

 

佐渡は、微笑むと叢雲のご飯茶碗を取り、席を立つ

古鷹の方を見ると、古鷹のご飯茶碗も空になっており、静かにそれも取る

 

 

「あ……提督…」

 

 

「いらないか?」

 

 

「……お願い…します」

 

 

「提督ー!僕たちもー!」

 

 

古鷹は、一瞬迷うが直ぐに照れ臭いのか頬を掻きながら、箸を置くと妖精さん達もおかわりを要請する

 

 

「はいはい、待っててね」

 

 

ご飯茶碗をトレーの上に乗せ、炊飯器の釜を開け、それぞれの茶碗にご飯をよそう

テーブルでは、古鷹達が今日あった出来事や、妖精さん達が和気あいあいと話をしているのを見ると、佐渡の頬も自然と緩む

 

 

「平和、だな……」

 

 

そう呟くと、よそいおわったご飯茶碗をトレーに乗せ、再びテーブルに戻り、皆にそれぞれ渡していくと、すぐに皆がご飯茶碗を持ち、食事を再開する

だが、佐渡だけは、再び台所に戻り、冷蔵庫から先程使った鶏肉を取り出す

 

 

「提督?食べないのですか?」

 

 

古鷹が不思議がって、台所に入って来ており、佐渡の隣に立つ

 

 

「ん?あぁ、そろそろかなぁと思ってね?」

 

 

佐渡の話に、古鷹は頭にはてなマークを浮かべたような顔をするとテーブルから怒号に似た叢雲の声が聞こえる

 

 

「あーー!!酢豚の唐揚げが無い!!

あんた達!!どんだけ食べてるのよ!!

私、まだ食べてないのに!!」

 

 

 



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鎮守府近海防衛戦 後日談 七

 

その声と同時に、佐渡は鶏肉を片栗粉にまぶし、加熱した鉄鍋に滑らせるように入れ、鼻歌混じりに、再び唐揚げを作る

 

 

「あはは……叢雲はまた…」

 

 

実は、このやり取りはいつもであると言うのも、妖精さん達も最初の頃は野菜もきちんと取っていたのだが、最近は、提督の作る料理の肉を良く食べるようになり、人数も相成り、すぐに肉が無くなってしまうのだ

 

 

叢雲も、動いてるのか……いやただの好み何だと思うけど、肉を良く食べており、特に酢豚等の唐揚げを好んで居るため、毎度妖精と喧嘩になっている

 

 

「叢雲が遅いのが悪いんだよー!

叢雲おっそーい!!」

 

 

「何ですって!?なら、あんたたをを食べてやろうかしら!?」

 

 

「にげろー!叢雲が、怒ったぞぉ!!」

 

 

全く……と佐渡は、溜め息を付くが、少しすると唐揚げが揚がり、鉄籠を持ち上げ、油をきる。

古鷹は戸棚から大皿とキッチンペーパーを取り出し、大皿にひき、提督に差し出す

 

 

「提督、どうぞ」

 

 

「お、ありがとさん」

 

 

差し出された、大皿に唐揚げを盛り付けていく

盛り付け終わった後、一つ唐揚げを取り出し、まな板を置き、半分に切り、爪楊枝で刺すと再び戸棚から、試作品唐揚げと書かれたタレの容器を取り出し少し降る、それを近くの少し底が深い小皿に少し出すと、唐揚げを熱々の唐揚げをに付け、古鷹に差し出す

 

 

「提督?こちらは?」

 

 

「新しく作った、唐揚げのタレ何だけど、試食お願いできないか?」

 

 

両手が塞がっている古鷹の為に、佐渡は唐揚げを息で冷ましてから、あーんをすると、古鷹は少し照れくさくするが、口を開け、タレ付きの唐揚げを佐渡から頂く

 

 

揚げたてだった故に、タレに付けてあるとしても熱く

口の中ではふはふしながら食べていると、佐渡は心配そうに聞いてくる

 

 

 

「どうだ?俺は好きな味何だけど……」

 

 

「……とっても美味しいです!!でも、何ですかこのタレは?

醤油ベースなのは分かりますが……」

 

 

 

佐渡は、ほっとしながら、タレを味噌汁等を入れる様な容器に少し入れ、古鷹と一緒にテーブルに戻る

 

 

「醤油と砂糖とゴマ油を加えただけの、少し甘めのタレだよ

案外、唐揚げとの相性が良くてね

古鷹が美味しいと言ってくれて良かったよ」

 

 

再び作った唐揚げを持ってくると、テーブルの上が戦場に変わっていた

 

 

叢雲は、妖精が持っている、唐揚げを箸で取ろうとしており、他の妖精達は、回鍋肉から肉を取り出し、引っ張り合い奪い合う

エビチリに、関しては、海老は無くなっており、タレのみが残されている状態だ 

親方妖精に関しては、いつの間にかお酒を取り出し一杯やっており、大の字で寝ている

 

 

「寄越しなさいっ!!このっ!!」

 

 

「やーだー!」

 

 

「はぁ……全く……ほらぁ!唐揚げ追加だぞ!!

要らないのか!?」

 

 

「美味しいタレもありますよー!」

 

 

その声に、皆は待ってました!!の声を上げ、我先にと唐揚げを取りに来る

 

 

 

 

こうして、賑やかな晩御飯時は過ぎていし

今日、忙しい一日の終わりを告げる

 

 

 



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鎮守府近海防衛戦 後日談 八

「ふぅ……今日も終わりか…」

 

 

佐渡は風呂に入りながらのんびりと、天井を眺めながら呟いた

ここは、男性用のお風呂である

ここの鎮守府には、昔何人かの男が在籍していたの、それとも、ただ先人の趣味なのかそこそこ広く、四人位なら同時に入れる程の浴室に、洗い場が二つある

 

 

 

 

皆の食事が終わり、妖精達は各々の仕事に戻り、叢雲は洗濯物を畳みに行き、佐渡も食器を片付け用としたのだが古鷹に「提督はお風呂にどうぞ?私がやっておきますから!」と言われてしまい、お言葉に甘えさせて頂き、風呂に入っている

 

 

「にしても……新人…かぁ……」

 

 

 

佐渡は、今日来た…と言うか流された新人に関して考えていた。

こんな所に飛ばされる艦娘何て言うのはよっぽどの問題を抱えた奴じゃないと飛ばされないからである

 

 

 

「さーて、何をやらかしたのかねぇ、あの子は」

 

 

けのびをしながら考え込んでいると、風呂場の扉が叩かれる

叢雲の声がする

 

 

「司令官、ここに替えの服置いておくわよ」

 

 

「あぁ、ありがとう」

 

 

叢雲は、更に一回ノックすると、少しだけ、扉を開ける

きちんと、佐渡が見えないように背中を向けてだが

 

 

「……何かあったか?」

 

 

叢雲の態度に違和感を感じた、佐渡は少し真面目な感じになり、叢雲に尋ねる

叢雲は、風呂場の外に顔だけだして、回りに誰もいないことを確認すると、本日全ての戦果報告をする

 

 

「今回、戦った戦艦ル級戦いなれてたわ、多分何回か他の艦隊と戦っては居たけど生き残った類いね

今回は不意打ちで、四体撃沈させたのが功をそうしたけど、あのまま二人で戦ってたら危なかったわ」

 

 

「……となると、例の『アレ』に成りかけてた奴だったのか?」

 

 

佐渡が、そう言うと叢雲は首を振り、否定する

 

 

「それはないわ、恐らくあいつが沈めてきたのは、駆逐艦だけだったみたいよ

あいつ、古鷹を見て警戒したけど、私を見た時余裕そうな表情してたからね。

だからこそ、あそこで私だけで戦ったのは正解だった見たいよ

前戦った、同じ形の奴とは、桁が違うもの」

 

 

そうかと、佐渡は呟くと顔に湯をかけ、ふぅとため息を付く

 

 

「以上が、戦果よ。

あと、あの新人、恐らく軽巡よ艤装を見るに

もしかして、雷撃よりの軽巡って奴じゃないかしら?」

 

 

「お、よく分かったな?

サンキューな叢雲~」

 

 

「じゃあ、私は寝るから

お休み、司令官」

 

 

「おう、お疲れ様。

いつも悪いな」

 

 

叢雲は、戦果報告をし終わると、扉を静かに閉め、風呂場を後にする

 

 

叢雲が居なくなったのを感じると、佐渡は窓を開け、外を見る

 

 

 

「……『歴戦種』では無い……か…」

 

 



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現実

佐渡は、呟くと、風呂を出て、自室へと戻っていく

 

 

『歴戦種』

 

 

深海棲艦の中で、どの原理で生まれてくるのかは分からないが極稀に存在する

強力な個体

 

 

 

初めてそれが、確認されたのは六年前

とある、大事件がきっかけだ

 

 

横須賀(よこすか)大空襲事件

横須賀鎮守府を含めた、神奈川県南部を襲った、深海棲艦による大空襲である

空母15体による、日本が受けた最大の被害であり、歴史にその名を残す最悪の事件

当時、最強の鎮守府として知られていた、鎮守府であり、負けるなんてあり得ない程だったのだが、その鎮守府はとある一体の『化け物』に軽々と潰されてしまった

 

 

 

『南方棲戦姫(なんぽうせいせんき) ー歴戦種ー 』

 

 

 

後にそう、語られるその者は、残っている記述には一体で戦艦三人を含む軽巡、重巡艦隊を軽々と轟沈させ、そのまま単機で鎮守府に急襲し、提督含め全ての艦娘を殺害

正に、完全敗北である

そして、その後深海から呼び出した、軽空母含め空母ヲ級達に指示を出し横須賀全土を火の海に変えた

 

 

 

これを重くみた、大本営はすぐに横須賀に応援を近くの鎮守府から向かわせたが、その艦隊を南方棲戦姫は撃破

そして、横須賀を後にし、二度とその姿を見せなくなった

 

 

 

後に分かったことは行動が異様なほど戦闘馴れしており、ほとんど通常の艦娘と戦ってるのと変わらないほどの戦闘力を誇る

実際、大本営が確認している個体は、南方棲戦姫を含めた三体のみである

 

 

しかも、この個体は通常の深海棲艦と違う点がもうひとつある

だが、その一つが最も厄介なのだ

 

 

それは、火力と耐久性だ

今まで報告に上がっている事は、戦艦の砲撃に耐える駆逐艦や戦艦を一撃で重症へと追い込む火力を出す軽巡等

司令艦(フラグシップ)より、可笑しいと言われるほどの性能である

 

 

これが、通常の深海棲艦だとするならば、二艦隊、総勢12人で挑まないと勝てないと言われており、大本営も何故なのかを究明を急いでいる

 

 

それが、原因だけでは無いのだが、今この戦争はこちら側がかなり芳しくない

実は、人類は、この戦争に一度勝利しているのである

いや、勝利したと““確信させられた””が正しい

艦娘の減少、そして、それよりも前に起きた大事件が影響している

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それが、大本営襲撃事件

この事件は、最悪に等しいだろう

消えかけた火に油を注ぎ、それが再び燃え始めたのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

この事件がきっかけで、人類は深海棲艦に負けたと言っても過言ではない

 

 

 

 

 

 

何せ、これは艦娘と提督達への深海棲艦達からの最悪のプレゼントなのだったのだから

 

 

 

 



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敗戦

三年前、稼働している全ての鎮守府が、暇をしていた

理由は単純だ

深海棲艦が、確認されなくなったのだ

 

 

ある決戦を境に

 

 

 

ハワイ諸島大決戦

 

 

 

それは、深海棲艦達の拠点とされていた

ハワイ島より半径六キロ圏内にある、地図にも乗っていないとある島国を攻撃した事である

 

 

どこからの情報かは、分からなかったが、大本営はその言葉を鵜呑みにし、全鎮守府に場所を発表

大規模作戦の開始である

 

 

全鎮守府は、持てるだけの戦力を持ち出し、ハワイ諸島へと向かわせた

何とそこには、深海棲艦が通常海域の五倍は有るであろう大艦隊が居たのである

その中には当然、歴戦種の南方棲戦姫も居た

 

 

当時は、これが深海棲艦の巣窟だと思い込み、この大規模作戦に全てを費やした

 

 

 

 

 

これが、敵の罠だと知らずに。

 

 

 

結果としては、勝利はした

だが、被害も甚大だった、何人もの艦娘が犠牲になり、皆それを悔やんでは居たが、それと同時に戦争が終わりなのかと嬉しがったいた

 

 

 

作戦成功し、世界各国の海域から深海棲艦が消え、海は平和になった……はずだった

 

 

実なこの戦いは仕組まれた物だったのだ、ある深海棲艦と当時元帥だった男によって

 

 

内容としては、艦娘戦力を半分減らす変わりに戦争を終わらせると言う事だった

当時最強を誇っていた、金剛形二隻、長門形一隻、扶桑形二隻、伊勢形二隻を轟沈させる変わりにと言う破格の取引だ

 

 

そして、戦争は終結した………はずだった

取引をした深海棲艦が裏切らなければ

 

 

迎えた、大本営での授与式

くしくも、この日は12月24日、クリスマスイブ

全ての人類へのクリスマスプレゼントになるはずだった

 

 

 

一番功績を出した、横須賀鎮守府、佐世保鎮守府の二つが授与を受け取った

横須賀は大敗こそはしたものの、何とか立て直し、最後の決戦時には実力を戻していた

 

 

その授与式は、ある爆音と共に終わりを告げる

 

 

大本営の屋根が、突如として爆撃を受けたのだ

それと同時に、無数の艦載機が空を黒く埋め尽くし、授与式の会場に三体の深海棲艦が仲間を連れて乱入してきた

 

 

三体の深海棲艦はそれぞれ、別の服装をしており、一人は堂々としながら歩き

一人はあくびをしながら、艦載機を指先で遊び

一人はカップを片手にアイスを美味しそうに頬張りながら

 

 

警備員がその三体を止めようとするが、航空機とリ級達がその行く手を阻む

三体が授与式の真ん中まで到達すると、堂々としている深海棲艦は、どこからか持ってきたリ級からマイクを貰い

 

 

提督達に、流暢な日本語で宣戦布告をする

 

 

「提督及び海軍に、この世界全てに!!我等深海棲艦は宣戦布告をする!!!

我等、深海棲艦は必ずや人間共を根絶やしにし、この世界から一匹残らず殲滅してくれよう!!!

我等に降伏は有り得ない!!

お前達が立ち向かって来るのであれば受けてたとう!!!

去らばだ!!人間共!!!」

 

 

 

 










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敗戦

それと、同時に深海棲艦が合図をすると、艦載機による大本営への本格的な攻撃が開始され、大本営は壊滅

 

 

しかも、深海棲艦は同時期にその当時あった鎮守府を同時に全戦力で攻め落としたのだった

戦争が終わるそう聞いていた艦娘達と提督達

なのに、その三体の深海棲艦によってそれは成されなかった。

 

 

 

これが、人類最大の敗戦であり、大事件である

その当時、生き残った提督はたったの六人

しかも、二人は意識がない重体

そして、艦娘は三人だったらしいが、大本営はそれが誰かは秘匿した

 

 

 

この時、大本営に現れた深海棲艦は、

 

飛行場姫

 

空母棲姫

 

南方棲戦姫

 

の三体、どれも様々な海域に現れては気紛れに艦隊を壊滅させた、強者である

 

 

大本営は、これら三体のうち一体でも倒したものには、報酬とは別に更に何でも欲しいものをやると破格の条件を出すぐらいこの者達を警戒した

 

 

そして、この三体が大本営が確認できている

最強の歴戦種である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐渡は、自分の部屋にたどり着くと、直ぐ様布団へと倒れこみ、枕に顔を埋める

 

 

「あー……つっかれたぁ…」

 

 

ゴロンと寝返りをうち仰向けになり眼を瞑る

そして、今日スカウターで見ていた叢雲の戦果を思い出す

 

 

『アイツ、駆逐艦を見て余裕そうな表情をしてたもの』

 

 

(余裕そうな、表情……

駆逐艦をなめていたってことだよな……

でも、何故だ?奴等は駆逐艦と軽巡の違いが分かるのか……?

それとも、駆逐艦の叢雲を知っていた?なら逆に警戒するべきだ

あいつは、一度だけ同じル級の『歴戦を倒している』のだから……)

 

 

佐渡は思考を巡らせるが、全く答えがでない

 

 

「何時だぁ?」

 

 

ふと、時間が気になりベットの上の目覚まし時計を見る

今日は満月で夜でも明るく、部屋の電気を付けなくても、月の光で部屋がよく見える

 

 

「…2400かぁ、寝よ」

 

 

明日は、新人の歓迎会やらないとなぁ…

あー、メニューどうしよっかなぁ……

 

 

そんな他愛も無いことを考えながら、佐渡はいつの間にか寝息が静かになり、熟睡する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あーあ、うちの艦隊を全て撃沈させるとはやるねぇここの提督と艦娘達は?」

 

 

 

月夜の夜、時間は0200を既に回っており、草木も眠る頃。

ある女は、鎮守府の見える崖に座り込み、のんびりとカップアイスを頬張っていた

 

 

「まぁ、『うちの』ル級の油断が行けないんだけどさ、一人で五人倒すとはね……

いやー、流石は『あいつが作った』歴戦を倒すだけはあるわぁ

んー!新発売ってか期間限定のサクラ味のアイス美味しいー!!」

 

 

カップアイスを食べながら、鎮守府を見るその女は、両脚に黒いブーツを履いてはいるが、そのブーツはふくらはぎ全体を覆い、太股の半分まであり、それを崖に当てる度に岩が崩れていく

座っている両端には、腕に付ける真っ黒な艤装を外している

そう、彼女は深海棲艦なのだ

空から黒い深海棲艦の艦載機が、手紙付きでその女に近付く

 

「あら?脆い崖ね、危ない危ないっと…

んー?どしたのー?」

 

 

女はアイスを太股に置くと、渡された手紙を見る

 

 

内容は

 

 

 

大本営ヘ先入シ

奴等ノ動向ヲ探レ

期間ハ六月二八日ノ作戦終了マデ

シクジルナヨ

 

 

「んー、次は大本営か

人の事こきつかうねぇ、あの脳筋さんは

了解」

 

 

女は受け取った手紙を、海に投げ捨てると、艦載機に命じ、手紙を撃ち抜かせ、バラバラになった手紙は海に散っていく

 

 

食べ終わったアイスカップを空に投げ、女は立ち上がり、両端に置いてある艤装を持ち上げ、両腕に付けると、真っ白な髪を左上にまとめ上げ、潮風に靡かせながら、鎮守府を見下ろす

 

 

 

「またね、反逆者の提督と艦娘さん達?貴方達が私達相手にどこまで足掻けるのか、今は静観しといてあげるわ

精々、艦娘を大事にしなさいねそうじゃないと……」

 

 

そう、言い終わる寸前に、女は人差し指をその投げたアイスカップに標準を合わせる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『貴方を殺さないといけなくなっちゃうんだからね

 

 

バァン」

 

 

その瞬間、アイスカップが何かに撃ち抜かれたのか粉々粉砕され、辺りに再びの静けさが戻り、女は夜の闇へと消えていく

 

 

 

この時、鎮守府内の深海棲艦の接近を告げる筈の、警報機は正常に起動しているのに鳴ってはいなかった

 

 

 

 



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第二章 男嫌いの軽巡
新人 男嫌い軽巡


 

 

 

ジリリリリリ!!!

現在の時刻 0600 外は太陽が登り、佐渡の自室に朝日が入り込む

だが、佐渡は起きる気配が無い

すると、扉が唐突に開き、一人の少女が入ってくる

少女は、入ってくると、佐渡の部屋に鳴り響く目覚まし時計を止め佐渡に揺さぶる

 

 

「提督~?朝ですよ、起きてください」

 

 

「んぁ~?まだ早いじゃんかぁ……

寝かせてくれよぉ…

古鷹様ぁ…」

 

 

古鷹は、もぅ!と呟くと扉の前に置いておいたフライパンとお玉を取り出し、思い切り叩く

 

 

騒がしい金属音に、たまらない佐渡は耳を押さえながら、苦しむ

 

 

「あーー!!!分かった分かった!!

起きる起きる!!」

 

 

「はい♪おはようございます提督

昨日着任した子がお待ちしておりますよ?」

 

 

「おっと、そりゃ行けねぇな」

 

 

古鷹の目覚ましに、スッキリ?と起こされた佐渡は、直ぐ様布団を投げ出し、自室の引き出しから海軍服を取り出し、着替えようと脱ぎ出す

瞬間、古鷹は顔をフライパンで押さえながらそそくさと佐渡の自室を後にする

 

 

 

「で、では!!提督失礼します!!」

 

 

「お、おう?

って、叢雲とは違うのか」

 

 

佐渡は、古鷹に悪いことしたなぁと思いながら早めに着替え、支度を整える

 

 

廊下を歩いていると、目の前から汗だくの叢雲が、肩にタオルをかけてスウェット姿でこちらに向かってくる

 

 

「おう、叢雲。

おはよう」

 

 

「おはよ、司令官

新しい子、治った見たいよ」

 

 

「聞いた聞いた、叢雲は風呂にでも入ってきな」

 

 

叢雲は、小さくありがとと言うと、お風呂へと向かっていき、佐渡とすれ違う瞬間佐渡が一言小さく叢雲に言う

 

 

「良い香りだな、相変わらず」

 

 

「っ!変態!!」

 

 

佐渡の変態発言に、相変わらずと思いながら脚を蹴り、足早にお風呂へと向かっていく

 

 

「いってー、良し今日も一日頑張りますかぁ!」

 

 

叢雲に蹴られて、渇が入ったのか、毛延びをしながら提督室への向かう

決してMではない

……違うからねぇ!?

 

 

 

佐渡は提督室に着くと、扉を開いた瞬間、聞きなれない女性の声での挨拶が聞こえる

 

 

「おはようございます!!

小笠原鎮守府佐渡提督様!!」

 

 

「お、おう?おはよう新人さん?」

 

 

流石に、入った瞬間挨拶されたのは、初めてであり、驚きを隠せない

しかも、綺麗な敬礼姿で戸棚にたっており

その女性……嫌女の子は、どこかの高校の制服に身を包み、髪は茶髪に見た目もどこか普通の女の子である

特徴と言えば……胸が少し大きいかな?

変態じゃないよ?男なら必ず眼にいくでしょ?

え?行かない?………こまけぇことは良いんだよ!!

 

 

「とりあえず、そこに立ってないで、こちらに来てくれるかな?」

 

 

「はい!!」

 

 



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新人 男嫌い軽巡 二

佐渡は欠伸をしながらのんびりと提督室の扉を締め自分の机へと向かおうとしていると古鷹が既に椅子の隣に立っており恐らくこの娘の資料を手にしている

 

 

「古鷹パスパス」

 

 

「はい、この子の書類になります」

 

 

古鷹から書類を渡され中身を確認する

事前に叢雲に言われたとおり彼女は軽巡だった

(艤装も確かにそこまで重装甲では無かったしな

そして、名前が)

 

 

「えっと…なんて読むんだ?…だいい?」

 

 

「申し遅れました!

球磨型軽巡洋艦(くまがたけいじゅんようかん) 四番艦 大井(おおい)です!!

本日より、小笠原鎮守府にお世話になります!!

よろしくお願い致します」

 

 

 

「こちらこそよろしく

俺は小笠原鎮守府提督

少尉の佐渡 満だ」

 

 

大井は背筋を伸ばした状態でお辞儀をすると佐渡もそれに返すようにお辞儀をしながらお互いの自己紹介を済ませる

 

 

「んでこっちが」

 

 

「私は古鷹型重巡洋艦 一番艦 古鷹です

これからよろしくね?」

 

 

古鷹は満面の笑みで自己紹介をすると大井は再びお辞儀をする

 

 

「こちらこそ、よろしくお願いいたします」

 

 

やけに腰が低い奴だなと佐渡は思いながら資料を見直す

ステータスとしては、主砲の火力は叢雲とあんまり差がない

他もほとんど

だが雷撃火力と言うよりは魚雷の搭載数がやけに多い

出撃回数はあるだが戦果はほとんどなし

だが戦闘経験はあり一度だけ深海棲艦の駆逐艦を撃沈

以外はほとんど大破

 

 

 

「そう言えば身体は大丈夫なのか?

昨日えらく傷を追っていたが?」

 

 

佐渡は聞くと大井はビクッと身体を震わせ再び敬礼をする

 

 

「大丈夫です!!痛みには馴れてます!

いつでも戦えます!!」

 

 

その発言に違和感を感じる佐渡だったが一応大丈夫そうなのか分からないがとりあえず流すことにした

 

 

「んー……」

 

 

大井の資料を見ながら佐渡は頭をかきながら変なところをいくつか見付ける

 

 

 

「提督?どうされましたか?」

 

 

「あ、いやな?ここの所

大井って何だ?強化装甲(バルジ)なんか積んでるのか?」

 

 

大井の変なところは出撃回数はあるのだが異様な程の大破率

出撃回数とほぼ同じ位の大破率

しかも何回は轟沈しかけてる

 

 

「なぁ大井…」

 

 

と言いかけた瞬間誰かの腹の音が聞こえる

可愛らしいなぁと佐渡は思いながら古鷹を見る

 

 

「私じゃないですよ?

だって、さっき…」

 

 

「となると?」

 

 

古鷹と佐渡は顔を見合せながら大井に向き直ると大井が顔を伏せながら耳まで真っ赤にしている

 

 

佐渡と古鷹はお互い笑うと佐渡は席を立ち上がり提督室の外へと向かう

 

 

「飯食うかー!」

 

 

「いえ!私は!!」

 

 

大井が佐渡を止めようとするが古鷹に肩を捕まれそのまま背中を押されていく

 

 

「ほらほら?大井さんも行きましょ?

朝御飯はきちんと食べないと提督煩いんですよ?」

 

 

「……分かりました」

 

 

古鷹に言われた大井はしぶしぶ古鷹に背中を押されながら、食堂へと向かう

 

 

 



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新人 男嫌いの軽巡 三

 

三人は、食堂へと入ると古鷹が電気を付け、食器の準備をする

昨日のうちにご飯は炊いてあり、いつでも食べれる状態だ

 

 

佐渡は、頭に帽子を被ると、食堂の奥厨房へと向かおうとすると大井に大声に止められる

 

 

「提督が、作るんですか!?」

 

 

「お?おう?そうだけど……

何だ?嫌か?」

 

 

「い、いえ……

何でもありません…」

 

 

大井の発言に、流石に疑問に思うのだが、まぁ良いかと佐渡は厨房へと向かう

 

 

その様子に、古鷹はあー…と言わんばかりに顔をしながら、食器を並べていく

 

 

厨房からは、佐渡の鼻歌と料理の音が聞こえる中、大井は、古鷹に指示を貰いながら、料理の準備をする

 

 

「あの、古鷹さん

この鎮守府は、いつも提督様が作るのですか?」

 

 

大井からの発言に、古鷹は一瞬悩むが、微笑みながら答える

 

 

「そうですよ、提督のお料理は絶品ですからね!

大井さんも気に入ると思いますよ?」

 

 

 

「あんまり持ち上げるなよー

古鷹、悪いけど出来た奴持っていってくれー」

 

 

「はーい、あと持ち上げてないですよー

本当に美味しいですよ」

 

 

佐渡に呼ばれた、古鷹は厨房から皿を二枚ずつ持ってくる

その皿には、スクランブルエッグ、ウィンナーが三つ、焼けた人参が乗っており、朝食にはピッタリである

その光景に、ゴクリと喉を鳴らす大井を余所に、古鷹は料理を運んでいく

 

 

「大井さんー悪いんだけど来てくれないか~?」

 

 

「は、はい!!」

 

 

次は、大井が呼ばれ厨房へと向かう

厨房に入った大井は、佐渡の料理している姿を見ながら、佐渡に近付き敬礼をする

 

 

「何でしょうか!提督!」

 

 

「あぁ、悪いんだけどそこの戸棚から味噌汁のお椀取って入れてくれないか?

そこに味噌汁あるから」

 

 

佐渡は、片手で火にかけてある味噌汁を指差すと、すぐに火を消して蓋を開ける

 

 

「は、はい!!」

 

 

大井は、お椀を取り出すと、味噌汁をお椀に移していくがその時に味噌の香りが鼻孔を刺激する

 

 

「美味しそう…」

 

 

そう、無意識に言ってしまい瞬間我に返り、佐渡を見上げると佐渡はふふと笑っており、顔が熱くなる

 

 

「つまみ食いは許さないよ?大井さん」

 

 

「は、はい!!」

 

 

恥ずかしくなり、直ぐ様味噌汁をよそい、テーブルへと人数分持っていくと大井の見慣れない人が食堂へと入ってくる

 

 

「あら?良い香り……朝御飯?」

 

 

先程までお風呂に入っていた叢雲である

服は、何故かタンクトップであり、髪はキチンと乾かしてあるが、拭ききれてない、お風呂の水が鎖骨に流れている

 

 

「おはようございます!!

私は……」

 

 

「知ってるわよ、昨日着任した、軽巡の大井さんよね?

昨日は災難だったわね

そう言う堅苦しいのは良いから朝御飯食べましょ?」

 

 

 

大井は、敬礼をしながら挨拶をしようとするが叢雲が先に知っていたかの様に自己紹介を聞くと、軽く自分の自己紹介も済ませ、テーブルのいつもの席に座る

 

 

「は、はい…」

 

 

叢雲のいつものスタイルに、調子を崩された、大井は何故か一番遠い左恥に座る

 

 

「ちょっと?あんたどこ座ってるのよ?

あんたはここよ?」

 

 

 



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新人 男嫌いの軽巡 四

 

 

「ですが」

 

 

「良いからこっち」

 

 

叢雲に言われるがまま、大井は叢雲の隣に移動すると、料理が運ばれてくる

 

 

「へぇ?今日はスクランブルエッグに鯵のヒラキね?

美味しそうじゃない?」

 

 

古鷹が、ご飯を全員分渡し終えると叢雲の正面に座る

少しすると、佐渡が漬け物を片手にテーブルに向かってくる

いつの間にか、妖精達も集まり、賑やかな朝食の始まりである

 

 

「だぁ!!叢雲!!またお前そんな格好しやがって!!

ちゃんとした制服を着ろ!!

襲うぞ!?」

 

 

 

「良いじゃない?別に

減るもんじゃないし?襲ったら憲兵さんに言うわ」

 

 

「いやまぁ、間違っても……うん

襲わない…よ?」

 

 

「酸素魚雷と憲兵どっちにする?」

 

 

「第3の選択肢!!!静観で!!」

 

 

毎朝恒例の二人のイチャつきに、古鷹は若干機嫌が悪くなるが、仕方無いかと言わんばかりに、ため息をつく

その頃、大井は目の前の食事に目が放せないでいた

 

 

「んじゃ、手を合わせて

頂きます!」

 

 

「「頂きます!!」」

 

 

「頂きます……」

 

 

挨拶と同時に、叢雲は、スクランブルエッグを頬張り直ぐ様ご飯も一緒に入れる

 

 

「んー!!このスクランブルエッグ少し甘い!でも旨い!!

漬け物もさっぱりしてて美味しいわぁ…」

 

 

「鯵も油が乗ってて美味しい!!」

 

 

二人が美味しそうに食べる中、大井だけは箸を持ったまま凍り付いていた

そんな、様子を見た佐渡は心配そうに聞く

 

 

「どうしたの?大井さん?

食べれないものでもあった?」

 

 

「い、いえ!!い、頂きます……」

 

 

大井は、恐る恐るスクランブルを一口サイズに切ると、口へと運ぶ

その瞬間、口の中に広がる砂糖の甘さと玉子の美味しさが広がり、思わず口を押さえ自然と呟いてしまう

 

 

「お、美味しい…」

 

 

「お?口に合ったか?

なら良かった良かった」

 

 

「は、はい!!」

 

 

佐渡は大井のさっきまで、恐る恐る食べていたのに一口食べたあとになるとバクバクと勢い良く食べてる姿をみて安心しながら、味噌汁を啜っていると、大井が泣いてることに気付いた

 

 

「美味しい…本当に……グスッ」

 

 

「え?ちょっとどうしたのよ!?あんた!!大井さんのご飯に、なにいれたのよ!!」

 

 

「大井さん!どうかしましたか!?」

 

 

「大井さん!?あ、あれ?変なもの何か入れてないはず何だけど……」

 

 

 

「新人さん、泣いてるのー?

どうしたのー?」

 

 

 

三人と妖精達が、困惑していると大井が我に返ったのか、服の袖で涙を拭くと笑みを浮かべながら三人に言う

 

 

「い、いえ……こんな、美味しいご飯は久しぶりでしたので…

つい」

 

 

その言葉に三人は固まる。

久しぶりに美味しいご飯を食べた……そこに引っ掛かった

 

 

「……古鷹さんや

彼女は何だ?俺をそんなに持ち上げたいのか?

んんん??」

 

 

 



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新人 男嫌いの軽巡 五

「と、言いますか……

多分、原因は『艦娘専用食』じゃないですか?」

 

 

「「何それ?」」

 

 

佐渡と叢雲は、同時に首を傾げるが、古鷹は「そうですよねぇ……」と呟くと続ける

 

 

「艦娘専用食と言うのは、人間で言う携帯食料見たいな物なんですよ?

良く、大規模作戦や遠征してる方々用にと開発したものらしいのですが。

これの凄いところが、艦娘が必要とする栄養素が全部詰まってるらしいんです」

 

 

「へー?なら美味しいの?

食べてみたいわね?」

 

 

叢雲は、古鷹の話を聞きながらスクランブルエッグを美味しそうに頬張る

 

 

「いえ、味が無いんです」

 

 

「「は?」」

 

 

その発言に、叢雲と佐渡は顔を見合せながら首をかしげる

 

 

「味が無い?専用食なのにか?」

 

 

「はい」

 

 

「何の味も?ないの?」

 

 

「ありません」

 

 

「もしかして、蒟蒻見たいな感じ?」

 

 

「正直、蒟蒻の方がまだ味があって良いですかね……」

 

 

「「うっそだろ(でしょ)……」」

 

 

二人は唖然としながら、大井を見る

大井はそんなこと気にせず、一心不乱に食べ、美味しいと良いながら朝御飯を噛み締めている

 

 

 

「えっとですね?提督

艦娘専用食と言うのは、栄養価だけを入れた携帯食なんです

実際は、作戦行動中に迅速に栄養補給を目的にされているのですが、他の鎮守府では、それだけを食べさせてるところもあるそうですよ?

実際、お安いですし、私達は…その……

 

 

『兵器』ですから…」

 

 

古鷹が言った最後の一言に、佐渡の眉がピクンっと反応するがため息を付きながら、味噌汁を飲む

 

 

「……まぁ、分かった

大井さん、いや、大井!

今から命令を下す!!」

 

 

 

「は、はい!!

提督様!」

 

 

佐渡の一言に、大井は食事の手を辞め、敬礼を佐渡に向ける

その頬には、先程まで食べていたスクランブルエッグがついている

 

 

「今日から一日三食!

きっちりと食べること、後いちいち敬礼はよせ、何か堅苦しい

あと、俺の事様付け禁止!

以上!!」

 

 

大井は、佐渡の出す可笑しな命令に「は?」と言わんばかりに唖然とする

当本人の佐渡は、若干イラつきながらもウィンナーをかじる

 

 

「あ、あの提督……」

 

 

「何だ?」

 

 

「何故、その様な待遇を私にするのですか?」

 

 

大井の発言に、こいつがどんな境遇を鎮守府で受けていたのか、何となく理解するが、佐渡は椅子から立ち上がり、箸で大井を指差す

 

 

 

「良いか、大井!

お前が、前の鎮守府でどんな扱い受けたとか、どんな奴だとかは知らん!!

ここは俺の鎮守府だ!!

俺はここで、お前達とのんびりしてたいんだよ!!

戦争とかぶっちゃけ知らん!!

分かったかぁ、あぁ!?」

 

 

佐渡は、ふんっと言うと再び座り、朝御飯を食べ始める

佐渡の堂々とした、自己中発言に唖然としていた大井だったがそれを聞いていた古鷹はふふふと笑みをこぼす

 

 

 

 



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新人 男嫌いの軽巡 六

 

 

「相変わらず自分勝手ですよね、提督は」

 

 

「良いだろー?何か不便な事させたか?」

 

 

「いえ、全く」

 

 

「ほんと、毎回その態度には呆れるわ」

 

 

二人はいつもの事と理解しているが、この時大井には全くといってその命令の意味が分からなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四人は、食事を終え、再び提督室に集まっていた

叢雲もいつもの仕事服(制服)に着替え佐渡の机の前に整列している

 

 

「今日は、古鷹、叢雲は哨戒任務

大井は……とりあえず書類整理を手伝ってくれ」

 

 

「はい!」

 

 

「分かったわ」

 

 

「分かりました!」

 

 

古鷹と叢雲は、二人揃って提督室を後にすると、部屋には佐渡と大井の二人きりになる

だが、ここで大井の変化に気が付いた

 

 

「ん?大井?寒いのか?」

 

 

小刻みに、肩を震わせて顔を下に向けている

佐渡に、呼び掛けらるとハッとして直ぐ様顔を上げ、佐渡を見る

 

 

「い、いえ!何でもありませんよ!!」

 

 

「そうかぁ?そうは見えないんだけどなぁ……」

 

 

佐渡は、椅子から立ち上がり、大井に近付こうとするが、大井は佐渡が近付くと後退り、距離を取ろうとする

 

 

「ほ、本当に大丈夫です!!」

 

 

「……そうは見えんのだが?」

 

 

大井は、提督室の扉まで追い詰められると、佐渡にデコを触られる

その瞬間ビクッと身体を震わせる

そして、そのままうつむき、全身を震わせる

 

 

「おいおい、本当に大丈夫かよ?

何かさっきより、体調悪そうだぞ?変なのでも食べたか?」

 

 

そして、佐渡はデコから肩に触れると、大井の震えが止まり、身体をわなわなと震わせる

 

 

「震えが止まったか、大井大丈夫…」

 

 

「……るな」

 

 

「ん?何か言った…」

 

 

佐渡は大井の顔を覗きこもうとするが、大井が一気に顔を上げる

その瞳は、佐渡を睨んでおり、先程の態度からは考えられない程に怒りに満ちていた

 

 

 

「私に!!触るなぁ!!!」

 

 

瞬間、大井の右ストレートが佐渡の頬に向かって飛んでくる

 

 

「あっぶな!!」

 

 

佐渡は、その瞬間に右ストレートを手で受け止めるが、次は右横腹に鈍い痛みが走る

 

 

「この!!くそったれ!!性欲野獣がぁ!!!」

 

 

「グハァ!!」

 

 

大井の蹴りは中々に強く、流石の佐渡も不意を突かれ、その場に座り込んでしまう

 

 

「おいおい、大井さんやどうし…」

 

 

佐渡が、腹を抱えながら、大井を見上げるが大井は既に脚を振り上げ、踵落としの体制を取っている

 

 

「死ねぇ!!!」

 

 

「わーお、ピンクか

良いもの見たな」

 

 

大井の振り上げた脚で捲れた、スカートの中身を確認しながら、踵落としを左腕で止める

大井は、相変わらず佐渡を睨んでいるが、佐渡は冷静にその状態を楽しんでいる

 

 

「大井さんや、そろそろ下ろさないと俺写真撮っちゃうよ?」

 

 

佐渡は右ポケットから、スマホを取り出し、大井のスカートの中身を撮影しようとすると大井は直ぐ様、振り上げた脚を下ろし、スカートを手で押さえながら、佐渡を睨み付ける

 

 

 

「変態!!!」

 

 

 

「認めよう、俺は変態だっ!!

って、見せてくれたのはそっちじゃないか?」

 

 

大井は睨み付けながらも、顔をほんのりと赤くしており恥ずかしそうだ

一方、佐渡は右横腹を軽く擦りながら、よっこいしょと立ち上がる

 

 

「これだから、男は嫌いなのよ……」

 

 

 

「やっと本性現したなぁ?

男嫌いの猫被りレズ娘?」

 

 

 

大井プロフィールリストの最後欄

彼女の移動理由

 

 

提督兼その他の男性職員に対する過剰な防衛

又、海軍上層部、男性二人への暴行

 

 

この者を小笠原鎮守府へと島流しにする

 

 

 

 



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彼女の選択 ー大井ー

提督室、ソファーに向かい合う様に二人は座っていた

一人はそっぽを向きながらお茶をすすり

一人は煎餅を食べながら、その女の子を見ていた

 

 

「なぁ、それ疲れないか?」

 

 

「貴方に心配される必要はありません

とりあえず口を開かないでください

空気が汚れます」

 

 

こりゃ、叢雲より手厳しなと佐渡は感じながらスマホを取り出す

さっきとうって変わった性格をしている大井

いつもは、猫を被り良い子のふりをしており、怒りだすとこう中身の性格を出すらしい

彼女が、ここに飛ばされた理由の大きな要因はこの男嫌いだ

どうやら、後から大淀さんから聞いて話によると、大井とは男嫌いの傾向があるらしいのだが、彼女は歴代の大井より別格と言うほどに男嫌いらしい

 

 

 

提督は基本的に男であることが多く、彼女はどこに移動になっても触られた提督を殴る蹴る等の暴行をしてしまい正直手に余るらしい

だからと言って、解体するわけにも行かずここに飛ばされた訳だ

 

 

「そっか、じゃあピンク色の下着をSNSに流すわ」

 

 

「撮ったんですか!?

寄越しなさい!!」

 

 

大井は、佐渡からスマホを取り上げようとするが、ひらりと交わしスマホをズボンにしまう

 

 

「それが嫌なら質問に答えてもらおうか?

猫被りの大井さん」

 

 

 

「……良いわよ

その代わり、消しなさいよそれ

あと、猫かぶりって呼ばないで」

 

 

呆れと言うよりは悪態を付きながら、ソファーに座り直し、再びお茶をすする、大井を余所に佐渡は先程の大井の下着写真を消す

 

 

「あーあ、もったいねぇなぁ

もう少し見ていたかったぜ」

 

 

 

「貴方……本当にここの提督なのですか?

ただの、下着写真趣味の変態野郎にしか見えないのですが」

 

 

「ところがどっこい、提督なんだよなぁ」

 

 

大井は深くため息付くと、佐渡を睨み付け、煎餅をかじる

スマホをしまい、お茶をすすると佐渡は本題を話始める為に資料を取り出す

 

 

「見たければ命令すれば良いのに……」

 

 

小さく佐渡に聞こえないように呟くと佐渡から質問される

 

 

「なぁ、この提督を半殺しって本当なのか?」

 

 

「えぇ、やりましたよ?

北上さんに手を出そうとしましたから」

 

 

「北上さん?」

 

 

「貴方……北上さんを知らないの?」

 

 

「あー、悪いな知らん」

 

 

「はぁ?あのですね北上さんはですね……」

 

 

それから、大井の話は止まらなかった

北上さんの可愛さや、美しさ、戦闘の功績等

さっきとはうって代わり、楽しそうにさも自分様に話ししている姿に佐渡は微笑みながら相づちをうちながら聞いていた

 

 

「……なんですよ!!北上さんは凄いんですよ!!」

 

 

「はは、大井は北上さんが大好き何だな?」

 

 

 

佐渡が笑いながら、お茶を飲んでいると大井は気付いたのかふぃっとそっぽを向きお茶を飲みだす

 

 

「と、とりあえず私はやったことに後悔はしていません。

北上さんをあのクズから守れましたからね」

 

 

大井の話を聞きながら、資料を見ると、確かに前任者の提督は下半身不随で提督業を出来なくなったらしく、提督を辞めている

 

 

「成る程?大井の話を聞くに、前提督は北上さんに無理矢理身体関係を持ち出し、それを大井が止めたか

はっ、良い気味だな」

 

 

 

「ええ、ざまぁみろって感じです……

って、え?」

 

 

 

 

 



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彼女の選択 ー大井ー 二

「ん?何だよ?」

 

 

「え?今、何て言いましたか?」

 

 

「嫌だから、良い気味だなって」

 

 

佐渡の予想外過ぎる発言に、大井は衝撃を受ける

何せ、彼女達は

 

 

「何で、提督、人間達が私達『兵器』に肩入れする発言をするんですか?」

 

 

兵器であり、『人間扱い』されるわけがないのだから

 

 

「……チッ、またそれか」

 

 

「北上さんを守るとは言えどやらかした事の大きさを分かっているつもりです

だから、ここに流されたのも……」

 

 

「なぁ、大井?」

 

 

佐渡は、大井の発言を遮りながら立ち上がり、提督室の窓を開ける

 

 

「それが、お前の選択だろ?」

 

 

「え?」

 

 

「だから、それがお前のした選択だろ

何か後悔とかはあるのか?」

 

 

佐渡の話に大井は首をふり、否定する

 

 

「いえ、後悔はないですよ

何せ、北上さんを守れたんですから」

 

 

大井の話を聞いた、佐渡は窓縁に両腕を付きながら、煎餅を頬張りながら少し真面目な面持ちになる

 

 

「なら、俺はそれに関しては何も言わねぇ

うちの奴等にも何も言わせねぇ

良いな?

うちはな、お前達が何をやろうが文句は言わねぇ

どこで何をしてこようがここに来たからにはそんな履歴は関係ない

ただし、二つだけ守ってもらうことがある」

 

 

佐渡の話に唖然としながらも、大井は何でと言わんばかりの顔をしながらも真面目に聞く

 

 

「一つ、ここでは艦娘を兵器として扱わず、一人の兵士、女の子として扱う

 

二つ、轟沈は許さねぇ、どんな理由でもな

 

以上

分かったな?」

 

 

「え、えぇ分かりはしたけど何故ですか?

だって、私達は……」

 

 

そう、言いかけた瞬間に佐渡は大井に近付こうとソファーに向かおうとすると大井の顔がほんの僅かだがひきつる

そして、佐渡は机の上にある資料を拾いあげ、大井の頭をポンっと叩き、戸棚へと向かう

 

 

 

「悪かったな、『男性恐怖症』なのに俺と二人きりにさせちまってな」

 

 

その言葉に、大井は全身を震わせた

隠していたのに、北上さんにもバレて居ないはずなのにと思いながら、佐渡の方向を向く

 

 

「ど、どうして分かったの!?」

 

 

「あぁ?分からないわけないだろ?そんな分かりやすい状態で、俺が近付くときお前は本心から震えてるし、触ったとき顔青ざめてたじゃねぇか」

 

 

「そ、そう……なら」

 

 

 

大井が、言いたいことを察していた佐渡は再び言葉遮り、戸棚を漁りながらお菓子を探す

 

 

「解体はしないぞ?」

 

 

「どうして!?」

 

 

「え?何お前死にたいの?」

 

 

新しいお菓子を戸棚から取り出し、それをソファーに持っていき、再び座る

 

解体

艦娘の艤装を、全て取り除き今までの記憶を消し、人間に戻す事と提督や艦娘に伝えてはあるが、詳細は定かではない

ある提督は、解体後その本人を探したが見付からなかったや本人の記録が海軍から消されてたり等で、今では解体=死と理解されているからである

実際、明石さんも知らないと言ってはいるが……

 

 

「だ、だって……

私は男が…」

 

 

 

「別に、俺と会わなくても仕事は出来るだろ?

哨戒も資料整理でも、報告は二人に任せれば言いし、ここは人手が足りないんだよ

分かれ」

 

 

そう言うと、佐渡は新しく持ってきたお菓子を頬張りながら、資料をゴミ箱に捨てる

 

 

「まぁ、それよりもっと

お前のその症状は、どれ程なんだ?

話すのが駄目か?それとも見るのも駄目か?

あ、もしかして同じ空間が嫌か?

となると……」

 

 

「どうして!!」

 

 

佐渡は、考えていると大井の大声に遮られ、話を辞めてしまう

 

 

「どうして……

私は…欠陥品なんですよ…

男性恐怖症と言う、艦娘が持ってはいけない病を煩いながらも、そこまで気をかけるの…?

早く解体して…

次の大井を建造すれば良いじゃない…」

 

 

 

大井の眼には、うっすらと涙が見え佐渡はその大井に袋に入ったドーナツを投げ付ける

 

 

 

「いたっ、何するのよ!?」

 

 

「命令違反の罰だ、次はウニの殻当てるぞ?」

 

 

 



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彼女の選択 ー大井ー 三

大井は、発言を思い出すが、それでも立ち上がる佐渡にくってかかる

 

 

「だ、だって!!」

 

 

「うるせぇ!!お前は黙ってそこでお茶してろ!!」

 

 

機嫌が悪そうにしながら、佐渡は机に座り、執務を開始する

その時大井が、立ち上がり、佐渡に自ら近付いていく

 

 

「……何だ?お茶してろと言ったよな?」

 

 

「えぇ、そんなことより執務は私がやりますから提督はなにもしないでください」

 

 

大井は、机の上にある書類をとろうとするが、佐渡は持っていたボールペンで大井の手を叩く

 

 

「いたっ!何するんですか!?」

 

 

「うっせ、お前は休んでろ

後で、鎮守府内案内してやるから」

 

 

佐渡は、そう言うと書類に眼を通していく、だがそれでも大井は書類を持っていく

 

 

「戻さないとその胸部装甲揉むぞ?」

 

 

「良いですよ、馴れてますし」

 

 

「良いのかよ………何だと?」

 

 

流石の佐渡もそれだけは聞き捨てならずに、動かしている手を止め、大井の肩を掴む

 

 

「待て、何て言った?」

 

 

「だから、命令ならどうぞ何でもお使いください

性的な事は馴れてますと言ったのです

あ、でも私暴れますのでキチンと手錠をしてくださいね」

 

 

「……成る程?」

 

 

大井の発言を聞いた佐渡は、静かに答え書類を置くと、お茶を飲み一息つくが大井に確認を取る

 

 

「それはなんだ、お前前提督と身体の関係があったのか?」

 

 

「えぇ、北上さんに手を出さないと言う理由でね

ただし、おさわりだけよ

それ以上は許してないけどね」

 

 

「それで、あれか、戦艦や空母の盾になってたのか?」

 

 

「っ!そ、そうよ」

 

 

 

「ついでに言うと、提督の執務もやってたのか」

 

 

「えぇ」

 

 

 

確認しおわり、佐渡はお茶を飲みきりふぅとため息を付くと、怒りの余り壁を思い切り殴る

木造の壁はバキッと鈍い音をたて、佐渡の拳サイズの穴を開ける

大井は、突然の事に驚き持っていた書類を床に落とす

 

「ちょっと!何してるのよ!!」

 

 

「あぁ?ああ、気にすんな……

大井、じゃあ命令なら聞くんだな

命令だ」

 

 

佐渡は拳を引き抜くと、木片等が刺さり、血だらけになっているが佐渡は気付いておらず、拳を開くと血が滴り落ちる

 

 

「な、何?」

 

 

大井は、先程までの佐渡と明らかに様子が可笑しいことに気付きながら恐る恐る聞く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日一日何もするな」

 

 

佐渡の意味がわからない命令に、大井は困惑していると佐渡はフラフラと大井に近付くが大井は後退りをする

だが佐渡は歩みを止めない

 

 

「な、なんですか!一体何がしたっ!」

 

 

大井の声は再び、遮られる

佐渡の血まみれになった片腕の抱擁によって

 

 

「は、放せ!!私に寄るな!!」

 

 

大井は、佐渡の横腹や脚に蹴りを入れているが、佐渡は動じず、全身を震わせる

しばらく、蹴っていると妙な安心感に襲われ、大井は攻撃を辞める

夢中になりながら、蹴っていたから佐渡の状態に気付かなかった

頭の上から冷たい何かが降ってきているのにもその時気付いた

 

 

 

「何をして………え?」

 

 

 

大井は、佐渡の胸から顔を除き混むと、突然のことに驚く

ありえないと思っていた、だって私は兵器だから、見た目だけは人間の兵器だから

こいつもどんな事を言っていても、上部だけだと

 

だから……何故貴方は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

泣いてるのか分からない

 

 

 

 

「ごめん……

ごめんな……

でも、今だけこうさせてくれ……」

 

 

佐渡は血まみれではない、手で顔を抑え必死に涙を大井にかけまいとしているが当然そんなこと出来ない

 

 

「な、何で……」

 

 

あり得ない、何故この男は泣いてるの?

眼にゴミが?それとも私に対して…?

嘘よ、嘘よ!!!

あり得ない!!

だってこいつは男で提督なのだから……

 

 

そう思っていると、佐渡は大井抱き寄せ、顔を埋めさせる

血に濡れた手を払い、頭を優しく撫でながらずっとごめんと呟きながら

 

 

 

 



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彼女の選択 ー大井ー 四

しばらくして、提督室

部屋の中に、変な空気が流れていた

それはそうだ、さっきまで大の大人が高校生位の女の子を抱きながら、泣いていたんだから

 

 

「あー、うん何だその大井」

 

 

「……何」

 

 

「さっきのは見なかったことにしてくれ

その代わりお前の言うこと一つ聞くから」

 

 

「……別に良いですよ

……気にしないでください」

 

 

佐渡は、恥ずかしそうに頬をポリポリ掻いているが、大井はそっぽを向いている

さっきの佐渡の涙を考えながら

 

 

「とにかくだ!!ここではお前は自由だ!好きにやれっといててて……」

 

 

佐渡が立ち上がると、横腹を押さえながら大井の頭を優しく撫でる

 

 

「良く頑張ったな

辛かったろ?もう我慢しなくて良いんだからな」

 

 

大井はその言葉に、うっすらと涙を浮かべるが強気になり佐渡の手を払いのける

 

 

「……触らないで」

 

 

 

「お、悪い悪い」

 

 

それだけ、言うと佐渡は提督室を後にする

大井一人だけ残された提督室には静けさが残る

先程から言われた佐渡からの言葉を思い出しながら

 

 

「……何なのあいつ

ワケわかんない……」

 

 

 

『ごめん…ごめんな……』

 

 

「何で泣くのよ、こんなこと普通でしょ……?」

 

 

 

『とにかくだ!!ここではお前は自由だ!!ってて』

 

 

「…………蹴ったこと…怒りなさいよ…」

 

 

大井は、両手で頭を抱えながら、下を向き

ガシガシと頭を掻きながら、意味が分からずどうすれば良いか悩むが最後の一言に限界を迎えてしまった

 

 

 

『良く頑張ったな

辛かったろ?もう我慢しなくて良いんだからな』

 

 

「………グスッ

優しくするなぁ………

私は……私は……」

 

 

ソファーに倒れこみ、両手で顔を押さえながら、声を押し殺しながら泣いていた

今までの事とは全く違う扱いを受ける戸惑いと、やっと終った悪夢から解放された喜びと、あの男にした暴力への罪悪感の入り交じった感情と共に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いてて、流石だなあいつ……」

 

 

佐渡は、横腹を押さえながら、廊下を歩いていた

そして、スマホを取り出し、ある人物に電話をかける

 

 

 

「あー、もしもし、大淀さん?

ちょっとお願いがあるんですけど……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは?どこ……?

私はさっきまで……

 

 

 

少女は見たことある、ベッドに寝ていた

分かっていた、でも分かりたくなかった

あぁ、さっきのは自分が夢見ていた事だと思いながら、ベッドから起きる

二段ベッド上からは、愛しの女の子の寝息が聞こえる中服を制服に整え

起こさないように、部屋の扉を締め

ある部屋に向かう

忌々しい、部屋に

 

 

しばらく歩くと、そこにたどり着くそこには提督の自室と書かれた看板がある

 

そして、理解する先程まで見ていた世界が夢で今が現実なのだと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐世保鎮守府

大井が居た、木原淳也(きはらしゅんや)が運営する

駆逐艦と軽巡を不当に扱う

ブラック鎮守府




果たしてこれは夢か
それとも現実か


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彼女の選択 ー大井ー 五

友を守るためにどこまで自分を捨てられる?


「失礼致します」

 

大井は提督室の扉をノックし、扉を開き中に居る起きたばかりの木原に声をかける

 

 

「おはようございます提督」

 

 

「おぉ、おはよう大井ちゃん?

では早速だけど部屋の掃除を頼むわ」

 

 

「はい、分かりました」

 

 

ここでの大井の仕事は、雑務と執務がメインであり、木原の身の回りの世話も全てこなしていた

不意に部屋の布団を畳んでいた、大井の胸を後ろから木原は触りだす

 

 

「相変わらず良い胸だなぁ?

何でこの胸部装甲で軽巡何だかねぇ?」

 

 

「さぁ、どうしてでしょうか?」

 

 

大井は、必死に表の顔で笑顔を作りながら木原のセクハラに耐えていた

その触られてる間、大井は嫌悪感しか覚えずに吐き気を催す

だが、気付かれてはいけない、気付かれれば北上は…

 

 

「へへ、大井は従順だなぁ?

まぁ抵抗すれば北上を……」

 

 

「あの人には手を出さないで!!!」

 

 

「おっと大丈夫だっての

お前が大人しく俺の身の回りを全部やれば手を出さねぇよ」

 

 

大井の胸を離すと木原は、驚きながらもテレビの電源とゲーム機を付け、ごろんと寝転がるといつも通り、大井に指示をだす

 

 

「んじゃ、いつも通り、執務と資材庫の掃除

あと、飯も頼むわ」

 

 

「はい、失礼致します」

 

 

部屋を後にすると、トイレの個室に駆け込み胃酸を必死にはいてしまう

我慢しないと……じゃないと北上さんが…

 

 

大井が、こうなってるのも実は理由がある

つい一週間前に、大井と北上がこの鎮守府に同時に配属されたのだが、その二日後に二人は空母達の壁として使われた

それにろくに食事も与えられず、入渠もされずに

それでも、二人は何とかお互いを慰め合いながらやっていた

いつか、こんな生活が終わるものだと思い

そして、廊下を一人で歩いていた大井は聞いてしまった

木原とある秘書艦の話を

 

 

「あー、何て言ったっけ。

あの軽巡、大井と北上だっけか?」

 

 

「それがどうした?」

 

 

「二人とも盾にも使えねぇけど、大井は使い道があるけど北上は駄目だなありゃ

解体も申請書書くの面倒だし、『取引』で轟沈させるか」

 

 

それを聞いた大井は、脚を止める

大事な仲間を、友人を死なせるわけにいかない

その瞬間大井は、扉を開け言っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お願いします!!!

北上さんを轟沈させないでください!!!

私があの人の変わりに何でもやりますから!!」

 

 

 

 

そして、今に至る

北上に手を出さない、轟沈させないを条件に大井は、嫌いな男であり、提督の身の回りを世話をしている

トイレから出てくると、顔を洗い、髪と服装を整え執務室に向かう

今日も北上さんの為に頑張ると胸に誓い

 

 

「大井っちー!」

 

 

後ろから、愛しの北上の声が聞こえ、振り替えるとこちらに向かい手をふる北上の姿があった

北上を待つために歩みを止め、二人で歩いていく

この時間が大井にとって、至福の時だった

 

 

「おはようございます!北上さん!

怪我はもう大丈夫なの?」

 

 

「うん、北上様だよ~?

このくらい何ともないさ!」

 

 

二人が仲良く歩いていると、目の前からフラフラと歩く小さな影が北上に当たってしまう

 

 

「おぉー?大丈夫か?駆逐艦?」

 

 

北上は、その駆逐艦の肩を掴むとその瞬間に彼女は北上の手を払い廊下に土下座をする

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい」

 

 

「おー、落ち着けー」

 

 

「そうよ?私達は軽巡よ?」

 

 

駆逐艦の少女は、顔を上げると二人の顔を見て安心して、立ち上がり、そのまま再びフラフラと歩きだす

傷だらけの身体で

 

 

この鎮守府では、あんなのが当たり前だ

これが、当たり前なのが普通なのか、分からないが、みんなあんなもんだ

 

 

 

 



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彼女の選択 ー大井ー 六

この鎮守府では、戦艦、空母等は重宝される

だがその反面、軽巡と駆逐艦は基本的には運用されない

兵器としてではなく、ただの肉壁として 

通常なら、資材が足りなくなる為に、遠征任務を酷使するはずなのにここではそれをしない

何故かは分からない

でも、決まって『誰かが轟沈すると資材が増える』

恐らく、轟沈するかしないのギリギリで活躍して、資材を受け取っていると大井は思っていた

この時は、そんなことより北上の事で頭が一杯だったのだから

 

 

「あ、大井っち私行かないと」

 

 

「え?北上さん何かあるんですか?」

 

 

大井は不思議がっていた、何せ木原との取引で北上を守っているはずだからなのに何故?

と考えていると北上から予想外の返事が来る

 

 

「実はさー、今日海軍のお偉いさんが来るんだって~

だから、そのお出迎えを頼むだってさ

しかも、海から来るらしいからこのあと戦艦達と迎えにいくんだ~」

 

 

 

「そ、そうなんですか……

気を付けてくださいね!」

 

 

北上の久しぶりの出撃に応援を入れると、北上はうんーと言いながらのんびりとしながら別方向に歩いていく

 

 

「じゃ、またね大井っち~」

 

 

 

「はい!また後で!」

 

 

階段の所で、大井と北上は別れ、別々に歩いていくと大井の目の前に見馴れない戦艦がこちらに向かってあるいてくる

大井は、廊下の端に避け頭を下げる

ここでは、これが普通なのだ

戦艦や空母が廊下を歩いていたら、端に立ち頭を下げる

ではないと、戦艦達に殴られるから

決まって同じ台詞を吐いて

 

 

「貴様ら程度の兵器が、我々の歩く道の眼に入るな目障りだ」

 

 

 

だがその戦艦は歩いていたが、大井のその状態を可笑しく思ったのか大井の横で立ち止まる

 

 

「HEY?そこのyou?何故貴女も頭を下げてるんデスカー?」

 

 

半分英語混じりで喋るこの方は、恐らくアメリカ艦の戦艦なのだろうと大井は思いながらも、頭を下げるを辞めない

 

 

「いえ、戦艦様が歩く道を邪魔したくないからでございます」 

 

 

「oh…

何か、ここに居る子達は皆同じことを言いマスねぇ……

では、えっとyou、nameは?」

 

 

大井は、何故こんなにも私(軽巡)なんかと話をされているのか?と思いながらも質問に答える

 

 

「球磨型 四番艦 大井です」

 

 

「大井ですか!meはIowa(アイオワ)です

どうぞよろしく!!」

 

 

戦艦、アイオワは大井に手を差しのべるが、大井は手をとらない

…いや、取れない。

とれば、恐らくそのまま、他の戦艦に撃たれる可能性があるからである

 

 

「むぅ……meと握手もしてくれませんか…」

 

 

「はい、誠に申し訳ありませんが」

 

 

 

アイオワは難しい顔をするが、無理矢理大井の両手を取り、ブンブンと握手をする

 

 

「よろしくーネ!!」

 

 

手を取られた大井は、他所を向いているがアイオワは満面の笑みだ

アイオワは手を離すと、大井の頭に口を近付け頬を吊り上げ怪しく微笑みながら小さく呟く

 

 

「二一〇〇(ふたいちまるまる)に、執務室にGOよ」

 

 

 




その囁きは何を意味する?


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彼女の選択 ー大井ー 七

「……え?」

 

 

「じゃ、good-bye!大井!!」

 

 

「ちょっとまっ……!!!」

 

 

アイオワに、詳しく尋ねようとしたが、アイワナの行く手に別の戦艦が見えてしまい慌てて頭を下げる

 

 

「アイオワ、あれと何を話していたんだ?」

 

 

「んー?ちょっとしたアドバイスですよ?」

 

 

そうかともう一人の戦艦は、アイオワと歩き始めるが、アイオワは歩みを止め、大井の事をチラッと見る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

「そう、アドバイスよ…

ふふふ」

 

 

 

 

 

アイオワは、口元を不気味に吊り上げながら、目の前を歩く戦艦に悟らせない程に上手く隠しながら、再び笑顔になり戦艦に付いていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大井は二人が居なくなったのを確認すると、頭を上げ先程までのアイオワの言葉を思い出す

二一○○……

その時間は、確か海軍のお偉いさんが二人執務室に来るはずだけどなんなのだろうか…

と思っているが近くの時計が八時を知らせるとそんなことより執務をしないと行けないのを思い出し、早歩きで食堂に向かう

 

 

食堂につくと、いつもの朝食セットを食券を購入し、食堂のおばさんに持っていく

 

 

「あら?大井ちゃんおはよう!」

 

 

「おはようございます」

 

 

食券を持っていくと、この食堂のおばさんが出てきて挨拶をしてくれる

この鎮守府の、数少ない『普通』の人間だ

おばさんは、テーブルに両手を付き食券を切り、他の方に渡すと「ちょっと待って」と大井を引き留める

 

 

「これ!うちで作ってきた佃煮何だけどさ、味見がてら貰ってくれない?」

 

 

「い、いえ!悪いですよ!!」

 

 

「いーのいーの!!いつも提督の世話してるんだから頑張ってね!」

 

 

おばさんは、無理矢理大井にタッパーに入った佃煮を押し付けると、ヒラヒラと手をふり、朝食セットの準備をする

大井は、申し訳なさそうにお辞儀をすると、その佃煮を直ぐ様艤装の中に隠す

 

 

しばらくして、朝食セットが出来上がり、それを取りに行き、そのまま提督室へと持っていく

その最中に、何度か空母達とすれ違うが、先程までの様に端には避けない

空母達も、大井を避けていく

下手に手をだすとこちらが木原に何をされるのか分からないからである

前に邪魔だと殴った戦艦が、『不慮の事故』で轟沈したと言う話を聞いたが空母達は、大井とすれ違う途中に舌打ちをする

 

 

提督室に着くと、扉を叩き部屋を開ける

 

 

「提督、朝食です」

 

 

提督室では、木原が電気も付けずにゲームに集中しており、大井に気付かない

大井は、木原が終わりそうなタイミングを待ち、そのまま立っている

少しすると、木原がゲームのコントローラーを置き煙草吸おうとしたところ再び声をかける

 

 

「お食事です、提督」

 

 

「んー」

 

 

 

 



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彼女の選択 ー大井ー 八

大井から、朝食を貰うと木原は「そう言えば」と言い、ポケットから携帯を取り出し

部屋の電気をつける

 

 

「大井、脱げ」

 

 

「………え?」

 

 

木原の発言に、驚きを隠せない大井は戸惑いを隠せず後退りをする

すると、木原は大井に近付き、睨み付けながらドアを蹴りつける

 

 

「命令だ、早くしろ」

 

 

「……はい」

 

 

大井は震えながら、着ている衣類を脱ぎだすと、木原はニヤニヤとしながら、それを眺めている

服を全て脱ぎ終わると、両手で秘部を隠そうとするが木原に止められる

 

 

「隠すな、敬礼」

 

 

「………はい」

 

 

木原の命令に逆らえるわけなく敬礼をすると、パシャっとカメラ音がする

 

 

「ど、どうして!!」

 

 

「あぁ?今度上官がな、うちに来るんだけどお前を抱きたいんだってよ

んで、その写真だ」

 

 

大井はその言葉に、顔を青ざめる

大嫌いな男に身体を許す、これがどれ程キツいものかこいつには分かるまい

例えるなら、全裸の状態でミミズ風呂に入れられてるほどに気持ち悪い事なのだ

その様子を木原は、ニヤニヤしながら見ている

 

 

「まぁ、断るなら北上を…」

 

 

「やります!!やらせてください!!」

 

 

大井は、全裸の状態で木原に土下座する。

その様子を見た、木原は大井の頭を踏みつけ上機嫌になる

 

 

「そうそう、その意気だぞぉ?

にしても、本当に良い身体してるよなぁ……

ここで、味見してみるか?」

 

 

木原は、脚を退け大井の髪を持ち上げ大井の全身を舐めまわす様に見る

気持ち悪い、吐きそう

大井はそれだけを感じながら、人形の様にただ耐えている

 

 

「んー、だが上官は処女が良いって言ってたし……

仕方ねぇ、後で別の奴でも使うか

良し、行っていいぞ」

 

 

掴んでいた手を放し、大井を床に落とすと木原は再び煙草を吸い始める

そそくさと、服をまとめ大井は「失礼致します」と言い部屋を後にする

 

 

直ぐ様、近くの部屋に入り服を再び着てトイレの個室に駆け込む

そして、今朝と同じように胃酸を吐き出す

気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い

 

ただ、それだけが大井の心を支配していた

 

 

少しすると、個室から出て再び鏡で身だしなみをチェックするとトイレから出る

 

 

「でも、耐えないとね

北上さんの為に

そうだ、佃煮……」

 

 

艤装から、佃煮を取り出して中身を確認する

 

 

「……良し、味、匂い問題なし

これなら、北上さんも喜んでくれるかな?」

 

 

「今日も北上さんの為に頑張ろう!!」

 

 

そして、再び艤装に佃煮をしまい、頬を叩き気合いを入れ執務室に向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大井っち……」

 

 

それを影から見ている者が居るとも知らずに

 

 

 

 



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彼女の選択 ー大井ー 九





執務室に着くと、書類が山盛りな状態で放置されてあり大井はいつも通りだなと思いながら、席に着き執務を始める

 

 

ここでの執務は基本的に、この鎮守府より上の階級の人達の後処理が主であり、正直辛くはない

しかも、出撃がやたら少ない

遠征はある程度メンバーが固定されているが、基本的には帰ってくるのは二日に一度

だが、帰ってきてはすぐにまた出かける

まともな補給もせずに 

 

 

 

「今日は……

北方海域の攻略位か…」

 

 

北方海域、実のところ危険度が低く、轟沈する確率が最も低く安全な海域

良くわからないが、あそこに姫級が二人居るらしいのだがその姫級や深海艦隊は艦娘を轟沈させることが少ないらしい

あそこでの轟沈は、精々帰投する際に運が悪くはぐれ艦隊と遭遇し、戦艦達が駆逐艦達を盾にしなければ大丈夫と言うこと

それに、あそこは場所は限られるが、漁業が出来ることから攻略する優先度は低いとされる

 

 

 

だからと言って、その二人は弱いわけではない

ここ最近、戦艦1空母2駆逐艦2軽巡1の艦隊と戦艦2装甲空母1軽巡3を送り込んでいるのに全く戦果が取れないのだ

 

 

 

戦艦達が言うには、あそこの一人の姫級がかなり強く、歯が立たないらしい

それでも、あそこに木原が艦隊を向かわせるのはある目撃情報かららしい

そこにはごく稀にある、深海棲艦が見付かるらしい

 

 

 

 

歴戦の空母棲姫である

何故かは分からない、だが四ヶ月程前にある鎮守府の艦隊が帰投途中に遭遇したらしく、その時は何とかして逃げたらしい

その後、数回位北方海域に居ることが確認されている

だが、どれも戦闘をしたことが無いらしく実力は不明

それを聞いた木原はそれを撃破するために艦隊を送り込んでいるのだ

 

 

「……どうせ今回も駄目なんだろうな」

 

 

大井はそんなことを呟きながら、執務に取りかかる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー……今日の分は終わりかしら?」

 

 

大井は執務の大半を終わらせ、時間を見るといつの間にか20時を回っていた

そろそろお風呂入ろうかなと考えていると、執務室の扉が開き見たくもない奴が顔を見せ、大井は敬礼をする

 

 

「大井、執務ご苦労様

戻って明日のために寝ろ」

 

 

「はい」

 

 

木原は、制服を見にまとい先程まで大井が仕事をしていた書類を見る

それを横目に大井は、執務室を後にする

大井は、その脚でそのままお風呂に向かい

服を脱ぐと湯船に浸かり

今日の疲れを癒す

 

 

「ふぅ……今日も終わりかぁ……」

 

 

この鎮守府は、終わりが他の鎮守府より早く幸い夜遅くまでは運営しておらず、夜7時には全員お風呂を終わらせているため風呂には大井だけしか居ない

 

 

「……北上さんへのお土産もあるし、今日は早く戻りましょう」

 

 

大井は湯船から上がり、髪を乾かしていると廊下に人の気配を感じて静かにする

廊下からは二人の男の声が聞こえる

 

 

『今晩ですかぁ、楽しみですなぁ』

 

 

『あぁ、久しぶりの女だからなぁ』

 

 

恐らく、海軍上層部の誰かだろうと思いながら、怪訝そうな顔をしながら静かに風呂の扉を開ける

二人の人影は、真っ直ぐ執務室に向かっており、再び脱衣場に、戻り髪を乾かす

 

 

『二一○○に、執務室にGOよ』

 

 

ふと、今日アイオワに言われた言葉が頭をよぎり時計を確認する

時計は20時50分を指しており、そろそろか……

と思いながら、髪を乾かし終わると脱衣場を後にする

 

 

自室の前に着くと、扉の音を立てないように開き中に居るはずの愛しの友人を起こさないようにするが、少し異変に気付く

気配がない、いや勘違いかな?と思いながら二段ベッドの上を覗く

 

 

「北上さーん?居ますかぁ~?」

 

 

だが、居ない

朝起きて動いた様に、布団が乱雑になっており、どうしてと思いながらもトイレかしらと思い

艤装から佃煮を取り出すとそれと一緒に艦娘携帯食を取り出し

大井は、艦娘携帯食を食べる

艦娘携帯食は、見た目はカロリー○イト見たいな感じの携帯食で味はない

 

 

 

「……相変わらず味がないなぁ…

北上さん、まだかなぁ……」

 

 

電気を付け、佃煮の香りを楽しみながら艦娘携帯食を食べ終わり時間を気にする

時刻は21時を越えており、布団に転がる

 

 

「……何だろう胸騒ぎがするわ」

 

 

 

アイオワの言葉を気にしながら、大井は部屋を後にし、北上を探しに鎮守府内を歩き回る

 

 

すると、執務室の扉から光が見える

大井は、足音を消すように忍び足で歩いていると部屋から声が聞こえる

 

 

『やっぱり、若い女は良い身体ですなぁ?』

 

 

『張りのある肌、これが兵器かぁ…

惜しいなぁ、うちに一人欲しいですなぁ』

 

 

『良ければ、駆逐艦でしたら密かにお譲りしましょうか?』

 

 

『本当かね木原君!?では、この子が欲しいねぇ』

 

 

相変わらず、胸糞悪い連中ね

と大井は思いながら、通りすぎようとするが中から聞こえたもう一つの声に足が止まる

 

 

「や、やだ!!やめてよ!!」

 

 

「……え?北上さん?」

 

 

 

 

 

 

 



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彼女の選択 ー大井ー 十

そして、彼女は選ぶ友か現在か


その声に身体が凍り付く様に固まる

え?何で?嘘?どうして?

大井の身体勝手に動いており、執務室の扉を開けており

目の前の光景に、言葉を失う

扉は、勢い開けたらしくその反動で直ぐにしまってしまう

 

「ん?何だね?」

 

 

「おい、大井何しに来た?」

 

 

「艦娘か?何の用かね?」

 

 

そんな声より大井の視線は別の方に向いていた

愛しの北上さんが、服を剥がされ執務室の机に押さえ付けられている

 

 

「どう……して?」

 

 

「うちの艦娘が失礼しました直ぐに追い払いますので」

 

 

木原は、大井の肩を掴み外に出そうとする

だが、大井は木原の両腕を掴み声を荒げる

 

 

「どうして!?するなら私でしょ!!

北上さんには何もしないって!!」

 

 

「ん?あぁ、あれか。

俺は守ってるじゃないか?」

 

 

大井ははぁ?と、言わんばかりに顔をするが、木原はニヤリと笑いながら大井に続ける

 

 

『俺はなにもしてないだろ?なぁ?』

 

 

木原の言葉に、大井は絶望する

確かに間違っていない、『木原はなにもしてない木原の上司が襲っているだけなのだから』

大井が、肩を震わせていると木原は再び上司の二人に向き直り

 

 

「どうぞ、ご堪能くださいませ!

これの事には気にしないでくださいませ」

 

 

木原は、頭を人差し指でトントンと叩くと、大井を嘲笑う

 

 

「軽巡風情が、俺に逆らうな

所詮貴様らは兵器何だからな?

大人しく人間様の言うことでも聞いとけや」

 

 

「それもそうだな!では楽しませてもらおうか」

 

 

上司が北上に再び手を出そうとする、大井は見ていることしか出来ない

こんな奴……殺してやる!!

でも、一人で三人なんて相手には……

大井が、脚を軽く動かすと何かに脚に当たる

当たったそれを大井は拾い上げると、それが何かを理解する

 

 

酸素魚雷、それも5連装である

何故、ここにこれがと思っていると後ろの扉が少し空いており声が聞こえる

 

 

『今晩わ大井さん、それは私からのプレゼントよ』

 

 

知らない声、間違いなくここの鎮守府の人間じゃない、だが大井にそんなこと考える余裕が無かった

その声はそのまま続け、大井に囁く

 

 

『目の前に友人が襲われているのに静観していて良いの?

貴女は、見てるだけしかしないの?

あんなに努力してたのに、それは誰の為?

嫌いな男に媚売って、裸を見せたのに?』

 

 

その言葉に、大井は沸々と今までされてきた事に怒りと同時にどす黒い感情が支配し、酸素魚雷握る手の力も必然と強くなる

 

 

『ほら、彼女を見なさい?

 

 

貴女に助けを求めてるわよ?』

 

 

見知らぬ女性の言葉に、大井はハッとすると北上は涙を流しながら、大井を見ており小さく呟いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「助けて………大井っち……」

 

 

 

 

「私の北上さんに触るなぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

 

 

その言葉に、大井は感情を抑えられなくなった、酸素魚雷でまずは木原を後ろから殴りそれを見た上司の男は怯み、持っていた酸素魚雷を一人に投げつけると男の顔面に直撃し当たり所が悪かったのか、そのまま気絶

北上を押さえ付けていた男の胸ぐらを掴みそのまま投げる

女とは言えど艤装を付けている為に力は大井の方がある

 

 

 

正直、大井が覚えているのはここまでであり、このあとは全く記憶が無いらしい

匿名より「佐世保鎮守府の執務室で艦娘があばれている」と通報を受けた憲兵が四人で乗り込んだとき状況が酷かった

気絶した、北上を抱き抱える大井に回りに転がる海軍上層部の男二人

そして、ボロボロの木原提督

しかも、執務室に脚を踏み入れようとした、男の憲兵に大井は襲いかかったそうだ

うわ言の様に「死ね」と連呼して、男のみを狙っているらしく他の艦娘に押さえ付けられやっと止まった

押さえ付けられた、直後彼女は気を失い

この事件は幕を閉じた

ただ、大井は木原に対しかなりの怒りがあったらしく木原だけは重態だったらしい

 

 

捕まっている間も男に近寄らずに触られれば無意識に暴力を振るうなどしており

 

 

裁判の結果

 

 

 

大井は小笠原鎮守府へと島流しの刑に処された

 

 

 

 

 

 

 

 




貴方はどう思う?
彼女の選択を


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二度目の選択 ー選べ歩む道をー

「……夢?」

 

 

大井は起き上がると、部屋を見渡すとそこは提督室でもなく、佐世保の自分の部屋でない

誰か女性の部屋である

結構広く、恐らく畳8畳分はある

二段ベッドの下に寝かされており、ベッドから出て部屋を見渡すと机にカーペットがあり、大井は脚をかける

 

 

「起きた?大井さん」

 

 

不意に、二段ベッドの上から声がする為ベッドから出るとそこには叢雲が座っており、大井を見下ろしていた

 

 

「随分とうなされてたわね?それともあいつに泣かされた?大丈夫?」

 

 

叢雲は飛び降りると大井を心配するように覗き込む

だが大井はいつも通りに猫かぶりを使い、叢雲に心配をかけないようにする

 

 

「いえ!大丈夫ですよ、ありがとうございます!」

 

 

「ふーん……」

 

 

大井は作り笑いをしていると叢雲は大井の顔をじっと見つめ言い放つ

 

 

「その言葉は、嘘ね間違いないわ」

 

 

「…え?」

 

 

叢雲は、大井の脚を払うと大井は倒れそうになるが叢雲がそれを掴みそのままベッドに座らせ、ブランケットをソファーから取り大井に渡す

 

 

「貴女、嘘が下手ね?

しかもかなり」

 

 

「え?え?」

 

 

不意を付かれた、大井は困惑しながらも叢雲の持ってきたブランケットを羽織る

 

 

「んで、いーつまで猫被ってるの?」

 

 

 

「!?ど、どうして……」

 

 

驚きの連続で大井は、先程より混乱しっぱなしだ

叢雲は微笑むと、ソファーに座りゆっくりとする

 

 

「だって、分かりやすいんだもん貴女

あ、これから私も大井って呼ぶからそっちも叢雲って呼んでね?

私、敬語とか苦手なのよ」

 

 

叢雲は、そう言うと資料を手に取りゴロンとしながら、ソファーに寝転ぶ

大井は、ブランケットを顔に当てながらそんなに分かりやすいかな?と思いながら顔を伏せる

 

 

「にしても、貴女凄いのね

ここまでやるなんて中々よ?」

 

 

「……え?」

 

 

 

転がりながら資料を見ている叢雲は、微笑みながら大井に向き直る

叢雲が見ている資料と言うのは、大井が起こした事件の全容だ

 

 

「み、見ないで!!」

 

 

大井は直ぐ様それを叢雲から奪うと、叢雲は面白いのに……と言いながら再び転がる

 

 

 

「私がどれだけの事をしたか

何をしてきたかを知ったんですね」

 

 

「えぇ」

 

 

「……どう思いますか?こんな兵器」

 

 

大井は感想を恐る恐る聞くが、叢雲は顎に手を当て考え込む

そして、暇そうに転がりながら答える

 

 

「良いんじゃない?」

 

 

「……え?」

 

 

叢雲から返ってくる予想外の発言に、大井は拍子抜けをくらう

そして、大井を見つめながら叢雲は大井に続ける

 

 

「別に?間違ってないと思うわよ?

友人が襲われていて、それを助けた

それの何が悪いの?

私だって古鷹が襲われていたら同じことをしていたわ」

 

 

叢雲の堂々とした発言に大井は唖然とする

自分がしたことを間違ってないと言う人は初めてだった

友人を助けるとは言えど、海軍の上層部と提督に暴力を振るう

これがどれ程のことか

 

 

叢雲は不意に立ち上がり、座っている大井を軽く抱き締める

 

 

「ここでは大丈夫よ

もう、何があっても私達が貴女を守るわ

任せなさい」

 

 

その言葉と行動に、一瞬佐渡を思い出す

今まで見てきた人間達や艦娘達とは大違いすぎて、大井の思考は追い付かない

少し、何か裏があるんじゃないかとも思う

でも、何故かその叢雲の包容に安心感がある

 

 

大井は再び涙ぐむと部屋の扉が開き大声でもう一人の艦娘の声が聞こえる

 

 

 

「あ、大井さん!起きても大丈夫ですか?

うなされていましたが?どこか悪いところがありますか?」

 

 

 



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二度目の選択 ー選べ歩む道をー 二

古鷹は、クッキーと紅茶をテーブルに置くと叢雲が離れ大井の身体をくまなく見ていると小さく「うん!」と頷くと机の側に座る

 

 

「身体は大丈夫みたいだね!

それにしても、ビックリしたよ……

哨戒任務の結果報告に、提督室に行ったら大井さん、ソファーに眼を腫らして寝ているんだもん

何か嫌なことでもあったの?」

 

 

「っ!ご、ごめんなさい!私あんなところで寝てしまってたんですね!」

 

 

その発言に、叢雲が大井の頭をコツンと叩く

そこまで、痛くは無いが叢雲を見上げる

 

 

「敬語、ここでは使わなくて良いのよ」

 

 

「でも」

 

 

「でもも無し、良いわね?」

 

 

叢雲はそう言うと、古鷹が持ってきたクッキーと紅茶を食べようとテーブルに向かう

頭を押さえながら大井は、唖然としていると古鷹が手招きをする

 

 

「大井さんもこっち来なよ!

今日は美味しく焼けたんだよ!」

 

 

「うん、美味しいわね

大井、食べないなら私が全部食べちゃうわよ?」

 

 

「あー!叢雲駄目だよ!

今日は大井さんの為に焼いたんだから!!」

 

 

叢雲はお構い無しに、クッキーを食べ、古鷹がそれを阻止しようとクッキーの皿を取り上げる

先程、大井が夢に見ていた光景では絶対にあり得ない現実

これが夢なんじゃないかと不安にもなり同時に

 

 

「北上さんも居れば良いのに」

 

 

と呟いてしまい、それを聞いた二人は大井に向き直る。

視線に気付いた大井は慌てて口を抑え、頭を下げる

 

 

 

「ご、ごめんなさ…」

 

 

「ねぇ?その北上さんってどんな人?」

 

 

「……え?」

 

 

叢雲は、食べる手を辞め紅茶に切り替えるとと次は古鷹が聞いてくる

 

 

「私も聞きたい!

夢の中で北上さんって言ってたから知りたいな!!」

 

 

 

二人の視線に、大井は照れながらも立ち上がり、テーブルの側に座る  

 

 

「長くなるけど良い?」

 

 

「構わないわよ、どうせ暇だし」

 

 

「聞かせて聞かせて!!」

 

 

「良いわよー!なら聞かせてあげる!!

北上さんはね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐渡は、三人が居る部屋の扉の横に立っており、内容を聞いていた

実はと言うと、古鷹と叢雲には既に彼女が男性恐怖症なのと佐世保鎮守府で起きた話をしており相談したところ

 

 

「なんだ、そんなこと?

と言うかそれならあんたが近づかなきゃ良いじゃない?」

 

 

「提督!それなら私達に任せてください!!」

 

 

二人に力強く言われ、佐渡は二人に任せることにした

正直、自分が手を出せないのは何か歯がゆいが、部屋の様子を聞くに大丈夫だなと思い、部屋を後にする

 

 

『へぇ?あいつ大井のパンツの写真を撮ったのぉ?』

 

 

 

『えぇ!全くありえないわ』

 

 

 

『ふーん?へぇ?ほぉ?』

 

 

佐渡が居なくなった、部屋の中で叢雲は携帯を取り出し、ある人へ電話をかける

 

 

『あー、もしもし、ちょっとよろしいですか?』

 

 

 

 

 

 

 



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二度目の選択 ー選べ歩む道をー 三

ここは、場所代わり食堂である

今、佐渡は晩御飯の用意中である

ここでの晩御飯は大体佐渡が作っているのだが悩んでいた

 

 

「何にするかなぁ?

昨日は肉食べたし、野菜か?生魚も捨てがたいしな……」

 

 

調理台の上に、タレに浸けた肉、野菜、三日前に釣った魚が置かれ悩んでいた

しばらく、悩んでいると食堂の引き戸が空き誰か入ってくる

 

 

「ちょっと司令官?時間良いかしら?」

 

   

「ん?あぁ、叢雲か。

良くここが分かったな?」

 

 

叢雲が、食堂のカウンターに背を預けながら、佐渡に後ろ向きになりながら話しかける

 

 

「大井は?」

 

 

 

「古鷹さんとお風呂よ

私もこのあと向かうわ」

 

 

 

「そうか」

 

 

 

「……あの大井って子、普通に良い子じゃない?

何とかならない?こんなところ辺境じゃなくて普通の鎮守府に行かせてあげたいわ」

 

 

佐渡は、叢雲の言葉に微笑みながら、調理台から離れて叢雲の頭を優しく撫でる

 

 

「相変わらず面倒見が良いな……

そう言うところ俺は好きだぞ」

 

 

不意に言われた叢雲は、顔を真っ赤にすると佐渡の手を思いっきり払う

 

 

「す、すすす好きとか言うな!!」

 

 

「ははは!好きだぞ~叢雲?」

 

 

佐渡が笑いながら、再び叢雲を撫でていると、流石にムカついたのか手を払い厨房に入ってきて蹴りを当てる

 

 

「いてっ!何すんだよ!」

 

 

「うっさい!!!このロリコン!!」

 

 

「ロリコンちゃうわ!!」

 

 

蹴られた場所を擦っていると叢雲が去り際に、料理の注文をする

 

 

「……今日はお刺身と肉野菜炒め食べたい」

 

 

「お?了解だぞ」

 

 

 

佐渡は、それを聞くと早速調理にかかる、叢雲はそれを他所にお風呂へと向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は過ぎ、晩御飯時お風呂から上がってきた三人は仲良く話ながら食堂に入ってくる

 

 

 

(お、早速仲良くなってる流石は叢雲と古鷹だな)

 

 

それを他所に、佐渡は先程の叢雲の注文通りに肉野菜炒めとお刺身を作り

更に何品か料理を作り、カウンターに置くと大井がそれを取りに来る

ちょうど料理を置いたときに大井と目が合うが、大井は目を反らし気のせいか風呂上がりなのか分からないが頬が赤かった気がする

 

 

そして、準備が終わり妖精含めた四人の晩御飯が始まる

 

 

 

「いただきます」

 

 

 

「「「「いただきます!!」」」」

 

 

 

食事をしながら、佐渡は大井をチラッと見るが大井はその顔を反らしてしまい会話しようにも出来ずにため息をつく

それに、何か叢雲と古鷹から若干……嫌視線を痛いほど感じる

 

 

 

「………えっと二人共どうしたの?」

 

 

佐渡は、二人に尋ねるが二人は無言で佐渡を見ている

 

 

「そいや、提督。

艤装の修復終わったぞ」

 

 

「おぉ!本当ですか、親方さん!

良かったな大井!」

 

 

 

そんなことを気にしてない、親方妖精から助け船を出され佐渡はそれに助けられた様に親方妖精と話をし大井を見るがこっちを見ていたらしく、佐渡が顔を向けた瞬間またそっぽを向く

 

 

 



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二度目の選択 ー選べ歩む道をー 四

「んー…?俺そんなに嫌われた?」

 

 

「そりゃそうでしょ、パンツの写真撮って、泣きながら抱き付いて、セクハラ発言しまくったんでしょ?」

 

 

「んなっ!!何でそれを!!」

 

 

佐渡は、大井に向き直ると大井はそっぽを向き知らんぷりをされ、その後古鷹にも怒られる

 

 

「大井さんが話してくれました!提督駄目ですよ!!そんなことしては!!

女の子……パンツの写真何て…ふ、ふしだらです!!」

 

 

「い、嫌ね?古鷹さんやこれには訳があってだね?」

 

 

「ほう?聞いてやろうじゃないの?下着写真趣味の底辺変態野郎」

 

 

「おいそれは流石に、酷くないか!?」

 

 

大井は、三人の話し合い兼佐渡の言い訳し、二人が聞いてる姿を横目で見ていると前にいた食堂とこの場所を比較してしまう

佐世保鎮守府での、食堂ではただの補給する為の場所

一切会話がなく、駆逐艦何かはほとんど入れなかった

食べ物も、こんな豪勢ではなく艦娘携帯食のみ

一部の戦艦や、空母達が色々と食べていたが、私達は居ることすら出来ない

 

 

 

ここでは違う、提督がご飯を作り、皆で食事の準備をして、一緒に食べ楽しく会話する

駆逐艦も重巡も軽巡も提督も、一切関係なく上下関係がある……とは思うけど

そして、こんなに美味しい食事……

 

 

皿の上に乗った肉野菜炒めを、取り口に運ぶ

こんな美味しいご飯、初めて……

こんな楽しいのは初めて……

私だけこんなでも優遇されて良いの?

 

 

大井は今朝と同じ様に、再び目頭に涙を溜めてしまい、泣き出しそうになる

 

 

「美味いだろ、ここの飯は」

 

 

不意に目の前から、声が聞こえ涙が引っ込み目の前に焦点を合わせる

 

 

「よう、新入りだなあんた

俺は、工廠妖精の親方を勤めてる親方妖精だ

よろしくな」

 

 

その姿は、自分達より遥かに小さく、でも立派だと思った

 

 

「は、はい!私は!」

 

 

「知ってる、大井ちゃんだろ?

話は大体、提督から聞いてるよ」

 

 

親方妖精は、あぐらをかきながらどこから取り出したか酒を取り出し飲みだす

 

 

「あんた、かなり苦労してたみたいだな

ここでは、そんなことしなくても良いんだぜ?

楽しく行こうや!」

 

 

親方妖精は、佐渡を指差しながら大井に向けさせ、再び酒をぐいっと酒を飲む

 

 

「あいつは馬鹿で変態だが、信頼だけはできる奴だ

お前達を本当に心配し、第一思う本当の馬鹿だ

今まで、あんな馬鹿見たことねぇ」

 

 

「……それ、叢雲にも古鷹さんにも言われました」

 

 

『それと大井、あの馬鹿の事だけは信じなさい

この叢雲様が保証するわ』

 

 

『私も保証しますよ!!

提督は、ちょっとエッチですけど信用出来ますから!』

 

 

大井は、必死に二人に弁解する佐渡を見ていると本当にそう思う

今まで見た男達ではあり得ないほどの男なのだから

 

 

「信じてやってくれ、あの馬鹿を

それと、これからよろしくな」

 

 

親方妖精は、おちょこを大井に付きだし乾杯する

同時にまた、一気に飲みだし「ガハハハ!!」と笑いだす

大井もその笑顔に微笑みを返す

 

 

 



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二度目の選択 ー選べ歩む道をー 五

「親方さんんん!!聞いてくれよぉ!!!

二人が、俺を苛めるんだよぉ!!」

 

 

「あーはいはい、なんだい下着趣味の変態提督さんよ」

 

 

「親方さんまでぇ!?ここに俺の味方は居ないのかぁ!!」

 

 

佐渡は、机に伏せながらシクシクと泣き出す

親方妖精と二人はそんな姿を見ながら笑っている

そんな姿を見て、大井も続けて笑ってしまう

楽しい、そんな事今まで有り得なかったのに………

 

 

そんな、みんなが笑い合う楽しい…?夕食が過ぎていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

   

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、分かりました

では、三日後にですね

待ってます」

 

 

佐渡は、電話を切りベットに座り、煙草に火を付け吸いだす

 

 

「三日後かぁ……

ま、仕方ないか」

 

 

一人事を呟きながら、煙草の吸い殻を灰皿に捨てると、そのまま窓を開け外を見ながらのんびりとする  

 

 

『あの子なんとかならないかしら?』

 

 

「なんとかできるさ

少しだけ我慢しろよ大井」

 

 

佐渡の部屋も、叢雲達の部屋と変わらず、そこそこに広く、叢雲達の部屋と違い机と珈琲マシン、後はベッドとソファー位とあまり物がない

 

 

 

時計を見ると、時刻は夜の0時

鎮守府内は静かに静まり返り、すぐ側の波の音位しか聞こえない

都会とは違い、明かりがないからか星が良く見え、月の光だけで室内を照らせる

これだけは、本当に良い

 

 

「戦争なんてくだらねぇなぁ」

 

 

綺麗な海を見ながら、煙草を加えているとのんびりとしていると扉をノックする音が聞こえる

 

 

「んぁ?誰だぁ?」

 

 

こんな時間に、誰だ?

叢雲?いや、寝てるな

古鷹?いやあり得ないな

 

 

「……大井です」

 

 

「………え?」

 

 

予想外のお客人に流石に驚き、窓縁に火が付いたまま煙草を口から落としてしまう

すぐに拾い、灰皿に潰すと、扉に手をかけるがすんでのところで止める

 

 

大井は男嫌いだもんな

会うわけにはいかんな

ここで話すか

 

 

そう思いながら、扉を前に立ち止まる

 

 

「どうした?何かあったか?」

 

 

 

「………二人で話したいの、直接

入っても良い?」

 

 

佐渡は、流石にどうなんだと思いながらも、扉をゆっくりと開くとそこには俯いた状態でワンピース一枚しか着ていない大井がいた

 

 

「……男だぞ?俺」

 

 

 

「…早くいれて、二人に見られたくないの」

 

 

大井は俯きながら言うと、佐渡は部屋に大井を入れ、窓を閉めるとベットに座る

 

 

「……座りなよ?」

 

 

「……はい」

 

 

佐渡に言われ、ソファーに座りお互いの間に静寂が訪れる

何を話して話していいのか全く分からず、佐渡もどうすれば良いのか分からずとりあえず立ち上がる

 

 

「あー、うん、えっと珈琲飲む?」

 

 

「……頂きます」

 

 

珈琲マシンの電源を入れ、二つ珈琲を入れ始めている時にも大井を見るがやはり俯いたままである

珈琲が出来上がり、二つのカップに珈琲を注ぎ、大井の目の前に置くと小さな声で「ありがとうございます」と言い飲みだす

佐渡もベットに座り、珈琲を飲みだす

 

 

「どうした?こんな時間に?

あー、あれか?まさかの夜中に襲いに来たのか!?

嫌、勘弁してくれよ…

睡眠ぐらいゆっくりさせてくれよ……

下着の件は謝るからさ?」

 

 

「違いますよ!!そこまで貴方を困らせるつもりありません!!」

 

 

大井の突然の大声に、流石に佐渡もビックリしてしまう

 

 

「お、おう?

なら、何だ?」

 

 

 



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二度目の選択 ー選べ歩む道をー 六

 

 

佐渡の質問に再び大井は黙り、俯いてしまう

特にこの後やることないし、のんびり待つか

…殴られる訳じゃないし

 

 

「………ください」

 

 

大井の言葉をしばらく待っていると、静かだが声が聞こえた

佐渡は、それを聞いたのだが何と言ったの分からずに聞き返す

 

 

「ん?何だって?聞こえんかったが」

 

 

大井は、意を決したように立ち上がりすぅと息を吸い、叫ぶ

 

 

「抱いてください!!!!」

 

 

「……………………………はぁ?

 

 

 

はぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」

 

 

流石に意味不明…と言うわけでは無いが、全くの予想外過ぎる発言に珈琲の入ったカップを床に落としてしまう

幸い、壊れても誰も怪我を良いようにとプラスチックのカップ為中身だけが溢れただけだった

 

 

「だ、だから!!抱いてください!!」

 

 

「いや、ちょ、まてまてまてまてまて!!!

何でそうなる??

え?待って待ってワケわかんない??

どゆこと?え?分かんない?

ちょっっっと大井さんんんん??

どうしてそうなったんですかねぇ!?」

 

 

「だ、だから!抱いて……

あっ……ちがうぅぅぅ!!!」

 

 

 

「何がぁ!?

わけわかんないよぉ!?」

 

 

 

流石の爆弾発言に、何を言っているんだと言う顔をしながら完全にパニック状態になる佐渡

その一方大井は、座り込み今にも火が出るんじゃないかと言うばかりに顔を真っ赤にしている

 

 

「と、とりあえず落ち着こう

wait、sitソファーオケ?」

 

 

 

大井は、佐渡の言葉に頷きソファーに座るが、顔が真っ赤にしながら俯いている

そして、再び二人の間に沈黙が流れる

頬をかきながろ、「あー」等佐渡が言っているが大井は膝にかかってるワンピースをぎゅっとしながら俯き続けてる

 

 

「……とりあえず、珈琲飲みな?

落ち着くよ?」

 

 

その言葉に、大井は頷き珈琲を一気に飲み干し、一息付き何度か深呼吸をすると再び話し出す

 

 

「…………抱き締めて欲しいんです」

 

 

「………はい?」

 

 

「だから!抱き締めて欲しいんです!

提督に!」

 

 

さっきとは違うけど、いややはり可笑しい大井に首を傾げる佐渡

大井は意を決したように、佐渡の瞳を真っ直ぐにみる

 

 

「どうした?何かあったのか?やっぱり」

 

 

「良いから……お願いします」

 

 

大井は立ち上がり、佐渡の前に移動すると両手を広げる

 

 

その、光景に唖然としながらも微笑み大井の目の前に立つ

 

 

「やっと、俺を見てくれたな」

 

 

「……ごめんなさい、見れなかったのよ」

 

 

「殴るなよ?」

 

 

「…………善処します」

 

 

佐渡は緊張しながらも、大井に近付き抱き付こうと腕を広げその手が腰を通り過ぎる瞬間大井が身震いする

その瞬間を見逃さず

 

 

 

「なぁ?無茶しなくても……」

 

 

「良いから!!」

 

 

「お、おう…?」

 

 

 

 



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二度目の選択 ー選べ歩む道をー 七

 

大井の瞳は、しっかりと佐渡を見ておりその瞳には決意の様な感じが見えており

それを見た佐渡は大井の決意を揺らがせてはなるまいと勢いに任せ抱き付く

 

 

「っ!!」

 

 

大井は、やはり反射的に佐渡を殴りたくなる衝動にかられるがぐっと拳を握り我慢する

 

 

「殴れ」

 

 

「……え?」

 

 

抱き付かれた状態で、大井は上を見上げると佐渡の顔が下から覗きこむ様に形に見えるが、暗く表情は分からない

それでも、木原や他の男と違う嫌悪感は無い

 

 

「我慢すんな

何発かは、多目に見てやるから

ほら」

 

 

その声に大井は甘え、軽くだが佐渡の背中を叩く

何回も、だが軽くしか叩いておらずほとんど痛くはなく

少しするとそれが止み、佐渡に身体を預ける

 

 

「もう、良いのか?」

 

 

「……えぇ、もう満足よ」

 

 

そうかと言うと、佐渡が大井から離れようとするが大井が手を回しそのまま佐渡をベットに押し倒す

と言っても、佐渡が座りそれに抱き付いている形になっている

 

 

「大井?」

 

 

「……頭、撫でて欲しいです」

 

 

「…はいよ」

 

 

予想外と言うか、男嫌いの大井が何故こんな事を?と思いながらも佐渡は大井の頭を優しく撫でる

 

 

「………私は」

 

 

しばらく撫でていると大井が、佐渡に抱き付きながら話し始める

 

 

「…私は、男嫌いの欠陥兵器です」

 

 

「んー、俺はそう思わないけどなぁ」

 

 

「しかも、軽巡です。

火力は無いですし、弱いです

……肉盾に位しか使い道がありません」

 

 

 

「そんなこと言ったら、うちの叢雲さんはどうなるんよ

あの子駆逐艦だぜ?」

 

 

「あれは、可笑しいんですよ

あんなに強い駆逐艦聞いたことありません」

 

 

「はは、全くだ」

 

 

佐渡は、笑いながらも大井の頭を撫でるのを辞めずにのんびりと話し続ける

 

 

「……私は犯罪者です」

 

 

「一応俺もだぜ?」

 

 

「…これからも殴りますよ?」

 

 

 

「んー、毎日は勘弁かなぁ?」

 

 

大井の表情は、見えないだがここまで近付き話してくれる大井に凄い嬉しさを感じながら佐渡は頭を撫でる

 

 

「…何でここの人達は優しいんですか?」

 

 

「ん?優しいって普通じゃないか?」

 

 

「…優しいですよ……優しすぎるんですよ!!」

 

 

服が、引っ張る感覚がすると大井が顔を上げ、目頭に涙を溜め佐渡を睨み付ける

 

 

「何で!!何で私なんかに優しくするのよ!!

私は欠陥兵器!!装甲も無い!!強くもなれない!!

どうやっても!戦艦や正規空母なんかにはなれない!!!

そう、何をしても!!

身体だけは綺麗で!!胸も他の子より大きくて!!

ただただ!!男の性欲処理にしか使えないような私に!!

何で何で!!!

あんたもそうでしょ!?だから、写真撮ったんでしょ!!!

何をしてほしいの!?何でもやってやるわよ!!

脱げば良いの!?分かったわよ!!」

 

 

大井は、今まで溜め込んだ物を吐き出し、癇癪を起こしたように来ていたワンピースを脱ごうとするが佐渡はそれを無理矢理にでも止める

 

 

「辞めろ!!大井!!」

 

 

「放してよ!!何でもするって言ったじゃない!!

こんな所に飛ばされて!!生かされて!!そうなんでしょ!?

内心では可愛そうだからとかおもってるんでしょ!!

分かってるから!!放してよ!!」

 

 

「大井!!良いから落ち着け!!」

 

 

暴れる大井を、抱き締め続け落ち着くまで何もせず何も言わずに待ち続ける

しばらくすると、抱き締めていた大井は落ち着き、肩から冷たいなにかを感じる

 

 

「何でも……言ってよぉ……

優しく……しないでよぉ…

恐いよぉ………

恐いのぉ…」

 

 

大井は、泣きながらそして弱々しく佐渡に言うと佐渡の肩が大井の涙で濡れながらも大井は静かに泣き出す

配慮が足りなかった、そう思うと佐渡は抱き締めながら片手で自分の頬を殴る

 

 

 

 



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二度目の選択 ー選べ歩む道をー 八

「提……督?」

 

 

「すまなかった、俺のせいだ」

 

 

「何で……

謝るのよぉ……」

 

 

さっきまで、強気だった大井が完全に弱気になっており、肩で涙を流しながらも小さな声で言う

 

 

「大井俺に時間をくれないか?」

 

 

「…ぇ?」

 

 

泣きながらも、小さく呟くように大井は返事をすると、佐渡は抱き締める力を強める

 

 

「俺に任せろ、必ずお前を助ける

嫌いでも良い、今だけは俺を信じろ

ここに誓う、必ずお前をこんな所じゃない

しっかりとした、鎮守府で北上さんに会わせてやるからな!!」

 

 

佐渡の言葉を聞いた、大井は安心したのか、それともただ泣き疲れたのかそのまま佐渡に抱き付かれながら寝てしまう

 

 

「大井?」

 

 

それに気付いた佐渡は、大井を起こさない様に、自分のベッドに寝かせると自分の部屋を片付け、再びあるところに電話をかける

 

 

 

「もしもし、俺だ

悪いな、こんな夜中に……

調べてほしいことがあるんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んん……ここは…?」

 

 

翌朝、大井は佐渡の部屋で起床する

目を擦り、部屋には誰も居ないことを確認しながら、昨日したことを思いだし、顔を赤くする

 

 

「わ、私…何て事を!!」

 

 

でも、昨日言われたある言葉を思いだし、冷静になる

 

 

『俺に任せろ、必ずお前を助ける

今だけは俺を信じろ』

 

 

「……何が信じろよ…」

 

 

そして、起き上がると机の上に書き置きがあり目を通す

 

 

『大井へ

少し、本島に出掛けるから鎮守府での指示は叢雲から聞いてくれ 

部屋は俺の部屋でもどこでも使いな

飯は古鷹に頼んでね

 

By提督』

 

 

「何よこれ?」

 

 

少しすると、扉がノックされ古鷹が入ってくる

 

 

「提督ー……って大井さん?

どうしてここに?」

 

 

「えっと……それよりも古鷹さんこれ」

 

 

古鷹に、その置き手紙を渡すと古鷹は納得したように頷くと手紙をポケットにしまう

 

 

「大井さん、朝ご飯にしましょう

提督は、何となく分かりますから」

 

 

その言葉に疑問を感じながら、古鷹の後を追い朝食を取ろうと食堂へと向かう

 

 

 

食堂に付くと、既に叢雲が座っており入った古鷹達の方を向くと机に頭を付けぐったりとする

 

 

「古鷹ーあの馬鹿知らない?

何か今日見てないんだけど」

 

 

「はい、叢雲」

 

 

「んー?」

 

 

それを見た叢雲は、「ふーん」と言いながらも食堂を出て携帯を取り出しあるところに電話をかける

古鷹は、静かに厨房に入ると冷蔵庫を開け中の食材を物色する

 

 

「ね、ねぇ!提督はどこいったの!?」

 

 

大井はカウンターを叩きながら聞くと、古鷹は微笑みながら冷蔵庫から食材を取り出し大井に向く

 

 

 

「本島ですよ、恐らく夜中のうちに向かったんだと思います」

 

 

 

「そんな!!私達を置いて!?

アイツ!!」

 

 

 

騒いでいる大井に近付き古鷹は、カウンターに向かうと大井のデコにコツンっと拳を当てると笑顔になる

 

 

「提督を信じましょう

何かあるんですよ」

 

 

 

古鷹はそれだけを、言うと再び厨房の中に入り朝ご飯の支度を始める

それを言われた大井は唖然とするしか無かった

 

 

 

「古鷹、大井

ちょっと良いかしら?」

 

 

叢雲が、再び食堂に戻ってくると本日の予定を二人に告げる

 

 

「提督は、野暮用で二日間本島に残るそうよ

その間は、哨戒任務は三人で一日一度

以外は特になしだとさ」

 

 

 

「了解」

 

 

「わ、分かりました…」

 

 

それだけを、言うと古鷹は朝食の準備をし始め叢雲は食器などの準備を始める

何故こんなに冷静なの…?大井はそんなことを思いながらも心を読まれたかの様に叢雲に言われる

 

 

「信じなさい、あの馬鹿を

それと、貴女の道をあいつは作ってくれるみたいよ」

 

 

「え?それってどういう…」

 

 

 

「叢雲ー!ねぇそっちに醤油ないー?」

 

 

「あるわよー」

 

 

古鷹のその声に、叢雲は醤油を持って厨房に向かってしまい大井の疑問は残ったままになってしまった

結局その疑問は、その後も聞けず

提督が二日間不在の鎮守府には、特には何も変化もなく襲撃も深海棲艦との戦闘もなく過ぎていった

 

 

 

 




そして、彼女は生きる道への選択を
再び強いられる


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二度目の選択 ー選べ歩む道をー 九

提督が、不在から三日が立ち大井は佐渡の部屋で起きる

この居ない三日間、大井は叢雲と古鷹に言われ、ここを寝床にしていた

そして、その間ずっと考えていた

自分の歩む先

これから、どうするかを

 

 

いつもの制服に着替え、廊下を歩いていると向こうから誰か眠そうにしながら歩いてくる

背丈からして古鷹さんかな?とも思ったがそれよりも大きい

そして、久しぶりにみるその顔に少し感動すら覚える

 

 

「んー……

よう、大井おはよう

三人だけにしてすまなかったな」

 

 

「おはようございます

心配してましたよ

二人が」

 

 

佐渡だ、三人を残し一人で本島に向かい三日間不在にした男

三日前の夜に起きた事を思いだし、思わず皮肉と顔を反らしてしまう

 

 

「おー……

あ、そうだ、後で提督室に来い

話がある」

 

 

「はい?私?解任ですか?」

 

 

「そんなもんだ

とりあえず来い」

 

 

その言葉に、やはりと思いながらもでも胸が少し痛む

大井が立ち止まって居ると佐渡は、横を通り過ぎようとするが大井はその佐渡の目を見て驚く

目にかなり濃いクマが、出来ており本人はかなり眠そうだ

何か声をかけようとしたが、佐渡は自室に入ってしまいそれ所では無かった

 

 

 

大井が食堂に着くと、食堂内では叢雲が食器の支度をしながら古鷹が鼻歌混じりに朝食を作っていた

いつもの光景、でもやはり提督が居た方がと思ってしまい頭を左右に振り、支度を手伝いに行く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時が流れ、夕方

佐渡は、連日の疲れが出ており、今朝方三人に会ったときから食事をせず、軽く自分の部屋で仮眠を取っていた

そして、約束の時間になると古鷹が入ってくる

 

 

「提督ー?お時間ですよ

あと、二人がお見栄になっていますよ?」

 

 

「んー、了解」

 

 

 

古鷹に起こされると、佐渡はその服のまま起き、軽い支度を整え提督室に行く

提督室の扉を開くと、大井がソファーに座り、叢雲が戸棚に背を預け、机の横には見慣れない人がいる

 

 

「お疲れ様よ、司令官

はい、熱いお茶よ」 

 

 

「さんきゅー、叢雲」

 

 

叢雲からお茶を貰い、飲むと苦味と渋みが強く少しは目が覚める

自分の机に、お茶を置き座ると隣に居た古鷹はそのまま提督の隣に立つそして、全員の目が佐渡に集まる

大井だけは、佐渡を睨み付けているが

 

 

「ふわぁ~……」

 

 

「佐渡提督、大丈夫ですか?

もう少し、寝ていても構いませんよ?」

 

 

「あぁ、嫌大丈夫

早く済ませましょう

そんなことより、こんな辺境に御足労願いありがとうございます

大淀さん」

 

 

 

大淀と呼ばれたその女性は、眼鏡をくいっと上げると片手に抱えた資料を持ち直し佐渡に向き直る

 

 

「いえ、構いませんよ?

佐渡提督にお力を添えろと元帥から言われておりますし、鎮守府から全員を移動させるの色々とよろしくないですからね」

 

 

大淀

正式名 大淀型 一番艦軽巡洋艦 

大本営所属、元帥が指揮する艦隊の旗艦にして秘書艦

大本営の経理など、様々な事をこなしながら、全鎮守府への伝達など多忙な人だ

基本的には大本営から離れることは無いのだが今回は特別に来ていただいている

 

 

 

「で、私に何ですよね?新たな罪でも見付かりましたか?

それとも、解体ですか?

好きにしてください……」

 

 

 

それを聞いた大淀は、佐渡を見てため息を付く

 

 

「佐渡提督……貴方彼女に何も伝えていないのですか?」

 

 

「あー……すいません忘れてました…」

 

 

あはは、と頬をかく佐渡を見て大きな溜め息を付くと大井に向き直り話し始める

 

 

「大井さん良く聞いてくださいね」

 

 

「はい、何ですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴女の無罪を証明する為に来たんですよ

今日は」

 

 

 

 

 



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二度目の選択 ー選べ歩む道をー 十

「……え?」

 

 

予想外過ぎる大淀の話しに、困惑しているが大淀はそんなことをお構い無しに話を続ける

 

 

「大井さん、確認したい点がいくつかございます

質問をいくつかよろしいでしょうか?」

 

 

「は、はい!」

 

 

大淀の話しに大井は立ち上がり、佐渡の机の前に移動し、大淀からの質問を待つ

 

 

「貴女は、あの鎮守府でどのような扱いを受けておりましたか?」

 

 

「私は……」

 

 

言いかけると、口をつぐんでしまう

どうせ、何を言っても意味がない……

そう思っていると、叢雲と古鷹が大井の肩を叩く

 

 

「大丈夫よ」

 

 

「提督と大淀さんを信じてください、大井さん」

 

 

二人の言葉に、勇気を貰い大井は佐世保鎮守府の全てを話し出す

木原の行っていたこと、海軍上司との癒着、食事体制全てを

 

 

「……以上になります」

 

 

「…そうですか、ありがとうございます

お辛かったでしょう、証言ありがとうございます」

 

 

大淀は、そう言うと下ろしていた片手を持ち上げ、持っていた物を机に置く

 

 

「だそうです、元帥。

いかがでしたでしょうか?」

 

 

「えっ?」

 

 

持っていたものは携帯だった、どうやらハンズフリーにしていたらしく先程の会話を全てを元帥に聞かれていた

 

 

 

「成る程、可笑しいですね?

木原中佐、私が聞いていた話の違いますね?

それと、郷田(ごうだ)大将、桐沢(きりさわ)大将

貴方達との話しとも食い違います

これはどういう事でしょうか?」

 

 

 

元帥の執務室には、三人が座り右から車椅子の木原、郷田、桐沢の順に座っており、後ろには憲兵が待ち構えている

 

 

一番最初に声を上げたのは、郷田である

 

 

「ち、違う!!私はこんな男と癒着なんぞしとらん!!

こんな奴等知らん!!」

 

 

「なっ!!郷田さん!!」

 

 

「黙れ!!貴様なんぞ知らん!!

私は帰る!!」

 

 

郷田は、椅子から立ち上がり、逃げようとするがその前には憲兵が立ち塞がる

 

 

「退け!!邪魔だ!」

 

 

と郷田が、憲兵の一人の肩を掴んだ瞬間憲兵はその腕を取り郷田を投げ付ける

 

 

 

「郷田、桐沢、木原

諸君達を艦娘保護法及び、鎮守府運営違反により逮捕する」

 

 

「連れていってください」

 

 

「は、放せ!!」

 

 

「話しは留置場で、聞かせてもらおうか?

行くぞ」

 

 

ハンズフリーの携帯からは、木原と郷田と桐沢の叫び声が聞こえるがそんなことをお構いなしに元帥は話をし始める

 

 

『これが、真実かい?佐渡君?』

 

 

「えぇ、ありがとうございます元帥」

 

 

『そうか、なら後は大淀、頼んだぞ』

 

 

「はい、元帥」

 

 

話し終わるとハンズフリーを解除し、電話を切る

その光景を聞いていた、大井は終始唖然としていた

すると佐渡は大声で笑う

 

 

 

「アハハハ!!いやー傑作だわ……

あ、そう言えば、そろそろ入ってきなよ

北上さん?」

 

 

 

「え?…北上…さん?」

 

 

その言葉に大井は、恐る恐る後ろを振り返ると扉がゆっくりと開きその影から北上が姿を現す

 

 

「実はですね、今回一番の功労者は北上さんなんですよ?」

 

 

「え?」

 

 

大淀は、自慢げに眼鏡を上げ書類を大井に見せる

 

 

「今回の事件ですが、どうやら他の艦娘全員にあの郷田と桐沢が『何もない』と言えと恐喝していたそうなんです

ですが、彼女はそれに反旗を翻し、私に伝えてくれたんです

そして、それとほぼ同時期に佐渡さんからの話で今回の計画に至ったのです」

 

 

北上は、顔を伏せながら大井に近付き抱き付く

 

 

「ごめんね……

大井っち…

実は知ってたんだ、大井っちがあいつの言いなりになってたの……」

 

 

「!!」

 

 

その発言に驚きを、隠せずに全身から冷や汗が止まらない

それでも、北上を抱く力を緩めない

 

 

「だから、あいつに言ったんだ

これ以上大井っちを苦しめないでって

そしたら、アイツが」

 

 

 

『ほう?ならお前が大井の代わりになるか?

それなら、もうやめてやる』

 

 

その話を聞いた、大井は怒りに震える

拳を握りしめ、唇を噛み、自分は何て無力だったんだろうと思いながら

 

 

「でも、あの時大井っちが来てくれた時

嬉しかったんだ……

でもね…でもね……」

 

 

北上の声が段々と小さくなっていき、静かに泣き出しながらも必死に声を出す

 

 

「ごめんね……

大井っち………

辛かったよね…

苦しかったよね………

ごめん……ごめん………

 

 

あの時、助けを……求めて……ごめんなさい……」

 

 

その言葉に、大井は北上を抱き締めるのを更に強くしながらも少しずつ眼に涙を溜めながらこちらも必死になる

 

 

「…大井っ…ち…?」

 

 

 

「違います!北上さんは悪くありません!!

私は、貴女を助けたかったからやってたの!!

貴女が笑顔を見たかったの!!

だから!!謝らないでください!!

あの時!私に助けを求めてくれて嬉しかった!!

だから!!っ……だから……」

 

 

大井は、抱き締めるのを辞め北上に向き直る

その顔は、いつも以上に眼を真っ赤にしながら、鼻水も足らしながら必死になっていた

その姿を見ながら北上は無理矢理にでも微笑み

 

「うん……

ありがとう……

大井っち……

 

大井っちが無事で……良かったよ……」

 

 

「き、北上さぁぁぁん!!!!」

 

 

それと同時に、二人は提督室で抱き合いしばらく泣いていた

見た目の歳相応見たいに泣きじゃくり、顔をぐしゃぐしゃにしながらみっともなく

 

 

その光景を見ていた叢雲は眼を閉じ、古鷹は微かに出た涙を袖で拭い

大淀は、微笑みながら佐渡を見ていた 

 

 

「ありがとうございます、佐渡提督」

 

 

「それはこっちの台詞だよ、大淀さん

ありがとうね、俺と北上さんを信じてくれて」

 

 

 

「貴方は、信頼できるお方ですからね」

 

 

 

夕暮れの提督室、太陽が沈みかけ窓から入る光が二人を照らしていた

 

 

 

 







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二度目の選択 ー選べ歩む道をー 十一

そして、彼女は行く道を選ぶ 



これから、自らが歩んでいく道を




長くなってすいません……


「……お恥ずかしい所を御見せしました」

 

 

「あははー、ごめんね皆ー……」

 

 

しばらく泣いた後、二人は落ち着きを取り戻しソファーの両隣に座りながら叢雲が入れたお茶とお菓子を頬張っていた

 

 

「全然大丈夫ですよ!

ごゆっくりしてください!」

 

 

古鷹は、お盆を持ちながら佐渡の隣戻ると叢雲もその場所に行く

 

 

「さてと、大井さんここからが本題です

よろしいですか?」

 

 

「は、はい!!

ごめんなさい!」

 

 

大井は、立ち上がると佐渡の机に向かい大淀に敬礼をする北上も同じ様に大井の後を追い手を繋ぎ隣に立つ

 

 

「今回の事件ですが、木原提督の不祥事

及び、郷田大将、桐沢大将の鎮守府への不正な行為が発覚したのは間違いなく、大井さん、北上さんのお陰様です

よって、元帥より貴女の罪の帳消しを命じられております」

 

 

「じゃ、じゃあ私は……」

 

 

「はい、無罪放免です

もう、犯罪者ではありませんよ」

 

 

 

その言葉に、北上と大井は喜び満面の笑みを浮かべながら二人で喜ぶ

 

 

 

「やったね!!大井っち!!」

 

 

「はい!!北上さんのお陰ですよ!!」

 

 

「違うよぉ!大井っちの頑張りだよ!」

 

 

 

二人を見ながら、佐渡も微笑み叢雲と古鷹も二人を祝福するように笑顔で拍手を送る

 

 

「良かったわね、大井」

 

 

「おめでとうございます!

大井さん!!」

 

 

「二人とも!ありがとうございます!」

 

 

大井は、叢雲と古鷹にお辞儀をすると同時に佐渡を見る

 

 

「良かったな大井」

 

 

「えぇ、これで貴方のお陰とは良いませんよ?あくまで大淀さんと元帥のお陰ですからね」

 

 

「かぁー、『最後』まで辛辣だねぇ!」

 

 

最後?その言葉に引っ掛かるが、その言葉の意味はすぐにわかる

 

 

「それと、今回の件に関して元帥からこちらをお預かりしております

大井さん、どうぞ」

 

 

大淀はある紙を、大井に渡すと大井はその紙を見て驚く

 

 

「これって移動……願い?」

 

 

「はい、佐渡提督にも既に許可を得ており、元帥よりも許可が降りております

と言うよりは、佐渡提督と元帥から貴女への細やかなプレゼント見たいな物です」

 

 

 

その言葉に、大井は書類を力強く握り締めながら、佐渡の顔を見る

笑いながら、佐渡は顎に手を付きながら内容を話す

 

 

「その移動先はな、佐伯鎮守府

北上さんが所属する、まだ出来たばかりの鎮守府でね艦娘を欲しがっていてな

それに、そこの提督は女性なんだ

お前さんにピッタリの職場だと思うんだけどなぁ?」

 

 

「うん!大丈夫!そこの鎮守府の提督は良い人だよ!

ご飯も美味しいし、ちょっと指揮はまだおぼつかないけど、私達艦娘を大事にしてくれて、大井っちもすぐに気に入るよ」

 

 

北上は、笑顔で大井に語りかけ、佐渡も進めており悩んでいると古鷹と叢雲が大井の背中を押すように促す

 

 

「こっちは、大丈夫よ

別に一人居なくなってもこいつを殴るやつが減るだけだし

任務に影響は出ないわ」

 

 

「待てこら、叢雲。

何故そこでそれを言う?」

 

 

「少し、寂しいですけど会えないわけではないですし、今度そちらに、遊びに行きますから!」

 

 

三人を見ると、笑みを浮かべており北上も大淀も大井の選択を待っている

しばらく、大井は考え込む

 

 

ここに残り、佐渡達と少ない戦力で生きていくか

現在(今)を取るか

 

 

北上と一緒に再び新しい鎮守府で再スタートを図る

過去を取るか

 

 

そして、大井は選択する己のこれより歩む道筋を未来を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんなさい、北上さん

私は、この小笠原鎮守府に残るわ」

 

 

そう言うと、大井は書類を両手でビリビリに破り捨てる

 

 

 

 

 





その選択はお前の正しい道か?


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二度目の選択 ー選べ歩む道をー 十二

「なっ!大井、お前!!」

 

 

ビリビリに破かれた書類を見ながら佐渡は驚いていると

、大井は佐渡を指差し宣言する

 

 

「北上さんと一緒に居られないのは残念ですが、貴方なんかに叢雲と古鷹さんを任せてられません!!

それに、ここは本島と違って離れています!

ここで私が離れれば、数少ない戦力が更に減るのは良いとは思いません!

貴方の事は大っっ嫌いですが!!

ここに残ります!!」

 

 

その言葉に、佐渡は「えぇ……」と言いながら椅子に持たれかけながら天井を見て呆然とする

だが、北上も大淀達も何故か皆笑っている

まるで、大井の気持ちが分かっているかの様に

 

 

「な、何ですか!!皆さん!!」

 

 

「ふふふ、いえ何でもありませんよ大井さん

では、このままここに在住と言う形でよろしいのですね?大井さん」

 

 

 

「はい!

と言ってもし、仕方なくです!!

仕方なく居てあげるんですからね!!

全滅されても困りますからね!!」

 

 

大淀が、確認のために再び言うと、大井は腕を組ながらそっぽを向き北上が大井から手を放し「あーあー」と言いながらソファーに倒れ込む

近くの煎餅をかじる

 

 

 

「大井っちにフラれた~

きーらーわーれーたーグッスンー」

 

 

「ち、違いますよ!北上さん!!

嫌ってなんか居ませんよ!!

むしろ大大大だーい好きですけど!!

こんな変態に二人を任せてられないんですよ!!」

 

 

北上へ必死に大井は弁解しているところに、叢雲達もソファーに座ると参戦し更にややこしくなる

 

 

「残念だったわね!北上さん!

大井は私達が貰うわ!!」

 

 

「北上さん、すみません

大井さんは私達が頂きますね!」

 

 

「ちょ、ちょっと二人とも!!」

 

 

大井だけが、焦りながら三人に誤解を解くように弁解しているが、三人は大井の取り合いの話しに夢中になり大井の話しなんて聞いてすらいない

 

 

「あーあ、俺の努力がぁ……」

 

 

佐渡は、思わず煙草に火を付け吸うと、ふぅとため息混じりに煙を吐き出す

 

 

 

「これが、彼女の選択です異論は無いですよね?

では、引き続き大井さんをよろしくお願いいたしますね?佐渡提督?」

 

 

「へいへーい、てかアイツそんなに俺のこと信用してないのかよぉ……」

 

 

煙草を加えながら、大井達を見るが皆凄く楽しそうにしながら笑いあっている

大井だけは必死になりながら北上に弁解しているけど

 

 

 

「あ、それと佐渡提督もうひとつお話が」

 

 

「んー?まだ何かあるんですか?」

 

 

佐渡は、煙草の煙を吐き出し、再び加えると大淀は笑みを浮かべながらこちらを見ているが直感的に何か嫌な予感がする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ある艦娘からの通報で小笠原鎮守府提督が艦娘のパンツ写真を撮ってその子を恐喝したとか何とか聞いたのですが、本当ですかねぇ?」

  

 

 

 

 

「………………ぇ?」

 

 

 

その言葉に、思わず加えた煙草を落とし佐渡はフリーズし顔から血の気が引いてしまう

 

 

え?何で大淀さん知ってるの?待て、恐喝は…………あ、してるわ

あれ?大井にはまだ携帯持たせてないし、うちは電話線通してないから電話は出来ない筈だけど

持ってるとしたら

 

 

佐渡は、ハッと気付き叢雲を見ると北上達がこちらの異変に気付き呆然と見ているが、叢雲だけはお茶を片手にスマホをふりふりと見せながら嫌らしく笑っている

 

 

「叢雲ぉぉぉぉ!!!

貴様ぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

思いっきり立ち上がり、叢雲を指差しながら大声で叫んでいるとソファーに持たれかけながら余裕な顔をしながらスマホをポケットにしまう

 

 

「あっらぁ?どうかしたのかしら司令官様ぁ?

そんな声荒げて何かあったの?

あー、このスマホ?使ったわよ?あんたが大井にやった行為全て報告しといたわよ

この下着盗撮変態司令官様ぁ?」

 

 

佐渡が叢雲に近寄ろうとするが、後ろからガシッと腕を誰かに捕まえられる

そこに居るのは一人しか居らず

勿論大淀である

恐る恐る後ろを振り向くとそこには、笑顔ではあるが確実に怒りながら掴む力を上げている大淀の姿があった

 

 

「あ、あの、大淀さん?腕がですね?

何かすんごい痛い、いてててててて!!!」

 

 

「ど こ に 行 く 気ですかぁ?佐渡提督さん?」

 

 

ギリギリと、掴む力を上げ確実に放す気配が無い大淀はそのまま佐渡の腕を反対方向に捻りねじ伏せる

そして、指を鳴らすと提督室の扉が開き憲兵が姿を現す

 

 

「なっ!!け、憲兵さん!?」

 

 

「はぁ……佐渡提督殿…

貴方という人は……

これもお仕事ですから、恨まないでくださいね」

 

 

「さてと?佐渡提督行きますよ?

全く貴方と言う人は!!」

 

 

憲兵と大淀に、首根っこを掴まれ引きずられながら提督室から佐渡は連れていかれていく

その時全員に助けを求める

 

 

「叢雲help!!」

 

 

「自業自得よ変態司令官」

 

 

「古鷹ぁ!!」

 

 

「提督?罰は受けないと駄目ですよ?」

 

 

「北上さぁん!!」

 

 

「あーうん、頑張って佐渡提督」

 

 

「大井ぃ!!頼むよぉ!!」

 

 

「……ふん!」

 

 

「ぬぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!

くそったれぇぇぇえ!!!

ここに俺の味方は居ねぇのかぁぁぁ!!!」

 

 

佐渡は叫びながら、提督室を憲兵と大淀に連れ行かれ四人だけが残される

すると、四人とも佐渡の光景を思いだし笑い合う

 

 

「なーんか、この鎮守府面白いね

提督は変態そうだけど、良いの?大井っち」

 

 

「大井、本当に良いの?あんなお馬鹿提督がやってる鎮守府だけど」

 

 

 

「そうだよ?今ならまだ大淀さんに言って……」

 

 

大井は、それを聞くと満面の笑みを浮かべながら三人に言う

 

 

 

 

「良いんです!

私は、ここに居たいんですから!」

 

 

 

 

 

 

尚、佐渡はこの後三日間の憲兵達の尋問によりやっとの事で解放されたのはまた別のお話

 

 

 

 

 

              男嫌いの大井編end






叢雲さんは、出来る御方です(目そらし)


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後日談 秘密の夜会

もう少しだけ物語は続きます


「あぁ~……疲れたぁ……」

 

 

時は真夜中二時をとっくに回り、三日間の憲兵達の尋問を受け、佐渡は帰還した

それから服を粗方脱ぎ、シャツ一枚でそのまま布団に倒れ、久しぶりの柔らかい感触を楽しむ

 

 

「叢雲あんにゃろう……

しかも、変な事まで言ってやがって………

今度ピーマン炒めだけにしてやろうか」

 

 

布団に倒れ込み、感触を楽しんでいると睡魔に襲われ、寝る寸前になったとき不意に扉をノックする音が聞こえる

 

 

「誰だぁ~

今日は休ませろよ~」

 

 

佐渡は、立ち上がりドアを開けるとそこには前に来たときと同じワンピースを着ながら大井が立っていた

 

 

「………おう?また来たんか?」

 

 

「えぇ、お邪魔しますね」

 

 

この前と違うのは、佐渡をしっかりと見て、返事を待たずに部屋に入る

扉を締めると大井はソファーでは無く、ベットに座りながら外を眺める

 

 

「何だ?今度は?」

 

 

「……二人きりで話したいんです」

 

 

「二人きりでの話?何だよ?」

 

 

大井は、深呼吸をすると立ち上がり佐渡を真っ直ぐ見ると口を開く

 

 

「……私を抱き寄せてください」

 

 

 

「…はい?てか、お前男嫌いだろ?無理すんなって……」

 

 

「良いから!!」

 

 

頭をかきながら、この我が儘お嬢様の言う通りに大井を抱き寄せようと腰回りに手を伸ばす瞬間やはり大井はビクンっと震える

 

 

「だから無理するなっ…」

 

 

「早く!!!」

 

 

「はいはい……」

 

 

大丈夫なのか?と思いながらも佐渡は大井を抱き寄せるとやはり震えている

大井は黙り身体を震わせているが、しばらくするとそれが止まり落ち着いたらしく深呼吸をする

 

 

「……お願いがあります」

 

 

「何だ?俺の出来る範囲なら聞いてやるぞ?」

 

 

佐渡は、お腹に当たる大きいものの感触に関して欲を無にするのに必死になっているが何とか返事を返す

 

 

「私は、男嫌いの欠陥兵器です」

 

 

「だからお前は…」

 

 

「聞いてください!」

 

 

大井が声を荒げて、佐渡の言葉を遮ると深呼吸を再びして口を開く

 

 

「それでも、貴方は私を使ってくれると言ってくれました

だから、私は貴方の為にこの男嫌いを直したいんです……

手伝って頂きませんか?私のこの欠陥を直す事の?」

 

 

佐渡は、そんなことかと思いながらも大井の頭を優しく撫でるとベットに座り大井を笑顔で見る

 

 

「俺で良ければいくらでも手伝ってやるよ」

 

 

その返事を聞くと、大井は満面の笑みを浮かべ佐渡を真っ直ぐに見る

 

 

「これから、よろしくお願いいたしますね!

提督!」

 

 

 

「おう!改めてよろしくな、大井!

ようこそ、小笠原鎮守府へ!」

 

 

 

 

こうして、小笠原鎮守府に三人目の艦娘

軽巡 大井 が新たに仲間に加わったのである

その日は、綺麗な満月であり、窓から入る月の光が二人を照らしていた

 

 

 

 

 

 

 

           秘密の夜会end




この後、めちゃくちゃ夜戦は……してませんよ?


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不穏な影

艦これ初めて一ヶ月
初のイベントにwktk しております!


時は流れ、六月二六日

ここは沖縄宮古島多良間島正面海域

時計が十二時を回っており、海は砲撃音と爆音により騒がしかった

多良間島の住民から、沖縄鎮守府へと『深海棲艦が出現』の緊急伝達が行き現在

深海棲艦と沖縄鎮守府在住の艦娘達は戦闘を行っており、その状態は劣勢

こちらの戦力は、旗艦軽巡一人 駆逐艦三人 軽空母一人 重巡一人

に対し夜間故に灯台からの光でしかほとんど見えないが深海駆逐艦十体 軽巡八体 重巡七体 空母五体 戦艦三体 そして、奥に黒い巨影一体の大艦隊だ

戦力差が酷く、多良間村の正面まで後退しながら戦うざるを得なかった

 

 

 

『阿武隈さん!多良間島の住民は全て避難させました!!』

 

 

ある、駆逐艦が旗艦阿武隈(あぶくま)に通信を入れると砲撃をしながらこちらは沖縄提督へと連絡を入れる

 

 

「提督!多良間島の住民避難完了!

どうされますか!?」

 

 

阿武隈は、耳に付いてるインカムで話かけるがその瞬間深海駆逐艦が海の中から飛び上がり阿武隈に襲い掛かるが、飛び上がり海上の上に出た深海駆逐艦の下に滑り込み、主砲を押し付け零距離砲撃を当て深海駆逐艦は胴体から木っ端微塵に吹き飛ぶ

 

 

『状況はどうだ!?被害状況は!』

 

 

 

「よろしくありません、向こうの戦力が分からず後退しながら戦闘を行っておりましたが、遂に多良間島正面海域付近までの進行を許してしまいました

被害状況は、阿武隈小破 潮(うしお)小破 龍驤(りゅうじょう)中破 朧(おぼろ)中破

那智(なち) 中破そして……」

 

 

艦隊の奥で一人、潮に抱き抱えられながら悔し涙を流し右腕を真っ赤な血で染め、左足の太股から下を無くし唇を噛み絞めている少女

 

 

「……曙(あけぼの) 大破重症です」

 

 

 

曙と呼ばれた少女は、真っ直ぐに深海棲艦を睨みながら痛みに必死に耐えていた

 

 

 

「曙ちゃん……大丈夫?」

 

 

「こんなの平気よ……

クソ……あんな奴等に…」

 

 

必死に強がるがそんなわけは無い、先程から左脚には潮風が当たり痛覚だけが刺激しており

右腕に関しては痛みが麻痺しているが、全く言う通りに動こうとしない

 

 

『すぐに帰投しろ!!

曙の守る用に輪陣形を取りながら、沖縄まで戻ってこい!!』

 

 

「ですが提督!!それでは多良間島を見捨てることに!!」

 

 

『バカ野郎!!向こうの戦力が分からないのにこれ以上戦闘をしても何の成果も得られんぞ!!

住民は避難が完了してる、これ以上君達が傷を追ってもこちらが不利になる一方だ!!

それと、誰一人として轟沈は許さん!!』

 

 

沖縄提督の必死さがインカム越しにでも伝わり、阿武隈は納得し、全艦隊に指示を出す

 

 

 

「通達!戦闘を中断し、全艦沖縄鎮守府へと帰還せよ!!

損傷が酷い艦を庇いながら撤退してくださーい!!!」

 

 

『『『了解!!!』』』

 

 

阿武隈が、インカムで指示を出すとインカムから今出撃している艦娘達はその指示を聞き命令通りに撤退する

 

 

「潮ちゃん、曙ちゃんは私に任せて」

 

 

「ありがとうございます、阿武隈さん」

 

 

大破している曙を抱き抱え、走り出そうとすると那智が忌々しく深海棲艦を見ながら何かの準備をすると龍驤がそれを静止する

 

 

「那智!何やっとるんや!!

撤退するで!!」

 

 

「なぁに、私は小破だ最後にあの巨影の姿を見てやろうと思ってな!!」

 

 

那智は、艤装から探照灯を取り出し脚に付けると正面にいる奥の巨影を照らしその正体を確認する

 

 

「なんだ……あれは…」

 

 

「うちが見たことある奴と大分違うで……」

 

 

その正体を見た二人は、探照灯の先を見て呆然としているのを見た阿武隈は二人の側に行く

 

 

「二人とも!!撤退だってば言うことを聞いてくださいよ!!!」

 

 

「阿武隈……あれを見ろ…」

 

 

「あれって………え?」

 

 

那智が照らす、その先には確かに深海棲艦が堂々といたが実際は本体よりはその後ろにいる艤装を見て唖然としていた

その艤装とは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

手は鋭い爪の様になっており、手の甲に恐らく戦艦の主砲であろう物が二門ずつあり、両肩にはそれよりも巨大な主砲を四門ずつ背負っており腹部には頑丈そうな鎧を身に付け左脚には魚雷発射官まである

口半分開きっぱなしで、深海棲艦の本体が腕を撫でている

まるで暴れるのを抑えてるかの様にも見える

そして、何よりもそいつはデカイ

従来のその深海棲艦が所持してるものより倍近くでかく、恐らく人間なら丸呑みに出来るほどである

 

 

「あれ……『戦艦棲姫』…だよな?」

 

 

「あぁ……うちの記憶が確かなら…やけど」

 

 

戦艦棲姫

深海棲艦の上位個体

人間の女性と同じ見た目ではあるが、頭には角が生え、肌は雪の様に真っ白である

この姫自体は武器を携帯しておらず、管が繋がっており動く艤装と共に活動する

その艤装とは、まるでゴリラの様な見た目と目の無い口だけの顔と背中に巨大な主砲を背負った物で、基本的には遠距離からの砲撃を得意とする

そして、姫級は他の深海棲艦を操ることが出来るため良く艦隊での発見報告が上がっている

 

 

「グァァァァァァァ!!!!!」

 

 

探照灯の光が眩しかったのかは分からないが艤装は咆哮をすると両肩から主砲を那智達に向け、斉射してくるが運が良かったのか那智達の周囲に着弾し水飛沫が上がる

 

 

 

「那智!!すぐに探照灯を捨てて!!

逃げるよ!!」

 

 

「わ、分かった!!」

 

 

那智が探照灯を投げ捨て、全速力で航行し始めると再び深海駆逐艦や重巡達から砲撃を避けながら撤退する

 

 

「逃げるでぇ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幸いなことに、今回の深海棲艦の目的が多良間島だったらしく向こうがこれより彼女達を追撃してくることはなかった 

 

 




戦艦棲姫より戦艦水鬼の方が強いとつい昨日初めて知りました……


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第三章 進撃セシ海上姫要塞
緊急召集


今回から新章です!


時は流れ、今は朝の九時

場所も変わりここは小笠原鎮守府

 

 

「今日も平和だなーこの島は」

 

 

この小笠原鎮守府の主兼提督佐渡はトンカチを片手に木材で壁を直していた

 

 

「そうですね、平和が一番ですよ提督

はい、釘ですよ」

 

 

「お、ありがと古鷹」

 

 

のんびりとしながら、古鷹に手伝って貰っており今日は提督室に他の三人も集まっていた

 

 

「提督、早く直してください

仕事が終わらないんですけど?」

 

 

「すまんすまんもう少しで終わるからさ秘書艦様は恐いですなぁ」

 

 

大井は眼鏡をくいっとあげながら注意すると、本日大本営から送られてきた書類を整理していた

 

あの後、大井自ら秘書艦を名乗り出てその訳を言ってくれた

 

『私は、戦闘経験がほとんどありませんから出撃しても二人の脚を引っ張るだけだと思います

なので叢雲達にある程度まで鍛えてもらい

その後、少しずつ出撃していきたいと思います

一々怪我をして貴方を心配させると面倒ですし

それに、私は前の鎮守府ではいつも書類整理等をやっておりましたからお役に立てると思います?』

 

 

と言われてしまい、二人は納得

それに、佐渡もその方が良いと思い、今に至る

結果的には、古鷹や叢雲より事務仕事に馴れており正直大助かりではある

たまに、佐渡がやろうとしたことを先読みするかの如く書類を渡したり先に終わらせているのが本当に助かる

 

 

「そう言えば、古鷹、叢雲。

大井の戦闘訓練はどうなの?」

 

 

佐渡が、トントンと木材を打ち付けながらソファーに寝転びながら漫画を読む叢雲と隣に居る古鷹を交互に見る

 

 

「悪くは無いけど、正直主砲での戦闘より搭載出来る魚雷が多いからそっち方面に育ててるけどねぇ……」

 

 

「そうですね……

命中率は正直悪いですね、取り敢えず主砲を的に当てることは出来ましたがまだまだですね

雷撃に関しては、センスはあると思いますよ?

ですがやはり外すこともありますので訓練が必要ですね」

 

 

二人からの評価を合計すると『雷撃だけ』らしく心配そうに大井を見るとボールペンを握り締め震えている

多分あれは悔しいとかではなく……

 

 

「いや、大井分かるよ?

俺もねこの二人は可笑しいと思うから」

 

 

「私も薄々は分かっていましたけど……

訓練を受けて本当に実感しましたよ………」

 

 

 

大井はその言葉に握り締めていたボールペンにヒビが入り、バンも机に叩き付けると二人を交互に指差す

 

 

「提督!!!この二人どんだけ強いんですか!!

一体何をすればこんな可笑しい駆逐艦と重巡が出来上がるんですか!!!」

 

 

その言葉に、二人は首を傾げるが佐渡は微妙な顔に頬を掻くことしか出来ずにいた

 

 

「叢雲に関しては!ひっきりなしに動き回られ、私はそれに追い付けずに主砲で撃たれてボロボロですよ!!

しかもいつの間にか雷撃撃たれて直撃!!

あんなの勝てるわけ無いじゃないの!!

しかも悔しくて二戦目挑んで主砲を避けられた所に追尾形雷撃!!

一方的ですよ!!一方的!!」

 

 

「……駆逐艦なら普通じゃない?

大井が遅いのよ」

 

 

「そんなことあってたまるか!!!」

 

 

その会話に、流石に大井に同情する佐渡と古鷹

叢雲の戦闘方法は主に近接戦闘での砲撃戦

敵に近付き、撹乱しながらその身軽さと小さな身体で確実にダメージ負わせていき仕留めていくスタイル

その他にも、追尾形雷撃と特殊雷撃に一度だけ使える一撃必殺コンボ

雷撃の着弾予測等様々な事を佐渡から教わっている

ある程度ダメージが、加算されたと思ったとき持ち前の雷撃でとどめと言う何とも慈悲はない

 

 




これって駆逐艦なら普通……普通じゃない?


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緊急召集 二

「それに!!何ですか!古鷹さんの砲撃と雷撃の命中精度!!

どんなに避けようとしても先回りされて当てられるし!!

しかも何で全て一撃大破まで持ってかれるのよ!!」

 

 

「えっと……私は叢雲見たいには動けないから少しでも砲撃の命中率を上げて叢雲の助けになりたくて頑張ったらこうなっちゃったんだあはは……」

 

 

「……健気過ぎるわね」

 

 

「分かるぞ大井」

 

 

古鷹の戦闘スタイルは中距離砲撃形

冷静そして、確実に相手を仕留めるために一撃を鍛えぬいた物

重巡の火力と叢雲のスタイルに合わせたやり方の為一人での戦闘にはあまり向かず基本的には叢雲と同時に出撃させている

ただし、その命中精度は百発百中とは言わないがほとんど外したことない

叢雲程とは言わないが、敵を一人の敵を凝視し続ける事で次にどのような動きをするのか大体理解し先手をうってくる

 

 

「何ですか!!この二人は!?」

 

 

「さ、さぁ…?俺にもわからん」

 

 

佐渡がこの二人に教えたことと言えば、ある程度のCQC、それぞれの戦い方、対人戦闘、近接戦、砲撃の体制位である

それ以外は自分達で何とかしたらしい

正直、ここまで強くなるとは思わなかったけど

 

 

「嘘ね、大井。

この自称普通の司令官も大分可笑しいから」

 

 

「はい?叢雲さんそれどういう……」

 

 

すると、不意に佐渡の携帯が鳴り出し工具を古鷹に預け電話に出る

 

 

 

「はいはい、どちら様ですか?今、うちの娘達と大事なお話タイム何だけど?」

 

 

『それはすまなかった。だが緊急なのだ許してくれ』

 

 

「げ、元帥!?」

 

 

唐突過ぎる元帥からの電話に驚愕し、携帯を落としかけるが何とか持ち直す

その言葉に三人とも反応し、各々やっていることを辞める

 

 

「え、えっと……私に何か御用でしょうか?」

 

 

『あぁ、すまない本日の予定はあるか?』

 

 

「えっと………大井、今日の予定は……」

 

 

大井に聞くと、両手をバツにし特に大事な予定がないと佐渡に行動で示すと再び電話に出る

 

 

「特にありません。どうかされましたか?」

 

 

『あぁ、すまないがこれから大本営に来てくれないか?

緊急なのだ』

 

 

「大本営に?分かりました今すぐ向かわせて頂きます」

 

 

『急な呼び出しに応答してくれて感謝する

詳しくはこちらに来て話す

大本営の三階会議室に来てくれ

既にそちらへ迎えの艦娘達を送っている、恐らく残り十分位で着くだろう

では失礼する』

 

 

ブツッと電話が切れ、携帯を服のポケットに終うと大急ぎで椅子に掛けてあった上着を羽織る

 

 

「叢雲、準備しろ

出掛けるぞ」

 

 

「…分かったわ、大本営?」

 

 

「あぁ、何かあったらしい

大方、どっかの鎮守府に出たか日本近海で何か居たんだろう

元帥からの電話なんてそれぐらいだろう」

 

 

叢雲は立ち上がると、漫画をしまい準備のために自室へと戻る

 

 

「提督……」

 

 

古鷹が心配そうに佐渡を見上げるが、微笑みながら頭を撫でてあげる

 

 

「鎮守府を頼んだぞ

大井、留守番を頼む」

 

 

「どれくらいで帰ってくるの?」

 

 

「恐らく、夕方位にはなるだろう

気を付けろよ」

 

 

「了解、そっちこそ気を付けてね」

 

 

佐渡は、準備を終え外に出ると既に艤装を纏った叢雲が海上に立っており、目の前から来た迎えの艦隊の艦娘達と話している

 

 

艦隊の艦娘達が佐渡の姿を見ると敬礼をする、それを返すように佐渡も敬礼で返す

 

 

「お迎え、恐縮の至りであります!

本日はよろしくお願いいたします!!」

 

 

「はい!こちらこそ、私は今回の旗艦を任された朝潮(あさしお)です!!

よろしくお願いいたします」

 

 

「よろしく、朝潮さん」

 

 

佐渡は、手を出し握手をしようとすると朝潮も佐渡の手を取り握手をする

 

 

「会えて光栄です、『戦闘の天才』佐渡様!」

 

 

「やめてくれ、俺はそんなんじゃないって

あと様と敬語いらないよ楽にして」

 

 

「はい!」

 

 

「早くしなさいロリコン司令官」

 

 

「叢雲さんや……

辛辣すぎやしませんか?」

 

 

佐渡は、叢雲が準備したボートに乗るとエンジンを掛け朝潮率いる艦隊と共に大本営へと航行する

 

 

 

 



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緊急召集 三

「いつみてもここはデカイよなぁ……」

 

 

「全くね」

 

 

佐渡達は、小笠原諸島から東京に到着しその脚で東京都にある海から少しだけ離れた大本営に到着していた

朝潮達は、近海を哨戒任務を元帥から受けていたらしく再び海に出ていってしまい現在二人だけで大本営に来ている

 

 

大本営

日本軍、今では海軍が主になるが最高機密機関

全鎮守府をまとめ上げる最高司令部として機能しており、全ての海軍情報があるとされ元帥とその秘書艦娘大淀さんが所属する場所である

そして、一度壊滅しており再び建造する際にさらに大きくしたらしく

四階だての豪邸見たいな外観をしている

 

 

「私、正直ここに来たくないんだけど?

司令官」

 

 

「許せ、お前じゃないと俺が困るんだ」

 

 

「後でパフェね」

 

 

「はいはい」

 

 

二人は、雑談をしながら階段を上がり大本営の開きっぱなしの扉を通り中へと入っていく

大本営の中は、廊下が多くしかも無駄に広いため至るところに案内標識がある

それに、ここにはエレベーター等はなく階段が一フロアに一つだけである 

途中海軍の者達や陸軍の者達とすれ違うと、大抵の人間が叢雲を見てヒソヒソのしている

 

 

「階段はっとここか」

 

 

「はぁー……行き苦しい」

 

 

「あーうん。本当にごめん」

 

 

実はと言うと、叢雲はちょっとした有名人である

それもそのはず、彼女はたった一人で東京湾に入ってきた歴戦種と断定された戦艦ル級を撃破しており、一種の英雄扱いされている

 

事実そのル級はかなり強かったらしいのだがこのお話はまた別の機会に

 

 

その当時、彼女を讃えてからか変な異名で呼ばれている

それは

 

 

「そう言うなよ、『雷撃姫』様?

皆お前を、凄いと思ってるんだぜ?誇りなよ」

 

 

「うっさい!私はそう言うのが嫌いなの!!

勝てたのは偶然と貴方の指揮があってからよ!

全く、本当にうざいったらないわ……」

 

 

雷撃姫

叢雲に付いた、誰が言い出したかは分からないがそんな変な名前が付いている

何でも、ル級を撃破したのが雷撃だったのと叢雲のこのツンツンした性格から付けられたアダ名らしい

叢雲はそれをかなり嫌がってはいる

 

 

 

むくれる叢雲を佐渡は頭を撫でながら会議室を目指していく

すると後ろから親しげな声で佐渡を呼ぶ声がする

 

 

「おーい!小笠原提督!!

雷撃姫!」

 

 

その声を聞いた瞬間、佐渡は普通に振り返るが叢雲に関しては睨み付けるようにその声の主を見る

その男は、走ってきており少し息が上がっている

 

 

「おー、雷撃姫怖。何かあったのか?」

 

 

「お久しぶりです、横須賀鎮守府提督 猿橋秀俊(さるはしひでとし)中佐殿。

本日はお日柄もよく」

 

 

猿橋と呼ばれた男に敬礼をしていると、叢雲が睨み付けているのを見て身体を揺らし合図をすると仕方なく敬礼をする

 

 

「あー、そう言うの良いからいつものでやってくれ」

 

 

「そうですか、ではお言葉に甘えて」

 

 

佐渡は敬礼を解くと、叢雲も同じように楽にする

 

 

「で?何の用でしょうか?」

 

 

「んや、何か居たから挨拶しただけ」

 

 

「提督ー!!待ってくださいよー!」

 

 

猿橋の後ろから、身長が高めの艦娘が走ってきており、隣に立ち止まると膝に手を当て肩で息をしている

 

 

 



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緊急召集 四

艦これのイベント厳しいですわぁ…… 
でも楽しいですなぁ


「あ、悪い大和(やまと)ちょっと知り合いが居たもんだからさ」

 

 

「知り合いって……あ、佐渡提督!!こんにちは!!」

 

 

大和と呼ばれた女性兼艦娘は佐渡を見た瞬間肩で息をしながらお辞儀する

 

 

「こんにちは大和さん

本日もお綺麗ですね」

 

 

「あ、ありがとうございます…」

 

 

佐渡が微笑みながら言うと、大和は頬を赤らめ俯いてしまう

 

 

大和

 

正式名 大和型 一番艦戦艦

横須賀鎮守府所属、猿橋の秘書艦を勤めている

現在、この海軍に所属する艦娘の中で最大の火力を誇り、日本海軍の誇りとされる女性

他の戦艦艦娘達の中でも郡を抜いた防御力、持久力を持つ彼女、だが今は諸事情により戦線から離脱している

見た目も美しく、正に大和撫子の様なお方だ

 

 

「おいおい、天才様?うちの大和をナンパしないでくれるかな?」

 

 

「まさか、私が中佐様の艦娘をナンパなんて……」

 

 

「その口調辞めてくれ気持ち悪い」

 

 

「……いや、酷くない?てかここ大本営なんだからこれぐらいしとかないと駄目じゃない?」

 

 

実は、この猿橋と佐渡は歴戦ル級戦の時に出会いそれから話をしていて気が合い、今は良い友人として付き合っている

だが、友人としても電話で話したりで共に出掛けたりは出来ていない

 

 

「そうそう、そんな感じなのがお前だよ」

 

 

猿橋は、佐渡の肩を叩くと歩いていくとその後を追い掛けるように佐渡は叢雲と共に着付いていく

 

 

「聞いたか、今回の話?」

 

 

「いえ?何の緊急召集何ですか?」

 

 

「やっぱりそっちには回ってないのか……

どうやらヤバいのが出たって話だぜ?」

 

 

「ヤバいの?いったいどんな?」

 

 

「ま、それは元帥が説明してくれるさ」

 

 

猿橋は、会議室の扉を開けるとそこにはそれぞれ席に座っている五人の提督がいた

今回集められたのは

 

佐世保鎮守府提督

 

佐伯鎮守府女提督

 

舞鶴鎮守府提督

 

呉鎮守府提督

 

大奏鎮守府

 

横須賀鎮守府提督

 

小笠原鎮守府提督

 

 

の七つの鎮守府の提督達が、それぞれの席に座り元帥の到着を待っていた

それぞれ、自分の秘書艦を後ろに立たせ、佐渡も自分の席に座る

 

 

「やっほー、佐渡提督」

 

 

後ろから声がして振り替えるとそこには、佐伯鎮守府所属の北上が立っておりこちらに向かい手をひらひらとさせている

と言うことは、当然隣には女提督がおり顔を見るとこちらに軽く頭を下げる

 

 

「あら?北上さん久しぶり。元気?」

 

 

「お、雷撃姫様~元気元気~

大井っちはどう?」

 

 

その言葉に、叢雲はイラッとはするが北上なら良いやと思い雑談を始めていた

 

 

「お久しぶりです、葛城(かつらぎ)大尉」

 

 

「えぇ、お久しぶりですね佐渡少尉

ちょっと長話をしたいから後で後ろの叢雲と一緒に話しましょ?」

 

 

「はい、分かりました」

 

 

そう言うと同時に、扉が開き元帥と大淀が書類を片手に入ってくる

会議室の真ん中に立つと、大淀に指示をして会議室を暗くする

 

 

 



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緊急召集 五

艦これイベントやり過ぎて小説忘れぎみ……
村雨姫固すぎる……
これ完走出来るかな……


元帥は、席に座っている各々の提督達を見ると机に書類を置き話し出す

 

 

「まずは、朝からの唐突な召集に集まって頂き感謝する

遠くから来たものも居るだろう、だがすまない君達の手を借りないと駄目だと感じてな」

 

 

「元帥~今度は何があったんですかー?」

 

 

 

 

そう、軽い感じで話すのは猿橋、机のお茶を啜りながらのんびりとしている

 

 

「あぁ、すまない猿橋提督

本題に入ろう」

 

 

元帥は、大淀に合図をすると元帥の後ろにある写真が公開されそれを見た提督達はざわざわとざわめきだす

 

 

「実は、昨日二四○○に沖縄多良間島の住民から深海棲艦の報告があり、沖縄鎮守府の石澤(いしざわ)大尉がこれを撃破しに艦隊を送り込んだのだが、数が多すぎる、これ以上の戦闘は不利な為撤退

多良間島が深海棲艦によって完全に占拠された

そして、その中にある一体の姫級が確認された

それがこの戦艦棲姫だ

彼女の目的は、恐らくこの本島 日本列島の占拠にある

君達の艦隊で連合艦隊を結成し、これを撃破して貰いたい」

 

 

元帥が説明をすると、舞鶴鎮守府提督が手を上げる

 

 

「何だね、舞鶴提督 唐澤慎也(からさわしんや)大将?」

 

 

唐澤と呼ばれた男は、立ち上がり元帥を向くと発言する

 

 

「元帥、貴方は今戦艦棲姫と申しましたね

ですが、その写真いやそいつは本当に戦艦棲姫なのですか?」

 

 

その写真とは、明らかにデカイ戦艦棲姫と思われる艤装とその本体、戦艦棲姫がその艤装の肩に乗り歩いている姿である

 

 

「すまない、断定が抜けていたな

こいつは沖縄鎮守府の龍驤が何とか艦載機を使い撮ってきて貰った一枚だ

だが、戦艦棲姫に容姿が酷似しているため大本営はこいつを戦艦棲姫と決めたのだ

理解してくれ

 

そして、この個体は新たな歴戦種の可能性が大幅に高い」

 

 

その言葉に更に、会議室の中に居る提督や艦娘達が騒ぎだす

 

 

「わーお、とんでもないなありゃ」

 

 

「えぇ、何あれ……」

 

 

流石に、佐渡も葛城は写真を凝視しながら唖然としている

 

 

「静粛に!!」

 

 

元帥が机を叩くと、会議室の提督達や艦娘達が一気に静かになる

それを確認した、元帥は再び話し出す

 

 

「明日、◯八○○に沖縄に出立する

各々第一艦隊を準備し、大本営に来てもらい海路を使ってもらう

以上だ」

 

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

その言葉と共に全員立ち上がり、元帥に敬礼をする

元帥が立ち去ろうとすると、佐渡に指を指し命令する

 

 

「それと、小笠原鎮守府提督 佐渡少尉は私の部屋に来るように」

 

 

「マジかよ……」

 

 

佐渡は聞こえないように、呟くと元帥が扉を開け外に出ていく

しばらくすると佐渡がため息をつく

 

 

「……俺何かしたっけかぁ?」

 

 

「ふふふ、ティータイムはまた今度ね

佐渡さん」

 

 

「そうなりますねぇ、すみません葛城さん」

 

 

佐渡は葛城にお辞儀をすると、叢雲を連れ会議室を出て元帥の執務室に向かう

 

 

 

 

 

 

 

 



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緊急召集 六

イベントのギミック解除方法が分からなくて絶望してる提督です……
E2どうすればええんや……


「佐渡少尉、ちょっと良いか?」

 

 

 

だが二人が、会議室を出た瞬間後ろから声をかけられる

声の主は、先程まで会議に参加していた大奏鎮守府提督

白鳥 一葉少将(しらとり いちよう)だ

後ろには秘書艦の重巡洋艦 鳥海(ちょうかい)が顔を伏せている

 

 

「何でしょうか、白鳥少将」

 

 

佐渡が、敬礼をすると叢雲も続けて敬礼をする

白鳥は叢雲の姿を舐め回すように見ると、話し出す

 

 

「そこの駆逐艦、叢雲とうちの伊168を交換(トレード)しないかね?」

 

 

 

その言葉を聞いた瞬間、叢雲は怪訝そうな顔をするが、佐渡は落ち着きながら平然としている

 

 

「いやさ、貰うのは流石に君達の艦隊……何てあるかは分からないけどさ

悪いとは少しばかり思うからさ?うちのご……失礼、『使えない』潜水艦と交換しないか?

いやしてもらおうか?佐渡 少 尉 ?」

 

 

最後の少尉と言う言葉だけ、強調して白鳥はニヤニヤしながら言う

上司が部下の手柄を取るように、部下の優秀な艦娘を奪い取ろうとする輩は今の海軍どころか昔からあるらしい

実際、叢雲が戦果を上げた次の日から佐渡はこの様な事を何度も言われてきた

だからこそ、佐渡はいつも通りに返す

 

 

「お断りします」

 

 

その言葉に、白鳥は舌打ちをすると佐渡の胸ぐらを掴む

だが佐渡は敬礼と表情を崩さず冷静だ

 

「お前に拒否権は無いんだよ?少尉?

大人しく交換しとけよなぁ?」

 

 

「何度言われようと、叢雲は渡しません」

 

 

その行動に、会議室に居た猿橋と葛城は立ち上がりそれを止めようとするが、猿橋の隣をある二人が通り過ぎる

 

 

「てめぇ?舐めてんのか?俺は少将だぞ?

命令が聞けないのか?」

 

 

「いくら少将様の命令でも、聞けません

それに、叢雲は物ではありません

俺の『相棒』です」

 

 

白鳥がその瞬間怒り、佐渡の顔面に右拳で殴ろうとするが、それが佐渡に当たることは無かった

白鳥の拳は、後ろからある一人の艦娘の手によって止められたのだ

 

 

「いててて!!誰だ!!……」

 

 

白鳥は余りの痛みに、その掴んでいる主を見る、つかさずに敬礼をする

そこに立っていたのは、戦艦長門(ながと)そしてその後ろには唐澤だった

 

 

「失礼致しました!長門秘書艦!唐澤大将!」

 

 

先程、佐渡に取っていた態度を改め唐澤に敬礼をしており、端に避ける

胸ぐらを離された、佐渡は溜め息をつき服を直している

 

 

「くだらないことは辞めろ、白鳥少将

私はこいつに用がある、失せろ」

 

 

「は、はい!!」

 

 

唐澤に言われた、白鳥はさっさとその場を離れていき去り際に佐渡の隣を通るとき「覚えておけ」と言い残していく

佐渡は、唐澤にお辞儀をすると再び敬礼をする

 

 

「助けて頂きありがとうございます、唐澤大将!」

 

 

お礼を言うと、唐澤はその隣を歩いていく

 

 

「助けたつもりは無い、今回の作戦に着いていくなら精々足を引っ張るなよ。

国家の裏切り者よ

 

行くぞ、長門」

 

 

「あぁ」

 

 

長門が佐渡の隣を通り過ぎるとき、叢雲を上から睨むように見ると、叢雲も長門を睨んでいた

唐澤達が去った後、二人が心配してか駆け寄ってきてくれた

 

 

「おいおい、大丈夫か?佐渡」

 

 

「大丈夫ですか?佐渡さん?」

 

 

「ありがとうございます、特に何もないですよ?」

 

 

二人に、心配かけまいと佐渡は笑顔で二人に言うと、猿橋が唐澤の後ろを見ながら佐渡の耳元に囁く

 

 

「相変わらず敵視されてるなお前」

 

 

「あぁ、勘弁してほしいよほんと」

 

 

 

 

 

 

 



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緊急召集 七

佐渡は、あれから叢雲と共に元帥の執務室に来ており現在その前に立っている

 

 

「……なぁ?俺なんかしたっけ?」

 

 

「さぁ?あんたの事だから何かしたんじゃない?」

 

 

 

扉の前で佐渡は、大きく溜め息をつくと叢雲が背中を軽く叩き「ほら行くわよ?」と言われノックをする

内側から元帥から『どうぞ』と言う声を合図に、部屋に入る

 

 

「失礼致します!!

元帥、お呼びでしょうか」

 

 

部屋に入ると、そこにはほとんど物がなくあるとしても元帥が座っているデスクと本棚そして、湯飲みのポット位である

だが、何故かその部屋の中央には、ポツンと椅子が二つ置かれている

佐渡は、入ると同時に敬礼をすると元帥が体制を崩しながらお茶をすする

 

 

 

「まぁ、座りたまえ佐渡少尉、駆逐艦叢雲」

 

 

「はい!失礼致します」

 

 

佐渡が、そう言い椅子に座ろうとすると、大淀が扉を開け外を確認し、鍵を閉める

……え?なんで?と佐渡は、思いながらもぎこちなく席に座ると恐る恐る元帥に用件を聞く

 

 

「元帥、私何か致しましたでしょうか?」

 

 

佐渡の心配を他所に、大淀が元帥に耳打ちをすると元帥は頷き沈黙する

 

 

「佐渡少尉」

 

 

「は、はい!!」

 

 

その言葉に、佐渡はビクッとしていると元帥はお茶を飲みきり机に湯飲みを叩き付けると首のネクタイを緩める

 

 

「あーー!疲れた、淀お茶おかわり

あ、佐渡君叢雲ちゃんも飲む?」

 

 

「ふふ、はい元帥」

 

 

「え、えぇと頂きます?」

 

 

「頂くわ」

 

 

先程とはうってかわり元帥は椅子にもたれかけながらのんびりとしている

まるで、仕事疲れのサラリーマン如くぐだりとしながら

 

 

「あ、今回の呼び出しは大したこと無いから構えないで良いよ」

 

 

「は、はぁ……」

 

 

佐渡が、その姿に唖然としていると叢雲がこちらをつつきクスクスと笑い、耳打ちをしてくる

 

 

「元帥はね、表では厳しいけど裏ではあんなもんよ

あの状態なら本当に大したことないから安心なさい」

 

 

「そうなのか…」

 

 

再び元帥を見ると、どこから取り出したか分からない煎餅を口に加えながら頭を天井に向けている

先程との大違いに流石の佐渡も動揺する

 

 

「はい、佐渡さん叢雲さんお茶です」

 

 

「どうも」

 

 

「元帥!お茶ですよ!それと煎餅独り占めしないでください!!!」

 

 

「お、悪い悪い、淀食べる?」

 

 

「お仕事中ですから後で頂きます」

 

 

まるで、いつもの自分達見たいな感じがして佐渡は微笑みながら二人を見ていた

 

 

「それと今回の呼び出しの話はよろしいのですか?」

 

 

「あ、忘れてたごめんごめん」

 

 

元帥は、食べていた煎餅を全て口の中に入れ噛み砕き飲み込むとお茶も続けて飲むと本題に入る

 

 

 



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緊急召集 八

「話とは二つ、一つは大したことないけど

もう一つは重要なこと

どっちから聞きたい?」

 

 

「で、では大したことないことから……」

 

 

元帥は、やはりどこから取り出したか分からない、羊羹を取り出し一本丸々齧りだす

 

 

 

「そっちなら、大井ちゃんの事だね

あんなことがあったからねぇ心配でさ 

どうだい?やっていけてるかい?」

 

 

「あぁ、大井の事ですか

凄い助かってますよ、執務は早いし戦闘訓練の努力怠らないしうちには勿体ないくらいの子ですよ!!

この前なんて……」

 

 

佐渡は、元帥に現状の大井がどんな事をしているか等を詳しく報告すると、元帥と大淀は顔を見合せ笑っていた

 

 

「とまぁ、こんな感じです

正直うちには本当に勿体ないですね」

 

 

 

「あー、うんやっぱり君に預けて正解だったよ

彼女を大切にしてあげてくれ」

 

 

「任せてください!」

 

 

佐渡は、胸を張りながら自信満々に答えると元帥は思いっきり笑う

 

 

「それと、もう一つはかなり真面目な話になるけど」

 

 

元帥はそう言うと、立ち上がり再び先程の様な真面目な態度になりながら窓際に立つ

 

 

「今回君をこの作戦に参加させたのは、私の独断だ

私は君達の実力を認めているからこそ参加させた」

 

 

その言葉に、嬉しさもあるが少しの怒りも感じる

 

 

「お言葉ですが、元帥うちの艦隊は三人しか居ません

だと言うのにこの様な作戦に私の鎮守府が参加する意味が分からないのですが?

他の鎮守府にお願いしてはいかがですか?」

 

 

元帥は、その言葉に「ふむ」と言うと佐渡の目の前に歩いてくると肩を叩く

 

 

「全くその通りだ

だがな、すまない君達に頼るしかないんだ

あの戦艦ル級撃破と陸上型を撃破した君達を頼らせてくれ頼む」

 

 

その目は真っ直ぐ、佐渡の瞳を捉えており、叢雲も一言言おうとするが途中で口をつぐむ

 

 

「現在の戦況は、私達の圧倒的不利だ

艦娘を兵器としてしか見ない提督も他の兵士も多く存在する

だが、君は違う彼等とは

真っ直ぐ、艦娘達と向き合い共に歩もうとしている

それが、この戦況を変えるきっかけになると私は思う

 

だから、私の身勝手な事を許してくれ」

 

 

そして、元帥は佐渡に頭を下げると佐渡はそれを止め微笑みながら立ち上がる

 

 

「頭を上げてください、やれるだけの事はやりますので」

 

 

佐渡はそう言うと、椅子から離れ元帥の部屋を立ち去ろうと叢雲と共に執務室の扉の鍵を開け、開く

 

 

「奴等が我々から奪うのなら、その覚悟を持ってるって事ですからねぇ」

 

 

怪しく、口元を吊り上げながら呟くと現在の部屋を立ち去る

二人が去った部谷で、元帥は椅子に座ると溜め息をつく

 

 

「大淀、今回のアレは」

 

 

「恐らく、この前のル級と同じだと思われます

何者かによって『改良、及び改造された深海棲艦』の可能性が極めて高いです

そして、もしかしたら今回も居る可能性があります」

 

 

大淀からの話を聞いた元帥は、引き出しからある一枚の写真を取り出し睨みつける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前は、何なんだ

『異形の空母ヲ級』よ」

 

 

その写真は、通常のヲ級とは違い

頭には艤装を付けておらず、両腰から二つの滑走路が伸びており、杖を海に付いている

つい最近見付かった、新型の深海棲艦だ

 

 

 



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緊急召集 九

そろそろ年末ですね
皆さんはどんな年末をお過ごしですか?


「んー……歴戦かぁ…

勝てるわけねぇのになぁうちが」

 

 

「そう言うことは言わないの、元帥が期待してくれてるんだから良いことじゃない」

 

 

「良い訳あるか、俺は戦いたくないの

お前らとあそこでのんびりしていたいのよ」

 

 

佐渡は、伸びをしながら叢雲に対し愚痴を言いながら歩いていると「あっ」と叢雲が言うと佐渡の服を引っ張る

 

 

「ん?なんだ叢雲」

 

 

「ちょっと寄りたいところがあるんだけど良い?」

 

 

叢雲に連れていかれるまま、大本営の廊下をしばらく歩いていると地下へ続く階段を見付け降り始める

行き先が分かった、佐渡は叢雲の頭を撫でながら後ろを共に降りる

 

 

「確かに、そろそろ寂しいもんなあれがないのは」

 

 

「戦闘になるなら尚更ね?」

 

 

地下の階段を降り、しばらく歩くと大きな鉄の扉がありそれを開けるすると中はかなり広くなっており、そこらに機材や工具等が置いてある近くには売店らしきものもある

 

 

「明石の工廠にようこそ、佐渡提督、叢雲ちゃん」

 

 

売店には、ピンク色の髪をした作業着の女の子が座りこちらに話し掛けてきていた

二人はその艦娘に近付き手をふる

 

 

「やっほー明石さん、最近はどう?」

 

 

「結構売行き良いんですよ

高速修復材の予約も殺到してますし、佐渡提督も何か買っていきますか?

今ならお安くしておきますよ?」

 

 

「いやー、今回は艤装を取りに来たんだ

買い物はまた今度ね」

 

 

「あ、叢雲ちゃんの

ちょっと待っててくださいね」

 

 

この艦娘、明石はこの大本営大型工廠の責任者にして、唯一艦娘の建造、改造等を行える貴重な存在である

実は、この明石と佐渡は面識がありそこそこ仲が良い

明石が戻ってくると、叢雲に箱を手渡す

 

 

「はい、直りましたよ」

 

 

「ありがとう、明石さん

やっぱりこれがないと落ち着かなくてね」

 

 

叢雲が箱を開けると、そこにはウサギの耳の様な艤装が入っておりスイッチを入れると叢雲の頭上にフワリと浮きまるでウサギの耳のように両端に浮き上がる

 

 

「あ、そうだ佐渡提督

叢雲ちゃんの練度検査してもよろしいですか?」

 

 

 

「あー…」

 

 

チラッと叢雲を見ると、コクンっと頷くのを確認すると明石に向き直る

 

 

「では、お願いします」

 

 

「かしこまりましたー

じゃあ、叢雲ちゃんこっち来てね」

 

 

明石に連れられ、叢雲は工廠の奥に連れていかれる

その間、佐渡は工廠から出て廊下のベンチに座り近くの自販機で珈琲を買いのんびりと待っていた

 

 

 

「あれ?佐渡提督?」

 

 

突然工廠の方から誰か女性の声に呼ばれ、佐渡は飲みながら振り替えるとそこにはタンクトップとつなぎのズボンを着た灰色の髪の女性が汗をかきながら立っていた

 

 

「おー、夕張(ゆうばり)さん

仕事休憩ですか?」

 

 

夕張

 

正式名 夕張型 一番艦軽巡洋艦

 

明石と同じ大本営に所属し、工廠で共に仕事をしている

手先が器用で、大淀明石共に仲が良く

実際砲雷撃戦も出来るのだが、今はここの仕事が気に入っておりここに定職している

 

 

 

 

 

 

 



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緊急召集 十

「そんなところよ

あ、そうだ佐渡提督~?

どうせだから奢ってよー?」

 

 

明石同様、夕張とも仲が良く自販機や他の所で会うと食べ物を奢ったり奢られたりしており今回は奢る方らしい

 

 

「はいはい、んじゃポカリですか?」

 

 

「いんや、紅茶欲しいなぁ?」

 

 

「はいよ」

 

 

佐渡は、午前の紅茶を買うと夕張に渡す

貰った夕張は佐渡の正面に立ちながら壁に背を預け紅茶を飲みだす

 

 

「隣空いてますよ?座らないんですか?」

 

 

「いやー、私汗臭いし?

それにさっきまで工具弄ってたからオイル臭いし……」

 

 

夕張は、そう言いながら紅茶を片手に頬を掻いている

 

 

 

「俺は別に大丈夫ですよ?

かもーんかもーん」

 

 

「私が気にするのよ!!」

 

 

そう言うと佐渡は、珈琲の缶を床に置き立ち上がると夕張に近付き壁に手を付け顔を近付ける

 

 

「ちょ、ちょちょちょ!?」

 

 

夕張は慌てながら顔を真っ赤にしていると、佐渡は夕張の首もとに顔を当て匂いを嗅ぐ

 

 

「特にそんな匂いしませんよ?

ほら、一緒に座りましょ?」

 

 

佐渡は夕張の手を取って引っ張り、隣に座らせる

顔を真っ赤にしている夕張には一切気付かずに

隣通しに二人で座ると夕張は顔を伏せているのを気付き興味が出そうな話題を持ち掛ける

 

 

「そう言えばさ、夕張さん今何か新装備の開発とかしてるの?」

 

 

「んん!?あ、あぁ開発ね

うん、今戦艦用の艤装を開発してるのよ

これが中々上手く行かなくてね……」

 

 

それからは、夕張は先程の事何か気にせず熱心に兵器開発や工廠の事を語りだしそれを相づちをうちながら佐渡は聞いていた

 

 

「ってことがあってねぇ今苦戦してるのよ……」

 

 

「成る程ねぇ、大変だね工廠の仕事も」

 

 

「まぁ、大変だけどさ

私も好きでやってますからねぇ……

そう言えばさ、そっちはどうなの?

この前、明石が工廠直したって聞いたからさ

開発とかしてるの?」

 

 

「あー、うんやってはいるんだけどねぇ……

基本的には魚雷とかばっかりかなぁ?

三人しか居ないしさ?」

 

 

「それもそっかぁ……」

 

 

夕張は、そう言うとベンチの後ろの壁にもたれ掛かると、天井を見上げ閃いた様に佐渡にニヤニヤと笑いながら向き直る

 

 

「なーらー?私がそっちに移籍しようか?」

 

 

 

「……………はい?」

 

 

 

佐渡が驚いてる中、夕張は立ち上がり佐渡の額に飲んでいるペットボトルを当てる

 

 

「だから、こっちを辞めてそっちの鎮守府行こうか?

それなら、佐渡提督の助けになるし色々と……」

 

 

「駄目ですよ」

 

 

夕張のペットボトルを取り、首元にペットボトルの蓋を突き付けると額を軽く逆の手先で小突く

 

 

「貴女はここに居るべきだ

俺みたいな戦場に来るべきじゃない

ここに居て欲しいんです

もう失うのは勘弁ですからね」

 

 

一瞬の事で、夕張も驚くが直ぐに笑いだしペットボトルを取り中身を一気に飲み干しゴミ箱に捨てる

 

 

「ふふ、ごめんなさい

わがまま言って」

 

 

「いえ、こっちとしては来てほしいですけど

夕張さんにはここに居て欲しいと思うだけですよ

次は奢ってくださいね?」

 

 

「はいはい、高いのは勘弁よ?」

 

 

二人が笑い合っていると、工廠の方から叢雲と明石が歩いてくる

その姿を見た叢雲は佐渡を睨み付けている

 

 

「あんたぁ?まぁた夕張さんをナンパしてるの?」

 

 

「待て、叢雲?俺は何もしてないぞ?」

 

 

佐渡と叢雲を見た、夕張は意地悪そうに笑いながら身体を両手で抑えしゃがみこみ嘘泣きをする

 

 

「そうなのシクシク

佐渡提督に、全身の匂いを嗅がれて

「ええ臭いだなぁ?夕張ちゃんやグヘヘ」って言われて襲われそうになったの………」

 

 

「待てぇ!!!夕張さんんん!!

俺そんなこと言ってないぃぃぃぃ!!!」

 

 

 

「こんのぉ!!匂いフェチの糞変態司令官がぁ!!!」

 

 

その瞬間、叢雲が佐渡の脚を蹴ると佐渡が体制を崩すと首を掴みそのまま押し倒し顔を踏みつけるグリグリとする

 

 

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!」

 

 

「うっさい変態!!!」

 

 

二人は騒いでいると、その姿を見ていた明石の夕張は笑っていた

 

 

「本当に、仲が良いですね二人は」

 

 

「うん…羨ましい位にね」

 

 

夕張は、頬をかきながら少し叢雲に嫉妬していた

 

 

「私も行きたいなぁ……小笠原鎮守府…」

 

 

 

「………そうね」

 

 

二人が、そんなことを話していると露知らずに佐渡は弁解を述べ叢雲は相変わらず脚で踏みつけていた

 

 

 

 

 



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多良間島奪還作戦

今回から深海棲艦戦になります

上手く書けるか心配ですが……


ここはところかわって、次の日の沖縄鎮守府正門前

あの後、小笠原に戻り二人に事を伝え何とか沖縄に到着していた

 

 

「………あっつくね?」

 

 

「そりゃそうですよ

こっちは小笠原とは違い気温が高く暑いですからね」

 

 

佐渡の隣には大井が、眼鏡をかけながら立っており書類を持ち正しく秘書艦が板に着いてきているようだ

 

 

「そうですねぇ……

でも、それよりも……」

 

 

古鷹が、佐渡の後ろに立ちながらも叢雲の方を見ると叢雲は両手に食べ物を持ち食べながら立っている

 

 

 

「……ん?なによ?」

 

 

「叢雲さんや……いくらなんでも食べ過ぎじゃないか?」

 

 

「そうだよ……流石に食べ過ぎだよ?」

 

 

「戦艦並みに食べてますよね……

その食べ物どこにいってるのよ…」

 

 

この三人が、驚いているのはそのはずここまで来るのに四件位梯子してゴーヤチャンプルーやらソーキそばを食べまくり実際少し到着が遅れていた

 

 

「普通じゃない?」

 

 

 

「「「そんなわけあるかぁ!!」」」

 

 

三人は、ハモりながら言うが叢雲は気にせず沖縄鎮守府の正門をくぐり入っていく

 

 

「行くわよ、司令官

大井、古鷹」

 

 

そう言われると、呆れながらも叢雲に付いていき指定の会議室へと向かう

途中、大井と古鷹は別の場所で待機の為別れ、佐渡と叢雲は会議室に向かう

 

 

「大型作戦か………

俺達の出番がないと良いな」

 

 

 

「それには同意よ」

 

 

二人が話していると、会議室へとたどり着き扉を開けると中には大本営に居た六人の提督ともう一人沖縄鎮守府の提督 石澤 悠木(いしざわゆうき)大尉が一番前に座っている

その隣には、その石上の秘書艦 阿武隈の姿も見える

 

 

阿武隈

 

正式名 長良型 六番艦 軽巡洋艦

沖縄鎮守府所属、石上の秘書艦にしてかなりの実力者

この鎮守府の事務仕事をこなしながらも自ら出撃することもあり他の鎮守府に名を知られるほどである

 

 

佐渡が席に座ると、会議室はピリピリとした緊張感に包まれる

それを破ったのは入ってきた元帥だった

元帥は会議室を見渡すとデスクに書類を置き、話し始める

 

 

「おはよう、諸君

良く集まってくれた

これより作戦と相手の説明をしよう

今回の敵について、石澤大尉頼む」

 

 

 

「はい、では失礼致します」

 

 

元帥に呼ばれた石澤は立ち上がり、資料を読み上げる

 

 

「皆様、本日はお集まり感謝致します

では、現状の戦況をご報告致します

現在、深海棲艦達は多良間島を占拠、それ以降はこちらに対しなにもしてきてはおりません

万が一の為にも既に近くの島宮古島の住民も全て沖縄に避難させ二つの島は現在無人島となっております

 

こちらとしても、何度か奪還を試みましたが向こう側とこちらの戦力差が激しく攻略に至っておりません

我が艦隊の空母達による策敵では50を軽く越える大艦隊だと思われます」

 

 

その言葉に、会議室はざわめく

 

 

「50か……かなり居るな」

 

 

「凄いわね、流石に」

 

 

「わーお、ヤバいねぇこれ」

 

 

会議室がざわめいていると、元帥が空砲の銃を撃ち静止する

その瞬間、皆が静かになり元帥は銃を下ろす

 

 

「大尉続きを」

 

 

「は、はい!

そして、今回姫級が確認されました

その正体は 戦艦棲姫 

しかも、通常個体とは違い彼女の艤装はかなり大きく、そして砲撃火力、装甲、どれを見ても通常個体より高く彼女自身にも二つの砲門を所持していることが分かっています

他には、姫級や鬼級は確認出来ず間違いなく彼女がこの大艦隊を指揮していることは明白です

現在、彼女率いる大艦隊は多良間島から動いておらず

今叩くのがベストだと思われます

 

以上です」

 

 

「ありがとう、石澤大尉

では今回の作戦を話す

各員頭に叩き込め」

 

 

元帥は、石澤を座らせると今度は自分の資料を取り出し、部屋を真っ暗にする

 

 

 

 



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多良間島奪還作戦 二

あ、冬イベント諦めました

資材が全て溶けましてね……はは

でも、やっぱり楽しいですね!!
イベントは!


「今回は、沖縄鎮守府含む八艦隊で作戦に挑む

まず編成から見ていただこう」

 

 

元帥は、パソコンを弄ると大淀が準備したモニターに全ての鎮守府メンバーが発表される

 

 

横須賀鎮守府 猿渡中佐

 

旗艦 戦艦 榛名(はるな)

戦艦 ローマ

軽巡 那珂(なか)

軽巡 龍田(たつた)

駆逐艦 夕立(ゆうだち)

駆逐艦 時雨(しぐれ)

 

 

佐伯鎮守府 葛城大尉

 

旗艦 軽巡 北上

駆逐艦 吹雪 (ふぶき)

駆逐艦 霰(あられ)

駆逐艦 霞 (かすみ)

重巡  足柄(あしがら)

戦艦 比叡 (ひえい)

 

 

大奏鎮守府 白鳥少将

 

旗艦 重巡 鳥海

軽空母 祥鳳 (しょうほう)

軽空母 飛鷹 (ひよう)

潜水艦 伊168 (いむや)

戦艦 ガングート

重巡 羽黒 (はぐろ)

 

 

呉鎮守府 斎藤中佐

 

旗艦 軽巡 神通(じんつう)

重巡 摩耶 (まや)

正規空母 飛龍 (ひりゅう)

戦艦 山城 (やましろ)

駆逐艦 黒潮 (くろしお)

駆逐艦 天津風 (あまつかぜ)

 

 

佐世保鎮守府 藤谷少将

 

旗艦 駆逐艦 不知火(しらぬい) 

駆逐艦 浜風 (はまかぜ)

戦艦 日向 (ひゅうが)

軽巡 川内 (せんだい)

軽巡 木曾 (きそ)

重巡 高雄 (たかお)

 

 

舞鶴鎮守府 唐澤大将

 

旗艦 戦艦 長門(ながと)

戦艦 陸奥 (むつ)

駆逐艦 磯風 (いそかぜ)

駆逐艦 綾波 (あやなみ)

正規空母 赤城 (あかぎ)

潜水艦 伊58 (ゴーヤ)

 

 

沖縄鎮守府 石澤大尉

 

旗艦 重巡 妙高 (みょうこう)

正規空母 瑞鶴 (ずいかく)

軽空母 隼鷹 (じゅんよう)

戦艦 霧島 (きりしま)

駆逐艦 満潮 (みちしお) 

重巡 筑摩 (ちくま)

 

 

小笠原鎮守府 佐渡少尉

 

旗艦 駆逐艦 叢雲

重巡 古鷹

軽巡 大井 

 

 

「以上が編成となる」

 

 

その画像を見ながら佐渡溜め息をつくと隣にいた葛城提督に肩を叩かれる

 

 

「これより、作戦を言う

まず、艦隊の番号を決める

第一艦隊 旗艦 長門の舞鶴鎮守府

第二艦隊 旗艦 榛名の横須賀鎮守府

第三艦隊 旗艦 鳥海の大奏鎮守府

第四艦隊 旗艦 妙高の沖縄鎮守府

第五艦隊 旗艦 不知火の佐世保鎮守府

第六艦隊 旗艦 神通の呉鎮守府

第七艦隊 旗艦 北上の佐伯鎮守府

第八艦隊 旗艦 叢雲の小笠原鎮守府

 

以上だ」

 

 

この順番は、鎮守府の活躍や実力で構成されている

特に第一艦隊の舞鶴鎮守府はかなりの深海棲艦を撃沈している実力者揃いである

 

 

「そして、今回第八艦隊は本作戦の最後の砦として沖縄近海にて待機してもらう

佐渡提督、構わないな?」

 

 

「はい!全力でやらせて頂きます!!」

 

 

「よろしい、ではそれ以外の艦隊での作戦を発表する」

 

 

それから、元帥による本作戦に関して話していた

簡単に言うと、これより三つの艦隊に分かれ出立し、三方向から多良間島を目指す

艦載機を使い、多良間島一体の深海棲艦を各個撃破し、情報が行かないように奇襲を仕掛けていくと言うもの

まず、空母軽空母や潜水艦で先制攻撃をし敵を混乱させ、その最中に高速戦艦や駆逐艦使い確実に潰していくものである

 

 

 

そして、第一艦隊の長門率いる舞鶴鎮守府だけは単独艦隊でそれぞれ連合を組んだ艦隊に指示を出していくそうだ

 

今回、連合を組んだのは

第二艦隊 第三艦隊の榛名連合

 

第四艦隊 第五艦隊の妙高連合

 

第六艦隊 第七艦隊の神通連合

 

である

 

「容赦ないねぇ、負ける要素無いんじゃない?」

 

 

佐渡は、呟きながらお茶をすすると話が終わったらしく

元帥がこの場をしめる

 

 

「今回の作戦で、初の歴戦姫撃破になるかもしれん

皆の者心してかかれ!!

暁の水平線に勝利を!!!」

 

 

「「「「暁の水平線に勝利を!!!」」」」

 

 

その言葉と、共に各提督と秘書艦は会議室を出ていき、各々準備に取り掛かる

佐渡も立ち上がると頭を叩かれる

 

 

「今回は留守番だな」

 

 

頭を叩いたのは猿渡であり、後ろには秘書艦の大和が立っていた

 

 

「仕方無いわよ、そもそもこの作戦に参加事態ありえないんだから」

 

 

隣に居る、葛城も佐渡の肩を叩いている

 

 

「いやー、うちの艦隊は三人しか居ないからなぁ

お役に立てるわけないですって」

 

 

「どの口が言うのやら」

 

 

猿渡は、呆れながらも会議室の外に出ていくと大和がこちらにお辞儀する

 

 

「この作戦終わったら今度こそ話しましょ?

佐渡提督」

 

 

「まったねー、佐渡提督~」

 

 

葛城も北上を連れて、会議室を後にする

 

 

「さぁてと、俺らも行こうか?

叢雲」

 

 

「えぇ、どうせ暇だとは思うけどね」

 

 

 

 

 

 

 



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多良間島奪還作戦 三

ここは海上宮古島付近の海域

深海棲艦達は、付近を警戒しながら巡回を行っていた

編成は、軽巡へ級一体、重巡リ級二体、駆逐艦ハ級三体の偵察艦隊

リ級の一体が他の者達へ指示をしており、恐らくフラグシップ(司令艦)だろう

だが、もう一人のリ級が空を指差し、そちらを見ると敵の艦載機が真上からこちらに突っ込んでくる

 

 

「…!!」

 

 

リ級は指示を出すが間に合わず、艦載機の爆装がハ級三体を直撃、撃沈していく

それを見て、軽巡へ級が艦載機を撃ち落とそうとするが、突如として砲撃を受け一撃で撃沈してしまう

リ級は何だか分からず、空から海上を見ると、艦娘の艦隊がこちらに向けて走ってくる

反撃をしようとするが、向こうの戦艦の一撃を受けてしまいリ級の一体は意図も容易く撃沈する

残されたフラグシップは、一人でも応戦しようとするが

 

 

「ごめんね、君はここで終わりだよ」

 

 

「沈むっぽい!!」

 

 

いつの間にか、両端に回り込まれており二人の駆逐艦に挟まれ両方の砲撃が直撃し、何も出来ずに撃沈していく忌々しい艦娘を睨みながら

 

 

「こちら、第二艦隊旗艦榛名

現在、宮古島付近を通過これより多良間島に向かいます

 

 

『了解、戦況はどうだ?』

 

 

「優勢です

先程、深海棲艦の偵察部隊と遭遇。

奇襲によりこちらの損傷無しに出来ております

空母の皆さんと駆逐艦の子達のおかげですね」

 

 

「榛名さーん、夕立頑張ってるぽい?

誉めて誉めてー!!」

 

 

「こら、夕立あんまり榛名さんを困らせてはいけないよ?」

 

 

第二艦隊と第三艦隊を指揮する、榛名は夕立の頭を優しく撫でると夕立は満足気な顔をしている

 

 

長門は、海を睨みながら辺りを偵察しながらゆっくりと航行していた

耳のインカムからは、第四、第六からの戦果報告の通話がなりやまずに全てを聞いていた

 

 

「提督、現在宮古島を通過これより敵の本拠地多良間島海域に入る」

 

 

 

『了解、一体足りとも逃がすな

確実に全てを滅ぼせ』

 

 

「了解、伊58海中に変化は無いか?」

 

 

「問題無いでち、深海から上がってくる新手は見付からないでちよ」

 

 

長門達が、多良間島海域に入ってる頃提督達は作戦本部に全員集まり各々の艦隊と連絡を取っていた

そこには佐渡もおり、のんびりとお茶を飲んでいた

 

 

「んー、叢雲どうよ?」

 

 

『退屈よ、回りは海だし

どうせなら釣りの一つでもしたいわ

流石にやらないけど』

 

 

『叢雲ー!こっちの海は綺麗だよ!ほら海中が透けて見えるー!』

 

 

『本当ね、小笠原の海も綺麗だけどこっちも綺麗ね……

北上さんとバカンスしたいなぁ……』

 

 

他の艦隊が戦っている中、叢雲達は暇そうにしている

彼女達は宮古島と沖縄の丁度中間の海域にて沖縄鎮守府に向かってくる深海棲艦の襲撃から守る役割なのだが、基本的に警報があるから必要無いと言っては無いものでもある

だからこそ、暇である

 

 

「お前達ー?

仕事に来てるんだから警戒は忘れるなよ?」

 

 

『忘れてないわよ、少なくとも私はね?』

 

 

叢雲がチラッと二人を見ると、二人は海の上で少しはしゃぎながら遊んでいるのを見ると溜め息をつく

 

 

『司令官、二人をお仕置きするからちょっと回線切っても構わない?』

 

 

「あー……うん程ほどにな?」

 

 

インカムの回線を切ると、佐渡は手を合わせ古鷹と大井の無事を祈っていると不意に後ろから声をかけられる

 

 

「少しよろしいですか?佐渡提督」

 

 

声をかけられ後ろを振り向くとそこには、この沖縄鎮守府の主にして提督石澤が佐渡の後ろに立っていた

 

 

 

 



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多良間島奪還作戦 四

「どうも石澤大尉、何か私にご用ですか?」

 

 

「あ、良いよ敬語は今回は来てくださりありがとうございます

それと、少しばかり話しませんか?同じ島の鎮守府として」

 

 

石澤は、佐渡の隣に座ると持ってきた麦茶を飲みだす

 

 

「佐渡提督は、艦娘をどう思いますか?」

 

 

「どう……とは?」

 

 

その質問に、石澤は佐渡に向かい合い真っ直ぐ目を見て話す

 

 

「私はね?彼女達は兵器であって、兵器ではないと思うんだ

あんな表情豊かな少女達がただの兵器とは思わない

佐渡提督はどう思うかい?」

 

 

佐渡は、その質問に少し考え込む

そして、口を開く

 

 

「俺は、あいつらを娘か仲間としか見てないですね」

 

 

「と言うと?」

 

 

「そう……ですね

彼女達を兵器と呼ぶなら、それは人間でも同じように兵器と成り行くと思っています

兵器とは、簡単に言えば武器の事を差します

俺は、あいつらが兵器と言うよりは人間に近いのだが人間ではない。

だからと言って兵器ではない中途半端な存在だと

故に、提督の采配によって彼女達の存在が決まる

兵器か人間か

なら、兵器として扱わず人間として扱い、これから共に戦っていきたい歩んでいきたいと思ってます

兵器として扱えばただの消耗品になってしまいますからね」

 

 

佐渡がそう語ると石澤は、微笑み手を握る

 

 

「……君とは気が合いそうだ 

この仕事が終わったら泊まっていかないか?」

 

 

「え?良いんですか?」

 

 

「あぁ、旨い酒があるんだ

共に語り合い夜を明けようじゃないか?」

 

 

佐渡は、握られながらアハハと軽く笑いながら気付いたことを石澤に投げ掛けてみる

 

 

「そう言えば、阿武隈さんは今回出撃しないんですか?」

 

 

「あぁ、彼女は今入渠中なんだ

実はこの前の戦闘での傷が癒えてなくてね

先程の会議後すぐに入渠させているよ

それに、彼女には出てほしくないからね……」

 

 

石澤は、そう言うと頬を掻いていると佐渡はニヤニヤと笑いながら石澤を指差す

 

 

「まさか、石澤大尉と阿武隈さんって出来てるんですか?」

 

 

「ま、ままま!!まさか!!そんなことはないよ!!」

 

 

「その反応、告白はしてないですけど

好きではあるんですね?」

 

 

「う、うむ…」

 

 

石澤は顔を赤くしながら、俯いてしまい佐渡はそれを見てからかっている

 

 

「告白、しないんですか?」

 

 

「あぁ、阿武隈にはいつも世話になっているからな

この想いは戦争が終わったら伝えるつもりだ」

 

 

 

その言葉に、佐渡はニヤニヤを辞め真顔になるとお茶を飲み一息つくとボソッと言う

 

 

「後悔しないでくださいね」

 

 

「え?」

 

 

「俺達は戦争中です。

いつどこで死ぬかは分かりません

だからこそ、伝えるものは伝えておかないと後悔しますよ? 

………俺の体験談からですけどね」

 

 

「佐渡提督それはどういう…」

 

 

すると、石澤がインカムに指を当て「分かった」と小さく言うと佐渡から離れ唐澤の方へと向かう

 

 

「すまない、佐渡提督

進展があったようだ集まろう」

 

 

「了解」

 

 

その進展とは、どうやら石澤の艦隊と猿渡の艦隊連合が多良間島を捉えたと言う話だ

 

 

『提督、見えました

多良間島です』

 

 

「どうだ、榛名

島の様子は?」

 

 

榛名達は島を見渡し辺りに深海棲艦が居ないか確認する

空母達の方へと向くと首を降っているのを確認し、報告する

 

 

「今のところ気付かれては居ないようです

深海棲艦の影は見えません」  

 

 

 

すると、もう一人の戦艦ローマが主砲に手をかけながら多良間島を睨む

 

 

「……静かね」

 

 

「はい、では皆さん長門さん達と合流しましょう」

 

 

榛名率いる連合艦隊は、多良間島を捉え長門と連絡を取り指定の着陸ポイントへ向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、その少し後方から一機の敵艦載機が榛名達を見ているとも知らずに

 

 

「……来たか」

 

 

多良間島から離れた所の海上に、一人の深海棲艦が立ち腰の滑走路から艦載機を飛ばしある場所へと向かわせる

 

 

 

 




満身駄目絶対


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多良間島奪還作戦 五

長門率いる艦隊は、辺りを警戒しながら多良間島付近の海域へと到着していた

辺りは昼間だと言うのに静かだ

普段ならうみねこやらの声がするのだが今は長門達に当たる波の音が少し聞こえるくらいだ

長門はインカムを押すと、多良間島付近に居る艦隊と連絡を取る

 

 

「全艦隊の空母達

索敵はどうだ?」

 

 

『こちら榛名連合艦隊 祥鳳

飛鷹共に付近に敵深海棲艦の影はなし』

 

 

『こちら妙高連合艦隊 瑞鶴

こっちも深海棲艦の敵影無しです

島の中も見てみますか?』

 

 

『こちら神通連合艦隊 飛龍

こちらは島の入り口に何体かの深海棲艦を確認

彼女達、艤装をしているけど陸上に居るわ

もしかしたら、島に潜伏しているのかも?』

 

 

「ありがとう、各員指示があるまで待て」

 

 

長門は全員の報告を聞くと、回線を唐澤へと切り替え指示を仰ぐ

 

 

『提督、奴等は既に多良間島を寝床にしてるみたいだがどうする?』

 

 

唐澤は、元帥を見ると元帥はコクンと頷き唐澤も理解したように長門へ指示をマイク越しに出す

 

 

 

「……戦艦及び各々の旗艦で多良間島に上陸

奴等を根絶やしに、そして奥に居るだろう姫を潰せ

多少家や物が壊れても構わん、勝利の為だ」

 

 

『了解』

 

 

唐澤が指示をだした後、会議室では勝利を確信して何人かの提督が安堵の溜め息をつく

ある程度の山場は終わり、後は陸上戦闘だが数が数であり確実に勝てると確信していた

元帥も隣の大淀を見ながら、安心してお茶を飲む

 

 

 

ただ一人、佐渡だけは表情を曇らせて居ているのを除いては

 

 

「どうした?佐渡そんな顔して」

 

 

「いやですね、どう考えても可笑しくないですか?」

 

 

その言葉を聞いた、各提督は佐渡に目を向ける

 

 

「はぁ?可笑しい?どこかだよ?

元帥の作戦が上手くいってる証拠だろ?」

 

 

「だから、それが可笑しいんですよ」

 

 

すると、唐澤大将は立ち上がり佐渡の前に立つ

 

 

「それはなんだ貴様元帥の作戦が上手くいかないと思ってたのか?」

 

 

「いえ、違います

『安易に事が運び過ぎているんです』」

 

 

「だから!それは作戦が上手く行ってる証拠だろうが!!いい加減ぬかすな!!」

 

 

白鳥が怒号を飛ばしているが、唐澤は表情を変えずに座っている佐渡を見下ろす

 

 

「唐澤大将、現在撃破した艦隊はいくつですか?」

 

 

「……榛名連合艦隊が二つ

妙高連合が二つ

神通連合が二つだ」

 

 

「少なくないですか?三方向に別れてるのにも関わらず」

 

 

その言葉に、唐澤は確かにとも思いながら長門からの報告を受けている艦隊メンバーを確認する

 

 

「だが、いくつかの敵艦隊には戦艦や空母何体か居た

量より質を取ったのだろう

違うか?」

 

 

「それもそうですか……」

 

 

佐渡は、それを受け下がってしまうがやはり考え込んでしまうが猿渡が頭を軽く叩き励ます

 

 

「気のせいだって、じゃああれか?

向こうに俺達の作戦がバレていて

陸上に上がった奴等を一網打尽にする為に今回わざとやられているふりをしてるとでも言うのか?

あいつらにそんな知恵は無いって

それにどうやってうちらを攻撃するんだよ」

 

 

そう言うと猿渡は笑っており、葛城も「大丈夫ですよ」と佐渡を励ます

 

 

 

佐渡は(本当にそうなのか?)と疑問に思いながらも長門達の報告を待つ

 

 

 

 



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多良間島奪還作戦 六

長門は7つの艦隊に指示をだし、空母達に先制で艦載機を飛ばさせると艦載機達は砂浜の上の深海棲艦達を容易に捉え爆撃を開始する

 

 

「全艦隊!!撃てぇぇぇぇ!!!」

 

 

その瞬間、7つの全艦隊は一斉に砲撃をし砂浜に居る深海棲艦を木っ端微塵に吹き飛ばす

砂煙が消えた後、長門達は全速力で多良間島を目指す

 

 

一番先に上陸したのは長門であった、それから榛名、鳥海、妙高、不知火、神通、北上がそれぞれ上陸した

長門は辺りをぐるっと見渡すが特に何もないことを確認する

 

 

「……やけに静かですね」

 

 

「えぇ、先程の砲撃で来ると思ったのですが」

 

 

「ですが、警戒は怠るわけにはいきませんね」

 

 

「何が来ても沈めるだけです」

 

 

「頑張りましょう!」

 

 

「いやー、つっかれたなぁ……

大井っちと来たかったなぁ」

 

 

「各員、行くぞ

それと、磯風、戦艦は私に付いてこい

他はここで待機だ」

 

 

長門筆頭に、各艦隊の戦艦と磯風は付いていき多良間島の中へと入っていく

 

 

「磯風、どうだ?」

 

 

「あぁ、居る何体か

だが、この島の真ん中に一体だけ動いていないのが居るこいつだな姫は」

 

 

磯風は電探を装備しており、それをソナーの様に使い映像を持っているタブレットに反映させている

 

 

「なら各個撃破と行こう

そいつは最後だ」

 

 

 

長門は、背を低くしながら歩いていき島に居る深海棲艦達を一体残らず撃破していく

 

 

「長門、次の曲がり角居るぞ」

 

 

磯風からの報告により、長門が壁に隠れながら曲がり角の先を見ると二体のリ級が歩いていた

 

 

「磯風、頼めるか?」

 

 

「了解」

 

 

磯風は、腰に掛けている二門の主砲両手に持つと音もなくリ級の真後ろまで走ると右に居るリ級の脚を撃ち抜くとリ級が脚を押さえながら倒れ、それに気付いたもう一人のリ級が反撃の為に振り替えるが、その瞬間磯風は右手から主砲を放し顔を掴み壁に激突させる

 

 

「ー!ーー!!」

 

 

痛みに耐えきれず声をあげ主砲をリ級は右手の艤装を放してしまい、磯風の手を外そうとすると磯風は直ぐ様右手を放しその瞬間左手の主砲をリ級の口の中に突っ込み撃つ

口から喉に貫通し、壁には穴と共に大量の血が辺りに散らばる

口から撃たれたリ級は糸が切れた人形の様にズルリと地面へと落ちる

 

 

そして、もう一人の脚を押さえているリ級を蹴り上げ、落とした右の主砲を持ち上げ頭に押し付けると主砲を撃つ

頭を木っ端微塵に吹き飛ばすとその返り血が磯風の主砲や服を汚し白かった制服は赤く染まる

 

 

「長門、これでいいか?」

 

 

その姿に、見ていた何人かは唖然としていたが長門は親指を立てながら

 

 

「流石だ磯風。行くぞ」

 

 

「ひゅ~痺れるねぇ」

 

 

「一方的……でしたね比叡お姉さま」

 

 

「ひぇ~…」

 

 

しばらく、歩き島に在住している深海棲艦を一体を除いて始末し終わると、最後の一つ姫級がいるであろう場所に向かう

 

 

そこは、島の中央小学校の体育館である

そこまで広くは無いが、物陰がなく長門達は校庭を突っ切り体育館の入り口へと行く

 

 

「磯風ここか?」

 

 

「あぁ、先程から動いていない

ここで間違いない」

 

 

「提督、姫級らしいものを確認強襲する」

 

 

『あぁ、気を付けろ』

 

 

長門は、比叡と榛名に指示を出し、各戦艦達にも砲撃の準備をするように指示を出す

 

 

「……開けろ!!」

 

 

 

比叡と榛名が開き、体育館の中に入り主砲を全門真ん中へと集中させる

だが、その者の正体にそこにいる艦隊全てが唖然としていた

そこに居たのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

主砲を一つだけ持った戦艦タ級だった

 

 

 




ぶっちゃけ多良間島の見取り図が分からないのでほとんど想像です
お許しください


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多良間島奪還作戦 七

勝利を確信したときこそ、大きな隙が生まれる


「なん……だと?」

 

 

長門は予想外の深海棲艦に唖然としていた

その様子を可笑しく思った外に待機していた戦艦や旗艦達が一斉に体育館へ入ってくる

 

 

「戦艦……タ級?」

 

 

「あれ?戦艦棲姫は?」

 

 

「妙高!!どう言うことだ!!」

 

 

「え……どうして?嘘よ!!今朝まで居たって瑞鶴が!!」

 

 

一同が慌て混乱していると、その最中に戦艦タ級は頬を吊り上げ怪しく笑っている

 

 

「フフフ、アハハハハハ!!!」

 

 

「何が可笑しい!!!貴様!!!戦艦棲姫をどこにやった!!!」

 

 

長門は、主砲を撃つのを忘れタ級に近寄り胸ぐらを掴み持ち上げる

その最中でも、タ級はずっと笑っていた

 

 

「磯風!!電探に反応は!?」

 

 

「いや……この島のどこにも…」

 

 

すると笑っていたタ級が、おもむろに天井に主砲を向け、長門を嘲笑う

 

 

「バカドモメ、オマエタチハオワリダ」

 

 

「何…?」

 

 

長門がそれを問い詰めようとした瞬間、タ級が天井に向け主砲を数発連続して撃つ

撃たれた弾道は、そのまま体育館を突き抜け空へと登りある程度まで上がるとまるで花火のような爆発を見せる

 

 

「貴様!!!何をした!!!」

 

 

「ハハハハ!!オワリダ!!オマエタチモワタシモ!!!」

 

 

タ級は、それからずっと笑っており長門はタ級を投げ捨てると直ぐ様唐澤に連絡を取る

 

 

「こちら長門!!応答してくれ!」

 

 

『どうした?長門報告しろ』

 

 

「現在、多良間島中央の体育館。

在住している最後の深海棲艦戦艦タ級と接触

だが、肝心の姫級

戦艦棲艦が何処にもいない!!」

 

 

その報告を聞いた、会議室にざわめきが生じる

そして、その視線は沖縄鎮守府石澤に向けられる

 

 

「石澤大尉これはどういうことですか?」

 

 

石澤大尉は、唖然と口を開けその場から崩れ落ちる

 

 

「嘘だ……だって今朝瑞鶴の報告では…」

 

 

その姿を見るに他の提督も察していた

彼は嘘などついていない、我々が一杯食わされたと

だが、唐澤は落ち着きながらも長門の報告を聞く

 

 

「長門、なにか奴は言っていたか?」

 

 

『確か、終わりだお前達も私もと………』

 

 

その言葉に、一番反応したのは悩んでいた佐渡だった

終わり、艦娘達だけなら分かる

だが何故わたしも?

その瞬間、佐渡は急いで立ち上がりマイクを手に取ると叫ぶ

 

 

「長門さん!!!罠だ!!!急いでその島を離れろ!!!」

 

 

長門は耳から叫ばれ、耳を痛くしながらも佐渡からの声を聞き直す

 

 

「佐渡提督?何だ、罠とは……」

 

 

だが、それを聞き直す前に各艦隊の旗艦に砂浜で休んでいる者達から緊急連絡の回線がはいる

 

 

「どうした?伊58」

 

 

その連絡は、この状況そしてこの島に仕掛けられた最悪の罠の発動を報告するものだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「長門!!!緊急連絡!!!

深海棲艦が深海より浮上!!多良間島を囲む様に展開してるでち!!!

奴等!!私達を待ち伏せしてたんでちぃ!!!」

 

 

 

「何だと!?」

 

 

「なんだ……この数は!?」

 

 

磯風が弄っていた端末に、一気に反応が入りそれは島を囲う様に展開されておりその数ざっと70はくだらない数が反応を示していた

しかも、まだ更に増え続けている

 

 

 

 



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作戦が必ず上手くいくとは行かないですよね~








少し前、長門達が突入する前に遡る

 

 

「なんか暇ね」

 

 

艦載機を空母達は飛ばしながら、島全体を警戒しながら砂浜で休憩をしていた

一応艤装事態は付けており、すぐに戦闘は出来るようにしてはいるが何人かは遊んでいたりだとかはしていた

 

 

「いやー、やっぱり酒は旨いなぁ!!」

 

 

「ちょっと隼鷹?今敵陣のど真ん中にいるんだから程ほどにしてよ?」

 

 

「へいへーい、仕事はしますよ~」

 

 

瑞鶴は、呆れながらも隼鷹に言うと島全体を警戒し何時でも戦闘が出来るようにしていた

砂浜では、空母達の警戒している最中伊58は海上に顔をだし、別の鎮守府の伊168と話しながらのんびりと休憩している

 

 

「……イムヤ、何か疲れてる?どうかしたでち?」

 

 

「えっ!?そ、そんなことないよ!!」

 

 

「それに、何か艤装が傷だらけだし……」

 

 

「おい!あれ何だ!?」

 

 

話している最中に、摩耶が空を指差すとそれは体育館でタ級が撃った花火のような物である

それは砂浜からも確認でき、かなり大きな爆発であった

 

 

「!!、敵艦載機発見!!」

 

 

「どこ!?」

 

 

「先程の爆発がありました真上です

数、六機!!」

 

 

 

祥鳳がそう言うと、他の空母達一斉に祥鳳を見ると自分達の艦載機にも命令をだしそこに向かわせる

 

 

その敵艦載機は、動きが可笑しかった初めは一個の塊のように動きこちらの艦載機からの攻撃が始まると一気に散り散りになりそれぞれ六っつの方向へと飛んでいく

そして、こちらの艦載機の攻撃を軽々と避けると海へと向かっていく

 

 

「何あの艦載機!?私達の攻撃が当たらない!?」 

 

 

空母達の驚きを他所に、その艦載機の一機が瑞鶴達が休憩している砂浜に真っ直ぐ向かってくる

 

 

「駆逐艦!!対空準備!!」

 

 

駆逐艦達は高角砲を準備するが、それよりも先に敵艦載機がこちらの頭上に到着する

 

 

「各員!!備えろ!!!」

 

 

砂浜に居る艦隊達は敵艦載機を睨み付けるがその艦載機はそのまま通り過ぎ海の方へと飛んでいく

 

 

「……あれ?なんも来ない?」

 

 

「何だあれ?」

 

 

「警戒して損したっぽい?」

 

 

だが、敵艦載機は近海の海を突如爆撃を開始した

爆撃が海上に当たると水柱が上がり、艦載機はそのまま沖へと飛んでいく

 

 

「何あれ!」

 

 

「ちょ、どこ爆撃してるんだよ!」

 

 

「あれを使っているのは馬鹿なのか?」

 

 

空母達は笑いながら、敵艦載機を指差し笑うと駆逐艦や重巡も笑っているが瑞鶴だけは警戒を解かない

 

 

「あの艦載機があんな動きするとは思えないわ……

なんの意味が……」

 

 

爆撃が終わった後、瑞鶴は違和感を感じ更に策敵の為に弓を引き空に撃つ

放たれた弓は艦載機に変わり空に飛んでいく

それと同時に、伊58も潜水を開始しそれと同時に伊168も潜水を開始する

 

 

「瑞鶴?どうかしたの?」

 

 

「んー、何かね?あいつなんであんなところに爆撃を……え?」

 

 

「ゴーヤ?どうしたの?」

 

 

「何となくでち、アイツ一体何を……

イムヤ、あれは何でち?」

 

 

瑞鶴が確認したのは水柱が島を囲うように六角形方位で次々と上がっておりそして、上がった海が黒くなっていることが分かる

 

 

伊58と伊168は、深海より何かが急浮上してきており目を凝らして見るとそれは

 

 

「っ!!嘘でしょ!深海棲艦!?」

 

 

「何でち!!この数!?」

 

 

深海から浮上してきているのは、戦艦ル級、戦艦タ級、重巡リ級等の火力が高い奴等ばかりで伊58と伊168は緊急浮上をすると砂浜組にインカムで連絡を入れる

 

 

「緊急伝達!!深海棲艦確認!!数多数!!」

 

 

「全員!!戦闘準備でち!!」

 

 

その報告と同時に、砂浜に居る艦娘達は戦闘準備をするがそれよりも一足早く深海棲艦は急浮上し、砂浜に居る艦娘に砲門を向け砲撃を開始する

 

 

「きゃああ!!!」

 

 

「落ち着け!!奴等はまだ少数だ!」

 

 

摩耶は、落ち着いて艤装を付け海へと行こうとすると、戦艦タ級達は摩耶に集中砲撃し海へと行くのを阻止する

 

 

「クソ!!アイツら私達を海に出さないつもり!?」

 

 

「瑞鶴ヤバいじゃねぇかよこれ!!

おい、どうするんだよ!!」

 

 

隼鷹は、艤装を構えながら艦載機を飛ばすが、ことごとく撃墜されており瑞鶴に援軍を求めるが

 

 

「何よ……これ…」

 

 

瑞鶴は、空の上から多良間島を艦載機から送られてくる映像に絶望していた

水柱が上がった所から次々と深海棲艦が浮上し砲門を多良間島に砲撃しようとしている

その浮上してきたなかには更におぞましいのがおり、空母ヲ級が同時に六体浮上してきており頭の艤装から大量の艦載機を発艦し、それを多良間島上空へと飛ばしている

 

 

「嘘よ!!何よこれ!!!」

 

 

こうしている間にも、深海棲艦は浮上してきており、静かにだが確実に多良間島の砂浜や陸に向けて航行を開始する

まるで、網にかかった獲物をゆっくりと確保する狩人の様に

 

 

「隼鷹!!妙高に報告!!急いでこっちに戻さないと奴等この島ごと私達を全滅させるつもりよ!!」

 

 

「りょ、了解!!」

 

 

「他の皆も急いで!!この事を島に居る仲間に伝えて!!」

 

 

各々の者達は砲撃の中、空母達は艦載機を飛ばし他の者は仲間へと連絡を取る

 

 

 

「長門!!!緊急連絡!!!

深海棲艦が深海より浮上!!多良間島を囲む様に展開してるでち!!!

奴等!!私達を待ち伏せしてたんでちぃ!!!」

 

 

 

『何だと!?』

 

 

 

 





不幸?は更に続きます



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罠 二

その報告を受けた長門は急いで外に出ると空には大量の敵艦載機が空を覆い隠していた

そして民家の一部が何かに撃たれたのか轟音を立てながら崩壊していく

恐らく先程受けた報告の、島一体囲んでいる深海棲艦が撃ったものだろう

 

 

「全艦聞いたな!!

急いで砂浜まで戻るぞ!!!

行くぞ!!」

 

 

「長門!!アイツはどうする!?」

 

 

磯風は、床に寝転がり笑っているタ級を指差すか長門はその腕を掴み走り出す

 

 

「奴に構ってる暇は無い!!急げ!!」

 

 

それと同時に、敵艦載機が体育館と校舎を爆撃し建物が轟音と共に崩壊し始める

長門達は何とかそこから逃げ出すが空には艦載機達が島に向けて爆撃を開始しており全員は走っていた

その最中に、長門は唐澤へと連絡をいれる

  

 

 

「こちら長門!!!提督!!すまない我々は罠に嵌められた!!」

 

 

『何だと!?状況を報告しろ!』

 

 

「現状況はかなり、こちらが不利だ!

向こうの戦力は不明!だがこちらより圧倒的に多い!

しかも、我々は陸に上がり砂浜の者達と別れている!

こちらはあまり被害は無いが砂浜の者達は分からない!!」

 

 

 

長門の報告に、唐澤は愕然とし辺りにいる提督達はざわめきだしている

 

 

「どういう事だ!?」

 

 

「深海棲艦が待ち伏せだと!!」

 

 

『こちら瑞鶴!本部応答願います!!』

 

 

 

その中再び、インカムから連絡が入る

現在、砂浜で戦闘中の沖縄鎮守府所属瑞鶴だ

 

 

「瑞鶴現状は!?」

 

 

その声に、石澤は反応しマイクを掴み瑞鶴へと話始める

 

 

 

「かなり劣勢です!突如深海より深海棲艦の伏兵多数!!

数は恐らく70を越えています

それにこちらも、突然の事に大パニックになっておりまして」

 

 

瑞鶴が、他の艦娘達に見ると皆武器を放り投げ陸に逃げる者、果敢に戦う者、放心状態の者など多数居た

その間でも、深海棲艦達は砲撃を辞めずに確実にこちらを落としに来ている

 

 

「どうするっぽい!?どうするっぽい!?」

 

 

「ゆゆゆ、夕立落ち着いて!!」

 

 

「クソッ…被弾しちまった……」

 

 

「摩耶!誰か傷の手当てを手伝って!」

 

 

「そうだ!!島の中に逃げるぞ!!反対側に逃げれば……」

 

 

「馬鹿!!陸は空からの爆撃よ!!

入ったらそれこそ向こうの思うつぼよ!!」

 

 

各々、何をすれば良いのか全く分からず艦隊は大混乱に陥っていた

 

 

「瑞鶴!!駄目だ艦載機の残弾が無くなりそうだ!!

何とかならねぇか!?」

 

 

「今!!必死に撃ってるわよ!!」

 

 

瑞鶴は弓を引き艦載機を深海棲艦達目掛けて撃つが、すぐに撃墜される

 

 

「クソ!!目障りね……」

 

 

砂浜に近付く敵艦隊には対空性能に優れた軽巡ツ級が三体ル級の後ろに隠れこちらが艦載機を飛ばした時にだけ、ル級が下がり直ぐ様艦載機を落としてくると言う連携を取ってくる

 

 

向こうがこちらに向かってくる編成は前列にル級が九体、その後ろにタ級が六体、ツ級が三体その後ろにリ級やハ級等が何体も控えている

 

 

「何なのよ!!アイツら!!」

 

 

「提督!!応答願います!!

指示をお願い致します!!」

 

 

「瑞鶴!!とりあえず…」

 

 

 

ウウウウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!

 

 

 

瑞鶴の悲痛な声に指示を出そうとすると警報装置がけたたましく鳴り出す

 

 

「今度は何なんだよぉ!!」

 

 

白鳥は頭を抱えながら警報装置の前にいる職員を怒鳴り付けると職員は慌ててその警報装置が鳴る原因を突き止める

 

 

 

「深海棲艦が、一体こちら沖縄に向けて進軍中!!!

どうやら、宮古島の陸地に隠れていた模様です!!」

 

 

「何だと!!」

 

 

元帥は、デスクから勢いおく立ち上がると椅子が倒れるがそんなことお構い無しに職員に駆け寄る

 

 

「何だ!何がこちらに来ているんだ!!」

 

 

「元帥!落ち着いてください」

 

 

「お待ちください、今モニターに出します!!」

 

 

職員は、急いで警報装置を処理し無人偵察機の映像をモニターに出そうとパソコンを必死になりながら動かす

 

 

「早くしろ!!」

 

 

「何が来ているの!?

ただのはぐれでしょ!?」

 

 

 

 

後ろから、何人かの提督に煽られながらパソコンを弄ると準備が終わったのか砂嵐状態だったモニターが少しずつ鮮明になり映像が流れる 

 

 

「映像!!出ます!!!」

 

 

その映像に、ここにいる全ての人間がモニターを見ており映像がハッキリと写った瞬間全員が愕然としながら絶望する

大淀は口を押さえ、元帥は膝をつき、唐澤はモニターを睨み、白鳥頭を抱えている

 

 

「嘘……どうして………」

 

 

「あり得ない……何故だ…」

 

 

「何故……貴様がそこにいる?」

 

 

「嘘だろ……嘘だ……」

 

 

その映像には一体の深海棲艦が写っていた

誰よりも居て欲しくない最悪の者が

そして、佐渡が一言だけ呟く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「戦艦……棲姫…!」

 

 

その映像には、明らかに姫よりデカイ艤装の肩に乗り口元を吊り上げニヤリとしながら沖縄を目指し航行する戦艦棲姫の姿だった

 

 

 

 

  



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チェックメイト

「嘘よ……何でアイツがこっちにいるの?

じゃ、じゃあ多良間島の深海棲艦は誰が指揮してるの!?」

 

 

 

「分からねぇよ!!クソクソ!!」

 

 

「提督!落ち着いてください!」

 

 

 

葛城に猿橋は、この状況に混乱し本来の仕事である艦隊指揮が出来る状態ではない

彼等だけではない、ここにいる提督のほとんどがこの映像に絶望しきっていた

そして、白鳥の一言がこの場を更に悪化させる

 

 

 

「終わった……もう無理だ…

この沖縄は戦艦棲姫によって滅ぼされるんだぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

「あ、あぁ、あぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「逃げろ!!!この島から早く逃げろ!!!」

 

 

その言葉を合図に、部屋に居た海軍職員は大混乱に陥る

それを聞いていた沖縄鎮守府に来ていた他の海軍職員に伝達され沖縄鎮守府全体に広がってしまう

 

 

「諸君落ち着け!!まだ、我々は負けたわけではない!!

持ち場にもどれ!!」

 

 

元帥が必死に、マイクを使い館内放送をかけるが大混乱に陥っている為か全く効果がない

 

 

 

 

唐澤は、唇を噛み締めながら悔しがっていると佐渡が椅子にもたれ掛かりながらインカムを付けているのを見ると

 

 

 

「おい、佐渡少尉。

いや、佐渡」

 

 

椅子にもたれ掛かっている佐渡の胸ぐらを掴み持ち上げる

 

 

「貴様……これを知っていたのか?」

 

 

持ち上げられた佐渡は、帽子を深く被りながら目を伏せる

 

「いいえ、全く誘い込まれてるとは思ってましたが

まさか戦艦棲姫が出てくるとは思いませんでした

向こうもかなり本気見たいですねぇ」

 

 

「この状況が分かっているのか!!」

 

 

「分かってますよ?

だからこそ、戻らせても良いですよね?私の艦隊も?」

 

 

「何だと?」

 

 

佐渡はそう言うと、インカムを使い自分の艦隊叢雲達と連絡を取る

 

 

「叢雲、応答しろ」

 

 

『何?司令官、何か騒がしいけど?』

 

 

「撤退だ、沖縄まで戻ってこい」

 

 

『はぁ?もう作戦終わったの?戦艦棲姫撃破?』

 

 

叢雲は、海上で二人を正座させ暑い中説教をしており、佐渡の言葉に驚いていた

 

 

『いんや、失敗だ作戦失敗

しかも、俺達の敗けだ

確実にな』

 

 

その言葉に、叢雲は二人を正座から立ち上がらせ真面目な顔持ちで佐渡に尋ねる

 

 

「……説明して」

 

 

『簡単に言うと、待ち伏せされて連合艦隊はボロボロ

沖縄に向けて戦艦棲姫が爆走中~』

 

 

それを聞いた瞬間、大井の顔が青ざめ、古鷹は慌てる

 

 

「嘘でしょ……北上さん……」

 

 

「そ、そんな!!皆さんが!?」

 

 

二人が慌てる中、叢雲だけは落ち着いた面持ちで話を聞いていた

 

 

「……何か無いの?打開策」

 

 

『ねぇな、さっぱり

今回に関しては詰みだ』

 

 

佐渡は、そう言うと立ち上がり部屋を出ていこうとする

 

 

「待て!佐渡少尉!!どこにいく!?」

 

 

元帥が、佐渡を呼び止めると佐渡は帽子を取り両手を広げる

 

 

「逃げるんですよ?まだ死にたくないですからねぇ……

それにアイツらを迎えに行かないと行けないですし」

 

 

「そうだ…そうだよ!!佐渡!お前の艦隊で足止めすれば……」

 

 

「白鳥少将それ本気で言ってますか?」

 

 

「だって、そうすれば少しは俺達が逃げる時間が……」

 

 

佐渡は、溜め息を付くと白鳥を指差す

 

 

「確かに、叢雲達が戦えば少しは時間を稼げるかも知れないですね?

ですが、それよりも彼女達が沖縄に戻り島民を逃がす方がどう考えても効率が良くないですか?」

 

 

「どういう意味だ!」

 

 

「彼女達は代用が効きますよね?でも島民を殺してしまうとなると海軍の面子に関わるんですよ

 

ま、どうせ海軍の面子なんて丸潰れですけどね」

 

 

佐渡は、そう言うと再び椅子に座ると沖縄の地図を広げる

 

 

 

 



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チェックメイト 二

「宮古島がここ、うちの艦隊はここ、連合艦隊はこの多良間島」

 

 

佐渡は、マグネットを置いていき現状と敗北の原因を説明する

 

 

「まず最初に、アイツらは連合艦隊を全ての深海棲艦で殲滅しますと仮定します

そして、その間に戦艦棲姫が沖縄を一体で落とします

もう既にこの状態で我々の敗北は確定的です」

 

 

「だが、奴は一体しか来ていない

何とか出来るのではないか?」

 

 

「嫌、一体で来てるからこそです

奴はかなりの自信があると言うことです、それに奴の目的は島ではありません少しでも良いから島民を確保したら奴の勝ちです」

 

 

佐渡のその発言に、元帥や他の提督は顔を曇らせる

 

 

 

「まさか……戦艦棲姫の目的は…」

 

 

 

「そう、《島民の捕獲》です。

つまり、私達が必ず全員避難仕切ることが今回我々の勝利となります

そんなこと出来ますか?」

 

 

提督達は、一斉に黙ってしまう。

不可能だ、今からどんな勢力を使ったとしても島民全員を全て避難させるのは

 

 

「そ、そうだ!!大和!!戦艦大和が居るじゃないか!?

こいつをぶつければ…」

 

 

白鳥は、大和を見るが首を横にふり猿橋がその理由を説明する

 

 

「大和は……艤装を持ってきてないんだ……

今の彼女は、ただの女性と変わらない」

 

 

すると、唐澤はこの鎮守府の主石澤に迫ると肩を叩く

 

 

「阿武隈や他の艦娘はどうした?」

 

 

「……彼女達は入渠しております

確かにもう少しですが間に合いません」

 

 

各員はそれぞれ、案を出しては行くだがどれもこれもやはり駄目な物ばかり

そうしてる間に、佐渡が一つの打開策を出す

 

 

「……一つだけ、あると言ったらあります

ただし、これは不可能に近いです」

 

 

 

その言葉に、部屋に居る提督達は佐渡に視線が集中する

 

 

「あるのか!?何か!!」

 

 

「佐渡、言え」

 

 

「多良間島の連合艦隊が、全ての深海棲艦を倒し、

戦艦棲姫をどうにかし足止め、そしてぶつけるですよ?」

 

 

その発言に再び各提督は黙ってしまう

出来るわけがない

今多良間島には、70を越える深海棲艦が連合艦隊を相手にしている

ただし、主力の戦艦達は陸地向こうは奇襲により大混乱状態

それを撃破出来たとは言えど沖縄へ戻り戦艦棲姫の相手なんて出来るわけがない

 

 

確かに少し戦力はある、ただしそれはたった三人だけで戦艦棲姫を足止めなんてそんなことを出来るわけがない

 

 

それに足止めしたとしても歴戦の可能性が高い戦艦棲姫止められる時間なんて数分程度

 

 

「元帥、つまりですね

我々は奴等との知恵比べで負けたんですよ

 

 

チェックメイトです

我々の敗けです」

 

 

そう言い放つと元帥は、力無く椅子に倒れるように座り、唐澤は拳を握り締め唇を噛んでいる

この場に居る提督全てが諦めていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、そんなことかの様な笑い声がインカムから聞こえてくる

 

 

 

 



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不屈の精神

『何よ、あるじゃない?打開策早く言いなさいよ全く』

 

 

その声の主は叢雲だった

声は部屋中に響き渡り、佐渡はマイクを掴むと話始める

 

 

「おいおい、聞いてたか?相手は歴戦の姫だぞ?

お前達三人が何とか出来る訳じゃないんだぞ?」

 

 

『あんた本気でいってる?この叢雲様に出来ないことがあるとでも?』

 

 

叢雲は、自信満々に言いながら自分の艤装を点検し始める

 

 

「む、叢雲?まさか本気?」

 

 

「古鷹、大井を連れて沖縄まで撤退」

 

 

「え?叢雲は?」

 

 

魚雷発射菅から魚雷を取り出し再び装備し直すと、叢雲は軽く準備体操を始める

 

 

「その姫とやらと戦うわ」

 

 

「まさか!!一人でやるつもり!?」

 

 

「無茶よ!!相手は情報もほとんどない化け物なのよ!!!」

 

 

「それでもね、誰かがやらないといけないのよ

例え、無茶でも無理でもやらないよりはマシ

だから、私はやる。

ここで死んだとしても、そいつに一矢報いてやるわ

それにね」

 

 

叢雲は、準備体操を終えるとインカムに向こう側に居る佐渡に向けて話す

 

 

「これは私の選ぶ道、文句は言わせないわよ?

佐渡

あんたは、私が守るわ

何があってもね」

 

 

『………勝率十%位しかないぞ?』

 

 

「それなら、私達を含めればどれくらいまで上がりますか?」

 

 

その声の主は、古鷹だった主砲のメンテナンスを終え、叢雲の隣立っていた

 

 

「ちょっと古鷹!?」

 

 

「私も居ますよ?」

 

 

その反対側には、大井が立ち艤装をメンテナンスしている

 

 

『おい!!二人とも!!』

 

 

「勘違いしないでください、私は叢雲に世話になってるからこそここにいるんです

別に貴方の為だとか、海軍の為ではありませんので」

 

 

「提督、私にもやらせてくださいお願いします

叢雲一人に任せられる様な事ではありませんし、それに皆のお役に、いえ提督のお役に立ちたいのです。

どうか、私のワガママを聞いてください」

 

 

その声に佐渡は、頭をかきむしりながら椅子へと倒れこむ様に座り溜め息をつく

そんな様子を分かってか、叢雲はインカム越しに笑っている

 

 

 

「これがあんたの鎮守府所属艦娘よ

最初から分かってたでしょ?

ほら指示頂戴?佐渡司令官?」

 

 

叢雲の煽りに、佐渡はマイクを掴み説明を始める

 

 

『死ぬぞ、お前達』   

 

 

「ふん、ここで死ぬほどやわじゃないわよ」

 

 

『それでも無事には済まないぞ?』

 

 

「それでも、私達はやってみせます!」

 

 

『……間違いなく、負けるぞ?』

 

 

「はぁ?この叢雲様が負ける?

あり得ないわね

それに佐渡、私達は兵器よ

代用は効くわでもねこれは私達が選んだ選択よ

だからね」

 

 

叢雲は、一息置き真剣な面持ちをして静かにいい放つ

 

 

 

 

「私達を信じて」

 

 

その一言に、佐渡は頭をかきむしりながら大きく溜め息を付き叫ぶように言う

 

 

『分かったよ!!信じてやるよお前達を!!!

だが命令だ!!誰一人として欠けることは許さん!!

良いな!!』

 

 

佐渡の一言に、叢雲達は微笑みながら艤装の武器を空に掲げる

 

 

「やってやろうじゃないの!」

 

 

「その言葉を待ってました!提督!

任せてください!!」

 

 

 

「えぇ、分かったわ

皆は私が守るわ

何せ、あんたの『相棒(バディ)』何だからね!!」

 

 

そして、叢雲達は海上からこちらに向かってきている戦艦棲姫が居るであろう方向に向け振り下ろす

 

 

『暁の水平線に』

 

 

『「「「勝利を!!!」」」』

 

 

その合図と共に、叢雲達は一斉に走り出し古鷹は水上偵察機を飛ばし戦艦棲姫を捉える

 

 

「敵補足!!会敵まで後十分!!」

 

 

 

「行くわよ!!二人とも!!!」

 

 

叢雲は、そう言うと武器を振り回し戦闘体制に入るそれを合図に二人も武器を構え戦闘体制に入る

 

 



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不屈の精神 二

その姿を、唐澤は見ているとおもむろにマイクを掴み長門へと連絡を入れる

 

 

「長門、応答しろ」

 

 

『何だ!提督!!』

 

 

長門は、磯風を布団に寝かせながらある民家に隠れていた

あの後直ぐに敵の艦載機達に襲われ、その攻撃を避けるために他の艦隊所属の戦艦達とは離れ離れになっていた

そして、磯風は長門達を襲う敵艦載機を撃破するために一人立ち向かったが向こうの感に触れたのか集中攻撃を受けてしまい

その際、左腕を被弾し服はボロボロになっており長門に抱えられながら逃げ、民家に共に隠れている

その左腕は、穴が空いておりそこから溢れ出る血液で真っ赤に染まっている

今は簡易的に治療を終え、腕には包帯が巻かれている

 

 

『今から説明することをよく聞け』

 

 

「あぁ、何だ!」

 

 

唐澤は、今起きている現状を説明すると長門は目を開きながら驚く

 

 

「何だと!?戦艦棲姫が沖縄に向けて進軍中!?」

 

 

その言葉に、磯風は起き上がり驚きながらも片腕を押さえる

 

 

『あぁ、だが現在小笠原鎮守府の第八艦隊が迎え撃っている』

 

 

「無茶だ!!そんなの勝てるわけがない!!」

 

 

『そうだ、無茶だ

勝てるわけがない誰が見てもな

だが、奴等は諦めてなんていない

だからこそ、長門そして連合艦隊への命令だ

多良間島の深海棲艦を掃討し、第八艦隊と合流

戦艦棲姫を撃破せよ』

 

 

「なっ!!!提督!!流石に無理が過ぎるぞ!!」

 

 

唐澤の無理難題を聞き長門は頭を悩ませる

現状、どこも大混乱状態

しかも仲間とは離れ離れ、砂浜の者達もどうなってるか分からない状態

この状況を打開出来るわけではない

 

 

『そうか、ならこの国は終わりだ

私もここで死ぬことになる 

繰り返すのか、あれを』

 

 

「!!!」

 

 

ただし、ここで諦めると言う選択は敗北を意味するそして佐渡の言う通り今回の戦艦棲姫の目的が島民だとすれば

 

 

「我々の……敗北…

そして……」

 

 

そう言うと長門は思い出し、拳を握り締め唇を噛む

大本宮襲撃事件を

彼女は、当時の数少ない生存者でありその敗北の全容を鮮明に覚えていた

逃げ惑う人々、蹂躙する深海棲艦、そして壊滅した自分の所属する艦隊の仲間達

助けて助けてという言葉を無視するように蹂躙され、多くの仲間が轟沈させられた

そして、長門はある化け物に会っていた

 

 

南方棲戦姫の歴戦種である  

 

 

彼女はたった一人で艦隊を壊滅させた

命乞いをする艦娘の頭を持ち上げ、空に投げると両手の艤装で的当ての様に楽しみ

逃げようとする者の脚を撃ち抜き、這いずる背中を踏みつけ頭を砕き

怯え戦う者に砲弾を弾きながらゆっくり近づき四肢を一つずつちぎる

その姿を鮮明に見ていた

泣き叫び、悶え苦しむ仲間達を嘲笑い

ボロボロの長門に見せ付けているその姿を

 

 

思い出した瞬間長門は凍りつく

あれを再び経験させられると思うと

 

 

『……悪い、だが思い出せあの屈辱を

絶望を』

 

 

「…そう……だな

敗北とはあれを言うのだな」

 

 

長門は立ち上がると、インカムの回線を全ての艦娘へと繋ぐ

 

 

「各艦隊諸君聞こえるか?」

 

 

『長門さん!!こちら瑞鶴砂浜に多数の深海棲艦!

何とか応戦してるけど、提督と通じないの!!

どうなってるの!?』

 

 

『長門さん!こちら榛名!!比叡が被弾しまして介護してるところです!!援軍を!!』

 

 

「各艦隊諸君、落ち着いて聞いてくれ

今、我々は劣勢だ

それに加え、どうやら本命の戦艦棲姫は沖縄鎮守府に向けて航行中だそうだ」

 

 

それを聞いた艦娘達は言葉を失う

そんな状態でも長門は続けて話す

 

 

「だが、今小笠原鎮守府の第八部隊の三人が迎え撃っている」

 

 

『『『!!!!』』』

 

 

『そんな!無茶よ!!

相手は歴戦の可能性が高いやつ何でしょ!』

 

 

『何でそんなことしてるのでち!』

 

 

とインカムからは、様々な声が聞こえるが長門は全て聞き流しながら用件だけを伝える

 

 

「そして、提督からの命令だ

我々は、何とかしてこの状況から深海棲艦を壊滅させ

第八部隊と合流、戦艦棲姫を撃破せよとのことだ」

 

 

 

『無理よ…そんなの無理無理!!』

 

 

『これを突破して更に戦艦棲姫も叩け?馬鹿じゃないの!?』

 

 

インカムから聞こえる否定的な意見を聞きながら、長門はすぅと息を吸い込む

 

 

「なら!我々より不利な状態でも戦いを挑んでいる!!第八部隊の三人は何だ!!

愚かでも!!馬鹿とでも言いたいのか貴様ら!!!」

 

 

 

『……』

 

 

その言葉に、インカムから聞こえてきていた否定的な言葉は一気に消え静かになる

 

 

「我々が頑張らなくてどうする!!

我々がここで負ければ全てを失うんだぞ!!

鎮守府も友人も提督も未来も!!

全て!!」

 

 

『で、でもよ?この戦いが全ての終わりだなんてよ……』

 

 

「戦艦棲姫の目的は、島民の捕獲だ

それを盾にされ沖縄を落とす予定らしい

沖縄が全て落とされた後どうなるか分かるか?

奴等が、他の歴戦種達が補給も全て完了させ、我等の本土を急襲してきたとしてもか?」

 

 

摩耶がインカム越しに意見するが長門の言葉に再び口をつぐむ

 

 

 

「正直、我々に勝機はほとんどない

だがな、ここで我々がこれを為せば勝機はある

戦艦棲姫の進軍を止めれば、沖縄は落とされない

そこで勝ちだ」

 

 

そこまで言うと長門は叫ぶ

 

 

「今こそ!!我等の意地を見せてやろうじゃないか!!!

奴等を殲滅し!!勝利を手にしようではないか!!

それともここで殺られるのを待つのか!?」

 

 

『……やりましょう』

 

 

『…やってやろうじゃねぇか!!』

 

 

『……やるっぽい!!』

 

 

『第八部隊の三人だけ何て心配よねぇ~

行かないとね~!』

 

 

長門はその返事を聞くと微笑み磯風の手を取る

 

 

「行けるさ、私もな

私の腕を取ったんだ、それぐらい報いを受けてもらおうじゃないか」

 

 

「すまないな、怪我してるなか」

 

 

磯風は立ち上がり、長門を見ると艤装を構える

 

 

 

「暁の水平線に」

 

 

 

『『『『『勝利を!!!』』』』』

 

 

それを合図に、隠れていた者達は静かに戦闘準備をし始め、砂浜の者達も無理矢理にでも海に出て応戦し、砂浜からは空母達が艦載機を飛ばしていく

 

 

 






長くなってしまい申し訳ないです……


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開戦

ここから戦闘シーン多目です
表現下手でもお許しください……







「…古鷹、敵は?」

 

 

「もう少しで会敵するよ」

 

 

「……私、来ない方が良かったかしら?」

 

 

『だから、大井無理するなって……』

 

 

三人は、沖縄に向かってくる戦艦棲姫を迎撃するために宮古島に向けて航行していた

古鷹は水上偵察機を飛ばし、叢雲は艤装を構え大井は魚雷を準備していた

 

 

『各員、俺の指示にしたがってもらう

サポートは任せろ

叢雲、古鷹、大井付けろ』

 

 

「「「了解」」」

 

 

三人は、スカウターの電源を入れると佐渡もポケットからスカウターを取り出し電源を入れる

 

 

「佐渡」

 

 

佐渡が、映し出されている映像を見ていると唐澤から声をかけられる

 

 

「お前の艦隊はどれだけ足止め出来る?」

 

 

「……敵の実力にもよりますが十分は余裕です

それから先は流石に分かりません」

 

 

「そうか、それとその映像をモニターに映せるか」

 

 

「?可能ですが……」

 

 

「映してくれ」

 

 

佐渡は、スカウターからコードを取り出し、USBメモリに突き刺しパソコンで映像設定をすると大画面に三つの映像が流れる

それぞれ場所は違うものの見ている姿は同じのようだ

 

 

「……佐渡、私はお前を認めない」

 

 

唐澤はスカウターの映像を見ており、佐渡に言うと腕を組ながら佐渡に向き直り睨み付ける

 

 

「だから、我々に見せてみろ《天才》の才覚とやらを」

 

 

その声を聞きながらも、佐渡はパソコンを見ており集中している

 

 

「でしたら、戦闘が始まりましたら私の事を一切呼ばないでください

気が散ります

それと、そちらはそちらの情報をお願いします

これより、作戦に入ります」

 

 

「何だと?」

 

 

唐澤が佐渡を再び見ると、先程とは違い真剣というよりは集中状態に入っており何とも言えない雰囲気になる

 

 

『叢雲、古鷹、大井

これより、深海棲艦 戦艦棲姫の迎撃作戦に移行する

オペレーションは任せろ

全員しっかり従え』

 

 

 

「えっと提督…ですよね?

どうしたのです……」

 

 

「大井!!作戦中よ!!黙りなさい!!」

 

 

 

 

その言葉に、いつもの佐渡とは違う感覚がした大井は心配そうに訪ねるが叢雲に怒られてしまう

古鷹を見ると、指先を口元に当てている大井は何だろうと思いながら静かにする

 

 

『大井、戦艦が見えた瞬間雷撃を撃て当たらなくても構わん』

 

 

「舐めないでよ!私だって…」

 

 

『古鷹、敵との距離は?』

 

 

「後、二分近くで見えます」

 

 

『叢雲、いつも通りに斬り込め

距離をとればお前は死ぬと思え』

 

 

「了解よ佐渡」

 

 

大井はいつもと違う艦隊の雰囲気に押されながらも、指示に従う

少しの間沈黙が、続くが佐渡がカウントダウンを始める

 

 

『10、9、8、7、6、5、4……』

 

 

そのカウントダウンに、大井は唾をのみ叢雲は武器を鳴らし古鷹は主砲を構える

 

 

『3、2、1…』

 

 

佐渡が0を言う前に前方から何かが見える

こちらに向かってくる巨大な影がこちらに向かってくる

その映像を見ていた、提督たちも息を飲む

瞬間古鷹が叫ぶ

 

 

「敵確認!!!

数!!一体!!」

 

 

『大井!!!先制で食らわせてやれ!!!』

 

 

「!!

酸素魚雷!!行っちゃってよ!!」

 

 

 

 



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緊急任務 戦艦棲姫を迎撃せよ

そう言えば、この前イベントで初めて戦艦棲姫と会いましたが
硬いですね……
本当に…







大井は左腕を振り上げると艤装に付いている魚雷が全弾発射され真っ直ぐ戦艦棲姫に向けて海面を進んでいく

 

 

向こうもどうやら、三人に気付いたらしく戦艦棲姫が艤装に砲撃命令を出し艤装は肩の主砲で三人を砲撃する

その瞬間を見ていた、佐渡は直ぐ様命令を出す

 

 

『叢雲、大井はそのまま航行、古鷹は航行停止後右に避けろ』

 

 

「な!砲撃を受けているのよ!」

 

 

大井は、その指示に反発し避けようとするが叢雲が大井の腕を掴みそれを阻止する

 

 

「馬鹿!!従いなさい!!」

 

 

「従って!大井さん!!」

 

 

古鷹は停止すると、右に航行しながら右腕の艤装を構えている

すると空から先程敵艤装から撃たれた砲弾が二人めがけて飛んでくる

(直撃する!!)

大井は目を瞑るが、一向に当たる気配はなくその代わりに大井と叢雲の回りに全ての砲撃が落ち

二人は無傷である、古鷹の方も先程いた場所に砲撃が落ち全員無事である

 

 

「嘘……」

 

 

「行くわよ!大井!!!」

 

 

 

それを見た提督達から歓声が上がり、佐渡へと目を向け元帥が呟く

 

 

「これが、《戦闘の天才》か」

 

 

佐渡は、そんなこと気にせず三人から送られてくる映像のみを真剣に見ながら戦艦棲姫と艤装の分析を開始していた

 

 

『大井、叢雲と離れ戦艦棲姫と少し距離を保ちながら、古鷹と逆方向に航行

単装砲を準備、砲撃戦に入る

叢雲、後一分で奴に大井の魚雷が到達する

その瞬間、斬り込め

古鷹、艤装を構えながらもう少し奴に近付きながら、叢雲の援護まずは様子を見るぞ』

 

 

「「「了解」」」

 

 

戦艦棲姫は、先程の砲撃が外れたのが悔しかったのか再び撃とうとするがその瞬間自分の足下に魚雷が到達してしまい急いで艤装の肩に移動すると瞬間爆発が起きる

 

 

「良し!命中した!!」

 

 

大井がガッツポーズを取っていると水柱が消え戦艦棲姫を見るが全く効いていない

 

 

「嘘でしょ!?」

 

 

すると、戦艦棲姫がある程度まで近付いて来ると三人をぐるっと見渡すと口を手の甲で押さえながら笑い出す

 

 

「アハ、ナニヨコレ

コンナノデ私ヲ倒スツモリナノ?

舐メテルノカシラ?」

 

 

「へぇ?喋れるんだあんた?

分かってるくせに言ってくれるわね」

 

 

叢雲が、薙刀の様な艤装を持ち直し戦艦棲姫に斬りかかるがそれは意図も容易く戦艦棲姫の艤装の腕に止められる

 

 

「マァ、イイワムカッテクルナラ

シズミナサイ!!」

 

 

その言葉と、同時に戦艦棲姫の艤装が叢雲の艤装を弾き飛ばし左手の主砲を向ける

だが、叢雲は全く引きもせずに海上を走りながら戦艦棲姫に向かっていく

 

 

「バカナノカシラ?

沈メ!!」

 

 

戦艦棲姫の艤装が左手から主砲を撃つ瞬間、横からの砲撃が左手に直撃し叢雲の左を霞めていく、忌々しく砲撃の場所を見るとそこには右腕の艤装を真っ直ぐに構えながら静かに息を吐く古鷹が居る

 

 

「忌々シイ!!

《ケルベロス》!!!」

 

 

「ガァァァァァ!!」

 

 

ケルベロスと呼ばれた戦艦棲姫の艤装は咆哮と共に右腕の主砲を向け撃とうとするが、お次は反対側から魚雷が迫りケルベロスに直撃し体制を崩す

 

 

「クゥ!ウットウシイナ!!

ケルベロス!」

 

 

「あんたの相手は私よ!!」

 

 

 

そして、古鷹とは反対側に居る大井にも向けて左手の主砲を向け撃つ準備をするがその間に叢雲は既に戦艦棲姫の側まで来ている

 

 

「チィ!!ケルベロスコイツヲ叩キ潰セ!!」

 

 

ケルベロスは、両手を拳にし叢雲に向け殴るが叢雲はそれを寸前で後ろに交わし拳は水面に叩き付けられ水柱が上がるが叢雲はその叩き付けられた拳を上に乗ると腕を伝い戦艦棲姫へと向かっていく

 

 

「ケルベロス!握リ潰セ!」

 

 

それに気付いた戦艦棲姫はケルベロスに命じるともう片方の手で握り潰そうとするが叢雲はそれを避け高く跳躍すると腰の主砲を二門戦艦棲姫へと向ける

 

 

「沈むのはあんたの方よ!!」

 

 

「!!!」

 

 

叢雲が、主砲を撃つ瞬間ケルベロスが片腕で戦艦棲姫を庇った為主砲はケルベロスの腕に直撃するがやはり効果的なダメージを負わせることは出来なかった

叢雲はその後ケルベロスの肩を蹴り、後ろの海上へと着地する

 

 

「…かったいわねあれ」

 

 

叢雲は、そう呟くと再び主砲を戦艦棲姫を向けケルベロスは腕に纏わりつく煙を払い叢雲へと向き直る

 

 

 

 

 

 

 



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みんなの為に

佐渡率いる第八艦隊が、戦艦棲姫と戦闘を始め連合艦隊が多良間島で接戦を繰り広げている中沖縄鎮守府提督石澤は廊下でベンチに座り頭を抱えていた

 

 

自分のミスで、こんなことになってしまった 

何故もっとうまく出来なかったんだと自分を攻め続けていた

そうでもなければこんなことには……

 

ふと、外を見ると警報が鳴り響き元帥の声が聞こえてくる

 

 

『ただいま、この沖縄に深海棲艦 戦艦棲姫と言う怪物がこちらに進行しております

現在我々、海軍の艦娘達が食い止めております

ですが、万が一と言うこともありますので皆様には避難を呼び掛けております

海軍の者達の指示に従い順次避難をお願い致します』

 

 

外では、海軍所属の軍人達が沖縄の島民を港へと案内している

そこには、大和や大淀も参加し艦娘の力を生かして老体等を運んでいる

 

 

石澤は自分の不甲斐なさに、警戒の低さに怒りを覚え石の壁を殴り頭も打ち付ける

 

 

「すまない……すまない…」

 

 

誰に言うわけでもないだが、謝りながらズルズルと壁に頭を打ちながら床に座り込み涙を流していた

 

 

「提督」

 

 

不意に、声がするとそこには入渠しているはずの阿武隈が立っており全身に艤装を纏わせているが服は所々破け、右腕には擦り傷、魚雷発射菅に関してはほとんど駄目になっており両手の艤装は腰に付けていた

 

 

「阿武……隈…」

 

 

「こんなところでどうしたんですか?

またお仕事サボりですか?」

 

 

阿武隈は、石澤の手を取り立ち上がらせると優しく微笑む唖然とする石澤は直ぐ様涙を袖で拭う

 

 

「そんなことより!!お前達は逃げろ!!

ここに戦艦棲姫が……」

 

 

「知ってます、先程大淀さんにあって状況を聞きました

そして、提督にお願いがあります」

 

 

その言葉に、石澤は察し阿武隈の両肩を掴み声を荒くする

 

 

「駄目だ!!そんなことさせられない!!!

君達は充分に頑張った!!だから…」

 

 

そこで言葉が止まりつぐんでしまう

その姿を見て阿武隈は、外を眺めながら潮風に髪を揺らしている

 

 

「提督、私ねここが大好きなの

いつも提督がお仕事サボって妙高さんや那智さんに怒られるからって一緒に逃げて

お昼は皆でご飯食べて、海に遊びに行って、釣りしたりご近所さん達と雑談したり子供達と鬼ごっこしたりしてね

たまに喧嘩もするけど、すぐ仲直りして

妙高さんも瑞鶴さんもみんな頑張ってるのに私だけ逃げるなんて嫌」

 

 

「阿武隈……」

 

 

「だから」

 

 

阿武隈は、振り返り石澤を真っ直ぐみて決意を話す

 

 

「私の大切で大好きなこの場所を守りたい!

あんな奴何かに島民の皆の居場所を大切な物を奪われたくない!!

こんな私でも役に立てるのであればやりたいの!!」

 

 

決意の言葉を聞いた、石澤は頭を悩ませながら口を開こうとするがまたつぐんでしまう

 

 

「馬鹿者、一人で行かせるわけないだろ」

 

 

その声に驚き、石澤が振り返るとそこには

那智、龍驤、朧が艤装を纏わせながら立っていた

 

 

「お前達……」

 

 

「この鎮守府を島を深海棲艦なんぞに渡してたまるものか」

 

 

「ウチの飛行甲板はまだ使えるで!あの野郎に目にもの見せてやるさかい!!」

 

 

「私達の居場所を渡さない」

 

 

各々の決意を聞くが、やはり石澤は頷くことはない

 

 

「クソ提督……」

 

 

その声に驚き声の主を見るとそこには潮に抱えられながら脚を引きずりながらもこちらに歩いてくる曙の姿だった

 

 

「曙!!どうして!!!」

 

 

「ごめんなさい提督!!曙ちゃんがどうしてもって……」

 

 

曙の状態は変わっておらず、右腕は傷だらけであり左脚は少しだけ治っており、脹ら脛の半分は治ってきているが一人で歩くのは困難な状態だ

 

 

曙は痛みに耐えながら、歩いていくと石澤の事を指差す

 

 

「高速…修復材…頂戴

お金は天引きで良いから……」

 

 

「!!」

 

 

曙から言われた高速修復材とは傷付いた艦娘達をたちまち治すことの出来る万能薬

ただし、使いすぎればその副作用により廃人になりかねない危険な物でもある

そして、更に言うとこれは大破艦達にはもうひとつのリスクがある

それは治すと言っても再生機能を向上させるだけのため、欠損したものなどには通常では耐えられないほどの苦痛を味わう事になる

 

 

「だが……あれは…」

 

 

「クソ提督!!しっかりしなさいよ!!

私達は艦娘よ!!兵器なの!!でもね!こんな駆逐艦にも守りたいものがあるのよ!!

こんな!どこ言っても皮肉しか言えない駄目な駆逐艦でもあんたやこの鎮守府は迎えてくれた!!

だから!!私にも守らせなさいよ!!

ここをみんなの居場所を!!」

 

 

曙はそこまで言うと、痛みに耐えきれず苦痛に顔が歪む

石澤は皆の顔を見渡すと皆決意とやる気に満ちており、少し息を吐くと自分の頬を殴る

 

 

「提督?」

 

 

そして、大きく深呼吸をするとみんなに指示を出す

 

 

「では!お前達に命ずる!!宮古島近辺で戦闘を行っている第八艦隊と合流!!戦艦棲姫を迎撃せよ!!

曙には高速修復材の使用を許可する!!

我々の家を!!島を守るぞ!!!」

 

 

その命令に、阿武隈や那智達は微笑み敬礼をする

 

 

「「「「「「了解!!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『はぁい、もしもし私よ

《ユリ》に早くその三人を仕留めないと沖縄の援軍が来るわよって伝えて~?』

 

 

 

「そうか、ご苦労

《エア》」

 

 

多良間島の沖に立ち黒い煙をあげている島を見ながらその深海棲艦は腰の滑走路から艦載機を発艦させると持っていた杖を思い切り海上に叩き付ける

 

 

「足掻いて見せよ

艦娘共」

 

 



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戦艦棲姫迎撃戦

 

 

「全く!!どんだけ固いのよあれ!!!」

 

 

叢雲は主砲を戦艦棲姫に当てようと撃ちながら、叫んでいる

先程から古鷹、大井、叢雲の三人は佐渡のサポートで無傷のまま何とか戦艦棲姫と艤装ケルベロスに対し優勢な立ち位置で戦えていた

叢雲が近接戦をしながら、古鷹、大井が中距離からの援護砲撃

だと言うのに、ケルベロスの異常な程の高い装甲に全く有効打を与えられていなかった

 

 

『確かにかなり固いなあれ』

 

 

「何とかならないの!?」

 

 

『叢雲!!来るぞ!!』

 

 

佐渡の指示に、叢雲は前を向くとケルベロスが左手で叢雲を殴ろうとしてきており艤装を使いそれを防ぐがかなり重く傷こそ負わなかったが海上を滑るように飛ばされるがすぐに持ち直し主砲を交互に撃つがまたもやケルベロスがそれを防いでしまう

 

 

「固イデショウ?コノ子ハネ特別製デネ

戦艦クラスノ砲撃ジャナイト倒セナイワヨ?」

 

 

戦艦棲姫は、ケルベロスの頬を撫でると指示をだし叢雲に砲撃し始める

両肩からの砲撃は、何とか交わした直後

 

 

『叢雲!!両手の主砲来るぞ!!飛べ!!』

 

 

佐渡の指示を聞きケルベロスを見ると、両手の主砲を構えており、叢雲は艤装を思い切り海に突き刺しその勢いで宙を舞う

その瞬間ケルベロスの砲撃が当たり先程まで居たところに砲撃が当たり水柱が上がる

 

 

『古鷹!!叢雲のカバーで奴の右足を狙え!!大井!左足に雷撃!!』

 

 

「「了解」」

 

 

 

宙を舞う叢雲をゆっくりとケルベロスは肩の主砲を構え狙いを定める

 

 

「飛ンデル最中ハ避ケラレナイワヨネ!!

吹キ飛バシナサイ!!ケルベロス!」

 

 

「ガァァァァァ!!」

 

 

叢雲は咄嗟に腰の主砲を二門構え戦艦棲姫へと向ける

ケルベロスが撃つ瞬間古鷹の主砲が右足に直撃し体制を崩す

そのおかげで、ケルベロスの砲撃は叢雲の頭と胴体の横を霞めただけで済んだ

 

 

「やらせないよ!!」

 

 

 

「コノ邪魔ナ奴ラメ!!」

 

 

 

戦艦棲姫は、古鷹を睨んでいるとお次は先程の大井が撃ってきた雷撃が左足に直撃し今度は左側に体制を崩す

 

 

「私の事も忘れてるんじゃないわよ!!」

 

 

「クソォ!!」

 

 

「ガァァァァァ!!」

 

 

ケルベロスは先程から何も出来ずにただ砲撃を受けており苛つきながらも両手の主砲を二人に構えるが

 

 

「あんたの相手は私だって言ってるでしょ!!」

 

 

主砲を二門構え、戦艦棲姫に向けて砲撃するが直ぐ様気付いたケルベロスがまたもやそれを防いでしまう

 

 

 

「ちぃ!またか!!」

 

 

 

そして、再び戦闘は膠着状態へと持ち込んでしまう

 

 

『そうだ、それでいい

無理をして倒す必要はないんだ

俺達の目的は時間稼ぎなんだからな…』

 

 

佐渡は、そう言いながら静かにスカウターに映る戦艦棲姫を見ていた

 

 

 



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戦艦棲姫迎撃戦 二

作戦本部では佐渡の第八艦隊の戦闘を他の提督達がまじまじと見ており一同唖然としていた

普通ならたった三人で足止めすら難しい戦艦棲姫相手に優勢な立ち位置でありながらも全員無傷と言う状態だったからである

 

 

「これが、《戦闘の天才》か」

 

 

猿橋はそう呟くと佐渡を見る、佐渡本人に関してはずっと動かずにスカウターに映る三人の見ている姿を何度も見直しながら指示を出している

 

 

 

この戦闘の天才とは、佐渡に付けられた海軍に来る前から付いていたアダ名である

佐渡は戦闘自体をあまり好んでいないのだが相手の初期動作と言動、状態から次に何をして来るかを確実に読むことが出来る

それに加え、今まで受けた戦術や作戦等も全て頭に入れており戦闘に関してはほぼ負けなしと言う物だ

 

 

「唐澤大将そちらはどうですか?」

 

 

「もう少しで、長門達が砂浜に到着する」

 

 

唐澤は長門の通信を聞きながら腕組をしていた

現在、長門達連合艦隊は多良間島の深海棲艦達の相手をしている状態であり砂浜の者達も被害は出ているが何とかなっているらしい

 

 

「佐渡少尉」

 

 

外に出ていた石澤が作戦本部に入ってくると、佐渡に近付く

 

 

「今、阿武隈達が出立した

二十分程度で第八艦隊と合流出来るはずだ

そして、私の艦隊を君に預ける」

 

 

その言葉に、作戦本部の者達はざわめく

位が上である石澤が下である佐渡に部下を預けるなんて通常ではあり得ないことなのだから当然だ

 

 

「君なら私の艦隊を上手く使えるはずだ

だから頼む!!私の《家族》を君に預ける!

奴を!戦艦棲姫を倒してくれ!!」

 

 

「…石澤大尉、それは違います

我々は奴を足止めしてるだけです、撃破ではありません」

 

 

佐渡は画面に集中しながらも冷静に返す

だが、口元を吊り上げにやける

 

 

「ですが、私達では役不足ですからね

石澤大尉に艦隊の支援をお願いしないと行けませんね

それを先に読んでくださるとはとても有り難いです

流石は石澤大尉です、私より上の御方だ」

 

 

 

「そ、そうだとも!!アハハハ!!

ではこれより我々の艦隊を第九艦隊として貴殿第八艦隊として合流させる!!」

 

 

「ありがとうございます!

石澤大尉」

 

 

 

その言葉の意味を理解した、石澤は佐渡に近寄り小声でささやく

 

 

「ありがとう」

 

 

「いえいえ」

 

 

『こちら砂浜に居る残っている艦隊!!

応答せよ!!作戦本部!!』

 

 

返し言葉をすると、瑞鶴から緊急入電が入り作戦本部の者達にも緊張がはしる

 

 

「どうした、瑞鶴」

 

 

唐橋は腕組をしながらインカムに話しかけると瑞鶴からとんでもないことを言われ、焦りを感じる

 

 

『突如として深海棲艦が多数通常からエリートに進化!!しかも倒しかけていた奴等まで回復してる!!

戦艦棲姫が何かしたの!?』

 

 

 

 

 

 

 

 



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戦艦棲姫迎撃戦 三

報告を受けた唐澤は佐渡へと向くが佐渡は頭を横にふり否定する

 

 

「瑞鶴、もう少し耐えてくれ

もう少しで長門達が到着する」

 

 

『りょ、了解!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは変わり瑞鶴が緊急報告をする少し前の多良間島砂浜

ここでは激戦が繰り広げられていた

空母達は砂浜から艦載機を飛ばし、海上では重巡達が奮闘していた

数少ない戦力では、ある程度の迎撃しか出来ず戦艦達の到着を待っていた

 

 

「何なのよ!!こいつら!!」

 

 

だが、しかし深海棲艦の連携により優勢とは言えなかった一番硬い戦艦を前に後ろから駆逐艦や重巡を置きゆっくりと進軍してきていた

 

 

「だけどさ、まだゆっくりなのが良いよな

何とか抑えられてるからさ……

まだかねぇ、妙高は!!」

 

 

「彼女達が来る前にはもう少し片付けて置きたいですよね!!」

 

 

 

隼鷹は、艦載機を飛ばしながら愚痴を溢していると隣に居る赤城に言われてしまう

 

 

「むぅ……夜戦なら得意だからこんなやつら余裕なのに!!」

 

 

「川内!無駄口叩かないの!この夜戦バカ!」

 

 

川内はむくれながら、敵ル級に対し砲撃していると隣居る高雄に言われてしまうがそんなこと気にしていないらしい

 

 

「素敵なパーティーしましょう!!」

 

 

 

「夕立!油断は駄目だよ!!」

 

 

 

夕立と時雨コンビは若干この状況を楽しみながら応戦していた

 

 

「ほらほら!!こっちにもいるでちよ!!」

 

 

「沈みなさい!!」

 

 

海中では、伊58と伊168が魚雷を発射しル級に直撃させるがやはり効果的なダメージにはなっていない

 

 

 

そんな戦場を見ながら瑞鶴は考えていた

(戦艦棲姫は宮古島、でも何でこいつらこんなに連携が取れているの?可笑しい……)

 

そう思うと瑞鶴は、真上に向けて弓を引く

 

 

「おい!瑞鶴!どこに撃つつもりだよ!!」

 

 

「この深海棲艦達の親玉を探すのよ!!

恐らくそいつはどっかでこいつらを見てるはず!!」

 

 

弓を放つと空高く三つの艦載機が飛んでいき飛べる限界まで高度を上げていく

だが、ル級が間を開けるとツ級達がそれを撃墜しようと顔を出すだがその瞬間を逃がさなかった

 

 

 

「今です皆さん!!

ツ級が顔を出しました!!一斉に叩きましょう!!」

 

 

綾波が指示を出すと海上に居る艦娘達が一斉にツ級へと向き直る

 

 

「うふふ、やっと顔を出したわねぇ~?」

 

 

「もー!アイドルが居るのに隠れてるのは良くないぞ!!」

 

 

「顔を出したわね!!潰してやるわ!!」

 

 

「先程から良くもやってくれましたね!!」

 

 

全艦娘は一斉に主砲をツ級に構えると、赤城が合図を出す

 

 

「全艦隊!!一斉射!!」

 

 

「「「「「撃てぇ!!!」」」」」

 

 

 

全艦娘からの一斉砲撃が撃たれると慌ててル級は自分の身を守ろうと盾の中に隠れるが肝心のツ級を隠すのを忘れてしまう

それに気付いたツ級も隠れようとするが既に遅く

砲弾は頭を貫通し穴からは血液が吹き出し、忌々しく撃っていた両手の高角砲は砲弾に当たり空へと千切れ吹き飛ばされていく

そして、胴体を貫きそのまま爆発を起こし、ル級達の連携が崩れてしまう

 

 

「ーー!!!」

 

 

突然の事に驚きを隠せずル級の一体が指示を出すが

辺りには、水柱が上がり近くにはツ級の物であった艤装の残骸が浮遊しており、他のル級達にも被害が出ており、盾を壊されている者もいれば腕が吹き飛びそこから血を出している者も居る

最早、連携は取れないほどの損害である

 

 

「やったぁ!!!」

 

 

「やりました!!」

 

 

「ざまぁみなさい!!」

 

 

「バカめと言って差し上げますわ!!」

 

 

 

「皆さんお見事です!!

ですが油断しないでください!」

 

 

 

ツ級撃破と深海棲艦の連携を崩壊させた事に喜ぶ一同であったが劣勢なことには変わらず再び艤装を構える

だが、これで制空権は有利へと運ぶ事であり空母達は密かに喜んでいた

 

 

 

 

 



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戦艦棲姫迎撃戦 四

瑞鶴が放った艦載機はツ級の妨害を受けることなく空へと上昇していく

途中、ヲ級達の艦載機と遭遇し二機落とされてしまったが一機だけを残し更に空へと向かっていく

そして、航空出来る限界まで達すると策敵を開始する

多良間島の砂浜にはル級や砲撃を可能とする者達が集まりその反対側では敵空母達が待機しており恐らくそこから発艦させているものだと思われる

 

 

「違うこんな所じゃない!!

もっと周囲を見ないと!!」

 

 

艦載機はゆっくりと沖合いへと航空しながら、辺りを見ていると多良間島と宮古島の中間辺りに何かが居ることを確認した

 

 

「何……あれ?」

 

 

その何かとは一切の装備をしておらず、かといって人間とは違い海上に立っていた

 

 

「艦……娘?いやだとしたら何であんなところに…」

 

 

するとその何かは、杖らしき物を海に叩き付けると再び動かなくなる

 

 

「一体、何をして……!!!」

 

 

一瞬寒気が全身を走る

実は一度だけ、瑞鶴はこの感覚を感じたことがあった、それは深海棲艦の姫級や鬼級が目の前で浮上、または生まれた瞬間である

(まさか、あれが親玉!?)

 

 

 

 

「瑞鶴さん!!敵の様子が!!」

 

 

 

そう考えている間に隣いた赤城が瑞鶴に呼び掛けると瑞鶴は目の前の深海棲艦達の群れを凝視する

目の前のル級達が一斉に動きを止めているのである

まるで、糸の切れた人形の様にうつむいている

 

 

「止まった…?」

 

 

「どういうこと?」

 

 

「あれじゃないの?仲間がやられてショックでも受けてるんじゃないの?」

 

 

海上に居る艦娘達は各々警戒を怠ってはいなかったが油断しきっていた

 

 

「先程、全身を駆け巡る様な寒気がしてからあんな感じです」

 

 

「動かないなら良い的じゃない?」

 

 

そんなことを言ってると興味心身に夕立が深海棲艦に近付いていく

 

 

「夕立!離れなよ!!」

 

 

「大丈夫大丈夫ー!動かないならもっと至近距離で当てた方が火力でるっぽいー!」

 

 

 

そう言い戦艦ル級に近付いていきある程度までの距離に近付くと主砲を構える

 

 

 

「ここで、活躍して提督さんに誉めてもらうっぽい!

よーく狙って……」

 

 

 

夕立が主砲を撃とうとゆっくり狙い撃つ瞬間深海棲艦達が震え始める

 

 

 

「全艦!!そいつらから離れて!!」

 

 

「夕立!!離れて!!」

 

 

「ぽいー!!」

 

 

 

時雨は夕立の首根っこを掴みながら離れていくと深海棲艦達が一斉に顔を上げ全員の目が真っ赤に染まり、損傷していた深海棲艦達がみるみるうちに治っていく

 

 

「嘘でしょ!!」

 

 

「あり得ない……

エリート化…現象…」

 

 

エリート化現象とは、戦っている際に追い詰められた深海棲艦が見せる火事場の馬鹿力みたいなもの

だが稀にしか起こらずそれがこんな全員一気に起こるなんてありえない

 

 

「さっきの奴!!」

 

 

瑞鶴は先程飛ばした艦載機をその何かに向かわせようとするが更に上から敵艦載機によって撃墜されてしまう

その艦載機は下降を続けゆっくりとその何かに向かっていく

 

 

 

「クソ!!なんなのよあいつ!!」

 

 

 

「瑞鶴さん!そんなことより!!」

 

 

瑞鶴がハッとすると目の前の惨状に気付く

先程までゆっくりと進軍していた深海棲艦達は勢いをまし連携など取らずに艦娘達を各個撃破しに向かっている 

 

 

「あいつは後ね!!」

 

 

砂浜に居る空母達は弓や各々の艤装を構え艦載機達を飛ばしていく

 

 

 

そして、先程の作戦本部への連絡を済ませ現在エリート化した40を越える深海棲艦と砂浜組は対峙していた

 

 

「こっのぉ!!」

 

 

「死にたい艦はどこかしら~?」

 

 

木曾は日本刀の様な艤装を使いル級の盾に挑み

龍田は薙刀の艤装でリ級の腕を切り裂いていた

だが、ル級は後ろに下がり、リ級は薙刀を片手で掴む

 

 

「うわっと!」

 

 

「嘘でしょ…正気?」

 

 

そして、その瞬間後ろから駆逐艦達の一斉砲撃を二人同時に受けてしまう

 

 

「いつの間に!!!」

 

 

「きゃぁぁぁぁ!!!」

 

 

木曾への砲撃は、脚と背中に直撃し脚は間接を撃ち抜かれ痛みにより膝を着いてしまうその瞬間にル級から蹴りを貰い吹き飛ばされる

龍田への砲撃は幸い背中だけではあったが服が破け背中には火傷の傷と共に多くの血が流れる

 

 

「ぐぅ……この…!!」

 

 

木曾は急いで反撃しようとするが、既に向こうは主砲を構えており既に砲撃体制だ

(やられる!!)

この状態から逃げられるわけも無く弾が来るのを待つばかりになるが

 

 

「仲間を!!傷付けさせません!!」

 

 

瞬間浜風が、主砲をル級の横から押し当てゼロ距離で砲撃をし何とか木曾への砲撃を防ぐが流石にゼロ距離での砲撃は砲主にも負担が大きく砲門事態が駄目になってしまい使い物にならなくなる

 

 

「木曾!大丈夫ですか!!」

 

 

「あ、あぁ浜風ありがとう…」

 

 

ゼロ距離から砲撃を受けたル級は撃たれた場所を押さえながらも浜風達へと砲門を向け砲撃を撃ってくる

 

 

「さっきより酷い劣勢だな!!こりゃ!!」

 

 

 

「つべこべ言わずとっとと飛ばす!!」

 

 

空母達も必死になりながら艦載機を飛ばしては居るが全く追い付かない程に敵の攻勢が止まない

 

 

「このままじゃじり貧だ!!」

 

 

「瑞鶴!!何か無いのか!!」

 

 

「わっかんないわよ!!そんなこと言われても!!」

 

 

だが、ここで最悪の事が起きてしまう

ル級達の後ろから何かがこちら向けて航行してくる

 

 

「……増援…」

 

 

そう、先程まで多良間島の反対側に居た敵空母艦隊とその護送艦達である

この状態でもキツいのに更に増援、最早万事休すに追い込まれる

 

 

「こ、来ないで!!」

 

 

そんなこと考えているうちに佐伯鎮守府の霞が大破を起こしており艤装がほとんど壊れ右足が真っ赤に染まっており足を引きずりながら目の前からゆっくり歩いているリ級と対峙していた

 

 

「霞今助けるわ!!!」

 

 

「霞ちゃん!!」

 

 

「霞!!」

 

 

足柄、吹雪、霰がその援護に回ろうとするがル級達はそれを逃がさず一斉に砲撃をし三人の進行を妨害する

 

 

「全艦!!霞の援護に回って!!

轟沈艦なんて出すわけには行かないわ!!!」

 

 

瑞鶴の指示を皆が聞いては居るがそんな状態ではないほどに深海棲艦の攻勢が激しく人の事を構ってる余裕がない

 

 

「いや、いやぁ!!!」

 

 

そんな状態でも、霞の危機は迫りつつあった

 

 

「こんのぉ!!」

 

 

瑞鶴は、弓を引き絞り何とか艦載機を飛ばそうとするがどう考えても間に合うわけがない

 

 

「やめてぇ!!」

 

 

「いやぁぁぁ!!!」

 

 

リ級が頭を押さえながら死を恐がる霞を見ながら嘲笑うとゆっくりと両手の主砲を構え轟沈(ころ)そうとする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全砲門一斉射!!!

撃てぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

 

 

その大きく猛々しい声が砂浜の空母達の後ろからその声は響き渡り空へと大量の砲弾が降り注ぐ

 

 

 

 





次回予告

合流

何となく書いてみました☆ミ
許してください書いてみたかったんです!!



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戦艦棲姫迎撃戦 五

その声と砲撃音に驚いた深海棲艦達は一斉に砂浜を見ており各々自分達に向けられた砲弾を避けるのに必死になる

対してその言葉に艦娘達は驚き砂浜の奥を見ているとそこには息を切らしながら肩で息をしている長門率いる戦艦達の姿があった

 

 

だが、瑞鶴達が言葉をかけるよりも速く何人かの戦艦達は空母達の横を走り抜けていき直ぐ様海上へと行くと全力航行をし自分達の艦隊の仲間の元へと急ぐ

 

 

先程の砲撃で怯んでしまったリ級は再び砲撃をしようと霞へと砲門を向けると目の前から戦艦の一人が突っ込んでくる

 

 

「気合い!!入れて!!守ります!!!

当たってぇ!!!」

 

 

戦艦比叡は、四門ある主砲を全てリ級へと標準を合わせ一斉に砲撃すると全弾着弾し、リ級の両腕と右顔に直撃し爆発を起こし腕を空に吹き飛ばしながらリ級は煙を上げて倒れていく

 

 

「良し!!命中!!」

 

 

比叡は、拳を握り締めながら霞の前に立ち塞がる

その光景に霞はおろか足柄、吹雪、霰も呆然としていた

すると比叡は霞へと振り返り手を差しのばす

 

 

「霞ちゃんごめんね遅くなってしまいました!

これより、比叡貴女達を全力で守りますから!!」

 

 

「比叡…さん……

ごわがっだよぉ!!!!」

 

 

 

比叡は頭に傷を負っているのか頭から少し血を出しながら霞達へと声をかける

その言葉に霞は涙を溜めながら、比叡の胸の中へと飛び込み大泣きする

 

 

「いやーごめんごめん遅くなったわ~」

 

 

その後をのんびりと北上は航行しながら、吹雪、霰、足柄達へと合流する

 

 

「随分と遅いじゃないの?北上」

 

 

「ちょっと道に迷っちゃってね~」

 

 

相変わらず、のんびりとマイペースな北上ではあったが、この現状を見てどんな状態かは把握する

 

 

「にしてもお疲れ様~こりゃー凄いねぇ」

 

 

「はい、こちらが劣勢のままです…」

 

 

「ま、これから勝てるっしょ~」

 

 

北上はのんびりとした口調で話していながら各々の艦隊達へと目にかける

 

 

「勝手は!!榛名が!!許しません!!!」

 

 

「良くも仲間をやってくれたわね!!

食らいなさい!!!」

 

 

榛名とローマは、負傷した龍田と那珂の前に立ち塞がり目の前のル級達へと砲撃をしており

 

 

 

 

「良くも私達にこんな罠を仕掛けてくれましたね!!

許しませんよ!!全門斉射!!」

 

 

 

 

霧島は、筑摩達と合流し目の前にいるリ級とハ級達へと砲撃を開始しており

 

 

 

「仲間が世話になったみたいだな、許しはしない!!

撃てぇ!!」

 

 

日向は、傷付いた木曾達を庇いながら砲撃しており

 

 

 

「全く、何で私はこんなに不幸なのかしら

それもこれもあんたたちのせいよ!!

沈めぇ!!!」

 

 

山城は、損傷した摩耶を見てため息と共にその鬱憤ばらしの様に主砲をチ級達へと撃っていく

 

 

 

「作戦は良かったがお前達はここで終わりだ!!」

 

 

ガングートは煙草を吸いながら、羽黒達と合流しル級達へと砲撃を開始している

 

 

 

そんな光景を見ながら、瑞鶴は唖然としていた

さっきまでの劣勢が嘘のようにこちらが少しずつ押してきているのだから

 

 

「すまない、瑞鶴

遅くなった」

 

 

長門は、磯風を背負いながら瑞鶴へと走り近付いていく

 

 

「いえ!お待ちしておりました!!

長門さん!」

 

 

瑞鶴は、思わず敬礼をしてしまい

それをみた長門はクスッと笑ってしまう

 

 

 

「辞めてくれ、罠に嵌まったバカな戦艦なのだから……

そんなことより戦況を教えてくれ」

 

 

「はい!では…」

 

 

瑞鶴は、今までここで起きた事を説明した

深海からの奇襲、連携、そして謎の人影、エリート化について全て

それを聞いた長門は少し考え込む

 

 

「艤装を持たない何か……気になるな

だが今は奴等を片付けなくてはな…」

 

 

長門は、磯風を下ろし赤城へと任せると海上へと歩いていき大声で指示を出す

 

 

「これより!!我々の合流と共にこの多良間島を深海棲艦から脱却し!!急ぎ戦艦棲姫の迎撃に当たる!!!

まずは、目の前の敵に集中せよ!!!

行くぞ!!!連合艦隊!!全艦気合いを入れ直せ!!!」

 

 

 

「「「「「了解!!!」」」」」

 

 

 

すると、長門はインカムの向こう側にいる唐澤に連絡を取る

 

 

「提督、こちら戦艦組

砂浜の者達と合流

奴等の殲滅に取りかかる」

 

 

 

『了解、任せたぞ長門』

 

 

そう言うと、インカムを切り深呼吸をする

 

 

 

「長門、行きましょ?」

 

 

 

隣にいる陸奥が長門に話しかけると頷き主砲を構える

 

 

「行くぞ!奴等を倒し!!戦艦棲姫を仕留める!!」

 

 

 

 

 




次回
  
海上要塞





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戦艦棲姫迎撃戦 六

唐澤は、長門からの報告を聞くと一段落したと安堵の溜め息をつく

それを聞いていた佐渡は理解し、三人に報告する

 

 

「お前達、そちらに沖縄鎮守府からの増援と多良間島の連合艦隊が合流

俺達が頑張れば勝てるぞ」

 

 

 

『へー!良いニュースね!

でもそれまで持つかしらね!!』

 

 

 

 

 

 

ここは宮古島近海、叢雲率いる第八艦隊が戦艦棲姫と戦っており戦況は良くは無いが何とか足止め出来ていた

 

 

「…流石にキッツいわね」

 

 

 

叢雲は、主砲を構えながら薙刀みたいな艤装を握り直すと目の前の戦艦棲姫と艤装ケルベロスを睨み付ける

どうやら向こうはかなりの余力を残している見たいらしく佐渡が警戒している戦艦棲姫の腰の艤装は一切触れていない

 

 

「渋イワネ?ソロソロ落チタラドウナノ?」

 

 

 

「はっ!先にあんたが家に帰ったらどうなのよ!

今なら追撃しないわよ?」

 

 

 

叢雲のその言葉にピクンっと戦艦棲姫は反応し艤装のケルベロスを見る

ケルベロスは以前変わらず、口を半開きにしながら荒く息をしている

 

 

「……ソウネ、私達ニハ負ケハ許サレナイ…」

 

 

 

戦艦棲姫はそう呟くと、ケルベロスの肩に乗ると叢雲に向けて突っ込んでくる

 

 

 

「オ前達ヲ!!沈メテ私達ハ先ニ進マセテ貰ウワヨ!!」

 

 

 

「ガァァァァァァ!!!」

 

 

 

「かかってきなさい!!何度でも止めてやるわよ!!」

 

 

ケルベロスは、肩の主砲を撃とうと標準を叢雲に向けるが瞬間大井と古鷹に両サイドから砲撃を受け爆発を起こし煙に包まれる

 

 

「ケルベロス!!私ヲ守ルナ!!全力デ行ケ!!」

 

 

 

「ガァァァァァァ!!!」

 

 

その言葉と共に、ケルベロスと戦艦棲姫は煙を突っ切り叢雲と対峙する

叢雲はやはりそう来たかと思いながら叢雲も艤装を握り直すとケルベロスへと突っ込んでいく

 

 

「撃テェェ!!」

 

 

「ガァァァァ!!!」

 

 

戦艦棲姫の合図と共に肩の4連装主砲を叢雲に放つが、急停止して何とか目の前で砲撃を避け水飛沫を突っ切りケルベロスへと向かい出す

 

 

「何ダト!?」

 

 

戦艦棲姫は、あまりにも無謀な戦い方をする叢雲に驚きながらもケルベロスへと指示を出す

 

 

「ケルベロス!!」

 

 

「ガァァ!」

 

 

突っ込んでくる叢雲に対し、右手の拳を握り締め叩き潰そうとするがケルベロスに対し叢雲は小さく意図も容易くその拳を避け腰の主砲を戦艦棲姫へと向ける

 

 

 

「食らいなさい!」

 

 

 

だが、ケルベロスは左手で叢雲を捉えようとしてくる

 

 

「分かってたわよ!!」

 

 

叢雲は、瞬間主砲を左手に構え撃つが全く止まる勢いがなく持っている艤装を左手に突き刺す

 

 

「グガァァァ!」

 

 

あまりの痛みに左手を引っ込めているうちに艤装を引っこ抜き叢雲は再び距離を取る

 

 

『流石はうちのエース』

 

 

「茶化さないでよバカ」

 

 

叢雲は、血の付いた艤装を振り血を払うと海上へ赤い血が撒き散らされる

 

 

 

「オ前、本当ニ駆逐艦カ?」

 

 

あまりにも戦闘馴れしている叢雲を睨み付けながら戦艦棲姫は痛みに耐えているケルベロスを撫でている

 

 

 

「えぇ、ただのそこら辺に居るような駆逐艦よ?」

 

 

 

「ソウハ見エナイガナ……」

 

 

 

「あら?褒めてくれるの?素直に受け取っておくわ」

 

 

戦闘が再び膠着していると一機の艦載機が戦艦棲姫の頭の上から急降下してくる

 

 

 

「アイツノ艦載機……何ダ?」

 

 

 

叢雲は、艦載機を警戒するがどうやらただの連絡の様な物だったらしく戦艦棲姫の目の前を通りすぎると直ぐ様どこかへと飛び去ってしまう

 

 

「………仕方ナイカ、私モヤラナイト通レソウニ無イシナ

余リ手ノ内ヲ見セルノハ良クナイノダガナ」

 

 

その言葉と共に戦艦棲姫は腰にある艤装に手を伸ばすと、艤装がまるで吸い付く様に両手にはまりその主砲を叢雲達へと向ける

 

 

「サテト、オ遊ビハココマデダ 

覚悟シテモラオウカ

艦娘共」

 

 

『…叢雲気合い入れ直せ

これからが本番だ』

 

 

 

「えぇ、この要塞を何とか足止めしないとね……

古鷹!!大井!!行くわよ!!」

 

 

「やってやろうじゃないの!!」

 

 

「援護は任せて!!」

 

 

 

 





次回 


接戦



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戦艦棲姫迎撃戦 七

戦艦棲姫の主砲ですが、簡単に説明すると重巡リ級の砲門を直接腕に付けたような感じです
ですが、威力は41㎝砲並みです




 


その場にいた三人は再び気合いを入れ直すと、佐渡もインカムの向こう側でほほを叩く

 

 

「沈ミナサイ!!」

 

 

先に動いたのは戦艦棲姫が指揮するケルベロスであり、ケルベロスは片手の主砲を叢雲へ向け撃つ準備をすると

叢雲は、それに立ち向かい真っ直ぐに突っ込んでいく

 

 

 

「私モ居ルノヲ忘レルナヨ!!」

 

 

 

その瞬間、戦艦棲姫は右手の主砲をケルベロスより先に撃ち込むが叢雲は右へ左へ軽快にステップをしながら避けていく

だが、戦艦棲姫はわざと叢雲の目の前の海面撃ち抜き視界を奪う

 

 

『叢雲!!真っ直ぐ左に避けろ!!左の主砲から来るぞ!!』

 

 

佐渡に言われた通りに急停止から左に避けると先程立っていた場所の少し右側へとケルベロスから砲撃が当たり、怯まずに再び戦艦棲姫へと突っ込んでいく

 

 

 

「コレデモカ!!ケルベロス!!」

 

 

 

「ガァァ!!」

 

 

 

ケルベロスは、全砲門を全て叢雲へと標準を合わせ一斉に砲撃を構えてくる

舌打ちをしながら、速度を上げ何とかケルベロスの懐に飛び込もうとするが

 

 

「来サセナイワヨ!」

 

 

戦艦棲姫の援護砲撃が叢雲に向けて放たれるが何とかギリギリで交わしてはいるがやはり追い付かない

ケルベロスが砲撃を撃つ瞬間、ケルベロスの肩の主砲を正確に砲撃してくる者がいた

 

 

「グラァ!!」

 

 

ケルベロスはその砲撃の方角を向くとそこには、右手を真っ直ぐにケルベロスへ向け捉えている古鷹の姿があった

 

 

「簡単には……やらせないよ!!」

 

 

 

古鷹は、右手を真っ直ぐにケルベロスに向けながら少しずつ距離を詰めていく

 

 

 

「厄介ダナ!撃チ抜ケ!!」

 

 

 

戦艦棲姫は、ケルベロスへと指示を出し古鷹を撃たせるが古鷹はほんのすこしだけ動き自分に着弾する弾だけを正確に撃ち落としていく

 

 

 

「バカナ!!アリ得エナイ!!」

 

 

 

「私にばかり構ってて良いの!」

 

 

古鷹の言葉に気付くと、戦艦棲姫は叢雲が居ることを思いだし砲撃を構えようとするが何かに当たり出来なくなる

 

 

「運の良い奴!!」

 

 

それは叢雲の艤装であり、戦艦棲姫へと振り下ろされており間一髪で戦艦棲姫の艤装に当たり防ぐことが出来た

 

 

「私を…忘れないでよ!!」

 

 

だが、その瞬間ケルベロスの背後に回り主砲を撃っているが鎧を来ているせいかやはりほとんど効果は無い

 

 

「くっ!!だったら雷撃ならどうなの!」

 

 

『馬鹿!!大井!』

 

 

 

佐渡の静止も聞かずに大井は主砲を下ろし、魚雷を発射させると叢雲はそれを確認すると少し戦艦棲姫から離れる

戦艦棲姫もそれに気付きケルベロスへ指示を出す

 

 

「ケルベロス!!」

 

 

「ガルァ!!」

 

 

ケルベロスは、大井の方角から来る魚雷を確認すると自分に着弾する前に水面を殴り魚雷を全て海上へと飛び出させる

 

 

「嘘でしょ!?」

 

 

『叢雲!!空中に魚雷が来るぞ!!

避けろ!!』

 

 

次の瞬間、ケルベロスは飛び出た魚雷を全て掴むと離れていた叢雲に全て投げ付ける

流石に驚いた叢雲だが、冷静に飛んでくるそれを避けようとするが

 

 

「甘イワネ!」

 

 

戦艦棲姫はその飛んでくる魚雷へ砲身を構え、正確に全ての魚雷を全て撃ち抜き強制的に爆発させる

その瞬間叢雲は、両腕と艤装で爆発から身を守ったが爆風に吹き飛ばされる

 

 

「くぅ!!」

 

 

『叢雲!!大丈夫か!?』

 

 

吹き飛ばされた、叢雲だが自身か軽いお陰なのか幸い艤装が軽く壊れた程度と両腕の軽い火傷で済んでいた

 

 

 

「問題ないわ、まだ行けるわよ!!」

 

 

「相変ワラズ可笑シイワネ貴女」

 

 

「あら?こっちを見ていて良いの?」

 

その言葉に気付き振り返るとそこには主砲を構えた古鷹が真っ直ぐ戦艦棲姫を捉え静かに正確に砲撃を開始しており、ケルベロスの頭部を撃ち抜いていた

 

 

 

「グラァァァァァ!!!」

 

 

 

ケルベロスの後頭部と首の付け根に当たり痛みの余りケルベロスは叫び声を上げ着弾した場所を押さえる

着弾した場所は鎧がなく、砲弾により真っ黒に焼け焦げながら血を流していた

 

 

「コイツ…!!」

 

 

戦艦棲姫は、直ぐ様反撃を開始し古鷹へ何発か砲弾を撃つと足元に当たり体制を崩してしまう

一進一退の攻防を繰り広げていると、インカムから再び佐渡からの指示が通る

 

 

『古鷹!そのまま援護砲撃!

大井!雷撃を止め主砲で応戦!

叢雲、いつも通りに暴れろ!!』

 

 

 

「「「了解!」」」

 

 

 

 

 

 






次回

コード


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戦艦棲姫迎撃戦 八

指示と共に叢雲は、戦艦棲姫へと向かい突っ走り二人はある程度の距離を取りつつ砲撃をしている

 

 

「……ソロソロ本当ニヤバイナ」

 

 

戦艦棲姫は時計を艤装から取り出し、直ぐにしまうとケルベロスの肩に乗り始める

 

 

「ケルベロス!!叩キ潰セ!!」

 

 

「ガァァァ!!!」

 

 

向かってくる叢雲へ命ずると戦艦棲姫も主砲を構え迎撃体制を取るがそれ同時に援護している二人を見るとニヤリと笑う

 

 

「ソウ言エバ叢雲ト言ッタカオ前」

 

 

「それが何!!」

 

 

主砲を構え、ケルベロスに向かい走る叢雲に戦艦棲姫が話しかけてきており主砲を叢雲とは別の方角へ向ける

 

 

『!!

古鷹!大井のカバー!!』

 

 

佐渡からの不穏な指示を聞くと、叢雲は勘づき急いで主砲を戦艦棲姫へ向け砲撃をするがケルベロスがそれを阻む

古鷹も全速力で大井のカバーをしようとするが間に合わない

 

 

 

「アンタノ仲間ノ一人ハ使イ物ニナラナイミタイネ!!」

 

 

 

戦艦棲姫は、大井へと主砲を構え両腕で砲撃をすると佐渡の声がインカムから大声で聞こえ大井は避けようとするが

 

 

『大井!!避けろぉぉぉ!!』

 

 

「きゃあぁぁぁぁ!!」

 

 

戦艦棲姫は、正確に大井の足と胴体を撃ち抜き大井は被弾してしまう

足は幸い艤装に当たり爆発を起こしただけだが、鋭い痛みに襲われ海面に膝をついてしまう

胴体に関しては円を書くように服が破け、所々火傷の後がある

服の艤装によるセーフティが働き最小限の損傷に押さえていたが艤装はボロボロであり状態は中破である

 

 

「ヤハリ、ソイツハオ前達トハ違ウナァ?」

 

 

「あんた!!」

 

 

叢雲は、古鷹が大井のカバーに入るのを確認すると戦艦棲姫に単艦で突っ込んでいく

 

 

「援護モ無シニ来ルノカ

愚カ者メ!!」

 

 

「黙れ!!沈めてやるわ!!」

 

 

『大井!大丈夫か!?』

 

 

「問題ありません…

まだやれます…」

 

 

佐渡からの言葉に痛みを耐えながら立ち上がり、古鷹と共に砲撃を構えるがやはりふらついてしまう

 

 

『古鷹、大井の状態は?』

 

 

「良くありません

これ以上の戦闘は困難かと……」

 

 

 

古鷹は主砲を構えながら、大井の肩を支えると大井は唇を噛み締める

目の前では、叢雲が戦艦棲姫とケルベロスの相手をしているが全くダメージを負えさせてないのを見える

 

 

「もっと……強くなりたい…

二人に迷惑かけないほどには……」

 

 

大井の言葉に、古鷹は微笑みながら叢雲を見る

 

 

「私も……強くなりたいな」

 

 

その言葉に大井は驚きを隠せない

今でも充分強いのに、何故こんなことを?

そんなことを考えていると二人の目の前に、叢雲が吹き飛ばされて来る

 

 

「いったいわね!!!」

 

 

 

叢雲は、主砲を構え戦艦棲姫に撃つがケルベロスが手で防いでしまうと舌打ち君に立ち上がる

 

 

「あぁ!!うざったいアイツ!!

何とかあれを引き剥がせないかしら!?」

 

 

頭をかきむしりながら、考えていると古鷹が指をさしながら叢雲に提案する

 

 

「……戦艦棲姫とケルベロスを繋ぐ首のコード

あれ撃ち抜けないかな?」

 

 

古鷹の指先を見ると、確かにケルベロスと戦艦棲姫の首はコードで繋がっておりそのコードはそこまで長くない

確かに二人はある程度の距離から離れようとはしないが恐らくあれが原因であろう

 

 

「……やってみる価値はあるわね?」

 

 

叢雲は古鷹、大井の順番に頷くと再び走り出し艤装を展開し主砲をケルベロスへと撃ち始める

 

 

「私が隙を作る!!古鷹頼んだわ!!

大井!無茶しないで休んでなさい!!」

 

 

 

その合図と共に古鷹は、叢雲の後ろで主砲を構え、大井はフラフラとはしているものの立ち上がり主砲を構える

 

 

 

 

 

 






次回


首輪



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戦艦棲姫迎撃戦 九

叢雲は、主砲を撃ちながら戦艦棲姫へと向かっていくが当然戦艦棲姫とケルベロスは応戦するために砲撃を撃ってくるが何とか避けながら再び懐まで入り込むと艤装を構え再び近接戦闘へと持ち込む

 

 

「チィ!!ケルベロス!!」

 

 

「ガラァ!!」

 

 

ケルベロスは、叢雲を捕まえようとするが相変わらずの身のこなしと軽さで軽々と避けていくが今回だけは違った

 

 

「私モ居ルノヨ!!」

 

 

今回から戦艦棲姫も近接戦闘をするが、叢雲には遠く及ばない

ゼロ距離での砲撃すら避け、こちらに向け砲門を合わせてそれを避ける

砲弾はほとんどケルベロスに当たるが全く傷を受けていない

だが、叢雲の目的は戦艦棲姫よ首の後ろに繋がってるコードでありそれを何とか前に出そうとするが上手くいかない

 

 

「ケルベロス!!」

 

 

「ガァ!!」

 

 

ケルベロスは、指示を聞くと身体を震わせると着ていた鎧を脱ぎ捨てる

重い鎧は海に沈んで行くと瞬間ケルベロスの動きが更に速くなる

 

 

「まだ速くなるの!!」

 

 

叢雲は、少しだけ離れようとするがケルベロスはそれを逃さずに間髪入れずに拳を当てようとしてくるが何とか避けた先にすぐにもう片手での拳がくる

 

 

「クソ!!」

 

 

艤装を突き立て、もう片手の拳を止めるのだがその時点で大きく隙が生まれてしまい戦艦棲姫はそれを逃がさなかった

 

 

「ヤット隙ガ出来タワネ?沈ミナサイ!!」

 

 

「しまった!!」

 

 

今片手と主砲は使えるがそれを戦艦棲姫に当てられる状態ではないが叢雲は主砲を海面に向けると両方同時に撃ち宙を舞うと同時に戦艦棲姫からの主砲が海面に当たり水飛沫が上がる

だが、ケルベロスはそれを逃さずに叢雲を片手で捕まえ握り締める

 

 

「ハハハ!!!捕マエタゾ!!」

 

 

「ぐぅ!」

 

 

『叢雲!!』

 

 

ケルベロスは、握り締める手を強めながら叢雲を握り締めていく

その痛みと苦しさに思わず声を出すが、叢雲は古鷹を見ると首を立てにふる

その意味が分かったのか、古鷹は静かに動き始めている

 

 

「ケルベロス!!ソノママ握リ潰シナサイ!!」

 

 

「ガァ!!」

 

 

「ぐぅぅぅ!!」

 

 

叢雲は、徐々に絞められていく手の中で苦しさに耐えながら声を抑えるがケルベロスの力が強く背中の艤装からのギギギと嫌な音も聞こえてくる

 

 

「アハハハ!!捕マエレバコッチノモンダ!!

ソノママリンゴノ様二粉々ニシテアゲル!!

ヤレ!!ケルベロス!!」

 

 

 

「ガァァァァ!!!」

 

 

 

戦艦棲姫は、今まで苦労をかけさせられたのがそんなに辛かったのか叢雲を握り潰すことに集中してしまい肝心の二人の存在を忘れていた

 

 

『古鷹!大井!!急いで叢雲を……』

 

 

「馬鹿…司令…官……ちょっと…黙り……なさい…よ……!」

 

 

握り締められながら、叢雲は笑顔を浮かべていると戦艦棲姫の顔から笑みが消える

 

 

「……何ヲ笑ッテイル?Mナノカ?」

 

 

「ちっがう……わ…よ!!

あん…た…忘れ…てない?」

 

 

その瞬間、ケルベロスと戦艦棲姫の間を砲弾が通り、二人を繋げていたコード正確に撃ち抜くとコードは焼け落ちそしてケルベロスの手が開き叢雲は解放され

ケルベロスは、機能を停止したのか両手を下ろし糸が切れた人形の様に項垂れる

 

 

解放された叢雲はむせながら距離を離しながら古鷹達と合流する

 

 

「もう!叢雲無茶しすぎだよ!!」

 

 

 

「流石……ですけど

大丈夫なんですか?」

 

 

 

「あれぐらいあいつの鍛練に比べたら平気よ

さぁてと?これで1対3ね?

どうする?戦艦棲姫

あんたのご自慢の艤装は動かないわよ?」

 

 

戦艦棲姫は首の後ろのコードを掴み断面図を見ながら驚いている

 

 

「……ソコカラコレヲ狙ッタノカ?

恐ロシイ奴ダナ…

賞賛シヨウソシテ」

 

 

戦艦棲姫は一息付くと、ケルベロスから少しずつ離れていき

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アリガトウト言ッテオコウ

馬鹿共メ」

 

 

 

その言葉と共に微笑みながら、首のコードを外しケルベロスへと向き直る

 

 

 

「サァ!!ケルベロス(凶犬)ヨ!!オ前ノ枷、首輪ハ取レタゾ好キニ暴レロ!!」

 

 

 

 

 

 

 





次回


ケルベロス(凶犬)

いつから艤装は単体で動かないと錯覚していた?

 


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戦艦棲姫迎撃戦 十

「何!?」

 

 

三人は揃ってケルベロスへと向くと先程まで動きをやめていたケルベロスは口を開き唾液を垂らしながらキレイな歯をカチンカチンとならし、こちらを睨み付けており今すぐにでもこちらに突っ込んで来そうだ

 

 

 

「くそ!!古鷹!大井!

戦艦棲姫をお願い!私は…」

 

 

 

「ガァァァァァァァァァ!!!!!!」

 

 

 

そう言い叢雲が軽く動いた瞬間に、辺り一体に響き渡るような程の大声でケルベロスが叫び思わず三人は耳を塞ぐ

 

 

「っ!うるさいわね……」

 

 

『叢雲!!前を見ろ!!来るぞ!!!』

 

 

叢雲はかろうじて前を見るとすぐ目の前までケルベロスは突っ込んで来ておりこちらに口を開きながら爪で引き裂こうとしてくる

 

 

「いつの間に!!しかもさっきより速い!」

 

 

叢雲は逆に懐に入り込み艤装を腹に突き刺すが、先程より固くなっており刺さらず弾かれてしまいならばと刃の部分を使い流すように切ると股下から潜り抜ける

 

 

「さっきより固い!!嘘でしょ!」

 

 

「ガルァ!!!」

 

 

潜り抜けた瞬間、ケルベロスも気付き直ぐ様振り向き叢雲へと両拳を振り上げラッシュの様に殴り付ける

何とか寸前で交わしては居るが先程よりも速く一撃だけ避けきれずに腰の艤装に当たり体制を崩してしまいふらつく

 

 

「しまっ!」

 

 

「グラァ!!」

 

 

それをケルベロスは逃がさずに、体制を崩した叢雲に対し拳を腹部へと当てそのまま吹き飛ばす

 

 

「がはっ!ゲホッゲホ……」

 

 

「ガァ!!」

 

 

ケルベロスの一撃をもろに受けてしまい、かなりの距離を吹き飛ばされて苦しさのあまりむせているがケルベロスの猛攻は止まずに再び叢雲へと突っ込んでいく

 

 

「叢雲!今援護を……」

 

 

「オ前ノ相手ハ私ヨ!!」

 

 

叢雲の援護に走ろうとする古鷹に向け戦艦棲姫は近付き砲撃をし動きを止める

 

 

「手ノ内ヲ晒スノハイケナインダケ……

アリガトウネ、コノコードハ私デハ切ル勇気ガナクテネ!!

奴ハ完全自立型ノ特別性ナノヨ

私ノ最後ノ奥ノ手ダケド仕方ナイワ

アンタタチヲココデ沈メテカラユックリ沖縄ヲ落トサセテ貰ウワヨ?」

 

 

「なら!貴女を倒して叢雲を助けさせて貰います!!」

 

 

「舐メラレタモノネ、沈メテアゲルワ!!」

 

 

古鷹と大井は戦艦棲姫へ艤装を構え砲撃戦へと移り叢雲は単艦でケルベロスと対峙する

戦力は圧倒的に不利でありながらも、何とか応戦しようとしているが

 

 

「速すぎる!!」

 

 

ケルベロスは先程より遥かに速くなり、しかも叢雲が撃っても一切怯まずにこちらを攻撃してきており対応のしようがなかった

 

 

『叢雲!右ストレートからの左ジャブから連続で来るぞ!!』

 

 

佐渡のサポートがあるとしても身体が追い付かず次ももろに受けてしまいそうになり咄嗟に艤装でカバーするにもやはり衝撃は大きく吹き飛ばされ身体を海面に叩き付けられる

 

 

 

 

 

 

 

 

 





次回

劣勢

艤装の自立型の元ネタは島風の連装砲ちゃん達です
これ、自立型にしたけどヤバくね?とは思ってます()





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戦艦棲姫迎撃戦 十一

「さっきより痛くないけど、艤装が……」

 

 

先程の拳を受けたとき、右側の主砲の艤装でカバーした影響で凹んでおり少し動きがぎこちない

左の主砲は先程避けるときに殴られており、こちらも凹んでおりこちらも同じようだ

しかも先程から、殴られて居るため全身を強打しており身体が痛みに悲鳴を上げている

 

 

「ガァ!!」

 

 

叢雲が考えているとケルベロスは既にすく側まで迫っており次は爪を立て引き裂こうとしてくる

 

 

「休ませてもくれないみたいね!!」

 

 

ケルベロスの爪を何とか避けその腕に乗ると、頭目掛けて走っていく

 

 

「ガァ!!」

 

 

走ってくる叢雲目掛け肩の主砲を構えるが叢雲はそれよりも早く肩の主砲に乗ると主砲が放たれその振動で体制を崩す

 

 

「しまった!!」

 

 

ケルベロスはその瞬間を逃さずに叢雲を捕まえ海面へと叩き付ける

 

 

「がはっ!」

 

 

叩き付けられた衝撃に耐えきれず、叢雲は声を漏らしながらケルベロスを見上げると既に拳を構えていた

殴られる瞬間叢雲は主砲二門をケルベロスの顔目掛けて砲撃するのだがケルベロスは止まらずに叢雲は殴り付けられる

 

 

「ぐぅ!」

 

 

「ガァ!!!」

 

 

それからはケルベロスに一方的に殴られ続け服の艤装が剥がれ始めていく

 

(このままだと不味い)

 

咄嗟に叢雲は、持っている艤装を拳に突き刺し何とか抜け出すが次の瞬間ケルベロスの片手に捕まってしまう

 

 

「くっ…そぉ!!」

 

 

「ガァァァ!!!」

 

 

ケルベロスは捕まえた叢雲の頭に食べようとするかの如く口を開くとそこには別の主砲が喉から伸びており叢雲の頭をしっかりと捉える

 

 

「叢雲!!」

 

 

その様子に気付いた古鷹は、援護に向かおうとするが戦艦棲姫の主砲を脚に直撃してしまい海面に転んでしまう

 

 

「オ前ノ相手ハ私ダ!!」

 

 

戦艦棲姫は、海上を走り古鷹に近付こうとするが瞬間目の前に雷撃が走ってくるのを確認し急停止をすると雷撃は外れてしまう

 

 

「外した…!」

 

 

大井が、何とか撃った雷撃を交わされ主砲を構え応戦しようとする

 

 

「マダ動ケタノカ

雑魚メ!!」

 

 

戦艦棲姫は、古鷹から大井へと標的を変え走り出すとそれを止めるべく古鷹も大急ぎで大井へと向かう

 

 

「貴女の相手は私です!!」

 

 

古鷹が、戦艦棲姫に近付いた瞬間戦艦棲姫は振り返り左手の主砲を古鷹の腹部へと押し当てる

 

 

「ヤハリ来ルト思ッタワ

コノ距離ナラ避ケラレマイ!!」

 

 

「!!」

 

 

古鷹が行動を起こす前に戦艦棲姫は主砲を撃ち古鷹の腹部をゼロ距離で砲撃し吹き飛ばされてしまう

 

 

「古鷹さん!!!」

 

 

吹き飛ばされた海上を転がり古鷹はお腹を抑えながら、フラフラと立ち上がるが被弾した所は真っ赤に焼け焦げ服が円形状に焼け落ちており鈍い痛みが刺激する

 

 

「ヤット当タッタカ

コイツハヤハリオ荷物ミタイダナァ?」

 

 

戦艦棲姫は、再び大井へと向き直り主砲をゆっくりと構える

 

 

「良くも!古鷹さんを!!」

 

 

大井は一人で、戦艦棲姫へと主砲を撃ち応戦するが見事に外れてしまい悠々と近付き大井を蹴り飛ばす

 

 

「がはっ!」

 

 

蹴飛ばされた海上を転がり大井は咳き込んでしまい戦艦棲姫はそのまま大井の髪を掴み持ち上げる

 

 

「ヤハリ弱イナ?オ前ハ

二人トハ大違イダ」

 

 

その言葉に大井は睨み付けるが戦艦棲姫は口元を吊り上げ笑いながら大井を再び海面へと叩き付ける

 

 

「大井……さん!!」

 

 

古鷹は主砲を構え戦艦棲姫を撃とうとするが、大井を踏みつけながら戦艦棲姫は主砲を下に向ける

 

 

「オォット?オ前良イノカコイツガドウナッテモ?」

 

 

下に向けた主砲の先端を大井の頭にぐりぐりと当てながら古鷹を向いていると古鷹は現状を理解し主砲を下ろしてしまう

 

 

「良イ子ネェ?黙ッテソコデ見テイナサイ?

ケルベロス!!ソイツヲ木ッ端微塵二吹キ飛バシナサイ!!」

 

 

古鷹と大井はその言葉に思いだし、ケルベロスを見るとケルベロスの手に捕まっている叢雲は苦しそうにしながら何とか逃げようとする

 

 

「しまった!!叢く…」

 

 

「動クナッテ分カラナイノォ!?」

 

 

古鷹が振り返り移動しようとした瞬間戦艦棲姫からの背後からの主砲を当てられそのまま崩れるように倒れ込んでしまう

 

 

「がっはぁ!」

 

 

「古鷹さん!!」

 

 

「アハハハ!!!コレデオ前達ハ終ワリヨ!!

ケルベロスヤレェ!!」

 

 

「この!このぉ!!」

 

 

 

ケルベロスは、口の主砲を叢雲の頭を狙いを定めると撃つ準備をし、叢雲は何とか逃げようと主砲を撃つが効果はない

絶対絶命、そう思い叢雲達は目を瞑り攻撃されるのを待つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうは行きませんよ!!!」

 

 

瞬間沖縄の方角から聞こえた声と同時にケルベロスの頭に複数の砲弾が命中し、衝撃の影響で頭を反らしてしまい叢雲への砲弾が空へと放たれる

 

 

 

 






次回

救援

阿武隈さんの活躍はこれからです!





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戦艦棲姫迎撃戦 十二

「ナンダト!?」

 

 

あまりのことに驚いた戦艦棲姫は、砲弾が放たれた方角を見ると六人の艦娘達がこちらに向けて航行してきていた

 

 

「助…かった…?」

 

 

叢雲は突然の事に驚きながら砲撃を受けたケルベロスを見るとケルベロスは呆然としており持っていた艤装を腕に突き刺し手を緩めさせ何とか逃げ出す

 

 

「ガァァァ!!!」

 

 

ケルベロスは、叢雲より新たに来た六人の方角へ向き直り主砲を全て構え一斉に砲撃する

 

 

「皆!!散開!龍驤さんは艦載機をお願い!!

那智さん、曙ちゃん、潮ちゃん、朧ちゃんは戦艦棲姫の所に居る二人をお願い!」

 

 

 

「「「「了解!」」」」

 

 

六人はケルベロスの砲撃を避けると各々行動を起こし、旗艦と思われる少女一人はケルベロスへと向かっていく

 

 

「さぁてと、艦載機の皆!お仕事お仕事!!

行ったれー!」

 

 

一人は艤装から、艦載機を発艦させると空へ飛び立ちケルベロスと戦艦棲姫に向かっていく

ケルベロスは肩の艤装から三式弾を艦載機に向けて撃ち応戦すると幾つかの艦載機に直撃し撃墜するが何機かは残りケルベロスへと爆撃を開始する

 

 

「グァァァァ!!!」

 

 

空からの爆撃に全身を撃たれ爆炎を上げ煙に巻かれると艦載機は次に戦艦棲姫へと雷撃を放ち再び空へと上がっていく

 

 

「撃チ落トシテヤル!!」

 

 

戦艦棲姫は、正確に艦載機を狙い撃つが自分の主砲では一機二機が落とすのは関の山であり、その隙に踏みつけられていた大井は逃げ出し、古鷹も叢雲の元へと走る

 

 

「クソォ!!!」

 

 

すると、戦艦棲姫に雷撃が命中し水柱に包まれその隙に大井は立ち上がり離れると痛みからかふらついてしまうが潮、朧に抱えられ何とか立っている

 

 

「大丈夫ですか?」

 

 

「えぇ、ありがとう…」

 

 

大井は二人に抱えられていると、那智と曙は戦艦棲姫へと主砲を構えており古鷹も急いで叢雲の元へと急ぐ

 

 

「叢雲!大丈夫!?」

 

 

「平気よ……古鷹こそ大丈夫なの?」

 

 

「全然大丈夫!それよりもこの方々は?」

 

 

古鷹は、辺りを見渡すと居るはずのない艦隊に驚いていると一人がこちらに向かってくる

 

 

「すみません!遅くなりました!」

 

 

「貴女は……確か沖縄鎮守府の……」

 

 

「はい!阿武隈です!提督の命令で我々も第九艦隊は貴女達、第八艦隊と合流し戦艦棲姫を迎撃せよと命令されました!

よろしくお願い致します!!」

 

 

阿武隈が敬礼をしていると、叢雲と古鷹は安堵のため息をつく

 

 

『間に合ったみたいだな』

 

 

インカム越しから佐渡の声が聞こえると叢雲が怒鳴るように怒り始める

 

 

「あんたねぇ!!

救援来るなら先に言いなさいよ!!

全く……でも」

 

 

叢雲は、艤装を構えケルベロスへと向き直ると古鷹と阿武隈も戦闘体制を取る

 

 

「ガァァァ!!!」

 

 

「ちょうど手が足りなかったのよね!!」

 

 

 

爆煙が晴れるとケルベロスは、ほとんど無傷のまま叢雲達に咆哮をしており爪を構えている

 

 

「ヤッテクレタナ艦娘共ガ!!

増援トハナ!!」

 

 

水柱を切るように、戦艦棲姫は主砲を那智達へ構え戦闘体制を取る

 

 

「嘘やろ、あれまともに受けて無傷なんか?」

 

 

「予想以上に固いようだな」

 

 

「ふん!関係ないわよ!クソ提督の……私達の居場所を奪おうとする奴を倒すだけよ!!」

 

 

曙の身体は高速修復を使った影響で全身回復しており艤装も完全に治っているためか、かなり強気である

 

 

「そうだな、我々の居場所を奪うものを倒さねばな!!」

 

 

那智も曙に言われ気合いを入れ直し、主砲を全門戦艦棲姫に構えるとインカムから佐渡の声が聞こえる

 

 

『これより!第八艦隊、第九艦隊連合を結成し!

戦艦棲姫とケルベロスを迎撃する!!

叢雲、古鷹、阿武隈でケルベロスを!!

大井、曙、朧、潮、那智、龍驤で戦艦棲姫を!!

各自!!俺がサポートはするが轟沈だけはするな!!!

良いな!!』

 

 

「「「「「了解!!!」」」」」

 

 

「忌々シイ奴等ガ!!マトメテ沈メテヤル!!!」

 

 

「ガァァァァァァ!!!」

 

 

 

各々、艤装を構え戦闘体制を取ると戦艦棲姫は主砲を那智達へ撃ち

ケルベロスは咆哮と共に爪を振り上げ叢雲達へ向かっていく

 

 

『戦闘!!開始!!!』

 

 

 

 

 

 





次回  


激戦

沖縄&小笠原の共同戦線
はてさて勝てるでしょうかねぇ?





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戦艦棲姫迎撃戦 十三

ケルベロスは、爪を叢雲と阿武隈に振り下ろすが二人は軽々と避けるがすぐさまもう片腕からの爪が来ており阿武隈に当たりそうになるが

 

 

「させません!!」

 

 

古鷹が艤装で防ぎ鉄が擦れる鈍い音と共に何とか防ぐと叢雲はその隙にケルベロスの懐に入り込み胴体に直接両方の主砲を押し当てる

 

 

「沈めぇ!!」

 

 

ゼロ距離から放たれた砲弾はケルベロスに当たるがやはりダメージは低くその隙に阿武隈が主砲を両手の構え同じ場所を撃ち抜く

 

 

「食らえ!!」

 

 

「グァァァ!!!」

 

 

同じ場所を撃ち抜かれ流石にダメージが入ったのかケルベロスは痛みの余り声を上げるが直ぐ様古鷹から手を放し肩の主砲を二人に標準を合わせる

 

 

『阿武隈!そのまま懐に入り込め!

叢雲離れて砲撃!古鷹右側の主砲を撃ち抜け!!』

 

 

「え、えぇ!!」

 

 

「良いから言うとおりにしなさい!」

 

 

叢雲は離れながら阿武隈に言うと阿武隈はどうにでもなれ!!と言うと懐に入り込むと右側の主砲だけその方角を向くと古鷹が正確にその右側の主砲を撃ち抜き砲撃を防ぐ

 

 

「嘘ぉ!!」

 

 

『阿武隈!そのまま同じところに砲撃!!』

 

 

ケルベロスの腹部は、叢雲と阿武隈の連激に耐えきれず赤く血が出ておりそこを目掛けて再び砲撃をするとケルベロスは痛みに耐えきれず声を上げ腹部を押さえる

 

 

「ガァァァ!!!」

 

 

「ナイス阿武隈さん!!」

 

 

「凄いです阿武隈さん!!」

 

 

先程より確実にダメージを与えられており、古鷹と叢雲は阿武隈に近寄りハイタッチをしていると阿武隈は唖然としている

 

 

『良くやったぞ阿武隈

さて、まだまだ来るぞ!!』

 

 

その言葉に、ハッとするとケルベロスは主砲を構えこちらに向かってきており再び三人は艤装を構え戦闘体制を取る

 

 

『叢雲、阿武隈、奴の懐へ

古鷹は少し遅めに援護砲撃をしながら行け!!

更にダメージを増やすぞ!!』

 

 

「「「了解!」」」

 

 

すると、ケルベロスはいきなり海面に両爪を立て海水を三人に掛ける

 

 

「目眩まし!!」

 

 

「何すんのよ!!」

 

 

「くっ!」

 

 

叢雲と阿武隈はまともに海水を受け眼を擦り古鷹は顔を腕で抑えていた為眼にはかからなかったが次の瞬間焦る

 

 

「叢雲!!避けて!!」

 

 

「えっ?」

 

 

古鷹が言った瞬間叢雲の小さな全身に衝撃と痛みが走る

ケルベロスは海水をかけた瞬間拳を握り叢雲を狙いをつけていたのだ

鈍い音と共に叢雲だけ古鷹の後ろに吹き飛ばされ艤装を海面に突き立て距離を抑える

 

 

「叢雲!!」

 

 

「叢雲さん!!」

 

 

「っ!大丈夫よ!!それよりも来るわよ!!」

 

 

叢雲の事を心配していたが、目の前のケルベロスは口を開き二人を主砲で狙いを定めており急いで左右に交わす

 

 

『叢雲!行けるか!?』

 

 

「平気…よ!!」

 

 

『そうか!なら古鷹の背中目掛けて走れ!!』

 

 

佐渡の指示を聞いた叢雲は痛みを抑えながら走りだし古鷹の背中目指す

 

 

『古鷹!中腰になれ!後左の主砲を下ろせ!

阿武隈!奴の注意を引け!!』

 

 

「了解!」

 

 

「りょ、了解!!」

 

 

それと同時に阿武隈は、ケルベロスの顔面目掛けて主砲を撃つとケルベロスは阿武隈へと集中し再び爪を振り下ろす

 

 

『右から一撃!左から主砲!最後に口と肩の主砲!!来るぞ!!』

 

 

「は、はい!!」

 

 

佐渡のサポート通りに右の爪を振り下ろし避けると左手からの主砲、そして肩と口の主砲を撃つ準備をしている

 

 

「こんのぉ!!」

 

 

阿武隈は、何とか全て避けると傷口へと両手の主砲を撃つとケルベロスは声を上げる

 

 

「ガァァァ!!!」

 

 

その間に叢雲は、古鷹の背中に追い付き走りを止めないそして、背中に着いた瞬間小さく ごめんなさいと言われるが古鷹は大丈夫と呟くと叢雲は古鷹の主砲と肩を蹴り宙を舞う

その時古鷹の背中に激痛が走るが何とか耐え、再びケルベロスへと主砲を構える

 

 

『阿武隈!古鷹!!一斉砲撃!!

叢雲!騎乗の時間だ!!』

 

 

「了解!」

 

 

「了解…?」

 

 

 

「はいはい、分かったわよ!!」

 

 

阿武隈は、叢雲への指示に不信がりながらも古鷹と一斉砲撃をするとケルベロスは痛みを耐えながらも主砲を構え阿武隈達へと向ける

だが、その瞬間

 

 

「よっこしょ!捕まえたわよ!!」

 

 

「ガァ!?グラァ!!」

 

 

宙を舞っていた叢雲がケルベロスの首に降り立ちがっしりと掴む

いきなり背中に何かがくっ付き意味が分からぬまま半狂乱になりながらも背中の叢雲を振り落とそうとする

 

 

「古鷹!!阿武隈!!今よ!!こいつに集中放火!!」

 

 

「え、えぇ!!

ちょっと大丈夫何ですか!?」

 

 

「大丈夫だから!!早く!!」

 

 

叢雲は、必死になりながらケルベロスの首に捕まっているが今にも振り落とされそうではある

そんな様子を見てなのか古鷹はケルベロスに近付き主砲を構える

 

 

「全く!無茶ばっかりするんだから!!

阿武隈さん!奴の足を狙うよ!!」

 

 

「は、はぁい!?」

 

 

阿武隈はこの状況に付いてはいけないが指示通りに古鷹と共に足を集中的に狙っては行くが如何せん暴れているため中々狙い図らいのだが古鷹は確実に一撃ずつ当てて行く

 

 

『どうだ?叢雲楽しいか?』

 

 

「アホぉ!楽しいわけ……いや楽しいわね」

 

 

その会話は一応二人にも聞こえており、古鷹はため息をつき阿武隈は唖然としているが砲撃は辞めていない

 

 

『さて、楽しい乗馬体験は終わりだ

奴の被弾場所にあれをくっ付けろ』

 

 

「……成る程ね

了解!!」

 

 

佐渡の意図を理解した叢雲は艤装からあるものを取り出し、赤く血で染まっているは被弾場所に粘土と一緒にくっ付ける

 

 

「二人とも!!砲撃辞め!!

撤退するわよ!!」

 

 

「了解!」

 

 

「は、はい!!」

 

 

叢雲は、暴れるケルベロスの首を蹴飛ばし再び宙を舞うと海面に軽々と着地しケルベロスから距離を取る

 

 

「ガァァァ!!!」

 

 

振り落とせたケルベロスは、再び叢雲に向かっていこうとするが足が動かず走っては来れないでいた

先程の砲撃が効いており足からかなりの出血をしていた

 

 

 

「やった!!」

 

 

「阿武隈さん、良く提督の指示に対応出来ましたね?

流石です!」

 

 

「えへへ…」

 

 

古鷹に褒められ素直に阿武隈は喜んでいると再びケルベロスが三人へと向かって砲撃をしてくる

 

 

「ほら!ぼさっとしてない!!来るわよ!!」

 

 

三人は艤装を構え、再びケルベロスへと向き直り戦闘を続行する

 

 

 

 

 

 

 






次回



長くなってしまい申し訳ないです……





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戦艦棲姫迎撃戦 十四

ケルベロスとの戦闘が優位に運んでいる中こちらはかなり劣勢を強いられていた

それもそのはず、相手は姫

ケルベロスと違い確実にこちらを潰す為に装甲が軽いものから確実に仕留めていた

 

 

「ぐぬぅ……」

 

 

「うぅ……」

 

 

「まだ……行ける…わよ!!」

 

 

駆逐艦の三人はほぼ大破状態まで持ち込まれ、艤装がまともに動いていない

 

朧は、左足を撃ち抜かれ胴体にも主砲を直撃しており服はボロボロであり艤装も主砲が辛うじて撃てるほどに追い込まれていた 

 

潮は、服こそ大丈夫ではあったものの両足を撃ち抜かれ立っている足は真っ赤に染まりガクガクと震えており

艤装も魚雷発射管を破壊され黒煙を上げている

 

曙は、服がボロボロになっており右肩と左腕を正確に撃ち込まれ血で真っ赤に染まりながらも主砲を構えており潮と同じく魚雷発射管が破壊され黒煙を上げていた

 

 

 

「アノ奴等トハ違イマダ弱イナァ?

コレナラ私デモ余裕ネ」

 

 

戦艦棲姫の方は、両手の主砲こそ無事ではあるが肩で息をしながら足を痛めたのか少し血を流していた

だが、六人を一人で相手取りまだ余力を残していた

 

 

「なんちゅー奴や……

これが姫って奴かいな…」

 

 

「嫌、従来の姫よりかなり固いようだな…

成る程、確かに歴戦の可能性は高いな…」

 

 

 

 

龍驤は、幸い離れていたお陰かほぼ無傷であり那智もほとんど傷を負っていない

その後ろで、大井は唇を噛み締め悔しがっていた

(お荷物何て……嫌よ!!)

 

 

「提督!!私に何か無いの!?

あいつを何とかする方法は!?」

 

 

『……無いことはない

だが下手をすれば……死ぬぞ?』

 

 

「構わないわ!!

でも、死ぬ気は無いけどね!!」

 

 

大井の目には諦めておらず、主砲を握り締める強さが更に上がる

 

 

『……分かった

全員聞いてくれ!』

 

 

インカムから聞こえる佐渡の声に反応し、全員インカムに集中し佐渡からの作戦を聞く

 

 

「あんた!!そんなことしたら大井さんが……」

 

 

「良いわ、やってやるわ」

 

 

「おい!大井!」

 

 

曙と那智が心配するのを他所に大井は頬を叩き気合いを入れ痛む腹部と足を気にするがまだ耐えられると自分に言い聞かせ戦艦棲姫を睨み付ける

 

 

「作戦会議ハ終ワッタカシラ?」

 

 

戦艦棲姫は主砲をこちらに向けながら余裕の表情をしており勝利を確信していた

 

 

「……みんなお願いしますねっ!!」

 

 

その言葉と共に大井は痛む脚に耐えながら全速力で戦艦棲姫へと突っ込んでいく

それと同時に沖縄鎮守府の者達も動き出す

 

 

「何!!馬鹿ノカ!オ前!」

 

 

戦艦棲姫が主砲を大井へと向け砲撃をしようとするが、艦載機によってそれは阻まれる

 

 

「やらせへんで!!」

 

 

「鬱陶シイ!!」

 

 

戦艦棲姫は直ぐ様、龍驤へと主砲を向け砲撃をすると飛行甲板に直撃し爆煙に包まれる

 

 

「龍驤!!」

 

 

「大丈夫や!!うちの事より戦艦棲姫へ集中せぇや!!」

 

 

那智が心配するが、すぐに戦艦棲姫へ向き直り左肩と右腕の主砲を向け砲撃をする

 

 

「鬱陶シイ奴等メ!!」

 

 

戦艦棲姫が那智へ主砲を構えた瞬間、それは近距離の砲撃で防がれる

 

  

「あんたの相手は!!私よ!!」

 

 

「コイツ!!イツノ間ニ」

 

 

戦艦棲姫の元へとたどり着いた大井は主砲を戦艦棲姫の主砲へ近距離で当て砲撃の軌道を無理矢理反らしていた

そう佐渡の作戦と言うのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

『大井、奴に近接戦を仕掛けろ奴は近接戦闘には馴れていない

お前のスペックなら行けるはずだ 

龍驤は、艦載機を発艦その後わざと砲撃を受けろ

次弾は、那智奴へわざと砲撃を外し大井から注意をそらせ

曙、潮、朧大破しているところ悪いが大井が時間を稼いでいる間確実に砲撃が当たる位置まで移動

準備が出来次第奴へ四艦で一斉砲撃を仕掛ける』

 

 

 

大井への叢雲と同じ近接戦闘を仕掛けろと言う危険極まりない物だった

ただでさえ、先程戦艦棲姫から受けた傷が癒えて居ないのにも関わらず

 

 

 

 

 






次回

近接戦

主砲での近接戦は普通は出来ない?
気にしたら負けやで()







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戦艦棲姫迎撃戦 十五

何かかなり長くなってしまって申し訳ありません…
戦闘は描くのが進む進む……











 

 

先程までボロボロだった大井が突然近接戦闘をしてきたことに驚きながらも戦艦棲姫は何とか距離を取ろうと後ろに下がろうとするが

 

 

『距離を離すな!!

奴を捕まえろ!!』

 

 

「分かってるわよ!!」

 

 

直ぐ様大井は踏み込み主砲を戦艦棲姫に突き付け砲撃をすると後ろに動かずその主砲を避けるために右へと移動する

 

 

「コイツ!!」

 

 

「さっきは良くもやってくれたわね!!

お返しよ!!」

 

 

通常、砲撃戦は自分の艤装に合った距離でするのが的確であり戦艦に関しては主砲の反動とその火力の為近接戦闘を仕掛けることは少ない

それこそ、自分に腕に主砲があり自らの主砲と腕を壊すことと同じだからである

 

 

「クソ!!マダヤレルノカコイツ!!」

 

 

戦艦棲姫は、主砲を大井へ向け撃とうとするが大井との距離が近すぎて撃てず主砲で大井を殴り付けようとするが何とか避け近距離で砲撃を当て続ける

 

 

『大井!!あんまり無茶を……』

 

 

「これぐらい!!

あいつに比べたら!!大したことないわよ!!」

 

 

大井は右腕や全身の痛みに耐えながらも、戦艦棲姫に向かい戦闘をしていると叢雲に言われたことを思い出す

 

 

『良い、大井

一応近接戦闘に関して教えておくわ

近接戦闘で最も大事なことは相手になにもさせないことよ

動きを読み、先に手を打ち、確実に傷を負わせていきなさい?

 

まぁ、やることはないとは思うけど一応よ一応』

 

 

大井はがむしゃらになりながらでも何とか戦艦棲姫の先を読み戦闘を続けているがやはり身体へと負担は凄まじく一瞬だけ反応が遅れてしまう

 

 

「コッノォ!!」

 

 

「がはっ!」

 

 

戦艦棲姫は、大井の怪我腹部へと主砲で殴り付けるとそのまま吹き飛ばされてしまう

 

 

「ヤッテクレタナ!!

ダガ、コレデ終ワリダ!!」

 

 

主砲を吹き飛ばされた大井へと向けて撃つ瞬間左からの砲撃によろけてしまう

 

 

「やらせないさ!それに……」

 

 

 

「!!イツノ間ニ」

 

 

 

那智を筆頭に曙、潮、朧は戦艦棲姫を囲うように主砲を構えており

 

 

「うふふ、貴女の終わりですよ?

戦艦棲姫!!」

 

 

大井はフラフラと立ち上がり、戦艦棲姫へと主砲を構え慌てて逃げようとするが先程の戦闘での傷が痛み一瞬遅れてしまう

 

 

「砲撃!!一斉射」

 

 

「「「「「撃てぇぇ!!!」」」」」

 

 

「クソォォォォォ!」

 

 

次の瞬間五人の砲撃に撃たれ爆煙に包まれる

曙、潮、朧は安堵のあまり手を合わせながら喜び、後ろから龍驤が近寄り良くやったのぉ!!と誉めている

那智もその姿に微笑むが大井だけは険しい表情である

 

 

「どうした?大井?奴は流石に沈んだだろう?」

 

 

「まだ…」

 

 

「『終わってない(わ)』」

 

 

那智は急いで爆煙の中を凝視するとそこにはまだ人影が残っていた

 

 

「…許サナ…イ、オ前…達」

 

 

煙が晴れたそこには、角が片方だけ折れ右腕の主砲を破壊され立っている戦艦棲姫が居た

 

 

「どんだけ固いのよ!!こいつ!!」

 

 

「嘘……五人の一斉砲撃でも駄目なの?」

 

 

『全艦!!そいつから離れろ!!』

 

 

佐渡の合図に、全員が離れると戦艦棲姫は息を吸い空に向かい大声で叫ぶ

 

 

 

「ケルベロス!!!!

戻レェェェェェ!!!!」

 

 

「ガァァァァァァ!!!」

 

 

それに反応するように、ケルベロスは走ってきており、再び戦艦棲姫の後ろへと付き主砲を五人に向ける

 

 

「モウ作戦等知ラン!!

オ前達ヲ海ノ藻屑ニシテヤル!!!」

 

 

戦艦棲姫は左の主砲を構えながらこちらを睨み付けているとケルベロスと戦っていた三人と合流する

 

 

「……ヤバそうねあれ」

 

 

「曙ちゃん!潮ちゃん!朧ちゃん!皆大丈夫!?」

 

 

「大井さん!大丈夫ですか!?」

 

 

二人は合流した者達の心配をしており那智と叢雲だけは戦闘体制を取っていた

だが、叢雲は横目で大井を見ると一言だけ呟く

 

 

「お疲れ様、大井

後は任せなさい」

 

 

その言葉とどこか頼りなるその背中に、少し涙目になるが袖で目を擦り小さな声で言う

 

 

「任せたわよ!うちのエース!!」

 

 

叢雲はニヤリと笑うと艤装を構え、最後の戦いへと向かう

 

 

『お前達!!もう少しだ!!もう少しだけ耐えてくれ!!』

 

 

 

「ほら!あいつの声が聞こえたでしょ!動ける奴は行くわよ!!」

 

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

叢雲の声に、那智、古鷹、阿武隈が応答し戦艦棲姫とケルベロスへと向かい始める

 

 

「死ネ!!死ネ!!皆底ニ沈メテヤル!!」

 

 

 

「ガァァァ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか分かった」

 

 

多良間島付近の海域に居たその深海棲艦は艦載機から多良間島の状態と戦艦棲姫の戦況を聞き沖縄へと走り始めながらある者へ連絡を取る

 

 

「私だ、仕事だ」

 

 

「えー?マジで~?

《ユリ》しくじったの~?

ま、分かったわぁ」

 

 

電話先の相手は海上で寝転んで居たが起き上がり準備運動を開始する

 

 

「行きますかぁ、沖縄へ」

 

 

 

 

 

 

 





次回


時間切れ


次で戦艦棲姫と決着です!
長くなってしまい申し訳ない……



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戦艦棲姫迎撃戦 十六

阿武隈と叢雲は戦艦棲姫へ真っ直ぐ走っていき、那智と古鷹は少し離れて援護砲撃の準備をしている

するとケルベロスが主砲の標準を那智と古鷹に合わせ先制砲撃をする

 

 

「くぅ!」

 

 

「何の!!」

 

 

砲撃は二人の横を掠め海面に着弾すると水柱が上がる

その隙に阿武隈と叢雲が距離を詰めようとするが

 

 

「沈メテヤルワ!!」

 

 

前から突っ込んできた戦艦棲姫が主砲を阿武隈にぶつけ

もう片手で叢雲の首を掴もうと手を伸ばす

 

 

「ぐはっ!!」

 

 

「阿武隈さん!!」

 

 

「余所見出来ルノカシラ!?」

 

 

叢雲は戦艦棲姫の手を掴むと投げ飛ばすと阿武隈に当たっていた主砲も離れる

投げ飛ばされた戦艦棲姫は直ぐ様着地をすると叢雲に主砲を構える

 

 

「甘いわよ!!」

 

 

「ドッチガカシラ!?」

 

 

「叢雲!!後ろ!!」

 

 

「ガァァァ!!!」

 

 

叢雲のすぐ後ろまでケルベロスが迫り拳を振り上げており避けようとするのだが

 

 

「っ!!」

 

 

足に力が入らない

先程ケルベロスの攻撃をまともに受けており蓄積した痛みと過剰な動きについに耐えきれなくなり足が動かなかった

ドゴッと鈍い痛みと共に叢雲の腹部に拳が当たりそのまま拳と共に主砲が放たれ叢雲に直撃すると爆煙を上げながら宙を舞い海面へと落ちる

 

 

「叢雲さん!!!」

 

 

「オ前モダ!!」

 

 

少しだけ油断した阿武隈に戦艦棲姫は左の主砲を砲撃すると直撃し爆煙に包まれと同時にケルベロスが拳を当て叢雲と同じ場所へと殴り付ける

 

 

「ごぼっがはっ……」

 

 

二人の連携技を受けた阿武隈は腹部の焼ける痛みと共に喉から上がってくる吐き気に耐えきれず血と共に胃酸を吐き出し苦しみつつある

 

 

「阿武隈!!」

 

 

「叢雲!!」

 

 

「ガァァァ!!」

 

 

未だに意識の無い叢雲と苦しむ阿武隈に駆け寄ろうと二人は走るのだがケルベロスが主砲を撃ちその行き先を行かせまいと砲撃をしてくる

 

 

「アハハハ!!二人落トシタゾ!!

沈メテヤルワ!」

 

 

「誰…を……沈め…る…です…って…?」

 

 

その声に戦艦棲姫はぎょっとして二人を飛ばした先を見る

そこには苦しみながら、吐血をし艤装を海に突き立て全身血塗れになりながらも弱々しく立ち上がろうとしている叢雲が居た

 

 

『叢雲!無茶をするな!!』

 

 

「うる…さ…い…!!」

 

 

先程の砲撃で服はボロボロになり艤装のセーフティが無くなり腹部には砲撃の焼けるような痛みと殴られた鈍い痛み

それに加え内蔵も少しやられたらしく口の中に血が溜まり嘔吐するように大量の血を吐き出す

骨も折れており、動かそうとすると激痛が走る

 

 

「阿…武……隈!!起き…な…さい…!戦闘は…まだ…続い…て…るわ…よ!!」

 

 

その声に何とか立ち上がり、腹部の痛みを抑えながら阿武隈も立ち上がる

こちらも服はボロボロになり、吐き気は止まらず全身焼けるような痛みに耐えながらフラフラと立ち上がる

 

 

『阿武隈…無茶は…』

 

 

「大丈…夫!それ…に

駆逐…艦…何かに…負け…るわ…けない…でしょ…!!」

 

 

 

 

「「私達が負けるわけには行かないの(よ)!!

守りたい物があるんだから!!」」

 

 

 

二人は重症なのに立ち上がり、再び気合いを入れる

叢雲は海面に右手の魚雷を突き立て静かに三発全て海中に射出する

 

 

「残…り五…分…」

 

 

そう呟くと、艤装を構え再びケルベロスと戦艦棲姫にボロボロの状態で向かっていく

 

 

「渋イ奴等目!!」

 

 

「全艦!!奴等に隙を作るわ!!!

砲撃用意!!!」

 

 

叢雲は叫ぶと痛みのあまり吐血をするが、それに耐え主砲をケルベロスへと当てていくがその前には戦艦棲姫が立ち塞がる

二人は、ケルベロスしか見えておらず戦艦棲姫に気付いていない

 

 

「良イ的ネ!!シズ…」

 

 

そう言いかけた瞬間戦艦棲姫は砲撃による爆煙に包まれ睨むようにその先へ目向ける

 

 

「やらせはせんさ!!」

 

 

「やらせません!!」

 

 

「コノグズ共ガァァァ!!!」

 

 

戦艦棲姫を抜け、ケルベロスへと向かうとこちらに砲主を構え砲撃してくるが何とか二人は避けるのだが

 

 

「あっ…」

 

 

阿武隈が躓き、フラッと倒れそうになるが叢雲がその手を掴み何とか持ち直す

 

 

「ありがと!」

 

 

「お礼なら…これが終わってからよ!!」

 

 

ボロボロの二人は、何とかケルベロスへとたどり着くと近距離で砲撃を開始する

 

 

「ガァァァ!!!」

 

 

ケルベロスも応戦するように爪を振り上げ戦闘を仕掛けるが先程より動きが鈍い

三人の攻撃が効いているのか、左脚を気にしながら戦っており叢雲はそこに目をつけた

 

 

「阿武隈!!左脚を狙うわよ!!」

 

 

「了解!」

 

 

「グラァァァァ!!」

 

 

二人はケルベロスの猛攻を交わしながら、左脚に集中的に砲撃をするとその痛みにケルベロスは耐えきれず倒れてしまう

 

 

「ケルベロス!!ドウシタノ!?」

 

 

「時間ね、撤退するわ!!」

 

 

「オッケー!!」

 

 

ケルベロスの声を聞き付けた戦艦棲姫が駆け付けてきておりその間に二人は離れていく

 

 

「アァ、脚ガ…オ前達!!」

 

 

だが、その瞬間ケルベロスと戦艦棲姫は海下から来た雷撃に直撃し水柱に包まれる

 

 

「雷撃!?一体誰が……」

 

 

「阿武隈!!砲撃用意!!!」

 

 

阿武隈が驚きながら叢雲を見ると右手の魚雷が全弾無くなっているのに気付きニヤリと笑いながら主砲を戦艦棲姫とケルベロスに向ける

 

 

「…流石雷撃姫」

 

 

「全艦!!砲撃先ケルベロスと戦艦棲姫!!」

 

 

その言葉と共に全ての艦娘が主砲を戦艦棲姫とケルベロスへと向ける

 

 

「己レ……雷撃トハ小癪ナ…!!」

 

 

水柱が晴れた瞬間、戦艦棲姫の目に飛び込んできたその光景に唖然とした

全ての艦娘がこちらに向け主砲を構えていたのだから

 

 

「ケルベロス!!」

 

 

「ガァ!!」

 

 

ケルベロスは、身を体して戦艦棲姫を守ろうとすると背中のあるものが古鷹の目に映る

 

 

「古鷹ぁぁぁ!!!背中を撃てぇぇぇ!!」

 

 

「了解っ!」

 

 

古鷹は正確に落ち着きながら、主砲を構えると深呼吸をしながらゆっくりと狙いを定める

 

 

「……当てる絶対に

砲撃、開始」

 

 

静かに呟き砲撃をすると、古鷹は正確に先程叢雲が取り付けた失敗作の魚雷がありそれを撃ち抜くと瞬間大爆発か起こり痛みのあまりケルベロスは手を背中へと伸ばし、戦艦棲姫ががら空きになる

 

 

「ガァァァァァァ!!」

 

 

 

「ナニ!?ドウシタノケルベロス!?」

 

 

「流石!古鷹!!」

 

 

「全艦!!一斉砲撃!!!」

 

 

突如起きた爆発に驚き戦艦棲姫も慌ててケルベロスの背中を見ようとするがすぐに叢雲達へ向き直るがもう遅く叢雲がニヤリと笑っているのを見ると睨み付ける

 

 

「「「「撃てぇぇぇぇ!!!」」」」

 

 

「ヤッテクレタナァァァァァ!!叢雲ォォ!!!!!」

 

 

瞬間、九人からの砲撃をまともに受けた戦艦棲姫とケルベロスは砲撃による爆煙に包まれ辺りは静けさを取り戻す

 

 

「やったの…?」

 

 

「……かしらね」

 

 

阿武隈は静かに呟き、叢雲も辺りを確認すると遠くからこちらに来る影を見付け油断してしまう

だが、次の瞬間

爆煙から何かが勢い良くこちらに走ってきており叢雲の首を掴み持ち上げる

 

 

「ヨクモ、ヨクモヨクモォォォォォ!!!」

 

 

「ガグラァァァァァァ!!!!」

 

 

まだ、晴れない爆煙の中ケルベロスは全身を弱らさせては居るものの両手の主砲と脚の魚雷発射菅は壊され黒煙を上げているが肩の主砲は生きておりこちらに向けて適当に砲撃してくる

そして、頭の角を両方折られ左手を主砲と共に無くし、左脚を血で真っ赤に染めているがそんなのを気にしないほどの気迫で叢雲を掴んでいた

 

 

「ぐぅ……」

 

 

「叢…雲!」

 

 

阿武隈も突然の事に驚き、何とか応戦しようとするが身体が動かない

先程からの無茶がたたりもう身体が限界を迎えていた

他の者達もケルベロスの砲撃を避けるのに精一杯であり叢雲の心配なんて出来ないほどである

だが、叢雲は笑っていた

 

 

「何ガ可笑シイ!?」

 

 

「アハハ…何でって…私達の…勝ち…だから…よ」

 

 

『あぁお疲れ様、皆

良く耐えてくれたな

俺達の勝ちだ』

 

 

 

佐渡は、スカウターをデスクに起きため息混じりに息を吐き訳がわからない石澤は佐渡を攻め立てる

 

 

「佐渡少尉!!一体どういう…」

 

 

「どういうってそりゃ……」

 

 

「『時間切れだ(よ)』」

 

 

それと同時に佐渡と叢雲はニヤリと笑う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全艦!!あのデカブツに一斉砲撃!!

 

 撃てぇぇ!!!!」

 

 

 

 

 

 






次回


決着

これで、戦艦棲姫との戦いは終わりになりますがまだ少しだけ続きます!




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戦艦棲姫迎撃戦 十七

その言葉に驚いた戦艦棲姫は、叢雲の手を放しケルベロスへと向き直るとケルベロスへと大量の砲撃が降り注ぎ大爆発を起こしている

 

 

「ケルベロス!!」

 

 

「ガァ……アァ…」

 

 

先程古鷹達のより火力の高い砲撃にケルベロスは耐えきれず、その場に倒れてしまい海面が水飛沫と共に血を流している

肩の主砲もその砲撃で破壊され、ケルベロス自体もボロボロの状態である

 

 

「マサカ!!嘘デショ!!アレヲ抜ケテキタノカ!?」

 

 

「遅いのよ……全く…」

 

 

「あれって……」

 

 

「凄いな…あれを抜けてきたのか…」

 

 

 

 

戦艦棲姫は驚きながらもその姿を見るとその顔は絶望に染まり、叢雲達は歓喜に震える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「連合艦隊到着!!これより戦艦棲姫の迎撃を開始する!!!」

 

 

多良間島に居たはずの連合艦隊であった

長門を筆頭に全旗艦が前に並びこちらに向けて進軍してきておりその内の不知火、北上が叢雲達へ飛び出してくる

 

 

「不味イ!!セメテコイツダケデモ!!」

 

 

戦艦棲姫は、何とか叢雲だけは仕留めようと再び手を伸ばすがそれよりも早く不知火が叢雲の前に飛び出し手を近距離で撃ち抜く

 

 

「往生際が悪いですね

沈め!!」

 

 

「駆逐艦ガァ!!」

 

 

不知火の砲撃を避け、後ろに下がると見せかけ不知火の腹部に蹴りを入れると苦しさのあまり腹を抑え後ろに飛ばされてしまう

 

 

「ぐっ」

 

 

「沈ムノハ貴様ダァ!!」

 

 

戦艦棲姫が不知火を再び殴ろうとすると真下からの雷撃により吹き飛ばされてしまう

 

 

「クソ!!マタ雷撃カ!」

 

 

「へ~、あんたが戦艦棲姫何だー?

まぁどうでも良いけどさ?

良くも大井っちをこんなにしてくれたね

流石に私も怒っちゃうよ」

 

 

先に撃っていた雷撃が命中し、北上は大井達の前に立ち塞がりその顔は珍しく怒りに満ちていた

 

 

「ヒーロー到着何てね

大井っち助けに来たよん

……今度は助けるからね」

 

 

「北上さぁぁぁん!!」

 

 

大井はボロボロになりながらも北上に抱き付くと北上が大井の頭を撫でていた

そして、戻ってきた不知火も主砲を戦艦棲姫へと向けていた

戦艦棲姫は膝をつき集まりつつある連合艦隊を睨み空に向かい叫ぶ

 

 

「ケルベロス!!」

 

 

「ガァァァ!!!」

 

 

ケルベロスは、ボロボロになりながらも戦艦棲姫へとたどり着き北上達へ威嚇しているがその姿は先程より驚異とは呼べないほどに痛々しかった

 

 

「お前の負けだ戦艦棲姫よ」

 

 

戦艦棲姫とケルベロスの前に長門が立ち塞がり主砲を向け睨みを効かせていた

後ろに居る横目で見ながら叢雲と阿武隈に一言呟く

 

 

 

「良く耐えたな

後は、我々連合艦隊に任せろ」

 

 

「お願い…します!!」

 

 

「……ふん、遅いのよ」

 

 

阿武隈は安堵し、海面に座り込み叢雲は嫌味を言う様にそっぽを向いてしまう

だが、長門は前に居る戦艦棲姫に振り返り主砲を構える

 

 

「全艦!!目標!戦艦棲姫!!

主砲準備!!」

 

 

「ケルベロス!!」

 

 

「ガァ!」

 

 

どうやら、まだやる気のあるらしいケルベロスはまだ使えそうな主砲を構え長門達へと向けている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そこまでだ」

 

 

突如として聞こえたその声と同時に長門達と戦艦棲姫の間に海中から水柱が上がり深海棲艦の艦隊が六体の姿を現す

その編成は全て戦艦ル級であり主砲が無い盾を装備していた

 

 

 

 

 

 






次回


邂逅

新種の深海棲艦現る?




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戦艦棲姫迎撃戦 十八

後少しだけ続きますご了承くださいませ……





「ナッ!!」

 

 

「深海棲艦!!」

 

 

突如として現れたその深海棲艦に二組は慌て艤装を構えるがその者は両手を上げ降伏の態度を取る

 

 

「……なんのつもりだ貴様」

 

 

ル級達はケルベロスを囲うように動き完全にその回りを固定すると一切動かなくなりその深海棲艦は両手を上げながら長門に近付きル級の隣まで来ると止まり首を傾げる

 

 

「ふーむ…?両手を上げるのは降伏の表れだと聞いたのだが間違っていたかな?

私は君達と戦う意思はない」

 

 

その深海棲艦の姿は、空母ヲ級と酷似していた

だがヲ級とは違い頭に艦載機を発艦させる艤装が無く代わりに腰に飛行場姫と同じ様なカタパルトだけを装備しており他に艤装が見当たらない

口元は真っ白なマフラーで隠れており半分くらいしか見えていないが無表情であることだけは分かる

そして、普通に人間の言葉を喋れるところを見ると通常のヲ級とは考えられない

 

 

「戦う意思はない……?

なら何故戦艦棲姫を庇う?」

 

 

「何故なんて分からないのか?

《ユリ》とケルベロスを回収しに来たのさ」

 

 

「待テ《監視者》!!嫌待ッテクダサイ!!」

 

 

ユリと呼ばれた戦艦棲姫は、ケルベロスの側に立ちながら傷口を抑え監視者と呼ばれた謎の深海棲艦に顔を向ける

 

 

「私ハマダ戦エマス!!

ネェ!ソウデショ!!ケルベロス!!」

 

 

「ガァ…ァァ!」

 

 

ケルベロスもボロボロの身体を動かし、再び動きだそうとするが監視者はル級へ合図を出すとケルベロスの脚を蹴り飛ばす

 

 

「ガァァァァァァァ!」

 

 

「ル級貴様!!」

 

 

 

ケルベロスは痛みの余り脚を抑え苦しんでいると監視者はユリとケルベロスを睨み付ける

 

 

「黙れ、このまま沈めてほしいのか?

貴様ら」

 

 

その顔に恐怖したケルベロスとユリは萎縮しケルベロスも倒れてしまう

監視者は長門に振り替えるがやはり無表情のまま杖に手を当てる

 

 

「と言うわけだ、我々は帰らせて頂こう」

 

 

「何がと言うわけよ!!」

 

 

長門の隣で弓を目一杯引き艦載機を飛ばそうと瑞鶴は監視者を睨み付ける

 

 

「あんたが!!多良間島を占拠してたんでしょ!! 

冗談じゃないわ!!

ここでみすみす逃がすわけないでしょ!!」

 

 

瑞鶴は、弓を空に放つと弓矢は艦載機に代わり監視者に向け爆撃をしようと突っ込んでいく

近くのル級がそれを阻止しようとするが監視者はそれを制止し腰から数機の艦載機を飛ばす

 

 

「航空戦か、それにその艦載機

成る程、お前のだったのか貧乳ツインテール」

 

 

「っ!!蜂の巣にしてやるわ!!!」

 

 

瑞鶴の放った艦載機は十機に対し監視者が出した艦載機は三つどう考えても勝てるわけがないと言うのに監視者は落ち着いていた

 

 

「だが下手だな貴様」

 

 

「っ!!なによその機動!?」

 

 

監視者が放った艦載機は通常ではあり得ない動きをしながら確実瑞鶴の艦載機を全て撃ち落とし、空に滞空している

通常艦載機はその場に滞空何て物は出来ないのだが、監視者の艦載機はそれが出来ていた

 

 

「満足したか?」

 

 

「こんのぉ!!」

 

 

「面倒だな」

 

 

瑞鶴が再び弓を引き艦載機を飛ばそうとしてくるが、先に監視者の艦載機が瑞鶴を正確に狙ってくる

 

 

「瑞鶴!!」

 

 

「ふむ……そのツインテールは瑞鶴と言うのか」

 

 

 

長門が間に入りその攻撃を自分で受けようとするが、監視者の艦載機はそれを避け回り込み正確に瑞鶴の飛行甲板を破壊し爆煙に包まれる

 

 

 

「きゃあぁぁぁぁ!!!」

 

 

「貴様ぁ!!」

 

 

長門は怒り主砲を監視者に向けるが、監視者は右手を上げ弁明する

 

 

「待て、黒いの

私は攻撃をされたから返したまでだ

それに瑞鶴と言ったか

そいつには怪我はないはずだ」

 

 

長門が瑞鶴を見ると確かに正確に飛行甲板と弓を破壊しており本人にはほとんど怪我がない

その言葉を信じ主砲を下ろす

 

 

「……だが確かに逃がすわけにはいかない

大人しく我々に捕まるなら話は別だがな」

 

 

「それは困るな、私も任務なのだ

逃げさせてもらおう

だがまぁ、少し話そうではないか?

黒いの」

 

 

 

 

 

 




次回


女王(クイーン)


因みにこの監視者は実際の艦これには出てこないのでご了承を
完全なオリジナルでございます



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戦艦棲姫迎撃戦 十九

「話…だと?」

 

 

監視者から言われた提案に長門は不審がりながらも主砲を完全に下ろす

 

 

「そう、私はお前達に興味がある

我々の作戦を看破した君達にね」

 

 

そういい終わると同時に監視者は両手を叩き純粋に長門率いる連合艦隊とユリを迎撃した叢雲達と阿武隈達を褒める

 

 

「見事だったよ、君達の足掻きと信念とやらは

我々も見習わなくてはね

特に、そこの叢雲

君、この前も私達のル級を撃破した駆逐艦は

今回の戦いも見事だった

良くもまぁユリとケルベロスを相手取れた物だ

それに加えそこの黒いの

名前は分からないが君が多良間島の戦いの火付け役だった 

私は全て見ていたからね

いやーお見事お見事感服したよ」

 

 

「敵に褒められるとはね……

変な感じね」

 

 

「同感だ」

 

 

 

そう長々しく監視者は今回のMVPを褒め称えると、両手を叩くのを辞め人差し指を立てる

 

 

 

「さて、では君達に特別に報酬を与えよう」

 

 

 

先程からかなり友好的な監視者に全員はすっかり気が抜けてしまい

その言葉に喜びすら覚えていたところに更に向こうからの報酬と言う言葉の誘惑に乗ってしまう

 

 

「何だ報酬とは」

 

 

「黒いのと叢雲の質問に一つだけ正直に答えよう

何でも、な」

 

 

その言葉に全艦娘と提督達はざわめきだす

深海棲艦との会話、これ自体すら珍しく大きな情報になると言うのにも関わらず向こうから情報を聞き出すことが出来るのだからざわめきだすに決まっている

 

 

「本当に…何でもか?」

 

 

「あ、一つ訂正しよう

私でも分からないものがある

その場合、私は分からないと答えよう」

 

 

その話を聞いていた作戦会議室の提督達はざわめきだしそれぞれ案を出しあっているが唐澤はそれを押しきり長門へと指示を出し長門はその言葉を聞き監視者に質問を出す

 

 

「私から良いか?」

 

 

「良かろう黒いの

聞こうか」

 

 

「……お前達、深海棲艦は何故我々、人間を襲う?」

 

 

「何だそんなことか」

 

 

長門の質問に、監視者は片手を長門達へ指差し首を傾げながら答える

 

 

「至極簡単だ

お前達が持っているものが欲しい

そして、貴様等人間が邪魔なのだ

それだけだ

まぁ、この考えが大半だな」

 

 

「共存は…」

 

 

「おっと質問は一つだこれ以上は答えないぞ?

さて、後は叢雲だな何を聞きたい」

 

 

長門が言いかけた瞬間、監視者は手を出し長門の言葉を遮り叢雲へ向き直る

 

 

「さぁ、何を聞きたい

駆逐艦、叢雲よ」

 

 

「そんなの決まってるじゃない」

 

 

叢雲は立ち上がり佐渡の聞きたい事が大体分かっており、聞く前に監視者へと質問すると佐渡と言葉が被る

 

 

「『お前は何者だ?』」

 

 

 

その言葉を言った瞬間辺りは静まり返り、監視者は杖を両手に持ちかえ海面を叩く

 

 

「ふむ、良い質問

嫌、普通は聞くところだ

どうやら君達は優秀な様だ」

 

 

次の言葉が待ち遠しく、ここにいる艦娘と作戦を会議室の提督達はごくりと喉をならす

そして、監視者は質問にゆっくりと答えていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我が名は監視者

深海棲艦の親にして全ての始まり、始元によって建造された全ての深海棲艦の管理人であり

人形兵器艦娘に対抗し作られた初の二足歩行形の深海棲艦

そして、全ての深海棲艦を操ることが出来る唯一の存在

それが私だ」

 

 

その言葉に、全ての艦娘達が一斉に艤装を構え戦闘体制を取る

だが監視者は微動だにしない

 

 

「始元…だと?」

 

 

監視者の言葉に驚きを隠せないのは、作戦会議室の提督達も同じである

 

 

「長門!!そいつを必ず捕まえろ!!!

奴はこの戦争を止めるきっかけになるはずだ!!」

 

 

 

『了解!!』

 

 

唐澤の指示を聞いた長門は全門監視者に向けておりいつでも撃てるようにしている

 

 

「監視者!!ソコマデ言ウ必要ガ……」

 

 

後ろではユリが、心配そうに見つめるが監視者ははぁとため息をつく

 

 

「だからお前は馬鹿なんだ、ユリ

私がただこいつらに話すわけないだろ?」

 

 

監視者は、杖を海面に再び叩き付けると付近から深海棲艦が何体か出現しケルベロスとユリを持ち上げる

 

 

「どういう意味だ!!

監視者!!」

 

 

「やはり、そこの叢雲以外は馬鹿なのか

 

時間稼ぎはここまでで良かったな」

 

 

時間稼ぎ、確かに監視者はそう言うと長門達の背後から何かがこちらに向けて航行してきており監視者はため息をつく

 

 

「長門さん!!

こっちに何か来ます!!」  

 

 

「何だと!?」

 

 

その航行してきている者を全艦隊で確認すると全員が冷や汗と共に警戒している

あるものは震え、あるものは恐怖している

その者は通常の深海棲艦とは違い人の形をしており

全身に多くの砲門を装備しており

海軍に居るものなら誰もが知る最悪であり最強の深海棲艦

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「遅いぞ、《クイーン》」

 

 

それは、南方棲戦姫の歴戦種

この二度目の戦争を引き起こした最悪の存在であった

 

 

「はぁ~い

来てやったわよ、監視者~」

 

 

 

 

 





次回


海の怪物

いきなりラスボス登場!
良くある展開ですよねぇ









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戦艦棲姫迎撃戦 二十

南方棲戦姫、全ての始まりそして二度目の戦争を引き起こした最強最悪の深海棲艦

海軍が勢力を上げて倒したい相手

それが目の前にいる

その真実だけが艦娘達へ突き付けられた

 

 

「よっと」

 

 

 

南方棲戦姫は、海面を蹴り勢い良くジャンプをすると監視者の隣に見事に着地すると腕を振り回し肩をゴキゴキと鳴らす

 

 

「あらぁ?本当にやられたの?ユ~リ?

あれだけお膳立てしておいて勝てないなんてねぇ?

あんたどんだけよぉ?」

 

 

「モ、モモモ申シ訳アリマセン!!

クイーン様!!」

 

 

ユリはクイーンと呼ばれた南方棲戦姫に土下座をしており頭を海面に擦り付けている

 

 

「まぁ、良いわ

それに」

 

 

クイーンは言い終わる前に長門達を見ると口元を怪しく吊り上げながら笑い始める

その姿に、艦娘達は恐怖を覚えていた

 

 

「アハハハ!!こんな大勢が相手なら仕方ないかぁ?

じゃあ、殺しますかぁこいつら」

 

 

その言葉にゾッとしながらも全員は主砲をクイーンへと向けるが監視者がクイーンの頭を軽く叩く

 

 

「馬鹿者、今回お前の任務は護送だ

戦うんじゃない」

 

 

「えー!何でよー!

こんなにゴミが浮いてるのよ?

早く掃除しましょうよ?」

 

 

クイーンは長門達を指差しながら子供の様にねだるようにほっぺたを膨らませる

だが、それは演技だと直ぐ様見破った監視者はクイーンを放っておきながら航行し始める

 

 

「帰るぞ」

 

 

「ちぇつれないわねぇ」

 

 

「待て!!」

 

 

ケルベロスとユリを運び始めると、長門がその二人の行方を引き留める

足が震え怯えながらも果敢に二人へと主砲を向けながら

 

 

「誰が行って良いなど……」

 

 

「ふむ、ではやるか?

お前達は傷だらけスタミナも無いのだろう

だがそれに対して私達は体力満タンに君達が恐れているクイーンだぞ?

負けるのは目に見えているだろう?」

 

 

「やるのぉ?構わないわよ?

藻屑になる覚悟が出来たってことよねぇ?」

 

 

「………くっ」

 

 

監視者の言葉に、長門は連合艦隊と叢雲達を見渡すが戦える状態ではない

それに加え、深海棲艦を操ると豪語する監視者に南方棲戦姫の歴戦種

こちらに勝機はない

 

 

『…長門沖縄に帰投せよ』

 

 

「提督……」

 

 

『これ以上の被害を出しても仕方ない

責任は私が取る帰ってこい』

 

 

唐澤の言葉に納得し、主砲をおろし唇を噛み俯く

 

 

「懸命な判断だ

そうだ、多良間島と宮古島は返却しよう

もう必要ないからな

行くぞクイーン」

 

 

「アハ、なっさけなーい」

 

 

ル級達は、ケルベロスとユリを持ち上げクイーンが来た方角へと走り出し

クイーンと監視者もその後ろを付いていく

その姿を見送る事しか出来ない連合艦隊と叢雲達は自らの弱さと敗北に頭を抱え悔しさに耐えており

叢雲と長門はクイーンが通り過ぎる瞬間睨みを効かせ、クイーンは余裕な表情をしていた

 

 

「そうだ」

 

 

最後に通り過ぎた、監視者は長門達に振り返ると杖を掴みながら無表情のまま続ける

 

 

「君達への賞賛は私の本心からだ

良くもまぁ、エリート化のあれらを処理出来たものだ

 

 

次はもう少しこちらも策を練らせてから行かせてもらおう

 

 

 

また会おう、お互い死ななければな」

 

 

そう告げると、振り返りケルベロスとユリ達の後ろを付いていくように航行し、しばらくすると水平線へと消えていく

 

 

「くそ!!!後少しだったのに!!!」

 

 

 

「悔しい……です!!」

 

 

 

「比叡お姉様…私もです!」

 

 

 

完全に姿が見えなくなった瞬間、瑞鶴は弓を海面に叩き付け比叡や霧島、長門達は悔しさに唇を噛み締める

 

 

「………すまない提督」

 

 

『嫌、これでいい

連合艦隊帰投せよ』

 

 

「……分かった

全艦!沖縄に帰投せよ!!」

 

 

長門の合図に連合艦隊はとぼとぼとした足取りで帰投する

勝利はした、目的の多良間島は取り返した

だが、連合艦隊はユリと呼ばれる戦艦棲姫と艤装ケルベロスを逃がしたと言う結末に納得出来るものは居なかった

そんな中四人、海面に倒れ意識を失った艦娘がおりその音が全員の目を集めた

 

 

「大井っち!!しっかりして!!」

 

 

「叢雲さん!!古鷹さん!!」

 

 

「阿武隈!!ちょっと大丈夫!?」

 

 

 

先程までケルベロスとユリを相手取り痛みと体力の限界が来ており全く動けなくなっていたのである

全員傷口から大量出血をしており海面が赤く染まっている

 

 

(あれ……動かない…

ちょっと、無理し過ぎた…かしら)

 

 

薄れゆく意識の中、耳元から聞こえる佐渡の必死な声と心配する声が頭に反響する

 

 

(眠い……駄目だ…

あいつに…心配……)

 

 

そう考えている間に叢雲は眼をゆっくりと閉じ意識を手放してしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

           海上要塞ケルベロス

         戦艦棲姫ユリ迎撃戦 end





次回

お前は誰だ


今回でVS戦艦棲姫戦は終わりになりますが、次回は今回の話に関係ありません!
良かったら見て頂いても良いのよ?(チラッ)










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罰を下すのは誰?

今回(二話目は)、かなりのグロが含まれると予想します!
キッツいと言う方は今回はスルーして頂いても構いません!!










それでも良ければどうぞ!







ここは、海軍刑務所の外ある人物が出所し車椅子のタイヤを回しながら走行していた

外は真っ暗になっており、時刻は0時を回っていた

 

 

「くそ!!大井と小笠原提督の野郎……

絶対に許さねぇからな…」

 

 

この男、元佐世保鎮守府提督 木原である

実は木原は海軍大将や他の元帥等に顔が効くため賄賂を払い刑期を無くし出所してきたのだ

 

 

「元帥も元帥だ、何で兵器を守る法律なんて作りやがるんだ

絶対に許さねぇ

まだ、奴との《取引》は終わってねぇ

俺には地位もあるやり直してやるぜ

 

 

あいつらを追い詰めて殺してやる!!」

 

 

木原が呟いていると目の前からある人物が歩いてくる

その姿を見ると木原の顔が明るくなる

 

 

「Hi!提督迎えに来ましたよ!」

 

 

「おぉ!アイオワ!!迎えに来てくれたのか助かる!」

 

 

アイオワは、木原の後ろに回り込み車椅子を押し二人は歩き始める

 

 

「提督、災難でしたね

これ大井の所属先の情報になります」

 

 

「流石だなアイオワ既に調べていたのか」

 

 

木原は資料を見ると怪しく微笑んでいると、アイオワはその姿を後ろから微笑みながら海を見渡していた

 

 

「提督?そう言えばまた提督をやられるのですか?」

 

 

「あぁ?やるに決まってるだろ?

佐世保では無理だと思うから大元帥に頼んで他の……」

 

 

「そこでの方針を今のうちに聞きたいのですが、よろしいですか?」

 

 

木原は、アイオワを見ると不思議がる

(何でこんなに聞いてくるんだ?

まぁ良いかこいつは戦艦何だしな)

考えてはいるが、戦艦や空母のみを優先的に育ててきた木原にとってアイオワは居ないと困る存在だからこそ特に気にも止めなかった

 

 

「きまってるだろ?駆逐艦や軽巡を盾として使いつつお前達戦艦を優先的に育てるだよ

 

所詮あいつらはすぐに使い捨て出来る

本当に便利だよなぁ!!」

 

 

そう言うと、木原は辺りに響き渡る位の笑い声を上げると静かにアイオワは笑う  

 

 

「……提督、所でドッペルゲンガーってご存知ですか?」

 

 

「はぁ?唐突にどうした?」

 

 

アイオワは、車椅子を押しながらゆっくりと歩きながら話を続ける

 

 

「ドッペルゲンガーはですね

自分自身の姿を見ることが出来る幻覚の一種とされています

基本的には、自分の第二の自我と言われたりもう一人の自分と称されます

超常現象の一つとされています」

 

 

「……それがどうかしたのか?」

 

 

先程からアイオワの様子が可笑しい、木原はそう考え振り返ろうとすると後ろからアイオワに頭を掴まれる、そしてアイオワはギリギリと力を込めながら頭を締め付けていく

 

 

「いたたた!!何をするんだアイオワ!!放せ!!」

 

 

痛みのあまり、両手でアイオワの手を掴み離そうとするがアイオワの力が強く全く離せずにいる

アイオワはそんなことお構いなしに話を続ける

 

 

「そしてある都市伝説がありますそれは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自分のドッペルゲンガーに会うとどちらかが死ぬと言う物ですよ

 

 

木原 淳也 中将」

 

 

その言葉に恐怖を覚え急いで車椅子から転げ落ちアイオワに振り返るとその姿に唖然とし恐怖する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……何故、俺が居るんだ?」

 

 

アイオワが居て車椅子を押しているはずなのにそこにいたのは軍服を着た木原自身だった

 

 

 

 

 





次回

ドッペルゲンガー

幽霊かな?(すっとぼけ)





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罰を下すのは誰?二

最近友人に色々と艦これに関して聞いてますが知らないことが多くて辛い…







木原が唖然としていると、その男もう一人の木原は車椅子を蹴飛ばし木原の頭を掴み持ち上げる

 

 

「いだだだ!!」

 

 

持ち上げられた木原は頭を手で押さえながら足を動かそうにも全く言うことが聞かないため力を入れようにも何も出来ずにいた

 

 

「誰?俺はお前だよ

駆逐艦と軽巡を盾に使い

深海棲艦と《取引》を行い

そして、艦娘を玩具としか思っていない

親のコネで入った海軍中将の木原 淳也さ

他にも言ってやろうか?」

 

 

「なっ!!」

 

 

深海棲艦との取引、これは木原とある一人艦娘しか知らない事実

しかもその艦娘は轟沈させており知ってるのは実質木原のみである

それに、この男が言ってることは全て合っており男のどこを見ても自分にそっくりである

 

 

「足で抵抗しないのか?

あー…そう言えば巨乳軽巡大井にやられたんだっけか?

憎いよなぁ?まぁ知らねぇけどよ!!」

 

 

その瞬間、男は木原の頭を地面に叩き付け足の太股を思い切り踏みつけながら怪しく笑みを浮かべている

 

 

「ギヤァァァァァ!!!!」

 

 

「おっと痛いのか

だが、こんな動かない下半身は入らないよな?」

 

 

男は木原の足を踏みながらポケットから銃を取り出し木原の脹ら脛に突き付ける

 

 

「や、辞めろ!まさか!!」

 

 

「そーれパンパンっとな」

 

 

引き金を引くと、二発の銃弾が発砲され木原の脹ら脛にに穴を開ける

穴からは硝煙の匂いと血の匂いが混じり空いた穴からは大量の血液が流れ始める

 

 

「あぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「おー痛そうだねぇ?

俺よ?」

 

 

そして、男は穴が空いた脹ら脛を思い切り踏みつけ木原に更なる痛みを味会わせる

 

 

「痛い痛い痛い!!!

辞めろ!!辞めてくれ!!」

 

 

「嫌に決まってるだろ?

やりたいからやってるだから」

 

 

「なら!!死ねぇ!!!」

 

 

 

木原もポケットから銃を取り出すとその男に向けて発砲する

銃弾は全て男に命中し、当てられた男は腹部を押さえながら苦しそうにしている

その隙に木原は抜け出し、這いずりながらでもここを立ち去ろうとしている

 

 

(何だ?何なんだ!!アイツは!?

アイオワはどこにいったんだ!?)

 

 

木原は、この状況が全く理解が出来ていなかったが一つだけ分かっていることがある

 

 

(あいつは俺を殺す気だ!!)

 

 

それだけが分かり、ただがむしゃらに痛む足に耐えながら上半身が泥だらけになりながらも這いずっていた

惨め、まさにその言葉が似合うほどに生きることに必死になっている木原を嘲笑う様に男は再び木原の首根っこを掴み持ち上げる

 

 

「逃がさねぇよ?

俺!!」

 

 

「ぐはっ!!」

 

 

木原は投げ飛ばされ、地面に叩き付けられると同時に足に冷たい物が感じられる

それが月明かりに照らされて目に写ったのは綺麗な銀色の刃

日本刀だった

 

 

「木ー原?これが何か分かるかなぁ?」

 

 

「やめろ、辞めてくれ!!!」

 

 

その行動に理解した木原は全力で逃げようとするが、男は片手で銃を撃ち残りの銃弾を両腕に全て撃ち込む

 

 

「痛い!!腕がぁ!」

 

 

両腕の二の腕と手の甲を撃ち抜かれ最早逃げる為の行動手段を失った木原は身体を揺らしながら何とか逃げようとする

 

 

「アハハハ!!滑稽だな!惨めだね!!

その姿が良く似合ってるぜぇ!!」

 

 

そう言うと男は、木原の背中にナイフを投げつけると見事に背中に刺さり木原は動けなくなる

 

 

「ギヤァァァァァ!!

背中!!背中にぃ!」

 

 

男は近付き背中のナイフを勢い良く抜くと木原を仰向けにすると日本刀を取り出し、木原の足首に当てる 

だが木原は気丈にも男に対し睨みを効かせる

 

 

「お前!!俺は深海棲艦との《取引》をおこなってるだぞ!!

俺を殺せばそいつらが……」

 

 

「知ってるさそんなこと」

 

 

そう言うと男は日本刀を振り下ろし木原の足を切断する

その瞬間木原は泣き叫び大声で痛みを叫ぶ

 

 

「足がぁぁぁぁ!!!足がぁぁぁぁ!!」

 

 

「ふふ、やっぱり楽しいねぇ

これは」

 

 

男は切り落とした足首を拾い上げ流れ出る血を木原にかけると中身を見せる

断面は、綺麗に切られており肉と骨がハッキリと見え絶え間なく血が木原へと流れ出ている

それに恐怖を覚え木原は震え涙を流し始め命乞いをする

 

 

「頼む……

金でも、名誉でも、地位でも

何でもやるから助けてくれ……」

 

 

男は、日本刀を片手に人差し指を手に当て考え込むがすぐに日本刀を振り上げ木原の腹部へと突き刺す

 

 

「ギヤァァァァァ!!」

 

 

「欲しいもの?あるぜ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お前の命だ」

 

 

刀を抜くと次はもう反対の足を切り落とし次は、それを徐々に太股、脹ら脛へとまるでネギを切るように輪切りにすると綺麗に切れた肉片が辺りに散らばり地面は真っ赤に染まる

そこまで、切ると男は日本刀に付いた血を地面へと流し木原の頭を掴む

 

 

「生きてる~?」

 

 

「ぁ、ぁあ」

 

 

その顔は涙と鼻水でぐちゃぐちゃになってはいるが話が出来るところを見ると生きているらしい

男はそれを確認すると血塗れの木原を車椅子に乗らせ海の崖沿いへと運んでいく

 

 

「全く~大井ちゃんがこいつを中途半端に生かすから殺すのに手間取って仕方ないわね」

 

 

その言葉を聞いた木原は、意識をハッキリとさせゆっくりと頭を向け男を見上げる

 

 

「ぉ、まぇ…まさ…か!!」

 

 

木原の言葉に、男はニヤリと頬を吊り上げながら睨み付けるように木原を見下ろす

 

 

「お前達提督を殺すのは私の役目

 

どんな奴だろうが、艦娘を無下にする奴は許さない

 

全て皆殺しにしてやるわ

 

私は正義ではない、お前達が提督がただ純粋に憎いのよ

 

 

だから、死ね 《木原提督》」

 

 

男は、車椅子を蹴飛ばし木原の車椅子は真っ直ぐ崖に進みそのまま崖からゆっくりと海へと落ちていく

木原は怯えながら目の前に迫る尖る岩に落ちていき、顔を突き刺しそのままぶらんと岩にもたれ掛かる

頭を突き刺した岩は真っ赤に染まり足の傷口から血が滴り落ち海面に落ちていった

 

 

その姿を見た男は、木原の死を確認すると振り返り服を全て脱ぐと月明かりを見ながら木陰へと消えていく

そして、一言だけ呟く

 

 

「地獄に落ちろ、グズ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、海軍刑務所の職員が出勤時に見た血痕を怪しみ後を辿るとそこには崖の岩に頭を突き刺した木原の姿が確認された

遺体は血の匂いが漂い、海猫達につつかれており白骨化している部分が多くかなり悲惨な状態だったらしい

その為か、彼が誰なのか分かるまで時間を要した

 

 

 

 




次回 

勝利

戦艦棲姫迎撃戦の後日談になります!
戦闘はほぼない完全な日常風景を書きます


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沖縄ツアー

ここからは日常の話になります
戦闘無しのオフ状態の叢雲達をご覧ください!







(ん……どこここ…)

 

 

叢雲は真っ白な天井とベッドで眼を覚ました

身体が動かない

そう思いながらも無理矢理にでも身体を動かそうとすると何か付いてるのが分かる

辺りを確認すると点滴があるのは分かる

袋には高速修復材と書かれている

 

 

「そうだ!!戦艦棲姫!!

っていてて…」

 

 

 

だが、次の瞬間起き上がるが全身に痛みが走ると同時に誰かが側に居るのが分かり眼を向けるとそこには佐渡が腕を組みベッドに寝ていた

恐らく、叢雲が起き上がるのをずっと診ていたらしくそのまま寝てしまったのだろう

その姿に微笑み時間を確認するとどうやらあれから四日はたっていたらしい

そのまま、外の風景を見ていた

少しすると、んんと言う声と同時に佐渡が目を覚まし起き上がり叢雲を見て喜びに微笑む

 

 

「おはよ、司令官」

 

 

「あぁ、おはよう叢雲

……じゃねぇ!!!」

 

 

その言葉と共に佐渡は、叢雲の頭を殴り付ける

 

 

「痛いじゃないの!!

怪我人に何するのよ!!」

 

 

「うっるせ!!お前無茶しやがって!!

このやろう……心配させんなよ!!

こいつ!!」

 

 

佐渡は、それと同時に叢雲を抱き締めるその姿に叢雲は察し背中を撫でる

 

 

「悪かったわ

でも守ったわよあんたも仲間も」

 

 

「あぁ、ありがとう

そして、お疲れ様」

 

 

すると部屋の扉が開き、古鷹と大井が入ってくる

 

 

「あら、起きてるじゃない!

叢雲平気なの!?」

 

 

「叢雲!!大丈夫!?

痛いところない!?

生きてるんだよねぇ!?」

 

 

佐渡を押し退け古鷹は叢雲に抱き付き大井はベッドに手を置きながら心配そうに全身をくまなく見る

 

 

「平気よ、心配かけたわね」

 

 

「こいつに何かされなかった!?」

 

 

「あー、頭叩かれて抱き付かれた位かな?」

 

 

それを聞いた、大井は佐渡に振り返りどこからか取り出した魚雷を佐渡の腹部へとゴリゴリと押し付ける

 

 

「ほほーう?あんたは怪我人を殴る癖があるのぉ?

ちょっと向こうで話しましょ?て い と く?」

 

 

「待って待って大井さんや

言い訳言わせて?」

 

 

「問答無用!!」

 

 

「ヒィィィィ!!」

 

 

「それは後でで良いから、佐渡状況を説明して」

 

 

いややらせたのお前じゃね?とか佐渡は思っては居るがパイプ椅子に座り直すと今回の作戦結果と現在の状況を話始める

 

 

叢雲達が気絶した後、沖縄の海岸に待機していた医療班に運ばれ総出で艦娘達の治療にあたり

特に叢雲はケルベロスとユリを相手取り無茶をしていた為かなり危険な状態だったらしい

他の艦娘達は高速修復材を使用したり、入渠したりで二日位で皆完治しそれぞれ自分の鎮守府へと帰っていった

 

 

沖縄は叢雲達が戦艦棲姫ユリと艤装ケルベロスが死守し最後に連合艦隊を恐れをなし逃げ出したと沖縄、宮古島、多良間島に伝えられ例の監視者と南方棲戦姫クイーンに関しては伏せられていた

 

 

戦艦棲姫ユリの艤装ケルベロスは、監視者と南方棲戦姫クイーンが連れ去り同行を探ってはいるもののどこに消えたかは分からず仕舞いらしい

恐らく深海を通り追っ手を逃れたのかもしれないと予測されていた

 

 

今回の作戦ミスの多くは元帥に有り、その否を認め全ての提督に謝罪をしたがあんな作戦を引かれているとは誰も予想できては居なかった為誰でも同じようになっていたと理解し今回は不問となっていた

 

 

 

だが、今回収穫もあった

歴戦の南方棲戦姫との接触識別名クイーン

そして、クイーン、ユリ達を従え未だに多くの謎に包まれている

始元によって建造された深海棲艦 監視者

深海棲艦を操る最も危険な存在であり、大本営はこの監視者だけでも同行を探るように呼び掛け必ず撃沈では無く捕縛命令が出ていた

彼女はこの戦争を終わらせる切り札になると感じていた

 

 

 

 

「成る程ね

つまり、私達は」

 

 

「そう、一応の所は奴等に勝ったってことになるな」

 

 

話を聞き終わった叢雲は再びベットにもたれ掛かると両腕を伸ばしながらのんびりと脱力する

 

 

「なら良かったわ

 

良くもまぁあれに勝てたわね私達」

 

 

叢雲はそう呟くとユリとケルベロスとの戦闘を思い出すそれと同時に当てられた砲弾の痛みや苦痛を思い出しベットの布団を握り締める

 

 

 

 

 

 





次回  

休暇

次回からゆるーいお話になっていきます
つかの間の休息を楽しむ彼女達見守ってあげてくださいませ!


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沖縄ツアー ニ

「あ、それと元帥から休暇を貰ったぞ」

 

 

「「「はぁ?(はい?)」」」

 

 

佐渡は、両手を合わせ言うと三人は首を傾げる

 

 

「今回の作戦でのMVP

長門

阿武隈

叢雲

達の鎮守府には今回の作戦報酬とは別に何かを元帥から貰えるのだが悩んだ結果三日間の沖縄ツアーを貰った」

 

 

そう言うと、佐渡はえっへんと言うほどの態度を取ると大井は肩を震わせ佐渡に掴みかかる

 

 

「提督!!何でそんなもの貰ったのですか!!

そんなことより艤装の新調とか!!」

 

 

「いや、今特に欲しいのは無いし」

 

 

「じゃ、じゃあ!機材とか!!」

 

 

「……今欲しいものは無いかな?」

 

 

「なら!新しい艦娘とか!!」

 

 

「おいおい、うちを忘れたのか?

そんなの貰えるわけないだろ?」

 

 

「………はぁ…」

 

 

大井は頭を抱えながら大きく溜め息を付くとその頭を佐渡は撫でる

 

 

「折角沖縄まで来たんだ、少しは羽を伸ばそうじゃないか?

それにお前達も疲れただろ?

たまには貰おうじゃないかな休暇をさ」

 

 

佐渡はニカッと笑うと大井はその手を払いのけ叢雲達と顔を見合せ溜め息をつく

 

 

「そうね、どうせだからゆっくりさせて貰おうかしらね」

 

 

「叢雲が治ったらね?」

 

 

「あら?私はもう大丈夫よ?

この位…」

 

 

叢雲はそう言うと、ベッドからゆっくりと立ち上がると点滴を持ちながら準備運動を開始する

 

 

「お、おい、叢雲大丈夫なのか?」

 

 

「こんなの平気よ

少し痛むけどすぐに馴れるわ

それに」

 

 

叢雲は窓から沖縄の景色を見ながら、満天の青空を見上げながら窓際に背を預け佐渡達へ向き直る

 

 

「休暇何でしょ?

折角貰ったんだから楽しませなさいよ!

美味しい物、珍しい物、小笠原では見れないものを見させてもらうわよ!!」

 

 

その姿に安心した佐渡はパイプ椅子から立ち上がり近くにあったスポーツドリンクを取ると叢雲に投げ付ける

 

 

「それでこそ叢雲だな

だが、ちょっと待ってろ先生呼んでくる」

 

 

「その必要はありませんよ」

 

 

その声の主を見るため全員が振り返るとその先に居たのは沖縄鎮守府提督 石澤と秘書艦阿武隈だった

 

 

「阿武隈さん!!

治ったのね!!良かったわ!!」

 

 

「叢雲さんこそ、良くぞご無事で!!

本当に……良かったです

一時はどうなるかと……」

 

 

部屋に入るなり、阿武隈は叢雲に抱き付き心配していると叢雲は阿武隈の頭を優しく撫でている

その後ろから石澤が歩いてくると佐渡と握手を交わす

 

 

「叢雲さん目覚めたのですね

良かったです」

 

 

「えぇ、本当に」

 

 

「阿武隈、ちょっと来い」

 

 

「あ、はーい!」

 

 

阿武隈は石澤に言われ叢雲から離れると石澤の隣に並び同時に佐渡達にお辞儀をする

 

 

「この度!我々の鎮守府!そして、沖縄を守って頂きありがとうございます!!

貴方達のおかげで無事戦艦棲姫達からこの沖縄を守れました

この恩は一生忘れません!!本当にありがとうございました!!」

 

 

「ありがとうございました!!

沖縄鎮守府艦娘一同を代表し、お礼を申し上げます

本当にありがとうございました!!

私達の居場所を守ってくれて……本当に……」

 

 

阿武隈は涙ぐみながら話し、石澤も少し目に涙を溜めながら話すと佐渡が肩を叩き叢雲は溜め息をつく

 

 

「石澤大尉、顔を上げてください

我々は至極普通の事をしたまでです

お礼なんていりませんよ」

 

 

「だ、だが……」

 

 

「そうよ、私達は兵器として軍人として当然の事をしたのよ

一々、そう言うのは要らないわ」

 

 

「で、でも……」

 

 

煮え切らない二人を見ると、佐渡は思い付き叢雲達を集めヒソヒソと会議を始める

 

 

「あ、それ良いわね」

 

 

「だろ?」

 

 

「そうですね!私も賛成です!」

 

 

「へー?提督の癖に良いこと思い付くじゃない?」

 

 

「提督の癖は余計だ!」

 

 

石澤と阿武隈は、置いてきぼりをくらい二人顔を見合せていると佐渡が振り返りごほんと喉をならす

 

 

「では、その恩今返して貰いましょうか?」

 

 

「!

あ、あぁ!何でも言ってくれ!!

艦娘でも資材でも……」

 

 

「俺達にこの沖縄を案内してくれませんか?」

 

 

「………へ?」

 

 

予想外の答えに石澤は、拍子抜けをしてしまっていると叢雲達がクスクスと笑っている

 

 

「私達、休暇中なの

それで沖縄を観光したいんだけど」

 

 

「私達、沖縄に来たことがありませんからどこをどう回れば良いのか分からないです」

 

 

「でも、観光したいんだけど観光客とかの予約はしてないから分からないんですよねぇ」

 

 

「と、言うわけで沖縄鎮守府の方々に沖縄を案内してほしいのです

どうせなら地元に住んでる方々に案内された方が良いですし

仮はこれで無しにしましょう!」

 

 

「だ、だが…」

 

 

石澤が狼狽えていると阿武隈が隣で微笑んでいると溜め息を吐き頭に被っている帽子を深く被りありがとうと呟くと帽子を取り息を吸う

 

 

「…そんな事で良ければ幾らでも!!

我々、沖縄鎮守府総出で貴方達小笠原鎮守府の方々をおもてなししましょう!!」

 

 

「やったー!」

 

 

「阿武隈さん!案内よろしくお願いします!!」

 

 

「よろしくお願いします!」

 

 

「まっかせて!!色々案内して退屈なんてさせないんだから!!」

 

 

阿武隈を含め叢雲達が楽しく話しており今後どこにいくとかを計画していると石澤が佐渡に近付く

 

 

「本当に良かったのか?

こんなので

艦娘でも良かったんだぞ?」

 

 

「えぇ、頑張ったのはこいつらです

一時を休息をね?」

 

 

佐渡が言うと石澤は、微笑み四人の姿を見守っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「所でここ病院じゃなかったでしたっけ?」

 

 

「「あ…」」

 

 

石澤と阿武隈が振り返るとそこには、カルテを持った看護師がひきつった顔で笑っておりドアにカルテを叩いていた

 

 

「病院では、お 静 か に!!

石 澤 さ ん?と阿 武 隈 ちゃん?」

 

 

「「ごめんなさい……」」

 

この後、石澤と阿武隈はしっぽりと看護師に部屋に正座させられて怒られており阿武隈が必死に弁解しているのを四人は笑いを堪えながら見ていた

 

 

 

 





次回

小笠原鎮守府休暇ツアー

IN 沖縄


次回から阿武隈達と叢雲達だけの沖縄ツアーになります!
だが、作者は沖縄に行ったこと無いので沖縄にお住みの方々が見ておりここおかしいとかあったらすいません…







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沖縄ツアー 三

ここから提督達の出番が一気に減ります
ご了承を!!

今回は叢雲達の食べ歩きツアーになります



 

「へぇ?これ美味しいわね?

具沢山で様々な味を楽しめて」

 

 

「でしょでしょ!私これ大好きなのよ!!

お肉は美味しいし野菜も取れるし!」

 

 

「あ、本当に美味しいですねこれ」

 

 

「具材沢山だから叢雲さんも古鷹さんも喜ぶと思ったけど良かった!」

 

 

現在、沖縄にて古鷹、叢雲は共に行動しその案内役として瑞鶴、阿武隈が同伴していた

その理由と言うのも、瑞鶴は沖縄の食べ物に詳しく阿武隈は景色等に詳しいからと言う理由だった

 

 

叢雲の状態は安定しており本当はニ、三日は安静にしてほしかったのだが叢雲本人が「早く出掛けたいの何か無いの?」と医師に詰めより液状の飲む高速修復材を出してもらい朝、昼、晩とキチンと飲むことを約束に今回ツアーに参加した

 

 

肝心の佐渡は「用があるからお前らだけで楽しみな、後夜まで帰ってくるなよ」と言われ沖縄鎮守府で何か用意しているらしい

 

 

大井に関しては、曙、潮、朧、那智が連れていき「大井さんの案内は私達がやるわ!!」と息巻きどこかに連れていってしまった

大井も満更ではなく「夜に落ち合いましょ?」と言い三人の駆逐艦に手を引っ張られその同伴として那智が着いていっていた

 

 

明日は明日で、また人を変えて小笠原の三人をもてなすらしいのだが三人はそれが楽しみで仕方無い様子だ

 

 

「タコスって言うのこれ?」

 

 

「そうよ!トウモロコシの生地で出来たメキシコの料理何だけどね……」

 

 

瑞鶴は味が気に入った叢雲に嬉しそうにタコスの事を詳しく説明していると叢雲も食い入るようにその話を聞いてはいるがタコスを食べる手をやめてはいない

 

 

「あはは、相変わらず食べるなぁ叢雲は……」

 

 

「あ、古鷹さんついてますよ?」

 

 

「え?どこ?」

 

 

阿武隈は、古鷹の口元に付いたサルサソースを取ると自分の口に運び舐めるのだがその瞬間気付き顔が熱くなる

 

 

「あ、ありがとうございます!

どうかしましたか?阿武隈さん?」

 

 

「な、ななな、何でもないです!!」

 

 

「よーし!!」

 

 

阿武隈が突然赤くなっているのを気にしていた古鷹だが突然瑞鶴が立ち上がりタコスを一気に食べきるが口元にトマトとサルサソースが付いているが気にしてないのか気付いてないらしい

 

 

「叢雲!気に入った!!今日は食べまくるわよ!!

付いてきなさい!!」

 

 

「良いわよ!!この沖縄名物今日一日で食いきってやるわ!!」

 

 

瑞鶴と叢雲を握手をするとニカッと二人して笑っていると古鷹と阿武隈は苦笑いを浮かべて溜め息をつく

 

(やっぱりこうなるのか……)

 

 

「ほら!!あんた達ボケッとしてない!!

まだ食べてないもの一杯あるんだから!ちゃっちゃと食べる!!」

 

 

「古鷹行くわよ!!今日は食べまくるんだからね!!

あぁ!!楽しみだわ!!」

 

 

二人は意気揚々としながら、古鷹達を置いてスタスタと歩いていってしまう

 

 

「ちょ、ちょっと!!」

 

 

「二人とも早いよ!?」

 

 

古鷹と阿武隈は急いで食べ終わり、ゴミ箱に捨て律儀に店のお兄さんに「ご馳走さまです!美味しかったです!!」と言うとお兄さんは「ありがとう英雄さん」と言われたのだが古鷹はそんなこと気にしてる余裕がないほどに瑞鶴と叢雲が早く阿武隈と後を追いかける

 

 

 

「「二人とも待って(よ)ー!!」」

 

 

 

 

 




次回

大井&駆逐艦の水族館ツアー


今回の話は叢雲、大井、佐渡の交互にやっていきます
彼等の一日の休暇ご覧ください





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沖縄ツアー 四

今回は大井の戦艦棲姫と対峙した組の話になります

龍驤さんは、残念ながらお仕事です(後半に出てきます)







「で、どこにいくの?」

 

 

「秘密」

 

 

「秘密よ!」

 

 

「秘密…です」

 

 

大井は、朧、曙、潮の三人に連れられながら五人で道路を歩いていた

実は、大井とこの四人は叢雲が意識が無い間に仲良くなっており沖縄鎮守府でも良く話していた

戦闘を共にしたと言うことも有り、気絶した大井の世話も北上と共にしていたらしく叢雲が意識を取り戻すまで一緒に行動していた

 

 

「すまないな、大井

叢雲達と離れ離れにしてしまって……」

 

 

「いえ、大丈夫ですよ!

どうせ叢雲と一緒に行くと食べ歩きになってたと思いますし……

古鷹さん…大丈夫かしら…」

 

 

「「「着いた!!」」」

 

 

 

苦笑いをしながら話すと那智は察したのか大井の肩を叩きそうかと呟くと前を歩いていた三人が叫びだし二人は目の前の建物を見る

そこには水族館と書かれており、大井は首を傾げる

 

 

「水族館?」

 

 

「……成る程な」

 

 

「そうよ!!大井さんの所にはないでしょ!こう言うの!」

 

 

「私達は基本的に海には居るけど、海上でしょ?

だから、大井さんには海の中も見てほしいの」

 

 

「折角ですから海の中の光景を楽しんで行ってください…!」

 

 

大井は三人に手を引っ張られ、転びそうになりながらも水族館の入り口へと誘われていく

 

 

「ちょ、ちょっと!」

 

 

水族館の入り口には、職員が居るが曙がその職員に向かいウィンクをすると職員は微笑みながら「ようこそ」と言い中を通してくれる

 

 

「え!お金は!?」

 

 

「先に払ってあるから平気」

 

 

「ほらほら!行くわよ!!」

 

 

「行きましょ…!」

 

 

 

曙が手をぐいぐい引っ張り朧が背中を押し潮がもう片手を引っ張っていくと那智が立ち止まり職員にお金を払おうとする

 

 

「すまない、五人で……」

 

 

「良いんですよ那智さん

館長からの話で特別に英雄達は無料にしろと言われているんです」

 

 

「何だと?提督か?」

 

 

「いえ、我々の島を救ってくれた英雄からはお金は取れないとの事です」

 

 

職員は引っ張られている大井の後ろ姿を見ながら微笑みながら話す

 

 

「あんな少女が化け物と戦いこの島を沖縄を守って頂いたんです

これぐらいはしないとな、との事です

那智さん達も今日は特別何ですよ?」

 

 

「……すまないな、ではお言葉に甘えさせて頂こう

おい!あまり走るんじゃない!!」

 

 

那智は職員と話を交わし三人に連れていかれた大井の後を追っていくと後ろで職員は深々とお辞儀をすると呟く

 

 

「本当に…ありがとうございます

我々の島を救って頂き

英雄様方…」

 

 

「すいません、よろしいですか?」

 

 

「あ、はい、水族館へようこそ!」

 

 

そんなことを大井は知らずに水族館へと入っていく

周りの視線を集めながら

 

 

 

 

 

 




次回  

佐渡と石澤の執務室


今回はここまでです
次回、本格的に水族館を四人で楽しむ姿を書きたいと思います!


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沖縄ツアー 五

今回は提督二人の話になります

男としての話がメインになります
あれですよね、現実にあったらこんな感じですよね…








「良かったのかい?三人と出掛けなくて」

 

 

「えぇ、あいつらも俺が居ない方が羽を伸ばせると思いますし」

 

 

佐渡と石澤は、沖縄鎮守府の机に向かい執務を行っていた

と言うのも、ほとんど石澤の執務を佐渡が手伝っていると言う感じであるが

だが、石澤は突然お茶を入れだし佐渡へと差し出す

 

 

「うん、辞めよう

流石に君に手伝わせるのはどうかと思うしね

はいお茶」

 

 

「あ、ありがとうございます?」

 

 

佐渡はお茶を手渡され手を止めると石澤は完全にだらけきりお茶を飲みだしており佐渡もそれに続いてお茶を飲み始める

 

 

「そうだ、石澤大尉」

 

 

「んー、あぁ大尉辞めて

どうせオフ見たいな物だからそれに

君とは腹を割って話したいし?」

 

 

「は、はぁ」

 

 

「所で聞きたいのだが、艦娘をどう思う?」

 

 

「えっと……俺は別に普通の女の子だと……」

 

 

「ちがーう!!そうじゃなくて、男としての目線で聞いてるのさ……」

 

 

「………はい?」

 

 

石澤の変化に佐渡は驚いていると、机に腕を立てどこかの黒眼鏡をかけたおっさんの様な姿をする

 

 

「……君、性欲はどう発散してる?」

 

 

「!?」

 

 

「嫌さ、この職業やってると正直…ほら……来るじゃん?

色々とさ?しかも女の子だよ?分かるだろ?男ならさ…」

 

 

佐渡は察すると、同じ様なポーズを取りながら石澤との話に望む

 

 

「……分かります、三人しか居ませんが正直あそこが…」

 

 

「だろ?うちは更にいるしから、結構無防備な子も多くてね。

こう、襲いたくてね……」

 

 

「分かります分かります

でも…」

 

 

「やっぱり」

 

 

「「憲兵さんが恐いよねぇ……」」

 

 

「……くだらないことで何意気投合してるんですか

仕事してください」

 

 

いつの間にか入ってきていた妙高に冷たい視線を送られており二人はハッと気付く

 

 

「おう、妙高。

お前も混ざる?男談義?」

 

 

「私は女です

阿武隈さんに言い付けますよ?」

 

 

「ゴメンナサイ」

 

 

妙高は、石澤に書類を手渡すと呆れる様に溜め息を付きながら佐渡を見ると微笑みを返す

佐渡も軽くお辞儀をすると妙高が扉を開けようとする

 

 

 

「それと、提督お客様です」

 

 

「ん?誰だい?」

 

 

妙高が扉を開けると廊下から腰を曲げスーパーの袋を持った80代程のお婆ちゃんを連れてくる

 

 

「やぁ、石澤さんこんにちは」

 

 

「あれ?佐藤さん!!どうしたんですか?

今椅子を持ってきますね!!」

 

 

 

「いいのいいの、今日はこれを持ってきただけだから」

 

 

 

石澤は立ち上がり佐藤へと椅子を持ってきてゆっくりと座らせようとするが佐藤は手を降りスーパーの袋を石澤へと渡す

 

 

「おぉ!これって!!」

 

 

「そうじゃよ、家で作ったミミガーとクーブイリチーじゃよ

どうか皆で食べて」

 

 

「ありがとう!!今度何か持っていくね!」

 

 

石澤は、スーパーの袋に入ったミミガーのタッパーとクーブイリチーを見るとそれを妙高に渡し嬉しそうにしており佐渡はその光景を見て微笑ましく思っていた

 

 

 

「良いんじゃよ、作り過ぎただけだからねぇ

それに今日はもう一つ用があったからね」

 

 

「用?」

 

 

佐藤は、ゆっくりと佐渡へと近付いていき、佐渡もそれに気付き椅子から立ち上がり佐藤へと近付いていく

 

 

「えっと、俺ですか?」

 

 

「貴方が佐渡さん、なのかい?」

 

 

「はい、小笠原鎮守府提督 佐渡少尉であります!」

 

 

佐渡は、敬礼をすると佐藤はそうかそうかと言うとゆっくりと頭を下げる

 

 

「この度は、沖縄を救って頂き誠にありがとうございました

本当に……本当に…どうお礼を言えば良いのか……」

 

 

「良いんですよ、それにその言葉は俺にじゃなくて叢雲と大井と古鷹に言ってあげてください

俺は、所詮ここで指揮を取っていただけですから……」

 

 

「いや、彼女達も素晴らしいですが貴方も素晴らしい指揮でしたどうか、このばばぁと握手をさせてください…」

 

 

佐渡は照れ臭くなりながらも、佐藤の手を取り握手を交わすと佐藤は嬉しそうにしながらありがとうと連呼している

 

 

「このばばぁが生きてる間に英雄様と会えるなんて嬉しい限りじゃ……」

 

 

だが、佐渡はその「英雄」と言う言葉に引っ掛かり石澤の方を向く

 

 

「……えっと?英雄って何ですか?

石澤さん?」

 

 

「あー……

えっと、実はね?」

 

 

石澤は歯切れが悪いように話すが妙高に腰を叩かれそっぽを向きながら答える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「君達、小笠原鎮守府の戦闘映像が間違って避難所のテレビ映像に流れてしまってね?

小笠原鎮守府全員がこの沖縄と多良間島、宮古島で英雄やヒーローと呼ばれているんだ……」

 

 

 

「…………………は?」

 

 

その発言に、佐渡は言葉を失った

 

 

 

 




次回 

沖縄食べ歩きツアー中編

誰にも間違いはあるよね!!
間違いで許されるのかこれ()
あ、黒眼鏡のおっさんネタがわかる人凄いと思いますよ?





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沖縄ツアー 六

(友人)なぁ、お前さんの小説のコメントログインしないと書けなくね?

( ´°ω°)←作者
え?何それ?

(友人)はぁ……
設定見ろよアホ

( ´°ω°)なぁにこれぇ?←情弱作者


馬鹿でゴメンナサイ…


「はぁ!!何それ!!」

 

 

叢雲は、机を叩くと一緒に食べている瑞鶴に詰め寄る

 

 

「だから、あんた達の戦闘映像流れててこの沖縄ではあんた達小笠原鎮守府の艦娘 叢雲 古鷹 大井は英雄扱いされてるのよ」

 

 

「あぁ~だから、タコスのお兄さんに英雄さんって言われたんだ!」

 

 

「らしいです……

何かすいません…」

 

 

それを聞いた叢雲は再び座り込み頭を抱える

 

 

「成る程ね、だからこんなに人が居るのね」

 

 

叢雲達が入ったお店には何人もお客さんが入っており叢雲達を見ながらひそひそと話をしている

 

 

「変だと思ったのよ、何か妙に優しいし私達の事知ってる見たいだしオススメは美味しいけど…」

 

 

「ま、そう言うことよ諦めなさい」

 

 

「すいません!!」

 

 

四人が食べていると、女子高校生位の二人組から話し掛けられる

 

 

「どうかしたの?」

 

 

「あ、あの!艦娘の瑞鶴さん 阿武隈さん 叢雲さん 古鷹さんですよね?」

 

 

「そうよ?どうかしたの?」

 

 

それを聞いた女子高校生の二人は「言いなよ!!」「えー?」と言っており四人は首を傾げる

 

 

「い、一緒に写真撮っても良いですか!?」

 

 

「そんなこと?構わないわよ?

古鷹達は?」

 

 

「良いわよ?」

 

 

「良いですよ?」

 

 

「私的には全然オッケーよ?」

 

 

「ありがとうございます!!」

 

 

二人の女子高校生は四人と一緒に写真を撮るとお辞儀をしてお礼を言うとそそくさとその場を後にする

 

 

「あんた達人気者ね?」

 

 

「原因さっき言ったわよね貴女……」

 

 

「でも、本当にあんた達の凄かったわよ?

私も見たけどさあんな化け物相手に三人で最初戦ってたんでしょ?

本当に駆逐艦?」

 

 

「駆逐艦よ、ただのそこら辺に居るね」

 

 

「ふーん……まぁいっか!

とりあえず!!食べましょ!!」

 

 

 

 

瑞鶴は、そう言うと沖縄そばをすすりスープを飲み干す

叢雲も続けてスープを飲み干し二人同時に皿を机に叩きつける

 

 

「にしても、本当に食べ物は美味しいわね」

 

 

「で、どうだった?沖縄そば?」

 

 

「さっこうね!!豚骨ベースのスープに良く絡む麺!!それにあのデカくて肉厚のチャーシュー!!

美味しいわ!」

 

 

「やっぱりあんたとは気が合うわ!!

良し!次行くわよ!!」

 

 

「ちょっと!!」

 

 

「二人とも待ってよ!!」

 

 

 

二人は立ち上がり、次の店に行こうとするが古鷹と阿武隈を見るとまだ食べ終わってないのを確認し再び座ると二人は「良かった」と呟くが

 

 

「すいませーん!」

 

 

「沖縄そば二つ!」

 

 

「「まだ食べるの!?」」

 

 

二人の食欲に付いていけるのか、かなり不安を募らせながらゆっくりと阿武隈と古鷹は食べ進めて行く

 

 

 

 

 

 

 

 




次回

大井&駆逐艦の水族館ツアー 中編

今回からしっかりと内容を書いていきますので許してください()


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沖縄ツアー 七

大井と駆逐艦と那智さんの絡みをご覧くださいませ!
キャラ崩壊起こしていたらすいません…






大井達は水族館に入ると、まず入り口の所にある水槽に目がいく

 

 

「ここは?」

 

 

「えっと淡水魚のコーナーですね…」

 

 

中はそこそこ暗いのだが水槽があるところは光で照らされており様々な魚達が水槽の中を自由に泳いでおり大井はその光景に見とれていた

 

 

「死んだ魚や、釣れた魚とかは見たことあるけど水槽の中に居るのは初めてみるわね……」

 

 

「そっちには水族館とかは無いのか?」

 

 

「えぇ……島だけど人は私達しか居ないのよ

だから水族館とかは初めて来るわ…」

 

 

大井は、水槽の中を泳ぐ魚を見ながら手で水槽の壁を触ると魚はビックリし急に泳ぎ始め逃げてしまう

 

 

「あ、ごめんなさい!」

 

 

その姿を見ていた曙達は再び大井を引っ張り出すと奥へ奥へと進んでいく

 

 

「ちょ、ちょっともう少し!見させてよ!」

 

 

「良いから良いから!ここからが名物よ!!

那智さん大井さんの目を隠して!!」

 

 

「良いだろう!」

 

 

「ちょ!ちょっと!!」

 

 

 

曙に言われた那智はその先にあるものを理解すると大井の目を両手で覆い隠すと大井は狼狽えながらゆっくりと歩いていく

そして、しばらく歩いていると引っ張っている手が止まり大井は歩みを止める首を傾げる

 

 

「大井さん!準備は良い!?」

 

 

「え?えぇ?」

 

 

「まだ、目を瞑っててね?」

 

 

「那智さん…手を放してください…?」

 

 

「やはりここか、承知した」

 

 

大井は言われたとおりに目を瞑って居るが少しすると三人の駆逐艦が一斉に

 

 

「では!!ご覧ください!!」

 

 

「目を開けてください、大井さん」

 

 

「目を開けても大丈夫ですよ…?」

 

 

三人に言われ大井はゆっくりと目を開けるが急な光に眩しく少し瞬きをするが目の前の光景に驚き見とれてしまう

 

 

「…………綺麗…」

 

 

そこは真っ青な巨大な水槽になっており多くの魚が泳ぎ様々な生態系が作られていた

まるで、今その海の中に居るような光景に大井は驚き、そして感動していた

 

 

「凄いでしょ!うちの名物なのよ!!」

 

 

「ここに連れてきたかったの

大井さんこう言うところ来たことないって言ってたし」

 

 

「どうですか…?」

 

 

「最高よ……ありがとう…」

 

 

大井はゆっくりと巨大な水槽に歩いていきその光景を目にする

上を向くと海面が光に照され綺麗に反射しており、下を向けば石に珊瑚が生えておりその回りを魚達が泳いでいる

 

 

「本当に……綺麗…」

 

 

「お前達が守ってくれたおかげでここにも来れたのだ

本当にありがとう」

 

 

「これは私達からのお礼よ

こんなことしか出来ないけど」

 

 

「大井さんが喜んで貰って良かった」

 

 

「すみませんこんなことしか出来なくて…」

 

 

「充分よ……全然…」

 

 

四人からのお礼の言葉を聞きながらその水槽に夢中になっていると四人は突然驚き大井の心配をする

 

 

「ちょっと!大井さん!?」

 

 

「どうかしたのか!?何か悪いことでも思い出してしまったか!?」

 

 

「目に何か入ったの!?どうしたの!?」

 

 

「大丈夫ですか…!大井さん…?」

 

 

「え……どうかしたの?」

 

 

大井は四人に振り返ると潮にハンカチを渡される

 

 

「涙…拭いてください」

 

 

「……え?」

 

 

潮に言われ初めて気付いた自分が泣いていることを、木原の所で今までどんなに努力しても頑張っても報われないと思って仕事をしてきた

 

 

自分が頑張るのは当たり前の事だと思っていた彼女にとってはかなり嬉しいものでありいつの間にか泣いていた

潮から貰ったハンカチで涙を拭きながらゆっくりと説明する

 

 

「大丈…夫よ…嬉しくて……

こんなこと……されたこと…無かった…から…」

 

 

その言葉を聞いた四人は顔を合わせ笑い合うと再び大井の手を引っ張り背中を押し始める

 

 

「なら!今日は色々と楽しみましょ!!」

 

 

「うん!色々と教えてあげるね!」

 

 

「行きましょう…!大井さん!」

 

 

「さぁ!休暇を楽しもうじゃないか!大井!」

 

 

そう言われると、大井は涙を拭ききり四人に連れられるままどんどん奥へと進んでいく

 

 

「じゃあ!お願いするわね!

皆!!」

 

 

「「「「任せなさい(て)!」」」」

 

 

 

 

 

 

 




次回

佐渡と石澤、提督雑談部屋


少しお涙頂戴が含まれましたが大井は一生懸命に生きています
それこそ過去を乗り越えようと
次回は、少し真面目な話が含まれます


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沖縄ツアー 八

今回は提督達のちょっと真面目な話です
男談義はほんの少しだけ…


「はぁ~……」

 

 

佐渡は頭を抱えながら溜め息をついていた、先程の佐藤さんは握手と抱擁をすると妙高さんに連れていかれ自宅へと帰っていった

 

 

「何か、すまないね佐渡君」

 

 

「一体全体何でそんなことに……

機密保護ぇ…」

 

 

「それがね……君には真実を伝えるが大元帥がそれをやったらしいんだそれを」

 

 

「あんのクソじじぃか!!!」

 

 

石澤から教えて貰った真実に怒りを覚え机を殴ろうとするが自分のではないため何とか我慢する

 

 

「……どうやら今回の作戦ミスでの混乱を避ける為の処置だったらしい仕方ない言ったら仕方ないね

ちょっと真面目な話をしようか」

 

 

「…はい、私も聞きたいことがあります

戦艦棲姫ユリと艤装ケルベロス達のことを」

 

 

佐渡に言われた石澤は、やはりかと呟くと再びお茶を入れ二人で向かい合うように座る

 

 

「戦艦棲姫ユリはあの後大本営の発表で新たに確認された歴戦種と決定された艤装ケルベロスもだ

今のところ彼女達に動きはない」

 

 

「やはりそうですか……

奴等が逃げた先とはもしかして」

 

 

「あぁ、間違いない

あの後すぐに連合艦隊の空母達が追跡したが奴等は

《飛行場姫の縄張り》を経由して逃げた

間違いなくな」

 

 

飛行場姫の縄張り

歴戦種の中でも唯一どの海域でも確認されない姫の一人である彼女は太平洋のどこかの島に拠点を築いているらしく太平洋全域の海域にはかなりの数の深海棲艦が配備されている

何でも対空母専門艦隊や戦艦専用艦隊がうじゃうじゃと居るらしく一定以上近付くとこちらに向かってくるらしい危険な海域の事だ

 

 

「やはり……

奴等は」   

 

 

「間違いなく繋がっている

でなければ奴等があそこを通れるとは思えん

それに加え今回の収穫である

監視者だが彼女の艦種は特殊空母として断定された

 

特殊空母 監視者それが奴の正式名称だ」

 

 

 

それを聞いた佐渡は溜め息混じりにお茶をすするとゆっくりと背中を椅子に預ける

 

 

 

「特殊空母 監視者……

またとんでもないのが出てきましたね…」

 

 

「全くだ、だがこの戦争の終わりが見えたのはデカイ

何とかして監視者を捕まえこの戦争を終わらせなくてはな……

そして、最終決戦の場所が大本営から発表された

 

 

「どこですか?」

 

 

石澤は一息付きお茶をぐいっと飲みきると深呼吸をするとゆっくりと話し出す

 

 

「…アメリカ合衆国ハワイ諸島

ハワイ島だ

五年前に歴戦種 南方棲戦姫クイーン に落とされ

今まで奪還出来ていない島だ

そして、奴等の航路が大体の予測地点らしい」

 

 

「……成る程」

 

 

ハワイ島

五年前突如現れた、歴戦種南方棲戦姫によって落とされた初の島国

当時、そこにはアイオワ、ローマ等の戦艦艦娘達と提督が居たのだが見事に完敗

提督と艦娘は殺され深海棲艦に占拠され続けている場所だ

 

 

「大本営の発表では、ここを攻めるとき

それは最後の決戦になることが予想されるらしい…」

 

 

「……」

 

 

石澤は言い終わると大きく溜め息を付くと、佐渡が考え込んでいるのを見ると戸棚のお菓子を取り出し差し出す

 

 

「まぁ、今日はこれ以上はよそう

どうだい?沖縄のお菓子でも食べようじゃないか?」

 

 

「これは?」

 

 

「くんぺんさ、まぁ食べてみなよ」

 

 

佐渡は渡されたくんぺんを頬張ると口の中に広がるピーナッツの香ばしさが広がる

 

 

「美味しいですね!これ!」

 

 

「だろう?では、さっき妙高に邪魔されたが……続けようではないか

男談義を…」

 

 

「……良いでしょう

俺も同じ職場の人と話してみたかったんですよ…」

 

 

佐渡は、滅多に無い艦娘達が居ない男同士だけの会話を楽しんでいた

それこそ、仕事柄人と会うことすら少ない彼にとっては中々に貴重な体験でもある

 

 

「所で、駆逐艦は好き?」

 

 

「……返答に困りますな…それ…」

 

 

 

 

 

 




次回

沖縄食べ歩きツアー 後編

次で叢雲達の話は終わりです! 
ほとんど瑞鶴と叢雲が食べている感じですけどね!!




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沖縄ツアー 九

 

今回は叢雲と瑞鶴達のお話です
少し瑞鶴のお話があります





「いやー…食べた食べた!!」

 

 

「美味しいわね!沖縄の料理も!!」

 

 

辺りはすっかり夕暮れになり電灯が光始めていた頃

叢雲と瑞鶴は、満足しながら沖縄鎮守府に帰路に着いていたその後ろで阿武隈はお腹を支えておりその背中を古鷹が苦笑いしながら擦っていた

 

 

 

「どんだけ食べるの……この二人…」

 

 

「えっと、タコス、ヤギ汁、ゴーヤチャンプルー、ラフテー、ソーキそば、沖縄ソバ、ハンバーガー、イラブー汁、豚飯、沖縄焼きそば、ステーキ……」

 

 

古鷹が今日食べたメニューを思い出していると阿武隈は思いだし吐きそうになる

 

 

 

「あ、叢雲!〆にあそこの名護すば食べたい?」

 

 

「何それ?」

 

 

「あっさりとしたソバの事よ」

 

 

「良いわねぇ!!」

 

 

「いい加減にしてください!!!

食べ過ぎです!!」

 

 

阿武隈が店に入ろうとする二人を制止すると二人は不服そうな顔をして仕方無く帰路に向かいだし古鷹は「あはは…」と苦笑いをしながら阿武隈の背中を擦っている

 

 

「今からある場所に行くんですからね!!」

 

 

「はいはい、分かってるわよ阿武隈

あそこでしょ?」

 

 

「?

どこ行くの?瑞鶴?」

 

 

「秘密よ、食べ物ではないわ」

 

 

瑞鶴が阿武隈の代わりに先導していくと歩道からズレしばらく山道を歩いていく

道はほとんど獣道見たいになってはいるが所々木々が切られており

足下以外は結構通りやすくなっていた

 

 

「どこ行くのよ?こんなところ通って…」

 

 

「ひーみーつ!私と阿武隈と提督だけが知っているね」

 

 

しばらく歩くと開けた場所に出ると目の前の光景に驚き感動する

 

 

「へー?綺麗じゃない?」

 

 

「凄い…!綺麗です!!」

 

 

二人は感動している光景は、太陽が水平線に沈みかけており海面がそれに反響しており島が一望出来る物だった

 

 

「……叢雲、古鷹

改めてお礼を言うわ…

ありがとう、この島を皆を守ってくれて

阿武隈もね」

 

 

瑞鶴は、近くの椅子に座ると続けて叢雲達も椅子に座り光景を眺めている

 

 

「良いのよ、私達は私達のやりたいことをやっただけなんだから」

 

 

「はい、私達は当然の事をやったまでです」

 

 

「それでもよ。

それでも…本当にありがとう…

私達連合艦隊が着くまであの化け物を足留めしてくれて……」

 

 

先程とは違う態度の瑞鶴に疑問に思っていると瑞鶴が話し出す

 

 

「私ね実は最初、沖縄鎮守府所属じゃなかったのよ」

 

 

「え?」

 

 

その言葉に驚いていると阿武隈が続けて言う

 

 

「実は、瑞鶴さんの鎮守府と艦娘は深海棲艦達によって壊滅してしまったんです

それこそ、彼女一人を残して」

 

 

「私は、仲間に何とか逃がしてもらって偶然沖縄鎮守府にたどり着いたの

だから、今度は私がこの沖縄を守りたかった…

本当にありがとうございました

私達の居場所を守ってくれて」

 

 

瑞鶴は、叢雲と古鷹にお辞儀をすると二人がクスクスと笑い出す

 

 

「ふふ、あんたのキャラじゃないわよ?そんなの?」

 

 

「そうですよ、私達で良ければいくらでも力をお貸ししますよ!」

 

 

「……ありがとう

二人とも、大好き!!」

 

 

瑞鶴は叢雲と古鷹に抱き付くと二人はくすぐったそうにしておりそれを見ている阿武隈も微笑ましく思いながら見ていた

太陽は完全に沈み辺りが真っ暗になった頃四人は帰路に着こうとするが瑞鶴が少しだけ残らせてと言い先に三人は先に降りていく

 

 

瑞鶴は一人残り拳を握り締め誰も居ないその場所で満天の夜空を見上げると目を瞑る

 

 

(今回は、本当に三人と佐渡提督に感謝しないとね

本当なら私がやるはずだった守りたかった……

まだ弱いな、私は……

いつか貴方の様になりますからね……

この命無駄にはしません…

だから、あの世で見守っていてください…)

 

 

そして、静かに目を開けると涙を流しながら夜空を見上げる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「加賀先輩……」

 

 

今は亡き大好きな先輩の名前を口にする

 

 




次回

大井&駆逐艦ツアー 後編

瑞鶴に何があったのか
それはいずれ詳しく書いていこうと思います





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沖縄ツアー 十


今回は大井達と戦艦棲姫戦でのメンバーです


駆逐艦三人のお陰さまで大井は大満足なご様子です!




「楽しかったわ、今日はありがとうね皆」

 

 

「楽しんで貰えたなら良かったよ」

 

 

大井達はある程度回り終わり今はレストランで一息着いていた

辺りでは、やはり英雄の話が出ているのか大井を見ながらヒソヒソと話しており大井もその事に気付く

 

 

「そう言えば、今日何だか視線を感じるわね

私達なんかしたのかしら?」

 

 

「あぁ、それはだな」

 

 

那智が大井に説明すると唖然としながらも溜め息混じりに珈琲を一口飲む

 

 

「成る程ね…

それなら納得だわ…

まぁ、良いわ

別に大したことではなさそうだし」

 

 

「すまない…」

 

 

「良いわよ、別に悪い気はしないし」

 

 

大井は珈琲を飲んでいると、三人がほとんど話してないのに気付き見ると三人がうつらうつらと眠そうにしている 

 

 

「皆大丈夫?」

 

 

「だ、大丈夫…よ…」

 

 

「ん……」

 

 

「大丈夫…です……」

 

 

ふと、曙のポケットから何かが落ちるのを見た大井は静かに拾い上げると今日一日の事を理解する

 

 

「……ふふ、頑張ったのね三人とも」

 

 

「ん?何だそれは?」

 

 

大井が拾い上げた物を那智にも見せると微笑み静かに笑い声を上げる

 

 

「ふふ、成る程な

これは恐れ入ったな…」

 

 

それとはこの水族館のパンフレットであり、今日は向かった水槽やイルカのショー等が赤丸やメモ書きがされており今日の為に下準備をしていたらしい

 

 

「本当にありがとう

皆…」

 

 

大井は優しく、曙の頭を撫でて上げるとそのままテーブルに突っ伏して寝てしまう

その姿を見た二人は微笑むと那智が携帯を取り出し応援を呼ぶ

 

 

 

 

 

 

 

「ほう?餓鬼共寝てしまったんか?」

 

 

「あぁ、すまないな仕事終わりに」

 

 

 

鎮守府近海警備の仕事終わりに駆け付けてくれた龍驤は溜め息混じりに言うと仕方無い奴等やなぁと言いながら会計を済ませにいく

 

 

「良し!帰るで!

大井さんすまないんけど手伝ってくれへんか?」

 

 

「良いですよ、これぐらい」

 

 

三人はそれぞれ寝てしまった駆逐艦達をおぶりゆっくりとした足取りで水族館を後にしていく

途中、何度か観光に来ていた人達に写真などを求めらたが龍驤が

 

 

「あんた達背中の子供が見えへんのか?

そう言うのは今度にしてーや」

 

 

と少し強い口調で言い皆萎縮してしまい、ゆっくりと三人で沖縄鎮守府へと帰っていく

 

 

「どやった?今日の駆逐艦達の沖縄観光ツアーは?」

 

 

不意に龍驤から言われ大井は満面の笑みを浮かべながら向き直る

 

 

「最高でしたよ!本当に!」

 

 

そう言われると、龍驤はそうかそうか!かなり嬉しそうになりながら自分の事の様に喜ぶ

 

 

「こいつら、上手くやったんやな!

良かった良かった!」

 

 

「龍驤が教えたのか?曙達に?」

 

 

「せやで、うちは行けへんから何か出来んかと思ってな……

満足してくれたならよかったで!」

 

 

二人の話を聞きながら、大井は今日の事を思い出していた

 

 

(楽しかったな…本当に…

今度は北上さんとも来たいし…

アイツとも……二人で…

って!なに考えてるのよ私!!)

 

 

突然頭を左右に振る大井を不思議がり那智と龍驤は心配する

 

 

 

「どうかしたか?大井?」

 

 

「な、なななんでもないですよ!!」

 

 

「せや!大井、今度小笠原の……」

 

 

「て、提督二人でなんて来ませんから!!!」

 

 

「ちょ、ちょっと大井!?」

 

 

「まちーや!!まだうちは何とも!!」

 

 

大井はそう言うと顔を真っ赤にしながら足早にその場を立ち去っていくと那智と龍驤も慌ててその後ろを追い掛ける

 

 

 




次回

佐渡と石澤の企み


楽しい帰りには駆逐艦とか楽しくて子供は寝てしまいますよねぇ
大井さんはどうしたのですかねぇ?
次回で、沖縄観光ツアーは終わりです!
さて、佐渡も石澤は何をやる気なのでしょうか?



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沖縄ツアー 十一

今回は、佐渡と石澤達の話ですが二人だけではなく全員を含めた締め括りになります




「~♪」

 

 

佐渡は沖縄鎮守府の厨房を借りながら、霧島、妙高、筑摩と共に夜ご飯の料理をしていた

三人が沖縄での料理を作っている間佐渡は自分の鎮守府よりある多くの食材や調味料に嬉しさを覚えながらテキパキと手際良く色々と作っていた

 

 

「へぇ……佐渡さんお料理上手なんですね…」

 

 

その姿を隣で見ていた筑摩が覗き込むように言っており佐渡はフライパンを返しながら楽しそうに話す

 

 

「俺の数少ない趣味なんですよねぇ

あ、筑摩さんこれ味見して頂けませんか?

いつもは親方にお願いしてまして、こちらの方々の口に合えば良いのですが?」

 

 

佐渡は箸で少しだけ野菜炒めの肉と野菜を取り出し小皿に乗せると筑摩へと差し出す

 

 

「あ、ありがとうございます…」

 

 

「熱いのでお気をつけを」

 

 

佐渡から差し出された野菜炒めを息を吹き掛けながら食べるがやはり出来立てなのでまだ熱くはふはふしながら食べる

 

 

「いかがですか?」

 

 

筑摩は、口の中に広がる野菜と豚肉の旨味を堪能しながら佐渡へと親指を立てる

 

 

「すっごい!美味しいでふ!」

 

 

「良かった!!では次はっと」

 

 

筑摩から褒められ、このぐらいで良いかと思い大皿によそうと直ぐ様フライパンを洗い別の料理を作る準備をしていると近くの鍋が沸騰しており中身を覗く

 

 

「お、こっちも出来たか…

味は…」

 

 

中身は味噌汁だが、中には大きいマグロの頭が入っておりグツグツと煮えている

小皿に味見の為少しよそい飲むと味を確認する

 

 

「…こんなもんか、良し!

次は…」

 

 

と言うと蓋を締め火を切ると手早く別の料理へと差し掛かる

その様子を見ていた三人は感心しながら納得はする

 

 

(((古鷹さんと大井さんが言ってたのはこう言うことか……)))

 

 

実は、佐渡の料理好きは大井と古鷹に聞いており半信半疑だったのだがここでの腕前を見て確信する

 

 

「佐渡君ー?料理の出来はどうだい?

こっち完了したよ?」

 

 

「こんばんわ

妙高さんこっちの準備は終わりましたよ?」

 

 

「お?良い香りじゃねぇか!!

なに作ってるんだい?」

 

 

石澤が、厨房に入ってくると後ろから満潮、隼鷹が入って来ており用意された料理を見に来ていた

 

 

「えぇ、完璧とは言いませんけどそこそこには出来てますよ」

 

 

「お?これは妙高達が作った奴じゃないな?

佐渡提督のかな~?」

 

 

隼鷹が佐渡の作った野菜炒めをつまみ食いしようとすると満潮がその手を叩き止める

 

 

「こら!!隼鷹!つまみ食いは駄目!」

 

 

「ちぇ、みっちーは厳しいなぁ」

 

 

「みっちーって呼ぶな!!

ほら運ぶわよ!!」

 

 

満潮に言われた隼鷹は口を尖らせながら渋々満潮と共に料理を運んでいくと佐渡は微笑む

 

 

「そうだ、佐渡君そろそろ君の艦隊が帰ってくるんじゃないかな?」

 

 

「おぉ、でしたら迎えに行かないとですね」

 

 

佐渡は、フライパンを洗い終わると後を三人に任せて早足で沖縄鎮守府の出入口へと向かうと不意に携帯が鳴り出す

 

 

「はいはい、佐渡ですが?」

 

 

『あ、佐渡さんですか?大淀です

ちょっとお話が………』

 

 

「……はい、分かりました

いつですか?」

 

 

『四日後になります

資料は後でそちらに送りますね』

 

 

「はい、分かりました

では失礼致します」

 

 

佐渡は電話を切ると溜め息混じりに歩いていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チッ、また島流しか」

 

そう誰も居ない廊下で呟きながら

 

 

 

 

 

 




次回

祝勝会

何か料理の事書いてたら終わってたと言う
なにこれ辛い




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今回、小笠原が再び集まり宴を楽しみます!
もう少しだけ彼等のオフを見てあげてください…





「……そろそろかな?」

 

 

佐渡は沖縄鎮守府の前に立ちながら携帯を確認しながら三人が帰ってくるのを待っていた

すると、遠くから三人がこちらに向かって歩いてくるのを確認すると手を振る

 

 

「あ、佐渡提督や」

 

 

「お出迎えとはな」

 

 

「チッ、何でいるのよ」

 

 

「お帰り、六人……と三人は寝てるのか」

 

 

佐渡は声を小さくすると大井の背中で寝ている曙の頭を撫でてあげる

 

 

「曙を触らないでくださいロリコン提督」

 

 

「撫でただけでそれは無いぜ…秘書艦様……」

 

 

「ふん!」

 

 

「あ、もしかして曙ちゃんに妬いたのか?」

 

 

「違いますから!!!」

 

 

大井は大声で否定してしまい急いで口を塞ぐが背中の曙がうう…んと言いながら起きてしまう

 

 

「あれ…ここは……」

 

 

「おはよ、曙ちゃん今日は大井を楽しませてくれてありがとね」

 

 

「はい……ん?

何で、佐渡提督さんが……」

 

 

曙は寝起きで今の状況を理解できておらず、周りを見ると那智、龍驤におぶられている潮と朧

そして、目の前に大井の頭と背中

ここでようやく自分がおぶられていることに気付いた

 

 

「あれ!?私!!寝ちゃってたの!!

ごめんなさい大井さん!!私!!」

 

 

「良いのよ、ありがとう曙ちゃん

龍驤さんから色々聞きましたよ?

私の為に夜更かしまでしたんですって?」

 

 

曙が龍驤を見ると片手で謝っており、溜め息をつく

 

 

「もぉ~……秘密にしてたのに……」

 

 

「ふふ、楽しかったわ今日は

本当に

お礼にもう少しおぶらせて?」

 

 

「し、仕方ないですね!

……お願いします」

 

 

大井はそう言うと佐渡の隣を抜けて沖縄鎮守府へと入っていく

その後ろから那智と龍驤も後を付いていくと佐渡が大井に向き直ると一言だけ言う

 

 

「あ、大井ー

晩飯は広場で取るから後で行けよなー」

 

 

「はいはいー」

 

 

しばらく、佐渡が外で待っていると遠くから四人がこちらに向かって歩いてくるのが見える

恐らく、叢雲達かな?思うと手を振ると向こうも手を振り返してくれる

 

 

「お、帰ってきたな英雄達」

 

 

「あんたねぇ!!あれどういうことよ!!聞いてないわよ!!」

 

 

帰ってくる早々に叢雲に怒鳴られてしまい耳が痛い

 

 

「いや、俺も知らなかったんだよ……」

 

 

「まぁまぁ、叢雲。提督ただいま戻りました」

 

 

「おう、お帰り古鷹楽しかったか?」

 

 

「はい!美味しいもの沢山食べてきましたよ!

それに綺麗な景色に島民の方々とも話せましたし!」

 

 

叢雲は苛ついてる中古鷹は満面の笑みを浮かべながら楽しんでいるのだが……

阿武隈がかなり苦しそうだ

 

 

「……阿武隈さん大丈夫ですか?」

 

 

「だ、大丈夫……です」

 

 

「全く阿武隈ったらあの程度で根を上げるなんて情けないわよ?」

 

 

「いや、食べきれる二人が可笑しいと思うんですけどぉ!?」

 

 

叢雲と瑞鶴は見合わせるとやれやれみたいな顔をしながら沖縄鎮守府に入っていきその介護の為佐渡と古鷹は阿武隈を支えながら共に入っていく

 

 

 

「よし、帰ってきたな

ほら、宴会やるぞ?」

 

 

「よーし!食べるわよぉ!!」

 

 

「まだ食べるんだね……叢雲…」

 

 

 

 

 





次回

宴会IN沖縄鎮守府!

沖縄鎮守府での夜
戦いが終わった後には楽しい宴会が待っています!
因みに、料理の大半は佐渡が作ったみたいです




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宴 二

今宵は楽しい宴の日!

各々それぞれの楽しい時間を過ごしていきます




「えー皆さんお集まりありがとうございます

本日もお日柄良く…」

 

 

現在、沖縄鎮守府中庭にて石澤と佐渡が計画していた宴会の始まりの挨拶?みたいな状態である

実は、この提案は佐渡からであり沖縄鎮守府の艦娘と小笠原の三人が仲良くしてほしいと言う物で石澤に頼んだところ快く了承してくれたのだ

 

 

「本日は小笠原の佐渡提督に……」

 

 

「話なっげーぞ!提督!それに肩苦し過ぎんぞー似合ってねぇ!」

 

 

「本当によ!あんたの長い話に付き合ってたらせっかく佐渡提督さんが作ってくれた料理が冷めるじゃない!!

本当に馬鹿ね!」

 

 

「いやさ?こう言うのは真面目に……」

 

 

「提督さーん!!はーやーくーしーてー!!

待ちきれないんだけど!!!」

 

 

佐渡と石澤一同は皆片手に飲み物を持ち挨拶を待っていたが沖縄鎮守府の面々は石澤の長い挨拶に苛立ちを覚えたのかヤジを飛ばしておりそれに耐えかねた石澤が阿武隈に袖を引っ張られる

 

 

「提督?、皆さんの言う通りじゃないですか?」

 

 

「……それもそうか んじゃ!我々沖縄鎮守府と遠くから来た連合艦隊!!

そして、たった三人であの化け物艤装と歴然の戦艦棲姫 ユリを止め指揮をしていた英雄の四人に!!!

 

 

乾杯!!!」

 

 

 

「「「「「「「乾杯!!!」」」」」」」

 

 

石澤が飲み物を空に掲げると同時に艦娘一同も同時に空に掲げ、各々食事や話をし始める

 

 

「へー……これを佐渡提督が…」

 

 

「大井さんの提督…凄いですね…」

 

 

先程まで大井達と出掛けていた朧と潮だが曙に起こされ今の祝勝会に参加しており現在佐渡の料理を凝視していた

 

 

「皆さんの口に合えばよろしいのですが……」

 

 

「ひゃっはー!佐渡提督ー、料理最高だぜー!

このつまみ、酒にすっごい合うよ!!」

 

 

「うむ、こっちも中々に旨いな……

酒が進む…」

 

 

那智と隼鷹は、お酒を片手に佐渡の作ったおつまみ料理を堪能しており朧も潮も恐る恐る口にするが食べた瞬間顔を見合せ美味しそうに食べ始めるのを見ると佐渡は安心する

 

 

「大井さん!こっちの食べてみて!美味しいわよ!」

 

 

「ちょっと曙!大井さんにはこっちのを食べてもらうの!大井さん、こっちの方が美味しいですよ!」

 

 

「二人とも……お気持ちはありがたいけど…」

 

 

「「さぁ!」」

 

 

大井はと言うと曙にすっかり気に入られの時一緒に仲良くなった満潮にもどんどん食べ物を進められて少し困っていた

 

 

「へぇ?あんたのところの提督かなり料理旨いじゃない?」

 

 

「でしょ?あいつ料理の腕前は本当に高いのよ」

 

 

「本当です…先程の野菜炒めも美味しかったですがこれも……」

 

 

「ぐ、何か悔しいですが……佐渡司令の完璧に計算された料理に完敗しました…

あ、これも美味しい」

 

 

叢雲と瑞鶴は相変わらず料理を食べておりその隣で霧島と筑摩も佐渡の料理を堪能していた

 

 

「へぇ…古鷹さんのあの砲撃は自己流何ですか?」

 

 

「はい!でも、そんなに命中率が高いわけでもなくて……」

 

 

「何をご謙遜を、映像見ましたがラストにケルベロスの背中にある魚雷を撃ち抜いた砲撃は見事でしたよ!」

 

 

 

「そ、そうでしょうか……」

 

 

古鷹は、阿武隈とすっかり仲良くなり妙高もそこに加わりべた褒めされておりすっかり古鷹は赤くなっていた

 

 

 

 




次回  

夜はまだこれから!


次回も宴の模様を書いていこうと思います
佐渡さんの料理スキル?あんな孤島にいたらそこそこ上達しますよね…(やることないですし)


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宴 三

宴は楽しいですよね……

酒が進むと本音も少し出ちゃいますよね




「ふぅ」

 

佐渡は、楽しんでいる皆の姿を見ながら少し離れた距離で椅子に腰掛け一息付いていた

初の大型作戦の参加と今回、初めて確認された監視者達の行動に少し考え事をしていた

 

 

『我が名は監視者

全ての深海棲艦の管理人だ』

 

 

「……全ての深海棲艦の管理人か」

 

 

「佐渡君、隣良いかな?」

 

 

「ん、良いですよ」

 

 

そう呟くと空を見ながら飲み物を口にする

そんなことをしていると石澤が隣に来て座る

 

 

「……平和だね」

 

 

「ですね、本当に…」

 

 

二人は宴会を各々楽しんでいる皆を見ながら、飲み物を飲んでいるとお互い気持ちを吐露する

 

 

「僕はね、戦いが、戦争が嫌いだ

そして、艦娘が嫌いだ」

 

 

その言葉に、佐渡は驚き石澤を見ると石澤は力強くコップを握り締めており悔しそうにしている

 

 

「……何故、僕達大人の男が部屋に籠ってなくて行けないんだ…

何故、隣で共に戦えないんだ……

何故、僕達にはその力が無いんだ…

俺も、艦娘になれば…」

 

 

佐渡は飲み物を飲みきると空になったコップを石澤の頭に軽く当てる

 

 

「駄目ですよ石澤さん

俺達は提督、彼女達は艦娘なんですから

そして、お互い軍人でしょ

代わりは居るんですから自分の仕事をやらないと」

 

 

「……君は怖くないのか?

彼女達がいつ死ぬか戦場に送り出すのが」

 

 

「怖いですよ?

そりゃーもちろん」

 

 

 

石澤の質問に佐渡はすぐに返すと意外な言葉に驚く

 

 

「正直、俺も戦いたいです

あいつらに任せないで俺が最前線に立って奴等を殺したいですよ

……でも俺達にはそれができない

だからこそ、俺達があいつらに出来ることは信じてやることですよ

…指揮をして、あいつらが勝って無事に帰ってくることをね

俺の全てをあいつらに託してね」

 

 

そして、佐渡は空を見上げながら呟く

 

 

「前に無茶をしたのですがある艦娘に言われてしまいましてね」

 

 

「一体何て?」

 

 

その言葉を思い出す佐渡は悔しそうにしながらでも笑い

 

 

「『あんたはそこで私達の帰りを信じて待ってなさい

必ず、どんなことになっても帰ってくるから

ボロボロでも、死にかけでも、絶対に

だから、信じて私達を』って言われてしまいましてねぇ

あるうちの大食いからですけどね」

 

 

そう言うと佐渡は笑いだすと石澤は俯いてしまう

 

 

「……僕は彼女達に何が出来るのだろうか」

 

 

「さぁ?俺には分かりません

それは石澤さんが決める事ですから」

 

 

「なぁにこんなところで二人でいるのよ?

私達は放置なのかしら?」

 

 

不意に二人で話していると叢雲がいつの間にか来ており両手には飲み物を持っている

 

 

「おう、叢雲

宴会は楽しいか?」

 

 

「えぇ、それなりにはね

はいこれ飲み物

あんたさっき飲みきってたわよね?

石澤提督にも渡して上げて」

 

 

「サンキューな」

 

 

佐渡は叢雲から飲み物を受け取ると空のコップを叢雲に渡すと戻ろうとする

 

 

「なぁ、叢雲」

 

 

「なぁに、司令官?」

 

 

「俺が司令官で良かったか?

お前達に無茶ばかりさせてるけど」

 

 

そう言われると叢雲は微笑みながら佐渡を指差す

 

 

「『俺が』じゃないわ『あんたが』良いのよ

二人で居るのも良いけどそろそろこっちに来ないと皆が心配するわよ?」

 

 

叢雲が言うと石澤は顔を上げ、皆を見るとこちらを見て心配しており佐渡も石澤に手を差し出す

 

 

「行きましょ、石澤さん

艦娘が貴方(提督)を待ってますよ?」

 

 

「……そうだな!くよくよしてても仕方無いか!!」

 

 

石澤は佐渡の手を取り元気良く走りだし阿武隈達の肩に手を回しはしゃぎ始める

 

 

「……何を話してたの?」

 

 

「男同士の秘密だ」

 

 

「そいつは残念ね」

 

 

佐渡と叢雲は二人でその光景を見ていると佐渡が叢雲の頭を撫でる

 

 

「お疲れ様、叢雲

信じてたぞ」

 

 

「ありがと、佐渡

本当かしらね」

 

 

「ちょっとー!!叢雲!提督!!

なに二人で居るのよ!!

提督!!叢雲に手を出していないわよね!?」

 

 

「叢雲ー!提督ー!

皆で沖縄料理食べましょー?」

 

 

大井と古鷹に呼ばれると佐渡と叢雲は顔を見合せ笑うと二人で歩いていく

 

 

「出してねぇよ!

お、古鷹どんなのがあるんだー?」

 

 

「肉は残しといてよねー?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こうして、騒がしい夜の宴会は過ぎていく 

束の間の平和を楽しむように

各々の疲れを癒すように

 

 




次回

夜のお話

もう少しだけ続けさせてくださいおねがいします(土下座)
宴会が終わり各々が寝静まる夜
叢雲と瑞鶴、そして古鷹と阿武隈が自分達の話をします
少し真面目な話になりますかね?



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宴 四

これ書いたら新章行けるかな…(遠目)




月夜が照らす夜

宴も終わり辺りは静けさを取り戻し

その中で、叢雲は月が映る海を一人で見ていた

艤装を展開しながらゆっくりと目を閉じ四日前の戦闘の事を思い出す

 

 

(……あの時、私がケルベロスを倒していれば…

あそこで判断ミスをしなければ……)

 

 

そう後悔しながら、身体をケルベロスの動きを思い出しながら避ける動作をする

すると、後ろから突然パァンと渇いた音がし振り返る

 

 

「何してんのよイメトレ?」

 

 

「…そんなもんよ」

 

 

瑞鶴がこちらを向いており手にはホットミルクが入ったコップがあり二人は近くの流木に腰掛ける

 

 

「……もしかして、ケルベロスとの戦いの時?」

 

 

「…そうよ、あの時もう少しこうしてたら避けられたなぁとかの反省よ」

 

 

「ふーん……」

 

 

二人はさっきと違い静かになってしまう

仲が悪いわけではないだが、何となく話す内容が思い付かないのだ

その空気に耐えかねた瑞鶴が叢雲に訪ねる

 

 

「ねぇ、叢雲」

 

 

「なぁに」

 

 

「叢雲はさ、大事な仲間を失ったことってある」

 

 

その言葉に、叢雲のコップの握る手は強くなるがすぐに力を弱めはぁと溜め息をつく 

 

 

「……あるわよ」

 

 

「…目の前で?」

 

 

「えぇ、四人ほどね

目の前で死んだわ」

 

 

「そっか……

邪魔してごめん」

 

 

瑞鶴はそこまで言うと謝り飲み物を飲みきり立ち去ろうとするが叢雲が服を掴み再び座らせる

 

 

「……それだけじゃないでしょ?

続けなさいよ」

 

 

「……うん」

 

 

先程、元気良くしていた瑞鶴とは違い少し弱々しく見え叢雲に服を引っ張られ再び座り込む

 

 

「……ねぇ、叢雲はさ

そんなに強いのに何で失ったの?」

 

 

叢雲はそう言われると返答に困ったわけではないが月夜を見上げ星空を見る

 

 

「私は、最初からこんなに強かったわけではないわ

努力して、打ちのめされて、負けて、負けて、死にかけて、やっとここまで成長出来た……

まだ弱いけどね」

 

 

その言葉に驚きながらも瑞鶴は拳を握り締める

 

 

「それに、私は強くないわ」

 

 

「嘘よ、叢雲は強いよ」

 

 

「強くないわよ……

でも、強くいたいのよ」

 

 

瑞鶴にまだホットミルクが入ったコップを渡すと立ち上がり空に手を伸ばす

 

 

「私は誓ったの

死んだ仲間に

今以上に強くなって、守れなかった貴方達の代わりに他の人を守るって

だから私は強くなりたい、もっともっと、血反吐を吐いても骨が折れても死にかけても……

二度と失わないってね」

 

 

そう言うと、空を掴むように拳を握り瑞鶴に向き直る

 

 

「それにね、アイツは私に言ってくれたのよ

『今を後悔したって遅いんだよ

事実は変わらない変えられない

だが、未来は変えられる

だから変えるために動け』ってね

だから、私はその為に強くなるの

二度と失わないために」

 

 

「アイツって佐渡提督?」

 

 

「そうよ、それにアイツは私に自分の全てをくれるって言ってくれたのよ

技術も知識も全て

だから私達は約束した

 

『海では私達艦娘が守るわ

だから、貴方は陸での私達を守って』てね

 

瑞鶴はまだあの提督に守られてるだけで良いの?」

 

 

叢雲は瑞鶴へ手を差し伸べると、瑞鶴は笑いながらその手を取る

 

 

「冗談じゃないわ!もう、守られてるだけなのは嫌なのよ!」

 

 

「その意気じゃない?正規空母瑞鶴様?」

 

 

「辞めてよね!確かに誇りはあるわ、でもあんたにはそう言う呼ばれはされたくないわよ駆逐艦叢雲」

 

 

お互い、少し冷めたホットミルクを飲み干すとコップを流木に置くとにぃと笑いながら握手を交わす

 

 

「貴女に会えて良かったわ

そして、ありがとう阿武隈をこの沖縄を守ってくれて

本当に感謝してる」

 

 

「しつこいわよ?でも素直に受け取っておいてあげる」

 

 

その近くの木の影で古鷹と阿武隈は二人の会話を盗み聞きをしておりお互いの顔を見合せる

 

 

「良い仲間をお持ちなんですね

阿武隈さん」

 

 

「古鷹さんこそ、最高な仲間を持っていますね」

 

 

二人はクスクスと笑い合うとはぁと言いながら阿武隈は立ち上がり瑞鶴と叢雲に向かっていく

古鷹もその後ろを付いていく

 

 

「ちょっと~?二人だけで何してるんですかぁ?」

 

 

「叢雲~?私を置いていくのは酷いと思うんだけど?」

 

 

「あちゃー、バレちゃったか……」

 

 

「どうせだから、もう少し話さない?

連合組とケルベロス組が揃ってるんだし?」

 

 

「お、叢雲ナイス~

阿武隈ほらほらここ座りなよ?」

 

 

「夜更かしはお肌の天敵だよ?」

 

 

「たまには良いんじゃない?」

 

 

阿武隈は、仕方ないなぁと言うと座り他の三人も各々座りだし色々と話を続ける

 

 

今までの話やこれから、恋ばなや女の子らしい話をしながら夜は明けていく

まだ終わらぬ戦いの最中に少しばかりの休息を

 

 

 

 

 

 

 

 




次回   

別れ

何か二回連続で真面目な話になってる?気にしたら敗けです(




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別れ そして我が家へ

今回で沖縄編終わりです
長かった~!



「本当ならもっとゆっくりしていってほしいのにな……」

 

 

「まぁ休暇は今日までですからね……

仕方がありませんよ」

 

 

現在、佐渡率いる小笠原鎮守府は沖縄の港で海の上に居た

昨日の朝四人が居ないと騒いでいたが、何故か四人とも部屋で外で身体を寄せあって寝ており少し騒ぎになったがそれ以外は特に何もなく

楽しい休暇は過ぎていってしまい小笠原鎮守府の帰りになっていた

 

 

「大井さん行っちゃうんですね……」

 

 

「元気でね…」

 

 

「また来てください…!」

 

 

「今度は私も入れて四人で色々と案内しますからね!!」

 

 

「達者でな、大井」

 

 

「元気でな大井、身体にはきぃつけぇよ?」

 

 

 

「皆、ありがとう

今度は北上さんも連れて一緒に回りましょ?」

 

 

大井はすっかり駆逐艦と那智、龍驤と仲良くなり別れを惜しみながらもまた来ることを約束し頭を撫でている

 

 

「古鷹さん、お元気で…

今度また砲撃のコツを教えてくださいね?」

 

 

「今度来たときはしっかりと観光巡りしますからね!!」

 

 

「はい!妙高さんも阿武隈さんもお元気で!

楽しみにしてますね!」

 

 

古鷹は、妙高と阿武隈と仲良くなっており次に会うときの約束を交わし

 

 

「叢雲…」

 

 

「何よ?」

 

 

瑞鶴は、涙を堪えながら叢雲に手を差し出しそれを取り握手を交わす

 

 

「次会うときまでに沈むんじゃないわよ!!

最強の駆逐艦!!あんたに会えて最高の三日間だったわよ!!叢雲!!」

 

 

「はっ!何言ってんのよ沈むわけないでしょ!!

私を舐めるんじゃないわよ!!

私もよ!瑞鶴!!」

 

 

二人は熱い友情と誓いを交わし

 

 

「佐渡君ありがとう、この作戦そして救援に来てくれて

改めてお礼を言おう」

 

 

「気にしないでください

我々の仕事ですし、困ったときはお互い様です」

 

 

佐渡と石澤は握手を交わし、二人とも微笑みながら別れを告げる

 

 

「また来てくれたまえ

君達なら歓迎だ」

 

 

「えぇ、生きていればですがね」

 

 

そう言うと、叢雲達は艤装のチェックを終え佐渡は船に乗り込むとエンジンを掛ける

すると沖縄鎮守府の面々の後ろから旗等が振られる

後ろには多くの島民が叢雲達にお礼を言っている

 

 

「島を救ってくれてありがとー!!」

 

 

「また来てねー!!」

 

 

「英雄の鎮守府!!死ぬまで覚えてるからな~!」

 

 

その言葉に小笠原面々は照れくさくしながらも海を走り始める

古鷹と大井は沖縄に手を振るが叢雲と佐渡は振り返らない

後ろからは皆の声が聞こえる

 

 

「帰るぞ!!お前達!俺達の鎮守府へ!!」

 

 

「「「了解!!!」」」

 

 

小笠原鎮守府の面々は速度を上げ、一気に沖縄から離れていきしばらくすると水平線に消える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行っちゃいましたね」

 

 

「あぁ、」

 

 

阿武隈が、そう言うと石澤が頷き港を後にしようとするが瑞鶴だけ一人残ろうとする

 

 

「瑞鶴?どうかしたのか?」

 

 

「………ううん、何でもないよ

提督さん、私決めた」

 

 

瑞鶴は微笑みながら心に決めたことがあった

振り返り石澤と阿武隈に抱き付くと大声で誓いを口にする

 

 

「この島を!!皆を!ずっと守り続けるね!!

駆逐艦の叢雲にも出来たんだもの!!正規空母の私が出来ないと可笑しいわよね!!」

 

 

瑞鶴の言葉を聞いた石澤と阿武隈は微笑みながら瑞鶴の頭を撫でる

 

 

「そうだな!!頼りにしてるぞ!我がエース!」

 

 

「瑞鶴、頼りにしてるからね!!」

 

 

「まっかせておいて!!あんな駆逐艦何かに負けないくらい強くなって見せるんだから!!」

 

 

太陽照らす昼間の時、一人の少女は硬い誓いと共に自らを守ってくれた先輩と仲間を守った叢雲に負けないと心に刻み生きていく

いつかこの戦争が終わるその時まで

 

 

 

 

 

       沖縄編 end




次回

新章?はい、島流しです

と言うわけで新人が小笠原鎮守府に来ます
今回は犯罪者と言うわけでは無いですが?


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第四章 不幸な高速戦艦
新たな仲間 不幸艦?


新章と言う名の新人です!!
今回の島流しは少し分け有り?です




「……暇ね」

 

 

「そう言うな叢雲さんやチョコバー食べる」

 

 

「……提督、本当に来るんですよね?」

 

 

「来るぜ?話によればな?」

 

 

「て、提督!今回はお一人で来ませんよね?

大丈夫ですよね?」

 

 

「うん、大丈夫だよ古鷹

今回はきちんと確認したからね?

姉妹艦達が送ってくれるらしいよ」

 

 

四人は小笠原鎮守府の港にて各々待機していた

叢雲はコンクリートに寝そべり、大井は書類をチェックしながら、古鷹はそわそわとしていた

各言う佐渡も中々に落ち着かない感覚で待っていた

沖縄から帰ってきた直後大淀さんからの連絡があり、本日一二◯◯にてそちらに艦娘を送るというもので合った

 

 

「……提督、確認してもよろしいですか?」

 

 

「何だ、秘書艦様?」

 

 

「今回の島流しですが犯罪者じゃないんですよね?」

 

 

「あぁ、お前と違ってな?」

 

 

そう、今回の島流しは犯罪者ではないならどういうことかもう一つの理由『使えない』の方である

だが、その方の理由としても何とも不可解であるため大井は首を傾げる

 

 

「ですが……この理由

ふざけてるんですか?これ本当に大本営の資料ですよね?」

 

 

「あー、うん一応な明石さんからコピー機貰ってるから間違いないし俺も聞いたからなぁ」

 

 

その理由が、何とも言えないと理由なのだが叢雲は寝そべりながら佐渡と大井へと向くと溜め息混じりに言う

 

 

「まぁ、良いんじゃない?高速戦艦がこっちに来るのは良いことよ?火力足りなかったし、うちの艦隊」

 

 

「いや、まぁそうだけどさ……」

 

 

そう、今回の島流しされた子は高速戦艦

小笠原鎮守府に取ってはかなりの嬉しい事なのだがやはり腑に落ちない

 

 

「にしても変よね聞いたことないわよ」

 

 

叢雲は、起き上がると港のコンクリートに座り近くに置いてあった飲み物を飲む

 

 

「不幸な高速戦艦なんて聞いたことないわよ?私」

 

 

そう、島流しの理由は『不幸』だったからただそれだけである

他には特に何もなく使えないのもただ不幸だからと訳がわからない

 

 

「でも、不幸な戦艦って実際居るんですよ?」

 

 

「え、マジ?」

 

 

「えぇ、確か扶桑型の一番艦扶桑(ふそう)と二番艦山城はかなりの不幸らしいんです

何故かは分かりませんが

ですが……これに関しては私も聞いたことなかったですね…」

 

 

大井の話を聞いた、叢雲、古鷹、佐渡はへぇと言うと水平線の向こう側から三隻こちらに向かってくるのが見える

 

 

「お?来たみたいだぞ?お前達」

 

 

「やっとね」

 

 

「皆さん!無事なご様子ですね!

良かった……」

 

 

叢雲は立ち上がり、海へと行くと古鷹はおーい!と手を振りながら三隻をこちらに誘導する

だが、大井はやはり訳がわからないその資料を読み返す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「金剛型 一番艦 金剛(こんごう)

山城、扶桑よりも酷い不幸を鎮守府にばらまきたらい回しにされた高速戦艦…か…

聞いたことないわよ、こんなの」

 

 

 

 




次回  

金剛四姉妹


今回より新たな仲間、金剛さんの登場です!
はてさて、叢雲達にどんな不幸が降り注ぐのやら?


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不幸な長女

実際のゲームにはない設定を入れてみました!
金剛好きの方にはすみません……




「遠路遥々護送ご苦労様です!!」

 

 

佐渡は、小笠原の港に到着した三人の艦娘に対し敬礼をすると三人も敬礼を返し叢雲達は佐渡の後ろで待機している

 

 

「いえ!!お姉さまの為なら私何でも頑張っちゃいますからね!!

佐渡司令官ですよね!!司令からいわれております!!良い方だと!!」

 

 

元気一杯に右端で敬礼しているこの娘は、金剛型二番艦 比叡

戦艦棲姫戦の時に連合艦隊に居た、佐世保鎮守府所属 葛城提督の艦娘である

 

 

「お姉さまの為ですから!これぐらい平気です!

佐渡提督ですね!提督から聞いております、素晴らしい方だと」

 

 

比叡の隣で、佐渡に敬礼している健気そうなこの娘は、金剛型三番艦 榛名 

彼女も戦艦棲姫戦の時に連合艦隊にいた、横須賀鎮守府所属 猿橋提督の艦娘である

 

 

「お姉さまの為ですからね!少し遠かったですがこの程度計算のうちです!

また会いましたね、佐渡司令官」

 

 

そして、最後佐渡に敬礼しているこの娘は金剛型四番艦 霧島

戦艦棲姫戦の連合艦隊におり、そして沖縄でお世話になっていた 沖縄鎮守府所属 石澤提督の艦娘である

 

 

「皆さん、疲れたでしょう?

一息いれませんか?後、俺には敬語も敬礼も入りませんからね?」

 

 

「そうしたいの山々なのですが……」

 

 

「私達、この後任務がありまして…」

 

 

「正直、もっと話したいし料理のコツを聞きたいのですが……」

 

 

比叡、榛名、霧島共々悔しい表情をしながら顔を反らすが霧島に関しては拳を握りしめているほどに悔しいらしい

 

 

「そうなのですか、残念です……

折角ですからパンケーキでも作ろうかと思ったのに……」

 

 

その言葉に三人ともビクッと身体を震わせる

 

 

「ぱ、パンケーキ……」

 

 

「蜂蜜とバターたっっぷりの美味しいのを……」

 

 

佐渡はそう言うと叢雲達を見るとアイコンタクトを送る

理解したのか大井は溜め息をつく

 

 

「えぇ、とっても美味しいんですけどね

提督のパンケーキ。

確か紅茶もありましたよね?」

 

 

「こ、紅茶……」

 

 

「残念ねぇ、

まぁ、任務があるなら仕方ないわよねぇ?

私達五人で美味しく頂きましょ

あーあ、折角司令官が作ってくれるのになぁ?」

 

 

「ぐ、ぐぬぬぬ……」

 

 

三人が煽るように言っていると、比叡達も拳を握り締めかなり悔しがっていると古鷹が満面の笑みで止めを指す

 

 

「提督のお料理は何でも美味しいですからね!

パンケーキも絶品ですよね!それこそ、街のスイーツ店にも負けないくらいですよ!!」

 

 

「「「絶品…」」」

 

 

その瞬間、三人が喉を鳴らしたところで佐渡は振り返り比叡達から去っていこうとする

 

 

「でも、残念ですねぇ今日位しか作れないのに……

街に買い物行くのは一ヶ月に一回ですから滅多にないのに…」

 

 

「「「……」」」

 

 

三人は顔を見合せると霧島が手を上げる

 

 

「はい!!佐渡司令!私食べたいです!!」

 

 

「ちょっと霧島!?」

 

 

「この後の任務は良いの!?」

 

 

すると霧島は眼鏡をくいっとあげながらそっぽを向く

 

 

「わ、私の計算が正しいならこの後沖縄鎮守府に帰るまでにお腹が空いて戦闘どころではないと思います!!

それに、佐渡司令の料理スキルは今後役に立つと思われます!!」

 

 

「じゃあ、私も食べたいです!!」

 

 

「比叡お姉さままで!?で、では榛名も……」

 

 

霧島を火付け役に結局三人とも一息つくことになったのだが肝心の島流しにあった金剛が居ないことに気が付く

 

 

「そう言えば、金剛さんは?」

 

 

「あ、お姉様ですね……」

 

 

「お姉様、そろそろ出てきてください?」

 

 

「そうですよ、佐渡司令がお呼びです」

 

 

そう三人が言うと榛名の後ろに隠れていた何かがビクッと動く

 

 

「そう言えば、そこに誰か居たわね?もしかして」

 

 

「貴女が?」 

 

 

その何かはおずおずと榛名の影から出てきては居るが榛名の袖を掴みっきりになりながらゆっくりと出てくる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こん…にち…は……金剛…型…一番艦 金剛…です

初めまして……佐渡…提督さん」

 

 

やたら縮こまりまるで子犬の様な感じになっている金剛、つまり今回の島流しになった艦娘が居た

 

 




次回

不幸な金剛


明るい金剛さんだと思った?残念だったな!!!

すいません理由があるんです許してください


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不幸な長女 二

最近、うちの艦隊が少しずつ改二になりつつありますがやはりまだキツいものがありますわ……





ここは場所代わり小笠原鎮守府の食堂

佐渡は、パンケーキを作るべく材料を混ぜておりその隣で比叡が凝視し、霧島が手伝っている

テーブルには榛名と金剛が座りずっと服を掴んだままである

それを囲むように叢雲、大井、古鷹が見ているが肝心の金剛は俯いており無言な状態だ

 

 

「……ねぇ、霧島さん。

彼女、君達のお姉さん何であんなに縮こまってるの?」

 

 

「えっとですねそれには理由がありまして……」

 

 

「お姉様、かなり運が悪いと言うか不幸なんですよ……」

 

 

「それは知ってるよ、こっちに送られてきたのはそれが原因なんだろ?」

 

 

佐渡が気になっているのはそこではない

もっと根本的な部分だ

彼女、金剛型一番艦金剛と言えば誰よりも明るく少し英語混じりの話をすると資料に書いてあったのだが

どうみても、全く雰囲気が違う

まるで捨てられた子犬の様に縮こまり下手すれば自殺するんじゃないかなと言うほどに弱々しい

 

 

「なんかあったの?彼女に」

 

 

実は佐渡が、この三人を引き留めたのはこれが理由の大幅だ

大井の時は情報が少なくどうすれば良いのか分からなかった為少しでも事情を知ってる三人の話を聞きたかったのだ

 

 

「実はですね、金剛お姉さまの不幸は『伝染』するんです」

 

 

「……伝染?病気みたいなもんか?」

 

 

「あながち間違っていないですね。

私達は特になんにも無い……訳ではないのですが」

 

 

伝染、彼女達は確かにそう言った

人から人へ移る不幸、そんなの有り得るわけが無いのだが……

 

 

「詳しく聞かせてくれないか?」

 

 

比叡は霧島を見ると頷きそれを見た比叡は佐渡に話始める

 

 

「金剛お姉様は、初めてお会いしたときから確かにちょっと運が悪かっただけだったんです

タンスの角に小指をぶつけたとかくじ運が悪いとか本当ちょっとしたことでした

最初は金剛お姉様も明るく「私ったらドジネー!」とか笑いあった位だったんです

 

ですが、その不幸はどんどん酷くなっていったんです

一緒に歩いていたら強盗に会ったり、殺人犯に狙われたり、ストーカーに狙われたりしたので外出は辞めました

でも鎮守府では、突然電柱が倒れてきたり、窓ガラスが割れて怪我しかけたり、雹(ひょう)が降ってきたりしてきまして部屋に籠るように当時の司令に言われました

ですが、そこでも不幸が発生しました

部屋のストーブが突然発火して部屋は全焼、鎮守府も半焼

しかも、近くの消防署の車がパンクしていて遅れたり……」

 

 

「なんだそりゃ……すげぇな…」

 

 

信じられないほどの事を聞くと金剛を見ると榛名が必死に話しかけているが俯いたままである

何とか古鷹も大井も話し掛けているが全く変わらない

 

 

「しかも、それが原因で一人逃げ遅れた艦娘が倒れてしまい……

お姉様は異動になりました……

何にも悪くないのに…」

 

 

比叡は悲しそうに、でも悔しそうに拳を握り締めると霧島が肩を叩くと再び口を開き続きを伝える

 

 

「ですが、金剛お姉様の不幸は続きました

異動先の鎮守府で金剛お姉様以外艦娘が轟沈したり、鎮守府が津波に呑まれたり、深海棲艦に潰されたり……

そして、金剛お姉様のせいと決め付けた司令が居たらしくお姉様を監禁し、酷い暴行を働いたそうなのですが……

その司令は不慮の事故でなくなったそうです……

しかも、金剛お姉様に触れた艦娘もしばらく不幸に会うらしいんです……

轟沈しかけるとか、空から瓦礫が降ってきたとか

そして、付いた名が 不幸な高速戦艦だそうです……」

 

 

「成る程な…

でも、榛名さんは大丈夫なのか?

ずっと側に居るけど?」

 

 

比叡が落ち込んでいる所に霧島が眼鏡をくいっと上げながらその理由を話始める  

 

 

「榛名お姉様は、他の方より運が良くてですね

金剛お姉様の不幸を消しているみたいなんですよ」

 

 

「……成る程な中和されてるのか…」

 

 

すると、火を止め金剛を見ると比叡が佐渡の服を掴み必死になりながらお願いをする

 

 

「だから!!佐渡司令!!金剛お姉様を何とかして頂けませんか!?

私達では何にもお力になれないんです……

葛城司令と霧島から聞いたんです!!佐渡司令なら何とかできるかもって!!だから……だから……」

 

 

そう言われると比叡は佐渡の腹部の顔を埋めており少しだけ泣いている

佐渡が困惑していると霧島も同様に頭を下げる

 

 

「お願いします、佐渡司令

何とか解体だけは避けられてここに行かせて貰えるように頼み込んで何とか漕ぎ着けたんです

だから!……私達のお姉様を何とか出来ませんか!?」

 

 

「何とかって言われてもな……」

 

 

佐渡は、金剛を見るとやはり顔を下に伏せており頭を掻きながらんー……と言うと二人に答える

 

 

「んまぁ、やってはみるよ 

出来るだけ、ね?」

 

 

その言葉を聞いた二人は顔を上げ喜びあう

 

 

(んまぁ、別にここなら特に何にもないからなぁ……)

 

 

そんなことを考えていると比叡は佐渡の両手を握り握手を交わす

 

 

「ありがとうございます!!!

もし!何かお手伝い出来る事があれば何でもしますからね!!」

 

 

 

 

 

 




次回

おやつタイム!パンケーキと紅茶はいかが?


次回からきちんと食べるよ!!
ごめんなさい!!


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不幸な長女 三

資材が足りなくて遠征に任せっぱなしのクソ提督がこちら()





その言葉を聞いた佐渡はピクッと身体を動かし比叡の顔を凝視する

 

 

「……ほう?今何でもするって言った?」

 

 

「はい!!何でもしますよ!!」

 

 

すると佐渡は金剛達から見えないように身体を動かし比叡の顎を持ち上げ顔を近付ける反対の指で胸を指す

 

 

「こんなことでもかな?」

 

 

「ひ、ひぇ~……」

 

 

「比叡ちゃん、可愛いし良い身体してるよね?

俺を慰めてくれないかなぁ?」

 

 

 

比叡は発言の意味を理解し、顔を真っ赤にするがキッと佐渡を睨み付ける

 

 

「ですが!それでお姉様が何とかなるなら!!

比叡!気合い!入れて!慰めます!!」

 

 

「ほほう?滅茶苦茶にしちゃうよ?」

 

 

「構いません!!」

 

 

顔が近く、そんな会話をしていると霧島も顔を真っ赤にしており眼鏡をひっきりなしに上げており少し沈黙が流れるが佐渡は突然笑いだし比叡の頭を撫でる

 

 

「アハハハ!冗談冗談!他の人の艦娘に手を出すほどクズじゃないよ俺は」

 

 

「ひえ?」

 

 

佐渡は、笑いながら比叡の頭を撫でておりフライパンに火を付け再びパンケーキを焼き始める

 

 

「こんなに妹さんに思われているお姉さんを助けない訳にはいかないでしょ!

さぁ、二人とも向こうに座りなよ

パンケーキ、そろそろできるよ」

 

 

「は、はい!」

 

 

「佐渡司令!ありがとうございます!!」

 

 

二人は、喜びながら歩いていくのを見送るとフライパンでパンケーキを大量に作っていく

 

 

「と言われてもどうすっかなぁ?」

 

 

「その前に、あんたを蹴るわ」

 

 

「あいたぁ!?」

 

 

いつの間にか隣に叢雲がおり、片手に魚雷そして足の脹ら脛を蹴り続けている

 

 

「叢雲さん!痛いっ!辞めて!痛い!」

 

 

「え、もっと?分かったわよ!!」

 

 

「痛ぇ!?酷くないか!?」

 

 

「黙れ性欲野獣変態司令官!!」

 

 

「全てしっかりと漢字で揃えられてる!?」

 

 

叢雲はある程度蹴り終わると満足したのか台所から出ていく

 

「……地獄耳かよあいつ」

 

 

佐渡はそう呟くと痛む足を押さえながら出来上がったパンケーキを腹ペコな艦娘達に振る舞いにいく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、私達はこれで」

 

 

「佐渡司令!お姉様をお願い致します!!」

 

 

「お姉様をお願いします!佐渡提督」

 

 

「おう、気を付けて帰れよ~

あと、それレンジで温めて蜂蜜とバターかけて食べなよ~」

 

 

三人はすっかり佐渡のパンケーキを食べ満足しお土産にそのパンケーキの余りを三人に持たせている

 

 

「では!佐渡司令!!」

 

 

「あ、比叡ちゃんやちょっとちょっと」

 

 

「ひぇ?」

 

 

比叡は佐渡に呼ばれ近付くと、佐渡は口元に付いた蜂蜜をハンカチで拭う

 

 

「また来てね、今度は晩御飯をご馳走するよ」

 

 

「本当ですか!?ではまた来させて頂きます!!」

 

 

比叡は片手をブンブンと振ると霧島と榛名も手を降り別れを告げる

しばらくすると水平線に三人の姿が消えると佐渡は毛延びをしながらのんびりと歩いていく

 

 

「さってと、どうしますかね……」

 

 

先程の料理の片付けをしようと食堂の扉を開けると、そこには下を俯いたままの金剛が目の前のパンケーキを残しながら座っていた

 

 

 

 

 





次回

不幸

佐渡さんが変態に見えた
貴方は正常です



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不幸な長女 四

今回は佐渡と金剛がメインになります





「パンケーキは嫌い?それとも不味かった?」

 

 

「い、いえ!…美味しいです…

とっても……」

 

 

「なら、残さないでほしいな?

それともお腹一杯だった?」

 

 

佐渡は金剛の目の前に座り、戸棚からお茶を取り出しコップに注ぎ込み飲み始める

 

 

「……ごめんなさい」

 

 

「ん?」

 

 

突然金剛に謝られ意味がわからず、首を傾げていると金剛は小さな声で続ける

 

 

「……こんな使えない不幸な高速戦艦何かが皆様の鎮守府に来てしまって…

戦艦ですから耐久には自信があります、盾にでも使ってください…」

 

 

佐渡は、そう言われるとムカッと来てしまい金剛のデコを指でつつく

 

 

「ばっかやろ、使えないとか誰が決めやがった

ここではそんなの関係ねぇよ」

 

 

だが、ここで金剛は目を見開き佐渡の指から逃げると椅子を倒して立ち上がる

 

 

「触らないで!!!」

 

 

そう突然に言われ、流石の佐渡も驚くがここで金剛の不幸が発動する

佐渡は驚き手を勢いよく引っ込めてしまいその反動で椅子が倒れてしまいそのまま背中から床に叩きつけられ運が悪く頭を強打、そしてその振動で戸棚が開きその中にあった煎餅の入った入れ物が落ちてきて佐渡の顔面に直撃する

辺りに埃が飛び散り佐渡はゆっくりと立ち上がる

 

 

「いてて…こりゃすげえな……」

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」

 

 

金剛は土下座をしており、佐渡は椅子を直している

 

 

「ちょっと?何してるのさ?」

 

 

「私がっ!私が悪いんです!!ごめんなさい!!!」

 

 

「いやいや、大袈裟だよ……

こんなこともたまにはあるって……」

 

 

佐渡は金剛へとテーブルを回り駆け寄ると肩を触れた瞬間的また金剛が逃げる

 

 

「来ないで!!!」

 

 

その瞬間、佐渡は躓き胴体を椅子の座る部分に直撃し肺が圧迫されその振動で背中に紅茶が降りかかり冷たくなっている

そして、頭にパンケーキの蜂蜜がたっぷりとかかりベタベタになってしまう

 

 

「……わーお、なぁにこれ?」

 

 

「ごめんなさっ!!」

 

 

「あー、待って待って?」

 

 

 

流石にこれは凄いわと思いながら、ゆっくりと立ち上がると金剛が謝ろうとするのだが佐渡はそれを辞めさせる

いててと言いながら金剛を椅子に座らせると厨房へ入っていく

 

 

「さっきのが君の不幸かい?」

 

 

「………はい」

 

 

「あーごめん、声が小さくて聞こえないからもっと大きな声で!!」

 

 

佐渡は髪を軽くタオルで拭くとフライパンに火をかけ、再びパンケーキを作り始める

次は小さな奴を

すると、金剛はゆっくりとカウンターに来ており佐渡の背中を見ながら調理を観察している

 

 

「…私に触れないでください

皆さんを酷い目に合わせてしまいます……」

 

 

「ふーん?そうなのか」

 

 

佐渡は手早くパンケーキを金剛に手渡すと金剛はパンケーキを見ながら首をかしげる

 

 

「提…督?」

 

 

「とりあえず、食べよっか?

俺も食べたいし」

 

 

金剛は恐る恐る皿を持ち上げ、かなり慎重にパンケーキをテーブルに置くと安堵の溜め息を付くのだが、座ろうとした瞬間椅子の後ろ足が壊れ床に倒れてしまう

 

 

「うっ!」

 

 

「金剛!大丈夫か!?」

 

 

佐渡は心配そうに、駆け寄ろうとするが金剛は頭を擦りながら手をこちらに出している

 

 

「大丈夫…ですから…来ないでください…」

 

 

佐渡は、そう言われると心を痛めながら椅子に座るが金剛は立ったまま食べようとする

 

 

「まてまて、金剛

椅子に座りなさいよ?」

 

 

「ですが、椅子が……」

 

 

「代わりはあるんだから、ほら」

 

 

金剛は渋々壊れた椅子を端に置くと別の椅子を使い座り始める

 

 

 

 




次回

伝染する不幸とは?

早速不幸艦の本領発揮ですね……
次回、更に他の艦娘も絡み不幸は続きます



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不幸な長女 五

不幸とは中々にどんなことか書きづらいですねぇ…

インデックス読んでみようかな……




「ほい、んじゃ頂きます」

 

 

「いただき…ます」

 

 

パンケーキにお互いたっぷりの蜂蜜をかけバターが乗っておりそれをナイフとフォークで食べているがやはり金剛は手を付けようとしない

 

 

「……やっぱり嫌いか?パンケーキ」

 

 

「いえ!頂きます!」

 

 

金剛は急いでパンケーキを切り分け食べるが出来立てだからか熱くてはふはふしながら食べ始める

 

 

「どうだ?旨いか?」

 

 

「はい…はい!」

 

 

金剛は美味しそうにパンケーキを頬張っており、急いで食べたのか喉を詰まらせる

急いで佐渡が飲み物を与えると一気に飲み干し再び食べ始める

 

 

(お腹、空いてたのか?)

 

 

だが、一つ食べ終わるとナイフとフォークを置き手を合わせる

 

 

「ご馳走様でした……」

 

 

「おう、お粗末様。

すまんな、こんな物しか作れなくて

まだ、食べるか?」

 

 

「いえ!とても美味しかったです…

だ、大丈夫です!!」

 

 

(戦艦ってかなり食べるって聞いてたけどそうでもないのか?

でも比叡ちゃん達はかなり食べてたよな…)

佐渡はそう考えながら食べ終わった食器を片付けようとするとぐぅとお腹が鳴る音が聞こえる

 

 

「………ん?」

 

 

その音はもちろん佐渡ではない

目の前の金剛から聞こえており、耳まで真っ赤しながら顔を伏せている

 

 

「ふふ、おかわりいるか?」

 

 

「えっと!あの、その、……はい」

 

 

真っ赤にしている金剛を見ながら佐渡は皿を取り再び調理を開始する

今回は、大きめに焼きながらいくつも作っていくと食堂に三人が入ってくる

 

 

「あら?こんなとこに居たのね?」

 

 

「こんにちは!金剛さん!」

 

 

「この香りは、また焼いてるんですか……」

 

 

三人は入ってくると再び金剛を囲うように座りじっと金剛を見つめる

 

 

「へぇ、巫女服って言うんだっけそれ?

似合ってるわね……

あ、私叢雲よ。よろしく」

 

 

「そ、そうでしょうか…

よろしくお願いします!」

 

 

「私は古鷹一番艦 古鷹です!

金剛さん!これからよろしくお願いしますね!!」

 

 

「は、はい!よろしくお願いします、古鷹さん!」

 

 

「こちらとしては待望の戦艦ですからね

私は、大井ですよろしくお願いします」

 

 

「あ、ありがとうございます!

よろしくお願いします」

 

 

「お、自己紹介終わったか?」

 

 

佐渡が、皿一杯のパンケーキを持ってくると叢雲の目がキラキラと光る

 

 

「とりあえず、食べましょ!!

パンケーキはご飯じゃないもんね!!」

 

 

「アハハ…

叢雲は、相変わらずだね…」

 

 

「あ、金剛さん

食べながらで良いので幾つか質問があるのですがよろしいですか?」

 

 

「あ、はい!」

 

 

佐渡が、パンケーキをテーブルに持っていくと叢雲、金剛がそれをとり二人とも美味しそうに食べ始めると佐渡は大井の隣に座る

 

 

 




次回

壊滅した鎮守府?

今回、書こうと思ったら足りなかった…
許してくだせぇ…



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不幸な長女 六

「とりあえず、話は色々と聞きました

不幸…体質?何ですか?」

 

 

「はい…何故かは分かりませんが…」

 

 

「では、いくつか聞いていきますね?」

 

 

大井は、金剛にいくつかの質問をしながらそれを金剛は答えていくだが一つ気になるものがあった

 

 

「でしたら、この……不幸によって壊滅した鎮守府とは?」

 

 

「何だそれ?」

 

 

「いや、書いてあるんですよ

備考欄に、金剛の不幸が招いた鎮守府壊滅事件って」

 

 

佐渡が資料を見ると確かに金剛が原因で鎮守府が壊滅したとそれを聞かれた金剛は腕を掴みながら小刻みに震える

 

 

「……当時、私は不幸艦と呼ばれある鎮守府に引き取られました

ですが、そこはブラック鎮守府と呼ばれていました

戦艦である私は度重なる出撃を繰り返していたのですが、戦績は良くなく盾として扱われていました

その当時恋仲だったある重巡と提督に良く戦果が悪いと陰湿に苛められたのですがその際私に手を上げてしまい

 

それが原因で不幸が伝染し重巡の娘に浮気がバレてしまい、鎮守府は険悪な雰囲気になり、更にその重巡はある姫級に轟沈されてしまい……

 

更に、提督は二週間後に何者かに殺されてしまいまして、その情報が深海棲艦に流れ集中砲火を受けて壊滅

鎮守府は解体されたんです……」

 

 

「わーお、すんごい。

まぁ天罰だな、良くやった金剛」

 

 

「提督、不謹慎ですよ」

 

 

流石に鎮守府一つ潰した?金剛に驚きを隠せないが、佐渡は金剛に親指を立てて褒めるが大井にバインダーで殴られる

 

 

「とんでもないわね、それ」

 

 

「そう言えば、そんな話聞いたことありましたね……」

 

 

「ふーん……不幸ねぇ…」

 

 

 

叢雲はそう言うと、金剛の肩を掴む

掴まれた金剛はビクッとし直ぐ様離れる

 

 

「触らないで!」

 

 

叢雲はその声に驚き慌てて手を引っ込めるとその反動で椅子の足が折れ後ろへと倒れる

 

 

「あぁ……これは凄いわね…」

 

 

大井と古鷹はその様子に驚き、金剛を凝視する

 

 

「今のが……」

 

 

「伝染する不幸?」

 

 

その言葉を聞くと更に金剛は頭を抱え込んでしまう

 

 

「大井、そう言うことだ……」

 

 

と言うと佐渡は大井の肩を触るとプチッと音がする

 

 

「……プチッ?」

 

 

流石に何の音か分からず大井を見ると、大井は固まりながら顔を真っ赤にしており勢いよく立ち上がると大井の服から何かが落ちる

 

 

「大井、何か落としたぞ?

……え?」

 

 

佐渡がそれを見て拾い上げると叢雲と古鷹がビクッと震えそれを凝視し、大井を見上げるとプルプルと震えている

 

 

「えっと……

大きいな!」

 

 

「死ねぇぇぇ!!!!」

 

 

「ガハァ!?」

 

 

佐渡が拾い上げたのはホックが壊れと肩の紐が切れた大井のブラジャーだった

下着を見られ怒り浸透になった大井はぶっ飛ばした佐渡に近寄ると次は無言で蹴り続けている

 

 

「痛い!大井!すまん!悪かったって!!」

 

 

「死ね!死ね!死ねぇぇ!!!」

 

 

その姿を見ながら叢雲は大井のブラジャーを拾い上げ自分の胸と比較する

 

 

「……確かにでかいわね」

 

 

「……大きいですね…」

 

 

「二人とも!!人の下着を見ないでよ!!!」

 

 

大井は胸を押さえながら、二人から下着を奪い取り佐渡にバインダーを投げつけ半泣きしながら食堂から立ち去ってしまう

 

 

「ちょっと司令官?今のはあんたが悪いわよ?

後できちんと謝りなさいよ?

確かに大きかったけど」

 

 

「そうですよ、提督?今のは失礼ですよ

大きかったですが」

 

 

「あぁ、そうするよ……」

 

 

「と言うかあれもそうなのかしらね?」

 

 

ボロボロになりながら、佐渡が立ち上がると金剛へ近付こうとすると

 

 

「来ないで!!

ごめんなさい!ごめんなさい!!」

 

 

金剛は、頭を押さえ泣きながら食堂を走って出ていってしまう

 

 

「金剛!!叢雲!後は頼む!!」

 

 

「ハイハイ、行ってきなさい」 

 

 

佐渡もその後を追いかけ走っていき、食堂には古鷹と叢雲だけが残されてしまった

 

 

「さてと、片付けましょうか」

 

 

「そうだね、凄い娘が来たね!」

 

 

古鷹は満面の笑みを浮かべており、叢雲は溜め息を付くと荒れた食堂の掃除を始める

 

 

 

 

 





次回

何で私だけ…

今回は金剛の不幸が猛威を振るいましたね……
大井さんはドンマイとしか…




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不幸な長女 七

「ひっぐ…えぐ……」

 

 

金剛は鎮守府の食堂から逃げ出し、小笠原の港に座りながら泣いていた

辺りはすっかり夕暮れになっており日が水平線に沈みかけていた

今までもずっと変わらない景色、自分が不幸だけならまだ良い

でもそれを他の人に移し不幸にするのが彼女には耐えられないのだ

目を伏せればあの光景が浮かび上がる

 

 

「お前のせいだ!!お前の不幸が原因だ!!」

 

 

「あんたなんか!!居るんじゃないわよ!」

 

 

金剛に向けられた提督達の暴言の数々

 

 

「こんな奴と一緒の艦隊とか最悪ね…

運の尽きね」

 

 

「提督!!この人とは別にしてください!!

沈みたくありません!!」

 

 

艦娘達からの批判の声

 

 

「お前何て、金剛型の恥だ!!」

 

 

「あんたなんかとっとと死ねばいいのに!!」

 

 

触ろうとすると避けられる

 

 

「触らないで!!!あたしはあの娘みたいになりたくない!!」

 

 

「金剛、貴様は執務室に立ち入り禁止だ失せろ!!!」

 

 

(どうして……何で…私だけ…)

 

 

「あんたのせいで!!轟沈艦が出たんだけど!!」

 

 

「うぅ……何でよ…」

 

 

 

(ごめんなさい!ごめんなさい!!!)

 

 

 

「死ね!死ね!死ね!死ね!!!」

 

 

「ちゃっちゃと沈みなさいよ!!」

 

 

(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!)

 

 

「この!!不幸を呼ぶ不幸高速艦が!!!」

 

 

(ごめんなさい……ごめんなさい………

解体……嫌……もう……殺して…)

 

 

「はぁ、はぁ、金剛!!こんなところに居たのか!?」

 

 

後ろから大声で名前を呼ばれ振り返るとそこには肩で息をしていた

 

 

「提……督…?」

 

 

「ふぅ……探したぞ、全く…

うちには空母が居ないから探すのに手間取るぜ……」

 

 

佐渡は息を整え、金剛に歩いていくと金剛は立ち上がり後ずさる

 

 

「こ、来ないで!!!」

 

 

金剛の言葉に一瞬足を止めると涙でぐしゃぐしゃの金剛を真っ直ぐ見ながら問う

 

 

「俺が嫌いか?それとも男苦手?」

 

 

「違います!!私に近付くと不幸が……」

 

 

「ふーん、じゃあやだ」

 

 

「……え?」

 

 

佐渡は再び歩み始め、金剛にゆっくり近付いていく

佐渡が来ると同時に金剛も後ずさるが後ろはもうコンクリートは無く後ろは波が打ち付けている

 

 

「辞めて!来ないでください!!」

 

 

「やーだー」

 

 

金剛は歩みを止めない佐渡に脅え、海を向くと飛び込もうとする

 

 

「逃がさん!!」

 

 

佐渡は一気に走りだし、金剛の手を掴み海へ入るのを辞めさせる

 

 

「!!!

離して!!私に触らないで!」

 

 

「暴れるなって!!落ちるか……」

 

 

そう言った瞬間、金剛は足を滑らせ真っ逆さまに落ちそうになるが佐渡が何とか止めるのだが、佐渡も足が滑り二人共海に投げ出される

 

 

「……ぷはぁ!!金剛!大丈夫か!?」

 

 

佐渡は落ちた後、何とか浮かび上がるが金剛の姿が見えない

まさかと思い海を覗くと金剛が足を押さえながら沈んでいく

恐らく足がつってしまい泳げないのだろう

息を整え、海に潜ると金剛を抱き抱えながら何とか岸まで泳いでたどり着く

 

 

「はぁぁ……疲れた…」

 

 

「ご、ごめんなさい…」

 

 

金剛は申し訳なさそうに座り込み、佐渡はその頭を撫でようとするとやはり逃げ出しそうになるが腕を捕まえる

 

 

「逃げんな!!」

 

 

「離してください!!じゃないと!!不幸が!!」

 

 

「うっるせぇ!!」

 

 

そう言うと、金剛を抱き締め逃がさないようにする

しばらく金剛は佐渡の胸の中で暴れるが諦めたのか大人しくなる

 

 

 

 





次回

不幸な高速戦艦と変態提督


ちょっと金剛の過去を書かせて頂きました
詳しくは……書くと大変なんでゆるしてくだせぇ


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不幸な長女 八


男は変態、これは揺るがない





「離して……ください…」

 

 

「やーだー、寒いから金剛の体温で暖まるんだ~」

 

 

そう言うと更に強く金剛を抱き締め、金剛も手を佐渡の背中に回そうとするが辞めてしまう

 

 

「不幸が……移りますよ?」

 

 

「既に移ってるからへーきへーき」

 

 

確かに、先程佐渡は金剛に触っており既に金剛の不幸を経験している

 

 

「それに、金剛の胸と身体の感触を合法的に堪能できるからな!!」

 

 

「……変態です」

 

 

「アッハハハ!!悪いな変態で!

だが、男は皆こんなもんだぞ~」

 

 

佐渡は笑いながらも金剛の身体を離さないが金剛もすっかり佐渡に身体を預けている自分がセクハラを受けているのにも関わらず

 

 

「……私より古鷹さんや大井さんの方が良いですよ?

私は…不幸を運びますから…」

 

 

「俺は気にしないからよゆー

それに金剛いい香りだな?女の子独特の良い匂いだわ」

 

 

「ふふ、嘘つき

さっき海に落ちたじゃないですか

塩の匂いしかしませんよ」

 

 

「嘘じゃないさ!くんかくんかしてやるぞぉ!!」

 

 

「辞めてくださいよ!もう!!」

 

 

「アハハ!悪い悪い」

 

 

次第に佐渡の冗談なのか分からない変態発言に涙が止まり少し微笑むと佐渡が笑いながら金剛を見ている

 

 

「お、やっと笑ったな?このやろうやっぱり可愛いじゃねぇか!ハハ!」

 

 

金剛はそう言われると直ぐ様顔を隠し照れてしまいしばらく無言になる

 

 

「……ごめんなさい、こんな不幸な戦艦で」

 

 

「気にしないって、それより金剛の事を聞かせてくれないか?もっと金剛の事を知りたいんだ」

 

 

「分かり……ました」

 

 

 

佐渡は、金剛を話すと二人で砂浜に座り話始める

今まで不幸の数々、そして胸の内を

 

 

「……と言う事です」

 

 

「成る程なぁ、つまりあれだな

全部金剛のせいにしてたってことだろ?」

 

 

「違います!!私が不幸だから……皆さんに伝染させるから……」

 

 

「嫌考えても見ろ?確かに金剛は不幸なのかもしれないでも、そんな鎮守府を壊滅させたとか言うけどあり得ないだろ

元々狙われてたんじゃないか?後、轟沈に関しては提督が悪い

艦娘をしっかりと導けなかったな」

 

 

「で、でも!!」

 

 

金剛が反論をしようとすると佐渡は口を押さえさせ、無理矢理にでも反論させないようにする

 

 

「良し!決めたお前の命令!」

 

 

そう言うと佐渡は立ち上がりと金剛は頭を伏せる

どうせ内容は決まっている

近付くな、別の鎮守府へ移動しろ等

この提督もどうせ変わらないと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これから一週間!俺と共に生活をしてもらうぞ?」

 

 

「…………ぇ?」

 

 

 

だが、金剛のその思いに反して佐渡が言った命令は真逆の物だった

 

 

 





次回

不幸な一週間、始まります!

触れられることすら許されなかった彼女は困惑する提督の能天気兼馬鹿さ加減に……みたいな?


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不幸な長女 九

「だから、俺と共に一週間生活をしてもらうぞ?

あ、寝るとき風呂、トイレは別々よ?

それ以外な、食事、仕事はずっと一緒だ!!」

 

 

「ちょっと待ってください!そんなの駄目です!!

提督の身が持ちませんよ!」

 

 

「だから、証明してやる」

 

 

「…え?」

 

 

佐渡は金剛に向き直り頭を優しく撫でながら笑みを浮かべる

 

 

「お前の不幸何て物がどれ程ちっぽけで俺がそんなことを気にしないって証明してやるよ!」

 

 

「で、でも……」

 

 

「提督命令だぞ~?規約違反で憲兵さんに捕まっちゃうぞ~?怖い目に合っちゃうぞ~?」

 

 

「それでも!!私は提督が不幸な目に合うのは嫌です!!」

 

 

金剛は、ここに来て初めてはっきりと意見し佐渡に食いかかってるのを見た佐渡は更に頭を撫でながら笑う

 

 

「ハハ、お前は優しいんだな!

それとも男と一緒は嫌か?」

 

 

「そんなんじゃありません!!

霧島や比叡から提督がどんな方は聞いています!

正直、確かに一緒には居たいですが……」

 

 

「ほい、んじゃ決まりな

ほら行くぞそろそろ身体がベタついて構わん」

 

 

佐渡は金剛の手を取り鎮守府へ向けて歩いて行こうとすると金剛は手を払おうとする

 

 

「離してください!」

 

 

「やーだよ、それに命令は始まってるから従って貰うぞ?

ほら戻るよ金剛~

それに絶対に離さないからな」

 

 

半分強引に、金剛を連れていくが金剛はこの状況に全く付いていけてなかった

今まで、こんなことあり得なかったから

 

 

 

 

 

 

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ーーーー

 

場面は代わり夜食堂

あの後、二人は風呂に入りさっぱりした後からずっと一緒におり現在五人で晩御飯を囲んでいる

そして、佐渡の隣には金剛がきちんといる

 

 

「……と言うわけです良いよな?」

 

 

「…何がと言うわけですか説明してください」

 

 

大井は、食事をしながら佐渡を睨み付けている

あの後大井に土下座をすると「今回だけ多目に見ます、次は酸素魚雷撃ちますからね?」と言われ何とか許してもらった

 

 

「嫌だから、かくかくしかじか四角いムーブ?」

 

 

「分かりませんし、CMネタ持ち込まないでください

分かる人絶対居ませんよ?」

 

 

「え?分からないの大井

簡単に言うと金剛と一緒に一週間過ごして不幸なんて大したことないって証明するんでしょ」

 

 

「何で分かるのよ……」

 

 

叢雲はテーブルに肘を付きながら金剛を見ており金剛は顔を伏せている

 

 

「ふーん……まぁ良いんじゃない?

司令官が決めたことだし、どうせやましいこと考えているとは思うけど」

 

 

「待て、叢雲さんや俺はそんなこと考えて……待て大井

無言で主砲を俺に向けるな辞めろそんなこと考えてない辞めろ落ち着け」

 

 

「どうせ、その不幸に乗じて金剛さんの身体触りまくって「ぐへへ、戦艦の身体は最高だぜ」とか「しおらしい金剛たんの弱味漬け込んで襲っちゃうぜぇ」とか考えてるのよこいつは」

 

 

「て  い  と  く?」

 

 

大井はどこからか取り出した酸素魚雷を片手に持ち上げると佐渡へ向けて投げようとしてくる

 

 

 

 

 





次回

取り決め

叢雲の勝手な言い分に理不尽に大井に攻撃されそうになる佐渡さんくそわろす(作者)



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不幸な長女 十

理不尽な暴力が佐渡を襲う!




「まてまてまてまて!!!俺そんな考えしてませんけどぉ!?」

 

 

「でも、実際は?」

 

 

「あったら……良いな」

 

 

「酸素魚雷当てますね、死ね変態提督!!」

 

 

「落ち着け大井さんんん!!今食事中なんですけどぉ!!」

 

 

 

目の前で起こる騒ぎに、金剛は顔を伏せていると隣にご飯茶碗を片手に古鷹が隣に座ろうとし肩を叩くとビクッと反応する

 

 

「お隣、よろしいですか?」

 

 

「……は、はい」

 

 

古鷹が隣に座ると触ったときの不幸なのか、同時に醤油が溢れるのだが古鷹は気にせず布巾で拭くと座る

 

 

「金剛さん、この鎮守府は楽しいですよ

多分金剛さんも気に入ってくれるはずです」

 

 

「でも……私のせいで提督と大井さんが喧嘩を…」

 

 

「ふふ、三人をよく見てください」

 

 

「え?」

 

 

金剛が喧嘩をしている大井と佐渡を見るが、確かに言い合いこそはしてるものの二人とも笑顔だ

それに、加え叢雲も二人を横目に微笑んでいる

 

 

「どうして……」

 

 

「この鎮守府はみんな仲良しですから

金剛さんも時期に分かりますよ」

 

 

古鷹は、微笑みながら食事をしているが唐突に大井がテーブルを叩きその場を制す

 

 

「……取り決めをしましょう」

 

 

「おう?秘書艦様何を決めるんだい?」

 

 

「提督と金剛さんのです!!」

 

 

大井は眼鏡とバインダーをどこからか取り出す

(大井のあの四次元ポケットなんだドラ◯えもんか?)

そう考えていると大井は眼鏡をくいっと上げると話し出す

 

 

「とりあえず、ここでは幸いほとんど出撃がありません

メインとなるのは家事、食料調達、書類整理、演習、対人戦闘訓練、です

金剛さん、何かやったことはありますか?」

 

 

「えっと……無いです…」

 

 

「でしたら、家事は古鷹さん、食料調達は提督、書類は私が、そして、叢雲には対人戦闘、演習を手伝ってもらいます

各々よろしいですね?」

 

 

「構わないわよ、戦艦相手は新鮮で楽しそうね」

 

 

「私も!大丈夫です!!正直人手が足りなくて大変でしたから……」

 

 

「俺も構わんが、大変だぞ?」

 

 

全員の承諾を確認すると、バインダーに何かを書いていき明日からのスケジュールを組むみたいだ

一通り書き終わった後、大井はバインダーを別の机の上に置く

 

 

「とりあえず、食べましょうか

折角のお料理が冷めてしまいますし」

 

 

「いや、大井さんやお主が始めた…」

 

 

「ああ?」

 

 

「ゴメンナサイナンデモナイデス」

 

 

佐渡が謝ってると叢雲はその姿に笑うのだが溜め息と共に食事を再開する

 

 

「明日から楽しみですね!金剛さん!」

 

 

「え、あ、はい…?」

 

 

金剛はこの状況が分からず、とりあえず古鷹の言葉に頷き返事をするしか無かった

これから、小笠原鎮守府で起こる楽しい?騒動の幕開けになるとも知らずに

 

 

 

 

 

 

 




次回

古鷹さんと家事手伝いをしよう!

次回から小笠原鎮守府の一日を書いていきます!
戦闘無しのゆるい生活をご覧くださいませ!



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不幸な?一週間! 一日目

今回は、古鷹さんと金剛がメインとなります
少しの変態佐渡アリですがね!!


次の日、佐渡と金剛は古鷹に鎮守府の家事を教わる為に脱衣場に来ていた

二人とも古鷹に言われ服装はジャージを来ている

 

 

「さてと、んじゃやるぞ金剛!デッキブラシは持ったか?」

 

 

「は、はい!」

 

 

金剛は脱衣場のロッカーに合ったデッキブラシを持ってきており佐渡はスポンジを持っている

 

 

「良し、入るぞー!」

 

 

ガラッと脱衣場から風呂場に入ると古鷹がデッキブラシを床に擦りながら掃除をしていた

いつもやっているわけではないが、ここでの掃除は三日に一度

そして、今日がその日なのだ

 

 

「あ!二人とも来てくださったんですね!! 」

 

 

「おう、俺達は何をすればいい?」

 

 

「では、提督は蛇口回りを金剛さんは私と床の掃除ですね!」

 

 

「オッケー、んじゃやろっか」

 

 

「は、はい!分かりました!」

 

 

佐渡と金剛は別れて各々決められた仕事をこなしていく

その間金剛はデッキブラシでの掃除に馴れてないのか、おぼつかない様子でやっているのを見ていた古鷹からアドバイスを貰う

 

 

「金剛さん、もっと力込めても大丈夫ですよ?」

 

 

「はい!」

 

 

古鷹から言われると、金剛は少し力を込めたのだがその瞬間デッキブラシが滑り体勢を立て直そうとしたのだが近くに何故か落ちていた固形石鹸を踏みつけずるんと滑り頭を床に打ち付けてしまう

 

 

「いたた……」

 

 

「金剛さん!!大丈夫ですか!?」

 

 

古鷹が心配そうに駆けつけようとするが、ここでも不幸なのかそれともただのおっちょこちょいなのか古鷹も足を滑らせ宙を舞う

 

 

「あ」

 

 

「え?」

 

 

その瞬間、古鷹が金剛に突っ込んでしまい辺りに石鹸やらシャンプー等が宙を舞うと二人とも頭からボディーソープを被ってしまい

石鹸でぬるぬるになってしまう

 

 

「うぅ……ぬるぬるする…」

 

 

「ご、ごめんなさい!!」

 

 

「大丈夫ですよ、私がキチンと片付けてやってなかったのが悪いんですしそれに」

 

 

そう言いながら古鷹はふふ、と笑いながら金剛の顔を触り鏡へと向けさせる

 

 

「金剛さん、真っ白な血を流してますよ頭から

戦闘したあと見たいです」

 

 

「え?」

 

 

金剛は鏡で顔を見ると頭の天辺に見事シャンプーが乗ったままそこから髪を伝い顔へ頭から血を流した見たいになっている

 

 

「どうせですから流しちゃいましょうね」

 

 

古鷹は、蛇口をひねりシャワーを使い金剛の頭を洗っていく

 

 

「金剛さん、綺麗な髪ですね

何かお手入れとか、してるんですか?」

 

 

「い、いえ……」

 

 

古鷹は髪を洗い終わるお互いびしょびしょになりながら、微笑む

 

 

「ふふ、お風呂と一緒に私達も綺麗になりましたね!」

 

 

「はい!」

 

 

「ところで私のデッキブラシ……」

 

 

「そう言えば私のも……」

 

 

二人がデッキブラシを探していると声が聞こえる

 

 

「………お二人さんや、俺に何か恨みであるのかい?」

 

 

二人がその声の主、佐渡を見ると先程の二人より悲惨な状態になっていた

二つのデッキブラシが首から背中に刺さり腰に打ち付けるように支えてあり全身に固形石鹸とボディーソープやらシャンプーをすべて被っていながら固まっていた

 

 

「提督ーー!?」

 

 

「ご、ごめんなさいい!?」

 

 

古鷹と金剛は急いでデッキブラシや固形石鹸を取り払い二人で謝罪する

 

 

「ふむ、だがこれは良いな……」

 

 

「え?」

 

 

だが、佐渡は金剛と古鷹の状態を見ながら満面の笑みを浮かべている

 

 

「二人のジャージがピッチリとくっ付きその肌にくっ付きプロポーションが良く分かる

古鷹は胸はそこそこ大きくだがしっかりとウェストは引き締まりヒップも中々ある

対して金剛は胸は中々に大きく、ウエストの俺好みに引き締まり、ヒップもいい感じに大きい

うん、ええ光景や……下着が見れないのは残念だけどな」

 

 

「提督の変態馬鹿ー!!」

 

 

古鷹は、佐渡に思い切りビンタを加えるとそのまま佐渡は横移動するように滑っていき桶などに当たっていき石造りの浴槽に頭を直撃し宙を舞っていた桶などを佐渡に降り注ぐ

 

 

「生涯……悔い…あるな…ガクッ」

 

 

「ああ!!ごめんなさい!!」

 

 

 

佐渡は頭を打ち付け、気を失ってしまい古鷹は大急ぎで助けに向かい金剛もそれを手伝っていた

この後皿洗いや鎮守府の掃除をしていたが、古鷹へは特に不幸は降り注がず佐渡への不幸がかなり酷かったと金剛と古鷹は語っている

 

 

一日目!終了!!

 

 

 

 




次回

山!海!食材の宝庫!!

今回は佐渡が十割悪いですねはい
次回は小笠原鎮守府の食事情を書いていきます!


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不幸な?一週間! 二日目

今回は、佐渡、古鷹、大井、叢雲の面々で小笠原鎮守府での食材を取りに行きます!




「と言うわけで、今日は材料を取りに行くぞ?」

 

 

「分かったわよ~」

 

 

「頑張りますっ!」

 

 

「はぁ、まぁ仕方ないですよね……」

 

 

「えっと……どこにですか?」

 

 

「どこって、そこらへん」

 

 

佐渡は、海と山を指差すと金剛は首をかしげる

 

 

「でも、私達艦娘に食事は……」

 

 

「駄目よ!!金剛!!ご飯は大事よ!!」

 

 

「そうだぞ!金剛!!食事は大事だ!!

皆で食べるからこそ意味があるんだよ!!」

 

 

「は、はい…ごめんなさい…」

 

 

二人の気迫に押されていると大井が肩を叩く

 

 

「駄目よ、この二人食べ物にはうるさいですから何言っても無駄なのよ……」

 

 

「は、はぁ…」

 

 

「二人ともご飯大好きですからね……」

 

 

三人を置いていきながら、叢雲と佐渡はやる気満々にそれぞれの担当場所にいこうとする

佐渡、金剛、古鷹は海で魚を

大井、叢雲ほ山でキノコなどの山菜を

そして、佐渡と金剛は二人で釣りをしており、古鷹は沖合いに出て罠を回収しに行っている

 

 

「……提督」

 

 

「んー?」

 

 

「釣れませんね……」

 

 

「そんなもんさ」

 

 

二人はかれこれ二時間ほどやってはいるが一向に当たりは来ない

佐渡は特に気にもしてないのだが金剛は次第に落ち込んでいく

 

 

「ごめんなさい…私のせいで」

 

 

「嫌、金剛は特に何もしてないでしょ?」

 

 

「でも……当たり来ませんよ?」

 

 

「そんなもんよ、ついでに暇だから話すか?」

 

 

佐渡は、竿を置き金剛の隣に座ると手をを握る

 

 

「……不幸移りますよ?」

 

 

「へーきへーき、こんな海でどんな不幸があるってのよ

雲一つ無い快晴だし、不幸要素皆無だぞ?

それよりも金剛たんの手をにぎにぎしたいお」

 

 

「……馬鹿…

ここは平和ですね」

 

 

「だろ?戦争中なのにな」

 

 

二人は穏やかな海と戦争のせ文字も無い現在の状況をゆっくりと楽しんでいた

少しすると、金剛が佐渡の手を握り返す

 

 

「私は…」

 

 

金剛が何かを言おうとしたが、急に竿が曲がり引き始める

 

 

「お!!金剛来たぞ!」

 

 

「え、え、え?」

 

 

佐渡が急いで竿を持ち上げ引き始めるのだがかなりの大物らしく結構キツイ

金剛も急いで加勢するがかなり大きいらしく二人で何とか引き上げる事に成功したのだが

 

 

「おぉ……おぉ?」

 

 

「えっと……これは?」

 

 

釣り上げたのは、なんと言うか良く分からない、そもそも魚なのかどうか分からないのだが、全身真っ黒でありそこそこの巨体であるのだが見た目が深海棲艦の駆逐イ級(以降駆逐イ級)にそっくりなのである

 

 

「え、何これ食べろって?無茶言うなよ……

捌ける……かな?」

 

 

「提督……この子泣いてませんか?」

 

 

「え?」

 

 

良く見ると駆逐イ級の目から涙の様に流しており金剛が可哀想な顔をしている

 

 

「……仕方ねぇな…」

 

 

佐渡は駆逐イ級を何とか持ち上げ海に返してやると駆逐イ級が顔だけ海面に出し佐渡達を見上げる

 

 

「もう、魚の餌なんて食べるんじゃねぇぞ!

次は捌くからな!」

 

 

駆逐イ級は、頷くと海の中へと潜っていく

 

 

「…………あれ?俺これ不味いことしたんじゃね?」

 

 

「提督ー!!ただいま戻りましたー!」

 

 

水平線から手を振りながらこちらに向かってくる古鷹を見ると振り返すと「まぁ良いか」と呟く

 

 

この後、結局三人で釣りをしていたのだがさっぱり釣れず夕方頃に叢雲と大井と合流したのだが叢雲は多くの山菜を運んでいるのに大井だけ異様に濡れており理由を聞くと

どうやら、川の苔に滑って盛大に転けたらしくその際山菜も流れ全身冷たい川に入ったと言う話だ

今回の不幸は大井に降りかかったらしい

 

 

「うぅ……何で私だけ…」

 

 

「ごめんなさい!!!」

 

 

 

二日目、終了!!

 

 




次回

真面目?な艦隊お仕事

大井さん、災難でしたねぇ
イ級に関してはぶっちゃけ何となく書きました許してください!!
次回、大井さんとの真面目なお仕事です!



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不幸な?一週間! 三日目

今回は、大井と金剛主体の話になります!




「さてと、では始めますよ二人とも

今日はしっかり仕事してもらいますからね」

 

 

「へーい」

 

 

「は、はい!」

 

 

次の日、佐渡達は提督室に集まり書類仕事の整理をしていた

基本的にここでの仕事は大井と佐渡のみなのだが、今回は金剛も一緒にやることになっている

 

 

「では、金剛さん

教えていきますので、こちらに来てください」

 

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

 

金剛は大井に付いていき今日の仕事関係に関して話しているのを見ながら椅子にもたれ掛かりサボろうとすると大井から魚雷に似たクッションを投げつけられる

 

 

「提督?サボってないでキチンと仕事してください?」

 

 

「へいへい……」

 

 

佐渡は渋々書類仕事をこなしていくのだが、大本営から来たある資料に手が止まり凝視していると大井に再びクッションを投げつけられるが受け止める

 

 

「て い と く?」

 

 

「あー、待て待てちょっとな?」

 

 

「全く、何見てるんですか?」

 

 

佐渡が必死になって、見ているものが気になり大井と金剛も覗き混むとそれは大本営からの警告と言うか注意喚起の封書だった

 

 

「警告、鎮守府各員提督達ヘ

昨日確認サレタ殺人事件ハ『提督殺シ』ノ可能性ガ高イ

各々警戒ヲ怠ルナ

 

    大本営より

 

だってさ?大井分かるか?」 

 

 

 

「提督殺し……また出たんですね…」

 

 

大井は、その名前を見た瞬間顔が曇る

心なしか金剛も嫌そうな顔をしている

 

 

「知ってるのか?」

 

 

「はい、有名な殺人鬼です

その独特な犯行と手口から海軍ではかなり」

 

 

「どんなだ?」

 

 

「提督のみを殺すんです、正確には『艦娘を指揮する者や艦娘を非道に扱う者』をですがね」

 

 

それを聞いた佐渡は背中に氷を入れられたかの様な寒気に襲われる

正に今の佐渡がその対象だからである

 

 

「手口は簡単です

提督やターゲットが一人になった夜に行われます

あるものは解体され、あるものは砲撃で一撃で、あるものは身体を生きたまま燃やしたり等方法は残忍極まりません」

 

 

「じ、実は私の元提督もその提督殺しの犯行だったらしいんです……」

 

 

「マジかよ恐いなこの仕事

つか、何で捕まらないんだ?」

 

 

「証拠が無いんです、何にも」

 

 

「は?殺してるのにか?」

 

 

「えぇ、目撃証言は愚か、指紋、毛髪等は一切見付からないそうなんですよ

まぁ、ここは島ですから狙われるとは思えないですけどね」

 

 

「へ、へぇ……」

 

 

そう言いながらもかなり動揺しておりお茶を飲もうとするが空になっているのに気付く

 

 

「あ、私持ってきます!」

 

 

金剛はお茶を持ってこようと運んでくるのだがここでもお決まりの不幸が発動し何もないところで躓き熱いお茶が宙を舞う

 

 

「あ」

 

 

「あ?」

 

 

「はい?」

 

 

そのお茶は見事佐渡の頭に直撃し流石の熱さにあわてふためきながら床に転がる

 

 

「あっつぅぅぅぅ!!!!」

 

 

「ご、ごめんなさい!」

 

 

「ちょっと提督そんなに暴れると!」

 

 

佐渡がゴロゴロと床を転がり回っていると机に激突し山の様に積まれた書類が崩れ落ちたお茶で濡れていく

 

 

「あぁぁ!!!書類がぁぁぁ!!

金剛さん手伝って!!」

 

 

「は、はい!!」

 

 

慌てて書類を回収しようとするが、大井は書類に足を滑らせ金剛の頭に激突する

 

 

「いったぁ……」

 

 

「いたた…」

 

 

金剛は頭の痛みに耐えきれず後ろへと後退ると戸棚に激突し上に合ったお菓子が入ったアルミ缶が落下し頭を直撃し気絶してしまう

 

 

「ちょっと司令官、なんの音?」

 

 

叢雲が、部屋に入ってくるとそこには惨状が広がっていた

床を転がり悶え苦しむ佐渡

頭を押さえ痛みに苦しむ大井

アルミ缶が頭に乗ったままの気絶している金剛

ばら蒔かれた書類 

溢れたお茶

 

 

叢雲は見渡しながらため息をつく

 

 

 

「あんた達……何してるのよ…」

 

 

 

 

 




次回

叢雲式砲撃演習!


今回、後半酷かったですねぇ
主に佐渡が悪い(暴論)




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不幸な?一週間! 四日目

叢雲が教える砲撃演習です!
叢雲だからこそ行える事もありますけどね…




「んで、今回は私ってこと?」

 

 

「そうなるわね」

 

 

「が、頑張ります!」

 

 

「金剛さん、気張りし過ぎないでくださいね?」

 

 

現在、四人は海上の上でそれぞれ艤装を纏いながら立っていたのだがやはり三人は金剛へ視線を集めていると金剛は申し訳なさそうにする

 

 

「な、なんですか……」

 

 

「へぇ…良いわねやっぱり戦艦って」

 

 

「こんなに砲門あって重くないの?」

 

 

「私より多いですね……

火力も高そうです」

 

 

「お前らー!演習しろー!!

早く金剛と遊びたいんだけど俺~?」

 

 

 

三人はまじまじと金剛の艤装を見ているが岸に居る佐渡から注意されるのだが大井は佐渡へ砲門を向ける

 

 

「提督~?金剛さんへの過剰なスキンシップは許しませんよ?」

 

 

「何でだよ!!良いじゃないか!!

金剛柔らかいんだもん!!」

 

 

「良くないですわ!!この性欲野獣提督!

あんたなんかに金剛さんは渡さないわよ!!」

 

 

「あんた達?どうでも良いけどやるの?やらないの?

やらないなら二人とも雷撃で吹き飛ばすわよ?」

 

 

「「ごめんなさい、お願いします」」

 

 

「あはは……」

 

 

三人コントの様な流れを一通りやると、大井も主砲を構えそれに続き金剛、古鷹も構える

 

 

「じゃあ、あれ撃ち抜いて」

 

 

叢雲が指差したのは金剛達から百メートル程離れた三つの的である

ここからではかなり距離がありしかも的が通常の半分、車の窓位の大きさである

 

 

「はい、開始」

 

 

そういい終わると、叢雲は手を叩き特に何かを教えるわけでもなくただ海面に座り始める

 

 

「え?え?」

 

 

流石にどうすれば良いのか分からず困惑する金剛の隣では大井が必死になりながらその的目掛けて砲撃している

 

 

「この!この!!」

 

 

だが、大井の砲撃は的の側を掠める程度で全く命中していない

一方古鷹は静かに息を吐くといつもの優しい感じとは違い冷静に確実にその的を狙う

 

 

「良く狙って……撃て」

 

 

古鷹が放った砲撃は弧を描き的の少し上を狙うのだが、距離により砲弾はゆっくりと高度を落とし見事的の真ん中を命中させる

 

 

「相変わらずね、古鷹

休んでて良いわよ?」

 

 

「やった!ありがと叢雲!」

 

 

古鷹は、的当てを終えると叢雲の隣に移動し大井と金剛の様子を見ると金剛はゆっくりと砲門を的に向け照準を揃える

 

 

「撃てぇ!!」

 

 

金剛の艤装から、ずっしりとした重い砲撃音に叢雲と古鷹は聞き惚れ大井は驚いている

 

 

「うん、やっぱり良いわよね戦艦って」

 

 

「そうだね……ずっしり来るよね…」

 

 

だが、金剛の砲弾は的の遥か上を通りすぎ見事に外れてしまう

 

 

「ほらー、当たるまでやりなさいよー金剛ー?」

 

 

「は、はい!!撃てぇ!!」

 

 

と勢い良く叫びながら砲撃をしようとするのだが一向に砲弾が射出されない

 

 

 

「……金剛?砲撃は?」

 

 

「金剛さん?」

 

 

「あれ?」

 

 

「金剛さん大丈夫ですか?」

 

 

 

疑問に思い叢雲と古鷹も近付くのだが次の瞬間金剛の艤装が大爆発を起こし金剛は倒れてしまう

 

 

「ちょ!ちょっと金剛!?」

 

 

「金剛さん!?大丈夫ですか!?」

 

 

「提督!彼女をドッグに!!」

 

 

「分かった!!急げお前達!!」

 

 

幸い艤装の爆発だけで、特に異常は無かったのだが修理に二日はかかるらしい

爆発の原因は長い間使われてなかったのと整備不良だったらしい

 

 

 

 

 




次回

親方に会いに行こう!

爆発オチ最低?ハハハ、今更()



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不幸な?一週間! 五日目

今回は、親方妖精と工廠のお手伝いです!

工廠は危険が付き物ですよねぇ




「さて、着きましたよ

ここが工廠ですよ」

 

 

「は、はい!」

 

 

「親方妖精がここを仕切ってるんだぜ?金剛さんや」

 

 

現在、三人は工廠に来ている

理由は簡単に親方呼ばれたかららしい

何でも戦艦専用艤装が完成したと言う報告だ

その試運転をかねての事だ

 

 

佐渡は、工廠の扉を開けると至るところから火花や鉄の叩く音、溶接している音が聞こえる

 

 

「おっやかたーさーん!!いーまーすーかー!?」

 

 

「おう、来たか提督待ってたぜ」

 

 

親方は相変わらず、工廠の入り口近くにあるドラム缶に立っており妖精達の仕事を見ていた

佐渡が手を出すとそれに乗り肩へと移動する

 

 

「ほう?嬢ちゃんが戦艦の金剛ちゃんか

俺はここの監督親方妖精だ

よろしくな!!」

 

 

「は、はい!よろしくお願いいたします!」

 

 

親方は笑顔で金剛に挨拶すると金剛もそれに頭を下げながら答える

 

 

「所で、親方さん

金剛の艤装は……」

 

 

「あー、あれか

あれは掛かるな、主砲が中からイカれてるからな

それに良くもまぁあんなにメンテナンスしてないもんだ

まるで半年手すら付けてないくらい酷かったぜ?」

 

 

「そうなんですか……」

 

 

「ま、その代わりにこんなもんを作ったんだわ

見てくれ、提督と大井ちゃんと金剛ちゃんや

俺の新作さ」

 

 

親方が、妖精達に合図を出すと妖精達は製造室に入っていき扉が開くとクレーンに吊るされたかなりデカイ砲門もとい艤装がこちらに向かってくる

 

 

「親方さんこれは?」

 

 

「実はな、明石ちゃんから設計図を貰ってな

作ってみたんだ 試製35.6㎝三連装砲だ

戦艦クラス専用の艤装だな」

 

 

そう言うと妖精達がクレーンをゆっくり下ろすのだが、やはりかなりの重量があるらしくズシンと重みが伝わってくる

 

 

「へぇ、これは…威力高そうですね

で、親方さん資材はかなり消費を?」

 

 

「いんや、設計図があったから一発で成功したよ

設計図さえあればこんなん余裕余裕!」

 

 

親方は笑いながら大井の言葉に返すと三人はその艤装を眺めていると親方から金剛へ言われる

 

 

「とりあえず、金剛ちゃんよ

着けてみてくれないか?」

 

 

「は、はい!!」

 

 

金剛は嬉しそうに艤装をも持つと自分の艤装に付ける

中々に様になっており佐渡も頷きながら喜んでいる

 

 

「どうだい?感覚は」

 

 

「問題ありません!!」

 

 

「よっしゃ!それなら今日からその主砲は金剛ちゃんの物だ!大事に使ってやりな!!」

 

 

「ありがとうございます!!

わぁ……新装備…」

 

 

「良かったですね、金剛さん」

 

 

「はい!!」

 

 

金剛は自分に取り付けられた装備を見ながらかなり喜んでいる

 

 

「ありがとね、親方さん」

 

 

「良いってことよ、俺達はああやって喜んで貰えるだけで嬉しいんだからな」

 

 

喜んでいる最中、艤装を外そうと金剛が35.6㎝砲を持ち上げるが良くわからないが奮闘している

 

 

「……あれ?」

 

 

「どした、金剛?」

 

 

「外れないです……あれ?」

 

 

「手伝いますね!」

 

 

大井も外そうと努力するのだが、やはり外れない

妖精達も加わり、何とか外そうとし何とか外れたのだがその反動で金剛は転けてしまう

そして、不幸が発動する

金剛が転け手を付いた所にオイルがあり、更に頭を打ち付ける様に転ぶ

その衝撃で艤装に入ってないはずの砲弾が砲撃され天井を撃ち抜く

しかも、それに収まらず

焼き焦げ穴が空いた天井から鉄骨が落ちてきて、それが偶然にもクレーンのスイッチな当たり大井の服の襟を釣り上げる

 

 

「え?」

 

 

「不味い!!お前達!すぐにクレーンを止めろ!!

大井ちゃんが燃やされちまう!!」

 

 

そのクレーンの次の行き先は溶鉱炉

もしも駄目だったらすぐに廃棄できるようにと親方が設定しており大井を釣ったクレーンはゆっくりとそこに向かっていた

 

 

「おやかたー!」

 

 

「とまらないよー!」

 

 

どうやらさっきの衝撃で、クレーンのスイッチが壊れたらしく一切言うことを聞かなかったその間もクレーンはゆっくりと動いていく

 

 

「いやいや!!外れなさいよ!!」

 

 

何とか暴れて外そうとするが、クレーンはしっかりと襟を外さずにしていると佐渡が走り始める

 

 

「大井!!」

 

 

佐渡は、工廠の機材を踏みながら真っ直ぐ大井へと向かい襟を腰に予備として持っていた銃で正確に撃ち抜くと襟からクレーンが外れ大井が落ちるのだが佐渡は抱き抱え何とか事なきを得る

 

 

「ふぅ……大井大丈夫か?」

 

 

「え、えぇ……ありがとうございます…」

 

 

「二人ともごめんなさい!!!」

 

 

「ふぅ……良かったぜ…」

 

 

こうして、危機一髪の五日目は終了した

 

 

 

 





次回

佐渡&叢雲の対人演習!!

何か大井さんが被害に合いまくってる?
気のせい気のせい




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不幸な?一週間! 六日目

今回は、佐渡が叢雲に教えている近接戦闘訓練になります




「さってと、んじゃ全員準備運動終わったか?」

 

 

「はい!」

 

 

「オッケーよ」

 

 

「ふわぁ~……眠い」

 

 

「は、はい!!」

 

 

現在全員は、ジャージに着替えており砂浜に来ており全員は艤装を装備している

と言っても親方に作って貰った模擬の艤装であり、主砲は墨が染み込んだゴム弾になっている

今日はいつも叢雲がやる海上での近接戦闘に関してをやるらしい

 

 

「じゃ、叢雲全員に基礎から教えてあげなさい」

 

 

「はいはい、じゃあ教えていくわよ」

 

 

叢雲は三人の前に歩いていくと戦闘に関してを軽く教えていき二組に分かれ実戦をするらしい

古鷹、大井のペア

叢雲、金剛のペア

でやるとのことだ

 

 

「さてと、んじゃ金剛やりましょうか?」

 

 

「はい!!お願いします!!」 

 

 

金剛が主砲を構えるのだが、叢雲は特に何かをするわけでもなく棒立ちしている

 

 

「どうしたの?来ないの?」

 

 

「えっと?なにもしないんですか?」

 

 

「別に、あんたなんかに負けるわけないし

背中向けてても余裕よ

不幸なだけが取り柄だもんね」

 

 

その言葉にムカッと来た金剛は主砲を構え叢雲に向けて砲撃するのだが、叢雲は意図も容易く避けてしまう

 

 

「嘘!?」

 

 

「どうしたのー?戦艦ってのはこんなもん?

これなら、金剛形ってのは大したことないのかしら?」

 

 

その言葉に更にムカつきやけになりながらも叢雲に主砲を構え撃つのだがやはり避けられてしまう

 

 

「もしかして、姉妹達もこんなもんなのかしらねぇ?

嫌、もっと弱いのかしら?」

 

 

「今の言葉……撤回してください!!!」

 

 

金剛は、姉妹達を馬鹿にされたのが一番腹に来たのか叢雲に全力で向かっていきながら主砲を撃とうとするのだが

 

 

「甘いわね」

 

 

その瞬間叢雲は金剛へ向かい走り出すと金剛は驚きながらも何とか攻勢に出ようとするが叢雲と金剛では差が大きく主砲を叢雲に構える前に腕を掴み引っ張ると同時に首を掴みそのまま地面に叩き付ける

あまりの苦しさに目を塞ぎ喉に手を当て苦しんでいると額に冷たいものを感じる

眼を開くと叢雲の越にある主砲が額と心臓を狙っていた

 

 

「はい、私の勝ちこれで貴女は一度死んだわよ?」

 

 

金剛は唖然としていると叢雲は主砲を放し金剛に手を差しのべる

 

 

「ごめんなさいね、少し本気を出させて貰ったわよ

それと、さっきの姉妹艦達への暴言と罵倒は謝罪するわごめんなさい」

 

 

「い、いえ……」

 

 

金剛は叢雲の手を取り立ち上がるのだが先程の速すぎる動きに頭が着いていけず、ぼーっとしてしまう

 

 

「金剛、覚えておきなさい

近接戦闘において、一番大切なのは主導権を握ることよ

絶対に相手に有利な状態にさせないことさせたら負けよ

後、さっきの罵声の意味は貴女を怒らせ油断を誘うためよ

まともに貴女とやりあっても私は勝てないし」

 

 

「な、成る程……」

 

 

「私は、私のやり方があるように貴女は貴女である戦艦のやり方で戦いなさい

それが一番よ」

 

 

叢雲が近接戦闘の事を教えている最中に佐渡に頭を殴られる

 

 

「いったいわね……何するのよ!!」

 

 

「やり過ぎ!言い過ぎだ!この馬鹿!!

金剛は新人だぞ!それと姉妹艦を馬鹿にするのは許さん!」

 

 

「悪かったわよ……」

 

 

叢雲は珍しく反省しながら歩こうとした瞬間何かを踏み足を痛める

 

 

「いったぁ!!」

 

 

踏みつけたのはウニの殻

何でここにあるのかは分からないが叢雲はそれを踏みつけ後ろに倒れるとそのまま佐渡も同じように倒れる

 

 

「おぉい!?」

 

 

佐渡は倒れた瞬間背中に痛みが走り転がると背中にもウニ(中身入り)のが三つほど刺さっておりかなり痛そうだ

 

 

「提督!大丈夫です……あ」

 

 

「あ」

 

「うそん……」

 

 

金剛が心配して駆け寄ろうとすると足下にあった、雑誌に滑り叢雲と佐渡を押し潰す

叢雲は金剛の胸に、佐渡は再び背中にウニが刺さってしまう

更に不幸は続きその衝撃で叢雲の艤装にあった砲弾と金剛の砲弾の墨が艤装から溢れだしまるでトマトが弾けるかの如く辺りを真っ黒に染める

 

 

「ちょっと!!」

 

 

「三人とも大丈夫ですか!?」

 

 

三人は倒れており佐渡の顔は苦痛に歪み

金剛の顔は真っ黒に染まりその胸に叢雲が押し潰されている

 

 

「ご、ごめんなさい!」

 

 

金剛は真っ黒な顔をしながら、急いで起き上がると二人の間に板挟みされていた叢雲が真っ黒な状態でゆっくりと立ち上がる

 

 

「ふふふ……成る程ね……これが不幸か…

やるわね…金剛……」

 

 

「………へ?」

 

 

まるで幽霊のように立っている叢雲に少し怖がっていると叢雲が金剛の胸を鷲掴みにする

 

 

「きゃっ!」

 

 

「この胸か!!この胸で私を苦しませたいの!?

このこのこのぉ!!!」

 

 

「いてて……って叢雲!?なにしてんだお前はぁ!?」

 

 

 

そのまま揉みしだいていると佐渡が状況に気付き叢雲を止めようとするが

 

 

「うるさい!!巨乳好きの変態やろう!!!」

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」

 

 

叢雲の肘が見事佐渡の股間に命中し、佐渡は股間を押さえながら更に悶え苦しむ

 

 

「こんな邪魔だけの胸のどこが良いのよぉ!?」

 

 

「助けてぇ!?」

 

 

「ちょっと!!叢雲ストップストッッッップ!!!」

 

 

「ほら辞めなさいよ!!」

 

 

「うるさぁぁぁぁぁい!!」

 

 

「………不幸や…」

 

 

この後、駄々をこねる叢雲をなだめるのにかなりの時間を用し佐渡はかなり疲れたらしい

全身痛かったらしいが

 

 

こうして、佐渡だけかなり大きい被害を被った六日目終了!!

 

 

 

 





次回

叢雲と金剛


佐渡さん大変ですね……
男の急所を……
次回で金剛の一週間が終わります!!
ちょっとだけ真面目な話になるかも?


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不幸な?一週間! 七日目

「ふぅ……」

 

 

金剛は一人湯船に浸かりながら今日の疲れを癒していた

いつも金剛は皆と時間をずらし入った後の最後に入り一人入浴をすると決めていた皆を不幸に巻き込まないために

そして、今日も一日佐渡と共に行動したがやはり不幸によって叢雲達を巻き込んだ事を後悔していた

(……やっぱり私は居ない方が…)

そんなことを考えているとお風呂の扉がガラッと開く

 

 

「あら?金剛じゃないの、初めて会ったわね?ここでは」

 

 

「!!!」

 

 

入ってきたのは叢雲だった、確かに今日は見掛けなかったけどこんな時間に入ってくるとは予想外これも不幸なのかと思いながら金剛は急いで湯船から出ていく

 

 

「ごめんなさい!!出ますね!」

 

 

「待ちなさい、いきなり私が入ったから逃げるなんて

そんなに私の事が嫌いなのかしら?」

 

 

「ち、違います!!ごめんなさい!」

 

 

あの後、実は叢雲がキチンと謝罪し金剛とは和解していた

その後叢雲の贖罪なのか分からないが、自分の好物を分け与えたり演習をしたり一緒に話したりしていた

実は叢雲の方が戦艦と言うのを少し嫌っており付き合い方が分からなかったと後から知ったのだ

 

 

「なら、何で逃げるのよ?」

 

 

「……ごめんなさい!」

 

 

金剛は急いで叢雲の脇から逃げようとするが叢雲に手を掴まれ逃げられなくなる

 

 

「放して!!」

 

 

「嫌よ、私の事そんなに嫌い?ショック受けるわ……」

 

 

「違うの!」

 

 

「じゃあ何?言わないと放さないわよ?」

 

 

「…………」

 

 

「あっそ、んじゃ一緒に入りましょ?」

 

 

叢雲は半分強引に湯船に連れていき、金剛と共に入る

叢雲がのんびりとはしているが手を放す気配はない

しばらく無言の状態が続くが金剛から話し始める

 

 

「……私の…不幸は…」

 

 

「ん?」

 

 

「私の不幸は、直接触ると更に強く伝染するんです

それこそ、抱き付いたり手を握ったりすると」

 

 

「成る程、それが私達との接触を避けていた理由ね」

 

 

「はい……ごめんなさ…」

 

 

金剛が謝ろうとした瞬間叢雲が人差し指で口元を押さえ言葉を遮る

そして、近付いていき金剛の胸に背を預ける

 

 

「な、何を!?」

 

 

「いやー胸が大きいのは良いわねぇ……

柔らかいソファみたい」

 

 

叢雲は、背中を押し付け金剛の胸を堪能していると何とかして逃げようとする金剛の足を掴み逃がさないようにする

 

 

「逃げないでよ、金剛」

 

 

「へ?」

 

 

「私と司令官はね、拒絶されることが何よりも苦手なのだから私達を拒絶しないで?

貴女の不幸が降りかかるよりも嫌いなのお願い」

 

 

叢雲のいつもの様子と違い、金剛は逃げようとせずに大人しく叢雲の背中に預けられるようになる

 

 

「ん、ありがとう」

 

 

「は、はい……」

 

 

「ねぇ、ここにきて一週間どうだった?素直に答えて

そして、貴女の気持ちを教えて

ここに居たい?それとも出ていく?」

 

 

「どうって……」

 

 

金剛は思い返す、この小笠原鎮守府に来ての一週間を

佐渡達に叢雲、古鷹、大井

皆、優しくしてくれた

だが、それと同時に自分の不幸に巻き込んでしまった

皆、良い人なのに私なんかの為に

でも、楽しかった

他の鎮守府では私の不幸で皆ギスギスしたり不穏な空気になっていた

でもここは違った、私の不幸を物ともしてなかったそれに私が謝っても「金剛は悪くないだろ?」と言ってくれた

それが彼の彼女達の本心か分からない

それでも否定され続けてきた金剛には嬉しかった、楽しかった、だから

 

 

「楽しかったです……とっても……

ここに……居た…い…よ…ぉ」

 

 

いつの間にか金剛は泣いていた

叢雲を強く抱き締めながら、嬉しさに

叢雲は微笑みながら金剛の腕を強く掴む

 

 

「それで良し

これで、晴れてうちの高速戦艦ね

貴女の不幸何てね私達には関係ないのよ

古鷹も大井も貴女を歓迎するわ

もちろん私も司令官も

だからこそ!!」

 

 

叢雲は立ち上がり、金剛の顔に湯を掛け頬を叩く

 

 

「その気持ちを司令官に言ってきなさい」

 

 

「提…督…に?」

 

 

「そうよ、あいつはまだ悩んでる

貴女を苦しませて居ないか、ここに居るべきではないのか、姉妹達への謝罪まで考えてるわ」

 

 

「そ、そんな!!提督は!」

 

 

「あいつは今風呂よ!ほら!行ってきなさい!!」

 

 

叢雲は金剛を立ち上がらせ、背中を押す

 

 

「で、でも!!」

 

 

「あいつを信じなさい!あんたに直接手は出さないわよ!

だしたら、私がアイツを血祭りにあげてやるわ!!

ほら!行く!!」

 

 

強引に背中を押し、風呂場から脱衣場に出すと扉を閉める

すると、金剛は頭を扉に当てる

 

 

「……ありがとう叢雲

行ってくる」

 

 

金剛は軽く身体を拭き衣服を着ると佐渡の入る風呂場へと向かう

 

 

 

 

 

 

「全く、世話のかかる戦艦だこと

貸しにしといてやるわよ

さーてと、今日はゆっくり浸かろうかなぁ?」

 

 

 

 




次回

不幸と幸運


次回!佐渡と金剛の混浴です!!!
あー、羨ま死ね!!(殺意)
え?作者だろって?
君のように感の良いガキは嫌いだよ



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私の止まり木

「あー…つっかれたぁ……」

 

 

佐渡は、大井の説教と仕事でかなり疲れていた

湯船に浸かりながら外を見ると綺麗な満月と夜空が見える

 

 

「くっそー大井の野郎~

金剛……やっぱり駄目かぁ…」

 

 

金剛が一向に心を開いてくれないのを気に病みながらも顔を湯船で流すと天井を見上げる

 

 

「拒絶されんのは……やっぱりキツいな……」

 

 

すると、脱衣場の扉が開く音が聞こえる

(ん?叢雲か?)

と思いながらのんびりと湯船に使っていると風呂場の扉が開きぐったりとしながらも頭を向けると

 

 

「し、失礼……します…」

 

 

「!!!!

金剛!?」

 

 

金剛が一糸纏わぬ姿で男の風呂に入ってきており直ぐ様反対方向を向く

 

 

「バッカ!お前ここは男湯てか俺の風呂だぞ!?」

 

 

「……お話…したくて…

よろしいですか?」

 

 

「いや、あのな?ここじゃなくて、上がってでも……」

 

 

「今!したいんです…駄目ですか?」

 

 

 

「~!!

あー!もう!分かったよ!!」

 

 

 

佐渡は、金剛から初めてのお願いに頭をかきむしりながらも渋々了承する

ゆっくりと歩いていき佐渡の背中に自分の背中を押し当てると二人で湯船に浸かる

初めて、金剛から寄り添って貰え佐渡は少し喜びに口元が緩む

 

 

「んで、どうしたんだ

ここに入ってきてまでの話なんて」

 

 

「私の不幸は直接触るほど、伝染しやすいんです

だから、今まで提督や他の方に触られるのを避けていました

ごめんなさい」

 

 

「ほう、そうだったのか……

でも、それなら何で背中を合わせてくれるんだ?

不幸を伝染させたいのか?」

 

 

「叢雲に言われました……

貴方は拒絶されるのが何よりも嫌いだと

だから、今日は今までの償いです」

 

 

「あいつ……余計な事を…」

 

 

すると、佐渡の背中に二つの柔らかい物と身体の暖かさが伝わり全身をビクッと震わせる

金剛は、少し強めに佐渡の身体を抱き締めておりそれに少し反応してしまう

(おっふ女の子の身体柔らかいでござる……

嫌落ち着け…)

 

 

「提督、私の気持ち聞いて頂けますか?」

 

 

「ん!お、おう」

 

 

金剛の抱き締める力が少し強くなり、深呼吸をすると話始める

 

 

「私、ここにきて良かったです

皆優しくて、不幸なんて気にしないって言ってくれて

ご飯が美味しくて、毎日が楽しかったんです

だから、ここに居させてください……」

 

 

そこまで言うと静かになり小刻みに震えている

佐渡は微笑みながら金剛の手に自分の手を絡ませる

 

 

「あぁ、お前が居たいなら居てくれ

俺達は歓迎する金剛を

だから、これからは自分を抑えなくても良いんだぞ?」

 

 

「……ぇ?」

 

 

「お前が抱き付きたいなら抱き付け

握手したかったらするがいい

怒りたかったら怒れ

お前のしたいことがあるなら好きにやれ

何か起こしても何があっても俺が何とかしてやる

お前は俺の鎮守府の艦娘だ

だから、ここでは好きにやれぜーんぶ俺が責任を持つ」

 

 

そう言われると金剛の中にあった今までのこびりついていた言葉や思いが消えていく

 

『死ね!!この不幸な高速戦艦が!!』

 

 

「良いんですか?私は不幸ですよ?」

 

 

「は?不幸?俺には関係ないね!

ちょっと刺激が増えただけさ!」

 

 

『あんたなんか!どっか消えなさいよ!』

 

 

「ここにいても良いんですか?」

 

 

「お前に居て欲しいんだよ!お前じゃなきゃ駄目だ」

 

 

『触るな!近寄るな!!』

 

 

「……いっぱい触りますよ?」

 

 

「女の子から触られるとかむしろウェルカム

どーんと来い!むしろ来てくれ!」

 

 

『またお前の不幸か!!本当に邪魔だな!』

 

 

「不幸をばら蒔いて迷惑かけますよ?」

 

 

「はっ!任せときな!俺が何とかしてやるさ!!」

 

 

 

 

今までの言葉を掻き消すかの様な佐渡の言葉に涙を溢しながら強く抱き締める

嬉しさに震えながら

 

 

「提督」

 

 

「ん?」

 

 

「……私の止まり木になってくれますか?」

 

 

「…あぁ!良いぜ!ここがお前の止まり木だ!!

好きなだけ休んでな!!」

 

 

佐渡に言われると、心から喜び口元が緩み微笑む

そして、耳元に口を近付け

 

 

「ありがとう、私の提督

大好き」

 

 

「え?」

 

 

頬にキスをすると、湯船から上がり早足で脱衣徐に向かい扉を開けると

 

 

「提督!!明日から覚悟してくださいね!!

金剛型一番艦の凄さを身をもって教えてあげます!!

明日からは遠慮なんてしませんからね!!」

 

 

そう言い残し扉を閉め、早足でその場を立ち去っていく

 

 

 

 

「大好きって敬愛……だよな?」

 

 

一人残された佐渡は金剛にキスされた頬を擦りながら顔を紅くしていた

 

 

 

 

 






次回

全力全開の愛で

次回から金剛さんはどうなるのでしょうか?
佐渡羨ましいので素直に藻屑になってほしいと思う作者ですはい



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金剛型一番艦 金剛

吹っ切れた金剛はどうなるか
察しの良い方は分かるかな?




次の日

大井と古鷹は二人で洗濯物を乾かすために共に行動していた

 

 

「大井さん、手伝ってくださりありがとうございます」

 

 

「いえいえこれぐらいどうってことないですよ

全くうちの提督は何で手伝ってくれないですかねぇ?」

 

 

「あはは……流石に女性物の下着は触れないと言ってましたからね……」

 

 

すると後ろから誰かが走ってくる

叢雲かと思ったがその影は叢雲より遥かに大きく和服を着こなしていた

その影、もとい女の子は二人の間を全速力で走り抜けていく

 

 

「おっはようございまーす!!

大井!!古鷹!!良い朝デスね!!!」

 

 

二人は通り過ぎたその姿を見ながら唖然としていると古鷹が微笑みながら笑い大井も微笑みながらため息をつく

 

 

「ふふ、金剛さんすっかり変わりましたね」

 

 

「えぇ、これは大変になりそうね…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは代わり叢雲は朝のジョギングを終え汗だくのまま鎮守府に戻っていた

タオルで拭いてはいるが今は6月かなり外は暑い

 

 

「ふぅ……

流石に飲み物無しだとキツいわね……

司令官に作ってもらおうかしら?」

 

 

そう呟きながらのんびりと鎮守府の廊下を歩いていると後ろから誰かが走ってくるのが聞こえ振り返ると

 

 

「おっはようございまーす!!

叢雲!!」

 

 

「わ!ちょっと汗臭いわよ!私!!」

 

 

「そんなの気にしませーん!!

んー!やっぱり叢雲は柔らかいねー!」

 

 

そこにはこちらに全速力で走って来ていた金剛に捕まり持ち上げられ全身を触られながらめんどくさいと身を任せてしまう

 

 

「変わったわね、何か吹っ切れた?」

 

 

「はい!!もう自分を押し隠すのは辞めまして!

金剛型一番艦として!金剛として!私はこの鎮守府に居たいのです!!

叢雲、本当にThank Youね!」

 

 

金剛は、顔を叢雲に押し当てながらグリグリとやるが二人ともほっぺたが柔らかいのでそこまで痛くはない

 

 

「そんなことより、司令官に会ってきたら?恐らく欠伸しながらそこら辺を歩いてるわよ?」

 

 

「oh!!そうでした!叢雲、また後でー!!」

 

 

まるで嵐が過ぎ去るように走っていく金剛を微笑みながら見ているとため息をつく

 

 

「まるで、嵐ね

でも、悪くないわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふわぁ~ねみ」

 

佐渡は朝食を作るために起床し欠伸をしながらのんびりと廊下を歩いていた

 

 

「さぁて、今日はどうすっか?」

 

 

「てーいーとーくー!!!」

 

 

「んぁ?」

 

 

佐渡はその声に気付き振り返ると、後ろから全速力で何かが走ってきている事に気付く

 

 

「んんん????」

 

 

「バーニング!!ラァァァァブ!!!」

 

 

「ぐほぉ!?」

 

 

その女の子に飛び付かれ、受け止めるがくるくると回りその場に二人して倒れ込む

一応女の子の事を守るために佐渡が下敷きだ

 

 

「いてて、もしかして金剛か?」

 

 

「はい!金剛デース!おっはようございます!!提督!!」

 

 

「はは!昨日と見違える様に変わったじゃないか?

だが、それも良いな!」

 

 

佐渡は微笑みながら、金剛の頭を撫でると拒絶されるのを少し恐がったがそんなことはなく大人しく撫でられてくれる

 

 

「もう、私は我慢しません!!ここで!提督と叢雲達と居たいんです!

良いですよね!提督!!」

 

 

「あぁ!これからよろしくな金剛!」

 

 

「はい!よろしくお願いします!提督!!」

 

 

皆が歩く廊下で、金剛は満面の笑みを浮かべておりその笑顔はまるで太陽の様に明るくこれから存分にこの鎮守府生活を楽しむと語っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      不幸な高速戦艦 金剛編 end

 




次回

自己紹介編


今更ですよねぇ……
嫌でも書けってどこぞの人に言われたので書かせて頂きます()



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外伝編
自己紹介しましょうか!


どうも、作者です(唐突)

今更だと思うんですよ?凄い今更だと
でもですね、どこぞの友人(リア友)に自己紹介書けやオラァ!!と言う感じに怒られてしまったんですよ


んで、最初に書くのもめんどくさくてここに書かせて頂きまふ
まだ増えるんですけどねぇ…半分来たのでとりあえずここに今後変更時は賞の終わりのあとがきに追加したことを連絡します

後は佐渡達に任せますねはい
では(ドロン)

⚠️ここからは台本形式で佐渡達が自分達を紹介します
許してくださいませ
あ、ここの話は本編と関係ないよ


2/3 潜水艦イムヤ 深海棲艦イ級 追加!!
2/8 正規空母グラーフツェッペリン 追加!!
2/27 深海棲艦 空母棲姫 追加!!



佐「……だそうだあんの適当作者めぇ…」

 

叢「仕方ないでしょ、ここ最近艦これ初めて、司令官や指揮官はたまたボーダー(傭兵)にハンター(狩人)やらやってる奴よ?

んま、作者はやってるから良いんじゃない?」

 

古「まぁまぁ二人ともそろそろ始めましょう?」

 

大「てか、木原はもっとゲスに書く予定とか聞いて私作者に殺意湧いたんだけど?」

 

金「ヘーイ!四人共!早く始めろって作者さんから催促のお手紙来てまーす!」

 

イ「ちょっと司令官?そろそろやらないと駄目なんじゃないの?」

 

グ「アトミラール、始めないと作者に怒られるぞ?」

 

エ「早くしないとあんたのアレを切るわよ?」

 

長「提督!やることはちゃっちゃとやるに限るぞ!!」

 

佐「おい待てエア辞めろ!!

ほいほい、んじゃ適当に始めていくぜ」

 

 

 

佐渡 満

 

今作の主人公兼提督

性格はサボり癖有るがやるときはやる基本的に温厚であまり怒ることはしない料理好きの優しい男

実は昔、陸軍のとある部隊に所属しておりそこではかなり優秀な男だった

戦闘スキルが高くサバイバルスキルもあるかなりの手練れである

加え、昔から喧嘩に巻き込まれることが多くその際付いたのが敵の行動を予測し、次の行動を読み取る力である

それに加え陸軍に所属した結果それが更に強化され、向こうが何をするのかを完全に把握する力に変わった

故に呼ばれているのが『戦闘の天才』

ただし、深海棲艦にはほとんど通用しない事を身に染みて知っておりそれを叢雲達に教え込んでいる

鎮守府では女の子しかも若い子ばかりだからある意味では困り果てては居るためかそれを隠すために変態発言やセクハラを良く行う。憲兵さんこいつです

実は叢雲とは海軍に来る前に出会っておりそこで『ある事件を共に解決しそれが海軍に来るきっかけになった』

その際叢雲と信頼関係を作りパートナー、バディとしてお互い絶対的な信頼関係にある

鎮守府の全員に基本的には好意は無く

あったとしても戦争中の為押し殺してでも表には出さないようにはしている

 

 

叢「まぁ、あんたね」

 

古「提督ですね!」

 

大「やっぱり変態か」

 

金「でも提督私と混浴しても手を出さなかったヨ?」

 

古 大 イ「「え?(は?)」」

 

グ「流石だなアトミラール」

 

エ「あんたねぇ…」

 

長「提督……手を出してないなら平気だな!」

 

古 大 イ「「「違う長門そこじゃない!!」」」

 

佐「あー!!はいはい!次々!!後作者憲兵は辞めてトラウマだから……」

 

 

吹雪型五番艦 駆逐艦 叢雲

 

今作のもう一人の主人公兼ヒロイン

小笠原鎮守府最強のエースにして歴代最強の叢雲

性格はクールな一匹狼 自分の容姿にプライドはある。

ある事件から自分の弱さを知り強くなることを目指し続けている努力家

現在も佐渡から直接訓練を受けたり、ジョギングや体力作りを怠らない

戦闘スタイルは近接戦闘と雷撃の弾着予測、佐渡から学んでいる相手の行動予測

常に鎮守府の皆には上から目線ではあるが優しいところもあり世話焼きな所もある

かなりの大食いである

今まで建造された叢雲と過程は同じなのだが、ある事件をきっかけに才能が開花された

事件後、佐渡と再開し大本営で処刑寸前であった古鷹を助けだし無理矢理仲間にし、佐渡同様の犯罪者となった

そしてその後、再びある深海棲艦に古鷹と二人で対峙しこれを撃破

その時止めをさしたのと撃破したのを雷撃だった為

海軍の者達からは性格の皮肉と実力の敬愛をこめて『雷撃姫』と呼ばれている

佐渡とは、初期艦 司令官と艦娘になる前に出会いある事件を二人で解決し信頼を得た

そして、その後深海棲艦との対峙したとき瀕死の重症を負い解体寸前だったが佐渡の必死な説得で事なきを得た

それから、佐渡を心の底から信用している

その時二人はある『誓い』を立てそれを守り続けている

この鎮守府では時に優しく時に厳しい姉御やお姉さんみたいな扱いを受けている

佐渡への感情は敬愛が八割恋愛感情が二割である

金剛と仲が悪いわけではないのだが良く喧嘩はしている

 

『ただし、飛行場姫戦から身体の妙な違和感と記憶の欠落が目立っている………

彼女に一体何が?』

 

 

 

古「叢雲だね!」

 

大「そうね、叢雲はこうよね」

 

金「叢雲は確かに姉御って感じデース!」

 

イ「確かに叢雲って、こんな感じよね」

 

グ「叢雲がやはり強いのか……」

 

エ「ほんと、こいつ何でこんなに強いのかしらね?」

 

長「本当にな……お前本当に駆逐艦なのか?」

 

佐「確かにな…だが気紛れの弄りは勘弁な」

 

叢「ふん、次いくわよ」

 

 

古鷹一番艦 重巡洋艦 古鷹

 

今作のヒロイン兼天使

小笠原鎮守府最強のもう一角

性格はかなり温厚で怒ることは全くと言うほどにない

佐渡の変態行動に少し怒る位はあるがそれ以外には全くと言うほどに温厚である

常に平穏を保っており誰にでも優しい正に天使

前は、家事を一人で行っていたがイムヤ達が来てからは基本的に二人でこなしている

そのせいなのかイムヤとかなり仲が良い

そして、佐渡と叢雲が小笠原に来た理由であり一番最初に来た艦娘であり鎮守府最大の犯罪者である

元佐世保鎮守府の艦娘であったがそこの艦娘や提督に捨てられ

反逆罪の冤罪を着せられそこを佐渡と叢雲に救われた

罪は 第九章 天使の罪参照

その後二人に背中を押され自らを裏切った者達と和解し今は良い関係を作れている

彼女も佐渡から戦闘技術を教わっている一人

だが、基本的には近接戦闘の叢雲の補佐をしたいと勝手でており砲撃技術を向上させている

そして付いたのが遠距離でも確実に命中させる技術を獲得し戦闘時は叢雲の補佐に回っている

叢雲と佐渡を心の底から信用しており共に生きていたいと願っている

小笠原鎮守府では、優しいお姉さんと言う立場である

 

 

㊙️実はしっかりと告白をした唯一の艦娘

佐渡に完全に惚れており返事待ちである

 

 

 

叢「へぇ?古鷹告白したんだ?やるじゃない!」

 

大「……へ、へぇ……古鷹さんが…?へぇ…」

 

金「ど、どう言うことデースか!?古鷹!提督に告白したって!?」

 

イ「ちょ!ちょっと古鷹さん!いつの間にそんなことしたのよぉ!?」

 

グ「な、な、な、な!先を越された…だと!?

あ、アトミラールこれは本当なのか!?」

 

エ「あーらー?とうとう言ったのねぇ?

やるじゃない!このこの~!」

 

長「ほほう!古鷹は提督が好きなのか!?

……だがまぁ気持ちは分からんでもない」

 

古「ちょ!ちょっと作者さん!!

皆に言わないでくださいよ!!

あぁ……もう…恥ずかしいよぉ……うぅぅぅ//////」(顔真っ赤)

 

佐「……おい、作者流石に…これ作中に影響しない……よな?

そうだよな?なぁ!!」

 

 

→作者( ´°ω°)佐渡さんや古鷹さん可愛い?(突然の登場)

 

 

佐「めちゃんこ可愛い!!もうね!!最高天使だよ!!

こんな良い艦娘どこにも居ないねぇ!!

結婚してぇ!!」

 

 

古「て、提督……辞めて……くだ…さい///////」(袖を引っ張りながら更に顔真っ赤)

 

 

( ´°ω°)(早く結婚しろやクソッタレ)

 

 

⚠️この後全員にメンイ○ブラックのアレをやりました(わかる人には分かる)

 

 

球磨型 四番艦 軽巡洋艦 大井

 

今作のヒロイン兼ツンデレ枠

小笠原鎮守府での雷撃兼事務担当兼秘書艦

性格は小笠原鎮守府以外ではかなりの猫被り

真面目で清楚な正に完璧美少女、だが佐渡達の前では中の素を出しており特に彼女も大変だとは思ってない

彼女が小笠原鎮守府に来た理由は元罪人

罪は第三章 男嫌いの軽巡 を参照

北上さん大好きでありレズっ気もあり全く男を寄せつけたくない、そもそも男の存在自体が嫌いな娘であり海軍の男性に会うと殴りたくなるらしい

たが、佐渡に対してだけはいくら殴っても構わないと許可を得ており攻撃的な姿勢を取っている

その影響で、少しずつ男嫌いは解消されてはいるがそれと同時に佐渡に惹かれつつある

ここでは一番のまとも枠兼ツッコミ担当

実はこれでも自らを救ってくれ涙してくれた佐渡を信用しており悪態や暴言を吐くものの心の中では許している

それと同時に小笠原鎮守府の会計等も担当しており多忙な毎日だがかなり充実はしているらしい

本人はここに居て良かったと豪語している

 

 

叢「まぁ、大井が居てくれて良かったわよね本当に」

 

古「そうですね、大井さんの技能は素晴らしいですよね!」

 

金「さっすが大井ね!!」

 

イ「そう言えばこの前も大井さんに助けられたっけ

ありがとう大井さん!」

 

グ「大井、また仕事を教えてくれ

アトミラールが隠れることが多くてな…」

 

エ「と言うかこの子が鎮守府回してない?」

 

長「それは大いにあるかもな」

 

佐「いつもありがとうな秘書艦様」

 

大「~~~///

提督うるさい!」ゲシッ

 

佐「いてっ、何故に!?」

 

 

金剛型一番艦 戦艦 金剛 

 

今作のヒロイン

小笠原鎮守府での火力担当兼明るさ担当

小笠原に来た当初は、別の鎮守府での扱いが原因で大人しく縮こまっていたが佐渡の頑張りと叢雲達の背中を押してくれたお陰で元の明るく活発な性格に戻っている

彼女は使えない戦艦としてこの小笠原に来た

第四章 不幸な高速戦艦 参照

元々、周りを元気にさせるほど明るい性格だったのだが自らが建造された頃から持っている不幸が原因で周りに悪影響を与えることを気に病み一人で居ることが多くなってしまい更に他の艦娘や提督に暴言を吐かれ自らの心を閉ざしてしまっていた

だが、佐渡と共に過ごし叢雲達にも認められたことがきっかけとなり心を開き皆を信頼している

小笠原鎮守府で一番にスタイルが良く、佐渡にもいつも抱き付いているため大井に怒られることがしばしば

スキンシップは基本的には誰にでも抱き付いたり体を触れたり等である

中でも佐渡と混浴しようとしたり、叢雲に過剰に抱き付いたりもしており大井に注意を受けている

今まで抑えてきた事の反動だが、佐渡も叢雲達とそれを楽しんでいる

実はこれでも乙女であり、男と付き合ったことがなく意識すると女の子らしい一面を見せる

現在、自らの不幸は完治とは行かないがかなり抑制されたらしい原因は未だに分からずじまいだが

佐渡の事は一人の男性として愛している

だが、今は止まり木としてまだこの安らかな安息を楽しみたいらしい

霧島に言われ渋々来たこの鎮守府だったが、ここに来て本当に良かったと大井同様思っているらしい

実は叢雲をライバル視していると同時に構って欲しくて良く喧嘩している

 

 

古「金剛さんも明るくなりましたよ!素敵です!」

 

大「金剛さんはもう少し節度を持ってほしいですけどね……」

 

イ「後から聞いたけど金剛さん……押し潰すのは勘弁して…」

 

グ「うん……だが、私にはうぇるかむ?だ!」

 

エ「確かに金剛って結構抱き付くわよね?」

 

長「良いんじゃないか?別に抱きつく位?」

 

叢「金剛……貴女ねぇ?抱き付くのは構わないわ

でも朝は辞めなさい?匂い嗅がれるの嫌なんだけど?」

 

佐「スキンシップは大事だろ?」

 

金「はーい、気を付けまーす…」

 

 

海大VI型 一番艦 潜水艦伊168

 

今作のヒロイン

小笠原鎮守府 雷撃&家事担当

元は大奏鎮守府所属であったがそこの鎮守府提督白鳥一葉が提督殺しに殺されどこにも引き取られずに19が佐渡提督に任せようと声を上げ小笠原鎮守府に流されて来た艦娘

当時極端な食生活と過剰な仕事をさせられていたのお陰で自分は使えないとハッキリと思い込んでいたが古鷹と共に過ごし自分はそうではないのと休むことの大事さを教えられ佐渡達と共に生きていきたいと思う事になった

第五章 奴隷の潜水艦参照

元々、少し生真面目な性格であった為今では古鷹さんと共に家事をしながら佐渡の資料整理と食料調達もやっている

そんなに働かなくては良いとは言っているのだが、どうやら前の鎮守府の癖が残ってるらしく動きたいらしい だが、たまにサボって寝ていたり古鷹と共にお茶したりしており休憩は良く取っているらしい

そのお陰か、拒食症は完治しているがやはりあんまり食べないらしい

戦闘技術はほとんどなく、魚雷の使い方は叢雲に

戦闘は佐渡に教わりながら強くなりたいと思っている

一緒に仲間になった深海棲艦イ級とも仲良くしており良く家事をやりながらサボるときには一緒にいるらしい

19に言われ来た鎮守府だったがかなり気に入っているらしくこの鎮守府の為に全ての捧げたいとまで思っているそうだ

 

佐渡に対しては恋愛感情が四割 敬愛が六割らしい

 

 

叢「イムヤね、初めて来たときのあれは驚いたわよ」

 

古「でも、今はきちんと食べれるから良いじゃないですか!」

 

大「彼女は働き者で助かりますよ本当に」

 

金「うぅ~、ごめんなさい…イムヤ…」

 

グ「イムヤは本当働き者だよな…

今度洗濯を教えてくれ!!」

 

エ「最早この子も居ないとここの家事回らないんじゃないかしら?」

 

長「ふむ、イムヤは働き者だからな

力仕事は私がやるからな!」

 

佐「んん?何で俺に恋愛感情が……」

 

イ「あー!あー!見ないでよぉ!!バカ司令官!」魚雷投げ

 

佐「ぐっはぁ!?目がぁ!!目がぁぁぁ!!!!」

 

 

深海棲艦 駆逐艦 イ級

 

小笠原鎮守府癒し枠

不幸な高速戦艦編で金剛が釣り上げた深海棲艦

通称 イーちゃん

敵対する意思はなく佐渡と古鷹の言うことを良く聞き、イムヤを救出したことから正式に小笠原鎮守府所属となった

普段は、イムヤか佐渡が世話をしておりその間に他の面々も世話しているらしい

声帯が無いのかそれともただ話せないだけなのか分からないが基本的には話さない

古鷹の焼き魚と佐渡のご飯をえらく気に入り良く食べているため餌付けに成功した

親方に言われ、この子は元艦娘の可能性が高く深海棲艦の正体をこれからそれを調べていきたいとも思っている

最近は何故か脚が生え鎮守府内を良く一人で歩いたりしている

 

叢「ねぇ、今更だけどイーちゃん大丈夫なの?」

 

古「ま、まぁ攻撃はしてこないですし……」

 

大「提督?責任は取ってくださいね?」

 

金「だーいじょーぶよー!!それにしてもイーちゃんは可愛いネー!」

 

イ「流石に私も驚いたけどね……

まぁ、司令官が言うなら大丈夫なんじゃない?」イーちゃん抱き抱え

 

グ「……深海棲艦…だよな?その子は?」

 

エ「いやこれに関しては本当に驚いたわよ……」

 

長「……敵ではないよな?」

 

佐「問題無いんじゃない?何かあったら俺が何とかするよ」

 

 

イー「コクコク(頭を縦に降りながら)」

 

 

Graf(グラーフ) Zeppelin(ツェッペリン)級 一番艦  正規空母  Graf(グラーフ) Zeppelin(ツェッペリン)

 

 

今作のヒロイン

小笠原鎮守府 二人目の秘書艦兼制空権担当

元々ドイツで建造されたのだが村山元帥とドイツ海軍の手によって未建造艦とされ日本に運ばれる予定だったのだがその船長が『霧の海域』に侵入してしまい船は沈没

彼女は運良く小笠原鎮守府に流れ着いた

存在自体を海軍の履歴に残っておらずどこにも所属出来なかったのだが何とか大淀と元帥の手によって所属だけは許されるようになっており小笠原鎮守府に所属となった

当初、ドイツの提督達にお前は兵器であると言うことを教え込まれていたのだが佐渡の心を知り小笠原鎮守府のメンバーに新たに教え込まれ自分の存在の意味を理解し小笠原鎮守府に所属することを決めた

第六章 架空の空母参照

かなり真面目な性格と手際の良さから大井に秘書艦を進められ現在は大井と交代だったり一緒に佐渡の秘書艦を勤めている

時々仕事をサボっている佐渡を見付けては怒っているがいつも言いくるめられ共にサボる事があり大井に一緒に怒られていることが多い

真面目な性格で何でも知りたがったりするがちょくちょく叢雲や金剛に変な事を教え込まれており佐渡も手を焼いている

佐渡に対しては恋愛感情が八割敬愛が二割それも金剛に押せ押せと教えられているためかなりぐいぐい来るらしい

 

 

叢「グラーフね、確かに良く司令官に詰め寄ってるわよね」

 

古「グラーフさんの攻めは……勉強しないと…」

 

大「仕事に支障出てないから構わないと思いますがね(何か危機感を覚えてるけどね)」

 

イ「良く二人で取り合ってるわよね~」

 

金「no!!提督のハートは私が頂きまーす!!」佐渡左腕組ながら

 

グ「悪いな金剛、提督は私が貰う」佐渡右腕組ながら

 

エ「仲良いわねぇ」アイス食べながら

 

長「こら!二人とも節度を持て!!」

 

佐(いやー、両手に華兼大福かぁ…)

 

 

深海棲艦壊滅種 空母棲姫 エア

 

今作の???枠

小笠原鎮守府 居候兼ネタ枠

 

正体不明とされていた提督殺しの正体でありこの戦争を引き起こした三人の内の一人

 

深海棲艦Eliteと呼ばれる特殊個体であり、姫クラス最強個体

 

空を支配する最悪の姫である

 

だが、基本的に艦娘とは戦闘をせず提督のみを憎んでおり殺し続けていた

実は大井、金剛、イムヤ、グラーフと間接的にではあるが接点があるのだが本人もほとんど気付いていない

エアには人の容姿を真似する能力を持っておりそれを駆使して相手に成りきり提督達を暗殺してきた

生まれた時から提督だけを憎めと頭の中で言われている感覚がしているらしくその為自らは艦娘を助けると言う名目で提督やそれに害なす者達を多く殺してきた殺人鬼

佐渡に対しては興味とその思いが偽物だと思い込み叢雲達の為に殺す予定だったのだがゲームに敗北し見定める為に小笠原に滞在することになった

第七章 提督ヲ狩ル者参照

他の小笠原メンバーとは違いかなり緩い性格をしており良く佐渡に対しては誘惑紛いの事をしては大井達にしばいてもらうのを見ながら楽しんでいる

自分の艦隊を幾つか持っており、それを今は動かし小笠原を警戒させている

彼女は実は深海棲艦にかなり深く繋がっているのにも関わらず佐渡達に真実を話す気配は無い

それも実はそこまでの信頼を置いておらずただ暇潰しに小笠原に居るだけと言う感じらしい

謎が多い人物ではある

実はかなりアイスが大好きで良く冷蔵庫から掠め取っているらしい

佐渡に対しての感情も興味本位とかの探究心と面白い玩具としか思ってないらしい

 

飛行場姫戦後、叢雲が深海側との和解への道を進むと決めてから何故か叢雲に肩入れし始めている

その真相は?

 

 

叢「…確かにエアって謎よね

何でここに居るのかも」

 

古「でも確かに艦娘には優しいですよね……」

 

大「…深海棲艦の親玉なんですよねこれでも…」

 

金「むー……提督と仲良くしてるのは羨ましいデース……」

 

イ「私達には協力してくれるけど司令官は助けないわよねそう言えば」

 

グ「む、むぅ……何故いつも私をからかってくるのだ…エア…」

 

長「……どう見ても敵なのだが…こんな深海棲艦も居るんだな…驚いた」

 

エ「うふふ!艦娘は大好きよ!

ただし、提督や人間は嫌い

でーも?あんたは例外よ佐渡

あんたのやってきたことは私があんたを味方として認めるのに充分すぎるわ」

 

佐「…ほほう?じゃあこれから先も仲良くしてほしいものだ」

 

 

長門型  1番艦  戦艦

 

 

今作のヒロイン?

小笠原鎮守府真面目枠

 

元舞鶴鎮守府所属の最強戦艦にして『正義の戦艦』と言う通り名を持つ海軍の最大戦力の一人

他の名のある戦艦や空母達を差し置き異常なまでの耐久性と火力、そして体術を身に付けている歴戦の猛者

だがその影で戦場で戦いすぎによる深海化が進んでおりそれを舞鶴鎮守府提督、唐澤は心配し小笠原へと流された

そして、第八章正義の戦艦編のラスボスでもあった

初めの頃は小笠原鎮守府全体を悪と決め付け敵対しており一度激突したことがある

海軍を正義と思い込みそれに対する叢雲達は悪とし戦った

第八章 正義の戦艦と第九章 天使の罪参照

その後古鷹の佐渡によって助けられ小笠原鎮守府へ在住することになった

だがそれまで信じてきた正義が何なのか分からなくなり小笠原で探すことにしたらしい

現在小笠原鎮守府では力仕事や演習相手をすることが多いのだが他の事が点で駄目であり家事をしようにも物を破壊したり窓ガラスを破壊したりと全般が苦手らしく少しずつ古鷹達に教わっている

特に料理は壊滅的で佐渡にかなり怒られたことがあるらしい

グラーフと同じでかなり真面目であり常識人なのではあるが時々叢雲にしごかれすぎて全身筋肉痛で動けなくなることがしばしばあるがグラーフ達でも締め切れてない鎮守府をキチンと閉めてくれているため嬉しいらしい

現在、深海化は全く表に出てきておらずその事自体も大井達には隠している

いつかは打ち明けたいとは思っているらしい

 

佐渡に対しては敬愛と尊敬の意があり好意は少しだけらしい

 

 

叢「出たわね正義の戦艦」

 

古「まさか、長門さんがこっち来るとは思わなかったよね……ビックリしたよ…」

 

大「戦力としてはかなり大きいですが……貴女が来るとは……」

 

金「むー…長門、古鷹を傷つけたら許さないデースよ?」

 

グ「大丈夫だろう、長門はもうそんなことしないさ」

 

エ「ふふ、あんたもここで反省することね

良かったわあんたを手に掛けずに済んで」

 

長「あぁ……ありがとう佐渡提督、古鷹

私はここで私の正義を見付けるよ」

 

 

佐「はは、精々頑張るこった

お前の正義をいつか教えてくれよ?」

 

 

 

 

夕張型  1番艦   軽巡洋艦

 

今作ヒロイン?

小笠原整備枠

 

昔、あるブラック鎮守府に所属しており大本営に所属していた軽巡、ほとんど戦場に出たことがない工廠?艦

 

そして数少ない大本営襲撃事件の生き残りにして唯一深海側と繋がりを持つ艦娘

 

ただし繋がりがあると言っても向こう側が一方的に夕張を傷付けないと決めつけているだけで交友があるわけではない

 

ブラック鎮守府に居たせいなのか、如月大元帥と言う拠り所を失ったからなのか、他の艦娘達より価値観がずれており自らの代用品が存在し、死への恐怖が無い

第11章壊れた兵器参照

 

実は前々から小笠原には興味を持ってたもののこんな自分が行くのは迷惑だと思いずっと悩んでいた

だが、飛行場姫戦の時に更にその思いが強くなると同時に叢雲達を側でサポートしたいと思い小笠原へ来た

 

意外と常識人ではあるものの自分への評価がかなり低く叢雲達から少し距離を置こうとするものの全員そんなのお構い無しにグイグイ来ているため少し困惑してもいる

 

技術、集中力、発想力に置いてはとんでもなく飛び抜けておりいつも叢雲達に最も適した武器や艤装を作り出している

ただし、たまに失敗し爆発させることもしばしば……

 

実は最初佐渡に出会った時から好感を持っておりこの鎮守府に来てから更に強くなったとか?

 

 

叢「にしても、まさか夕張が来るとはね

これからよろしくね」

 

 

古「あの時はお世話になりました!よろしくお願いします!」

 

 

大「夕張さんの加入はかなりの戦力ですね……どんどん小笠原が強くなっていきますね…」

 

 

金「わーい!夕張よろしくネー!」

 

 

イ「飛行場姫戦ではお世話になったね!よろしく!」

 

 

グ「我が鎮守府の工廠が更にグレードアップか……素晴らしいな!」

 

 

エ「ふーん……この娘がここに来ちゃったのかぁ…

まぁ当然と言ったら当然かしらねぇ?」

 

 

長「心強い味方だな、よろしく頼むぞ!」

 

 

夕「ふふ、じゃあこれからよろしくね!

佐渡提督!」

 

 

佐「おう!よろしくな!」

 

 

 

 

深海棲艦壊滅種 飛行場姫 カナ

 

今作の???枠

 

小笠原鎮守府の??

 

この戦争を引き起こした三人の姫の内一人であり太平洋を支配していた姫

 

深海棲艦Eliteと呼ばれる特殊個体であり、姫クラス最強個体

陸上形最強であり元ドレス島の支配者

 

 

エア同様に姿こそ大本営に確認されていた最強格の姫であり目撃例がほとんど無かった陸上形姫

平和を好み人間と艦娘を嫌っているドレス島から全海域を監視しており必要に応じアブソリュートと呼ばれる艤装で攻撃を仕掛けていた化物姫

 

そしてそのドレス島から逃げてきたZ3(マックス シュルツ)が原因で居場所がバレ東雲がそれを危惧し大型作戦が決行され叢雲達との死闘を繰り広げられた

 

第10章 不沈ノ飛行場参照

 

 

実力は陸上形最強とあるだけ対陸上兵器がほとんど通用せずまともな戦い方ではまず戦いにすらならなかった

 

異常な視力を駆使し超遠距離からの砲撃を行いそもそもドレス島に近付けないと言うとんでもない力を持っており何度か叢雲達も諦めかけた

 

しかも多才な武装、そして特殊弾頭を込められた艤装アブソリュートによって叢雲達を何度も追い詰めた化け物

 

 

アブソリュートに装填されている六種類の砲弾を使い分けることでどんな戦況にも対応する適応能力があり自身もすぐに気持ちの切り替えが出来る正に防衛に適した姫

彼女以上の防衛能力を持った姫は存在せず始原が最も信頼していた

 

近接戦闘は苦手とは言ってるものの、近接戦闘が得意な叢雲とほぼ同格であり途中で武器や艤装を絡ませて戦ってくる為まず一対一で勝てる物ではない

叢雲達が勝てたのはある意味奇跡と言っても過言ではない

 

深海側では始原の派閥に所属しておりドレス島の警備を担当しており島の地下に居る『ある化け物』の情報を守り続けていた

 

叢雲達に倒された後死ぬはずだったのだが艤装のセーフティにより何とか生きており駆逐艦達に運ばれ小笠原へと流れ着いた

 

第11章 砕けたプライド参照

 

元々、人間には全く興味が無かったのだが部下である椿に色々聞かされており多少興味を持っておりたまに叢雲に問いただす時がある

 

現状、基本的には何もすることが無くたまに誰かの手伝いをするという状態なのだがこれから何かをする予定…らしい?

 

かなりさっぱりとした性格であり切り替えが早く混乱することがほとんどない

だが、彼女自体カロリー消費が激しく著しいカロリー消費後無気力な状態になってしまうのが特徴

 

椿と言う始祖種の他にもう一人姫クラスの部下が居るらしいが……

 

 

大、金、イ、グ「…………(無言の警戒)」

 

 

古「流石にいきなりは身構えましたが……意外と話しやすい御方ですよ?」

 

 

エ「アハハ!まぁしょうがないわよね!あの時のカナは完全に戦闘モードだったし警戒も簡単には解けないわよ!」

 

 

長「まぁ、確かに敵ではあったがこの姿を見てると本当にあの時の姿が嘘みたいだな……」

 

 

叢「……本当に、私こんな姫を倒したのね…

と言うかいつまで寝てるのよコイツ」

 

 

佐「あのー……カナさん?そろそろ離れてくれないかな?

と言うか人の背中で寝ないでくれる?」

 

 

カ「いやー………zzzzzzzz……(オフモード中)」

 

 

 

 

 

 

 

 

佐「さて、こんなもんかでも次の章でまーた来るんだろ?誰か」

 

叢「だそうね、今度はどんなのが来るのよ……

面倒は勘弁よ」

 

古「でも、新しい仲間が来るのは楽しみですよね!」

 

大「男じゃないなら大丈夫よ私は」

 

金「私のnextは誰ですかねぇ?」

 

イ「どんな方が来るか楽しみだね!イーちゃん!」

 

イー「ピョンピョン!(嬉しそうに跳ねてる)」

 

グ「む、私の様なのがまた来るのか…

だが、誰でも歓迎しよう!」

 

エ「今度はどんな娘なのかしらね?」

 

長「ふむ?まだ増えるのか?

どんな人が来るんだろうな?」

 

夕「新人さん!?よーし!艤装チェック張り切っちゃうよ!」

 

カ「佐渡ー……お菓子どーこー?」

 

 

?「ここが小笠原島……私が居た無人島より全然良い!!」

 

 

 

 

 

 

 




次回

閑話休憩
鎮守府の休日~買い物に行こう!~

今回はここまで!
まだ追加してほしい、もっと詳しく知りたい方は感想にご記入くださればいくらでも書きますのでゆるしてください!!
今後、仲間が増えることにいくつか変更されますのでご了承を



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SS 小笠原鎮守府休日編

今回からキチンとした本編です
ちょっとした、ショートストーリーになります
10000UA突破!ありがとうございます!



「買い物に行こう」

 

 

その日はその言葉から始まった

現在、クーラーの効いた部屋で四人はだらけながらも立ち上がっている佐渡を見上げている

 

 

「……何よ?何か買いたいものでもあるの?」

 

 

のんびりと金剛を背に一緒に漫画を読んでいる叢雲が答える

二人とも椅子に据わっており金剛が座椅子に座り叢雲がその上から乗っている状況だ

 

 

「んまぁ、そんなところかな?

金剛って確かイギリス出生何だろ?」

 

 

「は、はい?そうですよ?」

 

 

「だから買いにいこうぜ?

紅茶好きなんだろ?」

 

 

「良いんですか!?」

 

 

金剛は勢い良く立ち上がると叢雲を押し出してしまいそのまま叢雲は座っていた大井の胸に飛び込む

 

 

「むぅ!?」

 

 

「叢雲?どうしたの?」

 

 

その瞬間叢雲は大井の胸を揉みし抱きながら抱きついている

 

 

「柔らかい…そしてデカイ……

ねぇ、大井ブラしてないでしょ?どうしたのよ?」

 

 

その言葉に顔を真っ赤にすると、その場に居た全員が凍り付く

 

 

「大井さん?また何で?いえ、オフですから構わないとは思いますが?」

 

 

「ち、ちちちちがうんです!!これには訳があって」

 

 

 

「大井!!そうやって提督を誘惑するですか!?

んんん!!許せません!!」

 

 

「違いますよ!!そんなわけありません!!」

 

 

「ふっ、大井照れるなよ

さぁ俺の胸にかもーん!!」

 

 

「ーー!死ね!!」

 

 

「へぶし!」

 

 

大井はどこからか取り出した魚雷を佐渡の顔面に当てると佐渡はそのまま倒れてしまう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いってぇ……酷くないか秘書艦様?」

 

 

「……ふん!」

 

 

佐渡達は現在海に来ており全員艤装を纏い各々待機している

佐渡はと言うと中々大きいボートに一人で乗っており特に荷物を乗せていない

 

 

「そう言えば提督ー?私、shoppingなんて初めてなんですけど、艦娘が同行して大丈夫なもんなのですか?」

 

 

「んー、大丈夫なんじゃないか?

良く叢雲と古鷹とは来てたし、なぁ?」

 

 

「そうね、でも約束事があるわよ?」

 

 

「約束…ですか?」

 

 

「はい!向こうに着いたら提督ではなく佐渡さんと呼ぶことです」

 

 

「何でデース?」

 

 

「提督やら司令官で呼ばれたらバレるだろ?

それにそう呼ばれるのは仕事の時だけだ他は自由に呼べ」

 

佐渡は、準備が終わったらしく

ボートにエンジンをかけ、各々出撃と同じ体制をとる

 

 

「さてと、準備オッケーか?」

 

 

「えぇ、行けるわよ」

 

 

「忘れ物ないか?」

 

 

「特に無いです!」

 

 

「服装は大丈夫かー?」

 

 

「いつも通りよ」

 

 

「んじゃ、各員出撃するぞ!」

 

 

「出発デース!!」

 

 

五人はその合図と共に出発し、本島を目指す

本日は小笠原の休日、そしてこれから本島で行われる各々のお休みをご様子をご覧ください

 

 

 

 

 

 





次回

二手に別れましょ


今回から少し書きたかった小笠原の休日編
そこまで長く書くつもりはありませんので少しお付き合いくださいませ




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SS 小笠原鎮守府の休日 買い物編

「ほい、到着っと」

 

 

佐渡達は、無事に本島に付き艦娘の四人は艤装を付けたまま陸に上がり佐渡は近くの港へ付きいつも借りている場所に船を着ける

 

 

「久々ね、本島も」

 

 

「うん!この前はただの食材の買い出しだったもんね!」

 

 

「そう言えば、私初めてかも沖縄と小笠原以外の陸の上に上がるのは……」

 

 

「私は、shoppingには来たことないから完全に初めてね……」

 

 

四人が辺りを見渡していると二人の憲兵がこちらに近付いてくる

一人が女性一人は男性だ

直ぐ様大井と金剛が構え敬礼をしようとするが叢雲がそれを制す

 

 

「お疲れ様です!小笠原の皆様ご連絡は来ております

物資は既に準備済みであります!」

 

 

「えぇ、ありがとう

でも、ごめんなさいね今日はそれに追加して買い物があるの」

 

 

「何でしょうか?手配しましょうか?」

 

 

「女性物の下着ですよ?」

 

 

「「申し訳ありませんでした!!」」

 

 

二人の憲兵と仲良さげに話す叢雲と古鷹を見ると大井と金剛は首をかしげる

 

 

「あ、どうも憲兵さん」

 

 

「佐渡提督殿お疲れ様です!!」

 

 

「お疲れ様です!!」

 

 

二人の憲兵は佐渡に敬礼すると佐渡は手をヒラヒラさせながら返す

 

 

「あ、金剛と大井は初めてか

この二人は俺が世話になってるここでの密航等の看守をしている憲兵さん達

いつも物資を準備してくれてるのさ」

 

 

金剛と大井は、頭を下げると憲兵二人は敬礼を返す

 

 

「では、四人様艤装を預かりますので着いてきてください」

 

 

「はーい」

 

 

「わかりました」

 

 

と二人に付いていき全く分からぬまま憲兵達にあるドッグに連れていかれそのまま海に面しているドッグに別々に入り武器等の艤装を外し用意された靴に履き替えると外に出てきておりそこで気付くのが

 

 

「あれ……?叢雲、それは?」

 

 

「古鷹も何ですかそれは?」

 

 

「ん?あー……そっか、二人とも私服が無いのだったかしら?」

 

 

「そう言えば買ったこと無かったですね……」

 

 

叢雲は白いワンピースを来ており、上に黒い上着を来ておりズボンはホットパンツを履いている

靴も黒いブーツだ

古鷹は黒い半袖の服と少し長めのスカートを来ており靴はサンダルの様なのを履いている

 

 

「お、叢雲と古鷹似合ってるなぁ

可愛いぞ?

とそうか、二人の私服も買いに行かないと行けねぇのか……忘れてた」

 

 

「古鷹さん、似合ってますね……」

 

 

「叢雲羨ましいねー!

私もほーしーい!!」

 

 

「はいはい、それじゃ佐渡二手に別れましょ

あんたは金剛のティーカップと紅茶を

私達は大井の下着ね」

 

 

「おいおい、三人だけで大丈夫か……」

 

 

「任せておきなさい、それじゃいつもの」

 

 

「ん、分かった」

 

 

佐渡は叢雲にあるものと財布を手渡し、最後に頭を撫でる

 

「じゃあ、二人を頼んだぞ?

我が相棒様?」

 

 

「任せなさい、あんたも金剛を任せたわよ」

 

 

「終わったら連絡くれよなー」

 

 

「はいはい、じゃあ後でね」

 

 

ここで叢雲組と佐渡組に別れそれぞれ買い物を開始する

本日晴天!雨予報無し!真夏の青空の下彼女達の買い物が始まります!

 

 

 

 




次回 

叢雲、大井、古鷹の胸囲とガールズトーク

次回から胸の内を皆で話していきます!



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買い物編 ガールズトーク?

今回は三人の買い物になります!




「にしても暑いわね、本島は

あっちと大違い」

 

 

「そうですねぇ、それに人も居ますし」

 

 

「ねぇ?叢雲、古鷹さん?どこの下着屋行くの?」

 

 

三人はショッピングモールを歩いており、ある下着屋に向かって歩いていた

今回大井の下着を探しに来ていた

何でもあまり下着を持っておらず大本営からの支給品だけだったらしく新しく買いに来たのだ

 

 

「もうじき着くわよ」

 

 

「可愛い下着が一杯あるんですよ!」

 

 

「へぇ?」

 

 

叢雲と古鷹はある店の前で歩みを止め二人は入っていく

そこはSUPER☆GiRLSと書かれており二人を追い掛けるように大井も入っていく

 

 

「相変わらず、品揃え豊富ね」

 

 

「そうだねぇ、あ、これ可愛いよ!叢雲!」

 

 

馴れてる二人は自分のサイズの下着を見ているが大井はどうすれば良いのか分からずあたふたしてしまう

 

 

「そう言えば大井っていくつなの?」

 

 

「えーっと……あれ?いくつなんだろ……」

 

 

「は?」

 

 

その言葉に驚き叢雲は店員を呼び大井に連れていかせる

 

 

「すいません、こいつのサイズ調べて貰ってもよろしいですか?」

 

 

「はーい、任せてください!

では、こちらに!ささ!」

 

 

「え、ちょっと!!」

 

 

大井は店の奥に連れていかれ、そこで採寸等をしてもらうと顔を真っ赤にしながら出てくる

対して店員さんはツヤツヤしている

 

 

「サイズは、約20.0㎝でEですね!」

 

 

「成る程…大きいわね」

 

 

「羨ましいです…」

 

 

「もう!!二人で見ないでよ!!」

 

 

他の人に上半身の裸を見られたのがかなり堪えたのかちょっと涙目になりながら胸を押さえる

 

 

「ま、とりあえず選びましょ?」

 

 

「そうですね!」

 

 

二人は大井の下着を探しながらも自分のも探しており色々と試着しては変えたりしているとちょっとしたガールズトークに入る

 

 

「そう言えばあんたたち佐渡の事好きなの?」

 

 

「「!!」」

 

 

叢雲に言われた瞬間、二人とも身体を硬直させるのを見た叢雲は口元を釣り上げニヤリと笑う

 

 

「へー?やっぱりそうなんだぁ?」

 

 

「ち、違うよ叢雲!!そんなこと!」

 

 

「そそそ、そうよ!!そんなわけないでしょ!

あんた変態やろうだなんて……」

 

 

「じゃあ金剛に取られるけど良いの?」

 

 

「「駄目!!(です!)」」

 

 

「ほれみなさい」

 

 

叢雲はケラケラと笑いながら、二人をからかっていると二人とも図星を突かれ顔を真っ赤にしながら俯く

 

 

「じゃ、じゃあ!叢雲はどうなの!?」

 

 

「そ、そうよ!叢雲は佐渡…さんの事どう思ってるのよ!!」

 

 

「んー?私、私は恋愛感情と言うよりは敬愛に近いかな?好きって前言われて流石に焦ったけど」

 

 

「え?叢雲好きってーー」

 

 

「君達、ちょっと良いかしら?」

 

 

叢雲達が話しているのを割き女性警官が叢雲達へ話してくる

 

 

「何でしょうか?」

 

 

「貴女達学校は?見たところ中学、高校生位にしか見えないけど?

ちょっと来てもらえる?」

 

 

女警官は無理矢理にでも大井の腕を引っ張り連れていこうとすると叢雲が溜め息を付きながらその警官の腕を掴む

 

 

「……公務執行妨害で捕ますよ?」

 

 

「はいはい、御苦労様よ

これ見て分からない?」

 

 

叢雲は佐渡から貰ったあるもの海軍の勲章を見せる

それを見た女警官は直ぐ様大井の腕を放し敬礼する

 

 

「し、失礼致しました!!もしかして貴女方は……」

 

 

「もしかしなくても艦娘よ、私は吹雪型五番艦 叢雲

あっちは古鷹型一番艦古鷹 この子は球磨型 四番艦大井

今日は休日なの、悪いここにいたら」

 

 

「い、いえ!失礼致しました!!

それとぶしつけなのですが、あの叢雲さんですか?」

 

 

女警官は恐る恐る叢雲に尋ねると首をかしげながら答える

 

「……?

知らないけど多分その叢雲よ?それがなに?」

 

 

「さ、サインください!!

ファン何です!!」

 

どこからか取り出したサイン色紙とペンを差し出され溜め息を付きながら適当にサインをすると女警官は喜びながら去っていく

 

 

「相変わらずだね、叢雲?」

 

 

「勘弁してよ……めんどくさいわね…」

 

 

「叢雲って有名人なの?」

 

 

「うん!この町を救った英雄だよ?」

 

 

「辞めてよ古鷹!さてと、そろそろ佐渡と合流しましょ?」

 

 

叢雲はスマートフォンを取り出すと、佐渡へと電話をかけ指定されたレストランへと向かう

 

 

 

 




次回  

金剛、佐渡の買い物デート?

今回はちょっと金剛と佐渡に御褒美です
尚、恒例の不幸は消えてませんよ?
死ね佐渡(嫉妬兼作者)





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小笠原鎮守府休日編 買い物デート?

今回は佐渡と金剛のお話 

彼女の不幸はどうやって発動するのでしょうか?






「佐渡さん~!このカップ可愛いね!!

あ、これも良いデース!」

 

 

「おい、金剛はしゃぐのは良いけど壊すなよー?」

 

 

現在、佐渡と金剛は二人でティーカップを買いに来ていた

周りには人が居るのだがそんなこと気にせず金剛ははしゃいでいる

結構種類があり、魚の絵がデザインされたものや薔薇や花が描かれたものついには深海棲艦が描かれたもの何てものもある

 

 

「おいおい……深海棲艦とか大丈夫かよ…」

 

 

「佐渡さん!私これにしまーす!!」

 

 

「んー?」

 

 

金剛が選んだのは薔薇や花をがデザインされたティーセットであり確かに金剛に良く似合うと思い即決した

 

 

「よし、んじゃそれ買うか

すいません、これください」

 

 

「はい、二万六千になります」

 

 

「え?」

 

 

金剛は値段を良く見ないで決めていたらしく値札を見ると確かに良い値段をしており佐渡の腕を掴む

 

 

「さ、佐渡さん!私あっちにします!」

 

 

「ん?」

 

 

金剛が次に指差したのはそれよりも遥かに安い二千位の特に絵柄がない物だったが佐渡は気にせず

 

 

「こっちの薔薇の奴で

カード使えますか?」

 

 

「さ、佐渡さん!?」

 

 

結局佐渡は二万五千のティーセットを購入し、金剛とショッピングを楽しんでいた

 

 

「ごめんなさい…佐渡さん……

こんな高いものを…」

 

 

「んー?大したことないって、それより高いのあったし、てか金剛よ佐渡で良いよ?

さん付けしなくてもさ?」

 

 

「だ、駄目です!!それは、その…まだ!呼べません!!」

 

 

「お、おう?」

 

 

佐渡は、変だなと思いながら金剛の手を握るとビクッと反応する

 

 

「ん?どうした?」

 

 

「え!?あ、いえ、そのあはは……」

 

 

「???」

 

 

いつもと違う金剛の反応に戸惑いながらもその手を離す

 

 

「金剛!飲み物買ってくるから少し待ってな?」

 

 

「あ、いや、えっと、はい……」

 

 

佐渡が歩いていき見えなくなると顔を押さえながらはぁぁ…と溜め息をつく

(提督とデートしてるみたいでどうすれば良いのか分からないよぉ……

しかも、名前呼びなんて馴れないし……)

そう考えながらも顔が熱くなるのを感じながら頭を左右に震う

(違うデース!今日はデートじゃなくて……デートじゃ

えへへ…でも提督と二人きりです…)

そんなことを考えていながら口元が自然と緩む 

 

 

「ねぇねぇ、そこの巫女服のお姉さん一人?」

 

 

「え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んー、金剛どうしたんだろうか?」

 

 

佐渡はそう考えながら、両手に飲み物を持って金剛の元へと向かうが金剛のいる場所に三人の男が群がっており金剛の姿が見えない

 

 

「ん?どこいった、金剛?」

 

 

佐渡はその場を去ろうとすると

 

 

「だ、だから!今日は連れの方が居るんデース!」

 

 

「ん?金剛?」

 

 

どうやら絡まれてるのは金剛だったらしく、良く見ると三人にナンパされている用だ

(んまぁ、あんなに可愛いし美人だから仕方無いか)

佐渡は溜め息混じりに金剛の元へと歩いていく

 

 

「佐渡さん!」

 

 

少し歩くと金剛は佐渡に気付き歩き出そうとするが茶髪の男に肩を掴まれる

 

 

「おっと、お嬢さん?嘘は良くないな?

お兄さん悪いんだけど邪魔しないでくれるかい?」

 

 

茶髪の男が二人に合図をするとピアスを付けた男とガムを噛んでいるチャラそうな二人に佐渡は囲まれる

 

 

「わっるいんだけどさー

俺達、あんたの彼女さんと遊びたくてさ?」

 

 

「譲ってくれない?あの娘?」

 

 

佐渡は溜め息をつくと近くのベンチに飲み物を置き再び金剛へ歩き出す

 

 

「ちょっとお兄さん聞いてるのかよ!!」

 

 

ピアスの男が我慢できずに佐渡の腹部に蹴りを入れるのだが佐渡は微動だにせずニヤリと口元を釣り上げる

 

 

「……正当防衛」

 

 

「は?」

 

 

佐渡はニコニコしながら、ピアスの男に向き直ると近付いていく

 

 

「急に不正な暴行を受けた際 自分を守るためにやむを得ず相手に害を加える行為だよ

分かるかな?お前達に」

 

 

「だからなんだよ!!」

 

 

ピアスの男は次に右ストレートを佐渡に向けるが佐渡はそれを容易く受け止め直ぐ様自分に引っ張った瞬間ピアスの男の頭を鷲掴みにし床に叩き付ける

 

 

「な!てめぇ!!」

 

 

次にガムの男がナイフを取り出し佐渡を切り付けようと後ろから襲いかかるが佐渡はその腕を回し蹴りでナイフを蹴飛ばし腹部の鳩尾へと右ストレートを決める

 

 

「がはっ!て、てめぇ……」

 

 

反撃をしようとするガムの男は佐渡を見上げるが、佐渡は既に右腕を振り上げており男の頬を思い切り殴るとガムの男は吹っ飛ばされる

 

 

「て、てめぇ!!こいつがどうなっても良いのか!?」

 

 

「さ、佐渡さん……」

 

 

茶髪の男が、金剛の首元にナイフを押し当ててるのを見るとゆっくりと無表情で茶髪の男に近寄る

 

 

「く、来るな!!来るんじゃねぇ!」

 

 

だが、佐渡は歩みを止めず完全に茶髪の男は佐渡にビビっておりその場から全く動けなくなり、佐渡が目の前に来ると完全に戦意を失っており金剛を離すと金剛は急いでその場から離れる

ゆっくりと手を伸ばしナイフを取り上げ床に落とし顔を近付け殺意を込めた睨みをきかせながらドスの効いた低い声で威嚇する

 

 

「俺の女に触れるな、次やったら容赦なく殺すぞ」

 

 

「は、はい……ごめんなさい………」

 

 

そう言うと茶髪の男はズルズルと崩れ落ちその場で腰を抜かしてしまう

男達のナイフを拾うと刃をしまい燃えないゴミ箱に捨てると金剛へ向き直り微笑みながら頭を撫でる

 

 

「すまなかったな金剛、一人にしちゃって

どこも怪我してないか?」

 

 

「だ、大丈夫です……」

 

 

「そうか!良かった良かった!」

 

 

佐渡はベンチから飲み物を取り金剛に渡し、もう片手で手を繋ぎながら歩き出す

 

 

「良し!そんじゃご飯でも行こっか?

叢雲達も終わった頃だしな!」

 

 

「は、はい……」

 

 

先程とうって変わる佐渡に驚きながらも自分を守ってくれた感謝と共に呆然とするが佐渡の言葉に顔を赤らめる

 

 

「ん?どした、金剛?」

 

 

「な、何でも!!ありませーん!!」

 

 

「お、おう?そうか?」

 

 

 

今日の不幸に少しだけ感謝する金剛であった

 

 

 

 

 




次回

五人での食事会


今回はちょっと佐渡さんの男気を見せました
元々この人温厚ですけど怒ると恐いんです

だが死ね(嫉妬兼八つ当たり)



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小笠原鎮守府の休日 お昼タイム

「聞いてください!皆!!佐渡さん、今日凄いかっこよかったんですよ!!」

 

 

「へぇ?何したの?佐渡?」

 

 

「んー?別に何も?大したことしてないよ?」

 

 

ファミレスに入った五人はそれぞれ運ばれてきた料理に舌鼓ながらのんびりと会話している

叢雲達と合流した瞬間服に付いた返り血をみた叢雲は密かに佐渡に耳打ちしそれを洗い流した後で大井にかなり詰め寄られたらしい

 

 

「さっきですね!私の不幸でナンパされたんですけどね!!」

 

 

「!?」

 

 

「へぇ?んで佐渡が何したの?」

 

 

佐渡は冷や汗が止まらないままスパゲッティを口に含んだままその場に膠着する

 

 

「そのナンパしてきた男を全員ボコボコにして、『俺の女に手を出すな』って低い声で言いましてねー!

私、更に佐渡さんに惚れちゃいましたよ!!」

 

 

「へぇ?ナンパしてきた奴等をねぇ?

佐渡ぃ?」

 

 

叢雲は佐渡の目の前でテーブル下で足をグリグリとしている

 

 

「へ、へい。

許せ、正当防衛だ」

 

 

「本当に?」

 

 

「あ、あぁきちんと先に手を出させたからな……」

 

 

「ふーん、なら良し

あんた怪我無いの?」

 

 

「ねぇよ、あんなガキ共に負けるほどやわじゃねぇよ」

 

 

「あっそ」

 

 

「いやちょっと待ってください!!」

 

 

大井がテーブルを叩きその場を制すと「ごめんなさい」と言うと座る

 

 

「佐渡…さんって強かったんですか?」

 

 

「そう言えば、私も佐渡さんが戦ったこと今日しか見たことないデース?」

 

 

「あら?あんたたち見たこと無かったっけ?

佐渡は私より遥かに強いわよ?」

 

 

「「え?」」

 

 

叢雲の発言に大井と金剛は驚きながら見ると古鷹が手を叩きながら答える

 

 

「そうですよ!佐渡さんは格闘術、近接戦闘では叢雲勝てた事がないんですよ!」

 

 

「へぇ……」

 

 

「知らなかったデース……」

 

 

「んまぁ、一応陸軍に居たときにな

対人戦闘を叩き込まれてその時の名残さ

んで、叢雲この後どうするんだ?」

 

 

「そうね、この後は取り敢えず大井と金剛の服を買いにいこうかしら?」

 

 

「んじゃ、食べ終わったら行くか?」

 

 

佐渡は、注文ボタンを押すと店員が来ており追加で注文をする

 

 

「すいません、デミグラスハンバーグとポテト、後タラコスパゲッティ、ドリア、エビグラタンにたこ焼き。

あ、食後にチョコパフェとイチゴパフェください」

 

 

「あ、私も追加でミートソーススパゲッティとチキン南蛮、まぐろのたたき丼、しょうが焼き定食

食後にチョコバナナパフェください」

 

 

「「二人ともまだ食べるの!?(デース!?)」」

 

 

「んー、この抹茶あんみつ美味しい」

 

 

佐渡と叢雲の注文に驚く二人を差し置いて、古鷹は食後のデザートを堪能していた

 

 

 

 

 

 






次回

女の子達だけのお買い物


え?佐渡は人間なのにこんなに食べれるのかって?
案外行けるらしいですよ?



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小笠原鎮守府の休日 

次回でこのSSは終わります
本編はちょっと艦これやらせてくだせぇ……(新人の性格作り中)




「あ、これとか大井に似合うんじゃないデースか?」

 

 

「あ、良いわね」

 

 

「金剛さんはこんなのとかどうですか?」

 

 

「可愛いデース!」

 

 

「あら?こっちも良いんじゃない?」

 

 

「ちょっと大胆デース……

でも、検討はしておきマース」

 

 

「ふわぁ……」

 

 

佐渡はベンチに座りながら四人の買い物を退屈しながら金剛のティーセットを持ちながら待っていた

当然、彼女達が入って行ったのは女性服コーナー男である佐渡が入るのは不粋だと思い現在終わるのを待っているがかれこれ二時間はああして探している

 

 

「良く飽きねぇなあれ……」

 

 

のんびりと煙草でも吹かそうとするが『煙草、辞めてよね?司令官?』と叢雲に言われたことを思いだし箱事握り潰し見事ゴミ箱に投げ入れる

 

 

「あいつに言われたんじゃ仕方ねぇもんな」

 

 

のんびりとどこか出掛けようとするが、先程の金剛の事を思い出しながらやはり辞めようと再び座ると

 

 

「暇そうね佐渡」

 

 

「んー、まぁな

俺は特に買い物は無いからな」

 

 

叢雲が買い物組から離れ、佐渡の隣に座ると側に寄る

 

 

「良いのか、買い物」

 

 

「えぇ、三人で盛り上がってるしね」

 

 

二人はのんびりとしながら、佐渡は立ち上がり近くの自販機で飲み物二つ買うと一つを叢雲に手渡す

 

 

「ありがと」

 

 

「おう」

 

 

のんびりと三人と買い物をしている光景を見ながら二人で呟きながら話をする

 

 

「平和ね」

 

 

「あぁ」

 

 

「佐渡」

 

 

「ん?」

 

 

佐渡は飲み物を飲みながら叢雲に向き直ると微笑んでいる

 

 

「こんな生活が毎日来れば良いのにね」

 

 

「……来るさ、きっといつかな

戦争は必ず終るんだからな」

 

 

佐渡が飲み物をぐいっと飲み干す

 

 

「へーい!佐渡さん!この服どうですか?」

 

 

「似合ってるんじゃないか?金剛に」

 

 

「えへへ…ならこれ買います!!」

 

 

「即決!?ちょっと金剛!少しは考えなさいよ!」

 

 

佐渡は金剛達に連れていかれ叢雲も飲み物を飲み干し呟く

 

 

「……そうね、貴方なら私達とこの戦争を終わらせてくれるわよね」

 

 

 

「叢雲ー!何してるのー?」

 

 

 

「そうよ!貴女も佐渡…さんに言ってあげてよ!」

 

 

「へーい、叢雲何一人でやってるねー!

こっちに来て一緒に選びましょー?」

 

 

「叢雲、助けてくれぇ!

大井に何か説教食らってるんだけど!?」

 

 

叢雲は、溜め息をつきながらもこの騒がしくも楽しい休日の買い物を満喫しており微笑みながらも佐渡達へと歩いていく

 

 

「はいはい、今行くから待ってなさいよ」

 

 

この後、五人は買い物を終え無事に小笠原鎮守府まで帰投する

皆、久しぶりの買い物や初めてだったかは分からないが、鎮守府に着いた途端に寝てしまったのはまた別のお話

 

 

 

 

       休日編 end

 




次回

お前を裁く

次回から新章!そして新人と本格的にある者が動き出します!!
そして、物語は加速します



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第五章 奴隷の潜水艦
提督に裁きを


今回はちょっとグロ注意!
プラス長いです
そして、次の犠牲者です……




「クソ!!何やっても上手く行かねぇ!!」

 

 

大奏鎮守府提督、白鳥一葉は酒を片手に頭を抱えていた

ここ最近新しい海域の制海権を取りに行ったのだがそこで運悪く謎の化け物に遭遇し取りに行けていなかった

白鳥は苛立ちが溜まっていた、原因は沖縄鎮守府での戦艦棲姫戦である

 

 

「あんなクズ共がぁ!!」

 

 

そう、そのクズ共とは小笠原鎮守府のメンバーである

実はあの作戦での報酬は小笠原鎮守府だけであり他の鎮守府には何も支払われて居なかったのだ

小笠原鎮守府以外のメンバーは戦艦棲姫ユリの策略に嵌まり多良間島で集中放火を受けていただけと言われ他の鎮守府も納得したのだが白鳥だけは納得していなかった

 

 

「クソ!!」

 

 

するとコンコンとノックする音が聞こえ頭を抱えながら「入れ!!」と叫ぶ

 

 

「失礼…します、司令官様こちら…今回の遠征報告書です…」

 

 

入ってきたのは羽黒である

おどおどしながら報告書を白鳥に渡すとそれをぶんどる様に奪い取る

 

 

「おい?羽黒、何だこの量は?」

 

 

「え?」

 

 

「だから、何だこれは?たったこれしかねぇのかよ!!」

 

 

白鳥は立ち上がり、羽黒を殴り付けると羽黒は頬を押さえながら倒れると更に白鳥が殴り付けようとするが手を止める

 

 

「重巡は入渠が長いから面倒だな……

おい、伊168を呼べ」

 

 

「え、でも……」

 

 

おどおどしている羽黒の胸ぐらを掴むと睨み付ける

 

 

「呼べ?解体すんぞ?」

 

 

「ひぃ!は、はい!」

 

 

羽黒は、出ていくと直ぐ様伊168を連れてくるとそそくさとその場を後にする

伊168は俯いていると白鳥に胸ぐらを掴まれる

 

 

「伊168、俺は今かなり苛立ってる分かるよな?」

 

 

「……はい、どうぞご自由に…」

 

 

「ありがとよっ!!」

 

 

それと同時に伊168の腹部を殴りつけると痛みで苦しみながら転がると足で何度も踏みつけたり蹴り飛ばしたりする

 

 

「ははは!!お前は入渠がすくねぇから本当に最高だな!!

蹴りやすい身体してるし!囮にも!オリョクルにも行かせられるとは最高だわ!!

おら!お礼はどうした!!」

 

 

「あ…り……が…と…ご…ざい…ま…す」

 

 

一通り蹴り終わると満足したのか、伊168の髪を持ち上げると流血で全身ドロドロになっておりそのまま再び床に叩き付ける

 

 

「鳥海!!このゴミを入渠しとけ!!」

 

 

だが、どれくらい待っても鳥海は現れず白鳥は手を叩く

 

 

「あ、そっかあれは轟沈(し)んだのか忘れてたな?

ち、まぁ良いやどうせ建造できるしな」

 

 

そうこの男は秘書艦鳥海を新しい海域の化け物にぶつけさせ無理矢理轟沈させたのだ

理由は邪魔だからや煩かった等の簡単な理由で

 

 

「ち、まぁ良いや。

おい、伊168入渠が終わったらオリョクルな

返事」

 

 

「は……い…」

 

 

「資材持ってこれなきゃてめぇ、今以上にやるからな?」

 

 

白鳥は伊168の髪を持ち上げ扉を開くと廊下に叩き出しゲラゲラと笑っている

 

 

廊下では伊168は無理矢理にでも立ち上がろうとするが、痛みに耐えきれず涙を流しながら倒れていると誰かに頭を撫でられ耳元で「お疲れ様、後は任せてねイムヤ」と言われ霞む眼を開けるとそこにはあり得ない女性がいた

 

 

その女性は、ノックも無しに執務室の扉を開き入る

それに気付いた白鳥は振り返る

 

 

「誰だ?ノック無しに入ってくるとは懲罰……房…」

 

 

「相変わらずやってるそうですね、司令官様」

 

 

「……嘘だ、何故ここにいる!?」

 

 

白鳥は幽霊を見たように驚き、眼を見開く

その女性は艤装を展開しながらゆっくりと白鳥に近付いていく

 

 

「何故って私はここの秘書艦ですよ?司令官様」

 

 

「………嘘だ嘘だ嘘だ!!何故ここにいる!!鳥海!!」

 

 

そこには轟沈したはずの鳥海が立っていた

艤装を展開しながら近寄る鳥海に腰を抜かし電気の付いたスタンドのコードを引っ張りながら倒れその勢いで電気が消え月の明かりだけになる

 

 

「えぇ、貴方が轟沈させたはずの鳥海ですよ?」

 

 

「………は、はは!!そうか!お前が有名な殺人鬼『提督殺し』か!!俺を騙そうっても…」

 

 

「なら貴方と私が肉体関係にあったと言ってもですか?」

 

 

「……え?」

 

 

鳥海はお腹や身体を自分の指でなぞりながら、二人だけの秘密を話していく

 

 

「貴方と会ったのはここでしたね

この執務室で出会い、貴方はメガネフェチで私を気に入り秘書艦にしていましね?

毎日私の事を性欲処理の様な扱いをし、毎晩私を部屋に呼びましたね?

初めて行ったとき、貴方は私が入った瞬間唇を奪いそのあと服を引き裂き抵抗する私に『逆らったら反逆罪としてお前を解体』すると脅しもかけてきましたね?」

 

 

「嘘だ……嘘だ嘘だ嘘だ!!」

 

 

この話は、外部以前の問題で二人だけの秘密と言うよりは知り得ない情報である

 

 

「子供が出来たときは金だけ払いおろせと言い、断ったら貴方は腹部を何度も殴り付けて無理矢理流産させましたよね?

あのあと私はトイレで泣いていたんですよ?

その後、貴方の為にいろいろしてきたんですよ?

私達の道を示してくれると信じた司令官様だから

でも」

 

 

すると鳥海から何かボトッと落ちそれを見ると月明かりに照らされたのは手首だった

 

 

「ひぃ!!!」

 

 

「貴方は私を沈めましたよねぇ!!

こんなにも尽くしたのにぃ!!

どうしてぇぇぇ!!!」

 

 

鳥海は、白鳥の顔を片手で掴むと全身から地を吹き出しながら床を赤く染めていく

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」

 

 

「謝ってもぉぉぉぉぉぉぉ!

私は生き返れないのぉぉぉぉ!!

助けてぇぇぇぇぇ!!!

私を死なせてぇぇぇぇぇ!!」

 

 

鳥海の顔が血で染まっていくのを間近で見ながら白鳥は失禁しガクガクと震えながら恐怖する

 

 

「許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許して許してくれぇぇ!!!」

 

 

 

「貴方を許さないぃぃぃぃぃ!!!

私をこんなにしたぁぁぁぁ!!

貴方をぉぉぉ!!」

 

 

顔の肉が削ぎ落ちそれが、白鳥の太股に落ちると白鳥は恐怖の余り頭を抱えながら左右に振るう

 

 

「夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢だ夢これは夢だぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「だからぁぁぁぁぁあ!!!

貴方も私と共にぃぃぃぃ!!!

死んでぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁ!!!

許してくれぇぇぇぇ!!

鳥海!!!!!」

 

 

瞬間、鳥海は右手の主砲を白鳥の頭に押し付けると砲撃し頭を撃ち抜くと辺りに頭部の破片と脳ミソが飛び散り真っ赤に染まる

鳥海はその姿を見ながら人差し指を口に当てると呟く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『提督』には罰を……フフフ…」

 

 

 

 

 

 

 

 




次回

佐渡と釣りとイ級と古鷹


いやー悪いことはするもんではありませんね
恐くないとは思いますが恐がらせてしまったら申し訳ないです
次回からいつも通りゆるく始まりますよ?



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釣りしようや?

え?前の話が酷い?
しょうがないじゃないですか、やらないと始まらないんですもん
許してください





「んー……あっちー…」

 

 

「ですねぇ、提督。

あ、麦茶ありますよ?」

 

 

「お、流石古鷹気が利いてる~

良い嫁さんになれるな」

 

 

「もう!そう言うこと言わないでください!

はい、麦茶ですよ」

 

 

「誉めてるんだけどなぁ…

ありがと」

 

 

現在、佐渡と古鷹は防波堤で釣りを楽しんでいた

楽しんでいると言っても晩御飯の魚を取りに来るためにここで釣りをしているのだ

だが、季節は8月完全に夏真っ盛りでありパラソルと麦わら帽子を二人とも被りながらのんびりとしていた

 

 

「にしても、良く釣れるよな

ここの魚は、前金剛とやったとき何も釣れんかったのに」

 

 

「それは金剛さんの不幸が原因ですかね?」

 

 

「かもなぁ……

んま、気にしないけどさ」

 

 

佐渡のバケツには多くの魚が泳ぎ更にアイスボックスにも入りきらないほど釣れていた

 

 

「次釣れたら何か食べるか?

古鷹?」

 

 

「良いですね!おにぎりもありますので、焼き魚にしますか?」

 

 

「用意良いな……そうするかぁ」

 

 

のんびりとこの生活を楽しみながら平和ボケしているほどに佐渡はあくびをしながら釣竿が引くのを待っているとぐんと強い引きが来る

 

 

「あ、来た」

 

 

「では、提督準備しますね!」

 

 

「おー」

 

 

佐渡は、釣糸を手繰り寄せながら見事に一本釣りをするとその釣れた魚に唖然とする

 

 

「………あ?」

 

 

「提督何が釣れて……え?」

 

 

佐渡が釣り上げたのは、前に金剛と釣り上げた筈のイ級だった

餌(伊勢海老)に食い付き見事に釣れており古鷹は慌てている

 

 

「え?え?深海棲艦!?

ど、ど、どどどうしよう!!

とりあえず!提督そのままで!!」

 

 

「待て、古鷹俺はこいつに言うことがある

とりあえず、飯の準備を」

 

 

「は、はい?」

 

 

佐渡はゆっくりと馴れた手付きでイ級の口に引っ掛かった針を取ろうとするとイ級も口を開け取りやすいようにしてくれ奥に引っ掛かっていた針を抜き取り

イ級をコンクリートに置くと佐渡は立ち上がる

 

 

「お前なぁ!!!このやろう!この前言ったよなぁ!?

魚の餌を食べるなって!!

捌かれたいのかお前はぁぁ!?あぁ!!」

 

 

佐渡はイ級を指差しながら怒っていると心なしかイ級は頭を下げており大人しく怒られている

その状況に付いていけては居ないが、とりあえず古鷹は火をお越し準備を進める

 

 

「全く!!お前達は何だ!魚の餌が好物なのか??あぁん!?きちんと飯を食え!!」

 

 

「あ、あの提督?そこではないと思うのですが……

それよりもそれ…イ級ですよね?」

 

 

「古鷹さん、とりあえず待つんだ

俺がこいつの飯の素晴らしさを伝えるからな?」

 

 

「い、いえ、提督それ以前にその子敵ですよね?

良いんですか?倒さなくて良いんですか?」

 

 

古鷹が混乱しているのを余所に佐渡はイ級に説教していると大人しくイ級が怒られているのを見ると大丈夫…なのか?と思い佐渡の釣った魚を七輪で焼いていく

 

 

「……だからな!飯は…ってお前!聞いてるのか!?」

 

 

イ級を怒っているといつの間にかイ級は古鷹の方をじーと見ている

古鷹はうちわをパタパタやりながら丁寧に魚を焼いておりイ級はその姿を見ている

 

 

「提督、そろそろ焼けますよ?」

 

 

「お、マジ?んじゃ食べるか、ほらお前は海に帰れ

次は撃沈させるからな?」

 

 

佐渡はイ級を見逃すと、古鷹から紙皿を受け取り焼かれた魚を食べようとする

 

 

「んじゃ、頂きます」

 

 

 

するとイ級が芋虫の様にコンクリートを這いながら佐渡に近付く

 

 

「ん?なんだお前何か用か?」

 

 

イ級は、佐渡の持つ紙皿をじーと眺めておりそれに気付いた古鷹は手を叩く

 

 

「もしかして、その子お腹空いてるんじゃないですか?」

 

 

「はぁ?深海棲艦って腹減るの?

……食べたいのか?」

 

 

佐渡が聞くがイ級はじーと眺めて居ながら一切答えない

ちょっと意地悪をしたくなった佐渡は紙皿を左右動かすとそれを見るようにイ級も頭を動かす

 

 

「……見たいだな

食うか?」

 

 

イ級は、頭を立てに振り佐渡は出来立ての魚の身をほぐし息で冷まし口に運ぶと口を開け食べる

その瞬間美味しかったらしく頭を上下に振りながら喜ぶ

 

 

「ほう?分かるか、旨味がよし!なら食え!!」

 

 

佐渡は紙皿に乗った魚を全てイ級に渡すと勢い良くバクバクと食べ始める

 

 

「お腹空いてたんですね……」

 

 

「成る程、だから魚の餌食ってたのかこいつ」

 

 

焼けた魚を食べ終わると再び古鷹を見上げじーと眺める

 

 

「まだ欲しいの?分かった!任せておいて!」

 

 

古鷹は美味しそうに食べるイ級を見るとやる気をだし

再び焼いていきと紙皿に乗せていきそれをバクバクとイ級は食べており、佐渡も別に焼いてもらい食べながら釣りを続ける

 

 

「平和だな……ここは……」

 

 

そう呟きながら、空を見上げると海の向こう側に入道雲が見えるがそれ以外は晴れ模様

絶好の釣り日和である

 

 

 

 

 

 




次回

イ級と仲良くなった?

今回はのんびりとほんわかとした話でした!
次回もそんな感じです!



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伝達

佐渡はのんびりと釣りをしながら、古鷹もその隣でヒットするのを待っていた

満腹になったイ級を膝に抱えながら

 

 

「……平和だな」

 

 

「…ですね」

 

 

イ級はある程度古鷹の焼いた魚を食べきると満足したのかゴロンと転がってしまいそれを見た古鷹が「日焼けしても大変ですからね」と膝に乗せ今パラソルの下で共に休憩していた

等本人はと言うと眼を閉じ身体を上下させながら眠っていた

 

 

「………そう言えば、そいつ敵じゃね?」

 

 

「今更過ぎますよ提督……」

 

 

凄い今更の事に気付いた佐渡であったが「まぁ良いか」と言いながらのんびりと釣りを続けているとスマホが鳴る

その音にビックリしたのかイ級も目を覚まし辺りを警戒する

 

 

「あ、ごめんごめん」

 

 

「ごめんね、イ級ちゃん」

 

 

古鷹は、目を覚ましたイ級の頭を撫でていると再び目を閉じ膝の上で寝てしまう

その間佐渡は釣り竿を置くとスマホで通話する

 

 

「はいはい、こちら小笠原鎮守府提督佐渡です

どっちらさまー?」

 

 

『お久しぶりです、佐渡提督

大淀です』

 

 

「oh淀さん!」

 

 

『……怒りますよ?』

 

 

「すんません……」

 

 

電話相手は大淀であり嫌な予感がしながらも佐渡は軽くふざける

 

 

「そんで俺に何かようかい?」

 

 

『えぇ、幾つか報告とお知らせがありまして』

 

 

「ほいほい、どうぞ

あ、でも今釣りしてるからヒットしたら少し待ってね」

 

 

『貴方艦隊運営は……とそこでは野暮でしたねではまず貴方への嬉しい報告から

先程伝達を送りましたが佐渡少尉 貴方を少尉から大尉に昇格させました事をご報告させていただきます

おめでとうございます!』

 

 

「おー、ありがとうございますー

でもなんで二階級特進?」

 

 

『この前の戦艦棲姫戦での話を海軍会議で話し合った結果少将以下の提督階級を上げることに決定しました

そして、最も貢献した小笠原鎮守府は二階級特進と言うことです』

 

 

「なーるほど?んで他には?」

 

 

『次は悪い知らせが二つ』

 

 

「聞きたくねぇ……」

 

 

『まぁ、聞いてください

一つは全鎮守府提督達にも言っているんです

もう一つは貴方の鎮守府だけですが』

 

 

 

「んじゃ、全鎮守府の方から」

 

 

『………現在、『提督殺し』が再び現れました

奴は既に四人の海軍提督と上層部に手をかけ殺害しております

今後再び現れると予測されます

小笠原鎮守府に来るもの達には厳重な警戒を』

 

 

「一体だれが被害者何ですか?」

 

 

『被害者は元佐世保鎮守府提督 木原中佐 海軍本郷田大将、桐沢大将そして大奏鎮守府提督白鳥少将です

全員惨殺死体で見付かっています』

 

 

「木原……」

 

 

その名前に反応した佐渡は拳を握り締めるが殺されたと聞いて「ざまぁみろ」と呟いてしまう

だがその中に一人聞いたことがある名前があった

 

 

「ん?白鳥?確かこの前一緒に作戦に参加していた……」

 

 

『はい、沖縄作戦に参加していた提督の一人です

彼も昨日遺体として報告が上がっています

後日捜査した結果、彼は日常的に艦娘に暴行、セクハラを働いていたらしく

それに加え無茶な進軍、捨て艦戦法を取っており

結果重巡 鳥海を轟沈しています

もしかしたら、それが『提督殺し』に目をつけられたのかも知れません』

 

 

「成る程な……んま因果応報かな?」

 

 

『そして、ここからが貴方の鎮守府だけに送られる報告になります』

 

 

「提督!ここに居たんですか!

大本営から報告が……」

 

 

佐渡が振り返ると大井がバインダーを抱えながら溜め息混じりに佐渡を見るが電話をしていることに気付き慌てて口を閉ざす

 

 

『……佐渡提督?』

 

 

「あぁ、いや続けて?」

 

 

『えぇ、ではその白鳥少将が保有していた艦娘の一人をそちらに送らせて頂きます』

 

 

「問題児、ですか?それとも犯罪者とか?」

 

 

その言葉を聞いた大井はバインダーを佐渡に手渡すと古鷹の膝上のイ級に驚くが古鷹がそれを静かにさせる

 

 

『どちらかと言うと問題児であり、解体よりそちらに送り戦力とせよと大本営の決定です

沖縄での活躍が影響を与えましたね 』

 

 

「嬉しいような……そうじゃないような……」

 

 

佐渡は渡されたバインダーの資料に目を通すとその送られてくる艦娘の詳細が記載されている資料を見付け手を止める

 

 

『今回貴方の鎮守府に送る艦娘は』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「潜水艦…か……」

 

 

『はい、海大VI型 一番艦 潜水艦 伊168

通称、イムヤ

彼女がそちらに配属されます』

 

 

 

 





次回

海からの使者?そして、新人!潜水艦イムヤ

今回は、大淀さん登場!!
次回は潜水艦四人登場します!



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新人! 社畜の潜水艦?

現在、小笠原メンバー全員は防波堤に集まっており麦わら帽子を被りながらこれから来る新人 潜水艦伊168が来るのを待っていた

 

 

「潜水艦ねぇ、まさかそんなのが来るとは思わなかったわ」

 

 

「そうだね……でも、この資料に書かれてる潜水艦を奴隷のように扱ってたって…」

 

 

「潜水艦は、損傷しても入渠時間が短く艤装の補給も少ないので凄い低燃費なんです

もしかしたら、それを狙われたのかと」

 

 

「だと言ってもそいつクズねー

女の子を奴隷扱いなんてクソよ!」

 

 

「それには激しく同感しよう

女の子は丁寧!そして優しく触るのが一番だ!!」

 

 

佐渡が威張りながら言っていると四人から総突っ込みが入る 

 

 

「知ってる?あんたのはセクハラよ?立派な犯罪よ?」

 

 

「提督は触りすぎでは無いですか?」

 

 

「貴方はただ私達に触りたいだけですもんね、魚雷撃ちますよ?あ、許可入らずに撃ちますから」

 

 

「提督のセクハラは、やりすぎはダメよー?

もう少し場所と時間を弁えよ?」

 

 

「弁えれば良いのか!?金剛!!」

 

 

「「んなわけあるか!!!」」

 

 

「ぐっはぁ!!」

 

 

大井と叢雲が揃って前後から佐渡の腹部を殴り付けるとどちらにも逃げれずその場に倒れてしまう

その瞬間、叢雲と大井は腕を組み合わしお互いを褒める

 

 

「大井!ナイス!!」

 

 

「これくらい秘書艦として当然!!」

 

 

「お前…ら…なぁ……」

 

 

「「アハハ……」」

 

 

四人がコントの様にやってはいるが実はこれが日常的に最近は行われており大井も金剛も慣れつつある

佐渡は痛がりながらも立ち上がると大井を見る

木原が殺された、その話を聞いた大井を気にかけていた

 

 

「なぁ、大井」

 

 

「何ですか」

 

 

「……木原だけどさ」

 

 

「えぇ、聞きました良い気味です

あんな男そうなって当然です」

 

 

「そうか……だが」

 

 

佐渡が何か言おうとするが、大井佐渡の口にバインダーを当て言葉を遮る

 

 

「もう、私はあの男とは関係ありませんし情もありません

それに今私が居るのはここ小笠原鎮守府です

貴方の心配する事なんて無いんですよ?」

 

 

「そ、そうか?」

 

 

「そうです、貴方は私達を心配し過ぎなんですよ

それに……」

 

 

「ん?」

 

 

「私は『貴方の艦娘』ですから。

貴方が狙われたなら全力で守ります

私を救ってくれた貴方へ出来るせめてもの恩返しですからね」

 

 

「……そっか、ありがとな」

 

 

「それはともかく……」

 

 

「ん?何だ?」

 

 

「そのイ級は何ですか?」

 

 

佐渡はイ級を抱き抱えており流石に疑問に思った大井は指摘すると全員が佐渡に集中する

 

 

「そう言えば、あんたそれなに?」

 

 

「提督ー?もしかしてあの時のー?」

 

 

「あぁ、また食い付きやがってな

腹減ってた見たいだから飯食わせたら懐いた」

 

 

金剛はイ級の頭を撫でてはいるが、大井は魚雷を取り出し警戒している

叢雲は、はぁ…と溜め息をついており呆れている

 

 

「………攻撃してこないんですか?」

 

 

「あぁ、深海棲艦にしてはな」

 

 

「そうですか、でもこれから来る新人には見せないでくださいね?」

 

 

「ちぇ、仕方ない

イーちゃん海にお帰り」

 

 

「「「「イーちゃん????」」」」

 

 

いつの間にか佐渡が名前を付け、全員不思議がるがイ級を海に帰すとゆっくりと潜航していき姿が見えなくなる

 

 

「……見なかったことにしましょう提督」

 

 

「え?ダメ?」

 

 

「駄目です」

 

 

「ちぇ、厳しいなぁ秘書艦様は」

 

 

すると、古鷹の電探に反応があり佐渡の服を引っ張る

 

 

「提督、来られたそうですよ?」

 

 

「え?どこ?」

 

 

佐渡は辺りを見渡すがどこにも艦娘の影は見えないが水中から何かが浮上してきているのが確認できると目の前に飛び出してくる

 

 

「海の中からこんにちはー!!ゴーヤだよ!!」

 

 

「おう!?そ、そうか潜水艦だから海の中からなのか……」

 

 

海の中から、伊58(以降ゴーヤ)が出てきて驚いた佐渡だが、その後ろから二隻続けて浮上してくる

 

 

「ゴーヤ、あんまり驚かせちゃ駄目だよ?」

 

 

「やっと着いたのねー!小笠原鎮守府遠いのねー!!」

 

 

眼鏡をかけたスク水の女の子とツインテールの女の子が同時に浮上してきており海面を立ち泳ぎしながらゆっくりと防波堤に登ってくる

 

 

「えっと君達が今回の護送艦かな?」

 

 

「はい!佐渡提督!私は伊58でち!

今回の旗艦を務めております!沖縄以来でちね!

話は提督から聞いてるでち!」 

 

 

元気一杯の彼女は 巡潜乙型改二三番艦 伊58

沖縄での作戦時に唐沢大将の艦隊におりその時はほとんど関わりが持てなかった子だ

 

 

「え?何か言ってた?あの人?」

 

 

「そうでちね、『提督としては駄目だが人間としては信頼できる』といってたでち」

 

 

「お、おう……

んで君は?」

 

 

「私は、伊号第八潜水艦の伊8

はっちゃんとお呼びください佐渡提督

話は提督から聞いております」

 

 

彼女は巡潜3型 2番艦 伊8

ここ最近、猿橋提督率いる横須賀鎮守府に着任した潜水艦娘である

 

 

「私は伊19なのー!話は提督から聞いてるの!!

佐渡提督だよね?」

 

 

その隣に居るのは巡潜乙型 3番艦 伊19

彼女は、北上が居る葛城提督率いる佐伯鎮守府に最近配属された艦娘であるのだが

 

 

「……ってあれ?資料の娘が見当たらないんだけど…」

 

 

「「「え?」」」

 

 

三人は顔を見合せ、海を見ると「あー!!」と叫ぶ

まさか?と佐渡は嫌な予感がする

 

 

「ちょっと19!しっかり連れてきなさいよ!!」

 

 

「ご、ごめんなのー!!」

 

 

「佐渡提督!!ちょっと待っててでち!!」

 

 

「お、おう?」

 

 

三人は同時に海に潜ると一人の少女を三人で持ち上げる

そのまま、防波堤に持ち上げるのだがその少女はかなり弱っていた

 

 

 




次回

衰弱

今回中途半端な気がしますがお許しを……


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社畜の潜水艦

ここは小笠原鎮守府の佐渡の部屋

実は新人艦 伊168はかなり衰弱しておりその状態で三人が運んできたらしいのだが、気を抜いてしまい離してしまったらしい

 

 

「君達ねぇ……」

 

 

「「「ごめんなさい……」」」

 

 

「はぁ……あんたたち仕事位全うしなさいよ?」

 

 

「はいなの……」

 

 

伊168はベッドに寝かされ安眠しており側には古鷹、金剛、大井が見ており佐渡と叢雲は部屋の外で三人に説教をしていた

 

 

「まぁ、大事ではないって言ってたし……良いでしょう!

あ、これ皆で食べなよ」

 

 

佐渡は四角いケースに入った物を三人に一つずつ手渡す

 

 

 

「佐渡提督、これは?」

 

 

「お土産、俺特性のドーナツ何だけどさ

作りすぎて余ってさ……

でも海の中を泳ぐんだもんね

だから、親方に作ってもらったケースの中だから向こうに着いたら開けな?」

 

 

「良いんでちか?こんなの貰って」

 

 

「まぁ、作りすぎただけだからね

今度感想聞かせてね?」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

三人は嬉しそうに、ドーナツをもって帰ろうとすると袋を背中に回し佐渡に改めてお辞儀する

 

 

「佐渡提督、イムヤをよろしくお願いしますでち」

 

 

「あの子、前の鎮守府でかなり酷い目にあってたみたいなのそれに何か食事も取らなくて……」

 

 

「だ、だけど!19、比叡さんから聞いて!

私のお姉さまを何とかした方だからイムヤを何とかできるかもって!!言われて!!」

 

 

(そう言うことか……)

 

 

何となく、伊168がこちらに来た理由を把握した佐渡はゴーヤと19の頭を撫でる

 

 

 

「んまぁ、出来るだけの事はやってみるよ

安心して」

 

 

「こいつの事だから何とかなるわよきっと

信じなさい」

 

 

「お前なぁ……

信用してくれるのは良いけどさ…」

 

 

佐渡は溜め息を付きながら三人を見るとこちらを心配そうか顔で見つめてきているのを見ると胸を張り威張るように宣言する

 

 

「俺に任せておけ!!」

 

 

 

「やったでち!!」

 

「やった!」

 

「やったなの!!」

 

 

 

そう言われると三人は明るい顔になりお互いに手を取り合っているのを見ると微笑みながらも溜め息をつく

 

 

「流石ね、司令官様?」

 

 

「茶化すなお前許さねぇからな

晩飯覚悟しとけよ?」

 

 

「あら怖い」

 

 

あくまで余裕の態度を取る叢雲の頭を掴みながらも三人の笑顔に答えるためにまた頑張ろうと思っていると

 

 

「提督!!!」

 

 

金剛が扉を勢いよく開けると、佐渡達は振り返る

 

 

「ん?どうした金剛?」

 

 

「伊168が目を覚ましたのですが……」

 

 

その歯切れの悪い金剛に嫌な予感をさせながら佐渡の部屋に入るとベッドの上で伊168がガクガクと震えており大井も古鷹もどうすれば良いのか分からず混乱していた

 

 

「伊168!どうかしたのか!?」

 

 

佐渡がベッドに近付くと頭を抱えながら「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい」と連呼しながら怯えておりゴーヤ達が駆け寄る

 

 

「イムヤ!大丈夫でちよ!!」

 

 

「そうだよ!イムヤ!あいつは居ないんだよ!?」

 

 

「イムヤ!大丈夫だから落ち着いてなの!」

 

 

ゴーヤ達が怯えている伊168を宥めておりゴーヤは佐渡に向けて顔を向けると頷き理由を理解する

 

 

「全員、ここから出るぞ」

 

 

佐渡に言われ、伊168を心配しながらも部屋を出ていくと廊下で待機する

中ではゴーヤ達が必死に説得しており佐渡以外は部屋を離れていく

 

 

 

 




次回  

拒食症

イムヤさん登場!今回も問題持ちな為イムヤ好きには申し訳ありません……




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社畜の潜水艦 二

しばらく廊下で待っているとゴーヤが外に出てくる

 

 

「何とか落ち着かせることが出来たでち」

 

 

「ありがとう」

 

 

「佐渡提督、イムヤをよろしくお願いしますでち」

 

 

「おう」

 

 

ゴーヤ達はイムヤを落ち着かせた後自分達の鎮守府へと帰っていくと佐渡は緊張した面持ちで部屋に入ろうとする

(……似てるなあの時と)

少し前に起きたことと近視間を覚えながらゆっくりと部屋のドアを開ける

 

 

「調子はどうだい?伊168

えっとイムヤで良いのかな?」

 

 

「は、はい

先程は申し訳ありませんでした…

お話は先程はゴーヤ達から聞きました」

 

 

佐渡は、起き上がっている伊168(以降イムヤ)の近くに座り込むと珈琲を入れイムヤに差し出す

 

 

「珈琲は苦手かい?」

 

 

「い、いえ!頂きます……」

 

 

イムヤは珈琲を受け取り、少しすすると落ち着いたのか先程よりは震えが収まっている

 

 

「とりあえず、自己紹介しよっか?

俺は佐渡 満 ここの鎮守府提督だ

君は、伊168で間違いないね?」

 

 

「は、はい!

自己紹介が遅くなり申し訳ありません

司令官様」

 

 

「あー、堅いのはよそう

俺が苦手だしここの鎮守府では特にそう言うのは気にしてないんだ

後、俺に様は無しね」

 

 

「ですが……」

 

 

イムヤが言いかけると佐渡はイムヤの頭を撫でながら言葉を遮る

 

 

「提督命令だぞ?」

 

 

「は、はい…」

 

 

頭を撫でられていると佐渡はイムヤの手を取りベッドから起き上がらせる

 

 

「とりあえず、鎮守府のメンバーに会わせるから来てくれないか?

ついでに飯にしよう」

 

 

「は、はい!」

 

 

佐渡は、イムヤが珈琲を置いていき後ろを着いていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「~♪」

 

 

佐渡は鼻歌混じりに料理をしているとテーブルにはイムヤを囲むように再び陣形が組まれている

 

 

「こんにちは、伊168

私は叢雲よ?」

 

 

「私は古鷹!よろしくね?」

 

 

「私は大井です。あの変態に何かされませんでしたか?」

 

「私は金剛デース!!よろしくネー!」

 

 

「えっと!私は伊168のイムヤです!

イムヤとお呼びください」

 

 

そう言うとイムヤは頭を下げるが金剛が指を左右に振るう

 

 

「ノンノン!イムヤ!!ここでは敬語はいらないネー!ね!大井!」

 

 

「えぇ、ここでは畏まらなくて良いんですよ?

後このあとお時間よろしいですか?

少し確認がありますので!」

 

 

「イムヤさん!よろしくお願いしますね!

仲良くしましょうね!!」

 

 

「ま、そう言うことよ

ここにいるのは問題児ばっかりだしね

気にしても無駄よ?」

 

 

「えー、それを叢雲がいうノー?」

 

 

「うっさい不幸艦!!」

 

 

「なんだと~!この鎮守府一のちっぱい!」

 

 

「言ったわねー!!」

 

 

「やるデースか!?」

 

 

「やめんかお前ら、喧嘩なら外でやれ

ただし飯抜きな」

 

 

佐渡が、厨房から出てくるとテーブルに皿を並べていくとそこにはいつもより少し豪勢な料理が並んでいた

 

 

「おー!提督!今日はゴージャスね!!」

 

 

「イムヤが来たからな、少し奮発した!!

魚も釣れたしな!」

 

 

「ま、今日は多目にみましょう」

 

 

佐渡が料理を運び終わると古鷹と叢雲がご飯をそれぞれ手渡すのだが

 

 

「あ、あの……」

 

 

「ん?どうかしたのですか?イムヤさん?」

 

 

「私、ご飯入りません……」

 

 

「「は?」」

 

その言葉に見事叢雲と佐渡が被り、大井と金剛が二人を押さえる

 

 

「二人ともストップね」

 

 

「落ち着きなさい貴方達」

 

 

「いや、ご飯いらないはいかんぞぉ!!」

 

 

「そうよ!!ご飯はキチンと食べなさい!!」

 

 

二人の気迫に押されイムヤはしぶしぶご飯を貰う

 

 

「そんじゃ、行き渡ったな

では皆で」

 

 

「「「「頂きます」」」」

 

 

「い、頂きます……」

 

 

それぞれ、皆は食べたいものを取ったりしながら堪能していると今回は親方も参戦しておりイムヤへと近づいていく

 

 

「よう!あんたが、新人だな!俺は親方妖精

工厰の責任者だ

潜水艦のイムヤちゃんで良いのかな?」

 

 

「はい!よろしくお願いします」

 

 

「おう!所でイムヤちゃん前の所がどうだったか分からないがここでは違うことばっかりだから気を付けろよー!」

 

 

「本当にそうでーす!!」

 

 

金剛は、肉団子を箸で掴みながらイムヤへと向いている

 

 

「ここでは向こうとは全く違いますからネー!

イムヤも気に入りマース!保証するネー!」

 

 

「それには同感します

提督は変態ですがそれだけを目を瞑ればたのしいですよ?ここは」

 

 

「私達は馴れてるけどそんなに違うのかしらね?」

 

 

「イムヤさんもここが好きになりますよ!」

 

 

「は、はい……」

 

 

だが、ここで佐渡が気付くイムヤが一口も食べ物に口をつけていないことに

 

 

「イムヤ、どうした?嫌いな物でもあったか?

それともお腹減ってないのか?」

 

 

「い、いえ!その……」

 

 

「うーん?どうしたの?イムヤー?」

 

 

皆が手を止めイムヤを心配そうに見ると、それに恥ずかしさを覚えたのかご飯を凄い勢いで食べる

 

 

「何よ?食べれるじゃない?美味しい?」

 

 

「は、はい!美味し……ヴッ」

 

 

突然イムヤは酷い吐き気に襲われ、口を押さ立ち上がる

 

 

「イムヤ!!どうした!?」

 

 

「な、なんでも……ヴぇ…」

 

 

佐渡は勢いよく立ち上がりイムヤを抱き抱えると全速力でトイレへと駆け込む

個室にイムヤを連れ込むと便器へ顔を近付けてやると勢い良く食べていた物を吐き出す

 

 

「大丈夫か?イムヤ?」

 

 

「は、はい……ごめんな…ヴ…」

 

 

「良いから、落ち着いたら出てこい。

良いな?」

 

 

「は、はい……」

 

 

佐渡がトイレから出てくると後ろからイムヤの気持ち悪そうな声が聞こえる

廊下に出るとイムヤを心配したのか四人ともトイレへと来ていた

 

 

「どうしたんでーすか?イムヤ……」

 

 

「恐らく、食べ物だな」

 

 

「でも、私達は何にもないですよ?」

 

 

「まぁ、何となくは分かるわよ原因」

 

 

「あぁ、ありゃ」

 

佐渡はその場に座り込むとはぁと息を吐き捨て頭をかきむしる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「拒食症だな典型的な」

 

 

 

 





次回

二つの問題

ちょっと汚い表現を使ってしまい申し訳ない…
気分を害された皆様に謝罪します



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社畜の潜水艦 三

「拒食症…デースか?」

 

 

「あぁ、正式には神経性無食欲症

簡単に言うとダイエットの為食事をしないことだ」

 

 

「聞いたことがあります。

ですが、提督イムヤさんは……」

 

 

「ダイエット何てのは艦娘と全く関係ない

むしろあんだけ細いし資料通りならあの激務をしていたって子がやるとは思えん

恐らくは」

 

 

「前提督の影響ね」

 

 

すると佐渡は少し真面目な面持ちになりながら、四人に指示を出す

 

 

「大井、大淀さんに聞いてイムヤの事を調べろ

金剛、布団と服の準備

古鷹、食事をラップして冷凍と冷蔵に別けろ

叢雲、イムヤと風呂に入る準備を

各員、動け」

 

 

「「「「了解」」」」

 

 

四人は命じられるままに各々動き始め、佐渡は頭をかきながら考え事をする

 

 

「今回はキツそうだな……

二つもあるのか……」

 

 

しばらくすると、イムヤがふらつきながらトイレから出てくると佐渡がその身体を支えてあげる

 

 

「大丈夫か?イムヤ?」

 

 

「だ、大丈夫……です…

まだ、仕事…出来ます…」

 

 

仕事、その言葉に若干引っ掛かるが今は気にせずイムヤを抱き抱えると歩き始める

 

 

「司令官様!?何を…!」

 

 

「どこが大丈夫何だよ?フラフラじゃないか

今日はもう休め。

風呂の準備が出来てるから、叢雲と入りな

その後金剛が付き添ってくれるからなそのまま寝ろ」

 

 

「で、でもオリョクルと遠征……」

 

 

「あ?提督命令を聞けんのか?」

 

 

「は、はい……」

 

 

オリョクルと遠征、遠征は分かるだがオリョクルとは何だと佐渡は思いながらイムヤを運んでいく

その身体はこの鎮守府の誰よりも軽く、本当に艦娘 嫌女の子なのか?と思うほどに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐渡は提督室のデスクに向かいながら、拒食症について調べていた

内容は、やはり知ってるものの通りだが今回は事情が違う

ここに来て初めての病人に戸惑っていると扉のノックする音が聞こえる

 

 

「入れ」

 

 

「失礼致します、提督」

 

 

入ってきたのは大井だった

片手にバインダーと眼鏡をかけており、佐渡へ向かってあるいていく

 

 

「どうだ?」

 

 

「イムヤさんは終始大人しかったそうです

今、古鷹さん、金剛 叢雲と共に床に着いております」

 

 

「そうか、何かわかったか」

 

 

「えぇ、中々に。

彼女の提督 白鳥は酷い物でした

後、妖精さんからでイムヤさんの栄養失調と衰弱が確認されました

かなりよろしくないと」

 

 

「分かった報告してくれ」

 

 

いつもの違う二人であるが、実はこれが日常でもある

佐渡もいつもはふざけているがやるときはキチンとしておりその姿は鎮守府の提督である

大井もいつもは罵倒するがこう言うときだけは真面目に提督に従っている

そして、大井は報告をする

 

 

「彼女、伊168 イムヤは白鳥一葉から毎日暴行を受け、それ以外は遠征、オリョクル、出撃での囮のサイクルを24時間こなしていたそうです

休みが無く、所詮艦娘、兵器だから代用が効くと白鳥一葉は考えていたようです」

 

 

「酷いもんだな、まるで社畜……いや奴隷だな」

 

 

「食事ですが、三日に一度。

艦娘栄養食だけ遠征で資材が足りない場合は暴行に加え、それを一週間に一度

しかも、大破や失敗すれば更に暴行を加えていた様です」

 

 

「ふむ……ありがとう、今日は下がっていいよ」

 

 

「はい、失礼致します」

 

 

大井は、佐渡に資料を手渡すと振り返り扉を開けると佐渡を横目で見ながら

 

 

「提督、無茶はしないでください

我々が付いております何なりと頼ってください」

 

 

「あぁ、分かってる

頼むことがあったら頼らせてもらうよ、ありがとう大井」

 

 

大井は扉を閉めると佐渡はふぅ…と溜め息をつく

(奴隷扱いをされていた潜水艦……か…

それに加え拒食症……こりゃ骨が折れそうだわ…)

すると目を閉じある光景を思い出す

『深海棲艦からは私達が守るわ、だからあんたは私達をそれ以外から守ってそして助けて

約束して、佐渡』

 

 

「あぁ……任せとけ」

 

 

佐渡は頬を叩き気合いを入れ直すと、再びデスクへと向かい調べものを開始すると同時に工厰へと電話をかける

 

 

「あぁ、親方さん?ちょっとお願いが……」

 

 

 

 





次回  

お前の任務は

次回から再び佐渡式のやり方です
イーちゃん書いてて可愛いなと実は感じてました(作者)



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潜水艦の休日


今回、ある子が大活躍!
ご期待?してくださいませ!




次の日朝佐渡はデスクに座りながら寝ており朝日の光が眩しく目を覚ます

 

 

「んぁ?あ、やべ寝てたのか……」

 

 

佐渡はけのびをしながら起きると立ち上がり風呂にでも行くかと提督室を後にすると廊下が騒がしいのに気がつきそちらに向かうと古鷹と金剛が何かを探している

 

 

「二人ともどうした?」

 

 

あくびをしながらのんびりとした佐渡に対し二人は汗をかきながらこちらに向けて走ってくる

 

 

「提督!!大変デース!!」

 

 

「て、提督!イムヤさんが!!」

 

 

イムヤと言われた瞬間目が覚め、二人に詰め寄る

 

 

「イムヤがどうかしたのか!?」

 

 

「「イムヤ(さん)がどこにも居ないんです!!」」

 

 

「………はぁ!?」

 

 

二人に言われ頭を抱え込みながら考える

(昨日の夜のうちにどこかに言った?

だがあんなに衰弱してるのにか?

だとしても遠くには行けないし

叢雲も探すはずだそれに俺に連絡するはず……

思い出せ……あいつの言動を……)

佐渡は必死に考え昨日の発言を思い出す

 

 

『オリョクルと遠征……』

 

 

『彼女、24時間働かせていたらしいんです』

 

 

「………出撃ドッグ」

 

 

「「え?」」

 

 

「お前達!今すぐ出撃ドッグに向かえ!!

潜水艦が出撃したらここの者達では誰も止められないぞ!!」

 

 

「「は、はい!!」」

 

 

金剛と古鷹は全速力で出撃ドッグに向かい佐渡もその後を追い掛けていく

しばらく走っていき出撃ドッグにたどり着きそこには海に片足を入れているイムヤの姿があった

 

 

「イムヤ!!」

 

 

「イムヤさん!!」

 

 

「おいこら、イムヤ!!何してやがる!!」

 

 

イムヤはそんな話を聞かずに海に入ってしまい佐渡達も急いでその後ろから走っていくのだがゆっくりと水中に沈み始める

佐渡達が着いた頃にはイムヤは完全に沈んでおりどこにいるのかさっぱり検討がつかない

 

 

「クソ!!あいつどこに行った!?」

 

 

「て、提督!ごめんなさい!!」

 

 

「ごめんなさい提督!!」

 

 

「いや、二人は悪くない……クソ!どうするか……」

 

 

佐渡は近くのセンサーで、彼女が出撃したことを見るとドッグの外に出て海に向かい叫び始める

 

 

「イムヤーーー!!!!

戻れー!!!

お前の別の任務があるんだよぉ!!!!」

 

 

叫ぶが聞こえるわけも無く、頭を抱え込みながらその場に座り込むと側の海面から何かが顔を出す

 

 

「………イーちゃん?」

 

 

それは、昨日食事を与えたイ級イーちゃんだった

どうやらイーちゃんには声が届いてたらしく心なしか不安そうな顔で佐渡を見ている

 

 

「………この際、君に頼るしかないな…」

 

 

佐渡は、イーちゃんにこちら来るように促すとイーちゃんもこちらに来てくれ両頬を掴む

 

 

「イーちゃん、頼みがあるんだ

今うちの潜水艦が勝手に出撃しやがったんだ

まだ沖合いには出てないはずなんだけど俺達じゃ捕まえられない

だから、君がその潜水艦を撃破してくれないか?」

 

 

「提督!?」

 

 

「正気ですか!?深海棲艦に頼るなんて!!」

 

 

「なら、お前達は何とかできるのか?」

 

 

「「………」」

 

 

佐渡が必死に頼んでいる姿を見たイーちゃんはこくりと頷く

 

 

「対潜水艦装備はあるか?」

 

 

イーちゃんは口を開けると口の中に対潜水艦装備爆雷を見せると口を閉じる

 

 

「良し!なら頼む!!イーちゃん!!出撃してくれ!!」

 

 

頷くとイーちゃんは沈んでいき出ていったイムヤを探しにいく

すると佐渡は振り返り二人に指示を出す

 

 

「お前達!!出撃してくれ!!イーちゃんがイムヤを止めてくれるはずだ!!

そうすれば浮上し捕らえられるようになる!!頼むぞ!!」

 

 

「「了解!!」」

 

 

二人が出撃の準備をしていると後ろから水爆の音が聞こえ振り反る水柱が見える

 

 

「……案外近いな

二人とも!!出撃!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あの後イーちゃんはイムヤを見付け出し何とか大破状態まで追い込み緊急浮上してきたイムヤを金剛と古鷹で確保し現在イムヤの修理が終わり佐渡のベッドに居る

 

 

「提督、私は言いたいことが山ほどありますが……

まぁ、多目に見ましょう今回だけは」

 

 

「相変わらず無茶やるわね

しかも、深海棲艦に頼るなんて……」

 

 

 

大井も先程の爆発音に反応し、佐渡達と合流し訳を聞いた

叢雲も朝のランニング中だったが水柱が見え急遽引き返してきたのだ

 

 

「仕方ないだろー

お前達居なかったんだし

イーちゃん偉いぞぉ~!!」

 

 

佐渡はイーちゃんの頭を撫でていると心なしか喜んでいるようだ

その姿を見た大井と叢雲は溜め息をつく

 

 

「とりあえず、話は後でしましょう

それとその深海棲艦は後で撃…」

 

 

「それは駄目だ、俺が許さん」

 

 

「……はぁ、仕方ないですね特別ですよ?」

 

 

「叢雲、イーちゃんにご飯とお風呂を」

 

 

「はいはい」

 

 

佐渡はイーちゃんを叢雲に渡すと溜め息混じりに大井と共に部屋を出ていく

少しするとイムヤが目覚めぼーとしている

 

 

「やっと起きたか問題児めこのやろう」

 

 

イムヤは佐渡に言われビクつきながら起き上がり佐渡の隣を走り抜けようとするが

 

 

「待った、どこにいく?」

 

 

「え、遠征とオリョクルに……」

 

 

「はぁ……お前に任務を与える」

 

 

「は、はい!」

 

 

佐渡はイムヤの腕を掴みながら座らせると頭を撫でながら任務を与える

 

 

「お前はしばらくの間仕事は禁止だ」

 

 

 

「………え?」

 

 

 

 

 




次回 

叢雲とイーちゃん

いやぁ、イーちゃん大活躍でしたねぇ
え?深海棲艦が提督に従うわけがない?
誰がそう決めた!!!




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潜水艦の休日 二

「だから、お前は仕事禁止

良いな?」

 

 

「で、でも!!私がオリョクルと遠征行かないと資材が……」

 

 

「あ?あぁー……資材か気にしたことなかったな…」

 

 

「……え?」

 

 

「まぁ、とりあえず飯にしようか

君特製のご飯も食べてもらいたいし

後、イーちゃんにお礼言っとけよなぁ?」

 

 

佐渡はイムヤの手を引いて歩いていこうとするが、イムヤがふらつくのを見ると受け止め再び抱き抱える

 

 

「し!司令官!?」

 

 

「何だ?抱き抱えられるのは苦手か?」

 

 

「い、いえ……」

 

 

「んじゃいくぞー、それにイムヤの柔らかい身体に合法的に触れて俺は役得!!」

 

 

佐渡は、イムヤを連れていきながらも食堂に向かい扉を足で開けると叢雲以外揃っていた

 

 

「あ、イムヤちゃん提督!ご飯もう少しで出来ますよ?」

 

 

「あー!!イムヤー!何で私のバーニングラーブから放れたのネー!」

 

 

「ご、ごめんなさい…その」

 

 

「金剛?イムヤさんを抱き枕にするのは良くないですよ?」

 

 

「なっ!お前金剛!!うらやまけしからん奴め!!」

 

 

イムヤが勝手に出撃したことは皆怒ってはおらずに、全員椅子に座り古鷹の朝御飯を待っており佐渡はイムヤを椅子に座らせると厨房に入っていく

 

 

「提督?ご飯出来ますが……あ、ごめんなさい…私なんかの料理じゃ駄目ですよね…」

 

 

「ん?あぁ!違う違う!ちょっとイムヤ用のご飯を作ろうとしてな?

古鷹の料理は残さず食べるさ!!」

 

 

古鷹は、佐渡に言われると明るく笑顔を浮かべると鼻歌混じりに料理を続けるとその隣で佐渡も調理を開始する

しばらくすると古鷹の料理が完成し、テーブルへと並べていく

朝御飯らしい、目玉焼きとベーコン、野菜炒め、焼き鮭、あおさの味噌汁等何とも普通だがちょっぴり豪華なメニューだ

 

 

「へー?古鷹の料理ですか!?美味しそうデース!」

 

 

「古鷹さんの料理は初めてですが、美味しそうですね……」

 

 

「提督程では無いと思いますのであんまり期待しないでくださいね?」

 

 

料理が並べられると茶碗にご飯を入れそれぞれ渡していくが

 

 

「あー、それとイムヤはご飯いらねぇからな?」

 

 

「……え?」

 

 

イムヤだけご飯を貰えずにその場に硬直する

昨日吐いたのが原因なのか佐渡は鼻歌混じりに料理を続けているが金剛と大井から怒号が飛ぶ

 

 

「提督!!それはあんまりじゃないデースか!!」

 

 

「そうですよ!!見損ないました!貴方がそんな……」

 

 

「まぁまぁ、二人とも落ち着いてください

イムヤさんには特別メニューがあるんですからね?」

 

 

「「「特別メニュー?」」」

 

 

三人は首をかしげていると食堂の扉が開き叢雲が入ってくる

 

 

「美味しそうな香りね?

これは古鷹の料理かしら?」

 

 

「あ!叢雲聞いてくだサーイ!提督が……って!!」

 

 

「そうですよ!叢雲!提督がですね……ちょ!!」

 

 

「っ!!そいつ!!」

 

 

「何よあんたたち?私を睨み付けて?

何か付いてるの?」

 

 

叢雲は意味がわからない様な顔をしていながら、椅子に座るのだが大井、金剛、イムヤは叢雲から離れる

 

 

「何かって!貴方何を抱えてるのよ!!」

 

 

「何ってイーちゃん」

 

 

「嫌それ、深海棲艦!!」

 

 

「そうね、で?」

 

 

「いや、その叢雲…さん?それは危ないじゃないですか?」

 

 

「大丈夫よ多分

司令官が言うんだし、責任はあいつにとらせるわ」

 

 

 

そう、叢雲は一緒に朝風呂を入っていたイーちゃんを抱えて食堂に入ってきており二人とも綺麗になっており湯気が上がっていた

イーちゃんも心なしかツヤツヤしている

叢雲にかなり綺麗にされたのだろう

 

 

 

 






次回

特別メニュー

普通にイーちゃんが居るって?
ご褒美は必要じゃん?だからです
お許しを……



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潜水艦の休日 三

「お前らーそろそろ席につけー

イムヤの飯も出来るんだからなー」

 

 

「ほら、司令官命令よ座りなさい」

 

 

佐渡の号令に、叢雲がそれを促すとしぶしぶ座り始め佐渡が厨房から出てくると石釜の茶碗を片手に持っているのだが

 

 

「うぉ、叢雲がイーちゃん抱えてる」

 

 

「駄目かしら?」

 

 

「いんや、この子は今日のMVPだし良いだろう

イムヤー、お前イーちゃんが居なかったら沈んでたかも知れないんだぞ?

お礼言っとけよな?」

 

 

「え?は、え?はい?」

 

 

流石にイーちゃんが深海棲艦だと思わなかったイムヤの頭は大混乱しておりどうすれば良いのか分からずにいると大井と金剛に肩を叩かれる

 

 

「イムヤさん、分かりますがここはそう言うところです

頑張りましょうお互いに」

 

 

「イムヤ、私も同じでしたから……

まぁ、その馴れるねー…」

 

 

「え、あ、は、はい?」

 

 

「あはは……」

 

 

古鷹はその光景を見ながら乾いた笑いをしていると佐渡がイムヤの後ろから石釜の茶碗を蓋した状態で目の前に置く

 

 

「司令官……これは?」 

 

 

「お前の朝御飯だ、足りなかったら言えよ?」

 

 

「は、はい……」

 

 

石釜の茶碗からは蓋をしてあり、それがご飯の代わりになっており佐渡も席に座り食事の合図をする

 

 

「よーし、揃ったな

んじゃ頂きます」

 

 

「「「「頂きます!」」」」

 

 

その合図と共に全員はおかずへと手を伸ばすのだがイムヤだけはやはり呆然とその姿を見ており佐渡が指示を出す

 

 

「イムヤ、開けてみな

そこにお前にご飯をあげなかった理由があるぜ?」

 

 

「は、はい!では頂きます……」

 

 

イムヤが石釜の茶碗にある蓋を取ると中から湯気が上がり目を曇らせるがすぐに晴れ中身を見るとそこには

 

 

「……司令官これは?」

 

 

「卵明太子粥だ、これならお前も食べられると思ってな

ご飯を柔らかくしてあるから飲むように食べられるぞ?」

 

 

茶碗の中には柔らかく煮込まれたお米と明太子、そして卵がありその上にはネギな振りかけてある

 

 

「なによそれ!私食べたことない!!」

 

 

「そうネー!私も知らないデース!!イムヤ羨ましいネ!!」

 

 

「うっさい、お前達

あれはイムヤだけの特別メニューだ

お前らにはやらん!!」

 

 

イムヤはいつも食べていた携帯艦娘食とは大きく違うそれに驚き箸を使って食べようとするがお粥はボロボロと崩れてしまう

 

 

「イムヤさん、これを」

 

 

「ありがとう、ございます」

 

 

 

古鷹にれんげを貰い、湯気が立ち込めるお粥をすくい息を吹き掛けゆっくりと口に運び食べていく

熱いが柔らかくとても美味しい

食べても気持ち悪くならない

 

 

「どうだ?イムヤ、食べれそうか?」

 

 

「は、はい!!」

 

 

「そうか!良かった良かった!冷めても暖めればいつでも食べられるからゆっくり食べろよ?

無理して食べるのは禁止な?」

 

 

イムヤは、ゆっくりと少しずつ食べていくのを佐渡は見ていると安堵のため息と共に微笑みながら食事を続けていく

 

 

 

 

 



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潜水艦の休日 四

「さてと、では今後の事について話そう」

 

 

「提督、その前に話があります」

 

 

「はい、何だね大井くん」

 

 

全員食事を終え、古鷹は食器を洗っており佐渡達はテーブルに座りお茶を飲んでいる

 

 

「この深海棲艦をどうするんですか?」

 

 

「どうするって……」

 

 

全員の目が食事を終え叢雲の太股で寝ているイ級もといイーちゃんに集まり叢雲はゆっくりと頭を撫でている

 

 

「ペットにしたい!!!」

 

 

「駄目です」

 

 

「えー良いじゃーん大井っちー

ペットにしようよー

責任もって世話するからさー?」

 

 

「駄目です、それと子どもみたいにねだらないでください気持ち悪い後大井っちは辞めてそれは北上さんだけに許してるんですから」

 

 

佐渡が、大井にねだってはいるが全く聞くそぶりを見せないが今回の活躍を理解してかイーちゃんをチラッと見る

 

 

「……しばらく、様子を見ましょう

それから考えます」

 

 

「マジすか!?秘書艦様!!ありがとー!!」

 

 

「抱き付かないでください殴りますよ!!」

 

 

佐渡は、大井に抱き付こうとするのグリグリと頬に魚雷を当てられているが嬉しそうだ(エムじゃないよ?)

するとイムヤが声を上げる

 

 

「あ、あの!」

 

 

「ん?」

 

 

全員の視線が今度はイムヤに向けられると縮こまるが話始める

 

 

「あの!私の任務は無いんですか!?

遠征とか!出撃とか!!」

 

 

そう言われると、全員の目が佐渡へと集中するが腕を組みながら考えるが

 

 

「なぁい!!!」

 

 

「え……それじゃ、私は……」

 

 

「嫌、待てイムヤさんやうちはなそもそもそんなのが必要ないんだ」

 

 

「え?どういうことですか?」

 

 

そう言われると、叢雲達も口を揃えて言い始める

 

 

「そうね、私がここの古株だけど出撃したのは数える程度かしらね?」

 

 

「私もここでは出撃より家事全般かな?

特にありませんし?」

 

 

「私は忙しいですけどね、どっかの変態提督がサボることが多いですからね」

 

 

「そうネー……私は一番経験が浅いですが確かに出撃したことは無いネー!」

 

 

「ま、そう言うことだからお前の出撃任務は無い!!」

 

 

イムヤは、ショックのあまりふらつきながらその場に座り込むが何かを思い付いたのか佐渡へ近付いていく

 

 

「ん?何だイムヤ?」

 

 

すると佐渡の手を取ると自らの頬へ向けて平手打ちをしようとするが急いで佐渡は手を引っ込める

 

 

「お前!!なにする気だよ!!」

 

 

「何って決まってるじゃないですか……

私を殴ってください…そうすれば司令官はスッキリするでしょ?ほら私潜水艦だから殴りやすいよ?それに入渠も早いから好きなだけ殴って?ほらほら!!」

 

 

イムヤに詰め寄られ少したじろう佐渡であるが直ぐ様ニヤリと笑いながらイムヤの細い腕を掴む

(ほら!司令官なんて…どうせ……)

殴られると思い目を閉じるがふわっと身体が浮き背中から誰かに抱き抱えられる

 

 

「………え?」

 

 

「確かに、この身体良いな……

柔らかいし、軽いし、髪からは良い香りがする…

クンカクンカ……」

 

 

予想外の行動にどうしようかと悩んでいると、大井と金剛が立ち上がり佐渡に詰め寄る

 

 

「あー!!何してるネー!羨ましいー!!

提督私にもー!!」

 

 

「金剛!ちょっと黙ってて!

提督!何してるんですか!?貴方は!!

セクハラですよ!!今すぐイムヤさんを放しなさい!!」

 

「やーだよーだ!イムヤたんは俺の抱き枕なんだぞー!誰にもやらんからなぁ!!」

 

 

三人がギャーギャーやりながらその真ん中にいるイムヤは大混乱を起こしておりそれから放れるように叢雲と古鷹はイーちゃんを撫でていた

 

 

「騒がしいわね……全く」

 

 

「まぁ、うちはいつもこんな感じだもんね……

叢雲、次私にもイーちゃん抱かせて?」

 

 

 

 




次回

小笠原鎮守府の資材事情

実際、書いてはいませんがこの鎮守府は毎日騒ぎっぱなしなのです(主に佐渡が原因)
次回、何故資材が余裕なのかに迫ります




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潜水艦の休日 五

「さてと、疑り深いイムヤの為にこんな所に来ましたが本当に見るのか?」

 

 

「はい!見せてほしいんです!!」

 

 

イムヤと大井と佐渡は、現在第一資材庫の前に来ていた

この小笠原鎮守府には四つの資材庫がありその一つ一つに銅材 燃料 ボーキサイト 弾薬がそれぞれ入っており常温保存されている

常に警備しているわけではないが滅多な事ではここには近付かない

今朝、三人が出撃したから燃料の倉庫から一つドラム缶を出した程度でその前は演習等で使うため特に銅材 ボーキサイトは手付かずなのである

 

 

「んじゃ、開けるか

大井、鍵」

 

 

「はい、提督」

 

 

大井から渡された鍵を回すと扉を開こうとするのだが

 

 

「あ、やべ開かね」

 

 

「え?」

 

 

佐渡が扉を引こうとするが全く動かない、引いても叩いてもびくともせずにムカついた佐渡は思い切りドアを蹴り破ろうとすると大井にバインダーで叩かれる

 

 

「やめてください親方さんに怒られますよ?」

 

 

「……へーい」

 

 

佐渡は渋々大井と共に引っ張ると何とか扉が開く

どうやら錆び付いていたらしく中に入るの埃っぽい感じ賀するが佐渡が電気をつけると

 

 

「え……えぇ!?」

 

 

イムヤはその資材の量に驚く

倉庫の端から端までを埋め尽くす木箱、その外には銅材とかかれそれが何段にも積み上がっており天井ギリギリまでありその光景に圧巻する

 

 

「な?言っただろ?必要ないって

ここに来るのは精々お使いに来た妖精さん位さ」

 

 

「いやいや!何ですかこの量!?」

 

 

イムヤは驚きながらも、資材の木箱を一つ開けるとそこにはびっしりと銅材が詰まっており前の鎮守府でも見たことが無いほどだった

すると佐渡達が入ってきたドアより小さいドアから妖精達が入ってくる

 

 

「お邪魔しまーす」

 

 

「資材取りに来たー」

 

 

「銅材取りに来たー」

 

 

「お?噂をすれば好きに持ってきなー」

 

 

妖精達は嬉しそうにしながら、イムヤとは別の箱から銅材をいくつか持っていくと大井に資材量伝え出ていく

 

 

「大井、今のでいくつ減った?」

 

 

「そうですね、150位ですか?」

 

 

「そうか、なに作る気だ?」

 

 

「最近親方さん、金剛と古鷹の電探を作るんだって言ってましたからそれ関連じゃないですか?」

 

 

「なーるほど?」

 

 

「あ、あの!!」

 

 

二人の会話を裂いてイムヤが言うと二人は向き直る

 

 

「後どれくらいあるんですか?」

 

 

「………大井どれくらいあるの?」

 

 

大井はため息を付くとバインダーの資料の中にある資材の残数を数える

 

 

「そうですね、銅材が残り657524ですかね?」

 

 

「!?」

 

 

「あーそんなもんか?他は?」

 

 

「他は……燃料が754829 弾薬が 675249 ボーキサイトにおいては1157684ですかね?うちにはそれを消費する空母何て居ませんし?」

 

 

その資材の数に唖然としているイムヤをさておき佐渡はため息混じりに言う

 

 

「ボーキって売れるのかな?

あれあっても、邪魔なんだよねぇ」

 

 

「駄目ですよ、万が一がありますからね」

 

 

「ちょちょ!待って!なんでそんなにあるの!?」

 

 

「だって使わないし?」

 

 

「えぇ、分かりますよイムヤさん何でここに関してはこんなにあるのか……

実はですね

ここの鎮守府が昔稼働していたときに、当時の提督がかなり貯蔵していたみたいでしてね?

その後佐渡提督に移り変わりましたが、この人使わないし一ヶ月に一度来るそれぞれの貨物資材艦から買い取っても居るんですよ……」

 

 

「んま、そゆこと唯一仕事があるとしたらそれぐらいかな?

哨戒任務も前はやってたけど、ここ最近は特に無いからやってないし?」

 

 

アッハッハ!!と笑う佐渡の頭をバインダーで叩く大井を見ながらイムヤは更に唖然としていた

このあと全ての資材庫を見て回ったが事実全ての倉庫が満帆になるぐらいに資材が埋まっていた

確かにこれなら私の出る必要がないわけだとここで理解した

 

 

 

 




次回

イムヤとイーちゃん

資材は使わなきゃ溜まる使えば減るのさ……



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潜水艦の休日 六

「と言われても……なにしよう…」

 

 

イムヤは自室で一人特に何もせずベッドで横になりながらのんびりとしていた

と言っても一人ではない

イムヤがベッドの下をチラッと見るとイ級のイーちゃんがじいーと見ていた

何故ここにイーちゃんが居るかと言うと

 

 

『イムヤ、とりあえずお前今日は自室謹慎な

罰は必要だ

イーちゃん、こいつの監視をお願いしたい

出来るか?』

 

 

『コクッ』

 

 

『良し、ならお前達は部屋で謹慎な

やることなかったり何かあったらこれに電話しろ』

 

 

そう言われて渡された佐渡のスマホを見ながら、ベッド横たわりなにもしないと言うことを楽しむと言うよりは満喫しているが落ち着かない

 

 

「そうだ!何か手伝いを!!」

 

 

勢い良くベッドから起き部屋から出ようとするとイーちゃんが口の中からガチャンと音をさせ主砲をイムヤに向けている

 

 

「う……わ、分かったわよ…」

 

 

イーちゃんに、主砲を向けられ渋々ベッドに戻ると再びゴロゴロしゆっくりし始めると主砲をしまい再びイーちゃんはじいーとイムヤを見る

 

 

「……もう!みてないでよ!!」

 

 

イムヤが、イーちゃんを怒るがイーちゃんは全く気にせずじいーと見ている

深海棲艦が近くに居て監視されているなんて向こうに捕まる位にしか思えないけど

(そう言えば、この子何で司令官に従ってるの?

私の無意識な行動も止めてくれたって言ってたわね)

イーちゃんを抱き上げると再び主砲をイムヤに向ける

 

 

「ひっ!落ち着いて!貴方を何処かに置くとか隠す訳じゃないから!!話したいだけよ!!」

 

 

それを聞いてじいーとしながらも主砲を構えるが信用したのか少しすると主砲をしまい口を閉じる

安心したのはイムヤはイーちゃんをベッドに乗せると二人で転がる

 

 

「ねぇ、貴方……イ級よね?」

 

 

そう言われるとイーちゃんは頭一つ動かさない

自分の事を言われてるのかさっぱり分からないようだ

(そうか、私達は深海棲艦とは呼んでは居るけどそれはこっちのこいつらの名称みたいな物だもんね)

 

 

「じゃあ、貴方はこの鎮守府の近海に居る子で良いのよね?」

 

 

コクンとイーちゃんは頷く

どうやら言葉事態は自分達と同様に理解できるらしい

 

 

「じゃあ、名前は?」

 

 

再びイーちゃんは固まる

(あ、そっかこの子話せないのかな?

話せるのは人型位ってどこかで聞いたことあったな……)

 

 

「じゃあ、名前はイーちゃん?それとも他にはあるの?」

 

 

イーちゃんは首を横に降り否定する

(イーちゃんって確か司令官が付けたのよね

ってことはやっぱりこの子達名前が無いのかな?)

 

 

「そう言えば、私を助けてくれたんだよね?

ありがとね?良く覚えてはいないんだけど……」

 

 

そう言われるとイーちゃんは芋虫見たいにベッドを這っていくとイムヤの頬をに自分の頬をすりすりとする

 

 

「あはは!ちょっとくすぐったいよ!

でもやっぱり硬いのね貴方……」

 

 

イムヤはイーちゃんの頭部装甲や身体を触っていくと気持ち良いのかイーちゃんの目がうとうとし始めているがイムヤは違和感を覚える

 

 

「……ん?何ここ?繋ぎ目?嫌それにしてはピッタリくっついてるわね?」

 

 

イムヤは上半身?と下半身?の間に僅かな隙間を見つけ手探りで探していくとイーちゃんを反対にするとその隙間が更に大きくなっておりそこに手を突っ込むとイーちゃんが目を覚まし暴れる

 

 

「あぁ!ちょっと大人しくして!痛いの!?でもごめん!!もう少しで……」

 

 

暴れるイーちゃんを掴みながら押さえ付けると力を込めて引っ張るとスポンっと音と共にイーちゃんの頭部装甲が、外れる

 

 

「…………………え?これ外れるの?」

 

 

外されたイーちゃんは少し不満げな顔をしながらイムヤの手に噛みつく

 

 

「痛い痛い!ごめんね!悪気は無かったの!でも…」

 

 

頭部装甲を外されたイーちゃんの頭を撫でるとかなり柔らかいまるで人間の肌の様な感じだ

頭部装甲を床に置くとイーちゃんを撫でご機嫌取りをすると落ち着いたのかうとうとし始めしまう

それにつられてイムヤも眠そうにする

(やば、眠くなってきて……遠征と出撃…)

だが、今朝言われた佐渡の言葉を思い出す

『仕事?うちにはねぇよ!!』

(そっか……ここでは…無いんだよね……)

そう思うと二人でベッドに横になり眠ってしまう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コンコンと扉をノックされ叢雲がイムヤの部屋に入ってくる

 

 

「ちょっとイムヤ?そろそろお風呂とごは……あら

失礼したわね」

 

 

叢雲は静かに扉を閉めると、食堂に戻ると全員が揃っている

 

 

「おい叢雲?イムヤとイーちゃんは?」

 

 

「ふふ、寝かせてあげなさいよ

あの子達仲良くやってるみたいだし」

 

 

二人ベッドの上でイムヤとイーちゃんは抱き合うように寝ており余りにも気持ち良さそうな寝息と表情に邪魔しては悪いと叢雲は佐渡に言うのであった

 

 

 

 

 

 





次回

ペット公認?

イーちゃんが何故気に入られたか?
……無垢だから?(深海棲艦だけど)



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潜水艦の休日 七

次の日、食堂にて各々食事を済ませ会議が開かれていた

お察しの通りイ級もといイーちゃん(実は仮名)をどうするかである

叢雲は良いんじゃない?

古鷹は大丈夫…じゃないですか?

金剛はへーきでーす!駆逐艦にここが落ちるとも思いませーん!!

と各々言うが大井だけは反対していた

 

 

「なぁなぁ?秘書艦様?ダメですか?」

 

 

「駄目です」

 

 

「んー、じゃあどうすればええんよ?」

 

 

「どうすればって言っても……」

 

 

大井はイムヤに抱かれたイーちゃんを見るが確かに有害とは思えない

昨日イムヤと寝ていたらしいが特に何も無かったし、今朝もイムヤを止めたらしいと話を聞いていた

止めたのも体当たりで鳩尾を狙いダウンしているイムヤを一切外に出さなかったらしい

 

 

「……駄目ですか?大井さん?」

 

 

二人を見るとまるで捨てられた子犬の様な顔をしてたり大井は流石に自分が反対していることに頭を抱えるが「あー!!もう!!」と吹っ切る

 

 

「分かりましたよ!!もう!認めますよ!!仕方ないですね!!」

 

 

大井に言われるとイムヤの顔が明るくなりイーちゃんを強く抱き締める

イーちゃんも嬉しいのか嬉しそうにしている

 

 

「やっと折れたわね」

 

 

「良いんですよね?提督」

 

 

「あぁ、俺が責任を持とうと言いたいんだけど、その前に」

 

 

佐渡は立ち上がるとイムヤからイーちゃんを取り上げイムヤの首を持ちながらある場所に向かう

 

 

「金剛、古鷹は家事に取りかかれ

大井、叢雲お前達は来い」

 

 

「わかりました!」

 

 

「りょーかいねー!」

 

 

「はいはい」

 

 

「わかりました」

 

 

イーちゃんを抱き抱えながら、イムヤの事も引っ張っていきながら連れていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………こりゃたまげたな…

こいつを手懐けたんか?提督よ…」

 

 

「ま、成り行きでね?」

 

 

現在、四人は工厰に来ておりイーちゃんが台の上に乗せられ妖精達はまじまじとイーちゃんを見ている

イーちゃんはと言うと初めて見るのか妖精達をジロジロと目で追いながら見ている

 

 

「し、司令官!イーちゃんをどうするの!?」

 

 

「ん?別に親方さんに見てもらうのさ

特に何もしないよ?解体とか殺したりなんかするかよ

お前の友人だろ?」

 

 

心配するイムヤの頭を鷲掴みにしながら頭をわしゃわしゃとすると良かったと言わんばかりに安堵のため息を付くのだが妖精達が騒ぎ始めイーちゃんは這いずり逃げようとする

 

 

「イムヤ、イーちゃんを安心させてやりな

それがお前の仕事だ」

 

 

「は、はい!」

 

 

イムヤはイーちゃんに近寄ると頭をゆっくりと撫でて上げると同時に「大丈夫だよ」と優しく言うと逃げるのを止めその場に止まる

そのまま元の場所に戻すと再び妖精達が集まる

 

 

「提督、俺にこいつをどうしろと?」

 

 

「んまぁ、簡単な話

この子の艤装を外せませんか?

流石に艤装付けっぱなしなんて危ないし」

 

 

「無茶を言うねぇ……

まぁ、やってみるよ」

 

 

親方妖精は、イーちゃんの背中に飛び乗ると妖精達に指示を出す

 

 

「お前ら!!折角またとねぇ機会だ!!

このイ級、もといイーちゃんの艤装を解体すんぞ!!

ただし無茶はさせられねぇから優しく扱えよ!!」

 

 

「「「「おー!!!」」」」

 

 

工厰妖精と親方妖精は工具を持ち出し、各々イーちゃんに群がっていく

その様子を不安そうにイムヤは見ているが佐渡に頭を撫でられながら笑っているのを見て少し安心する

そして、前代未聞にして不可解であった深海棲艦の艤装解体式が今始まる

 

 

 

 




次回

イ級改めイーちゃん解体式


次回深海棲艦の正体が明らかに!!
……なるのか?



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潜水艦の休日 八

「んー……流石に堅いなこりゃ…」

 

 

親方は手詰まりしていた、それはイーちゃんの強化装甲である

通常、艦娘には無いものであり確かに持っている艦娘も存在するがイーちゃんの場合それを全身に纏わせているためか手の付けように無い

 

 

「あ!それなら!!私が外すわ!!」

 

 

イムヤがイーちゃんを抱え上げるとまた無理矢理隙間に指を入れ引っ張ろうとするとイーちゃんが痛みに暴れだす

 

 

「あー、ちょっとイムヤ違う違う

貸しなさい」

 

 

イムヤから痛み苦しむイーちゃんを受けとると痛がるイーちゃんの頭を撫で頭部装甲と腹部装甲に手を入れくるりと回すとカチャンと音を立てるとスポンッと綺麗に抜ける

 

 

「「「「「「!?!?!?!?!?」」」」」」

 

 

「下も脱がす?よいしょっと」

 

 

イーちゃんの下回りに手を入れると今度は反対向きに回すとスポッと抜けるように取れる

まるで海老の殻向きの様な早技に全員唖然とする

 

 

「何よ、あんたたちぼーとして?イーちゃんスッキリした?」

 

 

綺麗に剥かれ、全身黒色の装甲で守られていた綺麗な肌色になると再び何事も無かったかのように元の台の上に置く

イーちゃんも綺麗に取れたのが嬉しいらしく台の上で誇らしくしてる

 

 

「はーい、叢雲大先生待とっかー?

なぁーんでそんなこと知ってるのかなー?」

 

 

「何でってあんたがイーちゃんを私に任せたんでしょ?

風呂に行くのに邪魔だったから身体中弄くったら何か取れたのよ」

 

 

「成る程なぁ?」

 

 

そこで、佐渡はうんうんと頷き納得するが流石に大井がツッコミにはいる

 

 

「嫌、待ちなさいよ叢雲!?

何でこんなこと知ってるのよ!?」

 

 

「だからさっき言ったじゃない?」

 

 

「違うわよ!!何で私達に報告してないのよ!!」

 

 

「え?すること?今の?」

 

 

「当たり前でしょ!?」

 

 

叢雲と大井が騒ぐ中親方は驚きながらもイーちゃんの口に注目した

 

 

「なぁ、イムヤちゃん

このイーちゃんと戦ったと言ってたな?

どこから武器を取り出したか分かるか?」

 

 

「ええっと……確か口の中から…」

 

 

「ふーむ……イムヤちゃん、イーちゃんお願いがあるんだ」

 

 

「はい?」

 

 

「口の中を見たい、イーちゃん口を開けてくれ

イムヤちゃんは抑えていてくれ」

 

 

「ちょっと親方さん!?」

 

 

佐渡の制止も聞かずに親方はイーちゃんの口の中へと入ろうとするとイーちゃんもイムヤも準備を始める

 

 

「よっと、んじゃイーちゃん主砲を見せてくれ」

 

 

イーちゃんは口の中の主砲を見せるとそれをまじまじと親方は見ていく

 

 

「………こいつはぁ驚いた…」

 

 

その主砲はどうやら右側の頬に仕舞われており自分の意思で色々と動かせる事が出来るらしい

他にも左側には爆雷が仕舞われておりこれも自分の意思で動かせるみたいだ

 

 

「オッケーだ、すまないなイーちゃん」

 

 

親方がイーちゃんの口から出てくると顎に手を当てながら悩んでいるがここに居る者達を見ると両手を上げさっぱりと言う表情をする

 

 

「分からん、とりあえずイーちゃんの艤装は預かる

本体の方はまた今度だな」

 

 

「そうですか……分かりました」

 

 

佐渡達はそう言うと、工厰を後にしようとするが親方が突然耳元に来ると

 

 

「提督、今晩1200にここに来い

誰も呼ぶんじゃねぇぞ」

 

 

「え?」

 

 

佐渡は返事を返す間もなく親方は台に乗ると頷く

どうやら他の人に聞かれたくはないようだと理解した佐渡は頷く

 

 

「提督ー?行きますよ?」

 

 

「あぁ、今行く」

 

 

大井に呼ばれ、佐渡達は工厰を後にすると親方はイーちゃんの装甲を触りながら呟く

 

 

「……………こんなことあるのか?

だが…あれは間違いないな……」

 

 

 

 





次回

イムヤ、家事をする

次回からイーちゃんは不参加です
え?何故かって?……これイムヤの話ですよ?(反らしてるのは作者ですごめんなさい)


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潜水艦の休日 九

「と、言うわけでイムヤは古鷹の手伝いをしてもらおうか?」

 

 

「えっと、司令官。

それは仕事なの?」

 

 

「んー、まぁ仕事と言っちゃ仕事かな?」

 

 

現在、イムヤと佐渡は二人で廊下を歩いていたと言うのもイーちゃんと大井、叢雲は別にやることがあるため別行動イーちゃんに関しては大井が監視すると言っており佐渡も承諾した

 

 

「それで家事と言うのは……」

 

 

「それは古鷹に聞きな、あいつならイムヤも直ぐに和解できるだろうしな」

 

 

「は、はぁ……」

 

 

しばらく廊下を歩いていると、ある部屋に辿り着くそこは洗濯室

そんなに広くは無いが、唯一洗濯機や掃除道具が集められている部屋である

佐渡が扉をノックすると中から古鷹の声が聞こえる

 

 

「おーい、古鷹居るかー?」

 

 

「はい!提督!……あ、待ってください!!」

 

 

ガタガタと騒がしくなるとイムヤと共に首をかしげる

 

 

「え?何してんの?古鷹さんや?何かあるの?」

 

 

「い、いえ!!大したことではないですよ!!

なにもしてませんよ!!」

 

 

「?????」

 

 

いつもと違う古鷹に怪しさを感じ無理矢理にでも扉を開こうとすると向こう側から押さえ付けられている様子で全く開かない

 

 

「ちょっとー?古鷹さーん?」

 

 

「な、何ですか!?すみません!鍵かけてましてね!!!今開けますからね!」

 

 

「いやここには鍵ないはずだけど!? 」

 

 

しばらくすると古鷹が少し汗をかきながら出てくる

 

 

「え、えっと!私に何のご用でしょうか!?」

 

 

「あぁ、うん、何かやってたの?

なら何かごめんね?」

 

 

「な、何もやってないですよ!?」

 

 

「嫌だって汗かいて……」

 

 

「何にもしてませんってば!!」

 

 

「お?おう……?」

 

 

佐渡はこれ以上言うと嫌な予感がしており詮索を辞める

 

 

「そう言えば!何かご用が合ったんですよね!?」

 

 

「あ、あー実はな?

イムヤに家事を教えてやってくれないか?」

 

 

「イムヤさんに?」

 

 

古鷹はイムヤを向くとお辞儀をしており佐渡はその頭をわしゃわしゃと撫でる 

 

 

「社畜だが奴隷だか知らんが仕事をずっとやってたやつが何もしないのは恐らく辛いだろうからな

だからここでの仕事と言うか家事をやらせたいんだ

どうだ?」

 

 

イムヤはそう言われるとギクッとバレており昨日の退屈過ぎた一日を思い出す

 

 

 

「そうですね、私は一向に構いませんよ?」

 

 

「そっか、じゃあ頼んだ

イムヤ、古鷹の言うことはキチンと聞けよ?」

 

 

「は、はい!司令官!」

 

 

佐渡はそう言うとその場を離れ、古鷹とイムヤの二人きりになる

 

 

「では、これからよろしくね?

イムヤさん?」

 

 

「は、はい!古鷹さん!」

 

 

「ふふ、そんなに固くならなくて良いよ?

古鷹で良いよ、呼び名も

じゃあこっちに来て?」

 

 

古鷹は扉を開き、イムヤを洗濯室に招き入れるとイムヤも続けて入っていく

 

 

 





次回

そこそこ忙しい小笠原鎮守府家事記録

次回からしばらく古鷹とイムヤだけの話になります
時々他のメンバーが軽く出る程度ですお許しを



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潜水艦と重巡の二人

「わぁ……ここが洗濯室?ですか?」

 

 

イムヤは初めて入る洗濯室に驚きながらも色々と興味が出ており色々と見ている

洗濯室の中には三つの洗濯機があり、全ては稼働しておらず今は二つしか動かしていない

一つは、艦娘の 一つは提督のに別れておりそれぞれ洗濯機が動いている

 

 

「何か質問はありますか?今、回してますのでこれを教えるのは明日になりますが他のことでしたら」

 

 

「じゃ、じゃあこれは?」

 

 

「これは柔軟剤ですよ、服を柔らかくしてくれるんです」

 

 

「じゃ、じゃあこれ!」

 

 

「これはですね……」

 

 

古鷹は興味津々のイムヤに色々と答えていくと、昔佐渡に教わったことを思い出しながら微笑んでいる

するとしばらくするとピーと音を出しながら洗濯機が終わりを告げる

 

 

「あ、終わりましたね

ではイムヤさん手伝ってもらいますよ?」

 

 

「は、はい!」

 

 

古鷹は洗濯機から衣服を取り出すと、洗濯篭に乗せそれをイムヤに手渡し洗濯室を後にし、しばらく歩くと外に面している部屋に辿り着くそして洗濯物を手際よく干し始める

 

 

「あ、イムヤさんそれはハンガーだけではなくて、この洗濯バサミを使ってください?」

 

 

「はい!」

 

 

イムヤは古鷹に教わりながらも、ゆっくりとやっていくと全員の衣服がズラリと物干し竿に並ぶと古鷹は端っこを引っ張っていく

 

 

「古鷹さん?何をしているんですか?」

 

 

「あぁ、こうすると良く乾くんですよ

イムヤさんもお願いします」

 

 

「はい!」

 

 

古鷹に指示されながら再び洗濯物を干し終わると、空を見上げると見事に快晴であり良い天気である

直ぐに洗濯物も乾くんと思い古鷹は縁側に座ると麦茶を持ってくる

 

 

「イムヤさん、一息入れましょうか?

お菓子は食べれますか?」

 

 

「い、頂きます……」

 

 

イムヤも古鷹と共に縁側に座り二人で麦茶を飲みながら一息つくがイムヤは落ち着かない様子だ

 

 

「イムヤさん、暇ですし話しませんか?

暑いので中で?」

 

 

「は、はい!」

 

 

イムヤと古鷹は、縁側から上がり部屋の中心に行くと扇風機を付け二人で涼む

 

 

「…………ここは平和ですね」

 

 

「えぇ、ここはかなり平和ですよ

最前線なのにですけどね、ふふ」

 

 

イムヤが外の景色と、特になにもしていないこの状況が何とも言えないほどに居心地が良く微笑んでしまう

 

 

「イムヤさん、どうですか?この鎮守府は」

 

 

「……最高…でしょうか、まだ分かりません

でもここの鎮守府の人達は皆さんが笑顔ですね

戦争をしてるとは思えないほどに」

 

 

「この鎮守府は、提督が望んで作り上げてくれたんですよ?私達、艦娘の為に」

 

 

古鷹は麦茶を飲みながら外の景色をじっと眺めながらのんびりとしている

 

 

 

 






次回

貴女はここの艦娘です

次回古鷹さんの健気さが伝われば良いなぁ……




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潜水艦と重巡の二人 二

 


「本当に……ここでは何もないんですね…」

 

 

イムヤはそう呟くと今までの鎮守府での行動ややって来たことが頭をよぎる

そして静かに目を閉じると目の前にあの男顔が浮かび上がる

キツイ労働、痛み、苦しみ、救いの無い毎日

今目を開けるとそこにはそんなものは無く

綺麗な青空と外から聞こえるのは蝉の声近くに居る古鷹の飲み物を飲む音だけ

平和……本当にその物である

 

 

「何もない訳ではありませんが、ここは平和です」

 

 

「……私はここにいて良いんでしょうか?」

 

 

「それは、どういう意味ですか?」

 

 

イムヤは麦茶の入ったコップが汗をかきはじめておりそれを綺麗にするように手で取りながら水を見ている

 

 

「私は潜水艦です、確かに駆逐艦や軽巡位しか攻撃を受けません

ですが、私には雷撃しかありません

いつも戦えるわけではなくただの囮等に使っていた白鳥提督は間違ってないと思うんです

それに私達は兵器です

どう抗ってもそれは覆りません

だから……」

 

 

そこまで言うと古鷹がふふふと微笑みながら笑っている

 

 

「何か可笑しい……ですか?」

 

 

「いえ、可笑しくないですよ。確かに私達は兵器です

これは絶対に覆えらないでしょう

でしたら、私は兵器の仲間としてイムヤさんに質問します

貴女はどちらの鎮守府に居たいですか?

前の白鳥提督さんが指揮する鎮守府と

今の佐渡提督の指揮する鎮守府」

 

 

「どちらって……」

 

 

イムヤは悩む、私達は兵器だから何も貰えない

貰えるわけにはいけないんだ、でも

ここではそんなことがなかった

艦娘達は優しく、提督も優しいそれは紛い物なのかもしれない

それでも私には、イムヤには居心地が良い

そう感じている自分が居ることに気付く

 

 

「……ここが良いです、いえこちらが良いです…」

 

 

 

「ふふ、でしょう?でしたら貴女はここに居れば良いんですよ」

 

 

古鷹は麦茶を飲みながら、その水面を見つめながら微笑む

 

 

「それに、貴女はここの艦娘です

ここで生きていきましょう?

でも、どうしても嫌なら提督に言って頂ければ、あの人なら何とかしてくれるはずです」

 

 

「……あの!古鷹さんはどうして」

 

 

イムヤがそう言いかけた瞬間外から「へーい!」と大声が聞こえ二人は縁側に歩いていくと金剛が人の顔くらいの大きさの西瓜を持ちながらこちらに歩いてくる

 

 

「ふーるーたーかー!!一緒に西瓜食べませーんかー?やっと冷えたのがあるんデース!!」

 

 

「あ、良いですね!では、包丁持ってきますからお願いしますー!イムヤさんは待っててくださいね?」

 

 

「は、はい!」

 

 

イムヤは、縁側に座っていると金剛が西瓜を振り回しながら歩いてくるが小石に躓いたのか転びそうになる

 

 

「あっ」

 

 

「え?」

 

 

金剛は転ぶとそのまま振り回していた西瓜が真っ直ぐイムヤに飛んでいき腹部に直撃する

 

 

「ぐふっ!」

 

 

「ギャンッ!!いてて……何でこんなところに小石が…不幸ネー……ってあれ西瓜…あー!!イムヤー!!!」

 

 

西瓜はイムヤの腹部に思い切り直撃し痛みにイムヤは堪えている

金剛は慌ててイムヤを心配し駆け寄る

 

 

「イ、イムヤーー!!ごめんなさいー!!

な、何か…」

 

 

「だ、大丈夫……です…」

 

 

 

と急いで縁側に上がろうとした瞬間靴紐がブチッと音を立て切れると金剛が再び躓く

 

 

「あ」

 

 

「……え?」

 

 

そのままイムヤを押し倒すように倒れイムヤは金剛の下敷きになる

すると扉が開き古鷹が包丁を片手に入ってくる

 

 

「金剛さん?さっきの音は……」

 

 

古鷹が入ってくると目の前の光景に唖然とする

飛ばされた西瓜が転がりその隣では金剛がイムヤに倒れ込んでおりまるでアレをしているような感じになっていた

 

 

「………金剛さん?場所と時を改めましょうね?」

 

 

「ちちち、違うネ!!!これは不幸ね!!」

 

 

このあと、金剛から事情を聞いた古鷹は金剛を少し強目に怒ったそうだ

その途中で西瓜を切り分けてありイムヤはその西瓜を少しだけ食べながら痛むお腹を擦りながら縁側でのんびりとしていた

 

 

「……この西瓜、甘いわね…」

 

 

 

 




次回

イムヤと古鷹家事記録

今回はちょっとだけ真面目にそしてのんびりとした日常です
少しの間こんな感じですかね?



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潜水艦と重巡の二人 三

今回もイムヤと古鷹がメインです!




次の日、佐渡から言われしばらくイムヤは古鷹と家事をする事になり今日もそれを手伝うために廊下に来ている

 

 

「では、本日はここを掃除します」

 

 

そこはこの三階の廊下を掃除するようだ

因みに、佐渡達が基本的に使うのは二階の寝室エリアと一階の食堂、風呂等でありここは提督室がありあまり横行が無いところでもある

 

 

「は、はい!」

 

 

イムヤは古鷹と共にジャージに着替え片手には雑巾を片手に仕事をする気だそうだ

 

 

「じゃあ、イムヤさんは廊下をお願いしますね?

私は窓をやっていきますので」

 

 

「はい!」

 

 

古鷹に事前に言われた通りに準備を進めると少しずつ廊下を掃除し始める

 

 

「そう言えば、古鷹さん?」

 

 

「ん?どうかしたの?」

 

 

「この鎮守府は何で最前線なのに敵が来ない……と言うよりは居ないの?

イーちゃんはともかく」

 

 

二人とも無言で掃除するのはどうかと思いちょくちょく会話を挟んではキチンとこなしていく

 

 

「えっと、確か提督によるとここはある意味まだ深海棲艦の落とされた島って扱いみたいなの」

 

 

「……え?」

 

 

その衝撃的な事実を叩き付けられ、流石にイムヤも動揺する

 

 

「え、じゃあ深海棲艦が多く存在するんじゃ……」

 

 

「それがね、ここには深海棲艦は居ないですよね?

そして、何もないですよね?鎮守府位しか」

 

 

「え、えぇ……」

 

 

「その為深海棲艦達は何故ここを落としたのかは分かりませんが、その後落とした後深海棲艦達はここを根城にしなかったみたいなんです

それに加えどの深海棲艦も近寄らないらしいんです

理由は分かりませんが」

 

 

「何で……」

 

 

「大本営は、資材を狙ってなのか、それとも鎮守府を潰したかったのか、ただの警告か、暇潰しか、深海棲艦の実力テスト、と言われていますが提督は別の考え見たいですけどね」

 

 

「一体どんな?」

 

 

イムヤは生唾を飲み込むと、手が止まり古鷹の話に聞き入っている

 

 

 

「ここを落としたのは、拠点を作る為だったが『やむを得ない理由』によりここを捨てざるを得なかった

又は、『又はここを奪還しに来た艦隊を総潰しにする作戦』だったかも知れないと思ってるみたいですよ?」

 

 

前のやむを得ない理由ならまだしも後半の予測に関してはゾッとする

もし自分が自分達を殺すために島ごと深海棲艦に囲まれるなんて物を想像すると……

 

 

「と言っても、そんなのは杞憂に終わりましたけどね

ここに深海棲艦はほとんどおらず、私達が来ても特に何もなかったと言うことで今は平和と言うこと何です」

 

 

「な、成る程……」

 

 

イムヤが怯えているのを見ると古鷹は掃除するの手を止め頭を撫でる

 

 

「大丈夫ですよ、どんなことがあっても貴女は私達が守りますよ

だから、安心してください」

 

 

 

「……はい!」

 

 

「さ、お掃除しましょ?早く終わらせて一息ついてのんびりとしましょう?」

 

 

どこか、頼りになる古鷹の背中を見ながらイムヤは今日も家事を共にこなしていく

 

 

 

 

 




次回

収穫

明日は小笠原の農園に行きます

え?そんなのあったのかって?
実はあるんですよ…



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潜水艦と重巡の二人 四

「と言うわけで!今日は収穫を行う!!」

 

 

佐渡達は鎮守府の近くにある畑に来ており全員ジャージに麦わら帽子を被っている

 

 

「へーい、提督今日は何を取るんですかー?」

 

 

「んまぁ、今日は金曜日……だよな?」

 

 

「はい、そうですよ提督

なので取るのは夏野菜のナス、トマト、キュウリ、ピーマン、オクラ、トウモロコシですね」

 

 

「だそうだ!!」

 

 

「って!何で私に言わせるんですか!」

 

 

「あいたぁ!?」

 

 

大井の説明を聞いた全員は納得しながら後ろを見ると確かに畑にはそれらの野菜が実っておりどれも綺麗に出来ている

 

 

「そんでもって今日の晩御飯はそれらを使ったカレーを作るからな!!

しっかりと取れよ!!」

 

 

「「「「「はーい!!」」」」」

 

 

「ほんじゃ、各員行動開始!」

 

 

佐渡に言われると全員バラバラに動き各々渡されたハサミで野菜を収穫する

 

 

「えっと……これは…」

 

 

「あぁ、これはこうやるんですよ?」

 

 

「あ、成る程!」

 

 

イムヤもそれに参加しており古鷹と共に行動しており、二人で野菜を収穫している

すると叢雲が野菜を片手に近付いてくる

 

 

「イムヤ、どう?ここには馴れた?」

 

 

「え、えぇ!と言いたいかしらね……」

 

 

「ま、それもそっか

でもまぁこう言うの良くない?」

 

 

叢雲に言われると確かにそう思う

いつもは海の中で暑さとかはあんまり感じなかったけどここでは海の中が少なく陸での行動が多い

 

 

「そう……ね!そうね、暑いけど仕事してるより良いよね!」

 

 

イムヤの言葉に叢雲と古鷹は顔を見合せ微笑むと突然水をかけられる

 

 

「……ちょっと、金剛何するのよ?」

 

 

「嫌!違うんデース!私じゃなくて大井が悪いんデース!!」

 

 

「ちょっと!私は何もしてないわよ!蛇口捻ったら金剛さんがシャワー暴発させただけでしょ!?」

 

 

「違いマース!!絶対大井のわざとデース!!」

 

 

「違うわよ!!」

 

 

「あんたたち……酸素魚雷当てるわよ!!」

 

 

「叢雲が怒ったデース!」

 

 

「ちょっと!私じゃないってば!!」

 

 

叢雲が笑いながら怒ると、金剛のシャワーを奪い取り金剛と大井にかけ始め二人は冷たさに逃げ回っている

 

 

「おいこらお前ら~遊ぶのは良いけど作物を潰すなよー?」

 

 

佐渡が注意しているが三人は聞く耳を持っては居ないが作物とは違うところで暴れ始めている

 

 

「ちょ、ちょっと……こんなところで暴れたら……」

 

 

「うっさい!食らえイムヤ!!」

 

 

イムヤは、叢雲からシャワーを顔面に浴びると少しイラッと来たのか笑顔になりながら怒る

 

 

「やったわねぇ!!このぉ!!」

 

 

「わ!冷た!!」

 

 

「きゃあー!」

 

 

とイムヤもその水遊びに参加し、古鷹はそそくさと作物を取りながら佐渡のところに避難する

 

 

「イムヤ、明るくなったな?」

 

 

「はい!彼女は明るい素直な子ですよ?」

 

 

佐渡と古鷹は、遊ぶ四人を見ながら微笑みがらお茶を飲んでいた

 

 

 

 

 





次回

この鎮守府で過ごしていく





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潜水艦と重巡の二人 五

「ふぅ……」

 

 

「気持ちいいですね…」

 

 

古鷹とイムヤは共にお風呂に入っておりのんびりとしていた

 

 

「イムヤさん、いかがでしたか?

この鎮守府で生活してみて」

 

 

「………私は、ここに居ても良いんですよね?」

 

 

「はい、ここは新しい貴女の居場所ですよ?」

 

 

「………そう、何ですね…」

 

 

イムヤは天井を見上げながらのんびりと体を湯に浮かせている

 

 

「私は、ずっと思ってたんです

何でこんな潜水艦に生まれちゃったんだろうって」

 

 

「はい」

 

 

「……19見たいに雷撃火力が高いわけでもない

ゴーヤ見たいに相手に上手く当てるわけでもない

はっちゃん見たいに頭が良いわけでもない

……だから私はこうなんだって自分の運命を、この扱いを受け止めて諦めていたの

どうせ、私は使われるだけでも嬉しいのだから

でもここで教えられた、休息が大事な事

食べること、生きる意味もね…

だから、私はここで、この鎮守府で生きていきたい

もし、轟沈するならこの鎮守府の為に沈みたい…」

 

 

 

「駄目ですよそれは」

 

 

「え?」

 

 

古鷹は湯に浮いているイムヤの両頬を掴みじっと顔を見る

 

 

「貴女は沈ませません

海では私が、叢雲が、金剛さんが、大井さんが絶対に貴女を守ります

そして、陸では提督が守ってくれます

だから貴女はこの戦争が終わるまでここにいてください

そして、誰一人かけることなくこの戦争を迎えるんです

大手を振って未来を生きていきましょう?」

 

 

古鷹の真剣な瞳に頷くと微笑みながら頬を放す

 

 

「提督が、貴女を私に任せた意味が分かった気がします」

 

 

「え?」

 

 

「貴女と私は似ているんです

境遇がですけどね、でも家事が上手いことも似てますよ?

だから任せたんだと思います」

 

 

「そう…何ですか…」

 

 

古鷹の表情を見ると少し悲しそうに過去を見ている様な感じをしており見ていられなくなる

 

 

「私も、最初来たとき提督も信用できなかったんです」

 

 

「……え?古鷹さんが?」

 

 

「はい、私はここに来たときここには今ほど物は無かったですし最初は叢雲と提督だけでした

それこそ、家事も無かったでしたしもっと悲惨な状態でした

提督なんてどうせ私達を物にしか見てないって当時思っていました

でも、あの人は佐渡提督は違った

私達、艦娘に寄り添い笑い合い決して見捨てない

私はそれを見せてもらいました

嬉しかったとても、だから私もそれに答えたいと思ったんです」

 

 

古鷹さんの横顔を見ると嬉しそうにいつもの明るい古鷹の表情をしており少し安堵する 

 

 

「だから、イムヤさんもあの人を信用してあげてください

貴女を決して見捨てませんよ」

 

 

「………うん!ありがとう!古鷹さん!」

 

 

イムヤは、湯船から立ち上がるとそそくさと脱衣場に向かう

 

 

「提督なら今防波堤に居ますよ」

 

 

「…ありがとう!古鷹さん!!」

 

 

イムヤは元気一杯に返事を返すと古鷹は微笑みながら手を振りそれを見送ると湯船から両肩をだして縁に身体を預ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そう……私と同じ……でも…無いのかな 

羨ましいな、失うものが無かった人は」

 

 

誰も居ない風呂場で一言だけ呟いた

 

 




次回

今を生きていけ

次回でこのイムヤ編は終わりです
え?古鷹さんは初期艦じゃないのかって?
誰がそんなこと言いましたっけ?
彼女の物語はまだ先です…そうまだ…ね?



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奴隷艦は月夜に願う

「ぬぅ、夜もまだまだ暑いな…」

 

 

佐渡は夜の防波堤に座りながらのんびりと酒を飲みながら月を肴にやっていた

 

 

「古鷹…と仲良くやってるかな…」

 

 

月夜に呟きながら酒を飲んでいると波の音に紛れ誰かの足音が聞こえる

 

 

「司令官、今良いかしら?」

 

 

「ん?おぉイムヤどうした?こんな所に来て」

 

 

イムヤが部屋着を着た状態で、佐渡の隣に座ると佐渡はイムヤに壺に入った飲み物を出す

 

 

「お前に酒を出すわけにはいかないからな

こいつで我慢してくれ」

 

 

「……司令官これは?」

 

 

「んー、梅ジュース

ここで取れた奴酸っぱいぞ~?」

 

 

イムヤは壺から桶を取り出し、佐渡から渡されたコップに入れると飲み出す

 

 

「すっぱ!でも、飲みやすいのね……」  

 

 

「おう、そういう風に作ったからな

身体に良いぞぉ?」

 

 

佐渡は笑いながら言うとイムヤも少しずつ飲んでいく

 

 

「んで、何の用だ?

こんな時間にさ」

 

 

「ねぇ、司令官は私をどう思う?」

 

 

「どうって……可愛い女の子」

 

 

「え?」

 

 

「だから、少食でひたむきで一生懸命で真っ直ぐな女の子」

 

 

佐渡は、イムヤを真っ直ぐ見ながら言うとイムヤは顔を少し赤くすると顔を左右に振るう

 

 

「違う!!潜水艦としてよ!!」

 

 

「あ、そっちか。うーん分からん」

 

 

「……そうよねごめんなさい」

 

 

「あー、でもな?」

 

 

イムヤは佐渡を見ると顎に肘を付きながら月夜を見ていながら呟く

 

 

「お前ならどんな潜水艦にも負けないと思うよ」

 

 

「…え?」

 

 

「だってそうだろ?何よりも真っ直ぐでしっかりと仕事をこなし、今までどんなこともやってきたんだ

そんな奴が戦いだけしか知らない奴なんかに負けるとは俺は思わない

俺がここでお前を見てきたんだ、間違いないさ」

 

 

そう言われると、古鷹の言葉を思い出しながら佐渡の手を握る

 

 

「ん?どったイムヤ?」

 

 

「ねぇ、司令官私のお願い聞いてくれない?」

 

 

「んー、内容にもよるかな?」

 

 

イムヤは顔を伏せており決意すると良しと言うと真っ直ぐに佐渡を見る

 

 

「私をここにずっと置いてくれない?

何でもするから

私を……守ってほしいの

私は装甲もないし弱いし、他の皆見たいに何か出来るわけでもないけど出来るようになるから!

お願い!!」

 

 

イムヤは眼をぎゅっとさせながらお願いをしていると佐渡は響き渡るような程の大声で笑う

 

 

「ハハハ!!そんなことかよ!!」

 

 

佐渡はそう言うとイムヤの頭を撫でてあげると、満面の笑みを浮かべている

 

 

「任せろ!お前は俺が守るさ!

お前はここの艦娘だ!!

お前をどこの鎮守府にも他の提督にもやるもんか!!

ここで、古鷹や叢雲達と好きに生きろ!!」

 

 

佐渡に言われるとイムヤは微笑むと鎮守府へと向けて駆け足で走っていき後ろを振り返り

 

 

「その言葉!!信じるからね!!司令官!!」

 

 

「おう!!!任せとけ!!」

 

 

返事を返すとイムヤは駆け足でその場を後にする

しばらく走った後空にある月を見ながら呟く

 

 

「これからよろしくね、私の新しい司令官!!

あの人の為に、皆の為に頑張るわよ!」

 

 

気合いを入れ直し、これからの鎮守府生活を満喫すると決意するイムヤであった

 

 

     奴隷の潜水艦 イムヤ編 end




次回

知りたくなかった真実

今回でイムヤ編が終わりです
次の話はある伏線の回収です




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深海棲艦イ級

佐渡は、イムヤが去った防波堤で一人酒を飲みながら静かなその場で月を見ながら悩んでいた

それは親方に言われた『真実』である

 

 

「……確かにあれは言えないよな

『艦娘』には特にな」

 

 

佐渡は眼を閉じ、イーちゃんを検査に回したときの日の夜親方に呼び出されていた内容を思い出す

 

 

「親方さん?俺だけに用ってなんですか?」

 

 

「あぁ、おい誰も連れてきてないだろうな?」

 

 

親方は静かになった工厰の土台に座りながら佐渡に背を向けている

 

 

「えぇ、誰も」

 

 

「おい、お前ら外で見張ってろ」

 

 

「はいー」

 

 

「親方了解ー!」

 

 

妖精達は全員佐渡の横を抜け走り出していくと扉の向こう側で待機しているようだ

 

 

「それでそこまで警戒するのは何でですか?」

 

 

「………イーちゃんについて分かったことがある」

 

 

「何か分かったんですか!?」

 

 

「あぁ、落ち着いて聞いてくれ

俺も専門家じゃない艤装を扱う一人妖精として言うだけだ 

信じてくれなくても構わない」

 

 

いつになく弱気の親方を変に思いながらも佐渡は返事を返す

 

 

「まさか?親方さんの言葉なら信じるよ」

 

 

「……そうか、実はなイーちゃんの主砲だが」

 

 

親方は渋るようにだが、決意したような感じになると話始める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれは、艦娘の装備12.7㎝連装砲だ」

 

 

「!!!!まさか!」

 

 

「いや、間違いはねぇ。

あれに関しては驚いた全く遜色ねぇ

誰の艤装までは分からないがあれは駆逐艦が持っている艤装だな」

 

 

「でも!そんなことあるんですか!?」

 

 

「分からねぇ……だがどっかの話では艦娘は轟沈すると深海棲艦になるって話を聞いたことがある

本当かは分からんけどな」

 

 

「じゃあ、イーちゃんは……」

 

 

「高確率で、『元』艦娘だ

だが、言語が使えず身体が縮小してるのは分からねぇ

だがあれは間違いない、あれに関しては良く整備させられてたからな……

後、イーちゃんの装甲に使われていたのもバルジ(強化装甲)は艦娘の奴を改良したもんだ

間違いない」

 

 

「そんな事って……」

 

 

「奴が何者かははっきりしてはいないが俺から言えるのはあいつは『元』艦娘の可能性が非常に高い

心当たりはないか提督、この鎮守府近海で駆逐艦が沈んだって話を」

 

 

「いや……聞いたことないや…

でも!この鎮守府が落とされたとき多くの艦娘が死んだって……」

 

 

「いや、あいつの主砲とバルジはほとんど消耗してなかった恐らくその後になった奴だからそれはあり得ない

下手をしなくてもここを攻略しに来た艦娘に撃沈させられるはずだからな……

すまない、提督こんなことしかできなくてな…」

 

 

 

「いえ!ありがとうございます!親方さん!」

 

 

そう言うと工厰から出ていくとそれからずっとその事が頭に引っ掛かっている

 

 

「なら俺達は……元艦娘を殺しているのか…?

分からねぇな…」

 

 

佐渡はそう呟くと酒をぐいっと飲み干す

 

 

 

 

    深海棲艦 イ級編 end





次回

止まらない殺戮

次回は大本営での元帥と大淀の話になります



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再び動き出す殺意

今回も少しグロ注意!!

奴がやらかし、犠牲者は増えていく……




ここは大本営の元帥の執務室

夜遅くまで元帥は仕事をしており目が疲れている為か眼がしばしばする

そして、コンコンと部屋をノックする者がいる

 

 

「入っていいよ」

 

 

「失礼します、元帥」

 

 

大淀は静かに扉を開けると険しい表情をしながら元帥を見つめていた

 

 

「……どうだ提督殺しは」

 

 

「………正直最悪です

あの悪夢が甦ってしまった見たいです

またです、次は海軍本部での殺人です」

 

 

大淀は元帥にその報告書を見せると元帥は頭を抱える

 

 

「くそう……木原は泳がせるためにわざと解放したのに……何故一日でバレたんだ…奴に…」

 

 

そう、元帥は木原が深海棲艦との繋がりに気付き行動を監視するために釈放させたと言うのにその日を狙い提督殺しは海軍へ偽情報を流し、木原を殺害していた

しかも彼が持っていた深海棲艦との関連する情報も全て隠滅されていた

 

 

「郷田さんも桐沢さんもあの後深海棲艦と連絡を取ろうとしていたのですが、彼等どうやら家に艦娘を『飼っていた』そうなんです

それが提督殺しに情報が漏れ……」

 

 

「クソ!!やはり奴は深海棲艦なのか!?

だが何故だ!!何故我々の動きが全て筒抜けなのだ!!!」

 

 

そう、元帥がいくら秘密裏に動いた所で提督殺しはその先を行き手を打つ前に相手を殺し情報を全て消しているのだ

まるで、わかっているかの如く

 

 

「……また明石にここを調査させますか?」

 

 

実はこの元帥の執務室に盗聴器等が無いかと疑った元帥は執務室を何度か明石と夕張に調査させてはいるがどこにも見つからないと言う

つまり、向こうは別の方法でそれを探っているのだ

 

 

「…いや、奴はもしかしたらこの大本営に裏切り者を寄越している可能性の方が高い…

大淀、明日全員の調査を行う

大元帥には私から話しておく」

 

 

「分かりました、ではその準備を」

 

 

「すまない、頼む」

 

 

大淀が執務室を後にすると一人執務室に籠り呟きながら頭を悩ませる

 

 

「提督殺しに沖縄で観測された『監視者』『歴戦の南方棲戦姫 クイーン』『戦艦棲姫ユリそして自立型艤装ケルベロス』……奴等が、本格的に動き出したって事なのか……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁてと、今日も終わりかしらねぇ~」

 

女は血の付いたナイフを片手に倉庫の木箱に座りながらその中身を確認していた

目の前には二人の拘束された男、一人は脚、腕、手首を切り落とされ喉から腹部まで切り裂かれている

もう一人は無傷だがガソリンをかけられ恐怖に怯え全身を震わせながら失禁すらしている

 

 

「にしても、良くこんな風に持ってくるわねぇ?」

 

 

全ての箱の中身は、無くなっているだが箱の裏側に「駆逐艦 旗風(はたかぜ)」と書かれておりその少女兼艦娘は女のすぐ側でスヤスヤと寝息を立てながら寝ている

 

 

「さってと、殺すか」

 

 

「ま、待てよぉ!!

俺達は艦娘を『買った』だけだろぉ!?

売ってる奴を殺せよ!!

何で……何で!!」

 

 

「へぇ?売ってる奴を知ってるの?情報を言えば見逃してあげなくないわよ?」

 

 

その男は明るくなり旗風を違法に売っていた造船所について話し始めるどうやら日本ではなく海外だったらしく女はふーんと言う

 

 

「へー、良いこと聞いたわ

じゃさようなら」

 

 

女はそう言うと、近くのドラム缶を倒し中身をぶちまけていく中身は燃料でありそれが倉庫の中にある木箱に染み込んでいくと女はそれを男の回りにいくつか置いていく

 

 

「おい!約束が違うだろ!!!」

 

 

「あら?誰が、見逃すなんて言ったかしら?

私は見逃してあげなくないと言っただけで見逃してあげると一言も言ってないわよ?」

 

 

その言葉に、男の顔は青ざめていくのを見ながら女は微笑み旗風を抱えていく

 

 

「た、頼むよ!!見逃してくれよ!!

何でもするからよぉ!!

それにあんたは『提督殺し』だろ!?標的は提督とか海軍関係者じゃないのかよ!?」

 

 

女は、いや提督殺しは立ち止まり振り返ると男を睨み付ける

 

 

「はぁ?それはあんた達が勝手に呼んでるだけでしょう?私はそんな名前名乗った覚えないし、私はお前達『人間』を殺すのが好きなのよバカなの?

そろそろ煩いし、死になさいよ」

 

 

提督殺しは燃料が付いた木の板に火を着けると勢い良く火が燃え始めそれが別の壊された木箱にも燃え広がると男は恐怖する

 

 

「た!頼むよ!!話を!!」

 

 

「じゃあねぇ、愚かな人間さん?精々、炎に焼かれて己の罪を悔いたら?」

 

 

提督殺しは、倉庫の扉を閉めるとその場を後にすると倉庫の窓から大声の男の苦しむ声と燃え広がると炎が見える

 

 

 

「フフ、罰を貴方に……」

 

 

提督殺しは旗風を抱えながらのんびりと倉庫を後にする

 

 

 

 

 




次回新章!!

序章 濃霧の海域


うん、我ながら提督殺しヤバくね?とか感じてます
嫌ほら、ダークヒーローぽいけど…さ?
次回はその闇に囚われた一人艦娘の話になります

追伸

潜水艦 イムヤ   

深海棲艦 イ級

自己紹介ページにて更新!!


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第六章 架空の空母
死の海域


時は流れ、イムヤが小笠原鎮守府に着任してから一月がたち今は九月そしてここは海上の商船である

一人のドイツ人があくびをしながらのんびりと航行していた

 

 

「ふわぁ、クソネミ」

 

 

「へいへーい、艦長余裕だねぇ?」

 

 

「そりゃそうだろ、今は艦娘も居るし俺達は商船だ

まぁ武装もしているがな」

 

 

この船は軍艦を改造し、商船として生まれ変わらせているが実はこれが一般的ではある

と言ってもそんなに大きいわけではなく通常の軍艦の半分位しかない

理由は、深海棲艦に対抗するためのちょっとした処置だ

 

 

「そいや、これは日本に向かってるですよね?」

 

 

「あぁ、明日には横須賀に着航出来るだろう」

 

 

「いやー、楽しみだな日本

俺行ったこと無いんですよ」

 

 

「そうだな、とりあえず艦娘に状況聞いてこい」

 

 

「はいよー」

 

 

乗組員は、甲板に出ると共に航行する艦娘に話しかける

 

 

「へーい!アイオワー!!変わらないないかーい?」

 

 

「yes!!NOproblemよ!!」

 

 

共に航行していたのは艦娘

戦艦アイオワ

戦艦リットリオ

駆逐艦リベッチオ

駆逐艦ジャービス

駆逐艦マエストラーレ

軽空母ガンビア

 

の艦隊六人である

 

「にしても今回の任務は楽で良いですねぇ

戦艦がこんな任務引き受けて良かったのかしら?」

 

 

「仕方ないよ、今回行くのは日本だし

この前戦艦棲姫の化け物が出たって話だよ?」

 

 

「えぇ……マジ?戦いたくないなぁ…」

 

 

「いやぁ、流石にもう居ないでしょ…」

 

 

「ひぇぇ……」

 

 

「ほら!皆仕事仕事!って言いたいけど暇なのは変わらないわよねー

ガンビアー!コーラ無いー?」

 

 

今回の任務内容の詳細は実はアイオワ達には知らされていない

と言うよりは知らせてはならないと言うことがあった何故なら今回の積み荷の中に

 

 

「まさか、こいつらも仲間を運んでるとは思わねぇだろうよへへへ」

 

 

 

艦娘があるのであった、つまり今回のアイオワ達の任務はその護送そして万が一の提督殺しの為のものである

商船の倉庫に一人の艦娘が鎖に繋がれ囚われていた

近くに艤装が置いてあり

髪は綺麗な銀髪に帽子を被っており

服装は白い制服に小さい赤いマントを羽織っている

 

 

「おいおい、これがこれから売られるって艦娘か?」

 

 

「あぁ、名前は忘れたけどなハハハ!」

 

 

艦娘は下を俯いており、乗組員はその顔をぐいっと持ち上げると顔をじいっと見ながら胸を鷲掴みにする

 

 

「おいおい、商品に触るなよ

後で怒られるぞ」

 

 

「良いじゃねぇかよ、少し位

にしてもデカイな、こりゃ……

触りごたえがあるぜ…へへ」

 

 

艦娘は触られているのに力なく頭を下げ眼を伏せている

(…私はこう言う奴等に売られるんだな……)

そう絶望しながら将来を悲観していた

倉庫でそんなことが起きているのにも関わらず艦長はのんびりとしていた

すると、艦娘から声が聞こえる

 

 

「あ、アイオワ……この進路不味いよ…」

 

 

「どうしたのよ、ガンビア?」

 

 

「このままいくと、霧の海域を通ることになるよ……」

 

 

策敵をしていたガンビアから言われ嫌な顔をするアイオワは商船を叩き報告する

 

 

「へーい!!このまま真っ直ぐ行くと霧の海域だよ?

良いのー?」

 

 

「え、マジか、待ってろー!!」

 

 

乗組員は、急いで艦長の元へと走ると艦長に報告する

 

 

「艦長、これより真っ直ぐ行くと霧の海域見たいです、どうしますか?」

 

 

「霧の海域?」

 

 

「えぇ、海軍から運航禁止にされている危険海域です

どうしますか?」

 

 

霧の海域

二年ほどまえから海上が年中霧に覆われている謎の海域

そこではかなり濃い霧に覆われており、艦載機の策敵不能、磁場の影響か無線すら使えず深海棲艦と会敵(エンカウント)する確率が高い場所である

だが、それだけではないここには

 

 

「幽霊が出る海域か」

 

 

そう殺された艦娘や深海棲艦の怨霊が出ると噂されている危険海域である

実際ここで轟沈した艦娘が多く入ったら帰ってこれないとされている

 

 

「どうしますか?艦長」

 

 

「………突き抜けるぞ

ここを突き抜ければ早く日本に着ける」

 

 

「ですが……」

 

 

「命令だ

それに一足早くついて積み荷と遊ぼうじゃないか?」

 

 

「…へへそうですなぁ!」

 

 

二人は嫌な笑いをしながら乗組員の一人は甲板に出てアイオワ達に指示を出す

 

 

「霧の海域を突っ切る!!戦闘準備をしておけ!!」

 

 

「わーお、度胸あるねぇ

OK!」

 

 

その言葉を聞いた全員は艤装を取り出し霧の海域に備える

 

 

 

 




次回

濃霧の化け物

次回、霧の海域に入ります
それが破滅への道とも知らずに……

あ、海外艦に関してはすいません全く性格考えていないんです許してください


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死の海域 二

この海の主と遭遇?




「……見えたわね、霧の海域」

 

 

アイオワは、目の前に広がる濃霧を見ながら呟く

後ろでは四人は息をのみガンビアは震えている

 

 

「や、やっぱり止めようよ!!

この海域ヤバイって良く聞くじゃんかー!」

 

 

「嫌でも行かないと仕事にならないし……」

 

 

ガンビアがいつも以上に怯えておりそれをリベッチオが宥めている

 

 

「艦長、霧の海域です

突入します」

 

 

「あぁ、まぁ大したことはないだろう」

 

 

そうこうしている間に、商船とアイオワ達は霧の海域へと侵入した

霧の海域では周りが一切見えないコンパスも羅針盤も使えないためライトをつけてもあまり意味がない

 

 

「うぇ……気持ち悪い霧…」

 

 

「湿気がまとわりついてきますね……」

 

 

「全員、商船を囲うように輪陣形を組んで、どこから来るか分からないからね」

 

 

アイオワの指示で全員は輪陣形を取りながら全方位を警戒しているとリットリオの電探がほんの少し反応する

 

 

「アイオワ!前方750メートル先に反応有り!一人……ぽいわね?」

 

 

「了解、リットリオ甲板の乗組員に連絡とって」

 

 

「はいはーい」

 

 

リベッチオは商船を叩くと上から声が聞こえる

 

 

「何だー!!」

 

 

「何か前に居るみたいだからー!!見てくるー!!

船止めてー!!安全第一だし!動かなきゃ見つからないからー!!」

 

 

「分かったー!!」

 

 

リベッチオから話を聞いた乗組員は艦長に連絡する

 

 

「分かった、船を止めろ!!」

 

 

艦長の指示により、船が一時的に止まりアイオワ達は動き始める

 

 

「ガンビアはここで、待機

他は私と共に来てね?」

 

 

「えぇ!?こ、恐いよぉ……」

 

 

「すぐ戻ってくるから、がんばれーガンビア!」

 

 

アイオワ達はそう言うと霧に消えていきガンビアだけが残されてしまう

 

 

「ここが霧の海域か」

 

 

「なーんにも見えませんね…」

 

 

のんびりと艦長と乗組員が過ごしている間、アイオワ達は霧の海を進んでいた

 

 

「リットリオ、あとどれくらい?」

 

 

「……もう少しで会敵(エンカウント)ね」

 

 

リットリオが少し不安げになっているのを励まそうとするのかリベッチオが明るく話しかける

 

 

「もしかしら幽霊かもね?」

 

 

「幽霊が電探に反応するの?」

 

 

「そしたら、ゴーストバスターでもやる?」

 

 

「oh!いい考えね!帰ったらやってみよっか!」

 

 

五人は笑い合いながら、目の前の何かに接近していく

するとリットリオがカウントする

 

 

「5、4、3、2、1、ゼロ会敵(エンカウント)

 

 

「さーてと?幽霊か…何……え?…何…あれ?」

 

 

アイオワはその姿を見ながら血の気が引いていく五人の目の前にはうっすらと黒い影がこちらを向いていたが声が聞こえる

 

 

「あァぁァ?だァぁれェえ?アはハ?

敵き確ニン?アハは?」

 

 

その声と姿には見覚えがあり、アイオワは叫ぶ

 

 

「全艦!!!戦闘準備!!!

何でっ!こいつが!!ここに!!」

 

 

 




次回 

圧倒的な戦力差

次回
霧の海改め死の海の恐さを知れ
……知って頂ければ良いなぁ


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死の海域 三

今回、轟沈描写有り
グロ表現有り
理不尽な戦いほど辛いものはない……
彼女達は運が悪かった







「うぅ……恐いよぉ…」

 

 

ガンビアは船の先頭で五人の帰りを待ちながら霧の海に怯えていた

この霧の海は別名『不還の海』とも呼ばれており入ったものは戻れないとされている

全く周りが見えない霧、音もしない、

 

 

「……艦娘達遅いですね?」

 

 

「…だな、迷ったか?」

 

 

甲板に、乗組員と艦長は出ておりガンビアと共に五人の帰りを待っていた

だが、一向になっても帰ってこず艦長が部屋に戻ろうとする

 

 

「艦長、どこへ?」

 

 

「迷われても困るから汽笛を鳴らすんだよ全く…世話を……」

 

 

その瞬間前方から巨大な砲撃音が聞こえ甲板に出ていた乗組員は前方へ集まる

 

 

「何だ!?」

 

 

「砲撃音!?深海棲艦か!」

 

 

しばらく続いた砲撃音は次第に静かになると前方から一人の艦娘が走ってくる腕を負傷しながら

するとガンビアはその艦娘に駆け寄る

 

 

「リベッチオ!?どうしたの!その傷!!」

 

 

 

「はぁはぁ……ガンビア!!

急速旋回!!この海を引き返して!!」

 

 

「え!?み、皆は…」

 

 

「良いから!!早く!!貴女だけでも……あ」

 

 

リベッチオは突然震えながら振り返ると左足に何かが噛み付いており全身をゾッとさせる

 

 

「いや!!いや!!助けてガンビア!!!」

 

 

「え?え!?リベッチオ!?」

 

 

瞬間リベッチオは霧の向こう側に左足の何かが凄い勢いで引きずり込んでいくその手を取ろうとするが手は空を切りリベッチオを海面に引きずりながら「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!」と叫びながら霧に消えるとグシャァ!!と嫌な音がする

 

 

「え………リベ…ッ…チ……オ?」

 

 

その瞬間、ガンビアの隣に何かが投げ捨てられ恐る恐るそれを見るとそれは

 

 

「あ、あぁぁ……!!

あぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!!!」

 

 

先程まで話していたリベッチオの生首であったその顔は恐怖に歪み静かに海に沈んでいく

 

 

「アはハ?うるサいの死ンだ?身体かルいねェ?」

 

 

ガンビアの目の前に何かがこちらに近づいてくる両手に何かを引きずっている

 

 

「お前ら!!スポットを目の前の何かに当てろ!!

あと急いでエンジンをかけろ!!!急速旋回してこの海を逃げるぞ!!」

 

 

乗組員は急いで二つのスポットライトを当てるとその姿が露になる

 

 

「何だありゃ……人?」

 

 

「違う!!深海棲艦だ!!

おいアイオワ達はどうした!?」

 

 

「嘘…嘘嘘!!何で!何でいるの!?」

 

 

その姿は、フードを被った女の子

歳は恐らく16位でありそこそこの身長とパーカーを着ておりフードを被っている

だが爪は異常に伸び、尻尾は二つに別れているそして何よりも恐ろしいのは

その掴んでいる物は人型をしており尻尾も口がありそれぞれ加えている

 

 

「せ、戦艦…レ級…?」

 

 

それは戦艦レ級に酷似していたが、

従来の物は尻尾が一本でありこれよりも更に幼い

 

 

「眩シいナァ?」

 

 

戦艦レ級?(以降レ級)は両手に持っている何かをスポットライトに直撃させライトを破壊する

一つは海に一つは甲板に乗り、乗組員に直撃する

 

 

「いてて、あいつ何を投げて……う、うわぁぁぁぁ!!

 

その乗組員は、すぐさまそれを退けるとそれは先程までアイオワの艦隊に居たジャービスだった両腕は不自然な方向に曲がり首が一回転しており眼から血を流したまるで玩具の人形のようになっていた

 

 

「撃て!!撃てぇ!!!」

 

 

乗組員は船にある、機関銃でレ級を撃つが服がそれを弾き一切当たらない

すると尻尾から二つの影を落とし頭を押さえる

 

 

「うるサイなァ!」

 

 

瞬間レ級は跳躍すると甲板に飛び乗りると同時に機関銃を使っていた乗組員を尻尾で上半身を噛みちぎる

噛みちぎられた下半身からは大量の血液が吹き出し甲板を赤く染める

 

 

「うわぁ!!!来るな!!来るな!!!」

 

 

乗組員は持っていた武器で応戦するがレ級には一切ダメージを与えられない

それどころか、どうやらレ級の怒りを買ったらしい

 

 

「うルさいワよォ?」

 

 

瞬間レ級は走りだし、甲板に居る乗組員達を虐殺し始める尻尾で噛みちぎり海に落とし爪で引き裂く等まるで子供と大人と言うほどに一方的な戦いに乗組員は逃げるしかなかった

 

 

「クソ!!こうなったら!!」

 

 

艦長は急いで、倉庫に走っていくと鍵を開け中に居る乗組員を退けると急いで艦娘の鎖の鍵を開ける

 

 

「ちょ、ちょっと!?艦長何してんの!?」

 

 

「そうですよ!!商品を……」

 

 

「黙れ!!おい貴様!!お前は艦娘なんだろ!

ならあれを何とか……」

 

 

と言いかけた瞬間船が爆発に揺れる

どうやらレ級は殺し終えた後この商船を破壊するつもりらしい

 

 

「外に出ろ!!そして戦え!!」

 

 

艦長に言われるが艦娘は虚ろな眼をしており「クソ!!」と言うと倉庫を出ていく

だが、次の瞬間ある光景が窓から目に入り絶望する

 

 

「おい……何するつもりだあれは…」

 

 

それはレ級が二本の尻尾をまとめており空に振り上げていたその行為を察した艦長は走ってその場を逃げようとするが

 

 

「割レば簡単ダヨネェ?」

 

 

レ級は尻尾を振り下ろすと衝撃と共に商船が横にバックりと割られ真っ二つになる

その衝撃で船の両端は空に向かい上がり静かに沈んでいく

その時倉庫に居た艦娘は衝撃に驚いたが船が沈んでいることに気付き艤装を付けようとするが他の荷物が頭に直撃し気を失ってしまう

片手を艤装に突っ込んだまま

 

 

「あ、あぁ……船が…」

 

ガンビアは外でその光景を見ながら、近くに倒れているアイオワ達の世話をしていたがアイオワはボロボロになりながら立ち上がりレ級へ主砲を向ける

 

 

「や、辞めようよ!!あんなのに勝てないよ!!」

 

 

「ばっか…ね!最後に一撃でも……」

 

 

だが、その視線にレ級は気付きこちらに走って近付いてくる

 

 

「食らえぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

アイオワは主砲を撃つがレ級は意図も容易くそれを尻尾で弾き返しアイオワの腹部にもう片方の尻尾を当て

 

 

「死ネ」

 

 

ゼロ距離で放つとアイオワは爆煙と共に吹き飛ばされ沈んでいく

 

「ば…け……も…の…め…」

 

身体に大きな穴を開けながら

すると、レ級はガンビアに向き直ると尻尾の主砲を二門顔に近付ける

 

 

(だから……言ったのに…止めようって……)

 

 

涙を流し、その時を待ち全ての艤装を落とすと霧の海に二門の主砲音が静かに木霊した

 

 

 

 




次回

流されて小笠原島?

次回から本編です
どこかの小説でのレレレに影響されましたぁ(登場は予定していたけど)
長くなって申し訳ない
ガンビアちゃん……すまん生かす訳には行かないんだ…



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漂流物

今回から本編です
すんません序章が長くて……
書きたかったの許してくだせぇ





 

二日後小笠原島 午前4時

叢雲は、毎朝の鍛練であるランニングを半袖のジャージを着ながら走っていた

いつも同じルート、同じ時間に走っているのだが今日に関してはちょっと早めの時間から走っていた

と言うのも少し肌寒くなる季節だからもっと走れると思い少し早めに来ていたのだ

 

 

そして、最後に鎮守府近くの防波堤に来るとそこで筋トレを始める

これが叢雲の毎朝行っていることである

一通りメニューをこなすとタオルで顔を拭くと胸を確認する

(……やっぱりあいつも大きい方が良いのかしら?)

そう思いながら触るが残念ながらお世辞ながら大きくはない

溜め息をつきながら休憩していると防波堤からイーちゃんが顔を出す

 

 

「あら、イーちゃん

お風呂いく?」

 

 

コクンとイーちゃんは頷くと叢雲が両手を広げるとイーちゃんは沈み海面を勢い良くジャンプし叢雲の胸へと突っ込んでくる

 

 

「じゃあ、行きましょうか」

 

 

イーちゃんを抱えながら歩いていこうとすると後ろの海で何かを見付けたのかイーちゃんが暴れる

 

 

「ちょっと!?どうしたのよ?」

 

 

叢雲が小笠原の海を見ていると沖から何かが流れてきている

 

 

「ん?何かしらあれ?」

 

 

叢雲は普通の漂流物とは違い大きなそれに疑問を浮かべつつイーちゃんと共に海に向かうとそれが何か分かる

 

 

「人!?え、ちょっとあんた大丈夫!?」

 

 

それは人の姿をしており力なくその何かに捕まっており潮の波でその手が離れ沈んでいく

 

 

「ちょ!!イーちゃん!手伝って!!」

 

 

叢雲はイーちゃんを海に投げると自分も急いで海に入りその漂流物に捕まっていた人を潜水しながら探していると静かに沈んでいくのを見付けイーちゃんと確保すると海面へと急浮上する

 

 

 

「プハッ!!ちょっと!あんた!!しっかりしなさい!!ちょっと!!!」

 

 

叢雲は頬を叩くが全く反応がなくイーちゃんと共に防波堤では流石に持ち上げるのはきつく砂浜へと向けて泳ぎ始める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「佐渡!!!佐渡!!!」

 

 

ドンドンと騒がしいノックに小笠原鎮守府の提督佐渡は起こされる

 

 

「……んぁ?叢雲ぉ?あんだぁよぉ…

まだ早いだろうがよぉ……」

 

 

現在時刻5時ちょっと過ぎ佐渡が起きるにはかなり早い

眠い顔を擦りながらのんびりとベッドから起きると扉を開ける

 

 

「あーん……ふわぁ…何だぁ…叢雲ぉ?こんな早くに起こしてぇ…?」

 

 

「入渠施設の許可をお願い!!!急いで!!!」

 

 

「あんだよ……誰か…大破でも…したかぁ?」

 

 

「っ!イーちゃん!!!」

 

 

叢雲の合図に、頷き佐渡の足に思い切り噛みつくとその痛みで流石に眼が覚める

 

 

「いってぇ!?何すんだよ!イーちゃん!!」

 

 

「佐渡!!!急いで!!この娘を殺したいの!?」

 

 

「は?何言って……」

 

 

佐渡は突然言われた事に混乱しているが叢雲が抱えている人間を見ると目を開き驚く

 

 

「はぁ!?おい!この娘どうしたんだよ!?」

 

 

「今朝流れてきたのよ!!!恐らくどこかで戦った艦娘よ!!衰弱してるの!!早く!!」

 

 

「分かった!叢雲とイーちゃんは全員にこの事を知らせろ!!

彼女は俺に任せろ!!」

 

 

「分かったわ!!」

 

 

叢雲はイーちゃんを連れて走り出すと佐渡は受け取った艦娘を抱き抱えると大急ぎで入渠施設へと急ぐ

 

 

「大丈夫か!?しっかりしろ!!」

 

 

 

 

 




次回

彼女は誰?

今回は物理的な流されて来た娘です
一体誰なんでしょうかね?彼女は


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正体不明の艦娘

現在、修復が終わり流れついた艦娘は布団に寝かされていた

古鷹が側で見ており鎮守府全員が起こされ、提督室に集まっている

 

 

「大井、今日着任予定の艦娘か?ありゃ?」

 

 

「……いえ、大本営からそんな話は来ていません」

 

 

「何だと?じゃあ何だあの娘はここの近海で戦っていたのか?」

 

 

「……いや、そんな報告も大本営から来ておりません」

 

 

「うーん?じゃあ、彼女は一体何だ?本当に無いのか?」

 

 

「えぇ、ここら辺近辺での戦闘はありませんね

大本営に問い合わせていますが全く……」

 

 

佐渡は、自分のパソコンを弄ってもいるが確かに連絡は来てないしファックスも来ていない

 

 

「んー……じゃああの娘は何だ?」

 

 

「さぁ……私も全く検討つきません」

 

 

佐渡は立ち上がり、大井の肩を叩くと「いくぞ」と小さく言うとバインダーを取り出し提督室を後にする

 

 

「なぁ、お前は知らないか?あの艦娘」

 

 

「えぇ……見たことないですね、日本艦では無いんじゃないですか?

彼女の容姿を調べましたが一切引っ掛かりませんでしたし見たこともありません」

 

 

「うーむ……」

 

 

佐渡は、ある部屋の前で止まるとノックし部屋に入る

その部屋は流されて来た艦娘の部屋であり古鷹がいる

 

 

「あ、提督……」

 

 

「どうだ?」

 

 

「身体自体は問題ないそうです

むしろ戦ってすら居ないくらいだそうです

ですが、何日も漂流したのか衰弱してるみたいなんです」

 

 

「分かった、目が覚めたらとりあえずこの娘に食事を与えてやってくれ

話はそれから聞こう」

 

 

「分かりました」

 

 

「……金剛達は?」

 

 

「何かこの娘の艤装を取りに行くだとか言って海に出てます」

 

 

「そうか、ありがとな」

 

 

佐渡は、部屋を後にすると大井と話始める

 

 

「だとさ、どう思う?」

 

 

「………では、彼女はかなり遠くから…でもその途中で襲われるはずですよね?」

 

 

「弱っていたから見逃したとかか?」

 

 

「可能性としては高いですね……

もう少し広範囲で調べてみます

提督は、金剛さん達から艤装を貰ってきてください!!」

 

 

「分かった!!頼むぞ!」

 

 

ここで大井と別れ、佐渡は金剛達が向かっている海へと向かう

しばらくすると防波堤近くの海では二人が海上に浮いており叢雲が艤装から碇を下ろす準備をしている

 

 

「どうだ?見付かったか?」

 

 

「今イムヤとイーちゃんに探してもらってるわ

確かここら辺だけど、深いのよね……」

 

 

水中では、イーちゃんとイムヤが海底を泳ぎながら探しているがやはりそれらしいのは見付からない

 

 

『駄目ね見付からないわ、叢雲本当にここらへん?』

 

 

「えぇ、間違いないわイーちゃんとここら辺であの娘かを助けたんですもの」

 

 

二人は静かに組まなく探していると何かが光ったような気がし二人顔を見合せ向かうとそこには艤装らしいものが沈んでいた

 

 

「イーちゃん、上に上がって場所を叢雲に伝えて?」

 

 

イーちゃんはコクンと頷き急浮上すると宙に跳び跳ねる

 

 

「そこね!!」

 

 

叢雲と金剛は顔を見合せそこに向かうとゆっくりと艤装の碇を下ろしていく

 

 

「オーライ、オーライ。オッケー!」

 

 

イムヤやそう言うと碇を少し引くとその感覚が叢雲に伝わり碇を止めると馴れた手付きで碇を艤装に巻き付け次は二回引くとゆっくりと碇を戻し始めているがやはり重く金剛がその碇に付いている鎖を持ち上げる

 

 

「ぬぬぬ!!これ、中々に重いネー!!」

 

 

ゆっくりとその艤装は引っ張りあげられると金剛が抱える

 

「よっと、取れましたね。

これは中々に重いデース

提督ー!引き上げられたよー?どうするー?」

 

 

「工厰に持っていくぞ!!

親方さんに見て貰おう!!」

 

 

「分かったネー!!」

 

 

金剛達は艤装を持ってドッグに向かうと自分達の艤装をしまい工厰へと向かう

 

 

 

 




次回

彼女は空母?

次回、親方の眼力が試されます!


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正体不明の艦娘 二

「ほほう?こいつがその流されて来た艦娘の艤装かい?」

 

 

「えぇ、分かりますか?親方さん」

 

 

工厰にて、親方に艤装を渡すと妖精達もまじまじとその艤装を見ている

 

 

「んー……分からねぇな…

だが、こりゃ戦艦ではないな重巡でもない…

こりゃ滑走路だな…

軽い機銃まであるな…」

 

 

「あ、親方さん!ねぇこれもあったんだけど…」

 

 

イムヤはもう一つの艤装を手渡すと親方はその艦娘の正体を突き止める

 

 

「おいおい!そりゃ飛行甲板じゃねぇか!!

成る程、この艦娘は空母だな間違いねぇ

しかも軽空母でも装甲空母でもない正規空母だ!!」

 

 

「へぇ……良く親方さん分かりますね……」

 

 

「あれって飛行甲板だったんだ……」

 

 

親方は飛行甲板を受けとると妖精達に指示をすると艤装を弄って行くと艤装が動き始め両脇にの機銃が上下し背中の部分が動くと見事に折れている

 

 

「恐らく、この部分だなこりゃ

どうやら破壊痕から察するに戦闘ではなく何かぶつかって折れた感じだな……

飛行甲板もほとんど損傷はない

艤装本体も損傷は無し……だが」

 

 

そこまで言うと親方は顎に手を当てながら佐渡に振り返る

 

 

「なぁ、この艦娘はどこの艦娘だい?

こんな艤装見たことないぞ、俺は?」 

 

 

「え?日本じゃないんですか?」

 

 

「あぁ、間違いなく日本の艦娘じゃねぇな

この艤装は日本の奴とは構造が違う

だが飛行甲板が似てるのは、確か赤城って言ったかな?その正規空母に似てるが違うんだよな……」

 

 

四人は顔を見合せると金剛に集中する

 

 

「え?私デースか?」

 

 

「そう言えば、貴女英国で作られてなかったっけ?」

 

 

「金剛さんは知らないの?」

 

 

「そうだよ、金剛知らないのか?」

 

 

「い、いやぁ……流石に分からないヨー…

でも英国ではないよ?恐らくは」

 

 

金剛がそう答えるとまた全員で唸り始める

 

 

「あ、そうだ親方さんその艤装から戦闘が行われたか分かる?」

 

 

「ん?あぁ、分かるぞいくら空母でも被弾はするし

滑走路や飛行甲板の状態から大体はどれくらい戦ったか分かるからな」

 

 

佐渡に言われた後親方は艤装を見るために妖精達と弄っているが飛行甲板に乗った瞬間違和感を覚える

 

 

「………なぁ、提督よ」

 

 

「ん?どうしたの?親方さん?」

 

 

「この娘、もしかして一度出撃したことが無いんじゃないか?」

 

 

「え?どうしてだい?」

 

 

「飛行甲板にはな、必ず艦載機が着艦する際にタイヤ痕が残るんだ 

新品に取り換えたなら、その独特の作りがある

妖精達も完璧には作れないからな少し構造が違うんだが……

こいつは、何の後もない。

新品に取り換えた形跡もない

むしろ、一度も使われてないぞこの飛行甲板

それに加え他の場所も損傷がない、それに加え出撃する際に必ず潮風に晒されて錆が発生するが、その後もない

この艦娘、戦闘は愚か出撃すらしたことがないぞ」

 

 

「はい!?じゃあ、彼女は建造されて間もないってこと!?」

 

 

「そうなるな……

護送艦だったとかじゃないか?」

 

 

「おいおい……こりゃいよいよ分からなくなってきやがった……」

 

 

佐渡が頭を抱えていると工厰の扉が開き大井が入ってくる

 

 

「提督、少しよろしいですか?」

 

 

「あぁ、分かった。

今行く」

 

 

佐渡は、三人に「少し待ってろ」と言うと工厰から出ていく

 

 

 





次回

海外の空母

一体彼女は誰なのでしょうか?
今までのヒントで分かった貴方は艦これをやりこんでますねぇ!!



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正体不明の艦娘 三

「どうした大井」

 

 

「一応、ここ最近の近海以外の海域戦闘を調べました

その一つに興味深いのが見付かりました

これです」

 

 

大井から渡された資料には二日前の戦闘記録であるが内容が可笑しかった

 

 

「……何だ、この『濃霧の海域』での戦闘って」

 

 

「『濃霧の海域』、通称『死の海域』『不還の海』『亡霊の墓場』とも言われている大本営が危険指定している海域です

ここではコンパス、羅針盤や通信機等の電子機器が使えず一年中濃霧が立ち込める特殊海域です

この海域はかなり広く、『現在はフィリピン海を占領しています』」

 

 

大井の言葉に引っ掛かり、佐渡は聞き返す

 

 

「待て、今現在って言ったか?

そいつはどういう意味だ?」

 

 

「実は、この海域動くんです」

 

 

「はぁ?」

 

 

「だから、動くんですよこの海域

少しずつとか一気に動いたりとか一ヶ月にほんの少しとか動いてるんですよ

端を通るだけなら特に何の問題も無いですし、入らなければ無害の海域なんです

ですが、この海域を突っ切ろうとすると駄目なんです」

 

 

「何で?」

 

 

「『霧に喰われる』と言われて居ます」

 

 

「はぁ?霧が人を喰うのか?」

 

 

「はい、話によればこの海を通ろうとすると最後二度と外には出れないそうです

霧の中に何かが居るのか、それとも深海棲艦の亡霊か艦娘の亡霊があの世に連れていくだとか何とか言われてます」

 

 

「はぁ意味わかんね、だが知識には入れとくか

んでこれがなんなんだ?」

 

 

「ここ最近ではここでしか戦闘記録がありません」

 

 

「だが、親方さんは戦った形跡は無かったらしいぞ

艤装には」

 

 

「では違いますか……」

 

 

佐渡は渡された資料を見ていくと、襲われたのは横須賀行きの商船

護送していたのはアメリカの鎮守府所属

アイオワ

リットリオ

リベッチオ

ジャービス

マエストラーレ

ガンビア

以上であり、彼女達は一人残らず轟沈しており商船も行方不明だがその積み荷に重要な物が有り捜索をしようか検討中と記載されていた

 

 

「ん?アイオワ?

あれこれって……」

 

 

「はい……私の元仲間です…

非常に残念です…」

 

 

大井は悲しそうに顔を俯かせており、佐渡は優しく頭を撫でる

 

 

「にしても、一艦隊を沈めて更に商船すら行方不明って何だよ……

そんなにヤバイのが居るのかここには」

 

 

「はい……しかもアイオワさんは戦艦でしたし、かなり強かったはずなのに……」

 

 

「だが、今はそんなこと考えている場合じゃない

すまないが大井、お前海外艦の空母って知らないか?」

 

 

「海外の空母ですか……?」

 

 

「あぁ、親方が艤装から彼女は空母だと判明したんだ

だから知らないか?」

 

 

大井は悩んでいるが、分からずに電話を取り出す

 

 

「ちょっと北上さんに聞いてみます

あの人の方が知ってるはずですから

あともう少し調べてみます」

 

 

「すまん、頼む

俺も大淀さんにかけてみるよ」

 

 

佐渡と大井は別れ、佐渡は工厰前に居ながら大淀に電話を掛けると少しコールがあったが電話に出てくれる

 

 

 

 




次回

存在しない者

次回、彼女が誰か判明します!
皆さんは分かりましたでしょうか?



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正体不明の艦娘 四

『はい、もしもし大淀です』

 

 

「お、大淀さん今お時間よろしいですか?」

 

 

『えぇ、構いませんよ?

どうかされましたか?』

 

 

「ちょっと聞きたいことがありまして……」

 

 

佐渡は今までの経緯を話すと大淀はうんうんと頷きながら聞いている

 

 

『成る程……正体不明の艦娘ですか…』

 

 

「えぇ、今朝うちに流されてきましてそちらに何か連絡は無いですか?」

 

 

『こちらには、特には……

あ、でもそう言えば濃霧の海域が戦闘が有りその際積み荷が《逃げた》って話なら聞きましたけど…』

 

 

「はい?逃げた?何か生き物でも運んでいたんですか?」

 

 

『はい……元帥がその様な事を他の大将達から聞いたと言われておりまして捜索隊を出そうか今話し合ってるところです』

 

 

「そんなに重要な生き物何ですか?」

 

 

『えぇ、何でも村山元帥がペットとして飼いたいらしくしかもかなり珍しい生き物だそうなんですよ』

 

 

その会話に嫌な予感がしたが大淀の方から元帥の声が聞こえてくる

 

 

『あ、ごめんなさい、佐渡提督

元帥に呼ばれてしまって……』

 

 

「あぁ、いえ大丈夫ですよ

ありがとうございました」

 

 

佐渡は電話を切ると大した情報が手に入れられずに溜め息を付くが目の前から大井が走ってき佐渡の前で止まると急いでいたらしく肩で息をしている

 

 

「どした、大井?」

 

 

「分かりました!!彼女の正体が!!」

 

 

「本当か!!誰なんだ、あの娘は!?」

 

 

大井は深呼吸をすると息を整えるとふぅと溜め息をつきながら佐渡を見る

 

 

「彼女の名前は Graf(グラーフ) Zeppelin(ツェッペリン)級 一番艦  Graf(グラーフ) Zeppelin(ツェッペリン)ドイツの正規空母です!!」

 

 

「はぁ!ドイツの正規空母!?

何でそんなのがうちに流されてんだよ!!」

 

 

「知りませんよ!!私も驚いてるんですから!!」

 

 

「だが、良くやった!!」

 

 

「あぁ!もう撫でないでください!はい、これ資料です!」

 

 

佐渡は大井から資料を貰うとそれに目を通しながら大井を撫でている

 

 

「間違いないな、彼女だ

だが……何で未建造艦何だ」

 

 

その資料の最後に未建造と書かれており、疑問を覚える

 

 

「分かりません

と言うか、そのせいで私調べられなかったんですよぉ!

偶然見付けたから良かったですが……」

 

 

「そっくりさんとか?」

 

 

「それはあり得ません!

艤装はその艦娘にしか使えませんから、普通の人間に使えるわけありませんから……」

 

 

佐渡は、今まで聞いた話と状況で最悪の答えに達してしまう

 

 

「…………大井、今すぐ古鷹に言って彼女を隠せ」

 

 

「え、何でですか?」

 

 

「良いから急げ!!間に合わなくなる!!」

 

 

「提督ー?ちょっとよろしいデースか?」

 

 

工厰の扉が開き金剛と親方が顔を出す

 

 

「なぁ、提督。

何で艤装から発信器が出てくるんだ?

こんなの今時の奴は付けてるのか?」

 

 

その発言に、佐渡の考えは確信に変わる

 

 

「親方!!急いでそれを戻して!!

後艤装の修復を急いで!」

 

 

「え?あ?どうした?提督」

 

 

「早く!!」

 

 

「へ、へい!!!」

 

 

親方は金剛の肩から飛び降り全速力で、工厰の中に走っていくと携帯が鳴り出し電話に出る

 

 

「はい、もしもし」

 

 

『佐渡提督!彼女は間違いなくそちらに要るんですよね!?』

 

 

「えぇ、居ますよ

その慌て振りなら、やはり俺の予想は当たりですか……」

 

 

『村山元帥がそちらに向かってますが!!』

 

 

 

佐渡は溜め息を付きながらも頭をかきはじめる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『彼女を渡さないでください!!!

村山元帥は!!』

 

 

「グラーフを買ったんですよね

ドイツから娼婦艦として…

わざわざ、未建造と偽ってまで…」

 

 

 

そう、彼女はその積み荷そして

自らのペット、玩具として

 

 

 





次回

艦の売買

人身売買改め艦の売買です
いやぁ、黒いですねぇ(他人事、)



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存在しない艦娘

「どうも、佐渡大尉

私は村山元帥だ初めまして」

 

 

「初めまして、村山元帥

遠路遥々ご苦労様でした」

 

 

村山元帥が来たのは電話の後十分程で来ており、急いで服を直し迎えていた

隣には叢雲とイムヤ、金剛が敬礼しており、村山元帥の側には何人かの黒服そして船の周りには艦娘が待機していた

 

 

「いや、楽にしてくれ

私は探し人が居たと言う報告を受けてここまで来させて頂いたのだよ

それにいきなり来られても迷惑だったろうに」

 

 

「いえ!全くその様な事はございません!

して、何の御用でしょうか?

こんな危険な島に?」

 

 

「ふむ、実はね

昨日着任予定だった艦娘 グラーフツェッペリンがこちらに流れ着いたと聞いてね

彼女を護送する艦隊が『間違って濃霧の海域に入ったらしくてねその後何とか逃げ延びたと聞いてね』

是非とも私自ら迎えに来たのだよ」

 

 

「左様でしたか!それはそれはさぞ元帥自ら迎えに来るとはさぞ美しく可憐な艦娘なのでしょう

その艦娘も喜ぶことでしょう

ですが、その様な艦娘はこちらに流れ着いて居ません

艤装らしいものでしたら流れ着いておりますが

金剛」

 

 

「はい、こちらになります」

 

 

金剛は敬礼をとき足下に置いてあった艤装を村山に見せる

 

 

「ふむ…?これだけかい?」

 

 

「はい、今朝叢雲が流れ着いたのを確認しておりまして先程少し妖精達が軽く弄りましたが特に目立った外傷は無いみたいです」

 

 

「そうか」

 

 

ここで引き下がってくれることを佐渡達は願っていたが当然そんなわけがなく

 

 

「だが、すまないね

私は用心深くてね

あり得ないとは思うけど君の鎮守府を調査させてもらうよ」

 

 

その言葉を聞いた金剛とイムヤはピクッと動くが佐渡は微笑みながら

 

 

「どうぞ、ですがその際は私が同行させて頂きますね

艦娘達の部屋などは遠慮していただくと嬉しいのですが」

 

 

「そうだな、艦娘達の部屋はこちらの女性にお願いしよう

それ以外は、他の者達にやらせよう

行け」

 

 

村山が指示をすると黒服達は動きだし、小笠原鎮守府へと入っていきその後ろを佐渡が着いていくが村山が佐渡の肩を触り

 

 

「佐渡大尉、君の将来の為にも話した方が身のためだよ?」

 

 

「はて?何の事ですか?私はグラーフツェッペリンなんて方は見ていませんよ?」

 

 

佐渡は微笑みながら答えると村山は「そうか」と呟き共に歩いていく

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく、鎮守府は黒服達の捜索が入り近辺の街(壊滅はしたまま)ではあるが捜索が入るが見付からない

そして、鎮守府で唯一探されてない部屋の前に集結する

 

 

「ここだけですね」

 

 

「鍵は空いてますのでどうぞ、ご自由に」

 

 

あくまで余裕の表情をしており、部屋に入るとそこには

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「え?どちら様ですか?」

 

 

「あ、古鷹さん!!この人海軍の方ですよ!!」

 

 

中には古鷹と大井が本を読んでおり、急いで敬礼をする

 

 

「いや、楽にしていてくれたまえ

だが少しこの部屋を捜索させてもらうよ」

 

 

黒服達は部屋を隅々まで探すが、どこにもグラーフの姿は見えない

押し入れ、戸棚、ベッド、ロッカーの至るところを詳しく調べても一切見付からない

 

 

「駄目です、元帥

ここには何もありません」

 

 

「そうか、失礼したね二人とも」

 

 

「いえ!お出迎えをしなくて誠に申し訳ありません!」

 

 

「では、失礼するよ」  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまないね、本当に艤装だけだったみたいだね

その艤装は今回君を困らせたお詫びとして受け取りたまえ」

 

「よろしいのですか?こんな上等な物を……」

 

 

「何構わないさ、彼女は居ない

濃霧の海域に沈んだんだろう……」

 

 

防波堤にて、佐渡達は村山を見送るために集まっており今回は古鷹も大井も居るため勢揃いである

 

 

「では、私達は失礼するよ

君も頑張りたまえよ」

 

 

「はい!ありがとうございます!!」 

 

 

村山は、船に乗り込むとその後ろから黒服達も乗り込み小笠原を後にし水平線に見えなくなると全員鎮守府に戻っていく

 

 




次回

彼女はどこ?

かくれんぼ成功でしたね……
え?グラーフがどこ行ったか?鎮守府に居ますよ?ちゃんとね



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存在しない艦娘 二

「佐渡提督!?」

 

 

突然、提督室の扉が開かれるとそこには大井、叢雲、金剛、イムヤ、佐渡がおり金剛とイムヤが佐渡に詰め寄っている

 

 

「あれ?大淀さんどしたのって!!どうやって来たのさ!?こんなところまで!!」

 

 

「そんなの後でも良いでしょう!?彼女は!!グラーフさんは!?」

 

 

「そうですよ!!提督ー!!グラーフさんはどこよ!?」

 

 

「司令官!そろそろふざけてないで教えてよ!!」

 

 

大淀さんが来たことを佐渡は驚きながらも、質問を返す

 

 

「ねぇ、大淀さん

貴女が来たとき何かすれ違いませんでした?」

 

 

「え!あ、あぁ……確かに幾つかの船とすれ違いましたが……」

 

 

「ほれみろ、何となくそんな気はしてたんだよ

んで今大淀さん一人?」

 

 

「は、はい!他の船などは全く居ませんでしたよ!」

 

 

「そうかい、それに大淀さんが来てくれたなら良しとするか」

 

 

佐渡は立ち上がると、提督室を出ていこうとする

 

 

「ほらこいよ、会わせてやるからさ」

 

 

「え!ちょっと佐渡提督!?」

 

 

「提督ー!?待ってヨー!」

 

 

「待ってよ!司令官!!」

 

 

佐渡の後をゾロゾロと付いていくとあることに全員は気付く

 

 

「そう言えば、古鷹さんは?」

 

 

「あれ?見てませんね?」

 

 

「古鷹なら、今彼女の世話してるわよ」

 

 

「「「え?」」」

 

 

「ほら着いたぞ」

 

 

佐渡が歩みを止めるとそこは一階のある廊下である

そして、部屋と部屋の間の壁に向かって言っている

 

 

「……あの佐渡提督?ここは廊下ですよね?隣の部屋ですか?」

 

 

「いんや、ここで合ってるよ?」

 

 

「いやいや、提督ー?ここは廊下だよー?

どこにも部屋なんて……」

 

 

「あ、そっかあんた達は知らないか

ここで合ってるわよ」

 

 

「嫌でも、隠し扉とか何にもないよ?」

 

 

イムヤと金剛は廊下の壁を触りながら確認するがそんなのは一切無い

 

 

「まぁ、ここは俺と叢雲と古鷹位しか知らないよな

さっき大井も初めて知ったんだろ?」

 

 

「えぇ……流石に驚きましたけどね……」

 

 

「なぁ、お前達気付かないか?この両隣の部屋

壁がこの空間から作られてるのに」

 

 

「「え?」」

 

 

イムヤと金剛は両隣の部屋を見ると、確かにその壁は少し横幅が広く部屋の壁もそこから隔てられおり、その間は確かに少しだけ他の場所より広い

佐渡は壁を叩くと大声で古鷹を呼ぶ

 

 

「おーい、古鷹。そろそろ出てこいー?

奴等はどっか行ったぞー?」

 

 

だが、全く返答がなく溜め息をつくと叢雲がニヤニヤと笑いながら横腹をつつくと

 

 

「あー!我が天使古鷹!!いや古鷹エル様!!

どうかこの変態でろくでもないクソ提督にお慈悲をぉ!!

私は貴女を愛しております!だからどうかどうか!!私にお姿を……」

 

 

「あぁぁぁぁ!!!もう!!提督!!この合言葉辞めましょうよ!!

恥ずかしいですよぉぉ!!」

 

 

「「「!?!?!?!?!?」」」

 

 

 

すると廊下の隙間からドアが現れ中から古鷹が勢い良く飛び出してくると三人は驚きながらも唖然としている

 

 

「よ、古鷹相変わらず可愛いな」

 

 

「もう!!提督の馬鹿!」

 

 

古鷹が出てきた場所は狭い空間になってはいるが、部屋がありベッドが四つだけありその一つにグラーフが寝ている

 

 

「ほらな?あるだろ?」

 

 

三人はしばらく唖然としているが、佐渡はグラーフを抱えあげると歩き始める

 

 

「ほら、いつまで呆けてるんだ行くぞ」

 

 

「あ、ちょっと待ってください!!」

 

 

 

 




次回

ドイツ空母 グラーフツェッペリン

んま、分かるわけないですよねぇ
隠し部屋の中に隠していたのです
因みに鎮守府の隠し部屋はここだけです



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存在しない艦娘 三

隠し部屋から移動し、再び提督室に戻ってくると佐渡はグラーフをソファに寝かせ自分は部屋の椅子に腰掛けると飲み物を飲み始めると古鷹達も各々座り一息つく

 

 

「とりあえず、佐渡提督ありがとうございました

彼女を匿って頂き」

 

 

「なぁに、これぐらい構わんさ

それよりも聞きたいんだ良いか?」

 

 

「はい、彼女の事ですよね」

 

 

大淀は眼鏡を上げると今回の事の経緯を詳しく話し始める

 

 

「彼女の名前は、ドイツの正規空母 Graf(グラーフ) Zeppelin(ツェッペリン)

正真正銘の艦娘です」

 

 

「ほう?やはりか、じゃあ何でこんなことになってるんだ?」

 

 

「それが、海外の海軍上層部と日本海軍上層部はお互いに何人か新しく建造する艦娘を交換すると言う行為を秘密裏に行っていたんです

しかも、艤装は与えるが基本的には私利私欲の為娼婦艦としての扱いだそうです

つい先程それが旗風と言う駆逐艦娘の密告により判明しました

彼女もその交換された方でして

どうやら貿易の際積み荷の一つとして運ばれており、名目上はドイツに着任とされていた見たいです」

 

 

「はぁーん、やるねぇ。

じゃあ旗風さんはドイツに?」

 

 

「いえ、彼女は三日前に保護されて今日本に居まして今朝目を覚ましました」

 

 

「え?何で?海軍にバレたの?」

 

 

「いえ……提督殺しに情報が漏れ倉庫に荷物を運んだ時に盗み出されたそうなんです

そして、購入したドイツのある男も焼身遺体として発見されました」

 

 

「わーお、やるねぇ提督殺し」

 

 

「佐渡提督、誉めないでください。

奴は連続殺人鬼ですよ」

 

 

「すまん、んで続けて」

 

 

大淀は佐渡を怒ると眼鏡をかけ直し再び続ける

 

 

「この交換事態は、艦娘保護法に引っ掛からないため取引を行っていた者達を憲兵に付き出すことが出来ず、現在元帥がその証拠を確保するために動いておりまして……」

 

 

「成る程、彼女をその間うちで匿ってほしいと?」

 

 

「はい、最低でも二日はかかりますのでどうかその間彼女をどの海軍の方が来ても引き渡さないで欲しいのです

幸い旗風さんが目覚めた事により、他のトレードされた艦娘達の居場所は判明しています

それが戦力としてではなく、自分の所有物と使われていれば村山元帥も海外の元帥も捕まえることが出来るんです

お願いします!!佐渡提督!貴方位しか頼れる方が居ないんです!!この島こそ彼女を匿うには最適何です!!」

 

 

「んー、俺は一向に構わないが……」

 

 

佐渡はチラッと他の全員を見ると

 

 

「私は構いませんよ

男なんかに渡すわけないじゃないですか

貴方見たいにそこそこまともな提督ならまだしも」

 

 

「私も意義無しデース!」

 

 

「構わないわ!!

彼女を助けたいもの!!」

 

 

「私も特には無いですよ?

それに人が増えるのは楽しいですから!」

 

 

「司令官に従うわ

それに助けたいしね」

 

 

各々特に反論は無く佐渡は頷くと大淀に向き直る

 

 

「全員反論無しなので良いですよ

彼女を預かりましょう」

 

 

「皆さん……ありがとうございます!!」

 

 

大淀は頭を下げるとソファで寝ていたグラーフが「んん……」の声を上げ静かに起きる

 

 

 

 

 

 





次回

小笠原鎮守府にようこそ!!

次からグラーフさん参加です!
今回は海軍から彼女を守るのがミッションになります!


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存在しない艦娘 四

「ここは……どこだ…?」

 

 

「グラーフさん!お目覚めですか!?」

 

 

「良かった、目が覚めましたか」

 

 

大淀は目が覚めたグラーフに駆け寄り抱き締めると古鷹も微笑みながら目が覚めたことを喜ぶ

当然現れた大淀に抱き締められたことに驚きながらも周りを見ると多くの艦娘がおり困惑する

 

 

「……すまない、私は…何故こんなところに…

確か先程まで船の倉庫に…」

 

 

「お、目覚めたみたいだなグラーフ ツェッペリンさんや?」

 

 

佐渡が微笑みながら声をかけるとそちらに向き直ると急いで立ち上がろうとするがそれを大淀が止める

 

 

「駄目です!グラーフさん!!貴女身体が……」

 

 

「大丈夫だ!すまない、挨拶をさせてくれ……」

 

 

大淀は、そう言われ放すとグラーフは立ち上がり佐渡の目の前に立つと敬礼をする

 

 

「初めまして、アトミラール。

私はGraf(グラーフ) Zeppelin(ツェッペリン)級一番艦Graf(グラーフ) Zeppelin(ツェッペリン)だよろしく頼む」

 

 

「おう、俺はこの小笠原鎮守府提督 佐渡 満だよろしくな」

 

 

「よろしく頼む、アトミラール」

 

 

佐渡は、手を差し出すとグラーフもその手を取り握手を交わすが

 

 

「あのだな、グラーフさんやそのアトミラールって俺のことか?」

 

 

「馬鹿ね、アトミラールってのはドイツ語で提督って意味よ」

 

 

「へー、成る程な?

って何で知ってるの叢雲さんや!?」

 

 

「決まってるでしょ、もしもグラーフが日本語話せなかった時様に覚えたのよ」

 

 

「いつの間に……」

 

 

流石の博識に佐渡は驚いているとグラーフの周りに大井達があつまり恒例の自己紹介をしており佐渡はのんびりとあくびをしている

 

 

「それよりも、アトミラール!私は何をすれば良い!

今は仕事の時間だろ!!私に出来ることはないのか!?」

 

 

その発言に、流石に驚き大井と顔を見合わせる

 

 

「いやぁ……その前にグラーフさんや?

君に話すことがあってね?

大淀さん、よろしく!!」

 

 

「はい、グラーフさんすみませんがお時間よろしいですか?」

 

 

「あ、あぁ……」

 

 

大淀はグラーフに今までの経緯を説明するとどんどん顔を曇らせ俯いていく

 

 

「……と言うことです」

 

 

「そう……なのか…やはり私は祖国に捨てられたのだな…」

 

 

「まぁ、落ち込むなグラーフ」

 

 

佐渡は、立ち上がりグラーフの側に行くと頭を撫でる

 

 

「それなら、これから頑張って祖国とやらを見返してやろうじゃねぇかよ!!」

 

 

「アトミラール……」

 

 

「そうですよ!ここでとは言いませんが!これから強くなれば良いんですよ!」

 

 

「そうネー!強くなってドイツに目にものみせてやりましょー!!」

 

 

佐渡が言うと大井達もグラーフを励ますと暗い表情から少しずつ明るくなっていく

 

 

「まぁ、あれだここでは二日間位だけだがよろしくな?グラーフ」

 

 

「あぁ!よろしく頼む!アトミラール!!」

 

 

 

 

 





次回

真面目なドイツ艦

海軍黒いですねぇ
絶対許早苗


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存在しない艦娘 五

「では、佐渡提督グラーフさんをよろしくお願い致します」

 

 

「おう、任せな

彼女は俺が守るさ」

 

 

「くれぐれもご注意を

何をしてくるのか分かりませんからね」

 

 

 

佐渡と大淀は話を終えると別れ、大淀は大本営へと帰っていき佐渡は頭をかきながらのんびりと戻っていく

 

 

「存在しない艦娘ねぇ……

全くお偉いさんの考えることは本当に良くわからねぇもんだな……」

 

 

のんびりと、鎮守府に戻り提督室の扉を開くとそこには大井とグラーフしか居なかった

 

 

「あら?他の奴等は?」

 

 

「皆さん、色々あるからってどこかにいきましたよ?」

 

 

「そっか」

 

 

「アトミラール!!!」

 

 

すると、グラーフが佐渡に詰め寄り顔を近付けてくる

 

 

「お、おぅ?どしたグラーフ?」

 

 

「ここでは!!出撃がないと言うのは本当か!?」

 

 

佐渡は、後ろにいる大井を見ると首を振っており何となく状況を察する

 

 

「あー、そうだよ?ここでは基本的に出撃はないよ」

 

 

「何故だ!!今、深海棲艦は進行を続けている!

なら我が鎮守府も出撃しないと……」

 

 

「わたー!」

 

 

「いたっ!」

 

 

そこまで、言うと佐渡はグラーフの頭にチョップを加えると頭を撫で隣を通り抜ける

 

 

「おいおい、真面目ちゃんだなおい

大井に似てるな!」

 

 

「私がしっかりしないとこの鎮守府駄目になると思うのですが?」

 

 

「それもそうだな!!アハハ!」

 

 

「アトミラール!!」

 

 

「まぁ、座れグラーフ」

 

 

佐渡は、ゆっくりとソファに座ると近くにあった煎餅を噛りながら指示をするとグラーフも対面に座ると大井は佐渡の隣に座る

 

 

「今の戦況は聞いたか?」

 

 

「あ、あぁ……かなり良くないのだろ?」

 

 

「まぁな、だが今無理に出撃するのは馬鹿なんだよ」

 

 

「な、何故だ!?」

 

 

佐渡はお茶をぐいっと飲み干し口の中をお茶で潤す

 

 

「考えても見ろ、現在深海棲艦は日に日に強くなっている

お前の運んでいた商船が通った霧の海域

昔あんなのは無かった

それこそ、歴戦種なんていなかったし、深海棲艦もそこまで強くなかったのさ

まぁ例外は居たみたいだけどな

ここは、どこぞの世界より深海棲艦が異常に強い

今出撃するのは愚策何だよ

それこそ、ただ無意味に艦娘を死なせるだけだ」

 

 

「だが!!」

 

 

「奴等は考える俺達と同じ思考がある

なら先に手を出させ俺達はそれに対策し確実に潰すのが一番だ

幸い奴等は強くはなっているがこちらの戦力を完全に把握してるわけではない」

 

 

「それでも!!海域を解放しなくては……」

 

 

佐渡は、反論するグラーフに溜め息を付きながら頭を撫でる

 

 

「そう焦るな

焦りはミスを油断を招く一番やってはいけない行為だ

どんなときでも余裕を持て」

 

 

撫でられているグラーフは、手を弾くと佐渡に向かい再び詰め寄る

 

 

「ならば!!『我々を犠牲』にすれば……」

 

 

「おい」

 

 

「っ!」

 

 

グラーフがその言葉を発した瞬間に一気に佐渡の態度が変わる

先程の穏やかな物ではない確実に殺意と怒りの籠った雰囲気になる

 

 

「口には気を付けろグラーフツェッペリン

二度とその言葉を言うな命令だ」

 

 

「だ、だが……我々は…軍人だ…

勝利…せねば…」

 

 

その真面目な答えに佐渡も雰囲気を戻し溜め息をつく

 

 

「真面目だねぇ…全く

少しは肩の力を抜けって」

 

 

「……すまない出過ぎた真似だとは思うのだが…」

 

 

「別に良いことだとは思うよ?

でもな俺もお前達を失いたくないんだよ

だって、聞いただろ?霧の海域の話」

 

 

「あぁ……私を護送した六人が轟沈したと」

 

 

「そんな海に普通行かせるか?

勘弁してくれ」

 

 

佐渡は落ち込んでいるグラーフを見ていながら考えているとあることを思いつく

 

 

「そうだ!!グラーフ! 

お前、秘書艦やれよ!」

 

 

「「え(は)?」」

 

 

大井とグラーフは、二人同時に佐渡を見る

 

 

「お前に、ここでの暮らしを教えてやる

だから、迎えが来るまで俺の秘書艦をやれ!!

良し!これで決まり!」

 

 

「待ってください提督それは私が許しません!」

 

 

「え?何で?」

 

 

「貴方!!私が居ないとサボるでしょうが!!」

 

 

グラーフの目の前で二人が喧嘩をしているが、一人考え事をしていた

(秘書艦……やってみたいな…)

 

 

「分かった!やろう!」

 

 

「お!マジで!やったぜ!」

 

 

「ちょっとぉ!!」

 

 

こうして、新任グラーフの秘書艦としての初の任務が始まる

 

 

 

 

 





次回

グラーフの秘書艦任務

次回からグラーフの秘書艦任務が始まります



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秘書艦任務

「グラーフ、そこの資料とって」

 

 

「分かった!」

 

 

「グラーフ、ここの文字間違ってるぞ

訂正頼む」

 

 

「む、すまない」

 

 

「グラーフ、大本営から何か伝達は?」

 

 

「今の所は……いや一つあるこれだ」

 

 

「ありがと」

 

 

次の日、グラーフの秘書艦任務が始まった

基本的には書類整理と大本営からの伝達を受けとる等ばかりだがこれでもかなり数がある

(ぬ、中々キツいな…)

流石のグラーフも疲れが見え佐渡がペンを置く

 

 

「0800、少し休憩するか」

 

 

「あ、す、すまないアトミラール……」

 

 

「なぁに、初めてにしては筋良いぞ?

珈琲で良いか?」

 

 

「頼む…」

 

 

パソコンと資料を交互に見てたりで目が疲れてしまい目頭を押さえ痛みに耐えていた

 

 

「どうだ?仕事はキツイだろ」

 

 

「……これしき、どうってことないさ!」

 

 

グラーフは強気で言うが、やはり目は疲れているためか眼をしばしばさせている

 

 

「グラーフ、メモを取れ

今日の日程を言う」

 

 

「わ、分かった」

 

 

グラーフは、大井から預かっている日付のメモ帳を取り出すとペンを取り書こうとする

 

 

「今日だけは少し真面目に仕事するからな

0900に資材庫で備蓄資材の確認

1000に工厰にて親方さんと艤装チェック

1100に古鷹とイムヤの手伝い

1200に昼食

1400に金剛と叢雲の演習立会人

1500に資料整理

1700に各部屋機材等の点検

1800に晩飯

2000で仕事終わりだ、メモできたか?」

 

 

「う、うむ!大丈夫だ!」

 

 

「良し!んじゃ!!

一息つくかぁ~」

 

 

佐渡は思い切りのんびりとソファに仰向けになりながら転がるとグラーフも正面に座る

 

 

「アトミラール、制服にシワが付くぞ?」

 

 

「ついたらアイロンで伸ばせばいいのさ」

 

 

グラーフは溜め息混じりに言うと、佐渡はその姿を横目で見る

 

 

「なぁ、グラーフ」

 

 

「何だ、アトミラール」

 

 

「お前は何で、あんなことを言ったんだ?」

 

 

「あんなこととは?」

 

 

「だから、我々を犠牲にすればってさ」

 

 

そう言われると、グラーフは固まる

佐渡に怒られたのが少し効いており恐る恐る言い始める

 

 

「……お前達をアトミラールは私達を兵器だと思ってるのだろう?

なら、我々も割りきらなくてならない……

いや割りきった方が良いのだ…

それの方が兵器としては楽だからな…」

 

 

「ふーん?」

 

 

「だ、だから!!アトミラールも私の事は兵器だと思ってくれ!!

私は貴方の指示に従う!危険な海でも行かせても構わない!!使いやすい兵器として扱ってくれ頼む!!でないと……」

 

 

グラーフはそこまで言うと目に涙を溜めており何度もそれを袖で拭い俯いている

 

 

「………戦えなくなるんだ…

恐いんだ……

あれを見てから……」 

 

 

「…見たのか?霧の海域で何かを」

 

 

「……あぁ、倉庫の中で頭を打ち付けたが入ってきた海水を浴びてな…

目の前で人が殺されていく様を見ているしか無かった…

霧のお陰が幸いしてか奴は私に気付いていなくてな……」

  

 

「相手は分かるか?」

 

 

グラーフは頭を左右に振るうと「そうか」と佐渡はグラーフの頭を撫でる

 

 

「だが、断る

お前を兵器のように扱わない俺は」

 

 

「何故だ……」

 

 

「え?だって、グラーフ人間だし?女の子だし?」

 

 

「……え?」

 

 

佐渡はグラーフの顔を持ち上げるとにかっと笑いながら答える

 

 

「考えてもみろ、兵器は泣かない、笑わない、恐怖しない、こうやって悩まない、話さない

お前達は立派な人間だ、それよりか人間より人間らしい

そして、俺はそんなお前達を陸上で守ってやる

どんな奴等からもな

二日間だけかもしれないが信じろ俺を

決して俺はお前を見捨てない、裏切らない」

 

 

真っ直ぐにグラーフを見ると涙で眼を赤くしており、佐渡はポケットからハンカチを取り出しながら涙を吹いていく

 

 

「さーてと、そんじゃうちの一日を体験してもらうぞ?

グラーフ ツェッペリン

普通の鎮守府とは違うところを見せてやる」

 

 

佐渡は立ち上がり、グラーフの頭を撫でながら歩いていく

その後ろを涙を拭きながら着いていく

 

 

「さてと、そんじゃ始めますか!」

 

 

 





次回

空母の艤装とは?

ちょっとしんみりさせましたが、実はグラーフは霧の海域でそのレレレを見てはおらずその影を見ていたに過ぎません



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秘書艦任務 二

「アトミラール、ここが工厰か?」

 

 

「あぁ、お前の艤装はここにあるんだ」

 

 

佐渡とグラーフは二人で工厰に来ており、扉を開くと親方がグラーフの艤装を弄っていた

 

 

「親方さん、やっほー」

 

 

「お、提督来たのか

それと親方さんはそろそろ辞めてくれ

親方で良いさ」

 

 

親方は真っ黒になりながらも艤装を弄っていると隣に見慣れない艦娘を見ていると艤装に向き直る

 

 

「この娘か、この艤装の持ち主は」

 

 

「えぇ、ドイツの正規空母、グラーフツェッペリンさんです

グラーフ、この人はここの工厰の管理人親方さんだ」

 

 

「は、初めまして!グラーフツェッペリンです

よろしく頼む!」

 

 

「おう、よろしくなグラーフちゃん

所で、提督発信器は外したんだがもう少し弄っても良いか?

ドイツの艤装なんてあんまり弄れないから新鮮でな」

 

 

「えぇ、それに関しては別に大丈夫ですよ

グラーフ、良いか?」

 

 

「あぁ、構わない

どうせここでは出撃が少ないのだろ?」

 

 

「皮肉かな?まぁ、そうだな

グラーフ、ちょっと待ってな

俺は他の妖精に用があるからな」

 

 

「分かった」

 

 

佐渡はそう言うと、工厰の奥へと歩いていくとグラーフと親方の二人になってしまう

 

 

「なぁ、グラーフちゃん

話は聞いたよ」

 

 

「っ!な、何の話だ?」

 

 

「んー?あんた、霧の海域から流れてこれた艦娘何だろ?

霧の海域は俺も知ってるがあそこは本当ヤバイからな

良くあそこから生還出来たもんだな」

 

 

グラーフはそちらの事かと安堵の溜め息をつくがやけに霧の海域について親方が驚かすので聞いてみたくなる

 

 

「何だ、そんなに凄いのか私は」

 

 

「あぁ、ぶっちゃけあり得ないほどにな

あそこは不還の海と呼ばれ入れば最後誰も出てこれない

前の提督が言ってたが、連合艦隊で行っても全員壊滅したって話を聞いたからなあそこは

正に艦娘の墓場だよ」

 

 

「何だと……私はそんなところから?」

 

 

「そうだぜ、あそこから出てこれたものは居ない

だからこそ大本営もどうすれば良いのか分からないらしい

あそこで、海外艦のビスマルク、ウォースパイト、プリンツオイゲンも沈んだって話を聞いたな

 

 

「え……ビスマルクとプリンツも…?」

 

 

「前の提督曰くだかな、危険海域、誰も通っては行けない、当時は『死にたい艦が行く場所』とさえ呼ばれていた

そこから帰還したんだあんたはすげぇよ」

 

 

ビスマルク、プリンツオイゲンその名前を聞くと身体が震えるグラーフと同じドイツが誇る艦にして戦艦と重巡それが沈められたと言うのだからあれはそれほどに強いのだろう

 

 

「……だが、彼女達も本望だろう

海の上で再び死ぬことができて…」

 

 

「そんなわけないだろ

と言うより、死なせたのは間接的に俺達が原因だ」

 

 

「…え?」

 

 

親方は艤装弄りを止めグラーフに向き直ると真っ直ぐに見ている

 

 

「海の上で死ぬのが再び死ぬのが本望?馬鹿言うな

それは俺達が整備している艤装がその娘達を守れなかったと言うことだ

悲しいさ、だから俺はどんなときでも整備を辞めない

死んでほしくないから、また無事に帰ってきてくれる事を願ってな

お前達がどんな扱いを受けているのは知ってる

前の提督がそうだったからな

何か悩みがあるなら言え聞いてやることは出来る

だから、死なないでまた無事にここに帰ってきて艤装を見せてくれ

完璧に直して、お前達が戦果を上げるのを楽しみにしてるんだからな」

 

 

親方が真面目に話すと、再び艤装を弄り始めグラーフは黙ってしまう

 

 

「ここは、確かに出撃は少ない

あいつは戦うのが嫌いだからな

だか、やるときはやる男だ

それに」

 

 

「……何だ?」

 

 

「俺は、お前達が戦果を上げても欲しいけどな

お前達と共に平和に生きていく方が楽しいよ

ここではそれが出来るようになった俺はそれが嬉しいのさ

あいつに感謝すらしてる」

 

 

「そう……か…」

 

 

グラーフは再び黙ってしまうと佐渡が奥から戻ってくる

 

 

「グラーフお待たせ~ってどしたの?」

 

 

「いや、何でもない……」

 

 

「ちょっと親方ー?何か言ったのー?」

 

 

「おいおい、提督俺は大したことは言ってねぇぞ?

勘弁してくれよ」

 

 

「ま、いっか

親方、艤装弄りも程ほどにね?」

 

 

「あいよー」

 

 

 

「時間か」と佐渡はつぶやくと時計を見るとグラーフを連れて工厰を後にする

 

 

 

 

 

 





次回

古鷹達と家事手伝い

今回少し親方が真面目に話してましたねぇ
親方さんもここで何人もの艦娘を見送ってますからね



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秘書艦任務 三

「アトミラール、次は家事の手伝い……か?」

 

 

「おう、古鷹達に応援を頼まれていてな」

 

 

佐渡とグラーフは、のんびりと廊下を歩いていると前からイムヤが歩いてくる

 

 

「お?イムヤ、どうした?」

 

 

「あれ?司令官とグラーフさん

ちょっと洗剤が足りなくて取りに行くの

古鷹さんが今やってるから手伝ってあげて」

 

 

「ほいほい」

 

 

そう言うと佐渡達の隣を抜けて歩いていく

 

 

「なぁ、アトミラール

古鷹達は何を掃除してるんだ?」

 

 

「んー?時期に分かるさ

そう言えば、今日は大掃除か」

 

 

佐渡は呟くと食堂にたどり着くと廊下に椅子やら机やらが置いてあり扉を開けるとそこでは古鷹が机を使いながら壁の掃除をしていた

 

 

「あ、提督!グラーフさん!来てくれたんですね!」

 

 

「おう、古鷹精が出るな

手伝いに来たぞ」

 

 

「応援に来たぞ、古鷹」

 

 

古鷹は、椅子から降りると佐渡達に近付いていくと今日の掃除内容を伝えていく

 

 

「では、提督とグラーフさんは厨房を

私達はこちらをやりますね」

 

 

「おう、任せときな」

 

 

「分かった任せろ」

 

 

佐渡とグラーフは、お互い別々の場所を掃除しているとイムヤが戻ってきて洗剤を手渡せる

 

 

「なぁ、アトミラール」

 

 

「んー?」

 

 

「いつもやってるのか?こんなことを?」

 

 

「んー、いつもじゃないけど時々な

出撃だけが仕事ではないからなここでは

嫌か?」

 

 

「いや……悪くはない」

 

 

しばらく、四人で掃除をしており終わらせると外に出していた家具などをしまいそれぞれテーブルに座っており佐渡は厨房で何か作っているようだ

 

 

「ふぃー疲れた~」

 

 

「お疲れ様です、イムヤさんグラーフさん

珈琲と紅茶どっちにしますか?」

 

 

「あ、私紅茶で!」

 

 

「私は珈琲で」

 

 

「はい、分かりました」

 

 

古鷹は立ち上がり馴れた手つきで珈琲と紅茶を入れると二人に差し出し三人で一息つく

するとグラーフが二人に話しかける

 

 

「二人は」

 

 

「ん?」

 

 

「はい?」

 

 

「ここでの生活をどう思う?

艦娘として兵器として」

 

 

二人は顔を見合わせるとイムヤから答える

 

 

「そうね、ここでの生活は少しどうかとは思うわよ?

出撃無いし戦争してるのこれ?って程に平和だし

仕事なんて家事位だしね」

 

 

「だったら!」

 

 

「でもね、悪くないのここの生活は

ここにいるとね、私達は兵器としではなく人間と勘違いするかもしれないけどそれでも良いの

私の元居た所は確かに私を『使っていた』

でもここではね『共に生活する』と言うことを教えられたの……

だから、私はここに居たいかな

他では経験できないと思う」

 

 

イムヤに言われるとグラーフは俯き古鷹が次を言い始める

 

 

「確かにここでは出撃はありません

仕事もこれぐらいです

でも、提督は共に生活し暮らしていける鎮守府を作ってくれているんです

その気になればいくらでもこの鎮守府を変えられるのに

提督は、佐渡さんは『私達の為の平和な鎮守府』を実現してくれているんですよ」

 

 

「そう言えば、私気になって居たんだけど、古鷹さんはーー」

 

 

「お前ら~何話してんだー?俺も混ぜろー!」

 

 

イムヤが、話す途中で佐渡が厨房から出てくると大皿を一枚持って出てきている

 

 

「司令官!それなに!?」

 

 

「んー?これか、実は今朝取れたカボチャが料理で余ってな

何となくケーキにしてみたんだけど」

 

 

「美味しそうですね!」

 

 

佐渡は、カボチャのケーキをテーブルに置くとナイフで綺麗に切り分けていくと古鷹が戸棚から取り皿を取り出していく

 

 

「ほい、グラーフ

カボチャは嫌いか」

 

 

「あ、いや、頂く」

 

 

「ほいよ」

 

 

佐渡からカボチャのケーキを渡されるとそれぞれ行き渡り皆で食べていく

 

 

「と言うかイムヤ、お前大丈夫なのか?

そんなに食べて?このあと昼飯だぞ?」

 

 

「ケーキは別腹よ?それに前よりは食べれるようになったしね!!

これも古鷹さんと司令官のおかげね!」

 

 

その言葉に違和感を覚えグラーフは佐渡に質問する

 

 

「ん?どう言うことだアトミラール?」

 

 

「ん?あー、えっと?」

 

 

イムヤを見るとケーキを加えており急いで飲み込むと話し始める

 

 

「実はね、私拒食症ってあんまり物が食べれなかったの

元居た鎮守府では全く食事を与えられなかったのよ

その癖毎日出撃と遠征と暴力の日々正直キツかったわ」

 

 

「な!何だそれは!!」

 

 

グラーフは怒りのあまり、机を叩くがイムヤは続けて言う

 

 

「その提督は殺されちゃって私はここに来たのよ

まぁ、正直に言うと問題を抱えた艦娘だったの」

 

 

「酷いな……そのアトミラールは…」

 

 

グラーフが同情するようにイムヤを見るがイムヤは気にせず

 

 

「でもね、佐渡司令官がそれを変えてくれたの

だから、私はここが好きこの鎮守府為に何かしたいのよ!

ありがとうね!佐渡司令官!」

 

 

「よせよ、俺は当然の事をしたまでだ

それに変わったのはお前で俺は大したことはしてねぇよ」

 

 

「もう!照れちゃって~!」

 

 

イムヤに言われたことが驚いているがそれよりも驚いてるのはそんなことがあったのに明るいイムヤである

普通ならそんな艦娘は解体するべきなのに彼女はそんな雰囲気も出さずに明るくなっていることに正直驚きを隠せない

 

 

「分かりますよ、時期に貴方も提督の事が」

 

 

不意にそう古鷹に言われ振り返ると、古鷹が微笑みながらケーキを頬張っている

佐渡を見るとイムヤと談笑しているのを見るとこの人がどんな人なのか少し興味が湧いたグラーフだった

 

 

 





次回

金剛VS叢雲

次のお話は少し戦闘シーンが含まれます
お許しを!!


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秘書艦任務 四

「HEY!今日こそ決着をつけてあげマース!!!

叢雲ー!!!」

 

 

「はいはい、どうせ負けるのはあんたよ

金剛」

 

 

「チッチッ!!今回のmeを侮って貰ったら困りマース!!」

 

 

現在、防波堤の近くで金剛と叢雲は艤装を展開しながら向き合い戦闘体制になっており佐渡とグラーフはその審判役として付き合っていた

 

 

「お前ら~早く始めろ~」

 

 

「なぁ、アトミラール」

 

 

「何だ?」

 

 

グラーフも佐渡の隣座りながら金剛と叢雲の資料を見ていた

 

 

「この戦績可笑しくないか?

何故叢雲が28戦28勝0敗で

金剛が28戦0勝28敗なんだ?

駆逐艦と戦艦なのだろ?どう考えても金剛の方が……」

 

 

「いんや、合ってるよ

うちの最強の駆逐艦だからなあいつは

良く見とけ、あれが俺の育てた『相棒(バディ)』だ」

 

 

佐渡は開始の空砲を空に撃つと金剛が動き出す

 

 

「先手必勝ネ!!fire!!」

 

 

金剛は主砲を叢雲に撃つが、叢雲は軽くそれを避けると後ろに跳躍すると同時に片腕を水に静かに付けると

 

 

「雷撃、一番と二番発射」

 

 

と、呟くと金剛が迫ってくるのを待っていると金剛が凄い勢いで迫ってくるが瞬時に動きを変え回り込んでくる

 

 

「叢雲の戦い方は分かってるネ!!持久戦になる前に早めに沈めてやりマース!!」

 

 

「ふーん?貴女に出来るかしら?」

 

 

「食らうデース!!」

 

 

金剛は主砲を叢雲に撃ちそれを叢雲が避けようとするが、空中で爆発し黒い煙幕が発生する

 

 

「お?金剛が珍しいな?黒煙弾(こくえんだん)かってそんなもん親方に作らせてたのかよ」

 

 

「これで視界を奪いました!!fire!!」

 

 

金剛は、次の瞬間一斉砲撃を叢雲が立っているであろう場所に撃ち込む水柱が上がり勝ち誇っている

 

 

「ふむ、流石戦艦だな

やはり金剛の方が強いではないか」

 

 

 

「はっはっは!!これで勝ちね!!」

 

 

 

「あんた、勝利を確信するのは早いんじゃない?」

 

 

 

だが、黒煙が晴れる前に叢雲がその黒煙から飛び出し勢い良く金剛に向かっていく

 

 

「なっ!!着弾したはずでは!?」

 

 

「んなわけあるか、叢雲があの程度で当たるほど馬鹿じゃねぇよ」

 

 

「まぁ、そうだと思ったデースよ!!fire!!」

 

 

金剛は主砲を叢雲に撃つが、走りながら華麗に避けていき金剛の懐に入り込むが金剛はニヤリと笑うと主砲の一本を叢雲の頭に当てる

 

 

「チェックメイトね!!」

 

 

「ばーか、まだまだね」

 

 

叢雲はそれを読んでいたのか瞬時に頭を横にずらすと主砲が艤装に当たり模擬弾の為爆発はしないがその代わり墨が飛び散りそれが金剛の目に入る

 

 

「ぎゃぁぁぁぁ!!!目がぁ!!!」

 

 

「あら、痛そうね案外それ」

 

 

叢雲はそのまま通り抜けると、背中の艤装を取り出し魚雷を金剛の足下に落とすと痛みに苦しむ金剛の足の間にプカプカと浮いている

 

 

「HEY!!叢雲!!痛いネ!!でも油断したね!!」

 

 

金剛は目を擦りながら叢雲に主砲を向けるが本人は溜め息を付くと足下の魚雷を指差す

 

 

「油断してないし撃ったのあんたでしょ、全くそれと貴女がチェックメイトよ」

 

 

「……へ?」

 

 

金剛は足元を見ると、プカプカと浮く魚雷と近くから迫ってくる魚雷に気付き青ざめる

 

 

「しまっ!!」

 

 

急いで避けようとするが、間に合うわけもなくそのまま魚雷が浮いている魚雷に当たり爆発し金剛を真っ黒に染め上げる

しばらくすると水柱が収まり真っ黒な墨だらけの金剛が見えてくる

 

 

「な、何……だと…」

 

 

 

「はい、叢雲の勝ち~」

 

 

「ほら負けた、だから言ってるでしょ?

あんたじゃまだ勝てないって」

 

 

「う~……真っ黒デース…」

 

 

グラーフは唖然としており、これが駆逐艦の動きかと言うほどの叢雲に驚愕しあれが本気でないことが良く理解できた

それと同時にこの艦娘が本気を出したときの事を考え生唾を飲み込んだ

 

 

 

 

 





次回

駆逐艦と戦艦

良くこの二人は演習をしているのですが練度の差で勝てないそうです……
まぁ、叢雲の方が長いですからね…



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秘書艦任務 五

「ぬぁー!!悔しいネー!!

何で勝てないんデースかー!!!」

 

 

「ばーか、あんたは分かりやすいのよ

顔にすぐ出るし」

 

 

「あはは!金剛言われてるぞ~」

 

 

「うー!!悔しいーー!!!」

 

 

現在金剛の艤装が真っ黒に染まった為洗浄機にかけており服も着替え風呂に入った後再び防波堤にて四人で雑談していた

現に金剛は防波堤に寝そべりながらかなり悔しそうにしておりその背中をグラーフが宥めている

 

 

「その……叢雲は強いのだな

駆逐艦だが」

 

 

「強くないわよ、金剛が分かりやすいし真っ直ぐ過ぎるのよ」

 

 

「嘘ネ!!グラーフ!叢雲ですね!!

大本営で雷撃姫って呼ばれるほど有名人でかなり強いんデースよ!!」

 

 

「何と、叢雲はそんなに強いのか……」

 

 

「あ!こらあんたそれどこから聞いてきたのよ!!」

 

 

「へへーん、霧島から聞いたんデース!雷撃姫ー!!」

 

 

「その名前で呼ぶんじゃないわよぉ!!」

 

 

「ひはいひはい!むらふもおちついてー!!」

 

 

叢雲は立ち上がり金剛のほっぺたをつねっており二人共喧嘩をしておりグラーフが心配する

 

 

「なぁ、二人は仲が悪いのか?」

 

 

ほっぺたをつねりながら、叢雲と金剛は顔を見合わせると二人とも笑い始める

 

 

「な、何か私は可笑しいことを言ったか…?」

 

 

「あー、sorryデース!違いマース、別に悪くないですよ?」

 

 

「そうよ、こいつが構ってほしいだけよ」

 

 

「違いマースよーだ!!」

 

 

「んー?電話か?悪いちょっと抜けるわ」

 

 

すると佐渡の電話が鳴り出し退席すると三人だけになる

 

 

「そう言えばグラーフどうなの?秘書艦は?」

 

 

「う、うむ……結構大変だ…」

 

 

「羨ましいデース、私も秘書艦やりたいヨー」

 

 

「駄目よ、この前あんたがやったら司令官が駄目になりかけたんだから」

 

 

「私は構わないと思うデースよ?」

 

 

「あんたねぇ……」

 

 

叢雲が溜め息を付くとグラーフが意を決したのか、二人に再び質問をする

 

 

「二人はこの鎮守府をどう思う?」

 

 

「ん?何で?」

 

 

「だって、可笑しいではないか

この鎮守府では出撃も海域攻略もない

我々の本文は戦争だろ?

だが、ここではそれがないだから……」

 

 

そこまで言うと叢雲は溜め息をつく

 

 

「あんた、真面目ねぇ……

本当に、初着任時のどっかの誰かを思い出すわ」

 

 

「だが!事実だ!我々には……

第二の命を与えられたのだ

それなら国の為人の為に…」

 

 

「悪いけど私はそう言うの分からないからパース

金剛お願い」

 

 

「え!?私デースか!?」

 

 

「そ、私は司令官に従うし

特に無いわ

よろしく~」

 

 

「えぇ……叢雲ぉ……」

 

 

「それに、私はここしか知らないから

あんたならグラーフが納得する答えを出してもらえるんじゃない?」

 

 

「それも……そうデースか…」

 

 

その言葉に違和感を覚えグラーフはイムヤの時を思いだし金剛を見ると先程より元気がなく少し落ち込んでいる

 

 

「私はここが好きですよ?

提督は優しいし、皆も……

他では貰えないものを私はここで貰いました…」

 

 

そこで気付くこの金剛もイムヤと同じで何かを持っておりここに来たのだと

 

 

「グラーフ、貴女は不幸を信じますか?、」

 

 

「不幸……だと?」

 

 

「はい、しかも人為的に伝染させる不幸を」

 

 

「は、馬鹿馬鹿しいそんなのあり得るわけ……」

 

 

「あるんですよ、私がそれを出来ますから」

 

 

「……え?」

 

 

そう言うと、金剛はグラーフの手を触ると偶然的なのかそれとも金剛がその条件を理解しているのか不幸が発動させる

叢雲がそれを止めようと起き上がった瞬間に、手が滑り顔を金剛の胸に飛び込むとその反動で金剛の手が『偶然グラーフの胸に当たり』振り下ろされるとグラーフが付けているブラのホックが外れそのままブラが外れ上半身の服が捲れる

 

 

「!?!?」

 

 

「あ、ごめんなさい!!グラーフ!!大丈夫ですか!?」

 

 

そのあり得ないほどの連続して起きた事に驚きながらも服を手で隠すと金剛の言葉を思いだし金剛を見ると少し離れる

 

 

「……ほら貴女も他の人と同じ反応をしましたね」

 

 

 

「っ!!すまない!!」

 

 

 

悲しそうに微笑む顔とその言葉にゾクッと来たグラーフだったが直ぐ様金剛に近寄り謝罪する 

 

 

「良いんデースよ?それが普通の反応ですから」

 

 

「いてて……ごめん金剛…あ…」

 

 

「……もう、叢雲のエッチデース」

 

 

「あー、うんごめん金剛……」

 

 

 

対して金剛も叢雲に服を脱がされかけさらしを巻いていた胸を半分出し急いでそれを直している

 

 

「提督が居なくて良かったヨー、見られたら恥ずかしくて死んじゃいマース」

 

 

金剛はフフフと笑いながら先程起きた事を流しているとグラーフに向き直る

 

 

「これが、私がここに来た理由デース

私は不幸を伝染させる、最悪の高速戦艦なんデースよ?」

 

 

笑っている金剛を見ると胸が痛くなるグラーフは、金剛の手を取り先程自分がやった行為に反省している

 

 

「すまない……本当にすまない…」

 

 

「大丈夫デースよ?慣れっこです

久々に人に離れられましター!新鮮デースね

グラーフ、貴女は戦争が私達の本文と言いましたね

ですが、私達は兵器であるが感情もありまーす

それを理解しておいてくださーい」

 

 

金剛は立ち上がると、二人から離れていく

その背中を追うように二人が行こうとするが

 

 

「ごめんなさーい、ちょっと一人にしてください」

 

 

そう言うと歩いていき佐渡とすれ違うと走っていく

その姿を見た佐渡は電話を切り、グラーフ達に駆け寄る

 

 

「お前ら、何した?」

 

 

「いや、その……」

 

 

「グラーフが、金剛の体質を知らずに避けたのよ」

 

 

「そうか……グラーフ予定変更だ

すまないが提督室で待機していてくれ

俺は金剛を見てくる」

 

 

そう言うと金剛が、走り去って行った方向へ走り出すとグラーフがその背中を追うように行こうとするが

 

 

「辞めなさい、あんたじゃ無理よ」

 

 

叢雲に止められグラーフはその場に立ち尽くしてしまう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐすっ、うぅ……」

 

 

「よしよし、金剛大丈夫か?」

 

 

「大丈夫じゃ…ない、デース……」

 

 

「許してやってくれあいつも悪気があったわけじゃないんだ」

 

 

「わかってまーす……でも、やっぱり辛いよぉ……」

 

 

 

 

 

 





次回

貴女はどちらになりたいの?

トラウマと言うものは簡単には癒えないものだ
例えどんなことがあろうとも



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秘書艦任務 六

グラーフは、今日一日の秘書艦任務を終えベッドに倒れていた

あの後金剛と会ったが眼を赤くしており再び謝罪をしたが気にしてないと言われてしまったが佐渡にげんこつを貰い「気を付けろ」と怒られた

疲れと共に今日会ってきた艦娘達の事を考えていた

ここに来ているのはそう言う者達であり佐渡はそれを癒していることをそしてそれに答えるために必死に生きている艦娘達を

 

 

「私は……愚かで浅はかだったな……」

 

 

「そうでもないんじゃないですか?」

 

 

その声に驚き、ベッドから飛び起きると今日一日見てなかった大井が扉に立っていた

 

 

「すみません、驚かせてしまいましたか?」

 

 

「い、いや……そんなことは…」

 

 

「隣座りますよ?」

 

 

「あ、あぁ……」

 

 

大井は入ってくるとグラーフの隣に座ると、手を出し今日のメモ帳を確認すると「成る程」と呟く

 

 

「……グラーフさん、金剛さんを避けましたね?」

 

 

「!!!!」

 

 

図星を突かれビクッと身体を揺らしてしまいそれを見た大井は微笑んでいる

 

 

「大丈夫ですよ、彼女は強いですから

多分提督が何とかしてくれていますよ」

 

 

「……本当にすまない…

彼女達がここまで酷いことをされていたとは思わなくてな…」

 

 

「そんなもんですよ、どこも

私のところもそうでしたし」

 

 

その言葉を聞いた瞬間更に驚く大井が全くそうは見えないからである

 

 

「私は、元々別の鎮守府に居ましたが犯罪者としてここに来ました

まぁ、今では『元』になってしまいましたけどね」

 

 

「犯罪者…だと?何をしたんだ?」

 

 

「提督に暴力を働きましてね、後側に居た海軍大将達をね

私の大事な人を襲うとしてまして、それでつい」

 

 

驚きを隠せない、この彼女がそんなことをするようには見えないからである

確かに佐渡とは少し言い合いが多いが佐渡は特に気にしてない様子だったから

 

 

「ここはですね、皆あの人に救われた人が居るんですよ

そして、この鎮守府は戦争から最も近いですがあの人がそれを遠ざけて居るのです

確かに私達は『艦娘』です

戦うのが本文です

ですが、あの人は他の提督と違う

あの人は私達を『艦娘と言う兵器』ではなく

『一人の女の子』として扱うんですよ

だから、そこが貴女とあの人の違いです」

 

 

「私達が……女の子…だと?」

 

 

その言葉に違和感を覚える、ドイツ海軍では艦娘は兵器であり使い捨ての道具だと国の為に命を捨てるのは普通だと教えられていたからである

 

 

「そうですよ、じゃないとあんな態度はしませんしね

まぁ、貴女の考えとは違うとは思いますが

こういう鎮守府もあるんですよ

ここまで戦争から遠いところも無いとは思いますが」

 

 

「…………私は…アトミラールにどう映っているのだろうか…」

 

 

「私達と変わらず、一人の女の子としてだと思いますよ

あの人は変態で、時々サボって、セクハラもしますし、争い事が嫌いなろくでもなしです

 

ですが、料理が上手くて、私達の事に全力で、優しくて、強くて、時々恐いですがそれは私達の為でもあって、お父さん見たいでもあり、そして何より信頼できます

本物は知りませんが

あの人はそんな人です」

 

 

「………そう…か」

 

 

グラーフは立ち上がると部屋を出ていこうとする

 

 

「あの人に、もう一度想いをぶつけてはいかがですか?あの人なら全力で答えてくれますよ」

 

 

「………そうさせてもらうよ、ありがとう大井」

 

 

ドアを開き部屋をゆっくりと出ていくグラーフを見ると大井はベッドに寝そべりながら微笑みながら呟く

 

 

「……あーあ、ライバル増えちゃうかなぁ…

何してるんだろ私

でも負けるつもりは無いけどね…」

 

 

 

 

 





次回

私はどうすれば?

そろそろグラーフ編前半が終わります
え?まだあるのかって?
正確にはこのお話はかなり長い話になります
それこそ章を飛ばしてね?


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私は 艦娘(兵器)?女の子?

自らを兵器と呼ぶが提督は女の子として扱う
彼女はどうおもうのでしょうか?
因みに作者はつい最近始めたのでグラーフ持ってません!!ほすぃ!!




「はい、おぉ流石ですね大淀さん

分かりました、でしたら『最後の証拠』を俺が作れば良いんですね

はいでは失礼致します」

 

 

佐渡は電話を切るとふぅと溜め息をつく

(…危険な綱渡りだな…)

そう思っていると扉からコンコンとノック音がする

 

 

「はいはーい、空いてるぜー」

 

 

「し、失礼する!」

 

 

すると、扉が開かれグラーフが佐渡の部屋に入ってくる

 

 

「んー?グラーフかどうかしたのか?」

 

 

「……すまない、こんな夜分遅くに少し良いか?」

 

 

「んま、構わないけどね」

 

 

佐渡は、珈琲を入れグラーフをベッドに座らせると自分も珈琲を飲みながら対面するように椅子へ座る

 

 

「んで、どうした?」

 

 

「いや、その、アトミラールは!

この戦況と状態をどうみる!?」

 

 

「んー、真面目な話だねぇ

そうだなぁ、まず最初に戦況に関してはしばらくは進展は無さそうだな」

 

 

「なぜ、そう思う?」

 

 

佐渡は、のんびりとした様子で自分の机から海図を取り出し電気を付けグラーフの目の前で広げる

 

 

「まず最初に俺達はほとんどの制海権を失っている一番の要素はこれであり

飛行上姫の縄張り

霧の海域

北方海域

西方海域

東方海域

そして、最後とされる場所ハワイ島だ

一つ一つ潰すにも敵さんもかなり強いし

最近では危険な姫級も増えてきた

だからこそ俺達は艦娘を大事にし俺達の知識を技術を与えないと勝てない程にな」

 

 

「だから、アトミラールは艦娘を大事にするのか?」

 

 

「いんや、ただの建前

俺は君達が普通の女の子としてしか見えてないだけ」

 

 

「………え?」

 

 

すると瞬間、海図を畳みその辺に投げるとグラーフの髪や頬を触る

 

 

「前にも言ったけどな

兵器はこんなに綺麗じゃないし髪だって柔らかくない

グラーフお前はなお前が感じているほどに兵器らしくないんだよ

顔は綺麗で整ってて髪はサラサラで柔らかくて良い匂いもするし

それに真面目で仕事に一生懸命でもうあれだよ嫁にしても全く問題ないくらいだぜむしろ土下座してでも頼むほどよ?

いや、こりゃ元帥も欲しがるわやらんけど

グラーフたんかわゆすハスハス」

 

 

「っ!!!」

 

 

佐渡の言動に驚きと照れを感じながら後退りをするがベッドの為直ぐに壁に当たってしまうが佐渡はグラーフを追い詰める

 

 

「いや、本当に綺麗で可愛いよな、食べて良いか?

俺も男だしお前は兵器なんだろ?」

 

 

「ま、ままま!!待て!!アトミラール!!

私はっ!!」

 

 

「ほほう?随分と照れているではないか、ほれコップはこっちにっと

それじゃあ!頂きまーす!!」

 

 

佐渡は、グラーフから珈琲のコップを取ると近くの机に置きグラーフに襲いかかろうとすると

 

 

「駄目だー!!!!」

 

 

「おっふ!?」

 

 

グラーフが佐渡に対し思い切りグーパンチを食らわせそのまま後ろへと飛ばされる

 

 

「お、おう……ええパンチやなほんまに…」

 

 

「はっ!す、すまないアトミラール!大丈夫か!?」

 

 

「おう、大丈夫だぜ?大井の蹴りよりは軽い軽い

それとほらみろお前は兵器じゃない」

 

 

「…………へ?」

 

 

佐渡は、珈琲をグラーフに手渡すと再び椅子に座りながらグラーフを指差す

 

 

「兵器は恥ずかしがらない、抵抗しないんだぞ?」

 

 

「そ、そうなの…か?」

 

 

「おう、後可愛いと綺麗なのは本当だぞ?

嫁にしても良い?」

 

 

「よ、嫁!?いや待て!アトミラール!!私達はその!艦娘と提督だ!!そう言う事は……」

 

 

「あっはは!!!冗談冗談!!」

 

 

佐渡が笑いながら話しているとグラーフは不満げにむすっとした態度を取る

 

 

「あ、後グラーフ」

 

 

「何だ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明日、お前を村山元帥に引き渡すわ」

 

 

「………え?」

 

 

グラーフは持っていたコップをその場に落とし白いシーツが真っ黒に染まっていく

 

 

 




次回

艦娘は兵器であり人間だ

はい、次回の展開わかる人は居ますかね?
まぁ、そのあれですよ
分かってください()



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嘘つき

「さてと、そろそろ来るかなぁ?」

 

佐渡達は防波堤にて、村山元帥が到着するのを待っていた

佐渡の隣には叢雲とグラーフが居るのだがグラーフは手枷をされておりその後ろには金剛、大井、古鷹、イムヤが待機している

だが、グラーフは落ち込んでおり顔を伏ている

 

 

「叢雲ー、調子はどうだ?」

 

 

「大丈夫よ、特に無いわ」

 

 

「りょーかい、哨戒は済んでるんだよな?」

 

 

「えぇ、私と古鷹さんで辺りを見てきたけど何もなかったわ」

 

 

古鷹と叢雲は艤装を付けておりそれ以外は誰も付けておらず古鷹はグラーフの艤装を持っている

 

 

「ねぇ、提督は本当にグラーフを渡してしまうのですか?」

 

 

「あいつ……とうとう落ちたのかしら?」

 

 

「司令官……」

 

 

三人は心配そうにグラーフを見つめており、グラーフはふと顔を上げ佐渡を見る

 

 

「アトミラール」

 

 

「なんだい、グラーフ」

 

 

「……これは何の冗談だ?」

 

 

「冗談?どこが?お前を元の配属先に渡すだけだけど?」

 

 

「そう……か」

 

 

しばらくすると、水平線から一隻の船と幾人かの艦娘がこちらに向かってくる

防波堤に船を付けるとそこそこの距離で艦娘は止まりこちらに一隻の船と一人の艦娘は防波堤に着く

 

 

「やぁ、佐渡大尉

グラーフツェッペリンが見付かったと言うのは本当かね?」

 

 

「えぇ、こちらに

昨日村山元帥様が帰ってから辺りを捜索した所

流れ着いているのを確認しまして

目覚めるまで介抱をしていたのです

報告が遅れてしまい申し訳ありません」

 

 

「いや、構わないよ

グラーフツェッペリンが見付かったならそれで良いさ……

ふむ、彼女が……ねぇ…?」

 

 

村山は、グラーフの身体をジロジロと見物していると身体中に手を這わせていく

その行為に、悪寒を覚えながらも耐えている

すると最後に顎を持ち上げ顔を確認する

 

 

「ふむ、顔も良いこれは中々……」

 

 

「村山元帥?彼女の顔が何か?」

 

 

「あぁ、嫌すまないね

怪我がないか確認していたのさ」

 

 

すると、黒服に指示を出すとグラーフの枷を掴み連れていこうとする

 

 

「辞めろ!!放せ!!!」

 

 

グラーフは暴れ始め佐渡を見るが一向に助けてくれる素振りを見せずに黒服は彼女にスタンガンを押し当てる

 

 

「手荒な真似はしたくないんだよグラーフ君?

連れていけ」

 

 

それに観念したのかグラーフは大人しくなり、黒服に大人しく付いていくのだが佐渡の方へ向き

 

 

「………やはり、貴様もそんな男だったのだな

失望したよアトミラール」

 

 

「何の事かな?グラーフ」

 

 

「惚けるな!!お前は!私を兵器と呼ばず!一人の女の子として扱うと言ったではないか!!

私がこのあとどうなるか分からないのか!?」

 

 

「何を言っているんだグラーフ

お前はこの後村山元帥の艦隊に配属されて艦娘として兵器としてその一生を終えるんだろ?

何せお前たちは

艦娘(兵器)なんだからな」

 

 

佐渡に冷たく言われ、今までここで過ごした一日を思い出すと涙ぐみながら佐渡を睨み付ける

 

 

「騙したのか……私を…」

 

 

「あぁ、騙すのに苦労したよ

お前が真面目で皆の協力あってだよ本当に

他の奴等のでっち上げ過去はどうだった?

悲しかったか?残念だったな全部嘘だよ!!

お前のその顔が見たくてな!!

アハハハハ!!!良い顔だぜ!グラーフ!!」

 

 

「貴様ぁぁぁ!!!」

 

 

グラーフは、黒服を押し退け佐渡に飛びかかろうとするが叢雲がそれを止めグラーフを地面へと叩き潰す

 

 

「悪いわね、あんたは最初からこうなる運命なのよ

諦めなさい」

 

 

「叢…雲…っ!貴様もかぁぁ!!」

 

 

「何をしている、早くスタンガンを撃て」

 

 

「は、はい!!」

 

 

黒服は急いでスタンガンを取り出すとグラーフに対して電撃を与えると苦しみだし動かなくなる

 

 

「これはすまなかったね、佐渡大尉

ほら、連れていけ」

 

 

「はい」

 

 

グラーフを黒服二人で担いでいくと佐渡と叢雲達を睨み付けながら涙ながら言い放つ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この…!嘘つき…っ!!」

 

 

 

 

 

 

 





次回

ポーカーフェイス

佐渡さんゲスですね!!



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嘘つき 二

佐渡と叢雲はそう言われるが涼しい顔をしているが、金剛がそれを止めようと動くが

 

 

「駄目です、相手が悪いです」

 

 

「でも!!」

 

 

「提督を信じましょう」

 

 

古鷹に静止され、渋々大人しくなるがイムヤも大井も拳を握りしめている

そして、グラーフが船に乗らされる寸前に

 

 

「あ、村山元帥これを彼女に」

 

 

「ん?なんだいこれは?」

 

 

佐渡は、グラーフの帽子を取り出し村山元帥に渡しておりそれをグラーフは睨み付けている

 

 

「彼女に似合うと思うんですよ

気高い女性ほど帽子が似合いますし」

 

 

「そうだな、良し連れてこい」

 

 

村山はグラーフを連れてこさせると帽子を被せるとグラーフは佐渡を睨み付けていると何かを伝えようと口を開いているのだが分かるわけもなく更に怒りが込み上げてくる

 

 

「ほう?確かに、似合うなぁ」

 

 

「所で、村山元帥」

 

 

「ん?何だね?」

 

 

佐渡は叢雲の肩を掴みながら村山元帥に近付いていき耳元で話しかける

 

 

「私、彼女から貴方は艦娘を娼婦艦にしていると聞いたのですが本当ですか?」

 

 

「!!!馬鹿を言うな!!

私はそんなことはしていない!!」

 

 

「まぁまぁ、落ち着いてください

実はですね」

 

 

佐渡は、叢雲の肩から胸に移動させると胸を揉みし抱く

叢雲はピクッと身体を震わせるがそのまま佐渡に身体を預けている

その光景に古鷹達は騒然となりグラーフも驚いている

 

 

「まぁ、私もこう言うことをしていましてね?」

 

 

「……ほほぅ?君も同じ口か

で、私に何かあるのか?」

 

 

「いやー、今回グラーフと言うあそこまで綺麗な艦娘を渡したんです

何か見返りが欲しくてですね?」

 

 

村山はそれを察し、顎に手を付きながら考え込んでいると

 

「そうだな……『誰か欲しいのか?』」

 

 

「どんな奴が居るんですか?」

 

 

「残念ながら、私は所持してるのは少なくてね

彼女で五人目だ

確か、如月、弥生、白露、千代田かな?

どれが良い?正直まだこれくしょんしたりなくてねぇ

目指せ全艦何てな」

 

 

そう言うと、村山は大声で笑っていると大井とイムヤも動きそうになるが古鷹が静止する

グラーフも反抗しようにも黒服が押さえ込んでいるため何も出来ない

 

 

「ほーう!これは凄いそんなに居るんですか!?

でも、そんなに艦娘を飼っていますと管理が大変なのでは?」

 

 

「君、まさか知らないのか?これを」

 

 

すると村山元帥は首輪を取り出す小さくチョーカーみたいだが真ん中にハートの飾りが付いている

 

 

「なんですかそれは?」

 

 

「一時期使われていた反抗的な艦娘を押さえ込む物さ

名前は確か『愛の首輪』だっけかな?

このハートの飾りに小型爆弾が仕掛けられていてね

スイッチ一つで首が簡単に取れるのさ

まぁ、死にたくなければ従えって言う代物さ」

 

 

「ほほう?それは何か電子プログラムでも組まれているのですか?」

 

 

 

「嫌、付け外しは簡単さ

首輪の後ろにあるホックを外すだけ、ただしそこに指紋認証装置があってね

本人以外が外そうとすると警告がなり、無視するとパンッと言う仕組みさ

ま、私のは付いてないがね

死なれても処理に困るしな」

 

 

「何とも画期的ですね!」

 

 

二人はすっかり意気投合しながら話しているとグラーフが、二人を睨み付けながら

 

 

「この……ゲス共め…」

 

 

と呟くが二人は気にせず話を続けている

 

 

「そうだ、今度私の別荘に来たまえ

ご馳走と艦娘……いやうちの娼婦艦娘達を使わせてやろう」

 

 

「よろしいのですか!?」

 

 

「あぁ、ただしそちらのも使わせてもらうよ?

あの金剛と大井は私好みでねぇ……」

 

 

「えぇ、構いませんよ……」

 

 

二人は、意気投合し手を取り合うとグラーフを連れて船に向かおうとするが

 

 

「あ、村山元帥!少し最後によろしいですか?」

 

 

「何だね?私に何か…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ご協力ありがとうございました!!」

 

 

「……は?」

 

 

 

 

 





次回

嘘はこう使うんだぜ?

まぁ、分かっていたと思いますがね!!
それでも佐渡さん?叢雲の胸触るのはあかんとちゃいますか?



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嘘つき 三

その言葉に、全員ポカンと呆然としていると佐渡が叢雲の頭を撫でる

 

 

「悪かったな叢雲

胸触って」

 

 

「あら?別に構わないわよ?

減るもんじゃないし

あんたなら許すわ」

 

 

「やったぜ」

 

 

「待て、佐渡大尉どういう…」

 

 

すると、村山元帥の携帯が鳴り出しそれに出るとみるみるうちに顔が青ざめていき携帯を落とすのを見ると佐渡はニヤリと頬を吊り上げながら笑う

 

 

「どうかされたのですかー?村山元帥?」

 

 

「き、貴様っ!!やってくれたな!!!」

 

 

その言葉に金剛達は顔を見合わせるが古鷹は微笑んでおりグラーフはポカンと口を開けている

 

 

「叢雲ー、その『通信機』貸してー」

 

 

「はいはい」

 

 

佐渡は、叢雲の頭に浮いている二つの耳の様な艤装を取ると端にある音量をマックスに変えると

 

 

『如月!弥生!白露!千代田確保!!

彼女達の首輪の爆弾は偽物だ直ぐにはずせ!!』

 

 

『了解!!この屋敷内に居るもの全て捕らえろ!!』

 

 

『急げ!!下手したら証拠を消されるぞ!!』

 

 

「残念でしたね~、この間明石さんに直してもらったときに付けて貰いましてね?まさか使う日が来るとは思いませんでしたよ」

 

 

そう、先程まで佐渡がやっていた事は全て演技

実はというと前日の夜に大淀から連絡があり

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

前日の夜、グラーフが来る前

 

 

「へぇ、凄いですね大淀さんそこまで突き止めるなんて」

 

 

『えぇ、とりあえず村山元帥はグラーフ以外にも四人の艦娘を所持しているのですが、その証拠が無いんですよ……

どうやら、別荘に居ると思うのですがそこにも金で雇われた護衛と憲兵がおりまして

更に艦娘を人質に取られる可能性があるんです

愛の首輪と言う小型爆弾式のチョーカーを付けられており下手に触れないんです

あれでは手の出しようがなくて……』

 

 

「まぁ、言いたいことは分かるよ?

とりあえずはそこまで聞き出せるようにやってみるよ」

 

 

『それと、村山元帥を確実に落とすために最後の決定的な言質を取って欲しいんです』

 

 

「分かりました、なってやりましょう!悪に染まってやりますよ!!

では、俺が最後の証拠を作れば良いんですね

分かりました失礼致します」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「とまぁ、これが真実ですよ村山元帥?」

 

 

「貴様ぁ!騙したのか!!」

 

 

「アハハ!!見事に騙されましたねー!!

馬鹿言わないでくださいよ艦娘を娼婦艦何かにするわけないじゃないですかー?

こいつらは俺の家族みたいなもんですよー?」

 

 

村山は拳を握りしめながら怒りを露にしていると通信機から声が聞こえる

 

 

『佐渡提督!!ありがとうございます!

これで、村山元帥を落とせます!!』

 

 

「大淀さんや、声聞こえてるから何か言って上げな」

 

 

『村山元帥、貴女を艦娘保護法そして、違法取引、その他にも色々と見付けましたよ

覚悟しておいてくださいね、貴方は終わりです』

 

 

「くそぉ!!!グラーフの首にあれをつけろ!!」

 

 

「「はっ!!」」

 

 

「放せ!!辞めろ!!」

 

 

村山が指示すると黒服がグラーフの首にチョーカーを付けようとするが叢雲と佐渡が同時に走りだし、黒服二人を殴り倒す

 

 

「バーカ、誰が」

 

 

「そんなことさせるもんですか」

 

 

「くそがぁ!!大尉と駆逐艦の癖に!!元帥に逆らうなぁ!!」

 

 

村山が拳銃を佐渡達に向けるがその後ろから頭に強い衝撃を受け気絶してしまう

どうやら古鷹が主砲から模擬のゴム弾を砲撃したらしい

 

 

「させませんよ?」

 

 

「さっすが!古鷹!我が天使!」

 

 

「良い命中精度!流石ね!!」

 

 

村山と黒服を縛り上げると船に乗せ共に来ていた艦娘達に事情を話すと理解したのか船を運び本島に戻っていくと金剛達も佐渡達に駆け寄る

 

 

「提督~、そう言うことなら言ってくだサーイ…

流石にビックリしましたよ…」

 

 

「はぁ……貴方と言う人は…」

 

 

「司令官…流石に今回のは怖かったよ?」

 

 

「悪い悪い、敵を騙すならまず味方からって言うだろ?

すまないな、グラーフ今外すぞ」

 

 

佐渡は、グラーフの手枷を持っていたマスターキーで外すとグラーフはまだ睨んでいる

 

 

「……今度は何だ、まだ私を騙し足りないのか?」

 

 

「あれは!違うって!!お前を助けるために仕方無くな……

いや本当にごめん……身体痛くないか?大丈夫か?」

 

 

「……問題ない、少し一人にしてくれ…」

 

 

グラーフは佐渡から離れていくと叢雲達と共に鎮守府に戻っていく

 

 

「あー……やっちまったな…こりゃ…」

 

 

佐渡も鎮守府に戻ろうとすると対岸に何か見覚えが無いものが見え歩みを止める

 

 

「……何だありゃ?船か?だがここには誰も…」

 

 

 

 

 





次回

侵入者

グラーフから信用を失ってしまった佐渡は今後どうするのでしょうか?



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後悔

『では、グラーフさんなのですが明日そちらに引き取りに向かいます

佐渡提督、今回はありがとうございました』

 

 

「いえいえ、大したことはしてませんよ?

では失礼致します」

 

 

佐渡は携帯の電話を切ると溜め息を付きながら天井を眺めている

グラーフはあの後、鎮守府には居てくれるがすっかり佐渡を信用しなくなってしまい話すらしてくれない状態で既に夜になってしまったのである

 

 

「はぁぁぁ………やっちゃったなぁ……

まぁそうだよなぁ…裏切ったんだもんなぁ……」

 

 

「ま、今回は仕方ないんじゃない?

守るためとはいえ彼女を囮にしたんだし?」

 

 

「分かってるけどよぉ……

ショックですわぁ……」

 

 

叢雲がドアの側に立っておりそのドアは開きっぱなしになりながら佐渡を見ている

 

 

「はぁ……ごめんよぉ…グラーフ……」

 

 

「本人に言いなさいよ、そういうことを」

 

 

「話し掛けても逃げられんだよぉ……

はぁ……」

 

 

大分落ち込んでいる佐渡を見ているとイラついて来たのか佐渡に向けてバインダーを投げつけるが佐渡は見事にそれを取る

 

 

「あんたが見付けた小型船、救命用に使われる奴だったわよ

本人は何処に居るか不明だけど警戒は怠らずにやっておくわ」

 

 

「頼むぅ……

今日はもう寝るわ…」

 

 

叢雲は「はぁ」と溜め息を付くと扉を閉め、廊下に立っている人物の背中を叩く

 

 

「ほら、行くわよグラーフ」

 

 

「………あぁ」

 

 

グラーフがどうしても佐渡の事が信じられないからと叢雲が連れてきたのだが先程からの佐渡の態度で本当に私の為だと気付いたのだが顔を合わせる事が出来ずに居た

 

 

「本当だったでしょあの馬鹿

あんたを騙したことかなり来てるみたいよ?」

 

 

「………あぁ」

 

 

「はぁ……何であんたまで落ち込んでるのよ…」

 

 

 

「……アトミラールを疑ってしまった…

私は艦娘失格だ…」

 

 

叢雲はグラーフの頭を軽く叩くと溜め息をつく

 

 

「あんなこと言われたら誰でも騙されるわよ

ほら、今日は寝る

明日謝りなさい」

 

 

「……すまない叢雲…

今晩少し出掛けさせてくれ…」

 

 

「駄目よ、今晩は寝なさい

この島に侵入者が居るかもなんだから」

 

 

「……分かった」

 

 

そう言うとグラーフはとぼとぼとした足取りで歩いていき叢雲は溜め息混じりにその後ろを歩いていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜中、グラーフは寝れずに鎮守府の近くを歩いていた

綺麗な月に照らされ海に映し出されており静かに波の音だけが聞こえていた

(私は何なのだろうな……艦娘(兵器)?それとも女?

わからない……それとも物なのだろうかただの…)

グラーフは、そんな事を考えていると溜め息をつき

(…そろそろ戻ろう、叢雲に怒られてしまう)

と鎮守府に戻ろうと振り返ると

 

 

「捕まえた!!!」

 

 

「なっ!!貴様っ!!むぐぅ!?」

 

 

「暴れるなよ!!暴れたら撃つからな!!」

 

 

見知らぬ男が、グラーフの口元に何かを加えさせ頭に拳銃を押し当てながら両手に鎖を付ける

(叢雲っ!!アトミラール!!!助けっ!!)

その瞬間眠気に襲われ意識を失った 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー、うん、えっと、うー……」

 

 

佐渡はグラーフの部屋の前で唸っており静かに扉を開ける

 

 

「どうもー夜這いに来ましたーってこれだと最悪じゃねぇかよ……すまんグラーフこんな夜分遅くちょっと話を……」

 

 

だが、グラーフは部屋に居らずベッドの中にもどこにも気配がしない

 

 

「……グラーフ?」

 

 

すると今日見た見知らぬ船を思い出すと全速力で走り出す

(辞めてくれよ!!俺の直感!!当たるなよ!!くそったれ!!)

 

 

 

 

 




次回

お前は商品だ

誘拐されたグラーフ、さて佐渡は間に合うのでしょうか!?



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商品

「へへへ、やっぱりこいつは上物だよなぁ……

捕まえられて良かったぜ」

 

 

ある男がぐったりと眠ったグラーフを運びながら海岸沿いを歩いておりある船へとたどり着き彼女を降ろすとエンジンをかける

 

 

「周りには誰も居ねぇな」

 

 

「んん…私は……」

 

 

 

だが、そのエンジンでグラーフは眼を覚ましてしまう直ぐ様男はグラーフに拳銃を突きつける

 

 

「へいへーい、久しぶりだなぁ?

艦娘、また会えるとは光栄だよ」

 

 

「貴様っ!!まさかあの船の船長か!」

 

 

「おうおう、静かにしろってしないと撃っちゃうぞ?」

 

 

そうこの男は、霧の海域にてグラーフを運んでおりじぶんの過信で艦隊を沈めさせ船すら沈没させたドイツの船長である(以降船長)

偶然にも脱出用の船に乗り込んでおり流されている間に霧の海域を抜け小笠原へとたどり着いていたのだ

 

 

「貴様!私をどうする!!」

 

 

「静かにって、いったよな?」

 

そう言うと、船長はグラーフの右足を撃ち抜きグラーフは痛みに耐える

 

 

「ギャハハ!!すげぇな!お前人間みたいに赤い血を流すのか!!

お前をどうすると聞いたな?売るんだよ?

お前達艦娘を欲しがる奴はいくらでも居る」

 

 

「なん…だと!」

 

 

「知ってるか?艦娘ってのは娼婦だけじゃなくて他の使い道もあるんだぜ?

生きたまま解剖して遊んだり、内蔵を売りに出したり、どこまでやれば死ぬかとかそう言う事にも使えるんだぜ!?

一人売るだけで億の値がつく最高のビジネスだよなぁ?

特にお前は空母だ、更に高く売れる!!状態も良いしなぁ?」

 

 

そう言うと、船長はグラーフの身体を触ろうとするがグラーフは後退りをしている

 

 

「まぁ、ここでやるとどうやら提督とやらが来るからな早くずらかるとするか」

 

 

船長はエンジンが暖まったのが分かると走り出そうとするがグラーフは飛び降りその船から逃げようと走り出すが

 

 

「逃げてんじゃねぇよ!!!」

 

 

と叫び次は左足を撃ち抜き、グラーフは痛みでその場に転倒し倒れてしまう

すると船長はグラーフの髪を掴みながらズルズルと引きずっていく

 

 

「痛いっ!!放せ!!」

 

 

「たく!世話かけさせるなよなぁ!!」

 

 

抵抗するグラーフにムカついたのか、船長はグラーフの腹部を殴ると苦しそうに声を上げるがそんなことはお構いなしに次は蹴りを入れグラーフを大人しくさせる

 

 

「やっと、大人しくなったか

こいつらならどうせすぐに治るんだからな

ま、良いか

行くぞ」

 

 

船長はグラーフを持ち上げると、ぐったりとしており涙を流しながら自分の無力差を呪った

(私は……こんなに弱いのだな……一人の男からすら逃げられない……はは滑稽だな…ならいっその事死んで困らせれやろうか…)

と思いながら舌を噛み切ろうとするが、その脳裏に佐渡達の姿が思い浮かび辞めてしまう

(やだ……死にたく…ない!まだ謝っていないんだ!!私はアトミラールに!!)

 

 

「アトミラール……助けて…」

 

 

 

「誰も来やしねぇよ

へへ、本当に上物だよなぁ……

どうやって、遊ぶかな」

 

 

船長がグラーフを船に下ろし乗り込もうとした瞬間後ろから発砲される

 

 

「なっ!!誰だ!?」

 

 

暗闇から一人の男が、船長とグラーフに向かって歩いていく

月明かりに照らされるとその姿が二人に映し出されるその姿を見たグラーフはその男名前を叫ぶ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アトミラール!!!」

 

 

「ちぃ!!提督とやらか!!」

 

 

男、佐渡は拳銃を片手に船長と対峙する

 

 

「悪いな、グラーフ待たせた

もう少しだけ我慢してくれ、こいつを片付けるからな」

 

 

 

 




次回

お前は一人だけだ

間に合って良かったぁ……
次回、佐渡が熱く語ります



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お前は人間だ

船長は直ぐ様拳銃をグラーフに突き付けるが瞬間佐渡が、それを撃ち抜き船長の拳銃が海へと落ちる

 

 

「さぁ、グラーフを返せ

その娘はうちが預かってるんだ」

 

 

「はは!誰が返すかよ!!こんな、上物!!

それにこいつは俺の積み荷だ!!てめぇのもんじゃねぇ!!」

 

 

すると、船長はポケットナイフを取り出しグラーフに突き付ける

 

 

「そうか、あんたがあの船の船長か

良くもまぁ霧の海から出てこれたもんだ」

 

 

「そ、そうだ!!あんた俺と取引しようぜ!!」

 

 

 

佐渡は冷静になりながらも、船長に近付いていくと突然取引を持ちかけてくる

 

 

「取引?」

 

 

「あぁ!!こいつを俺にくれたらお前にいくらでも金をやるよ!!

欲しいだろ?それと俺の腕があればこいつを10億いやそれ以上で高く売れる!!どうだ!?取り分はお前が8、俺が2でも構わねぇ!!

しかもこいつもヤれるぜ!!」

 

 

 

「……興味ないな

金何かには」

 

 

「じゃあ、なんだ!!何が欲しいんだ!?

俺が用意してやるよ!!これでも何回も同じような事をしてるからな!!海軍上層部には顔が効く!!

どうだ!?」

 

 

「……ほう」

 

 

佐渡はそう言うと、拳銃を降ろすがいつもと違うのが完全にこの船長に対して怒りを露にしていると言うことである

 

 

「お前は、艦娘をどう思う?」

 

 

「はぁ?」

 

 

その発言にはグラーフは心当たりがあった、前に佐渡に対し同じような質問をしたからだ

 

 

「艦娘何てのは商品さ!!見た目は少女!!しかも簡単に騙せる!!

泣き落としだけで軽くコロッと落とせる最高だぜ!

ドイツの奴等も言ってたよ!使い勝手が良くて従順でいくらでも言うことを聞いてくれるってな!!

しかも自分達に二度目の命をくれた礼に守ってくれるんだぜ正に海軍が作り出した最高傑作だよ!!

いくらでも、代用が効くしな!!

感情豊かで身体も性格も選び放題のただの『お人形さん』だな!!アッハッハ!!!」

 

 

そう言われるとグラーフは無性に悔しく悲しくなる

自分達が守らなくてはいけない人間達にこうも思われているとだが仕方ないそれが事実だ

それが存在理由だと

 

 

「……ふざけるな」

 

 

「あっ?何か言って……」

 

 

「ふざけるなって、言ってるんだよ屑が」

 

 

静かにだが、確実にキレていたその姿に船長もグラーフも怯えるその怒りは殺意が込められておりそれが船長に向けられて居るのだが隣のグラーフにもそれが伝わってくる

 

 

「何が最高傑作だ、何が人形だ?何が使い勝手が良いだ?

ふざけるなよ、お前達みたいな奴等が居るからこいつらは苦しんでるんだろうがよ?」

 

 

「はっ、なに言ってんだお前

艦娘は所詮使い捨てのお人形さん

どうせ沈んでも苦しんでいても変わりは居るんだよ」

 

 

「居ねぇよ、そいつの俺の知ってる『グラーフツェッペリン』はな」

 

 

そう言われると、身体がドクンと跳ねる感覚がした

佐渡を見るとどんどんこちらに近付いてきており船長を持ち上げ怒りを露にする

 

 

「知ってるか!?てめぇらがそうやって艦娘を軽視しているからなこいつらは苦しんでいるんだよ!!

知ってるか!?てめぇらが酷使するからこいつらは自らを兵器だ、ゴミだ使えないやつだと思い込んでるんだよ!!

知ってるか!?てめぇらが勝手に決めつけた体質で苦しんでいるやつも居るんだよ!! 

知ってるか!?てめぇらの勝手に産み出されて、使い捨てられて苦しんでる奴等が居るんだよ!!

こいつらはお前ら人間の道具でも何でもねぇ!!

 

こいつらは感情豊かで!!女の子らしくて!!誰よりも提督の為世界の平和を願っていつも戦ってくれているんだよ!!

俺達が戦えないのに!!こいつらはこんな華奢で小さな身体で化け物共と戦い続けてくれているんだよ!!

なのに何だ!?てめぇらは自分勝手に艦娘を使い!!物の様に扱うのが基本なのか!!

くそ食らえだ!!!こんな海軍!!こんな世界なんてぶっ壊れちまえば良いんだよ!!

こいつらに変わりは居ねぇ!!

人間と同じで一人一人違うんだよ!!同じ物は作れねぇ!!

そんな単純な事すら分からねぇのか!!てめぇら人間は!!!

艦娘は!!!人間だ!!物じゃねぇ!!」

 

 

そこまで言うと、佐渡は船長を持ち上げコンクリートに叩き付けるとその衝撃で気を失ってしまう

グラーフはその言葉に感動し泣いていた

間違いなく佐渡の心の叫びにグラーフは彼を信用した

 

 

「グラーフ!!!」

 

 

「は、はい!」

 

 

「お前は!!グラーフツェッペリン!!!

真面目で真っ直ぐで誰よりも可愛いげのある女だ!!

それ以外俺は認めねぇからな!!

お前は!!ここにいる限りはただの人間の小娘だ!!

覚えとけ!!

そして!大人しく俺に陸では守られてろ!!

俺を信じろ!!良いな!!」

 

 

「はい……はい……分かりました…アトミラール…」

 

 

月夜に照らされながら、佐渡はグラーフに指を指しながら言い放つとグラーフは涙を流していながらここに流れ着いた事を天に感謝した

 

 

 

 

 

 




次回

艦娘と提督

船長が噛ませ犬感しゅんごい()
次回で終わりになります、もう少しだけお付き合いください
ご都合主義?許して……



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私はここにいる

夜はまだまだ続きます




「足、痛くないか?」

 

 

「痛いな…これは治るのか?」

 

 

「あー、多分な」

 

 

佐渡は、グラーフをおんぶしながら鎮守府へと帰路に付いていた

因みに、船長はと言うとグラーフの足を撃ち抜いたのがムカつき同じように両足撃ち抜き船を蹴飛ばし小笠原から離れさせるように流した

 

 

「アトミラール……すまなかった…」

 

 

「ん?何が?」

 

 

「……村山元帥の件だ

私は、貴方が私を守ってくれたのを分かっていたのに拗ねていたからな」

 

 

「いやいや、あれは俺が悪いんだよ

本当にごめんな、グラーフ二度とやらないと誓うからさ?許してくれ…」

 

 

「いや、あれは私が……」

 

 

「いや、俺だって……」

 

 

と、二人で言い合いをしていると同じことを言い合っており笑い始める

 

 

「あはは、全くアトミラールは譲らないな」

 

 

「ばっかやろ、悪いのは俺なんだよ!

お前は悪くないよ

本当に、でも良かったよお前が誘拐されたんじゃないかって怖くて怖くて…

俺は海に出られないからな」

 

 

「……それに関してはすまない

私の不注意だ、叢雲に出るなと言われていたのに出てしまった」

 

 

「そこはお前が悪いなー

後で、叢雲にキチンと言って謝罪しとけよー?」

 

 

「了解したよ、アトミラール」

 

 

そこまで言うと、グラーフは佐渡の背中に身体を預けると佐渡が頬をかきながらいう

 

 

「あのー、グラーフさん?そんなに身体を密着させられますと

その……胸がですね?」

 

 

「……エッチだなアトミラールは」

 

 

「いやこれは仕方ないんじゃないですかねぇ!?」

 

 

佐渡がツッコミを入れるとグラーフはフフと笑いながら更に身体を密着させてくる

 

 

「当てているし、アトミラールを試しているんだぞ?」

 

 

「おぉぅ、それはそれは俺試されてる~」

 

 

すると、グラーフは佐渡の耳元に口を近付けると小さな声で

 

 

「かっこよかったぞ、アトミラール

助けてくれてありがとう」

 

 

「そうだろ~かっこよかったろ~

助けるのは当たり前だお前を預かる身何だからな!」

 

 

佐渡が自信満々に言っているとグラーフは耳元にキスをする

 

 

「惚れそうだよ、アトミラールに」

 

 

「おまっ!ちょっと!?グラーフさんや!?」

 

 

「ふふ、冗談だ」

 

 

「やめろよなー!そう言うの!」

 

 

佐渡が笑いながら言っているがグラーフは更に強く佐渡を抱き締めると「嘘だけどな」と呟く

 

 

「あ、そうだグラーフお前の配属先だけどな……」

 

 

「ふふ、実はなもう決めているんだ

私のワガママ聞いてくれるか?」

 

 

「おう?良いぜ俺が出来る範囲でな」

 

 

「なら、言わせて貰おうか私が行きたいのはーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日

提督室にて

 

「と言うことで、本日より正式に配属されることになった

グラーフツェッペリンだ」

 

 

「……お前、ここの事嫌がって無かったっけ?」

 

 

「まぁ、こうなるわよね」

 

 

「グラーフさん!!小笠原所属になるんですね!!」

 

 

「良いじゃない?空母が来たのよ、戦力増強だわ」

 

 

「これからよろしくネー!グラーフ!!」

 

 

「司令官が、とうとう海外艦まで手を出すとは凄いわね」

 

 

「こらー、イムヤー?下手なことを言うんじゃねぇぞ~

 

 

結局、グラーフは小笠原鎮守府に配属されることになった本人たっての強い希望だそうで正直大淀さんも「佐渡提督なら大丈夫でしょう」との事である

 

 

「では、アトミラールこれからもよろしく頼むぞ

私はここにいても構わないのだろ?」

 

 

「ま、いっか

ようこそ、小笠原鎮守府へ

君の着任を心より歓迎するよ?グラーフツェッペリン」

 

 

二人は握手を交わし、微笑み合う

 

 

「それと、貴方の心もいつか奪って見せよう」

 

 

「「「「……は?」」」」

 

 

「ワッツ?」

 

 

最後に特大の爆弾を投下して

 

 

 

 

 

 

 

 

   架空の空母 グラーフツェッペリン end

 




次回

次はあそこに行こうかな?

罪は償わないとね?



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ターゲット

今回もー!!
グロ注意!!
分かる方は分かるかな?







「うん……ここは…

いってぇ!!クソ!あのやろう……」

 

船長は流された船の上で目覚め辺りを見るが捕まえたはずのグラーフと対峙していた佐渡の姿が見えないと船を叩く

 

 

「あのやろう…許さねぇ俺の商品を…!!」

 

 

船長は小笠原を睨み付けると佐渡の事を思いだしながら持っているポケットナイフを取り出す

 

 

 

「小笠原は……あっちかまだ見えるぞ良し!!

また潜入して次こそはーーー」

 

 

「あら、起きたのですか?商船の船長さん?」

 

 

「!!!」

 

 

その声に驚き声の主見るとそこには眼鏡をかけて女が船の上に立っていた

 

 

「な、何だてめぇ!?」

 

 

「あら?ご存知…ありませんか貴方は海軍とは無関係ですもんね

初めまして、私は日本海軍大本営所属の大淀と言います

以後お見知りおきを」

 

 

大淀はお辞儀をすると船長は警戒を解きその場に楽にする

 

 

「何だ日本海軍か……」

 

 

「俺を助けに来たんだな!!

助けてくれ!!霧の海域で船が潰されて……」

 

 

「えぇ、ですが貴方を助けたいのは山々なのですが少し問題が生じておりましてね?」

 

 

「問題……?」

 

 

大淀は、資料を取り出すとそれを船長に渡す

 

 

「貴方の密輸がドイツ海軍に漏れていましてね、貴方は指名手配されているのです」

 

 

「そんな……本国が…?」

 

 

「なので、申し訳ありませんがここで貴方を助けると国家問題に発展しかけないのですご理解を」

 

 

そう言うと、大淀は船から飛び降りようとすると船長が急いでそれを止める

 

 

「ま、待ってくれ!!それなら何を差し出せば良いんだ!?金か!それとも艦娘か!?」

 

 

「そうですね……

では霧の海域の情報を教えてください」

 

 

「霧の海域の?」

 

 

大淀は、飛び降りるのを辞めるとずいっと船長に近付く

 

 

「えぇ、私達は霧の海域を攻略したいのですがその情報が足りません

なので、貴方を助ける変わりに情報をください

内容次第では貴方を重要参考人として日本海軍で保護します」

 

 

「わ、分かった!!それぐらいなら!!」

 

 

 

船長は霧の海域での出来事そして、霧の海域に潜む化け物レ級について事細かく、そして詳しく大淀に話した

大淀はそれをメモしていく

 

 

「ーー以上が霧の海域で起きたことだ」

 

 

「成る程?貴方の指示で艦隊を轟沈させたと言うことですね

それに二股のレ級ですか……成る程成る程」

 

 

「仕方ねぇだろ!!あの海域あんな化け物が居るとは思わなかったんだよ!!

それに艦娘何て所詮いくらでも作れるだろ!?」

 

 

大淀はメモ帳をしまうと溜め息をつきながら腰に何かを手探りで探しながらお辞儀をする

 

 

「情報提供ありがとうございました」

 

 

「なら!!俺を助けて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか?では死んでくださいね」

 

 

大淀はその瞬間腰から鉈を取り出し船長の足を切り落とす

突然の事に驚き痛みがマヒしているのかゆっくりと切り落とされた足を見ていると鋭い痛みに襲われる

 

 

「いっ、ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!!

足がぁぁぁぁ!!」

 

 

「はい、もう一つ!」

 

 

すると大淀はもう一つの足も切り落とし船が船長の血で真っ赤に染まっていく

 

 

「ぎゃあぁぁぁぁぁ!!!!

両足がぁ!!てめぇ!!何しやがる!!」

 

 

「何って逃げられても困るからですよ?

貴方はこの後ここで死ぬんですから

霧の海域を知った人間が生きていては困りますからね?」

 

 

「なっ!!!てめぇ!!海軍じゃないのかよぉ!!」

 

 

「あー、そんなこと言いましたねぇ

嘘ですよ、う  そ  見事に騙されましたね?

第一少し考えれば分かるでしょ?霧の海域には調査にも行けないですし生き残りが居るなんて分かるわけないじゃないですか」

 

 

大淀?はそう言うと主砲を船の真下に向けると船長に微笑む

その意図を理解した船長は痛みで苦しんでいるが、顔をみるみる青ざめていく

 

 

「辞めろ……やめろぉ!!!!」

 

 

「え?嫌ですよ?では、遊泳をお楽しみください~」

 

 

大淀?は艤装の主砲を撃つと船底に穴を開け静かに船が沈んでいく

 

 

「ひぃ!!水が!!」

 

 

「ま、それ以前にあんたは艦娘を軽視してるしあの商船の船長だったんでしょ?

生かしとくわけないでしょ?馬鹿じゃないの?」

 

 

その言葉に大淀の正体を掴んだ船長は大淀にナイフを突き付ける

 

 

「て、てめぇ!まさか!?」

 

 

「あら?感鋭い人

ま、正解よ死になさい

ここら辺は鮫が何匹か居るしね~」

 

 

そこまで言うと、大淀は海上におりたつとそのまま船の横に主砲を撃ち抜き船の沈没を加速させる

 

 

「くそがぁ!!!この提督殺しめぇ!!!」

 

 

船は沈没し、船長は投げ出されると船長の周りに鮫が群がる

 

 

「ひぃ!!来るな!!来るなぁ!!!」

 

 

船長は必死に動き回るが、鮫はそんなことお構い無しに複数で船長は噛み千切っていく手、足等を食い散らかし海面は赤く染まっていく

 

 

「た!頼む!!助けてくれ!!!」

 

 

「ふふ、そんなわけないでしょ

それが貴方への罰よ、良かったじゃない?あんたでも最後の使い道があるのよ?」

 

 

大淀…もとい提督殺しが笑いながら船長の顔を踏みつけると船長は沈んでいき鮫達に食われていくのを見ながら提督殺しは通信機の電源を入れると野太い男の声が聞こえる

 

 

「ふぅ、一仕事終わりっと

もしもーし、聞こえる?」

 

 

『あぁ、どうだ?』

 

 

「間違いなく、あの海域にいるのは『あんたの作品』よ?どうするのよあれ」

 

 

『ふふ、やはりそうか!まぁしばらくは静観だな

報酬はいつも通り払っておく

では、またな』

 

 

通信を切ると通信機と眼鏡を外しそれを海に捨てる

 

 

 

「にしても、小笠原鎮守府かぁ……

興味湧いてきちゃった、ふふふ」

 

 

提督殺しは怪しく笑いながら小笠原へ向いておりのんびりと海を航行していく

 

 

 

 

 

 

 

    TO be continue……




次回

平和な鎮守府

あー終わった!!やっとここまで終わった!
正直作者としては次の話からかなり書きたかった物になります!!
ですが、少し一休みにグラーフが追加された平和な鎮守府をご覧くださいませ

追伸 

自己紹介にてグラーフツェッペリン追加!



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閑話休憩
平和な日常


グラーフ着任し、しばらくたった小笠原鎮守府

現在五人の艦娘とのんびり生活を楽しみながら仕事に追われる日々を……送っては居なかった

 

 

「んー、今日も釣れるなぁ

ここの魚は警戒心が無くて楽だぜ~」

 

 

佐渡は恒例の釣りを楽しんでおり、近くにはキャンプファイヤー用の薪が置いてありその中で火がついておりそれを金剛と叢雲が見ている

 

 

「ちょっと、司令官まだなの?」

 

 

「うるさいなー、もう後三匹連れたらな~」

 

 

「提督~お腹すいたネー!」

 

 

二人はついさっきまで、演習を行っていたのだが佐渡が釣り具を持ってきているのを確認すると手早く終わらせ新しい服に着替え防波堤にて待機していた

すると、海の中からイーちゃんが顔を出す

 

 

「お、イーちゃん

来るか?」

 

 

イーちゃんはコクンと頷くと飛びはね佐渡の太股に着地すると佐渡はタオルを取り出しイーちゃんの身体を拭いてやると叢雲に手渡す

 

 

「叢雲、暖めてやれ」

 

 

「食べていいの?」

 

 

「魚じゃねぇから辞めろ

ペットを殺すな」

 

 

叢雲ははーいと言うとイーちゃんを抱き抱えながら薪で暖まり出すとそこで叢雲が違和感に気付いた

 

 

「ん?これ……ちょっと司令官!」

 

 

「何だー?」

 

 

振り返るとそこにはイーちゃんから脚が生えていたしかも四足

 

 

「へー、イーちゃん脚生えたのか……んんんん??」

 

 

流石に驚き釣竿を放り出してイーちゃんを見ると確かに前足と後ろ足が生えており叢雲も金剛も驚く

 

 

「……わーお、まるでdogね…」

 

 

「……ねぇ、司令官?これ歩けるのかな?」

 

 

「……わかんね、取り敢えずイーちゃんに歩かせてみるか」

 

 

佐渡は、イーちゃんを持ち上げ防波堤に立たせると身体がプルプルと震えているが少しずつ歩けるようになっている

 

 

「おー!!すっげぇ!!歩いてる!!」

 

 

「何か感動的ネー!」

 

 

「いや、あんたたちこれ不味いことだからね?

深海棲艦進化してるのよ?」

 

 

「「あ」」

 

 

金剛と佐渡は顔を見合わせるが笑いだし

 

 

「でぇじょうぶだ!!歩いてるだけだから!!」

 

 

「そうデース!叢雲大したことないネー!」

 

 

「いやアウトだと思うけど……まぁ、司令官が言うから良いか」

 

 

そう言うと三人は各々の場所に戻るがイーちゃんはゆっくりと佐渡の側に行き膝に乗るとぐるぐると動き回りその場に寝転び始める

 

 

「あらら、イーちゃんのんびりし始めたよ

イーちゃんや、そろそろご飯食べるぞ?」

 

 

その言葉を聞くと飛び上がり、叢雲達の方へと歩いていく

 

 

「現金な奴めぇ」

 

 

「アトミラール!こんなところに居たのか!?」

 

 

佐渡が釣竿を片付けていると鎮守府からグラーフが走ってこっちに向かってくる

薪には先程釣り上げた魚が置いてあり叢雲と金剛が焼きイーちゃんがそれを食べている

 

 

「おう?グラーフ、どうかしたん?」

 

 

「どうかしたもないぞ、今日は書類整理だろ?大井が怒ってたぞ?」

 

 

「あ、やっべ」

 

 

「司令官……あんたねぇ…」

 

 

「提督ー?サボりはメーだよー?」

 

 

三人に怒られると「すまね」と謝りながらも薪に近付き暖を取る

 

 

「こら!アトミラール!」

 

 

「まぁまぁ、グラーフさんや寒いじゃろ?少しは暖まってから行こうではないか?」

 

 

「む、むぅ確かに寒いが

仕方無い少しだけだぞ!!」

 

 

佐渡はその言葉を聞くとニヤリと笑う

 

 

「絶対悪いこと考えてるネー」

 

 

「間違いないわね」

 

 

 




次回

ドイツの襲来?

少しほんわかしたのを書きたいんです
許してくだせぇ…



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平和な日常 二

「ほら、グラーフ焼けたぞ食えよ」

 

 

「む、ありがとうアトミラール」

 

 

佐渡は焼けた魚をグラーフに手渡すと四人で食べ始めながらのんびりと秋を堪能していく

 

 

「平和だな相変わらずここは」

 

 

「んまぁ、出撃もないし」

 

 

「やることも無いですからネー」

 

 

「それが一番よ」

 

 

四人はのんびりと食べて入るのだがグラーフはイーちゃんをかなり警戒している

 

 

「まだ馴れんか、グラーフ」

 

 

「う、うむ……イーちゃんが敵意が無いのは分かるが…やはり深海棲艦だからなぁ…」

 

 

「まぁ、普通は無理よここくらいよ深海棲艦をペットにしてるの」

 

 

「グラーフの反応は間違ってないヨー?」

 

 

すると、佐渡の携帯が鳴り出すと嫌な顔をしながら携帯に出る

 

 

「へいへーい、こっちら提督ですぜ」

 

 

『貴方!!今どこにいるんですか!?』

 

 

「防波堤」

 

 

『提督!!!大本営からの速達便が来てるのに放置しないでください!!

今度の会議への出欠なんですから!!』

 

 

「えー、明日じゃ駄目?」

 

 

『駄目です!!今からそっち行きますからね!!!』

 

 

大井は怒りながら電話を切るとこちらに向かってくる様でその様子を見ていたグラーフが思い出すように佐渡を指差す

 

 

「あ!!そうだ!アトミラール!!大井が」

 

 

「あ、思いだしやがったちくしょう

今から来るってさ」

 

 

「嵌めたのか!?アトミラール!!?」

 

 

「気のせいよ気のせい」

 

 

グラーフが何か怒っているが佐渡は気にせず焼けた魚を頬張りもう一つをグラーフの口に押し込む

 

 

「ほらほら、怒ってないで食えよ

まだまだあるんだからさ?」

 

 

「そうではない!!アトミラールと言うものは!!」

 

 

とここで叢雲が佐渡の腹部をつつくと振り返る

 

 

「どった、叢雲」

 

 

「……何か来るわ」

 

 

「んん?」

 

 

佐渡が海の方角へ向き直ると確かに水平線に二つの影が見える

深海棲艦の艦隊では無い、恐らく艦娘だが何故この島にと思っていると大井がこちらに向けて怒りながら走ってくる

片手に魚雷を持ちながら

 

 

「みぃぃぃぃつぅぅぅけぇぇぇたぁぁぁぁ!!!」

 

 

「ひぃぃぃ!!大井さんや!!そんなに怒る事ないだーーーー」

 

 

「問答無用!!!」

 

 

瞬間大井は持っていた魚雷を佐渡の顔面に投げると刺さるように当たりその次に腹部へと重い一撃を加える

 

 

「ぐえらばっ!!」

 

 

その衝撃に倒れるとその後腹部へ馬乗りになると再び魚雷を拾い脅しにかかる

 

 

「提督~?もう一撃行きますか~?

それとも実弾で海の藻屑となりますかぁ?」

 

 

「辞めてぇ!既に俺のHP(ヒットポイント)は0よ!?」

 

 

「話せるなら大丈夫ですね!もう一撃!!」

 

 

「やめろぉぉぉぉ!!!」

 

 

「ちょっと大井そんなことより、あれなに?」

 

 

大井が魚雷を振り下ろそうとすると、叢雲に指差された方角を見ると「あーそう言えば」と言いながら佐渡な馬乗りになりながらも眼鏡と手帳を取り出す

 

 

「提督、めんどくさいのでこのままで良いですか?」

 

 

「お前馴染んでるなぁ

まぁ、俺にはご褒美だけど」

 

 

「魚雷投げるのは後にして」

 

 

「待って、ごめん嘘だから辞めて?その攻撃は俺にかなり効くんだよ?」

 

 

「成る程……アトミラールには暴力と魚雷が効果的なのか……」

 

 

「待てこら、グラーフ

そんなことメモするな実行しようともするな!!

俺が死ぬ!!」

 

 

「そろそろよろしいですか?サボり野郎」

 

 

「暴言が俺の心を削っていくぅ!!どうぞ」

 

 

大井は眼鏡をかけるとメモ帳を開いていくと佐渡を見下ろしながら話始める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼女達は、ドイツの艦娘

ビスマルク プリンツオイゲン Uー511

グラーフさんを連れ戻しに来たそうですよ」

 

 

「「…………はい?」」

 

 

大井の爆弾発言に呆然とするしか無かった佐渡とグラーフであった

 

 

 





次回

ドイツからの使者

え?彼女達が轟沈したんじゃないかって?
してますよ?なので彼女達は二代目です



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ドイツからの来訪者

「グーテンモルゲン!初めまして、私の名前はbismarck (ビスマルク)よろしく日本のアトミラール 」

 

 

「えぇ、どうも日本にようこそ……とは言えない場所で申し訳ありません」

 

 

現在、ビスマルク達は艤装を纏いながら佐渡達は提督室に来ておりソファを挟んで話しており佐渡の隣には大井とグラーフがいる

 

 

「まぁ、お掛けくださいそれで本日のご用は?」

 

 

「もちろん、うちの正規空母グラーフツェッペリンの引き取りに来たわ!!」

 

 

グラーフは、俯いており佐渡は頭を撫でると「任せろ」と小さく呟くと顔を上げる

 

 

「まず、最初にそれは大本営に?」

 

 

「えぇ、話は通してあるわ」

 

 

「じゃあ、俺からは特に無いです

グラーフ、お前が決めな?」

 

 

「え、良いのか?アトミラール?」

 

 

「あぁ、お前の好きにしろ

正直言うと居て欲しいけど、ビスマルクさんが来るほどの事なんだろ?」

 

 

「グラーフ、良く考えてね

私達が迎えに来たと言うことはそれほど貴女を欲しているの」

 

 

 

グラーフは、ビスマルクと佐渡を交互に見ると悩むのだが結論を出す

 

 

「………すまない、ビスマルク

私はここに残りたい

ドイツは確かに祖国だが私はここに居たいんだ

すまない」

 

 

「だそうですビスマルクさん」

 

 

「そうね、それなら無理矢理にでも連れ帰るわ

手荒な真似はしたくないんだけど」

 

 

そう言うと佐渡に対し艤装の主砲を突き付けるが微動にせず主砲を掴むが金剛達は身構える

 

 

「悪いけど俺に恐喝は効かないよ?

それにグラーフの意思を尊重したいんだ

連れていきたきゃ俺を殺してでも行きな

殺せるならな」

 

 

「頼む!!ビスマルク!

私はここに居たいんだ!

帰りたくは無いんだ」

 

 

 

グラーフが頭を下げるとビスマルクはしばらく睨み付けた後にため息をつく

 

 

「そこまで言うなら仕方無いわね

諦めるとするわ

さてでは真面目な話はここまでよプリンツ良いわよ」

 

 

そう言うとプリンツは、ソファを乗り越えグラーフの胸に飛び込みUー511もグラーフの側に行く

 

 

「グラーフゥゥゥゥゥ!!良かったよぉぉ!!!」

 

 

「良かった……話を聞いて…本当に…」

 

 

「あ!あぁ、二人とも元気そうだな…

良かったよ…」

 

 

プリンツはグラーフの胸で泣いておりU-511は側で心配そうにグラーフを見ている

するとビスマルクは立ち上がりお辞儀をする

 

 

「日本のアトミラール、礼を言うわダンケ…

仲間を救ってくれて

本当に…」

 

 

「いやぁ、俺は特に何もしてないよ」

 

 

「良く言うアトミラール

村山元帥とドイツの船長から私を守ってくれたではないか?」

 

 

「そうだっけ?」

 

 

佐渡は惚けながらのんびりとお茶を飲んでいると、プリンツに手を握られ上下に降られる

 

 

「アトミラール!!ダンケダンケ!!

私達、グラーフが売られたって言われたから心配で心配で……ドイツのアトミラールにも言って何とかしてほしくって……」

 

 

「おう、グラーフ良い仲間じゃないか?」

 

 

「数少ないドイツの知り合いなんだ

一度だけしか会わなかったがな……」

 

 

素直にお礼を言われるのがちょっと照れ臭く頬をかいているが少し真面目な話を始める

 

 

「所で、ビスマルクさん

そちらの取引相手はどうしたんだい?」

 

 

「ビスマルクで良いわ、こちらの造船所はすぐに場所が割れてしょけ……いや逮捕したわ!!」

 

 

(え?今何か不吉な事言ってたような気がしたんだけど?)

 

 

「ドイツでは艦娘を重宝していてね

こんなことは滅多に有り得ないんだけど、今回に限っては日本の元帥がそそのかしたらしいの

大金を積まれたらしくてね、それに裏でそう言う事を生業にしてる奴が居るのは知ってたけどまさか仲間に手を出してる奴が居たとはね……

居たら始末してやるわよ!!!」

 

 

「簡単に始末しては駄目ですよお姉さま!!

きちんと罪を償う為に両腕切り落としましょう!!」

 

 

 

正義感がかなり強いビスマルクなのだが、プリンツの方は少し危険な気がするのは気のせいだと思いたい佐渡であった

 

 

「へ、へぇ……そっちの海軍はしっかりしてるんだね?」

 

 

「えぇ、一度私達前任者が沈められてるらしいからね……

それからって聞いてるわ

それにそれだけでも無いんだけどね」

 

 

「と言うと?」

 

 

「それは……」

 

 

ビスマルクはグラーフをチラッと見るとそれを察した佐渡が直ぐ様話題を変える

 

 

 

 

 

 




次回

連れ戻したい訳

次回、ビスマルク達が来た本当の理由が明かされます



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ドイツからの来訪者 二

「そんなことより!ビスマルクさん達はこの後帰ってしまうのですか?」

 

 

「いえ、折角だから少し休んで行きたいと思ったんだけど泊まる家が無いのよ……」

 

 

「なら、良ければうちの鎮守府に泊まって行きますか?」

 

 

「「「え?」」」

 

 

佐渡は、大井達に頭を向けると全員OKサインを出している

 

 

「良いの?」

 

 

「まぁ、別に私達は構いませんよ

部屋もありますし、服は他の艦娘から借りるしかありませんがそれでも良ければ?」

 

 

ビスマルクは、プリンツとU-511達と話し合うと向き直り佐渡に頭を下げる

 

 

「「「お願いします!!」」」

 

 

「よし来た!それじゃ、グラーフと古鷹達三人を案内してあげて」

 

 

「分かった!」

 

 

「分かりました」

 

 

すると、ビスマルク達は提督室を後にしようとするが

 

 

「あ、ビスマルクさんと大井は残れ

ちょっと話がある」

 

 

その言葉に大井とビスマルクは顔を見合わせると佐渡が頷き理解したのかソファに戻っていき三人以外がのんびりも部屋を出ていき足音が聞こえなくなると、ふぅとため息をつく

 

 

「さてと、ではビスマルクさん良いですか?」

 

 

「えぇ、グラーフを連れ戻したい理由よね?」

 

 

「あぁ、何があったんだ?」

 

 

ビスマルクは立ち上がり、提督室の扉を開け廊下に誰もいないことを確認すると鍵をかけソファに戻ると艤装から写真を取り出し佐渡に手渡すとそれを二人で見る

 

 

「……これは?」

 

 

「ここ最近ドイツの近海西方海域で確認された深海棲艦よ

識別名 欧州棲姫 こいつが原因なの」

 

 

「新型ですか?」

 

 

「いえ、昔に一度西方への大型作戦の時に姿を現した姫級よ

でも、その時この個体が多く見られたのだけど、今はこの一体だけ

ただし、こいつはその時より遥かに強いわ」

 

 

その写真の容姿はまるで姫騎士を連想させるほどに美しくドレスの様な艤装と左目に傷を負ってはいるものの見えているらしく目が開いており巨大な剣を持ち水上オートバイの様な艤装に乗っている

 

 

「こいつがどうかしたのかい?」

 

 

「実はね、西方海域は未だに制海権を奪還出来てないのでもここ最近その突破口を見付けてね

何とかアゾレス諸島の奪還に漕ぎ着けそうだったのだけれど……」

 

 

「こいつが現れたと」

 

 

「えぇ、その通りよ

この個体とは昔、私の前がビスマルクdreiが対峙していてね

その時の履歴と戦いかた等が全て残っていたのだけど

そんなのとは桁違いの実力を誇っていたわ

剣の一撃で船を切り裂き、私達の艤装すら切り裂き砲撃の火力も遥かに高い

恐ろしかったのはその剣裁きよ

正確に私達の艤装を切り落とし、無力化した後彼女は去っていったわ

正に貴方達が見付けた歴戦種と言っても過言ではないくらいにね」

 

 

佐渡はその話を聞くと溜め息をつきながら海を見ておりお茶を飲み始める

 

 

「新種の歴戦種……か…」

 

 

「えぇ、ドイツ海軍はこれを

欧州棲姫ー壊ー 歴戦種と定めているわ」

 

 

「これを日本の海軍には?」

 

 

ビスマルクは首をふるとその理由を話始める

 

 

「日本の状態は知ってるわ、最近確認された戦艦棲姫の歴戦種、そして霧の海域、南方棲戦姫の歴戦種、飛行上姫の歴戦種

これほどの敵に囲まれているのにも関わらず戦い続けているのに私達ドイツの問題も持ち込むわけにはいかないと上層部は日本へこの情報は秘密にしているの

それに奴が現在動いておらず、向こうからも仕掛けてくる事が無いため無駄に情報を与えて混乱させては不味いと言っていたわ」

 

 

「そうだったのか……ありがとう、ビスマルクさん」

 

 

「いいえ、これくらいはどうってことないわ

貴方は我が友グラーフを救ってくれた、そのお礼にしては大したことないもの」

 

 

ビスマルクはニコッと笑うと佐渡も微笑みながら手を差し出す

 

 

「もし、力が必要になれば俺達を呼んでくれ

どこにでも駆け付けよう」

 

 

「良いの……?だって、貴方達の方が…」

 

 

「グラーフをここに置いてくれるお礼さ

どんなことよりもそちらを優先して助けにいくさ

約束しよう」

 

 

「……ダンケ、それならお願いするわ!」

 

 

ビスマルクは出された手を握り返すと二人とも微笑んでおり大井がごほんと喉をならす

 

 

「で、提督私は何のために?」

 

 

「今の情報を秘匿しといてくれ

それと、ビスマルクさんの案内を頼む」

 

 

「分かりました

では、行動させて頂きます」

 

 

大井は立ち上がると、ビスマルクを案内していこうとする

 

 

「それに、貴女は優しいですね

ビスマルクさん

この、写真はグラーフが拒絶したときの説明用だったんですよね

それを言わなかったのは彼女の意思を尊重するためですよね

彼女は真面目ですからね

多分無理にでも貴女達を助けようとしますからね

だから、ありがとうございます

精一杯おもてなしさせて頂きますね」

 

 

「……えぇ、そうさせてもらうわね」

 

 

話終わるとビスマルクと大井は提督室を出ていくと佐渡は大きく溜め息を付くと同時に欧州棲姫の写真を睨み付ける

 

 

「………欧州棲姫…

西方に巣くう姫級…か」

 

 

 

 

 




次回

ドイツ艦娘達が居る日常

分かる人分かりますがゲームの方で出てきた欧州棲姫です
作戦名 西方再打通 欧州救援作戦で登場致しました!



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ドイツ艦娘の居る日常

「にしても、ここは人気(ひとけ)がないのね」

 

 

「そもそも、ここは最前線だし人は私達だけだ」

 

 

「え!そうなの!?」

 

 

「だから、静かなんだね」

 

 

グラーフ率いるドイツ艦娘達は廊下を歩いており、一通りこの鎮守府に付いて教えてもらい晩御飯を食べるために食堂に向かっていた

 

 

「そう言えば、グラーフここでの補給は皆で取るの?」

 

 

「あぁ、それにここでは補給ではなく食事になる」

 

 

「でも、日本の食事って私達食べれるかなぁ?」

 

 

「納豆……臭いって聞いてる」

 

 

「はは、U-511多分今日は出ないぞ

アトミラールの作る食事はかなり旨いからな皆気に入るさ」

 

 

「「「え?」」」

 

 

その言葉を聞いた瞬間ビスマルク達は、立ち止まってしまい呆然としているとグラーフが振り返り首を傾げる

 

 

「……どうした?三人共?」

 

 

「どうしたもないわよ!!アトミラールが作ってるの!?ここの食事は!!」

 

 

「そうだが?何か変か?」

 

 

「いやいやいや!!そう言うのは私達、艦娘の仕事かバイトとかの仕事だよね!?」

 

 

「あー、そう言えばそうだったな

だが、ここではアトミラールが作るんだ

味は私が保証しよう」

 

 

「しかも、美味しいの…?」

 

 

「あぁ、ここで食事をすると正直ドイツに帰りたくなくなるほどにな

ビスマルク達は耐えられるか?」

 

 

グラーフはそう言うと食堂にたどり着くと扉を開くと既に全員集まっており晩御飯の準備を始めている

 

 

「あら?遅かったじゃないグラーフ」

 

 

「すまない、少し案内に時間が掛かってな」

 

 

「ここが、ジャパニーズ食堂……」

 

 

「どうぞ、皆さんゆっくりしてくださいね!」

 

 

「ダンケ!御姉様、U-511、グラーフ!座ろ!」

 

 

古鷹に案内されるとビスマルク達は、席に座るとライ麦パンとご飯が差し出される

 

 

「今日はうちの鎮守府での食事を楽しんでいってくださいね?」

 

 

「ふっふっふー!ここでのご飯は絶品ヨー!」

 

 

「こらー、金剛ー、勝手に俺のハードルを上げるんじゃねーよー

ごめんね、ビスマルクさん達

ドイツ料理はやったことなくてね、少し位しか出来なかったよ……」

 

 

「いえ!アトミラール作ってもらえるだけでも光栄だわ!」

 

 

すると佐渡は厨房から幾つかの料理を持ってくる

本日のメニューは、ポトフ、シチュー、シュニッツェル(カツレツ) ヴルスト、唐揚げ、煮魚、野菜の漬物、サラダとその他多くのメニューが並べられていくとビスマルク達は唖然としている

 

 

「んー、こんなもんかな?ビスマルクさん、足りますかね?」

 

 

「いやいやいや!!アトミラール!こんなに作ったの!?」

 

 

「いやー、ビスマルクさんは戦艦だと聞いては良く食べると思ったのですが……」

 

 

「いや、あんたこれは流石に作りすぎじゃない?」

 

 

いつもの倍ほどの料理に流石に小笠原面々も頬をかきながら焦っている

 

 

「まぁ!保存は効くから!!」

 

 

「いや、提督そう言う事ではないと思いますが……」

 

 

「駄目よ古鷹さん、この馬鹿提督は作るのが好きなだけですよ」

 

 

「司令官……作るの好きなのは分かるけど…」

 

 

「流石に多いネ……」

 

 

「まぁ!とりあえず!!

ほら、手合わせろ!!」

 

 

佐渡の合図に全員手を合わせているとビスマルク達が分からずグラーフが教える

 

 

「頂きます!」

 

 

「「「「「「いただきます!」」」」」」

 

 

「「「い、いただきます?」」」

 

 

 

 

 

 





次回

ドイツ艦娘と晩御飯

少しのんびりとした話が続きます
お許しを!!



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ドイツ艦娘の居る日常 二

合図と共に全員はそれぞれおかずに手を伸ばしていき色々と食事をしていくがビスマルク達は困惑していた

 

 

「ね、ねぇグラーフ

ナイフとフォークはあるかしら?」

 

 

「ん、あぁすまない

……はい、これで良いか?」

 

 

グラーフは、戸棚からナイフとフォークを取り出しビスマルク達に渡していくと受け取り食べようとするのだが

 

 

「……お姉さま、一杯ありますね

しかも、全部暖かそう…」

 

 

「…そうね、ドイツのお昼補給より多いわ」

 

 

 

「……凄い、日本とドイツ違うね…」

 

 

三人が手をつけずにいると佐渡が気付き心配する

 

 

「あれ?三人共、もしかしてお腹空いてなかったですか?

それとももしかして、気に入らなかったですか……

すみません…料理下手で……」

 

 

「あ!いえ!違うのよ!アトミラール!!」

 

 

「アトミラール、向こうでは昼はしっかり食べるが夜はパン等の冷たい食事なのだ

日本とは違って保存食が多く合理的な食事なんだ」

 

 

「あ、そうなんだ

知らなかった……」

 

 

グラーフが、説明していると親方達妖精がポトフの皿をビスマルク達に持ってくる

 

 

「よう!ドイツ艦娘達!俺は工厰の責任者

親方妖精だ!」

 

 

「グーテンアーベント、私達はビスマルク、プリンツ、U-511よ

よろしく親方さん」

 

 

「おう!よろしくな!

ここじゃ直ぐに晩御飯なくなっちまうからな!

早めに手をつけな!!

このポトフは誰にも手を付けさせてないからな!好きに食え!

食べるんじゃねぇぞ!!そこの食いしん坊二人!!」

 

 

「人の食べ物取るほど食いしん坊じゃないわよ!!」

 

 

「そうデース!!私そこまで提督の料理に……うん沈んでません!!」

 

 

「本当かぁ?」

 

 

親方に言われると叢雲と金剛はギクッと身体を揺らし反論するが親方に茶化されていると大井達が笑っている

 

 

「食べてみてくれ、美味しいぞここのご飯は」

 

 

グラーフに進められ、ビスマルクは恐る恐る手を付けると勢い良く口の中に運ぶとゆっくりと噛み締める

 

 

「……お姉さま?」

 

 

「…ビスマルク?」

 

 

二人が心配しているが、ビスマルクは無言でいくつもジャガイモを取っていき噛み締めながら笑みを浮かべ頬を押さえている

 

 

「……何よこれ…

美味しいじゃないのよぉ!!」

 

 

その言葉を聞いたプリンツとU-511も次に続きポトフを食べていくと美味しいのか笑みを溢す

 

 

「本当だぁ!!美味しい!!」

 

 

「美味しい…それに味もそこそこに濃いから食べやすい…」

 

 

「ふぅ、口に合ったなら良かったよ…」

 

 

佐渡は安堵の溜め息をするとビスマルクが佐渡に詰め寄る

 

「ねぇ!アトミラール!!ここにあるのいくつも食べても良いのよね!!」

 

 

「え?あぁ、好きに食べなよ?君達への料理だしね?」

 

 

そう聞いたビスマルクは出された料理に次々と手を出していき勢い良く食べたのか喉を詰まらせるとグラーフが慌てて飲み物を渡すと一気に飲み干す

 

 

「美味しいわ!アトミラール!どれもこれも!!」

 

 

「はは、それは良かった」

 

 

「当然だ、アトミラールの作るご飯はどれも絶品だからな」

 

 

「ビスマルクお姉さま!この煮魚と言うのも美味しいですよ!!」

 

 

「うん…シュニッツェルも唐揚げも美味しい…」

 

 

三人が満足してくれたのが嬉しく佐渡もゆっくりと食べ進めていき楽しい晩御飯の時は過ぎていく

 

 

 

 





次回

平和で何にも無い鎮守府

小笠原は平和そのものです



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ドイツ艦娘の居る日常 三

現在、ビスマルク達が来て1日が過ぎ次の日

ビスマルク達は縁側でのんびりと珈琲を片手に休んでいた

 

 

「…平和ね」

 

 

「平和…ですね」

 

 

「お茶菓子美味しい…」

 

 

ビスマルク達は平和と休息を堪能していた

それもそのはず、この鎮守府には特にやることがない

あるとしても家事位の為それも古鷹とイムヤが専門的にやってるため本当に何にもないのだ

 

 

「……ねぇ、プリンツ

今戦争してるのよね?」

 

 

「……はい、しているはずですよ

お姉さま」

 

 

「……これ、本当に戦争してるの?

何よこれうちと全く違うじゃないの!!」

 

 

ビスマルクは、珈琲を縁側に叩き付けると立ち上がり鎮守府内へと向けて歩いていく

 

 

「お姉さま!どちらへ!?」

 

 

「アトミラールの所よ!!

こんなんじゃいつ敵が来てもーー」

 

 

すると、ガラッと部屋を開けられ目の前にグラーフと大井が現れ驚きの余り少し後退る

 

 

「うん?どうしたビスマルク?」

 

 

「あ!グラーフ!!ねぇちょっとこれはどういうーー」

 

 

と言いかけた瞬間にグラーフが抱いているものを見ると驚き腰を抜かす

 

 

「ちょ!ちょちょ!!」

 

 

「ん?どうかしたのか?ビスマルク」

 

 

ビスマルクの反応が気になり二人もそれを見るがプリンツは指を指しながら唖然としているがU-511は「おー?」と言っている

 

 

「どうかしたもないわよ!!

何でここに深海棲艦が居るのよ!?」

 

 

「あ、うんやっぱりそう言う反応だよな

私は間違ってないよな?」

 

 

グラーフは、イーちゃんを抱き抱えておりそれを見ながら二人は驚きながらも戦闘体制を取っている

 

 

「まさか!!ここは深海棲艦の白地!?

成る程!それなら私達を泊めたのもご飯が美味しいのも平和なのも納得です!!

今すぐ艤装を……」

 

 

「あ、いやそうではないんだが…」

 

 

「いや、グラーフさん普通は無理だと思いますよ?

私も確かに敵なのに何故鎮守府に招いているのか…」

 

 

「あ、こんなところに居たんですか皆さん」

 

 

佐渡がその後ろからケーキを持って現れるとビスマルクとプリンツが警戒する

 

 

「出たわね!!アトミラール!!」

 

 

「貴方!!私達をどうする気なんですか!?」

 

 

「………ん?どゆ状況これ?」

 

流石の佐渡も状況が分からず困惑しているとグラーフの胸に抱いているイーちゃんとそれを睨んでいる二人を見て納得するととりあえずグラーフにイーちゃんを下ろさせケーキを持たせる

 

 

「ふふ、フハハハハ!!!バレてしまったか!!

そう、ここは我々の拠点だ!

バレてしまっては仕方ない!!私と勝負してもらおうか!?」

 

 

「な、何ですって!?」

 

 

「私達に勝てると思ってるのですか!?」

 

 

「なぁに、貴様らの艤装は我々が預かっている!!

今の貴様らはただの小娘同然よ!!

だから、これで勝負しようではないか!?」

 

 

すると、佐渡は戸棚からオセロを取り出すと机に置き座る

 

 

「さぁ!!貴様らドイツ艦娘達も座るがよい!!」

 

 

「な、何よこれ?」

 

 

「フフフ、これはオセロだ

説明するとだな……」

 

 

佐渡はビスマルクとプリンツにオセロのやり方を教えていっている間に大井は新しく机を取り出しそこにケーキを置くように指示する

 

 

「何か始まったぞ大井」

 

 

「さぁ?いつもの暇潰しの芸でしょ

さ、食べましょ」

 

 

すると大井は、ケーキを6等分にしそれぞれ手渡していくがプリンツとビスマルクの分は残しておく

 

 

「ねぇ、グラーフ

この子は深海棲艦だよね?敵じゃないの?」

 

 

「あぁ、だが敵意が無くてな

ここでペットとして飼ってるらしいんだ」

 

 

「本当は、駄目なんですけどね

この子には色々と助けられてますからね」

 

 

U-511はイーちゃんを恐る恐る触るがイーちゃんは身動きせずにその手を待ち身を任せている

 

 

「……本当だ、なにもしてこないね」

 

 

「なれれば可愛い物だ」

 

 

グラーフ達がのんびりしている間に説明が終わったのかビスマルクと佐渡が向かい合う様に座っている

 

 

「フッフッフ!!私に勝てたらグラーフを返し貴様らも安全にドイツに送り届けよう!!」

 

 

「よーし!負けないわよ!!」

 

 

「お姉さま頑張って!!負けちゃ駄目ですよ!!」

 

 

「グラーフどっちにかける?」

 

 

「…ビスマルクには、悪いがアトミラールだな

勝負事でアトミラールが負けたところをみたことがない」

 

 

「そんなに強いの?あの人?」 

 

 

「えぇ、かなりね

天才って言われるほどでもあるわ」

 

 

こうして、ビスマルクVS佐渡のオセロ対決が始まった

 

 

 

 

 





次回

ビスマルクVS佐渡

佐渡さんも暇ですからねぇ……
ついついやりたくなってしまうんですよね




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ドイツ艦娘の居る日常 四

しばらくしてビスマルクと佐渡との対決は長丁場を迎えていた

それもそのはず、ビスマルクは大の負けず嫌い

それに加え佐渡は基本的こういう勝負事には負けたことがない

つまり終わりが見えないのだ

 

 

「はい、盤面数は俺の方が多いね」

 

 

「悔しいわ……」

 

 

「ほい、ビスマルクさんチェックメイト」

 

 

「ぐぬぬぬぬ!!!」

 

 

「はい、王手」

 

 

「ぬぬぬぬ!!!」

 

 

「ほい、俺あーがり!」

 

 

「何でよぉ!?」

 

 

「はい、それダウト

俺終わりね」

 

 

「うぅ……」

 

 

「ほいっと、ブラックジャック

俺の勝ちー」

 

 

「ぬぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

ビスマルクは佐渡に何度も挑戦するが一向に勝てる気配が無くU-511の膝の上ではイーちゃんが眠り

のんびりと三人はその戦いを眺めていた

 

 

「そんな……お姉さまが全敗…」

 

 

「ハッハッハ!!これが私の力だ!!」

 

 

「もう一回よ!!アトミラール!!

まだまだやれるわ!!」

 

 

「ほほう?勇ましき者よ?まだ諦めぬか

我に勝てるわけないと言うのに……」

 

 

佐渡は完全に勝ち誇りビスマルクは半泣きになりながらも果敢に佐渡に向かっていく

 

 

「凄い……アトミラール

12戦12勝 完勝」

 

 

「容赦ないわね本当に」

 

 

「相変わらずだな、アトミラール」

 

 

三人はのんびりとしながら、その光景を見ていると外から声が聞こえる

 

 

「ヘーイ!提督ー!

叢雲が川で鮭取ってきたよー!」

 

 

「お、マジ?それじゃ夜ご飯はホイル焼きかな?」

 

 

「司令官、何してるのよ?」

 

 

「ん?ビスマルクさんと勝負」

 

 

金剛と叢雲は、捕まえた鮭を外に置きっぱなしにすると中に入ってきておりその光景を見ている

 

 

「戦績は?」

 

 

「俺が負けるとでも?」

 

 

「それもそうね」

 

 

「相変わらず容赦ないネー……」

 

 

「ぐぬぬぬ……こうよ!!」

 

 

「ほい、んじゃ王手ね」

 

 

「嘘でしょ……」

 

 

「お姉さま!!しっかりしてください!!」

 

 

ビスマルクは全敗しており最早打つ手なしと言うほどになってしまい真っ白になりつつある

 

 

「ちょっとやり過ぎたかな?」

 

 

「アトミラール、ビスマルクは負けず嫌い何だ

あんまり苛めてやるな」

 

 

「向かってくるなら全力で叩くまでだぞ?」

 

 

「提督ー、こちらに居ますかー?」

 

 

佐渡とビスマルクの勝負の最中古鷹とイムヤが部屋に入ってくる

 

 

「んー?どった古鷹?」

 

 

「大本営の大淀さんからお電話が来てますよ?」

 

 

「何したのよ?司令官?」

 

 

「……全く覚えがないな

何だろ?

あ、叢雲パース」

 

 

「えぇ……私こう言うのはあんまりやらないんだけど?」

 

 

佐渡は叢雲の手を叩くと部屋を出ていき古鷹と共に歩いていきイムヤは部屋に入る

 

 

「何々?何してるの?」

 

 

「アトミラールがビスマルクを負かしてたんだ」

 

 

「あー……あの無理ゲーね…」

 

 

実はこの鎮守府全員は佐渡に勝負を挑んだことがあるのだが一度として誰も勝ったことがないのだ

 

 

「え?そんなに強いんですか?アトミラール?」

 

 

「アイツはここでは無敗よ」

 

 

プリンツが聞いてきた為全員がその勝負を話す

 

 

「私は将棋で」

 

 

「私はトランプ」

 

 

「私はオセロデース」

 

 

「私は対戦ゲームよ」

 

 

「で、私がチェスだ」

 

 

「それで無敗なんですか……

凄いんですねアトミラール…」

 

 

プリンツが感心しているとビスマルクが目覚め周りを見る

 

 

「アトミラールは!?」

 

 

「あ、お姉さま!アトミラールなら先程電話をしに……」

 

 

「何ですって!?

勝ち逃げは許さないわよ!!アトミラールゥゥ!!」

 

 

ビスマルクは、部屋を出ていくと佐渡を追いかけ廊下に出ていくと「どうしたの!ビスマルクさん!?」「勝ち逃げは許さないわ!!」等の声が聞こえプリンツ達も叢雲達も笑い始める

 

 

「ここは平和なんだね!グラーフ!」

 

 

「あぁ、騒がしく楽しい平和な鎮守府なんだここは」

 

 

 

 





次回

帰国するドイツ艦娘

次回でビスマルク達の休暇は終わりです



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ドイツ艦娘の居る日常 五

「にしてもあっという間だったわここでの生活は」

 

 

「そうですね……でも良い休暇でしたね」

 

 

「うん……楽しかった…」

 

 

二日後ビスマルク達は帰るために艤装を纏い防波堤にて佐渡達に別れの挨拶をするために海上に立っていた

 

 

「もう少し居たらいかがですか?

うちはいつまで居ても構いませんよ?」

 

 

「そうもいかないわ!!

仕事があるもの!!

でも、また来ても良いかしら?」

 

 

「それは勿論!うちはいつでも歓迎しますよ!

グラーフも喜びますし」

 

 

「それは嬉しいわ

では、今度は大型の休みを取って来ようかしら?」

 

 

ビスマルクと握手を交わすと、グラーフがそう言えばと言い質問する

 

 

「そう言えば、ビスマルク

Z3 (マックスシュルツ)Z1 (レーベヒト・マース)はどうしたんだ?」

 

 

「……マックスとレーベはね」

 

 

ビスマルクが一気にその質問に顔を曇らせる

すると慌ててプリンツがそのフォローに入る

 

 

「え、えっとね!マックスとレーベは今回別任務中なの!!だから今回は来れなかったんだ!!」

 

 

「何だそうだったのか……

残念だ、彼女達にもここの暮らしを体験してほしかったのに…」

 

 

佐渡はその様子が気になりU-511に話を聞くため呼び寄せる

 

 

「マックスさんと、レーベさんはどうかしたの?」

 

 

「実はねーーーー」

 

 

「……そうだったんだ」

 

 

「うん、でも沈んではないみたいなの

だからビスマルクは探しているんだ」

 

 

「分かったこっちでも何かあったら、連絡するよ」

 

 

「ダンケ、アトミラールありがとう」

 

 

U-511から事情を聞いた佐渡はビスマルクを呼び寄せると耳元で囁く

 

 

「ビスマルクさん、事情は聞きました

こちらでも調査しておきます

何かあったらご連絡しますね」

 

 

「えっ!?良いの?」

 

 

「構いませんよ、貴女達はグラーフの友人です

助け合うのが筋ですよ」

 

 

ビスマルクはその言葉に涙を目頭に溜めながら佐渡を抱き締める

 

 

「おう!ビスマルクさん!?」

 

 

「ダンケ!!!アトミラールダンケ!ダンケ!」

 

 

とりあえずこのままだと大井達に殴られる可能性があるためビスマルクと連絡先を交換すると別れの握手を再び交わす

 

 

「では、また来てくださいドイツ艦娘の皆様

今度はもっとゆっくりしてくださいね?」

 

 

「えぇ、そうするわ!

グラーフをよろしくお願いねアトミラール」

 

 

「任せてください

彼女は俺が叢雲達が必ず守ります」

 

 

握手を交わし終わるとビスマルク達は離れていき全員で別れの挨拶を交わしながら手を振るう

 

 

「また来てくださいねー!!」

 

 

「ヘーイ!ビスマルクー!今度は勝負するデース!!」

 

 

「えぇ!!金剛!そうしましょ!!」

 

 

「また来ますねー!!」

 

 

「プリンツさーん!今度お菓子の作り方教えますからねー!」

 

 

「U-511さーん!!今度遠くまで泳ぎに行こうねー!!」

 

 

「うんー!!またねー!!」

 

 

しばらくするとビスマルク達は水平線へと見えなくなっていくと叢雲達はゆっくりと鎮守府へ向けて歩いていくのだがグラーフに佐渡は止められる

 

 

「アトミラール」

 

 

「ん?何だ?」

 

 

「ダンケ、いやありがとう

貴方のお陰でまたビスマルク達に会えた」

 

 

「んー?俺はなんもしてないさ?」

 

 

「謙遜するな、貴方が私を救ってくれたからこそ私はここに居られるのだからな」

 

 

「そうだっけかー?覚えてないやー」

 

 

アハハと笑いながら歩いていくのだが、グラーフに服を引っ張られ真面目な顔をされる

 

 

「……マックスとレーベは沈んだのか?」

 

 

「………やっぱり聞いちゃう?」

 

 

「あぁ、教えてくれアトミラール

彼女達はどうしたんだ?」

 

 

佐渡は、グラーフに向き直ると真面目な面持ちになりながらその内容を話し始める

 

 

「…実はな、マックスさんとレーベさんはなーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「楽しかったわね、小笠原鎮守府」

 

 

「はい!お姉さま!また行きたいですね!!」

 

 

「うん、楽しかった…」

 

 

ビスマルク達は海上を走りながら雑談を交わしていた

するとU-511がビスマルクを見上げながら答える

 

 

「……アトミラールにマックスとレーベの話をした」

 

 

「U-511!何で話したの!?」

 

 

「…えぇ聞いたわ」

 

 

「協力してくれるってビスマルク良かったね」

 

 

「……えぇ、あの人は本当に良い人ね

グラーフを助けてくれて更に私達すら助けようとしてくれる」

 

 

「ですが、お姉さま……マックスとレーベは…」

 

 

ビスマルクは航行を辞めると、真っ直ぐハワイ諸島の方角を睨み付けると拳を握り締める

 

 

「……私達を逃がすために囮になってくれたのは分かる

でも轟沈してないとするなら…どこかで生きてるはずよ…」

 

 

マックスとレーベは、ドイツ艦隊が飛行場姫の縄張りに誤って入ってしまいその際敵の大艦隊に襲われビスマルク達を逃がすために囮になったのだがその後行方不明になっていたのだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「必ず見付けるからね……二人とも……待っててね」

 

 

そう固く決意をしながら、ビスマルクは拳を更に握り締めた

 

 

 






次回

新章  嵐の前の静けさ


次回から新章突入!!
そして、小笠原鎮守府が大ピンチに襲われます!
正直ここから四章連続で凄い書きたかったんですわぁ!

因みに、最後のマックスとレーベは登場予定
大きな伏線となってですがね



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第七章 提督ヲ狩ル者
大本営からの召集


ビスマルク達が帰った後時は流れ10月の上旬

佐渡達は

 

 

「これが薪か……暖かいな…」

 

 

「グラーフ、そんなに近づくと服が燃えるわよ?」

 

 

「ヘーイ!提督ー!今日は何するのー?」

 

 

「んー?焼き芋でもやろうかなとね?」

 

 

「良いわねぇ!焼き芋甘くて美味しいのよね!!」

 

 

「もう!叢雲ってば食べ物ばっかり!」

 

 

「そう言う古鷹さんも焼き芋大好きなんでしょ~?」

 

 

拾った落ち葉で火を焚きながら縁側に座りのんびりとしていた

本日も快晴、周辺海域特に何も無し

平和な小笠原鎮守府

 

 

「秋はこれが出来るのが良いよなぁ

グラーフは焼き芋初めてか?」

 

 

「う、うむ食べたこと無いな」

 

 

「えー!グラーフ食べたことないの!?

あんたかなり人生損してるわよ……」

 

 

「そこまでなのか!?」

 

 

「でも、美味しいですよね焼き芋」

 

 

全員薪で暖まりながら火が小さくなるのを待っていると「そろそろかな?」と佐渡が言うと落ち葉の中からがさごそとアルミホイルに巻かれた芋をそれぞれ皆に渡していく

 

 

「熱いから気を付けろよー?」

 

 

「「「「はーい」」」」

 

 

各々アルミホイルを破り芋を割るとそれぞれ食べ始める

 

 

「やっぱり秋と言ったらこれよねー!」

 

 

「美味しいですよね!焼き芋!」

 

 

「これが焼き芋か……」

 

 

グラーフも恐る恐る焼き芋を口に含むとその甘さと柔らかさに驚きながらも美味しく食べている

 

 

「確かに…これは納得する美味しさではあるな…」

 

 

すると佐渡の携帯が不意に鳴り出し電話に出る

 

 

「はいはい、こちら小笠原鎮守府提督 佐渡です」

 

 

『佐渡提督、お久しぶりです大淀です』

 

 

「おー、大淀さんどうかしましたか?」

 

 

佐渡は、焼き芋を縁側で食べていると大井達がはしゃいでおり部屋の中に入っていく

 

 

『相変わらず楽しそうですね?

グラーフさんはいかがですか?』

 

 

「えぇ、良い娘ですよ

前向きに真っ直ぐに真面目な可愛い艦娘です」

 

 

佐渡は、グラーフへ向きなおると叢雲達と笑い合いながら焼き芋を食べており微笑む

 

 

『それなら良かったです

やはり貴方に任せて良かったです』

 

 

「で?そんな話ではないんですよね?」

 

 

『お察しがよろしいですね

佐渡提督この後何かございますか?』

 

 

「いんや、全く?」

 

 

『でしたら、大本営までご足労お願いできますか?』

 

 

その言葉を聞くと嫌な予感しかせず、溜め息をつく

 

 

「分かりました、では叢雲と大井で……」

 

 

『あ、いえ叢雲さんだけでお願いします』

 

 

「ん?また何でですか?」

 

 

『少し事情がありましてね、すみませんがお願いします』

 

 

「分かりました、では今から向かいますね」

 

 

佐渡は携帯の電話を切ると叢雲に声をかける

 

 

「おーい、叢雲!

ちょっと大本営行くから付き合え~?」

 

 

「またなの?何かあったの?」

 

 

「大淀さんからでな

大本営で何かあるらしい」

 

 

「はいはい、分かったわ」

 

 

叢雲は立ち上がるとドッグに向かい佐渡も準備をする

 

 

「古鷹、大井、後は頼んだ」

 

 

「分かりました、何かありますか?」

 

 

「いや、特にはない

留守を頼んだぞ」

 

 

そう言うと佐渡はそそくさと大本営に行く準備を始める

 

 

 

 





次回

不穏漂う大本営

今回は仲間ではなく敵?との対峙です
章で分かる人は分かってしまいますがね……



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大本営からの召集 二

「にしても、相変わらずでっけーよなぁ?」

 

 

「そうね、本当に」

 

 

佐渡と叢雲は大本営の入り口付近まで来ており相変わらず大きい大本営を見上げていた

だが、今日は大本営が少し違うことに気付く

 

 

「………なぁ、叢雲

何か、多くないか?憲兵?」

 

 

「えぇ、やけに多いわね

いつもは一人よね?」

 

 

そう大本営の入り口には六人の憲兵が立っておりそれぞれ男が三人女が三人であり女の一人は何か籠みたいのを持ち男がノート型パソコンを持っている

 

 

「……嫌な予感しかしねぇ…」

 

 

「ほーら、行くわよ司令官」

 

 

佐渡達が大本営に入ろうとする寸前に予想通りに憲兵達に足止めをくらう

 

 

「すみません、海軍の方で間違いありませんが証拠をお見せください」

 

 

「ほいほい、小笠原鎮守府提督 佐渡 満です

はい、免許証と海軍証」

 

 

佐渡は男の憲兵に見せるともう一人がそれをパソコンで検索し頷く

 

 

「ありがとうございます

佐渡大尉お通りください」

 

 

「ほいほい、ご苦労様です」

 

 

そして、佐渡と叢雲は憲兵の間を抜けようとするが叢雲が女憲兵に捕まる

 

 

「すみませんが、叢雲さんはこちらにお願いします」

 

 

「え?」

 

 

「は?待ってくれそいつは俺の秘書艦だぞ?」

 

 

「すみません、佐渡大尉

本日は少し問題がございまして……」

 

 

男の憲兵が佐渡と叢雲の間に入ると女憲兵は籠からあるものを取り出し叢雲の首に取り付けようとすると佐渡はその瞬間銃を取り出し男の憲兵を押し退け女憲兵に銃口を向ける

 

 

「おい、貴様俺の秘書艦に何を付けるつもりだ?」

 

 

「手を上げろ!!佐渡大尉!!」

 

 

瞬間佐渡の周りの憲兵が銃を構え佐渡に向けると籠を持っていた女憲兵は手を上げるとその首輪を落とす

その首輪とは以前村山元帥がグラーフに取り付けようとしていた愛の首輪だった

 

 

 

「良いのか?俺に対してこう言うことをして

死にたくなければ下ろせ、ここで全員殺しても構わないんだぞ?」

 

 

「銃を下ろせ!!佐渡大尉!!!」

 

 

「待ておまえ達!!銃を下ろせ!!

佐渡大尉お待ちください!すみませんこちらが無理矢理過ぎました!!」

 

 

リーダー格であろう憲兵が全員の銃を取り上げると佐渡もゆっくりと銃を下ろす

 

 

「で?説明してくださいよ?」

 

 

「実は、元帥の指示で本日来る艦娘と提督は別室に招くように言われているんです

その際艦娘が暴れられると我々では手の出しようが無いため仕方無く付けるのです

すみません、ご了承ください!」

 

 

佐渡は叢雲を見ると頷くのを確認すると頭を掻く

 

 

「そうですか、それは失礼しました」

 

 

「いえ、こちらも説明不足でしたから

とりあえず、この首輪は付けさせて頂きます

スイッチは我々が厳重に保管致しますのでご安心ください」

 

 

すると叢雲は首を差し出し女憲兵に首輪を付けさせる

 

 

「では、佐渡大尉はこちらに

叢雲さんは女憲兵さんに従ってください」

 

 

佐渡は叢雲を心配そうに見るが叢雲は微笑みながら女憲兵に付いていき佐渡と別れる

 

 

「先程は申し訳ありませんでした佐渡大尉」

 

 

「いえいえ、こちらこそ申し訳ありませんでした

にしてもどうしたんですか?こんなに厳重にして」

 

 

「それは、元帥に聞いてください

我々は貴方達を連れてこいとしか言われておりませんので」

 

 

すると佐渡は大本営の異様な空気に気付く

至るところに憲兵が居り辺りを警戒している

(何だ?この警戒は……)

しばらく歩いていくと憲兵達はある部屋にたどり着く

 

 

「こちらにお入りください」

 

 

「えぇ、ありがとうございます」

 

 

すると、憲兵達は振り返り扉の前で整列しており佐渡も扉を開ける

 

 

 

 

 

 





次回

捕まらない犯罪者

大本営も騒々しいですねぇ
まぁある奴が原因なのですが



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大本営からの召集 三

佐渡が部屋に入るとその中には全ての鎮守府の提督達が集められており入った瞬間佐渡へ全員の目が集中する

 

 

「お!佐渡じゃねぇか!!久しぶり!」

 

 

「お久しぶりです、猿橋中佐」

 

 

他の提督と話していた猿橋が佐渡へと歩いていくと肩を組ながらテーブルへと連れていく

 

 

「お前も呼ばれたのか?」

 

 

「えぇ、大淀さんに…」

 

 

「やっぱりか

俺もなんだ、何か重要な話があるって言われてな…」

 

 

佐渡は、その話を詳しく聞こうとすると後ろから背中を叩かれ振り返るとそこには

 

 

「やぁ!佐渡君!久しぶり!」

 

 

「おぉ!石澤さん!!」

 

 

沖縄鎮守府提督石澤であった、どうやら彼も呼ばれたらしく佐渡達の会話に入ってきたのである

 

 

「にしても、これは何の集まりなんですか?」 

 

 

「あれの話らしいよ、佐渡君」

 

 

「あ、葛城さん!」

 

 

「やっほ、久しぶり!元気してた?」

 

 

その横から葛城が顔を出すと佐渡と握手を交わし話しに参加する

 

 

「あれってのは?」

 

 

「まぁ、恐らくは提督殺しだろうな

あいつまだ捕まらないらしい」

 

 

「それに、どうやらかなり活発的に殺してるらしいからね……」

 

 

「かなりの被害らしいわ

尻尾すら掴めないらしいわよ」

 

 

「そこまでなんですか……」

 

 

「全員、揃ってるな!!

すまないが席に座ってくれ」

 

 

 

佐渡達が話していると憲兵に連れられ元帥が部屋に入ってきており手を叩くと各々提督達は席に座るのを確認するとボタンを押し部屋を暗くする

 

 

「急に呼び出してしまい申し訳ない

今回呼び出した内容は、君達の命に関わるためだからだ」

 

 

すると唐澤が手をあげ発言する

 

 

羽田(はねだ)元帥、もしかして提督殺しですか?」

 

 

「その通りだ、唐澤大将」

 

 

元帥改め羽田は、ボタンを押すとスクリーンに今までの提督殺しが殺した人間の写真と犯行の詳細を映し出す

そして映し出された人間の一人に佐渡は驚く

 

 

「つい昨日、村山元帥が亡くなった」

 

 

その言葉に部屋の中に居る提督達はざわめく

村山元帥はグラーフや他の艦娘を私物化していたと言うことがバレており海軍刑務所に収監されていた

 

 

「昨日、海軍刑務所からの報告でな

死因は毒殺

何故か村山元帥の食事の中にだけ青酸カリが混ぜられていたらしく

殺されたらしい」

 

 

「元帥、それは海軍刑務所に提督殺しが侵入したと言うことですか?」

 

 

「あぁ、そうだ間違いなくな」

 

 

「何故にそんなことが分かったのですか?」

 

 

「実は昨日、海軍刑務所の刑務官が食糧庫に閉じ込められていたらしく

それが発見され助け出された時に彼は『俺に襲われた!!』と証言しているんだ

これは提督殺しによる独特の手口だ

それに加え村山元帥の情報は遮断していたのに関わらず殺された

奴はどうやらこの大本営にも侵入していたらしくそこから村山元帥の居場所を見付け犯行に望んだと見られる」

 

 

その言葉に、提督達は更にざわめきながらも元帥に指を指しながら怒る

 

 

「どんだけ海軍無能なんだよ!!

殺人犯一人捕まえられないのかよ!!情けねぇな!!」

 

 

「お前はバカなのか?」

 

 

「あぁ!?」

 

 

唐澤は腕を組ながら眼を開けるとその暴言を放った提督を睨み付ける

 

 

「相手は、変装の名人に加え殺しのプロ並みの手口をする正体不明の敵だ

証拠も目撃証言も殺す順番さえ分からない奴をどう捕まえる?

罵倒するならお前は捕まえられるのか

この完全犯罪を何度も繰り返す化け物相手を」

 

 

唐澤に言われると提督達はばつが悪そうな顔をすると再び席に座り始める

 

 

 

 

 

 




次回

苦肉の策

次々と提督殺しに殺されていく海軍の人間達
これは罰なのかそれとも




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大本営からの召集 四

「すまない、唐澤大将」

 

 

「事実を言ったまでです

ですが、今回は他にあるのでしょう?羽田元帥」

 

 

羽田は「あぁ」と言うと今まで殺されてきた人間達が行ってきた犯罪行為をリストに上げていく

 

 

「実は、今回でようやく奴が殺す人間がどんな奴かが判明した

奴は『艦娘兵器派の人間と無下に扱う人間のみ』を殺している

特に優先的に提督達が狙われる傾向があるんだ

しかも、最近奴は見つけると手当たり次第に殺している

大本営は、現在全勢力を持って奴を探しているのだが……」

 

 

羽田は机を悔しそうに叩くと意を決した様子で全員の顔を見る

 

 

「残念ながら奴の尻尾すら掴めない状態だ……

なので、大本営はある決断に達したそれは」

 

 

提督達は息をのみその言葉を待っていると羽田はその重い口を開く

 

 

「……これより三ヶ月間、全鎮守府の艦隊運営を禁止と艦娘達との接触を禁止とする!!!」

 

 

「なっ!!!」

 

 

「はぁ!?」

 

 

「何だと!?」

 

 

「艦隊運営の禁止!?」

 

 

その言葉に提督達は顔を見合わせながら驚きを隠せないでいるが羽田は机を叩き場を制す

 

 

「驚く気持ちも焦る気持ちも分かるが!!

奴を捕まえるまで待って欲しい!

君達を失うわけにはいかないのだ……頼む…」

 

 

羽田が頭を下げると全提督達は顔を見合わせ手を上げる

 

 

「元帥、その間我々と艦娘はどうなるんですか?」

 

 

「君達は長い有給と言うと形と艦娘達は大本営の管理下に置かれる

心配するな、総指揮は私が取る誰にも口出しはさせないさ」

 

 

その言葉に、提督達は安堵のため息と共に長い休暇を楽しもうとするのだが

 

 

「「お断りします(する)」」

 

 

二人の提督が羽田の意見に反対し、その場が騒然となりながらもその反対した二人を見る

反対したのは佐渡と唐澤である

すると佐渡は立ち上がり手を上げる

 

 

「元帥、悪いのですが私はキッパリ断ります

俺はあいつらを守るって決めてるんです

それに小笠原はどうするんですか?」

 

 

「そこは私達が……」

 

 

「それでもです、元帥を疑うわけではありませんが我々の鎮守府は我々が守ります

提督殺し程度が出たところで我々が臆するのはどうかと思います」

 

 

「……珍しく意見が合うな佐渡大尉」

 

 

すると唐澤も立ち上がり、席をしまう

 

 

「提督殺し何て言う殺人鬼一人に我々海軍が臆するのはどうかと思います羽田元帥

私は艦隊運営は辞めません

奴等を根絶やしにするまで我々は戦うべきです

例え、その途中で死んだとしても」

 

 

佐渡はその発言に舌打ちをすると、唐澤と睨み合う

 

 

「駄目だ!!君達の様な、優秀な司令官、提督を失うのはこちらとしてはかなりの損害になるんだ!頼む!!」

 

 

「「お断りします!!」」

 

 

二人は断固としてその態度を取るとため息を付きながらも猿橋が立ち上がると

 

 

「いやー元帥、流石に三ヶ月も艦隊運営禁止と艦娘接触禁止はキッツいわー

大和と会えないと俺それだけで死んじゃいますわー」

 

 

「猿橋少将……」

 

 

「すみません、元帥

私も北上達に会えないのは流石にキツいです

彼女達は私を必要としているんです

それに答えるのが提督ですから」

 

 

「すみませんね、元帥

私達が沖縄も同じで阿武隈や瑞鶴達に会えないとは苦痛です

それにいつユリやケルベロスが来ても可笑しくないですからね」

 

 

「葛城中佐に石澤中佐まで……」

 

 

 

 

 





次回

『提督』ですから

元帥の言うこと聞かない人達ですねぇ
まるで子供()



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大本営からの召集 五

羽田は予想外の反抗に頭を抱えると立ち上がっている五人を見ている

 

 

「何故だ……君達は死にたいのか?」

 

 

「死にたいわけないじゃないですか?」

 

 

「そりゃ、怖いですよ?提督殺し」

 

 

「ターゲットは我々だけですからね」

 

 

「それでも我々は提督です

彼女達にいつも守られています

ですからこの程度で怖じ気付いていては艦娘達に向ける顔はありませんよ!」

 

 

「私は正義を全うするだけです

相手が提督殺しだろうが何だろうがね」

 

 

五人は立ち上がり去ろうとするが羽田が呼び止める

 

 

「分かった!!君達が従わないならそれも良いだろう!だが気を付けてくれ!!

奴は艦娘達にも化けることが出来る!

しばらくは艦娘達にも気を付けて接してくれ!!

そして、死なないでくれ…

我々も全力を上げて奴を見付け捕まえて見せるからな!!!」

 

 

五人の提督達は各々手を振りながら答えていくとゆっくりとその部屋を出ていこうとするが憲兵がその行方を止める

 

 

「すまない、最後に一つお願いがあるんだ

君達に検査を受けてもらう

それが終われば各々帰ってもらって構わない

軽い物だから協力頼む」

 

 

「はいはい、そんじゃ憲兵さんよろしく」

 

 

「こちらになります提督の方々」

 

 

憲兵達は提督達を全員案内していくと羽田は一人この部屋に残り提督殺しの犯罪履歴を見ていく

 

 

「ふーん、元帥の私の言葉に耳を傾けないかぁ?

ふふふ、唐澤と佐渡かぁ……

どちらに向かってやろうかなぁ?」

 

 

羽田?は怪しく微笑むと静かに部屋を出ていきながら怪しく微笑む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ではすみません、ここで検査を受けて頂きます

内容は簡単です、指紋認証、網膜認証、血液検査だけになります

順番は早い順からです

どうぞ」

 

 

すると提督達は列に並んでいきそれぞれ検査を受け始める

 

 

「にしても、佐渡カッコ良かったぜー?あれ」

 

 

「いやいや、流石に小笠原鎮守府三ヶ月も休んだらどうなるか分かりませんしね

あそこ島ですし……」

 

 

「でも、よく元帥に楯突きましたよね?

もしかしたら、首になるかも知れないのに……」

 

 

「それでも、あいつらは俺を必要としてくれているんです

それに出来る限りの答えないとって思ってるだけですよ」

 

 

「それにしても、まさか唐澤大将まで反論するとは思わなかったよな……」

 

 

すると、一番前に居る唐澤を見ると厳格な態度を取りながらも検査を受けている

 

 

「流石は正義の鎮守府提督だよなぁ……

深海棲艦を最も撃破してるだけはあるぜ

提督殺しに一切怯えない姿を見てるとな」

 

 

「そうね……

あそこの秘書艦の長門然り流石は深海棲艦撲滅兼海軍のエースだからね…

恐らく反論するとは思ったけどさ?」

 

 

「そうですね

私は嫌いですが」

 

 

「そう言えば、佐渡は何でーーー」

 

 

と猿橋が言いかけた瞬間憲兵が慌てて入ってくる

 

 

「こちらに!!小笠原鎮守府佐渡提督と舞鶴鎮守府唐澤提督はいらっしゃいませんか!?」

 

 

「うん?」

 

 

「何だ?」

 

 

 

その慌ててる様子に気付き佐渡と唐澤は列を外れ憲兵に歩み寄る

 

 

「どうかしたんですか?憲兵さん?」

 

 

「何だ、どうかしたのか」

 

 

憲兵は息を切らしており佐渡と唐澤の手を取り事情を説明する

 

 

 

「すみません!!貴方方の艦娘が喧嘩をしておりまして!!我々では手に終えないんです!!

助けてください!!!」

 

 

 

その言葉に佐渡と唐澤はお互いを見ながらため息を付く

 

 

「あんの馬鹿……」

 

 

「またか……長門…」

 

 

 

 

 





次回

犬猿の二人

次回は叢雲視点に変更して書かせて頂きます



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大本営からの召集 六

時は少し遡り、叢雲と佐渡が別れさせられた後叢雲は別室に招かれていた

その部屋は別に監禁などに使われる部屋ではなく普通の会議室であったその扉を開けると中には艦娘達が話し合いながら待機していた

叢雲が入ってくると同時に部屋の中に居る艦娘達が一斉に叢雲を見る

 

 

「あっ!叢雲!」

 

 

「叢雲さん!お久しぶりです」

 

 

「あら、阿武隈に大和さん久しぶりです

貴女達も来ていたの?」

 

 

入ってきた叢雲に対し阿武隈と大和が走ってきており側まで来ると三人で話し始める

部屋の中には幾人かの女性憲兵がおり艦娘達を監視している

 

 

「珍しいわね、大本営も堂々艦娘と提督を分けるようになったのかしらね?」

 

 

「いえ、そうではないみたいなんです

先程憲兵さんから事情を聞きまして」

 

 

「どうやら!提督殺しが原因らしいんだって!

何か奴は艦娘の可能性がかなり高いらしいよ?」

 

 

「ふーん?それで私達と提督を分けたのね?」

 

 

叢雲はそう言うと席に座ると大和と阿武隈のその席に座っていくと目の前に長門が腕を組ながら眼を閉じている

 

 

「……チッあんたの居たのね」

 

 

「悪かったな、私もここに呼ばれていてな」

 

 

「『正義の戦艦』様でもここに呼ばれるとは海軍も本当に舐めてるわよね」

 

 

「お前も『雷撃姫』なのにここに呼ばれるとはな私も同感に思うよ」

 

 

「同感に思われるのは屈辱ね

海軍の犬が」

 

 

「同意したくないが私もそう思っていたよ

裏切り者共」

 

 

二人から漂う完全な敵対ムードに阿武隈と大和は縮こまっており二人はひそひそと話し始める

 

 

「あのぉ、大和さん

何でこの二人仲悪いんですかぁ?」

 

 

「この二人はお互いの鎮守府自体が運営方針が違いますからね

長門率いる舞鶴は必ず深海棲艦を殲滅し戦争を終わらせる為に日々戦う鎮守府

対する

叢雲率いる小笠原は基本的に出撃をせず、最低限の事しかしない鎮守府

ですからね、真逆の二人なんですよ」

 

 

「成る程……」

 

 

「でも、そう言うこと以前にあの二人には何かあるみたいですけどね……」

 

 

二人は顔を合わせずにお互い別方向を向いている

 

 

「でも、長門さんって確か沖縄で叢雲を助けたんですよね?」

 

 

「は?阿武隈何それ?」

 

 

その言葉に長門もピクッと反応し叢雲は阿武隈に詰め寄る

 

 

「え、えっと……戦艦棲姫との戦いの時小笠原鎮守府全員が気を失ってその時叢雲を運んだのが長門さんだったって……」

 

 

阿武隈に事実を言われ、叢雲は長門をじぃーと見ているとゴホンッと喉をならす

 

 

「あのまま倒れていては邪魔だからな

仕方なくだ、それに戦果を上げた者がその様では示しにならんからな」

 

 

「でも、長門さんあの時叢雲さんを抱えて誰よりも先に入渠させろって確か詰めよってーー」

 

 

「大和!!!それは言わない約束だろう!!!」

 

 

「へぇ……そーなーんだー?」

 

 

長門は紅くなりながら大和の口を塞ごうとするが叢雲はニヤニヤと笑いながら長門を見ているとイラッと来たのか長門が叢雲を指差す

 

 

「第一!貴様があんな奴如きに倒れるなんぞ情けないと思え!!

九人係で仕留められないとは海軍の恥去らしめ!!」

 

 

「何ですって!?あんたねぇ!最初は三人でやってたのよ!!勝てるわけないでしょうが!!」

 

 

「ハッ!私なら一人だけでも奴を仕留めて見せるさ

流石は裏切り者の提督が指揮する鎮守府の駆逐艦だな!!」

 

 

「もう一度言ってみなさいよ?

あんたぶっ殺してやるわよ!!!」

 

 

「やるか?駆逐艦風情が戦艦の私に勝てるわけないだろう?」

 

 

 

 





次回

小笠原と舞鶴

実はこの二人因縁があるのですがそれはまた別のはなし



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大本営からの召集 七

そう言うと二人はお互い睨み合うとその状況を見た憲兵が急いで佐渡と唐澤を呼び出したのであった

部屋に入ると叢雲と長門がお互いを睨みあっており一触即発の雰囲気である

 

 

「叢雲!何してんだ!」

 

 

「長門!何をやっている!」

 

 

「「司令官(提督)!?」」

 

 

佐渡は叢雲の頭を軽く殴ると叢雲はいじけており唐澤も長門を叱っているが叢雲と長門は相変わらずお互いを睨み付けている

 

 

「はぁ……すみません唐澤大将

うちの叢雲が」

 

 

「いや、恐らくうちの長門だろう

こちらこそすまない」

 

 

と二人は謝るが手を取る様子が見れない以上やはりお互いを敵視しているようだ

 

 

「とりあえず、検査をしてお互い帰るとしようか」

 

 

「そうですね、叢雲早く受けてこい」

 

 

「……ふん!」

 

 

「長門も行け」  

 

 

「……分かった」

 

 

二人は同時に出ていくが顔を合わせず部屋の扉を開けていく

唐澤と佐渡は部屋に居る艦娘達に謝るといそいそと部屋を出ていくと部屋の隅から北上がひょこっと出てくる

 

 

「わーお、凄いものを見たねぇ」

 

 

「あ、北上さん」

 

 

「やっほー大和さんと前髪のあぶ」

 

 

「ちょっと!何ですか!前髪のあぶって!?」

 

 

「あははー、でもやっぱり喧嘩になったか~」

 

 

北上は阿武隈の前髪を弄っていると阿武隈が抵抗しておりそれを楽しんでいる

 

 

「やっぱりって?北上さん何か知ってるの?」

 

 

「んー?まぁ大井っちから聞いたんだけどねー

叢雲と長門さんが同じ部屋に居ると絶対に喧嘩になるから離れておけって言われてたんだー

理由は、何かあるんだってさー」

 

 

「詳しくは分からないんですか?」

 

 

「まぁねー、でも

提督から聞いた話だとかなり闇が深いらしいよあの二人

 

 

「もう!!北上さん触りすぎですよぉ!!」

 

 

「あ、ごめんごめんー」

 

 

前髪を弄られまくった阿武隈は流石に怒り北上の腕を軽く殴っているが大和は心配そうに出ていった二人を見ていた

 

 

「二人に……いったい何が…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く本当に失礼するわ!!」

 

 

「まぁ落ち着けって叢雲様や」

 

 

叢雲はイラつきながら大本営の廊下を歩いており後ろからは女の憲兵達が付いてきている

するとしばらく歩いた後叢雲が立ち止まる

 

 

「あ、司令官ごめん少し良いかしら?」

 

 

「んぁ?あー、了解だ」

 

 

その立ち止まったのはトイレの前でありそれを察したのか佐渡は壁際に立ちながら済ませるのを待っていると他の女性などが入っていくが叢雲は出てこない

(長いな…珍しく……)

佐渡は憲兵さんを見るとコクリと頷きトイレ内に入っていく

すると憲兵さんがすぐに出て来ており

 

 

「ごめん、お待たせ司令官」

 

 

「おう、じゃあ行くか」

 

 

叢雲と共に再び歩き始めしばらくすると大本営の入り口に差し掛かり出ようとすると再び憲兵に呼び止められる

 

 

「叢雲さん、そちら外させて頂きます」

 

 

「あ、忘れてた」

 

 

「おいおい、叢雲……」

 

 

すると、叢雲は首を差し出し愛の首輪を外すと憲兵はその首輪にあるコードを確認し終えると頷く

 

 

「問題ありません、では気を付けてお帰りください」

 

 

「へいへーい、ご苦労様です」

 

 

「ご苦労様です憲兵さん」

 

 

そう言うと叢雲と佐渡はゆっくりと帰路に着いていくと憲兵達も大本営に帰っていく

 

 

 





次回

波乱

次回から本編です!!
さて、小笠原鎮守府がピンチに追い込まれます!!



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破られた平和

次の日、佐渡達は小笠原鎮守府に帰投しておりそのまま大本営での会議内容を話すと全員が色々と言っては居たが結局は「提督は守る」と言う意見に固まりいつも通りに運営をすることに決まった

 

 

「にしても、提督殺しかぁ……

なぁ、大井さんやうちに来ると思う?」

 

 

「さぁ?でも無いんじゃないですか?

ここは犯罪者達や使えない艦娘が来る場所ですよ?

ありえませんよ」

 

 

「何それフラグ」

 

 

「辞めてください、本当に来たらどうするんですか」

 

 

「そうだぞ、アトミラール」

 

 

「へいへい……」

 

 

佐渡は渋々返事を返すと目の前の書類整理をしていくと部屋の扉がいきなり開き金剛が入ってくる

 

 

「へーい!提督ー!!

大事な話って何デースか!?」

 

 

「…………は?何の事?」

 

 

いきなりの金剛が来たことに驚きながらも大井とグラーフを見るが二人とも首を降ったり傾げたりしている

 

 

「What?提督が私に言ったんじゃないデースか?

大事な話があるから提督室に来てほしいって」

 

 

「はぁ?んなこと言ってないぞ?」

 

 

と佐渡と金剛が話していると次は叢雲が提督室に入ってくる

 

 

「ちょっと大井ー?大事な用って何?」

 

 

「え?何の事?」

 

 

「何の事ってあんたねぇ……

ついさっき廊下で会ったじゃない?

何か模擬弾と演習の日程がどうたらこうたらって」

 

 

「え……私、叢雲に会ってないよ?

ずっとここで事務仕事してたわよ?」

 

 

すると次に古鷹が入ってくるとグラーフに詰め寄る

 

 

「グラーフさん!!洗濯物は私に渡さないで、洗濯室に置いてください!」

 

 

「え……古鷹、私そんなことした記憶ないぞ?」

 

 

「もう!さっき廊下を歩いていたら私に『仕事が忙しいからすまないが頼む!!』って押し付けてきたじゃないですか!!」

 

 

「待ってくれ!古鷹

私はそんなことしていないし、洗濯物等無いぞ?

演習もしてないし、私はここにずっといたし……」

 

 

佐渡と大井とグラーフは顔を見合わせながら全員に弁解するが全く分かろうとしない

 

 

「じゃあ、誰デースか?一体?」

 

 

「いや、知らんがな……

でも、俺じゃねぇな」

 

 

「全く、じゃあ何私の場合は誰かがイタズラで大井に変装したの?」

 

 

「いや、暇だからってそんなことするとは……」

 

 

「でも、あれはグラーフさんでしたよ?」

 

 

「信じてくれ!古鷹!私はそんなこと決してしない!!」

 

 

全員が唸っているとイムヤがひょこっと顔を出す

 

 

「ちょっと司令官ー?良いかしら?」

 

 

「え、何?お前も俺とか誰かに何かいわれたの?」

 

 

「え?何の事?私はずっとイーちゃんと居たよ?

ねぇ?」

 

 

足下に居たイーちゃんは頷くとイムヤの足下からソファに移動する

 

 

 

 

 

 





次回

こんにちは

次回で今回の内容が判明します!




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破られた平和 二

「違うのか……じゃあ何だ?イムヤ?」

 

 

「あぁ、ごめん何か封書が届いてたよ?」

 

 

「封書?この鎮守府にか?」

 

 

「うん、ほら佐渡提督へって書かれてるよ?」

 

 

「どれどれ……?」

 

 

佐渡はイムヤから封書を貰うと誰からの差し出しか調べるために裏面を見たりするが表面に『小笠原鎮守府 佐渡 満へ』としか書いておらず差し出し人が誰か全く分からない

 

 

「差し出し人の名前がないな……誰だ?」

 

 

「ですがそれ、海軍の物ですよね?」

 

 

「何でそんなこと分かるんデース?大井?」

 

 

「この切手です

これ大本営が、提督達へ送るときに使う特別な切手何ですよ

ですが、何でここに封書何てものが……」

 

 

大井の言うとおり、封書の右上には切手が貼り付けれてありそこには軍艦の絵と大本営の判子が押されている特別な物である

 

 

「まぁ、海軍の物なら安心して開けられるな

だが、大井今日大本営からこんな封書が送られるなんて聞いてたか?」

 

 

「いえ?私はそんなことは?

グラーフは?」

 

 

「いや…私も聞いてない……」

 

 

「お前達、誰か艦娘が来た形跡はあったか?」

 

 

佐渡が叢雲達に聞くが全員首を横に降りそれを否定すると佐渡は頭を掻きながら悩んでいる

 

 

「あんたねぇ……ちゃっちゃと開けなさいよ!」

 

 

「んー、まぁそうだな

いつまでも悩んでいても仕方ないよな……」

 

 

佐渡はそう言うと、封書の中身を開けると六枚の写真と一枚の紙が出てくる

 

 

「写真?と手紙かこりゃ?」

 

 

写真の中身を見るとそこには

叢雲、古鷹、大井、金剛、イムヤ、グラーフの六人が写っているが周りに景色などは写り込んでおらずどうやら証明写真の様だ

 

 

「提督?何が入ってたんですか?」

 

 

「ん?写真、お前達のな」

 

 

「あら、懐かしいわね

大本営で撮られた証明写真ね」

 

 

「あーそう言えば私も撮られましたネー!

懐かしいデース!」

 

 

「あれ?でも何でグラーフのがあるの?

グラーフは……」

 

 

「いや、これはドイツで撮られたものだ村山元帥に送るために工廠の連中が無理矢理撮ったんだ

まさかお目にかかれるとはな……」

 

 

六人がそれぞれ写真に見ていながら話を弾ませている一向で佐渡は無言でもう一つの手紙を見ていた

 

 

「……………………マジか」

 

 

「へーい?提督?どうかしたの?」

 

 

「ちょっと司令官?どうしたのよ?」

 

 

「提督?具合でも悪いのですか?」

 

 

「やべぇ……まさかとは思ったが

最悪だ……

見てみろ」

 

 

佐渡から渡された手紙の内容を見ていくと六人全員がその内容に絶句し各々衝撃を受ける

 

 

「嘘でしょ……」

 

 

「まさか……」

 

 

「どうしてよ……」

 

 

「そ、そんな…」

 

 

「何で……何でよぉ!!」

 

 

「嘘だ……何故アトミラール何だ!!!」

 

 

その手紙の内容は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『小笠原鎮守府提督 佐渡 満へ

 

こんにちは、私は提督殺し

 

ゲームをしましょう?

 

この六人の内一人に私は化けているわ

見つけてみなさい

貴方達の信頼が本当ならね?

期限は五日後の00∶00

それまでに見つけられなければ

 

 

貴方を殺すわ

 

 

さぁ、ゲームスタートよ』

 

 

今海軍を騒がせている提督殺しからの挑戦状、そして佐渡を殺すと言う予告状だった

 

 

 

 

 

 




次回

最悪の敵

小笠原鎮守府は信頼によって出来ている
それを壊す提督殺しは最悪の敵ですよねぇ



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ゲーム

「…………どういうこったこれは…」

 

 

「私達…」

 

「六人の中に…」

 

「一人だけ…?」

 

「偽物が…」

 

「混じっている…」

 

「だと…?」

 

叢雲達はお互いの顔を見ているが特段変わった所はないむしろいつも通りでありだが、すぐに大井が行動を起こす

 

 

「提督、今すぐに大本営に報告しましょう!!

提督殺しが初めて予告をしてきたんです!これを報告すれば……」

 

 

「駄目だ、そんなことしたら奴は確実に俺たちを殺す

それに誰かが奴に捕まっているんだろ?

下手に動けばそいつすら殺されかねない」

 

 

「ですが!!」

 

 

「へーい?大井ー?今日は妙に積極的に提督に詰め寄るデースね?」

 

 

「……何?金剛、何が言いたいの?」

 

 

金剛は大井を怪しむような眼で見ながら指を指す

 

 

「貴方が『提督殺し』何じゃ無いデースか?

それに今、『初めて』って言いましたよネー?

なーんでそんなこと知ってるんデースか?」

 

 

「はぁ?私は提督殺しに対してある程度は調べただけですよ?

その中に予告して殺す何て言った事はしたことないんですよ

でたらめ言わないでください!!」

 

 

「強く否定する所も怪しいデース……」

 

 

「辞めろ!金剛!!疑心暗鬼になるな!!」

 

 

佐渡は金剛を怒ると顔を俯きながら身体を震わせている

 

 

「だって……提督ー…

提督殺しは確実にそのターゲットを仕留めるんですよね……?

私、嫌デース…ここは私がやっと来れた場所なんですよ?……

もう、失いたく無いんですよ!!!」

 

 

そう言うと金剛は佐渡に勢い良く抱き付くと頭を撫でてあげる

 

 

「すまん、だが無意味に疑っても仕方無いさ

とりあえず整理しよう」

 

 

全員はソファに座ると写真と文章を広げお互いを見ている

 

 

「……この六人の中にいる…

つまり容疑者はこの六人か……」

 

 

佐渡は改めて六人を見るが特段変わった所もないし、変な様子もないいつも通りの六人だ

 

 

「うん!分からん!!

良し!じゃあ提督殺しさん!今ならこの事無かったことにしてあげるから手を上げて教えて!!」

 

 

「そんなんで答える訳無いでしょうが!!」

 

 

「いてっ!!」

 

 

佐渡がボケると見事に突っ込んでくる大井を見ながらやはり特段変わった様子もない

 

 

「アトミラール、名案があるんだ」

 

 

「何だ?グラーフ」

 

 

「全員を解体しよう」

 

 

「「「「「「はぁ?」」」」」」

 

 

グラーフのいきなりの発言に全員の目が集中するが、グラーフは立ち上がりながら佐渡の頬を両手で掴む

 

 

「我々はいくらでも代用が効くんだ、だが貴方は駄目だ!!

貴方の様な素晴らしいアトミラールは今後現れない可能性がかなり高い

それなら、私達を解体し貴方の無事を最優先にーーー」

 

 

「ど阿呆駄目に決まってるだろうが俺が許さん」

 

 

「何故だ!貴女は五日後に殺されてしまうんだぞ!!」

 

 

「バーカ勝手に殺すな

まだ決まってないだろうが、五日以内にその偽物を見付ければ良いんだろうが早まるな」

 

 

「だが…しかし……」

 

 

佐渡はグラーフを座らせると軽く小突き頭を撫でる

 

 

「相変わらず真面目は抜けて無いなぁ?

なぁに、俺が死んでもお前達は必ず守るさ

ま、死ぬ気は無いけどな」

 

 

「……すまぬアトミラール…」

 

 

グラーフはそう言うと俯いてしまうが特段変わった様子もない

 

 

「俺に疑えって事か?お前達を?」

 

 

「そうでも無いんじゃない?」

 

 

叢雲はそう言うと写真を六枚取るとバラバラにしていく

 

 

「提督殺しが今回、初めての予告をしてきた

即ち今回はいつもと違う方法で私達を殺しに来た

と言うことは、何もこの六人ではなく貴方の可能性もあるのよね?」

 

 

大井はそれに気付き佐渡を見ると全員の目が佐渡へ向けられる

 

 

「………え?俺?」

 

 

「そう言われると……」

 

 

「そうデースね……」

 

 

「待て待て!!俺は本物だ!」

 

 

と何人かが疑っていると叢雲が佐渡の慌ててる姿を見ているとアハハ!!と笑い始める

 

 

「冗談よ!司令官に化けられる訳無いじゃない!

それに司令官が偽物な訳無いしね」

 

 

「それもそうね」

 

 

「デース」

 

 

佐渡は叢雲のお遊びだったことに気付きほっとしながら胸を撫で下ろす

そして、改めて全員を見るがやはり変化は無い

 

 

 

 





次回

偽物は誰?

始まりました!提督殺しによる小笠原鎮守府への攻撃!!
皆さんは誰が偽物の提督殺しか分かりますかね?



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ゲーム 二

「ですが、妙ですよね

何で提督なのでしょうか?」

 

 

大井が怪しみながら佐渡を見ており指を指す

 

 

「貴方……なんかしたんですか?

提督殺しに狙われる何かを……?」

 

 

「んー……えー……何だろう?

何かある?皆?」

 

 

佐渡は全員に尋ねると全員悩ませながら必死に考える

 

 

「セクハラ?」

 

 

「サボり?」

 

 

「出撃しない?」

 

 

「ご飯が美味しい?」

 

 

「え、それだけで俺殺されるの?辛くね?

あと待って最後のご飯が美味しいのは罪に入るの?

何それ酷くね?」

 

 

佐渡がそれぞれツッコミを入れているのだが、大井がタブレットで提督殺しに調べているがどれも該当しない

 

 

「……変ですね

その程度なら特に何にもないと思います

もしかして、提督殺しは海軍の人間?」

 

 

「え!?まさかの!!

いや、確かにそれならこの小切手の理由もつくか……

あれ、マジで俺消されるの?」

 

 

「そんなこと絶対にさせまセーン!!

提督は私達が守りマース!!」

 

 

「おぉ、金剛さんやもっと抱き締めていいのよ?」

 

 

「セクハラ!!!」

 

 

「魚雷は辞めてっ!!」

 

 

 

金剛がそう言うと佐渡に抱き付くのだが直ぐ様大井が魚雷を投げつけ見事顔に命中する

 

 

「ゴホン、とりあえず提督どうしますか?

相手は完全模倣してくる連続殺人鬼です」

 

 

「そうだなぁ……

と言うかイムヤ、この封書どこで拾ったの?」

 

 

「え?古鷹さんから貰ったのよ?」

 

 

「「「「「「え?」」」」」」

 

 

流石に驚き全員古鷹に目が集中する?

 

 

「え!わ、私ですか!?」

 

 

「うん、イーちゃんと廊下を歩いていたら目の前から古鷹さんが来て『これを提督にって』渡されて

ねぇ?イーちゃん?」

 

 

イムヤがそう言うとイーちゃんも頷きそれが真実であることが証明される

 

 

「恐らく、それも提督殺しが化けていたんでしょうね……

でも、何で直接渡さなかったんでしょうか?」

 

 

「恐らくですが、もしかしたら渡すことが不味かったんじゃないですか?

提督はかなり洞察力が高いですから、下手をすればそこすらも見破られる可能性がありますから」

 

 

「それもそうね、司令官相手だとかなりキツいものね

今回のこれは」

 

 

二人が佐渡を見ると金剛が腕に引っ付きながらもえっへんと胸を張っている

 

 

「とりあえず、今日1日何をしていたか確かめましょう

今の時刻は一000、皆さんどこで何をしていましたか?」

 

 

全員のアリバイを調べるために一人一人事情聴取を行うことにした

まずは叢雲からである

 

 

「私はいつも通り朝のランニング後イーちゃんとお風呂

朝ご飯後は親方に魚雷の事を聞いて、そのあと砂浜で近接戦闘のイメトレ

それで、汗を掻いてね気持ち悪かったからお風呂に入ろうとしたら大井に呼び止められたのよ」

 

 

「……いつも通りの叢雲だな?」

 

 

「証言出来る人は?」

 

 

「朝のランニングなら、金剛とグラーフ

次は全員、次は親方ね

最後は流石に居なかったけど、鎮守府正面よ?」

 

 

「あ、それなら私が見ました!

叢雲は砂浜で近接戦闘練習してましたよ?」

 

 

古鷹の証言によりこれで叢雲のアリバイは証明された

特段変わったことの無い叢雲の朝だ

 

 

「次は古鷹さんですね」

 

 

「私は、今朝起きてイムヤさんと洗濯物を乾かして

その後皆で朝ご飯を食べてイムヤさんと掃除してまして終わったので別れた後にグラーフさんに洗濯物を押し付けられたんです」

 

 

「えぇ、今朝はほぼずっと一緒に居たわ

私はその途中でイーちゃんと会って鎮守府内を歩いていたら古鷹さんにこの封書を渡されたの」

 

 

「まぁ、いつも通りだな?」

 

 

「特に気になる点はありませんね…」

 

 

古鷹とイムヤもいつも通りの生活をしており、アリバイも証明される

 

 

「次は、金剛ですね」

 

 

「私は、朝叢雲のランニングに付き合って、その後ご飯を食べてやることも無かったデースから鎮守府内を歩いて居ましたー

その途中で、叢雲が砂浜で近接戦闘のイメトレを見た後グラーフがお茶菓子を持っていたので少し話をして

終わったので紅茶を飲もうとしたら提督に会いましたー?」

 

 

「グラーフと?」

 

 

「あぁ、お茶菓子が足りなくなっていたからそれを取りに行ってその帰りに金剛に会ったんだ」

 

 

「そう言えば、グラーフさん席外してましたね」

 

 

「んで、二人は俺と一緒だったもんな?」

 

 

これで今朝からの全員のアリバイが実証された

誰一人として不審な点が見付からず

佐渡は溜め息をつく

 

 

 

 

 





次回

会合

奴は誰に化けているのでしょうか?



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ゲーム 三

「そもそも、今日入れ替わった訳ではないって事か?

となると、本当に分からねぇな……」

 

 

「ねぇ、司令官それならさ

私に作戦があるんだけど」

 

 

「ん?何だよ?」

 

 

 

叢雲が人差し指を佐渡に向けると提督殺しを見つけ出すために案を出す

 

 

「これから、五日間あんたと一人ずつ一緒に居るってのはどう?」

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

「それって、金剛の時みたいにか?」

 

 

「そうよ、あんたなら提督殺しを見破れるでしょ?」

 

 

「まぁ、そうだけどよ……」

 

 

「確かにその手がありましたね!」

 

 

「叢雲の言うとおりね!!

やりましょう!」

 

 

「賛成デース!!」

 

 

「良いんじゃない?司令官」

 

 

「意義なしだな」

 

 

佐渡以外全員がそれを承諾すると佐渡も溜め息を付きながらそれを許可する

 

 

「では、提督予定を組んでいきましょうか?」

 

 

「はいよ、全く誰が提督殺しなのやら……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜、佐渡は自室のベッドに寝転びながらのんびりと携帯での予定を確認していた

 

 

「明日からか

叢雲

古鷹

大井

金剛

イムヤ

グラーフか……

確かに着任順の方がやりやすいけどなぁ…」

 

 

佐渡は携帯を確認すると、ふとあることに気付き部屋の時計を見る

 

 

「そうだ、良いこと考えたっ!!」

 

 

それを実行しようとベッドから起きると部屋のドアがノックされる

 

 

「んー?誰だ?」

 

 

「私だよ佐渡大尉」

 

 

「元帥!?どうしてこちらに…」

 

 

その声の主は羽田であった、全く変わらない声色そして口調端から聞き間違いがないほどに

 

 

 

「少し緊急の話があってね

良いかね?」

 

 

「あっはい!!どうぞ……

何て言うわけないだろうが」

 

 

「……ふふ、流石に引っ掛からないか

佐渡提督?いや、『最悪の天才』さん?」

 

 

「……てめぇ、何のつもりだ

『提督殺し』

それと、『何でそっちのアダ名』を知ってるんだお前?

お前、陸軍か?」

 

 

佐渡は静かな起き上がると音も立てずにドアに向かっていくが

 

 

「おっと、このドアを開けたらゲーム終了だぞ?

その時点でお前の負け

即ち、預かっている艦娘の命はないと思え?」

 

 

そう言われると歩みを止めその場に立ち尽くす

何故かは分からないが提督殺しにはどうやら佐渡の行動がバレているらしい

 

 

「チッ、何の用だ?」

 

 

「決まってるだろう?ルール説明さ

お前と俺のゲームのな?」

 

 

提督殺しはそう言うと背中をドアに付けるとこの最悪のゲームのルールを説明し始める

 

 

「ルールは簡単

六人の中に隠れた俺を五日後の夜に見付け出し答えること

ただし、他の者第三者に伝えた場合預かってる艦娘の死体を君にプレゼントし俺はここから消える

以上だ」

 

 

「質問、良いか?」

 

 

「あぁ、そうだと思ったからここに来てやったんだ

答えてやろう」

 

 

 




次回

ゲームスタート

次回は佐渡と提督殺しのみの話です
今回は小笠原鎮守府にとって最悪の敵になりますね…




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ゲーム 四

「お前はあの時既に居たんだよな?

なら日付を伸ばしてくれないか?

作戦を聞いていたんだろ?」

 

 

「ふーむ?確かに五日間では足りんか

仕方無い、一日伸ばしてやろう

六日間にしよう

まさか、叢雲があんな作戦を立ててくるとは思わなかったからな

お前達の作戦に乗ってやろうではないか?」

 

 

「随分と余裕だな?」

 

 

「当然だ、俺は誰にも見付けられないさ」

 

 

提督殺しは笑いながら佐渡の話を聞いている間に佐渡は携帯を鳴らすのだが、一向に誰一人として出る様子がない

(何で、出ないんだあいつら!?)

 

 

「あ、そうだ言い忘れていたが誰も来ないぞ?

今晩の食事に睡眠薬を入れて食べさせたからな?

明日の朝までグッスリだ」

 

 

「チッ!そこまでお見通しかよ!!」

 

 

「悪いなぁ?これでも用心深くてね?

あそうだ、忘れていたルール追加だ

六日間に伸ばす変わりに最後の日に全員に睡眠薬入りのスープを飲んで貰うよ?

全員が寝たのを確認したらお前の所に答えを聞きに行こう

俺に回答したあとこの鎮守府の連中に襲われても困るからね?」

 

 

佐渡は携帯をしまうと、珈琲を入れ飲もうとする

 

 

「…良いだろう、その条件を飲もう

それと、確認だお前は絶対に六人の誰か何だよな?」

 

 

「あぁ、当たり前だ

六人の誰かに化けているよ?イーちゃんとか言う深海棲艦ではないから安心したまえ

約束は守るさ」

 

 

「…誘拐した奴は無事なんだろうな?」

 

 

「ははは!無事に決まっているだろう?

俺は艦娘には手を上げないお前達提督が充分知ってるだろう?

俺のターゲットはお前達提督と人間だ」

 

 

「なら良いさ、必ずお前を見つけ出してやるよ

六人の中からな?」

 

 

「ほほう?勝ち気だな?

海軍が躍起やっても見付けられない俺を見付けると?」

 

 

 

「あ、あぁそれにお前」

 

 

佐渡は少し話疲れたのか、一口珈琲を飲むと続けて話始める

 

 

「何か、いかにも『見付けて欲しそう』な雰囲気だしてるしな?」

 

 

 

「…………は?」

 

 

「嫌さ、何となくだけどなお前の様な奴を何人か見たことがあってな

それと似てると思ってな」

 

 

「は、ははは!!そんなわけないだろ?

見付かったら俺は終わりじゃないか?

ここでお前を殺して他の提督共も殺させて貰うよ?」

 

 

「……なぁ、お前の目的は何だ?

今回に関してはお前の殺す対象に俺は含まれているのか?」

 

 

提督殺しは拳を握り締めるがすぐに開き軽々と答えていく

 

 

「そうだなぁ?ただお前が気にくわないのさ?

お前は提督だ、所詮提督何て物はな

自分の為に艦娘を使い、簡単に使い捨てるのが普通なんだろ?

だが、お前とここの艦娘は違う

確かな絆があるのだろう?だから私はそれが幻覚であり偽物だと教えてあげたいのさ

それだけさ?」

 

 

「……お前…羨ましいのか?」

 

 

「違う!!お前と言う提督に騙されている艦娘を救いたいんだよ!!

お前なんて言う艦娘達が思い描いている偽物の提督に騙されているってことをな!!」

 

 

佐渡はここで提督殺しの殺人理由に気付くこいつはここに来た艦娘達に酷似している

だからこそ、提督殺しは佐渡が許せないのだろう

一度絶望を味わい、ここでそれを同じように絶望を与えた提督と言う存在に再び希望を与えられているのだから

 

 

「提督殺し……お前を必ず見つけ出してやるよ

そして、分からせてやる

お前がここでこれから見てくる絆が本物であると言うことをな」

 

 

「ほほう?そうか佐渡提督?

なら私に見せてみろ、お前達の偽りの無い絆とやらを

証明出来なければこの小笠原鎮守府を消してやる!!

二度とこんなふざけた真似が出来ないようにな!!!」

 

 

提督殺しはドアを殴り付けるとゆっくりと佐渡の部屋を後にすると佐渡は拳を握り締めながら呟く

 

 

「必ず、お前を見付け出し分からせてやるよ

俺達の絆を」

 

 

 

「絶対に殺してやるからな!!佐渡『提督』!!」

 

 

こうして、提督殺しと佐渡の思いが交錯しながらも六日間の心理戦が開幕した

果たして、提督殺しは誰に化けているのか

佐渡はそれを見破れるのか

 

 

 

 




次回

疑心暗鬼見つけ出せ一人の偽物を
叢雲編
 

では皆さんに問題です
これから六人の艦娘が佐渡と共に行動をします
その中に一人だけ提督殺しが混ざってます
当ててみてくださいな?
ただし、奴はその艦娘の過去と癖を完全に見極めた化け物です
難易度かなり高めになってます!!



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偽物探しー叢雲編ー

疑いたくない
でも疑わないと自分が死ぬ
さぁ!謎解きのお時間です!!




「へぇ?昨日の夜会ったんだ?提督殺しに?」

 

 

「まぁ、会ったと言うより向こうが来た感じかな?」

 

 

佐渡と叢雲は共にランニングをしながら話をしていた

ランニングは叢雲の日課になっており一日暇なら二回はする

朝のランニングは鎮守府から街を駆け抜け戻ってくるルート

そして、今のランニングは砂浜の端から端まで往復する物だ

 

 

「にしても、久しぶりね?司令官とランニングなんて」

 

 

「そいや、最近してなかったな?」

 

 

「お肉弛んできてない?」

 

 

「まっさか!んなわけあるかよ!!

ほら!バッキバキの筋肉よ?」

 

 

佐渡が服を捲り上げると叢雲は少しだけ見るとすぐにそっぽを向く

 

 

「それなら、心配入らないわね

じゃあ、司令官たまには演習にも付き合ってくれない?」

 

 

「オッケー、近接格闘で良いか?」

 

 

「えぇ、久しぶりだからって負け惜しみは無しよ?」

 

 

佐渡と叢雲はお互い走るのを止めると準備運動をして身体を動かす

 

 

「勝負はいつもだよな?」

 

 

「えぇ、参ったと言うまでね」

 

 

二人が準備運動を終えると身体を構え深呼吸をする

 

 

「どうしたの?司令官、来ないの?」

 

 

「レディーファーストだぜ?相棒(バディ)?」

 

 

「なら!!行かせてもらうわよ!!」

 

 

叢雲は、走り出すと佐渡の懐に入り込もうとするが佐渡はその行動を先読みしバックステップを取ろうとする

 

 

「逃がさない!」

 

 

だが、叢雲もそれを予期しており直ぐ様砂浜を蹴り左へと回り込もうとするが

 

 

「甘いねぇ!!」

 

 

それすらも予期していた佐渡は左手で叢雲の頭を掴みそのまま砂浜に叩き付けようとするが

 

 

「食らえ!!」

 

 

「くそっ!お前なぁ!!」

 

 

叢雲は、右手に握り締めていた砂を佐渡にぶつけると佐渡の目に入り込みそれを拭おうと手を放してしまう

 

 

「貰ったぁ!!」

 

 

その瞬間を逃さずに佐渡の腹部に拳を当てようとするが

 

 

「よっこいしょ!!」

 

 

「いったぁ!!」

 

 

佐渡は頭を振りかざし叢雲のデコに向けて思い切り頭突きをすると痛みで叢雲は頭を押さえている隙に佐渡の視力は回復する

 

 

「チェックメイト!!」

 

 

そう叫ぶと叢雲の足を蹴り体制を崩した所に腰から水鉄砲を取り出し叢雲の顔に掛けるとそれが目に染み目を押さえる

 

 

「あぁ!!目がぁ!!目がぁぁ!!」

 

 

「ハーハッハッハッハ!!まだまだだなぁ?叢雲?」

 

 

水鉄砲の中身は墨汁であり目に入るとかなり痛い

叢雲は半泣き状態になりながらも佐渡を睨み付ける

 

 

「くっそぉ……まいったわ…」

 

 

「これで、125戦?」

 

 

「125敗よ……うぅ…」

 

 

「悪い悪い、頭大丈夫か?

ほれこれで顔拭け」

 

 

「ありがと、司令官」

 

 

叢雲は佐渡から貰ったハンカチを使うと顔を吹き終わるとついでに汗まで吹き始める

 

 

「で?私なりの証明だったんだけど、どう?」

 

 

「あぁ、お前だよ

相変わらず少し油断の癖が残ってたな?直していけよ」

 

 

「はーい」

 

 

叢雲は返事をすると砂浜に流れ着いている流木に腰掛けると佐渡に手招きすると佐渡も隣に座る

 

 

「ねぇ、司令官」

 

 

「何だ?」

 

 

「ここ、大分賑やかになったわね」

 

 

「そうだなぁ

最初は三人だけだったもんなぁ

大井に金剛、イムヤとイーちゃんとグラーフ

本当に増えたな」

 

 

「えぇ、本当にね

賑やかになったわ、当時では考えられないほどにね」

 

 

二人はのんびりと座っていると叢雲が再び話始める

 

 

「ねぇ、司令官

もしも私が偽物だったらどうする?」

 

 

「んー?どうもしなさいさ、でもそれなら困るなぁ

叢雲はうちのエースだし俺の相棒だからな」

 

 

「そう?それなら他の娘だったら?」

 

 

「そいつも困るなぁ、誰一人欠けてもここは成り立たないからな」

 

 

「ねぇ、司令官

もし、もしもよ?他の艦娘が偽物でもね

あんただけは私が守るからね

絶対に」

 

 

「おう、信頼してるぜ叢雲」

 

 

こうして、佐渡と叢雲の一日は特に変わりの無いように過ぎていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良し、これで良いかな?」

 

その日の夜、佐渡は全ての部屋の『点検』を済ませると自室へと歩いていく

 

 

「さてと、後五人か」

 

 

 

 




次回

私は本物ですよ?


今回は叢雲編でした!
後五人、誰が偽物でしょうか?



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偽物探しー古鷹編ー

次の日、佐渡と古鷹は二人で洗濯物を乾かしていた

今回はイムヤと交代してもらい変わりにイムヤが佐渡の変わりにデスクワークをやって貰っている

 

 

「いやー!!久しぶりだな!古鷹と家事なんてさ!!」

 

 

「そうですね!提督はお忙しいですからね」

 

 

「そんなことないんだけどなぁ……

あ、古鷹のブラこれ?」

 

 

「もう!!提督!?」

 

 

「アッハッハ!ごめんごめん!」

 

 

佐渡は、洗濯物を乾かしながら古鷹とふざけあっているが古鷹はぷんすかと怒っているのを見て楽しんでいる

 

 

「古鷹ー、そっち終わったかー?」

 

 

「はい!終わりましたよ!」

 

 

「なら!ほれ!休憩だ休憩!!」

 

 

「分かりました!!」

 

 

佐渡は、戸棚からお茶菓子とお茶を取り出すと縁側に座る古鷹に出そうとすると急いでそれを手伝おうとする

 

 

「あー、良いんだよ古鷹

今日は俺がやるからさ?」

 

 

「でも……」

 

 

「ほれ気にすんなってすぐに手伝おうとするのはお前の悪い癖だぞー?」

 

 

「すみません提督…」

 

 

そう言うと佐渡はお茶菓子を古鷹に出しお茶を飲みながらのんびりと話始める

 

 

「なぁ、古鷹」

 

 

「なんですか?提督?」

 

 

「お前は、古鷹だよな?」

 

 

「はい、本物ですよ?

『貴方に救われた古鷹』ですよ

私は」

 

 

佐渡はその言葉を聞くと少し眉間にシワを寄せながらも古鷹に話し掛ける

 

 

「なぁ、古鷹俺はお前を救った気はしてないし俺は叢雲に言われたからーーー」

 

 

「いえ、私は貴方に救われたんですよ

確かに叢雲がきっかけでしたけど、私はちゃんと貴方に救われましたよ

これだけは、譲れません」

 

 

古鷹は微笑みながらも真っ直ぐに外の景色を見ておりお茶を持っている手が少し震えている

 

 

「古鷹……」

 

 

「私は信じてます

佐渡提督を、叢雲を、だからこそ私はここに居ます

どんなことがあろうともこの先二人がこの鎮守府をどんなものに変えても私は必ず貴方達に着いていきます

なので、佐渡提督は『私なんか』を気にしなくてもーーー」

 

 

「あー!!辞めろ辞めろ!

分かったから!お前は本物だよ!!

疑わないから許してくれ!悪かったよ!!」

 

 

「……ふふ、ごめんなさい提督

意地悪が過ぎましたか?」

 

 

「勘弁してくれよ……全く…」

 

 

佐渡はため息を付きながらもお茶を飲むが震えている古鷹の手を取る

 

 

「安心しろ、お前は俺が守る

あの時約束したろ?」

 

 

「……はい、必ず見付けてください

そして、約束を守ってくださいね?佐渡提督」

 

 

「あぁ、任せとけ俺は提督だからな!

お前達を陸では守るからな」

 

 

佐渡はそう再び決意するとお茶を飲み干し立ち上がる

 

 

「さーてと!古鷹さんや!ちゃっちゃと他の家事も終わらせていきますか!!」

 

 

「はい!!提督!!」

 

 

こうして、古鷹との一日は何事も無く過ぎていくのだが古鷹は静かに提督殺しに怒りを募らせる

 

 

 

 

「…………提督は殺らせないよ

絶対に…」

 

 

 

そう呟くと洗濯物を強く握り締める

 

 

 

 




次回

貴方は殺させない

今回は古鷹さんでした!
果たしてこれは本物の怒りか偽物の怒りか?



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偽物探しー大井編ー

「大井、ここ抜けてるぞ?」

 

 

「あ、ごめんなさい提督」

 

 

「……へい?大井さんや?漢字のミス多いぞ?」

 

 

「…え?あ、本当だごめんなさい!今すぐに直しますね!!」

 

 

「………あの、大井疲れてる?」

 

 

「そんなことありません!!大丈夫です!!」

 

 

明らかに、大井の様子が可笑しいと佐渡は気付いていた

漢字はミスだらけでパソコンに張り付きっぱなし、書類も初歩的なミスばかりである

 

 

「あの、大井休憩しようか?」

 

 

「良いです、私はこれを仕上げてから……」

 

 

と大井が反論しようとするので近くに落ちていた魚雷のクッションを顔目掛けて投げ付けると当たり大井はようやく手を止める

 

 

「落ち着け、お前らしくないぞ」

 

 

「………すみません」

 

 

「ほれ、こっち来い休憩すんぞ」

 

 

「……はい」

 

 

佐渡は無理矢理にでも大井をソファに座らせ休憩させると大井は顔を俯いており良く見ると顔が白くなっていることに気付く

 

 

「大井?お前、何か白くないか?

ちょっと顔見せろ!!」

 

 

大井の顔を見ると、目の下にクマが出来ておりぐったりとしている

 

 

「おい!大井!!大丈夫か!?」

 

 

「大丈夫です……ちょっと調べものをしてて……

提督…私のパソコンにある極秘ファイルを見てください…」

 

 

佐渡は大井に言われるとパソコンを開き極秘ファイルのフォルダを開くと提督殺しに関しての今までの犯行履歴が次々と出てくる

一番最初に殺した提督から今までの事に関して全てのデータだった

 

 

「お前……まさかこれずっと調べてたのか?」

 

 

「えぇ…少しだけですが…

提督、それで分かったことがあります」

 

 

「…お前なぁ、無茶するなよ…

ほら、少し休みな」

 

 

「それよりも聞いてください!

奴は一度だけ明確に艦娘を助けているんですよ!!」

 

 

大井は、眠そうにしながらもフラフラと立ち上がりパソコンのファイルを開いていくと一つの事件を開く

 

 

「……こいつは?」

 

 

「四年前の事件です

あるブラック鎮守府に所属していた艦娘が冤罪をかけられ解体されそうになったのですが、解体される二日前に突然その主犯が自首してきたそうなんです

何でも、その理由が『轟沈したはずの艦娘に自首しないとお前を殺す』と脅迫されたそうなんです」

 

 

「これって、もしかしなくても」

 

 

「はい、提督殺しです

奴はこの一度だけ明確に艦娘を助けているんですよ

しかもその後その主犯を殺していないんです

その主犯は毎日怯えて刑務所で暮らしていたらしいのですが自殺したそうです

提督殺しは艦娘達には一度として手を上げずに提督とその関係者だけを狙っているんです

それに加えこれまで調べましたが奴は貴方みたいな善人を狙ったことが無かったんです

もしかしたらですが……私達の事をどこかで見ていたのでは無いですか?」

 

 

艦娘には手を出さずに人間のみを狙ってくる提督殺し佐渡はそこに違和感を感じた

確かに奴は佐渡、提督達を嫌悪しているだがそれは最早執着と言うよりは復讐に近い

奴は、過去に提督と何かがあった艦娘の可能性が極めて高いと佐渡は予想つけた

 

 

「となると、提督殺しは艦娘……?」

 

 

「えぇ、もしかしたらですが

奴が現れたのは四年前

その時に『何かが奴に影響を与えこの殺人を続けていると言う事』です

それと、奴が化けることが出来るのは男女問わず『人間や艦娘』等の人形なら誰にでも化けられる見たいです

監視カメラに幾つか奴らしき人物は写し出されて居ますが駆逐艦から戦艦まで様々な艦娘に化けていまいした……うぅ…

すみません…これぐらいしか分かりませんでした…」

 

 

「大井!」

 

 

大井はそこまで言うとふらつき佐渡はそれを支え抱えあげるとソファの横に寝かせて毛布を持ってこようとすると大井に袖を掴まれる

 

 

「ごめんなさい……折角貴方に秘書艦に選んで貰ったのにこんなことしか出来なくて…」

 

 

「何言ってるんだ!お前には本当にいつも助けられてるんだぞ?こんなことじゃねぇよ!ありがとうなそんなになるまで調べてくれて」

 

 

「貴方は……私を助けてくれました…私だけじゃない北上さんもです……

だから、この程度…何ともないです…

絶対に貴方を殺させませんからね……

だから見付けてください提督殺しを……

私達を全員疑って必ず…」

 

 

そこまで言うと佐渡は大井の頭を撫でながら自分の上着を被せる

 

 

「任せておけって俺はお前達の提督なんだぜ?

それよりも休んどけ後は俺がやっておくからな命令だ」

 

 

そう言うと、毛布を取りに佐渡は提督室を出ていくと大井は佐渡の上着を顔を被せながら微笑む

 

 

「本当に……貴方が提督で良かった…

それに…安心する匂い…好き……」

 

 

そこで大井の意識は途切れてしまいゆっくりと夢の中へと落ちていった

こうして、大井との一日は過ぎていった

 

 

 

 

 





次回

全力で

提督殺しの過去に何があったのでしょうか?
それは再び起きる対峙の時のお楽しみで



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偽物探しー金剛編ー

「ふぅ~何か疲れたなぁ……」

 

 

佐渡はのんびりと湯船に浸かりながら今日一日を振り返っていた

今日は金剛なのだが正直大変だった他の艦娘が居る前で堂々とスキンシップ取ったり身体に抱き付いたりしており大井に殴られたり叢雲に蹴られたり等されて居るが金剛は離れず言ったのは「今日一日は提督を独り占め出来るんですから!!楽しませてもらいマース!!」と言うことだった

 

 

「にしても、今日のスキンシップは凄かったなぁ……

やけに激しかったけど」

 

 

確かに元々金剛のスキンシップは激しかった良く抱き付いてきたり執務中に紅茶等のティータイムやらそう言うのはいつも通りなんだが今日に関してはやけに

 

 

「なーんか、金剛何だけど違ったんだよなぁ……」

 

 

そう呟きながらのんびりとしていると風呂の扉が突然ガラッと開きその方角を向くとそこには

 

 

「ヘーイ!!提督ー!お背中流しまーす!!」

 

 

「ちょ!金剛!?待て待て!!何でここに入ってきてるんだよ!?」

 

 

「え?駄目デースか?大丈夫デース!水着着てますよー?」

 

 

そう言うと金剛は佐渡の話も聞かずに湯船に飛び込むと佐渡の背中に抱き付く

 

 

「おぉおいぃ!?人の話は聞くもんだぞぉ!?」

 

 

「嫌デース!今日は聞きませーん!!」

 

 

すると佐渡はため息を混じりに背中に飛び付いている金剛の頭を撫でる

 

 

「どうした?今日は

何かやけにスキンシップ多くないか?」

 

 

「気のせいデース!!

それとも、提督は嫌でしたか?」

 

 

「いや、構わないけどさ?

風呂にまで無理矢理入ってくるとなると色々とな?

何かあったか……何てのは野暮だけどさ」

 

 

「………大井から聞いたんデース

提督殺しは必ず狙った提督を殺すってだからその…」

 

 

「思い出作りか?なんだそりゃ俺を信じてないのか?」

 

 

「違います!!信じては居ます!!

でも……」

 

 

そう言うと佐渡は振り返り金剛を抱き締める

 

 

「なぁに、任せておけ

提督殺しに何て殺されてやらねぇよ

お前の止まり木になるって言ったんだ、こんなところで死なねぇよ!!」

 

 

「……ふふ、そうでしたね

ごめんなさい

提督ちょっと不安だったんです許してください」

 

 

「おう、と言うか久しぶりにそっちで話してるな」

 

 

「正直に言うと、こっちの喋り方が長かったので定着してるんですよ?

提督は嫌いですか?」

 

 

「いんや?どっちの金剛も好きだぞ?」

 

 

「ふふ、ありがとうございます提督」

 

 

佐渡は抱擁を解くと金剛に背中を向けると金剛が細い指でその背中を触る

 

 

「………提督?これ痛くないですか?」

 

 

「ん?あぁ、そんなに昔でも無いんだけどな

それは治せないらしい

まぁ、俺に取っては勲章見たいなもんさ」

 

 

佐渡の背中は中心から焼け焦げているその他にも深い切り傷等があり大きな古傷として残っている

 

 

「痛そう…ですね」

 

 

「まぁ、ぶっちゃけ死ぬほど痛かったよ?

でもこれは俺と叢雲に取っての信頼の証しでもあるんだぜ?」

 

 

「え?それってどういうーーーー」

 

 

「金剛!ここですかぁ!!!」

 

 

金剛が聞こうとした瞬間風呂場の扉が開かれ大井が入ってくる

 

 

「大井!?」

 

 

「あっ、ヤバいデース!」

 

 

「やっっっと、見付けたぁ!!貴女ねぇ!やりすぎなんですよ!!!

提督!彼女は連れていきますからね!!」

 

 

「あ、はいどうぞ」

 

 

「helpme!!提督ー!!!!」

 

 

大井に腕を引っ張られながらズルズルと連れていかれ金剛は浴室を後にする

 

 

「あはは……賑やかな一日だったなぁ…」

 

 

佐渡は一人残された湯船に再び浸かりながらのんびりと背中の傷に触れていた

こうして、金剛との一日は過ぎていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 





次回

何としてでも

最近大型建造をやっているのですが狙ってるまるゆが来ない……
辛い



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偽物探しーイムヤ編ー

「おーい、イムヤー?どうだぁ?」

 

 

『いい感じに取れてるよぉ!もう少し待っててね!

イーちゃんも結構取れてるって!』

 

 

佐渡とイムヤは、防波堤にて漁業をしていた佐渡は海側で釣りをしながらイムヤとイーちゃんは海中の岩に張り付いているサザエや貝類を取っている

無論無許可での密漁ではなく海軍の許可は得ている

一応この島で生きるための必要食料としてだが

 

 

「んじゃ、こっちも始めるか?」

 

 

佐渡は釣りを辞めると竿を仕舞うと近くに準備しておいた七輪に薪を入れて行き火を焚きながらのんびりとイムヤ達が帰ってくるのを待っていると防波堤の海から二つの影が上がってくる

 

 

「ぷはぁ!!司令官!取れたわよ!」

 

 

「おう、二人とも上がれ上がれどうだ戦果は?」

 

 

イムヤは防波堤の岩場に乗っていくとその胸にイーちゃんも飛び込み二人で登っていくと佐渡にその結果を見せる

 

 

「どう?凄いでしょ!」

 

 

「おぉ!こりゃすげぇ!サザエに伊勢海老にアサリ……大量だな!!」

 

 

えっへんと胸を貼る二人の頭を撫でながらもそれを網にのせ焼いていく

まずはサザエとアサリに醤油をたらし焼いていく

 

 

「んん!良い香りね!」

 

 

イムヤとイーちゃんが見つめる中佐渡は手際よく焼いていき二人に手渡していくとイムヤは「いただきます!」と言いイーちゃんは頭を下げる

 

 

「美味しい!!司令官流石ね!!」

 

 

イムヤが褒めるとイーちゃんも美味しかったのか佐渡の脚に頭を擦りながら頭を下げる

 

 

「良かった!じゃんじゃん焼いていくからな~?」

 

 

しばらく、すると取ってきた分を食べきるとイムヤとイーちゃんは満足したのかごろんと防波堤に転がりながら空を仰ぐ

 

 

「はぁ~満腹~」

 

 

「ほいほい、お粗末様」

 

 

佐渡は片付けをしているとイーちゃんがうとうとし始めイムヤのお腹の上に乗るとゆっくりと瞳を閉じる

 

 

「あら、イーちゃん寝ちゃった」

 

 

「ま、いつものことだな

にしても、イムヤも食べるようになったよなぁ……」

 

 

「どっかの誰かさんがいつも美味しいご飯御馳走してくれるからね?」

 

 

「ほーう?ならもっと頑張らないとな」

 

 

イムヤは晴天の空を見ながら静かに呟く

 

 

「……空って青いよね

でも海の青さと違って私は好き

あの頃にも同じ空を見ていたのに今は違うように見えるなぁ」

 

 

「はは、空は変わらねぇよ

それほど余裕が出来たってことだろ?」

 

 

「ねぇ、司令官

私は提督殺しに思える?」

 

 

「いんや?どうみても可愛いポニーテールの美少女だけど?」

 

 

「ふふ、ありがと司令官」

 

 

佐渡は片付けを終えるとイムヤの側に座りのんびりと海を眺める

 

 

「懐かしいなこの防波堤」

 

 

「そうね、貴方と会ったのもここだったっけか?」

 

 

「いやいや、お前意識合ったのか?沈んでたじゃんか?」

 

 

「あれ?そうだっけ……なーんてね

覚えてるわよ、初めてあったのはベッドの上だったわよね

あの時私はまた鎮守府に連れてこられて仕事と暴力の毎日って怯えてたっけ」

 

 

イムヤはイーちゃんを側に置くと起き上がり佐渡と共に海を眺める

 

 

「白鳥は死んだけどさ私本当に良かったと思うんだ

あいつのやり方は間違ってはなかった

私は早く死にたい生きていたくは無かった

でもあいつは殺されて私はここに来た

何かね、これが運命なら私は本当に良かったと思うの」

 

 

「イムヤ……」

 

 

「ねぇ、司令官

私ねかなり深くまで潜れるんだよ?

だから一緒に逃げない?

そうすれば提督殺しに……」

 

 

「バーカそんなことしたら明後日の回答が出来ないことになって捕まってる奴が殺されるだろうがって」

 

 

佐渡はそう言うとイムヤの頭を小突き頭を撫でる

 

 

「でも……私、司令官が死ぬのは嫌よ…

貴方と折角仲良くなれたのに、ここに来れたのに…」

 

 

「任せとけって、俺が必ず見つけ出してやるさ

提督殺しをな」

 

 

「……分かったわ司令官を信じる!!」

 

 

「おいおい、そりゃ俺を今まで信用してくる無かったのか?」

 

 

「違うわよ!!最初から信じてるけど司令官が怖がってないかなぁーとか思って!!」

 

 

「あはは!ありがとなイムヤ!」

 

 

佐渡はイムヤの頭を撫でながらも海を見ながらのんびりと過ぎていく

こうして、イムヤとの一日は過ぎていった

 

 

 

 

 




次回

貴方は他とは違う

ラスト一人になりました!!
さて貴方はだれか分かりますかね?



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偽物探しーグラーフ編ー

「……アトミラール?何をしているんだ」

 

 

「…何か心が疲れたから回復してるの」

 

 

「すまない、アトミラール流石に分からないぞ…」

 

 

今日はグラーフと一日を過ごすのだが五人とのちょっとしたデートに疲れたのかそれとも頭を使うのを疲れたのか佐渡は布団の中に潜りながらゴロゴロとしていた

 

 

「ほら、アトミラール起きてくれ

珈琲を入れたぞ?」

 

 

「後、5分」

 

 

「駄目だ、冷めてしまうぞ?」

 

 

「仕方無いなぁ」

 

 

佐渡は顔だけだすと芋虫の様に床を這いながらテーブルに向かい珈琲を飲もうとする

 

 

「待て、アトミラール

流石にそれは駄目だ」

 

 

「だって寒いやん?」

 

 

「それでも駄目だ全く貴方と来たら……」

 

 

とグラーフが近付いて手を伸ばした瞬間佐渡その手を掴む

 

 

「え?」

 

 

「お 前 も 入 る が よ い」

 

 

その瞬間佐渡はグラーフを勢い良く布団に連れ込むとぐるぐる巻きにし自分は出てくる

 

 

「なっ!アトミラール何をするんだ!!」

 

 

「ふふふ、お前もお布団様の魔力に沈むがよい!!」

 

 

「くっ!私は誇り高きドイツ空母だぞ!!

こんなものっ!!」

 

 

グラーフは身をよじりながら布団から出てこようと奮闘するが十分後動き止め全く動かなくなったグラーフが居た

 

 

「……くっ、この私が布団に負ける…なん…て」

 

 

「流石はお布団!!ドイツ空母すら落とすとはな!!」

 

 

そう言いながらグラーフが入れた珈琲を飲みながらのんびりと読書をしようとするとグラーフが床を這いながら佐渡に近付く

 

 

「……アトミラール、そろそろこれを解いてくれないか?」

 

 

「仕方無いなぁ」

 

 

佐渡はぐるぐる巻きにされた布団を解いてやるとその瞬間寒かったのかグラーフは布団を被ってしまう

 

 

「あれれー?どうしたのかなぁ?ドイツ空母様ぁ?」

 

 

「……お布団は凄いな

私が負けるとは」

 

 

「うっそ、この子完全敗北しとるやんけ」

 

 

しばらくグラーフは布団を堪能するとゆっくりと身体を出していくと佐渡の隣に座る

 

 

「……アトミラール、布団とは素晴らしいな!!」

 

 

「なに負けてんだよドイツ空母」

 

 

「うっ…仕方ないではないか…

柔らかいし暖かいしなんか安心するんだ…

それに少し貴方の匂いもしたし……」

 

 

「ん?何か言ったか?」

 

 

「何でもない!!」

 

 

そう言うと佐渡に枕を投げつけ、自分の珈琲を飲み始める

 

 

「それよりもアトミラール!!

提督殺しだ!私で最後なのだろう!?

誰だか分かったんだろうな!?」

 

 

「お?おう、分かってるぜ

と言うかあいつは結構早くに尻尾を出したぜ?

だから安心しろって」

 

 

佐渡は微笑みながらグラーフの珈琲を飲むとグラーフが詰め寄る

 

 

「誰だ!!貴方を殺そうとしているのだろう!?

そんな奴私が!!」

 

 

「落ち着けって、今話したらそいつが帰ってこないだろって……」

 

 

「む……す、すまない…」

 

 

グラーフは落ち着きを取り戻し佐渡と珈琲を飲み初めている

 

 

「アトミラール、私は信じている

貴方なら奴を確実に追い詰められると」

 

 

「あぁ、任せとけ」

 

 

こうして、グラーフとの一日が過ぎていき時間は夜へと流れていく

全員はゆっくりと食堂へと向かっていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふふふ、本当に見付けられたのかな?

佐渡『提督』?」

 

 

提督殺しは怪しく微笑みながら化けた姿で食堂へと向かっていく

 

 

 

 

 




次回

六人の容疑者

さて、ここで容疑者達のお話は終わりになります! 
貴方は誰が提督殺しだと思いますか?





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偽物探し 夜

「全員集まったな?」

 

 

「えぇ」

 

「はい!」

 

「大丈夫です」

 

「デース…」

 

「平気よ!」

 

「問題ない」

 

 

時刻は二二00、全員食堂に集まり席について居た

テーブルの真ん中には鍋が置いてあり中にはスープが入っている

どうやら昨日の夜に準備したらしく今朝から置いてあり誰もそれに手をつけていない

 

 

「こいつが、指定のスープか……」

 

 

佐渡は蓋を開けると中には具材が入ってない茶色いスープが入っておりそれを暖めるために厨房に持っていき火をかけるとその側に佐渡へと書かれている紙を見つける

 

 

『今晩、二三00に部屋へ行く

答えはそこで聞くわ

これは燃やしなさい?

 

By 提督殺し』

 

 

「……はいよ」

 

 

佐渡は呟くとその紙を丸めコンロの火を使い燃やすとそのまま灰皿に捨て暖められたスープを全員の前に再びだす

 

 

「さてと、これが提督殺し作のスープか……」

 

 

「具材は無いのね」

 

 

「……コンソメスープでしょうか?」

 

 

「毒…は無いわよね?睡眠薬は入ってると聞いてはいるけど」

 

 

匂いから察するに特に具材を入れていないコンソメスープである

実は全員にはあの日の夜提督殺しと会いルールの事話してある

 

 

「にしても、これ本当に大丈夫なのか?」

 

 

佐渡が警戒していると叢雲がお玉にすくい軽く飲む

 

 

「あつっ!うん、悪くはないわね?」

 

 

「おい!叢雲!!」

 

 

「どうせ飲まなくちゃ行けないんでしょ?

なら、いつ飲もうと変わらないわよ

ほら早く分けて司令官」

 

 

叢雲に言われ佐渡は正直嫌なのだがお玉にそのスープをよそうと全員に分け与えていく

 

 

「全員に行ったか?」

 

 

「はい、全員分行っています」

 

 

「では、頂きます!」

 

 

「「「「「「頂きます」」」」」」

 

 

全員手を合わせてスープを飲もうとするのだが叢雲と古鷹以外全く手をつけようとしない

 

 

「あんたたち、早く飲みなさいよ」

 

 

「そうですよ?折角のスープが冷めてしまいますよ?」

 

 

「二人とも、良く飲めますね……」

 

 

「毒が入ってるかも知れないんデースよ?」

 

 

「でも、早く飲まないと司令官の回答時間が少なくなるわよね……」

 

 

「アトミラール、信じて大丈夫何だよな?」

 

 

「あぁ、大丈夫だ

お前達を路頭に迷わせたりしないからな安心しろ」

 

 

「じゃ、御馳走様」

 

 

叢雲は早々に飲み終わり一番早くに食堂から出ていく

 

 

「司令官、明日の朝ご飯楽しみにしてるからね?

じゃ、お休み」

 

 

「あぁ、お休み」

 

 

「御馳走様でした」

 

 

次に古鷹が飲み終わりゆっくりと食堂を後にしようとする

 

 

「提督、信じてますよ

おやすみなさい」

 

 

「おう、おやすみ」

 

 

その二人を見た四人は早々にスープを飲み終わりに食堂を後にしようとする

 

 

「……提督、私には貴方が必要です

お願いしますね」

 

 

「提督、私はここが大好きデース

お願いします、提督殺しを必ず見つけてください」

 

 

「司令官、信じてるわ

だから、奴を捕まえてね?」

 

 

「アトミラール、貴方を信じるからな

お願いだから私達を離れ離れにさせないでくれ」

 

 

「任せておけ、安心して寝てろ

お休み皆」

 

 

全員が出ていくと時間を確認し、佐渡は食器を片付け終えるとゆっくりと自室へと向かっていく

 

 

「さてと、決着を付けようか?

提督殺し?」

 

 

 

 






次回

提督殺しと佐渡

次回提督殺しと決着を付けます!
さてはて、偽物は誰なのでしょうか?


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提督殺し

全員が寝静まる夜佐渡は自室にて珈琲を飲みながら夜空の満月を見ていた

これから提督殺しがここに来るその緊張を解すために窓を開けゆっくりとその時を待っていた

すると扉がノックされるが入ってくる気配がない

 

 

「……来たか提督殺し」

 

 

『はぁい、お久しぶり佐渡提督?

どうだったかしら?疑心暗鬼の六日間は?』

 

 

その声は一番最初にあった男性羽田の物とは全く違う声であった

女性の綺麗で高い声をさせながら提督殺しは背を扉に当てながらのんびりと廊下に立っている

 

 

「最悪だったよ

まさか、仲間を疑う時が来るとは思わなかったね」

 

 

 

『あはは、仲間を疑ったんだ?

あれほど、信頼やら絆とかはほざいていたのに

それで、私を見つけられたのかしら?』

 

 

「あぁ、見付けたよ偽物のお前をな」

 

 

 

佐渡は珈琲を机の上に置くと扉の向こう側に居るであろう提督殺しを睨み付ける

 

 

「……質問良いか?」

 

 

『良いわよ?ある程度なら答えてあげる

どうせ私に殺されるんだしね?』

 

 

扉の向こうでは提督殺しが笑っているが佐渡は椅子に座りゆっくりと聞いていく

 

 

「なぁ、お前は艦娘か?それとも深海棲艦か?」

 

 

『さぁ?どっちでしょうね

それには答えられないわ

もし、万が一にも貴方が私の正体を掴めたら困るしね?』

 

 

「そうか

なら、何故提督や人間を殺す?」

 

 

『あら?分からない?

決まってるでしょ、お前達は艦娘を軽視し過ぎだからさ

お前達を私はずっと見てきたよ

ある者は艦娘を物の様に扱い

ある者は艦娘を簡単に轟沈させる

ある者は艦娘を自らの欲望を満たすために使い

ある者は艦娘を兵器として扱い好意を逆手に取り使い潰し

ある者は戦略として傷付いた艦娘平気で捨てた

 

それなのに艦娘は提督の為平和な海の為と命を掛けて戦っている

これでは艦娘が哀れではないか?

彼女達も生きている、感情があり、心がある

なのにお前達人間は自らが作り出せたからと言って彼女達を物のように扱う

それが許せないのさ』

 

 

提督殺しの発言に佐渡は納得している全てを見て居ないが佐渡自身もこの海軍に来てからそれを目の当たりにしてきたのだから

そして、『自ら自身も昔はそうだったから何も言えない』

 

 

「成る程な、なら俺みたいな提督は何故お前に狙われる?」

 

 

『あんたは確かに他の提督や人間と違うのかも知れない

でもね、どうせあんたも他の人間達と同じでしょ?

貴方も自分の身分が危なくなったら艦娘を犠牲にするでしょ?

 

 

「……ほう?と言うとお前まさか俺がここに来た理由を知らないな?」

 

 

『…どういう意味?貴方がここに来たのは海軍への反乱行為が原因でしょ?

大本営の資料にはそう書いてあったわよ?』

 

 

佐渡は立ち上がり珈琲を再び飲むと一息つきながら落ち着いて話し出す

 

 

「そいつはじじいが勝手に変えたんだよ

俺は元々ここに配属されるわけでは無かったんだよ

何せ、俺が海軍に来たのは海軍からのヘッドハンティングだしな

実際俺は、本島の佐伯鎮守府に叢雲と共に配属される予定だった

しかも、何人かの艦娘を与えられるはずだった」

 

 

『…何ですって?

ここが初期任務地点じゃない?

何をしたの貴方?』

 

 

 

「俺はある艦娘を助けるためにここに来た

まぁ正確には『ここへ飛ばされた』だがな」

 

 

 

 

 

 





次回

私が提督殺しよ?

次回提督殺しが正体を現すかも?
では、後少しで提督殺しの正体が分かりますのでヒントをあげます!

奴は誰にでも成り済ます事が出来ます
奴はその人物の過去を知っています
成り代わったのは叢雲と佐渡が大本営後です
そして、奴は一言だけその艦娘が言わないことを言ってしまいました
奴の狙いは佐渡の信頼を破壊することです

さて、貴方には分かりましたか?



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提督殺し 二

『何ですって?

嘘を言うんじゃないわよ!!』

 

 

「残念ながら事実なんだよ

俺は元々陸軍のとある部隊に居た

その時ある任務時に叢雲と出会った

それを見込まれて海軍にヘッドハンティングされたのさ

大元帥のじじいに言われてな

そして、俺はある艦娘が『処刑される所』を見ちゃってな

それを止めたらここに飛ばされた

それだけだ」

 

 

『なら、あんたはその一人の艦娘を助けるために地位を捨てたの?』

 

 

「まぁ、そんなところだ」

 

 

佐渡は珈琲飲みきるとコップを机に置くと提督殺しは扉の向こうで笑っている

 

 

『ははは!!そうか、分かったわよ!!

あんたの魂胆が!

そう言う嘘を言ってだから殺さないでくれって言いたいんでしょ!?

悪いわね!私はそんなに簡単じゃないのよ!!』

 

 

佐渡の言っていることは紛れもない真実なのだが実際大元帥との話で確かにこの事はかなり内密にされているため証明の使用が無いのも事実である

 

 

「くっそ、あんのじじい……

書類の一つすら残してないのか……」

 

 

佐渡が呟くと頭を掻きながら扉の向こう側に居る提督殺しに聞き始める

 

 

「なら、どうやったら信じる?」

 

 

『あら?その必要はないわよ?』

 

 

「はぁ?何でだよ?」

 

 

『あら?貴方気付かないの時間を見なさい?』

 

 

佐渡は部屋の時計を見ると最悪の事に気付く

 

 

「……やべ、マジかよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『時間切れよ、佐渡提督

貴方の負けね』

 

 

時刻は0000を指しており約束の時間を過ぎていたそうすると扉がゆっくりと開かれ目の前から巫女服の女性が入ってくる

 

 

「ほほう?こいつは驚いた……マジでそっくりだな…」

 

 

「あら?随分と余裕デースね、提督ー?」

 

 

部屋に入ってきたのは紛れもなく金剛だった

頭にはカチューシャ型の電探、金色の綺麗な髪色、巫女服にスカート

体型も正に瓜二つだった

 

 

「はーい、答え合わせデース!

今回の偽物は私、金剛でしたー!!

 

 

……さてと、負けた貴方を殺さないとね?提督ー?」

 

 

金剛に化けた提督殺しは大井の持っているはずの艤装単装砲を佐渡に構える

 

 

「……お前、何でその艤装を扱える?

艤装は艦娘一人に大体一つが目安のその本人にしか使えないはずだぞ?」

 

 

「ふっふっふー、凄いでしょう

私は特別なのよ

私は全ての艦娘の艤装を使うことが出来るの

ただし、その場合対象の艦娘に化けないといけないんだけどね?

どうやら、この艤装は金剛も扱えるらしいわよ?

さてと、答え合わせも終わったしちゃっちゃと片付けさせてもらいマース!」

 

 

今から殺されると言うのに佐渡は椅子に座り珈琲を飲みながらその姿を凝視する

 

 

「……本当に凄いなその姿、しかも声、仕草まで真似られるのかこれは恐れ入ったわ」

 

 

「ふふ、褒めてくれてるのは素直に受け取っておきマース!

正直、真似るのがかなりキツかったヨー

抱き付かないと行けないし一緒にお風呂とか入っちゃったしね

あー、しんどかったわ

さてと、そろそろお話も終わりにしましょう?

何か最後に思い残す事はある?一つだけ聞いてあげるわ」

 

 

「じゃあ!おっぱい触らせて!!」

 

 

「却下」

 

 

「えー……」

 

 

佐渡が、ガックリと頭を下ろすとため息を付き提督殺しに指を指す

 

 

「じゃあ、一言言わせてくれ」

 

 

「なぁに?聞いてあげマース?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここで、お前が俺を殺したらお前のルールは無効になってお前の敗北だぞ?

提督殺し?」

 

 

 

「……は?」

 

 

予想外の話に提督殺しは唖然としながらも艤装を下に下ろしてしまう

 

 

 





次回

トラップ

危険な賭けをしますねぇ佐渡さんは
因みにある艦娘とは分かりますよね?
彼女の物語もいずれ話される予定です




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提督殺し 三

「は、はぁ!?あんた何をでたらめ言ってるのよ!!

ふざけないで!!!」

 

 

「残念ながらね、これも本当さ

見事に引っ掛かったな?提督殺し」

 

 

提督殺しは佐渡を睨み付けながら歩みより艤装を床に落とすと掴みかかる

 

 

「なら!証拠をみせろぉ!!」

 

 

「見るより聞いた方が良いだろう」

 

 

佐渡は携帯を取り出し電話を開くと117と押しそれを提督殺しに渡すとそれをぶんどり耳に当てる

 

 

『ポーン…ただ今の時刻23時6分をお知らせします』

 

 

「嘘……でしょ?」

 

 

「な?ほら事実だ」

 

 

提督殺しは馴れた手付きで電話をきり携帯でネットを開くと現在時刻を検索するとPM11時6分を示しており、自分の腕時計と佐渡の部屋時計を見るとその一時間後を示している

 

 

「貴様……いつの間に…!!」

 

 

「なぁに、お前と同じ手口さ

叢雲との1日終わりに全員に睡眠薬を盛ってな?

その間にこの鎮守府の時計を全て一時間早めておいたのさ

お前と直接会うためにな?」

 

 

「やってくれたな…!提督風情がぁ!!」

 

 

やっとの思いで殺せると確信した佐渡を自分のルールで殺せないことを知り悔しさに床を強く踏みつけ地団駄を踏む

 

 

「随分と焦ってたな?そんなに殺したかったのか?

時間ギリギリに来て、時間になったら自らの姿を晒して時間稼ぎとはね?

驚いたぜ」

 

 

「良いだろう……それならお前に解答のチャンスをやる

ただし!!一度だけだ!それを間違えたらお前を殺す!!」

 

 

「そりゃ、ありがたいねぇ

まぁ誰かは既に分かっているんだけどな?」

 

 

佐渡は立ち上がると金剛に化けている提督殺しの前に行くと推理を始める

 

 

「とりあえず、お前は金剛には化けてないな」

 

 

「っ!!どうしてそう思う!

私は最初に大井を疑ったんだぞ!?」

 

 

「金剛は、確かに大井を疑った

それはあいつの本心だ、あいつに取って俺は大きな存在だ

だから、大井が偽物で合ってほしいとアイツは思ってたんだろうな

俺を失いたくないから、自らの止まり木を失うわけにはいかなかったから

金剛は今回かなり周りを疑ってたからなぁ」

 

 

「なら!!大井はどうなのよ!

あの子が一番最初にこのルールを破ろうとしたのよ!?」

 

 

「バッカヤロ、アイツが知らされたルールの中に『外部に知らせてはいけない』なんてルールを知らなかったんだよ

アイツらしい、最も正攻法を取ったんだろう

だが、大井は人質が居ることを気にせずそれを選んだアイツは熱くなると周りが見えなくなるからな

あそこで大井は偽物じゃないと確信した」

 

 

「っ!!なら!古鷹は!?」

 

 

「それに関してはお前が言ったじゃないか?

お前は古鷹の過去を知らない、まぁこれに関してはついさっき知ったんだがな

それに古鷹しか『ああ言う言い回しはしないし俺がアイツを助けた』とは言わないからな

本当に助けたのは叢雲なのにな」

 

 

「へ、へぇ?なら後の三人も?」

 

 

「いや、イムヤの食欲に関しては真実だ

アイツは俺の料理や調理したものを必ず残さず食べるように努力しているし、そのおかげで少しは食べれるようにもなってきた

それに、イーちゃんとの連携に関しては水の中だどうやってもそれを真似られるとは思えない

 

グラーフに関してはあの時の発言と布団で分かったよ

グラーフの住むドイツは効率を重視する傾向があるって聞いたことがあってな

恐らく本心で自らより俺を取ったんだろう

アイツは布団何てものは寒さを和らげる物にしか感じてなかったからな

たまにベッドじゃなくて、机で寝てたりソファで寝てたから感心しなかったんだきちんと布団で寝てほしくてな」

 

 

そこまで言うと最後の一人に絞られると提督殺しは後退りをする

 

 

「……なら叢雲は…」

 

 

「アイツもぶっちゃけほとんど変わらなかったよ

見た目、食事量、動き、戦闘スタイルも恐ろしいほどに完璧だ

まさに目の前が本人だと言われても正直見間違いがない

 

 

だがな、お前はこのゲーム開始時に一言だけミスを犯した

だからこそ、お前を見破った

お前の正体は」

 

佐渡はゆっくりと息を吐き、提督殺しに指を指す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前が化けていたのは、俺の相棒(バディ)にしてこの鎮守府最強の駆逐艦

 

  叢雲だ」

 

 

 






次回

お前が提督殺しだ

さて、皆さんは何故か分かりましたでしょうか?
説明は次の話で話させて頂きます!



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偽物はお前だ

二人の間に沈黙が流れる

だが、明らかに提督殺しが震えている小刻みに確実に

それを見ながら佐渡は微笑む

 

 

「さてと?提督殺し、どうなんだ?」

 

 

「………何で」

 

 

提督殺しはゆっくりと顔を上げるがその顔は怒りと憎しみに溢れ今すぐにでも佐渡を殺す勢いである

 

 

「何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何でぇぇぇえ!!!

 

分かりやがったぁ!!てめぇぇぇ!!」

 

 

「おーこわ

どうやらビンゴみたいだな?

そりゃそうだろうな?お前が間違えたのはその一回だけだ」

 

 

「どこだぁ!!お前が分かったのどこなんだぁ!?」

 

 

すると提督殺しの見た目が変わっていく巫女服は次第に叢雲が着ている制服に変わり髪も金から青に変わり体つきも小さくなり、頭のカチューシャも叢雲の耳型電探へ変わり完全な叢雲の見た目へと変わる

 

 

「はは、やっぱり叢雲だなこりゃ

全くもってそっくりだ、その単装砲も叢雲の艤装だな?

何となくそんな気はしてたぜ?」

 

 

「答えろぉ!!どこだ!!私がどこで間違えたと言うのだぁ!?

私の化けは完璧だ!声も見た目も性格も!

生活スタイルも口調も仕草も!!

ありえないありえない!!何故だぁ!!

何故分かったんだぁ!!貴様ぁぁ!!」

 

 

「良いだろう、答え合わせと行こうか?

と言ってもお前は一言、そうたった一言でお前を見抜いたよ」

 

 

「どこだと言っている!!答えろ!」

 

 

「……お前、『俺を疑ったな』?」

 

 

「…………はぁ?」

 

 

佐渡の一言に提督殺しは唖然としながらも佐渡は答えていく

 

 

「だから、お前は俺を疑った

一度だけな」

 

 

「嘘をつくな!!私は………まさかっ!」

 

 

提督殺しはここでようやく自らが犯したたった一つのミスに気付く

そう、提督殺しはたった一度だけ佐渡を疑っていたのだ

 

 

「お前、このゲームが始まった時俺に言ったよな?」

 

 

『提督殺しが今回、初めての予告をしてきた

 

即ち今回はいつもと違う方法で私達を殺しに来た

 

と言うことは、何もこの六人ではなく貴方の可能性もあるのよね?』

 

 

「って、お前は言った

そう誰も俺を疑っていないのにも関わらずお前は誰よりも先に俺と残り五人を疑わせた

これが、お前が提督殺しである確たる証拠になったんだよ

ここで、俺は確信したよ

『偽物は叢雲』だとな」

 

 

佐渡に言われると提督殺しは後退りをすると佐渡は珈琲を入れ直し熱いうちに少しだけ飲み始める

 

 

「たった……たった一言の冗談を……お前は真に受けたのか!!!

それだけで!!それだけで!」

 

 

「バーカ、お前舐めんなよ?

これでもこの鎮守府の提督だぞ、それぐらいで分かるわ

それに相手をしてるのが誰だか分かってるんだろうな?

俺はアイツ等を信じてる、だからこそアイツ等も信じてくれる

これが信頼だ覚えとけ

それにな」

 

 

佐渡は珈琲を強く机に置くと提督殺しを睨み付ける

 

 

 

 

「俺と叢雲は、『誓い』で繋がれている

万の一つとしてアイツが俺を疑うことはない

絶体にな」

 

 

 

 

 

 

 

 





次回

叢雲は俺の相棒(バディ)

さて、皆さんはこの間違いに気が付きましたか?
分かった方は凄いですね…



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偽物はお前だ 二

提督殺しは悔しがり拳を握りしめると叢雲を誘拐したときの事を思い出す

 

 

「へぇ?あんたが提督殺し?

本当にそっくりね?」

 

 

叢雲は両足と両手に枷を付けられ捕まっており小笠原のとある小屋に連れられていた

その目の前には、提督殺しが叢雲に化けていた

 

 

「そうでしょ?これで貴方の司令官、提督を殺すわ残念だったわね

また新しい司令官を探しなさい?」

 

 

「ふーん、でも化けるなら私じゃない方がオススメよ?

何たって私と司令官は『誓い』で繋がっているからね

他の娘達より遥かに難易度が高いわよ

あんたの負けは見えてるわ」

 

 

提督殺しは余裕の表情と態度を取る叢雲を見下ろす

 

 

「私が負けるとでも?」

 

 

「間違いなくね、あんたは確実に負けるわよ

司令官なら絶体に見破ってくれるからね」

 

 

そう聞くと提督殺しは鼻で笑うとフードを被った仲間へと指示を出す

 

 

「そう言えばあんたに聞きたかったの

あんたたちの誓いって何?

それにあんたとあの佐渡って男の過去を探ってもなにも出て来なかった

こんなことは初めてよ

ただ、一つだけ気になるのは貴女が大本営へ来るのに『二ヶ月間の空白』がある

確かに貴女達、初期艦だけは特別に北海道の専用工厰で作られ大本営に送られてくる

でも過去一度として着任が遅れたことはない

しかも、同時に貴女と同じ時期に着任するはずだった

(さざなみ)、吹雪、電、五月雨はその着任予定時に死亡している

何か関連性があるのかしら?」

 

 

叢雲は、その言葉を聞くと微笑むと同時に提督殺しを嘲笑う

 

 

「あはは!!言うわけないでしょ!

私と司令官には絶対的な信頼があるわ!!

あんたなんかに断ち切れないほどにね!」

 

 

流石に余裕の態度を取る叢雲に苛ついた提督殺しは早足で小屋を出ていこうとする

 

 

「あ、そうだ一言アドバイスを上げるわ

あいつに、佐渡に対して一言でも言葉を間違えてみなさい?

佐渡はそれだけで気付くわよ、絶体に

アイツは私の司令官なんだもん、『私が選んだ司令官』なんだからね!!」

 

 

 

「ハッ!!言ってなさい!あんたの元にアイツの首でも持ってきてやるわよ!!

どうせ、あんた達の絆何てものはすぐに壊れるんだからね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉の、叢雲の言っていたことは真実であったことを提督殺しは実感していた

この男は今までの人間とは違う、最低でも叢雲とはかなり硬い絆で結ばれていると

 

 

「あいつに言われなかったか?

俺に対しては一言だろうと、間違えるなって

忠告は聞いておくもんだぜ、提督殺し」

 

 

「くそがぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

提督殺しは怒りのあまり佐渡に飛びかかるが、それを予期していたのか珈琲の中身をぶつけると提督殺しは急いで手でそれを拭おうとするが佐渡は提督殺しの頭を掴み床に叩きつけ押さえ付ける

 

 

「諦めろ、お前の負けだ

提督殺し」

 

 

「くそっくそっくそぉ!!

何なんだ!お前達は!!明らかに他の奴等と違う!

何でそんなにお互いを信じられる!!!」

 

 

「そりゃそうだろ

アイツは俺だけの『兵器』になると誓ったんだ

そして、俺はあいつだけの『司令官』になると誓った

俺達は二人で一つ、これからもそれは変わらない

だからこそ」

 

 

すると佐渡は提督殺しの頭を掴みながら力を込める

 

 

「返してもらうぞ、俺の相棒(バディ)を」

 

 

「……………くそがぁ!!」

 

 

提督殺しは佐渡の腹部を蹴るとその痛みで放してしまい少し距離を取り睨み付ける

 

 

 

 

 

 




次回

認めてやる


叢雲と佐渡の絆の話……今後書くつもりはある…のですがかなり長いので書こうか悩んでます()



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偽物はお前だ 三

「……良いだろう、認めてやろう

お前と、艦娘達の絆をな!!」

 

 

「おー、これは嬉しいねぇ

ならゲームは俺の勝利かなぁ?」

 

 

佐渡がニヤニヤと笑っておりそれにムカついたのか提督殺しは床に落ちていたクッションを投げつけると佐渡はそれを受けとる

 

 

「……明日の朝、嫌今日の朝に駆逐艦叢雲を砂浜に寝かせておく

約束は守ろう、お前の勝ちだ

ルールは守らねばならないからな」

 

 

「保証は?」

 

 

提督殺しは右手だけを変化させると小ビンを取り出し机に置く

すると自らの持っていたナイフを取り出し指を切りその血を小ビンにある程度入れると蓋を閉め佐渡に差し出す

 

 

「……私の血液だ

もし、帰ってこなかったらこれを大本営に渡すがいい」

 

 

「おいおい、そんなことしたらお前の正体が完全にバレるしキツいんじゃないか?」

 

 

「……お前達の絆を甘く見ていた

お前の様に艦娘を大事にしている者に託すのも悪くない

それに、そんなもので見付かるほど私は甘くない

それでも不安が残ると言うのであれば」

 

 

すると提督殺しは手錠を取り出し佐渡と自らの手に掛けると鍵を閉め佐渡に渡す

 

 

「…明日の朝までだ

かなり不服でもあるが、彼女が届けられたと言うまで私は拘束されてやろう」

 

 

「……おいおい、そんなことしたらお前が俺の仲間に殺されるぞ?」

 

 

「ふふ、ここは自分の心配ではないのか?

拘束されている間お前を殺すチャンスはいくらでもあるんだぞ?」

 

 

「いや、そいつは無いな

確かにお前は何人も人を殺しては居るが約束はどうやら守るみたいだしな?」

 

 

「………私を信じるの?」

 

 

「まぁ、六日間だがお前はうちに居たんだしな?

信じること位はしてやるよ」

 

 

そう言うと佐渡は手錠の鍵を開け外す

(ふふ、馬鹿な男こんな簡単に騙されるなんてさ

血液は偽物、後で提出されたのを回収すれば良いのよ

まぁ、実際あの娘は返してあげるんだけどルールを破るのはどうかと思うし)

そう思っていると佐渡は提督殺しの頭を触ろうとすると

 

 

「触るな!!」

 

 

「おっと、すまん

俺達提督嫌いだっけか悪い悪い」

 

 

佐渡は手を仕舞うと珈琲を二つ分用意し提督殺しに一つ差し出す

 

 

「ほれ、珈琲は嫌いか?」

 

 

「いや貰おうかな?」

 

 

急に友好的になった提督殺しに動揺もせず、佐渡はまるで客人にもてなすように珈琲を差し出すとニヤリと笑う

 

 

「その珈琲を俺に掛けて油断したところを殺す気か?

殺気を隠した方が良いぞぉ?」

 

 

「っ!!」

 

 

(読まれた!!嘘でしょ、確かにこいつが油断しているから行けるとは思ったけど)

佐渡に言われるとつかさず佐渡と距離を取ると笑いながら珈琲を口にする

 

 

「ははは!!俺には不意打ちは通用しないぜ?

残念だったな提督殺し」

 

 

「くそっ!!この提督風情が!」

 

 

 

 




次回

お前は違うのか?

そろそろこの提督殺しの前半が終わりになります
え?終わりじゃないのかって?
残念ながら今回はかなり長いんですよこれが




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疑惑の態度

「さてと、それじゃ俺は寝るからな

お前もちゃっちゃと帰れよ」

 

 

「………は?」

 

 

佐渡はそう言うと飲み終わった珈琲のカップを机に置くと布団へと潜り込む

 

 

「待て!お前、何のつもりだ!!」

 

 

「何だよ……この鎮守府では大体0時には寝てるんだよ

明日から執務しないと大井に怒られるし

あ、お前が使ってる叢雲の部屋綺麗にしとけよ?

それとももう一晩泊まりたいなら使っても良いけど、朝早目に起きないと誰かに見付かるぞ~」

 

 

佐渡は欠伸をすると寝に入ろうともぞもぞと布団を自分で被っていく

 

 

「待てと言っている!!お前!私を逃がすのか!?

私は提督殺し何だぞ!?

お前達海軍が必死に捕まえようとしている正体不明の化け物何だぞ!?」

 

 

「いや聞いたよ

別に?お前が殺してるのが普通の一般市民とかなら分かるよ?

でも、お前が殺してるのは村山とか木原見たいな悪人だろ?

ならどうぞご勝手に

海軍が探してる?確かに俺は海軍だけど特に探せとも言われてないしなぁ

俺には関係なーし

ただし、俺達はもう狙うなよ」

 

 

「お前の仲間を提督達を手にかけてるのに何故そんなに呑気なんだ!!

またお前の仲間を危機に晒すぞ!!」

 

 

「仲間に手を出すのは辞めてくれよぉ

でも、無いなお前はそんなことをもうしないさ」

 

 

「何故!言い切れる!!」

 

 

「だって、お前このゲーム中に俺をこの鎮守府の奴等に手をかけなかっただろ?」

 

 

「………はぁ?」

 

 

佐渡は寝ていたのだがゆっくりと起き上がり、提督殺しを見上げている

 

 

「お前はいくらでも俺を殺す機会が合ったのに殺さなかったそれだけでお前への信頼は充分だろ?

それにこんなゲーム何か仕掛けて回りくどい方法で俺を殺そうとしていたのに負けたらすぐに食い下がる

これ以上俺からもなんもねぇよ

うちの連中も傷付いてはいないしな」

 

 

「それだけで!!お前は……それだけでこの私を信用すると言うのか!?

提督殺しだぞ!今まで多くの人間を殺してきた重罪人をだぞ!!」

 

 

「まぁなー、それだけで俺には充分だしアイツらには叢雲と俺がおふざけでやったと伝えるよ」

 

 

提督殺しは流石に佐渡の態度に苛つきを覚え胸ぐらを掴む

 

 

「舐めてるのか貴様!!私に何もないと言うのか…!

私はお前を殺そうとしたんだぞっ!!」

 

 

「まぁ、実際死んでないし」

 

 

「そう言う事を言ってるんじゃない!!」

 

 

「いやまぁ、実はなお前の殺しには別に俺は何とも思わないんだよ

寧ろ凄いとも思うよ、不謹慎って大井におこられそうだけどな」

 

 

「……はぁ?意味がわからない!!」

 

 

佐渡は、胸ぐらを捕まれている手を放すと提督殺しを真っ直ぐに見ながら微笑む

 

 




次回

貴方は何なの?

書き始めると相変わらず止まらない…
あと少しで前半終了!



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殺人鬼の理由

「俺は知ってる、お前の事を調べてな

お前が提督狩りを初めてから、この海軍は変わった

昔は酷かったらしい、艦娘は兵器、所詮物だ

感情移入の禁止、恋愛の禁止

奴等を兵器として扱え、さもなくば提督の資格無しと言われてたらしいぜ

だが、お前の殺しのお陰で提督達がどれほど艦娘達を私欲の為に使っていたかが明るみになった

それを取り上げたメディアから国家に行き、ある元帥と艦娘達が立ち上がり艦娘保護法が作られた

それから海軍は変わった、艦娘は兵器じゃない人間だと思うようになり提督と艦娘の関係も変わっていった

まぁ、まだその名残で艦娘を兵器扱いする提督は減らないけどな」

 

 

「私は……ただ提督が憎いだけだ…」

 

 

「ただ憎いだけならもっと殺してるはずだ、だがお前は殺さなかった

むしろ艦娘の為に提督を殺してる感じだ

お前がこの鎮守府に来たとき正直嬉しかったよ

こんな鎮守府に所属する艦娘の事を見てくれているとな」

 

 

佐渡はそこまで言うと提督殺しの頭を優しく撫でる

 

 

「だが、悪いな俺はまだアイツ等を守りきってないんだ

この鎮守府は任せてくれないか?絶体に他の鎮守府見たいにはしないと約束するから

もし破ったなら、俺を煮るなり焼くなり好きにしてくれ」

 

 

「………お前にとって艦娘は何だ?」

 

 

「んー、家族かな?それと欠けがえのない物、俺の全てを使っても守るべき物だ」

 

 

佐渡の言葉に嘘がないと今なら分かる

提督殺しは怒りではなく自らが相手をしていた人間が自分と少し似ている所に気付く

 

 

「じゃ、俺は寝るから

あ、後お前に勝ったんだから何か褒美が欲しいな?

良いか?」

 

 

その言葉に提督殺しは体をビクッと反応するがすぐににやけながら佐渡を見下ろす

 

 

「良いとも、言ってみなさい何でもーー」

 

 

「楽しかったか?小笠原は?」

 

 

「ーーーーは?」

 

 

予想外の発言に提督殺しは固まり佐渡はその固まっていた提督殺しを見上げながらノンビリと布団に入る

 

 

「だから、楽しかったか?お前ここのところかなり殺してたろ?少しは休めたかって言ってるんだよ」

 

 

「……そんなこと?」

 

 

「おう、ほら早く答えろー

俺も眠いんだから」

 

 

「……楽しかったわ、正直今まで潜入してきた中ではね」

 

 

「そっか、それじゃお休み!!」

 

 

佐渡はそう言うと布団を被り静かになると立ち尽くす提督殺しを放置しながら自分は意識を手放し深い眠りへとついていく

(さてと、明日から真面目に仕事しないと……

提督殺しの正体…ちょっと気になったけどな…

まぁ、良いか…?)

少しすると今までの疲れか佐渡は直ぐに寝てしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……嘘でしょ、この男本当に寝てる」

 

 

一人部屋に残された提督殺しは佐渡の口元と喉に手を当てると佐渡が熟睡していることを確認する

するとナイフを取り出し佐渡の首もとに当てるがゆっくりと放していき通信機を取り出す

 

 

「私よ、駆逐艦叢雲を砂浜まで持ってきて頂戴

私が負けたわ」

 

 

『なっ!本当ですか!?まさか貴女が……

分かりました』

 

 

通信機を切ると佐渡に言われた事を思い出す

 

 

 

『悪いな俺はまだアイツ等を守りきってないんだ

この鎮守府は任せてくれないか?絶体に他の鎮守府見たいにはしないと約束するから

もし破ったなら、俺を煮るなり焼くなり好きにしてくれ』

 

 

「…………何なのこいつ

今までの奴等と違いすぎるわ

それに私に何言ってるのよ

私はあんたたちを殺してるのよ?」

 

 

提督殺しは混乱しながら頭の中では理解していた

この佐渡と言う男は他の提督とは違い艦娘を心の底から大事にしていると

 

 

「信頼……ヴっ!!」

 

 

その言葉を頭に過ると同時に鋭い痛みが走る

まるで何かを忘れているようなそんな感じがするが提督殺しは頭を左右に振りその考えを突き放す

 

 

「……良いわ、貴方を見定めさせてもらうわよ

その言葉が真実なのか偽りなのか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴方の側で『私の姿を見ても変わらないならね』」

 

 

そう呟くと提督殺しは衣類を全て脱ぎ捨て、擬態を解除すると佐渡の布団に潜り込み共に夜を過ごす

 

 

 

 

 




次回

提督殺しの正体

次回、ようやく奴の正体が判明します
察しの良い読者にはバレてそう…



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私が提督殺しよ

「んん……ここは?」

 

 

叢雲は小笠原鎮守府正面の砂浜にて毛布を掛けられた状態で眼を覚ました

辺りは明るくなっており、水平線の向こう側からは朝日が上がってきている

 

 

「……司令官!!」

 

 

その一瞬で意識が覚醒し、叢雲は鎮守府へ向けて走りだす

全身が少し怠いのだがそんなこと気にせず全速力で走ると鎮守府から古鷹がこちらに向かってきていた

 

 

「叢雲!!」

 

 

「古鷹!司令官は!?」

 

 

「それが……部屋の扉が開かなくてね

今大井さんが艤装を取ってきて無理矢理開けようとしているの!!」

 

 

そう聞くと嫌な予感をさせながら叢雲は佐渡の部屋に向けて走り出す

(司令官の事は信じてる、でもアイツがあの化け物が司令官や提督達に対する憎悪は普通じゃない!!)

捕まってる間、叢雲はヒソヒソと話し合う仲間の話を聞いていた

 

 

『なぁ、今回の相手って今までと違うよね?』

 

 

『確かに犯罪歴もない普通の提督だもんね

それなのに、殺すって珍しいですねあの人が』

 

 

『まぁ、でもあの人は提督殺しって呼ばれてますから

必ず殺すんじゃないですか?ゲームに勝とうが負けようが』

 

 

(お願い無事でいて!司令官!)

敵の仲間達が話している内容が如何にも怪しく嫌な予感しかせず叢雲は全速力で佐渡の部屋に走り出す

しばらく走っていると目の前から声が聞こえる

 

 

「提督!開けてくだサーイ!!」

 

 

「司令官!私よ!イムヤよ!!

お願い開けて!!」

 

 

「アトミラール!無事なのか!!

お願いだ返事をしてくれ!!」

 

 

金剛、イムヤ、グラーフがそれぞれ佐渡の寝室を叩いたり声を掛けたりしており叢雲も走る

 

 

「退いて!!!」

 

 

叢雲は三人を部屋の前に退けさせるとドアを思い切り蹴るがやはりびくともしない

佐渡の部屋は親方に新しく改装してもらったかなり硬い作りになっており艤装でも使わないと開けられないほどであった

 

 

「司令官!!私よ!分かるでしょ!今すぐ開けなさいよ!!」

 

 

「お待たせしました!!」

 

 

すると、大井が単装砲を持ちながら走ってきてドアの鍵穴に向けて撃つと鍵穴を撃ち抜きドアが開き全員で勢い良く佐渡の部屋に入る

 

 

「司令官!」

 

「提督!」

 

「無事ですか!?」

 

「提督ー!」

 

「司令官!」

 

「アトミラール!!」

 

 

全員が入るとその部屋は静まりかえっており辺りに血の匂いも死体も無く部屋の奥から「んんー?」と言う声が聞こえる

 

 

「何だぁ?砲撃音聞こえたぞぉ?朝にしては早すぎるだろぉお前らぁ……」

 

 

佐渡がベッドからゆっくりと起きているのを確認すると全員が安堵のため息をつくと同時に大井と叢雲が駆け寄る

 

 

「司令官!!提督殺しは!?」

 

 

「そうです!奴は何処に!?」

 

 

寝惚けた頭でのんびりとしながら佐渡は起きると叢雲の顔を見るとこくんと頷くとそれを理解したのか叢雲が微笑む

 

 

「あー…その話なんだけどな

悪い、俺と叢雲のおふざけだったんだわ」

 

 

「「「「「……はぁ!?」」」」」

 

 

全員が声を揃えて佐渡に驚きの声を出すと叢雲も佐渡のベッドに座ると理由を説明する

 

 

「いやー、悪かったわね

最近暇だったから何となくやってみたくなったんだけど、意外にも楽しくてね

ごめんなさいね」

 

 

それを聞いた四人は肩を震わせながら怒りを露にすると同時に大井に平手打ちを佐渡は食らう

 

 

「ばっかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

「いってぇ!?」

 

 

「貴方ねぇ!!貴方ねぇ!!!

私達がどれほど心配したのか!分かってるんですか!?」

 

 

「……あーすまん、心配掛けてしまったな」

 

 

大井は涙目になりながらも、佐渡を軽くだが何度も殴っておりその間から金剛が泣きながら飛び付いてくる

 

 

「提督ー!!冗談でよがっだよぉ!

本当に何にもないんデースよね!?提督殺しは居ないんですよねぇ!?」

 

 

「おう、悪かったな」

 

 

「ちょっと司令官!!貴方やっていいことと悪いことがあるのよ!

それぐらい弁えてよね!」

 

 

「あー、うんごめん」

 

 

「アトミラール!!貴方と言う人はっ!!

後で説教だからな!覚えておけ!!」

 

 

「ひぇ~……説教やだぁ…」

 

 

 

四人は佐渡に怒っており、叢雲は静かに離れると古鷹が叢雲に耳打ちをしてくる

 

 

「無事で良かったよ、叢雲

どこもいたくない?」

 

 

「えぇ、大丈夫よ

貴女はやっぱり気付いたのね」

 

 

「そりゃそうだよ、何たってここに来た初めての艦娘だもん」

 

 

だが、ここで異変に気付く抱き付いていた金剛が隣の布団が盛り上がっているのに気付きその何かを指差しながら佐渡の聞く

 

 

「………提督ー?

提督って寝るとき抱き枕でも使うんデースか?」

 

 

「……はい?いんや俺はそんなもの使ってーーー」

 

 

「なぁによぉ、うるさいわねぇ……

もう朝?」

 

 

「「「「「「!!!!????」」」」」」

 

 

その声にその場に居るもの全てが驚き顔を見合せるが誰の声でもなく金剛と大井は急いで佐渡の側を離れる

するとゆっくりとその何かは起き上がっていく

 

その何かは人の形をしており、髪は真っ白な白髪のサイドテールに後ろをロングで纏めてありその髪留めは星の形をしていた

真っ白な肌真っ赤な瞳をしており胸がかなり大きく衣類を着ておらず布団で胸を隠している

 

 

「あら、もう朝ね

全員お揃いじゃないの」

 

 

その言葉に全員唖然としながらも佐渡は指を指しながら驚く

 

 

「…………えっと、どちら様?」

 

 

「酷いこと言うのねぇ昨日あんなに熱く語り合ってそのまま………うふ」

 

 

「まさか!お前が!?」

 

 

佐渡が驚いてるのを他所に女性の言葉に二人以外が殺気を立てながら佐渡を睨み付ける

 

 

「提督ー?ナニをしていたんですかぁ?」

 

 

「待つんだ古鷹!!俺は何もしてない!無実だ!!」

 

 

「提督ー?私、お風呂すら一緒に入ってるのになーんで手を出さなくてそんな女を抱いたんデースーカー?」

 

 

「待てぇ!!そんなことしてない!!断じて!!」

 

 

「司令官さぁ……節操無さすぎない?魚雷撃つね?」

 

 

「やめろぉ!!そんなことしたら普通に死ぬから!!」

 

 

「アトミラール……これは説教だけで足りないな

拷問も追加だな…」

 

 

「グラーフさんんんん!

辞めてぇ!!拷問なんかしないでえ!!」

 

 

四人が佐渡を攻めていると叢雲は頭を押さえながらため息を付いているが隣にいる大井の様子が可笑しい

顔を青ざめ単装砲を構えながらガクガクと震えている

 

 

「は、離れろぉ!今すぐに!!」

 

 

「大井ー!!頼むからまだ殺さないでぇ!?」

 

 

「違います!!今すぐ私達の提督から離れろ!!化け物!!!」

 

 

「あら、やっぱり貴女にはバレちゃうか

なら尚更嫌ーよ離れたら貴女に撃たれるじゃない?」

 

 

そう言うと佐渡を盾にするように背中に隠れると裸の為胸を押し当てる

 

 

「おい!せめて服着てくれ!生殺し何ですけど!?」

 

 

「提督!!逃げてください!」

 

 

「大井!落ち着け!コイツはそんなにーー」

 

 

「早く!!そいつは……そいつの正体は…!!」

 

 

大井が震えを止めるとその女に睨み付けながら単装砲をしっかりと構える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そいつは!!歴戦種の空母棲姫です!!」

 

 

「「「「「………は?(え?)」」」」」

 

 

この場にいる大井以外は驚き全員の眼は裸の女性、空母棲姫へと向けられる

 

 

「はぁい、おはよう小笠原鎮守府の皆さん?

私の名前は『エア』

あんたたちは空母棲姫の歴戦種って呼んでるんだっけか?

よろしく~」

 

 

空母棲姫、もといエアは手をヒラヒラとしながら全員に挨拶をする

 

 

 

 





次回

歴戦種 空母棲姫エア

これで、前半は終わりになります!
後半はエアを混ぜた少しフラグ回収の話になっていきます




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歴戦の姫

大井から告げられた驚きの真実を聞き、とりあえず敵意が無いエアを移動させるため佐渡のシャツを着せて場所を移動し現在食堂にて鎮守府全員が集まっていた

 

エアに関しては佐渡の腕に捕まっており大井は相変わらず主砲を下ろさず他の四人は睨み付けている

 

 

「………とりあえず、空母棲姫さんや

その腕を離してくれないか?色々と俺がキツいんだけど?」

 

 

「いやーよー離したら撃たれるし~?」

 

 

「……大井、頼む下ろしてくれ

俺がかなり辛い、腕に当たるこの柔らかいのは男にかなり効く」

 

 

「…………提督、本当に大丈夫何ですよね?」

 

 

「あぁ、信じてくれ」

 

 

「……分かりました、信じます」

 

 

大井はそう言うと主砲を下ろすとエアも佐渡から腕を離すとため息をつく

 

 

「ふぅ……死にかけたぜぇ」

 

 

「へぇ?あんた女に免疫ないの?こんな職場の癖に」

 

 

「うるせぇな!!流石に朝から背中に生乳当てられて!更に一枚しか着てねぇ服で押し当てられたら普通に困るだろうが!!」

 

 

「あはは!それもそっかごめんごめん!」

 

 

まるで、幼なじみの様な対応をするエアに対し佐渡は少し警戒しながらも大井達は睨み付けている

 

 

「それで!お前が提督殺しなんだな?空母棲姫?」

 

 

「エ ア よ!空母棲姫は辞めて!

あんた達が勝手に付けた名前で呼ばれたくないんだけど?

まぁそうよ、私が提督殺しよ?」

 

 

「証拠は?」

 

 

「そうねぇ……じゃあ、そこの大井!」

 

 

「え!私!?」

 

 

エアは大井を指を指すと微笑みながら続ける

 

 

「北上は元気?いや、悪かったわね

貴女にあんなことさせちゃって

でもあれしか貴女を救えないと思ってね?許して頂戴」

 

 

「はい?貴女は何を言ってーーー」

 

 

「それと、霧の海域で轟沈したアイオワは貴女が佐世保鎮守府で会った人じゃないわよ

佐世保鎮守府に居たのはわ た し

それと貴女に魚雷を渡したのも私よ」

 

 

その言葉に、大井はビクッと震えるとエアは「あー、あー!!!」と声を上げている

 

 

「ごほん

HEY!大井、久しぶりですね!!

今日はmeと握手してくれますか?」

 

 

「!!!!

う、嘘……」

 

 

大井は驚きの余り、後退りをするとエアは立ち上がりゆっくりとその姿形を変えていくと大井の目の前に行く頃にはアイオワに完全に化けていた

その姿を見ると大井は口に手を当てながら驚く

 

 

「ほら、meと握手してください?

二一◯◯のお偉いさん共のpartyは阻止出来て良かったね?」

 

 

「貴女……だったんですか…」

 

 

「そうよ、私は元々木原を狙っていてね

殺す機会を探していたんだけど、流石に貴女達を見ていて不味いと思ってね?

予定を早めたのよ、結果貴女は死にかけてしまったのは許してね?」

 

 

「……あの時はありがとうございます

でも貴女は私の提督に刃を向けました、貴女は敵です!!」

 

 

大井が主砲を構えるとエアは擬態を解き元の姿に戻ると後ろへと飛び退く

 

 

 

「あら、嫌われちゃった残念ねぇ

私は貴女達艦娘の事は大好きなのに」

 

 

エアはゆっくりと歩いていき佐渡の隣に座ると大井も主砲を下ろし席に座る

 

 

「とりあえず、お前が提督殺しなのは分かった

まさかとは思うが、お前ここの奴等全員知ってたのか?」

 

 

 

「んー、少なくとも大井、金剛、イムヤは知ってたわ

グラーフに関しては手が遅れた感じかな?

ドイツの建造場に潜入した時に密かに建造されているのを知って急いで戻ってきて調べたら小笠原鎮守府に居るって知ったのだけど……」

 

 

そう言うと、エアはグラーフを見ると微笑むとグラーフはビクッと反応する

 

 

「……問題なかった様ね

あーあ、アイツをもっとエグく殺してやればよかった

何でこんな可愛い娘が物なのよムカつくわ」

 

 

「待て、空母棲姫ーー」

 

 

「エ ア !!」

 

 

「……エア、誰何だそのアイツって?」

 

 

「あら、決まってるじゃない?

貴女を運んでいた船長よ」

 

 

「「!!??」」

 

 

「お前!!アイツをどうしたんだ!?」

 

 

「殺したわよ?今頃、この近海に住む鮫の糞何じゃない?」

 

 

軽々と人を殺すエアに佐渡はため息をつきながら頭を軽く殴る

 

 

 

 




次回

何でも知ってる?

次回、提督殺しの本領垣間見せます
物理より精神攻撃って怖いですよね……




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歴戦の姫 二

「いたっ!何するのよ!!」

 

 

「お前なぁ!流石に殺し過ぎだろうが!!

もう少し命を大事に扱え!!」

 

 

「うるさいわねぇ!あいつらこそ死んで当然でしょうが!!

あんた達人間が普通は裁く筈なのに裁かないから私が殺してるのよ!

何よ!ならあんたが殺すの!?」

 

 

「殺すわけないだろうが!

もっと、こう何かあるだろうが!!他にやり方がよぉ!?」

 

 

「手っ取り早く殺すのが楽だからそうやってるのよ!!悪い!?」

 

 

「悪いから言ってるんだろうが!!」

 

 

二人が口論を始めると、今まで張り詰めていた空気が次第に和らぎ全員でため息をつく

 

 

「なんと言うか」

 

 

「拍子抜けも良いところデース……」

 

 

「私達、こんな奴に振り回されてたの…?」

 

 

「全く…二人とも落ち着いたらどうなんだ…」

 

 

「うっるさいわね!!グラーフ!だったら貴女こそ、毎晩ドイツのビスマルク達にのろけるの辞めたらどうなの!?」

 

 

エアが話したその言葉に、全員の目がグラーフへと行き

グラーフは固まり冷や汗を掻き始める

 

 

「……グラーフ?そう言えば最近お前に俺携帯貸してたな?夜だけ」

 

 

「あら?知らなかったの?この子高い確率でビスマルク達にのろけ電話してるのよ?」

 

 

「な、何の事だ?私は知らなーー」

 

 

「アトミラールと握手できた」

 

 

「……………」

 

 

「それに、今日のアトミラールはいつもよりかっこよかった」

 

 

「……………………やめろ…」

 

 

「あ、極めつけ言ってあげようかしら?

実は最近アトミラールのしゃーー」

 

 

「やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

いつも冷静なグラーフは慌ててエアの口を塞ぐため机に乗りだしそのまま押し倒す

 

 

「……グラーフさんや?ちょっと待てお前俺のー」

 

 

「アトミラール!!貴方は何も聞いてない!!良いな!?」

 

 

「いや、さっきエアがーー」

 

 

「良 い な?」

 

 

「アッハイ」

 

 

これ以上は問い詰めるのはいけないと野性的な直感で理解し佐渡が食い下がると大井が溜め息をつく

 

 

「はぁ……全くグラーフ何してるのよ…」

 

 

「いや、大井貴女も人の事言えないでしょ?

この前北上に電話先で相談したら怒られてたじゃない?」

 

 

エアがその事を言うと大井はピシッと固まり今度は大井へと全員の目線が行く

 

 

「………大井さんや、そう言えばお前に前携帯貸したっけ?北上さんと電話したいからって」

 

 

「は、はぁ?私が北上さんに怒られているなんてそんなーーー」

 

 

「Webサイト、男性の喜ぶテクニック特集」

 

 

「ーーーーー…」

 

 

エアの言葉に、大井が再び固まり佐渡が驚きながら眼をパチパチとさせる

 

 

「エアWikipedia詳しく」

 

 

「私はあそこまで詳しくないわよ?

そうね、ここ最近パソコンを弄っていてね佐渡が部屋から居なくなったときに密かに調べてるのよ」

 

 

「あー、そう言えばこの前俺が提督室に入ったとき急いでたな?

でも、あの時いきなり入ってきたからですって言われたんだよな……大井さん?」

 

 

佐渡が大井を見ると顔を真っ赤にしながら口をパクパクと開けており佐渡が勘づきエアを止めようとする

 

 

「エアさんやそこまでにしよう」

 

 

「何でよ?これからが良いところなのに

んでね、結局分からないからって球磨型の皆に素直になるーーー」

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

大井は何処からともなく魚雷を取り出すと佐渡に向けて振りかざしてくるが佐渡は何とか避ける

 

 

「うおっ!?ちょ、待て!大井!俺関係ない」

 

 

「うるさいうるさい!!忘れろ忘れろぉぉぉぉ!!!」

 

 

「はいはい、大井落ち着きなさい」

 

 

「叢雲離してぇ!!コイツを殺して私も死んでやる!!」

 

 

「いや、駄目に決まってるでしょうが

落ち着きなさい」

 

 

叢雲に取り押さえられながらしばらく暴れると落ち着いたのか部屋の隅に行くと小さな声で何かを呟きながら魚雷を壁に当てている

 

 

「あらら?ツンデレも大変ね?」

 

 

「他人事だなおい……」

 

 

 

 

 






次回

空母棲姫vs小笠原艦娘

始まりました!第一回艦娘の秘密をばらしちゃおう選手権!!
秘密をばらされるほどキツいものはないですよね…




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歴戦の姫 三

 


 

 

「全くー、二人とも情けないネー

秘密何てものを持ってるのが悪いのヨー?」

 

 

「あら?貴女もあるじゃない金剛?」

 

 

「何を言ってるネー、エア

私はそんな秘密無いーーーー」

 

 

「最近、霧島と榛名に恋愛相談したわよね?

しかもそのついでに媚薬とか調べに行ったわよね?」

 

 

「ーヨ………え?」

 

 

エアはニヤニヤと笑いながら金剛を見ていると金剛の顔がみるみるうちに青く染まっていく

 

 

「え、え?何で知ってーー」

 

 

「内容は、提督を振り向かせたいから二人に教えてほしいだっけか?

んで、霧島に押して押すのが良いと言われてエロ道具とかが売ってるお店で媚薬買ってたわよね?」

 

 

「ーーー……」

 

 

「おいこら待てや金剛、確かにこの前お前に外出許可出したけど何してんだ?」

 

 

「て、提督ー!違うネー!それはその」

 

 

「これで、提督を絶対に振り向かせて既成事実を作って晴れて結婚するネーだっけか?」

 

 

エアの言葉に金剛は冷や汗を掻きながら固まっていると続けて止めを差しに行く

 

 

「あ、でもその前に効果を試したいから自分で飲んでみるネーとか言ってこの前確か一日ーーー」

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

そう言い終わりかけた瞬間金剛が飛び掛かりグラーフと同じに押し倒す

 

 

「何で知ってるの!!何で!?」

 

 

「あはは!続けていい?貴女この前自分の部屋で一日中オーーー」

 

 

「駄目ぇぇぇぇえ!!!!」

 

 

急いで金剛はエアの口を塞ぐ二人のやり取りを見ていた佐渡は頭を抱えながら溜め息をつく

 

 

「金剛……あのな、気持ちは嬉しいけど自爆して休むなよ…

いや、仕事無いから良いけどさ…」

 

 

「あ、あぁ……終わった…」

 

 

金剛はそこまで言うと真っ白になり、その場に座り込むとエアはそれを見ながらケラケラと笑っている

 

 

「あー、面白い」

 

 

「ちょっと!!エアだっけ…か?貴女!仲間に何をしてーー」

 

 

「どうかしたの?恋する乙女ちゃん?」

 

 

イムヤがエアの攻撃を止めようとするがその言葉に更に固まる

するとニヤリとエアは微笑みながら話を続ける

 

 

「この前、潜水艦の仲間と集まって佐渡を振り向かせるテクニックをイクとはっちゃんに聞いてたわよね?

ゴーヤだけは分からなかったけど、その時に19から色々と教わったわよね?実践したの?」

 

 

「な、なななな!!」

 

 

「ほぉらぁ?寝てる間に佐渡の布団に潜り込んで潜水開始なんでしょう?」

 

 

「何で知ってるのよぉ!?誰も知らない筈なのに!?」

 

 

「そりゃ、私だし?

後、枕の下に佐渡の笑顔の写真を入れて毎晩頭を撫でられている夢を見ているってこともーー」

 

 

「だぁめぇぇぇぇ!!!」

 

 

イムヤは頭を押さえながら声を上げると耳を塞ぎダウンしてしまう

 

 

 

「イムヤさんや……何してるのや…」

 

 

こうして、四人ともエアの精神攻撃?によってダウンしてしまいエアは勝ち誇った様子で佐渡にVサインを送る

 

 

「 完 全 勝 利 S!!」

 

 

「いやこら待てや、お前は何をしとるんじゃボケェ!!!」

 

 

佐渡のツッコミが入ると叢雲が溜め息を混じりに呆れている

 

 

「あのねぇ……あんた達当初の目的忘れてない?」

 

 

「あはは…何か悲惨な事になってるね…」

 

 

古鷹も側で苦笑いをしながらダウンした四人を見ながら冷や汗を掻いている

 

 

 

 




次回

エアの目的

一応、提督殺しですからね…
艦娘の秘密を知るなんてお手の物何ですよこの人…



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歴戦の姫 四

しばらくして、佐渡達は軽い朝食を取っていたエアによってほぼ全員ダウンしておりそれを考慮したのか佐渡がサンドイッチを作り全員が回復した所で皆で話し合う事にした

 

 

「……さてと、では本題に入りましょうか

貴女は、提督殺しの正体にして空母棲姫歴戦種

エアで間違いないんですね?」

 

 

「まぁ、あんた達が呼ぶのは前者で私が他の奴等に呼ばれてるのはエアだから合ってるわね

私が提督殺しよ、あんた達が勝手に呼んでるんだけどね」

 

 

「…では、率直に聞きます貴女の目的はなんですか?

嘘をついても良くありませんよ」

 

 

大井が質問するとエアは佐渡のサンドイッチを食べながら「んー」と言いながらゴクンと飲み込み

 

 

「目的は既に言ったじゃない?私の目的はそこの佐渡『提督』を殺すこと

ゲームに勝ってね、でも殺せなかったから目的はないわよ?」

 

 

「なら!!何故ここにいるんですか!?」

 

 

「んー、こいつの事を信じきれないから?」

 

 

「えぇ……昨日あれだけ話したのにか…」

 

 

「うるさい、あんた達提督が信じられないのよ

どうせどこかで彼女達を捨てるでしょ?

だから、しばらくここにいることにするわコイツの監視って意味で」

 

 

「ちょっと待ってください!!それはこの鎮守府に住むって事ですか!?」

 

 

「そゆこと、良いわよね?佐渡?」

 

 

「んー、古鷹部屋って余ってるか?」

 

 

「確か、提督のお隣が空室でしたね?」

 

 

「だそうだ、そこなら良いぞ」

 

 

「やった、それじゃよろしく」

 

 

「「「「ちょっと待ったぁ!!」」」」

 

 

佐渡が軽々しく許可を下ろすと四人がそれを全力で否定する

 

 

「何だよお前ら、不服か?」

 

 

「不服以前の話です!コイツは深海棲艦ですよ!?

しかも歴戦の姫級ですよ!!」

 

 

「嫌でも敵意無いじゃん?」

 

 

「そうじゃないデース!!それ以前の話なんデース!

コイツは私達の敵デースよ!」

 

 

「あら?私、これでも艦娘には一度も手を上げたことないわよ?」

 

 

「司令官!姫だよ!?しかも歴戦種の!!

海軍が倒さなくてはいけないリストの三体何だよ!?」

 

 

「と言われてもなぁ……俺たちじゃ太刀打ち出来ないでしょ…」

 

 

「だがアトミラール!!コイツを大本営差し出せば良いではないか!?」

 

 

「えー、嫌よ私

あんな変態とクズの集まりの所に行かされるの

どうせ他の深海棲艦見たいに解剖や実験に付き合わされるのは勘弁」

 

 

佐渡は、エアの言葉に引っ掛かり四人の話を無視するとエアに問い詰める

 

 

「待て、空母棲ーーー」

 

 

「次その名前を呼んだら口を縫い合わせるわよ?」

 

 

「……悪い、エアそれはどういう事だ?

解剖や実験って?」

 

 

「あら?知らないの?ごく稀に深海棲艦が捕まえられたり降伏することがあるの

その際、提督達は大本営に預けるのが義務何だけどね

その場合高確率で死ぬわ、生きたまま解剖されたり投薬による効果を調べたり弱点を探すためと全身の艤装をくまなく調べられその上で艦娘と戦わせたりね?

色々よ

戦争中だから仕方ないと言っては仕方ないけど、流石にそれは勘弁してよ?」

 

 

「マジかよ大本営クズだな」

 

 

「今更じゃない?」

 

 

「分かるー」

 

 

エアの話を聞いた三人は黙ってしまうがグラーフは机を叩き反論する

 

 

「嘘だ!!海軍がそんなーー」

 

 

「事実よ、何なら今度その映像データ持ってこよっか?

中々エグいわよー?人形が主に捕まるから叫び声とか助けてとか声ばかり

それを笑みを浮かべながらやるあいつら、悪魔に見えたわよ

それに、あんたも経験したでしょ?所詮そんなもんよ」

 

 

グラーフはそう言われると黙ってしまい再び席に座り珈琲を一口飲む

 

 

「うーん、そんなところに送るのは嫌だなぁ

後味わっる」

 

 

「でも、義務よ?しないの?」

 

 

「俺は深海棲艦何て見てませーん」

 

 

「あはは、あんた優しいのね」

 

 

「そんなの事より私聞きたいことがあるんだけど?」

 

 

しばらく二人を静観していた叢雲がサンドイッチを片手に紅茶を飲んでいると一言話始める

 

 

 

 

 





次回

敵意の無い深海棲艦

最早深海棲艦の概念ぶっ壊してる気が……
気のせいかな?



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歴戦の姫 五

「何かしら?雷撃姫?」

 

 

「次その名前で呼んだら沈めるわよ?」

 

 

「あら、怖い

それで、何かしら?叢雲」

 

 

「あんた、本当に深海棲艦で歴戦種の姫なの?

嫌に友好的じゃない?

普通深海棲艦はどんな相手にも向かってくるし敵意しか無いものだと思うのだけど?」

 

 

「そうです!!私はそれを聞きたかったんです!!」

 

 

大井が机を叩きながらエアに対し指を指すとエアはのんびりとサンドイッチと珈琲を飲みながらゆっくりと答えていく

 

 

「そうね、正直私以外の深海棲艦はほとんどが貴女達、艦娘と提督、人間に敵意を向けているはその理由のほとんどは自らの縄張りを侵されたからやただ敵としてしか認識していないからかしらね?」

 

 

「と言うと、叢雲達が海に出なければあいつらは攻撃してこないのか?」

 

 

「まぁ、大半はそうなるわね?でもそれは通常の『意識の無い深海棲艦』に言えることね」

 

 

「『意識の無い深海棲艦』?何だそれは」

 

 

「そうね、簡単に言うと深海棲艦にも歳の概念があるの子供見たいな物ね

だからこそ、生まれてすぐは意識が無いのよ赤ん坊見たいな物ね

それから、外部の影響、つまり戦闘や会話を続けていくことで私達は意識を持つことが出来る

ま、例外もあるけどね」

 

 

エアから話される深海棲艦の話に全員が釘付けになりながらも聞いていく

 

 

「例外って?」

 

 

「ほとんどは、私達の様な姫級ね

彼女達は生まれた時から人間と同じ言葉を話せるわ

でも、基本的にはあなた達を敵としてしか認識してないけどね」

 

 

「なら!姫級なら話が通じるって事デースか!?」

 

 

「まぁ、一応ね?

だから、色々な所で様々な例があるわ

提督を助けた深海棲艦や和解が出来たって話もね

でも今はかなりキツいと思うわよ?

そもそも姫が生まれないし?」

 

 

「どうして?昔は姫がゴロゴロ居たじゃない?」

 

 

「さぁ?それは知らない

でも今の姫級は無理だと思いなさい

ほとんどの姫級は自我を持っていて明確に人間に敵意を持ってるわ」

 

 

「成る程な、だが待て何で今の姫級は自我を持っているんだ?」

 

 

エアはここで一息と言うように珈琲を一口飲むと再び続ける

 

 

「そうね、ほとんどの姫級は長い間この海に潜み生き続けてきた者達だからね

全員、艦娘と戦い何とか逃げ切れた者が多く存在しているのだからこそかな?」

 

 

「あー、それじゃ今更だな……

でも待て、何でお前は艦娘に敵意がないんだ?」

 

 

「そうね、私、いや貴方達が呼ぶ歴戦種と言うのはちょっと姫級からずれてるのよ」

 

 

「ずれてる?どういう事だ?」

 

 

「私達は、『ある特殊な状況で産み出された』深海棲艦なのよ

と言ってもそれは三人だけなんだけどね?

その状況ってのは流石に私も知らないわ

知ってるのはクイーンだけ」

 

 

「そうか、その三人ってのは

空母棲姫……エア

飛行場姫

南方棲戦姫 クイーンだな?

大本営大空襲の中心の三人だもんな」

 

 

 

その特殊な状況が気になるが佐渡はそれよりもエアの続きを聞く

 

 

「飛行場姫?

あぁ、『カナ』の事かしら?」

 

 

「カナ?」

 

 

「そうよ、貴方達が呼ぶ飛行場姫歴戦種の名前かな

でもあいつ以外居ないからね?とりあえず続けるわ

 

私は『艦娘より提督を憎み殺す事を目的に生まれ』

 

カナは『自らの縄張り、つまり生きる場所を守るために生まれ』

 

クイーンは『全ての艦娘と人間を皆殺しにするために生まれた』

 

これが、私達が他の姫級とは違うってこと

他の深海棲艦や姫達は私達三人を姫級のflagshipと呼ぶわ」

 

 

「成る程……それなら納得が行きます」

 

 

「どういう事だ?大井?」

 

 

大井はノート型パソコンで調べていたのか佐渡に記事を見せる

 

 

「実はですね、エアとその飛行場姫 カナ?の事を調べていたんです

ですが、二人は極端に目撃回数が少なくてですね、それよりもクイーンの目撃回数は比較的多いんですよ

しかも、カナに関しては大本営の事件以降どこかに隠れたのか見付からないんですよ」

 

 

「そりゃ、そうよカナはクイーンに頼んで島を貰ってそこでのんびりと暮らしてるわ

基本的にそこから出ないし周りは自らの艦隊で埋めてるから早々に見つかりっこないわ

まぁ、見付かった所で貴方達が倒せるわけないけど」

 

 

エアはそう言うと、サンドイッチを食べながら珈琲を飲み再び一息つく

 

 

 

 




次回

小笠原島の秘密

エアさん、バリバリ話してますね……
バレても問題ないと言うことでしょうか?


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歴戦の姫 六

「お前、その言い分ならそのカナに詳しいのか?」

 

 

「詳しいと言うか友人だし?

ちょくちょく遊びには行ってるわよ?」

 

 

「なら居場所をーーー」

 

 

「言うわけないでしょうが

友人を売らないわよ」

 

 

エアはそこで機嫌を損ねたのかプイッとそっぽを向くと佐渡は舌打ちをする

 

 

「まぁ、でも忠告はしといてあげる

私はともかく、カナとクイーンには手を出さないのが賢明よ

あいつらはただの姫級なんかじゃないからね

戦うなら犠牲覚悟で挑みなさい

あの二人は私みたいに甘くないからね」

 

 

エアはニヤリと笑いながら答えると佐渡達は背筋がゾクッとするのを感じる

 

 

「……だが、倒さないといけない敵なのは確かだ

いつかはぶつかるんだろうな」

 

 

「ま、頑張りなさいって精々ね」

 

 

「と言うか、何でお前は提督にしか興味ないんだ?」

 

 

「さぁねぇ?生まれた時から艦娘はどうでも良くてあんた達提督と言う存在そのものが嫌いだったんだし?」

 

 

「……お前、まさかとは思うが元艦娘なのか?」

 

 

「さぁ、分からないわ

過去の記憶なんて物は無いし、私が深海棲艦として生まれた意味も分からないわ

でも、何かやることがあるってことは明確に分かってる

それが何なのかは分からないけどね」

 

 

二人が会話しているとそれを割り込むように大井が咳払いをする

 

 

「ごほん、とりあえず彼女は危険です

ここに置いておくのはかなりよろしくないことです」

 

 

「へぇ?じゃあこの小笠原が危険になっても良いんだぁ?」

 

 

エアの含みある発言に全員の目が集中する

 

 

「……待て、それはどういう意味だ?」

 

 

「だって、この小笠原島は『私の縄張り』だもん

それを放棄すると言うことはこの鎮守府に大量の深海棲艦が流れ込んでくるわよ?」

 

 

その発言に全員が驚き唖然とするが佐渡は直ぐ様エアに詰め寄る

 

 

「まてまて、何だその縄張りっての!?」

 

 

「あら?知らないの、私達姫級はそれぞれ自らの縄張り(テリトリー)を持ってるの

んで、ここを保有しているのは私って訳」

 

 

「待て質問させろ!!

お前がここを潰したのか!?」

 

 

「違うわよ、ここを潰したのはクイーン

それで別にここの鎮守府を潰したかったからってここを放棄してね

なら頂戴って貰ったの」

 

 

「まさかとは思うけどこの近海に深海棲艦が居ないのって……」

 

 

「私が露払いしてるからよ?この鎮守府は私専用のお風呂だったしね」

 

 

「そう言うことだったのか…

だから近海に深海棲艦の……待て!!お前なら何でこの前この鎮守府を攻撃した!?」

 

 

佐渡はここに着任した時の事を思いだし聞くとエアは首を傾げると思い出したのか手を叩く

 

 

「あー!あれね!あれはあんた達への警告よ」

 

 

「じゃあ!警報器切ったのは!?」

 

 

「私、あの音嫌いなのよ」

 

 

「お前が犯人かぁ!?」

 

 

「そうよ?悪い」

 

 

エアがどや顔していると佐渡は溜め息を付きながら頭を抱える

 

 

「よかったじゃない?司令官、悩みが一つ減ったわよ?」

 

 

「逆に増えてるよクソッタレ……」

 

 

叢雲がにやにやとしているが佐渡は更に深い溜め息を付き頭を悩ませる

 

 

 

 




次回

そうだ!彼女に頼ろう!

次回の行動で一波乱になります
まだ終わりませんよ?



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歴戦の姫 七

「ごほん、ではそろそろ決めるとしましょう

彼女をどうするかを」

 

 

大井が仕切ろうとすると、全員大井へと目が行くのだがエアは珈琲を飲みながらのんびりしている

 

 

「……とりあえず、大淀に相談するのはどうだ?」

 

 

グラーフがそう意見を出すとエアがそれに手をあげる

 

 

「あら、それなら賛成

彼女なら何とかしてくれるんじゃないかしら?」

 

 

「待て、エア

あの人は大本営の人間だぞ?」

 

 

「あら?庇ってくれるの?」

 

 

「……まぁな」

 

 

「うふふ、優しいのねありがと

でも大丈夫よ、彼女なら実際なんとかできると思うわ

それに彼女は大本営の行動に反対派の艦娘だし?」

 

 

エアがそう言うと全員が佐渡を見ると佐渡は大淀に電話をする

何回かコールすると大淀が電話に出る

 

 

『はい、もしもしこちら大本営、羽田元帥秘書艦 大淀です』

 

 

「あー、突然ごめんなさい佐渡です」

 

 

『あぁ!佐渡大尉どうされましたか?』

 

 

「今って一人ですか?」

 

 

『いえ?隣に元帥がいらっしゃいますよ?』

 

 

「すみません、ちょっと他の人に聞かれたくない話なので一人になって頂けませんか?」

 

 

『……佐渡大尉、何したんですか?

セクハラですか?それとも…』

 

 

「あー、えっとまだしてないと言うかこれからするかもと言うか……」

 

 

『……?何かとんでもないことですか?』

 

 

「…まぁ、そんなところです」

 

 

『………分かりました少しお待ちくださいかけ直します』

 

 

そこで大淀とは通話が切れると全員が「どうだった?」と言わんばかりの顔をする

 

 

「ちょっと待ってな、大淀さんーー」

 

 

と言い掛けると再び携帯が鳴り出し全員に指を立てながら電話に出るために食堂の入り口まで移動する

 

 

「はい、もしもし」

 

 

『はぁ、はぁ、佐渡大尉!

周りには誰もいませんよ!』

 

 

「走ったんですか!?

何かすいません……」

 

 

『いえ、大したことありませんよ

で、何でしょうか?』

 

 

「実はですね……」

 

 

佐渡は今までの起きたことを全て大淀さんに相談すると向こう側で大声で叫ぶ

 

 

『提督殺しの正体が、歴戦種の空母棲姫!?』

 

 

「えぇ……

にわかに信じがたいですが…」

 

 

『で!彼女は!?』

 

 

「……今、うちの鎮守府に居ます

それで、彼女をうちに置いておきたいのですが…」

 

 

『駄目です!!』

 

 

「デスヨネー」

 

 

『と、言いたいのですがうーん……

彼女は何と?』

 

 

「ここに住みたいと…」

 

 

『貴方は大丈夫なんですか?彼女は仮にも空母棲姫、我々の敵です

しかも、提督殺しは相手を逃がしたことがありませんし…』

 

 

「それが、何か全くこちらに敵意が無いらしく

何かをするって感じでも無いんですよね

俺の事は嫌ってますけど」

 

 

『うーん……

とりあえず、そちらに伺っても?』

 

 

「大丈夫ですが…元帥には…その…」

 

 

『分かってます秘密にしてそちらに向かいますので

後すみません、明石を同行させても構いませんか?』

 

 

「構いませんが……何故に?」

 

 

『流石に私一人だと恐いですからね…

念のためです』

 

 

「分かりました、ではお待ちしております」

 

 

佐渡は電話を切り食堂に入ると全員がエアを向いているが大井だけこちらに振り向く

 

 

「どうでしたか?」

 

 

「とりあえず、大淀さんだけはこっちに来るって

後、明石さんも」

 

 

その名前にエアがピクッと反応する

 

 

「ねぇ、佐渡今明石って言った?」

 

 

「え、あぁ、うん」

 

 

「そう……ねぇ、佐渡

私が死にかけたら助けてくれるのよね?」

 

 

「え?まぁ、うん?」

 

 

「そう、なら良いわ」

 

 

その意味深の言葉に少し引っ掛かり、叢雲を呼び寄せると耳打ちしコクンと叢雲は頷く

 

 

「そんじゃ、全員防波堤に移動するぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「明石、居る?」

 

 

大淀は、大本営の地下にある工廠に来ると明石を呼ぶために工廠内を歩き回る

 

 

「ん?何か用?大淀?」

 

 

機材の真ん中から、ひょこっと明石が顔を出すと周りには妖精達も居り機材を弄っていた

 

 

「ねぇ、ちょっと良いかしら?」

 

 

「何々?何かの修理?」

 

 

「うん、ちょっと」

 

 

明石は機材をほったらかしにすると大淀に近づきその内容を聞く

 

 

「ちょっと、護送艦頼める?」

 

 

「え!私!?」

 

 

「うん、明石にしか頼めないの」

 

 

「いやいや!私なんかよりーー」

 

 

「お願い」

 

 

大淀のいつもと違う態度に明石は察したのか工具を床に置き着替えるために奥へと行く

 

 

「夕張ー、ごめんちょっと出てくるー」

 

 

「良いけどー、長いの?」

 

 

「まぁねー、ごめんここお願いねー」

 

 

明石はロッカーから服を取り出し着替えると置いてあったペンダントを取り出し首に下げる

 

 

「………提督、見守っていてくださいね」

 

 

そう呟くと、明石は早足で大淀に向かっていく

 

 

「ごめんお待たせー」

 

 

「じゃあ、行きましょ?」

 

 

明石と大淀は工廠を後にすると、海に向かって二人出歩いていくと明石が聞き出す

 

 

「ねぇ、どこに行くの?」

 

 

「小笠原鎮守府よ」

 

 

「え?何かあったの?」

 

 

「うん……かなりの問題がね」

 

 

「何々?教えてよー?」

 

 

明石が大淀の横腹をつつくと、大淀は辺りを見回し誰も居ないことを確認し明石に耳元で呟く

 

 

「……今から深海棲艦に会いに行きます

この事は黙っててね?」

 

 

「わーお……あの鎮守府凄いね…

今度は深海棲艦も引き取るの?」

 

 

大淀はそれ以上言わなかったが、明石は「そっか…」と言うとペンダントを力強く握りしめる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「深海棲艦か……平常心保てるかな…」

 

 

 

 

 

 

 

 






次回

明石


最近、仕事が忙しくて書くのが少し怠ってしまう…



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消えない怨恨

現在、佐渡達は全員防波堤にて大淀が来るのを待機して待っていた

グラーフと叢雲は艤装を付けており一応、エアには大淀さんだけではなく他の人が来る可能性を考慮して女憲兵に化けてもらっている

 

 

「にしても、本当にこれ凄いデース……」

 

 

「本当、本物の憲兵見たい…」

 

 

金剛とイムヤが、エアの全身を見ているが確かに何ら遜色ない程に女憲兵である

きちんとした制服、整った髪にメガネに真っ黒な髪に黒い帽子

正に憲兵と言うほどにしっかりとしている

 

 

「ま、これが特技だからね

こんなものお手の物よ?」

 

 

「おいエア、変なことだけは起こすなよ?」

 

 

「分かってるわよ、流石にね」

 

 

するとエアは「あー、あー」と声を出していくと少しずつ別の人間の声に変えていく

 

 

「うん、こんな感じかしらね

では佐渡提督待ちましょうか」

 

 

「本当にお前のそれ凄いよな…

グラーフどうだ?」

 

 

「……あぁ、来たみたいだな

二人、こちらに向かってきている」

 

 

グラーフは艤装を展開しながら、艦載機を飛ばしながら辺りを警戒してもらっている

 

 

「……だが、その近くに深海棲艦の艦隊が見える」

 

 

「あ、ごめんそれ私の艦隊

時間だもんね、連絡しとくわ」

 

 

エアはポケットから、艦載機を取り出すと空に向け投げるとかなりの速度を出していきながら飛んでいく

 

 

「……待て、お前艦隊何て持ってたのか?」

 

 

「えぇ、私に良く従ってくれる良い子達よ?」

 

 

「……うん、深海棲艦の艦隊が反対側移動を始めた

これでぶつからないだろう」

 

 

しばらくすると、水平線の向こう側から二つの影が見えて来る

 

 

「お、見えたな

エア」

 

 

「分かっていますよ、佐渡提督」

 

 

先程まで聞こえていたエアの声とは違い少し違和感を覚えエアを見るとやはり見た目は完璧な憲兵な為更に違和感を覚える

 

 

「……確かに、こんなんじゃ分かるわけないよな…」

 

 

佐渡がそう呟くと、目の前から大淀と明石が到着し防波堤に上がってくる

 

 

「お久しぶりです、佐渡提督」

 

 

「はい!遠路遥々ご苦労様です!

すみません大淀さん」

 

 

「いえ、大丈夫ですよ

本日の予定は特にありませんでしたから」

 

 

「お久しぶりです!佐渡提督!!」

 

 

「おぉー!明石さん!お久しぶりです

すみません、本日は工廠のお仕事休んでまで来ていただいて」

 

 

「いえ!構いませんよ!

特に急ぎの物は無かったですから」

 

 

二人が会話していると大淀がキョロキョロと周りを見ている

 

 

「……所で、佐渡提督

彼女は?」

 

 

「あー、えっと、グラーフ」

 

 

「………あぁ、大丈夫だ周りにはこの二人しか居ない」

 

 

「むぅ…信用してくれてなかったんですかー!佐渡提督ー!」

 

 

明石は頬を膨らませながら怒っていると佐渡は「あはは」と乾いた笑いをしている

 

 

「すみません、万が一がありますからね……」

 

 

「まぁ、仕方ありません事が事ですからね…

所で、そちらはどこの憲兵さんなのですか?

ここには憲兵さんなんて……」

 

 

大淀が言うと佐渡はエアの肩を叩くと「はぁ」と溜め息をつくと帽子を取りくるくると回し始める

 

 

「大淀、大本営所属

羽田元帥の秘書艦  

大本営の経理や全鎮守府の艦隊運営の指示を出している切れ者

趣味は読書とショッピング

工作艦明石と大の仲良し

癖は、そうね驚いたりすると右手に拳を作る」

 

 

「!!!!」

 

 

エアは次に明石を見るとゆっくりと説明していく

 

 

「明石 大本営所属

五十嵐(いがらし)少佐の艦娘

今は大本営で唯一の工作艦として工廠を仕切っている

趣味は機械弄りとスイーツ巡り

癖は、良く暇になったりすると髪を弄るかしらね?」

 

 

「どうして!私の事を!?」

 

 

「………成る程、佐渡提督彼女が…」

 

 

「あぁ、エア

姿を戻せ」

 

 

佐渡がそう言うと、帽子を投げ捨てると黒い帽子は空に消え髪は白く染まりどんどん伸びていき、服装も真っ黒な制服から白いシャツに変わり身長も伸びていく

エアは全身の擬態を戻すと髪を払いその姿を二人に晒す

 

 

「……………………えぇ間違いないですね」

 

 

「嘘………空母棲姫?」

 

 

「はぁい、『二人とも初めましてではないわね

久しぶり』かしらね?

貴方達の大本営を潰した空母棲姫 名前をエアよ

よろしくね?」

 

 

エアが微笑みながら自己紹介を終えると、大淀は後ろに後退るが明石は下を向きながら俯く

 

 

「佐渡提督、彼女が?」

 

 

「お電話したとおり、彼女が空母棲姫の歴戦種です

私達艦娘には敵意が無いらしく今は大人しいですがーーー」

 

 

「佐渡提督、ごめんなさいもう一度良いですか?」

 

 

大淀と佐渡の会話に突然明石が割り込み、二人の視線は明石に向く

 

 

「明石……?」

 

 

大淀がいつもと違う明石の態度に混乱しているが、佐渡はその態度が何なのかは何となく察すると叢雲に顔を向け頷くと明石に話始める

 

 

「……彼女は、提督殺しそして空母棲姫の歴戦種です」

 

 

「そう……です…か」

 

 

「明石?どうしたの?」

 

 

「ごめん、大淀……

これは私の責任にして良いからね?」

 

 

すると、明石は拳を握り締め唇を噛みながら何かに耐えているのだが次の瞬間艤装のクレーンを思い切り振り上げエアに向かっていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「死ねぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

 





次回

邪魔をするな!!

明石さんの怒りは次のお話で語られます



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消えない怨恨 ニ

いつもの穏やかな明石からは想像出来ないほどの怒りと憎しみに満ち溢れた声とその表情を見た瞬間エアが反応が遅れるのだがその瞬間叢雲が二人の間に入り込み艤装を使い明石のクレーンを何とか止める

 

 

「叢雲さん!退いてください!!」

 

 

「悪いわね、司令官が守るって決めたものを壊させる訳には行かないのよ」

 

 

「お願いだから!!邪魔をしないでください!!

ソイツは…ソイツだけは!!」

 

 

「グラーフ、古鷹!エアを下げろ!!

他全員は明石さんを止めろ!!」

 

 

「「「「「了解!」」」」」

 

 

「明石!!辞めなさい!

彼女は大事な重要参考人なんだから!!」

 

 

大淀も明石が暴れるのを止めていると佐渡はエアの側に行くと睨み付ける

 

 

「……何をした正直に言え

五十嵐…さんを殺したのか?」

 

 

「まさか、殺してはいないわ

ちょっと……ね?」

 

 

「ちょっと!ちょっとだと!?」

 

 

その言葉に更に明石の怒りはヒートアップしてしまうが最後に金剛が無理矢理明石の頭をコンクリートに叩き付けるがエアへの睨みを辞めない

 

 

「明石!落ち着くネー!

らしくないヨー?」

 

 

「放してください!!アイツを殺すんです!!

仇を……仇を討たせてください!!!」

 

 

「え……?」

 

 

その言葉に金剛は油断したのか手の力を緩めてしまいそれを見た明石はその隙に四人の拘束を抜け再びエアに向かっていく

 

 

「死ねぇぇぇぇ!!!

提督の仇!!」

 

 

だが、次の瞬間叢雲が明石の足を払い体制を崩させた瞬間クレーンの隙間に艤装を入れ無理矢理曲げ使い物に出来なくさせると同時に首へ腕を回し締め付ける

 

 

「あ……が…う……」

 

 

「悪いわね、少し寝ていてもらうわよ

話は起きてから聞くわ」

 

 

「む……ら…く……も…」

 

 

しばらく叢雲が首を絞めていると明石は気絶してしまいとりあえずは騒ぎが抑えられた

 

 

「……金剛、明石さんを入渠施設へ

叢雲助かった」

 

 

「了解デース!」

 

 

「こんなの大したことないわよ」

 

 

「ごめんなさい!佐渡提督!!」

 

 

 

金剛が明石を抱き抱えるとゆっくりと鎮守府へ向かっていきその後ろ姿を見ながら大淀は頭を下げる

 

 

「あぁ、嫌良いですよ

それよりも、エアどう言うことか説明してもらおうか?」

 

 

「……良いわよ、と言うかそこの大淀も知ってるはずよ?」

 

 

大淀がエアの言葉にビクッと反応すると恐る恐る頭を上げ眼鏡を直す

 

 

「……えぇ、知っては居ました

ですがあそこまで引きずっているとは思わなかったんです…」

 

 

「エア、何の話なんだ?」

 

 

「ここじゃ何だし、鎮守府に行きましょ?

寒いのは嫌いよ

大丈夫、キチンと話すわよ」

 

 

エアが歩いていくと、その後ろから他の艦娘達も付いていくが大淀だけは浮かない顔をしている

 

 

「大淀さん、エアが五十嵐さんを殺したのですか?」

 

 

「…いえ、正確には『巻き込まれた』ですかね?」

 

 

「……成る程、そう言うことですか

と言うと明石さんは」

 

 

佐渡は何となくその意味を理解し大淀に訪ねると暗い顔をしているがしっかりと答えてくれる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はい、彼女は明石は

私と同じ『大本営襲撃事件の生き残り』です

そして、彼女の提督五十嵐少佐は明石を庇って意識不明の重体なんです」

 

 






次回

恨み

エアの証言と明石の証言
食い違う二つの話の真実とは?



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消えない怨恨 三


20000UA 突破!ありがとうございます!!




現在、提督室のソファにてエアを佐渡と叢雲で挟みその対面側に大淀が座り一息ついている

 

 

「さてと、それじゃエアどう言うことか説明してもらおうか」

 

 

「そうね、私と言うよりもそこの大淀に聞いたら?

とりあえずその後で話した方がいい気がするし」

 

 

エアがのんびりとお茶を飲みながら大淀に顔を向けると大淀も一口お茶を飲み話始める

 

 

「そうですね……

佐渡提督、大本営の事件は知ってますよ?」

 

 

「あぁ、確か二度目の戦争が始まった事件だろ?」

 

 

「えぇ、あの日全てが終わるはずだったのです

犠牲は決して少なくは無かったですがようやくこの戦争が終わりを告げると思い皆安心しきって居ました

何人もの艦娘が自分達の未来を考えたり、提督と結婚する等を考えていました」

 

 

そう言うと大淀は哀しそうな顔をするがその過去の話を続ける

 

 

「当時、私は羽田元帥の秘書艦兼旗艦を務め、明石は五十嵐少佐の秘書艦を務め良く二人で遊びに行ったりしていました

羽田元帥と五十嵐少佐は幼なじみでして、良くお互いの鎮守府に遊びにいっていました

そして、二人とも艦娘を大事にしかなりの戦果を上げ硬い絆で結ばれていました

そうして、告げられた終戦の日

私達はその日に提督に告白すると決めていたんです、戦争が終われば私達のお役ごめんですからね

でもそれは叶わなかった」

 

 

大淀は悔しそうに、湯飲みを握り締めながら歯を食い縛りエアを睨む

 

 

「貴方達が来なければ……

あの日は地獄そのものでしたよ…

本当に良くやってくれましたよね…」

 

 

睨まれているのにエアはそんなこと気にせずにのんびりとお茶菓子を食べていると佐渡に軽く殴られる

 

 

「痛いわね殴らないでよ」

 

 

「いや、お前真面目な話してるのになに食べてるの!?」

 

 

「ここのお茶菓子美味しいわね?」

 

 

「ねぇ、聞いてた?ねぇ、聞いてた?」

 

 

大淀の話を聞いていたエアはお茶を一口のみ溜め息を付くとのんびりと語りだす

 

 

「そんなこと言われてもね、私はあそこに参加したのはクイーンに言われたからでまさか大本営行くなんて知らなかったし、私はあの日はただの付き添いよ?」

 

 

「では!あの艦載機は何ですか!!

貴方と飛行場姫の物では無いんですか!?」

 

 

 

「あれ?あれは全てカナの物よ?

私はなーんにもしてないわよ

だって、あの時から私は大本営には良く出入りしてたし、当時の大元帥は私の対象じゃなかったしね」

 

 

「……カナとは?」

 

 

「あんた達が呼んでる飛行場姫の歴戦種よ

私達はそれぞれきちんとした名前があるのよ」

 

 

大淀が睨みながらエアを見ているがエアはそんなこと気にせずにのんびりとしている

 

 

「それに、あの作戦を考えたのはクイーンよ

私は乗り気じゃなかったのよ

私の殺す対象はあくまで人間

貴女達艦娘ではないわ

だから、私は手を出さなかった

それに、私が手を出していたらあれだけじゃ済まなかったわよ?恐らくあんた達全滅よ間違いなくね」

 

 

エアに言われると大淀は悔しそうに唇を噛むと溜め息混じりに続ける

 

 

「はぁ……

仕方ないでしょ、私一人であんな『化け物止めるなんて』出来ないんだから」

 

 

「おい待てエア

今止めるって言ったか?」

 

 

「えぇ、言ったわよ

だって、私は戦争とかあんまり好きじゃないし

どうせならどっかでのんびりとしていたいしね」

 

 

その言葉に、大淀が反応しエアへと詰め寄る

 

 

「戦争反対派何ですか!?貴女は!!」

 

 

「え?えぇ、私は特に興味ないし

私が殺すのは艦娘を無下に扱う提督だけよ」

 

 

「………その話本当何ですか?」

 

 

突然提督室の扉が開かれ、廊下から明石が艤装を外した状態で入ってくるとエアに詰め寄る

 

 

 

 

 





次回

加害者と被害者

明石とエアの話し合いが始まります
元々エアは艦娘とは敵対してない珍しい深海棲艦ですからそこまで戦争にはこだわりはないんですよねぇ



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消えない怨恨 四

詰め寄られているエアは明石を見上げると特に気にせずにのんびりとお茶を飲んでいる

 

 

「えぇ、別に貴女達艦娘には興味ないし

正直、戦争にも興味ないわ」

 

 

「じゃあ!!どうして貴女達は人間達と戦争なんてしているんですか!?」

 

 

「さぁ?少なくとも私は知らないわよ

クイーンにでも聞いたら?」

 

 

「貴女は歴戦の姫級じゃないんですか!?

貴女が全ての深海棲艦に命じればこの戦争が終わるんじゃないですか!?」

 

 

「あのねぇ、確かに私は位としては上よ?

でも始元や監視者見たいな事は出来ないの

それに、多分無理よ」

 

 

「どうして!?」

 

 

「深海棲艦は貴女達人間を艦娘を憎んでいるわ

そりゃそうよ貴女達は私達の敵で、貴女達は何度も仲間を殺してるんだもん

中には貴女達に仲間を奪われ憎んでいる者も居る

少なくともあんた達が歩み寄る事をしない限りはね

こんな風に自分より弱い奴に命じられて動くやつなんて居るかしら?」

 

 

「だったら…!私達が歩み寄れば良いのですか!?」

 

 

「まぁ、分からないけど改善は出来るんじゃない?

少なくとも私はコイツなら居ても良いとは思ったし」

 

 

エアは佐渡の頬を人差し指でグリグリと押し付けるとムカついた佐渡に頭を殴られる

 

 

「いたっ!何するのよ!?」

 

 

「お前が先にやったんだろうが!!頬をグリグリすんな!!」

 

 

「一々煩いわねぇ!!あんたそれでも男なの!?」

 

 

 

二人が口喧嘩を始めていると明石は拳を握り締めながら怒りを露にしているとエアがそれに気付き佐渡との喧嘩を抑え溜め息をつく

 

 

「まぁ、貴女が怒る気持ちは分かるわよ

そりゃそうよね、大事な提督が意識不明の重体なんですものね」

 

 

「え……?」

 

 

「本当?明石?」

 

 

大淀も知らなかった事実をエアによって告げられ明石は更に怒りを溜め込みながら話を続ける

 

 

「そうです…私の提督…五十嵐さんは今植物状態で病院に入院しています…

あの事件の時私を庇って艦載機の攻撃をまともに受けてしまったんです…」

 

 

「私は見ていたけど、素晴らしいと思ったわよ?

艦娘はいくらでも替えは居るのにあの提督は自らを盾にすることで彼女を庇ったんだもん

本当、コイツとそっくりでね」

 

 

「えぇ…確かに佐渡提督にそのところはそっくりです…

あの人も艦娘を大事にし、優しく時に厳しい方でした…

だからこそ!!貴女が許せない!!お前達深海棲艦が憎い!!自分が憎い!!どうしてあの時私は動けなかったのか!どうしてあの人は私を助けたのか!!

どうして……私が犠牲になれなかったのかを…

あの時私が死んでいれば!!

きっと…五十嵐さんも私を憎んでるはずですよ…

せっかくの工作艦だから守らなくてはいけないって…仕方ないって…」

 

 

明石はそこまで言うと目に涙を溜めそれを袖で拭うと佐渡がそれを否定する

 

 

「明石さんそれは違うんじゃないですかね?」

 

 

「え……?」

 

 

「俺は五十嵐さんなんて知りませんが、多分俺と同じなら明石さんを守れたのを誇らしく思ってますよ」

 

 

そう言うと叢雲を見ながら自分の背中を触る

 

 

「俺も一度そう言う事がありましてね

どっかの駆逐艦を守るために自らの命を捨てようとしました

でも、それを後悔したことは無いですよ

守りたいものが守れたんですから、誇りに思いますよ

まぁその後、すっごい怒られましたけどね」

 

 

「本当にねぇ、心臓に悪いわよあんなの

二度としないでよね?本当に怖かったんだから」

 

 

「ごめんって、次は上手くやるからさ?」

 

 

「そう言う問題じゃないわよ!このお馬鹿!!」

 

 

「あいたぁ!?」

 

 

佐渡に対しクッションを投げ付けると真ん中のエアが避け見事に佐渡の顔面に直撃し二人とも笑っているとエアが明石に言う

 

 

「あんたの提督は自分の意思であんたを守ったんじゃない?少なくとも私はこれを見てそれを確信したわよ」

 

 

エアはポケットからあるものを取り出すとそれを明石に差し出す

 

 

「!!

これって!」

 

 

「五十嵐とやらのでしょ

クイーンが踏み潰そうとしていてね

先に拾っておいたの

いつか貴女達に返すために

悪かったわね遅くなって、渡す機会が無くてね」

 

 

エアから渡されたのは銀の懐中時計それは五十嵐がいつも身に付けていた明石からのプレゼントだった

時計を開けると時計は壊れており襲撃された時間二時四五分を示していた

 

 

「なんで……」

 

 

「別に最初は興味本意よ綺麗だったし直せば使えるしね?

でも、その裏を見て気が変わったの」

 

 

「裏……?」

 

 

エアは立ち上がり明石の持っている懐中時計の裏を見せ蓋を開けると一つの写真が入っていた

 

 

「!!

これ……」

 

 

「貴方達のこんなのを見せられたら返すしか無いじゃない

こんな笑顔で楽しそうな写真が合ったらさ?」

 

 

その写真とは桜の木の下で明石と五十嵐が笑い合いながら二人でピースをしている写真だった

それを見た瞬間明石は涙を流しながらその懐中時計を強く握り締める

 

 

「良かったわね、素晴らしい人間で

こんな人達が全鎮守府の提督になれば良いのにね」

 

 

「……ごめんなさい!失礼します!!」

 

 

明石は涙を流しながら外に出ていくと大淀が心配そうにしているのを見ており佐渡へ向き直る

 

 

「行って上げてください

大淀さん」

 

 

「……はい!」

 

 

大淀が急いで追い掛け部屋を後にすると廊下から明石の泣き声が聞こえているがエアは気にせずソファに座り直す

 

 

「へぇ?良いことするデースネ?深海棲艦?」

 

 

「別に?返すものを返してやっただけよ

それに」

 

 

エアは佐渡へ向き直ると再び頬をグリグリと触る

 

 

「こいつみたいな提督は殺す気は起きないのよ!!」

 

 

「だから痛いから辞めろって言ってんだろうが!!」

 

 

 

 

 





次回

難題

次回から少し難しい話になります
エアは艦娘の味方ですからねぇ



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大本営の内情

「……ごほん、佐渡提督申し訳ありませんでした

お騒がせしてしまって」

 

 

「いいえ、特にこちらとしては?

何かあったか?叢雲?」

 

 

「さぁ?忘れたわ」

 

 

明石が落ち着きを取り戻し、現在明石と大淀が隣同士に座りその対面に先程と同じように座っているのだが明石の眼は赤く染まっている

 

 

「では、すみません話を戻しましょう

歴戦の空母棲姫 エアさんの事に関して」

 

 

大淀がそう言うと、場の空気が少し張り詰める佐渡達も真面目な面持ちになるのだがエアだけはお菓子を頬張っている

 

 

「彼女が私達に対し敵意が無いことは分かりました、そして彼女が提督殺しであることも間違いないでしょう

正直に申し上げますと彼女をこちら大本営に身柄を渡して頂くのが賢明であり、そうして頂きたいです

ですが、私個人としてはここに居て欲しいんですよね」

 

 

「……それは何故に?」

 

 

「確かに大本営は、彼女達三人を撃沈させることですので正直捕獲と言う点に置いてはほとんど考えていないんですよね

と言うよりも普通歴戦の姫が自ら来るなんてこと事が起こると言うこと事態可笑しいことですから……」

 

 

そう言うと全員の目がエアに集中し、それに気付いたのか佐渡の頬に煎餅をグリグリと押し付ける

 

 

「何見てるのよ提督風情が!!」

 

 

「痛い痛い!煎餅を押し付けるな!!」

 

 

その光景を見た大淀は深い溜め息を付くと眼鏡をくいっと上げ話を続ける

 

 

「それに、正直ここから彼女を連行したところで向こうで逃げられるかその道中に深海棲艦に囲まれるがオチだと思いますしーーー」

 

 

「ねぇ、取り繕うのは辞めたら?大淀

貴女の意見を聞きたいんだけど?」

 

 

「……貴女はどこまで大本営を知っているんですか?」

 

 

「大半は知ってるわ

何せ貴女達の所に潜入してたんだし?」

 

 

大淀はエアを見ながら溜め息をつくと明石に頷くと明石もそれを返すように頷く

 

 

「……佐渡提督、私は正直彼女を匿って欲しいんですよね」

 

 

 

「匿う?深海棲艦をですか?」

 

 

「えぇ、ここからは機密事項です

口外は禁止ですからね?貴方達を信じて話します」

 

 

大淀は先程より暗い顔になるとそれを察したのか佐渡も真面目な面持ちになる

 

 

「深海棲艦、それは私達の理解を外れた者達

そして、明確な敵意を持って私達を襲う謎の怪物達

見た目こそ、人間に近いものが多い

これは知ってますね?」

 

 

「あぁ、海軍でその話は聞いた」

 

 

「実際、この深海棲艦に立ち向かう術は我々艦娘が扱う艤装だけ

だが、これが使えるのは艦娘のみ

通常の人間には使えない

正直、海軍はこれにうんざりしているです

艦娘にも心があります、疲れれば人並みに休息が欲しいです、お腹が空けばご飯を食べたいです

兵器とは名ばかりの少女に戦わせてのには違いありません」

 

 

「まぁ、そうだよな?」

 

 

佐渡はそう言うと叢雲達を見ると確かにこれまで見ていてるがどうみてもただの少女にしか見えない

 

 

「だからこそ、大本営はある実験に手を染め始めました」

 

 

「……まさか、深海棲艦の人体実験?」

 

 

「はい、その内容も中々に酷な物です

生きた人形深海棲艦の解剖、投薬による実験、毒ガス、生きたまま燃やしたり等です」

 

 

その話に金剛達は困惑しているが、叢雲と佐渡はエアを見る

 

 

「言ったでしょ

そいつはごめんよ

あれ見たことあるけど正直きっついわよ?」

 

 

 

 

 





次回

捕まえた深海棲艦は


戦争をしているからとは言えど大本営もエグい事をやりますよねぇ
でも、そうまでしても勝ちたい戦争だと分かります




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大本営の内情 二

「まぁ、戦争してるのだから仕方無いと言っちゃ仕方無い様な気もするけど結果は?」

 

 

そう聞くと大淀は首を横に振るう

 

 

「大したことは分かっていません

とりあえず分かったのが、深海棲艦には特殊な『コア』と呼ばれる心臓みたいなものがあるというだけです」

 

 

「何です?コアって?」

 

 

「それに関しては明石が説明してくれます」

 

 

すると、大淀が下がり明石が説明してくれる

 

 

「実は、深海棲艦を生きたまま解剖したときその研究所が爆発事故を起こしたんです

それを気にした大本営は、深海棲艦の遺体を調査する事にしました

幸い見付けたのが人形だった為解剖は容易く行われました

そして、心臓部分を見たとき見付けられたのが大人の成人男性並の真っ黒な球体でした」

 

 

「それが…コア?」

 

 

「はい、ただしこのコアは死んだ深海棲艦でもしっかりと鳴動しており複雑な血管が絡まり合っていて外すのは苦労しましたがこれが大きな発見になりました

これを外された深海棲艦がみるみるうちに溶けていったんです」

 

 

「溶けた??深海棲艦が?」

 

 

「はい、最初は艤装が壊れ始め次第にゆっくりと水に溶けるようにジワジワと溶けていき最後は真っ黒な液体になりました

そして、そのコアが深海棲艦を作り出していたことが分かったのですが……」

 

 

その言葉と同時に明石は溜め息を付きながら両手を上げる

 

 

「これが、簡単に壊れないですよ……

通常兵器おろか、艦娘の艤装を使っても戦艦並の砲撃がないと恐らく壊れないし下手に触れば研究所を破壊するほどの火力を秘めているため大した情報ではないと処理されました」

 

 

「成る程……」

 

 

「だ、だったら!そのコアを取り除けば奴等は倒せると言うことか!?」

 

 

グラーフが明石に詰め寄ろうとするが叢雲が深い溜め息をつく

 

 

「あんたねぇ、そんなの戦闘中にどうやって取り出すのよ

倒した後でも反撃される可能性があるしあいつらは沈むのよ?しかも爆弾何でしょ?逆に下手に狙えばこっちが被害出るわよ」

 

 

「む……それもそうか…」

 

 

叢雲に正論を言われてしまいグラーフは引き下がる

 

 

 

「まぁ、そんなところです

しかも姫級の歴戦種を捕まえたと大本営にバレれば彼女が何をされるか……」

 

 

「あら?もう一つの方じゃない?」

 

 

「エア、何だそれは?」

 

 

大淀はその言葉にピクッと反応し慌ててエアの口を押さえようとするがエアに頭を押さえられる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人間を深海棲艦化

または人工的に艦娘を深海棲艦化させ

戦力を上げようとするやり方よ」

 

 

「……は?何だそれ?」

 

 

「だから、人工的に深海棲艦を作り出すのよ

人間達の言いなりになる忠実な駒を増やすって言うね?」

 

 

エアから言われたその話がにわかに信じがたい話だったが大淀と明石が嫌な顔をしているのを見るとそれが真実だと理解できた

 

 

 

 






次回

人工深海棲艦化計画

どんな兵器を作り出す為に犠牲は付き物ですよね~



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大本営の内情 三

「明石さん、大淀さん何ですか?それは?」

 

 

大淀が、その説明をしようとすると明石がそれを遮り頭を横に振るう

 

 

「実はですね、深海棲艦の姫級においては艦娘、人間に限りなく近いと言う研究データが出ておりましてね

それに着目した研究所の一人が人工的に深海棲艦を作り出せないかと実験を行っているんです」

 

 

「待って!それってまさか!!」

 

 

「はい、艦娘と人間に深海棲艦のコアを移植して適合させると言うものです」

 

 

その話に、イムヤ達はゾッとするが佐渡と叢雲は真面目に聞いている

 

 

「で、成功したのか?」

 

 

「いえ、ほとんどがコアに適合せず身体の組織を内部から破壊されドロドロに溶けたり、ずっと止まらない血液を流し続けたりです

一部成功した例がありますが深海棲艦のコアに支配され人間を殺すだけの化け物に成り果てたりです」

 

 

それを聞くと叢雲と佐渡は「はぁ」とガッカリした様子で項垂れる

 

 

「……まさかあんた達やる気だったの?」

 

 

「「嫌だって強くなりたいじゃん?」」

 

 

見事にハモった二人を見ると全員が溜め息を付く

 

 

「とりあえず、彼女をそんなことにしてしまうよりも情報を聞き出しておきたいですし無闇に殺したくないですよ」

 

 

「あら?情報全部話したら殺されるのかしら?」

 

 

「そんなことしませんよ、貴女は貴重な証人ですからね」

 

 

大淀が、ボイスレコーダーを取り出すと机に起きエアの顔を見る

 

 

「では、これから貴女にーー」

 

 

「ちょっと待った」

 

 

エアは大淀の言葉を遮るとボイスレコーダーを持ち上げると電池を取り除き床に投げ捨てる

 

 

「ちょっと!何をするんですか!?」

 

 

「悪いわね、あれで話す気はないわ

話なら貴女の頭で覚えてちょうだい

後、大井携帯貸して」

 

 

「……チッ分かってましたか」

 

 

大井は携帯を取り出しエアに手渡すと電源のスイッチを入れるとボイスレコーダーが起動しておりそれを切り胸にしまう

 

 

「私が証言したって事がバレたら私殺されちゃうし?

それにこれはあんた達の為にもなるのよ?」

 

 

「……どういう意味ですか?」

 

 

エアは一口お茶を飲むとふぅと息を吐くとゆっくりと続ける

 

 

「クイーンは裏切りを絶対に許さない

どこかで私が話した情報が漏れた場合必ず私を殺すわ

でも、私が貴方達に協力したと知れれば私よりも先に貴方達小笠原を優先的に殺す為にここを襲わせ私の奪還を図るわ

情報を途絶させるために

そして、次に貴方達大本営への大掛かりな攻撃を開始した後最後に私を殺すわ

その危険性を考慮してるんだけど、分からない?」

 

 

エアに言われると大淀は眉間にシワを寄せるが「しかたありませんね」と言うとメモ帳を取り出し

 

 

「これなら、文句はないですよね?」

 

 

「えぇ、私から聞いたと書かなければね」

 

 

「でしたら、始めましょうか

ではこれから空母棲姫 エアに対する尋問を始めます」

 

 

こうして、大淀による深海棲艦の歴戦種エアに対する尋問が開始される

この世界の真実に迫るために

 

 

 

 

 

 




次回

世界の真実を知る空母棲姫(エア)

次回からエアの尋問が始まります



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大本営の内情 四

「とりあえず、貴女の名前はエア

私達が呼ぶ空母棲姫の歴戦種でありあの日大本営に居たと言うことですよね?」

 

 

「えぇ、そうよ

あの日はクイーンに呼ばれてね仕方無くね?」

 

 

「分かりました幾つかの質問をさせていただきます

では、最初にあの特殊空母監視者とは何者ですか?」

 

 

「監視者?あー、あの武器を持たない奴か

あいつは始元の部下よ、あいつに命じられて我々深海棲艦と人間達の戦争を名前の通り監視しているのよ

言わば中立ね、あいつは深いところまでは関与しないって聞くわ

沖縄の時は珍しくクイーンに加担していたけど」

 

 

「では、彼女はどちらの味方でも無いのですか?

こちら側の味方に付いてもらうとかは」

 

 

「永続的には不可能ね

アイツは始元の命令しか聞かないから」

 

 

「成る程、でしたら始元とは何ですか?」

 

 

「そうね、読んで字の如く一番最初に生まれた深海棲艦にして全ての深海棲艦を操ることが出来る女よ

ま、ラスボスね」

 

 

「では、その始元がこの戦争を引き起こしたのですか?」

 

 

「まぁ、最初の戦争はね?

でも、今やってる戦争はクイーンが引き起こしてるのよ」

 

 

「その始元はどちらに?」

 

 

「生きていたら居場所は言わないけど残念ながら

死んだわ、クイーンによってね」

 

 

その言葉に、場が騒然となる

一番最初にこの戦争を引き起こした始元が死んでいるならこの戦争を引き起こしている中核は

 

 

「……クイーンですか、やはり」

 

 

「えぇ、アイツが始元に成り代わってこの戦争を引き起こしているわ貴方達を根絶やしにする為にね」

 

 

大淀はそこまで聞くと溜め息を付きお茶を飲むと一息つく

 

 

「では、次の質問をさせていただきます

戦艦棲姫 歴戦種のユリ

そして、ケルベロス

あれは何ですか?生まれたのですか?それとも『造られたのですか?』」

 

 

「あら?それを知ってるのは驚いたわ」

 

 

「大淀さん何ですか?造られたって?」

 

 

「実はですね、この前の沖縄でのユリとケルベロスとの戦いの時幾つかの残骸が残ってましてね

それを明石に調べて貰いましたら変なことが判明はしたんです」

 

 

「これです、佐渡提督」

 

 

明石はタブレットから研究データを佐渡に見せるとその違いがハッキリと分かる

 

 

「……DNAが二種類?」

 

 

「はい、昔戦艦棲姫を倒した際その遺体の一部を持ち帰ることに成功していたのですが、その際のDNAともう一つ別のDVAが含まれているんです

まるで、『人工的に造られた』かの様に」

 

 

「正解よ、ユリとケルベロスは『ある奴』の手によって対艦娘様に建造、改装されてるわ」

 

 

 

「でしたらそれはーーー」

 

 

「その先はノーコメント

言ったらそいつらに消されちゃうし?」

 

 

「……まぁ、良いでしょう

では、最後の質問をしますよろしいですか?」

 

 

 

「良いわよ、どうぞ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方達に『提督、又は司令官』居ますか?」

 

 

 





次回

深海の司令官

後少しでこのお話は終わりです
中々ぶっこんだ話になっていますねぇ



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大本営の内情 五

「…………貴女、それをどこで?」

 

 

「昔、私達と対峙していたある姫級が『司令官』と呟いていたので、もしかしてと思ったんです」

 

 

先程まで余裕を保っていたエアの顔がひきつっており溜め息をつく

 

 

「ノーコメント」

 

 

「……それは居ると捉えても?」

 

 

「ノーコメント」

 

 

「……話したらどうなりますか?貴女と私達は」

 

 

「ノーコメント」

 

 

「……分かりましたではーー」

 

 

「大淀、勘違いしないでよ?

私は別に『暇潰し』の感覚でここに居たいのよ

だからこれ以上言うならばここを去ってこの事をクイーンに知らせるわ

そうなったらーー」

 

 

とエアが言いかけた瞬間大淀は制服のポケットから銃を取り出しエアの眉間に押し当てる

 

 

「大淀さん!!」

 

 

佐渡が動こうとした瞬間明石が工具を佐渡に突き付ける

 

 

「佐渡提督!すみませんがこれはこの戦争を終わらせるためでもあるんです!!

分かってください」

 

 

「良いわよ?撃ちなさい?」

 

 

エアは微笑みながらその銃を掴み自分の頭へと押し当てる

 

 

「……何のつもりですか?」

 

 

「別に撃って私を殺して見せなさい?

ただし」

 

 

エアは微笑みから更に頬を吊り上げ大淀を睨み付け笑いながら答える

 

 

「私を殺した時、お前達人間達は終わりだと思え

ユリ『如き』に苦戦を強いられてるのに他の姫や鬼を倒せるのかしら?

それに私の死は引き金よ、この戦争激化させるためのね

その覚悟と勇気がお前にあるなら、好きにしなさい?

私達の全戦力も何も分からない無知なお馬鹿さん達?」

 

 

しばらく、大淀は悩むのだか銃を放すとエアがその弾丸を全て抜き取り佐渡へと手渡す

 

 

「良い子ね、賢明な判断よ」

 

 

「……焦りすぎました、すみませんでした

以上で貴女に対する質問は終わりになります」

 

 

「やっと終わったね~

佐渡ーアイス無いー?」

 

 

「お前どんだけのんびりしてるんだよ……

そこの小さい冷蔵庫にあるんじゃないか?」

 

 

「一つもらうわよ~」

 

 

 

そう言うとエアは立ち上がり、冷蔵庫を開けカップアイスを取り出し美味しそうに頬張っておりその姿を横目に大淀が佐渡へ向き直る

 

 

「すみません佐渡提督と言うことで彼女を」

 

 

「はい、分かりました

ではうちで預からせて頂きます

ここなら特に何もないですからね」

 

 

立ち上がり大淀に手を差し出すと大淀もその手を取り握手を交わすのだが

 

 

「所で佐渡提督ここにもう一人、嫌一体深海棲艦が居ますよね?」

 

 

大淀に言われると小笠原面々は全員肩を動かし各々そっぽを向いたり汗を掻いたりしている

 

 

「は、はて?何の事でしょうかね」

 

 

「居ますよねぇ?確か駆逐のイ級が?」

 

 

「何のことですかねぇ?私は知らないなー?

そうだよな!叢雲!?」

 

 

「私は知らないわよ……古鷹知ってるんじゃない?」

 

 

「ちょっと叢雲!?私は知らないです!多分大井さんじゃないですかね!!」

 

 

「い、イムヤが知ってると思うわ……」

 

 

「ちょっと大井!?あ、この前グラーフがそんなこと言ってたような……」

 

 

「なっ!!私は知らんぞ!

そうだ!金剛ではないのか!?」

 

 

「What!?知らないデースよ!?」

 

 

 

大淀にバレているが何とか全員で誤魔化そうとするのだが、提督室の扉がゆっくりと開かれそこからイーちゃんがゆっくりとした足取りで入ってくる

 

 

 

 

 





次回

深海棲艦と艦娘と提督


はてさてイーちゃんはどうなるのでしょうか…



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大本営の内情 六

「あら?イーちゃんじゃない?

こっち来て一緒にアイス食べましょ?」

 

 

エアは入ってきたイーちゃんを持ち上げると冷蔵庫の前に連れていき一緒にアイスを食べようとしているのだがその姿を大淀と明石が凝視しており佐渡達はだらだらと汗を掻いている

 

 

「佐渡提督?イーちゃんとは?」

 

 

「さ、さぁ!!知りませんなぁ!!」

 

 

「ちょっと?あんたそれは無いんじゃないの?

この子はあんたのペット何でしょ?」

 

 

佐渡の発言にエアが申し立てると急いでエアの口を塞ごうとするのだがそれは明石が笑顔で工具を突き付けており防がれてしまい大淀がそのままエアに聞き返す

 

 

「エアさん、詳しくお願いします」

 

 

「ん?だからこいつが鎮守府前に釣り上げて餌付けしたらなついたらしいわよ

敵意もないし別に良いんじゃない?」

 

 

 

「……ほほう?と言う事ですが?佐渡提督反論は?」

 

 

 

「えっと、あのですね、えーと……」

 

 

佐渡は慌てながら色々と思考を巡らせるとイーちゃんをエアから取り上げると抱きしめ

 

 

「こ、この子は!!犬ですよ!!」

 

 

「「「………はい?」」」

 

 

言い訳が中々に苦し紛れ過ぎて小笠原の面々以外は唖然としており叢雲達は頭を手で押さえながら溜め息を付いている

 

 

「だって!ほらこれ服だから脱げるんですよ!!」

 

 

「「「!?」」」

 

 

佐渡はイーちゃんの艤装(体の装甲)を外すと叢雲に投げるように渡すとイーちゃんを抱き締める

 

 

「い、いや佐渡提督?流石にそれは苦しいかと……」

 

 

「何言ってるんだい!?明石さんや!こんな色した深海棲艦が居ますか!?」

 

 

イーちゃんの身体を見せると全身肌色をしているが寒いのかブルブルと震えており急いで佐渡はイーちゃんを抱き締める

 

 

「いや……あんたさ?見た目的にアウトでしょ?」

 

 

「はぁー?何言ってるんですかー?エアさんや!

肌色の深海棲艦が居るか?こんな可愛らしいのが深海棲艦な訳がない!!それに四足歩行なんだぞ!!」

 

 

「えぇ…」

 

 

流石に佐渡の無理矢理に付いていけず諦めてしまい溜め息をつく

 

 

「…佐渡提督?いい加減にしないとーー」

 

 

「だから、この子は犬、そう!犬ですよ!!

イーちゃん!ほら吠えて!!いつも通りにさ!!」

 

 

佐渡がイーちゃんを抱きしめながら言うとイーちゃんが顔だけを佐渡へ向けると首をかしげる

 

 

「いや、だからですね?佐渡提督?」

 

 

「ほら!イーちゃん吠えて!!」

 

 

「佐渡…あんた見苦しいわよ?」

 

 

「違うもん!!イーちゃんは犬だもん!!」

 

 

「はぁ……佐渡提督、あのですね?」

 

 

「あー!あー!聞こえなーい!なーんも聞こえなーい!!」

 

 

するとイーちゃんが身体をブルブルと震わせており佐渡達は不思議がりイーちゃんを覗き込むと次の瞬間

 

 

 

「……ワン!!」

 

 

「「「「「「「「「「!?!?!?!?!?!?!?」」」」」」」」」」

 

 

 

話すことが出来ない筈のイーちゃんの吠えた声は綺麗な女性の様な声だったがこの場に居た全員が唖然としながらも驚愕し声を失った

 

 

 

 

 

 





次回

深海棲艦と過ごしていく


次回で大幅終わりになります
後一話だけ残ってますのでご了承くださいませ…




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大本営の内情 七

辺りはすっかり暗くなる夜大淀と明石は艤装に着替え防波堤にて全員に見送られていた

 

 

「では、佐渡提督くれぐれもご注意を」

 

 

「はい、本日はありがとうございました」

 

 

「佐渡提督、先程の話忘れないでくださいね?」

 

 

先程の話とは結局エアは小笠原で一時的に預かると言うものであったのだが深海棲艦しかも歴戦の姫級と言うことで彼女を月に一度だけ明石が検査をすると言う事で落ち着いた

因みにイーちゃんも同行させてほしいとの事である

 

 

「はい、分かってますよ」

 

 

「それでは私達は、帰らせて頂きますね」

 

 

「佐渡提督ー?皆へのセクハラは程々にしてくださいね?」

 

 

「あはは……はい」

 

 

大淀と明石はゆっくりと動き始めると全員で手を振りながら見送る

 

 

「大淀さんー!また来てくださいね~!」

 

 

「お元気でーデース!」

 

 

「明石さんもまた来てねー!!」

 

 

大井達の声に反応した大淀達は手を振り返しゆっくりと夜の水平線へと消えていく

二人の姿が完全に消えた後全員はエアを見つめる

 

 

「……何よ?」

 

 

「嫌さ、どうするかなとな?」

 

 

「別に普通にしていれば?」

 

 

「嫌、あんたって本当に敵なの?

やけに馴れ馴れしいし敵意全く無いじゃない?」

 

 

「そう言う深海棲艦も居ても良いんじゃない?

あー!佐渡お腹空いたー!

晩ご飯食べたいんだけどー?」

 

 

エアはそう言うとのんびりとした足取りで鎮守府へ向かっていくと叢雲もその後を付けていく

 

 

「いやー、にしてもまさかあんたの言う通りバレるとは思わなかったわ」

 

 

「ふふん、私の司令官が私とあんたを間違えるわけ無いでしょ?」

 

 

叢雲が得意気に胸を張るがエアはそれに苛ついたのか叢雲を両手で脇を持ち上げながらくすぐる

 

 

「そのドヤ顔ムカつくんだけど~!」

 

 

「あはは!!辞めなさいよ!」

 

 

「このこの~!」

 

 

「辞めて!くすぐったい!あはは!!」

 

 

叢雲とエアはじゃれており佐渡はその姿を見ると微笑みながら溜め息をつくと大井に横腹をつつかれる

 

 

「提督、彼女をーー」

 

 

「なぁ、大井

お前は深海棲艦をどう思う?」

 

 

大井の言葉を遮り質問すると大井は驚きながらも思考を巡らせる

 

 

「……敵、ですかね?私達の海を支配し、人間の害となる存在です」

 

 

「そうだな、深海棲艦は敵だ

でもな俺はそんな奴でも分かり合えたら良いなと思っているんだよ」

 

 

「……提督、貴方は殺されかけたのですよ

それでもですか?」

 

 

「それでもだ、あいつはエアは俺の思いに答えてくれた

だからな俺はアイツを守りたい

せめて、この手が届く範囲で守れる物は守りたいからなそれにさ?」

 

 

佐渡はエア達を見るように大井へ促すと目の前で叢雲や古鷹達とじゃれて遊んでいるエアを見ると眼を見開き驚きながらも微笑む

 

 

「あんな『未来』があっても良いんじゃないか?

深海棲艦と人間と艦娘が手を取り合って笑い合う世界があってもさ?」

 

 

 

「……そうですね、この戦争が終わったらああいう風になれていたら良いですよね」

 

 

二人が微笑んで居るとエアはニヤニヤしながら佐渡達を見ており指を指しながら叫ぶ

 

 

「あー!!大井が佐渡を口説いてるー!

やっと素直になれたのかなぁー!?」

 

 

「なっ!!何でたらめ言ってるんですか!」

 

 

 

「えー?でもこの前ーー」

 

 

「あー!!またそうやって人の秘密を暴露する~!!

待ちなさい!!エア!!」

 

 

大井が全速力で走っていきエアの口を塞ごうとするがエアはそれを避け大井を含めて艦娘達とエアはじゃれて遊んでいる

 

 

「全く……騒がしいのが増えたな

ま、こんな毎日も悪くないな

 

……………なぁ、『相棒』」

 

 

佐渡はそう呟くとポケットから弾が込められていない壊れた銃を取り出すと昔を思い出しながら月に向けてそれを構える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで良かったんだよな

『お前はこう選択するはずだよな我が弟子よ』

バァン」

 

 

そう言うと佐渡は月に向けて引き金を引くが弾が込められて居ないためか銃は反応せず再びポケットにしまう

 

 

「ちょっとー!佐渡ごーはーん!!」

 

 

「司令官ーはーやーくー!!」

 

 

「はいはい!今行くよ!!」

 

 

佐渡は満天の星

空を見上げながら微笑むと騒がしい仲間達へと向かって歩いていく

 

 

 

 

 

 

 

 

     提督ヲ狩ル者 空母棲姫 エア end





次回

俺は善人じゃない

もう少しだけ続きますお許しを…
ちょっとだけ佐渡の過去と闇のお話になります



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悪夢

辺りは住宅地至るところが燃え盛り崩壊している家や建物引っ切り無しに起きる車の爆発音や家の崩壊する音

 

 

『起きろ!何故俺の言うことを聞かなかった!?』

 

 

佐渡はある青年を抱き抱えながら家の家屋に隠れその男を介抱していた

青年は右腕が千切れており腹部に幾つかの弾痕が残り血が止まらずに吹き出している

服を破り近くの衣類で押し当て血管を圧迫するが止まる気配がない

 

 

『隊……長…あ…の……子は?』

 

 

『…貴様が命掛けで逃がした奴か、俺の制止も聞かずに勝手に走って逃げて倒壊する家屋に潰されたよ

だから言っただろ!!助けても無意味だと!!』

 

 

『……く…そ…助…け……たか…った…なぁ……ガハッ!!』

 

 

『もう、喋るな!!

これ以上喋ると傷口が更に開く!!

貴様しかもう部隊の仲間は居ないんだ!!

俺の『駒』がこれ以上勝手に死ぬことは許さん!!』

 

 

青年は最早、虫の息になっているが佐渡が賢明に生かそうと治療している

青年から流れ出た血は大きな血溜まりになっており佐渡の全身はその血で紅く染まっている

だがそんなことを気にせずポケットからあるものを取り出し佐渡に手渡す

 

 

『隊…長…こ…れを…』

 

 

『…はぁ?壊れてるじゃねぇか!!』

 

 

『で…も…投…げれ…ば』

 

 

『こんな使えない物渡しやがって!!お前が死ぬときは俺の最後に『捨て駒』として扱うときだけだ!!』

 

 

『あ…は…は、隊長…は酷…い……なぁ…』

 

 

佐渡が治療しているが正直助かる見込みはないのにも関わらずやり続けている

何故かは分からないでも、身体が勝手にそうさせているのだ

 

 

『隊……長…駄…目…だす…み…ま……せ…ん…ゴフッ』

 

 

『駄目だ!!貴様さえ失わなければいくらでも部隊は作れる!!だからーー』

 

 

『あ…は…は、嬉…し…い……な

隊…長……お…願い……し…て…も…良…い…で…すか?』

 

 

『辞めろ!!貴様!!俺を越えるんじゃないのかよ!!』

 

 

佐渡は叫ぶがその言葉を聞かずに青年は左指を佐渡の額に当てると

 

 

『貴方…は……強…い…だ…か……ら……助…け…て………あ…げて…く…だ…さ…い助け…を…求…める…人を…貴方…が…助け…られ…る…範囲で……構いま…せん…ので……』

 

 

『……分かった…約束しよう

この命に掛けて!俺の誇りに掛けて!!だから!!!』

 

 

『は…はは……あり…が…とう…隊長……

お願い……します…ね…

貴方は…俺達…の…自慢で…すか…ら…

本当……は…優し…い…隊…長………』

 

 

 

『おい!!しっかりしろ!

……クソ!!』

 

 

その言葉と共に血溜まりに腕が落ちると青年は息を引き取り佐渡は悔しそうに拳でコンクリートを叩くと外から砲撃の轟音と共に陸に上がってきている化け物が空に向かい咆哮を上げている

 

 

 

『……深海…棲艦…!!!』

 

 

 

佐渡は憎しみと怒りを込めながら咆哮をしているその陸に居る巨大な化け物を睨んでいると化け物は気付いたのかこちらに口を開け主砲を向ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐渡は、その瞬間に眼を覚まし周りを確認し警戒するがここは小笠原鎮守府先程まで見ていた化け物はいない

全身に冷や汗を掻いており服もべったりと身体に張り付いており息も上がっている

 

 

「夢か……クソ、最悪だ…」

 

 

携帯を見ると、時刻は0300外は真っ暗であり外からは月明かりが差し込み電気を付けなくてもそこそこには明るい

佐渡は起き上がり自分の棚を鍵を使い開けるとある写真を取り出す

その写真は佐渡が陸軍時代の物であり青年が撮ろうと言い無理矢理に撮ったものである

しかも、これは世界に一枚しか無く持っているのは佐渡一人だけだ

 

 

「………俺はお前を『演じられてる』かな

なぁ、お前が居たらここはもっと良くなってたんじゃないかって思うよ

俺は善人じゃない、そう演じてるだけなんだからな

お前と違ってな……教えてほしかったな…」

 

 

佐渡は自分の隣に元気な笑顔で写真に写る青年を触ると眼を閉じる

『助けてあげてください貴方が助けられる範囲で構いませんので』

その最後の言葉を思い出しながら胸を押さえる

 

 

「あぁ、やってやるさ

お前の意思を継いでやるとも俺のやり方でな

だから精々見ていろ

天国とやらでな」

 

 

そう呟くと窓から見える満点の星空を見ながら決意を固め服を脱ぐと部屋を後にする

その後、佐渡の部屋に一人エアがこっそりと入ってきており佐渡が持っていた写真を月明かりを頼りに見る

 

 

「………これが、あいつの過去…か」

 

 

月明かりに照らされた写真には六人の男女がおり五人は笑っているのに隊長格の男は間違いなく佐渡なのだが今と全く違う

冷めた目付き、適当な服、触られたくないような嫌悪の表情そして一人だけ笑っていない

今とは対極だ

だが、隣に居る青年は佐渡にそっくりな態度であり不思議に思う

 

 

「……明らかに今とは違う

あんたは、何なの?本当に」

 

 

 

 






次回 私は正義だ


今回で終わりになり、次回から新章です!
佐渡の過去はいずれ詳しく書いて…いこうかは悩み中です
次の章は、戦闘シーン多め、複雑な人間模様を書いていきたいと思います
そして、正直次も書きたかったんですよ!!




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第八章 正義の戦艦
波乱の幕開け


ここはある海域の海上にて激戦が繰り広げられていた相手は戦艦ル級三体雷巡チ級一体軽巡ヘ級一体空母ヲ級一体の敵主力艦隊

対してこちらは旗艦長門、夕立、時雨、赤城、陸奥(むつ)磯風の艦隊で迎え撃つ

戦況としてはかなり有利で制空権を既に取っており向こうの空母は艦載機を発艦させる艤装を破壊され既にほとんど動けない

 

 

「沈むっぽい!」

 

 

夕立の雷撃が見事チ級に命中し、当たり所が悪かったのか爆発を起こし撃沈していくと軽巡ヘ級とル級が夕立を仕留めようと襲ってくるが

 

 

「僕達を居るのを」

 

 

「忘れては困るな?」

 

 

それに気付いた二体は直ぐ様応戦しようとするが赤城による艦載機からの攻撃に怯んだ一瞬に磯風と時雨の挟撃にあい爆発を起こし撃沈していく

 

 

「ーーー!!!」

 

 

するとル級の二体がそれを見ながら怒ったのか主砲を向けて二人に襲いかかるがそれを防ごうと陸奥が立ち塞がると

 

 

「あらあら?こっちに集中していて良いの?」

 

 

次の瞬間ル級の一体が真後ろから頭を掴まれ隣のもう一体にぶつけられると二体は体制を崩し海上に倒れるとそのぶつけた相手を見る

 

 

「沈め!!」

 

 

と長門は叫ぶと全砲門からほぼ近距離で砲撃すると同時に陸奥も砲撃し二体のル級は叫び声を上げながら撃沈する

最後に残された空母ヲ級は逃げようとするのだが長門はそれを見逃さずに脚を砲撃で撃ち抜くとヲ級は海上に転ける

 

 

「逃がすわけないだろ?深海棲艦」

 

 

「ーー!ー!!」

 

 

ヲ級は謝るような態度を取るが長門はそんなことを気にせずに砲門をヲ級に向ける

 

 

「何を言ってるかは知らんが貴様らは我々の敵だ

逃がすわけないだろ、沈め!!!」

 

 

そう叫ぶと長門は再び全砲門をヲ級目掛けて砲撃するとヲ級は叫び声を上げながら撃沈していく

 

 

「こちら長門 提督海域突破したこれより帰投する」

 

 

『了解、良くやったぞ』

 

 

長門は通信を切るとゆっくりと帰路に付こうとするが近くにまだ敵艦隊が居ることに電探が反応し気付く

 

 

「……全艦帰投してくれ

私は近くの小隊を叩く」

 

 

「始まったぽいー!長門さんの命令無視!」

 

 

「長門さん、またかい?」

 

 

「すまないな、弾がまだ余裕があるし今回は傷付いて居ないからなもう少し戦わせてくれ」

 

 

長門が一人で戦おうとするとその背中を磯風に止められる

 

 

「馬鹿者、あれほど一人で行くなと言っているだろうが?私達も行くよ」

 

 

「そうですよ、制空権は任せてください」

 

 

「しかし……」

 

 

「長門」

 

 

すると陸奥が長門の肩を叩くとビクッと反応するがゆっくりと陸奥へ向き直る

 

 

「一人で突っ走ったら駄目よ?私達が居るんだからもう少し頼ってよね?」

 

 

「……そうだな、すまない

では私のワガママを頼めるか?」

 

 

「余裕っぽい!」

 

 

「任せてよ!」

 

 

「やってやろうじゃないか!」

 

 

「行きましょう!」

 

 

「ええ、勿論よ!!」

 

 

五人は長門のわがままを聞く長門は電探を頼りに近くの小隊に向けて発艦していく

 

 

「深海棲艦は皆殺しにしてやろう!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは変わって大本営近くの飛行場

ある男がロシアからの帰りに海軍の者達が敬礼をしながら旅客機から降りてくるのを待っていた

旅客機からは現地に行っていた元帥や大将達そして

 

 

「「「「「お帰りなさい!大元帥様!!」」」」」

 

 

一番後ろから大元帥東雲(しののめ)憲次郎(けんじろう)がゆっくりとした足取りで降りてきており欠伸をしている

 

 

「ふわぁ、やっと着いたか

あー時差ボケキッツい」

 

 

「お帰りなさいませ、東雲大元帥」

 

 

その隣に羽田と大淀が立ち並び東雲に挨拶をすると欠伸をしながら東雲も簡単に挨拶をすませる

 

 

「あぁ、話はある程度聞いたよ

新型の歴戦種に特殊空母監視者、撃退良くやったぞ羽田元帥」

 

 

「勿体無いお言葉、ありがとうございます」

 

 

「とりあえず今までの資料を見せてもらおうか?」

 

 

「こちらになります大元帥」

 

 

大淀が資料を大元帥に手渡すとゆっくりとした足取りでその資料を見ていくがある項目に着目すると歩み止める

 

 

「おい待て、何だこの架空の空母ってのは?」

 

 

その言葉に大淀がビクッと反応すると羽田が落ち着いた様子でその理由を話し始める

 

 

「そちらは、ドイツで違法に建造された空母 グラーフツェッペリンです

彼女はーー」

 

 

「違うそう言うことじゃない

何でそんなのが『小笠原に居るか』を聞いているんだ?

それにやけに小笠原に艦娘が居るな?こいつを含めて既に一艦隊出来てるじゃないか?」

 

 

「彼女はその際受けた心の傷が残っており、他の鎮守府に置くにはよろしくないと判断したまでであります」

 

 

「……ほう?お前の独断か?」

 

 

「はい、申し訳ありません」

 

 

東雲は「うーん」と唸るがすぐにニヤリと頬を吊り上げながら笑いだし資料を大淀に投げ付ける

 

 

「小笠原鎮守府提督 佐渡 満大尉を呼び出せ

それと全鎮守府に向けてある電報を流せ

後大本営の馬鹿共にも準備を進めろと言っておけ」

 

 

「大元帥、一体何を!?」

 

 

「決まっているだろ?私はこの際空母が小笠原に行こうがどうでもいいだがな

『そいつが強いのかどうかを見たいのさ?』」

 

 

その言葉に、羽田はやはりとも思いながら冷や汗を掻いている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全鎮守府に大本営主催の大演習会を執り行う!!

準備をしておけとな

全鎮守府強制参加だ!」

 

 

 

 




次回

深海棲艦がいる日常?

満を期して大元帥東雲登場!
彼の登場により小笠原鎮守府メンバー達は窮地に立たされます



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憂鬱な季節

エアの騒動から二週間後10月下旬外は肌寒くなりつつあり提督室は暖房器具を付け暖かくしている

今日は真面目に大井、グラーフと共に執務を続けていた

 

 

「大井ーお茶ー」

 

「はいはい」

 

「グラーフ、そこの資料頼む」

 

「分かった」

 

 

「ちょっと佐渡ー

この漫画続きないの?」

 

 

「そこの戸棚に無いか?」

 

 

「うん?あ、あったサンキュー」

 

 

現在エアは完全なだらけきっておりソファに寝転びながら提督室にてのんびりと漫画を読み漁っていた

 

 

「……と言うかエアさんや?そろそろ普通の服を持ってきなさいよ?」

 

 

「えー、でも着心地良いしこれ楽だし」

 

 

エアは佐渡から何枚か借りているシャツを着ており下着は付けているがギリギリの所で見えない状態で正直佐渡にはキツイ状態である

 

 

「いやほら、ね?」

 

 

「……ほほう?もしかして中身が見たいのかなぁ?」

 

 

佐渡の反応を楽しみたいのかエアは起き上がり佐渡から借りているシャツを上下させながら煽っている

 

 

「辞めよう?俺今執務してるんだよ?」

 

 

「あーら残念その手を止めれば見えたかも知れないのにねぇ?」

 

 

その言葉にピクッと反応するとそれを見たエアはニヤリと笑いながらシャツを捲り上げようとする

 

 

「ほらほら~?見えるわよー?

私は深海棲艦だから憲兵さんには捕まらないわよ~?」

 

 

「見るしかねぇじゃねぇか!!!」

 

 

「駄目に決まってるでしょうが!!」

 

 

 

佐渡は完全に手を止め立ち上がりエアの脱衣ショーを見ようとするが、その瞬間に大井から魚雷のクッションを投げ付けられる

 

 

「辞めなさい!!ちょっとエア!仕事の邪魔しないで!!」

 

 

「アッハハハ!ごめんごめん、こいつの反応が楽しくてね?

それに、そろそろ来る頃だから一息入れないかしら?」

 

 

エアの発言に大井とグラーフは首を傾げると廊下からドタドタと走ってくる音が聞こえ佐渡はクッションを退ける

 

 

「何だ?」

 

 

「来たかしら?」

 

 

「て、提督ー!!」

 

 

バァンと大きな音を立てて扉が開くと汗だくの金剛が肩で息をしながら入ってきており佐渡に詰め寄る

 

 

「金剛、ノック位しようぜ?

それとはいタオル」

 

 

「あ、ありがとうございまーす……

じゃないんデース!!し、深海棲艦がーーー」

 

 

すると不意に提督室の部屋がノックされ佐渡は金剛を避けて扉を覗く

 

 

「はいはい、どうぞ?」

 

 

『失礼致します』

 

 

提督室の扉が開かれるとそこには

 

 

「え!!」

 

 

「何!?」

 

 

「うん!?」

 

 

「失礼致します、こちら小笠原鎮守府佐渡提督の執務室改め提督室でよろしかったでしょうか?」

 

 

「そうよ!やっと来てくれたわね!ソラ!」

 

 

ソラと呼ばれた重巡リ級が艤装を外した状態で立っており両手には手提げ袋を持っているのを見るとエアが立ち上がり向かっていく

 

 

 

 

 

 




次回

訪問者

突然来た重巡リ級!彼女の目的は……
なんて、大したこと無いんですけどね

自己紹介にて、空母棲姫 エア更新!!


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憂鬱な季節 二

「姫様!何ですかその格好は!

きちんと着てください!!」

 

 

「嫌だってめんどくさいし?」

 

 

「めんどくさいではありません!殿方が居られるのですよ!

申し訳ありません!皆様、少しお待ちください!」

 

 

するとソラはエアを連れて部屋から出ていくと全員唖然としておりお互いを見合わせる

 

 

「……なぁ?あれって」

 

 

「間違いなく重巡リ級ですよ?」

 

 

「嫌でもさ?」

 

 

「……何か敵意は無いしかなり頭が低いな」

 

 

「あっれぇ…?」

 

 

少しすると、再び提督室の扉が開かれエアとソラが入ってくる

エアはシャツを着ておらず真っ黒なセーラー服を着ておりソラもキチンとした女性物スーツに着替えている

 

 

「はぁ……あれ着やすかったのに…」

 

 

「姫様、服装はキチンとしてください

貴女は上に立っている者なのですから!!」

 

 

「はいはーい、全くうるさいわねぇ」

 

 

エアはそう呟くと再びソファに倒れるとソラはゆっくりとした足取りで佐渡の真横まで歩いていく

 

 

「貴方が佐渡提督様ですね

初めまして、私はエア様が所有する第一艦隊旗艦を努めておりますソラと申します

どうぞ、お見知りおきを」

 

 

「あ、はいどうも小笠原鎮守府提督 佐渡 満大尉ですよろしく?」

 

 

ソラは手を佐渡に手を差し出し佐渡もそれを取り握手を交わす

すると金剛がソラに指差しながら叫び始める

 

 

「何しに来やがりましたか!!深海棲艦!!」

 

 

「どうも、初めまして金剛様

お話は姫様から伺っておりますとても明るくて可愛らしい方だと」

 

 

ソラは金剛に近寄り歩いていくが金剛はそれに後退りをするがそれを逃がさずに手をとる

 

 

「突然の訪問本当に申し訳ありません、どうしても姫様の様子見とお洋服を届けたくて……」

 

 

「姫ってエアの事か?」

 

 

「はい、姫様は実力と指揮能力、隠密能力等はほとんど完璧なのですが如何せん私生活に関してだけどうも緩くてですね……

この前なんて、下着のまま外を歩こうとしておりまして……」

 

 

「ちょ!こらソラ!あんた何話してるのよ!?」

 

 

それを聞くと佐渡達はエアに向き直るが完全に焦っておりそれが真実であると分かる

 

 

「お前なぁ……自分の艦隊にも迷惑をかけるなよ…」

 

 

「うるさいわね!!良いでしょ!自分の何だから!!」

 

 

「いや良くねぇよ」

 

 

するとソラは袋からあるものを取り出し佐渡へ差し出すと佐渡はそれを受けとる

 

 

「こちらつまらないものですが」

 

 

「あ、これはどうも

開けてもよろしいですか?」

 

 

「どうぞ、本当につまらないものですが姫様がいつもご迷惑をおかけしていると思いますので」

 

 

佐渡は包装を開けると大井とグラーフも側に来ておりそれを覗き込むと

 

 

「ほう……こいつは上物ですな…」

 

 

「梨…ですか?」

 

 

「初めて見るな……」

 

 

中には梨が四つほど入っておりどれもかなり大きく持ち上げるとそこそこの重量がある

 

 

「すみません、こんなつまらないもので

私の持ち金ではこれぐらいしか買えないもので……

あ、その場所で購入させたので品質は保証しますよ?」

 

 

「…因みにソラさんこれは何と言うんですか?」

 

 

「えっと、確か新高梨(にいたかなし)だったはずですよ?」

 

 

「はいっ!?」

 

 

佐渡は驚きのあまり落としかけるが慌ててキャッチするとそっと元の箱に戻すと包装を戻す

 

 

「ちょっと佐渡ー?何でソラの土産仕舞うのよ?」

 

 

「お前なぁ!!これかなり高い奴何だよ!

ちょっとソラさん!何でこんな高いのを買ってきたんですか!?」

 

 

「え?普通ではないのですか?

本当にでしたらマンゴーやメロンだと思ったのですが時期が合わないらしく仕方なくそれにしたのですが……」

 

 

佐渡は額に手をやると深いため息を付く

 

 

「提督ー?食べないんデースか?」

 

 

「……知ってるか金剛

この梨一つで5000円はくだらないんだぞ?」

 

 

「「「はい?」」」

 

 

その言葉に三人は驚きを隠せないのだがエアとソラは首を傾げる

 

 

「何よ、一つでその程度?」

 

 

「そうですよ?佐渡提督、これぐらい私達には普通ですよ」

 

 

「いやお前らどんだけ金持ってるんだよ……

ちょっと待ってろ切り分けてくるわ

グラーフ全員呼び出せ」

 

 

「わ、分かった!」

 

 

 

 




次回

皆で新高梨試食会

因みに、ソラとエアがお金を持っているのはある男の任務報酬になります
購入したのは別の人に頼んでいます




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憂鬱な季節 三

「……おいこら提督

こいつはどう言うことだ?んん?」

 

 

「いや、そのですね?親方

これにはふっかーいそれこそ深海並みの理由があるんですよ、ね?」

 

 

現在、佐渡は食堂にて親方に正座をさせられておりソラとエアを横目で見ながら佐渡に説教している

厨房には古鷹が立ちソラからのお土産を切り分けている

 

 

「あのな?うちは鎮守府だよな?海軍だよな?

そしてこいつらは敵だよな?何でいるんだよええ?」

 

 

「いや、ほらね?

エアは言ったじゃないですか?そのソラさんは……ね?」

 

 

「ねじゃねぇよ!!いつからうちは深海棲艦の溜まり場になったんだえぇ!?」

 

 

「まーまー親方そろそろーー」

 

 

「黙ってろ深海棲艦!

大人しく梨でも食ってろ!!

溶鉱炉で溶かされたいのか!!」

 

 

「うふふ、怖い」

 

 

エアが止めようとすると思い切り反論されてしまい流石のエアも黙りながらソラに泣きつく

 

 

「あのー、親方?そろそろ提督がーー」

 

 

「黙ってろ!エセ海外艦!!

工厰に吊るすぞ!!」

 

 

「で、デース……」

 

 

金剛が止めようとするが親方は怒っており周りが見えていないのか怒鳴り散らすと金剛は叢雲の膝の上でしくしくと泣いている

 

 

「アホねあんた達、今の親方に何言っても無駄よ」

 

 

「まぁ、そりゃそうですよ……

深海棲艦を倒すための鎮守府なのに、深海棲艦が居るんですし……」

 

 

「すみません皆様……私達のせいで…」

 

 

「まぁ、ソラ?さんが悪い訳じゃないと思うわよ?

ねーイーちゃん?」

 

 

イムヤが意気消沈しているソラを慰めると足に抱いているイーちゃんも同意するようにこくこくと頷く

 

 

「それに今回はソラは悪くないからな

エアがきちんとしてないのが悪いんだ」

 

 

「何それ!私のせい!?」

 

 

「うっるせぇぞ!!外野!!ちと黙っとれや!!」

 

 

「「「「「「ごめんなさい」」」」」」

 

 

親方の気迫に押され叢雲以外全員縮こまっていると厨房から古鷹が切り終えた梨を持ってくる

 

 

「あれ?何で皆縮こまってるの?」

 

 

「あれよ」

 

 

「あれ?」

 

 

古鷹は叢雲に指差された方角を向くとそこには佐渡が親方に怒られているのを見え微笑むと梨を更に小さく切り分けつまようじに刺す

 

 

「大体お前はなぁ!」

 

 

「親方さん」

 

 

「何だぁ!!ちょっと…むぐっ!」

 

 

「美味しいですよ?皆で食べましょ?」

 

 

古鷹が親方に無理矢理切った梨を食べさせると口に含みながらしっかりと噛み締めると飲み込む

 

 

「ほう!!こいつは旨いじゃないか!!」

 

 

親方の一言にエアと金剛は泣くのを止め古鷹が切った梨を食べると二人顔を見合わせる

 

 

「美味しいじゃない!これ!!」

 

 

「凄いジューシーデース!!」

 

 

それから、全員でのんびりとした梨の試食会が始まり皆美味しそうにかなり高い梨を堪能していた

 

 

「ほう?これはそこの重巡リ級が?」

 

 

「は、はい!ソラと言います!」

 

 

「良いもの買ってくるじゃねぇか!!

ありがとよ!!」

 

 

親方に言われるとソラは喜び全員で楽しく食事をしているのだが古鷹が居ないことに佐渡は気付き厨房の外に向かう

すると空を見上げながら古鷹が梨を食べていた

 

 

「なぁにしてんだ?古鷹」

 

 

「あ、佐渡提督……間違えた提督

どうしましたか?」

 

 

「いやお前がどうしたんだよ皆で食べないのか?」

 

 

「あ……ごめんなさい

今日は良いです」

 

 

「そうかい」

 

 

佐渡はそう言うと厨房の扉を締めその場に座り込むと古鷹も隣に座る

 

 

「……そろそろお前の季節だな」

 

 

「…そうですね、私が『ここに来た季節』ですね」

 

 

 

 

 

 

 





次回

変わらないもの

親方さん怒ると恐いんですよこれが
平気で溶鉱炉ぶちこむとねぇ…



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憂鬱な季節 四

二人は空を見上げながらソラのお土産を頬張っていると古鷹が少し震えているのに気付き佐渡は上着を被せてあげる

 

 

「提督、私は大丈夫ですよ?」

 

 

「嘘付け、お前震えてるじゃねぇか

大人しく着てろ」

 

 

「…ありがとうございます」

 

 

古鷹は貰った上着を羽織ると佐渡のすぐ側まで行くと身体を寄せる

 

 

「……寒いですね」

 

 

「まぁ、そろそろ11月だもんなぁ

寒くもなるさ」

 

 

「この季節は少し寂しくなると同時に憂鬱です」

 

 

佐渡はポケットからココアシガレットを取り出すと煙草を吸うようにくわえ古鷹にも手渡す

 

 

「食べるか?」

 

 

「……頂きます」

 

 

二人は梨を食べ終えココアシガレットを食べていると古鷹が佐渡の手を握る

 

 

「提督」

 

 

「何だ?」

 

 

「提督は……『裏切りませんよね?』」

 

 

「あぁ、俺はお前の味方だ絶対に命をかけてそんなのはありえん」

 

 

「例え、私が深海に落ちても、貴方の敵になっても、殺そうとしても?」

 

 

「ねぇよ、絶対に約束したろ?

そんなのはありえない」

 

 

古鷹はそれを聞くと微笑みながら佐渡は肩を預けると眼を瞑る

 

 

「……私が、『大罪人』でもですか?」

 

 

 

「…あぁ、お前を裏切らない

俺と叢雲が絶対に守るよ

ずっと側に居てやるよ」

 

 

「……ありがとう」

 

 

そう言うと佐渡は古鷹の頭を優しく撫でると後ろのドアが開きそうになり二人はビックリして立ち上がる

 

 

「司令官、古鷹、何してるのよ?

中で梨食べましょ?」

 

 

「…そうだね!」

 

 

 

出てきたのは叢雲だったが、食堂の内部がかなり騒がしく古鷹は微笑みながら向かっていくと叢雲は佐渡の袖を引っ張る

 

 

「何かあった?」

 

 

「んー?別に、今の季節はほらな?」

 

 

「あー……そっか、そろそろ一周年ね」

 

 

「そゆこと」

 

 

佐渡と叢雲は、食堂に騒いでいる親方や古鷹、大井、金剛、イムヤ、グラーフ、エア、ソラを見ていると染々思う

 

 

「……騒がしくなったな

たった一年で」

 

 

「……そうね、最初は私達三人だったもんね」

 

 

「…一年前、こんなこと想像できなかったぜ流石に」

 

 

「…えぇ、正直三人だけだと思ってたしね」

 

 

「……叢雲、俺はちゃんと提督出来てるかな?」

 

 

「……出来てるわよ、あんたは立派な司令官よ」

 

 

「…こんなのが続けば良いのにな」

 

 

「そうね……」

 

 

二人がその素晴らしい景色に見ていると食堂から金剛が佐渡達に手を振ると大井とイムヤとグラーフが食堂に入ってくる

 

 

「提督ー!!梨食べましょーよー!」

 

 

「叢雲ー!食べ終わっちゃうよー?」

 

 

「ほら!叢雲行くわよ!」

 

 

「ほら!早く司令官!!」

 

 

「アトミラール!この梨はとても美味しいぞ!」

 

 

三人に引っ張られると叢雲と佐渡は顔を見合せ微笑みながら全員が待つ食堂へと向かっていく

(こんな幸せが続けば良いのにな)

佐渡はそう考えていると、携帯が不意に鳴り出し直ぐ様ポケットから取り出すと発信元が大本営になっており嫌な予感がする

 

 

「悪い、ちょっと電話に出てくる」

 

 

佐渡は二人を引き剥がし厨房の外に出るとその電話に出る

 

 

「…もしもし」

 

 

『佐渡大尉の携帯で間違いないな』

 

 

「はい、間違いありません」

 

 

電話先の相手は羽田でも大淀でもない別の誰かだが何となく分かっている相手は海軍の人間だと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『東雲大元帥がお呼びだ

グラーフツェッペリンと叢雲、そして貴様の三人で今すぐ大本営に来いとの事だ

大事な用事だそうだあまり待たせるなよ』

 

 

 

「……分かりました、今から向かいます」

 

 

電話を切ると佐渡は携帯を強く握りしめながら歯軋りをする

 

 

「………嫌な予感がするぜ…」

 

 

 

 

 




次回

大本営を統括する者

次回から本格的に海軍の本質を書いていきます
そして、現れる海軍最高権力者です!




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会議

「着いたな

悪かったな、グラーフ、叢雲連れてきて」

 

 

「別に私はいつもの事だし」

 

 

「私も特に問題ないが何故私が呼ばれたのだろうか……」

 

 

現在三人は大本営の入り口手前に立っているこの前提督殺しの事件以来だがあの時より遥かに警備が緩くなっており憲兵は一人だけ門前に立ち腰には銃と警棒が携えられている

 

 

「行くぞ、嫌な予感しかしないがな」

 

 

佐渡の声と態度に二人も気付きゆっくりと大本営の扉を開けるとそこには

 

 

「やぁ、佐渡君待ってたよ」

 

 

「お久しぶりです佐渡提督」

 

 

「羽田元帥に大淀さん!?どうしてここに」

 

 

羽田と大淀が三人を待っていたらしく入ってすぐの廊下に立っていた

 

 

「実はね君達の案内役を大元帥に言われていてね

付いてきたまえ」

 

 

佐渡達は顔を見合せると羽田と大淀の後ろにそれぞれ付いていく

 

 

「羽田元帥、本日私達が呼ばれたのは何のご用でしょうか?」

 

 

「うん……実はねグラーフさんの事に関してなんだ」

 

 

「グラーフ?」

 

 

「私……か?」

 

 

「君にスパイ容疑が掛けられてる」

 

 

「「「!?」」」

 

 

唐突の事過ぎて佐渡達は驚くと同時に佐渡はグラーフを背中に隠す

 

 

「と言っても、私はそんなことあり得ないと言ったんだけどね

どうやら他の連中が騒いでてね

ほら提督殺しの件もあるしね」

 

 

提督殺し、エアは現在小笠原鎮守府に残してきては居るが古鷹達に監視を任せている

だがそれでもエアはかなりの人間を殺してるから仕方はないのだが

 

 

「……何でグラーフが?」

 

 

「まぁ、警戒しないでくれ

何かあったら私が守るよ

彼女の在籍がねまだ日本とドイツの間でね

宙ぶらりん状態でさ、それを見たロシアに行ってた連中が騒いでいるのさ」

 

 

その話を聞くと納得はするだがグラーフは流れ着いた艦娘であり村山元帥がそれをペットとして買ったと言う事実もあるのに何故と佐渡は考えていると羽田元帥と大淀はある部屋の前で止まる

 

 

「佐渡君、彼女を頼むよ

ここから、私は君達に一切の援護は出来ない」

 

 

「はい、分かりました」

 

 

部屋の看板を見ると大会議室、通常は使われない会議室でありここは大元帥や元帥達、大将の位が使う専用の会議室である

ただしここを使うためには大元帥の許可が必要である

何故かと言うと

 

 

「……海軍裁判所か」

 

 

ここの別名は海軍裁判所、罪を犯した者等が基本的には連れてこられる場所だからである

羽田が扉を開けるとそこは薄暗くになっているが部屋の構造はまるで裁判所その物である

 

 

「お連れしました、小笠原鎮守府提督 佐渡提督と秘書艦叢雲 グラーフツェッペリンです」

 

 

「良し、では羽田元帥こちらに

佐渡大尉はこちらに」

 

 

案内の者がそれぞれ連れていくと部屋の電気が付きそこには三段に別れた裁判場があり、下段に大将十五人中段に元帥九人そして一番上に大元帥東雲が珈琲を飲みながら座っている

すると東雲は佐渡を見るとニヤリと笑い佐渡は睨み付ける

この海軍には大将に立つものが二十人元帥の地位に立つものが十人そして、大元帥が二人と言う構成になっている

今回の会議では唐澤の姿は見えない

 

 

「では、これではグラーフツェッペリンに対するスパイ容疑について審議する」

 

 

審議が始まるとグラーフは震えており佐渡と叢雲はその手を握りニカッと笑う

 

 

「アトミラール…」

 

 

「任せとけ!」

 

 

「…分かった、信じよう」

 

 

すると大元帥はあくびをしながら座っていると近くに置いてあるロールケーキを頬張りながら羽田を見るとこくんと頷く

 

 

「この度突然お呼び立て申し訳ありません佐渡大尉

実は今回お呼びしたのは彼女グラーフツェッペリンがドイツのスパイであると言う事です

佐藤元帥、証拠を」

 

 

「はい、こちら配布される資料をご覧ください」

 

 

佐藤元帥は指示を出すと大淀ともう一人の艦娘が全員に資料を手渡していき佐渡にもそれが来るのだが全く訳がわからない物だった

 

 

「この資料には、彼女グラーフツェッペリンの建造先で入手した資料になります

彼女は最初、普通の艦娘として建造されドイツの艦隊に派遣される予定でした

ですが、派遣される二日前に突然村山元帥が彼女に一目惚れを起こし買い取ったと記述でしたが、生前、村山元帥は購入してないと言っておりました」

 

 

佐渡はその資料を見ると確かに村山元帥は購入した履歴は無くグラーフはドイツの所属となっている

 

 

「つまり彼女は自分から村山元帥に買ってほしい、ペットにしてほしいと強く志願し、日本の大本営に侵入し混乱を招いたスパイの確率がかなり高いと思われます!!

よって私は彼女の解体!及びドイツへの返還を所望します!!」

 

 

「なっ!」

 

 

突拍子も無いことを言われグラーフが反論しようとするが佐渡はグラーフの前に手を出しそれを辞めさせる

 

 

「佐渡大尉、反論は?」

 

 

「えー、とりあえず村山元帥が購入したかはともかく彼女はスパイではありません

彼女は小笠原に流れ着いた艦娘です

これに関しては紛れもない事実です、それに彼女は小笠原に流されたときかなり疲弊していました

そんな、彼女がスパイとは訳が分かりませんね」

 

 

 

 

 

 





次回

艦娘とは?

グラーフに掛けられたスパイ容疑は一体誰が捏造したのでしょうかね……



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会議 二

「嘘をつくな!お前の鎮守府に流れ着いただと!?

あの霧の海域から生きて帰ったものはいないのだぞ!

どうせお前の鎮守府なら取り込みやすいと感じた計画的な犯行に違いない!!」

 

 

「だが、彼女は実際ドイツの積み荷だったのだろう?

ドイツ側はその事に関しては認めている

そうなると彼女は唯一の霧の海域での生還者だ

それなら、今すぐの解体よりここでその情報を全て吐いて貰ってからでも良いのではないのか?」

 

 

「それもそうか、なら彼女を解体する前に尋問してからと言うことにしよう

それが一番だな」

 

 

「それではドイツには轟沈したと報告するとしようか」

 

 

 

大将や元帥達はグラーフを何としても解体したいらしく、口を揃えていると佐藤がニヤリと笑っており佐渡はそれに気付く

(あいつか、今回の原因は)

恐らく、佐藤と村山は仲が良かったのかは分からないがグラーフが原因で自分の地位が悪くなるのを嫌悪しているのだろう

だが、元帥の一人が手を上げ意義を唱える

 

 

「意義あり、何故彼女がドイツのスパイなのに小笠原何かに居るのでしょうか?

それなら、唐澤大将の舞鶴鎮守府に行く筈では?

彼女には村山元帥との問題終了後にどの鎮守府に行っても大丈夫だと言う契約があったはずです」

 

 

発言したのはついこの間まで鎮守府の提督をしていたある元帥で艦娘や提督業の事をよく知っている人物であった

だが、しかし

 

 

「決まっているだろ?小笠原ならどうせ簡単に潜入出来ると思ったのだろう

あそこはクズの溜まり場だし提督は艦娘に甘いからなぁ!!」

 

 

「えっと、小笠原には……ほう?既に六人も居るのか

犯罪者三人に、厄介払いされたのが二人そしてスパイが一人が

ははは!!笑えるな!こんな奴等しか居ないのかこの鎮守府は!

どうせならこの機会に小笠原鎮守府自体を消してしまうのはどうだ?」

 

 

その発言にグラーフは怒りを押さえ込みながらも拳を握りしめ佐渡も唇を噛みしめている

 

 

「それもそうだな!それが一番良い!

こんな犯罪者等の集まりなんて物は無くすに限るな!!」

 

 

「そうすればこんな会議なんて必要ないんだからな!!」

 

 

(違う、こっちが今回の話題内容か)

大将や元帥の多くは深海棲艦が出てくる前からの古株が多く実際の海上戦闘や鎮守府の事を知らないものが多い

それに加え、艦娘を兵器としてしか考えていない物が多くそれを使って成り上がってくる提督達を毛嫌いしている

だからこそ、小笠原が活躍することは最も嫌っている為何とかして鎮守府自体を解体したいらしい

 

 

「待ってください!皆様、今回の議題はグラーフツェッペリンに対するスパイ容疑では無いのですか!?」

 

 

「黙ってろ!所詮元提督の成り上がり元帥が我々に口出しするな!若造風情が!!」

 

 

「グラーフツェッペリンはスパイで間違いないだろう

そして小笠原鎮守府はそれを介護しているこれで良いだろう

よって、グラーフツェッペリンの解体と小笠原鎮守府提督佐渡大尉には提督の任意を解くとしようではないか?」

 

 

 

「待て待て、その前にグラーフツェッペリンには拷問と尋問をしないとな?

スパイなら向こうの情報も霧の海域についても分かるはずだ

簡単には話さないだろうじっくりと拷問しようではないか?」

 

 

羽田や別の元帥の話を聞かずに佐藤の派閥は勝手に話をでっち上げ小笠原を解体するのとグラーフの厄介払いを決めつけ元帥と大将達は勝手に話を広げていると羽田が叫ぼうとした瞬間バァンと渇いた発泡音が会議室に響き渡ると辺りは騒然となる

 

 

「はぁーあ、本当に無能だよなぁお前らは」

 

 

銃を撃ったのは一番上に座る大元帥東雲だった

悪態を付きながらため息と共に銃にゆっくりと弾を込めている

 

 

 




次回

大元帥 東雲 雄大(ゆうだい)

次回海軍最高権力者の東雲が動き出します
はたして彼は小笠原の味方なのでしょうか?



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会議 三

「東雲大元帥!突然の発砲とは気でも狂いましたか!?」

 

 

「狂ってねぇよ

お前らが人の話も聞かずに勝手に進めるしやかましいから空砲を撃ったんだよ

それで、羽田元帥

グラーフツェッペリンはどうなんだ?」

 

 

東雲に言われると羽田は資料を取り出し読み上げる

 

 

「グラーフツェッペリンはドイツのスパイではありません

むしろドイツに帰国してほしいと言う要請も来ております」

 

 

「何だと!?」

 

 

「え?何でだ?」

 

 

 

その言葉に場がざわめくが東雲が再び空砲を撃ち無理矢理黙らせる

 

 

「黙れ、羽田が話してるんだ

話くらい聞け」

 

 

「……では続けます

今からお配りする資料をご覧ください」

 

 

羽田は大淀に合図をすると全員にある資料を配らせると全員の顔が引きつる

 

 

「おい!!羽田元帥これはなんだ!?」

 

 

「こいつは……欧州棲姫か?」

 

 

その資料には一つの写真が付属されておりその写真には巨体な剣を持ち左目に傷を負った欧州棲姫の写真があり佐渡は驚き羽田を見る

 

 

「この資料は、ドイツの大元帥から頂いた資料になります

彼女は、欧州棲姫ではありますが昔の個体とは違い実力が桁違いに上がった歴戦種だと報告が上がっています」

 

 

 

「アトミラール!これは本当なのか!?」

 

 

佐渡はグラーフに詰め寄られると静かに頷くとグラーフは佐渡の襟を掴む

 

 

「何故だ!何故言わなかったんだ!!」

 

 

「実はな、ビスマルクさんに言うなって口止めされてたんだよ

これを見せたらグラーフを戻せるってね」

 

 

「そうだ!こんなのが我が祖国の海に居るなら帰るに決まっている!

ドイツは!ビスマルク達は無事何だろうな!?」

 

 

「静粛に!!」

 

 

羽田が、木のハンマーで机を叩き騒いでいる佐渡とグラーフを黙らせると続けて先程の話を続ける

 

 

「現在、この欧州棲姫 歴戦種は行動を起こしておらず西方の海を支配しています

これが彼女を取り戻したい理由だそうです

如何ですか?大元帥」

 

 

東雲は資料をパラパラとめくるとその情報を見ていると佐藤が再び騒ぎ始める

 

 

「嘘だ!そんなのは有り得ない!

西方は我々が昔に行って攻略したはずだ!

そんな化け物が居るわけ無いだろう!

羽田元帥も佐渡大尉達にーーー」

 

 

「佐藤元帥、やけにグラーフツェッペリンを解体したいようだな?

グラーフツェッペリンは貴様とって何かあるのか?」

 

 

東雲が佐藤に言うと資料を机に置き東雲が座る机に向き直り反論し始める

 

 

 

「そんな事はありません!!

私は彼女が我々大本営に害を為す存在だとーーー」

 

 

「あぁ、すまなかった

それもそうかグラーフツェッペリンを購入しようとしたのはお前と村山だったもんな?」

 

 

「ーーえ?」

 

東雲の発言に他の元帥や大将達が顔を見合わせながらヒソヒソと話始め

東雲はニヤニヤと嫌らしい笑みを浮かべながら机に肘を付き佐藤を見下げていると佐渡は冷や汗をダラダラとたらしながら焦っている

 

 

「東雲大元帥何を……?

私は…そんなこと!!」

 

 

「ほう?しらばっくれるか?

実はな私もグラーフツェッペリンの取引に関して調べたんだよ

そしたら、興味深い事が分かってな

グラーフツェッペリンの取引時にかかった金額は手数料含めて約十万ユーロ

日本円で約一千万だ

だが、村山の口座からは七百万しか引き落とされていなかった

後三百万足りなくてな、お前達全員の口座の動きを調べたよ」

 

 

東雲が話していくと佐藤は汗を更に掻き始め口の中が乾燥しているのか近くの飲み物を一気に飲み干す

 

 

「そしたら何となぁ?お前の口座からドイツへ三百万振り込まれてるんだよ?

確か村山とお前は同期でいつか艦娘をペットにしたいとか言ってたみたいだな?」

 

 

「そ、そんなこと!私は言ってない!!

知らないぞ!」

 

 

「ほほう?まだ言うか?

おい矢矧(やはぎ)

 

 

東雲がそう言うと後ろから矢矧が静かに出てくると東雲に資料を手渡しそれを下段に居るもの達にばら蒔き渡していく

佐渡もそれを見るためにばら蒔かれた資料を取りに行き中身を見ると

 

 

「何だこれは!?」

 

 

「艦娘の解剖に薬漬け…他にもあるぞ

この男大麻や密売もやってるぞ!!」

 

 

それには佐藤がやってきた全ての悪事が書かれていた

それを急いで佐藤は広い集めようとするが他の元帥達に取り押さえられる

 

 

「は、放せ!!」

 

 

「黙れ!この恥さらし!!」

 

 

「こんな奴の言うことを聞いていたとは恥ずかしい!!」

 

 

東雲はニヤリと笑い指をならすと佐渡の後ろから五~六人の憲兵が出てくると直ぐ様佐藤を取り押さえ連行しようとする

 

 

「連れていけ」

 

 

「ま、待ってくれ!!

俺はやってない!!」

 

 

「黙れ!来い!」

 

 

「辞めろ!放せ!!

くそがぁ!このクソッタレ大元帥が!!」

 

 

佐藤は終始暴れていたが憲兵達が無理矢理連れていくと最後の一人が敬礼とお辞儀をすると会議室の扉が閉められ静かになる

 

 

「あー、楽しかった

ロシアに居たからああいうの出来なくてつまらなかったんだよねぇ」

 

 

東雲はそう言うと煙草に火を付けようと差し出すと矢矧がジッポで火を付ける

それと同時に後ろから灰皿を取り出し東雲の机に置く

 

 

 

 

 

 





次回

東雲と言う男

最近誤字報告をしてくださるのが本当に助かってます…(読み返してないから分からない)



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会議 四

東雲 雄大

この男は現在の大本営を仕切る最高責任者でありかなり頭のキレる人間

見た目は普通の20代後半位なのだが実際は30代後半

銀髪に右頬に傷があり、背丈は167と小柄な物ではあるが等本人は一切気にしていない

東雲がこの大本営に来る前はもう一人の大元帥が仕切っていたのだがその人は大本営襲撃事件の時に負傷し現在も入院している

東雲は人間で遊ぶのがかなり好きで先程の様に決定的な証拠を大勢に突き付けてはその人間が絶望する顔が大好きと言うかなり歪んでいる

 

 

「……東雲大元帥、先程のはただの憂さ晴らしですか?」

 

 

「あぁ、そうだよ?何か文句あるか?

面白かったじゃないか、あいつの絶望と焦りと怒りの顔

あー、久々にスッキリしたわー

ロシアじゃできなかったからなぁ!!」

 

 

東雲はそう言うと高笑いしながら足を机に置くと煙草の煙を天井目掛けて吐くと他の元帥や大将は縮こまる

すると、グラーフが佐渡と叢雲に対し声を小さくしながら呟く

 

 

「何だ、アトミラール

大元帥は良い方なのだな?」

 

 

「……なわけないだろ」

 

 

「…えぇこっからよアイツの性格の悪さは」

 

 

グラーフが不思議がっていると羽田が資料をまとめ会議を終わらせる準備をしていると他の元帥や大将達も立ち上がろうとする

 

 

「では、東雲大元帥これにて会議はーーーー」

 

 

「は?何言ってるんだ羽田

会議は終わってないしむしろこれからやるんだろうが」

 

 

「ーーえ?大元帥、今何と?」

 

 

羽田が驚いていると矢矧が東雲にある資料を渡し煙草を加えながらそれを見ていると足で机を叩くと元帥や大将達は再び座り始める

 

 

「あと、先に言っておくわ

グラーフツェッペリンは解体な」

 

 

「「「「「「「「はい?」」」」」」」」

 

 

東雲のあまりにも唐突な発言に全員が唖然としていると佐渡がそれに反論する

 

 

「待ってください!先程グラーフはスパイじゃないと貴方も認めたではありませんか!?」

 

 

「あぁ、認めたよ?グラーフツェッペリンはドイツのスパイではなくて流されてきた積み荷の艦娘だ」

 

 

「なら!!」

 

 

「違うなぁ?佐渡

俺が言ってるのはそんな『大した事』ではないんだよ?

俺はそいつの『存在自体』が駄目だと言っているんだ

分かるか?」

 

 

東雲はグラーフを指差しながら答えると資料をペラペラと捲りながら足を戻し煙草の煙を吐きながら答える

 

 

「そいつは、海軍の闇部分について詳しく知ってしまった

そんなことは正直我々海軍に悪影響しか及ばない

それに他の艦娘にもそんなことがバレてみろ?こっちがどうみても悪人じゃないか

どうせ兵器なんだ作り直せば良いさ

変わりのグラーフツェッペリンなら私が用意してやろうただしそいつは解体だ」

 

 

 

「待ってください!グラーフはそんな他の人に言う何て事はーーー」

 

 

「ほう?証明できるのか?

そいつが確実に言わないと言う保障が?

俺にはそんなことが出来るとは思えないな

人間も艦娘も変わらないのであれば絶対にどこかでボロが出る

それならその前に殺す又は解体するのが吉だろう?

提督なら分かるよなぁ?佐渡提督」

 

 

東雲の正論にぐぅの音も出ないでいると羽田がそれに対し反論する

 

 

「でしたら!彼女をドイツに戻すのはーーー」

 

 

「脳がないのか貴様は

グラーフツェッペリンがドイツに戻したところで記憶が消せるわけではないだろ?

どうせ向こうでも同じように消されるさ

海軍の正義を貫く為にな?

それにな」

 

 

東雲はそこで一拍開けるとニヤリと頬を吊り上げながら嘲笑うように佐渡達を見下げる

 

 

「所詮こいつら艦娘は兵器何だよ

いくらでも代用は効く

資材があればいくらでも作り出せる兵器なんて修理しても意味はないだろ?」

 

 

 

 

 





次回

艦娘=兵器


最近艦これでの攻略が進まなくて辛い…
ほっぽちゃん強い…


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会議 五

「そうだ……グラーフツェッペリンは解体すべきだ!!

我々の不祥事を知る艦娘何て言うのは解体しなくては!!」

 

 

「そうだよ…こいつらは兵器なんだ

代用は効くんだからな!!」

 

 

「だが霧の海域については?」

 

 

「それを聞き出してから解体でも良いではないか?

なら拷問と行こうではないか!!」

 

 

東雲の話に次々と元帥や大将達は賛同していき、声を上げていくが東雲は再び発砲し全員を黙らせると佐渡は東雲を睨み付ける

 

 

「そう怖い顔をするなよ佐渡

これでもお前達には感謝してるんだぞ?

沖縄での海戦は見事だったよ

それに免じて『グラーフツェッペリンだけの解体』で済ませてやるんだからな?」

 

 

そのグラーフだけの解体で済ませると言う言葉に引っ掛かり佐渡は机を叩き質問を投げつける

 

 

「待ってください!どういう意味ですかそれは!?」

 

 

「ほほう?それなら不幸持ちの金剛に拒食症のイムヤ

元犯罪者の大井達も解体処分にしてほしいのか?」

 

 

「何でですか!?あいつは関係ない!!」

 

 

「あるに決まってるだろバーカ

あいつらも全ての海軍の闇を知っているんだ

俺なら迷わず全員解体だ

それに古鷹だっけかな?あいつの方が率先して解体してやりたいねぇ」

 

 

その言葉を聞いた瞬間佐渡の中で何かがプッツンと切れ机を力強く叩き付ける

 

 

「てめぇ!!あいつらがどんな酷い目にあって心に傷を負っても尚生き続けようとしてるか分かってるのか!!

今必死になってこの世界で海軍で生きていこうとする決意をけなすのかクソジジイ!!」

 

 

「貴様!大元帥に何て口を叩いているのだ!?」

 

 

「大元帥!こいつは反逆罪ですよ!!」

 

 

佐渡が怒りを露にしておりながら敬語を一切使わない暴言に他の元帥達が怒っているが東雲は笑っている

 

 

 

「黙ってろ老害共、今俺はコイツと話してるんだ

ジジイではないがな?

そんなことは知ったことないさ

そいつらは兵器だ勘違いするな佐渡

お前の隣に居るのは鉄と金属で出来た人間の真似事をしているただの兵器なんだよ!!

そんなことも分からないのか!?」

 

 

「なら兵器は泣くのか!笑うのか!苦しむのか!?

お前達がそこでふんぞり変えることしか出来ない奴等にこいつらの何がわかる!?

こいつらは毎日苦悩しそれでも国の為に!人間達の為に!平和の為に戦い続けているんだぞ!!」

 

 

「それがそいつらの存在理由だ!

そうでも無ければこんな人間の真似事をする兵器を作るわけがないだろうが!!」

 

 

二人の言い争いは続き何度かグラーフが止めようとするがそれを叢雲に止められる

大将や元帥達も二人の話を聞きながら時にそっぽを向いたり飲み物を飲んだり震えたりしている

すると二人は息を切らし言い争いは一旦止まる

 

 

「ほほう?それならお前はグラーフツェッペリンをどうしても解体したくないと?」

 

 

「あぁ!!こいつは俺の艦娘だ!

誰にも手を出させない!」

 

 

「そうか、良いだろう

それなら条件を出してやる

貴様が居る机の中を見てみろ?」

 

 

 

 

 

 

 






次回

強さこそ全て

最近誤字報告を受けては居るのですがどこだか分からないで困惑している駄目作者がこちら
語彙力無いと本当に駄目ですね…



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会議 六

佐渡は机の中を探ると一枚の紙が入っておりそれを取り出すと内容を読む

 

 

「…大演習会?」

 

 

「そうだ、全ての鎮守府合同で行う演習会だ

それに出ろ

そして優勝しろ

私に認めて貰いたいのだろ?それならこれぐらいやってみろ」

 

 

佐渡はその契約書の内容を読んでいくと最後の欄に目が行きその紙を机に叩き付ける

 

 

「待てやクソジジイ!この負けたら鎮守府解体と金剛、大井、イムヤ、グラーフの解体ってのは何だ!?」

 

 

「ハハハ!決まってるだろ?

お前達にやる気を出させるためだよ

因みに一度でもその大会で負けたらその通りお前の鎮守府メンバーの大半を解体しお前を小笠原から解任させ鎮守府も解体するからな!!」

 

 

「いくらなんでも横暴すぎるだろ!!」

 

 

「なら、グラーフツェッペリンは諦めるんだな?

今ならそいつだけの解体で許してやろう?」

 

 

佐渡はその言葉に悩み苦悩しているとグラーフが肩を叩き首を横に振るう

 

 

「アトミラール、良いんだ私が解体されればそれだけで良いのだろう

なら迷わないでくれ私は大丈夫だ」

 

 

「グラーフ……」

 

 

佐渡とグラーフのやり取りを見ていた叢雲は佐渡から契約書を取り上げるとその内容を読む

 

 

 

「おい!叢雲!?」

 

 

「……ねぇ、東雲大元帥

これに優勝したら私達には何かあるの?」

 

 

「貴様は確か……雷撃姫の叢雲か

そうだな、今のところはほとんど考えていなかった

優勝した暁にはグラーフツェッペリンの解体を中止し

今後その事に関しては関わらないと約束しよう

後、小笠原鎮守府についての解体の話を今後一切しないと誓おう

それと貴様の言うことを一つだけ聞いてやろう」

 

 

「……それは本当に?」

 

 

「内容にもよるがな」

 

 

「それなら……『古鷹の罪を消して』」

 

 

「それは無理だ

あの艦娘の罪はそんなに軽い話ではない

こんなところで決められるほどに甘くはないのだ

理解しておけ」

 

 

「そう……それなら条件を追加するなら良い?」

 

 

「ほう…?そいつは何だ?」

 

 

東雲は叢雲からの提案に興味を示し煙草を消すと前のめりになりながら答えを待つ

 

 

「もし、この大会で私達小笠原が負ければ

私と佐渡を好きにして構わないわ

これならどう?」

 

 

「叢雲!?」

 

 

「待ってくれ!叢雲そんなこと駄目だ!!」

 

 

「ほほう…?これは驚いた

自分すら犠牲にするつもりか?」

 

 

叢雲がとんでもない事を言い始め佐渡は叢雲の両肩を掴み説得し始める

 

「バカ野郎!駄目に決まってるだろ!?

俺は別にどうなろうと構わない!だが叢雲お前は駄目だ!!」

 

 

「そうだ!叢雲何を考えている!

貴女がどんな目に合うのか分からないのだぞ!?」

 

 

「ふーん、因みに東雲大元帥

私をどうするの?」

 

 

「そうだなぁ……

一生を海軍の為に尽くす奴隷にでもなってもらうかな?

戦争が終わっても海軍にその身を全て尽くしてもらおう」

 

 

「ほら!そんなのは駄目だ叢雲!

私なんかの為に貴女までそんな危険を犯さなくてもーーー」

 

 

「私なんか?何言ってるのよあんただから私はここまでやろうとするのよ?」

 

 

叢雲はその言葉と共に近くにあるペンでサインを書くと佐渡に差し出す

 

 

「……本気か?叢雲」

 

 

「えぇ、勝てば良いんでしょ?

任せておきなさい

どんな相手でも私が倒して見せるわ」

 

 

叢雲の真っ直ぐな瞳を見ているとその覚悟が伝わり佐渡も頭を掻きながらその契約書にサインし始める

 

 

「アトミラール!駄目だ!そんなもの書かなくても私が解体されれば!!」

 

 

「グラーフ、俺はお前を守ると言ったな?

それに嘘はない

叢雲も同じだお前を守るために小笠原を守るために覚悟を決めたんだ

黙って従え」

 

 

佐渡はサインを終えると矢矧が下りてきてその契約書を受け取り東雲に渡すと内容を確認する

 

 

「……良いだろう、そのお前達の覚悟に免じてもう一つ条件を加えてやろう

お前達が優勝すれば、お前達小笠原鎮守府全員の罪を全て消し去ってやろう!!」

 

 

「なっ!!」

 

 

「大元帥それは!?」

 

 

「いくらなんでも破格の条件過ぎますよ!!」

 

 

東雲の発言に元帥や大将達はどよめくが東雲は立ち上がり叫び始める

 

 

「黙れ無能共!我が大本営に

いや海軍に必要なのは『力』だ!!

海上を支配する深海棲艦共を殲滅するための圧倒的な力がな!!

勝てば官軍負ければ賊軍

力こそ正義だ、やってみろ小笠原鎮守府

全ての鎮守府をねじ伏せ優勝してみろ!

お前達にその力があるならなぁ!?

開催は二週間後!詳しくは後で連絡を入れてやろう!!」

 

 

東雲雄大、この男に納得させるには自らの力を見せ付けるのが一番とされている

だからこそ佐渡と叢雲に対してこの様な態度を取る認めているからだこの二人の実力を

 

 

「「やってやろうじゃないか!!(やってやるわ!!)」」

 

 

その言葉と共に叢雲と佐渡は会議室の扉を開き出ていくとその後ろからグラーフも急いで付いていくと会議室は静かになるがその瞬間東雲が笑い出す

 

 

「アッハッハッハ!!

相変わらずあそこの奴等は面白いねぇ!

そう思わないか?矢矧?」

 

 

「あまりからかってはいけないと思いますよ

大元帥」

 

 

大元帥は立ち上がり煙草に火を付け会議室を去ろうとすると今日参加した元帥や大将達は揃って東雲に詰め寄る

 

 

「大元帥!あの言葉は本気ですか!?

あそこには大罪人の古鷹にそれを介護した二人の罪を消すって!」

 

 

「あぁ?本気だよ?

ハハ、勝てるならな?」

 

 

そう言うと東雲はあるリストをその元帥達に渡すと顔色を変える

 

 

「バーカ、簡単に勝たせるわけないだろ?

今回の大演習会にはかなりの実力者達が参加するんだよ

それには『正義の戦艦』長門も参戦する

かなり面白そうだぞ、ハハ!」

 

 

「成る程…」

 

 

「確かに彼女なら…」

 

 

「ハハ!まぁ、別にそんなことはどうでも良いんだけどな?」

 

 

「「「「え?」」」」

 

 

 

東雲は歩みを止めると元帥達に振り返ると頬を吊り上げながら嫌らしく笑う

 

 

「勝てば認めてやろう

負ければ殺してやろう

それが俺だ分かるだろ?諸君?」

 

 

その言葉に全員がゾクッと背中を冷やすと東雲は笑いながら矢矧と共に会議室を後にする

 

 

 

 

 





次回

大演習会に向けて

大演習会編は書きたかったのですが、何かとある人と同じような展開になりつつあるのがちょっと悔しい……



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小笠原の絆

「……と言うわけです

すいませんでした!!」

 

 

佐渡達は小笠原に戻ると残っていた大井達に向けて佐渡だけ土下座をしていると大井が溜め息を付く

 

 

「成る程、売り文句に買い文句で勝手に私達も巻き込んで負ければ解体ですか」

 

 

「提督ー?そう言う事は相談して欲しいデース?」

 

 

「そうよ、全く何でそんなことを勢いで決めるのかしらこの人は」

 

 

「ごめん、全て私の責任よ

司令官は悪くないわ」

 

 

「ち、違う!!私が二人を止めきれなかったのが悪いんだ!

本当にすまない!皆にまで迷惑をかけて……」

 

 

叢雲とグラーフも頭を下げると三人は笑い始め大井と金剛がグラーフと叢雲の肩を叩く

 

 

「まぁ、でも私がどっちの立場だったとしても止める気も辞める気は無いけどね?」

 

 

「デース!グラーフを解体なんて絶対にさせませーん!」

 

 

「そうよ!仲間を守るのは当然だし

うちの鎮守府が他の所になんて負けるわけないんだから!

ね!イーちゃん!」

 

 

イムヤに抱かれているイーちゃんも頷くとイーちゃんを下ろし土下座している佐渡に手を伸ばす

 

 

「ほら!司令官いつまでやってるのよ!

貴方のクビもかかってるのでしょ?

なら早く行動を起こさないと!」

 

 

「すまん……本当にお前達に迷惑をかけてしまって……」

 

 

佐渡はイムヤの手を取るとゆっくりと立ち上がり全員がその姿を見ながら微笑む

 

 

「何今更言ってるのよ

私達は貴方に救われた兵器ですから

貴方に従いますよ」

 

 

「そうデース!提督が居なかったら私はずっと孤独でしたしこんな仲間にも会えなかったデース!」

 

 

「そうよ?私も厄介払いされたのに貴方は助けてくれた

今こそ貴方に恩義を返すわよ!」

 

 

三人は微笑みながら答えると次は叢雲が佐渡の横腹を殴りながら指を指す

 

 

「そうよ?喧嘩を売ったのは私だしあんたは関係ないわ

それにあんたでも同じ事をするでしょ?」

 

 

「いやまぁ、そうだけどさ……」

 

 

「提督?私達が負けなければ良いんですよ!!」

 

 

古鷹と叢雲に言われると佐渡は頭を掻きながら全員を見ると全員やる気ではある

 

 

「良し!!それなら優勝するか!!」

 

 

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

 

「あんた達本気なの~?

負けたら死ぬのよ?」

 

 

叢雲達が決意を固くしている最中、エアがソファーに寝転びながらのんびりと煎餅を食べている

 

 

「仕方ないでしょ、グラーフを守るためよ

これぐらいするわ

とりあえず、これから二週間演習を増やすわよ?」

 

 

「では、とりあえず家事などの分担は……」

 

 

「あー、待てそれは俺が全てやるから

お前達は演習に励んでくれ」

 

 

「「「「「「は?」」」」」」

 

 

佐渡の発言に六人は驚きを隠せずに声を合わせて見合わせる

 

 

「それとお前達には俺が組んだ演習とトレーニングをやってもらう

それをみっちり二週間鍛え上げる良いな?」

 

 

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」

 

 

「何だ?大井?」

 

 

「提督!ここの家事はかなり大変なのですよ!?」

 

 

「お前達に戦ってもらうんだこれぐらいはしないとな

それとエアお前も手伝え」

 

 

「んー?家事なら良いわよ

その代わりソラ呼んでもいい?」

 

 

「やむを得ないな許可する」

 

 

「りょーかい」

 

 

エアは、携帯を取り出し電話を掛けていると大井が佐渡の服を引っ張る

 

 

「提督、本気ですか?彼女にやらせるなんて」

 

 

「本気だそうでもないと回せないと思うし女性用下着を触るのはちょっと俺にはなぁ……

とりあえず大井、俺が考えるメニューを作ってもらうぞ?良いな?」

 

 

「…分かりました」

 

 

「じゃあ、とりあえず今日は演習は無しだ

明日から俺のメニューをこなしてもらうぞ?良いな!!」

 

 

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

 

 

 





次回

演習内容

今回のお話もエアの話同様に少し長めになっています
それとこの章は直接次の章に繋がっております



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小笠原式演習会

次の日小笠原メンバーは佐渡から受けた演習内容を大井から作ってもらいそれぞれ受けている

朝、叢雲が行っているランニングから筋トレ等を全員にやらせてはいるがそれとは別に全員へ別々のメニューが組み込まれていた

 

 

「それで、私達のメニューがこれか」

 

 

 

叢雲に与えられたメニューそれは

 

 

「私と対峙……か」

 

 

古鷹と一対一の真剣勝負

この二人は佐渡に直接指導を受けておりその結果的に自らの出来ることとその範囲を理解している

だがそれだけでは足りないと佐渡は判断し

二人を対峙させた

 

 

「古鷹、容赦は無しでね

分かるわよね?」

 

 

「うん、分かってるよ?

じゃあ始めよっか!」

 

 

すると二人は艤装を構えると走り始め叢雲は近接戦闘を仕掛け

古鷹は自らの艤装をゆっくりと構えながら標準を叢雲に向ける

 

 

 

 

 

 

 

 

「そして、私達は」

 

 

「これデースか……」

 

 

大井、金剛の二人は深海棲艦の艦隊を相手にしていた

その筆頭は艤装を構えたソラだった

 

 

「姫様の頼みですし、佐渡様から直々のお願いですからね

聞かないわけには行きませんよね

安心してください

彼女達は私の言うことをキチンと聞く良い娘達ですから

弾薬も模擬弾に変えてあります」

 

 

ソラの艦隊は、重巡リ級一体 雷巡チ級一体 戦艦ル級一体 そして旗艦ソラの艦隊

この艦隊はエアが作り出したものらしく多くの艦娘の艦隊を撃退した強者揃いらしい

 

 

「じゃあやるわよ!金剛!」

 

 

「やってやるデース!!大井!」

 

 

「その行きです金剛様、大井様

お前達!容赦はするな!叩き潰せ!!」

 

 

 

 

 

 

 

「それで私のメニューは貴女ね?」

 

 

イムヤは防波堤にて立っていると隣にはイーちゃんが座っておりイムヤの話を聞くと海に飛び込みイムヤを見上げている

 

 

「確かに、貴女位しか私を攻撃できないし

私をいつも止めてくれているものね

じゃあ、よろしく頼むわよ!!

イーちゃん!!」

 

 

イムヤはその言葉と共に海に飛び込み潜水を開始するとイーちゃんは口を開き機雷を展開させるとイムヤに向けて正確に落としていく

 

 

 

 

 

 

 

「んで、私が最後ってことね

まぁ妥当よね?」

 

 

そして、最後にグラーフの相手はエアが勤めているのだがエアは艤装を展開させずに海上に立っていながらゆっくりとアイスを頬張っている

 

 

「正直、私は深海棲艦に教えを項のはどうかと思うがこの戦いには私も負けてはいられないんだ!

エア、すまないが付き合ってもらうぞ!!」

 

 

「ま、別に私は構わないわよ?

とりあえずあんたは今の状態の私に艦載機で攻撃を当てることね?」

 

 

「なら!エアも艤装を展開したらどうなんだ!?」

 

 

「あんたねぇ、相手が誰だか分かって言ってるの?」

 

 

エアはアイスを食べている木のスプーンをグラーフに突き付けると呆れた様子で言い始める

 

 

「あんたと私は潜り抜けてきた戦場の数が違うのよ

最初から私とまともに戦えるわけないでしょ?

それが嫌なら無理矢理にでも私から艤装を展開させてみなさい?」

 

 

「……後悔するなよ墨だらけになっても!

攻撃隊発艦始め!!蹴散らせ!!」

 

 

グラーフが艦載機を発艦させるとエアはゆっくりとアイスを食べ木のスプーンをくわえると人差し指を宙に回転させると三つの丸い艦載機を出す

 

 

「さぁてと?少しは楽しませてよね、グラーフ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小笠原のメンバー達がそれぞれ演習を行っている最中佐渡は海にて全員の演習風景を監督していた

 

 

「……頑張れよお前達」

 

 

同時にパソコンを弄りながら相手の鎮守府についても調べ誰が出てくるのかを予想していた

 

 

「一番の敵はやはり、唐澤大将の舞鶴鎮守府かな……

『正義の戦艦』長門か……」

 

 

佐渡は眉間にシワを寄せながらその演習映像を見ているが長門は近接戦闘も可能なかなりの強敵になると予想していた

 

 

「叢雲をぶつけるしかないな

だが普通では勝てないどうするか……」

 

 

佐渡が作戦を考えながらも全員の演習風景を見ていると全員必死になりながら取り組んでおりその中でも叢雲と古鷹はかなりお互いが苦戦している

 

 

「やはり切り札はあの二人か……」

 

 

こうして、全員に組まれた特殊メニューをこなしていき時間は過ぎていく

 

 

 

 





次回

お祭り騒ぎ

次回、全ての鎮守府の強者達が登場します
沖縄や舞鶴そして他の鎮守府のエース達
果たして小笠原は勝てるのでしょうか?



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大演習会 前日

「はぇー……ここが会場か…」

 

 

「何かかなり広いわね?」

 

 

「と言うか屋台もありますね?」

 

 

「いやそれよりも普通の民間人居ますよね?

どうなってるんですか?」

 

 

大会前日佐渡達は大演習会の会場に来ていたのだがかなり広く目の前にスタジアムが見えどうやらそこで行われるのだが辺りには屋台が立ち並び外には液晶が備え付けられている

 

 

「……あんのジジイ、まさかとは思うけど大演習会を一般公開にするつもりか?」

 

 

「そのまさかだぜ!佐渡!」

 

 

後ろからある男に背中を叩かれ佐渡は前に倒れそうになるが何とか持ち直し背中を擦りながら後ろを振り返るとそこには 

 

 

「猿橋提督!

それに大和さん!」

 

 

「よ、お前達も来たのか

本当に全鎮守府召集かけたのかあの人」

 

 

「お久しぶりです、佐渡提督

お変わりに無いようで」

 

 

後ろには猿橋と大和が立っておりその後ろには榛名と伊8が待機しておりうずうずしている

 

 

「あのー提督?」

 

 

「あ、悪い

良いぞほら二人とも」

 

 

猿橋が合図をすると後ろに控えていた二人は金剛とイムヤに向かっていく

 

 

「お姉さま!お久しぶりです!」

 

 

「おー榛名ー!久しぶりネー!

元気だったデースか?」

 

 

「イムヤ、身体は大丈夫?

ちゃんと食べてる」

 

 

「うん!と言うよりは小笠原には食べ物位しか楽しみがなくてね……」

 

 

二人は金剛とイムヤを心配しているが二人の明るい対応を見ると安堵の溜め息と共に談笑をしていると

 

 

「金剛おーねーいーさーま!!」

 

 

金剛の後ろから大声でこちらに走ってくる巫女服を来た女の子が突っ込んできておりある程度近付くと金剛に抱き付く

 

 

「比叡!!

久しぶりネー!!」

 

 

「お姉さま!お姉さま!!

元気になられたんですね!!

比叡感激です!」

 

 

比叡が金剛の胸に顔を埋めているとその後ろから眼鏡を直しながらゆっくりとした足取りで近付いてくる者が居る

 

 

「お姉さま、お久しぶりです

どうやら元に戻られたようですね」

 

 

「霧島!久しぶりネー!

皆sorry ね心配かけちゃったネー…」

 

 

金剛姉妹が四人揃うとその後ろから更にこちらに近付いてくる影が四人ほどおりこちらに手を振っている

 

 

「やっほー!佐渡くーん!」

 

 

「佐渡君も今回の奴に参加していたのか」

 

 

「葛城さん!石澤さんも!」

 

 

葛城と石澤が合流すると各々何人かの艦娘を連れており小笠原の者達と談笑を始める

 

 

「イムヤー!久しぶりネー!

少しは肉付き良くなってるネ!」

 

 

「ちょっと!イク!変なところ触らないでよ!」

 

 

「大井っち久しぶりー!」

 

 

「北上さぁぁぁん!!

あぁ!!久しぶりです!ずっとお会いしたかったんですよぉ!!」

 

 

「久しぶりじゃない、叢雲

元気してた?」

 

 

「元気も元気よ

特に何もないからねあそこは」

 

 

「古鷹さん!お久しぶりです!

後でまた話しませんか!?」

 

 

「阿武隈さん!そうですね!

二人でお話しましょうか!!」

 

 

皆が話している中グラーフだけは少し離れ佐渡の隣に立とうとするが佐渡が背中を押す

 

 

「アトミラール……」

 

 

「ほら、話してこい

何かあそこの伊8って潜水艦が話したそうにチラチラ見ているぞ?」

 

 

グラーフは佐渡に言われると伊8はチラチラとグラーフを見ているが目を合わせた瞬間そっぽを向いてしまう

 

 

「ほら、行ってきな」

 

 

「……あぁ、そうするよ」

 

 

グラーフは伊8に近付いていくと伊8も気付いたのかグラーフに近付き本を片手に楽しく話を始め佐渡も微笑むと猿橋に叩かれる

 

 

「アッハッハ!相変わらずだなお前は!」

 

 

「悪いですか?」

 

 

「いんや、全く

お前のそう言うところが気に入ってるんだからな!」

 

 

 

 





次回

大演習会の内容

次回は提督達による今回の大会内容の説明になります
あー……明石欲しい…



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大演習会 前日 二

「何よ、貴方達出来てるの?」

 

 

「マジか佐渡君、君ホモかい?」

 

 

「「違うわ!!」」

 

 

佐渡と猿橋が声を合わせていると叢雲に横腹をつつかれると同時に他の艦娘達も葛城達に会いに行く

 

 

「ちょっと司令官

私達屋台巡りしてきて良い?」

 

 

「おう、今日は前日だからな

程ほどにな?」

 

 

叢雲は佐渡に許可を貰うとそれを全員に伝えるとそれぞれ屋台に向かって行くのを見送ると佐渡達は残される

 

 

「さてと、それじゃ俺達は俺達でいくか?」

 

 

猿橋の一言に賛同し佐渡達も屋台巡りを開始する

 

 

「そう言えば、佐渡は聞いたのか?今回のこの大演習会の内容を」

 

 

「いえ、全く」

 

 

「では、説明しますよ?

今回の大演習会はトーナメント形式で行われ全鎮守府合計で20個の鎮守府対抗だそうです

一応AブロックとBブロックに別れそれぞれ二つの鎮守府が勝ち残り最後にその代表同士の戦いにて優勝を決めるそうです」

 

 

「へぇ、因みに既に決まってるの?

そのトーナメント表は?」

 

 

「はいこれ、さっき見てきて撮っておいた奴

あ、私チョコバナナ買ってくる~」

 

 

「俺イカ飯~」

 

 

「たこ焼きでも買ってこようかな?」

 

 

佐渡にトーナメント表の写真を見せると全員食べ物を買いに行くと佐渡はゆっくりとそのトーナメント表を見る

Aブロックには、小笠原、佐伯、沖縄 他六つの鎮守府

Bブロックには、舞鶴、横須賀、呉、佐世保、他六つの鎮守府が名を連ねていた

(唐澤大将とは別枠か

なら決勝だなジジイ仕組んだな)

 

 

「と言うわけで明日はよろしくね?

佐渡君」

 

 

「ま、こっちとは準決勝で当たるとはおもうけどね」

 

 

佐渡が所属する小笠原枠は左端に書かれておりその逆端には沖縄

そして勝ち進めば二戦目に葛城とぶつかる予定になっている

 

 

「あーあ、うちも小笠原と戦いたかったな~

相手があれだからなぁ」

 

 

二人と対峙するのと違い猿橋はBブロックに居るため戦うのは決勝なのだが鼻から諦めている

 

 

「何でよ?猿橋さんの所も決勝に行けば……あ」

 

 

「無茶言わないでくれよ葛城さん

相手は最強の鎮守府って言われてる舞鶴だぜ?

勝てるわけ無いじゃん?

大和出しても多分ムーリー」

 

 

Bブロックには全ての鎮守府より圧倒的な戦力を誇りどの鎮守府より深海棲艦の撃破数が多い舞鶴鎮守府が配置されておりその為か猿橋は諦めている

 

 

「あれ、また出さないんですか?大和さん?」

 

 

「出さねーよ、あいつを出す程でも無いし

約束してるしなぁ」

 

 

「約束?」

 

 

「んー、気にするな独り言だから」

 

 

猿橋の約束と言う言葉に引っ掛かるが佐渡は再びトーナメント表を見るとある鎮守府を見付け気にする

(佐世保……あそこも出るのか)

佐渡が考え事をしていると石澤が猿橋を励ますように話し始める

 

 

「でも!この大演習会の『優勝商品』はそれほどの価値がありますから勝ちたいですよね!!」

 

 

「優勝商品?」

 

 

石澤の言葉に佐渡は首を傾げると葛城がチョコバナナを食べ終わり木の棒を佐渡に向ける

 

 

「さては知らないなぁ?その口振りからして」

 

 

「あれ?伝わってないのかい?

今回の大演習会で優勝したら『大元帥が一つ願いを叶えてくれる』らしいよ?」

 

 

 

「………………はい?」

 

 

そんなことを聞かされていない佐渡は驚きのあまり唖然としてしまう

 

 

 





次回

優勝商品

最近暇な時間が無くて中々辛い社畜です
あぁ…お休みが欲しい…



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大演習会 前日 三

ここからは叢雲達に視点が変わります






「は?何それ?」

 

 

「もしかして叢雲知らなかったの?

海軍の権限で何とかなる物なら何でもくれるんだって

例えば一週間の鎮守府全体お休みとか、世界旅行行きたいとか

でも鎮守府で一つ何だってさ」

 

 

叢雲も同時期に瑞鶴からその話を聞いており古鷹と顔を合わせる

 

 

「小笠原は何かお願いするんですか?」

 

 

「ん、んん~、秘密かな?」

 

 

古鷹が何とか濁らせるがそんな話を聞いたこと無い小笠原メンバーは冷や汗をかいているが瑞鶴は胸に着けたアクセサリーを触りながら呟く

 

 

「そう……絶対に負けられないのよ…」

 

 

「そう言えば、瑞鶴

それ何?誰かからのプレゼント?」

 

 

「あ、これ?

これは……なんと言うかお守りよ

ある大好きな先輩から貰った物なの……」

 

 

瑞鶴は胸にかけたアクセサリーはクローバーの髪留めであるのだが少しボロボロになっているのにも関わらず瑞鶴は大切にしている様だ

 

 

「……それって貴女を元仲間の?」

 

 

「うん、実はね阿武隈には話したんだけどね

私はある海域に出撃してるときに鎮守府は壊滅したんだ

でもその時、翔鶴ねぇと赤城先輩と加賀先輩を一気に失ったの

そして、加賀先輩は最後に私をその海域から逃がすために一人で深海棲艦の艦隊に向かっていったの

私はその後何とか沖縄にたどり着いたんだけどね……」

 

 

瑞鶴は過去の話をしていると叢雲達はそれを聞きながら飲み物を口にしている

 

 

「その加賀先輩から貰った物なのこれは

かっこよかったんだよ……

一人で姫級相手に制空権奪ったり、規律正しくて、誇り高くて、自分にも他人にも厳しかったけど尊敬してた……」

 

 

「大好きだったんですね、その先輩が」

 

 

「うん!だから負けられないの!!

今回優勝して、ある姫級を追う許可を出してほしくてね」

 

 

「ある姫級?」

 

 

叢雲達が首を傾げると阿武隈がその次を話そうと食べ物を飲み込む

 

 

「何かね、その海域から脱出する際に瑞鶴は姫級が生まれる所を見たらしいの

でもほとんど覚えていないんだって」

 

 

「へぇ?姫級が…ね」

 

 

叢雲がその姫級の話を聞いた瞬間艦娘を攻撃しないと言うエアを一瞬思い出したがそんなことあり得ないと思い忘れることにした

 

 

「でも、その加賀って人有名ですよね」

 

 

四人の会話に横入りするように叢雲の目の前に後ろからたい焼き差し出すと叢雲は受け取りながら振り返るとそこには大井と北上が腕組みしながら立っていた

 

 

「貰うわよ」

 

 

「えぇ、さっき北上さんと買って余ったの」

 

 

叢雲は貰ったたい焼きを半分にすると瑞鶴に渡すと四人と合流しながら歩いていく

 

 

「それで、大井どういうこと?」

 

 

「まぁ、私は海軍のデータベースを見ただけですがその当時艦娘達にもそれぞれ最強と呼ばれた者達が居たそうなんですよ

その一人が誇り高き一航戦加賀

彼女は現空母達に語り継がれる程に強く、勇ましく、誰よりも強い信念と誇りを持っていたそうなんです

確かにその時二人の後輩を持っていたと見ましたがまさか瑞鶴さんが……」

 

 

「へぇ~?大井っち博識だねぇ~」

 

 

「そんなことありませんよぉ!あ、北上さんあちらのタピオカドリンク飲みますか?それともベビーカステラはどうですか?」

 

 

「うーん、後でにしようかなぁ?

そんなことより雷撃姫~」

 

 

北上が絡むとキャラが変わった様に大井は豹変するが北上は叢雲の肩を掴む

 

 

 

「何よ?」

 

 

「今から宣戦布告するね~

私達が優勝したら大井っちは私達佐伯鎮守府が貰うからね」

 

 

 

「「「………………は?」」」

 

 

 

 

 

 

 




次回

ルール変更

北上さんが略奪愛に目覚めた!?
ヤンデレ北上さん書いてみた……いや似合わないよなぁ…



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大演習会 前日 四

今回は佐渡達の提督目線になります





「…………え?今なんて?」

 

 

その事実は佐渡も聞いていた目の前の葛城と猿橋に宣戦布告をされながら

 

 

「だから、俺達横須賀が優勝したら金剛を貰うぜ?」

 

 

「私達が優勝したら大井ちゃんを貰うわ」

 

 

二人から言われている言葉に唖然としていると猿橋が佐渡の肩に耳打ちをする

 

 

「良いから、わざと仲互いしてるように演技してくれ

訳は後で話す」

 

 

「え?」

 

 

佐渡がその言葉に驚いていると石澤が猿橋の肩を掴む

 

 

「待ってくれ!何でそうなるだ!!

佐渡君の鎮守府から艦娘を奪うだと!

お前達何を考えてるんだ!!」

 

 

「あら、決まってるじゃない?

佐渡君の所の大井ちゃんはかなり強いしどうせなら景品として欲しいなと思ってね?」

 

 

「石澤は何か別に願い事したのか?

あ、もしかして叢雲かー?それは辞めとけよあいつはーーー」

 

 

「そうじゃない!!佐渡君の鎮守府に居る艦娘は皆心に傷を負っている!

それを佐渡君は懸命に癒しているのにお前達は……

見損なったぞ!!」

 

 

三人が仲互いしていると佐渡の携帯が鳴り出し佐渡は三人から離れ電話に出る

 

 

「はい、もしもし?」

 

 

『やぁ、佐渡~?

お前に伝えることがあってね

電話先だけど失礼するよ?』

 

 

「……何だ、ジジイ」

 

 

電話の相手は東雲であり電話先で笑いながら何か紙を捲っている

 

 

『嫌ね、今回の大演習会の報酬に君達小笠原の面々が欲しいと言う意見が多くてね

金剛、大井、イムヤ

この三人は解体から除外しようと思ってね?』

 

 

「ほほう?それなら解体はグラーフだけか?」

 

 

『いんや、実はある元帥が一人の艦娘を解体してほしいと強い要望があっての

その娘を解体に追加することにするよ』

 

 

佐渡は小笠原メンバーの事を思い出しながら考えていると一人の艦娘が頭を過る

 

 

「お前!まさか!!」

 

 

『相変わらず察しが良いなぁ?

その通りだ、三人の代わりに古鷹を解体のリストに入れておくよ

それ以外は同じだ』

 

 

「待てや!アイツは関係ないし!お前に力を示しただろ!!」

 

 

『あぁ、一応な?

だが悪いなぁ

我々にも色々とあるんだよそれに

あれは『大犯罪者』だ

ここで解体しなくてもいつか解体する予定だったしな?

それだけだ、では明日は精々足掻きたまえよ』

 

 

「待て!話しは終わってーー」

 

 

と佐渡が叫ぶが電話は切れておりポケットに仕舞うと力強く拳を握り締める

 

 

「クソッ!!」

 

 

「どうしたんだ、佐渡君?」

 

 

佐渡の態度に焦り石澤が心配すると振り返り猿橋達を睨んでしまう

 

 

「な、何だ?どうかしたのかよ?」

 

 

「……いや、すいません

どうやら二人の作戦は駄目だった見たいですよ」

 

 

「「え?」」

 

 

「解体の対象が古鷹に変わりました……

三人は何とか大丈夫ですが…」

 

 

「マジかよ……

これでもダメか…」

 

 

「え?え?どう言う事だい?」

 

 

「実はね」

 

 

二人は石澤に事の経緯と内容を話すとみるみるうちに石澤の顔が青くなっていく

 

 

「す、すまなかった!

事情と知らずに……」

 

 

「いや、説明しなかった俺達が悪いんだ

それよりも佐渡どうするんだ?

俺達は榛名達にこの事を話してないのだが棄権しようか?」

 

 

「そうね、私達が棄権すれば小笠原も勝てる見込みが増えるしね」

 

 

「いえ、辞めてください

そんなことしたら叢雲達が怒りますよ

全力で来てください

それの方がアイツも喜ぶしそれに」

 

 

佐渡は会場へ向き直るとその入り口にポツンと一人の立つ男と隣に艦娘が見える

 

 

「あれが納得するとは思えないしね」

 

 

会場の入り口立っている男はニヤリと笑うと会場内へと消えていき佐渡達も逆方向に歩いていく

 

 

 

 

 




次回

前日の夜

今回もかなり長くなる予定です



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大演習会 前日 五

今回二人の艦娘と叢雲のお話になります
前編と後編に別れてます!




「あー楽しかったわ!!」

 

 

「夜ご飯も美味しかったな」

 

 

「あぁ……北上さんにあーん出来て満足したわ……」

 

 

夜、全員は東雲が用意した会場近くのホテルに泊まっている

艦娘と提督達は別けられておりこのホテルには艦娘とホテルの従業員と憲兵だけになっており廊下には憲兵が見張っている

憲兵が居るのは艦娘の誘拐を防ぐためである

食事を終えお風呂に入ろうとする為全員で移動していると目の前の廊下に背を預けながらある艦娘が叢雲達を待っていた

 

 

「ん?誰か居まーす?」

 

 

金剛がそれに気付くとその艦娘は小笠原メンバーの前に立ち塞がる様に廊下に立つ

 

 

「………何の用

『正義の戦艦』」

 

 

「久しぶりだな雷撃姫

お前に用がある少し時間を頂きたい」

 

 

立っていたのは長門だった

舞鶴鎮守府所属最強と言われる正義の戦艦圧倒的な戦績と志を持ち一体足りとも深海棲艦を逃がさない事から正義の戦艦と呼ばれ他の艦娘達の憧れと目標になっている

 

 

「嫌よ、あんたと話す事は無いわ」

 

 

叢雲達は長門を通り過ぎようとすると肩を捕まれ耳元で囁きかける

 

 

「今回の解体に関しての話だ」

 

 

「っ!!」

 

 

長門の話を聞くと叢雲は飛び退き長門を睨み付けると舌打ちをする

一方長門は古鷹を睨み付けるとそのまま叢雲達とは反対側に歩いていく

 

 

「……先に行ってて話してくるわ」

 

 

「…分かったわ

叢雲、気を付けてね?」

 

 

大井に言われると叢雲は長門に付いていくと金剛達は心配そうに叢雲の背中を見送る

 

 

「叢雲……何で長門の事あんなに嫌ってるんデース?」

 

 

「さぁ?私は知らないけど

あの二人かなり仲が悪いのよ

それこそ、水と油 犬猿の仲って感じでね

良く大本営では意見がぶつかり合うとかとあるらしいわ」

 

 

「でも、何でさっき古鷹さんを睨んでたの?長門さん」

 

 

「そうだな、叢雲なら兎も角何故古鷹何だ?」

 

 

「そうですね……いつか皆さんにお話しますよ

長門さんと叢雲が仲悪い原因は私ですから」

 

 

「「「「え?」」」」

 

 

古鷹に言われると全員は唖然としているが古鷹は静かにその場を後にしながら左目を押さえる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪かったな、風呂の邪魔をしてしまって」

 

 

「そう思うなら早く用件を言って

私があんたを嫌ってるのは知ってるでしょ?」

 

 

長門と叢雲はホテルの外にあるテラスに出てきており周りには憲兵が居るのだが長門が指示を出すと憲兵は頭を下げホテル内に歩いていく

 

 

「今回のお前達の事は聞いている

負ければグラーフツェッペリン、大井、金剛、イムヤの解体

そして鎮守府の解体もな」

 

 

「それがなに?」

 

 

「あくまで気丈だな

そのルールが変更されたのは知っているか?」

 

 

「何ですって?」

 

 

叢雲が長門の言葉に驚いていると長門はテラスの端に行くと背中を預け腕組みをする

 

 

「どうやら、猿橋提督がその話を聞き付けてな

金剛、大井、イムヤの三人は別の鎮守府が引き受けるらしい

だから、実際に負ければ解体されるのはグラーフツェッペリンだけだ」

 

 

「……嘘ねそれだけな訳がない」

 

 

「察しが良いな

ここで大元帥は一つのルールを追加させた

それは三人の代わりに古鷹を解体すると言う条件だ」

 

 

「なんですって!?」

 

 

叢雲はその条件に怒りを隠せずに長門を睨み付け詰め寄る

 

 

「どう言う事よ!古鷹は今回の件には関係ない!!」

 

 

「藤谷元帥がな小笠原を解体するなら古鷹の解体を進めてきていてな

それを大元帥は承諾したらしい

それに彼女は『大罪人』だ

仕方ないだろう」

 

 

「ふざけないでよ!古鷹は何の罪も犯してない!!」

 

 

「だが、彼女は自らの罪を認めている

だから小笠原に居るのだろう?」

 

 

長門に言われると歯を食い縛りながら必死に手を押さえていると長門はため息を付く

 

 

「正直、この話をしたのは次の話を理解してもらう為だ

 

 

「……何よ?」

 

 

「私はお前の実力を志を全てを認めている

戦艦棲姫戦と歴戦のル級戦の時私は確信した

お前なら私の右腕に

嫌、相棒として相応しい

だから」

 

 

長門はそこまで言うと叢雲に手を差し出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「我が鎮守府に来い叢雲

私にはお前が必要だ」

 

 

 

 




次回

ヘッドハンティング

長門が叢雲を勧誘する理由そして叢雲はそれを受け入れるのか……
犬猿の仲である二人が激突し続ける理由とは?



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大演習会 前日 六

「……あんた何のつもり?」

 

 

「そのままの意味だ

私と共に来い叢雲

お前があんな鎮守府にいるのは勿体ない」

 

 

叢雲は差し出された手を凝視していると長門はその手をしまい再び腕組みをする

 

 

「まぁ、ただでとは言わない

お前が私の鎮守府に来るのであれば五人の安全を保証しよう」

 

 

「へぇ?どういうつもり?」

 

 

「別に、私は実力主義でありお前の鎮守府はかなり強いことを承知の上だ

大井も金剛もかなり強いことは知っている

イムヤはゴーヤが居るし、グラーフツェッペリンは赤城がいる

これから強くなれば良い

既に提督には話を通し許可は得ている」

 

 

その話を聞いている叢雲は二人だけそこには入ってない人物を思い出していると再び長門は手を差し出す

 

 

「どうだ、悪い話ではないだろ?

だから共に暁の水平線にーーーー」

 

 

「古鷹と佐渡はどうするのよ?」

 

 

叢雲に二人の名前を出された瞬間長門の顔が曇るが話を続ける

 

 

「佐渡提督に関しては提督と話を付けてもらう

だが、古鷹は駄目だ

彼女は罪人であり我が鎮守府に入れるわけにはいかない」

 

 

「そう、なら嫌よ」

 

 

叢雲は長門の手を払うとホテルへと向かって歩いていく

 

 

「待て!私達の鎮守府に付けば五人は助かるんだぞ!!

何故だ!何故お前はあの鎮守府に!古鷹達にこだわる!!

我々は兵器だ!代用品はいくらでもあるなのに何故!?」

 

 

「ねぇ、貴女は何かを失ったことがある?」

 

 

叢雲は振り返ると長門に問いかけると長門は苦しみながら胸に拳を作る

 

 

「あるさ……私は昔仲間を全てを失った……」

 

 

「そう、奇遇ね

私も姉と友人達を失ったわ目の前で

それならもう一つ質問

貴女は復讐した?その奪った奴に」

 

 

「出来るわけないだろ!

あんな…あんな化け物にどう勝てと言うんだ!!」

 

 

「そう、貴女は怖じ気ついたのね

私は違うそれを撃破したわ

そこが貴女と私の違い

貴女は逃げた、私は戦ったそれだけよ」

 

 

「貴様に……貴様に何がわかる!!」

 

 

長門は叢雲に詰め寄ると怒りの余り叢雲の襟を掴み持ち上げる

 

 

「分からないわ

でもね、あんたは逃げてるだけ今も

海軍の運営方針従ってその中でしか動かない

だから貴女は安全で作られたレールの上でしか動かない

でもね私達は違う」

 

 

その言葉と共に叢雲は長門を睨み付けると怒りを露にする

 

 

「私はアイツの思いを信じてる

何よりも誰よりも海軍の作られたレールの上で動くなんて真っ平ごめんよ!!

私はアイツの作るレールの上で皆で歩いていくの!

私は逃げない!アイツが私達を信じてくれるから!

だからこそ、私が仲間を守るのよ!

もう守られるのは……失うのは嫌なのよ!!」

 

 

叢雲は長門の手を振り払うと背を向けながら歩いていくと手をヒラヒラとさせながら背中越しに答える

 

 

「あんたの申し出は素直に嬉しいわ

でも、私は佐渡以外には従わない

倒させてもらうわよあんた達を

覚悟しておきなさい」

 

 

叢雲が去っていったテラスで長門は拳を握りしめながら怒りを抑えていた

 

 

「私が……逃げてる…?

そんなこと…私は…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

テラスから離れた叢雲はお風呂場に向かっていると再度三人の艦娘に阻まれる

 

 

「まーためんどくさいのが居るわね」

 

 

「叢雲さん、話があるの良いかしら?」

 

 

その艦娘達は佐世保鎮守府所属の加古(かこ)衣笠(きゆがさ)そして、後ろに隠れるように青葉(あおは)が立ち塞がっているが叢雲はそんなことお構い無しに横を通りすぎようとすると加古に肩を捕まれる

 

 

「ちょっと待てよ

話があるんだ」

 

 

「うっるさいわねなんか用?早くしてくれない?」

 

 

「貴女!お願いしてるのに何その態度!?」

 

 

「ね、ねぇ二人とも辞めようよ……」

 

 

衣笠と加古はかなり強気だが青葉だけはかなり怯えている様子を見ながら叢雲はめんどくさそうにしている

 

 

「早くして、お風呂入りたいんだけど?」

 

 

「なら、ここでも良い

『古鷹を返せ』」

 

 

「嫌よバーカ

誰があんた達何かに返すわけ無いでしょうが」

 

 

加古の話に叢雲は呆れるように返すと立ち去ろうとするが加古が叢雲の肩を力強く掴み逃がさない

 

 

「古鷹は『私達の仲間だお前達何かと一緒に居て良いはずがない』

どうせ古鷹の弱味を握ってるだろ!

白状しろ!!」

 

 

「別に?古鷹の弱味なんて握ってないわよ

でもそうね、私達何かと居るよりは別の鎮守府に移した方が良いとは思うわよ?」

 

 

「なら古鷹をーーー」

 

 

「でもね、『お前達見たいな屑に渡す訳には行かないわ

あの人は私が守る』

佐渡と私はどんなことがあっても古鷹を守るって決めてるのよ

じゃあね」

 

 

叢雲はその言葉を残すと加古の手を振り払いその場を後にしようとすると後ろから加古が

 

 

「お前達何かの所に居たら古鷹がどんな目にーーーーー」

 

 

「ねぇ?いい加減にしなさい?」

 

 

叢雲はゆっくりと振り返ると加古と衣笠を殺意を向けながら睨み付けると二人はビクッと震えながら脅える

 

 

「お前らの偽善であの人がどれほど苦しんでるか分からないのに知った口を聞くな

次古鷹をどうこう言ってみなさい

 

沈めるわよ海の底へ」

 

 

叢雲の態度に怯え二人は言葉を失っているとゆっくりと叢雲は歩き始めるとその後ろから一人の声が聞こえる

 

 

「じゃ、じゃあ私のお願いを聞いてくれませんか!?」

 

 

その声の主は今までずっと黙っていた青葉であり叢雲も興味を示し振り返る

 

 

「何かしら?変な内容だったら殴るわよ?」

 

 

「私達が……佐世保が優勝したら古鷹さんに会わせてください!

会うだけで良いんです!

一目自分の目で見たいんです!お願いします!!」

 

 

青葉がその場に土下座までしていると叢雲は呆れながらも再び歩き始める

 

 

「佐渡に聞いといてあげる

決定権はあの人にあるから」

 

 

その言葉を聞いた青葉は喜びながら涙を流していると叢雲は廊下の曲がり角を曲がると一人の艦娘が壁を背に立っていた 

 

 

「待ってたよ、叢雲」

 

 

「古鷹…聞いてたの?」

 

 

 

「まぁね、じゃ行こっか?」

 

 

古鷹は何事も無かったかの様に歩き始めると叢雲もその後ろに付いていき古鷹の顔を見上げると微笑んでいた

 

 

 

 




次回

唐澤襲来

古鷹の微笑みの理由とは…?
それは近いうちに書いていきます



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大演習会 前日 七

佐渡は東雲が用意した艦娘達が居るホテルに隣接しているホテルに泊まっていた

そして、ある人をベットに正座させながら佐渡は困り果てて居た

 

 

「…………なぁ?何でお前が居るの?」

 

 

「何でって来たからよ?」

 

 

「そうじゃねぇよ、お前留守番頼んだよねぇ!

何でここにいるんですかエアさんんん!?」

 

 

そう、佐渡を困り果てさせていたのは小笠原鎮守府で留守番させていたはずのエアだった

セーラー服に身をまとい星の髪飾りをしながら佐渡を待ち構えて居たようだ

 

 

「大丈夫よ、留守番はソラとイーちゃんに任せてきたし!」

 

 

「そうじゃねぇよ!!何で俺の部屋に居るんだよ!

てか、突然ベットの布団が盛り上がってパンパカパーンとか辞めろ!

ホラーゲームよりたち悪いわ!!」

 

 

「似てなかった?ある重巡を真似たんだけど?」

 

 

「似てたけど!そうじゃねぇ!!」

 

 

「皆でホテル何てズールーい!!

私も混ぜろー!」

 

 

「なら艦娘の方に行け!!」

 

 

「だって警備厳しいし?ここは大したことないしねー!」

 

 

エアはそう言うと再びベットに倒れると佐渡の隣でゴロゴロし始めそれを見ながら佐渡は頭を抱える

 

 

「お前……どうするんだよ夜は」

 

 

「あら、決まってるじゃない?

このベット大きいから一緒に寝れるわよ?」

 

 

「……まさか一緒に寝ろと?」

 

 

「YES!!」

 

 

「全力で断るわ!」

 

 

「えー、何でよー

一緒に寝ましょうよー?

私は深海棲艦だから憲兵関係ないわよ?」

 

 

「嫌、手を出したらお前に殺されるやん?」

 

 

「あら?どうかしらねぇ?

あんたの事知っちゃったし~?」

 

 

エアはそう言うと引き出しからあらかじめしまっておいた資料を取り出すと佐渡へそれを渡す

 

 

「……お前、どっからコイツを?」

 

 

「大元帥のパソコンから

まさかあんな厳重にされてるとは思わなかったわ

それとごめんね

私が優先的にやれば良かったわそれ」

 

 

エアが持ってきた資料はある情報が記載された資料であり海軍の重要機密の一つである

それは古鷹のプロフィールと佐渡、叢雲のプロフィールが記載された物だった

 

 

「ねぇ、佐渡古鷹の罪だけどーーー」

 

 

エアが佐渡に問いただそうとした瞬間佐渡達の部屋がノックされると扉の向こう側から声が聞こえる

 

 

『夜分遅くにすまない

唐澤だ少し時間を頂けないだろうか?』

 

 

「っ!?何で唐澤大将!?

ちょ、エア隠れろ!」

 

 

「えー、めんどくさいー」

 

 

『佐渡大尉、居ないのか?』

 

 

「あ、ちょっと待ってくださいー!」

 

 

佐渡がエアに布団を掛けると「ちょっと!」とエアは言うが佐渡は扉を半分だけ開けて顔を出すと扉の前には唐澤が立っていた

 

 

「はい!!何でしょうか!?」

 

 

「む……何故全身を出さない…

何かやましいことでもしてたのか?」

 

 

「い、いやーあれですよ唐澤大将

さっきまでエロ動画見てたもんで……」

 

 

「まぁ、提督たるものこう言うところじゃないと出来ないものな仕方ない

だが済まないぶしつけだが部屋に入らせてもらうぞ

外には聞かれたくない内容だからな」

 

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

 

唐澤は佐渡の部屋の扉を思い切り開くと中にズカズカと入っていき佐渡も慌ててそれを追い掛け腰から銃をそっと取り出すと唐澤が歩みを止める

 

 

「ほほう?お前が隠していたのはこれか」

 

 

(しまったエア奴!

仕方ないここで唐澤大将を取り押さえるしか……)

 

 

佐渡は銃を唐澤の頭に押し付けようとすると唐澤は呆れた様子をしながらベットを見ている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前達、仲が良いのは分かるがそう言うのは一人で見ろ

猿橋」

 

 

「あはは、すいません唐澤さん

俺持ってきてなくて佐渡に頼んでたんですよ」

 

 

そこにはついさっきまでエアが転がっていたのにも関わらずそこに居たのは紛れもなく猿橋だった

両手にスマホを見ながらそこそこ音量を出しながらエロ動画を鑑賞していた

 

 

 

 

 




次回

佐渡と提督達

留守番をきちんと守れない自由奔放なエアは実は作者のお気に入りだったりします




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大演習会 前日 八

「あ…れ?」

 

 

佐渡はその光景に目をパチクリさせてると唐澤が佐渡へ振り返るとそそくさと銃をしまうと猿橋が人差し指を口元に当てておりエアが化けているとこに気付く

(あ、そっかエアには擬態があったか)

 

 

「それよりもすまないが猿橋

今から佐渡と大事な話をするんだ

少し廊下で待っててくれないか?」

 

 

「えー、今良いところ何ですけどー?」

 

 

「悪いな」

 

 

「ちぇ、仕方ないっすね……」

 

 

エアは立ち上がり佐渡達の隣を通り過ぎる時に佐渡へスマホを手渡すと耳元で囁く

 

 

「中々良い趣味してるじゃない?」

 

 

「うっるせ!!」

 

 

佐渡の反応を楽しむとエアはゆっくりとした足取りで部屋の外に出ていくと唐澤はそれを確認すると佐渡へ向きなおる

 

 

「長いのは嫌いでな

単刀直入に言うこの大会で我々舞鶴が優勝したらお前の所の艦娘を四人預かることにした」

 

 

「……成る程、貴方達ですか

ジジイが気分を変えたのは」

 

 

「どうやらその顔だと何かあったらしいな」

 

 

「えぇ、私達が負けたら古鷹を解体する羽目になりましたよ」

 

 

「ふん、あんな犯罪者をまだ庇うのか貴様は

とりあえずそれだけだ

私は帰るよ」

 

 

本当に唐澤は用件だけを言うと佐渡の部屋を去っていこうとするが最後に振り返り佐渡を見ると睨みつける

 

 

「私はお前達とお前の実力を認めているし、口出しするつもりはない

だが一つだけ聞かせろ

何故、あの犯罪者を庇う?

頭の良いお前なら今自分がやっていることの愚かさについて分かるだろ?

『英雄』よ」

 

 

「…………何でそれを知ってるんですか?」

 

 

誰も知らないはずの佐渡の過去を知っている唐澤に少し警戒はするが唐澤は腕組をしながら溜め息混じりに続ける

 

 

「お前がこの海軍に来た理由は大元帥から聞いている

『唯一生身で深海棲艦と渡り合った男』としてな」

 

 

「………そうですね、あえて言いますと

彼女が古鷹が助けを求めていたからですかね」

 

 

「……それだけか?」

 

 

「えぇ、それだけですかね

ただ助けを求めていたから俺は助けただけです」

 

 

「……お前は一人の艦娘の為に全てを捨てたのか?

この海軍での地位も名誉もこれから先の自分の行く末を」

 

 

「えぇ、捨てましたよ

『そんなもん』で古鷹が救えるなら俺は満足ですよ」

 

 

「………イカれてるなお前は

だからこそ、私はお前を提督として認めない

一時の感情に支配され全てを捨てた愚か者よ」

 

 

「どうぞ、ご自由にお呼びください

俺はそう言う提督ですから」

 

 

唐澤は吐き捨てるように台詞を話すと最後に呟くように小さな声で続ける

 

 

「……羨ましいよ

私にはそんな真似は出来ないからな」

 

 

佐渡はあえて聞こえないフリをすると唐澤は扉を開け廊下に出ていくと廊下には猿橋に化けたエアが立っており会釈をすると廊下を歩いていく

 

 

「……ふーん?あんた認められてはいるのね」

 

 

「まぁ実力だけな」

 

 

エアは廊下から部屋に入るなり擬態を解くと佐渡のベッドにダイブするように飛び込むとゆっくりと潜り込む

 

 

「ねぇ、今夜暇でしょ?

あんたの話聞かせてよ?」

 

 

「はぁ?俺の話?

一体何を聞きたいんだよ?」

 

 

「あんたのその全てを捨てる覚悟と叢雲とのお話

気になって仕方ないんだけど?

それに唐澤が言ってた英雄の意味もね」

 

 

「はぁ……大したことないぞ?」

 

 

「良い暇潰しにはなるからね!

教えなさいよ!」

 

 

「分かったよ、少し長くなるからな

飲み物でも買ってくるから待ってな」

 

 

「はーい、後アイスよろしく~!」

 

 

佐渡はそう言うと部屋を出ていき売店を目指して廊下を歩いていくと目の前から一人の提督が歩いてくる

 

 

「あっ」

 

 

その提督は佐渡を見ると萎縮し廊下の壁際に寄りながら歩いていき佐渡とすれ違うと震えながら佐渡を呼び止める

 

 

「佐渡提督!!」

 

 

「何ですか、藤谷『少将』?」

 

 

佐渡は振り返らずに少将と言う言葉だけを強く言うと藤谷はビクッと震えながら恐る恐る話をしようとする

 

 

「そ、その……

古鷹…は元気…ですか?」

 

 

何故か佐渡の方が階級は下の筈なのにかなり低い腰の藤谷の言葉に反応した佐渡は笑顔になりながら振り返る

 

 

「えぇ、元気ですよ少将!

我が艦隊と鎮守府の為に様々な事を手伝ってくれ

とても優秀な艦娘です」

 

 

「そ、そうですか……

あの古鷹の事なのですが…」

 

 

「何ですか?少将?」

 

 

佐渡がやけに階級を押しながら答えていくと笑顔なのだが少しひきつっていることに気付いた藤谷は怯えながら強気で答えようとする

 

 

「もし!我々が優勝したら彼女を返してくーーーー」

 

 

「駄目だそれだけはさせない」

 

 

藤谷の言葉を遮るように佐渡は言うと先程の笑顔とは真逆に怒りを露にし藤谷を睨み付ける

 

 

「アイツは俺の艦娘だ

お前達何かに渡すわけ無いだろ?

『彼女を捨てた分際』で何ほざいてやがる

殺されたいのか?」

 

 

佐渡の威圧に藤谷は萎縮してしまいその姿を見た佐渡はその場をゆっくりと後にしていると舌打ちをしている

 

 

「…本当に屑ばっかだな

クソッタレ…」

 

 

 

 

 

 

 

 




次回

大演習会当日

色々な思いが交錯する中
佐渡達は小笠原を守るために戦います

とここで今までモブだった提督達の簡単な説明を致します

唐澤
髪は真っ黒であり右頬に傷を持ち一重のかなり筋肉質の身体付きをしています
深海棲艦に友人を殺され憎んでおりその時長門と知り合い提督となった者です
今回の重要人物になります

猿橋
髪は茶髪であり二重の身体は平凡な成人男性の身体付きをしています
ある理由で提督になりいつも大和と居るそこそこ楽観的な提督です

葛城
髪は青く染めており二重のスレンダーな女性
数少ない女性提督であり実は男性に興味がない
今は北上を秘書艦にし良く一緒にいる艦娘に優しい提督です

石澤
髪は黒く一重の少し体つきが良い成人男性
小笠原と同じ島国の提督でありながら阿武隈達とのんびりと生活しています
実は阿武隈に行為を寄せているのですがまだ告白出来ていないへたれ提督です

羽田
ちょくちょく出ている艦娘保護法を作った元帥
容姿は茶髪で優しそうな顔と厳しい態度だが元ある鎮守府の提督を担っておりあることが原因で大本営で大元帥が居ないときの代わりを努めています
秘書艦大淀と共に過ごしているが自分の艦隊を一つだけもっている元提督です

藤谷
容姿は髪が真っ黒であり特徴の無い普通の成人男性
現在佐世保鎮守府の提督ではあるが実は佐渡とあることが原因で頭が上がらない
元古鷹の提督で青葉、加古、衣笠の提督です
今回と次章の重要人物の一人です


蛇足みたいになってしまい申し訳ありません


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大演習会

今回のお話はまだまだ続きます
小笠原の存亡を掛けた戦いです






「良し!お前達準備は良いか!?」

 

 

「任せておきなさい」

 

「頑張りましょう!」

 

「ふん、負けるわけないじゃない」

 

「やってやりマース!」

 

「修行の成果見せてあげるんだから!」

 

「倒して見せるさ!!」

 

 

「大丈夫そうだな

行ってこい!!」

 

 

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

 

大演習会当日、佐渡は出場する小笠原の面々を見送ると後ろからエアがこっそりと忍び寄り背筋をススッと撫でる

 

 

「ひぃっ!って何しやがるエア!?」

 

 

「うっさいわね、何緊張してるのよ

戦うのはあんたじゃなくてあの娘達でしょ?」

 

 

現在エアは佐渡に似た女性に化けており周囲の提督達には姉と言うことで通している

実際、佐渡には姉が居ないが従姉として回りには説明している

普通は一緒に観戦する事は許されないのだが従姉なら仕方無いと大元帥が珍しく許可してくれた

(まぁ、恐らくあのジジイの事だし何かあるような気がするけどな……)

 

 

「仕方無いだろ……

何か緊張しちゃうんだからさ……」

 

 

「信じなさいよ

あの娘達は強いんだから負けやしないわよ

ほらあんたも行くわよ」

 

 

エアは佐渡の首根っこを掴んで会場の中へ連れていくと途中で唐澤とすれ違いお互い見るがすぐに気にせず別方向へと歩いていくと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ!始まりました大演習会!!

皆さんどうもこんにちは今回の実況を任されている海軍情報部担当中佐の恵比寿(えびす)と言います!

よろしくおっねがいしまーす!!

そして解説は何と!現在元帥にして元提督の羽田元帥に来ていただいております!」

 

 

「どうも、皆さんこんにちは羽田と言います

このような場所は苦手ですがどうぞよろしく」

 

 

軽快な恵比寿と違い羽田は落ち着いた声で会場に挨拶を交わしていく

この大演習会が行われている会場は艦娘達の戦闘力を調べる為に行われる特殊な会場になっている

構造は東京ドームの様な内装をして居るのだが真ん中に水が張られその中には入ることが出来ないように透明な特殊強化ガラスで囲まれている

普通は観客等居ないのだが艦娘の大会が見れると大勢の人間が集まっている

 

 

「と言うか一般人に見せて良いのかよ……

艦娘は機密事項じゃなかったっけか?」

 

 

「どうせだから整理券をかなり高値で売り出して、海軍の予算にした方が効率が良いって理由で大元帥がやったらしいわよ

屋台とかもかなりの金額で場所貸しして相当儲けたみたいよ

ま、本当の理由は暇潰しになるし敗北する小笠原を見せ付ける為らしいわ」

 

 

「相変わらずの物知りだよなお前

どっからその情報持ってきたんだよ……」

 

 

「データベースから」

 

 

「お前に対して隠し事は出来ないのか海軍ぇ……

もう少し大事にしろよ情報…」

 

 

 

佐渡達提督は別室に控えておりテレビに移る映像をみている

そのせいでエアと佐渡しか周りには居らずそれぞれ提督達は部屋が別れている

本当なら直接行きたいところなのだが海軍の人間ましては提督が直接外に出るのは危険と言うことだ

 

 

「では!簡単なルール説明とさせて頂きます!

今大会は勝ち抜き方式で優勝のみを競い合ってもらいます

なので、敗者復活や二位決定戦等はございません

午前はAブロック、午後はBブロックが戦いその間に一時間の休憩時間があります

使われる弾は実弾ではありますが殺傷能力の低い特殊弾になります

お互いが動けなくなるまで戦うか白旗を上げるかで勝敗は決します

その審判は羽田元帥の秘書艦大淀さんにお願いします!!」

 

 

歓声が上がる中大淀が真ん中に姿を表し観客に向けてお辞儀をする

 

 

「この度、審判を任されました

大淀型一番艦 大淀です

本日はよろしくお願いします」

 

 

大淀がハニカミながら挨拶をすると観客達が更に歓声を上げていく中恵比寿が選手達の入場を促す

 

 

「では!!大演習会開始致します!!

選手入場してください!」

 

 

恵比寿が合図すると叢雲達が艤装を付け会場の水上を滑走する様に入場すると更に歓声が上がっていく

 

 

「うわぁ……広いね…」

 

 

「見世物になるのはあまりすきじゃないけどね」

 

 

「提督ー!!見てるデースかー!?」

 

 

叢雲達は各々会場に入っていくと叢雲は頭を掻きながらカメラに目を向けると親指を立てる

 

 

「あぁ、見えてるよ

頼んだぞ最強の駆逐艦」

 

 

叢雲達が整列すると向こう側の入り口から対戦相手が入場してきており叢雲は不敵に笑う

 

 

「さてと、司令官が見てるんだしやりますか」

 

 

一戦目小笠原VS宮崎ではあったが叢雲が活躍する前に金剛と大井が二人だけで相手側を圧倒し制空戦もグラーフの一人勝ちと言う快挙を成し遂げてしまう

 

 

「嘘でしょ…

たった二人に…」

 

 

「戦艦一人と軽巡なんかに…」

 

 

宮崎鎮守府のメンバーは艤装を全て破壊されているのにも関わらず大井と金剛はほとんど無傷だった

 

 

「こんなもんかしらね?」

 

 

「提督ー!目を離さないでくれましたカー?」

 

 

「……あれ?何か可笑しくね?

あの二人?」

 

 

佐渡はその光景に唖然としているがエアが不敵に笑う

 

 

「へぇ?ソラ何をしたのかしらね?」

 

 

こうして小笠原の圧勝し次の戦いへ進むのだが次の相手になる試合もある艦娘が圧倒的に強く他の艦娘が動けないほどだった

 

 

「ひぇぇ……北上さん凄いですね…」

 

 

「珍しくやる気出してるわね?」

 

 

「別にー、まだ全開じゃないよー?」

 

 

「さっすが!ハイパー北上様!!」

 

 

葛城が跳ねながら喜んでいると会場では北上があくびをしながら入り口戻っていく

 

 

「さーてと、次は小笠原かー

大井っちには悪いけど勝たせて貰うよー?」

 

 

 

 

 




次回

小笠原VS佐伯

次回、葛城達と激突します!
北上さんがかなり強くなっている模様です



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大演習会 VS北上編

「お次の対戦カードは!

どちらも圧倒的な実力で一回戦を突破した二つの鎮守府!

小笠原VS佐伯だぁ!!」

 

 

恵比寿が叫ぶと会場は歓声が響き渡り叢雲達と北上達がお互い入場口から出撃し整列する

 

 

「やっほー叢雲ー

おっひさー」

 

 

「えぇ、久しぶりね

北上さん

かなり腕を上げたようね?」

 

 

「あはは、そんなことないよー

でも負けるつもりはないからねー」

 

 

叢雲と北上は握手をするとお互い離れていくが北上がチラッと大井を見ると微笑み口パクで

(負けないからね)

と言っており大井も気合いを入れ直す

 

 

「では!対戦カードの編成を発表しちゃうぞぉ!!

まず小笠原鎮守府!

 

旗艦 駆逐艦 叢雲

重巡 古鷹

軽巡 大井

戦艦 金剛

潜水艦 伊168

正規空母 グラーフツェッペリン」

 

 

「次に佐伯鎮守府!

旗艦 軽巡 北上

戦艦 比叡

重巡 足柄

正規空母 蒼龍(そうりゅう)

駆逐艦 霞

駆逐艦 吹雪

 

の以上になります!」

 

 

恵比寿がテンションを上げながら説明すると両者ともに緊張しているが叢雲と北上は睨み合いながら艤装の確認をしている

 

 

「負けないよ、雷撃姫」

 

 

「悪いわね潰させて貰うわよ」

 

 

二人が挨拶を終えると大淀が挨拶の砲撃をしようと準備していると全員身構える

 

 

「対戦………開始!!!」

 

 

大淀が空砲を撃つと同時にイムヤは潜水し蒼龍とグラーフが艦載機を発艦させる

 

 

「攻撃隊出撃!!」

 

 

「やっちゃって!!」

 

 

蒼龍とグラーフの航空戦が始まる最中初戦と同じように金剛と大井が北上の艦隊に二人だけで突っ込んでいく

 

 

「行くデースよ!大井!!」

 

 

「分かってるわよ!!」

 

 

「さってとこっちも行こっかー?」

 

 

「「「「了解!」」」」

 

 

突っ込んでくる金剛と大井を避けるように足柄、吹雪、霞が離れ北上と比叡が二人に対峙する

 

 

「んじゃ、大井っち行くよー?」

 

 

「お姉さま!行きますよ!!」

 

 

突っ込んでくる二人を対峙している中離れた足柄達は叢雲と古鷹に向かっていく

 

 

「いっくわよー!二人共!」

 

 

「はい!」

 

 

「やってやるわよ!」

 

 

叢雲と古鷹に突っ込んでくる三人を見ているの古鷹が前に出る

 

 

「叢雲は下がってて一人でやるよ」

 

 

「大丈夫、古鷹?」

 

 

「へーきだよ!それに大将は最後でしょ?」

 

 

古鷹はハニカミながら言うと主砲を展開すると深く溜め息をつくと目を閉じる

 

 

「一人!?舐められた物ね!!」

 

 

霞が古鷹一人が相手をしようとするのが気に食わないのか足柄より先に突っ込んで来ており左手に付けた単装砲を構えている

 

 

「ちょっと霞!気を付けなさい!

相手はあの叢雲の相棒よ!」

 

 

「目を閉じてるし一人よ!!

大したことないわ!!」

 

 

霞が主砲を砲撃するとその砲撃は放物線を描くように古鷹に吸い込まれていくが古鷹は動かず一人言を呟くように静かにしている

「相手の行動を読め、言葉を理解しろ、そして私ならどう動くかを予測せよ……」

呟くと古鷹は静かに目を開けると目の前に霞の砲撃が迫って居るが焦らずに落ち着いている

 

 

「敵は三人、一人は固いけど二人は行ける……」

 

 

すると古鷹は少し横にずれると霞の砲撃を避け肩に回っている主砲をゆっくりと足柄に向ける

 

 

「避けられた!?

くそっ!それなら……」

 

 

「っ!霞!気を付けなさい!」

 

 

足柄が叫ぶと古鷹は再び深く息を吐くと目の前の三人を睨み付ける

 

 

「………これぐらい出来ないとね

行くよ!!!」

 

 

瞬間古鷹は一気に加速すると迫ってくる三人に距離を詰める主砲を足柄に集中させる

 

 

「嘘!近接戦!?

霞、吹雪気を付けーー」

 

 

と足柄が注意をしようとするがその瞬間古鷹は足柄に向け主砲を二つ同時に砲撃するとその反動で足柄は後ろに倒れると霞と吹雪が古鷹を睨み付ける

 

 

「…まず一人

次」

 

 

「こんのぉ!!」

 

 

「良くも足柄さんを!!」

 

 

二人は近付いてきた古鷹に主砲を向けるが古鷹は落ち着きながら水面を蹴ると水が二人をかかり二人とも咄嗟にそれを避けようとするが古鷹はその瞬間を逃さず吹雪に主砲を押し当て0距離で砲撃を当てる

 

 

「グフッ!!」

 

 

当てられた吹雪は飛ばされていくがそれと同時に足に付けた魚雷を撃ち更に追撃すると吹雪は避けられずに全弾命中し艤装と身体がボロボロになってしまい立ち上がろうとするも艤装が爆発を起こし動けなくなる

 

 

「吹雪!戦闘不能!」

 

 

大淀の合図と共に歓声が上がる中残された霞は古鷹を睨み付けるがそんなことを気にしていない古鷹は呟く

 

 

「残り一人」

 

 

「こんのぉ!!」

 

 

霞はここでやけになってしまい何も考えずに近くに居る古鷹目掛け砲撃をするが全て避けられてしまいそのまま古鷹はゆっくりと主砲を霞へと向ける

 

 

「ごめんなさい、倒させて貰いますね」

 

 

「随分と余裕ね!」

 

 

古鷹の言葉に更に怒りを隠せずに霞は魚雷を放とうとするがその瞬間に古鷹は左右に動きだし霞を翻弄すると足下に主砲を当て水柱で自らを隠す

 

 

「またか!………ってあれ?」

 

 

水柱が晴れた後そこに古鷹の姿はなく思わず周りを見渡すが頭に冷たいものを押し付けられると背筋を凍らせる

 

 

「チェックメイトです霞さん」

 

 

「……あはは

私のミスね……

後で皆に謝らないと…

降参です」

 

 

「霞!戦闘続行不能!」

 

 

その瞬間歓声が上がり古鷹は溜め息を付くとゆっくりと足柄が立ち上がる

 

 

「まだ……終わって…無いわよ!!」

 

 

「いえ、終わりですよ

ね、イムヤさん」

 

 

足柄が主砲を古鷹に向けた瞬間下から来た雷撃に巻き込まれ足柄の艤装が爆発を起こす

 

 

「なっ……一体どこから!?」

 

 

驚きながら水中を覗くとそこにはイムヤが魚雷を構えており確実に足柄を狙っていた

 

 

「しまっ…た…潜水艦…」

 

 

 

その事を忘れていた足柄はそのまま倒れ気絶してしまうと大淀が再び判定する

 

 

「足柄、戦闘不能!!」

 

 

大淀の判定後会場が沸き立っていると古鷹は叢雲に近付くとハイタッチを交わす

 

 

「流石ね古鷹」

 

 

「叢雲程じゃないけどね」

 

 

「さてと、グラーフはどうかしら?」

 

 

叢雲がグラーフと蒼龍を見ると蒼龍の飛行甲板が全て破壊されておりこちらに親指を立てているのを確認する

 

 

「蒼龍!戦闘続行不能!」

 

 

「うぅ……ごめんなさい皆……」

 

 

「我々も負けてられないからな」

 

 

グラーフはその言葉と共に叢雲の元へ向かっていくと二人とハイタッチをする

 

 

「流石ねグラーフ」

 

 

「すごいです!グラーフさん!」

 

 

「まだまださ、後でエアに何か言われそうだがな」

 

 

「さてと、後はあの二人ね……」

 

 

叢雲達が金剛と大井を見るとかなり苦戦を強いられている様子だ

 

 

 

 

 




次回

二人の連携

次回、佐伯最強の北上と激戦を繰り広げます




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大演習会 VS北上編 二

「大井!大丈夫ですか!?」

 

 

「平気よ!どうやら向こうは終わった見たいだしね!!

こっちも片付けるわよ!!」

 

 

大井と金剛はペアになり北上と比叡と対峙しているが北上は特に何も行動していないが単装砲で的確に二人の連携を崩そうとしてくる

その隙を狙い比叡がどちらかを潰そうと主砲を構えている

 

 

「あーもう!北上のあれ鬱陶しいネ!!

あれから倒すヨー!大井!!」

 

 

「駄目よ!先に火力の比叡を倒さないとこの後負けたとしたら四人に負担が掛かる!!」

 

 

「ひ、ひえ~!!

北上さーん!凄い勢いで二人が狙ってくるですけど!?」

 

 

「頑張れひえー」

 

 

『北上ちゃん、そろそろ動いて

他の四人やられちゃったみたいなの』

 

 

 

北上はインカムから葛城の指示を聞くとゆっくりと魚雷を構えると静かに金剛へ向けて放つと比叡に近付いていく

 

 

「提督からの指示~

そろそろ動いてやっちゃえって」

 

 

「え?他の四人は?」

 

 

北上が指を指すと二人がボロボロになっており蒼龍は飛行甲板が壊れ霞は白旗上げている

 

 

「ひぇぇぇぇ!何でぇ!?」

 

 

「ま、とりあえずいつものに戻るよ~

ほらよろしくね~」

 

 

「了解です!お願いします北上さん!」

 

 

比叡が下がると北上が首を鳴らしながら二人に立ち塞がる

 

 

「さってと、私も二人を取って雷撃姫達に行かないとね~」

 

 

「へぇ?一人で相手デースか?」

 

 

「北上さん、流石に無謀じゃないですか?」

 

 

二人の前に立ち塞がると北上は微笑みながらのんびりと金剛へ指さす

 

 

「大丈夫ーまず一人だから」

 

 

「「え?」」

 

 

二人が唖然としているとその瞬間金剛へ向けられて放たれた雷撃が命中し水柱を上げる

 

 

「Shit!いつのまに!」

 

 

「金剛!」

 

 

「あはは、連続していっくよ!!」

 

 

北上は走り出すと同時に左腕に付けた艤装から魚雷を発射させると同時に右手に持った単装砲で大井に迫っていく

 

 

「くっ!こっちだって!!」

 

 

大井が反撃しようと前に出ようとすると目の前に水柱が上がり一瞬反応が遅れてしまい北上はその瞬間を逃さずに単装砲で大井を砲撃し大井はそれをもろに受けてしまう

 

 

「大井!今いーー」

 

 

と金剛が反応した瞬間を先程北上が放った雷撃が命中し再びその場から動けなくなる

 

 

「くぅ!こんのぉ!!」

 

 

無理矢理にでも動き主砲を北上に向けようとすると次は背中に鈍い痛みと熱を感じ振り返るとそこには比叡が主砲を金剛へ向けていた

 

 

「ごめんなさい、お姉さま……

でも負けるわけには行かないんです!!」

 

 

「比叡……やるデースね!」

 

 

比叡の砲撃と足下から来る雷撃が痛むがあえて強気な態度を取りながらも比叡を相手しようとしていると大井は北上相手に押されていた

 

 

「くっ!北上さんやっぱり強いですね!!」

 

 

「もう、守られるのは嫌だからね!

大井っちもやっぱり強いね!!」

 

 

すると大井は比叡に向けて雷撃を放とうとするが北上がそれを逃がさずに直ぐ様単装砲でそれを防ぐ

 

 

「くっ!」

 

 

「駄目だよ、大井っち

そんなことさせないよー!」

 

 

大井が押されている中金剛も大井を見ており主砲をゆっくりと北上に向けるが北上との距離が近すぎて砲撃するのを躊躇いその隙に比叡が距離を詰めてくる

 

 

「相手になります!お姉さま!!」

 

 

「Shit !めんどくさいネー!」

 

 

二人はそんな戦闘の中ソラから受けた演習内容と教えを思い出していく

 

 

 

 

 

 




次回

恐れるな

次回、ソラ達深海棲艦達との連携と特訓についてのお話になります




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仲間を信じて

「あー!勝てないネー!」

 

 

「はぁ、はぁ、強いですねやはり……」

 

 

大井と金剛は二人だけでソラ率いる四人の深海棲艦を相手しておりソラ達は無傷なのだが大井と金剛は模擬弾ですっかり真っ黒になっており金剛は海上に寝転がっている

 

 

「そうでも無いですよ?

お二人ともかなり強いとは私は思いますよ」

 

 

ソラは他の深海棲艦達に指示を出すと各々休みながら自分達の艤装をチェックし始めておりその間にソラは二人に近づいていく

 

 

「四対二では分が悪いのよ…

あいつはなに考えてるのよ…」

 

 

大井が呟くと佐渡を睨んではいるが佐渡は古鷹と叢雲の戦闘を凝視しており気付いていない

 

 

「でも、あの二人様は私達に完勝されましたよ?

正直とんでもないですねあの二人様」

 

 

「あれは別格ネ……

どう考えても可笑しいヨ…」

 

 

ソラと金剛が叢雲と古鷹を見ると叢雲は近接戦古鷹は少し距離を取りながら砲撃しているが動きに一切無駄がない

 

 

「でも、あのお二人も貴方達と同じ艦娘なんですよ?

それにお二人もあの方達と近い実力はありますよ」

 

 

「「え?」」

 

 

ソラの言葉に驚いた二人はソラに向き直ると艤装をチェックしながらソラは二人を指差す

 

 

「大井様は近接戦闘

金剛様は砲撃支援

役割をハッキリとこなしていることは素晴らしいです

ですが貴女方には足りないものがあります

恐らくそれを佐渡様は見破っていたのでしょう」

 

 

「…実力?」

 

 

「…技術デース?」

 

 

「どちらとも違いますよ

答えはですね」

 

 

ソラは、艦隊に戻るとル級とリ級の手を取ると握手を交わす

 

 

『仲間を信じ恐れぬことです』

 

 

「仲間を信じる……」

 

 

「恐れぬ事デース……?」

 

 

大井と金剛はお互いを見ると眼をパチクリとさせる

ソラはその手を繋ごうと二人に近付いていく

 

 

「貴女方の連携は素晴らしいです

ですが貴女達は最後にどちらかを恐れてしまっています

仲間に当たるのではないか、被弾させてしまうのではないかと恐れています

それは貴方達が心の底から相手を信じてないからです

あの二人は違います」

 

 

ソラは二人の手を取り握手させると演習している叢雲と金剛へ眼を向けると二人はハニカミながらも全力で戦っている

 

 

「あの二人は固い絆で結ばれています

それに加え恐れがありません仲間が被弾するそんなこと考えないで真っ直ぐに信じ戦っていますそこが貴方達の違いです

お心当たりがあるのではないですか?

仲間を信じきれない事に、どこか恐れはありませんか?」

 

 

ソラは両手の人差し指を二人の胸に当たると二人には心当たりがあり身体を震わせる

 

 

「二人の話しは聞いております

他人の為に自分を犠牲にしてきた大井様

自らの不幸が原因で接触を控えている金剛様

今のままでは貴方方は佐渡様のお役に立てませんよ?

ここはいっそ二人とも振り切って見てはいかがですか?

小笠原の為に、仲間の為に、佐渡様の為に」

 

 

「仲間の役に…」

 

 

「小笠原の為に…」

 

 

「「提督の為に…」」

 

 

大井と金剛はお互いを見合せ佐渡を見ると叢雲と古鷹に同時に指示を出しておりその姿を見て二人は微笑む

 

 

「……そうね、あいつに私達の成果をみせてやりましょ!金剛!!」

 

 

「……そうデースね!提督の為にやってやりマース!!」

 

 

二人がやる気を取り戻すとソラは微笑みながら他の深海棲艦達に指示を出すと全員主砲等を構える

 

 

「では、そろそろ休憩を終わりにしますよ

特訓再開!」

 

 

ソラが指示を出すと再び深海棲艦は動き始めると金剛と大井はお互い頷きながら向かっていく

 

 

「付いてきなさいよ!金剛!」

 

 

「それはこっちのセリフデース!大井!!」

 

 

 

 

 





次回

友を撃て

エアの艦隊は苦楽を共にしており小笠原並みの連携をもったかなり強力な艦隊になっております
と言うよりはソラ自体がそもそも有能なのですがね……




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大演習会 VS北上編 三

教えを思い出した二人はお互い顔を見合せると頷きお互いの相手から離れ合流しようとする

 

 

「させないよ!」

 

 

北上がその合流を阻止しようとするが後ろから砲撃を撃たれているのを察し即座に避け振り返ると砲撃していたのは比叡だった

それを見た北上は溜め息をつく

 

「ちょっと比叡ー?」

 

 

「ご、ごめんなさい!お姉様を止めようとして……」

 

 

二人はその間に合流するとお互い息を上げながら軽く作戦会議をする

 

 

「金剛、私の事は気にしないで良いから比叡をお願い

北上さんは何とかするわ」

 

 

「オッケー大井

でも、援護できたらするデースよ?」

 

 

「そんなこと言ってさっき援護躊躇ったわよね?」

 

 

「ヴっ……sorry ネー……」

 

 

金剛が落ち込んでいると大井が背中を叩き気合いを入れる

 

 

「ほら!落ち込んでないでやるわよ!!」

 

 

「そうデースね!やるデース!」

 

 

「信じてるわよ、金剛!!」

 

 

「信じてマース!大井!」

 

 

二人はその言葉と共にお互い別々の相手に向かっていくのだが大井は一瞬振り返り雷撃を比叡に撃つとその音を確認した金剛も主砲だけを大井へと向ける

 

 

「比叡!相手デース!」

 

 

「望むところです!!」

 

 

と二人が対峙する瞬間金剛は急停止をするとぐるんと振り返り北上へ照準を合わせる

 

 

「北上さん!相手になりますよ!!」

 

 

「大井っち、負けないよ!!」

 

 

北上が大井へと集中していると比叡が叫び始める

 

 

「北上さん!避けて!!」

 

 

「え?」

 

 

比叡の叫びに驚き先程まで大井だけを見えていなかったのだがその真後ろに金剛が主砲を構え大井を撃とうとしているのを確認すると避けようとするが

 

 

「どこに行くんですか!」

 

 

大井がその前に単装砲で砲撃し動きを防ぐと後ろから金剛が主砲を砲撃する

 

 

「Fire !!」

 

 

金剛が放った砲撃は放物線を描き大井へと迫るが大井は振り返らずに少し横にずれるとそのまま北上へと着弾する

 

 

「くぅ……やるね!!」

 

 

放たれた砲撃を少し受けると右手の魚雷発射管に直撃し爆発を起こすが直ぐ様その装備を捨てると単装砲で大井へと応戦するが大井は既に距離を詰めておりそれに気づいた北上は単装砲を身体に押し当てる

 

 

「北上さんと私の装備はほぼ同じですからね!!

先にこちらを破壊させて貰いますよ!」

 

 

大井はその言葉と共に北上の足に付いている魚雷発射管に単装砲を押し当て砲撃すると爆発を起こし北上は体制を崩す

 

 

「やる…ね!

でも!」

 

 

その瞬間大井はとどめに雷撃を放とうとするが北上の単装砲が大井の足を狙い砲撃すると魚雷発射管が爆発を起こし体制を崩す

 

 

「くっ!」

 

 

「なら狙うのも当然だよね!!」

 

 

お互い体制を崩してはいるが無理矢理にでも雷撃を放ち同時に水柱が上がるが二人ともそれを何とか避け距離を取る

 

 

「はぁ、はぁ、流石ですね

北上さん」

 

 

「はぁ、まだこんなもんじゃないの

大井っち」

 

 

二人が接戦を繰り広げている中金剛と比叡は近接戦より距離を取りながら砲撃戦を繰り広げていた

 

 

「くっ、強いですね!お姉様!!」

 

 

「比叡!手加減は無用よ!!」

 

 

戦況は金剛の方が有利だった先程大井が放った雷撃が直撃しそのお陰で主砲が何本がやられてしまっており思うように身体が動かない

 

 

「まさか、さっきみたいな戦法を取ってくるとは思いませんでしたよ!」

 

 

「これは戦いよ?比叡

どんな手を使っても勝つんデース!

これが実戦だったらどうするんデースか!?」

 

 

金剛が比叡に話していると実戦だったらという言葉に反応した比叡は俯きながら考えていると金剛へ走り出す

 

 

「なら!!容赦しませんよ!!」

 

 

「そうくると思ってたヨー!」

 

 

比叡が走り出すと同時に金剛も距離を詰めるために走り出すと比叡の方が驚き少し怯む

 

 

「ひ、ひえー!?」

 

 

「小笠原式の戦いは近接戦闘がメインなんデースよ!」

 

 

金剛の気迫に押されながらも前へと進んでいくが怯んだのが遅れ金剛の方が早く比叡に近付く事が出来た

 

 

「比叡!苦しいけど我慢してネー!」

 

 

「えっ?」

 

 

比叡が驚いていると金剛は比叡の腕を掴むとそのまま自分の方へ引っ張るとそのまま首を掴み海上へ叩き付ける

 

 

「ガハッ、ゴホッゴホ!」

 

 

あまりの苦しさに喉を押さながら苦しんでいると金剛は転がっている比叡目掛けてほぼ0距離で主砲を構える

 

 

「えっ!お姉様!?」

 

 

「全砲門!Fire !!」

 

 

金剛が容赦なく比叡を砲撃するが間一髪でそれを避けるのだが次は金剛に足を掴まれると引きずると馬乗りになる

 

 

「逃がさないデースよ?比叡」

 

 

「お、お姉様!まさか…この状況で!?」

 

 

金剛はニヤリと頬を吊り上げると比叡目掛けて主砲を構えると人差し指を比叡に向ける

 

 

「チェックメイトね!比叡?」

 

 

「う、嘘でしょ!?」

 

 

その瞬間金剛の主砲が比叡を捉えるとそのまま0距離で主砲を砲撃すると二人とも艤装の爆発と爆煙に包まれる

しばらくすると煙が晴れ二人の様子が見えるのだが比叡は眼を回しながら艤装を破壊されており金剛もボロボロなのだがゆっくりと立ち上がり会場に向けてピースサインをする

 

 

「ひ、ひえ~……」

 

 

「勝利!ブイっ!!」

 

 

「比叡!戦闘不能!!」

 

 

 

「「「おおぉぉぉぉぉ!!!!」」」

 

 

金剛の勝利と同時に会場が沸き立つと大淀から判定が入ると同時に金剛はふらつくが大井の方へと向き直る

その歓声を聞いた二人は対峙しながらも微笑んでいた

 

 

「あちゃー比叡やられちゃったかー」

 

 

「金剛……無茶し過ぎよ…全く

私も少し無茶しようかな!!」

 

 

金剛に勇気を貰い大井は北上と再び対峙するとその向こう側で叢雲達が待っているのを見ると北上だけに集中する

(北上さんは私が倒す!!)

 

 

 

 





次回

北上の思い

次回北上がこの大会と言うよりは戦いに関する思いをぶつけます


ここ最近、カスガダマ?で瑞鶴堀をしていたらですね
何故か大鯨が出てきましてね?
君じゃないんだよぉ!!って叫びながら今もほりほりしてます
友人には羨ましがられバケツは減っていく……
装甲空母姫はええんや(嫌良くはないけど)でもフラグタ級二人は勘弁してよぉ!!




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大演習会 VS北上編 四

いよいよ決着です!
長くなってすみません……





「ねぇ!大井っち!!」

 

 

「何ですか!北上さん!?」

 

 

二人は近接戦闘をしながらギリギリでお互い単装砲の砲撃を避けて居るのだが突然北上が大井へと話しかけてくる

 

 

「正直さ!大会何かどうでも良いんだ!!」

 

 

「じゃあ!何で出てるんですか!?

北上さんこう言うの好きじゃないですよね!?」

 

 

「大井っちと会いたかったし!

見て欲しかったんだ!!

私が強くなった所を!!」

 

 

「それなら!別の所で見せてほしかったですよ!!」

 

 

それと同時に大井は北上の足下を撃つと北上は体制を崩しその隙に単装砲を腹部に押し当てようとするが北上がその単装砲に自分の単装砲をぶつけ何とか軌道を反らす

 

 

「簡単にはやらせないよ!!」

 

 

「流石北上さん!今じゃなかったらまた好きになってましたよ!!」

 

 

大井は脚の魚雷を放とうとするがそれを北上に先読みされ単装砲を大井へ押し当て腹部に直撃させる

 

 

「ぐぅ!!」

 

 

「どうしたの大井っち!そんなもんなの!?」

 

 

「まだまだぁ!!」

 

 

二人の戦いは長期戦になっていきその隙に小笠原と佐伯の者達は集まり気絶していた足柄と吹雪も起きていた

 

 

「頑張れー!北上さん!!」

 

 

「やっちゃえー!!」

 

 

蒼龍達が応援する中叢雲達もその光景を見ていると金剛がうずうずとしている

 

 

「落ち着きなさい金剛」

 

 

「で、でも大井が……」

 

 

「大丈夫ですよ、大井さんは強いですから」

 

 

二人の決闘は続いていたがしばらく戦っていると二人とも息が上がってきており単装砲の弾薬も切れ始めぶつけ合っていたため壊れかけている

 

 

「はぁ、はぁ……まだやるの?大井っち?

降参したらどうなのさ?」

 

 

「はぁ、はぁ……そっちこそ…

北上さんだけしか残ってないじゃないですか…

どう考えても勝てませんよ…?」

 

 

「まぁねー、でも大井っちには負けたくないんだー」

 

 

「それはこっちも同じですよ!」

 

 

二人は戦いながら微笑んでおりお互い笑い合う

 

 

「ねぇ……大井っち」

 

 

「何ですか?」

 

 

こっち(佐伯)に来ない?

勝負うんぬんじゃなくてさ

正直、大井っちが欲しいんだ……

二人で強くなりたいんだよ

私には大井っちしか居ないんだ

ね?今度は私がなんとかするからさ?」

 

 

「そう……ですね

正直北上さんとならどんな敵が来ても勝てる気がします」

 

 

「ならーーー」

 

 

「でも、ごめんなさい

私は貴女の鎮守府には行けません」

 

 

大井は息を整え単装砲を水中に捨てると脚に付けた魚雷を北上に向ける

 

 

「私はあの人に救われました

男嫌いで猫かぶりでワガママで暴力ばっかりのこんな私をあの人嫌悪なんてしないで普通に接してくれました

あの人の役に立ちたい、あの人に見てほしい、あの人が望むというのであれば何でもしてあげたいんです

だから、私は貴女を倒します

北上さん」

 

 

大井の覚悟を見た北上は溜め息を付きながら単装砲を水中に投げ捨てる

 

 

「あはは、また振られちゃったな……

なら容赦なしかな…

大井っち!!」

 

 

「行きますよ!

北上さん!!」

 

 

大井と北上はお互いに魚雷を構えると同時に射出し雷撃を放つ

 

 

「酸素魚雷!行っちゃって!!」

 

 

「九十三式酸素魚雷行っちゃってよ!!」

 

 

お互いに発射された雷撃を避けずにニヤリと笑いながら直撃し爆発と共に水柱を上げていくと会場が静かになりその結果を待っていると水柱が晴れ大井の艤装からは黒煙が上がり水面に膝を付いていた

 

 

「……ごめんなさい、北上さん」

 

 

大井が呟くともう一つの水柱が晴れると北上が全身の艤装から黒煙を上げており水面に座り込んでいる

 

 

「あははー……ごめんね提督、負けちゃったよー……」

 

 

「北上!戦闘続行不能!

勝者、小笠原鎮守府!!」

 

 

「おおぉ!!」

 

 

「すげぇ!!」

 

 

大淀の審判が下ると同時に静かになっていた会場が再び沸き立ち歓声が上がっていくと大井は倒れそうにふらつきながら立ち上がるとその身体を金剛が支える

 

 

「お疲れ様デース、大井」

 

 

「えぇ……お互い様にね」

 

 

大井と金剛はゆっくりと北上へ近付いていくと北上は唇を噛み締めており悔しそうにしている

 

 

 

 

 

 




次回

仲間

北上が負けた原因は金剛による一撃が大きな敗因となりましたあれがなければ恐らく大井の敗けでしたね……

瑞鶴出ねぇ!ちっくせう!!




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大演習会 VS北上編 決着

「悔しいな……まだ大井っちに追い付けないんだ…… あはは…」

 

 

北上は悔しそうに震えながら乾いた笑いをしていると大井はその北上の肩を叩くと手を取る

 

 

「そうですよ、まだ追い付かせませんからね

北上さんは私が守るんです

先程北上さんは私だけって言ってましたけど

今の北上さんには私以外にもあるんじゃないですか?」

 

「え?」

 

 

北上が立ち上がると後ろから吹雪と霞が突っ込み二人に挟まれながら抱き締められると苦しそうにしておりその後ろから足柄がこちらに向かってきている

 

 

「北上さーん!大丈夫ですか!?」

 

 

「ごめんなさい!私達が油断したからやられてしまって!!」

 

 

「おうふ、分かったから引っ付くなー

うざいうざいー」

 

 

北上はうざそうに二人を引き剥がそうとしていると落ち込みながら足柄が北上へ頭を下げる

 

 

「ごめんなさい……油断してしまったわ…

それよりも北上さん大丈夫?」

 

 

「ううん、仕方無いよ

相手がやっぱり悪かったねー

大丈夫だよー」

 

 

北上が全員を宥めているとその光景を見ながら大井は微笑みながら笑っている

 

 

「貴女には既に素晴らしい仲間が居るじゃないですか?

あの頃と違って自分だけじゃなくて他の艦娘をしんぱいしてくれる素晴らしい仲間が」

 

 

「……うん、そうだねあの頃とは違うね

今は二人だけじゃないんだね…」

 

 

北上は大井と再び手を取ると握手を交わす

 

 

「次は負けないからね大井っち」

 

 

「次も勝たせて貰いますよ、北上さん」

 

 

二人が握手を交わすと再び歓声が上がりお互い微笑むと大井は叢雲達へ戻っていく

 

 

「お疲れ様、流石ね大井」

 

 

「貴女ほどではないけどね…

ありがと」

 

 

「疲れたデース……」

 

 

「お疲れ様です、金剛さん」

 

 

大井と金剛が三人と合流すると水中からイムヤが顔を出すと周りを警戒する

 

 

「あれ?終わった?」

 

 

「あぁ、ナイスファイトだったぞイムヤ」

 

 

「そっちもねグラーフ!

水中からだけど蒼龍の飛行甲板破壊されたのは見えたからね」

 

 

グラーフとイムヤはハイタッチをすると古鷹がイムヤに近付きハイタッチを交わす

 

 

「援護お見事ですイムヤさん」

 

 

「あれぐらい余裕よ!水中のスナイパーだからね!!」

 

 

沸き上がる歓声の中へ全員は各々来た出入口に戻っていくとその光景を観客席である二人組が見ていた

 

 

「古鷹……あんなに強くなってたのか……」

 

 

「古鷹さん…凄い…

あの頃何かより遥かに強くなっている…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆お疲れ様!残念だったわね!」

 

 

佐伯の艦娘達が戻ったとき艤装置き場に堂々と葛城が入ってくると満面の笑みを浮かべていた

 

 

「ごめんなさい、提督……」

 

 

「……ごめん」

 

 

「ごめんなさい提督…最高の勝利をあげられなかったわ……」

 

 

吹雪、足柄、霞が反省しながら葛城に謝っていると葛城は吹雪と霞の頭を撫でながら優しく笑う

 

 

「仕方無いわ、相手が強すぎるのよ

本当、あそこの鎮守府可笑しいわよね……

ほら皆で甘いもの食べに行きましょ?」

 

 

三人は落ち込みながら艤装置き場を後にするとそれを目で追いながら葛城は溜め息をつく

 

 

「提督、ごめんなさい比叡が……」

 

 

「ひぇ~……」

 

 

比叡は未だに眼を回しており蒼龍に抱えられており蒼龍も困った顔をしていると比叡の頭を撫でながら微笑む

 

 

「全く困った娘ね……

仕方無いわ蒼龍、比叡を医務室へお願いね」

 

 

「ごめんなさい…ほら比叡行くよ?」

 

 

「ひぇ~……お姉様容赦無さすぎです~…」

 

 

蒼龍が溜め息を付きながら比叡を運んでいくと北上だけは一人艤装置き場に座りながらぼーっとしている

 

 

「北上さん?行くわよ?」

 

 

「え!?あ、ごめん提督ー

先いっててー

ちょっち疲れちゃってさー…あははー」

 

 

北上はへらへらしていると葛城が北上の前に立つと両手を広げるも北上は首をかしげる

 

 

「どしたの?提督?」

 

 

「今なら私しか居ないわよ?北上さん?」

 

 

「…………ごめん」

 

 

すると北上は葛城の胸に抱き付くと葛城も抱き付いてきた北上の頭をゆっくりと撫でる

 

 

「お疲れ様、北上さん」

 

 

「うん、ごめん提督勝てなかった

提督の為に私の為に大井っち勧誘したけど駄目だった」

 

 

「うん、知ってるよ

大丈夫貴女は嫌われてないわよ

彼女も何かあるのよ」

 

 

「悔しいよ、提督

勝ちたいよ…小笠原に大井っちに」

 

 

「そうね、次は絶対倒しましょう?」

 

 

「ごめんね……私のワガママ聞いてもらってそれを達成できない役立たずで」

 

 

「そんなことないわ

貴女はうちのエースなんだからもっと胸を張って?」

 

 

葛城が慰めていると北上は胸の中で声を押し殺しながら泣き始め葛城は眼を閉じながらゆっくりと頭を撫でる

 

 

「ごめんね……ごめんね…

私エースなのに……一番強いのに……

私のせいで……負けちゃった…」

 

 

「そんなことないわよ

大丈夫よ」

 

 

「でも、動かせなかった……雷撃姫を…

ごめんなさい…」

 

 

「そうね…動かなかったね……

次はアイツを動かして倒しましょ?」

 

 

艤装置き場に北上の泣き声が木霊すると葛城は強く北上を抱き締めていた

その廊下で足柄達も密かにその話を聞いていながら唇を噛み締めながら悔しがっていた

 

 

「次は勝ちましょ、皆

小笠原に」

 

 

足柄が小さな声で言うと全員こくんと力強く頷き打倒小笠原を密かに誓うのであった

 

 

 

 

 





次回

小笠原VS沖縄

次回阿武隈と瑞鶴が所属する沖縄と小笠原が激突します

何で瑞鶴と翔鶴出ないのよぉ!
空母レシピで資材溶かしたアホ提督がこちら





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大演習会 VS沖縄

今回は対沖縄戦になります





艤装置き場にて瑞鶴は深呼吸しながら鏡の前に立ちあるものを握りしめていた

 

 

「…………絶対『手掛かり』を見付けるチャンス何だから勝たないと」

 

 

瑞鶴は鏡に手を当てると今はなき加賀の姿と言葉を思い出す

 

『どんな相手にも油断せず

真っ向から行きなさい貴女は決して弱くない

五航戦だけど私達は誇り高き正規空母よ

覚えておきなさい瑞鶴』

 

 

「………うん、頑張るからね加賀先輩」

 

 

そう呟くと握り締めていた髪飾りを右に付けると頬を叩き気合いを入れる

 

 

「瑞鶴行くでー?何しとるんや?」

 

 

「行くよー!瑞鶴!!」

 

 

「ごめん!今行くー!」

 

 

「じゃあ、皆!頼むぞ!!

相手は強敵であり恩人だが容赦はするな!!」

 

 

「「「「はい!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

対して佐渡達小笠原の艤装置き場では全員の準備が終わりそろそろ全員出場しようと水上に立っていると部屋の扉が開き佐渡が入ってくる

 

 

「おっす、お前ら緊張してないかー?」

 

 

「提督ー!!」

 

 

「いや、ちょっと待て金剛!!

艤装付けたままはよせ!!」

 

 

「あれ?司令官どうしたの?」

 

 

金剛が艤装を付けたまま飛び込んでくるがその顔を擬態したエアが鷲掴みにしながらニコニコしている

 

 

「あんたそのまま突っ込んだら佐渡死ぬわよ?

コイツを殺すのは私よ」

 

 

「む、むぅ……我慢しマース…」

 

 

「え、エア……来ていたのか…」

 

 

「グラーフぅ?負けたら承知しないわよ?」

 

 

 

エアに言われると金剛はしぶしぶ引き下がりグラーフは何故かエアを怖がっている再び水上に戻ると佐渡は叢雲に近付いていく

 

 

「何?司令官」

 

 

「叢雲、行けるか?」

 

 

「あら?良いの?」

 

 

「あぁ、頼む」

 

 

「了解よ」

 

 

佐渡と叢雲はそれだけ言葉を交わすと佐渡は離れていくが古鷹以外は首を傾げている

 

 

「じゃあ!お前ら!頑張ってこい!!」

 

 

「「「「「「はい!!」」」」」」

 

 

元気よく挨拶をすると全員会場へと航行していく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ!皆さんはじまりますよ!この大会Aブロック最後の戦い決勝戦です!

Aブロックにいる8つの鎮守府を打ち破り今その頂点が決まります!!

羽田元帥今までの戦いは以下がでしたか!?」

 

 

「どの鎮守府も連携と良い練度に仕上がってきており素晴らしいと思います」

 

 

「おぉ!羽田元帥から賞賛のお言葉を頂けました!

今大会はテレビ中継も来ておりますからね世界各国でこれをご覧になっている皆さん!彼女達を応援してあげてくださいね!!」

 

 

恵比寿がテンションを上げながら話していると大淀が羽田へアイコンタクトを送ると羽田が恵比寿へ促す

 

 

「恵比寿さん、そろそろ」

 

 

「おぉっと申し訳ありません!ではAブロック決勝戦を開始致します!

では対戦カードの発表です!!」

 

 

恵比寿は羽田に言われると自分の机にあるパソコンを弄り始めると会場の巨大モニターに対戦する二つの鎮守府を映し出す

 

 

「まず!怒濤の進撃!こんな鎮守府海軍にあったのか!?と海軍上層部も噂で持ちきりの辺境地にある鎮守府!

小笠原鎮守府!対戦する艦娘達はこちら!!

 

旗艦 駆逐艦 叢雲

重巡 古鷹

軽巡 大井

戦艦 金剛

潜水艦 伊168

正規空母 グラーフツェッペリン

 

になります!!」

 

 

恵比寿が説明すると入場口から叢雲達が航行しながら会場に入ってくると会場から歓声が上がる

 

 

「何か、会場の人増えてない?」

 

 

「まぁ、決勝戦だしね」

 

 

「でも楽しくなりそうデース!」

 

 

「対するは小笠原と同じ本島には無いが先日戦艦棲姫に襲われ何とか迎撃に成功した鎮守府!

沖縄鎮守府!

対戦する艦娘はこちら!!

 

旗艦 軽巡 阿武隈

戦艦 霧島

重巡 妙高

駆逐艦 潮

軽空母 龍驤

正規空母 瑞鶴

 

になります!!」

 

 

恵比寿の説明後入場口から阿武隈達が入場してくると再び会場から歓声が上がり潮がびくついているが阿武隈が宥めている

 

 

「やっぱり、こうなっちゃうかー

知ってたけどさ?」

 

 

整列した両者はお互いを見合わせていると瑞鶴が艤装を持ちながら叢雲を睨む

 

 

「負けないからね、叢雲」

 

 

「こっちもよ瑞鶴」

 

 

「勝つのは私達ですよ!古鷹さん!」

 

 

「負けませんからね、阿武隈さん」

 

 

お互い軽く挨拶を済ませると握手を交わしそれぞれ配置につく

 

 

「そう言えば情報によりますとお互いの鎮守府には有名な方が居ると聞いておりますが?」

 

 

「えぇ、沖縄には武勲をあげている軽巡阿武隈と元最強と呼ばれた正規空母加賀の弟子にあたる瑞鶴がおり

対する小笠原にも雷撃姫と呼ばれる強力な駆逐艦の叢雲が居ます

どちらが勝つかは分かりませんね……」

 

 

「しかも、その雷撃姫 叢雲さんは未だに動いておりませんからね

成る程……これは熱い戦いになりそうですね!

では大淀さん開始の合図を!!」

 

 

恵比寿から指示を受けた大淀は頷くと片手を上げる

それと同時に小笠原と沖縄のメンバーは艤装を構える

 

 

「対戦……開始!!」

 

 

 




次回

激戦!対沖縄艦隊

戦いの火蓋が下ろされ二つの鎮守府がぶつかります
さてどちらに軍配は上がるのでしょうか?

未だにカスガダマやってますが資材消費やっばいですなぁ……



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大演習会 VS沖縄 二

対戦の合図と共にイムヤは潜水し、瑞鶴、龍驤は艦載機を発艦しそれと同時にグラーフも発艦させ航空戦を始める金剛と大井は霧島達に突っ込んでいく

 

 

「行くデースよ!霧島!!」

 

 

「相手になりますよ!お姉さま!!」

 

 

「悪いですが、勝たせてもらいますよ大井さん!!」

 

 

「こちらの台詞です!!負けませんよ!!」

 

 

二人は同時に対峙する中阿武隈と潮はペアを組みながら叢雲達に向かっていき打ち合わせをしている

 

 

「潮ちゃん!行くよ!!」

 

 

「はい!阿武隈さん!」

 

 

「じゃあ行ってくるね叢雲」

 

 

叢雲にそう言うと古鷹が前に出ており艤装を構えると阿武隈がニヤリと笑いながら瑞鶴と龍驤を見ると瑞鶴と龍驤は頷く

(まだ叢雲は動かないはず

それなら古鷹さんを今のうちに足止めして瑞鶴か龍驤が航空戦を勝って制空権が取れるから……いける!!)

阿武隈達の作戦はとりあえず叢雲はこの決勝戦では動かないはずの叢雲を残った者達で集中砲火する予定でありその為に制空権を取りやすい錬度の高い二人と火力が高い霧島技量の潮と妙高を連れてきており何とかしてでも勝つつもりらしい

 

 

「悪いな、小笠原

恩人でもな瑞鶴の夢の為だ負けてもらうぞ!!」

 

 

この作戦を考え付いた石澤は複雑な顔をしているがそれを読んだかのように佐渡はその光景を見ていた

 

 

「はは、やっぱりか

なら『読みは当たりかな?』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いけど!勝たせて貰うよ!!

叢雲、古鷹さん!!」

 

 

「あら?そんな簡単に勝てるとは思わないでよね?」

 

 

その言葉と共に全員の目が叢雲に集中し会場も困惑と驚愕の声を上げ恵比寿は興奮ぎみにマイクを取りながら声を上げると羽田も汗をかく

 

 

「ま、ま、まさか!今まで動かなかったあの駆逐艦が!!」

 

 

「……ここで、動かすか彼女を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……叢…雲?」

 

 

「わーお、ここで叢雲を動かすんデースか

提督ー」

 

 

「嘘でしょ…動かないんじゃないの!?」

 

 

「これは…計算外ですね…」

 

 

沖縄の面々が驚く中叢雲が艤装を動かしながら古鷹の隣に移動すると古鷹の肩を叩く

 

 

「行くわよ、古鷹」

 

 

「了解、援護は任せて」

 

 

叢雲が軽い準備運動を終えると古鷹は下がり艤装を構え叢雲は阿武隈を嘲笑う

 

 

「動かないと思った?残念ね

悪いけど容赦なく潰せとの指示でね

勝たせてもらうわよ」

 

 

「…流石に驚いたわ…

でも!負けないんだから!!

行くよ!潮ちゃん!!」

 

 

「は、はい!!」

 

 

阿武隈がその言葉と共に再び走りだし次は叢雲へと向かっていくと潮もその反対側から叢雲を倒そうとしてくるが

 

 

「まずそっちからかしら?」

 

 

叢雲は阿武隈ではなく潮へ向かっていくと艤装の魚雷をちらつかせながら腰の主砲を潮へと向ける

 

 

「不味い!潮ちゃーー」

 

 

阿武隈がカバーしようとするがその進行方向へ曲がった瞬間目の前に雷撃が通過し爆発を起こされ水柱と共に動けなくなる

水柱が消えると雷撃の方向を睨むとそこには古鷹が足の魚雷を装填していた

 

 

「叢雲の邪魔はさせないよ!!」

 

 

「くっ!古鷹さん!」

 

 

 

 

 

 




次回

潮VS叢雲

初の駆逐艦対決!
勝者はどっちか!?




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大演習会 VS沖縄 三

「悪いわね!早めに潰させてもらうわよ!!」

 

 

「え、えぇ!?」

 

 

叢雲は走りながら、主砲を構え砲撃すると潮は何とかギリギリで避けるとそのまま叢雲から逃げるように水上を走っていく

 

 

「こ、来ないでください!!」

 

 

潮は逃げてはいるが連装砲を叢雲目掛けて砲撃するが叢雲には当然当たらずどんどん距離を詰められる

 

 

「逃がさないわよ!」

 

 

「ひぃ!」

 

 

鬼の形相で向かってくる叢雲に怯えながら魚雷を準備すると叢雲目掛けて雷撃を放つと叢雲もそれに合わせて雷撃を放ち二人の間に水柱が上がる

だが水柱が消えるよりも先に叢雲が水柱の中から突っ込んでくる

 

 

「捉えた!!」 

 

 

「ひぃ!!」

 

 

叢雲は腰の主砲が当たる距離まで詰めると潮目掛けて砲撃を撃ち全弾命中させる

 

 

「ぐぅ!」

 

 

「まだまだ行くわよ!!」

 

 

「潮ちゃん!!」

 

 

阿武隈が古鷹に背を向け潮の援護に向かおうとするが古鷹がその行き先目掛けて砲撃を撃ち動きを止めさせる

 

 

「敵に背後を見せるのは愚の骨頂…ですよ?」

 

 

「く、あの時は頼りになる人でも敵だとキツいですね!!」

 

 

阿武隈は潮を気遣いながらも古鷹目掛けて突っ込んでいく

一方潮は叢雲の連激に圧倒され逃げるだけしか出来ず砲撃を撃っても雷撃を放ってもことごとく撃ち落とされてしまっている

(阿武隈さんの言うとおりやっぱりこの人強い

私なんかが相手出来るわけがないよ……)

 

 

「どうしたのかしら!

逃げることしか出来ないの!?」

 

 

叢雲は逃げ腰の潮を構わず砲撃しているが少し苛立ちが募っていくが集中し距離を詰め近接戦に持ち込もうとする

 

 

(やっぱり、私なんかより曙ちゃんや満潮ちゃん達の方が絶対よかったんだよ……

私なんて…)

潮は半分叢雲に勝つのを諦め連装砲を離しかけると同時に会場から大声で声援が送られる

 

 

「潮ーーー!頑張れー!!」

 

 

「がんばれー!潮ー!!」

 

 

「潮!相手が恩人だからって強いからって諦めるんじゃないわよ!!」

 

 

その言葉に叢雲も止まり会場がその三人に集中する

 

 

「満潮ちゃん…朧ちゃん…曙ちゃん…」

 

 

その三人は石澤が連れてきた沖縄のメンバーでそこには石澤も立っている

 

 

「潮ー!頑張れー!!

叢雲なんか倒してしまえ!!」

 

 

石澤の応援でメンバーに選ばれた時の事を思い出す

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇ!私が、だ、大演習会に!?」

 

 

「そうだ、お前に頼む」

 

 

「そ、そんな…私なんかより曙ちゃんや満潮ちゃん、それに他の方の方が……」

 

 

「潮」

 

 

「ひゃ!ひゃい!!」

 

 

石澤はその言葉と共に潮の両肩に手を当てると真っ直ぐに潮を見つめる

 

 

「今回、必ず叢雲が出てくる

あれを倒せるのは阿武隈、霧島そしてお前だけなんだ

このメンバーじゃないと恐らく全く勝機はない

だから頼むお前は、お前が思ってるほど弱くない

俺が保証する」

 

 

「え、えっと……分かりました…

頑張ります……」

 

 

「それでこそだ!頼むぞ!!」

 

 

 

 

 

 

(そうだよね提督が信じてくれているんだよね…

曙ちゃん達も応援してくれているんだ…それなら!!)

 

 

離しかけていた連装砲を力強く握りしめると突っ込んでくる叢雲に再び標準を定める

 

 

「逃げてばっかりじゃ駄目!

戦うんだ!!」

 

 

 

 

 

 

 





次回

小心者の決意と雷撃姫

次回潮が選ばれた真の理由が明かされ叢雲がそれに答えるように力を発揮します


そろそろ明石が欲しいのですが2ー5の攻略をどうやるか分からなくて諦めている提督がこちら



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大演習会 VS沖縄戦 四

先程の潮と少し雰囲気が変わったことに気付いた叢雲は少し警戒はするが潮に突っ込み主砲を構えるのだか先程より潮はかなり落ち着いており

(……妙ね、突然変わった?)

少し違和感を覚えながら主砲を向ける

 

 

「瑞鶴さんの為にも…皆の為にも…負けない!!」

 

 

「っ!!」

 

 

突然逃げてばかりだった潮は叢雲目掛けて突っ込んできており連装砲を向け砲撃してくる

何とかそれを避けると次は脚の魚雷発射管を叢雲に向ける

 

 

「えーい!!」

 

 

「やば」

 

 

叢雲は先程の潮の攻撃で体制を崩しておりふらついているため雷撃を避ける術が無い

だがその顔は微笑んでおり潮を睨む

 

 

「へぇ?さっきとは別人ね」

 

 

「当たれぇぇぇ!!」

 

 

潮が雷撃を放つと叢雲は持っている艤装を水上に突き刺し体制を立て直すと宙を舞い主砲を潮へと向ける

 

 

「でも、悪いわね

貴女に負けているわけには行かないのよ!!」

 

 

「それはこちらも同じです!!」

 

 

対する潮も宙に舞っている叢雲目掛けて連装砲を構えお互い同時に砲撃をすると弾同士がぶつかり爆煙が上がり二人を包む

(阿武隈さんに言われた雷撃姫、叢雲さんの得意とするのは近接砲撃戦闘それに加えその自らの身体を生かした連続攻撃

なら恐らくこの爆煙が晴れた瞬間にーーー)

と潮が考察していると腹部に鈍い痛み熱が走る

 

 

「ぐぅ!!」

 

 

「悪いわね、煙に巻かれていようとも貴女の居場所は分かるのよ」

 

 

叢雲は爆煙の中で正確に潮の居場所を捉え腹部へ0距離の砲撃を放ち爆発と共に水上を転がり爆煙の外へと放り出される

 

 

「まだ……まだ!」

 

 

腹部の痛みを堪えながら連装砲を構えると叢雲が爆煙の中から走り抜けてきており主砲で潮を捉えている

(これを外したらやられる!!)

 

 

「当たってぇぇ!!」

 

 

潮は叫びながら連装砲を叢雲の右主砲に当てるように撃つが叢雲はその射線に気付き右主砲から砲撃し潮の砲撃を相殺し爆煙に包まれる

 

 

「良し!当たっーー」

 

 

そこで潮は油断し連装砲を離しその瞬間叢雲が爆煙から左主砲を突きだし潮を捉えるとニヤリと笑う

 

 

「油断したわね、貴女の負けよ」

 

 

「しまっーー」

 

 

気付き応戦しようとするが連装砲を離しておりそのまま叢雲の主砲が直撃したのだが当たったのは胸に下げていた連装砲であり潮には当たっていなかった

 

 

「良かったこれなら……」

 

 

潮は慌てて連装砲を構えるのだがその目の前には既に叢雲が腰の主砲で潮を捉えていた

 

 

「ぁ」

 

 

「少しは楽しめたわよ」

 

 

それと同時に両方の主砲から砲撃されると潮は吹き飛ばされ水上を何回かバウンドしそれと同時に潮の艤装が爆発を起こし意識が途絶えてしまう

 

 

「潮!戦闘不能!!」

 

 

「潮ちゃん!?」

 

 

倒された潮を心配し阿武隈が駆け寄ろうとするがその背後で古鷹が二つの主砲を阿武隈へ向ける

 

 

「阿武隈さん、油断は駄目ですよ?」

 

 

「しまっ!!」

 

 

阿武隈は油断しており古鷹の砲撃を避けきれずに直撃してしまうがまだ艤装は動かせており古鷹へ向き直るのだが

 

 

「馬鹿ね、相手は一人じゃないわよ?」

 

 

その声と同時に背中に激痛が走り頭だけ後ろへ向けるとそこには叢雲が近くまで接近しており主砲が煙を上げている

 

 

「いつの…間に…」

 

 

「悪いわね、貴女を早めに倒さないと私達に勝機がないからね」

 

 

その言葉と同時に叢雲は阿武隈を足払いし体制を崩すと後ろへ飛ぶと右手に魚雷発射管から雷撃を放ち阿武隈へ直撃させると阿武隈は水柱に包まれそれと同時に艤装が爆発を起こす

(ごめん……瑞鶴…提督…)

それと同時に倒れ気絶してしまう

 

 

「阿武隈!戦闘不能!!」

 

 

「ナイス、叢雲」

 

 

「そっちこそ、相変わらずね

さてと向こうもーーー」

 

 

と叢雲が他の三人に目を向けようとした瞬間大淀から判定が入る

 

 

「大井!金剛!妙高!戦闘不能!

龍驤!グラーフツェッペリン!行動不能!!」

 

 

「え!?」

 

 

古鷹が驚き他の三人を見ると大井と金剛の艤装が破壊されておりグラーフは飛行甲板を破壊され動けなくなっていた

 

 

「ごめん…二人とも…」

 

 

「ごめんなさーい!叢雲ー!」

 

 

「くっ……すまない…」

 

 

三人を戦闘不能にし沖縄側は残り霧島と瑞鶴を残すのみとなっているが瑞鶴に関してはほとんど傷を負って居なかった

 

 

「叢雲ぉぉぉぉ!!」

 

 

「……やっぱり残ったわね、瑞鶴」

 

 

 

 




次回

鶴の一撃

次回残された沖縄組と叢雲達が激突します


戦闘シーンになると書くのが捗り過ぎて困る……




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大演習会 VS沖縄戦 五

瑞鶴は艦載機を発艦させるために弓を引き放つと弓矢が艦載機に変わり叢雲達を襲うのだが何とか二人は避けながら瑞鶴へと近付いていく

 

 

「行かせませんよ!!」

 

 

だが、それを阻むように霧島が間に入り込み主砲を叢雲達に向けると立ち止まり忌々しそうに睨み付ける

 

 

「チッ!厄介ね!!」

 

 

「そこを退いて貰いますよ!!」

 

 

叢雲と古鷹は先に霧島を倒すために二人で艤装を構えるが空から艦載機が叢雲達目掛けて突っ込んでくる

 

 

「叢雲任せて!」

 

 

古鷹は深呼吸をすると艤装にある高角砲を使い正確に艦載機を撃ち落としていく

 

 

「くっ!やるわね!

なら更に増やすまでよ!!」

 

 

「全て撃ち落とします!!」

 

 

その隙に霧島は主砲を古鷹目掛けて砲撃を放とうとするが叢雲に邪魔される

 

 

「叢雲さん!」

 

 

「悪いわね、貴女の相手は私よ

金剛の妹さん?

私では不服かしら?」

 

 

「金剛お姉さまから貴女の話しは聞いておりますよ

とんでもない化け物駆逐艦だって

不服?まさか貴女を倒して古鷹さんも倒させて貰いますよ!」

 

 

霧島と叢雲がぶつかっている間に古鷹は瑞鶴の艦載機を一つ残らず正確に撃ち落とし瑞鶴へ砲撃するのだが避けられてしまっている

 

 

「やりますね、瑞鶴さん

でも負けるわけには行きませんからね!」

 

 

「私もよ!あんた達に勝って私は『手がかり』を見付けるんだ!!

悪いけど倒させてもらうわよ!!」

 

 

瑞鶴は更に艦載機を増やす為に二本の矢を束ねて放とうとするが昔加賀に言われたことを思い出す

 

 

『五航戦、艦載機が多ければ勝つんじゃないわよ

いかに艦載機の攻撃を上手く確実に相手に命中させるかよ

向こうは私たちより遥かに手数が多い

それなら私達は確実に相手を倒しなさい

覚えておきなさい

冷静に自分の立場と出来ることを考えておきなさい』

 

 

(そうか……それなら!!)

 

 

瑞鶴は矢を二本を別々の方向へ放つ一つを空へ一つは古鷹へと放つ

 

 

「何度やっても無駄だよ!!」

 

 

瑞鶴の艦載機は古鷹の高角砲で撃ち落とされるが瑞鶴は深く息を吐くと冷静に周りを確認すると左へと走り出し戦っている霧島と目を合わせる

 

 

「逃がさない!!」

 

 

古鷹が逃げようとする瑞鶴の先を読み砲撃をするとその瞬間瑞鶴は古鷹目掛けて全速力で突っ込んでいく

 

 

「引っ掛かったわね!!」

 

 

「なっ!!」

 

 

瑞鶴は瞬間矢を引き絞り古鷹目掛けて艦載機を飛ばすと古鷹は対応仕切れずに艦載機の攻撃を受けてしまい少しよろけると霧島は叢雲との戦闘を中断し古鷹に砲門を向ける

 

 

「叢雲の相棒!撃ち取りますよ!!

全門斉射!撃てぇぇぇ!!」

 

 

「古鷹避けて!!」

 

 

叢雲の言葉に気付き無理矢理によろける身体を反らし霧島からの砲撃を避けるのだが空を確認したとき言葉を失う

 

 

「敵機直上……急降下爆撃!!」

 

 

(避けきれない!!)

 

 

先程瑞鶴が放っていた艦載機が古鷹の真上から古鷹目掛け突っ込んできており咄嗟にそれを防ごうとするが先程阿武隈との戦闘で傷付いていたため少し反応が遅れ瑞鶴の艦載機の爆撃を直撃すると爆煙を上げる

 

 

「良し!取った!!」

 

 

瑞鶴がガッツポーズを取ると爆煙の中から一撃の砲撃が放たれそれが霧島へと直撃し体制を崩す

 

 

「なっ……あれを受けて…!?」

 

 

その瞬間霧島は目を離していた叢雲を思いだし振り返るとそこには今にも飛びかかり霧島を押し倒そうとする叢雲が見えるのだが当然反応できず叢雲に水上へ押し倒され主砲を腹部に突き付けられる

 

 

「……上手い連携ね

でもね、貴女は貰うわよ?

沈め」

 

  

霧島は急いで反応しようとするが当然間に合わず叢雲からの砲撃を全弾その身で受け止めると苦しそうに腹部を押さえ叢雲を振り払おうとするが

 

 

「私は、雷撃姫よ?」

 

 

「っ!!」

 

 

叢雲は宙に舞いながら右手の魚雷を霧島に向けると勢い良く放ち同時に装填が終わった主砲も連続で撃つと霧島は爆煙に包まれる

 

 

「つ、強…い…」

 

 

戦艦の耐久でも流石に主砲四発と雷撃三発をもろに受けると持つわけがなく霧島の艤装は爆発を起こし水上に力尽きる

 

 

「ごめん…叢雲…」

 

 

最後の気力を振り絞って古鷹は砲撃を放った為か爆煙が晴れていく中古鷹はゆっくりと水上に倒れると気絶してしまう

 

 

「霧島!古鷹!戦闘不能!!」

 

 

この判定に会場中から歓声と拍手が上がり戦いはクライマックスへと向かっていく

 

 

 

 

 







次回

一撃の雷撃

次回対沖縄戦決着です!
と言っても瑞鶴が圧倒的に不利なんですけどね……

鶴が出なくて諦めた提督がこちら




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大演習会 VS沖縄戦 六

「まさか、こうなるとは思わなかったわ

正直私がやられて阿武隈と貴女が戦うと思ってたもの」

 

 

「あら?そうなの?

私は最初からこうなると思ってたわよ?」

 

 

二人は睨み合いながら艤装を少し動かし動作を確認する状況的には叢雲の方が不利でもある

相手は正規空母に対して叢雲は駆逐艦そもそも戦いのスタイルが真逆だからである

 

 

一対一(・・・)、真剣勝負ね」

 

 

 

「……プッ、アハハハ!!」

 

 

だが、叢雲はその瑞鶴の言葉に笑いを隠せず腹を抱えて笑っていると瑞鶴が苛ついたのか更に叢雲を睨み付ける

 

 

「何が可笑しいのよ!?」

 

 

一対一(・・・)?何いってるのよ

一対二(・・・)よ!あんたこそ何言ってるのよ!!」

 

 

「……ぇ?」

 

 

瑞鶴は叢雲の言葉に驚きを隠せず撃破した小笠原メンバーを見ると確かに大井、金剛、グラーフ、古鷹の四人と無事の叢雲

一人足りない

(でも水上には誰も……

しまった!!)

次の瞬間瑞鶴の足下に雷撃が命中し体制を崩すと水中を良く見るとそこにはイムヤが雷撃を構え瑞鶴を狙っていた

 

 

「忘れていた……イムヤさん!!」

 

 

「悪いわね!瑞鶴!あんた達の負けよ!!」

 

 

水中ではイムヤが次の魚雷を艤装から取り出し静かに瑞鶴を狙い水上では叢雲が瑞鶴に近付く為距離を詰めてくる

 

 

「くっ!このぉ!!」

 

 

(やらせないわ!)

 

 

瑞鶴が弓を引こうとするタイミングでイムヤも魚雷を発射させると直撃し瑞鶴の体制を崩させる

 

 

「くそっ!厄介ね!

まずはイムヤさんをーー」

 

 

「水中ばっかり気にしてたら私にやられるわよ!!」

 

 

その隙に近付いていた叢雲は主砲を瑞鶴へ向けると瑞鶴は慌ててそれを避けようとするがイムヤがそれを逃がさずまさに水中と水上の挟み撃ちになっていた

 

 

「私は……負けないんだからぁ!!」

 

 

瑞鶴は何とか弓を引き矢を放ち叢雲に艦載機を当てるのだが叢雲はそれを全て撃ち落とすと瑞鶴の懐に入り込む

 

 

「さてと、覚悟しておきなさい

瑞鶴!!」

 

 

「っ!駆逐艦の癖に!生意気よ!!」

 

 

叢雲はその瞬間に主砲を瑞鶴の腹部に押し当てると砲撃を直撃させると瑞鶴の腹部に鈍い痛みが走るが無理矢理それを抑えて弓を引き絞り空へ艦載機を飛ばす

 

 

「今更遅いわよ!!」

 

 

「どう…かしら…ね!!」

 

 

瑞鶴は苦し紛れに放った様に思えるが空に放った艦載機は古鷹の時と同じ様に叢雲の真上を捉えると急降下してくる

 

 

「先に倒す!!」

 

 

「耐えて見せるわ!!」

 

 

叢雲はその瞬間に主砲二門を瑞鶴に押し当てながら砲撃すると瑞鶴は鈍い痛みを耐えながら何とか飛行甲板を守るが全身痛みが走り身体はボロボロになっていく

 

 

「あんた、やるじゃない!」

 

 

「負けないんだから……絶対に!!」

 

 

叢雲は焦りを感じながら主砲を当てていくが瑞鶴はギリギリの所で耐えており瑞鶴の艦載機が射程範囲を捉えてしまう

 

 

「時間切れよ!叢雲!!」

 

 

「くっ!不味い!」

 

 

空を見上げると艦載機が直ぐ側まで来ており叢雲は逃げようと瑞鶴から距離を取ろうとするのだが艦載機はしっかりと叢雲を捉えている

 

 

「これで!終わりよ!

急降下爆撃!」

 

 

「やば、これ耐えられるかしら…」

 

 

半分叢雲は諦めていると水中から魚雷が三本飛び出してきており慌ててしゃがむと艦載機の爆撃に直撃し誘爆を引き起こす何とか瑞鶴の攻撃を防ぐ

 

 

「嘘でしょ!そんなことできるの!?」

 

 

「ふふ、流石は魚雷の扱いには馴れてきたみたいね

良い命中率よ」

 

  

叢雲は水中を見るとイムヤが親指を立てており叢雲もそれを返すと指で指示をするとイムヤと叢雲が動き始める

 

 

「さてと、終わりよ!

瑞鶴!!」

 

 

「まだ、弓は残っているだから!!」

 

 

弓を引き絞る瑞鶴の目の前に水中から魚雷が飛び出し叢雲はそれを撃ち抜き誘爆させると瑞鶴の弓が損傷すると同時にイムヤは水中で艤装に入ってる魚雷を全弾瑞鶴に向けて放つ

 

 

(終わりよ!瑞鶴さん!!)

 

 

「くっ、まだまだ!!」

 

 

「いや、終わりよ貴女の」

 

 

瑞鶴が諦めずに弓を引こうとするが叢雲は既にその爆煙に紛れ瑞鶴の懐に入り込み主砲を瑞鶴へと当てると体制を崩すと同時に自分の魚雷を瑞鶴へむけ放つ

 

 

(「沈めぇ!!」)

 

 

「くそぉぉぉ!!!」

 

 

体制を崩した瑞鶴は立て直そうとするが間に合わず叢雲とイムヤの挟撃雷撃が当たり水柱を上げ爆発する

しばらくすると水柱が無くなりイムヤが叢雲の側に浮上すると瑞鶴の弓と飛行甲板は破壊されており本人は水上に倒れていた

 

 

「瑞鶴!戦闘不能!!

勝者、小笠原鎮守府!!」

 

 

 

 

大淀の判定が入ると会場中が歓声と拍手に包まれ叢雲とイムヤはハイタッチを交わす

 

 

「流石ね、イムヤ」

 

 

「まぁね、イーちゃん達に鍛え上げられたから当然よ!」

 

 

 

 

 

 

 





次回

殺人鬼の気紛れ

これで、Aブロックでの死闘が終わり次はある鎮守府達との決戦になります!
やっとこの章も半分終わった…




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大演習会 VS沖縄戦 決着

二人は共に航行しながら四人の元に戻っていくと金剛が叢雲に突っ込んでいく

 

 

「叢雲ー!流石デース!!」

 

 

「ちょ、飛び付かないでよ!あんた今かなり重いんだから!!」

 

 

「凄いわねイムヤあんな雷撃の使い方があるなんて……

と言うかあの魚雷何?私見たことないんだけど?」  

 

 

「あれ?あぁうん、親方が私専用に作ってくれた加速型酸素魚雷(かそくがたさんそぎょらい)

新作何だけど、火力を低い変わりに通常の魚雷より速度がかなり速いの

あんまり使うなとは言われてるんだけどね」

 

 

叢雲達が勝利に喜ぶ中阿武隈がゆっくりとそこに近付いて行くと叢雲が気付き振り返る

 

 

「やっぱり強いね、叢雲達は」

 

 

「そうよ、うちはどこにも負けないんだから」

 

 

「……次は絶対負けないからね」

 

 

「あら?勝つのは私達よ」

 

 

 

その言葉と共に阿武隈と叢雲は握手を交わすと再び会場から歓声が上がると恵比寿が場を締める様に話始める

 

 

「いやー!素晴らしい戦いでしたね!!

どちらも引けを取らないギリギリの戦いを見せてくれた小笠原と沖縄に拍手を!!」

 

 

恵比寿が言うと割れんばかりの拍手と歓声が上がりAブロック決勝戦は幕を閉じる

 

 

「ふーん?へぇ……あの娘面白いわね?」

 

 

エアはそう言うと佐渡と一緒に観戦していたが離れていく

 

 

「何処に行くつもりだ、エア」

 

 

「お手洗い~

付いてこないでよね~」

 

 

「そうかい、くれぐれも気を付けろよ」

 

 

何となくエアがやることが分かっていた佐渡は溜め息をつくとそれを見ながら笑い部屋を後にする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艤装置き場にて瑞鶴はタオルを頭に掛けながらベンチに座り落ち込んでいた

最後の戦いにて古鷹こそ取れたものの叢雲とイムヤを残し敗けてしまった自分をひたすらに責めていた

この後少しの休憩と共にBブロックの戦いが始まるのだがそれまでここに居させて欲しいと阿武隈達に頼み瑞鶴の心情を察し彼女を一人にさせていた

 

 

「……また…負けた…

あの時、二度と負けないって心に決めていたのに……」

 

 

悔しくそして負けた自分を情けなく思いながら髪飾り外しそれを握り締めながら涙を浮かべていた

 

 

「……強く…なりたいよ……

先輩や翔鶴ねぇみたいに…」

 

 

眼を閉じるといつもそこに焼き付いている自らを残し一人、一人と沈んでいく仲間達そして二人残され加賀は瑞鶴を庇い逃がしてくれた過去を

 

 

「先輩……加賀先輩…どうすれば…

私は貴女みたいに強くなれますか……

誇り高く、真っ直ぐな貴女みたいに…」

 

 

すると扉から音が聞こえ頭だけを向けるとそこには阿武隈が静かに立っていた

 

 

「瑞鶴、そろそろ行こ?

佐渡提督がご飯奢ってくれるってさ」

 

 

「……いらない」

 

 

「珍しいね?瑞鶴がご飯いらないなんて

いつも私達以上に食べて困らせてるのにさ?」

 

 

その言葉と共に阿武隈は瑞鶴の隣に座ると頭を撫でる

 

 

「ごめんね、私が潮ちゃんばっかり気にしてたから古鷹さんも叢雲も撃破出来なくて

今回の負けは私の責任だから瑞鶴は気にしなくて良いんだよ?」

 

 

「そんなことない!

私が最後で叢雲一人と油断したからよ!!

だから…ごめんなさい…」

 

 

「ねぇ、瑞鶴」

 

 

阿武隈は瑞鶴の頭を撫でながら肩に寄せるとタオルを取る

 

 

「そろそろ仲間を頼ってくれないかな?

いつまでも一人で戦ってても勝てないよ?」

 

 

「そんなこと…」

 

 

「でも、霧島さんが今日頼ってくれて嬉しがってたよ?

『初めて瑞鶴が頼ってくれた』って

確かに貴女には相応しくない仲間かもしれないけどさ」

 

 

 

「そんなことないわよ!

皆は!沖縄の皆は!一人になった私に色々してくれた!!

悩んでるときも、寂しいもずっと側に……」

 

 

「じゃあ、もう少し頼ろうよ?

一人で苦しんでいるのは駄目だよ?」

 

 

阿武隈は立ち上がり瑞鶴を抱き締めると頭をゆっくりと撫でる

 

 

「確かに負けて優勝商品の

『深海墜ちした姫級の情報』は手に入らなかったけどさ

捜索は手伝うからさ?

元気だそ?」

 

 

「………ごめんね阿武隈…

私の我が儘だったのに…」

 

 

「良いんだよ!どうせ提督何かに使わせたらろくなことお願いしないんだからさ?」

 

 

 

「あぁ!クソッタレ!!

賭けで負けちったじゃぁねぇかよ!!!」

 

 

 

 

抱き締められた胸の中で瑞鶴は泣き出しそうになるとドアを思い切り蹴る音にビックリし二人でドアに向くと下の隙間から封書が部屋に入れられる

 

 

 

「な、なんだろ?」

 

 

入れられた封書を阿武隈は取りに行きその中身を開けるとそれに驚きを隠せず慌てふためくと気になった瑞鶴もそれを見ると二人で驚く

 

 

「こ、これって!」

 

 

「現在確認されている姫級と鬼級のデータ……

それと初めて確認された場所も正確に乗ってる……」

 

 

 

その中身は重要機密である姫級や鬼級の事を書いた書類であり恐らく海軍上層部しか知らない等が記入されており本来なら金庫などに仕舞われている物である

 

 

「ず、瑞鶴これをーーー」

 

 

と阿武隈が持ち主に返そうと促そうとするのだが、瑞鶴が涙を浮かべながら資料を集中しながら見ていると微笑む

 

 

「ハッ!そうね!これは返さーーー」

 

 

「ね、瑞鶴ここには私と貴女しか居ないわよね?」

 

 

「え?あ、うん?」

 

 

「じゃあこれ、貰っちゃおうか?」

 

 

「えぇ!?」

 

 

いつも真面目な阿武隈がそんなことを言い出す物だから驚くのだがそそくさとその資料を隠すと持ってきた艤装に入れる

 

 

「だ、駄目よ!あれは機密資料何だしーーー」

 

 

「ほら!バレなきゃ大丈夫大丈夫!

瑞鶴行こ!この事は二人の秘密だよ!」

 

 

阿武隈は瑞鶴の手を取ると急いで艤装置き場の扉を開きその場を後にしようとする

 

 

「ちょ、ちょっと阿武隈!」

 

 

二人が廊下に出るとそこには清掃員のおばちゃんが台車を押しており会釈すると走りながらその場を後にする

 

 

「後でゆっくり見ようね!!

私達の秘密ね!!」

 

 

満面の笑みを浮かべている阿武隈に溜め息を付きながら瑞鶴も笑うと二人走り出す

 

 

「もう!怒られても知らないんだからね!!」

 

 

その後ろ姿を微笑みながら清掃員のおばちゃんは台車を押し周りに誰も居ないことを確認すると台車から服を取り出し素早く着替える

 

 

「全く、あんなので喜ぶなんて子供ねぇ」

 

 

清掃員のおばちゃんに変装していたエアは姿を変えると台車を置きながら走り去っていた二人を見ながら髪を整える

 

 

「佐渡の事を調べていたついでの情報よ

喜んで貰えたなら良かったわよ

同じ空母としての吉見よ

楽しい試合を見せてくれたご褒美よ」

 

 

そう呟くと廊下の奥へとゆっくり歩いていき姿を眩ました

 

 

 

 

 

 





次回

閑話休憩
小笠原での死闘


次回佐渡達が留守にしている小笠原で起きている戦いを書いていきたいと思います


花粉症辛い……


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優秀な番犬?

叢雲達が本島で戦いを繰り広げる中実は小笠原でも深海棲艦達の戦いが繰り広げられていた

ソラとイーちゃんは留守番を頼まれておりソラが少し外の哨戒をしている間に起きた死闘

 

 

イーちゃんは食堂の扉の前でじっと三体の深海棲艦を睨み付けながらその場を守っていた

 

 

「退ケ駆逐艦」

 

 

その筆頭はソラの艦隊に所属する戦艦ル級であり他にはソラと同じリ級と空母ヲ級がイーちゃんの前に立っており食堂へと入ろうとしているのだがイーちゃんがそれを防いでいた

 

 

「おうおう、お前らそんなところで何してやがるんだ?」

 

 

「親方様、ドウモデス」

 

 

「親方で良いぜめんどくさいしな

んで、何だこの状況は?」

 

 

 

すると親方が新しく開発した小型飛行機にて食堂の入り口廊下で揉めているル級達を目撃し向かってきている

 

 

α(アルファ)ガ、オ腹空イタカラ食ベ物食ベヨウト食堂二来タラ駆逐艦二邪魔サレテイルノ」

 

 

「おう?イーちゃんか、何で邪魔してるんだ?」

 

 

親方の言葉に気付いたイーちゃんは廊下にある時計と張り紙を交互に見ると再びα達を睨む

 

 

「あー……そう言うことか

おい、お前ら後二時間待機したら入れるぞ」

 

 

「ドウシテダ?」

 

 

「ほら、張り紙に書いてあるだろ?

1200と1800まで入室禁止って多分それだ

それに勝手に食堂入って食べると提督に怒られるぜ?」

 

 

「成ル程、α出直ソウ」

 

 

親方に理由を説明されヲ級とリ級はその場を去ろうとするのだがαと呼ばれたル級だけは頑なにそこを動かずイーちゃんを見下ろしている

 

 

「断ル」

 

 

「何?」

 

 

「私ハ今食ベタイノ

ダカラ断ル」

 

 

「辞メロ、ココデノ争イハ後デ姫様ヤソラ二怒ラレル」

 

 

「ソウダヨ!ココデ問題ヲ起コスト怒ラレルンダヨ!!」

 

 

二人の静止を聞かないαは食堂の扉に手をかけるとイーちゃんが口を開き中にある主砲を向けると手を止める

 

 

「オ前ゴトキガ私ヲ止メル気カ?

怪我シタクナケレバソノ主砲ヲ仕舞エ」

 

 

αの忠告を聞かないイーちゃんは主砲を向けたままじっと顔を睨みながら待っており扉を開けようと少し動かした瞬間顔面目掛けて主砲を放ち慌てて避ける

 

 

「ホホウ?立テツクノカ?駆逐艦ノ癖二」

 

 

イーちゃんの主砲を避けたαは戦闘体制を取ると飛び掛かり捕縛しようとするがそれを避け再び顔面に主砲で模擬弾を当てると顔が墨で真っ黒になる

 

 

「コノ!チョコマカト!」

 

 

αは捕縛しようとするのだが、それを華麗に避けつつ全身に模擬弾をぶつけていき墨で白い身体が真っ黒に染まりつつある

 

 

「辞メロα!ソノ駆逐艦ハ叢雲ノ指南ヲ受ケタ奴ダ!」

 

 

「ソウダヨ!辞メヨウヨ!怒ラレタクナインダケド私!!」

 

 

「おいおい……やるなら外でやれってんだよ……」

 

 

二人の攻防が始まると親方は溜め息を付きながら何処かへ飛び去ってしまい廊下には四人だけになってしまう

 

 

「……αト戦ッテルナラ今ノウチ?」

 

 

「チョットβ(ベータ)!?」

 

 

親方が居なくなったのを確認するとヲ級がこっそりと食堂の扉を開けようとするがイーちゃんはそれに気付きβと呼ばれたヲ級目掛けて主砲を放ち頭に直撃させる

 

 

「良イ……命中率…ダナ…」

 

 

βは当たり所が悪く気絶してしまうと廊下に倒れてしまいイーちゃんも誇らしくしているとその後ろからαに捕まる

 

 

「ヤット捕マエタゾ!ハハハ!!」

 

 

αに捕まったイーちゃんは慌てふためき暴れて脱出しようとするがガッチリと掴み横腹に抱えながら食堂を開けようとする

 

 

 

「フフフ……コレデ佐渡様ノ料理ヲ一人占メ……

誰モ私ハ止メラレナイ!!」

 

 

 

すると不意にαの肩を誰かが掴み先程の戦闘で疲れているαは苛つきながら振り返る

 

 

「何ダ!γ(ガンマ)、私の邪魔を…す…る……な…」

 

 

「誰も止められない?何を言ってるですかね貴女は?」

 

 

哨戒に出ているはずのソラがαの肩を掴み笑顔なのだがかなり恐く顔を青ざめ冷や汗をかき慌てるとイーちゃんを離す

 

 

「ア、エット、ソノー……

食堂二忘レ物ヲシテデスネ!!」

 

 

「嘘つくなお前は」

 

 

「チョット!親方様!?」

 

 

「ほーう?嘘ですか?

ではα、お前は何をしようとしていたのですか?」

 

 

親方がいつの間にか戻ってきておりαは慌てて誤魔化そうとするがソラは足下で主砲を向けていることに気付きαを睨む

 

 

「……勝手に食堂入って佐渡様の作ったカレーを盗み食いしようとしましたね?」

 

 

その言葉にビクンッと身体を震わせるとソラは直ぐ様αの襟を掴むと

 

 

「成敗!!」

 

 

「グフッ!!」

 

 

そのまま廊下に背負い投げをすると投げられたαは伸びてしまい溜め息をつくと指を指す

 

 

「γ!貴女は規則を破っていないので多目に見ましょう!

ただし!ここを綺麗にしておきなさい!良いですね!!」

 

 

「ハイ!ソラ様!!」

 

 

γと呼ばれたリ級は直ぐ様廊下を走っていくとソラはイーちゃんと親方に頭を下げる

 

 

「申し訳ありません不出来な部下で後でキツイお仕置きを致しますので」

 

 

 

「まぁ、うんお前も大変なんだな」

 

 

「えぇ……中々にですよ…

イーちゃん様も申し訳ありません

番人をするのでしたらどうぞ毛布です」

 

 

ソラに渡されたイーちゃんは毛布に乗ると身体を動かし見事にくるまりそれを見ると二人の首根っこを掴みズルズルと廊下を引きずる

 

 

「あ、親方様

明日辺り工厰を少しお借りできませんか?」

 

 

「構わねぇけど、何するんだ?」

 

 

「ちょっとこの馬鹿二人のお仕置きとして使わせて頂きたいのですよ

やるときになったらまた言わせて頂きますので」

 

 

「お、おう?分かった」

 

 

ソラは親方と共に廊下を歩いて行くとイーちゃんは安心して毛布の中にくるまりながらアクビと共にぐっすりと寝てしまう

 

 

 

 

 

 






次回

優勝候補


最近、艦隊を動かしまくるせいで資材がどんどん無くなっていく……
明石来ないなぁ……




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大演習会 決勝戦 

「美味しいデース!

ここのスイーツ!」

 

 

「ん!このあんみついけるわね!」

 

 

「北上さん!あーん?」

 

 

「ちょっと大井っち恥ずかしいよ!」

 

 

Aブロックの全試合が終わり参加していた鎮守府の人達は各々休憩を取っており小笠原、佐伯、沖縄の艦娘と提督達は出張甘味処間宮に来ていた

 

 

「ふふ、皆さん美味しそうに食べてくれて嬉しいです!」

 

 

「嫌でも本当に美味しいですね!間宮さんのスイーツは!」

 

 

間宮(まみや)

唯一艦娘の中で戦闘が出来ず給糧艦として大本営に在籍している

彼女の料理や甘味物はかなり美味しくそして本人も可愛らしく海軍の中にファンクラブがあるほどである

海軍の中には朝、昼、晩を全て間宮で食べる人も居るとか

 

 

「アトミラールも来れば良かったのにな

こんなに美味しいのに」

 

 

「仕方無いわよ、叢雲と古鷹が心配って言ってたし

あ、グラーフそれ食べないの?もーらい!」

 

 

「あ!こらイムヤ!

それは私が後でにと取っておいたんだぞ!!」

 

  

金剛達は甘味処で先程の戦いを癒しているが叢雲、古鷹、佐渡はBブロックの戦いが気になるらしく三人で見に行っていた

 

 

「にしても本当に不思議デースよね」

 

 

「どうかしたのですか?お姉様?」

 

 

「何で古鷹ってうちの小笠原に居るんでしょうか?

古鷹は何の問題も無いと思うんデスよね?」

 

 

「そう言えば私も思いました

どうなんですか?提督?」

 

 

比叡が葛城に問いを投げると身体を震わせそっぽを向きながらあんみつを頬張る

 

 

「さ、さぁねー……

わっかんないー…」

 

 

「そう言えば私も気になるなー?

提督ー?」

 

 

北上もそれに興味を示し葛城に問いただすがはぐらかし答えを言わない

その姿を見ながら金剛はスプーンを加えながら会場を見る

 

 

「……古鷹は何の罪…嫌、何で小笠原に居るんでしょうか……?

二人なら知ってるんデースかね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここに居たのか二人共」

 

 

「あら、司令官どうしたのよ?」

 

 

「提督、お疲れ様です!」

 

 

叢雲と古鷹はBブロックの試合を入り口近くの所から見下ろしておりフェンスにもたれ掛かっている

 

 

「うん、お疲れ様

どうだ?試合は」

 

 

「決まってるでしょ、舞鶴の圧勝よ」

 

 

「凄いですね相変わらず」

 

 

二人が見ている試合を見下ろすと会場では歓声が上がり大淀さんが判定を下している

 

 

「青葉!戦闘不能!!

勝者!舞鶴鎮守府!」

 

 

どうやら舞鶴の相手は藤谷率いる佐世保だったのだが水上に残っている舞鶴が異常だった

 

 

「マジかよ、あそこに完勝したのか」

 

 

佐世保は全員気絶し艤装は破壊されているのだが舞鶴は一切傷を負っておらずしかも四人は整列したままで動いていたのは二人だけ

 

 

「長門……『正義の戦艦』…か…」

 

 

正義の戦艦

深海棲艦を許さず全滅させるまで一人戦い仲間を守り続けた事からついた長門の通り名

その強さは海軍の折り紙付き

海軍の最終兵器として彼女を看板にしておりまさに現 最強の戦艦とされている

 

 

「聞いたことはあったけど相変わらずヤバイなおい」

 

 

「一応見に来て正解ね

正に化け物よ、あの戦艦」

 

 

「えぇ、一人で日向 木曾 衣笠 加古 青葉を連続で相手にして全く動じずに一人一人と確実に仕留めていくのはとんでもないですね

砲撃の命中精度も火力と近接戦闘もとんでもないです」

 

 

「正に、優勝候補かあれが」

 

 

勝敗が決した会場では長門達が去ろうとするのだが青葉がボロボロになりながら立ち上がり砲門を長門へと向けている

 

 

「ま…負け…ない…」

 

 

「もう勝負はついた

お前達の敗けだ」

 

 

「まだ…わ…たしは…動…ける!!」

 

 

「青葉さん!試合は終わってます!!

辞めてください!!」

 

 

大淀の静止も聞かずに青葉は主砲を放ってしまうが長門は動じずにそれを避け青葉の首元に当て身を食らわせ無理矢理気絶させる

 

 

「その心意気は、深海棲艦との戦いの時に見せてくれ

青葉よ」

 

 

青葉の横でそう呟くと意識を手放しダランとなった青葉を担ぎ上げながら長門は会場の外へと運ぼうとすると何かに気付いたのか観客席を見る

 

 

「へぇ、気配に気付いたんだ

どうやら本物見たいね」

 

 

長門が見た観客席の方角には叢雲達が見ておりニヤリと笑うと口パクで何か言い睨み付ける

 

 

「何だって?叢雲」

 

 

「『お前達を必ず倒す』だってさ

楽しみねあんなのと戦えるとはさ」

 

 

「フフ、叢雲楽しそうだね」

 

 

長門を睨み返すと叢雲は振り返り会場を後にしようとする

叢雲の姿が見えなくなった長門達はゆっくりと控え室に航行していく

 

 

「あいつなんかに」

 

 

「あんな者に」

 

 

「「絶対に負けん(負けないわ)」」

 

 

お互いそう呟き決勝戦での戦いを想像しながら、その時が来るのをゆっくりと待っていた

 

 

 

 

 

 

 





次回

正義の鎮守府VS敗者の鎮守府


次回やっとの事で長門達と激突します
認め合う二人だが自分達の信念を貫く為に戦います


資材使いすぎたのでしばらく艦これお休み中~
バケツ使いすぎた……



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大演習会 VS舞鶴

「さぁ!皆さん御注目!!

この大演習会も次で最後の戦いとなってます!

Aブロック、Bブロックで戦ってきた鎮守府の皆様お疲れ様でした

そして、その二つのブロックで勝ち進み優勝目前へ駒を進めた二つの鎮守府がございます!

その二つの鎮守府についてご説明しようと思います」

 

 

恵比寿が興奮気味に説明していると艤装置き場にて叢雲達は佐渡から指示を受けていた

 

 

「ーーと言うわけだ、今回は全員連携が大事になる

各々の役割を忘れるなよ?」

 

 

「「「「「「了解!!」」」」」」

 

 

「それとなんだ、この大会に負けたとしてもお前達を解体なんぞさせん

俺がこの命張ってでもお前達を守るからそこは安心しろ

だが!出来れば勝って欲しいな!」

 

 

「ふふ、決まってるでしょ

勝つわよあんな所何かに」

 

 

「全員ぶっ飛ばしてやりマース!」

 

 

「一人一人沈めてやるわよ!」

 

 

「おー心強いな!うちの鎮守府は!」

 

 

佐渡が全員を励ましているとベンチに叢雲が座りながら眼を閉じておりそれに気付き頭を撫でる

 

 

「行くぞ、叢雲」

 

 

「えぇ、任せなさい」

 

 

叢雲は眼を開けると五人と合流すると深呼吸をしているが少し緊張しており肩を震わせているの古鷹が耳にふぅと息をかける

 

 

「ひゃん!って何するのよ!古鷹!」

 

 

「ふふ、叢雲緊張し過ぎだよ

リラックスリラックス!」

 

 

古鷹が笑顔で叢雲を励ますと微笑み頬を叩き気合いを入れ直す

 

 

「良し!行くわよ!!」

 

 

「「「「「はい!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「長門」

 

 

対するこちらは反対側の舞鶴鎮守府の控え室兼艤装置き場にて長門もベンチに座り眼を閉じていた

 

 

「……何だ、提督」

 

 

「時間だ、頼むぞ」

 

 

「分かった」

 

 

長門は立ち上がり艤装を纏うとゆっくりと仲間達へと向かっていくと深く息を吐く

 

 

「相手は強い

絶対に油断をするな

あの男の鎮守府だ、確実に何か仕掛けてくるだろう

だが!我々も負けるわけにはいかないのだ!海軍の正義の為に頼むぞ!お前達!!」

 

 

「「「「「「了解!!」」」」」」

 

 

全員に挨拶を終えると唐澤は長門の肩を叩き頷く

 

 

「任せたぞ長門」

 

 

「任せてくれ提督

『あの日に誓った事は必ず守る』」

 

 

長門と唐澤は頷くと長門が全員に再び渇を入れる

 

 

「相手は小笠原!裏切りと敗北者達の鎮守府だ!

容赦はするな!!叩き潰すぞ!!」

 

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では!説明も終わった所で選手入場です!!

まずは!辺境地にして最前線で活躍をする雷撃姫と呼ばれる逸材の駆逐艦が旗艦を勤める鎮守府!!

小笠原の入場です!!」

 

 

恵比寿の言葉と同時に叢雲達が会場に入場すると歓声が沸き金剛と大井は耳を押さえる

 

 

「うるさいネー……

何か人数多いデスネ?」

 

 

「そりゃ決勝戦だしね

にしても凄いわね、カメラも沖縄戦より多いわよ?」

 

 

叢雲達は会場の真ん中に整列するとそれを確認した恵比寿が再びマイクを取る

 

 

「次に!今ある全ての鎮守府を打ち倒せる程の強力な艦娘を揃え海軍トップの座に君臨する最強にして正義の象徴!

正義の戦艦と呼ばれる長門が所属する鎮守府!!

舞鶴の入場だぁ!!」

 

 

恵比寿の言葉と共に長門達が入場してくると会場からは長門の名前を呼ぶコールが聞こえさっきより更に歓声が上がる

 

 

「わーお、凄いですね

あっち」

 

 

「まぁ、長門さんが居るしね

全艦娘の憧れにして絶対的な正義を誇りビッグ7と呼ばれているんだもん

そりゃ歓声も上がるわよ」

 

 

 

 




次回

ハンデ

次回勝ち上がった二つの鎮守府激突の時です!





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大演習会 VS舞鶴 二

舞鶴が整列すると叢雲の目の前に長門が並びお互い睨み付ける

 

 

「やはり貴様達はここに来たか

分かってはいたけどな」

 

 

「へぇ?あんたがそんなこと分かるとは驚きね?」

 

 

叢雲と長門が一触即発の空気に包まれているなか恵比寿が再びマイクを取り出すと決勝戦のルール等を説明する

 

 

「睨み合う両者!ではここで決勝戦特別ルールのご説明をさせて頂きます!

今回の戦いには通常の戦いと加えて夜戦が追加されます

この夜戦は通常と違い会場全体を真っ暗にし行われます

観客席の皆様は今から職員がお配りする暗視ゴーグルをお付けください

そして!何と!今回の決勝戦は全国へ配信されております!」

 

 

恵比寿の説明後会場のカメラが中央に整列する二人をアップしながら撮影しておりその様子を全国の人達がテレビにて見ていた

 

 

「更に更に!ここである御方のご紹介をさせて頂きます!

では登場して頂きましょう!この海軍の最高責任者 大元帥 東雲憲次郎さんでーす!!」

 

 

恵比寿の合図と共に東雲が矢矧と共に会場に現れると歓声が沸き上がり東雲が手で合図をすると矢矧がマイクを手渡す

 

 

「えー、どうもこんにちは

私がこの海軍のトップ東雲だ

めんどくさい挨拶は抜きにしよう

君達も戦いが見たくて仕方ないと思うからな」

 

 

マイクを握り締めながら東雲は目の下に居る叢雲達と長門達を見下ろすとニヤリと笑う

 

 

「これから俺はお前ら兵器に送る言葉をやろう!!

勝ってみろ!お前達の願いを!お前達の思いが本物ならな!

精々あがき潰し合え!以上だ!!」

 

 

そこまで言うと東雲はマイクを投げると矢矧が受け取りお辞儀をするとゆっくりと会場の奥へと消えていく

 

 

「相変わらずですね……

まぁ良いでしょう!

では!毎度お馴染み対戦する艦娘達のご紹介です!

小笠原鎮守府からは!

 

旗艦 駆逐艦 叢雲

重巡 古鷹

軽巡 大井

戦艦 金剛

潜水艦 伊168

正規空母 グラーフツェッペリン

になります!」

 

 

「お次!最強と言われ今回の大演習会の優勝候補!!

対戦する艦娘達はこちら!

 

旗艦 戦艦 長門

正規空母 赤城

駆逐艦 磯風

戦艦 陸奥

重巡 利根

駆逐艦 綾波

 

になります!!」

 

 

恵比寿の紹介を終えるとお互い整列しながら睨みあっていると長門が口を開く

 

 

「もう一度だけ言おう叢雲

貴様が欲しい我が鎮守府に来い」

 

 

「あんたの所に行く位なら自沈を選ぶわ」

 

 

「そうか、なら貴様を倒して認めさせてやろう

我々の『正義』を」

 

 

「何が正義よ、古鷹とグラーフを犠牲にする正義なんて知らないわ」

 

 

「………待つデース叢雲

それはどう言うことデスか?」

 

 

叢雲の話に金剛達は叢雲に目を向けると溜め息を付きながら変更された契約内容を話し出す

 

 

「こいつらが勝ったら古鷹とグラーフだけを解体するって話よ」

 

 

「「「「はぁ!?」」」」

 

 

その言葉に全員驚き古鷹は目をパチクリとさせる

 

 

「な、何で古鷹何ですか!?

古鷹は関係ないデース!!」

 

 

「そ、そうよ!解体されるのは私達なのでしょ!?」

 

  

「そこの戦艦に聞いてみたら?」

 

 

叢雲が長門に指を指すと全員がそちらを向く

 

 

「この大会で我々が優勝すれば我々舞鶴に叢雲、大井、金剛、イムヤに来てもらう

ただし、古鷹 グラーフ 佐渡提督は解体と解任だ」

 

 

「ど、どうして古鷹が解体なのよ!!

彼女は何もしてないでしょ!?」

 

 

「そうか、貴様らは知らないのかその大罪人を

まぁいいどうせお前達を倒せば見ずには済むからな

大元帥の決めた事だお前達が喚いても変わらん

それが嫌なら」

 

 

長門はそこまで言うと艤装を構えながら仁王立ちをする

 

 

「我々に勝つことだな

どうせ、お前達何かが勝てるとは思えないけどな」

 

 

 

 

 

 




次回

開戦

挑発しそして古鷹を目の敵にする長門
その真実は近い内に語られます


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大演習会 VS舞鶴 三

長門の言葉にカチンと来た金剛と大井は明らかに機嫌が悪くなる

 

 

「大井、こいつぶちのめしましょう?」

 

 

「あら奇遇、今私もそう思ったわ」

 

 

叢雲に加え大井と金剛も睨み出すと長門は少し離れ全員各々の配置に付いていくと恵比寿がそれを見るとマイクを取りながら興奮気味に話し出す

 

 

「いやー!今回の戦いは本当に興味深いですね!!

現最強と呼ばれ絶対的な正義の鎮守府、正に海軍の鑑と呼ばれる鎮守府対問題児や海軍から見捨てられた者達が行く最前線の鎮守府

正に真逆の鎮守府対決!羽田元帥どう考察しますか!?」

 

 

「そうですね、どちらの鎮守府にもエースと呼ばれるかなり強い艦娘が居ます

舞鶴には代表とされる正義の戦艦長門 

小笠原には代表とされる雷撃姫叢雲

正直、火力や装甲面で言えば小笠原に勝ち目は無いでしょう

ですがあそこはそれでもここまで勝ち進んで来ました

どうなるかは私にも考察しきれません」

 

 

「確かにそうですね!雷撃姫に関してはまだとっておきを見てませんから楽しみではありますね!!

では、長らくお待たせ致しました!開戦と行きましょう!!」

 

 

恵比寿が合図をすると大淀が頷くと手を天高く上げると両者は睨みあい艤装を構える

 

 

「試合………開始!!」

 

 

大淀の合図と共にイムヤは潜水し、グラーフと赤城は艦載機を発艦させる

金剛と大井は共に長門を狙いを定め走っていくが長門は仁王立ちしながら待っている

 

 

「まずは長門からデース!」

 

 

「えぇ!行くわよ!」

 

 

「悪いがそうは行かない」

 

 

その言葉と共に二人と長門の間に磯風が入り込み主砲を二つ構えながら対峙する

 

 

「舐めないでくださーい!叢雲じゃないんだから一人で私達相手なんて無理デース!」

 

 

「果たして、それはどうかな?」

 

 

金剛が突っ込んでくると同時に磯風は足元に砲撃すると目の前に水柱に包まれ思わず顔を隠し主砲を構えるが直ぐ様水柱は消え視界が開ける

 

 

「What?磯風どこデース?」

 

 

視界が開けたのだが磯風がどこにもおらずに目の前には仁王立ちする長門だけであり金剛は困惑していると大井が叫ぶ

 

 

「金剛後ろ!!」

 

 

「後ろ?」

 

 

金剛が振り返るとそこには鬼の形相で音もなく迫る磯風が主砲を構えており慌てて避けるのだが磯風は主砲を二つ構えており体制を崩した金剛に近接戦闘砲撃を仕掛ける

 

 

「いつの間に!」

 

 

「私の得意はな、叢雲とちょっと似ていてな

正直そっちを相手したかったのだが仕方無い

お前達で我慢しよう」

 

 

体制を崩した金剛に主砲を押し付けようとすると横から大井の援護砲撃が来るが軽々と避け二人と距離をとる

 

 

「さてと、では私はお前達の相手と行こうか?」

 

 

「くっ、めんどくさそうデース」

 

 

「同感ね、叢雲よりは大丈夫だとは思うけど」

 

 

二人が対峙し航空戦が始まってる最中叢雲と古鷹目掛け三人が突っ込んでくる

 

 

「二人とも油断しないでね!

叢雲は長門が認める実力者よ」

 

 

「「了解!!」」

 

 

「さてと、私達もやろっか古鷹」

 

 

「うん!叢雲とならどんな相手でも倒せると思うからね!」

 

 

二人は艤装を構えると三人と対峙しその姿を長門は静観しており叢雲の動きを観察していた

(奴の動きを見切っておかないと負ける…か

提督は奴を過大評価し過ぎなのではないか?

確かに彼女は強いが)

 

 

長門が考察しているがその意味を次の瞬間理解することになった

 

 

「じゃあ、我輩から行くぞ!

その駆逐艦先にもらっーーー」

 

 

利根が叢雲に照準を定めた瞬間真下から雷撃により足の艤装が爆発し体制を崩す

 

 

「なっ!初手から攻めてきおったか!?」

 

 

水中を覗くとそこにはイムヤが魚雷を両手に持ちながら利根を狙っており再びその二本の雷撃を放つ

 

 

「くっ!綾波!爆雷を頼むぞ!!」

 

 

「分かりました!!」

 

 

綾波は慌てて爆雷を取り出し利根の真下に居るイムヤに投げようとするがその手を正確に古鷹が砲撃で撃ち落とす

 

 

「させませんよ」

 

 

「貴女は最初から狙ってたわよ!!」

 

 

すると陸奥が古鷹に向かっていくが瞬間的に何か背後に殺気を感じ艤装で自分を守ると爆発し何とか衝撃に耐える

 

 

「貴女の相手は私では無いですよ?

ね、叢雲」

 

 

「そうよ?あんたは私が潰すわ」

 

 

「……本気?私は戦艦よ?」

 

 

陸奥と叢雲は睨みあうと古鷹は利根を綾波は爆雷を片手にイムヤを狙いだし会場がざわめいていると恵比寿の実況が聞こえてくる

 

 

「な、な、何と!!

雷撃姫こと叢雲が一人で戦艦の陸奥と対峙したぁ!?」

 

 

 

「あいつ、正気なのか?

わが舞鶴は私以外もかなり強いのだぞ?」

 

 

長門が驚いていると叢雲は陸奥に向かい走りだし陸奥もそれを倒すべく主砲を撃ち始めると各々の戦いが始まる

 

 

 

 

 

 




次回

真面目に狡猾に

次回はある艦娘の変化についてのお話です
すいませんかなり長くなりますのでご了承くださいませ……
そして、未だに2ー5が攻略できない()




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空母の教え

今回はグラーフとエアのお話になります






五人が各々の舞鶴とぶつかる中グラーフは赤城相手に苦戦していた

相手は赤城一人ではあるがグラーフはそもそも戦闘経験が浅く向こうは手練れ勝つことはかなり難しい

 

 

「まだ…まだぁ!!」

 

 

「貴女方には悪いですが、私達も負けられない理由があるんです!!

大人しく負けてください!!」

 

 

グラーフは元々搭載出来る艦載機が少なくしかも航空戦はエアとしかやったことがなく赤城がかなり驚異に見える

(このままでは負ける!だが私が負ければ……)

考えていると瞬間的に空を見上げる

スタジアムの空は夕暮れに染まっておりエアの教えを思い出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ……

まだ、まだぁ!!」

 

 

「いやアウトよ

ほら飛行甲板見なさいよ」

 

 

小笠原の正面海域にてエアは自分に纏う艤装だけを展開させて居ながら水面に倒れているグラーフを見下ろす

グラーフの飛行甲板は真っ黒に染まり実際なら恐らく破壊されている

それとは対象的にエアは全く汚れておらずノンビリとしている

 

 

 

「く……だが!まだ動ける!」

 

 

「そりゃそうよ実弾使ってないし?

とりあえずここまでよお馬鹿

はい、休憩休憩」

 

 

エアはグラーフの頭を掴むと髪をグシャグシャにすると艦載機をしまいどこからかアイスを取り出し食べ始める

 

 

「………なぁ、エア」

 

 

「んー!美味しい!

…なぁによ?」

 

 

「私は……あの二人みたいになれるか?」

 

 

グラーフ水上に座りながら近接戦闘訓練を受ける叢雲と古鷹を見ておりエアもその方角へ目を向ける

 

 

「無理に決まってるでしょバーカ」

 

 

「……私はどうなんだ?エア

お前から見て」

 

 

エアはアイスを食べながら顎に手を当てると考え込むがバッサリと言い捨てる

 

 

「そうね、センス無いわねあんた」

 

 

「ヴッ」

 

 

「艦載機の扱いがまるで素人、動きも単純、考え方もお堅い真面目スタイル、戦い方も真っ正面だけ

ぶっちゃけ、そんな状態ならうちのβ……いやそこら辺の軽空母にも負けるんじゃない?」

 

 

「そこまで言うか!?

………私はやっぱりお荷物何だな…」

 

 

エアにボロクソ言われ落ち込むグラーフの頭にまだ食べていないアイスを乗せると隣に座る

 

 

「でも、あんたの真っ直ぐな気持ちだけは伝わったわ」

 

 

「………え?」

 

 

グラーフは驚きながらエアを見ると微笑みながらアイスを頬張っており更に続ける

 

 

「戦いってねその人間の覚悟やその信念が分かるの

あんたと航空戦をやってハッキリと分かったわ

自分の為ではなく仲間の為に、信じてくれた仲間の期待を裏切らない為に真っ直ぐ私に立ち向かうその姿勢だけは誉めてあげる」

 

 

「………」

 

 

「でも、それだけじゃ勝てないわよ

相手だってあんた以上の覚悟と力を付けてきている

それならあんたはそれ以上の物を見せつけ勝たなくてはいけない

ねぇ、グラーフあんたは何ができる?」

 

 

「何……とは?」

 

 

「あんたは、いや空母は何をすべきか分かる?」

 

 

エアに質問されるとグラーフは悩み唸りながら答えを探していると一つの答えを導く

 

 

「………敵の艦載機を倒す?」

 

 

「他には?」

 

 

「………すまない分からない」

 

 

「そう、まぁ半分正解

半分外れよ

じゃあ答え合わせと行きましょ?」

 

 

エアはアイスを全て食べきると空に向けて手を伸ばすとグラーフもその手を見る

 

 

「正解はね、『空を支配する』ってことよ」

 

 

「空を支配する……だと?」

 

 

「そう、私達空母に出来るのはそれだけ

でもそれは他の艦娘や深海棲艦にも出来ない

『私達空母だけの特権』なのよ」

 

 

エアに言われるとグラーフは空を見上げると眩しいその太陽と海の様に真っ青な空と白い雲が目に写る

 

 

「…私達の特権か…」

 

 

「そうよ、だからあんたには私の戦いかたを全て教えるわ

今のあんたは真面目すぎる

もっと狡猾に、確実に相手を仕留める方法をね?

それにどう思う?あの広く美しい空を自分だけの物に出来るとしたら」

 

 

エアに言われると空を見上げながら目を閉じ空を支配する自分を思い浮かべる

 

 

「……最高…だな」

 

 

「でしょ?まずはあんたは敵を倒す術を覚えなさい

あんたが目指すのはまずは『相手を無力化』することよ

あんたの相手は赤城、間違いなくあんたより錬度も上

正に格上よ

あんたにそれが出来る?」

 

 

「……やってやるさ!!

叢雲達も格上に挑み戦うんだ!私が怖じ気つくわけには行かないさ!!」

 

 

「その粋よ、じゃあ私も本気を出そうかしら?」

 

 

「……………え?」

 

 

 

エアはアイスを食べ終わるとグラーフから離れると思い切り水面を踏みつけると水面が揺れそして真下からエアの艤装が飛び出しそれに乗る

 

 

「うふふ……現役の深海棲艦

しかも、歴戦が相手してあげるのよ?

光栄に思いなさい?」

 

 

エアの艤装は通常の空母棲姫と少し違い四つの飛行甲板に四つの主砲が兼ね備えられしかもその内二本はかなり大きくグラーフを捉える

 

 

「………何だ…それは?」

 

 

「私が海を横断するときに使う艤装よ

基本的には戦闘で使わないんだけど今回は特別よ

あんたの覚悟とその意気込みに免じて相手してあげる

さぁてと、覚悟しなさい?

休憩終わりよ!叩きのめしてあげる!!

今日は私に一発でも当てたら勝ちにしてあげる!!」

 

 

「…っ、やってやるさ!

艦載機発艦!!」

 

 

グラーフが艦載機を発艦させるとエアも艤装を動かし海上を縦横無尽に動きながら艦載機を発艦させる

 

 

「ふふ、教えるのも案外楽しいわね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 




次回

私だけに出来ること


エアに教えられたグラーフ
錬度の高い赤城にどこまで奮闘出来るのでしょうか?



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大演習会 VS赤城

「……そうだな、私はまだ赤城に勝てるわけないのにな」

 

 

グラーフは深く息を吐き頬を叩くと再び気合いを入れ直し目の前の赤城を向き直る

(赤城とはかなり差がある

それならその差を埋めるなんて考えるな

私は空母だ、今私に出来ることをやるだけだ……

目の前の赤城を無力化しないと叢雲達が苦労する…

赤城から制空権を取ることが出来るのは私にしか出来ないことだ!!)

 

 

「もう終わりですか!貴女の実力はそんなもんですか!?」

 

 

赤城が弓を引き絞り再び艦載機を飛ばしてくるがグラーフは最低限の艦載機で自分を守り赤城の隙を伺っていた

(狡猾に…そして確実に…

落ち着け…焦れば敗けだ…)

何もしてこなくなったグラーフに苛立ちを覚え赤城は弓矢を更に増やしグラーフへ止めを刺しにかかる

 

 

「これで終わりにします!ごめんなさい!グラーフさん!!」

 

 

「今だ!!」

 

 

その瞬間グラーフは、弓矢を引き絞る赤城に突っ込んでいくと艤装から艦載機を何機かを空高く飛ばし残りを直接攻撃を仕掛けると赤城は驚き慌てて矢をしまう

 

 

「なっ!艦載機の皆さん!お願いーーー」

 

 

「させないさ!!」

 

 

グラーフは艤装から高角砲を取り出し赤城の艦載機を破壊しそのまま赤城へと突っ込んでいく

 

 

「まさか!そんな物を持っていたんですか!?」

 

 

「秘策は最後まで取っておくものさ!!」

 

 

そのまま赤城へ高角砲を向けるが空からの爆撃によりグラーフは被弾し少し飛行甲板が損傷する

 

 

「くっ!まだあったのか!?」

 

 

「貴女方は近接戦闘を仕掛けてくるのは分かっていましたからね

何機か空高く飛ばしておいて正解でした

終わりです!!」

 

 

先程のグラーフが飛ばしてきた艦載機を撃破し赤城が弓矢を引き絞り艦載機を飛ばそうとする

(……すまない!皆!!)

その瞬間傷を負いながらもグラーフは爆煙から出ると弓矢を引く赤城に向かっていくが全く怯まずその矢を放つ

 

だがその瞬間グラーフは右手に持った飛行甲板を放たれた弓矢に突きだし矢が艦載機に変わる寸前で突き刺されそのまま飛行甲板を貫通し右手に当たる

 

 

「なっ!貴女自分の飛行甲板を!?」

 

 

無理矢理赤城の攻撃を辞めさせると矢が突き刺さったまま近付き左手で赤城の弓を掴む

 

 

「っ!流石に痛いな……

だが、捕まえたぞ赤城」

 

 

「正気ですか!貴女自分の武器を破壊してまで私を捕まえるなんて!?」

 

 

 

弓を捕まれた赤城は慌てながら離れようとするがグラーフががっしりと掴んでおり更に反動を利用し飛行甲板を捨てると右手で赤城を近付ける

 

 

「正気さ……ただ、ちょっと教えてくれた人が荒くてね

すまないな、赤城貴女も『道連れ』になってもらうぞ」

 

 

グラーフの言葉に引っ掛かり嫌な予感を手繰らせた赤城は空を見上げるとそこには先程グラーフが飛ばした艦載機が真っ直ぐに二人に落ちてきており混乱する

 

 

「まさか!貴女私と一緒に!?」

 

 

「ハハ…悪いなこれしかお前を倒す方法が見当たらなくてな…

正直航空戦では勝てないからな、お前を『無力化』することにするよ!!」

 

 

グラーフの顔を見ると決意と覚悟を決めており間違いなく自爆するつもりらしく離れようとするが

 

 

「これで終わりだ!赤城!敵機直上!急降下爆撃!!

制空権は…貰った!!」

 

 

「離れなさい!」

 

 

グラーフは力強く掴み全く離そうとせずその間にも爆撃機は迫り二人目掛けて大量の爆撃を放ち赤城は逃げる事が出来ずに二人は爆煙包まれる

 

 

しばらくすると爆煙が晴れるとグラーフは赤城からは離れており水上に横たわりながら気絶しており赤城は飛行甲板と弓矢が破壊され爆撃による熱のせいで艤装が使い物にならないほどに変形している

 

 

「くっ……ごめんなさい…提督…」

 

 

「グラーフツェッペリン!戦闘不能!

赤城!戦闘続行不能!」

 

 

大淀の判定が入ると会場は沸き立ち拍手が送られる

その戦いを中継で見ていたエアは微笑みながらアイスを頬張る

 

 

「まだまだね、まぁ及第点位かしらね」

 

 

「おいおい…無茶し過ぎだろ…」

 

 

 

 

判定後直ぐ様その場を離れないと行けないのだが今回の戦いが激戦となっており運ぶはずの艦娘がグラーフを運ぼうとするのだが危険すぎて近寄れなくなっているとまだ動ける赤城が気絶しているグラーフに近づき見下ろす

 

(彼女は着任して間もなく更に戦闘経験も浅いはず

それなのに…私を無力化するために自らすら使う…か

普通では有り得ませんね

ですが、彼女をここまで突き動かす物が気になりますね

そんなにあの提督は素晴らしいのでしょうか?)

 

赤城はそこまで考えていると微笑みながら自らの艤装をほとんど外しグラーフを背中に抱える

 

 

「ほら、行きますよグラーフさん

私に勝ったのにそんな姿情けないですよ?」

 

 

少しゆっくりにはなるが航行しているとグラーフが寝息と共に静かに呟き笑う

 

 

「アトミラール…私は…やった…ぞ…」

 

 

「………ふふ、私の完敗ですよグラーフさん

お見事でした」

 

 

二人はゆっくりと戦場となっている海上を離れていきながら終始赤城は満足そうに微笑んでいた

 

 

 

 

 





次回

駆逐艦と重巡

次回は叢雲と古鷹の戦いになります!
最近せきろうを買いましたが難しい…でも面白い!!



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大演習会 VS陸奥&利根

「強いわね、やっぱり」

 

 

「まぁ仕方無いの、奴等があの鎮守府最強じゃからな!」

 

 

赤城とグラーフの決着が着くと叢雲と古鷹は倒され気絶しているグラーフを運ぶ赤城を見ながら微笑んでいた

 

 

「よくやったわグラーフ

後であんたの好きなもの御馳走するわよ」

 

 

「流石だねグラーフさん!赤城さんから制空権奪うなんて!

じゃあ、こっちもそろそろ」

 

 

「そうね、やるわよ古鷹」

 

 

古鷹と叢雲は艤装を軽く整備しながらストレッチをやると陸奥と利根を睨み付ける

 

 

「……陸奥、こやつら本当にただの駆逐艦と重巡なのか?

何かこやつらを見てると…」

 

 

「…えぇ、戦闘時の長門を思い出すわ

でも装甲と火力は変わらないはずよ?

油断は出来ないけど」

 

 

二人が身構えると叢雲は深く息を吐くと右手の魚雷を水中に付け静かに発射させる

(三本…一応撃っておくか

残り残弾六本五本は残しておこうかしら?)

すると次の瞬間走りだし利根と陸奥に主砲を向ける

 

 

「来るわよ!」

 

 

「分かっとる!返り討ちにーーー」

 

 

利根が言い掛けた瞬間顔面目掛けて古鷹が主砲を撃ちそれが直撃し後ろに倒れそうになる

 

 

「利根!!」

 

 

「人の心配してる場合!?」

 

 

叢雲はその間にも陸奥に迫り主砲を交互に砲撃していくと艤装を動かし砲撃から身を守る

 

 

「流石に今のは……効いたぞ!

古鷹!!」

 

 

顔を撃たれはしたが幸いでこに当たった為あまり被害は少ないのだがかなり痛く擦りながら主砲を古鷹に向ける

 

 

「撃たせるわけないでしょ!!」

 

 

だがその瞬間叢雲が利根に向き直り自らの主砲を腰に押し当て0距離砲撃をし体制を崩させる

 

 

「なん……じゃと!?」

 

 

「まさかこの子!」

 

 

「あんた達何かはね私一人でも余裕なのよ

見せてあげるわよ、あいつに教えられた戦闘スキルってのを」

 

 

叢雲は艤装を複雑に動かしながら陸奥と利根を相手取り古鷹はゆっくりと息を吐きながら陸奥と利根に狙いを定めている

 

 

「っ!舐めるなよ!駆逐艦風情が!!」

 

 

「私達だって!長門程ではないけど貴女ぐらいは倒せるわよ!!」

 

 

利根が両肩の主砲を向けると叢雲は陸奥の影に隠れ撃てず陸奥は叢雲を捕まえようとするが距離が近いのと艤装同時がぶつかり捕まえることが出来ない

 

 

「ちょこまかと!!」

 

 

「そうね、少し離れましょうか」

 

 

陸奥と利根がイラついていると叢雲は陸奥の艤装を蹴ると少し離れ二人は同時に叢雲へ主砲を向けるのだが笑っており嫌な予感がする

 

 

「っ!利根逃げて!」

 

 

陸奥が叫んだ瞬間叢雲が先程放っていた雷撃が直撃し真下から利根が吹き飛ばされ古鷹がそれに駄目押しするように主砲を利根に構える

 

 

「させない!!」

 

 

 

咄嗟に陸奥はその二人の間に割り込もうとするが

 

 

「分かってたわよ貴女が庇うのを」

 

 

叢雲が陸奥の艤装を足場にすると利根に空中から捉え右手の魚雷と主砲を構える

 

 

「しまっーー」

 

 

「まず一人ね、沈めぇ!!」

 

 

魚雷を一本と主砲を撃ち込むと利根は更に爆煙に包まれ吹き飛ばされ水上を何回かバウンドし気絶し艤装が爆発を起こす

 

 

「利根!戦闘不能!!」

 

 

大淀の判定が入ると叢雲は陸奥から離れ再び古鷹と合流し艤装を構える

 

 

「あらあら、やってくれるじゃないの

流石ね」

 

 

「さてと、後は」

 

 

「貴女だけですね」

 

 

古鷹と叢雲が艤装を構えると陸奥は少し焦りながらも艤装を整え横目で長門を見る

(長門に心配かけるわけにはいかないわ

私がこの二人を倒す!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 





次回


正義の右手


次回は磯風と戦う金剛&大井戦になります


誤字報告の場所が本当に分からないアホがこちら……
本当に分からないどこや……



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大演習会 VS磯風

叢雲と古鷹が利根を撃破した頃長門の近くでは磯風と金剛、大井の戦いが膠着しつつあった

先程まで金剛、大井はかなり優勢に戦っていたが磯風が他の艦娘達とは違いかなり近接戦闘に馴れており下手に近寄れなくなっていたのである

 

 

「どうした二人とも?

私を倒さないと前には行けないぞ?」

 

 

「……北上さんとかとは大違いね」

 

 

「デース……これはキツイネー…」

 

 

磯風の戦いかたは叢雲や北上達とは大幅に違い確実に急所を狙ってきており一撃で仕留めることを前提に撃ってきておりそれを避けてもまた連続で首や頭等を狙ってくると言ったかなりキツイものであった

 

(提督の言った通りね…

磯風…長門の右腕にして海軍が認める正義の片腕となるとやっぱりこっちもそれぐらいしないと駄目か…)

 

 

大井は息を深く吐くと金剛に向き直り頭を縦に振るうと驚いた様子で金剛も頷く

 

 

「……やるんですか?大井」

 

 

「仕方ないでしょ、まともにやっても私達は負けるわ

でも古鷹の為提督や鎮守府の為覚悟は出来てるわ」

 

 

「……分かりました、ではお願いしまーす!!」

 

 

「打ち合わせは終わったか?

では二人とも沈んでもらうぞ!!」

 

 

磯風が両手の主砲を握り締め突っ込んでくると次は大井が一人で突っ込んでいく

 

 

「悪いけど!金剛を失うわけには行かないからね!!

大事な戦艦様だから!」

 

 

「大井!そう言うのは辞めてください!!」

 

 

「一人で来るか?面白い!!」

 

 

先程まで二人でもキツイ相手ではあったのだが大井は単艦で挑み金剛も少し後ろを付いていきながら主砲を磯風に向けるが磯風は大井の影に隠れながら主砲をぶつけ合う

 

 

「貴様の事は聞いているぞ

男嫌いの大井よ」

 

 

「それがなに!?」

 

 

「お前がやった罪は確か海軍上層部の者達への暴行

そして、提督への過剰な暴力

他の鎮守府には行けず死刑と同じ島流しにされた憐れな艦娘よ」

 

 

大井は磯風の言葉にピクンと反応するが続けて主砲をぶつけ隙を作り砲撃しようとするが磯風はそれを避け反撃の砲撃をしようとするが大井も辛うじて避ける

 

 

「あんたに!関係ないでしょ!」

 

 

「そうとも言えないさ、お前達が負ければ我々の鎮守府に来るんだ

確かそこの金剛は不幸持ち何だっけか

厄介極まりないな

正直、長門が欲しいのは叢雲だけだからなお前達はただの付属品に過ぎない

大人しく解体を受け入れたらどうだ?」

 

 

磯風の言葉に怒りを募らせる二人だが大井は深呼吸をすると佐渡の言葉を思い出す

(どんな時でも冷静でいろ、戦闘に関して怒りは大事な感情だ

だがそれに支配されてては駄目だ

それを押し止めて相手を倒せ、大変かも知れないがやれるか?大井)

 

 

「……ふぅ、そうね私達は正直貴女達海軍では厄介者かもね」

 

 

「分かっているなら海軍の迷惑にならないためにもーーー」

 

 

「でもね、アイツはそんな私達に生き方を教えてくれた私達を助けてくれた

私の親友を助けてくれた、私に……小笠原と言う居場所をくれた」

 

 

目を閉じながらいつもの小笠原の風景を思い出しながら微笑み磯風へと向き直る

 

 

「私はね!海軍なんてもうどうでも良いのよ!!

私は、私の為に!救ってくれたアイツと皆の為に戦う!あんた達なんてぶっ倒して!皆でまたあの小笠原で笑って過ごすのよ!!

だから私達の邪魔をするなぁぁぁ!!」

 

 

大井は主砲を磯風に押し当てるが磯風はそれを弾き腹部へ蹴りを入れると右手の主砲を放ち大井と距離をとる

 

 

「貴様らの覚悟は分かった…

だがな私もあの二人に救われたのだ

だからこそ私も負けるわけにはいかないのさ

悪いが負けてもらうぞ私達の正義の為に」

 

 

 

 

 

 

 




次回

覚悟

磯風と大井達の覚悟はどちらが上か

最近花粉が酷くて仕事にも影響し始めて辛いですわ…




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大演習会 VS磯風 二

大井達が激戦を繰り広げる中会場では途中で負けてしまった石澤と葛城が佐渡達の決勝戦をのんびりと見ていた

その隣には北上もおり息を飲みながらその戦いを見ていた

すると後ろから二人が息を上げながら走ってきている

 

 

 

「はぁ、はぁ!ごめん提督さん!遅くなっちゃった!」

 

 

「ごめんなさい提督!試合どうですか!」

 

 

「遅いぞ二人ともそうだね

とりあえず制空権は小笠原が取って有利かな」

 

 

「そんでもって利根、赤城、グラーフがアウトってところだよん」

 

 

「あ、北上さん……」

 

 

「やっほー阿武隈

大丈夫今日は弄らないから」

 

 

阿武隈は北上を見ると後退りをするがそれよりも試合に集中しており大井と磯風達を見ていた

 

 

「ねぇ、北上

あの磯風って」

 

 

「うん、恐らくだけど長門の右腕で近接戦闘を得意としてるね

しかも持ってる艤装も撃ち合いより近接で仕留めやすい様に工夫されてる

正直、長門もヤバイけどあれも何とかしないと小笠原に勝ち目は無いんじゃないかな?」

 

 

「そこまでなのか…

磯風…」

 

 

「叢雲が居るけど向こうも陸奥が相手だし長門は後ろでなにもしていない……

これって勝ち目あるの?」

 

 

 

 

北上の分析を聞きながら葛城と石澤は大井達の戦闘に集中し瑞鶴と阿武隈が心配そうに話している

北上は大井に勝って欲しいと思っていたそれでも心配ではある

(今の大井っちが負けるとは思えないけどかなりの手練れだよ

どうする気?大井っち……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「金剛!覚悟を決めるわよ!!」

 

 

「了解デース!!」

 

 

二人は再び磯風に向かっていくと磯風は艤装を軽く動かし大井から仕留めにかかり走り出す

 

 

「まずはお前から倒させて貰おうか!

大井!お前達の覚悟とやらを見せてみろ!!」

 

 

走り出した大井は単装砲を磯風に向けながら足に付いている魚雷発射管から雷撃を放ちその後砲撃をする

 

 

「同時撃ちか、避けられないとでも!!」

 

 

大井が放った雷撃は真っ直ぐに磯風を捉えるが磯風意図も容易く避けると同時に大井の砲撃を相殺し更に近付くのだが

 

 

「そうくると思ったわよ!!

金剛!」

 

 

「了解デース!」

 

 

大井は魚雷発射管から魚雷を取り出すとそのまま磯風に投げ付ける

 

 

 

「なっ!まさかそのまま使うつもりか!?」

 

 

「fire!!」

 

 

そしてその投げつけた魚雷を狙い金剛が砲撃すると魚雷は空中で撃ち抜かれ爆発を起こし三人は爆煙に包まれる

 

 

「ぐ、ただの魚雷ではないな……

目眩ましか!小癪な!!」

 

磯風は主砲を真下に向けると自らの足下を砲撃しその爆発でまとわりつく爆煙を吹き飛ばすと辺りを警戒するのだが真後ろから捕まる

 

 

「捕まえたわよ!!」

 

 

「何!?」

 

 

いつの間にか磯風の真後ろに回り込み羽交い締めにするとそれを抜け出そうと抵抗する

 

 

「金剛!やりなさい!!」

 

 

「なっ、貴様まさか!!」

 

 

磯風は羽交い締めにされながら爆煙の先を見ると金剛が主砲をゆっくりと磯風と大井に向けており背筋を凍らせる

 

 

「そうよ……これが私の覚悟よ!!」

 

 

「くそ!離せ!離せぇぇぇぇ!!」

 

 

羽交い締めにされた磯風は暴れ始め主砲を真後ろの大井へと向けると砲撃するが全く離れようとはせず金剛が砲撃準備が整う

(……大井、貴女の覚悟流石デス

後は任せてください!!)

 

 

「全砲門!fire!!」

 

 

「いくら貴女でも!金剛の砲撃に耐えられるかしら!?」

 

 

「貴様ぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

磯風は慌てて自らの身体を捻ろうとするが大井は足を絡ませ無理矢理にでも動かさないようにすると二人は金剛の砲撃が当たり爆煙に包まれる

しばらくすると爆煙が晴れるとそこには水上に膝をつく磯風と砲撃に巻き込まれ吹き飛ばされた大井が水上に倒れていた

 

 

「ま…だまだ!私は……負けん…ぞぉ!!」

 

 

大井が吹き飛ばされて居るが意識はあり何とか立ち上がろうとするが背中の艤装が爆発を起こし再び水面に倒れる

対する磯風は艤装こそ壊れているが主砲が二門生きており再び大井へと主砲を向ける

 

 

「…こ、小癪…な真似を……しや…がっ…て!!」

 

 

「大井!!」

 

 

主砲を向けられている大井は立ち上がろうとするが痛みに耐えきれず再び倒れそうになるが足の艤装を水面に叩き付けると同時に水中に雷撃を放ちニヤリと笑う

 

 

「は、はは!…あんた達…な…んかに…負けな…いわ…よ!」

 

 

最後の力を振り絞り磯風の主砲を避けるとその腕を掴み自らの側に連れ込みそのまま覆い被さるように捕まえる

 

 

「き…さ…まぁ!」

 

 

「終わりよ……磯風…

貴女も道連れよ!!」

 

 

その言葉に嫌な予感を巡らせると水中からこちらに向けて雷撃が放たれており逃げようとするが大井が上から押さえつけており逃げられず諦める

 

 

「一つ…聞かせてくれ…」

 

 

「な…によ?」

 

 

「グラーフと言い…何故…お前…達は…そこまで…やれる?

我々…は……兵器だぞ?…少しは…妥協…しないか?

何故…あの鎮守府に…仲間に…こだわる?……」

 

 

磯風の質問に大井は微笑みながら答える

 

 

「あそこが…あそこだけが…私達の居場所だからよ

あんた達の鎮守府と同じでね」

 

 

大井の返答に磯風はため息混じりに微笑むと脱力する

 

 

「なる…ほど…私の…負け…だな」

 

 

磯風が言い終わると二人は大井の雷撃が直撃し水柱に包まれしばらくすると二人が気絶しながら倒れており双方の艤装と主砲が破壊されていた

 

 

「大井!磯風!戦闘不能!!」

 

 

「大井!」

 

 

金剛は倒れた大井に駆け寄ろうとするがぐっとその気持ちを抑え込み長門へ向き直る

 

 

「まさか磯風がやられるとはな……

犯罪者共やるじゃないか?自らを犠牲にしてまでもやり遂げるとはな

そこだけは認めてやろう」

 

 

「長門!!」

 

 

「良いだろう、相手になってやろう金剛」

 

 

長門は主砲を動かすと金剛に向き直り金剛も主砲を構えながら大井を横目に見ると他の艦娘達が大井を連れていっており目の前の長門に集中する

(作戦とは言えど仲間を撃つのはちょっと嫌でしたが、ここからは私一人デス!

必ずやり遂げてみせます!!)

 

 

 

 

 





次回

戦艦同士の激突


佐渡が仕掛けた作戦とは?それは最後までのお楽しみです



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不幸の使い方

金剛は先制を取り主砲を長門向け砲撃するが長門は動かず少しだけ艤装を動かすとその砲撃を交わし金剛との距離を詰める

 

 

「確か貴様は不幸持ちの高速戦艦だったか

お前の存在が海軍にどれほど迷惑か考えた事はないのか?」

 

 

長門は至近距離まで近付くと艤装をぶつけ金剛を吹き飛ばすと同時に主砲を構え砲撃する

 

 

「ありますよ!と言うよりは正直私は解体を望んでたんデース!」

 

 

主砲を構えられた金剛は吹き飛ばされながら水面に砲撃し姿を眩ますが長門の砲撃が艤装に直撃し爆発を起こすが幸い破壊までは行かず何とか無事ではあった

 

 

「なら、何故戦う?あの男そしてあの鎮守府の為に?」

 

 

「それは!私が生きたい願ったからです!!」

 

 

金剛は長門と距離を詰めながら戦いほぼ近距離での砲撃戦なのだが長門はそれを軽々と避けながら金剛と話を続ける

 

 

「私は不幸です!

しかも皆に迷惑ばかりかけてます!

正直前向きに捉えることが出来ません!

今も私は拒絶されると泣いてしまいます!

人が艦娘が怖いです!

それでも!提督は!叢雲は!皆は!私に居場所をくれました!

優しくしてくれました!

だから!私は戦います!皆を守るために私に出来る事があるなら!

この不幸でどうしようもない戦艦に暖かい言葉をかけてくれているあの人達の為なら!

私を孤独から救ってくれたあの人達の為なら何も怖くない!

だから!貴女を倒します!長門!!」

 

 

自らの胸の内に秘めた言葉を発しながら長門と対峙するが長門は艤装をぶつけ金剛と距離を取ると

 

 

「そうか、貴様の覚悟とお前達の事は分かった

だがなお前達は所詮犯罪者共だ

私はそう言う奴等には容赦しない」

 

 

「くっ、相変わらず無理矢理な戦い方ですね!」

 

 

金剛が体制を立て直そうとするが次の瞬間長門が急に距離を詰め金剛の腹部に拳を殴り付ける

 

 

「グハッ……な…」

 

 

「言い忘れていたな

私の得意とするのは

近接格闘と砲撃戦だ」

 

 

長門はその言葉と共に主砲を金剛へ向けると砲撃しそれを避けられずに直撃しガードしていたもののかなり吹き飛ばされてしまう

 

 

「これが長門の砲撃…ですか

かなり効きますね…」

 

 

「この程度か?」

 

 

金剛が砲撃を受け痛みに耐えていると目の前から長門が迫り主砲をこちらに向けており金剛も主砲を構えるのだが長門は水面を蹴るとそのまま金剛へかかと落としをする

 

 

「お、重いっ!」

 

 

「全砲門撃てぇぇぇぇ!!!」

 

 

かかと落としを受け止めて居るとそのままの体制で長門は主砲を砲撃するが何とか金剛は避けるがその反動で翻した長門は金剛の腹部へ拳を入れ続けて腕を引っ張り水面に叩き付ける

 

 

「ガハッ!」

 

 

「これで逃げられまい」

 

 

叩き付けられた金剛に主砲をゼロ距離で構えると金剛も主砲を長門へと押し当て二人同時に主砲を放つ

 

 

「fire!」

 

 

「撃てぇぇぇぇ!!!」

 

 

二人が爆煙に包まれるとその中から金剛が投げ飛ばされて来ており水面を転がると左半分の艤装が破壊されていた

 

 

「ば、化け物ですか……貴女は…」

 

 

「貴様の所にも居るだろ私みたいのが」

 

 

爆煙を切り裂くように腕を振るうと長門は金剛に当てられた腹部をさするがほとんど傷がなく余裕そうにしている

(確かに叢雲と似ては居ますが…何ですか…あの無理矢理な戦い方は…

しかも、叢雲より遅いですが火力と攻撃力は桁違いです……)

 

 

「来ないのか?なら私から行かせてもらうぞ!!」

 

 

「ぐ、動いてください私の身体!まだやることは終わってません!!」

 

 

金剛は痛む身体を無理矢理に動かすと右半分の主砲を長門へ狙いを定めると左半分を狙うように主砲を放つ

 

 

「fire!」

 

 

「当たらんぞ!!」

 

 

金剛の主砲は意図も容易く避けられ長門が迫ってくる

(私に出来ること……『私にしか出来ないこと…』大井が出来たんです、私にも出来ます!!)

金剛は覚悟を決めると迫ってくる長門に突っ込んで行くと主砲を長門へと向ける

 

 

「fire!」

 

 

「下手くそめ!何度撃っても!」

 

 

金剛の砲撃を長門は避けると金剛はその瞬間長門の避けた方向へと飛び出し長門へと抱き付く

 

 

「なっ!貴様何のつもりだ!!」

 

 

「知って…ますか?

私の不幸は他の人達とは一味違うんですよ?」

 

 

ニヤリと頬を吊り上げながら右の主砲で長門の左脚を狙いを定め砲撃すると左脚の艤装が一撃で損傷を起こす

 

 

「な、何!?」

 

 

「私の不幸はですね……

自分だけではなく自ら触れた相手にも不幸を伝染させるんですよ!!」

 

 

「は、離れろぉ!!」

 

 

長門が艤装を動かそうとすると脚の痛みと艤装が思うように動かず金剛に押し倒される様に水面へ転んでしまい馬乗りの状態になってしまう

 

 

「はは……『ついてない』ですね長門!」

 

 

「く、貴様!!」

 

 

長門は金剛の腹部を突き飛ばすと金剛は突き飛ばされ何とか立ち上がるがどうやら先程の砲撃が悪いところに当たったらしく左脚に痛みが走る

 

 

「あ、相変わらずの…バカ力ですね…

でも役割は果たしました…」

 

 

ふらつきながら長門へ主砲を構え砲撃しようとするが重心がズレ砲撃が外れてしまう

 

 

「……お前も『ついてないな』金剛

終わりだ!!」

 

 

長門は痛む脚を耐えながら金剛へ近づき主砲を向けると金剛は膝をついてしまう

(やることはやれました……

叢雲…後は任せましたよ…皆を助けてください

…私の大好きな憧れの最強の駆逐艦)

次の瞬間長門は全砲門を金剛へ向け砲撃し金剛は避けられずに全弾直撃し吹き飛ばされるが口元は微笑んでおり水上を何回か跳ね艤装が爆発を起こし気絶する

 

 

「金剛!戦闘不能!!」

 

 

「ぐっ……」

 

 

長門はかなり余力を残しながら勝ちはしたが金剛に当てられた脚が少し痛むがいつもの戦闘よりは大したことが無いと思いながら陸奥達の方へと向き直る

 

 

「……陸奥、今行く」

 

 

 





次回

海の狙撃手(スナイパー)

次回、イムヤと綾波の戦いを書いていきます

今回本当に長くなりそう…



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静寂と共に

水上で激戦が繰り広げられている中綾波とイムヤはお互い対峙しながら綾波は焦っていた

 

 

「どこ!あの潜水艦は!?」

 

 

イムヤは静かに水中に潜りながら水上に居る綾波を見上げながらゆっくりと艤装から魚雷を取り出していた

(落ち着いて……相手の隙を伺いながら……

一撃ずつ確実に仕留める!!)

その瞬間一発の雷撃を放つと綾波に直撃し綾波もそれだけで居場所を理解し爆雷を放つ

 

 

「そこね!!」

 

 

綾波が爆雷を落とすとイムヤは潜航をしながら何とか爆雷を避けながら綾波と対峙する

(負けない…この程度イーちゃんに比べたら!!)

その爆雷を見ながらイーちゃんとの訓練を思い出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぷはぁ!あー!また負けたぁ!!」

 

 

イムヤは悔しがりながら水面に浮上すると水面を泳いでいるイーちゃんが近付きイムヤの顔を舐める

 

 

「もう!イーちゃん強すぎ!何で私の居場所が分かるのよ!!」

 

 

「そりゃお前が雷撃を外し過ぎだし撃ち過ぎなんだよ」

 

 

「司令官!」

 

 

水面を浮いていると防波堤でのんびりと寛ぎながらイムヤ達の演習風景を見ている佐渡が座っていた

 

 

「お前は当たると言うよりはとりあえず撃ってるだろ?

戦い方としてはまるで囮みたいだぞ?」

 

 

「うぅ……だって私これぐらいしか戦い方知らないんだもん…」

 

 

「ま、それもそうかお前の元鎮守府での戦い方はな

だがここでは違うお前はそんな戦い方してたらすぐにまたやられるぞ?」

 

 

「じゃあどうすれば良いのよ!!」

 

 

イムヤが声を上げると佐渡はイーちゃんに合図するとイーちゃんは水中へ一瞬潜り水上へ飛び出すと佐渡の胸に飛び込む

 

 

「そうだな、とりあえずお前は今から魚雷の数を減らす

三発だ三発でイーちゃんを仕留めろ」

 

 

「三発!?少な過ぎよ!!」

 

 

「良いかイムヤ

お前を攻撃できる相手は駆逐艦や軽巡位だ

航空戦はグラーフに任せれば良い

潜水艦には潜水艦の戦い方がある

お前は唯一水中を自在に動けるそれなら奴等を我が物顔で水面を航行してるやつを海に引きずり込むように真下から潰してやれ」

 

 

「………分かったわ頑張る」

 

 

「良し!それなら訓練開始だ!」

 

 

佐渡がイーちゃんを海へ離すと泳ぎだしイムヤに近づく

 

 

「あ、イムヤ今日イーちゃんに攻撃当てられなかったら飯抜きな」

 

 

「えっ!?」

 

 

「イーちゃんも避けないとご飯抜きだからね?」

 

 

「ワン!?」

 

 

「はい!訓練開始!!」

 

 

「ちょちょ!司令官!それは鬼だよ!!」

 

 

イムヤが反論しようとするとイーちゃんが既に構えておりイムヤも急いで潜航し始める

(もう!鬼司令官!絶対に当てるんだから!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(綾波って駆逐艦はこっちの居場所を確実には分かってない

ならここで確実に仕留めて叢雲達と合流しないと!)

 

 

イムヤは少し慢心しているが頭を左右に振るうとその考えを捨てると同時に少しだけ空気を漏らしてしまい水面では綾波が泡を確認してしまう

 

 

「そこですね!!」

 

 

綾波は持っている爆雷を落とすとその真下のイムヤは少し焦りながら移動するがそれを見付かり水面から綾波が追ってくる

(しまった、油断した!

もう!私の馬鹿!後で司令官に怒られる…ってそんなことよりあれを倒さないと!

それに何個かは使えない魚雷もあるし)

 

 

イムヤは通常の艤装とは別にもう一つのバッグを持っておりそれだけは死守しながら戦っていた

だが一瞬だけバッグに視線をずらした瞬間目の前に爆雷が落ちてきて爆発を起こす

 

 

「ガハッ!」

 

 

爆雷が直撃し空気を漏らしてしまいそれを確認した綾波が油断する

 

 

「良し!当たりましたわ!潜水艦は通常の艦娘より耐久が低いからもう一撃でーーー」

 

 

綾波が油断していると真下から雷撃が直撃し吹き飛ばされ水面を跳ねるが何とか持ち直し水中に居るイムヤを睨む

 

 

「やり…ますわね…

やはり長門が危険視するだけはありますわ」

 

 

艤装を見ると残りの爆雷が少ないことに気付きイムヤを見るが微笑みながら爆雷を取り出す

 

 

「聞こえているか分かりませんが貴女は本当に強いですよ

わたくしこれでも潜水艦の相手は何度もしてきましたが貴女みたいにここまで見えない潜水艦は初めてですわ

だからこそ、貴女を倒してみせますわ!!」

 

 

「聞こえてるわよ

確かに一瞬の泡だけで私の居場所を突き止めるとは本当に凄いわ

でもね私達も負けられないのよ!!」

 

 

イムヤは綾波の真下に移動すると艤装の中身から全ての魚雷を取り出し全てを綾波へと向ける

(叢雲、こいつは私が仕留めるから後はお願いね!

頼んだよ!我が鎮守府のエース!)

 

 

「魚雷!全弾射出!敵を海に引きずり込め!!」

 

 

「爆雷!全弾ばら蒔いて上げますわ!出てきなさい!潜水艦!」

 

 

お互い爆雷と魚雷を発射させるとお互いを確実に捉え水上では綾波がその爆発に直撃し水柱を上げると共に艤装が破壊され

水中ではイムヤを取り囲む様に爆雷が落ちてきておりイムヤはバッグを身体で力一杯抱き締めると爆発に巻き込まれ艤装が破れ潜航が出来なくなる

(でも、これだけは守りきったわよ……

『最後の切り札』!お願いね!!)

強制的に浮上する身体に逆らいながらバッグの中身を開けるとそれは大量の魚雷

水中にばら蒔かれイムヤよりゆっくりと浮上していく

 

 

「ぷはぁ!……あははごめん叢雲!」

 

 

イムヤが浮上すると艤装が破け魚雷も失っており近くでは綾波が気絶している

 

 

「伊168!戦闘続行不能!!

綾波!戦闘不能!!」

 

 

大淀の判定と同時に会場が沸き立ちイムヤは気絶した綾波を連れていきながら叢雲と古鷹にウィンクをする

 

 

「イムヤさん……

お見事です!」

 

 

「……流石ねイムヤ

それとありがと

後は…任せなさい!!」

 

 

 

イムヤが撃破されると叢雲と古鷹は目の前に居る陸奥と対峙しお互い睨み合う

 

 

「まさかここまでやられるとはね……

これ以上は負けられないわ!!

提督の為にも……長門の為にも!!」

 

 

 

 

 




次回

妹の思い

着々と進む佐渡達の作戦そして残りお互いの鎮守府二人だけ
そして迫る夜戦への時間
後二話近くでやっと長門と叢雲が激突します




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正義の片割れ

周りの戦闘が終わり長門が迫る中叢雲と古鷹は協力しながら戦艦陸奥と対峙していた

長門の速度はかなり落ちているが射程が長くそれを見越してか叢雲と古鷹は先程よりかなり攻めるようになっていた

 

 

「古鷹!急ぐわよ!!」

 

 

「うん!分かった!」

 

 

「簡単に言うのね!!

貴女達なんて私一人で充分よ!!」

 

 

古鷹が援護砲撃をしながら叢雲が陸奥に近接戦闘を仕掛け隙の無い攻撃をするが相手は戦艦

かなりの装甲と耐久があり重巡の利根より苦戦を強いられていた

 

 

「吹き飛びなさい!」

 

 

「当たらないわよ!!」

 

 

陸奥が砲撃をするが叢雲は軽々と避け逆に砲撃するとそれを艤装で防ぎながら反撃しようとするが

 

 

「やらせないよ!!」

 

 

「ぐ…邪魔ね!!」

 

 

古鷹の援護砲撃によってそれを防がれ鬱陶しく思う陸奥は古鷹に主砲を向けるがそれを防ぐように叢雲が陸奥に砲撃する

 

 

「古鷹を倒すならまず私を何とかすることね?」

 

 

「っ!駆逐艦の癖に!生意気よ!!」

 

 

叢雲と陸奥は戦っていると叢雲は陸奥の目が怒りと嫉妬に染まっておりそれを叢雲にぶつけてるように見えた

 

 

「何よ?あんた駆逐艦に憧れても居るの?

そんな眼をしてるわよ?」

 

 

「……違うわ私は貴方が憎いのよ!!」

 

 

陸奥はそれと同時に艤装をぶつけ叢雲を吹き飛ばすとヒラリと着地すると同時に主砲を連続で撃ってきておりそれも何とか交わしながら叢雲も主砲を構える

 

 

「私、なんかしたかしら?

長門には冷たく当たるけどあんたとはここが初対面だとと思うんだけど?」

 

 

「うるさい!何で!何であんたなんかが長門に気に入られてるのよ!!」

 

 

怒りに任せながら陸奥は砲撃していると叢雲はそれを避けながら陸奥の怒りを聞く

 

 

「何で!駆逐艦の癖にこんなに強いのよ!!

私は努力してもどんなに頑張っても貴女達見たいになれない!長門に……認めてもらえない!!

あの人はいつも苦しんでいる!私や他の仲間を見るたびに申し訳なさそうに悲しそうな目で見ている!

私にはそれが耐えられない!だから貴女達を倒して実力を証明するのよ!!

貴女達何か要らない!私達だけで長門を守るんだから!!」

 

 

陸奥の怒りが叢雲には痛いほど分かった

長門の気持ちと陸奥の怒りが

叢雲も昔目の前で友を姉を失っておりその時どれほど自らの弱さと愚かさを痛感させられた

叢雲には佐渡が居たその時に叢雲は佐渡に救われたから今強く生きることを決めている

だがこの二人には決定的な壁がある

だからこそ叢雲は全力で陸奥の怒りを受け止める

 

 

「……分からなくないわ

貴女の気持ち

そうよね、貴女は二代目(・・・)だもんね

アイツが貴女達に壁を感じるのはそのはずよ

でもね知ってる?貴女達は互いに思い合ってるだけで腹を割って話せばどうとでもなるのよ

今貴女達は生きているのだから」

 

 

「何が分かるの!貴女に!仲間を信じ!共に戦う事が出来る貴女に!!」

 

 

「私も同じことをしてきて佐渡に怒られたからかしらね」

 

 

 

「……え?」

 

 

叢雲は微笑みながら艤装を構え陸奥へ向き直ると古鷹も目をつぶり叢雲との最初の戦いを思いだす

(そうだね、叢雲も同じだったもんね

私を頼らないでたった一人で戦いそして死にかけて提督に怒られて三人で泣いてたもんね……

何か陸奥さんとは話せる気がしてきたな…)

 

 

「陸奥さん、この戦いが終わったら三人だけで話しませんか?

少し貴女とお話したいです」

 

 

「……え?どうして?」

 

 

「似ているからですかね

でも、今は貴女を倒させて貰います

仲間の為に叢雲の為にも!!」

 

 

古鷹も艤装を構えると陸奥も艤装を再び構えるが二人の言っている意味が分からないが明確にこの二人を倒さないと行けないと思い主砲を向ける

 

 

「貴女達を倒して!長門の信じる正義を通すわ!!」

 

 

「悪いけど勝つのは」

 

 

「私たちですよ!!」

 

 

 

 

 




次回

タッグ

やっとこのお話も終わりが見えて…来たのかな?
最近明石堀をしていますが全く出てこない!!
潜水艦も出てこないから辛いですわ……




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戦艦姉妹

叢雲は陸奥に接近し近接戦闘を仕掛けその後ろで古鷹がその援護に回りそれを迎撃するべく陸奥が主砲を叢雲に撃つがそれを軽く避け主砲で反撃してくる

(やっぱりただの砲撃じゃ当たらないわね…

長門を待ってても仕方無い!)

 

 

叢雲の主砲を避けると近距離まで迫ろうとするが叢雲が艤装を蹴飛ばし再びある程度の距離を取り自分から迫るヒット&アウェイをやられており自分のペースに持ち込めず陸奥は苛ついていた

 

 

「っ!めんどくさいわね!!」

 

 

「悪いけどあんたを潰すのにこちらも傷を負えなくてね!!」

 

 

だが、その戦いにも決着がつきそうになっていたいくら陸奥が戦艦だからとは言えど先程から叢雲と古鷹の主砲をもろに受けており艤装が少しずつ動かなくなっていた(そろそろ不味いわね…仕掛ける!!)

 

 

それに気付いた陸奥は再び叢雲に迫るのだが叢雲は陸奥の艤装を蹴ると真上に飛び上がり主砲を構えてくる

 

 

「しまっ!」

 

 

「いつも同じ行動をするわけないでしょ!」

 

 

反射的に腕で叢雲の主砲を防ごうとするがその瞬間脚に熱い鈍痛が走り身体の体制を崩す

叢雲ではないその攻撃に一瞬分からなかったがもう一人の艦娘を思いだし睨み付ける

 

 

「古……鷹!!」

 

 

「これで終わりです!!」

 

 

「沈みなさい!!」

 

 

叢雲が主砲を放とうとした瞬間何かに気付き主砲を自らを隠すように動かすとその主砲に砲弾が直撃し反動で横に吹き飛ばされるが無事に着地する

 

 

「叢雲!大丈夫!?」

 

 

「平気よ!

チッ!もう少しだったのに!」

 

 

「え?まさか!?」

 

 

「……どうやら間に合った見たいだな」

 

 

その砲弾を撃った正体は長門だった

先程金剛から受けた艤装の傷は痛むが無理矢理にでも走ってきたらしくギリギリで叢雲を射程圏内に捉えたのだった

 

 

「待たせたな陸奥下がってろ」

 

 

「で、でも長門!」

 

 

「お前では荷が重い私に任せろ」

 

 

「………分かったわ」

 

 

長門に言われ陸奥が下がろうとすると横目で叢雲と古鷹を見る

叢雲は主砲を動かし動作チェックをしながら古鷹は傷の心配をしている

『互いに思いあってるんだから話してみたら?』

先程叢雲に言われた言葉を思いだし陸奥は下がるのを辞め長門の隣に戻る

 

 

「陸奥、下がれと言ったはずだぞ?」

 

 

「嫌よ、貴女一人に任せてられないもの」

 

 

「だがーーー」

 

 

「ねぇ、長門

貴女が何を抱えているのか私達に何を思っているのか分からない

でもね私達も貴女を助けたいし援護したいの

それにあの二人を倒すなら二人の方が確実よ?

……これでも駄目?」

 

 

「………分かった、じゃあ背中を任せても良いか?」

 

 

「任せて!」

 

 

陸奥と長門が主砲を構えると叢雲と古鷹は怪訝そうな顔をしながらこちらも主砲を再び構える

 

 

「………不味いわね

戦艦二人か…」

 

 

「うん…こればかりは頑張らないとね…」

 

 

叢雲と古鷹は顔を見合せ頷くと叢雲が前に出古鷹が少し下がり

対する長門達は長門が前に出陸奥が後ろに下がる

 

 

「ま、負けるつもりは無いけどね」

 

 

「そうだね!私達は負けないんだから!」

 

 

「随分な意気込みだな

貴様ら覚悟は出来てるんだろうな?

陸奥、行くぞ」

 

 

「分かってるわ

行くわよ、長門」

 

 

 

 

 

 

 




次回

戦艦と駆逐艦


陸奥を先に倒せなかった二人に正義の戦艦長門が立ち塞がり二人は窮地に追いやられる

花粉辛い……



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戦艦姉妹 二

叢雲達が対峙する中それを心配するように北上達はその姿を見ていた

 

 

「……不味いね、あれ

多分負けるよ雷撃姫達」

 

 

「…え?そんなになの?北上ちゃん?」

 

 

北上が眉間にシワを寄せながら叢雲達の状態を見ていると葛城達は北上に視線が集中する

 

 

「大井っちから聞いてるけど長門は戦艦の中でもかなり強いらしいんだ

それこそ一人で艦隊を壊滅させるほどに

そんなのがタッグを組んでるとなるとね…

いくら雷撃姫と古鷹さんが強くても勝つ見込みは少ないかな」

 

 

「だ、だが!あの二人は戦艦棲姫を相手に出来たんだ!

簡単にはーーー」

 

 

「いや、そこの北上さんの言う通りだぜ

多分あいつら負けるぜ」

 

 

突然の声に驚き北上以外が振り返るとそこには猿橋がゆっくりとした足取りで秘書艦の大和と共に歩いてきていた

 

 

「猿橋さん!」

 

 

「ヤッホー、葛城さん石澤さん

いやーラストバトルには間に合ったかな?」

 

 

猿橋は歩いていくと北上の隣に立ちながら戦いを始めようとしている叢雲達を見る

 

 

「どう言うことですか?猿橋さん?

叢雲さん達が負けるかもって」

 

 

「そのまんまだ

あの二人相手だと流石に荷が重い」

 

 

「でも!一人は中破してるし長門はほとんど動いていないけど脚を負傷してるわよ?

あの二人なら行けるんじゃーー」

 

 

「嫌、今の状態なら無理だな」

 

 

「……どうしてですか?猿橋提督?」

 

 

瑞鶴が少し睨みを効かせながら猿橋を見上げると溜め息をつきながら長門の説明をする

 

 

「戦艦の長門

別名正義の戦艦

数々の実績と武勲を持ち幾つもの海域解放と姫級の最大撃破数を誇る実質現在海軍での最強と呼ばれる戦艦

その戦い方は近接砲雷激戦を得意とし物理的にも相手を殴り付けたり恐れを知らぬ戦場を駆ける修羅

正しく化け物だ

そんなのが妹の陸奥とコンビとなるとな……」

 

 

その話を聞いた一同は再び叢雲達の戦っている会場へ向き直ると心配する

 

 

「……大丈夫かな…古鷹さん…叢雲…」

 

 

「大丈夫よ!あいつらは私達に勝ったのよ!

勝ってくれるはずよ!」

 

 

阿武隈が心配していると瑞鶴がそれを励ますが拳を握りしめながら歯を食い縛る

 

 

「そうよ……あの二人なら勝てるはずよ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

叢雲達は猿橋の予想通りかなり苦戦を強いられていた

長門一人か陸奥一人なら何とかなるのかも知れないがそれが二人タッグを組んでおり隙がない

 

 

「どうした!その程度か!!」

 

 

「うっるさいわね!!」

 

 

しかも長門の戦闘スタイルは叢雲と瓜二つではあるが拳や肉体的な戦闘術も覚えており何とか艤装等でカバーしながら戦っていた

(不味いわね…このままだとジリ貧ね……)

叢雲は少し下がり古鷹を見ると合図をだし静かに頷く

 

 

「何をやってるのよ!!」

 

 

陸奥の援護砲撃が来ると叢雲と古鷹は同時に走りだし長門へ向けて主砲を構える

 

 

「二人同時にかおもしろい!」

 

 

長門は主砲を構え叢雲と古鷹に放つとそれを二人は避け長門へ主砲を放つが長門に交わされてしまうが叢雲は古鷹の背後に回り込む

 

 

「ごめんね!古鷹!」

 

 

それと同時に古鷹が少し屈むと叢雲はそれを足蹴にすると宙を舞い長門に空中から主砲を構える

 

 

「相変わらずの連携だな…

だが空中では避けられまい!!」

 

 

長門が主砲を構えるがその動きに合わせて古鷹が長門の左足を正確に撃ち抜きその痛みで体制を崩してしまう

 

 

「ぐ、凄い命中精度だな……

惜しいな」

 

 

「食らいなさい!!」

 

 

体制を崩した長門に対して主砲を直撃させると爆煙が起こりそれにダメ押しで更に追撃をしようとするが空中で首を掴まれ長門に捕まってしまう

 

 

「ぐぅ…あ…んた!!」

 

 

「良い連携攻撃だ

私でなければ致命傷だろう」

 

 

叢雲は捕まりながら右手の雷撃を長門に向けると瞬間的に叢雲を放し拳を握り締め正拳突きを当て吹き飛ばされ水上を何回か跳ねる苦しそうに腹部を押さえる

 

 

「ガハッ!ゴホッゴホ!」

 

 

「叢雲!」

 

 

まともに長門の攻撃を受け咳き込みそれと同時に右手の雷撃を水中に付けると静かに放つ

 

 

「行くぞ!陸奥ダメ押しだ!」

 

 

「分かったわ!!」

 

 

叢雲が苦しんでいると陸奥と長門が同時に仕掛けてきており急いで古鷹が主砲を構えるが叢雲は水面に主砲の当てると自らの姿を隠す

 

 

「古鷹、行くわよ」

 

 

「うん!分かったよ!」

 

 

水柱の中から叢雲が飛び出すと陸奥が一瞬躊躇うが長門は突っ込んでくる

 

 

「叢雲ぉ!!」

 

 

「悪いけどあんたはやっぱり後回しね!」

 

 

長門が主砲を放つが叢雲はそれを交わし長門の艤装に飛び乗ると思い切り蹴飛ばし陸奥へ向かっていく

 

 

「しまった!陸奥!!」

 

 

ターゲットが陸奥になったことを理解し急いで主砲を構えるが後ろから脚を崩され更に首根っこを掴まれ背中から倒されてしまう

 

 

「なっ!貴様古鷹!!」

 

 

「私だってこれぐらいは出来るんだから!!」

 

 

古鷹はそれと同時に主砲を向けると長門もそれに対する様に主砲を構えるがそれを理解していたように古鷹は倒れている長門に張り付き長門の主砲を避ける

 

 

「貴様っ!退け!!」

 

 

張り付いた古鷹を殴ろうとするがそれを受け止めると同時に肩の主砲を長門へ直撃させ爆煙に包まれたのを確認するとその場を離れる

 

 

「長門!!」

 

 

「姉の心配をしてる場合!?」

 

 

陸奥が一瞬油断してしまいその瞬間叢雲が陸奥の脚を蹴り飛ばすと体制を崩しその場に背中から倒れてしまう

 

 

 

「く、この!!」

 

 

「沈め!」

 

 

叢雲はそれと同時に主砲を両方放つと陸奥は爆煙に巻き込まれ少し離れると陸奥が爆煙を切り裂きながら立ち上がる

 

 

「…機関部は…まだ平気よ!

爪が甘いのね!!」

 

 

「どうかしらね?」

 

 

叢雲の表情は少し微笑んでおりそれを見た陸奥は背筋を凍らせると水面下を見るとすぐそばまで魚雷が迫っていた

 

 

「しまっーーー」

 

 

急いで避けようとするが間に合わず脚に直撃し水柱を上げ脚の艤装が爆発を起こし激痛が走る

(痛い……でもまだ!!)

だがそれと同時に前方から叢雲ではない砲撃が迫り陸奥に直撃し後ろに吹き飛ばされる

 

 

「なっ……嘘…でしょ…!?」

 

 

そこには叢雲の影に隠れるように古鷹が砲撃しており見事陸奥に当てていた

その隙に叢雲が突っ込んできており急いで主砲を構えるが間に合わず叢雲は蹴飛ばしながら陸奥に主砲を構える

 

 

「終わりよ、戦艦陸奥

貴女の負けよ」

 

 

「……ごめんなさい長門」

 

 

陸奥が謝った瞬間叢雲がゼロ距離で主砲を二門当てると艤装の耐久が限界を迎え陸奥が爆発を起こしながら水面を転がり倒れると気絶し叢雲が水面に着地する

 

 

「陸奥!!戦闘不能!!」

 

 

陸奥を倒した瞬間疲れからか叢雲から溜め息が出るが古鷹を見ると微笑んでいるのを見ると安堵していると

 

 

「私を忘れるなよ犯罪者共」

 

 

 

その瞬間古鷹が真後ろから砲撃を受け叢雲の方角へと吹き飛ばされ水面を転がる

 

 

「古鷹!!」

 

 

叢雲は古鷹に駆け寄ろうとするが次に叢雲目掛けて何発か砲撃が飛んできておりそれを避ける長門が爆煙を切り裂きながら深く息を吐く

 

 

「やってくれたな貴様ら……

良くも陸奥を……」

 

 

長門は陸奥がやられたことがかなり頭に来ているらしく叢雲達を睨み付ける

叢雲は古鷹に駆け寄ると幸い右腕の主砲だけが破壊されており左の主砲と他の艤装は無事だった

 

 

「ごめん…叢雲……油断しちゃった……」

 

 

「平気よ!後は任せなさい!」

 

 

叢雲は古鷹の前に立ち塞がると長門を睨み付ける

実質叢雲と長門のタイマンが始まろうとしている瞬間大淀から突如判定が入る

 

 

「双方!そこまで!

戦闘を中断してください!!」

 

 

 

 

 





次回

負けない

陸奥を何とか倒したが古鷹が中破そして残る主砲は一門だけそして大淀による判定の意味とは?
長くなってごめんなさい……
切るところわからなかった…





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戦闘中断

「……何故止める大淀」

 

 

「……そうよどうして止めるの?」

 

 

二人は睨み合いながら今すぐにでも戦おうとしているが大淀は冷静に二人を見る

 

 

「誠に申し訳ございません

ですが、この度のルールでして昼戦の時間が終わりましたので試合を中断させて頂きました」

 

 

「何だと?」

 

 

「…時間?」

 

 

二人は主砲を下ろすと会場にある時計を見ると確かに0になっており溜め息をついていると会場全体に恵比寿の声が響く

 

 

「今までより遥かに激熱な試合の中

な、な、何と!昼戦の時間では足らず夜戦の選択時間が来てしまったぁぁぁ!!

ここで夜戦の説明を羽田元帥!お願い致します!!」

 

 

「はい、では御説明させていただきます

今回の大演習会についての夜戦ですがこの会場の全ての電気を落とし上の屋根を開け外と全く同じ光の中で艦娘達には戦って頂きます

尚、途中での補給、艦娘の変更は行われません

そのままで戦って頂きます

夜戦では闇の中での戦闘になりますので皆様は椅子に付いております暗視ゴーグルの着用が必須になります

映像はキチンと処理されていますので映りますのでご安心ください

そして、この夜戦の選択は艦娘

しかも旗艦に決定権があります

さて、現在の状況なら少し小笠原が有利になっていますがどうするのでしょうか?」

 

 

羽田の解説と説明が終わると古鷹はゆっくりと立ち上がり叢雲はそれを支える

 

 

「叢雲、私は大丈夫だからね?」

 

 

「……分かったわ頼むわよ?」

 

 

古鷹を支えている肩をそっと離すと古鷹は左目を押さえながらふらつく

 

         

「では双方このまま夜戦へ移行し戦闘を続行しますか?

それともここで終わりにし判定を待ちますか?」

 

 

大淀の説明を聞くと叢雲と長門はお互いを睨み合いながら口を揃えて大声で叫ぶ

 

 

「「続行!!」」

 

 

 

二人の返事を聞くと大淀がポケットからスイッチを取り出しそれを押すと天井が開きアナウンスが流れる

 

 

『これより夜戦を開始致します

皆様足下にはご注意くださいませ』

 

 

しばらくすると辺りは静寂に包まれながら真っ暗になっているが叢雲と長門は睨み合う

 

 

「何故続行した?

判定勝ちならお前達勝ちなのにな」

 

 

「はっ、決まってるでしょ?

あんたを倒して私達は優勝するのよ

判定勝ちなんて情けないわ」

 

 

「お待たせ致しました!

夜戦の準備が完了致しましたので戦闘を続行してください」

 

 

 

辺りが完全に真っ暗になると周りが見えないほどに暗くなるが未だに古鷹は目を隠し叢雲と長門は睨み合う

 

 

「駆逐艦と重巡の癖に良くもまぁここまで来たものだ

だがここで終わりだお前達は私には勝てない」

 

 

「あら?慢心ね残念だけどあんたは負けるわよ

私達だって勝てる見込みがあるから続行したんだもん」

 

 

 

叢雲が言うと古鷹はゆっくりと左目から手を離すとゆっくりと話し始める

 

 

「…一度失った左目…これはみんなの為に使うって決めたから!

みんなが夜迷わないように!!」

 

 

古鷹が左目を開けると辺りが眩しくなり叢雲は目を伏せながら闇に消え長門は眩しく両手で顔を覆う

 

 

「ぐぅ!何だそれは!

まさか、左目が探照灯(たんしょうとう)になっているのか!?」

 

 

「負けない!皆の為にも!提督の為にも!!」

 

 

古鷹は左目の探照灯で長門を照らしているとあまりの眩しさに目が眩みその瞬間背後から叢雲の砲撃を受ける

 

 

「貴様らぁ!!」

 

 

「悪いけど、どんな手を使ってもあんたを倒すわよ

正義の戦艦長門!!」

 

 

 

 

 

 

 





次回

夜の灯り

古鷹の奇策にたじろう長門
その灯りを頼りに叢雲は長門に立ち向かう

最近やっと誤字の修正方法に気付いた無能がこちら


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夜を照らす灯火

「くそ!見えん!!」

 

 

長門は直接探照灯を当てられ目が眩み手で目を隠すのだがその手を正確に古鷹に砲撃され上手く隠れられていない

しかもその間に叢雲から全方位での砲撃を受け少しずつダメージが蓄積していく

 

 

「夜は私達の方が有利だね!!」

 

 

古鷹が砲撃している間叢雲は少し離れ艤装から棒を取り出すとそれを水中を入れゆっくりと静かに航行する

(確かここら辺よね?)

少しすると棒が何かに当たり水上を良く見るとあるものを確認しその場を離れる

(良し場所は覚えた後は誘導すれば……)

すると古鷹が長門から砲撃を受けているのを確認し急いで戻る

 

 

長門は古鷹の探照灯を受けながらがむしゃらに砲撃するがそれを全て避けながら古鷹は長門の左足を撃ち抜き少しずつだが確実に艤装を破壊していた

(もう少し……長門の視力が戻る前に!!)

 

 

「……一つ聞かせろ貴様は何故戦う?」

 

 

長門の質問に古鷹は思わず砲撃を辞めてはいるが長門への探照灯は消さずに当て続ける

 

 

「お前の事は提督から聞いた

だが、貴様は兵器だ

私も変わらない

それなら貴様が生きている行為自体が海軍にそして世界に不安と裏切り行為をしているのが分かるだろ?

大人しく解体されたらどうなんだ?裏切り者よ」

 

 

その言葉に古鷹は微笑みながら残っている主砲を下ろす

 

 

「……うん、そうだね

私は軍にこの世界には入らない存在だってのは分かってるよ

最初は私だって死ぬことだけを考えてたんだ

正直死にたかった、轟沈したかった、こんな苦しい事が続くなら自沈したかったよ」

 

 

「なら、何故貴様は戦う?

自らを生かすためでは無いのか?」

 

 

長門の質問に古鷹は微笑みながら自らの拳を見ながら強く握り締める

 

 

「違うよ、私は私の事なんてもうどうでも良いの

私が犠牲になれば皆が助かるなら喜んで死ぬよ

でもね、あの時私は提督……佐渡さんと叢雲に救われて言われちゃったんだ

『お前が死ぬのは俺達が許さない

生き続けろ俺と叢雲の為に』ってね怒られたの」

 

 

目を閉じると古鷹の脳裏にはその言葉と二人の怒りと泣いている姿がこびりついている

(そう……私はもう私だけの命じゃないんだ…

あの時私は『二人の(兵器)』になったんだから)

 

 

「だから私は戦う

皆の為に、私を救ってくれた二人の為に全てを賭けて貴女を倒します

貴女が佐渡さんと叢雲の邪魔をすると言うのなら

二人の前に立ち塞がるのであれば」

 

 

「貴女を倒します

私の為ではなく二人の為に

私の全てを尽くして貴女を

邪魔をする貴女を倒して私達は前に進むんだ!!」

 

 

古鷹の想いを聞いた長門は一つの疑問を感じながらもこの艦娘が昔の自分に似ている気がしていた

海軍よりも仲間の為に戦い共に戦場を駆けていたその記憶が蘇るが歯を食い縛る

 

 

「……貴様の思いは分かった

成る程な、貴様らが何故強いのか分かった気がするよ

訂正しようお前達がただの犯罪者だとは思わない

 

だからこそ、私は貴様らを倒し海軍に正義を証明し平和をもたらす」

 

 

古鷹の探照灯に当てられながら長門は深く息を吐くと何もせずに古鷹に主砲を構えると正確に古鷹を捉えるが何とかそれを交わす

 

 

「どうして!?探照灯で見えないはずなのに!!」

 

 

続けて長門は古鷹に主砲を構えるが後ろから叢雲が接近し近接戦をしようとするのだが長門は振り返り叢雲の首を掴む

 

 

「ぐっ……が…な…!!」

 

 

叢雲は何故長門に探照灯が効いていないのか顔を見て初めて気付いたそう長門は眼を瞑り何も見ない状態で叢雲を掴んでいたのだ

 

 

「目が見えないのであれば貴様らが出す音、気配、声で大体の位置を把握すれば良い

舐めるなよ、私は貴様らとは違うのだ」

 

 

すると叢雲をゼロ距離で主砲を構え吹き飛ばそうとするが何とか叢雲は長門の掴みから脱出し距離を取ろうとするが逃げる瞬間腕を掴まれそのまま投げ飛ばされるが何とか着地するが長門はそのまま主砲を構える

 

 

「ヤバっ」

 

 

「撃てぇ!!」

 

 

叢雲は体制を立て直そうとするが先程投げ飛ばされた衝撃で少しふらつき反応が遅れてしまう

(不味い、避けられない!!)

当たると確信した叢雲は急いで主砲を動かし自らを隠そうとするが

 

 

「やらせないよ!!」

 

 

古鷹が急いで叢雲の前に立ち塞がり長門の主砲をその身で全て受け止めるとそのまま爆煙と共に倒れる

 

 

「古鷹!!」

 

 

叢雲は倒れる古鷹を支えると主砲が全て破壊され艤装も使い物にならないほどに破壊され左目の探照灯が少しずつ暗くなりつつある

 

 

「ゲホッゲホ……ごめん…叢雲…

やっちゃった…」

 

 

「馬鹿何してるのよ!私は大丈夫よ!」

 

 

「もう……また…強がって……」

 

 

最早戦えない古鷹は叢雲の頬を優しく撫でると途切れそうになる意識をギリギリまで保ち叢雲に全てを託す

 

 

「私達の……エースを…守る…のが…私の…仕事…だから…」

 

 

「……そうね…ごめんありがと古鷹」

 

 

「ふふ……それで…いいん…だよ…

後は…お願い…叢雲……私達の…邪魔を…する

長門を……倒して…

私のヒーロー…?」

 

 

「…任せなさい、必ずあれを倒して貴女達を守るわ

ゆっくり休んで」

 

 

叢雲の言葉を聞いて古鷹は安心した様にゆっくりと意識を手放すと大淀の判定が入る

 

 

 

「古鷹!戦闘不能!!」

 

 

大淀の判定が入ると同時に叢雲は気絶する古鷹を抱え運びに来た艦娘に手渡し長門を睨み付ける

 

 

「……待たせたわね、正義の戦艦長門」

 

 

「やっと貴様と二人での対峙か

犯罪者 雷撃姫叢雲よ」

 

 

 

 




次回

二人のエース

次回より叢雲と長門のタイマン勝負となります!
仲間と提督の為に戦う者と
己の信念の為に戦う者
勝利はどちらに…

やっとここまで書けた気がする…




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VS 長門

長門と叢雲が対峙すると恵比寿が興奮気味に実況を再び開始する

 

 

「さぁて!この戦いも大詰め!

互いのエース同士の戦いまで追い込まれた!!

だが、舞鶴のエースは我等海軍が誇る最強の戦艦長門!!

対するは先程からアクロバッティックな戦いを見せる駆逐艦叢雲だぁ!

では羽田元帥これはどちらが勝つと思われますか?

私的にはやはり長門の方が有利だと思うですがーーー」

 

 

「分かりませんね」

 

 

「何と!それはどういう意味でしょうか?」

 

 

「正直耐久や火力なら長門が有利かも知れません

ですが、叢雲もかなりの実力者ではあります

彼女は今まで長門には劣りますが戦果を上げています

それに普通なら海軍は艦娘に通り名を付けません

彼女は海軍に実力を認められているのです

だからこそ、どうなるかは私にも分かりませんね」

 

 

恵比寿達が実況している中猿橋達も心配そうに叢雲の事を見ていた

 

 

「ねぇ、叢雲は勝てるよね?」

 

 

「……分からない確かに一体一まで持ち込み長門にはかなりのダメージが蓄積しているが…

相手があの長門だ

正直厳しいとは思うよ」

 

 

「そう言えばさ提督さん?通り名って何か意味があるの?」

 

 

 

「そう言えば……何なんだろうね?

俺もよく知らないや…」

 

 

「おいおい、石澤さん

通り名の意味も知らないのかい?」

 

 

 

瑞鶴が質問すると石澤は首をかしげ頭を悩ませていると会場を見ていた猿橋が振り返る

 

 

「え?猿橋さんは知ってるの?」

 

 

「知ってるも何も……んまぁ良いか通り名ってのは海軍がその艦娘を『強力な切り札』として認めたってことだよ」

 

 

「切り札?」

 

 

その言葉に猿橋と大和以外が首をかしげていると猿橋は会場で睨み合う叢雲達を見下ろす

 

 

「通常、現海軍の上層部はある程度の艦娘なら見捨てても構わないと言われている

俺もその思考は嫌いだがな

その中にも極一部手を出してはいけない艦娘が居る

それが通り名持ちの艦娘だ

実力が海軍に認められ大型作戦への強制参加を条件に解体、雷撃処分を出来ないとされている

普通それは熟練の戦艦や空母位しかそんなものは付かないんだが叢雲は着任してたった二ヶ月で『雷撃姫』と言う通り名がある

今まで、駆逐艦は使い捨ての道具としか見られていなかったのに叢雲にはそれが付いている

歴代駆逐艦の中でも通り名が付いたのはアイツだけだ」

 

 

「確か叢雲は歴戦の戦艦ル級を撃破したって……」

 

 

「あぁ、普通着任二ヶ月で撃破出来る敵じゃない

だからこそイレギュラー、異質、異常

叢雲は通常の駆逐艦と考える事自体間違ってるのさ

……さぁて、雷撃姫叢雲はあれに勝てるのかな?

『過去に囚われ臆病になった正義の戦艦に』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

辺りが暗くなった水上で叢雲と長門は睨み合いお互いに動いていない

叢雲の艤装はまだほとんど傷付いて居ないものの長門の艤装は左足の艤装が黒煙を上げていた

だがその静寂を長門が破る

 

 

「まさか私がここまで追い込まれるとはな

今までの中で初めてだ」

 

 

左足と自らの艤装を触ると砲門を少し動かし動作を確認する

 

 

「あらそれなら私達はいい線行ってるのかしら?

……まぁ倒すけどね」

 

 

お互いそれ以上は話さずに再び静寂が訪れ二人とも無言になっているがしばらくすると長門の左足から電気の様な光が発せられた瞬間叢雲が動く

 

 

「あんたを倒すわ!長門!!」

 

 

 

「来い!最強の駆逐艦よ!その力見せてみろ!!」

 

 

 

 




次回

駆逐艦VS戦艦

次回より長門と叢雲が激突しお互いの気持ちと覚悟を持って戦います


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VS 長門 二

叢雲は主砲を構えると長門へ向かっていくと先に長門が主砲を放ち目の前に水柱が二人の間に上がり眼を眩ませるがその水柱から長門の手が叢雲を捕まえようとするがそれを避け主砲を放つと長門に当たったのか爆煙が上がる

 

 

「やはり簡単には捕まらんか!」

 

 

叢雲の主砲が当たったにも関わらず長門はピンピンしており再び主砲を構えるがその隙に叢雲が距離を詰める

 

 

「喰らいなさい!!」

 

 

「ほう?近接戦か面白い!」

 

 

艤装から棒を取り出すと長門に向け振り下ろすがそれを軽々と弾き次に長門の鉄拳が飛んでくるがそれわ避け主砲を長門に押し当て主砲を放ち距離を取るが

 

 

「……あんたどんだけタフなのよ」

 

 

「ふん、この程度馴れてるわ」

 

 

対する長門は叢雲の主砲を受けているにも関わらずほとんど傷を負っていなかった

 

 

「数多くの深海棲艦と艦娘と対峙してきたが貴様の様に強すぎる駆逐艦は見たこと無い

あの大元帥が認めた程はある」

 

 

長門がここまで叢雲を認めているのには訳がある

実は叢雲が倒したとされる歴戦の戦艦ル級は長門が取り逃し本土に強襲したのを撃破しており間近でその戦いの一部を見ていた

 

 

「実力は折り紙付きに加え貴様はまだ余力を残している

正直戦いたくは無かったぞ」

 

 

「そう、私もあんたとは戦いたくは無かったわ

めんどくさいもん」

 

 

「……何故だ」

 

 

「何がよ?」

 

 

「貴様ら程の実力があれば更に上を目指せるなのに何故堕ちる?

古鷹と言う重巡一人を庇う為に何故貴様も犯罪者となる

アイツは我々の人類の裏切り者だ

あんな奴の為に貴様があの島に行くのはやはり分からん」

 

 

「別にあんたに関係ないでしょ?

それに『あんたも昔なら同じことをしたでしょ』

臆病者」

 

 

叢雲の言葉にピクッと眉間を動かし明らかに機嫌が悪くなり睨み付ける

 

 

「……………誰から聞いた貴様」

 

 

「『ある親切な情報通』からね

あんたが強さと海軍の正義に執着するのが何故か気になってね

あんたの過去を聞いたわ

道理で私を欲するわけよね」

 

 

「………そうかそれなら尚更貴様を手に入れなくてはいけないな!!」

 

 

長門は主砲を叢雲に向けて放ち距離を詰めようと走り出すが叢雲もそれを避け主砲を構え長門の左足に向けて砲撃を放つ

 

 

「あんた!昔はそんな通り名無かったんでしょ!?

何でそんなに正義へこだわるのよ!!」

 

 

叢雲の砲撃を交わし自らの主砲を放つが叢雲はそれを簡単に避け棒で殴ろうとしてくる

 

 

「知れたことを!我々は兵器であり人間に海軍に尽くすのが当然の義務だ!!

貴様こそ!何故あの仲間と男にこだわる!

貴様、昔言い寄られた時に大将に艤装を構えたと聞いたぞ!!」

 

 

振り下ろされた棒を腕で弾き回り蹴りを叢雲に当てるがそれを受け止め叢雲は宙を舞いながら主砲を長門へ当て二人は爆煙に包まれる

 

 

「私はね!アイツ以外に従う気はないのよ!!

そもそも海軍自体好きじゃないし!

あんたの『妹を見捨てたのは海軍じゃないの』!?」

 

 

 

「黙れぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

爆煙の中長門は叢雲を捕まえると降り回し水面に叩き付けると同時に足で思い切り踏みつけようとするが何とかそれを転がりながら避ける

 

 

 

「見捨ててなんかいない!!あれが最良の選択だ!!」

 

 

「なら!何であんたは今正義を振りかざし深海棲艦を根絶やしにしようと死にかけてでも戦うのよ!!」

 

 

「決まっているだろ!

奴等は我等の…私の仇だ!!

全員誰一人残らず皆殺しにして『妹の弔い』にしてくれるわ!!」

 

 

長門はほぼ近距離で叢雲に主砲を放つが何とか避け体制を整えようとするが長門の鉄拳が叢雲の腹部を捉えそのまま吹き飛ばされる

 

 

「ゲホッゲホ……あんたの正義って何よ!

復讐があんたの正義なの!?」

 

 

「違う!!私は全ての深海棲艦を殲滅することだ!!

そして、それに繋がる危険性の有るものは全て排除してくれる!!!

貴様らも例外ではない!!

『深海と繋がっている』貴様らを倒し!私は正義を全うする!!」

 

 

叢雲と対峙しながら過去を刺激された長門の脳裏に今とは違う過去の自分を思い出す

今とは違い同じ艦娘に寄り添い海軍の正義と共に戦い仲間と戦場を駆け抜けそして

全てそれが意味がなかったと思い知らされた昔の話

 

 

 

 

 




次回

正義

次回は長門の過去編になります
大本営襲撃事件の長門目線で書いていきたいと思います!




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戦艦長門 ー過去ー

私は気が付いたらどこかの部屋に居た

周りには小さな人間の様な者が私を見上げている身体の周りには幾つかの武器があり何だか分からなかった

(…どこだここは?私は……誰だ?)

疑問に思っていると近くの小さな人間が私の事を説明してくれた

自らが戦艦であり艦娘と呼ばれる存在であり戦艦であったときの話等を聞かされた

(確かに……そんな記憶が無いことも…無いな)

曖昧な記憶を頼りに思い出そうとしていると再び説明される

そして、ここは鎮守府と呼ばれる提督が仕切る海軍基地であることも伝えられると扉が開かれる

 

 

「おぉ!やっと来てくれたか!!」

 

 

目の前に居る初老の男性が私を見るや否や喜び

反射的に私は自らの名前を名乗る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が戦艦長門だ、よろしく頼むぞ

敵戦艦との殴り合いなら任せておけ」

 

 

「よろしく頼むぞ!長門よ!」

 

 

そう言うと初老の男性は私に手を差し出し握手を交わす

初老の男性は提督だった

提督は私達をまとめあげ戦場へ送り出し様々な事をしていること自らの存在理由等を説明してくれた

そして現在の戦況と敵の情報を教えてくれた

 

 

「ーーと言うことだ、戦況として若干優勢ではあるが向こうも新手の敵が増えつつある」

 

 

「成る程、深海棲艦と呼ばれる我々の敵…か」

 

 

私は写真を見ながら自らの敵を見ているが何とも言えない感じには包まれた

何か近いと言うよりは……類似していると言うか…

 

 

「なぁ、提督よ」

 

 

「どうした長門?」

 

 

「……こいつらは何故我々の敵なんだ?」

 

 

「そうだな、奴等は海上を支配しあまつさえ人間達を襲い殺している

向こうにも理由はあるのかも知れないが奴等とは対話何てものは出来ない

だから敵なのだ」

 

 

「成る程、分かった

なら私はコイツらを倒せば良いのだな?」

 

 

「あぁ!期待しているぞ長門よ!」

 

 

提督の真っ直ぐな眼を見ているとそれが正しいことだと思い私は提督の指揮に従い多くの深海棲艦を倒し戦い続けた

 

 

「ふぅ、こんなもんか……

提督終わった帰投する」

 

 

『了解、良くやった気を付けて帰ってこい』

 

 

 

海上で戦いを終え艦隊から少し離れてしまい戻ろうとすると真後ろで主砲を構えリ級が睨んでいた

(……コイツらは本当に悪なのだろうか?

確かに私達を唯一殺せる敵ではあるが…)

長門が悩んでいるとリ級が後退りをしているのを確認すると長門も主砲を下ろす

 

 

「……?」

 

 

「…貴様らと対話出来ないことは分かっている

だが戦う意思がない者と戦うのは私のプライドが許さん

私は『敵を見てはいない怯えている似たものを見た』

次、我々に挑むなら容赦はしないぞ」

 

 

 

長門の言葉を理解したのかそれとも長門からただ逃げたい一心だったのかリ級は全速力で長門から離れるとしばらく海上を走ると海に潜っていく

(……そう、次に私達の敵になるなら容赦は…しないからな)

 

 

そして長い月日がたった頃私はすっかり鎮守府の生活にも馴れ新しい海域の解放や多くの姫級鬼級を撃破していき仲間とも絆を深めながら成長していった

自らの正義と志を胸に秘めながら

 

 

ある時提督に呼び出され私は大本営に向かい二人の大元帥に出会った

 

 

「やぁ、君が戦艦長門かい?

噂は聞いているよ

多くの深海棲艦の撃破と海域の解放お見事だ」

 

 

「いえ、勿体ないお言葉です」

 

 

「あはは、やめてくれ私何かにそんな敬語なんて」

 

 

「馬鹿野郎、普通上の位の奴には敬語使うだろうが」

 

 

 

大元帥はとてもお優しい方だった

当時私は二人の大元帥と出会い知り合っていた

一人は力と絶対的な正義を振りかざす 東雲大元帥

一人は仲間と絆を大事にする 如月(きさらぎ)大元帥

二人は対照的ではあるが私は二人を尊敬していた

 

 

「大元帥、この度我々を呼び出した目的とは?」

 

 

「あぁ!すまないね、実は長門にある称号を受け取ってほしいと思ってね」

 

 

「称号?」

 

 

すると如月は長門の前に立つと手を取ると優しく微笑む

 

 

「戦艦長門、我々は君にある通り名を付けることにした

貴殿の類い稀なる才能と実力を認めその志に敬意を表し

 

 

 

 

 

『正義の戦艦』と言う通り名を授けよう」

 

 

 

 

すると提督は喜び東雲と後ろに居た矢矧は拍手をしていた

その時は凄いものとしか思わず私は素直に受け取った

 

 

「…ありがとうございます、如月大元帥

有り難くその名を頂きます」

 

 

 

この事を仲間や皆に伝えると驚きと喜ばれ私は褒められた

そして、通り名の意味を教えられ私自身も喜んだ

(…認められたのか…私は海軍に…仲間に…大元帥に…間違っては無かったのか…)

 

 

こうして私は名実共に『正義の戦艦』として海軍に名を馳せた()

 

 

これからも仲間を守り海軍の為に働き必ずこの世界の戦争を終わらせたいと思いながらそれと同時に

深海棲艦と対話出来ないものかと思っていた

 

 

 




次回

仲間

今回しれっと出てきた如月大元帥
現在の時間軸には存在していないですが今後書いていきたいと思います



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戦艦長門 ー過去ー 二

そして、しばらく立ったある日最悪の事件をを提督から聞かされた

 

 

「何だと!横須賀鎮守府が落とされた!?」

 

 

「あぁ……私も先程聞かされた…

艦娘はほぼ全滅、提督も殺された模様だ…」

 

 

「そんな……何故だ!あそこまで強い鎮守府は無いだろ!?」

 

 

横須賀鎮守府襲撃事件

当時横須賀鎮守府にはかなり強力な艦娘大和と武蔵の二枚看板で知られ他の鎮守府より逸脱していた

それに私の友大和と武蔵が心配だった

 

 

「武蔵が……轟沈した?嘘なのだろ!提督!!」

 

 

「……事実だ」

 

 

そして、私は事件の現場に行ったが悲惨な状態だった

横須賀の鎮守府は破壊されそこら辺には艦娘の遺体や破壊された家屋

負けるとはこの様な事を言うのだとゾッとした

 

 

「何故だ……何故武蔵程の艦娘が…」

 

 

私より強い艦娘であり衝突こそするが戦友として認めお互いを高めあっており酒を飲み交わしていた友の死を受け入れきれ無かったがそれでは武蔵に見せる顔が無いと思い私は気丈にも振る舞った

(必ず貴様が目指した平和を実現するからな…

待っててくれ武蔵、全てが終わったら私も向かうからな)

 

 

 

だが幸いな事に大和だけはどうやら無傷で生き残っており当時は横須賀を裏切ったとされていたが状態が酷くそれはすぐに有り得ないとされた

 

 

「大和……私だ…

話をしないか?」

 

 

「…………ごめんなさい…

放って置いてください………

今は誰とも会いたくないの………」

 

 

今まで明るかった心を閉ざし塞ぎ込み尋問するにも何も話さず泣き続けるだけであり彼女はその事件を知る唯一の証人であるため海軍も手を出せなかった

それを皮切りに多くの鎮守府が深海棲艦に落とされ戦争は激化した

そして、私は自らの無力差を知らされた

気丈にも振る舞っていたがある時限界が来てしまい一人溜め息をついていた

 

 

 

「………はぁ…」

 

 

「どうしたのよ?長門らしくないわよ?」

 

 

 

「陸奥……」

 

 

そんなとき私を支えてくれたのは陸奥、妹だった

武蔵を助けられず大和の心を開けず落ち込んでいるといつも私の為に色々としてくれた

気晴らしにと美味しいケーキ屋に連れてってくれたりご飯を食べに行ったり温泉に行ったりや様々な事をしてくれた

仲間もそれを気遣い色々としてくれた

 

 

「すまない皆……世話をかけたな…」

 

 

「何言ってるのよ!長門さんが落ち込んでるとこっちも暗くなるだけだからよ!」

 

 

「もう!そんなこと言って、本当はいつも助けてもらってる長門さんにお礼がしたいだけでしょ?」

 

 

皆が私を励ましてくれて嬉しかった

私はこんなにも恵まれていたと実感させられそれを守らなくてはと心底思った

 

 

「長門、困ったりしたときは私達も頼ってね?

貴女は一人じゃないんだからね?」

 

 

「…あぁ、すまないな陸奥

心配かけたな」

 

 

自分は一人ではないそう妹の陸奥に教えられ私はより一層頑張り仲間を守ると心に決めた

私の正義は仲間を守り世界を平和にし皆が笑顔になるように頑張ると言うことだった

提督の為に海軍の為に戦争が終われば全てが救われると思っていた

その為なら喜んでこの命捨ててくれる

 

 

「歴戦種?」

 

 

 

「あぁ、この前横須賀を襲ったある姫級だそうだ

何でも通常の姫より遥かに強く通常とは格が違うそうだ……」

 

 

歴戦種

それは横須賀鎮守府を襲った化け物の正体だった

通常の姫級達とは違い火力、装甲共に桁が違うほどに強く化け物とされている

それが…横須賀を武蔵を…殺した犯人にして深海側の奥の手なのだろう

横須賀にはかなりの艦娘が在住していたにも関わらずその者が指揮し壊滅させた

いつか戦うのだとは思っていた

 

 

如月大元帥から全鎮守府に通達が入る

それは深海棲艦の本拠地を捉えたと言う話だ

私達の最後とされる戦いが幕を開き私達も多くの被害を出したが勝利した

しばらく海上には深海棲艦が姿を現さず全ての海域が解放された

 

 

 

そして、月日が流れた頃海軍より私達に終戦が伝えられた

皆やっと終わった戦争に歓喜し私もやっと肩の荷が落ちた気がした

(終わったのか……戦争が)

 

 

 

長い長い戦争が終わり艦娘達は戦いの無い世界を夢見ながらどうするかを話し合い私も陸奥と全てが終わりその世界でどうしようかを相談していた

 

 

「陸奥はどうするんだ?」

 

 

「そうね……私はしばらくは海軍に居ようかしら?」

 

 

「ほう?何故だ?」

 

 

「深海棲艦が居なくなったとは言えど私達にしか出来ない仕事もあるしね?

それが全て無くなったら……その時考えるわ」

 

 

「そうか…なら私も海軍に残ろうかな」

 

 

「駄目よ!貴女はあの人と一緒になりなさい?」

 

 

「なっ!あ、アイツは違う!

あの男はただ気が合うだけの友人だ!!」

 

 

陸奥が言うあの男とは唐澤と呼ばれている大本営勤務の提督である

かなり優秀で何度か会い話していると気が合い最近では良く約束をしては出掛けているため勘違いしているらしい

 

 

「あら?違うの?二人ともお似合いだと思うわよ?」

 

 

「馬鹿を言うな!私は戦いの中で生きてきたのだぞ!恋とかそう言うのは似合わない!」

 

 

「そんなこと無いわよ!貴女だって普通の女の子何だから!」

 

 

「だ、だがしかし……

こんなゴリラ女何てのを……」

 

 

「なら!今からでも間に合うわよ!

ほら、色々教えてあげるしそれに」

 

 

「それに?」

 

 

「貴女には幸せなってもらいたいわ

私達をずっと守ってくれたんだもん

姉の幸せを願って悪いかしら?」

 

 

「……卑怯だぞ、陸奥…

分かった…頑張ろう」

 

 

「その行きよ!正義の戦艦様!」

 

 

この時の陸奥の笑顔は忘れない

満面に笑みを浮かべ私の幸せを願ってくれる素晴らしい妹に恵まれ私達は最後の仕事大本営近海の警備任務に着いた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう……最後の任務になるはずだった……

あの悪夢が…化け物共が来なければ…

 

 

 




次回

絶望

そして、長門の心には影と鬼が潜む
自らの無力差を知らされ打ち砕かれた正義と共に



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戦艦長門 ー過去ー 三

「平和だねぇ……」

 

 

「油断しないの!お馬鹿!」

 

 

隣に居る皐月(さつき)が、近くに居た霞に頭を殴られ少し涙目になっている

 

 

「でも、本当何もないわ

最後の任務だけどね」

 

 

「ま、あったら困るんだけどよ?

にしても最後まで任務とかめんどくせぇな!」

 

 

雲龍(うんりゅう)と摩耶が話しているが私は何があっても可笑しくないと思ってはいるが少し気が緩んでは居た

 

 

「あ!そう言えばこの戦争が終わったら長門結婚するんだって!!」

 

 

「「「「何ですってぇ!?」」」」

 

 

「ちょ、こら!陸奥!」

 

 

陸奥の余計な一言が原因で私に皆が集まり騒ぎだす

 

 

「いつ!いつなんだい!

長門さんが結婚なんて僕聞いてないよ!?」

 

 

「そうよ!長門さん結婚なんて聞いてないわ!

誰よ!貴女を落とすほどの男性なんて普通じゃないわよ!!」

 

 

「ま、待て!まだ結婚するなんて決まってなーーー」

 

 

「まだ?と言うことは結婚はしたいの?」

 

 

「長門!お前そんなの居たのかよぉ!!

あー、羨ましいぜ!!」

 

 

私が囲まれ焦っていると陸奥が後ろでウフフと笑っておりギリッと睨み付けるとそっぽを向きながら口笛を吹いている

 

 

「でも長門さんが結婚かぁ……

おめでと!長門さん!」

 

 

「…え?」

 

 

「そうね…いつも私達の事ばかりで自分の事は何もやらないからそう言うの心配してたのよ

なぁんだ心配して損したわ」

 

 

「うん…長門はいつも自分より人を助けようとするもんね」

 

 

「だな、あたしも何回も助けられてるしなぁ

長門には幸せになってほしいぜ!

あ、何か私達にやれることあるか?何でも言ってくれ!手伝うからよ?」

 

 

 

「…皆……」

 

 

「ふふ、やっと気付いたかしら?」

 

 

皆の言葉に感動していると陸奥が後ろから抱き付くと耳元で囁く

 

 

「皆、貴女を大切にし信じ、そして心配していたのよ?

これでようやく分かったかしらね?」

 

 

「あぁ……だからと言って!勝手に話すのを許す訳じゃないぞ!!」

 

 

「痛い痛い!ちょっと長門!鼻を摘ままないでよ!!」

 

 

私は陸奥の鼻をつまみながら怒っていると他の四人が笑っており少し向こう側から別の艦隊がやってくる

 

 

「お疲れ様です!長門さん!」

 

 

「おう、お疲れ吹雪」

 

 

吹雪が率いる別の艦隊も集まり海上の警戒を起こっていたが私の結婚の話が上がりその場は非常に盛り上がり思わず溜め息を出しながら陸奥を睨み付けると隣でずっと手を合わせて謝っている

 

 

「全く……今日だけだぞ?」

 

 

「さっすが長門!よ、正義の戦艦様!」

 

 

「やはり許さん」

 

 

「ちょ!何でよぉ!?」

 

 

必死に謝る陸奥を他所に微笑みながら今ある光景を見て戦争が終わるのだなと実感しながら大本営の行事が終わるのを待っていた

(結婚か……まだ付き合っても居ないのだがな…

だが、してみたいものだな…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、その気持ちは爆音と共に裏切られる

突然上がった爆音を聞き付けた私達は内地を見る

すると先程まで無かった深海棲艦の艦載機が内地から空に上がって行くのが見え絶句する

 

 

「雲龍!!」

 

 

「待って!艦載機をこっちにもどーーー」

 

 

私が雲龍に指示を出すと全員がその爆煙を見ながら狼狽え主砲を構える

 

 

「嘘だろ!何で内地に深海棲艦が!?」

 

 

「ねぇ、あそこって大本営じゃない!?」

 

 

「おいおい!どうなってるんだよ!!

深海棲艦は全滅したんじゃないのかよ!!」

 

 

大本営から上がる黒煙と爆音に焦り陸奥を見ると主砲を構え私を見ており頷く

 

 

「狼狽えるな!私達は内地を見てくる!

お前達はここで海上から来るであろう深海棲艦を見ていてくれ!!」

 

 

「待って!長門!!」

 

 

その意見を意義申し立てる様に雲龍が叫び皆とは逆方向の海上を見ながら冷や汗をかきながら睨んでいた

 

 

「何だ!雲龍!」

 

 

私は恐る恐る話す雲龍の言葉を待ちそして聞いた瞬間に思わず絶句し絶望した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「海中より深海棲艦多数浮上!

中には姫級や鬼級も多く存在しこちらに向け進行中!!

その数おおよそ300!!」

 

 

「嘘だろ!」

 

 

「一体何処にそんな艦隊を!?」

 

 

雲龍の言葉に海上を睨み付け目を凝らすと確かに水平線の向こう側から埋め尽くすように多くの深海棲艦がこちらに向かってきている

 

 

「くっ……先にこっちか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

深海棲艦の大艦隊の中心には一人の空母が無表情で杖を海上に付きながらその全艦隊を操っていた

 

 

「……あまり気乗りはしないが

見せてもらうぞ艦娘達よ

おまえ達の足掻きを」

 

 

 




次回

大本営襲撃事件

迫り来る深海棲艦の大艦隊
今までの規模を大きく越えたその怪物達は全てを蹂躙する




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戦艦長門 ー過去ー 四

「吹雪!!そっちは!?」

 

 

「だめです!全く数が減りません!!」

 

 

私と吹雪達は襲い来る深海棲艦達を相手にしていたが通常より遥かに多い深海棲艦に苦戦を強いられていた

最後の決戦時より敵が多くそして連携を取りながら我々を攻め続けていた

 

 

「チクショウ!戦争は終わりじゃないのかよ!!」

 

 

「っ!皐月避けて!!」

 

 

皐月へ向けてル級が主砲を放つとそれを避けようとするがそれでも逃げ切れずに少し被弾してしまう

 

 

「ぐ……まだまだ!」

 

 

「でも……流石に…キツイ!」

 

 

「だからって負けるわけにもいかねぇんだよ!!」

 

 

皆が戦っている中私はその後ろに待機している姫級に目を向けており冷や汗をかいていた

(様子見なのか?それとも戦う意思がないのか?

どちらにせよ先に倒さねば!!)

待機しているのは戦艦棲姫 戦艦水鬼 軽巡棲鬼 中間棲姫 重巡棲姫がそれぞれ一体

駆逐古鬼が二体と言う編成に何か後ろに待機しておりそれを守っている

 

 

「陸奥!ここを任せるぞ!!」

 

 

「ちょっと長門!?」

 

 

私は仲間に後ろを任せ深海棲艦の群れを突っ切るが何体かは邪魔をして来る深海棲艦を片っ端から薙ぎ倒し姫級達に向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良い光景だねぇ~

でも私達待機で良いの~?」

 

 

「命令よ、私達はクイーン達の帰りを待つだけ

その間艦娘を出来るだけ弱らせておくか殺せってね」

 

 

「じゃあめんどくさいから殺そうよ~?

そっちの方がクイーンも喜ぶんじゃないの~?」

 

 

中間棲姫の両隣で二人の駆逐古鬼が騒いでいると目の前から深海棲艦の群れを突っ切りこちらに走ってくる一人艦娘が見え駆逐古鬼が指を指す

 

 

「あー!何か来たよー!殺して良い?殺して良い?」

 

 

「戦艦が来たよー!撃沈して良い?撃沈して良い?」

 

 

二人が騒いでいるのを頭を抱えながら溜め息を付いていると後ろに居る空母に許可を求める

 

 

「監視者、許可を頼む」

 

 

「……まぁ良いだろう

フウ、ラン

あの戦艦を倒せ」

 

 

空母、監視者に命じられたフウ ランと呼ばれた駆逐古鬼はニヤリと笑いながら主砲を構えると勢い良く前に出ていく

 

 

「ヤッホー!戦いだぁ!!ラン!ぶっ殺すよ!!」

 

 

「オッケー!フウ!撃沈してやるわ!!」

 

 

フウと呼ばれた髪飾りが風鈴の形をした駆逐古鬼とランと呼ばれた白い蘭の髪飾りをしている駆逐古鬼が長門に迫る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「駆逐古鬼か!貴様ら何ぞ相手にならんぞ!」

 

 

「へぇ!余裕そうだね!戦艦さん!」

 

 

「へぇ!余裕そうだね!黒い戦艦さん!」

 

 

「なっ!貴様ら私の言葉が分かるのか!?」

 

 

私は明らかに違う二人に身構えていると二人の艤装を見ると片方が右半分に艤装があり片方が左半分に艤装が付いており私に砲門を向ける

 

 

「くっ!それでも悪いが退いてもらうぞ!」

 

 

「あら?私達を殺せるかしら?」

 

 

「あら?私達を撃沈出切るのかな?」

 

 

瞬間私の目の前で二体の駆逐古鬼が艤装の無い手を取るとお互いを振り回し片方を私に投げてくる

 

 

「あはは!貴女があれのリーダーかな!!

ぶっ殺してあげるね!!」

 

 

「かかってこい!」

 

 

私が主砲を構えようとした瞬間駆逐古鬼の真後ろから砲撃が飛んできており私に直撃すると爆煙を上げる

 

 

「ぐぅ!何だこの火力は!?」

 

 

その砲撃は今まで受けた砲撃の中でもかなり強力で私は思わず体制を崩してしまうが

 

 

「何それ!私を舐めてるの!?」

 

 

続けて目の前に迫っていた駆逐古鬼が主砲を押し当て私に直撃させると再び爆煙と共に吹き飛ばされると続けて駆逐古鬼の回し蹴りが私を直撃し吹き飛ばされる

 

 

「ガハッ!ゴホッゴホッ……」

 

 

「あはは!脆すぎだよ!戦艦さん!」

 

 

「あはは!弱すぎだよ!黒い戦艦さん!」

 

 

 

駆逐古鬼の攻撃が溝尾に入り苦しんでいると目の前に二人の駆逐古鬼が迫りお互いの主砲を合わせると私に向け砲撃してきておりそれを避けきれず直撃すると更に吹き飛ばされ爆煙を纏いながら海上を転がる

 

 

「長門!?」

 

 

「何だ!あの駆逐古鬼!?」

 

 

後ろからは皆の心配する声が聞こえるが身体中が痛みそれどころではない

目の前に見える駆逐古鬼は二人手と身体を合わせながら喜んでいる

 

 

「この戦艦大したこと無いね!ラン!ぶっ殺しちゃお!」

 

 

「この戦艦見た目だけだね!フウ!撃沈させちゃお!」

 

 

お互いをフウ ランと呼び合う目の前に駆逐古鬼を睨み付けると何とか立ち上がり主砲を構える

 

 

「貴様ら……何者だ!?

普通の深海棲艦ではないな!?」

 

 

「うん?何か戦艦が言ってるねラン?」

 

 

「フウ、こいつは私達の事を知りたいんだよ

自己紹介は大事って『あの人』も言ってたし名乗ってあげよ?」

 

 

「むぅ、めんどくさいけどまいっか

どうせ殺すんだけどさ」

 

 

 

目の前の駆逐古鬼は主砲を下ろし少し離れると頭の髪飾りが見えるように私に突き出す

 

 

「初めまして!戦艦さん!私の名前はフウ

見分けるポイントは右手の主砲とこの風鈴の髪飾りだよ!」

 

 

「初めまして、黒い戦艦さん!私の名前はラン

見分けるポイントは左手の主砲とこの蘭の髪飾りだよ!」

 

 

フウとランと名乗るこの二人は恐らくただの深海棲艦ではない

もしかしたら対話が可能な深海棲艦なのかと思いながらも主砲を下ろそうとするが

 

 

「ちょっとー!何主砲を下ろしてるのさ?

まだ戦いは終わってないよー?」

 

 

「ちょっとー!何主砲を下ろしてるのさ?

戦いはこれからだよ?」

 

 

「辞めろ、私は無闇な戦いは好きじゃないんだ

交渉をーーー」

 

 

私の言葉を聞いたフウとランは大声で笑いながら私に主砲を構えると睨み付ける

 

 

「あはは!お前馬鹿なのか?この状況で交渉?私達の方が有利なのに?

それに私達は交渉とかしないしお前を殺すだけだよ?」

 

 

「あはは!貴方はお馬鹿さんなのかな?こんな状況で交渉する余地なんてないよ?

私達は艦娘と仲良くなんかしないし撃沈するだけだよ?」

 

 

「「だってお前らが私達の仲間を殺して(撃沈して)いるのに何で和解なんて出来ると思ったの?

私達はお前達を根絶やしにしてやるんだからね!!」」

 

 

二人は怒りと憎悪そして憎しみが混じった目を私に向け殺意を剥き出しにしており交渉は不可能と思った

(やはり……和解は出来ないか!!)

そう思い戦いを続行しようとした瞬間後ろから轟音が響き渡るとフウとランは主砲を下ろす

 

 

「あーあ、残念時間切れか……

もう少し殺し会いたかったな」

 

 

「あーあ、残念時間切れか……

こいつを撃沈したかったな」

 

 

「「クイーンが帰ってきちゃったかぁ」」

 

 

フウとランが呼んだクイーンとは誰なのか全く分からなかったが後ろを振り向くと陸上からある二人の深海棲艦がゆっくりとこちらに向かい歩いてきていた

 

 

 

「あらぁ?まだゴミが海上に浮いてるわねぇ?

ちょっとカナ?ここで本当に合ってるの?」

 

 

「合ってるわよ、方向音痴

ほら向こう側に皆が見えるでしょ全くめんどくさい」

 

 

 

「あら、本当ね?じゃあ皆の所に戻る前に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「海上の掃除(殲滅)をしましょうか?」

 

 

陸上から現れたのは横須賀鎮守府を壊滅させた歴戦の姫級

南方棲戦姫だった

 

 

 

 




次回

儚き思い

次回、最強と呼ばれた南方棲戦姫の実力が明らかにっ!
そして長門が経験した最大の地獄が幕を開く



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戦艦長門 ー過去ー 五

今回、グロが含まれます!
ご注意ください








陸上から現れたその二体の姫級に艦娘達が全員恐れていると飛行場姫が欠伸をしながらその真ん中を通り抜けていく

 

「私はパース、クイーンよろしく~

あー…早く帰ってポテチ食べたい」

 

 

全員が手を出せずに困っていると静かに吹雪が主砲を構えると飛行場姫の頭目掛けて砲撃するが飛行場姫はその砲撃を避けると吹雪を指を指す

 

 

「下手くそ、奇襲を狙うならもう少し気配と音を消しなさい

ま、どうせ死ぬんだから関係ないアドバイスだったかしら?」

 

 

その、砲撃を皮切りに陸上に居た南方棲戦姫が走りだし跳躍すると吹雪の後ろに降り立つ

 

 

「あっらぁ?まずはこのちっこいのからかしらぁ?」

 

 

「ヒッ!このっ!」

 

 

吹雪は恐れながらも主砲を後ろに降り立った南方棲戦姫に当てると爆煙に包まれるがそれを切り裂き南方棲戦姫は吹雪の頭を鷲掴みにする

 

 

「へぇ?戦う意思は残ってるのぉ?

良いわねぇ……そう来ないとねぇ!!」

 

 

「あぁぁぁぁ!!」

 

 

南方棲戦姫は吹雪を掴んでいる手に力を入れるとミシミシと音を立てながら吹雪の頭を破壊しようとしてきており何とか離れようと吹雪は主砲を放し南方棲戦姫の腕を叩く

 

 

「その手を!!」

 

 

「放しなさい!!」

 

 

吹雪が苦しんでいると両端から同じ艦隊の叢雲と霧島が南方棲戦姫を挟撃するが南方棲戦姫はもう片手で霧島を掴むとそのまま向かいの叢雲に叩き付ける

 

 

「ガハッ!」

 

 

「叢雲!ごめんなさい!」

 

 

謝る霧島を未だに掴むと吹雪の手を放しその手にある主砲をゼロ距離から霧島に砲撃する

 

 

「グハッ……」

 

 

「霧島!!」

 

 

「あらぁ?まだ終わらないわよ!!」

 

 

次の瞬間霧島の腕を思い切り掴むとそのまま海上に叩き付け頭を踏みつけると主砲を向ける

 

 

「やらせないわよ!!」

 

 

叢雲がそれを防ごうとするが南方棲戦姫はその頭を掴むと霧島の上に叩き付け飛び上がると両腕の主砲を撃ち放つと再び海上に着地し爆煙の中から叢雲の頭を掴み持ち上げる

 

 

「こ……の…!!」

 

 

「ねぇ?知ってる?

艦娘でも頭は割れるのよ?」

 

 

その言葉に意味が分からないでいると南方棲戦姫が握り締める力を強めることでそれを理解する

 

 

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!

だずげでぇ!!!」

 

 

叢雲は痛みに苦しみ暴れているがその光景が恐ろしくほとんどの者が動けなくなっており痛みが引いた吹雪がそれを止めようとする

 

 

「叢雲を!離せぇぇ!!!」

 

 

吹雪の撃った砲撃は南方棲戦姫には当たらず片手で掴んだ叢雲に砲撃をぶつけると無理矢理にガードすると更に握り締める力を強くしていくと

 

 

「……死ね」

 

 

「た……助けっ!!」

 

 

グシャと言う音と共に叢雲の小さい頭が南方棲戦姫の手の中で潰れると先程まで暴れていた叢雲の身体が糸を切れた人形の様にぶらんと下がりそのまま手を離すと海上に頭が潰れた遺体だけが転がった

 

 

「嘘……叢…雲?」

 

 

先程まで助けを求め暴れていた妹の変わり果てた姿を見た吹雪は絶句しその場に座り込んでしまい

南方棲戦姫は高笑いを浮かべている

 

 

「アハハハハハハ!!!やっぱり艦娘の頭を潰すのは楽しいわねぇ!!

それに駆逐艦は簡単に破壊できるから本当に楽しい!

さてと……じゃあ他の奴等も殺しちゃおうかしらねぇ?」

 

 

南方棲戦姫の行動に恐れを抱き他の艦隊も急いで主砲を構えるがそれと同時に南方棲戦姫が動き始める

その光景こそ正に地獄だった

命乞いをする艦娘の頭を持ち上げ、空に投げると両手の艤装で的当ての様に楽しみ

 

逃げようとする者の脚を撃ち抜き、這いずる背中を踏みつけ頭を砕き

 

怯え戦う者に砲弾を弾きながらゆっくり近づき四肢を一つずつちぎる

泣き叫び、悶え苦しむ仲間達を嘲笑う

仲間達も砲撃や雷撃で応戦するが圧倒的に実力の違いを見せつけられ私は南方棲戦姫に向かっていく

 

 

「辞めろぉぉぉぉ!!!」

 

 

「ねぇ?ラン、あれ殺さなくて良いの?」

 

 

「クイーンが来たなら攻撃停止が命令だからね

後はクイーンに任せよ?」

 

 

私が南方棲戦姫に向かっていくと駆逐古鬼からの追撃が止まるがそんなことよりも南方棲戦姫の行動が許せず激突する

 

 

「あら?少しはやるやつかしらね?」

 

 

「貴様!よくも仲間を!!」

 

 

「はぁ?あんたたちも私の仲間を殺してるでしょ?

何言ってるのよ」

 

 

南方棲戦姫に主砲を突き付け放つが南方棲戦姫は物ともしておらずそのまま腕を掴まれると海上に叩き付けられると同時に両腕の主砲を構える

(不味い!!)

そう思い急いで避けと南方棲戦姫は両腕を前後に動かすと私に向け連続で主砲を当ててきており何発かは避けるのだが一発被弾してしまいそれが原因でふらつくとそれを皮切りに南方棲戦姫の主砲を全弾その身で受けてしまう

 

 

「ガッハ……」

 

 

「アハハハハ!避けられると思ったのかしらぁ!?」

 

 

私は全弾直撃しほとんど動けないほどにボロボロになっていると南方棲戦姫に頭を掴まれると持ち上げられる

 

 

「へぇ?あの連続砲撃で生きてるんだ?

アハハ、あんた面白いわねぇ!」

 

 

「貴……様!」

 

 

私は南方棲戦姫を睨み付けるとその手を離し頭を踏みつけると嘲笑い主砲を私に向ける

 

 

「でも、邪魔死んで」

 

 

「こ…こまで…か…」

 

 

他の仲間を見てもほとんどが怯え数も減っており正直この化け物に勝つ手立てが無く目を閉じると南方棲戦姫が爆発を起こす

 

 

「あぁ?」

 

 

「長門から離れなさい!!」

 

 

私を救ってくれたのは陸奥だったボロボロになりながら他の仲間達も主砲を構え南方棲戦姫に立ち向かいまだ希望を捨てていなかった

 

 

「へぇ?まだやる気なんだ?

ま、良いや殺してあげるわ」

 

 

それからはほとんど覚えていないボロボロの私を逃がそうと仲間達は奮闘してくれた

だが、相手が強すぎた

明らかに今まで戦ってきた深海棲艦とは桁が違う

(駄目だ…!頼む…逃げてくれ!!)

私が次に目を開けた時最悪の光景が広がっていた

陸奥を含め全ての艦娘が海上に倒れその上に南方棲戦姫が立っており嘲笑っていた

 

 

「弱すぎでしょ、あんたたち!

さぁてと長門を仕留めてこいつらも殺すかぁ」

 

 

ボロボロで動けない私を殺そうと南方棲戦姫は私に近付こうとすると近くの二人の艦娘が南方棲戦姫の足を掴む

 

 

「行かせ…ない!!」

 

 

「長門さん…は…私達が…守る!!」

 

 

それは皐月と霞がボロボロになりながらも必死に南方棲戦姫を止めておりそれを見るとニヤリと笑うと霞を思い切り踏みつける

 

 

「邪魔よゴミ共」

 

 

皐月の頭を持ち上げ霞の踏みつけている足を首に移動させるとそれが何を意味するか理解し無理矢理にでも身体を動かそうとする

 

 

「辞めろ!!二人に手を出すなぁ!!」

 

 

痛む身体と軋む艤装を動かし私は二人を助けようと手を伸ばし戦おうとするが

 

 

「遅いわよ、バーカ」

 

 

意図も簡単に皐月の頭を握り潰し霞の首を足で切り落とすと二人はパタリと動かなくなりそのまま南方棲戦姫はこちらに向かってくる

二人の血は海上を赤く染めると静かに海の底へと沈んでいく

 

 

「貴様ぁぁぁ!!」

 

 

私は何とか立ち上がり南方棲戦姫へ主砲を構えると南方棲戦姫から主砲を放たれそれが直撃し再び倒れてしまう

 

 

「なにしてんのよお前はそこで倒れてろ

戦艦長門?」

 

 

「ぐ……うぅ……」

 

 

ボロボロの身体に更なる追撃で瀕死になっていると南方棲戦姫を後ろから誰かが捕まえる

 

 

「行かせ……ねぇ!!」

 

 

「まぁたゴミが邪魔するのぉ?」

 

 

「ゴミが…どうか…は分からねぇぜ!!

雲龍!!」

  

 

摩耶が南方棲戦姫を抑えていると空から艦載機が二人に突っ込んできており離れたところで雲龍が息を切らせながら立ち上がっていた

 

 

「へぇ?自爆覚悟?良いわねぇ」

 

 

「あぁ!共に…死んで…もらうぜ!!」

 

 

「辞めろ!摩耶!そいつに構うな!!逃げるんだ!!」

 

 

私が叫ぶと摩耶はニヤリと頬を吊り上げながら私を見ながらウィンクをする

 

 

「バッカ…これぐらいは…するさ

長門の為…だからな!!」

 

 

次の瞬間雲龍の艦載機が南方棲戦姫と摩耶を攻撃すると二人は爆煙に巻き込まれるが少しすると私の方に何かが飛んできておりそれを見ると絶句する

 

 

「摩……耶?」

 

 

それは摩耶の生首だった顔は微笑んでおり胴体はどうなったと思い南方棲戦姫を見るとそれはあった

 

 

「へぇ、流石は重巡

良い盾になったわ」

 

 

南方棲戦姫は艦載機の攻撃を防ぐために摩耶の身体を盾にしており先に首を取り殺していた

すぐに爆撃が止むと摩耶の身体を投げ捨て両腕の主砲を雲龍に構える

 

 

「逃げろ!!雲龍!!」

 

 

私の声に逃げようとする雲龍だが身体がふらついてしまいそれを南方棲戦姫は逃がさない

 

 

「沈め、ゴミが」

 

 

次の瞬間南方棲戦姫による連続砲撃が雲龍を捉え爆煙に包まれると同時に艤装が破壊され身体のあちこちがボロボロになっていく

(ごめん……長門…)

雲龍はそう心で呟くと砲弾が頭に直撃すると頭が吹き飛ばされゆっくりとその身が海へ沈んでいく

 

 

 

 

 

 




次回

許さない

スッゴい長くなってしまった……
すいませんでした!!




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戦艦長門 ー過去ー 六

「貴様……貴様ぁぁぁ!!」

 

 

「はぁん?何よ仲間が殺されるのがそんなに悔しい?」

 

 

嘲笑いながら南方棲戦姫は私に近付き頭を掴むと持ち上げながら睨み付ける

 

 

「お前達も私達を殺しているだろぉ?

同じことをしているのに貴様らだけは可笑しいよなぁ?」

 

 

南方棲戦姫が私の身体に主砲を押し当てると同時に南方棲戦姫の背中が爆発を起こし苛ついたのかその砲撃の方向を睨む

 

 

「あぁ?少し痛いなぁ……陸奥?」

 

 

全身がボロボロになりながらも残った主砲を南方棲戦姫に向けており頭からも血を流し右腕を押さえており最早限界であることは明白だった

 

 

「はぁ……はぁ…長門を離せぇぇ!」

 

 

立っている姿すら痛々しいのにも関わらず陸奥は果敢に南方棲戦姫に向かい走っていくが

 

 

「立っているのもやっとなのに良くもまぁ戦うわねぇ?」

 

 

南方棲戦姫は右腕の主砲を陸奥の顔に直撃させるが陸奥は走るのを辞めず南方棲戦姫に向かっていく

 

 

「は?何で動けるのよ?この!!」

 

 

向かってくる陸奥を迎撃しようと何発も砲撃を当てるが何発当たろうと陸奥は走るのを辞めずに南方棲戦姫に向かい走りそのまま飛び掛かり押し倒す

 

 

「お前!もう死にかけの癖に随分動けるじゃないか!」

 

 

「うる……さい…長…門は…私が…守…る!」

 

 

陸奥はまだ動く全砲門を南方棲戦姫へ標準を合わせ押し当てる

 

 

「辞めろ!陸奥!その傷と損傷でゼロ距離砲撃なんてしたら!!」

 

 

私の言葉を聞くと陸奥は微笑みながら南方棲戦姫の首を締める

 

 

「ビック7の……妹を…舐め…ないでよね!!」

 

 

「くそ!離せ!!」

 

 

そう叫ぶと陸奥は全砲門をゼロ距離で砲撃すると二人は爆煙に包まれるがその爆煙から陸奥が吹き飛ばされ南方棲戦姫が腹部を押さえながら爆煙を切り裂く

 

 

「くそクソ!やってくれたな!!

あぁ!痛い痛イ!この艦娘風情ガァ!!」

 

 

南方棲戦姫の左腕の艤装が破壊され腹部には赤く染まっており間違いなく南方棲戦姫にダメージを負っている事は明白だったが陸奥が一向に動かない

 

 

「陸奥!!」

 

 

私は立ち上がり駆け寄ろうとするが後ろから砲撃を受け海面に倒れると背中を踏みつけられる 

 

 

「へぇ?珍しいねクイーンが怪我なんて?」

 

 

「へぇ?珍しいねクイーンが損傷なんて?」

 

 

後ろで大人しくしていた駆逐古鬼の声が聞こえ背中には二つの足に踏みつけられている感覚があるがそんなことより陸奥を助けようとするが既に南方棲戦姫は陸奥の頭を握りしめている

 

 

「………邪魔スルナ

フウ、ラン消し飛ばされたいのか?」

 

 

「まっさかぁ?うるさいから踏んでるだけよ?」

 

 

「まっさかぁ?クイーンがこれ以上傷付かない為の保険で踏んでるんだよ?」

 

 

「ちょっとラン!余計な事言わないの!!」

 

 

「あ、ごっめーん!フウ、つい言っちゃった!」

 

 

踏みつけられながら何とかそこから這い出そうとするが動くと更に強く二人に踏みつけられ苦しさで声が出る

 

 

「辞めろ辞めろ!陸奥だけは辞めてくれ!!」

 

 

「へぇ?御執心ねこの戦艦に

あ、そっかあんたたちは姉妹だっけか?

知らないから殺すけどね」

 

 

すると南方棲戦姫は陸奥を海面に叩き付けると残っている主砲を陸奥に押し当てる

何とか這い出そうと努力しても身体がほとんど動かないそんな状況で陸奥を見ると微笑みながら口元が微かに動いている

 

 

耳を凝らしその言葉を聞こうと這い出すのを辞めようとすると微かに陸奥から声が聞こえると同時に南方棲戦姫が主砲を押し当てる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「生…き…て……いつか…幸…せに…なってね…お姉…ちゃん…」

 

 

「辞めろぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

私が叫ぶと同時に南方棲戦姫の主砲が陸奥の頭を吹き飛ばし動かなくなると静かに海の底へと沈んでいく

この時私の心の中今まで無かった怒りと憎悪に支配され唇を噛みながら南方棲戦姫を睨み付けていた

 

 

 

「許さない……お前だけは……絶対に!!!」

 

 

 

 




次回

復讐を誓う


仲間を全て失った彼女は正義だけを生きる糧にして生きていこうとする
何物も捨て己の信念だけを真っ直ぐに

長門過去編が長くなって申し訳ありません……



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正義(復讐)

「アハハハハ!!そうよ!その眼よ!!

私達は分かり合えない!!お前達が全滅するか我々が全滅するかなのよ!

だが、貴様をここで生かしておいても得は無いわよねぇ?」

 

 

私に向け主砲を構え近付いてくる南方棲戦姫を睨んでいると遠くから声が聞こえる

 

 

「クイーン!フウ!ラン!そこまでだ!!

作戦は終了した!全艦隊撤退せよ!!」

 

 

遠くから聞こえた声に反応すると舌打ちをし静かに私の横を通りすぎていくと耳元で南方棲戦姫が囁く

 

 

「貴女が私を殺しに来るのを楽しみに待ってるわよ

正義の戦艦様?あ、ビック7だっけ?アハハハハ」

 

 

背中を踏みつけられ何も出来ずに悔しく唇を噛んでいると南方棲戦姫が最悪の一言を言う

 

 

「さぁてと!お前達!主砲用意!!

今残ってる海上のゴミ共に向け標準を合わせろ!!」

 

 

「なっ!貴様何を!?」

 

 

「少し」

 

 

「黙ってね?」

 

 

起き上がろうとすると再び踏みつけられ目の前の光景を見ると何人かの艦娘は生きておりフラフラと立ち上がろうとしている

 

 

「長門ぉ?貴女は幸運よ?だって

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達(姫級達)の一斉砲撃が見れるからな!!」

 

 

その言葉に察しが付き再び起き上がろうとするが背中を再び踏みつけられ動けない

 

 

「辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めてくれぇぇぇ!!!」

 

 

「全艦隊主砲海上の艦娘(ゴミ)へ撃てぇぇぇ!」

 

 

南方棲戦姫からの合図と共に後ろから爆音が聞こえると目の前に砲弾が降り注ぐ

その光景は正しく阿鼻叫喚だった後ろからの砲撃音は止全て艦娘に直撃し身体が吹き飛ばされながら痛みに苦しむ顔をしながら沈んでいく

吹雪が助けを求めるが次の瞬間砲撃が直撃し頭が吹き飛び霧島が仲間を庇い腕が取れ艤装に穴を開け爆発を起こし沈んでいく

全ての艦娘が悲鳴と助けを求めるが深海棲艦は砲撃を辞めない

私は……それを見ていることしか出来なかった

 

 

しばらく轟音が続くと静かになると背中の重さが聞こえ立ち上がろうとすると真後ろから二つの砲撃を受け再び海面に倒れてしまう

 

 

「ウフフ、これで生きてたら凄いねラン」

 

 

「ウフフ、これで生存してたら凄いねフウ」

 

 

二人の声と大声で笑う南方棲戦姫の声を他所に私は痛みにより意識を失った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はしばらくすると眼を覚まし軋む艤装と痛む身体を持ち上げ周りを見ると先程まで居た姫級達は居らず夢だったのかと思うが背中の痛みがそれが夢ではないと物語りゆっくりと陸奥が沈んだ場所に行くと何かのケースが浮いている

それを拾い上げるとネックレスと紙が入っていた

その紙を開ける読むと

 

 

『長門へ、今までお疲れ様

貴女にはいつもお世話になってたからこれを送ります

貴女に似合うと思うんだけどどうかな?

正直面と向かって言うのは恥ずかしいのでこんな渡し方でごめんね?

もし結婚して幸せになってくれたら私はそれだけで嬉しいです

貴女が正義の戦艦と呼ばれ、仲間の為に戦う貴女を尊敬し後ろを追っかけるのがやっとだったけどこれからも妹で居させてください

 

By 正義の戦艦、ビック7の自称妹より

PS 子供出来たら見せてよね?長門に似て正義感の強い子だとは思うけどね』

 

 

「…ぅ…うぅ……陸奥…ごめん……守れなかった……

ごめん……」

 

 

私は紙を握り締めると静かに泣いた

誰にも聞こえないほどに静かにそして自らかあの時駆逐古鬼と南方棲戦姫に恐れを無し動けなかった私を憎み

そして恐らく消えたであろう水平線を睨み

 

 

「…殺してやる…一体残らず…深海棲艦共…

私が……何をしてでも……どんな手を使ってでも…この手で…!!」

 

 

誓う、自らの信念である正義を歪め復讐として陸奥から貰ったこのネックレスを握り締め世界から一体残らず深海棲艦を殲滅する復讐を正義へと形を変え

その後痛む身体を引きずりながら私は大本営に向かったが悲惨な状態だった

転がる提督達の遺体、助けを求める声、苦しむ声

これが深海棲艦に敗北すると言う事であり二度とこのような事が起こさないと深く心に刻み込んだ

 

 

大本営が復活した頃同時に世界の制海権が再び奪われ強い艦娘のほとんどが姫級に殺され残っていたのは私を含め三人だった

上手くこの出来事から逃れたのは沖縄だけだった

他の鎮守府は大本営強襲と同時に襲われ全ての鎮守府が壊滅していた

私はしばらくは大本営の艦娘となり深海棲艦を殺し続けた

 

 

戦場を駆ける修羅、深海棲艦を殺す正義として呼ばれ幾つも勲章を貰った

そしていつしか私は最強の艦娘 正義の戦艦と呼ばれた

それでもまだ奴等の尻尾は掴めない

その後、私は幾つかの鎮守府を転々とし幾度と無く陸奥に出会った

私を姉と慕い共に戦場を駆けたが何度も彼女は撃沈していった

時には囮として使われたりしてもそれが最善として自分に言い聞かせて

 

 

 

 

艦娘が深海棲艦と繋がりがある

その話を聞いたとき私には殺意が湧いた

私達の中に裏切り者が居るなら私が殺すと志願した

 

 

 

そして、私がその艦娘を殺す時

その艦娘を見て驚いた

彼女の身体は既にボロボロだった

全身の傷 空いた瞳 折れた身体

何故かは聞かされ無かった

それでも憎き深海棲艦と繋がりがある裏切り者を許せなかった

 

 

その艦娘を殺すとき私は分かっていた

これをすれば私は艦娘として間違いなく終わると

それでも手を止められなかった

動かす主砲を止められなかった

憎いあいつらの仲間を殺そうと心が止まらなかった

まだ残る心の片隅で『辞めろ』と声が聞こえる

それでも自分に言い聞かせた『これが正義』だと

そして主砲を放つ為に標準を合わせた瞬間

目の前に光が広がり思わず眼を閉じた

脳裏で一瞬陸奥の怒る顔が見えた気がした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、私の前にお前達が現れた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光と高い音共に私の邪魔をする()として

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が殺すはずだった艦娘に手を差し伸ばす裏切り者として

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私が昔捨てた正義を振りかざして

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いけどこの艦娘の処刑は今この時を持って中止だ!!

こいつは俺達が貰っていくぜ!!」

 

 

 

 

 




次回

お前は敵か?

そして、時は現在に戻る
自らの歪めた正義を振りかざして長門は叢雲達に襲い掛かる海軍の犬として殺された陸奥の弔いをするために

自らを偽りながらも

長門の過去編終わりです!
次回から再び現在に戻り長門と叢雲の夜戦に戻ります



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VS 長門 三

「吹き飛べ!!」

 

 

「当たらないわよ!」

 

 

長門の砲撃を軽々と叢雲は避けながら対して長門に砲撃を当てるが長門にはほとんどダメージが蓄積しておらず思わず舌打ちをする

 

 

「相変わらず硬いわね…」

 

 

「誉め言葉として受け取ろう!」

 

 

砲撃を受けたのにも関わらず長門は爆煙から出ると叢雲に拳を振りかざすがそれを見越し叢雲はそれを避けようとすると

 

 

「撃てぇ!」

 

 

「やばっ!」

 

 

避けた瞬間体制が悪いにも関わらず長門が主砲を放ってきており持っていた棒の艤装を海上に刺すと無理矢理交わし長門に主砲を向けるのだが

 

 

「もう食らわないさ!」

 

 

「ちょっとあんた!何よそれ!」

 

 

長門は叢雲の主砲を掴むと空高く投げ飛ばしそれに主砲を構え砲撃してくる

 

 

「逃げられまい!吹き飛べ!!」

 

 

「こんのぉ!」

 

 

砲撃をするタイミングで叢雲も長門へ砲撃すると砲弾がぶつかり二人は爆煙に包まれるが叢雲がバックステップをしながら爆煙から出てくるとそれに続けて長門が拳を叢雲に振り下ろしそれを避ける

 

 

「あんた!随分と荒い戦い方ね!!」

 

 

「お前もだろ!!」

 

 

長門に思うように近寄れず叢雲は砲撃をするが全く効いている様子はないが少しずつ長門の艤装が軋んでいるのを確認する

(艤装には効いてるのかとなるとこいつ本人の耐久か!)

普通の艦娘とは明らかに違う長門にたじろいながらも横を見ると金剛達が応援してくれており頑張らないと再確認すると再び長門へ向き直る

 

 

「む、艤装が軋むか少し無茶が過ぎたか?

まぁ良い先に当てれば勝ちだ」

 

 

「……余裕そうね」

 

 

叢雲は少し息を上げているが長門は少し息を上げておらずどうするかと叢雲は考えるが不意に長門から声が掛かる

 

 

「一つだけ聞かせろ

貴様は負けるつもりは無いのか?」

 

 

「はぁ?どういう意味よ?」

 

 

仁王立ちをしながら長門は叢雲を見下ろすとその眼が先程とは違い明らかに敵意を剥き出しにしていることが分かる

 

 

「正直、私の主砲とこの拳は出来るだけ深海棲艦に使いたい

だからこそ、今ここで貴様が負けを認めれば私はこれ以上戦わない

どうだ?」

 

 

その言葉に叢雲は吐き捨てるようにため息と共に長門を睨みながら言う

 

 

「負けを認める?そんなことするわけないでしょ?

そっちこそ負けを認めればここで終わりにするわよ?」

 

 

叢雲の言葉に一瞬の沈黙が会場を包むと長門は深い溜め息と目付きが先程より変わりつつある

 

 

「そうか………なら」

 

 

叢雲には長門の目付きが変わった事に気付くと同時に背中に冷たい氷を入れられた様にゾクッと来る

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前を私の敵と認識する

正義を執行する」

 

 

 

 

 

 

 

 





次回

正義執行

次回から長門が抑えていた本気を出し叢雲に襲い掛かり窮地に追い込まれます

最近金剛のレベリング改二両に向けてやってますが資材消費がががががが



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VS 長門 四

その目と雰囲気には叢雲は心当たりがあった

今まで戦ってきた深海棲艦達と同じ純粋な殺意と敵意でありそれが長門から自分に対して発せられており思わず後退りをする

 

 

「成る程……今までは手を抜いてたのね…」

 

 

「抜いていた訳ではない

お前にはこの戦いを辞退してほしくて力を見せつけていただけだ

だが、それもやめだ

お前を倒す

私の正義の邪魔をし続けるならば容赦はもう無くそう」

 

 

先程とは違い長門から感じる殺意がそれを物語り思わずここが戦場で長門が深海棲艦の姫に錯覚するほどではあった

 

 

「来ないのか?ならこちらから行こうか?」

 

 

長門が主砲を構えると同時に叢雲も動こうとするとこちらに向かい長門が全速力で走ってくる

左足からはその不可に耐えきれず黒煙が上がっているがそんなことを気にせずに

(左足を撃ち抜いて体制を崩させればこちらのペースに持ち込めるはず!)

 

 

叢雲は主砲を左足に向け放つとそれは見事に命中し少し表情を曇らせるが体制は崩れずにすぐに叢雲に向け主砲を構える

 

 

「こいつ!!」

 

 

何とか距離を取ろうとバックステップをしようとするがその瞬間長門の眉間が動いた気がしすぐに横に避けると先程まで立っていた所に水柱が上がる

 

 

「勘づいたか、だが逃がさん」

 

 

長門の主砲は動いて居ないのに砲撃音がしており避けた叢雲に次は直撃するが主砲程の火力は無く何とか耐えられる

 

 

「これって、まさか副砲!」

 

 

「万が一の為に一応付けておいたが役に立ったな」

 

 

主砲の直ぐ側に副砲が付いており長門はそれを巧みに使い叢雲を捉えており更に叢雲を追い詰めていく

 

 

「撃てぇ!!」

 

 

「くっ、この!」

 

 

叢雲に向け主砲を構え砲撃しそれを避けるのだが更に一段階遅く副砲を放ち叢雲の避けるタイミングをずらし少しずつダメージを稼ぎ更に近接戦闘を仕掛け体力も奪っていく

 

 

「貴様の終わりだ

雷撃姫 貴様に勝利はない」

 

 

「黙りなさい!あんたのなんかに!」

 

 

軽快に動いていた叢雲にも少しずつ疲れと消耗が目立ち追い込まれていき歯を食い縛りながら長門の隙を伺う

(何か…何か無いの!?こいつの隙を突いてこっちのペースに持ち来ないと!)

叢雲は焦ってしまい長門の隙を伺うと左足を少し海面に着けていないことを居ないことに気付きその逆足を狙うことに決めそのタイミングを待つ

 

 

「そろそろ終わりにしよう!雷撃姫 叢雲よ!

貴様を倒し私は…正義を全うする!!」

 

 

長門が左足に上げると同時に叢雲は踏み込み棒の艤装を右足に突き刺し左足を主砲で撃ち抜くと二人は爆煙に包まれ

その中から叢雲がバックステップをしながら出てくる

 

 

「これで少しはーーー」

 

 

その瞬間叢雲は油断してしまい爆煙の中から右手が出てきて叢雲の首を捉え苦しみでその手を抑える

 

 

「ガ……ハ…うぐぅ…」

 

 

「この程度で私が戦く(をののく)と思ったのか?

正義の戦艦を舐めるなよ」

 

 

爆煙が晴れると長門の右足には棒の艤装が刺さり左足はほぼ破壊され中の足が見えているがそんなものを気にもせず叢雲を捉えていた

 

 

「あ…ん…た……そ…れ」

 

 

「足が取れようが砕けようが私は前に進む

それよりも覚悟は出来てるのだろうな?」

 

 

その言葉の意味を理解するには時間を用さなかった

長門は叢雲を放すと左手に拳を作ると腹部に一撃いれる

 

 

「グハッ……」

 

 

「……悪いな、叢雲(雷撃姫)よ」

 

 

(不味い!逃げないと!!)

叢雲の頭には嫌な予感が過り直ぐにでも避けようとするが長門はそれに間髪入れず主砲を叢雲に直撃させ次に副砲そして吹き飛ぶ腕を引っ張り逆の手で拳を入れると次に踵落としをすると再び主砲を叢雲に直撃させその腹部に拳を入れまた副砲を砲撃する連続攻撃を繰り出し叢雲は成す術が無かった

 

そしてボロボロになった叢雲を持ち上げ目の前に投げると主砲をと副砲を空中の叢雲に標準を合わせる

 

 

「全砲門斉射撃てぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

長門の全砲門から砲撃された砲弾は叢雲を捉え艤装と服がボロボロになりながら爆煙を突っ切り水面を何回か跳ねると力が抜けた人形の様に水面を転がり倒れてしまい艤装からは黒煙が上がりピクリとも動かなくなると会場から歓声が上がる

そして、最後に足に刺さった艤装を引き抜くと叢雲に直ぐ側に投げ水面に刺さる

 

 

 

 

「正義……執行」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回

敗北

長門の連続攻撃と砲撃が決まり叢雲はそのダメージで動けなくなってしまう
この章もそろそろ大詰めです!

金剛の新イラストに魚雷があると聞いて楽しみが止まりませんな!!




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VS 長門 五

「決まったぁぁぁぁ!!長門の連続攻撃!

今まで多くの深海棲艦を撃破してきた最強とも言われる連撃が当たり叢雲は最早虫の息かぁ!?」

 

 

「えぇ……これは流石に決まりましたね…

長門の主砲と副砲には駆逐艦は耐えられないですからね……

少し残念です…」

 

 

実況では二人が盛り上がり会場も暗闇の中長門のコールが響き渡りその様子を別室にて東雲と他の元帥達も見ていた

 

 

「決まったな

あんな連続攻撃なんて受けたのなら立てるわけがない」

 

 

「やはり駆逐艦では戦艦には勝てんか

だがあそこまで善戦したなら良かったのでは?」

 

 

「どうせ、駆逐艦なんて消耗品

いくらでも代わりは居るからな」

 

 

元帥達が立ち上がりその部屋を後にしようとする中東雲だけは会場を見下ろしておりその様子に疑問を抱いた元帥達が東雲に催促してくる

 

 

「東雲大元帥?まだ何かあるのですか?」

 

 

「……お前ら座れ

まだ試合は終わってないぞ?」

 

 

「何を仰いますか?もうこの戦いは終わりですよ

長門の勝利、小笠原鎮守府は解体

艦娘達も解体じゃないですか?」

 

 

「相変わらずお前らの眼は節穴見たいだな

まぁ良い、帰りたい奴から帰りな

俺はアイツが育てた右腕があそこでくたばるとは思わないけどな」

 

 

「馬鹿馬鹿しい、所詮駆逐艦なのですよ?」

 

 

 

東雲はそれを最後に何も話さなくなり他の元帥達も混乱するが仕方無く元の席に戻り大淀の判定を待つ

(俺にあれほどの大口を開いた貴様がここで終わりか?

見せてみろ雷撃姫、貴様の真の実力を……

戦艦棲姫と戦艦ル級戦の時に見せたその不屈を)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ね、ねぇあれヤバイんじゃないの?」

 

 

「……うん間違いなく長門の砲弾をもろに受けたから叢雲の負け…だね」

 

 

「そ、そんな……大丈夫よ!

あいつがあんなので負けるわけーーー」

 

 

「いや、無理だろうな

間違いなく叢雲の負けだ」

 

 

阿武隈達が心配する中叢雲の立ち上がる可能性を猿橋は真っ向から否定し瑞鶴が猿橋に詰め寄る

 

 

「……何でそう言うことを言うの?」

 

 

「…長門の主砲は普通の艦娘が扱うそれじゃない

あれは明石によって手が加えられた特殊な主砲と副砲だ

通常の奴より遥かに高い火力を備えてはいるがその反動と重さを犠牲にしている

一発でも、当たれば戦艦でも軽々と落とすそれを連続で受けたんだ

いくら叢雲でもあれでは立ち上がるのは不可能だ」

 

 

「そんな……」

 

 

猿橋の説明に全員が絶句し倒れている叢雲を心配そうに見る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「叢雲ー!!」

 

 

「ストップ金剛!駄目よ!私達が手を出したら反則!!」

 

 

「で、でも!!」

 

 

「良いから落ち着きなさいよ!」

 

 

高速修復材をかけられ叢雲以外のメンバーは全員会場に戻ってきており叢雲と長門の戦いを観戦していたのだが動かない叢雲を見ると金剛が駆け寄ろうとしており大井とイムヤが止めていた

 

 

「だが、あの砲撃では……叢雲は……」

 

 

「叢雲は戦闘不能ネー!早く大淀に話してーー」

 

 

「駄目だよ」

 

 

金剛が騒いでいると端で見ていた古鷹が金剛に一声かけると四人とも古鷹に視線が集中する

 

 

「な、何でデースか!?

これじゃ叢雲がーー」

 

 

「そんなことしたら叢雲に怒られるよ?」

 

 

「……古鷹さん、どうして?」

 

 

イムヤが質問すると古鷹はイムヤ達に微笑みながらぎゅっと服を握り締める

 

 

「叢雲は絶対に負けないから

だから信じて待とう?あの子が再び立ち上がって戦うのを」

 

 

古鷹の様子を見た四人は顔を見合わせると渋々落ち着きを取り戻し倒れている叢雲を見る

(そう……叢雲は負けない…

だから、お願い…叢雲立ち上がって…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと佐渡あれ……」

 

 

「あぁ、ヤバイな

完全に直撃してやがる

あいつ焦りやがって…全く」

 

 

「そうじゃないわよ!

あんなの受けたら高速修復材でも治りきらないわよ!?

早く降伏しなさいよ!!」

 

 

「それはない

俺はあいつの戦いに口を出さないって決めてるからな」

 

 

その言葉と同時にエアは佐渡の首元を持ち上げながら睨み付ける

 

 

「あんたねぇ!あの子は駆逐艦なのよ!?

あんなの受けたらどうやっても立ち上がらないしこれ以上戦えるわけがないわ!!

早く降伏しなさいよ!!」

 

 

エアが睨み付ける中佐渡は顔色一つ変えずにエアの手を払い除ける

 

 

「駄目だ

それはあいつの戦いを侮辱する行為だ」

 

 

「あんたねぇ!!」

 

 

「だが、まぁしょうがねぇ

少し渇を入れに行くとしようかな?」

 

 

エアが再び怒鳴ろうとした時佐渡の顔がエアの向かい側の鏡に映りその姿を見ると唇を噛んでおり手を見ると拳を握り締めている

(……そっかこいつも提督なんだ…

焦ればそれは艦娘にも影響するから…)

佐渡の態度の理由を理解したエアは黙って佐渡の後を着いていくが明らかに足が速足になっておりそれに合わせる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと……倒れたか…」

 

 

先程まで戦っていた長門は息を切らし倒れている叢雲を見下ろしており不意に緊張と集中が切れ片膝を水面に着くと両足から激痛が走る

(ぐぬぅ……金剛と古鷹、そして叢雲の攻撃に流石に限界を迎えていたか……

危なかった…これ以上長引いたらこちらが負けていたのかもしれない……)

 

 

無茶がたたり脚からはかなりの流血と艤装が直ぐにでも爆発しそうな程ボロボロになっているが今にでも動きそうな叢雲を見るが一向に動く気配がない

 

 

「貴様の負けだ叢雲」

 

 

 

 

 





次回

信念

ボロボロになり指一つ動かせない叢雲は不意に昔の光景を夢に思い出す

金剛改二両実装されましたね!!
早くしたいけど、色々足らなくてつらい…




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負けない

薄れいく意識の中叢雲は倒れ会場の歓声を聞きながら水面に倒れていた

(……痛い…全身が……)

身体を懸命に動かそうとするがピクリとも反応せず更に動かそうとすれば全身に走るような痛みが走る

 

 

(あぁ……駄目ねこれ……

動かない…私とした事が焦ったわ…

後で反省しないとね……)

 

 

身体が動かず全身の激痛と先程長門から受けた拳のダメージで吐き気まで催しておりその痛みでゆっくりとその意識を手放そうとする

(うん……無理ね…

このまま倒れていれば…私の負けね…)

 

 

『そうだな、お前の負けだ』

 

 

不意に眼を閉じると誰かの声が頭に反響しその言葉と独り言の様に話し出す

 

 

(頑張ったじゃない…?私…あの戦艦長門相手に…)

 

 

 

『あぁ、そこそこにはな

だが結果負けた、お前はあいつに負けたのさ』

 

 

(仕方ないじゃない……戦艦よ?

私は駆逐艦…勝ち目何て初めから無いのよ……)

 

 

『そうだな、お前は所詮駆逐艦

戦艦より耐久は低いし火力も低い

だからお前はここで負けるんだな?』

 

 

(そうよ……私の負け…

これ以上立ち上がっても何も出来ないわ…)

 

 

『だから負けを認めるのか?

そうやって自分に言い聞かせて、負けを正当化するのか?』

 

 

(何でよ…?何で……あんなの勝てるわけないじゃない

主砲も雷撃も戦闘でも負けてるのよ?…

無理よ勝てない)

 

 

『ならお前の仲間と提督はここまでだ

お前はまた何も守れない(・・・・・・・・)んだな

口だけの艦娘風情が』

 

 

叢雲はその言葉にハッと眼を開けると辺りの光景を見る

そこは会場ではなく住宅地

辺りからは爆音と叫び声が聞こえる

真っ暗な水上ではなく道路のコンクリートに倒れており目の前に一人の男が武装しながら背中を向けていた

 

 

『負けを認めるならそこのマンホールを開けてこの街の外に逃げろ

這いつくばって、泣きながらそのゴミ(艦娘)と共に俺の前から失せろ』

 

 

男の目の前には住宅地を破壊し暴れる化け物がおり、男はそれに向かって歩いていく

 

 

『待ちなさいよ!!あんたあれをどうするつもり!

まさか戦うわけじゃないわよね!?

あれは深海棲艦よ!あんたじゃ勝ち目なんて無いわよ!!』

 

 

その声は私の真後ろから聞こえその艦娘は顔をぐしゃぐしゃにしながら何かを抱えていた

 

 

『勝ち目がない?誰がそんなことを決めた?

俺が戦ってないのに何故お前に分かる?

お前が戦ったからか?それとも仲間を殺されたからか?』

 

 

『違うわよ!あんたの武器じゃあれには傷一つ付けられないわよ!!』

 

 

『そうか、まぁ知らん

やってみないと分からないしな』

 

 

二人は戦場のど真ん中であるにも関わらず声を荒げ喧嘩を始めておりその中心で自分は見ているが二人には見えてない

 

 

『あんたは人間でしょ!?

艦娘に守られてないと何にも出来ないただの人間!

ならあんたは逃げなさいよ!!』

 

 

『逃げる?何故だ

ここにお前と言う守る物があるのにか?』

 

 

『……はぁ?』

 

 

艦娘は不思議がっているとその男は武器の手入れを済ませると肩にかけると艦娘と私に振り返るがその顔は逆光で見えない

 

 

『お前が艦娘だろうがなんだろうがどうでもいい

お前の様な餓鬼を背にして逃げるなんてのは愚の骨頂だ

俺のプライドが許さない

それに俺はまだ負けてない』

 

 

『何言ってるのよ!

私は艦娘!消耗品なのよ!!

だからーー』

 

 

『だから、お前を見捨てろってか?

ふざけるな

それにこれは俺の戦いだ

お前に口出しされる筋合いはない』

 

 

男は再び振り返り化け物に向かっていこうとするが少し歩いて止まると顔だけを向けて艦娘に言う

 

 

『一応貴様も軍人でそこのゴミ(艦娘)を殺されたなら言っておく

お前は負けを認めるのか?』

 

 

『はぁ!あんた何を言ってーー』

 

 

『敗北とは戦うことを諦めた奴の事を言う

死んだから負けと言うのは抵抗出来ないからだ

つまり戦いとは両者が生きていれば続く物なんだよ

お前が戦う意志が無いのであればお前は所詮口だけの餓鬼だ

惨めにそこで這いつくばって泣いてるが良い

俺はごめんだね仲間を殺したあいつを復讐し破壊する』

 

 

『何で……何であんたはそんなに強いのよ!

人間!!仲間を殺されて何でそんな強気でいれるのよ!!』

 

 

『強くないさ、強くありたいだけだ俺はな

じゃあな艦娘、精々生き残れよ』

 

 

 

そう言うと男は走り出す艦娘を置いてしばらくすると化け物の方角から爆音が響き渡ると艦娘は死んだ艦娘の頭部を外壁の近くに置くとそっと隠す

 

 

『……ごめんね吹雪

私…負けたくない…あんな人間何かにあそこまで言われたら戦うことを辞めたくない……

ごめん後で迎えに来るから……貴女達を殺した

あれをあの人間と破壊してくるから!!』

 

 

艦娘は艤装を拾うと走り出し叢雲の隣を走り抜けるその横顔は涙と鼻水でぐしゃぐしゃになっているがハッキリと叢雲には分かる

そうこれは叢雲と佐渡が初めて出会った時だったのだ

 

 

景色は消え再び真っ暗になる目の前に誰か立っている

それが誰かは叢雲には分かっていた

 

 

(……ふふ、懐かしいのを思い出したわ

そうよね……私はあの時動けたんだもんね

怖くて、弱くて、情けなくて、口だけで、プライドだけ高いあの時)

 

 

『あぁ、そうだな

だが今は違う

俺が側に居る

もし、お前が負けても俺に任せておけ

何とかしてやるさ』

 

 

(……嫌よ)

 

 

『何故だ?』

 

 

(…私は二度と負けないって決めたの

あの時あんたに出会って戦って一緒に過ごして分かった

あんたはどこまでも敗北を嫌い戦い続ける人間だって

それなのに相棒(バディ)の私が諦める?ふざないで)

 

 

『なら立ち上がるのか?またあんな戦艦と相手するんだぞ?火力も装甲も桁違いの艦娘だぞ?』

 

 

(それでもよ、私は負けない

あんたが戦うのならば私も戦う)

 

 

『………はは、そうか

ならそろそろ立ち上がらないと試合が終わるぞ?』

 

 

(えぇ、ありがとう佐渡

私は貴方よ)

 

 

『俺はお前だ艦娘駆逐艦叢雲

俺の唯一の相棒(バディ)

さぁ立ち上がれ仲間を次は絶対に守れ

お前の力を見せてやれ』

 

 

 

(……あんたに会えて本当に良かったわ

私の唯一信頼する司令官(人間))

 

 

 

そして、叢雲の意識は目覚め会場からは長門コールが聞こえ近くに落ちている艤装をゆっくりと掴み握り締める

 

 

 

(倒す……私の…司令官の邪魔をする全てを

私の信念を貫くために)

 

 

 

 

 

 

 




次回 

相棒(バディ)


ボロボロになりながらも叢雲は諦めない
自らの道を作ってくれた恩人の為に
二度と失わないと言う覚悟と信念を胸に抱え


そろそろ大型建造をしたいのですが資材がががが…


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VS 長門 七

会場では動かなくなった叢雲を他所にほぼ勝ちが確定した長門のコールが鳴り響き大淀は叢雲が起き上がらないか少しの間だけ待っていた

(……艤装は爆発していない…でも長門さんのあれを受けてはもう…

叢雲さんならもしかしたらと思ったのですが…)

倒れている叢雲を見ると長門がようやく動けるようになったのか息を整える

 

 

「大淀、判定を頼む

これ以上奴は動かないだろう

それに私の連続攻撃で動けるとしても戦艦クラスだ」

 

 

「……分かりました、ではジャッジをーーー」

 

 

と大淀が手を上げようと叢雲を見ると先程と明らかに違う点を見付け判定を中断する

 

 

「……大淀?どうした?」

 

 

「あ……いえ…」

 

 

「まぁ良い、私は戻らせてもらうぞ」

 

 

長門が叢雲に背を向け微笑んでいる陸奥達へ歩きながら大淀の判定を待っていると不意に長門コールが止み陸奥達も口を押さえたり驚いた表情をしている

 

 

水面を叩く何かの音が背後から聞こえると同時に長門は焦りゆっくりと振り返ろうと痛んでいる足の事を忘れるほどに冷や汗をかいていると会場全体からどよめきの声が聞こえるとそれを掻き消すように恵比寿の実況が会場に響き渡る

 

 

 

 

 

    

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、な、な、な、何と!!叢雲立ちあがったぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

長門の目の前には全身ボロボロになりながら息を切らしながら艤装を片手に持ち左の主砲が破壊されているのにも関わらず叢雲はゆっくりとふらふらしながらも立ちあがっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何だと!?」

 

 

「あの駆逐艦…立ち上がった!?」

 

 

元帥達は席から立ち上がり食い入る様にガラスに張り付き長門の攻撃を受けた立ち上がる叢雲を見ている

 

 

「馬鹿な!ありえん!

たかが駆逐艦が!あの戦艦長門の主砲に耐えたのか!?」

 

 

「上手く避けた?いや、そんなわけない!

長門のあれは確実に命中していた!」

 

 

 

他の元帥が困惑する中東雲だけはそのボロボロの姿を見ながらニヤリと口元を上げながら笑っていた

 

 

「ははは!やはりな!あの艦娘ただの駆逐艦ではないな!!

流石アイツの相棒(バディ)を名乗るだけはある!

見せてみろ貴様の力とやらを!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘でしょ……雷撃姫あれを受けて立てるの?」

 

 

「おいおいおいおいおい!!マジかよ!長門の主砲を受けて立ち上がるのか!おい!」

 

 

北上と猿橋は手すりに掴まると立ち上がった叢雲を食い入る様に見ながら汗をかいていると同時に笑っていた

 

 

「ほら!やっぱり叢雲なら立ち上がるのよ!!

そうよ!アイツは絶対に諦めない!私が認めたんだもん!アイツは絶対に負けないわ!」

 

 

「叢雲ー!頑張れー!!」

 

 

阿武隈と瑞鶴が応援する中猿橋は唇を噛むとおもむろに携帯を取り出して佐渡へ電話しようとするがそれを大和に止められる

 

 

「大和!手を離せ!」

 

 

「駄目ですよ、提督

あの子の戦いの邪魔をしては」

 

 

「お前も分かるだろ!あれ以上戦ったらアイツは間違いなく!」

 

 

「それでもです

それに何を言っても戦いは止まりませんよ

叢雲さんは私の知ってる人達に似てますから……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「叢雲ー!」

 

 

「嘘……本当に立ち上がった……」

 

 

「だが、あの傷不味いのではないか?」

 

 

「えぇ……あれ以上戦えば…下手をすれば命に関わりますよ」

 

 

金剛が立ち上がった叢雲を喜んでいると直ぐ様大井がボロボロになった叢雲を見ながらその状態で察する

艤装はほとんど破壊され主砲も右しか残っておらず全身からは艤装による黒煙を上げながら血だらけになっている

 

 

「それでもだよ……叢雲の戦いに口出しは駄目だよ…」

 

 

その姿を見ながら古鷹は唇と拳を握り締めながら悔しそうにしていると他の四人もそれ以上は何も言わなくなる

(そう……今の叢雲に口出ししていいのは提督だけだもん…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘でしょ……あの子…立ち上がっている?

無茶よ…あんなボロボロの状態で戦える相手じゃない!!」

 

 

会場に先程着きボロボロの状態でも何とか立ち上がるの叢雲を見ながらエアは心配そうにそれを見ていた

 

 

「佐渡!彼女を下げなさい!

あれ以上戦えばどう考えても彼女は死ぬわ!!

死なないとしても後遺症やトラウマは残る!!

戦えなくなるわよ!!」

 

 

「……駄目だ、アイツは戦うことを選んだ

俺にはそれを止めることは出来ない」

 

 

エアの言葉に耳を貸さずに佐渡は真剣な面持ちになりながらも手すりに掴まると今にでも倒れそうな叢雲を見る

(…叢雲精一杯叫ぶぞお前に届いてくれるよな?

俺の片割れよ)

佐渡はそう思うと思い切り息を吸う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………驚いた…

貴様、何故立ち上がれる?

私の連撃をまともに受けて立ち上がれる者を見たのは初めてだ」

 

 

長門は驚愕しながらも主砲を構えようとするが叢雲は返事を返さずに息を乱し全身の傷口からは血がしたたり落ち最早戦える状態ではない

 

 

「……倒れたらどうだ?

今ならこれ以上何もしない

貴様が立ち上がる理由は分かる

だが、その傷と艤装では私を倒すなど無理だぞ?」

 

 

長門が話しているが叢雲は一言も答えずに息を乱すだけではあるが瞳だけは長門を捉えその目はまだ負けを認めていない

 

 

「ぅ、うぇぇ……」

 

 

長門に受けた腹部への攻撃が効いているのか胃酸を口から吐き出し海面に落とすと再び膝を着くが片手には艤装が握られておりそれを杖代わりに再び立ち上がる

 

 

「……あまりやりたくはないがトドメと行こうか

これ以上は時間の無駄だ」

 

 

叢雲の状態を見ると主砲を構え放とうとするがやはり抵抗があり躊躇っていると会場から大声で声が聞こえる

 

 

「叢雲ぉぉぉ!!

てめぇぇぇ!!何してやがる!!」

 

 

会場に鳴り響くその声の主は佐渡であり会場全体の視線と艦娘達も佐渡に集中するとエアも驚きながら佐渡を見る

 

 

「な、何だ!?って!佐渡提督!

ちょっと!なんでそこに居るんですか!?

ここではなく控え室に!!」

 

 

あまりの大声に実況をしている恵比寿もマイク越しに話しかなり焦っている

その様子を見ているとエアは思わずそれを止めようとする

 

 

 

「佐渡!あんた何してんのよ!!」

 

 

エアが隣で佐渡を落ち着かせようとするがそれを押し退け手すりに捕まると再び息を吸い大声で叢雲に話し掛ける

 

 

「何で油断しやがった!!何で焦りやがった!!

てめぇ!!俺の教えを忘れやがって!!

てめぇ!負けてえのか!!このクソ餓鬼がぁぁぁぁ!!」

 

 

佐渡の怒号が響き渡ると叢雲の身体がピクンと動くと艤装を水面に突き刺しながら佐渡へ向き直る

 

 

「この戦いはてめぇが望んだんだろ!!

また失いたいのかてめぇは!!無茶はしていい!!だが死ぬことは許さねぇ!!

てめぇは俺の艦娘だ!!俺の所有物だ!!

負けることは許さねぇ!!」

 

 

会場に響き渡るその声を止めようとエアが手を出すが佐渡はそれすらも払い除けるとボロボロになった叢雲を睨むと再び息を吸う

 

 

「だから!!負けるな!!

お前が俺の相棒(バディ)であるなら!

お前が俺の所有物でありたいのならば!!

そんな戦艦一人位叩き潰せ!!お前なら出来る!!

俺の全てを覚えたお前なら!!

信じてるぞ!!俺の駆逐艦叢雲!!」

 

 

会場に響き渡ると会場はどよめきながらも佐渡への視線が集中し恵比寿が会場をどよめきを制する様にマイクを手に取る

 

 

「え、えーと……佐渡提督?

熱い声援ありがとうございました、ですが控え室に戻ってーー」

 

 

恵比寿がそれを言おうとした瞬間主砲の砲撃音が会場に響き渡り遮ると再びそちらへ視線が集中する

 

 

「ふふ……久しぶりに…聞いたわ……あんたの怒号……」

 

 

今まで声を一切上げずにダウンしていた叢雲が笑いながら主砲を空に空撃ちしており顔をゆっくりと上げると佐渡を睨み付ける

 

 

「相変わらず……無茶ばっかり……

全く……何でこんな奴が司令官なのかしら?…はは……

でも届いたわよ……あんたの思い…」

 

 

叢雲は自分を支えていた艤装を再び持ち直すと横に振り回すと真っ直ぐに長門を捉えると同時に自らの左側艤装を切り捨てる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「任せなさい……貴方の思いを…

私のわがまま(・・・・)を為すためにこいつを倒すわ……

貴方の相棒(バディ)として駆逐艦叢雲として……」

 

 

 

 

 

 

 





次回

二つの正義

六周年を記念してうちの秘書艦(叢雲)に指輪を渡しましたが……うん母港ボイス…良い…



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VS 長門 八

「………まだやるのか?

叢雲、貴様に勝ち目は無いぞ?」

 

 

「はっ……言ってなさい…あんたには絶対負けないわよ…」

 

 

叢雲は虚勢を張っているが全身はボロボロになっており立っているのがやっとであるが戦う意思だけは全く衰えていない

 

 

「……前言撤回しよう

貴様はただの犯罪者ではないな

お前は誇り高い、犯罪者(正義)

敬意を払うよ」

 

 

「そりゃどうも……あんたに認められても嬉しくないけどね……」

 

 

「だからもう少し聞かせろ

何故だ、何故あんな男何だ?お前に頼っているだけのあんな惨めな男をそこまで信じられる戦える?」

 

 

「……あいつは私の全てよ

弱くて、情けなくて、虚勢ばかり張って、プライドだけ高い私を変えてくれた

戦い方をその意味を、私の存在全てを認めてくれて共に歩んでくれている

あんたはどうなのよ?戦艦長門

貴女は今何を信じて何で戦っているの?」

 

 

長門は直ぐにでも正義のためにと話そうとするが確かに自分が信じてるのは正義ではあるが何かこの叢雲とは違うと感じ口籠る

 

 

「それが貴女と私の違い

それにあいつはいつも仲間を動かしてくれる」

 

 

「古鷹ぁぁぁぁ!!!てめぇも我慢してんじゃねぇぞ!!」

 

 

再び佐渡の怒号が響き渡ると次は唇を噛み締めている古鷹に矛先が行くと古鷹は佐渡を見上げる

 

 

「俺は言ったよな!?我慢するなって!!

お前も俺の艦娘だ!!我慢は許さねぇ!!

叢雲に言いたいことがあるならきちんと伝えろ!!

アイツを信じろ!必ずお前の思いを成してくれる!!!

だから願え!!てめぇの願いを叢雲に伝えろ!!!」

 

 

佐渡の怒号は再び会場に響き渡ると古鷹は恐る恐る口を開こうとするが再び閉じてしまう

 

 

古鷹さん(・・・・)

 

 

叢雲の言葉にハッとすると顔だけを古鷹に向けており頭だけを頷くと古鷹は涙をこらえ唇を震わせながら自らの願いを叢雲に伝える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…お願い……叢雲…

皆を…提督を…私を…助けて!!」

 

 

古鷹の言葉を皮切りに金剛達も叢雲へエールを送る

 

 

「叢雲ー!長門なんかぶっ倒しちゃってくだサーイ!!」

 

 

「叢雲!お願い!長門を倒して!

信じてるからね!!貴女が勝つのを!」

 

 

「頼む!叢雲!長門を倒してくれ!!

お前なら倒せると信じてる!!」

 

 

「もう!貴女達は!!叢雲!負けるのは私も許さないからね!」

 

 

 

 

 

 

「任せておきなさい!!」

 

 

叢雲は空に拳を掲げると古鷹は微笑み金剛達も応援を始めると艤装を握り直し再び長門を睨み付ける

 

 

「……貴女確か正義がどうのこうの言ってたわね?」

 

 

「……あぁ、私は貴様ら深海と繋がる者達を深海棲艦を殲滅する

それが正義だ」

 

 

長門の言葉を聞くと叢雲はニヤリと笑いながら艤装を向けると言い放つ

 

 

 

 

「あんたのそれが正義なら

私の正義は仲間と共に歩みそれを助ける事こそが私の正義よ!!」

 

 

 

 





次回

限界

何とか傷を堪えながらも仲間の為に戦おうとする叢雲
古鷹達の願いを叶えることが出来るのか?



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VS 長門 九

「正義……だと?貴様がそれを語るのか?」

 

 

長門はその正義と言う言葉にピクンと反応すると先程より強い殺気を叢雲に向けるが全く恐れる気配は無く叢雲は深く息を吐く

(…やりたくはないけど…やらないと勝てないわね…

やるか…佐渡直伝の『あれ』を)

 

 

その姿を見ると長門は動かなくなり二人に静寂が流れそれを察してなのか会場も金剛達も静かになる

叢雲はゆっくりと瞳を開けると周りが聞こえない位に集中すると先程まで睨み付けていた眼を辞める

 

 

長門はその異様な叢雲の姿に眉を潜めるが二人は動かずに居ると叢雲の艤装が黒煙を上げており左の主砲繋ぎ目から部品がゆっくりと落ちるとそれを合図の様に叢雲は長門へと走りだす

 

 

「貴様!まだ走れるのか!!」

 

 

走り出す叢雲とは対称的に長門の足は既に限界を迎えておりこれ以上激しい動きが出来ないと理解し主砲と副砲を構えると叢雲へ正確に狙おうとすると

 

 

「副砲…からの主砲…近付いたら連続攻撃…」

 

 

「っ!?」

 

 

一瞬叢雲の口から聞こえた言葉に長門は驚き少しだけ動きが鈍りその瞬間に近付かれ艤装を振り下ろされ片手でそれを防ぐ

(何だ…?こいつ今何て…?)

長門が疑問に思っていると叢雲の追撃で右の主砲を長門に押し付けようとしてくる

(まぁ良い、とりあえずこの主砲をわざと受けその後に爆煙に紛れ副砲を当て近接戦に持ち込んでくれる!!)

 

 

だが、叢雲は長門が何もしない事を見ると主砲の砲撃を辞めると艤装を長門の腹部に突き刺すと同時にそれを蹴り飛ばし更に深く長門に刺し込む

 

 

「ガハッ……な、フェイク!?

貴様…!」

 

 

長門がそれを掴もうとすると右の主砲で長門の手を撃ち抜くと落ちそうになる艤装を拾うと副砲に向け突き刺そうとする

(それは不味い!主砲でカバーしながら拳で)

 

 

叢雲の動きより先に動こうとすると小さく呟いてるのが聞こえるがそれに絶句する

 

 

「主砲でカバー……右ストレートからの蹴り飛ばし……」

 

 

「っ!?貴様!まさか!!」

 

 

長門は先程からの叢雲の動きの違和感に気付き急いで突き刺されそう副砲を手で止めると叢雲を見ると既に艤装を手放しており右の主砲で長門の顔を捉えるとそのまま砲撃しまともに受けてしまう

それと同時に艤装を引き抜くと後ろに軽くバックステップをし距離を取る

 

 

「貴様……まさか…その技術は…」

 

 

爆煙の中顔を触ると先程の砲撃により頭から血を流しており爆煙を切り裂き睨み付ける

 

 

「それは…佐渡提督の先読み(未来予知)か?

何故だ…何故貴様が使える?」

 

 

佐渡の先読み

相手の行動や言動、予備動作で完全にその先を読むことが出来る佐渡だけが持っている才能の一つなのだが叢雲はそれと全く同じ位の行動をしており長門は警戒する

 

 

「……へぇ?知ってるんだ?

教えてもらったのよアイツからコツをね

普段は使わないでも勝てるし、あまり使うなって言われてるからやらないんだけどあんたを追い詰めるなら使うしか無いからね!!!」

 

 

叢雲は再び走り出すと艤装を構えており長門は唐澤に言われた言葉を軽く思い出す

 

 

先読み(未来予知)?なんだそれは?』

 

 

 

『あぁ、佐渡が戦艦棲姫戦の時に我々に見せていた技術の一つだ

敵の言動や行動、予備動作で相手の先を見る力だ

これが戦闘に用いられれば恐らく勝ち目はない

だが今のところ叢雲が使えたと言う話は聞かないがもしかしたら叢雲も使えるのかも知れない気を付けろ?』

 

 

 

『そうか、分かった警戒はしておく』

 

 

(まさか、提督の読みが当たるとはな…最悪だ

この艦娘最後にそれを残していたか!!)

 

 

長門の目の前には佐渡と全く同じ先読みをしながら叢雲が突っ込んできており長門の攻撃をことごとく読まれ全く攻撃が出来ていなかった

 

 

「この!!」

 

 

長門が拳を使い叢雲を殴ろうとするとその先を読まれてしまう

(右ストレートから左に避けたら主砲、外したら副砲

右に避けたら更に左ストレートと副砲)

叢雲は長門の拳を受け止めると同時にそれを引っ張り足を同時に崩すと背中を踏みつける

 

 

「くそ!貴様ぁ!!」

 

 

「くたばりなさい!!」

 

 

叢雲が主砲を放とうとすると長門は倒れながら水中に主砲を放つと二人を水柱が包み叢雲は思わず少し下がると少し屈む

 

 

「舐めるなよ!その程度、私の敵ではない!!」

 

 

水柱の中から立ち上がった長門の手が叢雲の頭をかすると同時に叢雲は長門の居場所を理解すると艤装で長門の腹部を突き刺す

 

 

「グフッ……これもか!!」

 

 

「無駄よあんたが何をしようと今の私にはあんたの全てが分かるからね!!」

 

 

叢雲はそのまま艤装を蹴り飛ばし追撃をしようとするが腹部に激痛が走ると同時に全身に痛みが広がり吐血してしまい動きが止まる

(ぐ……集中力が切れてきた…

痛い…でも……負けるわけにはいかない!)

だがその隙を長門は見逃さず叢雲の腹部に蹴りを入れると自分にもダメージが行くが何とか蹴り飛ばす

 

 

「…そろそろ限界の…ようだな!!」

 

 

「あんた…も…ね!!」

 

 

二人は各々付けられた傷と痛みに耐えながらボロボロの身体を無理矢理に動かしながらも対峙する

自らの正義を貫くために限界を越えてでも相手を倒すために

 

 

 

 

 




次回

声援

叢雲の隠し技佐渡の先読みを使い始め何とか長門に食らい付くその時間は短い
果たして叢雲は長門を倒しきることが出来るのか




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VS 長門 十

二人がボロボロになりながら傷を隠し戦い続けているとそれを見ていた会場は静かになりながは戦いを見ていた

 

 

「…ねぇ、佐渡

お願いがあるの」

 

 

「何だ?」

 

 

不意に隣から声が聞こえるとエアが手すりを思い切り握り締めながら唇を噛んでいた

 

 

「……私も大声出して良い?」

 

 

「…良いぞ、好きにしろ」

 

 

「ありがと」

 

 

エアは思い切り息を吸うとボロボロになりながら戦い続ける叢雲に向けて精一杯の声援を送ろうとする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「叢雲……お願い勝って…!」

 

 

水上では目を閉じ古鷹が祈り他の金剛達もそれを落ち着かない様子で見ておりそわそわとしている

 

 

「お願い…叢雲!」

 

 

「心配ないさ…叢雲は強い…」

 

 

「でもさ…何か叢雲の背中を見ると安心するわよね?」

 

 

「「「え?」」」

 

 

不意に大井が言ったひと言に一同驚きながらも叢雲の背中を凝視すると確かにと納得する

 

 

「……確かにデース

いつも見馴れている背中デスけど何か安心しますよね」

 

 

「そうね……あの背中を見ていると任せても心配ない気がするのよね」

 

 

「……叢雲は、本当に凄い艦娘()だと思う

アトミラールの願いを聞き一人でも懸命に戦うその姿がな…」

 

 

「叢雲は…」

 

 

不意に願っていた古鷹が声を上げると四人はそれに集中すると目を開け目の前で戦い続ける叢雲を見る

 

 

「いつも一人で前に出て、誰よりも先に戦って、それで一番提督を信頼して、そして仲間を大事に思っている

だから私はあの子を信じてる

『私を地獄から救いだしてくれた人だから』」

 

 

古鷹達が声援を送ろうとした瞬間会場全体に再び声が響き渡る

 

 

「頑張れー!!叢雲ー!!

あんたならそんな戦艦一人倒せるわよ!!!

頑張れー!!」

 

 

その声の主はエアなのだが観客席の視線を集めながらも声援を上げているとポツポツと他の観客席からの叢雲への声援が送られる

 

 

「頑張れー!駆逐艦!」

 

 

「頑張れー!小さいお姉ちゃん!!」

 

 

会場の半分が叢雲の応援をしているとその中から長門を応援する声も出てくる

 

 

「いや!負けるな戦艦!

ビック7の実力見せつけてやれ!!」

 

 

「最強の艦娘に勝てるわけないだろ!!

そんな奴叩き潰せ!!」

 

 

真っ暗な中会場全体で今戦う二人の艦娘に向けて声援が送られると阿武隈達もそれに紛れて応援する

 

 

「負けるなー!叢雲ー!!」

 

 

「やっちゃえ!雷撃姫!」

 

 

「あんたなら誰にも負けないわよ!!

勝ちなさい!叢雲ー!」

 

 

皆が応援する中その様子を猿橋もそわそわとしながら見ていると背中からコソコソと大和が囁く

 

 

「提督、今ならこの声援に紛れることが出来ますよ?」

 

 

「!……やっちまえ!!雷撃姫!!」

 

 

猿橋も抑えていたが叢雲へ応援しているとその様子を見ていた恵比寿と羽田が実況を再開する

 

 

「さぁ!いよいよ戦いは大詰め!!

盛り上がってきましたねぇ!!

大演習会ラストバトル!!

正義の戦艦長門VS雷撃姫駆逐艦叢雲!

お互いかなりの損傷を受けているのにも関わらず戦い続けております!!」

 

 

「えぇ……これは本格的に分かりませんね…

どちらが勝っても可笑しくありません」

 

 

「そうですね!さて一体どちらに軍配が上がるのでしょうか!?

最強の戦艦と最強の駆逐艦、勝つのはどっちだぁ!!!?」

 

 

会場全体が盛り上がる中水上では叢雲がかなり押していた

それもそのはず叢雲は先読みが使っており長門の攻撃を全て交わすか弾いており押し続けていた

(くそ!何をしてもこいつに先読みされる!!

そろそろこちらも限界だと言うのに!!)

 

 

長門が叢雲の攻撃に押され後ろに後退していると足下に何かが当たるのを感じると不意に下を見てしまう

 

 

「何だ…?艤装か…?でも何故こんなところに…」

 

 

その姿を確認した叢雲は残っている魚雷を一発取り出すと長門に投げつけると咄嗟に長門は避けるが叢雲はそれを撃ち抜き側で爆発させる

 

 

「グハ……貴様っ!!」

 

 

長門の艤装が黒煙を上げ始め耐久がかなり減っていることを理解した叢雲はトドメの攻撃をしようと走り出す

 

 

「終わりよ!長門!

トド…メ………」

 

 

だが、叢雲は途中で全身から力が抜けてしまいその勢いのまま水面に突っ込んでしまうと何とか立ち上がろうとするが身体が言うことを聞かない

(不味…い…ちょっと…早い…わよ!……もう少し…なの…に!)

水上で悶える叢雲を不思議に見ているといきなり叢雲が頭を抱えだしながら絶叫する

 

 

「アアアァァァァァァ!!!

痛い!!痛い!!!頭ガァァァァ!」

 

 

頭を抱えながら水面を転がっており口と鼻から大量の出血をしている叢雲に驚きながらも長門は撃ち抜こうとしてくるがそれを先読みし何とか避ける

やはり頭痛は止まらない

 

 

その姿を見ていたエアが恐る恐る佐渡を見ると冷や汗をかいており不味いと言った表情をしており何故かを察してしまう

 

 

「佐渡…まさかあれって……」

 

 

「……あぁ、先読みの代償……

すなわちリスクの方だ」

 

 

 

 

 

 

 





次回

リスク

強すぎる力には必ずリスクがある
それが強ければ強いほどに



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VS 長門 十一

「リスク…?でもあんたが使っても特に何もないわよね?」

 

 

「いんや、あるさ

俺も使うときはリスクを背負ってる

と言っても軽く使う程度なら問題ない

使いすぎたり連続して使えばそれが蝕む

だからこそ、ここぞって時にしか使わないし叢雲だけにしか教えてない」

 

 

「そのリスクって?」

 

 

エアが恐る恐る聞くと佐渡は頭を人差し指で指しながらその先読み(未来予知)の説明を始める

 

 

「俺の先読みには三つの発動条件がある

一つ、近接戦か目に見えている相手に対してのみ使えると言うこと

二つ、相手の持つ武器を理解すること

三つ、自らの身体がどこまで動けるのかを理解することそして戦いを幾つも重ねていること

これが条件だ

正直、スナイパーとか遠距離砲撃には使えない近接戦闘のみで使える先手読み見たいなもんだ

どっかのラスボス見たいに時間は飛ばせないけどな」

 

 

「それなら普通の相手には使えるのね

それで?」

 

 

「この先読みの正体は簡単に言えば

集中力と想像力の応用なんだ

戦闘馴れした熟練者には使えないわけではない

ま、完全な物は俺しか使えないが

……だがこれには大きな…リスクを伴う」

 

 

佐渡から言われた大きなリスクにエアは背筋を凍らせているが佐渡はそのリスクを話だす

 

 

「あの先読みはかなりの集中力と想像力を消費することで脳にかなり大きな負担がかかる

激しい頭痛、手足の痺れ、目眩吐き気、視力低下

一時的ではあるがそれを発生させる

それに加え自らが動いてその先を潰して更にその先を読み続けなくてはいけない

どんなに集中力が長けていても使えない

どんなに想像力が長けていても使えない

この二つを完璧に使いこなし更に自らの動きをそれに合わせていく

しかも一度歯車が狂えば恐らくその戦闘では二度と使えない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「正に諸刃の剣…何です」

 

 

「嘘……」

 

 

「提督のあれには……そんなリスクが…」

 

 

「む、叢雲……」

 

 

古鷹から同じ説明を受けた金剛達も心配そうに今戦っている叢雲を見ているが確かに苦しそうに頭を押さえている

 

 

「貴様……そこまでして戦うのか?」

 

 

流石の長門も先程よりボロボロになりつつある叢雲を見て恐れを感じる

目の光は消えず真っ直ぐに長門を捉え睨み付け戦うその姿に誇りすら感じながら

 

 

「これは……私のわがまま…だから…よ」

 

 

叢雲は痛む頭とボロボロの全身を無理矢理にでも動かしながら長門と対峙する

 

 

「わがまま…だと?」

 

 

「そうよ……正直…古鷹とかを捨てさえすれば確かに今の状況を抜け出せるわ…

普通に考えれば分かることなのよ…

佐渡もそれを理解している……

でもね、私は失いたくない……今の仲間を…鎮守府の仲間を…絶対に…

佐渡には迷惑をかけてると思う、でもあいつは私のわがままにいつだって付き合ってくれる

自分の気持ちを抑えてでも絶対に……」

 

 

艤装を振り回すと水面に叩き付けると長門を差し向けると声を振り絞る

 

 

「だから……私は今の仲間を助けるの!!

その為なら何だって犠牲にしてやる!声も!目も!味覚も!耳も!犠牲にするだけで助けられるなら私は何でもするわ!!」

 

 

叢雲の言葉はしっかりと古鷹達に届き微笑みながらも応援を始めると長門は唇を噛み締めながら叢雲を睨み付ける

(これが……最強の駆逐艦の覚悟か……

成る程な…素晴らしいな……

だが!私も負けられないのだ!!正義を通すために)

 

 

「行くわよ!!戦艦長門!!」

 

 

「来い!駆逐艦叢雲!!」

 

 

叢雲は悲鳴を上げると全身に鞭を打ちながら長門に突っ込んでいき右の主砲と艤装を振り回す

(後……少しで追い込める!!

それまで持ちなさいよ!私の身体!!)

 

 

 

 

 





次回

謀略

次回、佐渡が叢雲達に与えた作戦が発動し長門を追い込みます
雷撃姫の真骨頂が垣間見えます


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VS 長門 十二

叢雲は走りながら砲撃をすると長門は拳でその砲弾を弾くと次に艤装を振り回し長門に直撃させると顎を蹴りあげる

 

 

「ぐ……この!」

 

 

長門が主砲を叢雲に向けると長門の攻撃を先読みし艤装を水面に突き立て足払いをすると続けて腹部に拳を入れるのだが

 

 

「ぐぅぅ!!」

 

 

脳の痛みが激しく余り強くは殴れず長門にはほとんど効いておらずそれを軽く受け止め殴りかかってくる

 

 

「この程度か!貴様の拳は!!」

 

 

「っ!うるさい!!」

 

 

長門の攻撃を先読みし拳の角度と速度を理解するとその腕を掴みそのまま組伏せると艤装を長門の腹部に突き刺すが長門は痛みに耐え蹴り飛ばす

 

 

「同じところを狙うのが上手いな!貴様!!」

 

 

何度も艤装で同じところを突き刺され長門の腹部は青く染まり内部出血をしていた

そこを押さえながら戦うがやはり叢雲の先読みにより一切攻撃が当たらずどんどん後ろに下がっていく

(ぐぅ……足も限界だ…流石に走るのも不可能か!!)

足の艤装はほぼ破壊されており他の艤装も叢雲の攻撃が蓄積し煙を上げており限界を感じる

 

 

(後少し!!)

叢雲は身体の限界を感じながら激痛の頭に何とか耐えながら長門の攻撃を交わし少しずつ後ろに下げていき足下にある何かを蹴り飛ばしそれを長門の足下に流していきながら何とか戦う

 

 

「終わりよ!長門!!」

 

 

艤装の中から一発だけ魚雷を取り出しそれを長門に投げ付けると長門はそれを交わそうとするが叢雲は先に右の主砲でそれを撃ち抜き長門に最後のダメージを与える

 

 

「ぐぅ……くそぉ…不味いな…」

 

 

長門の艤装がとうとう黒煙を上げ始め叢雲はその姿を見るとニヤリと笑い艤装からもう一つの魚雷発射管を取り出し左手に付けると長門に突っ込んでいく

 

 

「トドメよ!!」

 

 

叢雲が二つの雷撃を長門の至近距離で当てようと飛び上がると長門がニヤリと笑う

 

 

「どうやら、貴様の先読みも時間切れの様だな?」

 

 

瞬間長門は飛び上がり叢雲の首を空中で掴むとそのまま掴んだ状態で主砲を叢雲に向けるとほぼ至近距離で砲撃する

 

 

 

「くたばれぇぇぇ!!」

 

 

「ガハッ……こん…のぉ!!!」

 

 

叢雲は主砲が直撃し爆煙と共に吹き飛ばされるが何とか雷撃だけは放とうとするがとうとう先読みのリスクが身体を蝕み視界が歪み身体に力が入らなくなり合計六発の雷撃があらぬ方向へと射出されると水上を転がりながら倒れてしまう

 

 

「はぁ……はぁ……終わったな……」

 

 

長門は次こそ勝利を確信していた

主砲をもしも耐えていたとしても先程の様子から恐らく身体が限界を迎えているのは明白だった

痛む身体を持ち上げると長門は息を整えると遠くに飛ばされた叢雲を見る

 

 

「雷撃姫 嫌駆逐艦叢雲よ……

貴様に敬意を表す

私をここまで、追い込んだ事誇るが良い…」

 

 

長門が話していると叢雲は歪む視界とほとんど力が入らない身体を無理矢理にでも動かし艤装を水面に突き刺し膝をついた状態で長門を見る

 

 

「貴様は限界の様だな?

私はもう少しなら動ける

さて、お前のトドメと行こうか!!」

 

 

だが、叢雲は微笑んでいたそれが時期に声を上げながら笑いその声が会場全体に響き渡る程に大きくなると長門は怪訝そうな顔をする

 

 

「……何が可笑しい?

貴様とうとう、壊れたの?」

 

 

「アハハハハハ!

違…うわよ……この戦いが…終わった…から…ね…

嬉しくて……ハハ」

 

 

「そうだな、お前の負けーーー」

 

 

「作戦完了、あんたの負けよ

雷の一撃に沈みなさい」

 

 

「………何だと?」

 

 

長門が疑問に思っていると周囲から何かがこちらに向かっていることに気付き周りを良く見ると先程叢雲が放った雷撃が長門に向かってきており背筋を凍らせる

 

 

「な、何故だ!?先程の雷撃は私を捉えていなかっーーー

…そうか!誘導性魚雷!?」

 

 

叢雲はニヤリと頬を吊り上げていると長門は何とかそこから動き逃げようとするが足の艤装が最早使い物にならないほどに破壊されており動けない

 

 

「無駄よ……私の最後の…先読みで…あんたは……動けない!!」

 

 

「小癪な!!」

 

 

長門は艤装を使い向かってくる魚雷を撃ち抜こうとすると水上の浮遊物を改めて見ると更に背筋を凍らせる

 

 

「な……なん…だ…こ…れは!?」

 

 

やっと叢雲達の作戦に気付いた長門を見ると更に笑い長門は震える手で水上の物を拾い上げるとやっと浮いていた物を理解する

 

 

「ぎょ…魚雷!?

だが、何故こんなところに!?

しかも不発弾だと!

 

……貴様!まさか、最初からこれが目的だったのか!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうよ…長門……あんたははまったの

司令官の謀略にね…」

 

 

 





次回

作戦

最初から佐渡の作戦が水面下で動いておりそれが最後になり発動し長門を絶対絶命まで追い込む

そろそろ次のイベントですねぇ
皆の育成を早くしないと…



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謀略

時は少し遡り叢雲達の出撃前の時間に戻る

 

 

 

「さて、そんじゃ今回の作戦をお前らには伝える良いな?」

 

 

「良いわよ」

 

 

試合が始まる前佐渡は叢雲達を集め全員が艤装を付けた状態で佐渡を囲むように指示を待っている

 

 

「取り敢えず、まず最初に伝えておく

今回の作戦には全員の連携と全員の力が不可欠だ

良いな?」

 

 

「力?連携だけではないのか?」

 

 

グラーフが疑問に思い佐渡に問いかけると頷き今回の作戦の概要を話していく

 

 

「そうだ、今回は各自の役割分担を果たしてもらう

取り敢えず全員が対峙する者達を話す

まず、グラーフお前は赤城を一人で倒せ

何としてでも制空権を取らないといけない

出来るな?」

 

 

「……中々無茶を言ってくれるなアトミラール?

赤城とはかなり強力な空母なのだろ?

だが良いだろう任せておけ

何とかするさ」

 

 

「次に大井お前は磯風を倒せ」

 

 

「ちょっと……それ私一人に任せるんですか?

叢雲とほぼ似たような駆逐艦相手とか嫌ですよ?」

 

 

「まぁ、そこは金剛とコンビで頼む

多分一人だと勝てないだろうし」

 

 

「ちょっと待ってください何で一人だと無理だと決めつけるんですか?えぇ?」

 

 

「さっき嫌とか言ってませんでしたかぁ!?」

 

 

大井は眉間にシワを避けながら怒り佐渡の首を閉めており隣でエアがごほんと咳を鳴らすと首から手を離す

 

 

「次にイムヤ、お前にはかなり重要な物を持たせる」

 

 

「え?私?何を持たせるの?」

 

 

「これだ」

 

 

佐渡が木箱から取り出してイムヤ達に見せたのは大量の魚雷しかもそれには使用禁止の札が貼られており全員が何かを理解する

 

 

「こ、これって!?」

 

 

「まさか!あの魚雷!?」

 

 

「そうだ、特殊魚雷名付けて誘爆型単装魚雷(ゆうばくがたたんそうぎょらい)

悪いんだかこれを持ってもらう」

 

 

イムヤは生唾を飲むとゆっくりとその魚雷を持ち上げる異様に重いそしてかなり装甲が薄く中にある弾薬が傾けるだけで手に感覚として分かる

 

 

「イムヤ、こいつをお前預けるのはお前を信用してるからだ良いな?

嫌なら良い他の作戦にーー」

 

 

「いや、やるわ

やってみせる!任せて司令官!!」

 

 

イムヤの返事と表情は自信に満ち溢れており佐渡は微笑みながら頭を撫でる

 

 

「良し!それなら任せるぞ?

お前は綾波を相手してもらう

くれぐれも油断はするか相手は潜水艦を何度も相手している強者だ

そして、こいつを負ける寸前にばら蒔いて欲しいんだ」

 

 

「ばら蒔く?でもそんなことをしたらーー」

 

 

「そこは大丈夫だ、信じておけ」

 

 

佐渡の言葉を信じイムヤは佐渡から渡された誘爆型単装魚雷を艤装にしまうと改めてその重さを実感する

 

 

「次に金剛、お前にも重要な役割を任せる」

 

 

「ハーイ!何でしょうか?」

 

 

「お前には長門と対峙してもらう」

 

 

佐渡の言葉に一度ざわめくが叢雲だけは目を閉じ聞いていた

 

 

「て、提督…」

 

 

「頼む、お前にしか任せられないんだ」

 

 

金剛は声を出そうとするが佐渡の真っ直ぐな目を見ると本気で信頼してくれていると理解し頷く

 

 

「分かりました、やりましょう」

 

 

「すまん、任せる

やることは二つ

一つは長門の脚部艤装の破壊と奴の耐久を出来るだけ削れ

二つ目のは出来なくても構わない

奴に不幸を伝染させろ」

 

 

「不幸を……デースか?」

 

 

「あぁ、出来ればで構わん頼めるか?」

 

 

「良いデースよ!任せてくださーい!!」

 

 

金剛が元気良く返事を返すと次に古鷹と叢雲に向き直ると最後の作戦を二人に告げる

 

 

「そして、古鷹叢雲は利根、陸奥、長門の三人を相手してもらう」

 

 

「分かりました」

 

 

「任せなさい」

 

 

「恐らく利根と陸奥はそこまで障害にはならないが長門には気を付けろ

奴が陸奥を傷つけられれば黙ってるわけがないからな

まずは二人の撃破、そして長門だ」

 

 

「了解です」

 

 

「分かったわ」

 

 

「二人を撃破した後恐らく夜戦に突入する

そしたら、古鷹頼むぞ

お前の光が頼りだ」

 

 

佐渡はそう言うと古鷹の左頬を撫でると嬉しそうに微笑むと胸を叩く

 

 

「任せてください!夜戦は得意ですから!!」

 

 

古鷹の言葉を聞くと佐渡は微笑み叢雲の目の前に立つと叢雲はゆっくりと瞳を開ける

 

 

「……作戦は理解したな?

相棒(バディ)

 

 

「イムヤのばらまいた魚雷にアイツを誘導し完全に動けなくなったら私の雷撃でトドメでしょ」

 

 

「流石だな相棒(バディ)

行けそうか?」

 

 

「私を誰だと思ってるの?

任せておきなさい

必ず勝って見せるわ」

 

 

佐渡が拳を出すと叢雲もそれに合わせて拳を合わせると二人ともニヤリと微笑む

 

 

「長門はまともな相手ではない

ならこちらもそれ相応の攻撃を仕掛ける

グラーフ、大井は赤城、磯風の撃破

イムヤ、綾波を倒し誘爆型を仕掛け

金剛、古鷹で長門の耐久を削り足の艤装を破壊し

叢雲が、ラストの雷撃で奴を完全に破壊する!

頼むぞ!!お前達!!

誰一人としてミスは許されない!」

 

 

佐渡の作戦と気迫に少し押されているが叢雲は毅然としており微笑んでいると佐渡も微笑む

 

 

 

「と言うわけだ、今回は全員連携が大事になる

各々の役割を忘れるなよ?」

 

 

 

「「「「「「了解!!」」」」」」

 

 

 

 

 

 

 




次回

孤高の一匹狼

佐渡の作戦が発動し叢雲の雷撃が長門に食らいつく!
VS長門編クライマックスです!


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雷の一撃

そして、時間は再び戻り叢雲の目の前には作戦通りに長門が誘爆型単装魚雷に囲まれ誘導型四連装魚雷により窮地に立たされていた

 

 

「まさか!まさか!こんなことを最初から仕組んでいたのか!?」

 

 

「そう…よ…あんたの…装甲…では…簡単に…は…仕留められないからね…

やらせて貰ったわよ…」

 

 

長門はどうしようもないその状況に焦り何とか魚雷を自分から遠ざけようする

 

 

「無駄…よ…

その魚雷は通常より遥かに火力が高い

それに誘爆しやすく取り扱いもかなり難しい代物よ……

下手に退かそうとすれば誘導型と誘爆型同時の爆発に巻き込まれあんたは更にダメージを負う

無事じゃ済まない……」

 

 

「き、貴様ぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「今度こそ…あんたの終わりよ…」

 

 

悔しがる長門に追尾型が迫り叢雲は佐渡の作戦を完全に遂行した事と勝利の確信があり微笑みながら長門へ指を指し叫ぶ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「海の底に沈めぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

「叢雲ぉぉぉぉ!!!」

 

 

長門は最後の気力を振り絞り全砲門を叢雲に向けると何とか立ち上がり標準を合わせる

 

 

「沈むのは貴様だぁぁぁぁぁぁ!!!

全砲門斉射!!沈めぇぇぇぇ!!!!」

 

 

叢雲の雷撃が命中する瞬間長門は叢雲へ全弾を撃ち放つと同時に誘導性魚雷が誘爆型に直撃し通常では有り得ないほどの爆音と水柱そして爆煙に包まれると同時に叢雲は何とか長門の主砲を避けようとするが

(やば……動け…ない…お願い…動いて右の主砲!!)

身体に力が入らず当たる寸前まで右の主砲を動かすが着弾しこちらも大爆発を起こし両者爆煙に包まれる

 

 

「決まったぁぁぁぁぁ!!

両者ラストの一撃が命中し二人が爆煙に包まれるぅ!!

果たして勝者は…どっちだぁ!」

 

 

二人が爆煙に包まれると会場は静かになると東雲がマイクに電源を入れると大声で大淀に話しかける

 

 

「大淀!電気を付けろ!!」

 

 

「で、ですか!」

 

 

「良いから早くしろ!!」

 

 

「は、はい!分かりました!!

ライトアップ!!」

 

 

東雲の指示に大淀は会場の電気を付けるといままで真っ暗だった会場が明るくなり全体が良く見渡せる

だが、以前として爆煙に包まれており会場全体が息を飲みながらその結果をみる

 

 

佐渡とエアもその結果を見ていると反対側にいつの間にか唐澤が来ており慌てながら水上で爆煙に包まれている長門を見下ろす

 

 

「叢雲…勝ってるわよね?」

 

 

「……さぁな…」

 

 

エアが質問するがこればっかりは佐渡も分からずに爆煙が晴れるのをゆっくりと待っている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『孤高の一匹狼』

 

 

ふと、猿橋がその言葉を呟くと阿武隈や瑞鶴達の視線が猿橋に集中する

 

 

「何よそれ?」

 

 

「叢雲が大本営に居た頃に呼ばれていたあだ名

誰よりも高い理想と信念を掲げ

決して誰にも懐かず、たった一人で戦い続けていたから付いた

佐渡が来てからすっかりアイツと仲が良いしある戦績によって呼ばれなくなったがその頃からアイツは強かった

だが、まさかここまでの実力をつけているとはね

驚いた」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どっちだ?どっちが勝ったんだ!?」

 

 

「おい!早く爆煙を消せ!!」

 

 

元帥達も慌てふためきながら二人の結果を待っていると後ろで東雲がニヤリと笑いながら見ている

 

 

「正義を貫く者と思いを貫く者

果たして勝者はどっちだろうなぁ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それぞれが長門と叢雲の勝敗を待っていると少しずつ爆煙が晴れていくと再び会場は息をのむ

 

 

 

「果たして!立っているのは!

勝者はどっちだぁぁぁぁ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 





次回

勝者は?

双方の最後の一撃が決まり試合は決着する
勝利の女神が微笑むのはどっちだ?

そう言えば令和になりましたね~
おめでとうございます?


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決着

爆煙が晴れていき二人の姿が確認された後恵比寿が再び興奮気味にマイクを取り実況を開始する

 

 

「さて!爆煙が晴れ!二人の姿が見えてきました!!

倒れているのは、立っているのはどっちだぁ!?」

 

 

そして、二人を包んでいた爆煙が晴れ姿を見た瞬間佐渡は眉間にシワを寄せエアは口を押さえ古鷹達はその結果に慌てる

一方同じく水上で見ていた磯風達は安堵のため息を付き唐澤もふぅと溜め息を付いていると再び恵比寿の実況が始まる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何と!立っているのは長門だぁぁぁぁぁぁ!」

 

 

爆煙が晴れた中長門は呆然と立ち尽くしそれに対する叢雲は水面に倒れており動いていない

その結果に会場が盛り上がり歓声と共に長門コール一色に染まっていると元帥達も安堵のため息と共にその場に座り込む

 

 

「何だ……結局長門か…」

 

 

「驚かせやがって……

さてこの大会も終わりだ終わり

長門の勝利で小笠原は解体だ」

 

 

元帥達が長門の勝利を確信すると東雲が立ち上がり会場を見下ろすと高らかに笑い声を上げる

 

 

「大元帥?」

 

 

「一体どうしましたか?」

 

 

「見ていれば分かるさ

もう少しだけ見ておけ馬鹿共」

 

 

長門の勝利が確定すると阿武隈達はガクンと腰を落とし瑞鶴は悔しそうに手すりを叩く

 

 

「叢雲……!」

 

 

「仕方ないさ……相手が悪すぎたんだ…

あの戦艦長門をあそこまでボロボロにしたんだ素晴らしいよ叢雲は……」

 

 

石澤が二人を慰めていると北上は手すりを思い切り握りしめると悔しそうに唇を噛んでおりそれを葛城が慰める

 

 

「北上ちゃん仕方無いわよ……

叢雲ちゃんは良くやったわ…」

 

 

「うん……そうだね…提督…」

 

 

全員が叢雲の敗北を確信していると猿橋だけが首をかしげながらその結果に疑問を抱いていると大和が隣で聞く

 

 

「提督?どうされましたか?」

 

 

「…嫌な…何か長門全く動かないなと思ってな?」

 

 

猿橋の言葉を聞くと確かに長門は息すらしていないように呆然と立ち尽くしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな……叢雲……」

 

 

「嘘デース!叢雲が負けるなんて!!」

 

 

「だが、これが結果だ諦めろ小笠原者達よ」

 

 

古鷹達が叢雲の敗北を悲しんでいる頃磯風が近付いてきながら残酷な結果だけを伝えに来る

 

 

「黙るデース!!叢雲が負けるわけないんデース!」

 

 

「辞めなさい!金剛!」

 

 

「そうよ!叢雲……負けたのよ!!」

 

 

暴れる金剛を取り押さえると磯風は自らが勝ったかの様に嬉しそうにしていると長門を迎えにいこうと前に出ると長門に話しかける

 

 

「流石だ長門!あの雷撃に耐えるなんて!!」

 

 

だが、長門からは一切の返事も言葉も動きすら無くただ呆然と立ち尽くし艤装だけが火花を上げている

 

 

「……長門?」

 

 

その様子に疑問に思いながらも先程の雷撃で少し耳が遠くなっただけだと思い大淀の判定を待つ

 

 

 

「勝負あったな佐渡よ」

 

 

対面する唐澤からインカムに声が入り佐渡もそれに答えるようにインカムの電源を入れる

 

 

「そうですね」

 

 

「お前達の負けだ、叢雲達は貰っていく

安心しろ悪いようにはーーー」

 

 

 

「何を言ってるんですか唐澤大将、負けは貴殿方ですよ?」

 

 

 

「……何だと?」

 

 

「ちょっと佐渡!何言ってるのよ!!

これはどうみてもーー」

 

 

「良いから、叢雲を信じろ」

 

 

佐渡は微笑んでいるとエアもそれ以上は詮索を辞めると最後の審判を待つ

 

 

 

 

 

 

「やはり、長門さんでしたか……

流石ですね、正義の戦艦の名は伊達ではないと言うことでしょうか?」

 

 

大淀が判定の為に両者を見ると叢雲は倒れているが艤装が爆発しておらず長門も立ち尽くしているため判定が取り辛いが手を上げ二人の戦いに決着を付ける

(正直、叢雲さんならやれると思ったのですが残念です)

 

 

「叢雲!戦闘不能!!

勝者!正義の戦艦長門!よって優勝は舞ーー」

 

 

と言い掛けた瞬間会場のコールを裂くような爆発音が響き渡り全員の目がその音の主に集中する

そして会場全体がざわめきと混乱していた

その爆発音を出した主と言うのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、な、な、な、な!?

何と!!長門の艤装が爆発したぁぁぁぁぁ!?」

 

 

その爆発音の主は長門の艤装であり長門は白目を向きながらその爆発によりゆっくりと倒れていく

 

 

 

 

 




次回

勝者

勝利していたはずの長門の艤装が爆発により大破し勝敗が決まらない
次回、長門戦決着となります!



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決着 二

「何だと!?」

 

 

「あの長門の艤装が!?」

 

 

元帥達は驚き慌てながらも東雲だけはそれを理解していたかの様に頬をつり上げながらニヤリと笑っていた

 

 

「ほう?あの戦艦を壊したか、駆逐艦叢雲」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘!?」

 

 

「長門の艤装が爆発した!?」

 

 

阿武隈達がその結果に驚いていると猿橋は口笛を吹くと笑いが止まらない

 

 

「はは!やべぇな、あの駆逐艦

やるじゃねぇかよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何だと!?」

 

 

「嘘……長門の艤装が…?」

 

 

「ぶっ壊れたデース!」

 

 

勝利を確信していた磯風は唖然とした表情をしながら金剛達は嬉しさに跳び跳ねたりしていると古鷹が微笑むと涙を流す

 

 

「流石だね……叢雲…」

 

 

 

観客も全員ざわめきながら倒れる長門を見ると既に偽装は全て破壊されており最早動ける状態ではない

 

 

「馬鹿な!

長門があの駆逐艦に負けたのか!?」

 

 

インカム越しに聞こえる唐澤の声は明らかに動揺しており目の前でも手すりに掴まりながれ前に身体を前に乗り出していた

 

 

「佐渡!」

 

 

「あぁ、計算通りだ

良くやったぞ叢雲」

 

 

長門が水面に倒れると判定を寸前までしていた大淀は混乱しながらも唖然としており実況をしている羽田を見ると頷いているのが見えると大淀も頷きマイクを取り出す

 

 

「えー、長門の艤装爆発を確認!

二人が二分以上立ち上がらない場合この試合は延長戦に持ち込まれます

その場合、最後まで残っていた叢雲と長門の一騎討ちになります

なので申し訳ございませんがお客様方今しばらくーー」

 

 

「おい!あの女の子動いてるぞ!!」

 

 

 

と大淀が説明している中観客の声が響き渡り全員の目が倒れているもう一人に集中する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘……叢雲…さん?」

 

 

先程長門の主砲を受け倒れ全く動いていなかった叢雲が片手で艤装を握り締めておりゆっくりとその身体を動かしながら何とか立ち上がろうとしている

全身の傷口からは出血をしており身体は既に動かないほどにボロボロなのに

 

 

「おいおい……アイツ大丈夫かよ……」

 

 

「あんなにボロボロになっても動くなんて……」

 

 

「おい!無理すんなよ!休んでろって!!」

 

 

観客席からはそんな声が聞こえるが叢雲は気にせず起き上がろうとするが血で艤装が滑り立ち上がる寸前で再び倒れてしまう

 

 

「叢雲……」

 

 

「駄目…見ていられない!!」

 

 

大井が叢雲を助けようと動くと古鷹がそれを止める

 

 

「古鷹さん退いて!叢雲が!」

 

 

「駄目だよ!これは叢雲の戦いなの!私達は手を出しては行けないの!」

 

 

「でもーーー」

 

 

「耐えろ!耐えるんだ!大井!!」

 

 

グラーフが大井の肩を掴み何とか止めようとするが大井はその静止を振り切り叢雲に向かおうとすると会場全体に声が響き渡る

 

 

「立ち上がれ!叢雲!!

まだ戦いは終わってない!!

見せつけてやれ!!お前が勝ったと言う真実をな!!」

 

 

佐渡の言葉が響き渡ると倒れていた叢雲が再び艤装を水面に突き刺し何とか立ち上がろうと必死に足掻いていると会場からも声援が響き渡る

 

 

 

「頑張れー!叢雲ー!」

 

 

「もう少しよ!立ち上げれば貴女の勝ちよ!!」

 

 

「見せてくれ!駆逐艦でも戦艦を倒せるってことを!!」

 

 

会場からの声援を聞いてるのか聞いてないのかは分からないが叢雲は何とかして立ち上がろうとする

(グラグラする……力が入らない……

全身が痛い……出血も傷口も酷い……

それでも立ち上がれば良いんだ……

もう少しだけ動いて…私の身体!!)

 

 

最後の気力を振り絞り何とか叢雲は艤装を杖にしながら立ち上がる

全身は傷だらけで艤装も黒煙を上げいつ爆発しても可笑しくない位に損傷しボロボロになりながらも何とか

 

 

 

「あり得ない……嘘…叢雲さん…」

 

 

叢雲は虚ろな目をしながら艤装を片手で支えると真っ直ぐ空に向けて拳と共に空になった四連装魚雷を掲げると大淀は喜びながら最後の判定を言い渡す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「長門!戦闘不能!!

勝者!雷撃姫駆逐艦叢雲!!

優勝は!小笠原鎮守府!!!」

 

 

 

「試合終了ぉぉぉ!!

勝者は小笠原鎮守府所属!

雷撃姫!駆逐艦叢雲だぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

その判定と共に会場の盛り上がりは一気に最高潮まで達しクラッカーが鳴り響き叢雲は力無く笑うと佐渡も笑う

 

 

「勝っ…た……わよ…佐…渡……!!」

 

 

「良くやったぞ、俺の相棒(バディ)

ありがとう、俺のわがままを叶えてくれて」

 

 

 

 




次回

最強の駆逐艦叢雲

遂に大演習決着!
幾度と無く危険な状態から何とか立ち上がり勝利を勝ち取った叢雲
これで終わりのはずが?



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勝利

「やった!やったぁ!!叢雲が勝ったぁ!!」

 

 

「凄い……本当に倒したんだ……」

 

 

「凄いねぇ…痺れるねぇ…雷撃姫!!」

 

 

瑞鶴達が自分の事の様に喜んでいると猿橋達は笑いながら拍手を送る

 

 

「凄い……やはり彼女は素晴らしい…」

 

 

「えぇ…とんでもないわね……

戦艦を倒すだけではなくあの艦娘最強と呼ばれた

正義の戦艦長門を倒すなんて…」

 

 

「アッハッハッハ!やべぇ!!

とんでもねぇな!なぁ大和!!

あんな駆逐艦今まで見たことねぇぞ!!」

 

 

「はい、提督……

あそこまで戦い抜いて勝てる駆逐艦は初めてみました…」

 

 

大和はふと長門を倒した叢雲を見ていると自分の妹を思い出すと拳を握り締める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……武蔵…見たいね…

仲間を見捨てない真っ直ぐな艦娘…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー!素晴らしい戦いでしたね!!

今回初とは言えどここまで熱くぶつかり合う最終決戦は他では見れませんよ!!」

 

 

「そうですね、長門さんは実力こそ素晴らしく普通の艦娘では勝てません

ですが、叢雲さんは仲間と連携をしながら最後まで諦めず食い付いていきやっとの事で勝利を勝ち取ると言う素晴らしい戦いを見せてくれました

これが艦娘の戦いとしての本懐だと思います」

 

 

 

「はい!羽田元帥ありがとうございます!

では皆さん勝利を勝ち取った叢雲さんに更に拍手を!!」

 

 

恵比寿の実況に更に会場は盛り上がると叢雲コールが響き渡りどんどん盛り上がっていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「叢雲ー!!」

 

 

「凄いデース!!」

 

 

「流石だな!!叢雲!!」

 

 

水上では叢雲の勝利が決定し大井達が叢雲に駆け寄ろうとすると叢雲はその姿を見た瞬間安心したのか微笑むとボロボロの身体から力が抜け倒れそうになる

 

 

「叢雲!!」

 

 

大井が全速力で支えようとするがその間を更に速い速度で誰かが駆け抜けると叢雲が倒れる寸前に支えると叢雲をゆっくりと抱え上げる

 

 

「……叢雲…お疲れ様…!」

 

 

「……えぇ…疲れ…たわ…

でも…勝った…わよ……

『また』…貴女を救えたわ…」

 

 

叢雲はニカッと笑うと古鷹は泣き崩れながら叢雲を強く抱き締める

 

 

「馬鹿……無茶ばっかりするんだから!!

……ありがとう…叢雲

『また』助けてくれたね!」

 

 

古鷹は背中に叢雲を抱えると喜びながら手を振る大井たちへと歩き始めると叢雲は意識を手放し寝息を立てる

 

 

「馬鹿な……長門が…負けた…?」

 

 

唐澤はその結果に混乱しながらも会場の叢雲コールがそれが真実だと物語腰を抜かしその場に座り込む

 

 

「残念でしたね、唐澤大将

私の叢雲の方がほんの少し上だった見たいですね」

 

 

「凄い……本当に凄い…あの娘…

あの化け物戦艦に勝つなんて!!」

 

 

エアも自分の事の様に喜んでいると佐渡も微笑み古鷹達に抱えられていく叢雲に拍手を送る

 

 

 

「馬鹿な……何故長門が……」

 

 

「長門さんが負けるなんて!」

 

 

「でも、どうやってラストの砲撃を……!」

 

 

磯風は叢雲の艤装にあった右の主砲が破壊されていることに気付くと勝因を理解する

 

 

「そうか……最後に自らの主砲でカバーし…自らへのダメージを抑えたのか……

はは…完敗だな…」

 

 

 

赤城達は腰を抜かし座り込んでいるのを古鷹達は横目で見ながら金剛は磯風に舌を出しながら馬鹿にし倒れている長門を二人の艦娘が運ぼうとすると突然二人が突き飛ばされる

 

 

「叢雲ォォォォォ!!!」

 

 

その声に小笠原面々と舞鶴面々は驚きを隠せずに振り返ると目が血走り白目を向いている長門が突然起き上がり古鷹が背負っている叢雲を睨み付ける

 

 

「マダだ!!マダ戦いは終わってナイ!!!」

 

 

 

 




次回

暴走

破壊されたはずの艤装を無理矢理に動かし気絶した叢雲に襲いかかる
それは自らの狂った信念と怒りの為に



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執念

「なっ!長門が起き上がった!?」

 

 

「長門!?」

 

 

会場は叢雲コールを辞め動き始めた長門を集中するがどこか様子が可笑しい

まるで先程戦っていた時の様ではなく何かに取り憑かれたように動けないはずの身体を動かし叢雲だけを睨み付けている

 

 

「長門さん!!試合は終わってます!!

貴女の負けです!!」

 

 

「黙れェェェェ!!

私ハ負けてナイ!叢雲ォォォォォ!!!」

 

 

大淀の注意も聞かずに長門は黒煙を上げる艤装と共に叢雲に襲いかかるが

 

 

「長門さん!!」

 

 

「これ以上は!!」

 

 

長門の目の前に今回の運び役とは別に暴れた艦娘を取り押さえる役として阿賀野(あがの)能代(のしろ)が二人の間に入り何とか長門を止めようとする

 

 

「退けェェェェェ!!」

 

 

二人の制止なんて全く邪魔とも思わず阿賀野の頭を掴み振り回すと投げ飛ばし能代を蹴り飛ばし二人は一撃でダウンしてしまい長門は叢雲へ一直線に突っ込んでくる

 

 

「私の邪魔ヲするナァァァァァ!!」

 

 

暴走した長門は艤装や体力こそ限界を越えており通常なら動けないはずなのに何故か動き叢雲を倒すと言うだけを目的にし真っ直ぐにその力を振るう

 

 

「長門!!そこまでだ!!

これ以上暴れることは許さん!!」

 

 

会場に唐澤の声が響き渡るが長門は止まる気配が無く仕方無く唐澤は他の舞鶴面々に指示を出す

 

 

「黙れェェェェェ!!

私は負ケテないィィィィ!!」

 

 

 

 

「く…長門…

やむ得ないか

磯風!陸奥!赤城!利根!綾波!!

何としても長門を止めろ!!

多少手荒にしても構わん!!」

 

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

古鷹の背中に抱えられている叢雲に向かい突っ込んでいるとその間に赤城、利根、綾波が入り何とか長門を止める

 

 

「長門さん!止まってください!!」

 

 

「退けェェェェェ!!!

ガラクタ共ォォォォォ!!!

私の邪魔ヲするナァァァァァ!!」

 

 

「今です!小笠原の皆さん!逃げてください!!」

 

 

「私達が護衛しよう、こっちだ」

 

 

磯風と陸奥が古鷹と叢雲を守りながら金剛達はその先頭を切り逃げていこうとすると長門が三人を意図も容易く蹴散らし全速力で叢雲に襲いかかる

 

 

「私の邪魔をするナァァァァァァ!!

雑魚共ガァァァァァ!!」

 

 

「きゃあ!!」

 

 

「グハッ!」

 

 

「くぅ!」

 

 

長門を止めるものが無くなり全速力でこちらに接近してきており古鷹は覚悟を決め叢雲を背中から降ろすと大井に預ける

 

 

「大井さん、叢雲をお願い」

 

 

「え?古鷹さん?」

 

 

「ちょっと行ってくるね」

 

 

叢雲を預けると古鷹は突っ込んでくる長門へと単身で対峙しようとする

 

 

「古鷹さん!?」

 

 

「無茶だ!仮にも長門は最強の艦娘だ!

一人で勝てるわけがない!!」

 

 

「く……行くわよ!磯風!!」

 

 

「っ!分かった!!」

 

 

小笠原を警護していた磯風と陸奥は古鷹を守るために長門に立ち向かうが古鷹には一つだけ勝算はあった

だが一度しか使えず時間も短い危ないもの

 

 

(一日に一度しか使えないけど……

使ったこともほとんどなくて怖いけど……

やるしかない!!)

 

 

 

 

 

 




次回

アナザー

叢雲と佐渡に過ごした古鷹は覚悟を決め怒り狂う長門に立ち向かう
叢雲と同じ全てを捨てる覚悟と共に



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執念 二

古鷹は単身長門に対峙するとその状態を理解した

恐らく長門の限界は既に越えており彼女に意識はない

あるのはただ一つ自らの正義の敵である叢雲を倒す

それだけなのだろう

艤装が破壊されているのが幸いしており主砲や副砲は使えずに近接攻撃のみとなっている

 

 

「正直、通常の貴女なら勝てるのは叢雲だけ…

でも今の貴女なら私でも勝てる!!」

 

 

「退けェェェェェ!!!

私の邪魔ヲするナァァァァァ!!」

 

 

長門の拳が古鷹に襲い掛かるが何とか避け長門の攻撃を受け流すようにやりつつ相手の気力を削いでいく

 

 

「もっと……削らないと!」

 

 

「死ねェェェェェ!!

犯罪者共ォォォォォ!!!」

 

 

だが、長門は先程叢雲に与えた連続攻撃の構えを取り恐らくそれが最後の攻撃だと察した古鷹は深く深呼吸をすると佐渡を見上げるとお辞儀をする

(ごめんなさい提督、貴方のお力お借りします)

 

 

その姿を見ていた佐渡は疑問に思っているとその意味を理解し手すりに掴まる

 

 

「アイツ!まさか!だが俺は教えていないはずだ!!

辞めろ!古鷹!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これ以上!仲間を傷付けさせない!!

もう守られるだけは嫌なんだから!!

今度は私が守るんだ!

貴女の行動を先読み(未来予知)します!!」

 

 

古鷹は叢雲と同じ先読みを使い長門の行動を全て予測すると連続攻撃を全て受け流しその先を読んでいく

 

 

「馬鹿な!長門の連続攻撃を全て受け流した!?」

 

 

「あれは……先読み…?

でも、あれは叢雲しか使えないんじゃ…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何でだ!古鷹には教えてないはずだぞ!!」

 

 

佐渡は今現在古鷹が使用している先読みに驚いていると一つの答えに辿り着く

 

 

「叢雲!あんの馬鹿!古鷹にこっそり教えてやがったな!?」

 

 

「ちょっと!佐渡落ち着きなさいよ!

今の古鷹なら大丈夫でしょ!?

さっきの叢雲より身体は治ってるんだから!」

 

 

「馬鹿!それだから更に良くないんだよ!!

身体は治っていても体力は治らない!

下手に使えば身体を壊すぞ!!」

 

 

「!!!

まさか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古鷹は叢雲から密かに教わっていた先読みを使い長門の攻撃を寸前で交わし時には受け流したりしながら観察する

(周りが全く分からない…音も聞こえない…

でも長門さんの行動は分かる!!

少しずつ身体が悲鳴を上げ動きが鈍くなってる

もう少し受け流せば!!)

 

 

じっと長門の残っている体力を消耗させているといらついた長門が止めの攻撃を仕掛けてくる

 

 

「沈めェェェェェ!!!」

 

 

「今だ!!」

 

 

長門の左ストレートを交わし懐に入ると次に回し蹴りが来るがそれをしゃがんで避けそのまま逆の軸足を引っ張ると長門は体制を崩し水面に叩きつけられる

 

 

「ガハッ!!」

 

 

「よし!このまーーー」

 

 

と古鷹がトドメの一撃を与えようとした瞬間に先読みが切れ同時に全身の力が抜け視界が歪む

(………ぇ?何で?

…まだ三分も立って……)

 

 

そのまま古鷹は水面に座り込み頭に激痛が走り頭を押さえながら苦しむ

 

 

「うぅ………

痛い……これが…リスク……なんだ…」

 

 

苦しんでいると上に気配を感じ重い頭を持ち上げると長門が踵を振り上げていた

 

 

「まず…い……」

 

 

「くたバレェェェェェ!!!」

 

 

古鷹は何とか避けようとするが全身に全く力が入らず目を閉じてその痛みに耐えようとすると

 

 

「そこまでよ!!長門!!」

 

 

振り上げる長門に陸奥が突っ込みそのまま水面に倒れると押さえ込む

 

 

「放せェェェ!!

私ハ!!」

 

 

「磯風!!」

 

 

「分かっている!!」

 

 

磯風は艤装から鎮静剤を取り出すと長門の首に向けて差し込むとゆっくりと長門は動きを止めていく

 

 

「私……ハ…負け…ナ…い

正義…ヲ………」

 

 

全身に鎮静剤が回ると長門は動かなくなり艤装が自動的に解除され水面に浮かぶ

 

 

「はぁ、はぁ……ごめんなさい…

私の姉が…ご迷惑をおかけしました…」

 

 

「いえ……大丈夫ーーー」

 

 

と古鷹が言いかける時に身体から力が抜け水面に倒れると更に視界が歪み頭痛が激しく声が出せないほど痛みに見舞われる

 

 

「古鷹!!」

 

 

その様子を心配しながらこちらに向かって来ていた金剛達が見えるが声が出せずに居ると首に強い打撲を感じると一瞬だけ磯風が見える

 

 

「…無理に意識があるより一度手放せば良い

ありがとう貴女のおかげで長門は救われた

ゆっくりと休んでくれ古鷹さん」

 

 

その感謝の言葉に嬉しさを感じ古鷹はゆっくりと意識を手放すと磯風が古鷹を抱え金剛達に差し出す

 

 

「すまなかった我々の問題に彼女を加担させてしまい

苦しんでいた為気絶させた

外傷は無いからゆっくり休ませてくれ」

 

 

「ありがとうデース……」

 

 

金剛は磯風から古鷹を預かると陸奥と磯風は気絶した長門を抱え去っていく

 

 

「後でそちらの提督を踏まえて謝罪に行く

今はすまない」

 

 

そう呟くと二つの鎮守府は気を失った三人を運ぶためにそれぞれの出口へと向かっていく

 

 

「えぇー、今回の大演習!

大変な盛り上がりを見せましたが両者ともにかなりの大きな傷を負っているため表彰は後日行いたいと思います!!

では皆さん、本日はここまで!お気を付けてお帰りください!!」

 

 

こうして、大演習会による大決戦は幕を閉じある男はその様子を満足そうに見ていた

 

 

 

 

 

 




次回

大演習会の目的

暴走した長門を止め大演習会は閉幕した
ある男の思惑を叶えながら



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思惑

叢雲が勝利し長門を倒したと言う事実を目の前で元帥達は見ながら驚きを隠せずに硝子に張り付きながらその様子を見ていた

 

 

 

「あり得ない……あり得ない!!」

 

 

「嘘だろ!あいつは駆逐艦だよなぁ!?」

 

 

「駆逐艦が……戦艦を倒した…?」

 

 

 

元帥達は驚き困惑していると東雲はその姿を見ながら嫌らしく笑いながら勝利した叢雲を見下ろす

 

 

「アッハッハッハ!!

本当に勝ちやがった!!

素晴らしい!素晴らしいぞ!!

雷撃姫叢雲よ!アッハッハッハ!!」

 

 

「お、お待ちください!大元帥!」

 

 

 

東雲は笑いながらその場を後にしようとするが藤谷がその後ろで引き留めると笑いながら藤谷に振り返る

 

 

「何だ?藤谷元帥?」

 

 

「あれは何かの間違いです!

あの長門が負けるなんてそんなーー」

 

 

「アッハッハッハ!!

何言ってやがる?負けてるじゃないか?判定でも会場全体も認めているこれのどこが間違い何だ?」

 

 

「あ、あれは間違いなんです!!

佐渡が何かをーーー」

 

 

藤谷が言い訳を言おうとすると東雲は少し苛立ちを覚え胸ぐらを掴むと顔を引き寄せ睨み付ける

 

 

 

 

「おい、藤谷信吾(しんご)元帥

あまり俺を怒らせるなよ?今は機嫌が良いんだ

『お前の利益や立場を守るために捨てさせた艦娘の罪を消すのがそんなに嫌か?』あぁん?」

 

 

「!!

まさか…大元帥…

知っていて…」

 

 

「お前の罪は無しにしてやる

あいつらに精々礼でも言うんだな?

俺は結果的に『雷撃姫の本気』を見ることが出来たからなぁ?

今回の話は不問にしといてやる

ただし、貴様の階級は落とす

大本営を叩き出されるよりはマシだろう?」

 

 

東雲の言葉に絶句すると藤谷はその場に崩れ落ち東雲は笑いながらその場を後にする

 

 

しばらく廊下を歩いているとしばらく席を外していた隣に矢矧が近寄り幾つかの資料を持っている

 

 

「どうだ、奴の居場所は見付けたか??」

 

 

「いえ、ですがあの歴戦種のおおよその場所は見付けました

あれはどうやら島国を一つ落としそこに泊地を作り人間達を支配しているみたいです

そこに居るかと」

 

 

「分かった引き続き奴の捜索を頼む

必ず近い内に見つけ出せ

後、阿賀野、能代達と一息の休憩を入れてこい

そのあとまた情報収集を頼む

こちらの戦力は充分の様だ…

後は奴を見つけ出すだけだ……」

 

 

すると東雲は端末を取り出し今回の大会出場者達から幾つかの鎮守府をピックアップをするとニヤリと笑う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、今度は我々の番だ

 

奴等に仕掛けるぞ、我々の海を取り戻す為にな」

 

 

東雲は端末に映るある歴戦の姫を睨み付けながら端末の電気を消すとゆっくりと廊下を歩いていく

 

 

 

 

 






次回

小さな祝勝会

東雲の思惑を知らない鎮守府の者達は今を楽しむ
これより起こる嵐の前触れを存分に



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大演習会 後日談

次の日の朝、叢雲はベットに寝かされており朝日の日差しが眩しく目を擦りながらゆっくりと起き上がる

(眩し……頭まだ痛いし…

身体もダルいわね…)

 

 

そう感じると再びベットに倒れると右足に重さを感じるとその方向へ顔を向けると佐渡がそこに寝ていた

良くみると自分の体には二つの点滴が施されており輸血と高速修復材と書かれた物を両腕に付いていた

他にも機材と繋がっている

(また、こいつ私を一日見ていたのかしら?)

 

 

すると近くベットから寝息が聞こえ顔だけ向けると古鷹が隣で寝ているが自分みたいに点滴はなく微笑むと周りを改めて確認する

エア以外の大井、金剛、グラーフ、イムヤが全員病室内で寝ており嬉しいがため息を付く

(全く…心配性な奴等が増えたものね)

 

 

叢雲はため息と共に再び微笑み足だけを軽く動かすがやはり全身が痛く動かしたことを後悔するがその動きで佐渡が目を覚ます

 

 

「ん……叢雲!

…おはよう、そしてお疲れ様」

 

 

「ん、おはよ司令官

ありがと、私勝ったわよね?」

 

 

「あぁ、お前の勝ちだ

最後に雷撃が命中し長門は大破

お前もギリギリだったけどな」

 

 

「そっか、なら良かったわ」

 

 

叢雲は脱力すると佐渡が起き上がり側に座るとゆっくりと頭を撫でる

 

 

「痛くないか?」

 

 

「痛いわよ?筋肉痛だし、全身ダルいし、頭も痛いわ」

 

 

「そっか」

 

 

佐渡は撫でていた手を放そうとすると叢雲がかなり不機嫌な顔になりそれを察し再び撫でるとご機嫌になる

 

 

「痛いのに頭は撫でてほしいのか?」

 

 

「これだけは別よ

ふふ、やっぱり悪くないわね頭を撫でられるのは♪」

 

 

叢雲が喜んでいると佐渡も嬉しくなり微笑み改めてお礼を言う

 

 

「ありがとう叢雲

お前のおかげで今回も勝てた」

 

 

「何言ってるのよ

私は貴方の武器で兵器よ

貴方に勝利をもたらすのが私の存在理由

それに私は絶対に負けないわ

どんなに苦しくても絶対にね」

 

 

叢雲の言葉に嬉しさを感じながら撫でていると隣のベットに寝ていた古鷹がゆっくりと眼を覚ますと起きている叢雲へ頭だけ向けるとベットから飛び起きる

 

 

「叢雲!!ねぇ!大丈夫?大丈夫なの!?」

 

 

「大丈夫よ、心配かけて悪かったわね」

 

 

「叢雲ー!!」

 

 

古鷹が飛び起き叢雲に抱き付くと優しく叢雲は古鷹の頭を撫で微笑むとその声に反応したのか病室内に寝ていた金剛達も同時に起きてしまう

 

 

「叢雲!!」

 

 

「大丈夫か!どこか痛くないか!?」

 

 

「身体は動く?傷口は無い?」

 

 

「何か食べたいものはないか!?

何でも言ってくれ!」

 

 

「あんた達ねぇ……

平気よ、少しダルいけど問題ないわ」

 

 

すると病室の扉が開かれそこに居なかったエアが姿を見せる

と言ってもやはり佐渡の妹として姿を化けさせてはいる

 

 

「あら?ちょうどよく目を覚ましたのね叢雲」

 

 

「何よエア

どっか行ってたの?」

 

 

「まぁね、あんた達の優勝を祝して…ね?」

 

 

するとエアは持っていた箱を叢雲に手渡すと皆でその中身を見ると全員微笑みながら喜ぶ

 

 

「お持ち帰り専用、間宮プリンよ

甘いものは嫌いだったかしら?」

 

 

「いや、ありがとねエア」

 

 

「プリンデース!」

 

 

「美味しそうだな……」

 

 

「ふふ、それなら皆で食べましょ?」

 

 

エアは一つずつ取り出し皆に渡していくと佐渡だけは受け取らない

 

 

「いや、俺はいい」

 

 

「は?食べなさいよ?仕方なくあんたの分も買ってきて上げたのよ?」

 

 

「俺の分はーー」

 

 

エアが持っていたプリンを貰うと叢雲の膝の上に置きながら笑う

 

 

「今回のMVPの叢雲に上げてくれ

こいつが居なかったら勝てなかったからな

もちろん、お前達全員もだけどな?」

 

 

「……ふふ、それなら貰っておこうかしら?

司令官?」

 

 

 





次回

症状

戦いが終わり一時の休息
だが叢雲の身体はやはりボロボロになっていた


そろそろ春イベですなぁ…
所でビック7って、他にもいるのですかね?



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大演習会 後日談二

「駄目です」

 

 

「………どうしてもかしら?」

 

 

「駄目です」

 

 

「…佐渡何とかして?」

 

 

「無茶言うな」

 

 

エアからの祝い品を食べ終わった後金剛とイムヤは姉妹や潜水艦の仲間に相談事があるらしく退席し現在大井、古鷹、エア、叢雲、グラーフと佐渡だけが残り明石さんと話をしていた

 

 

「嫌大丈夫よ?身体は動くし別に何もないわよ?」

 

 

「駄目です、今日は大人しくしていてください

あのですね?叢雲さん、貴女の身体はかなりボロボロなんですよ?

一応その輸血用の高速修復材を使って中も治しておりますが正直脳にかなりのダメージがあります」

 

 

先読みのリスクで叢雲は無理に身体を動かし過ぎたことにより脳にかなりのダメージを負っており更に全身を無理に動かした影響が重なり身体の内部はボロボロになっていたのである

 

 

「だからこの通り私はーーー」

 

 

「これでもですか?」

 

 

「ーーー!!!!」

 

 

明石は叢雲の脹ら脛を思い切り握りしめると苦悶の表情と共に脚を押さえておりため息を付く

 

 

「はい、佐渡提督も分かりましたね?

これが今の彼女です

本日は安静にしてもらいますよ?」

 

 

「えぇ、分かりました

ありがとうございます、明石さん」

 

 

明石はそれだけを伝えると静かに病室を後にすると叢雲がかなり機嫌が悪い

 

 

「それだけ無茶してたって事だ諦めろ」

 

 

「……じゃあ、私へのご褒美は?」

 

 

「ご褒美?」

 

 

すると叢雲は布団の中に隠れながらしくしくとわざとらしく泣き始める

 

 

「あーあ!私頑張ったのになー!

あの戦艦長門を倒すために無茶ばっかりしたのになー!

血反吐吐いて意識グラグラでも頑張ったのになー!」

 

 

「いや、あのな?叢雲さんや?

今日はダメだって言われたろ?な?お前達よ?」

 

 

 

叢雲の言葉を聞くとその場に居た佐渡以外は全員クスクスと笑いながら叢雲の演技に合わせる

 

 

「そうだな、叢雲は命懸けで頑張ったのにアトミラールからのご褒美がまだだな?」

 

 

「そうよねぇ?普通頑張ったらご褒美が必要なんじゃない?」

 

 

「提督?叢雲は、ここまでボロボロになっても戦ったんです

何かありますよね?無かったら魚雷投げますよ?」

 

 

「少し位叢雲にご褒美上げた方がよろしいと思いますよ?提督?」

 

 

「…………………お前ら…

何が目的だ…」

 

 

 

「「「「提督が私達のお願い事位聞いてくれないかなー?」」」」

 

 

 

古鷹達が声を揃えて同じことを言うと佐渡は頭をかきながら深いため息を付く

 

 

「……分かったよ、じゃあ俺の出来る範囲でお前達のお願いを叶えてやるからーー」

 

 

「「「「やりー!!」」」」

 

 

叢雲達は顔を合わせ喜んでいると溜め息を付くとエアが手を叩く

 

 

「あ、私用があるからちょっと出掛けるわよ?」

 

 

すると佐渡にウィンクを飛ばすとそれを納得したように大井と古鷹に声をかける

 

 

「あー、古鷹、大井

ちょっと用があるから一緒に来てくれ」

 

 

「え?あっはい?」

 

 

「分かりました!」

 

 

二人は佐渡に着いていくと去り際にエアがグラーフにウィンクをするとビクンとグラーフが跳ね病室に叢雲とグラーフだけが残される

 

 

「……叢雲、良かった無事で」

 

 

「まぁね、あんた達位守れないとあの司令官の片腕は名乗れないわ」

 

 

するとグラーフは静かに叢雲の胸に飛び込むと静かに泣き始める

 

 

「ありがとう……叢雲…本当にありがとう……」

 

 

「はいはい、大丈夫よ

あんた達は絶対に守るわどんな障害だろうと敵だろうと倒して見せるから

私は信じてなさい」

 

 

「うん……うん…

怖かった…負けるのが…死にたくない…

ありがとう…叢雲…」

 

 

叢雲は溜め息を付きながらも微笑み窓の外を眺めながら泣いているグラーフの頭を撫でていた

 

 

「そうよ…私は強くあり続けるのよ……

アイツと同じように…」

 

 

 

 

 

 

 

佐渡達はその様子を廊下で聞いていると静かにその場から解散していく

 

 

 

 

 




次回

大事な話

叢雲は勝利したことを噛み締めながらまだ強くなりたいと望む
それは己が守る大事な物のために
そして、ある提督が佐渡に近付く
自らの全てを佐渡に託すために



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大演習会 後日談 三

しばらくして大井と佐渡はベンチに座りながら珈琲を片手に溜め息を付いていた

 

 

「あー、疲れた

めんどくせー!!」

 

 

「頑張ってください

これも仕事です」

 

 

大井は隣でアイスを食べながら今日の日程を見ており佐渡はその姿に見惚れる

 

 

「……なんですか?」

 

 

「いんや、変わったなお前」

 

 

「は?」

 

 

珈琲を飲み干し別の飲料水を買おうと自販機から新しくペットボトルを買うと飲み始めながら大井を見る

 

 

「初めの頃はさ

いつも俺に魚雷とか投げてきたり殴ってきたりしてきたからさ?

最近じゃ減ったじゃねぇか?」

 

 

「まぁ、初めの頃は男なんて敵だと思ってましたから

今も変わりませんが」

 

 

「はは!やっぱり変わってないか!

だが普通にお前と話が出来ることは嬉しいよ大井」

 

 

大井は「ふーん」と小さく呟くとアイスを食べきりそのゴミを捨てると眼鏡を取り出し歩き始める

 

 

「さ、休憩は終わりですよ

このあと表彰式を行った後に羽田元帥と東雲大元帥に呼ばれているんですよね?

行きますよ?」

 

 

「へいへい、相変わらず厳しい秘書艦様だこと」

 

 

佐渡は立ち上がりのんびりと大井の隣を歩いているとボソボソと声が聞こえる

 

 

「貴方との話は楽しいですからね」

 

 

「ん?何だ大井?」

 

 

「別に私は変わってませんよ

私は貴方以外の男性はやはり嫌いですし今でも殴ります

それにもし変わっていたとしたらそれは貴女と皆のおかげですよ」

 

 

「お、嬉しいこと言ってくれるねぇ!!」

 

 

佐渡は大井の頭をぐしゃぐしゃと撫でるとイラついた大井に横腹を思い切り蹴られその場にうずくまる

 

 

「子供扱いするな!!」

 

 

「ゴフォ!?」

 

 

うずくまる佐渡を置いていきながら大井は耳まで紅くしていると佐渡はゆっくりとそのあとを着いていこうとする

 

 

「佐渡提督」

 

 

不意に後ろから声が聞こえると大井と佐渡は振り返りその姿を見るとそこには唐澤と磯風と陸奥が立っており驚く

 

 

「何か御用ですか、唐澤大将」

 

 

「……すまない、少し時間を頂けないか?」

 

 

「大井、まだ表彰式には時間があるか?」

 

 

「はい、表彰式は十時からですから二時間ほど……」

 

 

「分かりました、良いでしょう」

 

 

佐渡は唐澤に着いていこうとすると大井が袖を掴み心配そうに見上げているが微笑みながら頭を優しく撫でる

 

 

「心配すんな、そう言えば北上さんが確か今頃朝ご飯何じゃないか?

行ってきな?」

 

 

「……分かりました、お気を付けて」

 

 

 

大井は佐渡を信じるとゆっくりとした足取りで離れていくと唐澤達と向かい合う

 

 

「すまない、秘書艦との貴重な時間を裂いて貰い」

 

 

「いいえ、で何の話ですか?

うちの叢雲が何か?」

 

 

「いや、そうではない

ここで話せる内容ではないのだ

すまないが、着いてきて貰えないか?」

 

 

「艦娘を交えてですか?

なら私もーーーー」

 

 

「頼む、佐渡提督」

 

 

「お願いします佐渡提督」

 

 

佐渡の声を遮るように二人が頭を下げると溜め息をつきながら何となく状況を理解する

 

 

 

 

「成る程、そういう話ですか

分かりました、聞きましょう」

 

 

「本当にすまない

君以外の人間にこの話を聞かれるわけにはいかないんだ

こっちだ」

 

 

佐渡は先行して歩いていく唐澤の後ろを付いていきながら深いため息を付く

 

 

 

(あーあ、何か最近面倒事ばかり起きる気がするぜ……)

 

 

 





次回

怒り

その怒りは果たして誰の為なのか
自分の為かそれとも他の誰かの為なのか




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大演習会 後日談 四

時は流れ

唐澤達の話に決着を付け表彰式が終わり佐渡は再び一人で廊下を歩いていた

大井とはつい先程まで一緒に居たのだがちょっと私用があると言い離れていた

(さーてと、彼女はどこだ?)

 

 

佐渡は現在ある艦娘を探しながら会場を歩いているのだが全く見当たらずかなり苦戦していた

 

 

「やっぱ広いからなぁ……中々見付からねぇな…」

 

 

するとポケットの中から携帯が鳴り出しそれを取り出すと電話先にエアと表示されている

 

 

「はいよ、居たか?」

 

 

『えぇ、居たわよ

会場外れのたこ焼き出店の近くにある休憩所の自販機前

一人で何か見てるわ

でも彼女って……』

 

 

「良いんだよ、ちょっと話したいだけだからな

サンキューなエア」

 

 

『……佐渡一応言っておくわよ?

手を出すのは許さないからね』

 

 

「分かってる

そこまで怒ってないしな俺は

とりあえず向かうわ」

 

 

佐渡は携帯をきるとその場を後にしようとすると後ろから声をかけられる

 

 

「佐渡提督!」

 

 

「……はぁ…

今日は良く人に声をかけられるなぁ…

何か御用でしょうか藤谷少将」

 

 

佐渡が振り返るとそこには藤谷と衣笠が立っており藤谷は申し訳なさそうにしているが衣笠は佐渡を睨み付けている

 

 

「えっと…その…」

 

 

「早くしてくれませんか?

私はこの後用があるんですよ」

 

 

「そう…ですか…ではまた後でーー」

 

 

「提督!!」

 

 

衣笠が一喝入れると藤谷はビクッと反応し深呼吸をすると再び佐渡に向き直るのだが佐渡は冷たい目をしている

 

 

「…古鷹に会わせてくれないか?

話がしたいんだ」

 

 

「……ほう?俺に直接言いにかかりましたか?」

 

 

佐渡は衣笠を見ると叢雲から聞いた話を思いだすと更に冷たい目をしながら無視しようと背中を向ける

 

 

「待ってくれ!!頼む!古鷹に会わせてくれ!!

私は謝りたいのだ!彼女に!!」

 

 

「そうですか、ですが彼女は貴方達の謝罪なんて求めてませんよ」

 

 

「何であんたにそんなことが分かるのよ!!」

 

 

「分かるさ、少なくともお前ら何かよりはな」

 

 

衣笠が反論しようとすると藤谷はそれを引き止め自分で話すと口パクで伝えると一歩前に出ると佐渡に詰め寄る

 

 

「頼む!私達には彼女が必要なんだ!!

だから!古鷹を返してくれ!!」

 

 

その言葉に佐渡は歩みを止め顔だけを振り返るがその瞳は怒りに震えており拳を握りしめている

 

 

「…ほう?アイツが必要だと?

ならなんで『見捨てたんだ』

必要なのに、大切なのに」

 

 

 

「違う!私達は古鷹を捨ててなんか居ない!!

あの時はああ言うしかなかったんだ!!

だから!!」

 

 

「俺達は悪くないか?

ふざけるのも大概にしろ」

 

 

佐渡は怒りを抑え藤谷から距離をとろうとすると藤谷は更に詰めよると

 

 

「私は古鷹を愛してるんだ!!

だからーー」

 

 

「おい、今何て言った?」

 

 

その藤谷の言葉に佐渡の怒りが頂点に登り振り返ると今までは見たことないほどに怒りに満ちており衣笠も藤谷も震えるが何とか佐渡に食い付こうとする

 

 

「だから古鷹を愛してーーー」

 

 

と藤谷が言いかけた瞬間佐渡の左の拳が藤谷の頬を直撃すると同時にそのまま右手で頭を掴み壁に投げ付ける

 

 

「提督!」

 

 

衣笠が心配そうに藤谷を見るが佐渡は無言になりながらその胸ぐらを掴み怒りに震える

 

 

「おう、てめぇ愛してるとかほざいたな?

何だそれは俺に情で訴えかける作戦か?あぁ?」

 

 

「ち、違ーー」

 

 

「違くねぇよね?何でそんな事ほざくんだ?えぇ?

てめぇが見捨て艦娘を俺が助けて今度は返せだ?

艦娘を何だと思ってるんだ?」

 

 

佐渡の逆鱗に触れた藤谷はその瞳を見るだけで恐怖し衣笠も助けようとするが足が動かない

動けばこちらに飛び火すると野性的に理解しているからである

 

 

「おい、良いか良く聞け

アイツは俺の艦娘だ

誰にも渡さねぇ、何を積まれようが、何を言われようがアイツは俺と叢雲の物だ

次にこれ以上何か言ってきてみろ

その時は本気でお前の四肢を切り落とすぞ」

 

 

佐渡はそう言うと藤谷を思い切り蹴飛ばすと衣笠が心配そうに近寄る

 

 

「提督!大丈夫!?」

 

 

倒れている藤谷は佐渡を見上げると今までとは違いどこか別の人間のように冷酷な瞳をしながら自分を見下ろしており恐怖を覚えながら震える

 

 

「古鷹は誰にも渡さない

アイツは俺と叢雲が守る

どんな奴からも何者からも

その為なら全てを捨ててやる」

 

 

その言葉と共に佐渡は二人を残しエアに言われたある人物に会いに行こうとする

 

 

「全く時間かけちまったぜ……」

 

 

「あ……」

 

 

「ん?」

 

 

佐渡が廊下を曲がるとそこには棒立ちする金剛と鉢合わせると金剛が後ろに下がる

 

 

「ご、ごめんなさい……

盗み聞きするつもりは…」

 

 

「あー……

金剛、今度何でもお願い事聞いてあげるから今の話は聞かなかったことにしてくれ?な?」

 

 

「は、はいデース……」

 

 

「うん、ありがとな」

 

 

佐渡は金剛の隣を歩いていくとそのすれ違い様にいつもと違う佐渡に腰を抜かしてしまう

 

 

「提督が怒ってるの初めてみました……

古鷹が原因…なの…?」

 

 

 

 

 

 

 






次回

取引

大演習会での優勝を果たし佐渡は東雲との取引に話をつける

そう言えばそろそろ赤城さんの改二が来ると聞いてレベリングしてますがボーキサイトがががが


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大演習会 後日談 五

「ふぅ……やっと終わった気がするぜ…」

 

 

佐渡は自らのやることを全て終わらせ現在最後の仕事に取りかかる

(『彼女』とは話を付けた

唐澤大将との話も…何とかしないとか

後はこれだけか)

 

 

佐渡が来ていたのは呼び出されていた東雲の部屋の前に来ておりノックをすると中から東雲の声が聞こえる

 

 

『入れ、佐渡』

 

 

「失礼します」

 

 

部屋の扉を開けるとそこには東雲が目の前に座りその隣に秘書艦矢矧と羽田、大淀の姿があり椅子が一つだけ設けられていた

 

 

「まぁ、座れ佐渡大尉」

 

 

「はい」

 

 

席に座るとドアを閉められる

酒匂(さかわ)がドアに立っておりそのまま佐渡の横を通り抜け東雲の隣に立つ

 

 

 

「さてと、では今回の取引の内容を再確認しようか?

佐渡大尉?」

 

 

すると東雲は資料を取り出すと全てを読むと佐渡はそれに頷きそれが正しいと言うことを認める

 

 

「ーーと言うわけだ、異論は無いな?」

 

 

「ありません」

 

 

「なら良し、では約束通りお前達の罪を全て消すことにしよう」

 

 

東雲はパソコンのキーボードを叩き今まで小笠原鎮守府に居る艦娘達の罪や履歴を全て削除するとその削除したパソコンを佐渡に見せる

 

 

「これで、お前達の罪は消えた

良かったなこれで晴れてお前達は『普通の海兵に戻れた』わけだ」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

佐渡はそのパソコンを確認すると頭を下げ羽田が拍手をする

 

 

「おめでとう佐渡提督

これで君達は普通に戻れたわけだね

本当に良かったよ…」

 

 

「ありがとうございます

羽田元帥」

 

 

どこか浮かない顔の佐渡に東雲はニヤニヤしながらその次の話をし始める

 

 

「それでこれな

お前の鎮守府に所属する艦娘達の解体申請書だ」

 

 

東雲はその解体申請書にライターで火を付けると灰皿に起きゆっくりと燃えていく様を見ながら佐渡に笑いかける

 

 

「これで貴様らの解体は無しだ

解体申請書は一度作ると再度発行するのに時間がかかるからなぁ?」

 

 

「……へぇ、あんたが本当に約束を守るとはね

正直思わなかったよ」

 

 

「は、これでも大元帥だからな

約束は守るとしようじゃないか?

お前達は幾つもの強豪を撃破した

今成長しつつある軽巡北上率いる佐伯鎮守府

戦艦棲姫襲撃後再び強くなりつつ阿武隈率いる沖縄鎮守府

そして、最強が集まるとされる長門率いる舞鶴鎮守府

 

これだけの奴等を撃破してお前達は優勝した

お前達を認めざるを得ないだろう?

 

流石は俺が見込んだ男だ」

 

 

「そりゃどうも」

 

 

すると東雲が酒匂に合図を出すと酒匂は引き出しからある封書を取り出すと佐渡に手渡す

 

 

「それとそいつは俺からの選別だ」

 

 

「何だこりゃ?」

 

 

佐渡は封書の中身を開けるとそれは転属願いと報酬願いが入っていたのだが転属願いはわかるのだが

 

 

「……何だこの報酬願いって?」

 

 

「そいつは、戦果を上げた者に渡されるもんだ

簡単に言えばどんなものでも海軍が報酬として用意するって物だ」

 

 

「………何が目的だ?」

 

 

流石の大盤振る舞いに佐渡は疑り深くなるが東雲は笑いながら佐渡の隣に歩いていく

 

 

「ハハハ!なぁにただの報酬さ

それとその転属願いはすぐに受理されるようになっている

出せば必ずどこにでも行けるぞ?」

 

 

そして、佐渡の肩に手を置くと耳元で小さな声で呟く

 

 

「お前の所に艦娘を送る

そいつの前払い見たいなもんさ」

 

 

(やっぱりか……)

 

 

佐渡はため息を付くと椅子から立ち上がるとその二つの書類を貰っていくと東雲の部屋を後にする

 

 

「ではありがたく貰っていきます

失礼します」

 

 

佐渡は東雲の部屋から出ると書類を睨みながら今後の事に関して深いため息を付くと歩いていく

 

 

 

佐渡が去った後東雲はパソコンを弄りながら海軍のデータベースにアクセスすると小笠原の者達のデータを消していく

 

 

「東雲大元帥、よろしかったのですか?」

 

 

「なにがだ?」

 

 

「いえ……古鷹の罪まで消してしまって」

 

 

「なぁに構わねぇさ

それにその話は既に俺が政府に話は通してある問題ないさ」

 

 

東雲はアクセスしていると重要機密書類と記入してあるファイルを開くと古鷹の証明写真と共に右に罪状が書かれている

 

 

「………消去(デリート)

 

 

古鷹の罪状を全て削除するとそれを保存しパソコンの電源を落とす

 

 

 

 

 




次回

深海棲艦として

大演習会を最後まで見ていたエアは決断をしようとする
それは自らの使命の為かそれとも


イベントに向けてレベリングしてますが99の壁が厚い()




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大演習会 後日談 六

時は流れいつの間にか夜になっており叢雲は病室を抜け出し屋上にて一人夜空を見上げながら珈琲を飲んでいた

 

 

「抜け出して良いのかしら?叢雲」

 

 

不意に声を掛けられ振り返るとそこには擬態を解いたエアが扉に背中を預けながら一人空を見上げる叢雲を心配していた

 

 

「あんたこそ、擬態解いて平気なの?」

 

 

「ふふ、バレたらそいつを始末すれば良いのよ」

 

 

エアは冗談半分に言うと扉の鍵を閉めると硝子に黒いスプレーで見えないようにするとゆっくりと叢雲に近付いていく

 

 

「何か用?」

 

 

「まぁね、はいこれ

差し入れの羊羮よ」

 

 

「ん、ありがと」

 

 

エアは隣に立つと叢雲に間宮羊羮を渡すと自分の分も取り出し二人で食べ始める

 

 

「ねぇ、叢雲」

 

 

「何よ?」

 

 

「あんたは佐渡をどう思う?」

 

 

「は?唐突に何よ?」

 

 

「良いから答えてよ?」

 

 

エアによる唐突の質問の意図も分からないが叢雲は淡々と答えていく

 

 

「そうね、掛け替えのない物かな

今の私はアイツが居なかったらこうにはなってなかったから」

 

 

「逆に言えばあんたは佐渡に会わなかったらそんな無茶しなくて済んだんじゃないの?」

 

 

「そうね、否定はしないわ」

 

 

叢雲は間宮羊羮を再び食べると微笑みながらその答えを話していく

 

 

「もしかしたら今より楽で楽しい日常はあったのかも知れない

こんなに傷付いてボロボロになって自らの寿命を削ってないと思う

でもね

アイツが居なかったらあんたとこんな風に話せてないし

あんなに信頼できる仲間も司令官も居なかったと思うわ

だから、私は良かったと思うわよ」

 

 

叢雲の言葉が本心であり本当に思っているとエアは横顔を見るだけで分かる

少しだけしか付き合いは無いのに叢雲が真っ直ぐに佐渡の事を思っているのを少し羨ましく思う

 

 

「そうね、ここで貴女と話すことも無かったのかもね

だから私もアイツに感謝しないとね

だって」

 

 

するとエアは左手から主砲を取り出し叢雲の頭に押し付ける

 

 

「貴女と言う化け物を見付けられなかったのだから」

 

 

「………何のつもりエア?」

 

 

流石に叢雲も不意を突かれ全く動けずに居るとエアは片手で羊羮をを食べながら真顔になりながら答える

 

 

「大会を見ていた目的はね

お前達の実力を見るため

今の長門と対峙するにはかなり危険を要するからね

大会でその実力を見たかった

でも、私はそこであれよりも危険な艦娘

雷撃姫叢雲 貴女の実力を見てしまった

どんな状況でも諦めず不屈の心と身体を持つ貴女は私達にとってかなりの脅威になる

貴女を今のうちに仕留めておかないとこちらの不利になると判断したまでよ」

 

 

「………私を殺す気?」

 

 

「えぇ、貴女を殺しておかないと正直不味いからね

安心して一撃で仕留めてあげるし貴女の遺体は綺麗にして佐渡に送っといてあげる」

 

 

エアが冗談で言っているわけではなく自分の立場として言ってることを理解した叢雲は目を閉じながら微笑む

 

 

「そう、なら良いわ

やりなさいエア」

 

 

「あら?随分と素直じゃないの

正直ここで一戦やる覚悟を持って来たんだけど空振りに終わったわね

じゃあ遠慮なくーーー」

 

 

「貴女が本当にそう思ってしたいなら、ね」

 

 

叢雲の言葉にエアは眉間にシワを寄せながら間宮羊羮を更に強く握りしめる

 

 

「………どういう意味?」

 

 

 

「別に、あんたが今無理をしているように思ったからよ」

 

 

叢雲に言われエアが撃つのを迷っていると羊羮を食べきりエアの持つ主砲を自らのおでこに当てると握り締める

 

 

 

「今のあんたはいつものエアじゃないわ

深海棲艦として私を殺そうとしている

悪いのだけれど深海棲艦には殺されてやる気は無いけど

あんたになら殺されても良いって言ってるのよ」

 

 

「………馬鹿なの?私は姫よ?

空母棲姫

あんた達の敵なの

これは変えようがないわ」

 

 

「そうね、でも今私の前にいるのは深海棲艦の姫級空母棲姫じゃない

エアと言う一人の女性よ

私はエアと言う一人の女性になら殺されてやっても良いと言ってるの」

 

 

ここでエアは気付く叢雲は自分の事を深海棲艦として認識しておらず一人の女性エアとして扱っていると言うことを

 

 

「………あんた『も』私を信じるの?」

 

 

「えぇ、イタズラ好きで優しくて世話好きのエアを信じるわ」

 

 

 

二人の間に静寂が訪れるとエアは微笑み主砲を空に放つとパァン!とクラッカーの様な音と共に紙吹雪が叢雲を包むと唖然とする

 

 

「ふふ!騙されたわね!叢雲!!

冗談よ、貴女を殺すわけないでしょ!

貴女を殺すと後々めんどくさいんだから」

 

 

エアはそう言うと主砲を捨てのんびりとした足取りで叢雲の元を去っていくと同時にゆっくりと自らの姿を変えていく

 

 

「あんたねぇ……そう言うのは辞めてよね

一応深海棲艦の見た目してるんだからビックリしたわよ……」

 

 

叢雲は安堵の溜め息を付くと胸に手を当てながら微笑む

 

 

 

「ごめんごめん、ちょっと驚かせたくなってね!

じゃ私はそろそろ佐渡の部屋に戻るわね~」

 

 

エアが扉に辿り着くと同時に完全に佐渡の妹みたいな姿を擬態させると笑顔を叢雲に向けると手を降る

 

 

「あんまり司令官をからかうんじゃないわよ~?

アイツ今日はかなり多忙だったみたいだしー」

 

 

「はいはーい、そこそこにしておくわよ~」

 

 

エアは扉を開けるとゆっくりとした足取りで屋上を後にすると辺りに誰も居ないことを確認すると不意に見付けた鏡を見ながら自らの顔に触れる

 

 

「………深海棲艦としてじゃなくて(エア)なら殺されても良い…か…

本当にアイツとそっくりな事言っちゃって……」

 

 

すると隠し持っている方の携帯のバイブレーションが鳴り出し取り出すと表記に『深海』と書かれており電話に出ようとするが

 

 

(今のあんたが無理してるように思ったからよ)

 

 

叢雲に言われた何気無い一言が心に突き刺さり胸を押さえると携帯の電源を落とす

 

 

「……別に良いわよね、ずっと仕事してきたんだもん

少しは休暇位貰っても」

 

 

 

そう呟きながら微笑むとエアは隠し持っていた携帯をナイフで突き刺すと穴が空き火花を飛ばす

そしてそのまま滅多刺しにすると近くのゴミ箱に捨てる

 

 

「もう少し、このままで居させてもらうわよ

小笠原鎮守府

覚悟しておきなさい?」

 

 

 

 

 

 




次回

これからの道を選べ

東雲によって全員の罪や行いが無かったことになり再び佐渡は選択を迫る
このまま小笠原に残るかそれとも他の鎮守府に行くのかを

イベントでタシュケントが来てくれると聞いて本気を出してやらなくてはと心に決めた提督がこちら
同士が欲しいのだぁ!!




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大演習会 後日談 七

「ーーと言うわけで今回の大演習会で優勝を果たした俺達には全ての罪などが無くなったわけだ!!」

 

 

次の日佐渡は全員を叢雲の病室に集まると東雲との取引がきちんと果たしてもらったことを伝える

 

 

「えぇ、昨日あんたからの依頼で海軍のデータベースを覗いたけどあんた達の罪は全て消され戦果だけになってたわ」

 

 

エアがその隣に立つとそれが事実であることを証明すると大井達はもう一つの疑問を聞く

 

 

「では、私達の異動は?」

 

 

「それもない、じじいが無くしたらしい」

 

 

「じゃあ、解体はどうなったんだ

アトミラール?」

 

 

「そいつもじじいが目の前で燃やしたよ

奴に実力を証明できたからな」

 

 

「なら私達は!!」

 

 

「そうだ、お前達は『普通』の艦娘に戻った訳だ!」

 

 

「「「「やったー!!」」」」

 

 

全ての罪等が消され金剛達は叢雲を囲みながら喜ぶと叢雲も微笑みながらその快挙に喜んでいると佐渡は人数分の紙を手渡す

 

 

「提督?これは?」

 

 

「転属願いだ」

 

 

突然渡された転属願いに一同焦っていると佐渡は溜め息混じりに話し出す

 

 

「お前達はもう自由だ

どの鎮守府に行こうがやっていけるだろう

だからあの何にもない鎮守府より他の鎮守府が良いと思ってな

あそこには娯楽も姉妹も居ないし大変な事が多いからな」

 

 

全員は顔を見合わせていくと叢雲は笑いながらその紙をぐしゃぐしゃにすると佐渡に投げ付ける

 

 

「悪いんだけど、私はあんたの側を離れる気は無いわよ?」

 

 

「……まぁ叢雲はこうなるよな…

知ってたけどさ…

他の鎮守府行きたいとか思わないのか?」

 

 

「ないわね」

 

 

「即答かよ」

 

 

叢雲の返答が終わると大井はゴミ箱にその紙を持っていくと再び初めて会ったときの様にビリビリに破いて捨てる

 

 

「えっと……大井さんや?

北上さんの居る佐伯には行かないの?」

 

 

「そうですね、行きたいですが

やはり叢雲と古鷹さんを放置して他の鎮守府に行く気は無いです

貴方と言う変態に任せておけませんし私が見てないと貴方二人に迷惑かけるじゃないですか?」

 

 

「まだ信用ないの!俺!?」

 

 

大井はそう言いながらも微笑んでおり金剛はその書類をそのままゴミ箱に捨てると佐渡に抱き付く

 

 

「提督ー!私は小笠原が良いヨー!

他の所なんて行きたくないデース!」

 

 

「いやあのね金剛さん?

実は君にもかなりの勧誘来てるんだよ?」

 

 

「んー、それでもやっぱり私の提督は貴方だけデース!

佐渡さん以外あり得ないから私は小笠原に居たい!!」

 

 

金剛が抱き付いているとイムヤもその紙を畳むと佐渡に返す

 

 

「私も小笠原が良いかな

確かにゴーヤとかイクの所にも行きたいけど私を助けてくれたのはやっぱり司令官だし」

 

 

「だからなイムヤ

俺は別にお前を助けたくてじゃなくて頼まれて仕方なくーー」

 

 

「でも、もし私が助けを求めてたら助けてたでしょ?」

 

 

「勿論当たり前だろ?」

 

 

「ほら、そう言うところ

他の司令官だと信用できないからね

そーれーに、司令官のご飯じゃないと満足出来ない程に胃袋掴まれちゃってるしね!!」

 

 

皆の答えを聞きながらグラーフは一人悩んでいるとその紙をエアが横取りする

 

 

「エア!返してくれ!!」

 

 

「あんたの考えてること当ててあげる

私は皆の迷惑になると思ってるでしょ」

 

 

「!?」

 

 

「正解みたいね

私の洞察力舐めないでよ?

あんたの考えなんて簡単に分かるわよ」

 

 

グラーフは見事エアに考えを見抜かれると黙ってしまいゆっくりと佐渡に近付く

 

 

「………アトミラール

私は、どうすれば良いと思う?

私が造られた目的は提督達の慰安の為だ

だから分からない

今私はどう進めば良いのか…」

 

 

するとグラーフの頭にリンゴがぶつけられ痛みでその投げた人を見ると叢雲が呆れた顔をしていた

 

 

「あのね、前に言ったわよね?

あんたの好きにしなさい

どんな物を選んでも私達は攻めないわ

あんたの道はあんたが決めるのよ」

 

 

「そうだぞ、グラーフ

お前がどんな選択をしようが俺はお前を止めない

だからお前が選べ

道は自分で決めるもんだ」

 

 

グラーフは叢雲や皆を見ると微笑んでおり胸に手を当てると決心がつき佐渡に話す

 

 

「……私は小笠原に居たい

皆と共に歩んでいきたい!

だから居させてくれ!」

 

 

「ほらきた、それならこいつはいらないわよね!」

 

 

エアは紙をぐしゃぐしゃにするとそれをゴミ箱に捨てる

そして、佐渡は全員の顔を見る

 

 

 

「これで良いんだなお前達

俺の元に残るって選択で」

 

 

「当然よ」

 

 

「これから更にキツイトレーニングもやってもらうぞ?」

 

 

「バッチコイデース!!」

 

 

「もしかしたら他の深海棲艦からの強襲もあるかも知れない」

 

 

「その時は海の底に引きずり込んで上げるわよ!!」

 

 

「選択に悔いはないな?」

 

 

「あぁ!私達はアトミラールと共にある!!」

 

 

全員の答えに笑みを浮かべる

 

 

「では、改めて皆!

これからもよろしく頼むぞ!!」

 

 

「「「「はい!!」」」」

 

 

 

大演習会での取引が終わり全員が小笠原に残ると決まり全ての問題が無くなった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、佐渡は最後の転属届けを一枚だけを隠す

最後の一人の為に

 

 

 

 

 





次回

記憶 

時は少し戻りある鎮守府の提督と艦娘達の決断の話になります
提督は一人の艦娘の為に苦渋の選択をする

やっと古鷹さんがレベ99になりますわぁ……
これでイベントも大丈夫かな?




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大演習会 後日談 八

少し時を遡り、現在は大演習終了後の夜

 

ここは叢雲がいる病院ではあるが別の病室にてある艦娘がベットに寝かされその全身は医療機具と繋がっていた

するとその艦娘が目を覚ましゆっくりと周りを見る

 

 

「こ…こは?」

 

 

「長門!」

 

 

長門は全身に繋がった機具を見ながら心配そうな顔をしている磯風と陸奥、そして唐澤がその場に居た

しばらくぼーとしたのち自らに向けて叫んでいる叢雲の姿を思い出すと飛び起きる

 

 

「戦いは!私は勝ったのか!?

なぁ!磯風!私は!!」

 

 

「長門……もしかして覚えてないのか?」

 

 

「………まさか…はは私が…」

 

 

長門は次第に自分の最後を思い出す脚の艤装を破壊され動けなくなった所に水上に浮かぶ幾つもの魚雷

それ目掛け六発の魚雷が私に迫る中叢雲の叫ぶ声

 

 

『沈めぇぇぇぇ!!』

 

 

「クソ!クソ!!私が……正義の戦艦と呼ばれた私があんな犯罪者共になんかに!!」

 

 

長門は歯を食い縛りながら拳をベットに叩きつけ悔しがっていると三人も暗い顔をしていると唐澤が帽子を深く被りながら冷たく言い放つ

 

 

「彼等が我々より勝っていた

それだけだ長門」

 

 

「司令!」

 

 

「事実だ!我々は負けたんだよ!!

あいつらに!!

お前も見てただろ!磯風!」

 

 

冷たく言い放つ唐澤も悔しく帽子を深く被ってはその顔を隠し磯風もそれを理解すると顔を伏せているが陸奥だけは微笑んでいる

 

 

「皆落ち着いてください

確かに私達は負けました

今それを言っても仕方ありませんよ?」

 

 

「黙れ!貴様に何が分かる!

私の私の何が………あっ………すまない」

 

 

長門は怒りに任せ陸奥に暴言を吐いてしまい顔を伏せていると唐澤があることを確認しようとする

 

 

「……長門、お前叢雲を本気で殺す気だったよな?」

 

 

 

「は?何の事だ?」

 

 

唐澤の質問が分からず聞き直すと磯風と陸奥が驚きの表情をしている

 

 

「長門……覚えてないのか?」

 

 

「だから…何の話だ?」

 

 

「ねぇ、長門貴女どこまで記憶がある?」

 

 

「……叢雲に雷撃を受けたとき…だな」

 

 

唐澤はその話を聞くとあることを確信しそれと同時に溜め息を付くと磯風と陸奥がその後の話をする

(やはり……覚えていないのか…)

 

 

「長門、お前あの後叢雲達に襲いかかったのを覚えてないのか?」

 

 

「だから何の話だ?

私は古鷹と金剛を撃破後叢雲の雷撃を受けて……

それから目が覚めたらここに」

 

 

「貴女……他の艦娘や赤城さん達を押し退け叢雲に襲い掛かったのよ?

本当に覚えてないの?」

 

 

「私が?まさか!そんなことするわけないだろ?

確かに負けは悔しいがそんな馬鹿な真似をするわけない!」

 

 

この時唐澤は長門が本心で話しており間違いなくそれが真実であると語っているとしばらく前に明石から聞かされた話に信憑性が出てくる

(……やむを得ない…か…)

 

 

磯風達が話し合ってる中唐澤は三人の話を遮る様に話し出す

 

 

 

「長門、磯風、陸奥

大事な話があるんだ」

 

 

 

 





次回

忠告

時間は戻り叢雲達は小笠原への帰路についていた
これで大演習会は終了全てが丸く収まり終わるはずだった



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大演習会 後日談 九

時は再び現在に戻る

 

「それにしても提督何の用があるんですかね?」

 

 

「さぁね?でも私達来るなって事はかなり重要な事なんじゃないの?」

 

 

「でもやっと帰れるネー!」

 

 

大演習会が終わり叢雲もやっと身体を動かして良いと許可がおり用事があると言う佐渡を残し全員は帰路についていた

 

 

「にしてもさっきのはヤバかったわね……」

 

 

「そ、そうだね…あはは…」

 

 

一番最後尾には叢雲だけがかなり機嫌が悪くその理由とは

 

 

「あんたあんなに人気あったのね?

かなり凄かったわよ取材の連中」

 

 

「辞めて本当にうざかったんだから」

 

 

先程会場から叢雲達が出た瞬間にテレビの取材やら新聞の取材に囲まれ全員は少し疲れていた

叢雲に関しては他よりも更に多く揉みくちゃにもされていたらしくかなり機嫌が悪い

 

 

「あー!!本当にうざい!帰ったらやけ食いしてやるー!!」

 

 

「叢雲、あまりアトミラールを苦しませるなよ?」

 

 

全員は仲良く話ながら歩いていると真後ろからある艦娘を呼ぶ声が聞こえる

 

 

「古鷹!!」

 

 

その声に驚き古鷹以外の全員が振り向くとそこには息を切らした加古と衣笠が立っており叢雲は二人を睨み付ける

 

 

「確かお二人は古鷹型二番艦の加古さんと

青葉型二番艦衣笠さん?」

 

 

「古鷹の妹さんとご友人デースか?」

 

 

金剛が疑問に思っているが古鷹は一切振り返らずにその場を歩いて去ろうとする

 

 

「待ってくれ!古鷹!!」

 

 

加古が古鷹に迫ろうとするとその間に叢雲が立ち塞がり睨み付けるとその場にとどまる

 

 

「あんたたち、なにしてんの?

私は許した覚えはないわよ?」

 

 

「お前の許しなんかいるか!!

古鷹と話させろ!!」

 

 

「………あっそ、じゃあ好きにしなさい

せっかくあんた達の為に言っておいたのにね」

 

 

叢雲はその場を退き加古と衣笠は古鷹に迫るが

 

 

「おっと、そこのお二人さんここまでよ

これ以上は進ませないわ」

 

 

「誰よ!貴女!退いて!!」

 

 

「駄目よ衣笠さん

貴女達を彼女に近付けるなって兄さんの指示を受けてるの

それに貴女達は私を傷つけられないでしょ?」

 

 

エアは佐渡の妹に擬態しているため一応一般市民であり艦娘は一般人を傷付けてはいけないと言う決まりことがある

 

 

「それにここからでも話せるでしょ?

話があるならここでどうぞ?」

 

 

エアを挟んで衣笠と加古は古鷹に話しかけるこちらを振り向かない

 

 

「古鷹!ずっと心配してたんだ!

あんな酷い鎮守府に連れてかれていつ死ぬかも分からないところに一人で行かせてしまって本当にごめん!!」

 

 

「そうよ!古鷹さん!

私達は貴女を心配してたのよ!『あの時』も私達は貴女を無罪と言ってたのに信じないから!!」

 

 

二人の弁明を聞いているが古鷹は身動き一つ取らずにその話を聞いていた

 

 

「なぁ!古鷹帰ろうよ!また皆であの鎮守府に!

『楽しかったあの頃』にさ!」

 

 

すると古鷹の肩が震える

嬉しさでもない怒りでもないその震えは恐れである

古鷹は震える肩を押さえ深く溜め息を付くと加古と衣笠に振り返ると満面の笑みで答える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どちら様ですか?

私は貴女達なんて知りませんよ?

他の誰かとお間違えではありませんか?」

 

 

「…………え?」

 

 

そう冷たく言い放つ

突然そんなことを言われた加古と衣笠はショックのあまり呆然とするがその瞳は真っ黒に濁った瞳をしており金剛達もその瞳を見た瞬間背筋が凍りつく

 

 

 

 

 

 




次回



いつも優しくそして笑顔が絶えない彼女の瞳が濁る
それは自らを守るために


やっと古鷹さんがレベ99到達しましたわぁ……
後は霧島、大井、飛龍レベリングしないと←



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大演習会 後日談 十

「え………古鷹さん……私よ?

衣笠よ?」

 

 

「誠に申し訳ありません

私は衣笠と言う方は存じ上げておりません

他の誰かとお間違えはありませんか?

確かに私は古鷹ですが」

 

 

古鷹は今までと同じ様に微笑んでいるが目の奥が笑っておらず黒く濁っている

まるでゴミを見るような目で二人を見ているが二人は動じずに何とか会話を試みる

 

 

「ふ、古鷹!私だよ!加古だよ!

ほらいつも居眠りして古鷹に怒られてた……」

 

 

「知りませんねそんな方は」

 

 

「いつも作戦会議をサボって昼寝してたのを古鷹に怒られて無理矢理連れてかれて……」

 

 

「そんなことをなさっているのですか?

もう少し真面目になってはいかがですか?」

 

 

「ほ、ほら!前にも遊びに行ったじゃんか!

四人で遊園地とか水族館とか!」

 

 

「そんなところ貴女と行った記憶はございません」

 

 

「そ、そんな……何で……」

 

 

 

冷たく言われ加古はその場に崩れると次は衣笠が古鷹を説得しようとする

 

 

「ね!私は覚えてるわよ!!

ほら良く青葉一緒に取材したりしてたじゃない!」

 

 

「さぁ?青葉さんと言う方も知りませんし貴女も知りませんよ?」

 

 

「…そうだ!ほらこれ見てよ!

私達の写真!古鷹さんも居るでしょ!」

 

 

衣笠は四人ともう一人藤谷提督と撮った写真を見せるそれを見るが微笑みながら拒絶する

 

 

「皆様とても楽しそうですね!

貴女のお仲間はさぞ仲がよろしくて羨ましいです!」

 

 

 

「嘘……でしょ…古鷹さん……」

 

 

二人は完全に拒絶されるとその場に崩れ座り込むと古鷹は背を向け歩き出そうとする

 

 

「皆行こっか!この人達私を誰かと勘違いしてるみたいだし!」

 

 

「え、えぇ……」

 

 

「分かりましたー……」

 

 

金剛達は崩れている衣笠達の横を通り抜けながら古鷹に付いていくと最後に叢雲が二人の耳元で囁く

 

 

「だから私は忠告したし止めたのよ

佐渡が隠すあの娘の影を」

 

 

そう言うと加古はギリッと歯を食い縛り叢雲に掴みかかる

 

 

「お前!古鷹に何をした!!

古鷹が私達を!妹を忘れる訳がない!!

答えろ!!」

 

 

一触即発の雰囲気に金剛達も焦っているが古鷹は振り返り顔を伏せる

 

 

「なにもしてないわよ

あれが古鷹の本心よ

あんた達の事を覚えてないそれだけ

そんなことも分からないの?」

 

 

「っ!貴様ぁぁぁぁ!!!」

 

 

「駄目よ!加古!!」

 

 

「危ない!叢雲!」

 

 

 

加古が拳を振り上げ叢雲を殴ろうとすると無言で古鷹が全力で走ると加古の横腹を思い切り蹴飛ばし吹き飛ばす

 

 

「グフッ……古…鷹?」

 

 

吹き飛ばされた横腹を押さえながら苦しんでいると古鷹は叢雲の心配をする

 

 

「大丈夫?叢雲、どこも痛くない?怪我はない?」

 

 

「……大丈夫よ、ありがとね古鷹」

 

 

叢雲の心配をする古鷹を見上げながら涙目になる加古を余所目に叢雲の手を繋ぎ歩き出そうとすると加古が叫ぶ

 

 

「何でだよ古鷹!

何でそんな奴の手を取るんだよ!!

私達はずっと古鷹を待ってたんだよ!

どうして!!」

 

 

すると古鷹は歩みを止め顔だけを振り向かせるがその瞳は濁ったままでありまるでゴミを見るような目で見下ろす

 

 

「先程から意味の分からない事を述べないでください

次叢雲や私の仲間に手を出したら………貴女を敵と判断し殺しますよ?

二度と私に近寄らないでください」

 

 

「う……古……鷹……うぅぅぅぅ!!

何で……何でだよ……!」

 

 

加古はその場に泣き崩れるが古鷹は気にせずに歩いていこうとするが叢雲は可哀想なでも哀れみを込めた目をすると衣笠が叢雲を睨み付ける

 

 

「貴女古鷹さんに何したの?」

 

 

「なにもしてないわよ本当に

これが彼女の本心よ

貴女達が犯した罪の代償よ

二度と会わないことを忠告しとくわ」

 

 

そう言うと古鷹と叢雲は歩きだすと金剛達が心配そうな顔をしているがその間を通り抜けるとエアが金剛達を励ます

 

 

「ほら行くわよ!

小笠原に帰るんでしょ!」

 

 

「は、はい……」

 

 

「……デース…」

 

 

いつもの古鷹と違うその雰囲気に恐怖すら感じるとグラーフが口を開く

 

 

「…エア、古鷹は……」

 

 

「駄目よ、その話はあの娘本人から聞きなさい」

 

 

グラーフが古鷹の事を聞き出そうとするとそれを拒絶され全員は理解する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私達だけが知らない古鷹の過去がありそれを叢雲と佐渡は守り続けていると

 

 

古鷹と叢雲は手を繋いで歩いているが叢雲は古鷹の手が少し震えていることに気付き強く握りしめると古鷹が叢雲に振り向く

 

 

「安心して、貴女は私が守るわ

絶対に

だから信じて」

 

 

「…………うん、ありがと叢雲

信じるよ、私の正義(ヒーロー)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事がある最中佐渡は廊下を壁に預けながらのんびりとある艦娘との合流を待っていた

煙草は厳禁な為ココアシガトットを噛みながら待ちその時間になると廊下の奥から一人の物影が見える

 

 

「ほほぅ?時間通りだな流石はエリートは違う」

 

 

「皮肉か?まぁ良い」

 

 

その艦娘は艤装を主砲等の艤装は付けては居ないが他の艤装に見に纏い佐渡と直面する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よお、こうして話すのは『あの時』以来だな

正義の戦艦長門」

 

 

「あぁ、『あの時』以来ではあるな

佐渡提督」

 

 

 

 

 

 

 




次回

小笠原へ

佐渡が何故か長門と接触しており古鷹は加古達に冷たい態度を取る
その真実は一体?
正義の戦艦編もラストが近付いてきましたね!




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新たな仲間?

「あー長かったデース!!」

 

 

「本当ね……いやー疲れたわ……」

 

 

佐渡以外の全員が小笠原に帰宅すると全員毛延びをしながら持っていた荷物等を艤装の後ろから取り出すと

 

 

「皆様オ帰リナサイマセ!

オ勤メゴ苦労様デス!!」

 

 

 

重巡リ級のγと雷巡チ級が全員の帰りを防波堤で待っており敬礼をしている

 

 

「えぇ、ただいまγ

じゃあ皆の荷物をお願いね?」

 

 

「分カリマシタ!姫様!」

 

 

そう言うとγは荷物を運びもう一人の深海棲艦雷巡チ級がエアに敬礼する

 

 

「姫様、ゴ報告ヲ」

 

 

「あら?なんかあったのΣ(シグマ)?」

 

 

「タダイマαトβガオ仕置キヲ受ケテマス」

 

 

 

「「「「「「お仕置き?」」」」」」

 

 

「コチラデス」

 

 

その発言に他の皆も首を傾げるとΣと呼ばれたチ級が全員をある場所に案内する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぃー……やっと着いた」

 

 

「ここが小笠原か……本当にただの島なんだな……」

 

 

叢雲達とは別に佐渡とある艦娘が遅れてたどり着き艦娘は辺りを見渡す

 

 

「まぁな、それにお前だって知ってるだろ?

ここがどんな奴が来るかって」

 

 

「そうだな……」

 

 

「とりあえず、執務室で待ってろ

全員を呼んでくるから

くれぐれもここに在住してる深海棲艦を攻撃するなよ」

 

 

「分かっている

では失礼する」

 

 

ある艦娘と分かれると佐渡は鎮守府内を色々と歩き回り全員を探すが全く見付からない

 

 

「あっれぇ?何で居ないんだ?

艤装はあったよな……」

 

 

佐渡が疑問に思ってると目の前に何かが現れ佐渡を見つめるとそのまま動かなくなる

 

 

「お!イーちゃん!久しぶりー!!」

 

 

イーちゃんを抱き締め抱え上げ頬を擦っているとイーちゃんも佐渡の頬に嬉しそうに頬を擦る

 

 

「いやー!ごめんね!流石に本島に連れていくわけにはいかなかったんだ!許してくれよぉ!!」

 

 

佐渡の言葉を理解したのかイーちゃんは頷く

 

 

「そう言えばあいつらはどこにいるんだ?」

 

 

するとイーちゃんは佐渡から飛び降りると離れ歩いていきある程度離れると後ろを振り向く

 

 

「ワン!」

 

 

「着いてこいって?」

 

 

どうやらイーちゃんが案内してくれるらしく佐渡はゆっくりと近づき持ち上げるとイーちゃんの頭の方角へと歩いていきしばらくすると鎮守府を離れ工廠に近付いていく

 

 

「工廠?全員でか?

なにしてんだあいつら……」

 

 

佐渡は工廠のドアに触れると中から声が聞こえてくるが何だか分からずにゆっくりと扉を開く

 

 

「親方ーいますーーーー」

 

 

「ギャアァァァァァ!!!!熱イ熱イ熱イ熱イ熱イィィィィィィ!!!」

 

 

「ソラ!!ヲ願イデスカラオロシテレェェェェェェ!!!

ゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイゴメンナサイィィィィィィ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その光景に唖然とした

目の前で全員に見られながら戦艦ル級と空母ヲ級が溶鉱炉の真上に吊るされながら悶えていた

 

 

 

 

 

 





次回

平和?な小笠原

今回は少し平和な鎮守府模様です
正直特に変な事が無ければ何にもないですからねこの鎮守府



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新たな仲間? 二

「黙りなさい!!貴女達したことの大きさを理解してないみたいですからね!!

妖精様!後1メートル下ろしてください!」

 

 

「りょうかい!」

 

 

「「辞メテェェェェェェ!!!」」

 

 

流石の光景に唖然としていると親方がドラム缶に座りながらその光景を見ており入ってきた佐渡に気付く

 

 

「お、佐渡お帰り!

大会優勝おめでとうだな!」

 

 

「え、あ、うん

ありがとうございます親方

あのそれよりもあれ……何です?」

 

 

佐渡が現在行われてる拷問?に関して説明を求めようとすると親方が「あーあれな」と頭を掻きながら説明する

 

 

「実はなお前達の留守中にあの二人が勝手に飯を食いきろうとしていてな?

それをイーちゃんが阻止してそれでも止まらなかったからお仕置きを受けてるんだよ」

 

 

「な、成る程なぁ?

……え、あれお仕置きで済むの?下手したら溶けるよね?」

 

 

「深海棲艦の身体を溶かして作る艤装か……悪くないな!」

 

 

「嫌待った親方それはあかん

手を出したらいけない奴だよ?」

 

 

佐渡がつっこんでいるとその姿に気付いたエアがこちらを振り向く

 

 

「あら、佐渡お帰り

どこ行ってたのよ?」

 

 

「ま、まぁちょっとな

じゃなくて良いのか?あれ?」

 

 

佐渡が指を指すと現在真っ最中にお仕置き?を受けている二人を指差すと「あはは」と渇いた笑いをする

 

 

「ソラを怒らせたらいつもあーだから良いのよ」

 

 

「良いのかあれ……」

 

 

佐渡が混乱してると他の皆も佐渡に気付いたのか振り向く

 

 

「提督ー!!」

 

 

「おうおう、我慢してたもんな

抱き付いて良いぞ~」

 

 

「本当ですか!!提督優しいネー!」

 

 

佐渡から許可を貰い佐渡に抱き付くとその横からグラーフも佐渡に静かに抱き付く

 

 

「………えっとグラーフさん?」

 

 

「何だ、アトミラール」

 

 

「いや、あのですね?

何故に抱き付いてるのですか?」

 

 

「駄目か?」

 

 

「いや、駄目じゃないけど……」

 

 

「なら、たまには良いではないか?」

 

 

両腕に抱き付かれているとグラーフと金剛が睨み合っているとゆっくりと大井が魚雷を振りかざしている

 

 

「よーーーーく狙って……」

 

 

「待った、大井さんや

何ですかその魚雷は?」

 

 

「………うふ♪」

 

 

「………うん?」

 

 

「沈めやおらぁぁぁぁ!!!」

 

 

「辞めろぉぉぉぉぉ!?」

 

 

二人に抱きつかれてる状態では何も出来ずに結局魚雷を思い切りぶつけられる

 

 

「大井さんやぁ!!

酷くないですかねぇ!?」

 

 

「煩いですよ万年発情期!!

何二人に抱き付かれて嬉しそうにしてるんですか!沈めますよ!?」

 

 

「理不尽過ぎませんかねぇ!?

普通こんな可愛い女の子に抱き付かれたら嬉しいでしょぉ!?」

 

 

二人の喧嘩声が工廠内に響き渡るとグラーフと金剛も笑い叢雲や古鷹も笑いイムヤも微笑んでいるとイーちゃんも楽しそうにしている

 

 

「所で、司令官

どこ行ってたのよ?私たちに先に行かせて」

 

 

「ん?あぁ、ちょっとな」

 

 

「ははん?さては女ね?」

 

 

「んまぁ合ってはいる」

 

 

その返事に若干だか空気に殺気を感じると両腕に抱き付いてるグラーフと金剛が無言で見ており溜め息を付くと頭を掻く

 

 

 

「お前達に紹介したい艦娘がいる

ここに新たに配属された新人だ」

 

 

 

 

 

 





次回

新人?

佐渡が連れてきた新しい艦娘とは誰なのか?
察しの良いお方は気付きますよね…


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新たな仲間? 三

佐渡達は工廠を後にすると全員でその艦娘が来ていると言う提督室へと向かっている

尚、エアのソラ達はまだしばらく工廠にて二人の罰があるらしく残っている

 

 

「新人デースか……

こんな時期に来るなんて驚きデスね?」

 

 

「そうね……まぁでもここに流される艦娘何てそう言うもんじゃない?ねーイーちゃん?」

 

 

イムヤが話すとイーちゃんは抱き抱えられながらコクコクと頷き大井が佐渡に近寄る

 

 

「提督、私新人か来るなんて聞いてませんよ?」

 

 

「まぁ言ってないし、言う暇が無かったんだ

すまないな」

 

 

「そうですか、その艦娘は大丈夫なのですか?」

 

 

「あぁ、俺が連れてきた艦娘だしかなり強い奴だからな」

 

 

佐渡が言うかなり強いと言う言葉に引っ掛かったがとりあえず艦娘が無事なら良いやと思いながら佐渡の後ろを付いていくと提督室へとたどり着く

 

 

「新しい艦娘ねぇ?どんなの娘かしら?」

 

 

「私が来てからは初めてになるな?

いつもこんな感じだったのか?」

 

 

「いいえ、普通は皆酷い状態からでしたから私達も初めてですね!」

 

 

提督室の扉の前にたどり着くのだが佐渡は一向に扉を開けない

嫌、開けようとするのを躊躇っている

 

 

「何よ?司令官、早く開けなさいよ?」

 

 

「……古鷹、ちょっとこい」

 

 

「は、はい?」

 

 

佐渡は古鷹の呼び出すと隣に立たせ手を繋ぐ

 

 

「……提督?」

 

 

「俺を信じてくれるか?古鷹」

 

 

「…はい!貴方を信じてますよ!」

 

 

「…分かった」

 

 

確認するように佐渡は古鷹の手を握ると提督室の扉を開きそこにはある艦娘が一人ソファーに座りながらじっと待っていた

 

 

「っ!提督!!」

 

 

「ちょっとちょっと!何で貴女がここに居るのよ!!」

 

 

「どういう事デースか!?」

 

 

「アトミラール!何故彼女が居る!?」

 

 

大井達が驚く中叢雲はその艦娘を睨み付け古鷹は繋いでいる手を強くに握りしめる

 

 

「何だ、適当に茶菓子でも食べてて良かったんだぞ?

別にここに礼儀とかは存在しないんだし?」

 

 

「そう言うわけにもいかないさ

私はこうして生きてきたのだからな

それを捨てたら私は私でなくなるのだからな」

 

 

「とりあえず全員知ってるだろうが

自己紹介を頼む」

 

 

「分かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本日より舞鶴鎮守府から異動になった

戦艦長門だ よろしく頼む」

 

 

今回の大演習会最後の敵にして佐渡達を目の敵にしていた戦艦長門の姿がありこちらに異動してきていた

 

 

「………っ!」

 

 

長門の姿を見ると古鷹の手は更に強く握り締められ叢雲も警戒する

 

 

「……本当に深海棲艦が居るんだな…」

 

 

長門はイムヤに抱かれているイーちゃんを見ると全員でその姿を隠すようにすると佐渡も溜め息を付く

 

 

「落ち着けお前ら」

 

 

「落ち着けですって!提督!!

こいつは!!」

 

 

「分かってる、だがこいつもこっちに流されてきてるんだよとりあえず全員座れ

説明するから」

 

 

「……すまない、やはり私は…」

 

 

「良いからお前も座れ長門

とりあえず説明だけはさせろ」

 

 

 

 

 

 

 





次回

問題を抱える戦艦

長門が小笠原に異動となった
通常ではあり得ない事に金剛達は困惑する




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新たな仲間? 四

全員がソファーに座る中叢雲は窓際に背を預け長門を睨み他の艦娘達も長門を睨んでいる

 

 

「……とりあえず、良いな

お前達?」

 

 

佐渡が中間に座っていると明らかに全員が長門に対し敵意を剥き出しにしており長門は完全に萎縮している

 

 

「提督、とりあえず彼女は何故こちらに?

彼女は正義の戦艦そして舞鶴を代表する最強の艦娘ですよね?」

 

 

「あぁ、ちょっとな

こいつが抱えてる問題があるんだよ」

 

 

「へーそうなんデースか……」

 

 

大井が冷静に佐渡に聞いているが金剛だけは完全に敵意や殺気だけを向けており佐渡も溜め息をつく

 

 

「でもそうよね?彼女がこっちに来る理由なんてないじゃない?

そもそも私達は嫌われてるんだし?」

 

 

「いや!……その…違うんだ…

私は別にお前達が嫌いと言うわけではなく……」

 

 

「だが貴女は私達を犯罪者と呼び敵対していたではないか?

まぁ私は犯罪等犯していないのだがな

それにアトミラールの事も嫌っていたではないか?」

 

 

「あぁ……だがお前達がかなり辛い立場であったと唐澤さんから聞いてな

すまなかったお前達を犯罪者呼ばわりして」

 

 

そう言うと長門は全員に頭を下げる

イムヤや大井達は特に長門に関しては悪くも思ってなくそれだけで許しているのだが金剛だけは違った

 

 

「ほう?それだけで許すとでも思ってるのですか?

戦ってるとき貴女は言いましたよね?

使えない不幸な艦娘だと」

 

 

「あぁ、言った

すまなかった貴女も辛い思いをしたと唐澤さんからーー」

 

 

長門が頭を下げようとした瞬間金剛はイラつき長門の襟を掴むと持ち上げ顔を近付ける

何人かがそれを止めようとするが佐渡がそれを首を降って止めさせる

 

 

「私への謝罪が欲しいんじゃない!私の仲間への謝罪が欲しいんですよ!!

貴女は私の大事な仲間を侮辱した!そして貴女は叢雲を殺そうとした!それだけは許さない!!

誠意があるならそれぐらい見せてください!!」

 

 

「………分かった」

 

 

すると長門は近くにあったフォークを取ると金剛に差し出す

 

 

「……なんデースか」

 

 

「私を好きにしてくれて構わない」

 

 

その言葉にイムヤ達は困惑するが長門は更に続けて話す

 

 

「お前達が受けた傷はハッキリ言って分からない

だから好きに痛め付けてくれ

お前達気が済むまで好きにしてくれ構わない

焼こうが斬ろうが構わない

誰にも言わないし弁明もしない」

 

 

金剛は渡されたフォークを見ると握り締めると長門を睨み付けながら降りかざす

 

 

「駄目!金剛!」

 

 

「そうよ!金剛!

そんなことしても何にもならないわよ!!」

 

 

大井とイムヤが止めようとするが金剛は思いっきり振り下ろし長門へとフォークを突き刺そうとする

それと同時に長門は痛みに耐えるため目を閉じる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だぁぁぁぁぁぁ!!!

ムッかつきますねぇ!!

長門!!」

 

 

フォークを振り下ろし机に突き刺すと同時に長門に軽いデコピンをするとそのままソファーに座ると拗ねるようにそっぽを向く

 

 

「………やらないのか?」

 

 

「はっ!やったところで何にも変わりまセーン!

これでチャラにしてあげまーす

これから仲間になるのにこれ以上やっても駄目ですからね」

 

 

「………すまない」

 

 

「もういいか?金剛」

 

 

佐渡が待っており金剛は静かに頷くと佐渡は長門がこちらに飛ばされてきた理由を話し出す

 

 

「今から話す内容は、俺が唐澤大将から聞いた話だ

口外はするなよ?」

 

 

 

 

 

 




次回

正義の影

唐澤に呼び出され佐渡はある部屋に通され三人だけで話し合う
そして、唐澤は覚悟を決める




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対談 

時は再び遡り現在は大演習会終了後

表彰式に向かう最中に唐澤に呼び止められ佐渡は唐澤、陸奥、磯風に連れられある部屋に招かれていた

 

 

「唐澤大将、俺をここに連れてきて平気なんですか?」

 

 

「あぁ、ここでしか話せない事だからな」

 

 

そこは大本営の人間でしかも限られた人間のみが入れるシークレットルームと言うな飲食店

その内装はそこそこ暗くテーブルが四つほどしかない

 

 

「座ってくれ佐渡」

 

 

「ほいほい」

 

 

佐渡が座ると他の唐澤、陸奥、磯風も席に座るとテーブルの上の鐘を鳴らすと後ろからウェイターが出てくる

 

 

「はい、何になさいますか?」

 

 

「いつものを頼む」

 

 

「分かりました」

 

 

するとウェイターは下がると佐渡は何を注文したかも分からないが待っていると奥から色々とメニューが出てくる

 

 

「………わーお」

 

 

「お待たせ致しました

こちらフォアグラのステーキにフカヒレスープ

新鮮野菜のサラダ、松阪牛のハンバーグ、フグの刺身になります」

 

 

運ばれてきた料理はどれも高そうではあるが佐渡の手持ちにはそれに見合う金を持ち合わせていない

 

 

「私の奢りだ

半分は君達の勝利祝いと半分はちょっとした前払いだ」

 

 

「ほほう?そりゃまた

では遠慮なく頂きますよ?」

 

 

佐渡と唐澤達は共に食事を楽しみながら黙々と食べていき最後のデザートが運ばれてきたときに佐渡が本題に聞きにかかる

 

 

「それで、俺に何の用ですか?

唐澤大将ともあろうお方がこの底辺の俺に」

 

 

「辞めてくれ、私はそこまで君を見下してなんていない

むしろ羨ましいよ君が」

 

 

「羨ましい?俺が?」

 

 

すると唐澤は手を止め佐渡を見ると羨ましそうな目を向ける

 

 

「あぁ、陸軍特殊部隊現場 指揮官 元 元帥

佐渡 満通り名を死神又の名を戦闘の天才よ」

 

 

 

「……………………………誰から聞いた貴様?」

 

 

唐澤がそう言った瞬間その場に凍りつく佐渡は一瞬で今までの温厚な態度と違い冷たく殺気だけを向けている

その殺気に陸奥も磯風もその場に凍り付き唐澤も恐れを抱くが何とか話を続ける

 

 

「聞いたのは東雲大元帥からだ

……すまない、これは話さなくても良かったな

私が知っているのは君が陸軍の時にどこに所属していた位だだからーーー」

 

 

その瞬間唐澤の目の前にナイフが突き付けられるあまりの早さとしなやかな動きに陸奥も磯風も動けずに唐澤も驚きのあまり動けなかった

 

 

「そんな話をするためなら私はここを去る

お前達全員殺してな

死にたくなければこれ以上私の過去を語るな」

 

 

「わ、わかった…」

 

 

「………まぁいい、それで俺に何の用なんすか?」

 

 

先程の冷たい刺すような殺気を消すと佐渡は再び目の前にある珈琲に口をつけると唐澤も本題に入る

 

 

「……実は長門に関してなんだ」

 

 

その言葉に佐渡はピクッと反応するがすぐにまた珈琲に口をつけていると唐澤が続ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「彼女を小笠原に置いてくれないか?」

 

 

「…………はい?」

 

 

唐澤の予想外過ぎる発言に佐渡はすっとんきょうな声をあげてしまい唖然とする

 

 

 





次回

提督(唐澤)の思い

長門を小笠原に置いてほしい
それは唐澤が下した最後の決断にして決意だった

後数話でこの章は終わりになります!




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対談 二

「え?今聞き間違いかな?

長門をうちに置いてくれとか言いませんでしたか?」

 

 

「聞き間違いではない佐渡司令」

 

 

磯風が直ぐ様それが嘘でもなく聞き間違いでもない事を伝えると佐渡は二人を見ると真面目な面持ちをしている

 

 

「話は既に大元帥に通してあるし長門にも伝え納得して貰っている

いつでも彼女を君の元へーー」

 

 

「嫌!ちょっと待ってくださいよ!?

何で彼女をこっちへ?だって彼女そっちのエースだし居ないと大変じゃないんですか!?」

 

 

「まぁなだがそれよりも彼女はもう戦わせることが出来ないんだ」

 

 

「は?また一体どうして?」

 

 

「佐渡司令、今回の大会ラストに長門がどうなったか見ていただろ?」

 

 

磯風に言われると確かに最後長門が立ち上がった時様子が可笑しかったのを思い出す

言葉使いも声も少し変わっており仲間も判別出来てなかった

 

 

「そう言えば、彼女は大丈夫なのですか?

あんな状態で艤装なんて動かしたら……」

 

 

「…君は長門の心配までしてくれるのか…

大丈夫だ、今はベッドでゆっくりしているよ

その説は私の戦艦が君達にご迷惑をお掛けしまして申し訳ありませんでした」

 

 

唐澤は立ち上がり佐渡に頭を下げると陸奥と磯風も同時に立ち上がり頭を下げる

 

 

「別に良いですよ

と言うかそれは古鷹に言ってあげてください

アイツが居なかったら彼女止まりませんでしたよ?」

 

 

「あぁ、彼女にはまた別の機会に話すつもりだ

それでだ長門だが実はあれが初めてではないのだ」

 

 

「え?じゃあ、何度かあったのですか?

あれが」

 

 

「あぁ、これで三回目だ

一度目は磯風が確認し、二度目は陸奥も確認した

そして今回だ」

 

 

長門の暴走は今回が初めてではないと聞き佐渡は疑問に思う

 

 

「あれは何なんですか?」

 

 

「……明石にこの前精密検査を受けて貰った時に言われたんだ

彼女はこれ以上戦えば深海に堕ちる(・・・)とな」

 

 

「…深海に堕ちる?」

 

 

「あぁ、彼女は自らの信念の為に戦い

たった一人で何体もの深海棲艦を沈めてきた

それが影響してるのかそれとも彼女自信の問題なのかは分からない

だが彼女はこれ以上戦えばいずれ仲間も敵も関係なく殺す化け物に成り果てると…な」

 

 

「わーお、そりゃまた

とんでもない話」

 

 

佐渡は他人事の様に言いながらも珈琲を飲んでいると唐澤が頼み込んでくる

 

 

「だから長門をそっちでーーー」

 

 

「でもそれって俺には関係ないですよね?」

 

 

「………え?」

 

 

佐渡は珈琲を飲み終えるとその場に立ち上がり立ち去ろうとする

 

 

「俺には関係ない

俺は確かに色んな艦娘からお願いされたり流されてきた艦娘の世話をしてきています

でも現状これ以上世話できるほど余裕は無いんですよ

と言うわけです失礼します」

 

 

「貴方は長門がどうなっても良いのか!?」

 

 

「あぁ、それは俺の問題じゃない

貴方達の問題だ

安心してくださいもしも長門がその深海堕ちしたときはーーー」

 

 

唐澤を睨み付けると怒りが混じった声で話す

 

 

「俺の艦娘達が必ず殺してやる(沈めてやる)

では」

 

 

その場を去ろうと上着を着ると歩いていこうとすると陸奥が立ち上がり佐渡の行く手を遮る

 

 

「……退いてくれないか?

陸奥さん」

 

 

「お願いします佐渡提督

長門を 私の姉を助けてください」

 

 

するとその場に膝を付くと土下座をしており佐渡は頬を掻きながらその横を通り過ぎようとすると

 

 

「何でもします!!私に出来ることなら何でもしますから!!

だから長門を助けてください!!」

 

 

「……あのねぇ、陸奥さん

それは俺じゃなくてそっちの提督唐澤さんに頼んでくれないか?」

 

 

「駄目なんです!

私の提督は長門に甘いんです!!

昔の事がどうしても引っ掛かり長門に強く言えずいつもわがままを聞いてしまっている!

でもそれでも努力して長門の出撃禁止をしても彼女は無理矢理にでも出てしまう!!

だから!!」

 

 

「陸奥、良い後は私が話す」

 

 

唐澤は立ち上がると佐渡に近寄り頭を下げる

 

 

「お願いします、長門を助けてください」

 

 

「……あんたがどうにかしたらどうなんだ

自分の艦娘にここまでさせて」

 

 

「…何度も彼女の事を止めようとした

艤装を使えなくもした出撃禁止にもした

謹慎も言い渡した

 

だかな、長門を縛る鎖を断ち切れていない

艤装を使えなくしてもすぐに替えが届く

出撃禁止にすれば大本営から禁止を解けと言われる

謹慎にしても彼女は勝手に出撃する

 

彼女を罰を下そうとしても大本営が彼女の罪を消してしまう

何度も何度も彼女を戦場から遠ざけようとした

それをやろうとしても海軍と彼女自身がそれを防ぐ」

 

 

 

「司令…」

 

 

唐澤はそう語りながら頭を下げながら涙を溢す

その姿を見ながら磯風と陸奥は唖然とする

いつも厳格に涙等見せない男が目の前で泣いているのだから

 

 

「自分が情けないと思う……

だが、私には長門以外にも他の艦娘を預かっている

彼女達の命を名誉を守らないといけない!!

何度も長門にこの事を伝えても聞き入れてくれないんだ!思いが届かないんだ……」

 

 

そう語りながら佐渡はじっとその姿を見ているとゆっくりと唐澤は膝をつきその場に土下座する

 

 

「君に頼ることが間違っているのは分かるんだ

それでも私は君に頼ることしか出来ない!!

頼む!!長門を助けてくれ!!

私の愛しい女を!!頼む!!彼女を助けてくれるなら何でもする!!

私に出来ることなら!何でも!!

私はどうなっても良い!!だが!彼女だけは!彼女だけは救いたいんだ!頼む!!

死ねと言われれば死んでもやる!だからーー」

 

 

「……はぁ…全くどいつもこいつも…」

 

 

佐渡は溜め息をつくと更に唐澤の後ろから磯風が追撃をする

 

 

「私からも頼む佐渡司令!

長門を救ってくれ!もう貴方しか頼れる人もいないんだだからーー」

 

 

「だぁぁぁぁぁぁ!!!うるせぇぇぇ!!」

 

 

佐渡の叫びを聞くと三人はビクッとすると黙ってしまい深い溜め息をつく

 

 

「あのですね、唐澤さん、陸奥さん、磯風さん

俺は別にあいつらを救ってない

確かに救ったのは居る

だが、俺が救ったのは二人だけだ

それ以外は何もしてない

あいつらが勝手に救われたと言う気持ちになってるだけだ

だから俺には長門は救えない」

 

 

佐渡はそう言うと三人を置いてシークレットルームを後にしようとすると陸奥が震えており再び溜め息をつく

 

 

「だがまぁ、努力はしよう」

 

 

「!!」

 

 

「佐渡……提督?」

 

 

三人は頭を上げ佐渡を見るとめんどくさそうに頭を掻きながら振り返る

 

 

「そんな三人から必死の願いを見捨てるほど俺は出来た人間ではなくてね……

分かりましたよ、三人の願いを引き受けましょう」

 

 

「良い…のか?」

 

 

「良いですよ、どうせ戦艦一人増えた所で変わらないと思いますしね」

 

 

「…ありがとう…ありがとう…佐渡君…」

 

 

「全く、何で皆で泣いてるんですか

別に最初から三人の気持ちを教えてくれたら引き受けましたよ

ですが、その代わり貴方達にはある真実をお話します

それを聞いても尚彼女を私の所に送れますか?」

 

 

「真実…?」

 

 

佐渡は椅子に座り直すと唐澤達も涙を拭うと椅子に座り直し語りだす

真実を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これから貴方達に話す内容は私が知る海軍の闇だ

それを伝えます」

 

 

 

 

 





次回

不器用な戦艦

何度も戦い続け心すら擦り減らしてきた長門
ここで再び心を取り戻せるのか…?
……だが、そうは簡単事が運ぶほど優しくはない



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新たな仲間? 五

「と、言うわけだこいつも問題持ちなんだよ」

 

 

「………」

 

 

佐渡が長門の抱える問題深海堕ちに関して説明すると全員がこちらに流されてきた事を納得する

 

 

「成る程……まさか正義の戦艦にも影があったんだな…」

 

 

グラーフがそう言うと長門は腕を力強く握りしめると大井が眼鏡をくいっとすると続ける

 

 

「確かにある意味では一番危険な爆弾でもありますね

最強の艦娘にして最悪の敵に成りゆる

こんなのを本島に置いておけばいずれ問題が発生する

そしてその暴走を止められるのが」

 

 

大井がそこまで言うと他の艦娘達の目が叢雲の元へと集まる

 

 

「……私ってことね」

 

 

「そう言うこと」

 

 

佐渡の言葉に全員頷き納得するが古鷹だけが微笑んでいるのを確認すると溜め息をつく

 

 

「本島に置いておいてまた暴走したら今度こそ誰も手をつけられないほどに被害が出ると言うことでこちらに飛ばされた」

 

 

「……すまない…こんな爆弾持ちの艦娘なんて解体すれば良いのにな…ハハ…」

 

 

長門は力なく笑うと金剛がそれに近寄ると思い切り平手打ちを与える

 

 

「ちょっと!金剛さん!?」

 

 

「……何かしたかわたしは」

 

 

「馬鹿な事言ったから叩いただけデース

良いですか、長門貴女は私達とは遥かに状況が違います

私達は提督からも他の海軍からも見捨てられた者達です

でも貴女は違う、貴女の提督は貴女を救いたいと提督に頭を下げて頼み込んだんです

その思いが何故分からないんですか?」

 

 

「……すまない」

 

 

その返答に金剛は溜め息を付くともう一度平手打ちをしようとすると長門が続けて話し出す

 

 

「私は……分からないんだ…

今まで海軍の為に戦い続け

暴走をしても私は戦えと海軍に言われ

それを正義として言い聞かせているうちに私は…

誰とも付き合えなくなってしまった…

どうせ皆死ぬ、私達は艦娘で替えが居るのだとな…

だから唐澤さんの気持ちも分からないんだ…」

 

 

「……長門って馬鹿なんですか?

それとも不器用なんですか?」

 

 

「何だと…?」

 

 

 

金剛がそんなことを言うと腕を組ながら長門に呆れながら話す

 

 

「普通に甘えれば良いじゃないですか?

付き合うとかそんなの関係なくただ自分を晒けだして話せば良いだけデース

別に付き合い方何て一々考える必要あるんですか?」

 

 

「だが!私は…正義の戦艦だから…」

 

 

「ここではそんな肩書き何て意味を成さないですよ?

提督は私が不幸の高速戦艦でも関係なく接してくれます」

 

 

金剛がニコッと笑うと佐渡は溜め息混じりに話す

 

 

「そう言うことだ

まぁ、うちは確かに多いからな

男嫌いの軽巡に不幸の高速戦艦

奴隷の潜水艦に架空の空母

それに加えここには居ないが深海棲艦の姫も居るしなぁ……

別に気にしたことはないな」

 

 

「……そうなのか…」

 

 

「だからここではそう言うのを気にして関わるな

お前の素で良いんだよ」

 

 

 

佐渡に言われると金剛達は頷いており長門も「そうか」と呟く

 

 

「まぁ、と言うわけでお前を歓迎しよう

今日からよろしくな」

 

 

と佐渡が長門の挨拶を締め括ろうとすると一人の艦娘が声を上げる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は反対

そいつがこの鎮守府に配属されるのを」

 

 

「「「「「え?」」」」」

 

 

その言葉に全員の目が集中する

 

 

 

「………叢雲」

 

 

「私はそいつを絶対に認めない」

 

 

佐渡の意見に初めて反論し長門を睨み付けながら壁にもたれながら叢雲は反発した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

      正義の戦艦 長門編 end

 

 …To be continued………

 





次回

新章突入!

拒絶する相棒(バディ)

今回でこの正義の戦艦編は終わりになります!
え?中途半端じゃないかって?
それはこの物語が次の章に直接関係ある為です



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第九章 天使の罪
認めない


叢雲が佐渡の意見に反発した

普通ではあり得ない

今まで叢雲が佐渡の意見や行動に文句や反対したことがないことはこの鎮守府全員が分かっている

それほど二人には信頼関係があるためである

 

 

「む、叢雲ー?変な冗談は良く無いデースよ?」

 

 

「ふぅん?金剛、私が冗談で配属される艦娘を拒絶する艦娘だと思ってるの?」

 

 

「……違います、ごめんなさい」

 

 

金剛が場を和ませようとするが叢雲はかなり機嫌が悪くずっと長門を睨み付けている

 

 

「…ねぇ、叢雲理由を聞かせて?

貴女が提督に逆らうなんて」

 

 

大井が叢雲の様子が可笑しいことに気付き真面目な面持ちをしながら問いかけるが

 

 

「別にただ気に入らないだけよ

こいつが一人だけ被害者面してるのがね」

 

 

その言葉と共に再び長門を睨み付けるとビクンと古鷹が反応する

 

 

「ね、ねぇ叢雲、私は大丈夫だよ?」

 

 

古鷹も叢雲を説得しようとするが全く聞く様子がない

むしろその矛先は佐渡に向きつつあり佐渡もどうしようか悩んでいる

 

 

「……叢雲…」

 

 

「司令官、私は言ったわよね?

私と貴方は二人で一人の相棒(バディ)

何でこんなこと言ってるのか貴方には理解できるわよね?」

 

 

「……まぁな、だが俺の話も聞いてくれ

確かにこいつは俺達の敵同士だった

でもな俺はこいつも助けてやりたいんだ…

駄目か?」

 

 

佐渡の説得にも叢雲は耳を貸すことをせずただ横に首を振るう

その理由も佐渡には理解しているが何とか説得しようと試みる

 

 

「ね、ねぇ叢雲考え直してくれないかな?

ほら!イーちゃんとかも敵だよ?

深海棲艦でも叢雲は迎えてくれたよね!?

なら長門さんも……」

 

 

「駄目よ、その子はなにもしてないし私は深海棲艦なんてどうでも良いの

だから許可した

でもこいつだけは許さない」

 

 

イムヤの説得にも耳を貸さず最後にグラーフが説得を試みる

 

 

「……なぁ叢雲何が駄目なんだ?

私達と敵対していたエアですら貴女はここに迎え入れた

でも何故長門だけは駄目なんだ?」

 

 

「……エアは真実を知り信念を持ち戦っていた

でもこいつは違う、何も知らずただ自分の欲望を

深海棲艦を殺すだけの為に戦っている

私は無抵抗な奴には手を出さないって決めてるの

だから私はお前を許さない

ここに居る全員がお前を許そうと私だけは許さない

お前が『古鷹にした仕打ち』は絶対に許される物ではない!!!」

 

 

その言葉と共に佐渡と古鷹は俯いてしまう

その理由が二人には痛いほど分かるからだ

だがその二人を見ながら叢雲は溜め息をつく

 

 

「良いわ

なら長門をこの鎮守府に入れても良い」

 

 

その言葉に全員が安堵の溜め息を付くのだが次の瞬間それは打ち砕かれる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただし、私はこの鎮守府を去るわ

こいつと一緒に生活するなんて真っ平ごめんよ」

 

 

「「「「「!?」」」」」

 

 

叢雲は認めていなかった

完全に長門を敵とし認識し拒絶する

自らの信念に従って

 

 

 

 

 




次回

叢雲と佐渡

初めて叢雲が反発し佐渡は驚きながらも何とかしようとする
叢雲の思いを知りながらも

今回のお話はある一人の艦娘の物語
そして、現在小笠原鎮守府創設のお話になります!


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認めない 二

「じゃあそう言うことだから」

 

 

「待て!叢雲!それだけは許さん!」

 

 

佐渡は叢雲がこの部屋から立ち去ろうとするのを止めるがこちらを振り返らずに提督室の扉を開ける

 

 

「悪いけど、『今の貴方』の命令は聞けないわ

じゃあね、小笠原の司令官様」

 

 

叢雲が冷たく言い放つと丁度エアが戻ってきたらしくすれ違うがその様子に譲ると驚きながら部屋に入ってくる

 

 

「ちょっとー?あんたたち叢雲に何したのよ?

あの子かなり怒ってるわよ?

ってあら?新人って長門だったのね!

私は空母棲姫のエアよ

よろしく~」

 

 

エアが軽く挨拶をするが全員が反応せず更に重い空気になっており不思議がる

 

 

「……何よ?あんたたち元気ないわね?

まさか叢雲を本気で怒らせたの?何したのよ……あんたたち…」

 

 

「…あの…その…」

 

 

「長門の加入を叢雲が完全拒絶してアトミラールに逆らったんだ……」

 

 

グラーフが事の発端を説明するとエアは「ふーん」と言いながら佐渡に近付くと頭を殴る

 

 

「いて!何すんだよ!」

 

 

「ばーか、早く行ってあげなさいよ

私の知ってる『佐渡と言う提督』はこんな所で項垂れてないわよ」

 

 

「……すまん、エア皆を頼む」

 

 

佐渡は走り出すと急いで提督室を後にするとどこかに行った叢雲を追いかけていく

 

 

「全く、世話のかかる奴ね

これじゃ私が一応深海棲艦ってこと忘れてるんじゃないの?

ま、そこの長門は私をキチンと理解してるみたいだけど」

 

 

エアが振り返ると長門が少しばかり警戒と睨みを効かせながら見ているとエアの前にグラーフが立ち長門から守ろうとする

 

 

「大丈夫よグラーフ」

 

 

「駄目だ、エアは私達の仲間だ

手を出させないぞ、長門」

 

 

「……嫌、すまない

つい癖でな手を出すつもりは毛頭ない」

 

 

「だそうよ、グラーフ?」

 

 

それでも、グラーフはエアの前から離れずに長門からエアを守っているとエアはにやりと笑い後ろからグラーフの胸を鷲掴みにする

 

 

「ちょ!え、エア!

どこを触っている!?」

 

 

「おぉー……これはこれは……かなり大きいわね?」

 

 

「辞めろぉぉぉ!

何で私の胸を揉むのだぁ!?」

 

 

「いやさ、前々から気になってたんだけど大きいなぁと思って

これは凄いわね……ちょっと!大井より大きいんじゃないの?」

 

 

グラーフの胸を揉みながら大井に話しかけると咄嗟に胸を手で隠すとニヤリと笑いグラーフを離し大井に迫る

 

 

「ちょ、ちょっと!エアなにする気!?」

 

 

「決まってるじゃない?

ここまで来たら貴女達の胸を揉んで大きさチェック!!」

 

 

「……そうだな私も揉まれたのだ全員公平であるべきだ!!」

 

 

「ちょ、ちょっとグラーフまで!?」

 

 

 

グラーフとエアは共謀して大井に襲いかかろうとすると全速力で逃げようとするのだが古鷹が謝る

 

 

「ごめんなさい!皆、私のせいで!」

 

 

その言葉に提督室に居る者達が全員動きを止めると古鷹に視線が集中する

 

 

「…何で古鷹さんが謝るの?」

 

 

「そうよ?古鷹さんは何も悪くないでしょ?

叢雲が意固地になってるだけでしょ?」

 

 

「ううん、叢雲は悪くないの

全部私のせいなの」

 

 

その言葉の意味をエアは理解しており無言になりながら立ち上がり長門に近寄ると耳元で囁く

 

 

「無知は罪よ正義の戦艦

お前がやったことは正義でも何でもない

ただの自己満足よ」

 

 

「……何だと?」

 

 

エアは囁くと古鷹の背中を押さえながら提督室を後にしようとする

 

 

「さ、ほら私お腹空いた!

古鷹さん何か作ってー!」

 

 

「え、エアさん!?」

 

 

エアは半分強制的に空気をぶち壊していくと古鷹に耳打ちをする

 

 

「叢雲はアイツに任せておきなさい

何とかしてくれるわよ」

 

 

「………エアさんありがとうございます」

 

 

「貴女を救えなかった

ただの自己満足よ

気にしないで」

 

 

エアは古鷹を強制的に連れていくとその姿を何人かは追いかけていくが大井だけは提督室に残り海軍のデータを漁り始める

 

 

「………三人に関して知りたい…

何を隠してるのあの人達は…」

 

 

 

 

 

 

 





初めて?の喧嘩

佐渡と叢雲以外に唯一その理由を理解するエア
古鷹を守ろうとする彼女の知る事の正体とは?

イベント前にやっと大井、霧島、古鷹をレベ99に出来ました……
今回は走りきるぞ!!


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提督(佐渡)艦娘(叢雲)

時は流れ現在は夕方になり叢雲は防波堤にて一人夕暮れを見ていた

(…あんなこと言っちゃった…

悪かったとは思うわでもアイツも悪いのよ

馬鹿司令官…)

 

 

周りを見ると夕陽が海の向こう側沈んでいき溜め息を付きながらこれからの事を考える

(まぁ、良いか司令官がそうしたいならそうすれば良いし

私は私でーー)

 

 

「やっと見付けたぞ!!叢雲!!!」

 

 

その言葉に思わず振り返るとそこには寒い中汗だくになりながら息を上げている佐渡が居た

 

 

「何か用?小笠原の司令官様

私は貴方にーー」

 

 

「ごめん!お前に断りもなく勝手に決めて!!」

 

 

「…………」

 

 

「確かにアイツを許せないのは分かる!

でもな!俺は権力とか唐澤に頼まれたとか海軍とかの理由じゃなくて俺が助けたいと思ったんだ!!」

 

 

「………はぁ…」

 

 

「だが頼む!アイツにチャンスをやってあげてくれないか!?」

 

 

 

「……はぁぁぁぁ……」

 

 

 

佐渡が頭を下げながら頼んでいると叢雲は更に深く溜め息を付きながら佐渡に近寄り顔だけを上げさせる

 

 

「てい!」

 

 

「あいたぁ!?」

 

 

叢雲は佐渡にデコピンをするとまた防波堤に戻り座るとそっぽを向きながら怒っている

 

 

「それともう一つで許して上げる

こう言うとき私はどうして欲しいんだっけ?」

 

 

「………俺、汗臭いぞ?

走ってたから…」

 

 

「あっそ、それじゃ許さない」

 

 

「……分かったよお姫様」

 

 

すると佐渡は叢雲の真後ろに座るとそのまま腰を持ち上げ自分の太股に下ろすと後ろから抱き寄せる

 

 

「本当ね、かなり汗臭い」

 

 

「だから言っただろうが……」

 

 

「でも嫌いじゃないわよ?」

 

 

「おいおい、おっさんの汗の匂い嗅ぐのが趣味なのか?」

 

 

「誘爆式投げられたい?」

 

 

「やめろ、洒落にならん」

 

 

佐渡に抱き寄せられながら叢雲は沈む夕陽を見ながら呟く

 

 

「こっちこそごめんね

あんたの事考えないで勝手に言ってた」

 

 

「いやいや、今回は全面的に俺が悪いんだよ

本当にごめん」

 

 

「私も悪いわよ、あんたの気持ちも分かるのに古鷹を優先し過ぎた

ごめん」

 

 

「いや、俺も自分の気持ちを優先し過ぎて古鷹に気を回して無かったんだごめん」

 

 

二人は謝りながら話していくと叢雲が今日あった出来事を話し出す

 

 

「今日ね、加古達が接触してきたの」

 

 

「!!

古鷹は大丈夫だったのか!?」

 

 

「えぇ、二人を知らないって言って無理矢理無視してたわ」

 

 

「そうか……やっぱり古鷹はまだ…」

 

 

「治ってはないわね

恐らくまだ引きずってるしそれを恐がってる」

 

 

佐渡は溜め息を付くと「そうか…」と呟きかなり辛い表情をしながら歯を食い縛る

 

 

「なぁ俺達は古鷹を守れてるのかな?」

 

 

「分からないわ、でも彼女に笑顔は戻った

これだけでもかなりの進歩よ」

 

 

「そうだなぁ……」

 

 

叢雲に言われるがやはり佐渡は疑問に思う今の自分は彼女の為になっているのかと

 

 

「なぁ叢雲、長門はやっぱり駄目か?」

 

 

「駄目よ、彼女を入れるなら私は抜ける

でもね佐渡私から一つだけお願いがあるの」

 

 

「何だ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「長門を選んであげて私じゃなくて」

 

 

「……え?」

 

 

予想外の叢雲の発言に佐渡は驚き言葉を失う

 

 

 




次回

叢雲の思い

佐渡と誰よりも長く付き合い共に歩んできた叢雲
だが、彼女は自分ではなく長門を選んでほしいと願う
その訳とは?



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提督(佐渡)艦娘(叢雲) 二

「だから私じゃなくて長門を選んで

私の事はどうでも良いからさ?」

 

 

「何で…そんなことを…」

 

 

すると叢雲は微笑みながら立ち上がると佐渡に向き合うように再び座ると顔を近付けて話し出す

 

 

「ごめん、これも私のわがまま

私が長門と一緒に生活すればいつかアイツを殺したくなる

それほど私はアイツが憎い

多分これは変わらない

だから一緒には居れない」

 

 

「………」

 

 

その気持ちは佐渡も一緒だった正直に言えば佐渡は海軍が嫌いでありその象徴でもある長門を嫌っているのだ

それでも助けたいと思ってしまっている

 

 

「アイツと居るなら私は出ていく

貴方にこれ以上迷惑はかけられない

大丈夫よ私はどこでもやっていける

貴方に教えてもらった戦い方も生きる術もね

貴方に救われた(・・・・)のだから私を捨てて」

 

 

叢雲の思いを佐渡はじっと聞く自らの相棒(バディ)が願う最後のわがままを

 

 

「だから次は私じゃなくてアイツを救ってあげて?

私はもう充分よ、貴方と古鷹と過ごし

親方、大井、金剛、イムヤ、グラーフ、エアと過ごし

仲間にも出逢えた

私はもう満足なの

何せ出来ないと思った事を貴方は成してくれた」

 

 

「そんなことないさ……

これも全てお前が居たから出来たんだ……」

 

 

佐渡の言葉に再び微笑むと叢雲は佐渡に抱き付くと次は耳元で囁く

 

 

「違うわ、全て貴方の人望と貴方の技量よ

私は兵器として貴方の邪魔する者を排除しただけ

だからね」

 

 

叢雲は力を込めて佐渡を抱き締めると悔しそうではあるが我慢しながら佐渡に願う

 

 

「私じゃなくて長門を選んで

貴方が救うべき相手は私じゃないアイツよ」

 

 

その言葉と共に叢雲は立ち上がり佐渡の元を去ろうとする

 

 

「あんたの事は忘れないわ

多分これからも一生

じゃあね、司令官」

 

 

歩いていく叢雲は少し涙ぐみながら歩いていこうとするがその瞳は決意と共にこれから佐渡が長門達と歩む事を考え応援すると決めていた

(これでいい……そうよ、私はもう何もないんだから

貴方が救える艦娘を救ってあげてほしい

それが私の願いなんだから…)

 

 

「待て、叢雲」

 

 

すると佐渡は立ち上がり叢雲の手を取ると無理矢理にでも自分の元に引き寄せると抱き付く

 

 

「……何よ?司令官、お別れだからって寂しくなった?」

 

 

「いや、すまん

どうやら俺はお前が思うほど出来た人間じゃないみたいだ」

 

 

「は?どういう意味よそれ」

 

 

叢雲が不思議がりながら聞くと佐渡は満面の笑みを浮かべながら叢雲に思いを告げる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いがお前の願いは聞けない

長門は捨てる、お前を選ぶよ

叢雲」

 

 

「………………は?」

 

 

自分の思ってる事とは別の解答に流石の叢雲も驚き唖然とする

 

 

 

 

 

 




次回

佐渡の思い

叢雲の思いを聞きながら佐渡は思い出す
昔、叢雲と出逢い誓ったことを



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提督(佐渡)艦娘(叢雲) 三

「あんた!私の話を聞いていた!?

私はもう大丈夫だってーーー」

 

 

「聞いてたよ、だがなお前が大丈夫でもな

俺が駄目なんだよ」

 

 

「…………は?」

 

 

佐渡は小さく折れそうな叢雲の身体を強く抱き締めながら自らの内を吐露する

 

 

「今の俺はお前と共に歩み過ごしてきた

さっきお前が居ないことを考えたよ

でもなお前が居ないと俺は多分何にも手を付けられないほどに駄目になると思ったんだ」

 

 

「あんた……それ下手したら告白よ?」

 

 

「そう捉えても構わない

だが、俺にはお前が必要なんだよ

一緒に歩み、絆を結び、そして困難に打ち勝ってきた

他の艦娘では俺の相棒(バディ)は務まらない

お前だけだ、お前だけが俺の相棒(バディ)なんだよ」

 

 

叢雲はその言葉が嬉しく佐渡を強く抱き締める

 

 

「でも良いの?長門を助けなくて」

 

 

「お前が嫌と言うなら俺はそれに従う

お前を失う位ならあんな奴助ける必要はない」

 

 

 

「……そう」

 

 

そう呟くと叢雲は嬉しい半分悲しくなった自分が佐渡を縛り付けていると思い強く抱き締める

 

 

「……ごめんね私が貴方の枷になってて」

 

 

「違う、俺がお前に依存してるだけだ気にするな

こっちこそごめんお前に依存していて」

 

 

「ううん、嬉しいのよ貴方がここまで私を信用し共に居てくれる

ごめんね、弱くて本当は貴方とずっと一緒に居たいと願ってしまって」

 

 

「良いんだ、俺もお前と共にありたいからな」

 

 

二人は強く抱き締めあうが叢雲は気付いていた佐渡自身の為ではなく自分達の為に言っていると

(本当にごめんね……

貴方を縛り付ける鎖になってる私を…

いつか貴方が完全に必要無いと思えるほどに成長するから……)

 

 

 

「さてと、それじゃ戻るか叢雲」

 

 

「……えぇ」

 

 

「後は俺が何とかしておくからお前はいつも通りにしてろよ?」

 

 

「…分かったわ」

 

 

佐渡は先頭を歩きその後ろから付いていくがその後ろ姿だけは本当に大きく見えた

自分よりも大きな物を一人で背負い込むその姿を見ながらいつかこの人の隣に立ちたいと思いながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(すまんな、叢雲

お前を失う事は『今は』出来ないんだよ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言うわけなんだ」

 

 

佐渡は全員を食堂に集め食事を取りながら長門の今後に関して話していた

 

 

「……そうか…分かった」

 

 

「すまないな、長門

我々は叢雲を失う訳にはいかないんだ…」

 

 

「いや、こちらこそすまない

突然押し掛けて救ってくれなど旨すぎる話だったんだ

私から唐澤さんに言っておく」

 

 

「いや長門は悪くないさ

それとその報告はしなくていい

俺もちょっとあの人と話を付けなくてはいけなくてな……」

 

 

 

 

 

佐渡の決定した長門をこちらで引き取らないと言う話に大井達は納得がいかないが佐渡が決定した事には逆らえずしぶしぶ納得する

 

 

「まぁ、叢雲がそう思うなら仕方無いデースね

長門一緒には居れないデスが何かあったら頼っても良いデースよ?」

 

 

「………え?」

 

 

金剛の予想外の発言に驚き長門は金剛を見るとニヤニヤと笑いながら長門を見ている

 

 

「別にここに居れなくても貴女の力になってあげマース

どうせ私みたいに甘えるのは出来ないと思いマースし」

 

 

「そうね、別にここで一緒に暮らさなくてもできない訳じゃないしね」

 

 

「良い…のか?だって私は…」

 

 

「まぁ、私達も同じ様な境遇だったからな

それくらいは手を貸すさ」

 

 

「ありがとう……本当にすまない……」

 

 

金剛達が長門の暴走を治すために改めて協力を扇ぎそれで話を付けてこの話は終わりのはずだった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、叢雲が考えているよりある一人の艦娘にはかなり大きな負荷となっているとも今この時誰も気付いていなかった

 

 

 

 

 

 

 





次回

ほんの少しの異変

叢雲の意向により長門を小笠原には置かない事にするがそれでも一人の艦娘を何かが蝕んでいく



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晩餐会

「じゃあ!この話は終わり!

長門は明日本島に送り届けるからな

くれぐれもエアや深海棲艦については口外するなよ?」

 

 

「あぁ、それはな

事情も聞いているからな」

 

 

「私は言っても構わないけど言ったらどうなるか分かるかしら~?」

 

 

エアがニヤニヤしながら長門に恐喝していると佐渡が溜め息混じりに話し出す

 

 

「やめんかエア!んまぁ、取り敢えず晩飯にするか?

長門、嫌いな物とかは無いよな?」

 

 

「あ、あぁ、特にはない」

 

 

「オッケーそれなら作りやすいってもんだ

お前達、準備しろー」

 

 

「「「「「「はーい!」」」」」」

 

 

全員が晩御飯の準備をする最中長門だけはその場に座っていると動こうとする

 

 

「はいはい、あんたは座ってる!」

 

 

「だが!私も何か……」

 

 

「大丈夫デースよ?特にやるといっても食器等を並べるだけですからね」

 

 

「む……そうなのか…?」

 

 

佐渡は厨房に入り全員を見渡すとある異変に気付く

 

 

「……おい、古鷹

なんで花瓶なんて持ってるんだ?」

 

 

「……え?」

 

 

そう古鷹が自分の所に花瓶を置きそこに箸などを置いておりまるで花瓶を食べようとするように置いていた

 

 

「あ、あれ?ごめんなさい!提督!

すぐに戻します!」

 

 

「お、おう?何だ、考え事か?」

 

 

「もう!古鷹さん花瓶なんて食べれないわよ!

しかもそれこっちのじゃない、頂戴?」

 

 

「う、うんごめんねイムヤさん……」

 

 

古鷹が珍しくぼーとしていたらしく佐渡は疑問に思っているとエアがその様子を見て叢雲に囁く

 

 

「彼女、長門が来てから明らかに可笑しいわ

気をつけて」

 

 

「………ありがとうエア」

 

 

叢雲に囁くとその場を離れ佐渡の居る厨房に入っていくと佐渡が料理を覗きこむ

 

 

「今日の晩御飯は何かしら~?」

 

 

「あ!こらエア!厨房に入ってくるな!!」

 

 

佐渡が料理しているとその耳元に近寄ると先程叢雲に言った通りの事を言う

 

 

「古鷹がちょっと危険かも知れないわよ

あの娘、長門が来てからかなり可笑しいわ」

 

 

「何だと?」

 

 

「さっきも牛乳とハチミツ間違えてたしずっとぼーっとしてるのよ

気を付けなさい」

 

 

「………そうなのか分かった」

 

 

 

エアはそれだけを言うと古鷹を気遣うように背中を押す

 

 

「古鷹は疲れてるだけなのよ!

もう、おっちょこちょい何だからさ!」

 

 

「ご、ごめんねエアさん!

ありがとう」

 

 

エアは古鷹をかなり気遣っておりその姿を他の艦娘も疑問に思いながら見ているが気紛れだと思い自分達の事に集中していた

(……何か、彼女危ない気がするわね)

だがエアは気付いていた彼女の異変に

今まで幾度と無く人間達を観察してきた彼女位にしか分からない変化にそれを佐渡達に伝えるか迷っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その迷い自体がエアが犯した間違いだったとも気付かずに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(違う……ここはあの鎮守府じゃない……

深海棲艦も居る…仲間も違う……

だから違う……違うの……

『あの悪夢は終わったのだから忘れなきゃ』……)

 

 

古鷹は自分に言い聞かせながら静かに壊れ始めていた

昔見た自らの過去を必死に忘れようとしながら

だが、今日起きた数々の出来事が彼女を蝕む

 

 

 





次回

古き記憶

無理矢理にでも忘れようとする記憶
だがそれでも彼女にそれは付きまとう



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過去を乗り越えるのは並大抵の事ではない
その傷が深ければ深いほどに





『古鷹ーおんぶしてー』

 

 

『ねぇ!古鷹さん今度遊園地行かない?』

 

 

『古鷹さん古鷹さん!聞いてくださいよ!

な、何と!この鎮守府夜にお化けが出るらしいんですよ!』

 

 

(……懐かしい声でも今は好きじゃない

辞めて……その声で私の名前を呼ばないで……)

 

 

『おー古鷹ー料理上手いんだなー

そうだ!今度皆でピクニック行こうぜ?』

 

 

『お!良いね行こっか!ってーーは行っても寝てそうだけど?』

 

 

『もう!古鷹さんにあんまり迷惑かけちゃ駄目だよ!』

 

 

(辞めて……お願い…私の名前を呼ばないで…

忘れたいの……私の事を呼ばないで…)

 

 

『古鷹にはいつも助けられてるな…

提督として頑張らないとな!』

 

 

『あ!古鷹!大丈夫か!

さっきの出撃で怪我したって聞いたけど!?』

 

 

(心配しないで……優しくしないで…)

 

 

『聞いてくれ!古鷹!皆の活躍で大尉になれたんだ!

だから!昇格祝いに皆でご飯でもいかないか!?』

 

 

『なぁ、古鷹俺は君達にどれほど戦わせれば良いんだろうな……

俺も一緒に戦いたいよ…俺も…』

 

 

(辞めて……お願い辞めて…もう私を縛らないで……)

 

 

『逃げろ!古鷹!お前だけでも!』

 

 

『古鷹!!』

 

 

(逃げたいよ……もうやだよ…苦しみたくないよ…)

 

 

『古鷹一番艦古鷹、お前をーーーで連行する』

 

 

『やめろ!!古鷹は違う!!』

 

 

(そうだよ!私じゃない!!私はなにもしてないのに!!)

 

 

『どうだ?吐けば楽になるぞぉ?』

 

 

『あ、そうだこれも試してみようぜ!』

 

 

(辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて!!!!

来ないで来ないで来ないで来ないで来ないで!!!)

 

 

『……哀れだな艦娘古鷹

お前がやった罪は重い

私がもう貴様を殺してやろう』

 

 

『ーーさんやっさしー!

犯罪者に情けなんて素晴らしいですね!』

 

 

(違う!!私じゃない!!何で何で何で!!)

 

 

 

『お前がやったんだろ!!嘘をつくな!!』

 

 

『犯罪者め!早く死ね!!』

 

 

『消えろ!!お前は海軍の汚点だ!!』

 

 

(何でよ……私じゃないのに…助けてよ……『提督』!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『彼女が犯人です……』

 

 

 

「あああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

少女は飛び起きる周りの事なんて気に出来るほどに精神状態が安定しておらず辺りを見渡す

記憶が混濁し自分がどこに居るかも分からないほどに彼女は錯乱していた

 

 

「……どこ……ここ…分からない…」

 

 

彼女が手をつくとそれは柔らかくそれを見ると抱き枕なのに彼女には幻覚症状が現れそれが人間の死体に見えた

 

 

「ひっ!逃げなきゃ……ここから!!」

 

 

ゆっくりと起き上がると汗でぐしゃぐしゃになったシャツ姿で扉まで行くとふらつく足と歪む視界に耐えながら部屋を後にしようとする

そして、頭の中に反響する声に導かれる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「早く……死ななきゃ…」

 

 

 




次回

異変

ある艦娘を襲う幻覚とその他の症状
この小笠原鎮守府に何もない艦娘何てのは誰一人として居ない




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夜、草木が眠る二時を回り消灯時間が過ぎた頃ある部屋で艦娘と深海棲艦が二人で寝ていると深海棲艦が何かの音を探知し起き上がりベッドから飛び降り部屋を出ると一人の艦娘が壁を伝いながら廊下を歩いていた

 

 

「逃げなきゃ……逃げなきゃ……」

 

 

そう呟きながら一人のふらふらとした足取りとこの時間に外に居る人何てのは珍しく疑問に感じ部屋に戻ると一緒に寝ていた艦娘を起こそうとする

 

 

「むにゃ……司令官…ご飯美味しいね…」

 

 

その艦娘の上に乗りそのまま飛びはねると艦娘は苦しそうに呻きだす

 

 

「う……やめて…金剛さん…苦しい…」

 

 

何度も同じようにやっても艦娘が起きずに居ると深海棲艦は痺れを切らし耳元に移動し思い切り吠える

 

 

「ワン!!ワン!!ワン!!」

 

 

「んんー……イーちゃんご飯ー?

それとも抱っこ~?」

 

 

まだ艦娘は寝ぼけており深海棲艦もといイーちゃんを抱き締めるがそれでも起きない彼女に怒りを覚え口を思い切り開けると腕に噛みつく

 

 

「いったぁぁ!!!何!敵襲!?」

 

 

「ワン!」

 

 

あまりの痛みに流石に飛び起きると辺りを見るとイーちゃんが覗き込んでおり時間を見ると針が二時を指しており機嫌が悪くなる

 

 

「イーちゃん!何でこんな時間に起こすのよ!」

 

 

「ワン!ワン!!」

 

 

イーちゃんは吠えながらベットから降りると部屋の扉を開け艦娘を見上げる

 

 

「……うん?何か廊下にあるの?」

 

 

「ワン!」

 

 

艦娘は恐る恐る部屋から外にみる

廊下を見渡すと誰も居らず溜め息をつく

 

 

「ちょっとイーちゃん?誰も居ないわよ?」

 

 

「ワン!」

 

 

すると部屋からイーちゃんが飛び出しそのまま廊下を走っていく

 

 

「ちょ、ちょっとイーちゃん!?

待って!!」

 

 

部屋から飛び出したイーちゃんを追い掛けていくと目の前に壁を伝ってふらふらと歩いている艦娘を確認するとイーちゃんが吠える

 

 

「ワン!ワン!!」

 

 

「うん?あの後ろ姿って……古鷹さん?」

 

 

廊下の壁に身体を預けながらふらふらと歩いており疑問に思い声をかける

 

 

「古鷹さん?どうかしたの?体調でもわるーーー」

 

 

声をかけ古鷹の肩を叩こうとすると身体がビクンっと跳ねる

 

 

「触らないで!!!」

 

 

「えっ…?」

 

 

「来ないで…触らないで…やめて…私は違う…」

 

 

「え?え、古鷹さん?

どうしたの?私は違うって……」

 

 

明らかにいつもの古鷹と様子が違いイーちゃんも心配するように古鷹の足に顔を擦ろうとした瞬間

 

 

「触らないでよぉ!!!」

 

 

「キャンっ!」

 

 

突然古鷹がイーちゃんを蹴飛ばすとそのまま壁に激突し倒れてしまう

 

 

「イーちゃん!

ちょっと古鷹さん!何するの!イーちゃんは……」

 

 

艦娘が怒ろうとした瞬間古鷹の顔を見ることが出来たが明らかに可笑しい

月明かりに照らされた彼女は顔が真っ青に染まり目が左右に動いており頭を抱えながらうわ言の様に謝り続けている

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

 

 

「古……鷹…さん…?」

 

 

その姿はいつもの明るく優しい古鷹(彼女)の姿が無くまるで何かを恐れ怯えておりそれを見たイーちゃんも痛みを堪えながら心配そうに見つめる

 

 

「ごめんなさい……ごめんなさい

許してください…もう……死にますから」

 

 

「…………え?古鷹さん今なんて」

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!」

 

 

そう叫びながら廊下を走りだし追い掛けようとするがそれよりも先にイーちゃんが走り出し古鷹を追い掛ける

イムヤに頷くとまるで任せてと言わんばかりに全速力で走っていく

その姿を見ていた艦娘もといイムヤはハッとすると直ぐ様ある場所に走り出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「司令官に伝えなくちゃ!!」

 

 

 

 




次回

過去に蝕まれた者

突然様子が可笑しくなってしまった古鷹
今までそんな素振りも何も無かったのに彼女は次第に狂い始める



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夜 二

「ーーと言うわけです、唐澤大将」

 

 

『……そうか分かった

明日迎えをそちらに送る』

 

 

「いや、それは大丈夫です

私達の艦隊から何人か送り届けて貰うように話してあります」

 

 

『…分かった、すまない佐渡君』

 

 

「いえ、こちらこそお力になれず申し訳ありません」

 

 

佐渡は現在唐澤と長門をこちらで引き受ける事が出来ないと言う電話をしながら自室で月を見上げていた

 

 

「と言うより唐澤さん彼女に私が話した真実を伝えてませんね?」

 

 

『……………すまん』

 

 

その返答に本当に何も伝えてないと言うことを理解すると深い溜め息をつく

 

 

「あのですね、唐澤さん

正直、長門自体が我々とかなり仲が不仲なのを知ってますよね?

だから伝えてほしいと言いませんでしたっけ?」

 

 

『……すまない分かってはいたのだ

だが彼女を目の前にするとな…』

 

 

「告白前の高校生ですか…全く…

まぁこちらからも何とかーーーー」

 

 

「ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!ドン!」

 

 

 

といいかけた瞬間突然部屋の扉が思い切り叩かれ流石の佐渡もビクンッと跳ねると扉へ向き直る

 

 

『佐渡君?どうしたんだ?』

 

 

「あ、いえ、何か突然扉がーーー」

 

 

『司令官!!司令官!!

お願い起きて!司令官!!』

 

 

扉の向こう側からイムヤが息を切らせながら叫んでおり何か緊急自体であることに気付いた佐渡は唐澤との電話を切る

 

 

「すいません、唐澤さん

この話はまた明日しますねでは失礼します!!」

 

 

『待て!さっきの扉の音と言いどうしーー』

 

 

「待ってろ!今開ける!」

 

 

と唐澤がいいかけてるのを無視すると急いで扉の鍵を開けるそこには息を切らせながらイーちゃんが居ないイムヤが立っていた

 

 

「どうした!イムヤ!

何かあったのか!?」

 

 

「古鷹さんが……廊下を歩いてて……イーちゃんを蹴って……えっと…!」

 

 

「落ち着け!ゆっくり何があったのか教えろ!」

 

 

佐渡はイムヤを落ち着かせると深呼吸をしながら息を整えると先程合ったことを全て伝える

 

 

「古鷹さんがこの時間に廊下を歩いていて、何か様子が可笑しいの!

私を見ても理解してなくてしかもイーちゃんを蹴飛ばしてそれに!何かずっと謝ってて触るなって!!」

 

 

少し涙ぐんでいるイムヤは涙を袖で拭きながら説明していると佐渡の顔が真っ青に染まる

 

 

「何だと……?」

 

 

「それとね!何かもうすぐ死ぬって!!」

 

 

そのイムヤの言葉を聞いた瞬間佐渡の身体は動いていた

(不味い不味い不味い!!

何でだ!何で気付けなかった!クソクソ!!)

 

 

「司令官!」

 

 

走り出した佐渡を捕まえると佐渡は急いでイムヤにやることを伝える

 

 

「イムヤ!全員を起こせ!!

それと古鷹をもし見付けたら何としてもその場で捕まえろ!!

どんな手を使ってもな!!」

 

 

「え、でも触るなって…」

 

 

「良いから早くしろ!

間に合わなくなるぞ!!!」

 

 

「りょ、了解!!」

 

 

イムヤは走り出すと佐渡も鎮守府内を走り出しながら古鷹の行方を追う

 

 

(どこだ…クソ!無理に長門を招き入れたのが原因か!!クソ!!)

 

 

 

 

 




次回

狂う者

古鷹の様子を重くみた佐渡は鎮守府内を捜索する
佐渡にはその行動が何を示しているか理解していた
だからこそ彼は焦りながら捜索する



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夜 三

「どこだぁ!!古鷹ぁぁ!!」

 

佐渡は夜中なのにも関わらず鎮守府内を捜索していた

特に水場や屋上等自殺出来そうな所を重点的に探しているが見付からない

 

 

「もしかして、外か……?

不味い…まさか艤装での自沈は俺には手が追えないぞ……」

 

 

「佐渡!」

 

 

佐渡が考えていると廊下の奥からイムヤに起こされてきた叢雲、大井、グラーフ、金剛、長門、イムヤ、エアが走ってきており各々報告する

 

 

「居たか!?」

 

 

「駄目…ソラ達に連絡したけどこの島からは誰も出てないって」  

 

 

「アトミラール、この付近を艦載機を飛ばしたが古鷹らしき影は見付からなかった…」

 

 

「駄目ね…部屋をくまなく探したけど見付からない」

 

 

「こちらも監視カメラを見ましたが古鷹さんの影は映ってませんでした……」

 

 

「資材庫にもいませーん!

どこですか!?古鷹ぁぁぁぁ!!」

 

 

「司令官!駄目どこにも居ないよ!!

鎮守府内も皆で探したけど!!」

 

 

 

金剛が叫びながら古鷹を呼び他の艦娘達もどういう事だか分からずに慌てている

全員の話を聞いてもどこにいるか分からずに佐渡はイラつき壁を叩く

 

 

「クソ!どこだ…どこなんだ古鷹!

もう一度よく探すーーー」

 

 

「ていとくー!」

 

 

すると全員の後ろから艦載機に乗った妖精が手を振りながら佐渡達に向かってきている

 

 

「工廠妖精さん!すまないが後にしてもらってもーー」

 

 

「親方がきんきゅー自体だってー!」

 

 

「艦娘がスクラップになっちゃうー!」

 

 

「「「「「「!!!!!」」」」」」

 

 

その言葉に全員唖然と驚く中佐渡は直ぐ様その艦載機を捕まえると必死な形相で聞き出そうとする

 

 

「どこだ!そいつはどこにいる!?」

 

 

「工廠の艤装スクラップマシンの所ー!」

 

 

「無断使用してるー!」

 

 

「ありがとう!」

 

 

佐渡はそれだけを言うと全速力で工廠に走り出すとそれを追うように叢雲も走り出しその様子を重くみた全員も走り出す

しばらく走ると工廠に着き扉を開けようとすると

 

 

『ワン!ワン!!!』

 

 

『辞めろ!何してやがるんだ!古鷹ちゃん!!』

 

 

「叢雲、準備しておけ」

 

 

「分かったわ…!」

 

 

佐渡は嫌な予感が的中し叢雲と顔を合わせるとお互い頷き勢いよく扉を開くとそこには

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「離して!私は死ぬの!!

死なないといけないの!止めないでよぉぉぉぉ!!

誰も私を助けないんだから良いのぉぉぉぉ!!」

 

 

艤装のスクラップマシンのベルトコンベアー上に古鷹が暴れながら立っておりそれを親方や他の妖精達とイーちゃんが必死になりながら引きずり下ろそうとしていた

 

 

「ワン!ワン!!」

 

 

「辞めろ!これはそう言うもんでもないし!

何でお前さんが死ななきゃいけないんだよ!!

良いから降りて話をするぞ!!」

 

 

 

 

 

 




次回

自殺願望

佐渡達の目の前に飛び込んできたのはスクラップマシンに潰されようとしている古鷹
今まででは考えられない行動を起こす彼女に何が?

イベント始まりましたなぁ…
今回こそは完走するぞ!!





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夜 四

「やっぱりか!叢雲!!」

 

 

「分かってるわ!!」

 

 

叢雲と佐渡が走り出しスクラップマシンの所に向かおうとするとスクラップマシンのタイマーが動きだしゆっくりとベルトコンベアーが稼働していく

 

 

「やばっ急げ!!」

 

 

古鷹さん(・・・・)!お願いだからやめて!!」

 

 

叢雲と佐渡は急いで古鷹に駆け寄ると親方達に止められてるにも関わらず古鷹はスクラップマシンへと歩みを進めていく

 

 

「イーちゃん!親方離れて!!」

 

 

「だが!」

 

 

「離れろ!お前達が巻き添えになることはない!!」

 

 

それと同時に叢雲と佐渡が追い付き何とか二人係で古鷹を押さえつけようとするが二人とこの鎮守府で働いていた為か中々に手こずっている

 

 

「放して放して放して放して放して放して放して放して放して放して放して放して放して放して放して!!!

死なせてぇぇぇ!!!」

 

 

「駄目よ!貴女を死なせるわけないでしょ!!」

 

 

「ふ、古鷹さん!?」

 

 

「ちょ、ちょっとどういう事ですか!?これは!!」

 

 

「何してるデース!

何で、提督と叢雲が古鷹をスクラップしようとしてるデース!?」

 

 

 

佐渡達と遅れて大井達が到着するが現在の状況を見て困惑していると佐渡が大井達に叫ぶ

 

 

「大井!イムヤ!スクラップマシンを止めろ!!

金剛!グラーフ!古鷹を押さえつけるのを手伝え!!」

 

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

大井とイムヤはスクラップマシンのパソコンに向かいグラーフと金剛はベルトコンベアーに上がると四人係で無理矢理にでも古鷹を押さえつけ何とか後ろに下がっていぐ目の前にスクラップマシンの本体が迫ってくる

 

 

「え、えっとこれは……」

 

 

「これどうするの!?」

 

 

大井とイムヤが何とかスクラップマシンを止めようとするが間違えて加速ボタンを押してしまいベルトコンベアーの速度が上がる

 

 

「アトミラール!ベルトコンベアーの速度が上がったぞ!?」

 

 

「このままだと不味いよぉ!?」

 

 

「馬鹿野郎!イムヤ、大井!加速させてどうするんだ!?」

 

 

「ご、ごめんなさい!!」

 

 

「こ、これかな」

 

 

二人が混乱し通常の判断が出来なくなっており慌てていると佐渡達の目の前にスクラップマシンが迫ってくる

 

 

「不味いわね!!二人とももっと引っ張って!!

ぺしゃんこになるわよ!!」

 

 

「アハハハハ!やっとやっと死ねるよぉぉ!!

やっとあの辛い日々から解放されるんだぁぁぁ!!

加古(・・)達から見捨てられたんだから私は要らない娘何だからぁぁぁ!!」

 

 

「え……古鷹今なんて…言ったデース…?」

 

 

「加古って確か古鷹の妹艦の……?

でもあの時知らないって……」

 

 

その瞬間力を緩めてしまい同時に古鷹を離してしまい叢雲と佐渡が引っ張られる

 

 

「辞めろ!古鷹!お前の命は俺の物だ!!

勝手に死ぬなんて許さねぇぞ!!」

 

 

「そうよ!貴女は私達が買った(・・・)のよ!

なに勝手にやってるの!!」

 

 

 

「知らない知らない知らない知らない知らない!!

貴方なんて知らない!私はもう嫌なの!見たくないの!生きていたくないの!どうせ私なんてただの使い捨ての艦娘なんだからぁぁぁぁ!!」

 

 

二人は離れた事に気が付き急いで古鷹を掴もうとするがもう寸前までスクラップマシンが近付き古鷹は佐渡と叢雲を引きずりながらその真下に到着してしまう

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「早く!早く!早く!早く!早く!!!」

 

 

「提督ー!!避けるデース!!」

 

 

「叢雲!!逃げろぉぉぉ!!!」

 

 

四人が叫ぶ中諦めた佐渡は一度古鷹を離すと両手で抱き締め耳元で囁く

 

 

 

「…お前がそんなに死にたいのなら俺も一緒に行くぞ

お前を絶対に一人にはしないからな」

 

 

「……………………………ぇ………提……督?」

 

 

その瞬間少しだけ古鷹の濁っていた瞳が少しだけ元に戻るがそれよりもスクラップマシンが一番上に到達し勢い良く落ちてきそうになる

 

 

「お願いだから止まってよぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

「どうすれば止まるのよ!!このクソ機械!!」

 

 

 

「退きなさい!!大井!イムヤ!!」

 

 

だがその瞬間エアが二人を押し退け右手に艤装を付けると思い切り振りかぶる

 

 

「親方!!悪いけれどこのスクラップマシンはしばらく使用不能にするわよ!!」

 

 

「あぁ!別に構わねぇ!!やっちまえ!!エアちゃん!!」

 

 

「よっこいしょ!!!」

 

 

親方に一声入れるとエアはスクラップマシンを制御しているパソコンに手を突っ込み無理矢理に破壊すると中にある配線を全て引っこ抜く

それと同時にスクラップマシンのベルトコンベアーが停止し更にスクラップマシンが稼働自体を停止する

 

 

「……………止まった?」

 

 

「提督ー!!!」

 

 

「アトミラール!!」

 

 

スクラップが停止しそれと同時に金剛とグラーフが佐渡に抱き付こうとするが上に迫っていたスクラップマシンが嫌な音をしながら落ちてきそうになる

 

 

「ヤバイ!!退避!!」

 

 

 

 

直ぐ様そこを離れようとするがベルトコンベアーに乗っていた鉄屑に脚を引っ掛け叢雲と古鷹と共に倒れてしまいその衝撃でスクラップマシンが落ちてくる

 

 

「不味い!!」

 

 

「ワン!」

 

 

だがその瞬間イーちゃんが走り出し佐渡達の真下に行くと落ちてくるスクラップマシンに口を開き主砲を向ける

 

 

「頼む!イーちゃん!!」

 

 

倒れながら佐渡は叢雲と古鷹に覆い被さるとその瞬間イーちゃんが勢いおく主砲を放ち無理矢理にスクラップマシンを上に引き戻しそれと同時にスクラップマシンの鉄板が破壊され完全に破壊される

しばらく、宙を舞うとそれが溶鉱炉に落とされゆっくりと溶け始める

 

 

「………………助かった…」

 

 

「…………はぁ…危機一髪ね…本当に…」

 

 

二人に助けられ脱力すると深いため息をつく

 

 

 

 

 





次回

発作

古鷹を救うために何とかスクラップマシンを破壊する
だが彼女のまだ自殺衝動は収まっていない




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夜 五

 


「死な……なきゃ……」

 

佐渡と叢雲が冷や汗をかきながら古鷹を助けたのにも関わらず彼女はまだ虚ろな目をしながら再び歩き出そうとするが

 

 

「ワン!」

 

 

先程主砲を撃ったイーちゃんが古鷹の進行方向へ立ち塞がり口を開けるのだがそれを見た古鷹は怪しく笑う

 

 

「良いよ……撃って……

嫌、撃って…今なら死ねる…アハハハ!!

殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して!!!!」

 

 

「古鷹!!」

 

 

まるで壊れた人形の様に死を求める彼女に佐渡は抱き付くと古鷹は暴れ始める

 

 

「放せ……放せ…放せ…放してよぉぉぉ!!

私はなにもしてないのに何で!何で!何で!何で!何で!何で!何で!何で!何で!何で!何で!何で!何で!何で!何でよぉぉ!」

 

 

「あぁ、お前はなにもしてない!だから安心しろ!

誰が何と言おうと絶対にな!!」

 

 

「嘘……つき…だって私を…」

 

 

「違うわ!貴女を傷付ける奴はここには居ない!!

だから逃げなくて良いの!私達の元に居て!!」

 

 

「…………………嘘だ」

 

 

古鷹は佐渡に抱き締められながらも暴れ始め無理矢理にでも佐渡の拘束から放れると頭を抱えながら再び苦しみ始める

 

 

「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だぁぁぁぁぁぁ!!!

そう言って私を騙すんだ!!裏切るんだ!!

どうせ!どうせ!私なんて!!」

 

 

「っ!駄目か!ごめんな古鷹許してくれ!!」

 

 

古鷹の苦しみを取りきれず佐渡は悔しさに歯を食い縛ると頬に平手打ちを当てると古鷹がその場に座り込む

 

 

「………………………痛い…私…何かしましたか?」

 

 

「良く聞け古鷹

お前は俺と叢雲の所有物だ!!

だから!お前の命は俺達の物だ!!

お前が勝手に死ぬことは絶対に許さない!!

目を覚ませ!古鷹一番艦!古鷹!!

俺と叢雲の天使(・・)!!」

 

 

「天……使?」

 

 

古鷹の頭の中にその言葉が反響していくと身体から力が抜けその場で小便を漏らしてしまうがそれと同時に目の混濁が消え次第に元に戻っていく

 

 

「………………提…督?」

 

 

「そうだ、お前の提督だ

佐渡 満 お前を奪った(・・・)人間だ!」

 

 

「………………叢…雲?」

 

 

「そうよ!貴女の相棒にして貴女を守ると決めた艦娘よ!!」

 

 

古鷹はその言葉を聞くと周りを見ると破壊されたスクラップマシン、皆の驚きの表情、エアの右手の傷を確認すると急いで謝る

 

 

「ご、ごめんなさい!私!また!」

 

 

「良いからそれよりも立てるか?古鷹?」

 

 

「は、はい!」

 

と元気良く返事を返し立ち上がろうとするのだがすぐにまた座ってしまい手足が震えている

 

 

「あ……れ?」

 

 

「やっぱりか……」

 

 

それと同時に佐渡が古鷹に近付くが自分の回りにある水に気付き佐渡を拒絶する

 

 

「だ!駄目です提督!私!今!」

 

 

「汚くないし、別に気にしないっての

ほらちょっと待ってろ」

 

 

佐渡は身体が動かない古鷹を抱えると風呂場へと向かっていく

 

 

「叢雲、大井、イムヤ

付いてこい、古鷹と一緒に風呂に入ってくれ」

 

 

「分かったわ」

 

 

「りょ、了解!!」

 

 

「はい!」

 

 

濡れた古鷹を抱えながら工廠の扉を開くと顔だけを後ろに向けながら他の者達にも指示を出す

 

 

「金剛、グラーフ、長門

すまないが工廠を綺麗にしといてくれ

スクラップマシンのそれは俺がやるから他を頼む」

 

 

「わ、分かりました……」

 

 

「分かった」

 

 

「了解」

 

 

「エア、イーちゃん入渠してこい

すまない

本当に助かったありがとう」

 

 

「勘違いしないでよあんたを救ったんじゃない

古鷹を助けたのよそこんところ理解しときなさい」

 

 

「あぁ、それでもありがとう

お前のおかげだよ」

 

 

「ワン!」

 

 

「うん、イーちゃんも最後ありがとうね?

ゆっくり休んでくれ」

 

 

佐渡はそれだけ指示すると工廠を後にする

 

 

「………ごめんなさい、提督」

 

 

「いや、お前は悪くない

俺が悪いんだお前の異変に気付けなかったんだからな

本当にすまない」

 

 

「そんなことありませんよ!

貴方はまた私を助けてくれたんですね……

ありがとうございます

こんな欠陥だらけの重巡(・・・・・・・)を助けてくれて」

 

 

佐渡は古鷹に言われると抱き抱える力を強めながら歯を食い縛る

 

 

 

 

 

 




次回



何とか古鷹の暴走を止めるが佐渡はそれを引き起こしたのは自分だと攻め続ける
そして、他の艦娘達は真実を問い始める



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夜 六

佐渡が古鷹を浴場へと運び終わると自分も風呂に入ると言うと他の三人に任せると去っていき四人は風呂に浸かりながらのんびりとしている

 

 

「ふぅ~……この時間にお風呂ってのも良いわねぇ~…」

 

 

叢雲は毛延びをしながらのんびりと湯船に浸かっていると古鷹もその隣で申し訳なさそうにしている

 

 

「…ごめんね叢雲…私」

 

 

「気にしないで、私は貴女が何しても構わないとあの時言ったでしょ?」

 

 

「うん……二人もごめんね私が迷惑かけちゃって……」

 

 

「大丈夫だよ!」

 

 

「えぇ……」

 

 

だが、大井だけは今回の古鷹が起こした事に疑問しか無かった

佐渡が急に長門を鎮守府には入れないと言ったり叢雲が長門を完全拒絶し今回の古鷹の事があった

 

 

「………叢雲、古鷹さん

何か私達に隠してない?」

 

 

その言葉に古鷹がビクンと反応するが叢雲は全く微動だにしない

 

 

「え、えっと……」

 

 

「何もないわよ

別に」

 

 

「じゃあ、古鷹さんのあれは何?

私達の事も提督すら分からなくなった自殺願望は何なの

今ままでそんなこと一度として無かったなのに今回は私達より遥かに酷い」

 

 

大井と叢雲が少し険悪なムードになるがイムヤも俯きながらやはり気になり聞いてしまう

 

 

「……ねぇ、叢雲私も知りたいわ

何で古鷹さんがあそこまで酷い状態になったのか」

 

 

二人に迫られ古鷹は縮こまりながら俯くと叢雲が二人にお湯をかける

 

 

「ちょ!ちょっと叢雲!!」

 

 

「何するのよ!!」

 

 

「うっさい、あんたたちも秘密の一つや二つあるでしょ

そう言うことよ」

 

 

すると叢雲は古鷹の手を引っ張ると無理矢理にでもその場を離れようとする

 

 

「ねぇ!私達は仲間じゃないの!そんなに信用できない!?」

 

 

大井も立ち上がり二人に問いかけ古鷹が話そうとするが叢雲はそれを辞めさせ大井に言い放つ

 

 

「貴女達に彼女(古鷹)を背負う覚悟はあるのかしら?

仲間を友人を全てを捨てて彼女を背負うことになるけど良いのかしら?」

 

 

叢雲の真剣な眼差しにそれが嘘でもハッタリでも無いことに気付き大井は黙ってしまう

 

 

「ほら答えられない

ならこの話は終わり」

 

 

「叢雲!」

 

 

次にイムヤが立ち上がり古鷹の手を取ると真っ直ぐに二人を見つめる

 

 

「私は二人と皆に救われた!

酷い扱いを受けていてご飯も食べれない私に色々してくれたのは本当に感謝してる!

だから!次は古鷹さんの力になれるなら何でもするから!!」

 

 

「イムヤさん……」

 

 

イムヤの言葉を聞くと叢雲は俯きまた再び前を向き古鷹を連れて出ていく

そして、脱衣場で古鷹に問いかける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、古鷹

私達以外も信じてみない(・・・・・・・・・・・)

 

彼女達は絶対に貴女を裏切らないわ」

 

 

「……ごめん」

 

 

「分かったわ」

 

 

叢雲はそれだけを言うと一人で着替え出ていくと古鷹は一人で涙を堪えていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私も信じたいよ……でも…ごめんなさい

皆…」

 

 

 

 

 

 





次回 

葛藤と焦り

叢雲が守る古鷹の過去とは?
少し長引きますがお許しください!!



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夜 七

佐渡は一人シャワーを浴びながら悩んでいた壁に拳を突き立て何度も自分を痛め付けながら

 

 

「クソ!クソ!何してやがるんだ!俺は!!」

 

 

仕舞いには頭を壁にぶつけると頭から血を流しているのにも関わらず悔しそうに歯を食い縛っていた

 

 

「古鷹を助けるつもりが何苦しめてんだよ……

これじゃ()と変わらねぇじゃねぇか!!

クソ!!」

 

 

自分が焦り古鷹を無理に過去と向き合わせようとしそれが失敗に終わり自らを痛め付けていた

 

 

「………だが何とかしないとな…」

 

 

「全く、何してるのよあんたは」

 

 

ふとそんな声が聞こえ振り返るとそこには浴場の扉を開けながらため息混じりに佐渡を見ているエアが居た

 

 

「え、エア!?お前!何で男風呂にってその前に腕の傷はどうした!?」

 

 

「別に男の裸なんて見慣れてるわよ

何人も殺してきたし、後高速修復剤貰ったわよ

どうせあんまり使わないでしょ?」

 

 

「いや!そうじゃなくて!」

 

 

「平気よ、水着着てるし」

 

 

そう言われるとエアを凝視すると、真っ黒なビキニを着ており佐渡の後ろを通り過ぎるとそのまま湯船に浸かる

 

 

「あれが、あの娘がここに来た理由?」

 

 

「……あぁ、ここに来た時からある発作でな

今までほとんど起こさなかったのにな…」

 

 

エアが聞くと素直に答え「ふーん」と答えると佐渡に背を向ける

 

 

「まぁ、ある意味彼女(長門)を寄越したタイミングが悪かったのよ」

 

 

「そうだな……すまないエア助かったよ

怪我までさせて……本当にすまない」

 

 

「別にあの程度怪我に入らないわよ

少しビリッと来た位だしね」

 

 

エアは軽く流すがやはり佐渡が浮かない顔をしているのを見ると湯船からお湯をかける

 

 

「………何すんだよ?」

 

 

「その顔がムカつくだけよ

で、どうするの古鷹は」

 

 

「……様子見しかないな

アイツの過去は簡単に言える代物じゃない」

 

 

「ふーん、でもそうは行かないんじゃないかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは場所変わり工廠

金剛達は無言でエアとイーちゃんが破壊したスクラップマシンの破片を掃除し妖精達は直すものを直していた

 

 

「………やっぱり気になりマース」

 

 

「……だな」

 

 

金剛とグラーフはあらかた片付けると親方に詰め寄る

 

 

「親方、話がありマース」

 

 

「………言っとくが俺は知らないぞ」

 

 

「だが、貴方はここに長く居るではないか?

何かアトミラールから聞いてないのか?」

 

 

「………あぁ、奴からは何も聞いてない

ただ、初めてここに来た古鷹は今とは別人だった

暗く、何かに怯え、恐れ、疲れきっていた

ああいうのを何度か見たことあるがそう言うのじゃ無かった

提督に聞こうとしても「ごめんなさい」で通されてたからな

あそこまで酷かったのは初めてだ」

 

 

親方は振り返らずとも落ち込んでいるのが分かった

自らの工廠を荒らされたよりも佐渡が隠している彼女の真実を知れていなかったことに

 

 

「………何で、提督は話してくれないんデース」

 

 

「あいつは言ってた

『親方さんまで彼女を背負わせる訳にはいかない』ってな

多分あるんだろ

あの娘の過去を知ると言うことはそれなりの覚悟がいるってな」

 

 

するとそこで金剛が思い出すもしかしたらここに一人だけその過去を知り得ているかも知れない人物がいると

 

 

「そう言えば、長門

私達と古鷹を犯罪者って呼んでましたネ?

貴女知ってるんじゃないデースか?」

 

 

「いや、すまない私が知っているのは彼女(古鷹)の犯罪歴だけだ

それとそれに関しても私は佐渡提督に口止めされているんだ」

 

 

その言葉を聞いた瞬間に金剛が長門の首元を持ち上げ睨み付けるが長門は申し訳なさそうな顔をしており舌打ちをする

 

 

「もう良いデース

提督に直に聞きマース!」

 

 

金剛は全員をおいていこうとすると後ろから親方の声が聞こえる

 

 

「金剛ちゃん!あの娘の過去を聞くって事はあの娘を背負い傷を大きくするって事だ!!

それでも知りたいのか!?」

 

 

その言葉にピタッと金剛は止まるが振り返り親方を睨む

 

 

「私はあの人達に救われました

だから次は古鷹を助けたいの

あの人が傷付いても私は癒してあげたい共に居たい

一人で苦しむのは辛い事だから私達を頼ってほしいのよ

それを誰よりも私は理解してるから

あの人達の力になりたいのだから私は真実を知りたい」

 

 

そう言うと工廠の扉を勢い良く開け一人出ていってしまうとグラーフも笑いながら歩き始める

 

 

「グラーフちゃんもかい?」

 

 

「あぁ、私は一人で誰も仲間も知り合いも居ないこの地に来て売られそうな所をあの人達に救われた

だから次は私も力になりたいんだ

親方は違うのか?」

 

 

「俺は……」

 

 

「私は行く、誰よりも優しい彼女をもっと知りたいのだ

そして仲間として助けたいんだ」

 

 

するとグラーフも工廠を出ていき親方はしばらく唸ると「あーーー!!!」と叫び近くの艦載機に乗ると航行を開始する

 

 

「全く!知らない事があるってのもムカつくなぁ!!畜生!!」

 

 

親方も工廠を出ていくと一人長門が工廠に残されており全員の意思を見ているとエアの言葉を思い出す

 

 

無知は罪よ正義の戦艦

 

お前がやったことは正義でも何でもない

 

ただの自己満足よ

 

 

「……私の知らない真実があると言うのか

ここには」

 

 

そして長門も立ち上がりその真実を確かめるために佐渡へと向かい歩き始める

 

 

 

 

 

 

 

 





次回

教えて!!

金剛達は自らの思いと共に佐渡に詰め寄る
彼女の真実を確かめるために



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提督(佐渡)と艦娘達

「…………何の用だお前達」

 

 

佐渡は風呂から上がり工廠の掃除へと向かおうとしたとき工廠から来たであろう金剛達に止められていた

 

 

「提督、聞きたいことがありマース」

 

 

「何だ?こんな夜中に聞くことか?」

 

 

「古鷹の事だ

何故彼女はあんな風に暴れたんだ?

教えてくれアトミラール」

 

 

佐渡は予想通りの言葉に溜め息をつきながら二人の間を通り抜けようとする

 

 

「後にしてくれ今は工廠が先ーー」

 

 

「悪いが今話してもらうぞ、提督」

 

 

通り抜ける瞬間佐渡の目の前に艦載機が空中で止まり行く手を阻む

 

 

「親方……」

 

 

「悪いな、工廠は他の妖精に任せてある

話してもらおうか古鷹ちゃんの過去とやらを」

 

 

「……………今日は遅い明日でもーーー」

 

 

「そうは行かない佐渡提督」

 

 

その奥から長門が歩いてくると親方の後ろに立ち止まり佐渡を睨み付ける

 

 

「どうやら私の知らない真実があるらしいな?

私が知っていることと貴方の知っていることを話してくれ

私も知りたいのだ自らの犯した罪を」

 

 

気丈に振る舞っているがやはり震えており佐渡は反対側に回り逃げようとするのだが

 

 

「提督、少しよろしいですか?」

 

 

「古鷹について教えてよ!司令官!」

 

 

「………何だ?お前達は裏で俺を取り囲む練習でもしてたのか?」

 

 

後ろに大井とイムヤが立ち塞がり佐渡の退路を断つと溜め息を付きながら両方を見る

 

 

「お前達には関係ない話だ

だから今日は寝ろ」

 

 

「嫌デース、今聞きたいです」

 

 

「だから夜遅いだろ?

お前達には悪いことをしたな」

 

 

「構わない、古鷹の為ならどんな時でも助けになるさ」

 

 

「……明日話してやるからさ」

 

 

「駄目だ今話せ

お前はそうやってはぐらかすだろ?」

 

 

「…………寝ろよ、お前ら」

 

 

「嫌ですよ、今日こそは聞かせてもらいます」

 

 

「…………怒るぞ?

俺も眠いんだ」

 

 

「私達も眠い、それでも聞きたいの古鷹さんの仲間として真実を」

 

 

全員が佐渡から古鷹の事を聞き出そうと詰め寄るが佐渡は頭を掻きながら全員を睨み付ける

 

 

「お前達には関係ない

それだけだ」

 

 

「どうしてよ!私達仲間じゃーーー」

 

 

「仲間でもな!話せる事と話せないこと位あるんだよ!!!

失せろ!!!」

 

 

佐渡の怒号に全員が怯みその隙に去ろうとするが全員で佐渡の退路を断つ

 

 

「お願いします!提督!!私達はあの人を

私達を救ってくれたあの人を知りたい!!」

 

 

「古鷹さんは私にずっと優しくしてくれた!!

いつも笑顔で色々教えてくれてそんなあの人が悲しんで苦しんでる姿は見たくないの!!お願いします司令官!!」

 

 

「駄目だ!!アイツの過去はそう簡単に話せるもんじゃない!!!」

 

 

「お願いデース!提督!

話してください!二人が背負ってる物を私達にも背負わせてください!!」

 

 

「そうだ!アトミラール!貴方達だけが苦しむ必要は無いんだ!私達の事も頼ってくれ!!」

 

 

「うるせぇ!頼れたら頼ってるわ!!それでもな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督、もう良いですよ」

 

 

 

 

その声に全員が振り返ると古鷹と叢雲が大井達の後ろから現れ微笑みながら全員を見る

 

 

「古鷹……だが!」

 

 

佐渡が何かを言おうとすると古鷹は首を横に振り少しずつ佐渡に近寄っていく

 

 

「ずっと考えていました

ここに来てから私はこんな所に居て良いのかって

初めはほんの三人と親方さん達だけでとても楽しかったです

でも、他の罪を背負った艦娘や心に傷を持った方々が来てここはとても騒がしくなりました

実はそれが恐かったんです

いつかこれがまたなくなるんじゃないかって

それでも皆は私を思ってくれていると再確認出来ました」

 

 

「古鷹……」

 

 

「古鷹さん……」

 

 

古鷹は大井とイムヤの間を抜けると佐渡を見上げここに居る全員を見回すと微笑み目を閉じる

 

 

「…提督…いえ、佐渡さん

私はまた仲間を信じてみます

貴方と叢雲を信じられるようになったように

だから話そうと思います」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「皆が慕う(天使)の罪を」

 

 





次回

真実

古鷹は語り出す自らの過去とその心の傷を




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古鷹の話を聞くために全員は居間に集まると部屋の寒さを和らげる為にストーブを付け佐渡が全員に珈琲を淹れている

 

「……なぁ、古鷹無理しなくて良いんだぞ?」

 

 

佐渡は古鷹を心配するが首を横に振るうと微笑みながら目を閉じている

 

 

「大丈夫です

先程より落ち着きましたし

もしまた発作が起きても今は皆が居ます

だからお願いしますね?」

 

 

古鷹の隣には叢雲とエアが座りそれに対面するように金剛達が座っている

 

 

「古鷹……その…古鷹の発作って何なんデースか?」

 

 

金剛がふとその話を持ち出し古鷹に聞くと古鷹が答えていく

 

 

「私の発作は昔、あることが原因で私は『自殺させるように洗脳を受けていたんです』

それの名残です」

 

 

「は…?自殺させるようにって何で?」

 

 

「恐らく、罪の重さを耐えきれなくなって自殺した方が海軍も都合が良かったんだと思います

自分達で手をくださなくても必ず死ぬように」

 

 

「ちょ!ちょっと待ってくれ!!

古鷹は何でそんなのを受けていたんだ!?」

 

 

突然古鷹に言われた話に付いていけてないグラーフが声を上げていると古鷹は静かに説明していく

 

 

「私は前に所属していた鎮守府である罪を着せられ海軍に囚われていました

そして、その時海軍の人達による尋問時洗脳に近いのを受け続けたんです」

 

 

「古鷹さんの罪……?」

 

 

 

古鷹の言った言葉に全員が不思議がる何せ彼女はここに居るときは全くそんな事をせず佐渡や皆に優しい為想像がつかない

 

 

「でも可笑しいよね、古鷹さんが犯罪を働くなんて有り得ないじゃない」

 

 

「あぁ、古鷹はいつも私達を気遣い助けてもくれる優しい艦娘だ

想像がつかない……」

 

 

すると古鷹の手が震え始めておりそれに気付いた叢雲がその手を握ると次に反対の手を佐渡が握る

 

 

「叢雲……提督……」

 

 

「大丈夫よ、私が付いてるわ」

 

 

「あぁ、俺もお前の味方だ」

 

 

「私の事も忘れないでよね!」

 

 

するとエアが古鷹の後ろから抱き付くと微笑みながら頭を撫でている

 

 

「……ありがとうございます

エアさん」

 

 

佐渡達に元気付けられ古鷹は深呼吸をすると「よし!」と小さく呟く

 

 

「実はね、叢雲と佐渡さんには何の罪も無くてね

私が原因で二人はここに……小笠原に飛ばされたの」

 

 

「それは聞きました、でも貴女一人を助けるために何故二人はここに?」

 

 

「私が着せられた罪を庇ってしまった為に二人は私と同じ罪を背負わされたんです」

 

 

「古鷹ちゃんを庇っただけでか?そんな有り得ないだろ

確かに犯罪者を庇えばそうなることはあるだがこんな所に飛ばされるなんて有り得ないぞ?」

 

 

「それほど重い罪なのです

私が着せられた罪と言うのはーーー」

 

 

古鷹は一瞬間を開けると再び深呼吸をし全員に目を向けながら話し出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の罪は『反逆罪』

佐世保鎮守府に深海棲艦を招き入れたと言う事で私は捕まりました」

 

 

 





次回

国を裏切った者

古鷹の罪、それは反逆罪
国家に逆らい深海棲艦と共謀し鎮守府を陥れたと言う罪なのではあるが何故佐渡はそんなのを助けたのか?


イベントで二つめで早くもつんでます……
お願いだからフラグル級三人は辞めてくれ……



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罪 二

「……………はい?古鷹が…?」

 

 

「な、何の冗談ですか?

そんな有り得ないデース!」

 

 

「いや、事実だ

古鷹はその罪で海軍に捕まりそして……そこの長門によって処刑されるはずだった」

 

 

佐渡の言葉と共に全員の目が長門に集まると長門は頷く

 

 

「あぁ、私は彼女を殺そうとした」

 

 

「どう……して?」

 

 

「私は彼女が深海棲艦と共謀し佐世保鎮守府を壊滅させた張本人と聞いていたんだ

だからこそ、私が彼女の処刑に名乗りを上げた」

 

 

その話を聞いていくと事実古鷹がその罪を働き海軍の裏切り者や犯罪者と呼ばれるのが理解できた

 

 

「まぁ、ぜーんぶ嘘なんだけどね」

 

 

「…………は?」

 

 

「ちょっと待て!エアどういう意味だ!?」

 

 

エアは珈琲を飲むと古鷹の頭を撫でる

 

 

「この娘はね、『海軍に捨てられた艦娘なのよ』」

 

 

「海軍に捨てられた……艦娘?」

 

 

「と言うとまさか古鷹は……」

 

 

金剛達には嫌な予感が過りまさかとは思ってはいるがその先を言えないでいるとエアが続けてその話を続ける

 

 

「そのまさかよ

古鷹さん…古鷹はね

海軍の思惑とある奴等の地位を守るために罪を着せられ処刑されかけたのよ」

 

 

「何だと!?そんなわけがない!!彼女は!!」

 

 

長門がその意見に反論しようとするがエアは強気で長門に向きなおる

 

 

「なら、何故貴方が処刑しようとしたとき彼女は『あんなに酷い姿』だったの?

普通に極刑を下すだけならやる必要はないわよね?」

 

 

 

「それは!彼女が脱獄したから…とかではないのか!?」

 

 

「貴女まさかその理由を聞かないで殺そうとしたの?

呆れたそれじゃ分からないわよね~」

 

 

「なんだと!!」

 

 

「辞めろ!お前らの喧嘩をするためのここは場所じゃねぇよ!!」

 

 

エアと長門が喧嘩になりかけると佐渡が怒号を放ち二人は大人しくなる

 

 

「……ごめん、佐渡」

 

 

「…すまない佐渡提督」

 

 

「全く……古鷹続けてくれ」

 

 

「は、はい……」

 

 

佐渡によって静止され二人が落ち着きを取り戻すと再び古鷹は自らの事を話し始める

 

 

「……エアさんの言う通り私は実際何の罪も働いて居ないんです

私が当時所属していた佐世保鎮守府は深海棲艦達の奇襲により全壊

ですが、死者は誰一人として出ませんでした

そして、私はその事件を裏から操っていたと言う事で捕まりました」

 

 

「でも、調べれば分かる事よね?

そんなの」

 

 

すると古鷹は首を横に振るいそれを否定する

 

 

「確かに少し調べれば分かることのはずなのです

ですが、海軍の方々は初めから私を犯人に仕立てようと考えていたようで私はすぐに逮捕され拷問を受けました」

 

 

「拷問……だと?

嘘だ!海軍ではそれを禁止しているはずだ」

 

 

長門が反論するが古鷹はその話を続けていく

 

 

「これから話すのは私の過去であり私が佐渡さんと叢雲と出会った話になります」

 

 

 

そして、古鷹は語り出す自らの過去と何故この鎮守府に来なくては行けなくなったのを

 

 

 





次回

古鷹の過去

彼女は語り出す真っ黒で自分を縛り続けている過去を
そして、今までの不可解な行動の理由を

やっとここまで来れた気がします……
中々に長くなりますのでご了承を!!




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重巡(古鷹)の記憶

ここからしばらくの間古鷹目線のお話になります
ご了承ください





ここはどこ?

わたしはだれ?

 

 

 

私はある部屋で目を覚ました

近くには小さな子供の様な人達が私を見上げている

話を聞いてみると私は古鷹型一番艦 古鷹と言う名前らしい

小さな子供の名前は特に無く総称で妖精と呼ばれているらしい

 

 

私の名前は古鷹……これは何だろう?

 

 

右腕に付いている何かについて訊ねるとそれはある化け物達を倒すために必要な武器らしい

少し重いけど自分の思い通りに動くこの武器が気に入った

 

 

「じゃあ!いってらっしゃい!」

 

 

目の前の扉が開かれると同時に私は歩き出すと逆光で目が眩むがゆっくりと歩き出すとそこにはピンク色の髪色の可愛らしい女性が居た

 

 

「どうも!えっと貴女は古鷹一番艦 古鷹さんですね?」

 

 

「は、はい!」

 

 

「身体に変なところは無いですか?」

 

 

女性に言われると身体を少し動かし自らに付いた武器を動かすが全く問題ないと感じ敬礼をする

 

 

「だ、大丈夫です!」

 

 

「それは良かったです!ではこちらに来て頂いてもよろしいですか?

あ、艤装はそちらにお預けくださいね!」

 

 

艤装?あぁ、この武器の事かな?

私は自らに付いた武器を外し他の妖精さん達に渡すと言われた通りに女性に連れられていきながら周りを見るとどうやら工場見たいな所らしい

 

 

しばらく歩いていくとその工場を出て廊下を歩いていくとある部屋に通される

 

 

「ではおかけください!」

 

 

「し、失礼します!」

 

 

私は自らの存在と戦うべき相手を知らされた

私達は元軍艦の艦霊と言うものを人間に憑依させた言わばちょっとした軍艦の代理人見たいな物であり私達は普通の人間とは違い身体が丈夫に出来ていると言うこと

艤装と言う妖精が作ってくれる特殊兵器を唯一装備し海を駆ける事が出来、戦うことが出来る言わば人形(ひとがた)兵器

 

 

そして、戦うべき相手が深海棲艦

世界の海を支配し人を苦しみ続けていると言う化け物達

その唯一の対抗手段が私達であり通常の人間が使う兵器ではほとんどダメージを負わせる事が出来ないらしい

 

 

「と言うわけになります

質問はありますか?」

 

 

「えっと、そうなると私達は自分達で戦うのですか?」

 

 

「いえ!一人だけと言うわけではなく六人一つの艦隊となりその深海棲艦達と戦って頂きます

後!皆さんそれぞれの鎮守府に所属してもらい提督に従って貰います」

 

 

「提督??」

 

 

「簡単に言えば古鷹さんの上官ですね

艦娘の世話と管理を言い渡されている方々です

明日からそちらに移って貰いますからね!」

 

 

いきなりの話だなぁと私は感じながらもその日は終わり次の日私は車に乗りながらある場所に送られていた

そこに関する資料を眺めていた

鎮守府の名前は佐世保鎮守府

提督の名前は 藤谷 淳一(じゅんいち)

最近着任したばかりの新人で階級は少尉、真面目でキチンとした性格で良い人らしい

艦娘の在住も五月雨(さみだれ)と不知火だけと言うかなり少ない

 

 

「……私、やっていけるかなぁ…」

 

 

と弱気になっていたけど頬を叩き気合いをいれると良し!とやっていると車が止まりドアが開かれる

 

 

「着きましたよ、古鷹様」

 

 

「は、はい!ありがとうございます!」

 

 

私はお礼を言いながら頭を下げると車から降り運転手にお辞儀をする

目の前には大きな建物、そして潮風に紛れて海の香りがする

 

 

 

「後は、そちらの道を真っ直ぐ行けば鎮守府です」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

再びお辞儀をするとゆっくりと歩き始めようとすると後ろから敬礼混じりに大声で言われる

 

 

「では!暁の水平線に勝利を!!」

 

 

「は、はい!!」

 

 

私も慌てて敬礼と返事をすると運転手はゆっくりと歩いていき車に乗り込み走っていく

 

 

「さて、と行こうかな?」

 

 

荷物…と言っても特に無いけどバッグを片手に門を開き歩いていくと鎮守府の中に数人の影が見える

 

 

「司令!何してるんですか!!

本日は大事な仲間が来るんですよ!!」

 

 

「ご、ごめん!!昨日ゲームやり過ぎた!!」

 

 

「もう!あれだけゲームはやり過ぎないでくださいってきゃぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「ちょ!五月雨!待て、こっちに突っ込んで!!」

 

 

「司令!私に落ちてこないで!!」

 

 

「「うわぁぁぁぁぁ!!!(きゃあぁぁぁあ!!)」」

 

 

鎮守府の入り口近くの階段から三人?が転げ落ちる様に落ちてくると目の前のロッカーに衝突し三人とも掃除道具を被っている

 

 

(……大丈夫かな…この鎮守府…)

 

 

私が心配していると一番上に乗っている青髪の女の子がこちらに気付き急いで立ち上がる

 

 

「お待ちしておりました!古鷹さんですよね!」

 

 

「は、はい!古鷹一番艦 古鷹です!

……えっとその」

 

 

「あ、失礼しました!私の名前は五月雨と言います!

これからよろしくお願いします!」

 

 

と頭を下げる五月雨の近くから二人が掃除道具を被りながら立ち上がろうとする

 

 

「いてて……五月雨!気をつけてくださいってあれほど言いましたよね!」

 

 

「ご、ごめんなさい!不知火さん!提督!」

 

 

「あの、それよりも不知火さん重いです」

 

 

「ふん!」

 

 

「あいてぇ!?」

 

 

「あはは……」

 

 

先行きが不安ではあるが楽しい鎮守府生活にはなるのかな?と思っていると私に気が付いた男の人提督はこちらを向くと敬礼をする

 

 

「失礼致しました!えっと古鷹さんで良いんだよね?」

 

 

「はい!重巡洋艦の古鷹です!

これからよろしくお願い致します!」

 

 

「あぁ!これからよろしくな!

俺の名前は藤谷 淳一 

右も左も分からない新人提督だけどよろしくな!」

 

 

挨拶を交わすと藤谷さんと握手を交わすのだがやはりこの時の藤谷さんは忘れられない

何せ

 

 

「フフフ、提督頭にバケツ被ったままで格好つきませんよ?」

 

 

「え……あ…恥ずかしい…」

 

 

「はぁ……全くこの人は」

 

 

「ごめんなさい!ごめんなさい!」

 

 

 

 

 




次回

三人と一人

古鷹が初めて着任したのは藤谷が仕切る事になる佐世保鎮守府
そして彼女はここで幸せを掴もうとしていた



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重巡(古鷹)の記憶 二

初めて着任したのこの鎮守府正直全く分からないことだらけだった

その日は私の着任パーティーを開いてもらい不知火さん、五月雨さん、藤谷さんの三人で思い切り楽しみはしゃいでいた

 

 

「古鷹さんは重巡何ですよね!」

 

 

「う、うん

ごめんね?そんなに大きくなさそうだしよ弱そうで……」

 

 

「そんなことありません

この鎮守府には全く戦力がありませんからね

ね?司令?」

 

 

不知火さんの言葉にびくんと藤谷さんが震えると「あはは」と言いながら目をそらす

 

 

「ま、まぁ!そんなことより今日は楽しもうよ!

これから増えていくとは思うからさ!!」

 

 

すると藤谷さんは飲み物を片手にこちらに来ると五月雨さんと私の肩に腕を回し楽しもうとしている

 

 

「全く、仕方無いですね

本日だけは多目にみましょう」

 

 

「やったぜ!!よっしゃ!じゃあ今日は楽しもう!!」

 

 

不知火さんも微笑みながらも藤谷さんの事を許し五月雨さんも楽しんでいる

あぁ……これが鎮守府何だ…仲間なんだ…楽しいな…

と観賞に浸っていると藤谷さんが手を取り私もそれに付いていくように歩いていく

 

 

「今日からよろしくな!古鷹さん!」

 

 

「はい!提督!!」

 

 

そして、楽しい夜は過ぎていき私は次の日から哨戒任務に付こうと…思ったのだが

 

 

「わぁ!」

 

 

艤装で海を歩くと言うとのはかなり難しく何度か練習を重ねているが上手く歩けそうになかった

 

 

「大丈夫ですか?古鷹さん」

 

 

「だ、大丈夫……おっとと!」

 

 

「大丈夫と言いながら何回も転んでますよ?」

 

 

「うぅ……ごめん…」

 

 

『まぁ、下手に気にするな!

今日はとりあえず古鷹を海の上で歩かせるのが目標だな!』

 

 

全く海上を歩くと言うことが出来ず五月雨さんや不知火さんの手助けを受けながら結局一日が経過してしまいやっと夜になった頃に私は海上を歩けるようになっていた

 

 

「やった!出来た!!」

 

 

「流石古鷹さんですね!」

 

 

「ぬい、普通は二日間位なのに良く出来ますね

流石です」

 

 

二人に褒められ悪い気がせずに少し照れているとインカムから藤谷さんの声が聞こえる

 

 

『どうだ?古鷹は動けるようになったか?』

 

 

「はい、完璧です」

 

 

『何だと!それ本当!?』

 

 

「はい!やっぱり古鷹さんは凄いですね!!」

 

 

インカムからは喜んでいる藤谷さんの声が聞こえると同時に少し涙ぐむような声も聞こえる

 

 

『そうかそうか……また五月雨みたいに一週間とかはかからなかったのか…良かった良かった…』

 

 

「一週…間?」

 

 

「ちょちょ!提督!!」

 

 

『不知火の時は五日間ほどかかったよなぁ……いい思い出だ……』

 

 

「……司令、帰ったら覚えといてくださいね?」

 

 

『あ!やべ通信切り忘れてた!

サラバだ!!』

 

 

その声と同時にブツンと通信が切れると五月雨さんと不知火さんが私に詰め寄ってくる

 

 

「わ、私は元々こう言うの苦手だっただけだからね!!

違うからね!!」

 

 

「う、うん?そうなんだ?」

 

 

「司令の言葉を真に受けないでくださいね?

古鷹さん?私も一日でマスターしましたからね?」

 

 

「へ、へぇ…流石だね!」

 

 

と言うと二人は顔を見合わせると同時に

 

 

「提督!!!!!(司令!!!!!)」

 

 

と叫びながら鎮守府へ走っていくのを見ると流石に苦笑いが漏れるのだが

 

 

「あ、ちょ、ちょっと!待ってよ!二人とも!!」

 

 

まだ馴れたての艤装でゆっくりと走っていくと自分の左目が光っているのに気付き何気なしに触ると目の前がいきなり明るくなる

 

 

「わ!何これ?」

 

 

顔を動かすと左目の所がどうやら探照灯になってるらしくもう一度触ると電気が落ちる

 

 

「こんなのあったんだ……これなら!夜でも動けるね!ってそれよりも待ってよ!二人とも!!」

 

 

新しい発見をしつつゆっくりと鎮守府に帰投すると不知火さんにプロレス技を掛けられながら五月雨さんに殴られている藤谷さんを発見した

 

 

「いででででででで!!!!

許して!許して!!」

 

 

「馬鹿!馬鹿提督!!」

 

 

「絶対に許しませんからね!!」

 

 

「あはは……仲良いなぁ…」

 

 

 

 





次回

平和

藤谷が仕切る佐世保鎮守府は平和で皆が仲良く暮らしている
正しく平和そのものであった


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重巡(古鷹)の記憶 三

あれからしばらくたった私達の鎮守府は少しずつだけど大きくなりながらどんどん戦果を上げていった

藤谷さんも最初は少尉だったけど今では大尉まで昇進しておりそろそろ少将へと昇進するらしい話を聞きながら私は鼻歌混じりに洗濯物を乾かしていた

 

 

「古鷹ー、これはこっちかー?」

 

 

「うん!お願いねー!」

 

 

「古鷹さーん、これで最後みたいー」

 

 

「分かったー!」

 

 

あれから大分人も増えてきており仕事も多くなり

それに加え海域の攻略もあるため忙しくはなりつつあるが私はそれに生き甲斐を感じていた

 

 

「お、古鷹ー!洗濯物乾かしてるのか!

手伝うぞ!!」

 

 

「ちょっと!提督!女性物の下着を見ないでよね!!」

 

 

「ん?あ、ごめんごめん」

 

 

「司令官は女性の下着を観察するのが趣味の変態さんっと」

 

 

「待て待て待て待て!!青葉何書こうとしてるんですかねぇ!?」

 

 

「次回の青葉新聞をお楽しみに!!」

 

 

「ちょっとやめて!!また不知火にプロレス技かけられたくないんだけどぉ!?」

 

 

あれから私の妹艦の加古、仲の良い衣笠、青葉といつも一緒に行動をしており充実していたのだが一つだけ懸念があった

 

 

「と言うか提督洗濯物だけが目的だったのか?」

 

 

「ん?あぁ!そうだ!全員に召集かけてるんだった!!

全員ホールに集まってくれ!大事な話があるんだ!」

 

 

加古に言われると思い出すように話再び走っていってしまう提督に私達は不思議に思いながらホールに向かうとそこには全ての艦娘が集められていた

 

 

「お!古鷹もよばれたのか??」

 

 

「うん、木曾さんも?」

 

 

「あぁ、刀の錆を確認してたときにな」

 

 

すると提督が入ってきており突然机を叩く

 

 

「遠征に行ってる人以外は全員揃ったな?」

 

 

「提督~?何のお話~?

全員集めて、誰かと結婚でもするのぉ?」

 

 

「悪い、愛宕今回は真面目な話になる

ちょっと待っててくれ」

 

 

いつも以上に真面目な面持ちの提督に全員不思議がるとその話の全容を話していく

 

 

「ここ最近、深海棲艦の活動が活発化しているのは分かるな?

そこで夜の哨戒任務と昼の哨戒任務を少し増やすことにしようと思う」

 

 

提督の言葉に場はざわめいているが分かっている

そう私の懸念はここ最近の深海棲艦達だ

ついこの間、横須賀鎮守府を南方棲戦姫が襲い壊滅させたと言う時期からやけに増えている

しかもその南方棲戦姫はたった一人で壊滅させそして新たな姫級の類いとして記録された

 

 

「歴戦種……」

 

 

「そうだ、古鷹

姫や鬼級の中でも特出した化け物達の誕生を我々は確認した

大本宮の発表では奴等を歴戦種と別の種類に分別し警戒にあたってほしい

まだ一人しか確認されてはいないが奴の戦力は正に一騎当千

この前別の鎮守府がそれと遭遇し壊滅させられたらしい

しかも二つの艦隊が同時にだ」

 

 

その言葉で更に場はざわめく

確かにとんでもない化け物ではあると聞いている

それでも倒さないといけない敵ではある

……誰も失いたくはないから最悪私が特効しても…

 

 

「まぁでもこの鎮守府は大丈夫なんじゃないか?

古鷹も居るし!」

 

 

「…え?」

 

 

「そうですよ司令官!今は居ませんが五月雨さんも不知火さんも日向さんも居ます!」

 

 

「だな、私達が居れば大丈夫だ」

 

 

皆が私達を持ち上げているのには理由がある

確かに古参である私達三人はこの鎮守府でエースと呼ばれる程に強くなっていた

 

 

「……うん!皆は私達が守るよ!任せておいて!」

 

 

「古鷹……日向……すまない力を貸してくれ!

まぁそう言うわけだ!これから皆に負担をかけてしまうが頼む!

絶対にこの戦争に勝って平和な世界で遊ぼう!!」

 

 

「「「「「はい!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この当時私は絶対にこの人なら戦争を終わらせてくれると信じていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう、何も疑わず私達を他の鎮守府の様に捨てないと本気で

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





次回



もう少しだけ古鷹の楽しい記憶は続きます
彼女はこの鎮守府で見てきた夢はそんな簡単には覚めないのだから



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重巡(古鷹)の記憶 四

またそれからしばらく時が流れ私はすっかりこの鎮守府では頼れるお姉さんの様になっていた

 

 

「古鷹ー!五月雨はどこにいるか分かるか?」

 

 

「先程資材庫に行ってましたよ?」

 

 

「ありがと!」

 

 

「おーい、古鷹さーんごめんちょっと手伝ってくれない~?」

 

 

「はーい!ちょっと待っててー!」

 

 

皆に頼まれ事を断れなくなっており若干流されるようにもなって少し疲れたりもするけど

 

 

「古鷹さんー!スイーツでもいかがですかー?」

 

 

「うん!これ終わったら行きたいなー!」

 

 

「なら手伝いますよー!」

 

 

他の娘達からも助けてもらったりしておりこの鎮守府を気に入っていた

それにこの頃から良く秘書艦をお願いされることが多かったのだけれども

 

 

「ふ、古鷹!」

 

 

「はい?どうかされましたか?提督?」

 

 

「あー……その何だ

今度買い物に行かないか?」

 

 

「何か備品が足りなくなりましたか?」

 

 

「あ!う、うん!

ちょっとな!付き合ってくれないか?」

 

 

「分かりました!でしたら青葉とかも誘って行きませんか!?」

 

 

「え!あ……あぁそうしようか…」

 

 

「はい!では三人に言ってきますね!」

 

 

 

 

提督が良く私を外出に連れていってくれたり何か余所余所しかったりもしているけれど楽しい日常を過ごしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でもやっぱり戦争は続いていると思い知らされる

 

 

「陸上型深海棲艦?」

 

 

「あぁ、この間静岡の方に上陸した化け物の様な姿をした怪物だ」

 

 

提督に差し出されたその用紙を不知火さん、五月雨さん私でそれを確認するとその姿はまるでト級に酷似しているが四足歩行で背中に数え切れないほどの高角砲に足にも主砲が付いており肩にとんでもなくデカイ主砲が二門に口の中にも巨大な主砲が喉から伸びていた

 

 

「何ですか……これは」

 

 

「こんなの見たことありません……」

 

 

「海上ではほとんど役に立たないらしくてな

水上移動を犠牲にしているため何人かで護送しないといけないがこいつが陸上に立った瞬間

街は簡単に壊滅したらしい

異常に硬い装甲、圧倒的な火力、図体の大きさに見合わない程の俊敏性

正に化け物だ」

 

 

聞いてるだけで相手にしたくないしこれがどれほど脅威なのか分かる

でも可笑しい点が一つだけある

 

 

「でも、提督この深海棲艦は倒されているですよね?

一体誰が?」

 

 

「それが分からないんだ」

 

 

「分からない?どういうことですか司令」

 

 

「それがな?これを撃破するときに空軍、陸軍、海軍が協力したんだけど直接トドメをさしたのが誰かは分からないんだ」

 

 

「艦娘ではないんですか?だって深海棲艦は艦娘しか倒せないはずだから……」

 

 

「んー……そうなんだけどそれを大本営に聞いても答えてくれないんだよ」

 

 

大本営が隠しているその化け物を倒した人……

一体誰なんだろう?と思いながらも提督の話を聞いていく

 

 

「一応この話しは三人だけの秘密にしておいてくれ

下手に皆に話すと混乱するからな」

 

 

「「「了解!!」」」

 

 

話が終わり部屋から出ようとすると私だけ提督に止められた

 

 

 

「あ、そうだ古鷹だけは残ってくれ」

 

 

「え?あ、はい!」

 

 

何故か私だけ残されてしまい二人が出ていくと提督と二人きりになるのだが提督が落ち着かない様子だ

 

 

「どうかされましたか?提督?」

 

 

「え!あ……あぁ……実はな?

今度映画を見に行こうと思って…さ?

来週休み被るだろ?だからどうかなってさ?」

 

 

「うーん……構いませんよ!

特に予定もありませんから?」

 

 

 

「本当か!よっしゃぁ!!!」

 

 

提督がガッツポーズを取りながら喜んでいるのだが正直何故かは分からなかった

この時は

 

 

(……皆で…だよね?)

 

 

 

 

 

 

 

 




次回

デート

少しずつ変わりつつある彼女の生活に戸惑いつつも楽しんでいく
戦争をしていることを忘れながらも


因みに余談ですが陸上型深海棲艦を倒した人は既に作中に出てます
分かる人は分かるはず…
そしてやっとE2突破…疲れた…
己れフラグル級×3




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重巡(古鷹)の記憶 五

提督に誘われた映画の日当日私は一人公園で待っていた

周りにはカップルらしき男女が話し合ったりしており流石の私も恥ずかしくなる

 

 

(……いつか私もあんな風に…なりたいな…)

 

 

「古鷹ー!」

 

 

そう思いながら提督を待っていると遠くから声が聞こえ振り返る

どうやら走ってきていたらしく肩で息をしながら苦しそうにしている

 

 

「す、すまん……待ったか?」

 

 

「いえ!時間ピッタリですよ?」

 

 

「チクショウ……あいつらめ…」

 

 

提督が呟いていると私は辺りを見ながら青葉や他の娘達を見ているが全く見当たらない

 

 

「そう言えば提督?青葉達は居ないんですか?」

 

 

「え?」

 

 

「え?」

 

 

私が不思議に思っていると提督が「あー……」と頭を掻きながらそっぽを向く

 

 

「えっとその……今日は二人だけ…何だ?」

 

 

「……え?それって……」

 

 

流石の私も気付くと顔が熱くなるのが分かるそんな私を見ていると提督は私の手を引っ張ると無理矢理にでもここから離れようとする

 

 

「ほ、ほら!行くぞ古鷹!!」

 

 

「は、はい!!」

 

 

それから私達は二人きりのデートを楽しんだ映画を観に行って外で外食をして手は……ちょっと恥ずかしくて繋げなかったけど凄く楽しかった

そんな時間はあっという間に過ぎていき帰る時間になってしまった

 

 

「提督、本日はありがとうございました!」

 

 

「いやいや、こちらこそだよ

何かごめんな?こんな冴えない男と二人なんて嫌だったろ?」

 

 

「そ、そんなことないですよ!!

提督は素晴らしい御方ですよ!!」

 

 

ふと周りを見ると太陽が水平線に沈み辺りは夕暮れに包まれており見とれてしまう

 

 

「あ、あのだな!古鷹俺はーーー」

 

 

「綺麗ですね…」

 

 

「え!?」

 

 

提督が何か言いかけてる所に私は水平線に沈む太陽を見ながら呟いてしまう

その言葉を聞いた提督も私と同じ水平線に沈む太陽を見る

 

 

「……そうだな」

 

 

「提督、私は艦娘です

兵器です」

 

 

「分かってるさそんなこと」

 

 

「それに今戦争をしています

私達はそれが終わればお払い箱です」

 

 

「…………」

 

 

私は手すりに掴まりながら沈む夕暮れを背に提督に微笑む

 

 

「私達は貴方達とは違うんですよ

それでもこうやって接してくれるのは嬉しいです」

 

 

その言葉言うと提督は俯いてしまう

流石の私でも提督の思いには気付いてしまう

でも駄目、私がそれを受け入れてしまうと鎮守府の輪が乱れてしまう

今後に影響が出てしまう

 

 

「さぁ、帰りましょうか提督」

 

 

私がゆっくりと歩きだそうとすると提督は私の手を掴むと無理矢理に振り向かせる

 

 

「君が兵器だろうが関係ない!!

俺は君が古鷹と言う女性が好きなんだ!!」

 

 

「……駄目ですよ提督

私は貴方とは違う」

 

 

「違わないさ!じゃあ何で君達は泣くんだ!悩むんだ!!笑うんだ!!

それは人間だからじゃないか!!」

 

 

肯定したい

認めたい

でも駄目だ、ここでこの人の思いを受けてしまうと私は戦えなくなる

 

 

「違います!私達は兵器何です!

人間とは違い資材によって作られた兵器!!

だからごめんなさい!!」

 

 

「古鷹!!

俺は諦めないからな!!!」

 

 

私は咄嗟に逃げてしまった提督からあの人の思いから私自身が分からなくなりながらも混乱しながらも

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でもある意味これが良かったのかもしれないと私は後々思ってしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だって、ここでそれを受け入れていたら私は二度と治らなくなったのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この人達に壊された心が

 

 

 

 




次回




古鷹は思う藤谷は必死になりながらも告白してくれたことを嬉しくそして悲しくも思う


そして、運命を分ける夜が来る



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重巡(古鷹)の記憶 六

「………はぁ…」

 

 

私は鎮守府に先に帰ってきておりそのまま提督と会わない状態でお風呂や夜ご飯を済ませ溜め息混じりに夜間の任務に就いていた

 

 

私の夜の任務は左目の探照灯を使った鎮守府内の警戒任務

この任務は私か川内さんしかやっておらずいつも夜になると静かに鎮守府内を見回っている

 

 

あの後帰ってきた後青葉や加古にどうだったか迫られ真実を話すと怒られたり不思議がられたりしたけれど私の思いを話すと納得してくれた

明日提督にそっとフォローを入れておいてくれるらしいけれど

 

 

「………はぁ…」

 

 

私の気分は凄く落ち込んでいた

確かに提督の事は嫌いじゃないむしろ好意的ではある

優しいしいつも助けてくれたりしてくれていたから初めて会ったときも覚えてる

それでも今は戦争中

そんなことに浮かれるわけにはいかないと私の心は揺れていた

 

 

「……私は皆のお姉ちゃんなんだから頑張らないといけないのになぁ…」

 

 

そんなことを呟きながら窓を眺めたりしていると近海から探照灯がこちらに向けられており何だか分からないが一応振り向くと夜間の海上任務に就いている浜風さんの物であることが分かった

月は雲に隠れ真っ暗になっている

 

 

どうかしたの?

 

 

そう左目を押さえたりして探照灯を光らせると向こうからも返ってくる

 

 

皆さんはどうですか?

 

 

全く異常なく寝てるよ?そっちは?

 

 

こっちも特にありませんよ

大丈夫だと思います

 

 

私は大丈夫だと思いますと言う曖昧な信号に疑問を抱きつつも再び信号を送る

 

 

そう!夜は辺りが見えないから気を付けてね

 

 

分かりました、古鷹さんも気を付けてくださいね

 

 

 

そう合図をすると私はぐるんと廊下へと向き直り再び歩いていくだが次の瞬間窓から勢い良くパッパッ!と光が瞬き疑問に思い再び海上を見ると探照灯が無くなっている

 

 

(あれ?浜風さんどこいったんだろ?

しかも、さっきのはSOS……まさか!!!)

 

 

私は探照灯を消すとしばらく海を睨み付けていると雲が晴れ海上が見えてくるそこには

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘!深海棲艦!!!」

 

 

ここからでは良く見えないが海上を埋め尽くすほどの多くの深海棲艦がこちらを向いており背筋が凍りつく

 

 

私は焦りながら全速力で走り出すとそれと同時に大量の探照灯が鎮守府へ向けられると状況が良くわかった

 

 

浜風さん率いる今晩担当していた夜間任務の娘達が全滅しており捕まっている

そしてその真ん中に普通とは違いかなり大きい主砲を身に付けた戦艦ル級が居る

 

 

「何あれ!!何でこんな夜に!!」

 

 

浜風さん達のこともあるけれどそんなことよりあれはどう考えても不味いと思い放送室に走る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、海上では深海棲艦の親玉である戦艦ル級が全員に指示を出している

 

 

「今回ノターゲット!戦艦日向、重巡古鷹、駆逐艦不知火、駆逐艦五月雨

必ズ仕留メロ!!

全艦隊砲撃用意!!!」

 

 

それと同時に深海棲艦達は全員佐世保鎮守府に向けて主砲を構える

 

 

私が警報装置に手をかけ思い切り押した瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「撃テェェェェェェェ!!!!」

 

 

鎮守府内に警報が鳴り響くと同時に深海棲艦の砲撃が命中し爆音と爆炎が上がりその衝撃で鎮守府が揺れる

 

 

 

 

 

 

 




次回

強襲

突然夜に現れた深海棲艦達
平和だった日常が終わりを告げる



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重巡(古鷹)の記憶 七

鎮守府内に警報と共に爆音が鳴り響くと全員が飛び起きるが私は続けて放送室で全員に連絡する

 

 

「深海棲艦の強襲!!繰り返します!深海棲艦が攻めてきました!

全員速やかに避難してください!

提督を見付けしだい最優先に陸路を使い逃げてください!

出撃出来る艦娘は艤装を身に付け提督の援護に回ってください!!」

 

 

放送を終えると至るところから爆音が鳴り響き急いで外に出ると最悪だった

鎮守府の廊下は破壊され至るところで砲撃の影響で燃えており艦娘達が慌てふためきながら逃げている

 

 

「落ちついて!まだ上陸を許した訳じゃない!

下手に慌てると他の娘も怪我しちゃうから気を付けてください!!」

 

 

何とか皆を案内していると不知火さんと五月雨さんが走ってくる

 

 

「古鷹さん!!」

 

 

「そっちはどう!?」

 

 

「今日向さんと木曾さん達が応戦していますが流石に数が多すぎます!!」

 

 

「避難状況は!」

 

 

「ほとんどが完了していますが……

入渠施設にまだ取り残されているみたいで……」

 

 

「分かった!二人は皆を!私は入渠施設に行ってくる!!」

 

 

 

「待ってください!古鷹さん!!」

 

 

 

私が走り出そうとすると五月雨さんに肩を掴まれて止められる

 

 

「もう深海棲艦達は上陸を開始しています!

奴等の狙いは私達四人です!今古鷹さんが行ってもーーー」

 

 

「それでも!仲間を見捨てられない!!

任せておいて!私だって重巡何だから!!」

 

 

「無理ですよ五月雨、古鷹さんはこう言う方です

だからこれを渡します」

 

 

不知火さんに何か渡されそれを見るとインカムだった

 

 

「外で戦ってる日向さんと提督達とも直接繋がってるインカムです

必ず皆を連れてきてくださいお願いします」

 

 

「ありがと!不知火さん!!」

 

 

私は不知火さんからインカムを受けとると全速力で走り出す

(お願い間に合って!!)

ふと外を見ると確かに何体かが浜からこちらに向かい進撃してきていた

海上では木曾さん達が応戦しているが数が多すぎる

 

 

「どうしてここまで入れられたの………

計画的過ぎる、もしかして姫級が居るの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「状況ハ?」

 

 

「カナリ優勢

何人カハ鎮守府ニ侵入シタ」

 

 

海上の奥で戦艦ル級がヲ級に話しかけると二人はそこで現在の戦況を見ながら微笑んでいた

 

 

「マァ時間稼ギダシ良インジャナイカ?

アイツラニハ言ッテナイケドナ

ソレニシテモ良ク燃エルナ鎮守府ハ」

 

 

ル級は炎上する鎮守府を見ながらニヤリと笑い動こうとするとヲ級に止められる

 

 

「ヤメロオ前ガ死ンダラ私ガ怒ラレルンダ」

 

 

「……ソウネクイーン様ニ怒ラレルノハ勘弁ダワ

回収班ハ?」

 

 

「マダ見付ケテナイラシイ

沈ンダ場所ハ確認シタラシイケドナ」

 

 

「早クヤレト催促シテオケ

私達ハ囮何ダカラ」

 

 

ル級は時間を確認しながらヲ級と共に後ろで待機しながらある方角の海を見る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アノ人ガ作リ出シタ対陸上兵器

 

フェンリル(災いの狼)ヲ回収スルタメノナ」




次回 

守り抜く!!

強襲した深海棲艦達の目的は鎮守府を破壊することがサブ目標としているが容赦はしていない
そして、古鷹は命懸けで仲間を救おうとする




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重巡(古鷹)の記憶 八

しばらく廊下を走ると今度は鎮守府内での爆発音が聞こえさっき五月雨さん達に言われたことを思いだす

 

 

「鎮守府内から破壊してる!?

となるとやっぱり狙いは提督!!」

 

 

急いで提督にインカムで連絡を入れると何回かコールの後提督が通話に出てくれる

 

 

「もしもし!提督!ご無事ですか!?」

 

 

『あぁ!こっちは大丈夫だ!

さっき高尾と共に鎮守府を脱出した!

古鷹!お前も早く!』

 

 

「よかった!すみません私はまだ中に取り残されている仲間を助けに行ってきます!

提督必ず逃げてくださいね!!」

 

 

『待て!古鷹、今はーーーー』

 

 

 

そう言うと向こう側から聞こえる提督の声を無視し無理矢理インカムを切ると次はまた別の所から爆発音が聞こえてくる

(不味い!これ以上ここに居たら!)

 

 

慌てながらも急いで入渠施設に向かいその廊下にたどり着くと廊下に三体の深海棲艦が入渠施設に主砲を向けていた

(不味い!何とか注意を反らさないと!!)

私は思い切り息を吸うと大声で深海棲艦に声をかける

 

 

「貴方達の相手は私よ!!」

 

 

その声に気づくかの様にこちらを向くと三体が同時にこちらへ主砲を構えてくる

(重巡リ級二体に雷巡チ級が一体か!なんとかなる!!)

 

 

右の主砲で重巡リ級を砲撃すると見事に命中し頭部を破壊するとそれに驚きながらもあと二体がこちらに主砲を撃ってくるがなんとかそれを交わし真上の天井を左の主砲で砲撃すると天井が崩れ二体ともそれに押し潰されるように真上からの瓦礫に潰れる

 

 

「良し!何とかなった!後は……」

 

 

崩れいく鎮守府の廊下を走っていくと入渠施設の看板を見ると使用中が張られており急いで施設を開ける

 

 

「皆!大丈夫!?」

 

 

「ぁ……古鷹さぁぁぁぁん!!!」

 

 

「古鷹ぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

施設を開けた瞬間中に入っていた青葉と加古が飛び付いて来るけど何とか受け止め二人の頭を撫でる

 

 

「古鷹さん!ありがとう!もう駄目かと思ってたわ……」

 

 

「衣笠、無事で良かった!

さ!早く着替えてここから脱出するよ!!」

 

 

入渠施設には衣笠、加古、青葉の三人だけではあったはインカムから声が聞こえてくる

 

 

『古鷹、聞こえるか?』

 

 

「うん!どうしたの日向さん」

 

 

『奴等の大部分は何とか抑止したのだがどうやら向こうに司令塔が居るらしい

鎮守府内は大丈夫か?』

 

 

「今、入渠施設に取り残されていた加古達を助けたよ!他にも居るか探してみる!」

 

 

 

『嫌、恐らくその三人で最後だ

先程提督から連絡があってな、その三人だけ行方不明だったんだ

良かった、流石は古鷹だな

今付近の鎮守府から援軍がこちらに向かっている

それまで耐えてくれ!』

 

 

「分かったよ!そっちも気を付けて」

 

 

インカムを切ると急いで入渠施設を出ると廊下の端から何かがこちらに向かい歩いてくる

 

 

「……アラァ?マダイタノネェ?」

 

 

その姿は戦艦タ級、しかもほぼ無傷の状態でこちらに主砲を構えている

 

 

 

「っ!皆走って!!」

 

 

「で、でも!古鷹さんが!」

 

 

「私達も!」

 

 

「良いから行って!私は大丈夫だから!!」

 

 

私が言うと衣笠が二人の手を取り引っ張っていく

 

 

「不知火達を連れてくる!待ってて!古鷹さん!!」

 

 

「お願い!!」

 

 

後ろから衣笠が二人を連れていき私を呼ぶ声が聞こえるがそれよりも私は目の前の戦艦タ級に集中する

 

 

「ヘェ?ナカマヲニガシタンダ」

 

 

 

「皆には手を出させないよ!

皆を絶対に守るんだから!!」

 

 

 

 

 

 





次回

対話

たった一人で深海棲艦に立ち向かい仲間を守るために戦う彼女に戦艦タ級は語りかける


イベントやっとE3二本目行きましたが中々に……



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重巡(古鷹)の記憶 九

三人が廊下の奥に消えるのを確認すると私は目の前のタ級に集中する

お互い全く動かずに鎮守府はゆっくりと焼け落ちていく

 

 

「……ヘェ?モシカシテ貴方ガ古鷹カシラ?」

 

 

 

「……」

 

 

タ級が話しかけてくるが下手に話すと危険と判断した私は主砲を構えたまま動かずに警戒していた

 

 

「ンー?通ジテナイ?

ジャア、What's your neme?」

 

 

「………」

 

 

「アレェ?可笑シイナ……

英語モ通ジナイ?

ココ日本ダヨネ?」

 

 

(…何なのこの深海棲艦

やけに話すし友好的?でも鎮守府を攻撃してるし……)

私が少しだけ警戒を解いた瞬間砲弾が真横を通り抜け私の真後ろの天井を破壊し退路を断つ

 

 

「っ!退路が!!」

 

 

「ア、ヤッパリ日本語ジャナイ!

無視ハ良クアリマセンヨ?折角今日ノ為二勉強シタンダカラ!」

 

 

その瞬間タ級に向き直ると再び警戒するがタ級は笑っていた

 

 

「アーゴメンゴメン!

話ガシタイノ今ノハ話シテルトキニ逃ゲラレタラ悲シイカラヤッタノヨ

ダカラソノ物騒ナノヲ下ロシテ?」

 

 

(このタ級……普通じゃない…

話すことと言い今の砲撃とも言い…もしかして今回の事件の司令塔それなら隙を伺って…)

 

 

私はゆっくりと主砲を下ろすとタ級は微笑みながら自らの艤装を解除するのだが

 

 

「熱!ヤッパリ付ケテヨ……」

 

 

鎮守府内は焼け落ちているためかかなり高い温度になっておりそれを嫌がり再び艤装を付ける

 

 

「ナニカ聞キタイ顔ネ

ソレト隙デモ伺ッテルノカシラ?」

 

 

(読まれてる!!)

 

 

「マァ良イワ質問ドーゾ?」

 

 

「……貴方が今回の主犯?」

 

 

「イイエ違ウワ私ハ艦娘ト話ガシタクテ参加シタノ」

 

 

「私達と話?」

 

 

そう言うと同時にタ級は勢いよくこちらに走り警戒し右腕を構えるのだが右腕の主砲を蹴り飛ばされると両肩を掴まれる

 

 

「ソウヨ!貴方達ノ作ッテルヲ菓子!

アレドウヤッテ作ルノ?

後!友情トカ仲間トカ何?

連携ハドウ取ッテルノ?

ドウヤッテ貴方達ハ出会イソコマデ戦エルノ!?

私ハ貴方達ヲ知リタイ!身体ノ隅々マデ!!!」

 

 

そう純粋にグイグイ聞いてくるタ級にびっくりしながらもその姿がどうしても駆逐艦が何かを聞いてくる姿に似ており警戒を解いてしまうのだが

 

 

「ン?何ヨ『アナザー』

……ハァ!?マダ私ハ何モ出来テナインダケド!

……チェ、折角勉強シタノニ」

 

 

そう言うとタ級はガックリと肩を落とし私の肩から手を離す

 

 

「残念ナガラ時間切レ見タイヨ

貴方ノ提督ガ仲間ヲ呼ンダラシイワ」

 

 

タ級は艤装を構えると少し私から離れると指を指す

 

 

「一ツダケ質問二答エテクレナイ?」

 

 

「……なんですか?」

 

 

「貴方達ハ何故戦ウノ?」

 

 

「それは、貴方達が敵対し海を奪ってるから……」

 

 

「ジャアモシ、モシモヨーーー」

 

 

 

 

そして、私はそのタ級からとんでもない話を聞いていた

それはこの先の未来で私が経験する事だったのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私達ガ貴女達ト和平ヲ結ビタイト言ッタラドウスル?」

 

 

 

「………え?」

 

 

その言葉は私の未来で出会う空母棲姫(エア)と同じ言葉だった

 

 

 

 

 





次回

穏健派

突然タ級に言われた言葉に困惑する古鷹
そして、タ級からある真実が伝えられる



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重巡(古鷹)の記憶 十

突然の言葉に困惑しながらも主砲を構えている腕を下ろし呆然とする

ただ、このタ級が言ってる言葉が理解できなかった

 

 

「何を言って!」

 

 

「別二私達モ一枚岩ジャナイッテコトヨ

私達ニモ色々トアルノ

貴女達ヲ全滅サセタイ奴等

貴女達ト共二生キテイキタイ奴等

貴女達ト関ワリタクナイ奴等

ソレゾレネ

デ、私ハ戦イタク無イノヨ

ホットイテホシイ」

 

 

「だったら!どうして艦娘を殺すの!?

人間を襲うの!?何でー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何言ッテルノ?貴女達ガ始メニ攻撃シテキタンジャナイ?」

 

 

「…………え?」

 

 

私達が先に攻撃してきた?このタ級は何を言ってるの?

嫌、もしかしたらこのタ級は真実を知っているの?私より長く生きこの戦争の始まりを見たとでも言うの?

 

 

困惑する私を尻目にタ級はため息をつく

 

 

「フゥン?ヤッパリ知ラナインダ?

人間達ガ隠シテルノカナ?」

 

 

「どういうこと!?」

 

 

「オット、コレ以上ノ質問ハ駄目ヨ

私ガ質問シタノハ一度ダケ貴女モ一度ヨ

本当ハモット貴女達ヲ知リタインダケドネ」

 

 

その瞬間鎮守府が更に強く炎上し退路の向こう側の天井が崩れる音が聞こえる

 

 

「コンナ状態ジャアネェ……今日ハ退散スルワ」

 

 

「ま、待って!!」

 

 

私が声をかけるとタ級は脚を止め振り返る

 

 

「貴女の目的は何?これぐらいは聞かせてよ」

 

 

「私?私ノ目的ハ貴女達ヲ知リタイダケ

ア、答エチャッタコレハ貸シニシトクワヨ

ソレト私ニハ名前ガアルノヨソレデ呼ンデ頂戴?」

 

 

「……分かりました名前は?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私ノ名前ハ『ツバキ』アル姫様ノオ付キ人ニシテ艦隊ノ最高責任者

ツマリ貴女達デ言ウflag改カシラネ?

ジャアネ古鷹」

 

 

その言葉と共にタ級ツバキは私の隣に主砲を向け放つと柱が同時に倒れてきて真上でそれがぶつかり私の傘になる

 

 

「マ、生キテイタラダケドネ?」

 

 

「ま、待って!話はまだーーーー」

 

 

ツバキはそれだけを言い私もその姿を追いかけようとするが次の瞬間目の前に焼け落ちた瓦礫が降ってきておりツバキを追えなくなると同時に鎮守府が崩壊していく

 

 

(ツバキ……一体何者なの!?

それよりもこの状況は不味い!!)

 

 

私は目の前のタ級ツバキと話をし過ぎたせいで崩壊する鎮守府を気にかけておらずどんどん回りが崩壊していく

 

 

『古鷹!応答しろ!』

 

 

「提督!はい、古鷹です!」

 

 

『大丈夫か!脱出したか!?』

 

 

「……すみません、逃げ遅れました…

今一応安全な所に居ます

そちらはどうですか?」

 

 

『なんだって!?

こっちは味方の援軍のお陰で深海棲艦は撤退した!

そっちに日向をーーー』

 

 

それと同時にインカムの電池が無くなってしまい提督の声が途中で途絶える

 

 

「……ごめんなさい、提督

ここまでですかね…」

 

 

崩れいく鎮守府を見ながら今までの事を思い出していた

(色々あったなぁ……皆無事かな…

それなら本望かな?)

 

 

そして、私は静かに瓦礫に埋もれていくのだが途端にあることを思い出す

 

 

「そうだ!艤装を使って!!」

 

 

私は艤装を解除すると全身が焼けるように熱いが我慢して何とか自らの体を守ろうと主砲や部品を使ってシェルターを作る

 

 

「お願い!!間に合って!!」

 

 

そして、少しすると目の前の瓦礫が倒れてくるが何とかその前にシェルターが完成し瓦礫から自らを守ると伏せてやり過ごす

(提督……後はお願いします…

私を見つけて……!)

眠るように目を閉じるとインカムの電源を付けたまま小さくまるまる

それと同時に周りの瓦礫等が崩壊し私を隠していく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツ大丈夫カ?」

 

 

鎮守府から離れた場所にて戦艦ル級が遠目に鎮守府を見ながら呟く

他の艦隊は既に撤退しル級だけある深海棲艦を待っていると鎮守府から一人の深海棲艦がこちらに向かってくる

 

 

 

「オ待タセー」

 

 

「遅イゾツバキ、何シテタ?」

 

 

「艦娘ト話シテタ!」

 

 

「オイオイ大丈夫ナノカソレ?」

 

 

「ドウセアノ崩壊カラハ助カラナイワヨ」

 

 

ツバキは崩壊する鎮守府を尻目にル級と共に航行していきながら去っていく

 

 

「ソッチハドウナノ?『アナザー』」

 

 

「フェンリルノ回収ハ終ワッタ問題ナイワ」

 

 

アナザーと呼ばれたル級は自慢げに話すがツバキは「アッソ」とだけ言うとその前を航行していく

 

 

「ト言ウカオ前ノ目的ハ何ダッタンダ?

イイ加減教エテクレナイカ?」

 

 

「ンー?特二無イワヨ?デモ一ツアルト言ウノナラーーー」

 

 

ツバキは頬を吊り上げながら笑い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「簡単ニ殺シテ終ワリナンテハツマラナイジャナイ?

ダカラ奴等ノ事ヲ知ッタ上デ

痛メ付ケ、苦シメ、心ヲ破壊スルノヨ

知リタイワドウヤッテ絶望シテ苦シムカヲネ」

 

 

その言葉にアナザーは背筋を凍らせるそう話すツバキは身体をくねらせながら楽しそうに話していたのだから

 

 

「アァ!知リタイ!アイツラノ大切ナ物!

技術!艤装!思考!内蔵ノ作リ!記憶!ドウヤッテ作ラレタノカ!

知ッテソノ上デ殺スカ決メタイ!拷問シタイ!苦痛ニ歪ム顔ヲ見タイ!!

アァ!艦娘ッテ面白イ!!」

 

 

(相変ワラズ狂ッテル……化ケ物メ……)

 

 

「マァダカラ『今ハ手ヲ出サナイ』

アレガ私達ニ近イラシイシネェ?戦イモ敵ガ分カラナイ事ニモネェ

デモ平和協定ヲ結ベバアイツラヲ調ベ放題ナノガ楽シミ!!

アァ!話シタイワ!知リタイワ!艦娘!人間!

モット声ヲ聞キタイ!殺意ヲ感ジタイ!アァ!興味ガ好奇心ガ止メラレナイ!!」

 

 

「狂ッテルワヨ…貴女…」

 

 

「狂ッテル?何言ッテルノ?

私ハ知リタイダケヨ

我々ノ敵デアロウ人間ト艦娘ヲネ」

 

 

(コイツノ好奇心ハ狂気ニ近イ……前モ仲間ヲ解体シタッテ聞イタシ『アノオ方並ミダワ』

幸イナノガコイツニ悪気ガ無ク敵意モ無イトコロダケドネ……)

 

 

そう彼女は決して悪気も無く艦娘を殺したい訳ではないただ自らの知らない事を調べたいその好奇心だけであり全く敵意はない

 

 

「アァ……イツカモットユックリ話シタイワ……

貴女達ヲ知リタイワ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

作ラレタ命達……私達ヲ唯一殺セル者達ヨ」

 

 

そんなことを呟きながらアナザーとツバキは海域を後にする

フェンリルの回収と言うメイン任務を終え鎮守府を破壊すると言うサブ任務も完了して

 

 

 

 

 




次回

深海棲艦強襲後

破壊された鎮守府、そして古鷹の安否はいかに!
因みにこのタ級、ツバキは近いうちに再登場しますよ!


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重巡(古鷹)の記憶 十一

そして、彼女の運命は狂い始める






私が次に目を覚ましたのは病院のベッドの上だった

全身が焼ける様に痛いでも生きてるそれだけが嬉しかった

ベッドを見ると側で提督が寝ている

 

 

「…ありがとうございます、提督見付けてくださったんですね…」

 

 

正直死ぬ覚悟をしていたあんな崩れいく鎮守府の中本当に良く生きていたと自分でもそう思う

でもそれよりも私は気掛かりな事が残っていた

 

 

「……戦艦タ級flag改…ツバキ…」

 

 

今まで深海棲艦が言葉を発すると言う事は確かにあった

でもそれは指示や掛け声等の言葉位

あそこまで私達に興味を抱き短艦で接触してきたのは初めてだった

そして、自らの名前がある深海棲艦

(これは提督に相談すべき?

……嫌、辞めておこう下手に情報を与えて混乱させても…)

 

 

「んん………古……鷹?」

 

 

私が考えているとふと寝ていた提督が起き上がり私と顔を合わせる

 

 

「はい、提督おはようございます」

 

 

「…………………古鷹ぁ!!!」

 

 

ガバッと私に抱き付くと強く強く抱き締めてくる提督

全身に少し痛みが走るけどそれよりも震えているこの人がとても愛しく思う

 

 

「バカ野郎!!何してんだ!

お前!…お前なぁ!!」

 

 

「ごめんなさい提督

どうしても仲間を助けたかったんです」

 

 

「……二度とするなよ!良いな!!」

 

 

「…善処はします」

 

 

「提督ー……古鷹さんは…」

 

 

それと同時に病室に青葉が入ってくると抱き締められている私を見ると同時に持っている何かを落とす

 

 

「ふ、ふ、古鷹…さん?」

 

 

「うん!ごめんね青葉心配かけちゃったかな?」

 

 

「……うわぁぁぁぁぁん!!古鷹さぁぁぁん!」

 

 

それと同時に私に抱き付いてくるとやっぱり全身に痛みが走るけど泣いている青葉の頭を優しく撫でる

 

 

「ごめんなさい!ごめんなさい!古鷹さん!!

私達のせいで!!」

 

 

「違うよ青葉、あんな強襲誰にも予想つかないし私も連絡が遅れたからだよ?

だから大丈夫」

 

 

「…うわぁぁぁぁぁん!!」

 

 

青葉が泣いているとその間に提督が皆を呼びに行ってしまい途端に病室はうるさくなってしまう

私を心配していた加古や衣笠、行かせなければ良かったと悔しむ不知火さん

途中看護師さんにも注意されていたけど青葉が泣き止まずにごめんなさいと必死に提督や私達が謝っていた

 

 

「でも良かった……皆無事だったのですか?」

 

 

「あぁ、古鷹の連絡が一歩遅ければ全員あの鎮守府と共に死んでいただろうな……」

 

 

「鎮守府は……」

 

 

そう訪ねると提督は首を横に振るう

(そうだよね……あんな炎と砲撃を受けて無事な訳がないか……)

私は自分がどうやって見つかったのかと疑問に思い聞くとどうやらインカムの無線電波を辿って何とか見付けられたらしい

あれが役に立ったなら良かった

 

 

「無茶をし過ぎるなよ古鷹」

 

 

「ごめんなさい、日向さん…」

 

 

「だが、お前のお陰で被害は最小限に抑えられた

流石だな」

 

 

「そんなことありませんよ!日向さん達が深海棲艦を抑えていてくれたお陰ですよ!」

 

 

そんな話をしているがやっぱり皆が無事で良かったと私は心底に思った

 

 

 

 

 

 




次回

疑惑

全員が無事でありこれで全てが終わった
はずだった




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重巡(古鷹)の記憶 十二

「そう言えば!浜風さんは!?」

 

 

私が気になり聞いてみると木曾さんが頭を横に振るう

 

 

「今、集中治療室だ

他にも川内、初春、若葉、秋雲、が同じく

だが一人だけ何とか大丈夫だった清霜から聞いたんだけど今回姫が居なかったらしいんだ」

 

 

「何だと?じゃあ、誰があんな大艦隊を指揮してたんだ?」

 

 

提督が疑問に思いながら聞いているけど私には心当たりがあった

『ン?何ヨ『アナザー』

(彼女はツバキが呼んでいたアナザーと呼ばれる存在

恐らくそれが今回の首謀者…でも姫じゃない?

可笑しい…一体誰なの?)

 

 

「その事なんだが提督、少し今回の事で報告がある」

 

 

不意に日向さんが話だしその言葉に全員の視線が集中する

 

 

「何だ?報告って?」

 

 

「実は今回の襲撃はある戦艦ル級が絡んでるかもしれない」

 

 

「……例の個体に限りなく近いやつか?」

 

 

「あぁ、一体だけやけに強い奴が居てな

それに加えその一体を守ろうと何体かがカバーしていたのを見てなもしかしてと思ってな」

 

 

「何だよ提督例の個体って?」

 

 

木曾さんが質問すると提督は少し険しい顔をするがため息混じりに話し出す

 

 

「……歴戦種、それも姫ではない奴等だ

前に大本営がその疑いがある個体を見つけていてな

もしかして…」

 

 

「間違いないだろうな、奴が手引きしたんだろう

こちらの砲撃を受けてもほとんど傷を負った様子は無かったからな」

 

 

「提督!その事で私からも!」

 

 

私はやっぱり隠しておくのは不味いと思い焼け落ちていく鎮守府であったことを包み隠さずに話していくと皆の顔がひきつる

 

 

「……戦艦タ級flag改…ツバキだと?」

 

 

「……しかも自らの名前を名乗りこちらを調べてきている深海棲艦…」

 

 

「…もしかして、ル級が?」

 

 

「はい、彼女が通話していたアナザーだと思われます!」

 

 

その言葉と同時に提督が椅子に座りため息をつきながら頭を抱える

 

 

「……歴戦種戦艦ル級アナザーに

戦艦タ級flag改ツバキ…しかも会話が出来こちらと友好を結ぼうとして来ている深海棲艦…

何て事だ…何でそんな奴等が…

だが、それで今回の襲撃は納得が行く

アナザーはツバキの対話の為にうちを襲ったのか…対話をするためだけに!!クソ!!」

 

 

提督が悔しそうに話していると不知火さんと五月雨さんが提督を宥めている

 

 

「ですが、司令これで奴等の戦力も分かったんです

良しとしましょう」

 

 

「そ、そうですよ!被害も鎮守府が壊されただけですし!」

 

 

しばらく考えたのち提督が頬を叩くと「良し!」と気合いを入れ直す

 

 

「後で全て大本営に話す!今回の襲撃目的も分かったわけだしな」

 

 

「そのいきです司令」

 

 

「そうだぜ!提督がそんなんだとこっちも辛気くさくなるじゃねぇかよ!」

 

 

「おい待て木曾それはどういう意味だ?」

 

 

 

とツッコミが入り全員で笑っていると病室をノックされ二人の憲兵が入ってくる

 

 

「失礼する、こちらに古鷹は居るか?」

 

 

「え?あ、はい!私が古鷹です!」

 

 

私はベッドから降りると敬礼し他の艦娘達も敬礼している中提督が憲兵を見ると首を傾げる

 

 

「憲兵さん…?何か古鷹に用ですか?」

 

 

「あぁ、藤谷提督すみません急を要する用でしたのでお話がまだ貴方に届いて無かったのかもしれませんね」

 

 

「それよりもお前達入ってこい」

 

 

一人の憲兵が指示をすると武装した他の憲兵も続々と入ってきており全く意味が分からなくなる

 

 

「お、おい!お前達何なんだよ!!」

 

 

「何で武装した憲兵さんが!?

ここにはそんな危ない人なんかーー」

 

 

そして一人の憲兵が書類を取り出しその発言に全員言葉を失う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「古鷹一番艦古鷹 佐世保鎮守府に深海棲艦を招き入れ佐世保鎮守府提督 藤谷 大地(だいち)を殺害を目論み他の艦娘を同時に殺害しようとした

よって貴君を内乱罪及び反逆罪で逮捕する」

 

 

 

「………………え?」

 

 

全く意味がわからないその言葉に私の思考は停止した

 

 

 

 

 





次回

強制連行

仲間を救い、一人戦った彼女に待っていたのは謎の疑い
その裏で暗躍する者達とは?




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重巡(古鷹)の記憶 十三

「連れていけ」

 

 

憲兵さんが指示を出すと他の憲兵さんが私を捕まえようとしてくるが青葉や木曾さん達がそれを防ごうとしてくる

 

 

「待ってください!古鷹さんはそんなことしてません!!」

 

 

「そうだ!何かの間違いだ!!」

 

 

だがそんな二人の制止も聞かずに憲兵さん達は私を捕らえようとしてくるがその間に日向さんが立ち塞がる

 

 

「退け、戦艦日向」

 

 

「出来ないな、彼女は仲間を助けるため一人鎮守府に残り最後まで戦ったんだ

そんな嫌疑を掛けられる事自体が可笑しいではないか?」

 

 

憲兵さんに立ち塞がるその姿を見て他の憲兵さんが萎縮する中一人の憲兵さんが銃を取り出し日向さんの頭に当てる

 

 

「……退け、私もこんな手を使いたくないんだ」

 

 

「退かぬさ

彼女を守る為ならこんなもの怖くない」

 

 

全く譲らない日向さんと憲兵さんに場が凍りつくが次の瞬間提督に向けて銃を発砲する

 

 

「っ!提督!」

 

 

「どうしても退かぬと言うならその藤谷提督を殺す

貴様らの選択一つで簡単に死ぬぞ?」

 

 

「貴様!!」

 

 

「日向!構わない!古鷹を守れ!!」

 

 

提督も恐れずに憲兵さんに立ち塞がると他の憲兵さんからも銃を構えられる

 

 

「何故古鷹何ですか?彼女は今身体を火傷しています

それなのに何でそんな嫌疑が?」

 

 

「匿名でな通報があったんだ

佐世保鎮守府襲撃事件犯人は内部の人間それも艦娘が深海棲艦を招き入れたとな

そして、それを聞いた大本営の指示でその古鷹を捕らえに来たわけだ

貴様達今やってることの意味が分からないわけがないだろ?」

 

 

そう、今提督達がやってることはかなり危険な行為であり憲兵さん達は言わば軍の警察

しかも、普通の警察と違い彼等は犯罪者を捕らえたりするだけなのだがその場合実力行使しても良いと言われている

(このままだと皆が!!)

 

 

「全員退けさもないと」

 

 

憲兵さん達が武器を構えると全員完全な攻撃体制に入ってしまいその場の空気が凍りつく

 

 

「死人が出るぞ?」

 

 

「全艦隊!古鷹を守れ!!」

 

 

「「「はい!!」」」

 

 

「ま、待ってください!!」

 

 

私が声をあげ日向さん達をかき分け一番前に出る

 

 

「私が付いていけば良いんですよね!なら連れてってください!」

 

 

「駄目だ!古鷹!!」

 

 

「そうだ!君はなにもしてないんだから!」

 

 

 

後ろでは提督達が言っているが私は微笑みながら振り返る

 

 

「大丈夫ですよ提督、皆

私はそんなことしてません、だからちょっと憲兵さん達と話をするだけですから」

 

 

「古鷹……」

 

 

提督達がそれ以上何も言わなくなると私は大人しく憲兵さん達に付いていこうとすると全員武器を下ろし私を連行していく

皆を病室に残し私は静かに廊下を歩いていると一人の憲兵さんが私の肩を掴み耳元で囁く

 

 

「良い提督と仲間だな、すまない荒っぽい真似をしてしまい」

 

  

「はい!私の自慢の仲間と提督です!」

 

 

私が笑顔で答えると他の憲兵さん達も顔を反らすのだが肩を掴んでいる憲兵さんの力が増す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すまない……本当にすまない………」

 

 

「え?」

 

 

その言葉を聞くと他の憲兵さん達も何故か悔しそうな顔をしており私はこの時言葉の意味を理解できなかった

これから起きる地獄を暗示するとも知らずに

 

 

 

 

 

 




次回

尋問

自らを差し出し何とか場を納めるのだが古鷹と提督達はこの行為を後に後悔する




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重巡(古鷹)の記憶 十四

私はその後憲兵さん達連れられ大本営の地下にある尋問室に通されたその際艤装であったり私物等は全て取り上げられ私は椅子に座り待っていた

しばらくすると二人知らない人が入ってくると敬礼をする

一人は初老の男性と一人は若い男性だった

 

 

「は、初めまして!古鷹一番艦古鷹です!」

 

 

「あーうん分かってる分かってる座っていいよ」

 

 

若干適当そうだな?と思いながらも椅子に座ると初老の男性がパソコンを操作し始め若い男性が私の前に腰かける

 

 

「さってと、正直めんどくさいからちゃっちゃと終わらせよっか?

んで深海棲艦とは長いの?付き合いが?」

 

 

「いえ、私は深海棲艦とは付き合ってませんしなにもしてません!」

 

 

「ふーん?まぁ大抵黒の奴はそう言うんだけどね

んま良いやそれじゃ当時の状況を聞かせて」

 

 

私は若干適当な男性職員の指示に従い当時の状況を説明するとその後ろで初老の男性が私の言葉を書いているのかパソコンを動かしていた

 

 

「ふーん?戦艦タ級flag改 ツバキねぇ……

そんな報告は上がってないけど?」

 

 

「最後に残っていた私だけがそれを見たんです!他の人はほとんど目撃できてないと思いますし先程提督に報告したばかりですから!」

 

 

その話を聞いていると初老の男性が頭だけ振り返り私を睨む

 

 

「それってお前が罪から逃げるためについてる嘘何じゃないか?

それとも、自分が無実だと訴えるために深海棲艦を売ってるのか?」

 

 

「違います!私はそんなことしてません!!」

 

 

「と言うか良く無事だったな、鎮守府の崩壊で生き残れる何て可笑しいだろ」

 

 

「それはーー!!」

 

 

「あーはいはい、めんどくさいから絡まないでくださいよ先輩

とりあえず君は留置所ね

嘘の告白何ていくら聞いても意味無いしさ」

 

 

ここで私は理解したこの二人は私の話を最初から全く聞いてなんていなかったただこの二人は私を犯罪者であると決めつけ仮の尋問をしただけだったのだ

 

 

「そんな!私はやってません!!」

 

 

「しつこいなぁ、そんなに下手に言ってると解体しちゃうぞ?」

 

 

「ふん、所詮艦娘がどうせお前達の代わりなんていくらでも居るんだからよ早く認めてほしいものだな」

 

 

「だから!私は何もーーー」

 

 

「っるせえな!!そんなの聞いてないんだよ!!」

 

 

若い男性が突然怒り机を思い切り叩くと初老の男性も私もビックリし黙ってしまうと若い男性はハッと気付き「あはは!」と笑いだす

 

 

「いやーごめんごめん、あまりにしつこいからさイラついちゃってね

とりあえず君の身柄はこっちで預かるし正直早めに認めといた方が良いよー?」

 

 

そう言うと若い男性は立ち上がると私にも立ち上がるように指示すると同時に初老の男性を睨む

 

 

「と言うわけで古鷹ちゃんだっけか

廊下出たらすぐ隣の憲兵に聞いて留置所言ってね

また明日尋問を続けるからね」

 

 

私は指示されるがままに出ていくとすぐ隣に居る憲兵と顔を合わせると同時に留置所へと連れていかれる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、すいませんねー先輩」

 

 

古鷹が去った尋問室では古鷹の尋問を行っていた二人が話していた

 

 

 

「いやこっちも言い過ぎたすまん

……と言うかあれ本当に黒なのか?」

 

 

「さぁ?」

 

 

「さぁってお前なぁ…」

 

 

「せーんぱーい諦めましょうよー?

こんなところに配属になった時点で俺達のやることなんて決まってるでしょ?」

 

 

「だかな………」

 

 

初老の男性は悔しそうに唇を噛み締めるが若い男性はヘラヘラとしている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここで俺達のやることはアイツに嘘でも自白させること

そして、死刑にすることなんですからね」

 

 

そう言うその若い男性の目は死んでいた

 

 

 

 

 





次回



古鷹の言葉を一切信じていない尋問官達
そして、今回古鷹が逮捕された理由とは?




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重巡(古鷹)の記憶 十五

「ここだ、入れ」

 

 

「はい……」

 

 

私は案内されるがままに入るとそこは独房と言っても変わらない

冷たいベッドだけで全く物が無い

普通なら洗面台やトイレなどあっても可笑しくないのだがそれがない

 

 

「あ、あのトイレとか洗面台は……」

 

 

「あぁ、それなら私達がずっと居るからすぐに言ってくれれば良い

近くに隣接はしている」

 

 

「どうして無いんですか?」

 

 

「………昔、それを使って自殺しようとした奴が居てな

それなら全て撤去したんだ」

 

 

「…………え?」

 

 

「時期に分かる、君がここに来たと言うことの意味が」

 

 

憲兵さんはそれだけを言うと鍵を締め一冊の本を渡してくれる

 

 

「だがこれくらいは許されている

暇だしな、読んでいると良い『自殺にも使えない』しな」

 

 

すると憲兵さんが渡してくれた本を手に取るとゆっくりとその場を去っていく

(自殺にも使えない……確かに部屋には自殺しようにもそんなものは一つとして無いけど何で……?)

この時私がここに送られてきた意味が理解できずただ疑問に思うだけだった

 

 

確かにやることがなく憲兵さんに渡された本を見ようとしたけど身体が疲れていたのかベッドに横になると睡魔に襲われゆっくりと意識を手放していく

(……大丈夫だよね私は何もしてないんだもん…きっと提督が何とかしてくれるよね…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはうってかわりある豪邸の門の前に藤谷は来ていた

だが、藤谷にとっては嫌な思い出しかない辛い場所ではあるがチャイムを鳴らす

 

 

『はい、どちら様でしょうか?』

 

 

「俺だ、親父は居るか?」

 

 

『ぼ、坊っちゃん!?すいません今すぐ開けます!!』

 

 

坊っちゃんと呼ばれた藤谷

そう、ここは藤谷の実家でありもっとも藤谷が嫌う場所である

すると門が開かれ奥から使用人と執事がこちらに走って来る

 

 

「ぼ、坊っちゃん!お帰りになるのでしたら一言お声をーーーー」

 

 

「帰ってきたんじゃない!親父は何処だ!?」

 

 

「信吾様でしたらデスクに……」

 

 

すると藤谷は走りだし勢いよく家の扉を開きドンドンと音を立てて二階に上がると自らの父親の居る部屋の前にたどり着くと再び執事が声をかけてくる

 

 

「坊っちゃん!今信吾様は……」

 

 

「うるせぇ!急ぎの用事なんだよ!」

 

 

藤谷は扉を蹴り飛ばすと奥では藤谷の父親 藤谷信吾がデスクに座りながら仕事をしていた

 

 

「何だ騒がしいぞ帰ってくるなら一言連絡を入れろ馬鹿息子」

 

 

「てめぇ!何をしやがった!!

俺のやることにはもう何も手を出さないし言わないって約束したよなぁ!?」

 

 

藤谷は机を思い切り叩くとため息をつくように信吾は藤谷を睨み付ける

 

 

「あぁ、貴様の不祥事の事か

本当に馬鹿な息子だ、深海棲艦ごときに遅れを取るとは藤谷家の恥さらしめ

安心しろ貴様の愚行は無かったことにしといたからな」

 

 

「無かったことにした!?

やっぱりあんたが絡んでやがったか!!」

 

 

「まぁな、それと先に言うのを忘れていたよ馬鹿息子」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「古鷹とか言う艦娘を犯罪者にし処刑させろ

そうすれば貴様の不祥事は綺麗さっぱり無くなる」

 

 

 




次回

親子

古鷹を犯罪者にしたてたのは藤谷の父親であった
藤谷は何とかして古鷹を助けようと試みる



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重巡(古鷹)の記憶 十六

「ふざけんな!!

あの娘が何をしてくれたのか分かって言ってるのか!?」

 

 

「さぁ?私は知らないし知るつもりもない」

 

 

信吾は立ち上がり珈琲を入れると一人で飲み始めながら藤谷を睨み付ける

 

 

「あの娘は最後まで鎮守府に残って一人深海棲艦と戦いそして俺達を助けてくれたんだぞ!!

そんな娘を何でーーーー」

 

 

「そう、そこだよ私が目をつけたのは」

 

 

「…………は?」

 

 

信吾は珈琲を置くと今度はソファに座ると近くにある茶菓子を食べながらのんびりと話し始める

 

 

「都合が良かったんだよ艦娘(あれ)はお前と仲が良くて、他の艦娘とも仲が良く信頼も厚い

そしてお前が惚れている艦娘であり最後まで鎮守府に残ったと言う所がね今回の事件で犯人にしやすかったのさ」

 

 

「どういう意味だよ!」

 

 

「決まってるだろ?あの艦娘は最初からお前達を騙す目的で鎮守府に来た

だから提督であるお前と仲良くし艦娘共分け隔てなく付き合い機会を伺った

そう鎮守府を破壊するな

だが、作戦は失敗に終わったあの艦娘はお前達に情が移り深海棲艦を裏切ってしまった

それを最後に深海棲艦達に伝えるために残り何とか生き残った

 

 

 

と言う筋書きさ分かりやすいだろ?」

 

 

その意味が分からない話を聞きながら藤谷は拳を震わせていた

 

 

「まさか……あんたのそれが本当に通ったのか?」

 

 

「ハッハッハ!通るに決まってるだろ?

もし貴様が不祥事を起こしたらこうするつもりだったしな!

別に良いじゃないか所詮艦娘(奴等)は消耗品壊れたなら次を作れば」

 

 

その言葉に我慢が出来ずに藤谷は信吾の胸ぐらを掴みながら怒りを露にする

 

 

「ふざけるな!!彼女達は物何かじゃねぇ!!」

 

 

「ほう?お前が言うか馬鹿息子

お前も昔は艦娘を物だって言ってたじゃないか

人間の形をしたおぞましい兵器だってな」

 

 

「違う!彼女達と生活して分かったんだよ!!

彼女達は賢明に生きて!そして俺達を信じ戦ってくれている!!」

 

 

「それはそうだ

戦うのがあれの生きる理由だからな

そうじゃなきゃ造る価値も……嫌人間の精処理や観賞、ペットとしてもあるかな?」

 

 

「あんたって人は!!」

 

 

そうこの男信吾も艦娘を物としか思っておらず自らの利益の為にしか使っていない

それを見て育ってきた藤谷は最初の方こそそう思っていたが艦娘達を見てきてその気持ちが変わり家を飛び出したのだ

 

 

「まぁ、そう言うことだ

古鷹と言ったか?あれはどうやっても無理だ

良かったなぁ、お前の身代わりになってくれる奴が居て

話は終わりだ」

 

 

「ふざけるな!俺は古鷹の提督だ!

古鷹は俺が守るんだよ!」

 

 

「貴様……家と艦娘どっちが大切なんだ?」

 

 

「艦娘だ!!」

 

 

「………そうか…分かった」

 

 

そう言うと信吾が手を叩くと藤谷が入ってきた扉から憲兵が現れ藤谷を拘束する

 

 

「何しやがる!!」

 

 

「そいつを懲罰房に入れておけ

後しつけなおしだ」

 

 

「「「了解!」」」

 

 

憲兵に取り押さえながら何とか抵抗して逃げ出そうとするが憲兵の数が多く無理矢理連れていかれてしまう

 

 

「息子よ、少しは反省しろ

貴様の不祥事が我々藤谷家に多大な損害をもたらすと言うことを

そして、それがただ一つの兵器を捨てるだけで無くなると言うことをな」

 

 

 

「クソ親父がぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 





次回

海軍の闇

捕らわれた古鷹と藤谷、彼等を襲う運命は残酷な物だった……



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重巡(古鷹)の記憶 十七


今回少しだけグロが入ります!



「起きろ古鷹一番艦古鷹」

 

 

私はその声で起こされる

ここに連れてこられてから三日が経過しており私は連日の様に尋問官から尋問を受けており全てを否定し続けた

全くやってないことや嘘をでっち上げようとしている尋問官達は日に日に態度が悪くはなっていたけど私は気にしないようにしていた

(今日も……また尋問か…何にもしてないのに何で…)

 

 

そして、いつも通り尋問室に通されるはずだったのだが今日は憲兵さんが別の道を通ってることに気付いた

 

 

「憲兵さん?尋問室はこっちじゃないですよね?」

 

 

私の質問に全く答えてくれない憲兵さんに疑問を浮かべながら付いていくのだが更に地下に連れてこられ階段を下りた瞬間鼻を覆う

 

 

「っ!何の臭い!?」

 

 

酷い悪臭と言うよりはまるで血生臭く動物の解体でも行ってると言うほどの臭いで私は嫌な予感が頭を巡る

 

 

「ここだ、入れ」

 

 

廊下のある部屋に通されそうになるのだがそのプレートを見て絶句する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「拷問室……何で…こんなところが……」

 

 

プレートには削られているが拷問だけは見えており背筋が凍り付く

それと同時に扉が開かれ中からは更に濃い血生臭さが漂い憲兵に蹴り飛ばされ倒れてしまうが直ぐ様立ち上がり出ようとしたのだが憲兵によって再び鍵が閉められてしまう

 

 

 

「何で!私は何もしてないんです!

出してください!!」

 

 

「………すまない、時間になったら迎えに来る」

 

 

それだけを言うと憲兵さんは帽子を深く被りその場が去ってしまう

 

 

「憲兵さーーーーー」

 

 

「はいはーい、君はこっちだよ!!」

 

 

私はいきなり背後から髪を掴まれ引きずられると無理矢理椅子にくくり付けられると目の前に誰か居るのが分かるのだがその人間はガスマスクと全身防護服見たいのを着ている

 

 

「はい、どーも犯罪者さん

拷問官でーす

いやー、今回は驚いた女の子か?

あ、違う艦娘か」

 

 

「放してください!私は何もしてない!

私は提督を裏切って何かない!!」

 

 

私が必死に説明するのだが拷問官は近くにある器具を触りながら鼻歌混じりにこの状況を楽しんでいる 

 

 

「どうすっかなー今日は

初日だし、簡単なのにしよっかなー」

 

 

「お願いです!私は何もしてないんです!」

 

 

「随分と威勢が良いねぇ……あ、そうだあれ試そっかな?」

 

 

「何で!何でこんなことするんですか!?

本当にここは海軍の大本営なんですか!?」

 

 

「あーうん、それは間違いないよ

自己紹介が遅れたね

俺の名前は……おっと秘密か

海軍大本営所属拷問官を勤めてます

簡単に拷問官と呼んでくれたまえよ」

 

 

準備を終えたのか拷問官は目の前の椅子に座りくくりつけられている私と対面する

 

 

「そう言えば君何もしてないんでしょ?

犯罪者らしいけど」

 

 

「そうです!私は何もしてないんです!だからーーーー」

 

 

だが次の瞬間私の希望は意図も簡単に打ち砕かれた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「知ってるよ?そんなこと」

 

 

「……………ぇ?」

 

 

拷問官は立ち上がると私の両手を机に縛り付けると同時にボタンを押し次々と準備を進めていく

 

 

「じゃ、じゃあ何で!」

 

 

「決まってるじゃん?君は捨てられんだよ海軍に提督に」

 

 

「そんな訳ない!!だって提督はーー!!」

 

 

「あ、ごめん言い方間違えた正確には君は海軍の上層部に捨てられんだよ」

 

 

「上層部……?」

 

 

すると拷問官はナイフを私の両手の間に突き刺すと続ける

 

 

「そそ、君を犯罪者に仕立てあげないと君の提督のお父さんが困るって訳だから君はここに連れてこられた

つまり助けは来ないし君はここで死刑になるんだよ」

 

 

「そ、そんな!私はーーー」

 

 

次の瞬間右手の甲激痛が走り咄嗟に見ると先程置かれていたナイフが突き刺さっており痛みで口をつぐむ

 

 

「と言うわけで僕からは一言だけ言っといてあげるね

早く自分が犯人って認めることだ

まぁ認めなければ認めないほど僕の楽しみが増えるだけだから良いけどね」

 

 

「………私は…やってません…」

 

 

「ふふ、これは楽しめそうだね

じゃあまず指を一つずつ切り落としていこうか?」

 

 

ガスマスクで見えないがこの男は私を痛め付けるのを楽しんでいるこんな人が大本営に居るとは思わなかったけどそんなこと考えている最中に次は親指に激痛を感じるが何とか耐える

 

 

「……へぇ?耐えるんだ、まぁそれがどこまで続くのかな?楽しみだねぇ!!」

 

 

 

 

 




次回

苦痛

どんどん追い詰められていく古鷹
必ず藤谷が助けてくれると心から願いながら何とか耐え続ける


そしてやっとE3突破……己れポッポ妹(怒)



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重巡(古鷹)の記憶 十八

今回もグロが入ります!
ご注意を!




それから私の毎日は地獄そのものだった

始まりは拷問室に連れていかれ拷問を受けその後高速修復剤をかけられ更に激痛に耐え尋問

そして、ご飯もまともに与えられず一日一食それに艦娘栄養食の為味が次第に分からなくなっていった

 

 

身体も痩せ細りどれだけここに投獄されているのか分からなくなっていたときその人に呼び出された

 

 

「古鷹一番艦古鷹 出ろ」

 

 

私はいつも通り拷問と尋問を終えると牢獄で休んで居たところを再び起こされ憲兵さんに連れていかれる

 

 

少しすると再び尋問室に呼ばれいつもの二人かと思ったのだが今回は違う後ろ姿がどう見ても女性だったのだ

 

 

その女性は座っており私も対面するように座ろうとするのだが力が入らずに少しよろけたが何とか座る

 

 

「……私が分かるか古鷹」

 

 

「……はい、何か御用ですか?長門さん」

 

 

その女性とは戦艦長門

正義の戦艦と言う二つ名を持ち海軍の中でもかなり大きな権力を持っている

何となく彼女が来たのは分かっている

 

 

「まどろっこしいのは嫌いでな単刀直入に聞く

お前がやったんだろあれを」

 

 

そう彼女がここに来たのはいつまでも私が話さないから艦娘を使って話させようとする魂胆だ

 

 

「……違います」

 

 

「嘘をつくな古鷹

お前の為にもならないぞ」

 

 

「……嘘をついてません」

 

 

「早く本当の事を言ったらどうだ?」

 

 

話が通じない…恐らくだけど彼女は他の人に言われたんだろう

彼女は誰よりと正義感が強く深海棲艦を憎んでいるだからこそ私が繋がっているかもしれないと言うのが許せないのだろう

 

 

「私は……違う!深海棲艦となんて繋がってません!!」

 

 

「いい加減にしたらどうだ!?」

 

 

私の胸ぐらを掴み長門さんは私を持ち上げるのだがその時どうやら違和感に気付いたらしい

 

 

「……お前、何でこんなに軽いんだ?」

 

 

持ち上げられた私の身体が普通の重巡より軽いことに気付いた長門さんの手を取ると最後の望みを言うように叫ぶ

 

 

「助けてください!私はなにもしてません!!」

 

 

「助けて……?お前は何を言っているんだ?」

 

 

長門さんを真っ直ぐ見るがその瞳の奥には怒りが見えており私の声が届いていないことが理解できた

この時、この人に助けを求めなければ良かったと思った

 

 

「この!!裏切り者が!!」

 

 

私の言葉が長門さんの怒りを買い壁に叩きつけられそのまま首を閉めてくる

苦しさの余り声も出せないで居ると片腕で私の腹部を殴り付けてくる

 

 

「貴様が!裏切り者なのは分かっている!!

早く!奴等の居場所を吐け!!」

 

 

怒号と罵声を浴びさせられながら私は部屋の角に蹴飛ばされその痛みを必死に耐えているのだが先程受けた拷問の影響もあり口から吐血すると長門さんが動きを止める

 

 

「はぁ…はぁ…艦娘の面汚しが…

どこだ!!奴等は!!深海棲艦達の住みかを吐け!!」

 

 

「し……り…ま……せん」

 

 

「このぉ!!」

 

 

「はいはーい、ストップストップ!

長門さんそこまでー

あんたがそれ以上やったら死んじまうよ」

 

 

途中でいつの間にか入ってきていた尋問官が止めに入ると長門さんは歯を食い縛りながら私に最後の蹴りを加えると尋問室を去っていく

それと同時に尋問官が私の髪を引っ張りながら廊下を引きずっていく

 

 

「お前、長門に何か言いかけたな?

どうやら拷問が足りないらしいな!!」

 

 

「っ!嫌!放して!!」

 

 

 

その言葉にどこに引きずられているの理解し直ぐ様振りほどこうとするが力が残っておらずそのまま引きずられてしまい部屋に投げ飛ばされる

 

 

「……あれ?古鷹ちゃんの拷問は終わりじゃなかったっけ?」

 

 

その部屋は拷問室

私の血液や汚れを掃除していた拷問官が首を傾げる

 

 

「こいつが外部に漏らしかけた!もっと酷くやれ!!」

 

 

その言葉と同時に扉を閉めると拷問官はゆっくりと私に近付き足を掴むと拘束し電気イスに座らせる

 

 

「いや!放して!!放してください!!」

 

 

「いやもっとやれってお叱り受けちゃったからねぇ

今日は更に続けよっか?」

 

 

その瞬間私の身体に電気を流され苦痛の余り声を上げる

 

 

「あぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「さぁてとじゃあ今日は寝かせないでやっちゃうぞぉ?どれを試そうかな………

あ、艦娘ならある程度無茶も効くよねぇ!そうだ片足落としてみようか?」

 

 

「やだやだやだやだやだやだやだやだやだやだぁぁぁぁぁぁ!!!

助けてよぉ!!誰かぁぁぁぁ!!!」

 

 

「うるさいなぁほら猿ぐつわ噛んでねぇ」

 

 

そう言うと拷問官は私に猿ぐつわを噛ませ鉈を取り出すと電気イスに座らせたままその鉈を太股にあてる

 

 

「じゃあ、一時的に脚とバイバイしようねぇ!」

 

 

「んんん!!(辞めて辞めてぇぇぇ!!)」

 

 

そして、鉈が思い切り振り下ろされ脚に激痛が走ると同時に右足の感覚が失くなるを実感した

痛みの余り泣きながら頭を横に振るうが拷問官はもう片方の脚に鉈を当てる

 

 

 

「じゃあもうひとつ行こうか!!」

 

 

 

そしてそこから私の意識は途絶えた

頭が痛みに耐えきれずどうやら気絶したらしい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何で私が…こんな目になってるの?

 

 

 

 




次回

届かぬ希望

お久しぶりの投稿!
いやほんとごめんなさい
イベント突破出来なくなりかけてそっちに集中してました……
皆様は突破出来たでしょうか?
私は無事にコロラドさんとガリバルさんを迎え入れられました!
対地上兵器大事と実感させられた……



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重巡(古鷹)の記憶 十九

疲れた

もうそれが私の頭の中を支配していた

全身に痛みを感じていると最近は少しずつ馴れているのかベッドに横になっている時間が本当に楽になっていた

今日も昨日もずっと拷問を受けている

それなのに誰も助けに来てくれない

 

 

どうして?青葉も衣笠も加古も日向さんも五月雨さんも不知火さんも木曾さんもどうして助けに来てくれないの?

 

 

私の事を忘れてしまったの?

それとも……本当に……

 

 

私の頭の中には嫌な予感ばかり過るのだが無理矢理そんなことを考えないようにしながら頭を横に振るう

 

 

そんなことない……そんなことないよね…?

 

 

でも毎日聞かされている尋問官や拷問官の言葉がそれを煽ってくる

 

 

『君は捨てられたんだよ

だから諦めな

どうせ死ぬんだから』

 

 

『希望なんて持たない方が良いよ?

君は海軍からも鎮守府からも仲間からも捨てられんだからね』

 

 

違う……皆がそんなことするわけない………

そうだよね?提督……?

 

 

藁にもすがる思いで私はベッドの布団を握り締めるのだが突然憲兵さんから呼び出しがかかる

 

 

「古鷹、出ろ

尋問の時間だ」

 

 

…え?今日はもうやったのにまた何で?

 

 

この時一瞬だけ嫌な予感はしたのだけれど私は命令を聞くしか出来ずに憲兵に連れられ尋問室に通されるとそこにはニヤニヤと笑う若い尋問官が机に座っていた

 

 

「いやー悪いねちょっと急用で君に見て貰いたいあってね

ま、今の君には拒否権何てないんだけどね!」

 

 

「アハハ」と笑う若い尋問官と対照的にもう一人の尋問官は目を反らしており何なのだろうとは思いイスに座ろうとする

 

 

「全く二週間もアイツの拷問を受けてまだ言わないとは素晴らしい!

だから、俺考えたんだ君を本格的な壊さないと行けないと思ってね」

 

 

笑う若い尋問官を見ているが目の奥が笑っていない事に気付くのと同時に私を壊すと言う発言に嫌な予感がした

 

 

「君の仲間達からメッセージを貰っておいたんだぁ!」

 

 

その言葉にピクンと身体が動き目の前に置かれていたパソコンに集中するとしばらくするとデスクトップ画面が開く

 

 

久しぶりに皆の姿が見れるそれだけでも私はまだ頑張れると思い少し微笑むとその姿を見た若い尋問官が更に笑いもう一人がそれを止めようとするのだがその手は空を切る

 

 

しばらくするとテレビ画面になると木曾さんの後ろ姿が映りだす

その映像はこことは違い綺麗な尋問室と木曾さんを映していた

 

 

映像は4つに別れており一つの画面ではいつもの木曾さんの顔が映し出されており安心する

 

 

良かった、顔色が悪いわけではないし傷があるわけでもない私みたいに拷問は受けていないんだね

 

 

安堵のため息をつくと同時に木曾さんが暗い顔をしているのが見え心配にもなった

 

 

『さてと話してもらおうかな?

古鷹は深海棲艦と共謀し君達の鎮守府を落としたんだね?』

 

 

別の尋問官の言われると木曾さんが俯いているが服を握り締めるとすぐに放す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でもこの映像自体が私の事を狂わせる原因にもなってしまった

この時皆は私を庇ってくれると……そう願っていたのに

希望は……届かない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そうだ、アイツが鎮守府に深海棲艦を招き入れたんだ』

 

 

「…………ぇ?」

 

 

突然の発言に私は言葉を失った

 

 

 

 

 

 

 




次回

壊れル

木曾の裏切りこれをきっかけに彼女の心を支えていた物
が崩れ始める





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重巡(古鷹)の記憶 二十

木曾さんに言われたその言葉に私は動揺し身体が震える

だって見に覚えが無いし彼女は私を庇ってくれると思ったから

 

 

『そうか、詳しく聞かせてくれないか?』

 

 

『アイツは提督と親密な関係にあるのは知っていた

今まで裏切り者だなんて思わないほど皆の為に尽くしてくれていた

だが、古鷹の日記に今回の事件の事が書かれていて正直驚いたよ』

 

 

「日記……?知らない…知らない知らない知らない知らない!!そんなの書いてない!!

私じゃない!そんなの書いてないのに!!どうして!?」

 

 

私が半狂乱に成りながら話していると若い尋問官をにやけがおでその姿を見ていると映像の中に居る尋問官が私の現状を話していく

 

 

『今彼女はある場所に拘束されており拷問を受けているとしたら君はどう思う?』

 

 

『………はっ、良い様だな

今まで俺達を騙していた訳だからな

それぐらいが丁度良いんじゃないか

さ、早くアイツを死刑にでも解体でもしてくれよ』

 

 

その言葉と共に私の心にある何かにひびが入った気がしたと同時に苦しくなった

息苦しく思考が止まらない

 

 

 

何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?何で?

私はなにもしてないのに?何で?

 

 

「どうやら君は嫌われている様だねぇ?

ささ、他の娘達からの証言も見ていこうか?」

 

 

そう言うと若い尋問官は他の艦娘からの発言を見せるために木曾さんの映像を切り替えると次に日向さんを映しだす

 

 

『さてと、戦艦日向答えてもらおうか?

古鷹が犯人だな?』

 

 

『……あぁ、彼女が今回の事件を引き起こした主犯だ

彼女は一人鎮守府に残り今回の事件が失敗し深海棲艦から新しい命令を受け深海棲艦達に命を救われていた

間違い……ない』

 

 

「日向さ……ん?何で?………何で?

あの時…皆を助けたのは私のおかげって……」

 

 

 

信じてきた人達からの裏切りの言葉に私は混乱しながらも最後の支えになっていたものが少しずつヒビが入っていることに気付く

 

 

「じゃあ次いこうか?」

 

 

若い尋問官は再びパソコンを操作すると次は衣笠の姿が映りだし私は画面を掴みその姿を凝視する

 

 

「衣笠!違うよね!私はそんなことしてないよね!?」

 

 

届くはずの無い声を上げながら衣笠の映像に目を通していく

 

 

『次は君だね、衣笠君

彼女古鷹について教えてくれるかな?』

 

 

『……古鷹さんは誰とでも優しく接してくれて何でも面倒を見てくれていた素晴らしい人です

私の憧れでもあり姉の様に慕っていました

でもそれもまやかしだったんですよね

心の底では私達を憎み嘲笑っていたんです』

 

 

「違う!!私は皆を本当に心配して………何で……

何でよ……」

 

 

妹の様に慕っていた衣笠からもそんな言葉を言われてしまい私の心は限界に達していた

今まで寸前に耐えていた心が悲鳴を上げ少しずつ削り取られていく

なにもしてないのに……皆を助けたくて……助けになりたくて…優しく…していただけなのに…どうして…

 

 

私はそこで静かに涙を流しながらその話を聞いていたがほとんど内容が頭に入ってこなかった

助けた人に裏切られ

優しくした人に裏切られ

仲間だと思ってた人に裏切られ

耐えていた身体の痛みも限界を迎え全身に激痛が走る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

痛い………痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い

 

 

身体は高速修復材で治ってるはずなのに今まで受けた拷問の痛みが体を駆け巡り肩を掴みながら震え痛みに耐えながら涙を流し続ける

 

 

「何でよ……皆……私は…何もしてないのに!!!」

 

 

 

 

 

 

 





次回

信じた者の末路

仲間達から浴びせられる言葉に苦しみ自らの存在意義を分からなくなりながら彼女は追い詰められていく





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重巡(古鷹)の記憶 二十一

苦しい……それだけが私の心を支配し思考が追い付かないほどに心が壊れかけているのが自身で理解できた

涙は止まらず胸を押さえながら私は過呼吸になりながら苦しみそれでも僅かな希望を見たくて私は映像を見させられる

 

 

私のその姿を見ながら若い尋問官はニタニタと笑いもう一人の初老の尋問官は目を背けている

 

 

「さってとそう言えば君には妹も居たよね?

彼女にも聞いてきたんだ!映像に映すね!」

 

 

私は僅かな希望を諦めずに映像を見ると加古が映し出されており苦しさを抑えながらその映像を見ることにする

 

 

『さて、君で艦娘は最後かな?

古鷹型二番艦 加古 』

 

 

『……あぁ』

 

 

『聞かせてもらおうか

確か君はあの時古鷹に助けられたんだっけか?

その時出会った深海棲艦についても教えてもらおうか』

 

 

私は妹の加古だけは裏切らないと信じていた

ずっと一緒に居て唯一無二の妹艦

そうだと……思いたかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『助けられた……そう見せかけられたの間違いだろ?』

 

 

その言葉に私は涙が止まり思考が完全に停止する

今……加古は何て言ったの?

そう見せかけられた……?

 

 

『古鷹は……初めから私たちを仲間だと思ってなかったあの時も咄嗟に私達を助けたけどそれは深海棲艦の指示だったんだ』

 

 

どう言うこと……?深海棲艦の指示……?

意味が分からないよ…?何で?

 

 

『今回の事件を引き起こしたのは深海棲艦の末端の奴等だ

それを古鷹は知らなかった

だから、間違えて撃ってしまった(・・・・・・・・・・・・)

そして、深海のお偉いさんの部下にそれを見られて事情を説明していた』

 

 

何の事?意味がわからない意味がわからない言葉の意味が分からない?

加古が話している内容が頭に入ってこず私はフリーズした頭でゆっくりと理解していく

 

 

 

あぁ、そうか……私は初めから皆に好かれてなんていなかったと

仲間と思ってた(艦娘)達はただ鎮守府が一緒だったから仲良く見せかけていただけだと

妹も例外ではなく私は姉とは見ずにただの他人だと思ってたとそこで理解させられた

 

 

 

途端に私は涙が止まらずに流してしまい身体に力が入らない

私は何のために耐えていたのか

私は何のために生きてきたのか

私は何のために皆に優しくしていた

私は何の為に戦ってきたのか

私は何で生きてきたのか

 

 

 

分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない分からない

 

 

思考がぐちゃぐちゃになりながらまともに考えることが出来なくなってきた時に最後の人の声が聞こえる

 

 

『さぁ君で最後だ

藤谷提督 話してもらおうか今回の事件に関して』

 

 

『……はい』

 

 

 

「提……督?」

 

 

私は混乱する頭とぐちゃぐちゃになっている顔を上げると映像に映る提督を見る

映し出された提督は少しやつれ身体に打撲跡が残っており私と同じ事をされたのかと思っていた

でもこの人だけは裏切らないと思っていた

今までこの人の為に働き

命を預け

背中を預け

全てを捧げてきた人なのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから私は彼に

この人間達に壊された

心を

身を

信念を

思考を

全てを

粉々に破壊された

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『彼女が、古鷹が今回の事件を引き起こした犯人です』

 

 

 

 

 

 




次回

砕かれた希望

希望を失った艦娘(古鷹)は次第に壊れていく
心を体を自らの信念も想いも
提督(藤谷)の手によって




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重巡(古鷹)の記憶 二十二

心とは意外と簡単に壊れるものだ






「…………………………………どぅして?

貴方も私ヲ裏切ルの?」

 

 

私は自然とその言葉が出てきていた

その声を聞くと若い尋問官が少しだけ焦る

 

 

「あ、ヤバやり過ぎたか?」

 

 

「おい!その映像を止めろ!!

その艦娘様子が可笑しいぞ!!」

 

 

二人の声が聞こえない

でも映像の提督の声だけがハッキリと聞こえる

私を裏切るその言葉だけが

 

 

『彼女はいつからかは分かりませんが深海棲艦と繋がりを持っていました

もしかしたら出撃したときに敵に誘惑されたのかもしれません』

 

 

脳裏に甦る提督の声が聞こえてくる

私が出撃し勝ちを残して帰ってくるとあの人はとても喜んでくれた

 

 

『良くやった!古鷹!流石うちの重巡エースだな!

皆も見習えよ!古鷹怪我はないか?

小破したか?すぐに入渠しろ!!』

 

 

いつも勝つと嬉しそうにしてくれる反面怪我をしたらいつでも心配してくれた提督

 

 

『古鷹は確かに私の個人的な情報まで知っていました

施設の管理も彼女に任せていることもありましたからもしかしたら古鷹が情報を深海棲艦に洩らしそれで入渠中の艦娘にたどり着けたんだと思います』

 

 

施設管理をしていたのは元々は不知火さんだけだった

五月雨さんはおっちょこちょいで良く物にぶつかったりしてたから壊す可能性を考えていたらしい

 

 

『うーん?やっぱり不知火だけだとキツいよなぁ……

あ!すまない古鷹!折り入ってお願いがあってな!

実は施設管理を古鷹にもやってほしくてさ……

良いのか!?本当にすまない!ありがとう古鷹!』

 

 

どうして?私は貴方の役に……貴方の為に働いてきたのに……何で……

 

 

『君は確か彼女を好いていたよね?

それも彼女の策略だったと思うかね?』

 

 

『……確かに彼女を愛していました

彼女は献身的に鎮守府の為に尽くしてくれていました』

 

 

辞めて…辞めて………辞めて……辞めて……それ以上話さないで……嫌だ…

 

 

頭を抱え耳を塞ごうとするも身体が動かない

震えが止まらずこの先に言われる言葉を分かっているのに受け入れられない

 

 

『君が好きなんだ!

兵器ではなく君と言う人間が』

 

 

嘘つき………嘘つき……

私を初めから駒の様に捨てるためにそんな言葉を言ったの?

兵器としてではなく人間じゃなかったノ?

 

 

『ですが、彼女はそれすらも計算に入れて私に取り入ろうとしてたんです

それを理解したときにはもう遅かったですが

手遅れになる前に裏切り者を見付けられて良かったです』

 

 

私は次の言葉を聞く前に身体と心が既にボロボロになり涙が止まらず顔がぐしゃぐしゃになりながら立ち上がる事すら出来なくなっていた

     

 

辞めて…辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで捨てないで

 

 

壊れかけた私の思考はもうそれだけしか考えられなかった

皆が助けてくれるって信じて辛い拷問にも尋問にも耐えてきた私は限界に達していた

だが私の期待は淡く裏切られる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『彼女が犯人です……どうか処分をお願い致します』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の心はここで壊された

信じてきた仲間達と提督(藤谷)に全てを捧げてきた

者たちによって

 

 

 

 




次回

壊レタ者

希望も未来も裏切られた彼女には失くなってしまった
信じてきた者達の裏切りは彼女の唯一の心支えを意図も容易く破壊した




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壊された心

仲間に裏切られ

海軍に見放され

提督に捨てられた

私の居場所はどこにも無かった

あの後私は発狂し狂いパソコンを破壊し暴れまわってしまい留置所に戻されていた

それでも私の頭には先程提督……嫌藤谷に言われた言葉が頭の中で反響して涙を流しながらベッド濡らしていた

 

 

「何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で何で???」

 

 

私の心はもう粉々に砕かれまともな思考が出来ずにいた

どうして私がこんな目に合わなくてはいけないのか

何で私は藤谷に捨てられたのか考えても分からなかった

告白を断ったから?

あの時死ななかったから?

深海棲艦の奇襲に気付かなかったから?

何で?……私は捨てられたノ?

 

 

その日は一睡も出来ずに朝を迎えていた

もう分からない

何で私が捨てられたのか

仲間を助けただけなのにこんな酷い仕打ちを受けなくてはいけないのか

 

 

そして私は再び拷問にかけられる

いつもより大人しい私の姿を見た拷問官は不思議がるがいつも通り私の脚や指、爪や腕を傷付けていくのだが痛みを感じない

 

 

「あっれぇ……どしたの古鷹ちゃん、いつも見たいに悲鳴や苦しそうな顔をしないねぇ?」

 

 

「……………………」

 

 

「あちゃー、こりゃ駄目だな

今日は中止かな

と言うかアイツ先に心の方を壊したなぁ

これじゃ拷問しても楽しくないじゃんかよ!!」

 

 

そう言うと拷問官は私に高速修復材をかけると傷つけられた身体が治っていくのを見ると髪の毛を掴み拷問室の外に投げ捨てられる

 

 

「そこで寝てな、もう少しで憲兵が迎えに来るから」

 

 

拷問官はそれだけを言うと部屋を閉じ悔しそうに拷問器具を殴る

 

 

「クソッ!あれ以上やったらお偉いさんに怒られちまう!

前の玩具(おもちゃ)は殺しちゃったからなぁ

全く心を壊したなら言えっての!!」

 

 

しばらくすると憲兵が私を迎えに来るとぎょっとすると同時に私の頭を撫でながら涙を流す

 

 

「……すまない…すまない……

私は君を助けられなくて…すまない…」

 

 

 

何を泣いてるのか私には分からなかった

そもそもこの人は誰なのかさえも分からず私はただ身体を任せるだけだった

憲兵に連れられ私は尋問室に通されると機械の様にいつも通りに動き椅子に座る

 

 

「さぁてと、古鷹ちゃんやそろそろーーーー」

 

 

「やりました」

 

 

「………おっと?何を?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が藤谷提督を

佐世保鎮守府を裏切り深海棲艦達を招き入れました」

 

 

私の心はもう限界だった

これで良いんだよね

提督(藤谷)さん

 

 

 

 

 




次回

嘘の告白

全てがどうでも良くなってしまった彼女は自らの首を締め出す
何もかもを失った彼女にはこうするしか無かった



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壊された心 二

「お!!やっと話してくれる気になったか!

いやー、苦労した甲斐があったなぁ!!

ねぇ!先輩!」

 

 

「……あぁ」

 

 

尋問官が嬉しそうに私の嘘の告白を聞いていると色々と尋問を開始する

 

 

「じゃあどうやって彼女達深海棲艦と連絡を取ったの?」

 

 

「……出撃の時全員撤退した時に接触しました

それで…」

 

 

「ほうほう?それでも深海棲艦と共謀したんだね?」

 

 

「……はい」

 

 

今までめんどくさそうにしていた彼等が必死にパソコンや筆記をしながら私の供述を書いていく

全く見に覚えの無いことも言わされそれを記入していくと満足したのか満面の笑みを浮かべている

 

 

「はいはい!ありがとうね!

さぁてと君の処遇だけどやっぱり死刑又は解体は免れないだろうね!

何か要望はあるかい?」

 

 

「…………何も」

 

 

「そうか!じゃあ今日はもう少しだけ俺と話そうか?

先輩すいませんが良いですか?」

 

 

「………わかった」

 

 

そう言うと初老の尋問官は静かに部屋を出ていくと若い尋問官が私に話し掛けてくる

 

 

「さてと話そうか?君がやったことは大罪だ

絶対に許されない事だ

海軍を敵に回し国家を陥れようとした君にも唯一許されていることがある

それは『自ら死ぬことだ』」

 

 

「………自沈?」

 

 

「そうそう君はまだ希望が無いわけではない

そう君が死ねば皆喜ぶ

君の仲間や提督や海軍の人達が喜ぶのさ

素晴らしい事じゃないか?」

 

 

私はこの時この人の言葉に最後の希望だと思い込んでしまったそれが最後の罠だと気付かずに

皆が喜ぶ、私を見捨てた提督も衣笠も加古も木曾さんも日向さんも喜ぶと聞いて私は嬉しくなってしまった

 

 

「死ねば……皆喜ぶ…」

 

 

「そうだとも!君が死ねば皆喜ぶ!

だから君は必ず死ななくてはならない!

どんな手を使っても必ず死になさい?」

 

 

「……皆…提督も喜びますか?」

 

 

「あぁ!喜ぶともむしろ死んでくれたら君を一生忘れないさ!

何せ自分の為に死んでくれるなんてこんなに喜ばしい事はないんだからね!!」

 

 

提督がまた振り向いてくれる

私を忘れないで居てくれる

その言葉が私の壊された心の最後の支えになってしまった

 

 

「いつ死ねば良いですか?」

 

 

「いつでもさ!死にたいと思ったら死になさい!

誰も止めないし皆が喜ぶんだ!

さぁ、今日の話は終わりだ

自分の独房にお帰り?」

 

 

私はそれだけを言われると自らの足で独房に戻っていくとその後ろで若い尋問官が笑っていた

 

 

「いやー!希望を失った奴を自殺に追い込むなんて我ながら酷いよなぁ!!」

 

 

「……楽しそうだな?」

 

 

「えぇ!これで俺達の仕事は終わりですからね!

さぁてと上に連絡してこよっと!」

 

 

そう言うと若い尋問官と初老の尋問官は部屋を後にすると大本営に居る藤谷元帥の元へと行く

 

 

私は一人で独房に帰ってくるとベッドに倒れると辺りを見渡しながら自殺出来そうな物が無いか探すが何もない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…私が死ねば喜ぶんだ……

皆が……だから…死なないと…皆の為に」

 

 

私は頬を吊り上げながら笑う

瞳を濁らせながら

 

 

 

 





次回 

救われない艦娘(古鷹)

裏切られ捨てられ何もかもが失くなってしまった彼女は死にすがるものを
救われないとも知らずに



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壊された心 三

それから私の日常が変わった

死にたい…死ねば皆が喜ぶ

その気持ちだけが大きく膨れ上がりそれ以外はどうでも良くなっていった

 

 

だから様々な事をしようとした

拷問中に拷問器具で喉を切ろうとした

帰ってきては壁に頭を打ち付けて脳を破壊しようとした

トイレと見せかけて洗面所に水を張り溺死しようとした

 

 

それでも皆が私が自殺しようとするのを止めてくる

どうして?私は死ぬべき艦娘なんだよね?

どうして止めるの?

どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?どうして?

 

 

今日も独房に帰ってくるや否や何か死ねる道具が無いか探す

食べ物はあれだけなのが辛い

だってスプーンがあれば死ねるから……

 

 

最初の頃に言われた憲兵の言葉が憎く感じる

死にたいのに死ねないこれがどれほど辛いのか彼は分かっていない

 

 

だから今日こそは死のう

 

 

私はベッドを切り裂き紐を作り出すとそれを自分の首に巻き付け塀の一番上にくくり付けそのまま首をつる

苦しい…でもこれが今出来る精一杯の死ねる努力

 

 

「何してるんだ!古鷹さん!!」

 

 

憲兵が慌てて私の自殺を止めようとしてくると直ぐ様紐を切り落とし私は苦しさから解放されると同時に憲兵の懐から拳銃を盗み出す

 

 

「あ、おい!返せ!!」

 

 

私はおもむろにそれを額に当てると思い切り引き金を引くのだがカシャンと言う音しか出ず

何回も引き金を引いても弾が頭に当たらない

 

 

「どう……して?」

 

 

「……前にね同じことがあってね

彼女は拳銃のセーフティを解除出来なくて済んだから死ななかったんだ

でもそれから僕はここでの仕事時に弾は込めないんだ」

 

 

呆然とする私から格子の隙間に手を通し拳銃を取り返すと再びホルスターにしまうとここを去ろうとする

 

 

「……私はいつ死ねるんですか?」

 

 

「……さぁねまだ検討中らしいよ」

 

 

「………殺してください」

 

 

「…許可は得ていないから無理だ」

 

 

私はそう言われると格子を何度も叩きながら狂ったように叫ぶ

 

 

「殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して殺して!!!!

 

 

死なせてよ!!死にたいの!!私はもう生きていたくないの!!!

だから殺して!殺してぇぇ!!!」

 

 

憲兵さんは私を横目に見ながら冷徹にそして無慈悲に私に言い放つ

 

 

「……君は報われない

救われない

…諦めなさい、誰も君を助けてはくれない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

殺してよぉ!!助けてよぉ!!何で皆で私を捨てるのぉぉぉ!!

もう生きていたくないのぉぉぉ!!!」

 

 

私は泣き崩れながらボロボロの心と叩いた拍子で両手を自分の血で濡らしながら叫ぶ

誰にも届くわけがないのに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「以上が古鷹一番艦古鷹の罪状と犯行記録になります」

 

 

「ほほぅ……艦娘が提督を裏切ったか…

そんなことがあるとはなぁ驚いた」

 

 

藤谷元帥 信吾は大元帥たる東雲に今回の事件の事を報告しており東雲もそれをマジマジと見る

 

 

「となるとこいつも裏切るかも知れねぇな矢矧」

 

 

「かもしれませんね

今は裏切りませんのでご安心を」

 

 

「言うじゃねぇか艦娘の癖に」

 

 

「それよりも東雲大元帥、この艦娘の処刑を一週間後の一二○○にしようと思うのですが如何でしょうか?」

 

 

東雲は手元にある資料と古鷹の罪状今回の告白を兼ねてチェックしていると一つの紙を持ち上げる

 

 

「いや、三日後だ

急いで準備をしておけ」

 

 

「はい!三日後ですか!?

また何でそんな唐突に……」

 

 

「そうですよ大元帥

あまりにも早すぎます」

 

 

だが東雲はある資料と言うよりは履歴書を持ち上げると頬を吊り上げながら笑う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「三日後、俺がヘッドハンティングした新人が来るんだ

そいつに見せてやりたいのさ

艦娘の処刑をな」

 

 

履歴書には陸軍特殊任務部隊と言う肩書きとこちらを睨み付けてきている写真だけが貼られていた

 

 

 

 

 

 




次回

死刑執行

迫る古鷹の死刑執行
彼女には願ってもない日であり心待ちにする
最後の救いを求めて




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処刑

そして、物語は動き始める
一人の艦娘による願いと
ある男の勇気ある凶行によって





私の処刑が決まりその間私は死ぬことだけを考えていた

その日まで私は何もせず何も食べなかった

食事は処刑される本日まで手を付けなかった

 

 

やっと死ねるその願いが叶えられると思うと少し報われた気持ちになる

そんなことあるわけがないのに

 

 

そして、処刑場に連れていかれる前に最後の拷問があるらしく私は拷問室に連れていかれていた

 

 

「さってと、古鷹ちゃん

今日でお別れだねぇ!

と言うわけで今回の拷問は高速修復材を使わないで君を痛め付けることにするよ!」

 

 

拷問官はおもむろにバーナーとスプーン

そして、ハンマーを取り出しどれから使おうか悩んでいる

 

 

「最後だからね!取りあえず今日やることを言っておくと

君の両目を抉り取り、四肢の関節を破壊し、更にバーナーで君の喉を焼こうと思ってるんだ!

それと特別に君に選ばせてあげるね!

さぁどれからされたい?」

 

 

その声は楽しそうにしており私はそんなことはどうでもよく適当に返事を返す

 

 

「……何でも良いから早くして…

早く……殺してください…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

艦娘の処刑

普通は行われない事が行われると言うことで海軍の上層部も見つめる中それは行われる

通常処刑とは雷撃処分で済むのだが古鷹の罪がそれでは済まないと言われ本物の砲弾を使った処刑となっている

 

 

処刑場は、誰にも見られない様に大本営の近海にて行われる

大本営の窓からそれが見え周辺の海域は封鎖されておりどんな奇襲も救援も来ないようにと言うことだ

 

 

何人かの人間はこの処刑を楽しみにしてたり物珍しさで見に来ていた

だがその中でも全鎮守府の提督達は必ず召集されており全員その時を待っていた

それは藤谷率いる佐世保鎮守府も例外では無かった

 

 

「どうして!!

何で古鷹さんを裏切ったんですか!?皆さん!!」

 

 

青葉は声を上げながら処刑場を見下ろす藤谷達に怒りをぶつける

彼女も他の艦娘と共に尋問を受けていたが最後まで古鷹を庇い続けていたのだ

 

 

「青葉、落ち着いて?」

 

 

「何言ってるの衣笠!何で古鷹さんが助けてくれたのに私達が裏切ってあんな……あんな事言うなんて!!」

 

 

彼女は突然言われた解放に驚きを隠せずに皆に理由を聞いたところその真実を知った

藤谷や衣笠、木曾、日向達は彼女を裏切り捨てた真実を

 

 

「……青葉こうするしか無かったんだ

古鷹を見捨てなければ我々は助からなかった

提督も私達も」

 

 

「日向さん!本当にそれで良いと思ってるんですか!?

あの人は最後まで私達の為に戦い守ってくれたんですよ!!

それなのに!!」

 

 

藤谷達はある取引を尋問官達に持ち掛けられていた

そして、その取引に応じ彼等は彼女を古鷹を売っていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私達の身の安全と保証、そして提督の解放を条件に古鷹さんを捨てろ何て取引に応じるなんて!!」

 

 

そう彼らは自らの保身為に彼女を切り捨てた

彼女が助けを求めている何て知らずに

 

 

 

 




次回

報われない天使

彼女の願いは彼等には届いていなかった
絶望の淵に立たされた彼女には誰も手を伸ばさない




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処刑 二

「……仕方なかったんだ!!

もう耐えられなかったんだよ!」

 

 

古鷹が捕まってる間藤谷は親である信吾の部下達に酷く痛め付けられていた

だが、別に古鷹みたいに過剰にやられていた訳ではなくただ毎日殴られたり教養と言って座学をやらせれたりしていただけである

艦娘がどんな物かと言う

 

 

「古鷹さんだって!もっと酷いことをされていたかも知れないんですよ!

最後まで命を張って私たちを助けてくれた人をそんなん簡単に!!」

 

 

「簡単じゃねぇ!

だけど……俺達には提督が必要なんだよ…」

 

 

木曾も目を反らしながら答えるがやはり青葉の言葉が効いているらしく拳を握り締めている

 

 

「何で!提督も古鷹さんが好きなんですよね!?

あの人は皆を待っていたはずなのに!!」

 

 

「仕方ないじゃないか……!

俺は耐えられなかった……ごめん…古鷹……」

 

 

それしか藤谷は言えず崩れているとその背中を加古が擦る

 

 

「提督、あんたは悪くないよ

私達は艦娘だ、提督の為に尽くすのが生きる意味何だ

古鷹も…分かってくれるさ…」

 

 

加古の慰めに青葉は歯を食い縛るとその場を後にしようとするもその背中を日向に止められる

 

 

「……よすんだ、もう間に合わない」

 

 

「止めないでください!私はーーー!!」

 

 

「頼む……罰なら私が受ける…だから…頼む」

 

 

青葉の背中を掴む手が強くなるとその意味に気付く

日向は少なくとも古鷹を失いたくはなかったと

本当は失いたくない

だがそうしないと私達に未来がないと言う意味を

 

 

「後で私を好きにしてもらって構わない

解体するにも殺すにも

だから、提督を許してあげてくれ…青葉…」

 

 

「日向さん……」

 

 

それと同時にけたたましいサイレンが鳴り出し処刑場に艦娘達が配置に着く

 

 

『これより!!大犯罪者古鷹一番艦古鷹の処刑を開始致します!!

艦娘はこの処刑を必ずご覧になり裏切りがどんな意味を見せるのかきちんと理解してくださいね!!!』

 

 

その放送と同時に二人の艦娘が拷問を受けた後の古鷹を運び

処刑場の真ん中にある十字の木にくくり付ける

だがそこで青葉や日向は言葉を失う

 

 

 

「……ぇ?古鷹……さん?」

 

 

「………何だあの姿…は?」

 

 

 

処刑が始まり

古鷹が運ばれてくる

その姿は想像を絶する程に酷い姿であった

 

 

「……何故あんなに酷い姿何だ?」

 

 

「…さぁ?でも提督からは逃げたからって聞いたっぽい!」

 

 

処刑を担当する艦娘達長門や夕立もその姿に疑問を感じる

その姿とは喉をバーナーで焼き切られ

両目を失くし

関節は砕かれぶらんと垂れ下がり

全身に切り傷が残っており辛うじて生きている様な姿だった

 

 

「酷いな、まぁだが奴が選んだ道だ何も言うまい」

 

 

そして長門達は処刑するために実弾が入った各々の艤装を古鷹へと構える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「艦娘の処刑か

来たばっかりにとんでもないもん見せやがるな」

 

 

 

「……司令官、私今貴方にお願いしたいことがあるの」

 

 

その光景を一人の新人提督と大本営の問題児が見ているとも知らずに

 

 

 

 

 





次回

凶行

処刑される艦娘を見ている者達はこうはなりたくないと願い傍観する


二人だけを除いては



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処刑 三

全員が古鷹の姿を見る中各々の提督達は艦娘に指示を出すと古鷹に対し砲撃を開始する

だが、致命傷を負わせるだけで殺す気配はない

 

 

(痛い……そうだよね…痛いよぉ…)

 

 

砲弾が直撃するとその爆発が古鷹の体を更に酷いものにしていく

 

 

「まさか駆逐艦でもあんな良い的が居ると練習しがいがあるよね!!」

 

 

「だね!いつも棒切れとかばかりだけどこれなら敵の損傷とか分かるからやってて損は無いよね!」

 

 

その言葉は古鷹にも届いていた

古鷹に言われる言葉の数々が彼女の心を更に破壊し砕き苦しめていく

その姿を大本営の人間達はただ笑いながら見ていたりしていた

 

 

「っ!」

 

 

その姿を見ていられずに加古や衣笠は目を反らし

木曾や日向も拳を握り締めながら悔しがる

そして、安心していた彼女が犠牲になってくれていることが

 

 

「古鷹さん!!」

 

 

「駄目だ!青葉声を掛けるな!」

 

 

古鷹の名前を叫ぶ青葉の口元を藤谷は押さえ付け自分達には関係ないと言わんばかりに青葉を後ろに下げる

 

 

「提督、これの何の意味があるんだ?」

 

 

『大元帥からだ

最後に艤装のどの部分を撃てば敵を無力化出来るかって言う事らしい』

 

 

「……私は何故撃てない」

 

 

『長門はトドメを撃ってもらう

良いな?』

 

 

「あぁ、わかった」

 

 

長門はそれだけを言うとインカムをきると撃たれ続けている古鷹を睨み付ける

 

 

「ーーーと言うわけだ貴様にはこれから佐伯鎮守府に着任してもらう

向こうに着いたら前任者が居ないからマニュアルをキチンと読めよ」

 

 

「……なぁ、そんなことより妙に砲撃音が多くないか?」

 

 

「あぁ、窓から見てみろ

貴様に見せたかったんだ

艦娘の処刑だ」

 

 

その話が終わると大元帥は窓を開けその光景を二人に見せる

男は窓からその光景を見ながら溜め息をつく

 

 

「艦娘の処刑か

来たばっかりにとんでもないもん見せやがるな

随分とエグい方法だな?」

 

 

「貴様の所にもあっただろうこれぐらいのこと」

 

 

「ねぇ………とは言い切れないな」

 

 

男はその光景を見ながら溜め息をつくと廊下を歩いていこうとするのだが後ろに居る艦娘が窓を見たまま動かない

 

 

「どした、艦娘

あいつが気になるのか?」

 

 

「………司令官、私今貴方にお願いしたいことがあるの」

 

 

その言葉に男が反応すると艦娘は艤装を構えながら男に向き直る

 

 

「……お前、まさか?」

 

 

「……うん」

 

 

「……お前が言いたいことは分かるだがその覚悟はあるのか?」

 

 

「……あるわ!私はあの時死んでいった仲間に誓ったの!

だから、あの艦娘を助けたい!力を貸して!司令官!!」

 

 

男は覚悟を決めた艦娘の頭を撫でると不敵に笑いながら見下ろす

 

 

「…分かった

俺達の初任務だ!!

 

『叢雲!!』」

 

 

叢雲と呼ばれた艦娘は窓を大きく開くとその隙に男は廊下を歩いている大元帥に向けて言い放つ

 

 

「なぁ、東雲さんよ

あんた言ったよな

何でも一つ願いを叶えてくれるって?」

 

 

「……突然何だ?

確かに言ったが……」

 

 

「そうかい!それなら早速それを使わせてもらうぜ!!」

 

 

叢雲は艤装を展開しながら窓際に立つと男に向けて笑いかけると男も笑い合図を出す

 

 

「行くぞ!!!叢雲!!!」

 

 

「分かったわ!!司令官!!」

 

 

「おい!貴様ら!!何するつもりだ!?」

 

 

「なっ!貴女達!ここは三階ですよ!!」

 

 

先に叢雲が飛び降りるとその上から男が飛び降り叢雲に飛び乗りながら地面に降り立つと二人は処刑中の艦娘に目掛けて走り出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

痛い……熱い……

私の体が砲弾の熱と痛みに晒されている

艦娘達の怒りと笑い声が響き渡り私は身体を動かせずにいる

 

 

ここで理解してしまう

私は所詮使い捨ての道具

救われるわけがない存在

ただの兵器なのだと

 

 

目の前が真っ暗で何も見えない

目がないのは怖い

暗く何も見えない

光なんて無い

恐いよ……誰か助けてよ……

 

 

そう願っても私を助けてくれる人は居ない

だから死にたい

死んで楽になりたい

もうこんな世界に居たくない

 

 

「…提督もう良いだろう

そろそろコイツにトドメを」

 

 

『そうだな、良し長門トドメを刺せ』

 

 

「分かった」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……哀れだな艦娘古鷹

 

お前がやった罪は重い

 

私がもう貴様を殺してやろう」

 

 

 

「長門さんやっさしー!

 

犯罪者に情けなんて素晴らしいですね!」

 

 

その言葉が私に取って最後に聞く言葉何だと感じ

今までの事を思いだす

 

 

 

…………あれ?何だっけ?

分からないや、もう私は……壊れてるんだもんね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

口元を吊り上げ私は死を待つ

ずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと待っていた死

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く早く私を殺して!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でもその願いは無情にも砕かれる

甲高いまるで金属が擦れる様な音と爆発音で処刑を担当していた艦娘達が慌てている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近くに水上を走る音が聞こえる

こんな近距離で撃つの?

でもそれが確実かと思いながらその時を待つが来ない

そして私の両手足の拘束が切り落とされ抱き抱えられる

 

 

「大丈夫!?しっかりして!!」

 

 

…誰?私の事を死なせてくれないのは?

……近くに気配が二つ

一つは私を抱き抱えている艦娘

小さくて、でも力強く私を抱き抱えている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

分からない

私は殺されるはずなのに処刑されるはずなのに

何で………何で……貴方はそこにいるの?

もう一つの気配は私のすぐ目の前にある

電探は生きているから反応は分かる

私のすぐ目の前で大きく両手を広げている

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして貴方は凶行に及んだんだよね

貴方の言葉は一生忘れない

闇に落ちかけた私に手を差し伸べてくれた

 

 

 

 

 

私の英雄(ヒーロー)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いけどこの艦娘の処刑は今この時を持って中止だ!!

こいつは俺達が貰っていくぜ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

貴方は……だぁれ?

 

 

 

 

 

 

 

 




次回

新人提督と初期艦

死を願う艦娘に手を差し伸べたのは仲間でもなく提督(藤谷)でもない
艦娘の願いに答えた一人の新人提督と初期艦だった



いやーやっと出てきてくれましたねぇ
因みにこの最後は長門過去編でもやってましたね
これがちょっとしたフラグにもなってます




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二人の反逆者

突然現れたその男と艦娘に一同唖然とする中大本営の窓から拡声器を使いながら東雲が怒号を上げる

 

 

「佐渡!!!!!!!

貴様!!!何してやがる!!!!」

 

 

「おー、怒ってる怒ってる

恐いねぇ叢雲先生?」

 

 

「あんた意外と余裕あるのね……

あんなに怒ってる東雲見るの初めてよ……」

 

 

新人提督、改め佐渡は広げた両手を腰に当てるとやれやれと言うポーズを取ると東雲に説明していく

 

 

「だーかーら!!この艦娘は俺が頂いていく!!

これが俺の願いだ!!」

 

 

「そんなこと!!許可出来るわけ無いだろうがぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

大元帥東雲の怒号に気圧されていた元帥達だがその光景を改めて理解すると佐渡へ怒号を飛ばしていく

 

 

「そうだ!貴様!何をしてやがる!!」

 

 

「貴様新人だろう!?そんな犯罪者を庇いおって!!」

 

 

「退け!そいつは処刑されるんだ!!」

 

 

「殺せ!!ソイツを殺せ!!」

 

 

その怒号を聞いていると佐渡は怒りを露にしながら拳を握りしめていると窓から覗かせている元帥達に指を指しながら言い放つ

 

 

「黙れ!!グズ共がぁ!!

自分では手を下さす艦娘を使って犯罪者を処刑する?

ふざけるな!!!

そんなにこの艦娘を殺したいなら貴様らがやれや!!

銃を持ち!剣を持ち!こいつの苦しむ声を聞け!

こいつら艦娘はてめぇらの玩具(道具)じゃねぇ!!

こいつを殺したいならかかってこい俺が相手してやるからよぉ!!」

 

 

その声はギリギリ古鷹に届いていた

分からない

私は見捨てられた存在なんだよね……?

何で貴方は私を助けようとするの?

辞めて、私は死にたいの……どうして?

 

 

そう考えている間に古鷹は静かに気を失う

自らがまた死ねないと言う事実を抱えながら

 

 

佐渡の言葉に威圧されたのか元帥達は黙ってしまう中一人の艦娘が佐渡の目の前に立ちふさがる

 

 

「退いてもらおうか新人提督」

 

 

「断るよバーカ

誰かお前なんかの指示を聞くかっての

戦艦長門」

 

 

近くに近寄る長門に対し佐渡は睨みを効かせながら笑みを浮かべていると長門は主砲を佐渡に突き付ける

 

 

「司令官!!」

 

 

 

「…もう一度言う退け

ソイツは犯罪者で私達の敵だ」

 

 

「二度も言わねぇと分からないのかアホ

退かねぇよコイツは俺の物だ

これ以上誰にも手を出させねぇ

撃てるもんなら撃ってみろ」

 

 

一歩も譲らない両者に他の艦娘も慌てており叢雲は主砲を長門へと向けていると東雲の怒号が響き渡る

 

 

「もういい!!!!

その艦娘、古鷹一番艦古鷹の処刑は中断とする!!!!

佐渡 満!!貴様は今すぐ大会議室に来い!!!

処刑は今この時をもって中止だ!!!」

 

 

その言葉と共に東雲は姿を消し他の元帥達も慌てているのだがそれを見ると佐渡はニヤリと笑う

 

 

「どーも、そんじゃこの艦娘は貰っていくぜ」

 

 

「……………」

 

 

大元帥たる東雲の言葉には全員が従うしか無いのだがそれでも大本営は大混乱になっていた

そしてこの男佐渡の話がやったことは大本営中を駆け巡る

 

 

犯罪者の艦娘を庇い処刑を中断させた前代未聞の凶行として

そして、それをやったのが新人であり東雲が連れてきたと言う事実が

 

 

「行くぞ、叢雲

その艦娘大丈夫なのか?」

 

 

「……大丈夫、息はあるわ

かなり損傷は酷いけど…

と言うかあんた本当に度胸あるのね

普通艦娘にしかも戦艦の主砲突き付けられてまともに立ってられないわよ?」

 

 

「ハハハ!伊達に戦場を渡ってなかったからな!」

 

 

すると叢雲は何とか古鷹を抱き抱えると佐渡を盾にしながら航行し二人で岸に向かう

 

 

「にしてもお前の艤装にこんな使い方あるとはな

ビックリしたぜ」

 

 

「普段はこんな使い方しないわよ

と言うかこれが正規の使い方じゃないんだからね?」

 

 

佐渡の足には叢雲の耳型の電探を踏んでおりそれを使いながら何とか水上に立っていた

 

 

その後ろから長門が歯を食い縛りながら光景を見ており主砲を静かに構える

 

 

「長門さん!?駄目っぽい!それやったら!」

 

 

「邪魔をするな、ここで確実に仕留めてやる犯罪者め」

 

 

長門が主砲で古鷹を捉えるとインカムから唐澤の声が聞こえる

 

 

『辞めろ長門

これ以上の追撃は我々の罪になる』

 

 

「…………了解した」

 

 

唐澤に言われた長門は静かに主砲を下ろすがやはり悔しそうに歯を食い縛る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あれが正義の戦艦か

末恐ろしいな、まるで犯罪者を根絶やしにする化け物見たいだな

ああいうのは下手に刺激すると危険か?

 

………だが自棄に執着してるな

いつかぶつかるなアイツとは)

 

 

「どうかしたの?司令官」

 

 

 

「んー?別に何でもねぇよ」

 

 

 

佐渡は長門の殺気に気付いておりいつでも応戦出来るように腰にあるもう一つの閃光手榴弾に手を伸ばしていたが杞憂に終わってホッとしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回

裁判

古鷹を助けた佐渡は東雲に呼び出され裁判にかけられる
そして、古鷹を見守る叢雲にもある艦娘が牙を向ける




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二人の反逆者 二

「あーあ、まさかこんなことになるとはねぇ

全く呼び出しなんて初めてじゃねぇけどめんどくせぇな」

 

 

佐渡は叢雲と別れ古鷹を任せていると大会議室の目の前に来ておりため息と共に静かに扉を開ける

部屋は薄暗くまるで裁判所の様になっており一番上に苛ついている東雲が座っていた

 

 

「来ましたよ東雲大元帥

早くあの娘手当てをしたいんですけど?」

 

 

「貴様!!少尉の癖にでしゃばった真似しよって!!」

 

 

開幕から元帥らしい席から怒号が飛んでくるが佐渡は全く気にせず溜め息をつく

 

 

「そうだ!貴様が処刑を中断しなければこんなことにならなかったんだ!!!」

 

 

「あんな犯罪者を庇うとは頭イかれてるのか!?」

 

 

他にも席に座っている大将達が騒いでいると東雲が天井に向けて拳銃を空撃ちし場を静める

 

 

「黙ってろ

貴様らの意見なんぞ聞いてない

佐渡、あれは何の真似だ?

アイツは紛れもない犯罪者何だぞ?」

 

 

他の元帥達の怒号を物ともしない佐渡だが東雲に対してのみキチンとその理由を話す

 

 

「そうですね、ですが俺には関係ない

俺はアイツが欲しいから処刑を中断させた

それだけですよ」

 

 

「貴様!!あの艦娘古鷹がしたことを知らないと言うのか!?

ふざけるのも大概にーーー!!」

 

 

「黙ってろって言ってんだろうが藤谷元帥!!

奴がやったのは鎮守府に深海棲艦を招き入れ我々を陥れようとしたんだ

意味分かるな」

 

 

東雲の説明を聞いていると佐渡もその話を聞きながら頷く

 

 

「へぇ……あの娘が?

そりゃーお偉いさん達も怒るわけだ

そんな奴殺すに限るな」

 

 

「だから古鷹は死刑にするべきだ!!!!

今からでも遅くない!奴を死刑に!!」

 

 

「ならアイツは俺が貰っても問題ないですよね?」

 

 

「「「「は?」」」」

 

 

東雲以外が疑問に間抜けな声を上げると佐渡はニヤリと笑いながら腕を組んで答えていく

 

 

「だから、死刑にするなら俺にくれても問題ないですよね?」

 

 

「だから!奴は深海棲艦と繋がってーーーー」

 

 

「それは本当に?」

 

 

「……佐渡何が言いたい?」

 

 

「簡単な事ですよ

艦娘が人間を提督を裏切るなんてそうそうない

今までの歴史でそれが証明されている

そんなやつよっぽどの事をしたり艦娘を捨てたりするような奴だ

それこそ提督の責任なのでは?

艦娘に信じて貰えないなんてそんな奴に命何か預けたくないですからね」

 

 

「貴様に何が分かる!!新人のひよっこ少尉の癖に!!」

 

 

 

「なら言わせてもらうぞ

すぐそこに死が有り

仲間の死体が有り

銃に撃たれる痛みが

仲間達の恐怖が

お前に何が分かる?

俺から言わせて貰えば貴様らこそそんな所でお座りしている猿にしか見えないぞ」

 

 

元帥達は反論しようとするが佐渡は殺気を放ちながら全員を睨み付けると元帥達は萎縮してしまい東雲は溜め息を付く

 

 

「そいつはついこの間まで戦場を渡り歩いてきた化け物だ

そして一度として負けたことがない男

貴様らが話し合える相手じゃねぇんだよ

だがな佐渡、それは認可出来ない

古鷹は死刑囚だ

奴を生かしておくことは出来ないんだよ」

 

 

「へぇ?それなら俺との『取引』は無かった事にしますよ?

まぁ、それでもお前らを皆殺しにしてでもアイツは貰うけどな」

 

 

佐渡はニヤリと笑うと腰にあるホルスターに手を掛けると元帥達は怯え反射的に隠れようもするとそれよりも先に東雲が佐渡の机を撃ち抜く

 

 

「……落ち着け

だから貴様に提案があるんだよ」

 

 

「提案?」

 

 

「そうだ、古鷹が欲しいんだろ?

なら一つだけ方法があるそれは」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様もあの艦娘古鷹の罪を背負え

貴様ら二人が古鷹の罪を共に清算すると言うのであれば死刑は一旦先伸ばしにしよう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫かしらこの娘……」

 

 

叢雲は佐渡と離れ一人で古鷹の介護をしていた

近くにあったソファに古鷹を寝かせ

抉り取られた両目は自らの服を切り裂き目隠しをしており焼ききられた喉には佐渡から貰った薬が塗ってある

 

 

「……司令官平気かしら」

 

 

そう呟きながらふと立ち上がり古鷹の側を離れようとすると廊下の奥から一人の艦娘が艤装を付けたままこちらに近付いてくる

 

 

「……何か用かしら

戦艦長門」

 

 

「あぁ、古鷹をこちらに渡せ駆逐艦」

 

 

長門は一人で叢雲に接触を図り艤装を叢雲に構えたままでこちらに近付いてくる

 

 

「お断りよ、この娘は渡さない」

 

 

「……そうかならば力づくで頂くぞ!!!」

 

 

長門は不意に走りだし叢雲に向けて拳を振りかざしそのまま振り下ろす

確実に叢雲の頭を破壊するつもりだったらしく床に軽い凹みが付く

 

 

「本当に来るとはね驚いたわ

正義の戦艦」

 

 

「今のを軽く避けるか

貴様どうやら普通の艦娘では無さそうだな?」

 

 

長門の攻撃を交わし叢雲は後ろに飛ぶと自らの艤装から棒を取り出すと長門に向けて構える

 

 

「よこせ、その犯罪者を」

 

 

 

「渡さないわ、この娘は私が守る」

 

 

 

 

 





次回

海軍に逆らう二人

古鷹の死罪を消したいなら罪を被れ
その意味はこの海軍での未来を捨てろと言われた佐渡

そして長門は古鷹の生存を許さず提督に意思に反し追撃する

海軍から捨てられた艦娘
古鷹を救う事は並み大抵の事ではない



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二人の反逆者 三

「罪を被る?」

 

 

「そうだ、古鷹をどうしても助けたいと言うのであれば貴様のこれからを捨てろ

私との取引によってこれからのこの海軍で得ていく地位も

栄光も

未来も

艦娘も

全てだ

これから着任させる場所には何もない

味方も、仲間も、安全も何にもかな!!!

それでも貴様は古鷹を助けると言うのか!?」

 

 

佐渡は東雲が静かに怒り古鷹を助ける

その行為自体を良く思わず他の元帥達も佐渡の選択を待つ

 

「そうだ!貴様が選ぶ選択でこれからの海軍での地位が決まるんだ!!

慎重に選べ!!」

 

 

「あんな犯罪者を庇う必要何て無いんだ!考え直せ!」

 

 

「どうせ艦娘何て言うのは作り出せる!

またすぐに作れば良いじゃないか!?」

 

 

佐渡に言われるその言葉の数々

だが、佐渡の決意は変わらない

叢雲との『誓い』がそうさせてるわけではない

これは佐渡がある男に託された『願い』でありそれが彼の生きていく意味になっていたのだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうか、なら俺は全てを捨ててやる!!

罪を被ろう!俺と叢雲でアイツの古鷹ちゃんの罪を被り彼女を生かす!!!」

 

 

その選択を聞いていた会議室の元帥達は騒ぎだす

一人を除いては

 

 

「………艦娘の為に全てを捨てる人か…

彼を応援したいな…素晴らしいね佐渡提督」

 

 

一人だけその勇姿ある凶行に及んだ男を賞賛しそれ以外は怒号を飛ばしていく

 

 

「貴様正気か!?」

 

 

「あんな!あんな大して役に立たない重巡何かの為に!!」

 

 

「大元帥!こんな奴!死刑にしましょうよ!!!」

 

 

その怒号の中東雲が静かにイラつきながら机を思い切り叩くと佐渡を睨み付ける

 

 

「そうか……それが貴様の選択か……

良いだろう…ならば貴様に異動を言い渡す…

貴様は今日から小笠原鎮守府の提督だ!!!!

そして!これより貴様と叢雲は犯罪者だ!!

国家反逆、そして犯罪者を庇った罪により小笠原へと島流しにする!!!

精々あの艦娘の為に命を削るが良い!!!」

 

 

東雲はそれだけを言うと椅子を蹴り飛ばし怒り狂いながら大会議室を後にする

それに続くように他の元帥や大将達も佐渡を睨みながら後にすると一人佐渡は大会議室に残される

 

 

「ハハ、開幕から海軍に喧嘩売っちゃったぜ

まぁ良いや、あの娘が助けられるなら俺達何てどうでも良いしな」

 

 

佐渡は部屋を出ると毛延びをするとそのまま会議室を後にしのんびりとしながら叢雲の元へと歩いていく

 

 

「さってと叢雲を迎えにいくか!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ?とんでもない奴が入ってきたな」

 

 

「はい、提督に引けを取らないほどですね」

 

 

その後ろ姿をある提督と艦娘が見ているとも知らずに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃叢雲は長門に絡まれ古鷹を守りながら戦っていた

何人か海軍の人間が見てはいるのだがすぐに長門が睨みを効かせるとそそくさと居なくなってしまう

 

 

「あんた何かの権力がある艦娘なのかしら?

随分と派手にやるじゃない?」

 

 

「そんなところだ

にしても、珍しいな貴様」

 

 

「何がよ?」

 

 

長門は一時的に攻撃を辞めるがまだ諦めては居らず叢雲を睨み付ける

 

 

「誰にも懐かず

誰にも関わらず

誰にも心を開かない貴様がこんな犯罪者を庇うとはな

そうだろ?『一匹狼』」

 

 

「…その名前好きじゃないのよね

二度と呼ばないでくれる?」

 

 

叢雲は眉間にシワを寄せながら少しイラついていると長門はため息と共に腕を組む

 

 

「なら答えろ

何故この艦娘を助ける?」

 

 

「……別に?気紛れよ

ただこの娘を殺させたくないだけ

守りたいだけよ」

 

 

「………そうかならば退いてもらおうか!!」

 

 

長門は再び拳を振り上げ叢雲に襲い掛かろうとすると長門の後ろから憲兵が走ってくる

 

 

「コラァ!!そこ!何をしているんだ!!」

 

 

「…………む、邪魔が入ったか」

 

 

後ろからの憲兵に気付いた長門は拳をしまい憲兵は長門を注意する

 

 

「長門さん!貴女何をしてたんですか!?」

 

 

「何でもない、少し鍛練に付き合って貰っただけだ」

 

 

その言葉と共に長門は叢雲を睨み付けながら去っていくがその姿を叢雲はずっと見ていた

姿が見えなくなると肩の力を抜き大きく溜め息を付く

 

 

「君、大丈夫かい?」

 

 

「はい、助かりました」

 

 

「君は確か……あぁ!そう言うことか…

すまない私達の監督不行き届けだったようだ……」

 

 

憲兵は叢雲に対し頭を下げるが叢雲はそんなこと気にせず寝息を立てている古鷹の心配をする

 

 

「別に構わないわ

私がどんなことをしているかは理解しているもの」

 

 

「それでも私達は中立の立場だからな

何かあったら頼ってくれ

実はある艦娘からの報告で君達が戦闘していると聞いてね

その艦娘に礼を言っておくと良いよ

では失礼するよ」

 

 

ある艦娘からの報告それにちょっと引っ掛かる叢雲だったが憲兵はそそくさとその場を離れてしまい聞けず仕舞いにいるとまた別の二人組がこちらに歩いて来るのを確認すると睨みつける

 

 

「や、やっぱ辞めましょうよ!」

 

 

「いや!駄目だよ怖いけど私達しか出来ないんだよ!」

 

 

二人は武器や艤装を携帯しては居ないがさっきの長門があり叢雲は古鷹の前に立つと二人に艤装を構える

 

 

「何かしら?古鷹は渡さないわよ?」

 

 

「ま、待ってください!私達は貴女たちに危害は加えませんし!その艦娘を助けたいんです!!」

 

 

その言葉を聞いても叢雲は艤装を下ろさず警戒を続けていると緑髪色の女性がもう一人の後ろから言う

 

 

「その艦娘の治療を出来るのはここではこの人だけなの!

だから!お願い!私達を信じて!!

もしその艦娘に危害を加えたらどうしても良いから!」

 

 

その説得に叢雲は怪し半分に睨み付けているが溜め息を付きながら艤装を下ろす

 

 

「………話を聞こうかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廊下の奥で一人の艦娘が叢雲と二人が話しているのをじっと見ていた

少し話すと叢雲は古鷹を抱えてどこかに歩いていくのを確認するとほっと溜め息と共にその場に崩れ落ちる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね古鷹さん……

私に出来るのはこれぐらいしか無くて……

許してください………貴女を助けられなくて……」

 

 

一人、その艦娘は悔しそうに唇を噛み締めると口元に血が滴り落ちる

 

 

 

 

 

 

 




次回

二人の裏切り者

海軍も完全な対立した佐渡は小笠原への島流しを言い渡される
叢雲は長門から古鷹を守りきりある二人に付いていく
裏切り者と呼ばれながら




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協力者

(おい、アイツだぜ)

 

 

(聞いた聞いた、犯罪者の艦娘を庇って流された新人提督だろ?)

 

 

佐渡が廊下を歩いていると周りの者達がヒソヒソと噂話をしておりそれを聞こえてはいるが無視していた

 

 

「さってとそろそろだっけかな………とと!危ないぞ!!」

 

 

廊下を歩いていると一人の少女とすれ違いぶつかりそうになるがその少女は謝りもしないが佐渡は涙を流しているその姿を見て怒れずにいた

 

 

「全く、何かあったんかな?

まぁそれよりも叢雲か」

 

 

佐渡は待たせていた場所に向かい歩いているとその場所には叢雲と古鷹は居らず変わりに一人の少女が座っていた

 

 

「あっれぇ……?可笑しいなここだった気がするんだけど……」

 

 

佐渡がその少女に近付いていくとその少女は佐渡に気付き立ち上がると敬礼をする

 

 

「あの申し訳ありませんがここに二人艦娘が居ませんでしたか?」

 

 

「はい!彼女達には私達と共に来ていただいております!」

 

 

「うん?何故に?

……まさか、あんた…」

 

 

佐渡は臨戦体勢を取ると少女は慌てながら佐渡を宥める

 

 

「わわわ!待ってください!

違います!古鷹さんを今治療させて頂いてるんですよ!!」

 

 

「…あぁ!そう言うことですか!

で、貴女は?」

 

 

「申し遅れました!私夕張型 1番艦 軽巡洋艦 夕張と言います!

お待ちしておりました!佐渡提督!」

 

 

その自己紹介に彼女が艦娘であることを理解すると完全に臨戦体勢を解き溜め息を付く

 

 

「何だ、艦娘かぁ……って!古鷹と叢雲は平気なんだよな!?」

 

 

その瞬間佐渡は夕張の肩を掴みグラグラと揺らしていると夕張はその衝撃に頭を揺らされ目を回しそうになる

 

 

「待って!待って!待って!ください!!

今貴方を!待って!たんですよ!

すぐに!連れていき!ますから!!」

 

 

「ならよかった……二人は無事なんですね…」

 

 

「は、はい……とりあえず付いてきてください……」

 

 

夕張は佐渡を案内しながらちょっとした雑談を始める

 

 

「そう言えば佐渡提督は新人提督さんなんですよね!

またどうして提督に?」

 

 

「んー?まぁ、何だろう成り行きかなぁ……」

 

 

「成り行きでなったんですか……

でもでも、確か佐渡提督って東雲大元帥にヘッドハンティングされって本当何ですよね!?」

 

 

「まぁね~、俺は元陸の人間だし」

 

 

そんな感じで話をしていくと夕張は廊下の間にある地下へ通じる階段を下りていくのを見ると佐渡は疑問に思いながら付いていく

 

 

「うん?地下に居るんですか?」

 

 

「はい!と言うよりはそもそも建造等も地下のある場所で行ってるんですよ?」

 

 

(まぁ、地上よりは安全…なのか?)

疑問に思いながら夕張にしばらく付いていきながら話しているとある部屋にたどり着き佐渡は疑問に思う

 

 

「んん?本当にここに?」

 

 

「はい!ではようこそ!私達の根城!

大本営専用大型工廠へ!!!」

 

 

夕張が扉を開くとそこには左側に大きな店とその右側に開発、建造、修復と書かれた暖簾(のれん)が掛かっている入り口があった

部屋の中は何か鉄を叩く音やバーナーの焼いている音がしている

 

 

「ほほう……これが工廠…」

 

 

「はい!ではこちらに!」

 

 

夕張に案内されるように歩いていくと暖簾をくぐり歩いていくと妖精達が何かを作っているのだが佐渡を見るや否や敬礼をしてくれ佐渡もそれを返すように敬礼を返す

 

 

しばらく工廠内を歩いていると奥に立ち入り禁止と書かれた暖簾をくぐりまたしばらく歩いていくと工廠の騒がしい音が聞こえない所まで来るとある部屋に通される

 

 

「……療養室?」

 

 

「えぇ、普段は重症を負った艦娘だけしか入れない絶対不可侵エリアになります

ここに普段から入れるのは私と明石さん位で他の人は誰一人入れません

だけど今回は二人とも特別なんですよ?」

 

 

「へぇ………って明石さん?」

 

 

初めて聞くその名前に驚いていると夕張がその部屋に入っていってしまい佐渡も慌ててその部屋に入ると周りには機材ばかりありそれが全て奥の巨大な五つのポッドに繋がっていた

 

 

「こりゃまた凄いな……」

 

 

部屋は殺風景と言うわけではなく全く無駄なものがない

ゴミ箱と機材とソファーと椅子だけそれ以外は全くなく二つに区分されており

一つは機材を操作する為の操作室

一つはポッドだけがある修復室に分けられている

 

 

「司令官!」

 

 

「おぉ!叢雲!無事だったか!?」

 

 

ソファーに座っていた叢雲は佐渡を見るや否や近付き横に立つと案内していた夕張も機材を操作する一人の女性の側に立つ

 

 

「明石さん!連れてきました、古鷹さんを救いだした佐渡提督です!」

 

 

「お!ありがとう夕張ちゃん!」

 

 

その女性は機材を操作しており白衣を見に纏い椅子だけをこちらに向けてくると立ち上がりお辞儀をする

 

 

「お待ちしておりました!佐渡提督!

私は工作艦の明石と言います!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ようこそ!私達の工廠へ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





次回

ようこそ!明石の工廠へ!

突然佐渡達の前に現れた二人
彼女達は何故裏切り者の二人と古鷹に手を貸したのか

来月イベント……夏イベは地獄って聞いてますがどうなのでしょうか…(震え声)




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協力者 二

軽い自己紹介を済ませた両方はとりあえずは古鷹の状態を話し合いたく向き合うように椅子へ座る

 

 

「それで彼女の容態は?」

 

 

「かなり酷いですね……両手足の骨折全身の火傷に喉をバーナー等で焼き切られ両目の欠損

ここまでやるかってほどに容赦なくやられてますね……

流石に完全に治るか……と言うほどですね……」

 

 

「そう……ですか…」

 

 

二人はポッドの中に入っている古鷹を見ると心配そうにしていると叢雲もずっと古鷹を心配している

 

 

「と言うより何故彼女はあんな目に?

処刑にしてもやりすぎではないのですか?」

 

 

「それは……」

 

 

明石は叢雲をチラッと見ると佐渡もその合図に気付く

 

 

「叢雲、すまないが席を外してくれないか?」

 

 

「……分かったわ」

 

 

佐渡の意図を理解した叢雲は静かに部屋を後にするとそれを追うように夕張も出ていくと明石が本題を話し始める

 

 

「…彼女は処刑される寸前まで拷問を受け続け心身とも壊されているんです」

 

 

「……今時拷問なんてやってるんですかこの海軍は」

 

 

「はい……しかも艦娘相手ですからその耐久性の高さと高速修復材を多量に使いかなり……酷く…」

 

 

その話を聞き古鷹が置かれている現状を理解する

そして明石からとんでもないことを言われる

 

 

「それとこれは貴方だけに話します

貴方は古鷹さんを処刑から救いだし自らの物にすると言いましたね?

普通、そんなことは許されません

ですが彼女は既に殺される前提の艦娘

なので、貴方が『引き取った』と言う形で処理されるでしょう

元々所属していた鎮守府からは転属と言う形で貴方の鎮守府への異動になります

 

そして、ここからが本題です

彼女を解体しませんか?」

 

 

「……なぜそんなことを?」

 

 

佐渡が疑問に思い明石に返すと明石は真面目な面持ちでありながら少し溜め息混じりに話す

 

 

「彼女がここまで痛め付けられてる時点で恐らく心も精神も殺られている可能性がかなり高いです

特に海軍の拷問や尋問は心を壊すのを目的にもしています

例え貴方が引き取ったとしても彼女は戦力としては使い物にならないでしょう

幸い私なら叢雲さんにバレないように直ぐ解体と建造を済ませることが出来ます

いかがですか?貴方の誠意次第でいくらでもーーーー」

 

 

「断る」

 

 

明石が説明している間に佐渡は即答で返すのだが明石は真顔になると佐渡に詰め寄る

 

 

「……本気ですか?艦娘は所詮兵器

私も変わりません

彼女達の壊された心を治すのはかなりの時間と労力が必要になります

貴女達の足枷にしかなりませんよ彼女は」

 

 

「それでもです、俺達は彼女だからこそ助けたんです

解体何かしたら意味がない

それに解体されたら彼女は死んでしまう

名前は残る、でも彼女と言う存在は消えてしまう

俺達は古鷹一番艦古鷹を助けたいんじゃない

古鷹という女性を助けたいんです」

 

 

佐渡の表情は真剣な面持ちであり明石も彼女を生かしておく意味の無さを説明する

 

 

「大変ですよ

艦娘は身体こそ丈夫ですが心はそうはいきません

これを断ればもう私は貴方を助けられない」

 

 

「構いません、俺達が選んだんです

責任は持ちます」

 

 

「…心が壊れた艦娘はもう戦場に立てないかも知れないのに?」

 

 

「それでも共に生きていくことは出来ます

それだけで充分です」

 

 

「……貴方を信じてくれませんよ?」

 

 

「信じてもらうように努力します

なんだってやりますよ」

 

 

明石は深い溜め息を付くと最後の言葉を返す

 

 

「彼女を……本気で救うつもりですか?

その道は辛く険しくそして何よりも貴方達を苦しめますよ?」

 

 

「愚問ですな、あの時古鷹を処刑から救いだした時に既に覚悟は出来てます

どんなことでも乗り越えて見せます

俺は提督何だ、艦娘の全てを受け止めて見せます

それが俺達が彼女達に出来ることなんですから」

 

 

二人の間に沈黙が流れるがその沈黙を破ったのは明石の笑い声だった

 

 

「プ、アハハハハ!!

貴方は凄いですね!いくら新人だからってそこまで言う人は居ませんよ!!

アハハハハ!!」

 

 

「えぇ……これが普通なんじゃないですかねぇ……」

 

 

明石はは一通り笑うと涙を手で拭いながら佐渡に再び手を出す

 

 

「やっぱり貴方に協力して正解ですね

良いでしょう!これから私達は貴方達を全面的に協力します!

古鷹さんの事は任せておいてください!完璧に直して見せます!」

 

 

「ありがとうございます!

明石さん!」

 

 

二人は手を取り合うとお互いに笑いあい今後の事について話し始める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良い提督ですね、あの人」

 

 

「えぇ、私が唯一認めた人間よ」

 

その話が夕張と叢雲に聞かれているとも知らずに

 

 

 

 




次回

協力者達

古鷹を助け、その誠意を明石に見せ付けた佐渡
彼女達の信頼を勝ち取ると同時に今回佐渡達を助けるように仕向けた艦娘が現れる




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協力者 三

「では!彼女の事は任せてください!」

 

 

「はい、お願い致します」

 

 

佐渡と叢雲は明石の工廠を後にしようと外に出ると一人の女性が待ち構えていた

 

 

「話は終わったみたいですね、佐渡提督」

 

 

「……えっと…貴女は?」

 

 

佐渡は突然現れたその女性に驚きながら後ろから現れた明石と夕張が声をあげる

 

 

「あ、大淀さん!」

 

 

「あ、大淀来てたんだ?何か用?」

 

 

「えぇ、そこの佐渡提督と少しお話がしたくてここに来たのよ」

 

 

「……え?もしかして貴女も?」

 

 

佐渡がまさかとも思いながらも返事を待つと大淀と呼ばれた女性は眼鏡を直し自己紹介を始める

 

 

「初めまして佐渡提督

私は大淀型一番艦 軽巡洋艦 大淀と申します

ある人の代理で貴方を訪問させて頂きました」

 

 

「ある人の代理……?」

 

 

佐渡が疑問に思っていると大淀は工廠の中にある椅子に座り佐渡も対面するように椅子を持ってきて座る

先程まで作業していた妖精達も今は作業を停止していた

 

 

「はい、誰とは言えませんが私はある元帥の秘書艦を勤めておりその代理です

今回、貴方達を秘密裏に助ける様にお願いされ明石と夕張さんに協力を依頼したんです」

 

 

「貴女が!」

 

 

二人が大淀の隣に移動するとお辞儀をする

 

 

「で、どうだったの?明石、夕張さん」

 

 

「問題ないよ、この人なら彼女を任せられると思うよ」

 

 

「うん、この人は元帥の予測通り艦娘を大切にしてる人だよ」

 

 

大淀はその話を聞くと頷くと佐渡へこれからの事を話していく

 

 

「分かりました

でしたら、佐渡提督これからの事を話していきます

よろしいですか?」

 

 

「は、はい!」

 

 

「では改めて確認させてもらいますね

元陸軍特殊任務部隊『存在しない者(unknown )』所属

コードネーム『死神(Death)

通り名もあり他の仲間から『戦闘の天才』とも呼ばれていた

そして東雲大元帥にその功績を認められ海軍にヘッドハンティングされてきた人ですよね」

 

 

「…………へぇ?随分と知っているみたいですねぇ?

だが無闇に言って良いことと悪いことあるの分かるか?」

 

 

佐渡の過去を掘り下げた大淀はその瞬間後悔する

確認するためとは言えど彼の事は大元帥から気を付けろと言われていたのを忘れていた

 

 

「……………すみません言い過ぎましたね」

 

 

大淀の喉元にサバイバルナイフを佐渡が突き付けもう片方の手にピストルを大淀の心臓を捉えていた

 

 

「大淀!!!」

 

 

「動くな

動けばお前から殺す」

 

 

佐渡のドスが効いた声に明石は寒気を感じその場に凍り付く

 

 

「悪いがその昔はあんまりバレる訳には行かないんだ

頭が良いお前なら分かるな?大淀とやら」

 

 

「は、はい……」

 

 

大淀も深海棲艦と戦ったこともある何度も死にかけた事もあったが目の前の佐渡はそれよりも怖かった

その瞳は冷たく冷酷に大淀の命を狙っていた

 

 

「俺の過去を次話したらお前を殺す

これ以上の情報漏洩は避けなければならないんだ分かるな?」

 

 

「誠に申し訳ありませんでした

佐渡元『元帥』」

 

 

「げ、元帥!?」

 

 

「佐渡提督って元帥だったの!?」

 

 

 

「………まぁ良い二人とも?この事は秘密だよ?」

 

 

佐渡はサバイバルナイフとピストルを仕舞うと二人に対し人差し指を指すとニカッと笑う

 

 

「「は、はい…」」

 

 

「はぁ……佐渡を怒らせるからよ

私でもコイツが怒ったら手をつけられないのよ?」

 

 

叢雲が呆れていると大淀は彼が何よりも命を大切にその重さを理解していることを知る

そして、その事を嬉しく思い笑う

 

 

「フフ、成る程貴方なら心配無さそうですね

先程は申し訳ありませんでした貴方を試してみたくて」

 

 

「あんた、Mか何かなのかい?

アハハ、悪いなあんまりそう言うのは勘弁してもらいたいな」

 

 

「ち、違いますよ!

貴方の実力なら彼女を任せられると思ったんですよ!?」

 

 

大淀は必死に弁明するが佐渡は首を横に降りながら呆れている

 

 

「と!とりあえず!今貴方の海軍で置かれている現状をお伝えします!!」

 

 

「お、そうでしたな、忘れてた忘れてた」

 

 

 

 

 

 




次回

裏切り者達の立場

大淀との接触で佐渡達が海軍で置かれている立場が説明される
古鷹を助けただけで彼等はほとんどの物を失っているとも知らずに

今回はちょっと佐渡さんの過去を話していきましたね
彼の過去話はいつか叢雲との出会いとして書いていきたいかなと思ってます




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協力者 四

佐渡と大淀は再び座るとバインダーを取り出し佐渡達に向き直る

 

 

「正直、今の貴方達は裏切り者

つまり海軍からは爪弾きにされている状態です

それに加え、貴方は元々の位元帥への出世コースからも外れ正直出世はほぼ不可能に等しいです」

 

 

「ま、そうでしょうな

犯罪者を庇ったらそうなるでしょ!」

 

 

佐渡は楽観的に捉えているが大淀には古鷹を庇った事をこの後の二人に重い枷になることを伝える

 

 

「それに加え、貴方達二人は基本的に転属、転勤等はありません

特に佐渡提督、貴方は死ぬまで小笠原の勤務と言うことになります

海軍から抜け出すこと辞めることすら許されません」

 

 

「マジかぁ、ブラックだなぁ

海軍は」

 

 

「更に、大本営からの物資や資材の提供は不可能になります

よっぽどの事があれば……はあるかもしれませんが正直大本営は貴方達には非協力と言う態度を取る見たいです

結果論から言わせてもらえれば貴方達は全ての出世、立場を全て失っています」

 

 

「だってよ、叢雲」

 

 

「ま、仕方無いわね

それほどの事をしでかしたんだもん」

 

 

佐渡達の置かれている状況を伝えてるはずなのに二人は意外と楽観的に流しており大淀は疑問に思う

 

 

「……佐渡提督、貴方が東雲大元帥とした『取引』も無効になっているのによろしいんですか?」

 

 

「んー?良いんじゃね

と言うよりは俺は取引内容の一つだけは守ってもらったし欲しいものは手に入ったから別に?」

 

 

「分かってるんですか!

貴方の有能性は熟知していますし貴方はもっと評価されるべき人間なんです!なのに!何でこんなことを!!」

 

 

大淀は佐渡の事を大元帥や他の情報ルートから仕入れておりほとんど熟知している

だからこそ、今回の事件を重く見ているのに当の本人は楽観的なのが許せずに居た

だが、佐渡はそんなことをどうでも良いことの様に鼻で笑う

 

 

「なぁ、大淀さん

あんたは目の前で飢え死に仕掛けてる奴に自らが持ってる食い物をあげられるか?」

 

 

「え…?突然何を?」

 

 

「だから、自分はいつでも食べれるし金もある

それを持ってる状態で目の前に飢えで苦しんでる奴に食い物をあげれるのかって聞いてるんだ

どうだ?」

 

 

「そ、そんなのあげられますよ?

別にいつでも変わりなんて買えば良いじゃないですか?

その飢えで苦しんでる人は私とは違いますから……」

 

 

「ほほう?ならあんたなら俺が今何をしてるのか分かるだろ?

俺がやってることはそう言うことなんだよ」

 

 

「何を言って………」

 

 

佐渡は立ち上がると煙草を吸おうとするが明石さんに両手をバツに出され仕方無く煙草を噛むだけにする

 

 

「俺が持ってるもの、これから先を捨てるだけで彼女を古鷹ちゃんを救える

それなら俺は喜んで捨ててやりますよ

権力も地位も立場より俺は彼女の命を取ります

どんなことをしても人間や艦娘は変われる

まぁ変わらない奴も居るかもしれないその時は俺が責任を持って処理します

でも、俺は艦娘を信じたい

何故裏切ったのかは分からない、だから彼女を変えたいんです

 

 

だからこれは俺と叢雲のワガママだ

あの艦娘を古鷹ちゃんを助けたいと思い共に選んだ道です

これからどんなことが起きても俺達は古鷹ちゃんを助けたことに後悔は無いです」

 

 

「そうね、私達に後悔は無い

例え犯罪者であろうと私達は救える命は救いたいの

どんなものを犠牲にしようとも私達が死のうとも

救える命がそこにあると言うのであれば

私達は全力でその命を救うわ」

 

 

二人の硬い信念を見た三人は呆気に取られていると明石がその姿を見ながら笑いだす

 

 

「アハハ!凄いですね佐渡提督、叢雲さん!!

本当今の海軍にはこう言う人が居てくれるのは最高ですね!!」

 

 

「そうね、普通艦娘の為に権力とかを捨てる人なんて居ませんよ

本当に艦娘を大切に思ってるんですね」

 

 

「ま、俺の命はコイツがあってこそですからね!」

 

 

「ちょっと!司令官私の頭を撫でないでよ!!」

 

 

佐渡は叢雲の頭をぐしゃぐしゃにしていると叢雲もイラついてるけどその顔は嬉しそうにしておりその姿を見ながら明石と夕張は笑っていた

その光景を見ていると大淀は自らの提督の事を思い出す

彼も艦娘を大切にし、今でも古鷹を何とかしようとしたが出来なかった人を

 

 

「………………ふふ、凄いですね貴方は」

 

 

「凄くないですよ、ただバカなだけですよ俺達は」

 

 

「悪いわね、迷惑かけちゃって」

 

 

佐渡達の信念を聞いた大淀は確信する

この二人はいつかこの海軍を変えてくれると

 

 

「…分かりました!私も貴方達に協力します!

もし何かありましたら私にご連絡ください、出来るだけの事は貴方達を助けますよ!」

 

 

「本当ですか!?ありがとうございます!」

 

 

「良かったわね司令官」

 

 

大淀からの信頼を勝ち取り佐渡達は一旦工廠を後にする

そして、大淀に「三日後貴方達を小笠原鎮守府に送ります

私の指定する港に荷物をお持ちになりながら来てくださいね?」と言われ二人は地下を出て廊下を歩いていた

 

 

「いやー!意外と優しい人達も居るもんだな!」

 

 

「そうね、正直二人だけはキツいと思ってたしね」

 

 

だが、その二人の背後に誰かが近付き声をかける

 

 

「あ、あの!」

 

 

「んぁ?」

 

 

「なにかしら?」

 

 

二人は振り返るとそこには緊張した面持ちの提督らしき男と二人の女性が居た

 

 

「佐渡……提督ですよね?」

 

 

「あぁ、そうだよ?あんたは?」

 

 

「わ、私の名前は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

藤谷 淳一 古鷹の提督です」

 

 

 

 

 

 

 

 




 

次回

対峙

古鷹の治療を明石達に任せ大本営から去ろうとした二人の前に現れた藤谷
彼の目的とは?




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協力者 五

「……ふーんあんたがあの娘の『提督だった』人か」

 

 

二人は足を止め藤谷と対する様に立つが叢雲がため息をつく

 

 

「へぇ、古鷹さんの提督ね

もしかしてお見舞い?」

 

 

叢雲は警戒こそしているものの特に興味無さそうに話しておりため息もついている

 

 

「い、いやそうではなくてね……」

 

 

「古鷹に会わせてくれよ!!」

 

 

藤谷がその話をしている最中後ろの女性がそれを遮るように話し始めてしまう

 

 

「無理よ、彼女は今治療中だもの

意識すらないわ」

 

 

「な、ならせめて古鷹さんがどこにいるか位は!」

 

 

「それも無理よ、彼女は大本営から狙われている身

貴女達においそれと教えるわけにはいかないわ

と言うかあんたたち名前ぐらい名乗りなさいよ」

 

 

ため息混じりに話す叢雲は二人を睨み付けると自己紹介を始める

 

 

「……加古、古鷹二番艦の加古って言うんだ」

 

 

「衣笠よ、青葉型二番艦の衣笠」

 

 

「ふーん、まぁ良いわ

私は叢雲 吹雪型五番艦の叢雲よ

と言うかあんたたちまさかとは思うけど古鷹さんの知り合い?」

 

 

叢雲が話している中佐渡は黙ってその話を聞いており不思議にも思うが佐渡の代理として話を続ける

 

 

「そうよ!古鷹さんが所属してた佐世保鎮守府の仲間よ!」

 

 

「仲間……ねぇ?」

 

 

「そうだよ!古鷹と会わせてくれよ!!

私達だって心配でーーー」

 

 

「ねぇ、貴女達何でお礼の一つもないの?」

 

 

「「……え?」」

 

 

叢雲はうで組をしながら睨み付けると続けるがその声は怒りに満ちていた

 

 

「私達が助けた後、貴方達が現れてお礼の一つもない

それよりも古鷹さんに会わせろやら心配やら言ってるけど何なの?

そんな奴等に会わせるわけないでしょ?」

 

 

「なっ!あんたたちに頼んだ覚えは無いし!助けたのもだって戦力が欲しいからだろ!

古鷹は強いから!」

 

 

「そうよ!そんな人達に古鷹さんは任せられないわ!!

やっぱり奪い返してやるわ!!」

 

 

「あんたたち言わせておけば!!!」

 

 

「落ち着け叢雲」

 

 

怒る叢雲に手を出し後ろに下がらせると佐渡が前に出る

 

 

「叢雲の言う通りだ、何故今俺達に接触した?

お前達がもし彼女の事が大切だから鎮守府の仲間だからと言われても意味が分からない

説明してもらおうか藤谷さん」

 

 

「だから!古鷹は!!」

 

 

「黙れ艦娘、お前に聞いてない

俺はその提督に聞いてるんだ口出しするな」

 

 

佐渡は冷たく言い放つと加古は黙り込んでしまい藤谷が重い口を開き始める

 

 

「彼女が私達の鎮守府に所属していた仲間だと言う事は事実です

それで私達が貴方達に接触したのは……」

 

 

「古鷹ちゃんの返却ですか?」

 

 

「…その通りです

彼女は私達の鎮守府の仲間です

だから!」

 

 

「そうかそうだなぁ別に返しても良いとは思うんですけど……」

 

 

「本当か!やったな!衣笠!」

 

 

「うん!分かってくれる人で良かったね!」

 

 

三人が安堵の溜め息と喜んでいると叢雲が佐渡を睨み付けるがその顔の影に怒りが見えているのが叢雲には、分かってしまった

 

 

「ただし一つだけ質問に答えてください

それで決めさせてください」

 

 

「質問……?」

 

 

「えぇ、簡単な質問です

それに答えてくれれば構いませんよ」

 

 

佐渡は笑顔になりながらも藤谷に問いかける

 

 

「どうして古鷹ちゃんを助けずに処刑を傍観していたんだ?お前なら俺達よりも先に助け出せたよな?」

 

 

「それは………その……」

 

 

質問の意味を理解した藤谷は黙り込んでしまいそれに慌てて加古と衣笠がフォローを入れる

 

 

「し、仕方無いだろ!あんな状況じゃ助けるなんて無理だ!!」

 

 

「そうよ!あんな!長門さんが処刑担当してて他の提督やお偉いさんが見ている中助けるなんて無謀よ!」

 

 

衣笠も加古がそう言うと同時に藤谷もその返答に答えを言う

 

 

「……彼女を助ける事が出来なかった

俺は佐世保鎮守府の提督で他の艦娘の命を預かる身としてあの状況で彼女を助ければ佐世保鎮守府の仲間が危険に晒される!!

だから!助けられなかったんだ!本当は助けたかったよ!!だって彼女はーーー」

 

 

藤谷の話を聞いていた佐渡は目を細め冷たく言い放つ

 

 

「嘘を付いたな貴様、この話は無しだ」

 

 

「…………え?」

 

 

佐渡はそれだけを言うと藤谷に背を向け歩き始める

 

 

「ま、待ってくれ!俺は嘘なんて!!」

 

 

「他の鎮守府の仲間を助けるため?命を預かる身だから?

違うだろ、お前はお前の保身の為に彼女を捨てたんだろ?」

 

 

その言葉が藤谷の心に大きく突き刺さる

佐渡にはそんな話をしてないのにも関わらず

 

 

「そ!そんなこと!」

 

 

「何人もお前の様な奴を見てきた戦場でな

戦争だから、指揮官だから、リーダーだから

そうやって言い訳をするやつの特徴があるんだ

それは自らの守るものがあるから一人を捨てたって言う

悪いが貴様と俺は違う

お前が一を捨てて百を救うと言うのであれば

俺は一も助けて百も救う

お前はその立場だからと言う理由で古鷹ちゃんを捨てた

違うか?」

 

 

「そ……そんなこと……」

 

 

「無いと言いきれるのか?」

 

 

そして藤谷は黙ってしまう

その通りだったからだ

佐渡に言われて改めて理解させられる

古鷹を捨てたのは鎮守府の仲間を守るため

……自分の立場を守るため

だって彼女は艦娘(兵器)なのだから

 

 

「それの……それの何が悪いんだよ!!

艦娘は兵器だろ!それなら!あの娘を解体して新しく作れば!!」

 

 

その瞬間叢雲が怒りの余り艤装を藤谷に向け放とうとするが佐渡がそれを辞めさせる

 

 

「……退いて司令官

こいつを殺すわ」

 

 

「辞めろ、分かるけど抑えろ

とりあえずこの話は終わりだ藤谷さん

古鷹ちゃんは渡さない」

 

 

佐渡は叢雲を宥めるとその背中を押しながら無理矢理場を離れようとすると藤谷が叫ぶ

 

 

「頼む!彼女を返してくれ!!」

 

 

その言葉に叢雲は更に怒りを増すが佐渡は冷たく言い放つ

 

 

「断る、彼女は私が貰っていく

あの娘は俺の物だ、誰にも渡さない」

 

 

藤谷はそれ以上こちらに言ってこなかったが叢雲がかなり機嫌を損ねていた

 

 

「アイツ、クズね

いつか殺してやる」

 

 

「辞めろ、殺すのは敵深海棲艦だけだ」

 

 

だが、佐渡も怒りを隠せずに廊下を歩き曲がり角を曲がると一人の少女が居た

 

 

「………ぁ」

 

 

「うん?あれ君はあの時の……」

 

 

「知り合い?司令官」

 

 

「ご、ごめんなさい!!」

 

 

ポニーテールの少女はそれだけを言うと佐渡達から駆け足で逃げていきポケットからハンカチを落とす

 

 

「あ、ちょっとお嬢さんハンカチ……」

 

 

佐渡が声をかけようとするが既にその姿が無く仕方無く諦める

 

 

「行っちゃったわね……」

 

 

「あの娘……誰なんだろうか?」

 

 

 




次回

出立そしてもう一人の協力者

藤谷との話が終わり時が流れ佐渡達は小笠原へ旅立とうとする
だがその後ろから一人の艦娘が現れる


長くなってしまいもうしわけありません……
やっと過去小笠原に向かい始めます
今とは比べ物にならないほどですけどね




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小笠原へ

三日後早朝4時

辺りが薄暗い中佐渡達は小笠原へ出立するためにボートと艤装の準備をしていた

 

 

「よし!食べ物あるし武器もある!

他にもある程度の品は揃えたしこんなもんか」

 

 

最後のチェックを済ませると佐渡は古鷹が入った医療ポッドに手を伸ばし彼女が入ってるのを確認する

 

 

「すみません、佐渡提督

修理が間に合ったのですが彼女の意識が戻らなくて……」

 

 

「いえいえ!ここまで綺麗に身体を治してくださっただけで流石ですよ!!」

 

 

古鷹の意識はまだ戻ってなかった

彼女の損傷は昨日治ったのだがどうやらそれ以上に消耗が激しすぎたらしく意識の覚醒までには行かなかった

 

 

「でもこれ貰って良いの?

高そうだけど」

 

 

「大丈夫!予備はあるしこれ一つぐらい何時でも作れるからね!

それにこれの中に入ってる以上かなり安全だよ!」

 

 

夕張が自信満々に言うと大淀が準備を終わらせ水上に立つとその横に叢雲も立つと佐渡もボートに乗り込む

 

 

「では、佐渡提督、叢雲さん

お二人を小笠原へと送り届けますね!」

 

 

「はい!って別に大淀さんがわざわざ来なくても……」

 

 

「いえ、二人だけですと流石に心配ですからね

あそこは私位しかたどり着けませんから」

 

 

「え?それってどういう意味ですか?」

 

 

佐渡が疑問に思っていると大淀は「なんでもないですよ!」と笑顔で話しており首を傾げていると明石と夕張が佐渡と叢雲の手を取る

 

 

「佐渡提督!絶対無事にたどり着いてくださいね!」

 

 

「叢雲さんお気をつけて!絶対に沈まないでくださいね!!!」

 

 

「「???」」

 

 

二人は首を傾げると大淀が眼鏡を直すと同時に水上偵察機を飛ばし辺りを警戒しながら出立しようとする

 

 

「では!二人とも私に付いてきてくださいね!

絶対に離れずに!」

 

 

「え、あ、はい?」

 

 

「分かったわ?」

 

 

「ま、待ってください!!」

 

 

そして大淀が走り出そうとした瞬間後ろから大声での呼び止める声に大淀は焦り急いで出立しようとする

 

 

「佐渡提督!行きますよ!誰かにこれを見られるわけには!!」

 

 

「え、えっと?」

 

 

「待って大淀さん、彼女はどうやらそう言う奴じゃなさそうよ?」

 

 

「え?」

 

 

大淀と他の四人も振り返ると一人の綺麗な女性がこちらに向けて傘を差しながら艤装と共に走ってきており明石と夕張の横に辿り着くと両手を両膝に置きながら苦しそうに息を上げている

 

 

「よ……良かった……間に…合いました…

まさか…こんなに…早いとは……」

 

 

「え、えっと……貴女は?」

 

 

佐渡が疑問に思いながら首を傾げていると明石と夕張が唖然とする

 

 

「申し遅れました!

私は大和型一番艦 戦艦 大和と言います!

本日佐渡提督が小笠原鎮守府へ向かうと聞きその支援に参りました!」

 

 

「大和さん!?」

 

 

「な、何で貴女が!?」

 

 

佐渡と叢雲以外が驚いており大淀も目を真ん丸にしながら驚いていた

 

 

「ど、どうして貴女が……?

だって貴女は……?」

 

 

「提督が大淀さんだけですとキツイでしょうからと私が派遣されてきたんです

私は出撃停止命令が出てますから大本営も欺けるだろうって」

 

 

大和は微笑みながら言うと佐渡に向き直りお辞儀する

 

 

「初めまして、佐渡提督

本日はある提督の密命により二人を無事に小笠原へ届けろと言われております

よろしくお願いいたします!」

 

 

「いえ!こちらこそよろしくお願いいたします!」

 

 

佐渡はボートから降りると大和と握手を交わし大和も水上に降り立ち出立の準備をする

 

 

「そんじゃ、いきますか!」

 

 

準備が終わり古鷹を乗せたボートのエンジンをかけると全速力で小笠原へと向かう

 

 

 

「いざ!目標着任先小笠原鎮守府!!」

 

 

 

 

 





次回 

ドーナツの輪

大和の協力を元に佐渡達は小笠原へと向かい出す
意識の無い古鷹と共に


南方海域攻略大変ですわぁ……




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小笠原へ 二

その声と共に全員が走りだし四人は防波堤を離れ水平線へと消えていくと明石も夕張は落ち着かない様子だ

 

 

「大丈夫かな……」

 

 

「大丈夫ですよ!絶対に…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく航行していると明石達が見えなくなり佐渡は不意に大淀に尋ねる

陣形は佐渡を囲うように大淀が先頭、叢雲が右側、大和が左側に展開している

 

 

「で、大淀さん

何でさっきあんなに心配されたんですか?俺達」

 

 

「………実は貴方達が行く小笠原とはかなり危険な所なんです」

 

 

「そんなに?でも本島から近いわよね?」

 

 

「はい、それでもかなり危険な海域なんです

私も提督から聞いておりますが下手に艦隊を動かせば壊滅させられるほどらしいです」

 

 

 

大和も頷きながら答え艤装を前に構えながら辺りを警戒している

 

 

「小笠原には昔栄えていた鎮守府がありました

島だと言うことを良いことにブラック鎮守府でしたが戦果はきちんと上げており大本営も強く言えない程に強かったんです

そのおかげか島自体も活気に溢れ多くの人が住んでいました

ですが、二年程前に突然南方棲戦姫の歴戦種が指揮する艦隊によって壊滅させられました

鎮守府はほとんど破壊され街も大空襲によって壊滅

そのあと大本営が奪還作戦を開始したのですが時に遅し

鎮守府に所属していた艦娘共々提督も町民皆殺しにされたそうなんです」

 

 

「………また何でそんなことに…」

 

 

「分かりません、ですが奪還作戦の時に気になる資料を見つけまして……」

 

 

「一体何を見つけたの?」

 

 

叢雲が聞くと大和がその疑問に答えていく

 

 

「深海棲艦を使った新しい燃料、電力の生成らしいです」

 

 

「……なによそれ…」

 

 

「恐らく深海棲艦の実験の一つでしょう

ですが、それしか見付からず生存者も居なかった為訳も分からずにその資料は大本営に預けられることになりました

問題はここからなんです」

 

 

大淀は辺りを警戒しながら眼鏡を直すと続ける

 

 

「奪還した小笠原には深海棲艦の影も無く当時は簡単に通れたらしいんです

それこそ深海棲艦の目的が小笠原鎮守府の破壊と島の破壊を目的にしていたらしく

そこまでは良かったんです

一年程前に再び小笠原に向かった艦隊が居たのですが深海棲艦と出くわしたそうなんです

しかもかなり練度が高い艦隊と」

 

 

「何でまた……深海棲艦は居なかったんだろ?」

 

 

「はい、そのはずですが小笠原をぐるっと一週するように艦隊が配備されておりしかもそれ全てが並みの深海棲艦とは違うほどに強いらしいんです

お陰さまで下手に小笠原へ艦隊は行かせられずになり小笠原鎮守府の修繕や復興は断念せざることを得なくなりました

 

ですが大本営はそこに目を付けました

それなら左遷や使えない者達の処理に使おうと」

 

 

「………成る程な、自分達は手を汚さずに深海棲艦を使って処理しようってか

上手いこと考えるじゃねぇか」

 

 

「はい、ですのでこれから向かう小笠原にはどんなルートを使おうと必ず深海棲艦とぶつかります

でも、私が何とかして見せます

私は他の艦娘より遥かに高い索敵能力があります

出来るだけ深海棲艦と遭遇しないルートで通ります

奴等は早朝の数は少なく更に私がルートを選択すれば戦闘にならずに済むはずです

任せてください!」

 

 

「そいつは頼もしいな!叢雲さんや!」

 

 

「そうね、私は戦闘ぐらいしか出来ないしね」

 

 

「大丈夫ですよ!例え戦闘になっても私が皆さんを守ります!

戦艦ですし戦闘経験もあります!必ずやりきりますから!!」

 

 

「マジか!嬉しいねぇ!

今度大和さんの提督にもお礼言いたいなぁ」

 

 

そう楽しく話していると大淀が何を見付けたら指示を出し始める

 

 

「左舷前方敵艦隊確認

右に迂回します、付いてきてください!」

 

 

「了解!」

 

 

佐渡はボートを右に動かしまだ見ぬ深海棲艦から離れるように航行していく

 

 

「やはりまだ居るみたいですね

ドーナツの輪っか見たいに警備されてます

何とか隙を付いて入りたいですね……

次!右舷前方敵多数!

進行ルートは左ですから右に迂回します!」

 

 

「あいよ!」

 

 

大淀に言われるままに航行する

水平線からは全く敵も影も見えないが大淀は集中しながらその先を見ながら佐渡を何とか小笠原に届けようとする

 

「不味い!予想より艦隊数が多い!!

佐渡提督!直角に曲がり様子を伺います!付いてきてください!」

 

 

「分かったよ!」

 

 

大淀が焦っている間佐渡はボートを片手に双眼鏡で水平線を覗くと水平線の端に何か六つの物影が見えるがそれをきちんと見えている大淀には驚きを隠せなかった

(すげえな、あんなの普通見えないぞ

これが艦娘か)

 

 

「良し!間を見つけた!!

佐渡提督!直進します!全速力!!」

 

 

「よっしゃ!行くぜ!!」

 

 

大淀を先頭に全速力で走り出すと叢雲と大和が辺りを警戒しながら走っていたのだが徐々に速度を落としていく

 

 

「大淀さん?どうしたんですか?」

 

 

「…………やられました

奴等、ここまで知能が高いなんて…」

 

 

その言葉の意味は目の前の水平線から来る五つの影が証明していた

 

 

「まさか……」

 

 

「奴等、私達が小笠原に向かうことを最初から分かっていたのかこちらが向かっていたのを察したのか分かりませんがあの艦隊に私達をぶつけるように他の艦隊を動かしていました……

後ろ、右、左全方向に奴等の艦隊があります 

囲まれました……」

 

 

「嘘でしょ…」

 

 

「やるしか無さそうですね…」

 

 

大和と叢雲が構えると佐渡も双眼鏡を取り出し前方からくる五体の深海棲艦に目を向ける

大淀は歯を食い縛ると三人に戦闘の合図を伝える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵艦隊……見ユ」

 

 

佐渡の双眼鏡には重巡リ級を筆頭に戦艦ル級 雷巡チ級 重巡リ級 空母ヲ級の五体が映し出されていた

 

 

 

 

 

 




次回

突破せよ小笠原防衛網!

小笠原周辺に配備されている深海棲艦隊
大淀の力によって何とか複数戦は避けられたものの囲まれてしまい前方から来た艦隊と衝突する


この五艦編成どこかで見覚えはありませんか?
答えは次回!



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小笠原へ 三


今回は少し長いです
ごめんなさい!!!





「おいおい、マジかいな……」

 

 

佐渡は正面からこちらに来る深海棲艦に驚きを隠せずに居ると叢雲、大和が艤装を構える

 

 

「撤退は……出来なさそう?」

 

 

「はい……恐らくこのまま後ろに下がれば奴等は攻撃してこないでしょう

ですが、時間がよろしくありません

今日撤退を許せば貴方達を送り届ける事自体が出来ない可能性が高いです

この送り自体が大本営に逆らってる状態ですからね……」

 

 

「やるしかないんでしょ、結局」

 

 

叢雲が艤装を取り出し構えるとヲ級が艦載機を飛ばし先制でこちらの制空権を狙ってきており応戦しようとするが

 

 

「任せてください!

三式弾砲撃開始!!」

 

 

敵艦載機に向けて大和が三式弾を砲撃すると見事に直撃しほとんどの艦載機を撃墜するが何機かは残ってしまいこちらに向け突っ込んでくる

 

 

「叢雲!」

 

 

「分かってるわ!!」

 

 

突っ込んでくる艦載機に向けて叢雲は機銃を使い一つずつ撃墜するがやはり全ては破壊出来ずに何機からか爆撃を受けてしまい辺りに水柱が上がる

 

 

「佐渡提督!」

 

 

「大丈夫だ!どうやら外したらしい!」

 

 

だが次の瞬間ル級が佐渡に対し砲撃を行いすぐそばの海面に着弾させ更に大きな水柱を起こす

 

 

「……外した?わざとか?」

 

 

「はい!恐らく警告と言う意味でしょうか……

ですがこちらも下がれません!皆さん!行きましょう!!」

 

 

「分かったわ!」

 

 

「了解です!!」

 

 

「待ってくれ!!」

 

 

大淀が二人を連れて走り出そうとすると佐渡がそれを止める

 

 

「佐渡提督!どうしてーー」

 

 

「ここで無闇に奴等を撃沈したところでそのあとに周りの艦隊に袋叩きされるだけだ!」

 

 

「で、でもどうするんですか!?この戦わずしてこの状況を……」

 

 

「任せておけ、こっちも武器はたんまり持ってきてるんだ何とかしてやるさ!」

 

 

佐渡は腰に付けたいくつかの武器を取り出すと微笑みながら深海棲艦と対峙する

大淀を筆頭に叢雲、大和が敵深海棲艦とぶつかり佐渡は奥で三人に指示を出しながら敵の動きを分析していた

 

 

「大淀さん!左の重巡リ級と雷巡チ級を!

大和さん!戦艦ル級と空母ヲ級を!

叢雲、真ん中の重巡リ級を頼む!」

 

 

「「「了解!」」」

 

 

佐渡の指示に三人が動き始めるとリーダー格らしい旗艦リ級は全員に指で合図を出すと全員が頷き動き始める

(やっぱりアイツか

指で合図、まさか馴れてるのか?)

 

 

旗艦リ級の合図にチ級が大和に雷撃を放ちそれと同時にリ級が突っ込んでいく

 

 

「大淀さん!魚雷四発!右側に少し避けて主砲左側に!!」

 

 

「了解!」

 

 

大淀が避けると魚雷が大淀の側を掠り主砲を向けると丁度リ級の頭部を捉える

 

 

「!!」

 

 

「貰った!!」

 

 

大淀が主砲を撃とうとした瞬間旗艦リ級が大淀の足下を撃ち抜き体制を崩した大淀の主砲は空を切り外してしまう

 

 

「なっ!」

 

 

すると旗艦リ級はまた指で指示を出すとリ級とチ級は頷き後ろにバックステップを取りながら後退していく

 

 

「大和さん!ヲ級の飛行甲板を撃ち抜ける!?」

 

 

「やって見せます!

撃てぇ!!」

 

 

大和が主砲を放つと真っ直ぐヲ級を捉えるがその間にル級が立ち塞がり艤装を使い大和の主砲を流すように受けながす

 

 

「嘘!?」

 

 

その瞬間ル級が大和に突っ込んできており慌てて対処しようとする

 

 

「大和さん!落ち着いて!

奴の足下を撃ち抜きそのまま前進!近距離で撃ち抜いてやれ!!」

 

 

「りょ、了解!」

 

 

大和は深く息を吐くと主砲をル級の足下に放ち水柱を上げさせる

ル級は自らの顔を押さえながら海水を取ると大和が近距離に迫り主砲を向ける

 

 

「今!吹き飛べぇ!!!」

 

 

大和が主砲を放つとル級は慌てて避けようとするが旗艦リ級がル級の足下を撃ち抜き体制を崩させると大和の主砲がル級の頭部を掠り髪だけを撃ち抜かせる

(アイツ……やはり戦い馴れてやがる!!)

 

 

疑惑から確信に変わった佐渡は自らの所持してる火薬武器を見ると突破口を見付ける

 

 

「叢雲!気を付けろソイツ戦い馴れてるぞ!!」

 

 

「分かったわ!!」

 

 

叢雲は旗艦リ級に近寄り近接戦闘を仕掛けようとすると旗艦リ級も叢雲に近付き右手の主砲で叢雲を殴りかかってくる

 

 

「私に近接戦を仕掛けるつもり!?

悪くないわね!!」

 

 

旗艦リ級の攻撃を交わし叢雲は腰の主砲を当てようとするが旗艦リ級は直後に跳躍し足に付いた魚雷を叢雲に放つ

 

 

「近距離で撃ってくるわね!!」

 

 

旗艦リ級の魚雷を避けると取り出した艤装で思い切り腹を貫こうとすると旗艦リ級はその艤装を主砲で叩き落とすと同時に叢雲にかかと落としをしてくる

 

 

「こんのぉ!」

 

叢雲は何とか片手で防ぐがその次に主砲を叢雲に突き付け砲撃を放つと叢雲が意図も簡単に吹き飛ばされる

 

 

「ガハッ……やるじゃないの!!」

 

 

少しお互いに距離を取ると旗艦リ級の強さを佐渡は改めて実感する

自分以外の四人カバーしながら自らの戦闘能力も高い彼女に叢雲達は苦戦を強いられる

 

 

「叢雲!大和さん!大淀さん!

ちょっと来てくれ!この艦隊を突破する!!」

 

 

佐渡の声に反応した三人は戦闘を中断し少し下がるのだが向こうがそれを許してくれるわけがなく叢雲と大和だけは戦闘を続けて大淀だけが佐渡へ向かう

 

 

「私が聞きます!教えてください佐渡提督!」

 

 

「オッケー!少し耳を貸して!」

 

 

佐渡はこれから起こす作戦内容を耳打ちすると大淀は目を丸くしながらそれを聞く

 

 

「正気ですか!?

危険すぎます!」

 

 

「それでもやるしかない!一度限りだが間違いなく突破出来る!!」

(それに確認もしたいしな)

 

 

大淀は躊躇っていたが仕方ないと思いながら作戦を大和と叢雲に伝えると大和も驚くが叢雲はニヤリと笑う

 

 

「ほ、本気ですか!?」

 

 

「アイツらしいわ、やるしかないわね!!」

 

 

作戦を聞いた叢雲は直ぐ様その立ち位置に移動すると大和も渋々移動し大淀も構える

 

叢雲を前方に大淀、大和がその後ろに構えるその後ろから佐渡がボートで突っ込みボート操縦しながら片手で武器を構える

 

 

「全員!やるぞ!!」

 

 

「「「了解!」」」

 

 

「食らいな!!」

 

 

ボートを操作しオートモードにすると腰に付けたベルトから手榴弾を取り出し何個か前方のリ級達に投げ付けると目の前で爆発を起こし爆煙に包まれ一瞬見えなくなるがヲ級の艦載機がその爆煙を消し去ると佐渡達の陣形が変わっていることに気付く

 

 

「強硬突破!行くぞ!!

ほらよ!お次を食らいな!!」

 

 

佐渡のボートを真ん中に後ろに大和

前に大淀、叢雲と言った変な陣形ではあるが佐渡は続けて別の手榴弾を投げ付けると、どんどんリ級達に突っ込んでいく

その姿に呆れた旗艦リ級はル級に指示を出すとル級は正確に投げられた手榴弾を狙い撃ち破壊するとその手榴弾は爆発を起こすのだがお次は真っ白な爆煙だけになり佐渡達の姿を隠す

 

 

「!!」

 

 

その手榴弾に驚いた旗艦リ級は直ぐ様ヲ級に指示を出し艦載機達を飛ばさると爆煙を晴らすように指示を出す

ヲ級の艦載機で白煙を消そうとするとその中から全速力で叢雲と大淀が突っ走って来ており旗艦リ級は驚きながらも応戦しようとする

 

 

「叢雲!大淀さん!頼むぞ!!」

 

 

「「了解!」」

 

 

叢雲は魚雷を放ち大淀は旗艦リ級達の足下を狙い砲撃すると旗艦リ級達はその衝撃に体制を崩し更に叢雲の雷撃が直撃し旗リ級達はその場に座り込んでしまう

 

 

「いっくぜぇ!大和さん!!」

 

 

「はい!!!」

 

 

白煙の中から佐渡と大和さんが走り抜けてくると佐渡は再び別の手榴弾を取り出すと全速力で旗艦リ級達に突っ込んでいく

それに苛ついた旗艦リ級達は佐渡達に砲撃をするが叢雲が弾いたり大淀が庇ったり等して何とか耐える

(もう少し!もう少しだ!!)

 

 

佐渡のボートがある程度まで旗艦リ級達に近付くと最後の手榴弾のピンを抜き思い切り投げ付ける

 

 

「全員!!耳と眼を塞げ!!

大和さん!全速力で頼むぞ!!」

 

 

「は、はい!!」

 

 

大和は艤装の主砲をボートに押し付けると固定させ両耳を塞ぎ全速力でボートを押しながら航行する

それと同時に佐渡は体制を崩しかけるが何とか立て直しサングラスと耳栓をする

叢雲と大淀も耳と眼を閉じると全速力で走り出しその光景を見たル級達は呆れながら主砲を叢雲達に向け放とうとするのだが

 

 

「やっぱり、お前達は人間の武器を知らないみたいだな?」

 

 

佐渡が笑うと同時に手榴弾が爆発を起こし甲高い金属音と閃光が辺りを包みル級達もその光と音にやられ耳と眼を押さえながら苦しみだす

 

 

「ーーー!!!ー!!」

 

 

 

「今だ!!!全速力で駆け抜けろ!!!」

 

 

叢雲と大淀は目を瞑りながら苦しんでいるル級達の側を駆け抜け佐渡のボートも旗艦リ級の側を通り抜けるが瞬間佐渡の背筋が凍り付く

(コイツ!!マジかよ!!)

他の深海棲艦が混乱してる中旗艦リ級だけは艤装で光を防ぎ耳を塞いでおり通り過ぎる佐渡を睨んでいた

(不味い!この状況だとやられる!!)

大和も叢雲も大淀も閃光でやられてる中佐渡は一人旗艦リ級と対峙しようとするが

(………え?)

 

佐渡が動こうとした瞬間旗艦リ級は眼を瞑り佐渡を見逃す

 

その行動が一瞬だったが佐渡は確信を得ていた

(……見逃された?何でだ?)

旗艦リ級に見逃された佐渡達は全速力でその海域を後にし何とか突破していく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウゥ……何ダ今ノハ……」

 

 

佐渡達が駆け抜けた後しばらくするとル級が眼を擦りながら周りを見始めると視力が戻ってきており状況を把握する

 

 

「居ナイ!奴等ハ!?」

 

 

辺りを見ると先程まで戦っていた艦娘と男が消えており焦っていると艦載機を飛ばしていたヲ級が呟く

 

 

「逃ゲラレタ、小笠原ニ向カッテル」

 

 

「ナッ!ナラスグニ追ワナイト!!」

 

 

ル級に続きリ級、チ級も追撃しようとするが

 

 

「待ちなさい、α、β、γ、Σ

これ以上の追撃は無しです」

 

 

突然旗艦リ級がそれを止めるとαと呼ばれたル級が意を唱える

 

 

「何故止メル!ソラ!!

奴等ハ姫様ノ島ヘノ侵入者ダゾ!?」

 

 

「ソウダ、ソラ止メナイト姫様ニ怒ラレル」

 

 

「これ以上あの艦隊と戦えば我々の方が被害を被ります

それに奴等は我々を殺す気配は無かったですからね

恐らく小笠原鎮守府への着任予定がある提督なのでしょう」

 

 

「ナラ尚更!!」

 

 

「向こうには戦艦大和が居ましたその気になれば我々何て簡単に倒せたでしょう

だが、それをしなかった

我々も無益な戦いはしません

今まで来ていた提督とは違うのでしょう

何かあれば私が直接手を下します

安心しなさい、貴女達は悪くない私が独断で決めたことです

何かありますか?」

 

 

「……ソラガ言ウナラ…」

 

 

「チッ分カッタワヨ!デモ私達モオ仕置キハ受ケテアゲル!!」

 

 

「意義無シ…デス!」

 

 

「ソラハイツモ正シイ、信ジヨウ」

 

 

「ありがとう皆

では哨戒を続けます

他の艦娘、艦隊が来た場合は殲滅するように

私は姫様に連絡を入れます」

 

 

「「「「了解」」」」

 

 

旗艦リ級改めソラは携帯を取り出すとある人へ電話をかける

(あの男……かなりのやり手だった

下手に戦えばこちらの損害が大きいからと判断したが、よかったのだろうか)

何回かコール音の後に相手が出る

 

 

『はあぃ何か用かしら?ソラ』

 

 

「姫様、誠に申し訳ありません

貴女様の島へ侵入者を許しました」

 

 

『………へぇ?貴女が?詳しく聞かせなさい?』

 

 

 

 

 

 

 

 





次回

ようこそ死の島へ

小笠原を防衛していた艦隊を振り切り佐渡達はようやく小笠原に到着した
だが島の状況は思ってたよりは酷かった


今回出てきたのは佐渡達と会う前のエアが仕切る艦隊の一つソラ艦隊の五人でした!




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小笠原諸島

「どうやら……撒けたみたいですね…」

 

 

「本当ですか!?流石ですね!佐渡提督!」

 

 

「流石ね司令官」

 

 

「……あぁ」

 

 

佐渡は先程見逃してくれた旗艦リ級の事が引っ掛かっているがそれよりも古鷹を守れた事の方が大切と思いながら忘れることにした

 

 

「…見えてきましたよ、小笠原諸島です」

 

 

大淀が言うと全員が正面を向くと前方に島が見えてくる

早朝と言うだけあって暗いのだが街灯すら付いておらず漁港には沈没仕掛けている船や半壊している防波堤等もある

 

 

「……あれが小笠原…か」

 

 

鎮守府は海に近いところにあるのだが遠くから見て分かる様に半壊しており当時の様子が良く分かる

しばらく航行していると足場が安定している防波堤に着きボートを繋ぐ

 

 

「やっと……着いたぁ!!」

 

 

「はぁ……本当に疲れたわ…」

 

 

佐渡と叢雲は防波堤に上がると毛延びや欠伸をしながらやっと着いたことを喜んでいると大淀と大和もその姿を見て微笑む

 

 

「では、私達はこれで失礼します!」

 

 

「お二人をご無事にお届け出来て良かったです!」

 

 

「ありがとうございます!大淀さん!大和さん!

本当に助かりました!」

 

 

「ありがとう二人とも本当に助かったわ

貴女達が居なかったらここに着けなかったしね」

 

 

佐渡と叢雲は二人と握手を交わしながらたどり着けた事を喜んでいるが大淀は眼鏡を直しながら強く手を握りしめる

 

 

「貴女達はこれからですよ

ここは捨てられた者達の最果て

二人はこの劣悪な環境と酷い状況で何とか生きていかないと行けません

これは私の連絡先です

いつでもご連絡ください!精一杯二人を支援致します!!」

 

 

「ありがとうございます……

にしても何でそこまでしてくれるんですか?

誰か分からないですがその人の命令とは言えどここまで……」

 

 

佐渡が困惑していると大淀は眼鏡を直しながら微笑む

 

 

「応援したくなったんですよ

最初貴方に近付いたのは提督の命令でしたが古鷹さんを守ろうとする意思、その度胸と実行力に私は賭けたいと思ったんです

それに先程の戦闘で貴方の指揮は少し無茶もありますが優秀なのも良くわかりました

これだけでは足りませんか?」

 

 

「……いえ、ありがとうございます

本当に助かります!」

 

 

佐渡が大淀に頭を下げると次は大和が佐渡の手を取る

 

 

「佐渡提督頑張ってくださいね!

私も二人に協力出来ることがありましたら何でもしますからね!」

 

 

「ありがとうございます大和さん!」

 

 

「では、私達はこれで」

 

 

大淀が防波堤を離れようとしたとき何かを思い出したかの様に艤装から手紙を取り出す

 

 

「そう言えば佐渡提督!

こちらを」

 

 

「……手紙?」

 

 

「はい、ある艦娘から貴方に必ず届けてほしいと

差出人の名前は言えませんが彼女は嘘はつかないと思いますよ

それと必ず一人でお読みくださいと言われております」

 

 

「はい?分かりました?」

 

 

誰からか全く分からないがその手紙は可愛い便箋になっておりポケットにしまうと大淀達と別れを告げる

 

 

「では!お二人ともご武運を!

古鷹さんをよろしくお願いいたします!!」

 

 

「佐渡提督ー!叢雲さーん!お元気で!!

また会える時は提督と一緒にご挨拶させて貰いますね!!」

 

 

「はい!任せてください!

古鷹ちゃんは俺が守って見せます!!」

 

 

「えぇ!その時を楽しみにしてるわ!!また会いましょう!

本当に二人ともありがとう!!」

 

 

大淀と大和に別れを告げ水平線から見えなくなると佐渡はボートから色々と運び出そうとする

 

 

「よし!叢雲行くぞ!

荷物運び出すから手伝ってくれ!」

 

 

「分かったわ!」

 

 

早朝5時

佐渡達は持ってきた物資や食べ物を運びながら自らが着任する予定の小笠原鎮守府へと歩き始めていた

 

 

「にしても酷い状態だな」

 

 

「そりゃそうよ

深海棲艦からの攻撃を受けてそのまま放置された島だもの」

 

 

まずは物資を運び小笠原鎮守府の前に置いての繰り返しをしながら最後に二人はゆっくりと古鷹が入った医療ポッドをボートから運びだすと二人で運んでいく

 

 

「鎮守府もボロボロだな

こりゃ酷い」

 

 

「そうね、本当にここに来たことある奴が居るのかしらってレベルよね」

 

 

小笠原鎮守府

かなり大きく三階建ての建物でありコンクリートと木造の建築になっており正面には海が見える最前線基地

だが、窓ガラスは壊れ鎮守府の所々には砲撃で空いた穴があったり等酷い状態である

入り口のネームプレートも雨の酸化により見えなくなっており地面も弾痕等が残っている

幸いしたのが現在冬と言うこともあり雑草等は生い茂って居なかったと言うことだけ

 

 

「さてと……じゃあその前に鎮守府を……」

 

 

佐渡が鎮守府の入り口を見ると何かの違和感を感じる

確かに鎮守府の入り口扉は壊れているが何故か半開き状態であり風や動物が入ったなら分かるが明らかに何かが入った後がある

 

 

「何してるのよ司令官?」

 

 

「ちょっと待ってろ叢雲」

 

 

佐渡は叢雲を鎮守府正面に待たせると扉にそっと近付いていくとその違和感の正体に気付く

地面は昨日の雨によりぬかるんでいるが少しだけ削れている

しかも入り口には石の屋根があるのだがそこには何もなく丁度屋根の中にあるものがべったりと付いていた

それは鎮守府の中に続いており床を這いずった後があった

 

 

「………叢雲艤装を構えろ」

 

 

「は?あんた何言って……!」

 

 

叢雲も佐渡に近付くとその意味を理解し艤装を構える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「血痕だ、誰かこの鎮守府に侵入したらしい」

 

 

それは傷付いた身体を這いずった後であり床に広がる血痕は鎮守府内に続いており侵入者が居ると言う意味だった

 

 

 

 

 




次回

先住者

何とか小笠原鎮守府にたどり着いた佐渡と叢雲
だが鎮守府内に続く血痕に二人は困惑しながらもその正体を掴みに行く


最近赤城さん、蒼龍が改二になりまして
航空戦力が充実してきました!
次のイベントも完走してやるぜ……



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小笠原諸島 二

「でも何で……ここには誰も居ないんじゃ」

 

 

「分からない

だがここに飛ばされてきてあの深海棲艦の防衛網を突破して何とかたどり着いたって事じゃないか?」

 

 

佐渡は腰から銃を取り出しゆっくり扉を開くと中から悪臭と共に血の匂いがする

 

 

「酷い臭い……」

 

 

「二年以上も放置されてる鎮守府だからな

まぁ仕方ないさ」

 

 

二人は中腰になりながら血の後を辿っていくと一つの部屋に辿り着き佐渡が止まれの合図と共に声を抑える

 

 

(……叢雲、ここで待機

俺が先に突入する)

 

 

(馬鹿!相手は深海棲艦かもしれないのよ!?)

 

 

(こういうのは馴れてるし負傷してるなら問題ない

お前が被弾してもここでは治せないから待ってろ

良いな?)

 

 

佐渡の指示を仕方無く聞くとゆっくり佐渡は部屋の扉に手をかけドアノブを回し銃で少しだけ扉を開けていく

(気配はあるな

だが、妙に静かだ……

寝てる……のか?)

 

 

それと同時に立ち上がり佐渡は扉を蹴り飛ばすと銃を部屋に居る何かに突きつける

 

 

「動くな!お前は………」

 

 

だがその何かを見た瞬間佐渡は銃をしまいその何かに近付きながら叢雲に指示を出す

 

 

「叢雲、どうやら杞憂だったらしい

外で待っててくれないか?」

 

 

「はぁ?あんた何言って……」

 

 

と言いながら叢雲が部屋に入ろうとすると

 

 

「入るな!!お前が見て良い物じゃない!!」

 

 

佐渡に怒号を飛ばされ一瞬たじろうが叢雲は意を決して部屋に入ると絶句する

 

 

「………………ねぇ、その娘……」

 

 

「チッ、だから入るなって言っただろ?

……艦娘だ、もう手遅れのな」

 

 

部屋の中に続いていた血痕は壁まで伸びておりそこにはピンク色の髪に小さな身体をした少女が壁にもたれ掛かるように死んでいた

足を失いながらどうやら引きずってこの中に入り絶命したらしい

 

 

「恐らくこの鎮守府に流された艦娘だ

死後1日って所だ………クソ!!」

 

 

佐渡は悔しそうに床を殴り付け艦娘の頭を撫でる

潮風に晒された後に乾いたせいか髪には塩が吹いており顔は苦しそうにしながら眠っていた

損傷が酷く死因は出血死

そしてこの場所にもう少し早く来れなかった自分を悔しく思う

 

 

「……助けられたかも知れないのに…俺は…」

 

 

すると叢雲がその横を通り抜け艦娘に抱き付き血液が身体に付くが気にせず彼女を抱き締めると頭をゆっくりと撫でる

 

 

「ごめんなさい……私達がもう少し早く来ていれば貴女を死なせずに済んだのに……ごめんね」

 

 

叢雲は艦娘の遺体を抱き締めながら身体を震わせ涙を流す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「叢雲、俺は彼女を海に流してくる

すまないが少し待っててくれないか?」

 

 

「嫌よ、私も行くわ」

 

 

「ばかやろ、古鷹を見ていてくれ

この島に何が居るか分からない以上彼女を危険に晒すわけに行かない」

 

 

「………分かったわ」

 

 

叢雲は渋々その意見を聞くと佐渡は微笑みながら頭を撫でる

 

 

「安心しろ、これ以上死人は出さない

この娘で最後だ

ここでの死人はな」

 

 

「……分かってるわよ

じゃあ、お願いね」

 

 

佐渡は部屋にいる艦娘の遺体を持ち上げゆっくりと歩いていくと鎮守府の外に出ていきボートへ艦娘を乗せると少しだけ航行する

 

 

「……すまない、君を一人海に流すことを許してくれ

もし寂しかったら幽霊でも構わない

鎮守府に来てくれ、私達はいつでも歓迎するからな」

 

 

そう言うと遺体を海に静かに付けると手を放す

艦娘はゆっくりと海に浸かりながら沈んでいく

深い深い海の底に

佐渡はその姿を見ながら手を合わせ祈りを捧げながら決意と誓いをする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もう、誰であろうと俺の前で死なせないからな

そう君に誓おう

俺の全てを尽くしてでも」

 

 

 




次回

崩壊した鎮守府

艦娘の遺体に佐渡は誓い鎮守府に戻る
だが、荒廃していた小笠原鎮守府は予想以上に酷い有り様だった


この死んでしまった艦娘は誰か分かりますか?
答えは今後の作中に出てきます!



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小笠原鎮守府

佐渡はボートを再び防波堤に付けると小笠原鎮守府へと戻っていくのだが小笠原鎮守府の前に叢雲が体育座りをしながらこじんまりとしていた

 

 

「どうした、叢雲」

 

 

「………何でも…ないわよ…」

 

 

叢雲を良く見ると肩を小刻みに震わせており佐渡は頭を撫でながら励ます

 

 

「安心しろ、お前には俺がいる

絶対に沈ませないし死なせやしない

信じろ」

 

 

「……えぇ、信じてるわよ

あんただけを

でもごめん、やっぱり少し怖いわ」

 

 

叢雲はそう言うと佐渡に抱き付くと佐渡は頭を撫でながら落ち着かせる

 

 

「あの時見たいな化け物は居ない

ここには俺達だけだ

二度とあんなことは起こさせないからな」

 

 

「うん……うん…

ごめん佐渡…」

 

 

叢雲はあるトラウマを思い出しながら佐渡に抱き付いていると水平線から太陽が登りだす

 

 

「……朝だな」

 

 

「……そうね綺麗だわ」

 

 

朝日を二人で見ていると佐渡は叢雲の頭をぐしゃぐしゃにすると鎮守府へ向けて歩き始める

 

 

「よし!叢雲やんぞ!

まずは鎮守府の状態確認と泊まれる部屋の確認!

俺は二階三階を見る!一階は任せた!!」

 

 

「…分かったわ、電話は私の電探にかけてね?

古鷹さんは取り敢えず別の綺麗そうな部屋に寝かせておくわ」

 

 

佐渡と叢雲はお互い別れながら鎮守府内を探索する

誰も住んでおらず二年と言う月日放置されていたこの鎮守府には問題ばかりがあった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二階に着いたが酷いな、かなり酷い臭いだし階段はボロボロ床には穴だらけか

やっぱり叢雲に来させなくて正解だったな」

 

 

武器を構えながら佐渡は二階に上がり叢雲と別れて捜索するその光景には見覚えがあった

 

 

「……確か、インドネシアだっけか?

いきなり始まった戦争に逃げ遅れた奴等のアパートみたいだな」

 

 

その廊下には血がベットリと染み付いた壁に穴だらけの部屋

そして湿気か雨で軋む廊下

しかも廊下の端には幾つかの白骨

既に肉は無く骨だけになっているがそれが人骨であることは明白だった

 

 

「想像より酷いな……

壁には血の後、廊下は軋んでるし、白骨まである

本当にここへ辿り着いた奴が居るのか?」

 

 

佐渡は幾つかの部屋を見るが悲惨そのものだった

ある部屋は大穴が空いており四つの白骨遺体

ある部屋は全焼しており二つの白骨遺体

ある部屋はベッドに寝たままの白骨遺体

ある部屋は扉によりかかるように死んでいる白骨遺体

どれもどこかの部位が欠けており当時の状況を物語っている

 

 

「……どうやらかなりの人数がここには居たみたいだな

それに誰も逃げられてないところを見ると奇襲か

しかも鎮守府の構造を理解し狙って撃ってきたのか

…やり手だな南方棲戦姫め」

 

 

佐渡が敵を褒めながら部屋を探索しているとある部屋に辿り着く

 

 

「……ん?開かないな?

仕方ない、蹴り破るか」

 

 

佐渡は武器をしまうと思い切りドアを蹴り破ろうとするがかなり硬く全くびくともしない

 

 

「あぁ?……あぁこれ引くのか

んん?びくともしないな

仕方ない撃つか」

 

 

めんどくさくなりながらも銃を取り出し何発か鍵穴に撃ち込むと鍵穴が破壊され部屋が開く

 

 

「……うん?やけに綺麗だし何もないな?」

 

 

その部屋は閉ざされていたためかかなり小綺麗だった

白骨遺体もなく部屋も臭くは無くソファーとベッドがあるだけだった

 

 

「ここだけ砲撃されなかった?

だがどこかで逃げたはず………うん?何かあるな」

 

 

佐渡は部屋を探索しているとベッドの側に違和感を感じ調べて行くと全く床と同じ色でほとんど見分けが付かない引き戸を見付ける

 

 

「……隠し扉?何でこんなところに?」

 

 

その引き戸を持ち上げると真っ暗だが部屋がある

しかもそこからも何の匂いもせずこの部屋に設置された抜け穴だと分かる

 

 

「万が一の為の奴か、どうやら役にはたったらしいな」

 

 

それだけを確認すると佐渡はその隠し部屋の探索はせずに廊下に出ると三階へと向かう

相変わらず階段はボロボロだが何とか辿り着くのだが部屋がかなり少ない

 

 

「確か、構造的にはここらへんに……あった

提督室」

 

 

少し廊下を歩いていると佐渡は執務室兼提督室と書かれた部屋にたどり着きゆっくりと扉を開ける

 

 

「……骨は無いな

恐らく逃げたんだろ

意外と小綺麗だな」

 

 

部屋にはソファーと本棚があるが窓があったであろう壁には大穴が空いておりそこから海が見える

 

 

「……綺麗だが壁に大穴はヤバいな

書類とかはほとんどないな

風で飛ばされたとかか?」

 

 

部屋を探索すると机と椅子があり触ると苔が生えており座れる状態ではなかった

 

 

「丸々二年放置されてるな

部屋から雨も入ったんだろう

機材もほとんどやられてるな」

 

 

部屋にある機材はほとんど使えないほどに痛んでおり何か書類を探すべく本棚を見ていると気になる本が一冊あった

 

 

「ん…?何でこいつだけ痛んでないんだ?」

 

 

本棚の一つだけ傷んでいない本があり取り出すとその意味を理解する

 

 

「こいつ……ダミーか?

だが何で…」

 

 

佐渡はその本を取り出し開くと中には紙がなく空洞になっており一枚の手紙が入っていた

 

 

「えっと何々?

『ここの後任者にこれを託す

君の好きにするがいい

殺すも生かすも君が選べ』

何だこれ?」

 

 

佐渡がその手紙を読むと中に一つの錆び付いた鍵があり不思議に思う

 

 

「鍵か……?どこのだよ…

まぁ良いか

安全は確認できた、叢雲を迎えにいくか」

 

 

そう言うと錆び付いた鍵をしまうと提督室を後にしのんびりと探索をしているはずの叢雲を迎えにいく

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回

爪痕

二年の歳月と当時の状態をそのまま残した小笠原鎮守府
壊滅したその鎮守府は酷い有り様だった


大発を確保しようと阿武隈や他の艦娘を育成してますが中々に……
夏イベまでに間に合うかな…




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小笠原鎮守府 二

「…ん、この部屋なら大丈夫そうね」

 

 

叢雲は鎮守府内に入るとある部屋にたどり着きそこに古鷹の医療ポッドを置くと周りを警戒する

 

 

「この部屋……なにかしら?

別に艦娘の部屋って訳じゃないわよね?」

 

 

部屋は何一つとして物が無く家具すら置かれていない

だが、床には物が置いてあったかのような後がありもしかしたら倉庫や武器庫だったのかもしれない

 

 

「…佐渡がいつも言ってる通りなら何かの資材庫かしら?

まぁ良いわ医療ポッドは……安全に起動してる

探索しようかしらね」

 

 

医療ポッドの中にいる古鷹の安全を確認すると叢雲は外に出ていき一階の探索を始める

佐渡から渡された地図によると一階には

 

入渠施設

大浴場

食堂

トイレ

 

があるらしく取り敢えず近い食堂から叢雲は探索を始める

 

 

「……にしても酷い状態ね…」

 

 

廊下を歩いているがやはりここも酷い状態だった

二階程に白骨遺体とかは無いもの二年も放置されてきた鎮守府

苔や草が生えており動物の足跡すらある

 

 

「ここが、食堂かしら?」

 

 

叢雲はネームプレートに食堂と書かれた場所を見付け中に入ると意外と小綺麗だった

 

 

「…意外と綺麗ね?

でも掃除とかはされてないわね」

 

 

砲撃による大穴や破壊された後は無いが全ての家具に埃が被っており叢雲は厨房へと向かう

 

 

「……使われた形跡はない…か

でも使えそうね、問題はガスが通ってるかだけど

確かガス缶はあったから問題なさそうね

目ぼしい物も無い…か」

 

 

食堂の安全を確認した叢雲は扉を締め食堂を後にすると次にお風呂へと向かうのだがここで一つ異変に気付く

 

 

「…………妙ね、ここから綺麗にされてる」

 

 

叢雲が廊下を歩いていると大浴場へ行く廊下が綺麗に清掃されていた

それこそ大浴場へ行く廊下だけが清掃されておりそこから先は何も手をつけられていない

 

 

「誰かが掃除した?まさか……

でも警戒はしておこうかしら」

 

 

叢雲が大浴場に入ると更に警戒する

その光景に驚きと恐怖を覚えたからである

 

 

「……………何で、ここだけやけに綺麗なのかしら?」

 

 

大浴場は綺麗に掃除してあったのだ

床は汚れておらず服を入れる籠も全て綺麗であっま

だがここに来るまで誰かとすれ違っても居ないし気配も全くない

むしろこの鎮守府に来てお風呂に入る余裕があるほどの『何か』がここにいると言う事

 

 

「………誰か居るの!?居るなら返事しなさい!!」

 

 

叢雲は叫びながら戸棚を背にしながら大浴場の扉に歩いていくと艤装でゆっくりと大浴場を開けると艤装を大浴場に突き付けるが

 

 

「………誰も居ないわね

でも、使用された形跡は残ってる…」

 

 

案の定大浴場は綺麗に掃除してあった

つい最近まで使われてた形跡も残っている

 

 

「……まぁ、今は居ないから良いかしら…?」

 

 

下手に探索をすると不味いと感じた叢雲はすぐに大浴場を去っていくと次に最後となる入渠施設に向かう

 

 

「…こっちには来てないみたいね…」

 

 

入渠施設へと向かっていく廊下は綺麗にされておらず泥やゴミが溜まっており二年も放置されてきた鎮守府と言う面影を残していた

 

 

そして入渠施設を見て叢雲は絶句する

 

 

「…何よ……これ!?」

 

 

それは酷い有り様だった

個室の湯船は破壊され天井も穴が空いておりバケツがぶら下がり

至るところに白骨化した艦娘の死体

壁も穴が空いており服置き場にはまだ服が残っている

しかも皆全て動けなかったか逃げられなかったのか骨が至るところに有り叢雲はあわてふためく

 

 

「何よ……この骨の数……何で…嘘……」

 

 

叢雲は次第に息苦しくなりその場に倒れそうになるが何とか立ち直り目を伏せながら自分にいい聞かせる

(違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!!

あの時とは違う!私には私には!!)

 

 

トラウマ

そう彼女にもトラウマがありそれをまだ克復は出来ていなかった

乗り越えては居るもののまだそれは彼女に付きまといながら心の奥底で彼女を縛り付ける

 

 

「…大丈夫よ……もう負けない…誰も…失わない…!!」

 

 

叢雲は胸を叩くと深呼吸をしその場を去ろうとすると

 

 

「お、叢雲ここに居たのか?」

 

 

「わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「ワッショイィィィィィ!?!?」

 

 

叢雲の後ろに立っていた佐渡を反射的に殴ってしまい佐渡は後ろの壁に激突しながらその場に倒れる

 

 

「あ………ご、ごめん!司令官!

大丈夫かしら!?」

 

 

「う……ワザまえ………でござ……る…グフ」

 

 

「ちょ!司令官しっかりしなさいよ!?」

 

 

流石に駆逐艦と言えど艤装を付けた叢雲に殴られたのだから無事ではおらず佐渡はそのまま倒れると気を失ってしまう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、それと同じくしてある部屋にあった医療ポッドが解除モードに移行しゆっくりとその蓋が開く

 

 

「ん……ここ…は?」

 

 

 

 





次回

目覚め

佐渡と叢雲がある程度の探索を終えたあと静かに古鷹が目を覚ます
その目覚めは絶望からの目覚めか
あるいは希望への目覚めか

やっと浜風を乙改に出来ました……
彼女のお陰で駆逐対空カットインは大丈夫ですかね!(慢心)




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古鷹

「叢雲さんや……頼むからさ

艤装付けてるときは殴るのは辞めよ?

流石に俺でも死んじゃうよ?」

 

 

「…ごめんって

でもあんたが後ろに居たのも悪いのよ?」

 

 

「わーてるけどさ……いてて…」

 

 

佐渡は叢雲に殴られた所を擦りながら廊下を歩いていると色々と見ながら古鷹の元へと戻ろうとする

 

 

「にしてもあれが戦艦だったら俺は木っ端微塵だったのかな……ハハハ……」

 

 

「あんた……白骨遺体がある場所で洒落にならない冗談は辞めなさいよ

笑えないわよ……」

 

佐渡は笑っているが叢雲は申し訳なさそうにしており

二人が歩いていると古鷹を置いていた部屋から物音が聞こえ佐渡達は直ぐ様構える

 

 

「叢雲、今物音が聞こえなかったか?」

 

 

「聞こえたわ、もしかして古鷹さんが起きたんじゃない!?

古鷹さん!!」

 

 

「バッカ!叢雲!一応警戒してーーー」

 

 

佐渡の忠告も聞かずに叢雲は走りだし古鷹が居るであろう部屋に勢いよく入る

 

 

「古鷹さん!」

 

 

「ヒッ!ご、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」

 

 

医療ポッドの仲間は開けられ空になっており部屋の片隅で古鷹は小さくなりながら震えていた

 

 

「良かった起きたのね……って何で謝ってるの?

何も悪いことしてないのに……」

 

 

叢雲は震えていた古鷹に近付こうとすると古鷹の震えが大きくなり突然叫ぶ

 

 

「来ないでください!」

 

 

「えっ?」

 

 

その突然の叫びに叢雲は身体をビクンと震わせるその場に凍り付く

それと同時に佐渡が部屋に入ってくる

 

 

「バカやろう叢雲!いきなり突入する奴が……って古鷹ちゃん!起きたのか!

良かった良かった!」

 

 

佐渡も古鷹に近付こうとすると古鷹は更に怯え佐渡から離れようとし更に怯える

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!」

 

 

「え?あ、ちょっと待ってね古鷹ちゃんや

あのね俺はーーー」

 

 

「こ、来ないで!お願いします!

何でもしますから!!」

 

 

古鷹の怯え方が尋常じゃなく佐渡達は顔を合わせると入り口の所まで後退する

 

 

「……叢雲、何したの?」

 

 

「はぁ!?私は何もしてないわよ!

あんたこそ何かしたんでしょ!?」

 

 

「いや、だって叢雲先に入ったじゃん?

古鷹ちゃんが怖がることでもしたのかぁ?」

 

 

「してないわよ!!」

 

 

「うわらば!?」

 

 

 

それと同時に叢雲は佐渡の腹部に思い切りパンチを繰り出すと先程と同じ激痛に襲われその場に倒れる

 

 

「あ……ごめん司令官」

 

 

「だ、だから!!艤装装着時に俺を殴るなぁ!!

死ぬわ!殺す気何か我ぇ!!」

 

 

「う、うんごめん

ちょっと待ってて外すわ」

 

 

佐渡がうずくまってる間叢雲は部屋の片隅に行くと艤装を外し髪を整えると佐渡の元に戻ってくる

 

 

「し、死ぬ所だった……

まさか来て早々部下に殺されそうになるとはな……」

 

 

「うん、本当にごめん

いつもの癖で」

 

 

「辞めよ?司令官さん死んじゃうよ?

冗談抜きで木っ端微塵になるか内臓破裂するよ?」

 

 

古鷹は佐渡達のやり取りを見ているがやはり震えており佐渡が叢雲に指示を出す

 

 

「叢雲、取り敢えず椅子持ってこい

古鷹ちゃんもそんなところに居ないでさ?

ちょっと話そうよ?」

 

 

「分かったわ、古鷹さんに手出さないでよ?」

 

 

「出さねぇよ……

幼気な少女に手を出すように見えるのか?」

 

 

「えぇ」

 

 

「酷くないですかねぇ!?」

 

 

佐渡は優しく話すが古鷹はその場から動かずに震えており溜め息を付くとその場に座り出す

 

 

「まぁ、何だ君は大犯罪者なんだって?」

 

 

その言葉に古鷹の身体はビクンと震わせるが佐渡は続け話し出す

 

 

「んでさ、実は俺は君の更生を頼まれた新人提督でさ」

 

 

「…………………………………嘘」

 

 

「ん?何か言った?」

 

 

古鷹の震えは止まっていた

だが、その時佐渡は初めて古鷹の瞳と顔を見た

左目は真っ黒に染まり右目は暗く濁った瞳をしており佐渡でも背筋を凍らせる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき嘘つき!!!!!」

 

 

 





次回

捨てられた者
拾う者

古鷹の状態を覚悟していた佐渡だったがやはり目の当たりにすると恐れを抱く



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古鷹 二

「嘘つき…?また何でそんなこと…」

 

 

佐渡はその古鷹の瞳には見覚えがあった

仲間を殺され復讐に燃える瞳

全てを失い自暴自棄になってる瞳

 

人は感情に支配されると様々な瞳がある

そして、古鷹の瞳は全てを失い自暴自棄になってる瞳なのだが佐渡が知ってるよりどす黒く流石に驚く

(何だよ……あんなに真っ黒な瞳見たことねぇぞ

どういう事だ、ただの犯罪者何かじゃない

この娘、何かあるな)

 

 

「司令官、椅子持ってきたわよ」

 

 

それと同時に叢雲が部屋に入ってくるとその異様な空気に驚きながらも佐渡に近付く

 

 

(ちょっと、あんた何言ったのよ)

 

 

(いんや、俺じゃない

どうやら彼女は俺達が思うより酷い見たいだ

………!そうだ!叢雲合わせてくれるか?)

 

 

(は?)

 

 

佐渡とヒソヒソ声で話していると突然佐渡は古鷹に近付いていくと叢雲が止めようとする

 

 

「来ないで来ないで来ないで!来ないで!来ないで!来ないで!!」

 

 

「ちょ、ちょっと司令官!?」

 

 

そして、古鷹のすぐそばまで近付くと佐渡はしゃがみこみニヤリと笑いながらとんでもないことを言い出す

 

 

「嫌だね!何せ俺はお前をあの提督が奪い取った男何だからな!!」

 

 

「…………………え?」

 

 

古鷹はその発言に驚きながら顔を上げると佐渡を見上げているとその顔は嫌らしく笑っていた

 

 

「お前がどうしても欲しくてなぁ!

あの提督にわざわざ根回しをしてお前を処刑させる寸前に元々助けだし俺の物にするって計画だったのにバレてたとはね!」

 

 

「ちょ、ちょっと司令官!」

 

 

叢雲が何か言おうとするが佐渡はそれを遮るとニヤリと笑いながら続ける

 

 

「ここは俺達しか居ない鎮守府だ!いくら泣こうが喚こうが誰もお前を助けない!諦めて俺達の言うことだけを聞くんだな!!」

 

 

佐渡はそう言いながら古鷹を嘲笑うが古鷹の瞳の色が変わらずに再び顔を伏せてしまう

 

 

「違う……貴方はまた嘘をついた…」

 

 

「………やけに鋭いね古鷹ちゃん」

 

 

佐渡の嘘を見破りながら古鷹は顔を伏せていると佐渡はバッグを持ち出し中からココアシガレットを取り出すと古鷹に手渡す

 

 

「食べるか?」

 

 

「………良いです」

 

 

「あらそう?」

 

 

佐渡と叢雲はその場に座りながらココアシガレットを食べながら古鷹の側に居続けた

しばらくすると古鷹が顔を伏せながら話し始める

 

 

「………………何で」

 

 

「うん?」

 

 

「………………何で助けたんですか

私を」

 

 

「そいつはこいつに言ってくれ

俺は頼まれたからやっただけだからな」

 

 

佐渡は叢雲の頭を鷲掴みにすると叢雲が話し始める

 

 

「特に理由は無いわ

私は貴女を知らなかったし、でも助けたいって思ったの」

 

 

「………………助けてくれなかったら良かったのに」

 

 

古鷹のその発言に叢雲は驚き佐渡は目を細めながら話を聞こうとする

 

 

「助けなかったら死んでたぞお前」

 

 

「………………死にたいんですよ私は」

 

 

古鷹はそう言うと顔を上げ佐渡と叢雲を見るとやはり目はどす黒く染まっており叢雲は背筋を凍らせる

 

 

「死にたいんです、死ねば私は楽になれる

皆が嬉しがる、喜ぶ、死こそ私が望む物何ですだから死なせてください

もう生きていたくないんです」

 

 

その古鷹の言葉は本気だった

叢雲は何か声を掛けようとするが口籠ってしまう

今下手に声を掛ければ彼女を刺激してしまうと感じてしまったのだが佐渡はそれに反して声を掛ける

 

 

「……へぇ?誰が喜ぶんだお前が死んだら」

 

 

 

「…皆です

提督も仲間も海軍も皆皆皆皆皆皆!!!

私が死ねば!!」

 

 

「ここにはそんな奴居ないぞ

ここに居るのはお前に死んでほしくないと願う

提督と艦娘だけだ」

 

 

佐渡はココアシガレットを噛み砕くとそのまま古鷹を見る

 

 

「良いか古鷹ちゃん

ここに死を望むやつはいない

俺とコイツは絶対に君を死なせない」

 

 

「嘘!嘘!!貴方達もそうなんでしょ!

どうせ裏切る!私に死んでほしいと願ってる!!」

 

 

古鷹は叫ぶように佐渡の言葉を否定する

だが佐渡も負けないように古鷹へ話続ける

 

 

「分かった、古鷹ちゃん約束しよう

俺達は何があっても君を裏切らない

死なせやしない絶対に」

 

 

「嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘!!!

どうせ!人間なんて!!」

 

 

「約束する、もし君を死なせたら俺も後を追うよ

絶対に」

 

 

「嘘!嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ嘘よ!!!!」

 

 

佐渡の言葉は全く古鷹に届いておらず触ろうとしても拒絶され続ける

その姿を見て叢雲はかなりキツく思うが佐渡の必死な顔を見て覚悟を決める

 

 

「安心して、貴女は私が守るから」

 

 

「嘘!どうせどうせどうせどうせ裏切る癖に!!」

 

 

拒絶する古鷹に叢雲は近付き抱き締めると古鷹は暴れるがそれでも尚叢雲は抱き締め続ける

 

 

「裏切らないわ、絶対に

この命に掛けて貴女を守るわ

誰にも貴女を傷付けさせやしない」

 

 

「……信じない…私は信じない!!!」

 

 

その言葉と共に叢雲を突き飛ばし古鷹は再び顔を俯けながら塞ぎ混んでしまう

だが、佐渡が古鷹に近付くとその場に座る

 

 

「君が命を捨てると言うのであれば

俺達は君の命を拾うよ

絶対に君を死なせやしない

今は信じてくれなくてもいい

いつか、俺達を信じてくれ

嘘を付いてないことを君に知って欲しいんだ」

 

 

「………………………」

 

 

古鷹は佐渡の言葉を聞いては居たが返事をせず

再びその場にうずくまってしまう

 

 

 

 

 





次回

大掃除

古鷹が目覚めはしたが彼女の精神状態はあまりにも酷く佐渡も手をやいてしまう
彼女を精神状態を治したいと思う彼等はまず最初に鎮守府の掃除から始める




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古鷹 三

「よっしゃ!!やんぞおらぁ!!!」

 

 

「うるさいわよあんた……」

 

 

 

佐渡は誰も居ないその廊下で突然叫び出すと隣で叢雲が耳を塞ぎながら溜め息を付く

 

現在古鷹を一階の備品室?に休ませており二人は二階の廊下に移動し箒とチリトリを片手に掃除を開始しようとしていた

叢雲は艤装を付けているが耳型の電探だけは古鷹預けており何かあったら連絡するようにしている

 

 

「にしても……酷いわね……」

 

 

「んまぁ二年放置されてたしな、しゃーない」

 

 

「と言うか白骨ばっかり……」

 

 

二階は軋んでおりそれと同時に廊下には白骨が転がっている

 

 

「取り敢えず俺は骨とかを集めるから叢雲は廊下の掃除を頼むわ」

 

 

「分かったわよ

まさか来て早々掃除とはね」

 

 

佐渡と叢雲は分担しながら二階の掃除を始め佐渡は手際良く骨をビニール袋に入れ叢雲は箒で埃等のゴミを取り始める

 

 

「と言うか、あんた良く平気よね」

 

 

「何がだ?」

 

 

「白骨よ、普通は騒ぐんじゃない?」

 

 

「んー……まぁ死、には近いところに居たしなぁ

白骨なんて普通にあったぞ」

 

 

「あんたの出生がほんとワケわからないわ……」

 

 

佐渡はある程度袋に骨を集めるとまとめていきそれと同時に部屋の確認もしながら綺麗にしていく

 

 

「にしても、何でこんなに骨があるんだろうな

普通逃げてるとか戦ってるからこんなに多いとは思えないんだよな」

 

 

「……奇襲されたとか?」

 

 

「可能性は高いが部屋にずっといる状態なんて普通ないぞ

廊下に白骨があるなら納得するけどな!!」

 

 

部屋にあると言うことは逃げなかった

又は逃げる暇がなかったと言うことなのだがここは鎮守府

警報の一つは鳴るほどであり普通ではあり得ない

 

 

「んま、良いか

とりあえず程々には出来たかなぁ

叢雲、ちょっと外で薪焚いてくれないか?

骨を燃やしたいからさ」

 

 

「わかったわ、後は任せるわよ」

 

 

叢雲は一人先に下りていくと骨を集めたビニール袋を端に置く

 

 

「……にしても酷い有り様だな

これじゃ妖精とかも居なさそうだな…」

 

 

佐渡は掃除をしながらそんなことを呟きあることを思い出す

 

 

「…そいや、工廠ってどうなってるんだ?

後出撃場も…」

 

 

工廠や入渠施設には一応妖精が居るはずなのだが入渠施設があんなに酷い状態であることを確認するに工廠も酷いことになってると違いないと佐渡は思いながら二階にあった骨を全て集め終える

 

 

「こんなもんかな!さてとんじゃ下に……」

 

 

そう言い降りようとした瞬間にカタンっと何かが落ちる音が聞こえ廊下を振り返るとそこには一つの頭蓋骨が落ちていた

 

 

「……………んん?あんなところにあったか?

可笑しいな…あんな目立つ所にあったら分かるはずなのにな…」

 

 

佐渡は急いで戻ろうとすると何かの気配を天井から感じ上を見上げるが何もおらず少しばかりの穴が空いていた

 

 

「……ネズミか?もしかしてかじってたのを落としたとかかね?

んま良いか、これで最後だな行くか」

 

 

その最後の頭蓋骨を拾うとビニール袋に詰めのんびりとした足取りで二階を後にする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「人間だねー」

 

 

「提督と艦娘だねー」

 

 

誰も居ない廊下で屋根裏と穴が空いた壁の隙間から小さな人影が姿を見せる

 

 

「…新しい人?」

 

 

「分かんないー」

 

 

その小さな人影が続々と姿を表し去っていった佐渡と叢雲達を考えていると全員顔を合わせ頷く

 

 

「「「「親方に報告だー!」」」」

 

 

 

 

 

 

 





次回

工廠管理妖精 親方

鎮守府内の遺骨を集め叢雲は灰にするために燃やしだす
そして、佐渡は工廠妖精が居るであろう工廠へと歩み始めるのだが洗礼を受ける

今朝やっと阿武隈を改二に出来ましたぁ……
これで軽巡枠は完璧ですな!
後は重巡部隊をなんとかしないとな……


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古鷹 四

「よっこいしょっと!」

 

叢雲は鎮守府の外で薪を燃やしながら佐渡が持ってきたビニール袋を燃やしながら他のカビていた家具などを燃やしていた

 

 

「ふう……艤装を付けた状態なら意外と平気ね

ねぇ!古鷹さんも暖まる!?

そこ寒くないの!?」

 

 

「…………」

 

 

縁側に古鷹を連れ出し一緒に燃やしては居るのだが燃やしている叢雲を見てるだけで何もせずに居た

 

 

「…もう!そんな姿じゃ寒いだろうから…」

 

 

叢雲はふとバッグから毛布を取り出すと古鷹の隣に下ろし再びゴミを燃やそうとするのだが古鷹が動かない

 

 

「ほら、寒いでしょ?

冬なんだし少しは暖まって?風邪なんて引かれてもここでは治せないんだし……」

 

 

「…………」

 

 

古鷹は叢雲に毛布を掛けてもらうとその毛布にくるまりながら顔を伏せてしまう

溜め息を付きながら叢雲は再びゴミを燃やしていると佐渡の心配をする

 

 

「アイツ、大丈夫かしら…

工廠に行くとか行ってたけど鎮守府がこんな状態じゃ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えっと地図によるとここかな?」

 

 

一方佐渡はのんびりと廊下を歩きながら工廠へと向かっていた

工廠は鎮守府とは別に作られておりほぼ隔絶されていた

 

 

「…にしても外から見ても酷かったけど無事なのか工廠は」

 

 

しばらく歩くと外廊下に繋がりその先に扉が見える

 

 

「……あれか工廠」

 

 

工廠の扉横には【親方工廠】と書かれた看板が置いてあり佐渡は扉を開こうとするが

 

 

「…開かねぇな…引き戸っぽいが…ふん!!」

 

 

佐渡は思い切り扉を開くとギギギギギギと鈍い音がしながら開き中を覗く

 

 

「やっと開いた……うん?意外に綺麗だな?」

 

 

工廠の中に入ると屋根は破壊されている物のその下には物が無くそれ以外の機材は完璧に整備されている様に見える

 

 

「へぇ……驚いた、まだ妖精が居るってことかそれとも…ん?」

 

 

ピチャッ

工廠内に入ると足下に何かの水を踏んだことを確認すると佐渡は下を向くと驚愕する

 

 

「………………血?まて、何で工廠に血なんてーーー」

 

 

その瞬間佐渡の真横から巨大なハンマーが振り下ろされそれに一瞬早く気付いた佐渡は前に倒れこみ何とか避ける

 

 

「あっぶね!!何だいきなり!!」

 

 

だがそれだけで終わらずにハンマーが振り下ろされた後何かのスイッチが押され次に佐渡の頭から竹で作られた槍が落ちてくる

 

 

「わーお!こりゃまた!!」

 

 

佐渡は下手に動くと不味いと警戒し腰から二丁の銃を取り出すと落ちてくる槍を幾つか撃ち抜き自らの身を守る

 

 

「せーの!」

 

 

自らの守りきった佐渡に次は何かの声と共に今度は真横から何かが佐渡へ振り下ろされるが前に転がり何とか避ける

 

 

「一体何だよ!このトラップは!

俺を殺す気か!?」

 

 

「ほう?やるじゃねぇかお前」

 

 

その言葉が真後ろから聞こえ佐渡は急いで振り返り銃を構えるとその声の主は見当たらない

 

 

「どこだ!?姿を見せろ!!」

 

 

「見せてるよバーカ

目の前だ」

 

 

その声は下の方から聞こえ佐渡はゆっくりとそこを向くとそこには小さな小人、もとい妖精がうで組をしながら仁王立ちしていた

頭にはハッピをつけ加え煙草をしているその姿は人間そのものだった

 

 

「………妖精か?」

 

 

「ほう?俺のことが分かるって事はあんた海軍の人間だな?」

 

 

思わず佐渡はその妖精に向けて銃を構えるが妖精は全く気にも止めずに手を振り上げると工廠の至るところから艦娘の主砲が佐渡へ向けられる

 

 

「!!艦娘の生き残りが居るのか!?」

 

 

「動くな人間、ここは『俺の工廠』だ」

 

 

その言葉に佐渡はこの妖精の正体に気付き銃をしまう

 

 

「もしかして…貴方が親方さん?」

 

 

「あぁ、俺が親方妖精だ

この工廠全責任者にして管理人のな

んであんたは?」

 

 

「あ!申し遅れました私はーーー」

 

 

「親方ー」

 

 

「提督が鎮守府に来てるよー!」

 

 

「あぁ、来てるよコイツだろ?

さてとそんじゃあんたの事を聞かせてもらおうか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「成る程、と言うとあんたはここに来た新人なのか」

 

 

「は、はい!そうなります!」

 

 

親方に言われるまま佐渡は正座をしながら今の状況を説明したのだが親方は苦しそうな顔をしながら背を向ける

 

 

「……悪いが俺達は今お前達に協力は出来ない」

 

 

「な!何故ですか!?」

 

 

「……実はなここの機材はほとんど使い物にならないんだ

あの天井の大穴のせいで雨が入り込んで居てな

機材の中にある電線や他の端子がイカれててな

直しようが無いんだ」

 

 

「そんな……」

 

 

佐渡が落ち込んでいると親方はこちらを振り向くと可能性だけを話してくれる

 

 

「もし、お前があの大穴を塞ぐのを手伝い資材を提供してくれるなら使えるようになるかもしれないぞ」

 

 

「ほ、ほんとですか!?」

 

 

「かもしれないだ、覚えとけよ

いつになっても良い

もし、ここを使いたいならそれぐらいはやってみてくれ」

 

 

「分かりました!

今は少し難しいですが落ち着いてきたら必ずやります!」

 

 

佐渡はそれだけを言うと親方や妖精達に頭を下げると工廠を後にする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねー?親方ー?本当にここを再開するのー?」

 

 

「ふん、嘘に決まってるだろ?

資材と大穴程度じゃここは使い物にならん

機材も駄目になってるからなせめて内部の錆を落とすか新しいのじゃないと不可能だ

ま、奴へのただの課題として出してやっただけだ」

 

 

親方はそう言うと機材を殴り付け怒りを露にする

 

 

「……どうせやらないさ

提督なんてそんなもんだ

俺達を酷使するだけのクズだ」

 

 

 

 

 




次回

心閉ざす艦娘(古鷹)

ひとまず工廠の確認を済ませた佐渡は再び叢雲達の所に戻り食事を取ろうとする
だが、そう簡単には古鷹は心を開いてくれない




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古鷹 五

「叢雲ー!古鷹ちゃーん!

戻ったよ~」

 

 

「あら、司令官無事だったの?

てっきり死んだのかと」

 

 

「勝手に殺すな

ま、死にかけはしたけどな」

 

 

佐渡はのんびりとした様子で家具や遺骨を燃やしている叢雲達と合流し今後について話し始める

 

 

「とりあえず鎮守府の掃除なんだけどそれと同時に鎮守府を直さないとな……」

 

 

「まぁ砲撃による穴だらけだしね

これじゃ住めないわよ」

 

 

「うーん……一旦町に住むか?

と言っても無事な家があるとは思えないが」

 

 

鎮守府の廊下を掃除中に佐渡は街の様子を窓から見たがほとんど壊滅しておりとても人が住める状態ではなかった

 

 

「逆に町に行くのは危険じゃない?

野生動物とか居そうだしある意味危険よ」

 

 

「それもそうか

…じゃあ二階の部屋で寝泊まりしよっか?」

 

 

「……は?あの穴だらけや死体があった部屋で寝ろと言うのかしら?」

 

 

「いや、一つだけ無事な部屋があってな

そこならどうかなって」

 

 

佐渡は一つだけ気になる部屋があったかとりあえず荷物をそこに運ぶべく叢雲と協力しながら二階へ向かうとある部屋に入る

 

 

「……意外ねこんな部屋があったなんて」

 

 

「な?綺麗だろ?

何の部屋かは分からないけど」

 

 

叢雲は部屋に入るなり艤装を外しベッドへダイブするとゴロゴロと転がりながら枕に顔を伏せると匂いを嗅ぐ

 

 

「……しないわね血の匂い

でも少し海の匂いがするわ

ベッド柔らかい~♪」

 

 

「そいつは良かったよ

じゃあ古鷹さん呼んでくるからな」

 

 

叢雲が旅の疲れを休めていると佐渡は下に行くと古鷹が縁側で毛布にくるまりながら丸まっている

 

 

「古鷹ちゃん、こんなところに居ないで二階に行こ?

そこじゃ身体冷やしちゃうよ?」

 

 

「………………ほっといてください」

 

 

「断る!」

 

 

佐渡はそう言うと古鷹の隣に腰を下ろし座るとビクンッと古鷹は震え少し距離をとる

 

 

「…俺が恐いか?それとも人間が恐いか?」

 

 

「…………………はい」

 

 

「はは、すまない恐がらせてしまってたか」

 

 

しばらく二人は無言で隣に居合わせながら縁側に座りのんびりとしていた

ふと佐渡はココアシガレットと同時にライターを取り出し火を付けると古鷹の身体がビクンと震える

 

 

「……火が恐いか?」

 

 

「……………はい」

 

 

「そうか……って!何で俺ココアシガレットに火付けようとしてるの!?

煙草煙草……って辞めたんだったわ

忘れてた!!」

 

 

アハハハハと佐渡は笑っているが古鷹は縮こまりながら毛布にくるまったままでいる

 

 

「あ、そうだ古鷹ちゃんお腹空かない?

叢雲から聞いて食堂は無事らしいから何か作るよ?」

 

 

「…………大丈夫です」

 

 

 

「えぇーお腹空かないのー?

俺はお腹空いたんだけどなー?誰か可愛い女の子と一緒に食べたいなー?」

 

 

「……………叢雲さんと食べてはいかがですか?」

 

 

「アイツ食べる量半端無いんだよ……

だから君と食べたいんだけどなー?

安心してくれ流石に不味くは……無いと思う」

 

 

頬を掻きながらそっぽを向いているが古鷹は動じずやはりくるまったまま動かない

 

 

「そいや、古鷹ちゃんって何で捕まったの?」

 

 

その言葉に古鷹がビクンと反応を示すと佐渡は続ける

 

 

「何かとんでもないことやったんだって?

俺はそう思わないんだけどさ」

 

 

佐渡の何気ない言葉に古鷹は少しだけ反応すると顔だけを佐渡へ向ける

その顔は空を見上げながら笑みを浮かべていた

 

 

「まぁ、今の状態の君を見てと言う結果論何だけどさ

これでも俺はかなりの人間を見てきたんだ

でも君は犯罪者と言うよりはただのお人好しにしか見えないんだよね

俺の知ってる馬鹿共にそっくりだ

自分を犠牲にしてまで仲間や守りたいものがある

そんな娘にしか見えないんだ

間違ってたらごめんね?でも俺はそう思うよ?」

 

 

 

その言葉と共に佐渡は古鷹を見ないまま頭を撫でるが瞬間古鷹が震えるのが分かったが続ける

 

 

「大丈夫、安心しろここには俺達しか居ない

君を傷付ける者は居ないからな

怯えなくて良い、恐がらなくて良い

俺達は君を大切にする前任よりな!

それだけはどんなものにも誓って言えるからな!」

 

 

それだけを言うと佐渡は立ち上がり廊下へと歩いていくと古鷹へ振り返らずに手だけを振る

 

 

「シチューでも作ってくるよ!

ここは寒いからな!

二階の左にある部屋に叢雲が居る

早めにそこへ行きなそこは暖かいからね!」

 

 

佐渡は去っていくと一人残った古鷹は毛布にくるまりながら佐渡に撫でられた頭を触りながら先程の言葉を思い出す

 

 

『自分を犠牲にしてまで仲間や守りたいものがある

 

そんな娘にしか見えないんだ

 

間違ってたらごめんね?でも俺はそう思うよ?』

 

 

頭を押さえながら古鷹はその言葉を思いだし少しずつ泣き出してしまう

 

 

 

『大丈夫、安心しろここには俺達しか居ない

 

君を傷付ける者は居ないからな

 

怯えなくて良い、恐がらなくて良い

 

俺達は君を大切にする前任よりな!

 

それだけはどんなものにも誓って言えるからな!』

 

 

「嘘だよ………どうせ貴方も……裏切るんだ……」

 

 

信じられない

信じてきた物を全て裏切られてきた彼女にはまだその言葉は信じられなかった

そして古鷹は静かに声を圧し殺しながら泣いていた

 

 

壊された心には届かないはずの言葉であったが古鷹にはきちんとその優しい言葉は届き少しずつ彼女を癒していっていた

 

 

 

 

 

 




次回

食事

古鷹と叢雲の為に佐渡は暖かい料理を作ろうとしているとその前にある者達が立ち塞がる
佐渡の小さな戦いが幕を開ける




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古鷹 六

「にしても難しいな…彼女」

 

 

佐渡は一人悩みながらバッグを取りに行くと食堂に向かっていた

実は叢雲を呼びに行こうとしていたのだが朝の疲れからかベッドで気持ち良さそうに寝ていた為寝かせてあげている

 

 

「……でも、ああいうのはゆっくりと優しく接してあげろってアイツら言ってたな…

まぁ、ここは仕事無いしゆっくりやるか!

さーてと!頑張っちゃうぞ!!」

 

 

そして、一人晩御飯の支度をするために食堂へと向かう

外はいつの間にか暗くなってきており鎮守府内も少しずつ薄暗くなっていた

 

 

「にしてもここ電気って使えるのか?

と言うか電気通ってるのここ……」

 

 

佐渡はふと気になり近くにあった電気のスイッチを押すと意外にも電気は通ってるらしく廊下が明るくなる

 

 

「…へぇ、めっちゃ意外

と言うか良く生きてたな蛍光管も…」

 

 

だが幾つかの蛍光管は壊れてたりバチバチと音を立てながら不調を来しており少し不安には思う

 

 

「ま、良いか使えるなら別に

だが暖かくなる前には何とかしないとな……」

 

 

そう呟きながら食堂に着き電気を付けると意外にも綺麗になっており電気も普通に付くため少しだけ安心する

 

 

「少しテーブルとかは埃を被ってるか…

掃除するかぁ」

 

 

近くにある掃除用具入れを探索すると中には使い込まれたホウキや雑巾などがありバックをテーブルに置くと食堂の掃除を始める

 

 

「良し!こんなもんか!」

 

 

食堂の掃除を終えた佐渡は汚れた雑巾やゴミを外に捨てると綺麗になった部屋を見渡す

 

 

「さてと料理を作ろうかなぁ!」

 

 

バックから食料品やら調理器具を取り出し台所をチェックしていくがガスも水道も通ったままであり料理は出来るようにはなっていた

 

 

「へぇ…付くんだ…と言うよりは恐らくライフラインは生きてるのか

となると本当に突然深海棲艦に襲われたって感じか」

 

 

そんなことを考えながら水道を捻りしばらく水を流すと鍋の中に水を張っていく

 

 

「さてと、作っていこーーー」

 

 

と意気揚々にガス台に鍋を置こうとしたのだがガス台の上に妖精達が邪魔をするように小さな銃を佐渡へ向けていた

 

 

「………え?妖精さん?」

 

 

「待て提督」

 

 

不意に聞こえたその声に反応し後ろを振り向くとそこには仁王立ちする親方の姿があり佐渡を睨み付けていた

 

 

「……えっと、何か御用ですか?親方さん?」

 

 

「お前、何してる?」

 

 

「シチューを作ろうかと?」

 

 

「それよりも先にうちの工廠を直してもらおうか?」

 

 

「……あれ?いつでも良いって言わなかったでしたっけ?」

 

 

「気が変わった今からやってくれ」

 

 

突然のその話に佐渡は全く付いていけず重かった為鍋を適当に置くと親方へ向き直る

 

 

「今からですか?

流石に暗くなってきたので明日でも……」

 

 

「駄目だ今からだ

後、この食堂も使用禁止だ」

 

 

「何で!?だってここは親方さんの管轄じゃ……」

 

 

「ここを綺麗にしていたのは俺だ

台所もきちんと整備していたからな」

 

 

そう言われると確かにガス台も水道も綺麗にされている

だが、佐渡は一つだけ疑問に思う

 

 

「……でも何で使わないんです?

テーブルも埃被ってたし」

 

 

「んん!!まぁ、その、なんだ

俺達は食べなくてもーーー」

 

 

「僕達小さいから料理出来ないのー!」

 

 

「親方が前に頑張ってくれたけど無理だったのー!」

 

 

「ば、馬鹿野郎!何言ってやがる!!」

 

 

「……へ、へぇ…」

 

 

他の妖精による密告で親方はそっぽを向いてしまうが佐渡は一つ提案を出す

 

 

「でしたら、俺が皆の分も作りますよ」

 

 

「何だと?」

 

 

「良いのー?」

 

 

「僕達一杯居るよー?」

 

 

「その代わり、俺が皆を満足させられたらここの使用許可をください

どうですか?親方さん」

 

 

「………良いだろう、俺は煩いぞ?」

 

 

「わーい!ご飯だー!」

 

 

「もうひもじくないぞー!」

 

 

その提案に親方や妖精達が乗り気になってくれているが佐渡はここでも食事がどんなものかも少し気になりはした

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「後はこれを煮込んで終わりかな」

 

 

厨房の使用許可を一時的に貰い佐渡はシチューを作ると味見をし少し調味料を入れると納得したように鍋に蓋をする

 

 

「おい、出来たのか?」

 

 

「えぇ、少しだけ味見しますか?」

 

 

「食べたいー!」

 

 

「お腹空いたー!」

 

 

「……貰おうか」

 

 

佐渡はその返事を聞くと蓋をしたシチューを小皿によそい少しだけ妖精達渡していくとそのシチューに集まり各々少しずつ食べ始める

 

 

「おいしいー!」

 

 

「暖かいー!」

 

 

「……久しぶりに食べたな

まともな食事…暖かいな…」

 

 

佐渡は美味しく食べてくれている妖精達を見ながらのんびりとしているとかつての仲間達を思い出しながら少し微笑む

(……そう言えばあいつらも俺の料理は気に入ってたっけか)

 

 

その姿に気付いた親方が「ゴホン!」と咳払いをすると佐渡はハッと気付く

 

 

「どうですか?俺の料理は?」

 

 

「まだまだだな!こんなもんじゃーーー」

 

 

「提督おかわりー!」

 

 

「もっとちょうだいー!」

 

 

「おい!お前ら!!」

 

 

親方からの評価はキツいが他の妖精達には気に入って貰えたらしく佐渡は微笑みながら蓋をする

 

 

「ふふ、ごめんなまだコイツは完成してないんだ

もう少し煮込まないと美味しくないから残りは後でね?」

 

 

「えー!」

 

 

「ケチー!」

 

 

妖精達は不平を言ってる中親方を見ると溜め息まじりに佐渡へ手を差し出す

 

 

「認めるよ、お前の料理の腕を

他の奴等も気に入ったみたいだしここの使用許可を出す

好きに使え、もし壊れたら直してやるからその時は言いな」

 

 

「ありがとうございます

親方さん!」

 

 

佐渡は手を取り出すと小さく握手をする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、もう少し食べたいんだが駄目か?」

 

 

「はまってるじゃないですか……

もう少し煮込めばもっと美味しくなりますので待っててくださいね?」

 

 

「はーやーくー!」

 

 

「シチュー食べたいー!」

 

 

 

この時既に親方と他の妖精達の胃袋を掴んだ佐渡であった

 

 

 

 

 

 

 




次回

新たな問題

シチューを完成させ二人と食事をしようとする最中佐渡達は古鷹の新たな問題に直面する


因みにこの話が今までのフラグ回収にもなってます
かなり多くのフラグが散りばめられてますが正直自分でもわすれそう()



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古鷹 七

「~♪」

 

 

佐渡はシチューを作り終え別の料理も軽くこしらえていると隣でその姿を見ていた親方がふと疑問に思う

 

 

「なぁ、あんた

何でこんな鎮守府に来たんだ?

あんたみたいな奴が来る場所じゃねぇだろここは」

 

 

「んまぁ、成り行きですよ」

 

 

「そんなわけあるか

ここの鎮守府が『今は』こんな酷い状態でどんな奴が来るか位は知ってる

確かにお前達が来るまで隠れていたが来た奴がろくでもない奴等ばかりだったしな」

 

 

「……ま、今はそんなことより料理食べましょ?」

 

 

佐渡は笑顔になりながら親方に話しかけるがその顔は詮索するなと言う意味を込めていることに気付いた親方それ以上言わなかった

 

しばらくすると食堂の扉が開き叢雲があくびをしながら入ってくる

 

 

「おはよ~司令官~

ご飯かしら~?」

 

 

「おはようってもう夜だよお馬鹿

もう少しで出来るから古鷹ちゃんを連れてきてくれ」

 

 

「分かったわ~」

 

 

叢雲は眠そうにしながら手を振ると食堂を後にする

のだがしばらくしても叢雲が姿を現さずに全てを完成させてしまい

テーブルに並べ終えると流石に疑問に思い探しに行こうとすると

 

 

「司令官!ちょっと手伝って!!」

 

 

「………何してるの廊下で」

 

 

古鷹は毛布にくるまり叢雲は無理矢理連れてきたのかズルズルと引きずっている

 

 

「え、えっと古鷹ちゃん?ご飯食べよっか?」

 

 

「………………いりません」

 

 

「今食べないと今晩夜ご飯抜きだよ?」

 

 

「……………構いません」

 

 

その返答に叢雲を見ると首を振るい佐渡は溜め息を付くと古鷹をお姫様だっこで持ち上げる

 

 

「は!放して!!」

 

 

持ち上げた瞬間古鷹が暴れるが佐渡はそんなこと気にせず古鷹を強制的に連れていく

 

 

「だーめ、ご飯食べるよ」

 

 

「いりません!!いりませんから!!」

 

 

「駄目よ、食べてもらうわ

コイツの腕なら私が保証するから心配しないで?」

 

 

古鷹の拒絶を何とかしつつ椅子に座らせると毛布を剥ぎ取り三人は椅子に座る

 

 

「んじゃ、食べますかね」

 

 

「………ねぇ、司令官この小さな小人って?」

 

 

「あぁ、うん妖精さん達」

 

 

「「「「こんばんわー!」」」」

 

 

テーブルに既に居た妖精達に少し叢雲は驚きながらも妖精に挨拶をする

 

 

「叢雲よ、よろしくね」

 

 

「よろしくー!」

 

 

「初期艦も居るのか、やはりお前達がよく分からんな」

 

 

親方が叢雲を見上げながら見ていると佐渡は食事の挨拶をする

 

 

「んじゃ、手を合わせて頂きます」

 

 

「「「「「頂きます!!」」」」」

 

 

挨拶と同時に叢雲と妖精達が勢いよく食べ始め流石の佐渡も驚く

 

 

「…えっとそんなにがっつかなくても…まだあるからゆっくり食べなよ皆…」

 

 

「おいしいー!」

 

 

「まろやかー!」

 

 

「…ほほぅ?こいつは…さっきより濃厚だし野菜も柔らかい…旨いなこりゃ」

 

 

「コイツの料理は外れなしよ

基本的に美味しいからね、司令官おかわり」

 

 

「あはは、ありがとうって早すぎだろ叢雲!?」

 

 

「シチューなんて飲み物よ

でも味は最高よ司令官?」

 

 

あっという間に叢雲がシチューを食べ終わると皿を受け取りよそいに行くと次は妖精達も佐渡の元へおかわりを貰いに行く

 

 

「提督さんおかわりー!」

 

 

「はいよ、お皿貰うね」

 

 

妖精達にもおかわりをよそうとやっと大人しく料理を食べてくれゆっくりとした晩御飯になった

 

 

「と言うか親方さん達は何食べてたのさ?

ここじゃまともな食べ物何て……」

 

 

「そうだなぁ、適当に食べれそうな木の実とかを食べてたぜ」

 

 

「木の実あきたー」

 

 

「シチューおいしいー!」

 

 

「な、成る程……」

 

 

確かにここまで酷い状態で更に人が居ない状態なのだから仕方無いとは言えど何故ここから離れないのかと疑問に思い佐渡は聞こうとすると

 

 

「お腹いたいのー?」

 

 

「艦娘さん大丈夫ー?」

 

 

妖精達からそんな声が聞こえ叢雲と佐渡はその声がする方へと顔を向けると古鷹が一切食事を取っていなかった

 

 

「もしかしてシチュー嫌い?」

 

 

「古鷹さん?食べましょ?」

 

 

「………………いりません

お腹空いてません」

 

 

「おいおい、艦娘よちゃんと食べないと駄目だぞ

お前達は出撃もあるんだ

食べないとやっていけないぞ?」

 

 

「いりません……食べたくないんです……」

 

 

古鷹はそのまま立ち上がり逃げようとすると妖精達がそれを捕まえ無理矢理椅子に座らせる

 

 

「だめー!」

 

 

「食べないともったいないよー!」

 

 

「いや!いらないいらないいらないいらないいらないいらないいらないいらない!!!」

 

 

そのただならぬ様子に佐渡は異変を感じ妖精達を止めようとするのだがそれよりも先に妖精は連携し古鷹の口に無理矢理シチューの中身を入れようとする

 

 

「待ってくれ!彼女はもしかしてーーー」

 

 

「食べないとだめー!」

 

 

「いや!!辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて!!!!」

 

 

「おい!お前ら待て!嫌がる娘に無理矢理食べさせるな!!」

 

 

親方の指示も聞かずに妖精達は古鷹の口に具材を入れるとはいタッチをし古鷹も口を閉じるのだが入れた途端古鷹の顔が口に手を押さえながら真っ青になる

 

 

「叢雲!ゴミ箱あるか!?」

 

 

「え?あ、あそこにあるわよ?」

 

 

佐渡は急いで立ち上がりゴミ箱を取ると古鷹へ駆け込み席から立たせるとゆっくりと廊下へと歩かせていくと

 

 

「ごめんね、廊下に出るまで耐えてね?」

 

 

佐渡の言葉に古鷹は頷くとゆっくりと歩いていき廊下へ出ると食堂の扉を締め切ると背中をさする

 

 

「良いよ…無理しないで吐き出して良いからね?」

 

 

その言葉に古鷹は甘え口に含んでいたシチューの具材と共に胃酸をゴミ箱に戻していく

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

 

 

「大丈夫だよ、俺が無理矢理食べさせたのが悪いんだ

疲れてないか?お風呂行くかい?」

 

 

古鷹は静か頷くとゴミ箱を廊下に置き食堂の引き戸を開ける

 

 

「叢雲、悪いんだが古鷹ちゃんをお風呂に連れてってくれるか?」

 

 

「分かったわ、後でまだ食べるから私のは残しといて」

 

 

「あぁ、すまないな」

 

 

叢雲はそう言うと佐渡から古鷹を受け取りお風呂へと向かっていく

その後ろを姿を見ながら佐渡は呟く

 

 

 

「………拒食症だっけかな確か」

 

 

 

 

 

 

 





次回

傷だらけの心

古鷹の状態がかなり酷く早急に何とかしないといけないと判断した佐渡
一方で古鷹は唯一の艦娘である叢雲に自分の思いを吐露していく



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古鷹 八

佐渡は古鷹と叢雲が居なくなったのを見ると再び食堂に戻るのだが

 

 

「提督!すまなかった!!」

 

 

「「「「ごめんなさい!!」」」」

 

 

妖精達が土下座をしておりその姿を見て溜め息を付くとゆっくりと無理矢理口に突っ込んだ妖精にデコピンを当てる

 

 

「全く、嫌がってる娘に無理矢理食べさせちゃ駄目でしょ?

まぁ今回は俺の不注意もあったしね多目に見るよ

俺はアレを処理してくるからおかわりは少し待っててね?」

 

 

「待ってー!」

 

 

「僕達がやるー!」

 

 

そう言うと妖精達は降りていき自分達で先程のゴミ箱を運び外へ捨てに行く

 

 

「本当にすまなかった!提督!こいつらも悪気があったわけじゃないんだ!

提督の料理が美味しくて勿体ない事してほしくなくて……」

 

 

「分かってますよ、妖精達が悪気が無いなんて彼女も分かってるはずですから

でも後で古鷹に謝ってくださいね?」

 

 

「あぁ……本当にすまない…

もしかして、彼女か?お前達がここに来たってのは」

 

 

「んまぁ、そんなところです」

 

 

親方もその話を聞いた瞬間佐渡達がここに来た経緯を何となく理解する

 

 

「……なぁ、彼女は」

 

 

「言わないでおきます

これは俺達の問題ですから親方さんを巻き込む訳にはいきません」

 

 

佐渡の言葉を聞くと親方はその意味を理解する

 

 

「なぁ、佐渡提案なんだが鎮守府の修復を俺達に任せてくれないか?」

 

 

「え!?い、良いんですか!?」

 

 

「あぁ、どうせ毎日暇してた所だしお前がここに来たのも何かの縁だろう

だが条件がある」

 

 

突然の話に佐渡は驚いていると親方は口籠らせながら自分の思いを佐渡へ告げる

 

 

「……俺達を無下に扱わないでくれ

確かに俺達は妖精だ、お前達人間や艦娘の役に立つ事位しか出来ないちっぽけな存在

でもな俺達にも心はある、やりたいこともやりたくないことも

だから頼む、俺達を物等とは見ないでくれ」

 

 

その時佐渡は先程工廠で起きた洗礼の意味を理解する

(……そうか、何となく分かった

この妖精は一人で他の妖精達を守ってきてたのか)

 

 

「成る程、それで俺にあんなことをしたんですか?」

 

 

「あぁ、悪かったと思ってる

だが俺達は今までそんな扱いばかり受けていたからな

どうしても人間や提督が嫌いなんだ」

 

 

「分かりました

約束します、貴方達を無下にしません

と言うよりは元よりそのつもりです

共に生きていく仲間ですからね、酷い扱いなんて出来ませんよ」

 

 

佐渡が手を差し出すと親方もその手を取り握手をかわす

 

 

「すまないな、妖精なのにワガママを言って」

 

 

「はは、何言ってるんですか

妖精だろうが何だろうが関係ありませんよ

ここで共に生きていくんですから当然です」

 

 

叢雲と古鷹が居ない間に交わされた約束はこの鎮守府での佐渡が運営する目的に絡んでいき

今現在、佐渡は親方仲を深めていく

そして、この交わされた約束が後に叢雲と古鷹の生死を分ける事になる

 

 

だがそれはまた別のお話

この過去編のちょっと先のお話になることをまだここに居る者達は知らずにいた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お風呂が綺麗で良かったわ、お湯も沸かせるし冬にシャワーだけってのは辛いもんね

古鷹さん?」

 

 

「…………」

 

 

叢雲と古鷹は静かに湯舟に浸かりながらのんびりとしていた

お風呂場は綺麗に清掃されており洗剤もそのままになっているため直ぐに入ることが出来二人は入っていた

 

 

「にしても大丈夫?吐く時って体力使うんでしょ?

何かあったら言ってね?何でもするわ」

 

 

「…………どうして」

 

 

「うん?」

 

 

黙っていた古鷹が不意に声を出すと叢雲へ濁った瞳と共に問い掛ける

 

 

「………どうして私を心配するの?」

 

 

「どうしてって仲間じゃない?

ここでこれから生活する」

 

 

仲間 その言葉が古鷹の心に突き刺さる

仲間なんて居ないどうせこの人も裏切ると思いながらも古鷹の瞳は濁り叢雲を睨む

 

 

「……仲間なんていらない

私には構わないで…どうせ死ぬんだから…」

 

 

「え?嫌よ?貴女が拒絶しても私は構うわ

それに貴女は死なせないわよ」

 

 

「…………どうして、構うの殺してよ

生きていてもどうしようもない艦娘何だから道具なんだから早く殺してよ…」

 

 

「だーかーら!殺さないわよ貴女は私の仲間になるーーーーー」

 

 

「嘘つき!!どうせ貴女も裏切るんでしょ!!!

どうせどうせどうせどうせどうせどうせどうせどうせ!!!!」

 

 

突然声を荒げる古鷹にビクンと叢雲は反応し古鷹を見ると涙を溢しながら叢雲を睨み付けていた

 

 

「貴女達も私がうざいと思ってるんでしょ!そうだよね!!こんな食事も満足に取れず人に関わることも出来ない出来損ないのクズ重巡何て!!

そうだよね!!私なんて戦艦見たいに火力が高い訳じゃない!駆逐艦見たいに砲撃を避けるのが上手い訳じゃない!!捨て駒位にしか使えない艦娘何ていらないよね!!!」

 

 

その言葉で叢雲はどうして古鷹が死にたがっているのかそして彼女が置かれている状況を理解する

 

(似てる…私に……あの時絶望していた私に)

 

 

叢雲は覚えがあった何故なら叢雲もつい最近海軍に見捨てられた事があったのだ

ある深海棲艦を止めるための捨て駒として使われ死ぬはずだったその命を佐渡によって救われていた

でもそれとは少し違う、彼女古鷹は仲間になることを嫌っている

叢雲には仲間が居た信じ合えた仲間が、だが彼女はそれを拒んでいる

今その訳は分からないが叢雲なりの答えを古鷹へぶつける

 

 

「そうね、仲間はいらないよね」

 

 

「いらない!私に仲間は!!!」

 

 

「じゃあ!家族になりましょ?」

 

 

「…………家族?」

 

 

叢雲は古鷹に近寄るとその手を取りながら握手を交わす

 

 

「そう!家族よ!

仲間より深い絆で結ばれた物よ!

絶対に切れない縁で私達を結ぶの!

と言っても本当の家族にはなれないけれど貴方とともにずっと歩んでいくの!どうかしら?」

 

 

叢雲の真っ直ぐな瞳を見ると古鷹は目を反らしてしまう

 

 

「う、嘘……貴女もどうせ…」

 

 

「裏切らないわ!絶対に!

約束しましょう!私達は絶対に死なない!殺されない!

貴女は私が守る!約束よ!」

 

 

叢雲は小指を出し無理矢理古鷹の小指を絡ませると指切りを交わす

 

 

「はい!約束!

貴女は私が守るわ

絶対に何からもだから貴女は私を頼って、何でもするからね!」

 

 

「え、ちょ、ちょっと!」

 

 

叢雲は古鷹に抱きつくとその背中と頭を撫でながら優しく言う

 

 

「大丈夫よ、ここには私と司令官だけ

貴女は私達だけを信じなさい

二週間で良いわその期間だけ私達と共に居てほしい

もし、それでも信じられなかったら何時でも出ていって良いわ

でも後悔はさせない

約束よ」

 

 

「…………分かり…ました」

 

 

「良し!じゃあ改めてよろしくね!古鷹さん!」

 

 

叢雲はニカッと笑うと少しだけ古鷹の目の色が明るくなった様な気がした

 

 

 





次回

少しだけ落ち着いた日常

少しだけ強引に古鷹への信頼を勝ち取った叢雲だったがそれを佐渡は知らない
だがそのかいあってか二人は少しずつ仲良くなっていく

そう言えば最近資材を少し使い4ー5でおっぱい要塞(港湾棲姫)と対峙してたのですが古鷹さんが夜戦での連激で耐久全て持っていきましてね……
流石は古鷹エルですね!!と感動してました!

ついでに神通さんも改二になりましてイベント準備が整いつつあります!



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古鷹 九

佐渡達が小笠原鎮守府に来て三日後

時刻は夕飯より少し前の時間夕暮れ

厨房にて佐渡は苦悩していた

 

 

「はぁ………どうすれば良いんだろうか…」

 

 

それも古鷹の事である

彼女が拒食症であることが発覚し彼女への料理を作るのだがことごとく撃沈されていた

 

 

「うどん駄目…素麺駄目…お米駄目…パン駄目…お粥も駄目………

どうしよう…お粥なら行けると思ったんだけどな……

うーん……」

 

 

厨房の食材とにらめっこしながら今日の晩御飯を考えながら悩んでいると不意に妖精が顔を出す

 

 

「提督ー?どうしたのー?」

 

 

「んー?ちょっとねー……

ねぇ、妖精さんここって何があるの?」

 

 

何となく佐渡は今ある食材と小笠原にある食材が気になり妖精に聞く

 

 

「えっとねー

野菜ー

魚の頭ー

果物ー

木の実ー

イノシシー

熊ー」

 

 

「お、おうふ何か後半とんでもない物を聞いたような………

あぁ!そうだ!あれを作ろう!」

 

 

佐渡は何かを思い付くと早速料理に手を出していくと妖精は頭を傾げる

 

 

「何作るのー?」

 

 

「それは秘密!あ、妖精さんちょっとお願いがあるんだけどさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして外は暗くなり古鷹と叢雲が鎮守府に帰ってきていた

二人はお風呂の一件以来ずっと二人で行動しており佐渡も微笑ましく思っていた

 

 

「さてと、今日もアイツを試す時間よ!古鷹さん!」

 

 

「ご、ごめんなさい……私何も食べれなくて…」

 

 

「違うわ古鷹さん、アイツが下手なだけよ作るのが

病人食も作れないとは司令官失格ね

今日も駄目だったら私が殴るわ任せておいてね!」

 

 

古鷹の口数も増えており叢雲との会話を普通にこなせるようになるまで回復していた

三日前のアレから佐渡は古鷹への食事を何とか作ろうとしているのだが全て戻してしまい叢雲もイラついていた

 

 

「ごめんなさい…ごめんなさい」

 

 

「だから古鷹さんは悪くないってば!」

 

 

夕食の時間になり叢雲と古鷹が食堂に着くと丁度親方達と鉢合わせる

 

 

「あら、親方さん奇遇ね?」

 

 

「おう、叢雲ちゃん外はどうだった?」

 

 

「相変わらず酷い状態よ

夏じゃなくて良かったわ、熊や野生動物が冬眠してるから出掛けられるけど危ないわよねあれは」

 

 

叢雲と古鷹が出掛けていたのは理由があった

散歩兼体力作り、そして周囲の偵察である

二年も放置されていた島には人が居なくなった事で生態系が変化していると佐渡は危険視していた為叢雲達に任せていたのだ

 

 

「さてと今日は成功すると思うか?」

 

 

「さぁね?成功するとは思いたいけどね」

 

 

二人が食堂に入ると佐渡がエプロン姿で調理しておりそれぞれ自分達の席に座ると皿を妖精達が持ってきてくれる

 

 

「どうぞー!」

 

 

「はいお皿ー!」

 

 

「ん、ありがとうね

って今日はこれだけなの?」

 

 

「そうだよー!今日はスープなんだってー」

 

 

しばらくすると佐渡が厨房から鍋を持ってきており皆の前にそれを出し机に置く

 

 

「ほい!今日の晩御飯やぞ!

今日こそは古鷹ちゃんに食べさせちゃうぞぉ!!」

 

 

「こりゃ今日も無理だな」

 

 

「そうね」

 

 

「二人ともひでぇ!!」

 

 

佐渡が蓋を開けると香ばしい香りが食堂内に漂いだし親方と叢雲はその香りを堪能する

 

 

「へぇ………旨そうだな…」

 

 

「…そうね……何かしら…これ…」

 

 

「さ、古鷹ちゃんお皿頂戴な?」

 

 

「は、はい!」

 

 

佐渡は古鷹からお皿を受け取るとそのお皿にスープをよそいその中身を古鷹へと渡すのだがその中身に疑問を抱く

 

 

「……なぁ提督、何で具材無しなんだ?」

 

 

「そうよ、司令官具材無しなの?今日は?」

 

 

そう、そのスープには一切の具材が入っておらず真っ白なスープだけであり油すら浮いておらずに古鷹も驚く

 

 

「おう!これなら行けるんじゃないかな?

古鷹ちゃん!ご賞味あれ」

 

 

「い、…頂き…ます…」

 

 

古鷹がスプーンを取りそのスープをよそうと近くの妖精達もゴミ箱やゴミ袋を持ってきており準備万端である

その様子を皆で唾を飲み込みながら見ており古鷹はゆっくりと口に運ぼうとする

一瞬口に入れるのを躊躇ったが勢い良く口の中にそのスープを入れる

 

 

「ど、どうだ?」

 

 

「どう?古鷹さん?」

 

 

「不味い…?吐き出しても良いんだよ!?」

 

 

スプーンを加えたまま古鷹はその味を堪能しているとゆっくりとスプーンを放していくと声を震わせる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おい………しい……」

 

 

「マジか!?とうとう食べれるものが出来たのか!?」

 

 

「本当!?古鷹さん美味しい!?

飲めるの!?」

 

 

 

「は、……はい……これなら…大丈夫です」

 

 

 

「よっっっっっっしゃあああぁ!!!!」

 

 

叢雲と親方も喜んでおり作った佐渡本人は思わずガッツポーズを取りながら喜んでいると古鷹はゆっくりとスープをよそい口へ運んでいく

 

 

「美味しい…飲める……!」

 

 

「おう!やったな提督!!流石だよ!!」

 

 

「やったわ!!流石ね!司令官!!」

 

 

「「「やったー!!」」」

 

 

 

古鷹がやっとことで食べれる物を作れた事の喜びに佐渡達が喜んでいると妖精達も嬉しそうにしておりゴミ箱やビニール袋を捨てては他の皆もスープを自分達でよそい飲み始める

 

 

 

「…ほう!これは旨いな!

味が凝縮されてて後味もさっぱりしてやがる!

しかもほどよく薄いからいくらでも飲める!」

 

 

「本当!何よこれ!

何かのダシ……?でもちゃんと野菜の味もするわよね?」

 

 

「美味しいー!」

 

 

「あぁ~……苦労したよ……

そいつはマグロや海産物のダシを取ってそのあとに野菜とかを細かく刻み煮込んで完全に溶かした物だ

味も濃すぎず薄めに作ったんだが古鷹ちゃんが食べれるなら良かったぁ……

いやー苦労した甲斐があったよ!!」

 

 

佐渡はゆっくりだがキチンと食事をしている古鷹を見ると安堵の溜め息を付くと椅子に倒れるように座ると一人の泣き声が聞こえてくる

 

 

「……美味じい……美味しいよぉ………」

 

 

その声の主は古鷹だった涙を流しながらそのスープを飲みしっかりとその味を噛み締めている

その涙する古鷹を見ると佐渡は笑い叢雲は優しく頭を撫でていた

 

 

親方も涙脆いのか目を擦っておりスープを飲み干す

 

 

「かぁ!ちょっとしょっぱいな!!

提督!!おかわり!!」

 

 

「はいはい、いくらでもありますからね」

 

 

「司令官私もよ!!」

 

 

「僕たちもー!」

 

 

「はいはい」

 

 

佐渡が皆のおかわりをよそっていると古鷹は泣き続けそのスープを飲み干す

おかわりこそしなかったが食べ終わってもしばらくの間泣き止むことは無かった

 

 

 

その涙はここに来て初めての食事を出来たことと

美味しい食事が皆と出来たこと

そして、佐渡や叢雲達の優しさを改めて理解させられた事への涙だった

 

 

 

「うぅ……私……私は……」

 

 

少しずつ古鷹の壊されていた心が治り始め

少しずつだが確実に古鷹は佐渡達を信用しようとしてきていた

だが彼女の心にはまだ藤谷達に傷つけられた傷が深く残っていた

このスープは彼女にとっての始まりである

ここでの生活をするにあたっての第一歩だった

 

 

 

 

 

 




次回

距離間

佐渡や叢雲のお陰で少しずつ古鷹も心を開きつつある
だがやはり彼女の問題はそう簡単ではない
そして佐渡は真実を知る

もう少しで古鷹さんの過去が終わります
果たして佐渡達は彼女を救う事は出来るのでしょうか?




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古鷹 十

古鷹が食事を出来るようになってから一週間

少しずつだが会話もまともに出来るようになってきており佐渡や叢雲との会話をするようになっていた

 

それは大きな進歩であり佐渡も嬉しく思っていた

食事も一日一回でスープ位しか取れてないがそれでも少しずつ前に進めていることを実感していた

そして佐渡は

 

 

「親方さーん!ここ錆びてますがどうしますかー?」

 

 

「あぁ!そしたら切り落としてくれ!」

 

 

親方に頼まれていた工廠の修繕を行っていた

屋根の大穴を直していたのだがやはり一人では難しく妖精達と協力していた

 

 

「にしてもこんなデカイ穴どうやってやったんですかねぇ……」

 

 

「敵空母による爆撃だ、しかも一発じゃなくて何発連続して受けてたからな

とりあえず今日はもう少し直したら終わりにしよう!」

 

 

「分かりましたー!」

 

 

佐渡はノコギリやハンマーを使い少しずつ工廠を直していくと妖精達が道具を持ってきてくれる

 

 

「提督ー!」

 

 

「釘だよー!」

 

 

「お、ありがと!」

 

 

しばらくすると、工廠の天井を直し終え佐渡は工廠前で一息つく

 

 

「ふう……夏が来る前には色々と直したいですね……」

 

 

「だな、穴が塞がればエアコンも使えるしな……」

 

 

二人は一緒に休憩を取っていると佐渡が不意に立ち上がり食堂へと向かっていく

 

 

「提督、もう行くのかい?」

 

 

「えぇ、すいません

今日も時間がかかりますので行かせて貰いますね!」

 

 

「そうか、まぁ頑張れよ」

 

 

気付けば外は夕暮れに染まっており佐渡も古鷹の為のスープ作りの時間になり食堂へ向かっていると入渠施設や壊れてる廊下の修理を行っている妖精達とすれ違う

 

 

「皆ー!そろそろご飯作るからキリの良い所で切り上げてねー!」

 

 

「「はーい!」」

 

 

しばらく歩いていき食堂の引き戸を開けると厨房で何か人影を見つけ溜め息をつく

 

 

「おいおい、叢雲~

何つまみぐいしてんだぁ?

もう少しなんだから我慢しろよ……」

 

 

そう話しているのだが一向に叢雲が顔を出さずに佐渡は疑問に思っていると厨房に入りその姿を確認する

 

 

「おーい、叢雲?何して……………ぇ?」

 

 

「…………………ごめんなさい……」

 

 

叢雲かと、思っていたその人影は叢雲ではなく何故か古鷹が厨房のキッチン下に隠れており混乱する

 

 

「………え?…ちょっと待ってね……え?

どうしたの?古鷹ちゃん?何かあった?

叢雲が何かしたの?それとも親方?

良し任せろぶん殴ってきて骨砕いてやるからな」

 

 

「ち!違うんです!違うんです!辞めてください!!」

 

 

混乱しながら佐渡が暴走しそうになっていると古鷹が佐渡の腕を掴み何とか止める

 

しばらくすると佐渡も落ち着き二人とも席に座る

 

 

「…うんごめん変な所見せちゃったね」

 

 

「い、いえ……私も悪かったのでごめんなさい…」

 

 

「そんで何してたの?厨房何かで?」

 

 

「そ……その……」

 

 

古鷹は持っていた林檎を見せると佐渡は首を傾げるがそれを回転させると納得する

 

 

「…………まさか、食べたの?」

 

 

驚きながら聞き返すと古鷹は頷き林檎を持ち上げ見返すのだが良く見ると古鷹の顔色がよろしくはない

 

 

「………吐いた?」

 

 

その言葉にビクンと反応しそっぽを向くのだが静かに頷くと佐渡は立ち上がり古鷹の頭を撫でる

 

 

「そうか、努力することは良いことだ

だがなこう言うのは俺に任せておけ

古鷹が食べれそうに調理してやるからな!」

 

 

そう言うと佐渡はゆっくりとその林檎を持ちながら厨房に入っていくとその後を古鷹も付いていく

 

 

「良し!じゃあ古鷹に特別メニューな!

皆には秘密だぞ?」

 

 

「は、はい!」

 

 

そう言うと佐渡は手際よく林檎を切っていきそれを鍋に入れると砂糖や甘味を入れていきゆっくりと煮込んでいく

 

 

「君が食事の出来ない理由はいくつかあるんだろうけど多分一番の理由はストレスじゃないかな?」

 

 

「!!」

 

 

佐渡の言葉に古鷹は心を鷲掴みにされる感覚に陥る

 

 

「でも俺達にはそれを和らげる位しか出来ない

君の心にあるその『何か』は俺達にはどうしようもない

だから俺達は君がその何かに立ち向かえるまで君を支える

どんな形でもどういったやり方でも君を支えるよ」

 

 

料理をしながら佐渡は話を続けていき古鷹は黙ってその話を聞いていた

 

 

「嬉しいんだ、君が俺の料理の為にご飯を食べようとしてくれているのが

でもね、無理をしてほしくない

だから頼ってほしいんだ俺達をね

良し!完成っと!」

 

 

佐渡は料理を完成させると鍋からそれを取り出し皿に盛り付けていく

それはやはりスープなのだが柔らかく煮込まれた林檎がその中に沈んでいた

 

 

「どうかな?最近少しずつ食べれるようになってきたから作ってみたんだけど……」

 

 

古鷹は皿を受け取るとスプーンでスープをすくうと口に運びその味をしっかりと堪能する

 

 

「……甘い…凄く…でも美味しい……」

 

 

「ふふ、良かった

林檎はどうかな?かなり柔らかく煮込んだんだけど………」

 

 

古鷹はその言葉を信じスプーンで林檎を小さくしようとすると簡単に切ることが出来驚きながら口に運ぶ

林檎は少しの力で噛みきることが出来柔らかい

そして、林檎の甘味と食感がとても心地いい

 

 

「美味しい……美味しいです!」

 

 

「はは!良かった食べれるようになったか!

これならそろそろお粥とかなら行けるかなぁ?」

 

 

佐渡は嬉しそうに喜んでいると不意に食堂の扉が開き二人が入ってくる

 

 

「あーお腹すいた~

司令官ご飯まーだー?」

 

 

「おーい、提督~

そろそろご飯……って何食べてるんだ!二人!!」

 

 

「あっちゃーバレちゃったか~!

古鷹ちゃんとの秘密……だったのに………」

 

 

 

その訪問に佐渡も笑って誤魔化そうとするのだがそれよりも一つに視線が集まり笑う事すら忘れてしまった

 

 

「アハハハハ!バレちゃいましたね佐渡さん

フフフ、二人きりの秘密の筈だったのに!」

 

 

笑っていた

今まで暗い顔しかしておらず目も真っ黒に染まっていた彼女の瞳は色を取り戻しており左の義眼も綺麗な金色に輝いていた

 

 

「アハハハ……てあれ?皆さん?どうかしましたか……?」

 

 

「いや…何でもねぇよ!なぁ叢雲!!」

 

 

「えぇ!何でもないわアハハハハ!!」

 

 

「そうだな!何でもないなアハハハハ!!!」

 

 

「………?」

 

 

その姿を見ながら佐渡達は笑いながら少しだけ涙を流し喜んでいた

古鷹に笑顔が戻った

少しずつだけど彼女が前と同じように戻ってくれていると実感できているそれだけが佐渡達を喜ばせていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やったなぁ……彼女を笑わせられたなぁ……

ハハ!進歩はしてるんだな!俺達は!」

 

 

皆が寝静まる中佐渡は一人屋上に出ており寒い夜空を見上げながら喜んでいた

今宵は満月、辺りを照らしながら佐渡は海を眺めながらのんびりとしていた

 

 

「………あ、そうだ!この事を大淀さんに…」

 

 

佐渡はその報告を大淀にしようとするとポケットから手紙が落ち渡されたことを思い出した

 

 

「これって確か大淀さんに渡された……」

 

 

その手紙は大淀に去り際に渡された手紙

可愛い便箋に後ろにはアルファベットで『A』とだけ書かれており中身を見ようとする

 

 

『必ず一人でお読みくださいと言われております!』

 

 

その言葉を思い出し周りを警戒するが誰も居るはずが無く月明かりの中その手紙の内容を確認する

 

 

「……………おい、どういうことがこいつは…

だが、コイツが本当なら…彼女は……」

 

 

手紙の内容と大淀に言われた言葉を思い出す

 

 

『彼女は嘘はつかないと思いますよ?』

 

 

「……となるとこれは真実なのか…じゃあアイツは古鷹は……」

 

 

その言葉と同時に佐渡は手紙を強く握り締める

その内容は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『初めまして佐渡提督さん

最初に古鷹さんを助けて頂きありがとうございます

私の名前は明かせませんが彼女を密かに大切に思っている者です

これから私が貴方に教える内容には嘘偽りはありません

保証します、もし嘘ならば私は貴方の前に出てどんな仕置きでも受ける覚悟です

 

 

古鷹さんは何の罪も働いていません

彼女は私達を守り、私達の為に動いてくれた優しいお方です

古鷹さんは藤谷提督と海軍上層部によって殺された艦娘何です

毎日拷問を受け心を磨り減らされそして心を壊された人なんです

お願いします、彼女を古鷹さんを助けてください!

私では彼女を助けられないんですごめんなさい

非力で情けなくて貴方に頼ることしか出来ない愚か者であることをお許しください

 

 

彼女の心を貴方が救ってほしい、私には出来なかったから貴方に頼ることをお許しください

お願いします……古鷹さんを助けて…

                密告者Aより』

 

 

 

手紙の後半は涙で濡れたのか端がくしゃくしゃになっており佐渡もそのAが古鷹を心配している事を理解する

 

 

「任せろ、何とかしてやるさ

だがいつかお前の事も救ってやろうじゃねえが

密告者Aさんよ」

 

 

 

 

 

 





次回

真実と絶望

古鷹に笑顔が戻り佐渡達の苦労が報われてきていた
だがそれと同時に佐渡は古鷹の真実を知り彼女を何としても救いたいと思う
だが彼女に縛り付けられた絶望の鎖はそう簡単には壊せない


凄い長文になってしまったごめんなさい!
そして不意にプリンツ欲しくなったのですが海外艦ドロップしてくれないかなぁ!イベント!!



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古鷹 一十

鎖はまだ壊れない
彼女を縛り苦しめ続ける







時を同じくして佐渡が真実を知り叢雲と古鷹は眠りについていた

古鷹と叢雲は同室に寝ており二人とも同じベットに寝ていた

 

叢雲は熟睡するなか古鷹だけ苦しんでいた

笑顔を取り戻したばかりの彼女の夢には悪夢が付きまとう

 

『お前は犯罪者何だよ!!』

 

 

『死ねば誰もが喜ぶ!君は誰にも必要とされていない!

さぁ死になさい!死ね!死ね!死ね!死ね!!』

 

 

「違う!私は!!」

 

 

古鷹はガバッと起き上がり周りを確認すると辺りにはさっきまでしていた声が聞こえなくなる

だが身体中に汗をかいており息も苦しそうにしていた

 

 

「私は……私は…そうだよね……ハハハ…私は

 

犯罪者だもんね……」

 

 

そう呟くと古鷹は夜中であることにも関わらずフラフラと出ていき廊下に出ると頭を抱えながら歩いていく

 

 

頭の中では声が鳴り響く

 

 

『お前は犯罪者だ!』

 

 

『アイツがやったんだ!』

 

 

『お前が招いたんだ!奴等を』

 

 

『全て全て全て!!』

 

 

『『『お前が生きているのが悪いんだよ!!』』』

 

 

「私が生きている…のが悪い……?

ハハ…そうだよね…私が…」

 

 

一人廊下を歩いていると目の前から誰かが歩いてくる

 

 

「……あれ?古鷹ちゃん?どったのこんな時間に?」

 

 

それは屋上から戻ってきていた佐渡だった

一人廊下を歩いている古鷹に違和感を覚えるとその様子が可笑しいことに気付く

 

 

「退い……て私は…」

 

 

「…だぁめ、今は寝る時間だよ?

また明日ね

今日は寝なさい」

 

 

佐渡の言葉に古鷹はイラつき走り出そうとすると不意に床が抜けてしまいそのまま佐渡に抱き付くように倒れてしまう

 

 

「おっと!大丈夫か?古鷹ちゃん?」

 

 

「私は……私は…違う…よ……」

 

 

だが古鷹はそこで意識を手放してしまいそのまま深い眠りに付いてしまう

流石に意味がわからない状態になっている古鷹だったが何となく初めて来たときにそっくりだった為佐渡は古鷹を抱えながら寝室へと行く

 

 

寝室に着くと叢雲が爆睡しており古鷹を横に寝かせるとその頭を優しく撫でる

だが、それと同時に古鷹は涙を流す

 

 

「…助けて……誰か……私は…やってないのに……」

 

 

その声にやはり手紙の内容が事実であると佐渡は確信し古鷹の耳元で囁く

 

 

「安心しろ、お前は犯罪者何かじゃないからな」

 

 

声が古鷹に届いたのか涙を流しながら佐渡の手を取って静かに眠りについてしまう

 

 

「あちゃー……こりゃー逃げられんわ」

 

 

手を振りほどこうとしようにもかなり強く握られており溜め息を付きながら仕方無くその場で寝ることにした

と言っても布団で寝るわけにはいかない為近くの椅子を取り座りながら寝ることにした

(…久しぶりだな誰かに手を握られながらってのも…

やっぱり落ち着くのかね?分からんなぁ)

 

 

そう思いながらも眠気が襲ってきてしまい佐渡も眠りに付いてしまう

 

 

(……絶対お前を救って見せるからな…誓おう我が死神の名に掛けて)

 

 

 

 

 

 

 




次回

死を願う

古鷹と少しずつ距離を詰めていき親睦を深められたと思った矢先それは降りかかる
古鷹に付けられた鎖は幸福を許さないそして事件が引き起こされる


果たして佐渡と叢雲は彼女を救うことが出来るのか?
古鷹過去編もラストに近付いてます!


あ、題名は間違えてないですよ!
これで良いんです……これでね


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ふる鷹  十2

時間は再びの夜

古鷹と共に小笠原へ来て二週間が立った

だが何故かは分からないがあの真実を知った夜から古鷹の様子が可笑しくなってしまった

 

それまで普通に話せていたのにまた塞ぎ込み頭を抱えながら部屋の隅に居ることが増えており佐渡達は混乱していた

 

 

特に前兆があった訳ではない

古鷹に誰かが何かをしたわけでもない

だが彼女はあの時から苦しんでいる

何かを彼女を縛り笑顔を許さないかの様に

 

 

「ねぇ!司令官何とかならないの!?」

 

 

「俺に言うなよ……何とかしたいがあれは俺達にどうにか出来る問題じゃない

多分…彼女の心が問題だ…何であぁなったのか俺にも分からないんだよ…」

 

 

佐渡と叢雲は屋上で言い合っておりその声を聞いてなのか妖精達も隠れてしまっていた

 

 

「だがご飯は食べれてるからそこはまだ良いんじゃないか?」

 

 

「良くないわよ!あの娘私から話しても最近は返事位しかしてくれないし!話も聞いてないし!あんた何とかしてよ!!」

 

 

「無茶言ってくれるな……

それと落ち着け叢雲、焦っても何も解決しない」

 

 

「焦りもするわよ!何でよ!何で……やっと彼女に笑顔が戻ったのに…また振り出しに戻るなんて……」

 

 

叢雲は確かに焦っていた

古鷹に言った期限が迫っていること

そしてやっと心が交わせると思った相手がまた落ち込んでしまっていること

助けたいのに何も出来てない自分への焦り

 

 

「ねぇ!どうすれば良い!?私は何をすれば良いの!?

あの娘に!古鷹さんに何をすれば良いの!?

教えてよ!佐渡!!」

 

 

「落ち着け!俺達が焦ってたら彼女も困るだろ!」

 

 

 

 

その言葉と共に佐渡に抱き付きながら殴っているが痛くはなく佐渡も頭を撫でる

 

 

「何でよ……!何で!私はこんなに無力なのよ……

私は……」

 

 

叢雲は焦り混乱しており佐渡も抱き締めながら叢雲の頭を撫でていた

 

 

「安心しろ前には進んでいる

今ちょっと大きな壁に当たってるだけだ」

 

 

「うん……分かったわ……」

 

 

佐渡に胸の内を明け叢雲はしぶしぶ一人で戻っていくとポケットにしまってあった手紙を見返す

 

 

「……拷問…心を壊された……確かに拷問の一つにはその情報を吐かせるために過剰な事をすることもあるが

心を壊して何の意味があるんだ?」

 

 

密告者に教えられた真実を考えながら佐渡は屋上を後にし外へと歩みを続ける

佐渡と別れた叢雲は部屋に戻ると先に古鷹が寝ており何かうなされており直ぐ様手を握り頭を撫でる

 

 

「助けて……誰か……」

 

 

「大丈夫よ…私達が居るわ…大丈夫よ」

 

 

悪夢を見ているらしく叢雲は頭を撫でながらあやしているのだが途中で睡魔に襲われゆっくりと眠りへと落ちていく

 

 

叢雲が眠りに付いた後一人の艦娘がゆっくりとベッドから起き上がり繋がれた手を振り払うと頭を抱えながら呟く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私……何デ生きテるノ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言うわけ何ですよ、何かご存知無いですか?」

 

 

佐渡は鎮守府を出てある人へ電話で話しておりその相手も唸りながら返答する

 

 

『うーん………そこまで酷いとは……ですが彼女は確かに前の鎮守府ではしっかり者だったと聞いております

大本宮の資料にも彼女にそんなことをしたと言う記録がありません

それに艦娘を意図的に傷付けるのは駄目ですからね

拷問なんてそんな……』

 

 

密告者に教えられた拷問や彼女が罪のない事を伝えるのだが相手訳が分からずに返答しようがない

 

 

「何でも良いんです!何かありませんか!?」

 

 

『……そうですね、一つだけあるとしたら彼女が所属していた鎮守府から彼女の返還願いが来てるだけですかね?』

 

 

「確か、藤谷提督の?」

 

 

『えぇ、どうやら古鷹さんが必要だとかで

まぁそれは流石に通せないですけどね

彼女は仮にも犯罪者として扱われてるだけですから貴方の鎮守府にしか置けません

何せ仮にも死刑囚

貴方が無理矢理助け出した様な物ですから不可能です』

 

 

「アハハ…まぁ、そうですよね

となるとやっぱり元鎮守府の………」

 

 

と佐渡が不意に鎮守府を見ると電話をそっちのけで唖然とする

 

 

『……佐渡提督?どうされました?』

 

 

「あ……いえ…」

 

 

鎮守府はまだ幾つかの大穴が空いており古鷹や叢雲が寝ている二階は廊下が見えるほどである

故に外に出ていても廊下を歩いていればすぐに見える

 

 

「……何で古鷹が起きてるんだ?」

 

 

そう、佐渡が唖然としていたのは古鷹が起きて廊下を歩いていたのだ

しかも叢雲を連れてない状態でフラフラとどこかに向かうように

それだけなら別に何でもない

トイレか何か下に用があるなら分かるだが

 

 

「あの先って確か上に行ける階段しか無かったよな?」

 

 

そう彼女が向かっていたのは上へ向かう階段のある方角で流石の佐渡も驚いていた

(上に何か用がある?何でだ?あの娘が上の階に用なんて……)

 

 

『佐渡提督?どうかされましたか?』

 

 

「あぁ!いえすみませんちょっと……」

 

 

電話をしていたのを忘れており慌てて返事をするがそれと同時にあることを思い出す

 

 

『死にたいんです、死ねば私は楽になれる

 

皆が嬉しがる、喜ぶ、死こそ私が望む物何ですだから死なせてください

 

もう生きていたくないんです』

 

 

「おい……あいつまさか!?」

 

 

初めて会話したときを思いだし佐渡は急いで古鷹を迎えにいこうとする

 

 

『佐渡提督!どうかされたんですか!?』

 

 

「ごめん!大淀さん!ちょっと用事が出来た!!

明日かけ直します!!」

 

 

『ちょ、ちょっと佐渡提とーーー』

 

 

大淀との電話を切り急いで佐渡は携帯を別の奴に掛けるのだがその相手は全く出る様子が無く舌打ちをしながら走りだし古鷹の後を追う

(勘弁してくれよ!!間に合ってくれ!!)

 

 

途中廊下を走ってるとき何度か床が抜けこけそうになるが何とか耐え走る

そして屋上まで登ると思い切り扉を蹴飛ばし外を見る

 

 

 

「古鷹!!!」

 

 

屋上に行くと案の定古鷹が居た

フラフラと歩みを進めながらある場所に止まると佐渡へ振り返る

 

 

「………何ですか?佐渡提督」

 

 

「何ですかじゃねぇ!!何してやがる!!」

 

 

「…………決まってるじゃないですか」

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………死ぬんですよ

ここから飛び降りて」 

 

 

古鷹は屋上の端に立ちながら佐渡を見ておりそれが月明かりと共に二人を照らしていた

 

 

 

 

 

 





次回

この手を離さない

悪夢と絶望が彼女を取り込みとうとうそれが爆発する
死に向かおうとする古鷹を佐渡は救うことが出来るのか?

やっと遠征で東京急行がでて回してますがこれは良いですねぇ……
資材が貯まる貯まる



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ふるタカ  1三

「バカ野郎!なんでそうなるんだよ!!」

 

 

「……死にたいんです

死ねば私は役に立てるんですよ

死なないと役に立てないんですよ提督や皆さんの役に!

だから死ぬんですよ!!何で分からないんですか!?」

 

 

「分かるわけ無いだろうが!

お前が死んで喜ぶ者はここには居ない!!

分からねぇのか!?」

 

 

「分からないですよ!!私は…私は所詮兵器何ですよ!!

人の形をした深海棲艦を殺す為の人間によって作られた兵器!!」

 

 

古鷹は頭を抱えながら叫び苦しんでいた

佐渡には何故そうなったのか全く分からなかった

彼女が何故そこまで兵器であること死に執着することが

 

 

「ならここで分かっていけ!!俺達はお前の死を望んでいない!!」

 

 

「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!

二人とも私が居なければこんな目に合わなかったんだ!!

こんな捨てられた場所に来なかったんだ!!」

 

 

「あぁ!そうだよ!お前を助けなければ俺達はここに来なかった!

だが俺達は進んでお前を助けるためにここに来た!!

君を救いたい!助けたい!その言葉は本物だ!!」

 

 

「違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!

どうせ貴方達もあの人と同じ何だ!加古も衣笠も日向さんも木曾さんも提督も私を捨てたんだ!!

 

私が要らなくなったから必要じゃなくなったから!!

重巡ですもんね!!私は戦艦でも空母でもない!

特別強いわけでもない!!

皆に優しくしても皆の為に尽くしても私を助けてはくれなかった!!

貴方達もそうだ!!どうせ要らなくなったら私を捨てるんだ!ゴミ見たいに!見捨てるんだ!」

 

 

今まで溜め込んでいたその思いを古鷹は吐いていく

そして佐渡を睨み付けるその瞳に佐渡は異変を感じる

少しずつだが古鷹の瞳が赤く染まり瞳の奥には怒りそして憎しみに溢れていた

だが佐渡はそれを全て否定する

 

 

「違う!俺達はそんなことはしない!!

もし!俺達がお前を見捨てたりしたら殺してもらっても構わない!だから最後にチャンスを!

俺達を信じてくれ!!」

 

 

「嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!

もうあんな思いはしたくないの!!

皆の為に心を磨り減らして!助けるために命も張って!それでも皆は私を助けてくれなかったの!

もう嫌なの!生きていたくないの!だったら死んで皆の役に立つなら死なせてよ!!

戦いたくない!なにもしたくない!優しくしたくない!死にたいの!!」

 

 

 

 

彼女は私達を守り、私達の為に動いてくれた優しいお方です

 

古鷹さんは藤谷提督と海軍上層部によって殺された艦娘何です

 

毎日拷問を受け心を磨り減らされそして心を壊された人なんです

 

 

佐渡の頭にその手紙内容が思い浮かぶ

あれは真実だった

古鷹は犯罪なんて犯していない、彼女はただの被害者だ

皆を助けるために命を張りそして藤谷に裏切られ仲間にも見捨てられた艦娘

そんなのが実在するなんて佐渡は信じられなかった

だがそれが目の前に居る

だからこそ佐渡は古鷹をこの哀れな被害者である少女を助けたいと思う

 

 

「なら!俺が殺してやる!!」

 

 

「…………ぇ?」

 

 

佐渡は歩みを進めながら古鷹に近付いていく

 

 

「こ、来ないで!!」

 

 

「断る!死にたいんだろ!?

良いだろう!俺が殺してやる!!

艦娘を殺すのは初めてだがやってやるよ!!」

 

 

佐渡はある程度近付いていくと懐から銃を取り出すとセーフティを外し古鷹へ向け引き金に指を掛ける

 

 

「この引き金を引けばお前は死ぬ

どうだ!目の前に自分の死があるってのは!!」

 

 

「はやく……早く撃ってよ!!

私は死にたいの!!もう何も見たくない!聞きたくない!!」

 

 

だが佐渡はその時異変に気付く古鷹の容姿が変わっていることに古鷹の髪が少しずつ白くなり左目の艤装である義眼が真っ赤に染まり右目も赤く染まりつつある

それでも佐渡は引き金を引かない

 

 

「引いてよ……早く…はヤく撃テ!!」

 

 

「引いてやる!!だが古鷹!

お前が俺達に会ってお前は何を見てきた聞いてきた!?

答えろ!!」

 

 

「何ヲ…言ッてルの?」

 

 

「良いから答えろ!!艦娘古鷹!!」

 

 

 

 

佐渡の言葉に古鷹は佐渡達と過ごしてきた事を思い出す

 

 

 

 

 

大丈夫!しっかりして!?

 

 

 

 

 

この言葉は私が死ぬ寸前処刑される時に叢雲さんに言われた言葉

 

 

 

 

 

 

悪いけどこの艦娘の処刑は今この時を持って中止だ!!

 

こいつは俺達が貰っていくぜ!!

 

 

 

 

 

 

この言葉は私の処刑を中止させた佐渡さんの言葉

 

 

 

特に理由は無いわ

 

私は貴女を知らなかったし、でも助けたいって思ったの

 

 

 

 

 

この言葉は叢雲さんが私を助けてくれた理由

 

 

言葉を思い出す度に私を縛り付けている鎖が壊れていく音がする

一つずつ一つずつ、確実に千切れていく

 

 

 

君が命を捨てると言うのであれば

 

俺達は君の命を拾うよ

 

絶対に君を死なせやしない

 

今は信じてくれなくてもいい

 

いつか、俺達を信じてくれ

 

嘘を付いてないことを君に知って欲しいんだ

 

 

 

 

 

 

この言葉は私が死にたいと言ったときくれた言葉

 

 

 

 

 

 

大丈夫、安心しろここには俺達しか居ない

 

君を傷付ける者は居ないからな

 

怯えなくて良い、恐がらなくて良い

 

俺達は君を大切にする前任よりな!

 

それだけはどんなものにも誓って言えるからな!

 

 

 

 

 

 

 

この言葉は私が恐がってる時にくれた言葉

 

 

 

大丈夫よ、ここには私と司令官だけ

 

貴女は私達だけを信じなさい

 

二週間で良いわその期間だけ私達と共に居てほしい

 

もし、それでも信じられなかったら何時でも出ていって良いわ

 

でも後悔はさせない

 

約束よ

 

 

 

この言葉は私が信じられないと言ったときくれた言葉

 

 

佐渡達に貰った言葉が頭の中を反響する

その言葉達が私の中に残っている死への言葉を消していく

 

 

 

俺達にはそれを和らげる位しか出来ない

 

君の心にあるその『何か』は俺達にはどうしようもない

 

だから俺達は君がその何かに立ち向かえるまで君を支える

 

どんな形でもどういったやり方でも君を支えるよ

 

 

 

佐渡と叢雲から貰った言葉を思い出しながら古鷹は

 

 

「あ………アァ………私は……ずっと…」

 

 

泣いていた

ここに来て佐渡に初めて涙を見せ佐渡はため息を付く

 

 

「……やっと分かったかバーカ

俺達がいつお前に死ね何て言った

その逆だ

お前は死ぬには早い

俺達と共にこの鎮守府で生きろ

お前に命令をだす、古鷹

『生きろ』」

 

 

「あ……あぁ…私は……私は……」

 

 

止めどなく古鷹は涙を流し次第に古鷹の髪色が栗色に戻り真っ赤に染まっていた瞳も元の黄土色に戻っていた

だが彼女は

 

 

「でも私は死なないといけないの!!!!」

 

 

その言葉と共に古鷹は屋上から身を投げる

 

 

「辞めろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

佐渡は全速力で落ちる古鷹の手を掴み何とか耐えるのだが古鷹の身体は下に落ちてしまい佐渡の手にぶら下がっている状態になる

 

 

「バカ野郎!命令すら守れないのか!お前は!!」

 

 

「放してください!私は!!」

 

 

「誰が命令違反した奴の言葉をーーー」

 

 

だが、ここで佐渡は気づけなかった

屋上はほとんど手付かずのままであり苔等が生えており滑りやすくなっていたことに

古鷹を片手で掴みもう片手を屋上の縁に付けており体重によって片手を滑らせてしまう

 

 

「しまっーーー」

 

 

その瞬間佐渡と古鷹は屋上から落ちそうになるのだが何とか滑った手で屋上の滑った縁を掴み直し古鷹を片手で支えるのだがかなり危険な状態になってしまった

 

 

「やば……これ……流石にキッツ……」

 

 

片手で古鷹と自分の体重を支えており何とかギリギリでぶら下がっているが流石の佐渡も余裕がない

 

 

「放してください!貴方が死ぬ必要は無いんですよ!!」

 

 

「うるせぇ!絶対にこの手を放さないからな!!

俺は君を助けるって決めたんだからな!!」

 

 

 

 

 

 

 





次回

堕ちた天使は果てで何を見る?

古鷹の身投げを何とか止められた佐渡
だが自分の身体も落ちてしまい絶対絶命に陥る

佐渡は古鷹の絶望から助け出すことは出来るのか!?


次回も長くなります
あ、ネタバレですが佐渡が艦隊を動かさない理由と小笠原の方針そして真の意味が次回明らかになります!
この鎮守府は古鷹と叢雲の為に彼は作り出した



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果ての地にて少女は何を見る


古鷹過去編最終話!

かなり長いです……ごめんなさい……





とある部屋のベッド

一人眠りに付いていたが不意に夜中だと言うのに目が覚める

 

 

「……まだ暗いわね…もう少し…」

 

 

時間は真夜中、静まったはずの鎮守府

叢雲はベットに寝転びながら自分がどうすれば古鷹の力に馴れるのか悩んでいた

 

 

「……絶対助けるわ貴女を」

 

 

そう呟くと再び睡眠に付こうとするが艤装の電探がピカピカと光っておりそれに気付くと起き上がる

 

 

「…電話?この電探の番号を知ってるのは佐渡だけ…あれ?古鷹さんは?」

 

 

ベットから起き上がり周りを確認すると隣で寝ていたはずの古鷹が居らず佐渡も居ないことに気付いた叢雲直ぐ様電探で佐渡に電話を掛ける

だが反応がなく嫌な予感が頭を過る

 

 

「……まさか!古鷹さん!佐渡!!」

 

 

叢雲は急いで艤装を装着すると消えた二人を探しに鎮守府内を走り回ると声が聞こえる

 

 

「叢雲ぉぉぉぉぉ!!!!居ないのかぁ!!!」

 

 

「佐渡!?どこにいるの!?」

 

 

いきなり聞こえた声に驚きながら声がした方角へと走り出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「や、ヤバい……いくら俺でもコイツは…耐えられるか…?」

 

 

佐渡は片手で古鷹を掴み何とか屋上にしがみつき落ちないように力を振り絞っていた

(古鷹だけなら持ち上げられなくはないが……)

 

 

古鷹を見ると力を抜き下を向いており佐渡も何とかしようとするのだがそれに反して苔で手が滑り今にも落ちそうになっていた

(不味い…!これ以上はヤバイ!どうする!どうすれば良い考えろ!!)

 

 

思考を巡らせるが全く良い考えが思い浮かばない

もし手すりや窓があれば古鷹を投げ入れ自分は何とか這い上がれるかもしれない

だが、生憎そんなものはない

佐渡がぶら下がっている所は丁度窓も手すりもない壁

どうしようにも一直線に下に落ちるしかない

次に木々や垣根に落ちるように行けば何とかなるかも知れないと思うがそれもない

合ったところで冬で枯れている為使えない

 

 

「…絶対絶命とはこの事か…ハハハ……」

 

 

そんなことを呟くと古鷹が手を広げ佐渡の手から逃げようとする

だがそんなこと佐渡が許すわけもなく強く握り締め返す

 

 

「放してください!このままだと二人とも落ちちゃいますよ!!」

 

 

「嫌だね!約束したろ!

君を死なせやしないって!」

 

 

「でも!」

 

 

「でもじゃない!俺は約束した!君を守るって!

俺が死んだとしても必ず君だけは助けるからな!!」

 

 

古鷹はその言葉に声を失い再び俯くのだがそんな事をしている間にも佐渡の掴む手の力は弱まっていく

(や、やべぇ……そろそろ限界…!)

だがその瞬間佐渡の携帯が不意に鳴り初め身体を震わせるが着信音で一つの希望が沸いてくる

 

 

「叢雲か!この着信音は!やっと起きやがったなあのやろう!」

 

 

それと同時に佐渡は息を大きく吸うと鎮守府中に聞こえるように叫ぶ

 

 

「叢雲ぉぉぉぉぉ!!!!居ないのかぁ!!!」

 

 

そう叫ぶと廊下の方角からバタバタと走ってくる音が聞こえるのだが流石に佐渡も二人分の体重を片手で支えることが出来なくなりそうになる

 

 

「なぁ、古鷹ちゃん俺のお願い聞いてくれるか?」

 

 

「………ぇ?」

 

 

「もしも俺が死んだら叢雲に言っといてくれ

後は任せたってな!!」

 

 

それと同時に佐渡は最後の力を振り絞り古鷹を屋上に投げるとその身体は宙を浮き何とか屋上の端に登らせる事が出来た

しかし

 

 

「嘘!駄目!!!」

 

 

その反動でもう片手が苔で滑り佐渡だけ屋上から落下する

その姿を見て急いで古鷹は手を伸ばし佐渡を掴もうとするが寸前の所でその手は空をきる

だが落ちる寸前佐渡は古鷹に笑い掛ける

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほらな、約束守ったろ?

生きろよ古鷹」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「駄目ぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

空をきった筈の手を掴む為古鷹は屋上から佐渡へ向けて飛び降り佐渡の手を取り引き寄せると抱き締める

そして二人は屋上から落ちていく

落ちていく最中古鷹は涙を流しながら佐渡は強く抱き締めながら叫ぶ

 

 

「貴方が死ぬなんて駄目です!!

貴方は生きてください!次の私を作らないで!!!

貴方達なら誰でも救えるんです!私の心にある鎖を貴方は壊してくれた!!

貴方は素晴らしい人です!私何かの為にここまでしてくれる人なんて居ませんでした!

だからお願い生きて!!私も生きますから!おねがいです!!佐渡さん!!

もし駄目なら私も死にます!貴方と共に死ねるなら本望です!!」

 

 

「……はは…その思い受け取った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして遅かったじゃねぇかよ相棒(バディ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「佐渡ぃぃぃぃぃぃ!!!古鷹ぁぁぁぁぁ!!!

手を伸ばしてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

古鷹はその声に驚き落ちている中屋上を見上げると真上から艤装を展開させた叢雲がこちら目掛けて落ちてきていた

その両手を広げ佐渡と古鷹の手を取ろうとする

 

 

「古鷹!!叢雲に手を伸ばせ!!」

 

 

「はい!!!」

 

 

古鷹と佐渡は抱き締めあいながら叢雲に手を伸ばすと叢雲は身体を風の抵抗が無いように縮めると二人に近付き何とか落下しきる前に二人の手を掴み自分へと寄せる

 

 

「二人とも!!絶対に私を身体を放すんじゃないわよ!!!」

 

 

「頼むぞ!!叢雲!!」

 

 

「お願いします!叢雲さん!!」

 

 

叢雲は腰に展開されている二門の主砲を地面へと向ける

刻一刻と地面が近付き叢雲はぶつかる寸前のギリギリを狙う

迫る地面に恐怖し古鷹は目を伏せ佐渡は叢雲を掴む手が強くなる

そして地面が直ぐ目の前に迫ると叢雲が叫ぶ

 

 

「主砲二門!一斉射!吹き飛べぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

実弾が入った主砲が地面に直撃すると爆発が起き叢雲達に重力と砲撃の反動が上下に掛かりそれと同時に爆発の熱が三人を軽く焼く

だが、落ちる重力と叢雲の主砲による反動で掻き消され何とか三人は無事に地面へと着地した

 

 

 

「………生きてるのか俺達?」

 

 

「……えぇ…そうみたいよ……あんたたちねぇ!

こんな夜中に何してるのよ!?

あんたの声が屋上から聞こえたから急いで向かったら古鷹さんが飛び降りててそれを助けようとしたらあんたも落ちてるとか……もう!ワケわからないんだけど!!!」

 

 

そう言う叢雲の顔は怒りと焦りに満ちており額にはうっすらと汗も掻いている

主砲が直撃した地面は抉られており座りずらかったがそれでも三人はその場にへたりこむ

 

 

「紐無しバンジーやべぇ……」

 

 

「…今これ以上ふざけた事言ったらもう一度落とすわよ佐渡」

 

 

「生きてるの……私…」

 

 

九死に一生を得た三人はしばらくその場を動けない状態で居ると古鷹が自分が生きていると言うことを実感すると少しずつ涙を溢し始め佐渡と叢雲に土下座しながら謝る

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!

私のせいで!私のせいで!二人を危険な目に会わせてしまって本当にごめんなさい!」

 

 

「おーう……もうやるなよ…」

 

 

「えぇ…次は助けられるか分からないからね…

本当に……」

 

 

古鷹が謝っているが緊張と恐怖から解放された佐渡と叢雲脱力してしまい返答も適当になっていたが叢雲が古鷹を抱き締める

 

 

「でも良かったわ……貴女を助けられた…間に合って本当に…」

 

 

「ごめんなさい……ごめんなさい!」

 

 

「違うわよ古鷹さん、こう言うときは謝らないで

『ありがとう』でしょ…全く」

 

 

「うん……うん!ありがとうございます…叢雲さん!

佐渡さん…!」

 

 

古鷹は涙が流しながら叢雲に抱き締めておりその姿を見た佐渡は微笑みながら古鷹の手をとる

 

 

「これで……信じてくれるか?俺達を」

 

 

「っ!……はい!…信じます…二人を…『二人だけを信じます』!

もう疑いません、死のうともしません!ごめんなさい……そしてありがとう…ありがとうございます…佐渡さん叢雲さん

 

恐かったよぉぉぉぉ!!!」

 

 

古鷹は号泣すると二人に抱き付きワンワン泣き出し叢雲と佐渡は笑いながら泣いている古鷹を慰め続ける

 

 

「バーカ、絶対に死なせねぇよ

お前の命は俺の物だ

俺が居る限り絶対に死なせない」

 

 

「そうよ、私達が貴女を海軍から奪ったんだからね

貴女は死なせやしないわ絶対に」

 

 

「ありがとうぉぉ!二人ともぉぉ!!

ごめんなさいぃぃ!ごめんなさいぃぃ!」

 

 

古鷹はその言葉に更に声を上げながら泣いてしまう

その声は鎮守府中に響き渡るが佐渡と叢雲は古鷹の頭を撫でられ更に大きな声で泣いてしまう

改めて二人の優しさに触れた古鷹は今まで自分がしてきたことに後悔しそして二人に感謝した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……落ち着いたか?」

 

 

「……ふぁい(はい)…」

 

 

しばらく泣いていた古鷹だったが二人に撫でられている内に次第に泣き止む

だが、それでもまだ泣き続けておりそれがどれほど溜め込んでいたと言うことを物語っていた

 

 

「にしても、まさか飛び降りるとはね……

あんたも良くやるわね佐渡」

 

 

「ははは……我ながら本当に良くやったと思うよ……

右手いてぇ……」

 

 

「ごめんなざい……」

 

 

「いや怒ってないからな大丈夫だよ古鷹ちゃん?」

 

 

そう言うと佐渡はまた優しく古鷹の頭を撫でていると再び泣き出してしまい叢雲が呆れた様子で続ける

 

 

「あーあ、古鷹さん泣かせたー

あんた後で覚えときなさいよ?」

 

 

「はぁ!?俺のせいなの!?

違うよね!俺頭撫でただけだよね!?」

 

 

「ほら!古鷹さんこっち来てこんな獣野郎何かに触れてたら貴女が酷い目に合わされるわよ?」

 

 

「おい待てや!!俺何もしてねぇだろ!

何で俺が悪人になってるんだよ!!」

 

 

「べーだ!古鷹さんは渡さないわよー!」

 

 

「あんだとゴルァ!」

 

 

「あはは!もう二人とも!」

 

 

二人は古鷹を取り合い喧嘩をしていると古鷹は涙を流しながらその光景を見て笑っていた

そしてその古鷹を見ながら佐渡と叢雲も顔を合わせ笑っていた

 

 

「うん?あちゃー……悪いな二人とも朝になっちゃったな」

 

 

佐渡がそう言うと水平線の果てが少しずつ明るくなってきており古鷹と叢雲も水平線を見る

 

 

「全く、とんでもない夜だったわ」

 

 

「ごめんなさい……でも綺麗ですね……」

 

 

佐渡と叢雲は立ち上がり古鷹へ手を差し出すと古鷹は微笑みながらその手を取り三人は立ち上がる

 

 

「……なぁ、古鷹ちゃん俺達がまだ怖い?」

 

 

「…いいえ、全く

何せ貴方達は私を助けてくれたじゃないですか!」

 

 

「……まぁ助けたのは佐渡だけどね」

 

 

「はぁ?お前だろ?俺は何もできてねぇよ」

 

 

「あんたよ!私は後から駆け付けただけよ」

 

 

「お前が居なかったらぺちゃんこだったんだけど?」

 

 

「あんたが居なかったら私起きてないわよ?」

 

 

「やんのかおらぁ?」

 

 

「やってやろうじゃないの!!」

 

 

「もう!二人とも!!」

 

 

再び喧嘩になりそうになるが再び三人は顔を見合せ笑い出すと佐渡がとんでもないことを言い始める

 

 

「良し!決めたぞ

二人とも聞いてくれ!俺の鎮守府では一切の出撃を禁止とする!!」

 

 

「「はぁ!?(はい!?)」」

 

 

突然のとんでも発言に叢雲と古鷹は驚きながら佐渡へ苦言を漏らす

 

 

「あ、あんたバカなの!?

そんなことしたら大本営に何言われるか!」

 

 

「そ、そうですよ!そんなことしたら更に!」

 

 

「うるせぇ!俺が今決めた!

異論は認めん!」

 

 

二人の静止を振り切り佐渡はその理由について話し出す

 

 

「だって、お前らを出撃させた所で海域攻略なんて出来ないしなぁ……と言う建前を大本営に言っておくから問題ないさ

多分雑務は増えると思うけどなぁ」

 

 

「そ、そしたら佐渡さんが!」

 

 

「俺は良いんだよ、別に命掛けて海域に行くわけじゃないし

まぁ本当の理由は別にあるけどな」

 

 

「何よ、本当の理由って?」

 

 

叢雲に聞かれた佐渡は笑みを浮かべながらこの鎮守府の運営方針を決める

 

 

 

「この鎮守府を!休息所にする!!」

 

 

「……はぁ?」

 

 

「……え?」

 

 

二人の言葉に佐渡は全く屈せず二人に向き直ると笑みを浮かべながら更に続ける

 

 

「今日!この時からこの鎮守府はお前達の為に

艦娘やここに来た奴等が戦いから疲れ休める為の場所にする!!

人間関係に疲れた者、拒絶された者、捨てられた者、裏切られた者、人間を嫌う者、戦いに疲れた者達が集まりゆっくりと休息を取れる鎮守府に俺はしてみせる!」

 

 

二人に笑いかけながらその言葉を言うと叢雲が不意に笑い出す

 

 

「アハハ!言うじゃない佐渡!

まぁ出来るとは思えないけど良いわ手伝ってあげる!

その鎮守府作りを!

戦うための場所ではなく休むための場所ねぇ

良いじゃない!気に入ったわ!」 

 

 

叢雲は笑いながら佐渡の横に立つと唖然とする古鷹に佐渡は手を差し出す

 

 

「だから古鷹ちゃん

嫌、古鷹その第一号として君をこの鎮守府に迎え入れたい」

 

 

「…ぇ?」

 

 

「君に死ぬなとは俺は言った

そして生きていればいつか良いことがあるとか誰かは言った

だが俺はそうは思わない

生きていれば辛いことも苦しいことも絶望することもある

だから俺は、俺達が君の生きている良いことになりたい

君が精一杯楽しみ、毎日笑顔に成りながら休める場所を作ることを約束しよう

この命に掛けて佐渡 満と言う人間がここに誓う

決して後悔はさせない君を必ず幸せにしてみせる

今までの絶望何か忘れてしまうほどに」

 

 

その言葉は古鷹の心を縛り頭の中に響く声を掻き消していく

死ねと言う言葉が生きろと言う言葉に

お前のせいでと言う言葉が君だから助けたという言葉に

お前なんか必要ないと言う言葉が君が必要だという言葉に

 

 

『死んでしまえ!古鷹!!』

 

 

「だから、俺達と共に生きてくれないか?古鷹?」

 

 

古鷹の頭の中に響いていた負の言葉がいつの間にか消され佐渡と叢雲による希望の言葉に変わっており古鷹は口を抑えながら再び涙を溢す

 

 

「貴女は私達が守るわ、どんな奴からとどんな大きな力からも絶対に

何を捨ててでも、何を失ってでも私達は貴女を助けるわ

約束する、いえ誓うわここで

だから私達の手を取って

ここで共に生きていきましょう?

佐渡と私達が作る休息所と言う鎮守府で」

 

 

そして叢雲も古鷹へ手を差し出すと古鷹は更に大粒の涙を流しながら震えながら手を凝視する

 

 

「私は……私は……生きていて良い……の?」

 

 

「もちろん!生きてくれ!

必ず俺達が君の良いことになってみせる!」

 

 

「えぇ!ノアの方舟並みにしっかりとした大船に乗った気持ちで任せておきなさい!

貴女を絶対に助けるわ!!」

 

 

その言葉は古鷹はずっと待ちわび欲しかった言葉

見捨てられ何もかもから裏切られた艦娘(古鷹)は果ての島で希望を見た

そしてその二人の手を古鷹は泣きながらゆっくりと取る

 

 

「こんな……こんな……役に立つか分からない……重巡で良ければ………お願い…致します……!」

 

 

「違うぜ古鷹!」

 

 

「貴女だからよ!貴女だからこそ私達は欲しいのよ!」

 

 

 

「……うわぁぁぁぁぁぁん!!!佐渡ざん!!叢雲ざん!!!ありがとう……ありがとう!!!

苦しかったよぉぉぉ!!悲しかったよぉぉぉ!!」

 

 

二人に笑顔を向けられながら言われると古鷹は更に我慢出来ずに二人の胸に飛び込みながら号泣する

その姿を見ながら二人は優しく古鷹を包み込みながら頭を撫でる

 

 

「おう!じゃあこれからよろしくな古鷹!」

 

 

「よろしくね!古鷹さん!!」

 

 

「はい!よろじぐ!お願いじます!!!!」

 

 

 

古鷹は涙を流しながら二人の顔を見上げぐしゃぐしゃになった顔で満面の笑みを浮かべる

 

 

「全く可愛い顔が台無しじゃねぇかよ、ほら拭きな?」

 

 

「はい!はい!ごめんなざい!ごめんなざい!!」

 

 

「もう!泣きすぎよ古鷹さん!」

 

 

すると水平線から朝日が昇り三人を照らし始める

その朝日は冬の影響もあってかとても美しくそして三人の門出を祝福するかの様に島全体を綺麗に照らしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

仲間に捨てられ

信じてきた提督に捨てられ

海軍の勝手な理由から切り捨てられた艦娘は

こうして二人の裏切り者によって拾われた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

自分達の信念を通し一人を助けるために全てを捨てた二人

このあと彼等には一つの試練が待っている

だがそれはまた別のお話

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回

真実を知った者達へ

古鷹によって伝えられた過去
それは誰の心の傷より深く大きな物であった
そしてその真実は一人の艦娘を大きく傷付ける


長くなってしまい申し訳ありません…
古鷹過去編が終わりです!
次回から元の時間軸に戻ります!




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真実

「ーー以上が私の過去であり提督と出会いこの鎮守府に来た理由です」

 

 

古鷹によって告げられた真実は全員を凍り付けさせ理解する

この鎮守府でどの誰よりも深く傷つき絶望した艦娘は古鷹だった

その真実は全員の言葉を失わせた

そして彼女が初期艦でも友人とかでもなく

この鎮守府に着任した最も最初の艦娘であり佐渡と叢雲が最初に出会った艦娘だったという事

 

 

 

あり得ないとその言葉を発しようとしても声が出ない

嫌、出せなかった

古鷹の手は震え佐渡を掴むその手に力を込めているのが分かるほどだったからである

だがその静寂を一人の尋常じゃないほどの怒りが消し飛ばす

 

 

「何です……か…それ……」

 

 

「金剛?」

 

 

その怒りの持ち主は金剛だった

身体は怒りに震え顔を真っ赤にしながら拳を握り締めながら思い切り床を叩き付ける

 

 

「何なんですか!!!それは!!!」

 

 

バァン!と大きな音にその場に居た全員がビクンと反応するが金剛の怒りは収まらない

 

 

「何ですか!何なんですかそれは!!

古鷹は何も悪くないじゃないですか!!

古鷹は仲間を助けただけなのに!何も!何も悪い事をしてないのに何で!!何でそんな目にあってるんですか!!」

 

 

「落ち着け金剛…」

 

 

「落ち着け!?

落ち着いてなんていられるわけ無いじゃないですか!!

仲間が!古鷹がそんな酷い目にあっているのに私達は!!何も出来てない!!

いつも優しく!私達を助けてくれているのに……

あんまりじゃないですか………何で古鷹が…そんな酷い目に……」

 

 

金剛はそこまで言うと怒りながりも古鷹の為に涙を流す

自分がここに流されてきたのにはしっかりとした理由があった

不幸でありそれを無意識伝染させる

それは仕方ないと思っていた

でも古鷹は違う

仲間を助け仲間の為に尽くし

見返りを求めた訳ではないが裏切られた彼女の為に

金剛は涙を溢していた

 

 

「金剛さん……」

 

 

「そうだったんだね……古鷹さん……ごめんなさい……

そうだと知らず私達は……」

 

 

 

不意にイムヤが古鷹を抱き締めると古鷹は優しくイムヤの頭を撫でるとイムヤも金剛と同じ様に涙を流す

 

 

「……意味がわかりません

何故古鷹さんがそんな酷い目に合わなくてはならないんですか?

ちょっと大本営に掛け合ってきます

我慢できません」

 

 

大井も冷静を装っているが拳を握り締めていた

 

 

「待て大井」

 

 

「…止めないでください、私達の仲間を大切な者を傷付けやがった奴等を始末するんです」

 

 

「辞めなさい大井、それは私の仕事よ

……でもまぁ分からなくは無いわよ

あいつらは私利私欲の為に古鷹を切り捨てたんだからね」

 

 

「辞めろエアこれ以上焚き付けるな」

 

 

「はいはい、分かってるわよ」

 

 

各々怒り悲しみ古鷹の境遇と自分達を重ねると同時に自分達は今まで彼女に何もできなかったと言う無力差に苦しむ

 

 

「……だからか、アトミラールが出撃をさせない理由と言うのは」

 

 

「あぁ、この鎮守府では出撃は極力しない

元々ここには艦娘が来ないと思ってたし古鷹や同じ様な艦娘の為に出撃をさせずに休息を取らせるために俺はこの鎮守府を作った」

 

 

「……そうか…すまなかった私は…」

 

 

「気にするな、俺がきちんと理由を言わなかったのも悪かったしな」

 

 

そう言うとグラーフの頭を撫でながら笑うのだがグラーフの表情は暗いままであった

 

 

「お前ら何だ?古鷹の過去を聞きたがってて聞いたらそんな態度なのか?」

 

 

「ご、ごめんなさい……」

 

 

「古鷹…ごめんね…」

 

 

「大丈夫ですよ、今は佐渡さんと叢雲も居ますし皆が居ます!

だから気にしないでください!」

 

 

古鷹が皆に笑いかけると各々暗い顔をしているのだが一人だけ後退りをしているものがいた

 

 

「嘘だ……そんなわけがない!そんな海軍が……」

 

 

「……長門」

 

 





次回

セイギって……?

古鷹の真実が長門を狂わせる
それは自らが信じてきたものが何だったのか分からなくなるほどに彼女は混乱する


このお話は古鷹の話であり長門の話になります!
同時に二人を助けようとする佐渡は何をしようとしているのでしょうか?



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真実 二

「嘘だ嘘だ!あり得ない!海軍が……そんな事!あり得ない!

古鷹が嘘をーーー」

 

 

「それ以上話すな長門

怒りますよ?」

 

 

古鷹を疑おうとする長門に金剛はいつもの口調ではなく

冷たくそして怒りを込めながら話すのだが長門は止まらない

 

 

「だってあり得ないだろ!何で!何で!!大本営が!そんなことを!!」

 

 

「ねぇ、あんた知ってる?間引きって」

 

 

不意にエアがそんなことを言われるとため息混じりに長門を睨み付ける

 

 

「植物とかを栽培する際、苗を密植した状態から、少数の苗を残して残りを抜くって事よ

つまり彼女は間引かれた艦娘、捨てられたのよ海軍から

でも佐渡はそんなことをしなかった

捨てられた艦娘を見捨てずに、自らの全てを犠牲にして古鷹を助けた

それをあんたが否定することが出来る?」

 

 

エアに言われ長門は自らがしてきたことの意味が分からなくなる

 

 

「嘘だ…嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!!

海軍が…私が信じてきたものが……あり得ない!!

海軍は正しいのだ!正義なのだ!あり得ないんだ!!」

 

 

「長門……貴女……

いい加減に……しろぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

その言葉と共に金剛の怒りが頂点に達してしまい長門を思い切り殴り飛ばす

殴り飛ばされた長門はそのまま壁に激突し頬を押さえる

 

 

「金剛!」

 

 

「辞めてください!金剛さん!!」

 

 

二人の静止を聞かずに金剛は長門に詰め寄ると睨み付けながら見下ろすと長門の襟を持ち上げる

 

 

「何ですか!?貴女は古鷹が嘘をついてると思うのですか!?

古鷹は私達に一度として嘘をついたことはない!海軍何かよりずっと信じられます!

何故まだ分からないのですか!海軍が私達を殺そうとしていたのに!この鎮守府に!小笠原に捨てていると言う真実から何故目を反らすの!

いい加減目を覚ませ!戦艦長門!!」

 

 

金剛に言われ長門はハッキリと理解させられる

自らもここに捨てられてきた艦娘の一人であり問題を持った古鷹と同じだと言うことに

だが

 

 

「認めない……私は…私は……」

 

 

認められなかったその真実を自らが信じてきたものが全て嘘で塗り固められてきた物であり自分が何をしてきたのか分からなくなっていた

 

 

「……長門、私言ったわよね貴女に無知は罪

貴女がやったことは正義でも何でもない

ただの自己満足だって」

 

 

「…………私は………」

 

 

「貴女は、古鷹の事を何も知ろうとしなかった

知る方法もやり方もあったはずなのに

貴女にはそれを知る事が出来たはずなのに

貴女は調べず真実に辿り着こうとしなかった

だから私がお前を殺そうとする理由はこれ以上いらないわよね?」

 

 

そう冷たくいい放つエアの瞳には怒りと憎しみが混じっておりそれが殺意として長門に向けられる

 

 

「……何が正義の戦艦ですか

何が海軍のエースですか!お前達はただ自分達の都合の良いように私達を(艦娘を)使ってるだけじゃないですか!?

どうなんですか!正義の戦艦(海軍の犬)長門!!!」

 

 

金剛に言われるとその場に居る大井、イムヤ、グラーフにも同じ様に睨まれてしまい長門は頭を抱えうずくまってしまう

 

 

「……私は……私は………」

 

 

「そこまでだお前達」

 

 

その流れを立ち切ろうと佐渡はため息混じりに立ち上がると金剛を退け長門の頭を撫でる

 

 

「提督!長門から離れてください!」

 

 

「お前が離れろ金剛

言い過ぎだ」

 

 

「で、でも!」

 

 

「二度は言わないぞ、黙れ」

 

 

佐渡は少し強い口調で言うと金剛はそれを察したのか少し後退りをする

それと同時に叢雲も立ち上がり金剛の頭を殴る

 

 

「お馬鹿、あんたの気持ちも分かるけど追い詰めてどうするのよ」

 

 

「む、叢雲……」

 

 

「あんたがやってるのはただの八つ当たり

古鷹を助けられなかった怒りを長門にぶつけるんじゃないわよ

あんたもよエア」

 

 

「……悪かったわ、ごめんなさい」

 

 

エアと金剛は反省していると古鷹が二人の頭をコツンと優しく殴ると微笑む

 

 

「二人ともありがとうございます

こんなに思ってくれているのはとても嬉しいです

でも長門さんも知らなかったんです

エアさんが言うとおり知ろうとしなかったのかも知れません

ですが、彼女は今私の過去を知り後悔してくれています

それだけで私は充分なんですよ?」

 

 

古鷹に言われた言葉が長門の心に突き刺さったのか長門は不意に立ち上がりその場から逃げてしまう

 

 

「長門待て!!すまん叢雲!古鷹!この場は頼む!!」

 

 

「分かったわ」

 

 

「はい、彼女をお願い致します」

 

 

二人にこの場を任せ逃げていった長門を追い掛けるように佐渡はその場を後にする

 





次回

戦艦長門

真実を知ってしまった長門
自らの行いが正義か悪か
間違いか正しいか分からなくなり混乱する彼女
そして彼女が抱える最大の問題に佐渡は直面する

最近榛名を育成してましてね?
嫌、実は他にも居るんですよ?育てないといけない艦娘が
でもね?あれは反則じゃない?
何あの白パーカー
見たいやん?めっちゃ欲しいやん?
でも、改二じゃないと見れないじゃん?
やるしかないやん?
んでそれがバレて友人にめっちゃ怒られた欲深提督がこちら()


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もうヒトリ

今回、ある伏線を回収します

多分分かる人は居ないと思いますが……
分かった方が居たらもううちの伏線全部バレてそう()




佐渡は古鷹達を部屋に残し一人鎮守府内を走り回り長門の居場所を探していた

(どこ行きやがった、あんの戦艦娘!

全く!何で言わなかったんだよ!唐澤大将よ!!)

 

 

実は既に唐澤には古鷹の真実を伝えていた

しかし、唐澤はその事を長門に伝えずにここへ長門を送っていることに佐渡は違和感を覚えていた

 

 

そして、一つの結論に達し焦り始めていた

 

 

(…まさか、長門にはまだ何かあるのか?

暴走以外の何か…が?だがそれ以外アイツには……)

 

 

佐渡には幾つかの気になる点があった

長門が『正義』に執着する理由

最強と呼ばれている戦艦

仲間を頼らない孤独と言わんばかりの戦い方

そしてここに流されてきた理由『暴走』

 

 

確かにどれを取っても少し他の艦娘とは違う点もある

だが幾つかの事なら本島でも治せるしどうにでもなるはずだ

でも彼女はここに流されてきた

海軍のエースと言われているのにも関わらず

しかもそれは唐澤が何とかして差し向けてきたと言う事

 

 

「……可笑しいよな、何か…あるのか?本当に…」

 

 

鎮守府内を捜索しほとんどの部屋を見終わると不意に外の夜空を見上げるとなんとなく屋上へと向かう

(空いてる……ふ…懐かしいな

古鷹の事を思い出すここは

……また落ちたくは無いけどな)

 

 

ゆっくりと屋上の扉を開けると外は寒く風も吹いていた

そして、屋上の端に体育座りをしている人影が一つ

 

 

「…探したぞ、長門

寒いから中に入ったらどうなんだ?」

 

 

「……良いんだほっといてくれないか?」

 

 

「断る

この鎮守府で偉いのは俺だからな!!」

 

 

一人月明かりに照らされ座っている長門の隣に来ると薄着の長門に自分の上着を着せ隣に座る

 

 

「悪かったなうちの奴等がお前に八つ当たりしちまって」

 

 

「…嫌、良い

全て本当の事だしな

…そう私が全て悪いんだ」

 

 

蹲りながら長門は顔を隠していると佐渡はその頭を撫でようとするが手を叩かれてしまう

 

 

「……すまない今は辞めてくれ…私は……」

 

 

「嫌だ、お前の髪柔らかいしこう言うときにしか触れないしな!」

 

 

手を叩かれるが佐渡は無理矢理にでも長門の頭を撫でながら優しくしていると顔を伏せているが長門が震えているのが分かる

 

 

「……なぁ佐渡提督…私が憎いか?」

 

 

「まっさか?お前が憎い?何でそうなる?」

 

 

「……私は海軍を信じてきた

どんな相手であろうと殺し薙ぎ倒し全てを尽くしてきた

それはお前達も例外ではない

海軍の思惑とは逆の事をし逆らい反発し続けるお前達を私は殺そうとした」

 

 

「んまぁ、そうだな?

初めて会ったときも主砲突き付けられたしな!!

アッハッハ!」

 

 

長門が真面目に話そうとしているのに対し佐渡は笑いながらその答えを返していく

 

 

「……私は古鷹を…罪もない彼女を殺そうとした」

 

 

「それはお前が悪いんじゃない

悪いのはあの娘をはめた奴等だ、お前は仕事を全うしようとしただけだ」

 

 

「……私が志願したんだ、彼女は深海と繋がりの疑いがあると言うだけで」

 

 

「そんなんお前が志願しなくても他の奴がやってたろ

それに俺でも同じ様におもっちまうよ仕方ないさ」

 

 

「…………お前達に散々な事を言っていた」

 

 

「他の奴等からも言われてるからなぁ

別に慣れっこではあるぜ?」

 

 

長門の言葉を佐渡は全て否定する

それは佐渡が本心なら思っていることだからであり嘘偽りは無い

だが長門は認めてほしかった

悪いのは全て自分であり全て自分に責任があると

 

 

「……正直に言ってくれ全て私が悪いと」

 

 

「正直に言ってやるお前は確かに悪い

だが全てじゃない、お前はただ自分の信念に従い戦っていただけだ

だからお前だけのせいじゃない」

 

 

長門は認めてほしかった

先程金剛達に言われ殺意を向けられ責任があると

佐渡は認めない

全ての責任が長門にあると言うわけではないと理解していたから

それが二人を衝突させる

 

 

「………違う……違う…違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う違う!!!

 

私だ私に責任があるんだ!!全て!全て私が悪いんだ!

彼女の助けを求める声に私は耳を傾けなかった!助けようともしなかった!!

だから私なんだ!!私があの時処刑を担当してなければ!彼女を尋問したとき追い詰めなかったら!彼女は苦しまなかった!助けられたんだ!!

 

だから私が悪いんだ!!全て!全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て!!!!」

 

 

「何度も言わせるな!!お前だけが悪いんじゃない!

所詮お前なんかがそこで助けたところでアイツを助けられるわけないだろ!!

確かにお前は古鷹を助けなかった!だがな!アイツの所属していた鎮守府の奴等も!他の提督達も!艦娘達も見ていただけだったんだよ!!

悪いのはあの娘を!古鷹を陥れた連中だ!

お前が全て悪い訳じゃない!!」

 

 

「違う違う違う違う違う!!

私なんだ!!私がしっかり調べれば!権限があり!海軍に話を通せる唯一の艦娘である私が…ワたシが……話ヲ…トオせば……!!

うゥ…!!」

 

 

「……おい待て長門…大丈夫か?」

 

 

不意に長門が苦しみだし立ち上がると佐渡から離れると頭を抑えながら後ろに下がる

昔と違い今は屋上には乗り越えられる程ではフェンスが増設されており簡単に落ちることは無いのだが長門はそこまで下がってしまう

 

 

「く!来ルナァ!!見ルな!私ヲ……私を見ナイでくレ!!!!」

 

 

 

「お、おい?長門?」

 

 

明らかに様子が可笑しい長門に佐渡は心配し少しずつ歩いていくのだが長門が右手で手すりを掴む

艤装を着けていないのにも関わらずそれがまるで柔らいパンの生地見たいにグニャリと曲がる

そして佐渡が渡した服が風で飛ばされると長門が空に向かい叫ぶ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「辞メろ!辞めロ!!辞めテくれェェェェ!!

見るナァぁぁぁぁぁぁ!!!!

私カラ離レてろぉぉォォォォォ!!!」

 

 

 

 

叫びと同時に長門の右手が真っ白な腕に変わりそれと同時に姫と同じ様に鋭い爪の様に変わり左顔半分が真っ白な顔と真っ赤な瞳

そして長い白角が生え髪が真っ白に染まる

 

 

 

 

 

 

 




次回

正義と悪の狭間で

長門は信じ続けてきた
海軍と己の正義を
そして自らの信念を信じそれに従い生きてきた
その彼女が今狭間で苦しみ続ける
正義と悪の狭間 
自らの存在トハ何だったのかと
自らの生きる意味とは何だったのかと

この伏線は実は過去編で彼女だけが生かされた理由です
その犯人と理由は後程




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もうヒトリ 二

「……おい…長門…その姿……お前まさか……」

 

 

「見るナァァァァァ!!!」

 

 

長門はねじ曲げたフェンスを掴むとそのまま佐渡へ投げるが何とかそれを避ける

 

 

「私は……ワタシは!!正義…ダァ!!

私…ハ……私が!!正義……何ダぁ!!

分カらナい!!正義とは……何ナンだぁ!!」

 

 

「……長門、落ち着け

とりあえず深呼吸を……」

 

 

苦しみ頭を押さえながらその場をフラフラとしている長門に近寄ろうとすると長門がこちらを睨み付ける

 

 

「来ルなァァァァ!!」

 

 

近寄ろうとする佐渡に叫ぶと右手まだフェンスを千切ると握り潰し佐渡へ投げ付けてくる

だが佐渡はそれを交わすとその様子を見ながら唐澤が佐渡に彼女を預けた理由が判明する

 

 

「……深海化…だがまだ半分

乗っ取られては居ないがもうそちらに傾きつつある…か

おいおいとんでもないのを預けてくれたな唐澤さんよ」

 

 

佐渡は溜め息を付くと未だ苦しんでいる長門を見ると自らの腰に手を伸ばし武装を確認する

(手榴弾系は無し

ハンドガンとナイフはあるが長門を傷付けるわけにも行けないしな……やるしかないか…

全く!何でこんな鎮守府に着任しちゃったかなぁ!)

 

 

苦しむ長門を見ながら少し後退りをし屋上の扉に鍵を閉めるとゆっくりと長門に向かって歩いていく

 

 

「来るナと言っテルんだァァァ!!」

 

 

「断る!お前をこのまま放置するほど俺は出来た人間じゃなくてな

悪いが元に戻ってもらうぞ、長門」

 

 

深く溜め息を付くとゆっくりとした足取りで長門に近付き長門の動きを観察する

その行動は叢雲のアレと同じではあるが佐渡のは叢雲のとはレベルが違う

 

 

「近づクな!殺スゾ!!人ゲン!!」

 

 

「無理だお前に俺は殺せない

お前は叢雲すら倒せなかったんだ

アイツを倒せないなら俺も不可能だ

お前は『何も出来ないさ』」

 

 

 

「来ルナァァァァァ!!!」

 

 

長門は右手の爪を振り上げ佐渡に襲いかかるが意図も容易く佐渡は交わし長門のデコに軽く人差し指でつつく

それに怒りを覚えた長門は回し蹴りをしようとするがそれと受け止められる

 

 

「無駄だ、お前は俺には勝てない」

 

 

「………何故ダ、何故お前ハ強イ?」

 

 

まだ長門の意志が残っているのか不意に問い掛けてくる長門に佐渡は溜め息混じりに答える

 

 

「強くねぇよ、強くありたいだけだ

全く見た目だけだなお前が大人なのは!!」

 

 

その言葉と共に佐渡は長門の脚を引っ張り無理矢理自分に抱き寄せる

だが長門はそれから逃れようと暴れ始める

 

 

「離セ!!ワタシは!! 」

 

 

「嫌だよ~、あー長門の身体柔らかいなぁ…!!」

 

 

「っ!変タイ!!」

 

 

佐渡の拘束から無理矢理抜け出し突き飛ばすと佐渡は体勢を崩しかけるが何とか持ち直していると長門が身体を押さえながら睨み付けてくる

 

 

「はっはー!こーんな変態さんにも負けちゃう長門さんは対したことないですねぇ!!」

 

 

「こんノォ!!人間風情がァァァァァ!!」

 

 

右手の拳を振り上げ佐渡を殴ろうとするが佐渡はそれを受け止める

だが、仮にも深海の艤装佐渡は激痛を感じるがそれでも受け止め続ける

 

 

「離セ!!!」

 

 

「やーだよーだ、にしても深海の腕ってのもそんな変わらないんだな?

普通に長門のもう片手と変わらないじゃねぇか」

 

 

「っ!コノ!!」

 

 

「だからお前はお前だよ長門」

 

 

殴ろうとする長門の拳がいきなり止まる

その拳は佐渡の目の前で止まり長門の瞳は真っ直ぐ佐渡を捉えているが佐渡は全く動じていない

 

 

「何ヲ…言っテ……」

 

 

「ずっと隠してたんだろそれ

深海化、艦娘の一部にそんな風になる奴等が居るのは聞いたことがあるのは知ってた

今まで良く隠しきれていたな

お前の暴走はその初期段階に過ぎない

だが、お前は自分の中にある信念が何だか分からなくなり今そんな状態だ

『近づくな』とは俺を傷付けないためだろ?」

 

 

佐渡が一歩踏み出すと長門は一歩後退する

 

 

「く、来ルナ!!」

 

 

「自分でも少しずつ自らの意思に反して身体が動いていく

仲間を、提督を、傷付けなくないのに殺そうと頭の中で声がする

そしてそれが抑えられなくなっていく」

 

 

「辞メロ!……来ルな…!!」

 

 

「お前は充分苦しんだ

長門、教えてくれお前の心を思いを、俺は知りたい

任せろお前がどんな奴であろうと俺は見捨てない」

 

 

「来るナ!来ルナ!来ルナ来ルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナクルナ!!!!」

 

 

頭を抑えながら近付いてくる佐渡から逃れようと後ろに下がりフェンスに腰が当たると後ろを振り返り屋上から下を見る

 

 

「隙あり!!」

 

 

佐渡は屋上から下を覗いていた長門の手を引っ張るとその場に押し倒し馬乗りの状態になる

 

 

「辞めロ!降リロ!!人間!!

殺スゾ!!」

 

 

「お前には出来ないさ

お前に俺は殺せない諦めろ」

 

 

「………頼む……退イテくれ…私ハ……」

 

 

「お前はお前だ長門

深海棲艦じゃないしそうはならない」

 

 

佐渡に押し倒されながら長門の拳は少しずつ開きその場に力なく倒れると顔を手で抑える

 

 

「……私は…お前達二酷いことシテキタのに助けるノカ?…」

 

 

右手が少しずつ元の長門の手に戻っていき髪は元の黒色に戻っていくのを確認した佐渡はゆっくりと馬乗りから退くと横に座る

 

 

「まぁ今はされてないし良いんじゃねぇか?」

 

 

「………貴方は……何ナンだ……」

 

 

「ただの呑気な提督さんだよ」

 

 

佐渡は微笑みながらそう言うと長門もそれに釣られて少しだけ微笑み呟く

 

 

「………ハハ…これガ…貴方なのか…」

 

 

 

 





次回

私は何だ?

深海化した長門であったが佐渡の愚行?によって観念し自らの事を話始める
そして彼女は悩み答えを見つけ出す


え?前回と同じ様な次回予告?内容思ってたのと違う?
……気にするな!!
あ、榛名改二になりました
パーカー榛名好き



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もうヒトリ 三 

長門と軽い戦闘を終えて二人は寒い冬空の中ゆっくりと休んでいた

痛む右手をコンクリートに当て冷やしていると不意に長門が話し始める

 

 

「……私がこうなったのは二年前からなんだ」

 

 

そう言うと寝転んでいた長門は起き上がると佐渡の側に行き座り直す

 

 

「…二年前それは突然私の中に現れた

私はいつも通り唐澤さんの指揮する艦隊で出撃していた

順調に敵を撃破し海域の攻略を進めていた

だが、その時私達は深海棲艦の罠に嵌められ艦隊が壊滅しかけたことがあったんだ

私も大破し磯風も陸奥も大破してしまっていてな

助けようにも動けなかった

艤装は破壊され全く手出し出来ないようにされており私達は死を覚悟した

そして陸奥が撃沈される寸前私の頭の中で声が聞こえた」

 

 

『オ前ハマタ負ケルノカ?

惨メニ奪ワレルダケナノカ?

貸シテミロソノ身体ヲ

オ前デハ手ニ余ル』

 

 

 

「……次、私が意識を取り戻し瞬間周りを確認した時唖然としたよ

深海棲艦の影も形も無く陸奥と磯風も無事だった

誰かが助けてくれたのかと思った

だが違った、私の身体に付いた血痕と倦怠感で理解した

私がやったのだと」

 

 

佐渡はその話を聞きながら古鷹の時を思い出す

古鷹も同じ様な症状を一度だけ引き起こしたことがありその時も話し方が可笑しくなっていたことに

だが意識を失ったりはしていないため長門の方が重症であることが分かる

 

 

「この事は唐澤さんは?」

 

 

佐渡の言葉を否定するように長門は首を横に振るう

 

 

「全ては教えてはいない

だが、記憶が飛んでいる事は伝えている

それに頭の中で声が聞こえた何て誰も信じるわけないだろ?

でも聞こえるんだ私の中に居るその何かは私にずっと囁き続けている『殺セオ前ノ邪魔ヲスル者全テ』とな」

 

 

「……お前の邪魔をするもの?」

 

 

「あぁ、だがそれがなんなのか分からない

私の『もうヒトリ』は戦いを求め常に戦場に立ち続けることを望んでいる

そして私の邪魔をしているものを殺そうとしている」

 

 

長門は自らの角を触るとその角をへし折ろうと力を込めるが全く折れずに溜め息をつく

 

 

「滑稽だよな全く

正義の戦艦と呼ばれ艦娘の憧れであり

海軍のエースと呼ばれている戦艦長門が

実は正義でも何でもないただの我が儘娘で

しかも深海化が進んでるどうしようとない戦艦で

私自らがその深海棲艦になりつつある化け物なんだ

笑ってくれ、実際そうだからな」

 

 

そこまで言うと長門は拳を握り締めながらその真実を受け止める

だがそれと同時に再び髪が真っ白に染まり腕も白くなっていっていた

 

 

「なぁ……佐渡提督…今のワタシを見てどう思う?」

 

 

今の長門は真っ白な髪に二本の角姫と同じ様な腕に変わっておりその姿は普通の艦娘とは呼べなかった

 

 

「…………自分ではどう思う?その姿を」

 

 

「……化け物だな、艦娘でもない深海棲艦でもない中途半端な存在

そして……正義なんて無いただの怪物だ…

唐澤さんにも言われたんだ『今の君は表には出せない』ってね

……なぁ佐渡提督、私は今願いがあるんだ聞いてくれないか?」

 

 

「…………何だ?内容にはよる」

 

 

長門は立ち上がると月明かりを背にすると自らの首に深海化した手で絞めながら微笑む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……私がもう一人に呑まれたら

殺してくれ

貴方と貴方の艦娘達に

私は君達の『悪』だ

それか、今すぐにでも殺してくれ

解体でも構わない

頼む」

 

 

それは古鷹の願いと同じ死であり古鷹とは違う理由で彼女は死を願った

己を犠牲にし海軍に他の全てに迷惑をかけないために

 

 

 




次回

正義と悪

古鷹とは違う死を望む長門
その願いは自らの為でもあり他の者達への為に迷惑をかけないための物であった
彼女なりの答えを聞いた佐渡は微笑む


夏暑くて書けない……
夏バテつらひ
アンケートも投票してくださったら嬉しいです!
もし書くとしたらアナザーストーリーとして書こうかなと思ってます!(本編はこのままのルートかそれを引き継ごうと検討します)



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もうヒトリ 四

「ほほう……?『お前』も死を願うのか?」

 

 

佐渡は聞いたことあるような言葉を耳にすると溜め息を付きながら長門を見上げる

 

 

「あぁ……こうするしか方法は無いんだ…

私はずっと考えてきた

この命を最後まで戦争に使い、戦場で散らせる為に私は生きてきた

だがそれも出来なくなりつつある

こんな状態で私が沈めば私は深海棲艦となりこの力を仲間達に振るうことになる

それだけは嫌なんだ!!だから!!」

 

 

「アホか駄目に決まってんだろうが」

 

 

さも当然の事の様に佐渡は言うと長門は佐渡の側に近寄ると自らの姿を良く見せる

 

 

「この姿を見て何とも思わないのか!?

こんな!こんな化け物の姿を見て!!」

 

 

「何言ってるんだ?そんなに変わらないじゃねぇか?」

 

 

「は、はぁ!?」

 

 

先程深海化していた手で殴られた故に右手は痛む為に左手で長門の身体を触っていく

 

 

「元々綺麗だった黒髪が純白に変わっただけ

角は無かったがそれでも二本の綺麗な角だねじ曲がってなく真っ直ぐ上に向いているまるでお前の性格みたいだな

腕も真っ白な雪見たいに綺麗だ

手に傷があるわけではなく綺麗だぜ?」

 

 

「な、な、な、な、な!!何を言っているんだ!?」

 

 

 

そこまで純粋に褒められたことがない長門は不意に佐渡から距離を取ると顔を赤くしながら後ろに下がる

 

 

「何って……素直な感想だけど?」

 

 

「そ、そうじゃない!私は深海化してるんだぞ!

もう一人居るんだ!私の中に!

そんな奴が居たら恐いだろ!おぞましいだろ!!

今すぐにも爆発する爆弾を持ってる奴なんて!!」

 

 

「嫌?全く?」

 

 

「な、何故だ!?」

 

 

「だって、長門は長門じゃん?」

 

 

佐渡は起き上がると長門に近付いていくとデコを軽く叩き溜め息混じりに話していく

 

 

「お前さ、ちょっと真面目過ぎないか?

少しは緩くしたらどうだ?グラーフ見たいだぞ?」

 

 

「嫌!私は普通だ!

艦娘は提督や人間の為に戦いーーー」

 

 

「あーそこそこ、うちは出撃とかやってないって言ったじゃねぇか?

俺はお前達を艦娘(兵器)と見てない

お前達は所詮軍人(兵士)ごっこしてる女の子何だよ」

 

 

「…………何だと?聞き捨てならないな!!」

 

 

佐渡の発言に怒りを覚えた長門は佐渡の首元を掴むと睨み付ける

 

 

「私達がごっこ遊びをしているだと!?」

 

 

「あぁ、俺から見てればな」

 

 

「ふざけるな!私達は自らの誇りと成すべき事をーーー」

 

 

「なぁ、お前達のその誇りと成すべき事って何だ?」

 

 

佐渡に問い掛けられた長門は更に苛ついたのか佐渡の首を掴む力が強くなる

 

 

「そんなこと決まってる!!私達は深海棲艦を殲滅し!平和や海を!!」

 

 

「じゃあ何でここは平和なんだ?」

 

 

「………何が言いたい、貴様」

 

 

「だから、うちには深海棲艦のしかも歴戦種の姫が居る

その側近や部下達もな

なのに平和だぜ?

争いも無く轟沈艦も無くただただ平和だ」

 

 

「そんなの!いつまでも続くわけ!」

 

 

「続くさ絶対にな」

 

 

「何故だ!何故言い切れる!?」

 

 

「俺がさせないからだ

この鎮守府(小笠原)では俺が何もさせない

それに分からないのか?お前達に心があるように深海棲艦にも心がある」

 

 

佐渡は戦争を経験してきたからこそ分かる

どれだけ人間が醜いかを

 

 

「戦争に誇り?成すべき事?

そんなもんはねぇんだよ

良いか?戦争何てもんはただの欲求を満たすためのに引き起こされるもんだ

戦場に誇りも成すべき事なんてそんなもんはないんだよ

どっちがが死んで奪われるか、どちらかが生きて奪うかそれしかない

ただの奪い合いだ、どうしようもなく下らないことだ

相手を殺して成すべき事を成す?

死ぬことが誇り?

ふざけるなそんなもんクソくらえだ

そこにお前が求める正義はあるのか?

人から奪っているのにそれは正義なのか?

良く考えろ長門

お前達がやってる行為はただの『略奪行為』何だよ」

 

 

「……違う…違う!奴等は私達から全てを奪ってるんだ!!だから!!」

 

 

「だから奪い返すのか?

奪われた物を取り返すために

命をか?土地をか?海域をか?

果たしてそこに正義はあるのか?

……俺はそうは思わない」

 

 

「なら!私は…私達は!!

何の為に……作られ…生きているんだ…」

 

 

佐渡に言われた言葉が長門の心に突き刺さる

本当は分かっていた、深海棲艦を撃沈する度に向けられる殺意と怒り

自分達が向こうから見れば悪であると言うこと位

 

 

「さぁな?俺の知った事じゃない」

 

 

「何故だ!だって貴方は提督だろう!?」

 

 

「それ以前に一人の人間だ

そしてお前も一人の少女だ」

 

 

佐渡は長門の掴む手をほどくとデコをつつき不意に笑う

 

 

「正義も悪もこの世界には存在する

だが、正義が全て正しい訳じゃない

悪が全て正しい訳じゃない

 

それを理解しておけ艦娘長門

ここではお前達は兵器じゃない

ただの小娘だ」

 

 

「…………なら聞かせてくれ

貴方の『正義』とは何だ?」

 

 

 

佐渡はその言葉に頭を悩ませるがしばらくした後に笑いながら答える

 

 

「『俺自身』だ

俺が正義なのさ

だから、俺はやりたいようにやらせてもらう

深海棲艦も艦娘も俺に取ってはただの小娘だ

異論は認めねぇ

俺は提督だからな!」

 

 

「……無茶苦茶だ、そんなこと…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうでもないと思いますよ?」

 

 

いきなり聞こえたその声に驚き佐渡と長門は声をする方角へと向くとそこには屋上の扉付近に叢雲と古鷹、そしてエアが立っていた

 

 

 

 

 

 

 

 




次回

各々の正義


鍵をかけた筈の屋上に突然現れた三人
佐渡の説得を聞かない長門に呆れながらも三人は自分達の事を話し始める

アンケートご協力感謝いたします!
意外と投票してくださる人が多く驚いてる作者です……
アンケートは本日の2200までやってその時結果を決めたいと思います!
……まぁ書かないとは思いますけどね!!(フラグ)




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天使の抱擁

「なっ!お前らどうやって入って来やがった!?」

 

 

「はぁ?あんた馬鹿じゃないの?

そんなのピッキングよ、私の技術嘗めないでよ?

にしても、へぇ……それが貴方が送られて来た理由ねぇ……へぇ…?」

 

 

エアはドアの鍵を閉めると長門をマジマジと見ながらゆっくりと近寄る

 

 

「っ!見ないでくれ!」

 

 

「嫌よ!だって綺麗なんだもん貴女の深海化

素晴らしいわ……ここまで綺麗な深海化はあんまり見れないもの……でも納得したわ貴女が正義にこだわる理由が

貴女もしかして、そうしてないと呑まれそう何じゃないの?」

 

 

「!!……どうしてそれを……」

 

 

「やっぱりね!となるとやっぱり深海化する原因は心って事ね……ふーん…やっぱりねぇ……『アイツ』の研究は正しかったのね」

 

 

エアは一人考え込んでいると叢雲が軽く頭をつつく

 

 

「ちょっとエア、少し黙りなさいよ

後で詳しく聞くからね」

 

 

「はいはーい」

 

 

三人は長門に近付くと微笑みながら長門の姿をマジマジと見る

 

 

「へぇ、これが深海化ね

正に深海棲艦みたいね

でも良いじゃない?」

 

 

「でしょ?まぁ下手をすれば意識を持ってかれないけどね」

 

 

「………何故だ、何故恐れない…

何故平気で居られるんだ!お前達!!」

 

 

長門が叫ぶと古鷹が長門に近付き頬を撫でる

 

 

「恐れませんよ、貴女は貴女ですから

私達はそんな事では恐れません」

 

 

「……私は…深海に堕ちかけているんだぞ?」

 

 

「…でしたら私達が貴女を深海から引っ張りあげます」

 

 

そう言うと長門の手を取ると強く引っ張り自分の身体に抱き寄せると頭を優しく撫でる

 

 

「……駄目だ私は君を…」

 

 

「知りません、私は貴女を助けたいですから」

 

 

半分強引に古鷹は長門を抱き締めると長門は静かに涙を流していく

 

 

「すまない………私は……貴女を殺そうと……」

 

 

「良いんです、長門さんは悪くありません

確かに殺そうとはしましたけど躊躇ってくれてたんですよね

あの時受けた痛みに貴女の砲撃はありませんでした

貴女はあの時早く処刑を終わらせ私を苦しみから解放しようとしてくれました

それは忘れられません」

 

 

「っ!気付いてたのか!?」

 

 

「えぇ、これでも戦場には出てましたから

貴女は優しい人であることは私が知ってます

真っ直ぐに戦い誰よりも前に進んできました

だから今だけは少しだけここで休んで行きませんか?

私達と共に」

 

 

長門は殺そうとしていた古鷹の優しさに触れるがそれでも自分がしてきたことを許せずに手を取れないでいるとと古鷹は優しくその手を取ろうとする

 

 

「私は貴女達に捨てられました

その事実は変わりません、でも私は二人に拾われた

希望を失い、気力を失い、仲間も生きる意味すら奪われた私なんかでも二人は必死に手を伸ばし私の手を取ってくれた

だから次は私が貴女の手を取ります

何度その手が空を切ろうとも何度手が離れても私は取り続けます」

 

 

 

「私は……私は………」

 

 

「大丈夫です、恐くありませんよ

この二人は佐渡さんと叢雲さんは必ず貴女を助けてくれます

私は二人に色々な物を貰いました

次は私が助けを求めている者達を救いたい

だから信じてください

私達を」

 

 

古鷹の説得に少しずつ心を開いていく長門だがやはり自分の心に決めている正義がそれを邪魔をする

 

 

「だが!やはり私には正義が!!!」

 

 

「私の正義は!仲間を守りそれを邪魔をする者達を必ず倒すことよ!!

戦艦長門!!」

 

 

不意に叢雲が自信満々にそう言うとエアも続けて長門を指差し自らの信念(正義)を言う

 

 

「私の正義は!艦娘を傷付けるものを始末し艦娘を救い出すこと!

どんな相手であろうが何処にいようが関係ないわ!!

必ずぶっ殺してやる!!」

 

 

エアが叫ぶと佐渡もそれに続けて笑みを浮かべながら叫ぶ

 

 

「俺の正義は!俺が正義であることだ!!

俺のやりたいようにやり!誰にも邪魔させねぇ!

助けたい奴を助け!救いたい奴を救う!

それが俺のやり方だ!!」

 

 

佐渡が叫ぶと古鷹は長門を強く抱き締め耳元で自らの正義を語る

 

 

「皆、みんな違うんです

信念も正義も多種多様です

それでも私達は共にそれを尊重し互いに認めあい生きて行きます

ここには居ませんが金剛さんも大井さんもイムヤさんもグラーフさんにも自らの正義があります

 

私の正義は

皆が笑顔で笑って過ごす事です

争い事も無くどんな人とでもこの鎮守府で小笠原の皆と佐渡さんと叢雲さんと楽しく過ごすことです

 

だから私は貴女とも楽しく過ごしたいです

一緒に暮らし貴女のそれを治しませんか?

私達は何でも協力します

私は貴女を救いたいです

長門さん」

 

 

「そうだ!長門!

お前はここで生きていけ!

暴走しようが深海化しようが必ずお前を止めてやる!

助けてやる!約束しよう!!」

 

 

「ま、どうせあんたが出来るのは陸上だけでしょ?

良いわ!私が水上であんたが暴走したら止めてやるわよ!

任せておきなさい!何人だろうが私は負けないんだからね!!」

 

 

「じゃ、私は二人が居ないときにでもアンタを止めようかしら?

あんたが苦しんでいる艦娘なら別よ助けてあげるわ!!

ま!あんたの深海化は私達の原因でもあるしね!」

 

 

佐渡も叢雲もエアも自信に満ち溢れた顔をしながら長門へ笑いかけていると長門の瞳から涙が溢れる

 

 

「何故だ………何故お前達は……」

 

 

「それが、この人達何ですよ

いつも自信に満ち溢れ絶対にやってくれる

信用できる人達何です

では聞きますよ?貴女の正義は何ですか?」

 

 

古鷹に言われると長門は涙を流しながら俯きながら答える

 

 

「分からない……私は…何が正義なのか…もう…」

 

 

「なら一緒に見付けましょう?私達とここ(小笠原)で皆で!」

 

 

古鷹に微笑みながら言われると長門はゆっくりと古鷹を抱き締めるながら胸元に顔を押し付けながら泣き始める

 

 

「私は……私は…生きていて…良いのか?

本当…迷惑にならないのか…?」

 

 

「はい!迷惑になんてなりませんよ!

任せてください!

私達が必ず貴女を治し救ってみせますよ」

 

 

その言葉を聞いた長門は古鷹の胸元で更に泣き始めてしまい服が涙と鼻水で濡れてしまう

 

 

「…ごめん……ごめんなさい…古鷹……私は…貴女に酷い事を……取り返しのつかないことを……」

 

 

「大丈夫ですよ、貴女は勤めを全うしただけですよ

大丈夫…大丈夫ですよ…疲れましたよね…大変でしたよね…ここでこの鎮守府と仲間達とゆっくり休んでいきましょうね…」

 

 

「うわぁぁぁぁぁん!!古鷹!古鷹ぁぁぁ!!!」

 

 

古鷹の優しさに耐えられなかったのかついには周りを気にしないほどに泣き始めてしまう

古鷹は顔だけを佐渡に向けると微笑みを返す

それに答える様に佐渡は笑みを浮かべ親指を立てる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

寒い冬空の下

一年前佐渡は一人の少女を助けた

死を願い全てを諦めていた少女の手を取り命をかけて助け出した

 

 

その一年後同じ冬空の下

佐渡が助け出した少女はまた別の少女を助ける為に手を取ってくれた人と同じ様にまた手を取り助け出す

 

 

美しい満月の空の下

古鷹は優しく長門をあやしておりその姿を見た叢雲とエアも微笑み合う

 

そして佐渡は一瞬だが古鷹の背に美しく真っ白な羽が見えたと言う

 

まるでその姿は罪深き罪人へ手を差し伸べる天使と錯覚したらしい

 

 

 




次回

一年後君を救う

佐渡の届かない言葉を古鷹が代わり届け長門と和解する事に成功し二人は思い出の場所にて過去を振り返る
そして佐渡は古鷹を見て決断する


と言うわけで今回は古鷹さんに活躍して貰いました!
面倒見が良く優しいお姉さん的な古鷹さんです!(ある意味初めての活躍かも?)

そして次回から大演習会最後のフラグを回収します!

あ、それとアンケートありがとうございました!
長門戦は無しの方向で行こうと思います!
まさかあんなに投票来るとは思いませんでしたが本当にありがとうございます!



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前へ

「……綺麗な月ですね

佐渡さん」

 

 

「そうだなぁ、冬は空や灯りが綺麗に見えるもんなぁ」

 

 

長門は先程まで古鷹の胸の中で泣いていたのだが途中で声が聞こえなくなり様子を見るといつの間にか寝ていた

ここに来るまでどうやら深海化の事を隠してきたり気を張っていたらしくその寝顔は安らかな物であった

 

 

そして今は長門をベッドに寝かせ叢雲とエアと別れた後佐渡と古鷹は二人だけで屋上に残り空を見上げていた

 

 

「悪いな、俺の服大きいだろ?」

 

 

「いえ、佐渡さんの服ですから問題ないですよ?」

 

 

古鷹の服は長門の涙と鼻水で濡れてしまい急いで洗濯機にかけておりその間だけ佐渡の制服を貸し出し古鷹は着ていた

 

 

「どうでしたか?私のやり方で長門さんを元気付けて見ましたが……」

 

 

「グッジョブ!最高でありパーフェクトだったぜ!

流石はうちの天使様だよ!全く!!」

 

 

「えへへ…嬉しいです!ありがとうございます!」

 

 

佐渡に頭を撫でられながら誉められていると古鷹は微笑みながら嬉しがりそれと共に手すりに手をかけながら空を見上げる

 

 

「なぁ古鷹、聞きたかったんだが俺はちゃんと約束を守れてるか?」

 

 

「はい?……あぁ、ここで約束してくれた事ですか?

…ふふ、守れてないかも知れませんね」

 

 

「マジかぁ……有言実行するのが俺なのに駄目なのかぁ……」

 

 

「ふふふ、冗談ですよ!ちゃんと守れてますよ!

私は毎日とっても楽しいですし笑顔で幸せですよ」

 

 

手すりに捕まりながら落ち込む佐渡の頭を撫でながら笑っていると古鷹は月に手を伸ばす

 

 

「……貴方があの時手を握ってくれたから貴方が私を見付けてくれたから今の私はあります

絶望し、仲間に捨てられ、全てを諦めていた私を助けてくれたのは間違いなく貴方何ですよ

だから自信を持ってください、貴方は素晴らしく偉大な人なんですよ?」

 

 

 

「……ちげぇよ、俺はお前を助けなんていない

あの時俺もお前を処刑から助けるつもりなんて無かった

叢雲が俺に願ったから俺は手を貸しただけだ」

 

 

「そんなことありませんよ、あの時死を望んでいた私に貴方は生を望んでくれました

私はそれだけで嬉しかった

貴方と叢雲は、私を救ってくれた英雄(ヒーロー)何ですよ?」

 

 

古鷹は月を見上げ一年前の事を思い浮かべる

そして瞳からは涙が溢れる

 

 

「……貴方達が私の命を助けてくれたんです

あの絶望から救いだしてくれたんです

いくら感謝してもしきれません

信じられなかった私に信じる心をくれた

私こそ聞きたいんです

私は笑えてますか?貴方達が望める姿になれてますか?」

 

 

涙を溢す古鷹の頭を優しく佐渡は撫でると微笑む

 

 

「バーカ、俺がお前に望める姿なんかねぇよ

俺は君が楽しく笑えていれば良いんだ

楽しくなければ怒れば良い

嫌なことがあれば泣けば良い

この鎮守府はお前達艦娘の為にあるんだ

だから好きに生きて欲しいんだよ君に」

 

 

「………もう、佐渡さんはいつもそう言うことを言う!」

 

 

古鷹は不意に佐渡の胸に飛び込むと顔を胸に押し付けながら涙を流す

 

 

「貴方達が居てくれればそれで良いんです

私はもう何も要りません、あの時二人が手を伸ばしてくれて私が手を取って本当に良かった

心の底から私は嬉しいです、こんな未来があるとは思いませんでした

死ぬ事だけを望んでいたあの時には考えられないほどの幸福です

だから、安心してください

貴方達は私の希望、私の未来です

何でもしますよ私を死の未来を奪ってくれた

英雄(ヒーロー)

 

 

 

「……そうか、なら良かったよ」

 

 

佐渡は涙を流す古鷹の頭を優しく撫でながらあることを決意する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(そうか……君はもう充分前に進めているんだよな……

ならそうだな最後に俺達は君の背中をもう一度押さないとね

約束を守ろう君を救ってみせる

そして過去と言う鎖を今壊してみせる)

 

 

そう思いながら佐渡は古鷹の為に自分が出来る最後の事に手を出す

 

 

 

 

 




次回

再び動き出す時

長門を救い小笠原に再び平和が戻った
だがそんな中佐渡はあることを画策する
そして、小笠原へある艦娘が接近してきていた


まだこの章は終わりません
もう少しだけ続けさせてもらいますよ!



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前へ 二

長門の一件から一週間が経過した小笠原鎮守府

あの後叢雲は長門の加入を認め晴れてこの鎮守府所属になったのだが意外と大変だった

まず、長門の深海化に関しては四人だけの秘密にしておくことにし下手な事は他の娘達には言わないことにした

混乱やパニックを避けるためではあるが多分大井達も快く受け入れてはくれるが長門自体がそれを嫌がってるために秘密にすることにしたのだ

 

次に唐澤と話を付けるために本島に行ったのだがまた陸奥、磯風、唐澤から土下座されながら隠していたことを謝られた

その時叢雲と古鷹も同伴したのだが叢雲は呆れながら怒り古鷹は「秘密は誰にでもありますが提督にはキチンと言ってくださいね?」と釘を刺された

 

 

そしてその時と同時に古鷹の過去を先に聞いていた唐澤は古鷹の手を取りある約束をしてくれた

 

 

「君の過去は佐渡から聞いた

すまなかった、我々が君にしたことは取り返しのつかないことである

君が望むなら我々はどんな罰でも受ける」

 

 

と再び土下座をしながら謝られたのだが古鷹は気にしていなかった

と言うよりは長門の事があったからと言うのもだろうが許していた

 

 

「大丈夫ですよ、私は佐渡提督と叢雲に救われています

だから謝ってくださるだけで充分ですよ」

 

 

「……罪滅ぼしになるかどうかは分からないが私なりにこれからは君達に協力する

必ず君達が助けが欲しいときは呼んで欲しい

何を捨ててでも駆け付けると約束する

長門の事もある、すまない本当にすまなかった」

 

 

と唐澤の誤解も解け新しい協力者を手に入れ佐渡達は再び小笠原に帰り仕事をしていた

そして、長門にはしばらくの出撃禁止処分が言い渡されしばらくはここでの家事などをやることになった

 

 

それで現在の長門は…

 

 

「古鷹、その籠は私が持とう

イムヤ、そちらも私が持っていくよ」

 

 

「ありがとうございます長門さん」

 

 

「ありがと!長門!」

 

 

「なぁにこれくらいは余裕さ

戦艦何だしな力仕事は任せておけ」

 

 

「長門、工廠で親方が金剛と一緒に機材運んでくれとの事だ」

 

 

「分かった!これを運び終えたらすぐに行こう!」

 

 

今では力仕事を全般にやっており他の人達の手伝いと言う形で色々な所に呼ばれている

かといって佐渡達見たいに食材調達は行けないためほとんど鎮守府内での事ばかりであるがかなり助かっている

 

 

「……意外と早く馴染んだな、長門」

 

 

「そうね、驚く位」

 

 

「そもそもそんなに悪い人ではないですからね…

少しコミュニケーションにギクシャクはありますが頼りにはなるみたいですよ?」

 

 

そんなことを呟きながら叢雲と佐渡と大井は古鷹達の洗濯を干している姿を眺めていた

 

 

「んで、エアはどこ行ったんだ?」

 

 

「話によると少し北方に用と大本営での調査らしいです

北方の用に関してはソラさん達も引き連れてなので今近辺には居ないみたいですよ?」

 

 

「大本営の調査って……」

 

 

「いえ、拷問官では無いみたいです

どうやらある人を潰すために何かやるだとか」

 

 

「ほほう?って一体何するつもりだアイツ」

 

 

「でも『私は殺さないから安心なさい』って言われましたよ?」

 

 

「……信じとくか一応」

 

 

佐渡はその言葉を信じ持っていたお茶を一口飲むと不意に携帯が鳴り出し電話に出る

 

 

「はいはいー小笠原鎮守府提督佐渡さんだよ~?

……あぁ、君か

分かった、今から迎えを寄越すねちょっと待ってて」

 

 

それだけを言うと佐渡は大井と叢雲の頭を撫でる

 

 

「悪い、二人ともお客さんが小笠原付近に来てるから迎えに行ってくれないか?」

 

 

「……流された人ですか?」

 

 

「うんにゃ、ただのお客さん

多分誰かはすぐに分かるからな」

 

 

「分かったわ行ってくるわね」

 

 

叢雲と大井はそそくさとその場を後にすると佐渡は洗濯物を干しながらイムヤ達と笑っている古鷹を見て微笑む

(………さてと、吉と出るか

凶と出るか…ちょっとした賭けだな

勝てるか分からんけどな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にしても誰なんですかね?

お客さんって?」

 

 

佐渡に言われた通り大井と叢雲は二人で海上に出ておりお客とやらを迎えに行っていた

 

 

 

「………そうね、私は分かるわよ

アイツの考えてること位はね」

 

 

叢雲にはその正体を理解していた

その上で佐渡に従いここまでそのお客とやらを迎えに行っていた

そして、しばらく航行した後に正面にその人影が見えるのだが

 

 

「っ!!貴女は!!」

 

 

「やっぱりねよく来たわね

まぁそう言うことよ」

 

 

ゆっくりと航行しながらその人影に近付くと大井はその人を睨み付けているが叢雲は溜め息をつく

 

 

「………叢雲、撃って良いですか?」

 

 

「駄目よ?お馬鹿

久しぶりね、覚悟は良い?」

 

 

「……はい、お待たせしてしまい申し訳ありません」

 

 

「別に良いわよ、覚悟ってのそう簡単に出来ないもんね分かるわ

付いてきなさい

覚悟が出来ているならね」

 

 

叢雲に言われた人はその後ろを付いていこうとしながら大井はその人を睨み付ける

 

 

「叢雲!!この人は!!」

 

 

「良いから連れていくわよ

彼女も覚悟を持ってここに来たのよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さぁ、終わらせるわよ

一つの物語を」

 

 

叢雲は拳を握り締めながら佐渡の狙いを理解する

 

 

 

 

 

 

 






次回

押された背中

佐渡がある人を小笠原に招き入れた
その人物は佐渡と叢雲が唯一認めこの小笠原へ入るのを許可した人物であり一人の物語を終わらせる為の人だった


天使の罪編終盤!
二人は古鷹を本当の意味で救うことが出来るのか!?




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前へ 三

時は流れ佐渡達は夕飯の時間になり全員で食事を取っていた

 

 

「長門ー、明日の朝はどうするの?

走る?」

 

 

「い、いや勘弁してくれ…叢雲……」

 

 

「それがいいと思うデースよ長門……

叢雲の訓練は下手をすると動けないほどに苛められますからね……」

 

 

「あら失礼ね、ちょっと島一週するだけでしょ?」

 

 

「「どこがちょっとだ(デース)」」

 

 

「その後、腹筋背筋腕立て100回程度よ?」

 

 

「「どこが程度だ(デース)」」

 

 

「普通じゃない?」

 

 

「「どこがだ!!(デース!!)」」

 

 

長門はこちらに来てから叢雲の力の秘密を知りたくなったらしく叢雲からトレーニングを受けたのだが次の日倒れていた

どうやら筋肉痛で全身をやられたらしい

 

 

「あはは……叢雲、程ほどにしてあげてね?」

 

 

「何言ってるのよ古鷹、これぐらい普通よ?」

 

 

「いや待て叢雲、普通ではない」

 

 

「そうよ、普通の艦娘はそこまで身体を苛めないわよ!!」

 

 

「確かにな、普通はそこまでやらねぇと思うぞ叢雲さんや?」

 

 

 

くだらない話をしながら全員で楽しく食事をしているのだが大井だけは暗い顔をしており佐渡を見ていた

 

 

「……?どした大井、何かあったか?」

 

 

「……いいえ、何でもありません…

いえ、提督少しよろしいですか?」

 

 

「お、おう?」

 

 

珍しく大井が佐渡を食堂から連れだしてしまい全員が困惑するが叢雲がわざとコップを割りその場静かにする

 

 

「……あ、ごめんやっちゃった

片付けるわね」

 

 

「珍しいデースね?叢雲?」

 

 

「あ、叢雲手伝うよ!」

 

 

だが、それを皮切りに叢雲を心配したり割れたコップを片付けたりとで空気が変わったのを確認すると叢雲は拳を握りしめる

(……まぁそうよね

大井、これが佐渡のやり方よ覚えておきなさい)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んで、俺を連れ出したのは何でなんだ?

大井?」

 

 

食堂から連れ出された佐渡は誰も居ない外に連れ出され大井は拳を握り締めている

 

 

「……何故ですか、何故あの艦娘をここに?」

 

 

「……あぁ、あの娘か

彼女が鍵だからだ

古鷹の物語を終わらせる最後のな」

 

 

「…彼女は裏切りましたよね?

私達の仲間である古鷹さんを」

 

 

「…まぁなだがあの娘にも色々あったんだろ」

 

 

佐渡の説得に大井は舌打ちをしながら佐渡の首元を掴むと睨み付ける

 

 

「何ですかその曖昧な返答は……

古鷹さんは苦しんでいたんですよ!!

確かに貴方はあの人を助け出した!ですが!またあの人を!古鷹さんを絶望に突き落とすつもりですか!?

何を考えているのですか!佐渡提督!!」

 

 

強目に佐渡へ対し反抗をすると佐渡は微笑みながら大井の頭を撫でる

 

 

「ありがとうな大井、古鷹の事をそんなに大切にしてくれて

嬉しいよ、流石は我が秘書艦様だ」

 

 

「当然ですよ!私は!私達は貴方達三人に救われました!

一人が欠けてもいけないんです!だから私はーー」

 

 

「なぁ大井、過去って何だろうな?」

 

 

「……は、はい?」

 

 

掴みかかる興奮する大井に対し佐渡は冷静に大井を見つめながら首元の手を離させる

 

 

「だから過去って何だろうな?」

 

 

「……過ぎた後の事じゃないですか?

私達が生きてきた追憶、足跡ですかね?」

 

 

「そうだな

そして同時に自らが起こしてきた軌跡

結果だ、自分達が苦しんで選択した結果だ」

 

 

「…どう言うことですか?」

 

 

「過去と言うものはどうやっても消せない

そりゃそうさ自分が選び選択した道筋

過去とは自らの存在であり、記憶であり全てだ

自分そのものだ、過去なんだからな

トラウマも傷も絶望も嫌なことも乗り越えて新しく明日へ歩いていくために行くものだ

 

そして、その過去と言うものは他人にはどうにも出来ない

それに関係しそれに関わる者達でしか乗り越える事は出来ない

 

古鷹はまだ過去に囚われている

それが、あの発作が原因だ

 

アイツを前に進めるためにはこうするしかない

俺達が古鷹に出来ることは傷を癒し、和らげること

消すことは出来ない

乗り越えさせることは出来ない

乗り越えさせる様に背中を押すことしか出来ない

 

俺達はその時のきっかけにしかなれない

だから俺達は最後に出来ることはこれだけなんだよ」

 

 

佐渡に言われると大井は悔しそうに唇を噛み締めながら佐渡の袖を掴む

 

 

「どんなに苦しくても、どんなに辛くてもいつかは乗り越えさせるしかない

俺達はそれを見てることしか出来ない

さぁ、今日それを見送ろう

俺達にはその資格がある」

 

 

佐渡は震える大井の手を握るとゆっくりと歩き始める

 

 

「………古鷹さんは乗り越えられると思いますか?」

 

 

「大丈夫さ、俺達はやれることはやった

後は最後に背中を押すことだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さぁ、終わらせるぞ

天使の絶望を

俺達の手で、彼女を前に進めさせるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「提督?私に会わせたい人が居るって……」

 

 

「あぁ、ちょっとな?本島から来てもらってたんだけどサプライズで会わせたくてな!」

 

 

「誰でしょうか……あ!陸奥さんとかですか!?」

 

 

「さぁな~?」

 

 

佐渡は笑いながら古鷹と叢雲を連れて屋上へ向かっているのだが叢雲も微笑みながらその背中を見ていた

 

 

「長かったなぁ……ここまで来るのが…」

 

 

「はい?」

 

 

「嫌さ、一年前を思い出しててな?

最初の頃ここら辺も穴だらけだったし酷かったじゃん?」

 

 

「そうね、屋上なんてボロボロだったしね」

 

 

佐渡と叢雲は一年前この鎮守府に来たことを思い出しながら屋上へゆっくりと向かっていた

 

 

「そうですね……はじめの頃は何も無くて私達三人だけでしたね…

今は増えましたよね…

大井さん、金剛さん、イムヤさん、グラーフさん、エアさん、ソラさん、そして長門さん

随分と大所帯になりましたね!」

 

 

「……あぁ、そうだなぁ

古鷹、一年前の約束を覚えてるか?」

 

 

不意に言われるのだが古鷹は瞳を閉じながらしっかりと言う

 

「生きていれば辛いことも苦しいことも絶望することもある

だから俺は、俺達が君の生きている良いことになりたい

君が精一杯楽しみ、毎日笑顔に成りながら休める場所を作ることを約束しよう

決して後悔はさせない君を必ず幸せにしてみせる

 

ですよね!」

 

 

「うわぁ、恥ずかしい台詞

良く覚えてたな古鷹」

 

 

「忘れませんよ、貴方に貰った言葉ですからね!」

 

 

「じゃあ私の約束は?」

 

 

「貴女は私達が守るわ、どんな奴からとどんな大きな力からも絶対に

何を捨ててでも、何を失ってでも私達は貴女を助けるわ

だよね!!」

 

 

「凄いわね、良く覚えてるわね古鷹」

 

 

「えへへ!そりゃあ二人は私の英雄(ヒーロー)だもん!」

 

 

そして、そんな話をしていると屋上に着き窓から人影が月明かりに照らされ見える

 

 

「……古鷹、俺達が出来る事はここまでだ」

 

 

「…提督?」

 

 

「……私達に出来ることは貴女の傷を癒し

前へ進めさせること」

 

 

「……叢雲?」

 

 

二人の真面目な面持ちをしており古鷹が焦っていると佐渡は屋上の扉を開く

寒い冬空の下厚着をしながら少女は屋上の真ん中で待っていた

古鷹はその人影が誰か分からずに少しずつ歩いていくとその人影は物音に気付き古鷹へ振り返る

その顔は月が雲に隠れており見えなかったが次第に雲が消え顔がハッキリと見える

 

 

 

「「そして、俺達(私達)に残された最後の役割はお前(貴女)を未来へ歩かせるために背中を押すだけ()」」

 

 

 

「…………嘘…何で………何で居るの……」

 

 

古鷹はその人影が…嫌艦娘を見たことが

嫌、会ったこともあり話もしていたこともあった

その艦娘は彼女を裏切った者の一人

そして、佐渡と叢雲に認められこの鎮守府への許可が降りた

最後の鍵にして古鷹の過去を乗り越えるための者

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ………お……ば…………?」

 

 

「……お久しぶりです

古鷹さん

はい、青葉です

貴女の『元』友人の」

 

 

 

 




次回

青葉

佐渡と叢雲が認め古鷹を救うための最後の鍵として古鷹を裏切った佐世保鎮守府所属にして影から古鷹を思い続けてきた青葉だった
そして時は少し戻り大演習会後に戻る


にしても密告者が青葉って簡単にバレてた……
んまぁA何て彼女しか居ないですからね
大演習会最後のフラグ回収!



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前に進む覚悟

「はぁ…………勝てなかった……

ごめんなさい…………古鷹さん……ごめんなさい……」

 

 

青葉は一人静かに呟きながら一枚だけしか無いくしゃくしゃの写真を見ながら涙を溢していた

 

 

「でも……良かった…古鷹さんが笑ってた……

強くもなってたなぁ………アハハ……それだけで嬉しいよ……ごめんなさい古鷹さん……私は貴女を……」

 

 

「あっれぇ?お嬢ちゃんどうしたの?」

 

 

 

「なぁんでこんな人気の無い所に居るのさぁ?」

 

 

 

一人泣いているとその近くに二人のチャラついた男が近付いてくると青葉は急いで涙を拭くと立ち上がる

 

 

「ちょっとちょっと~?逃げなくても良いじゃんかよぉ?」

 

 

「そうだぜー?あんた艦娘何だろ?

ならさ、『人間様』逆らえないんだろ?

ちょっとさ俺達と遊ばないー?」

 

 

「離してください!私は!」

 

 

 

「良いじゃんかよ!って何持ってるの?」

 

 

「み、見ないでください!」

 

 

「よっと……何この娘!可愛いじゃーん!

何友達?」

 

 

「返してください!それだけしか無いんですから!!」

 

 

チャラついた二人は青葉から古鷹の写真を取り上げると二人でマジマジと見ていると青葉を囲む

 

 

「へいへーい?お嬢ちゃん?この娘呼べるー?

四人で楽しいことやろうぜぇ

んま、その前にさ?」

 

 

一人の男が青葉の腕を持ち上げると後ろから羽交い締めにするともう一人が青葉の胸を触る

 

 

「は、離して!!」

 

 

「おぉ……これは中々にデカイな…

艦娘っての皆こうなのか?

へへ、やりがいがあるねぇ!」

 

 

「嫌!誰か!助けーーー」

 

 

「ちょっとお前うるせぇよ!」

 

 

男はガムテープを取り出し青葉の口を塞ぎ次に脚を縛りに取りかかり写真をポケットにしまう

 

 

「へへへ!艦娘の誘拐ってのも初めてだけど案外楽勝だな!」

 

 

「まぁ、こいつらは艤装ってのを着けてなければただの女だからな!

ほらほら!ちゃっちゃと終わらせようぜ!」

 

 

二人は誘拐しなれてるのか手際良く青葉を捕まえるとその姿を見ながらニタニタと笑っている

 

 

「んー!んー!!」

 

 

「よし!じゃあ車回してちゃっちゃと行くか!」

 

 

「おう!まさかこんな可愛い娘が居るとはねぇ

いやーこんな艦娘を好きに出来る提督とやらが羨ましいぜ!

さてとじゃあ電話を……」

 

 

男の一人が電話を取り出しどこかに電話をかけようとしながらもう一人が辺りを警戒する

(誰か…助けて!……嫌、違う…か……因果応報…なのかな?

……そうだよね……私達は…古鷹さんを……見捨てたんだもん……

助けてなんて……古鷹さんの苦しみに比べたら!)

 

 

 

そう思いながら涙を溢していると男の一人が電話を始める

 

 

「あー、もしもしー?

艦娘一人確保~!ちょー可愛くて胸大きい娘!

いやー当たり引いたねー、車回してくれね?

そそ、屋台の近くの国道

オッケー頼むわ!」

 

 

そう言いながら電話を切ると青葉を見下ろしながらニタニタと笑う

 

 

「いやー……本当に胸大きいなぁ……

俺も先に触っておこうかな……」

 

 

そして男が青葉の胸を触ろうと手を伸ばすと青葉は眼を瞑り仕方ないと頭で考えながら涙を溢す

 

 

「コラコラ、女の子を泣かせるとは男の恥だと思わないのかねぇ?」

 

 

「……うわ!何だお前!いつ接近してきたんだよ!!」

 

 

突然聞こえた別の声に驚き涙を流しながら顔を上げるとそこには

 

 

「全く、やっと見付けたと思ったらこんなところに居るとはね~

やっほー青葉ちゃーん!探したよ~会場に居ないんだもん探すの疲れちゃったぜぇ……」

 

 

佐渡が微笑みながら青葉にしゃがみこむと頭を撫でる

 

 

「おい!てめぇ!何してやがーー」

 

 

「それはこっちの台詞だよ」

 

 

その瞬間佐渡の拳が男の頬に当たりそのままぶっ飛ばされるとそのままゆっくりと歩いていくと頭を鷲掴みする

 

 

「おーおー?良くもまぁうちの知り合いをやってくれたな社会のゴミ共ぉ?

艦娘を泣かせる奴はお兄さん許さないよぉ?」

 

 

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!」

 

 

「て、てめぇ!何してやがる!!」

 

 

警戒していたもう一人が佐渡に襲いかかるが持っていたもう一人を投げ付ける

 

 

「うわ!おい!大丈夫ーーー」

 

 

「人の心配してる場合かよ

クズ共」

 

 

次の瞬間佐渡は二人に対し踵落としを食らわせると気絶し二人の頭を鷲掴みにしながらズルズルと引きずると近くのゴミ箱に頭から突っ込ませる

 

 

「ゴミはゴミ箱にってね

エア!車は頼む!ほどほどに痛め付けておけ!!」

 

 

「分かったわ~

じゃあ骨の二、三本は折るからねー?」

 

 

 

「おーこわ…流石だなアイツ」

 

 

 

そう言うとエアは隠れていた木の影から消えると佐渡はため息をつくと青葉を持ち上げベンチに座らせる

 

 

「大丈夫か?青葉ちゃん、今切って上げるからね?」

 

 

佐渡はポケットナイフでガムテープを手際良く切ると口のガムテープをゆっくりと剥がす

 

 

「身体は…大丈夫?何かされてない?

正直に言えよ?追加であのゴミを燃やすとかはやるからね?」

 

 

「……何で」

 

 

「うん?」

 

 

「何で……助けてくれたんですか?

私は…」

 

 

「何でって、そりゃ助けるでしょ?

別にそれに君の罪ややったことは関係ないよ」

 

 

その言葉を聞いた青葉は理解する

(……そっか古鷹さんはこんな人に助けられたんだ…

ハハ……凄いな…本当に

私の事憎いはずなのに

貴方が助け出した古鷹さんの敵なのに

古鷹さんをあんな風にした原因なのに)

 

 

そう思うと自然と涙が溢れ声を殺して泣くと静かに佐渡は青葉の頭を撫でながら空を見上げる

 

 

「……そう、君がどんな人でもな

助けない理由にはならない

俺は助けを求める奴に手を差し伸ばすんだからな」

 

 

 

 




次回

最後の一人

佐渡が古鷹を助け出す為に青葉に協力を依頼する
だが、彼女も問題を抱えていた


青葉の胸を触った男を八つ裂きにしようかと一瞬思いましたが佐渡さんそこまで残虐じゃ……ない…かな?



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前に進む覚悟 二

「落ち着いた?青葉ちゃんや?」

 

 

「……はい、ごめんなさい

ご迷惑おかけしました」

 

 

「迷惑?何の事やら?」

 

 

しばらくした後

騒ぎを聞き付けた憲兵によって男達は逮捕され連れていかれ車の仲間も酷い有り様で見付かったらしい

車の仲間に関しては佐渡は御愁傷様と思いながら手を合わせる

 

 

「……私に会いたかったって…」

 

 

「ん?あぁ!ごめん忘れてた!!

ちょっとさ見てほしい物が合ってさ?

これ書いたの君だよね?」

 

 

「っ!!」

 

 

佐渡はポケットから手紙を取り出すとそれを見せた瞬間青葉の身体がビクンと揺れそれが事実だと理解する

 

 

「どうして……」

 

 

「んー、まぁうちにかなり頭の良い……と言うか筆跡とかそう言う情報屋見たいのが居てな…」

 

 

無論エアの事である

あれでも大本営に何度も入り込みそして提督殺しとして全ての艦娘に化けられる技術を持つ故に簡単に教えてくれた

 

 

「……はい、私が密告者です

…ごめんなさい…」

 

 

「いや、ありがとう

これのお陰で俺は古鷹を本気で助ける気になったんだ

まさか冤罪だったとはね……

どうやって調べたの?」

 

 

「大本営のデータベースと私の提督である藤谷提督のお父さんが今回の事を絡んでる事を調べあげたんです

貴方は真実を知ってほしかったんです

古鷹さんを命を掛けて助けてくれた貴方ですから」

 

 

「……随分と危険な事するね…

全く古鷹は愛されてるねぇ……」

 

 

そう呟くと近くの自販機から飲み物を二つ買うと一つを青葉に渡し側に座る

 

 

「……君は何故古鷹に無理矢理にでも会おうとしないのかい?

嫌、他の奴と同じ様に俺を悪人として見ないんだ?」

 

 

「…貴方はそう言う人では無いですよね

色々と見てきましたから悪い人と良い人の区別位出来ます

それに貴方は古鷹さんを処刑場から無理矢理助け出してくれました

長門さんに主砲を向けられても他の提督達を敵に回しても海軍すら敵に回して貴方は古鷹さんの命を救ってくれた

文字通り命懸けで

そんな人が悪人?あり得ませんよ

貴方は古鷹さんの恩人です

私の出来ないことを成した素晴らしい人です」

 

 

「………何か随分と評価高いなおい

でも勘違いするなよ?あの時古鷹を助けようって言ったのは叢雲だ

俺はそれに従っただけ」

 

 

「だからってあんなとんでもないこと出来ませんよ

…………私は見ていることしか出来なかった」

 

 

そう呟くと青葉は持っている飲み物を力強く握り締めると佐渡は本題に入る

 

 

「それで、何で古鷹に会わないんだ?」

 

 

「…………私に会う資格が……どの面下げて…会えと言うんですか?」

 

 

青葉は飲み物を置くと佐渡の目の前に立つと心内を話始める

 

 

「私達は古鷹さんを捨てたんです!

私達は大切だった仲間を捨てたんです!

優しくて!強くて!誰よりも人を思いやれる仲間を!!

正直、加古も衣笠も提督も意味がわからないよ!

私達が捨てた!手放した人を助けもせず!何もせず手に戻そうとしてる!!

私は……私は!あの人に…会う資格なんて無いんです!」

 

 

 

「……なぁ、会うのに資格って必要なのか?」

 

 

「………え?」

 

 

佐渡はそう呟くと飲み物を飲みきりそのゴミをゴミ箱に投げ入れる

 

 

「会うのに資格なんて必要なのか?

俺にはそうは思わない」

 

 

「だって!私は……私達は!!」

 

 

「違うだろ?お前はただ古鷹に向き合えないし

会うのが恐いんだろ?」

 

 

「っ!!」

 

 

佐渡に図星を付かれ青葉は後ろに下がると佐渡は立ち上がる

 

 

「古鷹はまだお前達を許してない

お前達を憎んでる

そりゃそうだ、お前達が古鷹を捨て、古鷹を絶望させ、死なせようとした

その事実は、過去は消せない

どんな事をしようと何をしようがその真実は消えねぇよ

古鷹がお前達を、青葉ちゃん達を許さない限り

だからお前は今、直接会えば拒絶される、突き放される

だってそれが私達が彼女にした事なのだから

も思って会えてない

逃げてるんだろ?前に進むことを辞め綺麗な過去を思い出しながら事実を受け止めずに」

 

 

「…………………るさい」

 

 

「その証拠にお前は無理難題でもある長門を倒すと言う約束をし見事に負け私はまだ覚悟がない

資格がないと言う言い訳をしながら自らを慰めている

俺が何とかしてくれるって人任せにしながら」

 

 

「…………………………………うるさい…」

 

 

「過去から逃げ続け古鷹と言う自分達のしてきた罪から逃げ続けてるんだろ!

違うか!重巡青葉!!」

 

 

 

「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!!」

 

 

青葉は叫ぶと佐渡の首もとを掴みながら涙を流しながら佐渡を睨み付ける

 

 

「そうですよ!その通りですよ!!

私は逃げてます!ずっと過去から!あの人を傷付けて死なせようとした事実から!!

そうでもしてないと生きていけないんですよ!!

逃げていないと……私は………

貴方に頼ってることも分かっているんです!

それでも私は…あの人に向き合えない!!

……あの人が受けた痛みを苦しみを…受け止めきれる…自信が無いんです…」

 

 

佐渡を掴みながら泣き崩れ青葉はそのまま地面に手を付きながら泣いていると佐渡は無言でハンカチを手渡す

 

 

「……ありがとう……ございます…」

 

 

「まぁ、そうだろうな

それが普通だ、逃げたくなるよな

自分達が傷付けて死ぬはずだった仲間が生きていて

会いたいのに会えば拒絶されるのが恐いのは

 

うん、やっぱり辞めるわ」

 

 

そう言うと佐渡はベンチに座ると崩れている青葉を見ていると自分の事を話し出す

 

 

「本当は君の力を借りたかったんだけどね

古鷹を本当の意味で助けるために」

 

 

「………………ぇ?」

 

 

 

「……古鷹は確かに捨てられた時の記憶は笑って言える程になってる

俺達は古鷹の為に何でもしてきた

美味しいご飯、仲間、楽しい鎮守府を作った

 

…でもな過去ってのはそんな簡単な物じゃない

他人じゃトラウマは乗り越えさせる事は出来ない

俺達じゃ元々古鷹の絶望を、アイツに縛りついている過去と言う鎖を壊せない

 

悔しいよな……俺達は結局出来ることと言えばアイツの傷を癒してあげる位なんだ

前に進めさせる事は出来ない

彼女を本当の意味で救えるのはお前達だけなんだからな」

 

 

その言葉と共に佐渡は悔しそうにしながら青葉を睨み付ける

 

 

「アイツを先に進めることが出来るのは

前に進み、過去を乗り越えさせる事が出来るのは

その傷を作った奴等だけなんだよ

だが、それも出来ないとなると古鷹はずっとこれから苦しみ続けるんだろうな

お前達に付けられた傷で」

 

 

そう言うと佐渡は立ち上がり青葉を置いてその横を通り過ぎる

 

 

「悪いな、もう頼まないよ

君なら行けると思ったんだけどな」

 

 

青葉から流れていた涙はいつの間にか止まっていた

そして佐渡に言われた言葉が頭を木霊する

それと同時に古鷹が自分にしてくれたことを思い出し立ち上がる

 

 

「待ってください!!」

 

 

「………うん?どした?」

 

 

青葉から呼び止められた佐渡は振り返ると青葉は佐渡に詰め寄る

 

 

「………私が前を向けば、古鷹さんに向き合えば古鷹さんを助けられるんですよね!?」

 

 

「…あぁ、傷は癒した

俺達はやれることを全てやった

後は、過去を乗り越えるだけだ」

 

 

「……分かりました、やります」

 

 

「……本気か?古鷹はお前達を恨んでる

憎んでる

それを受け止めるんだぞ?」

 

 

「それでもです、私は逃げ続けてました

古鷹さんから私の罪から

でも貴方は命を掛けて古鷹さんを助けてくれました

なら次は私が古鷹さんを助けて見せます!」

 

 

佐渡は青葉を睨み付けながら最後の確認を取る

 

 

「……前に進む覚悟は出来ているのか?

もうお前を慰める言葉も

優しくしてくれる古鷹()

お前の中にある古鷹は前に進めば全てを失う

二度とお前は過去には戻れない

お前の罪と向き合えるか?」

 

 

佐渡に言われた言葉が青葉の心に突き刺さる

今ここで佐渡の事を断ればいつまでも優しい古鷹さんを夢見ていることが出来る

だがそれよりもそんなくだらないことよりも

 

 

「向き合います

私の罪を向き合い、前に進みます

それだけであの人を古鷹さんを救えるなら!!」

 

 

青葉の覚悟を見た佐渡は一枚の写真を取り出す

その写真は青葉がずっと持っていたしわくしゃの写真

それに佐渡はライターで火を付けようとする

 

 

「……最後の確認だ

後戻りは出来ないぞ

何も得る物は無いかもしれない

自分の心の支えを失くす事になるかもしれない

…お前の心は壊れるかもしれない

古鷹はそれほどにお前達を怨んでいる

殺されそうになるかもしれない

それでもやるか?古鷹を救うか?」

 

 

「やります!やらせてください!

私が!あの人を古鷹さんを助けて見せます!

死んでも古鷹さんの過去を乗り越えさせてみせます

約束します!信じてください!佐渡提督!!」

 

 

その言葉を聞いた瞬間佐渡はニヤリと笑い写真に火を付ける

それと同時に古鷹の写真が燃えていくが青葉は見もしない

しばらくした後写真が完全に燃え佐渡はそれを踏み潰す

 

 

「……どうやら本気みたいだな?」

 

 

「はい!古鷹さんを救いたいです!!

私の手で!私達の罪へ向き合いたいです!!」

 

 

「………ハハ!良く言ってくれた!青葉ちゃん!

良し!じゃあ今度小笠原に呼ぶからな!

その時は頼むよ!」

 

 

「はい!よろしくお願いします!佐渡提督!

私が必ず古鷹さんを……助けます…!」

 

 

 




次回

背中を押す者
過去と向き合おうとする者


古鷹を助けるために協力を青葉は決意する
覚悟を決め古鷹と前に進み過去を乗り越える為に
自らの罪と向き合うために


古鷹は縛り付ける最後の鎖過去(青葉)と向き合えるのか?
過去を乗り越えることができるのか!?



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絶望と最後の鎖

「……何で…ここに…居るの?」

 

 

古鷹は最も会いたくない艦娘であり自分を裏切った元仲間

自然と後退りをしている古鷹であったが佐渡と叢雲は古鷹の背中を思い切り押す

そして、屋上の扉を閉める

 

 

「て、提督!叢雲!

ここを開けてよ!!」

 

 

「……駄目だ

古鷹、そろそろ前を向かないか?」

 

 

「…ぇ?」

 

 

「私達は貴女を完全に助けることは出来ないわ」

 

 

「そ、そんなことないよ!二人は!!」

 

 

「いや出来ないんだ

どんなに俺達が古鷹に尽くしても何をしても」

 

 

「貴女の過去は消せない

忘れさせることは出来ない

だから私達が最後に出来ることは貴女を過去に立ち向かえるように背中を押すだけ」

 

 

佐渡達に言われなくても自分でも気付いていた

嫌、気付かないようにしていた

だってそれは二人が私にしてくれたことが無意味だと言うことになる

二人がしてくれたことは古鷹にとって大き過ぎる事だったから

 

 

「でもな、古鷹

お前がここで前に進めると言うのであれば俺達がやってきたことにも意味があるんだよ」

 

 

「…………」

 

 

「私達は貴女を守ってきた

陸上で

水上で

戦闘から

批判や罵倒から

そして、貴女は笑顔を見せてくれた

前に進めると思わせてくれた

私達を信じてくれた」

 

 

「………うん」

 

 

古鷹はドアに頭を当て眼を閉じ佐渡達と過ごしてきた日々を思い出すと拳を握り締める

 

 

「だから、前に進もう

もし、何かあれば俺達がなんとかしてやる

絶対にな」

 

 

「私達はずっと貴女の味方よ

絶対に裏切らない

だから信じて

貴女を救うためには過去に向き合ってほしいの」

 

 

「…………うんそうだよね

私も前を向かないとね」

 

 

「俺達はお前の味方だ

どんな奴であろうが関係ない」

 

 

「貴女を助けるためなら何でもする

どんな奴でもぶっ倒すわ」

 

 

佐渡と叢雲はドアを背にしながら二人とも同じ言葉を叫ぶ

 

 

「「前を向け!過去を乗り越えろ!

俺達(私達)が付いてる!!」」

 

 

その声を聞くと古鷹は微笑みながら顔を上げると青葉に向き直る

 

 

「………分かった

二人を信じてるよ

ありがとう、二人とも」

 

 

古鷹は微笑みながら歩いていき再び青葉に向き直る

青葉も一年ぶりに会う古鷹に緊張しているのか身体をこおばらせる

だが、古鷹は微笑みながら冷たくいい放つ

今までの古鷹ではないように

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……今更何をしに来たの?青葉(嘘つき)

 

 

その言葉に青葉の心が削られた気がした

古鷹の顔は微笑んでいる様に見える

だが、瞳の中は真っ黒に染まっている

左の義眼も電気を付けてないから黒く見えるとは思いたい

冷たく言われた言葉に返す言葉を失っていると古鷹は青葉の隣を通り抜けるとゆっくりと歩いていく

 

 

「……忘れてないよ、皆が私を捨てたこと

ずっと……ずっと…ね?

そうでしょ?私は青葉を衣笠を加古を命懸け助けたよね?

他にも鎮守府の為に色々やってたんだよ?

最前線で頑張って、鎮守府でも皆に迷惑を掛けないように無理したりもしてたよ?

 

 

青葉はそう思わなかったんでしょ?

だから私を捨てられたんだよね

どうせ、私と言う存在は造れるから」

 

 

「ち!違います!青葉はそんなこと思ってません!!

貴女を!古鷹さんを大切に!心配していました!」

 

 

青葉に言われると古鷹は立ち止まり青葉に振り返るがその瞳に背筋を凍らせる

 

 

「……じゃあ、何で助けてくれなかったの?

何で裏切ったの?

何で私を……見捨てたの?」

 

 

その瞳は月明かりに照らされている

左の義眼は真っ黒に染まり青葉を見ているその瞳は冷たく怒りと憎悪に満ち溢れていた

 

 

 

 




次回

憎悪

青葉と対峙する古鷹は最後の鎖と立ち向かう
だが、やはり青葉を優しく迎えることは出来ない
彼女の中にある憎悪と怒りは消えない
そして、再び彼女を蝕む

そろそろイベントですかぁ
しかも今回新しい艦娘が来てくれるとか?
やるしかないじゃない!今回こそ迎えて見せる!!



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絶望と最後の鎖 二

その姿は一年前佐渡と対峙した時に酷似しておりずっと心の奥底にしまい込んでいた

誰にも気付かれないように

誰にも気を使わせないようにするために

青葉達を避けていた

 

何故なら見ればその気持ちを

憎悪を

怒りを

殺意を

抑えられないと分かっていたから

 

 

確かに佐渡と叢雲は古鷹を死へと縛り付ける鎖は壊していた

だがこちらは壊せなかった

いや、壊すことは出来なかった

古鷹の明確なこの憎悪は青葉達にしか向けられないのだから

佐渡はそれを理解し、最後に青葉と向かい合わせた

 

 

それがどんな結果に成ろうとも知らずに

 

 

 

「ねぇ?青葉、覚えてる?

皆で色んな所に遊びに行ったよね?

遊園地、ゲームセンター、山、お祭りにも行ったよね?

青葉が覚えてなくても私は覚えてるよ

楽しかったよね

今でも覚えてるよ、皆の笑顔に私を慕ってくれていた事を」

 

 

「古鷹…さん…」

 

 

古鷹は思い出を語りながら感傷に浸りながら微笑んでいるが少しずつその微笑みが消えていく

そして

 

 

「でも、全部……全部全部全部全部全部全部全部!!

嘘だった!幻だった!偽物だった!!

そうだよね!!青葉ぁぁぁ!!!」

 

 

古鷹は頭を抱えながら叫ぶと青葉を睨み付ける

その瞳には明確な殺意と怒りそして憎悪が混じっていた

初めて向けられるその瞳に青葉は背筋を凍らせる

誰にでも優しくて、頼りがいのあり、笑顔を向けてくれていた憧れの人

 

 

だが、今その姿は無かった

今あるのは青葉達を殺そうとしている変わり果てた

 

 

古鷹(優しい人)だった

 

 

「ち、ちがーーーー」

 

 

青葉は咄嗟にそれを否定しようとするが古鷹は更に睨みを効かせ怒りのまま叫ぶ

 

 

 

「違う!?何が!何が違うの!?

私!皆に何かした!?

酷いことをしたの!?

してないよねぇ!!!答えてよぉ!!

青葉ぁぁぁ!!!」

 

 

それと同時に古鷹は青葉の首を掴みかかると睨み付ける

今まで優しくされてきていた人からの殺意ほど堪える物は無い

佐渡が言っていた覚悟であり古鷹の乗り越えないと行けないと言うことも分かる

だからこそ、青葉は古鷹を救うためには力と心を振り絞る

 

 

「………なにもしてません…古鷹さんは何も…」

 

 

「じゃあ!何で!何で何で何で何で何で何で!!

私を捨てたの!?

裏切ったの!?

私達は仲間じゃなかったの!?ねぇ!!」

 

 

「……私達は古鷹さんを捨てれば安全が保証されたんです

だから皆……貴女なら許してくれるとーーーー」

 

 

「……そう私は『優しい』からなのかな?

……ふざけるな……」

 

 

その言葉と共に古鷹の殺意が更に大きく膨れ上がり瞳が少しずつ赤く染まっていくと同時に青葉の首を強く握りしめる

 

 

「ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!

私が!私がどんな目に合っていたのかも知らないくせに!!

私がどんな思いで苦しんでいたのかも知らないくせに!!

貴女達の考えを私に押し付けるなぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

そう叫ぶと古鷹は青葉を投げ飛ばす

投げ飛ばされた青葉は屋上に増設されたフェンスに当たると背中を強打し苦しみながらその場にうずくまる

 

 

「ねぇ、痛い?

私はねもっと痛い目に会ってたんだよ?

皆がのんびり平和に生きている中私はずっと苦しんでたんだよ

ねぇ?分かる青葉

貴女達に捨てられた私はずっと苦しんでたんだよ」

 

 

古鷹は青葉を見下ろしながらその脚を思い切り踏みつける

 

 

「うっ……!古鷹…さ……ん!」

 

 

「痛いよね?分かるよ?

でもね、私はね切り落とされたんだよこの脚を

何度も何度も何度も何度も繰り返し!!」

 

 

その言葉と共に青葉を睨み付けながら脚だけを持ち上げ反対側のフェンスにぶつける

 

 

「ガ…ハァ!…ふ……る…た……」

 

 

「アハハ!痛いよね!分かるよ!

でもね、でもねでもねでもね!!

私は毎日…毎日毎日毎日毎日毎日毎日ずっと同じ様に苦しめ続けられてたんだよ!!

身体に数えきれないほどの傷に!苦しみを与えられながら私は苦しんでたんだよ!!

ねぇ!青葉分かる!?

分からないよねぇ!!皆は拷問なんて受けてないもんね!!

分からない罪を認めるまで受けてきた心の痛みが分かる!?

 

 

ねぇ!青葉ぁぁぁぁ!!!」

 

 

その瞬間古鷹は踏み込むと一気に青葉に詰め寄りそのまま腹部を思いきり蹴り飛ばすと青葉は苦しみの余り胃酸を吐き出してしまう

 

 

「うぇ………おぇぇ……」

 

 

「青葉……ねぇ答えてよ…

何で来たの?ここに

分からなかったの?私はね皆を私を殺そうとした『オマエタチ』を恨んでるんだよ

殺したいんダヨ?分かラナいの?ねェ?」

 

 

古鷹の言葉が可笑しいし言動も怒りから来たものだと思っていた青葉であったが変に思い苦しみながら古鷹を見上げると恐怖する

 

 

「……ぇ………古……鷹……さ……ん…?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古鷹の髪色は栗色から真っ白に変わり風が彼女の髪を撫でると瞳も真っ赤に染まっていた

両腕は真っ白な爪になり両脚も真っ白に変わっていた

その姿は普通の深海棲艦と変わらないほどに進行が進んでいた完全な深海化だった

 

 

 

「そうダヨ?オマエタチが裏切っタ古鷹だよ?

そして……コレガオマエタチの罪ダ」

 

 

 

 

 




次回

深海化


恨み怒り憎悪殺意
彼女の心をそれだけが支配する
心が蝕まれた古鷹は青葉へ殺意を向ける
物語は最悪の方向へ向かう

そして絶望の鎖は彼女を蝕み狂わせる




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絶望と最後の鎖 三

青葉は咄嗟にその姿を見て恐れを抱く

噂には聞いていた

艦娘の深海化

一部の艦娘に現れる最悪の状態

この状態になった艦娘はすぐに解体処分にされるか雷撃処分することが軍の規約に含まれている

 

だが、滅多になることでもないし噂程度に思っていた

それが目の前で、助けるべき、救うべき相手である古鷹がなっていることに絶望する

 

 

助けられない、私には何も出来ない

 

 

頭にその言葉が過ると古鷹は青葉を見下ろすと頭を持ち上げる

 

 

「ハハ!ドウシタの?青葉……私ガ恐イ?そうだよね?

分かルよ?

優しくて頼りがいのアル私がこうなっテルんだもんね!!

デモねこれはオマエタチのせいなんだよ!!」

 

 

古鷹は青葉を投げ飛ばす

投げ飛ばされた青葉は身体から打ち付けられ血を流しその場に再びうずくまるとゆっくりと近付いていく

 

 

「……頭ノ中でコエガ聞こエルんだ

 

『ワタシカラ奪ッタ者ヲコロセ』てね

 

殺しタクないヨ?

でも抑エルのも大変ナンだぁ!!」

 

 

「ガハッ!グフッ!ウブッ!」

 

 

 

そのままうずくまる青葉の腹部を蹴りながら古鷹は笑っていた

深海化した古鷹は普通では無かった

頭の中に聞こえる声に支配され殺意を剥き出しにし青葉を確実に殺そうとしている

青葉もその事には気付いていた

それでも逃げなかった逃げようとしなかった

これが自分が彼女にした罪なのだから

これを直せるのは自分達しか居ないのだから

 

 

「古……鷹…さ……ん!」

 

 

「ワタシの名前ヲ呼ぶナァ!!」

 

 

一際強く蹴り飛ばすと深海化した腕で首を掴むと青葉を睨み付ける

 

 

「お前ガ裏切らカッタラ!

ワタシはコウならナカった!!

違ウカ!?青葉!!」

 

 

「……そう…です……私は貴女を裏切りました…

弁明もなにもしません

私は……」

 

 

 

「……何でなの?青葉」

 

 

ほんの一瞬古鷹の様子が変わったのが分かった青葉は古鷹を見るがやはり姿は変わってない

でも、優しい古鷹であることは分かる

 

 

「……佐渡さんニ真実を伝えたンでしょ?」

 

 

「っ!?……どうして…それを…?」

 

 

古鷹は深海化した腕で掴んでいた青葉を離す

青葉はそのままコンクリートに落下し苦しかったのかゲホゲホと咳をする

 

 

「……見ちゃったんだ、あの人の部屋を掃除してるとき

密告者A……青葉からの手紙を

ワタシの事を提督に伝えてくれたのは貴女だったって

筆跡で分かるよ、だって仲間だったもん

……それに貴女は最後まで私の事を庇ってくれてたんだよね

あの時ビデオテープに青葉は居なかったもんね

……尋問辛くなかった?」

 

 

古鷹は分かっていた

青葉が他の人達と違うことを

佐渡に真実を伝え古鷹を託し

そして、尋問に耐えながら古鷹を売ろうとしなかった

他の誰もが古鷹を捨てることにしたとしても

青葉だけは捨てようとしなかったのを

 

 

「……ごめんね、青葉

私を最後まで庇ってくれてたんだよね

助けようとしてくれてんだよね」

 

 

「……違います、私はそれしか出来なかったんです

古鷹さんを捨てるなんて見捨てるなんて出来ません!

だって貴女は私の恩人なんですよ!」

 

 

「そっか……そうだよね

青葉はそう言う娘だったもんね

ありがとう」

 

 

 

青葉のその言葉に古鷹は再び微笑みを返してくれ青葉は古鷹が戻ってきてくれたと思い込む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが

 

 

「デモ、お前ハそれしかシナカッタヨナ?」

 

 

古鷹は再び青葉の首を持ち上げると片手でフェンスを切り裂き青葉を屋上の外へと出す

 

 

「う……ふる……たか…さん……」

 

 

「アハハ!許シタと思っタ!?

馬鹿ジャないの!?

許すワケないダロう?

オマエタチを私は許サナい!!

絶対ニ!絶対に!!

殺しテヤる!!お前を殺シテ!私ハ前に進む!!」

 

 

古鷹に首だけで支えられ身体を屋上の外に出されており下を見ると恐怖で身体がこおばらせ何とか戻ろうと足掻いていると古鷹が笑う

 

 

「恐い?怖い?そウダよね!!

お前ガ死ネバ私ハ乗り越えラレる!!

オマエタチ居るカラ私は前ニ進めナイんだよ!!」

 

 

古鷹の瞳は真っ赤に染まりその中にある殺意を見ていると青葉は足掻きを辞め古鷹へ笑いかける

 

 

「何が可笑シイ?」

 

 

「……いえ、私が古鷹さんへ出来ることがまだ残ってたんですね

青葉嬉しいです」

 

 

古鷹の殺意を見ながら青葉は涙を溢す

 

 

「私は……ずっと後悔してました…

貴女を救い出せなかった事に……確かに最後まで…私は粘ってました…それでも……実はギリギリだったんです……

貴女を渡せば良いんじゃないかって思ったこともありました……

だから……解放されたとき…少し安心したんです

やっと終わったって

 

でもそれは古鷹さんを捨てた事だって事を後から知り怒りました

それでもそれしか出来なかった……

あの二人見たいに私は貴女を救い出せなかった

動けなかった、見ていることしか出来なかった

二人に嫉妬しました…古鷹さんを助けだし…大元帥に喧嘩を売って…古鷹さんを追撃してきた長門さんを見てることしか出来なかった……

私に出来たのはほんの少しの情報提供と憲兵を呼ぶ事だけでした…

 

古鷹さんの言う通りなんです

私は裏切り者です、情けない貴女の事を思うことしか出来ないどうしようもない娘何です

 

 

ごめんなさい……ごめんなさい…私達が貴女を助けていれば……あの時全てを失ってでも助けていればこうはならなかった

古鷹さんを苦しませることも無かった……

古鷹さんが深海化することも無かった…

ごめんなさい……ごめんなさい…古鷹さん……」

 

 

「……今更……遅インだよ」

 

 

それと同時に古鷹は青葉の首を離し屋上から落とす

古鷹は落ちる青葉を見ているとその顔が怖がってもなく泣いても居なかった事に驚いた

 

 

笑っていた落とされているのに殺されかけているのに

青葉は笑いながら古鷹へ最後の言葉を託す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「古鷹さん……幸せになってください…

あの二人なら貴女を絶対に幸せにしてくれますから

さようなら………前を向いて歩いてください……!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

落ちる青葉を見ていると昔を思い出す

自分も同じ様に落ちて死のうとしたことを

そして一年後因縁の相手を突き落とし全てを終わらせようとする

何故か苦しく胸を抑える

だがそれと同時に頭にある人の言葉が過る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『それが本当にお前がしたいことなのか?

 

古鷹

 

後悔はないか?仲間を殺して満足か?

 

お前は繰り返すのか?同じことを

 

自分がされたことをまたその娘に』

 

 

その言葉が頭に響くと私は自然と身体を動かしていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(アハハ……やっぱりこうなるよね…でも最後に古鷹さんに何か出来たのなら良かったのかな……)

 

 

青葉は古鷹に落とされながらそう思いながら落ちているといきなり誰かに手を掴まれガクンと身体が揺れる

 

 

「…………………え……?」

 

 

突然誰かに手を握られ驚いているとその手を握っている人を見上げると更に驚く

 

 

「古………鷹さん?」

 

 

「……………………」

 

 

深海化している古鷹は脚を壁に突き刺し青葉の手を掴んでいた

そして、その状態から壁を蹴り飛ばすと青葉の手を掴みながら飛び上がると再び屋上へ戻る

 

 

「………私……生きてる……?」

 

 

「………そウダよ、青葉」 

 

 

深海化した古鷹の身体能力も充分可笑しいがそんなことより自分の事を殺そうとした古鷹が何故助けてくれたの意味が分からなかった

 

 

「………どうして…?」

 

 

 

 

 

 





次回

この手を二度と離さない


憎悪に支配されているはずの古鷹は殺そうとした青葉を助け出した
自分を殺すほど憎んでいたはずの古鷹に困惑する
絶望と死の鎖とは別に古鷹を縛り付けていた物とは?


ちょっと古鷹さんが暴走していましたがこれには訳があります
それは少し先に話していきたいと思います!




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一年の時を越えて

今回も長くなってます!
ごめんなさい!!






「………殺せないよ、やっぱり私には」

 

 

古鷹は震えながら崩れ落ちると深海化していた身体がボロボロと崩れていく

まるで鱗が剥がれ落ちていくかの様に落ちていき空に消えていく

 

 

「殺せないよ!!

憎いよ!青葉達が!!

私を殺そうとした皆が憎い!!

殺したいよ!私を裏切って!自分達はのうのうと生きてる皆が憎いの!!」

 

 

大粒の涙を流しながら古鷹は身体を抑えながら苦しむ

青葉は自分がどれ程軽率であったかを分からせる

自分達が裏切った人がこれほどまでに優しいとは思わなかったから

死ぬ覚悟は出来ていた

それでも

 

 

「何デよ!!何で!私ハコロセナイノ!?

青葉を!コノテデ殺しタイのに出来なイヨ!!」

 

 

でも青葉にはその理由が分かっていた

古鷹がここまで優しくあれたのは

 

 

「どうしてよ!!何で!何で!何で!何で!何で!!!!

 

殺そウトしても貴方ハ私を……助けるの…?

佐渡さん……

辛イヨ!!何デワタシを縛リツケルノ!?」

 

 

佐渡と叢雲が彼女を救いだしたからである

二人の事は聞いていた

古鷹に何をしてきたか

どうやって彼女を助けてきたのか

守ってきたのか

それが今古鷹のストッパーになっていると

彼女を堕ちきらないように優しさと言う鎖で縛り付け青葉を殺さないようにしていたということを

最後まで彼女を守ろうとしていると

 

 

『アイツを先に進めることが出来るのは

 

前に進み、過去を乗り越えさせる事が出来るのは

 

その傷を作った奴等だけなんだよ

 

俺達には出来ないんだよ

 

だから古鷹を救えるのは君だけだ』

 

 

佐渡から言われたことを思い出す

そして自分が出来ることを理解する

 

 

(私しか古鷹さんを前に進めさせることは出来ない

それ以外は佐渡さんがやってくれている

古鷹さんを最後に助け出せって言うのは

『私達が向き合う事』)

 

 

それを理解し青葉は微笑む

 

 

(……凄いな…佐渡提督

何でそこまで出来るんですか

更に興味持っちゃうじゃないですか

任せてください、古鷹さんは必ず私が助けます!!

貴方達がくれたチャンスを必ず物にしてみせます!)

 

 

「………古鷹さん」

 

 

「……ねぇ、青葉

何で、ここに来たの?

分からない、分からないよ

ここに来なかったら私はこうはならなかったんだよ?

こんなに悩まなくて苦しまなかったのにーーーー」

 

 

古鷹が話している最中に青葉は無言で古鷹を抱き締める

ボロボロと崩れているもののまだ身体には深海棲艦の表皮が残っている

 

 

「ごめんなさい古鷹さん

私は貴女を…見捨てました

助けられませんでした、私は佐渡さんに叢雲さんに託してしまった

貴女を助けられるのは私達だけなのに私達は貴女と向き合えてませんでした

ごめんなさい」

 

 

「………離してよ…私は貴女が憎いんだよ

殺そうとしたんだよ…?何回も蹴ったり…傷付けたんだよ……?

私達はもう、戻れないんだよ…?

私は……貴女が…青葉が嫌い」

 

 

確かに古鷹に傷つけられた所は痛い

落とされた事も忘れてない

死にかけた

古鷹にの心の声を聞いた

それでも青葉は

 

 

「……はい分かってます

青葉の事を嫌いでも構いません

憎くても構いません

傷付けても構いません

 

それほどの事を私は貴女にしてきました

何をされようと私は貴女にされても私は構いません」

 

 

「……何で…?青葉は…私が嫌い……何でしょ?」

 

 

古鷹の言葉に青葉は頭を横に振るいそれを否定する

 

 

「いいえ、私は貴女が大好きです

どんな人よりどんな物より大好きです

貴女の事を忘れたことはありません」

 

 

「じゃあ……何で…助けて……くれなかったの?」

 

 

「私は古鷹さんを助ける勇気と覚悟が無かったんです

全てを敵に回し捨てる勇気と覚悟が

あの時、私は見ていることしか出来なかったんです

笑ってください

けなしてください

罵ってください

 

口だけで貴女を助けられなかった哀れな艦娘だったんです

それに加え貴女を佐渡提督に任せ、私は少しは貴女の為になっていると勘違いしてました」

 

 

「……違うよ、青葉のやったことは二人の助けになってたんだよ?」

 

 

「いいえ、私の出来たことは貴女を『救えたと思い込む為に』やってたんです

貴女に向き合うことを恐れ、こうしてあの人の佐渡さんに言われなければ私はずっと貴女を避けてしまっていた

貴女が怒り、私を殴るのも蹴るのも殺そうとするのも無理ありません

結局誰かに背中を押されないと何も出来なかったんです

 

 

ごめんなさい、弱虫で臆病だった私を許してください」

 

 

二人は抱き締めあっていると少しずつ古鷹の深海化が解けていく

髪はゆっくりと栗色に戻り瞳からは怒りと殺意が消え初めていた

 

 

「違うよ……青葉は……」

 

 

「違いません、私はずっと貴女を『思うことしか出来なかった』

思っていれば良いと思いました

でもあの人は、佐渡さんは私にチャンスをくれた

他の誰でもない私に

 

 

貴女を救う最後のチャンスを」

 

 

青葉は力強く古鷹を抱き締めながら涙を溢していた

 

 

「ごめんなさい……ごめんなさい…古鷹さん…

私達が貴女を捨てなければ…貴女を助けていれば…死なせようとしなければ貴女を苦しませることも無かったのに……

貴女にしてもらったことは忘れません

いつも優しくて

誰よりも気が利いていて

頼りになって

強くて

命を掛けてでも私達を守っていてくれて

 

 

ありがとう……古鷹さん……苦しんでいても…生きていてくれて…ありがとう…

貴女が待っていてくれて……ありがとう

死ななくて良かった……

ごめんなさい……一年も貴女を待たせてしまって……ごめんなさい……

 

 

ありがとう…私達を助けてくれて

大好きですよ、古鷹さん

生きていてくれて…本当ありがとう

 

 

今度は私も貴女を守ります

命を掛けて絶対に」

 

 

青葉の言葉が古鷹の心に染み渡る

一年前藤谷と海軍によって破壊された心

絶望と死に囚われずっと死ぬことを願っていた心

今まで佐渡と叢雲に救われ守られていた心

 

 

そして今、青葉が命を掛けて古鷹を助けようとした

深海化してもどんなに嫌いと言われても

青葉は古鷹を思い続け向き合ってくれた

 

 

それが壊されていた古鷹の本当心が少しずつ治っていく

 

 

「……嘘だよね……青葉は私を………捨てたんだよ……ね?」

 

 

「はい!確かに貴女を捨てました!

でも青葉はもうそんなことしません!!

もう迷いません!覚悟を決めました!

どんな人からも提督からも貴女を守って見せます!!

絶対に!貴女を後悔させません!

誓います!古鷹さんは私が守ります!!!」

 

 

古鷹は震えながら青葉を抱き締めようとするがやはり躊躇ってしまう

 

 

「嘘だ……嘘だ……青葉は……」

 

 

「今は信じてくれなくても構いません!!

いつか貴女に!古鷹さんに信じてもらえるように頑張ります!

だから!私にチャンスをください!

古鷹さん!!

 

 

貴女を救うチャンスをください!!」

 

 

その言葉を待っていたかの様に古鷹は涙を少しずつ溢し青葉を突き放す

涙を溢しながら青葉を見ると自分の手を見る

深海化は解けかけているものの半分はまだ深海棲艦みたいになっている

 

 

「私は……化け物だよ?」

 

 

「関係ありません!!古鷹さんは古鷹さんです!!

私の大好きな!大切な人なんです!!」

 

 

「……嫌いだよ青葉が私は」

 

 

「それでも構いません!私は貴女が大好きです!」

 

 

「………また殺そうとするよ?」

 

 

「構いません!もし貴女が殺したいなら殺してください!!

貴女がそうしたいなら私は構いません!

こんな命を貴女に差し上げます!!」

 

 

「………………青葉………大嫌い」

 

 

「私は大好きです!

だから、一緒に…共に前に進みましょう!

古鷹さん!

過去は消えません!それでも未来は作っていけます!

青葉は古鷹さんが居る未来に行きたいです!!」

 

 

青葉は離れた古鷹に手を差し出す

その手を見ながら古鷹は震えながら手を取る

取った手をゆっくりと握り締め古鷹は涙を更に溢す

 

 

「………もう離さない?この手を?」

 

 

「離しません!二度と!絶対に!!

私は!青葉は貴女を守ります!

一緒に歩いてください!古鷹さん!!」

 

 

手を握り返され古鷹は実感する

あの時佐渡に取られた手もこうだった

優しくて強く握り締め

絶対に離さないように古鷹を包み込む

 

だからこそ古鷹は

 

 

「…………青葉ぁ……信じる……よ…」

 

 

予想外の言葉に青葉は驚く

信じてもらえないと思ってたから

手を取ってくれないと思ってたから

それでも古鷹は手を取ってくれた

古鷹を見ると大粒の涙を溢しながら深海化が完全に解けていた

そして、おもむろに青葉に抱き付く

 

 

「ごめんね!ごめんね!!青葉ぁ!

痛かったよね!苦しかったよね!ごめんね!

ごめんね!!」

 

 

「古……鷹…さん?」

 

 

「私ね知ってたの青葉がずっと私を気にしてくれていたのを!!

それでも許せなかったの!私を捨てたのを!助けたのに!命をかけて助けたのに私を助けてくれなかったのが!!

辛かったよ!苦しかったよ!!

皆が私の事を嫌いになったと思ったの!!

憎いよ!憎くてて仕方ないよ!

 

でもね……貴女を殺せないのは本当だよ…?

だって仲間だもん!大切で忘れられないもん!!

皆が!楽しかった日々が忘れらないよ!!」

 

 

青葉は古鷹の壊されていた心の声を聞く

忘れてなんかいなかった

古鷹の事を確かに思っていた青葉だったが古鷹も青葉達の事を思い続けたことを

 

 

「忘れらないよ!!二人に!皆に優しくしてもらって!楽しく鎮守府で生活していても忘れることなんて出来ないよ!!!

 

 

だって!皆!皆!私の大切な仲間なんだもん!!

どんなに裏切られても嫌われても私は大好きなんだもん!!

 

どんなことをされても殺せるわけないよ!!

大切で大好きな人達を!!」 

 

 

「あ………あぁ……」

 

 

古鷹は青葉達にどんなことをされても嫌っていなかった

優しいままの古鷹であった

それでも心はその思いとは別に彼女を狂わせていた

 

 

だが今青葉が向き合った事により古鷹の心は再び元に戻った

 

 

「さっきはごめんなさい!

青葉を殴って!蹴って!ボロボロにして!大嫌いって言ってごめんなさい……ごめんなさい!!

 

大好きだよ…青葉…

いつも皆を心配して優しくて思いやりのある青葉が大好きだよ」

 

 

「う……うぅ…古鷹ざぁぁぁぁん!!」

 

 

青葉は報われたと思った

佐渡に背中を押され

覚悟を決めて古鷹を救うと決めた

 

 

そして今古鷹の心は治り

救われた

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!!

見捨ててごめんなさい!!古鷹さんを助けられなくてごめんなさい!!

青葉が悪いんです!!青葉があの時止められなかったから!!」

 

 

 

「違うよ青葉、あんな状況じゃ誰も助けられないよ…?

それよりもありがとう…青葉…私に向き合ってくれて

佐渡さんに真実を伝えてくれて

私の事を思ってくれていて」

 

 

「うわぁぁぁぁん!!古鷹さん!古鷹さぁぁん!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一年前、佐渡は古鷹を救いだした

そして死の鎖を壊し優しさと言う鎖で縛り付け

今日、彼女の過去である絶望の鎖を完全に破壊した

青葉と言う協力者と共に

 

 

「古鷹さぁぁん!!ごめんなさい!ごめんなさい!!」

 

 

「青葉…ごめんね……ありがとう…ありがとう!」

 

 

 

二人の泣き声と反省の言葉と感謝の言葉は交互に言い合いながら時は流れていく

一年、長く短い期間を埋めるかの様に二人は抱き締めあいながら自分達がようやく前に進めたことを理解する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、手のかかる重巡だったわね」

 

 

「かぁー何言ってんだお前が助けたいって言った艦娘だろうが」

 

 

「えぇ……ありがとう佐渡」

 

 

「はぁ?俺は何もしてねぇよ

二人が和解したのは二人が前を進む事を選んだからだ」

 

 

「……でも」

 

 

「……あぁ」

 

 

「「ミッションコンプリート(任務完了)」」

 

 

 

 

二人は屋上の扉に背を預けながら外の様子を聞いておりお互いの拳を合わせる

 

 

「んで、まぁ古鷹と青葉ちゃんが泣くのは良いんだ

……何でお前ら泣いてるの?」

 

 

「う…ひっぐ……ふるたかぁ……」

 

 

「良かったね……古鷹さん…良かったね…」

 

 

「過去と向き合い……前を進むか…良かったな…古鷹…うぅ…」

 

 

「そうですよ皆さん古鷹さん達は泣いていいですが私達は駄目ですよ…」

 

 

「と、言いながら大井も泣いてるじゃない?」

 

 

「ないでません!!」

 

 

「お前らなぁ……ハンカチ一つしか無いから各々で頼むぞ?」

 

 

 

いつの間にか屋上に金剛、大井、イムヤ、グラーフ、長門、エアが集まっており古鷹の事を見守っていた

 

 

「……佐渡提督、貴方はどこまでやるんだ?

…古鷹の過去を向き合わせるなんて……」

 

 

「どこまでも…かな、俺は出来ることをやるだけだ」

 

 

「…そうか…流石だな…古鷹…グスン」

 

 

ここに居るエアと佐渡と叢雲以外は全員泣いており佐渡と叢雲は溜め息をつく

 

 

「にしてもやるじゃない?佐渡

あの時の艦娘が今回の鍵だったわけね」

 

 

「まぁな、助かったよエア」

 

 

「あら?古鷹の為ならいくらでもやってやるわよ?

……私は艦娘の味方だからね!」

 

 

「全く、呆れたわ

……でも良い鎮守府になったわね」

 

 

「そうだなぁ……さぁてと後はこれだけかなぁ?」

 

 

佐渡は一枚の紙を取り出すとそれを見ようと全員がその紙へ視線が集中する

 

 

「何デース……か…それ?」

 

 

「…あれ?司令官……それ!?」

 

 

「あぁ、これがその仕上げだ

叢雲……良いな?」

 

 

「えぇ、始めから決めてたもんね

分かってるわよ?」

 

 

その紙を見ながら佐渡は微笑みながら叢雲の頭を撫でる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さってと、じゃあ古鷹の進むべき道を示そうか?」

 

 

 

 

 

 

 




次回

乗り越えた先へ


青葉と向き合い過去と決着を付けた古鷹
もう彼女を縛るものも苦しめるものも無い
そして佐渡は古鷹にあるものを渡す

台風遅いですねぇ……
早くどっかいってーな……



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進め己の道を

次の日古鷹と青葉は一緒の部屋で寝泊まりし共に手を繋ぎながら廊下歩いていた

昨日あんなことがあったのにも関わらず今ではすっかり仲良くなっていた

 

 

「にしても酷いところって聞いていましたがかなり綺麗ですよね小笠原鎮守府って」

 

 

「これでも初めの頃はこんな綺麗じゃなかったんだよ?

提督と叢雲と親方さんや妖精さん達と一緒に綺麗にしていったんだ」

 

 

「へぇ……凄いですね

……ごめんなさい古鷹さん

貴女をそんなところに行かせてしまって……」

 

 

「もう!青葉!」

 

 

暗くなりかけていた青葉の頬を両手で押さえると微笑む

 

 

「確かにそうだったけど今はそれで良かったと思ってるんだよ?

ここに来て佐渡さんに叢雲に会えたんだから気にしないの!」

 

 

「うぅ……でも…」

 

 

「良いの!青葉は私に向き合ってくれたんだからこの話は終わり!

良いね?」

 

 

「…はい、古鷹さん…強くなりましたね」

 

 

「ふふ、提督のせいかな?

でも私は強くないよ?強くありたいんだ

心を強く持ち負けない心で戦えって教わってるからね」

 

 

古鷹と青葉は朝食を済ませ鎮守府内を歩いていたのだが佐渡に呼ばれており提督室に向かっていた

 

 

「にしても何だろ?提督、私に大切な話があるって………

それに皆居ないし…」

 

 

「……大切な話だからじゃないですか?

青葉は聞いておりますが…」

 

 

「え!?青葉は聞いてるの!?

教えてよ!!」

 

 

「…駄目です、言えないんです

佐渡提督から言うなって口止めされてますからね…」

 

 

青葉が少しだけ暗い顔をしており何故教えてくれないか疑問に思っていたが提督室の前に到着し部屋をノックする

 

 

「提督!古鷹です!」

 

 

『あぁ、入っていいぞ』

 

 

「失礼します!」

 

 

ガチャッと扉を開き部屋に入ると古鷹は少しだけ変な雰囲気を感じながら身構える

 

 

「………ぇ?皆?」

 

 

提督室には鎮守府の全員が集まっており叢雲以外は部屋の両側に集まり古鷹を見ており叢雲だけは佐渡の隣立っていた

 

 

 

「待ってたぜ、古鷹

青葉ちゃん

すまないが少し待っててくれないか?」

 

 

「はい、分かりました」

 

 

古鷹はゆっくりとした足取りで佐渡に近寄ると異様な雰囲気に耐えきれずに困惑する

 

 

「え、えっと……皆どうしたの?

ここに集まって……」

 

 

「まぁ、それは追々話していくよ

まずは古鷹、良く前を向き歩き出してくれた

俺達は君をずっと守り見てきた

嬉しいよ、一年という歳月はかかったが君が過去を乗り越えてくれたことが本当嬉しい」

 

 

「いえ……これも皆のお陰です

皆が優しくしてくれていつも楽しい鎮守府生活をさせてくださって

最後に二人が私の背中を押してくれたから私は前を向けたんです

ありがとうございます

感謝してもしきれません!

この恩はここでずっとーーーー」

 

 

古鷹がそこまで言うと佐渡は微笑みながら言葉を遮り指を鳴らすとエアがある紙を取り出す

 

 

「えー、古鷹一番艦古鷹

貴女の罪は佐世保鎮守府を奇襲した深海棲艦を手引きし藤谷提督と艦娘達を壊滅させた反逆罪です

 

 

死刑が執行されるまで毎日拷問と尋問を受け続け貴女は苦しみ続けていました

海軍の都合により貴女は捨てられた

誰も貴女を助けず貴女に手を差し伸べなかった

絶望し、苦しみ、貴方は死を願った

 

だがそこに二人の反逆者が立ち塞がった

そして捨てられた貴女の命を拾った

二人は貴女に生きる意味を与え今まで貴女は生きてきた

 

それでも貴女は苦しんでいた

過去を忘れられずに静かに苦しみ続けていた

 

 

そして今貴女は過去と向き合い乗り越えた

なので我々小笠原鎮守府は貴女に最後の贈り物をします

 

我々が出来る最後の事です

貴女が喜んでもらえるかは分かりませんが貴女を我々が救います!!」

 

 

「………ぇ?どういう…」

 

 

エアは読み終わると微笑み大井を見ると頷き大井はタブレットを取り出し古鷹にあるニュースを見せる

 

 

「………ぇ…え?……え?」

 

 

そのニュースを見ながら古鷹は口を抑えながら驚く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『本日未明、海軍大本営所属 藤谷信吾が艦娘保護法に反した容疑と詐欺罪で緊急逮捕されました

藤谷信吾容疑者は自らの息子である藤谷淳一が運営する佐世保鎮守府に艦娘が深海棲艦を招いたという虚偽の証言を複数の元帥達と合作し大本営を騙して居ました

 

しかも、その艦娘に強制的に拷問や尋問をし無理矢理自供させたと言う事も報告されており本日未明緊急逮捕されました

 

そしてそれと同時に佐世保鎮守府の艦娘と藤谷提督にも同じ容疑が掛けられており現在憲兵達により捜査が開始されております………』

 

 

「な……ん…で?」

 

 

あまりの事に驚くとエアがウィンクすると佐渡が微笑む

 

 

「どう?これで満足かしら?佐渡」

 

 

「あぁ、完璧だ

流石だなエア

 

そして、長門、青葉ちゃんもありがとう」

 

 

その言葉に古鷹はハッとすると青葉は古鷹に近付くと頭を下げ

長門と大井も古鷹へ微笑む

 

 

「…私は提督がやったことそしてその行為と経緯を調べました

古鷹さんが送られた後からしたためて密かに密告しようと思ってました」

 

 

「…私は唐澤さんに頼み込んだんだ

古鷹を助けてほしいと正義を執行したいと

相手は大本営だろうと私がやりたかった

貴女を傷付けたのは変わらない

だが、少しでも良いから貴女の役に立ちたかったんだ

すまない、断りもせずに」

 

 

「うふふ!その調べた事と唐澤の発言を理解のある憲兵達に伝え新聞記者や各局に私が密告したのよ

 

全く苦労したわよ、こいつがそんなことをいきなり頼むんだもん」

 

 

「悪かったよ、だがお前ならできると思ってな」

 

 

「ふん、こんなの出来ないわけ無いでしょうが

ま、私が出来るのはこんなこと位だしね」

 

 

そう言うとエアは古鷹に近付き頭を優しく撫でると同時に抱き締める

 

 

「ごめんね、古鷹

貴女を助けることが出来たのに私は貴女を助けられなかった

私には貴女を助けることが出来る力があったのに出来なかった

 

私も長門と同じ罪を背負ってるわ

無知は罪よ

私も貴女が受けている痛みを知らなかった

だからこれぐらいしか出来なかった

ごめんね」

 

 

「良いんですよ!エアさんは優しいのは知ってますし知れなかったのは仕方ありませんよ

あの人達も私の事を厳重に管理してましたから…

でもありがとうございます!

私は嬉しいです!」

 

 

古鷹に言われるとエアは更に古鷹を強く抱き締めながら頭をなでる

 

 

「あぁ!もう本当に可愛くて優しい娘よね!

ねぇ!貴女こっち(深海側)に来ない!?

毎日貴女の好きな事させるし不自由はさせないわよ!」

 

 

「おいごら、待てやエア!

何勝手に引き込もうとしてるんだぁ!?」

 

 

「はぁ?あんたじゃこの娘は勿体無いわ!!

深海側でダメダメになるぐらい甘えさせてやるわよ!!

だから寄越しなさい!!」

 

 

「駄目に決まってんだろうが!!

古鷹は俺達側だ!!」

 

 

「古鷹の為ならここで一戦やろうかしら?」

 

 

「ほほう?うちらと戦うのかあぁん?」

 

 

 

「もう!辞めてくださいよ!二人とも!!」

 

 

深海側の姫と海軍側の提督が一人の艦娘を取り合って争ってる様はまるでお姫様を取り合い戦ってる様ではあるが佐渡とエアは古鷹に止められ笑い合う

 

 

「はは、まぁこの戦いは今度だなエア」

 

 

「良いわよ?受けてたつわよ人間!!」

 

 

そしてエアが元の場所に戻ると佐渡が続きを話していく

 

 

「と言うわけだ、これで古鷹

君に対する海軍の誤解も全て解かれることになる

長くなってすまなかった

俺にはまだ力がなかったんだ

今はこうして力があるからこそ君の罪を消すことが出来た

 

喜んで貰えたかい?」

 

 

「はい……ありがとう…ございます…

私は……」

 

 

「あぁ、これでお前は『普通の艦娘』に戻ったんだ

全て…古鷹を縛り付け苦しめていた物は終わりを告げた

 

君の苦しみと絶望の物語は終わりを告げた

大手を降って前に進めるな

おめでとう、古鷹」

 

 

「長かったわね、貴女を救うのにこんなにかかるとは思わなかったけど良かったわ

私は貴女との約束は守れたわ

 

お疲れ様古鷹

貴女が虐げられる事は無いわ

貴女は実力も付け他の鎮守府からも一目置かれる存在になったってことよ

 

おめでとう、古鷹」

 

 

「おめでとうデース!古鷹ー!!」

 

 

「お疲れ様、古鷹さん」

 

 

「古鷹さん!終わったんだよ!

貴女が苦しめられることはもう無いんだよ!!」

 

 

「良かったな古鷹!

貴女は救われるべき艦娘だ……

おめでとう…古鷹…グス」

 

 

「何であんたが泣いてるのよ!グラーフ!」

 

 

「すまない……古鷹の過去が酷すぎてな……」

 

 

「古鷹、すまなかった

そしておめでとう、貴女は絶望に耐えた素晴らしい艦娘だ」

 

 

 

その言葉と共に佐渡が拍手をすると周りに居る金剛や大井達からも賞賛の言葉と拍手が送られると古鷹は涙目になりながら喜ぶ

 

 

「ありがとう…皆……ありがとう…

こんな私何かの為に……ありがとう…」

 

 

「それは違いますよ!古鷹さん!」

 

 

青葉は古鷹の隣で笑いながら佐渡にウィンクすると全員声を揃えて同じ言葉を言う

 

 

「「「「「「「「貴女だからこそだよ!古鷹!

私達は貴女だからこそ助けるんだよ!」」」」」」」」

 

 

「ぅ……うぅ……皆…皆……ありがとう……ありがとう………!」

 

 

その言葉と共に古鷹は崩れてしまいその姿を見た全員は笑い合うが佐渡合図を出すと青葉が古鷹を立ち上がらせある紙を取り出しそれを古鷹に差し出す

 

 

「俺達はお前を守り続けてきた

そしてお前は前を向き歩き始めた

だからこそ、俺達は最後の仕事をしようと思う

 

 

古鷹、俺達は古鷹の進むべき道を作った」

 

 

 

「……ぇ?……提督……こ……これ……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは大演習会での全員に渡された転属願だった

一枚だけ佐渡は古鷹に渡さず残していた

この時の為に

 

 

「さぁ、古鷹選べ

お前の進むべき道を」

 

 

 

 

 





次回

選べ君の進むべき道を
前を向いて未来を


全てが終わり古鷹の罪もエア達の協力により消され佐渡は最後の贈り物を古鷹に渡す
選ぶ道がなかった彼女に再び選ぶ道作り進めさせる為に


そう言えば浴衣古鷹実装されてますけど
あれ、中破ヤバイですね……
もう…色々と……



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進め己の道を 二

その紙に古鷹は驚き震えながらそれを持ち上げる

 

 

「て、提督…どう…して…?」

 

 

「最初から決めてたのよ私達」

 

 

叢雲は佐渡の頭を軽く叩くと佐渡も笑いながらその話を始める

 

 

「もし、古鷹が前に進むことが出来

全ての事が終わったとき」

 

 

「貴女を別の鎮守府に移動させようってね

貴女はこんな所に居るべきじゃないわ

こんな犯罪者二人が居る鎮守府に」

 

 

「…え……どういうこと?

だって二人は私を!!!」

 

 

その言葉にハッとすると青葉を見る

顔を反らしエアも顔を反らしており詰め寄ろうとするが叢雲がその訳を話し始める

 

 

「私達の罪は消えない

貴女を助けるために処刑を中断させたのは立派な反逆よ」

 

 

「俺達は今まで通りこの鎮守府を離れること出来ないのさ

だが古鷹の罪はもう無い

だからこそ俺達何かと居る必要は無いのさ

まぁ叢雲だけなら何とかなったんだけどなぁ」

 

 

「そ……そんな…二人は…私のせいで……長門さん!

青葉!何とかならないの!?」

 

 

古鷹が二人の罪を消すことが出来ないか詰め寄るが長門も顔を反らしてしまう

 

 

「すまん……それだけは不可能なんだ…

確かに古鷹は無罪の罪で殺されかけた…だがな…」

 

 

「二人がやったのはそれだけで済まされません…

どんな理由があろうと二人が海軍に反逆したという事実は消せないんです…」

 

 

「不可能よ、こいつらはそれを承知で貴女を助けたのよ

理解しておきなさい

貴女を助けるために本当に全てを捨てたのよこいつらは

……本当馬鹿よね、あり得ないわ本当に」

 

 

エアがそれを言うと古鷹は自分がずっと守られ命を助けられた意味を理解する

だからこそ分からなかった、何故自分を手放すのか

 

 

「ふん!人を助ける為に私達が罪を背負えば良いならいくらでも被ってやるわよ!」

 

 

「そう言うことだ、俺と叢雲はその覚悟を持って君を助け出した

ま、死刑にならなかっただけマシかな」

 

 

佐渡と叢雲は笑いあっているとエア達は呆れていた

 

 

「ほんと、この二人は……」

 

 

「まぁでもこの二人ダカラ!」

 

 

「私達も付いていけるのよね!」

 

 

「あぁ、全くとんでもないアトミラールと艦娘だよ!」

 

 

「少しは加減をしてほしいものだが

貴方達は止まらないんだろな!」

 

 

それと同時にエア達も笑い出す

だが、古鷹だけは困惑していると佐渡が背中を押そうとする

 

 

「一年前、俺は君を大本営から海軍から藤谷提督から奪い取った

そして、持てる権限を使い君の命を我が物にした

 

君の大切な一年を縛り付けてしまいすまなかったと思う

無駄な一年をこんな酷い場所で過ごさせてしまって本当にすまない

君の時は戻せない

君から奪った時間は返せない

でも、俺達は古鷹に今道を選ばせてあげられる

 

それで許してくれないか?」

 

 

「そんな……提督!私は……!」

 

 

「もう、俺達は君を必要として無い

君は俺達の兵器()である必要はない

古鷹、ここで今君の所有権を我々は廃棄する!!!

 

君には進むべき道がある!!

俺達は最後に君を先に進める義務がある!

俺達は君の時を奪った!だからこそ君に選択する権利を与える!選べ!!」

 

 

佐渡が指示するとその場に居る艦娘達が笑いながら一人ずつ前に出る

 

 

「古鷹さん、私は貴女の道を一つ指し示します!

北上さんと葛城提督に話を通しました

もし、二人が居る佐伯鎮守府に行くのであれば必ず男との問題は起こさず貴女を歓迎し大切にすると約束します

何かあったわ私に遠慮なく言ってください

いつでも駆けつけます!

貴女は強いですから向こうでもやっていけると思います!」

 

 

「大井さん……」

 

 

大井が伝えると次は金剛が前に出て古鷹の手を取る

 

 

「古鷹ー!私も古鷹の道を指し示すデース!

霧島と石澤提督に話を通しましたー!

もし、二人の鎮守府に行くんだったら安全と古鷹を優しくする事を約束しまーす!

古鷹!もし、向こうで問題があったり石澤提督が何かしたら私に言ってくださーいネ!

私の持つ不幸をばら蒔いて鎮守府を潰してやりまーす!!

古鷹を傷付ける奴は許さないデース!」

 

 

「金剛さん……」

 

 

金剛が満面の笑みを浮かべながら伝えると下がり次にイムヤが古鷹の手を取る

 

 

「古鷹さん!私も……古鷹さんの道を指し示します!!

ハチと猿橋提督に話を通したわ!

もし、二人の鎮守府に行くんだったら出撃無しと平和を約束する!!

でも何かあったらいつでも呼んでね!!どんなことが起きても私は貴女を助けに行くからね!!

絶対だよ!絶対約束だから!!

古鷹さんが行っちゃうのは寂しいけど……私達は背中を押したいから!!」

 

 

「イムヤさん……」

 

 

泣きそうな顔を隠しながら古鷹から離れると次にグラーフが手を取る

 

 

「古鷹、私も貴女の道を指し示す!

ビスマルクとドイツのアトミラールに話を通した

かなり遠くなってはしまうがドイツの鎮守府に行くのであれば貴女を必ず皆は守ってくれる

二度と私の様な艦娘を作らないと約束してくれているからな!

だが、何かあればすぐに呼んでくれ

この鎮守府に居ようが海の上だろうが私は駆け付ける

貴女が私達にしてくれたことは忘れない!」

 

 

「グラーフさん……」

 

 

そしてグラーフが離れ最後の艦娘長門が古鷹の前に立つといきなり頭を下げる

 

 

「……すまない…私が君の道を示せるとは思わない

だが私にも示すことを許してくれない

唐澤さんと陸奥達に話を通した

舞鶴鎮守府に行くのであれば君を必ず守るそして二度と君を傷つけさせない約束する

私の命を掛けて、私の全てを掛けて

君を守るだから安心して進んでほしい」

 

 

「長門さん……」

 

 

全員から貰った道を受け取りながら古鷹は考え込む

だが古鷹の事を察した佐渡はその考えを遮るように話す

 

 

「古鷹、俺達から受けた恩とかそう言う事は考えるな

俺達はただやりたいからやっただけだ

ただの自己満足なんだ、君を救えた

それだけで良いんだ、だから君は真っ直ぐ前を向いてほしい

もし佐世保に戻りたいと言っても俺は止めない

今のお前なら藤谷達ともやっていけるはずだ

 

 

さぁ、選べ!!古鷹!!

今!ここでお前の進むべき道を!!

未来を選べ!!お前には資格が!権利がある!」

 

 

 




次回

私は………

一年前、自らが決めることが出来なかった道
それを佐渡は持っている全てを使い古鷹へ道を作り出した
そして少女は自らの未来を
歩いていく道を選ぶ
後悔がないように






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進め己の道を 三

古鷹は持っている転属願いをグシャっと握り締めながら目を閉じ静かに微笑むと佐渡を見る

 

 

「……貴方は、何故そこまで私に与えてくれるんですか?

何で貴方はここまでしてくれるんですか?佐渡さん」

 

 

「与えてなんかいねぇよ、俺は君が奪われた物を取り返してるだけだ

それだけだ、勘違いするな」

 

 

佐渡の冷たい言葉が物語る

この人は私をわざと突き放していると

ここに居れば私を助けた罪に私が巻き込まれると思っているから

だからこそこの人は私にこの鎮守府に残ってほしくない

 

 

だって自分達の事に私を巻き込みたくないから

もう後ろであると思い込んでいる自分達を見捨てて前を進んでほしいから

 

 

古鷹は分かっていた佐渡はそう言う人だって事を

自分ことより他人を

他人を助けるためには全力でやることを

何もかもを捨ててでも助けるその姿を一年側で見ていたから分かる

 

 

「……提督はどうしてほしいですか?」

 

 

「バーカ、俺に聞くな

今決めることがお前の未来を決める

だが俺達に恩を感じるなよ

俺達はあくまでやりたいからやったんだ

お前はお前の好きにしろ

 

俺達は止めないさ」

 

 

「なら、私の答えはずっと前から決まってます」

 

 

古鷹は転属願に自分の名前と転属先を書いていこうとする

ほんの一瞬転属先を迷った

本当にこれで良いのか

提督を他の艦娘を困らせないのか

だからこそ瞳を閉じて考える

 

 

『お前の道だ、お前が決めろ』

 

 

「………はい、私の道は私が決めます」

 

 

微笑みながら佐渡から教わった言葉を思いだし自分の移動先を書き終えるとその紙を裏側にし佐渡に差し出す

 

 

「提督、受理してくれますね?」

 

 

「あぁ、受け取ろう

嬉しいよ古鷹、前に進んでくれるんだな?」

 

 

「はい、私は前に進みます」

 

 

佐渡はその裏紙を受けとると微笑み金剛とイムヤが泣き出してしまい

大井とグラーフが宥める

それを横目に見ながら佐渡は裏側に向けられた転属願を表向きに変える

 

 

「さーて、古鷹はどこに……………待てこら

古鷹…………何のつもりだ?これは?」

 

 

「そのままですよ、私の道は私が決めます」

 

 

古鷹は受け取った紙を見ながら両手に後ろに組みながら微笑む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は………『小笠原鎮守府に行きたいです』」

 

 

「……ぇ?」

 

 

「…古……鷹さん?」

 

 

転属願には行き先は小笠原と書いており佐渡は頭を掻きながらため息をつく

 

 

「おいおいおい!古鷹!俺の事分かってるよな!?

俺はーー」

 

 

「分かってますよ、貴方が私を突き放す理由も」

 

 

「だったら!!!」

 

 

「それでも、私は貴方に逆らってでも『この鎮守府に小笠原鎮守府(我が家)に居たいんです」

 

 

古鷹の反抗に驚いていると古鷹は微笑みながらその理由を話していく

 

 

「確かに私にはもう罪はありません

前に向くことも出来ました

貴方達のお陰です、本当に感謝しています

本当に嬉しいです

この気持ちは心の底から思っています

 

 

それでも私はここに居る仲間を…家族を忘れて別の鎮守府に行くことは出来ません

私は貴方達に救われここに来ました

そして、大井さん、金剛さん、イムヤさん、グラーフさん、エアさん……まだ期間は短いですが長門さん

皆と……仲間と会えました

今では家族と言っても過言では無いほどに私は皆を信じ絆を感じています

 

例え別の鎮守府に行ったとしても私はこの鎮守府の皆を思ってしまいます

この鎮守府が皆が私にとって何よりも大きな存在なんです」

 

 

「古鷹……お前…」

 

 

そこまで言うと古鷹は満面の笑みを浮かべながらここに居る皆に見渡し佐渡に頭を下げる

 

 

「だから、こんなどうしようもない重巡ですが

この鎮守府に置いてください

私には皆が必要なんです

皆と離れたくない!皆とずっと一緒に居たいんです!!

皆とこの鎮守府の仲間を一人も欠けずにこの戦争を終わらせたいんです

 

お願いします、佐渡さん

私は……この鎮守府が皆が大好きなんです!!」

 

 

古鷹の思いを聞いた叢雲とエア、青葉は以外涙を堪えているが佐渡は大きくため息をつく

 

 

「はぁ………くそ全く……」

 

 

「ふふふ、古鷹少し図々しくなったわね

佐渡、無理よこうなったら古鷹は止まらないわ

私達に似て真っ直ぐに突き進む事しかしないんだからね」

 

 

「わーてるよ……全く!お前と言い!大井と言い!!何で俺の思い通りに動いてくれねぇのかな!!」

 

 

そう叫ぶと佐渡は転属願に判子を押し古鷹がこの鎮守府に残留することを許可すると古鷹は喜び笑みを浮かべる

 

 

「……ありがとうございます、佐渡さん!」

 

 

「全く……これからいつも以上にこき使ってやるからな

覚悟しとけよ古鷹」

 

 

 

「はい!よろしくお願いいたします!佐渡さん!」

 

 

「ふふ、これからもよろしくね

古鷹」

 

 

「うん!よろしくね叢雲!」

 

 

佐渡がゴホンと咳払いをすると椅子をくるっと回し手を振るう

 

 

「お前ら~、もう我慢しなくて良いぞ~」

 

 

「「「「………古鷹ぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」

 

 

 

その言葉を皮切りに涙を堪えていた大井達が一斉に古鷹に抱き付く

 

 

「わわ!皆どうしたの!?」

 

 

「わーん!古鷹ー!古鷹はどこにも行かないデースよね!?」

 

 

「う、うん?ここに居るよ?」

 

 

「古鷹さん!これからもよろしくお願いしますね!!」

 

 

「うん!よろしくね!」

 

 

「あーん!古鷹さん!!良かったよぉぉぉ!!

この鎮守府に居るんだよねぇ!!」

 

 

「よしよし、イムヤさん泣かないで?」

 

 

「古鷹ぁぁ……すまない!すまない…今だけはこうさせてくれ……!」

 

 

「うん、良いよグラーフさん!」

 

 

「すまない!すまなかった古鷹ぁぁぁぁ!!

本当にすまなかった!!」

 

 

「もう!長門さん良いんだってば!」

 

 

ほとんどが泣きついており佐渡はその姿を横目に見ながらため息をつく

 

 

「んまぁ、分かっては居たけど良いものね

あんた達の絆ってのは」

 

 

「はん、古鷹が優しすぎるのが悪いんだろうって

そんなことより悪かったね青葉ちゃん?

君も転属願をしたためてたんだろ?」

 

 

「えぇ………でも正直使い道は無いと思ってましたよ

貴方に会って更にそう思いました」

 

 

「うん?何で?

だって、古鷹は他の鎮守府に移動させる予定だったんだよ?」

 

 

「………ねぇ、あんたってさ恋愛とか絆とか分からない訳?」

 

 

「…そんなのあれだろ?小説の中にある空想だろ?

現実にあるわけないじゃん?」

 

 

「「「………はぁ……」」」

 

 

「え、何でお前ら頭抱えてため息付いてるの!?

え?何か変な事いった俺!?」

 

 

佐渡の鈍感と言うか唐変木加減が酷すぎて叢雲達は頭を抱えながらため息を付いていると佐渡は焦る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……でもこの気持ちは隠しておきますよ

貴方の邪魔にはなりたくないですから)

 

 

古鷹は悲しく微笑みながら佐渡を見つめておりその様子を叢雲は一人気付いていた

 

 

 






次回

わがまま

古鷹は自らの道小笠原に残ることを選んだ
それでこのお話は終わるはずだった
だが叢雲は古鷹の背中を再び押す
それは友人として仲間として相棒として
古鷹を大切に思い押してあげたいと思うから


イベントまで残り二週間位なのにバケツが底を付くと言う……(攻略で使いすぎた)

貯めていかないと……


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私の気持ち

「さてと今日のお仕事は終わりかな!

そろそろ寝ないとなぁ……」

 

 

時は流れ昼間古鷹はこの鎮守府に残ることを選び仕事を終え夜になっていた

古鷹は一人廊下を鼻歌を歌いながら歩いていると廊下の壁に一人の艦娘が立っていた

 

 

「……叢雲?どうしたの?こんな時間に…」

 

 

「………貴女を待ってたのよ古鷹」

 

 

古鷹を待っていた叢雲は壁から離れると古鷹に近付き立ち塞がる

 

 

「え?私を?

……叢雲らしくないね、こんな時間に?

あー!まさかエアさんの擬態!?

もう!からかうのは!!」

 

 

「………………いつまで隠すつもり?」

 

 

 

「……………何の事、叢雲?」

 

 

突然言われた叢雲の発言に頬を掻きながら焦っていると叢雲は古鷹の頭を小突く

 

 

「……嘘禁止、言ったわよね?」

 

 

「…………駄目だよ、叢雲

それ以上は駄目

私があの人を求めてはいけないの分かるでしょ?」

 

 

古鷹は叢雲の隣を歩いていこうとするが叢雲は行く手を遮る

 

 

「何で?貴女に資格がないから?

私達に救って貰ってばかりだから?」

 

 

「…………そうだよ、私は二人に救われてるんだよ

私なんかが求めちゃいけない

あの人の重荷に、更に大きな枷になるわけにはいかないの

だから駄目だよ」

 

 

古鷹が微笑みながら言うが叢雲は指を指しながら怒る

 

 

 

「……嘘つき、馬鹿古鷹」

 

 

「………何で、叢雲にはバレちゃうのかな?」

 

 

「あんたの相棒だからよ

私の相棒(バディ)は佐渡

そして貴女の相棒(バディ)でもあるのよ私は」

 

 

「……うん、さっきの事があってね

青葉の事があってね

…どんどん大きくなってるんだ

抑えきれないほどにどんどん……

気持ちが…想いが……どんどん…

こんなこと私は求めちゃいけないのに…

私なんかが求めちゃいけないのにどんどん大きくなってね……

ねぇ、私はどうすれば良いの?叢雲…」

 

 

 

叢雲に詰め寄られながら小刻みに古鷹は震えていると叢雲は頭を撫でる

 

 

「貴女の好きにすれば良いわ

どんなことになっても私は貴女の味方よ

安心しなさい、アイツが貴女の思いを蔑ろにする様な奴じゃないこと位分かるでしょ?

 

私と共にアイツの背中を見て共に歩いてきたんだから」

 

 

「………良いのかな、私なんかが求めて?」

 

 

「良いと思うわよ、と言うか古鷹何でそう言うところ勇気出せないのよ……

そう言うところよ貴女の悪いところ」

 

 

叢雲にバッサリと言われてしまい古鷹は乾いた笑いをすると頬を掻く

 

 

 

「あはは……ごめんね叢雲

いつも背中押してもらっちゃって」

 

 

「何を今更言ってるのよ

全く世話の掛かる娘

でも、良いわよそれでこそ古鷹なんだもん」

 

 

「ありがとう……行ってくるね!」

 

 

「えぇ、想いを打ち明けてきなさい

アイツなら屋上に居るわ

多分感傷にでも浸ってるんじゃない?」

 

 

叢雲に背中を押され走り出そうとしていた古鷹だが振り返ると叢雲に飛び込む

 

 

「叢雲ー!!」

 

 

「な!ちょっと何よ!?

突然!!」

 

 

「私は叢雲も大好きだよ!!

ありがとう!いつもいつも!私の事を守ってくれて

助けてくれてありがとう!!」

 

 

それだけを言うと古鷹は満面の笑みを浮かべながら走り去っていき叢雲は溜め息を付くと廊下を歩いていくと

 

 

「良いの?」

 

 

「居たの?エア」

 

 

「まぁね~

佐渡との話の帰りよ」

 

 

いつの間にかエアが立ち聞きをしていたらしく叢雲の頭を軽く叩く

 

 

「良いのよ、そうじゃないと張り合いがないもの」

 

 

「ふふ、貴女達の戦いを見るのも楽しいけどあんた敵をわざと作ってるのはどうなの?」

 

 

「馬鹿ね、誰にも平等にチャンスは訪れる

それを潰してまで勝っても面白くないわ

私は平行に戦いたいのよ

それに……古鷹は仕方ないんじゃないかしら?

あの娘ずっと遠慮してたしね」

 

 

叢雲が笑っている姿を見るとそれが本音であり本心から言ってることに気付いたエアは叢雲の後ろを歩いていく

 

 

「ねぇ、あんたがアイツに惚れたのいつなの?」

 

 

「ふーん、そこ聞くの?エア?」

 

 

「良いじゃない教えてよ?」

 

 

エアの質問に叢雲は振り返りながらニカッと笑う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初めて会ったときよ

アイツと会って共に戦場を駆け抜けて終わった頃には惚れてたわ」

 

 

 

 




次回

前に進め、己の心ままに


叢雲に背中を押され古鷹は佐渡の元へと向かっていく
絶望に落ちていた少女は前を向き想いを伝える


藤谷の親父が逮捕されて古鷹の罪が完全に海軍から消され一件落着ですねぇ


え?拷問官と藤谷達佐世保の連中?
………もう少しお待ちください(ニッコリ)


叢雲の過去編はまだ先になります!
最強の駆逐艦は絶望に抗う為に死神に力を求めるお話ですかね?
長門編で少しだけ見せましたけどガッツリ書きたいとも思ってます!




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冬空の下 時を経て貴方を

まず一言
古鷹提督の皆さんごめんなさい(土下座)





古鷹は叢雲に背中を押され屋上へ向かい扉の前に立つと大きく深呼吸をし目を閉じる

 

 

(…うん…大丈夫…!私だって!!)

 

 

そしてゆっくりと屋上の扉をゆっくりと開けると風が吹き込み髪を撫でる目の前に一人屋上から海を見ている背中が見える

いつも見てきた、ずっと追いかけて見馴れた背中

 

 

その人影は入ってきた古鷹に気付くと振り返る

 

 

「ん?古鷹か、どうしたこんな時間に?」

 

 

「……貴方と話がしたいんです

提督……いえ、佐渡さん」

 

 

佐渡は首を傾げているとゆっくりと古鷹はその隣に行き佐渡と共に海を見下ろす

 

 

「…綺麗ですね、夜の海は」

 

 

「……あぁ、夜の海は月明かりに照らされて綺麗なんだよな

時々見に来るんだよ」

 

 

「……考え事ですか?」

 

 

「……ま、そんなところだ」

 

 

二人は静かになった鎮守府の屋上で冬空の下記憶に浸っていた

 

 

「…一年か、君を助けて」

 

 

「……はい、貴方に助けられて一年が立ちましたね」

 

 

「あんなに死にたいと願い俺を嫌い信じてなかった艦娘が今では俺の隣で海を眺めているとは一年前は思っても無かったな!」

 

 

「はい…私も思ってもませんでした

全てに裏切られ、捨てられ、絶望していたあの時

貴方に救われ、手を取られ、希望を貰い、一年後にはそれを奪われた全て取り返して…………

そんな…そんなこと……思ってもいませんでした……本当に……本当に……」

 

 

様子が少し可笑しい古鷹を気に掛け振り向くと古鷹が少し涙目になっていることに気付き頭を撫でる

 

 

「……すまん遅くなって」

 

 

「遅くなんて…無いですよ……貴方は約束を守ってくれました

嬉しいです

本当に感謝してもしきれません」

 

 

「………なぁ、古鷹

本当に良いのか?うちで」

 

 

「…どうしてそんなこと言うんですか?」

 

 

「いやー……ほら古鷹の実力なら他の鎮守府でも活躍出来るしさ?」

 

 

「…そうですね、今の私ならどこにいっても平気だと思います

何せ貴方達二人に鍛えられましたからね

 

でもそうじゃないですよね、佐渡さんが私を飛ばそうとしている理由って?」

 

 

古鷹が微笑みながら佐渡に言うと乾いた笑いをしながら頬を掻く

 

 

「……聞いても笑わない?」

 

 

「内容によります!」

 

 

「じゃあ言わない~」

 

 

「ふふ、嘘ですよ

笑いません」

 

 

「本当に?」

 

 

「嘘は嫌いですから

笑いませんよ」

 

 

佐渡は周りに誰も居ないことを確認し屋上の扉に鍵を掛けると古鷹の所に戻ると深く息を吐き

古鷹から顔を反らす

 

 

「あー…えっとだな……その……な?」

 

 

 

「…珍しいですね?佐渡さんが歯切れわるいなんて?

早く教えてくださいよ!」

 

 

「まぁ、その、だな?

もう、古鷹にカッコつけられないなぁって思ってな?」

 

 

「……………………………………へ?」

 

 

「い、嫌さ?古鷹がここに来てから俺なりに何とかしてきたつもりなんだよ?

そのせいかは分からないけどさ

どうしても君が居ると少しはかっこつけたくなっちゃうんだよね……

俺も男何だなぁとは思うし馬鹿だとも思うよ?

ここを出ていって他の鎮守府を見て欲しいってのもあるけどそれよりも古鷹にずっとカッコ付けてきたせいかさこれ以上醜態を晒したくないなぁと思ってね…ハハハ」

 

 

その意外すぎる発言に古鷹は呆然としながら聞いていると佐渡は恥ずかしいのか少し顔を赤らめそっぽを向く

 

 

「わ、悪かったな!!個人的な理由で!!

でも別に良いんだよ?ここにいても!」

 

 

「……えっと、佐渡さん?

私がここに居ると自分達の事に巻き込みたくないとか……そう言うのもあるんですよね?」

 

 

「ま、まぁそれもある

だがまぁ、私情の方が大きいのも確かだ……

どうせーーーー」

 

 

と佐渡が言いかけた瞬間古鷹が佐渡の胸に飛び込み驚きの余り声を失う

 

 

「……えっと、古鷹?どうした?寒かったか?」

 

 

「……………馬鹿」

 

 

「うん?」

 

 

「馬鹿……馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「ぐぼぉ!?」

 

 

古鷹は抱き付いたまま佐渡の腹部を殴り突然の痛みに変な声を出しながら倒れそうになるのだが古鷹ががっしり掴んでおり逃げられない

 

 

「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿ぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!

古鷹さん辞めて!?

めっちゃ痛い!めっちゃ痛いからぁ!」

 

 

「馬鹿……馬鹿ぁ……」

 

 

次第に殴る力が弱くなっていくと共に古鷹は佐渡の胸の中で泣いており頭を優しく撫でる

 

 

「……すまん、変な理由で」

 

 

「本当……ですよ…

言っておきますよ、佐渡さん

貴方カッコいいですよ、ずっとずっと…変わりませんよ……どんな事になってもどんなに酷くなっても…

佐渡さんはカッコいいです……」

 

 

「そ、そうか?

でも俺は古鷹に何も……」

 

 

すると古鷹は顔を上げ睨み付けるように強い眼差しで佐渡を見上げると秘めていた想いをぶつける

 

 

「ふざけないでください!!貴方が私になにもしてない!?

意味が分かりません!

貴方は私を地獄から絶望から助けてくれた!!

死を願い!生きることを諦め!何もかもを捨てようとした私の手を取ってくれた!!

それだけじゃない!

貴方は私と約束してくれた!幸せにするって!!

現にその約束を守ってくれている

私は幸せです!皆と笑い合い!平和で!私が失っていたものを貴方は私にくれる!!

しかも何ですか!?私の罪を消すって!!

私の心を読んでるんですか!?

青葉と仲直り出来たのは貴方のお陰なんです!!

青葉を殺さなかったのは貴方の言葉なんです!!

ずっと……ずっとずっとずっと!!

貴方は私を助けてくれている!!私こそ!この鎮守府を出ていった方が良いと思いました!!

だって貴方にこれ以上迷惑はかけられない!!」

 

 

「古鷹!俺はお前の事を迷惑だなんて思わない!

むしろ居て欲しいとーーー」

 

 

「なら!!二度と私を他の鎮守に異動させようなんて思わないでください!しないでください!!

私はここに居たい!!皆と居たいの!!

私の居場所はここしかない!どこにもないの!!

世界中探して私の居場所は!私が居たい場所は……

貴方の側だけなんです!!」

 

 

古鷹はそこまで言うと泣き崩れてしまい佐渡も同じ様に座り込み古鷹の頭を撫でる

 

 

「……私は皆だけを……私は貴方だけを信じてます

この世界で信じられるのはそれだけです

貴方の為ならば私はこの命惜しくありません

捨てられた命を拾ってくれた貴方に差し上げます

これは私の意思です、揺るぎません」

 

 

「…そいつは駄目だ古鷹

お前の命はお前のだ

俺に、俺達に何かに使うな」

 

 

佐渡は古鷹の顔を上げさせると涙でぐしゃぐしゃになっている顔をハンカチで拭きながら微笑む

 

 

「……俺達は確かに君を拾った

でもな、俺が望むことは君達が命を捨てずこの戦争を終わらせ生きていって欲しいんだ

皆で手を取り合って楽しく、幸せに生きて欲しい

俺が出来ることはそれだけだから

だから命を差し出すとかは辞めてくれ

その命は俺達が拾い君に返しただけなんだから」

 

 

佐渡の言葉に古鷹は更に涙を流すと再び顔を胸に埋めると服を握り締める

 

 

「何ですか……じゃあ私は……貴方に何を返せば良いんですか……

貰ってばかりで……助けて貰ってばかりで……

貴方に何も返せてない……

悔しいよぉ……私は何も貴方に返せない自分が………」

 

 

「何言ってるんだ?

古鷹は充分俺達に返してくれてるよ」

 

 

「……ぇ?」

 

 

古鷹は顔を上げると微笑みながら佐渡は頭を撫でる

 

 

「いつも俺達の方が君に頼りっきりだ

家事に戦闘に料理に皆の事

今の今まで古鷹が居なかったら上手く行かなかった

古鷹が居てくれたからこそ上手く行ってるんだよ?

それに俺は古鷹が生きてくれているだけでも俺達がやってきたことに間違いは無かったと理解させてくれる

 

だから何も古鷹は特段何もしなくて良いんだよ?

 

 

生きてくれてありがとう

俺の言葉を信じてくれてありがとう

俺に付いてきてくれてありがとう

古鷹」

 

 

佐渡がニカッと笑うと古鷹は更に泣き出しながら服を強く強く握り締める

 

 

「どこが……ですか…貴方は世界一カッコいいですよ…

私の英雄……佐渡さん…」

 

 

「はは、そいつは良かったよ」

 

 

しばらく古鷹は佐渡の胸で泣き

収まった頃には外も少しずつ明るくなってきていた

二人は水平線を眺めていると古鷹が不意に佐渡へ声をかける

 

 

「……佐渡さん」

 

 

「何だ?」

 

 

「手を……繋いでも良いですか?」

 

 

「……おう」

 

 

佐渡が手を出すと古鷹はゆっくりとその手を握り強く強く握り締める

 

 

「……この手が私を死から救ってくれた

貴方の言葉が私を絶望から救ってくれた

貴方の全てが私を救ってくれた

 

 

…この手を離さないでくれますか?」

 

 

「おう、約束だからな

絶体に離さないよ」

 

 

古鷹と手を繋ぎながら一年前を思い出す

あの時とは違い強く自らの手を掴んでくれているこの手を見ると佐渡は自分の選択が間違いでは無かったと確信する

 

 

「……佐渡さん、私は貴方が好きです」

 

 

「おう………ってはあ!?」

 

 

いきなりの告白に佐渡は驚きながら声荒げると古鷹の顔が真っ赤に染まっていることが分かるだが古鷹は微笑みながらその言葉を続ける

 

 

「貴方が好きです

優しくて強くて、料理が上手くて

誰よりも私達の事を考えてくれている貴方が大好きです

私を救ってくれて過去と向き合わせてくれて

ありがとうございます

貴方を世界一愛してますよ、佐渡さん」

 

 

「え、あ、えっと、ちょっと待ってな?

えっと?」

 

 

流石に突然の告白に驚き焦っていると古鷹が再び佐渡の胸に飛び込むと背中に手を回しながら抱き締める

 

 

「返事は良いんです、いつか……いつか聞かせてください

今は戦争中、話す気は無かったんですけど

どうしても抑えられませんでしたごめんなさい

私はいつまでも待ってます

断ってくれても構いません

でも受けてくれたら嬉しいです」

 

 

「古鷹………」

 

 

すると古鷹は佐渡から離れ少し強く押しながら顔を隠す

 

 

「じゃ、じゃあ!私はもう寝ますね!!

お休みなさい!佐渡さん!!」

 

 

「お、おう!お休み!!」

 

 

少し早歩きをしながら古鷹は歩いていくと屋上の扉を開けると一度振り返り佐渡へ叫ぶ

 

 

「わ、私!待ってますからね!佐渡さん!!

この想いだけは!誰にも負けるつもりはありませんから!!」

 

 

「へぁ!?

お、おう!!」

 

 

その言葉と共に古鷹は強く扉を閉めると早足で屋上からの階段を下りていき残された佐渡は手すりに寄りかかるとその場に座り込む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………おいおい……告白何て初めて…受けたぞ…おい

…どうすりゃ良いんだ……クソ、流石に分からねぇよ……」

 

 

座り込んでいた佐渡の顔は真っ赤に染まっており明日から古鷹とまともに顔を合わせられるか不安に駆られていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古鷹は一人走り周りに誰も居ないことを確認すると顔を真っ赤にしながらその場に座り込んでしまいながら顔を手でパタパタと冷やす

(言っちゃった言っちゃった言っちゃった言っちゃった言っちゃった言っちゃった言っちゃったぁぁぁぁぁ!!

提督に言っちゃったよぉ!!

私!明日から提督の顔見れるかなぁ!?

 

うぅ……恥ずかしいし顔が熱いよぉ!!

後悔は無いけど……ううぅぅぅぅ!!)

 

 

お互い明日からの鎮守府生活に不安を抱えながらも朝は来る

 

 

 

 

 




次回

佐世保鎮守府

佐渡へ想いを告げ古鷹は決意する
それ青葉以外の者達との決着をつけること
佐渡と叢雲と青葉を引き連れ自らの過去に
そして囚われている他の者達を助けようとする
それは古鷹が佐渡にしてもらったことを自分がするために


いやー、古鷹さんの可愛さと健気さを書けなかった気しかしないですがごめんなさい!駄文でごめんなさい!

古鷹編の重要人物、藤谷淳一との対峙です
古鷹は何を思い何を告げるのか…
また彼女は暴走するのか……
お楽しみに!




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佐世保鎮守府へ

「古鷹さん、本当に来るんですか!?」

 

 

「うん、青葉案内よろしくね?」

 

 

 

古鷹と青葉が仲直りし佐渡達はある場所に向かっていた

それは古鷹にとっては因縁の場所でありもっとも行きたくない場所

 

 

「古鷹、無理してないか?」

 

 

「そうよ、別にここに来なくても貴女は……」

 

 

「良いの!私が行きたいから何だから気にしないで!

それに……向き合いたいの

あの人に」

 

 

叢雲と佐渡が心配する中四人は歩いていくのだが佐渡と古鷹は顔を合わせると突然お互い顔を反らしてしまう

 

 

「……ほーう?古鷹さーん?何かありましたねぇ!?」

 

 

「え!?な、何が!?」

 

 

「佐渡……あんた古鷹に何したの!」

 

 

「ま、待て!俺は何もしてない!」

 

 

その様子を怪しんだ青葉と叢雲に茶化されながら四人が向かっていくと大きな門が見えてきておりその前には二人の憲兵が厳重に警備していた

 

 

「そこで止まれ!」

 

 

「お前達!この先は立ち入り……っと青葉さん

お疲れ様です!」

 

 

二人の憲兵は佐渡達を見て警戒するが青葉を見た瞬間に敬礼し青葉も敬礼を返す

 

 

「お疲れ様です、憲兵さん」

 

 

「あの、青葉さんこちらは?」

 

 

「あぁ、えっとこちら小笠原鎮守府提督 佐渡 満さん

こっちが小笠原鎮守府所属 『雷撃姫』叢雲さん

そして小笠原鎮守府所属 古鷹さんです」

 

 

「「これは!失礼致しました!!」」

 

 

憲兵は急いで四人の行く手を開けるのだが

 

 

「……この先はつい先日まで大本営の監査が入っておりました故にまだ憲兵が居ますが貴殿方はお気に為さらずに」

 

 

「佐渡提督、お気をつけください

この先は貴方に怒りや妬みと言う感情を持っている艦娘も居ます

お気をつけを」

 

 

「ご忠告ありがとうございます」

 

 

「大丈夫よ、なんかあったら私がやるわ」

 

 

叢雲は微笑みながら言うとその横を四人は通ろうとするのだが何故か二人の憲兵が叢雲の行く手を塞ぐ

 

 

「待ってください叢雲さん」

 

 

「申し訳ありません叢雲さん」

 

 

「……何よ、私だけ駄目なのかしら?」

 

 

それに驚いた佐渡達は構えるのだが

 

 

「「握手してください!!」」

 

 

「「「「……はい?」」」」

 

 

いきなりの事に驚いた四人は唖然としていると二人の憲兵が土下座をしながら頼み込んでくる

 

 

「憲兵の身でありながらこんなことを頼むのは駄目だと分かっているんです!!

ですがお願いします!!」

 

 

「俺達!貴女のファン何です!!

古鷹さんもですがあの大演習での戦いお見事でした!!

駆逐艦でありながらあの戦艦長門に一歩も引かずに戦う姿は我々憲兵にも心打たれる物がありました!!

御願いします!どうかどうか握手をしていただきたく!!」

 

 

「ちょ、ちょっと辞めてよ!

握手するから!お願いだからそう言うのは辞めて!!」 

 

 

突然の事に叢雲は驚き慌てて二人の土下座を辞めさせようとしていると佐渡達は顔を見合わせ笑う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にしてもお前のファンだとはな」

 

 

「流石に驚いたわ……私特になにもしてないのに……」

 

 

先程絡まれていた憲兵達と握手やら写真やらを撮られ若干叢雲はぐったりとしながら目的地に向かっていた

 

 

「ま、そんなこんなしてたら着いたみたいだな」

 

 

「久しぶりにここに来ましたね」

 

 

佐渡達はそう言うと目の前にある鎮守府を見上げる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここが、古鷹の『元所属していた鎮守府』ね」

 

 

佐世保鎮守府

現藤谷淳一が指揮する鎮守府にして元古鷹が所属していた鎮守府

鎮守府内にはまだ幾人かの憲兵と事情聴取を受けている艦娘がおり古鷹は一人歩き始める

 

 

「古鷹……」

 

 

「大丈夫ですよ、提督

待っててください決着をつけてきますね」

 

 

古鷹は微笑みながら歩いていくとその後ろを青葉が付いていこうとすると佐渡へお辞儀をする

そして古鷹の後ろを付いていく

 

 

「……大丈夫…なのか古鷹」

 

 

「ばーか、あんたが信じなくてどうするのよ

信じましょ古鷹を」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

青葉と古鷹はゆっくりとした足取りで佐世保鎮守府を歩いていく

途中何人かとすれ違うがそのすれ違う様に全員が古鷹に振り返るが青葉が睨みを効かせるとそっぽを向いてしまう

 

 

「青葉、大丈夫だから」

 

 

「駄目です!もし古鷹さんに何かあったら困るんですから!!」

 

 

「もう……相変わらず心配性なんだから……」

 

 

古鷹と青葉が歩いていると後ろから誰か二人が走ってきておりそれに気付くと振り返る

 

「古鷹!!」

 

 

「古鷹さん!!」

 

 

「……久しぶりだね、加古、衣笠」

 

 

走ってきたのは衣笠と加古であった

他の艦娘から話を聞いたからであるか分からないが汗を掻きながら全速力で走ってきた様だった

 

 

「やっぱり……古鷹だよな!戻ってーー」

 

 

「加古さんそれ以上古鷹さんに近寄らないでください!!」

 

 

加古が古鷹に近寄ろうとするがそれを青葉が睨み付けながら阻止すると衣笠が詰め寄ろうとする

 

 

「な、何でよ青葉!?

だって古鷹さんは!!」

 

 

「うん、ごめんね

後でまた話はするから待っててね二人とも」

 

 

古鷹は先に歩きだそうとするとその後ろを加古が着いていこうとする

 

 

「待ってくれ古鷹ーーー」

 

 

「近寄るな、古鷹さんには手を出させない」

 

 

青葉が先程より強く睨み付けるとそれに加古は萎縮してしまい青葉はゆっくりと下がり古鷹の後ろを付いていく

 

 

 

「こら、青葉

駄目だよ?二人に酷いことしちゃ」

 

 

「で、でも古鷹さんを守らないと……」

 

 

「だからってやりすぎは駄目だよ?」

 

 

「……はーい…」

 

 

古鷹に怒られた青葉がシュンとしていると頭を優しく撫でる

 

 

「でも、ありがとう

二人から守ってくれて」

 

 

「!…はい!青葉にお任せです!」

 

 

撫でられた青葉は笑顔を取り戻し再び二人は藤谷の居る執務室に向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久しぶりの鎮守府

ずっと私が生活してきた場所

そして、皆に裏切られ来れなくなった場所

今までなら来れなかった

行こうともしなかった

行けば全てを壊しそうだったから

 

 

 

 

 

 

 

 

今も私の中に居る『ソレ』は鳴動し訴えかける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『壊セ裏切ラレタ物全テ』と

 

 

 

 

 

 

 

 

それでも今は大丈夫

佐渡さんが、叢雲が、皆が私の背中を押してくれる

だから私は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古鷹と青葉は藤谷が居る執務室に着くと中から女の子の声が二つと藤谷の声が聞こえると古鷹の心臓は高鳴るが深く息を吐いて落ち着く

 

 

 

 

 

 

 

(大丈夫……私には…二人が付いてる

皆が…青葉が居る

佐渡さん………貴方に貰った勇気を使わせてもらいます)

 

 

 

 

 

 

 

 

落ち着くと古鷹はゆっくりと執務室の扉を叩く

連絡は取っていない

だからこそ誰がノックしているから中の三人は分からない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あぁ!すまん少し待ってくれ

二人ともちょっと待っててな

……どうぞ』

 

 

「失礼します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古鷹は扉を開けると一年前と見馴れた光景

小笠原鎮守府より大きな執務室

そして真ん中の椅子に座りながら不知火と五月雨に板挟みにされ頭を抱えている藤谷

 

 

「あぁ、すまないまた……せ…………」

 

 

執務室に入ってきた人物を見るなり藤谷は持っていた珈琲を執務室の机に落とす

白い資料に黒く染み渡って行くが藤谷はそんなことより入ってきた人物に釘付けになる

 

 

 

「司令!何をしているんですか!?」

 

 

「そうですよ!提督一体どうし………………ぇ………」

 

 

入ってきた人物を見るや否や五月雨も持っていた資料を床にばら蒔く

口を押さえ驚いていると後ろに後退りをする

 

 

「突然、申し訳ありません藤谷提督

下手に連絡をすると逃げるかもしれないと思いましたのでご連絡無しで来させて頂きました

お久しぶりです、五月雨さん不知火さん」

 

 

その声を聞いた瞬間不知火も持っていたタオルを落とし勢いよく振り返ると古鷹に視線が釘付けになりながら驚く

 

 

「……貴女…………どうして……」

 

 

三人が驚いている中青葉は睨みを効かせていると古鷹が微笑む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「決着を付けに来ました

藤谷さん」

 

 

 

 

終わらせよう

私の過去に

貴方の過去に

縛り付けているそれを壊しに来ましたよ

貴方の為に

私の為に

 

 

 

貴方を助けに来ました

藤谷さん

今、恩を返します

 

 

 

 

 






次回

進むべき道を貴方に


古鷹は立ち向かう過去に自らを壊した者達に
誰にも手を取られず絶望し失った
それでも古鷹の手を取った者達が居た
その者たちに胸を張って行けるように
藤谷に立ち向かう


古鷹編実質ラストです!
でもあれですよ?藤谷を殺すとかは無いですからね?
そして、エアが何故彼を生かし追い詰めなかったかも分かります




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晴れやかなる明日へ

佐世保鎮守府では一人の犠牲者が出ていた

その一人はその鎮守府では居なくてはいけない一人だった

だからこそ居なくなった鎮守府では活気が減り

信頼と信用も無くなっていた

それはその一人が『繋ぎ』の役割を成していた

 

 

自分達がその一人を裏切ったとしても

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「古……………鷹………」

 

 

突然現れたその裏切り捨てた艦娘

古鷹が藤谷達の鎮守府に現れた

それに驚き藤谷は立ち上がると椅子が倒れ同時に五月雨が腰を抜かす

 

 

「……古鷹さん………夢…?」

 

 

「もう、五月雨さん

資料は落としちゃダメですよ?」

 

 

古鷹は五月雨に近付くと呆然としている資料を拾うと手渡すと微笑み頭を撫で手を差し出す

 

 

「大丈夫ですか五月雨さん?」

 

 

「は、はい……」

 

 

「不知火さん、どうかされましたか?

と言うより資料!提督!何してるんですか!?」

 

 

微笑みながらテキパキとした動きで汚れている机を綺麗にし資料を片付けていくと再び藤谷の前に立つ

 

 

「全く、皆さん

確かに何も言わずに来ましたが驚きすぎです

もう少し気を付けてください

特に提督!貴方は前からですがーーーー」

 

 

何故か古鷹は藤谷に説教を始めておりその姿を見た青葉は完全に警戒を解いてしまい説教を始めた古鷹の肩を叩く

 

 

「何!青葉!今説教中だよ!」

 

 

「いや、その古鷹さん?

話をしに来たんじゃないですか?」

 

 

「…………あっ!ごめん青葉ありがとう!

お、おほん!」

 

 

古鷹は昔の癖を出してしまうがそんな姿を見て藤谷達は呆然としていた

 

 

「ごめんなさい、二人とも

少し提督とお話をしたいのでよろしいですか?」

 

 

「は、はい!古鷹さん!」

 

 

五月雨は古鷹に言われた通り出ていこうとするのだが

 

 

「……出来ません、私は…」

 

 

「いや、いい不知火出てくれないか?」

 

 

「ですが!」

 

 

「良いんだ、すまない」

 

 

 

不知火が反抗したのだがすぐに藤谷が命令を出し不知火は渋々青葉と共に三人は執務室を出ていく

しばらくの沈黙が続く中古鷹は微笑みながら藤谷に声をかける

 

 

「お久しぶりですね、提督」

 

 

「……あぁ、一年振りか

………なぁ古鷹、君は」

 

 

「ここには戻りませんよ

私には私の居場所があります」

 

 

「…あの男と艦娘か?」  

 

 

「はい、私を助けてくれた二人です」

 

 

藤谷は拳を握り締めると悔しそうに歯を食い縛る

 

 

「…なぁあの二人はそんなになのか?

君をあの鎮守府に縛り付けて…」

 

 

「……実は私小笠原鎮守府を追い出されそうになったんです」

 

 

「…………え、何でだ!?」

 

 

その衝撃的な事実に立ち上がり驚くと古鷹は執務室の窓から空を見ながら話を続ける

 

 

「……あの二人は私が過去に向き合い前に向け歩きだしたなら私を他の鎮守府に飛ばす予定だったらしいんです

元々、私はこの鎮守府所属で無理矢理連れてきたんだからって言う理由で」

 

 

「だったら!!」

 

 

「それでも私はここに戻りませんし、他の鎮守府に行くことはありません

それに私があそこを離れることはありません」

 

 

空を見ていると一羽の鳥が木々から飛び上がりそれを見ると古鷹は目を瞑りながら胸を押さえる

 

 

「…私はあの人達に救われました

貴方達に見捨てられ裏切られ

絶望し、全てを諦めていた私にあの二人は希望をくれた

生きていて欲しいと約束してくれた

それだけでも嬉しいのにあの二人は最後まで私の事を大切にしてくれました

その恩を返したい、そして共に生きていきたい

そう思うんです

 

…初めてでした、私が生きてきてあんなに優しくされ大切にし思ってくれる人達に出会ったのは

だから私はあの二人を裏切らない

こんな罪を着せられ拾っても特がない重巡を二人は拾ってくれた

それはこれから先も変わらない真実

私は小笠原で生きていきます」

 

 

古鷹の思いを聞いていた藤谷であったが悔しさなのか怒りなのか分からないが拳を机に叩き付ける

 

 

「嘘だ!あんな奴等が君を手放す訳がない!!

あんな!あんな野蛮な奴等が!!」

 

 

「……どうしてですか?」

 

 

「だってそうだろ!?あいつらは俺から君を奪い取り勝手に育て!その結果君は実力を得た!!

それだけには飽きたらず他の鎮守府からも艦娘を奪い育て上げている!!

そして、大演習会でその実力を見せ付け自慢している!!

君は騙されているんだ!!」

 

 

藤谷は入り交じった感情に押し潰されそうになるが静かに古鷹が告げる

 

 

「でしたら提督、お聞きします」

 

 

「……何だ?」

 

 

「貴方は全てを捨てることが出来ますか?」

 

 

「……は?どういうことだ?」

 

 

真っ直ぐ藤谷を捉えながら古鷹は話を続ける

それは自らが経験し小笠原で見てきた物

 

 

「小笠原鎮守府の艦娘は皆問題を抱えています

 

一人は全てに裏切られ捨てられた者

 

一人は友を助けるため海軍に楯突いた者

 

一人は自分の意思とは関係なく周りを不幸にする者

 

一人は満足に食事も出来ずに苦しむ者

 

一人は海軍の闇に触れ物として扱われた物

 

一人は怨念に囚われている者

 

一人は自らの罪を理解できず戦う事しか出来なかった者

 

 

貴方はこの人達を救えますか?

助けることが出来ますか?

手を……差し出すことが出来ますか?」

 

 

「……出来るさ」

 

 

「では、どうして私を助けてくれなかったんですか?」

 

 

その言葉にハッと思い出すと古鷹を見上げる

古鷹は怒ってもおらず微笑みながら続ける

 

 

「あの二人は他の誰とも違います

 

命を捨てようとした者に手を差し出し持っている物全てを犠牲にし助けだしました

 

友を助けた理由を見つけ出しそれを海軍に証拠を差し出し罪を消しました

 

自らが不幸になっても構わないと思いその娘に拒絶されても近付き不幸は無いと証明しました

 

食事が出来ない者には食べれる様になるまで奮闘し何回も挑戦を繰り返し共に寄り添いました

 

海軍の闇に触れた娘には最後まで共に居続け闇から引っ張り上げました

 

自らの罪を理解できなった娘には残酷ですが真実を伝え戦うその手を取り戦場から無理矢理下げさせました

 

そして、皆が楽しくそして疲れた心に安らぎを与えるためにあの二人は奔走しています

様々な人達から手放された手をあの二人は一人一人しっかりと手を取り手放さない

 

 

それが貴方に出来ますか?

一人ずつ、艦娘の為にやっていくことが貴方に」

 

 

「そ、それは………」

 

 

古鷹の言葉に藤谷は声を失う

出来ないと分かっていた

自分にはそんなこと出来る訳が無い

 

 

「あの二人はそれをやってみせています

すぐ側で私は見てきました

二人が苦悩しながら毎日頑張ってる姿を

私はその二人の助けになりたいんです」

 

 

「………………そうか」

 

 

「でも貴方が私を捨てたことは間違ってませんよ

多分私がその立場でも同じことをしていたかも知れません」

 

 

「え!?」

 

 

その言葉に驚くと古鷹は訳を話していく

 

 

「普通は出来ませんよ、あの二人みたいに覚悟を持って

貴方は良くやっていました

あの状況で私を捨てたの間違いでは無いと思います

それで皆が鎮守府が救われるなら私は本望ですよ」

 

 

「古鷹…………」

 

 

「だから、もう私の事で悩まないでください

私は大丈夫です」

 

 

 

 

古鷹に言われた優しい言葉と共に藤谷は崩れ落ち再び椅子に座ると頭を抱えながら声を押し殺して泣き始める

 

 

「……違う…俺が悪かったんだ…ごめん…ごめんな古鷹……俺は取り返しのつかない事をしたんだ…」

 

 

「良いんですよ、それが皆の為なら仕方ないことです」

 

 

「違う!!俺達は!!君が必要だったんだ!!

居なくなって良くわかった!!俺達には君が必要なんだ!!

だから頼むよ!古鷹!!戻ってきてくれ!!

 

何でもするから…この通り頼む……」

 

 

藤谷は立ち上がると古鷹の目の前で床を頭を押し付けながら土下座をする

古鷹はその頭を優しく撫でる

 

 

「……ごめんなさい、私は今守るべき物があるんです

あの二人は私が見てないと自分を省みずやり過ぎてしまうんです

だから私はここには戻れません

ごめんなさい、藤谷さん」

 

 

「…………ごめん、古鷹…俺達が君を捨てなければ

あの時親父何かの尋問に耐えていれば…

自分を優先させなければ……君は……」

 

 

「…そうですね、でもそれがあったからこそ今の私がありあの二人に出会えたんです

もう、思い悩まないでください

私は大丈夫です

だからお互い前を向いて歩いていきましょう?」

 

 

藤谷は涙を流しているが古鷹がその涙を拭き取りながら微笑むとしばらくの間藤谷は泣き続ける

 

 

「…俺は情けないな

いつまでも君に頼り続け土下座までして頼み込んでフラれるなんてな…

すまない、私達が君にしたことは許されない事だ

……俺を好きにしてほしい

いつか君に会えた時そうしようと思っていたんだ

煮るなり焼くなり好きにしてくれ 

それと佐渡提督にも今度会えたら謝ろう」

 

 

「はい、それが良いと思いますよ!

……でしたら鎮守府の皆をお願いします

そして、二度と私見たいな艦娘を作らないでください

私はあの二人に助けられました

でも私の様に前を向けるとは限りません

だからお願いします」

 

 

古鷹が頭を下げようとすると藤谷はそれを慌てて止め再び土下座をする   

 

 

「…約束しよう、この命に掛けて君の様に艦娘は捨てない

二度と…

約束するもし俺が破ったなら殺してくれても構わない

ここに誓う!!」

 

 

「も、もう!藤谷さん土下座ばかりしないでくださいよ!!」

 

 

藤谷の土下座を何とか古鷹は止めようとするのだが無理矢理にでもしており止められずに困惑していた

 

 

 

 

 

 




次回

過去に囚われた者達


藤谷と向き直り古鷹は執務室を後にする
そして佐世保鎮守府に残る古鷹が原因で前に進めない艦娘達と話を付ける為に歩き始める


書ききれなかったごめんなさい()
次回で一応古鷹編ラストになります!
ちょっと二話位エピローグがありますがそれはすぐに上げますね!
え?誰か忘れてないかって?誰ですかねぇ?



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晴れやかなる明日へ 二 

「では、失礼します」

 

古鷹は執務室を出ると深く溜め息を付くと胸を押さえる

やはり藤谷との対峙だけは覚悟してたが辛いものがあった

それでも古鷹の中にあるものは少しずつ小さくなっていた

(…これを完全に消さないと……)

 

 

そして廊下を見ると青葉が待っており古鷹が出てくるのを確認すると駆け寄ってくる

 

 

「古鷹さん!大丈夫ですか!?」

 

 

「うん、大丈夫だよ青葉

他の人達はどこにいるか分かる?」

 

 

「えっとですね、衣笠と加古は分かりませんが木曾さんは多分自室

日向さんは演習場見たいです!」

 

 

「そっか……じゃあまずは木曾さんからーーーー」

 

 

「古鷹………さ……ん?」

 

 

不意に後ろから声が聞こえ振り返ると一人の少女が書類を片手に立ち尽くしていた

 

 

「……久しぶりだね、浜風さん」

 

 

「……嘘…どうして……古鷹さん……」

 

 

古鷹の姿を見て呆然としていたが浜風は書類を投げ捨てると全速力で走りだし古鷹に抱き付くと顔を埋める

 

 

「古鷹さん!古鷹さん!!

無事だったんですね!!大丈夫何ですよね!?

古鷹さんですよね!!この鎮守府に居た古鷹さんなんですよね!?」

 

 

「うん、そうだよ

浜風さんも傷は大丈夫なの?」

 

 

「私の傷なんてものはどうでも良いんです!

ごめんなさいごめんなさい!!私達があの時奇襲を止められなかったから古鷹さんを………」

 

 

浜風は古鷹に顔を埋めていると古鷹は優しく浜風の頭を撫でる

 

 

「違うよ、あんな奇襲誰にも分からないし浜風さんは良くやったんだよ?

それよりも無事で良かった」

 

 

「う………うぅ……ごめんなさい…ごめんなさい…!古鷹さん!貴女に鎮守府を守って貰ったのに…私は何も出来なかった…!ごめんなさい!提督を止められなくて…貴女は無実なのに…!

ごめんなさい……ごめんなさい!!」

 

 

古鷹に助けられたのは浜風も同じである

あの時奇襲を止められずに鎮守府自体を破壊されその罪を古鷹に着せられていた為浜風には何の罪を着せられていなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあやっぱり皆」

 

 

「……はい、提督に対しかなり不信感が強いみたいなんです

その…古鷹さんを見捨てた事が原因で……

不知火さんと五月雨さんも頑張って何とかしてますが……」

 

 

鎮守府自体が可笑しいのは入ったときに感じていたがかなり深刻な問題であることを理解すると古鷹は立ち上がる

 

 

「良し!じゃあ私に任せて!

何とかして見せるね!!」

 

 

「で、でも!古鷹さんには関係ないですよ!!

だってこれは私達の……」

 

 

「だぁめ!一応これは私が出来なかった事なんだから!私がやらないといけないの!

それよりも浜風さんは他の艦娘達をお願いね?

……私は恐らくその元凶になってる人達を何とかするから」

 

 

「古鷹さん……ごめんなさい…いつも私達は貴女に頼ってばかりで……」

 

 

「良いの!私がやりたいからやってるんだから!

それと二人に日向さんと木曾さんを見つけてほしいんだ

多分二人も元凶何でしょ?」

 

 

古鷹が言うと青葉も浜風は顔を反らす

その意味を理解しているが二人の頭を撫でる

 

 

「お願い、二人とも

私はこの鎮守府を助けたい

確かに皆は私を捨てたけど私はそうはなりたくないから!」

 

 

「「古鷹さん……」」

 

 

古鷹の言葉に涙を溢しかける青葉は頬を叩き浜風は涙を拭い立ち上がる

 

 

「分かりました!青葉にお任せです!!」

 

 

「私の誇りとプライドにかけて見つけ出し説得して見せます!!!」

 

 

「そのいきだよ二人とも!

じゃあお願いね?」

 

 

「「はい!!」」

 

 

そう言うと二人は鎮守府の廊下を走りだし急いで二人を探しだそうとする

静かになった廊下で古鷹は深く息を吐くと叫ぶ

 

 

「居るんでしょ!衣笠!加古!

出てきなよ!!」

 

 

その声と共に古鷹は廊下の角を睨むとゆっくりと二人が姿を現す

 

 

「………古鷹…」

 

 

「…久しぶり、元気にはしてた見たいだけど

大分クマが酷いね加古」

 

 

「あ、あの古鷹さん……その…」

 

 

「分かってるよ、寝れてないんでしょ加古」

 

 

加古は眠そうな顔をしながら古鷹に向き合い衣笠は加古の様子を気遣っている

 

 

「ねぇ!何であの時あんな酷いことを言ったの!?

私達仲間だよね!友達だよね!加古に取っては古鷹さんはたった一人の姉何だよ!

それなのに青葉も古鷹さんも酷いよ!!」

 

 

「……そうだね、あの時私は二人に酷いことを言ったね

ごめん、そうでもしないと私は二人を殺しそうになってたから」

 

 

「何で!私達何かした!?

私達は提督を助けるために『嘘の証言』をしたんだよ!

古鷹さんは殺されないって提督が!!」

 

 

「そんなわけないよ、私はね処刑されかけたんだよ」

 

 

「でも、今目の前で生きてるじゃん!

それは!!」

 

 

「佐渡提督と叢雲に助けられてるから私は生きてるんだよ

処刑される寸前あの二人は私を助けてくれたの」

 

 

「嘘だ!あの二人は古鷹さんを奪ったって!!」

 

 

「……衣笠、もう辞めよう」

 

 

今まで黙って聞いていた加古が口を開くと衣笠から離れ古鷹に近づく

 

 

「何で!だって私達は!!」

 

 

「古鷹を捨てたんだよ、私達は」

 

 

「違う!!私達は!」

 

 

「衣笠……分かるだろあんな証言したら古鷹がどうなるか位

今こうして、古鷹が来てくれたのは私達の為なんだよ

……苦しくて嫌なのに来てくれたのはあの二人がそうしてくれたんだよ」

 

 

「で、でも加古!!」

 

 

「衣笠!いい加減にしろよ!!」

 

 

加古は未だに喚いている衣笠を殴ると眠気を我慢しながら古鷹に背を向け衣笠に怒る

 

 

「私達は!仲間を!大切な人を捨てたんだ!

あの時の言葉で分かるだろ!!私達を忘れたいんだよ古鷹は!

そりゃそうだよ!信じてきて!命を掛けて助けてくれたのに私達は古鷹を犯人に仕立て上げた!!

助けてくれなかった提督を尋問から救うために!私達は命の恩人を捨てたんだよ!!

いい加減目を覚ませよ!!」

 

 

「…うぅ…だって……だって………そうしないと……」

 

 

古鷹は驚いていた

何せ加古と衣笠はずっと現実逃避して自分の罪を理解出来ずに居るものだと思っていたのだから

だが、加古はあの時古鷹に言われた言葉を理解し目を覚ました

自分が何をしたのかを

自分達が犯した大罪を

 

 

「古鷹……私は古鷹を捨てた

それは提督の為であり私自身の為だったんだ

古鷹が捕まった後

提督もどこかに連れていかれて

私と衣笠、青葉、木曾、日向も大本営に連れていかれ尋問を受けてたんだ

毎日毎日同じ質問と同じ事の繰り返しをさせられていた

それが、辛かったんだ

逃げたかったんだ

でもな、尋問官が言ってきたんだ

『今、古鷹に関する虚偽でも証言をすれば提督を解放し君達の罪を無くそう』って

 

……あたしはそれに乗ってしまった

自分達の為に……提督の為と思い込ませて……

私達は悪くないって……思い込んで……

古鷹は命がけで私をあの化け物から助けてくれたのに……

私達を守ってくれたのに……ごめん…ごめん……

私達は…助ける相手を……裏切る相手を間違えたんだ……

ごめん…ごめんなさい……許されるとは思ってない……殺したいなら殺してくれても構わない…

私達は古鷹に救われたんだ…命を…それならその命を古鷹に奪われても構わない……」

 

 

拳を握り締めながら古鷹に向き合うことが出来ない加古に対し古鷹は無理矢理こちらを振り向かせ頬を思い切り叩く

 

 

「…………馬鹿、遅いよ」

 

 

「……ごめん、古鷹……私は古鷹の妹なのに……裏切ってごめん……だから古鷹に殺されたーーー」

 

 

加古が再び言おうとした瞬間古鷹はもう一度頬を叩くと胸ぐらを掴み睨み付ける

 

 

「……加古、それは違うよ

加古はまた私に罪を着せるつもり?」

 

 

「ち、違う!古鷹が気の済むようにしてほしいんだ!!

私達は取り返しのつかないことをしたんだ!だから!!」

 

 

「だから!私が貴女達を殺せば済むと思ってるの!?

そんな簡単に許すわけ無いでしょ!

辛かったんだよ!加古が尋問を受けている間!私は拷問も受けていたんだよ!

毎日毎日毎日!自白を強要され!まともに食事もあたえられずに!苦しみ!絶望してたんだよ!皆が助けてくれるって最後まで信じてたのに!

皆は私を裏切った!!

その意味が分かる!?加古!貴女一人の命で償える程安いものじゃないんだよ!!」

 

 

古鷹の怒りに触れてしまった加古は我慢していた涙を流しだし古鷹は加古を離すと崩れるように倒れてしまう

 

 

「じ、じゃあ!私達は!何をして償えば良いんだよ!!

死んでも!殺されても駄目ならどうすれば良いんだよ!

私は……私はもう古鷹に迷惑を掛けたくないんだよ!!

古鷹の重荷に成りたくないんだ!!

散々迷惑を掛けて!苦しませて!私は……私は!……どうすれば良いんだ……よ……古鷹ぁ……」

 

 

崩れた加古に見下ろしていると古鷹は座り込み加古の頭を撫でる

 

 

「じゃあ、私のお願いを聞いてくれない?」

 

 

「……!聞く!何でも聞く!だから!!」

 

 

「…皆をお願い

提督を、不知火さんを、五月雨さんを、木曾さんを、日向さんを、浜風さんを、青葉を、衣笠を助けてあげて」

 

 

「…………ぇ?」

 

 

泣き崩れている加古に微笑みかけながら古鷹は優しく頭を撫でる

 

 

「私ね、あの二人に付いていくんだ

ここには戻らないし戻れない

私、今やりたいことを見付けたの

それを今やっていきたいんだ

二人に出会って助けられてここにまた来れて皆に向き合うことが出来たの

だからここの事を加古に任せたいんだ」

 

 

「古………鷹……」

 

 

「私にいっぱい迷惑かけて

私を見捨てたんだよこれぐらいはしてほしいな

今、鎮守府は酷い状態なんでしょ?

だからこれが加古に与える罰です

私はもう側に居れないから加古がこの鎮守府を支えてあげて

私の『妹』なんだから出来るよね?」

 

 

そっと古鷹は加古に手を差し出す

古鷹の優しさに再び触れた加古の涙は止まり手を取り立ち上がると涙を拭う

 

 

「…分かったよ、古鷹

任せてくれよ…私…もっと強くなる…!

古鷹みたいに皆を守れる位強くなる…だから…」

 

 

「ふふ、もうしょうがない妹だなぁ

良いよ今日だけ特別にね?」

 

 

古鷹は手を広げると加古はその胸に飛び込み静かに涙を流しながら泣き始める

その後ろで衣笠も泣こうとしていると古鷹が静かに手招きをする

それを合図に衣笠も古鷹に抱き付き二人とも久しぶりに触れる事が出来た事、そしてその優しさに涙を流す

 

 

「ごめんなさい……ごめんなさい…古鷹さん…

私…貴女を……」

 

 

「良いんだよ……辛かったね…苦しかったね……

もう、終わったから大丈夫だよ…」

 

 

「古鷹……古鷹ぁぁ…ごめんなさい…ごめんなさい……!!」

 

 

「もう!加古も泣きすぎだよ!」

 

 

しばらくの間古鷹の胸の中で二人は泣き続けそれを優しく包み込むように頭を撫でていた

 

 

 

 

 




次回

過去との決別
そして共に歩いていく未来

浜風、加古と衣笠に縛りついている物を壊しながら古鷹は少しずつ過去に向き合っていく
そして、絶望から救われた少女は自らの意志で道を歩んでいく
どんな苦難も絶望も乗り越えて前に



書ききれなかった……ごめんなさい…
次回が本当のラストになります!




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晴れやかなる明日へ 三

一言だけ言います
詰め込みました()







「じゃあ、衣笠

加古をよろしくね?」

 

 

古鷹と和解した二人だったのだが、加古は安心したのかいつの間にか寝てしまっており現在衣笠の膝枕で寝ていた

 

 

「う、うん

でも古鷹さん、あの二人は……」

 

 

「……大体分かるよ、それでも助けられるのは私だけだから」

 

 

「……ごめんなさい、最後まで古鷹さんに頼ってしまって……」

 

 

「良いよ!これぐらいしか私には出来ないからね」

 

 

古鷹は微笑みながら廊下を歩いていこうとすると

 

 

「ねぇ、古鷹さん

強く…なったね

ここに居た時より遥かに

心も実力も」

 

 

後ろから衣笠に言われると古鷹は笑いながらいつもの言葉を掛ける

 

 

「強くないよ!強くありたいの、私は!

あの二人の様に!またね!衣笠!」

 

 

そう言うと古鷹は廊下を歩いていき姿が見えなくなると衣笠は呟く

 

 

「……そっかあの二人は…そんなに強いんだ…

そうだよね…古鷹さんをあんな絶望から救いだすほどだもんね……凄い…な…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さってと、じゃあどっちに行こうかな……」

 

 

「ふ、古鷹さーん!!」

 

 

 

古鷹は鎮守府内を歩いていると目の前から血相変えた青葉が走ってくる

 

 

「どしたの?青葉?」

 

 

「じ、実は日向さんを見付けたんですけど!」

 

 

「何処に居るの!?」

 

 

「演習場です!ですがあの人!」

 

 

「分かった!ありがと!」   

 

 

古鷹はその言葉を聞いて演習場に走り出すと青葉を置いてきぼりにしてしまう

 

 

「ま、待ってぇ……古鷹さぁぁん……」

 

 

 

しばらく、走った後に演習場に着くのだが他の艦娘達がざわざわとしながらその演習場を覗いている

 

 

「どうしたんだろ?何か……!!」

 

 

そのざわざわしていた意味を理解する

演習場には日向が一人立っておりその身体は全身から血を吹き出しながら膝をついていた

その光景は普通の様で普通ではない

何せ演習には専用の模擬弾が使用される為艦娘は傷付かないようになっている

なのに日向は全身から血を流し他の艦娘達が日向に砲を向けていた

 

 

「日向さん!それ以上は駄目だよ!」

 

 

「そうだよ!いくら日向さんでも!」

 

 

「うるさい!!もっとだ!もっと私を撃て!!

殺す気でも構わない!今回の大演習会で負けたのは私が原因だ!

早く撃て!!」

 

 

不味い!!と古鷹は直感で理解し走り出し艤装置き場を見ると自分の所だけ鍵が空いているが青葉の文字で「触るな禁止!」と言う札が張ってあり開けて仲間を見ると綺麗に整備された艤装が入っていた

(青葉……ありがとう!)

 

 

直ぐ様自分の艤装を付けると演習場に走り出し日向の後ろから近付くと他の艦娘達はそれに気付き砲を下ろそうとするのだが

 

 

「撃て!お前達!!」

 

 

「「は、はい!!」」

 

 

日向の剣幕に驚き主砲を撃ってしまうが

今の古鷹には力がある

艤装の主砲を使い放たれた砲弾を全て撃ち落とすと爆煙に包まれ日向の目の前に立ち塞がる

 

 

「貴女達!演習場での実弾の使用は禁止されているのを知ってますよね!?

何をしてるんですか!ましては仲間を!!」

 

 

古鷹の声に気付いた日向は顔を上げその背中を見る

そして爆煙を切り裂き古鷹は砲を構えている艦娘達を睨み付ける

 

 

「だ、だって……」

 

 

「日向さんが…やれって……」

 

 

「関係ありません!貴女達は規則違反をしているんですよ!!

きちんと提督の許可を得ないとこの様な事をしていい理由にはなりません!

今すぐに戻りなさい!!

それとも私が相手になりましょうか!?」

 

 

古鷹は怒りながら睨み付けていると艦娘達は怯えながらその場をそそくさと去っていくのを確認すると深く息を吐き振り返り日向に手を差し出す

 

 

「大丈夫ですか、日向さん

あまり無茶をしてはいけませんよ?」

 

 

「古………鷹……

すまない……私は…」

 

 

差し出された手を無視し逃げようとするが古鷹は強引に手を取る

 

 

「駄目ですよ、どうせ皆資格が無いだとか言うんですから

ほら!行きますよ?」

 

 

「………すまない…」

 

 

日向の手を取りながらゆっくりと航行し二人は艤装置き場に到着するや否や日向がいきなり倒れてしまう

 

 

「日向さん!」

 

 

倒れてしまった日向を介抱しながら古鷹は日向の艤装を外し片付けていると日向が口を開く

 

 

「………何をしに来たんだ古鷹

君がここに来る理由は無いだろ?」

 

 

「皆の様子を見に来たんです

私が居ない佐世保鎮守府はどうなのかなと思いまして

それで、どうですか?」

 

 

「………悲惨だよ

艦娘達は皆誰に従いどう戦えば良いか分からず

戦う意味すら分からず、ただ生きてるってだけでな

…………私達が君を裏切った…からな…」

 

 

日向は顔を反らしながら拳を握り締めており古鷹はその頭を撫でる

 

 

「…日向さんは抵抗したんですよね

あの話に」

 

 

「…加古か?それとも青葉か?…どうでもいいな

……そうだ…だって君は私何かより気高かった

自らの実力とやることを理解し立ち向かい救いだした……

なのに……尋問官共は君を売れと言ってきた…

もちろん断ったさ

だがな奴等は……『私がそれを認めないと姉妹に迷惑がかかる』と言われたんだ……」

 

 

「まさか!伊勢さんを!?」

 

 

悔しさで唇を思い切り噛んだのか口から血を流しながらその時の事を話し出す

 

 

「……あぁ、奴等は伊勢に手を出そうとしたんだ…

だから…………いや、だからと言って君を捨てる理由にはならないな……情けない話だ

戦艦なのに、皆よりしっかりしないといけないのに……

私は……何も出来なかった…君が処刑される時…私は見てるだけだった……

すまない……ろくでもない(戦艦)で…

すまない…謝って許される…とは思ってない……殺してくれても構わない…我々は……君を見捨てたんだ……

己の為に……自分勝手に…」

 

 

血を流しながら日向は泣いていた

古鷹に会って再び助けてもらい、何も出来ずに自分勝手にやってきたことを後悔する

仲間一人すら救えない自分(戦艦)

 

 

その姿を見ながら古鷹は微笑み再び頭を撫でると涙と血ををハンカチで拭う

 

 

「いいえ、貴女はよくやっていますよ日向さん」

 

 

「…違う!私は何も出来てない!!

古鷹見たいに優しくも無いし!仲間の為に命を張ることも出来ない!

何が戦艦だ!私は古鷹何かより遥かに劣っている!!

だから……だから…」

 

 

「だからあんなことを?

もしかして、いつもやってたんですか?」

 

 

「…あぁ、敗北は私の責任だ

私が皆を戦闘で守らなくてはならない

君の代わりに……君が守った仲間を私がやらなくちゃいけない…だから……」

 

 

日向が落ち込んでいると古鷹はため息を付くがその顔は微笑み嬉しそうにしていたが日向に構える

 

 

「えい!」

 

 

「痛っ!……何を…?」

 

 

日向のデコにデコピンを食らわせるとそのまま優しく頭を撫でる

 

 

「もう、気負い過ぎですよ日向さん

全く変わってないですね、正義感の強さも実は気が弱いのもあの時から」

 

 

「だって…私は……」

 

 

言い訳をしようとする日向を古鷹は優しく抱き締めると頭を撫でる

 

 

「少しは周りを頼りましょう?

貴方は戦艦ではありますが完璧に強いわけではありません

私だって強くないんですから」

 

 

「違う!君は!」

 

 

「強くないんです

これでもこの鎮守府に居た頃から影で泣いたり苦しんだりしてました

ここでエースと呼ばれ影で毎日砲撃の演習をこなしたりしてましたから」

 

 

「そんな……君が?」

 

 

「はい、正直誰にも頼りたくても頼れなくて私がしっかりしなきゃって思ってた

迷惑をかけたら悪いってね

ずっとずっと

でも、今は違うの私を救ってくれたある二人が私に仲間の本当の意味を教えてくれた

お互い事を理解したいから迷惑をかける

お互い事を知りたいから頼る

あの二人はずっと一人だった私にあの二人は手を差し述べてくれたんだ

だから日向さんも皆を頼ってみたらどうかな?」

 

 

 

「………私は……」

 

 

「日向さんは確かに戦艦だよ?

私より強いけど心が強い訳じゃないんだよ

それは皆分かってくれるから

絶対に、大丈夫だから私が保証するよ

…もし駄目なら私が貴女の手を取るから安心して?」

 

 

日向は傷だらけではあるが古鷹の強さと優しさを見て思わず古鷹を強く抱き締める

 

 

「……すまない…私が君を頼るなんて……そんな…事……許される訳…」

 

 

「良いんですよ、私はあの二人が助けてくれました

だからもう大丈夫です

頼ってください貴女は一人じゃありません」

 

 

「……うぅ…ごめん……ごめん……古鷹…私は…君になりたかった…んだ……でも…無理だよぉ………

君の代わりなんて……」

 

 

「はい、日向さんは日向さんなりに守っていけば良いんですよ……

安心してください……」

 

 

古鷹の胸の中で日向は久しぶりの安心感と優しさに静かに涙を流しながら自分のやってきたことを後悔した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「では、日向さん

かならず入渠してくださいね?」

 

 

「あぁ、分かってる……そのすまなかった……

みっともない姿をーーー」

 

 

日向が言おうとした瞬間古鷹は人差し指を口に当てると微笑む

 

 

「私と日向さんの秘密にしておきますからこれ以上は駄目ですよ?

では私は行きますね」

 

 

「……あぁ、すまなかった

ありがとう古鷹」

 

 

そう言うと古鷹は日向を置いて艤装置き場を後にすると最後の一人木曾へと向かって歩いていく

 

 

古鷹が去った艤装置き場で日向は一人項垂れながら古鷹の艤装が入ったロッカーを開きその艤装を触れる

 

 

「……あぁ…私は……また君に守られたのか…

…敵わないな…今も昔も…君は私の憧れであり…目指すべき艦娘だ……必ず君の様になってみせよう…

ここに誓う…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後の一人木曾を古鷹は探していた

だが、それは案外早く見付かった

 

 

「……久しぶりですね、木曾さん」

 

 

「……あぁ、古鷹

久しぶりだな」

 

 

古鷹が廊下を歩いていた時目の前から木曾が向かってきており浜風から話を聞いているらしく来た意味を理解していた

 

 

「…変わって無いみたいですね」

 

 

「……そうでもないぜ、お前が居なくなってからは変わったよ

古鷹が居なくてせいせいしたよ

でも何でまたここに来たんだよ」

 

 

「…私が嫌いだったんですか?」

 

 

「………あぁ、嫌いだったよ

この鎮守府で一番強くて優しくて誰にも弱味を見せずに戦い続けてたお前がな」

 

 

木曾は拳を握り締めながら話していると古鷹を睨み付けながら話し出す

 

 

「だから!何でここに来たんだよ!

俺達はお前を裏切ったんだぞ!見捨てたんだ!

放っておいてくれ!!俺達にもうーー」

 

 

「私は要らない?」

 

 

「…っ…そうだよ!俺達にはお前なんか要らないんだ!!

だから!」

 

 

「ならよかった、私ねこの鎮守府には戻らないんだ

小笠原に居る二人の所で戦うって決めたの

あの二人に付いていきたい

だから今お別れを言いに来たの」

 

 

その古鷹の言葉に木曾は身体をビクンと震わせる

 

 

「なら……早くいっちまえよ…俺達にお前は必要ない!!

早く行けよ!!!」

 

 

「………優しいね、木曾さんは」

 

 

「っ!何の事だよ!俺達は!!」

 

 

「ここでの辛い思い出を思い出させないようにって事でしょ?

後は自分の為

皆に弱さを見せないため、気を張って来たんだよね

皆をまとめるために」

 

 

古鷹が木曾に近付いていくと木曾は少しずつ後ずさりをする

 

 

「来るなよ!」

 

 

「嫌だよ、貴女をこのままにしておくと危ないから」

 

 

木曾は後ずさりをしていると足下にあった石に躓きそのまま後ろに倒れる

 

 

「辞めろ!来るな!来るな!来るな!来るな!!!」

 

 

先程の威勢が失くなり古鷹が近付き木曾に手を出そうとした瞬間木曾は縮こまりながら震える

 

 

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

 

 

古鷹はその姿を見て変わってないと感じながら木曾の頭を優しく撫でると木曾はビクンと跳ねながら古鷹を見上げる

 

 

「ふふ、やっぱり変わってないね

木曾さん大丈夫だよ、怒ってないから」

 

 

「………………何で……何で来たんだ

俺達を殺しに来たのか?」

 

 

「違うよ、お別れを言いに来たんだよ

皆を助けると同時にね」

 

 

「………………何で……俺達を……助けるんだよ…

だって俺達は……古鷹を…見捨てたんだぞ?」

 

 

「そうだね、分かってるよ

それでも助けたいと思うんだ」

 

 

木曾は震えながら縮こまり古鷹を恐怖の眼差しで見続ける

 

 

「………なぁ、俺だけで許してくれないか?

…俺だけを殺して皆を許してくれないか?

………俺が一番最初に裏切ったんだ!だから!!」

 

 

「もう!殺さないってば!いい加減信じてよ!

さっき提督と皆と話してきたんだ

木曾さんも人質を取られてたんでしょ?」

 

 

「………そうだ、でも理由にならない…

俺達は古鷹を捨てた理由には……」

 

 

そんな弱気な事ばかり言ってる皆を見てきて古鷹は呆れたのか木曾の頬を引っ張る

 

 

「さっき私が嫌いって言わなかったっけかなぁ?

この口はぁ?」

 

 

ひはいひはい!ごめんなさひ(痛い痛い!ごめんなさい)

 

 

「私に出ていけとか言わなかったっけかなぁ?

うーん?」

 

 

ごめんさひごめんさひ!!ゆるひて!(ごめんなさいごめんなさい!!ゆるして!)

 

 

「駄目です!人の事裏切っといてそんなこと言う人は知りません!」

 

 

ほ、ほんなぁ~!(そ、そんなぁ~!)

 

 

だが木曾の変な顔を見た古鷹は笑ってしまいその手を放すと木曾に一つお願い事をする

 

 

「じゃあ、許してあげる変わりに私のお願いを聞いてくれない?」

 

 

「な、なんだ!何でも言ってくれ!

俺はーー」

 

 

「皆をお願い、私はここに居られないから

日向さんと、加古と衣笠と不知火さんと五月雨さんとこの鎮守府を守ってあげて?」

 

 

木曾はその願いに再び顔を伏せてしまうと古鷹の手を取る

 

 

「…………こんな願いを言う資格は無いのは分かる

でも……でも…古鷹……ここに居てくれないのか?」

 

 

「…ごめんね、ここには戻れない

私にはあの二人が待ってるから、待ってる人達を置いてはいけないの」

 

 

「……………そう……だよな…ごめん…

頑張るよ……古鷹の分まで…私達」

 

 

歯を食い縛り涙を堪えていると古鷹はそっと優しく木曾を抱き締める

 

 

「ごめんね、皆を置いていく見たいになって

私ねあの鎮守府であの二人と共に歩んでいきたいの

ここの皆も大切だよ?それでもね私はあの二人と歩んでいきたい

あの二人は私が居ないとブレーキ効かずに一直線に走りすぎちゃうと思うから」

 

 

「…うん……ごめん古鷹」

 

 

「……またね…優しい木曾さん

私が居なくなってもーー」

 

 

と古鷹が言い終わろうとした瞬間木曾は古鷹の身体を強く強く抱き締める

 

 

「…………やだ」

 

 

「…木曾さん?」

 

 

「やだやだやだやだやだぁぁ!!

離れないでよ!!古鷹ぁぁぁぁ!!

古鷹が居ないと私!私!!」

 

 

「ふふ、やっぱりまだ甘えんぼさんですね…

でも駄目ですよ?いい加減私離れしてください?」

 

 

「やだよぉ!古鷹の事捨てたのに!やっぱり忘れられないよぉ!

ごめんなさい!ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」

 

 

しばらく古鷹の胸の中で駄々をこねながら泣いている木曾を見ながらこれからのこの鎮守府は大丈夫なのだろうかと少し心配になった古鷹であった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「落ち着きましたか?」

 

 

「……………ごめん、またやったな…

本当にごめん…古鷹……」

 

 

顔を真っ赤にしながら廊下に座り込んでいる木曾の頭を撫でていた

 

 

「まぁ、私が木曾さんの育成係だったからだけど……

そろそろ私が居なくても大丈夫な様に…育ってほしいな?」

 

 

「………頑張ります」

 

 

「ふふふ、じゃあね木曾さん」

 

 

古鷹は立ち上がり歩いていこうとするのを木曾は止めようとするがその手をぐっと押さえる

 

 

「あ、そうだ忘れてた」

 

 

そう言うと古鷹は振り返り木曾に笑顔を向けると手を振るう

 

 

「今までありがとう木曾ちゃん

忘れないからね、皆をよろしく

私のお弟子さん」

 

 

「あ…………うん……頑張る……よ…古鷹さん…

それとごめんなさい!!貴女を裏切って!見捨てて!ごめんなさい!!」

 

 

「良いよ!でも二度と皆にやらないでね!

約束だよ!!」

 

 

「うん!約束する!!古鷹さんみたいに強くなって!皆を守って見せる!!」

 

 

木曾は涙を堪えながら手を振るうと古鷹は廊下を歩きながら佐渡達の居る場所に向かう

(皆に挨拶は終わったかな?じゃあ私も……)

 

 

そして階段を下りると玄関に青葉と浜風が待っていたのだが最後の二人が古鷹を待ち受けていた

 

 

「………何かご用ですか、不知火さん、五月雨さん」

 

 

「え、えっと…古…鷹…さん……」

 

 

「……いいえ、私達は貴女の帰宅を見届けに来ただけです」

 

 

「そっか」

 

 

古鷹はゆっくりと歩いていき玄関に向かっていき二人の間を通り抜けすれ違うと不知火が呟く

 

 

「……もし貴女が復讐の為に私達を殺しに来たのだったら『司令』だけを逃がしそれ以外は貴女の好きにさせるつもりでした」

 

 

「…………そんなことはしないよ

今はね」

 

 

「……司令と我々が貴女にした罪は消えません

何をしようとどう償おうとそれは変わらない

私はこの命で償えるなら差し出しますよ」

 

 

「…相変わらず真面目だね

要らないよ、そんなの」

 

 

「……何故ですか、私達は貴女を裏切った

この鎮守府で最も大切な一人なのに

この鎮守府で最も活躍した人なのに

この鎮守府を最も愛していたのに

 

……私達は司令の自分勝手と他の者達のわがままで貴女を殺したのに」

 

 

「それでもだよ

私はこの道を選んだの

誰も殺さず、苦しんでいる人達を助ける道を」

 

 

その言葉に不知火は歯を食い縛る

 

 

「…貴女は…何故そんなに強いんだ…

いい加減怒ったらどうですか!?

貴女を理不尽に捨て!私達は貴女を踏み台にしたと言うのに他の者達は貴女にすがっていた!

司令も木曾も日向も青葉も浜風も加古も衣笠もそうだ!!

自分勝手に貴女を捨てたと言うのに貴女に救われている!!

意味が分からない!何故貴女はそこまで出来る!!

憎いんでしょ!苦しいんでしょ!

なら殺したらどうなの!古鷹!!!」

 

 

古鷹の優しすぎる行為に不知火は変わりに怒りに震えていた

そう、佐世保鎮守府全員が古鷹を理不尽に捨てたと言うのにすがっていた

古鷹の優しさに甘えそしてすがっている

それに答える様に古鷹が怒らずそれを癒していることに不知火は怒りを感じていた

 

 

「…………そうだね、多分あの二人に会わないで生きていたら……多分皆を殺してたよ

どんなに命乞いをしても許すを乞うても私は……皆殺しにしていた

地の果てまで追い掛けて一人残らず……ね」

 

 

「だったら!やれば良い!!私達の覚悟は出来ている!!

貴女に殺されても文句を言うものはここには居ない!!

貴女に救われた奴も居る!だから殺しなさいよ!!」

 

 

「ううん、やらないよ

私にはそんなこと必要ないから」

 

 

「どうして!?」

 

 

「……今、私は皆を憎んでないからだよ

私はねあの二人に、叢雲と佐渡さんに全部奪われちゃったんだ

憎しみも怒りも悲しみも苦しみも全部…全部……」

 

 

不知火は怒りながらも古鷹に振り返ると古鷹は不知火に微笑みかける

 

 

「今の私はあの二人に全てを奪われたからあるの

私がここに来たのは理由は優しさじゃない

私の過去に決着を付けて貴女達を前に向かせること

そして、皆を救うこと

それは私が最後にやり残したことだったから

だから私が皆の過去を奪います

苦しみも悲しみも私が奪い皆を前に向いてもらい戦ってもらうことなの」

 

 

「……なら、貴女は私達を許すと言うの?

私達は貴女を陥れ殺そうとしたのに」

 

 

「…はい」

 

 

「ずっとずっと優しくしてもらって色んな物を与えてもらってたのに私達は奪った

貴女の全てを」

 

 

「…そうだね」

 

 

「……貴女を死なせようとしたのに!?

私達は!貴女を!!!」

 

 

「それでもだよ不知火

私は許しちゃうの、あの二人はその佐世保鎮守府から受けた苦しみも絶望も憎しみも奪ってくれたから

そして……私に生きる希望をくれたから

私は貴女達に繋ぎます

佐渡さんと叢雲がくれたものを貴女達に繋いでいくの」

 

 

微笑みながらその言葉を聞いた不知火は昔を思い出す

昔、初めてこの場所に来た古鷹の姿を

あの時から優しそうな姿をし、微笑みが可愛らしい古鷹が今不知火達にさようならを言うためにここにいる

 

 

「……貴女は……何故…そこまで……」

 

 

「私はあの二人がしてきたことをしてるだけ

叢雲が与えてくれた強さで

佐渡がくれた優しさで貴女を救っただけだよ」

 

 

不知火にそう微笑んでいると不知火は一瞬錯覚をしたかの様に古鷹の背中に大きな天使の様な羽を見た

いや、錯覚ではないのであろう

奪われていた

希望を

強さを

優しさを

佐渡と叢雲が与え古鷹をここに来させてくれた

その事に不知火は感謝した

 

 

紛れもなくこの人は古鷹は天使のそのものなのだろうと

そして自らが行った事を後悔すると同時に不知火は泣き崩れる

 

 

「ごめんなさい……ごめんなさい!

私が…司令を止められなかった……貴女ではない…皆を取って……ごめんなさい……ごめんなさい!!」

 

 

「…良いよ、不知火も大変だったね」

 

 

不知火が泣き崩れていると隣に居る五月雨も古鷹に土下座をしながら泣き始めてしまう

 

 

 

「古鷹さん……ごめんなさい…ごめんなさい……ごめんなさい…ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!!!」

 

 

「うん、大丈夫だよ

私は……もう大丈夫だから!」

 

 

そう言うと古鷹は一人佐世保鎮守府を出て歩いていくと目の前で佐渡と叢雲が古鷹を待っていた

 

 

「お待たせ致しました、佐渡さん、叢雲」

 

 

「……おう、もう良いのか?」

 

 

「はい!皆これで大丈夫だと思います

皆強い娘ですから」

 

 

「そう、なら行きましょう」

 

 

古鷹を連れて佐渡達は歩いていくとその後ろから何人かの足音が聞こえ佐渡と叢雲は振り返ると笑う

 

 

「……はは、古鷹どうやらお前はかなり愛されてた見たいだな」

 

 

「……ふふ、そうみたいね

人望はあったみたいよ

全く何でそんな人を裏切ったのかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「古鷹ー!ありがとう!!

それとごめんなさい!!」」」」」

 

 

古鷹が後ろを振り向くとそこには先程まで話していた

青葉、浜風、加古、衣笠、日向、木曾、不知火、五月雨が手を振っていた

 

 

「古鷹ー!私!絶対強くなるから!!

お姉ちゃん見たいに!強くなるから!!絶対!!」

 

 

「ごめんなさい!古鷹さん!!

もう二度と仲間を見捨てないから!!

貴女の様な人を二度と作らないから!!」

 

 

「古鷹!私は貴女の様に気高く強い戦艦になる!!

二度と君に頼らないように!!私は強くなる!!」

 

 

「古鷹さんー!!俺!強くなるよ!古鷹さんに甘えないで入れるように強くなる!!だから!だから!見ていてくれよ!!」

 

 

「貴女を裏切ってしまい本当にごめんなさい!!

私達は貴女が居なくてもやれるように頑張ります!!」

 

 

「古鷹さーん!!貴女が居なくても私達はやっていけるように頑張ります!!だから!!」

 

 

一人ずつ思いを告げると全員は息を吸うと一斉に叫ぶ

 

 

「「「「「行ってらっしゃい!!古鷹(さん)!!

そして!助けてくれて!救ってくれて

私達は貴女から貰ったものを他の艦娘達に繋げていきます!!

佐渡さん!叢雲さん!古鷹さんを!お願い致します!!」」」」」

 

 

その光景に古鷹は涙を溢しそうになるがぐっと我慢するが佐渡が頭を軽く叩き叢雲が肩を叩くと我慢をやめて泣きながら全員に手を振るう

 

 

「行ってきます!!皆!元気でね!!

今までありがとう!!!」

 

 

「おう!任せとけ!」

 

 

「守って見せるわよ!あんた達何かよりね!!」

 

 

佐渡達は手を振るいながら佐世保鎮守府を離れて行くと古鷹は涙を拭い前を向いて歩いていく

 

 

 

「本当に良かったのか?古鷹、お前の大切な仲間何だろ?」

 

 

「はい!それでも私はこの道を選びます、駄目とは言わせませんよ?」

 

 

「だってよ、佐渡

残念だったわねぇ~わざわざ他の鎮守府に話したってのに」

 

 

「全くだ、俺の苦労がまた空振ーーー」

 

 

「ちょ、ちょっと君達!」

 

 

「ここから先は!!」

 

 

三人が歩いていくと目の前にある門で憲兵達が誰かを押さ込んでおり疑問に思っていると

 

 

「あ!!提督デース!!」

 

 

「古鷹さん!?ちょっと退きなさい!!」

 

 

「すまないが!ここを開けてもらうぞ!!」

 

 

その人影は門を無理矢理こじ開けると憲兵達を押し倒し佐渡達へ走ってくる

 

 

「はい?何だなんだ!?」

 

 

「提督ー!!バーニングラーブ!!」

 

 

「古鷹さーん!大丈夫?何かされてない!?」

 

 

「あんた達……何でここに居るのよ?」

 

 

その憲兵達を押し倒したのは小笠原で待っているはずの大井達であり何故か佐世保まで来ていた

 

 

「いや!お前ら何で居るんだよ!

留守番頼んだよなぁ!?」

 

 

「んー!提督に会いたかったんデース!!」

 

 

「理由になってねぇ!?」

 

 

「仕方ないわよ、古鷹がいきなり佐世保何かに行くなんて言うから皆心配で来ちゃったのよ」

 

 

金剛に抱き付かれながら佐渡が焦っていると擬態したエアが冷静に話その後ろから長門や大井達も歩いてくる

 

 

「何でエアまで居るんだよ!?

と言うか!グラーフ!大井!長門!

何で止めなかったんだよ!!」

 

 

「い、嫌止めはしたんだがな……」

 

 

「私は、一応警告しましたよ?

提督に怒られるって」

 

 

「すまん、佐渡提督私には止められない!

古鷹の危機ならば行かなくてはと思ったんだ!!」

 

 

「長門は真っ直ぐだなおい!!

許す!!」

 

 

「佐渡一応行っとけど大井もグラーフも乗り乗りだったわよ」

 

 

「ちょ!エア!?」

 

 

「な、何を言ってるんだ!?」

 

 

「お前らぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

佐渡が怒鳴っているとその光景を見ながら叢雲は呆れ古鷹は乾いた笑いをしている

 

 

「貴女はこの道で良いの?古鷹」

 

 

「うん、私はこの道を選ぶよ

私が選びたいんだ皆と笑い合いたいんだ」

 

 

「そう、ならもう言わないわ」

 

 

叢雲がそう言うと怒っている佐渡の脚を蹴ると無理矢理静かにさせる

 

 

「うるさいわよあんた、来ちゃったんだから諦めなさい」

 

 

「……それもそうか全く…良し!飯でも食いに行くかぁ!!」

 

 

「「「「「「賛成!!!」」」」」」

 

 

いきなり来た全員を見ながらため息を付いていると佐渡の隣に古鷹が立つ

 

 

「…古鷹、お前は後悔しないか?

この選択に」

 

 

「はい!私は皆と小笠原と歩いていきたいんです!」

 

 

「そうか、じゃあ行くか!」

 

 

佐渡がそう言うと全員が佐世保鎮守府から離れて行くと佐渡は古鷹の手を取ると微笑む

 

 

「なぁ、古鷹

俺は君の良いことに成れてるか?」

 

 

「…はい!!貴方は私の良いことですよ!

私に勿体ないくらいに!」

 

 

「そうか!約束は守れてるみたいだな」

 

 

「あー!!古鷹ずるいデース!!

何で提督と手を繋いでるデースか!?」

 

 

金剛の言葉に全員振り向き佐渡に飛びかかり佐渡の手を取ろうとするが古鷹を繋いだ手だけは離さずに金剛達に捕まりながら歩いていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……俺もああなれるだろうか」

 

 

鎮守府の窓から古鷹を見送っていた藤谷は去っていく小笠原の全員を見ながら呟く

 

 

「…彼等はこれからもどんな障害であろうが壁であろうか壊して前に進むんだろうな…

俺には出来ない…でも目指すことは出来る……

古鷹…俺は君を愛していたのは本当だ……

でも君は…彼が好きなんだね……

お幸せに、私の愛しい(艦娘)

 

 

一人持っていた指輪をゴミ箱に投げ入れると空を見上げると最後に一言だけ呟く

 

 

 

「……進め、晴れやかなる明日へ……」

 

 

その日の天気は雲一つ無い晴天

そして佐世保鎮守府に残っていた古鷹の過去と言う雲は晴れ全員が前を進み出す

 

 

 

明るい未来へと

 

 

 

 

 

 

 

 

         天使の罪 古鷹編end




次回

エピローグ 二人の英雄(ヒーロー)

エピローグ もう一人


古鷹編完結!
いやー長かった!特に最後凄い無理矢理詰め込みましたね……
ぶっちゃけ三話位に分けた方が良いかなと思いましたが書き続けてしまいましたごめんなさい!!

因みに今回だけ二話の特別なエピローグが存在します
投稿は一気にやりますが一応古鷹編の後日談見たいな物です!



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悪夢の先

再びの古鷹目線のお話です!
今回の話は彼女が全てを終わらせた話になります!
全てが終わり彼女は何を見るのでしょうか?





私は目を覚ますと再び真っ暗な世界に居た

そしてまたあの声が私を苦しめる

でも今回は違う今回は……私を苦しめるだけの声

 

 

 

『いい加減罪を認めろ!!犯罪者!!』

 

 

『そうだ!この裏切り者!!早く認めろっての!!』

 

 

ちがう!私はやってない!

信じてよ!!私はやってないの!!

 

 

 

『あ、そうだこれも試しあげるねぇ!

大丈夫どうせ君は艦娘何だからハハハ!!』

 

 

『今日は脚を切り落とそうね!!

あ!両手とお腹も切ろうかなあ!!』

 

 

辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて辞めて!!!!

痛いのは嫌痛いのは嫌痛いのは嫌痛いのは嫌痛いのは嫌ぁぁぁぁぁぁ!!

 

 

 

 

『……哀れだな艦娘古鷹

 

お前がやった罪は重い

 

私がもう貴様を殺してやろう』

 

 

 

 

 

『ーーさんやっさしー!

 

犯罪者に情けなんて素晴らしいですね!』

 

 

 

 

 

(違う!!私じゃない!!何で何で何で!!)

 

 

 

 

 

 

 

『お前がやったんだろ!!嘘をつくな!!』

 

 

 

 

 

『犯罪者め!早く死ね!!』

 

 

 

 

 

『消えろ!!お前は海軍の汚点だ!!』

 

 

 

『そうだ!!消えろ!艦娘風情が!このクソ重巡がぁ!!』

 

 

 

(何でよ……私じゃないのに…助けてよ………誰かぁ……

 

 

誰かぁ!!助けてぇぇぇぇぇ!!

私は!私は!!!!)

 

 

 

黒い人影が私を殺そうとしてくる

死ねと言う言葉を言ってくる

私は少しずつ沈んでいく

深い 深い 深い 海の底へ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あぁ、お前はなにもしていない』

 

 

『助けに来たわよ貴女を』

 

 

その瞬間私の両手を誰かが引っ張りあげるとしっかりと掴む

その二つの黒い人影はそれだけを言うとニヤリと笑い他の黒い人影に向けて武器を構え撃ち抜いていく

 

 

 

(……誰…貴方達は?)

 

 

 

藤谷さんでも加古でも衣笠でもない青葉でもない

佐世保の人ではない

だからと言って大本営で会ったこともない人影

分からない、この二人が誰なのか

 

 

『行くぞ!古鷹!』

 

 

『ちゃんと付いてきなさいよ!』

 

 

二人の黒い人影は私の両手を取りながら走っていく

どれだけ離れそうになっても何度も力を入れ直し手を繋いで真っ暗な世界を迷いなく進んでいく

 

 

(ま!待って!貴方達は誰なの!?

何で、私を助けるの!?

ねぇ!)

 

 

『助ける理由なんてねぇよ!』

 

 

『私達はやりたいことをやるだけよ!!』

 

 

 

 

 

二人の黒い人影の言葉が聞いたことがあるような気がした

でも誰かにそんなこと言われたことも無い

 

 

 

 

 

 

それでも、何故か心が胸が暖かい

 

 

 

 

 

 

引っ張られながら真っ直ぐに走っていくと目の前が少しずつ明るく綺麗になっていき光が見える

眩しくなっていくと言うのにその二人の姿は何故か黒いまま

 

 

 

そして二人に引っ張られ真っ暗な世界から脱出するとそこは光で眩しく見えない

しばらくするとその先に人影が六つ程見える

 

 

手を取られながら私は光に目を馴らせるとそこは鎮守府だった

でも佐世保じゃないどこかの鎮守府

 

 

そして六つの人影は一言ずつ私に声をかけると一人ずつ姿をしっかりと写していく

 

 

「古鷹さん!どこ行ってたんですか?探しましたよ?」

 

 

「古鷹ー!探しましーたヨ?

どこいってんたんデースか?」

 

 

「古鷹さん!探したよ!どこ行ってたの?

洗濯まだ終わってないんだから!ぱっぱと終わらせよ!?」

 

 

「古鷹!探したぞ、アトミラールを探すのを手伝ってくれないか?」

 

 

「古鷹~?どこ行ってたのよ?

まさか佐渡に何かされたの?良し!アイツをまた嵌めてやらないと!」

 

 

 

「古鷹!どこ行ってたんだ!!心配したぞ!

怪我は無いか?何かあったのか!?」

 

 

 

……知ってる…私はこの人達を……

私は……

 

 

そして黒い人影は笑いながら私の横を通りすぎていく

  

 

「私は貴女を守るわ、どんな敵からもどんな化け物からも私は絶対に貴女を守る

任せておきなさい

貴女は私の相棒(バディ)何だから!」

 

 

叢雲……私を絶望から助け…ずっと守ってくれている艦娘

誰よりも強く美しく気高い雷撃姫

その強さで皆を守る小笠原のエース

 

 

「この鎮守府はお前達の為に作る

全ての疲れた艦娘達の休憩所にして助け出す場所

そしてその一号はお前だ古鷹

君の命は俺が預かった、だから死ぬことは許さん

だが責任は持つお前が笑いここに来て良かったと幸せだと思う鎮守府を俺達は作っていく

だからお前は安心して俺達に守られてろ

ここではお前は自由だ古鷹」

 

 

佐渡さん……私を絶望と失意から救いだし新たな希望と生きる意味を教えてくれた提督

 

その言葉に偽りは無く何もかもを現実にし走り続けこの鎮守府で様々な人達に好かれている凄い人

そして、私の愛しい人

 

 

「「さぁ、行こうぜ古鷹!」」

 

 

二人は手を差し出す

私はその手を取ろうとするが佐世保の事が気になり後ろに後退りしてしまう

だがいきなり誰かに背中を押され無理矢理前に出る

そして後ろを振り返ると青葉が背中を押していた

 

 

「古鷹さん、貴女は幸せになるべきです

私達は貴女を裏切りました

それでも貴女は私達を許してくださいました

だから私達はもう大丈夫です

これからは貴女の幸せを掴んでください私達は」

 

 

青葉だけだと思っているとその後ろで藤谷さん達が申し訳なさそうにしているが笑い手を振っている

 

 

 

「「「「貴女に幸せになってほしい!!

だから、進んで!貴女の選ぶ道を!真っ直ぐに!!」」」」

 

 

その言葉に背中を押され私はゆっくりと二人の手を取る

すると二人は笑いながらその手をしっかりと掴み再び走り出す

 

 

 

皆が待っている小笠原(我が家)

 

 

 

「ただいま!!皆!!!」

 

 

「「「「お帰り!古鷹(さん)!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………夢?」

 

 

ふと私は目が覚めてしまいゆっくりと布団から起き上がると何か重いものがあることに気付き暗い部屋の中目を凝らしてみる

 

 

「……ぁ………み……んな……」

 

 

それは小笠原の全員であった

提督が急遽取ったホテルで寝ていた

一室しか取れなくてしかも布団も無かった為皆で寝ていたのだが何故か皆が古鷹に集まっていた

 

 

「…………………手……」

 

 

古鷹の両手は誰かに掴まれておりそれを確認すると右手に佐渡、左手に叢雲が掴んでいるがその上から皆が手を掴んでいた

全く動かせないほどに重ねられた手を見て体温を感じていると古鷹は涙を溢す

 

 

「う………うぅ……皆…放さないんだね……

ありがとう……私何かの……手を取ってくれて……捨てられるはずだった……手を取ってくれて………ありがとう…ありがとう………うぅぅ……」

 

 

小笠原の絆と優しさ、それを直に感じなから古鷹の悪夢は終わりを告げた

彼女を救ったのは小笠原の絆と仲間達であり古鷹はこれを絶対に守ると静かに決意した

 

 




次回

もう一人の影


まだまだ続くよ!
もうこれ古鷹ルートで良くね?(真顔)
古鷹さんメインヒロイン説


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裁き

今回はグロ注意!
一応あるフラグの回収です!
気付きましたか?実はある人達が小笠原に居なかったのを……




「ん……んん?」

 

 

男はある部屋の一室にある椅子に座らされており眠い頭で周りを確認しようと立ち上がるが

 

 

「ん!んん!!」

 

 

両手両足が何かに拘束されており動くことが出来なかった

そして口には猿靴が加えさせられており辺りを確認するとその部屋には何もないまるで監獄の檻見たいになっていた

 

 

「ヤット目ヲ覚マシタカ人間」

 

 

突然声が聞こえその方向に振り返るとそこには深海棲艦の空母ヲ級が立っており男を見ていた

意識を取り戻した男を見ながらヲ級はあるボタンを押すと男の猿靴を外す

 

 

「て、てめぇ!ここは何処だ!

俺を誰だとーーー」

 

 

と言い掛けた瞬間ヲ級の頭にある艤装の触手が男の腹部に直撃し苦しみで声を失う

 

 

「黙レ、貴様ノ声何ゾ聞キタク無イ」

 

 

「が………は……てめぇ……!」

 

 

そして少しするとその部屋に一人の深海棲艦が入ってくる

 

 

「どうも、目が覚めましたか

β、監視ご苦労様

しばらくこの部屋から離れていなさい」

 

 

「……分カッタ」

 

 

βと呼ばれたヲ級は深海棲艦の言うことを聞きゆっくりとその部屋を後にすると深海棲艦は男にお辞儀する

 

 

「初めまして、私はエア様の親衛隊兼あの人が管理する第1艦隊旗艦ソラと申します

いきなりこの様な所に連れてきてしまい申し訳ありません」

 

 

「エア……?誰だ?まぁ良い!ソラとか言ったなあんた!

今なら許してやる!俺をここから出しやがれ!!」

 

 

「それは出来ません、姫様の命令で私は貴女にあることをしろと命じられてますから」

 

 

「なっ!てめぇ!俺が誰だか分かってるのか!?」

 

 

ソラはエアから預かっていた資料を取り出すとゆっくりと読み上げる

 

 

田中(たなか)広明(ひろあき)年齢36歳

海軍大本営所属

地下拷問室の管理人にして拷問官を勤めている

その仕事柄世間一般には隠された存在である為表向きには所属は無いことになっている

性格は残忍極まりなく人を痛め付けることを何とも思わず逆に悲鳴や痛め付けることに快感を覚えるほど

趣味は録音した拷問した人の叫び声を聞くこと

 

これはこれは中々ですね……」

 

 

「な、な、な、な!!てめぇ!何でそこまで知ってるんだよ!?」

 

 

「それはまぁ、調べていただきましたからね?

あの短時間でここまで調べあげるなんて流石ですね姫様」

 

 

異様に自分の事を調べあげているソラに背筋を凍らせると一人の悪魔を思い出す

 

 

「ま、まさか……お前!『提督殺し』か!?」

 

 

「いいえ、私は提督殺し何かではありませんよ」

 

 

「じゃ、じゃあ何で俺を捕まえる!!

俺は『お前達に何もしてないだろ!?』」

 

 

拷問官の言葉にピクンとソラは反応すると資料を置く  

 

 

「ほほう?なにもしてないと?

貴方、かなりの人間を拷問にかけたらしいじゃないですか?

それも自白したのに関わらず続けて殺した人も居ると言うのになにもしてないと?」

 

 

「あ!あれは加減を間違えてだな!

俺は悪くーー」

 

 

と言い掛けた瞬間脚に何か違和感を感じ下を向くと脚にナイフが刺さっており傷口からじんわりと血が滲んでいた

 

 

「あぁぁぁぁぁ!!!?痛い!痛い痛い痛い!!

て、てめぇ!何しやがる!!」

 

 

「何ってナイフを刺してあげたんですよ

分からないんですか?」

 

 

ソラは拷問官に刺さっていたナイフを抜くと再び別の場所をゆっくりと突き刺す

 

 

「やめろぉぉぉぉ!!

な!何だよ!お前の目的は!?

金か!金が欲しいのか!?

ならくれてやる!だから辞めてくれぇ!!」

 

 

「金…?あぁ、人間が物を買うときに使う物ですか

そんなの深海棲艦である私が要るわけ無いじゃないですか?」

 

 

「じゃ、じゃあ何だよ!

欲しいものがあるんだろ!?言ってみろよ!手に入れてやるからさ!!」

 

 

「あぁ、一つだけありますよ?」

 

 

ソラの言葉に拷問官はニヤリと笑う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴方の苦痛にまみれ絶望し、苦しみ悶え死にゆく姿です」

 

 

「………………は?」

 

 

ソラはそれと同時にある黒い液体が入った注射器を取り出し思い切り拷問官に突き刺すと中身を身体に入れていく

 

 

「ガ…は!!な、何を!?」

 

 

「貴方に絶望を与える薬ですよ

ある人から実験を頼まれてましてね

貴方で試させてもらいますね」

 

 

すると拷問官の身体が少しずつ熱くなり身体の内部から焼かれるような痛みに襲われる

 

 

「あぁぁぁぁ!!!熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!!!!

何だこれはぁぁぁぁ!?」

 

 

そして身体の異常に気付く

先程刺された脚がゆっくりと焼けるように治っていき身体が少しずつ白くなっていくことに

 

 

「成功みたいですね、流石は『始原の左腕』様」

 

 

「て、てめぇ!!何をしやがった!?」

 

 

「詳しく言うことは禁じられてますので簡潔に

貴方を痛ぶる為に死にずらい身体にしてあげたんですよ」

 

 

ソラの言う通り先程傷つけられた傷は完全に治っておりソラは再び別の所に傷を作るもゆっくりと回復していく

 

 

「なんだ!なんなんだこれはぁ!?」

 

 

「言うわけ無いでしょ?ゴミ風情に」

 

 

ソラがそう言うと今度は拷問官の両手と両足にナイフを突き立て見下しながら話を続ける

 

 

「ひぎぃ!!辞めろ!頼むから辞めてくれ!!

何でもするから!!頼む!!」

 

 

「だから貴方に求めることは先程申しましたよね?

それに貴方は古鷹様を傷つけ他の艦娘も傷付けた

それが許せないんですよ……だからお前を死ぬまで痛め付けてやりますよ」

 

 

ソラは拷問官の髪の毛を掴むとその顔を見ながら睨み付ける

 

 

「私は人間と艦娘が大好きなんです

艦娘はひたすらに真っ直ぐ人の為に戦いその命を燃やしている姿が美しく儚い

人間は愚かであるもののその中には綺麗な者達もいる

仲間を助け希望を与え、戦い続ける姿はとても素晴らしい

 

だけどね、私はお前の様に自分の欲を満たすために人を痛め付け騙す奴等がどうしても許せないんですよ!!

本当はすぐにでも殺してやりたいのですが姫様のお慈悲です

お前に与えられた時間は三日間

その間私はお前をずっと痛め続ける

寝かせやしませんよ

お前が24時間絶望し、苦しむ姿を見ていてやろう

さてと、では始めますよ拷問官」

 

 

ソラはそう言うと拷問官の後ろから大量の拷問器具を取り出し拷問官の前に並べていく

 

 

「っ!!!

や、辞めろ!辞めてくれ!!」

 

 

「さて、どれから行きますか……

あぁ、とりあえず貴方の指の骨を折り、爪を剥ぎ、肉を少しずつ削っていきましょうか

安心してください、私は拷問には馴れてましてね

死ぬギリギリで止めてあげますからね

精々楽しんでください」

 

 

恐怖に歪む拷問官に対しソラはにこやかに笑いながら拷問官の指を掴むと上に持ち上げる

 

 

「辞めろ……辞めろ…辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろ辞めろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

 

「ほら貴方の趣味での死に方が出来るんです本望でしょ?

どうぞ、三日間楽しんでくださいませ」

 

 

その言葉と同時に指を手の甲まで捻ると骨がボキッと折れる音と共に拷問官の絶叫が部屋に鳴り響く

 

 

「ギャアァァァァァァァァァァ!!!!

指が!!指がァァァァァ!!」

 

 

「まだ一本目ですよ?後これが19本あるんですよ

楽しみですね

拷 問 官 さん?」

 

 

「嫌だ……嫌だ…嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ!!!!!

助けてくれぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「罪を知れ、お前がしてきた事はこんなことで許されるほど甘くない

罪人には裁きを」

 

 

その言葉と共にソラはもう一本の指をへし折り拷問官の絶叫が再び部屋と廊下に響き渡る

 

 

 

 

 




次回

新章突入!!

脱獄

これで天使の罪古鷹編完全終了になります!
拷問官の事は忘れてませんよ~
エアは小笠原に居るためもう人間を殺せないので拷問官を誘拐してきて最も信頼しているソラに殺らせています
次章の序盤でソラが何故エアの部下なのかも話していきますね!

次章ではまた多くのフラグを回収します
四人のお話にある大きなフラグが解放されます!


自己紹介にて長門新しく追加!
古鷹は天使の罪編が終わった為改変!



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第十章 不沈ノ飛行場
脱獄


ここは太平洋のある島国

時刻は0300を回っており草木すら眠る真夜中だと言うのにも関わらずその島では多くの者達が慌ただしくしていた

至るところで警報が鳴り響き島中が起きていた

 

 

「脱獄者ガ出タ!!

捕虜ガ逃ゲタシダゾ!!」

 

 

深海棲艦の声が島中に響き渡り大勢の深海棲艦が島の中を探しだし一人の捕虜になっていた艦娘が逃げていた

 

 

「居タカ!?」

 

 

「駄目ダ!何処ニモ居ナイ!!」

 

 

「必ズ探シ出セ!

姫様ニ殺サレルゾ!!!」

 

 

そう、ここは深海棲艦の白地にしてある姫級が指揮する大艦隊の居住区

そして今そこに幽閉されていた捕虜が逃げ出し全員で探し回っていた

 

 

「今すぐ周辺海域を封鎖せよ!!

空母部隊!お前達は空から奴を探し出せ!

戦艦部隊!森を探せ!少しばかりの破壊は多めに見る!!

重巡部隊!犬を使え!奴の痕跡を追え!

駆逐、軽巡部隊!海に出て奴が逃げてないか探し出せ!!」

 

 

「「「「ハ、ハイ!!」」」」

 

 

「……にしても、やってくれましたね…

まさか脱獄とはね…艦娘!!」

 

 

指揮艦を務めているある深海棲艦が司令室兼モニタールームでそれぞれの部隊に指示を出し逃げ出した艦娘を確実に追い詰めていていこうとするがもう一人の艦娘を睨み付ける

 

 

 

「はは………意外と…ここの警備も甘いんだね……」

 

 

 

「…Z1(レーベヒト・マース)……貴様…どこだ!奴をどこに逃がしたんだ!!答えろ!!」

 

 

指揮する深海棲艦は両手を拘束されボロボロのレーベの首襟を掴み持ち上げると睨み付ける

 

 

「は……はは……言うわけ無いじゃ…ない…か……

マックスは……お前達に…つか…まらない…!!」

 

 

「クソ!!お前達!コイツをもう少し痛め付けておけ!!」

 

 

「「「ハッ!!」」」

 

 

「伝令!ドウヤラマックスハ艤装ヲ着用シテイル模様!!

艤装置キ場ヨリマックスノ艤装ガ失クナッテイルガ判明シマシタ!!」

 

 

「何だと!?クソ!クソクソクソ!!

やってくれたな駆逐艦風情が!!」

 

 

指揮する深海棲艦は島中を映し出しているモニターを睨み付けながら脱走したマックスを探す

 

 

「見付け出せ!奴はこの場所を知った!!

殺しても構わん!奴の死体か姿を私の前に持ってこいお前達!!」

 

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ!!!ごめん!レーベ!ごめん!!」

 

 

その頃マックスは一人艤装を付けながら森を駆け抜け警報鳴り響く村から離れ海岸沿いを目指し走っていた

 

 

「見付ケ出セ!!」

 

 

「ドコイキヤガッタァ!?」

 

 

後ろからは戦艦ル級達の声が響き渡りマックスは少しずつ追い詰められていた

 

 

(マックス!僕が隙を作る、その隙に君は逃げるんだ!!)

 

 

(無理よ!艤装は使えないし、ここは絶海の孤島よ!?)

 

 

(艤装は僕がロックを解除しておいた、お願いだ!

君は僕より逃げ足が早い!この事を日本に伝えるんだ!

ドイツ方面に逃げても南方棲戦姫達がすぐに駆けつける!

だから必ず日本に逃げるんだ!

頼んだよ!!僕は…大丈夫だから!!)

 

 

 

「ごめん!レーベ!必ず応援を呼んで戻ってくるわ!!」

 

 

だが、最悪な事に走ってる間に真後ろから犬の吠える声が聞こえ深海棲艦達が叫ぶ

 

 

「居タゾ!アソコダ!!撃テ!撃テ!撃テ!!」

 

 

「ヤバイ!見付かった!!」

 

 

その言葉と共にマックスの周りの木々を深海棲艦達は撃ち抜いていき急いで森を抜ける

だが抜けた先は絶壁の崖になっており絶対絶命に陥る

 

 

「ど、どうする!?」

 

 

真後ろからは砲撃が止まず戦艦ル級やリ級達が全速力でマックスを捕まえようとしてきており壁際に走っても追い付かれる

 

 

「……えぇい!神様!!」

 

 

その瞬間マックスは壁から飛び降りるとその後ろ姿を確認したル級達は落ちていくマックスを崖上から覗く

落ちていったマックスは脚に激痛を感じるが何とか海上に着地することに成功しそのまま島の外へと全速力で航行していく

 

 

「逃ガスナ!!撃テ!撃テ!!!」

 

 

後ろからは戦艦ル級達から主砲を撃たれるが何とかその猛攻を避けていると今度は空から艦載機に狙われ身を屈めながら避けていく

 

 

「駆逐艦を!舐めないでよ!!」

 

 

「アノ人ニ報告ダ!!!急ゲ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴様ら!!何をしている!?

マックスを見付けたのに海に逃げられただとぉ!?」

 

 

「モ、申シ訳アリマセン!!」

 

 

「全艦隊!すぐに艤装を着用し!マックスの追撃に当たれ!!

奴を必ずこの海域からーーーー」

 

 

指揮をしている深海棲艦が怒っていると他の深海棲艦も狼狽え動揺する

だがそれを打ち破るかの様に一人の姫がアクビをしながらモニター室に入ってくると指揮をしている深海棲艦以外はその姫に膝をつく

 

 

「騒がしいわよ、こんな夜更けに

何してるのよ貴女は」

 

 

「っ!!姫様!誠に申し訳ありませんでした

貴女様の眠りを妨げてしまい!」

 

 

「それはこの際どうでも良いわ

で、この騒ぎは何?」

 

 

指揮をしている深海棲艦も姫の登場に驚いていたが他の深海棲艦と同じ様に膝を付き現状を説明する

 

 

「実は捉えていた艦娘

Z3(マックスシュルツ)Z1(レーベヒト・マース)の力を借り先程我々の目を掻い潜り脱獄しまして現在再び捕縛しようとしているところであります」

 

 

「ふーん、で見付けたの?」

 

 

「はい、現在我々の島を離れ近海を航行中です

ご安心くださいませ!必ずや我々が再度捕縛してみせましょう!!!」

 

 

「ふーん……あ、そうだ」

 

 

姫は指揮をしている深海棲艦を退けるとマイクに向けてある指示を出す

 

 

「全艦隊、撤退せよ

Z3(マックスシュルツ)の捕縛を中止せよ

繰り返す、全艦隊速やかに元の配置に戻れ」

 

 

「ひ!姫様!何故にマックスの捕縛を!?」

 

 

「ねぇ、アイツはこの島の事をどこまで知ってるの?」

 

 

姫はモニタールームにある小窓を開けると夜の海を眺める

 

 

「え、えっと……ここが姫様の居住区であること……だけでは無いですかね?

それ以外は連れ回してませんので」

 

 

「ふーん、じゃあ『地下』には行かせてないのね?」

 

 

「は、はい!そもそもあそこは一部の者しか行けませんので誰も知るわけがありません!!」

 

 

「なら良いわ、ねぇちょっと賭けをして遊ばない?」

 

 

その姫の言葉に驚き深海棲艦達は顔を見合わせていると指揮をしていた深海棲艦が内容を聞き出す

 

 

「か、賭け……ですか?」

 

 

「えぇ、あの方向

恐らくあの艦娘は日本を目指しているわ

その間に何の海がある?」

 

 

「えっと……『夜海』『赤海』『白海』…ですかね?」

 

 

「そうよ、それに私の艦隊も日本に行くまでぶつかるわよね?

もし、あの艦娘が日本までたどり着ければあの娘の勝ち

もし、たどり着けなければあの娘の負けよ

貴女はどっちに賭ける?」

 

 

その言葉に指揮していた深海棲艦は意味が分かりニヤリと笑う

 

 

「成る程、中々趣味の悪いことをお考えになりますね……

分かりました、その賭けに乗りましょう

私はたどりつけないに賭けますよ」

 

 

「うふふ、貴女のその性格好きよ?

じゃあ私はその逆に賭けるわ

少し退屈してたしねぇ、遊び相手が欲しいのよ」

 

 

姫は窓を閉めるとモニタールームを去っていきアクビをする

 

 

「じゃあ後はよろしく頼んだわよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私の右腕にして艦隊旗艦責任者 椿(ツバキ)

 

 

「はい、おまかせくださいませ姫様

貴女に頂いたこの名前に恥じぬ仕事を致しましょう」

 

 

指揮をしていた深海棲艦、改め椿は頬をニヤリと吊り上げながら笑い全艦隊に撤退命令と哨戒任務に出ている深海棲艦達に指示を出す

 

 

 

 

「お前達!!艦娘を見付けたら全力で潰しにかかれ!!」

 

 

 

(本当はもっと貴女を知りたかったけど仕方ないわよねぇ?マ ッ ク ス ちゃ ん?)

 

 

椿が不気味に笑うと周りの深海棲艦達はその恐ろしい笑いに背筋を凍らせる

 

 

 

 

 





次回

逃亡者

ある姫が住む島から脱出したマックス
だが彼女が進む道は決して楽ではなく苦の道であった
それでも、彼女は逃げる
自らを逃がしてくれた友の為に


因みにこの椿は古鷹過去編で出てきたツバキです
彼女が慕い従う姫の正体が明らかになります!
これがあのドイツ艦達が探していた二人になりますね!



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逃亡者

時は進み現在の時刻 0830

ここは横須賀沖の近海でありある艦隊が哨戒任務を終え帰投しようとしていた

 

 

「では!本日の哨戒任務を終了致します!

皆様!お疲れ様でした!」

 

 

「「「「お疲れ様です!」」」」

 

 

旗艦である、駆逐艦が全員に挨拶を終え少し毛延びをしていると後ろから一つの艦隊が近づいてくる

 

 

「あー!朝潮さんだーお疲れ様だよー!」

 

 

「あ、阿賀野(あがの)さん!お疲れ様です

哨戒ですか!」

 

 

「ううん!調査!東雲さんに言われてちょっと遠くまでね!

あー……お腹空いた……」

 

 

「ちょっと阿賀野姉!さっきおにぎり食べたじゃん!?」

 

 

朝潮に阿賀野近付くとお腹を擦っておりその後ろからは、酒匂(さかわ)矢矧(やはぎ)能代(のしろ)大鳳(たいほう)伊勢(いせ)の艦隊が朝潮達と合流する

 

 

「えー……あれだけじゃ足りないよー……」

 

 

「いや!阿賀野姉、6個も食べたじゃん!

まだ食べるつもり!?」

 

 

「うん!まだまだ行けるよ!」

 

 

「全く……貴女はどれだけ食べるんですか…」

 

 

「阿賀野さんは相変わらずだね……」

 

 

阿賀野の食欲に矢矧意外が呆れておりその間矢矧は朝潮に近づき敬礼をすると朝潮も敬礼をする

 

 

「お疲れ様です、朝潮さん

そちら本日如何でしたか?」

 

 

「お疲れ様です、矢矧さん!

こちらは全く異常無しです!

そちらは何か掴めましたか?」

 

 

朝潮の言葉に矢矧は首を横に振るう

それを見た朝潮は残念そうな顔をする

 

 

「やっぱり……ですか…」

 

 

「はい、やはり奥には行けませんでした

大元帥が調べている『例の姫』はやはりかなり奥地に居ると思われます

……やはり縄張りと言うだけですね、かなり強力な艦隊ばかりで前に進めません…後ニ、三艦隊は欲しいですね……」

 

 

「……飛行場姫の縄張り…やはり一筋縄では行きませんか…」

 

 

危険海域にして飛行場姫が統べている巨大海域

太平洋全域を閉め飛行場姫の艦隊が常時警戒しているため多くの深海棲艦と遭遇する

 

 

「……後で大元帥に怒られるのを覚悟しておきましょう

 

 

「だ、大丈夫ですよ!提督も言ってましたけど東雲大元帥はそこまで悪い人じゃないですから!!」

 

 

「そうだよ、矢矧!また謝れば許してくれるよ!!」

 

 

「わ、私達も謝るからさ!」

 

 

「あの人の希望に答えられないので私の責任よ……

でもありがと姉さん、朝潮さん」

 

 

矢矧は肩を落としながら撤退しようとすると大鳳と朝潮の艦隊に居る雲龍が何かを察知したのか太平洋方面へと顔を向ける

 

 

「……?どうかしましたか?雲龍さん?」

 

 

「…………何かこっちに来る」

 

 

「…数は?」

 

 

「……1……いや!21!!しかも!艦娘が深海棲艦に追われてる!!」

 

 

「「「「っ!?」」」」

 

 

 

大鳳の言葉に全員驚き矢矧は声を荒げる

 

 

「大鳳!案内して!」

 

 

「了解!」

 

 

「姉さん!皆行くわよ!!」

 

 

「オッケー!」

 

 

「雲龍さん!私達も行きますよ!!

朝潮艦隊!全艦突撃!!」

 

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

朝潮と矢矧は艦隊を引き連れ大鳳と雲龍の案内を頼りに全速力でその追われている艦娘を救うべく走り出す

 

 

「大鳳!どれぐらいで会敵(コンタクト)する!?」

 

 

「遠いですが後、五分程で!」

 

 

「艦隊全速力よ!飛行場姫の縄張りからの帰還者となると!どこかの攻略艦隊の生き残り!死なせるわけにはいかない!!

気を引き締めて行くわよ!!」

 

 

「了解!」

 

 

「分かったよ!!」

 

 

しばらく矢矧達は航行を続けていくと水平線の向こう側から水柱と煙が見える

 

 

「敵艦隊!見ユ!!」

 

 

「大鳳!艦載機を飛ばして!奴等から制空権を奪って!

伊勢!あの娘をお願い!!

姉さん!能代!酒匂!私達は周りを片付けるよ!!」

 

 

「分かりました!」

 

 

「任せておいて!」

 

 

「オッケー!派手にいっくよぉ!!」

 

 

「腕がなるわねぇ!!」

 

 

「やっちゃおー!」

 

 

矢矧が指示を出すと伊勢が突撃し大鳳が艦載機を飛ばしそれに合わせて雲龍も艦載機を発艦させていく

 

 

「お願い!!間に合って!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(もう少し………もう少しで………日本に……)

 

 

マックスはかなりボロボロの状態になりながら何とか日本の近海にたどり着いて居たがタンクが破壊され脚の艤装も壊され既に航行自体が危うい状態になっていた

しかも、後ろからはル級やリ級達が血眼になりながら追ってきており最早限界に近かった

 

 

(何か……見える気がするけど…もう……無理…

ごめん……レーベ…私……もう…)

 

 

そんな状態でマックスは後ろからは駆逐艦の攻撃を受けてしまいそのまま海面に倒れてしまい血が海水に滲んでいく

 

 

(あ………逃げなきゃ………日本へ……あぁ……動けない……や…も……う……無……理)

 

 

マックスはゆっくりと瞳を閉じるとル級が主砲をマックスへ撃ち確実に仕留めようとする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やらせないわよ!!あんたたち!!」

 

 

その瞬間マックスに着弾する筈だった砲撃を伊勢が艤装で防ぎマックスはその音に目覚める

 

 

「く……やっぱり飛行場姫の奴等か…かなり痛いじゃないの…貴女!大丈夫!?しっかりして!」

 

 

ぐったりとしているマックスは薄れいく意識の中微笑む

 

 

(あ………あぁ……艦娘………だ……助かっ……た………レーベ…………待って……て……ね)

 

 

伊勢の声を聞いて安心したのかガクンと脱力し意識を手放すと伊勢の前に矢矧達が立ち塞がる

 

 

「この娘は無事よ!!意識は無いけど、息はあるわ!!」

 

 

「了解!ありがとう伊勢!!

全艦隊!伊勢と重症の艦娘を守るわよ!!」

 

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

突然来た救援に驚いていた深海棲艦達であったがすぐに体制を立て直し矢矧達に襲い掛かる

 

 

 

「にしても、この娘……どこの艦娘なのかしら……

日本にこんな艦娘居ないと思うけど…」

 

 

伊勢はボロボロになっている艦娘を抱き抱えようとするとポケットから身分証が落ちそれを持ち上げる

 

 

 

「……嘘…この娘…ドイツの艦娘?

待って!何でこんなところにドイツの艦娘が居るの!?

この娘……何で一人で飛行場姫の縄張りから……」

 

 

更に困惑していながらも何とかその艦娘を守ろうと矢矧達は奮闘する

この結果が大本営に多大な影響を与えるとも知らずに

 

 

 

 

 





次回

小笠原の冬
そして得たもの


古鷹の話と長門が新しく加わった小笠原鎮守府は二度目の冬を迎える
昔と違うのは仲間が増えたと言うこと
そして小笠原全員は……


今回のお話でぶっちゃけ前半が終わります
え?後半があるのかって?
…ありますよ書いてて思ったのはこんなに長くなると思わなかった()


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冬の小笠原

冬、小笠原は大寒波と言うよりは正直何もない場所の為本島何かより遥かに寒い

だからこそなのではあるが鎮守府内もかなり寒く特に廊下なんてのは暖房も巷で有名な床暖房何てものもない

 

 

「あー……さみぃ…」

 

 

「仕方がありませんよ提督」

 

 

「これが日本の冬か……確かに寒いな…」

 

 

佐渡は仕事を終えグラーフと大井と共に廊下を歩いていたのが寒さにやられており少し厚着をしているのだが

 

 

「………今晩の飯は鍋だな」

 

 

「良いですね、何鍋にするんですか?」

 

 

「んー……グラーフ希望あるか?」

 

 

「私か!?……特にないな…アトミラールのは何でも美味しいからな……」

 

 

「そうきたか…嬉しいけどどうすっかなぁ」

 

 

「提督、確か野菜が余ってませんでしたっけ?」

 

 

「そう言えば……あ、キムチ鍋にするか

辛いの苦手な奴居ないはずだし」

 

 

「良いですね、それにしましょうか」

 

 

「キムチ鍋か……私は初だな…」

 

 

 

そんなくだらない話を続けながら廊下を歩いていると目の前から一人の艦娘が段ボールを運んでいた

 

 

「あれ?古鷹?どしたの段ボールなんか運んで?」

 

 

「あ、提督!皆がミカン食べたいって言ってて持っていく所なんですよ!」

 

 

「あいつらなぁ……代わりに運ぶよ

力仕事なら任せときな~

どこに持ってけば良い?」

 

 

段ボール一杯に入ったミカンを運んでおり佐渡はつかさずその段ボールを取ると古鷹の代わりに運ぶ

 

 

「あ、ありがとうございます!

居間ですね!何か皆グダグダしてたので悪いと思って……」

 

 

「古鷹さん!そう言うときは提督を頼ってください!

どうせこの人暇してるんですし」

 

 

「そうだぞ、古鷹!」

 

 

「お前らなぁ!!」

 

 

「「サボってる人が何を言ってるの?(んだ?)」」

 

 

「スイマセンデシタ!!!」

 

 

「あはは……」

 

 

四人は雑談をしながら居間に付くと佐渡が引き戸を開けようとするが大井が代わりに開けてくれ入った途端に全員に叫ぶ

 

 

「お前ら!古鷹に何やらせとんじゃ!!」

 

 

「あ、司令官……て、え?何の事?」

 

 

「あ~……提督デース……」

 

 

「あら佐渡、あんたが持ってきてくれたの?

サンキュー!」

 

 

居間に入ると真ん中にかなり大きいこたつが設置されており金剛とイムヤとエアの三人が暖まっており完全にのんびりとしていた

 

 

「てめぇか!エア!古鷹にこんな重たい物持たせるなや!!」

 

 

佐渡は段ボールの中からミカンを取り出すとコタツで暖まっているエアの頭部に向けて思い切りミカンを投げつけぶつける

 

 

「いったぁ!!何すんのよ!」

 

 

「うるせぇ!お前深海棲艦ならお前がやれよ!!」

 

 

「寒いから無理に決まってるでしょ!?あんた馬鹿なの!?」

 

 

エアと佐渡が喧嘩しているのを横目に大井と古鷹はそそくさと寒さに耐えきれずコタツに入っていく

 

 

「あー…やっぱり良いわね……コタツは…」

 

 

「ですねぇ……あぁ…最高ですね…」

 

 

「ごめんね、古鷹さん一人で行かせちゃって…」

 

 

「ううん!大丈夫だよ!そんなに遠くないし重くも無かったから!」

 

 

「グラーフ……入らないの……デース…かぁ…?」

 

 

古鷹達がコタツの中に入っているのにも関わらずグラーフだけはコタツに入らず怪しんでいた

 

 

「う、うむ……なんと言うかこれは何なのだ?」

 

 

「コタツよコタツ、簡単に言えば脚と身体を暖める暖房器具よ」

 

 

「ふ、ふむ…そんなに良いものなのか?」

 

 

「最高デース……よぉ…冬は…これが…一番…デース……ふぅ…」

 

 

金剛が完全に腑抜けておりその姿を見ていると危険な物なのかと警戒していると古鷹がコタツから出てグラーフの背中を押す

 

 

「大丈夫ですよ、危険ではない……とは思いますので!」

 

 

「待ってくれ古鷹!その間は何だ!?」

 

 

「入れば分かるわよグラーフー

ま、入ったら出れなくなるけどね~ふふ」

 

 

「待て!今イムヤが恐ろしいことを言わなかったか!?」

 

 

「ほらほら!入りましょう!入れば分かりますよ!!」

 

 

中々入るのを渋っているグラーフを見てなのかエアが目を光らせ瞬時にコタツの中に入り込みグラーフの足下から両手を取り出し掴む

 

 

「いらっしゃ~い?二度と出られない天国に~?」

 

 

「や、辞めろ!エア!!」

 

 

その瞬間エアはグラーフの脚を軽く引っ張ると無理矢理腰を落とさせそのままズルズルとコタツに引きずり込んでいく

 

 

「ふふふふ……抵抗しなくて良いのよぉ……身を任せなさーい?貴女を天国と言う抜け出せない魔窟へ……」

 

 

「や、辞めろ!辞めてくれぇぇぇ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それからエアがグラーフをコタツに引きずり込んで五分後

 

 

「あぁぁぁ~……これは……これはぁぁぁ~…」

 

 

「はい、一丁上がり!」

 

 

先程まで騒いでいたのにも関わらず完全にコタツの虜になりグッタリとしていた

 

 

「にしてもデカイコタツだな

親方が作ったの?」

 

 

「はい、どうやら去年から作ってたみたいなんですよ!

人が増えたら使ってくれって」

 

 

「あの人万能過ぎないか?」

 

 

そう言うと佐渡もコタツに入り五人はのんびりとする

 

 

 





次回

コタツでのんびりと

古鷹の事件が終わり平和な日常が戻った小笠原
相変わらずの艦隊運営が無く皆各々の冬を過ごしていく



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冬の小笠原 二

しばらくコタツでのんびりとしていると佐渡はコタツの向こう側にぐったりと倒れている人影に気付く

 

 

「うん?そこに誰か倒れてないか?」

 

 

「うーん?……あぁ長門の事?」

 

 

「長門ぉぉぉぉぉ!?」

 

 

流石に倒れているのが金剛とかイムヤなら分からなくないが珍しく長門が倒れておりそれに驚いた佐渡は急いでコタツから出ると長門に駆け寄りうつ伏せの状態で長門の背中をゆする

 

 

「……その声は佐渡提督か?すまない無様な姿を見せてしまい」

 

 

「いや、それはどうでも良いんだけど……どしたの?」

 

 

「いや……その…ハハハ…」

 

 

「叢雲の特訓を受けたんデースよ

しかも全て」

 

 

金剛の言葉を聞くと佐渡は意味を理解し苦笑いをする

 

 

「あー…お前…マジであれやったの?」

 

 

「……あぁ…やったよ……何だあの訓練…意味が分からん……」

 

 

長門が倒れていると金剛が呟く様に訓練内容を言う

 

 

「朝四時から小笠原を一周

終わったら筋トレ全て百回ずつ

ご飯後に砂浜でのランニング、その後海上で砲撃練習

次に山登りと崖を命綱無しでの訓練に筋トレ……

それを丸一日とか……ね?何ですかあれ

どれだけ、筋肉を苛めれば良いんですか?」

 

 

「……叢雲の動きの理由が分かったよ…あれを簡単にこなすとはとんでもないな…本当に」

 

 

「そんでお前はそれをやって?」

 

 

「…全身筋肉痛だ、動けないんだ……」

 

 

「納得した、コタツ入る?」

 

 

「……すまないが、痛くて動けないんだ……引っ張ってくれないか?」

 

 

「エアー、金剛ー頼むー」

 

 

「「はーい」」

 

 

長門は二人に引っ張られながらズルズルとコタツに入れられるとその暖かさを堪能しながら筋肉痛に苦しむ

しばらくのんびりしていると引き戸が開き風呂上がりの叢雲が入ってくる

 

 

「あら、ここに居たの?あんた達?」

 

 

「お、叢雲か

風呂上がりか?」

 

 

「そうよ、イーちゃんと入ってたのよ」

 

 

叢雲の足下からイーちゃんが顔を出し佐渡に向けて走り出すと飛び上がり背中にしがみつく

 

 

「おー、イーちゃん良い香りがするね~

コタツ入る?」

 

 

佐渡がコタツの布団を持ち上げるとイーちゃんは背中から飛び降り警戒するがゆっくりと入っていき丁度真ん中をぐるぐる回るとそのまま丸くなりながら眠る

 

 

「はは、まるで猫だな」

 

 

「深海棲艦よ、忘れないでよねお馬鹿」

 

 

叢雲は佐渡の後ろから頭を叩くと隣に入りイーちゃんに足が当たらないように入ると暖かさを堪能する

 

 

「今年は良いわね……昔こんなの設置出来なかったし」

 

 

「だなー……あの時は中々に酷かったもんなぁ」

 

 

「あ、司令官!私、司令官達が初めて来た頃の鎮守府を聞きたい!」

 

 

「それ、確かに私も気になるな

エアも知っているんだろ?」

 

 

「まぁねん、と言ってもここが修繕されている様子とはか知らないけどね

佐渡に聞きなさい、私はお風呂を使ってただけだし~」

 

 

「じゃあ暇だし話すかぁ

古鷹ー、叢雲ー、補足は頼んだぞ~」

 

 

「はいはい」

 

 

「分かりました!」

 

 

そんなこんなで佐渡達は昔の鎮守府がどうなってたかを話していると外が少しずつ暗くなっているのを確認し佐渡がコタツから出る

 

 

「時間か、さてと飯でも作るかぁ……

おい、エア

今日ソラさん達は帰ってくるのか?」

 

 

「帰ってくるわよ、多分もう少しじゃないかしら?」

 

 

すると廊下から五人の足音が聞こえ居間の引き戸が開く

 

 

「ただいま戻りました姫様……と佐渡様方も一緒でしたか!」

 

 

「あ、おかえりソラさん

丁度良かった

今晩、ご飯は食べて行くかい?」

 

 

「うーん、いえ私達はーーー」

 

 

「食ベル!」

 

 

「チョット!ソラ食ベマショウヨ!!

私、オ腹ペコペコナンダケド!!」

 

 

「ワ、私モ食ベタイデス!」

 

 

「私モ!」

 

 

「こら!貴女達!」

 

 

「ハハハ!良いよ、今夜は鍋だけど大鍋幾つか必要かな?」

 

 

「すみません…お世話になります…

あ!後佐渡様!鎮守府玄関前にこんなものが来てましたよ?」

 

 

「おん?これって……テレビか?」

 

 

「あー!来たのね!それ!!」

 

 

叢雲がコタツから飛び出るとソラが持っていたテレビを受け取ると嬉しそうに喜ぶ

 

 

「何だ、こんなの買ってたのか?」

 

 

「違うわよ、大元帥に頼んどいたのよ

古鷹の事これ以上言われたくなかったらこれぐらい寄越せってね」

 

 

「悪どいなお前……」

 

 

「この程度で許してやるんだから安いもんよ

イムヤ、大井設置するから付き合いなさい!」

 

 

「はいはーい」

 

 

「分かったわ」

 

 

三人は居間の真ん中にテレビを設置しようとするとαとβがコタツに入ろうと佐渡の横を通り抜けようとするが

 

 

「待て、お前達磯臭いままコタツに入るつもりか?」

 

 

「ダッテ」

 

 

「寒イノ!良イデショ!?」

 

 

「風呂に入ってからです、ほら行きますよ」

 

 

「「エー!!」」

 

 

「また拷問されたいか?」

 

 

「「ゴ、ゴメンナサイ!!」」

 

 

ソラに低い声で脅された二人はダッシュで廊下を走って逃げるとソラは溜め息を付く

 

 

「全く……あ、佐渡様

鍋でしたら私も手伝えると思いますのでお風呂上がりに向かいますね!!」

 

 

「ワ、私モ手伝イマス!」

 

 

「私モ!」

 

 

「そいつは助かるなぁ、何せ人数が多いからなぁ」

 

 

「あ、提督!私も手伝いますよ」

 

 

「お、マジか頼むわ古鷹!」

 

 

「お前らも飯前には風呂に入っとけよなー?」

 

 

「「「「はーい!」」」」

 

 

佐渡は残っている全員に言うと古鷹と共に食堂に向かい鍋の晩御飯である準備をしにいく

 

 

 

 

 






次回 

深海棲艦を含めた夜

出掛けていたソラ達も帰投し小笠原は賑やかな夜を迎える
平和そのもののこの島では何も起こらずにのんびりと皆は過ごしていく


何だろう、作者的には凄い日常が書きやすい……





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冬の小笠原 三

「さてと、今日は鍋だから簡単に作るか」

 

 

「そうですね提督!」

 

 

古鷹と佐渡は寒い厨房で古鷹が野菜を切る係りと佐渡がキムチスープを作る係りと分かれ手際よく料理を進めていた

 

 

「それにしても、古鷹って意外と料理上手いよな?

もしかしてやってたのか?」

 

 

「はい、昔佐世保でちょくちょくやってましたよ!

良く加古や青葉何かにもお菓子や簡単な料理を作ってたんですよ?」

 

 

「へぇ?そいつなら納得だわ

にしても、炊事洗濯家事完璧で気立ても良いとかもう嫁に行ったら最強じゃねぇかよ」

 

 

「そ、そんなことないですよ!

提督ほど料理は上手くないですし…家事は良く向こうでやってましたから……」

 

 

「謙遜するなって充分に上手いよ

いやー……こんな人が嫁に来てくれた男は嬉しいんだろうなぁ」

 

 

佐渡は呟くように言うとスープの味見をしていると古鷹の手が止まり顔が真っ赤になっている

 

 

「て、……提督は…その……家庭的な…艦娘は……好きですか?」

 

 

「っ!ゴホッ!ゴホ!」

 

 

「だ、大丈夫ですか!?提督!」

 

 

「お、おう……大丈夫だ!心配するな……」

 

 

味見をしていたスープでむせると古鷹に背中を擦られる

 

 

「……古鷹、いきなり言うなよ…」

 

 

「ご、ごめんなさい……つ、つい…」

 

 

この前の古鷹からの告白が佐渡にはかなり効いているらしくあれ以来古鷹を艦娘と言うよりは一人の女性として意識しており少しの行動や発言だけでも動揺していた

 

 

「な、何だ

家庭的な艦娘は誰でも好きだと思うぞ!」

 

 

「て、提督は……どうですか…?」

 

 

「うっ」

 

 

古鷹に上目遣いで見られてしまい佐渡はそっぽを向くと小さな声で呟く

 

 

「………好きだぞ家庭的な艦娘」

 

 

「!

やった!では頑張りますね!」

 

 

佐渡からの発言に古鷹は喜ぶと元の持ち場に戻り鼻歌混じりに野菜を切っていく姿が様になっており佐渡は頭を掻く

(やべぇ……素直にあれが嬉しくて動揺しちまう…

クソ…死神が情けねぇ……

古鷹が……嫁か……)

 

 

不意にそんなことを考えると容易に想像でき佐渡は思い切り床に頭をぶつける

 

 

「て、提督!どうかされたのですか!?」

 

 

「え!あ!いや何でもないよ!!

アハハハハ!!

よぉし!晩御飯作るぞぉ!!」

 

 

頭の傷口から少し血を流していると古鷹は溜め息混じりに戸棚から救急箱を取り出す

 

 

「提督、血出てますよ見せてください」

 

 

「うん?大丈夫だよこの位」

 

 

「駄目です、その傷からバイ菌が入っては困ります

座ってください」

 

 

「……はいよ」

 

 

佐渡は渋々椅子に座り古鷹の治療を受けていると目の前に古鷹の程よい胸が見え直ぐ様目を反らす

(ああぁぁぁぁ!!!何で古鷹はこんなに無防備何だよ!!

いや!あれだよ!?信頼されてるってのは分かるけど俺は男だぞ!!

クッソ!金剛やグラーフとかなら何とかなるのによぉぉぉぉぉぉ!!!)

 

 

歯を食い縛り治療を待っていると手際よく治療を済ませ佐渡のおでこに絆創膏を張る

 

 

「はい、終わりましたよ!

全く提督?気を付けてくださいね、皆心配しますからね?」

 

 

「あ、あいよ……」

 

 

そんなことをしていると佐渡はふと誰かに見られている視線に気付き食堂の扉を見ると少し開いており三人が覗いていた

 

 

「………夫婦ですね正に」

 

 

「オ似合イ……」

 

 

「グッド」

 

 

 

「ふ、夫婦って!?」

 

 

「………何を覗いてるのさ三人とも?

手伝ってくれますかねぇ!?」

 

 

いつの間にかソラ、γ、Σが風呂を上がって居たらしく佐渡達を覗いていた

その姿に佐渡はため息と共に冷静さを取り戻す

だが、ソラに夫婦と言われた古鷹は終始真っ赤だった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「いやー、ごめんね三人とも助かったよ」

 

 

「いえいえ、これぐらいは当然ですよ

それでαとβはどこ行ったのですか?」

 

 

ソラとγ、Σに古鷹はそれぞれ鍋とご飯を専用の台車で運んでおり佐渡も食器を運んでいた

 

 

「イ、居間ダト思イマス!!」

 

 

「コタツ強イ」

 

 

「あんの馬鹿共はぁぁぁぁ!!!

後でゲンコツしますかね!!」

 

 

「まぁまぁ、ソラさん

程ほどにしてあげてくださいね?」

 

 

ソラは拳を握り締めながら怒りしばらく廊下を歩いていると全員が集まっているであろう居間にたどり着きドアを開ける

 

 

「おまえらー、飯だぞー」

 

 

「待ってましたー!」

 

 

「んー、司令官ー今晩はなぁにー?」

 

 

「キムチ鍋だよ、ご飯もあるからな」

 

 

「キムチ鍋!?食ベタコトナイ!!」

 

 

「少し辛いのよ、でも口に合うと思いますよ」

 

 

「早ク食ベタイ!」

 

 

「深海棲艦の口に合うかは分からないけど

エアが美味しいって言ってるんだし大丈夫かな?」

 

 

 

何だかんだで大井達もすっかりエアやα達に馴れ隣同士で座ってたりのんびりとコタツに入りながら談笑していた

その光景に佐渡は微笑むと五人で料理の準備をしていく

 

 

「よっし!やれ!!」

 

 

「そこ!そこデース!!」

 

 

「あちゃー……下手くそねこいつ

逆転されてるじゃないの」

 

  

その間叢雲と金剛とエアは新しく創設したテレビに夢中になりながら見ていたのだが一つ疑問に思い大井に聞く

 

 

「…なぁ大井、うちって電波来るの?」

 

 

「来ますよ?

叢雲が脅しをかけた時ついでに私が大元帥に言って流してもらうようにしてもらったんです

後、アンテナは親方さんが作ってくれまして」

 

 

「万能過ぎかよあの人

風呂作れて艤装直せてコタツ作れてとか最早どこの発明家……てかどうやって作ってんだおい

どっかの駆逐艦はテレビ欲しさに大元帥脅すし

電波欲しいから直談判するし

アンテナ作るし

誰だよこんな鎮守府にしたの

提督出てこいや!!」

 

 

「「「「「「貴方ですよ!!!(デース)」」」」」」

 

 

「はい、すいませんでした」

 

 

佐渡の呟きに全員からツッコミを受け少しへこむと各々笑いあっており溜め息をつく

そうこうしてる間に食事の準備が終わり全員はコタツに入る

 

 

「んじゃ、食うか

いただきます」

 

 

「「「「いただきます!!(イタダキマス!!)」」」」

 

 

その合図と共に一斉に三つほど並んでいる大鍋をそれぞれ手を付けながら食べていく

 

 

「うむ!これは少し辛いな

だが、身体の芯から暖まる……うんいいなこれは!」

 

 

「そいや、グラーフは初か

辛くないか?」

 

 

「大丈夫だ!この位ならむしろ好きな位だ!」

 

 

グラーフは野菜や肉を均等に取っていき食べておりその隣ではイムヤも食べているが少し辛いのが苦手なのか、かなりゆっくり食べていた

 

 

「辛いの苦手か?イムヤ?」

 

 

「そ!そんなこと………ううん、苦手…これぐらいなら行けるけどね!」

 

 

「じゃあ、次は辛くない鍋作るからな

それとももう一つ作ってこようか?」

 

 

「良いよ!美味しいし、また今度お願い!」

 

 

「おう!今度はコラーゲン鍋でも作ろうかな?」

 

 

佐渡はそんなことを呟きながら食べているとコタツの布団がもぞもぞと動きイーちゃんが顔を出す

 

 

「お、イーちゃん起きた?

もしかして、匂いに釣られたな~?」

 

 

佐渡の質問にイーちゃんはコクコクと頷くと膝の上に座り佐渡と共に食事をとる

 

 

「ほい、イーちゃんあーん?」

 

 

佐渡はキムチ鍋から肉や野菜を取り出すと息を吹き掛け冷ましイーちゃんの口に運ぶ

その運ばれてきた食べ物を食べながら頭を縦に振るう

 

 

「お、イーちゃん美味しい?」

 

 

「ワン!」

 

 

「そうかそうか良かった良かった

まだ食べるかい?」

 

 

「ワン!!」

 

 

佐渡の質問に元気よく答えると佐渡は自分が食べるのを辞めイーちゃんに食べ物を与えていくとエアが近付いてくる

 

 

「にしても不思議よね、何でこんなに懐いてるなんて」

 

 

「そうなのか?」

 

 

「えぇ、普通の深海棲艦の中で特に駆逐艦は警戒心が高いのよ

どの深海棲艦よりも」

 

 

「うん?何故に?」

 

 

「それは佐渡様、『駆逐艦』だからだと思いますよ

重巡や軽巡とかと違い彼女達は私達の中で最も低い装甲と火力です

だからこそ、それを最大限に行かすために自らの弱さを理解し戦います

それが結果として警戒心が高く懐かないんです

たとえそれが姫だとしても

私も駆逐艦だけは扱うのが難しいですから……」

 

 

ソラがそう説明すると佐渡はイーちゃんを見るがそんな様子は全く無く佐渡から貰うご飯を美味しそうに頬張っている

 

 

「……そうなの?」

 

 

「そうよ?私だって駆逐艦は多様するけど懐かないのよ

だからその点は本当に羨ましいわ……こんなにマジマジと見れる機会もないしね」

 

 

エアはイーちゃんの頭を優しく撫でると気持ち良さそうにしている

 

 

「ふーん…でも確かにイーちゃんは初めてあったーーーーー」

 

 

「ぬあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

佐渡が話していると突然金剛が両目を押さえながら叫び声を上げるながら苦しんでおり大井とβが心配そうにしている

 

 

 

「おいおい、突然どした?」

 

 

「大井様ノキムチスープガ目ニ入ニッラシイ」

 

 

「何してんだよ大井……」

 

 

「ち!違いますよ!私が食べようとしたら金剛が取った茸が私のスープに落ちてその飛沫が金剛の目に入ったんですよ!!」

 

 

「どんな確率だよそれ!!」

 

 

「目がぁぁぁぁぁぁ!!!目がぁぁぁぁぁぁ!!!

焼けるぅぅぅ!!焼けるぅぅぅ!!」

 

 

「あー落ち着け金剛、大井、βさん金剛を洗面台に

水張って瞳を洗ってやってくれ」

 

 

「了解」

 

 

「分かりました!

ほら、行きますよ金剛」

 

 

「うぅぅぅぅ!!痛い……痛いよぉ…」

 

 

金剛は目を押さえながら二人に連れられ居間を後にすると佐渡は溜め息をつく

 

 

「大丈夫かよ、金剛は」

 

 

「意外と痛いですからね、しかもキムチスープだと辛いですから……」

 

 

佐渡の真向かいに座っていた古鷹が苦笑いをしていると隣に座っている長門が一口も食事に手をつけておらず古鷹が心配する

 

 

「……長門さん?キムチはお嫌いですか?」

 

 

「ん!い、いや!嫌いではないぞ!!」

 

 

古鷹に言われ長門は箸を取りキムチ鍋の具材を取ろうとするが

 

 

「うぐ!」

 

 

突然長門は箸を落とし両腕の筋肉痛が痛みそのままプルプルと震える

 

 

「……もしかして、そんなに痛いんですか?」

 

 

「………うむ…情けない話だがな…」

 

 

「あの程度で苦しむの?情けないわね」

 

 

「いや、苦しまないお前が可笑しいよ叢雲」

 

 

「ソンナナノ?叢雲様ノ訓練ッテ?」

 

 

「大したことないわよ、今度やる?α」

 

 

「ヤリタイワ、身体鈍ッテルカモダシ」

 

 

「いや、やめーーー」

 

 

αのその発言を聞いた瞬間に長門が止めようとするが古鷹が首を横に振るい佐渡はそっと手を合わせる

だが長門が食べれないのを可哀想に思ったのか古鷹が鍋から具材を取ると息を吹き掛け冷ます

 

 

「はい、長門さん

あーん?」

 

 

「んんん!?い、いやそこまでは悪い!」

 

 

「良いから食べなさいよ

古鷹の思いを無下にするつもり?」

 

 

叢雲に言われ古鷹を見ると微笑んでおり長門は顔を赤くしながら口を開け具材を食べる

 

 

「美味しいですか?」

 

 

「…………うむ」

 

 

「ふふ、良かったです

次は何を食べたいですか?」

 

 

「…………肉団子…が…いい…」

 

 

「はい、熱いですから切って一口サイズにしますね?」

 

 

古鷹は肉団子を切り分けると息を吹き掛け冷ましていくと再び長門に食べさせていく

 

 

「にしても平和だなぁ」

 

 

喧嘩も闘争も戦争すら感じさせない小笠原は今日も今日とて平和である

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本島では事態が大きく動くとも知らずに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本島、大本営医療施設にて矢矧、朝潮に保護された艦娘

Z3(マックスシュルツ)はベッドの上で明石と大淀によって治療を受けていた

マックスは全身を砲撃を受けボロボロ更に艤装もしばらく動かせないほどに壊され生きているのがやっとだった

 

 

「にしても酷い怪我ですね……しかも単艦でここまで来るなんて……」

 

 

「えぇ、普通あり得ません

でも飛行場姫の縄張りから来た艦娘ですか……一体この娘はどうやってここまで……」

 

 

と大淀がマックスの手を取ろうとした瞬間いきなりマックスが大淀の手を取る

 

 

「大淀!!」

 

 

「っ!?マックスさん!?

貴女!!」

 

 

人口呼吸器を付けているがもう片手でそれを外し無理矢理にでも起き上がるが二人は止めようとする

 

 

「マックスさん!駄目です動かないで!!」

 

 

「貴女!それ以上動いたら!」

 

 

「ーーーーけて」

 

 

 

「え?マックスさん?」

 

 

マックスは息も絶え絶えになりながらも苦しそうにだが残り少ない体力を振り絞り大淀と明石に助けを求める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「たす………けて!!…私の……仲間……が…!飛行場……姫…の……泊地……に……捕まっ……てる……の!……お願い!!……レーベを……あの娘を…助けて!!!」

 

 

「ま、まさか貴女!?」

 

 

「貴女!飛行場姫の泊地から逃げてきたんですか!?

その泊地を知ってるんですか!?」

 

 

 

彼女は、マックスが捕まっていたのは飛行場姫の泊地

 

 

 

そう、彼女が知っていたのは太平洋を支配する姫  

 

歴戦種 飛行場姫 カナの支配する海域を知りその泊地の情報を持ち込んだのだった

これが引き金になったのは言うまでもない

 

 

 

 





次回

小笠原艦隊改装!

平和だった小笠原に大本営から召集が掛かった
しかも全ての艦娘と言う異例ではあるが佐渡達は向かう


椿の主人が誰か判明しましたね
そう、飛行場姫歴戦種カナ
太平洋を支配し他の海域を守護する化け物です!

因みに椿はかなり重要な立ち位置に居ますのでちょっと今回も伏線を張っていきます!


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大規模作戦

キムチ鍋の日から五日が経過し佐渡達は何故か分からないが大本営に召集がかけられ鎮守府総出で呼ばれていた

 

 

 

「にしても何で俺達が呼ばれたかねぇ……

大井、何か分からねぇの?」

 

 

「………思い当たる節は…まぁいくつか?」

 

 

「…久しぶりだなここに来るのも」

 

 

珍しく、と言うよりは初めて全員が集まり大本営を見上げているが金剛とイムヤは敵意をむき出しにしている

 

 

「………提督ー?ここぶっ壊していいデース?」

 

 

「……司令官、ここにありったけの魚雷撃ちたいわ」

 

 

「辞めんか、そんなことしたら俺でも庇いきれん」

 

 

「あんた達……やるならバレないようにやりなさい」

 

 

「ちょ!ちょっと叢雲まで!?」

 

 

何故か三人はかなり敵意を剥き出しにしており佐渡は深く溜め息をつくと先頭をきって歩き始める

 

 

「行くぞ、あんまり時間無いみたいだしな」

 

 

その後ろを叢雲達は付いていき扉を開けるといつも通りお出迎えが居るのだが

 

 

「どもども!青葉です!!

お待ちしてましたよ!佐渡提督!小笠原鎮守府の皆さん!」

 

 

「あれ、青葉ちゃん?

どしたのこんなところで?」

 

 

「あれ?青葉、何でここに?」

 

 

「青葉デース!でも佐世保所属デースよね?」

 

 

いつもなら憲兵や大本営所属の人が出迎えるのだが何故か青葉が迎えて来ており驚く

 

 

「え?……あぁ!すいませんお伝えしてませんでしたね

私、実は佐世保鎮守府を辞めたんですよ」

 

 

「はい!や、辞めた!?」

 

 

「はい、元々あの鎮守府には長居するつもりはなくてですね……あはは……

小笠原に行きたかったのですが、流石に通らなくて……

それで、検討する条件として大本営でしばらく働き活躍を見せろって大元帥に言われましてね」

 

 

「それで、大本営所属に?」

 

 

「えぇ、極めて遺憾ではありますがその代わりに小笠原の事は私もバックアップしますよ!

伝達や運搬も青葉にお任せあれ!!

それに大本営に居た方がここで行われている悪事を見付けやすいですから

そう言うことが行われていた場合佐渡提督に即時お伝えする事も出来ますしエアさんに依頼できますしね?」

 

 

「そいつは助かるけど……エアといつの間に仲良くなったんだ?」

 

 

「藤谷さん密告の時古鷹さん談義で……」

 

 

「流石、我が天使

深海と艦娘の壁越えたぞおい」

 

 

「え……えぇ……二人とも…」

 

 

古鷹が困惑する中青葉と言う強力な後ろ楯を佐渡達は新しく手にいれ青葉に案内されながら小笠原鎮守府一行はある場所に連れていかれる

若干エアと青葉が仲良くしているのに不信感を覚えるがエアも艦娘を騙すとも思えないから気にしないことにする

 

 

「にしても、何で俺達呼ばれたんだ?

なんかしたっけ?」

 

 

「……あれ?聞いてないんですか?

今回皆さんが呼ばれたのは改装だからですよ?」

 

 

「………………おん?改装?」

 

 

佐渡は首をかしげながら大井を見るが大井は首を横に振るう

 

 

「え?伝わってないんですか?

今回、皆さんをお呼びしたのは大演習会で小笠原艦隊の全員が改装出来ると判断され大元帥の判断で全員を改装しろと………あれ?可笑しいな、確かメールしたって聞いたのですが…」

 

 

再び大井を見るが首を横に振るいグラーフを見ると唸っていた

 

 

「おい待てグラーフ、お前まさか知ってるな?」

 

 

「…………あぁ、もしかしてあれ…だったのか?

『小笠原へ、お前らに改装許可が降りたから早く大本営に来い』って奴なら来てたな」

 

 

「「それじゃねぇか(じゃないですか)!!!」」

 

 

佐渡はグラーフの頭を掴むとギリギリと握りしめていきグラーフは痛みに苦しむ

 

 

「何で連絡しなかったんだおい!!」

 

 

「いただだだだだだ!!す、すまないアトミラール!

送られてきたメールの先が大本営じゃなかったから分からなかったんだ!!

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!」

 

 

「ほほう?それはちょっと青葉気になりますねぇ?

それはきちんと大本営のパソコンから送らないといけないのに送るはずの誰かが私用パソコンで送信したんですねぇ?

後で大淀さんと羽田さんに手伝って貰ってきっっつーいお仕置きをしないといけませんねぇ……」

 

 

グラーフの発言に青葉は少し殺意を漏らしながら話を聞くと直ぐ様携帯を取り出し羽田に事の顛末を連絡していると全員を大本営の工廠へと案内する

 

 

「着きましたよ、では青葉はまだやることがありますので終わりましたらまた来ますね!」

 

 

「あぁ、ありがとう青葉ちゃん」

 

 

「ありがとう青葉」

 

 

青葉は立ち去ろうとするのだが後ろを振り向きおもむろに古鷹に抱き付くと顔を埋める

 

 

「あ、青葉?」

 

 

「……少し、このままで居させてください」

 

 

「ふふ、良いよ

すみません提督?」

 

 

「あぁ、ごゆっくりどうぞ

先に行ってるぞ」

 

 

古鷹と青葉を残して佐渡達は工廠へと入っていくと珍しく明石さんが居らずその代わりに夕張が暇そうにだらけていた

 

 

「あれ?佐渡提督!?

ど、どうしたのさそんなに引き連れて!!」

 

 

「やっほー夕張さん

実はうちの艦隊を改装してくれるって聞いてさ連れてきたんだけど……」

 

 

「あぁ~……となると佐渡提督の所『も』何だ?

ちょっと待っててね!」

 

 

「も?」

 

 

その言葉を聞くと佐渡は大井とグラーフを見るが二人とも首を傾げており夕張は奥に入っていき明石を呼び出す

しばらくすると奥から明石がこちらに向かってきており顔を出す

 

 

「佐渡提督!お久しぶりです

後、お待たせ致しました!こちらです!」

 

 

「ほいほい、じゃあ今日はよろしくお願いいたします」

 

 

明石が工廠内を案内していき一番奥の部屋改装室まで行くと佐渡と叢雲達と別れる

 

 

「じゃあ、俺は待ってるからな」

 

 

「えぇ、また後でね司令官」

 

 

「行ってきます、提督」

 

 

「改装なんて初めてデース!」

 

 

「では皆さんこちらにどうぞ

………あれ?古鷹さんは?」

 

 

明石が全員を確認しようとし周りを見ると古鷹だけ居らず辺りを見渡すと佐渡の後ろから古鷹が走ってくる

 

 

「ご、ごめんなさい!お待たせ致しました!」

 

 

「大丈夫ですよ

これで全員ですね

では皆さん検査を受けた後に全員改装しますので指示に従ってくださいね?」

 

 

明石は手際よく説明していき叢雲達はその後ろを付いていくと佐渡は近くの自販機から珈琲を買うと一人ベンチに座りながらのんびりとする

 

 

「にしても改装か……あいつらも一応艦娘何だなぁ」

 

 

「そりゃ、そうだよ

見た目は普通の女の子なのにねぇ」

 

 

不意にのんびりしていたら夕張が近付いてきており佐渡の目の前に立っていると佐渡はベンチを叩く

 

 

「隣、失礼するね」

 

 

「あいよ、にしても珍しいね?

夕張さんが工廠で開発とかしてないの?」

 

 

「今日は休みなんだ、明石さんが改装で忙しいから私はその代わりの店番」

 

 

「成る程ね」

 

 

夕張は近くの自販機で飲み物を買うと佐渡の隣に座り二人はのんびりと飲み物を飲む

 

 

「にしてもいつの間にか増えたんだね

小笠原艦隊」

 

 

「あぁ、あれから金剛、イムヤ、グラーフ、長門が増えてな

今ではかなり騒がしくなったよ」

 

 

「ふふ、聞いてるよ

まーた艦娘助ける為に無茶してたんでしょー?」

 

 

「あはは、まぁいつも通りにね?

別に大したことはしてないけどね」

 

 

佐渡は珈琲を飲みながら夕張と話していると夕張が何となく呟く

 

 

「………ねぇ、佐渡提督

佐渡提督の鎮守府ってまだ艦娘受け入れてる?」

 

 

「うん?どしたの急に?」

 

 

「……嫌さ、私も行きたいなぁと思ってさ?」

 

 

「辞めといた方が良いよ?

マジで何にもない場所だから」

 

 

「でも、楽しそうな仲間と佐渡提督が居るよ?」

 

 

その発言に驚き夕張を見るといつの間にか佐渡を見つめておりその目は真面目な面持ちをしていた

 

 

「……辞めときな、うちは最前線だしいつ戦いになるか分からない危険な所なんだ

夕張さん見たいな艦娘が来て良い場所じゃないよ」

 

 

「…ねぇ、佐渡提督

貴方の鎮守府って問題を抱えた艦娘を引き取ってるんだよね?」

 

 

「うん?ま、まぁね?

と言うか引き取っていると言うか流されてくると言うか……ね?」

 

 

「ふーん……じゃあ、私も一応その条件はクリアしてるんだよね」

 

 

夕張の発言に驚いた佐渡は夕張を見るが夕張は少し哀しそうな顔をしていた

 

 

「夕張さんーーーー」

 

 

「佐渡提督!!」

 

 

佐渡が夕張の名前を呼んだ瞬間青葉が走って階段を降りてきており驚きながらも話を聞く

 

 

「…どしたの?青葉ちゃん?

そんな急いで」

 

 

 

青葉は全速力で走ってきたのか息を上げており佐渡の前に着くと膝に手を起き深呼吸をする

 

 

「はぁ、はぁ、この後って何か後用事とかはありますか!?」

 

 

「え?いや?特には無いけど」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「佐渡…提督、及び幾つかの鎮守府に緊急召集が掛かってます!

至急、秘書艦又は艦娘一人を連れて作戦会議室に来てほしいとの事です!」

 

 

その緊急召集に佐渡は前と同じ感じがし嫌な予感を巡らせる

 

 

 





次回

緊急召集

叢雲達の改装時に突然の緊急召集
しかも今回は艦娘同行が条件付きと言う異例の召集
佐渡達は不安の中作戦会議室に向かっていく
それが運命を分けるとも知らずに


夏イベント欧州作戦ですねぇ……
今回は完走と堀をやらないとなぁ




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大規模作戦 二

佐渡と青葉は叢雲達の改装を二人で待っており少し落ち着かない様子だった

 

 

「……なぁ、青葉ちゃんさっきのって」

 

 

「はい、羽田元帥からの緊急召集です

ですが、内容は明かされてません

どうやらそれを言うのは駄目らしく私達にも伝えられてません

それに加え選ばれている鎮守府もかなり強力な鎮守府ばかりです」

 

 

「……ってことは」

 

 

「恐らく、どこかの鎮守府が襲われているか

それとももしかしたら……」

 

 

青葉と話していると明石が改装室から出てきており佐渡に気付く

 

 

「あ、佐渡提督!

お待たせ致しました、改装終わりましたよ!」

 

 

「お!ありがとう明石さん!」

 

 

明石がそう言うと改装室からイムヤとグラーフから一人ずつ現れていく

 

 

「あれ?司令官待ってたの?」

 

 

「そりゃあな?お前達の初改装だからそりゃ待ってるさ」

 

 

「ではすまなかったなアトミラール

お待たせしたな」

 

 

「えっと、グラーフさんとイムヤさんは改二改装は出来ませんので改までの改装になります

艤装の変更などはほとんどありませんが、イムヤさんは魚雷の搭載数が大きく変更されました」

 

 

「成る程成る程」

 

 

佐渡は明石にその資料を手渡されながら改装された二人を見るが確かにほとんど変化は無いようだった

 

 

「それで次からですね

改二が実装されている艦娘達になります

大井さん、金剛さん、長門さん、叢雲さん、古鷹さんは艤装が大きく変わっておりまして強力になってます」

 

 

「へぇ、うちに五人も居たのか」

 

 

明石と話していると改装室の部屋が開かれ長門と金剛が仲良く出てくると金剛が佐渡を見た瞬間に抱き付いてくる

 

 

「提督ー!私!強くなりましター!」

 

 

「おうおう!聞いてるよ、見た目は変わってないのにな

艤装が何か変わったんだろ?楽しみに待ってるよ」

 

 

「デース!後で見せてあげますね!!」

 

 

「相変わらず、金剛は提督大好きなのだな」

 

 

「お、長門も……ってお前は大分変わったな?」

 

 

「そうか?私としては特に変化は無いと思うんだけどな?」

 

 

かなり露出が多く腕や肩等の肌が見えていたのだが改装の影響か服も変わっており全体的に黒主体の服に変わっていた

露出もお腹だけであり落ち着いた感じになっていた

 

 

「でも、似合ってるよ

良かったな長門」

 

 

「その言葉素直に受け取っておこう」

 

 

「むー…提督ー!私も見てくだサーイ!」

 

 

長門を褒めていた佐渡に金剛が悪絡みをしていると改装室からボールペンが飛んで来て金剛の頭に直撃する

 

 

「痛!大井!なにするんデースか!?」

 

 

「金剛、あんまり提督を困らせないでくださいね?」

 

 

「お、秘書艦様も終わったのか改装?」

 

 

「えぇ、お待たせ致しました」

 

 

大井が改装室から出てくるとその風貌こそは変わってないものの何か違和感を感じる

 

 

「……大井、何か大幅に変わったのか?」

 

 

「相変わらず察しが良いですね、私艦種が変わったんです」

 

 

「はい、大井さんは軽巡から重雷装巡洋艦に変更されたんです」

 

 

「重雷装巡洋艦?」

 

 

佐渡は明石からその資料を手渡されるとその艦種を理解すると共に桁外れの雷撃搭載数に驚く

 

 

「……こりゃまた凄いな

正に雷撃特化型の軽巡か」

 

 

「そう言うことです、では改めて重雷装巡洋艦大井

これからもよろしくお願いしますね、提督」

 

 

「あぁ、こちらこそよろしくな秘書艦様」

 

 

佐渡と大井は改めて握手を交わすと最後の二人が改装室から話をしながら出てくる

 

 

「随分と変わったわね?古鷹」

 

 

「叢雲もだよ?前と服装も大分変わってるじゃん!」

 

 

「お、最後の二人が出てきたか」

 

 

佐渡達は鎮守府のエースたる二人を心待ちに待っていると出てきた二人に唖然とする

 

 

「あら、司令官

待たせたわね?」

 

 

「あ、提督!お待たせ致しました!」

 

 

「…………うん?あれ、古鷹と叢雲だよね?」

 

 

「何言ってるのあんたは……」

 

 

「まぁ、その大きく変わったからね私達…」

 

 

古鷹は確かに身体の体格は変わってないものの服装が大分変わっていた

改二前は制服だけだったのだがその下に全身黒タイツを着込み身長も少しだが伸びていた

 

それよりも叢雲は大分変わっていた

いつもの制服ではなく特注の制服に代わり身長も伸びているし胸も大きくなっていた為一瞬誰か分からなかった

 

 

「えっとですね、実は改装される事でそれまで抑えられていた成長を一時的に解放することが出来まして多分それが影響してるんだと思いますね」

 

 

「な、成程?」

 

 

「…そう言えば叢雲大きくなったね?」

 

 

「それは私が一番驚いてるわ

まさか大きくなるとはね……司令官触ってみる?」

 

 

「良いの!?」

 

 

「駄目に決まってるでしょうがっ!!」

 

 

「みそじっ!!」

 

 

叢雲の誘いを受けようとした瞬間大井に後ろから思い切り蹴られてしまいその場に倒れそうになると古鷹が慌てて支えてくれる

 

 

「だ、大丈夫ですか!提督!?」

 

 

「お、おう大丈夫だぜ……」

 

 

「大井、ナイスよ!」

 

 

「ふふん!」

 

 

「相変わらずだな、二人は」

 

 

「それでこそ叢雲デース!」

 

 

「全く、司令官を弄る癖は改装しても変わらないのね」

 

 

「ハハハ、良いじゃないか面白いし」

 

 

佐渡達がいつもの感じで笑っていると青葉が佐渡にアイコンタクトを送るとそれに気付いた佐渡は叢雲に指示を出す

 

 

「そうだ!叢雲、ちょっと付き合ってくれないか?」

 

 

「………めんどう事?」

 

 

「ま、そんなところだ

大井、すまないが財布はお前に預けておく

辺りで時間を潰していてくれないか?」

 

 

「分かりました、何かあったのですか?」

 

 

「あぁ、呼ばれてるんだ

恐らく何かあったらしい」

 

 

「佐渡提督、それなら私も行く

会議に参加させてくれないか?」

 

 

その言葉に青葉を見るとコクンと頷いており佐渡も頷く

 

 

「分かった、多分お前なら問題ないだろう

大井、後で合流しよう

終わったら連絡する」

 

 

「提督……」

 

 

佐渡の指示に古鷹は不安そうに袖を掴むが頭を撫で微笑む

 

 

「安心しろ、多分ただの会議だ」

 

 

「……分かりました」

 

 

「じゃあ、青葉ちゃん案内頼むよ」

 

 

「はい!お任せくださいませ!」

 

 

佐渡と叢雲、長門は共に作戦会議室に向かっていくとその後ろ姿を古鷹は心配そうに見つめていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にしても、何だ緊急召集って

長門はどう思う?」

 

 

「大方海域攻略か、何かあるか位だと思うがそんなこと聞いてないしな

だが、緊急召集と言うことは恐らく何かあったか……可能性は高いな

もしかしたらまた南方棲戦姫絡みなのかも知れん」

 

 

「でも、青葉はそんなこと聞いてないんですよね

確かに上層部が何か騒いでいたのは知ってますが………」

 

 

「ま、どうせまたくだらないことでしょ

早く済ませましょ」

 

 

佐渡達は今回の召集が何の為なのかを話し合いながら廊下を歩いているとやけに人通りが少なくなったのを感じると共に武装している憲兵が居ることに気付く

 

 

「………なぁ、青葉ちゃん本当にこっち?」

 

 

「え?あ、はいこっちのはずですが……」

 

 

「…何かあったのか?何故こんなに武装憲兵が居るんだ?」

 

 

「警戒は……しておきましょう」

 

 

武装憲兵とすれ違うと挨拶代わりに御辞儀をしていきしばらく歩いていると階段を登り作戦会議室に行こうとすると何故か階段が武装憲兵に封鎖されていた

 

 

「……あれ?こっち…だよね?」

 

 

「え?え?何で武装憲兵さんが階段を封鎖してるの?

ちょ、ちょっと待っててくださいね?」

 

 

青葉は流石に驚き武装憲兵に近付こうとすると

 

 

「貴様!動くな!それ以上こちらに来ることは許さない!!!」

 

 

突然武装憲兵が銃口を一斉に青葉へ向け佐渡達は驚きながらも青葉は手を上げる

 

 

 

「ヒッ!ちょ、ちょっと待ってくださいよ!

私は大本営所属の青葉です!元帥の指示で佐渡提督を連れてきただけですよ!!」

 

 

「それでもだ!そこから動くな!!」

 

 

「おいおい!随分じゃねぇか!!

俺達は呼ばれたから来たのによ!!」

 

 

佐渡の声に武装憲兵の一人が反応し訳を説明する

 

 

「小笠原鎮守府提督、佐渡提督だな

すまないが本日は許してくれ、大元帥からのお達しでな貴方達提督はあり得ないがもしかしたら艦娘に提督殺しが化けてる可能性があるらしく徹底してほしいとの事なんだ」

 

 

「……何だ、そんなに重要なのか?」

 

 

「今回あの人は我々にさえ情報を秘匿しているんだ

恐らくかなりだと思われる

すまないが、青葉さん身体検査を受けてもらう

そこの二人もだ

下手に抵抗するな、今回は容赦なく撃つぞ」

 

 

「分かったわよ」

 

 

「あぁ、好きにしろ」

 

 

すると武装憲兵の後ろから同じく武装しているが女性の憲兵が現れ叢雲と長門と青葉の全身をくまなく身体検査をしていき金属探知すらしていく徹底されていた

 

 

「青葉、クリア」

 

 

「叢雲、クリア」

 

 

「長門、クリア」

 

 

「良し、すまないな

面倒を掛けた

それと我々はここを許可があるまで動かない

憲兵がもし貴方達に話し掛けても警戒してくれ

本日は提督、艦娘達との会話をここ以外は禁止にしているため話し掛けられたらすぐに報告してほしい」

 

 

「はい、分かりました」

 

 

すると武装憲兵は道を開け佐渡達は通っていくが武装憲兵にいつ囲まれても可笑しくない状態での階段はかなりきつい

 

 

「凄いわね、ここまで徹底するなんて」

 

 

「……流石にここまでは見たことない

かなり重要な作戦なのだな」

 

 

「間違いなく深海棲艦絡みか……相手は誰だ?」

 

 

「さ、佐渡提督……」

 

 

先程の威圧に青葉は弱気になっており佐渡は頭を撫でる

そして、階段を登り終わると廊下を全て武装憲兵で警護させており廊下を通ろうとすると武装憲兵に止められ紙を渡される

 

 

「所属鎮守府と名前をご記入ください」

 

 

「はいよ」

 

 

佐渡はその紙を書くと武装憲兵はインカムで連絡を取り確認すると佐渡廊下を開ける

 

 

「どうぞ、佐渡提督

叢雲さん、長門さん

ご苦労様でした青葉さん

貴女はこれ以上は行かせられません」

 

 

「は、はい!佐渡提督、お気をつけて」

 

 

「あぁ、ありがとう青葉ちゃん」

 

 

青葉はお辞儀をするとその場をそそくさと去っていき佐渡達は作戦会議室へと向かっていく

 

 

「エア対策ね、確かにこれならアイツも不可能よね」

 

 

「だな、流石にここまで徹底するとはな

……面倒事ではありそうだ」

 

 

「……もしかしたら大規模作戦なのかもしれないな

しかも、かなりの」

 

 

長門の言葉に佐渡達は覚悟を決めながら廊下を歩いていき作戦会議室の扉を開けると七人の提督と秘書艦が会議を今かと待っていた

そのうちの一人が立ち上がり佐渡に近寄ってくる

 

 

「おー?佐渡じゃねぇか?お前も呼ばれたんか?」

 

 

「えぇ、何故か呼ばれたんですよね

猿橋さんもですか?」

 

 

「あぁ、今日は折角大和と食べ放題でも行こうかと思ったのに呼び出されちゃってな

全く、あの警備と言い何なんだか……

と言うか本当だったんだな?長門が小笠原に居るって」

 

 

「あー……まぁ色々ありましてね…」

 

 

猿橋は長門をマジマジと見ながら笑い佐渡の肩を叩く

 

 

「いやー!何か風の噂でさ唐澤大将から寝取ったって聞いたけどやるな!佐渡!」

 

 

「待ってください、俺そんなことしてないですよ!?」

 

 

「嘘つくなって!いやー、分かるよ?

確かに長門良いよなぁ……胸は大きいし意外と女の子らしい身体付きだしデレたら最高なんだろうなぁ」

 

 

「ほほう?貴様はうちの長門をそんな目で見ていたのか?猿橋」

 

 

その言葉に猿橋はビクンと震えるとゆっくりと後ろを振り返ると鬼の形相の唐澤が陸奥と立っていた

 

 

「ち、ちわーす!唐澤大将様!!」

 

 

「………裁き!!」

 

 

「ぐぼぉ!?」

 

 

その瞬間唐澤は思い切り猿橋の鳩尾を殴り飛ばしその痛みと苦しみにその場に崩れ落ちる

 

 

「全く、この男は……

すまないな佐渡提督

このバカが迷惑を掛けてしまい」

 

 

「い、いや?大したことないですよ?」

 

 

「それなら良かったがちょっと来てくれ」

 

 

突然唐澤は佐渡を長門から遠ざけるとひそひそ声で話をする

 

 

(本当に長門に手を出してないよな?)

 

 

(出してませんよ、そんなことしたら金剛や大井に殺されますよ)

 

 

(本当か?確かに長門は……)

 

 

(出してませんって……着任して全然立ってないのに手をだせるわけ無いでしょ…)

 

 

(な、なら良いんだ

最近君の悪い噂を聞くからな……)

 

 

(うん?何ですかそれ?)

 

 

(……小笠原鎮守府の艦娘達を手篭めにして毎日…その…してるとか?)

 

 

「はい!?何ですかそれ!!!」

 

 

全く身も蓋も無い事を疑われ意味が分からずに困惑しているとつい最近エアがここに来ていたことを思い出す

(あんのやろうかぁぁぁぁぁ!!!)

 

 

「いや、まぁ、その何だ

君の事は信頼している

だが……まぁ確かに発散は大変だよな、うん分かるよ?

それでも艦娘には手を出すなよ?」

 

 

「……男性提督は大変だもんね…うん分かるよ佐渡君」

 

 

突然後ろから肩を叩かれ振り向くと石澤が頷いておりその後ろから阿武隈が睨み付けており佐渡は深くため息つく

(覚えとけよなあんにゃろう……帰ったらぶん殴ってやる……)

 

 

佐渡は二人に説明しようとするがそれよりも先に扉から羽田と大淀と矢矧が入ってくると佐渡達は各々の席に座る

 

 

「……どうやら集まってるね

すまない急に呼び出してしまい

休日の者は代休を用意しよう」

 

 

「全くだよ元帥~

とりあえずちゃっちゃと始めましょうよ

俺も大和と遊びに行きたいし」

 

 

「……すまないが、今回君達を呼び出したのは私じゃないんだ」

 

 

「何ですって?じゃあ誰なんですか」

 

 

すると後ろの扉から一人の男が入ってくる

 

 

「俺だ、お前達を呼んだのは」

 

 

「っ!!大元帥!?」

 

 

突然の大元帥である東雲が登場し全員は立ち上がり敬礼をする

 

 

「いや、良い辞めてくれ

今回急に呼び出してしまいすまない

すぐにでもやりたい事があってな

とりあえず全員座れ」

 

 

東雲はゆっくりとした足取りで会議室の真ん中に座るとその右に羽田と大淀そして矢矧を立たせると全員を見る

 

 

 

「さてと、では始めようか

お前達の覚悟を聞こう」

 

  

 






次回

各々の覚悟

大元帥によって集められた精鋭の鎮守府達
そして、自らの作戦に参加するかを問い始める
選べお前達の行く末を


イベント始まりましたね!
初っぱなから仏とはな……相変わらず良いおっぱ(殴られ



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大規模作戦 三

今回ちょっと長いです()






「覚悟?」

 

 

「大元帥、一体……」

 

 

東雲の言葉に全員困惑していると佐渡や一部の提督にはその言葉の意味を理解し構える

何か嫌な予感がするためである

 

 

「そんなことより大元帥さー?今回呼び出したのは何なんですか?」

 

 

「そうだなその内容を話す前にお前達を振るいに掛けるとするよ

今から私はお前達にとんでもないことを依頼する

今回は強制ではない、私個人であり大本営の決定だ」

 

 

東雲は座ったまま続けると矢矧にアイコンタクトすると矢矧は後ろの扉に移動し扉を開ける

 

 

「私は今からお前達に大規模作戦を指令する

ただし、その作戦内容を聞いた瞬間お前達を逃がすわけにはいかない

もしこれから私の話を聞くと言うのであれば作戦が終わるまでお前達を軟禁する」

 

 

「なっ!」

 

 

「あんた!何言ってるんだ!

俺達を軟禁って!」

 

 

「馬鹿じゃないか!そんなことしたら!」

 

 

「俺は本気だ

もし、それが嫌だと言うのであればその扉から出ていけ

安心しろ今ここでお前達が出ていった所で何の支障もない

階級も扱いもそのままだ

 

ただし、二度と私が指揮する作戦を頼むことはない

それだけを理解しておけ」

 

 

東雲はいつもと違い本気の目付きをしながらも全員を見ておりその雰囲気からただ事では無いと言うとこが理解できる

そんな雰囲気の中一人の提督が手をあげる

 

 

「東雲大元帥

もし、私がその話を聞いた場合鎮守府運営はどうするのですか?」

 

 

「斎藤大佐か……

そこは大丈夫だ

その間は大本営が代わりに艦隊運営をするし軟禁期間も三日間と長くはない」

 

 

「となると、その作戦は三日後に開始されると認識してもよろしいのですか?」

 

 

「あぁ、三日後に開始する

急ですまないとは思うが急を要するに作戦の為何よりも優先して行う」

 

 

「分かりました、では最後に何故この八つの鎮守府なのですか?」

 

 

「私が現段階で信じられる実力を持った鎮守府だからだ

ここにいる鎮守府以外の奴には荷が重いと判断しただけだ」

 

 

「…………ほう、信じられる実力…ですか」

 

 

斎藤は冷静にこの状況を理解し話を聞いていくが佐渡を睨み付ける

 

 

「私はこの男の小笠原が強いとは思わないのですがね」

 

 

その言葉に他の鎮守府が騒ぎだし佐渡も斎藤を見上げる

 

 

「おいおい!斎藤さんよ!佐渡は大演習会での優勝者だぞ!

何で疑うんだよ!」

 

 

「猿橋提督、私はぽっと出のこの男が強いとは信じられないんですよ

それに大演習会の最終試合も八百長と聞いてますが?」

 

 

「なんだそりゃ!そんなのーーー」

 

 

「それはあり得ない、斎藤大佐」

 

 

猿橋が庇ってる中その言葉を遮り唐澤が立ち上がり斎藤を睨む

 

 

「私達は正々堂々戦い負けたのだ

八百長なんてくだらない真似はしていない」

 

 

「唐澤提督、貴方分かっているのですか?

それは我が海軍最強と呼ばれる『正義の戦艦』長門が『敗者の鎮守府』と言うゴミが集まった様な処に負けたと言うことですよ?

そんなことあってはならないしあるわけがないでしょう」

 

 

「………佐渡アイツ」

 

 

「辞めろ、下手に手を出すな

長門もだ」

 

 

「ぐ………だが!!」

 

 

斎藤の言葉を聞いた叢雲と長門は構えるが神通が二人に対し斎藤の後ろで申し訳なさそうにお辞儀をしている

 

 

「確かに、小笠原はそんなところなのかも知れないな

だがな、あそこに居るもの達は今を必死に生きているんだ

海軍や提督に捨てられた者達が集まり

今、佐渡と言う提督の元で苦しみと絶望を乗り越えて再び力を我々に貸してくれている

そして、あれがその結果だ

私達舞鶴に勝った言う真実だ

あれは彼女達の努力の結晶であり事実だ

だからこそこれ以上の侮辱は我が鎮守府全体が許さない」

 

 

唐澤静かに怒りを露にし斎藤を睨み付けるとその気迫に押され少したじろうが斎藤も冷静に続ける

 

 

「そこまで言うとは失礼致しました

まぁ庇うのも無理ありませんか、何せ『今長門がそんなところに居るんですもんね!!』」

 

 

「………貴様、何が言いたい?」

 

 

「貴方が小笠原を庇うのも無理ありません

そりゃ長門が愛しの艦娘が要るんですもんね庇いたくなりますよね」

 

 

「長門は関係ない」

 

 

「ではどうしてですか?

今更になって小笠原を庇い助けようとしている

貴方がこの海軍で最も小笠原を嫌ってたじゃありませんか?」

 

 

「あぁ、それは認めよう

私は小笠原を嫌っていた

だが、私は今小笠原に居る艦娘や状態を知ったからそう言えるのだ」

 

 

「笑わせてくれますね、正義とは正反対の反逆者である佐渡をーーー」

 

 

論争が続いていると二人の間を銃弾が通りすぎ壁に穴が開くと東雲が二人を睨み付けていた

 

 

「喧嘩なら外でやれ

斎藤、文句があるなら後でたっぷり聞いてやる

唐澤、落ち着けお前らしくない」

 

 

「……申し訳ありません」

 

 

「……申し訳ありませんでした」

 

 

「次は当てる、良いな?

どうするんだお前達は?今なら帰れるぞ」

 

 

二人の論争を見ていた提督達はすっかり頭が冷えており冷静に考えることが出来たのだが

 

 

「大元帥に信じられた実力者なんて言われたら帰れないでしょ~

な、大和」

 

 

「はい、聞かないわけにはいきませんよね!」

 

 

「折角お呼ばれされたなら聞いてみないとね?

そうよね、北上ちゃん」

 

 

「そうだね~軟禁は辛いけど聞いてみないとね~」

 

 

「阿武隈、良いか?」

 

 

「はい!覚悟は出来てますよ!

また私達の様なのは作りたくありませんから!!」

 

 

各々覚悟を決め東雲の話を聞くことに決める

その姿を見た東雲は笑いながら頭を下げる

 

 

「すまない、突然こんなことを言われ困惑するのは分かるが助かった

だが、問題はここからだ

良いなお前達

私はこれから大規模作戦を指示する!!」

 

 

東雲が大声でそう叫ぶと矢矧が廊下に出ると周りの武装憲兵に合図をすると全員セーフティを外し最大警戒状態にし矢矧も鍵を閉める

 

 

「まずは、五日前ある艦娘が飛行場姫の縄張りより単艦で日本に亡命した艦娘が居た

運良くその艦娘は矢矧指揮する艦隊と羽田の朝潮艦隊によって保護された

現在彼女は集中治療室にて治療を受けているところだ

だが、問題はここからだ

彼女はある情報を我々に持ち込んだ

それは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛行場姫の縄張りの主にして歴戦の飛行場姫の泊地だ」

 

 

その言葉に提督達や艦娘が動揺し額に汗をかく  

 

 

「ま、まさか……そんな…」

 

 

「や、奴の居場所が…?」

 

 

「……初の歴戦種戦か」

 

 

 

「奴は現在北太平洋中心に位置するミッドウェー島とクレ環礁の間にある孤島ドレス島を泊地にしている

ミッドウェー島は南方棲戦姫がハワイ島を落とした時に放棄されている

そして今奴の管轄に入っており深海棲艦の寝床になっている

我々はこれを叩く!!」

 

 

東雲は机を叩くと立ち上がり提督達を見るが全員慌て混乱しているそれをそそのかすように東雲が続ける

 

 

「もし、この作戦に参加したくないなら構わない

だが良いな?参加しないのならば三日間の軟禁だ

安心しろ、不自由はさせない」

 

 

東雲の話を聞いた猿橋は机を叩くと東雲を指差す

 

 

「あんた!何言ってるか分かってるのか!?

相手は歴戦種だぞ!!

あいつらはただの姫じゃない!奴等こそ本物の化け物だ!!

そんな短期間で決戦を挑める相手じゃねぇ!!

もっと年密に時間を掛けて準備する相手だ!!」

 

 

「五日間だ」

 

 

「は!何言ってるんだよ!!」

 

 

「その艦娘がこちらに逃げてきてから五日間、飛行場姫の縄張りで深海棲艦が確認されてないのがだ」

 

 

「「「「「!!!!!」」」」」

 

 

東雲のその言葉が何を意味するか猿橋や他の提督達には理解できていた

飛行場姫の縄張りは一年中深海棲艦が監視し必ず相対する

だからこそ今回の縄張りで深海棲艦が確認されていないと言うことは

 

 

「……奴等が、何かを企んでいる?」

 

 

「間違いなく一週間以内にこの日本に攻撃を仕掛けてくる

恐らくその艦娘共々見せしめとして日本を潰し力を証明する為に来るだろう」

 

 

「な、なら!それを迎撃したら良いだろう!!」

 

 

「馬鹿者!そんなことをすればとんでもない被害が出るぞ!!

それこそ万単位で人が死ぬ!!奴等の大艦隊がどれ程か知らないわけがないだろう!!」

 

 

「だがな!唐澤さん!三日後奴等に戦いを仕掛ければ俺達はあいつらに喧嘩を売ることになる!!

それに奴は歴戦種の中でも未確定の未知なんだぞ!実力もどんな技も使うかも分からない化け物だ!!

勝てるわけがない!あんな姫六体同時に相手するのと変わらない奴だ!!」

 

 

「………確かに奴は…飛行場姫の歴戦種はどの艦隊も戦闘報告が無い…未知の敵だ……下手に挑める奴ではない事は確かだ」

 

 

「…軍の学校でも奴等の事は聞いたけど……とんでもないんでしょ?一体で艦隊三つ分は潰すって…しかもその本拠地と言うと………」

 

 

「…まさか歴戦種だとはな……姫なら何度も相手したが奴等は……別格だ…我が艦隊も生きて返ってこさせるのが精一杯だった…」

 

 

先程まで、威勢が良かった斎藤だったが彼は一度南方棲戦姫の歴戦種と対峙したことがありその恐怖と強さを知っていた

他の者達も歴戦種の別格さは理解していた

姫級や鬼級より強く一体居れば艦隊を容易に壊滅させる化け物

しかも今回は実力も何にも判明していない化け物姫

飛行場姫歴戦種

 

 

どうなるかも分からない未知の敵に全員は自分達の被害と相手を倒せない時の最悪の場合を考えていた

 

 

「………悪いですが大元帥俺は降ります」

 

 

そんな中猿橋が立ち上がり大和を連れ立ち去ろうとする

 

 

「そうか、席は残しておく

無理を言って悪かったな」

 

 

「すみません、あれを相手にする勇気は俺には無い

俺にも守りたいものがあるんでね」

 

 

「……申し訳ありません私達も降りさせて貰います」

 

 

「提督!」

 

 

「阿武隈、分かってくれ……確かにあの時の事はある……だが奴は格が違う…奴は南方棲戦姫と肩を並べるほどらしいんだ……すまない」

 

 

「ごめんなさい、私も降りるわ」

 

 

「ちょっと提督?」

 

 

「北上ちゃん、今の私達ではあんな化け物相手に出来ないわ

下手したらこっちが誰か轟沈するかもしれない

そんな指揮私には取れない!!」

 

 

各々が自分達の意思で戦うことを辞め出ていこうとする中佐渡は一人狼狽えもせずに座っていた

 

 

「佐渡提督、君も辞めておけ

君達の艦隊が相手を出来るほど奴は甘くない」

 

 

「………だってさ叢雲

どうする?」

 

 

「…そうね、どうせ私に決定権があるんでしょ?」

 

 

「勿論、俺は戦えないからなお前に任せる」

 

 

「ふーん、じゃあ良いわ」

 

 

そう言うと叢雲は溜め息を付くと東雲に指差す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「小笠原鎮守府はその作戦に参加する

飛行場姫を……潰すわ」

 

 

その発言に佐渡はニヤリと笑い東雲も嬉しそうに椅子に座り直し矢矧は目を丸くしていた

そして、帰ろうとしていた猿橋達が話を聞いた瞬間振り返りそれを止めようとしてくる

 

 

「っ!?お、おい!正気かよ!叢雲ちゃんや!」

 

 

「そうだ!叢雲さんいくら貴女でも相手が悪い!!」

 

 

「そうよ!大井ちゃんから聞いてるし大演習会では見事だったけど!!」

 

 

だが、その言葉に叢雲は表情一つ変えずに溜め息を付く

 

 

「だって、どうせいつか戦う敵よ

それが先になったか後になるかよ

それに誰かさんに負けるとか遠回しに言われてるしね

勝手に決めないでくれる?あんた達が負けたからと言えど私が負けるなんてあり得ないわ」

 

 

叢雲の態度に猿橋はイラつきながら肩を掴む

 

 

 

「お前!分かってるのか雷撃姫!奴は化け物何だぞ!!」

 

 

「化け物?はん、どうせ殺せない訳じゃないんでしょ

殺れるなら殺るだけよ

私達はその為に生まれた、そして奴等は私達の敵よ」

 

 

話を聞かない叢雲を差し置いて猿橋は次に佐渡へ向き直ると机を叩く

 

 

「佐渡!雷撃姫を止めろ!!

お前達の艦隊は確かに強い!だがな奴は歴戦種!

たった一体で海域を支配できる化け物だ!!」

 

 

「らしいですね、だが叢雲は戦うことを選んだ

俺は止めるつもりはありませんよ

俺の仲間なら全員同じ事を選ぶ」

 

 

「馬鹿野郎!お前!雷撃姫を沈めたいのか!」

 

 

「馬鹿はどっちですか猿橋さん

あんたは今自分の気持ちを優先させて艦娘の声を聞いてない」

 

 

「何だと!?」

 

 

「て、提督……」

 

 

二人の論争に大和がおずおずと入っていくと携帯を片手に持っておりいつの間にかハンズフリーにしていた

そして、電話の先からは一人の艦娘から声が聞こえる

 

 

『提督、話しは聞きました

歴戦の飛行場姫との戦いなんですよね

榛名は……戦いたいです!!』

 

 

「馬鹿言うな!!お前!相手が誰か分かって言ってるのか!?

戦争の引き金で太平洋全域を支配する化け者姫だぞ!!

俺達何かが勝てるわけがない!!」

 

 

『…それでも、奴等はこちらが動かなければ日本を大本営を…鎮守府を皆を襲いに来ます!!

それなら私達は戦いたい!海軍の…人々の為に!提督の貴方の為に!』

 

 

その言葉を聞いた猿橋が狼狽えていると阿武隈が石澤の目の前に立ち頭を軽く叩く

 

 

「提督!私も戦いたい!!」

 

 

「馬鹿!阿武隈、俺達が勝てるわけがないだろ!

ただでさえあの戦艦棲姫にボロボロにされたのに……無理だ!」

 

 

「端から決めつけないでよ!私達は強くなったよ?

瑞鶴も潮ちゃんも曙ちゃんも朧ちゃんも那智さんも皆!

それにあの時見たいに多良間島見たいな事にしたくない!!!

次は私達が皆を守りたいの!!」

 

 

「そうだね~阿武隈の言う通りだね

たまには良いこと言うじゃん?」

 

 

阿武隈の必死な説得に北上も賛同し葛城の前に立ち塞がる

 

 

「………北上ちゃん」

 

 

「ねぇ、提督戦おうよ

私、もう失いたくないんだ

仲間を皆を大井っちの時私は逃げた

それでも佐渡提督はその背中を捕まえてくれた

次は逃げたくないよ、私」

 

 

各々の秘書艦や艦隊旗艦の声を聞き三人は悩んでいると唐澤が声をあげる

 

 

「我々舞鶴はその作戦に参加する

良いな?陸奥」

 

 

「えぇ、そこにいる私の姉も同じ事を言うものね

戦いましょう歴戦種の化け物と」

 

 

「…神通、我々も参加するぞ良いな?」

 

 

「はい、私もそのつもりです

必ず貴方に勝利を」

 

 

「ガッハッハッハ!!!

歴戦種戦か!ガングート!どうする!?

尻尾巻いて逃げるか!死ぬまで戦うか!!」

 

 

「馬鹿を言うな!!私達に後退の二文字は無い!!

相手がどんな奴でも戦うさ!!」

 

 

「不知火…良いか?」

 

 

「司令の思うままに

ですが、私は戦いたいです」

 

 

悩んでいる三人の提督を尻目に他の四組も参加を決定し佐渡は悩んでいる三人を見る

すると一人が手をあげる

 

 

「………沖縄鎮守府はその作戦に…参加……します!!!」

 

 

「おい!石澤!」

 

 

「貴方!正気なの!?」

 

 

二人に言われてはいるが石澤は阿武隈を見ると満面の笑みを浮かべていた

 

 

「……本当に良いんだな?阿武隈」

 

 

「うん!ありがとう!提督!」

 

 

その光景を見ていたもう一人の提督も秘書艦を見ると手をあげる

 

 

「佐伯鎮守府!作戦に参加します!!」

 

 

「おい!葛城さん!!」

 

 

「……これで良いの?北上ちゃん?」

 

 

「うん、ありがと提督

任せておいてよハイパー北上様だよ、絶対に負けないから」

 

 

残る鎮守府は猿橋指揮する鎮守府のみとなるがやはり猿橋は立ち去ろうとする

 

 

『提督!お願いします!!

私は皆を守りたいんです!!』

 

 

「駄目だ!俺にはお前達を守る義務がある!!

そんな危険すぎる戦いに出せるわけがない!!」

 

 

「提督」

 

 

猿橋が少し意固地になっていると大和が猿橋を優しく抱き締めると頭を優しく撫でる

 

 

「……戦いましょう、私達は兵器ですがその前に貴方を守りたいんです

その気持ちは榛名さんも同じです

私も戦いますから」

 

 

「……駄目だお前達を失う危険がある戦いなんて出来ない」

 

 

「お願いします、月一度のわがままです

私達は貴方の為に戦いたいんです」

 

 

「…………必ずだ……必ず帰ってこい約束できるな?」

 

 

『はい!榛名は絶対帰ってきます!!』

 

 

「私もです、任せてください

大和型の力見せてあげます」

 

 

猿橋は拳を握り締めるがゆっくりと開き大和から離れると叫ぶ

 

 

「あぁ!分かったよ!!

横須賀鎮守府もその作戦に参加するよ!!

絶対に飛行場姫をぶっ潰せ!!!」

 

 

『「はい!!!」』

 

 

全鎮守府が参加を決定し東雲はその全員を見渡すとニヤリと微笑むが全員に向けて大規模作戦を発令する

 

 

 

「ならばよし!!流石は私が見込んだ鎮守府共だ!!!

 

これより!三日後!ドレス島に向けて大規模攻撃を行う!!

それまで貴君らに休日と全ての大本営資料の閲覧を許可する!!!

この作戦は他言無用だ!話せば罰則が下ると思え!!!

 

 

これより!ドレス島攻略!飛行場姫討伐作戦を決定する

 

 

暁の水平線に!!!」

 

 

 

 

「「「「「勝利を!!!!」」」」」

 

 

 

 

こうして選ばれた八つの鎮守府

 

舞鶴鎮守府

 

横須賀鎮守府

 

呉鎮守府

 

佐世保鎮守府

 

大奏鎮守府

 

佐伯鎮守府

 

沖縄鎮守府

 

小笠原鎮守府

 

 

は歴戦の飛行場姫カナが泊地として構えるドレス島への攻撃を決定する

それがどんな絶望的な戦いになるとも知らずに彼等は歩み始める

 

 

 

 





次回

提督達の交流会

飛行場姫が巣くう地ドレス島
そこへ大規模作戦が決定し選ばれた八つの鎮守府はそれぞれ戦う覚悟を決めた
そして、大元帥が去った会議室では新しくなった鎮守府や提督達や艦娘のちょっとした交流会が開かれるのであった

イベントのE1甲クリア狙ったんですけどね……
ボスのあの鬼硬防御に折れましてね…?
結局乙クリアしたへたれ提督です()
しかも資材も大量に持ってかれましてねE2出来ねぇ!!
前回よりは柔らかいけどPT群に苦戦してますはい()


あ、今回登場したドレス島は完全オリジナルの島です
後で作られた経緯もかも書きますね
世界地図みてもありませんのでご了承を(クレ環礁は実在します)






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大規模作戦 四



事前に言います
次回予告は嘘です!!(書いてたら違う内容になってましたごめんなさい)

おほん、次回予告を変更し

罰からは逃げれられない
ですかね

ちょっとグロ注意です!




東雲によって告げられた大規模作戦ドレス島攻略作戦

それは奴等の鼻をへし折る戦いになり戦いは激闘そのものになると佐渡は察しながら椅子にもたれ掛かっていた

 

 

「あんた、いつまでそうしてるつもり?

皆行っちゃったわよ?」

 

 

「あれ?マジー?」

 

 

気付いたら佐渡以外全員部屋から出ており佐渡も慌てて立ち上がる

 

 

「にしても大規模作戦か、大本営の作戦に参加するのは『三回目』か」

 

 

「最初の一回目は作戦なんかじゃないわよ

……んまぁ、あれがあったからこそ今があるのよね」

 

 

「そゆことだ、だからまぁ良いじゃねーーー」

 

 

と雑談しながらその場を立ち去ろうとするとドアの前に一人の艦娘が立ち塞がっているのを確認し佐渡達は立ち止まる

 

 

「あんたは確か」

 

 

「…矢矧さんだっけ?東雲の艦隊で旗艦の」

 

 

「あぁ、少し話をしたくてな君達を待たせてもらった」

 

 

矢矧は佐渡達に歩いていくと目の前で立ち止まると頭を下げる

 

 

「この度は大元帥の無理難題を聞いて頂きありがとうございます

そして、申し訳ありませんでした

古鷹さんの件に関してはこちらの大本営のミスです

我々は罪もない彼女を殺しかけました

貴方達が彼女を助けてくれなかったら彼女は……」

 

 

佐渡達は顔を見合わせると矢矧の肩を叩き笑い合う

 

 

「気にしないでください

あれは俺達が好きでやったことですから

それに悪いのは彼女を貶めた奴等ですからね」

 

 

「そうよ、あんたが謝ることはないわ」

 

 

「いえ、彼女の濡れ衣を見破れなかった我々のミスです

これは大元帥より口止めされていますが貴方方にはお話します

彼女を貶めた者達はかなり多く全員海軍から追放しました

ですが藤谷提督だけは被害者と言う扱いになり出来ませんでした申し訳ありません」

 

 

その話を聞いた佐渡と叢雲は眼を丸くした

まさか自分達の知らない所でそんなことが行われているとは知らなかったからである

 

 

「意外だな……東雲さんがそんなことをするとはね」

 

 

「あの人も完全な悪ではないんです

ただ、今深海棲艦を倒すことだけを目にしており他に目を配れないだけなんです

それをご理解頂きたく思います」

 

 

矢矧の言葉に感心していると叢雲は一つだけ聞きたいことがあり矢矧に問う

 

 

「……ねぇ、拷問官はどうしたの?

後尋問官共も」

 

 

その言葉に矢矧はビクンと跳ねゆっくりとだが恐る恐る語りだす

 

 

「尋問官は……死にました

古鷹さんの尋問も藤谷提督の尋問を行っていた計六人は自殺と遺体で

特に古鷹さんを追い詰めた二人は……酷い状態で」

 

 

その話を聞いた瞬間佐渡はエアを予想したが矢矧はとんでもないことを言い出す

 

 

「……検死の結果一人の尋問官は全身の爪を剥がされ筋肉を切り取られその部位からの出血死

しかも血を一つのペットボトルに集められており最後にその男を湯船に寝かせ血を全て入れて血の風呂に……

更に出血毒すら検出されました

もう一人は全身の身体をバラバラにされ全身を一つの壺に納められておりましてそれを部屋の真ん中に……二人の遺体苦痛に歪んでおり生きたまま殺されたと言うことは明白でした

まるで殺人を楽しむかの様です…提督殺しより遥かに凄惨性があり奴ではないと断定されています

ですが、証拠が一切残っておらず捜査は進展ありません…」

 

 

その話を聞いた瞬間二人の背筋が凍り付きエアではないもう一人が存在すると言うことを理解させられる

 

 

「まぁ……その…天罰かしら?」

 

 

「……とんでもない奴が居たもんだ」

 

 

その話を聞くにエアが殺してるわけではなく誰かに依頼したと理解できるが深海棲艦に同じ様なのが居るかと思うとゾッとした

 

 

「それと拷問官ですが、行方不明なんです

どこかに逃げたと言うわけでもなく所持品も金も家もそのままであり忽然も消えたんです」

 

 

「……言わゆる失踪?」

 

 

「はい、捜索はしていますが全く足取りすら掴めません

申し訳ありません」

 

 

その言葉にやはり不信感を思い後でエアに問いただしてみようとする佐渡ではあったが本題を忘れており聞き直す

 

 

「まぁ、この話はここまでにしといて

何か用だったんだろ?矢矧さんや?」

 

 

「あ、そうでした!

この度の作戦参加ありがとうございます

…正直貴方達には参加してほしくはありませんでしたが」

 

 

「へぇ、何でそんなことを言うのかしら?」

 

 

矢矧は頭を上げるとかなり暗い顔をしながらも佐渡達に語る

 

 

「……今回の飛行場姫討伐作戦はあの人の東雲さんが無理矢理行う作戦だからです

貴方達は強い、ですからあの人の思惑につきあわせたくないのです

私は貴方達を良く思ってます

古鷹さん、大井さん、金剛さん、イムヤさん、グラーフさんそして長門さん

貴方方は問題を抱えていた彼女達の光だ

二人が進む先に彼女達は必ず付いていく

だからこそ貴方達が軽率な行動をすればどうなるか分かりますよね?」

 

 

矢矧の忠告に近い言葉に佐渡と叢雲は顔を会わせるが再び笑い合うが同時に矢矧の肩と背中を叩きながら横を通り過ぎる

 

 

「分かってるよ、だからこそ俺達は選択を間違えない

だからこそ」

 

 

「私達は選択を後悔しない

どんなことが起きてもどんな結果になっても私達は受け入れるわ

でもね」

 

 

「「俺達は絶対に負けない絶対に仲間を守る(私達は絶対に負けない絶対に仲間を守るわ)」」

 

 

二人は息を合わせながら言うとその場を後にしようとすると矢矧は後ろから佐渡達に叫ぶ

 

 

「分かってるんですか!仲間を失う辛さを!恐怖を!貴方達は!!

それでも突き進むんですか!?」

 

 

「あぁ、分かってるし俺達はそれでも進む」

 

 

「それしか出来ないから後ろを振り向かず私達は突き進む

どんな障害だろうが敵だろうが叩き潰してね」

 

 

「「それが俺達だ!!(私達だ!!)」」

 

 

そう叫ぶと佐渡と叢雲は作戦会議室を後にする

その二人が居なくなった会議室で矢矧はクスクスと笑う

 

 

「ふふふ、似てるなあの人と

全くもってそっくりだ、成る程

東雲さんが気に入るわけだ

………お願いします、佐渡提督、叢雲さん

私達の仇を…どうかうってください

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『もう一人の大元帥』の仇を……」

 

 

そう呟きながら矢矧は拳を握り締める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にしても、まさか矢矧さんがあんな人だとはな」

 

 

「驚いたわ、意外としっかりした艦娘なのね」

 

 

二人は廊下を歩いていると先程まで居た武装憲兵が消えており窓から外を見ると大本営を警戒していた

 

 

「エア対策か、これじゃアイツも侵入はキツいんだろうな」

 

 

「どうかしら?アイツよ

どうにかして入ってきそうだけど」

 

 

「違いないなアハハハ!」

 

 

そんなことを呟きながら笑い廊下を歩いていると目の前に一人の巨漢の男と艦娘が立ち塞がる

 

 

「よぉ!!あんた!佐渡提督だな!!」

 

 

「…えっと……そうですが貴方は?」

 

 

「おいおい!さっき会議室に居たじゃねぇかよ!

俺だよ!って分からねぇか!!ガッハッハッハ!!」

 

 

廊下中に響き渡るほどの大声に叢雲は耳を塞ぎながら聞いていると後ろからその艦娘に頭を叩かれる

 

 

「おい、提督!少し声量を下げろ!!」

 

 

「おぉ!すまないな!!悪い悪い!!

ガッハッハッハ!!!」

 

 

二人の漫才を見せ付けられていると誰かを思い出す

 

 

「確か貴方は白鳥の後任の……」

 

 

「お!やっと思い出してくれたか!!

私の名前は錦戸(にしきど)竜馬(りょうま)中佐だ!!

よろしく頼むぞ!!佐渡提督!!!

貴方の噂はかねがね聞かせてもらっている!!」

 

 

「え、えぇよろしく…」

 

 

白鳥が提督殺し、エアに殺された後すぐに入った元空軍所属にしてかなりの指揮能力でヘッドハンティングされた男

大奏鎮守府に入ってすぐに機材を壊したりドアノブを破壊するほどの怪力の持ち主であり戦闘経験もあるらしい

 

 

錦戸は手を出すと佐渡はその手を取り握手を交わすとその手の大きさとタコやマメがどれ程戦場を駆け抜けてきたか良くわかる

 

 

「それでまたなんの御用ですか?」

 

 

「敬語は辞めてくれ!貴方は私の先輩見たいな物だ!!

それに俺は敬語が使えん!!すまないな!!

それで用があるのは俺ではないんだ!!!」

 

 

「………えっとそうなると…」

 

 

佐渡がチラッと一人の艦娘ガングートに目を合わせると反射的に目を反らすが錦戸に背中を叩かれる

 

 

「ほら!ガングート話があるんだろ!?

早く話したらどうなんだ!!

漢らしく!!」

 

 

「私は女だ!!と言うか貴様は私のどこを見たら男に見えるんだ!!」

 

 

「………度胸かな?」

 

 

「いきなり真顔になるな!!調子が狂うだろうが!!」

 

 

「そうか!ガッハッハッハ!!!」

 

 

「あー!!もう!声量を下げろと何回言えば良いんだ貴様は!!!」

 

 

ガングートは頭を抱えゴホンと咳払いをすると錦戸から突っ込みがくる

 

 

「おう?ガングート風邪か?

良し!!温泉と病院に行くか!!!」

 

 

「貴様は黙ってろ!!!」

 

 

その瞬間ガングートは錦戸の脚を思い切り蹴飛ばすが錦戸はびくともしていない

 

 

「痛い!!だが!!いい蹴りだ!!!

流石だな!!!」

 

 

「はぁ………頭が痛い……何で私の提督はこうなんだ……」

 

 

「あはは……何か大変そうですね…」

 

 

流石の佐渡も中々凄い提督に同情しているとガングートは照れくさそうにあることを聞いてくる

 

 

「えっと……そのだな…い、イムヤは……元気か?」

 

 

「イムヤ?……また何で?」

 

 

佐渡が何故イムヤの事を聞かれたのか疑問に思っていると錦戸から補足がくる

 

 

「イムヤは元大奏鎮守府所属だ!!!

だからと言って返せとは言わない!!それでもガングートは毎日気にしてのさ!!何せ彼女を白鳥に売ってたんだからな!!」

 

 

錦戸に言われると佐渡は思い出す

(そう言えばイムヤは白鳥がいる時大奏鎮守府所属だったっけ?忘れてた……そっか心配してたのか

……確かイムヤを人柱見たいにしてたんだっけか?)

 

 

「元気ですよ、ご飯もきちんと食べれてますし最初の頃より見違えるようにね」

 

 

「そ、そうか!……

そのすまなかった!私は自らの保身の為に彼女を白鳥に売っていたんだ!本当にすまない!」

 

 

「んー、まぁ大体の事は察しが付きますし分かりますよ?

でもそれは本当に何ですか?」

 

 

「……どういう意味だ?佐渡提督」

 

 

「あー嫌ね?実はイムヤからそんな話一度として聞いたことないんですよ

それにアイツが恐れていたのは俺と言う提督自身

艦娘にも見捨てられていたらそれこそ連れてくることなんてほぼ不可能ですよ

………うちにはそう言う艦娘も何人か居ますから」

 

 

佐渡の言葉にガングートは顔を反らすと錦戸が頭を撫でガングートを後ろに下げる

 

 

「……あんた、本当に鋭いんだな

悪かった試す様な真似をしてしまい」

 

 

「なぁに、うちには色んな艦娘が居ますから

それで何でそんな嘘を?」

 

 

「いや、実際は嘘ではない

彼女を売っていたのは事実だ……だがなガングートはある時まで白鳥に逆らっていたんだ

他の艦娘が従う中こいつだけは白鳥を許せなかったらしい」

 

 

「……ある時?」

 

 

佐渡がその言葉を聞き返すとガングートがいつの間にか錦戸の服を摘まんでいた

 

 

「……実はな我が鎮守府にはもう一人ロシア艦が居たんだ

その名前はタシュケント、駆逐艦なのだが二人は仲が良くてな……白鳥の指揮に逆らっていたんだが…

そのタシュケントが白鳥によって沈めーーー」

 

 

「沈んでない!!同志は生きてる!!!」

 

 

錦戸がその話をするとガングートは睨み付けており錦戸は頭を撫でる

 

 

「……らしいんだ、単艦で北方の海域に行かされそのまま帰ってきてないらしいんだ」

 

 

「………あのやろう…イムヤ以外にやってやがったのか……それで居なくなってどれぐらいなんですか?」

 

 

「…………二年…だそうだ」

 

 

その言葉を聞いて佐渡は頭を悩ませる

流石に生きているとは思えず言葉を話そうとするとガングートは錦戸と佐渡を睨み付けておりその間を割って叢雲が前にでる

 

 

「生きてるんじゃない?二年なら」

 

 

「っ!雷撃姫……」

 

 

「だよな!!同志は生きてるよな!!」

 

 

叢雲の言葉にガングートは反応すると思い切り叢雲を抱き締めるとそのまま佐渡にアイコンタクトを送る

 

 

「……まぁ、大体分かりました

北方海域出撃の際は探してみますよ

な、叢雲」

 

 

「えぇ、良いわ探してあげる」

 

 

「本当か!?す、すまない!恩に着る!」

 

 

「ありがとう!ちっこいの!!」

 

 

「たーだーし!!」

 

 

佐渡はそう言うと叢雲にアイコンタクトを送るとそれを受け取った叢雲はガングートから離れ指を指す

 

 

「イムヤに謝りなさい

あの娘は気にしてないとは思うけど一応ね

じゃないと私達は手を貸さないわ」

 

 

「分かった!同志を探してくれるなら何でもやる!!

ありがとう!ちっこいの!!ありがとう!!」

 

 

「叢雲よ覚えなさいガングート」

 

 

「ありがとう!……叢雲!ありがとう!!」

 

 

ガングートは泣きながら叢雲の手を取っていると錦戸は佐渡に頭を下げる

 

 

「すまない、こんなときなのに……こんな願いを言ってしまい」

 

 

「ま、作戦が終わったらになりますが別に構いませんよ

にしてもあんた見たいな提督が増えてくれりゃ良いんだけどな」

 

 

佐渡は笑みを浮かべるとその二人の間を通っていくと錦戸とガングートに手を降りながら去っていく

 

 

「……北方海域…か……大井が詳しいかもな」

 

 

「エアにも聞いてみましょう?

にしても初めてね提督にそんなこと頼まれるなんて」

 

 

「こりゃーめんどくさいことになりそうだなぁ……」

 

 

佐渡は何だか嫌な予感を巡らせながら叢雲と二人古鷹達が待つ間宮へと向かう

 

 

 

 

 





次回予告

動きだすそれぞれの対策

大規模作戦ドレス島攻略
そして歴戦種との対峙に各々の鎮守府では動き出す
どうすれば奴を攻略できるのか


因みに殺ったのはエアではありませんよ?
誰かは言いませんが……まぁあの娘です

イベントですがやっぱり陸上型で毎回詰まりますな()
大人しく友軍来るまでとりあえず待ちますかな……(集積めぇ…)



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大規模作戦 五

佐渡は間宮で待っていた古鷹達と合流し全員に大規模作戦

ドレス島攻略作戦の内容を話すと全員恐れ困惑していた

 

 

「……まさか…歴戦種…との対峙ですか」

 

 

「…となるとエアと同じ位デースか……」

 

 

「……エアはあれほど強いのに…その本拠地って…」

 

 

「………化け物か…正に」

 

 

四人が困惑する中古鷹だけは一人居なくなった人を佐渡に聞き出す

 

 

「……提督?それよりも長門さんは?」

 

 

「あれ?そう言えば……」

 

 

「作戦会議室であんたがぼーとしてたからでしょうが

唐澤さんに用があるから私は別行動を取るだってよ

明日には戻るそうよ」

 

 

「あっれぇ?そんなこと言ってたの?」

 

 

「私にね」

 

 

「お前かよ!!」

 

 

佐渡のツッコミが入るがそれでも大井達は困惑していたが大井が頬を叩く

 

 

「今さら言っても仕方無いわ!

やるって決まってるんだからやらないと!!」

 

 

「そうデースね!!どんな奴だろうとぶっ飛ばしてやりまーす!!」

 

 

「うん!この皆が居るんだもん!負けるわけないよね!!」

 

 

大井を皮切りに全員は気合いを入れ直すがグラーフが心配そうに佐渡の服を引っ張る

 

 

「どした、グラーフ?」

 

 

「………なぁ、アトミラール

この事…は…エアに…隠すのか?」

 

 

その言葉に全員の目が佐渡に集中するが佐渡は迷いなく答える

 

 

「いや、言うよ」

 

 

「………貴方本気ですか?提督?」

 

 

「そ、そうデース

だってエアは………」

 

 

「そうだよ…司令官……敵になるかもしれないんだよ?」

 

 

「それでもだ、もしこれでアイツが俺達の敵になるならそんときはそんときだ

エアは俺を信じてくれた

だから嘘や隠し事はしたくないんだ」

 

 

「アトミラール……」

 

 

不安そうに佐渡を見ているグラーフや大井達の背中を叢雲が叩く

 

 

「アイツが敵になったなら望むところよ」

 

 

「もう、叢雲!

大丈夫ですよ、分かってくれると思いますよ

エアさんは心優しい方ですから」

 

 

佐渡はエアが再び敵になると不安に思いながら全員を引き連れて小笠原へと帰投する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふーん、成る程ねあんた達カナと戦うんだ」

 

 

「あぁ、だからここでお前が俺達を止めても構わない」

 

 

小笠原に到着後エアとソラ達を居間に呼び出しエアはイーちゃんを抱えながら佐渡と対面するように話を続けていた

 

 

「姫様、これは流石に我々も動かないと行けませんね

佐渡様達には申し訳ありませんが………」

 

 

話を聞いたソラは指で指示を出すとα、β、γ、Σは戦闘体制を取り叢雲達も構える

 

 

「………ねぇ、佐渡何でそれを私に言ったの?

三日後何でしょ?それぐらいの期間なら私を騙すことも出来たでしょ

なのにあんたは私にその作戦を話した

何で?私が姫であり深海側であること承知の上でしょ?」

 

 

「それでもだ、お前は俺を信じてくれた

なら俺はそれに答えるだけだ

俺達と敵対しても構わない

この事を他の姫や南方棲戦姫クイーンに伝えても構わない

そして、もし俺達と敵対するなら叢雲達には手を出さないでくれ

俺の命で許してほしい」

 

 

「て、提督!?」

 

 

「駄目デース!そんなことさせません!!」

 

 

「黙ってろ!これは俺とエアの問題だ!

口出しするな!!!」

 

 

佐渡は怒鳴ると金剛達狼狽え黙ってしまうとエアはため息をつく

 

 

「相変わらずね、あんたは真っ直ぐで曇りなく人を艦娘を深海棲艦すら信じる

ここまでくると馬鹿ね普通言わないわよ私にそんなこと」

 

 

「分かってるだろ?これが俺なんだよ」

 

 

「はぁ~馬鹿らしい

まぁそうね……ソラ」

 

 

「…はい、姫様この者達を捕らえ拷問にかければよろしいんですね任せてください」

 

 

その言葉にソラの艦隊とソラは完全に佐渡達へ敵対しそれに合わせ叢雲達も完全に戦闘体制を取る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今の話聞かなかったことにしなさい

私達は動かないわ」

 

 

「「「「「………………え?」」」」」

 

 

「あー寒、呼び出されたから応答してやったけど何よそんなくだらない話で私を呼ばないでくれる?

イーちゃんコタツ入りましょ?」

 

 

 

「「「「「く、くだらない話!?」」」」」

 

 

 

エアはそう言うとイーちゃんを引き連れコタツに入りその暖かさを堪能しているとソラ達がエアに駆け寄る

 

 

「ヒ!姫様!!何デ動カナイノヨ!!」

 

 

「ソウダ!カナ様ガ危ナインダゾ!!」

 

 

「イクラアノ人デモ日本ノ精鋭艦隊ハ!!」

 

 

「ウン!ウン!!」

 

 

「らしいわね、カナ頑張ってね~

私が助ける理由なんて無いしね」

 

 

「姫様!何を言っているんですか!?

貴女と同じ姫何ですよ!!何故動かないのですか!?」

 

 

「うっさいわね~私は動かないわよ

寒いし何で外に出なきゃいけないのよめんどくさい

戦争とか戦いとか私は興味ないの分かるでしょ?」

 

 

 

ソラ達はエアに集まるが佐渡達は流石の対応に狼狽えているとエアは佐渡達に向けて手をふる

 

 

「あんた達精々頑張りなさいよ~

安心しなさい、私は今回手を出さないわ

こいつらにも出させないから」

 

 

「……待てエアお前良いのか?」

 

 

「何よ?敵対してほしいの?」

 

 

「嫌、違うけど……だって同じ姫なんだろ?」

 

 

「そうだけど、別に私は仲間とかそう言うの居ないし

深海側ではあるけどあいつらがどうなろうと私には関係ないしね

そーれーに」

 

 

エアはコタツに入りながら佐渡達を指差しながら笑う

 

 

「ここに居る間の私は『空母棲姫歴戦種エア』としてではなく

『エアと言う名の一人の女』として居るのだから深海の問題を持ってくるのは御法度よ

そうでしょ、佐渡、叢雲」

 

 

その言葉に佐渡と叢雲はエアに言った言葉をそのまま返された気分になり笑う

 

 

「………ははは!悪かった!それもそうか!」

 

 

「ふふ、そうねあんたは『エア』だもんね

でも本当に良いの?私達を行かせて」

 

 

「何度も言わせないで、私は動かないし静観してるわよ

精々沈むんじゃないわよ

一人でも沈んだらコイツを殺すわよ?」

 

 

エアが敵対しないと分かった叢雲達は警戒を解き佐渡は立ち上がる

 

 

「すまん話はそれだけだ

時間を取らせたな」

 

 

「ほんとよ、全く二度とこんなくだらない事で呼ばないでよね?」

 

 

「悪かったよ、今晩御馳走にするから勘弁してくれ」

 

 

「御馳走よりアイスを貰うわよ

良いわね?」

 

 

「あぁ、好きなのを食ってくれ

じゃあすまないが俺達は」

 

 

「えぇ、頑張りなさい~」

 

 

佐渡は立ち上がり叢雲達は居間から出ていき佐渡も出ていこうとした瞬間エアに呼び止められる

 

 

「佐渡ー良いことを教えてあげるわ

私に隠さず言ったことのね」

 

 

「……何だ?」

 

 

エアはこっちを振り向くがいつものふざけてる様子は無く真剣な面持ちになりながら警告する

 

 

「アイツを、カナをただの飛行場姫として見るんじゃないわよ

アイツと本気で戦うのであれば失う覚悟をしなさい

アレは私達の中でも桁違いだし化け物よ

それだけは言える、一度相手したことあるけどあれはヤバイわ

『常識は捨てなさい』あれを倒すならあれと対峙するなら常識を持ってたら負けるわよ

これは忠告であり警告よ

『私個人の感情からの』ね」

 

 

エアが警告するほどの化け物と言うことを佐渡は理解すると笑みを浮かべながら礼を言う

 

 

「ありがとうエア

必ず全員を帰ってこさせるからな心配するな」

 

 

「あんたにそんな指揮出来るとは思えないけど

精々頑張りなさい佐渡」

 

 

二人は笑みを浮かべると佐渡は居間から出ていきエアはコタツを堪能しているとソラが机を叩く

 

 

「姫様!!どういうおつもりですが!?

カナ様を捨てるおつもりですか!!」

 

 

「違うわよばーか

私達は手を出せないし出す必要が無いのよ

そんなのも分からないの?」

 

 

「ど、どういうこと……ですか?」

 

 

 

エアの言葉にソラ達が困惑しているとエアは頬を吊り上げながら笑いその顔にソラ達は恐怖する

その顔はいつも憎い相手を殺すときの顔

つまり深海の姫そのものだったからである

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『アイツに情報なんて必要ないのよ

事前準備もなーんにもねどうせアイツには全て見えてるんだから』」

 

 

その不吉極まりない言葉にソラ達は背筋を凍らせた

この姫は、エアは全てを知っている

飛行場姫カナの実力を

 

(精々あがいてみせなさい勝てたとしてもあんた達には平和は訪れないけどね)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大規模作戦の前日佐渡は大本営の大書庫にて飛行場姫の事を調べるために本棚の全てを読み漁っていたのだが

どれを見ても飛行場姫の事は書いておらず頭を悩ませていた

 

 

「あぁ~……見付からねぇ…………

マジキッツ……何でここまで探してるのに無いんだよ…」

 

 

「まぁ、そう言わないでくださいよ

青葉だって手伝ってるんですから!」

 

 

現在大本営所属の青葉に手伝って貰いながら探してるものの全く手がかりすら掴めずにおり佐渡は頭を悩ませていた

 

 

「……にしても佐渡提督は情報何ですね

他の鎮守府や艦娘は決戦に備えて演習等で実力を上げているのに……はい、次の資料ですよ」

 

 

「そりゃーな、どんなに実力を付けようと相手を知らないことには変わらねぇし対策も立てられん

情報は力だ、あれば困らないしな……だが何で見付からないんだ!!ここは大本営の大書庫だよなぁ!?」

 

 

佐渡は思い切り机を叩くと立ち上がり外に出ていこうとする

 

 

「もうめんどくせぇ!!青葉ちゃんご飯行こうぜ!!」

 

 

「……そう言えば全く食べてませんでしたね

折角ですから行きましょう!」

 

 

若干苛つきながら佐渡達は大書庫を後にしようとすると青葉が何か躓き突然佐渡に倒れかけてくる

 

 

「おっと……ってうわぁ!!佐渡提督避けてぇ!!」

 

 

「うん?っておいおい!こっちに突っ込んでーーー」

 

 

佐渡は突然の事に対処仕切れずにぶつかるとそのまま本棚にぶつかり本棚の上から大量の荷物が落ちてきており咄嗟に青葉を庇うように抱き締める

 

 

「……ふぅ、終わったか

大丈夫かい?青葉ちゃん?」

 

 

 

「は、はい!ごめんななさい!!」

 

 

「いや良いよ、だがこれを片付け………ってうん?」

 

 

倒れてきた荷物の中に不採用報告書と書かれた古い書類をまとめているファイルを確認するとおもむろに持ち上げる

 

 

「あ、それって確か大本営に提出する報告書ですよね?

でも確かそれは送られてきたは良かったのですが意味不明の報告書だからってまとめられた奴ですね」

 

 

「……へぇ…一応見てみるかこれも」

 

 

佐渡は不採用報告書を開いていくと確かに内容が意味不明の者や文字が読めなかったりと中々に中身は酷かった

 

 

「えっと……北方海域を攻略中にストームに襲われ艦隊壊滅

東方海域出撃中にクラーケンに襲われたぁ?

他にもUFOや宇宙人と遭遇??何だこりゃ面白いな」

 

 

「な、何ですか艤装が突然使用不能とか蟻地獄に襲われたとか巨大な鮫とか!こんなの報告書じゃないですよ!!

アハハハ!!」

 

 

内容はどれも酷い物であり青葉はお腹を抱えて笑っており佐渡も一応見ていると一つだけ気になる報告書を見付けた

 

 

 

「………何だこれ、『飛行場姫の縄張りで起きた現象』って」

 

 

「アハハハハ!今度はど、どんな内容なんですか!!」

 

 

『本日未明 我々の艦隊ーーは飛行場姫の縄張りに進行を開始した

ーーから敵艦隊と遭遇したと言う報告があり私は攻撃を許可した

幸い相手はそこまで強くなく我々も勝ちを確信した

 

だがそこで我々は現象に襲われた

………いや撃たれた…だ

 

ーー達の戦闘が終盤に差しかかり我々は勝利を確信した

だが次の瞬間ーーのインカムから耳をつんざく爆発音が聞こえた

私は何度もーーの名前を何回も呼んだ

だが、返事はなく他の艦娘達も慌て狼狽えていると飛行場姫が指揮する艦隊に襲われ撤退を余儀無くした

ーーは帰投後直ぐ様入渠したが何日もかかった

そしてーーが目覚めたとき彼女は震えており何があったか教えてくれた

ーーは勝利を確信しトドメをさす寸前に何かに撃たれたのだと

だが敵は見え無かったらしく更にーーは一撃で大破航行不能まで追い込まれた

 

 

あそこには何か居る、だからこそ飛行場姫の海域に近付くな

あそこには戦艦を一撃で沈められる化け物がいる

海域攻略を停止するように私は進言します

 

ーーーー鎮守府ーー大佐』

 

 

「………何だこれ」

 

 

「…分かりません、ですが飛行場姫の海域には化け物ってことですかね?」

 

 

その報告書は嘘を書いたようには見えずにそれが本当だとも思えず佐渡は疑問に思っていた

(……戦艦を一撃で大破しかも航行不能に陥れる化け物……

あそこにはまだ居るのか?だが問題は……その姿を明確に書いてない所だ)

 

 

姿形が書いておらず、ただ戦艦を一撃で航行不能に陥れる事が出来る化け物が居ると言うこと

だが佐渡はそれが引っ掛かっていた

 

 

「……あの海に、何がいるんだ…一体……」

 

 

「…佐渡提督?」

 

 

「ん?あぁ!ごめんご飯行こうか!」

 

 

 

「は、はい!」

 

 

佐渡その気になる報告書を机に置きっぱなしにすると大書庫を後にし青葉と間宮へと食事をしにいく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、大書庫を調べ尽くしたがそれ以外は見付からず日付が変わり大規模作戦当日になってしまう

その報告書が鍵になるとも知らずに

 

 

 

 

 

 

各々鎮守府、そして艦娘達は秘めた思いと決意と共に作戦に参加する

化け物であり太平洋を支配する飛行場姫に挑むために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、前日の夜一人の男は大規模作戦の作戦を作り上げ部屋に籠り明かりを消した状態で月を見上げていた

タブレットには飛行場姫の写真が映し出されておりそれを睨み付けていた

 

 

「やっと……やっと見付けたぞ……『カナ』…

まさかあの島にまだ居るとは盲点だったぞ

……やっと矢矧達の捜索が身を結んだな…」

 

 

その男は東雲であり何故かカナの名前を知っていた

そしておもむろに鍵の掛かった引き出しを開けると中にある写真を見る

 

 

「………鹵獲は不可能だ、だが奴を倒せばあの島を調べられる

そうすれば……『真実』に近付ける…そうなんだろ」

 

 

そう呟くと持っていた写真を力強く握り締める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………始元……『裏切り者』

……何故だ……何故裏切ったんだ…俺達を!!!」

 

 

その写真には五人が映し出されており左から矢矧、東雲、監視者が並んでおりその真ん中に

優しそうな少女と東雲と同じ『もう一人の大元帥如月』が映っていた

そして東雲は写真を力強く握り潰す

 

 

 





次回

発令!ドレス島攻略作戦

日は流れついに歴戦種飛行場姫討伐作戦決行の日になり選ばれた鎮守府の艦娘達は出立する

E2を何度か挑戦しては試行錯誤し負けてます()
時々ゆーちゃん掘りしては向かってますが陸上型めんどくさいぃぃぃ!!!
でも夏姫は好きです、あの声と絵が凄く好き
台詞の「クラエ!!」とかマジ良い




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ドレス島攻略作戦

時刻朝の0400

大規模作戦開始の日艦娘達は東京湾に集められ海岸沿いでは大掛かりな交通規制が貼られていた

それにも関わらず海岸沿いには多くの人達が集まっていた

 

 

「随分と人が居るのね」

 

 

「そりゃそうよ、こんなに艦娘が居ること普通はないから……」

 

 

「にしても大規模作戦の場所がここだとは思わなかったデース」

 

 

「基本的にはここかららしいがやはり目立つな」

 

 

「まぁそう言うな、いつかはどうせ馴れるさ」

 

 

大井達は混乱しているが長門は堂々としており叢雲もそれを見習っていると先程言われた作戦内容を思い出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これより、ドレス島攻略作戦の概要を説明する

各自用意は良いな?」

 

 

大本営の大広間に八つの鎮守府に所属し今回参加を決定している全艦娘が集められていた

 

 

「今回、我々が攻略するのはドレス島

北太平洋中心の赤道に近い島であり

ここからはかなり距離があるその間に今回の強敵

飛行場姫歴戦種の縄張りを通ることになる

そして、その近くには『夜海』『赤海』『白海』もある

かなり危険な海域だ

奴に今回の事を知られるわけにはいかない

だからこそ今回は奇襲作戦を行う」

 

 

「大元帥ー、それなら夜の方が良かったんじゃない?

夜なら私が活躍出来るっぽい!」

 

 

「こら!夕立!」

 

 

「いや、時雨良い

確かに夜の方が見えずらいが奴等の本拠地を叩くに当たって向こうには島からの照明があるにも関わらずこちらは心許ない光ではまともに戦えないだろう

だからこそ、奴等の本拠地に到着するときは朝が良いと判断した」

 

 

「分かったっぽい!大元帥さん頭良いー!」

 

 

夕立が東雲を褒めると猿橋は夕立の頭を殴り黙らせると東雲が続きを話す

 

 

「本当だったら、奴の本拠地に波状攻撃を仕掛けるべきなのだが今回は奇襲と言うこともあり全艦隊一斉攻撃を仕掛ける

そして、もし奴等の哨戒部隊が居た場合……一体残らず叩き潰せ絶対に逃がすな

では作戦内容を話していく」

 

 

そして東雲から今回の作戦が話されていく

簡単にまとめると全艦隊で飛行場姫の泊地にある程度まで近付いたら水雷戦隊で索敵、状況を把握させ

その後、戦艦と空母達による一斉砲撃を開始し飛行場姫が出てきた所に対地上兵器で攻撃を与えていくもの

 

 

「王道だな」

 

 

「まぁ、それが一番だしな」

 

 

猿橋や石澤がそんなことを話しているが佐渡はエアの言葉がずっと引っ掛かっていた

 

『常識は捨てなさい』あれを倒すならあれと対峙するなら常識を持ってたら負けるわよ

これは忠告であり警告よ』

 

(常識を捨てろ……なら俺は…)

 

 

「ーーー以上だ、他に何かあるか?」

 

 

東雲が全員を見渡していると佐渡が手をあげる

 

 

「………ほう、佐渡何かあるのか?」

 

 

「おい!貴様佐渡!」

 

 

「悪いですが、相手は歴戦種だ

俺も全く分からない敵だからな俺の艦隊にしか出来ないことを進言させてもらいます」

 

 

その発言に斎藤が突っ掛かろうとするが唐澤が無理矢理押さえ付けると佐渡は進言する

 

 

「我々にしか出来ないことそれはーーーーーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

叢雲はそれを思いだし大きく溜め息をつく

 

 

「本当、あいつは無茶ばっかり指示してくれるわよね」

 

 

「それほど私達を信じてくれてるってことだよ叢雲」

 

 

古鷹は側で微笑んでおり叢雲も微笑みを返すとグラーフが周りや海中を覗き込む

 

 

「……そう言えば、イムヤはどうしたんだ?」

 

 

「イムヤ?あぁ、彼女は佐渡提督による別作戦だ

だが、付いては来るから心配するな」

 

 

心配するグラーフに長門は微笑み返していると大元帥から大号令がマイク越しに聞こえてくる

 

 

「諸君!この度は私が発案した作戦に参加し朝から集まっていたもらいありがとう!!

今回の戦いはかなりの激戦になるだろうだが私は歴戦種討伐に名乗りをあげてくれたお前達なら必ず勝利してくれると信じている

 

 

とまぁ、建前はここまでだ!!

せっかくだ本音を言ってやろう!!

今回の戦いは奴等に大打撃を与えることになり太平洋を奴から解放する事だ!!

必ず勝て!死んでも勝て!!奴を!飛行場姫の歴戦種を!我々に喧嘩を吹っ掛けてきたあのクソッタレをぶっ殺せ!!!

この度の作戦が成功したら大本営は一つだけお前達の願いを聞いてやる!!」

 

 

その発言に提督や艦娘達ざわめく

 

 

「ざわめく気持ちは分かる!ただし、聞けるのは一つの鎮守府について一つ!!

だがその代わり我々が出来ることなら何でもやろう!!

だから勝ってこい!!お前らなら奴を倒せると信じてるぞ!!艦娘共!!」

 

 

「「「「「おぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」」

 

 

 

「行ってこい!!飛行場姫をぶっ殺して!!暁の水平線に勝利を刻め!!!」

 

 

その言葉と共に八つの鎮守府に所属するそれぞれの艦隊旗艦達は仲間達と顔を合わせ艤装を構える

 

 

 

「ドレス島攻略大連合艦隊抜錨せよ!!!」

 

 

 

「「「「「「了解!!!!」」」」」」

 

 

 

「暁の水平線に!!!」

 

 

 

「「「「「「勝利を!!!!!」」」」」」

 

 

その言葉と共に八つの艦隊によって構成されている大連合艦隊は一斉に東京湾から出撃し北太平洋の中心にある島にして飛行場姫の泊地ドレス島を目指す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その上空に一つの艦載機があるとも知らずに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅむ、これはこれは驚いたな

この方向は真っ直ぐドレス島へ向かってるな」

 

 

その姿をある深海棲艦が捉え持っていた携帯を使うとある者に連絡を入れる

 

 

『はいはい!こちら椿!!』

 

 

「久しぶりだな、探……っと『今は椿』だったな?」

 

 

『って監視者じゃないの

どしたのよ、こんな朝から私忙しいんだけど?

明日には日本へ攻撃をーーーー』

 

 

「今、日本の大本営から艦娘がお前達の泊地へ向け出撃したぞ」

 

 

『……やっぱりか、そろそろだと思ったのよね

分かったわ連絡しとく

 

 

………手伝ってと言っても付き合ってくれないのでしょ?』

 

 

「当たり前だ、私は始元様の命令しか聞かない

あの人の最後の命令は『戦うな』だ

戦争の肩入れはしない

姫なんぞの言うことは聞かない」

 

 

『まぁ、分かってたけどさ一応言っただけよ

あんたが居ればもっと楽に奴等を殺せるはずなのにねぇ…………

『始元の右腕』にして深海棲艦最強空母さん』

 

 

「私は最強ではない、精々エアと互角位だ」

 

 

『それでも可笑しいでしょうが………

あの人も充分化け物の癖に実力同じとかふざけてるわよ

あんた一人で泊地一つ分の航空能力とか何よ

にしても貴女が私を助けてくれるなんてね?』

 

 

「別に私は『監視者』だ

お前達の戦いを見届ける義務があるからだ

それは公平に行うべきだ」

 

 

『公平ね……まぁ良いわ

ありがとね、報告感謝するわ

じゃあね

今度一緒にご飯でも行きましょ

貴女位だし、気兼ねなく話せるのは』

 

 

椿との通話を切ると艤装に携帯をしまい空を見上げる

 

 

「…………………始元様……私は……貴女の死を受け入れられません…

感じるのです……貴女様は必ず生きていると…だからこそ私は貴女の命令を遂行し続けます……」

 

 

 

そして一枚の写真を取り出すとそれを優しく撫でる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故……何故裏切ったのだ……『人間よ』」

 

 

その写真は東雲が持っていたのと全く同じであった

 

 

 





次回

姫が支配する海

大規模作戦ドレス島攻略作戦が開始され海域へと走り出す大連合艦隊達

その航路はかなり順調であり少し余裕があった


やっとE2の陸上型を撃破出来ましたわぁ……
それから地中海姫と対峙しましたが陸上型より遥かに楽……
ガリのお姉さんを迎えられてよかった…

と言うわけでE3攻略開始!弾薬は無いけど!!


あ、因みに東雲と監視者は繋がりがあります(暴露)
ですがそれはかなり先のフラグになってます……



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ドレス島攻略作戦 二

「……にしても平和ね」

 

大本営を出立してからしばらく叢雲達はのんびりと航行しており巨大な輪陣形を取っていた

その外側には索敵値の高い重巡や駆逐、空母で構成され真ん中には主力となる戦艦達が待機していた

 

 

「まぁ、そういうな

だがここまで平和なのは初めてだな

やはり飛行場姫が全ての艦隊を下げたのか」

 

 

長門は警戒しており外側に居る利根に顔を向けると首を横に振るっており辺りに深海棲艦の影が無いことを理解する

 

 

「それにしても本当に大掛かりな作戦ですね

グラーフさん、どうですか?」

 

 

『平気だ、辺りには全く敵影すらない』

 

 

「長門

丁度良いから今のうちに編成の確認でもしましょう」

 

 

「そうだな、後ろの事もあるしな」

 

 

大井は資料を持ち出すとグラーフに辺りの哨戒を任せながら開いていく

 

 

「まず、舞鶴鎮守府

 

旗艦 戦艦 長門改二

戦艦 陸奥改二

駆逐艦 磯風乙改

航空巡洋艦 利根改二

正規空母 赤城改 

戦艦 リシュリュー

 

 

次に横須賀鎮守府

 

 

旗艦 戦艦 大和

戦艦 榛名改二

戦艦 ローマ

軽巡 由良(ゆら)改二 

駆逐艦 夕立改二

駆逐艦 時雨改二

 

 

 

次に佐伯鎮守府

 

 

旗艦 重雷装巡洋艦 北上改二

駆逐艦 吹雪改二

正規空母 蒼龍(そうりゅう)

駆逐艦 霞改二

重巡  足柄改二

戦艦 比叡改二

 

 

 

次に大奏鎮守府

 

 

 

旗艦戦艦 ガングート

軽空母 祥鳳改

軽空母 飛鷹改二

航空巡洋艦 最上(もがみ)

重巡 羽黒改二 

戦艦 ウォースパイト

 

 

 

 

次に呉鎮守府

 

旗艦 軽巡 神通改二

重巡 摩耶改二

正規空母 飛龍改二

航空戦艦 山城改二

航空巡洋艦 鈴谷改二

航空巡洋艦 熊野改二

 

 

 

次に佐世保鎮守府

 

 

 

旗艦 駆逐艦 不知火改二 

駆逐艦 浜風乙改

航空戦艦 日向改二

軽巡 川内改二

重雷装巡洋艦 木曾改二

重巡 高雄改

 

 

 

 

沖縄鎮守府

 

 

 

旗艦軽巡 阿武隈改二

装甲空母 瑞鶴改二甲

戦艦 霧島改二

駆逐艦 満潮改二

航空巡洋艦 筑摩改二

重巡 妙高改二

 

 

小笠原鎮守府

 

 

旗艦駆逐艦 叢雲改二

重巡 古鷹改二

重雷装巡洋艦 大井改二

戦艦 金剛改二 

正規空母 グラーフ改

 

 

で間違いないですね」

 

 

「そして後ろには

 

大本営艦隊修理班

 

旗艦工作艦 明石改

軽巡 夕張改

軽巡 大淀改

戦艦 伊勢改

装甲空母 大鳳改

重巡 青葉改

 

で以上だな

 

それよりも私が舞鶴所属……と言うことで良かったのか?」

 

 

『良いんだよ、お前がこっちに所属してたら海軍の面子がどうとか言われてるからなどっかの誰かさんに』

 

 

突然インカムから佐渡の声が聞こえると長門達も少し驚くが気にせず続けていると唐澤の声が聞こえてくる

 

 

『長門、どうだ?』

 

 

「問題ない……いや、問題ないのが問題だ

しばらく航行しているが深海棲艦の影すら無い

こんな平和な海は久しぶりだ」

 

 

『了解、警戒は怠るな』

 

 

その言葉と共にインカムの通話を切り唐澤達はのんびりと椅子に座り直す

唐澤や佐渡達は大本営の通信施設に全員集まり出撃している艦娘達を各々心配や連絡を取っていた

 

その中で佐渡だけは持ってきた資料と海図を広げていた

(やっぱりこの報告書気になるな……何だ現象って…そんなの有り得るわけがない

飛行場姫の泊地に何か居る?でもそれならどこかで見つけてるはずだ……ステルス?向こうにそんな技術があるならもっと多用しているはずだ……

それに戦艦を一撃……何だ…何かが引っ掛かるんだ……)

 

 

「何してんだ?佐渡?」

 

 

「あぁ、猿橋さん

ちょっとね気になることがあって」

 

 

「おいおい、出撃してる奴等ほっといて気になることって……」

 

 

猿橋が呆れていると佐渡が持ってきた報告書を見ると「あー」と言う声を上げる

 

 

「懐かしいものを出してきたな、これ俺の先輩が書いた奴じゃん?」

 

 

その言葉に驚き顔を向けると佐渡は猿橋に詰め寄る

 

 

「何だと!これ本当なのか!?

なぁ!教えてくれ!!」

 

 

「落ち着けって!あー……多分本当…なのかな?

この時俺はこの先輩の鎮守府に所属していてな

確か飛行場姫の海域調査を大本営から依頼されていて行ったときにあったらしいんだ

何でもある戦艦タ級を仕留めようとしたら旗艦の戦艦が一撃大破されたって話だ

それもその戦艦タ級じゃなくて別の何かに

 

その娘、かなり真面目でな嘘なんてつかない娘だったんだけど皆信じなくてな

でも先輩だけは信じてなその報告書を作ったらしいんだ

 

でも大本営は取り合わなくて結局廃棄扱いされたって聞いたぜ」

 

 

「………なぁそれってどこか分かるか?」

 

 

「あー……えっと確かここかな?」

 

 

猿橋が指した海域は丁度ドレス島と日本大陸の中心に間する位置

 

 

「…ここも飛行場姫の海域何だよな?」

 

 

「あぁ、確かな

でもこんなこと役に立つと思わないぜ?

その戦艦タ級も他の資料見ても見付からなかったし、先輩……と言うか艦娘が未間違えたんじゃね?」

 

 

 

「そうなのか……うん?待った何でタ級が見付からないんだ?」

 

 

他の資料にも見つからなかったと聞いて佐渡は引っ掛かり猿橋に聞き直す

 

 

「ん?書いてなかったのか、その戦艦タ級見た目が少し違ったらしいんだ

しかもどうやら艦隊旗艦だったらしいんだが、主砲や艤装が変わってたらしいんだ

それにやけに艦娘に話し掛けてきたらしいんだよ

そんなの有り得るわけがないのにな」

 

 

(タ級が話し掛けてきた……しかも艦隊を任せられている奴?…そしてそれを守るように戦艦を大破させる一撃……なんだ全く意味が分からない…)

 

 

佐渡が頭を悩ませていると長門から通信が入る

 

 

『こちら長門、北太平洋に侵入

ドレス島まで600キロを切った

以前敵影無し

順調だ』

 

 

(順調、それが可笑しいんだ

普通潜水艦やら何か居る筈なのに…何も海域に置いてない時点で誘い込まれてるのか、それとも何か理由があるはずなんだけど!なんだ、なんなんだ!この嫌な予感で引っ掛かるものは!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飛行場姫の泊地、ドレス島では監視者による密告により大規模な警戒網が引かれ全員戦闘体制を取っていた

そして椿はその泊地の姫であるカナの捜索に当たっていた

(姫様、どこに行ったのかしら?)

 

 

椿は途中すれ違った深海棲艦達に話を聞きながらも海岸側を走っていると巨大な艤装が展開されており駆け寄る

 

 

「姫様!こんなところにいらっしゃったのですか!?」

 

 

「あら?椿、何か用?」

 

 

「はい!実は先程監視者より報告がありまして、日本の艦娘達がこちらに向け進行中だそうです姫様も準備をーーーーー」

 

 

と椿が話した瞬間カナの艤装が動きだし縮小され仕舞われていた異常に巨大で長い主砲がゆっくりと砲撃準備を開始していた

 

 

「何だ、そんなこと

『知ってるわよ、艦隊数は八かしら?』

ふふふ、少ないわねもう少し居ても良いのにねぇ……」

 

 

(……?何で姫様知ってるんだ?前から思ってたけど姫様ってもしかして予知能力でもあるの?)

 

 

「ひ、姫様前から思ってたのですが何故そこまで知っているんですか?

私が監視者から聞いたのは奴等がここに来るって事だけ、艦隊数何て………」

 

 

「あぁ、貴女に見せるのは初めてだったわね

良いわそこで見ていなさい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『私がこの島と海域全てを任されている理由をね』

 

 

その言葉と共にカナは艤装を完全な戦闘状態にすると頬を吊り上げながら笑う

 

 

「嵐の前の静かなる時は終わりを告げる

お前達は『ここまでたどり着けるかしら?』」

 

 

 

 

 

 

 




次回

洗礼

飛行場姫の海域を悠々と航行する大連合艦隊
久しぶりの平和な海を楽しんでいたのだが
彼女達は思いしる、ここが姫の海域であることを


E3行きましたがまさかの開幕から積みかけると言う……
何でボスがきちこー範囲8なんだよちくしょう!!
一つしか飛ばせねぇじゃあねぇか!!
そして陸上型何で居るんだよぉぉ!!!
と言う訳でE3ー2のギミック解除に奮闘します()




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ドレス島攻略作戦 三

 

ここは場面変わって小笠原島

一人の深海棲艦が小笠原の崖に座りながらアイスを頬張っており膝上にはイーちゃんを寝かせていた

 

 

「姫様!こんなところにいらっしゃったのですか!」

 

 

「うん?あぁ、ソラ

どしたの何かあったの?」

 

 

「先程、カナ様からご連絡があって『手出しするな』と言われたのですが……」

 

 

「だから言ったでしょ、アイツ戦いにはかなりプライド高いのよ

それにアイツが負けるとも思えないしね

叢雲達も馬鹿よね~あの程度の数で勝てるほど甘くないのに」

 

 

「ひ、姫様それはどういう意味なのですか?」

 

 

ソラが質問するとエアは微笑みながらアイスを頬張る

 

 

 

「そうね、アイツがあの島と言うより海域を『一人』で守ってると言ったらどうする?」

 

 

 

「ま、まさか!?そんなのあり得ません!」

 

 

「でもアイツはそれを成し遂げている

それが理由よ」

 

 

そしてエアは頬を吊り上げながら笑う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ、足掻いて見なさい

姫のエリートは簡単じゃないわよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドレス島へと向け走り続ける大連合艦隊は辺りを警戒しながら航行していると後ろから一人の艦娘が叢雲に近付いてくる

 

 

「叢雲さーん!!!」

 

 

「うん?あら青葉じゃない、どうしたのよ?」

 

 

大連合艦隊の後ろに付いてきている緊急修理班の青葉が何故か来ており真っ白な布に巻かれている抱えていた

 

 

「明石さんからなのですが、これを渡しそびれたので渡してくれとの事です!!」

 

 

「明石からの渡し物?」

 

 

叢雲は減速するとそのまま海上で青葉からそれを貰うと布を取っ払い中身を見る

 

 

「………これって薙刀?」

 

 

それは前の艤装を使っていたときに持っていた棒だったのだが先が刃物になっており今の叢雲でも使うことが出来る

 

 

「はい!改装時に預かって居たんですが、今まで改良して作り直していたそうなんです!

貴女は砲撃戦闘も上手いですがどちらかと言うと近接戦闘メインですからね

これが無いとキツいんじゃ無いですか?」

 

 

「……確かにね、でもこれ私使えるの?」

 

 

貰った新しい艤装を叢雲が振り回すと全く違和感もなく軽く素振りが出来るほどではあった

 

 

「大丈夫ですよ!元の素材は貴女の艤装ですから使うことは可能です!

前の物ですと殺傷能力が低かったのでそれに対深海棲艦用の刃を新しく加工しただけですから問題はありませんよ!」

 

 

叢雲はしばらく素振りや使い勝手を調べると微笑みながら艤装にしまう

 

 

「ありがたくもらっておくわ、ありがとね青葉」

 

 

「はい!では頑張ってください!

私は明石さんの警護に戻ります!!」

 

 

そう言うと青葉は敬礼しそのまま後ろへと航行していき叢雲は元の配置に戻ると古鷹がこちらに航行してくる

 

 

「どしたの?叢雲?」

 

 

「うん?あぁ、明石さんから新しい艤装だってこれ」

 

 

叢雲は再び貰った艤装を取り出すと古鷹にその艤装を見せる

 

 

「へぇ………薙刀…見たいだね」

 

 

「えぇ、私には使いやすい武器ね嬉しいわ」

 

 

「だね!なら今回は絶対に勝たないとね!」

 

 

そんな話をしていると金剛が叢雲の側に走ってくる

 

 

「叢雲ーー!叢雲も食べるデースか!?」

 

 

「は?あんた何言って……」

 

 

叢雲が金剛の手にバスケットを持っていることに気付きその中にサンドイッチが入っており驚く

 

 

「はぁ!?あんた何よそれ!!」

 

 

「提督が、ドレス島までかなり距離があるからお腹空いたら困るからって持たせてくれたんデース!

食べますか?」

 

 

「貰うわ!と言うより寄越しなさい!!」

 

 

「古鷹もどうデースか?」

 

 

「いただきます!」

 

 

金剛はバスケットからサンドイッチを取り出すと叢雲と古鷹はサンドイッチを頬張りながらその味を噛み締める

 

 

「んんー!美味しい!卵サンド最高!!」

 

 

「こっちはツナサンド!美味しい!」

 

 

「じゃあ、私はフルーツサンドを……んふふ!美味しいデース!」

 

 

三人はそんなことをやっていると長門と真面目に話していた大井がそれに気付き近付いてくる

 

 

「ちょっと!何してるの三人とも!」

 

 

「司令官特製サンドイッチよ、大井も食べる?」

 

 

「あのね!ここはもう既に飛行場姫のーーー」

 

 

「良いから食べるデース!!」

 

 

大井が注意しようとすると金剛が無理矢理口にサンドイッチを食べさせると大井もゆっくりと噛み締めながら食べる

 

 

「……美味しいです」

 

 

「気を張り過ぎても良くないですよ大井さん」

 

 

古鷹に言われ大井も渋々注意を辞めると口に入れられたサンドイッチを食べていくと叢雲が三つほどサンドイッチを取ると一番先頭に居る長門に近付く

 

 

「ほら、あんたの分よ」

 

 

「ん?……ってお前達何してるんだ!!

ここは作戦海域だぞ!これから飛行場姫と戦うってのに!!」

 

 

「あら?要らない?なら私食べきっちゃうわよ?」

 

 

「要らないとは言ってない!!だがな!!」

 

 

「いただきまー」

 

 

「あぁ!分かった分かった!欲しい!頼むそのサンドイッチをくれ叢雲!!」

 

 

完全に叢雲に手玉に取られている長門であったが無事に叢雲からサンドイッチを貰うと食べながら水平線を睨み付ける

 

 

「………美味しいな、流石だ」

 

 

「まだ距離はあるのよ、少し気を緩めなさい

下手に気を張り続けるともたないわよ」

 

 

「……そうだな」

 

 

長門が美味しそうにサンドイッチを食べているのを見ていた陸奥がそれを見ており叢雲は陸奥に近付く

 

 

「陸奥さんもどうかしら?」

 

 

「あらいいの?じゃあ頂くわ」

 

 

「磯風さんもどう?」

 

 

「頂こう」

 

 

気を張り続けていた艦隊達であったが金剛が持ち込んだサンドイッチで少しは緊張が解れていき無言だった艦隊に少しずつ会話が増えていき交流が始まっていた

 

 

「あ!このサンドイッチ美味しい!」

 

 

「それ美味しそうね!私のと半分交換しない?」

 

 

「相変わらずですね、佐渡提督

またあの人の料理食べたいわ」

 

 

「えー!霧島食べたことあるの!?」

 

 

 

その様子を大本営で佐渡達は聞いていたが微笑ましかった

 

 

「………願うなら戦争が無い世界なんだろうな」

 

 

その話を聞いていた唐澤がふと呟くとそれに続けて猿橋が続けていく

 

 

「…ですな、彼女達はこんな戦争に関わらせずに平和に過ごしていって欲しいですからね」

 

 

「その為に戦うってのも可笑しいけどな……」

 

 

「本当、戦争が無ければ普通に生きられたはずなのにね」

 

 

そんなことを猿橋達が話しているとその後ろで東雲が拳を握り締めていることに佐渡は気付いたが何故かは分からなかった

 

 

「だが、ここまで順調だとはな

やはり大規模攻撃の為に戦力を溜め込んでいるのか奴等は」

 

 

「ガッハッハッハ!!だが今回の奇襲が成功すればそれを削ることが出来る!!

成功してほしいものだな!!!」

 

 

他の提督達が話しているのを見て佐渡は海図を見ているがやはり引っ掛かっているのが分からず投げ出すと椅子にもたれ掛かる

(だめだこりゃ、さっぱり分からん

…気のせいって事にしとくか)

 

 

 

少し緊張が解れた連合艦隊では各々が話し始めたりしていたが空母や重巡達は全く敵を見付けられずにおり少し拍子抜けしていた

 

 

「にしても長門も変わったわよね」

 

 

「む?そうか?」

 

 

突然陸奥に言われると長門は仁王立ちしていたが体制を崩し陸奥と話を始める

 

 

「だって、前なら問答無用で艦隊での私語を怒ってたじゃないの?

でも今はそんなことないじゃない、私とも話してくれるし?」

 

 

「……そうだな、あの鎮守府に行って大分変えられてしまったな」

 

 

「でもいい方向にだから良いんじゃない?」

 

 

「そうだな、あの鎮守府では毎日が楽しいぞ

陸奥も今度来るか?いつも騒ぎやハプニングがあるからな退屈はしないさ

戦場に居るよりもな」

 

 

「あら、それは是非とも行ってみたいわ」

 

 

二人は雑談していると後ろから一人の艦娘が近付いてくると長門に膝カックンしてくる

 

 

「くらえ!長門さん!!」

 

 

「うぉ!?って何だ鈴谷か、いつも言うがいきなりはよせビックリするだろうが」

 

 

「アハハ!だって驚かせる為にやってるんだよー?でも今日は怒号飛ばしてこないね?どしたの?」

 

 

 

「なぁに、今日は機嫌が良いだけだ

次回は無いからな」

 

 

 

「えぇー!いつも機嫌良くしてよー!長門さんからかうの楽しいんだもん!」

 

 

鈴谷と長門は仲良く話していると後ろからもう一人走ってくると鈴谷にチョップをくらわせる

 

 

「鈴谷ぁ!また貴女は長門さんにちょっかい出してますの!!アチョー!」

 

 

「いったぁ!!ちょっと熊野!何するのさ!!」 

 

 

「問答無用ですわ!ごめんさい、長門さん鈴谷がご迷惑を」

 

 

「ハハ、構わないさ

戦闘中じゃなければ問題ない」

 

 

長門が笑って許していると熊野は驚いた表情をしていると鈴谷が少し前に出る

 

 

「おいおい、鈴谷私より前に出るんじゃない」

 

 

「いーじゃん!どうせなーんにも居ないんだしさ!

うちの索敵には全く引っ掛かってないしー!」

 

 

「鈴谷!!」

 

 

「ふふ、鈴谷は相変わらずね」

 

 

熊野が悪態を付きながら鈴谷に駆け寄ろうとすると鈴谷は前を向いて逃げようとする

 

 

「うわー!熊野が来る!逃げなきゃ!」

 

 

「待ちなさい鈴ーーー」

 

 

 

その瞬間、瞬きをする本当のコマ一瞬全員は突然の轟音に驚きその音がする場所に視線が集中する

何かが破壊される音、だがそれでもかなりの轟音に全員目を疑う

辺りには何の索敵にも引っ掛かっておらず何も居ない海域

確かに油断はしていたのかもしれない

だがそれでも誰がこんなことを予想出来ただろうか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、忘れてはいけなかった

ここは姫が支配する海

全ての深海棲艦の個体の頂点に立つ化け物姫

飛行場姫歴選種 カナの支配し続けていた海

誰も攻略出来ず、誰も手を出せなかった危険な海域

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして彼女達は嫌でも理解させられる

自分達がどんな化け物と対峙させられているのかを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

轟音の主は長門より先頭を航行していた鈴谷だった

彼女は何者かの砲撃を直に受け熊野達の目の前で爆発したのだ

飛び散る服と真っ赤な血、そして破壊された艤装の破片や熱によりねじ曲げられた主砲

一瞬時がゆっくりと動く感覚と共に熊野が叫ぶ

 

 

 

「す、す、鈴谷ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

 




次回

化け物が支配する海

突然の轟音と爆発音に全員は厳戒体制を取る
何も居ない海、辺りには敵影すら見えない海 
何にやられたかも分からない状態で長門達大混乱に陥る


資材が底をついたので回復中~
E3ー1は突破!後はギミックとボスかぁ……
陸上めんどくさい!!




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ドレス島攻略作戦 四

「全艦!!急停止!!!

敵艦による!!攻撃確認!!!警戒を厳とせよ!!」

 

 

突然爆発した鈴谷はゆっくりと黒煙を吐きながら倒れていく

それを確認した長門は連合艦隊を全艦急停止し辺りを警戒させる

それと同時に長門と陸奥、そして熊野が倒れた鈴谷に走りだし長門と陸奥は鈴谷を庇うように前に立つ

 

 

「鈴谷!鈴谷!!しっかりしてくださいませ!鈴谷!!」

 

 

「赤城!!敵艦より砲撃を確認!辺りはどうだ!?」

 

 

『駄目です!何も見えません!!』

 

 

「嘘をつくな!鈴谷が砲撃を受けたんだぞ!!本当に偵察してるのか!?」

 

 

『しています!!それでも辺りには何も居ません!!』

 

 

「利根!!そっちは!?」

 

 

『こっちもじゃ!筑摩や他の重巡に聞いとるが全く敵影何てのは見えないぞ!!』

 

 

長門が辺りを見るにも敵影も全く見えない

確かに近くからは砲撃音は聞こえなかった、聞こえたのは鈴谷に着弾した爆発音

 

 

「鈴谷!お願いです!目を覚ましてくださいませ!」

 

 

「熊野ちゃん!鈴谷ちゃんの容態は!?」

 

 

「……大破です!…それも主砲もカタパルトも全て破壊されています…航行不能です……」

 

 

「馬鹿な!?そんなわけあるか!そんな火力の兵器が音もなく砲撃してきたと言うのか!?」

 

 

長門が鈴谷を見ると鈴谷の艤装は熱で焼け焦げ身体も腹部にその砲撃が着弾したらしく丸く円を書くように焼けている

カタパルトも熱でへし折れ服はほとんど無いような状態だった

脚にある航行用の艤装すら破壊され鈴谷は意識を失いボロボロになりぐったりとしていた

 

 

『長門!どうした!何があった!

先程鈴谷のインカムから轟音が鳴り響いたぞ!!』

 

 

「……提督、攻撃だ

正体不明の敵から我々は攻撃を受けている」

 

 

長門の発言に大本営に居る提督達は混乱し狼狽えるが唐澤は冷静に状況を把握しようとする

 

 

「敵は見えるのか!幾つだ!鈴谷の状態は!?」

 

 

『……周囲に敵は見えない、鈴谷は大破、航行不能の意識不明だ…』

 

 

「馬鹿な!一体何でやられたんだ!?」

 

 

『分からない…だが鈴谷を後ろに下げ緊急修理班に連絡し修理してもらう!』

 

 

 

唐澤の声に長門は冷静になるが現在の戦場では全ての艦娘が混乱していた

突然の砲撃、しかも一撃で鈴谷の装甲を意図も容易く撃ち抜き大破させる何かに狼狽えていた

 

 

「おい!佐渡!これって!!」

 

 

「同じだ……この報告書と同じだ!!!」

 

 

佐渡の声に全員の目が集中すると斎藤が佐渡の胸ぐらを掴む

 

 

「どういうことだ!貴様!!」

 

 

「斎藤さん辞めてください!これを見てくれよ!!」

 

 

猿橋が斎藤を宥めると斎藤は報告書を確認すると目を丸くしながら震える

 

 

「……馬鹿な…これは……あの男の……

だがこれは!!」

 

 

「疑うのは分かります、ですがこの報告書に嘘はありません

これが真実です、奴等は何かで鈴谷さんを撃ち抜いたんです」

 

 

佐渡はそれだけを言うとグラーフに指示を出す

 

 

「グラーフ、艦載機の索敵範囲を広げられるか?」

 

 

『可能だ、どれぐらい広げれば良い?』

 

 

「出来るギリギリまでだ!近辺にステルスが居る場合その後ろに何体か居るはずだ!

いくらステルスでも一人で配置するわけがない!」

 

 

『了解した』

 

 

そして、グラーフは全艦載機を使い周辺を索敵する

限界までその範囲を広げるとおおよそ50キロ圏内を全て索敵するが

 

 

『……アトミラール…何もない

潜水艦も戦艦も何にも居ない……

ただ広い海だけだ』

 

 

「……そうか…どういうことなんだ……」

 

 

「佐渡!どういうことだよ!!」

 

 

猿橋が佐渡にくって掛かるが佐渡は冷静に事を理解し説明する

 

 

「もし、撃ってきた相手がステルスならそのステルス能力をある深海棲艦を配置しステルス能力を持ったものが撹乱、もしくは殲滅しそれに加え辺りから艦隊を潰せば簡単でしょ?

それでもない……何だ…何が…」

 

 

佐渡は今まで聞いてきた見てきた単語や話を頭の中で何度も思いだす

 

 

(広大な海を支配する飛行場姫

それ以外の姫や固定配置されているのは確認されていない

そして、今の攻撃とエアが今回介入しない理由……

ステルスじゃない、だが攻撃を受けた……待てよ)

 

 

「……何で俺達は攻撃を受けたんだ…」

 

 

「は?何言ってるんだよ佐渡、それは敵に見付かってーーーー」

 

 

「だからだよ!!何で辺り一体に深海棲艦の影すら見えなかったのに!潜水艦すら!!」

 

 

「っ!?ま、まさか!俺達の中に密告者が居るって言いたいのか!?」

 

 

猿橋の言葉に更に場が混乱するが佐渡はそれよりもお構いなしに海図とその報告書を照らし合わせる

 

 

「長門!!今お前は何処にいるんだ!?」

 

 

『さ、佐渡提督か?今……何処なんだ、赤城』

 

 

『え、えっと……ここは…』

 

 

「違う!今!『ドレス島からどのくらい離れてる!?』」

 

 

『……えっとドレス島まで残り500キロを切っていますが…それが?』

 

 

「猿橋さん!この報告書の攻撃を受けた地点はどこでしたっけ!?」

 

 

「え?あ、あぁ……確かここらへんだっけかな?」

 

 

猿橋が指差した所に佐渡はマジックペンで丸く表記すると近くに持ってきていた長めの定規で距離を図る

 

 

「………まさか…嫌あり得ない…だがそれしかない…だが、まさか…」

 

 

佐渡はそれだけで飛行場姫の正体を知ると背筋を凍らせ急いでインカムに伝言を伝える

 

 

「長門!!今から全速力でドレス島へ迎え!!!

『全滅する前に』!!!」

 

 

『な!何を言っているんだ!?今私達はーーー』

 

 

「良いから急げ!!お前はその大連合艦隊を壊滅させたいのか!!」

 

 

佐渡の焦りが通じたのか長門はその指示に従う

 

 

 

『っ!分かった従う!全艦隊!!抜錨!!!

全艦!全速力でドレス島を目指せ!!』

 

 

「佐渡提督!何のつもりだ!!

そんなことさせて近くに敵が居たら!!」

 

 

長門へ無理矢理指示を出したことで唐澤が佐渡に食って掛かる

 

 

 

「……居ませんよ、奴は飛行場姫は『長門達が出撃するのを最初から』見てたんですよ」

 

 

「ど、どういう事なの!佐渡君!!」

 

 

佐渡は唐澤達を自分の開いた海図と報告書を見せながら順に説明していく

 

 

「今回砲撃を受けた地点はドレス島から500キロの地点

そして、次にこれは報告書が受けたとされる砲撃地点

そのおおよその位置はドレス島から500キロの海上」

 

 

「そ、そんなのただの偶然だ!!」

 

 

「ですが、可笑しくありませんか

何故飛行場姫は他の姫や鬼に頼らずにこの海域を支配しているのか

そして、海域を攻略しようとすると戦艦艦隊やツ級艦隊を送り込めるのか」

 

 

「……何が言いたいんだ、佐渡」

 

 

深く深呼吸をすると佐渡は最悪な予想結果を伝えていくそして、エアに言われた一言を思い出す

 

 

 

 

 

『常識を捨てなさい、常識に囚われていたら勝てないわよ』

 

 

(……確かにな、こんなのあり得ねぇ

現代の兵器でも実現不可能だっての

『両方ともな』)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……奴には『太平洋全域が見えているですよ』

だから今回の我々の作戦は最初から破断していた

何せ奴はずっと自分の泊地から長門達の出撃を見ていたのだから

そして今鈴谷さんを砲撃したのは『自分の艤装射程距離に入ったから』です」

 

 

その言葉に提督一同が絶句した

あり得ないと言う言葉すら出せずに今自分達が行かせている敵が何なのかを知ってしまったのだ

 

 

「じゃ、じゃあ奴は…飛行場姫は!?」

 

 

「……えぇ、奴は飛行場姫歴戦種は…自分の泊地から既に長門達を捉え砲撃を開始している!!

撃ったのは長門達を足止めし数を減らすため!!奴はかなり危険過ぎる!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

長門達が全速力で航行する中ドレス島の海岸ではカナは自らの艤装から見える必死な長門達を見ながら巨大な砲身を動かし再び照準を長門達へと構える

 

 

 

「フフフ……ここにたどり着けるかしら?

全滅する前に……

 

 

 

 

 

 

 

    残り46艦ね」

 

 

 

 

 

 

 





次回

走れ走れ走れ!!


カナの謎を解き明かした佐渡は長門達に全速力でドレス島へと向かわせる
その間にもカナは主砲を構え長門達を一人ずつ確実に潰していく

カナの艤装ですが完全なオリジナル兵器となります
例えるならドイツの兵器80センチ列車砲を飛行場姫の左肩に装備させた感じですかね!
詳しくはいつか書いていきたいと思います


イベントでラスダンまで行きましたがめっちゃ遠い……
流石は夏イベ…




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支配者

ここは変わって小笠原島

留守番をしているソラはエアからカナの事を聞いていた

 

 

 

「見えてるって……!?」

 

 

「そのまんまの意味よ、カナは他の深海棲艦や姫達とは明らかに違うのよ

異常なまでの視力と射撃精度からアイツの泊地防衛に関して右に出るものは居ないわ

その視力を生かして泊地から敵の編成を見抜き艦隊を送り込み確実に潰していく

指揮能力は高くないけれど奴に奇襲作戦は通用しない

まさにアイツしかドレス島は任せられないと言われてるほどにね」

 

 

その言葉の意味をソラは理解できる

いくら泊地の防衛と言っても複数の姫等で守れている程なのにカナはそれを一人で守れてる

そして、確かにドレス島へ艦娘が迎えた試しはない

 

 

「そ、そんな……じゃあ叢雲様達は!?」

 

 

「ま、苦渋を強いられるでしょうね

奴を倒せるとは思えないしアイツには『始元に貰った』特殊艤装があるわ

あれに関しては本当にヤバイわよ……何よ私ですら一撃で航行不能になりかける兵器って……

イカれてるわ、あんなのアイツにしか使えないし正にチートも良いところよ………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「走れ!全速力でドレス島へ向かうぞ!!」

 

 

混乱する連合艦隊を長門は無理矢理動かすと砲撃を受けた鈴谷と熊野を後ろに下げる

 

 

「長門!どういうこと!辺りに敵が居るかもしれないのよ!?」

 

 

「……佐渡提督が奴の飛行場姫が何故この大海原を支配しているのか解き明かした!奴は既に私達を捉えて自らの艤装射程圏内に捉えている!!」

 

 

「ば、馬鹿な!あり得ないぞ長門!ここからドレス島までは500キロあるんだぞ!そこから私達を見ることも更にそこから砲撃を当てるなんてそんな!!」

 

 

「あんた達!くだらない言い合いしてるんじゃないわよ!!」

 

 

 

陸奥と磯風は混乱しているがそれを制する様に叢雲と古鷹が走りだし長門の隣に行く

 

 

「司令官からは他に何か言われた!?」

 

 

「いいや!全速力でドレス島へ向かえって言われただけだ!」

 

 

「なら行くわよ!それしか私達に道はない!!」

 

 

「そうだね!今から撤退なんて出来るわけないもんね!!」

 

 

長門はその反応をしてくれる二人に微笑むが直ぐ様水平線の先を睨み付けると更に速度を上げる

 

 

「良し!では行くぞ!!」

 

 

「ちょっと!ガングート何してるのよ!?」

 

 

近くにいたウォースパイトがいきなり声を上げるとガングートに視線が行くとガングートは大きくジグザグに航行していた

 

 

「向こうから砲撃されているのであれば!こうすれば奴から砲撃を避けられるはずだろう!!」

 

 

「貴女ね!そんな事でーーーー」

 

 

と話してる間に突然の轟音が鳴り響きその音の主に再び長門達が振り向くと先程までガングートを注意していたウォースパイトがカナの遠距離砲撃に直撃しており爆煙を上げながら真後ろにぶっ飛ばされていく

 

 

「ウォースパイトぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

「ウォースパイトさん!!!」

 

 

 

艤装と共にウォースパイトが海面を転がっていくと装備されていた主砲や副砲が破壊され辺りに飛び散る中一人の艦娘がその転がるウォースパイトを受け止める

 

 

「ウォースパイト!大丈夫デースか!?」

 

 

「ガ………ハ……私…が………」

 

 

と少しだけ声をだすが鈴谷同様に異常なまでの砲撃火力に耐えきれずに気絶してしまう

艤装は全て焼け焦げ使用不能に陥っておりその姿を見た全員は血の気が引く

 

 

「金剛!!彼女を明石の所まで!!」

 

 

「分かりました!ウォースパイト!しっかりしてくだサイ!!」

 

 

ウォースパイトは仮にも戦艦、流石に駆逐艦や軽巡には運べないため丁度ウォースパイトを支えていた金剛がそのまま減速しおぶりながら後方に付いてきている明石に向かっていく

 

 

「走れ!走れ!走れ!!

これ以上被害を出すわけにはいかない!!

奴を!飛行場姫の泊地!ドレス島へ走れ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「命中、戦艦ウォースパイト撃破

さてと後45艦ね」

 

 

ドレス島の泊地にてカナは巨大な砲身の艤装を動かしていた

巨大な薬莢がガコンと音を立てながらコンクリートに転がると次弾が装填される

(恐ろしい……まさかこんな距離から戦艦すら仕留めるとは…流石は姫級エリート

他の者達が認める最強の陸上型深海棲艦

この人が味方で良かったと心底思いますよ全く)

 

 

 

「………姫様、前々から思ってたのですが何ですか?

その艤装、従来の貴女型の艤装では無いですよね?」

 

 

「そうよ、私の艤装は始元とアイツに作って貰った特注品でね

私にしか使えないらしいわ

ま、確かに射程距離500キロとかワケわからない射程してるからねこれ

反動も凄いけどこれ面白いのよ?

後で見せて上げるわ貴女の知らない私をね?

それよりも空母部隊を連れてきなさい」

 

 

「分かりましたが一体何を?」

 

 

「決まってるでしょ?」

 

 

カナは頬を吊り上げながら笑うとその顔に椿は久しぶりの姫としての姿に恐怖を抱く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

銃撃の雨(バレットレイン)よ、奴等を一掃するわ

このドレス島へたどり着けるかしらね?

私の島に」

 

 

 

 





次回

銃撃の雨(バレットレイン)


飛行場姫カナによる長遠距離砲撃に長門達は恐れながらも全速力でドレス島へと向かい続ける
だがその行く手を嘲笑うかの様にカナは更に一手をうってくる
彼女達はドレス島へとたどり着けるのか!?


Eー1の堀をやっているのですが全くゆーちゃんもリシュリューも来てくれない………
あぁぁぁ!!!ゆーちゃん欲しいよぉ!!!



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支配者 二

長門達が飛行場姫による砲撃に晒される中大本営の指令室も大混乱に陥っていた

それもそのはず、飛行場姫の能力を解き明かしたことによる事がかなり大きく東雲はドレス島周囲500キロ圏内に居る海外と連絡を取り合っていた

 

 

 

「そうだ!今すぐ避難させろ!

我々は今そのドレス島へと向け艦娘を送り込み飛行場姫の歴戦種と対峙している!!

……二度も言わせるな!!奴の予測射程距離は500キロ!!ドレス島へと近付けさせるな!!」

 

 

突然通達される飛行場姫の能力に海外の軍も動きだし大規模な規制が引かれており他の提督達も艦娘達のケアに大急ぎであった

 

 

「皆!気をしっかり持ってね!

無理はしてほしくないけど皆の行動が鍵なの!」

 

 

「頼むぞ!大和!奴等に目にものを見せてやってくれ!!」

 

 

「阿武隈!もし無理そうなら撤退しろ!

お前達があんな砲撃に耐えられるわけがない!!」

 

 

「ガングート!ウォースパイトは!ウォースパイトは大丈夫なのか!?」

 

 

「鈴谷!応答しろ!鈴谷!!!」

 

 

そんな中佐渡だけはインカムを付けると叢雲に一言だけ告げる

 

 

「叢雲」

 

 

『何よ!?』

 

 

「……信じてるぞ、お前が帰ってくるのを」

 

 

『!……ふん!当たり前じゃない!

あんなやつ沈めてやるわ!!!』

 

 

それだけを言うと佐渡はそれ以上話さずにじっとモニターを見続ける

(頼むぞ…奴を倒せるのはお前だけなんだ

俺の相棒、奴を倒してくれ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「赤城!あとどれくらいで奴の島に着く!?」

 

 

『の、残り250キロ!!』

 

 

「急げ!これ以上被害を増やすわけにはいかない!!」

 

 

長門達はカナの遠距離砲撃に晒され無謀と知りながらもドレス島へと全速力で向かっていた

だが長門の意識とは別に連合艦隊は不安と恐怖に包まれていた

いつ来るか分からない一撃必殺の砲撃が誰に当たるか分からない状態の中辺りを警戒したり各々どうにかして避けようと行動を起こしていた

だがそれに拍車を掛けるようにカナによる更なる攻撃が襲い掛かる

 

 

『っ!!!長門さん!!前方上空!!

敵艦載機多数確認!!!』

 

 

「何だと!まさか、このタイミングで空襲か!?」

 

 

長門が前方の空を凝視すると前方から空を埋め尽くす白い影が見えてきていた

その数が数なだけ流石の長門も恐怖を抱いていた

 

 

「前方上空空襲だ!!

連合艦隊!迎撃準備!!」

 

 

長門の指示に艦隊は空を見上げると空を埋め尽くす程の艦載機に気付き各々機銃や高角砲を構える

 

 

「空母部隊!対航空部隊!!頼むぞ!!!」

 

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

「全機発艦!!撃ち落とせ!!」

 

 

「いっくぜぇ!!落ちろ!落ちろ!」

 

 

連合艦隊と敵艦載機達がぶつかると一気に急降下しながら敵艦載機は長門達を襲うがこちら側にもかなりの航空戦力があり順調に敵艦載機を落としていく

 

 

「よっしゃ!どんなもんだい!!」

 

 

「摩耶!まだ安心するのは早いわよ!!」

 

 

「は?何でだよ?空襲は………はぁ!?何だあれ!?」

 

 

摩耶が空を見上げると唖然としながらも再び高角砲を構え始める

それもそのはず攻撃してきたのは半分だけ、更に後ろから敵艦載機の増援が来ており空母の艦載機だけでは落としきれなくなっていた

 

 

「く、数が多い!!」

 

 

「赤城!まだ、来るのかこれは!?」

 

 

「はい!まだ来ます!

後!6部隊ほど後ろには控えています!!」

 

 

「何よそれ!飛行場姫はどんだけ航空戦力があるのよ!?」

 

 

「瑞鶴!そんなこと言っとる場合じゃないで!!

ほら!また来るで!」

 

 

空母や対空性能が高い艦娘達が居るもののそれより遥かに敵艦載機が多く次第に連合艦隊は追い詰められていく

そして

 

 

「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「吹雪!ちょっと大丈ーーー」

 

 

吹雪が絶え間ない連続空襲に倒しきれずに艦載機から被弾してしまいそれに足柄が駆け寄ろうとするのだが

 

 

「足柄さん!上!」

 

 

「え?……嘘…嫌、いやぁぁぁぁ!!」

 

 

その瞬間佐伯鎮守府の艦隊が空襲により大打撃を受けてしまいそれをきっかけに他の艦隊にも影響が出始めてしまい連合艦隊は空襲をまともに受けてしまう

 

 

「ぐ!クソ!何だこの空襲の数は!?

奴等こんなに航空戦力があるのか!」

 

 

「磯風!平気!?」

 

 

「問題ない!利根!そっちはどうだ!?」

 

 

「こっちも何とか平気じゃ!

じゃが!筑摩が少し被弾してしまった!

他の者も何人か被弾している!」

 

 

しばらくの空襲を通り抜けると既に連合艦隊は幾人かの大破艦や中破艦を出してしまい長門が最後の確認をする 

 

 

「各艦隊!被害状況を!!」

 

 

「横須賀鎮守府!

夕立さん大破!意外は小破で済んでます!!」

 

 

「うぅ~……痛いっぽい…」

 

 

「大丈夫かい?夕立……」

 

 

「佐伯鎮守府、ちょっとヤバイかもね

吹雪と足柄さんが大破

他は何とか耐えられたよ」

 

 

「ご、ごめんなさい……皆……」

 

 

「くっそぉ……この私が…空襲なんかに……」

 

 

「大奏鎮守府!被害無し!

こちらは平気だ!

ウォースパイトだけは……アレに撃たれたせいで」

 

 

「呉鎮守府……ぐ…

鈴谷さんが大破…熊野さんが…まだ戻ってきて……」

 

 

「ちょっと神通さん、無理しないでよ私を庇って被弾するなんて……」

 

 

「仲間を……守るのは旗艦の役目です…から…

私が…中破です…」

 

 

「佐世保鎮守府、こちらは川内さんが避けきれず大破しました

申し訳ありません」

 

 

「うぅ……夜戦まで耐えられると思ったのに…悔しい……」

 

 

「ほら、肩に掴まってください…川内さん…」

 

 

「沖縄鎮守府!

こちら被害無し!何とかやり過ごせました!」

 

 

「小笠原鎮守府

こっちも被害無しよ、これぐらいなら何とかなったわ!」

 

 

長門はその被害状況を見て唇を噛み締める

(まだ奴の拠点に到達していないのにこの被害……この状況で行けるのか?

嫌!迷ってなんかいられない!!我々は進まなくてはならないんだ!!)

 

 

「大破した者達は後方に下がり明石達の修理を受けてくれ!!他の者はーーー」

 

 

と長門が指示を出しているとその瞬間再びの轟音に全員の目が集中する

(…!馬鹿な……今空襲が終わったばかりだぞ!?)

次に着弾したのはこの艦隊で最も対空性能が高い摩耶であった真横からカナの遠距離主砲に直撃し艤装を全て破壊されると後ろに吹き飛ばされていく

 

 

「摩耶!」

 

 

「摩耶さん!!」

 

 

摩耶はまるで糸の切れた人形の様に海上を転がっていると佐世保鎮守府に所属している高雄が転がる摩耶を受け止める

 

 

「摩耶!しっかりして!摩耶!!」

 

 

「あちぃ………うぇ……あちぃよ………ねぇ…さん………」

 

 

前方からの直撃で無かったからなのか摩耶はしっかりと意識を持っていたが艤装は完全に破壊され着弾した横腹は真っ黒に焼けていた

 

 

「高雄さん!摩耶さんを明石さんへ!」

 

 

「は、はい!ほら、摩耶肩に掴まって!」

 

 

「ご、………ごめ……」

 

 

高雄に謝ろうとするのだが余りの痛みと苦しみに耐えきれずにそのまま意識を手放してしまう

そんな姿を見て一人の艦娘が後退りを始める

 

 

「いや……いやいやいやいや!!もう嫌だよぉ!!私帰る!!

あんなのになりたくないよぉ!!」

 

 

「待て!羽黒何処に行くつもりだ!?」

 

 

騒ぎだしたのは小心者の羽黒であった

次々に撃ち抜かれていく他の鎮守府の仲間やウォースパイトを見て恐怖が限界に達し発狂し始めてしまう

 

 

「ガングートさん!離してください!!!

こんな頭可笑しい火力の砲撃をする飛行場姫なんて勝てるわけないじゃないですか!?

このまま泊地に向かっても私達は全滅するんですよ!!」

 

 

「馬鹿者!!だからって今ここから逃げるのか!?

逃げたところで奴の射程範囲からは逃げ切れない!!

むしろ逃げたら私達は完全に全滅するんだぞ!!」

 

 

「それでもやだよ!!こんな……こんないつ誰が撃たれるかも分からない状態で戦えるわけないよぉ!!」

 

 

羽黒の意見は最もでありそれが本当であり全員が思っていたことであった

高い航空戦力、正体不明の敵戦力、そして飛行場姫カナによる一撃必殺の超遠距離砲撃

誰しもがこの場から戦場から逃げ出したかった

 

 

「……やっぱり勝てないんだよ…歴戦の姫なんて僕達に…」

 

 

「最上!貴様まで何を言ってるんだ!!」

 

 

「だってガングートも見ただろ!?ウォースパイトさんが一撃でやられたのを!!彼女は戦艦なんだよ!僕達より遥かに強いのにそれを一撃で!!」

 

 

「だからって、下がれるわけないだろ!!」

 

 

「……ははは、そうよ私達に勝てる見込みなんてないのよ」

 

 

「ちょ!ちょっと霞ちゃんまで!?」

 

 

「だって、比叡さん考えてみてくださいよ!貴女ですら恐らく一撃であんなにボロボロになっちゃうんですよ!!

私達駆逐艦なんて一発轟沈ですよ!!

勝てるわけないよ!!」

 

 

「ちょっと霞~?分かるけどさここでそれ言う~?」

 

 

「だって!吹雪も足柄さんもやられたんだよ!?

うちに勝ち目なんて無いわよ!!」

 

 

「………そうかも知れないわね」

 

 

「ちょちょちょ!満潮ちゃんまで!!」

 

 

(不味い……意見が別れ始めたぞ…

恐れていた状況になってしまった!!)

 

連合艦隊は次第に意見の争い合いになってしまった

それもそのはず、何せ自分達が見えないところから飛行場姫からの砲撃が飛んできて一方的に連合艦隊は追い詰められていっているからである

どの海域にも確かに苦難とされる場所もある

だが今回は状況が全く違う

敵が見えない、そしていつ攻撃されるかも分からない極限の状況

しかも敵艦隊数も戦力も不明な今回の戦いに勝算を見出だせない

 

そんな思いが連合艦隊の艦娘達に芽生え始めそれぞれ戦うことを放棄し始めていた

 

(……まさか、これも飛行場姫の作戦なのか!?

わざと艦隊を下げて戦力を分からせないようにしつつ自分達は一方的にこちらを攻撃する)

 

 

「奴の狙いは……これか!連合艦隊の分裂!!」

 

 

 

 

 

 

 




次回

私達の戦う意味

未だに飛行場姫の影すら掴めない連合艦隊
そして、いつ攻撃されるかと言う恐怖に耐えていたが空襲がきっかけにそれは壊れ始める
だが、一人の艦娘、鎮守府の者達は諦めていなかった


いやー、カナの艤装可笑しいですね()


そして、E3ボス硬い……
何あれフランスパン見たいに硬いやんけ!!




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支配者 三

カナの遠距離砲撃により連合艦隊は恐怖と不安に支配されており長門や他の旗艦達は何とかしようとするのだが全く上手くいく気配がない

 

 

「み、満潮ちゃん頑張ろうよ!

だって私達じゃないと飛行場姫を倒せないんだよ!」

 

 

「阿武隈さん、私は確かに貴女には従いたいです

でもこんな!一方的にやられているのに勝てるわけないですよ!!

私達!まだたどり着けてすら居ないんですよ!?」

 

 

「でも、そうかも知れないわね

こんな状態で戦えるとも思えないわ」

 

 

「ちょ!ちょっと山城!そんな弱気にならないでよ!」

 

 

「嫌だって分かるでしょ?

このまま、進んでも飛行場姫の的になるだけよ

摩耶であれなのよ、私なんて不幸だからあんなのくらったら………

何でこうなるかしら…不幸だわ……」

 

 

「お前達!!何を弱気なーーー」

 

 

混乱する連合艦隊を長門が宥めようとすると一人の艦娘が艤装から空に向けて空撃ちをする

皆の視線がその一人に向けられ視線が集まる

 

 

「………雷撃姫」

 

 

「叢雲……」

 

 

叢雲は呆れたように溜め息を付くと艤装を再び下ろし連合艦隊を見渡す

 

 

「……残り39人ね、戦力としては充分じゃない

私はそう思うけど」

 

 

「いや!どうみても無理だよ!

今僕達は砲撃を受け続けてるんだよ!たどり着けてすら居ないのに!」

 

 

「それが?」

 

 

「それがって!」

 

 

最上が反論しようとすると叢雲が最上に向けて指を指す

 

 

「あんた、何言ってるの?

これは戦争よ、私達とあいつらの奪い合い

そんな状況に正々堂々なんてあると思ってるの?

あんた達私より出撃経験がある熟練者よね?

ならなんでこの程度の状態で狼狽えてるわけ?」

 

 

「で、でも!だからってこんなに酷い状態じゃ!」

 

 

「酷い?じゃあ何あんたは自分の仲間が傷付かないで安全に敵地にたどり着いて戦って皆で笑って勝つの?

何それふざけてるの?お遊戯じゃないのよこれは戦争

命の奪い合い、劣勢も損失も当たり前でしょ?」

 

 

叢雲が言うことは最もでもある

だがそれでも何人かは叢雲へ反論していく

 

 

「そうとは言ってないわ!でもね!ここまで酷い有り様で勝てると思ってるの!あんたは!!」

 

 

「勝てると思ってる?違うわね『勝つのよ』

何がなんでも足が折れようとも骨が砕けようとも艤装が壊れようとも足掻いて足掻いて足掻いて足掻いて勝つのよ!!

あんたは!そんなことも分からないの!?」

 

 

「相手は歴戦種よ!こんな少ない戦力で勝てるわけないわ!!」

 

 

「所詮命ある一体よ!相手が歴戦種だろうが何だろうが関係ない!!私達は戦わなくていけない!!

あんた達は!あんた達の提督に託されたんじゃないの!?」

 

 

叢雲の言葉が連合艦隊の艦娘達の心に染み渡る

自分達が見てきた提督や頼まれた言葉を託された思いを

 

 

「うちの馬鹿司令官はいつも言ってるわ!

『俺に力があれば俺が戦う』って!『お前なんか小娘に戦場を任せるなんてやりたくない』って!!

それでもアイツは私達に思いを!戦いたいと言う意志を託してくれた!!

あんた達はそれを放棄して逃げ出すの!?

私達が逃げたら誰が司令官達を守る事が出来るの!?

誰よ!答えてみろ!!」

 

 

その言葉に全員が沈黙してしまう

だが、叢雲は続ける

 

 

「私達にはアイツらを倒せる力がある!それなら私達は司令官達の変わりに戦うべきじゃないの!?

違う!ねぇ!!」

 

 

続けて言われるが誰も叢雲に反論できなくなっていると呆れたように連合艦隊に背を向ける

 

 

「逃げたい奴は逃げなさい

そんな状態で無理に戦っても邪魔なだけよ

そんな奴等今はいらない」

 

 

その言葉と共に一人単身で飛行場姫が待つドレス島へと航行してしまいその後ろを古鷹は追いかけようとする

 

 

「ふ、古鷹さん……」

 

 

「私も行くよ、私達は提督に託されたの

あの人だって戦いたいのに戦えない

だから、私達が代わりに戦いの

別に無理して来なくても良いんだよ?私達が囮になるからその間に皆は本島での防衛を強化しておいて?」

 

 

古鷹は叢雲の後を追い掛けていくとそれに続けて大井とグラーフも追い掛けていく

 

 

「お、大井っちも行くの?」

 

 

「えぇ、私の出来ることは少ないかも知れません

ですが私は戦いたいんです

提督の為では無いですよ?私がただ戦いたいんです

それにいつか倒すべき敵です、それが後か今かですからね

北上さんは逃げてください、付き合う必要はありませんから」

 

 

「グラーフさん!貴女もなんですか!?」

 

 

「あぁ、飛行場姫は艦載機を使うんだろ?

なら制空権を取るために私は必ず行かないとな

それに叢雲が行くなら我々は何処までも付き合うさ

例え勝てなくても絶望しようともな」

 

 

 

叢雲達が行った後後ろから金剛と熊野がこちらに向かってくる

 

 

「あれー?皆何してるデース?」

 

 

「あ……お姉さま…えっと……」

 

 

榛名が現在の状況を説明すると頷き金剛は迷わず笑み浮かべる

 

 

「そうデースか、分かりました!

榛名!霧島!比叡!下がっても良いんデースよ?」

 

 

「お、お姉さまは?」

 

 

「もちろん行きマースよ、叢雲達だけじゃ火力が足りないデースし何処までも付き合うって決めてマースから!」

 

 

「で、ですがお姉様相手は歴戦の姫、それに我々はもうここまでボロボロに……」

 

 

「それが何デースか?」

 

 

「「「え?」」」

 

 

榛名達は現状を伝えたはずなのだが金剛はニカッと笑う

 

 

「私は!まだ負けてないんデース!

確かに戦況は良くないかも知れません!

もしかしたら負けるかも知れません!

それでも、私は負けたくないんデース!

飛行場姫にすら会えてないんですよ?なら一撃でも私の攻撃を与えてから撤退したいんデース!」

 

 

「お姉さま……」

 

 

「それに!」

 

 

金剛は榛名達を指差すとウィンクをし笑う

 

 

「ここで撤退したら私達は何のためにここに来たんですか?

私達には守るべき物があるんじゃない?」

 

 

「「「!!!」」」

 

 

「じゃあ!私は先に行ってるデースよ!

叢雲ー!待ってくださーい!!」

 

 

金剛はそれだけを言うと全速力で叢雲を追いかけていきその言葉に長門はクスッと笑う

 

 

「ふふ、流石だな小笠原鎮守府

どんな逆境も乗り越えてきた事はある

陸奥、磯風、利根、赤城、リシュリュー

お前達はどうする?」

 

 

「あら?そんな野暮を聞くの?長門?」

 

 

「勿論行くさ、必ず勝ってみせる」

 

 

「うむ、ワシもじゃ!筑摩を傷付けた礼をしてやるぞ!!」

 

 

「愚問ですね、私は始めから覚悟はしてきてます」

 

 

「ぶっ潰してやりましょ!

アドミラルに勝利を!!」

 

 

長門は頷くと連合艦隊に指示を出す

 

 

「連合艦隊!我々、舞鶴は飛行場姫殲滅に向かう!!

お前達が付いてくるから自由だ!これ以上被害を増やしたくないなら下がって良い!私から大元帥に進言しておこう!

 

下がらず戦うと言う者は覚悟しろ!!

奴は我々が想像する以上の化け物だ!!死を覚悟し我々に付いてこい!!!

行くぞ!!舞鶴艦隊!」

 

 

長門はそれだけを言うと陸奥達と共に先を先行する叢雲達に向かっていく

残された者達は一人一人考え込むがそのうちの一人が前に出る

 

 

「や、大和さん…」

 

 

「私は、自らこの戦いに志願しました

それは提督の為皆を守りたいからです

榛名さん、貴女は違いますか?」

 

 

「…………違いません、私は提督を大好きな鎮守府を守りたいんです!!」

 

 

「ならやることは決まってますよね?」

 

 

「はい!皆はどうですか!?」

 

 

「無論ですね、私は戦いますよ」

 

 

「行かないわけ無いでしょ、このままやられっぱなしのは嫌いなのよ」

 

 

「うん、僕も行くよ!夕立の分まで戦うんだ!!」

 

 

「比叡お姉さま!霧島!榛名は先に行きます!!」

 

 

大和に背中を押され榛名率いる横須賀艦隊も先行する叢雲達を全速力で追い掛ける

 

 

「……榛名も行っちゃったかーじゃあ私も行かないとね!北上さんは!?」

 

 

「比叡ー?誰に行ってるさ行くに決まってんじゃん?

あんなに突っ走ってる大井っちを見て行かないわけ無いでしょ?」

 

 

「皆馬鹿じゃないの!?行っても勝てっこ無いのよ!!

し、沈むかも知れないのよ!?」

 

 

「でもそれって『かも』でしょ?沈むって決まって無いよね~?

それに足柄と吹雪をやってくれたお礼もしてあげないと行けないしね

蒼龍はどすんの?」

 

 

「うーん……怖いけど行くよ!だって提督と皆の鎮守府を守りたいんだもん!!」

 

 

「だってさ、霞良いよ下がりなよ

私達は行く、アイツを仲間を傷付けた飛行場姫を粉々にするんだから

行くよ、二人とも」

 

 

「め、珍しく怒ってるね北上さん……

よし!じゃあ、気合い!入れて!行きます!!」

 

 

「航空戦は任せてよね!!」

 

 

北上は少し怒っており比叡と蒼龍は苦笑いをしながらも三人は叢雲達を追っていく

一人残された霞は頭をガシガシと掻くと大声で叫ぶ

 

 

「あー!!もう!馬鹿ばっかり!!!

それでもたまには馬鹿になってみるのも良いかもね!!」

 

 

そう叫ぶと霞も北上達の後ろを付いていくように走っていくと霧島は眼鏡を掛け直すと一人前に出る

 

 

「さてと、では私も行きますか

阿武隈、どうしますか?私は行きますが?」

 

 

「何言ってるの霧島さん!やるに決まってるじゃないですか!

多良間島の二の舞にはさせないよ!」

 

 

「流石阿武隈ね、皆は?」

 

 

「馬鹿ね!行くに決まってるでしょ!

叢雲が行くのよ、私達だけ逃げる訳には行かないわ!!」

 

 

「そうですね、行きましょう!」

 

 

「空襲では少しやられましたがこの程度平気です!

行きましょう!」

 

 

皆が行くと決めた中満潮だけは俯いており阿武隈はそんな満潮の頭を優しく撫でる

 

 

「満潮ちゃん、もし怖かったら下がっても良いよ?

ここからは私達だけでいくから」

 

 

「………下がれるわけ…無いでしょ!

良いわ!戦ってやるわよ!!あの時見たいに何てしてたまるもんか!!」

 

 

「それでこそ満潮ね!じゃあ行くわよ!」

 

 

沖縄艦隊は全員行くことを決めると今度は不知火が前に出る

 

 

「私達も行きますよ

古鷹さんが行ってるのです私達も行くべきです」

 

 

「そうだな、私達も行かなくては勝てるものも勝てなくなる

木曾、下がっても良いんだぞ?」

 

 

「い、行くさ!!舐めんなよ!」

 

 

「相手は飛行場姫、対空戦なら得意分野です!」

 

 

「夜戦じゃないかも知れないけどぶっ潰そう!!」

 

 

「では、佐世保艦隊!抜錨します!!」

 

 

佐世保艦隊も覚悟を決め飛行場姫へと向かっていく中神通は一人前に進もうとすると飛龍が止めようとする

 

 

「ちょっと本気?神通そんな傷で?」

 

 

「本気です……私は奴と戦います必ず勝って提督に……」

 

 

その必死な姿を見て山城は溜め息を付くと神通を持ち上げると後ろに下がろうとする

 

 

「お!おろしてください!私は前に!!」

 

 

「そんな、状態で行ったとして勝てるものも勝てないわよ

ほら明石さんに直してもらうわよ

…………飛行場姫を倒すんでしょ?直ったら私も行く」

 

 

「…!山城!」

 

 

「飛龍、任せても良いかしら?艦隊指揮

私はこの特攻しそうな旗艦を治して貰ってから行くから」

 

 

「オッケー!任せておいて、それまで皆は私が守るからね!!

じゃあ熊野行こうか!!」

 

 

「えぇ!鈴谷の仇をうたせて頂きますわ!!」

 

 

「じゃあ、後で落ち合いましょ

ほら行くわよ旗艦様

……全く不幸だわ…」

 

 

飛龍と熊野は前に向かい山城は神通を抱え後ろへと下がっていく中残された大奏艦隊

 

 

「……私は行く、皆はどうする?」

 

 

「私も行きますよ、軽空母ですがやられっぱなしは嫌ですから」

 

 

「私も行くわ!居ないと航空戦キツいでしょ?」

 

 

 

祥鳳と飛鷹が前に行くことを決めるとガングートは残っている二人を尻目に前に行こうとする

 

 

「本当に行く気かい!?戦力も分からない化け物相手に!!」

 

 

「そ、そうだよ!勝てるわけないよ!」

 

 

説得をしようとするがガングートはその二人を見ると一言だけ言う

 

 

「私達は行く、お前達は好きにしろ

だが私はもう逃げたくないんだ

白鳥に支配され抵抗する気力を奪われていたあの時に戻りたくない

私は、あの男が直してくれた居場所を守りたいんだ

それを失いたいなら好きにしろ」

 

 

それだけを言うとガングートは二人を残し前に進んでいく

二人だけ残されていたが最上は深く溜め息を付くと前に踏み出す

 

 

「も、最上さん!?行くんですか!」

 

 

「まぁね、確かに一理あるしね

僕も新しく来た提督の為に何かお礼がしたいからね

あの人優しいし面白いし僕達を第一に考えてくれてる

それなら僕達はあの人の為に戦うことは恩返し何じゃないかな?

羽黒はどうする?」

 

 

「わ、私は………」

 

 

羽黒は最上に言われて考え込む

それでもやはり飛行場姫の攻撃が恐ろしすぎて戦いたいとは思えないが最上がトドメの一言を告げる

 

 

「『君はまた見捨てるのかい、イムヤの時見たいに』」

 

 

「!!!!」

 

 

「じゃあ、僕は行くよ

ガングートにも恩があるしね」

 

 

最上はそれだけを言うと一人ガングート達を追い掛けていく

一人羽黒だけ海上に残っていると拳を握り締める

 

 

「………やだ、私は…もう見捨てたくないよ!!」

 

 

決意を固めた羽黒は前を向き先を走っていく最上を追い掛けていく

 

 

 




次回

銃撃の雨(バレットレイン)を抜けて


各々再度覚悟を決めて飛行場姫と戦う覚悟を決めた
そして彼女達は太平洋海域を抜けてたどり着く
深海棲艦の中でも最強と呼ばれる三体のうちの一体
飛行場姫歴戦種カナの泊地へと


E3のボスがかってぇ!!
と言うか集積も居るのマジ辞めてほしいんだけど……
可笑しいな…装甲粉砕ギミックやったはずなのにクリア出来ない……
なにこれ辛い今回のイベント……





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支配者 四

叢雲は一番先頭を航行しているとその隣にこちらへ近づいてくる影が見えそちらへ振り向く

 

 

「待て!叢雲、我々も行く!!

お前が先頭では的になるぞ!!」

 

 

「……多分平気よ、『私』は狙われないわ」

 

 

「どう言うことだ?」

 

 

『長門、聞こえるか?

俺だ』

 

 

「佐渡提督?ど、どうしたんだ?」

 

 

突然インカムから佐渡の声が聞こえ長門は驚くが佐渡は淡々と話を続ける

 

 

『今着弾した艦娘を調べているんだが奴当てたのは重巡と戦艦だけだ

前の記録を調べても駆逐、軽巡、軽空母は狙われた試しが無いんだ』

 

 

「……どう言うことだ?何故わざわざ硬い重巡や戦艦を?」

 

 

『……これは俺の推測であり俺が戦場で培った知識何だが奴の砲弾は恐らく駆逐、軽巡、軽空母は耐えられないんだと思う

そして、それは地雷と良く似ている

奴はわざと撃沈出来る艦娘を撃たないで撃沈しない艦娘を的確に狙ってきているんだ

傷を付け、主戦力の艦娘をボロボロにし、いつ撃たれるか分からない恐怖を植え付け戦力を確実に削いでいく

結果としてお前達は衝突したろ?』

 

 

「やはりこれも奴の作戦だったのか!では敵艦が居ないのは!」

 

 

『間違いないだろうな意味としては二つ

いつ撃たれるか分からない状態にし安心させてから絶望に突き落とす

もう一つは確実に着弾させる為だ、お前達が下手に戦闘すると仲間に被弾するか当てずらいんだろうな

だから試してみてくれないか?』

 

 

「………分かった!貴方を信じよう!!」

 

 

長門はインカムを切ると後続に続いてる艦娘達に連絡を回していく

 

 

「聞け!!艦隊旗艦達!!

今すぐ戦艦、重巡達と駆逐艦、軽空母、軽巡を板挟みにして進め!!

それで奴の砲撃を受けなくて済む!!」

 

 

「はぁ!?本気かよ!」

 

 

「そんなわけ無いでしょ!そしたら……」

 

 

「そ、そうよ!!私達を殺す気!?」

 

 

「なら!他に何かあるのか!?言ってみてくれ!!」

 

 

長門の言葉に全員言葉を失っていると長門の前に磯風が走り長門を守ろうとする

 

 

「これで良いんだな?長門」

 

 

「あぁ!頼むぞ磯風!」

 

 

その磯風の行動に背中を押され各艦隊の駆逐艦や軽巡、軽空母達は顔を見合せそれぞれの戦艦や重巡達の前に動いていく

 

 

「満潮!」

 

 

「悪いけど、霧島さんはうちの火力なのよ

やらせないわ!」

 

 

「ほら比叡~私の後ろに隠れてな~」

 

 

「ありがとうございます!北上さん!」

 

 

「良し!行くぞ!!連合艦隊!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チッ!あいつら攻撃の意図を理解しやがったな!?」

 

 

ドレス島の泊地にて、カナは連合艦隊達が戦艦や重巡達の前に駆逐や軽巡が立ち塞がっており歯軋りと共に艤装を思い切り叩く

 

 

「椿!!迎え撃つ準備は!?」

 

 

「終わっております!!太平洋海域に存命する深海棲艦を全てこのドレス島へと戻らせ補給、修理は万全でありいつでも戦えます!!」

 

 

「良いわ!流石は私の右腕ね!

そろそろ奴等がここに到達する、迎え撃つわよ!!

各艦隊に戦闘用意!!」

 

 

「はい!伝えてきます!!

姫様に勝利を!!」

 

 

隣に居た椿はその場を離れていくと全艦隊へと戦闘用意をするように促していく

そしてカナは巨大な艤装をゆっくりと動かし次の照準を空母達に切り替える

 

(確かこの特殊弾頭は空母も撃てる筈よね

始元が言うには装甲空母も一撃で撃ち抜けるんだっけ?

空母より面倒と聞いたし、なら!!)

 

 

カナは主砲を装甲空母の瑞鶴へと構えるとゆっくりと狙いを定めると主砲を撃とうとする

 

(必ず殺さないで損傷させ、艦隊に恐れを抱かせることで連携を弱体化させる

そうすれば簡単に勝てるってアイツから聞いてるけどこれはこれで楽しいわね

確かに私にしか出来ないやり方ね

さぁてと………じゃあ!苦しみなさい!!装甲空母!!)

 

 

だが引き金を引くその瞬間突然インカムから通信が入り舌打ちをする

 

 

「誰よ!!この状態の私に通信なんて喧嘩売ってる奴は!?」

 

 

『あらぁ?別に喧嘩は売ってないけど余裕無さそうじゃない?カーナ?』

 

 

「っ!?エ、エア!あんた何でこの回線を知ってるのよ!!」

 

 

その通信相手はエアであった

小笠原に居ながらもドレス島に居るカナに向けて無線を飛ばしており嘲笑う様に話していた

 

 

『私に知らないことがあるとでも?相変わらずねぇ

少しは頭を使いなさいよお馬鹿』

 

 

「今戦闘中何だけど!?邪魔しないでくれる!!」

 

 

『知ってるわよ、アンタから聞いてるし

言っとくけど手伝いはしないわよ

私は不干渉だからね、あんた達の戦争には』

 

 

「分かってるわよ!!

それで何の用!?」

 

 

『べっつに?キツいならクイーンに連絡しようかって聞こうと思ったのよ』

 

 

クイーンと言う名前を聞いた瞬間カナの顔がひきつる

そして冷静になると深く息を吐く

 

 

「しなくて良い、あれが居ると面倒なのよ」

 

 

『強いのに?あれが居ればどんな艦隊も敵も勝てるわけないわ』

 

 

「………正直アイツは嫌いなのよ

それよりもあんたの方が欲しいわ

ムカつくけど嫌いじゃないし」

 

 

『あら、嬉しい

でもごめんなさいね私は戦争に加担しないのよ

それと一つ情報よ、空に警戒しなさい

あんたには関係ないと思うけどね

負けるんじゃないわよ、その島を『あんたに託したんだからね』』

 

 

その言葉と共にエアは通話を切りカナは拳を握り締めると艤装のロックされた金庫から一枚の写真を取り出す

 

 

「……そうよね、私は他の奴等からここを託されたのよね……

負けられない…また全てを潰して守るんだから…

私は……あんたの居場所を守らないと行けないんだから…

唯一信じられるあんたの居場所を…」

 

 

その写真は一人の少女を真ん中にクイーン、カナ、エア、監視者そして他の姫級と四人の男達が映し出されており微笑みながら写真を撫でる

 

 

「…………負けない、あんな奴等全員ぶっ潰してやるわ!!!

私は姫のエリートなのよ!!あの娘達に渡されたコイツで!!全て凪ぎ払ってやるわ!!!

『あの娘の帰るべき場所を守るのよ!!!』」

 

 

その言葉と決意を胸にカナは艤装を動かしその照準を連合艦隊へと向ける

 

 

 

「『略奪者共!!』覚悟しろここがお前達の墓場だ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「赤城!!どうだ!?」

 

 

「残り!50キロを切りました!!

もうすぐです!!」

 

 

「にしても本当に効果があるとはな

驚いた、だがこれで!!」

 

 

「奴の島にたどり着ける!!」

 

 

連合艦隊はカナからの砲撃が無くなり全艦隊が何とかドレス島へと近づいていた

そして

 

 

「見えました!!ドレス島です!もう少しで水平線に映ります!!」

 

 

赤城からの報告により連合艦隊の全員は息を飲みその時を待つ

たどり着くことすら出来なかったドレス島

未確認の敵勢力と戦い、今まで誰とも会敵が無かった飛行場姫歴戦種カナ

 

 

「カウント!!5、4、3、2、1!!」

 

 

赤城のカウントダウンを待っていると水平線の先に島が見え始める

最強と呼ばれる歴戦種の姫との戦いの幕が上がる

 

 

「0!!見えました!!ドレスーーー」

 

 

と赤城が発言した瞬間前方から轟音と共に連合艦隊側にも爆音が響き渡りその方角へと目を向けるとカウントダウンをしていた赤城が飛行場姫カナの砲撃に直撃しており後ろへと吹き飛ばされていく

 

 

「赤城!!」

 

 

「赤城さん!!!」

 

 

再び腹部に命中し弓は焼け折れ甲板も破壊されながら後ろに転がっていくとそれをリシュリューが支える

 

 

「赤城!!しっかりして!」

 

 

「リシュリュー!赤城を頼む!!

連合艦隊!!用意しろ!!ドレス島突入!!」

 

 

リシュリューは頷くと赤城を肩に背負いながら運んでいき長門は歯を食い縛るが叫ぶ

 

 

「やっと、会えたな!!飛行場姫!!!

行くぞ!連合艦隊、ドレス島攻略作戦!!開始!!!

飛行場姫を!倒すぞ!!!」

 

 

そしてそれと同時に近づいてきた連合艦隊にカナは不敵に笑みを浮かべながら艤装に乗りながら叫ぶ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「来たわね!艦娘共(略奪者共)!!!

掛かってきなさい!!ここがお前達の墓場よ!!!」

 

 

そして、連合艦隊と飛行場姫カナとの戦いの幕が上がった

 

 

 

 




次回

激突!飛行場姫歴戦種カナ!


遂にドレス島へとたどり着いた長門達
そこにはカナが待機させておいた戦力が待ち構えており連合艦隊とぶつかり合う


ある意味では初の歴戦種戦になります!
この歴戦種カナはまだ実力の半分も見せておりませんのでお楽しみに!

E3は友軍来ないと攻略出来そうに無いですわ……
何であれあんなに硬いんだよ……


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開戦 

長門達がドレス島に到着すると敵戦力が姿を表す

 

 

「……やはりとんでもないな」

 

 

「何よあれ……」

 

 

「嘘でしょ……何体居るのよ!?」

 

 

ドレス島の海岸から多くの部隊が編成されておりそれが長門達を待ち構えていた

目視できるだけでもその数は100を越えており連合艦隊の倍以上の数であった

 

 

「来ましたね、では姫様そこで砲撃をお願い致します」

 

 

「えぇ、艦隊指揮は任せたわよ椿」

 

 

椿は一人の深海棲艦の部隊に溶け込むと全艦隊に指示を出していく

 

 

「空母艦隊!航空戦用意!!」

 

 

 

椿の指示に空母ヲ級や軽空母達が動きだし艦載機を次々に発艦していくと連合艦隊もそれを迎撃しようとする

 

 

「!!空襲が来るぞ!対空戦用ーーー」

 

 

と長門が言い掛けた瞬間後ろの空から艦載機の音が鳴り響き不意に後ろの空を見上げる

 

 

「あれって……」

 

 

「…どうやら提督達も私達だけで戦わせるという訳では無いみたいだな」

 

 

「おぉ!基地航空隊か!!」

 

 

それは空軍が保有する対深海棲艦兵器基地航空隊

しかも、その数100機を越えており連合艦隊も圧巻する

 

 

『長門!応答しろ!』

 

 

「提督!!この基地航空隊はまさか!?」

 

 

『あぁ、錦戸提督が今回の為に空軍に要請してくれた基地航空隊だ!向こうの戦力がどうであれ必ず役に立つはずだ!!』

 

 

それと同時に基地航空隊はドレス島に配備されている深海棲艦達に爆撃を開始しており椿はその対応に追われていた

 

 

「クソ!かなりの数!!

艦娘共め!お前達!!必ず全て撃ち落としなさい!!」

 

 

「「「了解」」」

 

 

ドレス島に配備されている深海棲艦達は基地航空隊に苦戦を強いられているとそのうちの何体かは椿の艦隊を通り越して陸上に構えているカナへと向かっていく

 

 

「不味い!!姫様を守れお前達!!」

 

 

カナを攻撃させまいと椿やツ級等が攻撃に向かう艦載機を撃墜していくが数が多く何機かはその攻防を潜り抜け突っ込んでいく

 

 

「ひ!姫様!お逃げくださーーー」

 

 

「落ち着きなさいよ、椿」

 

 

慌てる椿とは対照的にカナはかなり落ち着いておりため息つくとカナに向かってきていた艦載機はカナの側に居た砲台古鬼が正確に全て撃墜する

そして、支配されつつある空を見ながらカナは笑う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはははは!!何よ!この程度の『ハエ』で私から空を奪えると思ったのかしら!?」

 

 

そう叫ぶとカナは再び巨大な砲身である艤装をゆっくりと空へと照準を狙いを定める

 

 

「主砲!一番スロットから三番スロットに変更!

対空砲撃を開始する!!全艦載機!当たらないように気を付けなさいよぉ!!!」

 

 

その言葉と共に巨大砲身から二回ガコンと言う音が聞こえると四本の刺股が地面に伸び刺さる

 

 

「な、何だ!?」

 

 

「アイツ何をする気なの!?」

 

 

いきなり動き出したカナの巨大艤装に長門達は警戒し椿は困惑する

 

 

「ひ、姫様何を!?」

 

 

「何って花火よ、は な び!

美しく散りなさい!!六式弾砲撃開始!!!」

 

 

カナはそう叫ぶと空に向けて巨大な砲身から三連続で砲撃を開始する

放たれた砲弾は三発ゆっくりとした軌道で空に放たれていくと空に居る基地航空隊の上を通り過ぎる

 

 

「さぁ、爆裂しなさい

私の艤装専用特性対空弾を」

 

 

その瞬間三発の放たれた砲弾は基地航空隊の上で大爆発を起こし三式弾の倍以上の火薬をばら蒔いていきそれに着弾した基地航空隊の大部分は撃墜されてしまう

 

 

「ば、馬鹿な!あれだけ居た基地航空隊が!?」

 

 

「嘘でしょ…何よ!あの砲弾!!」

 

 

「三式弾?いや、それより火力がある弾か!?」

 

 

 

先程までドレス島の上空に居た基地航空隊は次々に撃墜されその代わりにカナの艦載機が再び空を支配する

たった三発、カナが放った特殊弾頭により一気に形勢逆転されてしまう

 

 

 

「……何ですか…あれ……興味深いですが…

あんなの見たことありませんよ…」

 

 

「椿!なぁに呆けてるのよ!ちゃっちゃと反撃しなさいよ!!」

 

 

「ふぇ?あ、は、はい!空母艦隊!攻撃用意!!」

 

 

椿が指示を出すとヲ級達が艦載機を発艦させそれに対して連合艦隊の空母達も用意を開始する

 

 

「瑞鶴!お願いね!!」

 

 

「グラーフ!任せたわよ!!」

 

 

「了解!行くわよグラーフ!」

 

 

「任せろ!

攻撃隊発艦始め!!蹴散らせ!!」

 

 

連合艦隊の空母達は艦載機を発艦させると椿指揮する敵艦載機とぶつかるのだがこちら側が少しばかり優勢ではあった

 

 

「良し!これなら!!」

 

 

少しだけ瑞鶴が油断をしていると再びドレス島の海岸から巨大な砲撃音が聞こえると瑞鶴達の頭上に先程基地航空隊を撃墜した六式弾が放たれる

 

 

「ま、不味い!皆下がって!!」

 

 

艦載機を下げようとするが間に合わずに六式弾が爆裂し瑞鶴やグラーフ達の艦載機に直撃し全ての艦載機を撃墜する

 

 

「あはは!あんた達が私から制空権なんか取れる訳ないでしょ!!

この程度なの?艦娘共!!三番スロットから四番スロットに変更!

砲撃に変更!!行くわよ椿!!!」

 

 

カナがそう叫ぶと再び巨大な砲身からガコンと音が聞こえると瑞鶴に向けて主砲を構える

 

 

「不味い!瑞鶴避けて!!」

 

 

「大丈夫よ!私がここに居ればーーー」

 

 

瑞鶴の前に満潮が立ち塞がり守ろうとするのだが次の瞬間満潮がカナの主砲が直撃すると爆煙に包まれ瑞鶴にぶつかる

 

 

「満潮!!」

 

 

「え!?ど、どうして!?」

 

 

「な、なん……で?…さっきまで……撃て…なかったのに……?」

 

 

だが満潮が爆煙と共に倒れていくが明らかに先程他の艦娘が受けた一撃よりも火力が抑えられていた

それでも満潮は駆逐艦でありそれ相応の一撃であった為に大破させられてしまう

艤装は破壊され主砲もねじ曲がっており体も焼け焦げていた

 

 

「何だ!アイツは火力を抑えた砲撃できるのか!?」

 

 

「陣形を崩せ!奴はこれから駆逐艦や軽巡も狙ってくる!!」

 

 

長門が指示を出していくと先程までやっていた戦艦達を守る陣形を崩すとカナは艤装から連合艦隊を見ていた

 

 

「ふぅ、命中

四番スロット、通常の砲弾ならやっぱり一撃破壊は普通か

初めて撃ったけど良い火力ね?

しかもこっちなら連発出来るのが良点なのよねぇ

さ、て、と、始めるわよ!!」

 

 

それと同時に再び砲弾がリロードされその主砲先が連合艦隊に向けられる

 

 

「行くぞ!!連合艦隊!奴に近付くぞ!!」

 

 

「これ以上近付いても死ぬだけよ!馬鹿共!!」

 

 

 




次回

absolute(アブソリュート)


基地航空隊による攻撃を意図も容易く撃滅し更にドレス島の制空権を握るカナを倒すべく長門達は戦闘を仕掛けるものの戦力差はかなり大きい
そして、叢雲と古鷹、磯風はある作戦を実行しようとするがその古鷹の前に一人の深海棲艦が立ち塞がる


昨日まで装甲粉砕ギミック探して三千里……
どこにあるんだおらぁ!!と思ったらJマス攻略忘れてた無能提督がこちら(E3のラストギミック)
しかも連合艦隊で行けなくて大量に資材溶かして最終的に通常編成でやっと突破しました()

覚悟しろよな!クソッタレめ!!
ゆーちゃんとネルソン欲しいんだよぉ!(ゆーちゃんはフランスパンですがね)


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開戦 二

長門達は航空戦を終えるとドレス島にいる敵戦力に突っ込んでいく

先程の基地航空隊により少しだけ削がれた戦力を叩こうとするのだがその前にル級達が長門に立ち塞がる

 

 

「退け!私の邪魔をするな!!」

 

 

ル級達は長門に向け砲撃するが長門は意図も容易くその攻撃を避け艤装でル級達を殴り飛ばしていく

だがその後ろからリ級が狙いを定めていたが

 

 

「あらあら?長門に何するつもりだったのかしら?」

 

 

「!!」

 

 

その後ろから陸奥がリ級を吹き飛ばし長門の後を追い掛けていく

 

 

「ちょっと長門!突っ走り過ぎも良くないわよ!」

 

 

「馬鹿者!こんな状態で後ろに引いたとしても士気は上がらん!

ならば少しでも無茶をして士気を上げないとーーー」

 

 

長門と陸奥が話しているとカナが居座っている艤装から轟音が聞こえ辺りを見ると佐世保艦隊に所属する川内が被弾していた

 

 

「きゃあぁぁぁぁ!!」

 

 

「川内!!」

 

 

「川内さん!」

 

 

それを皮切りに深海棲艦の視線が川内に集中する

 

 

「お前達!今被弾した軽巡を狙え!!」

 

 

「「「了解!!」」」

 

 

椿が指示を出した瞬間深海棲艦達が一斉に川内に向かっていくのだが

 

 

「へぇ?随分と姑息な手を使うのね?

深海棲艦らしいじゃない?」

 

 

「川内さんはやらせないよ

日向さん、川内さんをお願いね?」

 

 

「あ、あぁ!」

 

 

「駆逐ト重巡ダ!!殺セ!!」

 

 

 

その向かう深海棲艦達の前に叢雲と古鷹が立ち塞がるが勢いは止まらず叢雲達に襲い掛かる

 

 

「呆れた、もう少し知的だと思ったのに」

 

 

叢雲に向けてル級達が砲撃をするのだが叢雲はほとんど身動きもせずにその砲撃を交わし新しく貰った艤装を構える

 

 

「さてと、切れ味を確かめさせてもらうわよ!!」

 

 

叢雲は一人飛び出すと前方に居たツ級の首に艤装を当てると思い切り切り裂き首を飛ばす

その次に隣に居たリ級が構えるのだがそれと同時に艤装でリ級の頭を捉え砲撃をする

低い火力とは言えど仮にも砲撃、リ級は頭部に軽傷を負うと目を閉じながら主砲を叢雲が居るであろう場所に撃つが

 

 

「イタイ!ナニスルノ!?」

 

 

そこには既に叢雲は居らず代わりに別のリ級がおり負傷してしまう

 

 

「ア!ゴ、ゴメーー」

 

 

と謝ろうとした瞬間背後から心臓(コア)を叢雲の艤装が貫くと笑みを浮かべる

 

 

「へぇ?良い切れ味、心臓(コア)を貫けるのは良いわね」

 

 

叢雲はそのまま引き抜くとリ級は口から吐血しながらその場に崩れるように倒れる

明らかに駆逐艦の機動を越えており返り血に濡れている叢雲に少しばかり怯えるが仲間を殺されたことにより標的を叢雲に変える

 

 

「コイツヲコロセ!!」

 

 

「ばーか、あんた達じゃ無理よ」

 

 

その瞬間少し離れた距離から叢雲を狙い撃とうとしたル級が居たのだが撃つ寸前に足下を撃ち抜かれ体制を崩す

 

 

「叢雲には手出しさせないよ!」

 

 

その言葉と共にル級から怒りを買い古鷹に意識が行くのだが背後から戦艦程の火力で撃ち抜かれ痛みに倒れる

 

 

「駄目デースよ!古鷹はやらせませーん!」

 

 

ル級が立ち上がろうとした瞬間足下に魚雷が近づいており離れようとするが

 

 

「ごめんね、逃がすわけには行かないの!」

 

 

古鷹が正確にル級の脚を捉えその場に倒れる瞬間雷撃が命中し撃沈する

 

 

「ちょっと失敗しましたね、古鷹さんありがとうございます」

 

 

「ううん、それよりも」

 

 

叢雲が一人深海棲艦達に囲まれながら戦っている姿を見ると古鷹はため息を付く

 

 

「相変わらずだね、叢雲は一人で突っ走り過ぎだよ」

 

 

「それを止めるのが私達ですよ、金剛!行くわよ!!」

 

 

「デース!叢雲だけに良い顔はさせませんよぉ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

叢雲が一人戦う中に大井達も参戦するとその姿を陸上でカナが睨んでおり

 

 

「……あれか、確かユリが世話になったって言う駆逐艦

名前は……叢雲だっけか

何よあれ、話以上にヤバイじゃないの

と言うか何よ、あれ本当に駆逐艦?いや可笑しいでしょ!?」

 

 

無双している叢雲を見て頭を悩ませていた

 

 

「いやあれよ?確かに多くの艦娘とかを見てきたわよ?

確かにヤバイのとかも居たけどさ?何あれ、駆逐艦と言う名の深海棲艦姫?

いやそれでも可笑しいでしょ!!ちょっと椿!どうなってるのよ!!

私あんなの知らないんだけど!?」

 

 

『えぇ……姫様、沖縄戦の資料渡したじゃないですか……

目を通しといてって言ったのに……と言うか戦闘中にオフを出さないでください意外と余裕あるんですか?』

 

 

「無いわよ!あったらこんなに焦ってないわよ!

私がすこーーーしだけ小心者なの知ってるでしょ!?」

 

 

『いや、知ってますけど……と言うかそのabsolute(アブソリュート)で狙っては如何ですか?』

 

 

「………あんた、あそこにいる奴等まとめて私に殺せと?」

 

 

『………失礼しました、分かりましたよ

何とかしてみま………うん?あーれー?あそこに居る重巡どっかで見たことがー?』

 

 

カナはため息を付くとabsoluteの艤装に反映されているモニターを見ながら五つあるスロットの残弾を確認する

 

(確かにabsoluteなら狙えるかも知れないけれどあそこまで仲間達に囲まれてると撃ち辛いし下手したら仲間に被弾しかけない………五番スロットのこれを使えば倒せるかもだけど…これは『清掃用』だし仲間も殺し兼ねないしなぁ……

下手な奴を撃つわけにもいかないし本当に扱いが難しいわねこれ)

 

 

カナが叢雲に対策しようと考えているとその近くに居た重巡に目を光らせそれを撃ち抜こうとする

 

(!そうだ!あいつらの仲間の重巡を狙えばこっち来るかも!

そして向かってきたらそのまま撃ち抜けば良いのよ!私あったまいい!!)

 

 

思い付くとカナは主砲を再び構えその重巡古鷹に照準を合わせる

 

 

(さてと、悪いわねちょっと痛い目にあってもらうーー!)

 

 

『あーーー!!!やっぱりそうだぁ!!

あの時の重巡古鷹だー!!姫様!あの叢雲の側に居る古鷹を狙わないでくださいね!!絶対ですよ!?』

 

 

撃つ瞬間に手を離すと頭からガックリと落とすと艤装から椿を見ると満面の笑みを浮かべている

 

 

「あの時って一年前敵本拠地の鎮守府で会ったって言う?」

 

 

『そうです!そうです!!!

あぁ!またこんなところで会えるなんて運命?それとも偶然!?そんなことどうでも良い!姫様!ちょっと私お話してきますねぇ!!』

 

 

「あ、ちょ、こら!艦隊指揮はどうするのよ!?

………ってアイツインカム切りやがったなぁ……全く…あれさえ無ければ完璧なのに…」

 

 

カナはため息を混じりに現在の戦況を見ながら少しだけ微笑む

(この戦いでの鍵はあの叢雲と戦艦長門

他はどうせ集められただけの弱そうな奴等ばかり、問題は長門を撃ち抜くタイミングとあの意味が分からない叢雲をどう処理するかね

………やっぱり撃とうかしら五番スロットのこれ

でも被害は酷いからなぁ

まだ良いか)

 

 

艤装を再び構えるとその先を覗きながらまた別の標的を探し始める

 

 

「全員潰せば問題ないからね!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「長門!!ちょっと良い!?」

 

 

叢雲は一通り深海棲艦を倒し終わると長門に向かって走っていく

 

 

「何だ!!今取り込み中だ!!」

 

 

そう言う長門の前には何体かの深海棲艦がおり叢雲は駆け出すとその一体の首をはね飛ばしその隙に長門がもう一体を主砲で吹き飛ばす

 

 

「そろそろあの作戦をやりたいから!磯風さんを借りるわよ!!」

 

 

「!!あぁ!分かった!

磯風!ちょっと来てくれ!!」

 

 

「何だ!!」

 

 

「古鷹!ちょっと!」

 

 

「うん!分かった!」

 

 

 

別の場所で戦っていた磯風を呼び出し叢雲と合流させると古鷹も同じ様に近づいてくる

 

 

「三人共!当初の予定通り佐渡提督の作戦を発動する

磯風、二人を頼む

叢雲、古鷹は作戦を遂行してくれ」

 

 

「「「了解!!」」」

 

 

「私は引き続きこの艦隊を指揮している者を探す!!」

 

 

「何を言っているんだ?長門、この艦隊を指揮しているのはあの飛行場姫だろう?」

 

 

「いや、奴はあの場所から砲撃しかしていないし艤装を常に覗いている

私達の行動を監視することは出来るが深海棲艦の艦隊を動かしているわけではない

恐らく現場を指揮するもう一人が居るはずだ

あの飛行場姫が助けたと言う戦艦が」

 

 

長門は戦場を睨み付けると深海棲艦達は連携を取りながら着々とこちら側を攻めてきており長門も悔しそうに歯を食い縛る

 

 

「陸奥、私、他の艦隊はこの現場を指揮する者を叩く

お前達は飛行場姫を頼むぞ!」

 

 

「「「了解!!」」」

 

 

その言葉と共に叢雲、古鷹、磯風の三人は長門と離れドレス島の近くへと航行していく

 

 

「私が先導する!離れるなよ!!」

 

 

「分かってるわよ!」

 

 

「お願いします!磯風さん!」

 

 

三人は隠れながらもゆっくりと航行しているとその目の前から艦娘を吹き飛ばし仲間である深海棲艦も殴り飛ばしながら一人の深海棲艦が三人に突っ込んでくる

 

 

「どこに行くつもりですかぁぁぁぁぁ!?

古鷹ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

「な、何!?」

 

 

「な、何だアイツは!?」

 

 

磯風と叢雲は面を食らってしまうが叢雲は急いで艤装を構えて刺そうとするがその深海棲艦はその先を蹴り飛ばしそのまま跳躍すると古鷹に突っ込み自分の艤装をぶつける

古鷹も艤装でそれを防ぐと互いに間に火花が飛ぶ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりですねぇぇぇぇぇ!!!

生きていたんですねぇ!?古鷹ぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「あ、貴女!!まさかツバキ!?」

 

 

「はぁい!そうですよぉ!!!

まさかまた会えるとは感激ですねぇぇぇぇ!!」

 

 

 

そう叫びながら艦隊総司令である椿は自分の職務を放棄してまでも古鷹に突っ込んでいく

 

 

 




次回

狂気との再開

叢雲達がある作戦を遂行しようとした瞬間椿がそれを偶然防ぎ古鷹に襲い掛かる
一年前、焼け落ちる鎮守府で出会った二人は再び戦場で再開する


やっとE3突破しましたぁ……
友軍来てやっと突破ですよ…突破出来て良かった、マジで陸上と水上のコンボは辞めて欲しい(切実)
何となくE3攻略を諦めてE1掘ってたらゆーちゃんが来てくれました!!
これでやっと潜水艦が五人になったぞふへへへ……
WGも持ってきてくれたし後はネルソンとグレカーレ掘らなくては……



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開戦 三

「あははは!!久しぶりですねぇ!

やっぱり貴女ですよね?あの時私とお話した艦娘ですよね?雰囲気が似てると思ったんですよぉぉ!!あははは!!」

 

 

「まさか、貴女の付き従ってるのは!?」

 

 

「そうですよぉぉぉ!私はカナ様の艦隊を任されている総司令でありこの艦隊を動かしているんですよぉぉぉ!!」

 

 

古鷹は当たり続けて当たる艤装を跳ね返すと椿はくるっと一回転するとそのまま水上に着地すると頬を赤らめながら身体をくねらせる

 

 

「あぁ!あぁ!何て嬉しいのでしょうか!!

あの時の重巡に会えるなんて最高!これが戦争なのね!あぁ!あぁ!嬉しいですわ!!」

 

 

「……前よりかなり流暢(りゅうちょう)に話せるようになったんだね……ツバキ」

 

 

嬉しそうに身体をくねらせている椿を叢雲と磯風は警戒しながら古鷹に事情を聞く

 

 

「古鷹、もしかして貴女が一年前に会ったって言うflag改の戦艦タ級?」

 

 

「うん、普通に言語を話せる深海棲艦何だけど……かなり強いよこの人」

 

 

そして二人が話す中静かに磯風が椿の後ろに近付き主砲でその首を狙い砲撃しようとすると

 

 

「駆逐艦、今私は喜んでいるんですよ

その余韻を邪魔するならば容赦しませんよ」

 

 

(!?ば、バレてるだと!)

 

 

磯風を見ては居ないが明らかに他の深海棲艦と違う椿に警戒すると三人を見渡しながら微笑む

 

 

「さってと、貴女達が何かしようとしているのは明白ですし早目に潰しておきましょうか?」

 

 

そう言うと三人を見渡すと自らの艤装を展開させると叢雲が単身走り出し椿に襲い掛かる

 

 

「あぁ、貴女の事は聞いてますよ駆逐艦叢雲

どうやらユリがお世話になったそうですね?」

 

 

「あんた!まさかあの戦艦棲姫を知ってるの!?」

 

 

「えぇ、知ってますよ

彼女を生まれた時に世話してますからねぇ」

 

 

薙刀の艤装を椿に向けて振り回すがそれを簡単に避け、自らの主砲の照準を叢雲に向けるが、瞬間的に叢雲はそれに気付き自分の主砲で海面を撃ち水飛沫で自らを隠す

 

 

「良い判断能力!確かに機動性は駆逐のそれとは別格ですね!!

そして!貴女も良い!!確か磯風でしたっけ?」

 

 

椿が頭を下げると磯風の砲撃が空を切り後ろからの砲撃を交わす

 

 

「馬鹿な!?音を出さずにやったはずなのに!!」

 

 

「舐めないで欲しいですねぇ?私は姫様の右腕ですよ」

 

 

そのまま振り返らずに磯風に主砲を180度回転させ向けるが、水飛沫から叢雲が飛び出し心臓に向けて艤装を突き刺そうとするが

 

 

「速いですねぇ!ですが、先程も同じ様に仲間を殺してましたよねぇ!?」

 

 

心臓に向けて突き刺そうとする薙刀を素手で掴むとそのまま一つだけ主砲を戻し叢雲に向ける

 

 

「不味い!」

 

 

叢雲は急いで薙刀を手放し再び同じ様に主砲を海面に撃とうとするが

 

 

「それも同じ技ですよねぇ!!」

 

 

「ガ……ハ…!」

 

 

それよりも先に椿が叢雲の腹部目掛けて蹴りを入れられ叢雲は苦しむとそのまま蹴り飛ばすと同時に薙刀の艤装も同時に叢雲へ投げ付けると薙刀は海面に突き刺さる

 

 

「叢雲!!」

 

 

海面を転がる叢雲に向けて椿は主砲を構えるとそのまま放とうとする

 

 

「やらせないよ!!」

 

 

だが、それを古鷹が咄嗟に主砲を構え椿の軸足である右足を撃ち抜こうとする

 

 

「それはさっきル級にやってましたよねぇ?古鷹ぁぁぁ!!」

 

 

古鷹が砲撃した瞬間椿は右足を上げその砲撃を交わすとそのまま叢雲に向けて主砲を放つ

 

 

「嘘!叢雲!!!」

 

 

「こんのぉ!!」

 

 

 

だがその瞬間いつの間にか動いていた磯風がもう片足を蹴り飛ばすと椿は体制を崩すと砲弾はあらぬ方向に飛んでいく

 

 

「あら、それは知りませんでしたねぇ

まさか蹴り飛ばしてくるとは撃ってくるならまだしも」

 

 

「く、貴様!!」

 

 

椿は体制を崩すが直ぐ様手を海面に付きそのまま跳躍すると海面に立ち直る

 

 

「良い!!良い!!ですよ!貴女達の連携技!!

そしてお互いを助け合う力!!最高ですねぇ!!

これだから楽しい!艦娘と戦うのはぁぁぁぁ!!」

 

 

体制を直した椿は笑っていると三人は他の深海棲艦と明らかに違う椿に警戒すると古鷹が単身で椿へと向かっていく

 

 

「古鷹!」

 

 

「二人は先に行ってて!!私が椿を抑えるから!!」

 

 

「だ、だが!」

 

 

「早く!!」

 

 

古鷹は単身椿に立ち向かうと叢雲は磯風を見ながら頷き二人は古鷹を置いて先に向かう

 

 

「分かった!待っているぞ古鷹!!」

 

 

「気を付けなさいよ!古鷹!!」

 

 

「うん!二人もね!!」

 

 

二人と別れ椿と古鷹は対峙すると椿は笑いながら艤装を再展開する

 

 

「いやー!良い信頼関係ですねぇ!!

やはり貴女達艦娘は面白い!!あぁ、あぁ!!

これだから戦争はやめられないんですよねぇ!!」

 

 

「そんなこと言ってる余裕があるのかな!?」

 

 

古鷹は正確に椿の重心である足を狙い撃ちするが椿はそれを意図も容易く交わし変わりに古鷹の足を撃ち抜いてくる

 

 

「余裕?ありますよぉ……何せ私はこの艦隊での総指揮ですからねぇ!!」

 

 

「く!、や、やっぱり強いんだね貴女!!」

 

 

 

 

 




次回

狂気染みた好奇心


佐渡から受けた作戦を実行しようとする三人の前にドレス島総指揮艦椿が立ち塞がる
通常の深海棲艦と明らかに違う椿に古鷹は決着を付けるために一人立ち向かう

イベントも大詰めになってきましたね!
うちはネルソンとグレカーレ確保に掘ってますが、友軍強すぎない?
ボスたどり着いたら勝てるまでありますよあれ()





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開戦 四

古鷹は痛みに耐えながらも静かに魚雷を放つと続けて右肩を狙い撃つように砲撃をしようとする

 

 

「いやー!ほんと生きていると何があるか分からない!

それが面白い!あぁ!あぁ!最高ですねぇ!!

死んだと思っていた艦娘にまた会えるなんて!!」

 

 

「戦闘中に話すだけの余裕、貴女何者なの!?」

 

 

古鷹の砲撃は椿の右肩を狙い撃つと椿は避けずにそのまま攻撃をわざと受けそれと同時に古鷹が放っておいた雷撃も命中すると椿は爆煙に包まれる

(良し!当たった……でも避けようとしなかった?何で……)

 

 

「……うん?やっぱり普通の重巡の攻撃火力と変わらないわね?

いや、それよりも少し低いかな?他にも痛いのはあるし」

 

 

「っ!?き、効いてない!?」

 

 

爆煙に包まれながら椿は全く損傷してなかった

確かに相手は戦艦、だからとは言えど古鷹も重巡であるために通じるはず

 

 

「まっさか、私がこの程度の砲撃で倒れるとでも?

アハハハ!舐めないで欲しいですね!!」

 

 

「っ!あの時感じた違和感はやっぱりこう言うことなんだね!!」

 

 

古鷹はそこそこの距離を保ちつつ椿の有効打を与えられそうな場所を探していると椿は突っ込んでくる

 

 

「どうやら!貴女は近接戦闘が苦手な様ですねぇ!!

なら苦手を克服しましょうねぇ!!」

 

 

(っ!嘘!この短時間でそんなことまで分かるの!?)

 

 

迫り来る椿に対し古鷹は距離を取ろうとするが椿は圧倒的に速く距離を詰められると艤装をぶつけられる

 

 

「アハハハ!こんな近距離では撃てませんよねぇ!?」

 

 

「………それはどうかな!」

 

 

「何ですって?」

 

 

古鷹はぶつけられている艤装を少し下に動かすと椿は体制を崩しその腹部に蹴りを与える

 

 

「ぐっ……ほほぅ?少しはーーーー」

 

 

「まだだよ!!」

 

 

蹴りを与えた瞬間左肩にある主砲で椿の頭を捉えると椿は慌ててそれを避けようとするが

 

 

「そう来ると思ったよ!!」

 

 

避けようとした瞬間椿の腹部を思い切り殴ると椿は苦しみの余り息を詰まらせる

そして、その状態からもう片手で艤装を離すとそのまま蹴り飛ばす

 

 

「ゲホッゲホッ!こ、これは予想外ですね……まさか近接攻撃も出来るとは…」

 

 

「伊達に戦いを重ねてはないからね!!」

 

 

痛む腹部を擦っていると椿は不意に艤装を下ろし古鷹に笑いかける

 

 

「貴女、変わりましたね?あの時出会った時とは全く違う」

 

 

「…………どういう意味?」

 

 

「フフフ、失礼あの時貴女を見たときどうしても貴女は無理をしているように思ってましてね

まるで、一人で何でも抱え込んで戦っているように見えましてね………

だから、私はあの時手を出さなかった

姫様にそっくりだから

でも、今は違う

今の貴女は何かを守るために、きちんとした理由を持って戦っている

そして、一人ではない

仲間……と言いましたっけ?

叢雲と磯風達と戦い二体に迷惑を掛けないように行かせた

 

 

さぁ、あの時聞きそびれた質問を返してもらいましょうか

貴女は何故戦っているんですか?」

 

 

椿は問いかけると古鷹は目を閉じながら笑いその質問に答える

 

 

「………確かにそうだね

あの時は私は違う

あの時はただ、皆を守らなきゃ、私がしっかりしなきゃって一人で戦っていた

でも今は違う!!私は私の意思で仲間を守るために戦う!だから退いてもらうよ!!椿!!」

 

 

 

「フフフ、アッハッハッハ!!そうこなくては!!

そうです!その強い思い!信念!!やはり艦娘はそうでなくては面白くない!!」

 

 

 

「でも、古鷹は一人じゃ無いデースよ!!」

 

 

 

古鷹が一人椿に戦いを挑もうとしているとその後ろから砲弾が飛んできており椿は慌てて避けるとその次に足下に来た雷撃も避ける

 

 

「チッ!外したか!!」

 

 

「大井さん!金剛さん!!」

 

 

いつの間にか金剛と大井が古鷹の後ろに来ておりそのまま隣立つ

 

 

「古鷹が私達を守る?ノンノン!私達が古鷹を守るんデースよ!!」

 

 

「古鷹さん、ここは私達に任せてください

貴女は叢雲達の援護に」

 

 

「で、でも…………」

 

 

金剛と大井は親指を立て笑いかけると古鷹は一人その場から離れようとする

 

 

「ごめん!二人ともお願いします!!」

 

 

「まっかせてくだサーイ!古鷹は古鷹の成すべき事を!!」

 

 

「こんな奴私達で充分よ!!」

 

 

「フフフ、仲間ですか………だが逃がしませんよ!!」

 

 

自分から逃げようとする古鷹を捉えるべき椿は追いかけようとすると横からの砲弾に気付き一瞬早く後ろに下がると目の前に砲弾が当たり水柱が上がる

 

 

「行かせるわけ無いデース!

古鷹は追わせませんよ!」

 

 

「悪いわね!仲間に手出しはさせないわよ!!」

 

 

「全く鬱陶しいですねぇ……ですが、砲撃は止められませんよねぇ!!」

 

 

 

椿は主砲で古鷹を捉えるとそのまま砲撃し金剛と大井は慌てて防ごうとするが間に合わず砲弾は古鷹に飛んでいく

 

 

「古鷹!避けてくだサーイ!!」

 

 

「え?」

 

 

その場から離れようとする古鷹に追撃の砲弾が飛んでいくと慌てて避けようとするがその間に誰かが入り込み古鷹への着弾を防ぐ

 

 

「ひゅ、日向さん!?」

 

 

「無事か、古鷹

後ろは任せろ

さぁ、行け貴女の作戦を実行してくれ」

 

 

「……うん!ありがとう!!」

 

 

その言葉と共に古鷹は一人その場から離れていくと椿は計三人の艦娘に包囲される

 

 

「…………これはこれは…まさか私を倒すためにここまで来るとはね…驚きですねぇ

ですが」

 

 

絶対絶命の状況だと言うのにのも関わらず椿は大声で笑いながら金剛達を睨み付ける

 

 

「良い!良いですね!!こんな状態になってもまだ戦争が楽しいと感じてしまう!!!

さぁ!さぁ!さぁ!!

掛かってきなさい戦艦共!!この私を楽しませてみなさい!!!」

 

 

「行くデースよ!大井!」

 

 

「えぇ!ぶっ潰してやろうじゃないの!!」

 

 

 

 

 




次回

最強の泊地防衛

椿と対峙していた古鷹だが、金剛達と変わり椿に立ち向かう
そんな中長門達は最強と呼ばれるカナと対峙しているが圧倒的な実力差を思い知らされていた


次回!カナが少しだけ本気を見せますよ!





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開戦 五

金剛と大井が椿と対峙する中長門達は苦戦を強いられていた

それもそのはず、どんなに敵を倒して行ったとしても数が減らず連携を取りながら連合艦隊を追い詰めていってた

 

 

「クソ!制空権は取れないのか!?

瑞鶴!どうだ!」

 

 

「かなりキツいよ!!艦載機を放つにしてもツ級も居るし!何より!!」

 

 

瑞鶴は長門の言葉に海岸で艤装を構えこちらを見ている飛行場姫カナを睨み付ける

 

 

「あれの対空弾がかなりヤバイのよ!あれ一発でこっちの艦載機を全て落とされちゃうんだもん!!」

 

 

カナは艤装をゆっくりと動かしながら連合艦隊に牙を向けていた

その姿を見ていた長門は舌打ちをすると新たに指示を出す

 

 

「奴を叩く!対地上兵器を持ってきている艦娘は私に続け!!

陸奥!比叡!霧島!大和!榛名!付き合え皆を守るぞ!!」

 

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

長門を筆頭にそれぞれ離れていた艦隊の対地上兵器を持ち合わせている者達は続いていきカナに近寄ろうとする

 

 

「お前達!!奴等をここに向かわせるな!!

潰せ潰せ潰せ!!」

 

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

それに対応するようにカナは指示を出すとバラけていた深海棲艦と地上にいる砲台古鬼は集まり向かってきている長門達を迎撃する

 

 

「退けぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

「邪魔です!!退いてください!!」

 

 

「全艦!WG、及び大発の準備をするのじゃ!

奴に一杯食わせるぞ!!」

 

 

「任せておきなさいよ!あんな奴一撃で仕留めてやるわ!!」

 

 

長門達は対地兵器を持参している艦娘達を守るように輪陣形を取りながら深海棲艦達と対峙する

 

 

「チッ!めんどくさいわね!………まいっかそれの方が好都合だしね」

 

 

それに反するようにカナは艤装のスロットを再び動かし長門達が近寄ってくるのを待っているとその主砲をゆっくりと動かす

そして、長門達はある程度までカナに近寄るとその場で停止し利根達に指示を出す

 

 

「利根!やれ!奴に食らわせてやれ!!」

 

 

「了解じゃ!筑摩!時雨!霞!不知火!最上!

全艦隊、対地兵器用意!!」

 

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

その言葉と共に各艦隊が持参してきた装備を取り出すとそれをカナに向けるとめんどくさそうな顔をする

 

 

「対地上兵器か、懐かしいわね

昔よくアイツがボロボロにされてたっけ?」

 

 

「余裕そうだな!飛行場姫!撃て!!」

 

 

「行くぞ!!WG砲撃開始!!」

 

 

「三式弾改!一斉射撃!!!」

 

 

「大発!いけぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

対地兵器を持った艦娘達はカナに向けて一斉射をするとカナは逃げもせずにその攻撃を受け地上ば爆煙に包まれる

 

 

「良し!全弾命中!!」

 

 

「これで少しはダメージを稼げたんじゃないかな!!」

 

 

「ふん!そんなところでデカイ態度取ってるのが悪いのよ!!」

 

 

各艦隊の艦娘達は勝利を確信するが長門だけは異変に気付き主砲をカナに向ける

 

 

「どうしたの長門?」

 

 

「………アイツ何で避けようとしなかったんだ?

…まるで私達がここまで来るのを待っていたかの様に構えていたような気がしてな」

 

 

「まさか、そんなことーー」

 

 

「アハハハ!やっぱりこんなもんかあんた達の兵器火力ってのは!!」

 

 

陸奥が話そうとした瞬間爆煙の中からカナの笑い声が聞こえ全艦隊は爆煙に包まれているカナへ視線が集中する

爆煙が晴れていくとその異様な艤装に長門は困惑する

 

 

「な、何だ……あれは!?」

 

 

「………防御壁?でもあんなのさっきまで」

 

 

「ま、まさか全て受け止めたのか!?あれを!!」

 

 

カナの艤装は巨大に伸びた主砲を除いて全ての艤装に鉄の壁の様な物が展開されておりそれに焼け焦げた傷や損傷はしているものの本体のカナには一切ダメージは行ってなかった

そして、攻撃が止んだと確認したカナはその防御壁を解除し再び姿を表す

 

 

「対艦娘用対地兵器防御壁、意外と堅いのね

さってと?こっちに攻撃してきたならあんた達も覚悟はあるのよね?」

 

 

頬を吊り上げながらカナは艤装を動かすと長門達の近くにいる深海棲艦達に指示を出す

 

 

「全艦!今すぐその艦娘共から離れろ!!

死にたく無ければなぁ!!!

四番から五番スロットに変更!!ぶっぱなすわよ!!」

 

 

カナの指示を受けた深海棲艦達は一斉に連合艦隊から離れていくとカナは主砲を連合艦隊の真上に撃つように構えるとそのまま砲撃を開始する

その放たれた砲弾は異常に大きくまるで砲弾と言うよりは巨大な爆弾が宙を舞っている感じだった

 

 

「な、何だあの砲弾は!?」

 

 

「……対空弾より大きい…」

 

 

「どんだけ弾薬があるのよアイツ!」

 

 

「不味い!連合艦隊退避!!!」

 

 

長門はいち早くその砲弾の危険性を理解すると陸奥や利根達を退避させようとする

だがその放たれた砲弾は膨張を始め利根達の真上に到達した瞬間

 

 

「群衆殲滅型特殊弾頭、流星群(メテオ)!さぁ!爆裂し奴等を殲滅しろ!!!」

 

 

カナが叫んだ瞬間その膨張した弾頭は大爆発を起こし中に入っていた大量の爆弾が長門達に襲い掛かる

 

 

「う、うわ、うわぁぁぁぁ!?」

 

 

「な、何よあれ!?」

 

 

「全艦!上からの攻撃に耐えろ!!」

 

 

「退避!退避!!」

 

 

 

だが、退避しようにも見てからでは一歩遅く連合艦隊に流星群が襲い掛かり多くの駆逐艦や重巡が大ダメージを負ってしまう

しばらくすると爆煙が晴れていき長門は咳き込みながら辺りを確認する

 

 

「な、何なんだ……あれは…ハッ!

各艦隊被害状況を!!」

 

 

「う………うぅ…酷いもんじゃ…

ワシはまだ、何とか…じゃが……」

 

 

利根が何とか立ち上がるがそれ以外の重巡や軽巡は中破状態

更に最悪なのが

 

 

「クソ……クソ!!………動いてよ…!もう!!」

 

 

「痛い……痛いよぉ……」

 

 

「熱い…………熱い……」

 

 

駆逐艦達の艤装が完全に破壊されており身体もかなりの重症を負っていた

その姿を見た長門は歯を食い縛り一人カナに突っ込んでいく

 

 

「利根!重症の者を後ろに下げろ!

少しだけ奴から時間を稼ぐ!!」

 

 

「馬鹿者!!お主一人で何とか出来る相手ではないぞ!!」

 

 

「だが!私が出なくては全滅する!!

それだけは避けなくてはならない!!

連合艦隊を頼むぞ!!」

 

 

長門は一人カナに向かっていくと主砲を構える

 

 

「飛行場姫!私が相手だ!!」

 

 

「あら?戦艦が走ってきたわね?

まぁ良いわ潰してあげる!!」

 

 

カナは右肩にある巨大な主砲を長門へ向け

 

 

「くたばれ!!徹甲弾一斉射!!」

 

 

「防御壁!起動!!」

 

 

 

長門の主砲から徹甲弾が一斉に砲撃されるのだが再びカナの艤装は防御壁を展開しその砲弾を全て防ぐ

 

 

「く!堅いな!!」

 

 

「アハハハ!じゃあ次は私よ!!!

五番スロットから六番スロットに変更!!」

 

 

カナは防御壁を艤装に戻すと巨大な砲身からガコンと音が聞こえ長門は勢い良く右側に移動し主砲を構える

 

 

「この距離なら貴様の弾頭も命中しまい!!」

 

 

「アハハハ!馬鹿じゃないの!?

私には六種類の弾頭があるのよ!!!

くたばりなさい!戦艦長門!!

近距離特殊弾頭!斬裂(ショット)

逃がすな!!」

 

 

主砲を長門に直接向け砲撃するとその弾頭は勢い良く迫るのだが何とか長門は交わそうと左にステップを踏むのだが

 

 

「馬鹿ね!逃げられないわよ!!」

 

 

その弾頭は長門の避けた瞬間爆発し中から刃の様な物が飛び出し前方に向けて飛んでいく

 

 

「ぐう!き!貴様!!」

 

 

当然長門は避けきれずにその刃が直撃し主砲の艤装に刺さり砲弾が撃てなくなり身体も深く突き刺さっていく

 

 

「私に近寄れると思ってるの!?

本当に艦娘って馬鹿よねぇ!!」

 

 

「そうとも言えませんよ!!

徹甲弾一斉射!!」

 

 

その声は長門の後ろから聞こえ轟音と共にその砲弾はカナが居る陸上へと着弾すると爆煙に包まれる

 

 

「……大和…!すまない……」

 

 

「いえ、こちらこそ遅くなりました!

長門さん大丈ーーー」

 

 

と長門に駆け寄ろうとした瞬間目の前の陸上からの轟音と大和が爆発する音が同時に聞こえカナへ向き直ると主砲から砲撃された砲弾で爆煙が消し飛ばされていた

 

 

「へぇ?それが大和型の砲撃?

良い火力だけど、どこ狙ってるのよぉ!

無駄弾お疲れ様ねぇ!アハハハ!」

 

 

爆煙が晴れた陸上ではカナの目の前に弾着した後が残っており砲撃を受けた大和は頭から血を流しながら睨み付ける

 

 

「固いわねぇ?やっぱり四番スロットじゃ火力が足りないのかしら?」

 

 

「大和!」

 

 

「大…丈夫です!次は外しませんよ!!

一斉射!撃て!!」

 

 

その言葉と共に大和は再び主砲を放つとカナは頬を吊り上げると主砲を動かす

 

 

「面白い事してあげるわ!!ほぉら!!」

 

 

大和が主砲を放ったとほぼ同時に砲撃しカナも砲撃するとお互いの丁度真ん中でお互いの砲弾が直撃し大爆発を起こす

 

 

「う、嘘!?」

 

 

「ば、馬鹿な!砲弾を相殺しただと!?」

 

 

そして爆煙が晴れる前に再び陸上から巨大な砲撃音聞こえると再び大和が後ろに吹っ飛ばされる

だがそれは先程受けた攻撃とは比べ物にならないほどの火力であり大和の艤装が完全に破壊されていき口からは黒い煙を吐いていた

 

 

「大和ぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

「これが撃つってことよ

勉強になったかしら?お代はあんたの艤装と命ってことで

やっぱり大和型は一番スロットね」

 

 

「き、貴様ぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「や、大和さん!?」

 

 

 

吹き飛ばされた大和は艤装が完全に破壊されており気を失っていた

その戦闘を見ていた榛名が慌てて助けに来たのだが

 

 

「榛名!!大和を連れて離脱しろ!!」

 

 

「は、はい!!

大和さん!しっかりしてください!!」

 

 

榛名はぐったりとした大和を引き連れその場を離れていくと長門は刃を引き抜き痛む身体を動かし再びカナに挑む

 

 

「まだ戦うつもり?戦艦長門、お前達に勝ち目は無いわよ?」

 

 

「黙れ!!貴様に勝敗を決める権利はない!!」

 

 

長門の言葉にカナは頬を吊り上げながら笑うと艤装のスロットを変更しながら長門と対峙する

 

 

「アッハッハッハ!!あんた面白いわねえ!!

 

良いわ!!なら教えてあげるあんた達がどれほど無力で無価値で愚かなのかを!!

 

最初からあんた達艦娘に勝ち目なんか無いのよ!!」

 

 

 

 

 

 




次回

絶望的な戦い 一振りの希望

圧倒的な火力と自衛力を誇る陸上最強深海の姫カナ
カナのお気に入りにして深海棲艦達を指揮する椿

ドレス島を支配する二人の深海棲艦に苦戦を強いられる長門達連合艦隊
そして彼女達は追い詰められていく


堀を一旦中断して資材回収~
一週間で二万近くは回復するから日曜日に全力で掘るぞ!
ネルソン!グレカーレ必ず確保せねば!!


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開戦 六

「くた……ばれ!!」

 

 

長門は痛む身体で砲を構えカナに向けて放って行くのだが

 

 

「アハハハ!効くわけないでしょ!防御壁!!

からの六番スロットに変更!!

斬裂(ショット)弾!!」

 

 

「ぐ!避けなくては!!」

 

 

長門が放った砲撃は防御壁に防がれそれに反抗するようにカナは斬裂弾を放ってくる

カナの砲撃を避けようと思い切り横に走り抜けようとするが砲弾は長門の目の前爆発し再び長門の身体を傷付けていく

 

 

「避けられるわけないでしょうが!!馬鹿じゃないの!?」

 

 

「ぐぅ!!……く、くそ…」

 

 

 

長門は単身でカナに挑んでは居たもののやはりかなりキツいものがあった

自分の砲撃は艤装による防御壁で無効化され向こうの砲撃は直撃する

まさに一方的であり勝算の見えない戦いを行っていた

 

 

「諦めないわねぇ?それが、正義の戦艦なのかしら?」

 

 

「だま……れ!!…ぐぅ……」

 

 

カナの砲弾には幾つかの種類がありそれを細かに使い分けることによって長門の頭は少し混乱していた

範囲攻撃の五番スロット流星群(メテオ)

近距離攻撃の六番スロット斬裂(ショット)

連続して撃てる四番スロット

一撃で大和ですら大破させる一番スロット

一発で艦載機を落とす三番スロット六式弾

 

どれもかなり強力であり長門だけではキツいものがあった

それに加えカナの艤装に付けられている可動式の防御壁

長門の砲弾を物ともせず傷すら付かない

 

 

「これが……歴戦種…か!!

化け物め!!」

 

 

「アハハハ!あんた達が弱すぎるだけでしょ!

本気でやってるつもりなの!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!こいつ何なんデースか!?」

 

 

「嘘でしょ!私の砲撃全部交わされた!?」

 

 

「このぉ!!」

 

 

「遅い遅い!やはり戦艦クラスはこの程度の速度ですか!!」

 

 

長門がカナと対峙する中、椿は金剛達三人を普通に相手取りながら軽々とあしらいながら笑っていた

金剛達が混乱しているのは椿の機動力であり三人の砲撃を簡単に交わしながら自分の砲撃は的確に命中させていることである

 

 

「大井!ちょっと早いですがやりましょう!!」

 

 

「そうね……こいつに出し惜しみしても仕方無い!!」

 

 

「ふむふむ?何かするんですかね?」

 

 

金剛と大井がアイコンタクトを取ると二人は椿に向けて走り出す

 

 

「ハハハハハ!!まぁた同じ奴ですか!効くと思ってるんですか!!」

 

 

椿が二人に向けて主砲を構えるとそれを防ごうと日向が狙い撃ちをするが

 

 

「アハハハ!当たりませんよぉ!!

貴女の砲撃何てのは!!」

 

 

「クソ!こ、こいつ!!」

 

 

椿はそれを軽々と避けると二人に向けて砲撃をし二人は爆煙に包まれるが二人はそれを突っ切り椿に向かう

 

 

「おっと?これは予想外」

 

 

「食らうデース!!」

 

 

金剛は自らの主砲を椿の足下に撃ち込み目眩ましをした後大井が回り込む

 

 

「ほほう?新技ですかね?」

 

 

「随分と余裕ね!!」

 

 

回り込んだ大井が主砲を椿に構え砲撃するがそれを軽々と交わしニヤリと笑う

 

 

「まっさか、この程度ーーー」

 

 

と話している最中にいつの間にか放っていた大井の雷撃が椿に命中しそのままよろける

 

 

「ぐ……いつの間に雷撃を……」

 

 

「まだまだぁ!!行くデースよぉぉぉぁ!!」

 

 

次に金剛が逆側から殴りかかると椿は主砲を動かし何とかその拳を防ぐが思い切り殴られ体制を崩す

 

 

「くたばるデース!!」

 

 

「あ、これは避けられませんねぇ」

 

 

その瞬間椿は金剛の主砲が着弾し爆煙に包まれると大井が駄目押しに雷撃と主砲を放ち更に大爆発を起こす

 

 

「よっし!やりまーした!!」

 

 

「これでかなり削れたわね!」 

 

 

「凄いな……何だあのコンボ技は…」

 

 

金剛と大井がコンボ技を命中させはいタッチして喜び日向がその光景を唖然としながら見ていた

だが

 

 

「フフフフフ!!!これはこれはこれはこれは!!!

楽しいですねぇ!新しいですねぇ!!

戦艦と雷巡だからこそできるコンボですかぁ!!

あぁ!あぁ!なんてなんてなんて痛いのでしょうかぁ!!」

 

 

その声に二人は喜んでいたが再び椿に向き直ると爆煙の中両手と艤装を少し凹ませた椿が笑っていた

 

 

「ば、馬鹿な!あのコンボでも生きてるのか!?」

 

 

「……何て耐久デースか、あいつ」

 

 

「流石は叢雲と古鷹が苦戦してただけはあるわ」

 

 

「アハハハハハハハ!!

アッハッハッハ!!!あぁ!あぁ!新しい!初めて見ましたよぉおぉ!!

痛い痛い痛い痛いですが、楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい!!!

これだから戦いは辞められないんですよねぇ!!

私達を殺すための技を私にぶつけてくる!

その痛み!苦しみ!熱!相手の殺意!!

心地いい!!あぁ!心地いいですよぉ!!」

 

 

爆煙が晴れた中椿は狂気染みた笑い方をしていると金剛達を見ながら笑っている

 

 

「さぁ!さぁ!次は!次は何を見せてくれるんですかぁ!?

私を殺すための技を!熱を!痛みを見せてくださいよぉぉぉぉぉ

アッハッハッハッハッハッハッハッハッハッハ!!!!!」

 

 

「金剛!もう一度行くわよ!!」

 

 

「了解デース!!」

 

 

金剛と大井は再び椿に同じ様に攻撃を仕掛けようとすると

 

 

「あっれぇ?可笑しいですねぇ?

それはさっきもやりましたよねぇ!!!」

 

 

すると椿は走り出すが金剛が再び椿の足下に砲撃をし目眩ましをするのだが

 

 

「馬鹿ですねぇ!!そこに居るのは分かってるんですよぉ!!!」

 

 

椿は目眩ましを物ともせずに水飛沫の中金剛の艤装を掴む

 

 

「なっ!嘘!!」

 

 

「それと貴女はそこですかねぇ!?」

 

 

そしてそのまま金剛の艤装を軽く持ち上げるとそのまま回り込んでいる大井に投げ付ける

 

 

「キャアァァァァァァァァァ!!」

 

 

「金剛!?」

 

 

大井は投げ付けられた金剛を慌てて掴むとその間に椿が大井達との距離を摘める

 

 

「させるか!!」

 

 

だがそれを防ごうと日向が狙い撃ちするのだがやはり

 

 

「当たるわけないでしょう!?学習しなさいよぉぉ!!」

 

 

椿は軽々と避けるとそのまま大井達に詰め寄る

 

 

「いてて……大井大丈夫デースか?」

 

 

「えぇ、私は大丈夫……ってちょっと!?」

 

 

その瞬間椿は二人の足と艤装を片手で掴むと簡単に持ち上げると二人を両手で振り回す

 

 

「アハハハハハハハ!!ぶっ飛んでいきなさーい!!」

 

 

「キャアァァァァ!!」

 

 

「イヤァァァァァァァ!!」

 

 

金剛と大井は同じ方向にぶっ飛ばされていきその場所に居たもう一人の艦娘にぶつかると水飛沫が上がる

 

 

「ぐあ……お前……達…」

 

 

「いてて……あ、あれ?長門?

ってどうしたんデースか!?その傷!」

 

 

「いてて……長門さん?何ですかその斬り傷?」

 

 

「あーらぁ?何か的が増えたわねぇ?」

 

 

「「え?」」

 

 

二人が前を向くとそこには艤装を構えこちらを見ながらにやけているカナの姿があり長門は二人の前に立つ

 

 

 

「二人とも……離れてろ…コイツは…私が……」

 

 

「ま、待ってくださーい!長門!!

そんな酷い傷じゃ!!」

 

 

「そうよ!私達もーーー」

 

 

「アハハハ!そうですよぉ!もう二人位居ないと面白くありませんよぉ!!!」

 

 

ボロボロになっている長門の前に椿がゆっくりと、航行しながら立ち塞がるとカナが溜め息を付く

 

 

「あんたねぇ、何で敵増やしてるのよ

私めんどくさいのは嫌いなんだけど?

それに多いと恐いし?」

 

 

「いやーごめんなさい姫様

でもでも?コイツら殺せば多分連合艦隊は壊滅しますよぉぉ!!」

 

 

カナに椿が合流し長門に大井と金剛が合流したのは良いのだが戦力的にはかなり不利になっていた

 

 

「二対三ですよぉ?ほらほらほらほら!!

楽しんでいきましょうよぉ!!貴女方が死ぬか!私達が死ぬかです!!

さぁさぁさぁさぁ!!戦いましょう!

殺しあいましょう!!」

 

 

「あーこりゃスイッチ入ってるわねぇ……

ま、いっかそっちの方が楽だし

それにこいつらが私に攻撃を与えられるとは思えないし

さてと、蹂躙を開始するわよ!!椿!!」

 

 

全く怪我や傷等が負っていないカナにまだ万全な状態の椿

対するはボロボロの長門に万全な大井と金剛

そして周りには多くの深海棲艦

正に絶望的な戦いであった

戦力差圧倒的、だが長門は笑っていた

 

 

「長門?」

 

 

「何笑ってるんデースか?」

 

 

笑っている長門をカナは忌々しそうな顔をしながら睨み付ける

 

 

「何が可笑しいの?戦艦長門?」

 

 

「フフフフ、嫌すまないな

確かに絶望的な戦いだ

普通なら途中で逃げ出す

誰しも勝てるとは思えない戦いだ

私も執念で戦ってる状態だ」

 

 

「そうよ、あんたたちはここに死にに来たのと同じななのよ!!今更分かった所で!!」

 

 

「いや、それは違う

我々は死にに来たわけではない

成すべき事を成しに来たのだ」

 

 

長門は半分笑いながら自分の傷を押さえながら真っ直ぐカナを睨み付ける

 

 

「奴は言ったいつか戦うべきだと

奴は言った勝てるではない勝つのだと

足掻いて足掻いて足掻いて、それでも絶対に勝つと」

 

 

「はぁ?勝てる見込みが無いのに勝つとか馬鹿じゃないの?」

 

 

 

長門の言葉に椿は首を傾げカナはイラつきながらその言葉を聞いていた

 

 

「奴は言った!私達は提督達に託されたと!!

奴は言った!我々にはお前達を倒す力があると!!!

その者は誰よりも弱く脆く小さな身体で大きな物を背負っている!!

気高く強く自分の意思を真っ直ぐに貫き戦い続けると!!

最後まで諦めず戦うその姿に誰しもが憧れている!!」

 

 

「そんな奴居るわけないでしょうが!!

馬鹿なんじゃないの!?これだから!!艦娘は嫌いなのよ!!!」

 

 

カナは苛立ちが最高潮まで達し長門に主砲を構えるが長門全く動じなさい

 

 

「居るさ!!そしてそいつは戦艦でも空母でもない

だが!奴は必ずお前に刃を突き立てる!!

必ず追い詰めお前を殺すためにな!!」

 

 

 

「居るわけーーー!!!!」

 

 

その長門が話している最中にカナの背筋が凍り付く様な感覚に陥り後ろを振り向こうとする

(後ろから殺気……?でも陸上には誰にも……?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁ!敵の喉元を食い千切れ!!狼の如く!!

叢雲(雷撃姫)!!!」

 

 

 

 

その瞬間カナの巨大な砲身に激震が走った

まるで鉄と鉄がぶつかり合う大きな音にカナは驚きゆっくりとその顔を見ると鬼の形相で薙刀をアブソリュートに振るう駆逐艦(叢雲)の姿があった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ば!馬鹿な!!嘘でしょ!!

ここは陸上なのよ!?」

 

 

「飛行場姫ィィィィィィィ!!!!」

 

 

 

 





次回

成すべき事を成せ

いつの間にかカナが居る陸上へと歩み寄っていた叢雲
そしてその一振りの攻撃がこの絶望的な状態を打開する
戦うべき舞台と敵は揃った
さぁ、決戦の時だ


イベントお疲れ様でした!
ネルソン来てくれませんでしたァァァァァ!!!!
まぁ、グレカーレは来てくれましたので……うん
クソォォォォ!!
(本日から毎日投稿再開しますね!!)


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ドレス島の支配者達

叢雲はいつの間にか陸上にたどり着き背後からカナへの奇襲を狙い見事成功していた

だが、それでもカナの巨大な艤装に刃が阻まれ砲身を切り裂こうとして居た

 

 

「こ、こいつ!さっきから姿が見えないと思ってたら!!いつの間にか私の側に!?」

 

 

「なっ!さっきの駆逐艦が陸上に!!

ど、どうやって!?」

 

 

鉄がぶつかり合う鈍い音は戦場となっているドレス島海域に響き渡りカナと椿は突然の事に驚き焦っていたが

 

(待て待て!焦るな私!切り替えろ!!今は戦闘中だ!!)

 

カナは地面に突き刺していた刺股を解除するとその勢いでその場から初めて動き叢雲から距離を取ろうとするが

 

 

「逃がさない!!」

 

 

叢雲が逃がすわけが無く地面を蹴ると猛スピードでカナに近接戦闘を仕掛けるために薙刀と主砲を構える

 

 

「クソ!!こ、こいつ!速い!!」

 

 

「斬り飛ばしてあげるわよ!!」

 

 

叢雲は薙刀を振りかざしカナはそれを砲身で防ぐと甲高い金属音が響き渡り二人の間に火花が飛び散る

(全く!!だから嫌な予感はしてたのよ!!

私の得意は遠距離、近接戦は苦手なのに!でも仕方無い!)

 

 

「アブソリュート!縮小!!」

 

 

「なっ!」

 

 

カナがそう叫ぶと巨大な砲身が一瞬で小さく戻っていき力を入れる場所を失った叢雲の薙刀が宙を斬りそのまま地面に突き刺さる

 

 

「離れなさいよ!!」

 

 

「ガハッ!」

 

 

そのままカナは片足で叢雲を蹴り飛ばすと自分も後ろにステップで踏み下がっていくのだが

 

 

「逃がさないよ!!」

 

 

「何!?」

 

 

一回下がった所で足下に砲撃を当てられ地面が削られると体制を崩しその場に座り込んでしまう

 

 

「くっそ!もう一人!?」

 

 

「叢雲お願い!!」

 

 

座り込んだカナに向けて叢雲は走りだし薙刀を持ち直し跳躍すると振り下ろそうとする

 

 

「くたばれぇぇぇぇ!!!」

 

 

「ふっ、あんた馬鹿見たいね!!

射撃用意!砲身戻れ!!」

 

 

カナは小さく戻っていた砲身を叢雲に狙うとその瞬間一気に砲身が元の姿に戻り思い切り叢雲の腹部を捉える

 

 

「グフッ!!」

 

 

「アハハ!この可能性は考えなかったの!?

コイツは私の意思で自在に動かせるのよ!!」

 

 

「叢雲!!」

 

 

腹部を捉えその勢いで叢雲は吹き飛ばされるとカナは立ち上がり首を鳴らし叢雲は何とか地面に着地すると苦しみの余り咳をする

 

 

「全く、本当に鬱陶しい駆逐艦ね!!

確かにユリが負けるわけだわ

こんなの普通の駆逐艦とは言えないわよ!」

 

 

「ゲホッゲホッ……切り替えが早いのねあんた」

 

 

「クソ!あんなの聞いてない!!

姫様!今そちらにーーーー」

 

 

「それは!!」

 

 

「させません!!」

 

 

椿がカナの援護に入ろうとするとその行く手を金剛と大井が止め長門が主砲を構え放つと椿は何とか交わす

 

 

「叢雲の邪魔はさせん!!」

 

 

「鬱陶しい奴等め!!」

 

 

「加勢する!!」

 

 

「長門!付き合うわよ!!」

 

 

 

椿は金剛と大井を吹き飛ばし長門の砲撃を交わすと三人に向き直ると日向も陸奥が合流し舌打ちをする

 

そして、叢雲が長門に叫ぶ

 

 

「長門!そいつがこのドレス島の深海棲艦の総指揮艦よ!!!」

 

 

「やはりか!コイツが!」

 

 

叢雲に言われると長門は痛む身体を抑えながら椿を睨み付け続けて叢雲に言われる

 

 

「飛行場姫は任せなさい!!

あんたはソイツを!椿を倒して!!」

 

 

「了解した!!気を付けろよ!!

飛行場姫は歴戦種だ!簡単に相手取れる奴ではない!!」

 

 

「大丈夫よ!今の私には仲間がいる!!」

 

 

叢雲が叫ぶと後ろから古鷹と磯風が走ってきておりカナと対峙する

 

 

「成すべき事を成すのよ!!

あんたは総指揮艦 椿を!!」

 

 

椿は鬱陶しそうに長門達を睨み付け主砲を構える

 

 

「あぁ!飛行場姫はお前達に任せたぞ!!

雷撃姫!叢雲!!!

お前を信じてる!!」

 

 

二人が戦う準備をするとカナは艤装を叢雲に構えるとイラつき鬱陶しそうに三人を見る

 

 

「まさか、陸上に艦娘が来るとはね驚いたわ……

でも!たかが駆逐艦二隻と重巡でしょ!!

勝てると思ってるのかしら!?」

 

 

「笑わせないでくれる、あんたなんかに負けるわけないでしょうが

所詮陸上からしか撃つしか脳の無い引きこもりが」

 

 

「言ってくれるじゃない駆逐艦……

あんたの身体を木っ端微塵にしてやるわよ!!!」

 

 

カナは叢雲の言葉に怒りを覚えると完全な戦闘体制を取りそれと同時に椿が笑い出す

 

 

「アッハッハッハ!!

姫様にあそこまで言うとは愚かな艦娘ですねぇ!!

ですが、私も応戦としないと不味いと思いますのでねぇ……

お前達を沈めてから行くとしますかねぇ!!連合艦隊とやら!!!」

 

 

「貴様にこの数を相手出来るのか!?戦艦椿!!」

 

 

「アッハッハッハ!!この数(・・・)?違いますねぇ!!この程度(・・・・)ですよぉ!!

さぁさぁさぁさぁ!!見せてくださいな!!

お前達艦娘の足掻きとやらを!!!」

 

 

椿は両手を広げると艤装の再展開し長門達と対峙する

そして、叢雲と長門は開戦の合図を言う

 

 

「こちら叢雲!!これより!!飛行場姫歴戦種に対し!!白兵戦を開始する!!」

 

 

「こちら長門!!これより!!深海総指揮艦椿に水上戦闘を開始する!!」

 

 

その合図は連合艦隊のインカムと大本営の指令室に伝わり叢雲と長門は気合いを入れる

 

 

「行くわよ!長門!!

椿は任せたわ!!!」

 

 

「あぁ!叢雲!!

飛行場姫は任せたぞ!!」

 

 

二人は同時に走りだしドレス島を支配する深海棲艦の支配者達に向かっていく

 

 

「掛かってこい!!艦娘共(略奪者共)!!!

力の差を見せてやるわ!!!」

 

 

「来なさい!お前達の足掻きを!!

力を!!私に見せてみろ!!

アッハッハッハ!!」

 

 

 

 




次回

ー歴戦種ー 飛行場姫カナ

叢雲と長門お互い戦うべき相手と対峙する
そして、叢雲と古鷹、磯風は唯一陸上での戦闘経験がありカナと対峙するが相手は歴戦の姫
そう簡単ではない

そう言えば、1ー3か1ー4で山風が来てるらしいですね?
………掘るか(燃料&弾薬共に尽きかけてるけど)



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白兵戦 

「鬱陶しい!奴等め!!吹き飛びなさい!!」

 

 

カナは主砲を構えると叢雲に照準を合わせ砲撃しようとするがそれよりも先に磯風がカナの懐に入り込もうとする

 

 

「叢雲だけではないぞ!!」

 

 

「言われなくても分かってるわよ!駆逐艦!!」

 

 

磯風が懐に入り込むと直ぐ様カナは左脚に付けられた中型の主砲を展開するとそのまま磯風に向ける

 

 

「何!?まだあるのか!」

 

 

「バーカ!吹き飛びなさい!!」

  

 

磯風は慌てて避けようとするが間に合わずそのまま中型の主砲から砲撃を受け吹き飛ばされてしまうが何とか体制を立て直しカナに向き直るが

  

 

「さてと駆逐艦に撃った事ないけど……木っ端微塵にしてあげる!!」

 

 

巨大な砲身を磯風に向けるとそのまま引き金を引くのだが

 

 

「あんたの相手は私よ!!飛行場姫!!」

 

 

叢雲が背後から近寄りカナに薙刀を振りかざすがニヤリと笑い少しだけ自らを屈ませると薙刀は艤装に当たり鈍い音がする

 

 

「コイツ!自分の艤装を使って守った!?」

 

 

「このアブソリュートは特別硬く設計されてるのよ!!

さぁまず一人貰うわよ!!

木っ端微塵にしてーーー」

 

 

カナは意気揚々と磯風を撃ち抜こうとするが

 

 

「やらせないよ!!」

 

 

その瞬間カナの足下を古鷹が撃ち抜き体制を崩したことにより主砲の砲身があらぬ方向に動いてしまい何とか直撃を免れる

 

 

「助かった!古鷹さん!!」

 

 

「気を付けて!歴戦種は全員どんな戦力を持っているか不明だかーーー」

 

 

古鷹が言い掛けてる間にカナが古鷹に砲身を構えスロットの番号を変える

 

 

「あれ鬱陶しいわ、先に潰しておこうかしらねぇ!!」

 

 

「やらせないわよ!!」

 

 

その視線に気付いた叢雲は急いで薙刀を離し地面に飛び降りると艤装でカナの砲身を思い切りぶつけ軌道を反らし砲弾は二人の後ろに合った木を撃ち抜き丸く円を描くように穴が開く

 

 

「チッ!相変わらず速いわね!駆逐艦!!!」

 

 

「食らいなさい!!」

 

 

そして薙刀を取ると少し後ろに下がりカナに向けて砲撃をするがそれよりも早くカナは防御壁を起動させ叢雲の砲撃を防ぐ

 

 

「私に砲撃は効かないわよ!!」

 

 

「じゃあ!斬撃なら聞くのかしら!?」

 

 

カナが防御壁を解除すると叢雲が薙刀を振りかざし当ててこようとするが

 

 

「あんた、忘れてない?私の名前は『飛行場姫』なのよ?」

 

 

その瞬間叢雲の横腹に球体の艦載機が噛み付き直撃するとそのまま横に運んでいくが薙刀を艦載機に突き刺し破壊すると古鷹達と合流する

 

 

「グハッ!こ、こいつ!艦載機を!!」

 

 

「アハハ!制空権は私が握ってるのよ!!

さぁ蜂の巣にしてあげるわ!!

全艦載機!あいつらを蹴散らしなさい!!」

 

 

カナは腰にある滑走路から大量の艦載機を発艦させるとその全てを叢雲達に向け放っていく

だが磯風が叢雲達より前に出ると高角砲を構える

 

 

「叢雲!対空戦は任せろ!!

飛行場姫を頼む!!」

 

 

「オッケー!任せたわよ!!

古鷹!援護お願い!!」

 

 

「了解!!」

 

 

「この数を捌ききれるかしら!?」

 

 

カナの上空にある60を越える艦載機は一斉に叢雲達に襲いかかるが磯風は一つ一つ確実に潰していきその横から叢雲がカナに走っていく

 

 

「へぇ、やるじゃない!!

ならもっと増やしてあげるわよ!!」

 

 

「させないわよ!!」

 

 

叢雲は主砲を構えカナに砲撃するがカナは少しだけ動きそれを全て交わした後に砲身を叢雲に向けると刺股が地面に突き刺さる

 

 

「吹っ飛べ!!駆逐艦!!」

 

 

(落ち着け……私…コイツをよく見ろ…)  

 

 

静かにカナの艤装を見ていると砲撃する瞬間身体をこおばらせているのを確認した叢雲は瞬時に右へ動くと砲弾が自らの髪を撃ち抜くとそのまま地面に着弾し爆発を起こす

 

 

「嘘っ!私が外した!?」

 

 

「くたばりなさい!!」

 

 

半分の髪を失いながらも叢雲は薙刀でカナに突き立てようとするがその瞬間

 

 

「クソ!防御壁!!」

 

 

カナの目の前に防御壁が展開され叢雲の薙刀が簡単に弾かれてしまうその振動が手を震わせる

 

 

「くっ……硬い!!」

 

 

「ほんと危ない奴ね!しかもここまで陸上で動ける艦娘見たことないわよ!!」

 

 

カナは続けて自らの足下に砲撃すると二人は粉塵に包まれ二人とも少し距離をとる

 

 

「………硬い防御壁…あれを何とかしないとね

それに切り替えが早い……流石歴戦種ね

今まで戦ってきたどれよりも強い!!」

 

 

「……駆逐艦とは言えどヤバイわねコイツ

普通に可笑しいわよ、ここまで戦えるのが人間(ゴミ)側に居るとはね

認識を改めないとね」

 

 

カナの砲撃により二人は一度冷静に成りながらお互いの事を警戒し賞賛するが負けるつもりは毛頭ない

そして再び艤装を構え直すと叢雲が走り出す

 

 

「斬り飛ばしてあげるわ!その防御壁!!」

 

 

「あんたに出来るわけないでしょうが!!駆逐艦!!!」

 

 

 

 




次回

戦い好奇心に狂う者


陸上では叢雲がカナと戦い何とか追い付くことが出来てはいた
その一方で長門達はたった一人の姫ではない深海棲艦に苦戦を強いられていた
その力はどこから来るのか?



Twitterで調べたら1ー3見たいですね?
道理で出ないわけでしたわ(1ー4周回してた
さってと今日こそは迎えてやるぞい!



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探求し続ける者

カナと叢雲達が対峙する中長門達は椿、そして深海棲艦と対峙していた

カナと言う脅威が今は抑えられているのにも関わらず全く戦況が変わらなかった

と言うのも

 

 

「航空隊!制空権を維持に努めろ!!

対空隊は空母達を押さえ続けろ!!

戦艦、重巡隊は艦娘達を相手取り連携を忘れるな!!」

 

 

椿の的確な指示によりカナが居なくとも連携が取れていた

しかも椿は

 

 

「くたばるデース!!」

 

 

「当たりませんよ!お馬鹿さん!!」

 

 

金剛達とも対峙しており正に一人で何役もこなしておりどう考えても普通の深海棲艦とは呼べなかった

その姿を見ながら長門は考察する

 

(………どう言うことだ?何故深海棲艦達はアイツに従う?

普通統率出来るのは『姫や鬼クラス、だが奴はどう見ても普通の深海棲艦』……何だこの違和感は…)

 

 

椿は通常の深海棲艦と違い話すことが出来、更に一年前に古鷹に接触しており情報を聞き出そうとしていた

それだけなら友好的な深海棲艦なのだが今その椿は長門達に牙を向きそしてあることに気付く

 

(…………そう言えば何でこいつはさっきから受け身なんだ?

自分からはほとんど手を出してない)

 

 

そう椿は自分からは手を出したのは古鷹のみ

それ以外の攻撃は受けた後の反撃と言う形を取っている

それに気付いた長門は動き出そうとする

 

 

「長門待ってこれ使って!!」

 

 

動こうとした長門に陸奥は高速修復剤が入ったバケツを手渡すと微笑む

 

 

「有り難い!すまない陸奥!!」

 

 

「あんまり無茶しないでね、何かある?」

 

 

「……いや、今は待っててくれ

アイツの正体を掴みたい

…何か…何かあるんだあの椿と言う深海棲艦には」

 

 

「………分かったわ、でも危なくなったら助けるからね?」

 

 

「あぁ、頼む」

 

 

長門はふぅと息を吐くと高速修復剤を頭から被ると全身に酷い痛みが走るが歯を食い縛り何とか耐えきるとみるみるうちに身体が再生する

 

 

「おやぁ?戦艦長門が復活ですかぁ?」

 

 

その姿を大井達と戦っていた椿が横目で見ており長門は全速力で椿に向かっていく

 

 

「皆!すまない退いてくれ!!」

 

 

「長門!」

 

 

「駄目デース!一人でなんて危険過ぎマース!!」

 

 

「大丈夫だ!皆は私の援護に回ってくれ!!

コイツの正体を掴む!!」

 

 

長門は拳を振りかざし椿を殴ろうとするが椿はそれを受け止め艤装同士がぶつかり合う

 

 

「へぇ?私と一騎討ちですか?

勝てる見込みがおありで?」

 

 

「ふん!貴様の様な奴はごまんと相手してきたからな!

余裕だ!!」

 

 

「なら見せてもらいましょうか?貴女の実力とやらを!!!」

 

 

椿は長門の拳を離すとそのまま脚で長門の腹部を蹴り飛ばし距離を取ろうとするのだが

 

 

「………あれ?動かない…」

 

 

「…ふん、この程度か?椿?」

 

椿の蹴りは長門に掴まれており唖然としているとそのまま長門は椿の足を掴み振り回すと宙に投げつける

 

 

「吹き飛べ!!」

 

 

「おっと!これは流石に避けられない!!」

 

 

宙に飛ばされた椿に長門が主砲を放つと爆煙に包まれながら椿は更に飛ばされ離れたところに着地すると体制を立て直そうとする

 

 

「これはこれは中々脳筋な戦い方で?」

 

 

「まだ、終わらんぞ!!」

 

 

立て直そうとしている椿に対し再び拳を振りかざし殴ろうとすると

 

 

「先程と同じ、当たると思って?」

 

 

椿はその拳を難なく避けると主砲を長門の腹部へと直撃させる

 

 

「グフッ!」

 

 

「アハハ!同じ技は効きませんよ!!」

 

 

「ならこれならどうだ!!」

 

 

腹部を撃ち抜かれながらも主砲で椿を捉え撃ち抜くとそのまま椿は被弾し爆煙に包まれる

 

 

「ぐぅ!……やはり長門型の主砲は効きますね……

ふふふ、これはこれは……」

 

 

「笑ってる場合なのか!?」

 

 

その瞬間長門は椿に殴りかかるがそこで異変に気付いた

(!コイツ!私の主砲を受けているのにも関わらず傷が付いてない!?)

 

 

「場合ですよ!貴女の場合はね!!」

 

 

だが長門の拳が当たるより先に椿は思い切り長門の腹部に蹴りを入れるとその痛みに苦しむ

 

 

「グ……な…何…だと?」

 

 

「ぶっ飛びなさいな!!」

 

 

そしてそのまま長門を蹴り飛ばし自らの体制を立て直す

 

 

「長門!!」

 

 

「ふぅ、やっぱり長門型は強いですねぇ?

ですが!それがそれが楽しい!!

あぁ!貴女はどうやれば苦しんでくれるんですかね!

痛がってくれるんですかね!

殺されてくれるんですかね!!

あぁ!あぁ!やはり戦闘は楽しいですねぇ!!!」

 

 

蹴り飛ばされた長門は何とか体制を立て直し腹部を押さえながらその痛みに耐えているが確信する

 

(先程より強い蹴り

明らかに可笑しい、コイツ戦闘中に強くなっている!?

どう言うことだ!!)

 

 

「長門!大丈夫!?」

 

 

「椿ぃぃぃ!!」

 

 

「よくも長門を!!」

 

 

長門が蹴り飛ばされた後椿に大井と金剛が襲いかかるが長門はそれを止めようとする

 

 

「辞めろ!!二人とも!!!」

 

 

「アハハハァ?五月蝿いハエ共ですねぇ?

お前達は大人しくしてなさいなぁ!!」

 

 

その瞬間主砲を展開し大井を撃ち抜き金剛には蹴りを加え二人を逆方向へと吹き飛ばす

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「ガハッ!!」

 

 

「大井!金剛!!」

 

 

「貴様!!容赦しないぞ!!」

 

 

「はぁん?確か日向でしたっけ貴女?」

 

 

そして続けて日向が主砲を構え椿に放ち見事命中させるとガッツポーズを取る

 

 

「良し!これで少しは」

 

 

「少しは……何ですって!?」

 

 

だが椿は爆煙中から飛び出すと一気に日向に詰め寄り頭を掴むと腹部に蹴りを加える

 

 

「ガハッ……こ、こいつ…」 

 

 

「アハハ!!弱い弱い!この程度の砲撃で私が死ぬとでも!?」

 

 

そして、日向を蹴り飛ばし自らの主砲を一斉射させ日向は爆煙に包まれる

 

 

「日向!!」

 

 

「アハハ!!お前達何かが私に!姫様に勝つ?夢でも見てるんですかねぇ!?」

 

 

何発も砲撃を受けているのにも関わらず椿には全く有効打を与えられてない長門はどうするか考えていると椿は長門を嘲笑う

 

 

「まぁ、お前達が私に勝つなんてあり得ないんですけどね!!

私は『始元様の元側近』ですしねぇ!!」

 

 

「な……な!何だと!?貴様今何て!!」

 

 

椿がとんでもない事を言い長門が混乱していると続けて嘲笑うようにその言葉を続ける

 

 

「良いでしょう!この島にたどり着き私に牙を向けることが出来た褒美として私の正体を教えてあげますよ

私は貴女達が思うように『普通の深海棲艦』ではない

そう、私は始元様によって作られた『特別な深海棲艦』何ですよ!

 

今は椿と言う名を名乗っておりますが昔始元様に呼ばれていた名は」

 

 

椿はそこまで言うと頬を吊り上げながら痛みに苦しむ長門達を見下ろす

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私のもう一つの名は『探求者』

お前達が知っている監視者と同じ時期に作られた初のタイプ人形戦艦深海棲艦にして探求し続ける者!!!

そう!私は人形深海棲艦の始祖に当たるんですよ!!

さぁさぁさぁさぁ!!お前達の苦しみを!絶望を!!

悲しみを!!この私に見せてみろ!!」

 

 

 

「探…求者……だと!

監視者と同タイプの深海棲艦!?」

 

 

いきなり突き付けられた真実に長門は困惑し沖縄で出会った監視者を思い出していた

 

 

 




次回

始祖級

椿、もとい探求者は始元が作り出した始祖に当たる深海棲艦
その実力はどれ程の者かは全く不明
長門は困惑しながらもその未知のクラスと対峙する
だが椿にはある特殊な力が備わっていた


いやー、1ー3掘り&レベリングやってたら燃料が二回ほど底を尽きましたわ(笑)
まぁ山風ちゃん来てくれたんでオッケーです!(周回125週目)

イベントで来てくれたローマがめっちゃ資材持っていくんですよね……ハハハ…

………書いてるの私ですが、何か椿がラスボス風格出してるよなぁとこの頃思いますはい




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探求し続ける者 二

『始祖級?』

 

長門は沖縄での戦闘後羽田元帥に呼び出され作戦会議室に来ており話を聞いていた

 

『あぁ、まだ未確定であり不明な点が多く危険度も分からないクラスだ

四年前にその存在が初めて確認されておりそれ以降はさっぱり

だが存在していることは確からしく始元が直接作り出した深海棲艦らしい

 

奴等の実力は分からないし何体存在するかも分からない』

 

 

羽田はある極秘資料を長門に手渡すとその実態をまじまじと見る

 

『……コイツがもう一人の始祖級』

 

 

『あぁ、南方棲戦姫が生まれたときに居たとされる姫級の始祖に当たる深海棲艦 離島棲姫だ

だが、彼女は南方棲戦姫が生まれたときに姿を消している』

 

 

『……まだ海に居るのか?』

 

 

『分からない、だが生きている可能性はある

そして今回で二つの事が分かった

 

一つ、始祖級には艦隊を統率することができる

恐らく艦隊の数の制限なく

これだけを見ればそこらの姫より危険だ

鹵獲(ろかく)かなり難しいだろう

 

そしてもう一つ

始祖級は通常の姫や深海棲艦と違い逸脱している事だ

……もう奴等は歴戦の姫級と扱っても可笑しくない』

 

 

『そ、そんなになのか!?』

 

 

羽田は窓から見える沖縄の海を見ながら長門に答えていく

 

『あの始祖級、監視者を見ただろ?

奴はたった一人で連合艦隊から制空権を奪い瑞鶴の甲板を的確に破壊した

それに奴は戦う意志が無かった

……それであれだぞ』

 

 

『…………成る程、それは一理あるな』

 

 

『この事は機密扱いで頼む、歴戦の実力者共が増えたなんて知られたら指揮に関わる

それに始祖級は全員化け物であることが分かる

下手に手を出せばこちらが壊滅させられる』

 

 

『分かった、ここでの秘密としておこう』

 

 

『他の鎮守府や提督には奴を特殊空母と指定しておく

誰にも言うなよ、長門』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(まさか!ここで元帥が言ってた始祖級とぶつかるはめになるとはな!

しかも今回は敵意を剥き出しにしこちらを殺しにかかっている!

これが、始祖級なのか!!)

 

 

羽田に言われたことを思い出しながら長門は冷や汗を掻き始祖級 椿を睨み付けていると首をゴキゴキ鳴らしている

 

 

「ふふふふふ!!良い表情ですねぇ!!

そうです!私はその顔が見たかったんですよ!!戦艦長門!!

私は監視者見たいに優しくないですよ?

あの娘は殺しや戦争が苦手ですが私はその逆

戦争も殺しも大好きですからねぇ!!」

 

 

「く……貴様が三体目の始祖級か!!」

 

 

長門の言葉に椿は首を鳴らし終わり長門を見下ろすと主砲を構える

 

 

「へぇ?監視者以外にもう一人知ってる見たいですねぇ!!」

 

 

「くっ!こんのぉ!!」

 

 

椿はその瞬間長門に対し砲撃すると何とかそれを交わせたのだが水柱を椿が突っ切り長門の首を掴む

 

 

「ぐぅ!!」

 

 

「アハハ!!細い首ですねぇ!!へし折ってあげますよぉ!!」

 

 

少しずつ長門の首を掴む力を強めていくと

 

 

「やらせないわよ!!」

 

 

真横から陸奥が突っ込んできており思い切り椿に激突するとその衝撃で長門の首から手を離しその勢いで主砲を椿に近距離で当てると吹き飛ばされる

 

 

「長門!平気!?」

 

 

「ゲホ…ゲホ……あぁ!助かったよ陸奥」

 

 

「痛いですねぇ全く姉妹とはめんどくさいものですねぇ」

 

 

吹き飛ばされた椿は起き上がるとめんどくさそうに長門と陸奥を見ていると自らの艤装から何やら黒い液体が入った試験管を取り出す

 

 

「……何だそれは」

 

 

「ふふん、貴女がさっき被った物と同じ様な物ですよ?

これが効くんですよ~」

 

 

椿は試験管の中身をぐいっと飲み干すと身体を震わせるとみるみるうちに身体の傷や艤装が治っていく

 

 

「な、な、な!!」

 

 

「まさか!高速修復剤!?」

 

 

「かっはぁ!効きますねぇ!!

まだ使わなくても良いと思いましたが流石にこの数で出し惜しみしても意味ありませんからねぇ?

後、もう一つオマケに良いこと教えてあげましょうか?

戦艦長門はもしかしたら薄々気づいていると思いますが私は基本的に後主に回ってます

それには理由があります、さぁ何でしょーか?」

 

 

椿は飲み終わった試験管を海に捨てると頬を吊り上げながら笑い長門は最悪の予想を言う

 

 

「………まさか、貴様我々の行動、動き、戦い方を見るためにやってるのか?」

 

 

「え!?」

 

 

「ど、どういうことデースか!?」

 

 

「そ、そうよ!長門!!」

 

 

長門が話すその内容に倒れていた金剛と大井は起き上がり視線が集中する

 

 

「この椿は基本的に後主で攻撃を仕掛ける

しかも、『最初の攻撃は当たるのに次の攻撃は当たらない』

まるで、『我々の動きを観察しているかの様な』感じでな」

 

 

長門の話が終わると椿は拍手をしながら笑いだす

 

 

「正解でーす!!!

お見事ですねぇ!戦艦長門!

そうですよ、私はお前達の砲撃、技、連携、殴る強さ、速さを見ていたんですよぉ!

まぁ、そうしないと私の好奇心は満たされないですし戦いにもなりませんしねぇ?」

 

 

「どういうことだ!?」

 

 

椿はそのまま頬を吊り上げながら自分の力に関して話し出す

 

 

「私は『お前達の行動を一度見ただけで記憶する』事が出来るんですよ!!

汗、動き、表情、砲塔の角度、撃ち方、火力、すべてを一度受けるだけで記憶し二度と同じ攻撃を受けることはない!!

そして、私は傷を負う度に強くなる!身体も艤装も私は戦いの中で成長し続けるんですよぉ!!

一度だけだ!お前達が私に攻撃できるのは一度だけ!!」

 

 

 

「なん………だと?」

 

 

その言葉に長門は今までコイツが攻撃を受けたり返してた事や異常なまでの成長の理由を理解する

そしてそれと同時に背筋が凍り付く感覚に陥る

 

 

「我が名は探求者!!

そう、私は追い求め続ける!痛みを!苦しみを!絶望を!怒りを!悲しみを!喜びを!全ての秘密を解き明かすまで戦い続ける生まれついての戦闘狂!!!

お前達がどうやって苦しみ!痛み!絶望し!殺すことが出来るのか知りたい!!

さぁさぁさぁさぁ!!私に見せてみろ!!お前達の力を!足掻きを!!全てぶつけて私を殺してみろ!さもなくば!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死ぬだけだぞ艦娘(ゴミ)共」

 

 

最後に椿は冷たく言い放つと静かに戦闘体制を取り長門達は冷や汗を掻きながらそのもう一人の化け物(始祖級)と対峙する

 

 

「…………これが佐渡提督の言ってた謎の正体か…

太平洋を締める歴戦姫の右腕 始祖級 椿

やってやる!!」

 

 

 





次回

白兵戦 防御壁を突破せよ!!


始祖級 椿と言う明らかになったもう一人の強者に長門達が立ち向かっている中叢雲達は歴戦種カナを突破するためにその硬い殻を破壊するために戦いを続けていた


ぶっちゃけ、今回も長いです()
あ、そう言えば艦これのアニメラスボスも飛行場姫でしたね(今更)
あれは後半強化入って中間棲姫に変わってましたがこっちでは無いです(きっぱり)
ですが、まぁ一筋縄では行きませんよこの化け物は




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強固なる壁を破壊せよ

長門が始祖級椿と対峙している中陸上では叢雲達と歴戦姫カナが対峙しておりその戦況は全く芳しく無かった

それもそのはず、相手は歴戦の姫であり戦いにも馴れているそしてそれよりも

 

 

「くたばりなさい!!」

 

 

「効かないわよ!防御壁!!」

 

 

カナの艤装に付けられている砲撃や攻撃を防ぐ防御壁がかなり厄介であり叢雲達は一方的に攻撃を受けていた

 

 

「鬱陶しいわね!あれ!!」

 

 

「あぁ、対陸上兵器と長門の主砲も防ぎ更にまだ健在しているからな!

どんだけ硬いんだあれは!!」

 

 

「アハハ!!壊せるわけないでしょ!

これは特注品なのよ!さぁ死になさい!!」

 

 

カナが操る艤装アブソリュートには防御壁に加え戦艦すら一撃で大破させる主砲があり正に

 

 

「最強の盾と矛を同時にあるって事ね……

矛だけなら何とかなるかもだけど、盾はキツいわね…」

 

 

叢雲はイラつきながらその防御壁を見ていると薙刀を持ち直し舌打ちをする

 

 

「磯風!古鷹!行くわよ!!

アイツの防御壁を破壊する!!」

 

 

「破壊するって!どうやってだ!?」

 

 

「どうにかしてよ!!古鷹援護お願い!」

 

 

「任せて!!」

 

 

叢雲は走りだし磯風もそれに連れ回される様に走りだす

そしてカナは再び主砲を構える

 

 

「壊す?この盾を?無理に決まってるでしょうが!

お前達何か駆逐艦に!!」

 

 

「深海棲艦が作ったから私達が壊せない?馬鹿じゃないの!!

作られたものはいずれ壊れるものよ!だから壊せないわけがない!!」

 

 

その言葉と共に腰にある主砲を動かしカナに向けて砲撃するがそれも防御壁に防がれてしまう

 

 

「効かないって言ってるでしょうが!!

四番スロット!大型通常弾!!」

 

 

カナが叫ぶと巨大な砲身からガコンと音が聞こえそれを叢雲達に向ける

 

 

「撃たせやしないさ!!」

 

 

磯風はカナに向けて砲撃するが直ぐ様防御壁を作動させ砲撃を防ぎ巨大な砲身を古鷹に照準を定める

 

 

「不味い!古鷹!!」

 

 

それに気付いた叢雲は急いで戻ろうとするが

 

 

「私は大丈夫!二人は飛行場姫を!!」

 

 

「だが!」

 

 

「信じるわよ!古鷹!!」

 

 

戻ろうとする磯風に対し叢雲は走りだし古鷹はカナの主砲に集中する

(考えるな……そう感じるんだ…提督に教わったんだ……)

深く息を吸い吐くとカナの動きを全て観察する

 

 

『古鷹、お前には叢雲の先読みは使えない

これに関してはまだ時間が足りないからだ

だが、今のお前なら敵の砲撃予測は出来る

それを先に読め

大丈夫お前なら出来る

何せ俺の自慢の艦娘だからな!』

 

 

(よく見ろ…飛行場姫の動きを……

私は私に出来ることをやるんだ……)

 

 

「あんた達薄情ね!!避けられる訳無いでしょうが!!

死になさい!重巡!!!」

 

 

カナは主砲を構えると古鷹に合わせ砲撃しようとし砲撃する瞬間

 

(今だ!角度28度距離三メートルで相殺する!!)

 

 

「くたばりなさい!!」

 

 

「撃てぇぇ!!!」

 

 

カナと古鷹の砲撃が同時に行われ古鷹の砲弾は見事予測通りの場所でぶつかり相殺されるとカナは流石の行動に驚愕する

 

 

「嘘でしょ!!私の砲撃を相殺するなんて!!」

 

 

「良し!当たった!!」

 

 

「凄いでしょ!うちの相棒は!!」

 

 

「流石は大演習会で長門を追い詰めた事はある!!」

 

 

自らの砲弾を相殺されたカナは驚きの余りリロードを忘れていると叢雲と磯風が突っ込んでくる

 

 

「クソ!何なのよこいつら!!

どう考えても普通じゃないわよ!!」

 

 

「それは!」

 

 

「お前が言えるのか!」

 

 

叢雲と磯風は同時に砲撃をし傷を負わせようとするが

 

 

「防御壁!起動!!」

 

 

その砲撃はカナが展開する防御壁によって防がれてしまい続けて叢雲は薙刀で防御壁を斬り付けるが弾かれてしまう

 

 

「くぅ!」

 

 

「壊せるわけないでしょ!!

馬鹿ねぇ!!」

 

 

「クソ!なんなんだ!こんなに硬いのか!!」

 

 

「磯風!続けて攻撃するわよ!!」

 

 

弾かれた薙刀を再び握り直し叢雲は何度も防御壁に対し斬り付け磯風は砲撃するが傷の一つも付かない 

 

 

「アハハ!!無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄!!!

効かないわよ!いい加減ーーー」

 

 

「叢雲!一旦砲撃を辞めて!!」

 

 

 

だがその次の瞬間二人とは明らかに違う衝撃が防御壁に当たる

 

 

「重巡か!

だが無意味よ!!これは壊せない!!」

 

 

壊れるはずがない、その盾に少しだけカナは違和感を感じていた

その重巡が放った砲撃に

 

 

「………?冷たい?何で?」

 

 

「古鷹……あれ、何?」

 

 

「何だ…?砲撃したところが凍り付いている?」

 

 

カナの防御壁に直撃した弾頭は爆発せずそのまま突き刺さっており困惑する

 

 

 

「今回の秘策用に親方から貰った特殊弾頭 瞬間冷凍(フリーズ)弾だよ!

一発だけしかないけど……でもこれなら行けるよね!叢雲!!」

 

 

「……成る程!分かったわ!古鷹!!」

 

 

叢雲は瞬時に古鷹の意図を理解し再び走り出すとカナに向かっていく

 

 

「アハハ!何よ!防御壁を凍らせただけで壊せると思ってるの!?おめでたい頭してるわねぇ!!」

 

 

「あんたこそ!この意味が分からないなんて馬鹿なんじゃない!!」

 

 

「何だと!?」

 

 

カナの砲撃を交わし叢雲は艤装から魚雷を取り出すとそのまま凍り付いている防御壁にくっ付け後ろに下がる

 

 

「………はぁ?何よこれ?ふざけてるの?

魚雷くっ付けても爆破なんてーーー」

 

 

「古鷹今よ!!磯風離れるわよ!!」

 

 

「は?叢雲何を………」

 

 

叢雲は全速力でカナの防御壁から離れると古鷹がその魚雷を狙い砲撃すると一緒に走っていた叢雲は磯風の頭を掴むとそのまま地面に伏せさせる

 

 

「アッハッハ!まさか誘爆?でも魚雷何かでーーー」

 

 

と余裕の態度を取っているが古鷹の砲撃が直撃した瞬間その魚雷は誘爆を起こしとんでもない爆発音が辺りに響き渡りカナの防御壁に今まで受けたことない衝撃が襲う

 

 

「キャアァぁぁぁ!!!

は、はぁ!?な、何よこれ!!

魚雷の威力じゃないわよ!!」

 

 

「な、何だ!あれ!!

ま、まさかあの時長門を倒したときの魚雷か!?」

 

 

 

カナは爆発の衝撃に何とか耐えるがその代わり防御壁が先程よりかなり傷が付いており困惑する

 

 

「嘘でしょ!?こ、この防御壁が一発でここまで!!」

 

 

「良し!磯風行くわよ!最後のダメ押し!!」

 

 

「あ、あぁ!!」

 

 

地面に伏せていた叢雲と磯風は走りだし防御壁を展開しているカナに向かっていくとカナは二人に向けて砲撃をするが何とか避けつつまた近くまで行く

 

 

「さぁ!壊すわよ!この防御壁!!」

 

 

「了解した!!」

 

 

「いくらあれが火力高いからって壊せるわけないでしょうが!!こいつは無敵なのよ!!」

 

 

カナは防御壁を起動させたまま二人の砲撃を受け続けているとしばらくするとピキッと嫌な音に気付く

 

 

「!?

ま、まさか!!

でもあり得ない!!こんな奴等の砲撃なんかで!!」

 

 

「気付かないようね飛行場姫、あんたさっき何で私が奥の手を見せたのか?」

 

 

「ど、どういう意味よ!!」

 

 

「さっき私がアレを仕掛け爆発させたのは古鷹の弾丸がお前の防御壁を急速冷凍させたからやったのよ

どんなものでもね、冷たいものをいきなり熱されたりすると壊れやすくなるのよ

それがどんなに固くても」

 

 

「っ!?ま、まさか!さっきのはそれが目的で!!」

 

 

「さっきの魚雷で壊せないのは分かってた、でもあれは火薬が普通の倍以上入った特注品

つまり熱量も普通の倍!!だから!!」

 

 

叢雲は飛び上がり全力を込めて薙刀をその防御壁に振るう

 

 

「冷凍されたあんたの防御壁を『壊しやすく』するには充分なのよ!!!」

 

 

叢雲の薙刀が防御壁に当たった瞬間少しばかりの硬い感触の後防御壁全体に裂け目の様にヒビが入りそして思い切り砕け散る

 

 

「嘘!!私の防御壁が!?」

 

 

「さぁ!砕いてやったわよ!!あんたのご自慢の防御壁を!!!

切り裂いてあげる!!あんたの身体を!!」

 

 

そして叢雲は続けて薙刀を振るいその刃がカナの身体を捉えようとした瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ?やるじゃない?駆逐艦」

 

 

カナは右手を鋭い爪に変化させると叢雲の刃を受け止める

 

 

「何!」

 

 

「驚いたわ、私の防御壁を壊せる奴が居るなんて

あんたが初めてよこれを壊したのは」

 

 

そして刃を自分に引っ張ると叢雲の腹部を蹴り飛ばす

 

 

「叢雲!!」

 

 

「あら?仲間の心配してる場合!!」

 

 

それと同時に磯風に対しても回し蹴りを加え同じ方向へと蹴り飛ばす

 

 

「叢雲!磯風さん!

この!」

 

 

二人が吹き飛ばされ古鷹は慌てて砲撃するがカナは落ち着きながら脚に付いている中型主砲を撃ち古鷹の砲撃を相殺する

 

 

「そんなあっさりと!」

 

 

「これぐらい普通よ、私達はね」

 

 

防御壁が壊れた事なのかそれとも何かが吹っ切れたのかカナの雰囲気が大分変わると首をゴキゴキと鳴らし吹き飛ばされた二人と古鷹を眺めながら冷静に続ける

 

 

「嫌、本当にめんどくさいわね

正直私の艤装が壊されるとは思ってなかったわ

全く良くやってくれたわね雑魚の分際で」

 

 

「雰囲気が変わった?」

 

 

「………さっきより遥かに姫らしいな…コイツ

殺気がひしひしと伝わってくるぞ」

 

 

「……ヤバイね、この姫」

 

 

先程より冷酷にそして恐ろしい程の殺意を叢雲達に向けており笑みを浮かべる

 

 

「名前を聞かせなさいあんた達」

 

 

「………叢雲よ」

 

 

「……磯風だ」

 

 

「……古鷹です」

 

 

「ふふふ、良いわ

私もずっと座ってるのは性に合わないのよ」

 

 

それと同時にカナはゆっくりと動きだし破壊された防御壁を外すと背伸びをした後に深くため息を付くと

 

 

 

「さてと、おふさげはここまでにしましょうか?

あんた達を正直舐めてたし耐えてれば椿が来てくれると思ったけどそうもいかないわよね

こーんな、強い艦娘が来ちゃってるんだもんねぇ?」

 

 

それと同時にカナの艤装から何か金属等が擦れる音が聞こえ三人を睨み付けると両手を広げる

 

 

「良いわ!相手になってあげる!!

叢雲!磯風!古鷹!!!

この陸上型深海棲艦最強と呼ばれているカナが相手になるわよ!!

さぁ!蜂の巣になる覚悟は出来たかしら!?」

 

 

その瞬間両腕と艤装の至る所から様々な種類の主砲や副砲が姿を見せ叢雲達は背筋を凍らせる

 

 

「な、何?あれ!!」

 

 

「何だ!あの砲塔の数は!!!」

 

 

「嘘!あんなに装備出来るわけがないのに!!」

 

 

三人が流石の数に困惑しているとカナは笑いながら叢雲達に立ち向かう

 

 

「さぁ!私の島に来たからには死ぬ覚悟は出来てるのよねぇ!!

 

武器要塞(バレットフォートレス)の恐ろしさその身を持って知ると良いわ!!

掛かってきなさい!!艦娘共!!!」

 

 

 

 





次回

武器要塞(バレットフォートレス)


防御壁を突破したのも束の間カナは今まで手を抜いておりその本気を見せるために艤装の全て展開し叢雲達に襲い掛かる


ここに来てやっとカナが率先して戦います!
『補足』因みに武器要塞とはカナの異名見たいなもんです(始元に呼ばれている)

そいやアズレンアニメ化したらしいですが……何ですかあの白狐は()




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最強の陸上型深海棲艦

ここはうって変わって小笠原島

留守番を任されているエアとソラがお互いカナに関しての話を続けていた

 

 

武器要塞(バレットフォートレス)

何ですか姫様その名前?」

 

 

「始元が付けたカナの異名よ

アイツは私達姫級flag改の中でも陸上戦闘に関しては化け物染みてるのよ

……まぁアイツは自分の事過小評価してエリートって名乗ってるけどね」

 

 

「要塞ってあの人航空戦と遠距離砲撃だけですよね?

それに姫様が倒したって………」

 

 

「それは水上戦闘で倒したのよ

それにあの時は航空戦では私の方が上だったし今見たいに防御壁も無かった

……正直運が良かったわ、アイツと相性が良かったのかもしれないわね」

 

 

エアは膝の上でのんびりとくつろぐイーちゃんを撫でながら海を見る

 

 

「そんな、貴女でも危険だなんて……で、でも!

叢雲様ならもしかしたら!」

 

 

「いんや、正直叢雲とは相性最悪かもね」

 

 

「へ?何でですか?だってカナ様は近接戦闘は苦手なんですよね?

叢雲様の得意分野は近接戦闘ですし!」

 

 

「えぇ、苦手よ

と言うか、アイツは近接戦闘何かする必要がないからかしらね」

 

 

「え?どういう意味ですか?」

 

 

「カナは私達三体の中でも陸上戦闘に特化した姫でね

艤装全体に武器を装備した異色の深海棲艦

その圧倒的な火力と武力で相手を潰す

だけど、艤装も基本的には陸上でしか使えない

でもそれは水上に行く必要性が無いからよ

正直、火力、武力に関して三体の中でも一番

クイーンですらあれとは戦いたくないと豪語するぐらいにね」

 

 

「えぇ!?あ、あのクイーン様がですか!?」

 

 

「そうよ私でも次やったら勝てるかどうか………

でもそれほどに強い、アイツは

他の深海棲艦がカナに意見せず二人だけに関わらず太平洋全域を任せたのもそれが理由よ

そして探求者 椿が認めた化け物……

 

 

さぁ、叢雲貴女無事に帰ってこれるかしら?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

異常なまでの主砲や武器の数に叢雲は少しだけ困惑するが直ぐ様カナへ向けて走り出す

 

 

「叢雲!」

 

 

「困惑してても仕方無いわ!!行くわよ!磯風」

 

 

「そうだな!今更何が起きようが変わらないか!!」

 

 

「二人とも!気を付けて!!」

 

 

艤装の全てを見せてもまだ向かってくる叢雲と磯風にカナは全ての主砲を二人に向ける

 

 

「もうさっきみたいに守るのは辞めよ!

私はどちらかと言うと攻撃が得意でね!ぶっ潰してやるわ!!

近寄れると思わないことね!!」

 

 

その瞬間艤装の至るところから出ていた主砲や副砲が一斉に砲撃され叢雲と磯風に襲い掛かる

 

 

「くっ!磯風!避けきりなさいよ!!」

 

 

「わ、分かって居るが!!」

 

 

その数が異常に多くまるでその砲撃の数が向かい風の嵐に立ち向かい走る様にすぐ横や頭を狙い砲弾が飛んできており二人とも余裕を無くす

 

 

「良いわね!あんた達この砲撃を見てもまだ近寄ろうとするなんて、ならこれならどうかしら!?」

 

 

カナは巨大な砲身を縮小させると今まで動かなかったのにも関わらず叢雲と磯風に向かって走り出す

 

 

「なっ!!」

 

 

「近付いてきた!?」

 

 

「これがお望み何でしょ!ほら掛かってきなさい!!

叢雲!磯風!!」

 

 

叢雲と磯風に近付きながらも身体に付いている主砲や副砲を砲撃するのを辞めない

 

 

「あんたから近付いてくるなら好都合よ!!」

 

 

「やるぞ!叢雲!!」

 

 

「やれるもんならやってみなさい!!」

 

 

二人が別々の方向に回り込むがそれを見越すかの様にカナは艤装を動かし二人を捉える

 

 

「馬鹿ね、回り込もうと私に死角はない!!」

 

 

その瞬間回り込んでいる二人に向けて近距離射撃をされ二人は急いでその砲撃を交わし叢雲がカナに斬り掛かる

 

 

「はぁぁぁぁ!!!」

 

 

「あんたのそれだけは危ないわね!!」

 

 

カナは叢雲の薙刀を鋭い爪状に変化させた手で弾くと叢雲は続けてカナに斬りかかる

 

 

「切り裂いてあげるわ!!」

 

 

「出来るわけないでしょうが!!」

 

 

二人が近接戦闘を繰り広げている間磯風はその反対に回り込み真後ろから静かにカナの頭に向け砲撃をしようとするが

 

 

「蜂の巣にしてやるわよ!磯風!!」

 

 

「なっ!ぐふ!!」

 

 

真横から艦載機が磯風に突っ込み腹部に当てると体制を崩しその場に座り込むと空から多くの艦載機が磯風に向かって急降下してくる

 

 

「不味い!!」

 

 

「逃げられるわけないでしょうが!!」

 

 

磯風が慌てて避けようとするがそれよりも先にカナの艤装が磯風を捉え正確に脚と腕を撃ち抜き再びその場に倒れそして艦載機からの爆撃に直撃する

 

 

「ぐぅぅ!!」

 

 

「磯風!!」

 

 

「仲間の心配してる場合なのかしら!?」

 

 

カナは叢雲の薙刀を掴むと腕にある主砲を動かしその全ての照準を叢雲へ向ける

 

 

「くそ!回避!!」

 

 

「仕切れるかしらぁ!?」

 

 

その言葉と同時に正面にある主砲と腕にある砲塔を全て叢雲に向け一斉射撃を開始する

流石に数が多く叢雲でも避けきれず何発か被弾するとその威力により吹き飛ばされる

 

 

「叢雲!この叢雲から離れろ!!」

 

 

「はは!そんな距離で大丈夫なのかしら!?」

 

 

古鷹がその状況を重く見ており急いで二人を助けるために走りながら主砲を放つが全て撃ち落とされてしまう

(撃ち落とされる……それなら!!)

 

 

「これでも食らえ!!」

 

 

「馬鹿ね!そんなの当たるわけないでしょ!!」

 

 

艤装から艤装を取り出すとそれを思い切りカナに投げつけるとそれを難なく空中で撃ち落とすと辺り一体に黒煙が立ち込める

 

 

「あんた、ほんと何でも持ってるわね

それに判断能力も高い」

 

 

「お褒め頂き嬉しいよ!!」

 

 

古鷹はその黒煙に入り込むと右腕の主砲と左肩の主砲でカナに狙いを定め

(……動いてない!良し!撃て!!)

辺りの音からカナが動いてないことを理解するとそのまま砲撃する

 

 

「へぇ、凄いわね自らを隠しながら撃つとはね!!」

 

 

その瞬間カナは走りだし古鷹の砲撃を交わし黒煙に入り込もうとする

 

 

「掛かったね!!」

 

 

「何ですって?」

 

 

カナが走っているとその足下に何か堅いものを踏みつけ下を向くといつの間にか魚雷が転がっており古鷹はそこ目掛けて砲撃をするとカナは爆煙に包まれそれにより黒煙が晴れていく

 

 

「良し!これでーー」

 

 

「これで、何かしら?」

 

 

だが次の瞬間爆煙から白い腕が伸び古鷹の首を掴む

 

 

「なっ!どうして!?

今直撃したはず!」

 

 

「残念、当たりはしたわよ?

でもそれは私の右足に付いていた艤装でカバーしたのよ」

 

 

カナに言われて良く見ると右足に付いていた艤装が外れており爆発した場所に落ちており見事に破壊されていた

 

 

「ま、まさか…自分の艤装で魚雷の爆発を押さえ込むなんて…!」

 

 

「誘い込みは上手かったわ

でもね、私はそう言う事も予想して動いてるの

舐めないで欲しいわね!!」

 

 

そして古鷹の首を放すと艤装が外れた脚で思い切り腹部を蹴り飛ばし吹き飛ばすと古鷹は地面を転がりながら腹部を押さえ苦しむ

カナは跳躍すると叢雲達から離れ

磯風も負傷こそするが何とか立ち上がり叢雲達と合流する

 

 

「くっ!近寄れば砲撃されるし遠距離でもあの巨大な砲身と全身にある砲塔からの主砲!」

 

 

「それに加え三人を同時に相手してるはずなのに艦載機も動かしている……正にだな」

 

 

武器要塞(バレットフォートレス)……まさしく要塞だね」

 

 

「どうかしら?これが姫なのよ

お前達が勝つ見込みなんてないのよバーカ」

 

 

三人が負傷しているのにも関わらずカナはほぼ無傷の状態で立ち塞がる

 

 

「………せめて航空甲板を破壊できれば…」

 

 

カナの航空甲板からは随時艦載機が発艦されており空を白い球体が埋めつくしどんなときでもカナと水上の空を守り続けていた

 

 

「さてと、長く戦っても仕方無いわね

そろそろ三人を殺してーーー」

 

 

と言い掛けた瞬間カナが突然海の方角を向くと舌打ちをする

 

 

「チッ!めんどくさいのが来たわね……」

 

 

カナはその言葉と共に巨大な砲身を再度拡大し主砲を海の方角へと向けていると叢雲達のインカムから声が聞こえてくる

 

 

 

『叢雲!!!生きてるか!?』

 

 

「っ!!グラーフ?どうかしたの!?」

 

 

すると海の方角から何隻かこちらに向かってくる姿が見え叢雲達も振り返ると次に瑞鶴から声が聞こえてくる

 

 

『叢雲!海上の空母部隊は壊滅させたわ!

後はその飛行場姫だけよ!

だから協力してほしいの!!』

 

 

「へぇ!やるじゃない、グラーフ、瑞鶴!

良いわよ!任せなさい!!

磯風!古鷹!!行くわよ!!」

 

 

「分かった!」

 

 

「了解だよ!!」

 

 

カナは叢雲達を横目で見ながら舌打ちをすると呟きながら海を睨み付ける

 

 

「海と陸、しかも航空戦と陸上戦とはね

めんどくさいわね……だけどまぁ勝てないことは無いわ!!!

掛かってこい!!」

 

 

「行くわよ!グラーフ!!!」

 

 

「あぁ!奴から制空権を奪うぞ!!」

 

 

「陸上は!」

 

 

「私達に!!」

 

 

「任せてね!!!」

 

 

 






次回

空を奪い返せ!

カナの想像を越えた武装と火力
そして異常なまでの判断能力に圧倒される叢雲達
空すら支配されている状況で瑞鶴達が動きだしカナに対し航空戦を仕掛ける
果たして彼女達は歴戦の姫から制空権を奪い返せるのか!?


ぶっちゃけどこが飛行場姫何だよって作者が思い始めてますはい()
因みにちょっとしたネタバレですがこのカナ戦ってまだ序章と言うか中盤に過ぎないんですよね……



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一羽の鶴は空に憧れる

「よし!これで、大丈夫ですよ!」

 

 

「ありがとうございます、明石さん」

 

 

ここはドレス島からかなり離れた海域

明石率いる修理部隊は戦闘海域から離れ負傷している艦娘達の修理に当たっていた

 

 

「夕張ちゃん!艤装はどう?」

 

 

「うん!直ったよ何時でも動かせる!」

 

 

「ならほら行くわよ神通」

 

 

「はい、では行きます!!」

 

 

神通は先程銃撃の雨(バレットレイン)で負傷しておりその傷を治して貰うと全速力でドレス島へと向かっていく

 

 

「……にしても酷いね、あそこまで破壊された艤装も見たことないよ」

 

 

「だね、しかもあれが一撃だなんて信じられないよ」

 

 

二人は修理していた艤装や艦娘の傷を思い出しながらカナが砲撃した一撃について話し合っており一番最初に運ばれてきた鈴谷しかり他何人かの破壊痕に疑問を浮かべながら相手がどれ程の者なのかを考えていた

 

 

「……艦娘を一撃で沈めかける…それが歴戦種…か」

 

 

明石が呟いた一言にその場に居る全員が息を飲む

普通ではあり得ないその発言に次は我が身だと考えると背筋が凍り付く様な感覚に陥る

だが、そんな状態でありながらも目の前から二人の艦娘がこちらに向かってくる

 

 

「明石さん!」

 

 

「っ!榛名さん!どうし………って大和さん!?

ど、どうしてそんな!」

 

 

明石は木っ端微塵破壊された大和の艤装と重症の大和を見ながら困惑するが頭を横に振るい艤装を展開する

 

 

「ごめんなさい!大和さんを!!」

 

 

「はい!任せてください、工作艦明石!完璧に治してあげますよ!!

夕張ちゃん!手伝って!!」

 

 

「了解です!

皆さんは辺りの哨戒を!!」

 

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

運ばれてきた大和は気を失っており明石に預けられると艤装と別々に分けられ高速修理剤と医療品で治していく

(私の戦場はここなんだ!だから、皆お願いします

どうか勝ってください!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くわよ!グラーフ!」

 

 

「あぁ!」

 

 

「ちょっと!瑞鶴ちゃん私達の事も忘れないでよね!!」

 

 

瑞鶴達空母部隊は一斉に艦載機を発艦させると上空に居るカナの艦載機に向けて戦いを挑んでいく

 

 

『にしてもグラーフ、あんた良くここに来れたわね?

途中で椿に捕まらなかったの?』

 

 

「捕まりかけたさ、だが長門がそれを助けてくれたんだ

そして、成すべき事を成せって言われてな」

 

 

「それに今ウォースパイトさんや鈴谷さん達も戻ってきてるからね!

これで私達に余裕が出来たのよ!

対空なら摩耶さんが居るしね!」

 

 

『成る程ね、明石さんの修理か

でもコイツは本物の化け物よ!警戒しなさい!!』

 

 

叢雲は戦いながらもグラーフ達に警戒を促すと二人は頷き更に艦載機の数を増やしていく

 

 

「叢雲が化け物呼ばわりとは本当にヤバイみたいね」

 

 

「あぁ、流石は歴戦だな」

 

 

だが二人はその意味をすぐに理解することになる

二人が発艦させた艦載機がいつの間にか全滅し堕とされていることに気付く

 

 

「嘘!いつの間に!」

 

 

「馬鹿な……ざっと40はあったんだぞ!?」

 

 

「慢心しては駄目よ!二人とも!!」

 

 

赤城が後ろから二人に近付き再び弓を引くと艦載機を発艦させそれをカナへと向けていくが

 

 

「この程度?舐めてるのかしら!!」

 

 

カナは艦載機を指で動かすと赤城の艦載機を全て撃ち落とし更に巨大な砲身を赤城達に向ける

 

 

「させないわよ!!」

 

 

「やっぱり来たか!叢雲!!」

 

 

その間に叢雲は割り込み薙刀をカナに振るうがそれを手で押さえ防ぐとその後ろから磯風が襲い掛かるがカナはニヤリと笑う

 

 

「撃て、砲台古鬼」

 

 

「っ!?」

 

 

カナの言葉に驚いた磯風は急いで艤装を蹴り宙を舞うと磯風が居たところに砲撃が直撃し少しだけカナにも被弾する

 

 

「本当に下手くそな砲撃ねぇ……

まぁ少しは使えるところを見せなさい玩具共」

 

 

「まさか!!」

 

 

「こいつら!どこから!?」

 

 

磯風は急いで降りると辺りの物陰から砲台の体に足が付いた者達が8体程現れ磯風と古鷹を捉える

 

 

「くっ、まだ伏兵を隠してたのね!」

 

 

「私の相手をしていて良いのかしら?叢雲?」

 

 

「………チッ!磯風!古鷹!先にそいつらを破壊するわよ!!」

 

 

「了解!」

 

 

「分かったよ!!」

 

 

叢雲は一旦カナから離れると出てきた砲台古鬼達に向き直り対峙するとカナは笑いながら瑞鶴達へ牙を向く

 

 

「さてと、邪魔は居なくなったわね

じゃあ、楽しみましょうか!!空母達!!」

 

 

瑞鶴達へ主砲を再び向けると同時に艦載機を空に放ち戦闘体制を取ると一斉に弓を引く

 

 

「行きますよ!瑞鶴さん!」

 

 

「えぇ!さぁ、私達の成すべき事!空を奪い返すわよ!!」

 

 

「行くぞ!!飛行場姫!!」

 

 

「全艦載機!発艦!!」

 

 

瑞鶴達は艦載機を発艦させカナの艦載機とぶつかり合うがやはり航空戦力はカナの方がかなり高くほとんど撃墜されてしまう

 

 

「く、やっぱりキツいわね!!」

 

 

「諦めないで!私達は正規空母なのよ!

これぐらいで負けていられない!!」

 

 

「瑞鶴さん!」

 

 

「私達も加わるわ!!」

 

 

後ろから祥鳳と飛鷹が加わり空に向けて艦載機を飛ばして行くがやはりカナの艦載機が数で上回り全て撃ち落としてされる

 

 

「嘘、あんなにあったのに!?」

 

 

「どんだけなのよ!あの姫!!」

 

 

「アハハ!私から制空権を奪うなんて出来るわけないでしょう!アイツ(・・・)じゃあるまいし!不可能なのよ!!」

 

 

「っ!やっぱり直接行くしかないか!!」

 

 

その言葉と共に瑞鶴は単身航空戦を止めカナに近付いていく

 

 

「瑞鶴ちゃん!?何するつもり!!」

 

 

「私が飛行場姫を直接攻撃します!赤城さん達は上空の艦載機をお願いします!!」

 

 

「ちょ!ちょっと!」

 

 

「待て!瑞鶴!私も行くぞ!!」

 

 

「ありがと!グラーフ!」

 

 

グラーフも瑞鶴に付き合うように走り出すと更にカナへ近付くと主砲を向けられる

 

 

「勝負よ!飛行場姫!!」

 

 

「馬鹿な奴!!空母の癖にここまで近づいてくるとはね!!」

 

 

 

 




次回

残された者


制空権を奪おうとするもカナの艦載機は数が多く更に他の艦娘を狙う主砲を恐れ二人直接カナを倒しに掛かる
そして、自らが託された思いと力を飛行場姫にぶつける



次回は瑞鶴のお話になります
実は彼女の過去もこの物語にかなり関係してるんですよねぇ



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一羽の鶴は空に憧れる 二


今回も長いです!




「爆撃してあげるわよ!!」

 

 

「艦載機!発艦せよ!!」

 

 

「撃ち落としてやるわよ!!」

 

 

赤城達に制空権を任せ瑞鶴とグラーフは二人でカナと対峙し直接攻撃を仕掛けようとするが

 

 

「くっ……やはり通らないな!!」

 

 

カナの全身に付けられた主砲や副砲等が二人の艦載機を正確に撃ち落とし到達するまえに撃墜されてしまっていた

 

 

「っ!!グラーフ上よ!!」

 

 

「なっ!回避!!」

 

 

しかも制空権は奪われたままの為空からもカナの爆撃等が飛んできており二人は何とか交わしながらもカナに反撃をする

 

 

「どうする!瑞鶴、これ以上やってもこちらの艦載機が底を付くぞ!!」

 

 

「そうだけど!!」

 

 

「諦めなさい!!お前達が私から空を奪えるわけないでしょ!!

三番スロット!六式弾!!

放て!!!」

 

 

カナがそう叫ぶと再び主砲を空に向け放つと基地航空隊を壊滅させた砲弾が射出され赤城達の艦載機を全て撃ち落としていく

 

 

「これが、歴戦の姫か!!」

 

 

「全く通用しない!」

 

 

「艦娘の空母もこの程度か!これならよっぽどアイツの方が脅威だったわ!!」

 

 

瑞鶴は全ての攻撃が全く通用せず苛つきながら戦っていると残り少ない弓矢を持ちながらふと昔を思い出す

 

 

 

『五航戦、もっと弓矢の消費を抑えなさい

そんな馬鹿みたいに艦載機を使ってもただ浪費して制空権は取れないわよ』

 

 

(…………………加賀…先輩)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「五月蝿い!!あんたに言われるまでもないのよ!!」

 

 

「そんな使い方をしていても無駄に艦載機を浪費して勝てるものも勝てませんよ

これだから五航戦は」

 

 

ここは昔、瑞鶴が居た鎮守府の演習場

加賀を相手に航空戦の練習をしていた

 

 

「五航戦五航戦言うな!絶対に制空権を取ってやるんだから!!」

 

 

「………はぁ、これだから新人の世話は嫌なんですよ

全くプライドや実力を過信している馬鹿ばっかり」

 

 

「っ!五月蝿い!爆撃してやるわ!!」

 

 

瑞鶴は持てる艦載機を一気に発艦していくに対し加賀はほんの少しの艦載機を放ち瑞鶴の艦載機を確実に潰していく

そして

 

 

「あぁ!鬱陶しいなぁ!これで…………あれ?」

 

 

背中の弓矢を入れている箱が一つになっていることに気付くと顔を青ざめ加賀を見ると背中にはまだ多くの弓矢を持っており溜め息をつく

 

 

「はぁ………これだから五航戦は

こんなお馬鹿じゃなくてもっと聞き分け良い姉の方が良かったわね」

 

 

「うっさい!あんたより艦載機の数が少ないんだから仕方ないでしょ!!」

 

 

「なら良いわよ

補給してきなさいそれまで待っててあげる」

 

 

「……………あんた今、いくつ使ったの艦載機」

 

 

「二発だから20位かしらね」

 

 

「嘘だ!そんなのあり得ないわよ!私は80出したのよ!!それなのに!!」

 

 

「これが私と貴方の差よ、諦めなさい」

 

 

加賀は冷たく瑞鶴に接していると苛ついた瑞鶴は弓を投げ捨て加賀を直接殴ろうとするが

 

 

「これだから五航戦は」

 

 

その瞬間空を航行していた加賀の艦載機が一斉に瑞鶴を狙い爆撃すると瑞鶴は真っ黒な墨にまみれるとその場に座り込む

 

 

「…………………」

 

 

「頭は冷えたかしら、五航戦」

 

 

「………………悪かったわ」

 

 

「本当に純粋で真っ直ぐの馬鹿ね

嘘とかも知らないほどに

ほら、立ちなさい」

 

 

加賀は発艦させていた艦載機を飛行甲板にしまっていくと瑞鶴の手を無理矢理取って立たせると再び溜め息を付く

 

 

「………何で、私はあんたに勝てないのよ」

 

 

「私と貴女では戦歴も潜り抜けてきた戦場の数も違うからよ

今の貴女では私には一生勝てない」

 

 

その言葉に瑞鶴は歯を食い縛り悔しがっていると加賀は頭を軽く殴る

 

 

「その無い頭で考えなさい

何故負けたのか

どうすれば勝てるのか

どうすれば……私から空を奪えるのかを」

 

 

「…分からないわよ……そんなの」

 

 

すると再びまた加賀は瑞鶴の頭を殴ると溜め息をつく

 

 

「貴女は誇り高き正規空母なのよ

この程度で敗けを認めるの?

空を奪うことを諦めるの?

なら艦娘なんて辞めなさい、今すぐ解体を進めるわ」

 

 

「良いじゃない!あんたは生まれつき強いんだから!!

私は艦載機の数も少ないし!馬鹿だし!練度も低いし!!流石は一航戦様ね!!!」

 

 

「何を馬鹿言ってるの?私以外の『加賀』は私より弱かったのよ」

 

 

「は?何言ってるのよ!!あんたは最強の空母なんでしょ!?

皆言ってるわ!!」

 

 

「違うわ、私は私の先代達から託されたのよ

私自身(加賀)から」

 

 

「どういう……事よ?」

 

 

「私は初めから強くなかったわ

むしろ出来損ないって言われてた

それでも先代は頑張っていた

今までどんな敵であろうと立ち向かい、自らの欠点を見付け成長してきた

…………私はその先代達の技術を受け継ぎその上に立っている」

 

 

加賀は空に哀しそうに手を伸ばしながら話を続ける

 

 

「空は良いわよね、私達が唯一戦える場所

他の戦艦や重巡も手を出せない私達(空母)だけの世界

だから、私は誰よりも強くありたい

この空を私の物にするために」

 

 

だが、手を下ろし瑞鶴に背を向けると歩き始める

 

 

「その気が無いならもういいわ好きにしなさい

貴女に教える気は無いわ」

 

 

瑞鶴はその背中を見ていると加賀がどれ程努力し戦ってきたかを理解し背を向ける加賀に向けて弓を拾い叫ぶ

 

 

「まだ!!終わってないわよ!!!」

 

 

背中に残ってる最後の弓矢を引くと加賀は振り返る

 

 

「貴女に勝ち目は無いわよ

五航戦」

 

 

「五月蝿い!私はまだ負けてない!!」

 

 

その言葉と同時に瑞鶴は弓矢を引き空に向けて艦載機を飛ばす

そしてその姿を見た加賀は微笑みながら弓矢を引く

 

 

「そう来なくてはね

あの時の威勢はまだ残ってるようね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(そうよ……艦載機を無駄に浪費せず、最小限でアイツを撃滅する…

加賀先輩見たいに!!

あの人が目指した……空を私の物にする!!)

 

 

「グラーフ!ちょっと付き合って!!

アイツを出し抜くわよ!!」

 

 

「了解した!!」

 

 

瑞鶴とグラーフは左右に展開すると両端からカナを狙い出す

 

 

「そんなことしても!意味無いわよ!!」

 

 

カナは両端に展開した二人に砲を向けていると空から再び赤城達の艦載機が突っ込んでくる

 

 

「五月蝿いハエ共がぁ!!」

 

 

主砲を空に向けると同時に瑞鶴とグラーフは発艦し低空飛行をしながら直接カナを狙い出す

 

 

「航空戦を赤城共に任せてお前達は直接か!!

馬鹿ね!私の艤装にはまだ多くの高角砲があるのよ!!」

 

 

カナはそう叫ぶと高角砲を展開し低空飛行する艦載機に狙いをつける

 

 

「今よ!グラーフ!!」

 

 

「了解した!!」

 

 

その瞬間グラーフの艦載機が陸上近くの森に突っ込んでいきその姿を隠す

 

 

「はぁ!あんた馬鹿じゃないの!?そんなところ艦載機が通れるわけーーー」

 

 

「悪いな、私には鬼教官が付いていてな……これぐらいは何ともない!!」

 

 

グラーフの艦載機は時期に森の奥に姿を消していき更に追加で空に向けて艦載機を飛ばしていくと瑞鶴も同じ様に放っていく

 

 

「でも、そっちのツインテールのは落とせるわよ!!

落ちなさい!!」

 

 

「馬鹿ね!そんな簡単に落とせるわけ無いでしょ!!」

 

 

すると瑞鶴の艦載機は高角砲より更に下へ低空飛行をしながらカナに突っ込んでいく

 

 

「馬鹿な!あり得ないわよ!そんな低い位置での航行何て………

でもこれであんたは私に攻撃出来ないわよね!!」

 

 

「それはどうかな!

艦爆隊……ごめん!」

 

 

すると艦載機はその勢いのままカナの脚部に向けて全速力で突っ込んでいきその機体をカナにぶつけ大爆発を起こす

 

 

「ぐう!は、はぁ!!あんた正気!?

艦載機を特攻隊として使うなんて!!」

 

 

「お前を倒すために私は何でも犠牲にする!

覚悟しろ!!」

 

 

「こ、こいつ!……ぐ…脚をやられたか…このぉ!!」

 

 

カナは艤装を再展開するとその砲門を瑞鶴に向け砲撃をしようとするが

 

 

「私の艦載機も忘れるなよ!!」

 

 

その瞬間カナの背中が大爆発を起こし痛みに耐えなが前を向いているとグラーフの艦載機が通過する

 

 

「き、貴様らぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「これで終わりよ!!艦載機!発艦開始!!」

 

 

「行くぞ!飛行場姫!!」

 

 

瑞鶴とグラーフがカナに向けて発艦させると空から自分の艦載機を戻しその迎撃に当たらせようとするが

 

 

「そんなことは!!」

 

 

「させないよ!!」

 

 

地上に戻りつつあった艦載機を飛龍と赤城の艦載機が捉え撃墜する

 

 

「くそがぁ!鬱陶しいなぁ!!」

 

 

「終わりよ!飛行場姫!」

 

 

だが、カナはニヤリと笑いながら主砲を空に向ける

 

 

「ばーかねぇ!!全て撃ち落としてやるわ!六式弾全弾砲撃開始ぃぃ!!!」

 

 

空に向けてカナは六式弾を打ち上げると空にあった自分のを含め全ての艦載機を撃ち落とし瑞鶴達は絶句する

 

 

「う………そ……自分の艦載機もまとめて!?」

 

 

「何故…そこまでして!?」

 

 

「アハハハハハ!知ってるわよ!!

あんた達って艦載機の数に制限があるのよね!!

その矢が無くなればお前達は何も出来なくなる!!

そんなこと最初から知ってたのよ!!」

 

 

カナに言われると全員自分の背中にある艦載機を搭載した矢を確認すると全て無くなり空になっていることに気付く

 

 

「うそ……うそ!!」

 

 

「いつの間に……慢心…ですね…」

 

 

「でも残ー念!私に艦載機の制限はない!!

この通り!!まだまだ増やせるのよぉ!!」

 

 

カナが両手を広げると自らの飛行甲板から再び艦載機を大量に発艦させ空を埋め尽くす

 

 

「アハハハハハ!!これであんた達の負けよ!

六式弾は弾切れだけどお前達を無力化したなら儲けだからねぇ!!」

 

 

勝利を確信したカナは笑っているとそれと同時に瑞鶴とグラーフがニヤリと笑う

 

 

「へぇ?そうなんだ、あのとんでも対空弾は無いんだ!」

 

 

「なら、我々の勝利だな

瑞鶴!」

 

 

「………何ですって?」

 

 

二人に言われるとカナは空に聞こえる自分の艦載機以外の音に気付き空を見上げると驚愕する

 

 

「落ちてきなさい!!」

 

 

「我々の切り札!!!」

 

 

それは一直線にカナへ向けて突っ込んでくる二人の艦載機であり流石のカナも混乱する

 

 

「馬鹿な!!さっき私の六式弾で全て撃ち落とした筈!!」

 

 

「残念だったわね、私の艦載機は貴女が爆発させた対空弾より上に飛ばしておいたの」

 

 

「だから我々のは落とされずに済んだ!!」

 

 

「チィ!!ふざけやがってぇぇ!!!」

 

 

その説明を聞いたカナは舌打ちをすると空にある艦載機達を動かし二人の艦載機を撃ち落とそうとするが

 

 

「やれやれ、私達の出番かな!!」

 

 

「はい!頑張りましょう!!」

 

 

横から来た艦載機と対空砲に次々とカナの艦載機が撃墜され慌ててそちらへと振り返る

 

 

「蒼龍!吹雪!!」

 

 

「全く、駄目じゃんか飛龍

艦載機の数はきちんと管理しないとね?

あ、はいこれ予備だよ

これ赤城さんと祥鳳さんと飛鷹さんもね!」

 

 

「ありがと!」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

「助かります」

 

 

「よーし!これなら行ける!!」

 

 

「雑魚共がぁぁぁぁ!爆撃の雨に沈めてやるわよ!!」

 

 

空に埋め尽くしていた艦載機が赤城達へ向かっていくと更にその後ろから対空砲と瑞雲や水上戦闘機が艦載機を次々と撃墜していく

 

 

「なっ!更に増援!?」

 

 

「全く、この摩耶様が居なくて対空戦が勤まるかよ!!」

 

 

「摩耶!貴女大丈夫なの!?」

 

 

「あぁ!何とかなさぁ、終わらせようぜ!」

 

 

「こんのぉ!群れるだけしか脳のない雑魚共がぁぁぁぁ!!」

 

 

対空に優れた艦娘や空母達が集まり対空戦はかなり連合艦隊が有利になりカナも焦っていると空から艦載機が落ちてくる

 

 

「クソ!それなら対空砲でーーーー」

 

 

「やらせると思ってるの!!」

 

 

その言葉に振り返るとそこには砲台古鬼達を全て破壊した叢雲達がカナに接近しており慌ててそちらへも砲を回す

それがカナの命取りとなった

 

 

「さぁ!終わりよ!!飛行場姫!!」

 

 

「我々の爆撃を受けるが良い!!」

 

 

「しまった!高角砲が!!」

 

 

再び空に目を向けるとすぐ目の前まで二人の艦載機が迫っておりカナは慌てて避けようとするが

 

 

「そんなことはさせません!!」

 

 

古鷹が、先程瑞鶴の艦載機が直撃した脚に砲撃をしカナの体制を崩すと腰にある飛行甲板が空から狙えるようになる

 

 

「今です!二人とも!!」

 

 

 

「なっ!古鷹ぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「「いっけぇぇぇぇぇぇ!!!!」」

 

 

その瞬間二人の艦載機が確実にカナの飛行甲板を捉えそれと同時に全身に向けて爆撃を開始すると続けて叢雲と磯風、そして赤城達の艦載機も爆撃しカナは爆煙に包まれる

 

 

「…………やったの?」

 

 

「……倒せては居ないと思うがあそこまでの爆撃すこしは動きがーーー」

 

 

とグラーフが言った瞬間カナを取り巻く爆煙から突然ガチャンと音が聞こえると同時に轟音が聞こえ辺りに衝撃と爆発音が響き渡る

その着弾したのはグラーフだった

 

 

「グラーフ!?」

 

 

「なっ!あんな状態でも!?」

 

 

着弾したグラーフは黒煙を上げながら吹き飛ばされ赤城が慌ててその身体を支えにいく

カナを取り巻く爆煙からは巨大な薬莢が転がってくると更に艤装が動く音が聞こえ叢雲が名一杯叫ぶ

 

 

「瑞鶴!避けなさい!もう一発来るわよ!!」

 

 

「えっーーーー」

 

 

そう叫んだが時既に遅く再びの轟音がカナの爆煙から聞こえ次に反対側に居た瑞鶴に着弾し黒い爆煙に包まれながら吹き飛ばされていく

 

 

「瑞鶴!!」

 

 

「嘘!瑞鶴ちゃん!!」

 

 

そして少しずつカナの周りにある爆煙が晴れていくと舌打ちをしながらカナは二人を睨み付けていた

 

 

「やってくれるじゃないの!!くそがぁ!!

私の!私の艤装を破壊してくれるなんてぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

爆煙が晴れたカナの艤装はかなり傷が付いており大量にあった主砲や高角砲がほとんど駄目になっていた

そして

 

 

「クソ!クソ!クソ!クソ!!!!

私の飛行甲板を!良くも良くも良くも!!!

やってくれたなぁ!!瑞鶴!グラーフ!!!」

 

 

カナの飛行甲板は完全に破壊されていた

発着艦は穴が空いており使い物にならないほどに壊され怒りながら海を睨み付ける

 

 

「全員ぶっ殺す!!海の藻屑にしてくれるわぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

カナは再び主砲に砲弾を装填するがそれを止めるべく叢雲が走り出す

 

 

「させるわけないでしょうが!!!」

 

 

「退け!!私の邪魔をするなぁぁぁぁぁ!!」

 

 

薙刀をカナに振るうとカナはそれを爪で防ぎ再び叢雲達はカナと立ち向かうが先程より格段に楽にはなっていた

そして

 

 

「叢雲ぉぉぉぉ!

制空権は奪ったわ!後は!任せるわよ!!!

飛行場姫を必ず倒しなさいよ!!」

 

 

瑞鶴の言葉が海域中に響き渡り叢雲は微笑みながら礼を言う

 

 

「ありがと、瑞鶴、グラーフ

助かったわ後は任せなさい!!」

 

 

それだけを言うと叢雲達は再び島の支配者カナと対峙する

そして、瑞鶴は飛龍や蒼龍に介抱されながら綺麗な空を見上げる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………どうですか加賀先輩…

私は貴女見たいに…動けましたか……?

貴女ならもっと…上手く戦えたのかな…?

まだ……まだだなぁ…)

 

 

そう思いながらゆっくりと瑞鶴は意識を手放し寝息を立てていく

 

 

 




次回

二人目の始祖級

カナから制空権を奪うことに成功した連合艦隊
これでカナによる爆撃は無くなり大分戦闘が楽になる
その頃、長門は始祖級椿と対峙しその能力と桁外れの実力に圧倒されていた


鶴が欲しい、とてつもなくそうも思ってやってました
そしたらですね!!やっと来てくれたんですよ!!
ボーキめっちゃ消費しましたが翔鶴さんが来てくれました!!めっちゃ嬉しい!!
瑞鶴?………欲しいけど出ないんだよぉぉ!!!(血涙)




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突破口

瑞鶴とグラーフがカナから制空権を奪い何とか連合艦隊が少しだけ有利になっていた頃長門達は椿と対峙しながら苦戦を強いられていた

 

 

「良くもまぁ、姫様から制空権を奪ってくれましたねぇ……

これは早めに決着をつけないと行けませんねぇ!!」

 

 

「く……化け物め…」

 

 

「ゲホッゲホッ……」

 

 

「何なんデースかこいつ…」

 

 

「これが始祖級…ですか……ゲホッ」

 

 

椿は一人で長門、陸奥、日向、大井、金剛と対峙しながらも余裕な表情で戦い全員を唖然とさせていた

異常なまでの学習能力と相手の行動を記憶する能力はどんなに多くの艦娘が対峙しようとも相手にならず長門は考え込んでいた

 

(何か……何かあるはずだ!

完璧無敵な深海棲艦何てものは存在しない!!

突破口を見付けなくては!!)

 

 

「アハハハハ?まさか私の突破口を見つけようとしてますかねぇ?

なーがーとぉ?」

 

 

「っ!?」

 

 

心を読まれてしまい困惑する長門を椿は嘲笑いながら陸奥へと突っ込もうとする

 

 

「早く私を倒さないと!また貴女は妹を失いますよぉ!!!」

 

 

「貴様ぁぁぁぁ!!」

 

 

その言葉に怒りを覚え長門は全速力で椿に突っ込み拳で殴りかかるがそれを軽く椿は受け止める

 

 

「アハッ!そうですよ!もっと!もっと殺意と怒りを露にして私に向かってこい!!それを打ちのめすが楽しいんですよぉぉぉぉ!!!」

 

 

「そんなことさせませんよ!!」

 

 

だが、次の瞬間椿の横から突然砲弾が飛んでくると着弾し爆発を起こし舌打ちをする

 

 

「リシュリュー!」

 

 

「……痛いですねぇ、戦艦ですかねこれは

しかも日本製じゃない……驚きました…まさか海外の奴まで居るとはね……」

 

 

先程赤城を連れていったリシュリューが戻ってきており更にその後ろから二人の戦艦が椿に向かっていく

 

 

「行くぞ!ウォースパイト!!」

 

 

「えぇ!先程はやられましたが挽回しますよ!!」

 

 

「ガングート!ウォースパイト!お前達、他の深海棲艦達は!?」

 

 

「羽黒や他の重巡達に任せている!コイツは強いのだろ?赤城に言われてな助太刀に来た!!」

 

 

二人は艤装を椿にぶつけるとその隙にリシュリューが装填し再び砲撃しようと構える

 

 

「驚きましたねぇ……まさかロシア艦も居るとは…

だが良い!!それでこそお前達(艦娘達)だ!!!

楽しませてくださいよ!!精々ねぇ!!」

 

 

「ほう?随分と好戦的だな!貴様!!」

 

 

「私みたいに好奇心旺盛なのは構いませんが私達の事を倒せるんですかね!!」

 

 

「倒せますよ?舐めないで欲しいですねぇ!!」

 

 

ぶつけてきた二人の艤装を椿はおもむろに掴もうとするが

 

 

「ウォースパイト!ガングート!そいつは軽々と私達の艤装を持ち上げます!!掴まれないでくだサーイ!!」

 

 

金剛に言われ慌てて距離を取ろうとする二人であったが

 

 

「逃がしませんよぉ!!」

 

 

「きゃっ!嘘!」

 

 

ウォースパイトの艤装だけ掴まれてしまいそのまま軽々と艤装を持ち上げる

 

 

「な、何だ!こいつ!!」

 

 

「アハハハハ!意外と軽いもんですねぇ!!」

 

 

艤装を掴むとそのままガングートに向けて振りかざすのだが

 

 

「離しなさい!!」

 

 

「これ以上はやらせまセーン!!」

 

 

「チッ!めんどくさいですねぇ!!」

 

 

金剛て大井が掴んでいた手に集中攻撃をしウォースパイトを離させると金剛がウォースパイトを助け出す

 

 

「大丈夫デースか?」

 

 

「え、えぇ、ありがとう」

 

 

椿は依然変わらず陸奥達を相手しながらもかなり余裕に戦っており長門は歯を食い縛りながら考えていた

 

 

(何か!何かあるはずなんだ!考えろ!!

コイツの弱点を!こいつと…同じ…………)

 

 

長門がそんなことを考えていると一つだけ思い出す

 

 

「……こいつの能力…佐渡提督の『先読み』に似てないか?」

 

 

そう思い付くと長門は陸奥達にいい放つ

 

 

「陸奥!金剛!大井!ウォースパイト!ガングート!日向!リシュリュー!すまない少しだけ時間をくれ、そいつの足止めを頼む!!」

 

 

「「「了解!!」」」

 

 

「ほほう?何かするつもりですかぁ?やらせるとでも!!」

 

 

椿はその言葉を聞くと真っ直ぐ長門に向かっていくがその間をリシュリューと陸奥が止める

 

 

「行かせないわよ!!」

 

 

「貴女の相手は!私達よ!!」

 

 

「相変わらずウザいですねぇ!!」

 

 

二人が椿を止めていると長門は急いでインカムを使い佐渡と連絡をとる

 

 

「佐渡提督!!居るか!?」

 

 

『おう!どうした長門?』

 

 

「もし!もしもだ!全てを一瞬で記憶出来二度と攻撃が当たらない相手が敵となった場合どう戦う!?」

 

 

『………そうだな、まずその相手のトラウマや受けたくない攻撃方法を探す…かな?』

 

 

「トラウマ…だと?」

 

 

佐渡はインカム越しにその相手(椿)の対処法を話していく

 

 

『一瞬で記憶できるとき覚えていると言うことは受けた傷や痛みを覚え続けると言うことだ

その中には何かトラウマになってるものがあるはずだ

忘れたくても忘れられない痛みが』

 

 

「トラウマ………」

 

 

長門は考える、ここまでの戦いとその記憶を

この場に居ない者、椿の言動、攻撃、動き全てを

 

 

(考えろ…考えろ…考えろ……何があったいまここに居ないのはさっき飛行場姫の攻撃を受けた大和、瑞鶴、グラーフ………それより前を…視野を広げて…何か………)

 

 

一人戦場で深く息を吐きながら考えていると一つだけ疑問を思い出す

 

 

(………飛行場姫の謎…そうだ!何故佐渡提督は分かったんだ!?)

 

 

「佐渡提督!まだ、聞きたいのだが良いか!?」

 

 

『お、おう?どした?』

 

 

「何故貴方は飛行場姫の謎を解き明かした!?

教えてくれ!!」

 

 

『あ、あぁ実はな飛行場姫の縄張りで昔出撃した人の報告書があってな

それに書いてあったんだ

戦艦タ級を瀕死に勝つ寸前まで行ったのだが飛行場姫の砲撃にーーー』

 

 

「誰だ!その艦隊の砲撃を受けた艦娘と言うのは!!」

 

 

『いや?そこまでは記載してないんだ』

 

 

「すまないが調べてくれ!そいつだ!そいつが突破口になる!!」

 

 

『分かった!少しだけ待ってろ今すぐ調べる!!』

 

 

その言葉と共に通信を切ると長門は一人で戦い続けている椿を睨み付ける

 

 

(誰だ…誰がお前に傷を付けたんだ!!)

 

 

 

 

 

 





次回

弱点

昔、椿に傷を付け瀕死にしたものが居る
その情報は藁にもすがる思いで佐渡達に尋ねる
果たして彼女を瀕死にしたのは誰なのか?


一応これもフラグでしたが気付いた方はいらっしゃいましたか?
翔鶴さんをレベリングして装甲にしようとしたらカタパルト足らねぇ!!
なんてことだ!!



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突破口 二

長門から頼まれた佐渡は急いで猿橋に問いただす

 

 

「猿渡さん!ちょっと良いですか!?」

 

 

「お、おう?どした?」

 

 

「この報告書に記載されている飛行場姫に砲撃された艦娘って誰か分かりますか!?」

 

 

佐渡は報告書を猿橋に見せるとかなり唸りながら必死に思い出そうとする

 

 

「えっと………あー……

あれ?誰だっけかな?

凄い真面目で良い娘だってことは覚えているんだよなぁ……

えっと…………」

 

 

「艦娘は分からないが、そこの報告書を書いたのは大谷(おおたに)大佐だ」

 

 

佐渡達の後ろから声が聞こえるとそこには唐澤が立っており佐渡達を見ていた

 

 

「と言うよりは猿橋お前その鎮守府に実習しに行ってただろ?

何で覚えてないんだ?」

 

 

「アハハ………ま、まぁその時ちょっとありましてねー……ハハ」

 

 

「笑い事ではないだろう

何故先輩の事を忘れてるんだ貴様は全く」

 

 

大谷、その名前を聞くと猿橋は少し怪訝そうな顔をしており佐渡が疑問に思っているといきなり隣にリストを渡される

 

 

「……えっと…斎藤さんこれは?」

 

 

「大谷が保持していた艦娘一覧だ

そして、戦闘記録が全て載っている好きに調べろ」

 

 

「!ありがとうございます!!!」

 

 

佐渡は急いでそのリストを開くと一つ一つ丁寧に調べていくと猿橋と葛城もそれを手伝おうとする

 

 

「手伝うぜ!佐渡!!」

 

 

「飛行場姫の縄張りでの戦闘記録よね!手伝うわ!!」

 

 

「二人ともありがとう!」

 

 

「俺も手伝うよ!佐渡君!」

 

 

「私も調べよう!!」

 

 

そして、唐澤と石澤も加わり五人で椿を傷付けた艦娘が誰なのかを調べ始めていた

 

 

(戦艦タ級を傷付けた本人……誰なんだ!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(後は佐渡提督達に任せるとして我々もやらなくてはな!!)

 

 

長門は通信を入れっぱなしにしながら陸奥達と合流しようとするが向こう側からいきなり何かが飛んでくると隣に落ちる

 

 

「なっ!ひゅ、日向!!大丈夫か!?」

 

 

「あ……あぁ何とかなだが…」

 

 

日向の心配をしていると飛んできた方角から椿が笑いながらこちらに歩いてきていた

 

 

「アハハハハハハハハ!通信は終わった見たいですねえ!!

さぁてぇとぉ!!そろそろ楽しませてくださいよ!!戦艦なーがーとぉぉぉぉ!!!」

 

 

椿の後ろでは陸奥、ウォースパイト、ガングートがボロボロの状態で座り込んでおり舌打ちをする

 

 

「くっ、やはり突破口が無いとキツいか!!」

(佐渡提督が調べてくれるはずだそれまで何とか!!)

 

 

「さぁてと行きますよ……戦艦長門!!!」

 

 

椿は瞬間的に海上を蹴ると一気に長門と距離を詰め勢い良く殴るとそれを何とか防ぐ

 

 

「ぐ………重い!」

 

 

「言ったでしょう!私は戦えば戦うほどに強くなる!!」

 

 

「……仕方ない!早めにやるとしようか!!」

 

 

長門はそのまま椿を蹴り飛ばすと主砲を全て仕舞い椿と距離を再び詰める

 

 

「……おっと?まさかの近接戦ですかね」

 

 

(コイツが油断している隙に一気に落とす!!)

 

 

その瞬間敵意と殺意を椿に分かるほどに向けると一瞬だけ椿は後ろに下がるがそれを逃がさずに拳を鳩尾に向けて勢いよく殴り付ける

 

 

「ガッ………ハッ……な…まーー」

 

 

「死んでもらうぞ、椿!!」

 

 

その後に続けてもう片手で横腹を殴ると続けて脚で顎を蹴り上げそのまま踵落としへと繋げ連続攻撃を続けていくと椿が痛みで苦しみながら海面に顔をぶつける

 

 

「グフッ……こ…このーー」

 

 

「まだまだ!!」

 

 

その後飛び上がり思い切り背中を踏みつけると椿の艤装が曲がりそのまま椿にダメージがいきダウンしている中頭を掴み宙へ投げると再び拳を鳩尾に向けて放つ

 

 

「沈め!始祖級椿よ!!

主砲一斉射!撃てぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

そして脚で思い切り椿を蹴り飛ばすと宙に舞った椿に向けて主砲を一斉射撃すると椿は更に吹き飛ばされボロ雑巾の様に吹き飛ばされる

 

 

「流石デース!長門!」

 

 

「これで少しは落ち着くのかしらこいつ……」

 

 

少し離れていた金剛と大井が合流すると他の艦娘達も長門に合流し倒れている椿を見ており全く動く気配がない

 

 

「……やった様だな」

 

 

「流石にあの連激で無事な訳がない

では飛行場姫と対峙している叢雲達のーーーー」

 

 

「痛い……ですねぇ、流石に」

 

 

「「「「「!!!!」」」」」

 

 

その声に驚いた全員は椿を見ていると倒れていた椿はひょいっと身体を持ち上げ立ち上がると首をゴキゴキと鳴らす

 

 

「いやー……流石に効きましたね今のは

驚きましたよまさか近接戦闘に加え砲撃とは

いやはや、恐れ入りますねぇ」

 

 

「ま、まさか!?」

 

 

「あれだけの連続攻撃を受けて立ち上がるの!?」

 

 

「…………」

 

 

椿は起き上がり身体の艤装を確認すると再び黒い液体の入った試験管を飲み干すと全回復する

 

 

「ぷはぁ!!さってとでは始めますかぁ!

第三幕と!!」

 

 

再び椿が戦闘体制に入っており全員が再び身構える中一人長門だけは無言でその姿を見ていた

 

 

「長門!構えないと!!」

 

 

「一つ聞いても良いか?椿よ」

 

 

「ほほう?質問ですか?

良いですよ、私の質問にも答えてくれるなら…ね?」

 

 

長門は冷静になりながら椿を見ていると淡々と自分の予想を椿に問い掛ける

 

 

 

「………貴様のそれは高速修復剤ではないな」

 

 

「え!どういうこと長門!?」

 

 

「ほほう?どうしてそう思うですか?」

 

 

「……簡単な事だ、高速修復剤なら何故飛行場姫が持っていない?

持っていればあの破壊された飛行甲板が直せるはずだ

それに加え貴様はそれを私達と戦い続ける時に使っている

そして、今のタイミングで全て理解した

その黒い液体は『貴様のダメージをリセット』するものだな?」

 

 

長門がそう話すと椿は少しずつ笑みを溢し高笑いをする

 

 

「アハハハハハハハハハハハハ!!!!!!

正解!正解ですよ!!

そうです!これは私の蓄積したダメージをリセットさせることが出来るんですよ!!

『ある人』に作って貰いましてね!

私専用の特殊薬品なんです!!

だから姫様には渡せないものでしてね!まさか!これを見破られるとはねぇ!!

驚きましたよ!戦艦長門!!!」

 

 

「……ふん、ある人の受けうりでな

『未知は恐怖だ、だからこそその未知を解き明かせ

戦いの中で相手を知らなければ勝てない』とな」

 

 

「アハハハハハハハハ!!嬉しい!嬉しいですねぇ!!

私の秘密をここまで解き明かしたのは貴女だけですよ!!!

ではでは!私からの質問です!!

お前は誰を待っている?」

 

 

『長門!分かったぞ!戦艦タ級を傷付けた艦娘が!!』

 

 

椿の質問と同時にインカムから声が聞こえ長門は水平線の向こう側から来る一人の艦娘を見ていた

 

 

「ありがとう、佐渡提督

私もようやくこの椿の突破口が分かったんだ

だが教えてくれないか?」

 

 

『あ、あぁ…昔大谷大佐が率いる横須賀鎮守府に所属していた艦娘でありある二つ名を持っていたらしいんだ

その名前はーーー』

 

 

「ふん、誰を待っているだと聞いたな椿よ

決まっているだろ

 

お前の天敵(・・・・・)だよ」

 

 

「私の天敵?何を言っているんですか!?そんな奴はーーーーーっ!?ま、まさか!!

だがあり得ない!だってアイツが出撃しているなんて記録なかったはず!!

それに死んだはずだ!!」

 

 

「あぁ、我が友だった

戦死したさ横須賀鎮守府でな」

 

 

『武蔵だ!戦艦武蔵!

だが、その艦娘は………』

 

 

「大丈夫だ、佐渡提督

その武蔵には姉が居る

実際、武蔵ですら姉とは戦いたく無かった程の火力を持っているな」

 

 

その水平線から見える艦娘の影は大きくそして先程カナの砲撃によって後ろにさがり修理を受けていた艦娘

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そうだ、私は待っていた

私より火力が高い『大和』をな!」

 

 

「お待たせ致しました!!

大和!戻ります!!!」

 

 

 

 

 




次回

弱点そして反撃へ

椿の謎を紐解き長門は攻勢に出始める
さぁ、劣勢から抜け出し始祖を突破せよ


やっと山風が45行きましたぁ……
後、鈴谷と利根が改二になりまして…
改装設計図足りねぇ!!!



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突破口 三

水平線から来ている大和を見ると椿は全身から血の気が引くような思いと共に一直線に長門に向かっていく

 

 

「貴様ぁぁぁぁぁぁ!!!

今すぐ殺してくれる!!

あんなもん連れてきやがってからに!!」

 

 

「やはり貴様大和が駄目の様だな、その姿から見て最後の貴様の謎を解き明かした

お前は、ダメージの規定容量があり『私の攻撃が限界であり大和と武蔵の攻撃はその規定容量を越える』と言うことだな!!」

 

 

「クソガぁぁぁぁぁぁ!!!

分かっていようと攻撃を受けなければ良いことだ!

死ねぇ!!」

 

 

椿が突っ込んでいると横から金剛が思い切り当たりその行動を停止させる

 

 

「行かせまセーン!椿!!」

 

 

「邪魔だぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「私も居るわよ!!」

 

 

「クソがぁぁぁぁぁ!!」

 

 

金剛を投げ飛ばそうとすると大井が反対側から走ってきており雷撃を命中させ椿は体制を崩す

 

 

「大和!頼みがある!あの戦艦タ級を撃ち抜いてくれ!!」

 

 

「りょ、了解!!」

 

 

「お前達!!その戦艦大和を私に近付けるな!!」

 

 

大和が長門達に合流しようとすると椿が艦隊を動かしそれを阻止しようとするが

 

 

「ちょっとちょっと~」

 

 

「私達の事忘れてませんか!!」

 

 

艦隊が大和に近付こうとした瞬間雷撃と砲撃により撃破され大和の両隣に二人の艦娘が立ち塞がる

 

 

「北上さん!阿武隈さん!」

 

 

「大和お帰り~護衛は任せてね」

 

 

「大和さんはあの戦艦タ級をお願いします!

私達がそれまで必ず守ります!!」

 

 

「ありがとう!」

 

 

大和は二人に守られながら長門の元へと走っていくとその後ろを追いかけようとする艦隊に北上と阿武隈立ち塞がると更にそれを援護しようと二人近付いてくる

 

 

「比叡~、ちょっと手伝って~

こいつらぶっ殺すよ」

 

 

「はい!北上さん、今行きますね!!」

 

 

「阿武隈!付き合うわ!」

 

 

「妙高さん!ありがとうございます、行きますよ!!」

 

 

四人は大和の背後を守っていると大和は長門と合流し椿を射程距離内に捉える

 

 

「クソっ!鬱陶しい!!」

 

 

「きゃあ!」

 

 

「くっ!この!」

 

 

椿は思い切り艤装を振り回し二人の身体に激突させると大和に向かい全速力で突っ込んでいく

 

 

「お前はどうせあの艦娘(化け物)とは違う!!

貴様の砲撃に当たり前に確実に仕留めてやれば私に恐いものはない!!」

 

 

「は、速い!!」

 

 

「行かせるか!!!」

 

 

椿が大和を近接戦闘で仕留めようとした瞬間その間に長門が割り込み何とか椿を止めることに成功する

 

 

「大和!!私ごとコイツを撃て!!」

 

 

「なっ!そんなこと出来ません!!

それに私は…………」

 

 

大和は先程カナに言われた言葉と椿の言葉と『久しぶりの出撃』に自信を失っており狼狽えていると長門が叫ぶ

 

 

「頼む!!お前だけが頼りなんだ!!

安心しろお前のミスは私が何とかして見せる!だから……信じてくれ!!私を!!」

 

 

「……長門…」

 

 

「私はお前を『妹』から託されているだ

大丈夫だ必ず避けて見せるだから……撃て!大和わたしごと!!」

 

 

「っ……分かり…ました!!」

 

 

その言葉と共に椿の背筋は凍り付き明らかに困惑し狼狽える

 

 

「き、貴様正気か!私と共に死ぬつもりか!?」

 

 

「なぁに貴様を屠れば後は叢雲が何とかしてくれる……それに甘く見るなよ私を!!」

 

 

長門は拳を椿に叩き込もうとするとそれを先に読んだ椿は反射的にその拳を片手で掴むとニヤリと笑う

 

 

「私に、二度の攻撃はーーー」

 

 

「あぁ、知ってたよだから……利用した!!」

 

 

「何!?」

 

 

「徹甲弾一斉射!!」

 

 

そのタイミングで大和が砲撃し長門は拳を引っ込める為に先程と同じ行動を取ると椿はそれを防ごうと拳を放すと

 

 

「受けるとはお前だけだ!!椿!!」

 

 

長門は瞬間的に横に伏せるように飛ぶとそのまま見えなかった砲弾が一瞬で椿の目前まで飛んできていた

 

 

「なっ!?ま、まさか!」

 

 

「お前が防ぐのは分かっていた、そうだろうな先程の攻撃は効いたからな

だからこそお前の身体は反射的に防ぐ体制を取る

その場合お前は他の攻撃を交わす事は出来ない!!」

 

 

「クソがぁぁぁぁぁ!!」

 

 

その瞬間大和の徹甲弾が椿に命中し海上を転がるように吹き飛ばされていくと爆煙の中艤装が壊れる音が聞こえ長門はニヤリと笑う

 

 

「どうやら、私の予測は当たった様だな椿!!!」

 

 

爆煙が晴れるとそこには椿がかなり負傷した状態でおり艤装も所々破壊されていた

 

 

「クソッタレガぁぁぁぁぁぁ!!!

クソクソクソクソクソクソ!!!!

この私が!!二度も!!こんな!こんな傷を負うことになるだなんて!!!

あぁ!忌まわしい!大和型ぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

先程の余裕の態度は無くなり身体焼け焦げた肌と怒り狂いながら長門達を睨み付ける

 

 

「さぁ!反撃だ、椿……覚悟しろ!!

お前の謎は解けた!!」

 

 

「艦娘風情がぁぁぁぁぁぁ!!!

我々の邪魔をしよってからにぃぃぃぃ!!!

ぶっ殺してやる!てめぇらの身体引き裂いてゴミのように海に投げ捨ててやる!!

覚悟するのは貴様らだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 




次回

反撃

今まで全くダメージを負わせることが出来なかった椿に対し有効打を見付けた長門は反撃の狼煙を上げ椿を打ち倒すために連合艦隊を動かす
だが相手は始祖級 そんな簡単に倒せるほど甘くない



台風の被害が酷かったらしいですね……
そんな状態でも仕事行ってましたがね?
いやー鉄板が転がってきたときは面白かったですね!!(呑気)




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突破口 四

久しぶりに受けた傷と痛みを感じながら椿は昔始元に言われた言葉を思い出しながら戦闘をしていた

 

「チッ!クソやっぱり耐えきれないか!

長門が装備してるのは41cm三連装改だからまだ耐えられるが大和のは46cm三連装改か!!

始元とアレに言われたのは長門の主砲までなのか!」

 

 

「これで貴様と私達は五分五分だ!

やっと貴様と一緒の舞台に立てたぞ!!」

 

 

「クソ共がぁ!規定容量まで分かっているとなると確実に殺しておかないと後に響きますねぇ全く!!」

 

 

椿は主砲を展開すると長門達を向けて一斉に砲撃し長門達はそれを交わしていきながら椿に近付く

 

 

「大和!援護を頼む!!

金剛!大井!共に奴を潰すぞ!!

ウォースパイト!日向!ガングート!陸奥!動けたらで良い!援護を頼む!!」

 

 

「オッケーデース!!」

 

 

「了解!!」

 

 

「了解っ!」

 

 

「任せておけ!!」

 

 

「了解した!!」

 

 

「長門!私も付き合うわよ!!」

 

 

「この餓鬼共がぁぁぁ!!お前達何かが私に勝てるわけないだろうがぁぁぁぁ!!!」

 

 

椿はがむしゃらに辺り一体に砲撃すると長門に一撃被弾し爆煙に包まれるが直ぐ様その爆煙を抜け突っ込んでいく

 

 

「貴様に傷を付ければこっちのものだ!!」

 

 

「長門ぉぉぉぉ!!!」

 

 

椿に近づいた長門は拳を握り締め近接戦闘を仕掛けるがその全てを既に椿へ当てているためか全て避けられてしまう

 

 

「くっ、やはり駄目か!!」

 

 

「お忘れですかねぇ!!私は一度受けた攻撃はもう効きませんよぉ!!」

 

 

「なら視覚外ならどうデースか!!」

 

 

その瞬間椿の背後が爆発を起こし前に倒れかけそうになり砲撃した方向を見ると金剛が立っていた

 

 

「クソ戦艦がぁぁぁ!!!」

 

 

「水中にも目を配った方が良いわよ!!」

 

 

「なっ!!」

 

 

そして続けて放っていた大井の雷撃が命中し水柱が上がり確実に椿へとダメージを稼いでいく

 

 

「クソクソクソクソ!!!!

この雑魚共がぁぁぁぁ!!!」

 

 

「行くぞ!ウォースパイト!」

 

 

「わかってるわよ!!ガングート!!」

 

 

更に続けてガングートとウォースパイトが走りだし負傷した椿に向けて航行するとガングートの影に隠れるようにウォースパイトが動く

 

 

「貴様は見えなければ記憶できないはずだ!!

なら!私ではなくウォースパイトを隠してやれば!!」

 

 

「何発でも命中するはず!!」

 

 

「くっ、このおぉぉぉぉ!!!」

 

 

椿は突っ込んでくるガングートに向けて砲撃し何発が被弾するがそんなことお構いなしに突っ込みかなり接近すると主砲を構え砲撃しようとする

 

 

「馬鹿ですねえ!貴女のはもう覚えているんですよぉ!!」

 

 

「馬鹿はお前だ!椿!!」

 

 

「言ったわよね!!本命は私よ!!」

 

 

瞬間ガングートは右に走りそして真後ろに居たウォースパイトがそれと同時に砲撃し椿に着弾する

 

 

「クソッタレがぁぁぁ!!」

 

 

「まだまだ!!」

 

 

そして走ったガングートも更に体制を立て直すと椿に対し砲撃を行い全弾命中させる

 

 

「良し!!こんなもんだろう!!」

 

 

「やったわね!ガングート!」

 

 

二人が喜んでいると爆煙の中椿の艤装がかなり損傷し全員を睨み付けていた

 

 

「この!この私がお前達何かにぃぃぃぃ!!!」

 

 

「椿!貴様の終わりだ!!

陸奥!一気に行くぞ!!」

 

 

「えぇ!!」

 

 

「全砲門!一斉射!!」

 

 

「撃てぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

その瞬間椿の視覚外からの戦艦二人の一斉射撃が椿に着弾し更に爆煙を上げ全員から笑みが溢れる

 

 

「良し……これで!!」

 

 

「かなりのダメージを与えたはず!!」

 

 

「やはり、無敵何てのはいなーーーー」

 

 

「クソが……お前ら必ず殺してやる…」

 

 

全員が勝利を確信した時爆煙の中で椿の声が木霊する

そして、ゆっくりと動きながら艤装が変化しているのがよく分かる

 

 

「………まさか、こいつ…」

 

 

「ぎ、艤装大きくなってる……!?」

 

 

そして爆煙を椿がかき分けるとその身体が実体となり全員の目が集まる

先程とは違い肩に巨大な三連装主砲に加え腰にも同じ主砲が二問、両手は爪の様に鋭く変化し瞳の色が真っ赤な椿色に変化していた

 

 

「モードⅡタイプ殲滅型

私ガこの姿ニなるノハ久しブリだ………

殺してヤる、覚悟しロ艦娘(略奪者)共!!

海の藻屑ニしてくれル!!」

 

 

「………どうやら奴の壊状態か

全員気を引き閉めろ!来るぞ!!最強の始祖級が!!」

 

 

長門はそう言いながら壊となった椿と連合艦隊は初の始祖級との戦いをしようとしているといきなり日向が大爆発を起こす

 

 

「っ!日向!?」

 

 

「だ、大丈夫ですか!日向さん!?」

 

 

「ぐ……大丈夫…だ……だがこれは……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんた達ぃ?私の事忘れてるんじゃないのかしらぁ!!」

 

 

その声が陸上から聞こえ目を疑う

そこには負傷こそしているもののこちらに巨大な砲を向けているカナの姿があった

 

 

「姫様!ご無事でシたか!!」

 

 

「あら、椿?珍しいわね、貴女がその姿何て

それほどには強いのかしらこいつら」

 

 

「なっ!飛行場姫!?

貴様!叢雲達はどうしたんだ!!」

 

 

「あぁ、あのちっこい奴等?決まってるでしょ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「殺したわよ、さっき撃ち抜いてね

あんた達の希望は打ち砕いてやったわよ!!」

 

 

長門が驚きながらも良く陸上を見ると木々が薙ぎ倒されておりその近くに瀕死の磯風と古鷹が見える

 

 

「磯風!!古鷹!!!

貴様ぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 





次回

撃ち抜かれた希望

椿が壊になり長門達に牙を向いた直後にカナから伝えられる三人の敗北
それは長門が予測していない事であり連合艦隊に再びの絶望が襲い始める

やっと山風を改にできたぁ……
さてと、ほかの艦娘も育てていかないと……
特に航巡とか重巡とか()




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打ち砕かれた希望

時は少し戻り瑞鶴達が制空権を奪い返しカナの艤装を破壊した時まで戻る

艤装を破壊されたカナはかなり激怒しており先程の余裕な態度が無くなっており確実に叢雲達を倒すと言う思いから巨大な砲身を三人に向けていた

 

 

「主砲の数が減ったみたいね!」

 

 

「これでコイツに近付ける!!」

 

 

「雑魚の分際でほざくなゴミ共!!」

 

 

カナは破壊された艤装を解除すると足下に飛行甲板と幾つかの主砲や高角砲を落とし軽量化しその状態で叢雲達と対峙する

 

 

「お前らが主砲と飛行甲板を破壊しようと私に勝てるわけないだろうが!!

全員このアブソリュートで撃ち抜いてやる!!」

 

 

「やってみなさいよ!あんたの狙撃がノーコンじゃなければね!!」

 

 

「駆逐艦風情が!図に乗るなぁ!!」

 

 

残っている主砲を展開すると正確に向かってくる二人を撃ち抜こうとするがその攻撃を読む様に二人は砲撃を交わしカナに近付くと磯風は主砲を叢雲は薙刀を振りかざそうとする

 

 

「行くぞ!カナ!」

 

 

「砲門が減ったあんたなんか恐くないわよ!!」

 

 

「あら?そう!!」

 

 

すると、カナは後ろに下がると巨大な砲身を上に向けと勢い砲撃するとニヤリと笑う

 

 

「対空弾?空には何も………」

 

 

「余所見してる場合なのかしら!!」

 

 

何故か空に砲撃したカナであったがそんなことお構い無しに叢雲達に砲を向け砲撃していき何とか交わしていく

 

 

(何!こいつ、今何をしたの!?)

 

 

「フフフ、さてとそろそろかしらね!!」

 

 

カナは叢雲達の足下に向けて砲弾を撃つと着弾した砲弾から黒煙が吹き上がり二人は煙に巻かれる

 

 

「ぐ……なんだこの煙は!」

 

 

「………何か嫌な予感がするわね」

 

 

「っ!?叢雲!上!何か降ってくるよ!!」

 

 

突然古鷹の声が聞こえ叢雲と磯風は空を見上げるとそこには先程カナが撃った巨大な砲弾が叢雲達に向けて落ちてきていた

 

 

「何だあれ!?」

 

 

「くっ、磯風退避!!」

 

 

叢雲は急いでその砲弾から避けようと動くが古鷹はその砲弾に主砲で狙いを付けると

 

 

「………良し撃てぇぇぇぇぇ!!」

 

 

叢雲達の頭上に落ちてきている砲弾に向けて砲撃すると見事その砲弾を撃ち抜く

 

 

「流石だ!古鷹!!」

 

 

「相変わらず良い精度ね」

 

 

「良し!これでーーー」

 

 

「撃ったわねその弾を」

 

 

カナがニヤリと笑い

撃ち抜かれたその砲弾は爆発するところか何故異様に膨張し古鷹はそれが何なのか理解する

 

 

「磯風さん!!叢雲!!

避けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

「え?」

 

 

「っ!!磯風!伏せなさい!!!」

 

 

その砲弾は異常に膨張すると爆発を起こしその砲弾の中にある爆弾や弾薬が雨の様に叢雲達に降り注ぐ

 

 

「ぐう!何だこの爆弾の量は!!!」

 

 

「クソ!!何なのよこれ!!」

 

 

「叢雲!磯風さん!!!」

 

 

「アッハッハッハ!!そいつは特殊弾頭流星群(メテオ)よ!!

あんた達の砲撃火力じゃびくともしないわ!!」

 

 

「く………それでも!!」

 

 

爆弾の雨が降り注ぎ地面や周りを削る中叢雲何とかその雨を避けながらはしるとカナへ近付いていく

 

 

「これ以上は近付けさせないわよ!!

六番スロット!斬裂弾(ショット)!!」

 

 

カナは艤装を動かしその照準を叢雲へ向けるとそのまま長門を苦しめた近距離様の砲弾を撃ち放つ

 

 

「回避っ!!」

 

 

「出来ないわよ!!」

 

 

その砲弾は叢雲の横を通り過ぎた瞬間に爆裂し叢雲の身体を刃が傷付けていく

 

 

「くぅ!さっきの弾と同じ途中で爆発するタイプ!!」

 

 

「アッハッハッハ!!そうよ!

どう!痛いかしら叢雲!!」

 

 

「舐めるなぁ!!」

 

 

叢雲は身体に刺さった刃を抜き取るとそのままカナに投げつけ自らも突進していく

 

 

「そう!それなら縮小!!」

 

 

カナは主砲を小さくすると刃を爪で弾き飛ばしそのまま叢雲に爪を振り下ろすと薙刀とぶつかり火花が飛び散る

 

 

「良いわ!相手になってあげる!!」

 

 

「余裕……そうね!!」

 

 

薙刀で爪を振りほどき一撃与えようとするがカナは上手く爪を動かし叢雲の薙刀を弾き

それと同時にもう片手の爪で叢雲のくびを狙ってくるがそれを何とか交わす

 

 

「ゲホっゲホ……叢雲!加勢するぞ!!」

 

 

「援護は任せて!!」

 

 

カナと叢雲の一騎討ちに磯風が近付きカナに向けて放つがそれを意図も容易く交わし叢雲の攻撃も弾く

 

 

「コイツ!さっきより速い!!」

 

 

「艤装を外したからよ!お馬鹿さん達!!」

 

 

その瞬間腰にある叢雲の艤装を狙い爪を振り下ろすとそれに気付いた叢雲慌てて回避するとそれを追撃するようにカナが叢雲の腕を掴む

 

 

「しまっーーー」

 

 

「捉えたわよぉ!!!」

 

 

その瞬間叢雲を片手で空に向けて投げ上げると爪を元の手に戻し自らの艤装に手を伸ばす

 

 

「砲撃用意!!スロット変更!第一スロット!!」

 

 

 

そしてカナは巨大な砲弾を元に戻し砲撃体制に入る

 

 

「不味い!!やらせんぞ!!」

 

 

「あんたは黙ってなさい!!」

 

 

慌てて磯風がカナに近付き近接戦闘を仕掛けようとするが回し蹴りを受けそのまま蹴り飛ばされ遠くにあった木にぶつかり苦しそうに悶える

 

 

「磯風さん!そんなことやらせないよ!!」

 

 

磯風が吹き飛ばされたことをしると古鷹もカナに近付き脚に向けて砲撃しようとするとカナは少しだけ身体を動かすと飛行甲板に隠れていた中型主砲を古鷹に向ける

 

 

「隙アリね古鷹!!!」

 

 

「っ!回ーー」

 

 

と避けようとした瞬間カナがその主砲から砲撃し古鷹の足首目掛け撃ち放ち古鷹は盛大にその場に倒れる

 

 

「さぁ!あんたの終わりよ!!叢雲!!」

 

 

「くっ!食らいなさい!!!」

 

 

叢雲は空から落ちてきながらカナに向けて苦し紛れの砲撃をし全て命中させるが

 

 

「アハハ!効かないわねぇ!!

私を倒したいならもっと火力高いのを持ってきなさいよ!!

砲撃用意!!くたばりなさい!!」

 

 

主砲を叢雲に照準を定めると完全な砲撃体制を取り絶体絶命の状況に追い込まれる

(タイミングが重要よ!絶対に失敗出来ない!!)

 

 

叢雲はカナが砲撃するタイミングで自らの主砲を同時に避ける方向とは逆に動かし同時に砲撃することで何とか避けようと考えていた

それで何度も空中での砲撃を交わしてきた叢雲には交わせる自信があった

 

 

「死ね!駆逐艦叢雲!!」

 

 

「今っ!!!」

 

 

カナの砲撃より少し速いタイミングで叢雲は艤装を動かすと同時に主砲を放ち何とか軌道を反らす

そしてカナの主砲が轟音を上げ砲弾が放たれ叢雲の直ぐ横を掠め何とか交わす

 

 

「何!?」

 

 

「流石叢雲!!」

 

 

「素晴らしいな……何て艦娘だ…」

 

 

カナの砲撃を避けた叢雲は少しだけ余所見をし再び薙刀の艤装を構えカナに向き直るのだがそこで異変に気付いた

 

 

「へぇ……やっぱり避けたのね?」

 

 

「…………っ!?まさか!!」

 

 

カナは一気に後ろに飛ぶとその状態のまま主砲を叢雲が落ちてくる場所の少し上に再び構えると刺股を地面に突き刺す

 

 

「あんたの事だからねどうせ何とかして避けると思ったわ

だからこそその為に地上に艤装をロックはしてなかった

予想通り…だったわね!!」

 

 

「ま、まさか!コイツ連発して撃てるのか!?

不味い!!」

 

 

「っ!や、やらせない!!!」

 

 

古鷹と磯風は急いでカナの砲撃を阻止しようと動き始めるが磯風に向けてカナ左腕に付いている中型主砲を全弾脚に命中させその場に転倒させる

 

 

「ぐぅぅ!き、貴様っ!!!」

 

 

「そこで見てなさいあんた達の希望が死ぬ瞬間を」

 

 

「駄目ぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

そして、古鷹は痛む脚を無理矢理動かし左肩と右腕の主砲を全てカナに向けて砲撃するが

 

 

「砲台古鬼、盾になりなさい」

 

 

カナの指示を聞いた砲台古鬼が壊れていた筈なのに突然動きだし古鷹の砲撃を全弾その身で受けカナを守る

 

 

「嘘っ!仲間を犠牲に!?」

 

 

「悪いわね、後で埋葬してあげるわ

でも貴女のお陰で」

 

 

二人の攻撃が失敗に終わり何とかして叢雲はその落ちている状態で交わそうとするが主砲のリロードが終わらず避けようにも相殺させようにも時間が足らない

 

 

(ヤバい!避けられない!!)

 

 

「角度、落ちる速度良し、悪いわね少し無茶な扱い方をするわよ始元」

 

 

そして落ちる叢雲に主砲の照準が合わさり

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さようなら、駆逐艦叢雲

死になさい」

 

 

砲撃の轟音が辺りに響き渡ると同時に叢雲の腹部の中心を捉え苦しみと痛みの余り叢雲は息を詰まらせる

 

 

「グ……あ……」

 

 

そして叢雲に直撃した砲弾は爆発の轟音を上げ大爆発を起こすとそのまま叢雲は吹き飛ばされていく

 

 

「叢雲ぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

吹き飛ばされた叢雲は木々にぶつかるがカナの砲撃火力が凄まじくそのまま幾つもの木々を破壊しながら吹き飛ばされていきその先にあった建物の壁に当たるそれすら貫通し建物内の壁に当たると黒煙や血を大量に流しながら床に転がる

艤装は腰に繋げてあったせいなのか破壊はされていないが身体は焼け焦げ至る所から血を流し倒れた床には血溜まりが出来ていた

 

 

「命中、駆逐艦叢雲撃破」

 

 

「貴様ぁぁぁぁぁぁ!!!良くも叢雲を!!」

 

 

磯風は痛む身体を持ち上げ何とか立ち上がろうとするとカナは巨大な主砲以外の砲門を全て磯風に向けると背筋が凍り付く

 

 

「安心しなさい、あんたも同じ様にしてあげる

蜂の巣にだけどね!!」

 

 

「なっ、クソぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

その瞬間カナは砲門を全ての磯風に向けると一斉砲撃をし磯風は黒煙を上げながら痛みの余り気を失ってしまう

 

 

「良くも!良くも叢雲をぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

「砲台古鬼、やりなさい」

 

 

「なっ、嘘!さっき破壊したはずなのに!!」

 

 

 

カナの指鳴らしと同時に倒れていた砲台古鬼達が起き上がりその砲を古鷹に向けて一斉に砲撃すると古鷹も重症を負ってしまう

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

カナを倒すために陸上戦を仕掛けていた三人は叢雲が撃破された瞬間一気に倒されてしまいカナも息を切らせる

 

 

「はぁ……はぁ、全く手間をかけさせてくれるわねこいつら……

ここまで追い込まれたのいつ以来かしらね……全く

あー!!疲れた!!!

あ、あんた達ご苦労様

その盾になってくれた子は一応修理施設に

他も休みなさいありがとうね、助かったわ」

 

 

三人を倒した事を再度確認すると辺りを見渡しながら砲台古鬼達に命令を出していき海上を見る

 

 

「全く……マックスを逃がすんじゃなかったわ…

眠かったから放置したけどめんどくさいことになったわね………

チッ、人の平和を乱しやがって……全員殺してやろうかしら全く……

にしても連発したらやっぱり放熱ヤバイわね……

終わったらメンテナンスしっかりしないとね」

 

 

カナはかなり熱された主砲を叩きながら倒した三人を放置しながら海上へと主砲を向け再び艤装に腰掛けると刺股を地面に突き刺す

 

 

「さってと、椿の援護しよっと

でも、あの娘は一人で何とかなるとおもうんだけどなぁ

あーめんどくさいめんどくさい」

 

 

 

 

 

 




次回

絶望的な状況

叢雲達が撃破されカナの主砲が再び長門達に牙を向く
戦艦椿と歴戦の姫カナ
この二人が揃ってる状況で長門達連合艦隊に勝ち目はあるのだろうか

やっと中盤()
そして何か改二がたくさん来るらしいですね?
だれやろ……青葉まだ?





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絶望

「さてと、始めようじゃない

ドレス島での私達の防衛とやらをね!!」

 

 

「ハイ!姫様!!全艦隊、艦娘達ヲ残らず殲滅しロぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

椿が指示を出すと深海棲艦の艦隊は一斉に動きだしその牙を連合艦隊に向けていく

 

 

「や、ヤバイねこれ」

 

 

「わわわ!!さっきより勢いを増した!?」

 

 

「妙高さん!何としてもここは死守するよ!!」

 

 

「で、でも阿武隈!流石にキツいわよ!!」

 

 

大和を襲おうとしていた深海棲艦達も同時に勢いが増し少しずつ阿武隈達は押され始め長門は歯を食い縛っていた

 

 

「貴様ぁぁぁぁぁぁ!!飛行場姫ぃぃぃぃぃ!!!」

 

 

長門はやられた見えている二人を救出すべく一人カナへと向かっていくが

 

 

「行かせまセんよ?長門!!」

 

 

「クソ!椿!!」

 

 

「アハハハハハハ!お前達の負けダ!姫様には誰モ勝てナい分かるでしょ?お前達とは格が違うンだよ!!」

 

 

椿が言うと同時にカナは再び巨大な主砲を動かし一人ずつ照準を定めていく

 

 

「さてと、誰から撃ち抜いてやろうかしらねぇ?」

 

 

「そんなことはさせませんよ!!」

 

 

その言葉と共に赤城達空母達が再びカナの前に立ち塞がり空へ向けて艦載機を飛ばしていく

 

 

「私達が制空権を取ってるのよ!あんたの好きにはさせないからね!!」

 

 

空に放たれている艦載機を見るとカナは主砲を空に向けニヤリと笑う

 

 

「確かに六式弾は無いわ、でも別の方法でも代用できるのよお馬鹿さん達!!

六番スロット!流星群(メテオ)!!」

 

 

「一体何を!?」

 

 

そして流星群(メテオ)を空に向け放つと艦載機の上空に到達すると膨張する

 

 

 

「からの、スロット変更!一番スロット!

さぁてと花火を見せてやるわよ!!」

 

 

流星群(メテオ)の砲弾が爆発すると同時にカナは主砲をそのばら蒔かれる爆弾を狙い砲撃すると誘爆を引き起こし艦載機を全て撃墜する

 

 

「なっ!」

 

 

「な、何よその使い方!?」

 

 

「馬鹿ねぇ!自分の砲弾の使い方位把握してるわよ!!

それとさっきは良くやってくれたわね空母共……まずはお前らからだ」

 

 

カナは続けて主砲を赤城達に向けると急いで弓を引こうとするがそれよりも先にカナが砲撃し飛龍に着弾すると大爆発を起こし飛行甲板もろとも艤装が破壊され吹き飛ばされる

 

 

「飛龍!!」

 

 

「飛龍さん!!」

 

 

「ガ…………はぁ…!」

 

 

「命中、一人終わりね

さぁ!お前達トドメを指しなさい!!」

 

 

カナの号令と同時に深海棲艦達が動きだし負傷した飛龍に向かい砲撃や艦載機を飛ばしトドメを指そうとしてくる

 

 

「く…!蒼龍さん、飛龍さんを明石さんへ!!

他の人達は彼女を守ります!!」

 

 

「わ、分かりました!!飛龍!飛龍しっかりして!!」

 

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

「アハハ残念ねぇ!弱い味方を持ってると!!」

 

 

「貴様あぁぁぁ!!」

 

 

「長門!避けて!!」

 

 

「なっ!!」

 

 

長門がカナに向かおうとすると椿がその行く手を防ぎ肩に付けられた大型の主砲を向け撃つ

何とかそれを交わすと椿がカナの前に行き長門達に立ち塞がる

 

 

「さぁサァさぁ!終わらせマしょう姫様!!

こんな奴等全員沈めて我々の平和を戻すとしましょう!!」

 

 

「そうね、そろそろ鬱陶しいしポテチ食べたいし全員沈めて上げるわね!!」

 

 

「クソ、またさっきと同じ………いや、さっきより酷くなったか!!」

 

 

長門達は再びのカナと椿による絶望的な状況に追い込まれ全員脅えながらも自らの艤装を握り締め最悪の二人と対峙する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゴホッゴホ…………ガハッ……

カ………ナ……!」

 

 

 

 

 




次回



カナの指揮が再び戻り深海棲艦達は更に勢いを増し連合艦隊に牙を向け戦いが激化しようとしていた

そして撃ち抜かれた叢雲は一人意識を取り戻し起き上がろうとしていた


ぶっちゃけカナヤバくね(作者だけど)
ネタバレですがこの後出てくる姫達より遥かにレベルが高く今の段階では戦うべき相手では無いです()
え?それでも書く理由?

…………まだ言わないでおきましょう!



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雫滴る水底へ

 

 

カナの砲撃に撃ち抜かれた叢雲は瓦礫に埋もれながらも辛うじて生きており何とか起き上がろうとする

(艤装は………生きて……る…腹部に…だけ……当たった……か…魚雷に……誘爆…しなかった……のは…せめて……もの……救い…ね……)

 

 

身体を動かそうとするが床に広がる生暖かい液体を口の中にも感じながら辺りを確認する

(建……物?…あの……カナ達…の……居住…スペース……かな…?

立た……な…い……と…戦わ……ない…と……)

 

 

身体を床に這いずると腹部に焼ける痛みと激痛が走り震える手で触るとそれは真っ赤に染まり腹部から流れ続け止まる様子がない

(馬…鹿……こんな…所で……倒れて…られ……ない…のよ……まだ…私……は)

 

 

必死に物に掴まり立ち上がろうとするが全く力が出ずに激痛と出血のしすぎにより意識を失う

(ヤバい………意識…………が……

みん……な…………)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

真っ暗な世界、前に一度叢雲は同じ様な事を長門戦の時に経験していた

そう、それは意識の奥底にある自分だけの世界

その中で叢雲は一人うつ伏せで倒れていたが今回は違った

辺り一面から雫が滴り落ちる音が聞こえる

 

 

(……ここは……意識の深層?…また気絶しちゃったか……

でも……この前と…違う……?

佐渡に怒られる前に……動かないと……っ!?)

 

 

起き上がろうとする叢雲の背中と頭を何かが踏みつける

それも自分より遥かにデカイ何か

見ようとしても身体が全く動かない

頭だけでも振り向き見ようとしても首ごと押さえ付けられ動かすことも出来ない

 

 

(な、何!?何なの!!

私を何が押さえ付けてるの!?)

 

 

そして叢雲の艤装が全て勝手に外されると目の前に耳型の艤装が転がり真っ黒に変わるとノイズが聞こえる

 

 

(ノイズ……?さっきので壊れてーーー)

 

 

だがそのノイズの中から少しずつ、だが確実に声が聞こえるがその声は明らかに人の声でもない

かと、言って人形の深海棲艦が話す声でもない

何か機械が無理矢理話しているようなノイズ掛かった謎の声

 

 

『マ……ダ、……戦ウ……ノカ…艦娘』

 

 

(っ!!、な、何!?

と言うよりなにこの声!!!こんな声聞いたことない!!)

 

 

『ホウ?…忘レテル…ミタイダナ

マァ、ソレハ……ドウデモイイ

マダ戦ウノカト……聞イテイル』

 

 

謎の声に質問され困惑するがそれに答えていく

 

 

(戦うわ!!まだ私は負けてない!!!)

 

 

『ハハハ、自ラノ実力モ図レナイ愚カ者メ

マダ分カラナイノカ

オ前ハ負ケテイルンダヨ

戦イタイナラ動イテミヨ、艦娘』

 

 

叢雲は謎の声に言われムカつき動こうとするが全く身動きが出来ない

 

 

(っ!!離しなさいよ!!あんたが押さえつけてるから動けないのよ!!)

 

 

『違ウナ、我ガ押サエツケテイルノハ頭と背中ダケダ

…ソレ以外ハ触ッテオラヌ』

 

 

(っ!!)

 

 

そこで叢雲は気付く背中にある重みは頭と背中だけ、いつもなら転がってでも這いずってでも抜け出せる筈

だが、身体の損傷が酷すぎて言うことを聞いてくれない

 

 

(…………クソ……何でよ!動いてよ!!)

 

 

『ソレガ答エダオ前ハ負ケタンダ

アノ化ケ物二撃チ抜カレテナ

諦メロ、オ前ガ挑メル相手ジャナインダヨ

イクラ足掻イテモ勝テヤシナイ』

 

 

その謎の声は確かにまともであり的を得ている

身体は全く動かないし全身に焼ける痛み、腹部からは血を流し瀕死であることは確かだった

 

 

(…………じゃあ、何であんたはここに出てきたの

何が目的?)

 

 

叢雲が話した瞬間謎の声が笑い出す

そして、叢雲を踏みつける力が更に強くなっていく

 

 

『ソノ身体ヲ我二寄越セ

ソウスレバコノ海域カラ逃ガシテヤル

オ前ダケヲナ』

 

 

(ぐぅ!……どういう……意味よ!!)

 

 

『我ナラアノ姫カナカラ逃ゲラレルト言ッテイル

アレニ挑ムノハ早スギダ

モット経験ヲーーー』

 

 

(お断……りよ!!)

 

 

『………ホホゥ?ナラココデ死ヲ選ブノカ?』

 

 

そして叢雲は痛む身体軋む艤装を動かそうと身体に力を加える

その瞬間的傷口から血が吹き出し激痛が走る

 

 

(そんなわけ……無い!……でしょう…が!)

 

 

『マサカ、アレヲ倒スノカ?

愚カ者メ、勝チ目ナンテノハ無イゾ』

 

 

(それでも……私…は…戦う!!)

 

 

『アノ男ノ為カ?

艦娘ハ面白イナ、提督トヤラノ為二命ヲ掛ケテ戦イ、ソシテ死ンデイク

奴等ハ指揮ヲシテイルダケナノニ

ナノニオ前達ハアレヲ仲間ト言ウ

戦友ト言ウ

オ前達ガソノ気二ナレバ世界スラ滅ボセル力ヲ持ッテイルノニ

滑稽ダナ、愚カダナ、惨メダナ艦娘よ

オ前達ガ深海棲艦ト組メバ全テヲ手二入レラレルト言ウノニ』

 

 

(……要らないわ、私はアイツと仲間だけが居れば良い)

 

 

『ハハハハ!笑ワセルナ!!

ソンナワケ無イダロ!!オ前達ハ人間ト変ワラヌ!!

……ソウダ!良イ考エガアルオ前ノ欲シイモノヲ言ッテミロ

我ガ貴様ノ身体ヲ使イ手ニイレテ見セヨウ

ソノ代ワリ貴様ノ身体ヲ寄越セ

悪クハナイ取引ダロ?』

 

 

叢雲を踏みつける力を少しだけ緩めながらその声は叢雲に問い掛け交渉を持ち込む

 

 

(……無いわ、私は……皆と仲間と……平和に…楽しく過ごす……世界が欲しい!!!)

 

 

『マダ言ウカ!!コノ小娘ハ!!』

 

 

その瞬間更に踏みつける力が増し叢雲は黒い床に押し付けられギリギリと踏み潰そうとしてくる

 

 

『ココデ貴様ヲ殺シ、意識ヲ奪ッテモ良イノダゾ!!

イイ加減本性ヲ見セロ!!欲深キ者ヨ!!!』

 

 

(……私は何も要らないし求めない……だって…アイツは……そんなことしなくても与えてくれるんだから……!!)

 

 

『………ドウイウ意味ダ?』

 

 

叢雲は踏み潰されながら両手を使いその力に反発しながらも力強く動こうとする

 

 

(私は力が欲しかった!!だからアイツは自分の技術を私にくれた!!

私はワガママを聞いて欲しかった!!だからアイツはそれに付き合ってくれた!!

私は艦娘を助けたかった!!だからアイツは私と共に全てを捨てても良いと言ってくれた!!

私は戦いたかった!!だからアイツは戦うことを許可してくれて私は今ここで戦わせてくれている!!!

 

誰よりも仲間を失うのを恐れているのに恐くて仕方ない筈なのに!!!

それでもアイツは私に全てを与えてくれる!!

そんな奴に私は出来ることを返したいのよ!!!!

私に出来ることはアイツの障害を破壊すること!

アイツが戦えない代わりに!!私が戦う!

この命捨ててでも!!

お前なんかに求めるもの何てものは何一つとしてない!!)

 

 

叢雲の声にしばらく謎の声は黙りそして少しだけ踏みつける力を緩める

 

 

『……ソノ為二命ヲ掛ケルノカ、馬鹿馬鹿シイ

本当二愚カデ、滑稽デ、惨メナ生キ物ダナ

貴様ハ』

 

 

(私の気持ちが分からない……なんて……可哀想ね……)

 

 

『分カリタクモナイ……ダガ貴様ノ行ク末ガ見テミタクナッタ』

 

 

謎の声は完全に叢雲を踏みつけるのを止め仰向けにすると暗闇だけが続いている

だが、何も居ない筈なのに真っ赤な瞳が二つ鋭く叢雲を見下ろしている

 

 

『面白イ、私ガ今マデ見テキタ艦娘ヤ人間トハ違ウ様ダナ

ソノ覚悟トヤラ

ダガ、最後ノ質問二答エテモラオウカ?艦娘』

 

 

(な、なによ……?)

 

 

ノイズ掛かっていた声は消えハッキリとその言葉だけが聞こえ

 

 

『オ前ハ何ヲ目指ス?艦娘ト人間達ガ勝利スル奪イ取ッタ未来カ?

ソレトモアノ方ガ目指シタ皆ガ手ヲ取リ合ウ終ワリノ未来カ?

答エヨ艦娘』

 

 

その質問に叢雲はクスッと笑いながら当然の如く答える

 

 

「どちらでもないわ、私は佐渡が連れてくる娘達を守るだけよ

それが深海棲艦だろうと艦娘だろうと化物だろうと関係無い

私は佐渡の歩む道を共に目指すだけよ」

 

 

『貴様ニハ艦娘モ深海棲艦モ関係無イト言ウノカ……ソウカ』

 

 

 

叢雲の答えに謎の声は大声で笑いだす

そしてその声は暗闇の世界に響き渡り見えているのは瞳だけではあるがとても楽しそうにしていた

 

 

『ハッハッハッハ!!!面白イナ貴様ハ!!

ココマデアノ男二依存シテイルトハナ!笑エテクル

良イダロウ、貴様ノ身体ハ一先ズ乗ッ取ラナイデオイテヤロウ

ココマデ無様二滑稽二戦ウ貴様ノ行ク末ヲ傍観シテヤロウ!!』

 

 

その声は叢雲の艤装から響き渡りそして瞳が叢雲の目の前まで迫ると再び腹部を踏みつけられている感覚がする

 

 

『ダカラコソ、今ホンノ少シダケ我ノ力ヲ貸シテヤロウ(・・・・・・)

 

 

言われた瞬間叢雲の口を無理矢理何かの力で開けさせると叢雲の目の前に巨大で大きな爪が現れ何か黒い雫の様な物を口に入れようとしていた

 

 

(あ、あんた!一体何をするつもり!?)

 

 

『ナァニ我ノ力ヲホンノ少シダケ貸シテヤルダケダ

タダシコレハ万能デハナイアレヲ倒シタイノナラソノ身ヲ捨テル覚悟デ行ケ

効果時間モ長クナイ早メニ決着ヲツケヨ』

 

 

その言葉と共に叢雲の口の中にも黒い雫が一滴だけ垂らされると全身に再び激痛が走り焼けるような痛みに襲われる

 

 

(あぁぁぁぁぁぁぁ!!!

痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!

焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける!!!!!

身体が!焼ける!!熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い!!!!)

 

 

『耐エテ見セヨ愚カナ艦娘ヨ

サァ、起キ上ガリ行クガヨイ』

 

 

叢雲は激痛に苦しみながらまるで水面に上がっていくかの様な感覚に襲われながらもその床から離れ浮上していきながら下を見下ろすとそこには二つの赤い瞳と一瞬だけ自分より遥かにデカイ影が見えた

 

 

(待ちなさ……い!あんたは……一体!!)

 

 

聞こうとした瞬間その真っ暗な世界がどんどん遠くなっていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ソノ一雫ハ貴様ノ希望カ、絶望カ

オ前ノ行ク末ヲ我ハコノ深層ニテ見サセテモラウゾ

艦娘、叢雲ヨ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(…………何か…夢を…見……てい…た?

覚えて……無い…けど)

 

 

叢雲は再び目を覚ますと辺りを確認すると破壊された瓦礫の山だけがあり先程の倒れていた場所から動いていなかった

だが、腹部に手を伸ばすと先程まで酷くは無く少しだけ焼け焦げているだけであり流血も止まっていた

 

 

(身体は……動く………でも痛い……それでも……)

 

 

何かを物に掴まり何とか立ち上がるとその場からゆっくり、だが確実に動きだし吹き飛ばされた先に居るカナを睨み付ける

 

 

(アレヲ……倒さないと……!!)

 

 

 

叢雲の左目は真っ赤に染まっていたが少しずつその色は元の色に戻っていることに叢雲は気付くことは無かった

 

 

 

 

 




次回

淡い期待

椿とカナの二人はその勢いを増し一気に長門達連合艦隊を潰そうとしており敗北の言葉が頭を過っていた

アズレンのアニメ見てきたのですが……その…
ぶっちゃけ声が……嫌いと言う訳では無いんですよ?
正直、うーん…みたいな感じと何故に空母が空に対空出来るんだ!?とかツッコミががが……
後、2話最後の瑞鶴が若干棒読みなのが……
結論、プリンツとエンタープライスが可愛い
ゲームをやろうか本気で悩む(やってるのが多すぎてですね……)


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絶望 二

「全砲門!放て!!」

 

 

「アハハ!当たりまセんねぇ!!」

 

 

椿は笑いながら長門達と対峙しその後ろではカナが主砲を構え長門達に狙いを定めていた

 

 

「次はどうしようかしらね」

 

 

「金剛!大井!飛行場姫を任せられないか!?」

 

 

「了解!!」

 

 

「任せてくだーーー」

 

 

「行かせませんよぉ!!」

 

 

長門が言った瞬間椿は金剛と距離を詰めその艤装を掴むとそのまま持ち上げる

 

 

「なっ!」

 

 

「アハハ!!吹き飛んでいけぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

そしてそのまま、霧島が戦っているところに投げ飛ばすと気付いた霧島が金剛を受け止める

 

 

「お姉様!大丈夫ですか!?」

 

 

「大丈夫デース……全くあの化け物本当にーーー」

 

 

「金剛!避けなさい!!」

 

 

大井の言葉に気付き慌ててカナの方角へ向き直ると金剛を捉え砲撃しようとしていた

 

 

「ナイス椿」

 

 

「霧島!!離れてくだサーイ!!」

 

 

「お姉様!!」

 

 

瞬間的に金剛は霧島を突き飛ばすとそれと同時に金剛にカナの砲撃が着弾し爆煙に包まれる

 

 

「金剛!!!」

 

 

「命中、やりなさい!あんた達!!」

 

 

カナの号令を聞いて深海棲艦達は一斉に負傷した金剛に集まり沈めようとしてくる

 

 

「お姉様の事は!!」

 

 

「やらせませんよ!!!」

 

 

金剛に向かっていく深海棲艦達に比叡、榛名が立ち塞がりその行く手を防ごうとするもその後ろで再びカナが照準を定めており慌てて金剛は起き上がる

 

 

「お姉様!まだ動かない方がーーー」

 

 

「退いて!!霧島!!!」

 

 

「次は……あんたかしらね!!」

 

 

起き上がり何とか動くと榛名の肩を掴むと無理矢理後ろに下げさせる

 

 

「お姉様何をーーーー」

 

 

榛名が言った瞬間再び金剛にカナの砲撃が着弾し爆煙に包まれながらその場に倒れてしまう

 

 

「「お姉様!!」」

 

 

「う……そ…どうして!?」

 

 

「チッ、アイツまた私の弾道を読みやがったわね……」

 

 

金剛は二度の砲撃にボロボロになっており艤装は半分壊れ口から血も流していた

 

 

「ゴフッ……利きます…ね……この砲撃…は……」

 

 

「お姉様どうして!私より重症なのに!!」

 

 

「そんなの……当たり…前デス……妹を守る……のはお姉ちゃん…の……役目…デース…!」

 

 

その言葉と共に金剛はヨロヨロと立ち上がりながら両手を広げるとカナに向けて叫ぶ

 

 

「飛行場姫!妹達には一発も当てさせませんよ!!

私の大切なたった三人しか居ない妹に傷は付けさせません!!!」

 

 

「お、お姉様……」

 

 

「言ってくれるじゃないの……良いわよ…なら次の砲弾で仕留めてやるわよ!!!

第一スロットに変更!葬ってやるわよ!!その身体で耐えられるかしら!?」

 

 

「金剛!!」

 

 

長門は慌てて金剛へ向き直りそのカナの砲撃を病めさせようとするがその前には椿が遮り行く手を阻む

 

 

「退けぇぇぇ!!椿!!」

 

 

「アハハハハハ!!嫌に決まってるでしょう!!

お前達はここで死ぬ運命なんですよ!!!」

 

 

「くっ、なら私が!!」

 

 

「手伝うわ!

大井ちゃん!!」

 

 

「行かせませんよぉ!!

戦艦部隊!!そこの戦艦と軽巡を止めろ!!」

 

 

椿の指示でル級とタ級が動きだし二人の行く手を阻む

 

 

「邪魔よ!!退きなさい!」

 

 

「私達の邪魔をしないで!!!」

 

 

二人が助けに行こうとする中カナは着実にその砲を金剛に向けておりそれを止めようと榛名達は金剛を動かそうとする

 

 

「お姉様辞めてください!!そんなことしたら!!」

 

 

「そうです!お姉様が犠牲になる必要は無いんです!!」

 

 

「私!装甲にも痛みにも耐える自信があります!!だからどうか!!」

 

 

だが金剛は血を流しながら淡々と続ける

 

 

「無理デース、あの砲撃からは誰も逃げられません

もしここから私が一歩でも動けば多分三人が狙われます

だから」

 

 

そして、心配そうにする三人にニカッと笑かける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃんに任せて

妹達に頼ってばかりの駄目なお姉ちゃんだからさ」

 

 

「「「お姉様!!」」」

 

 

「覚悟は決まった様ね……なら死になさい!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「グ……ゴホッ……ごほ…私は……そうだ!飛行場姫を!!ぐぅ!!」

 

 

「うぅ……痛い…でも起きなきゃ……!!」

 

 

カナの主砲が金剛に向いている頃、気絶していた古鷹と磯風は同時に意識を取り戻し何とか立ち上がろうとしていたが受けた傷が痛み動けないでいた

 

 

「叢雲が……やられても…我々だけでも……!!」

 

 

「そうだ…よ……私達だけでも……アイツを……!!」

 

 

だが二人は後ろから聞こえる足音に驚き頭だけを向けるとそこには

 

 

「……な……な……な!!!」

 

 

「う……嘘…どう……して……!!」

 

 

一人の艦娘が二人の間をフラフラと通り抜け地面に突き刺さっていた薙刀を手に砲撃をしようとしていたカナの背後を見ると睨み付け薙刀を握り締める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………やら……せない!!」

 

 

そしてボロボロの身体に鞭を打ち走り出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「冷却完了!!さぁ金剛型!!

その耐久でコイツを受けたらどうなるか見物だわ!!!」

 

 

カナの艤装が完全に砲撃体制に入り刺股を地面に突き刺すと同時に金剛はその砲撃を受ける覚悟を決めニヤリと笑う

 

 

「やっと……榛名…比叡…霧島……

お姉ちゃんらしいことが出来るね

見ててね、私が皆を守るから!!!」

 

 

「駄目です!お姉様!!」

 

 

「動いてください!!お姉様!!」

 

 

「いや、いやぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

三人は全力で金剛を動かそうとするが全く動かない金剛に悲鳴を上げる

(ごめん、叢雲……私こんなことしか出来ない…や

でも貴女なら許してくれるよね?

それに信じてるよ、叢雲が飛行場姫を倒してくれるってだから)

 

 

「私は!!喜んで盾になります!!

こい!飛行場姫!!!」

 

 

「良いわよ!死になさい!!

金剛型!!砲撃用意!放ーーー」

 

 

そして金剛に向けてカナが砲撃しようとすると一人の艦娘が勢い良くカナの上に飛び上がりその砲身に向け落ちていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「させるわけ!!ないでしょうがぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

 

「なっ!!な、な、な!!!!」

 

 

 

「叢雲!!!」

 

 

 

そしてカナの砲撃より瞬間的に早く到達した叢雲は主砲に踵落としを食らわせ無理矢理その砲の軌道を反らす

放たれた砲弾は金剛の目の前の海面に着弾し巨大な水柱を上げ何とか着弾を避けることが出来た

 

 

「あんたの相手は私よ!!!

カナぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「ば、馬鹿な!!何であんたがここに居るのよ!!!

叢雲!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 





次回

あり得ない

カナから砲撃を受け何とか再び立ち上がった叢雲
そして満身創痍のままカナと対峙するがカナ本人が大混乱に陥っていた

これでやっとこのお話……と言うより戦闘が半分ですね!
ぶっちゃけカナ戦は長期化しちゃいますね……強すぎますからねコイツ(作者ですが)




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反撃

カナの艤装を蹴り軌道を無理矢理反らした叢雲はその状態から薙刀を持ち変えカナに振りかざしその心臓を突き刺そうとするがその刃は瞬時に掴み取られる

 

 

「なっ!こ、コイツ!!」

 

 

「くっ……やはり無理か!!それでも!!」

 

 

叢雲は薙刀を手放すと少し損傷した艤装を動かし薙刀の柄の部分を思い切り殴ろうとするが

 

 

「ふざけん……なぁぁ!!」

 

 

「しまっ!!」

 

 

それよりも先にカナは主砲を縮め叢雲を自らに寄せるとそのまま足首を掴むと真後ろに思い切り投げ付けるがその前に手放した薙刀を握り締め何とか空中で立て直し地面へと着地する

 

 

 

「金剛!!」

 

 

「は、はい!!」

 

 

不意に叢雲が叫ぶと海上に居る金剛を指差すと怒りながら宣言する

 

 

「勘違いしてるんじゃないわよ!!

あんたが守るのは妹だとしてもそのあんたを守る奴が誰も居ないと思うんじゃないわよ!!

あんたは私が守る!だから無茶してるんじゃないわよ!!!」

 

 

「叢雲………」

 

 

「そんな傷で戦えるの!?それなら何も言わない!!

でも無理なら今すぐ下がりなさい!コイツは私が必ず倒す!!!

この私が守ってやるんだから!少しは信じて待ってなさいこのお馬鹿!!!」

 

 

「………ハイ!」

 

 

金剛はその言葉と共に少しふらつき霧島達がそれを支える

 

 

「榛名!霧島!比叡!!

金剛を頼むわよ!!!

そのお馬鹿は本当に世話が焼けるんだから!気絶させてでも無茶をさせないで!!」

 

 

「「「は、はい!!」」」

 

 

「早く金剛を治してきなさい!!ほら行く!!」

 

 

「「「りょ、了解!!」」」

 

 

叢雲の気迫に押され榛名達は金剛を連れて早急にドレス島から離れていくとその後ろを複数の深海棲艦が襲い掛かろうとするが

 

 

「おっと、やらせないよ」

 

 

「霧島には手を出させないよ!!」

 

 

その後ろから北上と阿武隈が追撃し何とか四人はドレス島から離れていき明石の修理に向かっていく

それと同時に叢雲はカナと再び対峙するが再び精一杯声を張り上げ二人を起こす

 

 

「起きなさい!!磯風!!古鷹!!

まだ戦いは終わってないわよ!!!」

 

 

「む、叢雲………」

 

 

「私達が休んで良い時はこの姫を倒したときでありこの島を奪還した時!!!

それまで休むのは許さないわよ!

もし!動けないなら下がりなさい!!!

私だけでもコイツをぶっ倒すわ!!!」

 

 

「……ふふ、叢雲……らしい…ね!」

 

 

「全く……自分が…一番酷い筈なのに…まだ戦うのか……この艦娘は…同じ駆逐艦だとは思えないぞ…」

 

 

叢雲に言われ古鷹はフラフラと立ち上がり再び主砲をカナに向けそれと同時に磯風も痛む脚を持ち上げ主砲を拾うと構える

 

 

「行くわよ!!二人とも!!!」

 

 

「あぁ!!」

 

 

「了解!!」

 

 

三人が再び気合いを入れて立ち上がるとカナの頭は大混乱に陥っていた

 

 

「何故だ!叢雲貴様!!さっき私の砲撃を受けたよなぁ!?

戦艦大和を航行不能にする私の一番スロットを受けたよなぁ!!!

違うか!!艦娘叢雲!!答えろぉぉぉぉ!!!」

 

 

「受けたわよ……流石にまだ痛いけれどね…」

 

 

「痛い!痛いで済むだと!?ふざけるな!!!

私達残り二人のエリートですら重症にもちこめるんだぞ!?そんな攻撃が痛いで済むわけないだろうがぁぁぁぁぁぁぁ!!!

どうやってだ!!何故貴様は立ち上がれる!?

お前は何なんだ!!!艦娘叢雲ぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

「私?何言ってるのよ……私はただの駆逐艦よ

諦めが悪くてあんたを倒そうとしているただの駆逐艦よ!!!」

 

 

「そんな訳あるかぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

大混乱に陥っているカナは主砲を叢雲に向けると四番スロットのまま連続して撃ち抜こうとするがそれを左右にステップしながら交わしカナに近付いていく

 

 

「来るな!!来るなぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

六番スロット!!斬烈弾(ショット)

切り刻まれろぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

その瞬間カナは斬烈弾(ショット)を撃ち放つと叢雲は真っ直ぐその砲弾に向かって走っていく

 

 

「叢雲!避けて!!」

 

 

「駄目よ!避けちゃ駄目!!」

 

 

「な、何を言っているんだ!!叢雲!!」

 

 

「アハハハハハ!!!その砲弾からは逃げられない!!

刃で全部切り裂いてやるわよ!!」

 

 

そして叢雲はおもむろに薙刀を握り締める振り上げる

 

 

「この砲弾はさっき古鷹が撃ち抜こうとした砲弾と同じ特殊弾頭!!

そして途中で爆裂し逃げようとする方角へ刃を飛ばしてくる!!

それはコイツがそのどの方角に逃げようとその前に爆裂し刃を当てると言う計算をしているからでありコイツに信管は存在しない!!

それなら対処法は一つよ!!!」

 

 

「なっ、き、貴様!!」

 

 

そして叢雲は薙刀で思い切り砲弾を殴り付けると鈍い音が辺りに響き渡る

 

 

「『この斬烈弾(ショット)が爆裂する前に撃ち落とせば良いのよ!!!』

こんな風にね!!!」

 

 

殴り付けられた斬烈弾(ショット)は思い切り地面に突き刺さり叢雲が走り去った直後に爆裂し刃が地面にばら蒔かれカナと距離を詰める

 

 

「こ、コイツ!!短時間で私の斬烈弾(ショット)の弱点を!?」

 

 

「カナぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

叢雲はカナに接近するとカナに向けて薙刀を振りかざすとカナも再び爪を展開させ叢雲の薙刀を防ぐ

 

 

 

「反撃開始よ!!カナぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「このぉ!艦娘風情がぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 





次回

第二回戦 歴戦姫カナ

撃ち抜かれた倒されたと思っていた叢雲が起き上がり再びカナと対峙する
その身体はボロボロの筈なのにそれに鞭を打ち歴戦姫を倒そうとする
命を削りながら

ぶっちゃけ長いなぁと思ってますカナ戦()
それでも書きたいと思ってしまう……
そしてもう一つ小説を書こうかなと思ってます
こっちと違い一話完結のゲーム内の鎮守府物語ですかね
台詞メインの話でありイベントで書けないこっちの代用見たいな物です
まぁ!叢雲と古鷹は常駐で居ますけどね!!!



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反撃 二

叢雲は薙刀をするりと動かしカナの腕を撫でるように動かし腕の皮を削るように斬るとそのまま薙刀を手放し思い切り腹部に向け蹴りを入れる

 

 

「グフッ……こ、コイツ!!」

 

 

カナがその脚を掴もうとすると叢雲の腰にある主砲が勢い良くカナの頭に動いてくるのが見えそれを咄嗟に防ぐ為に脚を掴むのを諦める

 

 

「磯風!!今っ!!」

 

 

「了解!」

 

 

「なっ!」

 

 

その瞬間カナの背後に回っていた磯風が脚を思い切り蹴飛ばそうとするとニヤリと笑い主砲を構える

 

 

「馬鹿ね!!そんな奇襲ーー」

 

 

「ふ、そうだな当たるわけがない

だが残念だったなカナ」

 

 

「何!?」

 

 

カナが一瞬だけ磯風に意識を回した瞬間叢雲がいつの間にか薙刀を持ち直しておりカナの腹部のへそへとその刃を突き刺す

 

 

「グハッ……き…貴様……!!

いつの間に…!」

 

 

「切り裂かれろぉぉぉぉ!!」

 

 

そのまま叢雲は腹部に突き刺さった薙刀を上に持ち上げ喉まで掻ききろうとするが

 

 

「させるわけないでしょうがぁ!!」

 

 

それよりも先にカナが刃を掴み腹部から抜くと叢雲も同じ様に後ろに下がると主砲を動かし叢雲へ向ける

 

 

「四番スロット!撃ち抜いてあげる!!」

 

 

「く、対応が速い!!」

 

 

「させ……ない!!」

 

 

するといつの間にか古鷹が走ってきており思い切りその主砲を蹴り飛ばし無理矢理弾道を変える

 

 

「なっ!コイツこんなこと出来たのか!?」

 

 

「吹き飛んで!!!」

 

 

そしてそれと同時にカナの顔面に向け砲撃すると爆風が叢雲と古鷹を襲い少し下がる

 

 

「ありがと、古鷹

……と言うより貴女近接技出来たの?」

 

 

「最近教わってね!

でも、軽いのしか出来ないけど……」

 

 

「凄いな古鷹、正確な砲撃にそんなことまで出来るとは……

小笠原にはそんなに優秀な人がいるのか?」

 

 

「呑気ねぇ……あんた達?」

 

 

 

三人が話していると爆煙に包まれているカナから声が聞こえ三人は視線を集中させる

そして爆煙が晴れると少しだけデコが焼けているカナが睨んでいた

 

 

「……艦娘では初めてよ、私にこんな傷を負わせたのは……

久しぶりに痛いと言う感覚がするわ……」

 

 

「そう、でもこれからあんたは嫌になるほどそれを経験するのよ!!」

 

 

叢雲が薙刀を握り直すとカナは血が流れ出る腹部を擦りながら睨み問い掛けてくる

 

 

「ねぇ、あんた達

確か、叢雲、古鷹、磯風だっけか?

あんた達は何のために戦うの?」

 

 

「……何だ突然?」

 

 

「別に、私は私の意思がありここを守り戦っている

あんた達も同じでしょ?」

 

 

「交渉?悪いけど私達は」

 

 

「あら?聞くだけ良いじゃない?

ちょっと気になったのよ」

 

 

カナの問い掛けに叢雲は二人の前に出る

 

 

「私はここを奪いたい訳じゃないしあんたを殺したい訳じゃない

あんたが大人しく投降するなら私達はもう戦わないし

ただし、この島は一時的に預かるし調査はさせてもらうわ」

 

 

「ふーん?それって『私が犠牲』になればここを放置してくれるとかは無いわけ?

私はここの防衛を任されているだけだから」

 

 

「悪いけどそれは出来ないわ

ここにある情報は包み隠さず全て調べさせてもらう」

 

 

「……ふーん…やっぱりあんた達は例外無く略奪者(・・・・・・・)なのね

時間の無駄だったわね」

 

 

そう言うとカナは思い切り後ろに飛ぶと主砲を海上に向ける

 

 

「な!お前!何を!!」

 

 

「そうね……こっちも余裕ないし無限リスポンされても困るしねぇ………

お前達の最重要拠点(・・・・・)を破壊させて貰おうかしら?」

 

 

「え?そんなの……ってまさか!?」

 

 

「あ、あんたまさか!?古鷹!磯風!!止めーーー」

 

 

だがそれよりも先にカナから大号令が深海棲艦達に発令され連合艦隊を恐怖に陥れる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全艦隊に告ぐ!!今より!敵の本拠地であり修復施設があるドレス島沖にある一つの艦隊を叩け!!!

それが奴等の生命線だ!!!」

 

 

その言葉を聞いた連合艦隊と叢雲達の背筋が凍り付き一斉に深海棲艦達が動きだし沖へと目指していく

 

 

「さてとさっきあんたは反撃開始って言ったわね叢雲」

 

 

「こ、コイツ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「その反撃はアレが無くなっても出来るものなのかしらぁ?アハハハハハ!!」

 

 

「く……やっぱり佐渡の言う通り見えてたのね!!あんた!!」

 

 

叢雲達を嘲笑いながらカナは主砲を沖合いにいる明石達へ向けておりそれを何とか止めようとする

 

 

 

 




次回

工作艦隊防衛戦

カナの大号令によって明石が控えている沖合いへと深海棲艦達が向かっていっておりそれを阻止しようと長門達は奮闘し叢雲もカナが主砲を撃たないようにと戦いを続ける


最近艦これで資材回収だけをしていたのですが改装設計図が尽きてしまいましてね……
必死に任務と2ー5やってます()
意外とキッツい(




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反撃 三

カナの大号令後一斉に深海棲艦達が明石達が居る沖合いを目指しているがそれを北上や阿武隈達が止めようと奮闘していた

 

 

「阿武隈~、命かけても通しちゃ駄目だよ~」

 

 

「分かってますけど!!数が多すぎます!!!」

 

 

「だね~、ちょっと私もキツいかも知れないね……こいつは!!」

 

 

北上は両腕に付いている魚雷を横を通り抜けようとする深海棲艦達に向け一斉に撃ち放つと全弾命中し爆発するがその後ろから更に抜けていき手に終えなくなる

 

 

「不味い!この状況で明石が取られたら勝てるものも勝てなくなる!!全艦隊!!必ず明石を守りきれ!!

私も!!」

 

 

「長門!前!!」

 

 

陸奥に言われ正面を向くと椿が巨大な爪で振りかざしておりギリギリでその攻撃を受け止める

 

 

「く……椿!!」

 

 

「行かせやしませんよぉ!!長門ぉぉぉ!!」

 

 

その瞬間回し蹴りをされ慌てて艤装でカバーするが予想以上に椿の蹴りが強く主砲の一本が真横に折れてしまう

 

 

「なっ!」

 

 

「アハハ!お前ノ艤装全部壊してやるよぉ!!」

 

 

「させません!徹甲弾一斉射!!」

 

 

続けて長門に追撃しようとする椿を止めるために大和が主砲を撃ち放つとそれを交わすために少し離れると

 

 

「そこだぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

その椿の後ろから日向が突っ込み主砲を当てようとするのだが

 

 

「ざーんねん!!」

 

 

それすらも見切っていた椿は軽々とそれを交わすのだが

 

 

「我々を!!」

 

 

「忘れてない!?」

 

 

その交わした状態で更にウォースパイトとガングートの追撃の同時砲撃をされるのだが

 

 

「忘れテませんヨォ!!」

 

 

それを両肩にある主砲で相殺させ爆煙を起こし自らへの被弾を防ぐ

 

 

「やはり……こいつを放置することは出来んぞ……」

 

 

「もう終わりですネぇ!!潜水艦隊モ!外に居た深海棲艦達もお前達の拠点に潰しに行った!!!

アハハハハハ!これで本当に終わりなんだよ!艦娘共ぉぉぉ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、何ですって!深海棲艦の大艦隊がこっちに向かってくる!?」

 

 

その報告を受けたのは大淀でありドレス島に居る長門からの報告でありその話は修理を受けていた金剛や瑞鶴、グラーフ達にも聞こえていた

 

 

『あぁ!お前達の事を飛行上姫は見えており既に射程圏内に入っているが何とか叢雲が押さえている!!

だが、その代わりに深海棲艦の多くの艦隊がそっちに向かっている!!

今すぐ退避しろ!!』

 

 

「分かりました!!ありがとうございます!

大鳳さん!伊勢さん!青葉さん!戦闘用意!!

明石!夕張!ここから離れます!!

こちらに深海棲艦が向かってきます!!」

 

 

「え、えぇ!?な、何で!!」

 

 

「まさか、青葉見たいに視力が良いんでしょうか!?」

 

 

「私が偵察機を飛ばしてーーー」

 

 

「大淀さんどうやら」

 

 

「遅かった……みたいだよ…多分」

 

 

 

大淀が艤装を構えようとした瞬間大鳳と伊勢が戦闘用意に入り全方向の水平線から黒い影が見え始める

 

 

「嘘!もう来たの!?」

 

 

「青葉!明石さんと夕張さんを!!

伊勢!用意できてる!?」

 

 

「はい!青葉にお任せです!!」

 

 

「いつでも行けるけど、数どれくらい!?」

 

 

「……ざっと60、潜水艦が見えないから分からないけど多分それ以上」

 

 

「ヤバイね……榛名さん!霧島さん!比叡さん動ける!?」

 

 

「はい!いつでも!!」

 

 

「任せてください!」

 

 

「気合い充分です!!」

 

 

「わ……私も…!」

 

 

榛名達が戦闘用意をすると金剛も負傷しているのにも関わらず動こうするが一人に殴られる

 

 

「あんたは大人しくしてなさい、金剛」

 

 

「……山城…」

 

 

「全く、私と同じ……嫌それ以上不幸なのにそんな傷で戦ったら危ないでしょ

それにうちの旗艦も居るから平気よ

ヤル気充分見たいだし?」

 

 

山城の言葉と共に神通が主砲をガチャンと鳴らし戦闘準備に入ると赤城達も弓矢を構える

 

 

「私達も居ることを忘れないでくださいね!!」

 

 

「航空戦手伝うよ!」

 

 

今無事でおり付き添いで来ていた赤城達や修理が終わった神通達はやる気を出し大淀は全員に指示を出す

 

 

「……分かりました、では皆さんお願い致します!!

明石!夕張は、負傷しているグラーフさん、瑞鶴さん、金剛さん、飛龍さんの修理を!!

他の動ける皆さんは明石と夕張達を守るように輪陣形を取ってください!!」

 

 

「「「「「「了解!!」」」」」」

 

 

「さぁ!我々の戦いを始めますよ!!皆さん覚悟してください!!」

 

 

大淀の指示に動ける艦娘は動きだし水平線の黒い影は段々と大きくなり明石達に向けて疾走してくる

 

 

 

「明石と夕張防衛戦を開始します!!!

ここを命をかけても死守せよ!!」

 

 

 

 





次回

勝機

完全包囲網により明石たちが逃げられない状況に追い込まれ防衛をせざる得なくなった明石達
カナに狙われ、深海棲艦に囲まれた彼女達に勝機はあるのか?

はい、次回予告詐欺しましたごめんなさい!!
明日書きますので許してください!お詫びに木曜日二ページ更新しますので!!
どうしても椿の戦闘を書きたくなってしまいまして……
本当にごめんなさい…




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反撃 四

「神通さん!潜水艦は見えますか!?」

 

 

「右に6!左に3です!」

 

 

「でしたら左をお願いします!!右側は私と祥鳳さんと飛鷹さんで倒します!

航空戦は、赤城さん、蒼龍さん、大鳳さんお願いします!!

榛名さん、霧島さん、比叡さん、青葉、山城さんで正面の敵艦隊をお願いします!

明石!夕張!敵の砲撃は必ず避けてね!!」

 

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

大淀の指示により明石を深海棲艦から守る防衛戦が開始され各々がそれぞれ動き深海棲艦と対峙していき明石を全力で守り明石も三人の修理を急いでこなしていく

 

 

「潜水艦に雷撃を撃たせないでください!!撃たせたら終わりです!!」

 

 

「分かってます!爆雷で早目に沈めていきます!!」

 

 

神通は少ない爆雷を正確に潜水艦へ当てていくとそこに水柱が上がり三体全て撃破する

 

 

「こちら神通!終わりました!!」

 

 

「分かりました!では山城さんの援護をお願いします!!」

 

 

大淀は正確に全員に指示を出していくが深海棲艦の勢いは止まらず徐々に押されていく

 

 

「ま、不味い!このままだと!!」

 

 

「明石!!私に高速修復剤をくだサーイ!!」

 

 

「だ、駄目ですよ!!

そんなことしたら身体への負担がーーー」

 

 

「そんなこと言ってられません!!

これ以上私がダウンしていてはーーー」

 

 

「私も……お願い…明石…さん…」

 

 

その言葉に金剛と明石が振り返るとそこにはフラフラになりながらも立ち上がり肩で息をしている瑞鶴の姿があった

 

 

「ず、瑞鶴さん!まだ動いては!!」

 

 

「うっさい!ここで無茶しないといつ無茶するのよ!!」

 

 

「そう……だな…我々が動かないと…貴女を守れない……!」

 

 

そしてもう一人ダウンしていたグラーフも起き上がり何とか立ち上がる

 

 

「グラーフさんまで!駄目ですってば!!」

 

 

「頼む!私達に……貴女を守らせてくれ!!」

 

 

「で、でも……」

 

 

「お願いデース!!明石!!」

 

 

「三人とも高速修復剤の痛みに耐えられる容態では無いんですよ!?」

 

 

「それでもよ!!私達は戦いたい!!」

 

 

「で、ですが……」

 

 

「三人共」

 

 

そう明石に詰め寄る三人を横目に夕張が海上に三人の艤装を置き飛龍の艤装の修理に取り掛かっていた

 

 

「艤装は治ってるわ、もし戦いたいならそれを受け取りなさい

でもそれを取ったら死ぬかもしれないよ?それでも良いならーー」

 

 

夕張が注意を入れるがそんなことお構い無しに三人はそれぞれの艤装を取るとそれぞれ身に付けていく

 

 

「全く、まだ言ってる最中なのに」

 

 

「Thank You!夕張!!」

 

 

「ありがと!助かるわ!!」

 

 

「これさえあれば!戦える!!」

 

 

「ちょ、ちょっと夕張!!」

 

 

修理を続ける夕張は微笑みながら明石に話す

 

 

「ねぇ、明石

私達が出来ることは砲雷撃戦じゃないければ皆の助けには馴れるよね?

……なら少し位仲間のワガママを聞いてあげても良いんじゃないかな?

じゃないとこのまま行っちゃうよ?この三人は」

 

 

夕張に言われて三人を見ると今にも突っ込んでいきそうな雰囲気であり明石も「あぁぁぁぁぁ!!もう!!!」と叫ぶ

 

 

「分かりましたよ!今回だけですよ!!全く!!!」

 

 

「「「ありがとう!!明石!!」」」

 

 

そう言うと艤装から高速修復剤を取り出し三人に手渡していくとそれぞれ被り身体を治していく

 

 

「良し!これで!!」

 

 

「えぇ!行けるわね!!」

 

 

「さぁ!行くぞ!反ーーー」

 

 

とグラーフが意気揚々に言っている最中突然伊勢が轟音と共に大爆発を起こし後ろに吹き飛ばされていく

 

 

「え………?」

 

 

「……は?…え……?」

 

 

「い、伊勢ぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

「ま、まさか!!でも!!」

 

 

「叢雲が負けた!?いや、そんなわけ!!」

 

 

「でもこれは飛行場姫の遠距離砲撃!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「命中……ふん、反撃?させるわけ無いでしょうが」

 

 

「あ、あんたまさか!?」

 

 

「ま、まさか……そんな体制でも撃てるのか!?」

 

 

「嘘……でもそんな状況で当たるの!?」

 

 

叢雲達がカナと対峙するなか突然カナの主砲が動いたと思った瞬間に砲撃音が聞こえ驚いており

ドレス島海岸ではカナが主砲だけを海の方角へ向け身体を叢雲達と対面させる形で砲撃しておりそんな状態からも伊勢に命中させていた

 

 

「馬鹿ね、これが普通よ(・・・・・・)私を舐めないでくれる?

ほぉら!早く私を倒さないと不味いわよぉ!!」

 

 

「磯風!古鷹!!コイツを全力で止めるわよ!!

これ以上コイツの好きにさせたら不味い!!」

 

 

「「了解!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「がは……ごほ…ごほ……」

 

 

カナの砲撃を受け大ダメージを負った伊勢は立ち上がろうとするが損傷が酷く艤装もほとんど焼き焦げていた

 

 

「ま、まさか……ドレス島から撃ったの…?

でも、ここからどんだけーーー」

 

 

「大鳳さん!!伏せて!!!」

 

 

「えっ?」

 

 

大鳳がよそ見をしていると目の前のル級が大鳳へ砲を向け撃っておりその瞬間爆発と同時に艤装が焼き焦げる

 

 

「しまっ!!」

 

 

「大鳳さん!」

 

 

「わわわわ!赤城さん不味いよ!正面!青いヲ級だよ!!」

 

 

「なっ!?」

 

 

青いヲ級、即ちflag改状態のヲ級が赤城達に迫りその頭から大量の艦載機を発艦させていくきそれに応戦するが

 

 

「くっ!やはり強い!!

どんどん押される!!」

 

 

「大淀さん、不味いです……ドレス島から敵の増援です!!」

 

 

「く……どうすれば…」

 

 

大淀は囲まれた状態で辺りに見て回るが打開策が見付からずに悩み込んでしまう

 

 

「これはそろそろ不味いかもね

神通、貴女に会えて良かったわ

私の不幸に付き合わせて悪かったわね」

 

 

「山城!辞めてください!今その発言は不謹慎ですよ!!」

 

 

「何か……何か…!!」

 

 

「大淀!避けて!!!!」

 

 

「え?」

 

 

悩み込んでいる大淀が隙だらけだと言うことが深海棲艦にバレてしまい敵艦載機が何機か向かってきており大淀に対し爆撃しようとする

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「不味い!大淀さん避けてぇぇぇ!」

 

 

「やらせないデース!!」

 

 

「グラーフ!!」

 

 

「分かっている!!」

 

 

大淀が倒れてしまえばこの防衛網自体が機能しなくなることを理解している全員は必死になって被弾を避けさせようとするが全員深海棲艦を相手取っておりかなり難しい状態ではあった

それでも手を伸ばし大淀を動かそうとする

そして

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全く、ある意味良いタイミング見たいね

島風!!!」

 

 

「はいはーい!」

 

 

後ろから唐突に現れた小さな影は金剛達の間を走り抜けそのまま爆撃されかけていた大淀の腹部を掴むと凄い勢いで大淀を動かしその直後爆撃が起こり水柱が上がる

 

 

「…………え?」

 

 

「え……今誰が大淀さんを?」

 

 

「わ、私……被弾してない?」

 

 

「お、おぅ~大淀ー、大丈ー夫?」

 

 

大淀の危機を救ったのは大本営所属であり東雲直轄(ちょっかつ)の駆逐艦島風であった

 

 

「な、何で島風がここに?」

 

 

「あっれぇ!珍しい!伊勢と大鳳が被弾してるー!!

二人とも大丈夫?」

 

 

「どうやら間に合った見たいだな大淀!!」

 

 

その大声と共に目の前にいた深海棲艦達に遠距離から砲撃が降り注ぎ命中すると日本側の方角からこちらに大艦隊が向かってきていた

 

 

「あぁ!嘘!夢みたい!!」

 

 

「これは……これはこれは!!」

 

 

「……ま、まさか……」

 

 

明石防衛をしていた艦隊達は全員絶望的な状況から勝機を見出だせる程に嬉しく思っていた

 

 

「矢矧さん!!!」

 

 

「待たせたな!!大淀!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

友軍到着!!

これより!ドレス島攻略中の連合艦隊と合流する!!」

 

 




次回

友軍

カナの砲撃により崩壊仕掛けた防衛戦を助けたのは矢矧が連れてきた友軍艦隊であった
戦力が更に増え連合艦隊の反撃が開始される
果たして彼女達に勝機はあるのか?


さぁ!そろそろ終盤に入りますね!!
あ、この章が終わったらあとがき見たいのを書こうかなと思ってます
正直、このカナ戦が良い区切りになりますからね……



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反撃 五

友軍として到着した矢矧達に深海棲艦達が気付き明石達を狙う艦隊と矢矧達を狙う艦隊に別れ始めようとするが

 

 

「島風!やれ!!」

 

 

「りょーかーい!」

 

 

矢矧に指示を受けた島風が全速力でその艦隊に入り込むとリ級達の艤装を掴み

 

 

「皆おっそーい!私みたいに速くないと勝てないよ?」

 

 

「ッ!!」

 

 

近くにいたル級にぶつけそれと同時に自動操縦の連装砲達が一斉に砲撃し更に背中に付いている魚雷で雷撃を放ち進行を妨害しその間に矢矧達が合流する

 

 

「待たせた様だな、大淀」

 

 

「い、いえそんなことはありませんがどうして矢矧さん達が?

大元帥からはこんな作戦……」

 

 

「あぁ、伝えて居ないからな

実際我々も来る予定は無く、本島の防衛任務についていたのだが飛行場姫の力と戦力が完全に把握されたことにより本島への直接攻撃は無いものと判断され我々が来たと言うことだ

……それに、とんでもないのだろ飛行場姫は

だからこそ我々が援軍として呼ばれたんだ

そして」

 

 

矢矧が後ろの空を見上げると空に多くの艦載機が飛んでおりそれを見た大淀は嬉しさに笑みを溢す

 

 

「基地航空隊!!でも、先程全て壊滅したと報告が……」

 

 

「これも援軍だ、

頼むぞ!!深海棲艦達を撃滅してくれ!!!」

 

 

矢矧の指示を聞いた基地航空隊は矢矧達の上空に差し掛かった瞬間深海棲艦達に爆撃を開始しその爆撃により多くの深海棲艦が沈み大ダメージを負わせていく

 

 

「こ、これなら!」

 

 

「嬉しいです、この程度なら行けます!!

行きますよ!山城!!」

 

 

「全く人使い…艦使いかしら?荒い旗艦様だ事

不幸…ではないかしらね!!」

 

 

基地航空隊による大打撃により一気に形勢が逆転し神通達は優勢へと変わっていき明石に向かってきていた深海棲艦達は撃滅され皆からは笑みが溢れる

 

 

「ありがとうございます!矢矧さん!!

これで何とか乗りきれそうです!!」

 

 

「安心するのは速いぞ大淀

まだその肝心の姫を倒していない

修理が完了しているものは全てドレス島へ向かってくれ!!

我々が明石達を守る!ここの防衛は任せてもらおう!!」

 

 

「了解デース!グラーフ行きますよ!!」

 

 

「あぁ!奴を倒さなくてはな!!」

 

 

「あんのやろう!私を撃ち抜きやがって!爆撃してやる!!」

 

 

「ほら行くわよ神通」

 

 

「はい、姫を倒しましょう!」

 

 

矢矧が指示していくと修理を終えた艦娘達は顔を見合せ次第に明石の艦隊から離れていき前線であるドレス島へと向かっていた

 

 

「いやー、お姉ちゃん嬉しいなぁ

矢矧がこんなに立派になってくれるなんて!」

 

 

「ちょっと阿賀野ねぇ、今回もキチンと戦ってよね?」

 

 

「よぉし!頑張っていこう!!」

 

 

援軍として来たのは阿賀野、能代、酒匂、島風そして旗艦矢矧であり大淀はそれを見て安心していた

 

 

「ここは大丈夫ですが……問題は…」

 

 

「安心しろ大淀、手は打ってある

………と言うよりは問題はない」

 

 

「?それはどういう意味ですか?」

 

 

大淀はその言葉の意味をすぐに知ることになる

矢矧が指差す水平線の向こう側に矢矧達より大きな黒い影が見えはじめ歓喜する

 

 

「っ!!ま、まさか!でもそんな命令違反じゃ!!」

 

 

「実はそうでもないらしい、では我々の反撃と行こうか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「チッ!援軍か!!しかもハエ共まで居やがる!!」

 

 

その光景をドレス島から見ていたカナは舌打ちと共に水平線に居る大淀達を睨んでいた

 

 

「やらせないわよ!カナ!!」

 

 

「これ以上は撃たせん!!」

 

 

海を見ていたカナを止めようと叢雲が再び薙刀を振りかざすとそれを受け止め更に磯風の近接攻撃を交わす

 

 

「クソ!こっちもキツいってのに!!」

 

 

全体の状況を見ていたカナは叢雲達から跳躍し下がると歯を食い縛ると全艦隊に指示を出す

 

 

 

「全艦隊に告ぐ!!これより我々ドレス島艦隊はこの艦娘達を完全殲滅に移行する!!

手加減(・・・)は終わりだ!全てを海よ底へ沈めてやれ!!!」

 

 

「っ!!な、何だと!?」

 

 

「こ、これで手を抜いていたの!?」

 

 

その大号令に驚き指示を聞いていた深海棲艦は先程より殺気だちそして何より

 

 

「あらぁ、姫様がそんなこと言うなんて……いよいよ余裕が無いみたいですねぇ」

 

 

長門達と対峙している椿も首を鳴らすと爪をカチカチと動かす

 

 

「正直、貴女達の何体かを生かして実験しようとしていたのですがあんな命令がくだってはねぇ……

さてと、では行きますよ艦娘達」

 

 

椿の殺意が先程より強くなり長門達は思わず冷や汗を欠いているとカナは叢雲を睨み付ける

 

 

「全く、本当に鬱陶しいわねお前達艦娘は!!」

 

 

「手を抜いていたか……あれでねぇ!!」

 

 

「どうやらコイツらにも後が無いようだな!!」

 

 

「行くよ!ここからが正念場!!」

 

 

 

 

 

 

 




次回

希望

明石の艦隊に現れた援軍
それは東雲の艦隊であり更に基地航空隊も加わり更に戦力を増やしていく連合艦隊
それを見越しカナも容赦を無くす
その牙を確実に叢雲達に向け戦いは更に激化する


加賀改二が来るそうですね?
ミッドウェーでの戦い…お疲れ様ですね…
赤城と共に沈んでいたかぁ……

いつかその二隻の実物も見たいですが今は安らかに眠らせてあげてほしいです



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反撃 六

カナの艤装が再び縮小されると叢雲と磯風は向かっていき薙刀と主砲を構え砲撃と斬撃を繰り出していくがカナはそれを簡単に弾き交わしていく

 

 

「クソ!やはり当たらない!!」

 

 

「堅いわねぇ!あんたの艤装!!」

 

 

「お前らこそ!私の砲撃で何で生きてるのよ!!

あぁ!もううざったい!!!」

 

 

カナはまた再び後ろに下がると空に向けて主砲を向けると再展開し刺股を地面に突き刺す

 

 

「まとめて全員焼き払ってあげる!!

五番スロット!流星群(メテオ)!!」

 

 

その瞬間巨大な弾頭が空に放たれある程度上空に到達した瞬間に再び叢雲達に向け砲弾が落ちてくる

 

 

「っ!叢雲来るぞ!!」

 

 

「分かってるわ!!それよりも先にーーー!!」

 

 

叢雲が走り出そうとした瞬間脚に激痛が走り少しだけ動けなくなる

 

 

「叢雲!?」

 

 

「アハハ!やはりダメージは残ってる見たいねぇ!!

さぁ!降ってきなさい爆弾の雨!!」

 

 

「く……こんな…時に!!」

 

 

叢雲が空を見上げると先程放った砲弾が膨張を始め爆発する寸前までいっていた

 

 

「叢雲!磯風さん!!二人ともその砲弾は任せて!!

だから!飛行場姫をお願い!!」

 

 

「古鷹!何を!!」

 

 

古鷹は走っていくと砲弾が降ってきている真下に移動し膨張している砲弾に主砲を向ける

 

 

「……分かったわ、任せたわよ!古鷹!!

行くわよ磯風!!」

 

 

「だが!……わかった、頼むぞ!古鷹!!」

 

 

「アハハ!何言ってるの!?その砲弾は特別製!あんたの砲撃では破壊何かできないわよ!!」

 

 

古鷹は深く息を吐くと落ちてきている砲弾を見上げ先程叢雲がやっていたことを思い出す

(叢雲の話が本当ならこの砲弾にも信管は存在しない

それなら、相殺させるのは不可能

でも!この砲弾は通常とは違い爆弾を降らせてくるそれなら!!)

 

 

「爆発した後の砲弾を撃ち抜いて誘爆させる!!」

 

 

その瞬間流星群(メテオ)が膨張しきると爆発を起こし叢雲達に大量の爆弾や砲弾が落ちてくる

 

 

「叢雲!!!」

 

 

「私の相棒を信じなさい!!」

 

 

「爆弾の雨に死ねぇぇぇぇ!!!」

 

 

焦る磯風に叢雲は構うこと無く走り古鷹はじっくりと撃ち抜く場所を決め静かに

 

 

「そこ、撃て!」

 

 

砲弾を撃ち一つだけ少しだけ大きな爆弾を撃ち抜きその瞬間爆弾が爆発を起こしそれと同時に降ってきていた爆弾や砲弾に誘爆を引き起こし流星群(メテオ)が霧散する

 

 

「ば、馬鹿な!?私の流星群(メテオ)を霧散させた!?」

 

 

「良し!出来た!!」

 

 

「す、凄い……まさか霧散させるなんて……」

 

 

「行くわよ!!磯風!!!」

 

 

だが、この行為が逆にカナの怒りを買った

先程カナは言っていた手加減を辞めろ(・・・・・・・)とそれはカナ自身も同じだと言うことに

 

 

「……あぁ、本当に…あんた達とは戦いたくないのよ……下手に殺すとエアが五月蝿いし……始元の言いつけもあるし……それに私も殺しは好きじゃないし……」

 

 

「何をぶつぶつと言ってるのよ!!」

 

 

「行くぞ!叢雲!!」

 

 

二人が迫る中カナの瞳は怒りに狂い先程よりかなり強い殺気を叢雲達に向けるとそれを探知した叢雲は瞬間的に脚を止める

 

 

「待って磯風!!何か……不味い!!」

 

 

「え?何を言ってーーーー」

 

 

と磯風が言おうとした瞬間突然爆発が起き逆方向へと飛ばされていく

 

 

「磯風!!!」

 

 

「叢雲!前!!」

 

 

古鷹に言われ前を向くとそこには叢雲の目の前に来ていたカナが主砲を向け接射をしようとしており何とか横に交わすのだが

 

 

「逃がさない」

 

 

その瞬間腹部に鈍痛が走り苦しさと同時に自らの身体が持ち上がると宙に浮かされ

 

 

「吹き飛べ」

 

 

カナの拳が命中しそのまま吹き飛ばされ木に激突し痛みに苦しむ

 

 

「叢雲!この!!」

 

 

古鷹が思わずカナに砲撃するとカナもその砲撃に合わせ砲弾を相殺させると二人の間に爆煙が包みお互いを見えなくする

 

 

「叢雲!磯風さん!大丈ーーー」

 

 

と古鷹が駆けよろうとした瞬間爆煙の中から砲撃音が聞こえ慌てて見るがそれよりも砲弾は速く古鷹に被弾してしまう

 

 

「キャアァァァァ!!!!」

 

 

「古鷹!ぐ……何でこんなに速く砲弾を撃てるんだ……こいつ……」

 

 

「……どういう事…私は何に持ち上げられた…の?

あいつの主砲は…一つ(・・)なはず?じゃあ何に……」

 

 

叢雲は腹部の痛みを不思議に思いながら爆煙の中に居るカナを見ているとその答えに気付く

 

 

「早く逃げれば良いものの……早く諦めれば良いものを…こんな所に来なければ良いものの……本当、本当に……お前達艦娘は馬鹿ねぇ……

お前達が私に勝てる要素なんて皆無なのに」

 

 

爆煙の中、カナは呟きながら叢雲達に歩いていき足音が近付く事にその姿が見えるが先程と明らかに違う

 

 

「……どういう…事だ……

叢雲…私は……夢を…見ているのか?」

 

 

「そうね……夢なら最高…だったわね…」

 

 

「嘘……何で……そんな…」

 

 

姿形は変わっていない

異形になったわけでもない

身体が巨大になったわけではない

だがその姿を見ただけで叢雲達は愕然とし絶望すら感じた

 

 

「何故……何故……幻覚……か?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

何故主砲が二門に増えているんだ?(・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

その瞬間カナは爆煙を切り裂くとその姿が露になる

右肩上にあった巨大な主砲と全く同じ主砲が左肩上にも付いておりそれを稼働させると先を叢雲達に向ける

 

 

「お前達が逃げないから本気で殺さなくちゃ行けないじゃない

本当に嫌になるわね……お前達の希望や勇気………

良いわよ、そんなに死にたいなら確実に殺してあげる

この海で私の手で確実に……ね!!!」

 

 

 

 

 

 




次回

歴戦の本領

今まで殺意を押さえていたカナであったが明石達を取れなかった事と叢雲達の抵抗に苛立ち殺意を剥き出しに叢雲達に牙を向ける


昨日二ページ投稿すると言ったな?あれは嘘だ(すみません休日出勤させられました)

日曜日書けたら良いなぁ……
そして今日!改二改装来ますね!誰かなー誰かなー!!



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反撃 七

「っ!!待避!!!」

 

 

叢雲の声にハッとした二人は全速力で森に隠れたり物影に隠れるとその瞬間三人が寄りかかっていた木々に穴が空きそしてミキミキと音を立てながら倒れていく

 

 

「全く、本当にネズミ見たいねぇ……まぁ良いわ木なんてあっても無くても変わらないし!!」

 

 

その瞬間二門の主砲は辺り一帯にある木々を次々と撃ち抜いていき叢雲達は別々になりながらも逃げていく

 

 

「何故だ!何故、主砲が二門に増えたんだ!?」

 

 

「そもそも!私達が勘違いしてたのよ!!

あれだけの主砲が一門だけってね!!」

 

 

「だからってもあれは反則だよ!!」

 

 

「ほらほらほらほら!!出てきて戦いなさいよ!!叢雲!磯風!古鷹ぁぁぁぁぁぁ!!!

アッハッハッハッハ!!!」

 

 

叢雲達に向け主砲を連続で撃ち続けており全く近寄れそうにも無く叢雲達は途方に暮れていた

 

 

「く……どうすれば良いんだ…」

 

 

「下手に動けばアレで蜂の巣よ、長門に頼むしかないかしら……」

 

 

「そうだね……流石にこの状況が続くと…」

 

 

先程より確実に叢雲達の命を狙いに来ているカナに全く容赦がなく隠れている叢雲達の上空に砲を向ける

 

 

「隠れてないで出てきなさいよ!五番スロット!流星群(メテオ)!!」

 

 

その瞬間両方の主砲から先程古鷹が霧散させた特殊砲弾が砲撃され古鷹は何とかして撃ち抜こうとするが

 

 

「古鷹!撃てそう!?」

 

 

「ごめん……木々で砲弾が見えない!!」

 

 

「森ごと焼いてあげる!丸焼けになりなさい!!!」

 

 

砲弾は叢雲達の上空で爆発し再び三人に爆弾が降り注ぎそれと同時に近くにある木々が燃えていく

 

 

「森から離れるぞ!これ以上は不味い!」

 

 

「磯風!下手に出ちゃ駄目!!」

 

 

磯風が慌てて外に出るとそこには主砲を向けていたカナが構えていた

 

 

「出てきたわねお馬鹿さん」

 

 

「しまっーーー!!」

 

 

その瞬間磯風はカナの砲撃をもろに受けてしまい再び燃え盛る森の中に吹き飛ばされてしまう

 

 

「ガハッ………ぐぅ…」

 

 

「磯風!古鷹!磯風をお願い!!」

 

 

「分かった!でも叢雲は!?」

 

 

「何とか近づいてみる!!」

 

 

その言葉と共に叢雲は飛び出しカナへと向かっていく

 

 

「今度はお前か、叢雲」

 

 

「私は磯風見たいには行かないわよ!!」

 

 

「さぁ?どうかしらねぇ!!」

 

 

近付いてくる叢雲に主砲を向けると再び何発か砲撃を放たれるが何とか叢雲は避けそれを鬱陶しく見たカナは再び艤装を動かす

 

 

「スロット変更!六番スロット斬烈弾(ショット)!!」

 

 

カナの艤装が再びガコンと音を出し叢雲に向けて砲撃が放たれそれを見て叢雲は怪訝そうな顔をしながら艤装を振り上げる

 

 

「あんたのそれはもう当たらないわよ!!」

 

 

「それはどうかしらねぇ?」

 

 

叢雲が再び砲弾を撃ち落とし地面に激突させるとカナはニヤリと笑い爆発を起こす

(やはり!これなら行けーーー)

 

 

と叢雲が思っていた瞬間にいきなり上空から何かが飛んできており慌てて交わそうとするが避けきれず攻撃を受けてしまう

 

 

「ぐぅ……な…何!?」

 

 

それは身体に突き刺さっており良く見ると先程落としたはずの斬烈弾(ショット)の中身が叢雲の身体を傷付けていた

 

 

「な、何で!さっき落とした……っ!そうか!!」

 

 

叢雲はカナを見ると二門ある主砲は両方とも白煙を上げておりカナはニヤリと笑っている

 

 

「ばーかねぇ?私の主砲は二門あるのよ?

避けきれる訳無いでしょうが!!!

斬烈弾(ショット)二連撃!!」

 

 

再びカナが砲を撃つ空から二つの斬烈弾(ショット)が降り注ぎ叢雲は慌てて回避しようとするも

 

 

「避けられるわけ無いでしょうが!!!」

 

 

叢雲の上空で斬烈弾(ショット)が爆発を起こし二つの砲弾から叢雲に刃が降り注ぐ

 

 

「キャアァァァァ!!!」

 

 

「アッハッハッハッハ!切り刻まれなさい!!

私を本気にさせてあんた達が悪いのよ!!後悔と絶望の中で死になさい!!叢雲ぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

降り注いだ刃は叢雲の服と身体を切り裂きながら更に突き刺さりかなりの傷を負わせその場に座り込んでしまう

 

 

「く………くそ……ぉ…!!」

 

 

「終わりよ、お前達がここに来るのは早すぎたのよ」

 

 

「叢雲!!!」

 

 

 

カナは再び艤装を構えると座り込んでいる叢雲に砲を向けると古鷹が森から飛び出してくるとカナに対し砲撃するがそれをことごとくカナは撃ち落としていく

 

 

「叢雲!大丈夫!?」

 

 

「え……えぇ…一応ね?でもやはりキツいわね……」

 

 

「あら?心配してる場合なのかしら!!」

 

 

カナは勢い良く古鷹に突っ込んでいくと蹴りを与え吹き飛ばすとそのまま主砲を古鷹に向ける

 

 

「まず、一人ーーー」

 

 

「やらせないわよ!飛行場姫!!」

 

 

「やれ!艦爆隊!!」

 

 

といいかけた瞬間カナは空から突如爆撃され爆煙に包まれる

 

 

「艦載機!?まさか!」

 

 

その声と艦載機に見覚えがあった叢雲は海上を見ると二人の空母が艤装を構えながらこちらに笑いかけていた

 

 

「援軍に来たわよ!叢雲!!」

 

 

「すまない!遅くなってしまったな!!」

 

 

「瑞鶴!グラーフ!!」

 

 

そこには先程明石に治して貰った瑞鶴とグラーフが到着しており嬉しさに笑みを溢すが

 

 

「チッ、さっき撃ち抜いた筈なんだけどねぇ?空母共………」

 

 

爆煙を切り裂くと海上に居る瑞鶴とグラーフを睨みつけながら主砲の一本を向ける

 

 

「まだ私に楯突くつもり?このお馬鹿さん達?」

 

 

「行くわよ!グラーフ!!」

 

 

「あぁ!叢雲!古鷹と磯風を頼む!!

我々で少し時間を稼ぐ!!」

 

 

「分かったわ!頼んだわよ!!」

 

 

 

 

 




次回

時間稼ぎ

カナの本気に叢雲達は劣勢を強いられ敗北寸前の時にグラーフと瑞鶴が援軍として到着し何とか体勢を建て直そうとする


始まりましたね!秋刀魚祭り!
何かやってたら鰯?を取りましたけど何に使うんだろこれ……(初参戦)
朝霜改二実装ですか……まだ、持ってないから全く分からない奴がこちら()
あ、後明日出来たら複数ページ投稿します(予告)




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反撃 八

「艦載機!発艦!!」

 

 

「航空甲板の無い貴様にはどうにも出来まい!!」

 

 

「本当にお前達は馬鹿見たいねぇ!!

右舷主砲五番スロットに変更!

左舷主砲六番スロットに変更!

さぁ!見せてあげるわよ!!複合砲撃って奴をね!!」

 

 

グラーフと瑞鶴が艦載機を発艦させるとカナはその砲を二人ではなく艦載機達に向ける

 

 

「何をするつもり!?」

 

 

「大丈夫だ!どうせもう何もーーー」

 

 

「アハハハハハ!!そうかしらねぇ!!!

砲撃!開始!!」

 

 

カナは砲撃すると瑞鶴とグラーフは艦載機を避けさせようとするがそれよりも先に二つの特殊弾頭が膨張を開始する

 

 

「私の艤装は元々二本の主砲で成り立っている

その理由は砲弾の数が両方とも別々に装填されているからでありどんな状況になろうと対応することを想定され作られている

万が一に一本の主砲が折られたり使えなくなった場合を想定しそして応用することによって負けることの無いアブソリュート(絶対的な強さ)に死角は無い!!

食らいなさい!!お前達には到底出来ない複合砲撃!!」

 

 

カナが砲弾を見ながら笑い艦載機の真上でその砲弾が爆発を起こしその威力を見せつける

 

 

斬烈弾(ショット)流星群(メテオ)の同時攻撃!!

壊斬弾(カマイタチ)!!」

 

 

その瞬間二つの砲弾が大爆発を起こすと艦載機に向けて爆弾と刃が降り注ぎ艦載機達を次々と襲い全て撃墜させてしまう

 

 

「なっ!」

 

 

「嘘でしょ!?全て撃ち落とした!?」

 

 

「アハハハハハ!逃げなくて良いのぉ?二人の空母ちゃん!!」

 

 

「は?あんた何をーーー」

 

 

「っ!?瑞鶴!!まだだ!降ってくるぞ!!先程爆発した中身が!!」

 

 

しかもカナの砲弾から放たれた刃と爆弾は更に二人に向けて降り注ぎ瑞鶴達は逃げ出すがそれよりも速く二つの砲弾は降り注ぎ二人にダメージを与えていく

 

 

「キャアァァァァ!!!」

 

 

「くぅぅぅぅ!!!」

 

 

「馬鹿ねぇ!お前達二人だけで勝てるわけーー」

 

 

「そうデースね二人では無理デース」

 

 

その瞬間カナは二人の後ろから砲撃を受け爆煙に包まれると二人の前に立つ

 

 

「大丈夫……ではないデースね二人とも

全く突っ走り過ぎデース」

 

 

「……すまん金剛」

 

 

「……ごめんなさい金剛さん」

 

 

「まぁ良いデース

それよりも」

 

 

「相変わらず鬱陶しいわね金剛型」

 

 

カナは爆煙を手で切り裂くと苛ついた様子で金剛を睨み付けておりそれに合わせ金剛は笑いかける

 

 

「長門!そっちは大丈夫デースか!?」

 

 

「金剛!!……あぁ!何とかしてみせる!!」

 

 

「了解デース!後少しだけ耐えてください!!

もう少し我々の勝ちデース!!」

 

 

「な、何!?それは一体!?」

 

 

「余所見してる場合ですかぁ!?」

 

 

長門は椿と戦いながらも金剛の言葉を信じ何とか暴れる椿を押さえ込み金剛はカナと対峙する

 

 

「へぇ?この状態で勝算があるんだ?」

 

 

「ありますよ、貴女を確実に仕留める勝算が」

 

 

「それなら見せてほしいものね!!」

 

 

カナは再び艤装を展開させるとその照準を金剛に向けるが瞬間的に殺気を感じ横に避けると更に後ろから砲弾が飛んできており何とか交わす

 

 

「チッ、外したわ」

 

 

「続けて行きます!砲撃開始!」

 

 

その言葉と共に金剛の後ろを駆け抜けると一人の艦娘がカナに向けて砲撃をするがそれを意図も容易くカナは避ける

 

 

「……へぇ?まだ居るんだ?」

 

 

「全く、金剛もやるわよねこんなのを相手にするなんて」

 

 

「ですが、相手にとって不足はありません」

 

 

金剛の後ろから山城が近付くと肩を叩きそして神通が主砲をカナに構える

 

 

「山城!神通!!」

 

 

「すまない!助かる!!」

 

 

「さぁ!始めますよ!時間稼ぎを!!」

 

 

金剛、神通、山城は合図と共に散開しカナに主砲を構え瑞鶴とグラーフは再び艦載機を発艦させようと構える

だが、カナはその姿を見ると顔を押さえ笑いだす

 

 

「くふふふふふ、アハハハハハ、アッハッハッハッハ!!!」

 

 

「な、何が可笑しいんですか!?」

 

 

「いやー……ね…あんた達さぁ、何で私が今まで海上の敵を本気で狙わなかったか分からないの?」

 

 

「はぁ?それはあんたが狙いずらいからでしょ?」

 

 

「アハハハハハ!!ハッハッハッ!!あー!!笑える!!違うわよぉ?

それはね?」

 

 

カナが主砲を構えるとその笑みの理由が判明する

 

 

「お前達が轟沈するからよ

只でさえ、弱いあんた達を簡単に殺しちゃうんだから」

 

 

「「「「「っ!?」」」」」

 

 

その場に居る全員が背筋を凍らせていると叢雲がボロボロになりながら叫ぶ

 

 

「そいつの砲弾に当たるんじゃないわよ!!

当たれば間違いなく死ぬわよ!!」

 

 

「そう言うこと、今まではね加減してお前達の基幹を狙わなかった

でもね?私がその気になれば狙えるのよ!!」

 

 

「っ!?か、回避!!」

 

 

その瞬間金剛は言葉の意味を理解しカナに砲撃するがそれよりも速くカナの砲弾が金剛に着弾し爆発を起こしその場に崩れ落ちそうになり脚の艤装を触ると黒煙と共に破壊されていた

 

 

「金剛!!」

 

 

「くぅ……ま、まさか…航行艤装を正確に!!」

 

 

「なっ!嘘でしょ!一撃で!?」

 

 

「不味いですね、ですが戦わなくては!!」

 

 

神通は慌ててカナに砲撃し応戦しようとするが主砲を向けられ交わそうとし

 

 

「ばーか、私の砲撃からは何者も逃げられない」

 

 

「っ!?」

 

 

その瞬間もう片方の主砲を避けた先に向けると砲撃し神通は爆発を起こし吹き飛ばされていく

 

 

「神通!あんた良くもぉ!!」

 

 

吹き飛ばされた神通を助けに行きたい気持ちを押さえ山城は全砲門をカナに向けると何発も連続して撃ち放つとそのほとんどがカナへ直撃し爆発と共に黒煙に包まれる

 

 

「はぁ…はぁ…これで少しはーーー」

 

 

「何よ?これで終わり?」

 

 

その瞬間山城の腹部に鈍い痛みと焼ける痛みが同時に大爆発を起こし吹き飛ばされていく

 

 

「山城!!」

 

 

「ば、馬鹿な……たった少しの時間で……壊滅…」

 

 

「あーあ、本当にお馬鹿さん達

もう少し粘ってくれると思ったのになぁ」

 

 

一方的かつ絶対的な実力差

深海の姫であり歴戦と呼ばれているその化け物は一方的に山城、金剛、神通を撃破していき退屈そうに欠伸をす

 

 

「お前達が勝つ?勝機?

はは、あるわけないでしょ?

あんた達さぁ?良く考えてみなさい、この島には特別強いと言えるのは私と椿だけ

それだけなのよ?

分からないの?海域はここだけじゃない、私以外にも姫は居るし他は基本的に複数居るのよ

ある海域には姫が六体以上とか言う海域もある

そんなところに本当に行けるのかしらぁ?」

 

 

「………く…」

 

 

カナが話している最中に何とか叢雲は立ち上がりカナに向けて薙刀を振りかざそうとするがその途中で気付かれ蹴り飛ばされてしまう

 

 

「ガハッ……」

 

 

「叢雲!!」

 

 

「本当に馬鹿よねぇあんた達

私を倒したところでお前達に希望なんて無いのにねぇ………」

 

 

カナは主砲を縮めると蹴り飛ばした叢雲の頭を掴み海上に居る金剛達に見せ付ける

 

 

「む、叢雲!!クソ!動いて!動いてよ!!」

 

 

「今助けるぞ!叢雲!!」

 

 

「あんた!良くも私の友人を!!」

 

 

「あら?それ以上動いてみなさい?コイツの頭を潰すわよ」

 

 

その言葉に金剛達は一切動けなくなり後ろに居る古鷹も動こうとするがカナに主砲を突き付けられ動けなくなる

 

 

「フフフフ、アッハッハッハッハ!!!

これであんた達の負けね!さてと!!じゃああんた達の希望を潰してあげるとしましょうか!!!」

 

 

「あぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

カナは叢雲の頭を掴む手に力を込めていきその痛みで叢雲は叫び声を上げる

 

 

「叢雲!?不味い!!今助ける!!」

 

 

「行かせませんって言ってるでしょぉ!!長門!!」

 

 

声を聞いた長門は助けに向かおうとするがやはり椿に止められてしまい助けようにも全く行けずギリギリとカナは叢雲の頭を握り締めていく

 

 

「アッハッハッハッハ!!!

これで!完全に終わりよ!!あんた達の希望はここで終わりなのよ!!!

アッハッハッハッハ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うちの島を救ってくれた英雄に……何してくれてんや!!お前ぇぇぇ!!!!!」

 

 

その怒声が水平線から聞こえたと同時にカナの背後を艦載機が捉え爆撃する

 

 

「なっ!馬鹿な!こいつらはなにもしてないはず!!」

 

 

そしてカナの背後から艦載機が通り抜け叢雲の掴んでいる手を正確に撃ち抜き叢雲はその場に崩れ落ちる

 

 

「各艦隊!!全砲門!主砲斉射用意!!

撃て……撃て!!!」

 

 

その直後、水平線から砲撃音が聞こえると同時に深海棲艦達に砲撃の雨が降り注ぎかなりの大打撃を与える

 

 

「何!?どう言うことだ!!」

 

 

「……嘘…だが、何故ここにお前達が!?」   

 

 

だが一人だけその声を聞き笑いながらカナを睨み付けている艦娘が居た

 

 

「予想よりも早いデース……貴女の負けですよ飛行場姫……」

 

 

「何ですって!?」

 

 

「時間切れ……デスよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「友軍艦隊到着!!!長門!!助けに来たわよ!!」

 

 

「ローマ!何故お前達が!!?」

 

 

「瑞鶴!しっかりしいや!!あんたそれでも正規空母なんか!?」

 

 

「龍驤!来てくれたの!?」

 

 

「大井さーん!瑞鶴!助けに来たわよ!!」

 

 

 

「お姉様!!」

 

 

「助太刀します!!」

 

 

その援軍の数、ざっと見て24人がこちらに向かってきておりそれを見るとカナは鬱陶しそうに金剛を睨み付ける

 

 

「あんた……いつの間に!!」

 

 

「さぁ……反撃開始デース!!」

 

 

 

 





次回

一筋の光

危機的状況に援軍の到着、そしてカナとの戦闘は更に激化していき戦場は荒れに荒れ狂う


秋刀魚祭り!始まりましたねぇ……
何か2ー1で磯風が、落ちるとか落ちないとか?
行きたいけど意外とキツいんですよねあそこ()




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援軍 

「何!増援!?

不味い、空母艦隊!奴等をーーー」

 

 

と椿が指示を出そうとした瞬間椿の周りが突然爆撃され指示が出せなくなる

 

 

「今度は何だ!!」

 

 

「長門!ソイツから離れて!!」

 

 

ローマの声に反応し長門は椿から飛び退くとその瞬間空から椿に向けて爆撃が開始される

 

 

「くぅ!まさか!空からの爆撃!!しかもこの痛み……まさか!基地航空隊か!!」

 

 

空を見上げると空には多くの艦載機がドレス島上空を飛んでおりその次にカナへ向けて飛び立っていく

 

 

「へぇ、まだあったんだ……でもコイツもそれを受けるのよ?

でも、まぁ良い先に殺してくれる!!」

 

 

「叢雲!!」

 

 

基地航空隊がカナを攻撃しようとする前にカナは地面に転がる叢雲を踏み潰そうとするが

 

 

「やらせない…よ!!」

 

 

その間に古鷹が入り込み艤装と主砲でカナの脚を止めると鈍い鉄が当たる音が響き渡る

 

 

「クソ!古鷹!!」

 

 

「磯風さん!!叢雲を!!」

 

 

「心得た!!」

 

 

カナの攻撃を防いでいる隙に磯風が急いで叢雲を抱き抱えると離れ古鷹もカナの脚を全力で弾く

 

 

「やぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「く!コイツここまで力を残していたのか!!」

 

 

カナの脚を弾くと思い切りバックステップを取ると空から基地航空隊による攻撃が降り注ぎカナは再び爆煙に包まれ古鷹は叢雲の元に駆け寄る

 

 

「叢雲!大丈夫!?」

 

 

「え……えぇ…何とか…ね」

 

 

「頭が痛むか?なら少し休んでいてくれ後はーーー」

 

 

「私達がやるって?磯風?」

 

 

その声は爆煙の方角から聞こえカナは爆煙から抜けてくると磯風と古鷹に砲を向けながら歩いてくる

 

 

「一時的に私から逃げられたことは褒めてあげる

でもね、あんた達はどうせ私から逃げられないのよ」

 

 

三人は重症、だがカナはほとんど傷が付いておらずしかも先程より絶対的な強さを誇るアブソリュートの主砲が二門対峙するにも絶望的な状況であることにも関わらず叢雲は立ち上がる

 

 

「逃げる……?は、笑わせないで…くれる……」

 

 

「叢雲!」

 

 

「お、おい!今は動くな!!」

 

 

身体は切り傷や鈍痛が響き渡っているのにも関わらずそれに耐え叢雲はカナに指を指す

 

 

「あんたを倒すのは私よ、他の誰でもない

だから私が逃げるなんてあり得ない、逃げるのはあんたの方よ」

 

 

「へぇ?立っているのもやっとなあんたがこの私を倒す?笑わせてくれるわね駆逐艦叢雲

ならその度胸……いや無謀かしらね」

 

 

「そうとは言えないかもしれないわよ!!!飛行場姫!!」

 

 

その声が響き渡るとカナは鬱陶しそうに海上を睨み付けるとローマの背後には数人の艦娘が巨大な黒い何かを持ってきておりニヤリと笑っていた

 

 

「叢雲!磯風!古鷹!!貴女達今すぐその陸上から離れて!!コイツに海軍が誇る最強兵器を試すわ!!!」

 

 

「……ほう?それは楽しみねぇ…良いわあんた達の処刑は待ってあげる」

 

 

カナはそう言うと海岸沿いに行きそのローマの背中にある巨大な黒い何かを見る

 

 

「全隊!攻撃準備!!対陸上型深海棲艦兵器!!

起動!!!」

 

 

ローマの指示と同時にその黒い何かを後ろで何人かの艦娘が動かしていくとそれが徐々に起動すると正体が判明する

 

 

「………何あれ」

 

 

「な!ろ、ローマ!!何故お前!!!それはまだ試作段階であり使用禁止兵器だろ!!」

 

 

「大丈夫!これも大元帥の指示よ!!

コイツにはこれを試す価値があり使わないと勝てないと大本営が判断をくだしたのよ!!」

 

 

 

 

その黒い何かは見た目こそは正にドイツで開発された列車砲であるがその砲門が異常に大きく形状はまるでカナの持っている艤装アブソリュートとそっくりな程であった

 

 

「っ!?!?!?あ、あれって!!!

試製アリュシュール(殲滅型迫撃砲)!!!な、何でお前達がそれを持っているのよ!!」

 

 

「超遠距離型主砲艤装!試製62型水上単装砲!!!

照準を飛行場姫に合わせろ!!奴を島ごと吹き飛ばすわよ!!」

 

 

 

 




次回

試作兵器試製62型水上単装砲

援軍ローマが持ってきた物、それは試作段階でありまだ未完成の対陸上型兵器だった
この兵器は彼女達の希望になるのか、それとも……


意外と秋刀魚落ちませんね……
とか言いながら1ー1で2尾落ちてる作者です(
海防艦レベリングしないとなぁと染々に思います(他にも育成する艦娘が多すぎて




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援軍 二

ローマ率いる友軍艦隊の一人綾波が自分の顔程の砲弾の装填を終えるとローマからの指示を待つ

 

 

「装填完了!いつでも撃てます!!」

 

 

「オッケー!なら照準を飛行場姫に!!

奴を吹き飛ばすわよ!!」

 

 

すると他の艦娘達がその照準を飛行場姫に合わせ砲撃しようとすると椿がそれに気付き止めようとして来る

 

 

「随分とデカイ兵器ですが、動かすのに時間を要するに様ですね……今のうちに止めなくては!!」

 

 

「行かせは!!」

 

 

「しないわ!!」

 

 

だが、長門と陸奥が艤装をぶつけ椿の行く手を防ぎ更にウォースパイトとガングートがその後方から迫ってくる

 

 

「行かせないぞ!!椿!!」

 

 

「貴女の相手は私達よ!!」

 

 

「チッ!こいつらまだこれほど戦えるのか!!」

 

 

その一方でカナはローマが持ってきた試製62型水上単装砲を見ながら混乱していた

 

 

「いや、間違いない!

あれはアイツが試作段階まで仕上げたアブソリュートの水上型兵器!!製作段階で動かす人数と期間が思いの他長いからって確か中止して設計図もどっかに捨てたって言ってたけど……何でアイツらがそれを持ってるのよ!!!

情報管理ずさん過ぎない!?あんのやろう!!」

 

 

カナが睨みながら呟いていると叢雲達はその着弾地点であるカナから少しずつ離れていくと空から再び艦載機が近付いてくる

 

 

「何かしら、何か運んでる?」

 

 

「……バケツか?だが何でそんなものが」

 

 

話をしているとインカムから龍驤からその物の正体について連絡が来る

 

 

 

『叢雲!明石さんから三人分の高速修復材を受け取ったんや!今うちの艦載機で運んでるから受け取ってーな!!』

 

 

「本当に!助かるわ!!」

 

 

艦載機はゆっくりと叢雲達の下に降りていくと運んでいた高速修復材を受け取ると古鷹、磯風、叢雲の順番でそれを被っていく

 

 

「っ!!……痛いけど傷が治っていく!!」

 

 

「っ!あぁ、……これは本当に助かる…!」

 

 

「ぐぅ…うぅ!!……はぁ…はぁ……」

 

 

古鷹と磯風は大した事ないように傷を治していくのに対し叢雲はかなり苦悶の表情をしながらその高速修復材の痛みに耐える

 

 

「叢雲……大丈夫?」

 

 

「おい、大丈夫なのか?叢雲?」

 

 

「平……気よ…これ……くらい!!」

 

 

それもそのはず、この三人の中で最も傷を負い戦ってきたのは叢雲だったからである

そして傷を治した三人は静かにカナから離れていき戦いが終わろうとしていた

 

 

「あの62型の使用許可が降りるとはな

あれはまだ完成してないと聞いていたがあそこまで出来てきたとは」

 

 

「磯風さん、知ってるの?」

 

 

「あぁ、提督に聞いた事があってな

昔の作戦である島を取り返したときにあった深海棲艦の設計図を頼りに建造されたらしい

外部からしか装填出来ないし、動かすのと運ぶのも戦艦クラスの艦娘が必要であり艦娘が装備することが出来ない欠点が多い兵器であるもののその代わりの破壊力は凄まじいと言われている特殊兵器だ

………まさか、ここでそれを見れるとはな」

 

 

磯風の説明を聞きながらローマがその照準をカナへと向けている間叢雲は一つだけある違和感を感じていた

 

 

「………磯風、古鷹いつでも戦闘出来る用意をしておきなさい」

 

 

「え?叢雲?」

 

 

「何を言ってるんだ?叢雲?流石にあれを使われてはカナも戦闘不能に出来るだろ?」

 

 

「……だと良いわね、でもアイツ驚いてはいるけど全く焦ってないのよね

どう見ても」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

叢雲の予感は当たっていた

カナは驚きこそしていたもののその兵器について設計図を作り上げた深海棲艦から詳しい話を聞いていたからである

 

 

「まさか、人間側であれを作り上げるとは良くやるわね……驚いたわ」

 

 

「貴女も横暴もこれで終わりよ!!62型水上単装砲……撃てえぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

ローマの指示と共に他の艦娘達は耳を押さえており増援として来ていた両耳に耳栓をした扶桑(ふそう)が62型を動かし最後の砲撃システムを起動させると62型の砲塔が動くと一瞬だけ止まり次の瞬間

周囲に何かが大爆発を起こした様な轟音が響き渡ると同時にその反動でローマ達は吹き飛ばされそうになる

 

 

「っ!!嘘!私が知ってるーーー」

 

 

「伏せて!!!」

 

 

叢雲が二人を伏せさせカナが慌てた瞬間62型の砲弾は直撃し通常では有り得ないほどの爆発音とその衝撃に晒され叢雲達は慌てて耳を鬱ぐ

 

 

「姫様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「何て破壊力だ……これが水上兵器…」

 

 

「……これが大本営が誇る試作兵器…」

 

 

カナが居た場所は黒煙が立ち上ぼり辺りの木々は爆発の衝撃で葉が吹き飛ばされ木々は少しだけ焼き焦げていた

 

 

「良し!これならアイツを倒せたはずよ!!」

 

 

「はい!あの砲撃は島一つ吹き飛ばす程ですからね流石にひとたまりも無いでしょう!」

 

 

その砲撃と爆発音はこの戦いに終わりを告げるようであり他の深海棲艦もカナが敗北したと思い愕然としていた

 

 

「粉々になったデースか!飛行場姫!!」

 

 

「これで、私達の勝ちね

……全く辛い戦いだったわ」

 

 

「……終わったなこれで我々の勝利か」

 

 

「今回は援軍に助けられたね、叢雲!」

 

 

全員が安心しきってる中叢雲は一人立ち上がり再び艤装を構えていた

 

 

「……叢雲?」

 

 

「どうしたんだ、叢雲?」

 

 

「………終わってないわ、恐らく」

 

 

「「え?」」

 

 

その結果を見ていた長門は笑みを溢し肩の荷が降りたようにため息を付くと椿に話しかける

 

 

「これで我々の勝利だ、椿

大人しく投降するなら悪いようにはしないぞ?」

 

 

 

「………き…貴様ら……全艦ーーー」

 

 

と椿が言おうとした瞬間ある声が戦場に響き渡る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、良い火力ねそれ」

 

 

その声に全員が驚きその声の主の方角へ向き直る

その声は間違いなくカナが着弾した場所から聞こえ全員驚きが隠せない

そして、爆煙を切り裂き62型に撃たれた筈のカナが全員の前に姿を現し全員愕然とする

 

 

「けほ、けほ、流石に危なかったわ今回ばかりは」

 

 

 

 

 

 




次回

絶対的な強さ

62型水上単装砲が命中したにも関わらずカナはほぼ無傷の状態で援軍を嘲笑う

ぶっちゃけコイツラスボスで良いんじゃね?とか最近思い始めてる作者です()
あ、秋刀魚漁ですがこっちは順調です
後八匹で終わりですかね
鰯だけすんごい使うなぁとは思ってます(




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援軍 三

「う、嘘よ!!何で生きてるの!?」

 

 

「当たった…筈……砲撃は命中した筈!!」

 

 

ローマ達が流石の事に驚いていると長門は唇を噛み締めローマ達に指示を出す

 

 

「ローマ!!次発装填を急げ!!!

効いてないわけじゃない!!奴は何らかの方法で砲撃を弱体化させたんだ!!!」

 

 

「くそ!やっぱり駄目デースか!!」

 

 

「何なのよ……何なのよ!!コイツ!!!」

 

 

連合艦隊と援軍に恐怖の二文字が駆け巡る中、椿は身体をくねらせながらカナの姿に幸悦を覚える

 

 

「あぁ!あぁ!流石は私が認めた最強の姫様!!

さぁ!お前達!!今のうちに援軍が持ってきたあの兵器を破壊しろぉぉぉぉ!!!」

 

 

椿の指示により再び深海棲艦達が動きだし62型を狙い出し同じ陸上に居た叢雲達はそのカナの姿に呆然としていた

 

 

「あ、アイツは無敵なのか……?」

 

 

「あれを受けて動けるなんて……」

 

 

「いや、『受けてないわ』アイツは」

 

 

「は?どう言うことだ?叢雲?」

 

 

叢雲の言葉に疑問を覚え尋ねるとその理由を説明していく

 

 

「……アイツの主砲を見てみなさい

さっきまで冷却されていた筈なのに熱を持ち白煙が上がってる

つまり、アイツは自分に砲弾が着弾する寸前で二門の主砲を放ち62型の砲弾を無力化させたのよ……」

 

 

「は、はぁ!?」

 

 

「そんな!それを一瞬で!?」

 

 

「何て奴なの……あぁ言うのの対処法は確かに佐渡聞いてるけど…あれは桁違いよ…

でも確かに私との相性は最悪で最高の様ね……」

 

 

叢雲達がカナの様子を見ていると首をゴキゴキならし艤装の損傷箇所を細かくチェックしていく

 

 

「うーん、やっぱり接射は無茶か……

両主砲はかなり負荷があるか……全くアイツ…今度あったら承知しないわよ……

仕方無い、尻拭いをしますか」

 

 

カナは両主砲を62型に合わせ艤装を地面に固定させるために刺股を突き刺すと再び艤装に座るように動き出す

 

 

「椿!!少しばかり任せるわよ!!!

あの兵器を破壊するわ!!!」

 

 

「はい!!姫様!!!

全艦隊!姫様を援護しろ!!!」

 

 

カナの号令と椿の命令に反応した深海棲艦がカナを守るように動き始め空母達は艦載機を飛ばし他の深海棲艦は62型に向かっていく

 

 

「ローマ!!急げ!!!

奴から何か来るぞ!!」

 

 

「っ!次発装填を急いで!!龍驤!警護をお願い!!」

 

 

「分かったでぇ!全艦!この馬鹿デカイ兵器を守るでぇ!!」

 

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

「全艦隊応答しろ!お前達の中で陸上戦闘出来る艦娘は居るか!?」

 

 

『ーーこちら沖縄艦隊旗艦阿武隈!私は少しばかり出来ます!』

 

 

『ーーこっち北上~、あたしは出来なくは無いけど多分比叡の方が良いと思うよ』

 

 

『ーーこちら横須賀の榛名です!私は出来ませんが夕立さんと時雨さんが確か陸上戦闘経験があるはずです!!』

 

 

『ーーうぅ、こちら呉鎮守府の神通……私が経験があるのですがこの通り基幹をやられているため……代わりに鈴谷さんと熊野さんを打診します…彼女達なら出来る筈です……』

 

 

『ーーこちら、佐世保の不知火私が近接戦闘経験があり陸上戦闘もやったことがあります

後、木曾も自前の剣技があるため戦力になると思います』

 

 

「こちらガングート!すまない!私が出来るのだがコイツを見ていなくてはならなくてな!参加できそうにない!!」

 

 

「分かった!!では、沖縄の阿武隈

佐伯の比叡

横須賀の時雨、夕立

呉の熊野、鈴谷

佐世保の不知火、木曾

今呼ばれた者は、ドレス島に上陸し叢雲達の援護に迎え!!!

万が一がある、それにどうやら三人ではキツいらしい!!

頼むぞ!!!」

 

 

『『『『『了解!!!』』』』』

 

 

 

長門はその報告を聞くと連合艦隊全員に指示を出していきそれぞれの鎮守府に居る陸上でも戦える艦娘を選出し向かわせていき動けなくなっていた金剛を運ぼうとする

 

 

「長門!お姉様は私にお任せを!貴女は椿を!」

 

 

「すまない!頼む!!」

 

 

「はい!お姉様、大丈夫ですか?」

 

 

「大丈夫デース……艤装さえ直れば戦えマース!」

 

 

それと同時に神通と山城も他の艦娘に連れていかれ再び明石達が居る後方へと下がっていく中カナが再び座り出していることに気付く

 

 

「叢雲!今、カナが鎮座している!!倒せないのか!?」

 

 

『無理よ!こっちは敵の艦載機に攻撃されて動けないのよ!!』

 

 

叢雲達も鎮座しているカナを見えているのにも関わらず海上にいる空母艦隊に攻撃を受け全く身動きが出来なくなっていた

 

 

「綾波!装填は出来る!?」

 

 

「はい!もう少しで次発撃てます!!」

 

 

「扶桑!62型の冷却はどう!?」

 

 

「後少しです!もう少しだけ!!」

 

 

ローマ達は62型を庇いながら戦いカナはその様子を艤装から覗きあるスロットに変更していた

 

 

「確か、アイツの話によれば外装は深海棲艦の強化外装を使ってるはず

でもアイツらが持っているとは思えない、だが万が一を備えて第1は辞めておきましょう

……正直これは使いたくなかったんだけどね……」

 

 

カナが呟くと艤装からガチャンと何回か音が聞こえると更に刺股の数が増えゆっくりとその砲門を62型へ向ける

 

 

「ローマさん!装填完了です!!」

 

 

「扶桑!砲撃用意!!」

 

 

「待ってください!まだ、もう少しで終わるんです!!」

 

 

「はよ撃たんか!!敵さん間違いなくそれを壊す気やで!!」

 

 

62型の撃つパネルにはオーバーヒートの文字が出ており砲身が熱を持っていた

二つの兵器がお互い構えているがカナのアブソリュートは62型より冷却時間が短く先にカナが62型を捉える

 

 

「砲撃場所は奴の装甲が薄い両方の側面、そしてそこは砲弾のリロードの為に撃ち抜きやすく誘爆しやすい場所……撃ち抜くわよ第2スロット、狙撃裂傷弾(サイレントエンド)

 

 

カナが完全に主砲を向け62型を破壊しようとする

 

 

「扶桑!早く!!」

 

 

「まだです!あとほんの少し!!」

 

 

「冷却すればエエんやな!?ならこれでどうや!!」

 

 

それよりも先に龍驤62型の真下の海上を爆撃するとその威力で水柱が上がり物理的に砲身を冷却するとパネルに冷却完了の文字が出る

 

 

「っ!!冷却完了!撃てます!!」

 

 

「龍驤!ナイス!!

良し!砲撃用意……撃てぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

「62型水上単装砲!!撃て!!!」

 

 

扶桑がパネルを操作すると砲撃用意に入り静かに動きだし砲撃しようとする

 

 

「良し!ぶっぱなしたれ!!」

 

 

カナより早く砲弾を撃てると確信したローマ達は勝利を確信していた

だが、カナが言った次の言葉に全員が混乱する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「椿!!私の盾となり守りなさい!!」

 

 

「はい!!姫様!!」

 

 

カナの号令を聞いた椿は戦闘を中断しカナの前へと向かっていこうとする

 

 

「待て!誰がいかせーー!」

 

 

長門が何とか椿を捕まえようとするがその行く手を他の深海棲艦に止められてしまっていると椿はカナの前に動く

 

 

「な!アイツ!仲間を犠牲にするつもり!?」

 

 

「流石は深海の姫ですね……勝利の為に仲間を捨てるとは!!」

 

 

「でも、何でや?アイツは飛行場姫のお気に入りやろ?何でそんなことを……」

 

 

と話している間カナは笑いながら椿に問いかける

 

 

「椿、貴女になら出来るわよね?私が思ってることくらい?」

 

 

「えぇ!お任せください、貴女様の無茶振りなんて今更ですからね!!」

 

 

二人が謎の会話をしていると62型が完全にカナを捉えると砲撃準備に入る

 

 

「まぁ、良いこれで戦力を削げる!!

吹き飛ばせ!!62型水上単装砲!!!」

 

 

その瞬間62型から砲撃音と衝撃がローマ達を襲うと同時に椿が海上より飛び上がる

 

 

「やりなさい!!私の最強の部下よ!!」

 

 

「お任せあれ!カナ様!!!」

 

 

そして椿は自らの両腕を異常なまでに巨大化させると砲撃されてきている62型の砲弾両腕で掴む

 

 

「なっ!?あ、アイツ!!砲弾を両腕で止めた!?」

 

 

「ば!馬鹿な!有り得ない!!」

 

 

「ぐぎぎぎぎぎぎぎ!!!!」

 

 

椿はギリギリ砲弾の信管に当たらないように掴みその威力を押さえその砲弾を何とか動かそうとする

 

 

「ふ、フル……パワー……!!!

どっっっっっっせい!!!」

 

 

そして全力の力を込めてその砲弾をカナから反らすと島の左半分に命中しそこにあった森が大爆発を起こし燃え盛っていく

 

 

「は、弾き飛ばした!?」

 

 

「嘘……嘘嘘嘘!!有り得ない!!有り得ない!!!!

何なの!アイツは!?」

 

 

「くふぅ……では姫様後はお願いします……」

 

 

「えぇ、助かったわよ私の秘書艦ちゃん

さてと、じゃあ次は私の出番ね!!!」

 

 

椿の有り得ない程の力に圧倒されているとカナが続けて砲撃体制に入り62型を狙いを定める

 

 

「不味い!62型を動かしーーー」

 

 

狙撃裂傷弾(サイレントエンド)……発射!!!」

 

 

そしてカナの砲撃が始まり二発のライフル弾の様に鋭い弾丸は真っ直ぐ62型に向かっていき見事狙いを定めていた場所に命中する

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「くぅ!かなり来ますね!衝撃が!!」

 

 

「綾波!扶桑!大丈夫!?」

 

 

「命中、ま、こんなもんか」

 

 

その命中した砲弾の衝撃に綾波と扶桑がやられており心配するが62型を見ると二つの砲弾が中心まで突き刺さった状態で止まっていた

 

 

「扶桑!状況確認!」

 

 

「62型損傷大!ですがもう一撃は撃てます!!」

 

 

「分かったわ!ごめん綾波お願いできる!?」

 

 

「わ、分かりました!!」

 

 

「何や不発弾かそれなら良かっーーー」

 

 

と龍驤が安心していると妙な音に気付きローマに問い掛ける

 

 

「………ローマ、あんた何か時計なんて持ってる?」

 

 

「何を言ってるの!?持ってるわけ………」

 

 

ローマと龍驤が話している最中どこからかカチカチと音が二人の耳に聞こえその音がどこから聞こえるか探ろうとする

 

 

「馬鹿ねぇ、私が不発弾なんて撃つわけないじゃない?

どんなに硬い兵器でもね必ず弱点や壊せる方法がある

それに第二スロットは対人ではなく対兵器用

それが着弾した時点で負けなのよ」

 

 

カナは笑みを浮かべているとその音の正体を龍驤が突き止める

 

 

「砲弾や!さっき飛行場姫が撃った砲弾から音が聞こえる!!!」

 

 

「な!まさか!?で、でもそんな砲弾有り得ない!!」

 

 

「ローマ!!!今すぐその兵器から離れろ!!!

巻き込まれるぞ!!」

 

 

その様子に気付いた長門は精一杯の力を込めてローマ達に避難を呼び掛ける

そしてカナは主砲をしまい刺股を解除すると指を兵器に向けると一言呟く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「狙った獲物は逃がさない

さぁ、起爆しなさい狙撃裂傷弾(サイレントエンド)

 

 

そして着弾した砲弾から音が聞こえなくなると同時にローマと龍驤は頭を伏せ綾波と扶桑も62型から全速力で離れ先程の砲弾が膨張し起爆すると62型が内部から大爆発を起こし辺りに居た援軍達に大ダメージを負わせ62型を木っ端微塵に破壊する

 

 

「ばーか、私に兵器は効かないわよ

私を倒したいなら直接来なさい」

 

 

 

 

 




次回

陸上最強姫カナVS陸上連合艦隊

62型を破壊され落胆する援軍達、それでも叢雲達は諦めずカナを倒そうと努力する
そして、長門が通達した各鎮守府の援軍が叢雲達と合流する

カナ強くし過ぎた感が凄い()
でもまぁ、これぐらい強くないとね!!
そして秋刀魚と言うよりは鰯が足りねぇ!!




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決戦

「み、皆無事!?」

 

 

「大丈夫やで……」

 

 

「私も…何とか……」

 

 

「平気…です……」

 

 

ローマが全員の安否を確認すると先程大爆発を起こした62型を見るとそこには

 

 

「…………嘘……これを一撃で……」

 

 

砲身はネジ曲がり装填する場所も起動パネルも完全に破壊されており内部からの爆発により両端にぼっかりと穴が空いており修理も使うことも不可になるほどに完璧に破壊されていた

愕然もする中62型は再び爆発を起こすと水上維持装置が破壊されまるで吸い込まれる様に海中へと沈んでいく

 

 

「ローマ!!しっかりしろ!!!!

目を覚ませ!!」

 

 

「で、でも……長門……62型が…」

 

 

「聞いていないのか!!アイツに常識は通用しない!!

62型は残念だがそれでも戦うしかない!!」

 

 

愕然としているローマとは裏腹に長門は深海棲艦達と戦っており龍驤が近付き頭を叩く

 

 

「しっかりしいや、ローマ

まだ戦いは終わってないで」

 

 

「龍驤……でも62型が……」

 

 

「どうせ兵器何てもんはいつか壊れるんや

確かにあの一撃で破壊されるとは思わんかったけどな

それでもうちらが来たのであればやるしかあらへん

それに皆うちらの力を必要としてる

それなら戦うしかないんやで」

 

 

「………そうね、まさか軽空母に言われるとは思わなかったわ

ありがと龍驤」

 

 

「なら、ほら行くで!!」

 

 

龍驤に言われ動こうとし目の前を見るとカナがニヤリと笑いながらこちらに砲を向けておりそれに気付いたローマは龍驤を突き飛ばす

 

 

「いたっ!何するんーーー」

 

 

と言いかけた瞬間陸上から砲撃音が聞こえ砲弾がローマを直撃し爆煙も共に吹き飛ばされていく

 

 

「ローマ!!コイツーーー」

 

 

「成分と悠長ですねぇ……貴女達?」

 

 

龍驤が反撃しようとした瞬間何者かに首を締め上げられながら持ち上げられ苦しみながらもがく

 

 

「な……お前…さっきの……!」

 

 

「全く、戦場で励ましあいをする余裕があるなんて………へし折ってあげましょうかぁ?」

 

 

「が……は……何や…この…力……!」

 

 

椿の腕は元の大きさに戻っているものの力こそは全く変わっていない為龍驤の首はギリギリと締め付けられ苦しみながら椿の腕を何度も叩く

 

 

「私の仲間に何してるのよ!!!」

 

 

その瞬間空から爆撃機が飛んできており真っ直ぐ椿に向けて爆撃を行いそれを椿は龍驤を投げ飛ばし交わす

 

 

「ゲホッゲホッ!助かったでぇ……瑞鶴…」

 

 

「大丈夫!?良かったまだ無事見たいね……」

 

 

瑞鶴は傷を負いながらも龍驤に駆け寄り再び椿に弓を引きその間に吹き飛ばされたローマをグラーフが介護する

 

 

「大丈夫か?しっかりしろ!」

 

 

「平気よ……どうやら砲弾が逸れて直撃を免れた見たい……

あの娘のお陰かしらね」

 

 

ローマが見ていた先ではカナが体制を崩しておりその側に一人の艦娘がカナの艤装を傾けさせていた

 

 

「………やっぱりお前を倒さないと駄目見たいねぇ…………叢雲」

 

 

「あんたの相手は私よ、どこ見てるのよ?」

 

 

 

カナはイラつきながら横目で睨み付けており叢雲も同じ様にカナを睨み付け少しだけ後ろに下がると叢雲へ向き直る

 

 

「本当にうざったるい駆逐艦ねぇ……あぁ、本当に

ここまでうざいのも初めてかしらねぇ?

どうやらさっきの艦載機が修復材でも持ってきたのかしら?

叢雲」

 

 

「私を完全に殺さない限り私はあんたに食い付くわよ

あんたの相手は私よ掛かってきなさい、最強の陸上姫

カナ」

 

 

叢雲が再びカナを捉えその後ろでは古鷹と磯風が砲を構えるとカナも艤装を再展開する

 

 

「まぁ、叢雲だけじゃ」

 

 

「無いんだけどね!!」

 

 

その瞬間カナの横から砲撃が直撃しカナは爆煙に包まれる

 

 

「叢雲!援軍に来たよ!」

 

 

「さぁ!やってやりましょう!!」

 

 

「皆!」

 

 

「来てくれたのか!!」

 

 

援軍として長門に指示されていた阿武隈、比叡、夕立、時雨、鈴谷、熊野、不知火、木曾が陸上の叢雲達と合流し全員はカナへ砲や武器を構える

 

 

「あったり前じゃーん!じゃあちゃっちゃと倒しちゃお!!」

 

 

「鈴谷!先程撃たれたのに油断大敵ですわよ!」

 

 

「磯風、助けに来たよ!かなりキツいんだろ?」

 

 

「あぁ、助かるよ時雨、夕立」

 

 

「久々の陸上戦ぽい!

さぁ!素敵なパーティーしましょう!!」

 

 

 

「古鷹さん、微力ですが力になります!」

 

 

「良くも古鷹さんと恩人の叢雲さんを傷付けてくれたなコイツ!!」

 

 

「ふふ、助かるわ

正直キツかったしね」

 

 

仲間も合流した叢雲は少しばかり笑みを溢しそれと同時にカナが爆煙を切り裂き全員を睨み付ける

 

 

「増援ねぇ……そんなので私に勝てるとでも?舐められたものねぇ…

良いわ、全滅させてあげる

一人残らず」

 

 

改めて全員と対峙しようとしている最中海上では増援部隊が長門と合流し椿と対峙しようとしていた

 

 

「ローマ、扶桑、綾波行けるか?」

 

 

「問題ないわ、少し痛いだけ」

 

 

「大丈夫です、私は被弾してませんから!」

 

 

「行けます、任せてください!」

 

 

「大井さん!手伝いに来たわ!」

 

 

「あの時の借りを返すわよ!」

 

 

「コイツを倒せば良いんですよね、やってやりましょう!」

 

 

「ふふ、皆ありがとう!

本当に助かるわ」

 

 

「全く増援に来たはずなのに助けられるとは面目丸潰れやんか」

 

 

「アハハ、そもそも龍驤に面目なんてあったの?」

 

 

「ちょっとまちぃ!瑞鶴どういう意味やそれ!!」

 

 

「あらあら、玩具(おもちゃ)が増えましたねぇ……

ですが!良い!これでこそ戦争ですよねぇ!!」

 

 

椿は増えた増援に笑みを浮かべながら海上を踏むと海中から多くの深海棲艦が浮上し連合艦隊を相手取ろうとする

 

 

『行くわよ!長門!!』

 

 

「分かっている!!」

 

 

陸上艦隊旗艦叢雲と連合艦隊旗艦長門はお互いに相手すべき相手と対峙しながら艤装を構えると対峙する

 

 

『「暁の水平線に!!!

勝利を!!!」』

 

 

「死ぬ覚悟は出来たみたいね……

艦娘共(略奪者共)!!!」

 

 

「さぁさぁさぁ!!!楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい楽しい戦争をやりましょう!!!!

アッハッハッハッハッハッハ!!!」

 

 

 

 

 




次回

ー決戦ー 陸上最強姫&最悪の始祖級

援軍は到着した、カナと椿も力を見せ付けた
それでも叢雲と長門は諦めない
不屈の心と勝利を目指して
そして全てが揃った叢雲は奥の手を使おうとする


次回カナ&椿との対峙を書きます故にかなり長くなります!!(予告)

あ、そう言えば実は鰯と秋刀魚を取り&朝霜と磯風を狙ってたらお互い来てくれました!!
ぶっちゃけ秋刀魚と鰯より遥かに嬉しい!!
育成はまだ先になるけれどね!!(現在浦風育成中)



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決戦 陸上姫カナ

叢雲と長門は同時に走り出しそれに対する様にカナと椿も動きだし二人と相対する

そしてカナは主砲を二門動かし向かってくる叢雲達と対峙する

 

 

「私が先陣をきるわ!!皆は後から来なさい!!」

 

 

「「「「「了解!!!」」」」」

 

 

「ほんと諦めが悪い奴等ね!!」

 

 

叢雲は艤装を構えカナに斬り込もうとするがカナはそれに対し主砲を叢雲に向ける

 

 

「あんたを粉々にしないといけないみたいね!!」

 

 

「そう言うことよ!!」

 

 

カナが主砲を撃とうとした瞬間艤装の耐久性や他のシステムを確認すると左主砲に損傷軽微と表示されており砲撃を躊躇う

(チッ、さっきの接射が響いてるか……

自動修復システムを起動させておいてしばらくは右だけに頼るか!!)

自動修復システムを起動させると左主砲は少し下に傾き叢雲が迫ってくる

 

 

「切り裂いてあげる!!」

 

 

「く!近接戦は苦手なのに!!

やるしかないわね!!」

 

 

叢雲が薙刀を振り下ろすと同時にカナは腕を硬質化させ薙刀を弾くと弾かれた反動を使い叢雲何度もカナに振りかざしぶつけていくと二人の間に火花が飛び散りその後ろから磯風、夕立、時雨、不知火、木曾が突っ込んできていた

 

 

「夕立!時雨!お前達は右側から!

不知火、木曾は私と共に左側から行くぞ!!」

 

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

その姿を見ていたカナは瞬時に主砲である二門を縮小させると思い切り叢雲の薙刀を殴り付け吹き飛ばすと両端から来ている五人を見渡す

(めんどくさそうなのが三人、二人は弱そうね)

冷静に判断すると同時に磯風と時雨が主砲を放ちカナは爆煙に包まれる

 

 

「目眩ましか!!」

 

 

「くたばるっぽい!!」

 

 

爆煙からジャンプし突撃するように夕立が突っ込み右手に付けている主砲を向け接射しその間に逆側から不知火も主砲を構え砲撃するとさらにカナは爆煙に包まれる

 

 

「沈め!」

 

 

「行くぞ!間髪入れるな!!」

 

 

「了解!木曾砲撃で行きますよ!!」

 

 

「分かった!行くぞ!!」

 

 

とカナへのダメージを期待していると突然爆煙から手が伸びまだ跳躍中だった夕立の首を掴む

 

 

「ぽい!?」

 

 

「掴まえたわよお馬鹿さん!!」

 

 

「夕立!!」

 

 

カナは夕立を逆方向に居た不知火へとそのまま投げつけ慌てて飛ばされてきた夕立を受け止める

 

 

「夕立!大丈夫ですか!?」

 

 

「大丈夫……ぽい…ゲホッゲホッ」

 

 

「良くも夕立をやってくれたね!!」

 

 

夕立を投げ飛ばされた事に怒りを覚えた時雨は背中にある主砲と腕に装備している主砲を同時に構え砲撃するとカナはバックステップを取ると軽々と交わす

 

 

「砲を撃つだけの能無しと一緒にしないでくれる!!」

 

 

交わした直後右主砲を勢いよく戻し時雨の腹部に直撃させるとそのまま吹き飛ばされると叢雲がそれを受け止めるそして再び踏み込むと磯風に向かっていく

 

 

「ガハッ!」

 

 

「おっと、大丈夫かしら?」

 

 

「次はあんた達よ!!」

 

 

「早いっぽい!?」

 

 

「不味い!このままでは!」

 

 

「く!やはり数でもキツいですか!!」

 

 

カナは鋭い爪の艤装を振り下ろそうとするとそれよりも先に木曾が艤装である刀を抜き振り下ろされている爪を何とか防ぐ

 

 

「へぇ?それ飾りじゃないんだぁ?」

 

 

「ぐぅ……!今の内に離れろ…!」

 

 

「ごめんなさい!木曾!」

 

 

「少し下がるぞ!!」

 

 

磯風と不知火が下がろうとするとカナはもう片手でその刀を弾こうとするが木曾は何とか持ちこたえる

だが、それだけで終わらずカナは弾いてくる刀を破壊しようと連続で爪を振りかざしそれを防ごうとするがカナの一撃が重く反撃が出来ずに居た

(一撃一撃が重い!こんなのが何回も続けば!!)

 

 

「ほらほらほらほら!頑張りなさいよこのままじゃ駆逐艦以下よ!!」

 

 

「く!こ、こいつ!!」

 

 

「そのまま耐えてなさい木曾!!」

 

 

その声が聞こえると叢雲は木曾の肩を足蹴にすると木曾を飛び越えカナに向かい薙刀を振り下ろしそれに気付いたカナは慌てて薙刀を片手で防ぐ

 

 

「チッ!やっぱり無理か!」

 

 

「ほんとあんたはいきなり来るわね!叢雲!!」

 

 

カナは振り下ろされた薙刀を弾くと叢雲も地面に着地すると再び薙刀を握り直すとカナとの距離を詰める

 

 

「行くわよ!木曾!!」

 

 

「分かった!任せておけ!!」

 

 

「二対一ねぇ、良いわよ!掛かってきなさい!!」

 

 

叢雲と木曾はお互いの剣撃を繰り出しカナを斬ろうとするがその全てをまるでいなしていくように両手で弾き辺りには火花と鉄のぶつかり合う鈍い音が響き渡る

その後方では比叡、鈴谷、熊野、古鷹が援護砲撃をしようとするが二人の戦いに入る余地が無く焦っていた

 

 

「これじゃあ!援護する隙なんて無いっしょ!?」

 

 

「わたくしも何度か陸上戦はやりましたがここまで陸上馴れしている姫も初めて見ましたわ…

これが、歴戦種…」

 

 

「……うん、良し三人とも付いてきて!叢雲達を援護するよ!!」

 

 

「え?古鷹さんあれのどこを!?」

 

 

古鷹は単身走り出すとその後ろを三人は付いていき一人現在の叢雲達の事を観察していた

(確かに木曾&叢雲なら少しだけ押せるかもしれない、でもそれも長くは持たない

それならカナの体制を崩して二人が戦いやすいように援護すれば良いだけ!!)

 

 

二人の戦闘を見ていた磯風も古鷹が動いたことで行動を理解し動き出す

 

 

「我々も二人を援護する!腕に自信がないなら古鷹達の後に砲撃しろ!!」

 

 

「何をするつもりですか!?」

 

 

「どういうことっぽい!?」

 

 

叢雲と木曾はカナへ斬撃を当てようとするが両手を使いその剣撃と薙刀を弾き全く隙がなく更にカナから来る攻撃が重く木曾はかなり苦労していた

 

 

「重い……!何だこの姫は!!」

 

 

「馬鹿!真面目に受けるんじゃなくてきちんといなしなさい!!」

 

 

「あんた、どうやらあんまり得意じゃないみたいねぇ!!」

 

 

カナに見破られた木曾は更に重い一撃を受けてしまい剣を弾かれ腹部ががら空きになってしまい首を掴まれそうになる

 

 

「取った!!」

 

 

「しまっ!!!」

 

 

「させないわよ!!」

 

 

だが、それよりも先に叢雲がカナの腕に薙刀を突き立てると二の腕の部分に突き刺さるがかなり浅い

 

 

「チッ!本当にムカつくやつね!!」

 

 

カナは刺さった腕を軽く動かすと突き立てられた薙刀は外れ両手を地面に付くと艤装の主砲を地面に突き立て思い切り宙に舞い主砲を叢雲達へ向ける

 

 

「なっ!そんなことも出来るのか!?」

 

 

「馬鹿ね!私は陸上型なのよ!!!

これぐらい当然よ!!くたばりなさい!五番スロット!流星群(メテオ)!!」

 

 

カナの右側の主砲からガコンと音が聞こえると流星群(メテオ)が全員へ向けて放たれ全員は待避しようとする

 

 

「大丈夫!私が何とかする!!」

 

 

だがそれに反する様に古鷹は主砲を空に向けると同じ様に鈴谷、熊野、比叡も砲撃用意に入る

 

 

「ねぇ!あれってヤバイんじゃないの!?」

 

 

「お黙りなさい鈴谷!私達が一番火力が高いんですわよ!やるしかないんですわ!!」

 

 

「古鷹さん!指示をお願いします!!」

 

 

「了解です!私のタイミングで一斉砲撃します!!」

 

 

カナの砲撃が迫る中古鷹は静かに深呼吸をすると流星群(メテオ)の砲弾を見ており一気に膨張したタイミングで

 

 

「今です!!一斉射撃!!

撃てぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

合図すると古鷹達の砲撃すると同じく流星群(メテオ)が大爆発を起こし古鷹達に爆弾が降り注ぐが古鷹達の砲弾に直撃し誘爆を引き起こす

 

 

「よっしゃあ!流石名手だね!!」

 

 

「素晴らしいですわ……流石!!」

 

 

「やりましたね!!古鷹さん!!」

 

 

「ふぅ……これで少しは…」

 

 

「まだよ!!!」

 

 

と安心しきっている中叢雲が叫び走り始めると爆煙を突っ切るようにカナが落ちてきながら両方の主砲で下に居る全員を狙い始める

 

 

「な、何だと!?まさか空中で体制を立て直したのか!?」

 

 

「やばすぎるっしょ!!こいつ!!」

 

 

「ひ、ひぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

 

「左主砲修復完了、さぁ!吹き飛ばしてやるわよ!

艦娘共(略奪者)!!」

 

 

「古鷹!屈んで!!」

 

 

「はい!!」

 

 

古鷹は艤装を展開したまま屈むと叢雲はその艤装を足場に勢い良く飛び上がると更に古鷹が叢雲の足の裏を撃ち抜き更に飛躍させる

 

 

「カナァァァァァァ!!!」

 

 

「チッ!ここまで来るか!叢雲ォォォォォォ!!」

 

 

カナは主砲を叢雲に構えるが勢い良く飛ばされた叢雲はそれよりも速くカナに近寄ると薙刀を振り上げ主砲と薙刀がぶつかり合い火花が上がる

 

 

「ほんと!駆逐艦離れしてるわね!あんた!!」

 

 

「あんたこそ!本当にとんでもない切り換えの早さよね!

全く苦労するわよ!!」

 

 

お互いの艤装が弾かれ空中で体制を崩し地面に着地すると砂ぼこりが舞うとお互い睨み合う

 

 

「あぁ!もう!認めてあげるわよ!!

あんたは今まで見てきた駆逐艦の中で最も相手にしたくない奴だってね!!」

 

 

「私も認めてやるわ!あんたが最も強いと言うことをね!!

でも」

 

 

「だからと言って!!」

 

 

「「負けるつもりは毛頭ないけどね!!(ないわ!!)」」

 

 

叢雲は薙刀を握り直しカナに向かっていきながらあることを実行しようとしていた

(後少し……後少しコイツの動きを読めれば!アレが使える!!それが私の切り札よ!!!)

 

 

そう考えながら叢雲の左目は一瞬だけ真っ赤に染まっていた

 

 

 

 





次回

奥の手

少しずつだが確実に先程より叢雲達はカナを追い詰めることに成功する
そして叢雲は最後の切り札である技を使おうと仲間に最後を託す

予告詐欺しましたごめんなさい!!!(書き切れなかった…
そして秋刀魚&鰯漁終わりました!
さぁて、今月末イベント……果たして大型…なのかな?



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決戦 陸上姫カナ 二

叢雲はカナへと走り出すとそれを合図と言わんばかりに古鷹達は砲を向け磯風達もカナへと向けて走り出す

 

 

「あぁ、あぁ、あぁ!!もうもうもうもう!!!

ウザったいウザったいウザったいウザったいウザったい!!!

良いわよ!!なら見せてあげるわ私の最強技である一つを!!!」

 

 

カナは艤装を構えその主砲を空に向けると艤装からガコンと弾が変更される音が聞こえる

 

 

「何かしてくるぞ!!」

 

 

「警戒してください!何か来ます!!」

 

 

「複合砲撃!!斬裂弾(ショット)流星群(メテオ)!!

からの壊刃弾(カマイタチ)五連撃!!」

 

 

そしてくるっと一回転すると空へ向けて巨大な弾頭が何発も放たれ古鷹が構えるがその数に唖然とする

 

 

「………嘘、何あの数?」

 

 

「はぁ?はぁ?はあぁぁぁぁ!!?」

 

 

「な、何ですの!?あの数は!!!」

 

 

その砲撃された弾の数はざっと見て10発

まるで集中的に空襲を仕掛けてきたかの様にその弾頭は叢雲達に降り注ごうとしていた

 

 

「アハハハハハ!!!これでお前達は終わりよ!!

私も被害は受けるけどもう逃げられない!!!」

 

 

「流石に今の私達じゃ……ヤバイわね」

 

 

「どうするっぽい!?どうするっぽい!?」

 

 

「た、待避!待避!だよ!!」

 

 

「無理よ今からどんなに距離を離してもあの数では必ず被弾する」

 

 

「く……何て奴なの…」

 

 

落ちてくる特殊弾頭を見ながら全員が大混乱に陥る中古鷹は静かに瞳を閉じると主砲を空に向ける

 

 

 

「………比叡さん、鈴谷さん、熊野さん

私に力を貸してください

アレを……無力化します」

 

 

「は、はぁ!本気!?」

 

 

「む、無茶ですわ!!あんなの!!」

 

 

「無茶は承知です

ですが、何もしないよりはマシです!」

 

 

古鷹が空を向き見上げると比叡も同じ様に主砲を空に向ける

 

 

「ちょ!比叡さん本気!?」

 

 

「はい!お姉様を助け信じている御方ですから!!

私は古鷹さんを信じます!」

 

 

「……あぁ!もうやりますわよ!鈴谷!」

 

 

「マジ!?…でも何もやらないよりはマシかぁ!!」

 

 

そんな中叢雲は一人カナへ向けて走りだしており磯風達は混乱する

 

 

「叢雲!何を!!」

 

 

「古鷹を信じなさい

無力化するって言ったんだからやってくれるわよ

私達はカナを取るわよ!!」

 

 

「無理だよ!こんなの受けながら戦うなんて!!」

 

 

「そうそう!無力化なんて出来るわけがない!!」

 

 

「……不知火は古鷹さんを信じます!!」

 

 

「俺の師匠が出来るって言ってるんだ!信じてろ!!

俺達は飛行場姫を取るぞ!!」

 

 

叢雲は完全に古鷹を信じ前に進み古鷹は静かに深呼吸をする

(……大丈夫落ち着いて……焦れば…当たるものも当たらない…どんな時でも……そう提督(佐渡さん)が教えてくれたんだ……信じろ…私の腕を…あの人の言葉を…私を信じてくれた提督(佐渡さん)を信じる!!)

 

 

膨張する弾頭を気にしながら時雨達は頭を押さえ叢雲と磯風はカナへ走り不知火は少しだけ空を気にしていた

 

 

「どうするの?教えて古鷹さん」

 

 

「私達は貴女に従います」

 

 

「古鷹さん、信じてます」

 

 

「私の合図で右方向の四つ目の弾頭が爆発します鈴谷さんはそれをお願いします

熊野さんは左方向の三つ目を

比叡さんはカナ上空の一番上にある弾頭を

…私は真上にある二つを撃ち抜きます

全艦、全砲門を確実に合わせ命中させてください」

 

 

「「「了解」」」

 

 

 

深くそして弾頭を睨みながら全ての砲弾が膨張するのを見ており静かにその時を待つ

 

 

「っ!!不味いアイツ(古鷹)本気で撃ち抜くつもりか!やらせるかぁ!!」

 

 

先に古鷹が無力化しようとしているのを気付いたカナは慌てて主砲を構えるがそれよりも先に叢雲がカナに薙刀を当てる

 

 

「古鷹の邪魔をするんじゃないわよ!!」

 

 

「くっ!叢雲!!」

 

「我々も!!」

 

「居ますよ!!」

 

 

叢雲が薙刀をぶつけると同時に不知火の蹴りと磯風の主砲が命中しカナはよろけると同時に後ろに飛び退く

(くそ!身体がそろそろ不味いか!!)

 

 

「よろけた!?ダメージは通ってるのか!!」

 

 

「行くわよ!!だめ押しぃぃぃ!!」

 

 

 

そんな状態だと言うのにも関わらず古鷹は落ちてくる弾頭に集中し一つ一つの変化を見ていた

(……やっぱり予測した砲弾は全ての膨張が早い

理由としては時間差で爆発させ刃を飛ばし更に地面に爆弾を着弾させるのが目的

ならそれよりも先に爆弾を誘爆させる!!)

 

 

そして五つの砲弾が膨張しきると古鷹は叫ぶ

 

 

「今です!!撃てぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

「いっけぇぇぇ!!!」

 

 

「とおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

 

「撃ちます!!当たってぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

古鷹の合図にそれぞれの砲弾が狙い通りの場所に向かい放たれるとカナの砲弾が膨張しきり爆発を起こし爆発すると大量の弾薬と爆弾が落ちてくるが砲弾に直撃し誘爆を引き起こす

 

 

「やっほぉ!!やり!!」

 

 

「完璧ですわ!」

 

 

「流石古鷹さん!!」

 

 

砲弾が誘爆を引き起こすと残りの5発はそれぞれあらぬ方向に吹き飛んでいきその後に膨張し爆発を起こすと刃が飛び出し地面に突き刺さる

 

 

「す、凄い……あれを…撃ち抜いた…」

 

 

「……ヤバイ…っぽい…」

 

 

「流石古鷹だな!」

 

 

「頼りになります!」

 

 

「くぅ!カッコいいぜ!古鷹!!」

 

 

「流石は私の右腕ね」

 

 

「……はぁ……出来た…あはは……

腰が抜けそうだよ……恐かったぁ……」

 

 

全員が喜び古鷹は地面にペタンと座っているとカナは怒りに震えその砲を再び叢雲達に直接狙ってくる

 

 

 

「クソ!クソ!クソ!クソ!クソがぁぁぁぁぁぁ!!!

これでも死なないのか!あんた達は!!」

 

 

カナが怒り狂っている中叢雲は覚悟を決めたように深く息を吐く

(……コイツらなら信じられる

…今、アレをやるしかない!!)

 

 

「……磯風!不知火!木曾!夕立!時雨!比叡!鈴谷!熊野!古鷹!!

お願い!時間を稼いで!!

私は一旦戦線離脱をする!!」

 

 

「は!?」

 

 

「え!?」

 

 

「ちょ!?」

 

 

そう叫ぶと叢雲は艤装をしまいバックステップで後ろに下がると両目を瞑り深く深呼吸を開始する

 

 

「アハハハハ!!何よそれ!狙ってと言ってる見たいじゃないの!!

ならご希望通り!!」

 

 

棒立ちになっている叢雲に古鷹は気付きカナへと向かって走っていく

 

 

「最後だよ!!皆!!ここを!ここだけを踏ん張れば勝てるよ!!」

 

 

「ど、どういう意味っぽい!?」

 

 

「そ、そうだよどうしてそんな!!」

 

 

「夕立!時雨!良いからやるぞ!!

叢雲と古鷹の事だ!何かあるんだ!!」

 

 

「もうー!どうにでもなるっしょ!!」

 

 

「行きますわよ!鈴谷!」

 

 

「気合い!入れて!倒します!!」

 

 

「古鷹さんの恩人を信じましょう!木曾!行きますよ!!」

 

 

「あぁ!何かあるんだ!!それを信じよう!!」

 

 

全員は不確実なその古鷹の言葉を信じ全員でカナへと向かっていきカナも苛つきながらその相手をしていく

 

 

「どんなに来ようが無駄よ無駄ぁぁぁぁぁ!!」

 

 

カナは主砲を構えると夕立、時雨のペアが主砲をカナに当てようと放ってくる

 

 

「くたばるっぽい!」

 

 

「いっけぇ!」

 

 

「当たらないわよ!!」

 

 

だが、カナはそれを軽々と交わし反対側から向かってきている不知火、木曾のペアに顔を向ける

 

 

「沈め!」

 

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「鬱陶しいわ!!」

 

 

不知火の砲弾を手で弾き更に木曽の剣を掴むと思い切り自分に寄せると腹部を蹴り飛ばし不知火にぶつけると更に前方から磯風が突っ込んでくると同時に夕立と時雨が跳躍し飛び掛かってくる

 

 

「覚悟しろ!!カナ!」

 

 

「連携!」

 

 

「技っぽい!」

 

 

「黙りなさい!この駆逐艦風情がぁぁぁ!!」

 

 

カナは主砲を動かすと磯風と夕立に合わせ勢いよくその砲を伸ばし腹部にぶつけると吹き飛ばし残された時雨はそのままカナに腹部を殴られぶっ飛ばされる

 

 

「気合い!入れて!」

 

 

「やっちゃうよぉ!!」

 

 

そして続けて比叡と鈴谷が突っ込んで来ると主砲を動かし二人に照準を合わせる

 

 

「くたばれ!!」

 

 

「簡単には当たらないよぉ!熊野!!」

 

 

「了解ですわ!水戦さん!瑞雲さん!お願いですわ!!」

 

 

鈴谷の合図で熊野は瑞雲と水上戦闘機を発艦させカナへと爆撃を開始しそれをもろに受けると三人は更に主砲を構える

 

 

「ぐぅ!こ、小癪な!!」

 

 

「よっしゃ!行くよ!二人とも!!」

 

 

「分かってますわ!」

 

 

「お姉様を痛め付けてくれお礼です!

撃てぇぇ!!」

 

 

三人はカナに向かい砲撃をすると爆煙に包まれ鈴谷はガッツポーズをする

 

 

「良し!これで少しはダメージ与えたっしょ!」

 

 

「鈴谷!油断大敵ですわよ!!」

 

 

「ですが多少は与えたはず!」

 

 

だが次の瞬間爆煙を切り裂きカナが三人に向けて突っ込んでくる

 

 

「なっ!?」

 

 

「全く受けてない!?」

 

 

「嘘ぉ!?」

 

 

「少しはやるみたいじゃない!

だから近付いてあげる!!」

 

 

カナは全速力で走って来ており鈴谷と熊野は慌てて砲撃するがそれを軽々と交わしていき自らの拳が当たるほど近寄ると鈴谷の腹部を殴り付けぶっ飛ばす

 

 

「ぐふっ!」

 

 

「次はあなた!!」

 

 

「させません!!」

 

 

次に熊野を蹴り飛ばそうとするがそれよりも先に比叡がそれを艤装をぶつけ庇うのだが

 

 

「あら?じゃあ両方かしらね!!」

 

 

「ぇ?」

 

 

カナは両手を地面に付けると逆立ちの様な体制になり身体を思い切り回転させると比叡と熊野にアブソリュートの主砲がぶつかり二人とも痛みに苦しむ

 

 

「ガハッ!」

 

 

「きゃあ!」

 

 

「アハ!まだ終わらないわよ!!」

 

 

更に両手で地面を押し飛ばすと再び体制を立て直し苦しむ熊野の頭を掴み持ち上げ離すと思い切り蹴り飛ばす

 

 

「吹っ飛べ!!」

 

 

「グハッ!」

 

 

「熊野さん!!」

 

 

カナに思い切り蹴られた熊野は吹き飛ばされ比叡はそれを心配するが抑えカナを見上げると目の前に真っ暗な世界が広がっていた

 

 

「良かったわねぇ?私がまだ優しい方の深海棲艦で

あんた今ので死んでたわよ?」

 

 

「っ!?」

 

 

その目先の理由が理解できた

それはカナのアブソリュートの主砲でありこの状態で撃たれていたら頭が消し飛ばされていたからである

 

 

「ぶっ飛びなさいよ!!」

 

 

だがカナはあえて砲で撃たずにそのまま蹴り飛ばし比叡は転がっていきそれと同時に先程吹っ飛ばされていた夕立、時雨、磯風、木曾、不知火が後ろから襲いかかろうとしていた

 

 

「覚悟しろ!」

 

 

「飛行場姫!!」

 

 

「いい加減理解したどうかしら!?

あんた達じゃ無理なのよ!!」

 

 

カナは主砲を下に向けると勢い伸ばし宙に浮くと五人の攻撃を交わし更に真下へも主砲を向けた状態で

 

 

「くたばりなさい!五番スロット流星群(メテオ)!!」

 

 

右主砲から流星群(メテオ)を砲撃すると磯風達は慌てて

 

 

「待避!!!!」

 

 

待避しようとするがそれよりも先に流星群(メテオ)地面に着弾し大爆発を起こし五人を吹き飛ばしていく

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁ!!」

 

 

「ぐぅぅぅぅ!!」

 

 

「くそ!何て奴だ!」

 

 

そして地面に着地すると同時に起き上がりかけている比叡、熊野、鈴谷へ主砲を向けていく

 

 

「嘘!この状態は!」

 

 

「流石にヤバいですわ!!」

 

 

「よ、避けないと…!」

 

 

「無駄無駄無駄無駄!!!

避けられる訳ないでしょうが!!」

 

 

慌てて避けようとするが当然に間に合わず三人は砲撃されてしまい更に吹き飛ばされてしまう

 

 

「雑魚共がどんだけ群がろうが勝てるわけないでしょうが!!」

 

 

「それでも貴女を止めて見せる!!」

 

 

そして最後に古鷹がカナに突っ込み艤装を当てるの睨み付ける

 

 

「一番鬱陶しいのが来たわねぇ?古鷹!!」

 

 

「稼いで見せる!叢雲がアレを使えるまでの時間を!!」

 

 

 

 

 

 

 





次回

古鷹VS陸上姫カナ

叢雲が一時的に抜けたことによりすこしばかり押されている陸上部隊
それでも古鷹達は叢雲を信じ戻ってくるときを待つ


やっと浦風と山風のレベリングおわったぁ(70突破だけですが)
でもまだまだ育成する艦娘が多くてなぁ…()



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決戦 陸上姫カナ 三

目の前に立つその姫eliteカナと単身対峙しているだけでその威圧感を感じながら古鷹はすこしばかり怯えていた

(……改めてカナの前に立つけどやっぱり凄い…

殺意と怒り……そして今までに無いほどの圧倒的な存在感に押し潰されそうになる…正直勝てる見込みは無い

この人の砲撃は私より上手くしかも火力も桁違い……身の丈にはあってないけれど!!)

 

 

古鷹は後ろで意識を集中させる叢雲を横目にその砲をカナへと向ける

 

 

「それでも戦うんだ!」

 

 

「アハ!本当お前達は愚か者だな!!

たった一人の為に全員が命を賭けるとはねぇ!!

笑えてくるわ!雑魚共がぁぁぁぁぁ!!」

 

 

古鷹はすこしばかり距離を取ると主砲を脚に向けると同時にカナは近寄ろうとしてくる

 

 

「お前に距離を取るとこっちが危険だからね!

詰め寄らせて貰うわよ!!」

 

 

「やっぱり!接近してきましたか!!」

 

 

それと同時に古鷹はカナの脚を撃ち抜くがやはりほとんどダメージになっておらずカナは主砲を古鷹に向ける

 

 

「くたばりなさい!!」

 

 

「くっ!」

 

 

その瞬間カナは古鷹に砲撃するとそれを交わすと同時に地面を撃ち抜く

 

 

「どこ撃ってるのよ!お馬鹿さん!!」

 

 

「もう一撃!!」

 

 

そしてそのまま顔に向けて砲撃すると艤装を動かしその砲撃を無力化しながら更に接近してくる

 

 

「だから効かないってーー!!」

 

 

と言っている瞬間カナはガクンと体制を崩しその場に転けてしまい地面に顔をぶつけそうになる

 

 

「な、何で……っ!まさかこいつ私の足下にあった地面を撃ち抜いたのか!?」

 

 

「今!一斉砲撃!!」

 

 

体制を崩したカナ目掛けて全砲門から砲撃し命中すると爆煙に包まれるが更に距離を取る

 

 

「上手く嵌まってくれたけど油断は出来ない

叢雲がいつも言ってるもんね、確実に倒したと確認出来るまで油断はするなって」

 

 

「その意気込みは合ってるわねぇ、流石はアイツの仲間と言うべきね」

 

 

その言葉と共にカナは爆煙を切り裂き古鷹を睨み付けていた

 

 

「全く、下手に近寄れないとはねぇ?

本当にアイツの仲間はめんどくさい……」

 

 

「お褒め頂き恐縮だよ」

 

 

素直にそれを誉め言葉と古鷹は受けとるとカナは主砲を後ろの地面へと向けると身体を震わせる

 

 

「そうね、それならもっと早く貴女に近付いてあげる!!」

 

 

「何をする気!?」

 

 

「久しぶりね……でもこれを使うと周りも破壊するから嫌なんだけどあんたには丁度良いわ!!」

 

 

カナの艤装である主砲アブソリュートを半分まで縮小させると地面に向けて砲撃しその爆発で勢いで古鷹と距離を詰める

 

 

「っ!そんな無茶苦茶な使い方!?」

 

 

「私も無事では無いし諸刃の剣だけどこれが一番楽なのよ!!」

 

 

そのやり方は叢雲の脚を撃ち抜き距離を稼いだやり方と似ては居るものの明らかにその火力の物でやるものではなく直ぐ様古鷹に手が届く程の距離まで詰め寄る

 

 

「く、このぉ!!」

 

 

流石の古鷹も慌てて砲撃を撃とうとするがそれよりも先にカナが主砲を弾き飛ばし腹部を思い切り殴りつける

 

 

「ぐぅ!」

 

 

「吹き飛びなさい!」

 

 

腹部を殴られた痛みに耐えながら古鷹は何とか脚に付いている魚雷をカナへと蹴るように放ちそれと同時に勢い良く吹き飛ばされ木に激突し魚雷を見ると不発に終わっていた

 

 

「アハハ!良く飛ぶわーーー」   

 

 

「今っ!!」

 

 

だが古鷹は腹部と背中の痛みに耐えながら肩の主砲を魚雷目掛けて砲撃し爆発させると近距離で爆発を起こしカナはその威力にふらつく

 

 

「クソ!やっぱりただではやられない……か!!」

 

 

だが痛みはほとんど無くカナは再び主砲を地面に向けると砲撃しその勢いで古鷹と距離を詰めると古鷹を踏みつけ主砲を向ける

 

 

「く……こ…この…!」

 

 

「ばーかあんた達がどんだけ足掻こうが勝てるわけないでしょうが

にしても、安心したわ

これで少しは楽になる」

 

 

カナは少しずつ体重をかけていくと古鷹は苦しみに声を上げていく

 

 

「あぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「このまま!踏み潰してあげるわよ!!」   

 

 

「古鷹さんから!」

 

 

「離れろぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

苦しむ古鷹の後ろから木曽と不知火が襲い掛かるがカナは主砲を軽く動かすとその砲を二人に合わせ接射を放ち二人は爆煙と共に吹き飛ばされていく

 

 

「まだ動けたのか、全くめんどくさーーー」

 

 

「この!!」

 

 

二人に少しだけ意識を反らしたカナの腹部に向けて古鷹は接射をすると叢雲が付けた傷がすこしばかり開き血が吹き出す

 

 

「………こいつ!!!」

 

 

「はは……やっぱり傷は痛むんだね!」

 

 

「ふざけやがってぇ!!」

 

 

その砲撃がカナを完全に怒らせてしまい古鷹の首を持ち上げるとそのまま思い切り空へ投げ付けると跳躍し再び地面に叩き付ける

 

 

「ガハッ!」

 

 

「このクソ餓鬼!私に更に傷を付けるとは!!ぶっ殺してやるわ!!」

 

 

背中に異常な負荷がかかり激痛に襲われていると再び磯風達が立ち上がりカナへと向かっていこうとする

 

 

「それ以上古鷹に手出しはさせん!!」

 

 

「雑魚は黙って倒れてろぉ!!」

 

 

そして再び二門の主砲を磯風に向けると砲撃し吹き飛ばすと再び古鷹を踏みつけようとするのだが

 

 

「っ!居ない!!アイツどこに!?」

 

 

薄れている意識の中古鷹は誰かに抱え込まれておりゆっくりと地面に下ろされる

 

 

「……叢…雲…?」

 

 

「えぇ、ごめんなさい

少し遅くなったわ

安心して休んで良いわよ古鷹」

 

 

「……うん…後はお願い……」

 

 

「時雨、夕立

古鷹をお願い」

 

 

「分かったよ!」

 

 

「了解っぽい!」

 

 

古鷹の頭を優しく撫で二人に古鷹を任せると叢雲は立ち上がり艤装を構えるとカナを睨み付ける

 

 

「なぁんだ?戻ってきたの?

怯えて震えるのは終わりかしら?」

 

 

「……………」

 

 

カナの言葉に耳を貸さない叢雲の瞳は赤く染まっておりその姿に嫌な予感が直感を刺激し叢雲へ襲い掛かかる

 

 

「お前!何をした!!その瞳は何だ!!

やっぱりお前を先に!!」

 

 

「…………踏み込みからの右手からの左手での切り裂き」

 

 

「っ!?」

 

 

カナは全速力で叢雲に近寄りその呟きの様な声を聞くとすこしばかり困惑するが踏み込み右手で切り裂こうとするが叢雲は簡単にそれを交わし再び左手で切り裂こうとする

 

 

「遅い」

 

 

「っ!!」

 

 

叢雲はその左手を動かさないようにするために先に左主砲を左の二の腕に命中させ再び艤装で腹部の傷を抉ろうとする

 

 

「く!こ、こいつ!!」

 

 

「…主砲でガード、からの反撃せず後ろにバックステップ」

 

 

「っ!!!????」

 

 

その呟きと自分の行動が一致していることに気付く事は出来た

だがそれでもそれしか動けることが無くカナは同じ行動をしようとするが主砲でガードする前に叢雲は薙刀を放し脚で思い切りカナの右足を蹴り飛ばし転げさせると薙刀を拾い思い切りカナの右腕を突き刺す

 

 

「ぐ!こ、コイツ!!」

 

 

カナは突き刺さった状態で主砲を動かし叢雲に当てようとするがそれを軽々と叢雲は交わし伸びた主砲を踏みつけながら薙刀を引き抜き振りかざそうとする

 

 

(こ、こいつ!可笑しい!さっきから私の行動を!!)

 

 

「切り裂く!!」

 

 

「クソが!!」

 

 

思い切り振り下ろした刃はカナが自爆覚悟で残していた最後の副砲を地面に押し立てながら接射し無理矢理艤装を動かす事で叢雲の体制を崩させることで何とか防いだ

 

 

「まだ、そんなのを!」

 

 

「離……れろ!!」

 

 

そして地面を思い切り蹴ると艤装を反転させ叢雲もそれを理解しているかの様に後ろへと飛び回避する

カナは刺された痛みと叢雲の行動が先程と全く変わってることに気付き困惑していると叢雲は静かにカナを睨み付ける

 

 

「お前……何を得た(・・)!!あの少しの時間に何をしたんだ!!」

 

 

「…………私は負けない…自分の全てを犠牲にしても…絶対に仲間を守って見せる」

 

 

カナは初めて未知(・・)と言うものを知る

その力は深海側には無く叢雲と佐渡にし得られていない力

そして、それを初めて敵であるカナへとぶつける

 

 

 

「お前はもう、私に攻撃を当てることは出来ない(・・・・・・・・・・・・・・)

行動も攻撃も回避も私はお前の先を読む(・・・・・・・)!!カナ!!!」

 

 

その瞳は真っ赤に染まり少しだけ髪先が朱色に変化していた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『サァ見セテミロオ前ノ最後ノ足掻キヲ』

 

 




次回

発動 叢雲最強の能力先読み(未来予知)

叢雲は奥の手であり最後の力先読みを発動させる
そして着実に決着の時とタイムリミットは迫っていた

やっとここまで来ましたね!
今年中には終わるかな?


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決戦 陸上姫カナ 四

「先を読む……だと?ふざけたこと言わないでくれる!!」

 

 

カナはその意味がまだ良く分かっておらず主砲を足下に付ける砲撃し叢雲の上を取ろうとするがそれよりも先に叢雲は薙刀を地面に突き刺しそれを足場代わりにするとカナより先に空へと飛び上がる

 

 

「なっ!?」

 

 

「行かせるわけ無いでしょうが!!」

 

 

そして二門の主砲を放ち空中で回転するとかかと落としをカナにぶつけそのまま地面へと叩き付けると砂埃が上がり背中の痛みに苦しむ

 

 

「ガ……ハァ!!き、貴様ぁぁぁ!!」

 

 

「もうあんたは何も出来ない!!大人しく私に倒されなさい!!」

 

 

そして続けて主砲をカナに向けると一斉砲撃を放ち顔面を攻撃し着地する

 

 

「クソが!あんたそんな力を隠してたのね!!

良いわ!それならお前のーーー」

 

 

「仲間を取るって!?させないわよ!!」

 

 

カナが主砲を動かすよりも先に叢雲は突き刺さった薙刀を引き抜くと主砲を切り上げそのままカナに近寄ると腹部を再び蹴り飛ばす

 

 

「グフッ!こ、こいつ!!」

 

 

「まだまだぁぁ!!!」

 

 

そして薙刀で再びカナの腹部を切り裂こうとするが

 

 

「舐めるなよ!!叢雲!!

この私がーー」

 

 

「この程度で負けるかって!!

お見通しよ!!」

 

 

「っ!?」

 

 

カナの発言すら先に読み爪で薙刀を受け止めようとする事をまるで分かっていたかの様に薙刀を手放すと一歩後ろに下がるとカナが薙刀を掴む

そして

 

 

「突き刺されぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

薙刀を思い切り蹴り飛ばし掴んでいた薙刀はカナの手をすり抜けそのままカナの腹部へと貫く

 

 

「ぐ、ぐう!!コイツ!またしても私に傷を!!」

 

 

「まだ終わらないわよ!!カナぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「駆逐艦の癖に私に立てついてんじゃないわよ!!!」

 

 

そして瞬間的に近寄りカナから薙刀を引き抜くとその傷口から出血が目立ちカナも痛みに腹部を押さえていると叢雲は再びカナに食らい付いていく

 

 

「す、凄い……あの飛行場姫に優勢を取ってる……」

 

 

「何なのっぽい…あれ……」

 

 

「叢雲が…佐渡提督から授かっている先読み(未来予知)だ」

 

 

磯風はボロボロになりながらも立ち上がり困惑している時雨達にその説明をしていく

 

 

「さ、先読み?何それ?」

 

 

「佐渡提督が持っている技術の一つだ

敵の行動を完全に把握し、意識、行動、話す言葉さえも先に読むことが出来る一種の未来予知だ

あれを発動させたなら恐らく叢雲に敗北はない」

 

 

「それって!大演習会で長門さんとの戦いで見せたアレの事!?」

 

 

「何それ!無敵の能力じゃん!そんなんあるなら最初から使ってよねぇ!!」

 

 

「いや、そんな能力代償無しに使えるわけがないですわ

そうですよね?磯風さん?」

 

 

「あぁ、佐渡提督に聞いた事がある

能力の発動条件は相手とある程度戦うことであり敵の事を完全に理解しないといけない

そして、あの状態になると叢雲はアイツ(飛行場姫)しか見えなくなる

更に代償はかなり大きい

アレを使っている状態は完全集中状態、正にいつ爆発するか分からない爆弾を処理してるみたいな物だ」

 

 

「え…………それって…かなりヤバイんじゃ…」

 

 

「あぁ、敵の行動を一瞬でも見逃せず、初期動作も見逃せない状態だからなしかもその負荷は脳に直接掛かるらしい……」

 

 

「お、おいそれって……」

 

 

「一度でもその集中の糸が途切れれば二度と使えない

しかし、使い続ければ脳に負荷が重なり続ける

それも高速修復材で直せない脳にだ

つまり強いがその分自分もダメージを負いつづける

諸刃の剣」

 

 

「ひ、ひぇぇ……そんなものを使ってるんですか…?」

 

 

全員が単独で戦い優勢を取る叢雲を見ながら頭を押さえてしまう

 

 

「………つまり今叢雲は自分の身体を傷付けながら飛行場姫に優勢を取っている状態だ」

 

 

「そんなん……辞めさせないと駄目じゃん!!

叢雲はかなり疲弊してるんだよ!そんな能力使ったら本当に壊れちゃう!!!」

 

 

「駄目……です!!」

 

 

古鷹はボロボロになりながらも起き上がり止めようとする鈴谷を止める

 

 

「な、何でだし!あんた同じ鎮守府の仲間がそんな状態で止めないとか可笑しいんじゃないの!?」

 

 

「叢雲は!そんな状態でも、その先を見てるんです!

もしここで使わないと恐らく負けると叢雲は分かっていたんです!私達がいくら飛行場姫と戦っても体力も持久力も向こうの方が上!

つまり今叢雲が戦いを辞めれば我々は確実に負ける!!」

 

 

古鷹の言葉に叢雲とカナを見るとそれを納得する

戦っているカナは確かに傷が少なくしかも叢雲の早い動きに対応し更に鈴谷達をさっき一斉に相手出来るほどの余力を残している

それに対して鈴谷達はカナの攻撃を受けており持久戦に持ち込まれれば確実に負ける

 

 

「で、でも!!」

 

 

「叢雲を最後まで信じてください!!

私達は叢雲(希望)に頼るしか無いんです!!

叢雲が最後の希望です!あの能力を使うと言うとは彼女に勝機があると言うことです!!皆がそれに合わせてあげれば必ず勝てます!!!」

 

 

古鷹の説得に鈴谷頭を掻いていると比叡がカナに向けて主砲を向ける

 

 

「ひ、比叡!なにする気!?」

 

 

「何って叢雲の援護!

これ以上じっとしてるのは私好きじゃないんです!

だからあの娘の無い火力を私でカバーしたいんですよ!

それに!叢雲の実力は皆ご存知ですよね!?

あの長門さんに勝つほどなんですよ!それなら最後まで信じ抜きましょうよ!!」

 

 

その比叡の動きと言葉に全員は顔を見合わせると頷き主砲をカナへと向ける

 

 

「比叡さんの言う通りです、やりましょう

我々は我々の出来ることを!」

 

 

「あぁ!あれを倒さねぇと終わらないからな!!」

 

 

「もう!私達はお膳立てっていう感じ!

でも悪くないかも!!」

 

 

「あいつをぶっ倒してやりましょう!!」

 

 

各々が武器を構え一対一(タイマン)をやっている叢雲や周りに集まるとその行動が前を向いている叢雲にも理解できカナも焦りを見せる

 

 

「あら、古鷹が何か言ったのかしら?」

 

 

「こんなめんどくさいのに更に援護砲撃だと……舐めるなぁ!!」

 

 

カナが鈴谷に主砲を構えるが鈴谷は動かず構えていると叢雲がその行動を先読みし主砲を弾き飛ばし隙を作る

 

 

「今!!飛行場姫を撃ちなさい!!!」

 

 

「了解!熊野!比叡さん行くよ!!

主砲放て!!!」

 

 

「いっけぇ!!」

 

 

「砲撃開始ですわ!!」

 

 

三人が砲撃した後叢雲は薙刀で地面の土を蹴り飛ばし目眩ましをすると直ぐ様横に避けるとそのままカナに三人の砲撃が直撃する

 

 

「クソが!こいつ等はぁ!!」

 

 

「良い感じね!!

さぁ!行くわよあんた達!近接戦闘とカバーは私に任せなさい!!他は私が隙を作った瞬間躊躇いなく撃ちなさい!!!

私を巻き込んでも構わない!絶対に交わして見せるから!!

お互い信じて戦うわよ!!」

 

 

「「「「「「「了解!!!」」」」」」」

 

 

前衛に叢雲一人に対し後方に比叡、鈴谷、熊野、木曾、不知火、磯風、夕立、時雨、古鷹の九人の援護砲撃と言うとんでもない陣形ではあるがカナは一層に焦りを感じていた

 

 

 

 

 

 

 

 

「行くわよ!!あんた達!ここが勝負所!!

コイツを押しきって勝つわよ!!」

 

 

 

 

 

「舐めるなよぉぉぉぉぉ!!

艦娘共(略奪者共)!!!

一人残らず殺してくれるわぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





次回

最後の足掻き

先読みを発動させた叢雲に圧倒されるカナ
そしてジワジワと叢雲達はカナを追い詰めていく中でカナは二人の深海棲艦を叢雲に連想する

何となく、なんとなーくエピック7?とやらをダウンロードしましてやってるんですけど意外と面白くてはまって休み一日潰したアホがこちら
しかもリセマラしようとしたら引き抜くいレア度高いの来てリセマラ出来ないと言う悲しみ(それでも強すぎる奴引いてしまったから良しとしよう)



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決戦 陸上姫カナ 五

叢雲は一人カナに向かっていき他の艦娘は完全に援護に回っている最中木曾は歯を食い縛っていた

 

 

「……やっぱり俺は足手まといなのか…」

 

 

「木曾!くだらないこと呟いて無いで戦いなさい!!」

 

 

不知火が叫ぶとカナと対峙している叢雲に少しだけ変化が見えてきていた

 

 

「ねぇ、何か叢雲守備に回ってない?」

 

 

「……そう言えば……」

 

 

そう、叢雲はかなり苦戦を強いられていた

それもそのはず先読み(未来予知)は敵の行動を完全に把握しその攻撃を全て交わし先を読み取ることが出来る

だがそれは逆に攻撃が分かっているからこそ避けなくてはいけない

叢雲がカナに与えられる有効なダメージとは特殊魚雷誘爆型単装魚雷も明石に改装して貰った薙刀だけ

それに対しカナはアブソリュートの主砲二門に両方の爪、そして強靭な足技

圧倒的に戦力差があった

(後一つ!後一つだけ武器があれば!!)

 

 

「さっきの勢いはどうした!!駆逐艦叢雲!!」

 

 

カナは守備に回ることを辞め完全に叢雲を標的にし両方の爪も足技、そしてアブソリュートを伸ばす攻撃をしてきており叢雲はそれを全て交わしたり防いだりしていた

(何か!何か叢雲の手助けに!!)

 

 

木曾はそんな状態の叢雲を見るだけしか出来ず先程しまった刀を思い出す

(……これを渡せば…でも叢雲は駆逐艦…俺は軽巡…持てるわけがない!でも……)

 

 

『最後まで叢雲を信じてください!!』

 

 

出し渋っていると先程古鷹の言っていた言葉を思い出し刀を取り出す

 

 

「木曾!貴女何を!?」

 

 

「叢雲ぉぉぉぉ!!受けとれぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

そして思い切り叢雲目掛け自分の艤装である刀をぶん投げそれを聞いていた叢雲とカナが反応する

 

 

「あれは木曾の刀!!させるかぁぁぁ!!」

 

 

カナが先に動くとアブソリュートの主砲を短くすると刀が落ちる速度や高度を計算し吹き飛ばそうとするがそれよりも先に叢雲が主砲の目の前に飛び出す

 

 

「なっ!ちゅ、中止!中止!」

 

 

「今のそれなら間に合わないでしょ!!」

 

 

その通りにカナの主砲が伸びると同時に叢雲は脚をその主砲にぶつけると勢い良く吹き飛び木曾の飛ばしてくれた刀を左手で受け取る

(ぐぅ!お、重い!!

でも!!これで!)

 

 

普通は他の艦娘の艤装は使うことが出来ない

魚雷や砲弾なら爆弾として使えなくはないが発射機関や刀を抜くこと等は出来ないようになっている

そうなっている筈なのに

叢雲は勢い良く刀を抜こうとするとその両腕が白く染まり刀身を皆の前に晒す

 

 

「嘘でしょ!!何で叢雲が木曾の刀を使えるの!?」

 

 

「………ありえない、普通は不可能なはず!!」

 

 

「頼む!叢雲!ソイツを!我々の敵を倒してくれ!!!」

 

 

「オッケーあんたの大事な物預かったわ

助かるこれで」

 

 

「たかが一本武器が増えた所で!!状況は変わらないわよ!!!」

 

 

カナが再び叢雲に襲い掛かるが叢雲は木曾の刀でカナの爪を弾き飛ばすとその威力に驚いたカナが爪を上げてしまい腹部ががら空きになりそれを叢雲は見逃さず腹部を切り裂く

 

 

「ぐぬぅ!!こ、コイツ!!」

 

 

「行くわよ!カナ!!」

 

 

叢雲は踏み込むとカナと距離を一気に詰めると主砲を叢雲に向けて撃ち込むが木曾の刀を使いその砲弾を真っ二つにする

 

 

「馬鹿な!?」

 

 

「良い切れ味、最高じゃない!木曾!!」

 

 

そして叢雲は薙刀で心臓を突き刺そうと伸ばすがカナはそれを読んでおり砲身でその薙刀を吹き飛ばそうとし叢雲は薙刀を手放し両手で木曾の刀を振りかざし左腕に深い傷を付ける

 

 

「あぁぁぁぁぁぁ!!!痛い!痛いぃぃぃぃ!!!」

 

 

「まだ終らないわよ!」

 

 

「クソ!クソ!クソ!クソ!クソ!クソがあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

武器を一つだけしか増やしていないのにも関わらず叢雲はカナを更に追い詰めていく

 

 

「ぶっ殺してやる!!」

 

 

カナがアブソリュートを二門構え叢雲に放つがそれを先読みした叢雲はそれを跳躍し交わすと後ろから木曾、不知火、磯風の砲撃がカナに直撃し苛立ちながら後退りをする

そして叢雲は地面に着地すると再びカナに薙刀を振りかざし傷を与えていくと流石のカナも一歩、また一歩と後ろに下がり叢雲達は着実に前に進んでいた

 

 

「この私が!こんな!こんな艦娘(略奪者)何かに!!」

 

 

「あんたはもう終わりよ!!カナぁぁぁ!!!」

 

 

正に怒濤の勢いでカナを傷付けながらダメージを与えていくと中カナは歯を食い縛りながらある深海棲艦の名前を脳裏に思い出してしまい思わず口にする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「この!!エアと同じ能力(・・・・・・・)!更にクイーンと同じ全く隙の無い近接戦闘方法!!

本当に私の苦手な物ばかり集めた様な戦いしやがってぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

(エアと同じ!アイツも佐渡と同じ先読み(未来予知)が使えるの!?)

 

 

 

 

 





次回

敗戦記憶

カナは叢雲と戦い思い出す自らが敗北した一人の深海棲艦と勝ちを譲られた(・・・・・・・)深海棲艦を
自分より強い二人の化け物を


ちょっとだけカナの過去編ですかね?
ですが、後少しでカナ戦のファイナルステージになります!




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ドレス島過去編 空母と飛行場

カナは久しぶりに押されている戦いの中昔自らが弱いと思い知らされていた事を思いだす

それは椿や他の深海棲艦達にいつものように『貴女は最強の一角』ですと言われているのにも関わらずそれを認めようせず仲間達に話す自らの最も恥ずべき敗北記録

 

 

 

(私が弱いと言う理由?そんなのは決まっている

私はそんなに強くないと実感させられた事があったから、このドレス島を始元に任せられている時私は自身を誰にも負けないほどの最強の姫だと思っていた

だって、アブソリュートの火力と航空能力、そしてこの遠距離を見る視覚があれば誰にも負けないと知っていた

 

 

でも、それは幻想だった

あいつが私の前に現れ現実を見せるまでは)

 

 

ーーーー六年前ドレス島ーーー

 

 

「クソ!クソ!動きなさいよ!アブソリュート!!」

 

 

「無駄よあんたのそれは基幹を破壊されてあるわ

……全く、とんでもない姫ねあーんーた

ゲホッゲホ……あーキッツい

ここまでキツいのは初めてよ」

 

 

ドレス島にて二人の姫が激突していた海上に一人、そして陸上に一人

本来姫同士の戦い何てものは起きないはずなのに二人の姫は片方が喧嘩を吹っ掛けたことにより起こされた事であった

 

 

「私がのんびりと航行してるときに砲撃なんてしないでくれる?

それに、まさか私の艤装をほとんど壊すとはやってくれるわね………」

 

 

そう海上に居る一人の姫も無事ではない

艤装は煙を上げ飛行カタパルトこそは生きているものの水上航行装置は半壊主砲もへし折れ動かすのがやっとなレベルであり右腕は真っ赤な血で染まっており全身にも焼き焦げた後が残っている

 

 

そしてカナは空を奪われ、アブソリュートの接続部分を破壊され動かせずしかも左足を失っており右足だけだった

その光景を椿やソラは息を飲みながら見ておりその間には監視者が光景を記録している

 

 

「……流石は姫のelite同士

普通ここまでの激戦はあり得んぞ」

 

 

監視者が言うのには理由があった

それもそのはずカナが居た海岸沿いは大きく抉れておりカナの周りにはクレーターや木々は全て粉々になっておりカナも頭や肩から血を吹き出していた

 

 

「ヒ、姫様ガココマデヤラレタノハ初メテ…見タ…」

 

 

「いくらなんでもとんでもないですね……

これが姫様とカナ様の戦い……」

 

 

「全く、僕の『作った艤装』を滅茶苦茶にして……直すのは誰だと思ってるんだよ

でもまぁ、アブソリュートとイコライザ(空戦母艦)の実戦テストには申し分無いな

あれをあそこまで使えるカナもだけどエアもとんでもないな」

 

 

そして一人の深海棲艦が眼鏡を直しながら嬉しそうに話しているとカナが動き出す

 

 

「良し!まだ動く!!覚悟しなさいよ!!

エア!あんたなんかに負けるなんて私のプライドが許さないわ!!」

 

 

「まだやるのー?私、お風呂入りたいしアイスも食べたいんだけど?」

 

 

「うるさい!あんたがうちの艦隊を全滅させなかったらこんなことやってないわよ!!!

それに艦娘を殺さないとかほざいててうちの奴等に示しがつかないのよ!!

この裏切り者め!!」

 

 

「はぁ………もう徹底的に壊すしか無いみたいね……」

 

 

カナは二門の主砲を動かすとガコンと音をたてその照準をエアへと向ける

 

 

「私が負ける事はない!!

あんたはここで死ね!!!」

 

 

「死ねとか物騒ねぇ」

 

 

切羽詰まっているカナとは対象的にまだエアは余裕を残しており艤装に座ると再び動かそうとする

 

 

「第1スロット!!アンリミテッド(即撃徹甲弾)!!」

 

 

カナは二つの主砲でエアを撃ち抜こうと撃ち放つが

 

 

「ばーか、同じ技は二度は受けないわよ」

 

 

エアは勢い良く跳躍するとその砲撃を交わし再び艤装に着地するとカナに真っ直ぐ向かっていく

その姿にカナは驚くが再び主砲を構えエアを撃ち抜こうと第1スロットを撃つがエアはそれを軽々と交わしていく

 

 

「なっ!!お、お前!どうやって!!」

 

 

「あんたの動きを見ればどこに撃とうとしてるか簡単に分かるわよ!!」

 

 

「そんなわけあるかぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

エアの挑発に乗ったカナは二門をエアに向け連続で撃ち放って行くが少しずつ加熱されそして

カチッカチッと音を立てて動かなくなる

 

 

「な!ど、どうして!?」

 

 

「馬鹿者!カナ撃ちすぎでのオーバーヒートだ!!」

 

 

「クソが!こんなときに!!!」

 

 

「はい、あんたの終わりよ!!」

 

 

エアは全速力で近寄りそして海岸が近くなった瞬間急停止をするとその勢いでカナの目の前に着地する

 

 

「クソ!この空母風情が!!」

 

 

「あらぁ?引きこもり飛行場に言われたくはないわ?」

 

 

そして爪を振り下ろし襲い掛かろうとするがその腕を艦載機が正確に撃ち抜き動きを止めると思い切りカナを蹴飛ばし艤装ごと岩に激突し背中を強打する

 

 

「ガハッ……こ、…この私がぁぁぁ!!!」

 

 

「はい、チェックメイトよ

カナあんたのまーけ」

 

 

そしてトドメの様にエアが指を鳴らすと空からエアの艦載機から爆撃され艤装ごとカナは爆発し全身を火傷し赤黒く焼け焦げる

 

 

「クソ………この…私……がお前……何か…に…」

 

 

「はぁー……キッツい本当に

もう辞めてよね、私戦うの嫌いなんだから

それにあんたは強いわよ、油断したら私が負けそうだったし」

 

 

その言葉と共にエアはその場に座り込みカナは仰向けに倒れる

 

 

「…………化け物……め」

 

 

「あんたが言う?下手したらあんたの方がよっぽど化け物らしいけど?」

 

 

「………お前……なら…クイーンを……倒せる…のかも……な…」

 

 

「はぁ?あんたクイーンに勝ったんでしょ?

始元から聞いてるわよ、何嘘言ってーーーー」

 

 

「こーらー!!二人とも何してるのー!!

この島での喧嘩は辞めてっていつも言ってるじゃないのー!!」

 

 

「ヤバ、始元!で、でも痛くて動けない!!

ちくしょう!!カナあんたぁぁぁぁぁぁ!!」

 

 

薄れゆくその記憶にはもう一人の姫であるクイーンが映っていた

カナとクイーンは一度ぶつかったことがあった

それは意見の食い違い、破壊を求めるクイーンと平穏を求めるカナでは大きく意見が別れたのだ

そして、激突しカナが勝利を納めた

だがカナは理解していたクイーンが手を抜いていたと

(アイツは最後に『これはめんどくさい』とだけ良いわざと私の砲撃を受けて敗けを認めた

めんどくさいで済まされるのであれば間違いなく『倒せない訳ではない』と言うこと

……しかも私は近接戦闘苦手なのにアイツは砲撃を受けようと突っ込んでくる…それが私は怖かった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして今、私の目の前にそれと同じことをする駆逐艦が一人)

 

 

「カナぁぁぁ!!!」

 

 

「クソ!こ、こいつ!!」

 

 

恐怖、久しぶりにカナが感じたのはそれだった自らを犠牲にし突っ込んでくる叢雲がカナにとって最も相手にしたくなく危険な相手だと

どんなに有利を取っても、勝てると分かっていてもクイーンと同じ戦い方にエアの様に先を読んでくる叢雲が一番危険であり恐かった

だからこそ、この状況になることを最も恐れていた

 

 

「クソ!きょ、距離を取らなくては!!」

 

 

「逃がさないわよ!!カナ!!」

 

 

どんなに距離を離そうとしても叢雲は踏み込み近寄ってくる

カナのスタイルは砲撃戦闘を主体としているため近距離での戦闘は普通の姫と変わらない

だからこそ、叢雲との相性は最悪だった

 

 

「こ、こんな!こんな奴に!!」

 

 

「切り飛ばしてやる!!このぉぉぉぉぉ!」

 

 

そして、カナが後ろに下がると背中から潮風が当たり不意に後ろを振り返るとそこは完全な海

つまりカナはもう下がれなくなっていた

 

 

「クソ!もう陸がない!!これじゃあ………」

 

 

「逃がさない!

これで!トドメぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

目の前では叢雲が木曾の刀を振りかざしておりカナは舌打ちをすると片足で地面を踏みつけると脚に水上航行用の艤装が展開される

 

 

「舐めるなよ!!駆逐艦叢雲!私が海の上を動けないと思ってるなら違うわよ!!」

 

 

そして主砲を自分の真下に向けると叢雲が攻撃を中断しようとしておりカナはそのまま主砲を撃ち放ち海上へ逃げる

 

 

「なっ!!」

 

 

「嘘!自滅するつもり!?」

 

 

磯風達が驚く中カナが海上に降り立つと同時にその重さで海上が波打つがカナは海上に浮いていた

 

 

「ば!馬鹿な!?陸上型が海上に!?

そ、そんなこと聞いたことない!!」

 

 

「まさかアイツ海上戦闘も出来るのか!?」

 

 

「航行艤装正常に作動確認

四年振りだから動くか心配だったけど行けるもんね

さてとこれであんた達と同じね!!潰してあげるわよ!!」

 

 

カナが主砲を叢雲達に向けると叢雲はニヤリと笑い海上へと逃げていったカナを追い掛け自らも海上へと向かう

 

 

「行くわよ!あんた達!!もう少しよ!!

もう少しアイツを追い詰めるわよ!!!」

 

 

そして叢雲は不意にそのカナの姿を見ながら笑う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(佐渡の読み通りね、それならもう少しでアイツを倒せる!!!)

 

 

 





次回

陸から海へ

陸上を支配するカナをとうとう海まで追い込むことに成功した叢雲達
そして、佐渡の作戦が実を結ぼうとしていたが……

唐突ですが、カナ戦が終わったらちょっとした後書き見たいのを書きたいと思います(

まぁ、なんと言うか振り返り見たいのです()



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決戦 陸上姫&始祖級



今回長居です!(書きすぎた…)




叢雲が、海上に降り立つと少しばかりの頭痛がし頭を押さえる

(くそ、やっぱり来たか!でもまだ戦える!!)

 

 

叢雲達が迫る中カナは艤装に座るとシステムを開きその脚部のスラスターと航行艤装の耐久値、そしてアブソリュートの稼働状態を再確認する

(この巨大艤装、アブソリュートは一応海上でも使えるように設計はされているらしいけれどやはり脚部のスラスターは要注意ね

エアの艤装をヒントに改良したって言ってたけど

下手に攻撃を受け続けると動けなくなるまである……最悪アブソリュートを捨てれば自由に動けるけどそんなことしたら死は免れない)

 

 

そしてカナは主砲を動かすと叢雲達へそれを向ける

 

 

「褒めてあげるわ初めてよ(・・・・)

お前達が初めて私を海上に追い出したのは!!」

 

 

「行くわよ!皆!!

コイツを!ポイントまで追い出したら私達の勝ちよ!!!」

 

 

「「「「了解!!」」」」

 

 

叢雲が先頭を走りカナと再び近接戦を仕掛け先読みの力を使い行動を予測しながら戦い続けるが脳への負荷と身体への負担がかなり大きく先程よりは動きが鈍くなっていた

 

 

「海上でもそれは変わらない…か!

でも!少しずつ鈍くなってる見たいねぇ!!」

 

 

その様子を見ているとカナは艤装から魚雷を取り出し脚の艤装に装填すると叢雲達へ放つ

 

 

「コイツ!そんなものまで持ってたの!?」

 

 

「回避!回避!!」

 

 

その魚雷を避けると少しだけ離れた鈴谷と熊野に向けて主砲を構える

 

 

「馬鹿ね、それが当たらないのは知ってたわよ!!」

 

 

「ヤバ!」

 

 

「これが、最初からの目的!?」

 

 

「やらせないよ!!」

 

 

カナが主砲を構え砲撃しようとするがその隣に居る古鷹がカナの脚を撃ち抜き体制を崩させる

 

 

「くぅ!やっぱり海上戦闘は馴れないわね!!」

 

 

「カナぁぁぁ!!!」

 

 

体制を崩した瞬間を叢雲が狙い腹部に再び薙刀を突き立てようとするとカナがそれを受け止めようとするが

 

 

「ぐぅ!?」

 

 

叢雲が勢い良く突き刺すとカナが海上で思いきり押されてしまうその力に驚く

(こ、コイツ!!気のせいか!?

力が上がってる!?でも疲れも負傷もあるはず!!)

 

 

「まだ、まだぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「くそ、この駆逐艦がぁぁぁぁ」

 

 

カナはその薙刀を何とか受け流すと続けてくる振り下ろされる刀も受け止めるがやはり威力と力が先程より上がっており海上で押されてしまう

(可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい可笑しい!!!

やっぱり力が上がってる!!いくら海上だからと言えどこの艤装を持った状態の私が押されるなんて!!)

 

 

「す、凄い!叢雲が押してる!!」

 

 

「あのとんでもない艤装を持っている飛行場姫を!」

 

 

「勝てる!これは勝てるんじゃないかな!」

 

 

磯風達はカナを押して来ている叢雲を見ながら喜んでおり勝てると言う希望を抱き叢雲の援護に入る

 

 

「あんたを!!倒す!!!」

 

 

「クソ、こ、こいつ何でいきなり………」

 

 

怒濤の勢いで戦う叢雲を良く見るとカナはあることに気付くその容姿が少しだけ変化していることに

両腕は白く変わっており、両目とも真っ赤に染まり、髪先は朱色に変わったその姿を見てあることを思い出す

(こいつ、まさか混血(レイズ)!?

しかもそれを操っている!?で、でも始原はそれは不可能だって……それに混血(レイズ)であれば間違いなくこの戦いで死ぬわよ!コイツ!!)

 

 

「お前!その姿!!死ぬつもりか!!

それ以上使えばお前は身を滅ぼすぞ!!」

 

 

「そんなことどうでもいい!!今お前に勝てればこの後どうなろうと関係ない!!!」

 

 

カナの話を聞いてはいるが叢雲には目の前の敵を倒すと言うことしか頭に無く言われた意味を理解するよりも先にカナへ斬りかかる

(コイツ!本当に死ぬつもりか!?

だが、少し呑まれ(・・・)かけてる?何だ!コイツの中に何がいるの!!

私を押すほどの力とその能力!一体何がコイツに力を貸しているの!?明らかに通常の深海棲艦ではない何か!!)

 

 

カナは戦いながら力をどんどん上げている叢雲に恐怖を感じ始め逃げ腰になりつつあった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてカナが海上に降り立った時椿達は長門達を相手にしながらその光景を見ていた

 

 

「姫様が海上へ出てきた!?

どうやら、それほどあの駆逐艦や他の艦娘達は強いと言う事か………これは本格的に私も援護に行かないと不味いな」

 

 

「余所見してる場合か!?」

 

 

椿が海上へ降り立ったカナを見ているとガングートが単身突っ込んでくるが椿はそれを意図も容易く交わし主砲を鷲掴みにする

 

 

「今私は考え事をしているんですよ?ガングート

ちょっと邪魔しないでくださいよ…よっ!!」

 

 

「ガハッ!」

 

 

主砲を海上へ叩き付けると背中を強打し息がつまる

そしてその次にと言わんばかりに長門と陸奥が椿に接近する

 

 

「どうやら我々が有利になってきた様だな!!椿!!」

 

 

「貴女達!そろそろ降伏したらどうなの!?」

 

 

そして陸奥は蹴り技長門は拳を椿にぶつけようとするが二人の攻撃を簡単に受け止めるとニヤリと笑う

 

 

「有利~?何寝言ほざいてるんですか?

そもそもな話貴女達は私を倒せて無いじゃないですか!!!」

 

 

二人の攻撃を押し戻すと同時に両肩にある主砲で撃ち抜くと二人は爆煙に包まれ再び海上を踏みつけると波紋の様に広がり海中から深海棲艦が浮上してくる

 

 

「アハハハハハハ!!!この私を止めない限り深海棲艦は永遠と増え続けますよぉ!!

全く!始原様には感謝しないとですねぇ、私に深海棲艦を呼び出す権限を与えてくれたんですもの!!」

 

 

「クソ!また兵を増やしてきたか!!」

 

 

「本当に不味いわねアレ

いくら倒しても無限に湧いてくるなんて!!」

 

 

「私達が出ます!!」

 

 

「長門達は他の奴等をお願いするぜ!!」

 

 

「ここは青葉達にお任せです!!」

 

 

「お前達!だが、何故青葉が!?」

 

 

苦戦する長門達の間を衣笠、加古、青葉が抜けていき後ろを振り返ると明石達がこちら側に到着していた

 

 

「長門!これより我々明石艦隊も合流する!!

さぁ、最後のふんばりよ!!アイツを!我々の敵を殲滅しましょう!!」

 

 

「矢矧!来てくれていたのか!!

これは助かる、皆!ここが踏ん張り時だ!!

飛行場姫は叢雲たちに!我々は椿と深海棲艦の艦隊を潰すぞ!!!」

 

 

「「「「おぉぉぉぉぉ!!!」」」」

 

 

後方に下がっていた明石達も合流し長門達の間を抜けていった加古達は椿と対峙する

 

 

「久しぶりね!あの時古鷹さんが世話になったらしいじゃないの!!」

 

 

「どこかで見たことがあると思ったら……あぁ!あのアナザーが襲撃した鎮守府に残っていた艦娘達ですか!

と言うと古鷹の仲間ですかぁ……ハハ!!!成る程?

あの時古鷹を残して逃げていった腰抜けですかぁ!!」

 

 

加古がその話を聞くと唇を噛むと同時に椿に襲い掛かる

 

 

「貴様あぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「ほほう?その様子を見るに……古鷹が変わった原因は貴女達ですか…成る程?」

 

 

加古が近接戦を仕掛けようと殴り掛かるが椿はそれを簡単に受け止めると加古の身体を近付け耳にそっと呟く

 

 

「まさかとは言いますが、私と古鷹が出来ていると勘違いでもしましたかぁ?

そのせいで彼女は処刑されかけたとかですかねぇ?」

 

 

「くっ!コイツ!!」   

 

 

「ハハ!ビンゴ見たいですねぇ?あぁ、何て愚かで滑稽な艦娘達なのでしょうか……仲間を信じきれずその仲間を捨てたんですかねぇ!!!」

 

 

「離れろ!!」

 

 

椿に完全に事の顛末を読まれ勢い良く加古は椿を突き飛ばすとそれと代わるように衣笠が主砲を撃ちながら突っ込んでくる

 

 

「はぁぁぁぁ!!!」

 

 

「馬鹿ですねぇ!!私にその程度の攻撃効きませんよぉ!!」

 

 

衣笠の砲撃に直撃しながらも椿は衣笠に接近すると思い切り蹴飛ばすとそれを青葉が受け止める

 

 

「大丈夫!?衣笠!」

 

 

「グハッ!な、何て威力なの……

大丈夫よ……それより何でアイツあんなことを…」

 

 

椿は主砲を受け止めた青葉と衣笠に向け二人は慌てて避けようとするが

 

 

「やらせねぇ!!」

 

 

それよりも先に加古が椿の主砲を蹴り飛ばし再び接近すると近距離での砲撃戦を開始する

 

 

「ハハハ!!貴女は確か古鷹型二番艦の加古でしたっけ?まさか!貴女自らの姉を信じきれず疑ったのですが!?」

 

 

「うるさいうるさいうるさいうるさいうるさいうるさい!!!」

 

 

嘲笑いながら椿は加古へ近接戦闘と同時に主砲を撃ちそれを受けながらも加古は椿と何とか戦えていた

 

 

「滑稽ですね!!無様ですね!!惨めですね!!

自らの信じられる物を見付けられずにこうして私に八つ当たりすることしか出来ないとはねぇ!!」

 

 

「グフッ……あぁぁぁぁ!!」

 

 

椿に罵倒され砲撃を受けようとも椿を捉え反撃の為に砲撃をしているがことごとく交わされてしまい身体がボロボロになっていく

 

 

「加古!あんまり無茶しないで!!」

 

 

「加古さん!それ以上は不味いですよ!!」

 

 

「にしてもタフですねぇ……

愚かな艦娘さん?」

 

 

「……ハハ、この程度でタフって言われるのか?」

 

 

砲撃を受け続けていた加古は不意に笑うと椿の首もとを掴み脚を引っ掻けるとそのまま海上へ押し倒す

 

 

「何!?コイツこんなことも出来るのか!!」

 

 

「くたばれぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

そのまま自らの主砲を椿の腹部に押し付けると同時に接射するとヨロヨロと立ち上がり少し距離を取る

 

 

「ゲホッゲホッ……主砲はまだ撃てるか…」

 

 

「驚きましたねぇ、まさかそんなことも出来るとは」

 

 

砲撃を受けたはずの椿はそのままゆっくりと起き上がると首をゴキゴキと鳴らす

 

 

「嘘でしょ……接射が効いてないの?」

 

 

「情報は来ていましたが…まさかここまでとんでもないとは……」

 

 

「…………ハハ、凄いなやっぱり古鷹は」

 

 

二人がほぼ無傷の椿を見ながら唖然としている中加古だけは何故か笑っておりその様子を見た椿は首を傾げる

 

 

「ほほう?何が可笑しいのですか?古鷹の妹よ?」

 

 

「いや、古鷹すげぇなって思ったんだよ

だってあんたより強いんだろ?あの飛行場姫は」

 

 

「ハハ、何を当然なことを?あの人の前では私なんて足下にも及びませんよ………

姫のeliteにして誰にも支配されない最強の陸上型なのですからね」

 

 

「そうだよな……なのにあたし達はお前何かに(・・・・・)躓いてるんだよな……笑えてくるよ

情けなくて」

 

 

加古の言葉は今ドレス島に居る全ての艦娘にインカムを通して繋がれており椿と対峙しながらも話を続ける

 

 

「あたしは一度信じることを諦めた

あんたの言う通り一瞬でも古鷹を……姉ちゃんを疑った

そして見捨てたんだ、自分の為に

凄い後悔していたんだ、それでも自分に言い聞かせてた仕方のないことだって

でもな、それを覆す様にあの人が……叢雲と佐渡さんが現れた

二人は殺されるはずだった、解体されるはずだった艦娘を助けてその艦娘達に居場所を作り安らぎを与えている

あたしには到底出来ない、提督にもな

そして、古鷹も同じだ

どんなに苦しくても辛くても諦めずにお前達(深海棲艦)に向かっていく

戦力差があっても絶望的な状況でも負けると分かっていても絶対に

だから、あたしは決めたんだ

お前達がどんなに強くても強大でもあたしは戦い続けると……古鷹見たいになりたいから」

 

 

その言葉は全ての艦娘に聞こえ青葉と衣笠も主砲を取り出し加古も再び椿に主砲を構える

 

 

「だから!!あたしは!!お前なんかに躓いてる暇はねぇんだよ!!

どんなにあんたが強くても関係ねぇ!!あたしは古鷹見たいに強くなるんだ!どんなに砲撃してこようが!主砲を破壊されようが!航行艤装が壊れようが!足掻いて足掻いて足掻いて足掻いて足掻いて足掻いて!!

絶対にお前を倒す!!!

行くぞ!!衣笠!!青葉!!」

 

 

「えぇ!!やってやりましょう!!!」

 

 

「青葉!全力でコイツを倒しますよぉ!!」

 

 

 

 

その声は古鷹と叢雲にも届いており笑いながら聞いていた

 

 

「ふふ、言うようになったじゃないあんたの妹はさ?」

 

 

「うん、強くなったみたいだね加古」

 

 

その言葉を聞いていた椿は眉間にシワを寄せながら苛ついており主砲を加古に向け爪を肥大化させていた

 

 

「言ってくれますねぇ……?随分と生意気な事を……

たかが重巡三体が!!この私を倒すだと!?」

 

 

「ヘーイ!何言ってるデース!!私達も居ますよぉ!!」

 

 

その声の主は椿の横側から高速で接近し思い切り艤装を殴り飛ばすとその威力に椿は海上を滑る

 

 

「チッ!もう直したみたいですねぇ……金剛?」

 

 

「チッチッチ!舐めないでくだサーイ、私は金剛型一番艦ですヨー?そんなに脆くありませーん!!」

 

 

「金剛…さん」

 

 

金剛は加古に気付くと親指を立てながら笑みを溢す

 

 

「良い演説でしたー!確かにこんな奴に躓いてたら古鷹と叢雲に申し訳無いデースね!」

 

 

そして更に続けて雷撃が椿に命中すると同時にため息混じりに加古の頭を叩きながら金剛の隣へと大井行く

 

 

「全く、しばらく他の深海棲艦相手にしてたらこんなことになってるとはね

良い演説だったわよ、確かに叢雲と古鷹さんに申し訳ないわね」

 

 

「チッ!めんどくさいから他の深海棲艦に任せていたのにとうとうここまで来ましたか……」

 

 

「大井と金剛だけではないぞ!!椿!!!」

 

 

そして最後に椿へ砲撃が撃たれ慌ててそれを交わすと飛んできた方角を睨み付ける

 

 

「確かにな、正義の戦艦とも言われている私がこんなところで躓いてる訳にはいかんな……

覚悟してもらうぞ!!始祖級椿!!」

 

 

長門、金剛、大井が加古達と合流し椿に対峙する

その姿を見ながら椿は苛立ちを見せていた

 

 

「全く……大人しく実験の対象になっていれば良いものの…仕方ありませんね……微塵も残さずここで殺してあげましょうか!!艦娘共(略奪者共)!!」

 

 

艤装を展開させると再び長門達に襲い掛かり長門達もそれぞれ椿の右や左に回り込むと主砲を構え応戦していく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優勢に思えていた戦い

カナを海上に追い出し、椿へのダメージの蓄積

叢雲の先読み、加古の不屈の精神による艦娘達の励まし

この戦いに少しばかり勝機を見いだしカナや椿も少しずつ焦りを見せていた時

それは起きてしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁぁぁぁ!!!」

 

 

「く!ヤバイ!!」

 

 

不意にカナと対峙している叢雲がカナの両腕を弾き飛ばし両方の武器がカナのコア(心臓)を捉えようとしていた

 

 

「主砲でガードを!!」

 

 

「させないよ!!」

 

 

カナが主砲でその攻撃をガードしようとするも古鷹、鈴谷、熊野、比叡の砲撃により体制を崩してしまい動かせなくなる

(ま、不味い!!この状況は不味い!!

確実にあれを貫かれたら!!)

 

 

 

「トドメぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

「いけぇぇぇぇ!!!叢雲ぉぉぉぉ!!!」

 

 

「やっちゃえぇぇぇぇ!!」

 

 

「お願い致しますわ!!」

 

 

「イエーイ!!叢雲!!」

 

 

防ぎようがなく完全に致命傷を負わされることを覚悟していたカナは何とかその攻撃を交わそうとするがその瞬間

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ドクンと叢雲の身体が震え白くなっていた腕は元に戻り毛先が朱色になっていたのも消え、赤い目も元に戻っていく

そしてドシャア!とその場に崩れ落ち持っていた薙刀と刀が海上に突き刺さる

 

 

「…………へ?」

 

 

「………え……?叢……雲…?」

 

 

「……え?…え?…え??叢雲?」

 

 

「…ど、どう…したん……ですの?」

 

 

攻撃を受ける覚悟をしていたカナも驚くがすぐに切り替え体制を立て直すと勢い良く後ろに飛び退き崩れ落ちた叢雲を見る

(何?何?何?何?何?何????

どう言うこと?見逃された?嫌違う、そんなわけない……ならどうして……!!)

 

 

何かの作戦かと思っていたカナは叢雲の姿を見てそれは違うと確信する

それもそのはず叢雲は

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガハッ……ゴホッ…ゲホ……い、痛い……何…で……?」

 

 

カナが撃ち抜いた腹部が焼け焦げ更に全身から血を吹き出していた

更に苦しそうに疼くまり吐血をしながら海上を真っ赤な血で染めていた

 

 

「アハ……アハハハハハハハ!!

やっぱりかなり無茶してみたいねぇ!!

死にかけてるじゃないの!!アハハハハ!ならいっそのこと楽にしてあげるわよ!!」

 

 

「叢雲!!!」

 

 

「な、何で!!さっきまで何とも無かったのに!!」

 

 

「っ!!全艦!急いで叢雲を下げろ!!我々でカナを止めるぞ!!」

 

 

磯風の指示が聞こえる中叢雲は朦朧とする意識の中目を閉じると頭に何かの声が響き渡る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ダカラ言ッタダロウ、効果時間ハ長クナイト

時間切れ(タイムオーバー)だ』

 

 

 

 





次回

時間切れ(タイムオーバー)

優勢を保ち戦い続けていた叢雲が突如として倒れてしまう
全ての力を出しきりそしてそれをほとんど失ってしまった叢雲は再び立ち上がれるのか?

最終局面突入!!
やっとここまで書いたぁ……(作者なのに長く感じてる)
果たして彼女達は勝てるのか!それとも逃げるのか!
どちらでしょうかね?


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折れぬ意志

倒れ傷だらけになった叢雲を庇うように磯風達がカナと対峙している中叢雲はかなりの重症に陥り古鷹が叢雲を抱き抱えながら介抱する

 

 

「叢雲!叢雲しっかりして!」

 

 

「ガハッ……ゲホ………古……鷹……」

 

 

 

「な、何でいきなりこんな事になってるの!!

さっきまで何とも無かったのに!!」

 

 

「鈴谷!今は飛行場姫に集中しなさい!!

分かりませんが、今叢雲さんを守らないと我々の負けは確実です!!」

 

 

「退け!雑魚共!!退かないとお前達から沈めるぞ!!!」

 

 

「ここから先は!!」

 

 

「絶対に通さないっぽい!!」

 

 

いきなり倒れてしまった叢雲の穴を埋めようとそれぞれがカナに向かっていくが相手は歴戦の姫

全く相手にもならず吹き飛ばされてしまう

 

 

「く…臆するな!!数では我々が上なんだ!!」

 

 

「古鷹さんの恩人を守りますよ!!木曾!!」

 

 

「分かってるよ!!……くっ」

 

 

木曾は突き刺さっていた刀を取るとその柄に叢雲の血がべっとりと付いており悔しそうにその刀身をカナに振り下ろすとカナはそれを防ぐ

 

 

「軽いわね……そうよねぇ!軽巡とかはこの位よねぇぇぇぇぇ!!」

 

 

だが、カナは軽々と木曾の刀を弾き飛ばしもう片手で木曾を殴り飛ばし不知火を蹴り飛ばしていく

 

 

「このおぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

「アハハハハハハ!!アイツが居なければお前達なんてどうってこと無いのよ!!

大人しくアイツを差し出せば重症に留めておいてやるわよ?」

 

 

「そんなことで!!」

 

 

「仲間を売るわけないっしょ!!」

 

 

「ならば!!!死ねぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

カナは主砲を動かすと鈴谷、熊野を撃ち抜き吹き飛ばすと再び夕立と時雨が飛び掛かるがそれすらも首と頭を掴み投げ飛ばしていく

 

 

「叢雲!叢雲しっかりして!!ひどい傷…でもなんで……」

 

 

「……古…鷹…ガハッ!………ゴホッ…ゴホッ……」

 

 

酷い状態にも関わらず叢雲の瞳はしっかりカナを捉えており立ち上がろうと動き始める

 

 

「駄目!叢雲これ以上は!!」

 

 

「駄目……じゃ…ない…!……私が…やらない……と!!」

 

 

身体が動かないのにも関わらず無理矢理にでも動こうとする叢雲に更に追い打ちを掛けるように先読み(未来予知)の代償である頭痛が襲い掛かり身体と脳にダメージが蓄積し動ける様な状態では無くなってしまう

 

 

「痛い……頭が……視界が……でも……アイツを………カナを……私が……たおさな…い…と!!」

 

 

抱き抱えられた叢雲は何とか身体を動かし海上へと落ちると歪む視界の中手を伸ばし這いつくばりながら動いていく

その姿を見た古鷹は一つだけ決意をしそしてそれを叢雲に問い掛ける

 

 

「叢雲、一つだけこの状況で貴女が戦える方法がある

それをやらない?」

 

 

「……な……に…?」

 

 

古鷹は意を決っした様に這いつくばる叢雲を抱えあげるとその方法を伝える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私が、貴女の身体になる

叢雲は私の目になって!」

 

 

「……!!」

 

 

その意味を叢雲は分かっていた

それは古鷹が叢雲を背負いながら戦うと言うもの

以前二人は佐渡にあることを言われておりそれが二人の力が合わされば恐らくどんな敵にも勝てると言うもの

だが、その戦い方は古鷹だけにかなりの危険性がある

 

 

「だ……!」

 

 

叢雲が否定の言葉を言おうとした瞬間古鷹は微笑みながら口に人差し指を立てる

 

 

「駄目なんて言わせないよ

大丈夫、私は平気だから正直貴女の様に撃ち合えるとは思ってないけどでも今貴女が戦えるのはそれだけなんだよ」

 

 

「……………」

 

 

叢雲は考えていた

自分の事なんてどうでも良い、死んだって壊れたって仲間を助けられるならどうでも良いと

だが、この戦い方は正直自分を庇いながら戦いダメージは全て古鷹に行ってしまう

それに無茶であり古鷹も背中にいる叢雲を気にしながら戦う事になる

そして、何より仲間が傷付くのを見ていられるか不安であった

 

 

「ねぇ、叢雲

前にも言ったけど私はもう守られてるだけは嫌なんだよ?

確かに私は貴女に救われた、あの絶望から救いだしてくれた

それには感謝してるし本当に嬉かった

だからこれは少しばかりの恩返し……

なーんてね、そうじゃないの今私は貴女の力になりたい

救われたとか恩とかじゃないの、私は今戦いたい誰でもない貴女と」

 

 

「……古………鷹……」

 

 

「ずっとずっと、憧れてるんだ私は貴女に

どんなときでも諦めず戦い続ける貴女を

私の事を頼ってほしい、すがってほしい、手伝わせてほしい

だから叢雲     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私を信じて、貴女の命を預けて

必ず守るから」

 

 

その瞳は真っ直ぐ叢雲を捉えており言葉を失っていると不意にその瞳を見ながら笑みを溢す

 

 

「ふふ……アハ……ハハ……強く…なった…わね……古……鷹!」

 

 

「お陰様でね!恐い二人に散々鍛えられたからそりゃもう!」

 

 

叢雲はひとしきり笑うと古鷹に手を伸ばす

 

 

「死の……覚悟は……出来た……?」

 

 

そして古鷹はその手を取ると笑みを浮かべながら答える

 

 

「いつでも出来てるよ!私は貴女の相棒だもん、例え地獄だろうと絶望的な状況だろうと付き合うよ!」

 

 

手を取り合うと叢雲の基幹を一時的に外し叢雲を背中の基幹との間に背負うと古鷹の艤装にある鎖を叢雲に巻き付ける

 

 

「大丈夫……?重く…ない…かしら?」

 

 

「こんなのへっちゃら!大したことし全然軽いよ!

流石駆逐艦だね!!」

 

 

「ふふ……そうね…今日ばかりは…私が駆逐艦であることに感謝ね…」

 

 

少しずつ喋れる位までに回復した叢雲を背負い叢雲は古鷹の腰に主砲を回し頭を首元に置く

 

 

「良し…じゃあ…行く……わよ…!!」

 

 

「うん!行こう叢雲!私達の敵を倒しに!!」

 

 

 

そして異例ではあるが重巡の背中に駆逐艦が背負われていると言う状況での二人の戦闘は再開される

 

 

「私が…古鷹の…目になる!!

一言も聞き逃さない…で!!」

 

 

「はい!私が叢雲の身体になります!!!

絶対に貴女を守ります!!!」

 

 

「行くわよ…!!相棒(古鷹)!!」

 

 

「うん!絶対に倒そう!!相棒(叢雲)!!!」

 

 

そして二人は走り出す、時間稼ぎをしてくれている磯風達の元へ

 

 

 




次回

支えるもの

古鷹の協力により動く力を失った叢雲の代わりに戦うことを決め二人は再びカナへと立ち向かう
そしてその二人を援護するように動き出す者達が居た

そろそろイベントですかぁ……
資材集めないとなぁ



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工作艦の使命

古鷹は走りながら空へ向けて赤い信号弾を撃ち放つと空でそれが爆発し空を赤く染めると長門達がその意味を理解する

 

 

「信号弾!!しかも赤と言うことは………まさか叢雲が倒れた!?」

 

 

『えぇ……悪いわね…ちょっとドジ踏んだわ……でもそれだけじゃない…わ』

 

 

だがその意味が違っており訂正するために叢雲が無線を長門に向けて送っていた

 

 

「叢雲!大丈夫なのか!?」

 

 

『ぶっちゃけヤバイわ…話してるのも…辛い…だから一度だけ言うわ聞いて……

今、私は…古鷹に抱えられながら戦いを挑む……でも安心して…必ずポイントまでアイツを追い込む…だから…その時になったら私達が叫ぶわ……

そしたら分かるわよね…チャンスは一度きり……頼んだ…わよ…!』

 

 

ほぼ一方的ではあるがその通話越しの叢雲の声が掠れておりかなりの重症だと理解すると大井に話しかける

 

 

「大井!用意しておけ!!

叢雲と古鷹が飛行場姫を追い詰める!!

そしたらお前の出番だ!頼んだぞ!!」

 

 

「了解!!」

 

 

その通話は明石にも聞こえており歯を食い縛ると勢い良く矢矧の隣を走りぬけていく

 

 

「ちょっと明石貴女!!」

 

 

「私の仕事は艦娘の傷を治すこと!!

それなら私は今大怪我を負っている叢雲を助けることです!!今から叢雲へ向かって走ります!!皆さん警護をお願いします!!」

 

 

一切砲撃能力が無いのにも関わらず無謀にも戦場へと足を運ぶと深海棲艦が一斉に明石へと砲を向ける

 

 

「やらせは!!」

 

 

「しないよ~!!」

 

 

そして明石を守るように矢矧と阿賀野が守り更にその先を能代と酒匂が道を作る

 

 

「全く無茶するわね!!でも!」

 

 

「私達が守る!行って!明石さん!!」

 

 

「ごめんなさい!お願いします!!」

 

 

「よぉし!私も付き合うよ!!明石!!」

 

 

他の艦娘も明石の事を気にしながらも深海棲艦と戦いそして明石の目に叢雲達の姿が見えた瞬間目の前に一人の深海棲艦が立ち塞がる

 

 

「そう易々と通れると思うなよ!!工作艦!!」

 

 

「く、椿!!」

 

 

「明石!ここは私がーーー」

 

 

「退いて!!二人とも!!」

 

 

二人の後ろから声が聞こえその場から左右に避けると立ち塞がっていた椿に砲撃が直撃し爆煙と共に身体を傾ける

 

 

「伊勢さん!」

 

 

「行って!叢雲さんを助けてあげて!貴女は貴女の戦いをするの!!」

 

 

「ありがとう!行くよ明石!!」

 

 

二人はその椿の横を通り抜けようとするが直ぐ様椿は体制を立て直し夕張の首を捕まえる

 

 

「ぐぅ……こ、こいつ…!」

 

 

 

「夕張!!」

 

 

「通さないって言ってるでしょうがあぁぁぁぁ!!」

 

 

そしてそのまま海面に叩き付けると爪で夕張の首を切り裂こうとしてきており夕張は痛みに耐えるために目をぎゅっと瞑る

 

 

「だから!お前の相手は!!」

 

 

「私達デース!!」

 

 

だが、それよりも早く加古と金剛がそれに割り込み椿の両端から艤装をぶつけており体制を崩す

 

 

「く!てめぇら!!」

 

 

「島風!!」

 

 

「分かってるよ~!」

 

 

その一瞬を島風が見逃さずに倒れていた夕張を掴みあげると全速力でその場から離れていくと同時に明石の背中も押していく

 

 

「ありがとう!島風!」

 

 

「へっへーん!こんなのお手の物だよ!大丈夫二人を無事に届けてみせるからね!!」

 

 

「クソ共が!ならここから撃ち抜いてーーー」

 

 

「貴様の相手は私達だ!!」

 

 

椿が主砲で島風達を撃ち抜こうとするがそれよりも先に日向が立ち上がり椿に刀を振り上げるとそれを交わすために後ろに下がり主砲の射程外へと逃げられてしまう

 

 

「クソが!!この戦艦風情が!!」

 

 

「やるじゃん、日向!」

 

 

「この程度造作もないさ!!」

 

 

何とか椿の居る位置を抜けた島風に矢矧が通信を入れる

 

 

「島風!二人の事は任せたわよ!!」

 

 

『オッケー!任せておいて、必ず送り届けるよ!

提督の名に恥じないようにやってみせるね!!』

 

 

二人を運びながら島風は前で戦っている磯風達を見ながら笑みを溢す

 

 

 

「……あれがこの島の支配者…強いんだろうなぁ……」

 

 

 

 





次回

相棒(バディ)

古鷹が叢雲を背負い、お互いを助け合うために力を合わせるそれを振るい再びカナへと目指し戦いを仕掛ける


最近デスストランディングを買いましてね?
小島監督の奴らしく勢いでやってますがかなり面白いですなぁ……これ



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二人で一つ 

「皆さん!お待たせしました!!」

 

 

「来てくれたか……って!!」

 

 

「二人とも!何してるの!?」

 

 

古鷹の姿に流石の磯風達も驚きカナもその異様な状況に眼を疑うがすぐに嫌そうに眉間にシワを寄せる

 

 

「……更にめんどくさくなったわね…こいつら!!」

 

 

「古鷹…!少し…屈んで!!」

 

 

「了解!!」

 

 

古鷹が少しだけ屈むと海上に突き刺さった薙刀を叢雲が引き抜きカナに迫る

 

 

「私がアイツの…行動を読むわ……でも先読みは…使えない…だから予測だけに…なるわ…」

 

 

「それだけでも充分だよ、私じゃそれすらも出来ないから!」

 

 

「じゃあ行くわよ!!古鷹!!」

 

 

「うん!お願いだよ!叢雲!!」

 

 

古鷹は主砲を構え叢雲は手だけを動かし薙刀を構えているその姿を見ながらカナは舌打ちをするが直ぐ様微笑み

 

 

「お前達が一緒なら……お前達を同時に潰せばこの戦いは終わった様なもんよねぇ!!!」

 

 

カナはその瞬間主砲を構えると叢雲から予測をする

 

 

「右主砲は撃ってくるわ!左はぶつけてくる!!」

 

 

「了解!!」

 

 

叢雲の予測通り右主砲から砲弾が放たれるとそれを交わし更に左主砲は伸びてきておりそれを寸前で交わすとカナとの距離を詰めていく

 

 

「チッ!やはり予測されるか!!

だが!動いてるのは古鷹よね!!なら近接戦闘で!!」

 

 

そして近づいてきた古鷹に爪を振り下ろそうとすると

 

 

「良いわ!そのまま近付いて!!」

 

 

「はい!!」

 

 

叢雲は交わすと言う指示をせずにそのままカナに突っ込ませると古鷹の脇の下から薙刀を構え古鷹の頭に当たる寸前でその刃をカナの振り下ろされた爪にぶつけ弾かせる

 

 

「何!!そんな芸当を!!」

 

 

「古鷹!腹部に私が付けた傷がある!!蹴り飛ばしてあげなさい!!」

 

 

「はい!!」

 

 

「やらせるか!!」

 

 

古鷹はそのまま脚を持ち上げ蹴り飛ばそうとするがカナがもう片手でガードしようと動かすが叢雲はそれよりも先に主砲をカナの二の腕に命中させ再び傷口を開かせる

 

 

「ぐぅ……コイツ!!」

 

 

「はぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

そして古鷹の重い蹴りが命中しカナは海上を少しだけ滑り腹部を押さえる

 

 

「く……流石に痛いわね…こいつら!!」

 

 

「休まないで攻め続けるわよ!!古鷹!」

 

 

「うん!!追い詰めよう!!」

 

 

カナの行動を完全に把握している叢雲は完璧な指示とサポートをし古鷹はそれに合わせ攻撃していく

その姿を時雨達はただ傍観するしかなかった

 

 

「す、凄い……あの二人」

 

 

「飛行場姫相手に優勢を保ってるぽい!?」

 

 

「凄い……凄すぎる…正に息ピッタリだよ…まるでお互いが何をするのか分かってる位に…」

 

 

「………ふふ、やはり凄いなあの二人は

流石、あの長門が認めた最強だ」

 

 

その姿を見て磯風だけは笑っていた

 

 

「あれが、信頼でありお互いを信じ合う者達なんだよ」

 

 

カナの攻撃を叢雲が予測しそれを古鷹は交わし、更に避けきれない攻撃は叢雲が薙刀や砲撃で弾き飛ばす

そして確実に叢雲が傷を付けたところに古鷹が攻撃を仕掛けていく

その攻撃にカナは完全に押されており少しずつドレス島から沖へと追い出されていた

 

 

「クソが!いい加減離れろぉ!!!」

 

 

近接戦闘ばかりされておりカナはほとんど手が出せないことにイラつき主砲を海上に向けると撃ち放ち古鷹の目を眩ませると少しばかり下がり両方の砲を古鷹に向ける

 

 

「潰してあげる!第1スロット!!吹き飛べぇぇぇぇ!!」

 

 

「古鷹!合図したら交わして!!」

 

 

「了解!!」

 

 

カナが主砲を向けている間古鷹は走り後ろから聞こえるであろう叢雲の声を待つ

 

 

「まだよ……まだ、落ち着いて……大丈夫、貴女なら交わせる」

 

 

深く息を吐きカナの動きを観察しながら確実にカナに近づいていく

 

 

「死ね!!古鷹ぁぁぁぁ!!!」

 

 

その瞬間ガコンと音が鳴り叢雲が叫ぶ

 

 

「今よ!!!伏せて!!!」

 

 

「っはい!!!」

 

 

古鷹は急停止をし頭を下げるとその上を二つの砲弾がかすり叢雲の髪の毛を撃ち抜き顔を上げると再びカナへと向かっていく

 

 

「馬鹿な!?第1スロットを避けたぁ!?」

 

 

「「カナァァァァァ!!!」」

 

 

その姿を見ていたカナは確実に恐怖した

それもそのはず、当てられる筈の第1スロットすら当たらず自らの攻撃が完全に通用しなくなった二体の艦娘に成す術が無くなってしまい初めてここでカナは負けを想像した

だが

 

 

「舐めるなよ!!私はこの島の支配者にして守護する姫よ!!

この程度で私が負けを認める訳無いだろうがぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

それと同時にカナは艤装をしまうと爪を伸ばし古鷹に近接戦を仕掛ける

 

 

「古鷹!防御は任せて!貴女は攻撃して!!」

 

 

「了解!信じてるよ!!」

 

 

振り下ろされる爪は受け流し更に古鷹が叢雲の付けた傷を開くために蹴りや砲撃を加えていくのだが

 

 

「く……やばい!!」

 

 

叢雲の身体は限界をとうに越えておりとうとうカナの攻撃を弾けないほどに身体が言うことを聞かなくなっていた

だが、それをカナは見逃さない

 

 

「叢雲!?」

 

 

「どうやら、お前はもう無理なようね!!」

 

 

歪む視界の中笑みを浮かべるカナの爪が叢雲に振り下ろされるが古鷹は身体を動かしその爪を変わりに受ける

 

 

「うぅ!」

 

 

「古鷹!!」

 

 

「そっこぉ!!!」

 

 

叢雲を庇ったことにより古鷹の左腕が大きく傷付き血が吹き出してしまい苦しんでいると更に右腕からの爪に腹部を切り裂かれる

 

 

「グフッ!!」

 

 

「古鷹!!このぉ!!」

 

 

歪む視界が一瞬だけ元に戻った瞬間カナの右腕を切り裂き腕に深手を負わせる

 

 

「っつぅ!!こいつぅぅ!!」

 

 

そして再びカナの爪が叢雲を捉えようと振り下ろされるが

 

 

「させない!!!」

 

 

それよりも先に木曾がカナの爪を刀で受け止めるが力で押されてしまう

 

 

「貴様ごときが押せると思うなよ!!!」

 

 

「木曾さん!!」

 

 

「く、くぅ!!」

 

 

「木曾一人ではありませんよ!!」

 

 

木曾の後ろから腕を掴み不知火が助力するとカナの爪を受け止めることに成功しカナはイラつきながら舌打ちをする

 

 

「不知火さん!!」

 

 

「なら!もう片手はどうかしら!!」

 

 

そして、更にもう片腕で爪を振り下ろす

 

 

「させませんよ!!!」

 

 

すると古鷹の背中を引っ張ると比叡がカナの爪を主砲でカバーし攻撃を防ぐ

 

 

「比叡さん!!」

 

 

「よっこいしょ、大丈夫?古鷹、叢雲?

全く無茶苦茶するんだからさ!後は任せて!後少しだもんね!!」

 

 

「行きますわよ!皆さん!!」

 

 

負傷した古鷹を鈴谷が受け止め更に熊野が参戦しその横を磯風と時雨、夕立が駆け抜けていく

 

 

「そのまま受け止めていろ!!行くぞ!!時雨!夕立!!」

 

 

「了解!」

 

 

「さぁ!ステキなパーティーしましょう!!」

 

 

「雑魚共がぁ!調子に乗りやがってぇぇ!!!」

 

 

カナは爪を戻そうとするがその瞬間不知火が木曾から離れカナの腹部へと主砲を接射する

 

 

「沈め!!」

 

 

「グハッ!!コイツ!!」

 

 

意識が一瞬だけ不知火に向かった瞬間

夕立が比叡の艤装を足場にすると跳躍しながら魚雷をカナへと向け撃ち放つ

 

 

「くたばるっぽい!!!」

 

 

その魚雷は全弾カナに直撃し爆煙に撒かれるが腕でそれを切り裂く

 

 

「クソ!駆逐艦が!!」

 

 

「我々も!」

 

 

「居るよ!!!」

 

 

そして更に時雨と磯風の主砲が直撃し再びカナは一歩下がり更に木曾と比叡が追い込んでいく

 

 

「食らえぇぇぇぇぇ!!」

 

 

「気合い!入れて!当たってえ!!!」

 

 

更に木曾の雷撃と比叡の主砲が命中し更にカナは後ろへと下がっていく

 

 

「ぐ、ぐぅぅぅ!!こいつら!!」

 

 

「行くよ!熊野!!」

 

 

「えぇ!行きますわよ!!鈴谷!!一斉射!!」

 

 

「「撃てぇぇぇぇぇ!!」」

 

 

そして最後に熊野、鈴谷の一斉射撃が命中するとカナの身体に更に傷が付きどんどん後ろへと交代していく

 

 

「ぐ、ぐぬぅぅ、こ、この私……がぁぁ!!」

 

 

だがカナも応戦しようと主砲を構えようとするがその瞬間腹部に痛みを感じ頭を下げる

 

 

「き、貴様……!!」

 

 

「撃つのおっそーい……でも!終わりだね!!」

 

 

腹部を蹴っていたのは先程明石と夕張を運んでいた島風でありその一撃が致命傷だった

 

 

「ぐ、ぐ、ガハッ………く、…くそぉ!!」

 

 

カナは口から血を吐き出しヨロヨロと下がっていき体制を立て直そうとすると古鷹達が揃っていることに気付く

 

 

「皆さん!よろしいですか!

主砲!!一斉射用意!!」

 

 

古鷹の合図に時雨、夕立、磯風、鈴谷、熊野、比叡、叢雲、島風が主砲を一斉にカナに構える

 

 

「ま、不味い!!!」

 

 

「「「「「撃てぇぇぇぇぇ!!」」」」」

 

 

その合図と共に古鷹達の一斉砲撃がカナに降り注ぎ全砲弾が命中するとカナは海上を滑り大きく沖合いへと吹き飛ばされていく

 

 

「く、くそぉ!!こ、この私がぁぁ!!」

 

 

そして古鷹はカナに最後の一撃を下すために走りだす

 

 

「古鷹!最後の一押し!!」

 

 

「はい!!」

 

 

「う、動け……アブソリュート…!!」

 

 

カナはアブソリュートを再度起動させると主砲を古鷹に向けるが古鷹は恐れない

 

 

「終わりです!カナさん!!」

 

 

「何が終わりだ!古鷹!!伸びろ!主砲!!」

 

 

カナは勢い良く主砲を伸ばすが古鷹は寸前でその攻撃を交わし深手を負っているカナの腹部を思い切り蹴り飛ばし叢雲はカナの脚を撃ち抜く

 

 

「ガハッ!!」

 

 

「「行けぇぇぇぇぇ!!」」

 

 

古鷹と叢雲の攻撃は命中しカナは大分押されていき痛みに苦しんでいると叢雲が辺りを見る

 

 

「ついた!!古鷹!!」

 

 

「うん!!」

 

 

そして二人はおもっきり息を吸い込むと空に向けて叫ぶ

 

 

「「大井ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!

金剛ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!

お願い!!!(します)!!!!」」

 

 

その声はドレス島周辺に響き渡り大井の耳にも届いていた

 

 

「合図!!金剛!!お願い!!」

 

 

「了解デース!!」

 

 

大井は二人の合図を聞くとカナへと走りだし金剛はその警護をしようとするが

 

 

「どこに行こうと言うのですかねぇ!!!」

 

 

「くっ!椿!!」

 

 

その行く手を椿が阻もうとするとその横から加古が椿を押さえ込み大井に叫ぶ

 

 

「行ってくれ!!コイツはあたしに任せろ!!」

 

 

「っ!頼んだわよ!!」

 

 

「ごめんなさーい!!」

 

 

二人を逃がすために加古は身体を張り、大井は一つだけ持っていた爆雷を艤装から取り出すと握り締める

そして

 

 

「いっけぇぇぇぇぇ!!」

 

 

「不味い!この状態は!!」

 

 

その爆雷をカナへと投げ飛ばすとカナは反射的に避ける体制を取り海中に沈みそして爆発を起こす

それにカナはあっけらかんとすると笑いだす

 

 

「アハ、アハハ、アハハハハハハ!!!!

ま、まさか!これがあんた達の言ってた奴!?笑わせてくれるわね!!これが!?アハハハハハハ!!!!」

 

 

カナが海上で大爆笑している時気付くことは無かった

その爆雷が真っ赤な塗料をばら蒔き海中を染めていることに

そしてその振動はドレス島の海溝にも響いていたことを

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「合図!!皆!!!

この戦いに決着を付けるわよ!!!」

 

 

 

 





次回

切り札

ポイントまでカナを追い詰めることに成功した叢雲達
そこに大井は何故か爆雷を放つのが作戦だった
だが、それはある艦娘達への合図となっていた

来ましたね!イベント告知!
20からですか……今回はバッチリ資材貯まってるから頑張るぞい!!



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海底に潜む者達

「大井!!金剛!!来るまでコイツをここに止めておくわよ!!」

 

 

「「了解!」」

 

 

叢雲の指示に金剛と大井は動きだし長門へと通信をする

 

 

「長門!飛行場姫をポイントまで追い込んだ!!

そっちも用意しておきなさい!!」

 

 

『了解した!!それとそっちに明石と夕張が向かった!

叢雲、傷を治してもらえ!お前に死んでもらったら元も子もないからな!!』

 

 

「そんなこと!!」

 

 

「叢雲さん!!」

 

 

「古鷹さん!!」

 

 

負傷している古鷹と叢雲に明石と夕張が駆け寄り夕張は叢雲の基幹を持っていた

 

 

「二人とも酷い怪我です!こちらに!!」

 

 

「で、でも……」

 

 

「古鷹さん!!叢雲!!後は任せて!!」

 

 

古鷹が渋っていると金剛が既にカナへ近接戦闘を仕掛けており大井は更に雷撃を放ちカナを動かせないようにしていた

 

 

「大丈夫デース!少しの間だけ時間を稼ぎマース!!

二人は傷を治してください!!」

 

 

「……分かったわ、お願い明石!」

 

 

「…お願いします、明石さん!」

 

 

「はい!今すぐに!!」

 

 

そして明石は艤装を取り出し一番重症な叢雲を治療し始めるとその様子をカナはイラつきながら見ていた

 

 

「あいつが復活したら更にめんどくさくなる!!

先に殺してやる!!」

 

 

「叢雲と!」

 

 

「古鷹には」

 

 

「「手を出させない!!」」

 

 

主砲を動かしたカナに思い切り蹴りを与えるとその痛みに体制を崩すと通信が入る

 

 

『二人とも離れて!!!』

 

 

その通信を聞くと大井と金剛はカナを蹴り飛ばし距離を取ると二人に主砲を向ける

 

 

「この雑魚共が!!私に良くも!!」

 

 

「不味い!」

 

 

「大丈夫!もうコイツは私達に構ってられなくなる!!」

 

 

「はぁ?お前ら何を言ってーーー」

 

 

カナが言った瞬間突如雷撃が脚に直撃し体制を崩す

 

 

「なぁ!い、いつの間に!!

こ、コイツ!!」

 

 

いきなり見えない所からの雷撃に大井か不知火達が撃ったと思っていたが更に続けて同じ方向から複数の雷撃が放たれており脚に直撃すると脚部の艤装が大きく損傷する

 

 

「え!?な、何で飛行場姫に雷撃が!?」

 

 

「木曾、貴方ですか!?」

 

 

「い、嫌違うぜ!!」

 

 

「じゃあ一体誰が?」

 

 

 

「ぐ、ぐぬぅ!!な、何!?

一体何が私を!!」

 

 

「来ました!良し行きますよ!!大井!!」

 

 

「えぇ!流石は良い狙いね!!」

 

 

カナと不知火達は何が起こったのか分からず向かってくる金剛と大井を相手しようとするが更に複数の雷撃により体制をまともに取れない

 

 

「受けなさい!!飛行場姫!!」

 

 

「fire!!」

 

 

そして体制を直せないカナは大井と金剛の砲撃をもろに受けてしまいその場を動けないでいるとそれを見ていた磯風が動き始める

 

 

「っ!今だ!全艦隊!!カナに砲撃を集中させるぞ!!!」

 

 

「え?え?は、はい!!」

 

 

「わ、分かりました!!撃てぇぇ!!」

 

 

どこからか飛んでくる雷撃に体制を崩され更に海上では金剛達の集中放火を受けながらカナは必死に考えていた

 

 

 

「ぐぐぐぐぐ!!な、何!何なの!?一体何が私を………まさか!!

アクティブソナー!!!」

 

 

カナは自分の艤装に取り付けられた水中探査機とソナーを稼働させると海上の金剛達とは別に四つの反応を見つける

 

 

「見付けた!!

ど、どこ!この雷撃の正体は!!」

 

 

だが、カナは辺りを見渡すがそれらしき影は見えず必死にモニターを見るとそれが何なのかやっと理解する

 

 

「ま、まさか……この四つの影ってのは!!!」

 

 

自らの足下が真っ赤染まっているがそこに自らを苦しめている正体を掴む

 

 

 

「海中!?この雷撃の正体は潜水艦か!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

海上から見えないほどの奥深い海中の中四人の艦娘が飛行場姫を捉えており各々が魚雷を艤装から取り出していた

 

 

「捉えたわよ!!飛行場姫!!!!」

 

 

 

 





次回

最終作戦発動!飛行場姫ヲ討伐セヨ!!

佐渡の作戦が発動し更にカナを追い込んでいく
海中と海上の同時攻撃に流石のカナも防戦になってしまい
それを合図として長門が動き始め戦いを終わらせようとする

イベントが迫る中これが書き終わるか分からなくなってきましたわ(他ゲームもやりすぎてて)
次のイベントこそE1は甲攻略してやる……
と言うわけで村雨さんを育成中です、間に合うかな……



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最終局面


今回詰め込みました☆ミ








カナは雷撃を放っている者の正体を掴み何とかそれを避けようとするがそれを金剛達が阻止し全く動けなくなる

 

 

「クソ!クソ!クソ!クソ!クソ!クソ!!!!!

こいつらあぁぁぁぁぁ!!」

 

 

『良くも比叡さん達を痛め付けてくれたのー!!

イクの魚雷でしずめてあげるの!!』

 

 

『榛名さんや、大和さんを痛め付けたお返し…!!

許さない!!!』

 

 

『磯風や長門を良くもやってくれたでちね!!

絶対に許さないでち!!』

 

 

『私の仲間達をやってくれたわね!!

ずっと我慢してたけど絶対に許さないわ!!!』

 

 

イク、ハチ、ゴーヤ、イムヤは海中から海上に見える赤い印を目印に持っている魚雷を全弾使いきる勢いで撃っておりカナもその火力に全く動けなくなっていた

 

 

「ば、馬鹿な!潜水艦!?

近辺は潜水艦達で警戒させたはずなのに何で!どこから沸いて出てきたんだ!?」

 

 

「余所見してる場合か!?」

 

 

「うるさい!邪魔をするな!!」

 

 

椿は押されているカナを横目にイムヤ達がどこから出てきたのかを考えていながら戦っているとここら近辺の海底を思い出す

 

 

「………っ!?ま、まさか!!

あいつら2000メートルの海溝を通ってきたのか!?

だがあそこはかなり危険な場所なはず!!

ただでさえ、崩れやすいし下手をすれば死ぬ様な所を!」

 

 

「見事だ椿、正解だ!!」

 

 

その瞬間長門が殴りかかっており椿はそれを受け止めると話し始める

 

 

「そうだ、ゴーヤ達は最初から我々と共にこの島へと来ていた

佐渡提督の指揮の元太平洋に広がる迷路の様な海溝を通りこのドレス島へとな!!!」

 

 

「あそこを通ってここに来るなんてあり得ない!!

あそこは一度迷えば出られないほどの迷宮なんだぞ!?

更にかなり危険な海洋生物だっているのに!!」

 

 

「それでもだ!それでも、彼女達はその話に乗ったんだ!!

お前達を必ず倒すために!!!」

 

 

その瞬間長門は椿の艤装を掴むと思い切り握り締めていく椿を持ち上げようとする

 

 

「な、何をするつもり!?」

 

 

「私も…!もっと……頑張らない…と!!」

 

 

「ハハハ!!無理ですよ!貴女に持ち上げられるわけない!!

このまま撃ち抜いてやりますよ!!」

 

 

艤装を持ち上げようとする長門を嘲笑いながら主砲で撃ち抜こうとするが気にせず全力で持ち上げていると不意に浮遊感に襲われる

 

 

「無理だとか無駄なんて事は無いんだ!!

叢雲は勝てないと諦められていた飛行場姫を追い詰めた!!

瑞鶴はあの馬鹿げた航空部隊を壊滅させ制空権を奪った!!

イムヤ達は迷路の様な場所を通り抜けてきた!!

私達は必ず……勝つのだぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

その瞬間椿の艤装を持ち上げるとそのまま振り回す

 

 

「き、貴様まだこんな力を!!」

 

 

「貴様をここで必ず倒す!そして飛行場姫を倒し!!我々は前へと進む!!ぶっ飛んで……行けぇぇぇぇぇ!!」

 

 

そしてカナとは逆方向に投げ飛ばすと大和に指示をする

 

 

「今だ!大和!!椿を撃ち抜け!!!」

 

 

「っ!了解!!全砲門照準合わせ!!撃てぇ!!」

 

 

「ぐ!こ、こいつら!!!」

 

 

空中に投げ飛ばされた椿に砲撃すると直撃し爆煙を纏いながら海面に叩きつけられると主砲の一本がへし折れてしまう

 

 

「ぐぅ……流石に不味いか!!」

 

 

そして再び試験管を取り出し飲み干そうとするが

 

 

「させねぇよ!!!」

 

 

「チッ!古鷹の妹!!」

 

 

加古が爆煙を切り裂き椿に近寄ると試験管を破壊し更に追撃を行う

 

 

「クソ!まともに回復が出来ない!!」

 

 

「そんなことさせるわけないでしょ!!」

 

 

椿が後ろに下がろうとするとその逆側から衣笠が脚に向けて雷撃を放ち直撃させると体制崩し倒れそうになると青葉が更に追撃をする

 

 

「良くも古鷹さんを苦しめてくれましたね!!

椿!」

 

 

「チィ!重巡風情がぁぁぁ!!」

 

 

その追撃を交わすと更にガングートとウォースパイトが椿に迫る

 

 

「我々の事を!!」

 

 

「忘れてないかしら!!」

 

 

「ガングートにウォースパイト!!」

 

 

椿が体制を立て直そうとするが日向と伊勢に撃ち抜かれ再び体制を崩したところにガングートが椿の首を掴むと全身の力を込めてウォースパイトに投げ飛ばす

 

 

「行くぞ!!ウォースパイト!!」

 

 

「オッケー!行くわよガングート!!」

 

 

「ま、不味い!!それを受けたら!!」

 

 

「一斉砲撃!!」

 

 

「fire!!」

 

 

その瞬間ガングートとウォースパイトの挟み撃ちをまともに受けてしまい椿はフラフラとしておりかなりのダメージを与えていた

 

 

「ぐ………こ……この…私……が…!」

 

 

「これで終わりだ!!椿!!」

 

 

そしてそのフラフラの状態の椿を更に長門と陸奥が追撃にかかり椿は何とか応戦しようとするが視覚が揺れており能力が使えない

 

 

「く……長……門!!」

 

 

「お前をここで倒す!我々は前に進むんだ!!

だから……退けぇぇぇぇ!!」

 

 

長門は椿の腹部を殴りそのまま頭を掴み膝で鳩尾をけり更に思い切り蹴り飛ばすと腕を掴み海面に叩きつけ踏みつけそして艤装を掴むと思い切り空へと投げ飛ばす

 

 

「行くぞ!陸奥!!吹き飛べ!始祖級椿!!」

 

 

「えぇ!やるわよ長門!!一斉射!!」

 

 

「「撃てぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!」」

 

 

「ガハッ……この……この私が…!こんな奴等に!!

実験対象……何かに!!」

 

 

椿は空中に投げ飛ばされた状態で長門達の砲撃をまともに受けてしまい大爆発を起こすとそのまま力無く海面へと落ちていく

 

 

「……やったの?」

 

 

「…いや、恐らく一時的な物だ……多分また動き出す

加古!すまないが椿を頼む!!我々は作戦を実行する!!」

 

 

「了解だ!後はあたしたちに任せておけ!!」

 

 

「すまない!行くぞ!陸奥!ガングート!ウォースパイト!日向!伊勢!!

奴を……飛行場姫を倒すぞ!!」

 

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソ!クソ!クソ!クソ!この私がこんな!こんな潜水艦ごときに!!」

 

 

カナはイムヤ達の雷撃の影響でほとんど動けずになっており辺りを見渡しても友軍が一人も居ない状態になっていた

 

 

『大井!金剛!!今のうちに飛行場姫の体力を削って!!

こっちもそんなに搭載出来てないからいつ尽きるか分からないよ!!』

 

 

「分かってマース!だから今全力で撃ってるんデース!」

 

 

「にしてもコイツ硬すぎる!いくらなんでもこれだけの雷撃と砲撃、更に叢雲達の攻撃を受けているとは思えないほどに硬い!!」

 

 

カナは先程から大井達の砲撃に晒されているはずなのに艤装がほとんど傷が付いていなかっただが

 

 

「ぐ、ぐぅぅ!流石にキツイ…!」

 

 

「コイツがいくら硬くても通らないわけではない!!

確実にダメージは蓄積されている!もっとだ!もっと撃てぇぇぇぇ!!」

 

 

艤装には確かに傷は無かったが本体であるカナにはかなりのダメージが蓄積されておりそれに苛立ったカナは叫びを上げる

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

うざいうざいうざいうざいうざいうざいうざいうざい!!!!

もういいわ!!アクティブソナー!!!」

 

 

カナが海面を踏みつけるとそれが足に付いているソナーが反響しイムヤ達の居場所を特定する

 

 

「見付けた!良くもやってくれたわね!!コイツら!!

爆雷射出用意!!放て!!!」

 

 

そして艤装から無数の爆雷が出てくるとそのまま海中へと放たれていきイムヤ達の目の前に落ちてくる

 

 

『なっ!!』

 

 

『嘘!飛行場姫が爆雷を!?』

 

 

『や、ヤバイでち!!早く潜航してーーー』

 

 

『皆!!逃げないで撃ち続けるわよ!!』

 

 

三人が潜航して逃げようとする中イムヤだけはその爆雷に臆すること無く雷撃を撃ち続けていた

 

 

『な、何言ってるでち!?今逃げないと!!』

 

 

『そうなの!こんな大量の爆雷当たったら間違いなく死んじゃうの!!』

 

 

『そうだよ!今逃げないと手遅れになる!!』

 

 

『じゃあ!私達の任務を放棄するの!?

私達の任務は飛行場姫の脚を奪うこと!!

それが出来てない以上私は逃げない!!

皆だけでも逃げて!!』

 

 

三人が混乱する中イムヤだけは艤装から魚雷を取り出してはカナに向けて放っており自分の思いを三人に告げる

 

 

『私達が到着し戦闘するまで叢雲や古鷹は死に物狂いで戦ってくれた!私達にこの任務が出来るまで繋げてくれた!!

その思いに私は答えたい!!

皆苦しんでる!痛みに耐え!辛さに耐え!それでも絶望的な状況に抗い飛行場姫を倒そうとしている!!

だから、私は逃げない!私は!私にしか出来ないことを今やるんだから!!』

 

 

イムヤの思いを聞いていた三人は顔を見合せると微笑み逃げるのを辞めると再び艤装を構えカナへと雷撃を再開する

 

 

『成長したね、イムヤ

いつの間にか凄い強くなってる』

 

 

『まさかイムヤに言われるとは思わなかったの!

やっぱり佐渡提督に預けて正解だったの!』

 

 

『そうでちね!ここで私達が逃げたら作戦が水の泡でち!!

いいでちよ!最後までやってやるでち!!』

 

 

『ありがとう皆……行くよ!!アイツの脚を絶対に破壊する!!!』

 

 

『『『おぉ!(でち!)』』』

 

 

カナは爆雷を射出すると脚のダメージを確認しそれを見ながら怪訝そうな顔をする

(ヤバかったわ損傷45%……これ以上は危険すぎた

まぁあれだけ撃てば流石の潜水艦共もーーー)

 

 

と安心したのも束の間足下に再び雷撃が命中しカナは再び体制を崩す

 

 

「なっ!あいつら逃げてない!!死ぬつもりか!?」

 

 

「い、イムヤ!!」

 

 

『金剛!大井!聞こえる!?

こちらイムヤ!!

用件だけ言うからしっかり覚えてよね!!』

 

 

突然イムヤから通信が入りその用件をしっかりと聞く

 

 

『私達はギリギリまでアイツに雷撃を撃つわ!!

だから皆も攻撃を続けて!!私は逃げない!!』

 

 

「ちょちょ!イムヤ!!貴女危険すぎーーーって切れてるし!!もう!!」

 

 

「諦めてくだサーイ、イムヤもうち(小笠原)の艦娘デース!

諦めの悪さよ無茶も提督譲りデース

さぁ、やりますよ!!大井!!」

 

 

「全く……後で感謝しないとね!!」

 

 

 

そして一方的に通信をし終えると大井と金剛は再び主砲を構えカナへと砲撃を開始する

そんな状態が続いているとカナは焦りを感じ始めていた

(ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!

脚の耐久がそろそろ持たない!!これ以上ダメージを受けたら!!)

 

 

カナはその雷撃を何とか交わそうとするが交わす先に砲撃を受けてしまい身動きが出来ずどんどん表記される脚の耐久が削られていく

(55……60……70……80……!!!)

 

 

それと同時に爆雷膨張していくと端から一つずつ爆発していきハチが少し怯えるがそれでも雷撃を撃ち続けいきカナの表示にはemergencyと表記されてきていた

(82……86……89……93……早く!早く!起爆しなさい!!爆雷!!)

 

 

 

『『『『いっけぇぇぇぇ!!』』』』

 

 

そしてとうとうイムヤ達の周りにあった爆雷が膨張すると一気に大爆発を起こしゴーヤ、イク、ハチが爆発に巻き込まれていく

 

 

『『『きゃあぁぁぁぁぁ!!!』』』

 

 

『お願い……これだけでも!!!』

 

 

そして、最後に残ったイムヤが一撃だけ雷撃を放つと三人と同様に爆発に巻き込まれ艤装もほとんど破壊されていきゆっくりと意識を手放していく

 

 

『ごめん……皆………ここまで……みたい……

後……任せた……わよ……』

 

 

それと同時に海上ではカナの辺り一帯に水柱が上がり爆雷が爆発したことを知らされ金剛達は唖然としながらイムヤ達には連絡を取ろうとする

 

 

「イムヤ!イムヤ!!応答してください!!」

 

 

「ハチ!ハチ!!ちょっと聞こえる!?」

 

 

「イク!応答してください!!イク!」

 

 

「おい!ゴーヤ!聞こえるか!ゴーヤ!!」

 

 

「フフフフ、アハハハハハ!!!どうやら終わった見たいねぇ!!あんた達の切り札とやらは!!!」

 

 

各々がイムヤ達の心配をする中カナは大声で嘲笑い自らのモニターを見ていた

モニターにはダメージ率95%で収まっており脚の艤装は黒煙こそ上げているものの動いてはいる

 

 

「作戦失敗見たいねぇ!!アハハハハハ!これであんた達の負けは確定ねぇ!!アハハハハハ!!!」

 

 

と笑っているとイムヤが最後に放っていた雷撃が迫りそれがカナの脚部に命中すると更にダメージを与える

 

 

「イムヤの雷撃!!」

 

 

「イムヤ……最後まで……頑張ってたんだ…」

 

 

「ぐぅ!ま、まだ残っていたのか……

くぅ……あ、脚が……」

 

 

そしてカナが海面に膝を付き苦しそうにしており金剛達は笑みを浮かべる

 

 

「よ!良し!これで飛行場姫の脚を奪っーーー」

 

 

「なーんてね?そんなわけ無いでしょうが!!!

アハハハハハ!!!ざーんねんでした!!!」

 

 

カナはそう言うと立ち上がり金剛達に向け主砲を構える

 

 

「なっ!!コイツ!まだ動けるの!?」

 

 

「いやー…流石に焦ったわよ?まさか耐久があと少しで持ってかれる所だった

良い火力と精密射撃ね?いや本当に……先に倒せて良かったわ」

 

 

カナの脚部の耐久は99%でとどまっており少しずつ時間経過と共に修理が始まっていた

そしてゆっくりと金剛達に主砲を構え狙いを定める

 

 

「さてと……邪魔な奴も消えたこれであんた達をーーーー」

 

 

と言い掛けた瞬間砲撃音が鳴り響き脚部に鈍い痛みと焼ける様な熱さを感じ脚を見ると何者かがカナの脚を撃ち抜いていた

 

 

「な……な…な、な、な、な、な、な!!!!!」

 

 

「イムヤさん達の働きは無駄ではありませんだって」

 

 

その砲撃音をした方角を見ると古鷹が主砲を構えており座った状態でカナの脚を撃ち抜き微笑んでいた

 

 

「皆がそこまで貴女の脚を損傷させたから、私が貴女の脚を破壊できたんですから」

 

 

「「古鷹(さん)!!!」」

 

 

「ふふ……流石、良い精度ね…」

 

 

「き…き、き、貴様ぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

それと同時にカナの脚部が黒煙と共にバチバチと音を立てモニターが99%と言う文字から損壊と言う文字に変更されカナの脚部が大爆発を起こしその場に座り込む

 

 

「やった!やった!やったぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「飛行場姫の脚を壊した!!」

 

 

「凄いっぽい!!凄いっぽい!!」

 

 

「すっげぇ!流石古鷹!!」

 

 

「貴様……!古……鷹ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

痛みと脚の耐久が無くなったカナはその場に崩れ落ちておりアブソリュートの重さに耐えきれず全く身動きが取れなくなっており古鷹を睨み付けていた

そして

 

 

「長門!今よ!!!」

 

 

「分かっている!!全艦隊!!主砲を飛行場姫へと向けろ!!!」

 

 

その言葉を聞いたカナは慌てて長門の方角を向くと背筋を凍らせる

 

 

「全艦隊!照準を飛行場姫へと向けろ!赤城!空母艦隊共にそれまでの間深海棲艦を近付けるな!!!」

 

 

「了解!!」

 

 

「不味い!あれを受けたら流石の私も!!」

 

 

連合艦隊の主力となっている戦艦、重巡達は一斉にカナへと主砲を向けておりその姿を見たカナは何とかしてそれを避けようとするが脚を破壊されており全く動けそうにない

 

 

「用意は良いな!!全艦隊!これで終わりだ飛行場姫!!

主砲用意!!一斉射撃!!」

 

 

そして長門がこの戦いに終わりを告げるために全艦隊は全身全霊の声を上げる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「「「「「撃てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」」」」」」」

 

 

長門達の掛け声と共に砲撃が放たれその全てがカナへと雨の様に降り注いでいく

(不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い不味い!!!!!!

流石の私もこんな!こんな砲撃を受けたら!!)

 

 

何とかしようとするも盾は破壊され、脚は破壊され、腕は重症を負い、動きずらい海上に来ていたカナにはどうしようも無かった

 

 

 

「この!!略奪者共がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!!」

 

 

その雄叫びと共に無数の砲弾がカナへと降り注ぎ大爆発を起こすと辺り一帯に衝撃と黒煙が上がり大きな水柱が上がる

 

 

 

 

 

 





次回

歴戦

とうとう佐渡が計画していた作戦が完遂しカナに長門達の一斉砲撃が命中した
椿は倒れ、カナは撃ち抜いた
全てが終わったはずだった

最近やるゲームが多くて小説遅れぎみなのは申し訳ありません……
やる気はあるんですけど如何せん時間ががががが



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最終局面 二

「………やった…のか?」

 

 

「……えぇ、流石に終わりよ」

 

 

ほぼ全艦達からの砲撃をカナは受けてしまいまだ晴れない爆煙の中静かに時は過ぎていく

そしてそれを見ながら叢雲は安心し背中を明石に預けていた

 

 

「……ふぅ、長かったわね…」

 

 

「そうだね……疲れちゃったね叢雲…」

 

 

その側では古鷹も修理を受けており修復材でゆっくりと傷を治していた

全てが終わったと感じた金剛と大井は急いで叢雲に駆け寄ってくる

 

 

「叢雲!!」

 

 

「古鷹!!」

 

 

「あぁ……金剛…大井…お疲れ様よ…」

 

 

「本当に無茶し過ぎデース!!もう!もう!

でも流石は提督の相棒(バディ)デース…ゆっくり休んでください?」

 

 

「古鷹さんもよ、本当に無茶ばっかりするんだから!

でもやっぱり憧れちゃうな……私達ももっと頑張らないと」

 

 

そしてそれと同時に海上に二人の艦娘が浮上してくると視線が集中する

 

 

「ぷはぁ!……あー!やっと終わったのね!!!」

 

 

「あー!空気が美味しいでち!!」

 

 

「イク!貴女無事だったの!?」

 

 

「ゴーヤ!お前なんで通信に出なかったんだ!!」

 

 

二人は浮上すると同時に一人ずつ艦娘を抱えており笑みを浮かべながらボロボロになったスク水を直していた

 

 

「無事じゃないの!!あの爆雷は直撃したけどイクとゴーヤはそんなに酷くはやられなかったの!

だけど、二人が!!」

 

 

「磯風!早くイムヤとハチを明石さんに!

二人とも意識が無いんでち!!」

 

 

「分かった!明石!すまないがこの四人も頼む!!」

 

 

 

イクとゴーヤは二人とも海上をキョロキョロすると明石を見付け大慌てで明石に向かって泳いでいく

 

 

「あ、明石!イムヤとハチが!!」

 

 

「……大丈夫ですよ、怪我は酷いですが意識を失ってるだけですお任せください!」

 

 

明石の診断にゴーヤとイクは喜んでいると叢雲は無理矢理身体を動かしイムヤの頭を優しく撫でる

 

 

「お疲れ様イムヤ、全く無茶するんだから」

 

 

「お疲れ様ですイムヤさん、良く頑張りましたね」

 

 

その様子を見ていた鈴谷達も脱力するとその場に崩れ落ちるように座り深く溜め息を付く

 

 

「はぁ~………終わったぁ…………つーかーれーたー!!!」

 

 

「えぇ……流石に疲れましたわ…」

 

 

「二人ともお疲れ様、良い戦いでしたよ」

 

 

「本当に良くやったわね、鈴谷、熊野」

 

 

深海棲艦と戦っていた神通と山城が鈴谷達に近付くと激励しており夕立達もその場に座り込んでいた

 

 

「疲れたっぽい~……」

 

 

「だね……僕も流石に…疲れたよ……」

 

 

「お疲れ様だ、二人とも

良く頑張ったな」

 

 

「ふぅ……これで北上さんやお姉様に一歩は近付いたかな?」

 

 

「……終わりましたか、お疲れ様です木曾」

 

 

「あぁ……終わったんだな………やはり俺はまだ弱いな……」

 

 

比叡達も疲れはてておりその場に座り込み不知火も疲れからか膝に手を当てながら休んでおり木曾だけは刀を握り締めていた

 

 

「………終わったか…飛行場姫…」

 

 

砲撃を受けたカナは爆煙が少しずつ晴れており艤装が焼き焦げていた

カナ自体も意識が無いのかその場に倒れており深く深く息を吐く

 

 

「終わったわね長門、お疲れ様」

 

 

「あぁ、ローマ増援ありがとう

本当に助かった」

 

 

「私達はなにもしてないわ、62型も壊しちゃったしやられそうになってたし……本当何にもしてないわね…」

 

 

「そんなことないさ、深海棲艦を相手してくれていただけでも大助かりだ」

 

 

辺りを見ると深海棲艦達はカナと椿が倒れていることに驚愕し狼狽えておりどうしようか悩んでいた

 

 

「聞け!これ以上我々は戦いは望まない!!

逃げたいのなら逃げるが良い!!我々は追撃はしないと約束しよう!!」

 

 

長門の言葉に深海棲艦達は顔を見合わせるとクモの子を散らすように逃げ出していきその場には倒れた椿とカナだけになってしまい長門も安心のあまり膝をつく

 

 

「長門!!」

 

 

「む………大丈夫だ……すまない…ちょっと疲れただけだ……」

 

 

「全く無茶してないでよね?貴女はエース何だから?」

 

 

「ハハ……すまない」

 

 

再び長門が立ち上がろうとした瞬間その違和感に気付いた

 

 

「………なぁ、陸奥」

 

 

「何かしら?長門?」

 

 

「………アイツの主砲動いてないか?」

 

 

「え?」

 

 

長門がカナを指差しながらそう言うと確かにカナの主砲が長門達を捉えているがカナは全く動く気配が無く首を傾げる

 

 

「そうかしら?元々あの位置じゃなかったかしら?」

 

 

「………そうか…じゃあ……ーーーー!!!!」

 

 

だがその瞬間長門は背筋が凍りつき全身から冷や汗が止まらなくなる

それはカナが立ち上がったとか動き始めたとかではない

見えてしまったのだ、長門はそれを

そして感じてしまったその何かを

 

 

「どうしたの長門!?その汗!!」

 

 

「分からん……だが何だ……この感覚………寒気がする……まるで目の前に死があるかの様な……そんな……」

 

 

そして見ていたカナの身体に何か黒い稲妻の様な電気が走っているのを

ほんの一瞬、瞬きするほどのそんな短い間、何か電気の様な物がカナの艤装に走っているのを

 

 

「……何か可笑しい……!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あー!戦い終わってる!!」

 

 

そして戦いが終わったドレス島から一人の艦娘が一人の少女を連れながら叢雲達に近付いてくる

 

 

「あれ?阿武隈さん?

何でここに?」

 

 

「ちょっとー!私も陸上戦に加わろうとしたのに終わっちゃってた!?

実は長門さんに飛行場姫を倒せって命じられてたんだけどねその道中で艤装の破片を拾ってね

もしかしたらここに艦娘が居るかもって捜索していたら何と!地下にこの娘が投獄されていたの!!」

 

 

阿武隈が肩を貸している艦娘はかなりボロボロの状態になっており力無く寄りかかっていた

 

 

「……誰かしら?この娘?」

 

 

「分からないけれどあたし的には多分艦娘だと思うんだよね!」

 

 

「レーベ!!」

 

 

その声が海上に響き渡り空母艦隊に居たグラーフが全速力でこちらに接近してきており慌ててレーベを抱き抱える

 

 

「……グラー……フ?」

 

 

「あぁ!私だ!何でお前がここに!?」

 

 

「……マック…ス……は?」

 

 

「マックス?マックスも居るのか!?

待て!今私が探してくる!!」

 

 

「ちょ!ちょっと待って!!この娘以外誰も居なかったよ!!」

 

 

「だが!」

 

 

「落ち着きなさいグラーフ

マックスは無事よ」

 

 

慌てるグラーフに対し叢雲はかなり落ち着いた様子で明石から修理を受けていた

 

 

「な、何故そんなことを!」

 

 

「そもそもこのドレス島の情報を持ち込んだのがマックスって艦娘何でしょ?

じゃないと誰がここを周知してるのよ」

 

 

「じゃ、じゃあ!今集中治療室にいるのは!!」

 

 

「マックスよ、安心しなさい」

 

 

「そ、そうか……良かったぁ……」

 

 

グラーフが安堵の溜め息を付いていると咄嗟に叢雲と古鷹は長門と感じた何かを感じ背筋が凍りつき全身に鳥肌と寒気を感じ更に冷や汗を掻いていた

 

 

「叢雲!ど、どうしたの!?」

 

 

「分からないわ……でも…何……これ…

あんた達は感じないの?」

 

 

「わ、分かりまセーン!一体何が!?」

 

 

「分からない……でも…怖い…恐い……何か…何か凄く恐いの……何だが分からないけど…何か……!」

 

 

叢雲は咄嗟にカナを見るとカナの艤装に黒い稲妻の様な物が見えており眼を擦るとそれが幻覚ではないことを理解する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ!!!!長門!!!

全艦隊!!!!今すぐ戦闘体勢!!!

まだよ!!!まだ!!飛行場姫は生きている!!!!」

 

 

「え?」

 

 

 

叢雲の声が響き渡ると不意にカナの艤装が動きだし辺りを振動するほどの砲撃が開始され長門の側に居たローマに砲弾が直撃する

 

 

「ガッハぁ……!!」

 

 

「なっ!!ローマ!!!!」

 

 

その砲撃音に全員の視線がカナへと集中する

倒れていたカナはゆっくりとその身体を起こしていく

艤装からは黒い稲妻が走り巨大な砲身は未だに健在であり真っ白だった髪がまるで血が滲むように赤く染まっていく

 

 

「良くも……コノ私に……コノ私ヲ………ココ……まで追い込んで……クレタワネ……!!!!!」

 

 

ゆっくりとカナは立ち上がると壊れていた筈の脚部スラスターがみるみるうちに治っていく

身体は焼き焦げ額から血を流しており目が真っ赤に充血していく

 

 

「う……そ……で……しょ……?」

 

 

「あり得………ない……」

 

 

「……嘘……嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘!!!!」

 

 

そしてカナが完全に起き上がるとその身体は血が滴り真っ赤に染まっていき叫び始める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「良くも良くも良くも良クモ良クモ良クモ良クモヨクモヨクモヨクモヨクモヨクモヨクモヨクモヨクモヨクモ!!!!!!

この!!!!私を!!!ココまで追い詰めてくれたなぁァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

その身体と髪は燃え上がる炎の様に真っ赤に染まり長門達を地獄の形相で睨み付けると主砲を向ける

 

 

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス!!!!!

お前ら一人残らず……確実に!!全員皆殺しにしてやる!!!!」

 

 

その姿は怒り狂い全てを破壊する神の様であり長門達は完全にカナの逆鱗に触れてしまった

そして長門が一言だけ呟く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まさか……飛行場姫の……ー壊ーか……!!」

 

 

 

 

 





次回

限界突破(オーバーリミット)

どんな敵であろうと一斉砲撃で倒せないわけがないと言う常識や普通の知識を嘲笑うかのようにカナは再び動き始める
そして今まで押さえていた力を解放し再び長門達へと襲い掛かる
飛行場姫カナ戦最終戦突入!!
もうオマエタチは逃げられない


え?まさか倒せると思った?
残念でした!そんな簡単(?)にはコイツは倒れませんよ!
あ、そろそろイベントですね!うちはやっと足柄さんを改二にしたので重巡艦隊が出来上がってきました~
今回も完走するぞっ!






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最終局面 三

再び動き出したカナに全員が恐怖し困惑し焦りを感じていた

そしてカナはもうなりふり構えないほどに追い詰められておりその牙を見せ長門達に襲い掛かる

 

 

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!!」

 

 

その言葉と同時にカナは主砲を長門達撃ち始め綾波や扶桑等を撃ち抜いていくが長門達は身動き出来ずに居た

それはカナの姿が異様であり他の深海棲艦の壊とは明らかに身体が違うからである

そして、蛇に睨まれた蛙の様に恐怖で動けなくなっていた

 

 

「ぜ、全艦隊!しっかりしろ!まだ奴は動いている!!

負傷したものを下げろ!!もう奴しか残ってーーー」

 

 

「キャアァァァァァァ!!!」

 

 

 

と長門が再び指示を出そうとすると長門の側に衣笠が吹き飛ばされてきてくる

 

 

「衣笠!大丈夫か!?」

 

 

「えぇ……何とか…でも!!」

 

 

「貴様らァァァァァァァァァァァァ!!!!!

良くもやってくれましたねぇ!!!!」

 

 

その声が鳴り響き長門は不意に振り返るとそこには再び動き出していた椿が爪を肥大化させながら加古達と対峙していた

 

 

「アイツ!もう起き上がったのか!?」

 

 

「椿ィィィィィィィ!!!!

そいつらを絶対にニガスなァァァァァァァァァァァァ!!!!

殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

「了解致しました!!我が君主カナ様ァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

 

カナの指示を受けた椿も髪を朱色に染めておりそれが姫級の壊と同じ状態になっており連合艦隊は逃げ場を失う

 

 

「ま、不味い!!この状況は不味いよ!!!」

 

 

「逃げ場が無い!!ドレス島方面には飛行場姫の壊!

沖合いには始祖級椿の壊!!」

 

 

「どどどど!!どうするのよ!!」

 

 

正に挟撃とはこの事を言うように連合艦隊はカナと椿に挟まれ大混乱に陥っていたが突然カナからの砲撃が止む

 

 

「クソが!!こんな時にオーバーヒート!!」

 

 

カナの艤装モニターでは両主砲がオーバーヒートを示しており全く動かなくなっておりその隙に長門が仕掛けようとする

 

 

「全艦隊!落ち着け!!今、飛行場姫を叩くことに専念ーーー!!!」

 

 

「仕方ない!!アブソリュート!!私を喰らいなさい!!!」

 

 

その声と同時にカナは右腕を外に出すとアブソリュートからレ級の尻尾の様な口が付いた管の様な物が現れカナの右腕に噛みつくと血がその口に滴り落ちる

 

 

「あ、アイツ何してるの!?

長門!!何か来るわよ!!」

 

 

「何だと!?」

 

 

叢雲の声に気付いた長門はカナを見るとカナの腕からは血を流しておりまるでカナを喰っているかの様でありある程度口に血を溜め込むとその管はアブソリュートに戻っていく

 

 

「音声コード入力!!アブソリュート!!限界突破(オーバーリミット)!!!!」

 

 

カナの声に反応するかの様にアブソリュートは黒い稲妻を纏い始めるとまるで生き物の様に空へ向けて振動をしみるみるうちに艤装を修理していく更にカナの血液が反映されているのか艤装の隙間に血が滲んでおり花の形に模様付いていく

 

 

「な……何…あれ…」

 

 

「まさか、アブソリュートが奴の血液に反応して艤装を修理した…?」

 

 

そして古鷹とイムヤが破壊した脚部艤装もある程度修復されてしまいその砲を長門達に向ける

 

 

「破壊し尽くせ!!アブソリュート!!!!」

 

 

「不味い!全艦!飛行場姫をーーー」

 

 

と長門が言っている最中に後ろに居た扶桑が撃ち抜かれそのまま吹き飛ばされていく

 

 

「ガハッ……こ、…この威力…!」

 

 

「扶桑!!!」

 

 

しかも射速とその威力が桁違いに変わっており撃ち抜かれた扶桑の艤装が完全に破壊され扶桑自身も撃ち抜かれた腹部から全身に至るまで焼き焦がされていき見るも無惨な姿になってしまう

 

 

 

「ば、馬鹿な!さっきより射速と威力が上がっている!?」

 

 

「オマエタチは終わりだァァァァァァァァァァァァ!!!!

私を完全に怒らせた!!誰一人逃がさないでここで沈めてくれるわァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

その言葉を聞くと更に連合艦隊は大混乱に陥り各々逃げ出そうとするがそれをカナは全く見逃そうとせず逃げようとする者を一人も逃がさず両方の主砲で撃ち抜いていく

 

 

「嫌だ!嫌だ!死にたくない!!」

 

 

「あ、あんなの勝てるわけないのよ!!」

 

 

「逃げろ!あんなのに殺されたくない!!」

 

 

「落ち着け!まだ戦闘中だぞ!!」

 

 

「アハハハハハはハハハはは!!!!壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す壊す!!!!!

殺す殺す殺す殺す殺す殺す!!!!!

私の邪魔する物全部全部全部全部全部全部全部壊して殺して粉々になっていきなさい!!!

アハハハハハはハはハはハはハは!!!!」

 

 

半ば半狂乱になりながらカナは主砲を連発していきその姿を鈴谷達は脅えながら見るしか出来なかった

 

 

「何あれ……明らかにヤバいっしょ……」

 

 

「で、でも……倒さないと……」

 

 

「ゆ、夕立……動ける?」

 

 

「…む、無理っぽい……怖いよ…時雨……」

 

 

そんな状況の中叢雲は無理矢理身体を動かすと明石に頼み込む

 

 

「明石!!高速修復材あるわよね!!」

 

 

「え!?え、えぇ……」

 

 

「なら……それを頂戴!!」

 

 

「だ!駄目ですよ!そんな短期間に高速修復材を使うのは禁止されてるんですから!!!」

 

 

叢雲は明石の肩を持つと全身に痛みが走り治っていない傷口から再び出血する

 

 

「でも!今アイツを止めないと私達は全滅する!!

それにアイツを止められるのは私だけよ!!だから!!!」

 

 

「駄目です!!許可出来ません!!

貴女!自分の身体がどれ程酷い状態か分かってますか!?

普通動くことすら禁止するほどにボロボロなのに更にまだ戦おうだなんて!!」

 

 

「お願い明石!!今私が出ないと手遅れになる!!

私にしか出来ないの!!だから!!」

 

 

「何と言われようと駄目です!!私は貴女に……死ねだなんて言えませんしそんなのを渡せるわけありません!!!」

 

 

叢雲は頑なに願いを聞き届けない明石には理由があった

それを静かに話していく

 

 

「私には……昔提督が居ました…あの人は誰よりも優しくて強い人でした…艦娘を大切にし共に戦場に立とうとするその勇ましい姿に私は見惚れていました…

でもその人は私を守って……重症の意識不明に……

そして決心しているんですよ!貴女の様な誰よりも先に突っ走ろうとする艦娘を止めないと!貴女は死んでしまう!!!

今!貴女を失っては!我々に希望も何にもなくなってしまう!!それにもう私は!!目の前で誰かが死ぬのを見れない!!!次!そんなのを見たら私は!!私は……壊れてしまう……」

 

 

明石は震えながら叢雲の顔を直視出来ずに俯いてしまうがその肩を三人の艦娘が叩く

 

 

「それなら」

 

 

「私達も共に戦えば」

 

 

「良いんだな?」

 

 

「………え?」

 

 

その声に明石は顔を上げると大井、金剛、グラーフが微笑んでいた

 

 

「全く、まさかあれで倒れないとは予想外だったわね」

 

 

「デース、でも戦いがいがあるってもんデース!!」

 

 

「レーベとマックス、叢雲と古鷹達の借りも返せる物だ

やってやろうではないか」

 

 

三人は完全にやる気を取り戻しており古鷹も負傷しながらも立ち上がり明石の顔を微笑みながら見る

 

 

「安心してください明石さん、私達は死にません

叢雲一人に行かせるわけないじゃないですか、叢雲はいつも一人で突っ走って死にそうになるんですもの

私達がその手綱を捕まえてますから大丈夫です」

 

 

「古鷹さん……」

 

 

「だから信じてください、私達を

必ずカナを倒しますから」

 

 

明石はそんな勇気ある行動に初めて艦娘を送り出す提督の気分を味わう

(……そっか…提督はいつも…こうやって送り出していたんだ……)

 

 

「……分かりました、ですが条件があります

皆さんがこれを使ってください

そして無事に帰ってきてください

良いですね!?」

 

 

「分かってるわよ、助かるわ」

 

 

「さぁ!最終決戦(ラストバトル)デース!!」

 

 

「あぁ!やってやろうじゃないか!!」

 

 

「全く早くそれを寄越しなさいよ」

 

 

「もう!叢雲口悪いよ!」

 

 

五人は渡された高速修復材を被ると全身激痛が走るがそれと同時に身体の至るところが修復していく

 

 

「無茶ばっかりすんだからさ

ほら、皆の艤装も直しておいたよ」

 

 

「さっすが夕張デース!!助かりまーす!」

 

 

「二人が居ればいくらでも戦えるな!」

 

 

「ありがとね夕張」

 

 

全員戦う準備が終わると叢雲を戦闘に各々飛行場姫に向かおうとする

 

 

「行くわよ!!あんた達!!!」

 

 

「準備オッケーだよ!」

 

 

「えぇ!行けるわ!!」

 

 

「ノープロブレムデース!!」

 

 

「行こう!決着を付けよう!!」

 

 

叢雲は再び薙刀を握り締めイムヤを優しく撫でると大きく号令を出す

 

 

「小笠原艦隊!これより飛行場姫カナ討伐作戦を開始する!!!

抜錨!!!」

 

 

「「「「おぉ!!!」」」」

 

 

叢雲達は全速力で半狂乱になっているカナへと向かっていく

カナが見るモニターに接近する五人の影を捉えその方向へと主砲を向け振り返る

 

 

 

「カナァァァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

 

声を荒げ突っ込んでくる叢雲を睨みながらカナは歯を食い縛り突っ込んでいく

 

 

「叢雲ォォォォォォォォォ!!!!」

 

 

そしてカナと小笠原艦隊が激突し最後の戦いの幕が上がる

 

 

「貴女を!!」

 

 

「オ前を!!」

 

 

「「絶対倒す(殺ス)!!!」」

 

 

 

 

 

 

 

 




次回

格の違い

艤装のリミッターを外しその力を惜しみ無く叢雲達にカナはぶつけていく
だが、歴戦(Elite)との力の格差はかなり大きい
果たして彼女達は勝利を勝ち取れるのか?

物語中盤にしてラスボス級のカナとの最終戦ですね!
因みにコイツほど強い深海棲艦は何体居ますけど陸上ではカナが最強になってます!


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最終局面 四

先頭を走っていた叢雲がカナに薙刀で襲い掛かりその反対側から大井が主砲を接射しようとする

 

 

「本当に邪魔な奴等メ!!」

 

 

だが叢雲の薙刀を腕で防ぎ大井の主砲を掴むと自らに引き寄せ握り締めると主砲自体が簡単にへし折られそうになる

 

 

「なっ!コイツさっきより握力が増してる!?」

 

 

「死ねぇぇぇ!!!」

 

 

それと同時に叢雲の薙刀を押し返し大井に爪を腹部に突き刺そうとするが叢雲が何とかそれを薙刀で押し止める

(お、重い!!さっきより遥かに!!)

 

 

「吹き飛べえぇ!!」

 

 

「きゃあ!!」

 

 

「ぐ!!」

 

 

何とか爪の一撃を止めたがそのまま薙刀ごと大井を蹴り飛ばすと威力が高く大井は吹き飛ばされ叢雲も薙刀を弾き飛ばされる

 

 

「薙刀を!!」

 

 

「行かせるかぁ!!」

 

 

叢雲が弾き飛ばされた薙刀を取りに行こうとするがそれよりも先にカナが叢雲の右腕を掴み自らに引き寄せると軽々と持ち上げ海面に叩き付ける

 

 

「ガハッ!」

 

 

「死ねぇぇぇ!!!」

 

 

そしてそのまま爪を叢雲に振りおろすが主砲でその爪を無理矢理止めるが先程より重く火花が飛び散る

(やっぱりさっきより重くなってる!コイツまだこんな力を残して)

 

 

「相変わらず対応が早い奴!!だがこれで終わりだ!!」

 

 

カナはそれと同時に主砲を海面に向けると勢い良く射出し飛び上がると叢雲に主砲を向ける

 

 

「ヤバい!!」

 

 

「逃がさない!木っ端微塵にしてやるわ!!!」

 

 

「させるか!!!」

 

 

その瞬間グラーフが艦載機を発艦させると空中で砲撃体制を取るカナに対し空爆を行い何とか体制を崩させる

それを見ていた叢雲は起き上がり薙刀を拾う

 

 

「叢雲!大丈夫か!?」

 

 

「グラーフ助かったわ!」

 

 

「うざいわねぇ…じゃああんたからかしら!?」

 

 

体制を崩されたカナだが空中で標的をグラーフに変更し狙い撃とうとする

 

 

「金剛!!」

 

 

「分かってマース!!荒っぽく行きますヨー!!」

 

 

だがそれよりも早く大井は金剛に頼むと金剛は大井の背部艤装を掴むと一度振り回し思い切りカナへと投げ飛ばす

 

 

「やらせないわよ!!!」

 

 

「チッ!また来たか!!」

 

 

そしてそのまま蹴りを加えるとグラーフへ向けていた照準を無理矢理変えさせ空中で主砲をカナへと向け撃ち抜く

 

 

「これほど近ければ!」

 

 

「効くと思ったのかしら!?」

 

 

爆煙に包まれながらカナは右腕で大井の首を掴もうとする

 

 

「大井さん!ごめんなさい!!」

 

 

それを先に古鷹が伸びている腕にある叢雲が与えた深傷を撃ち抜き咄嗟にカナは伸ばしている腕に激痛が走る

 

 

「ぐ!あの野郎!!」

 

 

「このぉ!!」

 

 

伸ばされた手を主砲をぶつけ空中で距離を取りお互い海面に着地した瞬間金剛がカナに向けて砲撃を放ち再びダメージを与えていく

 

 

「着地狩りは戦いのモットーね!」

 

 

「それは効く奴の事を言うんじゃないかしら!?」

 

 

だが瞬間カナは自らの主砲を後ろに向けると海面を撃ち抜きその爆発を利用し一気に金剛との距離を詰め爪で襲い掛かる

 

 

「Whats!?」

 

 

「死ね!金剛型!!」

 

 

「させませんよ!!」

 

 

爪を降り下ろす瞬間古鷹が脚でカナの攻撃を防ぐが余りにも重い一撃に苦言を漏らしそうになる

 

 

「古鷹!少しの間だけそのまま!!」

 

 

だがその後ろから叢雲が薙刀を持ちながら迫りカナを背後から斬ろうとする

 

 

「誰がもうお前の攻撃なんぞ効くかぁ!!」

 

 

カナは主砲を背後に向けた状態で海面を撃ち抜くと叢雲に海水が直撃し前が見えなくなりたまらず薙刀をおろし目を擦ると

 

 

「叢雲避けて!!」

 

 

古鷹の声が響きわたり直ぐ様目を開けるが鈍い痛みが腹部を襲いそのままの勢いで吹き飛ばされてしまい海面に身体を強打しながら転がっていく

 

 

「死ねぇぇぇ!!叢雲!!!」

 

 

そして間も無くカナの声が響き渡り向き直ると主砲を叢雲に向けており転がっている叢雲を撃ち抜こうとする

 

 

「そんなことは!!」

 

 

「させないデース!!」

 

 

だが、それよりも先に古鷹と金剛がそれぞれカナの体制を崩すように砲撃と蹴りを与えギリギリ砲弾は叢雲の側の海面を撃ち抜く

 

 

「雑魚共がぁぁ!!邪魔をするなぁぁ!!」

 

 

体制を崩されたカナは一瞬で体制を直すと古鷹と金剛をそれぞれ掴むとまるでボールを投げるように軽々と投げ飛ばしていく

 

 

「きゃあぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「な、なんて力デース!!」

 

 

二人が海面を転がっていると再び主砲を構えるがそれと同時にカナに雷撃が命中し更にグラーフの艦載機からの爆撃により見えなくなり撃てなくなる

 

 

「あぁ!うざいうざいうざいうざいうざいうざい!!!!!

本当にうざったるい奴等ねぇ!!!」

 

 

叢雲は薙刀を海面に刺し再び起き上がると息を切らしながら更に化け物染みているカナに恐れを抱く

 

 

「………対応が早いのは分かってたけど…ヤバイわね……一つでもミスしたら誰かやられる……

これが格の違いね…」

 

 

小笠原艦隊は連携はサポートを得意とした戦い方故に何とかカナを抑えられているがそれも長くないと叢雲は理解していたが

 

 

「でも、私達がやらないと!!」

 

 

 

 

 




次回

決断

壊状態に入ったカナは先程の余裕がなくなり更に強化され練度が高い小笠原艦隊でも相手が出来なくなっていた
その光景を唖然と見ているしか出来なかった磯風達は一つの決断をする

うん、やっぱりカナを強くし過ぎた感はありますな()
まぁ仕方無いね!実質ラスボス枠だし!!
実際この物語には化け物染みてるのは多いからなぁ……狩人とか女帝とか姫騎士とか…





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最終局面 五

叢雲達が壊状態になったカナと対峙してる中磯風達は唖然とその光景を見てるしかなかった

それもそのはず、小笠原艦隊は確かに練度が違う

それは佐渡が教え叢雲達は従い強くなる努力をしている

だからこそ、普通それが五人も居れば姫何てのは勝てるはずだった

 

 

だが、目の前に広がる戦いで叢雲達は苦戦を強いられていた

叢雲達がカナの攻撃を防ぐ位しか出来ず、その先である攻撃を仕掛けたとしてもカナには全く効いていない

それどころか、叢雲達が一瞬でもその攻撃を緩めればカナから主砲や爪での攻撃で襲い掛かる

 

 

「……何なんだ…この戦いは…」

 

 

次元が違い過ぎる

小笠原艦隊とカナとの戦闘は

そう磯風達は思っていた

薄々は感じていた

それでも何とか追い付いて行こうとしていた

 

 

「……無理だよ…あんな…あんな一瞬でも気を抜いたら死ぬ戦いは…」

 

 

叢雲も古鷹も大井も金剛もグラーフも全員が意識を研ぎ澄ましカナの攻撃に対応し何とか一矢報おうとするも全てカナには効いておらず勝利は絶望的であった

 

 

「……凄い…これが『戦争』か…」

 

 

その様子を見ていた磯風は自らがどれ程ちっぽけな存在か理解する

カナと叢雲達のぶつかり合いは接戦であり叢雲達はどんな攻撃を受けようとも直ぐ様立ち上がりカナに向かっていく

その姿はさながら非力な勇者が絶対的な力を誇る魔王に挑んでいくような幻想すら感じた

そして

 

 

「……私は…何をしてるんだ?」

 

 

そう疑問に思っていた

足は動かない、カナの威圧に圧され全く言うことを聞かない

頬を叩こうとしても身体が震えている

頭が本能が戦いを知っている身体が理解しているのだ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここでカナ(飛行場姫)と戦えば必ず死ぬと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は……ハハ……情けないな私は……」

 

 

死への恐怖

叢雲達と戦う為に覚悟していたはずなのに

いざとなると身体が動かない

 

 

目の前にある本物の死を見ていると身体が震えてくる

それは誰もが必ず感じるもの誰もが最も恐れるもの

当然であり普通である、こんな化け物には勝てないと頭と身体が理解してしまい

足腰に力が入らない

 

 

「何が……武勲艦だ…何が駆逐艦最強枠だ…私は無力だ……だって分かってしまっているから……あんなのには勝てない…どう足掻いても!!」

 

 

磯風は元々唐澤の鎮守府に来る前から強かった

自らが武勲艦であり駆逐艦の中でも強いと知っていたから

そしてそれに見合う様に生きてきた

自分は強いと信じその為に鍛練も怠らず誰よりも頑張ってきた

だからこそ自分が転属して初めて強いと感じた長門に出合ったときいずれこの人を倒すと決めていたから

 

 

だが、磯風は見てしまった自分より強い駆逐艦に

 

 

『長門!戦闘不能!!

 

勝者!雷撃姫駆逐艦叢雲!!

 

優勝は!小笠原鎮守府!!』

 

 

あの時ボロボロになりながら勝っていた叢雲に磯風は驚き憧れそして嫉妬した

強かった、だがそれだけじゃなかった

彼女は最後まで諦めなかった、どんなに敵が強くても、戦力差があっても諦めず勝利を勝ち取った叢雲(雷撃姫)に気高さと美しさに

 

 

だから今回互いに戦えると知ったとき嬉しかった

間近でその力を見れると正直期待の方が大きかった

もしかしたらこの艦娘(叢雲)の力の根源を見れるんじゃないかと

 

 

そして知った、叢雲は自分が弱いと理解していたと

自分は強くないと言い、いつも死力を尽くしていると言うことを

どんな逆境にも絶望にも負けないその不屈の心はまるで勇者だと

 

 

それに対して自分は何だと感じていた

自身を強いと過信し、誰よりも負けないと慢心し、叢雲と共に戦えると浅はかだった

 

 

「……私は…強くなんかない……ただの駆逐艦…なのだな……

弱い…装甲も脆く…火力も低い…ただの駆逐艦……

ハハ…情けないな…本当に」

 

 

一人自らの力の無さと叢雲との壁に絶望し戦うことを諦めていた

 

 

 

「イムヤさん!動かないでください!!」

 

 

「そうなの!イムヤ!動いちゃメ!!なの!」

 

 

そんなとき後ろから声が聞こえ振り返ると先程爆雷にやられ気を失っていたイムヤが明石の治療とイクの制止を振り切り前に出ようとしていた

 

 

「退い……て!…私……は!まだ…戦え…る!!」

 

 

その姿は叢雲そのものだった

血反吐を吐き苦しみ傷が痛む身体に鞭を打ち動こうとする

勝つことを諦めていない者

 

 

「………どうしてだ……何でお前達はそんな……」

 

 

「イムヤ!これ以上は本当に駄目なの!!死んじゃうよ!!

さっきあれほどの爆雷を受けて動けるのが可笑しいのに!!」

 

 

「退い……て!!私は……戦わな……いと…!いけない……の!……皆…を!守……るの!!」

 

 

その姿を見て磯風は静かにイムヤに近寄ると潜水しようとする身体を持ち上げる

 

 

「磯風さんからも言ってあげてよ!これ以上イムヤが戦ったら!!」

 

 

「邪魔……しない…で!!」

 

 

顔を伏せながら持ち上げると明石の元に戻すと真っ直ぐイムヤに向き直ると頭を撫でる

 

 

「……一つだけ教えてくれ

何でお前達はそこまでして戦うんだ?

あんな……死と同じ様な化け物と…何故そんなに勇気があるんだ?」

 

 

磯風の質問にイムヤは笑みを浮かべながらさも当然のように話し出す

 

 

「決まってる……じゃない…負けたくない…からよ……もう……何も失いたくないから……叢雲と勝って…皆で笑える…全員であの…鎮守府に帰る…の……司令官の…待っている…あの場所に……生きるために……勝つの!!!」

 

 

理解する叢雲だけではない、小笠原鎮守府の艦隊は皆こうなのだとその中でも叢雲だけは飛び抜けていただけだと

そして自らの守るべき物と帰るべき場所を思い出すと自然と笑みを溢す

 

 

「……そうか、すまないありがとう」

 

 

その言葉と共に磯風は深く息を吐くと頬を叩く

 

 

「…ふふ、こんなボロボロな者に戦わせる何て馬鹿な事はさせられんな

後半お前の力を借りるときが来るそれまで休んでいろイムヤ!!

後は私に任せておけ!!」

 

 

そして再び磯風は戦場へと戻っていきイムヤは呆然としながら見ていると微笑み

 

 

「……へぇ……叢雲の…言う…通りかぁ……手強い…相手に…なりそうね…」

 

 

と呟くと再びイムヤは気を失ってしまい明石達に身を任せる

 

 

磯風は航行しながら迫るカナと戦う叢雲達を見ながら身震いする

それが恐怖であることを知りながらも自らが守るべき物を思いだす

(……司令、陸奥、綾波、ローマ、赤城、利根、ゴーヤ…長門、そして鎮守府…皆私の大切な物だ

それを守る為ならこの命惜しくない!!)

 

 

深く息を吐き音もなくカナの背後を取ると一瞬だけ躊躇う

(これに手を出したら戻れなくなる…私は死へ歩むことになる……だが!それよりも何かを失うよりは!!)

 

 

磯風は意を決し主砲を構えているカナの首に主砲を押し当てるとそのまま接射をする

 

 

「くたばれ!!カナ!!!」

 

 

「磯風!?」

 

 

「コイツ!いつの間に!!」

 

 

カナに砲撃が直撃するがやはりほとんどダメージが無く爪が磯風の頭を掴むとそのまま海面へと叩き付けられそうになるが

 

 

「磯風を!!放しなさい!!!」

 

 

それよりも先に叢雲が踏み込みカナの腕を斬り付けると力を失い投げ飛ばされ磯風を大井が抱き抱えると海上に立たせる

 

 

「あんた……何で来たのよ!?しかもあんな無茶して!!」

 

 

「ハハ、すまない一矢報いれると思ったんだが駄目だったな

微力ながら私も参戦する!!私の事は見捨てても構わない!!守るべき物の為ならこの命無くなっても悔いはない!!!

戦わせてくれ!!叢雲!!」

 

 

その言葉と面持ちを見るに覚悟を決めてきたと叢雲は把握すると笑みを浮かべる

 

 

「足手まといにならないでよね」

 

 

「全く叢雲はツンデレ何ですから、助かります!

正直人手が足りなかったんです!!」

 

 

爆煙を切り裂くとカナが撃たれた首を擦りながら睨み付ける

 

 

「大人しく脅えていれば殺さなかったのに……馬鹿な奴ねぇ??

本当に…本当に馬鹿な艦娘共(略奪者共)ねぇ!!!」

 

 

「行くわよ!!死ぬ覚悟は出来たかしら!?」

 

 

「あぁ!!」

 

 

「えぇ!!」

 

 

「行くデース!!」

 

 

「はい!!」

 

 

「とっくに出来ている!!」

 

 

カナは艤装を再展開すると磯風、叢雲、大井が走りだし三方向からカナを攻め立てようとする

 

 

 

「勝つわよ!!絶対に!!!」

 

 

 

 

 

 

 





次回

勝利を目指して

磯風は一人絶望的な状況から立ち上がりカナと再び対峙する
その実力差は明らかであるがその姿を見て一人一人と立ち上がる


磯風のちょっとした過去でしたねぇ
まぁ彼女にも少しだけ闇はあるのでそれは今後に!
そう言えば新しく村雨さんを改二にして対陸上型対策は出来ましたね!!
これで攻略出来るかなぁ……



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最終局面 六

磯風が再び戦線に復帰しカナと戦いを繰り広げている最中他の艦娘達はまだ動けずにいた

磯風同様カナの実力と気迫にやられ恐れていたからである

だが、その中で磯風は自らに向き合い本当の覚悟をし一人抜けだした

 

 

その姿に誇り高さを感じた阿武隈は一人歩き始める

 

 

「阿武隈さん!行っては駄目です!!」

 

 

「どうして?死ぬから?」

 

 

「そうだよ!あんなの勝てるわけない!!

確かに磯風は強いし小笠原は強い!!でもその皆が押されてるんだよ!!分かるでしょ!?」

 

 

本物の化け物に成り果てたカナは確かにとんでもない

金剛の砲撃も大井の雷撃も磯風の接射も叢雲さえも効かず全てを破壊しつくす勢いで六人を殺そうとしている

 

 

「……ねぇ、あたしね一度失いかけたんだ

大切な物を

……皆を、沖縄鎮守府を」

 

 

「それは知ってますわ!!でもあの時は状況が違う!!

あの時居た歴戦の戦艦棲姫何かとは比べ物にならないですわよ!!」

 

 

「そうです!あれとは違いすぎます!!

あれは叢雲さん達と貴女達が居たからなんとかできました!でも今回は違う!!」

 

 

阿武隈が歩き出していると他の艦娘から弱気な声が聞こえてくると唇を噛む

 

 

「そうだよ!あれは耐えれば良かったんだ!!

でも今回はあれを倒さないといけないんだ!!それに攻撃は全く通用しないのに!あっちの攻撃で一度でも受ければ瀕死なんだよ!!

あんなの!勝てるわけないよ!!」

 

 

「だから阿武隈!叢雲達に恩義があるとかで行ってもーーーー」

 

 

「違わなくないよ!!だって!今私はその大切な物を失おうとしてるんだもん!!」

 

 

阿武隈の声に時雨達は驚くが阿武隈は続けて時雨達に言い放つ

 

 

「だって!今あの姫を倒さないと次に狙われるのは私達の鎮守府何だよ!!

次に狙われるのは私達の大切な物と大切な人なんだよ!!

だから!あの時と変わらない!!全く!!

私達が援軍として到着するまで戦艦棲姫を押し止めていたのは叢雲達だ!全く関係ない!私達の為に!!

あの人達は!小笠原の人達は命を掛けてくれたの!!

それなのに私達は何!?ここで叢雲達の戦闘を傍観することしか出来ないの!?」

 

 

阿武隈に言われてしまうとそれぞれ顔を伏せてしまう

そんな姿を見ていた阿武隈は一人走り出そうとする

 

 

「呆れた!何が連合艦隊なの!!!艦娘として誇りはないんだ!!貴女達の守りたいものってのはそんなものなんだ!!!

失っても良いと思える物なんだ!!自分の命すら掛ける価値が無いならそこでずっと傍観してなよ!!

私は違う!叢雲達が命懸けで守ってくれた物を今度は私達が守る!!」

 

 

そう言うと阿武隈は一人カナへ向けて走りだしてしまう

そしてその言葉を聞いて何人かが笑いだす

 

 

「……木曾、死ぬ覚悟は出来ますか?」

 

 

「今更だな、いつでも行けるぜ!!」

 

 

「では、行きますよ!!」

 

 

阿武隈に続いて木曾と不知火が走っていくとその後ろで鈴谷達が覚悟を決める

 

 

 

「言われちゃったね……でもその通りっしょ」

 

 

「す、鈴谷!?」

 

 

「アハハそうだね、お姉様に甘えてたのかな

お姉様なら勝てるって」

 

 

「ちょ!ちょっと比叡さん!?」

 

 

「あそこまで言われてしまうと倒さないと行けませんね」

 

 

「ちょっと神通本気?」

 

 

阿武隈、そして不知火、木曾に焚き付けられた鈴谷、比叡、神通は戦う意思を見せ歩きだす

 

 

 

「だってさ熊野、今勝つ可能性で死ぬか後で仲間を失って死ぬかだよ?だったら今やらない?」

 

 

「……それもそうですわね…私としたことが…やってやりましょう!鈴谷!!」

 

 

「その意気だよ!熊野!!」

 

 

「だって!私達は守るものの為に戦ってるんです!それなら今戦わないと!!」

 

 

「で……でも…」

 

 

「……そうだよね、戦うしか無いっぽい!!」

 

 

「夕立!君までも!?」

 

 

「だって!大和だって力を貸してくれるんだよ!やるしか無いっぽい!!」

 

 

「山城、めんどくさいとは思いますが付き合ってくれませんか?」

 

 

「………はぁ…そうね、それにこれ以上姉様が傷付くのは見たくありませんし貴女を一人で行かせるわけにはいかないしね」

 

 

そして全員が覚悟を決め再びカナへと向かっていき接戦を繰り広げている叢雲達と合流する

 

 

「叢雲ー!!私達も手伝うよ!!」

 

 

「阿武隈!……全く来なくて良かったのに!」

 

 

「阿武隈さん!助かります!!」

 

 

「ちゃっちゃと倒して皆で帰ろう!!」

 

 

「行きますわよ!!鈴谷!」

 

 

「お姉様!!私も共に戦わせてください!!」

 

 

「比叡!……全く良い妹デースね!!」

 

 

叢雲と磯風の二人がカナと近接戦闘をしている中に不知火、木曾、阿武隈、夕立、時雨、神通が加わり中距離で戦っている古鷹達に鈴谷達が合流し援護に加わる

 

 

「さてと、これでさっきと一緒ね!カナ!!」

 

 

「ドレダケ雑魚が増えヨうと変わらないわよ………お前達をここで逃がセばいずれ脅威二なる……

必ずこの海デ沈めてクレる!!」

 

 

全員の決意と覚悟の中カナは主砲と爪を向けると叢雲達はカナへと走り出す

 

 

「この化け物を倒すわよ!!一瞬でも気を抜いたら死ぬと思いなさい!!」

 

 

「あぁ!」

 

 

「了解!!」

 

 

「分かったぜ!」

 

 

「行きましょう!!」

 

 

「やってやるっぽい!!」

 

 

「行くよ!!」

 

 

 





次回

命を掛けろ

全員が覚悟を決め再びカナと対峙する
だが覚悟を決めただけでカナを倒せるほどこの化け物は甘くない

この話イベント終わるまで書き終わるかな……
既にイベント一つ越えてるしなぁ……
作者だけど…




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最終局面 七

叢雲達が束になりながらカナに向かっていくがカナは主砲を叢雲達に当てようとしそれを交わしていく

 

 

「コイツに捕まったり攻撃を受けたら終わりだと思いなさい!!さっきとは確実に違う!!」

 

 

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

叢雲は全員に警戒を促し一番先にカナに近寄ると薙刀を振り下ろすがカナはそれを軽々と弾き飛ばしその後に磯風が背後に回り込み接射を試みようとするが

 

 

「同じ攻撃が通用すると思うなよ!!」

 

 

磯風の行動を読んでいたカナはバックステップで磯風に思い切り艤装をぶつけ吹き飛ばすと叢雲の後ろから不知火と木曾が突っ込みカナの足を狙うが不知火は蹴り飛ばされ木曾は頭を掴まれ海面に叩き付けられる

 

 

「夕立!」

 

 

「今っぽい!!」

 

 

その間に夕立が磯風を踏み台にすると飛び上がりカナの真上から主砲を当てると爆煙に包まれ笑みを溢す

 

 

「これで少しはーーー」

 

 

「この程度なのかしら!?」

 

 

だが、爆煙の中から爪が伸び夕立の首を掴む

 

 

「ぐえっ!」

 

 

「夕立!!」

 

 

「まず!一人!!」

 

 

するとカナは夕立を掴んだまま一気に後ろに飛び退くと叢雲が何かを悪寒を感じる

 

 

「古鷹!金剛!!急いでカナを撃ち抜きなさい!!!

何か嫌な予感がするわ!!!」

 

 

「もう遅い!!これが私の格違いよ!!」

 

 

カナは夕立を手放すと主砲を伸ばし夕立を押し付け海面に叩き付けると接射をしようとする

 

 

「嘘!ま、まさかアイツ!!」

 

 

「接射するつもりか!?その主砲で!!!」

 

 

「やめ……やめろぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

カナの接射を止めるべく全員が動きだし夕立はもがきその主砲から逃げようとするが重くて逃げられなず時雨に手を伸ばす

 

 

「やだ!やだやだやだやだやだやだやだ!!!!

時雨!!助けーーー」

 

 

「まずは一人死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

その状態でカナは夕立の腹部に接射するとカナと夕立が爆煙に包まれ全員は唖然とする

そして爆煙から何かが蹴り飛ばされ海面をゴロゴロと転がる

 

 

「嘘………夕……立…?」

 

 

それは夕立だったが、意識は無く主砲が直撃した腹部は大きく抉れ焼け焦げており海面を赤く染めまるで人形の様に転がっていた

 

 

「う、うわぁぁぁぁ……!!!」

 

 

時雨は慌てて駆け寄り夕立を抱き抱えようとするがそれよりも先に主砲が時雨を狙っていることに気付いた磯風が首を掴む

 

 

「時雨!!」

 

 

「離してよ!!夕立が!夕立が!!!」

 

 

だが駆け寄ろうとするがその自らの前に水柱が上がりカナが爆煙から姿を見せると接射した主砲がバチバチと火花を上げていた

 

 

「この主砲が壊れようがお前らを必ず殺してやる……私を怒らせた代償が安くすむと思うなよ!!!」

 

 

 

その姿を見て全員はカナの覚悟とこちらへ向けられた確実な殺意に脅えていたがその中で一人木曾だけがあることに気付いていた

(………まさかアイツ…接射したことにより…身体が傾いている?…何でだ?)

 

 

そうカナは少しばかり接射した側の肩が落ちており更に腕も辛そうにしているのに気付いてる中叢雲が走り出す

 

 

「今!コイツと戦う事を諦めた奴は下がりなさい!!

コイツにもう容赦はない!下手したらあぁなるわよ!!」

 

 

全員が脅え唖然としている中叢雲が走りだし再びカナと対峙すると磯風が走りだし倒れていた夕立を拾いあげるとその姿をカナが狙いだす

 

 

「させません!!」

 

 

「デース!!」

 

 

カナの主砲が動くと同時に古鷹と金剛がカナを撃ち抜き爆煙に包まれるが微動だにせずにいるとグラーフの艦載機と大井がカナの足下を狙い雷撃を放つ

 

 

「させはしないぞ!!」

 

 

「させないわ!!」

 

 

その攻撃を受けると流石のカナも体制を崩し主砲が撃てなくなるが先程より耐久も上がっており体制を崩すのも簡単になっていないと改めて理解する

 

 

「夕立の仇!!」

 

 

「駆逐艦がぁ!私に勝てると思うなよ!!!」

 

 

叢雲の攻撃を意図も容易く爪で防ぎ掴まえようとするが寸で交わし身体を切り裂こうとするがそれよりも先に主砲をぶつけられ吹き飛ばされる

それでもすぐに起き上がるとカナへも向かっていく

その間に磯風は夕立を明石へと運んでいく

 

 

「明石!すまない!」

 

 

「分かりました!!お任せください!!」

 

 

磯風はボロボロになった夕立を明石に託すとその中時雨がカナへと全速力で向かっていく

 

 

「良くも!良くも夕立をぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

「馬鹿!突っ込んで勝てるような相手じゃない!!時雨よせ!!」

 

 

叢雲と対峙してる中時雨の砲撃が命中しその方向へと主砲を向けると勢いよく海上を蹴ると一瞬で時雨の目の前に移動する

 

 

「不味い!!時雨逃げろ!!」

 

 

「勇敢ねぇ?友達がやられたのがそんなに悔しいのぉ!?」

 

 

「ヒッ!!」

 

 

カナが一瞬で移動した事とその殺意が自らに向いていることに怒っていた時雨も恐怖を抱きまるで蛇に睨まれた蛙の様に動けなくなってしまうとカナは爪を振り下ろそうとする

 

 

「させません!!」

 

 

「やらせねぇ!!」

 

 

だが、その一瞬何とか木曾と不知火が間に合い主砲と刀で爪を受け止めるがそれでもカナの力には敵わず三人共に吹き飛ばされてしまう

 

 

「雑魚共がぁ!!群がっても意味ないのよ!!」

 

 

吹き飛ばされていくとそれに変わるように磯風と比叡が向かっていき叢雲も行こうとするが

 

 

「叢雲待ってくれ!!作戦があるんだ!!」

 

 

「…え?」

 

 

 

 

 





次回

希望を繋いでいく

夕立が倒れカナの覚悟を見せ付けられた叢雲達は恐れていながらも倒そうとする中木曾が叢雲にとんでもない作戦を提案する
それは自らの力を見定めてかそれとも……

明日?からイベントですね!!
しかも今回6海域だとか……あぁ大型かぁ……
新艦は七人……前回は迎えられたけど今回行けるかなぁ……




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最終局面 八

突然木曾が叢雲を呼び止めるとそれをカナが狙おうと主砲を構えるがそれに気付いた磯風がカナに近接戦闘を仕掛け無理矢理方向を変える

その間、叢雲と木曾は作戦について話し合っているが聞けば聞くほどに叢雲の顔が青ざめていく

 

 

「ーーーと言うことだ、だから頼むぞ叢雲」

 

 

「待ちなさいよ!!そんなことさせないわよ!!」

 

 

その作戦を実行しようとすると叢雲は力強く木曾の腕を掴み引き止める

 

 

「今何言ってるか分かってるの!?

そんなことしたらあんた!!」

 

 

「だが!これしか方法はない!!

これが、最善であり最大の手だ!!」

 

 

「やらせないわ!!そんな……そんなこと!!!」

 

 

「頼む叢雲!お前だけが頼りなんだ!!お前だけが!あの化け物に勝てるんだ!!だから!!」

 

 

「嫌よ!!絶対に認めないしやらないわよ!!

確かに私はあんた達が嫌いだった!それでもそんなことはさせられない!!」

 

 

木曾と叢雲が口論になっていると叢雲の肩を持つと真っ直ぐ瞳を見ながら話し出す

 

 

「叢雲、聞いてくれ

お前は連合艦隊の、嫌、今戦っている私達の希望なんだ」

 

 

「知らないわよ!私は希望何かじゃない!!

私はあんた達より強くない!!そんなこと押し付けないでよ!!」

 

 

「……あぁ、迷惑なのは分かっている

でもなあの化け物に立ち向かい傷を付けられるのはお前だけなんだ

頼む」

 

 

「嫌よ!そんなことできない!!」

 

 

「……頼む叢雲、俺は弱い

お前みたいに一人で前に進めなかった、お前みたいに勇敢にアイツに向かっていけない、お前みたいに飛行場姫と戦えない

だから、俺は俺の出来ることをやりたいんだ

……俺の覚悟なんだ頼む」

 

 

木曾の真っ直ぐな瞳を見ていれず目を反らすが木曾がそれを逃がさない

 

 

「……頼む、叢雲」

 

 

「……………わか………った……わ」

 

 

歯を食い縛り苦しげに一言だけ言うと木曾が微笑む

 

 

 

「…すまない、お前に助けられたのにこんなこと頼んでしまって

後でいくらでも暴言でも罵声でも浴びせてくれ」

 

 

「…………そんなこと出来るわけないでしょうが

一つだけ言うわ、死ぬんじゃないわよ」

 

 

「安心しろ、俺は夕立より装甲が高いんだ任せろ」

 

 

木曾は叢雲から離れると一人カナに向かっていくと刀を取り出し戦っている不知火達に加勢する

 

 

「皆!俺に任せてくれないか!?

ソイツに目にものを見せてやる!!」

 

 

「木曾!」

 

 

「何か作戦があるんですか!?」

 

 

木曾の言葉に全員が振り向きカナはその言葉に苛つくと睨み付ける

 

 

「へぇ?作戦があるんだぁ?なら見せてもらおうじゃないの!!」

 

 

その瞬間カナが磯風、不知火を吹き飛ばし進もうとするが

 

 

「ここから先は!」

 

 

「行かせませんよ!!」

 

 

「軽巡と金剛型がぁ!私に逆らうなぁ!!」

 

 

比叡と阿武隈が立ち塞がりそれを止めようとするも阿武隈の腹部を主砲をぶつけそのまま吹き飛ばし比叡の腕を掴みそのまま海上に叩き付けそれを踏み台にすると一気に木曾に近付く

 

 

「見せてもらおうじゃないの!!その作戦とやらを!!」

 

 

カナの気迫は先程より恐ろしいほどになっているが木曾は臆することなくカナに刀を振り上げる

 

 

「お前はどうやら砲撃の耐性があるらしいな

なら俺の剣に対してはかなり相性が悪いんじゃないか!?」

 

 

だがカナはその刀を片腕で防ぎそのまま刀身を掴む

 

 

「えぇ、その通りよ?ある程度の練度を積んだ姫級は砲撃に対する耐性がかなり高い

特に私は砲撃に対する耐性が姫の中ではダントツに高い

確かに剣への耐性は高くないけれど!!」

 

 

そしてそのまま刀身を握り締めるとジワジワと木曾を押し潰そうとする

 

 

「力では私の方が圧倒的に上!!!

そんなもんで私が死ぬわけないでしょうが!!!」

 

 

「くっ!やはり勝てないか!!だが!」

 

 

押し潰されそうになった木曾は刀を手放すと同時に少しだけ下がり雷撃をカナへと直撃させる

 

 

「チッ、意外と痛いわね……」

 

 

「それだけで終わらないぞ!!」

 

 

一撃だけ当たった雷撃に続けてカナの腕へと集中的に砲撃を開始しその砲弾はカナの装甲を少しだけ剥がす

 

 

「ぐっ、こいつ同じ場所を連続で!!」

 

 

「まだまだ!!くたばれ!!!六方向同時雷撃!!」

 

 

カナが爆煙に包まれ動けない所に艤装から12発の魚雷を放つと周囲六方向からカナを追い詰める

 

 

「凄い!飛行場姫を追い詰めてる!!」

 

 

「木曾さん……いつの間に……」

 

 

「逃げられない……か!!」

 

 

そしてそのまま雷撃がカナに命中すると水柱が上がりかなりのダメージを与えたと確信すると手放した刀を再び拾い

 

 

「トドメだ!!飛行場姫!!」

 

 

そして木曾は刀でカナの首を斬り飛ばそうとするとカナがニヤリと微笑む

 

 

「……へぇ?意外とやるわね?でもこれで終わり?」

 

 

「なっ!ぐえっ!!」

 

 

その瞬間カナは主砲で木曾の攻撃を防ぐと同時に首を掴み持ち上げる

 

 

「木曾!!」

 

 

「不味いデース!また捕まてしまいました!!」

 

 

その姿を見た叢雲は歯を食い縛りながら静かにゆっくりと動き始めカナが再び後ろへと飛び退く

 

 

「悪くなかったわよ、あんたのやり方

ぶっちゃけ普通の深海棲艦なら倒せたんじゃない?

でもね、あんたの相手はそんな生易しい奴じゃないのよ?

高く付いたわね!!授業料が!!」

 

 

そして夕立の時と同じく木曾を手放すと自らの主砲で捕まえそのまま海面へと叩き付ける

 

 

「ガハッ!」

 

 

「あの状態やばいっしょ!!」

 

 

「木曾!!」

 

 

「だめ!!やらせない!!!」

 

 

木曾が捕まり古鷹、金剛、鈴谷、熊野が慌てて主砲をカナに向けて放とうとするが何故か躊躇ってしまう

それもそのはず今木曾はカナに捕まっている状態、下手に撃てば木曾に当たってしまう

 

 

「今助けます!!木曾!!」

 

 

「貴様!!これ以上はやらせない!!」

 

 

「駄目ぇぇぇ!!!」

 

 

「やらせや…しません!!」

 

 

磯風達が慌てて立ち上がりカナに駆け寄ろうとするが間に合うわけがないがその横を一人の艦娘が全速力で駆け抜けていきカナもその存在には気付けていなかった

 

 

「二人目、さてと言い残す事はあるかしら?軽巡?」

 

 

「………ハハ、なら一言だけ」

 

 

「何かしら?」

 

 

今から砲撃されると分かっていながら木曾は嘲笑うかの様に笑うと一言だけ告げる

 

 

「繋げた希望は……決して消えない消せない

お前はここで必ず死ぬんだ、お前はあの希望に勝てやしない

先に言っておいてやるよ……お前が死ぬのを先に待っててやるよ!!ザマァみろ!!!」

 

 

「……へぇ?……口だけは達者見たいねこの雑魚が!!!」

 

 

カナは苛つき木曾へ接射放とうとするが

 

 

「駄目ぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

それよりも先に古鷹が砲撃し再びカナの脚を狙うように放つが

 

 

「見え見えね、本当にお馬鹿さん」

 

 

その脚に主砲を伸ばしガードするとニヤリと笑いそのまま木曾に接射を行いカナは爆煙に包まれる

 

 

「………木曾……木曾ぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

不知火の叫び声と古鷹の絶叫が響き渡るとカナが主砲を戻し爆煙の中から木曾が蹴り飛ばされてくる

 

 

「………不味いデース…この状況は本当に不味いデース!!」

 

 

「こんなのどうしろってのさ!!!」

 

 

蹴り飛ばされてきた木曾はマントが破れ艤装もほとんど破壊されており腹部が抉れ身体も焼け焦げていた

もうこの戦闘では戦えないほどの傷を負いその姿を見た金剛達は焦りと恐怖を感じる

 

 

「アハハハハハ!全く雑魚がいきがるからこうなるのよ!!!アハハハハハあー、笑えるわ!!!」

 

 

「カナぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「貴様ぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「ガ…………ハッ………!」

 

 

 

カナが笑っていると木曾が辛うじて動けるのか身体を動かし頭だけをカナへと向ける

 

 

「木曾!」

 

 

「木曾さん!!」

 

 

「あら?動けたの?笑えるわ、あれだけたんかきっといてこれだもんねぇ?アハハ!」

 

 

木曾は声こそ上げられないが何とか動く腕をカナへと向けると人差し指を差し向ける

 

 

「なぁによ?まだその状態で私に挑むつもりー?アハハ笑えてくるわね!!」

 

 

砲撃を受けボロボロの状態にも関わらず何とか動き微笑むと掠れた声で告げる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「頼……ん………だ………ぞ……希望(叢雲)

 

 

「は?あんた何いってーーー」

 

 

カナがすっとんきょうな声で聞くと爆煙を切り裂き一人の艦娘がカナへと襲い掛かる

 

 

「カナぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「え!む、叢雲!?」

 

 

「いつの間にあんなところに!?」

 

 

「さっき、確かに前を走っていたが何故このタイミングで!?」

 

 

「なっ!いつの間に!!」

 

 

叢雲は薙刀を振るうとカナはそれを交わすのだがそれすらもさせないように一人でカナを追い詰めようと全力で走る

(不味い!今戦うのは本当に不味い!!)

 

 

カナは突然現れた叢雲に恐れを抱き全速力で逃げようとするが叢雲は全く逃がそうとせず距離を詰めると先程カナが砲撃した右半身をに回り込む

 

 

「なっ!こ、コイツなんで!!」

 

 

右半身に回り込んだ叢雲に驚きながらも慌てて正面を捉えようとするとそれよりも叢雲が早く追い付かない

(やっぱり!木曾の読み通り!コイツ半身が使えなくなってる!!)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「叢雲聞いてくれ、アイツの弱点を見付けたんだ」

 

 

「は?弱点?」

 

 

突然そう言われた叢雲は驚き困惑していると木曾はカナを指差しながら答えてくれる

 

 

「今、奴が夕立を接射した直後左半身の艤装が傾いたんだ

変だと思ってその左半身に攻撃を仕掛けたんだが奴の防御がかなり落ち、そして動きが鈍くなってたんだ

恐らくだが、奴の接射にはかなりのリスクがある

艦娘を一撃で仕留められる代わりにかなりの反動がありそれは奴の半身を動けなくするんだと思う」

 

 

「まさかそんな!……でもあり得ない話じゃない

奴の主砲は明らかに別物だし、あんなのポンポン撃てるのが可笑しいもんね」

 

 

「だから奴がもう一度あれをやったとき斬り込んでくれないか?

どうやらお前の斬撃はアイツに効くみたいだからな」

 

 

「……ちょっと待ってそうなると一人接射されないといけないわよね?そんなの」

 

 

「俺がやる」

 

 

「……は?」

 

 

「俺がわざと捕まってアイツに接射を撃たせ隙を作る」

 

 

「……は?」

 

 

「だから、叢雲お前が奴を倒してくれ

俺にはそれが出来ないから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「本当!何が希望よ!!何がお前だけが傷を付けられるだよ!!」

 

 

叢雲は涙を流すのを堪えながら薙刀を振るい右半身が使えなくなっているカナを追い詰めていく

(この私の弱点を見抜いた!?まさか!あの軽巡が!?)

 

 

 

「本当!本当に!馬鹿なんだから!!自己犠牲なんてしちゃって!!でも!!」

 

 

カナが完全に慌てている中叢雲は薙刀を力一杯握り締めるとその右半身を切り裂きに掛かる

 

 

「あんたが繋げてくれた希望は!!私が繋げるわよ木曾!!!」

 

 

「このぉ!!叢雲!!」

 

 

何とか左腕の艤装でその刃を弾き飛ばすが叢雲は艤装に付いていた碇と鎖を取り出すとそれをカナの右腕に投げるとぐるぐるとそれを巻いていくと勢いよく艤装で腕を引っ張る

 

 

「離せ!!離せぇぇぇ!」

 

 

「良くも!木曾と夕立をやってくれたわね!!

これはそのお返しよ!!斬り飛ばして上げるわ!!!」

 

 

「辞めろぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

 

動かない右腕を近付けると鎖をほどき薙刀の刃を突き立て全力でそれを斬り上げるとカナの右腕が宙を舞う

 

 

「あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!腕が!!腕がぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「やりました!!飛行場姫の腕を!!」

 

 

「叢雲ー!!」

 

 

右腕から大量の出血しているが叢雲は更に追撃をしようとする

 

 

 

「あんたは私が倒す!!この命に変えても!!」

 

 

 

 

 

 





次回

それぞれの死闘

木曾が自らを犠牲にする変わりにカナを倒す希望を繋げそれを叢雲が斬り開いた
死闘が続く中、各々が力を振り絞り強敵に挑む

イベント始まったー!イエーイ!!
ですがまだやってなーい!!!
今晩からやらないとなぁ……



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最終局面 九

「クソガキ共がぁぁぁぁ!!アブソリュート!!」

 

 

カナがアブソリュートを呼ぶと先程カナを食らっていた管が伸び斬り飛ばされた腕を掴むとそのまま持ってくる

そして持ってきた腕を右腕に付けるとその場から修復され元に戻る

 

 

「何て再生力!!」

 

 

「斬り飛ばした腕を瞬時に!」

 

 

「チッ!やはり動かないか!!

やってくれるじゃないの!叢雲!!!」

 

 

「やっぱり、簡単にはいかないか

腕を斬り飛ばされた瞬間に治すなんて!!」

 

 

だが、カナの右腕はぶらんと垂れ下がっており傷口が完全には治っては居なかった

それでも無くしたはずの右腕を簡単に治すカナに叢雲は更に警戒する

 

 

「本当にお前らは私の神経を逆撫でしてくれるなぁ!!」

 

 

「切り替えが早いのが本当苦痛ね、あんたは!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アハハハハハ!!沈んで貰いますよぉ!!」

 

 

「くっ!コイツやはり強い!!」

 

 

カナと叢雲達が激戦を繰り広げる中長門達は起き上がっていた椿と対峙していた

先程の様に深海棲艦こそ居なくなり椿に集中出来るのだが椿自体がかなり強く長門達も苦戦を強いられていた

 

 

「粉々にしてくれる!!」

 

 

「死になさい!!」

 

 

「効きませんし、もう見切ってるですよぉ!!」

 

 

ガングートとウォースパイトが同時に攻撃を仕掛けるが椿はそれを軽々と交わしていきその着地点を狙って大和が砲撃する

 

 

「砲門!放て!!」

 

 

「チッ!当たるわけにはいきませんねぇ!!」

 

 

だが、大和の砲撃も次第に見切られてきてしまい長門はどうするべきが悩んでいた

(どうする!コイツに砲撃戦も近接戦もほとんど通用しない!!もしコイツに勝てるとしたら………)

 

 

長門は不意に叢雲を見てしまう

そう、もしこんな状況でも叢雲は直ぐ様一人で突破口を見付け行動すると思い頼っていたが叢雲を見てあることに気付く

(…………アイツ、腹部にあんな傷あったか?)

 

 

叢雲の腹部を凝視するとそこには少しだけ抉られた傷が見えておりそこから少しだけ血が流れていた

しかも叢雲も息がかなり上がっており疲労していることが遠くからでも分かる

(叢雲もそろそろ限界と言うことか!不味い!椿で足止めを食っていたからか!叢雲の援護に!!)

 

 

長門が走りだそうとした瞬間椿がそれを見逃さず海面を蹴り飛ばすと一気に距離を詰める

 

 

「逃がしませんよぉ!!!」

 

 

「クソ!やはり速い!!」

 

 

長門は咄嗟に構えるがその間に一人の艦娘が割り込み椿の突進を受け止める

 

 

「陸奥!!」

 

 

「チッ!邪魔が入りましたか!!」

 

 

「長門行って!!コイツは私達が押さえる!だから!!」

 

 

火花を散らしながら陸奥は椿を押さえており長門も手を出そうとするがぐっと押さえその場を去ろうとするも

 

 

「行かせませんよぉ!!!」

 

 

「きゃあ!!」

 

 

椿がその陸奥の艤装を蹴り飛ばすと長門へ全速力で突っ込むが

 

 

「やらせねぇ!!」

 

 

その椿を両手で加古が受け止めそれと同時に衣笠も艤装をぶつけ椿を止める

 

 

「加古!衣笠!!」

 

 

「コイツは私達がやる!!長門は叢雲達を!!」

 

 

「木曾が命賭けてやったんだから!私達が命張らないなんて情けないわ!!行って!!あの人達を!!古鷹さんと叢雲達を助けて!!」

 

 

「……すまない!二人とも!!」

 

 

「行かせや!!」

 

 

「そこまでですよ!!椿!!」

 

 

加古と衣笠が何とか椿を止めている中真横から青葉が主砲を構えると砲撃しておりそれを見ていた椿は二人を蹴り飛ばすと砲撃を交わす

 

 

「チッ!逃がしましたか……本当に邪魔ばかりしてくれますねぇ?貴女達?」

 

 

加古、衣笠、青葉が椿の前に立ち塞がる

その後ろではガングート、ウォースパイト、大和達が主砲を構えているがそれを見ながら椿は笑みを浮かべる

 

 

「まぁ、良い

お前ら全員沈めればそこを通れば良いんですからねぇ!!!」

 

 

その瞬間加古に向けて爪を振りかざすがそれを青葉が防ぎその横から衣笠が主砲で撃ち抜こうとする

 

 

「沈みなさい!!」

 

 

「あらよっと!!」

 

 

「え!?」

 

 

だが、椿は爪で青葉を掴むとそのまま衣笠の方へと向け青葉を盾として使う

 

 

「え!?ちょっと!!」

 

 

「隙有りですねぇ!!」

 

 

一瞬、ほんの一瞬砲撃を躊躇った瞬間青葉を衣笠に投げ付けると同時に雷撃を放ち二人に直撃する

 

 

「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ!!」」

 

 

「あーあ、弱いですねぇ!!本当に!!」

 

 

「貴様!!」

 

 

「これ以上はやらせないわよ!!」

 

 

衣笠と青葉がやられた直後ローマと綾波が走ってきており椿に対し砲撃をするが椿は簡単にそれを交わし自らの砲撃で綾波を狙い撃つと直撃し一瞬ローマが躊躇うが直ぐ様拳を握り直し椿に襲い掛かる

 

 

「貴様ぁぁぁ!!」

 

 

椿はローマの攻撃を交わし艤装を掴むとそのまま海面に叩き付ける

 

 

「ガハッ!」

 

 

「相変わらず脳が無いですねぇ!!そんなので私がやられるとでも!?」

 

 

たった一人の戦艦にすら手が出せない状況で加古は一人椿の戦い方を見ており静かに考えていた

(…何か……何かあるんだ……見ろ…よく見て考えろ…コイツの弱点が……どこか…絶対に……化物であろうが何だろうが絶対に!!

ただ倒すだけじゃ駄目だ……またさっき見たいに起き上がる……ならコイツを動けないように……コイツの機関は何処にあるんだ?)

 

 

そしてガングートやウォースパイト達が戦っている最中その答えを見付ける

 

 

「………あった……そこか……だが……いや、なりふり構ってる場合じゃない!!

コイツを倒して!私達は前に進むんだ!!」

 

 

 

 





次回

未来(勝利)に繋いでいけ

長門がとうとうカナへと向かいだし加古が椿と戦う最中その突破口を見付ける
そして木曾に影響を受けた艦隊達は笑みを浮かべながら覚悟をする

この戦いも後少しですかなぁ…
あ、因みにイベントのE1は甲突破しました!
四艦編成でしたが意外と余裕でしたな……
村雨さん強すぎる……(集積やら吹き飛ばすし…)
最早この娘エース何じゃね?と思いましたね!!
ヴェール?あぁ……居ましたが何故か主砲を当ててくれなくてですね…ハハ…(ヴェールレベ91村雨レベ71)



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最終局面 十



またまた詰め込みました☆ミ
後予告詐欺ですはい





加古は走り出すと真っ直ぐ椿に向かっていきそれに気付いた椿は加古に振り向くと主砲を向ける

 

 

「まぁた来たんですかぁ!?古鷹二番艦!!」

 

 

「あぁ!今度こそお前の終わりだよ!!椿!!」

 

 

「アハハ!!何ほざいてるんですが雑魚重巡がぁ!!」

 

 

それと同時に椿が砲撃するが加古はその砲撃を交わすと椿に接射をしようとするが椿はそれを先に読むと直ぐ様交わす

 

 

「やっぱり、お前その艤装特殊みたいだな!!」

 

 

「ほほぅ?今ので気付きますかぁ?」

 

 

交わされた直後雷撃を放つがそれすらも椿は海面を蹴り飛ばすことで交わし主砲を加古に向けると直撃し加古はかなりのダメージを負う

 

 

「くっ!やはり下手には攻撃出来ないか!!」

 

 

「アハハ!!この私に勝てるわけないじゃないですかぁ!!」

 

 

椿の身軽過ぎる動きに加古が翻弄されていると日向が海面を踏み込むと一気に椿との距離を詰める

 

 

「そこぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

「ほほう?これは速いですねぇ!!」

 

 

そして海面に着地する椿との距離を詰め接射しようとするが椿は日向の主砲を掴むと軽々と日向を持ち上げる

 

 

「なっ!コイツ!!」

 

 

「軽いですねぇ……こんなもんですかぁ!!」

 

 

そのまま日向を海面に叩き付けると同時に主砲を向けるがその瞬間頭を下げ伊勢の砲撃を交わす

 

 

「嘘!真後ろから撃ったのに!?」

 

 

「馬鹿ですねぇ!!その程度予想済みですよ!!」

 

 

そして日向を掴んだまま伊勢へ投げ付けると同時に主砲を伊勢に向け砲撃する

 

 

「きゃあぁぁぁ!!」

 

 

「ぐぅ!」

 

 

「アハハハハハ!弱い弱い!!こんなもんですかぁ!!」

 

 

「クソ!少しだけ……ほんの少しだけコイツの動きを止められれば!!」

 

 

加古が歯を食い縛っているとその姿を見ていた矢矧が方を叩く

 

 

「……何か見つけたのか?加古?」

 

 

「矢矧さん!……恐らくだけどアイツの機関を見付けた

少しだけアイツの動きを止められれば……破壊できるの思うんだ」

 

 

「………三分」

 

 

「……え?」

 

 

「三分、嫌二分ならアイツを足止め出来るわ

それで行ける?」

 

 

「っ!!充分です!!」

 

 

「よし、分かったわ!阿賀野ねぇさん!!能代ねぇさん!!酒匂!!アレをやるわよ!!」

 

 

「お、あれやるの~!久しぶりだね!」

 

 

「阿賀野ねぇさん、順番忘れないでね!!」

 

 

「よっしゃ!やっちゃおっか!!」

 

 

矢矧が笑みを浮かべながら答えると阿賀野、能代、酒匂が動きだすと矢矧は再び肩を叩く

 

 

「行くわよ!!フォーメーション『トライアングル』!!」

 

 

「「「了解!!」」」

 

 

矢矧の呼び声と同時に阿賀野達が応答すると四人は一斉に動きだし横一列に並び椿に向かっていく

 

 

「見たことある動き………っ!?貴様!!矢矧か!?不味い!!」

 

 

久しぶりね(・・・・・)!!武蔵から受けた傷はまだ痛むのかしら!?」

 

 

椿は矢矧の姿を見た瞬間焦り先に矢矧を撃ち抜こうとするがそれよりも先に阿賀野と酒匂が主砲で撃ち抜く

 

 

「さっ!行くよぉ!!」

 

 

「阿賀野型の恐ろしさ!」

 

 

「思い知ってよね!!」

 

 

「覚悟しなさい!!四姉妹の絆!貴女に抜けられるかしら!?」

 

 

その瞬間矢矧が椿に突っ走ると阿賀野、能代、酒匂が椿を囲うように三角の陣形を取り矢矧だけ椿に向かっていく

 

 

「この陣形!!クソ!またか!!」

 

 

「沈みなさい!!」

 

 

そして逃げようとする椿を矢矧が捉えるとその瞬間三人は主砲と魚雷を構えており椿は久しぶり背筋が凍り付く

 

 

「このぉ!!」

 

 

椿が爪を振り上げた瞬間その手を阿賀野が狙い撃ち避けようとしてもそれを逃がすまいと能代が撃ち抜き被弾する

 

 

「くっ!痛みはあんまりないが!」

 

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

 

その瞬間椿の腹部に矢矧が蹴りを当て、更に脚に砲撃すると少しだけ下がると椿が爆煙に巻かれながら爪を振り下ろす

 

 

「この!!」

 

 

「させないわよ!!」

 

 

だが、その攻撃も能代により撃ち抜かれ腕が弾き飛ばされると矢矧は魚雷を放ち命中させ椿に確実にダメージを負わせていく

 

 

「く、くそがぁ!!」

 

 

再び反撃に出ようとするが走り出した瞬間再び雷撃が直撃しふらついた脚に酒匂が主砲で撃ち抜き椿は体制を崩す

 

 

「あ、脚を!!」

 

 

「阿賀野ねぇ!!」

 

 

「了解!ぶっ飛ばしちゃお!!」

 

 

「砲撃用意!」

 

 

「「撃て!!!」」

 

 

体制を崩した椿に対し矢矧と阿賀野が砲撃し爆煙に巻かれるとそれに間髪入れず酒匂と能代が椿に雷撃を放ち命中させる

 

 

「このぉぉぉ!!」

 

 

だがそれでも椿は倒れずに再び矢矧に爪を振り下ろすと矢矧はそれを交わすと同時に能代が椿の頭を撃ち抜く

 

 

「ガハッ……!」

 

 

「はぁぁぁ!!」

 

 

それと同時に矢矧が椿を蹴り飛ばすと少しだけ椿が後退したところに阿賀野と酒匂の主砲が命中する

 

 

「………すげぇ…あれが…大本営最強軽巡艦隊…『クローバー』」

 

 

クローバー、昔東雲が大元帥になる前に提督として前線に居たときに呼ばれてきた矢矧率いる阿賀野姉妹艦隊の名称

多くの海域と姫を倒してきた実績を持つ四人の事であり

名前の題材は幸せの四葉のクローバー

その意味は海域に平和をもたらし戦争の終わりを意味する

その名に恥じぬほどの実力があり特に矢矧は近接戦闘に馴れており阿賀野達も支援砲撃に特化した艦隊である

 

 

「加古!!長くは持たない!!

コイツの特性上これが通用するのも後少しだ!!頼むぞ!!」

 

 

「分かってる!!」

 

 

加古は矢矧達が椿を押さえている間にガングートとウォースパイト達に合流すると作戦を提案する

 

 

「ガングートさん!ウォースパイトさん!大和さん!日向さん!伊勢さん!ローマさん!陸奥さん!聞いてほしいんだ!!

奴の機関を破壊する!!」

 

 

ウォースパイト達に作戦の概要を話していると大和は口を押さえ日向と伊勢は目をそらす

 

 

「ーーーと言う事だ、あたしだけじゃ無理なんだ協力してほしい!!」

 

 

「だ!だがそれだとお前が!!」

 

 

「分かってる!!でもこれしか無い!!

奴を倒しても何度も起き上がる!!さっき分かっただろ!?

恐らくだけどアイツを撃沈するにはまだ火力が足りないか何かあるんだ!!

でもそれはまだ分からない……だから!今回だけでも!!」

 

 

「ですが!貴女そんな事!!」

 

 

ガングートとウォースパイトがその行動を止めようとするがローマが二人の肩を叩く

 

 

「………成功するのよね?」

 

 

「あぁ!してみせる!!」

 

 

「……分かったわ信じるわよ、貴女を」

 

 

「ローマ!」

 

 

「貴女!何言って!!」

 

 

「でもこれしかないでしょ!!私が出来るなら私がやりたいわ!!でもその正確な場所はこの娘しか分からない!!なら私達はそれに協力するだけよ!!

違う!?」

 

 

ローマの言葉に二人は黙りこんでいると日向と伊勢、そして陸奥が肩を叩く

 

 

「……ごめん、任せても良い?」

 

 

「……すまん、加古」

 

 

「良いんだ、あたしにはこれしか出来ないからな!!

じゃあ頼んだぜ!!皆!!」

 

 

「……信じるわよ、貴女を」

 

 

「任せてくれ!!」

 

 

「加古さん!!」

 

 

加古が走り出そうとすると大和に呼び止められ振り向くと涙をためていた

 

 

「な、何でそんな作戦何ですか!!貴女!!命が惜しく無いんですか!?」

 

 

「………惜しくないよ

だって、アタシはもうそんなことを恐れて失いたくないからな!!」

 

 

その言葉は古鷹を捨てた自分への言葉でもありそれを救った叢雲に対するリスペクトであった

(惜しくないさ、叢雲だって……命を掛けて古鷹を救い、更に今こんな奴より強い化け物と戦ってるんだ

駆逐艦なのに自分より遥かにデカイ化け物と

それに比べたらこの程度の事!対したことじゃねぇ!!

アタシは!あんな風になるんだ!!あんな!強くてカッコいい艦娘に!!)

 

 

そして加古は走り出す、己の新しい理念と信念に従い島の支配者たる化け物に

 

 

「きゃあぁぁぁ!!」

 

 

その瞬間矢矧に主砲が命中し爆煙を上げていた

 

 

「矢矧!!」

 

 

「何度も同じ手を食らってたまるもんですかぁ!!!」

 

 

椿の身体は傷こそ付いているものの艤装は無傷でありその砲を阿賀野達に向けると三人同時に撃ち抜いていきそれぞれ爆煙と共に大爆発を起こす

 

 

「くぅ!私お姉ちゃんなのに!!」

 

 

「阿賀野ねぇ!きゃあぁぁ!!」

 

 

「皆!!きゃあ!!」

 

 

傷を負い肩で息をする椿に加古は簡単に近寄ることが出来艤装をぶつけようとするが椿の爪がそれを掴む

 

 

「また来たんですかぁ!?古鷹妹!!」

 

 

「あぁ!お前を倒しに来たぜ!!」

 

 

「何度やっても同じことを!!」

 

 

椿が艤装を掴み加古を持ち上げようとするがその状態で椿に接射をし加古と椿は同時にダメージを負う

 

 

「コイツ!躊躇いなく!!」

 

 

「熱い……だが!こんなもんじゃねぇ!!」

 

 

加古はそのまま足払いをしようとするが椿はそれよりも先に加古の艤装を持ち上げる

 

 

「この!!雑魚がぁ!!」

 

 

そしてそのまま海面に叩きつけようとした瞬間砲弾が椿の脚に直撃し体制を崩す

 

 

「ぐぬぅ!この痛み……ローマか!!」

 

 

「まず脚ね!!ガングート!ウォースパイト!!」

 

 

「っ!分かっている!!」

 

 

「ごめん!加古!!」

 

 

それと同時に椿の注意がガングートとウォースパイトに向いたのを確認した加古は無理矢理艤装から手を離させると足払いをし椿の体制を崩す

 

 

「なっ!まだこんな力を!?」

 

 

「よし!今だ!!」

 

 

足払いにより椿が体制を崩した所にガングートとウォースパイトが椿の脚部を狙い砲撃すると見事着弾し大爆発を起こす

 

 

「ぐぅ!脚をやられたか!!」

 

 

「まだまだ!!」

 

 

椿の脚からは黒煙が上がっているのにも関わらず軽々と体制を戻し海面に立ち上がると加古から距離を取ろうとする

 

 

「逃がさねぇ!!」

 

 

「チッ!なら食らいなさい!!」

 

 

その状態から椿は加古に向けて砲撃するとそれが直撃し加古は爆煙に巻かれてしまう

 

 

「全くうっとお」

 

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「なっ!まさか!?」

 

 

砲撃を受けても臆さない加古に焦ってしまうと加古が椿の肩を掴むとその後ろに日向と伊勢が回り込む

 

 

「伊勢さん!!日向!!お願い!!」

 

 

「っ!了解!伊勢!!」

 

 

「えぇ……行くわよ!!主砲一斉射!!撃て!!!」

 

 

椿はそれを確認し避けようとするも加古はそうさせまいと椿に抱きつき自分事伊勢と日向に撃たせると加古だけかなりのダメージを負う

 

 

「き、貴様!!何のつもりだ!!」

 

 

「ぐぅ……痛い…だが!足りねぇ!!」

 

 

その加古の行いに椿は疑問に感じながら応戦しようとしていた

(……可笑しい、コイツら何で本体ではなく艤装を?

艤装の耐久は突破出来るわけないしまして機関を破壊なんて………待てよ!?

コイツら今私の何処を破壊した!?)

 

 

焦りながら自らの破壊された部分を確認すると両足、そして背部にある燃料タンク

壊されたのは大したことない部分、それは薬で直せるからであるが

 

 

「お前!!まさか!!」

 

 

「はは……バレちったかな…狙いが…」

 

 

ニヤリと笑う加古に冷や汗を流す

(脚部のスラスターの右側には機関に直結する部分もある!だがそれらはバックアップもあるから破損しても問題ない!!

それに加え燃料タンクは壊れても予備がある!!逆を言えばそれらを破壊すると言うことは私の装甲が落ちる!!)

 

 

「……ハハ、右砲門の下だろ?お前の機関は!!」

 

 

その言葉に椿の背筋が凍り付く

 

 

「お前どうやって私の機関の場所を!!」

 

 

「…簡単さ、お前はどんな攻撃をされても肉弾戦で返してきていた

そして自棄に自身の身体に攻撃を受けることに専念していた

お前は主砲や艤装を破壊されることを何よりも恐れていた!!」

 

 

「ぐぅ!!」

 

 

「…聞いたことがある、ある特殊艤装の話だ

その艤装の耐久値はかなり高く設計されていた

だが、一つだけ欠点があった

それは部分的な破壊をされると全体の耐久が落ちること!!つまりお前の艤装はそれだ!!」

 

 

今まで誰にもバレていなかった艤装の秘密を加古にバレてしまい椿は静かに後退っているとそれが本当であることを理解するとニヤリと笑う

 

 

「…どうやら、当たりの様だな」

 

 

「……これは……これはこれは…末恐ろしい…まさかこの艤装の弱点を見破るなんて初めてですよ全く……えぇ全く……

えぇ、当たりですよ…この艤装は部分的な耐久性は低くそれを各個破壊されると全体の装甲が落ちますね…ですが……」

 

 

その瞬間椿は走り出しその爪を突き刺そうと全速力で加古に襲い掛かる

 

 

「ですが!!ここでお前を殺せば良いだけだ!!」

 

 

その瞬発力は凄まじく一瞬で爪は加古の腹部に到達すると加古は覚悟を決めわざとその爪に突き刺さる

 

 

「グフッ……!!」

 

 

「アハハハハハ!!!このまま貫いてーーー」

 

 

椿がその状態から加古を貫こうとするが加古は椿の爪を掴むとニヤリと笑う

 

 

「……捕…まえ…た!!」

 

 

「なっ!!コイツ!!」

 

 

加古はわざとその爪に刺さりながら椿を捕まえると大声で叫ぶ

 

 

「大和さん!!陸奥さん!!!」

 

 

「はい!!」

 

 

「分かったわ!!」

 

 

加古の言葉に答えるように大和と陸奥は椿の背後を捉えると機関があると思われる右砲門を狙う

 

 

「ま、不味い!!離せ!!」

 

 

「誰が……離すかよ!!」

 

 

「待て!考え直せ!!大和と陸奥の砲撃を受ければお前もただではすまない!!今私を見逃せばお前の命は助けてやる!!どうだ!?」

 

 

加古に取引を持ちかけようとするが加古はニヤリと笑いながら当然のように答える

 

 

「やだよ、ここでお前は終わりだ!!」

 

 

「…ごめんなさい!徹甲弾!!全砲門一斉射!!」

 

 

「撃て!!!」

 

 

 

そして大和と陸奥の砲撃が二人を襲い二人は爆煙に包まれる

しばらくすると直撃した椿が膝を付いており主砲の艤装から黒煙が上がっており背中も焼け焦げていた

 

 

「くそがぁ!!クソ!クソ!クソ!クソ!!!

まさか!私の艤装が!!……ですがぁ!!」

 

 

爆煙が晴れると黒煙こそ上がっていた艤装ではあったが椿はまだ航行出来ておりその主砲を大和達に向ける

 

 

「まだ……まだ、動く!!さぁこれで!!」

 

 

 

「や……ら……せる……かぁ!!」

 

 

椿が大和達に攻撃を仕掛けようとするがその背後から加古が椿に飛び付き後ろから押さえ付ける  

 

 

「加古さん!!」   

 

 

「コイツ!まだ動けるのか!?離せ!!離せぇぇぇぇ!!」

 

 

「今だ!皆!!私事コイツを撃て!!!」

 

 

「なっ!」

 

 

「ちょっと何言ってるのよ!!」

 

 

「そうだ!そんなこと!!」

 

 

ガングート達が拒否する中日向が椿に向けて主砲を構える

 

 

「各員砲撃用意!!」

 

 

「なっ!日向何してるのさ!!」

 

 

「そうだ!仲間だぞ!!」

 

 

「……っ!了解!!」

 

 

日向の言葉の意味を理解したローマは苦虫を噛み潰した様な顔をしながら椿へと主砲を向ける

 

 

「ちょっと!!」

 

 

「急げ!!!加古も限界なんだ!!」

 

 

「だったら尚更!!」

 

 

「離せ!!離せって言ってるんだよ!!」

 

 

伊勢達が渋っている中椿は動く主砲を全て加古に向けて連続して砲撃し爪で身体を引き裂き何とか引き剥がそうとしている

 

 

「っ!ガハッ!!早く……頼む!!!速く!!」

 

 

「全艦隊!!椿へ主砲斉射用意!!彼女の思いを無駄にしないで!!」

 

 

陸奥が叫ぶと全員が椿へと主砲を構え椿はより一層暴れ加古を降りきろうとする

 

 

 

「離せ!!離せ!!離せぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁそう言うなよ、お互い地獄で会おうぜ」

 

 

そう笑みを浮かべながら話す加古に椿は鬼の形相で叫ぶ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「加古ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

「「「「「撃てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」」」」」

 

 

その瞬間陸奥達の砲撃が雨の様に降り注ぎ加古と椿に直撃すると二人は先程より巨大な大爆発を起こし爆煙に包まれていく

 

 

「加古!加古ぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

「嘘でしょ……加古!!」

 

 

しばらくすると爆煙が晴れていき未だ立っている影が一つ

その姿を見て青葉と衣笠達が駆け寄ろうとするが

 

 

「嘘でしょ!!」

 

 

「ま、まさか!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ガハッ………この……私……が………この…」

 

 

立っていたのは椿だった

その真後ろには一人ボロボロの状態で転がっている加古の姿があった

だが、艤装は完全に破壊され頭から血を流し全身焼け焦げていながら呆然と立っていた

 

 

「アイツ!まだ!!」

 

 

「早くアイツを!!」

 

 

日向達が慌てて応戦しようとするがそれを陸奥が止め首を横に振るう

呆然と立ち尽くす椿はゆっくりと倒れている加古を見る

 

 

「……勝利………の為………に……ここ……ま……で……や……る………の………か…………負……け………た……よ加古

ガハッ」

 

 

賞賛の言葉を残し笑みを浮かべると吐血しその場に崩れ落ちるように倒れ二人の海面を赤く染めると青葉達が全速力で加古に駆け寄る

 

 

「加古!!加古!!しっかりして!!」

 

 

「全く何て事をしてくれるんだ!コイツは!!」

 

 

加古を優しく持ち上げると身体は焼け焦げているものの虫の息ではあるが少しだけ呼吸音が聞こえ青葉達は加古を抱き締める

 

 

「……強かったわコイツ」

 

 

「……えぇ、今までの中で一番だっわねコイツは」

 

 

陸奥とローマは倒れている椿に主砲を構えているが動く気配が無い

そしてまだ砲撃音が鳴り響く戦場を見る

 

 

「片方は倒した……後は」

 

 

「飛行場姫か……あれはコイツ以上だぞ」

 

 

 

 

 





次回予告

最強種 歴戦の姫

ドレス島の支配者たる一人椿を戦闘不能にまで追い込むことが出来た加古達
だが戦いは終わらない、最強種たる姫カナを倒さない限り……

椿戦終わりですね!!(一気に書いてしまいましたわ(汗))
残るは最強種たるカナだけですねぇ
あ、イベントはE2を甲攻略目指してます!
行けるかなぁ……




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我、沈マズノ姫

「………まさか、椿が…?嘘でしょ?

アイツを倒すなんて予想外ね」

 

 

カナは艤装で辺りを警戒していると椿が加古と共に倒れていることを確認し素直に驚いておりそれを見ていた時雨がカナに向かっていく

 

 

「隙だらけだよ!!」

 

 

「どこがよ!!」

 

 

時雨は一人カナに立ち向かっていくが直ぐ様主砲をぶつけられ吹き飛ばされるとその後続けて叢雲と磯風が突っ込んでいく

 

 

「磯風!!捕まるんじゃないわよ!!」

 

 

「分かっている!!」

 

 

叢雲と磯風は全速力でカナに向かっていくがカナは艤装の主砲を伸ばすと二人が攻撃範囲に入った瞬間主砲を振り回す

 

 

「鬱陶しい!!」

 

 

「ぐっ!」

 

 

「こっちか!!」

 

 

主砲の砲塔で二人を吹き飛ばしていると後ろで援護砲撃をしていた熊野が微笑みながら小さく「よし!」と言う

 

 

「鈴谷、話がありますの」

 

 

「何さ!熊野こんなときに!!」

 

 

「………わたくし達がこの化け物に勝つためにはもう形振り構ってられないかも知れませんわ」

 

 

「え?熊野それって………」

 

 

鈴谷は砲撃するのを止めており熊野を見ると笑みを浮かべていた

その意図を理解すると鈴谷も笑いだす

 

 

「本気ー?熊野?」

 

 

「えぇ、もうこれしかありませんわ

だから鈴谷共に死んでくれませんか?」

 

 

熊野の言葉に鈴谷は笑みを浮かべると二つ返事で返してくる

 

 

「当然!!熊野となら何でも付き合うよ!!」

 

 

「神通さん!山城さん!後はお願い致しますわ!!」

 

 

その言葉と共に鈴谷と熊野は同時に走りだし全速力でカナに向かっていく

 

 

 

「ちょっと待ってください何をするつもりですか!?」

 

 

「あいつら……木曾に感化されてるわね……

でもそうするしかもう無いんじゃない?神通?」

 

 

「……そう……かも知れませんね」

 

 

「叢雲!磯風退いて!!」

 

 

「鈴谷!熊野!?」

 

 

「わたくし達が活路を開きますわ!!そこをお願い致します!!」

 

 

「あんた達何するつもり!?」

 

 

カナに向かっていた鈴谷と熊野は笑いながら向かっていくと主砲と魚雷を構える

 

 

「重巡がぁ!私の相手になるとでも!?」

 

 

主砲を仕舞うと二人を引き裂こうと爪を肥大化させるとそれを熊野が受け止める

 

 

「鈴谷!」

 

 

「分かってるって!!ほら!当たっちゃいなよ!!」

 

 

その瞬間瑞雲と魚雷を同時に発射させると瑞雲は主砲により潰されるが魚雷はカナに命中する

 

 

「効くか!この程度の魚雷!!」

 

 

「きゃぁぁぁ!!」

 

 

雷撃の攻撃を物ともせず鈴谷を蹴り飛ばすと同時に主砲の照準を合わせるが熊野がその主砲を思い切り蹴飛ばす

 

 

「とぉぉぉぉ!!!」

 

 

「チィ!ならお前からだ!!」

 

 

だが熊野を爪で捉えるとそのまま海面に叩き付け脚で熊野の腹部を踏みつける

 

 

「グフッ……あぁ!!」

 

 

「そのままこの重量に押し潰されろぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

「熊野から脚を退けろぉぉぉ!!!」

 

 

熊野を踏みつけながらギリギリと踏み潰そうとすると鈴谷がそれを止めるべくカナに接近すると脚を撃ち抜く

 

 

「その程度で私を動かせるとでも!!」

 

 

「ですが!貴女の意識は外せましたわね!!」

 

 

その瞬間確かにカナの脚が緩みそれを熊野は見逃さず主砲を取り出すとカナに向ける

 

 

「雑魚共が!そんな砲撃で!!」

 

 

「熊野と鈴谷だけではありませんよ!!」

 

 

そして突然カナは海中から飛び出した雷撃に命中し体制を崩すと熊野は脚から抜け出し主砲を構え 

 

 

「撃て!!!」

 

 

「くたばりなさい!!」

 

 

鈴谷と熊野が同時に砲撃しカナにそれが直撃すると二人の背中を神通が叩く

 

 

「全く、貴女達は二人で走りすぎですよ」

 

 

「アハハ、ごめんね神通」

 

 

「ごめんなさい、でもこれしかないと思って」

 

 

「この程度?」

 

 

鈴谷達が話してる間カナは主砲を後ろに回し海面を砲撃すると一気に距離を詰め爪を振り下ろそうとするが

 

 

「あんた達!油断してるんじゃないわよ!!」

 

 

その爪を山城が両腕で受け止めるが爪が鋭く両腕から血を流す

 

 

「山城!」

 

 

「良いからやりなさい!!私は大丈夫だから!!」

 

 

「行きますよ!三人とも!!」

 

 

「「了解!!」」

 

 

だが、三人が走り出そうとした瞬間カナは山城を爪で吹き飛ばし三人に襲い掛かる

 

 

「きゃあ!」

 

 

「雑魚共が!!いくら群れようが私の敵にならないのよ!!!」

 

 

「なら!!雑魚なりにさ!!」

 

 

「貴女に傷を付けて見せますわ!!」

  

 

「飛行場姫!貴女を倒すなんては言いませんが私達の希望(叢雲)には繋げて見せます!!」

 

 

 

 





次回

使い捨ての兵器(艦娘)

木曾に感化された鈴谷達は自らを省みずカナへダメージを与えることに覚悟を決める
それを叢雲が止めようとするが…

E2甲突破!!最強ソナー確保!!
大井っちの連激最強(迫真)
そして古鷹さん強いですわぁ……
さてと後はのんびり攻略ですかね、E3とE4は丙でぶっ倒してやろっと♪



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我、沈マズノ姫 二

神通、鈴谷、熊野が同時に主砲を構えると再びカナの主砲が三人を捉え近距離で砲撃するが何とか三人は交わし神通と鈴谷が近接戦をしようとするが

 

 

「お前達が私に傷?舐めるなよ雑魚がぁ!!」

 

 

その瞬間主砲が神通を襲いぶつかりそうになる

 

 

「させ……ないわよ!!」

 

 

だがそれよりも先に山城が艤装をぶつけその攻撃を防ぎ神通は山城を足掛かりに飛び上がると主砲と魚雷を向ける

 

 

「そこ!!」

 

 

「当たるかぁ!!」

 

 

だがカナは一瞬で主砲を仕舞うと後ろに下がることで神通の攻撃を交わすと更に海面を蹴ると神通より高く飛び上がると神通に踵落としを当てる

 

 

「くっ!」

 

 

「落ちろぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

寸前の所で神通は主砲をぶつけ防ぐのだがカナの重量と一撃に耐えきれずそのまま海面に叩き付けられてしまう

 

 

「ガハッ!!」

 

 

「踏み潰してやるわ!!」

 

 

そしてカナも落ちてくると神通を踏みつけようとするが

 

 

「山城!!」

 

 

「ちょっと借りますわ!!」

 

 

「はいはい!」

 

 

山城がしゃがむとその艤装を蹴り飛ばし鈴谷と熊野が飛び上がり落ちてきているカナに二人同時で艤装をぶつけ火花が飛び散る

 

 

「やらせは!」

 

 

「しませんわ!!」

 

 

「雑魚がぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

だがカナは空中で体制を建て直すと鈴谷を主砲で吹き飛ばし熊野の首を掴み海面へと投げ付ける

 

 

「熊野!!」

 

 

「ガハッ!!」

 

 

「そのまま潰れろぉぉぉ!!!」

 

 

「不味い!助けないと!!」

 

 

磯風と叢雲が走り出そうとすると阿武隈に手を出され止められる

 

 

「阿武隈!邪魔すんじゃ……!!」

 

 

「……二人は駄目だよ、二人は希望なんだから

お願い見ていて、お願い」

 

 

その直後、熊野がカナに踏みつけられ息苦しさから胃酸を吐き出してしまう

 

 

「ガハッ!!」

 

 

「熊野!!」

 

 

「熊野さん!!」

 

 

「野郎!!!」

 

 

熊野を踏み潰したカナはその状態から主砲を鈴谷達に向けようとするが突然足下が大爆発を起こし体制を崩す

 

 

「なっ!何で突然!?」

 

 

驚いたカナが足下を見るとそこには大量の不発した魚雷が浮いておりそれが踏んだ瞬間に起爆したことを理解する

 

 

「コイツ!まさかこれを想定して魚雷をばら蒔いたのか!?」

 

 

「ガハッ……重い……ですわ…でも…この重量なら魚雷も…爆発しますわよ……ね!!」

 

 

「この!!雑魚が!!」

 

 

カナは再び脚を上げると熊野を踏みつけようとするが目の前から砲撃を受け反動で少しよろける

 

 

「これ以上熊野を苛めんじゃねぇぞ!!

飛行場姫!熊野から退けぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

「オンボロ戦艦風情が調子に!!」

 

 

そしてカナが動こうとした瞬間脚に重量を感じ見るとそこにはカナの脚にしがみつく熊野が居た

 

 

「離せ!雑魚が!!」

 

 

「離し……ませんわ…!!鈴谷!!神通!!山城!!

今ですわ!!」

 

 

「流石熊野!!」

 

 

「行きますよ!!」

 

 

熊野が脚を捕まえ一斉にカナに向かっていこうとするのだが

 

 

「舐めるなよ!雑魚共!!」

 

 

脚にしがみついていた熊野を鷲掴みにすると持ち上げ再び海面に叩き付けると向かっていてきた神通に左主砲を伸ばしぶつけ

 

 

「ガハッ!!」

 

 

「吹き飛びなさい!!」

 

 

そしてそのまま左主砲で接射すると神通が大爆発を起こし吹き飛ばされていく

 

 

「神通!!こんのぉ!!」

 

 

「遅いんだよぉ!!」

 

 

神通が撃ち抜かれても鈴谷は躊躇いなくカナに主砲を当てようとするもそれよりも先に踏み込み鈴谷は首を掴まれ捕まってしまう

 

 

「が………離……!!」

 

 

「そのまま死になさい!!」

 

 

そしてカナは鈴谷を手放すと左主砲を再びぶつけ接射し叢雲の方角へと吹き飛ばされてしまう

 

 

「グ……ハァ……!!!」

 

 

「お前!よくもぉ!!」

 

 

「黙れ!オンボロ戦艦風情が!!」

 

 

そしてそれに加え山城が突っ込み砲撃するがカナはそれをものともせず山城に近付き爪で切り裂きに掛かりそれを何とか両手で防ぐ

 

 

「お!重い!!」

 

 

「弱い癖に調子に乗るんじゃないわよ!!」

 

 

その瞬間もう片手で山城の艤装を掴むとそれを振り回すとそのまま海面にぶつけ腹部に左主砲で接射しようとする

 

 

「不味い!逃げられ!!」

 

 

「くたばりなさい!!!」

 

 

そして山城は逃げることも叶わずカナに接射されると左半身の麻痺と共に山城を蹴飛ばしカナは膝をつく

 

 

「はぁ……はぁ…クソ!流石に体力が……」

 

 

「そこですわぁぁぁ!!!」

 

 

その状態を熊野は見逃さずにカナに襲い掛かるが

 

 

「分かっていたわよ!!」

 

 

カナは右手で熊野を捉え再び主砲にぶつけようとするが

 

 

「ならこれも分かっていましたの!?」

 

 

それよりも先に熊野が腕を掴みそのままカナの腕にしがみつく

 

 

「なっ!お前何をするつもりだ!?」

 

 

「鈴谷ぁぁぁぁ!!今ですわぁぁぁぁ!!!」

 

 

「よし来たぁぁぁ!!!」

 

 

吹き飛ばされたはずの鈴谷はボロボロになりながらも左側から爆煙を切り裂きカナへ近づくと近距離で主砲を向け

 

 

「あんた今左で撃ったよね!なら今対応出来ないはずいっくよー!!」

 

 

「チッ!それならば!!」

 

 

カナは右腕にしがみついた熊野を盾にすると一瞬だけ砲撃を撃つのを躊躇う

 

 

「あんたの仲間よ!これでも撃てるのかしら!?」

 

 

「鈴谷!何してますの!」

 

 

「分かってるって!ごめんね熊野!!」

 

 

だが鈴谷はその直後熊野ごとカナを撃ち抜き舌打ちをする

 

 

「チッ!仲間こと撃つか!!なら仕方無い!!死ね!!!」

 

 

しがみついた熊野を主砲に合わせそれを伸ばすと無理矢理剥がしその状態で接射すると先程より威力が高く熊野は吹き飛ばされてしまう

 

 

「熊野!!」

 

 

「余所見してる場合!?」

 

 

「ヤバッ!!」

 

 

その瞬間がら空きになった右手で鈴谷を捕まえると撃ち抜いた熊野の方角へと腹部を蹴り飛ばす

 

 

「ガハッ!!こ……!!」

 

 

鈴谷が主砲を構えようとするとそれよりも先にカナが主砲を構えておりニヤリと笑っている

 

 

「ヤバッ!!避けられ!!」

 

 

「死ね!!!」

 

 

その瞬間カナの砲撃が再び鈴谷に直撃し熊野と同じ様にボロボロになってしまい海面に力なく崩れ叢雲と磯風が駆け寄る

 

 

「鈴谷!!しっかりしなさい!!」

 

 

「熊野!!おいしっかりしろ!!

島風!山城を頼む!!」

 

 

「了解だよ!!」

 

 

「アハハ!これで三人!!後お前もだぁ!!」

 

 

カナが振り返るとそこには魚雷と主砲を構えていた神通が居りカナは襲い掛かる

 

 

「不味い!!」

 

 

「お前もあいつら見たいに死ね!!!」

 

 

「させませんよ!!」

 

 

カナの爪が振り下ろされた瞬間比叡が割り込み何とかカナの攻撃を防ぐとその後ろから時雨と阿武隈と不知火が走り左半身に主砲を放つ

 

 

「貴女の相手は」

 

 

「僕達だよ!!」

 

 

「沈んでもらいます!!」

 

 

「雑魚共がぁぁぁぁ!!」

 

 

その姿を見た叢雲と磯風が走り出そうとすると

 

 

「待つ……しぃ!」

 

 

叢雲の脚を息も絶え絶えになっている鈴谷が掴み慌てて振り返る

 

 

「ちょっと!何で邪魔するのよ!!」

 

 

「そうだぞ!あれでは皆が!!」

 

 

「違い……ますわ……!あの人……達は……もう…覚悟を……決めて…ますの!!」

 

 

「え?」

 

 

「どういうことだ?」

 

 

二人は全身がボロボロなのにも関わらず掠れた声で叢雲達に話し掛ける

 

 

「叢雲……達は……最後の……希望………だから…!

ここで……少しでも………休んで……!!」

 

 

「馬鹿言わないで!!阿武隈達だけで勝てる相手じゃない!!」

 

 

「分かって……ます……わ!!」

 

 

「まさか……お前達…自分達を足掛かりに飛行場姫を倒せと言うのか!?」

 

 

「正……解…!」

 

 

「ふざけないで!!そんなこと認められるわけないでしょ!!あんた達は下がってーー」

 

 

「叢……雲!!!」

 

 

掠れておりボロボロになっている鈴谷と熊野を見れずに走り出そうとするが鈴谷が手を離してくれず恐る恐る振り返ると

 

 

「お願…い……私達の……希望に…なって…?」

 

 

「……嫌よ、私はそんなつもりで戦ってるんじゃない」

 

 

「貴女を……認めてる……ですわ……私達は………立てなかった……から……」

 

 

「知らない知らない!!私は貴女達の希望になんてならない!!私は!!!」

 

 

「叢雲」

 

 

不意に古鷹が叢雲の肩を叩くとビクンと体を震わせながら拳を強く握り締める

 

 

「……嫌よ…だって私は……あんた達が傷付くのを…見たくない……だから…私は戦うのよ…それなのに!!」

 

 

「それでも………お願い……うちらの……」

 

 

「事を……信じて…くだ……さい……ませ」

 

 

掠れた声で言われながらも鈴谷と熊野は胸の内を叢雲に話していく

 

 

「うちら……正直…勝てると……思わなかったんだ……だってさ……作戦失敗してさ?飛行場姫が壊になってすっごい恐かったんだ

あの怒りと殺意に私達は威圧され押し潰されそうになってた

でも叢雲達はそれでも諦めなかった

飛行場姫は倒れてないまだ戦いは終わってないと教えてくれた」

 

 

「私達は既に死んだも同然でしたわ……それでも貴女達は立ち上がり私達に希望を見せてくれた

それは誰にも替えが効かないもの、大和さんにも長門さんでもない貴女だからこそ私達に希望を見せてくれた

だから、私達は再び立ち上がれた

木曾はそれを見て自らの役割を理解し貴女に託した

ならば私達も貴女にそれを繋げる役目がありますわ」

 

 

「そう、うちらは所詮兵器、ここで勝てなかったらしずむ運命使い捨ての兵器(艦娘)

 

でも貴女は違う」

 

 

「貴女は使い捨ての兵器(艦娘)に希望を見せてくれた

死しか見れていなかった私達に勝利いう一筋の光を」

 

 

アイツ(飛行場姫)を倒せるのはうちらじゃない」

 

 

飛行場姫(化物)を倒せるのは貴女だけ」

 

 

「誰よりも前に進み皆を引っ張るもう一人の連合艦隊旗艦」

 

 

「誰よりも小さく大きな背中を持ち決して絶望に屈しない希望の駆逐艦」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「お願い、私達に勝利(希望)を見せて

雷撃姫(叢雲)」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉に叢雲は声を詰まらせると無言で鈴谷と熊野を殴り付ける

 

 

「いたっ」

 

 

「何……するん……ですの…?」

 

 

「………ばーか、私は希望何かじゃないわ

ただ諦めが悪くて馬鹿で戦うことしか出来ない弱い、弱い駆逐艦よ

でも、分かったわよ今回だけよ

今回だけあんた達に従ってあげる」

 

 

叢雲は腹部を押さえると血が滲んでおり唇を噛み大声で叫ぶ

 

 

「阿武隈!不知火!比叡!時雨!神通!!!

頼むわよ!!ソイツの体力を出来るだけ削って!!!」

 

 

その声を聞いていた阿武隈達は顔を合わせ笑い合うと返事をすぐに返す

 

 

「あったりまえ!!」

 

 

「やってやります!」

 

 

「はい!お任せください!!」

 

 

「僕も出来ることを見せてあげるよ!!」

 

 

「任せてください!!」

 

 

そう言うと叢雲はその場に残り言葉を聞いていた金剛達もニヤリと笑う

 

 

「なら、私達も行かないとデース」

 

 

「金剛!」

 

 

「ふ、そうだな叢雲に託さないと恐らく今回は勝てないからな」

 

 

「グラーフまで…」

 

 

「まぁ、エースに託すのは前から変わりませんからね

行きましょうか」

 

 

「ちょっと大井!!」

 

 

三人が前に出古鷹も出ようとするが大井に止められる

 

 

「駄目ですよ、貴女も我が鎮守府のエース何ですから信じて待っててください」

 

 

「………はい」

 

 

古鷹は何か言いたげであったが押し殺すと大井達はニヤリと笑い全速力でカナに向かっていく

 

 

「比叡!!援護しますよぉ!!!」

 

 

「お姉様!!」

 

 

「さぁ!やってやろうじゃないか!!」

 

 

「グラーフさん!!」

 

 

「海の藻屑にしてやりましょう!!」

 

 

「大井さんまで!!」

 

 

全員が集まると再びカナに向き直りカナはうざそうに全員を睨み付ける

 

 

「まだ邪魔をするのか雑魚共………良いだろう……それならまとめて海に沈めてやろうじゃないの!!!」

 

 

「行きますよ!!皆!!

希望(叢雲)に繋ぐため私達はここで負けます!!

ですがコイツに一子報いますよ!!」

 

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

金剛の合図と共にカナと対陸艦隊と金剛達は最後の戦いをカナに挑む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

太平洋、真っ白な海にて一人の深海棲艦が監視者から伝達を受け取り動き出そうとしていた

 

 

「………へぇ?監視者から伝達なんて珍しい

何々?『ドレス島ニ迎エ』

……ふーん、監視者からの伝達なんてよっぽどだし

カナ様に何かあったのかしら?良いわ!暇だったし!!行くとしましょうかお前達!!!」

 

 

その声と共に深海棲艦は杖を海面に突き立てると真っ白な海が動き始めドレス島へと向かっていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回

繋いでいけ

叢雲を一旦下げ金剛達が最後の敵カナと対峙し耐久を削ることに専念する
ドレス島に迫る何かの事を知らずに


イベントE3突破!!
と言うことで新人ですが……うん、良いわ本当に……
あ、後カナ戦ですが申し訳ありませんがもう少しかかります……すいません…(いい加減長いと自負してますが…)





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我、沈マズノ姫 三

「くたばるデース!!」

 

 

「主砲斉射!当たって!!」

 

 

金剛と比叡が同時に主砲を放つとカナはそれを交わし反撃しようとするも時雨、不知火、阿武隈、大井が近接戦闘を仕掛けていこうとするも

 

 

「失せろ!!雑魚共がぁ!!」

 

 

カナはそれらを簡単に蹴散らし時雨の首を掴みそのまま握りつぶそうとするも

 

 

「やらせない!!」

 

 

グラーフの艦載機がカナの腕を撃ち抜き時雨は解放され下がる

 

 

「ありがとう!グラーフ!!」

 

 

「礼は後で良い!!来るぞ!!」

 

 

その瞬間時雨のすぐそばに砲撃が命中し振り返るとカナが体制を崩しており比叡と金剛の砲撃が命中していた

 

 

「金剛型ぁぁぁぁ!!」

 

 

「そう簡単には!!」

 

 

「やらせませんよ!!」

 

 

「どうやらお前らから始末した方が良さそう………!!」

 

 

カナが不意に何かを感知するとその方角へと顔を向け水平線の果てを見ると舌打ちをする

 

 

「……監視者め、余計な事をしやがって……海王(ネプチューン)を呼び寄せたな……確かに私の部下だけどアイツが来たらめんどくさいことになるじゃないの……」

 

 

「何余所見してるデース!!」

 

 

「黙れ!金剛型風情が!!!」

 

 

カナのその一瞬の行動をグラーフは見逃さずに数機の艦載機をカナが見た方角に飛ばし何なのかを確認する

(飛行場姫が一瞬だけ見たもの………一体なんだ?

警戒に越したことはないがこれ以上何か来たら私達の負けだ!!)

 

 

「くたばりなさい!!」

 

 

グラーフが、艦載機でその正体を探っている中金剛がカナと対峙しカナは爪で引き裂きに掛かるが

 

 

「させません!!」

 

 

カナの爪を比叡が防ぐと金剛はその隙に主砲をカナの腹部にぶつけるとそのまま接射しダメージを与える

 

 

「チッ!死に損ないが!!」

 

 

「その死に損ないに押されてるの誰デース!?」

 

 

「言うじゃないの!金剛型!!」

 

 

カナはほんの少しだけふらつくと腹部を押さえているとその後ろから大井と阿武隈が突っ込んでくる

 

 

「金剛さんと!」

 

 

「比叡さんだけじゃないわよ!!」

 

 

「お前らはもっと弱い癖にでしゃばるな!!!」

 

 

阿武隈と大井が近距離で撃ち抜くとカナはその爆煙に包まれながらも大井の身体を掴み主砲へとぶつける

 

 

「ガハッ!!」

 

 

「くたばれぇぇぇぇ!!!」

 

 

その状態から大井を接射すると大爆発を起こし吹き飛ばされてしまう

 

 

「大井さん!!」

 

 

「神通!前だ!!!」

 

 

「え?」

 

 

神通が慌てて前を振り向くとそこには息を切らしたカナが主砲を神通の腹部目掛けて伸ばしており腹部に主砲が命中し身体が宙に浮く

 

 

「不味い!神通!!」

 

 

「二人目!!くたばりなさい!!」

 

 

そしてその状態から接射すると神通の身体が宙を舞い力なく海面に崩れ落ちる

 

 

「神通!!コイツ!!」

 

 

「アハ!アハハ!あんた達風情がこの状態の私に勝てるわけ無いでしょうが!!!………っ!!」

 

 

だが、大井と神通を倒した瞬間カナの表情に曇りが見え始め片足を海面に付ける

(確かにこの限界突破(オーバーリミット)での敗北はあり得ない……でも痛みや体力は完全には治らない……そろそろ決着を付けないとな……)

 

 

確かにカナ自体は叢雲達より遥かに強くとんでもないことは明らかであるものの生物であり生きるものである

だからこそ疲れもするしそれにカナは艤装の重量もある

通常ここまでカナが戦えてる事自体有り得ないと言える

 

 

「……やっと…やっとコイツも疲れてきたみたいデースね……」

 

 

「ぶっちゃけヤバすぎるよ……私達も限界なのにさ……」

 

 

「でも、まだだよね……コイツの体力……」

 

 

そう、全員が警戒しているのはカナは疲れてはいるもののまだ艤装を展開しており海上に立てているからであり

 

 

「お前ら何かにこれ以上時間をかけられないよなぁ……」

 

 

殺意と気迫だけは全く衰えておらずその殺気は金剛達に向けられていた

 

 

「行くデース!コイツを必ずーーー」

 

 

と、金剛が言い掛けた瞬間カナから空気を振動させるほどの砲撃と共に金剛の側を砲弾がすり抜け近くに居た時雨が大爆発を起こし吹き飛ばされていく

 

 

「ガハッ………!!」

 

 

「えっ………?」

 

 

「今のって……」

 

 

砲弾が命中した時雨は明らかに今までの砲撃とは違う火力で吹き飛ばされていき艤装と身体がズタボロに破壊され海面を転がると動かなくなる

 

 

「……正直、この近距離で使いたくなかったわ……

コイツは反動も大きい……だからこれはお前達への敬意よ……この距離での砲撃は私にも危険が及ぶ、近接攻撃もほとんど出来ない

良くもまぁこれを使わせるまで私を追い込んでくれたわね

第1スロット即撃徹甲弾(アンリミテッド)

 

 

その言葉を聞いた瞬間金剛達はあの時の悪夢を思いだし背筋を凍らせると慌てて全員離れて戦おうとする

 

 

「皆!あの砲撃に当たったら駄目!!」

 

 

「警戒して全員でーーー」

 

 

と比叡が注意しようとした瞬間再び空気が振動するほどの砲撃音と共に比叡が大爆発を起こし時雨と同じく艤装を破壊され身体もボロボロになり吹き飛ばされていく

 

 

「比叡ぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

 

「残り四人」

 

 

「貴様ぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

比叡を撃ち抜かれた金剛は何も考えずにカナに突っ込んでいこうとするとカナはその金剛に照準を合わせ

 

 

「お前も死ね」

 

 

「金剛さん!!!」

 

 

再び轟音と共に砲撃するとその砲弾が金剛に迫るがそれを不知火が代わりに当たり大爆発を起こし金剛にぶつかる

 

 

「不知火!!!!」

 

 

「邪魔が入ったか、だが後二人」

 

 

不知火を撃ち抜いたカナは落ち着きながらも再び金剛へ主砲を構えていると阿武隈がその横から突っ込みカナに主砲と魚雷を命中させる

 

 

「これ以上は!!!やらせない!!!」

 

 

阿武隈の攻撃が命中するとカナは爆煙に包まれ阿武隈はほんの一瞬だけ安堵する

 

 

「……悪いわね軽巡」

 

 

だがその一瞬が不味かった

その一瞬でカナは主砲を阿武隈へ向けると爆煙を消し飛ばすほどの砲撃で砲弾を阿武隈に直撃させると大爆発を起こし吹き飛ばされていく

 

 

「阿武隈!!う、嘘デース!!

少しの時間で……こんな!!」

 

 

先程まで、神通、大井、阿武隈、不知火、比叡、時雨と戦っていたはずなのに

 

 

「残り二人、悪いわね

これが実力差よ!!」

 

 

ほんの少しの時間で一方的にカナは六人を大破させ戦闘不能に追い込み残っている金剛とグラーフにトドメをさしに掛かる

 

 

「不味いぞ!叢雲!!!」

 

 

「えぇ、これは流石に!!」

 

 

「金剛さん!!!」

 

 

流石にこの状況が、不味いと感じた叢雲達は動きだし金剛とグラーフだけが残る戦場に走り出す

 

 

「嘘……皆が…こんな……!!」

 

 

「これが力よ、これが……お前達に与える私の絶望」

 

 

カナの主砲からリロード音がすると金剛は一瞬で四人を大破させた光景を思いだし腰が抜け動けなくってしまう

連発出来るわけがない砲撃でありカナの最も火力が高いその砲撃に当たってまず助かる見込みはない

 

 

「不味いわ!!金剛!!!」

 

 

「死ね!!!金剛型ぁぁぁぁ!!」

 

 

「た、助けて!叢雲!!!!いやぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

仲間達を一瞬でしかも一人でボロボロにしたカナに恐れてしまい金剛の頭はパニック状態になってしまい叢雲達が全速力で駆け寄ろうとするも間に合う程の距離ではなくカナが主砲を放とうと構える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それ以上私の仲間に手を出すなぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

カナが主砲を放とうとした瞬間長門がカナの真横から突っ込みアブソリュートの主砲を思い切り殴ると主砲が角度を曲げ砲弾が金剛を反れる

 

 

「チッ!貴様!!!」

 

 

「金剛!大丈夫か!?」

 

 

「な、長門………長門ぉぉぉぉぉぉ……!!」

 

 

「泣くな!まだ戦いは終わっていない!!

連合艦隊旗艦長門!これより飛行場姫との戦いに参戦する!!」

 

 

救援に現れた長門に泣きつきそうになる金剛を制止するとカナと向かい合い対峙する

 

 

「長門!あんた平気なの!?」

 

 

「あぁ!加古が椿を倒してくれたんだ!!」

 

 

「加古が!?」

 

 

叢雲達は椿達を見ると椿は倒れ傷だらけの加古を介抱している青葉達を確認する

 

 

「奴の機関を破壊し、更に自らを犠牲にすることで完全に椿を無力化させたんだ!

おかげで私もこっちこれた!!」

 

 

「……へぇ、やるじゃない」

 

 

「…凄いな、あの化け物を……」

 

 

「ふふ、流石は加古だね」

 

 

叢雲達が加古の事を見ているとカナは苛立ちながら海面を踏みつける

 

 

「あぁ……全く次から次へと……めんどくさいわね……」

 

 

「……金剛、比叡達を頼む

コイツはどうやらお前達ではまだ早い」

 

 

「分かりましたー!!」

 

 

怒りに震えスタミナも限界に近づいているカナと再び対峙すると長門は不意に微笑む

 

 

「何が可笑しいのよ長門」

 

 

「いや、実は夢だったんだ

叢雲、お前と共闘するのがな」

 

 

「……はぁ、私はしたくなかったわ

だって」

 

 

叢雲は苦笑いを浮かべると怒り心頭になっているカナを見ておりため息すら付いている

 

 

「あんたと共闘なんて、相手はどうせとんでもない奴って思ってたし」

 

 

「はは、その通りだ

……勝算は?」

 

 

「……正直かなり低い

沖縄の時より確実にヤバイわ

……でもあの時と違って戦力もある、信頼できる仲間も居るわ」

 

 

叢雲達はそれぞれ武器を構えるとカナも主砲を構える

 

 

「…叢雲覚悟を決めろ、我々の敗北はこの戦いの敗北だ」

 

 

「…分かってるわ、大井達の仇うつわよ」

 

 

「…殺す……誰一人としてこの海からは逃がさない!!!」

 

 

そして、長門を追加した叢雲達はカナとの最終決戦に挑む

 

 

「行くわよ!!長門!古鷹!磯風!!」

 

 

「暁の水平線に勝利を!!!」

 

 

「了解!!」

 

 

「分かった!!」

 

 

「お前らが最後の希望だと言うならばここで全て撃ち抜いてやるわ!!!

来い!!略奪者共(艦娘共)!!!」

 

 

 

 

 

 

 





次回

二つの正義と飛行場姫

遂に長門が合流し叢雲達はカナとの最終決戦に挑む
勝利の女神はどちらに微笑むのか!?

イベント順調に進んでますねぇ、因みにE4はボスで少し沼ってますが今日突破できますな(完全状態で挑みます)
あ、ヒューストンは何故か削ってる最中に来てくれましてね?
眠い中やってたら来て眠気が吹き飛んで仕事に遅刻しかけましたわ(お馬鹿ですはい)




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我、沈マズノ姫 四

叢雲と長門は同時に走りだし、その後ろに磯風と古鷹が付いていくとカナは主砲を構える

 

 

「今奴が装填してるのが!あの時我々を苦しめた砲弾か!?」

 

 

「そうよ!!正直撃った直後に避けられる速度じゃないわ!!」

 

 

「なら!撃たせなければ良いのだな!!」

 

 

長門はそれだけを言うと叢雲の身体を掴むと一度止まり力を込め叢雲をぶん投げる

 

 

「頼むぞ!叢雲!!!」

 

 

「了解!!」

 

 

「なっ!コイツ仲間を投げやがった!?」

 

 

長門によって投げられた叢雲は全速力でカナに突っ込みカナも慌てて主砲を仕舞い叢雲の薙刀を爪で受け止める

 

 

「くっ、硬い!!」

 

 

「チッ、相変わらず他の駆逐艦とは違うわね!!」

 

 

そしてカナは叢雲の薙刀を弾くとその後ろから長門の正拳が飛んでくる

 

 

「くたばれ!!!」

 

 

「そんな攻撃効くかぁ!!」

 

 

だがカナはその拳を受け止め直ぐ様切り替えもう片手の爪を振り下ろし長門を切り裂こうとする

 

 

「させないよ!!」

 

 

古鷹はその振り下ろされた爪を正確に撃ち抜くと磯風が雷撃を放ちそれを見ていた叢雲と長門が後ろに飛び退く

 

 

「相変わらず精度が良いなぁ!!古鷹!!!」

 

 

「……弾着!!」

 

 

磯風が呟くとその瞬間カナに雷撃が命中し大爆発を起こすがカナはそんなことを構わずに長門達に襲い掛かる

 

 

「やはり効かないか!!」

 

 

「死ねぇぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

「任せろ!!」

 

 

カナが両爪で二人を切り裂きに掛かるが長門がその両手を掴み攻撃を止める

 

 

「長門!借りるわよ!!」

 

 

「存分にやれ!!」

 

 

その瞬間叢雲は長門の艤装を踏みつけると宙を舞いカナの頭部へと主砲を放つがカナは物ともしていない

 

 

「頭部への砲撃も駄目か!!」

 

 

「私の両手を掴むとは、握り潰されたい様だな!!」

 

 

カナがそう言うと長門の両手を全力で掴み爪が長門の手に食い込み更に握り潰そうとしてくる

 

 

「あぁぁぁ!!」

 

 

「長門!少し我慢して!!」

 

 

だが、叢雲はその状態を逆手に取ると薙刀を構えカナの頭部目掛けて振り下ろす

 

 

「読めてたわよ!そんなこと!!」

 

 

その振り下ろされた薙刀をカナは主砲を伸ばすことで防ぎ叢雲は薙刀の弾かれてしまう

 

 

「く、硬い!!」

 

 

「このまま引きちぎってやるわ!!」

 

 

「あぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「長門!!」

 

 

「大……丈夫だ!!

ビック……7の力を……舐めるなよぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

握り潰されそうになっていた長門は更に力を込めるとカナの手を逆に潰そうと返すとカナの顔が歪む

 

 

「こ、コイツ!!意外とやるじゃないの!

でも悪いわね私まだ全力じゃないのよっ!!」

 

 

その瞬間カナは更に力を込めると長門の両手に爪が更に食い込んでいく

 

 

「ぐぎぎぎぎぎ!!!!」

 

 

「長門!今助けるぞ!!」

 

 

その言葉と共に磯風がカナの脚に雷撃と主砲を命中させそれと同時に古鷹も主砲を命中させカナは体制を崩し手の力が弱まる

 

 

「今だ!!」

 

 

力が弱まった瞬間を見計らい長門は手を離すと近距離で主砲をカナに撃ち放ち距離を取ろうとするが

 

 

「いや、今の状態で下手に距離は取れんか!」

 

 

少しだけ後ろに下がりあまり距離を取らずにその場に残る

爆煙に包まれながらカナの笑い声が聞こえる

 

 

「ハハ……いい判断ね、今距離を取れば撃ってたわよ」

 

 

爆煙が晴れていくとカナの腹部は少しだけ焼け焦げては居るもののカナにはほとんどダメージを受けておらず長門は流石に驚く

 

 

「……私の主砲をあの近距離で受けてほぼ無傷だとはな

とんでもないな、これが歴戦種か

成る程、確かに今我々が挑める相手ではないな

猿橋さんの言う通りだ」

 

 

「正直ここまで来ると私でも自信なくすわ

でもそうは言ってられないわよ……」

 

 

叢雲と長門は息を切らしておりカナも少し疲れが見える

 

 

「本当に……お前らはうざったるいわね……本当に!!ここまで私を追い詰め…苦しめたのはあんた達だけよ……!

全く…限界突破(オーバーリミット)もそろそろだし…殺したくは無いけれどお前達『だけ』はここで殺しておかないと確実に私達の…始元の脅威になる!!!

特に駆逐艦叢雲!!!お前にはまだ伸びしろが見えるからな!!!!『いずれ我々を倒しかねん脅威でありお前の中に居るソイツもろともな!!!!』」

 

 

「私の……『中に』居る奴?」

 

 

叢雲は何を言われてるのか分からないと言う顔をするとカナは長門と古鷹も指指すと睨み付ける

 

 

「お前達はどうやら堕ち掛けているだけだしな!!」

 

 

「っ!?こ、コイツ!!」

 

 

「まさか!そんなどうやって!?」

 

 

カナは息を切らせながら二人を睨み付けながら話し出す

 

 

「簡単だ……私はある程度の深海棲艦を操ることが出来、更に我々側に成りかけている奴は見れば分かるわ

まぁ、だからこそお前達はここで殺さないといけないんだけどな!!!」

 

 

カナが主砲を再び構えると叢雲達も身構え戦闘体制に入る

だが

 

 

「っ!?な……何だ……!!」

 

 

突然長門が頭を押さえるとその場にうずくまる

 

 

「長門!?」

 

 

「うぅ……!!な、…何…痛い…!?」

 

 

「古鷹!どうしたんだ!?」

 

 

その状態を見たカナは舌打ちをしながらある方向を睨み付ける

 

 

「………アイツ…何度余計な事をすれば気が済むのよ!!後で撃ってやろうかしら!監視者!!

…まぁ、良いわこれで二人は減ったわね!!」

 

 

「カナ!!お前古鷹達に何をしたの!?」

 

 

「私じゃないわよ、でもそいつらは終わりね

ほら良く見てみなさい」

 

 

古鷹と長門がうずくまっていると髪と肌が白く成り始めており磯風は後退りをする

 

 

「ま……まさか!!深海化!?」

 

 

「っ!!!あんた!!」

 

 

「どうやら監視者が発症させた見たいね」

 

 

二人は頭を押さえ苦しんでいるとしばらくしその場に倒れてしまい磯風と叢雲が声をかける

 

 

 

「古鷹!大丈夫か!?」

 

 

「長門!しっかりしなさい!!」

 

 

「無駄よ、その二人にもう声は届かない

さてと残りは三人かしらね!!」

 

 

カナはそれと同時に主砲を構えると磯風と叢雲が二人でカナを相手しようとする

 

 

「二人を放置して良いのか!叢雲!!」

 

 

「信じるのよ!あの二人は必ず戻ってくる!!それまで私達が戦線を維持するわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

遠い海の果て、監視者は真っ赤に染めた杖を海面に突き刺しているとカナの戦場を遠くから監視していた

 

 

「……さて、これが吉と出るか凶と出るか

海王(ネプチューン)が到着するのが先か、カナが負けるか

勝利の女神……いや戦いはどちらに軍配が上がるのかな

いよいよ、分からなくなってきたし

面白くなってきたな

お前達に倒せるかな、我々最強の一角が」

 

 

 

 

 

 





次回

向き合う心

カナとの戦闘中、突然長門と古鷹が倒れてしまった
それを補う為に叢雲と磯風はその穴を埋めようとする
そんな中長門と古鷹は自らの全てと対峙する


イベントの時期になるとやってくるスランプ……!!
まぁ、実際はイベントに集中し過ぎて小説が思い付かないってだけですがね!!!
今年中にはカナ戦を終わりにしたい()





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我、沈マズノ姫 五

今回、二人のお話になります!

詰め込みました!!








『………ここは?』

 

 

長門は暗闇の中目を覚ます

先程まで戦っていた戦場ではなくどこか暗い場所

 

 

『……身体は動くか…ではない!!飛行場姫は!?叢雲達は!?

…どこだここは!?私は何故こんなところに!!』

 

 

《ここはお前の心の中だ》

 

 

声が聞こえその方角に振り返ると深海化した長門の姿があった

 

 

『………成る程、飛行場姫の仕業か』

 

 

《飛行場姫?違う彼女ではない》

 

 

『…なら、誰だと聞きたいところだが今そんな余裕はなくてな

何故出てきた?嫌、何故……主砲を構えている』

 

 

深海化した長門は艤装を長門に構えており当然の事の様に話し出す

 

 

《…分からんのか?お前と言う存在そのものを殺すためさ》

 

 

『…やはりかそう言うと思ったよ

一つ聞かせてくれ、お前は私と言う存在を殺した後どうするんだ?』

 

 

《……死ニ行クオ前ニ言ウ必要ガアルト?》

 

 

その瞬間深海長門は歪んだ笑みを浮かべ艤装を展開すると長門に全砲門を放つ

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

『……ここって……』

 

 

古鷹が目覚めた場所は長門と違っていた

そこは牢獄

昔、白鳥達によって捨てられ幽閉されていた場所

最も古鷹が思い出したくない場所であり今の古鷹を作り出した原点でもある

 

 

『……動けない、やっぱり鎖で繋がれてるんだね』

 

 

古鷹の手は鎖で繋がれ近くには拷問器具が置いてある机がありそれを見ると震えが止まらない

そして、牢獄の扉が開かれるとある男が姿を見せる

 

 

『あぁ、起きてたんだ』

 

 

『……拷問官さん…』

 

 

その顔はガスマスクをしており古鷹を最も精神的に肉体的に追い詰めた男である拷問官の姿があった

 

 

『さて、そろそろ認める気になったかい?』

 

 

『……何度同じことを言っても変わりませんよ?』

 

 

『強気だねぇ?その強気がいつまで続くのかな?』

 

 

ガスマスクの拷問官はドリルを取り出すとそれを勢い良く回転させ古鷹に何をするのかを理解させる

 

 

『……さて、今日はあることをしよう

君の手の甲に穴を開けてどれだけ空くかの実験もとい拷問だ』

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

《コノ程度カ!戦艦長門!!》

 

 

『くっ!コイツ!!』

 

 

暗闇の中長門は深海長門から砲撃を受けておりそれを交わしながらも砲撃するがそれは全て深海長門に交わされる

 

 

《弱イ!話ニナランナァ!!大人シクソノ身体ヲ寄越セ!!》

 

 

『断る!!私の身体をお前に渡す気はない!!!』

 

 

《ナラバ死ネェェェェェ!!!》

 

 

深海長門の砲撃が長門に直撃すると焼ける痛みが全身を走ると同時に深海長門が抱えている負の感情が流れ込む

怒り、悲しみ、絶望、失意、恐怖、憎悪

その感情に長門は流されないように頭を押さえていると深海長門が爪を振り下ろそうと近付いてくる

 

 

《死ネェェェェェ!長門!!!》

 

 

『く、私であるものの強いな!!』

 

 

長門はその爪を受け止めるとやはり深海長門から負の感情が頭に流れ込む

全てを奪った怒り

仲間を失った悲しみ

妹を失った絶望

何も出来なかった海軍への失意

強すぎる歴戦姫達への恐怖

深海棲艦達への憎悪

 

それが走馬灯の様に駆け巡り長門は苦しみながらも深海長門の意図を理解する

 

 

『貴様……まさかわざと私にこれを見せているな!!』

 

 

《良ク分カッタナ??オ前ハ忘レテハイケナイ

コレハ全テオ前ガヤッテ見テキタ真実ダ

私ハオ前ノ負ノ感情

オ前ガ忘レヨウトスルモウ一ツノ存在

ダカラ私ニ寄越セ!!全テヲ破壊シテヤル!!!

深海棲艦モ姫モ始祖モ歴戦モ海軍モ人間モ全テ全テ全テ全テ全テ全テ全テ全テ!!!!

壊シテ壊シテ壊シテ壊シテ壊シテ壊シテ壊シテ壊シテ壊シテ

殺シテ殺シテ殺シテ殺シテ殺シテ殺シ尽クシテヤル!!》

 

 

深海長門の瞳は怒りに燃えているのが見え長門は後退りをする

(これが私……なのか?…抑えていた怒り?

…そう思えば思うほど自らの事を理解できる

だがこの怒りは…違う八つ当たりだ)

 

 

『……お前の願いは全てを壊すことか?』

 

 

《ソウダ!!!世界ニ生キル者全テヲ殺サイト怒リハ収マラナイ!!》

 

 

『……違うな、お前の怒りはただの八つ当たりだ!!』

 

 

長門は深海長門の爪を強く握り締めると怒号を飛ばす

 

 

『お前の怒りはほとんどが私に向けてだ!!無力で!無価値で!弱い私へ対するな!!』

 

 

《違ウ!!私ハ弱クナイ!!!》

 

 

『良いや!私は弱い!!!

なら!何故あの時私は動かなかった!!助けられる命があったのに!……陸奥を助けられたのに!!!』

 

 

《黙れェェェェェ!!!》

 

 

その瞬間深海長門は爪を離し長門に拳を当てながら怒りを吐露する

 

 

《弱くナイ!!私ハ!あの時ワザト動かナカった!!

アソコデの全滅ハ駄目ダカラ!!ダカラ!!》

 

 

『ではなんで!!あの時私の身体を乗っ取った!!

磯風と二人目の陸奥を助けてくれたんだ!!!』

 

 

《決まっテルダロ!倒セタカラ守りたカッタからダ!!!!》

 

 

深海長門の拳が長門に命中しそれに対して長門も怒りを露にしながら深海長門を殴り続ける

 

 

『なら!何故今の状況で出てこなかった!!』

 

 

《危険ト判断シタカラダ!!!》

 

 

『仲間がやられてるのにか!!』

 

 

《死ンデハイナイ!!》

 

 

『貴様の理念は何だ!!』

 

 

『正義ヲ執行スルコトダ!!』

 

 

『お前は何なんだ!!』

 

 

《私ハ!正義だ!!》

 

 

『正義とは何だ!!』

 

 

《ソンナモノ!!!……ソンナモノ………アレ……?》

 

 

すると深海長門は頭を押さえ長門から後退りとブツブツと話しながら考え込む

 

 

《………何ダ……正義ッテ?》

 

 

『……分からないだろうな今の私には』

 

 

長門はそう言うと額から血を流しながらゆっくりとした足取りで深海長門に歩み寄る

 

 

《クルナ!!撃つぞ!!》

 

 

『撃ってこい!私は逃げない!!』

 

 

深海長門はその瞬間長門に向けて砲撃するが砲弾が何故か長門に当たらない

 

 

《な!何デ!?》

 

 

『…………』

 

 

《クルナ!!来るなァァァァァァ!!!》

 

 

すると深海長門は主砲を長門に向けて砲撃していくがその砲弾は全て当たらず長門は深海長門の目の前まで行くと立ち止まる

 

 

《クッ!死ねェェェェェ!!!》

 

 

深海長門は勢い良く爪を長門の腹部に突き刺すと痛みで顔を歪めるがその爪を長門は握り締める

 

 

《は!離セ!!》

 

 

『断る!!お前が私に「怒り」を見せたんだ!

ならお前も私の中にあるものを見るがいい!!』

 

 

《辞メロ!!辞メロォォォォォォ!!!!》

 

 

深海長門は長門と繋がった状態になると今まで、そして長門を倒した叢雲の事を垣間見ることになる

その光景を脳裏に映しながら深海長門は悔しそうに唇を噛む

 

 

『……諦めろ、お前が今外に出ても負けるんだよ

何も殺せない何も壊せない

あの艦娘は、叢雲は………私達より強い

信念も実力も度胸も覚悟も全て…私達より上だ』

 

 

《…………………分カッテタサ、今出ても意味がないと》

 

 

深海長門は爪を抜くと力なくその場に座り込むと瞳に涙を浮かべる

 

 

『私達は井の中の蛙だ、海軍の中で最強と呼ばれ心酔していたな』

 

 

《……海には私達より遥かに強い奴がいる、今目の前に居る姫もそうだ

私達では勝てない……殺されて終わりだ

ハハハ、やはり弱いんだな私達は、何もかも奪われて終わりだ》

 

 

『……そうか?今、私達には心強い仲間が居るじゃないか?』

 

 

《仲間……?あのお前よりひ弱な奴等が?

あんなのは仲間なんて……》

 

 

『呼べるさ、弱いとか強いとかは関係ない

私達と共に戦い繋げてくれた仲間だ』

 

 

長門は微笑みながら話していると深海長門もクスッと笑う

 

 

《……お前は敗北から変わったな、お前を縛り付けていた正義はなくなったと言うことか………ハハハ、凄いな駆逐艦叢雲は》

 

 

『そうだ、アイツは凄いんだ

小さな身体の癖に大きな背中に諦めの悪さ、絶望に打ち勝つほどの勇気

………私の憧れだ』

 

 

その姿を見ていた深海長門は呆れたように溜め息を付くと立ち上がる

 

 

《辞めだ、お前の身体を乗っ取っても私は簡単に殺されそうだ

それに、お前の執念はどうやら壊されたみたいだしな》

 

 

『あぁ、見事大火力の雷撃でな

流石に死ぬかと思ったけどなあれは』

 

 

《言えてる》

 

 

深海長門と長門は笑い合うとお互い手を取る

 

 

『すまない、私はまだ弱いのは分かっている

でも任せてくれないか?私はこれからもっと強くなる

お前の世話にならないほどに』

 

 

《ハハハ、そうだな

私の力は禁忌だ使わないが吉

………でも今は違うな?》

 

 

『流石私だな、分かってくれている

頼む、力を貸してくれ

今奴と戦っても勝てる見込みが無いんだ

いくら叢雲達でもアレを倒せるとは思えん』

 

 

《……まぁ、無理だろうな

奴は姫であって姫ではない

正しく化け物(災害)と言うほどだ

良いだろう今回だけだ

ただし、後で対価は貰うぞ?》

 

 

『その時は言ってくれ、出来る限りの叶えよう』

 

 

《はは、では楽しみにしておこう》

 

 

長門と深海長門は握手をしていると妙な浮遊感に襲われ二人は共に浮上していくと深海長門がまるで幽霊の様に身体が透けていく

 

 

《私の力はかなり反動がある

その代わり、それに対した力を与えてやろう》

 

 

『あぁ、助かる

では共に行こうではないか、(深海長門)よ』

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

『へぇ?今回は泣かないんだね?』

 

 

古鷹は手の甲に大きな穴を開けられ全身も焼け焦げて居るのにも関わらず涙も声も上げなかった

 

 

『つまらないなぁ、もっと泣いて見せてよ!!』

 

 

拷問官が古鷹を蹴り飛ばすが古鷹はうんともすんとも言わない

 

 

『全く気味悪』

 

 

『痛みには……馴れました』

 

 

『………は?』

 

 

古鷹は焼け焦げた身体を動かし立ち上がると手の甲から血を流しふらつく脚にムチを叩く

 

 

『肉体の痛みはいずれ消えます、私達は艦娘(兵器)ですから

だから、こんなの痛い内に入りません』

 

 

『…………へぇ?じゃあ何なら痛いのかな?』

 

 

『…知ってますか、艦娘ってかなり感情が豊か何ですよ

希望、勇気、嬉さ、悲しみ、絶望

負の感情にも支配されやすいんです』

 

 

『…何が言いたいんだ?』

 

 

『簡単な事です、私を屈服させたいなら痛みは効かないと言うこと

もう……私に痛みは効きません

貴方に散々苦しめられ痛め付けられましたからね』

 

 

『……そうだね?君はいつも泣いていたね?

提督ー衣笠ー青葉ー木曾ーっていつもいつもいつも』

 

 

 

『えぇ、あの時の私は皆が助けてくれるって信じてました

私が助けたんだから助けてくれるって』

 

 

『でもだーーーーれも来なかったよねぇ!!お前は見捨てられて!ここで拷問を受け続けてたよねぇ!!

いやほんと!笑えてくるよ!!いつもいつも泣いてる君を見て俺は楽しかったよ!!最高だった!!アハハハハハハハハハ!!!!』

 

 

拷問官が大声で笑う中古鷹も微笑むと頭を下げる

 

 

『そうですか、それは良かったです

貴方を楽しませられてたんですね』

 

 

『………あ?』

 

 

『いえ、私は少しは貴方の役に立ててたんですねと思いまして』

 

 

古鷹の言葉に苛つくと懐から銃を取り出し古鷹の脚を撃ち抜く

 

 

『…てめぇ、ふざけてるのか?』

 

 

『ふざけてませんよ、だって私は艦娘(兵器)なんですから』

 

 

『ならここでお前を殺しても良いんだよなぁ!!』

 

 

『構いませんよ、ただし覚悟してくださいね』

 

 

古鷹はその言葉と共に血が滴る脚を引きずりながら拷問官へと歩き出す

 

 

『はぁ!?兵器を殺すのに覚悟!?舐めてるのかぁ!!』

 

 

『いいえ、私の命は私の物ではないということです』

 

 

『は?何言ってるんだお前は!!』

 

 

『私の命は佐渡さんと叢雲の物です

だから私はここでは死ぬことはない、貴方が殺そうとしても私はここで死ねないんですよ』

 

 

『そんなわけ!!!』

 

 

『ありますよ、あの人達は約束してくれました

私を助けてくれるって

どんなことになっても守ってくれるって

だから私はここでは死なない!!!』

 

 

『ヒッ!』

 

 

古鷹の気迫にやられ拷問官は後退るが古鷹は前に進み続ける

 

 

『どうしたんですか!撃ってみてください!!私は死にません!!心臓を撃ち抜かれようとも!頭を撃たれようとも!!目を取られようとも!!私はここで死ぬことはない!!

さぁ!撃ってみなさい!!』

 

 

『辞めろ!辞めろ来るなァァァァァァ!!!』

 

 

拷問官はすっかり変わったしまった古鷹に怯え銃を乱射するもその弾丸は古鷹の服を掠め一発も当たらない

後退りを続けていると背中のドアにぶつかり古鷹は目の前まで到着し最後に胸に銃を押し当てる

 

 

『は!ハハハハ!!退けよ!兵器風情が!!

このまま撃ったら死ぬぞ!いくらお前でも!!』

 

 

『なら撃ってみなさい!ほら!!ここですよ!!』

 

 

だが古鷹は全く臆することなく拷問官の銃を持つと自らの心臓の場所に押し当てる

 

 

『ほら!撃ってみなさい!!拷問官!!!』

 

 

『あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!』

 

 

その瞬間拷問官は銃の引き金を引くがカシャンと空発の音が響き渡り古鷹は笑みを浮かべる

 

 

『ね、私は死なないでしょ?』

 

 

『あ…………あぁ……』

 

 

古鷹の度胸に感服した拷問官はその場に崩れるように座り込むと楚々をしてしまい笑みを浮かべながら部屋を開ける

 

 

『では、失礼しますね拷問官さん』

 

 

笑みを浮かべながらその言葉を告げると拷問官は唖然とした状態で拷問室に残される

 

 

『……ここってそう言えば何処だろ?、でもさっき拷問室だったしもしかして大本営?……え?もしかして飛行場姫や佐渡さんは夢の出来事!?

え?え?じゃあ、私まだ捕まってる状態!?

………どうしよう…私…』

 

 

《……違うよ、ここは貴女の意識の深層》

 

 

『え?』

 

 

古鷹が振り返るとそこに拷問室は無く代わりに古鷹と瓜二つの深海化した古鷹が居た

 

 

《貴女は今海上で》

 

 

深海古鷹が説明しようとした瞬間古鷹はダッシュすると深海古鷹の肩を掴むとグラグラと揺らしながら必死に聞く

 

 

『じゃ、じゃあ佐渡さんや叢雲は本当の事なんだよね!?居るんだよね!?私の妄想じゃないよね!?』

 

 

《違う!違うから!貴女に起きたことは事実!拷問官は!私が用意したの!!だからお願い!離して!!》

 

 

『そうだよね!そうだよね!!!はぁ…………良かった……あ、ごめんなさい!!大丈夫ですか!?』

 

 

《ゆ、揺れる……世界が…揺れる……》

 

 

しばらくした後、深海古鷹が咳払いをすると古鷹は正座をさせられながら起こられていた

 

 

《私が幻覚を見せたのも悪かったけど、だからと言えど説明中の私に攻撃とは良い度胸ですね全く》

 

 

『ごめんなさい……』

 

 

《はぁ……

今、貴女は始原の力によってこの意識の深層に引きずり込まれた形になってます》

 

 

『始原の力…?』   

 

 

《えぇ、その力は海上に生きる深海棲艦を操り操作することが出来る覇者の力

だから今貴女は私によって強制的に深層に囚われている状態ということです》

 

 

『そんな力が……じゃ、じゃあさっきのは!』

 

 

《……貴女を試したんです、変わったのかどうか》

 

 

『どうして?』

 

 

《……この深層は、(深海古鷹)貴女(古鷹)のどちらかが負けを認めるか死ぬまで出れないからです

深海棲艦に蝕まれている者の落ちる場所、それがここです》

 

 

『……そう、何だ

じゃあ貴女は私を殺すの?』

 

 

深海古鷹は首を横に振るうと哀しそうに笑う

 

 

《いいえ、私は貴女の負の感情である『絶望』によって生まれたもう一人のもう一つの可能性(姿)です

……それに私はもう貴女に負けています》

 

 

『え?』

 

 

《私は貴女の感情と言いましたよね?だからあの時、青葉を殺そうとした時既に力を解放していました

貴女を乗っ取ってたんです

ですが貴女は自力……いえ、あの二人(佐渡と叢雲)に繋がれていた鎖で私を抑え込んだんです

貴女の心にあった積み重ねられた殺意と怒りと憎悪を全て》

 

 

古鷹は胸に手を当てあの時の事を思い出す

(……そうだ、あの時間違いなく青葉を殺そうとした、頭の中には怒りと憎悪だけになって私を裏切った人を……)

 

 

《あの時私は貴女を奪い取ったと思いました、ですが貴女は再び抑え込み自らの力で倒したのです私を》

 

 

(……あの時、佐渡さんの声が頭に響いて殺しては行けない助けなきゃって…思ったとき既に身体が動いていた

そうか…そうだったんだ……)

 

 

《そして、私は完全に貴女に敗北し消える寸前でした

貴女の中にある絶望も怒りも憎悪も同時に消えていき、今ここにいる私はその残りの様な物です

ですが、先程始原の力により私は再び姿を取り戻した……いや取り戻してしまった》

 

 

すると深海古鷹から鼻を啜る音が聞こえ古鷹が見上げると泣いていた

 

 

《……ごめんなさい……ごめんなさい…私は……あの力が来たとき……消えたくないと…願ってしまった……私の役目は終えたのに……貴女が見る世界が……楽しくて……まだ見ていたくて……》

 

 

『………そっか、私が本当の意味で壊れなかったのは貴女が居てくれたからなんだね

…貴女が肩代わり…してくれてたんだね…私が本当の意味で壊れるのを寸前で止めてくれてたんだね』

 

 

その言葉と共に古鷹は壊れそうになっている深海古鷹を優しく抱き締めると頭を撫でる

 

 

《ごめんなさい……私は……》

 

 

『ありがとう

私に取り付いてくれて』

 

 

《……え?》

 

 

深海古鷹は涙を流しながら古鷹を見ると笑みを浮かべており優しく頭を撫でていた

 

 

『…貴女が私に取り付いてくれなかったらね、私はもう死んでいたと思うの

だってあの時私はこの世界全てに絶望して希望も何も無かったんだから

深海化しなければ私は何もかもから逃げ出して死んでいたと思う』

 

 

《違う…!私が取り付かなくても貴女は!!!》

 

 

『違わないよ、だって私は深海化して暴走してきた艦娘を見たことがあるから

その艦娘達は怒りや憎悪に満ちていた、深海棲艦がそうさせてきたんだって思ってた

……だからいつか私もそうなると思っていた

でも貴女は違った』

 

 

《ち、違う!私は貴女の絶望によって生まれて……だから!》

 

 

『じゃあ、何であの時最後に佐渡さんの言葉を思い出させる為にほんの少しだけ私の意識を戻したの?』

 

 

《そ、それは……貴女を…試した……だけ…》

 

 

『他の深海棲艦はそんなことしない、だって貴女達は私が器にし殺すために居るんだから』

 

 

《………無理だよ…貴女を殺すなんて……あんな……あんな酷い事をされて……貴女を殺すなんて……出来ない…!他の奴がどうか何て知らない!……貴女は仲間に対しての殺意が無く…ただ……ただ苦しんでいた…!だから…私は……貴女を助けたかった……そして二人が来てくれた…それでも貴女は自分のせいだと言って……恨んでほしかった…殺意を抱いてほしかった……そうすれば私は貴女を支配できた…でもそうしなかった…だから私は……過去に打ち勝って欲しくなったの……

私は貴女に向き合ってほしかった…!》

 

 

 

『ありがとう……私を見守ってくれてたんだね…本当にありがとう…ごめんね…苦しい思いをさせちゃったね……』

 

 

古鷹は自分だけが苦しんでいたと思っていた、だがそうではなかった

自分に取り付いてしまったが故に深海古鷹も同じ様に苦しんでいたと知り涙を溢す

 

 

《……でもそれも終わり、私はもう貴女の中には居られない》

 

 

『……え?』

 

 

すると深海古鷹は半透明になっていきその姿が光に消えていこうとしていた

 

 

《私は……私のやるべき事を終えた……始原の指示で貴女を倒し器を奪えと命じられた……でもそれは出来ない…だから貴女の覚悟を見たかった…ごめんなさい……また貴女に辛い思いをさせてしまった…でもこれで安心して私は消えることが出来る》

 

 

そう言うと深海古鷹は古鷹を突き放し空を指差すと真っ白な光が見えてくる

その光は暗闇の中にある一筋の光

 

 

 

《さぁ、貴女はここに居てはいけない

このまま浮上すれば意識を取り戻せる》

 

 

『貴女は……どうなるの?』

 

 

《私?私は……どうなるんだろう…でも私と言う存在は無かったことになるかな

貴女と言う器に入りきれなかった私はどこにも行く場所がない

存在という概念である私は多分消えてなくなるんだと思う》

 

 

『そんな!!』

 

 

《大丈夫、もう私は消えかけた存在

居てはいけない存在だったの

それに願いは叶えられたしね、始原様に……いや監視者様に感謝しないとね》

 

 

『……願い?』

 

 

《うん、貴女(表の私)と話すこと

だからもう思い残す事はないの》

 

 

『っ!!』

 

 

古鷹は次第に浮遊感に襲われていき地面から白い光に吸い込まれそうになる

 

 

《ありがとう、(古鷹)貴女に出会えて良かった

貴女に取り付けて良かった

色々な世界を……見せてくれて楽しかったよ

じゃあね》

 

 

『……駄目だよ…そんなこと!!』

 

 

深海古鷹は泣きそうな顔で笑っていると古鷹は歯を食い縛ると無理矢理でも足場を蹴り深海古鷹に抱き付く

 

 

《な!こっちに来ちゃ駄目!貴女は!》

 

 

『駄目だよ!貴女は私なんでしょ!なら貴女も死ぬことは許されない!!』

 

 

《な、何を言って!!》

 

 

『あの人達は言った!私を死なせないって!!

なら貴女も同じです!貴女を消させやしない!!存在を消させやしない!』

 

 

《無、無理よ!私はもう!!》

 

 

『なら!私の器に半分入ってよ!!』

 

 

《……え?》

 

 

古鷹が深海古鷹を抱き締めると浮遊感が無くなり強く強く抱き締める

 

 

『貴女は私なんだよ!私と同じ様に苦しんでたのにこんなのあんまりだよ!!

私達はこれから楽しい生活を送っていくんだよ!!なのに役目を終えたら消えるなんて!そんなことさせない!私が許さない!!』

 

 

《………駄目……私は…深海棲艦…だから》

 

 

『関係無い!それも私何だから!そんなこと関係無いんだよ!!だから!一緒に生きようよ!!!

誰が何と言おうと私は貴女を見捨てない!!絶対に!!

小笠原の皆と仲間達と!佐渡さんと!叢雲と!!』

 

 

《…………何で………私は……ワタシは………》

 

 

古鷹は泣きそうな顔にしながら強く抱き締めていると深海古鷹も抱き締めようとする

 

 

『もう良いんだよ……苦しまなくて…これからは私と一緒に楽しく生きよ?』

 

 

《………良いの?だって……ワタシは……》

 

 

『良いの!私達は同じ何だから!!

だから』

 

 

古鷹は抱き締めていると手を離すと深海古鷹に手を差し出す

 

 

『生きよう?共にこの世界を私達と仲間達と』

 

 

古鷹に言われると深海古鷹はゆっくりと手を伸ばし涙を溢す

 

 

《……うん…!生きたい…!私は……消えたくない…!!》

 

 

それと同時に古鷹と深海古鷹は共に手を取り浮上していくと深海古鷹が涙と共に消えていく

 

 

《私の力を貴女にお貸し致します、私の力は必ず貴女の役に立つはずです

そして貴女ならこの深海の力を使いこなせるはずです》

 

 

『ありがとう…使わせてもらうね!!』

 

 

《私達の敵を!!》

 

 

『倒そう!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ、はぁ……ヤバイわねこれ以上は……」

 

 

「ゲホッゲホ……」

 

 

長門と古鷹が気絶している中叢雲達は二人でカナと対峙していたが全く歯が立たなかった

 

 

「『今の』あんた達二人なら余裕ね……

そろそろトドメいこうかしら!!」

 

 

その瞬間カナは主砲を構えると叢雲と磯風が構えると

 

 

「………ん……」

 

 

「長門!目が覚めたのか……!!」

 

 

長門がピクンと動きゆっくりと起き上がる

だがその身体は真っ白に染まっていき頭からは二本の角が生える

 

 

「まさか!!」

 

 

「不味いわね、こんなときに!!」

 

 

「アハハ!!堕ちた見たいね!!!さぁこれで二対……」

 

 

とカナが言った瞬間長門が二人をすり抜けて走るとカナに向けて思い切り拳を当てるとカナの爪と鈍い音がする

 

 

「なっ!コイツ!!」

 

 

「長門!!」

 

 

「ふん、どうやら大丈夫見たいね」

 

 

「すまない待たせたようだな!!安心しろ私だ!!!

少し力を借りているだけだ!!」

 

 

すると長門は手をカナと同じ爪状に変えるとカナを切り裂こうとするが跳躍と同時に交わされてしまう

 

 

「チッ!逆に支配されたか!仕方無いこの状態から撃ち抜いて」

 

 

とカナが主砲を空中で構えた瞬間何者かがカナを撃ち抜くと大爆発を起こし体制を崩す

 

 

「なっ!何だこの威力!?」

 

 

「長門!」

 

 

「違う!私じゃない!!」

 

 

「皆さん無事ですか!?」

 

 

すると後ろから真っ白な髪と左目が真っ赤に染まった古鷹が駆けてきており二人は驚き叢雲は笑みを浮かべる

 

 

「古鷹!?、お、お前もなのか!!」

 

 

「うん!大丈夫この娘は悪い娘じゃないし、私に力を貸してくれてるの!

終わらせよう!この戦いを!!」

 

 

「ハハ……驚いたな…流石は佐渡司令……か」

 

 

「……流石ね、古鷹」

 

 

「くそ!コイツもか!!監視者めぇ!!余計なことだったわね!本当に!!」

 

 

先程より遥かに火力が上がった深海化した古鷹に力自体が上がった深海化した長門が加わる

 

 

「さぁ!終わらせようこの戦いを!!!」

 

 

「あぁ!やってやろうじゃないか!!!」

 

 

「行くぞ!我々連合艦隊に…海軍に勝利を!!!」

 

 

「行くわよ!最終決戦!!!」

 

 

四人は再び戦闘を開始するとカナは苛つきながら主砲を構える

 

 

「たかが、二体増えただけで勝てると思うなよ!!!艦娘(略奪者)共!!」

 

 

 

 




次回

守る者奪う者

自らに向き合う事で乗り越えた二人
そして深海化した古鷹と長門は再びカナを倒すために立ち上がる
少しずつ情勢は有利になりつつ中でカナは胸の内を話だしてしまう


すっごい詰め込みましたねぇ……初めて一万文字近く書いてしまったとぶっちゃけ思ってますはい()
あ、イベントは順調に進んでますわ、後最後の海域か……アトランタ?は欲しいなマジで…



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我、沈マズノ姫 六

カナへと走り出す叢雲達は各々武器を構えながら向かっていくとカナは主砲を構えるがその瞬間古鷹がカナの脚を撃ち抜き体制を崩す

 

 

「ぐぅ……さっきより火力が上がってる…深海化の影響か!!」

 

 

「磯風さん!後方は私に任せてください!!

三人は近接戦闘を!!」

 

 

「分かった!!」

 

 

磯風も走り出すとカナは体制を立て直すがその瞬間長門と叢雲がカナに斬り込む

 

 

「「はぁぁぁぁぁ!!!」」

 

 

「チッ!駆逐艦と戦艦風情が!!」

 

 

カナは主砲を一時的にしまうと爪を伸ばすと叢雲の斬撃を受け止め長門の拳を受け止めるが

 

 

「ぐぅ……こ、コイツ!!」

 

 

「はぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

長門の力が先程より上がっておりカナが押し負けてしまい、それを見た叢雲が再びカナに斬りかかる

 

 

「そこ!!」

 

 

「クソが!!」

 

 

だがカナは隠していた副砲を伸ばすと叢雲に向けて放ち叢雲はそれを直撃してしまい爆煙と共に吹き飛ばされる

 

 

「ガハッ!!」

 

 

「叢雲!!」

 

 

吹き飛ばされた叢雲を抱き抱えるとその状態から主砲を伸ばし長門の腹部に命中させる

 

 

「ぐぅ!!」

 

 

「長……門!!」

 

 

「アハハ……吹き飛べぇぇぇ!!!」

 

 

「やらせんさ!!」

 

 

カナはその状態から主砲を放とうとするも磯風が雷撃を直撃させると再びカナの体制を崩し主砲は長門から外れる

 

 

「チッ!駆逐艦が!!!」

 

 

だがカナはその状態から主砲を仕舞うと磯風の腕を掴むと引き寄せ思い切り腹部を蹴り飛ばす

 

 

「グフッ!」

 

 

「邪魔をするなぁぁぁぁ!!!」

 

 

磯風は蹴り飛ばされると古鷹がそれを受けとめ再び長門がカナに立ち向かうとカナは主砲を長門に向ける

そして勢いよく長門へ伸ばす

 

 

「くたばれ!戦艦長門!!」

 

 

「ぐぅ!!」

 

 

長門は腹部に思い切り主砲をぶつけられながらとその主砲を掴む

 

 

「長門!!」

 

 

「大……丈夫だ!!!」

 

 

「その状態で撃ってやるわよ!!」

 

 

カナが砲撃体制に移ろうとするとアブソリュートから警告が表示される

(警告?接射での警告は出ないはず?)

カナはアブソリュートの警告原因を探ると主砲が伸びきって居ないと表示され目を丸くする

 

 

「なっ!伸びきってない!?そんな、でも!主砲は長門に!!」

 

 

「ぐぎぎぎぎぎぎ!!!!!」

 

 

長門は腹部に主砲を当てられながら全力で力を込めており爪も展開させるとアブソリュートの主砲を掴む

 

 

「叢……雲!!準備しておけ!!!」

 

 

「は?あんた何言って……」

 

 

すると長門は全力で主砲を掴んでいるとアブソリュートの主砲から鈍い音が聞こえる

 

 

「は?????ま、まさかあんた!!!!」

 

 

「ぐぎぎぎぎぎぎ!!!!!ビック……7……を……私を……舐める……なよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

 

アブソリュートの主砲から鈍い音どんどん大きくなると共に妙な浮遊感に襲われる

 

 

「嘘でしょ……長門貴女…!!」

 

 

「え?え……えぇ!?」

 

 

「ま、まさか長門!?」

 

 

「嘘……嘘よ!!ありえない!そんなこと!!クイーンでも出来ないわよ!!!!!!!」

 

 

「ぬあァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

そして長門は全身全霊の力を使うとアブソリュートの主砲を垂直に真上へ持ち上げると使っているカナごと宙に浮かせる

 

 

「嘘!嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘!!!!!!」

 

 

「叩き潰れろォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!」

 

 

そして勢い良くカナを海面に叩きつけるとアブソリュートからも鈍い音が聞こえカナは重さに耐えきれずアブソリュートに押し潰されてしまう

叩き付けた長門は全身に激痛が走ると同時に筋肉痛にも襲われ膝を付いてしまう

 

 

「きゃあァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

「く……これが精一杯か…

すまん叢雲…少し頼む」

 

 

「馬鹿ね、充分よ!!」

 

 

叩き付けられたカナは体制を建て直そうとするもそれよりも先に叢雲が突っ込んでいく

 

 

「この!!略奪者がァァァァァァァァァ!!!!!」

 

 

「くたばりなさい!!カナァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

叢雲は薙刀を振るうと同時にカナは爪を薙刀に直撃させると二人の間に火花が飛び散りその間に体制を立て直すが

 

 

「ぐぅ……!足が…」

 

 

先程の長門が与えた一撃が響いておりカナはフラフラと立ち上がると頭を押さえながら怒りを露にする

 

 

「クソ!クソ!クソ!クソ!!!

略奪者風情共が!!まだ奪い足りないのか!!あの娘の命だけでもこちらとしては大きいというのに!!」

 

 

「あんた達も奪ってるでしょうが!!被害者面してるんじゃないわよ!!!」

 

 

「私達が奪ってる?違う!!!お前達が私達から奪い続けてるんだよ!!」

 

 

カナは主砲を仕舞うと両方の爪を展開させ叢雲と一騎討ちの形になり薙刀と打ち合う

 

 

「お前達は我々を何だと思ってるんだ!敵か!?海を支配する化け物か!?違う!私達はこの世界に生を受けたただの生き物だ!!

なのに貴様らは自らと違う見た目、力だけで差別し我々の声を聞こうともしない!!違うか!?」

 

 

「そんなことない!私達は!!!」

 

 

「なら!何で私達は戦いあってるんだよ!!!

お前達は自分達を守りたいが為に自分達より強い私達を恐れ絶滅させようとしている!!!違うのか叢雲ォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」

 

 

そしてカナは爪で薙刀を弾くともう片手で叢雲の身体を貫こうとすると叢雲は主砲を動かしそれを何とか防ぐ

 

 

「なら!あんた達は私達を襲わなきゃ良い!!違う!?」

 

 

「それなら何でお前達は支配したがる!!私達はお前達の支配を望んでいない!!私達が欲しいのは自由だ!!

少なくともあの娘は……始原は違った!!」

 

 

それの同時にカナは爪を振り上げ叢雲を切り裂こうとすると叢雲は薙刀でそれを防ぐ

 

 

「あの娘は誰よりも優しく誰よりも戦争を嫌っていた!!!

自分が始めてしまった戦争ではあったがこの無意味な戦いにいつも頭を悩ませ!苦しんでいた!!

お前達とどうにか和解出来ないかとな!!!

そして歩み寄ろうとした!お前達人間にな!!!

だがお前達はそれを裏切った!!あの娘を殺した!!!」

 

 

「っ!?」

 

 

カナの言い分に叢雲は首を傾げる

(始原が和解を望んでいた?私達(人間)が裏切った?どういうこと?だってこいつらは大本営を破壊したはず?)

 

 

「私はお前達を許さない!!あの娘を裏切り気持ちを踏みにじり私達から全てを奪った……人間(略奪者)をな!!!!!」

 

 

カナが思いを吐露すると同時にカナの力が異常な程に上がっていることに叢雲は打ち合いながら気付く

(こ、こいつさっきより重くなってる!?まさか更に強くなるの!?)

 

 

「私から…私達から(深海棲艦)全てを略奪したお前達を一人残らず絶滅させて私達がこの戦争に勝つのだ!!!!

あの娘が望んだ争いが起こらない平和な世界を実現するためにお前達人間と艦娘は不要なんだよ!!!!」

 

 

それと同時にカナは叢雲を蹴り飛ばすと古鷹がその吹き飛ばされた叢雲を受けとめるとカナの身体から黒い稲妻が走る

 

 

「あの娘が帰ってこないのは分かっている……それでも私の使命はあの娘が大切にしていたこの島をあの娘の……ピース(peace)の帰る家は誰にも奪わせない!!!」

 

 

カナが海面に両手を当てると黒い稲妻がアブソリュートに伝わり艤装に黒い稲妻の模様が出来同時にカナの身体にも黒い稲妻の様な模様が出来、目が更に赤黒くなる

 

 

「ワタシは最強の盾……最強の防衛ライン…全ての矛を破壊する鉄壁の盾…ピース(始原)の盾ヨ!!!

我コソハ不沈ノ飛行場姫!!!!

ピースの全てハ誰ニモ奪ワセヤシナイ!!!」

 

 

 

 





次回

緊急任務ー飛行場姫歴戦種カナヲ討伐セヨー

最強の盾でありドレス島の守護者たるカナは最後の力を持って叢雲達を迎え撃つ
その覚悟と力に叢雲達は押されながらもカナを倒す為に死力を尽くす

さて!本当のラストバトルになりました!
この戦いも残る数話になる……はず?
あ、何かE5掘ってたら初月が来てくれました!!!めっちゃ嬉しい!!!
これで対空戦力が拡張出来る…!!


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我、沈マズノ姫 七

カナが更に身体を強化すると叢雲達は冷や汗を掻きながらその殺意に威圧されていると瞬きの瞬間にカナは跳躍すると叢雲達に襲いかかる

 

 

「速い!!」

 

 

「シネェェェェェ!!!!」

 

 

叢雲は慌ててカナの攻撃を防ぐが先程とは明らかに違うその重量と威力に押し潰されそうになる

 

 

「お、重い!さっき以上に!!」

 

 

「この!」

 

 

何とか長門は動けるようになるとカナの腹部を殴るがまるで岩を殴ったかの様に硬く長門がダメージを受けてしまう

 

 

「ぐぅ……か、硬い!!」

 

 

「退けェェェェェ!!!!」

 

 

その瞬間カナの爪が長門に直撃すると腕が切り裂かれ傷から大量の出血をする

(長門!カナは今現在暴走状態にある!

あれに今下手に攻撃すればこっちが狩られるぞ!!)

(じゃあどうすれば良い!!)

(……案がある少しだけ私に変われ、お前は英気を養え!!)

(分かった!頼むぞ私!!)

 

 

長門の中で話を進めると長門の意識と変わるように深海長門の意識が表に出ると両目が真っ赤に染まり人格が変わる

 

 

「艦娘叢雲!話ガアル!!」

 

 

「何よ……ってあんた誰!?長門じゃないわね!!」

 

 

叢雲はいつもと違う長門に気付くがそんなことお構い無しに深海長門は話を続ける

 

 

「ソンナコトハドウデモイイ!!オ前ノ中ニ居ルソイツヲ起コセルカ!?嫌、協力ヲ仰ゲルカ!?」

 

 

「はぁ?あんたと言いカナと言い何を言ってるのよ!?

私の中に何かいる??私は私よ!!」

 

 

「マダ分カラナイノカ!!オ前ノ意識ノ中ニハモウ一人居ルノガ!!!」

 

 

「この裏切リ者ガァァァ!!シネェェェェェ!!!」

 

 

叢雲と話している間もカナは深海長門に襲い掛かりその攻撃を受けとめると余りの重さに膝と腕が悲鳴を上げる

 

 

「私の中に……?でもそんなの分からないわよ!!!」

 

 

「グゥ……ヤハリ私達(・・)トハ違ウノカ!!

トナルト別ノ意識カ!!道理デ私達ヨリ強イ訳ダ!!」

 

 

深海長門はカナの攻撃を弾き飛ばすとその状態から後ろに向かって走ると叢雲を抱き抱える

 

 

「磯風!古鷹!!少シダケ飛行場姫ヲ頼ム!!」

 

 

「りょ、了解!!」

 

 

「分かりました!!」

 

 

「退けェェェェェェェェ!!!!」

 

 

磯風と古鷹にカナを任せると深海長門は少し離れた所に行くと叢雲を下ろし肩を掴む

 

 

「今、我々ダケデハアイツハ、深海姫Eliteノ暴走状態ハ倒セナイ

ダカラオ前ノ中ニ居ルソノ化ケ物ニ力ヲ借リルシカナイ!!!!」

 

 

「だから!私はそんなの知らないって!!!

それに倒せないなんてそんなこと!!」

 

 

「アルノダ!!奴等ノ暴走状態ハ通常ノEliteトハ明ラカニ違ウ!!!

装甲、火力、速度ガ異常ニ上昇シテイルカラナ普通ノ攻撃デハ通ラナイ!!

ダガ、ソレニ対抗出来ルノハ恐ラクオ前ノ中ニ居ル化ケ物ダケダ!!」

 

 

深海長門の切羽詰まった表情に息をのみながら叢雲はため息を付く

 

 

 

「……分かったわ、何をすれば良い!?」

 

 

「目ヲ閉ジロ、深呼吸ヲスルンダ

リラックスダ…リラックス……」

 

 

深海長門に言われると言われた通りに叢雲がリラックスしていると鳩尾に鈍痛が走り目を開ける

 

 

「なっ………あんた……!!!」

 

 

「悪イナ、多分コレシカ方法ハ無インダ」

 

 

その状態から片足で叢雲を蹴り飛ばすと海面に思い切り頭と全身を強打すると腹部の痛みと横腹の痛みで意識が遠退いていく

 

 

「お前………許さ……な……い…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(………ん……ここ……は?)

叢雲が目を覚ましたのは先程まで戦っていた戦場ではなく辺り一面真っ暗な空間

そして、辺り一面から水が滴り落ちる音が聞こえる

(…………ここって……まさか……)

 

 

辺りを見渡そうとするも身体が動かずに居ると耳型の艤装が頭から外れるとノイズが聞こえてくる

 

 

(ノイズ……ノイズ?……どこかでこんなことを……)

 

 

叢雲が立ち上がると同時に耳型の艤装に宙を舞うとノイズが激しくなるといきなりそのノイズが止まり声が聞こえる

 

 

『…ザー……マタ来タノカ艦娘』

 

 

(……あんたが深海長門が言っていた化け物ね)

 

 

『……ザザ……ソウダナ…マサカ私ヲ認知出来ルトハ思ワナカッタケドナ』

 

 

その言葉が艤装から聞こえると目の前に何か巨大な何かが居ることが分かる

目には見えない、姿形も分からず、ただそこに居るような気がするだけであるがそれがかなりデカイ事だけは分かる

 

 

(なら話が早いわ、力を貸しなさい

奴を倒す為の力を)

 

 

『…ホホゥ?随分トデカイ態度ダナ?』

 

 

(あら、あんたが勝手に入ってるだけじゃない?

だったら貸してくれても良いんじゃない?)

 

 

『…良イダロウソレナラ我ヲ倒シテミロソシタラ考エテヤル』

 

 

(良いわそれで行こうじゃ)

 

 

と叢雲が話した瞬間腹部に何か鞭の様な物が当てられると思い切り吹き飛ばされる

 

 

(ガハッ……!何……!?…一撃が重い!!)

 

 

『フン、ドウヤラ口ダケノ様ダナ?』

 

 

(まだ…私は!!)

 

 

だが次に真上から有り得ないほどの重量が掛かるとその状態でそのまま地面に叩き付けられ身体が押し付けられる

 

 

(ぐぅ…!お、重い!!……な…何!?)

 

 

『何トハ失礼ナ奴メ、我ハ軽ク踏ミツケテイルダケダ』

 

 

(踏みつけている!?あ、あんたやっぱり!!!)

 

 

『ホホゥ?意識ガシッカリシテイレバ我ガ分カルノカ?

ナラ話ガ早イ、答エハNOダ』

 

 

叢雲は踏みつけられた状態で反撃しようとするも自分が艤装を付けておらず何も出来ないことを理解する

 

 

(く………)

 

 

『ソレニコレハ貴様ノ事ヲ安ンジテルンダ』

 

 

(……どういうことよ? )

 

 

『貴様ハ既ニ一度我ノ力ヲ酷使シテイル

次使エバ身体ガ持タナイト言ッテイルノダ』

 

 

(あんた何言って……!!まさか!!)

 

 

叢雲はこの時カナを追い詰めた時に使っていた強力な力を思い出す

 

 

『ソウダ、貴様ハ一度奴ノ砲撃ヲ受ケテ死ニカケタ

ダガ、我ガソレヲ蘇生サセタ

ソノ時貴様ハ同時ニ私カラ力ヲ受ケ再ビ立チ上ガッタ

マァ時間切レニハナッタケドナ』

 

 

手を握り締めるとその時の感覚を思い出すと同時に時間切れになったときの激痛を思い出す

それは普通の痛みではなかった、内部がまるで切り刻まれ、焼かれ、殴られ続ける痛み

 

 

『ソレニ加エアレハ今ノ貴様デハ扱エナイ物ダ

諦メロ、オ前ハ』

 

 

(お願い……もう一度私にあの力を貸して!!!)

 

 

声の言葉とは真逆な事を言うとその声の主は苛ついたのか叢雲を踏みつける力が更に増していく

 

 

(うぅぅぅ!!!!)

 

 

『貴様!!!我ノ話ヲ聞イテイタノカ!?

ソモソモ貴様ガ扱イキレル力デハナイ!!

現ニ貴様ハアレヲ半分モ使エテナイ!ソンナヤツニ安易ニ貸セルモノカ!!!』

 

 

(お願……い…もう一度……だけ……貸して……くだ…さい!!!)

 

 

『……ザザ……シツコイゾ!!駆逐艦叢雲!!!!』

 

 

踏みつけられ身体を破壊されそうになっても叢雲はその声に頼むことを辞めないでいると力は強くなっていき遂にボギッと鈍い音が響き渡る

 

 

(あぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!)

 

 

『フン、背骨ガ折レタカ

全ク馬鹿ナ奴ダ』

 

 

声の主は呆れたように踏みつけるのを辞めその場を去ろうとするが

 

 

(お願い………します……)

 

 

『…………………マダ言ウカ』

 

 

叢雲は背骨を折られているのにも関わらずその声の主に土下座をすると歩みが止まり再び叢雲へと向きを変える

 

 

(お願い……します………力を……貸して…)

 

 

 

『クドイゾ!!駆逐艦叢雲!!!』

 

 

その瞬間叢雲は横腹から鞭の様な物で吹き飛ばされると思い切り地面にぶつかるがそれでも再びその声の主に頼み込む

 

 

(お願い………!!)

 

 

『…………何度言ワレヨウト変ワラン

同ジ事ヲ言ワセルナ』

 

 

(………………お願い…します!!

私に…力を貸してください!!!)

 

 

叢雲の必死な態度に声はため息を更に付くと叢雲に近寄り顔を近付ける

 

 

『……貴様ハ我ガ誰カ知ッテイルヨナ?』

 

 

(……知ってる……わ)

 

 

『貴様ハ憎キ相手ニ頭ヲ垂レルノカ?オ前ノ『友ト姉ヲ……全テヲ奪ッタ』我ニ』

 

 

(……えぇ、力が欲しいから…)

 

 

『何故ダ?佐渡ノ為カ?

長門ニ言ワレタカラカ??

ソレトモ奪ウタメカ?』

 

 

(…守るためよ、今ある仲間と全てを)

 

 

『……ソノ為ニ命ヲ捨テルツモリカ?』

 

 

(…えぇ、こんな命一つで皆が救えるなら私は本望よ)

 

 

『オ前ハ地獄ノ苦シミニ苦シムノニ本当ニ欲シイノカ?』

 

 

(仲間を…友を失うよりマシよ

私は二度と誰も失いたくはないの!!)

 

 

『……ソレガ結果的ニ『相手カラ奪ウ物デモカ?』』

 

 

その言葉に叢雲はピクんと反応するとしばらくした後に苦しそうに声を上げる

 

 

(……えぇ………そう…よ)

 

 

『…………ソウカ……ハァ』

 

 

その瞬間声の主は爪で叢雲を押し倒すと仰向けの状態にすると最後の確認を取る

 

 

『……今回ダケダゾ、二度ノ力ヲ貸スノハ今回ダケ

タダシ、コノ力ヲ受ケトレバ今ノ貴様ナラ80%ノ確率デ死ヌ

地獄ノ苦シミノ中デナ』

 

 

(……上等よ!!)

 

 

『…口ヲ開ケロ』

 

 

叢雲は指示された通りに口を空けるとその口前に巨大な爪から滴り落ちる黒い液体を口に含もうとする

 

 

 

『……精々苦シメ、愚カナ艦娘』

 

 

(……え?)

 

 

 

その黒い液体が舌に当たった直後叢雲の全身にその液体が染み込むと同時に全身に激痛が走る

(痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!!!!!

焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける焼ける!!!!!

裂ける裂ける裂ける裂ける裂ける裂ける裂ける裂ける裂ける裂ける裂ける裂ける!!!!!)

 

痛みは全身にくまなく走ると意識が気絶するほどの激痛に耐えていると不意に浮遊感に襲われゆっくりと空へと上昇していく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……マァ良イ、死ンダラ『他ノ奴二乗リ換エレバ良イ』

ダガ、アノ艦娘ハ惜シイナ

『傀儡』二相応シイノニナ』

 

 

真っ暗な空間でその声の主はニヤリと笑う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぅ……私…は……さっき長門に蹴られて!」

 

 

叢雲が目を覚めると前方でカナが暴れ長門達が対峙しているのが見える

 

 

「アイツ……何が私の中に居るよ!!ただ気絶させただけじゃない!!!

ふざけた事言って!!」

 

 

だが、叢雲は自分の身体の異変に気付く

 

 

「……でも、何だか身体が軽いわね?少し休んだから?…まぁ良いか行かないと!!!」

 

 

そして叢雲は走り出す抉れていた筈の腹部が綺麗さっぱり治っており殴られた筈の鳩尾の痛みが無くなっている事に気付く事なく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「不味イコレ以上ハ!!」

 

 

「アハハハハハハ!!我島ヲ略奪しに来たアホ共め!!!

ココデ殺してクレル!!!」

 

 

深海長門達は叢雲を失ってからかなりの劣勢に立たされていた

それもそのはず、カナがこの状態になってからまともなダメージを与えられておらず更に向こうの攻撃は一撃でも当たれば致命傷

正に一方的な防戦を強いられていた

 

 

「お前ラガ私二勝つナンテ不可能何ダヨ!!

クタバレェェェェ!!!」

 

 

「ク……ココマデカ!!」

 

 

負傷した深海長門はカナから振り下ろされる爪を受け止めようとするとそれよりも先に一人の艦娘が間に入ると薙刀で爪を受けとめる

 

 

「全く、人の事殴っといて何諦めてるのよ」

 

 

「叢雲!!」

 

 

「もう起キテキタカ!!」

 

 

そしてその状態からカナの爪を弾き飛ばすと深海長門の腹部を思い切り殴る

 

 

「グフッ!ナ、何ヲスルンダ!!」

 

 

「うっさい!あんたが意味分からん理由で私を殴ったのが悪い!!

全く、何がお前の中に居るものよ!そんなの居ないわよ!!」

 

 

「ソンナコトーーー!!!」

 

 

だが深海長門は叢雲の腹部が治っていることに気付くと微笑み長門に話し掛ける

(長門、もう大丈夫だこれで我々の勝利は確定した)

(何だと!やってくれたのか!?)

(嫌、違う我々の希望は…繋がれた!!)

 

 

「さてと、それじゃ少し休んだおかげで身体も軽くなったしやるわよ!!!」

 

 

それは叢雲の意思に反してなのか、それとも叢雲の意思の願いが実現させたのかは分からないが再び叢雲はその力を発現させた

髪先が赤く染まり身体は白く染まると薙刀を構えると左目が真っ赤に染まる

 

 

「マタカ……マタソレヲ発動サセタカ!!!

混血(レイズ)ヲ!!!」

 

 

「さぁ終わらせるわよ、カナ

貴女をここで倒す!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戦いが最後に迫る中グラーフは艦載機を飛ばすことに専念していた

カナが見ていたその何かを確かめるために

 

 

「どこだ……更に遠くか?」

 

 

艦載機を低空飛行させ、その何かに見付からないために放っていると突然艦載機から白い何かが映し出される

 

 

「………?何だ白い……壁?……海にか?」

 

 

その瞬間艦載機を上昇させると海中から何かが飛び出しグラーフの艦載機を食い千切る

 

 

「なっ!艦載機が破壊された!?

しかも砲撃とかではなく!?」

 

 

幾つか予備を放っていた艦載機を上空に上げると先程破壊された艦載機の場所の上空に飛ばす

 

 

「何だ?一体何が………ぇ?」

 

 

その艦載機から映し出される映像にグラーフは目を疑う

それは普通では有り得なく、まるで幻想にでも迷い込んだのかと思ったが

そうではないと理解させられる

そしてそれが間違いなくドレス島に迫っていることが分かると背筋を凍らせる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………白い海が………動いてる……?」

 

 

そう『海が動いていた』

正確には巨大な真っ白な海域自体が動き近付くもの全て破壊しながら真っ直ぐドレス島へと向けて迫っていた

 

 

 





次回

暴走姫VS連合艦隊

欠けていたピースは揃いお互いが隠していた全ての力を引き出す事に成功する
カナは壊の限界突破(オーバーリミット)での暴走状態
叢雲達は隠されていた力を発揮し最強と呼ばれる姫の一体と対峙する

激戦ドレス島奪還作戦ラストバトル!
勝利の女神はどちらに微笑むのか!?

後二話位で決着ですかね(やっとですが
イベントですが、意外とてこずってます(汗
と言うよりは仕事が忙しくて……つらひ



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不沈姫 歴戦飛行場姫カナ

叢雲が走り出すと自然も自分の身体が軽く感じ同時に振り下ろされるカナの爪の動きがゆっくりに見えた

 

 

異常(イレギュラー)ガ!排除シテクレル!!!」

 

 

「遅い!!」

 

 

カナの爪を薙刀で弾き飛ばすとその状態から腹部に刃を突き立てると石にでも当たったかの様に弾かれる

 

 

「硬っ!」

 

 

「ソンナ刃効クカァ!!」

 

 

「叢雲!ソイツ二通常ノ攻撃ハ効カナイ!!」

 

 

「そう言うことは早めに言いなさいよ!!!」

 

 

カナの硬い皮膚に叢雲が頭を悩ませていると艤装からノイズと共に声が聞こえた気がした

 

 

『ザザ……刃二血ヲ捧ゲヨ』

 

 

「っ!!誰!?」

 

 

叢雲はその声に驚き辺りを見るがその声の主は居らず不思議に思うがそうも言ってられずに後ろに一歩下がる

(誰かは分からないけれどそんなこと考えてる暇はない!!!)

その声に従い叢雲は手に薙刀の刃を当てると勢いよくそれを引き抜く

 

 

「っ!」

 

 

「叢雲!?」

 

 

「何してるんだ!!」

 

 

だが、すぐに変化が起きる叢雲が流した血は海面に落ちること無く手に停滞していた

そしてその血液が刃に吸い込まれてい薙刀をコーティングしていくと手の傷口が消えていく

 

 

「へぇ、あながち私の中に何か居るってのも嘘じゃないかもね!!」

 

 

刃が真っ赤に染まると叢雲はそれをカナに向けて振りかざそうとすると

 

 

「チッ!姫騎士(プリンセス)ト同ジ技カ!!」

 

 

カナはその刃を見ると舌打ちと共に爪でそれを弾くと叢雲の血液が弾かれカナの身体に付着すると白い肌が少しだけ肌色に変化する

 

 

「っ!あんた……成る程ね!!」

 

 

「気ヅイタカ!!」

 

 

その瞬間叢雲とカナは激しく打ち合い深海長門達はほとんど攻撃できそうに無く離れていた

 

 

「凄い……あのカナと打ち合えてる……」

 

 

「これが…叢雲の力…」

 

 

「……違ウ…叢雲ダケデハナイ……」

 

 

深海長門は呟くと叢雲の見た目が変わっている中に一つの影が見える

それはまるでカナの攻撃を全く通しておらず遊んでいるように見えた

(……何なんだ、叢雲の中にいるソイツは……叢雲に助力してる化け物…一体)

その瞬間深海長門は身体がぐらつき倒れそうになると

(…すまない、長門変わってくれ……これ以上はキツイ…)

(大丈夫だ、ゆっくり休んでくれ)

長門達が入れ替わるとカナと叢雲の打ち合いに決着がつく

 

 

「クタバレ!!叢雲ォォォォ!!!」

 

 

「くたばるのはそっちよ!!カナぁぁぁぁ!!」

 

 

カナの爪が叢雲に当たる寸前でそれを交わし叢雲は刃を下から振り上げカナの身体を切り裂く

 

 

「はぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「ガァァァァァァ!!!!」

 

 

今までどんな攻撃も通すことが無かったカナの身体に大きな切り傷が入ると叢雲が叫ぶ

 

 

「長門!磯風!古鷹!行くわよ!!

今コイツの装甲を破壊したわ!チャンスよ!!

私がカバーする!あんた達は撃ちなさい!!」

 

 

「了解!!」

 

 

「流石だな!叢雲!!」

 

 

「行くぞ!奴を倒す!!!」

 

 

叢雲が切り裂いた傷口から血が溢れて居るのを確認したカナは再び艤装を構えると怒り狂う

 

 

「ヨクモヨクモヨクモ!!!この私二傷ヲ付けてくれたなぁ!!!!」

 

 

その瞬間カナは右主砲を構えると長門達に照準を合わせると長門達は一瞬躊躇う

 

 

「良いから進みなさい!!」

 

 

叢雲が叫ぶとその前に移動するとカナの主砲からガチャンと音が聞こえる

 

 

「クタバレ!!第1スロット!即撃弾(アンリミテッド)!!!」

 

 

「叢雲!」

 

 

「私に任せなさい!!」

 

 

アブソリュートから辺りを震動させる程の音が響き渡ると同時に鉄同士がぶつかり合う鈍い音が聞こえ全員は目を疑う

 

 

「……………は?」

 

 

「…………嘘……だろ?」

 

 

それもそのはず叢雲はカナの砲弾を血の薙刀で一刀両断し砲弾が真っ二つされ海面に落ち海中に沈んでいく

 

 

「ふん、こんな所ね」

 

 

「………………ハハ…何て奴だ」

 

 

「……ふふ、流石は私達のACEだね」

 

 

その光景に長門は呆れながらも笑い、古鷹は微笑んでいた

 

 

「行くわよ!あんた達!!」

 

 

叢雲は微笑むとカナは事態を理解すると大混乱に陥り暴走状態が解除されてしまう

 

 

「ば、馬鹿な嘘よ!嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘嘘!!!!

私の砲弾を切り裂くなんて!!そんな!!あり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ないあり得ない!!!!」

 

 

「それが叢雲だ!覚えておけ!飛行場姫!!」

 

 

「ふざけるなぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

長門達が迫る中カナは主砲を展開するが叢雲がその主砲を切り上げ向きを無理矢理変える

 

 

「やりなさい!あんた達!!」

 

 

「「「了解!!」」」

 

 

叢雲の合図と共に長門達は主砲を構えると叢雲が居るのにも関わらず砲撃しカナへとダメージを与えていく

 

 

「こいつらぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

「あんたの終わりよ!!カナ!!」

 

 

「調子に乗るなぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

カナが再び主砲を構えようとすると次は空からカナへと爆撃が入りカナの身体が傾く

 

 

「今度は何だぁぁぁ!!!」

 

 

「艦載機!まさか!」

 

 

「ちょっと叢雲!私達の事忘れてない!!」

 

 

「全く英雄だけにええ顔させんで!!」

 

 

先程まで休んでいた瑞鶴に龍驤が参戦し更に赤城が残っている空母達を集めカナへ爆撃を開始する

 

 

「叢雲さんを援護します!空母艦隊艦載機を発艦してください!!」

 

 

「クソ共がぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

叫んでいるカナに対し長門達とは別の方向から砲撃が加わると舌打ちと共にその方角を睨み付ける

 

 

「私達を忘れてない!叢雲!!長門!!」

 

 

「陸奥!」

 

 

「さぁ!最後の敵よやってやるわ!!」

 

 

 

「戦艦共がぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

カナがその矛先を向けようとするも叢雲がそれをさせない様に動いていると更にカナへと雷撃が命中する

 

 

「今度は何だ!!」

 

 

「雷撃……この威力は!!」

 

 

「へぇ、あれを受けてもほとんど傷受けてないのはヤバイねぇ

お待たせ、雷撃姫」

 

 

休んでいた北上も合流し全ての艦隊がカナへと矛先を向けるとカナの額に汗が見え始める

 

 

艦娘(略奪者)共がぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

全ての戦力が集まりカナを囲む形を取っていると叢雲が空に薙刀をかざしその矛先をカナへと向ける

 

 

 

「さぁ、終わりにしましょうカナ

暁の水平線に勝利を刻むわよ!!!」

 

 

 

 

 




次回

届カヌ願イ

全ての戦力が仲間が集まりカナを追い詰めていく連合艦隊
絶対的な防御を誇るカナを前に全員は希望と言う叢雲と共に最後の戦いを仕掛ける

次回ドレス島最終決戦!
果たして叢雲達は最強と呼ばれる歴戦の姫を倒しきる事が出来るのか!!




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不沈ノ飛行場

今回も長めです!
そして長きに渡る戦いに決着が……






「誰が負けるものかぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

カナは怒り狂いながら主砲を構えるが叢雲がそれを蹴り飛ばすと主砲の向きを変えられてしまいその力に驚く

(何なんだ!何なんだコイツは!!!

コイツの力は私達と同じ姫Elite級の力!!コイツに取り付いているのは何なんだ!!)

 

 

「長門!アレを使うわ!!コイツにトドメをさすわよ!!」

 

 

「っ!了解!!」

 

 

叢雲は長門にある武器を使う指示を出すと意図を理解すると全速力でカナに近付きながら5発の雷撃をカナとは逆方向に放つ

 

 

「破壊してくれる!お前らの艤装なんぞ!!」

 

 

「やれるもんならやってみなさいよ!!!」

 

 

カナは爪で叢雲を切り裂こうとするもその一撃を叢雲は簡単に弾き飛ばしそして入れ替わる様に長門が近距離でカナに砲撃する

 

 

「くたばれ!!!」

 

 

「ぐぅ!このぉぉぉぉぉ!!!!」

 

 

叢雲の攻撃により装甲が破壊され長門の砲撃がダメージが通るようになっており確かな手応えを感じ再び爪が長門を襲う

 

 

「叢雲!長門さん!!伏せて!!」

 

 

その声が後ろから聞こえると叢雲と長門は伏せると直後古鷹の砲撃がカナに直撃しその威力にカナがふらつく

 

 

「ガハッ……こいつら!!!」

 

 

「叢雲!長門離れて!!」

 

 

そして次に瑞鶴達からも声が聞こえ少し離れると空から艦載機の爆撃が始まりカナは爆煙に包まれていくと

 

 

「チッ……ハエ共がぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「全艦隊!行くわよ!!

主砲砲撃用意!!撃てぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

更にそこに加え陸奥の指示により連合艦隊による砲撃が降り注ぎカナに大きなダメージを負わせていく

 

 

「ガハッ……まだだ……私は!!」

 

 

「まだ倒れないの!?」

 

 

「ほんと!硬すぎよ!!」

 

 

「長門!磯風!古鷹!!行くわよ!!」

 

 

「「「了解!」」」

 

 

叢雲の合図と共に四人はふらついているカナへ向けて走り出すと二門の主砲を四人に向ける

 

 

「近付くなぁぁぁぁ!!!」

 

 

「叢雲!私が左をやる!」

 

 

「了解!任せたわよ!!」

 

 

古鷹と叢雲はカナの砲弾を無力化しようとするとカナは砲撃体制を取ると古鷹は深く息を吐き主砲を構える

(落ち着いて、貴女なら出来るわ

貴女は強い!)

(……うん、かならずやってみせる!!)

静かにカナの砲撃を待っていると叢雲も薙刀を構えるとその瞬間を静かに待つ

 

 

「木っ端微塵にくたばれぇぇぇぇぇ!!!」

 

 

「「今!!」」

 

 

カナの両方も主砲から轟音が聞こえると同時に叢雲は刃を振るい古鷹は砲撃すると叢雲の砲弾は真っ二つに切れ古鷹の砲弾は横にそれ海面に弾着する

 

 

「何!?」

 

 

「覚悟しろ!!カナ!!!」

 

 

「ここで、終わりだ!!飛行場姫!!」

 

 

二人が砲弾を無力化するとそれと入れ代わると様に長門と磯風が突っ込むがカナはすぐさま対応し磯風の首を掴むと思い切り投げ飛ばし長門を蹴り飛ばす

 

 

「雑魚共が!!調子に乗るなぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「ぐっ!」

 

 

「やはりかなり我々ではキツイか!!」

 

 

「退きなさい!!」

 

 

だが、その後ろから叢雲が薙刀を振りかざすとカナへと刃を振り下ろしカナはそれを爪で防ぐが叢雲はどんどん押していく

 

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

「重い……!コイツ!こんなに……!?」

 

 

カナはその叢雲の攻撃を防いでる中背後に何か大きな影が見える

それは叢雲やカナより遥かに大きい化け物

そしてその化け物はカナを見下ろしながら笑みを浮かべ口パクでカナに話し掛ける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  オ 前 ノ 敗 ケ ダ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「舐めるなぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

叢雲の攻撃をいなすと主砲を叢雲に向けて砲撃するがそれよりも速く叢雲が動き砲弾を交わすとそれが海面に直撃し大爆発を起こす

 

 

「この距離でもか!!」

 

 

「終ワリヨ!!カナ!!!」

 

 

叢雲の両目は真っ赤に染まり髪先だけであった赤い髪は血が滲むように半分まで上がってきておりカナは恐れを抱く

(不味い!この私が負ける!!)

まるで目の前に小さい姿をした化け物を目の前にカナは震えながら叫ぶ

 

 

「この!!化け物がぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

カナは両方の爪を振りかざし叢雲を切り裂こうとするもそれを交わされ薙刀を振り下ろしカナの右腕を切り飛ばす

 

 

「アァァァァァァ!!!!」

 

 

「さぁ!長門最後よ!!!」

 

 

「了解だ!!陸奥!!!全艦隊砲撃用意!!」

 

 

 

切り飛ばされた腕の痛みに苦しんでいるカナを横目に叢雲は薙刀を小さくすると艤装から二発の魚雷を取り出すとカナの両方の主砲にくっ付ける

 

 

「何してやがる!!!」

 

 

カナがそれを辞めさせようとするがそれよりも先に古鷹が顔を撃ち抜くとその痛みでカナはふらつくと設置が終わったのか叢雲が海面に降り立つ

 

 

 

「古鷹ぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

だがその瞬間古鷹がカナに吹き飛ばされてしまうと再び叢雲とカナの一騎討ちになる

 

 

「お前はまだ強くなるのか!叢雲!!!

答えろ!!お前達は何故略奪する!?

そんなに私達から奪って楽しいか!?嬉しいか!?

我々の犠牲の元に貴様らの平和があることに気付かないのか!!」

 

 

「っ!……そうね、正直な話あんた達から奪った平和で嬉しくないし楽しくはないわ

でもね、私達あんたを倒さなきゃいけないの!!

カナ、貴女のは敵として会いたくなかったもっと別の出会いをしていればこうはならなかったと思うわ!!!」

 

 

叢雲は不意に小笠原島に居るエアを思い出す

彼女も歴戦種であり話し合うことが出来る数少ない深海棲艦の一人にして覚悟と信念を持ちカナと似たようなぞんざいであるが故である

 

 

「貴様らは艦娘は人間の傀儡(かいらい)と同じか!!!

自分の意思を持たず、願いを持たないただの兵器!!!

どんなに見た目が同じでもお前達は人間の代理でしかない

お前達は人間でも無感情の兵器でもない!!!ただ提督の言うことにしか従うことがない憐れでどうしようも無い存在ってことよね!違うかしら!?」

 

 

カナの言い分に叢雲は心を撃ち抜かれた気がした

全くその通りだったからである、佐渡の言うことが全て正しくそれに従ってきたからである

そして今カナを倒すことにほんの少しだけ困惑と葛藤がある

 

 

「……えぇ、その通りね

私達は傀儡であり兵器よ、でもあんたと同じ守りたいものがあって私はそれを守りたい

だから!!!私はあんたからこの島を奪う!!!!

私達の仲間を!信頼する友を守るために!!!」

 

 

「……ならお前達はやはり私の敵であり我々深海棲艦の敵だ!!!略奪者共!!!!

一人残らずこの海の底に沈めてくれる!!!!」

 

 

完全に叢雲とカナは敵対するとお互いが武器を構えると同時にカナは艤装から何か取り出すと切り飛ばされた右腕に注射すると右腕が再生する

 

 

「なっ!」

 

 

「左右不安定なのは嫌なのよ!!」

 

 

それと同時にカナが踏み込むと爪を振り上げ襲い掛かると薙刀で弾くと更にもう片手で叢雲の薙刀にぶつけるとその勢いで海面を引きずる

 

 

「ぐぅ…!」

 

 

「吹き飛べ!!!」

 

 

だがその瞬間カナは主砲を構えるとカナの横側から雷撃が命中し睨み付ける

 

 

「そう簡単に雷撃姫はやらせないよ!!」

 

 

「北上!!」

 

 

「雑魚がぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

カナが主砲の向きを変えようとすると叢雲の後ろから幾つもの砲弾がカナに直撃し爆煙に包まれると後ろを振り返る

 

 

「まだ私達は残ってるデースよ!!」

 

 

「はい!まだ……撃てます!!」

 

 

「叢雲!雷撃で援護するよ!!」

 

 

「動けませんが……貴女を援護します!!」

 

 

「全く、固定砲台位しか出来ないけどやるわよ!!」

 

 

「叢雲ー頼むよ!うちらが援護するっしょ!」

 

 

「叢雲!私達の希望を繋いでくださいませ!!」

 

 

「不知火も…微力ながら援護します!!」

 

 

金剛を筆頭に倒れており動けなかった阿武隈達が残っている武器で精一杯援護することを聞くと叢雲は微笑む

 

 

「あんた達……もう休んでなさいよ全く…」

 

 

「クソが……雑魚共がぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

カナが主砲を放とうとすると今度は真下から雷撃が命中すると叢雲に通信が入る

 

 

『叢雲!私達も援護する!』

 

 

「イムヤ!?あんた平気なの!?」

 

 

『へへ、何とかねまだ撃てはするから!』

 

 

『全く無茶してるの、でもここで無茶しないとなの!』

 

 

『安心して、私達が貴女を海から支える!』

 

 

『さぁ!やってやるでち!叢雲!!』

 

 

「……本当に馬鹿何だから!!」

 

 

「この略奪者共がぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

カナはその瞬間叢雲に爪で斬りかかるが薙刀で弾きその状態から砲撃する

だが、カナにはほとんどダメージが入っておらず爆煙の中から手を伸ばすが砲撃に撃ち抜かれる

 

 

「やらせないよ!!」

 

 

「古鷹ぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「治るならまた斬り飛ばすだけよ!!」

 

 

叢雲はその瞬間に右腕を斬り飛ばしに掛かるがそれよりも先にカナが隠していた副砲を叢雲を狙い撃ち

 

 

「ぐっ!こいつまだ隠してたの!?」

 

 

「負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない負けない!!!!!

私が!この島を守るんだぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

半狂乱になっているカナに再び長門達から砲撃と北上達からの雷撃によりダメージを負うと一気に宙へ飛び上がると主砲を別の方向に動かし北上達へ向ける

 

 

「私の!!邪魔をするなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

「まさか!アイツあの状態から!?」

 

 

「全艦!!上からの砲撃に気をつけーー」

 

 

「死ねぇぇぇぇぇ即撃弾(アンリミテッド)!!!!」

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「空から砲撃何て!そんな馬鹿な!!」

 

 

カナが叫ぶとアブソリュートが正確に一人ずつ狙い砲撃を当てていきそれを見ていた叢雲は飛び上がろうとするとイムヤからの通信が入る

 

 

『叢雲!貴女に加速型を撃つわ!!それに乗ってアイツを撃ち落として!!』

 

 

「了解!!」

 

 

通信と同時にイムヤが放った雷撃が叢雲の脚に当たると勢いよく飛び上がり砲撃しているカナを斬り上げる

 

 

「カナぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「また来たのか!!叢雲ぉぉぉ!!!」

 

 

カナはその状態から斬られてしまうと宙から落ちていくと海中に居るイムヤ達を視認する

 

 

「お前らが原因か!!潜水艦共!!!」

 

 

その瞬間アブソリュートを構えると海中へと砲撃すると海中で砲弾が膨張し大爆発を引き起こす

 

 

『きゃあぁぁぁぁぁ!!!』

 

 

「イムヤ!!あんた良くも!!!」

 

 

カナは海上に着地すると同時に空に居る叢雲へ目掛けて砲撃体制を取る

 

 

「それなら避けられないわよね!!死になさい!!駆逐艦叢雲!!!」

 

 

「不味い!!」

 

 

「そんなことは!!」

 

 

「やらせないよ!!」

 

 

だが、その瞬間青葉と衣笠がカナに衝突し無理矢理砲撃体制を崩させると砲弾が叢雲を反れる

 

 

「青葉!衣笠!!!」

 

 

「雑魚共がぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「「きゃあぁぁぁぁぁ!!!」」

 

 

叢雲の砲撃を反らした瞬間二人はカナに蹴り飛ばされてしまうが叢雲はそれよりも先に艤装から魚雷を取り出すと発射管に納める

 

 

「終わりよ!カナ!!!

雷撃射撃開始!!!」

 

 

叢雲は持っている全ての雷撃を放つとそれはカナを囲うように海面に命中するも爆発はせずに辺りを漂うばかりである

 

 

「アハハハハ!残念だったわね!!不発弾よ!!!」

 

 

「違う!これはお前を逃がさないためにだ!!!」

 

 

「何!?」

 

 

カナが落ちてきていた魚雷を確認するとそれはカナに近付いていき脚に当たると鈍い音がする

まるで弾薬だけが詰まっているかのように

 

 

「何だ!この魚雷!!」

 

 

「そいつは誘爆型!通常とは違い誘爆しやすいように造られた特別性よ!!」

 

 

叢雲の言葉に背筋を凍らせる急いで周りを見るとそれが10~15発程浮いておりそれが全て弾薬だけが詰められた物であると理解する

 

 

「っ!?!?!?!?」

 

 

「それだけを見ていて良いのかしら!?」

 

 

その瞬間叢雲がカナの目の前に落ちてくると勢いよく薙刀を振るい脚部の艤装切り落とす

 

 

「なっ!脚を!?」

 

 

「これでもうあんたは逃げられない!!!

終わりよ!飛行場姫カナ!!!」

 

 

「全艦隊!主砲用意!!」

 

 

長門の声にカナが気付くと動ける艦娘達や主砲が生きている艦娘達は全てをカナへと向ける

 

 

「っ!!!不味い!!!」

 

 

その光景を見てカナの背筋が凍り付きその場から退避しようとするも脚が破壊されており身動きが取れない

 

 

「全ての砲弾、魚雷、弾薬を使いきれ!!!

連合艦隊最後の砲撃!!狙いは飛行場姫!!!」

 

 

長門が指示をすると連合艦隊全ての艦娘が主砲をカナへ向け一斉に掛け声を上げる

 

 

 

「「「「「撃てぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」」」」」

 

 

「沈むデース!!!!」

 

 

「いっけぇぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

「海の底へ……沈めぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!」

 

 

全ての砲撃、雷撃、爆撃がカナに集中しその砲弾が降り注ぐと叢雲が放っていた誘導型が誘爆型に当たる

 

 

 

「この!!!!!略奪者共ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

カナの絶叫と共に全てがカナとアブソリュートに着弾し今まで最大の大爆発を起こすとその勢いに長門達は押され顔を押さえる

 

 

「……全弾命中…だな…」

 

 

長門の一言が終わるとカナは爆煙に包まれており辺りに一時の静けさに包まれる

 

 

「……終わりね、これで……うぅ…」

 

 

「叢雲!」

 

 

最後の攻撃をした叢雲は力抜けたのかフラフラと倒れそうになるが磯風がそれを支える

 

 

「お疲れ様、叢雲」

 

 

「えぇ……疲れたわ……」

 

 

爆煙は未だに晴れていないがカナの方角からは爆発音が聞こえ確実に破壊されていることが分かる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかしいきなり轟音が響き渡り金剛へ砲弾が直撃し大爆発を起こす

 

 

「ガハッ……」

 

 

「金剛!!」

 

 

その砲撃は爆煙の中から聞こえ砲撃の勢いに爆煙が掻き消されると全身を火傷し血塗れになっているカナが姿を現す

 

 

「ま、まさか!?」

 

 

「まだ生きてるの!?これで二回目よ!!!」

 

 

「マダダ!!!私ハ!!私ハ負ケテナイ!!!!

私ハ負ケナイ!!!ピースノ帰ル所ヲ

!!!!

ガハッ……守ルンダァァァァァァァァァァァ!!!!」

 

 

吐血し身体がボロボロになりアブソリュートにもヒビが入っているのにも関わらずカナは海面に手を付きながら叢雲達を捉えていた

それは自らの信念であり自らの存在意義であるかの様にあがき最後の力を振り絞る

 

 

「あんな状態でもまだ動けるの!?」

 

 

「くっ……化け物め!!!」

 

 

だがカナとアブソリュートは限界を迎えており二門の主砲には大きくヒビが入り艤装自体も半壊していた

カナも頭から血を流し左目が閉じており身体から至るところが焼け焦げ出血しボロボロになりながらも無理矢理動き撃とうとしている

 

 

「これ以上は……!!!」

 

 

叢雲はその状態から一つだけ突破口を見付ける

それは先程叢雲が付けたアブソリュートの主砲にある誘爆型が爆発してなかったのである

 

 

「古鷹!!あれを撃ち抜ける!?」

 

 

「あ、あれを!?」

 

 

「かなりキツいとは思うけどお願い!!!」

 

 

「……了解!!」

 

 

古鷹は全神経を集中させるとカナの主砲に取り付けられている誘爆型を狙い撃とうとする

残る砲弾の弾薬は一発、絶対に外せず、もし弾薬があっても次からは警戒される

だからこそ絶対に外せない

いつも撃っている砲弾がずっしりと重く古鷹は震えてきてしまう

(当てる当てる当てる当てないと当てないと!!!)

途中で目を閉じてしまうと不意に手を握られ目を開ける

 

 

「………叢雲」

 

 

「…大丈夫よ、貴女なら当てられるだから頼むわよ相棒(バディ)

 

 

「……うん!」

 

 

叢雲に勇気付けられると古鷹は大きく深呼吸をすると静かに呟く

 

 

 

 

 

「………撃て!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

古鷹の砲弾は真っ直ぐ飛びカナの頭部をすり抜けるとそのままアブソリュート本体にくっついている誘爆型を撃ち抜き大爆発を引き起こす

 

 

「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」

 

 

その爆発により更にアブソリュートが傷付き右の主砲に入っていたヒビがどんどん大きくなり小さく爆発していくとカナは重量に耐えきれず海面に顔を付けてしまう

 

 

「艦娘共ガァァァァァ!!!!略奪者共ガァァァァァァァァァァ!!!!!」

 

 

カナが再び顔を上げると目の前から雷撃が迫ってきていることに気付く叢雲を見る

 

 

「……悪いわね、これで終わりよカナ」

 

 

その雷撃は叢雲が隠し持っていた雷撃

もしもの時の様に残しておいた最後の雷撃であり正真正銘トドメになるもの

それがカナに直撃するとカナは爆風に吹き飛び身体が再び立ち上がるとアブソリュートの主砲と砲弾の部分が爆発していき耐えきれなくなっていく

 

 

そして

 

 

「許サナイ………オ前ラヲ……私カラ全テヲ奪ッタオ前達ヲ………

 

コノ人間共ガ………コノ艦娘(略奪者)共ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!」

 

 

カナの叫び声と共にアブソリュートが限界を迎えたのか接続部分が破壊され主砲にヒビが走り崩壊していくと勢いよく周りの空気を吸う

その瞬間カナは叢雲の向こう側にあるドレス島を見つめ手を伸ばしながら一筋の涙を流す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね……始原(ピース)…………守れなかった…………貴女の大切な帰る場所を……………」

 

 

「っ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして次の瞬間アブソリュートの弾薬に引火すると辺りの空気を震動させるほどの大爆発を起こしその爆発に長門達は背を向ける

アブソリュートの大爆発は想像以上であったそれは長門達の肌をすこしばかり焼くほどの火力であり長門達は顔を反らす

だが、叢雲だけはその爆発から目を背けずにゆっくりと沈んでいくカナを見ていた

 

 

「……やった…のか…?」

 

 

長門が次見た時はアブソリュートの主砲が空を向いておりゆっくりと海中に沈んでいく

そしてその破壊されていくアブソリュートからはまるで何か化け物の叫び声のような音が聞こえ海中に姿を消していく

その姿をイムヤ達が確認すると海上に飛び出す

 

 

「飛行場姫!!!!!」

 

 

「撃沈!!!!」

 

 

「確認なのね!!!!」

 

 

「私達の勝利よ!!!!」

 

 

イムヤ達によって告げられた言葉はすこしばかりの沈黙の後に連合艦隊の艦娘達は大声を上げて勝利を喜ぶ

 

 

「やっっっっったぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「勝った!勝ったぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「やったんですわよ!!私達はやったんですわよね!!!!」

 

 

「よっしゃぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「勝ちましたか!!!!」

 

 

「やったデース!!!!」

 

 

連合艦隊の面々が勝利を喜びお互いが生き残ったことを泣いて喜んだ

 

 

そして撃沈したカナはゆっくりと破壊されたアブソリュートと共にドレス島の海溝へと沈んでいく

 

 

 

 




次回

連合艦隊の勝利!!そして

最強と呼ばれるカナを見事撃沈した連合艦隊、その戦いはかなり苦しく険しい道のりだったのにも関わらず彼女達は見事その戦いを乗り越えた
だが、勝利に受かれている彼女達には更なる試練が……


カナ戦終わりましたねぇ……
凄い感慨深かったですわ…ぶっちゃけこれ最終回でもいい気がした(燃え尽きた感)
まぁ!まだ半分なんだけどね!!




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荒れ狂う海

「………終わったんだな…」

 

 

「えぇ……全て…終わったのよ……」

 

 

ローマ達が喜ぶ最中長門と陸奥はカナが撃沈した場所を見ていると少しずつ長門の深海化が溶けていきふらつく

 

 

「長門!」

 

 

「だ、大丈夫だ……少し…疲れただけだ……」

 

 

「そう…お疲れ様よ本当に…ゆっくり休んで…」

 

 

「その前に報告しないとな

……こちら長門提督聞こえるか?」

 

 

『長門!!大丈夫なのか!?戦闘は!?』

 

 

長門が大本営に連絡を入れると唐澤の通信が会議室に繋がっており全員はその後の言葉を待つ

 

 

『…勝ったよ…我々の勝利だ!!』

 

 

「本当か!!歴戦の飛行場姫を倒したのか!?」

 

 

『……あぁ、叢雲がやってくれた』

 

 

「やったぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「イヤッホォォォォ!!!流石だな!!おい!!!!」

 

 

「あぁ!皆!凄い…凄いよ!!!あの歴戦種を倒すなんて!!」

 

 

その言葉に会議室の葛城達は手を叩きながら喜び猿橋と石澤は抱き締め合いながら喜び佐渡はゆっくりと椅子に座ると深く息を吐く

 

 

「はは、流石だな叢雲」

 

 

「東雲大元帥!やりましたね!!!」

 

 

「……あぁお前達を信じて良かった」

 

 

喜びに溢れる会議室の中羽田と東雲も微笑んでいた

 

 

 

「叢雲ー古鷹ー!!!」

 

 

「凄いわ二人とも!!」

 

 

「全く流石は私達のエースだね」

 

 

「あら金剛、大井、イムヤお疲れ様」

 

 

「皆さんお疲れ様です」

 

 

三人はテンションが上げながら喜んでいる最中叢雲と古鷹は疲れからかゆっくりと休んでいた

だが叢雲だけは一人浮かない顔をしていた

 

 

「あの飛行場姫を倒すとは流石デース!」

 

 

「えぇ、流石は小笠原のエースね!」

 

 

「………そうね」

 

 

「叢雲?どうしたの?何か浮かない顔だけど?」

 

 

「何でもないわ、別に……」

 

 

「叢雲!」

 

 

金剛達とは違う声に呼ばれ振り返るとボロボロにこそなっているものの鈴谷達が古鷹の膝で休みながら囲まれていた

 

 

「あらあんた達、動いて大丈夫なの?」

 

 

「大丈夫!」

 

 

「そんなことより!叢雲こそ大丈夫ですの!?

もうゆっくり休んでほしい……のですが!!」

 

 

「その前に!やることがあるっしょ!!」

 

 

すると力を抜いている叢雲の腕を磯風と比叡が掴むと古鷹が少し離れる

 

 

「ちょちょ!何するのよ!」

 

 

「決まってるだろ?胴上げだ!!」

 

 

「え!ちょっとここで!?」

 

 

全員ボロボロではあるもののそれは出来るほどの体力を残っていたのか陸上戦闘部隊は叢雲の胴上げを始める

 

 

「ありがとう!叢雲ー!!」

 

 

「信じて…良かったですわ!!」

 

 

「流石英雄ー!!」

 

 

「お見事でした!叢雲さん!!」

 

 

「カッコ良かったよ!!叢雲ー!!」

 

 

「ちょっと!これ恐いんだけど!!」

 

 

「大丈夫デース!戦艦が居ますからー!!」

 

 

「ちょっとー!!私達も混ぜなさいよ!!」

 

 

「うちもやー!ほら!皆歴戦種の姫を倒した英雄の胴上げやで!!!」

 

 

「「「おぉー!!」」」

 

 

 

その胴上げを見ていた瑞鶴、龍驤が更に加わり大所帯になりながら叢雲を胴上げしており当の本人はため息を付きながらため息をついていた

その姿を古鷹と大井は少し離れた所で見て二人微笑んでいた

 

 

「お疲れ様、古鷹さん」

 

 

「うん、大井さんもね!」

 

 

「にしても綺麗ですね古鷹さんの深海化!!」

 

 

「え!?そ、そうかな……?」

 

 

「私は好きですよ、貴女の真っ白な心の様に綺麗な髪色ですし、目は真っ赤に燃える意思の様で」

 

 

「えへへ…そうかな?」

 

 

「何してるデース!古鷹もデスよ!!」

 

 

「え?私も!?」

 

 

「そうよ!あんたも頑張ったじゃないの!ほらやる!!」

 

 

「え?ちょ!ちょっと!!」

 

 

叢雲の胴上げが終わると今度は古鷹の腕が掴まれ古鷹の胴上げが始まると溜め息を付きながら大井に近付いていく

 

 

「全く、疲れたわ」

 

 

「お疲れ様、叢雲」

 

 

「えぇ、本当にね」

 

 

ボロボロになっている大井の肩を叩くとその場に座り込み海面を触りドレス島を見つめる

 

 

「浮かない顔ね?どうしたの?」

 

 

「………ねぇ、大井あんたは北上の為に提督を殺しかけたわよね?」

 

 

「えぇ?それが?」

 

 

「……それってあんたの意思?それとも使命感から?

それと後悔はないの?」

 

 

叢雲の問い掛けに大井は笑みを浮かべながら当然の様に答える

 

 

「私の意思よ、北上さんを守りたかったの

後悔はないわあの後死んでも全く

だって北上さんを守れるなら死んでも良いと思ってたから」

 

 

「そう……」

 

 

「どうしたのよ?こんなこと聞いて?」

 

 

「…………大井、小笠原に帰ったら話があるわ」

 

 

「えぇ、良いわ皆を集めるわね」

 

 

「ありが………!!!」

 

 

叢雲が大井に礼を言おうとすると水平線の果てに何かの気配を探知し立ち上がると薙刀を構える

 

 

「………叢雲?」

 

 

「……大井、余力はある?」

 

 

「は?何言って……」

 

 

「叢雲!!皆!!!今すぐここから待避するぞ!!!!」

 

 

喜びに溢れている連合艦隊に突然グラーフから不穏な言葉が響き渡り喜んでいた艦娘達はグラーフへ視線が集中する

 

 

「どうしたのよ?グラーフ?

飛行場姫は倒したのよ?」

 

 

「そうよ!だからもう」

 

 

「まだだ!!!こっちに『真っ白な何か』が向かってきているんだ!!!

しかもかなりデカく数が多い!!!」

 

 

そのただならぬ声に長門も気合いを入れ直すとグラーフに何かの情報を聞こうとする

 

 

「グラーフ!敵か!?」

 

 

「恐らく!だが、付近に居た深海棲艦がそれを見た瞬間逃げ出している!!!

ただ者ではない!!更に逃げ遅れた深海棲艦を食らいながらこちらに迫ってる所を見ると恐らく深海棲艦側も危険な存在であることは確かだ!!!」

 

 

グラーフの情報に連合艦隊は背筋を凍らせる

ただでさえ、先程カナを相手に疲弊しきってる中更に弾薬もほとんど無い状態での新たな敵

連合艦隊は再び大混乱に陥る

そして

 

 

「た、た、大変なの!!」

 

 

「どうしたイク!?」

 

 

「凄い巨大な白い魚見たいなのがこっちに来てるの!!!」

 

 

「何体だ!?」

 

 

「今ざっと確認しただけでも八体!!多分味方ではないよ!!あれ!!!」

 

 

「や、ヤバイでち!!あんなの今相手に出来る奴じゃないでちよ!!!」

 

 

 

「流石にあの数はヤバイよ!!」

 

 

 

 

イク達の話を聞いた長門は指示を出そうとすると水平線の端に白い何かが見え始め突然海中から巨大な何かが飛び上がり雄叫びを上げる

 

 

「グオォォォォォォォォォ!!!!」

 

 

その何かは巨大な鯨の様な海洋生物は全身が真っ白に染まっており深海棲艦達が付けているような艤装が付いていた

周りを確認するために瞳を動かすと長門達を見つけ睨み付ける

そしてそれが何なのか長門と大淀、そして矢矧達は理解していた

 

 

「ま、まさか!?でもどうして!!!」

 

 

「何てことなの!!コイツは!!!」

 

 

巨大な海洋生物を見ると長門は冷や汗を掻きながら息を呑むと海洋生物に構える

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「このタイミングで来るとはな………『白海』!!!」

 

 

 

 

 




次回

白銀の強襲

突然現れた巨大な真っ白な海洋生物に長門達連合艦隊は恐れ大混乱に陥る
この海域から簡単には逃げられない

E6にかなり苦戦してます()
道中事故多くてつらい……



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荒れ狂う海 二

その巨大過ぎる海洋生物は飛び上がった一瞬で辺りを確認すると椿がボロボロで倒れていることを確認し勢い良く長門達に向けて身体を倒す

 

 

「っ!倒れてくるぞ!!退避!!!」

 

 

長門の言葉を聞くと全艦隊が勢い良く散らばると海洋生物は思い切り海面を叩き海上に波を作ると長門達も身体がふらつき波に飲み込まれる

 

 

「な、な、何なのあれ!?」

 

 

「鯨!?いや!それにしてはでかすぎる!!」

 

 

「長門!アイツは何!?」

 

 

「白海だ!!間違いない!!!」

 

 

「白海!?あんた!白鯨じゃないの!?」

 

 

「いいえ!コイツだけではないから白海何です!!!」

 

 

 

叢雲達が大混乱に陥っていると巨大な海洋生物白鯨は叢雲の足下を通過するとまるで海が真っ白に見え大淀がその説明をする

 

 

「太平洋海域の一つ、危険海域『白海』!

正式名称 『白き厄災の海』!

太平洋海域の中でも危険と呼ばれている航行禁止海域の一つです!!

何でも30隻程軍艦をたった10分足らずで海に沈めた深海棲艦の部下である白い海洋生物達の群れ!!!

艦娘達でも下手に手を出すことが許されてない移動する『霧の海域』の次に危険な海域です!!」

 

 

「何でこいつらがここに!!!」

 

 

矢矧達が焦っていると長門が白鯨が向かっている方向を見ると全員に叫ぶ

 

 

「っ!椿!!全艦隊!!!!椿を回収しろ!!!

こいつらの目的は椿を回収することだ!!!

奴は!真実を知っている!!奪われるわけにはいかない!!!」

 

 

「急げ!!!」

 

 

「グオォォォォォォォォォ!!!!」

 

 

長門の言葉に慌てて近くに居た霧島達が倒れている椿を回収しようとするがその瞬間海中から白鯨が飛び出し霧島達を宙へと叩き出す

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁ!!!!」 

 

 

「こいつ!!私達の動きを理解してるのか!?」

 

 

「シャアァァァァァァァ!!!!」

 

 

 

霧島達が海上に叩きつけられると海中より椿の真下から白鯨より小さい白いシャチの様な海洋生物が椿を丸呑みにすると海中へと潜っていく

 

 

「しまった!椿が!!!」

 

 

「そう、簡単にはあげないの!!」

 

 

「やるわよ!!魚雷残ってるわよね!!」

 

 

海中ではイク達が白シャチを魚雷で撃ち抜こうとするが後ろから突然雷撃が命中し振り返ると

 

 

「なっ!何でちあれ!?」

 

 

「さ、鮫!?」

 

 

イク達後ろを振り返ると真っ白な鮫四体がエラの部分に魚雷発射管を付けた状態でイク達を狙い撃ちしてきていた

 

 

「グルルルル………」

 

 

「くっ!こいつらも深海生物って事!?」

 

 

「不味い!椿が!!!」

 

 

椿を丸呑みした白シャチは勢いよく沖合いに泳いでいきその方向から更に多くの白シャチや白鮫が並列航行しながらこちらに向かってきていた

 

 

「何あれ!?何体居るの!?」

 

 

「分からないけど…ヤバイよ!!!」

 

 

「グオォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな状況で再び白鯨が海上に顔を出すとさっきより巨大な声で叫び出し水平線の奥に居る更に巨大な白鯨の上に乗っている一人の深海棲艦まで届く

 

 

「艦娘がいる?しかも椿ちゃんが倒れているから回収した?

カナ様が居ない?really?でもあの子達が嘘をつくとは思えないわ

となると、カナ様が負けた?まさか!有り得ない!!

嫌、今はCOOLdown…落ち着きましょう

………今私がやることは一つね!!!!」

 

 

深海棲艦が乗っている白鯨の背中を三回叩くとその巨体を動かし白鯨がその先に居る白鯨に指示を出す

 

 

「グオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その声は水平線から聞こえその方向を向くと水平線の端に巨大な白鯨の影が見え始め冷や汗を掻き始める

 

 

「長門さん!!白海の本隊が来ます!!!!

しかも恐らく全勢力です!!!」

 

 

 

 

「何だと!?ヤバイ!!

あんなのが来たら我々は終わりだ!!

全艦隊!!負傷者を真ん中に輪陣形を取ってこの海域を脱出する!!

余力があるもの動けるものは白海の迎撃を!!」

 

 

「「「「「了解!!!!」」」」」

 

 

長門の指示に全員は動きだし全速力でドレス島から離れ本島に向かおうとすると

 

 

「グオォォォォォォォォォ!!!!」

 

 

白鯨が声を上げ水中に居た白鮫が声を聞き目を赤く染める

 

 

「ガァァァァァァ!!!!」

 

 

「不味い!!戦闘体制に入った!!!来るぞ!!!」

 

 

「走れ!走れ!!走れ!!!」

 

 

長門達が全速力で走り出すとそれを追い掛けるように白鯨が潜水を開始しドレス島の方角から四つの鮫の背びれに更に後ろに数十体程の背びれが見え始める

 

 

「帰るぞ!!我々は生きてこの海域から!!!!」

 

 

 

 

 




次回

逃げろ白き厄災から

椿を奪われ白海が迫る中連合艦隊達は全速力でドレス島から離れ本島を目指す
海を埋めつくす程の多くの海洋生物は容赦なく連合艦隊に襲い掛かる
だが、全員疲労し疲れも限界に達していた

災害であり厄災である章のラスボスになっている深海棲艦海王(ネプチューン)からの撤退戦!(ちょっとしたネタバレ)
果たして彼女達は無事にこの海域から逃げ延びることが出来るのか!
あ、E6輸送作戦やっっっっと終わりました……
いやー…辛かった……






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荒れ狂う海 三

長門達は白海からの追撃を逃げるために全速力でドレス島を後にしようとするも真後ろから凄い勢いで迫っており冷や汗を掻く

 

 

「密集陣形を取れ!!奴等は海中からも来るぞ!!!

陸奥は先頭で全員を誘導しろ!!」

 

 

「「「「了解!!!」」」」

 

 

「明石!夕張!最後の仕事だ!!頼むぞ!!」

 

 

「分かっています!!夕張!最後の死力を尽くすよ!!」

 

 

「了解!!」

 

 

白海がすぐ後ろに迫る中海中にはイク達も魚雷を構えていた

 

 

「何なの!あの数!!」

 

 

「あれでも本隊じゃないんでしょ!ヤバすぎだよ!!」

 

 

「弾薬……もつかな…」

 

 

「良いから!やるでちよ!!」

 

 

海上では長門達砲撃し、海中ではイク達が雷撃を放ち白鮫に当てようとするが海洋生物だからか、その攻撃は全て交わされ白鮫の雷撃だけが連合艦隊を苦しめる

 

 

「駄目ね!!砲撃が当たらない!!」

 

 

「もう!どうすれば良いの!?」

 

 

「良いから撃て!!これしか方法が」

 

 

長門が話しているとその連合艦隊に追い付いたのか両サイド側から突如イルカの様な真っ白な深海海洋生物が海上を跳ね始める

 

 

「イルカ!?ま、まさかあいつらも!?」

 

 

「キュイ!キュイ!!」

 

 

「不味い!奴等胴体に主砲がある!!!」

 

 

良く見ると白イルカ達の胴体に中型主砲が装着されており飛び上がったタイミングで長門達を砲撃を放っていく

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「ぐぅ!!」

 

 

「両サイドの白イルカは戦艦!重巡が撃て!!駆逐艦!軽巡は爆雷で白鮫を!!」

 

 

「「「「「了解!!」」」」」

 

 

「ガァァァァァァ!!!!」

 

 

 

長門が全員に指示を出すと真後ろから白鮫が飛び出し吹雪を噛みつこうとしてくる

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「吹雪!」

 

 

「不味い!!」

 

 

長門がそれに気付き応戦しようとするとそれよりも先に一人の艦娘が白鮫を真っ二つに斬る

 

 

「大丈夫!?」

 

 

「う、うん…ありがとう叢雲ちゃん」

 

 

「油断しない!こいつは確実に私達を殺しに来てるのよ!!

ほら!来るわよ!!」

 

 

「ガルアァァァァァ!!!!」

 

 

その一匹を皮切りに海中から白鮫達が飛び出し連合艦隊を遅い始めると神通や阿武隈達軽巡がそれを守ろうと撃ち抜いていく

 

 

「この!この!!」

 

 

「数が多すぎる!!」

 

 

「もうやばすぎるっしょ!!」

 

 

「そんなこと言ってる暇あったら撃つのよ!!!」

 

 

前方以外から集中攻撃を受けており多少は撃ち抜いているが次第に弾薬が底を尽きかけていた

 

 

「明石さん!砲弾ってない!?」

 

 

「私は持ってません!!夕張そっちは!?」

 

 

「私も持ってないよ!!さっき艤装に入れた分だけ!!」

 

 

「ま、不味いぞ!!!弾薬が切れるぞ!!!」

 

 

そんな状態にも関わらず叢雲は主砲を使わずに襲い来る深海棲艦を切り裂いていた

 

 

「くそ!何体切っても全く減らない!!!」

 

 

叢雲が切り裂いた白鮫達は確かにその場で死んでは居るもののそれよりも更に多く白鮫が増援として来ており全く減らない

 

 

「叢雲!あんまり無茶は!!」

 

 

「ここでしないといつするのよ!!!

帰るのよ!!小笠原………ガハッ」

 

 

「ガァァァァァァ!!!!」

 

 

 

だがここで叢雲に異変が生じる

突然吐血し目の前がぐらつき航行する危うくなってしまいそれを狙って白鮫が叢雲に食らい付こうとする

 

 

「叢雲!!」

 

 

「やらせはせん!!」

 

 

叢雲に食らいつく寸前で磯風が主砲を押し当てると白鮫の頭部を吹き飛ばし白鮫は力無くその場に落ちると海中へと沈む

 

 

「ガハッ……ガハッ…」

 

 

「叢雲!大丈夫か!?」

 

 

「大丈……夫…!!」

 

 

「でも叢雲吐血を!!」

 

 

「良いから!大丈…夫!だから!!」

 

 

吐血しながら叢雲は薙刀を構えると異変に気付く

それは刃をコーティングしていた血が無くなっていたこと

身体がどんどん重くなりヒビの様な傷が増えていること

髪色が元に戻っていること

(私……何で?切り傷何で……いつ?)

だが叢雲が考えている間それは頭から聞こえる声と共に突然やってきた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『時間切レダ、駆逐艦叢雲

サァ、代償ヲ払エ』

 

 

「…………え?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間叢雲は全身にヒビが入ったかの様な傷が一気に入ると同時に全身から吹き出すように大量出血をする

その様はまるで果物を内側から破裂させたかの様であり痛々しくて見ていられないほどに

 

 

「ガハッゲボッ……アァァァァァァ!!!!」

 

 

「叢雲!!!!」

 

 

「不味い!!叢雲がやられた!?」

 

 

そして叢雲が力無く倒れるが磯風が慌ててその姿を抱き抱えると再び海中から白鮫が襲い掛かる

 

 

「叢雲!叢雲しっかりしろ!!」 

 

 

「ガハッ…ゲボッ…ガハッ!…痛い痛い…オェェ!!」

 

 

「ガァァァァァァ!!!」

 

 

「叢雲に近づくなぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

 

だがその瞬間金剛が白鮫を思い切りぶん殴り吹き飛ばす

 

 

「磯風!!今すぐ叢雲を明石の所へ!!」

 

 

「了解!!明石!叢雲が!!!」

 

 

磯風は叢雲を抱き抱えるとその身体から止めどなく血が流れており明石もその姿を見ると絶句する

 

 

「な、な、な、何ですかこれ!?

彼女は一体どうして!?」

 

 

「わ、分からん!突然こうなったんだ!!」

 

 

「叢雲!叢雲しっかりして!!」

 

 

「ガハッ………ゲェェェ!!」

 

 

声も出せずに全身から出血しまるで嘔吐するように口から大量の血液を吐き出しては海面を真っ赤に染めていく

 

 

「不味い!出血が酷い!!すぐ治療しないと!!!」

 

 

「明石!手伝うわ!!」

 

 

他の人の艤装を直していた夕張も酷い状態の叢雲を見ると全身からの出血により赤く濡れている叢雲に絶句しながらも助けようとする

そして高速修復材を含んだ包帯を巻いていくが傷が全く癒えない

 

 

「な!どうして!叢雲さんの傷が治らない!?」

 

 

「どういうこと!!」

 

 

直ぐ様真っ赤に染まった包帯をほどくと叢雲の傷口は治っておらず仕方なく高速修復材の原液を掛けるが治る所か更に血液が流れだし治せない

 

 

「あ、有り得ない!!艦娘の細胞を活性化させるこの薬が効かないなんて!!どうなってるの!?」

 

 

「それでも包帯を巻くしかないよ!明石!!」

 

 

「ゲボッ…アァァァァァァ!!!!」

 

 

全身が痛いのか叢雲は暴れだしそれを古鷹が血塗れになりながらも押さえる

 

 

「叢雲!叢雲落ち着いて!!!」

 

 

「アァァァァァァ!痛イ痛イ!!

喉ガ!頭ガ!腕ガ!筋肉ガ!肺ガ!目ガ!耳ガ!足ガ!痛イ痛イ痛イ痛イ痛イ!!!!!!」

 

 

叢雲の絶叫の中彼女がどれ程無茶をしていたかを連合艦隊は唇を噛み締めながら聞いていると吹雪があることに気付く

 

 

「あ、あれ?攻撃が止んだ?」

 

 

吹雪の言葉を聞くと確かに連合艦隊の周りを潜水していた深海海洋生物達の姿が消えており辺りを見渡す

 

 

「……本当にだ…終わった…のか?」

 

 

「に、逃げ切った!やったぞ!!!」

 

 

「よっしゃ!!これで帰れる!!」

 

 

「……いや、あり得ん我々を見逃すなんて…」

 

 

全員が喜んでいると陸奥も安堵の溜め息を付いた瞬間突然前方から泡が現れていることに気付く

 

 

「待って!!前方!何か居る!!」

 

 

「え!?」

 

 

「ま、まさか!!!」

 

 

「グオォォォォォォォォォ!!!!」

 

 

その瞬間前方から白鮫達より巨大な白鯨が姿を現すと連合艦隊の行く手を塞ぎながら横腹部に装備された十一もの主砲を連合艦隊に構える

 

 

「た、たい!!」

 

 

「グオォォォォォォォォォ!!!!」

 

 

長門がそう叫ぼうとした瞬間長門達背後からも同じ位の巨大な白鯨が海上へと姿を現すとその巨大な口を開くと辺りの海水を吸い込み始める

 

 

「ま、まさか!!!」

 

 

「こいつら!私達を喰うつもり!?」

 

 

「不味い!吸い込まれるぞ!!!」

 

 

連合艦隊は吸い込まれないと全速力で走っていくがそれと同じくらいの吸引力を誇る白鯨はジワジワと連合艦隊を吸い込もうとする

 

 

「グオォォォォォォォォォ!!!!」

 

 

「まさかアイツがあそこで主砲を構えてるのって!?」

 

 

「っ!全艦!前方警戒!!来るぞ!!!」

 

 

長門の声が聞こえると前方にいる白鯨の主砲が右から火を吹いていきその砲弾が連合艦隊を襲う

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「不味い不味い不味いよ!!!!」

 

 

「前門の戦艦鯨に後門の人喰い鯨!!どうすんだよこれ!!!」

 

 

「耐えろ!耐えるんだ!!!」

 

 

絶対絶命の状態になってしまっている連合艦隊に長門はどうすれば良いのか混乱してしまう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だが、その瞬間叢雲のまぶたが開きどす黒い瞳を姿を現す

 

 

 

 




次回

猛者タル怒声

白海の連携技に苦戦し追い詰められてしまう連合艦隊
そして迫る白海の本隊
だがその時太平洋にある声が響き渡る

さぁ!後もう少しでこのお話も終わりです!!
まだまだこのお話は終わらなそうですがね……



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荒れ狂う海 四

「ぐぅぅぅぅ!!!」

 

 

「ど、どうするんだよ!!長門!!!」

 

 

「どうしようどうしようどうしよう!!!」

 

 

連合艦隊は絶望的な状況に大混乱に陥っていると北上が案を出す

 

 

「ねぇ長門!アイツに魚雷を食わせてみたらどうかな!?外側が無理なら体内から破壊すれば倒せるんじゃない!?」

 

 

「っ!その手があったか!!!

皆魚雷の残弾はあるか!?」

 

 

「少しあるよ!!」

 

 

「何発か残ってるぜ!!」

 

 

「良し!皆後ろの白鯨に魚雷を一斉に放つぞ!!!」

 

 

長門の指示に全員が魚雷を用意すると後ろにいる大口を開けた白鯨に構える

 

 

「全艦一斉雷撃放て!!!!!」

 

 

「「「「いっけぇぇぇぇぇぇ!!!!」」」」

 

 

そして連合艦隊による雷撃が放たれそれを白鯨が吸い込んでいくと喉の所に当たった瞬間大爆発を起こし白鯨の吸い込みが停止する

 

 

「グオォォォォォォォォォ!!!!」

 

 

「よっしゃ!止まった!!」

 

 

「全員今の」

 

 

「グオォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!」

 

 

だが白鯨は身体を軽く海に沈めた瞬間再び海上へと出すと再び大口を開けると喉奥から巨大な主砲を取り出すとそれを連合艦隊に向ける

 

 

「ちょちょちょ!!!何あれ!?」

 

 

「な!あいつら深海駆逐艦見たいに口の中にも砲門があるのか!?」

 

 

「グオォォォォォォォォォ!!!!」

 

 

そしてそれに合わせるかのように前方に居た白鯨も向きを変えると大口を開きその砲門を連合艦隊に向ける

 

 

「不味い!挟み撃ち!!全員両サイドに散開」

 

 

「キュイ!キュイ!!」

 

 

「シャアァァァァァァァァ!!」

 

 

「ガルアァァァァァァ!!」

 

 

長門が全員を散開させようとするも両サイドから今まで居なくなっていた白鮫、白シャチ、白イルカ達が連合艦隊に主砲と魚雷を構えておりまるで逃がさない様に連続で砲撃してくる

 

 

「きゃあぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「こいつら!戦い馴れてる!!」

 

 

「くっ!連携が上手すぎる!!」

 

 

「これが白海かよ!!!」

 

 

そして更に挟撃を受けている最中にイク達からも連絡が入る

 

 

「ま、不味いの!!!」

 

 

「どうした!イク!!」

 

 

「白海の本隊らしいのがドレス島に到着した!!!」

 

 

「後少しでこっちに合流するかもしれないわ!!!」

 

 

「しかも数が尋常じゃないでち!!!」

 

 

「大淀!!ここから見えるのか!?」

 

 

「索敵してみます!!」

 

 

長門に指示された大淀が索敵をすると顔を真っ青に染めると絞り出すように声を出す

 

 

「う…………そ………何あれ……」

 

 

「大淀何が見えた!?」

 

 

「……ドレス島の沖合いを埋め尽くす程の白い海洋生物です……しかも反応だけで500は越えてます!!!」

 

 

「なっ!?」

 

 

「は、はぁ!?こんな奴等が500!?」

 

 

今現在ここに居るのは巨大な白鯨が二匹、白シャチ白イルカ白鮫がそれぞれ十体程でありその十倍を越える数に絶望する

 

 

「あは…は…もう無理だ……私たちはここで終わりだ!!!!」

 

 

「諦めるな!!」

 

 

「無理無理無理無理無理!!!こんなのどうしようもないよ!!!」

 

 

「帰りたいよ!帰りたいよ!!!提督ー!!!」

 

 

大淀の索敵と現在の状況に連合艦隊は完全に戦意を失っており長門も少しずつ諦めていた

(……無理なのか…ここまで…なのか……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウルサイヤツラダ、仕方ナイ』

 

 

そんな中全員の通信機にノイズ掛かった声が響き渡り全員は驚く

 

 

「な、何だ!?」

 

 

「ちょっと誰の声!?」

 

 

「誰だ!!あたし達のインカムに話しかけた奴は!!」

 

 

突然の声に驚いてる最中長門と古鷹が身体を震わせるといきなり深海化してしまう

 

 

 

「ぐぅ!な、何だどうしたんだ!!」

 

 

「うぅ!どうしたの!?」

 

 

「二人とも!?な、何で!?」

 

 

「ちょ!ちょっと叢雲さん!?」

 

 

「な、何してるのよ!!!」

 

 

二人が深海化したタイミングで叢雲がまるで何かに操られているかの様に起き上がる

全身から出血し苦しんでいたのにも関わらず軽快な歩みで後ろに居る白鯨に向かって歩いていく

 

 

「な!叢雲!!何を!」

 

(長門!深海化は私が起こしたんだ!!警戒しろ!!!)

「どういう意味だ!!」  

 

(良いから!叢雲から目を離すな!!)

 

 

「待って叢雲危ない!!」

 

(古鷹!主砲構えて!!!砲弾は貴方の血液で作るわ!!)

 

「ど、どうして!?」

 

(不味いの!叢雲の中に居る奴が表に出てきてる!!!

ここまで恐ろしい気配は初めてよ!普通の深海棲艦でも姫でもない!!私達が悪感するほどの『何か』!!)

 

 

「む、叢雲さん下がってください!」

 

 

「おい!叢雲待っ……!!!」

 

 

磯風が叢雲を止めようとするがその身体はまるで動く鋼の様に硬く瞳は真っ黒に染まりそして動く機械の様であり磯風の手を簡単に振り払うとゆっくりとした足取りで歩いていく

 

 

「……………」

 

 

叢雲は出血していたが力を込めるとその出血が止まり流れ出た血液が宙を浮いており叢雲の周りを漂っていた

 

 

「ど、どうしちまったんだよ叢雲は!!」

 

 

「わ、分からん!!だが何か…恐い…」

 

 

連合艦隊の全員は動いている叢雲?を凝視すると見た目は叢雲であるが何かとんでもなく大きな存在に釘付けになっていた

 

 

「……………ーー…ーーー…?」

 

 

叢雲?は声を出そうとしているのか口をパクパクさせておりそれを白鯨が見ると声を上げる

 

 

「グオォォォォォォォォォ!!!!」

 

 

白鯨の遠吠えが煩かったのか叢雲?は耳を塞ぐと口を開ける

 

 

『五月蝿イ魚……嫌、哺乳類ダカラ魚類デハナイカ』

 

 

そしてその声を聞いた瞬間白鯨は固まり長門と古鷹に悪感が全身を走る

叢雲?の声は異様に低く、威圧的でありながらまるでノイズが掛かった変な声ではあるものの一言だけでもかなりの恐怖をその場全員に与えた

 

 

「な、何……あの声」

 

 

「寒気が……悪感が止まらない……」

 

 

「あ、あれ……?砲撃が止んでる?」

 

 

摩耶が周りを見ると後方と前方の白鯨以外は縮こまる様に叢雲?を見ながら威嚇するので手一杯なのか砲撃を辞めていた

 

 

『我ニ恐レヲ成シタカ、良イ判断ダ』

 

 

「グオォォォォォォォォォ!!!!」

 

 

白シャチ達が萎縮する中白鯨だけはその主砲を叢雲?に向けており思い切り吠えるとニヤリと笑う

 

 

『ソウ言エバピースガ教エテクレタナ、動物ノ中ニハ声ヤ身体ノ大キサデ敵ヲ威嚇シタリシテ優劣ヲ測ルト

ナラ良カロウ我ノ力ヲ少シ見セテヤロウ』

 

 

叢雲?は勢いよく息を吸い込むと耳型の艤装を身体の横に動かし

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ガアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!!!!!!!!』

 

 

白鯨に向けて大声で叫ぶ

叢雲?の声は辺り一杯に反響するように響き渡り全員耳を塞ぐ

 

 

「きゃあぁぁぁ!」

 

 

「な、なんつー声だよ!!」

 

 

「く、空気が振動してる!!!」

 

 

「な、なんて声だ!まるで獣の咆哮見たいだ!!」

(や、やっぱり叢雲の中に入り込んでる奴はただ者じゃない!!姫じゃない!何か!!)

 

 

「こ、これ本当に叢雲の声なの!?」

(違うわ!コイツは叢雲の中に居るもう一つの声!!

何て迫力!!)

 

 

 

その声を聞いた瞬間白シャチ達は脅え海中に潜ると白海の本隊へと逃げていき海上は叢雲?の声で振動され波立ち更に空気もビリビリと振動させていると白鯨達も口を塞ぎ主砲を仕舞い後ろに下がる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその声は白海の本隊にも届き従えている深海海洋生物達も大混乱に陥る

 

 

「Whats!?何このvoice!!!

まるで自分のpowerや居場所をアピールするような威嚇!!

こんなの聞いたことない!!」

 

 

叢雲?の咆哮より白海の本隊はその場から動けなくなってしまい白鯨の背中に乗っている深海棲艦も耳を塞ぐ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、収まった……?」

 

 

しばらくすると叢雲?の声は収まると叢雲?は笑みを浮かべており白鯨は口を閉ざしすっかり脅えていた

 

 

『フン、動物風情ガ我ヲ威嚇スルトハ良イ度胸ダ………ンゥ……?』

 

 

だが、叢雲の身体は先程より更に傷付き出血が止まらなくなっており叢雲?は溜め息をつく

 

 

『モウ限界カ、ドウセナラコイツラヲ殺シトキタイガ……ソレモ叶ワヌ……

モット、『経験値』ヲ積マセナイト耐エラレナイカ

仕方ナイ、今回ハココマデダナ』

 

 

叢雲?は白鯨に背を向けて歩きだすとまるで糸が切られた人形の様にその場に崩れ落ちる

 

 

「む、叢雲!!」

 

 

「おい!叢雲!しっかりしろ!!」

 

 

「叢雲ー!!」

 

 

「き、消えた……?さっきの気配が?」

(どうやら今回は『敵として』では無かったみたいだな……良かった……)

 

 

 

「な、何だったの……今のアレは…?」

(あれが叢雲の中に居る『何か』だよ……一瞬だったけど本気で死ぬかと思った…)

 

 

その場に倒れた叢雲の周りに飛んでいた血液はパシャンと海面に落ちると再び叢雲の身体から大量に出血し金剛達がそれを抱き抱える

 

 

「っ!今だ!!白海達が動けない隙にこの海を脱出するぞ!!!!」

 

 

長門が動けなくなっている白鯨達を尻目にドレス島付近の海域から脱出する為に全速力で航行していく

だが、長門はその白鯨を良く見ると震えており叢雲が居た場所を凝視し続けていた

 

 

「………こいつらを怯えさせる程の者……一体叢雲は……」

 

 

一つの大きな疑問を残し連合艦隊はドレス島付近の海域を脱出していく

そしてその帰り道にもある変化があった

何度か深海棲艦と対峙仕掛けたが叢雲?声が影響したのか連合艦隊を脅えながら避けていた

 

 

「すげぇ!深海棲艦が俺達を避けてやがるぜ!!」

 

 

「これなら順調に帰れますね!!」

 

 

「あぁ……だが!急ぐぞ!!叢雲が心配だ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「驚いたな、奴等が脅えるとはな……『やはり』あの駆逐艦に入り込んでいたか…」

 

 

太平洋のある海域にて監視者は連合艦隊、そして叢雲の戦いを見物していた

 

 

「あの声、間違いないだろうな

海王(ネプチューン)を差し向けたのは間違いだった

アレ(叢雲)とは相性が悪い

…………にしてもまさかカナと椿が敗北するとはな…」

 

 

監視者はそう呟くと艦載機を5機発艦させると四方へと飛ばしていき空を見上げる

 

 

「……荒れるぞ、姫級のEliteたるカナの敗北は戦争を加速させる……

恐らくこの連絡に『彼等』が動き始め海は荒れ狂う……果たして勝者はどっちだ?

 

 

さてと私も一つ噛むとしようかな」

 

 

監視者が杖で海上を叩くと海中から空母ヲ級達を出すと命令を出す

 

 

「対象、日本列島付近に行く艦娘連合艦隊

爆撃機を用意し随時発艦させろ」

 

 

監視者の命令に頷くとヲ級達は全艦載機を連合艦隊に向けて発艦していく

 

 

「カナを撃沈した怨み、晴らして見せようではないか」

 

 

左目を青い炎で包みながら監視者の最後に残った一つの艦載機を放ち連合艦隊に最後の追撃をする

 

 

 

 

 





次回

空は渡さない

叢雲が謎の力を使い白海を退ける事が出来、連合艦隊は順調に本島へ向かいその島が見えた瞬間再び絶望に落とされる


後数話でこの章は終わりになります!
因みに東雲が何故あの島を落としたがっていた理由は後半に大きく影響しています





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荒れ狂う海 五

「叢雲の容態は!?」

 

 

「不味いです!出血が止まりません!!」

 

 

長門達は全速力で本島を目指し叢雲ボートに乗せ守りながら向かっていると大淀が叫ぶ

 

 

「見えました!!本島です!!!」

 

 

「本当!?やった!着いたんだ!!」

 

 

「叢雲!しっかりして叢雲!!」

 

 

「頑張りなさいよ!あんたが今回のMVP何だから死ぬんじゃないわよ!!」

 

 

「叢雲!もう少しデースよ!叢雲!!」

 

 

皆が声を掛けながら意識の無い叢雲を励ましているとグラーフが叫ぶ

 

 

「瑞鶴!長門!不味いぞ!後方から敵艦載機多数!!!!」

 

 

「何だと!?」

 

 

長門が振り返ると太平洋側から空を埋め尽くす程の艦載機が連合艦隊に迫っていた

 

 

「クソ!こんなときに!!」

 

 

「最後だ!これが我々の戦いの終わりを告げる!!

やりきるぞ!!!」

 

 

「「「了解!!」」」

 

 

摩耶達重巡が機銃を構え駆逐艦達が高角砲構え空母達が艦載機を発艦させていく

 

 

「この!この!!」

 

 

「撃て撃て!!全て撃墜しろ!!」

 

 

「皆!お願い!!!」

 

 

カナが差し向けた艦載機郡よりかはいくらか弱く摩耶達は順調に敵艦載機を撃墜していっていた

 

 

「良し!この位なら!!」

 

 

「おい待て!何か一機可笑しくないか!?」

 

 

摩耶の声に空を見上げると一機だけやけに動きが俊敏かつ艦載機郡を守るように動いている赤い艦載機があった

 

 

「あ、あれってまさか!!!」

 

 

「間違いないわ……監視者の艦載機!!」

 

 

「何だと!?」

 

 

その艦載機は瑞鶴達の艦載機を見付けるや否やそれを次々に撃墜していき摩耶達の機銃や高角砲の攻撃を軽々と交わしていく

 

 

「やはり奴が絡んでいたか!!となるとあのタイミングで白海が来たのも奴が呼び寄せたのか!!」

 

 

「不味いです長門さん!!我々の艦載機がどんどん撃墜されていきます!!!」

 

 

「もう少しなんだ!頼む!!」

 

 

「クソ!クソ!!アイツ全く当たらねぇぞ!!」

 

 

長門の指示に奮闘していると赤城達の艦載機が尽きてしまう

 

 

「誰か!艦載機は残ってない!?」

 

 

「うちも終わりや!!何なんや!あれ!!!」

 

 

「どう考えても可笑しいです!あの機動!!」

 

 

空の艦載機がほとんど撃墜される中瑞鶴が最後の弓矢を構える

 

 

「渡さない……!加賀先輩が大好きだった!空は私が守るんだから!!!」

 

 

そして瑞鶴は赤い艦載機に向けて放ちそれを撃墜しようとするがそれよりも赤い艦載機が速く攻撃が交わされてしまう

 

 

「不味いで!瑞鶴!!」   

 

 

「まだ!まだ諦めない!!

あの人は艦載機一つでも諦めたこと無かったんだから!!

だからお願い!!!」

 

 

瑞鶴の艦載機が空に一機だけ残された艦載機は赤い艦載機を執拗に追い掛け破壊しようとするが赤い艦載機はそれを簡単に交わしていき瑞鶴の艦載機を破壊しようと背後に付く

 

 

「避けてぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だがその瞬間赤い艦載機が何者かの艦載機によって撃ち抜かれ爆炎を上げる

 

 

「………え?」

 

 

その艦載機は艦娘の物であり誰のかは分からないが見たこともない塗装がされていた

 

 

「な、何やあの艦載機!?誰のや!!」

 

 

「味方……?」

 

 

「お、おい!更に来るぞ!!」

 

 

「で、ですが十機程しかありませんよ!!」

 

 

その艦載機は一機だけではなく十機程しか無かったが綺麗な連携を見せながら敵艦載機を順調に撃墜していく

 

 

「すげぇ!!あんなに上手い艦載機見たことねぇ!!」

 

 

「凄い…!たった十機なのに次々に艦載機を落としていく…しかも被弾もしてない!!」

 

 

その艦載機達は敵艦載機のプロペラや弾薬を正確に撃ち抜き無力化させていき正に完璧と言わんばかりの空中戦闘を見せていく

撃墜を狙ってくる艦載機達は、回避の高い片方の艦載機を囮にし命中率が高い片方の艦載機を撃墜し敵艦載機を無力化するその様はまるで二人が操っているかの様であった

そして赤い艦載機も爆炎を上げておりゆっくりと太平洋側へと逃げていく

 

 

「……………あの戦い方…」

 

 

瑞鶴はその艦載機達の戦い方には見覚えがありそして呆然とそれを見ていた

それは昔良く見ていた光景であり自分が憧れている戦い方

 

 

「…………飛龍先輩と……蒼龍先輩の……連携技……」

 

 

「瑞鶴!何ぼさっとしてるんや!!ここが正念場やで!!!」

 

 

「…え?あ、あぁ!ごめん!!!」

 

 

「恐らく基地航空隊の奴だろう!!さぁ!最後の戦いだ!!」

 

 

長門がそう言うと瑞鶴は後で基地に向かうと心に決め最後の戦いを仕掛ける

(あの二人の戦い方は誰にも出来ないはず!!一体誰があれをやってるか見付けないと!!!)

 

 

「さぁ!私達の空を守るわよ!!!」

 

 

「「「「おぉぉぉ!!!」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その一方で監視者は久しぶりに表情を動かし怪訝そうな顔をしていた

 

 

「………私の艦載機が破壊されかけた…?

…可笑しい…あれは特別性だし壊せるわけないのに…誰が…瑞鶴ではない…誰だ!私の艦載機を撃ち抜いたのは!!」

 

 

久しぶりの怒りと言う感情に監視者は杖を海上に突き立て周りのヲ級達も怯えていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

小笠原島付近の海域にて一人の姫級が艤装を展開し座りながら指を動かし艦載機を操っていた

 

 

「うん、大丈夫そうみたい

悪かったわね親方、新作の艦載機借りちゃって」

 

 

「良いさ、叢雲ちゃん達を助ける為だしお前さんが艦娘を傷付けるとは思えないからな」

 

 

一人の姫級 エアは親方を肩に乗せながら親方に借りている艦載機を扱い監視者率いる艦載機郡を退けていた

 

 

「それよりも良かったのかい?お前さんの仲間だろあれは?」

 

 

「大丈夫よ、深海艦載機を使わなきゃバレることは無いわ」

 

 

「嫌、そうじゃなくてだな……この行為自体が裏切りなんじゃないか?」

 

 

「あー、そっち?別に大丈夫だしあぁ言うの気に入らないのよね~

戦いが終わった後を狙って攻撃するって言う行為自体私の理念に反するし嫌なのよ

それにその事は監視者も知ってるからバレても大丈夫」

 

 

「ほう?お前さんって意外と真面目なんだな?」

 

 

「意外って何よ?

生まれつきね姑息な手とか陰湿なやり方が気に食わないのよ」

 

 

エアの意外な一面を見た親方は笑みを浮かべながら持ってきていたお菓子を頬張る

 

 

「それに、あの娘達は頑張ったのよ

絶望的な敵に真っ正面から向かい合いそれを倒した

私はそれを評価したい

だからこれはささやかなご褒美見たいな物よ」

 

 

「………ハハハ!」

 

 

「何よ?」

 

 

「いや!お前さんやっぱり変わってるな!!

エア!お前の事好きになりそうだぜ!!!」

 

 

「あら?それは今まで好きじゃなかったってこと?」

 

 

「ハハハ!悪いな!!」

 

 

「ちょっと!!」

 

 

エアと親方が笑い合っていると後ろからソラの声が聞こえる

 

 

「姫様ー!親方様ー!そろそろご飯ですよ!!」

 

 

「はいはーい!」

 

 

「もう少ししたら行くぜ!!」

 

 

エアの艦載機が叢雲達連合艦隊が無事に東京湾に着いたことを確認すると笑みを浮かべながら小笠原に戻っていく

 

 

 

 

「うふふ、悪いわね監視者

空は渡さないわよ、あの空は私の物なんだから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回

開かれた扉 全ての始まり

エアの助力により空襲艦隊を壊滅させ連合艦隊が本島に到着することが出来た
これで深海棲艦達に一矢報えた……と思っていた
だが、東雲の考えは違っていた

ここまでのお話が前半であり東雲が何故カナを探していたかの理由になります!





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荒れ狂う海 六

エアの助力により連合艦隊は東京湾から陸上に上がっていくとそこには提督達が各々待っており長門率いる連合艦隊と先頭に居た唐澤が敬礼する

 

 

「……ただいま、戻ったぞ提督」

 

 

「あぁ……お帰り長門…では戦果ほう」

 

 

「貴様ら!!何してる!!!」

 

 

唐澤が長門に今回の作戦報告を聞こうとすると後ろから東雲からの怒号によりそれが遮られる

 

 

「し、東雲大元帥…えっと戦果報告を……」

 

 

「てめぇは馬鹿なのか!!そんな事より優先することがあるだろうが!!!

医療班!整備班!急げ!!!損傷が酷い艦娘を担架で運べ!!!」

 

 

「「「了解!!!」」」

 

 

東雲の指示の元、医療班と整備班が全速力で艦娘達に駆け寄っていく

 

 

「お前達!戦果報告なんてもんはしなくていい!!

今装備している艤装はその場に脱ぎ捨てろそして損傷してる者、重症者は直ぐ様医療班に運んでもらえ!!!それ以外の疲弊してる者もこれから一週間の休暇を与える!!

戦果報告は後日お前達の疲労が無くなったときに報告せよ!

本日の任務はこの場に到着した事により終了とする!!

これは大元帥である私の命令だ!!!異論は許さん!!!」

 

 

「「「「は、はい!!」」」」

 

 

大元帥の命令により連合艦隊の艦娘達はいそいそとその場に艤装を脱ぎ捨てて行くと何人かは医療班に遠慮をする艦娘がいるが

 

 

「お前達!今日は遠慮することは許さん!!!

医療班と整備班を奴隷とでも思って構わんから名一杯甘えろ!!」

 

 

「で、ですが……」

 

 

「黙れ!これも大元帥命令だ!

全員必ず英気を養え!!!お前達が成し遂げた事は我々にそれほど大きな功績である!!

この場に居る者達はそれに感謝しているからこそ働いている!!

だから、好きにワガママを言うことを私が許す!!」

 

 

 

「「「は、はい!!!」」」

 

 

東雲の無理矢理過ぎるやり方に唐澤達が呆然としていると東雲が舌打ちする

 

 

「お前達!艦娘が帰ってきてるのに何呆然と立っている!!!

アイツらに駆け寄ることも許す!!死ねと言われた戦いから帰ってきた艦娘に返す言葉もないのか貴様らは!!」

 

 

「だ、大元帥…えっと…」

 

 

「早く行け!!これは命令だ!!!」

 

 

「「「は、はい!!」」」

 

 

東雲の気迫に押され唐澤達は慌てて艦娘達に駆け寄り各々激励の言葉を交わしていく

だが

 

 

「お、おい!叢雲!しっかりしろ!!」

 

 

「これは酷い…明石さん!どうしてここまで!!」

 

 

「彼女は一人で歴戦種と戦っていましたからその反動だと思われます!!急いで輸血としっかりとした医療施設へ!!」

 

 

「分かりました!では担架に運びます!!」

 

 

「叢雲!叢雲しっかりして!!」

 

 

連合艦隊を最後まで引っ張り戦い続けた叢雲は息も絶え絶えになりながら吐血し苦しんでいると

 

 

「明石!!お前だけは悪いが働いてもらうぞ!!!

必ずその英雄を治して見せろ!!!」

 

 

「りょ、了解です!!!」

 

 

「叢雲の完全治療後に二週間近い休暇をやる!!

それで許せ、だから頼む!!」

 

 

「お任せください!!」

 

 

東雲に命じられた明石は医療班と共に叢雲を担架に乗せると急いで病院へと運んでいく

 

 

「し、東雲さん!戻りました!!」

 

 

「……お帰り、あの危険海域から良く帰ってきてくれた矢矧

友軍任務良くやってくれた」

 

 

「いえ、あの程度大したことありません!」

 

 

「とりあえず今日は休め

お前達にはすまないがまた近いうちに出てもらう」

 

 

「分かっております、では申し訳ありませんが」

 

 

「あぁ、行け」

 

 

「東雲……大元帥!!」

 

 

矢矧率いる友軍艦隊は東雲の隣を通っていくと一人修理班に肩を借りながら走ってくる艦娘が一人

 

 

「…確かお前はドイツ海軍のZ1(レーベ・ヒトマース)か?」

 

 

「ね、ねぇ!マックスは!!マックスは無事なの!?」

 

 

全身がボロボロになりながらもマックスの事を心配するレーベに東雲は笑いかける

 

 

「あぁ、安心しろ彼女は我々日本海軍が預かり全力で治療に取りかかっている

君達の勇気ある行動が我々を動かしてくれたありがとうZ1(レーベ・ヒトマース)

 

 

「良かった……マックス……よか……」

 

 

その言葉と共にレーベは東雲に倒れかけると東雲は身体を支えると医療班にその身体を受け渡す

 

 

「お前達!!絶対に誰一人として死なせるな!!!

安心した瞬間が一番危ないからな!!!」

 

 

「「「「「了解!!!」」」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー次の日ーーーーーーーー

 

 

「大元帥、到着しました」

 

 

『ザザ、周囲はどうだ?』

 

 

「静かです、大淀と大鳳に索敵をさせてますが誰も居ません」

 

 

『良し、分かった

では手はず通りに頼む』

 

 

「了解」

 

 

今矢矧達が居るのは一日経過した後のドレス島

辺りは静かであり矢矧達以外の気配は感じず誰一人としてその島には居なかった

 

 

「にしても東雲さんも使い勝手荒いよねー!」

 

 

「そう言わないの阿賀野ねぇ」

 

 

「そうそう!あんまり出撃しない代わりなんだから!」

 

 

その編成は少なく、矢矧を筆頭に阿賀野、能代、酒匂、大淀、大鳳、伊勢と言う七人でドレス島へと来ていた

 

 

「にしても、他の艦娘には休暇を与え我々は出撃とは……流石に辛いですね」

 

 

「仕方がありませんよ、何せこの島を早急に調べないといけないことがありますからね」

 

 

「あたしも日向と休みたかったけど仕方ないよねー!」

 

 

阿賀野達が話していく最中矢矧は辺りを警戒しながら歩きカナが使用していたとされる建物に迷いなく歩いていくと叢雲が開けたとされる穴から建物内に侵入する

 

 

「………大元帥の予想が正しければここに『あの情報』があるはず…」

 

 

そして静かにその建物内の壁に掛けてある地図からある場所を見付けそこへと向かって歩いていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……矢矧、頼むぞ」

 

 

「あ、あのー……東雲大元帥?」

 

 

「何だ羽田」

 

 

東雲と羽田は二人だけで通信室に籠っており外には武装憲兵を配置している徹底振りに羽田は困惑していた

 

 

「何故、未だ危険要素が残るドレス島に彼女達少数精鋭で行かせたんですか?

歴戦の飛行場姫は倒したではありませんか?

もう少し彼女達に休みを……」

 

 

「………お前の言いたいことは分かる

私がお前を気に入っているのはお前が『如月のサポート提督』をしていたときからありその艦娘を大切にする性格を知っていたからな

だが今回だけはそうは言ってられないんだよ

………私が今目を付けている情報だけはハッキリさせておきたい

『奴』が動く前に」

 

 

「…東雲大元帥、前々から思ってましたが貴方何故そこまで詳しいのですか?」

 

 

「…何が言いたい?」

 

 

「いえ、如月大元帥が重体になってから…ですが貴方は深海棲艦の情報をかなり持っている

それは私が知るよりも…東雲大元帥そろそろ教えてください

……あの時、何があったんですか?貴方と如月大元帥の過去に何が」

 

 

羽田がそこまで言うと東雲は静かに銃を取り出すとそれを羽田の額に当てる

 

 

「………余計な詮索は辞めろ羽田

いくらお前でも………殺すぞ」

 

 

「…………………」

 

 

「良いから黙って俺を信じてくれ

一言だけ言うと俺は深海棲艦側ではないと言うことだけだ」

 

 

「……分かり…ました」

 

 

「それでいい、いつかお前にも話してやる

それまで待っててくれ」

 

 

東雲はそれだけを言うと銃をホルスターにしまい椅子に深く座り込むとため息を付くと呟くように話し出す

 

 

「………歴戦の飛行場姫……奴は深海棲艦の中で最強と呼ばれる泊地防衛主だ………初めて奴が確認されたのは北方海域だった………ある時…提督達が口を揃えて言った……『あそこの泊地は誰にも落とせない』」

 

 

「……それってまさか…」

 

 

「……もし、始原が……俺が戦争の総大将だとしたらそんな奴にはある大きな命令を出す………

そこにある秘密を守れと……その場所を守れと……

だからこそ、奴は………飛行場姫は扉の門番をしていたのさ

この戦争を激化させないための……秘密を…戦争相手を見せないために…な」

 

 

東雲が呟いていると大淀達から緊急連絡が入る

 

 

『て、て、提督!!!応答してください!!』

 

 

「ど、どうしたんだ!大淀!!!」

 

 

『……嘘…なにこれ…』

 

 

『アハハ……嘘でしょ…これヤバくない?』

 

 

『……なんてことですか…これは凄い……』

 

 

『あちゃー……やっぱり東雲さんの予想通りか……』

 

 

『……嘘でしょ…まだこんなに居るの?』

 

 

『……帯閉め直さないとね…』

 

 

各々その映像を情報を見ながら唖然としている声が聞こえており羽田は慌てている

 

 

『……東雲大元帥…予想的中です』

 

 

「…やはりか…奴はやはり『門番』だったか?」

 

 

『はい、貴方の予想通りです

今から情報を送ります』

 

 

矢矧はデータベースにアクセスするとそのデータを東雲達が居る通信施設に送るとそれが大画面で映し出される

 

 

「………………嘘」

 

 

その情報を見た瞬間羽田は唖然としてしまい

東雲はニヤリと笑みを浮かべる

 

 

「…我々はまだ『土俵すら立って居なかった』か」

 

 

「し、東雲大元帥……これは本当……ですか?

ドッキリとか…」

 

 

「目を覚ませ羽田、これは事実であり奴が『門番』と俺が呼んでいた理由だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それは巨大な世界地図

だが明らかに違う点がいくつも存在する

それは海域の名前と色分けされた海

そして、その色分けされた海にある四人の名前が刻まれていた

 

西の海『西方提督』

 

東の海『東方提督』

 

北の海『北方提督』

 

南の海『南方提督』

 

と書かれそれ以外にも霧の海、赤海、夜海と海に記載されておりそれぞれ深海棲艦の姫級と提督達の写真が添付されていた

そして姫の数も記載されているが合計するだけで15体

 

 

「ま、まだ……こんなに敵勢力が……あるだなんて!!!

し、しかも!!まさか向こう側にも『提督』が存在してるだなんて!!」

 

 

「さぁ、戦争の門は開かれた

帯を閉め直せ……我々の戦争はこれより激化していくぞ

今までぬるま湯に浸かっていただけなんだよ俺達は……飛行場姫の討伐は『終わり』でも『前進』でもない

ただの『始まり』に過ぎないんだよ!!!」

 

 

 

 

 

 

 




次回

荒れ始める海 四方提督そして姫級達

カナの討伐は終わりでも前進でもなくただの始まりに過ぎなかった
そして時間は巻き戻り一日前カナが討伐された日に戻っていく
四つの海を仕切る者達が動き始める

次回!この章完結です!
あ、私事ですが何とかイベント突破しました!
いやー……辛かったですわ…さってと堀をしないと……



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荒れ狂う海 七

東雲達がドレス島の真実を知った前日

監視者によって放たれた情報はある四人に通達されていた

そのうちの一機がある所へと向かっていた

 

 

そこは赤道直下のとある島

そこでは一人の男が姫級に膝枕をされながら昼寝を楽しんでいた

その男は左半身が真っ白な肌になり髪も白髪に染まり腕が爪状に鋭くなっていた

海辺では鬼級が二人仲良く遊んでおりその姫級が艦載機に気付くと男を起こそうとする

 

 

「提督、起きて」

 

 

「……Zzzzzzz」

 

 

「起きて提督、監視者から何か来たよ」

 

 

「……ZZZzzzzzzz 」

 

 

「………全く仕方ない人」

 

 

姫は腕を伸ばすと監視者の艦載機から電報を受けとり膝枕をしている提督の耳を口に含む

 

 

「……んぅ?んんんん???」

 

 

そしてそのままピチャピチャと耳を舐め回すと提督が飛び起きる

 

 

「ぬぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!な、何の音だよ!!!!

あ?あぁ!?何か耳が濡れてる!?」

 

 

「おはよう、提督」

 

 

「……おい!!『シロ』!!!お前起こすなら普通に起こせっていつも言ってるよなぁ!?」

 

 

シロと呼ばれた姫級は首を傾げながら提督に反論する

 

 

「だって、提督呼んだのに起きなかったよ?」

 

 

「だったら!身体を揺らすとか!叩くとかあるだろうが!!!

耳を舐めるな!!!」

 

 

「揺らしたら気持ち悪くなるし、叩いたら痛いからやらない

それとも私が舐めたら気持ち悪い?」

 

 

「ちゃうわ!!寝起きはめっちゃビックリすっから辞めろって言っとるんや!!!

舐めてもらうこと自体は最高です!はい!!」

 

 

「私の事嫌い?」

 

 

「んなわけあるか!大好きだわ!!!」

 

 

「……んへへ…」

 

 

「そこで照れるな!!おまえは!!!可愛いな畜生!!!」

 

 

シロはにへらと照れながら笑みを浮かべていると海辺から二人の鬼級が戻ってくる

 

 

「どうしたのー?提督、シロお姉ちゃん?

痴話喧嘩?それとも敵でも来たの?」

 

 

「どうしたの?司令、シロ姉様?

痴話喧嘩?それともゴミが来たの?」

 

 

「聞いてくれよ!フウ!ラン!

シロが俺を起こしてくれるのは良いんだけど耳を食べようとして来るんだよ!!」

 

 

「食べようとしてない、舐めただけ」

 

 

「仕方ないよー!シロお姉ちゃんは提督の事大好き何だし!食べたくなる気持ちは分かるよー!」

 

 

「仕方無いですよ!シロ姉様はそうやって提督をからかうのが大好き何ですからその気持ちは分かりますよ」

 

 

「おい待てラン?今何て言った?」

 

 

「ちょっと!!ラン!!!」

 

 

「あ、不味い」

 

 

「お前らぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

「「逃げろー!!!」」

 

 

 

提督がフウとランを追い回そうとするが立ち上がるが首根っこをシロが掴み提督は再び膝枕をされてしまう

 

 

「ぐえ!」

 

 

「二人は後で私が捕まえるから取り出すこれ」

 

 

「いてて……なにすんねんシロ…って誰からだ?これ?」

 

 

「監視者」

 

 

「えぇ……アイツからの電報とか嫌な予感しかしないんだけど?

見るしかねぇか……」

 

 

提督がその電報内容を読むと先程まで嫌がっていたのに関わらずだんだんと真顔になっていく

 

 

「………マジか、アイツが?ありえねぇ……」

 

 

「どうしたの?提督?」

 

 

「悪い知らせー?」

 

 

「良い知らせ?」

 

 

「……悪い知らせだ……カナが艦娘達に倒された」

 

 

「嘘!」

 

 

「う、嘘だ!!カナが負けたの!?」

 

 

「あり得ない!!!カナは私達より遥かに強いんだよ!?」

 

 

提督の発言に姫達が驚いていると提督は立ち上がり電報を読みなおす

 

 

「いや、監視者が嘘を付くとは思えねぇ

恐らく事実何だろうが……まさかアイツが…となるとドレス島が陥落したのか…中間棲姫シロ!うちの奴等に声を掛けておけ!!

駆逐古鬼フウ!ラン!帰る用意急げば!それと泊地にて警戒を厳にしろ!!!」

 

 

「了解、任せて皆に話しとく」

 

 

「はいはーい!戦争本番だねぇ!!」

 

 

「はいはい、また奴等と対峙だね」

 

 

姫達が動き出すとその提督は頭をかきむしりながらため息を付く

 

 

「……全く、カナを倒したってことはうちら『東方海域』の事もバレちまったか……こいつは荒れるな海が戦況が」

 

 

提督改め東方提督は海を眺めながら左爪を撫でる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

監視者が飛ばした艦載機の一つはある寒い冬の海を通りその泊地へと向かっていた

それに気付いた小さな二人の姫達は艦載機から電報を受けとると二人走りだし泊地にあるコンクリートで出来た基地に入るとある場所に向かい執務室と書かれた扉を開くと男と一人の姫が資料整理をしていた

 

 

「提督ー!!でんぽーだよー!」

 

 

「持ってきてやったんだからお菓子寄越せー!」

 

 

「おぉ、ほっぽ、フィアお帰りお菓子ならそこの御茶請け食べて良いからね」

 

 

「「わーい!!」」

 

 

ほっぽとフィアと呼ばれた北方棲姫と北方棲妹は受け取った電報を提督に手渡す

その提督は左脚、右腕を深海棲艦見たいな腕と脚をしており左目は真っ赤に染まっていた

そして二人が御茶請けを取ろうとするとそれを一人の姫が阻止する

 

 

「あー!お姉ちゃん取らないでよー!」

 

 

「そうだよー!お菓子返せー!!」

 

 

「駄目、二人とも外から帰ったら手を洗う

そしたらお菓子あげるよ?」

 

 

「ケチー!」

 

 

「そうだぞー!」

 

 

「良いんじゃないか港湾?」

 

 

「駄目!提督も許可を出さないでください!

ほら洗ってきなさい?」

 

 

「仕方無いか、フィア行こ!」

 

 

「チェッ!食べないでよねー!」

 

 

ほっぽとフィアは渋々港湾棲姫の言うことを聞くと執務室を後にするとため息を付く

 

 

「港湾、そんなに厳しくしなくても良いんじゃないか?ほっぽとフィアはまだ幼いんだからさ」

 

 

「駄目です提督!今のうちから覚えさせないと行けないんですよ!」

 

 

「はは、港湾は厳しいなぁ

さてとでは監視者からの電報でも読ませてもらおうかな?」

 

 

提督はほっぽ達から貰った監視者からの電報に目を通していくと眉間にシワを寄せる

 

 

「……………なんてことだ…」

 

 

「どうしましたか?提督?」

 

 

「失礼します提督、少しお話が………ん?」

 

 

丁度タイミング良く港湾水鬼が執務室に入ると眉間にシワを寄せている提督に詰め寄っている港湾棲姫を見て察したように眼鏡を戻す

 

 

「失礼、これから○○○ですか人払いをしておきますね」

 

 

「ち、ち、違うから!待って!『キューブ』!!待って!!」

 

 

「キューブ、丁度良いところに来てくれた」

 

 

「ほほう?私も含めて3Pですか?

良いですよ?」

 

 

「は、はしたないよ!!」

 

 

「違う、すまないが『アクア』と『ディープ』を呼び戻してくれ早急に」

 

 

提督はキューブと呼ばれた港湾水鬼のボケ?に全く反応せず慌てている提督に二人は疑問を抱く

 

 

「……どうしたの?提督?」

 

 

「珍しいですね、貴方が乗ってくれないなんて?

どうかしたのですか?」

 

 

「………………カナが負けた

撃沈されたそうだ」

 

 

「っ!?う、嘘!!」

 

 

「ありえません!!!あの方は我々の泊地一つ以上の戦力なんですよ!!嘘に決まってます!!!」

 

 

「いや!監視者が我々に嘘を付いたことは一度としてない…間違いないだろう…すぐに全員を集めろ!!!急げ!!!」

 

 

「「りょ、了解!!!」」

 

 

港湾とキューブは慌てて提督の指示に従うと執務室を後にすると壁に掛けられた写真を見る

 

 

「カナ……貴女ほどの深海棲艦が負けるなんて………

ですが切り替えないと……私は貴女に任されたこの『北方海域』を守らなくてはいけません!!」

 

 

提督改め北方提督は強く拳を握り締める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

監視者によって放たれた艦載機のうち一機がある所へと向かっていた

そこは大陸から離れた小島に行きある姫級へと届くとそれを受け取り全速力で走っていく

 

 

そしてある和室に二人は居た

その二人とは男女であり一人は正座しながら腰に軍刀を身に付け軍服を身に纏いお茶を入れておりもう一人は正座をしながらそのお茶を待っていた

 

 

「これでどうだ?」

 

 

「頂こう」

 

 

男は右半身が真っ白な肌に右爪は鋭くなっていた

だがそれでも器用にお茶を入れていた

そしてそのお茶を貰った女性……いや姫級は左目に大きな傷があるが眼をしっかりと開いていた

 

 

「……ふむ、美味しいな」

 

 

「そうか、お前達にはこれぐらいが良いのか」

 

 

「提督……流石にさっきのは渋すぎだ

あんたもの飲めないわけではないが我々にはキツイ」

 

 

「むぅ……日本ではこれくらい普通なのだがな……

確かに甘いお菓子と食べていたな艦娘達は」

 

 

「日本人は凄いな…あんな渋いお茶を軽々飲めるのか……我々も精進だな」

 

 

二人は正座をしながら日本茶をすすると竹の水が溜まり石へと落ちカコンと音を立てているのを堪能していると

 

 

「アーーーーーートーーーーーミーーーーーーラーーーーーールゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!!!!!」

 

 

「…………はぁ、一時の平和が」

 

 

「諦めろ欧州棲姫(プリンセス)、『欧州水姫(ナイト)』が哨戒に出てる間位しか静かにはならん」

 

 

廊下を全速力で走ってきており二人の居る和室の襖がピシャンと音を勢いよく開くと一人の姫級が現れる

 

 

提督(アトミラール)!!今戻ったわ!!!

作戦終了よ!!!ティータイムにしたいわ!!!!」

 

 

「ナイト、元気なのは良いが戦果報告を」

 

 

「oh!sorry!!完璧よ!!途中でドイツの奴等と戦闘になったけどぶっ飛ばしたわ!!!」

 

 

「沈めてないだろうな?」

 

 

「ろん!もちよ!!」

 

 

「勿論だろ?」

 

 

「そうとも言うわね!!!」

 

 

「そうとしか言わないぞ、いい加減覚えなさい」

 

 

「そんなことよりティータイム!!!!」

 

 

落ち着いているプリンセスとは対極的にナイトは元気一杯であり満面の笑みを浮かべていた

 

 

「少しうるさいぞ、ナイト」

 

 

「貴女が静か過ぎるのよ!プリンセス!!!

もう少し元気にしたらどうなの!?」

 

 

「あらあら、ごめんなさいね提督

ナイトがうるさくしちゃって」

 

 

「わーい!アトミラール帰ったよー!」

 

 

ナイトが和室に乱入するとその後ろから二人の姫級も和室へと入ってくる

 

 

「あぁ、お帰り『ダイヤ』『アン』外は寒かっただろ

ここで暖まってから風呂に入るといい」

 

 

「あら、それなら失礼するわね!」

 

 

「アトミラール!お菓子お菓子ー!」

 

 

ダイヤと呼ばれた戦艦仏棲姫とアンと呼ばれたアンツィオ沖棲姫はプリンセスとナイトの隣に座ると提督がそれぞれお菓子とお茶を出していく

 

 

「あ、そうだアトミラール!監視者から電報届いてたよ!ほらこれ!!」

 

 

「む?監視者から?

何かした記憶は無いが、何かあったのか?」

 

 

「大方、ナイトが煩すぎるからだろう」

 

 

「待った!プリンセス!私はそんなに煩くないぞ!!!」

 

 

「うるさいと思うわよ~?」

 

 

「うん!ナイトはかなり声大きい!!」

 

 

「そ、そんなぁ……私は死ぬのか…?

やだやだやだー!!」

 

 

「…………………馬鹿なありえん」

 

 

提督はその情報を見ると唖然としながらも額に冷や汗を流す

 

 

「…どうしたんだ?アトミラール?」

 

 

「貴方が焦るなんて珍しいじゃない?どうしたの?」

 

 

「どうしたの?アトミラール何かあったの?」

 

 

「な、なぁ!まさか本当に私の解体じゃないよな!?違うのよね!?」

 

 

「そんなことは誰に命じられてもしないから安心しろ……ある意味最悪の知らせだ

カナが負けた」

 

 

「「「はぁぁぁぁぁぁぁ!?」」」

 

 

その言葉にプリンセス以外の姫達が騒ぎ立てるが意外にも提督は落ち着いていた

 

 

「あ、あのカナが!?まさかあり得ない!!!」

 

 

「そうよ!アイツ、泊地防衛に関しては最強なのよ!!それが負けるなんて!!!」

 

 

「カナが負けるなんてそんな!!!」

 

 

「落ち着けお前達」

 

 

慌てふためく三人に対しプリンセスが一喝すると外の竹がカコンと再び鳴る

 

 

「落ち着けって!プリンセス!!カナが負けたんだよ!!!

あの私達の中でもさいきょ」

 

 

「落ち着けと言っている

今ここで慌ててもなにも変わらん

そうだろ?アトミラール」

 

 

「分かっているではないかプリンセス

確かに慌てることであるが慌ててはいけない

とりあえず一服しようではないか?」

 

 

提督がそう言うとお茶をすすり他の三人もゆっくりとお茶をすする

 

 

「今すぐ奴等が攻めてくるわけではない

だからこそ今は落ち着いて奴等の動きを見ようではないか?

それに」

 

 

提督がプリンセスを見るとそのコップにヒビが入っており傷がある瞳が真っ赤に燃えていた

 

 

「我々にはカナに匹敵する最強の騎士とお前達がいる 『西方海域』は奴等には渡さん」

 

 

「あぁ、必ずその期待に応えて見せよう

今度こそは」

 

 

提督改め西方提督と欧州棲姫(プリンセス)は静かに決意をする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

監視者によって放たれた艦載機のうち一機がある所へと向かっていた

そこはカナが居たドレス島に最も近い島でありある化け物が巣くう島

 

そしてその艦載機をある深海棲艦が監視者から電報を受け取ると駆け足で泊地の研究所へと走っていきある場所へとたどり着くと自動扉が開き中に入る

 

 

「失礼いたー!!!」

 

 

自動扉が開いた瞬間に目の前に戦艦棲姫の自立艤装ケルベロスが深海棲艦を睨み付けておりその恐さに気絶してしまう

 

 

「ちょっとケルベロスー?何してるの?」

 

 

「ガウ」

 

 

「落とし物って……ってちょっとあんた大丈夫!?

ケルベロス!貴女何してるのよ!!全く!!!

誰か来てくれる!?」

 

 

気絶していた深海棲艦は泡を吹いており近くに通りかかった深海棲艦にその娘を頼むとケルベロスから電報を受け取ると部屋の中を進んでいく

その部屋は研究所となっており辺りには巨大なポットがあり液体で満たされていた

そしてその奥で一人の男がパソコンを睨みながらタイピングをしていた

 

 

「ちょっと提督、聞こえてる?」

 

 

「何だユリ…今忙しいんだ……後にしてくれ」

 

 

その男の声はかなり野太く低い声をしており全身が真っ白な肌ではあるが手は普通の人間の様な手をしていたそして頭には小さな角が生えていた

 

 

「貴方……そういって今何徹目?」

 

 

「八…」

 

 

「いや寝なさいよ、何か監視者からの電報だって?」

 

 

「……あぁ、後で読む置いといてくれ」

 

 

「はぁ………」

 

 

ユリと呼ばれた戦艦棲姫は自立型艤装ケルベロスに指示を出すと提督を持ち上げる

 

 

「おいごら!!何しやがるケルベロス!!!

離しやがれ!!!」

 

 

「ガルル」

 

 

「ちょっと提督!!監視者からの電報!!!しかも緊急よ!!早く見なさいよ!!!」

 

 

「あ………?監視者からの電報?いつ来たんだそんなもん?」

 

 

「ついさっき」

 

 

「あぁ?中枢(コア)はどうした?」

 

 

「さぁ?また寝てるんじゃない?」

 

 

「あのやろう……その手の連絡を必ず受けとれって命令したのに……!!!」

 

 

ケルベロスは提督を下ろすと椅子に座りユリから貰った電報を読み出すと驚く

 

 

「何だと!?カナが負けた!!!???」

 

 

「はい!?カナ様が負けた!?有り得ないわ!!!」

 

 

「嘘だろおい!!アイツはEliteの中でもかなり強力な深海棲艦!!!負けるわけがねぇ!!

ユリ!出撃命令だ!!今すぐドレス」

 

 

「あーらぁ?どうしたのー?提督ー?」

 

 

あわてふためく提督の後ろから身体を濡らした状態の姫が一人現れその身体を提督に押し付ける

 

 

「……おい、女帝(クイーン)お前何で濡れてるんだ?

今日出撃予定ないよな?」

 

 

「あら、無いわよ?だーかーらお風呂…入ってたわ」

 

 

「あー成る程な?だがよぉ?ちゃんと拭いたか?」

 

 

「今拭いてるわ~貴方の服で」

 

 

「タオル合っただろうか!!それで拭け!!!」

 

 

提督が怒号を飛ばすとクイーンが機嫌悪そうにすると提督の首元に噛みつく

 

 

「だー!!!人に噛みつくな!!!」

 

 

ひゃってつまらないんひゃもん(だってつまらないんだもん)

 

 

「良いから拭いて服を着ろ!!!俺は男何だぞお前は!!」

 

 

「あら?あたしを抱きたいの?構わないわよ?」

 

 

「お遊びは辞めろ!!クイーン!!今はそれよりもこれを読め!!!」

 

 

提督はたまらず監視者から貰った電報をクイーンに押し付けると提督を背もたれにしながらその電報を読んでいく

 

 

「………へぇ?カナが?

ありえないけど、監視者が嘘をつく方がありえないわ」

 

 

「そう言うことだ、お前この意味が分かるな?」

 

 

「えぇ、分かるわよ?つまり向こうは私達の事を見つけたってことよね?」

 

 

「そうなるな

クイーン、お前が負けるとは思えないがこれから出撃が増えるぞ覚えておけ」

 

 

「あら?あたしは構わないわよ?

あの艦娘(ゴミ)を殺すのに躊躇いはないからね」

 

 

「ユリ、ケルベロスお前達もだ分かってるな?

これより戦争は激化していく……と言わなくても分かるか」

 

 

提督がユリとケルベロスを見るとお互い凄い形相になっていた

 

 

「許さないわ……叢雲…阿武隈…古鷹……絶対潰してやるんだから…」

 

 

「ガルァァァ!!!」

 

 

「ハハ、これなら平気そうだな?クイーン」

 

 

「えぇ、ある意味テスト成功ね?」

 

 

提督はニヤリと笑いながらその電報を握り潰す

 

 

「さて?奴等は我々『南方海域』をこの『ハワイ島』を落とせるかな?楽しませてくれよ……人間共

 

 

 

さぁ戦争を始めようじゃねぇか

種の存続を掛けた本当の戦争を」

 

 

提督改め南方提督はニヤリと笑いながら再びパソコンの画面を付けるとそこには二つの尻尾を持つ深海棲艦の姿が映し出されていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  不沈ノ飛行場 歴戦の飛行場姫 カナ

         始祖種 椿  end.............

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……まさか、カナが負けるなんてね…

僕が作ったアブソリュートのセーフティが発動してるから大丈夫だと思うから僕はドレス島にアクセスして全てを消去しないとね

……ごめんね、始原(ピース)

 

 

 

      -To be continued-




 
次回

半分突破記念!ネタバレ多目の振り返り回!

次回はこの作品を軽く振り返りながら残されたフラグや回収されたフラグ等を適当に登場キャラと共に話していきます!
ネタバレ有り!ネタ多目?のゆるぐだ何でもありで行きますね!!!
ぶっちゃけただの筆休め回!!!





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ここまでの誰ガ為ノ戦争カは!!

ネタバレ兼これまでのフラグとその回収履歴です!!
ネタバレが嫌な人は読まないで1日待ってね!!











と言うわけですよ皆さん

あ、今回の参加者は

叢雲、佐渡、エアの三人でーす!!

 

 

佐「……いや、あのさ?作者唐突すぎない?

嫌マジで?」

 

 

すっごい今更だよ佐渡君、君達を書いてる作者はこう言う人なんだよ?

ぶっちゃけ、その場のノリとかで書いてるからね仕方ないね!!!

 

 

叢「こんな奴が書いてるの……この物語…」

 

 

エ「ま、仕方ないんじゃない?そう言うもんよ」

 

 

諦めが早くて助かるぜ!エアさん!あんたの秘密を

 

 

エ「それはアウトでしょうが」

 

 

そうでした☆ミ

 

 

佐「ほんと今回伸び伸びと書くつもりなのか?あんた?」

 

オフコース!自由奔放に書いていくよ!!!

あ、それとUA10万突破とそして500話突破しましたー!!イエーイ!!!

 

 

佐「こんな、作品を読んでくださり誠にありがとうございます」

 

 

叢「誤字脱字が、多く更に設定も若干無視して書いてて申し訳ありません」

 

 

エ「それにキャラ崩壊もしてるわよねこの作品」

 

 

仕方ない想像と勢いで大体書いてるから!!!

 

 

叢「と言うか作者思ったんだけど本当にこれでまだ前半終了なの?大分進んだわよね話?」

 

 

ん?前半だよ?ぶっちゃけまだまだ話のストックあるよ

と言うかどんどん増やそうかなと思ってる

 

 

エ「当初何章だったのよ?」

 

 

えっと、19章

と言うか前半はあれで切るつもりだったよ?

ぶっちゃけカナの討伐でこの物語の戦争が開幕するもんだしね?

 

 

佐「……因みに残り何章あるんだ?」

 

 

普通に終わらせると10章

でもまだ書き足りないから後6章位追加して16かな?

 

 

叢「……いつまで続くのよこの作品…」

 

 

まぁ、一章が長いからねこの作品仕方ないね!!

書くの楽しいからね!!!

さてと、ではでは?そろそろ前置きなげーよクソ作者とか言われそうだから始めますか?

 

 

叢「と言うか何でこの三人なのよ?」

 

 

あぁ、それは叢雲は艦娘代表

佐渡は人間代表

エアは深海棲艦代表ってことだよ?

 

 

エ「ふーん?にしても何でこの三人なのよ?

しかも、何か意味ありげじゃない?」

 

 

まぁそりゃこの三人がこの物語の中心だしな

 

 

「「「は?」」」

 

 

とりあえず始めるわよー!!

 

 

第一章&第二章 平和な鎮守府&美味しいご飯を

 

 

叢「この物語の初めの方ね」

 

 

佐「凄い平和な鎮守府風景だったよな…本当に」

 

 

この話はぶっちゃけプロローグ扱いだね

物語の世界観と設定、佐渡達が居る鎮守府に二人の艦娘と小笠原での日常を書いてみたんだけど今思い返すと一つで良かった感じがある

 

 

エ「それで、そのお話の最後に私が登場って訳ね」

 

 

そそ、最後に登場した深海棲艦はエアの事でこれは後の章『提督ヲ狩ル者』でのボス空母棲姫歴戦種のエアへのフラグだったね

後は作中の途中に合った古鷹達がおふざけでいった言葉も『天使の罪』へのフラグだね

 

 

叢「やっぱりあんただったのね……あれ差し向けたの!!」

 

 

佐「ん?でも可笑しくないか?エアって艦娘を襲わないんじゃ……」

 

 

エ「あぁ、あの艦隊?実はクイーンから貰った艦隊だったのル級が使い物になるかどうかのね」

 

 

佐「あぁ……だからかあの時の叢雲の違和感は……」

 

 

あ、因みにこのお話が物語での始まりだけどこれよりも前のお話が二つほど存在してるんだなこれが

 

 

叢「は?まだあるの?」

 

あるよー?

一つ目は叢雲と佐渡の出会い

 

二つ目は叢雲が雷撃姫と呼ばれる物語

 

この二つはやるか未定!!!

ホイ次行きましょ!!!

 

 

第三章男嫌いの軽巡 

 

 

佐「あー…懐かしいな大井が来た時の話だなこりゃ」

 

 

そうだね!元々大井っちは入れることは決まってたんだけど、どうやって連れてこようか悩んでたけどあぁなったね!!

 

 

叢「確か提督を半殺しにして上層部もぶっ飛ばしたのよね」

 

 

そそ!当初北上さんの事を守るために何でも従ってきたがそれをあの木原が裏切り北上を軍の上層部に『貢ぎ物』として売ったのが原因だったね

 

 

エ「ねぇ?ここで少し疑問なんだけど何で大井を売らなかったの?

体つきも猫かぶりキャラも多分大井の方が断然よくない?」

 

 

あぁ、ここでは書かなかったね?実は大井っちの秘書艦としての能力は一級品で雑務も執務もほぼ完璧だったんだよ

 

 

佐「確かに、大井の処理能力と手助けはかなり助かってるな……」

 

 

だから木原はそれを手放したくなかったのさ、それでもう一人の軽巡北上をバレない様に売って『彼女は異動したが私は何も手を出してない』とまだ大井を縛るつもりだったんだよ

まぁ、それをアイオワに化けていたエアが情報を流しちゃったからおじゃんになったんだけどね

 

 

叢「エア、ナイスb」

 

 

佐「良くやったぞエアb」

 

 

エ「素直に嬉しいけどあれは私が始末する予定だったのに申し訳ないことをしたと思ってるわよ?」

 

 

ま、そんなこんなで大井編が終わったね

因みに、今回収されたフラグは木原が狙っていた北方海域にて大破撤退ばかりさせられる理由の北方提督と深海棲艦達だけだね

 

 

叢「え?まだ合ったっけ?」

 

 

あるよ?

木原が言ってた『取引』これ実はかなりとんでもないフラグでもあるんだよね東雲と始原が追っていた真実でもあるし

後、佐渡と北上さんの出会いと頼みの物語がスキップされてるね

 

 

佐「そういや、飛ばされてたな?まぁ俺は良いけどさ?」

 

 

書くとしたら番外編になるね

あ、ついでに言うとこの物語最後に出てきたのもエアだよ!提督殺しの狙いは外さないってね!!

まぁあんまり必要ないと言っちゃ必要ないけど今度アンケート取るよ

次行ってみよ!!

 

 

第四章 進撃セシ海上姫要塞

 

 

エ「戦艦棲姫(ユリ)自立型艤装(ケルベロス)の事ね」

 

 

そそ、この物語で最初にぶつかる歴戦個体だね

実際この時は大して強くは無かったんだけどね?

 

 

叢「大して強くない!?あんた!可笑しいでしょ!!あれ堅すぎなのよ!!!」

 

 

そうかな?まだこれから出てくる姫達よりは良心的に作ったんだけど……あ、因みに一年の歳月によりユリとケルベロスは更に強くなってるよ!

 

 

佐「マジ?あれ以上化け物になってるの?辞めて欲しいんだけど?」

 

 

だが断る(キリッ)

本当は、ここに金剛を迎えて戦う予定では合ったんだけど友人に相談したら三人の方が面白いって言われてね

急遽こう変えてみた

因みに、ここで始祖種監視者、歴戦個体南方棲戦姫(クイーン)が出てきたね

そして暗躍するエアだね

 

 

佐「やっぱりお前かよ!!!!」

 

 

エ「アハッ☆ミ

まぁ大本営に入り込めるなんて私位しか居なかったしね?」

 

 

因みにここで登場した監視者がこの物語のかなり重要な立ち位置だってことも分かったね

 

 

叢「まさか、向こう(深海側)に始原と呼ばれる存在が居るとはね……」

 

 

エ「まぁあんた達は知らないわね………一人を除いてはね」

 

 

「「え?」」

 

 

さ!次行ってみよ!!!

 

 

第五章 不幸な高速戦艦

 

 

叢「金剛ね、これに関しては流石に驚いたけどわ」

 

 

今作オリジナル設定の金剛さんだね

かなり汐らしく怯えてる感じになっている元気一杯の筈の長女だね

 

 

佐「これは流石に驚いたわ、山城と扶桑って戦艦が不幸なのは知ってたけど金剛型にそんなのは無かったって聞いたし?」

 

 

ぶっちゃけ、小笠原に来る艦娘は全て問題持ちでは無くては行けないんだけど彼女には不幸を付与した感じかな?

 

 

エ「でも、彼女が来た履歴凄いわよね

特に一つの鎮守府を潰したってのが」

 

 

まぁ、不幸に不幸が重なっていき結果として鎮守府が潰れたって感じですけど彼女には全く罪は無いんですよ?

 

 

佐「うーん……確かにうちに来た当初も中々おもしろ……改め凄かったけどな…」

 

 

エ「いや何であんた楽しんでるのよ?死にかけてたりするかもなのよ?」

 

 

叢「うちに不幸はほとんど関係ないから佐渡的には楽しんでるのよ新鮮とか言って」

 

 

まぁ、実を言うと佐渡さんかなりの強運だしね!!!

 

 

佐「確かに、くじ引きとか残念賞って引いたことないし欲しいものが出たりするからなぁ」

 

 

エ「あんたってどうなってるのよ……」

 

 

因みに金剛がこうなった物語もありますがそれも外伝行きですかね!!

次行ってみよ!!!

 

 

第六章 奴隷の潜水艦

 

 

エ「イムヤね、私が殺した白鳥のサンドバッグになってた潜水艦娘」

 

 

佐「流石に頭に来るなぁ……白鳥の奴」

 

 

叢「私が殺りたかったわよ……あんな良い娘をサンドバッグにだなんて!!!」

 

 

落ち着いて二人とも

白鳥が運営してるブラック鎮守府がエア(提督殺し)により解体され行き場を失った拒食症兼社蓄になっていた潜水艦イムヤと金剛編で釣り上げたイ級のお話だね

 

 

叢「一つ思ったんだけど鎮守府は解体されたのにガングート達は残ってたわよね?しかもその後新しく提督着任してるし?」

 

 

あぁ、そこ?実はガングートはその鎮守府を離れられなかったんだ

一応後の話でも言ってたけど白鳥が北方海域にタシュケントを送り込んでいてねその娘が帰ってくるのを待ちたいって強く懇願したらしいんだ

でもね、イムヤの状態が他の艦娘より酷いから見過ごしてきた我々より離した方が良いだろうって理由で他の鎮守府に異動させようとしたんだよね

 

 

エ「タシュケント?あれ……可笑しいわね北方海域で艦娘を激」

 

 

はいエアさんそこまでその先は大きなネタバレですよ!

 

 

佐「へぇ、あのガングートって娘そんなにタシュケントさんを大切にしてたんだ?」

 

 

嫌?ガングートは鎮守府のリーダー見たいな存在で全ての艦娘を守ってたんだよ

 

 

叢「あれ?それなら何でイムヤは?」

 

 

それはこの後のお話で明かされていくよ!!

今回のお話で深海棲艦の秘密が明かされてきているね、イーちゃんは果たして何者なのか?

はい次!!

 

 

第七章 架空の空母

 

 

佐「グラーフの話か」

 

 

そそ、今回は海軍の深い闇に触れるお話だったね!

ドイツのある場所で建造された闇に消されそうになっていた艦娘グラーフツェッペリンが流れ着くお話!

 

 

エ「チッ!もう少し私が早ければ!!」

 

 

叢「あんたは旗風救ってるんだから良いじゃない?

まぁ、流れ着いたのがグラーフの幸運よね」

 

 

因みにグラーフの名前が分からなかったのも海軍のデータベースに乗ってなかったのは村山が改竄していたって事だよ!

 

 

エ「と言うか、あんた良く村山と対峙しても引けを取らなかったわね本当に」

 

 

佐「んぁ?何言ってやがる、うちの鎮守府は艦娘を大切にしてるんだ

元帥だろうが大元帥だろうが俺は歯向かうぜ?」

 

 

叢「ほーんとコイツの度胸とやることはとんでもないのよ昔から」

 

 

因みに今回で危険海域『霧の海』が解放されたね!

この海域は元々出す予定ではありその主は多分とんでもない強さを誇ってるよ!!

それこそカナ達歴選種とほぼ変わらないほどの!!

 

 

叢「………はぁ」

 

 

頑張ってね!叢雲さん!!

あ、因みに最後に出てきたエアとの通話相手は南方提督であり実はその依頼によりエアはあの海域での生存者を潰し回ってたんだよ!!

 

 

エ「ま、と言ってもあんな所馬鹿しか通らないけどね

私達でも通らないし?」

 

 

はい次!行ってみよ!!!

 

 

第八章 提督ヲ狩ル者

 

 

エ「まぁ、私のお話ね」

 

 

そう!今まで全てのお話に裏から暗躍していた歴戦の空母棲姫エア初登場回だね!

 

 

佐「正直、本気で恐かった」

 

 

叢「まぁ、でしょうね」

 

 

アハハ、ぶっちゃけエアの設定はある小説?からだけどエアはきちんとした理由があって提督達を抹殺していってるよ!!

 

 

エ「はぁ?だから言ってるじゃない、私はただ提督が嫌いだから殺してるって」

 

 

佐「だからそれを辞めろっていってんだよ!!」

 

 

エ「うっるさいわね!!あんた達がキチンとやらないから私が殺ってやるのよ!!文句あるのかしら!?」

 

 

佐「あるねぇ!!たんまり山盛りに!!!」

 

 

叢「まーた始まったわ……全くこの二人は…」

 

 

まぁ、佐渡とエアは対極であり正反対であり似た者同士ですからね

佐渡は守る正義

エアは奪う正義

どちらも正しい正義と言うことです

 

 

叢「成る程ね、確かにそう言われてみればそうかもね」

 

 

あ、因みにこの物語はエアが居たからこそここまで落ち着いてると言えますよ

『提督殺し』と言う脅威が提督達を押さえ付けこれ以上の凶行に陥っていない海軍と言う事でもあります

 

 

叢「………ねぇ、ちょっと待って?もしかして海軍ってエアが居なかったらとんでもない状態に」

 

 

はい次!行ってみようか!!!!

 

 

叢「ちょ!こら待て作者!!!」

 

 

第九章 正義の戦艦

 

 

佐「いつかなるとは思ってがやっぱりかぁ……って感じだったな」

 

 

書く予定には入ってたよ!

海軍との意見のぶつかり合い、そして大演習会にて小笠原存続のお話にして海軍最強と唱われる歴戦の戦艦長門戦だね!

 

 

叢「……正直に言うと勝つ見込みは無かったわ

小笠原の皆が居たからこそ私は勝てたと思ってる」

 

 

エ「かなりの激戦だったもんね、それに長門は深海側でも警戒するほどの艦娘だし」

 

 

海軍の中でも滅多に居ない二つ名を有した最強戦艦長門と同じく二つ名を持つ叢雲との対峙!そして負けたら小笠原解体!だったもんね

 

 

叢「何がなんでも勝たなきゃいけないってのはあったわ、それでもそれに力を貸してくれた皆に本当に感謝してるわ」

 

 

佐「本当に良くやってくれたよ叢雲、お前のおかげで俺達は救われたからな」

 

 

叢「あら?私はそれよりも前にあんたに救われてるしこれは私のわがままよあんたが司令官じゃなきゃあんなに頑張らないわよ」

 

 

エ「何か良い雰囲気になってない?」

 

 

ま、良い雰囲気の二人は放っておきましょうか

今回長門の過去編が解放されその記憶の中で長門が戦った二人の駆逐古鬼のフウとランは前回のお話へのフラグでしたね!

あ、因みに二人がいってたあの人ってのは東方提督の事ですよ!

そして長門が生かされた理由もわかる人には分かると思いますが深海化が鍵を握ってます!

このお話にはまだいくつものフラグが隠されてます!あえて言いませんがわかる方は居たのかな?

 

 

そして次のお話!!

 

 

第十章 天使の罪

 

 

と言うわけで満を持してやってきました古鷹の過去編にして海軍の闇にして佐渡達が古鷹を救い出す物語!!

 

 

叢「…………」

 

 

佐「…………」

 

 

エ「正直、ここまで海軍が屑だとは思わなかったわ

海軍本気で潰してやろうかしら?」

 

 

辞めて物語終わっちゃうから!

叢雲と佐渡が隠し続け二人が小笠原鎮守府に来た理由であり古鷹が初期艦でも友人とかでもないと言う事実ですね!

 

 

叢「……あの娘はただ優しいだけだったのよ…ただ他の艦娘の事を考えその力になりたいと切に願う優しい艦娘…だったのに!!!」

 

 

佐「…確かに今までそう言う奴等を見てきたことはあるぜ?だがな、流石に今回見たいな屑共が群れを成してるとなぁ…」

 

 

落ち着いて二人とも…

実際処刑寸前で古鷹を救い出したものの二人は出世街道を外れ海軍からは負け犬のレッテルと反逆者と呼ばれ本島から離れた小島に閉じ込められていると言うフラグ回収ですね!

 

 

エ「ま、そこには私が居たんだけどね」

 

 

そう!因みに言うとエアが何故小笠原に居て小笠原に何があったのかと言う物語も存在しています

小笠原鎮守府は昔栄光に輝き活気を持っていた

だが、それを深海棲艦が全てを奪い取った

その島を拠点にするわけでもないのに

 

 

佐「…そう言えば何であの遺体達は部屋に閉じ籠ったり逃げていなかったんだ?」

 

 

ふふん、エア貴女は知ってますね?この島の惨状が何故引き起こされたのか…そしてこの島の闇を

 

 

エ「……えぇ、知ってるわよだってこの島を……焦土に変えたのは…」

 

 

おっとそこまで!

このお話もいつかやろうかなと考えています

そしてこのお話はエアが長門に対する気持ちも反映されています

因みに小笠原過去編はやりませんが小笠原島の秘密を一つだけ解き明かす物語は本編に絡んできます

いくつかフラグ残る回でもあったお話です!

 

次!ラスト行きましょう!!

 

 

第十一章 不沈ノ飛行場

 

 

最強にして最悪の歴戦種の一体歴戦飛行場姫カナとの激突のお話ですね!!

 

 

叢「本当に……本当に辛かったわ……何なのよ…あれ…」

 

 

佐「超遠距離砲撃に連合艦隊でないと取れない制空権、硬すぎる防御力、素早い切り替え、高い判断能力、超威力の主砲ニ門、全身に付けられた隠し砲台、千里眼、陸上での砲台の扱い方の上手さ、しかも海上戦闘も出来る、………何だよこれ本当に」

 

 

まぁ今作品ボスと同格の深海棲艦ですし、これぐらいはね?

 

 

叢「いや!戦うレベル可笑しすぎるわよ!!!

どう考えても今戦える相手じゃないない!!!」

 

 

え、でも叢雲?どうせ戦うんだから変わらないって言ってたじゃん?

 

 

叢「桁!!桁違いすぎるわよ!!何なのよあれ本当に!!!」

 

 

エ「まぁアイツ本当に強いからね、ユリの数十倍…嫌それ以上よ?私と同格だしね?」

 

 

本当はもう少し弱くするつもりだったんだけど本作品のラスボス自体がとんでもなく強くてねそれと同格とするとこれぐらいやらないと駄目かなって思ってたらこうなってた

うん、今読み返しても強すぎるし戦うべきじゃないね本当に

 

 

佐「………なぁ、作者まさかこれと同格はボス以外は居ないよな?」

 

 

あー……居ないわけではないよ?

ボス除くと四人は居る

 

 

叢「……………嘘でしょ…」

 

 

佐「おま…マジかよ……」

 

 

まぁ、その、うん、頑張ってね!

 

 

「「お前が原因だろうが!!!」」

 

 

エ「息ピッタリねぇ……」

 

 

あ、因みにカナ編での叢雲の覚醒は実は最初は無かったお話

何故かと言うとそれが直接叢雲と佐渡の過去編繋がるからね!!!

 

 

 

と言うことで終わりかな?振り返りは

 

 

叢「こうして思い返すとまだまだ話は終わりそう無いわね」

 

 

佐「だなぁ……始原の事も残ってるし新しく追加された四提督…色々謎やフラグはあるからな…長そうだな」

 

 

エ「ふふふ、まぁゆっくりと楽しんでいけば?」

 

 

さてと今回はここまでにしようかな!!

ぶっちゃけ長く書きすぎた感じ凄いし!!

じゃあ三人共挨拶頼むよ!!

 

 

叢雲「はいはい、それでは読者の皆様この度は誰ガ為ノ戦争カ見てくださりありがとうございます」

 

 

佐渡「まだまだ終わりには近付けそうに無いけれど精一杯頑張って行きますのでよろしくお願い致します」

 

 

エア「ま、後一年は余裕で掛かりそうね呆れるくらい長いと思うけどよろしくね!」

 

 

あ、追伸ですが後半からは深海棲艦達と深く関わっていきます

では今回はここまで!ではでは!また明日以降お楽しみに!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エア「あら?ここまで見てくれたのかしら?

じゃあちょっとだけ、サービスしちゃうわ!!

次章のタイトル兼ネタバレね!」

 

 

次章 砕かれたプライドと壊れた兵器

 

 

エア「次回は叢雲の深層から始まるわ

そしてまた小笠原に大波乱の予感

カナが死んだとは誰も書いてないわよね?

壊れた兵器って何かしらね、そう言えば緑色の髪の艦娘も問題持ち何だっけ?

後自己紹介の最後は基本的に次来る艦娘or深海棲艦よ又はその二人!

じゃあまた次のお話で会いましょ! 

これからもよろしくね♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回新章突入!!
我後半二突入ス!

深層二我落チヌ

死にかけた叢雲は再び深層に落ちてしまう
そこで彼女は再び奴と対面する





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第十一章 砕かれたプライドと壊れた兵器  
深層ニテオ前ヲ待ツ



第二幕、開幕です!!
後半からは深海棲艦と戦争の真実に迫っていきます!!





(ここは……どこ?……私は…………何で……沈んでるの………?)

 

 

叢雲はゆっくりと目を覚ますとそこは海中の様な場所でありとても心地よく感じていた

 

 

(気持ち良い…………でも沈んでる…………沈む程に身体が心地よく軽くなっていく…………)

 

 

そして再びゆっくりと目を閉じようとするが慌てて目を開ける

 

 

(……!!気持ち良いとかじゃなくて!!私沈んでる!!何で!!私は轟沈したの!?嘘でしょ!!!)

 

 

叢雲は周りを確認すると黒い手の様な物が叢雲を優しく掴んでいた

 

 

(放せ!!私は沈むわけには行かないのよ!!!)

 

 

掴んでいた手は案外簡単にほどくことが出来急いで海面を目指して泳いでいく

 

 

『私達ヲ置イテイクノ?叢雲チャン?』

 

 

後ろから聞こえる声に叢雲は泳ぐのを辞め、その場に止まってしまう

その声は叢雲が一番良く知り聞き馴れた声であり自分の過去であること

 

 

(…………ごめん、私は行かなくちゃ行けないの)

 

 

『置イテ行カナイデヨ!!!私達ヲ!!』

 

 

『ソウダヨ!私達モ連レテッテヨ!!!!』

 

 

声が増えその声も叢雲には聞き覚えがあった

それでも叢雲は振り返らずに海面を目指し浮上していく

 

 

(ごめん……ごめん…皆……いつか……いつか私もそこへ行くから………ごめん!!!)

 

 

叢雲は謝りながら浮上していくと身体に重圧が掛かっていくが何とか浮上する

 

 

「ゲホッゲホ!!こ、ここは!?」

 

 

浮上し周りを見るとそこは一面真っ暗な世界

辺りからは水が滴り落ちる音が聞こえ見渡しても光一つ見えない

そしてそれと同時に異常な程の渇きに襲われる

 

 

「あ………あぁ!喉が……!渇いて……!!」

 

 

『ホホウ?喉ガ渇イタカ?ナラコレヲ飲ムト良イ』

 

 

いきなり聞こえたノイズ掛かった声に黒い液体の入った物を渡されると叢雲は一気に飲み干す

 

 

「あ、甘い……美味しい…!染み渡る……身体に!!!もっと……もっともっともっともっと!!!!」

 

 

『ハハハハハハ!!ソノ程度デバ潤センカ

ナラバソコニアルデハナイカ?』

 

 

声の主は見えないが叢雲は自らが立っている海面?を見ると確かにそこには先程渡された黒い液体があった

 

 

「喉……渇いた……寄越せ…寄越せ寄越せ寄越せ!!!」

 

 

その言葉にそそのかされるように叢雲は海面?に口を付けて飲み始める

黒い液体は程よい甘さであり身体に染み渡るように叢雲の渇きを潤していく

それと同時に髪色が赤く染まっていき肌も白くなっていく

 

 

『ハハハ!ヤハリ墜チタカ艦娘

サァ飲ミタケレバ飲メ!!オ前ヲ満タシテクレルゾ?』

 

 

「美味しい!甘い!美味しい美味しい美味しい美味シイモットモットモットモット!!!!……?」

 

 

一心不乱にそれを飲んでいると頭の片隅に何かが過る

それはある男と交わした一つの約束

 

 

『必ず帰ってこいよ!!勝利なんかよりお前が無事なのが大切何だからな!!』

 

 

『分かってるわよ、ーー』

 

 

(ン?私……何シテルンダッケ?………渇イタ?……喉?……違ウ……ここでこんなことしてる場合じゃない!!!!!私は!!!)

 

 

だが、その瞬間叢雲は異常な嘔吐感に襲われると手を喉の奥に入れ無理矢理飲んでいた黒い液体を吐き出していく

 

 

「おえぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

『………ホホウ?ソレヲ吐キ出ストハ驚イタナ

素晴ラシイ精神ノ強サダ

大分貴様ハ奴ヲ信用シテルヨウダナ?』

 

 

嘔吐された黒い液体は海面に消えていき叢雲の体内から全て出ていくと同時に赤い髪の毛は銀色に戻り白い肌も元の綺麗な肌色に戻っていく

口の中には甘く美味しい蜜の味が残るが一滴残さずに吐き出す

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ………ここはどこ!?

私は戻らないと!!!」

 

 

『ソンナニ戦イタイノカ??駆逐艦叢雲』

 

 

その声に叢雲は初めて自分の目の前に居る何かに気付く

 

 

「………あんた誰?」

 

 

『ハハハハ!!今更我ノ存在二気付イタカ?馬鹿者メ!!

嫌、オ前ハ私ヲ知ッテルサ?ソウダロ小サキ勇者ヨ』

 

 

姿は見えず声も叢雲の耳型電探から聞こえておりしかもノイズが混じっていたその声に叢雲は聞き覚えがあった

 

 

「あ、あんた!まさか!!嫌!有り得ない!!!あんたはあの時!!!」

 

 

『思イ出シタカ、勇者ヨ』

 

 

その声に聞き覚えがあり叢雲は慌てて艤装を使おうとするが腰にあるはずの刃が無く主砲も無い

今叢雲は丸腰になっておりその事にやっと気づいた

 

 

「………何で」

 

 

『決マッテルダロ?ココハ我ノ深層ダカラナ』

 

 

姿が見えないがその巨体が動きだし叢雲の周りを回ろうとするが

 

 

『………フムゥ、コノ姿デハ大キイカ

仕方無イ『アレ』ヲ使ウカ』

 

 

姿が見えないその怪物は自らの身体を切り裂くとその傷口から大量の出血をするとその巨体が動かなくなると黒い人間の様な姿を現す

 

 

「っ!?」

 

 

『ふむ、こんなもんか

この姿は久しぶりになるからな少し違和感があるな』

 

 

「あ、あんた!何よその姿!!!」

 

 

黒い人間の様な姿をしたその化け物はまるで深海棲艦の姫級の様に女性の形をしていた

 

 

『我の『能力』で作った

人間型の姿だ

これで話しやすくなっただろう

あの巨体では動きずらいからな

それとあんたは辞めよ、我にも名がある』

 

 

「…………私はあんたの名を知らないわよ」

 

 

『ふむ?それもそうか貴様とは話すことがないと思ってたからな

そうだな、我が名はふ………嫌コードネームは辞めておこう

ウーム、ならば(ブラッド)と仮名付けておこう』

 

 

ブラッドは黒い姿をしているがその身体を軽快に動かし真っ暗な世界を歩いていく

 

 

「…………あんた…」

 

 

『ブラッドだ、あんたではない殺されたいのか?

あの巨体でまた踏み潰してやっても良いのだぞ?』

 

 

「…………ブラッド、何でここに居るの?

あんたはあの時…」

 

 

『あぁ、あれか

確かに痛かったな、身体の内部から破壊される痛みとは流石に味わったこと無かったからな?

まぁそれは良いとしよう、どうせお前には関係ない』

 

 

その瞬間ブラッドが空中にジャンプするとその姿が再び掻き消える

 

 

『良くもまぁ貴様は耐えられた物だあの激痛に

我の血を二度と受けて生きているとは思わなかったぞ駆逐艦叢雲』

 

 

「………私があんたの血を受けた?」

 

 

『そうさ、一度目は我がお前を助け

二度目はお前は力を追い求めた』

 

 

「はぁ?あんたと会うのは初めてよ!!」

 

 

『違うな、それは我がお前の記憶を弄ってるからだ』

 

 

「そんなわけ……!!」

 

 

叢雲はそこで思い出す今までの戦闘で起きた不思議な事

カナからの砲撃をまともに受けて立ち上がれたこと、木曾の刀を抜き振るうことが出来たこと、沸き上がる力、二度の激痛

 

 

「まさか……あれって……」

 

 

『そうだ、我の力だ

正確には我が与えた力だがな』

 

 

その力を叢雲はハッキリと覚えていた

だがそれでも

 

 

「私に…あんたとの記憶がない……」

 

 

『言ったであろう、その時の記憶は消しておるからな

お前は我の血液を身体に取り込み我の力の『一部』を使った』

 

 

「……ちょっと待って!一部!?あれが一部なの!?」

 

 

『あぁ、お前は我の力をほとんど使いこなせなかったからな

ほんの一部だ』

 

 

ブラッドは話をしながら叢雲の周りを歩いていく

 

 

『お前がさっき飲もうとしていたのは我の血液だ

お前の身体が既に我の血液に馴染みお前の身体がそれを欲している

それは一気に力を二回も使ったからだ

そしてその反動でお前は我の血液に溺れ求めそうになっていた

だが叢雲、お前はそれを精神的な物で跳ね返した』

 

 

「…………私は………深海化……してるの?」

 

 

『違うな、深海化はお前の潜在意識に深海の意識が入り込むことだ

つまりお前の人格が艦娘の人格、そして深海の人格に完全に別れること

それが深海化だ』

 

 

「……あんた何でそんなことを知ってるの?」

 

 

『決まっておろう、その研究は始原(ピース)と『ロキ』が解き明かした』

 

 

「っ!?待ちなさい!!ロキって誰よ!?」

 

 

叢雲は聞いたことがない名前に驚き聞き返すがブラッドは答えない

 

 

『お前には言う必要はない

いずれ会敵(エンチャント)するからな

 

だからこそお前が置かれている状況は深海化ではないのさ

何せ、私と言う完全に別の意識なのだからな

いずれ知るお前の置かれている状況を、お前がどうなっているのかをな

そして絶望する……確実にな』

 

 

ブラッドは叢雲の耳元で言うとその言葉の重さを理解する

そしてブラッドは再び歩き始める

 

 

『まぁ、とりあえずカナ討伐おめでとうだ

…お前はやはり繰り返すのだな』

 

 

「………何が言いたいの?」

 

 

『嫌?お前は我に『奪われた』はずなのに知らぬ者からまた『奪う』のだな

流石は人間の作った兵器艦娘だ』

 

 

「違……!!」

 

 

『違わないだろ?お前はカナからドレス島を…アイツの全てを奪った

仲間を、平和を、守るべき物を………命すらも』

 

 

 

「っ………」

 

 

『お前は最後の言葉を聞いたのだろ?

カナの願いを叶わぬはずの願いを』

 

 

「…………」

 

 

『どうだ?嬉しいか?楽しいか?誇らしいか?

ハハハハ!!!流石だよ!!艦娘!!!』

 

 

笑い声が響き渡ると叢雲は黙りこんでしまう

 

 

『どうした、艦娘浮かない顔だな?』

 

 

「……………私は……奪ったの?」

 

 

『ハハハ!何を今更言っているんだ?

あのドレス島は元々ピースが拠点として使っていた無人島さ

確かに近くに島はあったがあの島は完全に孤立した島として人間達に見向きもされてなかった島

だが、東雲はピースの秘密を知りたいが為にカナを探し殺そうとしていた

それは世界の為だと言っていたが恐らく自らの為だろうな

自分が『真実』に近付きたいが為に!!!お前達を利用したんだよ!!!』

 

 

叢雲はブラッドに言われて初めて気付いてしまう

自分達がやっていた事の意味を

 

 

『ハハハ!!笑えてくるな相変わらず!!!

お前達人間は勝手に自分達の物だと思い込み深海棲艦が住んでるだけで奪われたと勘違いする

ただ、他人の物が欲しいだけなのにな!!ハハハ!!!』

 

 

「っ………」

 

 

『どうした?言い返してみろ?お前達は自分達がやって来たことが『正義』であり『正しい』のだろう?

異種族が住んでる物を奪うのがお前達の正義なのだろ!?違うか!!!駆逐艦叢雲!!!』

 

 

「……………えぇ、その通りよ

あんたが合ってるわ」

 

 

『ほほう?認めるか駆逐艦叢雲

お前達はただ、奪っているだけだと』

 

 

「認めるわ、確かに私達は奪ってばかりね

あんた達の居場所を命を……ただ奪い続けている」

 

 

『ならお前も』

 

 

「だから、私はもう奪わない」

 

 

『……………は?』

 

 

叢雲の予想外の発言にブラッドは驚き目を丸くすると叢雲は続けて話を続けていく

 

 

「カナの願いを聞いて、カナの覚悟を、守る力を見て思ったのよ

私はもう誰からも奪わない!!!」

 

 

『……何を土地狂った言っておる?

お前達は奪い合うしかないだろう?それに深海棲艦もお前達を殺しに来ているんだぞ奪う以外の道なんてのは』

 

 

 

「まだよ!まだ私達に向かうべき道はある!!!

『和解』するって道が!!!」

 

 

その言葉にブラッドは黙りこむ

 

 

「だってあんた達にも話が出来るんでしょ!会話が出来るんでしょ!!それなら私達は話し合える!!分かり合うことが出来る!!!」

 

 

『………無理だな…お前達は我々と分かり合えない』

 

 

「そんなことない!!現にエアや他の深海棲艦と私は話し合えているだから!!!」

 

 

『不可能だ!!!お前達が分かり合う?馬鹿も休み休み言え雑魚共が!!!』

 

 

その瞬間叢雲の腹部に鈍痛が走ると勢い良く吹き飛ばされ海面を転がっていく

 

 

『まだ分からんのか!!もう既にそのやり方は破綻してるんだよ!お前達と我々は分かり合えない!!!』

 

 

「ゲホッゲホ!分かり…合える!!あってみせる!!!私とその仲間達がそれを成し遂げて見せる!!!」

 

 

『その願いを持つ者は過去にも居た!!だがそいつは優しすぎた故に殺された!!!種族が違う以上分かり合うなんて不可能なんだよ!!!』

 

 

「そんなことないわ!!!私達は分かり合えるはずよ!!!!だって現に私はこうして生きてる!!

あんたに助けられなかったら私は既にカナに殺されているんだから!!!」

 

 

二人の間に一時の静寂が訪れブラッドが口を開く

 

 

『……我がお前を助けた……だと?』

 

 

「そうよ!あんたがもし力を貸してくれなかったら!私はとっくに死んでいた!!違う!?」

 

 

『違うな!!我はお前に死んでもらっては困るからちょっとだけ力を貸したんだよ!!我は我の願いの為に力を貸したに過ぎない!!!』

 

 

「でも、その結果私は助かった!!!私達は必ず分かり合える!!人間嫌いだった!艦娘()人間(佐渡)が分かり合えたように!!!!」

 

 

『ほざくな!!艦娘風情が!!!』

 

 

その瞬間再び背中に鈍痛が走り叢雲は海面に叩き付けられる

 

 

『お前達が我々から奪ったのに!!綺麗事ばかり言うでないわ!!!餓鬼が!!!』

 

 

「それでも!それでも私はもう奪いたくない!!!

あんな気持ちを!!誰にもさせたくないから!!私が体験したあの気持ちを誰にもさせないために!!!」

 

 

叢雲の切なる願いにブラッドは歯軋りをすると自らの身体を溶かし再び巨体を動かす

 

 

『モウ良イ!!興ガ冷メタ!!!失セヨ!!!』

 

 

ブラッドが海面を思い切り叩くと叢雲の身体が宙に浮いていきブラッドを見下ろす

 

 

「ブラッド!!私は諦めないからね!!!

あんたとも分かりあってみせる!!!絶対に!!!」

 

 

しばらくすると叢雲は完全にその世界から消え失せブラッドは海中に潜ろうとする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『不可能ダ、何セソレハピースノ願イデアリオ前達ガ裏切ッタノダカラナ』

 

 

 

 

 

 




次回

戦争後

深層にて叢雲とブラッドは話し合い話は平行線のまま終わりを告げ再び記憶が消される
そして、叢雲は静かにベットの上で目が覚める


不味いなぁ……これ叢雲過去編やらないといけない気がすると思ってる作者ですはい()
次回からちょっとアンケート取りますかね!
あ、後何となくE6ボス殴りにいったら瑞鶴落ちました!!!やったぜ!!!
これで、鶴姉妹が揃ったぜ!!!








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二人の怒り

「ーーーーーーーーん………こ……こは?」

 

 

叢雲が目を覚ますと一度見たことがある白い天井が見え身体を動かそうとするも全く動かない

 

 

「………………固定……されてる?」

 

 

指を動かすと動きはするがその途端激痛が走り直ぐ様動きを停止させる

 

 

「うっ!痛っ!何これ………私……何で……!!!」

 

 

ぼぅとする頭を覚醒させるとさっきまでの事を思い出し飛び起きる

 

 

「そうだ!白海に襲われて!私逃げてる最中に激痛に襲われて意識を失ったんだ!!皆は!?

っ!痛い!!」

 

 

飛び起きると全身の筋肉が悲鳴を上げその痛みと倦怠感に襲われるがそれよりも先に起きなくては行けなく起き上がるとそこは病院だった

 

 

「……………私……帰ってこれたの?……白海は?」

 

 

頭だけ動かそうとするも首にも激痛が走り動かせないでいるとベッドの両隣に誰か居るのが分かり目を向ける

 

 

「………佐渡……古鷹……

あんた達…見ていてくれたのね……」

 

 

そこには佐渡と古鷹が叢雲の手を掴んだ状態で寝ておりスヤスヤと寝息を立てており微笑む

 

 

「………そっか…私……帰ってこれたんだ……

皆を無事に帰せたんだ……」

 

 

呟くと叢雲は再びベッドに倒れるとバサッと音がしその音と振動に佐渡が目を覚まし勢い良く叢雲へ頭を向ける

 

 

「叢雲!?」

 

 

「あら司令官起きたの?ごめんね起こしちゃったかしら?」

 

 

叢雲が微笑みながら返事をすると佐渡は唖然とした顔をしていると直ぐ様ナースコールを押す

 

 

「全員起きろ!!!叢雲が目を覚ましたぞ!!!」

 

 

「んぇ?む、叢雲……?」

 

 

「ん……?叢雲…が?」

 

 

「んん!叢雲!?」

 

 

いきなり叫び始めた佐渡に驚いて目を丸くすると全員を起こし周りで寝ていた全員を叩き起こす

 

 

「おい!叢雲!お前だよな!?俺の相棒の叢雲だよな!?」

 

 

「そ、そうよ?何言ってるのよ?突然?」

 

 

「叢雲!叢雲大丈夫なのですか!?」

 

 

「え、えぇ?大丈夫よ?

全身痛いし倦怠感はあるけど?」

 

 

「叢雲!お前死にかけたんだぞ!?」

 

 

「え?え?どういう」

 

 

「佐渡提督!!叢雲さんは!?」

 

 

「明石さん!!こっちです!!!叢雲が昏睡状態から目覚めました!!!」

 

 

全員の物々しい態度に叢雲は困惑していると順を追って説明されていく

 

 

「は、はぁ!!あれから1ヶ月経過したの!?」

 

 

「そうだよ、お前は歴戦の飛行場姫を討伐した後

全身が壊れる様に倒れ、大量出血で死にかけたんだ

しかも一週間ずっと輸血し続けてもその出血は止まらずお前は生死の狭間をずっとさ迷ってたんだ

つい三日前お前の容態が安定してきたからこっちに移動するまでお前は昏睡状態でギリギリ生きてたんだ」

 

 

「………そう、…じゃあ!皆は!?連合艦隊は!?木曾は!?加古は!?」

 

 

「安心しろ、全員無事……とは言わないが生きているよ

お前は全てを守りきったんだ」

 

 

「………なら良かったわ…ふぅ………」

 

 

叢雲はそれだけを言うと再びベッドに倒れ明石の検査を受け続ける

 

 

「………うん大丈夫そうですね、凄い回復力です

明日には退院しても構いませんと言いたいですが様子が見たいので一週間は居て貰いますよ?」

 

 

「分かったわ」

 

 

「明石さんありがとうございました!!!」

 

 

「いえいえ、英雄を死なせるわけにはいきませんよ

では検診は今日で最後にしておきます何かありましたら直ぐに電話してくださいね?

ではごゆっくり!」

 

 

明石はそそくさとその場を出ていくと病室には小笠原メンバーのみが残される

 

 

「にしても…良く帰ってこれたわね私達」

 

 

「本当デース!叢雲のおかげですよ!!」

 

 

「本当だ、叢雲が飛行場姫を倒したからこそ我々も帰ってこれたんだ

感謝してもしきれないさ」

 

 

「ありがとう!叢雲!私達が帰ってこれたのは叢雲のおかげだよ!!」

 

 

「流石はうちのエースね、本当に助かったわ叢雲」

 

 

「連合艦隊旗艦として一個人として礼を言うよ叢雲

お前のおかげで我々は勝てたんだからな」

 

 

金剛達が叢雲を賞賛する中古鷹が静かに立ち上がると叢雲の側に向かって歩いていく

 

 

「あら古鷹、貴女も無事に」

 

 

その瞬間パァンと乾いた音が響き渡り一人を除いて全員唖然とする

そして叢雲は古鷹に頬を叩かれたと言うことを実感するとその頬を手で押さえる

 

 

「ふ、古鷹……?」

 

 

「お、おい古鷹何で……」

 

 

「……………古鷹?」

 

 

叢雲は古鷹を見ると感動や感謝を古鷹はしていなかった瞳に一杯の涙を溜めながら肩を震わせていた

その姿を見て叢雲は慌てて

 

 

「ごめん古」

 

 

「何で!そんなに無茶するの!!馬鹿!!!!」

 

 

叢雲の謝る言葉より先に古鷹の怒号が響き渡り襟を持ち上げると涙を溢しながら叢雲に怒鳴り付ける

 

 

「叢雲!!貴女が強いのは知ってる!!無茶をするのも知ってる!!!だからと言っていつもしていいなんて言ってないよね!!!

貴女死にかけたんだよ!?『また』!!!

飛行場姫との戦いは確かに激戦だった!!!!

それでも私は貴女に引いてほしかった!!!

私達をもっと頼ってほしかった!!!何で!!何で!!一人で戦おうとするの!?私達!!仲間だよね!?」

 

 

「…………………ごめん」  

 

 

「ごめんじゃないよ!!!何で!!何で!『残されるかも知れない人』の事を考えてくれないの!?ねえ!!!!

私は嫌だよ!!もう信頼してる人を失うのを!!!

もし!誰が死んだとしても!!その代わりに叢雲が死んじゃうのだけは絶対に嫌だよ!!!何で!!何で!!頼ってくれないの!?私ってそんなに頼りないのかな!?」

 

 

「ち、違う!そう言うんじゃ!!」

 

 

「じゃあ!頼ってよ!!!私はその為に強くなったんだよ!!叢雲の手助けになりたいから!!!貴女と信じてる人を守りたいから強くなったの!!!!

なのに!なのに!!!………何でよ………」

 

 

古鷹は気持ちを吐き出すと叢雲の襟を掴んだまま泣き崩れ落ち布団を涙で濡らしていく

 

 

「……ごめん、古鷹……私……またやっちゃったわね」

 

 

「そうだよ……!いつも一人で戦って……全部背負って………私達を守るために……死のうとして……本当に!!!馬鹿!!馬鹿叢雲!!!」

 

 

「ごめん……本当にごめん古鷹……」

 

 

「でも生きてて……良かったよ…!!叢雲…!叢雲…!!」

 

 

古鷹は叢雲の胸で大粒の涙を溢し痛む身体を無視して古鷹を抱き締めていると佐渡に頭をペットボトルでコツンと突かれる

 

 

「……全くどうしようもないなお前」

 

 

「佐渡………」

 

 

「俺がお前に力を与えたのはこう言うことをさせる為じゃねぇぞ

お前にも守りたいものを守る為の力だ

命を掛けて良いなんて誰が言った馬鹿」

 

 

「………ごめん」

 

 

「自惚れすぎだ、自分の力にもう少し周りを頼れ

お前には今信じ合える仲間が居るんだよ、一人で戦うな辛かったら頼れっていつも言ってるんだろうが

お前は俺には成れないんだから」

 

 

「……………」

 

 

佐渡と古鷹に怒られてしまい叢雲が意気消沈してしまうと佐渡は金剛達にも順番にペットボトルで叩いていく

 

 

「お前らもお前らだ、叢雲は確かに強い

そうだと言って叢雲だけに頼るんじゃねぇ

コイツが死んだらどうするつもりなんだ?」

 

 

「……ごめんなさい」

 

 

「……そうだね…叢雲が死んだら……うぅ…」

 

 

「す、すまないアトミラール……」

 

 

「……私達は叢雲に頼りすぎて…たね」

 

 

「……すまない佐渡提督、私は…」

 

 

長門がそう言うと佐渡は長門にデコピンを与えると一言付け加える

 

 

「どうだ、長門大切な仲間を失いかける苦しみは?」

 

 

「……………辛いな……私は今まで……こんな気持ちを陸奥達に……させてたのか…」

 

 

「そう言うこった、覚えとけお前が必死こいて死んでも守った所で残された者はただ悲しみと辛さに耐えなくちゃいけなくなる

それが大切であればあるほどにな」

 

 

「………………後で陸奥達と話してくる」

 

 

「そうしとけ馬鹿野郎」

 

 

全員に軽い説教を終えると佐渡の顔が見える位置に移動すると全員の顔を見ながら溜め息をつく

 

 

「さてと、どうやら古鷹以外はどうやらまだ意識と実力が足りない見たいだから帰ったら地獄の特訓をするとして」

 

 

「「「「「え"」」」」」

 

 

「あぁん?文句あるのか?久しぶりの提督命令だぞお前達

覚悟しておけお前らに本物の地獄ってのを見せてやるからな…

ま、とりあえずそれは後にしといて

叢雲!古鷹!大井!金剛!イムヤ!グラーフ!長門!良くやってくれた!!お前達のおかげで我々はドレス島を奪還できた!!!

特に叢雲!古鷹!お前達は歴戦姫飛行場姫の討伐を成し遂げた

流石俺の艦娘だな!!!

とまぁ、そんなくだらないことをおいといて」

 

 

「「「「「「「くだらないこと!?」」」」」」」

 

 

「くだらないこと……でもないな?」

 

 

「「「「「「「そうでしょ!?」」」」」」」

 

 

「まぁ、何だお疲れ様!!!」

 

 

と適当な挨拶に静まり返っていた叢雲達はクスッと笑い始めてしまう

 

 

「ちょ!全く締まらないデース!提督!!」

 

 

「そうよ!もう少しまともに言ってよね!ハハ!」

 

 

「全くアトミラールは相変わらず適当だな!」

 

 

「ちょっと?こう言うところはしっかりしてほしいのですが?」

 

 

「ふふ、まぁ佐渡提督らしいな」

 

 

「そうだね、ごめん叢雲言い過ぎちゃったね」

 

 

「良いのよ、あれぐらい言ってくれないとまたやりそうだし

じゃあ次はもっと頼っていくわよ?古鷹(バディ)!!」

 

 

「うん!任せておいてよ叢雲(バディ)!!」

 

 

「さてとそんじゃ!!!」

 

 

と佐渡が言おうとすると叢雲のお腹からぐぅ~と音が聞こえると佐渡は笑みを浮かべる

 

 

「とりあえず飯にすっか!何食いたい?」

 

 

「ハンバーグデース!」

 

 

「私海鮮丼!!」

 

 

「私は親子?丼が良いな!」

 

 

「全く貴女達は!!あ、私はさばの味噌煮をお願いします」

 

 

「お前達!朝何だからもっとガッツリ食え!!

私はサーロインステーキで頼む!!」

 

 

「じゃあ、私はお茶漬けが良いです!」

 

 

「うーん、じゃあとりあえず酢豚、チャーハン、餃子10個、焼き鳥6本、もつ煮、ハンバーガー、ポテト、納豆巻き、ラーメン、ステーキと…」

 

 

「「「「「叢雲は食べ過ぎ(デース)!!!」」」」」

 

 

「アハハ……相変わらずだね…」

 

 

「その食欲は健在かよ流石は俺の相棒(バディ)……」

 

 

 

 

 




次回

食事を取りながらの回想

叢雲の目覚めに全員が喜び朝食を取りながらこの1ヶ月の間に起きたことを説明していく

これからしばらく戦闘回はお休みして日常回になります!
ただいまロイテル掘ってますが中々出ない……




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飛行場姫戦 後日談

「それで司令官、私が寝てる間に何かあったの?」

 

「まぁ色々とあったぞ、基本的にお前の看護を古鷹達に頼んでたからな」

 

 

佐渡達は間宮さんに頼んで各々病室にて朝食を取っていた

普通病室や病院では病院食に限定されるのだが叢雲達だけは特例で普通の食事が許可されている

 

 

「これは提督達にしか知られてない情報だが、ドレス島のデータベースを矢矧さん達が調べたところ向こうの大幅な戦力が分かったよ」

 

 

「どうなってたんデース?」

 

 

「……正直ヤバいな

聞いたとき寒気がしたよ」

 

 

「そんなになの?」

 

 

「……向こう側(深海側)に提督がいる

それも四人」

 

 

「なっ!提督(アトミラール)!?

深海棲艦を仕切る者達が居ると言うのか!?」

 

 

「あぁ、しかもそれが四方にいるらしい

『東方海域』

『北方海域』

『西方海域』

『南方海域』

この全てを仕切っている提督の存在が確認された

そして歴戦個体 南方棲戦姫が南方海域に潜みしかも提督の指揮下らしい」

 

 

「…………奴が南方海域に」

 

 

「だが、南方提督は今ハワイ島を拠点としておりそこにいるらしい

恐らく南方棲戦姫も同じだろう」

 

 

「……成る程、合点が行きました」

 

 

大井が一足先に食事を終えるとタブレットを取り出す

 

 

「どうした大井?」

 

 

「提督、私が昔木原の元に居たときの事を覚えてますか?」

 

 

「っ!?あ、あぁ…」

 

 

「当時私達は北方海域を突破しようとしました

ですが必ずと言っていいほどに戦艦クラスや空母達を大破させられてきました

盾になるはずの駆逐艦達を出し抜いて」

 

 

「まさかそれって……」

 

 

「はい、一度目は確かに盾になれたのですが二回目からは何故か盾になることを学習したのかわかりませんが、駆逐艦が盾になる前に戦艦達を大破させていたんです」

 

 

「……成る程、向こうに提督が居ればそれが出来るってわけか」

 

 

「間違いないかと」

 

 

佐渡はその話を聞くと深く溜め息を付く

 

 

「となるとこの話しは間違いないって訳か

マジかよ……敵側に指揮官の存在か………」

 

 

「で、司令官続きは?」

 

 

「あぁ、すまん

とりあえずその提督達はそれぞれ

東方提督、北方提督、西方提督、南方提督と名付けられ全ての海域への攻略がストップされてる

下手に奴等を刺激するわけにはいかないからな」

 

 

「懸命な判断だ、姫級すら従えるほどの指揮官か……」

 

 

「そして、世界会議が開かれて歴戦種の認識が変更された

お前達が戦った結果を全世界の首脳に見せたらしい」

 

 

「なっ!そんなことして大丈夫なのか!?」

 

 

「安心しろ、深海化の部分は編集した奴らしいぞ

それでだ、歴戦種に格付けがされた

前に戦った戦艦棲姫歴戦種は普通の歴戦とされ

飛行場姫と残り二体は別の名前に変更された」

 

 

「……どうなったデース?」

 

 

「飛行場姫『壊滅種』

歴戦の上のクラス体であり一人居るだけで国幾つかの戦力を誇り世界の全てを壊滅させるほどの力を持っているからこそその名が付いた

奴は歴戦種とはかけ離れすぎている」

 

 

「か、壊滅種………」

 

 

「それと今回の戦いをもって当時大本営を襲った残り二体

空母棲姫歴戦種と南方棲戦姫歴戦種が壊滅種に変更され無期限『連合艦隊のみ』での戦闘が許可されなくなった」

 

 

「………それって?」

 

 

「あぁ、全世界共通で奴等に手出しすることは禁止だ

奴等は…強すぎる

飛行場姫があんななのに、二体が同等と予想し更に加えて姫が何体か居たら敗けは確実だからな

下手をすれば艦隊が全て撃沈される可能性を考慮してだ」

 

 

「それも大元帥が?」

 

 

「らしい、これ以上戦力を失うわけにもいかないんだろ」

 

 

叢雲達は食べながらその話を聞いていると大井はお茶を飲み干すと溜め息をつく

 

 

「……折角、叢雲が歴戦…いえ、壊滅種の飛行場姫を倒したのにまだ終わらないんですね……

しかもあれがまだ二体」

 

 

「ま、奴が黒幕って訳でもないからな

………ただ、大元帥の話によると奴は『前より桁違いの実力を付けていた』らしいんだよな」

 

 

「うん?どういうことだ?アトミラール」

 

 

「いやな、大元帥の話によれば昔奴と対峙したことある提督が居たらしいんだがその時よりかなり強くなってた…………ん?」

 

 

佐渡はここで自分が言ってることに疑問を抱く

(………待てよ?何で大元帥が飛行場姫の強さを知ってるんだ?……海軍のデータベースも報告書もほとんどに目を通したのに……)

 

 

「他には無いの?」

 

 

「いんや、まだあるさ

とりあえず全て話していくか

お前達が飛行場姫を倒した事は、この戦争を

嫌、世界の全てを変えた

悪い方向にも、良い方向にもな」

 

 

佐渡はゴクンと飲み込むと全員に海軍で起きたこと、そして変化した世界状勢と認識を詳しく説明していく

 

 

 

 




次回

世界会議

東雲はある情報と映像を持ち内地で行われる世界会議に出席する
そしてこの戦争を加速させるため、終わらせるために世界に訴えかける

次回は佐渡達がお休みして東雲と世界海軍の話になります
デロイテルでねぇ!!!






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世界会議

時は戻りカナ撃破から一週間後急遽内地、ロシアの都市の一つモスクワにて世界会議が行われた

その参加者のほとんどが海軍の最高責任者達

世界各国の首脳の代理であり現在深海棲艦達と直接対峙している者達

 

巨大な会議室にて東雲はある情報とカナとの戦闘映像を持ち込みスクリーンの真下にてその映像を見せておりそれを見ていた世界各国の大元帥達は息を飲んでいた

 

 

そして映像が終わるの暗転していた会議室に照明が付いていくと東雲が終わりの一言を告げる

 

 

「以上が、我々日本海軍が相手した歴戦の飛行場姫だ

何かあるか?」

 

 

東雲の一言に世界各国の大元帥が言葉を失ったり唖然としている中一人の大元帥が立ち上がる

 

 

「こ、こんなのデタラメだ!!!こんなのが存在してるわけがない!!!」

 

 

そう叫びだしたのはアメリカの大元帥であり東雲を指さすと再び叫びだす

 

 

「ジャパニーズ東雲!!!貴様こんなデタラメのCG映像を見せてどうかしてるのか!?」

 

 

「ほう?アメリカ、この私が嘘を付いてると?」

 

 

「当たり前だ!!!こんな!!!こんな化物が海に居るわけないだろうが!!!

全部(フェイク)だ!!!!」

 

 

「落ち着けアメリカ、ここで我々が叫んでも変わらんぞ?」

 

 

そうアメリカの大元帥を宥めているのはドイツの大元帥であり溜め息をつく

 

 

「落ち着け!?こんなデタラメに付き合わされる我々の事を少しは考えて欲しいだけだ!!こちらはただでさえ!ハワイ島を失っているのだ!!!

早くあそこを奪還しないといけないのに!!!」

 

 

「お前が急いでも変わらんって事だろ?少しは頭をクールダウンしろよ」

 

 

「貴様!ロシア!!!お前も北方海域が落とされてるのに悠長すぎないか!?」

 

 

「それとこれは違うだろ?」

 

 

「お前なぁ!!」

 

 

アメリカを落ち着かせようとロシアの大元帥も言うがアメリカは全く落ち着きを取り戻せずにいると東雲が空砲を撃つと会議室は静まり返り溜め息をつく

 

 

「なぁ、俺はくだらない喧嘩をしに来たんじゃねぇんだよ分かるだろアメリカ」

 

 

「……そ、そうだな、すまない話を続けよう」

 

 

全員が静まり返ると東雲は静かに話し出す

 

 

「信じられないのは分かる、俺も最初はそう思ったが連合艦隊が帰ってきたとき監視者が操ると見える艦載機が追撃してきたのを見るとこれが本当であることは明白だ

そして、もう一つこれで我々は深海棲艦と完全な敵対関係になった」

 

 

「どういうことだ、東雲」

 

 

「飛行場姫討伐後、連合艦隊が『白海』に襲われた」

 

 

その発言に会議室内が再びざわつく

 

 

「諸君らにはこの意味が分かるな?」

 

 

「『やはり』奴等は繋がっていたと言うことか

となると君が飛行場姫を守り続ける物を見付けたんだな?」

 

 

「あぁ、向こう側に提督の存在を確認した」

 

 

「っ!!!何だと!?」

 

 

「深海側に!!!」

 

 

「提督だと!!」

 

 

その話に全員が驚き東雲は持ってきた情報である姫とその指揮下にある深海棲艦の情報を提示する

 

 

「おいおい!これ本当かよ!!!」

 

 

「中間棲姫…駆逐古鬼…欧州水姫…欧州棲姫…北方棲姫…港湾棲姫………そして……!!!」

 

 

「『歴戦』の南方棲戦姫もか!!!」

 

 

「これが俺が持ち込んだ情報だ、奴等は全て繋がっていた

恐らく飛行場姫は『中継地点』の役割を担っていた」

 

 

東雲の話に全員がざわついていると一人の男が手をあげる

 

 

「………………すまないが皆に私からも情報があるんだ」

 

 

「ドイツ?どうしたんだ?」

 

 

ドイツの大元帥は立ち上がると西方海域を指差すとその深海棲艦達の名前を呼び出す

 

 

「欧州水姫は……恐らく歴戦種だそして奴等の連携は…並大抵ではない」

 

 

「いっ!?」

 

 

「は!?」

 

 

「な、何だと!?」

 

 

ドイツの大元帥から突然言われた言葉に更に会議室はざわつきその理由を話し出す

 

 

「…ついこの間、我々ドイツ艦隊が攻略に乗り出したときこの

欧州水姫とアンツィオ沖棲姫、そして戦艦仏棲姫と対峙した……は良かったんだがアンツィオと仏棲姫がやけに欧州水姫を押さえ付けていたんだ

それを怪しんだビスマルクが二人を交わし欧州水姫を叩いたのだがな………

奴はそれに対して『笑っていた』」

 

 

「『笑っていた』だと?」

 

 

その話しながらドイツの大元帥は息を飲み更に話を続けていく

 

 

「あぁ、そして奴はビスマルクに言ったらしい

 

『もっと戦力を連れてこい、お前ら程度じゃ楽しくない』と

その瞬間ビスマルクは欧州水姫に吹き飛ばされ航行艤装を全て破壊され撤退を余儀なくされたらしい」

 

 

その話を終えると会議室はざわついているとロシアが話し出す

 

 

「………一つ聞きたいドイツよ」

 

 

「何だ、ロシア?」

 

 

 

「……その欧州水姫は飛行場姫と同格か?」

 

 

「あん?そりゃーどういうことだロシア?」

 

 

いきなりロシアの大元帥がそんなことを言い始めると東雲がその意図を理解する

 

 

「…つまり、歴戦種ではないと言いたいのか?」

 

 

「いや、そうではない

ただ、この強すぎる飛行場姫と欧州水姫は明らかに実力差があると言いたいんだ

だって可笑しくないか?奴等のほとんどがこの飛行場姫見たいなら我々が生きてることがありえないに等しい

 

 

……この飛行場姫は、歴戦種とは呼ぶにはふさわしくない程に強すぎる」

 

 

ロシアの話に全員が「確かに」と呟き始める

 

 

「奴等の呼び名を変えると言う事か?」

 

 

「あぁ、もしかしたらだがこれから歴戦と呼ばれる者達が現れるかもしれん

いや、もしかしたら既に海にはその歴戦しか居ないのかもしれん

それでもだ、奴は…飛行場姫は……異常だ」

 

 

「じゃあ呼び名を変えた方が良いな、確かにコイツは異常だ

こんなのが海にポンポン居るとは思えねぇ……居るとしたら俺達に勝ち目はねぇ」

 

 

「それに関しては考えてある」

 

 

全員が考えようとする中東雲は先手を切って全員に言う

 

 

「『壊滅種』だ

世界の全てを壊滅させかねない力を保有する最悪の深海棲艦」

 

 

「……成る程?悪くないな」

 

 

「壊滅種か……はぁ…また胃薬が必要になるなこりゃ…」

 

 

「それで良いだろう」

 

 

東雲が机を叩くとその名が決定したことを叫ぶ

 

 

「ならば!この時より!!この飛行場姫を壊滅種とする!!異論は無いな!?」

 

 

東雲の言葉に全員が納得する

 

 

「この飛行場姫と同格とされる

空母棲姫歴戦種と南方棲戦姫歴戦種も壊滅種に変更!!!

そして我々が確認した深海棲艦の始祖たる者達を始祖級とする!!!」

 

 

会議の内容が決まっていくと同時に世界各国の大元帥がそれに納得し同意していく

 

 

「そして私がここに来たのは他でもない!!

これとは違う理由からだ!!それを伝えていきたい!!」

 

 

「ほほう?まだあるのか?東雲」

 

 

「あぁ!とんでもないことを言うようだが!!」

 

 

東雲は息を吸い込むと全員の顔を見ながら叫ぶ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は!!!!ここに集結してくれた君達を称え!

そして認めている!!

だからこそ!!!我々が一つになるべきだと思う!!

これより私は世界海軍連合をここに建設したいと思う!!」

 

 

「「「「!!!???」」」」

 

 




次回

世界海軍連合

東雲は日本だけでは深海棲艦には勝てないと判断し世界各国に力を求める

今年も終わりですね!!
ぶっちゃけ年末大掃除で何にも出来なかった作者どす()
でも今年最後に天城が来てくれました!!!
めっちゃ嬉しいけど!!ロイテルさんが来ねぇ!!!
来年もよろしくお願いいたします!
良いお年を!!




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世界会議 二

「世界連合だと?」

 

 

「そうだ」

 

 

「おいおい、東雲

戦力ならお前の所だけで充分だろ?流石にうちらから使う必要なんて………」

 

 

「……いや、残念ながら必要だ

何せ今回飛行場姫を討伐した編成は俺が認めて送り出したのにも関わらず負けかけていた

それほどに奴等は強大な敵なんだよ

飛行場姫は陸上に特化した深海棲艦

これから我々が相手するのは海上に特化した深海棲艦達だ

だからこそ、今我々が一つになり戦わねば……この戦争は負ける」

 

 

東雲の言葉に全員が沈黙するがアメリカが笑い出す

 

 

「ハッハッハッ!それもそうか!!

確かにあんな化け物が居るんだ

我々も連合を組まないと不味いか……こっちにも色々あるが仕方ない」

 

 

アメリカが笑うとドイツがにこやかに笑う

 

 

「世界連合か、確かに悪くない」

 

 

「やるしかないか我々も争ってる場合ではないと言うことだな」

 

 

「今こそ一つとなり戦うしかないか」

 

 

「やってやろうじゃないか!!我々の国を!世界を守ろうではないか!!」

 

 

二人に続き各国から賛同する声が上がっていくと東雲は宣言する

 

 

「では!ここにいる者達は世界海軍連合に加入すると言うことで良いな!?」

 

 

「「「「おぉぉぉ!!!!」」」」

 

 

「…すまない、ここに集まってくれた世界各国の英雄達よ

私は弱い、君達の力を借りなくてはこの戦争に勝てない自分が悔しく思う、だがここで君達から連合に加入してくれたことを嬉しく思う!!

必ずや!!我々に!!この戦争に勝利を!!!」

 

 

「「「「おぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」」」」

 

 

「ではひとまず、今日の会議はここまでとしよう!!

明日から三日間これから世界各国での艦娘の認識や常識を伝えていき我々を一つにしていこう!!!

以上だ!!!解散!!!!」

 

 

こうして三日間東雲が主催した会議は閉幕し世界各国の認識と深海棲艦達の呼び名が決まっていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、時は現在に戻り東雲は一人ある集中治療室に居る男に会いに来ていた

 

 

「あっ…………提督……」

 

 

「…来てたのか矢矧、それと東雲で良い

どうせ誰も来ないからな」

 

 

矢矧は側にある花瓶の水を取りかえており男は寝息を立てながら寝ていた

 

 

「如月は?」

 

 

東雲が言うと首を横に振るうとそそくさとその場を後にしてしまう

そして東雲はゆっくりと近付くとベッドで治療を受け続けている如月の頭を優しく撫でる

 

 

「………如月聞いてくれ、世界海軍連合を作ったんだ

これで世界各国の深海棲艦に関する情報を共有できる

…これでお前を裏切った始原……ピースの目撃情報が手に入るかもしれない……

でもな…お前の知り合い、カナを殺してしまった…その贖罪はきちんと受ける

奴は、『昔から』ピースの側近であり盾だったからな……奴が情報を掴んでいると思ったんだ…

すまない……私はお前みたいに優しくないし周りをみることが出来ない」

 

 

東雲はそう言うとベッドに座り込みながら再び如月の頭を撫でる

 

 

「やはり俺だけでは大元帥が務まらん

お前が居ないと…駄目だとはな…笑えてくる

人は失ってから気付くと言うが本当だな

羽田にお前の代わりをやらせているがやはり駄目だな

アイツは権力やら俺の事を気にしすぎている

………大元帥に相応しいのは俺じゃないお前だよ

俺は器じゃない、だがお前が寝ている間は俺に任せてくれ

何とかして見せるさ、何とか…この戦争を終わらせてやる

四年前、あの時終わるはずだった戦争を必ずや!!」

 

 

そう言うと東雲は立ち上がりその病室を去っていくと途中矢矧とすれ違う

 

 

「東雲、あまり無茶をするな

貴方に倒れられたら我々も…海軍も困る」

 

 

「お前が言うな生真面目娘が、俺に指図する暇があったら休め」

 

 

「だが!貴方は今!!」

 

 

「指図するな!これは俺の復讐だ!!!!

俺達の友人を!!大切な如月を殺そうとしたな!!!

何が『東雲さんを愛してる』だ!!!許さねぇ!!アイツを!!誰よりも優しい如月を騙しやがって!!!!

絶対見つけ出してこの手で殺してやるんだよ!!!」

 

 

 

矢矧の心配を他所に東雲はズカズカと廊下を歩きながら歯軋りと共に呟く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピース…必ず見つけ出してやる……俺達を裏切り如月に重症を負わせた代償は…大きいぞ!!!

お前が望んだ平和な世界とは嘘だったんだな!!!

この深海棲艦共が!!一体残らず絶滅させてやる!!!」

 

 

 

 




次回予告

訪問者

東雲が復讐に燃える中叢雲達はゆっくりとその傷を治していた
そんな中一人の訪問者が叢雲達の前に現れる

明けましておめでとうございます!!
今年も書いていきますがよろしくお願いいたします!!
因みに艦これからお年玉としてサラトガとロイテルさんが来てくれました!!!
やったぞ!!!












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飛行場姫戦後日談 二

「とまぁ、そんな感じだ

とりあえず分かったか?」

 

 

「まぁ、大体はね」

 

 

叢雲達は食事を終えると一息付き飲み物を飲んでいた

 

 

「それと、明日俺は一時的に向こうに帰るからな?」

 

 

「え!?な、何でデースか!?」

 

 

「そりゃそうよ、提督が鎮守府をこんな長期間開けてたら起こられるでしょ?」

 

 

「ま、そゆこと

すまないが、お前達に叢雲を任せるぞ?」

 

 

そう言いながら叢雲の頭をぐしゃぐしゃと撫でていると不服そうな声をあげる

 

 

「私は平気よ……」

 

 

「うるせぇ!お前は休んでろ!!」

 

 

すると叢雲の病室がノックされるとガラガラと艦娘達が覗いてくる

 

 

「お!叢雲起きてるじゃーん!!ちょっと大丈夫なの!?」

 

 

「ちょっとうるさいですわよ鈴谷!叢雲、お身体は大丈夫なのですか?」

 

 

「叢雲さん目を覚ましたんですね!良かったです!!」

 

 

「へぇ、あんた良くあの状態から生きてたわね?

流石は雷撃姫ね」

 

 

病室に入ってきたのはカナ戦の時に共に戦ってくれていた鈴谷、熊野、神通、山城であった

 

 

「あんた達、無事だったのね

良かったわ」

 

 

「いやいや!叢雲こそ大丈夫なの!?

あの時全身から大量出血して倒れちゃってさ!?」

 

 

「叢雲、何かありましたら私達に言ってきてくださいね!!貴女の為なら何でも致しますわ!!」

 

 

「別に良いわよ、あんた達が無事なら」

 

 

「そうもいかないわよ、あんたがあの時飛行場姫を倒してくれなかったら私達全滅してたのよ

だから礼くらいはさせなさいよ」

 

 

「そうですよ、貴女は我々の英雄であり正に救世主です

本当にありがとうございました

私達に何かさせてください!」

 

 

鈴谷達に迫られ焦っている叢雲を尻目に佐渡は微笑みながら静かにその場を後にし病室を出ていくと

 

 

「……待っていた佐渡提督」

 

 

「あれ?矢矧さん?どうかしました?」

 

 

病室の外で矢矧が待ち受けており佐渡を見るや否や手を取る

 

 

「ここでは話せない内容でな少し付き合ってくれ」

 

 

「はいはい?」

 

 

そう言われると佐渡の手を取りしばらく歩いていると屋上に出ていき矢矧は辺りを確認し鍵を閉める

 

 

「随分と警戒心高いですね?どうしたんですか?」

 

 

「……正直に答えてくれ、何を隠してる?」

 

 

突然そんなことを言われてしまい佐渡は首を傾げる

 

 

「はい?唐突に何です?」

 

 

「惚けるな、お前達が我々海軍に何か隠しているんだろ?

それぐらい分かる」

 

 

「いや、そんな隠し事何てしてませんよ?」

 

 

「嘘をつくな、別に咎めている訳ではない

お前達の小笠原を簡単に往き来出来ているのは何かあるからなんだろ?」

 

 

(チッ、エアの事か……ただのかまをかけただけじゃなかそうだな)

 

 

「あぁ、それは大淀さんから安全なルートを教わったんですよ

初めて小笠原に行くときにね」

 

 

「あり得ないな、何せあそこの艦隊は誰であろうと必ず我々を追撃してくる

正に小笠原を何かから守るように」

 

 

「………」

 

 

「…安心してくれ、今の私はオフでな

東雲さんとは別だ

あの人には何にも話さないさ」

 

 

佐渡はゆっくりと矢矧に近付くと顎を持ち上げ瞳を間近で覗き込む

 

 

「………本当にですか?」

 

 

「……本当だ、信じてくれ

ただの好奇心だしそれを知れば私はこれから君達の役に立てると思う」

 

 

二人の間に沈黙が流れ佐渡は矢矧の身体に全く変化がないことと瞳孔の動きを観察すると溜め息を付く

 

 

「どうやら嘘は付いてない見たいですね

良いですよ、それじゃお話しますね」

 

 

そして佐渡はゆっくりと自分の鎮守府に居るエアの事と艦隊の事を話すただし、エアが空母棲姫の壊滅種であることと提督殺しであることを伏せて

その話を聞いている矢矧は静かに笑う

 

 

「やはりか」

 

 

「やはりって分かってたんですか?」

 

 

「いや、薄々な

歴戦……嫌、今は壊滅級か…

あれが攻め落とすだけ落として放棄するとは思わなかったんだ

仲が良いのか?そのエアと呼ばれる深海棲艦とは?」

 

 

「うーん……そこそこ…ですかね?

アイツは俺をからかって楽しんでるだけだと思うんですが……どうなんでしょうかね…」

 

 

「それは仲が良いと言うことだろう

……羨ましいなお前達が」

 

 

矢矧は手すりに掴まりながら空を見上げ呟く

 

 

「実は、昔『我々も』深海棲艦と交流があったんだ」

 

 

「!?

え!そうなんですか!?」

 

 

「あ、言うんじゃないぞ

言ったらお前達の事もバラすからな?

……とても優しい奴等でな、正直戦いたいと思えないほどの者達はだったんだ

それこそ、我々と変わらぬ言葉と思いでな

…楽しかった彼女達と居れて……」

 

 

「……会わないんですか?その人達と」

 

 

佐渡が問うと矢矧は首を横に振るうと静かに話し出す

 

 

「実は仲違いをしてしまってな会えないんだ

それに向こうも我々から逃げているのか避けているのか分からないが見付からなくてな…」

 

 

「そう……なんですか…」

 

 

「実は君を呼んだのはお願いがあってなんだ

聞いてくれないか?」

 

 

「はいはい?何でしょうか?」

 

 

矢矧は深呼吸をすると佐渡の顔を見ると頭を下げる

 

 

「ある深海棲艦『ロキ』と呼ばれる者を探してほしいんだ

それも大元帥の東雲さんに伝えないで秘密裏に」

 

 

「ロキ?誰なんです?ソイツは?」

 

 

「……君にだけは話そう、何故我々が持ち帰った情報が『あれだけだった』のかを」

 

 

 

 

 

 





次回

もう一人の支配者

時は再び戻り矢矧達がドレス島に潜入した時に戻る
矢矧達はそこでドレス島の影の支配者と対峙し真実を知りかける

次回新たな敵の予感です!
前々から決めてはいたのですが、名前はある人から盗みましたw
ごめんなさい!!



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電脳ノ管理人

時間は再び巻き戻り矢矧達がドレス島での情報を掴み東雲に報告した後になる

 

 

「嘘でしょ……まだ海にこんなに姫級が……」

 

 

「し、しかも深海側に指揮官まで居るって……ヤバすぎでしょ……」

 

 

全員が唖然とする中矢矧は更に情報を得ようとパソコンを打っていると大淀も隣で同じ様に動き出す

 

 

「矢矧さん!ここにはまだ情報がありそうなんですか!?」

 

 

「あぁ!ここは飛行場姫の根城にして守っていた場所だ!

まだあるはずだ!!『霧の海域』に新たな深海棲艦の情報、他にも始原が居る場所等が詳しく分かるはず!!」

 

 

「分かりました!では私も手伝います!!

だからこの場所を探していたんですね!!こういうのに関しては私もやったことがありますから!!」

 

 

二人がパソコンのデータベースにアクセスし更なる情報を引き出そうとすると突然警報が鳴り出す

 

 

「なっ!」

 

 

「警報!?まさか、誰か接近して」

 

 

「違う!!これはまさか!ハッキング!?」

 

 

矢矧と大淀が操作していたパソコンが勝手に動き始め最初のデスクトップ画面に戻っていくと停止する

 

 

「く!まさかハッキングされてるなんて!!今すぐそれを直さないと」

 

 

『ザザ、それは不可能だよ、そのデータベースはもう僕が掌握した』

 

 

突然スピーカーから変成された声が聞こえると全員は周りを確認し警戒体制を取る

 

 

「誰!?どこから声を出してるの!?」

 

 

「大淀!大鳳!伊勢!辺りに誰か居る!?」

 

 

「居ません!少なくともこの施設には!!」

 

 

『居るわけないだろ、僕は別の場所からカナのデータベースにアクセスしてるんだからね』

 

 

良く見ると部屋の右端にスピーカーが付いており画面を見るとスパナの絵が映し出されていく

 

 

「……まさか、深海側の者なの?私達が来たことに気付くとはね……」

 

 

『うん?何言ってるんだい?君達の事はこの島に来たときからずっと監視カメラで見ていたよ』

 

 

「なっ!じゃあ何で今更私達の邪魔をするの!?」

 

 

『決まってるだろ?これ以上データベースを覗かれては困るからね

ロックを掛けさせて貰ったよ』

 

 

「……貴女は誰なの?」

 

 

スピーカーに向けて話しているとそこから溜め息が聞こえる

 

 

『はぁ、言うわけないだろ?ただでさえ、君達に情報の一つを教えてやったと言うのに』

 

 

「っ!!まさか、さっきのマップは!!」

 

 

『そうだよ、君達がカナを倒した報酬……いや、その実力、そして努力を讃えての物さ

別にそれすら分からなくさせてやっても構わなかったのに随分と欲が深いようだね君達は

良くもまぁ、僕の『友人』を殺ってくれたね』

 

 

その瞬間部屋の中にあった全てのパソコンに電源が入り何かをアップロードしていく

 

 

『でもまぁ、自己紹介は大切だって始原(ピース)も言ってたっけかな?

良いだろうなら教えてあげるよ』

 

 

そしてアップロードが完了すると武器庫にある自立型艤装達と他の施設に管理されていた深海棲艦達が動き始めとその音と映像がデスクトップに映されていく

 

 

「ちょ!ちょっと!!何あれ!?」

 

 

「どうしたんですか!?」

 

 

「武器庫らしき場所から多くの艤装が動き出しています!!

しかも他の場所からは深海棲艦が動いています!!」

 

 

「なっ!それって!!!」

 

 

「コイツだ!!コイツがハッキングして自立型艤装と深海棲艦を操ってるんだ!!」

 

 

そして更に動き出した深海棲艦達と自立型艤装は部屋を出ると真っ直ぐに矢矧達が居る部屋に向かっていく

 

 

「ま、不味い!!その全てがこの部屋に向かってきている!!!」

 

 

「ヤバイ!コイツ!私達を袋叩きにするつもりだよ!!!」

 

 

周りが慌ててる中矢矧は落ち着きその声からの言葉を待っていると自己紹介を始める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『僕の名前は『ロキ』この島と深海棲艦達のネットワーク管理人にして責任者

『始原の左腕』と呼ばれた深海棲艦だ』

 

 

「…ロキ……!聞いたことある!お前は確か!!」

 

 

その瞬間廊下から破壊音が聞こえ大淀は慌てて廊下に出ると恥からト級が姿を見せこちらを確認すると吠える

 

 

「ガァァァ!!!」

 

 

「不味い!もうここまで!!伊勢さん!お願い出来ますか!?」

 

 

「了解だよ!!」

 

 

伊勢は慌てて主砲を展開するとト級目掛けて砲撃するとその音を聞き付けたのか深海棲艦達が矢矧達の部屋に全速力で向かいだす

 

 

「矢矧さん!逃げましょう!!我々だけではこの数を相手出来ない!!」

 

 

「待ってくれ!もう少しコイツと!!」

 

 

「矢矧!不味いよ!!自立型艤装も反対側から向かってきてるよ!!」

 

 

「くっ!!仕方無いか!!」

 

 

『ハハハ!早く逃げると良いよ!!

悪いけどこの島からは何もあげないよ!!

僕は人間と艦娘が大嫌いだからね!!』

 

 

矢矧が舌打ちをすると慌てて外に出た瞬間伊勢が砲撃を受けてしまう

 

 

「ぐぅ……こ、これ以上はヤバイね…ごめん矢矧……」

 

 

「仕方無い!全員ドレス島からは脱出するぞ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが、ドレス島で起きたことだ」

 

 

「……ロキ…始原の左腕………

何かとんでもねぇな…」

 

 

その話を聞いた佐渡は深く溜め息を付く

 

 

「恐らくそのロキは深海側でもかなり重要な立ち位置に居ると思われるんだ

それを探してほしい」

 

 

「と言われてもなぁ……どこにいるかは検討付くんですか?」

 

 

「……残念ながら全く調べる前に我々はあの島を追い出されてしまったからな」

 

 

「マジかぁ………うーん……」

 

 

「君の所に居る、エアと呼ばれる者は知ってそうか?」

 

 

佐渡は矢矧に言われると唸りながら考えてると

 

 

「分からない……ですね、アイツがどこまで深海棲艦に詳しいかは知らないですからね」

 

 

「そうか……なら希望は薄いか…」

 

 

佐渡に言われると矢矧は深い溜め息を付きながら落胆し再び空を見上げる

 

 

「にしても、何で小笠原に深海棲艦が居ると思ったんですか?」

 

 

「ん?あぁ、その話が途中だったな

実は小笠原の事なんだがな、初めて『姫が集結』し島を攻撃したのは」

 

 

その話に違和感を感じ佐渡は首を傾げながら聞き返す

 

 

「『姫が集結』した?どういうことです?」

 

 

「やはり聞いていないか

あの島が昔栄えており鎮守府としても優秀だったのは知ってるよな?」

 

 

「えぇ、それは聞きました

そう言えば、鎮守府と島が壊滅した理由は聞いていませんでしたね」

 

 

「そうだろうな、今でもあの島が何故狙われたのかも全く分からないらしいしな」

 

 

矢矧はそう言うとスマホからある情報をデータから取り出すとそれを佐渡に見せる

 

 

「えっと何々……『速報、小笠原島に姫が集結を確認

至急近辺の鎮守府は最強の戦力を持って小笠原へ向かわれたし』…

これは?」

 

 

「当時、海軍に速報として流れたニュース見たいな物だ

私達も小笠原に向かおうとしたがその道中、戦艦水鬼、中間棲姫、欧州棲姫、戦艦仏棲姫等の多くの姫に遮られたんだ

姫があそこまで集結し島を破壊するなんて事は今まで無くてな

我々も驚いたよ

結局我々は何も出来ずに島は焼け野原になってしまってな

小笠原鎮守府が深海棲艦の怒りを買ったのか、それともこれは我々への警告なのかは分からなかったけどな

だから何かは居ると思ったんだがやはりか」

 

 

「…………」

 

 

佐渡はここで初めて着任した時の事を思い出す

(確かに、可笑しいことだらけだったなあそこ

艦娘の白骨遺体、破壊された鎮守府、街すらも焦土に変えた爆撃、まるで島全てを破壊する為に行われた殺戮……エアがそれを許すとは思えない)

 

 

そして一つの言葉を思いだす

 

『ここの後任者にこれを託す

 

君の好きにするがいい

 

殺すも生かすも君が選べ』

 

 

(………あれは何だったんだ?鍵は確かに持ってはいるが小笠原に何があるんだ?)

 

 

佐渡が黙り混んでいると矢矧から背中を叩かれビクンと震える

 

 

「大丈夫か?佐渡提督?」

 

 

「え!あ、あぁ!大丈夫ですよ!

じゃあちょっとこちらでも探してみますね!!」

 

 

「あ、あぁ…すまない

それとこの話は大元帥には内密にな」

 

 

「そう言えば、何でです?

大元帥に隠れて俺に依頼だなんて?」

 

 

「…………」

 

 

佐渡の質問に矢矧は黙りながらある写真を見せると佐渡は目を丸くしながら驚く

 

 

「っ!?こ、これって!!!」

 

 

「あぁ、始原(ピース)と監視者…『ルナ』だ

私が仲違いしたのはその二人なんだ」

 

 

「な、何で始原達と!?」

 

 

「それは言えん、だがこれで分かるだろ

我々は一度始原と会い、『ある取引』をした

だがそれは決裂し東雲さんは深海棲艦を根絶やしにするつもりなんだ………

私はそれを止めたい」

 

 

矢矧の悲しそうな表情に佐渡はそれ以上の詮索が出来ずに思いを押し殺していると矢矧が頭を下げる

 

 

「私は……始原(ピース)が我々を良く思わなかったのかもしれない

だが!それでも私はもう一度始原と話をしたいんだ!!我々が何をしたのか聞きたい!真実を知りたいんだ!!

今、東雲さんに始原を見付けさせるわけにはいかない!!あの人は今復讐に燃え!始原を殺そうとしている!!

だから!頼む佐渡提督!!始原を見付けて欲しい!!

少しでも良い!彼女に近付きたいんだ!!

恐らくロキは彼女の居場所を知っている!!だから!!!」

 

 

矢矧の必死な頼みに佐渡は矢矧の肩を叩くと笑みを浮かべる

 

 

「分かりましたよ、任せてください

全力を尽くしてロキを見つけ出して見せます」

 

 

「………本当か?私達は君を…」

 

 

「本当ですよ、まぁ秘密裏ですから進捗もほとんどないかもしれませんが何とかして見せます」

 

 

佐渡の言葉に矢矧は涙を浮かべながら佐渡の手を取る

 

 

 

「……すまない……佐渡提督…本当にすまない……」

 

 

「ちょっと矢矧さん!?ま、まだ早いですよ!!

その涙は分かったときに始原さんに対して流してくださいよ!!」

 

 

「……ふふ…すまない……成る程な…東雲さんが貴方に固執する理由が分かった気がするよ……

では、すまない佐渡提督頼んだぞ」

 

 

「はい、任せてください!」

 

 

佐渡と矢矧は笑みを浮かべながら手を取ると二人で屋上を後にしようとする

目の前を歩く矢矧の背中を見ながら佐渡は心の中で矛盾に気付く

(……変だな、エアは始原は死んだって言ってたなのにこの人達は始原を追っている…逃げていると思ってる

…確かに深海側と連絡が取れなくなったなら分かる…だが、何でだ?まるで何かに操られたみたいにいきなり連絡が取れなくなるなんて…あるのか?)

 

 

その疑問を頭の中で巡らせながら佐渡達の一日は過ぎていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

それと同じ時刻、一人の艦娘が大元帥である東雲の部屋にてある命令を受けようとしていた

 

 

「お前、本気か?」

 

 

「えぇ、貴方達の恩義は忘れてません

ですが行きたいんです、駄目ですか?」

 

 

「……お前を助けたのは如月だ、俺に決定権はねぇ」

 

 

「でも私も『ある欠陥』を抱えてるし条件は満たしてますよね?」

 

 

「………はぁ、仕方無い

奴等には『特別報酬艦』として譲渡してやるか

良いだろう、お前の小笠原流しを許可してやる」

 

 

「ありがとうございます、東雲さん」

 

 

その艦娘は笑みを浮かべながら敬礼をする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の夜中ある姫級がドレス島海域にて滞在していた

 

 

「どう?お前達、カナ様は見付かった?」

 

 

「グオぉ……」

 

 

「キュイ…」

 

 

「ガルゥ…」

 

 

「居ないか……可笑しいわね…ここに撃沈したってロキから連絡があったのに……

カナ様の命令で椿はハワイ島に送り届けたし、後はカナ様の御遺体を確認しないといけないのに……」

 

 

「ガァァァ!!」

 

 

「どうかしたの?」

 

 

そんな中海中から一体の白鮫が出てくると何かを咥えており深海棲艦が近寄る

 

 

「あら!それはカナ様のアブソリュート!!!

カナ様を見付けたの!?」

 

 

「ガァ……」

 

 

だが、白鮫は首を横に振るい深海棲艦は落胆してしまう

 

 

「うーん……どこに消えてしまったのですか……カナ様……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてここは再び場所が変わり深夜何体かの深海駆逐艦が海中から浮上すると一人の女性を背中に乗せながら輪陣形を取りある島を目指していた

 

 

 

 

 





次回

拾う命

新たな敵ロキの情報を知り得た佐渡は一度小笠原に戻りエア達の様子を確認しにいく

かなり真実に近づいた感じがありますがまだまだです!!
実は話のストックはかなりあるのですがやろうかは決めてません()
実質イベント終わったから冬イベントに備えて資材を集めなくては……




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(エア)提督(佐渡)

時は進み佐渡は小笠原島に一時的に帰宅しており現在、エアとイーちゃんの三人で小笠原の海岸を歩いていた

 

 

「……いきなりどうしたんだよ、エア」

 

 

「べっつにー?良いでしょ、あんたと久しぶりに話をしたかっただけよ

1ヶ月振りでしょ?」

 

 

「ま、まぁそうだけどな……」

 

 

エアと二人で歩いていたが佐渡はいつにもまして話をしようとせず話そうとしてもすぐさま言葉を詰まらせていた

 

 

「……ねぇ、ちょっと?」

 

 

「うん?な、何だ?エア?」

 

 

「あんたさ、珍しく話そうとしないじゃない?

どしたの?」

 

 

「いや……最近忙しかったからな……疲れてるんだよ…」

 

 

「ふーん?」

 

 

小笠原に帰ってきたときソラ達と話しイーちゃん抱き合った時から佐渡は少しぎこちなくなっていた

ソラ達が冷たかったとかではなく、ただ自分達が倒したカナに関しての後ろめたさがあったからである

それを察したのかエアはそれよりも先に佐渡を連れ出していた

そして鎮守府からかなり歩いた所でエアが立ち止まると佐渡にヅカヅカと近付き顔を掴む

 

 

「あんた、何気にしてる訳?」

 

 

「な、何の話だ?」

 

 

「惚けるな、私はこれでも多くの人間や艦娘を直に見てきた貴方の変化位見破れるわよ」

 

 

「…………」

 

 

「何?カナと対峙したことで私が怖くなった?確かに私はアイツと同格よ

ぶっちゃけた話、深海側でも私は」

 

 

「違う!そうじゃない!!」

 

 

「じゃあ何?何で私にそんな素っ気ない態度取るのかしら?

……嫌、深海棲艦達にかしら?

もしかしてカナの事を気にしてるの?」

 

 

「っ!!」

 

 

佐渡は核心を突かれてしまい目を逸らすとエアは無理矢理それを直すと佐渡の頭に自らの頭をぶつける

 

 

「いてっ!何しやがるんだよ!!」

 

 

「うるさい!!あんた!何くだらないこと気にしてるのよ!!」

 

 

「くだらないって!俺達はお前の仲間を!!!」

 

 

「だからそれがくだらないって言ってるの!!あんたねぇ!!……ごめん、言い過ぎた

私達は戦争をしてるのよ、失って当たり前よ」

 

 

エアは手を離すと佐渡に指差しながら呆れている

 

 

「別にあんた達がカナを倒したからって私があんたをどうこうするってことは無いわ

と言うよりは私はあんた達を称賛してるのよ?」

 

 

「は、はぁ?何でだよ?」

 

 

そう言うとエアは近くのコンクリートに座り顎に手を起きながらニヤリと笑う

 

 

「そりゃそうよ、誰も倒せないと言われている姫のEliteクラスをあんた達は倒したのよ?

絶望的で勝てる見込みなんてない戦いにあんた達は決して諦めずカナを倒したことは誰にも出来やしない

それは努力の結晶、実を結んだ実力、その勝利は貴方達の全て

深海提督共も、カナを撃破したお前達をついに意識し始める

そして、それと同時にお前達が私達と戦える敵であること言うことの証明

素晴らしい事だわ

本当に…本当にお疲れ様佐渡」

 

 

「………すまない」

 

 

「だから何で謝るのよ!

一応言っといてあげるけど、カナは負けるはずが無かったのよ!!

カナの実力は深海棲艦達が恐れ戦き提督や始原(ピース)ですら認め命令が出来ないほどだったのよ

だから誇りなさいその勝利に」

 

 

「だ、だがお前達の仲間の命を…俺達は奪った」

 

 

「それは仕方のないことよ、私達にも成すべき事もある

安心しなさい、カナはあんた達の事を憎んでない

負けたのはアイツの慢心が原因よあんたは悪くない」

 

 

佐渡がエアの言葉を受け入れきれずにいるとイーちゃんが佐渡の足下まで歩き足にすり寄る

 

 

「ワン?」

 

 

「イーちゃん……」

 

 

「『元気ないよ?どうかしたの?』ですってよ」

 

 

「っ!?お、お前!イーちゃんの言葉が分かるのか!?」

 

 

「まぁね、全くイーちゃんはあんたの帰りをずっと待ってたのよ

それにあんたはカナを倒すことでそのイ級と私達を守ったのよ

だーかーら!!」

 

 

エアは立ち上がると佐渡の腕を引っ張り顔を胸に埋めると笑みを浮かべる

 

 

「誇りなさい、私達(姫級Elite)の一人を倒した貴方は偉大よ

大丈夫、誰かがあんたを貶しても恨んでも私だけはあんたを認めてあげる

あんたは立派よ、小笠原の提督佐渡」

 

 

「…………すまん、エア」

 

 

「今日だけよ、本当は吐き気がするほど嫌なんだからねお馬鹿」

 

 

「ワン!ワン!」

 

 

「ふふ、『元気出して』だってよ?」

 

 

「………あぁ、ごめんなイーちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくした後に再びエアとイーちゃんの三人で歩いているとエアがイタズラに微笑みながら佐渡をからかう

 

 

「にしてもあんたにもそう言う一面があるとは驚いたわー

しかも身体も触られちゃったなー

あーあ、今度大井達に言っちゃおっかなー」

 

 

「頼む辞めてくれ……心に留めといて……」

 

 

「あ、そっかあんたってもしかして私見たいなのがタイプなの?

成る程……と言うとあんたまさかいつも私の事そう言う風に見てたの!? 

あんたが私達を受け入れたのってそう言う理由!?

ふーん……ムッツリ変態提督か処そうかしら?」

 

 

「待った!そんなことはない!断じてない!!」

 

 

「で、私の身体の感想は?」

 

 

「そりゃもう最高でした!!!」

 

 

「やっぱり変態じゃない」

 

 

「違う!!!」

 

 

「ワン!ワン!!」

 

 

佐渡をからかっているエアとイーちゃんは楽しそうにしているとため息を付く

 

 

「………なぁ、エア」

 

 

「何よ?」

 

 

「…ありがとな、あの時監視者からの空爆を助けてくれたのお前なんだろ?」

 

 

「あら、良く分かったわね?」

 

 

「あそこまで上手い艦載機捌きはお前位しか居ないからな」

 

 

「別に良いわよ、監視者のやり方が気に食わなかっただけだし?

あ、その代わり冷蔵庫にあったハー◯ンダッツとかアイスとか無くなったから早く買ってきてきてね?」

 

 

「対価あるんじゃねぇかよ……向こう行ったときに買ってくるよ」

 

 

三人が散歩しているとエアが溜め息を付くと再び佐渡の顔を掴むと睨み付ける

 

 

「他に、何かあるんじゃないの?」

 

 

「は、はぁ?何がだよ?」

 

 

「私に聞きたい事とかあるんじゃないの?

さっきそれを言い掛けてたでしょ?」

 

 

「………ハハ、流石だな

実はな…」

 

 

佐渡はエアに矢矧から言われた事を包み隠さずに話していくとエアが目を丸くし肩を掴まれる

 

 

「ねぇ!それ本当!?」

 

 

「あ、あぁ…矢矧さんから言われた話なんだが

エアは知ってるのか?『ロキ』って深海棲艦を」

 

 

「…知らない奴はほとんど居ないわよ

ロキ 始原(ピース)の左腕にして全ての艤装とインターネットを支配する権限を持つ深海棲艦

あんた達が呼ぶのは『集積地棲姫』

そして叢雲達が倒したカナの艤装アブソリュートを作り出し

海軍が作り出した試製62型水上単装砲の設計図を作り出した奴よ」

 

 

「は、はぁ!?あの二つの設計図を作り出した深海棲艦!?」

 

 

エアに教えられたその話に耳を疑うが溜め息混じりに更に話を続けていく

 

 

「そうよ、深海棲艦の中で最も頭がキレる奴よ

始原が最も信頼する深海棲艦の一人で私の艤装等を手掛けたあんた達には最悪の相手ね」

 

 

「うへぇ……そんな奴が居るのかよ…勘弁してくれよ……」

 

 

「しかも機械関連にかなり強くてね、アイツが作り出す艤装はその深海棲艦専用になっててどれもイカれてる位強いのよ」

 

 

「………胃が痛くなってきた…」

 

 

聞いてるだけでも胃が痛くなるような話に落ち込んでいるとエアはその先を歩きながら呟く

 

 

「でも何でアイツが……アイツはかなり慎重なはずなのに……」

 

 

「因みにソイツも化け物並みなのか?

お前達見たいに?」

 

 

佐渡が渇いた笑いをしながら言っているとエアが首を傾げる

 

 

「いいえ?すんごい弱いわよ?」

 

 

「……またまた…どうせ椿見たいな奴なんだろ?」

 

 

「いや、弱いわよ?ぶっちゃけアイツと戦闘してもあんた達なら余裕なんじゃない?

むしろ、金剛とか大井一人でも余裕よ?」

 

 

「…………嘘ぉ?」

 

 

「本当よ、アイツはあんた達で言う明石見たいな感じ

でも明石とは違ってとんでもばかり作るし艤装を遠隔操作出来るからそこは大きく違うのかしら?」

 

 

その話を聞いているとやはり頭が痛くなっており溜め息を付き頭を抱える

 

 

「明石さんの深海棲艦バージョンって事か?畜生……とんでもねぇじゃねぇかよ……」

 

 

「しかも更に悪いことを言うとね、多分あんた達は見付けられないし会えないわよロキには」

 

 

「は?それはどういう意味だ?」

 

 

「だって、ロキはそもそも他の深海棲艦と違って表舞台には出てこないのよ

それに今アイツの居場所を知ってる奴は誰も居ない

連絡も通信か特定のネットワークからしか入れない方法でしか話すことが出来ないのよ

現に私もアイツの居場所は分からないし?」

 

 

「えぇ………マジ?」

 

 

矢矧から頼まれたお願い事が早速の所で躓いてしまい大きく溜め息を付く

 

 

「連絡も取れない感じ?」

 

 

「まぁね、基本的に向こうから連絡来る位だしね」

 

 

「はぁ………こりゃ俺達とんでもない奴等を相手にしてるのかもな……」

 

 

「今更よ?」

 

 

エアと話していると再び頭が痛くなっていると笑われてしまう

 

 

「でも良かったじゃない?そのとんでもない戦力の一つである わ た し とは敵対してないんだからさ?」

 

 

「……本当にな」

 

 

「ワン!」

 

 

「『私も』だってさ!」

 

 

「そうだなぁ!イーちゃんは本当に敵に回したくなかったなぁ!よしよし!!あー可愛いよぉ!!」

 

 

佐渡はイーちゃんを抱き抱えると思い切り頭を撫でていると再び三人で散歩を始める

 

 

「まぁ、ロキは基本的に戦争には直接絡んで来ないと思うから放っておいても平気よ

会いたいなら頑張ってとしか言えないしね」

 

 

「うーん……何かないのか?会う方法は?」

 

 

「………強いて言うなら深海迷宮に居るんじゃない?」

 

 

「深海迷宮?」

 

 

佐渡は聞きなれない言葉を聞くとエアが説明する

 

 

「そうよ、ドレス島付近の海溝にある洞窟の事よ

中はソナーで見分けられないほどに入り組んで居てね、しかも深海だから光源もない真っ暗な迷宮見たいな洞窟

よ」

 

 

「……そんなところが…」

 

 

「でも行こうだなんて思わないでね

あそこは下手に入れば間違いなく出れないわよ」

 

 

「何でだ?」

 

 

「あそこは深海棲艦ですら迷うのよ

迷えばほぼ確実に出ることは出来ない迷宮だからね

だから諦めなさい」

 

 

「そうか……残念だ…」

 

 

「やっぱり行こうとしたのねあんた」

 

 

「まぁな!!!」

 

 

「辞めなさい!!」

 

 

その瞬間エアにチョップをくらってしまい頭を擦っていると佐渡を尻目に呟くように言う

 

 

「あんたが居なくなったら困るじゃない……」

 

 

「何か言ったか?」

 

 

「何でもないわよ深海棲艦にのみ欲情する変態提督」

 

 

「待った!!今おかしくーー」

 

 

「ワン!ワン!!」

 

 

佐渡とエアが話していると突然イーちゃんが吠えだし佐渡の足に噛み付く

 

 

「いたっ!?ちょ!イーちゃん違うって!!」

 

 

「ワン!ワン!!」

 

 

「え?『呼んでいる?』」

 

 

「は?なんだって?」

 

 

「ワン!ワンワンワン!!!」

 

 

「お、おい!イーちゃん!!!何処に行くんだよ!!!」

 

 

突然イーちゃんが走り出しそれを佐渡とエアは追い掛けていく

森を駆け抜けていくとそこは小笠原の側面部分に辺る太平洋に面した白浜海岸が見えそこに辿り着く

 

 

「こんなところあったのか…」

 

 

「私も知らなかったわ…こんなところあったんだ…」

 

 

「ワン!!ワン!ワン!!」

 

 

「ちょ!イーちゃん待って!!」

 

 

だが、イーちゃんは止まらず走っていくとエアは海岸の近くに深海棲艦の影が見える

 

 

「ちょっと佐渡!!」

 

 

「何だ!それよりもイーちゃんを追わないと見えなくなるぞ!!」

 

 

イーちゃんは全速力で走っており佐渡とエアも走らないと見失うほどに速くエアは海岸を気にしながら走っているとイーちゃんが海岸の岩場に入り跳び跳ねながら奥へと向かっていく

 

 

「イーちゃん!止まれってば!!そんなに走られても俺達が!!」

 

 

「ワン!ワン!!」

 

 

「『早くしないと』ですって!!全く何があるのよ!!こんなところに!!」

 

 

しばらく岩場を走っていると洞窟に見えてくる

そこへ全速力でイーちゃんが入っていくと

 

 

「ワンワン!!」

 

 

「『人が倒れてる』だって!!」

 

 

「人!?こんなところに流れ着いたのか!!不味い急げエア!!」

 

 

「分かってるわよ!!」

 

 

二人は岩場を乗り越えるとその洞窟に入るとイーちゃんがその海に半身が入った状態の人を見付けていた

 

 

「おいおい!本当に人じゃねぇか!!!

しっかりしろ!どうしたんだ!!」

 

 

「はぁはぁ!やっと追いつい……ん?佐渡ちょっと待って!!!」

 

 

エアの制止を聞かずに洞窟に流れ着いている人を海から引っ張り上げようとするとイーちゃんも手伝い岩場に上げる

 

 

「おい!大丈……夫……!?え!?な、何で!?」

 

 

「嘘でしょ……何でここに!?」

 

 

「ワン?」

 

 

二人はその倒れていた人の容姿に驚いていた

倒れていた人は女性であり全身が真っ白な肌であり髪も白く染まっていた

そして両端がまとめられており服はまるでウェットスーツの様になっている

だが、それよりもその顔を見た瞬間佐渡とエアは唖然とする

その顔は二人が見馴れた顔をしており佐渡は血の気が引くのを感じた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、な、何で……ここに飛行場姫が居るんだ!?」

 

 

そう、その倒れていた人はつい1ヶ月前に叢雲達連合艦隊が命懸けで撃沈させたカナであった

 

 

 

 

 

 

 





次回

落ちた飛行場

撃沈したはずだったカナが何故か小笠原島に漂着しており佐渡達は大混乱に陥りかける

アンケートですが後二話程で締め切りたいと思います!
……何か圧倒的に見たい人が多いですね…まぁ、色々と伏線は貼ってましたからね…因みにかなり長いです()
何だかんだで佐渡のお話も含まれてますからね









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墜ちた姫

イーちゃんに導かれるままに佐渡達は小笠原の洞窟内で意識のないカナを見付け唖然としていたが佐渡は直ぐ様頬を叩くとカナをゆっくりと寝かせると自らの服を脱ぐ

 

 

「ちょ!ちょっとあんた何してるのよ!!」

 

 

「この状態で運んでも風で身体が冷える!だから少し身体を拭くんだよ!!

イーちゃん周りに敵は居ないな!!」

 

 

「ワン!」

 

 

「良し!すまないな、飛行場姫!少し触るぞ!!」

 

 

佐渡は寒い冬ではあったもののそれよりも意識の無いカナの生存確認の為に心臓と耳を押し当てる

 

 

「……良し!鼓動を確認、息も…正常

だが身体はかなり冷えている、長時間海水に触れていたからか、今は冬だからな更に冷えてしまってるか

イーちゃん!急いで鎮守府に戻って親方を呼んでくれ!!

エア!艦載機は発艦出来るか!?今すぐコイツを入渠させたい!!用意してくれとソラさん達に連絡してくれ!!」

 

 

「ワン!」

 

 

「ま、待ちなさいよあんた!!カナを助けるつもり!?」

 

 

「それ以外無いだろ!!!」

 

 

「あんた!ソイツはあんた達の敵よ!!

助けてもあんた殺されるわよ!!」

 

 

「知るか!その時はその時だ!!!」

 

 

佐渡は自らの服で体についている海水を拭き取っていきもう一枚服を脱ぐとカナに着せてやりカナを背中に背負うと走り出そうとするがエアに止められる

 

 

「待ちなさいよ!あんたコイツは私と違って艦娘の事も人間も大嫌いなのよ!コイツを助けたらあんた後悔するわよ!!」

 

 

「エア!俺はな助けられる命は必ず助けたいんだよ!!

それで俺が死ぬことになったとしてもな!助けないで後悔するより助けて後悔したい!だから頼む!!退いてくれ!!」

 

 

「ワン!」

 

 

佐渡の瞳には嘘の一文字もなくエアは唸るが艦載機を作り出すと鎮守府に向けて発艦させる

 

 

「良いわよ!ほんと底抜けの馬鹿ね!!

後で死んでも私知らないんだからね!!」

 

 

「ありがとう!行くぞ!エア!!イーちゃん!!」

 

 

佐渡達はカナを背中に背負いながら全速力で岩場を駆け抜けていくと海岸に再び深海棲艦の影が見えエアが海の方向を見ると

 

 

「っ!駆逐艦!」

 

 

海岸付近に駆逐艦達が顔を出しておりカナを背負って走る佐渡を凝視していた

 

 

「………まさか、あいつらが?」

 

 

「エア!急げ!!」

 

 

「わ、分かってるわよ!!」

 

 

佐渡はその姿と影に気付いていなかったがエアが駆逐艦達を見ているとゆっくりと再び潜水を始めエアも佐渡の後を追い掛けていく

 

 

「しっかりしろよ!飛行場姫!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうですか?妖精さん?」

 

 

「……大丈夫ですよ、身体に異常は見当たりません

ただ気を失っているだけです」

 

 

「良かった……」

 

 

佐渡達は鎮守府に帰ってくると直ぐ様カナを入渠させると妖精達に依頼しカナの容態を見てもらっていた

カナは気を失っている為寝転んでも顔に浸からないほどの浅いお風呂に入っており修復剤が含まれている湯船にも浅く浸からせていた

 

 

「にしても、またですか提督さん

深海棲艦を助けるなんて

私、艦娘の事は分かりますが深海棲艦の事は詳しく分からないんですよ?」

 

 

「あはは……ごめんさい看護妖精さん…」

 

 

今佐渡が話している妖精は看護妖精、見た目は白衣のナースの様な見た目をしており入渠施設の管理を任されている

 

 

「まーた姫を拾ってきやがって…このやろう……

お前、そろそろ深海提督の方が良いんじゃねぇか?」

 

 

「辞めて親方、俺もそうなってるような気がしてくるから」

 

 

「いや、あんたは立派な深海提督に近いわよ本当に……」

 

 

「やめろエア、洒落にならん」

 

 

二人に言われてしまい頭を抱えようとするも寝転びながら気を失っているカナの頭を撫でる

 

 

「にしても、なんでコイツがここに?」

 

 

「恐らくだけど、他の深海棲艦が運んで来たんじゃないかしら?

一応、私の領地だし?」

 

 

「成る程、と言うか飛行場姫ってあの時撃沈させなかったっけ?」

 

 

「恐らくだけど、ロキが作った『防止装置(セーフティ)』が発動したんだと思うわよ」

 

 

防止装置(セーフティ?)

 

 

エアは入渠施設の椅子に座ると近くの台に腕を付きながら顎を支える

 

 

「私達の艤装にある轟沈防止システムよ、あんた達で言う応急修理妖精見たいな物

一度だけ深海棲艦の轟沈を避ける事が出来るのよ、ただしのその代わり本人が受けたダメージを全て艤装が肩代わりするから艤装自体が木っ端微塵になっちゃうけどね」

 

 

「えぇ………何それとんでもないじゃん……

マジお前らに勝てねぇじゃん……」

 

 

「と言っても艤装全て壊されちゃうから海に沈むことは変わらないんだけどね

海上歩行も出来ないから

……でも可笑しいわね、なんでこんな離れた小島に連れてこられたのかしら?」

 

 

エアは気を失っているカナを見ながら笑みを浮かべており安堵の溜め息をつく

 

 

「ありがと、佐渡」

 

 

「あ?何だよ急に?」

 

 

「いや、あんたなら助けてくれると少しだけ思ってたけど本気で助けてくれるなんてさ

カナは友人だったからね」

 

 

笑みを浮かべているエアに溜め息を付く

 

 

「馬鹿野郎、俺が見捨てるわけ無いだろうが敵だろうが何だろうが関係ねぇ

俺は二度と命を見殺しにしないって誓ってるんだからな

それにさ」

 

 

佐渡はエアに近付くと頭を撫でる

 

 

「お前の友人を見捨てる訳ねぇだろ

良かったな、お前の友人が生きてて」

 

 

「えぇ、本当にね

……でも、私の頭は撫でないでくれる?私あんたの指揮下でもないし撫でて良いなんて言ってないけど?」

 

 

「あ、すまん」

 

 

「後で高く付けるからね?」

 

 

「はは……多目に見てくれよ…」

 

 

エアと談笑していると再びカナを見下ろすと頭を撫でるとその場を後にしようとする

 

 

「じゃあ看護妖精さん、お願いします」

 

 

「はい、お任せください提督」

 

 

「頼んだぞ!看護!」

 

 

「任せなさい!どんな患者も完璧に治して見せるからね!」

 

 

親方がそう言うと入渠施設を後にする佐渡の肩に乗りエアと同時に出ていこうとガラッと開けた瞬間

 

 

「っ!?て、提督逃げてください!!!」

 

 

「……え?」

 

 

佐渡が振り返ると寝ていた筈のカナが入っていた湯が揺れており姿が消えていたその瞬間天井を見上げるとカナが爪を振り上げているのを確認した

 

 

「エア!!親方を頼む!!!」

 

 

「「……え?」」

 

 

佐渡はそれと同時に肩に乗っていた親方を掴みエアに投げ付けるとエアは受け取った瞬間佐渡はカナに押し倒され爪で首を絞め付けられる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…ぐぅ……飛行…場姫……!!」

 

 

「……貴様提督だな!!!殺してくれる!!!!」

 

 

 

 

 





次回

カナ対佐渡

突然目を覚ましカナは佐渡を敵であると誤認したままで襲い掛かり佐渡もそれに反撃する


まさかの"壊滅種"のカナとの対峙です!
一応艤装が無い状態ですから人と変わりませんが佐渡は勝てるのでしょうか!?




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墜ちた姫 二

「カナ!!」

 

 

「おい佐渡!!」

 

 

「う、嘘!さっきまで倒れていたのに!!!

まだ動けるわけがないのに!!」

 

 

カナは佐渡を床に押し倒し爪で捉えた状態で居るともう片手を爪に変化させ佐渡へと振り下ろそうとする

 

 

「ぐぅ………ぬぁぁ!!」

 

 

「ぐふっ!」

 

 

だが佐渡は鳩尾に思い切り殴るとカナは苦しむが腕の力を弱めず睨み付ける

 

 

「…へぇ……!これで…離さないか!!」

 

 

「はぁ……敵を目の前に……そんな馬鹿な事を……するか!!!」

 

 

「待ちなさい!カナ!!!ソイツは敵じゃない!!」

 

 

「…はぁ……はぁ……エア…?」

 

 

カナの意識は少しばかり混乱しておりエアの姿と言葉を聞くと頭を横に振るう

 

 

「違う!こんなところに……エアは居ない!!

お前!!私に……はぁ…幻覚を見せて何を私に……はぁ…打った!!!」

 

 

(何の話だよ畜生!!と言うかコイツ何か……やけに疲れてると言うか…焦ってると言うか…)

 

 

佐渡は混乱しているカナを見ると瞳は濁りかなり疲弊している様に見えまだ身体が完全に回復していないようだった

 

 

「お前…まさか無理矢理動いてるのか?だったら!」

 

 

「っ!うるさい!お前なんかに……言われる筋合いは無い!!!」

 

 

カナが叫ぶとその瞬間佐渡の頭へと爪を振り下ろされるが寸前で佐渡はカナの横腹を蹴ると体制を崩すと立ち上がり少し離れる

 

 

「うぅ……!!」

 

 

「全く!!少しは俺の話を」

 

 

「っ!アァァァァ!!!」

 

 

だが、カナは佐渡の話を聞かずに爪を再び振り上げると佐渡は交わしそれが他の浴槽に当たるとカナの爪で浴槽が切り裂かれる

 

 

「くっ、駄目そうだなここじゃ狭すぎるし親方に迷惑をかけちまう!!

エア!!親方退いてくれ!!」

 

 

佐渡は怒りの矛先が自分にだけ向いていることを理解すると入渠施設を飛び出すと出た先でソラに出会う

 

 

「あれ?佐渡様どうかしまし」

 

 

「死ねぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

「危ないソラさん!!!」

 

 

入渠施設からカナが飛び上がり勢い良く佐渡とソラに向けて爪を振り下ろされ佐渡は慌ててソラを押し倒すとソラと佐渡の居た廊下に大きな爪痕を残し切り裂く

 

 

「カ、カナ様!?も、もうお目覚めに!!

で、ですが何故こんなことに!?」

 

 

「話は後だ!!すまないがカナは暴走してるから何も刺激するなよ!!!」

 

 

「待てぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

それだけを言うと佐渡は慌てて押し倒したソラを置いていくとその後ろをカナが追い掛けていく

 

 

「チッ!相手は姫の壊滅種!エアと同じタチの悪い奴だなおい!!!」

 

 

「逃げるナァァァァァァ!!!」

 

 

カナは廊下にあった花瓶を掴むと思い切り佐渡の進むべき方向の天井に当て佐渡の真上からは水と花瓶の破片が落ちてくる

 

 

「しかも頭がキレやがる!畜生!!」

 

 

だが、佐渡は急ブレーキを掛けると何とかそれを交わし走っていると目の前に扉が見える

 

 

「ごめん親方!!後で直しといて!!」

 

 

佐渡は両腰に付けていたホルスターから銃を取り出すと扉の鍵穴と取っ手を撃ち抜くと扉が半分開きそのまま扉を蹴り飛ばし外に出ると走るのを止める

 

 

「はぁ、はぁ……久しぶりだな、ここまで全力疾走は!!」

 

 

「追い付いたぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

「………はぁ…全く仕方ねぇな……相手してやるか」

 

 

深く溜め息を付くと銃をホルスターに仕舞うとカナが襲い掛かってくる

 

 

「…お前の動きは既に叢雲達の動きで覚えている

特別に見せてやるよ飛行場姫その誇り高き精神に敬意を表して

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本物の先読み(未来予知)ってのをな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「エア!もっと走ってくれ!!」

 

 

「これが全速力!これ以上は不可能よ!!!」

 

 

エアと親方はさっきの出来事を唖然と見ていたが先程ようやく動けるようになり佐渡が走っていった外へと向かっていた

 

 

「アイツはあんな状態でも姫なんだろ!?

いくら佐渡でも一撃でも当たれば!!」

 

 

「分かってるわよ!!!」

 

 

(あれでも佐渡は人間!でもカナは深海棲艦!確かに艤装が無いから少し人より強いだけだけど私達eliteは違う!!

アイツがその気になれば簡単に佐渡の身体を真っ二つに出来る!!)

 

 

エアは走っていくと破壊された扉を見付けそれを蹴り破る

 

 

「佐渡!無事なの!?」

 

 

「おい!佐渡!!!」

 

 

二人が息を切らしながら佐渡に追い付くと佐渡とカナは近接戦闘に入っており佐渡の雰囲気が少し変わっていた

 

 

「死ねぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

「カナ!やめ」

 

 

「ま、待て!エア!良く見ろ!!」

 

 

「……え?」

 

 

親方がエアの声を止めさせるとエアは良くカナと佐渡の動きを見るととんでもないことに気付く

 

 

「…………嘘……嘘嘘!」

 

 

「………アイツ…マジか……」

 

 

二人がその戦闘を唖然と眺めていた

それもそのはず二人の戦闘は圧倒的に差があった

拮抗でも劣勢でもない、片方が圧倒的に相手を押しておりその姿を呆然と見るしかなかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐふっ!……に、人間!!!」

 

 

「やはり硬いし耐久も高いな、姫級は

全く俺の相手はいつも人外か?勘弁してほしいなっ!!」

 

 

そう佐渡の方がカナを圧倒していたのだ

カナの爪による攻撃は振り下ろそうとする瞬間に佐渡に関節と腹部を攻撃されカナは全く身動きが取れずに居た

 

 

「こ、この!口だけの雑魚がぁぁぁぁ!!!」

 

 

「果たしてそれはどっちだ、飛行場姫!!」

 

 

「お前だよ!提督!!!」

 

 

その瞬間カナは回し蹴りを当てようとするが佐渡はそれを交わし更にその蹴りの回転を更に強めるために脚を蹴り飛ばすと体制を崩しその場に倒れる

 

 

「くぅ!こ、コイツぅぅぅぅ!!!」

 

 

「諦めろ、お前じゃ俺には勝てん」

 

 

「クソがぁぁぁぁ!!!」

 

 

カナは再び立ち上がると佐渡を切り裂こうとするがそれを交わされ鳩尾と関節を攻撃され全く反撃が出来ない

 

 

「う…そ……あれ…人間…?」

 

 

「確かにアイツ、反射神経とか運動能力とか、戦闘技術高かったけど……え?アイツ本当に人間なの?

ワケわからねぇんだけど?」

 

 

佐渡の絶対的な状況にエア達が唖然としているとカナは佐渡を睨み付ける

 

 

「お前の技……どこかで見たことあると思ったら……お前!!叢雲と同じ技を!!!」

 

 

「正解と言うかアイツは俺の艦娘だ

これを教えてるのは俺だよ、ま、アイツのは未完成だけどな

本物はこっちだぜ」

 

 

「っ!クソォォォォォ!!!」

 

 

「エアも来たしそろそろ眠ってもらおうかな?飛行場姫」

 

 

カナが両爪で襲い掛かろうとすると佐渡は踏み込みカナの目の前に行くとカナの鳩尾を殴る

 

 

「ガハッ……!!」

 

 

「まだ行くぜ、死ぬんじゃねぇぞ!!」  

 

 

そして、その手を開くと勢い良く顎をかち上げる

するとカナの脳と視界が揺れぐらりと身体が揺れた瞬間両手で思い切り肺を叩くと息が出来なくなる

 

 

「ガッ……!!!」

 

 

カナが苦しんでいるのを他所に佐渡はカナの顎に回し蹴りを与えるとそのダメージが直接脳に行き脳震盪を引き起こし身体が動かなくなりその場に崩れ落ちそうになるが

 

 

「まだ倒れるのは早いぞ飛行場姫」

 

 

佐渡はそのままカナの首を掴むと地面に叩き付けるが再び腕を引っ張りあげると持ち上げカナの腕の関節を思い切り叩くと腹部を押さえ付けながら再び地面に叩き付ける

 

 

「ガッ……アァ………ァ……」

 

 

その連続攻撃に流石のカナも倒れると最後の力を振り絞って佐渡を見上げる

 

 

「その心意気と誇り高いプライドは認めてやる

だが、人の話は聞くものだ飛行場姫

海では強くとも陸では勝てまい、諦めて這いつくばってろ深海棲艦

ゆっくり休め」

 

 

佐渡の冷酷で冷たい眼差しを見上げながらカナは最後の言葉を佐渡に投げ掛ける

 

 

「…バ……ケ…モ……ノ……」

 

 

そしてゆっくりと意識を手放し気を失っていく

 

 

「ったく、お前が言うか?俺より充分化物じゃねぇかよ……うん?」

 

 

佐渡がカナを見下ろしているとエア達が呆然としているのに気付き首を傾げる

 

 

「どした?二人とも?」

 

 

「ど、ど、ど、どうしたじゃないわよ!!!

あ、あ、あ、あんた!本当に何者なの!?」

 

 

「そ、そ、そ、そうだ佐渡!!!

お、おま、お前!姫を意図も容易く!!!」

 

 

「いや、容易くって言うけどコイツかなり疲弊してたんだぜ?そりゃ俺でも倒せるってもんでしょ?」

 

 

「「いやそれは可笑しい!!!」」

 

 

「……そうか?」

 

 

二人が騒いでるのに対し佐渡はキョトンとしており再びカナを背負う

 

 

「ま、とりあえず飛行場姫制圧完了っと

後で叱らないとな」

 

 

そう言いながら佐渡は眠っているカナのおでこにデコピンをするとゆっくりとした足取りで歩いていく

 

 

 

 

 

 





次回

対話

何とか?カナの暴走を止めた佐渡は再びカナを入渠施設に預け目を覚ますのを待っていた
そしてカナは二度目覚醒と共に自分がどうなったのかを改めて理解する

え?佐渡さんが可笑しい?
……普通じゃない?(すっとぼけ)
イベントでの雲龍堀が終わらねぇ!!!








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墜ちた姫 三

「ん………」

 

 

佐渡との戦闘後しばらくしたのちカナは再び入渠施設にて目を覚まし辺りを確認しようとするが

 

 

「うぅ!……い、痛い……何…で……!」

 

 

全身の関節が悲鳴を上げるほどの激痛に襲われ動けなくなっていると側に居た看護妖精がカナの身体に飛び乗る

 

 

「大丈夫ですか?えっと……カナさん…でしたっけ?」

 

 

「……あんた…誰?」

 

 

「私はこの入渠施設の管理を任せられている妖精の看護妖精です

貴女先程提督に襲い掛かって返り討ちにされたんですよ?」

 

 

「提……督…?」

 

 

カナは薄れゆく記憶を辿っていくと先程背後から人間を襲い掛かりそのまま外でその人間に近接戦闘で返り討ちにされたことを思い出すと

 

 

「提督!!!」

 

 

「ワン!」

 

 

「グフッ!お、お前!!退け!!」

 

 

飛び上がろうとするカナの腹部にイーちゃんが飛び乗り再び湯船に浸からせる

 

 

「ワン!ワン!」

 

 

「えっと、『大人しくしてて、皆に知らせるから』と言ってますね」

 

 

「皆…?」

 

 

「ワン!」

 

 

イーちゃんは湯船から上がるとボタンを押すと入渠施設の外からバタバタと音が聞こえ扉が勢い良く開く

 

 

「カナ!!!」

 

 

「え、エア!?あ、あんたなん」

 

 

カナがエアに聞くよりも先にエアが浴槽内に居るカナを抱き締める

 

 

「良かった!あんた死んでないわよね!!

そうよの!大丈夫よね!?生きてるわよね!?」

 

 

「え?え、えぇ……」

 

 

「ばーか、殺してねぇよ

普通に手加減したわ」

 

 

エアの後ろから佐渡が歩いてくると溜め息混じりに話す

 

 

「っ!提督!!!」

 

 

佐渡の姿を見た瞬間カナは爪を展開するが佐渡の攻撃が聞いているのか関節に悲鳴を上げ動けなくなる

 

 

「っぅ……」

 

 

「無茶すんなって、何にもしないからよ

あ、でもさっきのはノーカンな、お前が話を聞かないからちょっと痛い目にあってもらっただけだ」

 

 

「ちょっと!?ちょっとって言ったあんた!?

あれの何処がちょっとなのよ!!!普通にカナが死にかけてたのよこの化物!!!」

 

 

「いやそれ特大ブーメラン……と言うか俺じゃ殺せないって……」

 

 

「……嫌、死にそうな位痛かった」

 

 

「ほーらー!!!佐渡あんた覚えてなさいよ!!!」

 

 

「えぇ……俺が悪いの…何か酷くない?」

 

 

「確かに、提督やり過ぎだと思いますよ?」

 

 

「俺もそう思うな、今回は佐渡が悪い」

 

 

「え、何これ俺悪役?何、フハハハ!!とか笑った方が良い感じ?」

 

 

「安心しろ佐渡、全部お前が悪い」

 

 

「酷い……酷すぎるよ皆……」

 

 

全員から総精神攻撃を受けた佐渡は端っこで小さくなっているとイーちゃんが湯船から出ると佐渡にすり寄る

 

 

「あぁ………俺の味方は君だけなんだねイーちゃん……」

 

 

「ワン!」

 

 

「あぁ…ええ子やわぁ……マジ天使」

 

 

「いや、深海棲艦でしょうがお馬鹿」

 

 

「……何、私あんな奴にボロボロにされたの?」

 

 

「あれでもここの提督なのよ、しかもあんたを倒した叢雲達の師よ」

 

 

「嘘でしょ、冗談じゃなくてもキツいわよ……」

 

 

「ま、ともかくだ!!話をしたいんだが出来るかな?飛行場姫!!」

 

 

イーちゃんに慰められた?のか佐渡はイーちゃんを抱き抱えながらカナを見下ろすとカナが睨み付ける

 

 

「あのさ、その飛行場姫って辞めてくれる?

私、あんた達がつけたその名前嫌いなの」

 

 

「………じゃあ何て呼べば良い?」

 

 

「…………カナで良いわ」

 

 

「じゃあカナ!俺は今後の話をしたいんだが、俺を襲わないと約束出来るか?」

 

 

カナは不服そうに溜め息を付くとエアと懐いているイ級を見る

 

 

「………良いわ、どうせあんたに襲い掛かっても返り討ちに会うと思うし」

 

 

「良し!なら高速修復剤を使って場所を変えようか!」

 

 

「その前に一つだけ質問に答えて」

 

 

「何だよ?」

 

 

「………ねぇ、あんた本当に『ただ』の人間?」

 

 

カナが睨みながら佐渡に問い掛けると佐渡は笑いながら当然の様に話す

 

 

「あぁ、至って『普通』の人間だ

ちょっと他の奴等より死線を潜り抜けてきただけのな

俺はお前達何かのは『見馴れてる』からな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

高速修復剤を使いカナを入渠施設から出し食堂にて佐渡とエア達は現状の説明とこの場所がどんなところなのかをカナに説明していくとカナは終始大人しくお茶を飲みながら聞いていた

 

 

「ーーと言うことだ」

 

 

「……疑問が残ることは多くあるけれど、まぁ良いわ

それで確認なんだけどここは小笠原鎮守府であんたは提督ってことで良いの?」

 

 

「そゆことだ」

 

 

「えっとそれじゃ……」

 

 

「あぁ、すまん自己紹介が遅れたな

俺の名前は佐渡 満だ

佐渡で良い」

 

 

「じゃあ佐渡、あんたはこの鎮守府で死にかけてる艦娘や捨てられた艦娘を助けたりしてるんだ?」

 

 

「まぁ、別に進んでって訳じゃねぇけどな

この鎮守府に来るって奴はそう言う奴って訳」

 

 

「ふーん、嘘は付いてなさそうね

まぁ良いわ、あんたが他の提督共と違うのは大体わかった

それよりも大きな問題を見付けたからね」

 

 

「問題?」

 

 

カナは佐渡ではなくその隣に座りアイスを頬張っているエアを睨み付けるとエアも気付いたのか自分を指差す

 

 

「………私?」

 

 

「そうだ!!お前だよ!!!

今まで何処に居るかも分からなかったのに!!!こーんな所で殺すべき提督と仲良くやってるんだよ!!!

この裏切り者!!!!」

 

 

「あら?別に裏切ってないわよ、このお馬鹿に情報は与えてないし助けてもないわよ?」

 

 

「裏切りだろうが!!!」

 

 

「ま、まぁカナ様落ち着いて……」

 

 

「ソラは黙ってろ!!!」

 

 

「は、はい!!申し訳ありませんでした!!!」

 

 

その光景を見ながら佐渡はイーちゃんの頭を撫でながらお茶をすすっていると親方が耳元で囁く

 

 

「なぁ、佐渡

あの飛行場姫、カナって実はまともなんじゃねぇの?」

 

 

「うん、それは俺も思うよ

エアが可笑しいだけ」

 

 

と佐渡が良いかけた瞬間佐渡と親方の間をアイスのスプーンが掠りエアが笑みを浮かべる

 

 

「な ん か い っ た?」

 

 

「「いいえ!!!」」

 

 

「エア!!話は終わってない!!!」

 

 

「はいはい、分かったわよ!

ってそれよりもあんたどうするのよ?」

 

 

「どうって………」

 

 

エアに言われるとカナは悩んでおり佐渡が助言を出す

 

 

「因みに、多分ドレス島には帰れるぞ?」

 

 

「は?どういうことよ?」

 

 

「実はな、ロキって深海棲艦が島に残っていた自立型艤装と深海棲艦を動かし島自体を守ってるらしい」

 

 

「ロキが!?………ってことはロキにも私の死んだってことにされてるのね……」

 

 

「だったら北方はどう?他は私好きじゃないし?」

 

 

「いや、帰るならドレス島が良いんじゃないか?

だってカナの島なんだろ?

それに確か椿も近くに」

 

 

「ですが佐渡様、一応海軍が落とした島ですよ?

カナ様が居たらまた大騒ぎになるのでは?」

 

 

「あー……それもそうか…」

 

 

「ソウナルトカナ様危ナイワヨ?」

 

 

「カナ様ガ大変」

 

 

「となると北方か?あそこは」

 

 

佐渡とエア達が話し合っているとカナが重い口を開くととんでもないことを言う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………いや、私はこのまま雲隠れをするわ

私が生きてるってことは誰にも伝えない」

 

 

「「「「……え?」」」」

 

 

 

 

 

 




次回

死んだ者(ロスト)

自らの事を死んだことにし雲隠れをすると言うカナに佐渡達は驚きカナはその理由を話していく

因みに言うとカナはかなり常識人です
実力だけは化物染みてるですけどね……
イベント残り3日(?)!堀が終わるかな……
あ、アンケートは次回で終わりにします!
皆さんご協力ありがとうございます!!




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墜ちた姫 四

「誰にも伝えないって何でよ!?」

 

 

「……ちょっとね、それに今私は艤装も無い

あれがあるからこそ私はEliteを名乗れた物だしね、それが無い以上使い物にならない」

 

 

カナが溜め息を付いていると佐渡が首を傾げる

 

 

「なら、あの兵器を作ればお前は他の所に行けるのか?」

 

 

「……は?」

 

 

「なぁ、親方あれって作れると思う?」

 

 

「んー…あれはちょっと……流石に一人だとキツいなぁ……もう一人人手が欲しいな……」

 

 

「あれば作れるのかよ……流石親方!!」

 

 

「仕方無い、私が何とか設計図探してやるわよ」

 

 

「エア様!私達も手伝います!!」

 

 

「ヤルカ!」

 

 

「ソウネ!!」

 

 

「待った!!!!」

 

 

何故かカナのアブソリュートを作る話になっており慌ててカナがそれを止める

 

 

「何だよ?」

 

 

「いやお前達可笑しいだろ!!何で私の艤装を作るって話になってるんだ!?

私の力を見ただろ!?」

 

 

「まぁ、うん?」

 

 

「うんじゃない!!

首を傾げるな!!佐渡!!」

 

 

カナが突っ込んでいるとエアが溜め息を付く

 

 

「カナ、こいつはそう言う奴よ

私達の事を敵だと思ってないからね」

 

 

「は?本当なの?」

 

 

「……あぁ、だって今敵対してないんだろ?

なら敵じゃないだろ?それに、艤装は必要だろ」

 

 

「……………はぁぁぁぁぁ……」

 

 

カナは大きな溜め息を付くと頭を抱えてしまいその肩をソラに叩かれる

 

 

「カナ様、これが佐渡様何ですよ……」

 

 

「ねぇ、ちょっとソラ

提督って皆こうなの?」

 

 

「いえ違いますよ?佐渡様が特別なだけですよ

普通の提督なら貴女を解剖するとか身体中調べたりしますよ……」

 

 

「おいおい、ソラさんや

俺は解剖なんてそんな事せぇへんで?」

 

 

「えぇ、存じ上げております

貴方に関しては本当に私達への敵意が無いですもんね分かってますはい」

 

 

「ソウヨ!コレコソ提督ノ器!!」

 

 

「大キスギルト思ウケドネ」

 

 

「同意」

 

 

ソラの会話にαとβ達も賛同していくとカナは頭を抱える

 

 

「カナ諦めなさい、コイツは底抜けのお人好しよ」

 

 

「……成る程ね、とりあえず佐渡私の艤装は良い」

 

 

「え?じゃあ親方脚に付ける航行艤装とかある」

 

 

「あるんじゃないか?

だが、コイツに合う物があるかどうかは分からないから付けて貰わねぇと」

 

 

「…………一つ良いか、佐渡」

 

 

「何だ?」

 

 

カナは溜め息を付くと佐渡を見ながら顎に手を当てる

 

 

「お前は私達(深海棲艦)をどう見る?」

 

 

「どうって……人に似た存在?と言うか話せば分かる奴等だよな?」

 

 

佐渡の即答にカナはある人物を思いだし少しだけ笑みを溢す

 

 

「なら、私達を使役して世界を滅ぼすとか支配とかは考えてないのか?」

 

 

「え、何で?やる意味ある?

支配したところでいつかは崩れ去る

滅ぼしたところでいつかは元に戻る

やったところで意味はない

それに、俺は今お前達と笑い合えるならそれで良いんだよ

争いなんかより平和が一番!!」

 

 

その答えに佐渡がただ楽観視してるだけの人間には見えなくなると同時にカナは思い出す『唯一自らが認めた人物を』

 

 

『私は皆が戦ってるより皆と笑い合って楽しく過ごせれば良いの!

戦争や争いなんかより、平和が一番だよカナ!!

だから!今この時を楽しもうよ!!』

 

 

「…………ふーん……似てるねお前」

 

 

「うん?どしたカナ?」

 

 

カナは目の前に居る男に親近感を覚えると自然と笑っており溜め息をつく

 

 

「何でもない、お前が私の知り合いに似てるなって思っただけ

さてと、じゃあ佐渡ここからは少し話をしましょう

お前は何を望む?」

 

 

「は?」

 

 

唐突に言われた話に佐渡が混乱しているとカナが立ち上がり佐渡の横に移動し見下ろし顎を軽く持つ

 

 

「お前は私を仮にも助けた、私はその借りを作るつもりはない

だから今それを返す私に、深海棲艦最強たる姫のEliteに何を望む?

気にいらない奴を殺す?

気にいらない国を壊す?

それとも私を使って栄光を得る?

それとも私を売って富を得る?

それとも私の身体を使う?

良いわ、抵抗もしない貴方に尽くしてあげる

 

さぁ願いなさい、私に出来る事を」

 

 

佐渡が唖然としているが直ぐ様溜め息を付きカナの頭にデコピンを当てる

 

 

「いてっ!何するのよ!!」

 

 

「うっさい!もっと自分を大切にしろ!!

俺は別に対価を求めて助けた訳じゃねぇ!!お前を助けたいから勝手に助けただけだ!!!

勝手に仮とか恩義とか考えるな!!!!

普通に『助けてくれてありがとう』って言えやこのお馬鹿が!!!

二度も言わせんなこの真面目娘が!!!大井かグラーフかこの野郎!!!」

 

 

逆に怒られてしまいカナが唖然としているとエアがその光景を見ながら腹を抱えながら大爆笑する

 

 

「アッハッハッハッハ!!!!

相変わらずあんたは真面目ね!!アッハッハッハッハ!!!!

無理無理!そいつに望むものなんて無いわよ!!

さ、佐渡!グッジョブ!!!アッハッハッハッハ!!!!

やば!お腹痛い!!そいつは本当に『ただの善意』で助けてるのよ!!あー笑える!!アッハッハッハッハ!!!!」

 

 

「ちょ、ちょっと姫様笑いすぎですよ!

ですが、カナ様佐渡様はそう言う人なんですよ」

 

 

「そうそう、だってこの鎮守府に居る艦娘ってのはコイツに助けられた海軍に捨てられた艦娘ばかりなんだ

しかも助けた癖に他の鎮守府に異動させようとするんだぜ?

本当に底抜けの馬鹿でお人好しなんだよ

コイツに対価とか求めても無駄無駄」

 

 

「ソウソウ!カナ様!佐渡様ハオ優シインデスヨ!!」

 

 

「ソラト違ッテネ」

 

 

「ウンウン」

 

 

「お前達?今なんて言いました?」

 

 

「「ヒッ!!」」

 

 

各々笑ったりしていると佐渡が立ち上がりカナの頭を撫でる

 

 

「俺の望み?一つだけあるぜ、お前が万全になることだ

それまでゆっくりしていきな」

 

 

「……………はぁ………お前には欲がないのか?」

 

 

「無い訳じゃないが、お前達には無理してほしくないんだよ

ここでは全て平等だ、上下関係なんて無い

自由で平和で艦娘だろうと深海棲艦だろうが休憩できる鎮守府

それが俺の鎮守府だ

大丈夫だ、ここにお前の敵は居ない

陸でなら俺が守ってやる」

 

 

「……ひ弱な人間に何が出来るのやら……だが、信じてみたい言葉だなそれは」

 

 

今まで守り続けていたカナが始めて聞く『守ってやる』と言う言葉に少しだけ違和感を感じながら笑みを溢し大人しく佐渡に頭を撫でられていた

 

 

「にしても、髪サラサラだな?

深海棲艦なのに?」

 

 

「お前はどういう偏見をしてるんだ……

まぁ良い、さてとお前達に世話になりっぱなしにも成りたくないしここを」

 

 

とカナが話していると誰かのお腹からぐぅと音が聞こえるとエアが笑うのを止める

 

 

「あ、あら?誰かお腹空いたのかしら?」

 

 

「私ではないですね?」

 

 

「私デモ無イワ?」

 

 

「私デモナイ」

 

 

「違ウ!!」

 

 

「俺は違うぜ?それに妖精はならないしな」

 

 

「俺でもねぇなじゃあ誰が……」

 

 

佐渡がカナを見ると耳が真っ赤に染まっており俯いていた犯人が分かると頭を更に撫でる

 

 

「……ま、そうだよな

何か嫌いな物あるか?」

 

 

「………………………ない」

 

 

「よっしゃ適当に作るか

少し待っててくれ」

 

 

「アッハッハッハッハ!!!!本当!カナ面白すぎ!!!

お腹鳴らしちゃって可愛過ぎ!!!アッハッハッハッハ!!!!

やば!私死ぬ!!」

 

 

「~///!!エア!!!お前いい加減うるさい!!!」

 

 

堪忍袋の緒が切れたのかカナはテーブルを飛び越えエアに斬りかかるとエアはそれを止め大乱闘が始まってしまう

 

 

「ちょちょ!カナ様!!辞めてください!!色々壊れてしまいます!!!

お前達!!止めますよ!!!」

 

 

「「ハ、ハイ!!」」

 

 

佐渡が厨房に入っていくと後ろから二人を仲裁しているソラ達を見ながら笑みを浮かべる

 

 

「ハッ、賑やかなこったで

ま、叢雲達が帰ってくるまでには何とかしないとな」

 

 

 

 

 

 





次回

今後のお話

カナの誘いに全く乗らない佐渡を見ると呆れながらもその器を認めており自分のこれからの話をしていく


一応今回は二人登場します!
あ、アンケート結果ですが圧倒的に叢雲の過去編を所望する人が多かったのでやりますね!
因みにこの話はかなり長めですのでお覚悟を!
佐渡の過去、そして叢雲が力を求め佐渡の事を絶対的に信頼するお話になります!




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墜ちた姫 五

時間は流れ夜になり佐渡達は晩御飯を食べながらカナの今後の話を話し合っていた

 

 

「それでカナあんたどうするのよ?隠れるって言って……あ、これ美味しい

佐渡の料理は相変わらずね」

 

 

「そうね、とりあえずまた孤島を探す

艤装は……まぁロキと何とか連絡……取れるかな…」

 

 

「私達作りますよー?」

 

 

「任せてー!」

 

 

「ふふ、ありがと気持ちだけ受け取っておく」

 

 

カナはあまり佐渡の食事に手を付けておらずエア達だけが食べており特にαとβは食い付くす勢いで食べていた

 

 

「何だ、口に合わなかったか?」

 

 

「違う、人間の作った料理を食べるわけいかないでしょ、助けられたのに更にこんな世話になるわけには」

 

 

「「オカワリ!!!」」

 

 

「はいはい」

 

 

カナが話してる最中にも二人はご飯を食べきると佐渡に求めソラに叩かれる

 

 

「こらお前達!少しは限度を知りなさい!!!」

 

 

「「嫌デス!!!」」

 

 

「全く……申し訳ありません…佐渡様」

 

 

「いいよ、俺も帰ってくるの久しぶりだったしね

それに食べてくれるのは嬉しいしね

はいどうぞ!」

 

 

「「イタダキマス!!」」

 

 

二人の食欲をカナは唖然と見ていると再びお茶をすすっておりエアが唐揚げを箸に刺す

 

 

「ねぇ、カナ」

 

 

「何よエ」

 

 

「ほら食いなさい!!」

 

 

「むぐぅ!?」

 

 

エアはカナが口を開けた瞬間刺した唐揚げを無理矢理押し込むとカナはそれを手で取り出す

 

 

「あっつ!!何するのよ!!!」

 

 

「あんた前からだけど警戒心高すぎなのよ

安心しなさい、何も入ってないわよ

私が保証してあげる」

 

 

「お前達が緩すぎるんだよ!!

食えるか!人間の料理なんて!!!」

 

 

「あ、あんたその言葉………」

 

 

「………え?」

 

 

カナがそう叫んだ瞬間全員の目が佐渡に集中するとかなり落ち込んでいた

 

 

「…………そうだよな…人間の料理なんて食えないよな…」

 

 

「そ、そんなことありませんよ!佐渡様!貴方様のお料理は素晴らしく美味しいですよ!!」

 

 

「ソウダヨ!!佐渡様!!凄イ美味シイヨ!!」

 

 

「ウンウン!佐渡様ノ料理ハ世界一!!!」

 

 

カナが拒絶すると佐渡が落ち込みソラ達が必死に宥めているとエアがカナの頭を叩く

 

 

「大丈夫よ、コイツが食事に何か仕込む事なんてないわ

それにあんたを倒せる力があるのにそんな小細工するわけないでしょ」

 

 

「だがな!!!」

 

 

「良いから今日だけで良いから食べなさい!!!ほらほらほらほら!!!」

 

 

「分かった!分かったから!!」

 

 

エアに催促されるとカナは渋々料理に手を出していくと笑みを溢しそうになり顔を反らす

 

 

「………カナ、吐きそうな程不味いか?」

 

 

「……違う、普通に……嫌、美味しいすごく」

 

 

「本当か!?本当に!?」

 

 

佐渡はその言葉に立ち上がりガッツポーズを取っているとソラ達が拍手をする

 

 

「いやー!良かった良かった!!

実は今回全く自信がなくてな!エア達に気に入るような味付けにはしたんだがカナは味覚が違うと思ってなぁ!!凄いふ」

 

 

と佐渡が話しているとカナが顔を反らしながらご飯茶碗を佐渡に差し出す

 

 

「…………」

 

 

「……おかわり?」

 

 

佐渡の質問にコクンと頷くと佐渡は喜びながらカナの茶碗にご飯をよそっていく

 

 

「もっと食べてくれよ!!足りなくなったらどんどん作るからな!!!」

 

 

「も、貰う

特にこの麻婆豆腐好き」

 

 

「そうか!カナは辛いのが好きなのか!?」

 

 

「ち、違う!!豆腐が好きなの!!

だからこの麻婆豆腐の味付けが好みでね辛すぎなくてまろやかな口当たりが………ふ、ふん!!」

 

 

「そっか、そっか……覚えとくぜ!!」

 

 

「忘れてろ!!人間!!」

 

 

カナと佐渡の会話を見ていたエアも微笑み再び料理に手を伸ばしていくと話を戻す

 

 

「と言うかカナどうするのよ、隠れるって言っても」

 

 

「適当に島を見つける、食事とかは別に取らなくても良いし」

 

 

「でも、その島に居座っても艦娘とか深海棲艦に見付かったら大変よ?

それこそ人間なんかに見付かったら」

 

 

「それもそうだが、深海側には戻るわけにはいかない

それに私は一度ではあるが負けた

私を引き受けてくれる場所なんて……」

 

 

「ならうち(小笠原)はどうだ?」

 

 

カナとエアが話してる間を裂くように佐渡が言うと二人の視線が集中しカナが反論する

 

 

「お前!!私が言ったこと聞いていたか!?

私は今どちら側にも付くつもりはない!

ましてや!人間側になんぞ!!」

 

 

「は?何か勘違いしてないか?」

 

 

「え?」

 

 

佐渡はお茶をすするとテーブルに肘を付き顎に手を当てる

 

 

「一応うちは鎮守府だけど、別にお前にこちら側の戦力として入れなんて言ってねぇよ

ただ行く当てが無いなら居たらどうだって話だ」

 

 

「そ、そんな事言ってお前は!!」

 

 

「悪いが俺は嘘は付かない

お前達の事を戦力としても深海棲艦としても見るつもりは無い

『ただのカナと言う女性』を迎えるつもりだ」

 

 

「……い、いや!そんな!!」

 

 

「良いじゃないカナ?ここは隠れ蓑にピッタリよ?

深海棲艦にも人間にも見付からない荒れ果てた島なんだから

深海棲艦側には(エア)の島としてしか映らず

人間側には小笠原鎮守府としてしか映らない

最高じゃない?」

 

 

エアに言われるとカナは立ち上がり机を叩く

 

 

「馬鹿も休み休み言え!!私に始原(ピース)を裏切れと言うのか!?」

 

 

「違うわよ、相変わらず頭硬いわね……

あんたが次の島を見付けるまで居たらって話よ

それにコイツが私達の力を借りないっての事実でしょ

現にコイツはあんたを討伐するのに私の力を借りなかった

私が協力してたら……分かるでしょ?」

 

 

エアが少しばかり睨み付けるとカナは萎縮し大人しく座る

 

 

「…………いや、やっぱり私は」

 

 

「なぁ、カナ別に気にしなくて良いんだぞ?

この小笠原は誰が来ても歓迎だ

この島は休憩所、疲れた者が休める場所

疲れたなら動けるようになるまで休んでいけ

俺が許す

それに、あいつらも気にしなさいさ」

 

 

「……………………」

 

 

カナはしばらく唸り頭をかきむしっていると頭を抱え込んでしまう

 

 

「はぁ……あんた本当に真面目よね……」

 

 

「いや、お前は少しは見習えよ……」

 

 

「それは同感です」

 

 

「ウン、姫様モ見習ウベキ」

 

 

「ほほう?あんた達いい度胸ねぇ?」

 

 

佐渡の発言にソラ達が賛同するとカナが机に突っ伏してしまう

 

 

「……そ、そんなに葛藤するもんなの……か?」

 

 

「そりゃそうよ!!!あんた!普通相手の!しかも敵の世話になるなんて!!あり得ないでしょ!!

『捕虜』としてとかなら!!良いけどさぁ!!」

 

 

カナの発言を聞いていた佐渡は突然とんでもないことを言い放つ

 

 

「捕虜………あ、そうだ!良いこと考えた!!!

じゃあ!カナお前を『雇いたい』!!」

 

 

 

「「……………はぁ?」」

 

 

 

 

 

 





次回

雇用取引

小笠原に居ることに頭を悩ませるカナに佐渡は一つの取引を持ちかける
それがカナの運命を分ける

小笠原島の過去編をやろうか少し悩みつつある作者がこちらです()
本編では軽く触れる程度にはやりますけどね!



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生を願い死を願う

「雇いたい……?」

 

 

「そうだ!!カナ!お前を雇いたい!!」

 

 

佐渡の突拍子も無い言葉にカナとエアは首をかしげると佐渡が続ける

 

 

「お前を住み込みで働いて貰うってのはどうだ!?」

 

 

「は、はぁ?何で……」

 

 

「月給40万!飯も風呂も使い放題!

週休二日に休憩自由、仕事内容は基本的にこの鎮守府の炊事洗濯掃除全般!後、少しだけ艦娘の砲撃演習教官!

安全保証福利厚生完備!

どうだ!?」

 

 

「い、いやそう言われても……」

 

 

「金が低いか!?60万ならどうだ!?」

 

 

「そうじゃなくて!」

 

 

勝手に話を進める佐渡とカナが止めようとするとエアがその隣で大爆笑する

 

 

「あはははは!!本当にカナを雇おうとしてるよ!!

面白すぎでしょ佐渡!!」

 

 

「黙ってろエア!!待て!佐渡!

何でそんなことを提案するんだ!?」

 

 

「何でって……別に理由はねぇよ?」

 

 

「はぁ?」

 

 

「だって、カナは俺達ともエアとも居たくないんだろ?

だったら島を確保する必要がある、でも無許可の誰も知らない島に住み着くと見付かる危険性がある

なら島を買うしかないだからうちで働いて資金を稼がないか?うちなら歓迎だしな!!」

 

 

「………私はお前達の敵よ?」

 

 

「関係ないね!!俺は助けたい奴を助ける!自由に生きるって決めてるんだ!!!」

 

 

佐渡は立ち上がると胸を張っておりその姿を見たエアは溜め息を付く

 

 

「本当、あんたは自由人ね」

 

 

「何を今更言ってやがる!!」

 

 

「…………少し考えさせて」

 

 

「おう!時間はたっぷりあるからな!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時は流れ真夜中の小笠原鎮守府カナは静かに屋上に登り満点の星空を見上げており破壊された街を眺めていた 

 

 

「……小笠原か……初めて来たな」

 

 

そして先程からの佐渡の態度に疑問を感じながら溜め息を付いていた

 

 

「……変な男、私が誰だが分かってるのか?」

 

 

「分かってるからこそじゃない?」

 

 

声がする方角を向くとエアがドアに立っておりカナに近付くと珈琲の入ったカップを手渡す

 

 

「どういう意味だ?」

 

 

「あんたの島を…ドレス島を奪った償いのつもりよ

多分アイツがそう言うことを言うのは」

 

 

「……ドレス島…あれからどうなったの?」

 

 

「今、ロキが兵器庫に残されていた奴等を動かして何とか守ってるわ

そろそろ動かなくなるとは思うけど、後椿は無事よ

ネプチューンが回収したって」

 

 

「……そう」

 

 

カナはそう聞くと溜め息を付きながら壊された街を見ていた

 

 

「……私は『守る者』

どんな力からも災害からも私は守り続けてきた

艦娘が来ようが深海棲艦が来ようが負ける気は無かった」

 

 

「………そうね、あんたは強い

誰よりも守る時はだけは本気を出す

『だから私は勝てた』」

 

 

「………今でも思い出す、負けたときをあの時を

ボロボロになっても腕が吹き飛んでも私はアイツを艦娘(叢雲)を殺す気で居た

初めて、初めてだった

艦娘を、敵を殺そうとした

でも届かなかった、私の刃はアイツには届かなかった

いくらアイツが『呪われている』としても」

 

 

そして悔しそうにカナは手すりを掴むとその手すりがぐにゃりと曲がる

 

 

「………怨んでるの?叢雲を」

 

 

「まさか?そんなわけないでしょ

負けたのは私の責任、私の力不足、私の怠慢であり慢心

…………でもね、私は目的を失ってしまった

生きる意味を」

 

 

「っ!あんたまさか!?」

 

 

カナの意図を察したエアは声を荒げるとカナは微笑む

 

 

「…そうよ、死ぬつもりだった

だって意味が無いんだし、守る力の無い私に価値は無い

だからアイツ(佐渡)が私を助けようとする意味が分からない」

 

 

「あんたねぇ!始原があんたに死んで欲しく無いから艤装にセーフティを付けたのよ!!!なのにあんたは!!!」

 

 

始原(ピース)は居ない、私を従えさせる者は今どこにも居ないのよ

現実を見なさいよエア」

 

 

カナはそれだけを言うと珈琲を飲み干し屋上から出ていこうとする

 

 

「待ちなさいカナ!!あんたを必要としてる深海棲艦は多く存在してる!!椿だって!ネプチューンだって!貴女を探してる!!!

それを裏切るつもり!?」

 

 

エアが声を荒げているがカナは気にせず歩いていくと屋上の扉に手をかける

 

 

「それは違うよエア

あの娘達が探してるのは私ではない(力無いカナ)

あの娘達が探してるのは私なのよ(力あるElite)

お休み、今日は休むわ

明日アイツの誘いは断ってこの島を夜中にひっそりと出ていくわ

じゃあねエア、心配してくれてありがとう」

 

 

その言葉と共にカナは静かに屋上を後にする

 

 

「………全く!!真面目過ぎるわ!本当に!!!

絶対に死なせないわよ…カナ!!!

あんたが死んだら始原に会わす顔が無いじゃない!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてその夜日本の本島にて一人の艦娘が荷造りをしていた

 

 

「……良し!準備オッケー!

後は小笠原へのルートだけど……前に佐渡提督が通ったルートで行けば問題ないか!

随伴艦や明石には迷惑を掛けられない!明日の早朝に行こう

小笠原鎮守府へ!!!」

 

 

 

 





次回

混乱

カナはエアに心の内を打ち明けるとエアはそんなことさせまいとしカナも雇用の話を拒否しようとするがそんな最中小笠原と佐渡に最悪の知らせが届く

次回新人艦登場!……予定?
性懲りも無く小笠原への新しい島流しになります!
イベントお疲れ様でした!雲龍は来てくれませんでしたよ畜生!!!
夕張改二のお腹あれ冷えないのかしら?





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切迫

次の日の早朝4時頃、まだ外は暗い状態で佐渡の携帯が突然鳴り出し佐渡は飛び起きる

 

 

「んっ!この時間に電話!?

緊急召集!!……って部隊じゃあるまいし気のせいか……

どうせエアのイタズラアラームだろう」

 

 

そう思い再び眠りに付こうとするのだがふと気付く

 

 

「………嫌、待てよ?こんな時間にあるのか?

…一応見るか」

 

 

そして起き上がると携帯が置かれている机まで歩みを進めていくとアラームではなく大淀からの電話であり驚きながらも電話に出る

 

 

「はいはい?こちら小笠原鎮守府提督佐渡ですが?」

 

 

『あっ!良かった!佐渡提督出てくださいましたね!!!

朝早く申し訳ありません!!大淀です!!』

 

 

「ほいほい、どったの大淀さん

こんな朝早くから……ふわぁ……クソネミ……」

 

 

『本当に申し訳ありません!実は小笠原鎮守府へまた新しい艦娘が流されておりまして!!』

 

 

大淀の言葉に佐渡は一瞬で意識が覚醒する

 

 

「何だって?

だが、今回は叢雲達がそっちに居るだろう?」

 

 

『そ、それが!叢雲さん達や私達の同伴は一切禁止されておりまして………』

 

 

「まさか!!!一人でここまで来るつもりなのか!?」

 

 

『は、はい……なのでそちらに残ってる』

 

 

「マジかよやべぇな!!!ありがとう大淀さん!ちょっと出てくる!!」

 

 

『佐渡提督待っ』

 

 

佐渡はその言葉と共に慌てて着替えると扉を勢いよく開け全速力で鎮守府内を駆けていく

 

 

「んん……なぁによ……こんな朝早くから…」

 

 

「敵襲!?」

 

 

 

その音に起こされたのかエアとカナ、そしてソラが目を覚まし鎮守府の中を走っている佐渡を探し見付けると敬礼をする

 

 

「佐渡様!どうかされましたか!?

敵襲でしょうか!?」

 

 

「い、いや違うよ!ごめん起こしちゃって!!

寝てて良いよ!」

 

 

「なぁによ佐渡……こんな朝早くから慌てて……」

 

 

「人間!!敵襲か!?深海棲艦か!?それとも何かか!?」

 

 

「あー…ごめん三人とも…実はね」

 

 

佐渡は起きてしまったエア達に慌てている理由を話すとソラが慌てて走ろうとする

 

 

「ちょっとソラ?何処に行くつもり?」

 

 

「どこって!α達を起こしてきます!!

私達が迎えに行けば恐らく」

 

 

「駄目だ!今回ソラさん達は協力しないでくれ!!」

 

 

「な、何故ですか!?」

 

 

ソラが疑問に思っているとエアがその質問に答えていく

 

 

「……あんたねぇ、仮にも私達は深海棲艦側よ

しかも、今小笠原周辺を警備してるのは別の艦隊

あんたが出たら私が小笠原で艦娘を匿ってる事になる

そうなったらどうなると思う?」 

 

 

「あ………で、でも!それでも!!」

 

 

「良いんだ、気持ちだけありがたく受け取っておくからさ!」

 

 

ソラがエアの反対を押しきって行こうとするが佐渡がそれを制すると武器を装備しながら海岸へと走っていきエア達も佐渡を送っていく

 

 

「……うん、準備完了!良し、行きますか!!」

 

 

「佐渡様!本当にお一人で行くつもりですか!?」

 

 

「あぁ!多分死ぬことは無いと思うがもしもの時は……エア!頼んだぞ!」

 

 

「………はぁ…分かったわよ

でももしもの時とかは辞めてよね、絶対帰ってきて」

 

 

「おう!任せとけ!小笠原鎮守府の提督さんは他の鎮守府とはちょっと違うんだぜ!!」

 

 

佐渡がボートのエンジンを掛けるとカナがボートを掴む

 

 

「待ちなさいよ佐渡」

 

 

「ん?どうしたカナ?」

 

 

「……お前が行った所で助けれる保証は無いし、非力な人間ごときに何か出来るとでも思ってるの?」

 

 

「…………」

 

 

カナは佐渡の事を睨み付けると更にボートを掴む力を上げていく

 

 

「知ってるよね?深海棲艦はお前達人間が作り出した兵器はほとんど通用しない

人間ごとき下等生物に私達は殺すことも傷を付けることは出来ない

お前が行った所で無駄よ、ただ惨めに残酷に死ぬだけ」

 

 

「……正論だな、確かに俺が行った所で何の助けにもならないのかも知れないな」

 

 

「だったら」

 

 

「だがな、俺はここで動かない事を後悔したくないんだ

もし、ここで俺が行かなかったら助けられない命なのかも知れない

俺が行ったことで助けられる命なのかもしれない

だから俺はここで動きたい、助けたいんだよ」

 

 

佐渡はカナの説得に笑みを浮かべながら答えカナは溜め息を付く

 

 

「……馬鹿ね、底抜けの」

 

 

「はは、良く言われるよ」

 

 

そう言葉を交わすとカナはボートを掴んでいた手を放し佐渡は出発する

 

 

「艦娘が今深海棲艦の艦隊と交戦してるわよ

大した艦隊じゃないけど一人だとキツイんじゃない」

 

 

「っ!ありがと!カナ!!

よっしゃ!待ってろよ!!!」

 

 

 

戦闘をしている流されて来ている艦娘を助けるために佐渡はボートを走らせると運転を自動に切り替え武器の整備を行う

 

 

「……久しぶりの海上戦闘だ…さてどこまでやれるかな…」

 

 

 

「……エア、ちょっと来て」

 

 

「は?え?ちょ、ちょっと!?」

 

 

佐渡が見えなくなるとカナはエアの手を引くと工廠へと走っていきソラもその後ろを追いかけていく

そして扉を勢いよく開けると親方が目を覚ましカナの前に降りてくる

 

 

 

「ん……どうした?カナ……こんな時間に…」

 

 

「ちょっと良い?エア、あんたにお願いしたいことがあるの」

 

 

「はぁ?な、何よ?お願いって……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな中小笠原近海の海上では一人の艦娘と深海棲艦の艦隊が戦闘を行っており劣勢を強いられていた

 

 

「簡単には小笠原に行けないって事ね…

このルートは外れだったかしら!!」

 

 

 

 





次回

海上戦

カナの問題が解決もしていないのに突然の電話に佐渡は驚愕と焦りながらも流されてきている艦娘を助けようと奔走する

果たして流されてきた艦娘とは?


久しぶりの投稿です!!!
失踪?しませんよ!
ちょっとゲームの育成とかリアルが忙しかったりだとかで書けてませんでしたすいません!!






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切迫 二

佐渡がしばらくボートを走らせ望遠鏡で辺りを探索していると本島側から艦娘の砲撃音が聞こえそちら側にボートを向ける

 

 

「あっちか!!間に合ってくれよ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここは小笠原と本島の中心に位置する海域にて最も深海棲艦と遭遇する可能性が高い海

 

通称深海境海(ボーダー) 

 

小笠原を取り巻く円形状の海域にして大抵はソラ達の深海艦隊が守護しているがたまにはぐれ深海艦隊達がここを通るため流されてくる艦娘は必ずここで深海艦隊と衝突する

高い索敵能力が無い限りここを無事に突破することは出来ない

そして流されてきた一人の艦娘はここで深海艦隊と対峙していた

 

 

「くっ、やっぱりあの島に単独で行くのは危険ってことね………でも悪いわね通してもらうわ!!!」

 

 

一人の艦娘に対し深海艦隊は駆逐イ級三体、重巡リ級二体、旗艦戦艦タ級一体と言う編成

戦闘馴れをしていないのかそれとも艦娘を舐めているのか砲撃を良く外していた

 

 

「…でもまだ当たり見たいね…話によるとここに出る深海棲艦ってかなり練度が高くって普通の艦隊じゃないと通れないって聞いたんだけど……この艦隊なら何とか……」

 

 

と油断していると突然その艦娘の足下が爆発し吹き飛ばされる

 

 

「なっ!何!雷撃!?

で、でも駆逐艦や重巡は……まさか!?」

 

 

艦娘が足下を確認すると海中に六体の潜水艦がうっすらと映っており背筋を凍らせる

 

 

「嘘でしょ!もしかして援軍!?

ヤバいこれは想像以上にヤバい!!」

 

 

その姿を見たタ級は笑みを浮かべると他の艦隊に指示を出し一気に艦娘を追い詰めようとするが

 

 

「でも、まだ予想通りね!!」

 

 

艦娘は爆雷を取り出すとソナーを使い潜水艦を爆撃するとタ級は驚きその瞬間一気に小笠原へと走りだす

 

 

「正直撹乱用に持って来たんだけど役にたったわね……さて、こっからは撤退戦ね!

あのタ級が呼び寄せたとするとここでの持久戦は不利!

今のうちに」

 

 

だが次の瞬間突然艦娘の左足を何者かが撃ち抜き艦娘は海上に倒れてしまう

 

 

「っつぅ!な、…一体誰…まさか!」

 

 

艦娘が振り向くとタ級が笑みを浮かべながら主砲を向けており白煙が上がっていた

 

 

「まさか…撃ち抜いたの?私の足を…正確に…!

これを隠してたのねコイツ!!」

 

 

そしてその瞬間タ級が深海棲艦に指示を出しイ級とリ級が全速力で艦娘目掛けて走ってくる

 

 

「ヤバ、流石にこの状況は予想外!!!」

 

 

艦娘が動けずに居ると重巡リ級が主砲を構え思わず目を瞑ると

 

 

「はいはい!そこまでにしてもらおうかな諸君!!」

 

 

その瞬間突然の爆音と共に艦娘の身体に熱風が撫でる

 

 

「………え?」

 

 

「全く無謀な艦娘だなおい!これがバレたら俺怒られるんだからな!!」

 

 

慌てて目を開けると小笠原方面からボートが近付いてきておりその上には一人の男が乗っていた

 

 

「どこのどいつだ!うちに来ようとしてる…馬鹿な奴……は……え?…あ、あれ?夕張ちゃん?」

 

 

「さ、佐渡提督!!もしかして迎えに」

 

 

「あーごめん、話してる余裕無さそうなんだ

話しは後でじっくり聞かせてもらうから逃げるよ!!」

 

 

「え?」

 

 

爆煙が晴れていくと深海棲艦達は怒っており佐渡はボートを深海棲艦達へと向けて走り出す

 

 

「佐渡提督!!」

 

 

「夕張ちゃんが流された艦娘かは後で知るとして!!この距離なら小笠原が近い!!

今すぐ向かって!!」

 

 

「で」

 

 

「急げ!!俺は囮位しか役に立たない!!!」

 

 

「りょ、了解!!」

 

 

夕張が全速力を出し小笠原に向かっていくのに対し佐渡はボートを走らせると突然ボートを反転させロケットランチャーを構えると突っ込んできている駆逐艦達に向けて放ち正確に命中し爆煙に包まれる

 

 

「さてと、逃げるとしますか!!

コイツは……弾切れか

次はコイツらかな!!」

 

 

ボートを再びオートにすると小笠原へ向け走り出す

その後ろを駆逐艦達が追いかけてきており佐渡は大量の手榴弾を取り出すと安全ピンを全て抜きとり再び後ろに投げていく

 

 

「ちょ!佐渡提督なんでそんなに持ってるのさ!?」

 

 

「自己防衛用に決まってるっしょ!!」

 

 

そして爆煙を突き抜け深海棲艦達が再び佐渡達に近付くが再び手榴弾の爆発に巻き込まれ進めなくなる

 

 

「凄い……人間でここまで深海棲艦を動けなくするなんて……やっぱり佐渡提督って普通じゃない…」

 

 

「さてと、恐らくそろそろ爆弾には馴れてきたかなぁ!!

それならこいつを御見舞いしてやろうかねぇ!」

 

 

佐渡は次にソラ達に使っていた閃光手榴弾を取り出すと夕張に警告を出す

 

 

「夕張ちゃん!!合図したら目を閉じて耳を塞いでね!!!」

 

 

「え、あ、はい!!」

 

 

爆煙が晴れていくと佐渡達へと向かってきており佐渡はタイミングを見計らう

(まだだ……もう少し…さぁ…俺を狙ってこい!!)

そして駆逐艦達が怒り狂い主砲で佐渡のボートを撃ち抜こうとした瞬間安全ピンを抜き取る

 

 

「今!!!」

 

 

「は、はい!!!」

 

 

佐渡の合図に夕張は耳と目を塞ぐと閃光手榴弾を投げつけそれに応じたリ級がそれを撃ち抜こうとした瞬間

目映い光と甲高い音が辺りに響き渡り佐渡はサングラスと耳を塞ぎ笑みを浮かべ駆逐艦達は突然の音に驚き大混乱に陥る

 

 

「やっぱり臆病な駆逐艦には効くようだな

それに人形の重巡もどうやらこの音と光には馴れてないと見た

予測は当たったな」

 

 

佐渡はそう呟くと後ろを向き夕張と共にその海域を後にしようとするがいきなり砲撃音が聞こえ佐渡のすぐそばを撃ち抜く

 

 

「なっ!あの光と音に動じてないのか!?」

 

 

「まさか、あの戦艦タ級!?」

 

 

一人駆逐艦達を置いて深海棲艦が佐渡達へと突っ込んできており夕張が主砲を構える

 

 

「戦艦タ級!コイツ、まさか少し戦いに馴れてやがるな!!

チッ!夕張ちゃんちょっと手伝って!!」

 

 

「了解!!」

 

 

と共闘しようとするがそれよりも早くタ級は佐渡のボートを撃ち抜き投げ出されそうになる

 

 

「くっ!」

 

 

「佐渡提督!!このぉ!!」

 

 

ボートが撃ち抜かれその反撃にと夕張が主砲を放つがタ級はそれを意図も容易く交わし夕張を撃ち抜く

 

 

「キャアァァァァァ!!」

 

 

「夕張ちゃん!チッ!こいつ!!」

 

 

佐渡は閃光手榴弾を再び投げ付けるがタ級はその手榴弾を爆発するよりも先に掴み海中へと沈めると海中で爆発し佐渡へ再び主砲を撃ってくる

 

 

「まさかコイツ後ろで俺達の事をずっと見てたのか!!

エアの配下では無さそうだし他の姫の配下か何かか畜生!!

不味い手立てがない!!こうなったら!!」

 

 

このタ級に勝ち目が無いと感じた佐渡はボートの向きを再び変えようとするがそれを夕張に止められる

 

 

「ま、待って!佐渡提督何するつもり!?」

 

 

「決まってるだろ!このボートぶつけて少しだけで時間を稼ぐ!!」

 

 

「駄目!そんなことしたら!!!」

 

 

「なぁに!君達と違って俺は海では死にはしない!!それよりも鎮守府に行ってくれ!

ちょっとめんどくさいのが居るけど君の味方だ!!」

 

 

「駄目だってば!!そんなことさせるために私は来たんじゃ!!!」

 

 

二人が言い争ってる中タ級は笑みを浮かべると全砲門を佐渡達に集中させ砲撃を撃とうとする

 

 

「不味い!夕張ちゃん離れて!!!」

 

 

「駄目!佐渡提督は私が守るんだから!!

絶対に!『もう分からないうちに失わないんだから』!!!」

 

 

ボートを守るようにタ級の砲撃をその身で受けようとしており佐渡は慌てて夕張を剥がそうとするが艤装を付けている夕張は動かせずタ級は砲撃をしようとする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「3……2……1……着弾!!」

 

 

だがその瞬間タ級が何者かの砲撃を受け突然後ろへと倒れる

 

 

 

「………え?」

 

 

「………へ?な、何で?」

 

 

「も、もしかして夕張ちゃん?」

 

 

「ち、違うよ!?私こんなに高い火力持ってないもん!

さっきの火力は戦艦クラスの物だよ!!」

 

 

(戦艦…?この辺りに艦娘は居ないし今の砲撃は空から…まさか…でもカナは艤装を持ってないはず……)

 

 

『佐渡!佐渡聞こえるか!?』

 

 

佐渡が疑問に思っているとボートの無線が突然声が聞こえ慌てて無線機を取る

 

 

「お、親方!?いきなりどうしたの!!」

 

 

『まだ無事の様だな!良し、それなら後ろを振り返らず真っ直ぐここまで全速力で走れ!!!

喜べよ!今、カナとエアがお前達を助けてくれている!!』

 

 

「は?それってどういう…」

 

 

親方の言っている意味が分からずに居ると次はエアの怒声が聞こえてくる

 

 

『良いからそこの緑髪の艦娘を連れて帰ってこいって言ってるのよお馬鹿!!!

こっちだって時間が無いんだから!!!』

 

 

「はぁ!?お、お前まさか俺達が!!」

 

 

『そのまさかよ!!今あんた達を目視(・・)してるのよ!!さぁ早く戻ってきなさいお馬鹿!!』

 

 

そう叫ぶエアは長門の姿に擬態しており艤装を付けているもののその艤装は大きく変容しており主砲が二本だけであり深海艤装に歪になっており少しばかり黒煙が上がっている

そしてその後ろではカナがエアの腹部に両爪を突き刺し両目を閉じ集中しながら息を上げていた

 

 

「はぁ……はぁ…残り五分が限界…早く…して…!

艤装も…はぁ……あんまりもたない!!」

 

 

 

 

 

 





次回

与えられたもう一つの力

危機的状況をエアとカナに救われる
だが遠距離砲撃が出来るのはカナだけの筈なのに何故かエアがその力を使えている
それはカナがある深海棲艦に教わっていた秘められた力であった

再びお久しぶりです!!
リアルが忙しくて全く書けませんでしたすいません!!!





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隠された力

佐渡が単身で夕張を助けに言っているときカナとエアは二人で工廠で親方からあるものを受け取りそれを持って海岸へと走っていた

 

 

「早くして!間に合わなくなる!!」

 

 

「ちょ、ちょっとカナ!貴女何をするつもりよ!?」

 

 

「そうだぜカナ!長門のスペア艤装(・・・・・・・・)を貸してくれだなんてよ!!」

 

 

そう、今エアが運んでいるのは長門のスペア艤装、つまり緊急時に備えて艤装が使えなくなった時の物を持ってきていた

 

 

「正直、これは誰にも見せたくないし教えたくは無かったんだけど

『今回だけ特別』

借りは作っておきたくないから!

エア!貴女の能力って確か『擬態』よね!?」

 

 

「は?それが」

 

 

いきなりのカナの質問に首を傾げているとカナが声を荒げる

 

 

「良いから答えて!!」

 

 

「え、えぇ…そうだけど…」

 

 

「なら!長門に化けてその艤装を扱うことも出来るのよね!?」

 

 

「か、可能よ?長門には化けたことも艤装を使った経験もあるわ」

 

 

「だったら!今すぐ長門に化けてその艤装を付けて!!」

 

 

カナに言われるがままにエアは能力である擬態を使うと髪の色を身体を自在に変えていき長門と全く見分けが付かないほどに姿を変え艤装を身に付けていく

 

 

「あ、あのカナ様一体何を……?」

 

 

「お前達が知ることが無いことよ

恐らく、深海棲艦でも今からやることはこれから後にも先にも知ることが出来るのはお前達だけね」

 

 

「終わったわよ、カナ」

 

 

艤装を身に付け終わったエアはカナに呼び掛けるとカナはエアに近づいていく

 

 

「何?声も変える?」

 

 

「必要ない

必要だったのは『艦娘の艤装を扱える者』だからね」

 

 

「はぁ?いよいよ分からないわね

どういう」

 

 

「今分かる、親方さん

申し訳ありませんがこの艤装の機関部分を開けてください」

 

 

「え?あ、あぁ分かったよ」

 

 

カナに言われるままに長門の艤装の機関部分を露出させるとカナはおもむろに自らの右手を鋭い爪に変化させ手首を切り裂き赤黒い血液が流す

 

 

「ちょ、ちょっと!?」

 

 

「カ、カナ様!?」

 

 

「お、おい!何してやがるんだ!?」

 

 

「黙ってて!これが必要なのよ……」

 

 

するとカナは滴り落ちる血液を機関に流し込んでいくと艤装がガタガタと震え始める

 

 

「な、何!?」

 

 

「長門様の艤装が…!」

 

 

「……私達姫クラスの…いや、Eliteクラスの姫にはそれぞれ独自に特化した能力が付いている

でも、その姫達にはある隠された共通点がある

それは『姫の血液を武器に混ぜ合わせる事で武器を変異』させることが出来ると言う事」

 

 

「なっ!?何だと!?」

 

 

カナの説明を聞いていると長門の艤装の震えが止まると一気に艤装が変化し始めカナは血を止める

 

 

「ぎ、艤装が……変わっていく…!」

 

 

「そして、その血液を混ぜ込まれた武器はその姫の特性に応じた形へと変わっていく

私の特性『超遠距離形』

つまりその艤装の射程は異常に伸びる様に変異する」

 

 

すると長門の艤装は真っ赤に染まっていき主砲の数が三門だったのが集まっていく一門に集中され巨大な砲塔へと変異し大きな艤装は更に巨大へと変わっていき艤装から柱が伸び砂に突き刺さり固定砲台の様に変わる

 

 

「す、凄い……これが姫Eliteの血液の力………」

 

 

「……何てこった……長門の艤装が……見る影もねぇ……」

 

 

「………分かるわ…カナ……これが貴女の艤装…なの?

……あんたこれで良くあんなに動けたわね……」

 

 

「ま、アブソリュート見たいにはなるわよね

アレはロキが私専用に作り上げた物だから

……さてと、次よ」

 

 

カナは次に両手を爪状に変化させるとエアの横腹部に思い切り突き刺す

 

 

「いっ!!!ちょ!カナあんた!!」

 

 

「か、カナ様!?今度は何を!?」

 

 

「まだ…あるのよ……私達姫Eliteには隠された力が…ね……エア…前を…見なさい…」

 

 

「な、何を……?」

 

 

エアは正面を向くと水平線が広がるだけ…だったはずだが明らかにその視力が向上しておりいつもなら見えないはずの距離が見えていた

 

 

「…………え?ど、どういう……」

 

 

その視力が信じられず再び瞬きをすると更に遠くを見渡すことが出来水平線から黒煙が見え再び瞬きをすると水平線の端に人影が見える

 

 

「……カナ…あんた私に何をしてるの!?」

 

 

「エ、エア様?一体どうしたのですか!?」

 

 

「これが……私達の…隠された…能力……もう一度瞬きをしなさい……エア…」

 

 

カナに言われるがまま再びエアは瞬きをすると海上でタ級に終われる佐渡と夕張を見ることが出来る

 

 

「佐渡!アイツ、タ級に追われてる!?」

 

 

「え?え?どこですか?佐渡様は?」

 

 

「おい!カナどういう事だ!?」 

 

 

「今……エアに……私の血液を流し込んでいるのよ……つまり…私の能力の一つ……『全てを見渡す目(千里眼)を貸してあげてる』……のよ……これは姫Eliteクラスに……しか出来ない……けどね……」

 

 

「貸す!まさかお前の能力をエアが使ってるのか!?」

 

 

「そ、そんなことが出来るんですか!?」

 

 

「えぇ……ただし…私は…動けないし…かなりの体力を……削られるけどね……

ある……『化け物』からの……教えよ……」

 

 

「化け物?」

 

 

「そうよ……私より……遥かに強い……『本物の化物』……にね……」

 

 

ソラに言われるとカナは昔、この力を教えてもらった日の事を思い出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◯年前

 

 

 

『なぁ、カナお前は自らの事を理解してるか?』

 

 

「……突然何?」

 

 

『いやなに、我々深海棲艦のトップに君臨するお前が自らの能力や力をきちんと理解してるのか聞きたかっただけだ』

 

 

ここはある兵器庫

私がのんびりとポテチとコーラを堪能してる中

ソイツはのんびりとした口調と威圧的な声で私を見下ろしながら話だす

 

 

「私がトップぅ?何言ってるのよ、確かに私は他の深海棲艦や姫よりは強いけどトップは貴女でしょ?

それに私よりエアやクイーンの方が強いわよ」

 

 

『ハハハ!抜かすな化物め、お前だけとは言っておらん!だがお前もトップに決まってるだろうが!

何せあの始原(ピース)からドレス島の守りを託されているのだぞ?

それは我の事も守ってるの同義では無いか?』

 

 

「いやいや、私なんか貴女に比べたらちっぽけよ

確かに人間や艦娘相手には負ける気は無いけど、貴女から見たら私なんてバッタが良いところよ」

 

 

『そう悲観するな、お前は充分強い

それを誇れ!それに我が動くその時は有り得ないであろう!!

何せ我の歩みは『世界の終わり』だからな』

 

 

「まぁ……ね…始原(ピース)が貴女を外に出した時はもう私達何て居なくても『人類が滅ぶ』わ」

 

 

 

『むぅ、だが外の世界は見てみたいな

我もこんな倉庫で一生を終えるのは勘弁してほしいのだがな?』

 

 

「それは有り得ないんじゃない?戦争が終わるときには出してくれるわよ

まぁその時貴女は役目を無いか、役目を全うするかのどっちかだけどね」

 

 

『ハハハ!蹂躙と言うのを一度してみたいものだな!』

 

 

「辞めてよ…貴女のそれは洒落にならない……

で、何だっけ?」

 

 

『おっと、すまぬな

多分だがこれは知らぬ者は少ないと思うが我々の血液にはある特殊な力があるのは知っておるか?』

 

 

「………何それ?初耳なんだけど?」

 

 

『やはり知らぬか、この際だ教えてやろう』

 

 

「ねぇ、それって『貴女見たい自由に血液を操れる』の?」

 

 

『それは無理であろう!!

これはお前達で言うEliteのみが持つことを許された固有の能力だからな!』

 

 

「残念、貴女の能力は私達何かより遥かに馬鹿げてる強さなのにね」

 

 

『まぁそう悲観するなカナよ、では教えてやろう

我々の血液に秘められた力を』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(まさか……ここでそれを使うことになるとはね……)

 

 

カナは自らの血液をエアの身体に流しているとエアは真っ直ぐ水平線を見ており次々と砲撃をしている

その姿を見て少しばかり微笑む

(……コイツが躊躇いなく誰かを…助けるなんてね………そんなにあの人間(佐渡)が大切なの?……少しばかり…興味が出てきた……けど……)

 

 

その瞬間カナがガクンと身体を揺らしエアの艤装に身体を預けるとエアがその事に気付く

 

 

「カナ!あんた大丈夫なの!?」

 

 

「平……気………じゃ……な………い………はや………く……」

 

 

「っ!佐渡!!!早くしなさい!!!これ以上はカナが持たない!!!」

 

 

『分かってるよ!!今全速力で向かってる!!!』

 

 

 

佐渡は全速力でタ級から逃げておりタ級も謎の砲撃に怒り狂いながら二人を追いかけてきていた

夕張が砲撃を撃ち命中するがそれを物ともせず真っ直ぐに突っ込んでくる

 

 

「もう!何なの!あのタ級!!」

 

 

「正に執念深いな!!まるで…何かを奪われ……たか……の様に……」

 

 

ここで佐渡は一つの答えに気付く、このタ級がどこの艦隊だったのかを

この海域はつい最近までエアとカナの海域だったものつまり今目の前に居る深海棲艦隊は

 

 

「……まさかコイツ…カナの艦隊の奴か?」

 

 

ボロボロになりながらも追い掛けてくるそのタ級の瞳には涙が浮かび上がり怒りと憎しみに燃える瞳をしていた

 

 

 

「………まぁそりゃ憎いよな、お前達の主人を殺されたんだもんな」

 

 

「佐渡提督!何言ってるの!!」

 

 

「良し、エア!砲撃を辞めてくれ!!」

 

 

『は?あんた何言って』

 

 

「良いから!後は何とかする!!」

 

 

佐渡はそう言うと閃光手榴弾を取り出し縄を取り出すと輪っかを作り身体に巻き付ける

 

 

「ちょ、ちょっと?佐渡提督?」

 

 

「はい!夕張ちゃんパース!!」

 

 

「え?え?」

 

 

「おい!タ級!!良く聞け!!!

お前のご主人……姫を殺したのは俺の艦隊の艦娘だ!!!

つまり俺が姫を殺せと命じてた提督何だぜ!!!」

 

 

突然佐渡がその話を始めるとタ級は歯を食い縛りながら佐渡を睨み付ける

 

 

「ちょっと佐渡提督!!」

 

 

「ハッ!お前達の姫様は大したこと無かったよなぁ!何せあの小島一つ守ることすら出来ねぇ雑魚何だからなぁ?

いやー、これならまだお前らを相手してた方が強いし苦戦したぜ!!

あんな雑魚姫他には居ないねぇ!ほんと!ろくでもねぇ姫だったなぁ!!!」

 

 

「…………ダ……マレ……」

 

 

「あんだぁ?聞こえねぇな?

悪いが俺は人間なんだお前達の言葉なんて分からねぇんだわ!!

あ!そっかぁ!お前達の姫様は言わなくても理解してくれたのか!!!

素晴らしい姫様だったみたいだな、死んだけどなぁ!!!

全く殺さないで生かしておけば娼婦にも出来るってのに海軍は勿体ない事をするよなぁ……あんな良い身体だったのにもった」

 

 

「ダマレェェェェェェェェェ!!!!!!」

 

 

突然タ級が叫びだすと全砲門を集中的に佐渡へ向ける

 

 

「姫様ヲ殺シタ怨ミ!!!!晴ラシテクレル!!!!!」

 

 

「良い怒りだが悪いなそれが目的だっ!」

 

 

 

だが佐渡はタ級に丸い何かを投げつけるとタ級はそれを直ぐ様掴み再び海の中に沈めようとするが違和感に気付く

その掴んでいる物は先程爆発させた閃光手榴弾では無く普通の手榴弾

しかも安全ピンを抜いてない物であった

 

 

「バーカ、それはダミーだよ!」

 

 

その声と共を聞き前を向くと目の前に閃光手榴弾が迫ってきており

 

 

「悪いな、お前をここで殺す気は無いんだ

ちょっと麻痺してもらうぜ」

 

 

瞬間甲高い爆発音と閃光が目を刺激しタ級は絶叫しながらも麻痺している視覚で動いているボートを目指そうとする

そのボートは何故か小笠原とは直角に曲がっていたが閃光手榴弾によって麻痺したタ級はそれを追い掛ける事しか出来ず追い掛けていく

 

 

「………全く無茶ばっかりするんだからさ」

 

 

「アハハ…悪いね夕張ちゃん」

 

 

タ級がボートを追う姿を尻目に佐渡は夕張に引っ張られながら海上をのんびり航行していた

 

 

「……あんなこと言って良いの?あのタ級多分また襲ってくるよ?

かなり佐渡提督を憎んでるし?」

 

 

「んー?構わんよ、海上では今日以外なら叢雲達が守ってくれるし陸上に来るならカモーンだぜ?

それに俺を狙うってことは他の艦娘とかに被害は出ないからな

にしてもこれ良いな波に揺られながらってのも

……とりあえず帰ったらお風呂入りたい、冬にやるもんじゃねぇなこりゃ」

 

 

「…やっぱり佐渡提督は馬鹿で優しい人なんだね」

 

 

「そんなことねぇよ?あ、そうだエア聞こえるか?」

 

 

『はいはい、聞こえてるわよ』

 

 

「すまん、助かったよ

と言うか撃って良かったのか?

仲間だろ?」

 

 

『大丈夫よ、あの砲弾自体は長門の砲弾だから恐らくあのタ級にはバレてないわ

それに撃沈はしてないし?』

 

 

「そういう問題なのか……」

 

 

そして夕張と佐渡はタ級と言う驚異から無事逃げることが出来エア達が待つ小笠原へと向かっていく

 

 

 

 

 





次回

合流、そして

エアの援護砲撃により佐渡達はタ級からの追っ手を振りきることに成功する
そして無事小笠原に帰れたのだがカナの様子が?

やっとリアルが落ち着いてきましたぁ……
そろそろ一日投稿に戻せそうですはい









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オーバーヒート…?

タ級からの上手く逃げおおせた佐渡と夕張は二人で小笠原の海岸へと向かっていき何とかその後無事に島の内海に入ることが出来安心していた

 

 

「と言うか、何で夕張ちゃんがここに来てるんだ?

俺は確か流されてくる艦娘が居るって聞いたんだけど?」

 

 

「鈍いなぁ?それが私だよ?」

 

 

「…………ん?ごめんちょっと分からない?

夕張ちゃんが流されてきた艦娘???何の冗談??」

 

 

「いや、本当だよ?

正確には私は『報酬艦』何だけどね?」

 

 

「駄目だ更に分からん!!」

 

 

佐渡が夕張の言葉を全く理解できなくなっていると夕張が今回の事に関して詳しく説明してくれる

今回流されてきたのは間違いなく夕張であること

そして叢雲達の護送を断ったのは自分でありそれを東雲大元帥にも話していたこと

それが原因で一人で小笠原に向かっていたこと

 

 

「待った!何でそんなことしたのさ!?」

 

 

「そりゃそうだよ、この島に送られる艦娘は必ず『護送艦を付けてはいけない』って決まってるからね

それは大元帥であろうとそれを変えることは出来ない

いくら優秀な艦娘であろうと

それにあの人にも恩義があるからね、手を煩わせる訳にもいかないの」

 

 

「いや、それ以前にだ!!君はこんな島に送られる艦娘じゃない!!!

君は何かに裏切られた訳でもなく!海軍に敵対してるわけでもなく!問題があるわけでもない!!」

 

 

「………佐渡提督、勘違いしてない?」

 

 

「…え?どういうこと?」

 

 

佐渡は見上げると夕張は悲しそうに微笑みながら呟く

 

 

「…私はね、問題がある艦娘なんだよ

それも…兵器としても…艦娘としても…ね?」

 

 

「待った!それは可笑しい!なら何で大本営に居れたんだ!明石さんの工廠に入れたんだ!?」

 

 

「……後で、その詳しい話はしてあげるね

でも先にこれだけは言っておくね佐渡提督」

 

 

「な、なんだい?」

 

 

海上を引っ張られながら見上げると夕張は冷たい眼差しを佐渡に向けており口パクで何かを言うと再び前を向く

だが、夕張は言ったことを後悔したのか頭を横に振るい無理矢理話題を変える

 

 

「と思ったけど辞めとく!期待は無駄って分かってるからね!ほら見えてきたよ!!佐渡提督!!」

 

 

「お、おう?」

 

 

夕張は佐渡へ向けた言葉が伝わってないと思っていたがその言葉は佐渡に届いており夕張が流されてきた理由を同時に理解する

(………成る程な、確かに『あんな言葉』を言う夕張ちゃんが普通…ではないわな

 

…………待った!今俺達海岸に向かってない!?)

 

 

夕張の事もあるがそれよりも海岸にはエアとカナが居ることを思い出すと慌てて起き上がろうとするも海上であり思うように動けないでいると

 

 

「おー!あれがさっき助けてくれた人かな?おーい!!」

 

 

「ちょ、待った待った!夕張ちゃ」

 

 

「よーし!全速力!!」

 

 

「お願い!お願いだから待ってぇぇぇぇぇ!!!!」

 

 

佐渡の叫び声虚しく夕張は全速力で走っていくとあっという間に海岸に到着しエア達と対面する

 

 

「あら?見えてた通り可愛い艦娘ね?」

 

 

「先程佐渡様が話していた艦娘さんですね!

朝早く御苦労様です!!」

 

 

佐渡は慌てて立ち上がるとロープを切断し夕張の前に立ち塞がり両手を広げて間に入り込むと夕張は唖然としていた

 

 

「あー!あー!これは!これは違うんだ!夕張ちゃん!!

これはね!えっとね!色々あってね!?」

 

 

「ちょっと佐渡ー?何私の前に居るのよ?邪魔退きなさい?

可愛い艦娘が見れないじゃない?」

 

 

「そうですよ、佐渡様?

そんなに慌てること無いじゃないですか?」

 

 

「お前ら状況理解してる!?あのさ!天然なの??

艦娘だよ!?しかも大本営から来た新人の!!お前達のこと全く知らない艦娘さんだよ!?

君達深海棲艦!!どぅーゆーあんだーすたんど!?」

 

 

「こ…この人……まさか…空母棲姫……?」

 

 

「そうよー?でもその名前はよして私の名前はエア

あんた達からは"提督殺し"とも呼ばれてる壊滅種の空母棲姫よ」

 

 

「ちょっと黙ってろエアぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

佐渡の話を聞かずに自己紹介を進めるエアに突っ込みを入れていくと夕張が佐渡を避けてゆっくりとエアに近付いていく

 

 

「あーあー!夕張ちゃん待って待って!!

コイツは悪いやつじゃなくてただの!!!」

 

 

と慌てていると佐渡を尻目に夕張はエアの目の前に行きまじまじとその姿を見ると主砲を構えようとする

 

(やっば!止めないと!!!)

 

その姿を見て夕張の首後ろに思い切り手刀を振り下ろそうとする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「初めましてエアさん!!お話は伺っております!!とてもお優しく素晴らしい人だって!!」

 

 

だが、夕張は佐渡の思ってる事とは違い主砲を構えようとしたわけではなくただ手を取るために動いただけであり佐渡の手刀が空振りになる

 

 

「んぁぁぁぁ!?」

 

 

手刀が空振りになりそのまま地面に倒れるとエアが呆れながら溜め息をつく

 

 

「あんた……何してるの?馬鹿なの?アホなの?

それともネタ?」

 

 

「い、いや!そうじゃないわい!え?夕張ちゃん?

何でエアの事知ってるの??」

 

 

「え?……あっ!ヤバ……アハハ……

じ、実は…明石から聞いてて……ね?」

 

 

「はい!?あの人まさか他の人にも言ってるの!?」

 

 

「い、言ってないよ!?ち、違うの!私が偶然深海棲艦のデータを見付けちゃって……」

 

 

「おいおい……勘弁してくれや……」

 

 

佐渡が溜め息を付き立ち上がるとエアの後ろから一人フラフラとした動きで近付いてくる人影を確認する

 

 

「ん?もしかしてお前カナか?おい大丈夫かよお前?」

 

 

「…佐……渡……?」

 

 

「あ、ヤバちょっと佐渡カナを頼める?多分私よりかなり疲弊してーー」

 

 

とエアが言っている最中カナがふらつきその状態から倒れそうになり佐渡が慌ててその身体を抱き抱える

 

 

「おい!カナお前大丈夫か!?」

 

 

「………………」

 

 

「か、カナ様しっかりしてください!!やはり血を使いすぎたのではありませんか!?」

 

 

「は、はぁ!?どういうことだよ!?」

 

 

「カナは自らの血液を利用して、長門の艤装を変異させお前達を助けたんだよ!!」

 

 

佐渡が困惑していると親方がエアの肩から顔を出しその説明をするとカナの傷付いた腕を自らの服を破って傷口に巻き付ける

 

 

「何でそんなことを!!」

 

 

「あんたに借りを作りたくないらしいわよ

まぁ、そうでしょうねカナは深海棲艦の中でも恩とかを気にするタイプの奴だからね

早目に返したかったんじゃないかしら?」

 

 

「だからって!こんな状態になるほどに無茶なんてするじゃねぇよ!!!全く!折角助けた命を無駄にしようとするなこのお馬鹿!!」

 

 

「…う………る………さい………あー………もう………無理……」

 

 

「お、おい!カナ!何が無理なんだよ!!おいしっかりしろ!!」

 

 

カナの様子が明らかに良くは無く慌てているとカナは佐渡の首に手を回すと思い切り力を込める

 

 

「ちょ、ちょっとカナさん!?」

 

 

「…………テチ」

 

 

「…はい?なんだって!?」

 

 

声が聞こえなかった佐渡にイラついたのかカナは佐渡を睨み付けると大声で怒鳴りつける

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「だーかーら!!!ポテチとコーラ!!!!!

後チョコレートにグミもたーべーたーい!!!

おーなーかーすーいーたーのー!!!!!

血液使い果たして動けないの!!早く運んでよ!!

あー!もう、真面目キャラやってらんなーい!」

 

 

その叫び声と同じくしてカナのお腹からぐぅ~と空腹の音が聞こえ佐渡は唖然とする

 

 

「…………………はぁぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

 

 

 






次回

オフスイッチ

夕張を無事に小笠原に届け終わると同時にカナが予想外のキャラ変に驚きながらも運んでいくのだが?


カナの様子が変わりましたね…?
因みにこれがあの時(前章の戦闘前)でカナが見せてた一面になります!




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オーバーヒート…? 二

ここは場所変わり談話室兼居間に全員を集めていた

佐渡が風呂から上がり服を着替え訪ねるとある意味目を疑う光景が飛び込んできており目を疑う

 

 

「あー……むん……うまー……あー……最高ー……妖精……もっとー……」

 

 

「ほら!お前らどんどん持ってこい!!

お菓子だ!大量のお菓子をカナの口にぶちこんでいけ!!」

 

 

「「「りょ、了解!!」」」

 

 

「コーラー………」

 

 

「次は飲み物だ!!早くしろ!!」

 

 

「……何この状況」

 

 

コタツに身体ほとんどを突っ込んだ状態でカナは口を開けその中に妖精達がひっきりなしにポテチを入れており近くには巨大なコップにコーラが入っておりそれをストローで飲ませている

流石の佐渡も驚き突っ込むと夕張とα達がババ抜きで遊んでおりエアもコタツでのんびりとアイスを頬張っている

 

 

「………………ここは本当に鎮守府なのか?

いや、そうだよな?夢とかじゃ無いよな?うん?」

 

 

「何意味わからないことほざいてるのよお馬鹿

早く入れば?」

 

 

「良し!あたし上がり!!」

 

 

「チョ!夕張様早イ!」

 

 

「グヌヌヌ!トナルトα持ッテル!?」

 

 

「シ、シーラナイ……」

 

 

「……考えても無駄っぽいなよし入ろっと」

 

 

佐渡はコタツに入ると脚を何かにぶつけるとカナの身体が揺れる

 

 

「ちょっと~……冷たいから触らないで~……

触るなら……暖めてからに……してよ~……」

 

 

「あ、ごめん」

 

 

「完全にオフになったわねコイツ」

 

 

思い切り寛いでいるカナをエアが見ていると佐渡は本題に入る

 

 

「な、なぁエア?

カナはどうしたんだ?」

 

 

「は?何がよ?」

 

 

「嫌……さ?…何か大分さっきと違わなくないか?」

 

 

「あー……あんたは知らなかったっけ?

カナはドレス島では大半がこんな感じよ?

まぁ、簡単に言うと反動ね

カナは深海棲艦の中でもかなり真面目でね、いつも気を張ってるのよ

だからたまにこうやって気を思い切り緩めてのんびりすることがあってねそれが今よ」

 

 

「へ、へぇ……」

 

 

佐渡がカナを見ると確かに真面目だった面持ちは見る影もなく消えており脱力し動こうとする気配が無い

その姿を見てか佐渡は一つの疑問を解決するためにカナの側に移動する

 

 

「ちょっと~……寒いから開けないでよ~……」

 

 

「なぁ、カナさんやさっき冷たいから触るなって言ったよな?」

 

 

「言ったー」

 

 

「……じゃあ暖かったら良いのか?」

 

 

「……なーにー?……触りたいの~?」

 

 

「え、あ、うん」

 

 

「どーこーをー?」

 

 

「え、えっと太股とか?」

 

 

「いーよー……好きにすればー…?…たーだーし…暖かい手で触ってよねー……」

 

 

「……あの、手とか切り飛ばさない?」

 

 

「……はー?……何でー…そんな……疲れることしないといけないのー?……別に減らないしー……好きにすればー……?

あー…遠慮してるのー?胸とかでもー……良いわよー……」

 

 

佐渡のセクハラ発言に全く同様せず目を丸くしエアを再び見ると溜め息を付きながら頭を抱えている

 

 

「あー…うん、今なら触りたい放題よ!!やったわね!佐渡!!」

 

 

「いやそこは止めろよ!?」

 

 

「いや、発言したの佐渡提督じゃん!?」

 

 

「うん!そうだったね!!夕張ちゃんありがと!!

俺可笑しくないよね!?」

 

 

ボケをボケで返され流石の佐渡がツッコミといつの間にかこちらに来ていた夕張にツッコミされてしまいカナの頭を撫でる

 

 

「んー……何よー?頭で良いのー?…男なら胸とか下とか触れば良いじゃーん?」

 

 

「嫌な?流石にそんなこと佐渡さんしないよ?」

 

 

「触りたい癖に我慢は良くないよー?ほらほらー?」

 

 

「ウッ!!!!!

佐渡さん!深海の誘惑には負けないぞっ!!」

 

 

「何してんのよあんた達……」

 

 

佐渡とカナのやり取りに流石にエアがツッコミを入れると再び本題に入る

 

 

「まぁ、オフになったのは分かるんだが、何でカナは身動き一つ取らないんだ?」

 

 

「あー、それは単なるカロリー不足よ」

 

 

「カロリー不足?」

 

 

「えぇ、カナは他の深海棲艦とは違ってかなり多くのカロリーを消費するの

特にカナが操ってた特殊陸上型艤装アブソリュートは使用するにはかなりのカロリー消費してるって聞くし

カナにとって食事、カロリー摂取は大切なのよ

何せ食べないとこうなっちゃうからね」

 

 

「成る程……あ、だからあの時!」

 

 

ここで佐渡は昨日エアがカナに無理矢理唐揚げを食べさせた事を思いだし納得する

 

 

「そ、だから無理矢理にでも食べてもらわないと困るのよ

こうなっちゃうとコイツ一日この状態よ

……完全脱力状態と言うことでカナの事一日頼むわよ」

 

 

「えぇ……カナが嫌がるでしょ……」

 

 

「良いわよー……世話役とでも思っとけば良いしねー……人間嫌いだしー……借りも作りたくないんだけどーねー……

エアに作るよりー…マシー」

 

 

「良いのかよ……と言うかありがとうなカナ」

 

 

カナにお礼を良いながら頭を撫でていると不服そうに頬を膨らませる

 

 

「やーめーろー!頭撫でるなー!!

人間が頭触れるのはーきーらーいー!!」

 

 

「良し!なら今のうちに撫でておこう!!!」

 

 

「こーろーすーぞー!!下半身とか胸とかは良いけど頭はー撫でるのは少しだけだー!!!」

 

 

「待ったそれ可笑しくないか!?

何!深海棲艦は貞操観念無いんですかねぇ!?」

 

 

「「貞操……概念……?」」

 

 

「マジっすかこれ本当無いパターンやんけ!?」

 

 

「ちょっとー!佐渡提督!皆が居ないからってそんなことさせないんだからね!?」

 

 

「うん!夕張ちゃん居てくれて本当にありがとう!!!

居てくれないと俺マジ危ないわここ!!誘惑に負けそうだゾッ!俺!!」

 

 

佐渡が頭を悩まさせているとカナは脚でエアの脚を二回蹴るとエアは微笑みながらその意味を理解する

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(……ふーん?本当に貴女の思い通りになるかしら?カナ?)

 

 

 

 

 

 





次回

深海棲艦達との日常

カナの脱力状態により一日佐渡が世話することになったのだがカナは全く動こうとせず佐渡はそれに翻弄される……


リアル忙しくてつらひ…



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墜ちた姫と新人と孤島の提督

『で、では!夕張さんは無事にそちらに到着したんですね!?』

 

 

「えぇ、大丈夫ですよ

こちらで迎え入れる事が出来ました

ご心配なく」

 

 

居間を離れ提督室に戻ってきており改めて大淀に今回の事を説明していた

電話越しではあるが大淀からも安堵の溜めが聞こえる

 

 

『良かった………彼女も確かに問題持ちとは言えど友人ですからね……』

 

 

「はは、すいませんご迷惑おかけしてしまって」

 

 

『いえ!今回はこちらが全て悪いんですよ!?

佐渡提督は全く悪くありません!!』

 

 

大淀とそう話している間不意に提督室の二人に見られていることに気付く

 

 

「そう言って頂けると嬉しいです

……あ、ごめんなさいそろそろ切りますね

雑務が残っておりますので」

 

 

『分かりました!では申し訳ありませんが彼女をよろしくお願い致します!!』

 

 

「任せてください!では失礼しますね」

 

 

『あ!佐渡提督最後に一つ!』

 

 

「はいはい?」

 

 

佐渡が通話を切ろうとすると大淀に呼び止められると一言だけ告げられる

 

 

『どうか彼女に生きる意味(・・・・・)を教えてあげてください』

 

 

「……はいよ、任せておきな

ここは小笠原鎮守府、敗者の鎮守府

失った物を取り戻す場所さ」

 

 

『………ふふ、貴方の言葉は誰よりも信用できますね

最高の提督さん』

 

 

その言葉と共に大淀との通話が切れると溜め息を付く

 

 

「全く、俺は最高の提督何かじゃないですよ

過大評価し過ぎですよ」

 

 

「そうでもないと思うよ?私は」

 

 

普通(・・)の提督では~……無いよね~……」

 

 

「お前らなぁ……大分寛いでないか?」

 

 

佐渡が前を向くとソファにだらりと寛ぐカナの口に夕張が羊羮を入れており夕張も時々摘まみながら話していた

 

 

「にしても、この人……本当にあの時私達が戦った歴戦……あ、今は壊滅だったっけ?

飛行場姫のカナさんなの?正直全く信用できないと言うか……あの時撃沈したと思ったんだけど……」

 

 

「まぁ……そのだらけた姿を見てるとそう思うよな……

一応そうだよ、あの時お前達が戦った最強の陸上姫 飛行場姫壊滅種のカナだ

つい昨日偶然うちの島に流れ着いてね、今療養の為に在籍してるんだ」

 

 

「佐渡提督が言うなら本当だと思うけど……その……ね…あの時戦ってる身として言わせてもらえば凄い差だよ?

あの時は叢雲達が居たから戦えたけど……単身であの状態の飛行場姫のカナさんを目の前に出来ないよ……

まるで目の前に絶対的な捕食者が居るのかと思うくらいの覇気はあったし……」

 

 

二人の会話を聞いていたカナはだらけながら溜め息を付くと夕張に指示を出す

 

 

「ふーん……信じられないなら良いわ~……恐らく私にしか出来ないこと(・・・・・・・・・・・・)見せてあげるからそのアー◯ンドチョコ一つ頂戴ー………」

 

 

「え?あ、はい!」

 

 

夕張はカナに言われるがままにチョコを渡すとカナは人差し指と親指の間にチョコを乗せると佐渡に構える

 

 

「ターゲット確認……砲弾装填完了……風速ゼロ……狙い撃つ……」

 

 

「っ!!」

 

 

佐渡はそんな状態のカナに気付かずのんびりとお茶を飲もうとしておりカナは深く息を吐く

そして

 

 

「……発射」

 

 

その言葉と共に親指に装填されていたチョコを弾き飛ばすとそのチョコが飲み終わった佐渡の湯飲みの縁に当たりそのまま半開きになっていた口に当たり口内にチョコが入る

 

 

「むぐぅ!?な、何だ!?」

 

 

「嘘!?」

 

 

口の中に突然甘いものを感じ佐渡が混乱しているとカナが先程よりぐったりとする 

 

 

「はぁ~………余分に力使ったからもうダメ……」

 

 

「……凄い…親指だけであそこまで弾き飛ばして更に佐渡提督の口に入れるなんて…」

 

 

「ん?チョコか、こりゃ?

って!カナ何すんだよ!!せめて一言言ってからにしてくれよ!!」

 

 

佐渡が怒っているとカナは薄ら笑いを夕張に向ける

 

 

「どう…?……信じた?」

 

 

「…………はい!」

 

 

「ちょっと?そこのお二人様?一体俺に何の怨みがあってなのかなぁ?うん??」

 

 

「ち、違う!佐渡提督!これは!!」

 

 

「この艦娘がーあんたを撃ち抜けーって言ったのよー……」

 

 

「ちょっ!?」

 

 

「ほほう…?夕張ちゃんの差し金かこのやろう!!!」

 

 

カナの言葉を信じた佐渡は立ち上がると夕張に凸ピンをしようとすると

 

 

「ま、嘘なんだけどね~……私がやりたくてやった~……」

 

 

「嘘なのかよ!!お前なぁ!!」

 

 

カナがさっきの発言を訂正すると佐渡はカナの頭に凸ピンを食らわせるとカナは「いたーいー」と言いながら頭を押さえる

 

 

「全く、提督をからかうんじゃありません!」

 

 

「からかわれるー……やーつがーわーるーいー」

 

 

「何だとこのやろう!!」

 

 

「ま、まぁまぁ佐渡提督!」

 

 

久しぶりに訪れた佐渡への平穏

だが、それと同時に流されてきた二人

壊滅種飛行場姫 カナ

 

大本営直轄工廠担当艦 夕張

 

 

この奇跡の様な偶然に佐渡は再び立ち向かう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

砕かれたプライド(カナ)夕張(壊れた兵器)を直すために

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(見抜いてやる……お前の本質を…必ず)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(優しい人……それでも貴方は私を受け入れられる…?

明石でも直せなかったこの(欠陥兵器)を)

 

 

 

 

 

 

 





次回

それぞれの思惑

二人の問題児を一度に請け負うことになった佐渡
一人は気高い姫
一人は問題が無さそうに見える艦娘
そしてそれぞれ思惑があり佐渡を試していく…

次回から攻略編になっていきます!
二人からの猛攻?に佐渡が晒されていきます!!



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深海姫(カナ)

「………はぁ~……なんもしたくない~……」

 

 

「……大分寛いでるなお前…」

 

 

時間は流れ提督室にてカナと佐渡は二人きりになっていた

それも夕張は「工廠見てみたい!」と言い工廠に行ってしまいそれからずっと籠ってるらしくエア達も何かやることがあるとからしい

佐渡も一通り雑務を終わらせており寛いでいるカナを見ながら雑談をしていた

 

 

「にしても確かに夕張ちゃんの言う通りだな

アレがこうなってるとなると信じられねぇな………」

 

 

「仕方無いでしょ~……エネルギーが一旦切れるとー……こうなっちゃうんだからー……はぁ……」

 

 

「……改めてお礼を言うよカナ

ありがとう、俺達を助けてくれて」

 

 

「別にー……私はー…借りを返したー…だーけー……

でーもー?」

 

 

カナは残ってる力を振り絞りフラフラと歩き出すと佐渡の膝に頭を乗せごろんとソファに寝転ぶ

 

 

「ちょ!?か、カナさん!?」

 

 

「またー…あんたに借りを作っちゃったー……」

 

 

「借り?一体何の事だ?」

 

 

「私はー……こうなるとー…しばらくこうなっちゃうのよー……だからー…この状態だとー…私はー……何も出来ないー……そう…何も(・・)……ね」

 

 

「………何が言いたいんだ?」

 

 

佐渡は怪訝そうな顔をしていると怪しくカナが微笑む

 

 

「私をー……どうにでもー…出来るのよ…?

解剖とかー…実験とかー……貴方の性欲の吐け口にでもー……ね?」

 

 

「………………」

 

 

唖然としている佐渡の顔を見ながらカナは手に意識を集中させる

(……そうよ、どうせこいつも所詮欲深い人間…現に私はほとんど動けない程に弱っている…その姿を見てどうも思わないわけがない…始原(ピース)を裏切った浅はかな人間なんだ!エアが信じてると言えど私の天敵!!)

 

 

「どう…?胸はそこそこあるし抵抗もしない……良い娼婦で……実験体よ…?あんた達も気になるでしょ……私の身体がどうなってるのか?」

 

 

「…うーん、確かに気にはなるな

あの馬鹿デカイ艤装を使い、島を守り続け、他の深海棲艦より遥かに強く、高いカリスマ性を秘めた壊滅種の姫……

しかも美人だし文句の付けようがないほどにスタイル抜群だし最高だよなぁ…」

 

 

(ほーら、やっぱりコイツも人間よ

あの娘を裏切った人間…自分が相手より有利な立場に立てば縛り付け支配しようとする欲深き人間!!!

さぁ!私を襲うなり好きにすれば良いわ……その喉裂いてやる!)

 

 

「でしょ…?なら私を手に入れたらどう(・・・・・・・・・・)?」

 

 

カナが佐渡を誘惑していると佐渡は笑みを浮かべる

 

 

「……いや、そうはしないよ

俺は君を縛らない(・・・・)

 

 

「…………………は?」

 

 

 

佐渡が予想外の返事をしてきており驚いていると更に佐渡は上着を脱ぎカナの身体に掛けてあげる

 

 

「な、何で…!?あ、貴方!私よ!?

分かるわよね!?」

 

 

「うん?分かるよ、深海棲艦最高クラス姫級Eliteの飛行場姫 カナだろ?

と言うかその服冷えないか?」

 

 

「大丈夫よ!私達にはほとんど寒さなんて無いんだから!

と言うか分かってるなら!私を手に入れなさいよ!!

あんた!私は今好条件を持ち掛けてるのよ!?」

 

 

「うーん?別に俺は戦力は欲しくないし?」

 

 

「じゃ、じゃあ娼婦は!?私何でもするわよ!

あんたの欲望に答えるくらい出来る!」

 

 

「そう言うのも良いかなぁ

と言うか!女の子がそう言う事言うな!!」

 

 

カナの提案を全て却下した佐渡は凸ピンを当てるとお茶とお菓子を取る

 

 

「わ、分かったわ……な、なら…私を大本営に売り飛ばしたらどう……?嫌だけど……貴方に返す為なら……」

 

 

「はいはい却下却下、ほらお菓子食うか?」

 

 

「……………食べるけど………ねぇもしかしてエアが恐いの?良いわ、それならアイツに理由伝えて……それか!別の事でも何でも!!!」

 

 

カナが声を荒げると佐渡は口を塞ぐ

 

 

「落ち着けってカナさんやほらチョコ食べて」

 

 

「むぐぅ!!(何するのよ!!)」

 

 

動けないことを良いことに佐渡はカナの口を塞ぎしばらく何か話しているカナを黙らせる

しばらくするとカナが落ち着いたのか口から手を退ける

 

 

「………何でよ……」

 

 

「うーん?」

 

 

「………何で……借りを返させてくれないのよ……」

 

 

「………何言ってるんだよ?充分お前は俺に借りを返してくれてるよ

それに俺はお前に感謝してるんだからな」

 

 

「…………はぁ?」

 

 

カナがすっとんきょうな声を上げていると佐渡がその理由を話し出す

 

 

「…一つ聞かせてくれカナ

お前、あの時……叢雲達がドレス島攻略の時、全力だったのか?」

 

 

「何言ってる…のよ?全力だったわよ…?」

 

 

「ほう?それは最初から(・・・・)か?」

 

 

「っ!?………」

 

 

カナは佐渡の言葉に面食らったのか黙り混んでしまう

 

 

「…答えてくれ、お前は始めから全力だったのか?」

 

 

しばらくカナは沈黙しているとそっぽを向きながら答える

 

 

「……………………違う」

 

 

「やっぱりか、油断か?それとも手を抜いたのか(・・・・・・・)

 

 

「…………仕方無い……じゃない……」

 

 

「答えてくれ!カナ!!!」

 

 

「仕方無いでしょ!!!!私にあんた達を殺せないんだから!!!」

 

 

カナは残っている体力を振り絞り起き上がると手を爪状態に変化させると佐渡の首元に近付ける   

 

 

始原(ピース)が愛した!あんた達を殺すことは出来ない!!!私はあの娘の盾!あの娘の大切な()を!!全てを守るために私は戦うんだよ!!なのに!!!お前達は!!お前達は!!!!」

 

 

その姿を見た佐渡は微笑むと爪を掴む

 

 

「……………良かった、それがお前なんだな」

 

 

そしてそのままその爪を自らの首に触れさせ血を流す

 

 

「な、何を!!」

 

 

「カナ、俺を殺せ」

 

 

「は、はぁ!?何で!?」

 

 

「お前の島を、ドレス島の攻略を任せ、そして叢雲達の指揮をしていたのは俺だ

お前から大切な物を奪った俺を殺す権利は充分にある

叢雲達も納得するさ」

 

 

カナは慌てて爪を戻そうとするが佐渡が力強く掴んでおり動かせそうに無い

 

 

「何言ってるんだ!お前は!!」

 

 

「………正直な本音を言おうカナ

俺はお前に殺されても何も文句は言えないんだ

叢雲もな」

 

 

「ど、どういう」

 

 

カナがその理由を尋ねようとするよりも先に佐渡は話し出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は深海棲艦に全てを奪われ壊された事がある

仲間を、友を、プライドを、生きている意味すらもな

守らればならないその命を俺は目の前で簡単に一瞬で奪われたんだよ」

 

 

「っ!?」

 

 

カナはその言葉に信じられなかった

だが佐渡の瞳に嘘が付いているようには見えなかった

 

 

「だから、俺はお前の気持ちが分かるとは言わない

それでも俺があの時それが分かっていれば作戦に参加しなかった(・・・・・・・・・)

 

 

「な、何でよ……あんた達はそれを怒りに変えて私達と戦うんじゃないの!?」

 

 

「違う、俺はそれを終わらせる為に

このくだらない(・・・・・)戦争を終わらせる為に海軍に来た

復讐はどこかで立ち切らないといけない

だからお前は俺に借りをなんて返さなくて良い

借りなんて最初から無いんだよ」

 

 

「っ…………」

 

 

「だから」

 

 

「…お前やっぱり馬鹿だな」

 

 

カナはそう呟くと爪を普通の手に戻し佐渡を押し倒す

 

 

「ちょ、カナさん?」

 

 

「私はお前に借りを返すと言ってるんだよ、大人しく受けとれ」

 

 

「え、あ、えっと?カナさん?ちょっと待って今シリアスだったじゃん?何でこうなってるの?」

 

 

「シリアス?知らないわ、そう言えば男って女の身体が好きなんでしょ??」

 

 

さっきまでの空気をカナはぶち壊しにかかると佐渡の右手を掴み自分の太ももに触らせる

 

 

「ちょっ!?、か、カナさん!?ま、待ってください!!!」

 

 

「ほら……もっと触りなさいよ……好き…何でしょ?

人間は嫌いだけど借りを返すなら別

あ、胸の方が良い?」

 

 

そう言うとカナは佐渡の手を胸に近付け触らせようとするが

 

 

「それは色んな意味でアウトォォォォォォ!!!!!」

 

 

それよりも先にカナの頭を自分の頭をぶつけるとカナが痛みに苦しみ手を離す

 

 

「ちょっと!何するのよ!!」

 

 

「だまらっしゃい!この痴女!!!

身体大切にしろって言ってるのが分からないのこの娘は!!」

 

 

「はぁ!?だから!!借りを返すから私を◯せって言ってるの!!

合意よ!合意!!どうせここで貯まってるんしょ!?」

 

 

「否定……は出来ないけど提督さんはそんなことしません!!!

と言うか!女の子がそう言うこと言うなっていってんだろうがぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

この後佐渡の腕を再び掴み自らの胸に触らせようとしたが途中でエアが乱入し今回だけは事なきを得た佐渡であった

 

 

 

 

 

 





次回

姫の誘惑

佐渡が借りを返されることを望まないことに苛立てたカナは無理矢理にでも佐渡へ恩を返そうとする


シリアス?ハハハ、カナには関係ないですからね!
因みに少し佐渡の過去が明かされましたね
え?何で深海棲艦を憎んでいないのかって?
……そこはお楽しみに!





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深海姫(カナ)

そして少しだけ時は流れここは居間に戻ってきているのだがそこに居合わせたソラの艦隊に所属している四人が愕然と口を開けたまま佐渡を見ていた

 

 

「……ネェ、アルファ?私ハ夢デモ見テルノカナ?」

 

 

「……………違ウト信ジタイ」

 

 

「ハワワ………コンナ姫様……見タコトナイ……」

 

 

 

「………ポカーン……」

 

 

それもそのはず何故なら

 

 

「ちょっとー……いい加減借りを返させなさいよー……」

 

 

「いや、あのな?俺はそう言うのいらないし、とりあえず胸を押し付けるの辞めてくれますかね?」

 

 

「あーらー?それとも直接触った方が」

 

 

「辞めろ!!!金剛達のおかげで少しは引っ付かれてるの馴れたけど!!ここまでじゃねぇ!!!」

 

 

相変わらずカナによる猛攻?は続いており脱力した状態で佐渡の背中に胸を預け身体中を弄っていた

 

 

「たーしーかー?男ってここに……」

 

 

「だぁぁぁぁ!!!どこ触ろうとしてるんだお前は!?」

 

 

「◯◯◯」

 

 

「言わなくて良いわ!!このアホンダラ!!!」

 

 

一応、敵同士であり仮にも最強の一角であるカナが佐渡に背中から甘えてる?様に端からは見えており四人はあぜんとしていた

すると居間の扉が開き一人の深海棲艦が入ってくる

 

 

「はぁ……疲れました……まさか艤装が損傷してるとは…親方様にまたご迷惑を…」

 

 

「お、ソラさんお帰り」

 

 

「お帰りー……ソラー…あんた達はもう少し艤装を上手く使ったら?」

 

 

「そうですね…私もカナ様見たいに…う…ま………く………?」

 

 

居間に入ってきており現状を見たソラは目をぱちくりとさせ目を擦る

 

 

「…………………????

私は……疲れてるのでしょうか?

…………うーん?」

 

 

そして居間のドアを締め再び開けカナと佐渡を見ると目をゴシゴシと擦る

 

 

「…………………最近、忙しくも無かったはず

疲れもそんなに無いはず………確かに最近佐渡様のお料理は食べてないはありますが…………うーん幻覚を見るほどとは……一度寝てきた方が……」

 

 

「現実よソラ」

 

 

ソラが混乱している後ろからエアが現れ頭をコツンと叩きコタツに入っていくとしばらくソラは膠着した後

 

 

「……………佐渡様、貴方様は世界一の本物の女タラシなのですか?」

 

 

「違う!!断じて違うよソラさんんんん!!!」

 

 

「嫌だって!!可笑しいですよ!?

本来!始原様以外に懐く事がなく!誇り高く!深海棲艦でも最強であり!災厄と呼ばれる類いのEliteクラスの姫に!!!

しかもしかも!!よりによってその真面目で厳格な性格のカナ様に!!!後ろから抱き締められてる何て!!!

有り得ない!!えぇ!有り得ませんよぉ!!!」

 

 

「わーお、あのソラさんがそこまで言うってねぇ……」

 

 

「そりゃそうよ、私達Eliteクラスは本来人間や他の生物より遥かに強い実力を持ってる

それこそ一騎当千と呼ぶほど

ぶっちゃけ他の姫達が私達(Elite)との戦いを全力で回避するほどにね

特にカナは誰にも始原以外に従うなんて有り得ないほどの真面目な性格だからねぇ」

 

 

「………うん、このソラさんの反応とエアの話で再確認するけどやっぱりお前達ってとんでもないんだね」

 

 

佐渡は改めて今背中に寄っ掛かってるカナとエアを認識するが態度を変えようとは思っておらず背中に居るカナにポテチを渡していく

 

 

「と言うかー……いい加減借り返させろ~……

でもやっぱり動きたくない~………佐渡ー……勝手に触って~……」

 

 

「何度も言わすな!触らないっての!!」

 

 

「もう~……仕方無いわね~……」

 

 

すると佐渡の背中からゴソゴソと音が聞こえるとα達とソラが目を丸くしながら持っているものを落としエアが「あー……」と言いながら呆れた目線を佐渡に送る

 

 

「……?何だよお前達俺の顔に…」

 

 

「よっこいしょ……ちょっと寒いけどー……これならどうかしら?」

 

 

「っ!?ちょ!こ、この感覚!?」

 

 

佐渡は背中に伝わる熱と柔らかさに身体を震わせ恐る恐る後ろを振り返ろうとするが

 

 

「駄目佐渡様!!振リ向イタラアウト!!」

 

 

「チョチョ!コレ不味イ!」

 

 

「ヒャアァァ……」

 

 

「……ワーオ…凄イ」

 

 

「ちょ!ちょっとカナ様!!それは流石に!!」

 

 

「やるわねあんた、そこまで普通やる?」

 

 

「やるわよー……ふふふ、これでどうー?……人間の男……私の素肌(・・)は?」

 

 

そう、カナは自らの服を脱いで裸の状態で佐渡の背中に抱き付いており佐渡は冷や汗を掻いていた

 

 

「……ほ、ほう?……そこまでするの…?いや……阿野ですね……?カナさんや?……辞めようぜ?こういうの……と言うかこんな知識どこから?」

 

 

 

「ロキって……貴方知ってるわよね……

ソイツは博識…でね……男はこれで喜ぶって……聞いてね?……どう?……襲いたくなった……?」

 

 

「ぐぬぬぬぬ……これ…かなりキツイ…こうなったら!!!」

 

 

 

すると佐渡はテーブルに思い切り頭をぶつけ

 

 

「そ、ソラさんんん!!頼む!カナさんを剥がしてくれませんかねぇ!?

俺!眼を閉じてるから!!潰してでも閉じてるから!!」

 

 

「え、あ、その」

 

 

「早くしてぇ!!!俺も男だから辛いのぉぉぉ!」

 

 

「は、はい!!!」

 

 

佐渡の必死さにソラが動きだしカナに近寄ろうとすると

 

 

「ソラ、私の邪魔をするつもり?」

 

 

「え、で、ですが……」

 

 

カナは佐渡に抱き付いたまま近づいてくるソラを睨み付けると動けなくなる

 

 

「そこにお座り、死にたくはないでしょ?」

 

 

「う、……ですが…佐渡様は我々の…!!!」

 

 

カナの威圧に負けないように頑張って動こうとするが

 

 

「座れ」

 

 

「……はい」

 

 

「ソラさんんんんんんん!!!!!」

 

 

頑張りはしたがやはりカナの威圧に負けてしまい静かに正座をし大人しくなってしまう

 

 

「こ、こうなったら奥の手……!!エア!!頼む!!!カナを剥がしてくれ!!」

 

 

「えー嫌よ、その状態のあんた見るの楽しいし?

あ、こっち向いて写真撮って後で大井達に見せるから」

 

 

「お前は鬼か!?」

 

 

「私は姫よ?」

 

 

「そうじゃねぇぇぇぇぇぇ!!!!お願いですから!!後生ですから!!助けてくれませんかねぇ!?」

 

 

無料(タダ)は嫌よ?」

 

 

「わ、分かった!今度好きなだけアイス買ってやるから!!!」

 

 

「………はぁ、仕方ないわねぇ」

 

 

エアは重い腰を上げると背中に張り付いているカナを剥がすと佐渡は安堵の溜め息をつく

 

 

「た、助かった……」

 

 

「エーアー!はーなーせー!!」

 

 

「はいはい、私の前でそう言うの辞めてよね

にしてもあんたも男なのね一応、服は着せたから振り向いたらどう?」

 

 

「あぁ、全くお前は」

 

 

と佐渡が言いながら振り返ろうとすると居間の扉が開き何かが佐渡の顔目掛けて飛んでくる

 

 

「ワン!!!!」

 

 

「うわっぷ!!イ、イーちゃん!?

ちょ、いきなり顔に張り付かないで!!」

 

 

振り返る寸前でイーちゃんが顔に張り付きカナ達が見えなくなり引き剥がそうとするが

 

 

「佐渡様!イーちゃんは貴方助けているんです!!

カナ様はまだ服を着ていません!!」

 

 

「は、はぁ!?おいごらエア!!!」

 

 

 

「ソーラー?言っちゃ駄目でしょー全く」

 

 

「お前このやろう!!後で覚えとけよなこのやろう……それとイーちゃんグッジョブ!!!」

 

 

「ワン!」

 

 

顔に張り付いているイーちゃんを下ろし前を向くと

 

 

「ウゥゥゥゥ……」

 

 

「……へぇ?私に楯突くんだ…?イ級風情が……」

 

 

カナに対し威嚇しておりカナもイーちゃんを睨み付ける

 

 

「……貴女、ただのイ級では……無さそうね

成る程私の威圧に全く動じない訳ね

哀れな者よ(・・・・・)

 

 

「ワン!ワン!!」

 

 

「喧嘩は辞めろよ?お前達が本気になったら鎮守府失くなっちゃうんだけど?」

 

 

「え?私見てみたいんだけど?」

 

 

「お前は黙ってろ!!!」

 

 

止める佐渡に対しエアは半笑いしながらからかっておりカナをマークしたイーちゃんは全く視線を反らそうとしない

 

 

「……ふーん……?でも貴女がその男を庇う理由が見当たらないわね……?」

 

 

「ワン!ワンワン!」

 

 

「…………へぇ、認めてるんだその男を

……それは貴女はやはりそうなっちゃうの?」

 

 

カナの問い掛けにイーちゃんは首を横に振るうと嬉しそうに吠える

 

 

「ワン!ワンワン!!」

 

 

「………嘘よ、私は騙されないんだから絶対に」

 

 

「何話してるんだよ二人とも」

 

 

「あんたは黙ってなさい佐渡」

 

 

二人はお互い睨み合っているとカナが溜め息を付く

 

 

「分かった、分かったわよー……もうここまで露骨なのは善処するって……私も疲れたし~……」

 

 

「ワン!」

 

 

「………まさか、イーちゃんが説得してくれるとはな…」

 

 

「凄いわね本当にこの娘」

 

 

どうやらイーちゃんが説得してくれたらしくカナはゴソゴソと服を再び着ると佐渡の背中に張り付く

 

 

「………おい待て何でまた張り付いてるんだよ?」

 

 

「だってー……暖かいんだもんー……

佐渡ー…お菓子ー……」

 

 

「このやろう……はぁ、ほらよ」

 

 

「わーいー………」

 

 

佐渡は深く溜め息を付くと佐渡の膝にイーちゃんが登り丸まりながらコタツに入る

 

 

 

 

 

 

 




次回

壊れた兵器(夕張)

ひとまず、イーちゃんのおかげさまでカナによる猛攻が止み一つだけ気になることに手を出せるようになった佐渡
そう、もう一人流されてきた少女
夕張(欠陥兵器)に近付こうとする


ここで、一旦区切りまして次回から夕張の攻略編です!
え?夕張何の問題も無いじゃんと思ってます?
……実は既にフラグとしてはカナ戦の時に出してるんですよね!




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夕張(欠陥兵器)

カナの猛攻が終わり時は流れ時刻はAM2時を過ぎた頃

いつもなら静寂に包まれる鎮守府

だが、何故か今日は工廠にて何かを修理する音が聞こえる

 

 

「……ふぅ、後はこれとこれを溶接すれば…」

 

 

その音の正体は来たばかりの夕張が艤装の修理をしていた

だが、それは佐渡が指示したことでもお願いしたことでもない

彼女が勝手にやっていたことである

 

 

「あ、今何時だろ?」

 

 

不意に夕張は時計を見ると2時を過ぎており溜め息を付く

 

 

「…やば、佐渡提督に12時には寝るようにって言われてたんだ……

ま、いっか徹夜すればバレな…」

 

 

「んなわけあるか、今日はここで終わりだよ」

 

 

「っ!?」

 

 

突然後ろから声が聞こえ振り返るとホットコーヒーを飲みながら佐渡が機材に座っていた

 

 

「……あ、…あれ?佐渡提督?」

 

 

「はぁ、やっぱり気付いていなかったね夕張ちゃん

何度も声掛けたんだよ?」

 

 

「あ、あははは!ごめんなさいね!私集中しちゃってて………」

 

 

「全く、提督さんの言うことは聞きなさいよ」

 

 

佐渡はそう言うと夕張に珈琲を差し出すと夕張も手を止め休憩を取る

 

 

「この鎮守府では出撃が極端に少ない…と言うか俺がさせてないからやることは無いって言ったじゃないか?

親方にも暇だったらやってほしいのとかは頼むけどこんな時間まではやらせてないんだぞぉ?」

 

 

「ご、ごめんなさい……どうしても」

 

 

「俺の役に立ちたいってか?」

 

 

「っ!?」

 

 

夕張は佐渡に見透かされたのかビクンと跳ねコップを握る手が強くなる

 

 

「………………何で分かったの?」

 

 

「うーん、直感かな?

初めて会ったときから夕張ちゃんは過剰に他の人の役に立ちたがってたし認めて欲しがってた

承認欲求って奴?」

 

 

「……あはは…やっぱり鋭いね佐渡提督は」

 

 

「これでもあいつらの提督だからね!えっへん!!」

 

 

胸を張る佐渡とは対極的に縮こまっておりしばらくの沈黙のうち夕張が話し出す

 

 

「……私ね、実はブラック鎮守府に所属してたんだ」

 

 

「やっぱりか、道理で今まで会ってきた『闇』を抱えた艦娘と同じ感じがしてたわけだ」

 

 

 

「……ねぇ、佐渡提督貴方に私はどう見える?」

 

 

「そうだなぁ……『価値観を無くした者』かな?」

 

 

「…あははは……凄いね流石は『孤高の狼』と呼ばれていた叢雲を認めさせた人間さんだね……

その通りだよ…私には価値観が無い

それは命も大切な物も何にもね」

 

 

「まぁ、そうじゃないとカナとの戦いの時明石が止める中簡単に叢雲達を行かせるとは思えないしな」

 

 

「………うん正直、あの時も叢雲達が死んでも何とも思わなかったかもしれない

それほど私の価値観は無くなってるの」

 

 

 

夕張は服を握り締めると深く溜め息を付く

 

 

「私ね、自分が何で生きてるか分からないの

だって私の代わりはいくらでもいる

そうとしか考えられないの

どうせ私が死んでも建造できるんだから

だから、私が生きている価値も分からない

酷い事を言うと思うけど東雲大元帥の代わりも居ると思ってる

叢雲の代わりも明石の代わりも大淀の代わりも

皆皆みーんな、代わりが居る

だって私達は人間が造り出した兵器に過ぎない」

 

 

そう言いながら佐渡を見ると微笑む

 

 

「……何があったんだい?夕張ちゃん」

 

 

「ふふ、やっぱり佐渡提督は私の欲しい言葉を言ってくれるね

………聞いてくれる?私の過去を」

 

 

「あぁ、いくらでも聞いてあげるよ」

 

 

 

そして、夕張は語りだす自らの過去を

失った自らの価値観の事を

 

 

 

 

 

 

 





次回

過去編 命の価値

佐渡と話をしながら夕張はゆっくりと語っていく
自らの過去を
求めようとして失ってしまった皮肉の物語を

次回から夕張の過去編です!
因みに分かりずらいですが、カナ戦の時叢雲を送り出したのは止められないと思ってではなく
どうせ代わりが居るからと言う理由でした!
分かった人居たら凄すぎですわ……



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夕張 過去編

私が大本営に勤める前、私はある鎮守府で建造されその生を受けた

妖精達に囲まれ初めて目にするものに興味を抱きながら私は建造ドッグから出てくる

 

 

「………ここが鎮守府…?」

 

 

そう、私は妖精達が建造を嫌がる前に生まれた長門さん達と同じ個々の鎮守府で生まれていた一人

だからこそ悪い鎮守府に当たる確率が高かったと後から知った

でもこの時の私はそれを知らなかった

 

 

「初めまして夕張さん、私の名前はーーー

この鎮守府で秘書艦を勤めています」

 

 

この時、私を案内してくれた艦娘

名前は覚えてない

だって、覚えるだけ無駄だって知ってしまったからだから名前を思い出せない

 

 

「は、はい!よろしくお願い致します!」

 

 

「では付いてきてください」

 

 

私は案内されるままに鎮守府を歩いていき廊下を歩くが誰ともすれ違わなかった

……いや、この時気付かなかっただけ

艦娘は居た

ただ、『許可を貰って無かっただけ』

それでもその時の私は疑問に思ってしまった

 

 

「ね、ねぇ!ここって艦娘が少ないの!?

全くすれ違わないけど……もしかして今大規模作戦にでも参加してるの?」

 

 

「……いえ、ただ皆様自室に籠ってるだけです」

 

 

「自室にって……あ!何か趣味とかやってるの!?」

 

 

「…………そう…だと良かったかもしれませんね」

 

 

「え……それって?」

 

 

すると艦娘は扉の前で立ち止まり私も必然と立ち止まる

 

 

「……貴女は運無いのかあるのか分かりませんが一言だけ言っておきます

ここでは『感情も価値観も捨ててください』

…それが貴女を苦しめます」

 

 

「え?ど、どういう意味?」

 

 

その艦娘はそれだけを言うと扉を開き敬礼をしそれに習って私も敬礼する

 

 

「提督、着任しました艦娘をお連れしました」

 

 

「あ?……あー、そう言えば建造してたな?艦種は?」

 

 

「軽巡です」

 

 

「チッ、軽巡かー……どうすっかなー」

 

 

男…嫌、私の初めての提督は真面目そうな見た目であり眼鏡が似合う中年の男性であった

だが、それに反し粗悪な口調を扱い私をジロジロと見る

 

 

「え、えっと提督!私の名前はーーー」

 

 

「おい、新人何話してやがる?」

 

 

「………え?」

 

 

「やれ」

 

 

その瞬間隣から小さく「ごめん」と声が聞こえ足に激痛が走り足を押さえながら踞る

 

 

「いっ」

 

 

「誰が踞っていいと許可した?」

 

 

そして艦娘が私の髪を引っ張り頭を持ち上げさせると提督が歩いて来ており顎を掴む

 

 

「ここでは俺が全てだ、命令以外の事をしたらお前に罰を与える

良いな?返事」

 

 

「な、なんで……」

 

 

「…俺は今返事と言ったよなぁ!?」

 

 

男…提督はその言葉と共に私の腹部を思い切り蹴り飛ばし首を掴む

 

 

「返事は?」

 

 

「……は……はい……」

 

 

「はぁ、全く新人はこれだから駄目だなおい

ーーー、ちゃんと指導しろ解体されたいのか?」

 

 

「申し訳ありません提督」

 

 

「まぁ良い、後でソイツの配属先は決める

下がれ」

 

 

「はい、失礼致します」

 

 

艦娘は私の手を取るとその部屋を後にするとしばらく歩いた後トイレに差し掛かる

 

 

「私はトイレに行きます付いてこないでくださいね」

 

 

「は、はい……」

 

 

そう言うと艦娘が歩いていこうとするが振り返り手招きをする

 

 

「…………え?」

 

 

「……………」

 

 

そして指差す方向を向こうとすると腹部を軽く殴られ……いや拳で押される

 

 

「貴女は新人なのですよ?私と話すときはちゃんと目を見て話しなさい」

 

 

その声と共に小さな声が聞こえる

 

 

(付いてきてください、後トイレに行きたいと良いながら私に従ってください良いですね)

 

 

「!」

 

 

艦娘が離れると再びトイレに行こうとし私は

 

 

「あ、あの誠に申し訳ありませんが私もご同行願いませんか?」

 

 

「……仕方ありませんね、今回のみ許します」

 

 

そう言うと艦娘と私はトイレに付いていき一番奥の同じ個室に入ると私は座らされると小声で指示される

 

 

(さっきはごめんなさい、あそこで貴女にああしてもらわないと私も貴女も酷い目に合わされるの許してね?

アイツに蹴られたお腹見せて治療するわ)

 

 

(う、うん……)

 

 

艦娘は私の服を脱がすと殴られた腹部等を治療してくれるそして小声で疑問を訊ねていく

 

 

(ね、ねぇあれがこの鎮守府の提督なの?)

 

 

(そうよ、私達の提督

…正直死んで欲しいほどに憎いけどね

……ごめんね、今は我慢して私が絶対に何とかするから)

 

 

その艦娘は私の手を握っていると震えているのが分かった

でも多分彼女が居たから私の運命は変えられたんだと今は思う

正義感が強く他の艦娘()の為に動きただ自分を犠牲にし続けた艦娘

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして私が不完全に壊れる原因になった艦娘

名前は覚えてない

唯一思い出したい彼女

今は亡き貴女の事を

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





次回

配置

新しく着任した夕張はある場所に配属され頑張っていこうとする
密かに助けてくれている彼女の為に
提督に認めてほしいが為に

一週間ぶりの投稿ですいません!
仕事辛い……





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夕張 過去編 二

次の日、私は工廠で働くことになった

理由としてはここで働いていた明石がどうやら事故で死んでしまったかららしい

前線で戦わないのかと聞こうとしたがそれよりも先に

 

 

「お前は前線に出る必要がない

手先が器用で兵器開発も出来るって聞いたしな

そこが適任だ」

 

 

と言われてしまい工廠で働いているが実を言うと嬉しくもあった

危険な前線に出たくないと言うのは誰もが思っていること

 

 

「……でも、こんな所で艦娘が事故死なんてするのかな?」

 

 

私がこれから働くことになっている工廠は特段汚いわけでもなくかなり危険な物を扱ってる訳でもない

だからこそここで艦娘が事故死(・・・・・・)なんてありえないと思っていた

 

 

「……艦娘さん……?」

 

 

「あ、妖精さん

初めまして今日からお世話になります!」

 

 

だが、その理由を私は分かってしまった

これから働く妖精達に言われてしまったからである

 

 

「………四人目(・・・)の艦娘さん

頑張ろうね、今度は自殺しないでね」

 

 

「…………え?」

 

 

それから、私の日常……いや地獄…が始まった

まず最初に一日持ってくる艤装の数が百を越えておりそれを二時間で直さないといけないこと

食事は一日一回

寝る時間は……一時間あれば良い位

でも、これが普通だと思ってた

だって戦場に出ないのだから戦争中なのだから

 

 

「………疲れた……なんて言ってられないよね」

 

 

毎日ずっと工廠に籠る日々

曜日の感覚なんて無くなった頃彼女が来た

 

 

「久しぶり、元気に仕事出来ている見たいね」

 

 

「………えっと……」

 

 

「……まぁ、当然だよね

私と会ったのはあの時位だし他の艦娘も極力他人と話すことを禁じられてるし」

 

 

……何人も艦娘を見てきた背中を見てきた

話し掛けてくる艦娘は居ないわけではない

それでも彼女だけは他の艦娘と違っていた

…何かが違う、この時から私は気付いていた

この艦娘は何かを抱えていると

 

 

「ねぇ、貴女の名前を教えてほしいの」

 

 

「……忘れちゃった?」

 

 

「う、うん……ごめんなさい」

 

 

「…その感じだと多分名前は覚えられないんじゃないかな?

まぁそれで良いよ、そうだあだ名で呼んで私のことは」

 

 

「あだ名?」

 

 

「うん、私ね皆に『冷血』って呼ばれてるの

だからそう呼んで」

 

 

「……私にはそう見えないんだけど…」

 

 

「良いからそう呼んで

……お願い」

 

 

「分かった」

 

 

鎮守府で唯一話すことがある艦娘

名前を教えてくれなかった初めての艦娘

 

 

 

彼女は分かっていたのかもしれない

私が壊れかけていたのをだからこそ名前を教えなかった

記憶に残らせないように

 

 

それから彼女は何度か艤装を自分で持ってきた

大半の前線組の艦娘は自分で持ってこず待機している艦娘に任せこちらに持ってくる

でも彼女はいつもボロボロでも自分で持ってきていた

 

 

「夕張ー!ごめんまたお願いできる?」

 

 

「良いよ!ってまたこれ酷くやられ……って!冷血傷!!」

 

 

「大丈夫大丈夫!折れてないから!」

 

 

「そう言う問題じゃない!!」

 

 

この鎮守府で唯一の楽しい時間

私は彼女からその楽しいと言う感情を貰った

普通、この鎮守府では私語をすること自体が許されないが工廠だけは違っていた

 

だからこそ私と冷血は話すことが出来ていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でも分からなかった

何故彼女が冷血と呼ばれているのか

 

 

 

 

 

 





次回



夕張は何とか鎮守府での生活に付いていけていた
一人の艦娘との会話を一時の楽しみに


最近モチベが上がらなくて辛いです()



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夕張 過去編 三

私が配属されてからしばらく立ったある日冷血とあることを話していた

 

 

「ねぇ、夕張ちょっと聞いて欲しいことがあるんだけどさ」

 

 

「何?何かあったの?」

 

 

「うん……どうやらね深海棲艦側にかなり強力な個体が出てきたらしいの」

 

 

「………え?どういうこと?」

 

 

「提督が軍の上層部と話してたんだけどね

横須賀鎮守府が潰されたらしいよ」

 

 

 

「は、はい!?あ、あの実力者ばかりの艦娘が居るって言う横須賀が!?」

 

 

当時横須賀鎮守府は海軍が誇る鎮守府の一つでどんな作戦において優秀な成績のみを残しており私も一度は見てみたい場所だった

 

 

「うん、一人の深海棲艦によってね

確か名前は『南方棲戦姫』、2、3年程の殲滅作戦で倒しきった筈の姫

火力、耐久力共に姫の中でもかなりのトップクラス

でも、それが蘇ったらしいの」

 

 

「で、でも!横須賀には!『不屈の正義』って通り名を持った武蔵さんが居るはずでしょ!?」

 

 

 

武蔵、当時最強と呼ばれた戦艦

その強さは全艦娘の中で一位であり判断能力、砲撃技術、体術共に誰にも負けることが無いほどに完璧な(艦娘)

 

 

「………沈んだそうよ、彼女

恐らく、その南方棲戦姫に殺られたらしいって海軍の見解」

 

 

「う、嘘……有り得ないよ!だってあの人一人で姫三人を相手出来るほどだって聞いたし!!」

 

 

「……戦争がとうとう終わりに近づいてるのかもしれない

向こう側も余力が無くなって出してきたってことなのかもしれないってのが海軍の見解

出し惜しみせずこちらを本気で潰しに来たってことよ」

 

 

冷血の顔は強ばり歯を食い縛っているが不意に私の顔に触れ

 

 

「……ねぇ、夕張私と約束してくれない?」

 

 

「え?な、何?」

 

 

「……これから先どんなことになっても何を犠牲にしても私が裏切っても…

私を信じて欲しいの」

 

 

「………え……それってどういう意味?」

 

 

「いずれ分かるわ、大丈夫私だけは貴女の味方であり続ける

絶対に貴女をこの閉ざされた場所から出してあげる

私がどんなに汚くなってもどんなに惨めになっても」

 

 

「ちょ、ちょっと冷血?」

 

 

私が話している最中に突然電話が鳴り出し出ると

 

 

「は、はい!こちら工廠です!!」

 

 

『夕張、今すぐに執務室まで来い』

 

 

「分かりました!!」

 

 

「提督?」

 

 

「う、うん!ちょっと行ってくるね!!」

 

 

電話を直ぐ様切ると急いで工廠を後にする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………やっぱりあの娘だけは死なせたくはない…」

 

 

冷血は誰も居ない工廠で一人呟くと妖精達が心配そうに冷血を見上げていると真っ黒な携帯の電話が鳴り始める

 

 

「はい、こちらーー」

 

 

『悪いな、今誰か周りにいるのか?』

 

 

「居ませんよ、どうかしました?

トラブルですか?」

 

 

電話の相手は男

どこか中性的な声質であり親しみやすいような口調で冷血に話し掛ける

 

 

『んー、ま、そんなところだ

実はよ、うちの大将に『計画』がバレちゃったのと一つ問題が起きてな

ちょっとばかり延期にしたいんだが良いか?』

 

 

「……どれくらいですか?せめて私が『生きている』内じゃないと」

 

 

『うーん、大将の説得に3日位かね

……後さ、もう一人が計画に加わりたいとか言っててなそれの説得も必要なんだ』

 

 

「では決行は?」

 

 

『…すまん、予定の二週間後になる

本当にすまん』

 

 

「………構いませんといつもなら言いたいですが

でしたら条件を一つ追加しても良いですか?」

 

 

『良いぜ、と言うか別に一つじゃなくてもっとくれても良いんだぞ?

例えば『お前さんをこちらに雇う』とかでもな』

 

 

「いいえ、そんなことは言いませんよ

取引に応じてくれた貴方に感謝しかありません

一つだけ……一つだけ私の願いなんです希望なんです

だからお願いします」

 

 

『………良いだろう全員に言い聞かせてやる

言ってみな』

 

 

男の問いに冷血は静かに呟くように言う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「工廠にある艦娘を閉じ込めます

彼女と工廠には手を出さないで何も教えないで何もしないで

あの娘は……私の希望です未来への希望なんです

…そして私の全てなんです

私が犯してきた罪を少しだけ償わせてください」

 

 

そう言う冷血は拳を握り締める

 

 

 





次回

冷血と呼ばれし(艦娘)

不穏な雰囲気を醸し出す冷血
そんなことは露知らず夕張は提督からある命令を受けそれに取り掛かろうとする
それと同時に夕張は提督に訪ねてしまう
彼女が冷血と呼ばれている意味を


久しぶりの投稿でーす!!
ぶっちゃけやるゲームが多すぎてこっちに来れない……






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夕張 過去編 四

「………医療…ポットですか?」

 

 

提督に呼ばれて執務室に来た私にある設計図を渡され言われた言葉である

 

 

「そうだ、お前らに言うほどでも無い事だがつい先日横須賀鎮守府が深海棲艦の強襲に会ってな

それを懸念した大本営からの指示だ

一週間以内に作れ」

 

 

渡された設計図と資料を見ながら考えており少し疑問に思った事を聞く

 

 

「あ、あの……提督一つよろしいですか?」

 

 

「………はぁ…何でお前は普通に聞いてくるかなぁ?

あれだけ殴ってるのによ……まぁいいや何だ?」

 

 

「えっと、この設計図通りに作らなくても良いですか?」

 

 

「……………はぁ?」

 

 

「あ、いえあれですよ?別に出来ないわけではないのですが無駄を省いたりするだけです

後、艤装開発に使う資材を頂ければ完璧な物を作りますよ?」

 

 

提督は深いため息を付きながら椅子にもたれかかるとお茶を飲む

 

 

「好きにしろ、お前の腕は認めてるからな

全く……工廠に着かせたのは適任だったみたいだな

どんな奴を着かせても半月と持たないからな」

 

 

「そうなんですか?仕事以外は良い場所ですよ?」

 

 

「………皮肉か?貴様?」

 

 

「…?」

 

 

私が首を傾げると提督は深く溜め息を付く

実を言うとこの提督と私は普通に会話が出来る仲ではある

そう言えば話によるとこの鎮守府で唯一成果を上げている私の事を唯一認めてるだとか冷血が言ってたっけ?

 

 

「まぁ、いい

とりあえずそれを作っとけ

いつもの作業と平行してな」

 

 

「え、そうすると二週間は掛かりますよ?」

 

 

「良いから作れ、作れなかったら解体……は辞めておこう

お前を無くすのは惜しい、そうだなその伸びた期日飯と風呂抜きだ」

 

 

「うへぇ……一週間徹夜じゃないですか……」

 

 

「ハハハ、出撃して死ぬよりはマシだろう」

 

 

提督が嘲笑っているとふと疑問に思ったことを聞く

 

 

「そう言えば、提督って何で艦娘達を物として扱うんですか?」

 

 

「あん?そんなの決まってるだろ?

お前達は代用が利くからだよ?」

 

 

「まぁ、確かに私達は作られてますが……各々人間と同じ思考し理解し感情があるって分かって言ってるんです?」

 

 

「………自棄に今日は言ってくれるな?夕張」

 

 

「久しぶりなので少し聞きたくて」

 

 

「…分かっては居る……嫌、分かりたいとは思ってる

だがまぁ、今は戦争中だし……なーんて言うこと言い訳だな

別に俺は成り上がりたいだけだよ、艦娘を使い潰しても許されるからそうしてるだけだ」

 

 

「へー……いつか艦娘に裏切られるって考えは無いの?」

 

 

「あいつらが?裏切る?

ハハハ!裏切ったところで居場所なんてないだろ!?

裏切りがバレたら海軍に消されるんだ!出来るわけねぇよ!!」

 

 

提督が大爆笑しながら顔を押さえているとその姿を見ながら溜め息を付く

 

 

「あ、それと最後に一つだけ聞きたいことがあったの」

 

 

「ハハハ……って何だ?

次で最後だぞ?」

 

 

「……あのさ、何で提督の秘書艦は『冷血』って呼ばれてるの?」

 

 

「あぁ?……あー…アイツか

まぁそりゃそうさ、何せアイツは血も涙も無い奴だしな」

 

 

そう言うと提督はお茶をすすりその理由を答えていく

 

 

「俺が艦娘を使い潰してもアイツは淡々と俺の指示をこなしていく

それが自分の姉妹艦や仲が良かった艦娘であろうと俺に楯突くこと無く従う

例え目の前で仲間が死んでも壊れても悲鳴を上げていても誰にも手を差し出すことはない

そんな奴さ、だから誰もアイツに逆らわない逆らえない

アイツは俺の半身みたいなもんだからな」

 

 

「……へー……冷血が…ね?」

 

 

その話を聞いても本当だとは思わなかった

でも提督が嘘を付くとは思えない

 

 

(……冷血って何でそうなっちゃったんだろ?)

 

 

ふとそう思っていると電話が鳴り出し提督が嫌な顔をする

 

 

「チッ、機嫌が良いときにまたかよ」

(あ、ヤバいここまで見たいね)

 

 

「では提督、私は失礼致します」

 

 

私の言葉に耳を貸さずに提督は電話に出ると苛立ちながら話し出す

 

 

「はいはい、何ですか如月大元帥?

……はぁ?轟沈数が多い?仕方無いだろ!ここは激戦区何だぞ!!!」

 

 

如月大元帥……良く提督から聞く単語

この人との電話だけの時は本当に機嫌が悪くなる

何度か話が終わった後殴られるから嫌

私は執務室を離れ廊下を歩いているとふと艦娘とすれ違いお辞儀をすると耳元で囁く

 

 

(報告書を渡したらすぐ退散した方が良いよ

提督かなり機嫌が悪くなるから)

 

 

「……え?」

 

 

振り返ること無く歩き工廠に着くと扉の向こう側で誰かが話している

 

 

『うん……うん…分かりました、ではお願いします

私が死んだら情報のみを送っておきます』

 

 

(……?この声は冷血?でも誰だろ?)

 

 

私が扉を開くと同時に冷血は黒い携帯電話を切りこちらに気付く

 

 

「あ、お帰り夕張

提督から何か押し付けられたの?」

 

 

「んー、まぁそんな感じ

誰かと電話してたの?」

 

 

「うん、ちょっと大本営の人とね

この前戦った深海棲艦の情報が知りたいらしくてね

私っていつ死ぬか分からないから死んだら情報だけでも送りますってね」

 

 

「へー、冷血って大本営とも連絡取ってるんだ?」

 

 

「まぁねー、これでも私コミュニケーション能力あるからね!」

 

 

冷血が威張っていると私は設計図を机に置き一言だけ告げる

 

 

「ねぇ、冷血

大本営と電話できるなら何でここの状態を伝えないの?」

 

 

私の言葉に冷血は固まり深く溜め息を付くと頭をガシガシと乱暴に撫でる

 

 

「え、ちょ、冷血?」

 

 

「貴女はそんなこと気にしなくて良いの!

ほら!提督から任された仕事があるんでしょ?」

 

 

「あー!そうだった!

よーし!また徹夜して頑張らないとなぁ!!

絶対に提督の助けになってやるー!」

 

 

私が気合いを入れると冷血はゆっくりとした足取りで工廠を後にしようとする

 

 

「あれ?行っちゃうの?」

 

 

「私が居たら邪魔でしょ?また来るよ!」

 

 

「そうでもないんだけど……分かった!じゃあね!冷血!」

 

 

私は冷血に手を降ると冷血は工廠を後にする

誰も居なくなった工廠で一人私は気合いを入れる

 

 

「よし!提督の為に頑張るぞ!

ついでにこれが完成したら冷血と外に出掛ける許可貰いたいし!

やるぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

工廠の扉にもたれ掛かる様に冷血は中の夕張の話を聞くと崩れるようにその場に座り込む

 

 

「……夕張……ごめんね…ごめんね……

でも…これしか方法が無いの…誰も助けてくれない…皆に託されたから…やるしかないの……」

 

 

座り込むと同時に冷血は枯らした筈の涙を流しながら声を殺しながら亡き始める

 

 

「……死にたくない…死にたくないよぉ……

もっと夕張と話したいよ…遊びたいよ……

でもこれは私達の罪…私達の罰……やらないと…いけないけど……辛いよぉ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

次の日、私は知らされた

提督から冷血が轟沈したと

 

 




次回

失っていく物

何かを得ようとする夕張に容赦なく襲い掛かる戦争の波
それともこれは仕組まれた事?

次回……彼女は…






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夕張 過去編 五

「ねぇ!!提督!!嘘だよね!?

冷血が沈んだって!!」

 

 

私は医療ポットの開発をほっぽりだして執務室に居る提督に聞きに行ってしまった

 

 

「本当だ、アイツは死んだよ

どうやら偶然(・・)強力な艦隊とぶつかったらしくな

ま、仕方無いよなアイツの練度でも死ぬときは死ぬって訳だ」

 

 

「嘘……何で…冷血……」

 

 

提督に冷たく言い放たれた私は愕然としてしまいその場に座り込んでいると近くに居た艦娘が私を連れていこうとする

 

 

「残念だったな夕張

まぁここでは良くあることだ諦めろ

いつ誰が死んでも可笑しくないって訳だ

早く仕事に戻れ」

 

 

そう話す提督は少し笑みを浮かべていたがそれよりも冷血が轟沈したショックで何も言い返せずに居た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はー、全くアイツ

余計な事しようとするからこうなるんだってーの」

 

 

提督はそう呟くとある場所に連絡を取る

 

 

「あーもしもしー?今回の報酬もちゃんと貰えるんだよなぁ?」

 

 

『あぁ、まぁこっちの作戦は失敗したけどね

後で振り込んでおきますわ』

 

 

電話の相手は女性でありそれだけを話すと通話を切り椅子をくるっと一回転させる

 

 

「……ちょっと惜しいことをしたかな?

ま、良いかアイツ何かしようとしてたし先に轟沈させといて損は無いだろハハハハハ!」

 

 

高笑いをしている提督の姿を他の艦娘がドアの隙間から見ると静かに締め呟く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「冷血……安心して私達もすぐにそちらに向かいます」

 

 

冷血に渡された黒い携帯電話を握りしめながら

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私はしばらくの間工廠にて呆然としていた

近くの妖精達が心配しながらも作業をしておりふと医療ポットが見える

 

 

「………そうだよ…私が悪いんだよ…私が医療ポットを完成させていたら冷血は死ななかった…

私の……せいなんだ…」

 

 

そう呟くと全ての仕事を放り出し医療ポットの図面を机に広げる

 

 

「……一週間で完成させて見せる…これを!!!

もう誰も沈ませないために!!!」

 

 

そして私は一週間缶詰め状態になりながら医療ポットを作っていた

どんな攻撃にも耐え、どんな損傷も治し、誰も作れないような物を作り出すために私は全てをなげうってそれを作ろうとした

食事も睡眠も何もせずただ一心不乱にそれを作っていた

 

 

完成が後少しと感じたとき少しだけ手を休めて周りを見ると妖精達が何かに怯え作業を止めていた

 

 

「ちょっと貴女達!何で手を休めてるの!?」

 

 

それと同時に外で爆音が聞こえた様な気がし外を確認しようとしたとき突然工廠の扉が誰かにノックされた

 

 

「………ん?」

 

 

『すんませーん、ここに艦娘さんはいらっしゃいまーすーか?』

 

 

聞いたことない中性的な男の声に私は驚きながら声を掛ける

 

 

「え、えっと!一応私も艦娘ですが何ですか?」

 

 

『お!じゃあもしかして君、夕張って名前の艦娘かい?

ちょっと顔を見たくてさ開けてくれないか?』

 

 

「……何かその言い回し凄く怪しいんですけど…」

 

 

『怪しい者じゃないよ!?そのほら、あれだよ!

通りすがりのお面付けた宅配のおじさんだよ!

だから…はぁはぁ…ここを開けてくれないか?お嬢ちゃん…グヘヘヘ…』

 

 

「嫌怪しさ満載じゃないですか!?開けませんからね!!!」

 

 

私が扉の前から去ろうとした時男はある名前を話す

 

 

『…実はある人を探しててね

冷血って君知らない?』

 

 

「っ!?」

 

 

その名前に私は勢いよく反応し工廠の扉を勢い開ける

 

 

「冷血!おじさん冷血を知ってるの!?」

 

 

扉を開けると外から火薬の匂いと何かが焼ける匂いがしたが男は私を押すと工廠内に入ってくる

 

 

「やっと開けてくれたなぁお嬢ちゃん」

 

 

男は全身を隠すような真っ黒なフードに狐の仮面に黒い手袋をしており入ったと同時に鍵を閉めるとフードを外す

 

 

「ね、ねぇおじさん外何か……」

 

 

「んー?気にしない方が良いよ、冷血もそれを望んでたし」

 

 

そう言うと男は手軽な所に座ると深く溜め息を付いた

 

 

「ね、ねぇおじさん誰?」

 

 

「さっき言ったじゃないか?まぁおじさんじゃ呼び辛いと思うから狐とでも呼んでくれな」

 

 

狐と名乗るその男は工廠内を見ると医療ポットを見つけそれを触ろうとする

 

 

「触らないで!!!」

 

 

「おっと!すまんすまん…まだ完成してないのかこれ

でも…凄い良くできてるな…これ君が作ったのか?」

 

 

「え、あ、う、うん」

 

 

「ほう…?これを……誰と作ったんだ?これを」

 

 

「え……一人…ですよ?」

 

 

「はぁ!?これを一人で!?嫌待て!何でこんなもんを一人で作ってるのさ!!

普通何人かで作るんだろ?」

 

 

「提督からの指示で……って狐さんには関係ないでしょ!!!」

 

 

私が大声で言うと狐は考え込んでおりマジマジと私が作った医療ポットを見ている

 

 

「そ、それよりも!狐さんは冷血を探してるんじゃないの!?」

 

 

「そうだった!!そうだよ!アイツと連絡取れなくてさ!君知らないか!?

俺、アイツに言いたい事があってよ!!」

 

 

その発言と共に狐が詰め寄り肩を掴まれると冷血の事を静かに話し出すと狐の力が弱くなっていく

 

 

「…う……嘘だろ?…冷血が…轟沈した……?」

 

 

「……本当です…」

 

 

「そんな訳あるかよ!!だってアイツは!?

……クソ!!!」

 

 

狐は苛立ちながら床を踏みつけると舌打ちしながら髪をガシガシとかきむしる

 

 

「…ね、ねぇ狐さんって冷血と知り合いだったの?」

 

 

「あ!?…あ、すまん

冷血とはある取引をしててな、その話を今日しに来たんだが……ちくしょう…俺のせいじゃねぇかよ!!!」

 

 

狐は床に崩れ落ちると思い切り拳で殴り付けると工廠から出ていこうとする

 

 

「……ね、ねぇ!冷血は酷い艦娘だったの!?教えて!」

 

 

私の声に狐は歩みを止めると肩を掴む

 

 

「…お前さんにあんまり話すなって言われてるんだがな

それだけは否定する

アイツは酷い艦娘何かじゃねぇ!アイツは自分がしてきたことに後悔していた!ずっと苦しんでいた!!

だから!お前だけはそう言うな!お前だけはアイツを信じてやってほしい!

…冷血は最後までお前だけを心配し自由にしたいと!笑顔にしたいと望んでいた!全てを失ってでも!!」

 

 

狐の仮面には目の部分が空いており顔の瞳が見える

それは左目だけ色が違く真っ赤に燃えるような瞳をしていた

 

 

「…仕方ねぇな、あんまり荒っぽい事は好きじゃねぇんだけどな」

 

 

狐は歩いていくと工廠の扉に手を掛けると振り返り

 

 

「俺が出ていった後この扉に鍵を閉めな

そして、誰が来ても開けるんじゃねぇぞ」

 

 

「え……?」

 

 

「良いな?冷血がそう俺に頼んだんだ

またな、夕張ちゃん」

 

 

そう話すと狐は外に出ていくと同時に扉前に何が押し付けられる音が聞こえ狐の言う通りに鍵を閉める

 

 

「……誰だったんだろ…あの人」

 

 

私はそう思いながら狐が去った後の場所を見ると何か袋が置いてあり開くとそれはインスタントの食べ物だったり私の好物が置いてあり置き手紙が入っていた

 

 

『一週間分ある、すまないが少しの間耐えてくれ

冷血の願いに答えてやってくれ』

 

 

 

「……うん分かった信じるよ狐さんと冷血を」

 

 

私はその言葉を信じ医療ポット作りに没頭した

妖精達が止めようとする中それを無視し振り払いながら二人の言葉を信じて作った

 

 

そして医療ポットが完成しその場に倒れるように休憩を取る

 

 

「でーきーたー!!!」

 

 

そう叫ぶと狐が置いていったカロリーメイトを頬張りペットボトルの飲み物を飲み干す

 

 

「さーてと、作り終わったし提督に報告しないとー!」

 

 

だが、携帯で執務室に電話を掛けても誰も出ず首を傾げる

 

 

「…あれ?可笑しいな……珍しく出ないな…」

 

 

私が疑問に思っていると突然工廠の扉が凹みビクッと震える

 

 

「え?え?な、何?」

 

 

恐る恐る工廠の扉に近付いていくと外から声が聞こえる

 

 

『ここだけ無事だぞ!!』

 

 

『でも駄目だ!!かなり硬い!!』

 

 

『長門!壊せるか!?』

 

 

『ぐぅ……殴ってみたが硬い…』

 

 

『誰か!!ここの鍵を探してくれ!!』

 

 

意味がわからなかった、何故この扉を開こうとするのか

しかも長門?長門ってあの正義の戦艦って呼ばれてる人が何でこんなところに?

 

 

「え、えっと……どうかされたんですか?」

 

 

不意に私が声を掛けるといきなり扉をドンドンと叩かれ声が聞こえてくる

 

 

『君!!無事か!?ここを開けてくれ!!』

 

 

『おい!!生存者だ!!!』

 

 

『タンカー急げ!!唯一の生存者だぞ!!!』

 

 

生存者?何の話?か訳がわからず着いていけずに居るが私は鍵を開けない

 

 

「だ、駄目!ここは開けられないの!

ここに居ろって言われて……」

 

 

『馬鹿を言ってるんじゃない!!!こんな危険な所に君だけを残せるわけないだろ!!』

 

 

『良いから開けろ!!』

 

 

扉の前で開けろと男の人達の声に私は後ろに下がっていると突然声が聞こえなくなり長門の声が聞こえる

 

 

『…すまない開けてくれ

誰に言われたかは知らないが私は君を迎えに来たんだ

頼む、恐らく全て終わったんだ

だから……頼む開けてくれ』

 

 

長門の悲しそうな声に私は二人に言われた言い付けを破り工廠の鍵を開けるとゆっくりと扉が開き長門が汗を流しながら私を抱き締める

 

 

「……すまない恐がらせたな…本当すまない……

そして仲間を助けられなくてすまない(・・・・・・・・・・・)

 

 

「………え?」

 

 

長門の横から見えた景色に私は絶句した

 

 

「な、……え……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鎮守府だけが完全に崩壊し無くなっており私は見た景色を疑った

 

 





次回

失った艦娘

鎮守府を知らない間に失った夕張
そして彼女はある男に拾われる


因みに狐仮面の男は既に作中に出てきております!
果たして彼は何故そこまで冷血に入れ込んだのか……は今回明かされませんがある章で夕張と対面します!






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夕張 過去編 六

私は鎮守府を失い唯一の生存者として大本営に連れていかれた

連れていかれる最中ヘリに乗り込みその場を後にしようとした時自分が生まれた所を初めて知った

 

 

島の名前は覚えてない

だが町は無く鎮守府のみ有り自分が孤島に居たことを初めて知った

 

 

「夕張、大丈夫か?怪我とかはないか?」

 

 

私の目の前で長門さんが心配してくれる

だがそんなことを言われても私は気にとめることなく破壊された鎮守府を見下ろしていた

それを引き起こした犯人はおおよそ検討が付いていた

 

 

そう、間違いなく狐の仮面の人だ

…でも彼が何故こんなことをしたかは分からなかった

………私を生かされたのか分からなかった

 

 

しばらくの間私は大本営に預けられ憲兵達に保護されながら生活をしていた

そして鎮守府を破壊を招いた犯人として私が軍法会議に連れていかれた

 

 

大多数の人は私が深海棲艦を招いたと言い私は拷問の後解体処分が会議で決まりそうになっていた

 

 

(……あぁ、そうだよね…私が生き残ったのは…こう言うこと…何だね冷血)

 

 

私は言われの無いことではあったがこの運命を受け入れていた

だが

 

 

「えー、では判決を「ちょっと待った!!!」

 

 

会議の最中にある人達が会議室に乱入してきた

その人達は艦娘を連れており提督だと思われていたのだが

 

 

「まーた君かぁ!!如月君!!!」

 

 

「悪いね!皆!この判決には大きな間違いがあることを見付けてね!

聞いてほしい!!」

 

 

如月……覚えてる

提督が意味嫌っていた名前であり誰かは知らなかった人

後ろに三人の艦娘ともう一人の男の人を連れ会議室に入ると参加してる人に何かを配っている

 

 

「何だこれは?」

 

 

「あの鎮守府に深海棲艦を招いた者の遺書だ」

 

 

「「「っ!?」」」

 

 

その言葉に全員が驚きながら渡された紙をマジマジと見ており私の側に二人の艦娘が近付いてくる

 

 

「夕張ちゃん!ちょっとだけ耐えててね!」

 

 

「そうそう!私達が必ず貴女を助けるからね!」

 

 

「え?あ、は、はい?」

 

 

何の事だかさっぱり分からないでいると会議長が唸り出す

 

 

「………これは本当なのか?」

 

 

「えぇ、本物です彼女は自らの鎮守府を深海棲艦達に破壊させるために招き入れたと言うことです!」

 

 

「だ、だが!この艦娘は既に轟沈したと報告が上がっている!!」

 

 

「お前らは馬鹿なのか?流石はそこに座って偉そうにしてるだけはあるな」

 

 

「何だと東雲!!!」

 

 

東雲と呼ばれた如月さんの後ろに居た男は溜め息を付きながらその説明をしだす

 

 

「いくら轟沈してるからと言っても情報を全て深海側に垂れ流しにされてる状況ならいつでも襲えるだろうが

むしろ深海側に付いているとしたら何でコイツを回収しなかった?普通に考えてコイツを殺すか回収するだろ?」

 

 

「む、むぅ……確かに」

 

 

「と言うかコイツが居たのは工廠でしかも鍵を掛けてやがったんだぞ?

そんな奴が深海側と繋がってるとは思えねぇだろ少しは考えろ能無し共」

 

 

「貴様東雲!!!その暴言を何とかしないか!!!」

 

 

「ちょ、ちょっと東雲?もっと優しく言おうよ?」

 

 

「これぐらい言わねぇと分からねぇから言ってんだよ

如月、お前は優しすぎるんだよ」

 

 

 

二人の持ち込んだ遺書により会議長が判決を言い放つ

 

 

「判決を言い渡す、被告人夕張

君の容疑はまだ晴れた訳ではない

だからこそ、これから君はこの大本営で働いてもらう!

良いね?」

 

 

「は、はい!!」

 

 

「以上をもって本日の会議は終了とする

解散!!!」

 

 

会議が終わり私は大本営の工廠で働くことになりそこで明石と出会った

 

 

「初めまして!私は工作艦の明石です!!

これからよろしくね!」

 

 

「う、うん!よろしく私は軽巡の夕張!!」

 

 

しばらく明石と共に工廠で仕事をしていると助けてくれた二人が訪ねてきた

 

 

「明石さんー!いーまーすーかー!?」

 

 

「あぁ!如月さん!お疲れ様です!!」

 

 

「居るに決まってるだろアホ如月

居なかったら大問題だっての」

 

 

東雲が深く溜め息を付く中私は二人に隠れるように作業していると明石と何か話した後にこちらに歩いてくる

そして私の目線になるようにしゃがみ

 

 

「こんにちは!夕張ちゃん!」

 

 

「こ、こんにちは……如月さん…」

 

 

「うん?夕張ちゃん何かやけに僕に対して警戒心高くない??

何かしたっけか?」

 

 

「と言うか夕張貴様、俺達は元帥だぞ

その態度は無いんじゃないか?」

 

 

「っ!?

そ、それは誠に申し訳ありませんでした!!」

 

 

元帥、階級こそは知っていた提督が少将だからそれ以上の人が居るとは……

私は慌てて立ち上がり頭を下げながら謝る

 

 

「ちょっとー東雲ー

そう言う階級の話は無しっていつも言ってるじゃんか?」

 

 

「言わねぇと後でめんどくさいんだよ」

 

 

「全く……えっとね実は今日は君と話したくて来たんだけど…時間大丈夫?」

 

 

「は、はい!全く問題ございません!!」

 

 

「むー……その堅苦しいのは嫌いだなぁ

ちょっと夕張ちゃん頭上げてくれない?」

 

 

「は、はい………」

 

 

私が頭を恐る恐る上げるとそこには変顔をした如月さんの顔があり私は面白さの余り顔を反らしながら口をおさえ笑ってしまう

 

 

「あ!こら逃げちゃだめ!」

 

 

笑いを堪えているのだが如月さんは変顔を続け更にそれを見せ続けられていると我慢出来ずに笑ってしまうと頭を撫でられる

 

 

「良く頑張ったね夕張ちゃん

あの鎮守府で本当に」

 

 

私が如月さんの方を向くと笑みを浮かべながら優しく撫でられており顔が熱くなるのが分かる

 

 

「まぁ、まさか艦娘の裏切り者が出るとは思わなかったがな

何をしてやがったんだあのクソ提督は」

 

 

「それは後日調べよう

それに彼女だけ助けたのも知りたいし……

あ、そうだ!夕張ちゃん!僕達君の鎮守府を襲った犯人を探してるんだけど心当たりない?」

 

 

心当たり……ある

狐の仮面を被った片目だけ真っ赤な工廠に唯一来ており冷血の知り合いと名乗った男の人

あの人以外鎮守府を襲った人は有り得ない

でも、私は……冷血を信じたかった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「分かりません……私は工廠に閉じ籠ってただけですから…」

 

 

 

初めて嘘をついた

冷血を守るためにあの狐の人を守るために

どうしても狐の人が悪い人に思えなかったから

 

 

 





次回

夕張の失われた物と見たいもの

夕張は大元帥如月と東雲に助けられ工廠で再び働きだす
そして彼女はまた失っていき何も考えられなくなったとき
彼女は目映いほどの光を見る

遅くなってすいませんんん!!!
コロナの影響で仕事量が増えて書けてませんでした……
そろそろ1日投稿再開したい()







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夕張 過去編 七

私はそれからと言うものこの大本営での仕事をやり続けた

基本的には持ってくる艤装の修理と新しい艤装や武器の開発、改装

それを徹夜でやり続けたりした

……正直、向こうの鎮守府でやってたことと変わらなかった

違うとしたら明石や如月さんたちと言う新しく仲良くなった人達が出来たと言うこと

 

 

「やっほー!夕張ちゃんいるー?」

 

 

「あー!如月さん!また来たんですか!?」

 

 

「いやはは、実は執務やりたくなくて逃げてきちゃった!」

 

 

「ちょっとー、如月さん大丈夫何ですかー?

私達匿ってるのバレたらどやされるですよ?」

 

 

「へーきへーき!僕は大元帥だからね!

(しの)位簡単に騙せ」

 

 

「誰を簡単に騙せるダァ?如月?」

 

 

「…………逃げ!!!」

 

 

「捕まえろ島風」

 

 

「ほっほーい!!」

 

 

「ぬぁぁぁぁぁ!!!!島風ちゃん使うのは反則だろぉぉぉぉ!!!!」

 

 

「「あはは!」」

 

 

ちょくちょく如月さんは執務を抜け出しては工廠に顔を出しいつも東雲さん達に捕まっていた

東雲さんも悪い人では無く私の事を認めてくれている

 

 

……次第にここでなら私は楽しく生きていけると思っていた

それと同時に冷血も居たら……と考えてしまう

結局、冷血の事は二人に聞いても教えてくれなかった

でも一つだけ教えてもらった

 

 

「…冷血…ちゃんだっけ?彼女はずっと君を助けたいと願っていたんだよ」

 

 

「だからこそあの鎮守府を破壊した

囚われていたお前を外に出すために

……お前は生きろ、アイツの思いを無駄にするな」

 

 

その言葉は似ていた狐仮面の男の人に

 

 

 

『アイツは酷い艦娘何かじゃねぇ!アイツは自分がしてきたことに後悔していた!ずっと苦しんでいた!!

 

お前だけはアイツを信じてやってほしい!

 

…冷血は最後までお前だけを心配し自由にしたいと!笑顔にしたいと望んでいた!全てを失ってでも!!』

 

 

……ほんの少ししか会わず会話をしなかった恐らく深海側の人間

でも私はあの人が悪い人には全く見えなかった

 

 

だからこそ私は思う冷血は深海側と繋がりが合ったのだと

それを言うことはない

…これ以上彼女を汚したくないから

 

 

それからと言うもの私は工廠で働き続け色々な人に出会ってきた

明石の提督や長門さん達に大和さん達

色々な人がここに訪れ私は楽しい毎日を過ごしていた

 

 

そして一大事件が大本営で発生する

 

 

「え!?き、如月さんが行方不明!?」

 

 

「ら、らしいよ……如月さんと東雲さんが太平洋に視察に行ったとき嵐に巻き込まれて如月さんが海に投げ出されたんだって

今大本営総出で捜索してるらしいけど……」

 

 

「そ、そんな!!こんなことしてられない!!」

 

 

「ちょっと夕張駄目!!!」

 

 

「止めないでよ明石!!あの人は!!」

 

 

「太平洋と言えば!深海側最強の一角飛行場姫の縄張りだよ!!

あそこに深入りしたら誰も帰ってこれない!!

信じて待つしかないよ!!」

 

 

「そ、そんな……」

 

 

また失ってしまうのか…?

如月さんが行方不明になってから四ヶ月後ある情報が大本営を駆け巡った

 

 

如月さんが見付かり帰ってきたのだ

どうやら無人島(・・・)に漂着し何とか東雲さん達が見付けられたらしい

安堵のため息と共に笑みが溢れた

良かった、また失わなくて済んだと

 

 

そしてしばらくたったある日如月さんが工廠に来てとんでもないことを言い出したのだ

 

 

 

「なぁ!聞いてくれよ!!

もしかしたら戦争を終わらせることが出来るかもしれない!!」

 

 

「「………はい?」」

 

 

突然言われたことに私達は拍子抜けしているとその後ろに居た東雲さんにおもいっきり殴られる

 

 

「馬鹿野郎、まだ出来てないことを口にするな」

 

 

「いやでもさ!この戦争を終わらせることが出来れば艦娘も!深海棲艦も手を取り合えるんだよ!!」

 

 

「はぁ………すまん妄言だと思っといてくれ」

 

 

「ちょ!しの!酷くない!?」

 

 

「黙ってろ脳内お花見一色モード野郎

毛虫の海に沈んでろ」

 

 

「そこまでなのか!?と言うか酷すぎないか!?」

 

 

 

その時如月さんから言われた言葉は全く意味が分からなかったが後になって分かった

大本営が騒がしくなったある時聞かされた

 

 

敵の本拠地を見付けたと

そしてそれを叩くと

 

 

作戦が結構されるまで私達は大忙しであり毎日寝ないで働いてた時休憩中廊下で如月さんが電話していたのを盗み聞きしてしまった

 

 

「うん…うん……大丈夫こっちは予定通りに攻めるよ

そっちは?……そうなんだ、分かった

任せておいて!共に戦争を終わらせよう、手を取り合って生きていこう!」

 

 

その内容を聞いて確信した

あの人も深海側に知り合いがいると

……でも分からなかった何で深海側が戦争を終わらせようとしているのかが

 

 

本拠地への進行が始まり作戦は成功した

深海棲艦達が世界の海から姿を消した

そして本当の終わりを迎えた

 

 

大本営から終戦が発表され艦娘達は喜び泣いていた

私もやっとやることを終わったのだと思うと同時に…冷血の事を思い出す

 

 

「……居てくれたら…冷血も喜んだだろうな…」

 

 

終戦が発表され大本営から鎮守府へと授与式が行われ鎮守府の解体が発表される

明石は恋人である提督と共に出席するらしく私は工廠にて最後のチェックを行っていた

 

 

「ここともお別れかぁ……名残惜しいなぁ……」

 

 

私が機材を触っていると突然地響きの様な物が工廠内に響き渡る

 

 

「……え?…地震?…いやここは地下……だよね?」

 

 

この感じには覚えがあった嫌な予感がした

私は慌てて工廠の扉を開けようとするが何故か開かない

 

 

「ど、どうして!?何で開かないの!?」

 

 

『あら?誰か中に居るのかしらぁ?』

 

 

扉の外から聞いたことない様な女性の声が聞こえ私は扉を叩く

 

 

「あ!あの!すいませんここを開けてください!!!」

 

 

私は叩きながら外にいる女性に開けてもらうように願うが女性から返答はない

 

 

「あ!あの!!!!」

 

 

『貴女はそこに居なさい

出たら貴女も死ぬわよ、狐のお友達、冷血の宝物さん』

 

 

「っ!!!!????」

 

 

突然その言葉を言われ私は後退っていくと女性は話を続ける

 

 

『人間は愚かで哀れな生き物ね

欲に狩られ目の前の物に飛び付く悲しい生き物

でも貴女は違う、貴女達(艦娘達)は違う

人により変わる、変わっていける

ここにいれば安全よ、ここは誰も汚さない』

 

 

それだけを言うと女性は工廠の扉から離れ廊下を歩いていく音が聞こえ私は拳を握り締める

 

 

(……間違いない深海棲艦側の人…まさか大本営を…?

…出ないと…でも恐い……)

 

 

その場から私は工廠の奥へと避難しようとするが一瞬だけ如月さん達の事を思いだしすぐさま行動に移した

 

 

「駄目!皆を助けなきゃ!!!」

 

 

艤装を身に付け工廠を開けようとするが鍵がしまっており開かない

初めて艤装を動かし私は工廠の扉を撃ち抜くと外から轟音が聞こえてくる

 

 

「急がなくちゃ!!皆!無事でいて!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回

輝くもの

大本営を襲う深海棲艦の攻撃
再び夕張に襲い掛かる不幸に涙を流す

ちょっと早めの投稿です!
何とか暇な時間が確保出きましたぁ……


…え?次回予告と違う?
……すいません書ききれませんでしたぁ!!!(次回書きます許してください!!)



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夕張 過去編 八

私は地下の階段を駆け上がり外に出ると大本営が崩壊しかけていた

焼け落ちてくる天井、燃え盛る壁や建物

外や中からは叫び声や泣き声が聞こえ穴が空いた天井からは白い球体の艦載機が見えた

 

 

「何で!?深海棲艦の本拠地を叩いたはずなのに!!」

 

 

疑問に思いながら大本営から脱出しようと扉に手を掛ける寸前扉の上の天井が崩落し降りかかってくる

 

 

「キャアァァァァ!!」

 

 

目を閉じ受け身を取るが痛みも重みも無く恐る恐る目を開けるとその瓦礫を白い艦載機達が支えていた

 

 

「え………?」

 

 

「出てきちゃったのね、偉い偉い」

 

 

その声が聞こえる方角を振り返るとそこには深海棲艦の姫級 中間棲姫が立っていた

 

 

「っ!中間棲姫!!」

 

 

「早くそこから離れて?いつまでも耐えられない」

 

 

中間棲姫に言われると思いだし直ぐ様扉から離れると艦載機達が散り散りになりながら中間棲姫に戻る

  

 

「ど、どうして助けたの……」

 

 

「別に?気紛れよ気紛れ」

 

 

焼け落ちる大本営の中私は中間棲姫に武器を構えようとするが直ぐ様辞め質問を投げ掛ける

 

 

「……何で、大本営を襲うの?」

 

 

「クイーンの指示だし

こっちの本拠地を叩かれたんだからその仕返し

ふふ、狐に聞いてた通り良い艦娘ね

悪くない」

 

 

「…狐さんがこれをやった訳じゃないんだよね?」

 

 

「えぇ、あの人は最後まで反対してたから

だから私に貴女の庇護を頼んできたそしてもう一つ任務を言い渡されててね」

 

 

中間棲姫はそれだけを言うと私に近付き手を差し出す

 

 

「ねぇ、夕張私達の側に付かない?

安全と命の保証してあげる

こんな所に居るより楽しいわよ」

 

 

「……ヘッドハンティングのつもり?」

 

 

「えぇ、狐は貴女を偉く気に入ってる

その腕もっと有意義に使わない?

ここより良い所があるわよ?(・・・・・・・・・・・・)

 

 

焼け落ちる大本営の中で私は揺れ動いていた

正直、私が居なくなってもここは困ることはない

……むしろ深海側に落ちた方が良いのではないか…とも思い手を取ろうとした瞬間脳裏に冷血の笑顔が蘇り手を引っ込める

 

 

「……ごめんなさい、私は艦娘(・・)だから無理です!!!」

 

 

私はそう叫ぶと扉を勢いよく開け大本営の外に走り出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うーん、残念ねぇ……あの娘もやっぱり艦娘かぁ…」

 

 

中間棲姫はおもむろに通信機を取り出すとある男に繋がる

 

 

『おーう、どうだった?』

 

 

「振られちゃった」

 

 

『あちゃー……やっぱり無理か~

俺も冷血を口説けなかったからなぁ……

あの娘は無事か?』

 

 

「えぇ、元気よく皆を助けに行ったわよ」

 

 

話している最中に中間棲姫へと焼け落ちた物が落ちてくるが艦載機を指で動かし破壊し大本営の中を歩いていく

 

 

『悪いな、お前さんにこんなこと頼んじまってさ』

 

 

「良いわよ、別についでだったし?

あ、後中間棲姫(シロ)の身体は借りたわよ」

 

 

『あぁ、構わねぇよ

今、長門達を潰したって連絡が来た

お前の正体には気付く訳ねぇ

ありがとよ エア』

 

 

狐に呼ばれた中間棲姫…改めエアは再び姿を憲兵に変えるとゆっくりとした足取りで進んでいく

 

 

「はいはい、じゃあねーー提督さん」

 

 

そう言うとエアは通信機を落とし踏み砕くと艦載機を使い屋根を崩し破片を隠す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと、私もやることをやらないとね

ロキが見付けられないってことはレトロな紙資料があるはずよね

全くどこにあるんだか革命者(フィリア)の情報は」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は大本営を飛び出すと外は地獄そのものだった

破壊された家屋や燃え盛る木々、倒れている人々

その中に明石が一人の男性を抱えながら泣いている

 

 

「明石!!」

 

 

「ゆ……ゆぅ……ばり……ヒック……

ていとくが……」

 

 

「ま、まさか貴女を庇って……?」

 

 

明石は何度も頷きながら涙を流し目を真っ赤に腫らしており男性の応急手当を終わらせていた

 

 

「どうしてこんなことになってるの!?」

 

 

「わかんない……でも……三体の……姫が……現れて………皆を……」

 

 

「夕張!!そこに居るのは夕張か!?」

 

 

瓦礫の中から半分だけ身体を出している男が意識を取り戻し夕張に話し掛ける

 

 

「あ……か、唐澤大将!?だ、大丈夫ですか!?」

 

 

「大丈夫だ……と言いたいがすまない瓦礫を退けてくれないか!?」

 

 

「は、はい!!」

 

 

慌てて私は唐澤さんを瓦礫から助け出すと安全な場所に座らせると通信機で連絡を取ろうとする

 

 

「今手当てを!」

 

 

「必要ない!!長門と連絡が取れないと言うことは奴等は海に出ている!!

それよりも如月大元帥を探してくれ!!あの人!南方棲戦姫を追い掛けたんだ!!!!

心配だ頼む行ってくれ!!」

 

 

「は、はい!!」

 

 

「ルートはここから海へ行ける方角だ分かるな!?

行け!走れ!!あの人が死んだらこの海軍は終わりだ!!」

 

 

唐澤さんからルートを教えてもらうと私は燃え盛る大本営を駆け出し如月さんを追い掛ける

街は破壊されており時々私に助けを求めるが心の中で謝りながら如月さんを探す

 

 

(お願い!お願い!!無事でいて如月さん!!!)

 

 

私に笑顔を取り戻させてくれた恩人

絶対に助けないと

 

そう思いながら走っていると聞き馴れた声が聞こえる

 

 

「夕張!!」

 

 

「っ!矢矧さん!?」

 

 

進行方向に矢矧さんが手を振っており全速力で近付くと東雲さんの声が聞こえる

 

 

「おい!如月!如月しっかりしろ!!!」

 

 

「きーちゃん!しっかりして!!」

 

 

「早く!早く退けるわよ酒匂!!!」

 

 

「分かってるけど……!!」

 

 

「大鳳!辺りはどう!?」

 

 

「かなり酷い!至るところで火災や崩壊が続いてる!!」

 

 

「如月さん!!!」

 

 

大本営直轄大一艦隊と東雲さんが如月さんの名前を呼びながら瓦礫を退けようとしており私もそれに加わる

 

 

「夕張!頼む!如月を助けてくれ!!」

 

 

「分かってます!酒匂さん、能代さん!行きますよ!」

 

 

私は慌てて瓦礫を退けるとその下から血生臭いが鼻に付き瓦礫を退け終わるとそこには

 

 

「おい……如月…?」

 

 

「う……嘘…きーちゃん……?」

 

 

「如月さん!!!」

 

 

地面を真っ赤に染めながら至るところから大量出血をしている如月さんが発見され慌てて呼吸と心拍を確認する

 

 

「夕張!どうなんだ!?」

 

 

「……大丈夫です生きてます!!ですがかなり危険な状態です!!」

 

 

「島風!!急いで車を調達してこい!!!」

 

 

「は、はい!!」

 

 

「阿賀野!能代!酒匂!矢矧!辺りの警戒を怠るな!!

伊勢!深海棲艦は見付け次第ぶち抜け!!

大鳳もだ!見付け次第蜂の巣にしてやれ!!!」

 

 

「「「「「了解!!!」」」」」

 

 

……それから私はがむしゃらに如月さんを生かそうと努力し何とか一命は取り留めた

だが、頭部や全身の傷が酷く昏睡状態になってしまった

 

 

大本営襲撃事件、この事は後に世界に大きく響き渡る事件となってしまいそして戦争が終わらないことを意味しており絶望にうちひしがれる

 

 

如月大元帥を失った後大本営の統括は東雲大元帥へと移行された

明石の提督もかなりの大怪我だったらしく昏睡状態になってしまった

 

 

今回の事件で私は自らの無力さを思い知らされ、明石は前ほど元気は失ってしまい時々一人で泣くことが増えた

 

 

辛い……ねぇ…冷血これを…貴女は私に見せたかったの?

 

 

忘れたい忘れたい忘れたい忘れたい忘れたい

辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い辛い

誰も失いたくない…仲良くしたくない…親密になりたくない…

私はこの事件をきっかけに大きく心に傷が付いてしまった

 

 

だからこそなのか……昔の言葉を思い出してしまう…

昔、提督に言われた言葉を

 

 

『お前らは所詮兵器、代用が利く只の物なんだよ!』

 

 

…そうだよね…私も如月さんも東雲さんも誰もかも代用が利くって考えれば良いんだよね

だって『私だって代わりは居るんだから』

 

 

それからだった私は艤装を作ることに専念し自らの生きた証を残すために多くの物を開発し改装してきた

明石が私を止めようとする

それでも止まらず私は誰の声も聞かず作り続ける

 

 

それしか出来ないんだから私は

力がなくてただ機械を弄ることしか出来ない

 

不良品(欠陥兵器)

 

 

しばらくの間一人で作り続けていたら久しぶりに東雲さんから呼び出しを受けた

そして明石と共に行くと新しい兵器を作って欲しいとの事だった

 

 

「出来るか?夕張」

 

 

「可能です、ですがかなり掛かりますよ?」

 

 

「構わん、コイツは深海棲艦達が作り出そうとしていた兵器だ

名前は試製アリュシュール

我々は62型と名前を変え二人で開発してくれ」

 

 

その設計図を貰い私は少しだけ興奮していた

これだけの物を作れば記録に残すことが出来ると

そう思いながら二人で廊下を歩いていると明石が脚を止める

 

 

「どうかしたの?」

 

 

「……見てあれ」

 

 

私が外を見ると一人の艦娘の処刑が行われていた

磔にされ見たことないほどにボロボロにされた艦娘

 

 

「酷い痛め付け方だね、それほどの事したのかな」

 

 

「多分、彼女佐世保鎮守府に深海棲艦を招き入れたって」

 

 

「あー、何かそんなこと言ってたね

ほらそんなことより早く行こう明石」

 

 

「ちょ……夕張もう少しは気にしようよ……」

 

 

私はこの時処刑される艦娘の事より自分が成すべき事を考えていたのだがいきなり明石に首を掴まれる

 

 

「ぐえっ!な、何すんの!明石!!!」

 

 

「………………ねぇ…………あれ………」

 

 

「何よ!全くただの艦娘の…………は?」

 

 

廊下の窓から見える光景に私は目を疑った

磔に合っている艦娘は変わらない

処刑を行おうとしていた艦娘が呆然としている

 

そりゃそうだ、呆然もする

何せ磔に合っている艦娘の前に一人の軍服に身を包む男と一人の艦娘が居た

 

大本営に居たほとんど人間が窓からその光景を見続ける

男はそんな視線を集めながら笑みを溢し大声で叫ぶ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「悪いけどこの艦娘の処刑は今この時を持って中止だ!!

 

こいつは俺達が貰っていくぜ!」

 

 

その男の人はそう叫び処刑される筈の艦娘を庇った

 

 

 

「………何なのあの人……」

 

 

 

私が今まで見てきた誰とも違う

でも凄く凄く輝いて見えた

 

 

 

 

 

 

 

 





次回

揺れ動く思い

艦娘の処刑を止めた男に夕張は惹かれてしまう
それが今後どうなるかとも知らずに

久しぶりの投稿でーす!!
ぶっちゃけゴールデンウィーク前なので普通に急がしい仕事()
コロナって、なんだっけ(遠い目)



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夕張 過去編 九

「佐渡!!!!!!!

 

貴様!!!何してやがる!!!!」

 

 

さっきまで話していた東雲さんがいつの間にか廊下の窓から身体を乗りだし叫んでいた

 

 

佐渡……そう言ってた

確か今日どっかの英雄(・・)を海軍に引き込むとか言ってたけどあの人が?

 

 

その怒号に廊下を歩いていた人達も足を止め処刑場を見ているが海上に降り立っているその男は不敵に笑いながら東雲さんに食って掛かる

 

 

 

「だーかーら!!この艦娘は俺が頂いていく!!

 

これが俺の願いだ!!」

 

 

「そんなこと!!許可出来るわけ無いだろうがぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

東雲さんがいつにもなく怒鳴り声を上げており驚いていると明石が私の肩を叩く

 

 

「ね、ねぇ!ちょっと夕張!!

あ、あの艦娘って!!」

 

 

「え?」

 

 

佐渡と呼ばれた新人提督の後ろに居るのは恐らく初期艦でありこのとんでもないことに巻き込まれてる可哀想な艦娘……のはず…だったのだが

 

 

「え………あ、……あれって?」

 

 

「ま、間違いないよ!だって!同じ艦娘は建造されない!!

彼女だよ!叢雲だよ!!!

あ、有り得ない!!あの誰にも懐かず言うことを聞かない艦娘で有名な!『一匹狼』の叢雲!!」

 

 

叢雲……一応初期艦として元帥から送られる五人の艦娘の内の一人

でも『今大本営に居る叢雲だけは違う』

彼女は東雲さんの命令でこの大本営に配属される前に戦場に駆り出されてしまった言わばイレギュラーの艦娘

 

その証拠に彼女は配属される日に大本営から姿を消し3ヶ月に再びここに召集され配属された

空白の3ヶ月間に何があったかは知らないが彼女はここに配属されてから今まで『誰の艦娘にもならなかった』珍しい艦娘

実力はかなり高く下手をすれば一人で戦艦を倒せるほどであり上層部も彼女の扱いに困ってるだとかはこの前愚痴を言ってたっけ?

 

戦闘方法も変わっていて彼女は持久戦がかなり得意としており駆逐艦ならではの速度を利用し相手を様々な方法で弱らせていき確実に倒せると判断したときのみ一気に攻め落とす

 

ずる賢く確実に仕留める狼の如く

 

 

そして影で呼ばれている名が『孤高の一匹狼』

 

 

「あの娘が……何で……」

 

 

あんな男に従ってるの?

 

 

本気でそう思っていると東雲さんが処刑を諦めて佐渡さん?を呼び出す

当の本人は自分が何をしでかしたのか分かってないのか笑っている

 

 

「明石!!」

 

 

「あれ?大淀どしたの?

と言うかさっきの見た!?」

 

 

明石さんと大淀さんが話しているのを横目に私は窓に手を付き犯罪者…処刑されるはずの艦娘を助け出すあの人を見ていた

途中、長門さんに主砲を突き付けられても怯むことなく笑みを浮かべるその人

 

 

私の目は釘付けになってしまった

だって、だって、だって、だって

そんな人誰も居なかった

ここにいる人は誰も上に…東雲さんに楯突かない

従うことしかしない

如月さんも東雲さん位しか知らない

でもあの二人は勝算があるから楯突いていた

あんな、あんな……あんなあんな!!!

何もなく無策で!馬鹿げた事はしない!!

 

 

…好奇心、私は忘れていた…嫌、忘れようとしていたその感情を思い出しつつあった

 

 

「ばり……ゆ……り!!」

 

 

「凄い……何なの…あの二人」

 

 

凄い……そうとしか言えない正しく反逆

二人はとんでもないことをしているのにも関わらず笑みを絶やしておらず私は……

 

 

「夕張!!」

 

 

「え?あ、え?ご、ごめん?どしたの?」

 

 

「聞いてなかったの!?」

 

 

大淀さんと明石がため息を付いていると大淀さんが話し出す

 

 

「すみません、もしかしたら長門さんが古鷹さんを単独で処刑しようとするので助けてあげてほしいんです!」

 

 

長門さん……そうかあの人は『正義の戦艦』…悪を…許すわけがない……

 

 

「で、でもさ大淀…私達どうすれば……」

 

 

「憲兵を連れて彼女を探してほしいの!お願い!!」

 

 

「えぇ……で、でもあの正義の戦艦だよ?私達が…」

 

 

「分かった、任せて」

 

 

……何で?

 

 

私は今自分で言った言葉に疑問を抱いた

何故、私はそれを『分かった』と答えたの?

いつもなら『私には関係ない』で済ませるのに

 

 

物珍しさから?

叢雲が動いたから?

あの男が他の人間()と違うから?

 

 

 

分からない…分からない

 

 

でも、ほんの少しだけ……ほんの少しだけ…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この時私の中での価値観が変わった瞬間だった

 

 





次回

中途半端の思い

夕張は反逆を起こした二人に惹かれその姿を目で追うようになる
それが彼女を少しだけ狂わせる理由になるとも知らずに

久しぶりの投稿でーす!!!
ぶっちゃけ忙しくて忘れてた!!!
コロナ?俺の仕事にほとんど関係ないですねぇ!!!
ゴールデンウィークくそったれぇ!!!(虚しき叫び)







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夕張 過去編 十

それから私達は二人を助力することを約束し彼等は小笠原島へと旅だって行った

 

 

……正直死ぬと思った

あの島には何か得体の知れない深海棲艦が居ると思ってたしあそこには辿り着けない

 

……そのはずだったのに

 

 

「やっほー!明石さん!

顔出しに来ちゃいました!」

 

 

「あ!!佐渡提督!ご無事でしたか!?」

 

 

………嘘?

 

 

私は作業していた手を止め頭を上げるとそこにはあの時処刑される艦娘を助けた提督と叢雲が居た

 

 

あり得ない……だってあそこに無事に着いた艦娘も提督も居ない…はずなのに…どうして……

 

 

「じゃあ叢雲をお願いします」

 

 

「お願いするわ、あっちじゃまともな事できないしね」

 

 

「はい!お預かりしますね!

では叢雲さんこちらに」

 

 

叢雲と明石が居なくなってしまい下手をすると私の方に来ると思いそそくさと隠れてやり過ごそうとしたのだが

 

 

「お、可愛い女の子はっけーん?ヘーイ彼女!俺と出掛けない?」

 

 

「………ナンパですか?結構です!!」

 

 

……何で見付けられたのかは分からなかったけど佐渡提督は私の作ってる物を見ながら頭を撫でてくる

 

 

「えー?可愛い女の子をナンパしちゃうのは仕方ないでしょ!

と言うかこれ一人で作ってるの?」

 

 

「ま、まぁ……」

 

 

「手伝おうか?」

 

 

「結構です!私一人で作れますから!」

 

 

そう叫ぶと再び黙々と機材を作っていこうとするのだが

 

 

「そう言わないでさ?俺に付き合ってよ!

ちょっと行きづらい所があって……ね?奢るからさ!」

 

 

「…………はぁ、分かりましたよ」

 

 

私は渋々佐渡提督に言われるがまま付いていくとそこは甘味処間宮

 

………そう言えば来たこと無かった

作業着だけど良かったのかな

 

 

私がため息を付いていると佐渡提督が突然上着を被せてくれる

 

 

「ちょ!何するんですか!?汚れますよ!!

私オイルまみれだし!」

 

 

「あー、いやさ?俺の服の汚れは気にしないんだけどその格好だと他の男共が君をジロジロ見てるからさ?」

 

 

「…え?」

 

 

私が不意に周りを見ると大本営に勤務している男性職員が私を見ていたのか視線を反らす

…確かにタンクトップに半ズボンだったけど

 

 

「……?別に艦娘何だから普通じゃないですか?」

 

 

「…はぁ、何で艦娘って皆自分を大切に思わないですかねぇ……叢雲と言い古鷹と言いこんちくしょう!!

 

ま、良いや夕張さん何食べます?」

 

 

「え?あー……」

 

 

ふとメニュー表を見ると色々ある

食べ物か……安いので良いかな

 

 

ペラペラとメニュー表を捲っていくとパフェとかも気になったけど高いからと辞めておき

 

 

「じゃあ私は「パフェ食べたいの?」

 

 

………は?

 

 

私は驚いて佐渡提督を見るとニヤニヤと笑っており同時に定員を呼び出し

 

 

「はーい!何にしますか?」

 

 

「このミックスパフェ一つとイチゴパフェ、後ハンバーグセットにあんみつ、後アイス二つ

お願いします」

 

 

「ちょちょ!!」

 

 

「分かりました!」

 

 

私が止める間も無く注文が完了してしまい定員が去ってしまい私は机を叩く立ち上がる

 

 

「ちょっと佐渡提督!私一言もパフェ食べたいなんて!」

 

 

「え?違う?パフェの項目見た瞬間食べてみたそうな顔して直ぐ様高そうだから辞めて安いポテトにしようとしたんじゃないの?」

 

 

「………は?……え?……え?」

 

 

……その言葉に唖然とした

だってその通りだったからまるでお見通し見たいに私の考えが読まれてしまい力なく椅子に崩れ落ちる

 

 

「あはは、違ってた?」

 

 

「な、何で?分かったの?」

 

 

「正解かー、よっしゃ!

んー俺元々心理学ってのをかじった事あってね

人の考えてることとかお見通しなのさ

それに俺はしばらく戦場に居たし色んな人を見てきたからね!

ドヤァ!!」

 

 

……その言葉に唖然としてしまった

この人は明らかに他の提督や人間とは違う

そう確信し私はある疑問をぶつけてしまう

 

 

「あ、あの!!」

 

 

「お待たせ致しました!ミックスパフェ、イチゴパフェにハンバーグセットにあんみつです

アイスは食後にお持ち致しますね」

 

 

「ありがとうございます!……夕張さん何か言った?」

 

 

「え!?あ、あ、いや何でもないです……」

 

 

「そう?じゃあ食べますか!頂きまーす!」

 

 

初めて見る食べ物に私は戸惑いながらもどうやって食べるかわからずに居るとそれを察したのか佐渡提督がスプーンで掬ってくれる

 

 

「パフェは、こうやって食べるんだよ?

ほら口開けて、あーん」

 

 

「……あーん」

 

 

掬ってくれたスプーンに乗ったプリンや赤いソースと共に食べると口の中に柔らかい食感と今まで食べたことないほどの甘さが広がる

 

 

「っ!!!」

 

 

「はは、美味しそうに食べるねぇ…よし、俺もたーべよっと!」

 

 

それから私は無我夢中で食べてしまいあっという間に出てきたパフェを食べきってしまった

でも

 

 

「あ、追加頼む?すいませーん!」

 

 

まひゃなひもひってないですよぉ!!!(まだ何も言ってないですよ!!!)

 

 

……結果的にかなりの量を食べてしまい金額が五万近くになってしまい頭を抱えていると佐渡提督がさらっと会計を済ませようとする

 

 

「ま、待ってください!私が!」

 

 

「いーのいーの、別にこのぐらい大したことないよ」

 

 

「で、でも……」

 

 

「うーん、じゃあこの事を叢雲に秘密してくれない?

それでチャラにしよう!」

 

 

「え、ちょ、そんなことで?」

 

 

「あ、そろそろ叢雲の整備終わるかな?

やば!走るよ!夕張さん!!」

 

 

佐渡提督はそれだけを言うと全速力で走っていってしまい私もその後ろを追い掛ける

 

 

「ま、待ってください!!」

 

 

……第一印象は凄く変な人

艦娘に対して兵器だとかそんな偏見はなく一人の人間として接している珍しい提督

たまにそんな人が居るのは知ってる

でもどうせこういう人は早く死ぬ

…如月さんみたいに騙されて自分を省みなさすぎて

 

 

そして直ぐ様私達は危機に直面した

 

 

戦艦ル級歴戦種の進撃

当時私達も艤装を付けて戦おうと作戦会議室に走っていた

作戦会議室はどうやら大荒れの様子で入ろうとしたら

 

 

『何を馬鹿な事を言ってやがる!!叢雲!!!』

 

 

っ!佐渡提督の怒号…一体何が

私と明石は顔を合わせてそっと扉を開けると

 

 

『私がアイツを止める』

 

 

「馬鹿を言うな!!お前が相手出来る相手じゃねぇ!!

直ぐ様帰投してこい!!!」

 

 

『そ、そうだよ!叢雲!

長門さん達でさえ苦戦を強いられる相手だよ!?

私達がどうこうできる相手じゃ』

 

 

『分かってるわ、だからこれはただの時間稼ぎ

古鷹、貴女は下がって司令官を守ってあげて

相手は一人、一時間は持って見せる』

 

 

……あの艦娘は何を言っているんだろう?

相手は歴戦種

姫の歴戦種は…記録がないけれど一人で六以上の艦隊を相手出来るほど

姫じゃなかったとしても歴戦種は格が違う勝てるわけがない!なのに

 

 

「駄目だ!お前をここで戦わせるわけにはーーー」

 

 

『お願い、佐渡……信じて』

 

 

「っ!!!!…………分かった

ただし!死にそうになったら逃げろよ!!」

 

 

『ありがと、私の司令官!』

 

 

何で……何で何で何で!!

そんな指示を出せるの!?何で艦娘を……

あぁ、違うそうか自分の身を守るためにか…そうだよね……そうに違いない…絶対に!!

だからこそ私は明石に他の人の誘導を頼んで作戦会議室に入り彼に駆け寄る

 

 

「佐渡提督!」

 

 

「夕張さん!すみませんが、大本営の人間を避難誘導してくれませんか!?」

 

 

「それは勿論ですが貴方もですよ!」

 

 

私が佐渡提督の手を取り他の人と共に連れていこうとするが何故か手を弾かれる

 

 

「ちょ、ちょっと佐渡提督!!貴方も逃げないと!!」

 

 

「すまん、俺は行けない」

 

 

「なっ!何をふざけてるんですか!?貴方を逃がさないと!!」

 

 

「叢雲が戦ってるんだ!!俺だけ逃げることは出来ない!」

 

 

「駄目です!貴方は『提督』、彼女は『艦娘』です!

彼女はいくらでも造れますが貴方は!!!」

 

 

「うるせぇ!!俺はここを離れない!!

最後までアイツの指揮を取る!!」

 

 

そう叫ぶと佐渡提督は直ぐ様パソコンを開くと天候や海流、現在の状況を調べ始める

 

 

「佐渡提督!ワガママ言わないでください!

貴方に出来ることなんて無いんです!それに貴方を死なせることはあの人に!!!」

 

 

私が話しているといきなり発砲音が響き渡り後退りをする

 

 

「……佐渡……提督……?」

 

 

発砲音の主は佐渡提督だった

私に向けてではなかったが静かにこちらを睨み付けてくる

 

「……邪魔をするな

アイツは『俺の武器』だ」

 

 

「っ!!!!」

 

 

その瞳は今まで見てきた人と明らかに違う

冷たく、刺すような瞳

何人も殺してきたかような冷酷な目付きに私は腰を抜かす

その姿を見た佐渡提督がハッとすると

 

 

「……あ、ごめんごめん!

夕張さん脅かしてごめんね、俺は一人で逃げるから他の人をお願い!」

 

 

いつもの笑顔を作りながら再びパソコンに手を伸ばしていく

 

 

「……どうして…ですか?」

 

 

「んー?何がー?」

 

 

今まで聞きたかった事をこの際だから聞いてやろう

そんな気分だった、だからこそ聞いてみる!

 

 

「何で貴方は艦娘を人間として扱うんですか!?」

 

 

「何でって俺は艦娘も人間も変わらないとそう思うからだよ」

 

 

……即答だった

流石に少しは考えると思ったなのに!この人は!!

そんなことを考えているの佐渡提督は続ける

 

 

「俺に取っての兵器ってのは人の命を奪うための物だ

一方的に、圧倒的に、確実に奪うための物だ

そこに感情はない、躊躇いはない

そりゃそうだ、だって兵器はしゃべらない、感情を持たない、血を流さない……涙を流さない

 

 

お前が自分を兵器だと思っても構わない

だが俺はお前達(艦娘達)を兵器だとは思わない

だって俺が見てきた人間よりずっと感情豊かで、馬鹿で、可愛げなんてない

 

だから何を言おうが俺は艦娘を一人の人間として扱う

お前達が何から出来ようがどんだけ強かろうが変わらない

 

 

俺はお前達を人間として、一人の軍人として、一人の少女として扱う

それだけさ」

 

 

佐渡提督にそれを言われた瞬間他の人との違いを理解する

 

 

そっかこの人はそう言う世界で生きてきたんだって

 

 

だからこそ私は

 

 

「……そうですか…分かりました他の人を避難誘導してきます」

 

 

「頼んだ!」

 

 

この人を置いて他の人を助けに行き外へ走っていき湾内に到着すると砲撃音と金属の音が響き渡る

 

 

(本当に……二人で戦ってる)

 

 

歴戦種と思われるル級、そして叢雲さんと古鷹さんが戦っている

その光景を横目に私が避難誘導をしていると叢雲さんが撃ち抜かれてしまいこちら側まで吹き飛ばされてくる

 

 

「ぐぅ!こ……このぉ……!!」

 

 

身体と服はボロボロ、頭から血を流し左腕は折れているのか力なく垂れ下がっていた

だが

 

 

「ここで……必ず…止める!!」

 

 

彼女は諦めない

もしかしたら死んでもここを守るつもりなのか分からないが再びル級に向かっていき砲撃戦が始まり私は呆然とその姿に見いってしまう

 

 

初めてみる間近の戦い

叢雲さんも強いのは知っていた、でも敵も相当強い

砲弾を避け盾で防ぎながら二人を相手取り劣勢を強いられていない

明らかに通常のル級ではないが叢雲さん達と引けを取っていない

長きに渡る戦いの末に叢雲さんがル級の側に何かをばら蒔くと吹き飛ばされる

 

 

「ハハハハ!!!不発!不発デハナイカ!!

オマエノマケダ!!!艦娘!!!」

 

 

「何を……言ってる……の…あんたの…負けよ!!!」

 

 

「何!?」

 

 

ル級が辺りを確認すると四方から雷撃が迫っておりその意図に気付く

 

 

「マ、マサカ!!コレッテ!!」

 

 

「海の底に……沈めえぇぇぇぇ!!!!!」

 

 

「貴様ァァァァァ!!!叢雲ォォォォォォォォ!!!!」

 

 

その叫びと共にル級が大爆発を起こしその衝撃を私は目にする

通常の雷撃の比ではないその火力、恐らく特殊な雷撃とのコンボ攻撃

 

 

「凄い……」

 

 

それしか言えなかった

彼女は戦艦ではない

彼女は空母ではない

彼女は重巡ではない

彼女は潜水艦ではない

彼女は軽巡ではない

 

 

そうただの捨て艦として扱われている駆逐艦

それが歴戦種を倒した

その可能性を見出だした

 

 

それから私は佐渡提督と叢雲さんに興味を持ち出した

明らかに違う二人

他の艦娘や提督に無いそれを見て私は好奇心と共に奇妙な感覚に襲われていた

 

 

こんな感覚や感情は今まで一度として無かった

 

 

そして二人はどんな困難や壁に正面から立ち向かい走り抜けてきた

 

 

沖縄での歴戦の戦艦棲姫戦

 

捨てられた艦娘達へと救済

 

海軍最強の長門さんとの戦い

 

 

その全てに撃ち勝ち彼等は強くそして確実に成長していった

この頃から私は二人に惹かれていった

自分には無いものを持っている二人に

 

 

そして訪れた歴戦の飛行場姫戦

 

 

最強クラスにして誰もが成し遂げる事が不可能とされた歴戦の姫戦

 

 

……正直、彼女はここで終わりだと思った

でも仕方無い、相手が悪すぎる

 

 

歴戦の飛行場姫は他の姫とは桁違い過ぎる実力を持っている

太平洋を支配するほどの力を持つ姫に勝てるわけない……そうないのだ誰にもそんな力なのに!!!

 

 

彼女は飛行場姫と渡り合って見せた

 

 

一撃でも当たれば致命傷、更に多彩な武器、多くの艦載機

誰もが逃げ出す力を私達に見せ付け皆が諦めかけていたのに彼女は違った

 

 

一人でも戦う覚悟を見せていた

 

 

貴女の代わりはいくらでもいる

だって艦娘は造られているんだから

いつでも造れるんだから

人間と違って同じ性能を引き出せるんだから

 

だから!だから!!!そんなにボロボロになって戦う意味はないはずなのに!!彼女は!!

 

 

「今アイツを止めないと私達は全滅する!!

 

それにアイツを止められるのは私だけよ!!」

 

 

そう言って見せた

あぁ、この艦娘は……明らかに違うのだろう

私達とこの艦娘には絶対的に何かが違う

 

 

そして彼女は飛行場姫を倒して見せた

勝てるわけがないのに

普通なら……そう普通なら

 

 

彼女のソレ(・・)は聞いたことがある

でもそれを見たのは初めてだった

代償も大きいなのに彼女はそれを省みず戦うその姿に私の気持ちは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大きく揺らいでしまった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

兵器を作るための兵器としてではなく

彼等の為にこの知識を役立てたいと

彼等を側で見ていたいと

彼等の結末を

 

 

 





次回

覚悟

二人を影から見ていた夕張
彼女は飛行場姫戦の時に決心しそうになる
二人を間近で見ていきたいと
再び、鎮守府に行きたいと

久しぶりの投稿ごめんなさい!!!
あ、次回で夕張過去編終わりです、長くなって申し訳ありません……


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夕張 過去編 十一

二人への思いが大きくなるほどに私の集中力が落ちていき気を失っている叢雲さんの事を意識してしまいちょくちょくミスをするようになってしまった

 

 

「どうしたのさ夕張?

ここ最近かなりミスしてるけど?」

 

 

「んー、ちょっとね」

 

 

「もしかして!あの戦いでどこか損傷してるの!?」

 

 

「ち、違うよ!そんなことない!」

 

 

「ふーん?じゃあもしかして叢雲の事?」

 

 

「っ!?な、なんで!!」

 

 

と驚き振り向くと明石がニヤニヤと笑みを浮かべながら私を見ていた

 

 

「いやーさ、夕張が珍しいなと思って

人間や艦娘に入れ込むのが

いつもなら適度にしか付き合わないからさ」

 

 

「むー……まさか明石にバレるなんて……

悔しい!!!」

 

 

「ちょっと酷くない?

話聞こっか?どうせしばらくは仕事無いかもしれないし?」

 

 

「……何か明石に話すのはしゃくだなぁ…」

 

 

「おいこらどういう意味よ?

まぁ良いや、とりあえず休憩に間宮行こっか?」

 

 

二人で手を止めて間宮へと向かいお互い座り注文を終えると二人の事を話し出す

あの時から二人が気になっていること

佐渡提督の事、叢雲さんの事

自分が少しずつ変わってしまったことを

 

 

「ってことなんだけど………」

 

 

私が話し終えると明石が微笑んでおりイラッと来てしまい明石のほっぺをつねる

 

 

「ひたたたた!!ひたいひたい!!」

 

 

「ちょっとー?人の話聞いてた~?」

 

 

「きいへひゃきいへひゃ!!」

 

 

「じゃあ何で微笑んでるのよぉ?私が真剣に悩んでるのにー!」

 

 

「い、嫌さ?嬉しいなって思ってさ」

 

 

「え?」

 

私がほっぺたを放すと明石は笑みを溢しながらほっぺたを擦る

 

 

「だってさ、夕張がそんなこと言ってくれた事一度もなかったからさ

ずっと側に居たけど」

 

 

「……ごめん」

 

 

自然と私はその言葉が出てきてしまうが明石は首を横に振るう

 

 

「違う違う、私は攻めてるんじゃないの

貴女が二人に影響を受けて前に進めてるんじゃないかなって思えたの」

 

 

「…前に…進めてる……?」

 

 

首を傾げているとパフェが運ばれてきており明石はスプーンを片手に生クリームを頬張る

 

 

「だってさ夕張

あの時……大本営襲撃事件の時からずっと人や艦娘と関わるのが怖そうにしてたんだもん

ここに来た頃見たいに」

 

 

……その通りだった私は怖かった

信頼を置いている仲間や知り合いが死ぬことが壊されることが怖かった

冷血が死んでしまった事、力を尽くしたい相手が居なくなることが

だから価値観を捨てた……いや、捨てたかった(・・・・・・)

 

 

「貴女は誰よりも怖がりで失いたく無い臆病な艦娘

私はそれを知っている

だからこそ、私もそれを承知で付き合ってたよ

 

 

……佐渡提督はそれを気付いてたんじゃないかな」

 

 

「え………そ、それって……」

 

 

「…あの人は誰よりも他人を優先させる

もし、自分が夕張の大切な友人になってしまって死んでしまったら……自分は貴女を再び傷付ける事になるって

自分がしていることを理解しているから

貴女を残して死んでしまう可能性がある

だから貴女をここに閉じ込めておきたかった

ここに来る一人の少し仲の良い提督でありたいが為に」

 

 

「っ!!…………」

 

 

…明石の言っている言葉に納得してしまった

そうだ、あの人は絶対に私を小笠原に行くことを拒んでいた

誰も仲間が居ないのに、一人でも仲間が欲しいのに

彼は拒んでいた

 

 

「……あの人は恐らく残される苦しみを

悲しみを

虚しさを

知っているだからこそ優しい

そして自らから遠ざける様にする

自分が危ない橋を渡り続けているから

 

…似てるんだよねぇあの人に東雲さんに」

 

 

明石が話していると自分が何を言っていたのかを理解する

 

 

「私は……軽率だったんだね……」

 

 

「んー、でもさそれでも行きたいんじゃないの?

夕張は?」

 

 

明石はそう言うとポケットからある紙を取り出し私に差し出す

 

 

「…これって……」

 

 

「転属願い、実はね如月さんから預かってたの

ほら如月さんの判子押してあるでしょ?」

 

 

良く見ると確かに如月さんの判子が押してあり驚いていると明石が言葉を続ける

 

 

「明石…何でこれを?」

 

 

「如月さんはね、貴女をどこかの鎮守府に送ろうと考えていたの

いつか貴女が行きたい鎮守府が出来ると信じてね

 

そしてこれを渡すときが来たね」

 

 

その紙をまじまじと見ているが目を瞑りそれを置こうとすると明石に手を取られる

 

 

「夕張、私はね貴女に小笠原へ行ってほしい」

 

 

「で、でも私は……」

 

 

「どうせ自分は迷惑になるって考えてるんでしょ?

正直その通りだと思う、でもね迷惑をかけても良いんじゃないかな?」

 

 

「……良いのかな」

 

 

「大丈夫!佐渡提督だって許してくれるよ!

行きなよ!小笠原へ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

明石に背中を押され私は勢いのまま転属願いを書き東雲さんの元へと来てしまった

不安はある悩みもあるそれでも私は行きたいと願う

 

 

 

「お前、本気か?」

 

 

 

 

 

「えぇ、貴方達の恩義は忘れてません

 

ですが行きたいんです、駄目ですか?」

 

 

 

 

 

「……お前を助けたのは如月だ、俺に決定権はねぇ」

 

 

 

 

 

「でも私も『ある欠陥』を抱えてるし条件は満たしてますよね?」

 

 

 

 

 

「………はぁ、仕方無い

 

奴等には『特別報酬艦』として譲渡してやるか

 

良いだろう、お前の小笠原流しを許可してやる」

 

 

 

 

 

「ありがとうございます、東雲さん」

 

 

 

 

 

私は笑みを浮かべながら敬礼をする

そして、部屋を後にしようとした

 

 

「待て、夕張」 

 

 

後ろから東雲さんに呼ばれ振り返ると何かを投げ付けられそれを受けとる

 

 

「……時計?」

 

 

「あぁ、お前の旅立ち記念だ

お前は時間を忘れるからなちゃんと見て動け

やはりあの鎮守府に行きたいと思うとはな」

 

 

「…え?」

 

 

東雲さんは椅子をくるっと回すと煙草に火を付け吸い始める

 

 

「……あの二人は如月に良く似てるからな

馬鹿な所が

お前が惹かれるのも良くわかる」

 

 

その言葉に私は今まで彼等を見て惹かれていた理由を理解する

 

 

そうか……私はあの二人に如月さんを重ねていたのか……

 

 

「だが、アイツ等は如月とは違う

アイツは引っ張れないからな

佐渡も叢雲も他人を仲間を引っ張っていく

どん底に居ようとも絶望の淵に居ようともアイツ等は止まらない

 

 

お前を引っ張ってくれるよ必ずな」

 

 

そう言うと親指だけを立てて見せる

 

 

「……東雲さん」

 

 

「ハハ、お前が出ていってくれるのはうれ……清々するなぁ!!!

やっと明石だけをこき使える!!ちゃっちゃと行きな!欠陥品(夕張)!!!」

 

 

 

「はい!今までお世話になりました!!」

 

 

「あ、後何か不祥事見付けたら報告しろよ

あそこを潰さないと他の元帥共がうるせぇからなぁ」

 

 

「えー、言いませんよー?

私の鎮守府になるんですから!」

 

 

「しけた奴だな!早く行きやがれ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして私は小笠原へと向かう

中途半端な状態で

 

 

 

 

 

 

 

自分が何なのかをどうすれば良いのかを確かめるために




次回

欠落した感情は

時は現在に戻る
価値観の違いと佐渡はその話を聞いて彼女の事を知る

そして佐渡はある事実を彼女に突き付ける

凄く久しぶりの投稿……な気がする?
お仕事が少し暇になってきたので投稿頻度上げられるかな?



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欠落した感情と護る者

「これが私の過去かな

ごめんね、他の艦娘とか違ってそんなに酷くなくてさ」

 

 

「おいおい、謝らないでくれよ?

むしろそう言うのが無い方が嬉しいんだからさ」

 

 

夕張の過去を聞いた佐渡はいくつかの違和感を感じていた

 

 

(彼女の過去……冷血と呼ばれる艦娘と提督が鍵であることは確かなんだけど……

何で彼女は今まで殺されなかったんだ?

少しでも深海側の情報を持っているなら海軍でも無事ではすまないはず……何だが……)

 

 

「佐渡…提督?」

 

 

「ん?あ、あぁすまんすまん

ちょっと考え事気にしないで!」

 

 

佐渡は考えてるうちに一つの答えに辿り着く

その答えは夕張に伝えずに留めておくことにすると珈琲を飲み干す

 

 

「んー、正直に言うと夕張ちゃんの価値観に関しては俺はどうにも出来ない…が現状かな」

 

 

「や、やっぱりですか……」

 

 

「下手にそれを崩したりすれば君の自我が耐えきれずに壊れてしまう可能性があるからね」

 

 

「……え?それってどういう…」

 

 

夕張が疑問に思っていると佐渡は珈琲のカップを置く

 

 

「君はそもそも生まれた環境が他の艦娘と違いすぎるからね

物として扱われ、突然それを失った

そして助けてくれていた艦娘の名前を覚えてない…

 

いや違うね、君は覚えようとしていない思い出さないようにしている無意識に」

 

 

「なっ!そんなこと!!」

 

 

「残念ながらあるんだよ

だって君はその艦娘が新しく生まれたときそれを受け入れられないと感じているから

違うかい?」

 

 

「そ、それは……」

 

 

反論しようとする夕張だったが口ごもってしまい俯く

 

 

「…でもそれが悪いことではない」

 

 

「……え?」

 

 

「君は自分でその過去に自分の間違いに気付き前を向こうとしている

今無理にその事を思い出さなくてもね」

 

 

「…そ、そうなの…かなぁ?」

 

 

「そうそう、それに……」

 

 

夕張が不安がっていると佐渡は近付くと夕張の手を取る

 

 

「正直俺はそれを解決することは出来ない

不甲斐ないけどね」

 

 

「………」

 

 

「傷が付いた心は当人達しか完全に癒すことは出来ない

俺が出来るのはその後押しをすること

古鷹だってそうだった

俺達が出来たのは彼女の傷を出来るだけしか癒せなかった

完全に治すためにはその過去を乗り越えるしかない」

 

 

夕張は佐渡に言われているとそっぽを向いてしまう

 

 

「……俺の予想が正しければ君はいつかその過去に直面しなきゃ行けなくなる

だから俺が出来るのはそれまで君を癒すことだけだ

 

でも俺は君を裏切らない信じてほしい」

 

 

「……ふふ、大丈夫ですよ

私は貴方を信じてます

何人も救ってきた貴方が言うならばその時を待つことにします

でもその間お願いしますね?」

 

 

「おう!それぐらいは任せろ!

さーてと、じゃあそろそろお風呂入って寝なさい?」

 

 

「ええー、もう少し弄ってたかったのに……

ま、仕方無いか!」

 

 

佐渡に言われると夕張は渋々言うことを聞き工廠を後にすると静寂に包まれしばらくすると

 

 

「居るんだろ、エア」

 

 

一言だけ呟くと機材の影からエアが現れる

 

 

「良く分かったわね、私が居るって」

 

 

「お前の事だ、どうせ聞いてると思ってな

……俺の聞きたいこと分かるよな?」

 

 

「分かるわよ、分かってて言うわ

駄目よ教えられない」

 

 

エアが佐渡の聞きたいことを断ると大きく溜め息をつく

 

 

「どうしてもか?」

 

 

「えぇ、これ以上教えられないわ

ただし一つだけ言えることがあるのは、あんたの予想は当たってる

 

アイツは、彼女を狙っている

時期に痺れを切らせて攻めてくる可能性がある」

 

 

「……やはりか、そりゃそうだよな

お前を護衛に付けるほど気に入ってるんだもんな」

 

 

佐渡はそう呟くとエアは近くの椅子に座るとポッキーを食べ語りだす

 

 

「…彼女は…いえ、夕張は元々深海棲艦に関わっていた鎮守府出身なの

でも、ある艦娘の裏切りによって鎮守府が崩壊した」

 

 

「…その裏切った艦娘が」

 

 

「…そう、名前は教えられてないけど夕張が言っていた『冷血』

彼女は元々提督の秘書を勤め大本営を欺き、深海側に艦娘を売っていた

何人もの艦娘を深海側に提供することで鎮守府の安泰と成果を不正に受け取っていたらしいわ」

 

 

「らしい?知らないのか?」

 

 

「まぁねー、私はまだ生まれてなかったから

で、その取引は深海側の一部で行われていてその男は知らなかった」

 

 

「……狐の男」

 

 

「そ、アイツはそう言うの嫌いだからまず耳に入ったら深海側も艦娘側も滅ぼしに掛かるわ

そしてそれを知ってたのか冷血はアイツの元に駆け込んだ」

 

 

「そして情報を流し鎮守府を滅ぼさせた」

 

 

「そゆこと

…もしかしたらだけど、その冷血って娘は深海側にもそう言うのが居ると思ってたのかしらね」

 

 

「だが、何で大本営にそれを伝えなかったんだ?」

 

 

佐渡が疑問を投げ掛けるとエアは立ち上がり佐渡の側に向かっていく

 

 

「当時、大本営では艦娘を軽視する傾向にあったらしいわ

それこそ道具としてしか見てない人が大半

そんな所に駆け込んでも艦娘である彼女の話を信じてもらえないと思ったんでしょ?

信じて貰えても証拠を消されていたから」

 

 

「……でも何で夕張ちゃんはそれに巻き込まれたんだ?」

 

 

「運が悪かったんじゃない?

元々アイツと連絡を取った方が早かった……とか?

ま、今考えても仕方ないわよ」

 

 

エアは佐渡の肩を叩き工廠から出ていこうとするが

 

 

「待て、前から聞きたかった事があるんだ」

 

 

「あーらー?なにかしら?私に」

 

 

エアが振り返らずに言おうとするがそれを遮る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前、何を探してる?

大本営とここで」

 

 

その言葉にピクンとエアが反応するとゆっくりと振り返る

 

 

「お前が夕張ちゃんだけの監視だとは思えない

他にも何かあるはずだお前ほどの『エース』を送り込んでくるんだからな」

 

 

「……何が言いたいの?」

 

 

「これはただの仮説だ、戯れ言かもしれないがお前は二人から依頼を受けているんじゃないか?

一つは、狐男から夕張ちゃんの監視

 

そしてもう一つ、恐らくこっちが本命だ

『誰かを見付け出せ』と言う依頼」

 

 

佐渡の言葉が図星だったのかエアは艦載機を取り出そうとするが

 

 

「………お前には関係のない話よ

もう一つの方はね」

 

 

「やはりか…なら取り引きをしないか?」

 

 

「…あら、私と?あんたが?」

 

 

「あぁ、その探し人を手伝う

その代わりお前も狐男の情報を俺に流す

どうだ?」

 

 

その言葉にエアは揺れ動くが直ぐ様振り返り工廠を後にしようとする

 

 

「待てよ!エア!!

お前だけが頼りなんだ!!」

 

 

佐渡の呼び掛けにエアは動きを止め頭だけ振り返る

 

 

「………考えとくわ

じゃあお休み」

 

 

「…あぁ、頼む」

 

 

それだけを言うとエアは工廠を後にする

そして誰も居なくなった工廠で佐渡は呟く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……夕張ちゃんの過去を知る深海の人間……

予想は付いてる…いつか対峙するときが来るはずだよな……

 

 

深海提督よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………信じられるわけないでしょうが人間なんて

見つけ出さないといけない奴……無理よこれだけは誰にも頼れない

見付けられてはならない

私が見付けて……問いたださないといけないの……」

 

 

エアは一つの写真を服から取り出し月明かりに照らしながら見る

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、貴女は何処にいるの

革命者(フィリア)

始原(ピース)に追放されし始祖たる深海棲艦」

 

 

その写真には一人だけ姫級の少女が映し出されていた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃本島にて

 

 

「さてと、そろそろ抜け出すわよあんた達」

 

 

「ちょっと本気なの?」

 

 

「決まってるでしょ、こんなところに長くは居られないわ

司令官が心配だし」

 

 

「まぁそれは分かりマースが……」

 

 

「ま、仕方無いさ罪は私も被るとしよう」

 

 

「長門さんには秘密ね!……絶対止められるし」

 

 

「さ、行くわよあんた達

 

 

 

 

 

 

 

小笠原へ帰るわよ!!」

 

 

 

 

 

 

 





次回

出会い

夕張を完全に治すために深海側の狐男だけだと踏んだ佐渡はその男と会うまで彼女を癒すと決めた
そしてその男の情報を知るためにエアに迫るが交わされてしまう
そんな中本島に居るある艦娘達が小笠原へ来てしまう


イベントが近付いてる最中、思い出したかの様に5ー3を攻略してます
夜戦きつい…あ、ガンビアちゃんドロップしましたやったぜ!!!




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出会い、そして

次の日

佐渡はいつも通りに起床すると台所に立ち朝食を作っていると食堂の扉が開く

 

 

「おはよう、今朝は目玉焼き、刺身と納豆と味噌汁何だが大丈夫かー?」

 

 

「……貴方、こんなに朝早くから起きてるの?」

 

 

起きてきたのはカナだった

昨日のぐだぐだした雰囲気とは違いかなりしっかりとしており佐渡も顔だけ後ろに向ける

 

 

「おっとその声はカナか

昨日と違ってしっかりしてるみたいだな」

 

 

「……昨日は迷惑掛けたわね、ごめん」

 

 

「気にすんな、あれがお前の素なのか分からんが

別に悪い気はしなかったからな!」

 

 

そう言いながら作っているとカナが厨房に入ってくる

 

 

「どした?……ま、まさか!ここでやるつもりか!?」

 

 

入ってきたカナに対しお玉とヘラで対応しようとすると溜め息をつかれる

 

 

「そんなわけないでしょ、手伝うわ」

 

 

「…………へ?」

 

 

「だから……朝食作り手伝う」

 

 

予想外の言葉に佐渡はお玉とヘラを握ったまま呆然としているとカナが再び大きく溜め息をつかれる

 

 

「何?私が手伝ったら駄目なの?」

 

 

「え!?あ、いや、……マジ?」

 

 

「……はぁ、ここまでお前にしてもらってなにもしないってのは私が嫌なの

とりあえず手伝わせて」

 

 

「お、おう……それなら頼む

味噌汁の作り方分かるか?」

 

 

「舐めないでくれる?その位余裕よ」

 

 

そう言うとカナは冷蔵庫から味噌や食材を探そうとする

(……凄いな…ってそれもそうかカナはドレス島を仕切ってた

料理位できて)

 

 

と考えながらふとカナを見ると豆腐を開けそのまま鍋に入れようとする

 

 

「待て待て待て待て待て!!!!」

 

 

「何よ?邪魔しないでくれる?」

 

 

「いや待て!?何しようとしてるのカナさん!?」

 

 

「何って……味噌汁には豆腐が入ってるでしょ?」

 

 

佐渡が慌てて止めるのだがカナは溜め息を混じりに話しており再び入れようとする

 

 

「待てって!!おま!そのまま入れたらとんでもないことなるから辞めてくれ!!」

 

 

「何よ!全く!!豆腐ってのは鍋に入れると一口サイズになるんでしょ!?」

 

 

「そんなわけあるかぁ!!どこのサイキック料理だ!!!」

 

 

カナとの言い争いをし終えると認識の違いを改めさせ色々と料理を教えていくが

 

 

(……コイツ…かなり飲み込みが早い…嫌、包丁の扱いが上手すぎる)

 

 

そう、カナは料理…と言うよりは包丁捌きが素人ではなく明らかにプロと言うほどの切り方をしており佐渡は感心する

 

 

「はい、こんなもの?……って聞いてるの?」

 

 

「ん?あ、あぁ!ありがとう!

と言うかカナ、包丁捌き上手いな?もしかして向こう(ドレス島)とかで使ってたのか?」

 

 

「いや、これが初めて」

 

 

「………は?マジ?」

 

 

「本当よ、包丁何て物初めて持ったもの」

 

 

「えぇ……それで三枚卸しとか微塵切り出来るって……」

 

 

「当然じゃないこれが私の『能力』なんだから」

 

 

「……は?能力??

どういうこと?」

 

 

カナの発言に疑問を感じるとそれを答えてくれる

 

 

「貴方、エアの能力知ってるわよね?」

 

 

「あぁ、確か『擬態そして模倣』だったな」

 

 

佐渡が答えるとカナは包丁をまな板に置き説明する

 

 

「そう、私達Eliteにはそれぞれ他の深海棲艦と違って特別な力がある

エアはどんな生物にも擬態する能力

 

そして私は『どんな武器を自在に操る能力』があるの」

 

 

「どんな……武器でも?」

 

 

「ま、正確には相手を傷付ける物

だけどね

私はそれを触れば使い方や用途が頭の中に流れ込んでくるの

どう使えば良いか、どう使えば効率良く出来るかってね」

 

 

「……チートかよ…

待て!なら視力は!?

あれは何なんだ!?」

 

 

「あぁ、あれ?あれは能力の副次効果

一応いつでも使えるけれど基本的には武器を持ってる時位しか本当の力は発揮しない

それに集中力使うからカロリー持ってかれるしあんな(・・・)時じゃないと連続しては無理」

 

 

説明を終えると再び食材を切り始め唖然としながらボソッと言う

 

 

「…………ほんと、良く叢雲達勝てたよな…」

 

 

 

「本当にね、私も負けるつもりは全く無かったんだけどね

結果的に私よりあいつらが上だったって事でしょ」

 

 

まるで他人事見たいに話すカナは切った食材を鍋に入れていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして二人で朝食を作り終えると他の深海棲艦達も集まり朝食を共にする

その中には昨日話していた夕張も含まれていた

 

 

「それじゃ食べますかー」

 

 

「ヲ腹空イター!」

 

 

「相変ワラズ美味シソウ!」

 

 

「本当にね、さてと食べるわよー」

 

 

「そんじゃいただきます!!」

 

 

「「「「「頂きます!!」」」」」

 

 

全員で挨拶を終えると食べ始め各々話しているとカナが佐渡へ話を切り出す

 

 

「佐渡、あの話なんだけど」

 

 

「うん?もしかしてうちで働くって話か?」

 

 

「えぇ、やっぱり断る」

 

 

「何でよカナ!あんた!」

 

 

「うるさいエア、私なりに考えたからこう言ってるの

…そこの緑髪の艦娘」

 

 

「……あ、え、わ、私!?」

 

 

いきなり夕張が呼ばれ困惑しているがカナは構わず続ける

 

 

「そうよ、この男佐渡は叢雲の提督なんだよな?」

 

 

「う、うん、そうだけど……」

 

 

「なら私は会うわけにはいかない」

 

 

「何でだ?叢雲なら話を通せば」

 

 

「あの艦娘は後悔してるからよ

私を殺した(撃沈した)事に」

 

 

カナの発言に納得した佐渡は力なく座り込むと深く溜め息をつく

 

 

「………やっぱりかぁ……」

 

 

「え?叢雲さんが?何で?」

 

 

夕張が疑問に思っていると佐渡が話を続ける

 

 

「…アイツな、敵を倒すことは出来るんだが相手から『奪う事』が出来ないんだよ」

 

 

「奪う事が出来ない?」

 

 

「そう、あの艦娘、叢雲は私からドレス島を奪う事を躊躇っていた

 

それはあの艦娘は奪われた事があるからでしょ?」

 

 

「…ハハハ、良く分かってるじゃねぇか

カナ」

 

 

「これでもEliteだからね

色々見てきた」

 

 

二人はお互いを見るとお茶を飲み干す

 

 

「この受けた恩はいつか返す

だが、私はここには居られない」

 

 

「……いや、やっぱり心配だ 

ここに居て欲しいカナ

 

なにもしなくて良い

絶対に俺がお前を守るから」

 

 

「ハッ、笑わせないでくれる人間が私を守る?

大層な事言うじゃない

それとも私と言うElite級の姫が必要なのかしら?」

 

 

「それは断じて違う!ならお前をどこか安全な所に送らせて欲しい!!」

 

 

「余計なお世話だ!私は一人で生きていく!!

もう誰かと共に生活なんて嫌なんだよ!!」

 

 

「カナあんたねぇ!!」

 

 

「エアは黙ってろ!!これは私だけの問題だ!!」

 

 

「ちょ、ちょっと姫様達!」

 

 

「カナさんも佐渡提督も落ち着いて!!」

 

 

三人が口論になっているとイーちゃんが廊下に出てしまい一人の艦娘を見付ける

 

 

「あ、イーちゃん!久しぶり!!!

ねぇ、皆を探してるんだけど知らない?」

 

 

「ワンワン!」

 

 

艦娘の服を噛み引っ張っていくと近くにいた艦娘にも声を掛ける

 

 

「ちょちょ!待ってよイーちゃん!

皆!司令官達こっちに居るって!!」

 

 

イーちゃんに引っ張られ食堂に到着すると中から口論が聞こえ慌てて扉を開く

 

 

「ちょっと!何言い争ってるの!?

イーちゃんが心配…し……て………」

 

 

「っ!?イ、イムヤ!?何でここに!?」

 

 

「あら、イムヤお帰り~

朝ごはん出来てるんだけど食べる?」

 

 

「………どうやらあんたが言ってたことは本当の様ね

 

『私の脚を奪った潜水艦』が居るってことは」

 

 

カナの姿を見たイムヤは少しずつ後退りをすると壁にぶつかりそのまま崩れ落ちる

 

 

「イムヤー?どうしたデース?何か見たの……で……す…………か………え?」

 

 

「そうよあんた何を見て…………は?」

 

 

その後ろから金剛と叢雲が現れると金剛は冷や汗を掻きながら呆然としており叢雲はカナを見て唖然とする

 

 

「な、な、な、な、な!!!!」

 

 

「あの時の諦めの悪い金剛型の長女か

成る程、お前もここだったのか

そして」

 

 

カナは叢雲をじっとみており呟く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「久しぶりだな 化け物 駆逐艦 叢雲」

 

 

「……えぇ、久しぶりね 化け物 姫 カナ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





次回

交渉

小笠原から離れようとするカナに病院から抜け出してきた叢雲達が現れる
そして叢雲は佐渡にある提案をする

フレッチャー堀りをしているのですが如何せん安定して勝てないですねぇ…
中々にキツイ()




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(カナ)艦娘(叢雲)

食事の場からここは変わり提督室

カナ、エア、佐渡と対面するように叢雲が座りそれ以外は艤装を構えながらカナを睨み付けていた

 

 

「………佐渡提督これはどういうことだ?」

 

 

「あー……えっと…な?とりあえずおまえ達は艤装を置いてこい?」

 

 

「出来るわけないでしょ!?相手はついこの間戦ってた姫なのよ!!」

 

 

「しかも!コイツはただの姫なんかじゃないデース!!

歴戦…いや!壊滅種なんデースよ!!

油断も隙もあったもんじゃないデース!!」

 

 

「当然でしょうね、これが普通よ

……で?何でお前は私を警戒しない?叢雲」

 

 

 

長門達が警戒する中、叢雲はただ一人艤装を身に付けておらずソファに座っている

 

 

「……別に警戒していない訳ではないわ

ただ、貴女がここに居て司令官や夕張を襲ってない時点で敵ではないと判断しただけ」

 

 

「お前を誘き寄せる為にと言ってもか?」

 

 

「…それなら私が島に到着する前に撃てば良い

違う?」

 

 

叢雲の問答にカナはハッ!と鼻で笑う

 

 

「良い洞察力、それでこそお前だよ叢雲」

 

 

「誉め言葉として受け取っておくわ」

 

 

「と言うことだお前ら艤装を置いてこい」

 

 

「だ、だが…アトミラール……」

 

 

「良いから、俺を信じろって」

 

 

佐渡の言葉に全員が顔を会わせると夕張が立ち上がり何人かの艤装を預かろうとする

 

 

「待て、私の艤装は持てないだろう

何人かはここに残り佐渡提督と共に居てくれ

……信じてないわけではない、一応の警戒だ」

 

 

長門がそう言うと長門、金剛、夕張、グラーフ、イムヤが出ていき

残りの古鷹、大井、叢雲が提督室に残る

 

 

「さてと、そんじゃ話をしよう」

 

 

「話をするも何も私は言っただろう

ここを出ていく、これ以上は居られない」

 

 

「駄目よ、あんたが一人で生きていけるとは思えないもの」

 

 

「お前には関係ないだろエア

別に部下でもないのだから」

 

 

「あるわよ!あんたねぇ、私はあんたを友人だと思ってるから!!」

 

 

「はいはい、そこストップ」

 

 

佐渡がヒートアップする二人を止めていると叢雲がカナに問い掛ける

 

 

「ねぇ、何でカナはここにいるの?

貴女あの時……間違いなく沈んだわよね?」

 

 

「そこは俺が説明するよ

実はなーーーー」

 

 

佐渡はここまでの経緯を説明すると大井は青ざめ古鷹も表情には出さないがこおばっている

だが叢雲だけは納得していた

 

 

「成る程ね、なら納得したわ

道理で海軍が慌ただしいわけね(・・・・・・・・・・・・・・・)

 

 

「待った、どういうことだ叢雲?」

 

 

叢雲が話そうとすると大井がその間を割って佐渡に話し出す

 

 

「それに関しては私から!実はあの時『白海』の強襲が最後にありましたよね?」

 

 

「あぁ、でもそれは叢雲が追い払ったって……」

 

 

「それがですね、その白海が太平洋で暴れまわってるんです」

 

 

「なんだって?」

 

 

その話を聞いて佐渡がカナを見ると深い溜め息を付いている

 

 

「……心当たりありそうだな」

 

 

「…バッチリね、ねぇその白海って海洋生物の群れよね?」

 

 

「え、えぇ…」

 

 

「…あの馬鹿……私の言い付けを守れって言ったのに……」

 

 

カナは額に手を当てながら深く溜め息をつき佐渡に元凶を説明する

 

 

「そいつは、私の部下である姫海王(ネプチューン)

まぁ王と言っても女王なんだけどね

恐らく私が負けたことを監視者に聞いて探してるのね……

全く…相変わらず心配性なんだから…」

 

 

「となるとカナをドレス島に帰さないと……」

 

 

「お馬鹿、それこそ駄目に決まってるでしょうが」

 

 

佐渡の発言にエアが遮ると首をかしげる

 

 

「は?何でだよ?その海王さんがカナを探しているならここに生きてるって見せてあげないと…」

 

 

「あんたねぇ、そもそも彼女はカナが生きてるって確信してるのよ

それをこちらからカナを引き渡すってことは」

 

 

「っ!そ、そうか!矛先がこっちに向けられる!!」

 

 

「そう言うことよ、だからと言ってこのままにするわけにもいかないでしょうね」

 

 

エアもその事に悩んでいるとカナが立ち上がり提督室を出ていこうとする

 

 

「カナ待て!お前どこにいくつもりだ!?」

 

 

「太平洋、私が行けば恐らく海王は止まる

安心してここの事は言わないし人間達に攻撃もさせない

借りは返す、そう言ったでしょ?」

 

 

「駄目よ!今貴女が出ていっても安全と言う保証は!!」

 

 

「無いでしょうね、下手したら殺されるかもね」

 

 

「だったら!!」

 

 

「うるさい!これしか方法が無いんだから私は行くの!!」

 

 

カナが出ていこうとするがその扉を叢雲が閉める

 

 

「む、叢雲!」

 

 

「……何のつもり?艦娘叢雲」

 

 

「待って、まだ他に方法はある」

 

 

「はぁ?あるわけないでしょ、あれは」

 

 

「私が倒す、海王を」

 

 

突然の叢雲の発言に辺りが静まり返ってしまい

それを聞いたカナが大きな笑い声を上げる

 

 

「アハハハハ!!!本気かお前!!

アレを?倒す?お前が!?」

 

 

「そうよ!あんたを倒せたんだからそれぐらい」

 

 

と言いかけた叢雲の胸ぐらをカナが片手で掴みあげるとそのまま本棚に叩き付ける

 

 

「叢雲!」

 

 

「お前!!」

 

 

「ちょっとカナ!!」

 

 

大井と古鷹が戦闘体制を取ろうとするが叢雲が手を伸ばしそれを止めさせるとカナは叢雲を睨み付ける

 

 

「何調子に乗ってやがるんだ艦娘

あの娘を舐めるなよ、海上と連携に関してはお前なんかより遥かに上だ

勝てるわけないだろう?」

 

 

「そんなのやってみたいと分からないじゃない

私達は不可能だった貴女を倒したのよ?ゼロでは無いはずよ」

 

 

「無理に決まってるでしょ、私一人に対してあれだけやって紛れで勝てた癖にあの軍勢に勝てるわけ無い」

 

 

お互いが睨み合っていると佐渡は溜め息をつき立ち上がると二人の頭を軽く殴る

 

 

「いた!何するのよ!」

 

 

「佐渡、お前!」

 

 

「とりあえず落ち着けお前達

カナ、どうしても俺達と居るのは嫌か?」

 

 

「嫌、私は始原を裏切れない」

 

 

「…そうか、分かった

だったら少しばかり援助はさせてくれ

食料と船、後簡易の艤装を作る」

 

 

「いらない、これ以上の施しは受けない」

 

 

「そう言わずにさ…せっかくここに流れ着いたんだ

少しばかり」

 

 

と佐渡がカナを宥めようとしていると叢雲が叫ぶ

 

 

「なら!!私と取引しましょう!!!」

 

 

 

その叫び声にカナと佐渡が驚き顔を向けると叢雲は驚きの取引内容を話し出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「貴女を!戦争が終わるまでこの鎮守府で雇いたい!!!

その代わり戦争が終わった暁には貴女にドレス島を明け渡す!!!」

 

 

「「「「「………はぁ?」」」」」

 

 

叢雲の内容にその場に居た全員が呆然としてしまう

 

 

 

 

 

 

 

 





次回

頼らない、頼れない


叢雲のとんでもない発言に全員が呆れる中一人その発言に興味を持つ者が居た
強すぎるが故に彼女は知らない

何かカナの話になりつつあると感じている作者ですはい()
でも実際はカナ七割の夕張三割と言う感じで……書いてます…よ?
決して夕張ちゃんを忘れてるわけではないよ?
ある章では彼女の話をやりますからね??



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(カナ)艦娘(叢雲) 二

叢雲の発言に全員が唖然としていると大井が声をあげる

 

 

「無理ですよ!叢雲!!

あの島は深海棲艦の最重要拠点!!

大本営が手放すとは思えない!!」

 

 

大井の発言に賛同するように古鷹やエアも発言していく

 

 

「そうよ!あの島を海軍は手放すわけがない!!

あの島を落とすためにあんた達どれほど苦労したことか!?」

 

 

「む、叢雲……ごめん私も無理だと思う

あの島を大元帥が手放すとは思えない……」

 

 

「いや!絶対私があの島の所有権を得る!!

そしてカナ!貴女にあの島を返すわ!!」

 

 

その発言にカナは無言で聞いており佐渡が叢雲がつっこむ

 

 

「いや、叢雲さんや?どうやってあの島の所有権を取るって言うのさ?

いくらこれから先何をしてもあれだけは難しいんじゃないか?」

 

 

「じゃ、じゃあ買い取るわ!!

島まるごと!」

 

 

「嫌、叢雲それこそ無理よ

恐らくだけどかなりの金額よ?」

 

 

「な、何とかするわよ!」

 

 

全員から反感を買っているのにも関わらず叢雲は頑なにドレス島をカナに返却しようとしていると

 

 

「……呆れた、不可能な事を約束するとはね」

 

 

「不可能じゃない!!!」

 

 

カナが溜め息混じりに言うと叢雲が睨みながら反論する

 

 

「この世に不可能なんて有りはしないのよ!!

どんなに絶望的な状況でも!

どんなに絶対的に不可能事でも!

私は乗り越え成し遂げてきた!だから今回もやってみせる!!

 

もし!出来なかったら私が海軍から奪って見せる!!

ドレス島を!!!」

 

 

「ちょっとあんた!?」

 

 

「む、叢雲!何を言って!!」

 

 

叢雲の瞳を見ていたカナはそれが本気であることが分かり佐渡にアイコンタクトをする

 

 

「…はいよ、じゃあ屋上に行きな

今日は天気が良い」

 

 

「悪いね、佐渡」

 

 

その瞬間カナは叢雲の首根っこを掴むと提督室の扉を開き出ていこうとする

 

 

「カ、カナ?」

 

 

「二人で話がしたい、来い」

 

 

「ちょっと!カナ!!」

 

 

「待ってください!それは!!」

 

 

古鷹達がそれを止めようするが

 

 

「全員、座ってろ」

 

 

佐渡はいつの間にか入れたお茶を飲みながら全員を止めると再びカナにアイコンタクトをされる

 

 

「じゃあ借りるよ、あんたのエース」

 

 

「あぁ、お前達しか分からない話があるんだろ

好きに話してな」

 

 

そう言うとカナは叢雲を捕まえたまま出ていきエア達が佐渡に詰め寄る

 

 

「ちょっと佐渡!あんた何してるのよ!!」

 

 

「そうですよ!提督!あの二人は……」

 

 

「安心しろってカナは叢雲に手を上げねぇよ

今はな」

 

 

「……提督、何か知っているのですか?」

 

 

佐渡はお茶を飲み干すと一息付き

 

 

「嫌?何にも知らんよ?」

 

 

「あんたねぇ!?」

 

 

「でもまぁ」

 

 

エアが佐渡を掴みかかろうとするが大井がそれを止め佐渡は呟く

 

 

「……カナの様子を見るに、アイツは叢雲を認めている

叢雲の言葉を信じているからな

今回は叢雲に一任するってだけさ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

叢雲の首根っこを掴みながら屋上の扉を開けるとその場にカナは叢雲を下ろし歩き出す

 

 

「悪かった」

 

 

「別に大丈夫よ

で、何で二人きりになりたかったの?」

 

 

カナは屋上から海の景色を見ながら大きく深呼吸をする

 

 

「………お前達が私の島向かってきた時私は『またか』と思った」

 

 

そう呟くと叢雲の側に向かってあるいていく

 

 

「…私はあの島を始原に任され向かってきた艦娘達や敵を撃退することを任されてきた

今まで艦娘共を一度として近付けなかった

あらゆる手を使いお前達を追い詰めた

それが私の任務であり役割だったから」

 

 

「…えぇ、貴女の力は凄まじい物があった

まさか島すら見えてないのに撃たれるとは思わなかったわ」

 

 

「私の砲撃は深海棲艦達の中で一番火力がある

どんな敵もどんな奴も私の砲撃で恐れなかったものは居ない

……でもお前は違った」

 

 

カナは振り返ると叢雲を指差す

 

 

「お前だけは違ったんだ叢雲

教えてくれ、何故だ、何故お前はあの時戦えた

撃ち抜かれ、破壊され、ボロボロになって、死にかけてでもお前は戦った

仲間を勇気づけ、自分だけでも立ち上がって見せた

それは何故だ?私には理解できない」

 

 

カナの質問に叢雲は軽く溜め息をつくと当たり前の様に答える

 

 

「それが私だからよ

どんな絶望にも負けず、戦い続ける

『死ななければ敗けじゃない』のよ」

 

 

叢雲の返答にカナは深く深く溜め息をつく    

 

 

「あー……今からオフで話す

お前なら…良いわ」

 

 

「?」

 

 

カナの発言に意味が分からずに首をかしげていると座り込み叢雲を手招きする

 

 

「嫌さ、正直私って強いじゃない?」

 

 

「え、えぇまぁね

とんでもないわよね?あんた」

 

 

「だからさ、誰にも頼れないんだよね

私は強くなくちゃいけない、そう、誰もが私の力を恐れ欲しがる

だから私は始原に従った

あの娘は私を恐れなかったから」

 

 

「…まさかあんたがこの鎮守府に居たくないってのは…」

 

 

「弱さを見せたくないから他人に

椿と始原位だしね、私の弱さを知ってるの」

 

 

「……そう言うこと…でも私は?」

 

 

「決まってるでしょ?お前は私を倒した

なら別に弱さ見せても変わらないでしょ?」

 

 

「…………はぁ…」

 

 

叢雲は突然の変わりように唖然しながらカナの難儀な性格に溜め息をつくと肩を掴まる

 

 

「さーてと?お前には大きな借りがあるわーよね?」

 

 

「な、何の……」

 

 

「よくも私のアブソリュートと島を奪ってくれたわよね?」

 

 

「う……な、何が目的…?」

 

 

叢雲が警戒しているとカナは目を輝かせた様に叢雲の肩を掴む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ!私に人間の世界を教えて!!!!」

 

 

「……………はぁ?」

 

 

 

 

 

 





次回

恐怖と好奇心

誰も居ない二人だけの屋上でカナは素の姿を見せながら叢雲と会話する
姫ではなく一人の女性として


そろそろイベントですなぁ
さてさて、大型イベントやらはどうなってるのやら…




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(カナ)艦娘(叢雲) 三

突然の発言に叢雲が驚いているとカナが続ける

 

 

「嫌ね、椿と始原からいつも外の世界……人間達の世界を聞いていてね少しばかり興味を持ってたのよ

エアから聞くのは釈だし、直接行くのは恐いし?だからお前に聞きたいの」

 

 

「い、嫌待ってくれる?あんたが恐い??

何言って…」

 

 

叢雲が唖然としているとカナに肩を再び掴まれる

 

 

「だ、だって!恐いじゃない!!

私!知ってる事と言えば!ドレス島の事、深海棲艦の事位、武器の扱い方位しか知らないのよ!?

未知よ!未知!!人間社会とか、食べ物とか、どんな風景とか知らないのよ!!!

どんな兵器があるとか!私が倒せないものがあったら恐いじゃない!?

それに誘拐?とか!拷問?とかも監禁とか実験とかあるんでしょ!?

恐い恐い!!」

 

 

叢雲は直接カナと対峙したからこそ分かるのだがあの鬼気迫る姿と化け物染みた力、戦闘力を誇る壊滅種の姫がそんな事に恐れを抱いていることに少しの親近感が湧いてしまい笑みが溢れる

 

 

「何を馬鹿にしてるのかしらぁ?」

 

 

その笑みを見られカナは馬鹿にされていると勘違いし頬をつねる

 

 

「痛い痛い!違う違う!

やっぱりあんたも私達と変わらないなと思ってね」

 

 

「む、それは不服ね

私はお前達強いんだぞ?」

 

 

「そうじゃなくてよ

あんたも私と同じで恐いものがあるのねと思ってね」

 

 

「……お前にもあるの?恐いもの?」

 

 

 

カナの質問に叢雲は頷くと側に座る

 

 

「あるわよ、いくらでも

強くても恐いものは無くならないものだもの」

 

 

「分かるわその気持ち

力ではどうにも出来ないのよねぇ」

 

 

「そうそう、全く全部解決出来れば良いのにねぇ」

 

 

「その通りね全く

さてと、それじゃあんたに世界を教えてもらおうかしら?」

 

 

「良いわよ、何から聞きたい?」

 

 

「そうねー……それじゃ遊園地とかーーー」

 

 

 

それからカナは叢雲から日本や世界にある食べ物や景色や楽しみや遊び

様々な事をカナに話していく

その話を聞きながらカナは楽しそうに質問したり聞き入っていた

 

 

「へぇ……人間って何でも作るのね?

それに遊園…地?だっけかそれも面白そうね」

 

 

「楽しいわよ、お金は掛かるけどね」

 

 

そんな雑談をしている最中カナは太平洋のある方角を見つめる

 

 

「……始原もそれを知ったからなのかな…」

 

 

「………ねぇ、カナ

私に貴女を託してくれない?」

 

 

「は?お前何を言ってるの?」

 

 

突然の叢雲から言われる言葉に困惑していると立ち上がり手を差し出す

 

 

「私が……嫌、私達(小笠原)がこの戦争を終わらせる

だからその時までここに居て欲しいの」

 

 

「……それは出来ない、私は深海側で姫だ

お前達に従うことは」

 

 

「違う、私は深海の姫である貴女(飛行場姫)ではなく

今、ここに生きている貴女(カナ)に居て欲しいの

 

あの時飛行場姫としての貴女は役目を終えた

私に倒され撃沈し敗北した」

 

 

「ッ!!……」

 

 

現実を言われると苦虫を噛み潰したような顔をするカナに叢雲は無理矢理手を取る

 

 

「貴女は確かに強い姫よ、でもそれでも貴女は負けてしまった

私も……敗北は知ってる

だからこそ、貴女はもう姫としての役割を背負わなくても良いんじゃない?」

 

 

「……どういう意味?」

 

 

「貴女はもう姫じゃない

姫じゃないなら貴女は深海棲艦じゃない

それならここに居ても良いわよね?」

 

 

「……そんなの」

 

 

「屁理屈じゃないわ、私は貴女を倒した

嫌、倒してしまった

貴女がずっと守っていた物を奪って

 

 

だから責任を果たしたいの」

 

 

そう言うと叢雲はカナを引っ張りあげ真っ直ぐ瞳を見ながら話す

 

 

 

「貴女の全てを私に……私達に預けてほしい

必ずこの戦争を終わらせドレス島を手にいれ貴女に返却する

 

そして貴女が毎日笑って楽しく暮らせる様にする

 

だから私を信じて」

 

 

「……………無理だ、私は」

 

 

「無理じゃない、私の実力を貴女は知ってるでしょ?

必ずやり遂げて見せる、貴女を幸せにしてみせる

どんな奴からも絶対に守る

 

だから、だから、私を信じて

もし裏切られたりしたら貴女にこの命を差し出すわ

 

 

それが私が貴女を倒した責任よ」

 

 

 

叢雲の真っ直ぐ気持ちと瞳を直視出来ずカナは目を反らそうとするが手に力を込める

 

 

「む、無理!無理無理!!!」

 

 

「お願いだから!!」

 

 

「だ、だって私!守られた事とか無いし!お前達人間を信じるなんて出来るわけ無いし!

そもそも!私の存在価値なんて力と姫であることぐらいしか」

 

 

「そんなことない!私は貴女と言う人が必要なの!!!

お願い!!」

 

 

叢雲の純粋な目を見ているとカナは他の深海棲艦達に向けられていた目を思い出す

 

 

「わ、私は!陸上形最強の姫なのよ!

なのに!何であんた恐れないのよ!!恐怖しないのよ!怯えないのよ!

そんな目で私を見ないでよ!!」

 

 

「私は貴女を恐れない!だってあの時貴女は泣いてたから!!!!」

 

 

「っ!!!」

 

 

カナは逃げようとするがそれを捕まえる

 

 

「貴女は化物何かじゃない!!化物は泣かない!

苦しまない!

だから!貴女は違う!!!」

 

 

叢雲が力の限り抱き締めるとカナはその身体を抱き締めようとするが頭を降り放そうとするが

 

 

「私が!私が何からも守って見せる!!

全てを捨てでも!!だから!一緒に居て欲しいの!!

お願い!カナ!!」

 

 

その言葉にカナは聞き覚えがあった

その言葉を懐かしく思った

たった一人だけそう言った少女が

カナに名前を与えたか弱い少女に

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ねぇ、飛行場姫さん

私は貴女がどんなに強くても弱くても構わない

私と一緒に居て欲しいの

貴女を守って見せるから弱い私が力の限りね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

………始原(ピース)……全く……こいつらは…

本当に私の心を掻き乱すわね…

 

 

必死に頼んでいる叢雲の頭を撫でると深くため息を付く

 

 

「……分かった」

 

 

「……え?」

 

 

「だから、分かったわ

ここに居る、小笠原に居させて貰おうかな」

 

 

「…良いの?カナあんた……」

 

 

「しつこい、これ以上言うなら気持ちを切り替えようかしら?」 

 

 

「ほ、本当なのね!良し!良し!」

 

 

叢雲はカナから離れるとガッツポーズを取っておりその姿を見たカナは深くため息を付く

 

(……似てるなぁ…本当にコイツは

あのお人好しのお馬鹿(ピース)に)

 

 

「じゃ、じゃあ!行きましょうか!カナ!!

皆にその事話さないと!!」

 

 

「ちょ、あんまり引っ張らないでくれる!?」

 

 

渋々、小笠原に残ることを決意したカナを引っ張る叢雲の姿はまるではしゃぐ少女の様な姿をしておりその姿をみて更にため息を吐く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(あーあ、始原を裏切っちゃうけど……

長い旅行とでも言って誤魔化そうかな

……やっぱり駄目な気もするんだけどなぁ…)

 

 

少しの罪悪感に悩まされながら彼女は歩んでいく

 

 

 

 

 

 

 

 





次回

決意

渋々だがカナが小笠原に残る意思表示をする
そして叢雲はカナとの戦いにて自らの決意を全員に話す

お久しぶりです……
いやー……今回は仕事ではなくてですね?
普通にゲームにはまってました(殴
すいません!今度から早めに投稿しますので!!




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決意

叢雲とカナは再び提督室に戻ると全員が集まっており手を繋いでる姿を見て佐渡が察する

 

 

「…どうやら話しは終わったみたいだな」

 

 

「えぇ、ごめんなさい時間を取らせたわね」

 

 

「カナ、あんたやっぱり……」

 

 

「…………」

 

 

カナが黙っていると叢雲が胸を張るように全員に話し出す

 

 

「カナは今日からうち(小笠原)の一員よ!!!」

 

 

「「「「「………は?」」」」」

 

 

「何?悪いの?」

 

 

叢雲の発言に全員がポカンと口を開けていると佐渡が腹を抱えて笑う

 

 

「アハハ!やっぱり叢雲に押し負けたのか!お前!!」

 

 

「仕方無いでしょ、あそこまで言われたら流石の私も断れないわよ

と言うかお前もしかして分かってたのか!?」

 

 

「決まってるだろ!だって叢雲は俺の相棒何だぜ?」

 

 

「いやいやいや!!!ちょっと待ってくだサーイ!!」

 

 

「ひ、飛行場姫が小笠原に!?」

 

 

「ちょ、ちょ!姫クラスが二人もうちに居るって!?」

 

 

「て、提督!貴方正気ですか!?」

 

 

「うん?至って正気だぜ?大井っち」

 

 

「わぁ……小笠原って本当に誰も拒まないんだね……

流石佐渡提督…」

 

 

「へぇ、…へぇ!あんたがここの一員ねぇ!

どういう気紛れよ?ねぇ!」

 

 

「何だ、悪いのか?」

 

 

「そんな訳無いじゃない!大歓迎よ!!」

 

 

叢雲の発言に大混乱している者達に長門とグラーフはため息を付く

 

 

「全く、佐渡提督は壊滅種の姫すら恐くはないのか……」

 

 

「まぁ、それがアトミラールだ

来るものは誰として拒まないからな

例えそれが、どんなに強い敵であろうと」

 

 

半分諦めては居るがカナが小笠原に入ることに賛成しておりカナも少し嬉しそうにしていると叢雲が全員に話し出す

 

 

「そして皆!聞いてほしい事があるの!」

 

 

叢雲の言葉に古鷹達が振り返ると静かに話し出す

 

 

「私達は、今回の戦いに勝利した

皆のおかげよ

私一人の力では到底飛行場姫、カナを倒せなかった

むしろカナの元に到達することすら出来なかった

それは感謝してもしきれないわ」

 

 

「そんなことないデースよ!」

 

 

「うん!カナさんを倒したのは間違いなく叢雲だよ?」

 

 

「それでも、私は皆が居てくれたから、励ましてくれたから、私に繋いでくれたから、あの時立ち上がれた

改めてお礼を言わせて

本当にありがとう!!!」

 

 

頭を下げると長門がクスッと笑う

 

 

「繋いだのはここの者達だけではないだろう叢雲」

 

 

「分かってるわ、今度休暇を貰って全鎮守府にお礼を言いに行く

 

そして、私は今回の戦いで決めたことがあるの」

 

 

話を聞いていると佐渡は先を読んだのか微笑み

その姿を見た古鷹も理解したのか微笑む

 

 

「何を決めたのよ?叢雲」

 

 

 

「それはね」

 

 

大きく深呼吸をすると叢雲は全員に自らの決意を話す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私は!!全深海棲艦と和解しこの戦争を終わらせる!!!

 

私は!もう奪わない!!カナの様に!全てを奪い勝つのではなく!!

お互いに生きる道を見つける!!!」

 

 

 

「「「「「………はぁ!?!?」」」」」

 

 

 

 

 

 

 





次回

茨の道


叢雲が話したのは戦争を終結させることそして大きく出来た深海側との溝を埋め和解を目指すと言うもの
それがどれほどきつく険しい物かまだ彼女は知らない


一日、一投稿がんばるぞい!
そう言えばイベント来ますねぇ……
10人の艦娘…お迎えしなくては←






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歩みを辞めない

叢雲の発言にエアは怪訝そうな顔をしたがそれよりも先に長門が叢雲の肩を掴み夕張が詰め寄る

 

 

「叢雲!それは不可能だ!

大本営の事件を知っているだろう!?

向こうは完全に我々を敵として認識している!!

和解なんて……出来るわけない!!」

 

 

「そうだよ叢雲!この戦争が始まる前なら……もしかしたらだけど…あの事件で確実にそれは不可能になったんだよ!!

深海側のほとんど…嫌、姫クラスは私達艦娘、そして人間を敵視している!和解なんて出来ない!!」

 

 

「それでも!私は!もう彼女達から何かを奪いたいとは思えない!!!

別の道があるはず!!!」

 

 

「だから!そんなものは……無いんだ…!

私はそれを知っている…見ているんだ!奴等は確実にこちらを殺しに来る!!」

 

 

「ま、まぁまぁ落ち着くデース二人とも……」

 

 

「そうだよ…もしかしたらあるかもしれないんだよ?」

 

 

叢雲達が口論になってしまい金剛とイムヤが仲裁に入ろうとするが

 

 

「八万人」

 

 

「………え?」

 

 

「大井…さん?」

 

 

いきなり大井がその話を割るように話し出し叢雲に詰め寄る

 

 

「この数が、何だか分かる?叢雲」

 

 

「……嫌、分からないけど…」

 

 

「今年一年で深海棲艦に殺された人間の数だよ」

 

 

「っ!!!」

 

 

大井はそう言うとノートパソコンでそのデータを見せるといつの間にか付けていた眼鏡を直しながら話す

 

 

「と言っても、ほとんどの被害に会ってるのは他の国への輸出、輸入船が誤って深海棲艦達の縄張りとされている海域に侵入してしまったからだけど艦娘が対応してもこれだけの被害を出している

詳しくは分からないけれど行方不明者で言えばその倍以上は居る

 

叢雲、これを見ても貴女は和解を求めるの?

私達の鎮守府は他の鎮守府と比べて今回の事によって大きく変わってしまった

貴女は強い、そしてその強さには責任が生じるの

貴女が和解を求めると言うことはそれらの命を踏みにじるのよ

深海側の殺戮を貴女が認めることになるの

 

 

 

 

叢雲、まだ貴女は和解を目指すの?

深海側を認めると言うことよ?」

 

 

大井の言葉に全員が黙り混んでいると叢雲がその静寂を打ち破るように話し出す

 

 

「深海側の殺戮を認めるわけではないわ

それでも彼女達にも何らかの理由があるはずよ!

ならそれを突き止めて私はお互いに歩むべき道を探す!!!

絶対に見付けて見せる!!!」

 

 

叢雲の発言に大井は微笑むとパソコンを閉じる

 

 

「ま、そうよね叢雲がこんな言葉で考え直すとは思えないもの

でも、これは事実だからね」

 

 

その言葉に頷くと全員の目は二人の姫へと向けられる

 

 

「むら」

 

 

とエアが言おうとするがカナがそれを止め先に話し出す

 

 

「…先に言っておく叢雲

私はその話には同意できない

お前達は私の島を既に奪っている、この事実は変えられない、変わらない

そしてその歩もうとする道は誰もが進もうとし崩れていった道だ

 

お前だけで行けるとは私は到底思えない

だから諦めて奪え

深海側からこの海を、空を、世界を」

 

 

「そうね、私は貴女の島を奪い、幸せを自由を奪った

その事は認めるわ、謝罪もする

でも私は貴女に感謝してる、貴女が…貴女の涙が思い出させてくれたから奪われる悲しみを苦しみを……絶望を

 

だから諦めない

私は奪いたくない、分け合いたい

この海を、空を、世界を」

 

 

二人の睨み合いが続くがカナは微笑み頭を撫でる

 

 

「ま、お前が決めたなら口出しはしないさ

ただその道は辛く険しいぞ」

 

 

「平坦で安全な道は嫌いなのよ」

 

 

「ふん、言うじゃない

あの時見たいにさ

 

ま、応援はしてあげる、精々頑張りなさい」

 

 

カナがそう言うとエアの肩を叩く

 

 

「………ねぇ、叢雲本気?私達(深海側)との和解って」

 

 

 

「えぇ、本気よ」

 

 

「…そう、なら言ってあげる

私はカナより他の深海提督達と関わりがあるから言えるけど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

不可能よ、私達(深海側)貴方達(人間側)の和解なんて

絶対に」

 

 

エアが冷たく言い放つとグラーフが反論する

 

 

「エア!そんなこと!!」

 

 

「あるのよ、私は知ってる

アイツらを(深海提督達を)

アイツらは人間に捨てられた存在、そして人間を怨み、妬み、絶滅させようとしている

姫も同じ、私見たいなイレギュラーは居るかもしれない

でも私以外はそうじゃない、破壊と殺戮を好み、艦娘と人間を殺そうとする

和解なんて出来るわけがない」

 

 

「それでも!出来るかもしれないでしょ!?

だって!」

 

 

「私と和解できたから?」

 

 

「そうよ!」

 

 

「……叢雲、勘違いしてない?」

 

 

「どういうこと?」

 

 

 

「…私がいつ仲間になった(・・・・・・)なんて言ったかしら?」

 

 

「……え…」

 

 

エアはそう言うと叢雲の首筋に自らの手を当てる

だがその手は鋭く鋭利な爪様に変わっており少しだけ撫で切れ込みを入れる

 

 

「エア!!!」

 

 

「辞めろ!お前達!!」

 

 

叢雲の危険を感じ取った何人かが動こうとするが佐渡が静止する

 

 

「………エア、貴女……」

 

 

「正直、私はお前を始末するべきだと思ってる

カナを倒したとき確信したわ

お前はいつか私に到達すると(・・・・・・・)

 

 

二人が無言になっておりグラーフ達が固まっていると叢雲がエアの鋭い手を力強く掴む

 

 

「……何のつもり、叢雲」

 

 

「…良いわ、やりなさい

貴女に殺されても私は構わない」

 

 

「…貴女、本気でそんなこと言ってるの?

それがどれだけの損失になるか」

 

 

「そんなの知らない

ただ、私は信じてほしいのエア

必ず、必ず道を切り開いて見せるから」

 

 

その言葉にエアの気持ちは複雑になっていた

一人の少女が辿った結末を知っていたから

そう言う事をする者達の結末を知っていたから

 

 

 

「無理よ、貴女には出来ない

諦めなさい

人間も深海棲艦もそれを望んでいない」

 

 

エアの言葉に叢雲は声を荒げながら答える

 

 

「私は!望んでる!!

私は!!貴女達と共に笑って!楽しくこの世界を生きていきたいの!!!」

 

 

「……茨の道よ、貴女の歩む道は」

 

 

「挑む所よ!」

 

 

「……はぁ、全く

分かったわよ!好きにしなさい!」

 

 

叢雲の真っ直ぐな気持ちに折れたのかエアはため息を混じりに言うと再び全員に言う

 

 

「でも、私一人ではこの道を進めない……だから!!」

 

 

叢雲が全員に頭を下げようとするとその肩を古鷹が叩く

 

 

「古鷹……?」

 

 

「ふふ、そこからは言わなくても分かるよ

私も協力するよ、その願いに歩む道に」

 

 

「ありがとう…」

 

 

「あら、誰が古鷹さんだけだって?」

 

 

古鷹に続けて大井が微笑みながら叢雲の肩を叩く

 

 

「雷巡は不要かしら?」

 

 

「そんなことあるわけないでしょ!」

 

 

大井の手を取り話していると後ろから突然金剛が叢雲に抱き付く

 

 

「私も混ぜてほしいデース!

それとも、不幸な高速戦艦は解体ですか?」

 

 

「貴女が不幸?何寝惚けてるのよ!全く!!」

 

 

金剛と叢雲が笑っているとイムヤとイーちゃんが叢雲の頭を触る

 

 

「装甲も武装無い潜水艦は要りませんかー?ふふ!」

 

 

「ワン!」

 

 

「何言ってるのよ!あんたのサポート本当に最高何だから!!!

欲しいわよ!居ないと困るわ!」

 

 

二人を抱き締めるとその隣からグラーフに肩を叩かれる

 

 

「あまり戦力にはならない空母だが、それでも良いか?」

 

 

「何馬鹿な事言ってるのよ、あの飛行場姫から制空権奪った癖に!!」

 

 

グラーフの肩を叩き返すとその前に長門が立ち塞がる

 

 

「……お前の行く道は私も目指したことがある

だが、断念した」

 

 

「…そうね、貴女は地獄を見た」

 

 

「…でも、やはりここで…皆を見ていて思う

私は!お前の目指すべき道に行きたいと!!!

だから、私も連れてってほしい!叢雲!!」

 

 

「…はは、あの時は私の事敵視してた癖にー?」

 

 

「そ、それは……その…すまなかった…」

 

 

「冗談よ、悪かったわ!

貴女に来てもらえれば千人力よ!!!正義の戦艦!!」

 

 

長門と拳を合わせるとその少し離れた所に居た夕張に向かって歩いていく

 

 

「夕張は、どうするの?」

 

 

「…行きたい、でも私は…皆と一緒に戦うことは出来ないから…」

 

 

「あら?いつも戦ってくれてるじゃない?」

 

 

「へ?」

 

 

夕張の手を取ってその手を撫でながら話していく

 

 

「貴女は、いつも私達の為に艤装のメンテナンスをしてくれている

それがどれ程凄いことか…私達にはそれが出来ない

だから私は貴女に一緒に来てほしい」

 

 

「叢雲…さん……」

 

 

「ね、夕張一緒に行きましょう!貴女は私が守るから!!」

 

 

「……うん!お願いします!!

叢雲さん!」

 

 

「あ、さん付けは禁止よ

私、そう言うの苦手なのよ」

 

 

小笠原の艦娘達が全員同じ道を歩むと決めその姿を佐渡は静かに眺めていた

 

 

(……仲間……か…)

 

 

叢雲達が楽しそうに話していると風景を見ながら佐渡はある光景を思い出す

この鎮守府に、海軍に来る前の光景を

 

 

「ちょっと司令官?何ぼーとしてるのよ?」

 

 

 

「ん?別に何でもねぇよ」

 

 

そう言うと佐渡は立ち上がり全員に向けて話し出す

 

 

「お前達の事はよーく分かった!!

お前達の進む道は険しく、辛く、苦しい道なりだろう!!

だが俺はお前達なら出来ると思ってる!!!

まぁ、提督としてのサポートは精一杯してみせるから安心しろ!!」

 

 

「ま、あんたのサポートなんて大したことないと思うけどね」

 

 

「おいこらエア、今格好付けてんだから水差すな」

 

 

「あっらぁ?違ったかーしーらー?

深海棲艦にしか欲情しない変態さーん?」

 

 

「おま!ちょ!それは!!!!」

 

 

エアの発言に一気な場の空気がピリピリしたことを感じ取った佐渡が叢雲達の方角を見ると金剛、大井、グラーフ、イムヤが怖い顔をしていた

 

 

「ほほーう?てーいとくー?どーう言う意味デースかぁ?」

 

 

「貴方……エアに何をしたんですか?」

 

 

「アトミラール……ちょっと話があるんだが?」

 

 

「しーれーいーかーんー?」

 

 

「ま、待て待て!俺は何にもしてないから!?」

 

 

佐渡が必死に弁明する中エアが更に四人を焚き付ける

 

 

「エアさんのおっぱいとふともも最高ですグヘヘヘヘ

だっけ?」

 

 

「エア貴様ぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

「「「「提督!!!(司令官!!!)(アトミラール!!!)」」」」

 

 

その言葉を皮切りに佐渡が全速力で提督室から脱出すると後ろから四人が追い掛けていく

 

 

「ちょっとエア……」

 

 

「てへ!」

 

 

「お前なぁ……」

 

 

「アハハ……提督頑張ってください……」

 

 

「…仕方ない、助け船を出してやるか…」

 

 

「私も行きます、佐渡提督には何かと恩売り付けておきたいし?」

 

 

渋々長門もその後ろを追い掛けていくと夕張も出ていってしまい提督室には四人が残される

 

 

「カナさん、これからよろしくお願い致しますね!」

 

 

「……う、うん…よろしく」

 

 

「では!この鎮守府を紹介しますので一緒に行きましょ!」

 

 

他の艦娘達より一足早くカナとの挨拶を済ませ提督室から出ていくとエアが叢雲の肩を掴む

 

 

「……エア?」

 

 

「さっきは悪かったわ

ごめん

でも貴女が歩もうとする道はかなり険しいわよ

多くの障害と弊害がある

……今深海側と人間側には大きな溝がある

貴女はそれを埋めようとしている

誰もが考え誰も出来なかったことよ」

 

 

エアが何時にもなく真剣であり叢雲は聞き入ってしまう

 

 

「…諦めてほしいのは本音よ

いくら鎮守府全体がそれをやろうとしても出来ないと私は感じてしまう

それほど大きな溝なの

 

 

それでも本当にやるの?」

 

 

エアの問い掛けに叢雲は即答する

 

 

「やるわ、だからこそ私は強くなる

この手に収まりきらないほどの物を助け、救う為に

歩みは止めない、どんな事になってでも」

 

 

叢雲の回答を聞いたエアは叢雲を優しく抱き締める頭を撫でる

 

 

「………エア?」

 

 

「…ごめん、少しだけこうさせて……

お願い……」

 

 

エアが何を考えているの分からずに叢雲は身体を預けていると不意に変な感覚に襲われる

それは彼女が深海棲艦と言うよりは人間や艦娘の肌の感覚に近く冷たくないということに

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今度こそ……守って見せるわ…

始原の思いを継ぐ貴女を」

 

 

そしてエアは小さく呟く

叢雲に聞こえないように

 

 

 

 

 

 

     砕かれたプライド  飛行場姫カナ

           と壊れた兵器  夕張

 

                 end..........

 

 

 

             

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『不可能、そう不可能なのだ

お前にはな、叢雲……

我が居る限りなぁ』

 

 

 

      To be continued………

 

 

 





次回新章!と言うの名の幕間話~

栄光ある艦娘達と温泉に行こう!

次回から幕間でのオフ話になります
その後待望?のお話をやりますね!

ちょっと変な終わり方になってしまいましたがちょっとこれには訳があるので仕方無し()

明日はちょっとお休み~
追加された二人を書かなくては←





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第十二章 パーティーと温泉と各々の記憶
見当違い


夕張とカナの加入から三日後のある日一本の電話が提督室で雑務をしている時に届く

 

 

「パーティー……ですか?」

 

 

『はい!東雲大元帥が今回の功績を称え参加した鎮守府だけでのパーティーを開こうと仰っておりまして

是非とも今回の勝因となった小笠原に参加してほしいと思いまして』

 

 

「はぁ、それって他の関係者とかも参加するんですよね?

だったらうちは………」

 

 

『いえ!今回だけは特別に作戦に参加した艦娘と提督のみで執り行うらしいんですよ!

どうですか?佐渡提督?』

 

 

「……一応聞いておきます、それって拒否権あります?」

 

 

『多分無いですね』

 

 

「アハハ……デスヨネー

て言うか!それなら何で聞いてきたんですか!?大淀さんんん!!!」

 

 

『建前って大切じゃないですか?』

 

 

「言うようになりましたねぇ、このこの」

 

 

『誉め言葉として受け取っておきます、では!日程は後日お伝えしますね!』

 

 

そう通話が終わると佐渡は深くため息を付き二人の秘書艦に心配される

 

 

「……また大本営の無茶ぶりですか?」

 

 

「アトミラールも大変だな、本当に」

 

 

「ん?あぁ、違う違う今晩全員揃ったときに話すよ」

 

 

デスクワークをしながらそう話すと提督室でくつろぐエアが茶化してくる

 

 

「あんた達、あの戦いで一番目立ったからねぇ

ま!あんたの負担が増えたのは楽しいから良いんだけどね!」

 

 

「エアこのやろう、お前晩飯にワサビ入れるぞ」

 

 

「あんたのー……鎮守府……大変…そうねぇ……」

 

 

「誰のせいだと思ってるカナ?」

 

 

エアの反対側でオフモードになっているカナが少女漫画を読んでおりポテチ片手にのんびりとしており服もだらけている

 

 

「と言うか、カナさんやお前オフでものんびりし過ぎじゃないか?」

 

 

「仕方ないー……じゃない……私ー……あの戦いで…死力使い果たし……たん…だもん……」

 

 

歴戦種、改め壊滅種飛行場姫、カナ

大本営の大型作戦ドレス島奪還作戦にて対峙した最強クラスの姫級であり何度も叢雲達を追い詰めた最強の個体

実力は誰もが見て化け物と呼ぶに相応しくその戦闘映像を見ただけで新人が提督になるのを諦めるほどなのだが……

 

 

「……なぁ大井さんや、グラーフさんや、これが本当にあの壊滅種の姫なのか?」

 

 

「……すいません、提督

それは私もここ数日全く同じ事思ってました」

 

 

「……あの時の気迫を全く感じられない…な…

間違いないとは思うのだが…」

 

 

ここ数日、カナは長期間のオフモードに入っており他の艦娘に助けてもらってたりとあの時の気迫は全く感じられていない

 

 

「戦いがー……無い時は……いつも…こんな…感じ……よー……」

 

 

ぐったりとしているカナを見ていると何故か頭が痛くなっている大井を横目に佐渡がパソコンを操作していると突然提督室の扉が開く

 

 

「へーい!提督ー!

ティータイムにしましょー!!!」

 

 

「お?そんな時間か、二人とも少し休憩しよう」

 

 

「そうですね、ちょうどゆっくりしたかったし」

 

 

「だな、珈琲を入れよう」

 

 

飛行場姫戦後の二人を迎え入れた小笠原は一日平和でありゆっくりと時間が流れていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「と言うことで、今度パーティーを開くらしいんだ

因みに全員参加だ」

 

 

そして時は流れ夜になり全員が食卓に着き食事を取っていた

 

 

「へぇ、粋な事するじゃないあのクソ野郎」

 

 

「ちょっと叢雲!……でも珍しいですね、あの人がそんなことするとは思わないですからね…」

 

 

二人が今回の東雲の行動に驚いていると大井とグラーフがその理由を説明する

 

 

「まぁ、確かにこれくらいはあっても良いんじゃないですか?

何せ今回の事で深海側に大打撃を与えたんですから」

 

 

「歴戦…いや、壊滅種の姫を倒したんだ

太平洋の制海権は奪えたも同じだ」

 

 

二人が話し終わると長門が突然立ち上がり携帯を取り出す

 

 

「ん、どした長門?」

 

 

「いやすまない、唐澤さんからだ

…珍しいなこんな時間に」

 

 

「お、愛しのダーリンからか」

 

 

「辞めてくれ、まだ違う」

 

 

「まだ?今、まだって言ったデース!?」

 

 

「もしかして付き合ってるの!?」

 

 

「へぇ、やるじゃないの長門」

 

 

「もうお付き合いしてたんですね!流石長門さん!!」

 

 

「待て!付き合ってないし、そんな予定はない!!」

 

 

長門は必死に否定し騒がしくなる食卓の扉が突然開く

 

 

「ごめんなさい!遅れました!!!」

 

 

「遅いぞー夕張ちゃんー?」

 

 

「いやーごめんごめん!回路がもう少しって所だったからさ

お、今日も美味しそう」

 

 

夕張が席に付くとそれと入れ代わる様に長門が電話しながら外に退出していく

 

 

「そう言えば、夕張ちゃんも参加何だっけか?」

 

 

「はんのはなしでひゅか?(何の話しですか?)」

 

 

「夕張さん、口に物を入れながら話さない」

 

 

「あ、ごめんなさい」

 

 

夕張は口に残っていた食べ物を一気に飲み込むと話を戻す

 

 

「で、何の話ですか?」

 

 

「あぁ、実はさ東雲大元帥がパーティーやるから来いってさ」

 

 

「あ、やっぱりやるんですね

そんな気はしてましたよ?」

 

 

「どゆこと?夕張ちゃん?」

 

 

淹れられたお茶を飲みながらその疑問に答えていく

 

 

「嫌ですね、元々は如月さんが提案してた事なんですが大きな作戦が成功した時はその時の参加した人だけで労いパーティーを開けって言われてたんですよ

恐らくそれじゃないですかね?」

 

 

「あー、成る程な

それでか

でもそれならめんどくさいことは無さそうだな?

皆、参加で良いか?」

 

 

「明石とまた話したいし私は大丈夫!」

 

 

「良いデースよ!榛名達にも会いたいですし!」

 

 

「北上さんとまた会えるなら全然良いです」

 

 

「パーティーかぁ……イーちゃんはお留守番かなぁ……ゴーヤ達に紹介したかったんだけどなぁ……」

 

 

「私も、瑞鶴とかと話したかったんだ是非参加したいな」

 

 

「美味しい物が出るなら良いわよ」

 

 

「皆さんに改めてお礼を言いたいですから是非参加したいです!」

 

 

「オッケー、じゃあすまないがエア、カナ、イーちゃん留守番頼むぞ」

 

 

「良いわよ、流石に参加できないしね」

 

 

「ワン!」

 

 

「行ってらっしゃ~い……」

 

 

全員が参加することが確定すると長門が青い顔をしながら食卓に戻ってくる

 

 

「…長門さん?どうかしたんですか?」

 

 

「……佐渡提督、叢雲、古鷹

少し話があるんだが、良いか?」

 

 

長門が三人を連れていこうとするのだが叢雲が反論する

 

 

「…ここで話せないこと?」

 

 

「そう言う訳ではないのだが……良いか

お前達なら」

 

 

長門は深呼吸をすると真剣な面持ちで話し出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「佐渡提督、叢雲、古鷹

明日私と共に大本営へと来てもらう

話の内容は今回の大戦での深海化についてだそうだ」

 

 

「「「「「「!!!!」」」」」」

 

 

その話しに古鷹は苦虫を噛み潰したような顔をし叢雲も顔がひきつる

 

 

 

「やっぱりか……そんな気はしてたけどな……」

 

 

 

 

 

 

 

 





次回

判別

突然大元帥東雲からの呼び出しを受ける佐渡達
内容は三人の深海化についてだが果たして……

イベント10人実装……
果たして何人掘らなくていけなくなると言うのだ……








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見当違い 二

次の日、佐渡達は大本営に呼ばれ東雲の部屋の前で待機していた

古鷹は少し震えておりその手を叢雲が取り微笑む

 

 

「なぁ、長門

お前の深海化はアイツ知ってるんだよな?」

 

 

「アイツって……相変わらず貴方の度胸は凄いな…

あぁ、知ってる

それを知っても尚私は正義の戦艦と言う名を貰っている

だが、恐らく佐渡提督が隠していたと言うことが原因かもしれないな」

 

 

「チッ、めんどくさいな

相変わらずあの野郎」

 

 

『入ってこい、佐渡、叢雲、古鷹、長門』

 

 

長門との会話を終えると中から東雲の声が聞こえ佐渡達は部屋に入っていく

 

 

「失礼します」

 

 

「来たな、そこに掛けろ」

 

 

部屋に入ると東雲が座るデスクが一つと四人が座れる椅子、そして東雲の傍らに

 

 

「……あれ?矢矧さんじゃない?」

 

 

「やっほー、叢雲達~

久しぶり」

 

 

何故か島風が立っており笑顔で挨拶をしてくれる

 

 

「矢矧は別の事を任せてるからな

今回だけ島風が代理なんだよ

とりあえず、座って菓子でもつまみながら聞け」

 

 

東雲は別に不機嫌と言うよりは佐渡達の事を全く目の敵にしておらずむしろ少しご機嫌な様子だった

 

 

「……何で呼ばれたんですか、俺達は」

 

 

「決まってるだろ、お前達の深海化についてだ」

 

 

「「「!!!」」」

 

 

その話を聞いた瞬間古鷹は固まりそうになるが東雲が手を出す

 

 

「と、言うのは建前だ」

 

 

「「「……は?」」」

 

 

突然先程の発言を覆す言葉を言われ全員ポカンと口を開ける

 

 

「え……東雲大元帥…違うのか?」

 

 

「違うぞ、別にお前達の深海化について現状はない」

 

 

「いや……いやいやいやいや!!おいおい!!あんたそれでも大元帥なのか!?

仮にも深海化何だぞ!?」

 

 

「まぁ、実際何人か深海化した奴は見てきたし殺してきたからな

俺としては全く珍しくないのさ深海化(・・・)…ならな」

 

 

妙に含みのあるような話をし珈琲を飲む

 

 

「で、では……今回我々が呼ばれたのは…」

 

 

「あぁ、ただの建前で呼んだだけだ

ま、いつも通り佐渡が解体宣言を取り消すように騒いだとでも元帥共には言っておくさ」

 

 

「おい待て大元帥、いつも通りとは何だ?」

 

 

「どうせお前なら騒ぐって元帥の中では周知だからな

それなら納得するんだよ」

 

 

「………凄く納得できないのだけど?俺は?」

 

 

「知るか反逆者が、黙って納得しとけ」

 

 

東雲は無理矢理佐渡を納得させようとすると煎餅を齧りもう一枚を島風に渡す

 

 

「……ねぇ、今貴方深海化した艦娘を見てきたし殺してきたって言ってたわよね?」

 

 

不意に言葉の内容に引っ掛かった叢雲が東雲に尋ねる

 

 

「あぁ、言ったぞ」

 

 

「それって深海化にも殺す基準が存在するってこと?」

 

 

「あぁ、あるな」

 

 

「「「っ!?」」」

 

 

叢雲の質問に淡々と答える東雲はため息を付きながら立ち上がる

 

 

「深海化にもフェイズと言うものが存在する

それを大本営の研究チームが見つけ出した」

 

 

「フェイズ…?」

 

 

「そう、合計で三つに分かれている

第1フェイズ、初期の深海化

 

戦闘中の激昂、危機的状態に陥った時に無意識に発動する深海化

ただし、対象が死ぬ、又は逃走時に解除される

その最中の記憶は残らない」

 

 

その話を聞いた長門は思いだすことがあり自らの手を見ながら震える

 

 

「第2フェイズ 末期の深海化

ここで殺すか生かすかが決まる

 

自らが危機的状態に陥った時無意識に発動する物と

自らの意思で発動する深海化

 

一つ目ならば何とか止められる、第三者によって止められるか何らかの原因で動きを停止させればとりあえず収まる

問題は二つ目だ

深海化は大きな力を得られるがその反面、身体と心が成長仕切ってないと意識が完全に深海棲艦に呑まれる

呑まれた艦娘は自らの内にある憎悪と怒りに任せ手当たり次第殺しまくる

こうなったら終わりだ殺すしかない」

 

 

第2フェイズの一つ目は長門が

二つ目は古鷹が起きた状態であった

 

 

「……それ以上があるの?」

 

 

「あぁ、第3フェイズがある

だがこれはお前達の事でもある」

 

 

「私達……」

 

 

「だと…?」

 

 

東雲の言葉に顔を見合わせると最後のフェイズを話し出す

 

 

「第3フェイズ、深海越え

こうなる艦娘はほとんど居ない

 

自らの意思で深海化を行う事が出来る少数の艦娘

外部の影響か、それとも自分との決別によって深海化の能力を充分に発揮できる状態

 

そして唯一、歴戦、壊滅種の姫と対峙出来る人類の最後の希望」

 

 

「「「!!!」」」

 

 

東雲の言葉に全員がビクンと跳ねると三人を指差す

 

 

「つまりお前達だ」

 

 

「……だが!艦娘は誰でも第3まで」

 

 

「いけねぇよ、大半が第2フェイズで意識事深海棲艦に呑まれる

力と負の感情に押し潰されて手放してしまうのさ

自らが艦娘であることを」 

 

 

長門の希望を一刀両断するとある本を取り出し長門に見せる

 

 

「これが、そのリストだ

今まで深海化し、呑まれ、殺してきた艦娘のな」

 

 

「………こんなに…」

 

 

リストには様々な艦娘の名前が書いてありその中に

 

 

「……おい待ってくれ東雲大元帥…これ…この名前……!!」

 

 

「…あぁ、二人目の陸奥(・・・・・・)か」

 

 

「何故だ!?アイツは轟沈したって!!」

 

 

「…嫌、違う

俺が殺させた」

 

 

その言葉に長門は立ち上がり東雲の胸ぐらを掴もうとするが寸前で止める

 

 

「…悪いな、もう手の施し様が無かったんだよ」

 

 

「………くっ……」

 

 

二人が話す中そのリストを佐渡が受け取りまじまじと見ていく

 

 

「…ほとんどが轟沈で処理された艦娘ばかりだな」

 

 

「あぁ、表向きにはな

裏で俺達大元帥達が殺してきたのさ」

 

 

リストを見ながら佐渡はあることに気付くが東雲の表情を少しだけ見るとリストを閉じる

 

 

「……完全な深海化になったら助けられないのか?」

 

 

「不可能だ、憎悪と怒りに任せ手当たり次第殺しまくるからな

……何度か止めようとしたんだがな無理だった」

 

 

リストを東雲に返すとそれを本棚にしまい再び座り出す

 

 

「ま、そう言うことだ

深海化を乗り越えたお前達は解体する必要がないのさ

解体すればこちらの損失だからな」

 

 

「成る程ね

そう言えば、私、飛行場姫を討伐したのよね

それに対する何か戦果報酬見たいのはないの?」

 

 

「嫌、今回だけはある

正直、あの化け物姫を倒せるとは思ってなかったからな

それにドレス島での情報はかなり大きい

特例中の特例だがお前の願いを一つ叶えよう

俺が出来る範囲でな」

 

 

「そう、なら私一つだけ願いがあるの」

 

 

「待って!叢雲!」

 

 

「そうだ!叢雲早まるな!」

 

 

 

叢雲の発言に古鷹と長門は察しそれを止めようとする

だが、その制止を振り切り叢雲は言い出す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ドレス島を私に寄越しなさい」

 

 

「……何だと?」

 

 

 

 

 

 





次回

取引

カナとの約束であるドレス島の返却を求める叢雲に東雲は猛反対する
だが、一つだけ無理難題を突き付けそれをクリアしたら返却すると言う

最近色んなゲームのイベントが重なった時間が足りないですわぁ……
つらひ()






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見当違い 三

叢雲が話した内容を聞いた東雲は眉を潜めあからさまに態度が急変する

 

 

「だから、ドレス島が欲しいと言ったのよ」

 

 

「無理だ、あそこにはまだ調べきれてない物が多すぎる

そんなのをポンとくれてやるほど海軍も甘くない」

 

 

「あら?でも奪ったのは私よね?

なら私が所有していても可笑しくないんじゃないの?」

 

 

「駄目だ、あそこを易々と渡すわけにはいかない」

 

 

叢雲の要求を完全拒否するとお互い睨み合うと東雲が再び口を開く

 

 

「……だが、チャンスならくれてやろう」

 

 

「チャンス…?」

 

 

そう言うと東雲はある地図を取り出しそれを叢雲達の前に手渡す

 

 

「現在、制海権を奪われている海域は八つ

白海

北方海域

紅海

東方海域

夜海

西方海域

霧の海

 

そして、南方海域とハワイ島

 

この海域を全て我等人間側が取り返した時は話が別だ」

 

 

「えっ!」

 

 

「そんなの!不可能だ!東雲大元帥!!!」

 

 

東雲が出した条件とはこの戦争の火種となっている戦場を支配してる者達を倒し戦争を終わらせることである

 

 

「……8つの戦場を制覇しろってことよね」

 

 

「そうだな、それほどドレス島は重要だ

あの島には深海棲艦の情報が多く存在しているからな」

 

 

その話を聞いた叢雲は立ち上がるとその地図を思い切り叩く

 

 

「……良いじゃないの!やってやるわ!!!」

 

 

「なっ!?」

 

 

「叢雲本気!?」

 

 

発言をした瞬間に古鷹は叢雲の肩を掴む

 

 

「今、東雲大元帥が言った海域には!今まで誰も倒せなかった姫級や未知の化物達が居るんだ!?

それを全て制覇するなんて!」

 

 

「……正直、貴女と二人だけだったら無理だったかもね」

 

 

「だったら!」

 

 

「でもね古鷹、今私達には仲間(・・)が居るでしょ?」

 

 

「!!」

 

 

叢雲は肩を掴む古鷹の手を取ると肩からおろさせる

 

 

「前は二人だった

でもそれから大井が来て三人になった

次に金剛が来て四人になった

次にイムヤ、次にグラーフ

 

そして最近、長門に夕張が来てくれた

私達は二人きりじゃない仲間が居るわ」

 

 

「…そうだけど……」

 

 

「恐いのは分かるわ、でも戦わなくちゃいけない

正直、私一人で戦えば」

 

 

「駄目!そんなことさせないよ!!!」

 

 

叢雲が一人で戦うと言った瞬間古鷹は力強くその手を握り返す

 

 

「貴女を絶対一人にはさせない!どんなことがあっても!」

 

 

「……ならごめんね、私のわがまま聞いてくれない?

この戦争を終わらせて皆で楽しく過ごしたいの

私も貴女を一人にしないから」

 

 

古鷹は複雑な顔をするが頬を叩き気合いを入れ直し東雲へと振り向く

 

 

「…私が、叢雲に協力することに異論はありませんよね?」

 

 

「ないさ、叢雲単身でなくて良い

何なら

小笠原(・・・)が戦争を終わらせるならば鎮守府に所属する者達全ての願いを叶えよう」

 

 

「な!東雲大元帥!!」

 

 

「何だ長門?それくらいは必要だろう

お前も叶えたい望み位あるだろう」

 

 

「…なら私からも良いですか?東雲大元帥」

 

 

「良いだろう、言ってみろ」

 

 

東雲の発言に古鷹が反応し手を握り締めると願いを口にする

 

 

「……二人の罪を…私を助けるためについた罪(・・・・・・・・・・・)を失くしてくれますか?」

 

 

「……ほぅ?」

 

 

「古鷹……」

 

 

「待て古鷹!それは駄目だ!!」

 

 

今まで沈黙していた佐渡が声を上げ古鷹の願いに口を出す

 

 

「これはお前達に与えられる正当な報酬だ!

お前の為に使え!そういうことは!!」

 

 

「良いんです、私は貴方達二人に救われました

だからこれは私の為なんです

私の事を救ってくれた貴方達を今度は私が助けたいんです

だって、この戦争が終われば佐渡さんには極刑が下るんですよね?東雲大元帥」

 

 

その話を聞いた瞬間に全員の視線が東雲に集中する

 

 

「……誰に聞いた?」

 

 

情報通な友人(・・・・・・)です」

 

 

「……アイツか、どこでそんなことを…

まぁその通りだ、佐渡はしばらく幽閉されるさ

内容はまだ決まってないがな」

 

 

「東雲大元帥!それは横暴ではないか!?

佐渡提督は今まで我が軍に大きな利益を!!」

 

 

「悪いな長門、これは体裁の問題なんだよ

佐渡と言う異端児を裁かないといけないと言うな

 

………だが、古鷹お前の願いを聞くと言うならそれも無くなるな

本当に良いのか?」

 

 

「はい、私の願いは二人に課せられた罪

反逆罪の帳消しです」

 

 

古鷹の話を止めようとするが叢雲がそれを制止させ取引が成立する

 

 

「…良いだろう、なら戦争が終わった暁には佐渡と叢雲の罪は帳消しだ」

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

古鷹が頭を下げるとにこやかに笑っており佐渡は深くため息を付く

 

 

「長門、お前はあるのか?」

 

 

「……今の所は何もありません

いつか話します」

 

 

「良いだろう」

 

 

東雲は再び立ち上がると叢雲達を指差す

 

 

「お前達の願いは聞き届けた!

ならば成してこい!お前達のやるべきことを!!

今!我等の戦況は劣勢だ!八つの危険海域に八つの化物達!!

これを倒さねば我々の海は取り返せない!!!

願いを叶えたくばそれを制覇してこい!!グズ共!!!

 

 

俺に力を見せてみろ!!貴様ら全力とやらをな!!」

 

 

「はい!」

 

 

「言われなくても!」

 

 

「あんたに言われなくてもやってやるわよ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

四人が東雲の部屋から出ていくと深く息を吐きながら椅子に座り直す

 

 

「ふふ、提督大分期待してるんだね

小笠原に」

 

 

「あー?まぁ、そりゃあな

あの化け物姫を倒したんだ、精々使い倒してやるさ」

 

 

「それって飴と鞭って奴ー?」

 

 

「ま、そんなところだな」

 

 

島風も椅子を持ってくると東雲の隣に座りお茶を飲む

 

 

「………で?どうだった島風」

 

 

「……そうだね、とりあえず二人はフェイズ3確定だね

深海の支配を乗り越えてる

問題は叢雲…ねぇ本当にあの艦娘って深海化してるの?」

 

 

「どういうことだ?」

 

 

東雲の質問に羊羮をかぶり付きながら答える

 

 

「だって、二人からは感じたけど叢雲は全く感じなかったよ?

あの時、戦ってる時は凄く濃く感じられたのに」

 

 

「……と言うと?」

 

 

 

「うーん、分かんない

こんなの初めてフェイズ1でも少しは違和感として感じるのに叢雲からはそんなの全く感じなかった

正直、普通の艦娘だよ?」

 

 

「………調べる必要がありそうだな」

 

 

東雲がお茶を置くと島風はそんな様子を見ながらニカッと笑う

 

 

「お仕事増えて楽しいねー!」

 

 

「んな訳あるか、只でさえ元帥共の相手で」

 

 

「失礼致します!」

 

 

突然扉が開くと大本営の職員が入ってくる

 

 

「どんなに急いでいてもノックはしろ常識知らず」

 

 

「も、申し訳ありません!ですがこれを見てください!!」

 

 

大本営の職員から渡された資料を目に通すと東雲の顔が歪む

 

 

「………やはり動いてるか白海め」

 

 

「は、はい!再びの活動です!!

今度は北方海域近海を!!」

 

 

「…分かった、何とかしよう」

 

 

「し、失礼致します!」

 

 

大本営の職員が去っていくと島風が棒付きの飴を加えながら机に突っ伏し東雲を見上げる

 

 

「どーすーるーのー?」

 

 

「辺りの避難を指示する、そして早急に対処する艦隊を」

 

 

険しそうな表情を見ると島風がニヤリと笑う

 

 

「……私、行こっか?」

 

 

その発言に東雲はハッと我に帰り頭を横に振るう

 

 

「…嫌、出る必要はない

やはり様子見といこう」

 

 

「なーんーでーよー!私一人で行けるもーん!」

 

 

机に突っ伏しながら手足をじたばたさせると頭を撫でられる

 

 

「お前が出るときは本当に危なくなった時だ

だからそれまで俺を守っててくれよ『神速』」

 

 

「ぶー……てーとくが言うなら仕方ないなー

でーもさ」

 

 

島風は不意に棒付きの飴を噛み砕くと笑う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アイツらを殲滅したいってたまに思うよ

東雲さんの友人である如月さんを傷付けた奴等をね」

 

 

暖房が効いた暖かい部屋だと言うのに口から白い息を吐きながら島風は笑う

 

 

「お前が出るときは必ずあるさ

だからその時は期待してるぞ

 

 

 

 

我が艦隊のACE」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






次回

打ち上げパーティー


東雲の呼び出しから少したった頃佐渡達は再び本土に来ていた
東雲が開催するパーティーに参加する為なのだが少し佐渡だけは警戒する

イベント始まりましたねぇ!!
まず、初手はいつも通り甲ですかねぇ
対潜水武器が手に入るならやらなくては←






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パーティー

「……意外とデカイ会場だな」

 

 

「そうね、流石は大元帥なだけはあるわ」

 

 

「わぁ……私達私服で良かったのかな…?」

 

 

東雲の呼び出しから三日後佐渡達はパーティーに出席するために再び本土を訪れある場所に来ていた

 

 

「ここが、東雲大元帥の屋敷か…デカイな流石に」

 

 

「大元帥って、お金持ち何だね……」

 

 

「そりゃそうですよ、何せ海軍のトップですからね」

 

 

パーティー会場は東雲大元帥の屋敷にて開かれており入り口には憲兵が立っている

 

 

「そんなことより行きませんかー?提督ー?」

 

 

「ん、そうだな

じゃあ全員行くぞ」

 

 

佐渡の合図に小笠原の艦娘達は歩いていくと憲兵に招待状を見せ会場へと向かっていく

 

 

「……マジデカイなこの屋敷」

 

 

会場へ向かう最中、屋敷の廊下を歩いているがかなり広い

部屋もいくつも有り壁には絵が飾られておりそれを色々と見ていくと佐渡は一つの絵を見て止まる

 

 

「司令官?どしたの?」

 

 

「ん?あぁ、先行っててくれ

ちょっとこれを見たくてな」

 

 

佐渡が見ようとしている絵は誰かが書いた作品であるものの他の絵とは違い多くの艦娘と何人もの提督が描かれている絵であった

全員笑い合い艦娘達と仲良くしている姿が書かれているがその中心の二人だけは対極的だった

片方は満面の笑みを浮かべ片方は不服そうな顔をしている

 

 

「これって…昔の鎮守府…?」

 

 

「……なぁ、夕張ちゃんこの真ん中に居る人って……」

 

 

「うん、如月大元帥

そして隣に居るのは東雲大元帥

多分、ここに描かれている提督達って……」

 

 

「当時、如月大元帥と東雲大元帥の部下だった人達ですよ」

 

 

不意に正面から声が聞こえ振り返るとそこには銀髪のツインテールをした艦娘が立っており佐渡達にお辞儀をしてくる

 

 

「えっと……貴女は?」

 

 

「申し遅れました、本日皆さんの案内を頼まれました練習巡洋艦鹿島です

皆さんがその絵に見ていたので声を掛けさせて頂きました」

 

 

「鹿島!久しぶりだな!!」

 

 

「あ、長門さん!お久しぶりです!!

活躍の程は聞いておりますよ!」

 

 

鹿島は走って長門に近付くとお辞儀をしお互い手を取る

 

 

「皆さんのご活躍は聞いております、あの化け物姫

歴戦種、いえ現在は壊滅種でしたね

その姫の対等に戦えた現時点最強の鎮守府小笠原鎮守府の皆様

この度は我が大日本、さしては世界各国の制海権解放に大きな一歩となりました

本当にありがとうございます」

 

 

畏まりながらもお辞儀をする鹿島であったがその顔は満面の笑みを浮かべている

だが

 

「それは違うわね鹿島さん」

 

 

「え?」

 

 

「私達小笠原だけで挑んでもアレには勝てなかった

むしろ、あの超遠距離砲撃の的になるだけだったわ

連合艦隊があったから他の鎮守府があったから私達は戦えたの」

 

 

叢雲がそう言うと全員が顔を合わせながら笑う

 

 

「そうだね、私達が戦えたのは皆の協力があったから」

 

 

「北上さんや比叡さん、瑞鶴とグラーフ、赤城さん達の制空権奪還」

 

 

「何度も諦めそうになっても戦ってくれた仲間」

 

 

「私の無茶に付き合ってくれたゴーヤ達」

 

 

「絶望的な状態であり圧倒的な戦力差でも立ち上がってくれ」

 

 

「戦い続けてくれた連合艦隊があったからこそ

我々は勝てたのだ、絶対的な戦力差があったにも

絶対的な確率だったにしてもだ」

 

 

「ま、戦場は地獄そのものだったけどね!!!」

 

 

「ちょっと夕張!その通りだけどさ!!」

 

 

最後の言葉に全員がどっと笑いだしてしまい鹿島も釣られて笑ってしまう

 

 

「……流石ですね、東雲さんが認めた実力者ばかりの鎮守府です

ではでは!そんな謙虚な英雄様御一行をご案内させてくださいね!」

 

 

そう言うと鹿島は佐渡の隣に行くと小笠原鎮守府の全員を案内していく

 

 

「そう言えば、鹿島さんって大本営所属なんですか?」

 

 

「えっと……一応…そうなりますかね?」

 

 

「一応ってどういうこと?」

 

 

「鹿島は、元々如月大元帥の鎮守府所属だったのさ」

 

 

「如月大元帥って……あの艦娘保護法を作るきっかけを作った人!?」

 

 

「うふふ、そうなんですよ

一応、私は(・・)如月さんの艦娘なんですよ?」

 

 

「私は?……待って、東雲大元帥の艦娘と如月大元帥の艦娘が居るってこと!?」

 

 

「そうですよー、因みに言うと

大鳳さん、阿賀野さん、能代さん、矢矧さん、酒匂さん、伊勢さんも如月さんの艦娘です!」

 

 

その話を聞いて佐渡は立ち止まり首を傾げる

 

 

「へ……?矢矧さんも如月大元帥の艦娘何ですか!?

どうみてもじ……東雲の秘書艦にしか見えないんだけど!?」

 

 

「こら、佐渡提督さん

東雲さんをジジイ呼ばわりとか呼び捨てにしてはだめですよっ!

実はそうなんですよ、私達は如月さんの艦娘で今は東雲さんが代理で指揮を取っているんです」

 

 

ここで佐渡は一つの疑問に気付く

 

 

「……もしかして東雲…さんは艦隊…と言うよりは専属の艦娘が居ない?」

 

 

「半分そうですね、あの人は艦隊を持っていませんが艦娘は持っています

たった一人、それ以外は東雲さんは所持していません」

 

 

「……一体…誰なんです?」

 

 

「…三人はお会いしませんでしたか?

まぁ確かに滅多に側には居ない艦娘ですからね」

 

 

鹿島はそう言うと指をくるくると回し答える叢雲をチラッと見る

 

 

「……あの人が唯一所持する艦娘の名前は

駆逐艦、島風型一番艦、島風さんです

 

 

そして、歴代の駆逐艦島風の中で最速にして叢雲さんと同格かもしれない艦娘です」

 

 

「「「「………え?」」」」

 

 

 

鹿島の爆弾発言に一同混乱していると大きな扉の前にたどり着き後ろに回り込む

 

 

 

「さ、着きましたよ皆さん」

 

 

「ちょ、ちょ!待って鹿島さん!?」

 

 

「さぁさぁ!英雄のご登場ですよぉ!!!」

 

 

一番後ろから全員を押していくと勝手に扉が開き佐渡達は押されるままにその部屋に通され鹿島は笑顔で手を振るう

 

 

 

 





次回

打ち上げパーティー

会場に着いた佐渡達を待っていたのは作戦に参加した全メンバーと提督達
そして、東雲主催のパーティーが幕を開ける

イベントのE1甲で若干苦戦してます()
意外と雷撃痛いよなぁ……


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パーティー 二

扉の中に入った佐渡達は辺りを見渡すと今回の作戦に参加した全鎮守府、全職員が集められており入場と共にほとんどの人は佐渡達に視線が集中する

 

 

「お!来たな英雄の鎮守府!!!」

 

 

「佐渡君!やっと来たね!」

 

 

「遅いぞー!今回の主役!!」

 

 

「叢雲ー!」

 

 

「古鷹さーん!!」

 

 

「お姉様!!!」

 

 

そして叢雲達に向かって何人かの艦娘や提督が集まり、近くに居たウェイターから飲み物を渡され部屋を確認すると

 

 

「………わーお、正にパーティー会場だなおい」

 

 

「そりゃそうでしょ、パーティーなんだから」

 

 

部屋はかなり広く色々と装飾がされており近くの窓から中庭にも出ることが出来る

今回の参加者達を見ていくと他の元帥や大将、又は重鎮とかは来ておらず確かに今回の作戦の参加者のみ来ていた

 

 

「やっと来たか、お前達」

 

 

目の前の壇上には東雲が座っておりその隣には矢矧が立っていた

そして、立ち上がるとマイクを取り出す

 

 

「諸君、飲み物は持ったな?ではこれより飛行場姫討伐作戦打ち上げパーティーを開始する

長い話しは俺も好きじゃない、だからこそ簡潔に話す」

 

 

東雲はそう言うと全員の顔を見ると飲み物を片手に取り話し出す

 

 

「正直に言おう、今回の作戦で私はここに居る艦娘の半数を失うと思っていた

諸君らは大演習会にて私が見て判断した強者達だ

だが相手は歴戦種、嫌、壊滅種の姫だった

実力は未知数、そして化け物染みた実力を持つとされていた我々の海を支配する深海棲艦最強格とされていた

 

実際、あの姫は壊れているほどに強すぎた

正直、敗走してきても文句を言うつもりは無かった

見ていた私が言うのも何だが、あれは明らかに深海棲艦と呼ぶには異常だ

あんなもの今まで生きてきて見たことがなかった

 

だが君達はそれでも果敢に挑もうとした、絶望に苦しみ、力の差に恐怖しても尚」

 

 

「それは違うぞ、東雲大元帥」

 

 

東雲の話に長門が横槍を入れると怪訝そうな顔をする

 

 

「……どういうことだ?長門」

 

 

「お、おい長門?」

 

 

長門は一歩手前に出ると飲み物を置き東雲を見ると大声で話し出す

 

 

「我々は屈しかけた、絶望に呑まれ掛けた

敗走しようとした、何度も何度も苦しみと力の差に押されていた」

 

 

「だから、それでも仕方ないと」

 

 

「だが!その中で我々が動けたのは、勇気を持って戦えたのは!一人の艦娘が居たからだ

いや、艦娘達が居たからだ!!」

 

 

そう叫ぶと長門は叢雲達に指差すと笑みを浮かべながら話し出す

 

 

「この小笠原鎮守府達の艦娘達が我々を支えてくれた!

どんな実力差でも!どんなに絶望しても我々に希望を見せてくれたから私達は戦えたんだ!!

だから!今回の作戦でのMVPは彼女達だ!!」

 

 

長門がそう言った瞬間瑞鶴や北上、榛名達から拍手が上がる

 

 

「そうね!確かに叢雲達が居たからこそ、私達は戦えた!」

 

 

「何度も諦めかけたけど」

 

 

「お姉様達は諦めなかった」

 

 

「どんなに敵が強大でも」

 

 

「どんなに絶望的な状況でも」

 

 

「諦めなかった彼女達が居たからこそ私達は最後まで戦えた」

 

 

そして全員の視線が叢雲達に集中すると同時に笑みを浮かべ拍手する

 

 

「「「「ありがとう!小笠原鎮守府!!!」」」」

 

 

 

「……はぁ、あんた達ねぇ…」

 

 

「えへへ…照れ臭いね、叢雲」

 

 

「ドヤァ!」

 

 

「何ドヤ顔してるのよ、金剛さん……」

 

 

「そんなこと無いんだけどね…」

 

 

「何言ってるんだイムヤ、貴女も充分凄かったじゃないか?」

 

 

「いやいや、グラーフ何て制空権奪ってるじゃない?」

 

 

そんな話をしていると東雲がため息を付き隣で矢矧が口を押さえながら笑う

 

 

「まぁ、そうだな 

お前達が居なかったらこうはなってなかったな

認めよう、お前達の実力を」

 

 

「なら少しは物資を届けてくれませんかねぇ?

大元帥?」

 

 

「それとこれは別だこの反逆者」

 

 

「ケチ過ぎませんかねぇ!大元帥の癖によ!!!」

 

 

佐渡のツッコミに場が盛り上がっていると東雲がグラスを持ち上げると高らかに宣言する

 

 

「まぁ良い!!今日は無礼講だ!

お前達!良くやってくれた!!!

飛行場姫討伐!そして!ドレス島の奪還!!!

好きに飲み!騒ぎ!楽しんでいけ!!

我々の勝利に乾杯!!!!!」

 

 

 

「「「「乾杯!!!!!」」」」

 

 

全員がグラスを持ち上げるとパーティーが始まる

提督、艦娘関係無い楽しい打ち上げパーティーが

 

 

 

 

 

 

 

 





次回

入り乱れるパーティー会場

東雲によって開催される打ち上げパーティー
皆が勝利に喜び各々が楽しむ中、それを純粋に楽しめていなかった者が一人

お久しぶりです!(再び)
いやー…最近ゲームイベントがかさんで来れませんでした…
FGOにモンハンに艦これに……

あ、E1甲突破してタシュと神威が来てくれました!!!
もうイベント終わりで良いやと思ってましたがホーネット達が欲しくて突破を目指します!!(丙)






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パーティー 三

パーティーが始まると同時に二人の艦娘が佐渡達に近付いてくる

 

 

「ちーす!叢雲、古鷹!久しぶり!」

 

 

「お久しぶりですわ、叢雲さん古鷹さん!」

 

 

「お久しぶりです鈴谷さん、熊野さん!」

 

 

「あら鈴谷に熊野、どうしたのよ?」

 

 

「えー、決まってるじゃーん!

叢雲達に改めてお礼と色々話したくてさ?」

 

 

「えぇ、お二人には助けてもらってばかりでしたから

本当にありがとうございました」

 

 

深々と頭を下げる熊野につられて鈴谷も頭を下げる

 

 

「そんなことありませんよ!お二人が時間を稼いでくれなかったら私達は……」

 

 

「そうよ、今回の勝利は私達だけじゃない、連合艦隊の勝利よ

私は少し姫の相手をしただけ」

 

 

「少しー?今少しって言ったー?このー!!」

 

 

その瞬間叢雲の頭を鈴谷が捕まえるとそのまま胸に押し当てながら抱き締める

 

 

「ちょ!ちょっと!!」

 

 

「その発言は私達に対する嫌みかー!このこのー!」

 

 

「こら鈴谷!叢雲さんに失礼ですわよ!」

 

 

「ふふ、大丈夫ですよ

叢雲は多分馴れてますから」

 

 

「ちょ!苦し!鈴谷!!」

 

 

「このぉー!」

 

 

叢雲達が楽しんでいる最中全員がそわそわとしており佐渡は全員の背中を一人ずつ叩いていく

 

 

「!提督?」

 

 

「ほら、お前らも行ってこい」

 

 

「で、でもさ?」

 

 

「おいおい、これはお前達の勝利のパーティーだ

主役はお前達だ、だから楽しんでこい」

 

 

「……そうですね、じゃあ皆それぞれ遊びにいこうか!」

 

 

大井がそう言い歩き出すと全員釣られて各々話に行きたかった者達の方へと歩いていき佐渡はため息をつく

 

 

「なーに一人で居やがるんだよ!佐渡!!」

 

 

突然後ろから肩を抱かれ驚き振り返ると

 

 

「猿……猿橋さん」

 

 

「おいこらお前また猿呼ばわりしそうになってたな?ごるぁ?」

 

 

「まぁまぁ、今日くらいは良いじゃないですか」

 

 

「そうですよ、今日は打ち上げ何ですから」

 

 

猿橋に続けて石澤、葛城も来ており佐渡は二人と乾杯を交わすと猿橋とも乾杯する

 

 

「いやー……お前の雷撃姫相変わらずとんでもないよな」

 

 

「そんなことないですよ、皆さんの援護があったからアイツは戦えたんですよ」

 

 

「ははは!!二人揃って謙遜かこのやろう!!」

 

 

猿橋が笑っているが佐渡はどうも落ち着かない様子であり辺りを警戒する

 

 

「…佐渡君どうかしたのかい?」

 

 

「え?」

 

 

「さっきから何か警戒してる様だけど?」

 

 

「あー……いやすいません、パーティーって初めてでして……何か落ち着かないんですよね」

 

 

 

「そう言うことか、まぁあれだよ

好きに飲んで楽しめば良いんだよ!」

 

 

「そうそう!よーし、色んな艦娘にちょっかいだしに行っちゃうぞ~」

 

 

「おい待て葛城、それは駄目だ」

 

 

「何でよ!?ちょっと女の子の身体を触るだけよ!?」

 

 

「石澤、今すぐ憲兵呼んできてくれない?」

 

 

「そうだね、不味いことになる前に止めようか」

 

 

「待って!憲兵さんは止めて!つい昨日蒼龍ちゃんの胸触ってお世話になったばかりなんだから!!!」

 

 

「「なにしてんだお前は!!!」」

 

 

二人のツッコミが入るとその後ろから一人近付いてくる

 

 

 

「何を騒いでるんだ…お前達は……」

 

 

「お、唐澤大将様ー」

 

 

「様を付けるなお前は」

 

 

ふざけている猿橋の頭を軽く殴ると唐澤も話に参加する

 

 

「葛城さんが艦娘に手を出してるそうなんですよ……

全く何かいってあげてくださいよ……」

 

 

石澤が事の経緯をはなしていると唐澤が首を傾げる

 

 

「いつもの事じゃないか?」

 

 

「「………は?」」

 

 

「何だお前達知らなかったのか?良く大本営に呼ばれては怒られてるのを見てたが……」

 

 

唐澤の話に二人が葛城へ視線を向けると

 

 

「……てへっ」

 

 

「「葛城!!」」

 

 

「し、仕方ないじゃない!!うちの娘が可愛いのが悪いのよ!!!」

 

 

三人がギャーギャーと騒いでる姿を見ながら佐渡は微笑んでいるとふとある光景が脳裏を過り誰にも気付かれないように静かにワインビンと食べ物をある程度皿に盛ると会場から去っていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれ?提督が見当たらないデースね?」

 

 

「え?佐渡提督ですか?」

 

 

会場にて姉妹達と話していた金剛がふと気付き辺りを見渡すが佐渡の姿が見えず叢雲の方へと歩いていく

 

 

「叢雲ー!」

 

 

「ん?どうかしたの?金剛?」

 

 

叢雲はと言うと鈴谷、熊野、古鷹、瑞鶴と共に食事をしておりどんどん皿を空にしていく

 

 

「提督見てないですかー?見当たらないデスよ」

 

 

「司令官?」

 

 

「そう言えば見当たらないですね」

 

 

「トイレとかじゃないの?」

 

 

古鷹も気になり周りを見るが見当たらず立ち上がろうとすると

 

 

「良いわ、私が探してきてあげる」

 

 

「分かるの?叢雲」

 

 

「ま、大体はね」

 

 

叢雲が立ち上がると近くにあったワイン瓶を取りゆっくりと会場を後にし深くため息をつく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり、あの人には駄目だったか

そうよね、普通であって普通じゃない人(・・・・・・・・・・・・)だもんね

司令官(佐渡)さんは」

 

 

 

 




次回

静寂を好み人を嫌う

抜け出した佐渡を見つけるため叢雲は屋敷内の捜索を開始する
一方佐渡は一人静かに過ごしていた
思い出にふけりながら


何とかE4を突破しましたが地獄でしたわ……
いやー……あれに戦艦連れていけなかったので本当にラスト苦行でしたね…
ラストに姫とElite出てくるのは卑怯だよぉ!!








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パーティー 四

パーティー会場は外に変わり各々楽しんでおりそんな中二人の少女が目的に向かって走っていく

 

 

 

「グラーフ!!」

 

 

突然パーティーの最中呼ばれグラーフが振り返るとそこには

 

 

Z(レーベ)Z3(マックス)!!

二人とも無事だったのか!?」

 

 

今回の大型作戦のきっかけとなった飛行場姫に囚われていたドイツ艦の二人がドレスを着こなし笑みを浮かべていた

 

 

「えぇ、何とかね

長い間ベッドの上だったから少し鈍ってるけど平気よ」

 

 

「僕の方は一応手当ては受けてたからね

そんなことよりグラーフ君こそ」

 

 

と二人がレーベが言い掛けた瞬間グラーフは持っていたグラスを置き二人を強く抱き締める

 

 

「ちょっとグラーフ?」

 

 

「いた、ちょっと痛いよグラーフ!」

 

 

「……良かった…二人とも本当に…」

 

 

グラーフに抱き締められている二人は微笑むとグラーフの肩を叩き後ろから阿武隈に声を掛けられる

 

 

「あ!レーベさん、身体良くなったんですね!」

 

 

「阿武隈さん!はい、おかげさまで!

あの時はありがとうございました!!」

 

 

グラーフから離れると阿武隈に頭を下げグラーフも頭を下げる

 

 

「阿武隈…ありがとうレーベを助けてくれて…」

 

 

「良いんですよ!私も気付いたから行けただけですから……と言うか今回私それぐらいしかお役に立ててませんから……」

 

 

「えー?充分何じゃないー?」

 

 

阿武隈が謙遜していると横から北上が乱入し阿武隈の横腹をつつく

 

 

「ちょ!北上さん!お腹つつかないでください!」

 

 

「じゃあ前髪触るわ~」

 

 

「やーめーてー!!」

 

 

そう言いながら前髪をぐしゃぐしゃにされ北上の後ろから誰かが抱き付く

 

 

「ちょっと阿武隈ー?北上さんに弄られてるんだから光栄に思いなさいよー?」

 

 

「何ですかそれ!?」

 

 

「あははー、なら大井っちの胸でも弄ろっかなー?」

 

 

「北上さんなら構いません!!どうぞどうぞ!!!」

 

 

「そこは拒絶して欲しいんだけどなー?」

 

 

三人が楽しんでいるとマックスが不意に周りを見渡しそれを疑問に思ったグラーフが首を傾げる

 

 

「どうかしたか?マックス?」

 

 

「いえ、実は貴女の提督に一目会いたくて……

後、今回…あの化物姫と一人で対峙したと言う雷撃姫と言う艦娘に会いたくて探してるんだけど見当たらなくてね」

 

 

「あ!僕も会いたいんだよね!

あれほどの姫と一人で相手出来る駆逐艦なんて聞いたことないから!

 

それに、グラーフの提督にも会いたいし?」

 

 

「叢雲と佐渡提督か、そう言えば姿が見えないな…

どこに行ったのだろうか……」

 

 

「叢雲なら提督を探しに行ったけど……そう言えば長いわね…

どこまで行ったのかしら?」

 

 

グラーフ達が辺りを見渡すとレーベがグラーフに詰め寄る

 

 

「それと、僕グラーフに聞きたいことがあるんだよね!」

 

 

「うん?何だ?」

 

 

「いやさー?グラーフが認めてる提督ってどんな人かなーって思って

何せあの堅物グラーフが信じきってる提督なんて聞いてみたいし?」

 

 

「それに貴女、しばらく行方不明だったし……

そこも知りたいわ」

 

 

二人の質問にグラーフは少し驚くと微笑み飲み物を取る

 

 

「……少し長くなるが良いか?

それとこの話を聞いてもドイツの提督達を恨まないと約束してくれよ?」

 

 

「え?どう言うこと?」

 

 

「……成る程ね、大丈夫よ

聞かせてほしいわ、貴女に何があったのか」

 

 

「ちょっとグラーフ」

 

 

話をしようとするグラーフの肩を大井が叩くと笑みを返す

 

 

「良いんだ、私には皆が居る

過去を話しても変わらないさ」

 

 

「……そう、ふふ強くなったのねグラーフ」

 

 

大井の気遣いに感謝しながら自分に何があったのか二人に話していく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぷはー!美味しいデース!!」

 

 

「お姉様どうぞどうぞ!」

 

 

「金剛お姉様!こちらも美味しいですよ!」

 

 

一方金剛達はパーティーに出された料理を満足そうに食べながら今回の事を話していた

 

 

「正直、今回の戦いは怖かったデスが皆良く最後まで頑張ってくれたデース!

流石私の妹達!!」

 

 

「何をおっしゃいますか!お姉様が私達を庇ってくれたとき…本当に嬉しかったんですよ!」

 

 

「あー……あれはほら、勢いデスよ?

私も無我夢中でしたし?」

 

 

「でもかっこよかったわよね、あの時の金剛」

 

 

「私の妹達は傷付けさせません!!だっけかな?」

 

 

「辞めて!!言わないでくだサーイ!!!」

 

 

ウォースパイトとガングートにニヤニヤされながら言われると顔を真っ赤にしながら押さえる

 

 

「ですが、お姉様

あのような事は二度としないでください

私達は貴女に守られてるだけは嫌ですからね?」

 

 

「で、デモ……皆にはいつもお世話になってたデースから……」

 

 

「それでもです!私達は誇りある金剛姉妹!どんな状況でも戦い抜けることが出来るんですから!!」

 

 

「皆……うぅ…本当に頼りになる妹達デース!!!」

 

 

比叡達からの言葉に金剛は感動し三人を抱きしめるとその姿を青葉が写真に撮る

 

 

「良い姉妹愛ですね!」

 

 

「おいおい、青葉盗撮は良くないぞ?」

 

 

「あはは…後で許可は得ますよ……

そう言えばガングートさん、ウォースパイトさん

佐渡提督と叢雲さん見てないですか?

是非写真を撮りたいのですが…」

 

 

「そう言えば見てないな…どこに行ったんだろうな……」

 

 

「私も是非会いたいんだけどね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

楽しいパーティーの最中夜の闇に紛れるように黒いローブを羽織ながらパーティー会場を屋根から見下ろしあらかじめ持ってきていた酒と食べ物を摘まみながらのんびりとしていた

 

 

「…………」

 

 

全員が笑顔で楽しみ、時に怒り平和な時間を噛み締めながら今を生きることに感謝している姿を見ているとふと昔を思い出し酒を飲み干す

 

 

(いつの時代も人は宴やパーティーを好むか……

ま、良いとは思うけどな)

 

 

 

『おーい!隊長!!こっち来て飲みましょうよ!!』

 

 

 

『そうですよ!!折角のパーティー何ですから!!』

 

 

『ほーら!隊長の口に合うかは分からないけど美味しいわよ!

毒もないし!!』

 

 

『隊長!折角ですから楽しみましょうよ!』

 

 

 

『断る、悪いが好みじゃないんだよ

お前らが楽しんでろ』

 

 

自分はその光景に入ることを拒み、楽しんでいる人の姿を見て微笑む

そして煙草に火を付けると静かに煙を吐き出す

 

 

 

(………いつかこれ(・・)に深海棲艦や姫を混ぜたら面白いだろうな)

 

 

男は自分が楽しむよりは人が楽しんでいる姿を見るのが好きだった

昔から自分は楽しまず人が楽しんでいる光景を見ていただけだから

一人でいることだけを徹底していたから

 

 

(……俺には分からないからな仕方無い)

 

 

 

そんな一人で居ると窓が開きそこから一人の少女が屋根に登ってくる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱりここに居たのね佐渡さん(・・・・)

 

 

「……ほう?良く分かったな艦娘(叢雲)

 

 

 




次回

艦娘と人間

パーティーを楽しむ皆とは裏腹に佐渡は一人離れてその光景を見ていた
そして叢雲と二人だけの会話を楽しむ


お久しぶりですねぇ
見事に夏イベが忙し過ぎて書けませんでした……
やってるゲームが多いと忙しいですわ…




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パーティー 五

叢雲は屋根をゆっくりと歩いていくと電探の光をオフにし恐る恐る佐渡の隣に座る

 

 

「貴方は参加しないんですか?今回の功績は私だけじゃなくて貴方もあるんですよ?」

 

 

「笑わせるな、俺は今回なにもしてないさ

主役はお前だろ、あの化物を倒したのは間違いなくお前の功績だ」

 

 

「違いますよ、私の功績は全て貴方の功績です

それとそろそろ無くなると思ってこれを」

 

 

「ん」

 

 

そう呟くと持ってきていたワインビンを渡すと佐渡は受け取り開ける

 

 

「お前は持ってきてないのか?」

 

 

「私は別に…

先程好きに飲み食いさせて頂きましたから」

 

 

「相変わらず謙虚だな、お前は自由なんだぞ?

あと敬語は辞めろ、苦手なんだ」

 

 

「そうはいきませんよ、実際皆の手前と二人の時は違いますから」

 

 

「は、相変わらず強情な餓鬼だな

なら命令(・・)だ、敬語を辞めろ」

 

 

「……わかりまし」

 

 

「あん?」

 

 

「……分かっ……たわ…」

 

 

「よろしい」

 

 

佐渡はいつもの雰囲気とは違い少し近寄れない感じになっており珍しく煙草を吸っていた

 

 

「平和だな、艦娘」

 

 

「そうで……そうね、平和

平和そのものね、ついこの間まであんなのと戦ってたとは思えない程に」

 

 

叢雲が下を向くとイムヤがゴーヤ達と騒いでたり長門と陸奥が楽しそうに談笑しているのを見え微笑む

 

 

「お前が望むのはこう言う世界か?」

 

 

「……えぇ、戦争なんて無い皆が平和な世界

深海棲艦も、艦娘も、人間も、皆が笑って楽しく生きていく世界

私が望むのはそれだけよ」

 

 

「ほう?まぁ、このまま行けば何とかなるのかもな」

 

 

「…そうね…ゲホッ」

 

 

叢雲は煙草の副流煙を吸い込んでしまいむせると直ぐ様佐渡は煙草を消す

 

 

「良いのに、今日位は吸ったら?」

 

 

「別にやることがないし癖で吸ってただけだ

お前の肺を汚す訳にはいかないからな」

 

 

「………相変わらずそう言うところは素なのよね貴方は」

 

 

「何か言ったか?」

 

 

「何も言ってないですよ!」

 

 

そう言うと佐渡は不意にグラスを取り出すとワインを注ぎ叢雲に渡す

 

 

「………突然何?」

 

 

「一人酒は気分が悪いんだ

付き合え」

 

 

「いや私お酒は」

 

 

「命令」

 

 

「………はい」

 

 

渋々受けとるとグラスの中にあるワインを軽く飲むと

 

 

「……?これって白葡萄ジュース?」

 

 

「炭酸入りのな、どうやらお前達を考慮してたみたいだな」

 

 

「なーんだ、じゃあ良いか」

 

 

「あ、そうだ艦娘……いや叢雲」

 

 

「なにかしら?」

 

 

佐渡の方を向くとグラスを差し出しており二人は静かに乾杯する

 

 

「我々の勝利に」

 

 

「乾杯」

 

 

静かな夜に二つのグラスが当たる音が響き渡りのんびりと下を見下ろす

  

 

「……時々思い出すの」

 

 

「何をだ?」

 

 

「…………もしも…もしもあの時私は貴方に出会わなかったら……どうなってたんだろうって」

 

 

「………さぁな」

 

 

グラスを持ちながら小さく縮み込むと少しだけ震える

 

 

「あの時……私は敗北した(・・・・)……徹底的に、圧倒的に、絶対的に

今まで持っていたプライドも、価値観も、力も、全て

破壊され、蹂躙され、打ち砕かれた

そして……思い知らされた、私は弱い(・・・・)と」

 

 

「…………」

 

 

「私は兵器よ、人間が扱う人の形をした兵器

だから割り切っていた、人間は私達が恐ろしいから虐げると

正直心の底から人間が大嫌い(・・・・・・)だった

私より弱い、ただの使い手だから

深海棲艦何かより私達が強いと

 

でもそうではなかった」

 

 

叢雲は震えながら怯えながらグラスに入った飲み物を飲む

 

 

「深海棲艦は私達より遥かに強かった

話に聞くよりずっと大きく危険な化け物だった

 

こんなの勝てるわけ無い

そう思った

 

 

だから私は動けなかった」

 

 

「は、何度聞いても笑わせるなクソガキ」

 

 

佐渡の方を見ると笑っておりグラスに残っている飲み物を飲み干す

 

 

「相変わらず精神は弱いままの様だな

技術や力、判断能力は向上しても中身は変わってない

とっとと成長しやがれ、がきんちょ」

 

 

「……はぁ、何であんたはアレを見ても怖じ気づかないのか今でも分からない

 

 

でもそんな貴方に私は憧れている

いつか貴方見たいになりたいわ」

 

 

「は、一生掛かっても無理なこった

お前じゃ不可能だっての」

 

 

「本当に相変わらず口は最悪に悪いわね

初めて会ったときから変わってない

そんなんだからあの娘に言われるのよ?」

 

 

「はは、何だ?またしごかれたいのか?」

 

 

「それは勘弁してください」

 

 

そんな雑談を交わしながら二人だけの時間を楽しんでいると不意に佐渡が言う

 

 

「まぁ、俺もあの時お前に会わなかったらここには居なかっただろうな

 

……こんな日の当たる世界にはさ」

 

 

「……でも貴方にとても似合うのよ

こっちの世界が」

 

 

「そうか?俺はどちらかとあっちの世界が似合うと思うんだけどな」

 

 

「そんなことないわ、いくら貴方が変わっても根本は変わってない

だから、貴方はこっちに来て正解なのよ」

 

 

「……ま、ただし俺の記録は残らない(・・・・・・・・・)けどな」

 

 

佐渡はそう言うと飲み物を飲み干し瓦を歩いていき窓に手をかける

 

 

「……ねぇ、考え直してくれない?

私は」

 

 

「駄目だ、俺はお前達とは歩めない

……既に手遅れ(・・・)何だ」

 

 

その言葉と共に飲んでいたグラスを屋根に投げるとそれがパーティー会場に落ちる

 

 

「うん?何で空からグラスが……あ、あー!!!

雷撃姫ー!お前何でそんなところに登ってるんだぁ!?」

 

 

落ちた先に猿橋が居たらしく音に気付き屋根に座っている叢雲だけを見付ける

 

 

「え、ちょ、司令官!?」

 

 

叢雲が振り返ると既に佐渡の姿は無くパーティー会場に居る人達の視線を集めてしまう

 

 

「あれ?叢雲ー何してるんデースか!?」

 

 

「ちょっと叢雲!貴女どこに乗ってるのよ!?」

 

 

「叢雲ー!危ないから降りてきなよー?」

 

 

「おい雷撃姫!!!貴様グラスを割りやがったな!?」

 

 

「え、ちょ、は?し、司令官!!!!!」

 

 

 

…この後、叢雲だけ東雲大元帥や古鷹達に怒られたがパーティーは楽しく進んでいく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パーティー会場が騒がしくなっている様子を佐渡は聞きながら一人月夜を見ながら飲み直していた

 

 

 

「……悪くないな、こう言う騒がしいのも

ま、参加はしないがな」

 

 

そう呟くとグラスを月に掲げた後に壊れた銃を側に置く

 

 

「…………俺はお前の代わりが出来ているか?

……俺はお前の様に立ち回れているか?

……俺はお前の様に正義感で動けているか?

……教えてほしい…唯一俺が分からなかった人間性(・・・)を持っていたお前に

 

 

 

お前が来るべきだったこの世界に俺は馴染めているのか俺の弟子(我が友)よ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ここはうってかわり小笠原島

ソラ達が眠っている最中、一人カナが倒れていた海岸へと足を運んでいた

 

 

海には人の気配を察知したからか深海駆逐艦達が浮上し一人を見ていたがその姿を見た瞬間隠れる

 

 

「……ふーん?あんた達やはりここの深海棲艦では無いみたいね?」

 

 

海岸へと歩いていき海を見渡していると不意に真っ赤なスマホを取り出すとおもむろに電話をする

何回か長いコール音の後に一人の女性が電話に出る

 

 

『んー……誰だい、こんな時間に僕へ電話をする奴は?

僕が誰か知っててやってるのかい?』

 

 

「……えぇ、知ってやってるのよ

久しぶりね」

 

 

電話先に相手はエアの声を聞くと直ぐ様目を覚ます

 

 

『……へぇ、珍しいねエア

僕に電話を掛けてくるなんて、一体どんな風の吹き』

 

 

「分かるでしょ、カナをここに運ばせたのはあんたよね?」

 

 

『……何の事かな?』

 

 

「とぼけないで、研究施設を藻屑にしても良いのよ?」

 

 

『おー怖い怖い、それだけは勘弁してほしいねぇ

まぁその通りだよ、僕が彼女をそこに送った』

 

 

「…何のつもり?」

 

 

『何のつもりって別に

彼女は今までずっと働いてたからね、すこしばかりの休息見たいなものさ』

 

 

「へぇ?あんたがそんなことするとは思えないんだけど」

 

 

『ははは、今回だけは何の目論みもないよ

まぁ、ただ君の自由さを見習って欲しくて送っただけ』

 

 

エアが話していると深くため息をつく

 

 

「ふーん……まぁ良いわそれだけじゃあ」

 

 

『あ、それと一つ君に忠告ね』

 

 

「何よ?あんたからの忠告ってろくな」

 

 

エアが呆れた声で話していると相手はハッキリとした声で話す

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あまり肩入れしないことだよ人間(・・)

君は僕達よりそっちに近いんだから、特に提督と艦娘にはね』

 

 

「っ!!」

 

 

その言葉にビクンと身体が跳ねると勢いでスマホを切ってしまいしばらく硬直する

 

 

 

「……流石ね……電脳の支配者…私の素行もお見通しって訳ね…

 

ロキ」

 

 

エアがそう呟くと空から艦載機が一機近付いてきておりエアに何かを落とす

 

 

「…何かしら?恐らく監視者の艦載機だけど……」

 

 

その内容を見た瞬間今度は大きく溜め息を付く

 

 

「………まぁそうなるわよね 

はぁ……仕方無いわ、行かないとね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ハワイ島に」

 

 

 

内容にはこう書かれていた

 

 

 

伝達

 

四方ノ提督、及ビ姫達二連絡

 

 

ハワイ島ニテ会議ヲ開ク

 

 

集マレタシ

 

 

   監視者

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これはこれはまたまた波乱の予感がするねぇ……」

 

 

ロキは椅子に座りながらモニターを付けるとそこにはパーティーをする艦娘達の姿や溜め息を付くエアの姿が映し出されていた

 

 

 

「僕に隠し事は出来ないよ、ネットワークは全て掌握済みだからねぇ

でーも、僕の興味は今は君だけだよ」

 

 

ロキは全ての映像を一人の男に切り替える

 

 

 

「僕でも分からない君は何者だい?

ねぇ……小笠原鎮守府の提督、佐渡満さん」

 

 

佐渡の映った映像を眺め笑みを浮かべる

 

 

 

 

 





次回

温泉に行こう!

次回もカナ戦打ち上げ会です!因みにもう一つ話がありますので今回も長くなります…

自分事ですが、e6でフレッチャーが泥しました!!!
タシュケントと言い、今回のイベントは良くレアキャラが落ちてくれる……
後はe7でグラーフをお迎えしなくては……(使命感)









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賑やかな休日

…どうも佐渡です

現在、本土にてある場所に来ております

 

 

「おー!ここが温泉宿デースか!?

初めて見ましたー!」

 

 

「いや、あんた本土に居たのに見たこと無いの?」

 

 

「ないデスよ?私は不幸体質ですから外出なんて出来なかったデスからね……」

 

 

「結構大きいのだな、私も雑誌でしか見たことなかったが」

 

 

「グラーフ、これが普通らしいわよ?

これ以上デカイのもあるらしいし?」

 

 

「ふむ?私も温泉は初めてだな……」

 

 

「え?長門さん温泉来たことないの!?

ま、まさか休みの日とか…」

 

 

「あぁ、基本的に休みは鍛練に勤しんでたからな

外出自体初めてかもしれん」

 

 

「私が言えた義理でもないけどえぇ……

唐澤さんとは行かなかったの?」

 

 

「なっ!提督とはそんな仲ではない!!」

 

 

「本当に~?」

 

 

……はい、本土です

え?何で本土に居るかって?

…まぁ、その、うん

 

 

「……提督、大丈夫ですか?」

 

 

古鷹に心配されるとため息を付く

 

 

「…俺は、まぁ、大丈夫

それよりなぁ……」

 

 

とりあえず、こうなってしまった経緯を話そうと思います

え?何で珍しく俺が解説と言うかここに居るかって?

……何となくだよ何となく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、一人の艦娘の一言で佐渡達が動かされた

 

 

「温泉に行くデース!提督!!」

 

 

「「「……は?」」」

 

 

突然提督室に入ってきた金剛が机を叩きながら言うと三人が固まる

 

 

「……唐突だな?金剛さんや?」

 

 

「はい!テレビで温泉見たら行きたくなりましたー!

提督ー!行きましょうヨー!」

 

 

「待て金剛、ここは小笠原諸島の鎮守府だぞ?

行けるわけない」

 

 

「えー、行きましょうよー!」

 

 

「金剛、我が儘言わないの」

 

 

「むー……」

 

 

大井とグラーフに言われると金剛はむくれながら机に張り付いているとソファで寝転んでいたカナが頭を上げる

 

 

「行ってきたらどうなの?私が留守番してれば良いんだし」

 

 

「いやそれが問題だよカナさんや」

 

 

「何で?」

 

 

「いやいや、一応カナさん深海棲艦だし、姫だし、壊滅種何ですよ?

そんなの居るってバレたら大変なのですよ?」

 

 

「……今ここでぴったしの言葉をこの前聞いたんだけど」

 

 

「……一応聞くね?なんだい?」

 

 

「死人に口無し」

 

 

「それが一番駄目なんですけど!?」

 

 

佐渡がツッコミを入れるとカナが深くため息を付き立ち上がると金剛の上に覆い被さる

 

 

「なぁによ?この深海姫の泊地防衛最強とも言われている私を信用出来ないって言うの?」

 

 

「いやそうじゃなくてね?」

 

 

「か、カナ……重い……デース…!」

 

 

「何が心配なのよ、私に言ってみなさい何でもやるわよ?」

 

 

「えっとね?普通に考えて海軍の鎮守府に姫が居るのが問題なんですよ?」

 

 

「だからバレなきゃ良いんでしょ?」

 

 

「まぁ……そう…そうなんだけど…ね?」

 

 

目を反らしながら答えていると大井が深いため息と共に立ち上がりカナの肩を叩く

 

 

「カナさん、ちょっと良いですか?」

 

 

「なによ?雷巡?」

 

 

「大井です、とりあえず何故駄目かを詳しく伝えますので……」

 

 

大井に連れられるとカナは金剛から離れ金剛も深く息を吐く

 

 

「し……死ぬかと思ったデース……」

 

 

「金剛、お疲れ様」

 

 

「にしても、金剛、何故突然温泉に行きたいなんて言ったんだ?」

 

 

「むー……だってー…皆カナとの戦いで疲れてるだろうと思ってー……

だから少し休養をしたいなー…って思ってー……」

 

 

「金剛……」

 

 

叢雲達の事を思って言っている金剛に少しばかり心に来た佐渡だったが

 

 

「で、本音は?」

 

 

「比叡達が温泉行ってるの羨ましいからデース!!!!」

 

 

「このやろう!人の感動返せや!!!」

 

 

その瞬間感動は掻き消え金剛の頭を軽く殴る

 

 

「だから行ってきなさいよ、佐渡」

 

 

大井の話を聞いたはずのカナが再び佐渡に近寄ってくる

 

 

「いやだから」

 

 

「分かった、殺しはしないし大人しく鎮守府で待ってるから安心して」

 

 

「……そうじゃなくてね…えっと…」

 

 

佐渡が言い淀んでいるとカナが深くため息を付き佐渡に近付き耳打ちをする

 

 

「イーちゃんと私は平気、貴方を裏切るつもりもないしいつか連れてってくれれば良い」

 

 

「……だがな…」

 

 

「良いから行ってきなさいよ、安心して誰も撃たないし誰も傷付けない

約束は守るし鎮守府は綺麗にしておくから

 

 

 

ま、エアは居ないから心配なのも分かるけどね」

 

 

いつもエアが寝っ転がっている場所には珍しく彼女は居ない為か佐渡はため息を付く

 

 

「……アイツも一応姫のEliteって事だったんだよな…」

 

 

エアは深海棲艦達の召集に呼ばれ「何日か空ける」と佐渡に話しソラ達を連れ小笠原を後にしていた

 

 

 

「とりあえず、鎮守府は私とイーちゃんで何とかするから任せなさい

親方妖精も居るし大丈夫よ」

 

 

「それでもなぁ……」

 

 

佐渡が渋っていると続けて扉が勢いよく開かれ二人が入ってくる

 

 

「佐渡提督!」

 

 

「司令官!」

 

 

「……待てお前ら、嫌な予感がするから話すn」

 

 

 

「「温泉に行こう!!!」」

 

 

 

佐渡の制止を聞かず話す二人に頭を抱えるとグラーフに肩を叩かれ首を振られる

 

 

「行ってきなさいよ、私が小笠原を守って見せるから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……そんなこんなで押しきられ本土の温泉に来てますはい

 

 

「にしても、叢雲何で温泉行こうだなんて言ったの?」

 

 

「決まってるでしょ?東雲に何か追加で褒美をくれないと雷g……欲しいって頼んだのよ

そしたら温泉チケット貰ってね」

 

 

(恐喝…いや恫喝かしらねこれは……)

 

 

相変わらずたくましい叢雲に感心しているとそそくさと温泉宿に入ろうとする

 

 

「ほら、あんた達早く行きましょうよ!!」   

 

 

「あ!待つデース叢雲ー!!」

 

 

「ちょっと!はしゃぐ子供じゃないんだから!」

 

 

「楽しみだな、温泉は疲れが取れると言うからな」

 

 

「それだけじゃないと思いますよ、長門さん!」

 

 

「何?他にもあるのか!?」

 

 

「うーん、イーちゃんと来たかったなぁ…」

 

 

「日本の温泉……初めてだから楽しみだな!」

 

 

続々と温泉宿に入っていく皆を見ながら佐渡は頭に手をおくと古鷹に言う

 

 

 

「古鷹……頼みがあるんだけどさ?」

 

 

「…何となく分かりましたよ…

あれですよね、皆が何かやらかさないように見ていて、ですよね」

 

 

「流石皆のお姉さん兼天使!……すまん頼むわ

嫌な予感がするんだよ……」

 

 

「お姉さんかもしれませんが天使ではないですってば!

でも提督の嫌な予感は当たりますからね……

分かりました、が、折角ですからゆっくり休みましょう?佐渡さん」

 

 

「そうだな、折角の温泉だゆっくり休……めるかなぁ…」

 

 

かなり大きな不安を背負いながら休暇?の為に小笠原鎮守府のメンバーは温泉宿に入っていく

 

 

 

 

 

 

 





次回

ゆっくり?温泉に浸かろう!

珍しく小笠原鎮守府からの出先に艦娘達はテンションが上がる中佐渡はひやひやしていた


凄くお久しぶりですぅ……
嫌ね?ぶっちゃけイベント多すぎて死んでました…
何度も尽きるボーキサイトと燃料にバケツ…
艦これイベント突破こそしましたがかなり辛かったです……

あ、因みにきちんとグラーフは確保しました!(やったぜ)
これで小笠原艦隊がそろったぁ!!さて、レベリングしないとなぁ






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賑やかな休日 二

「こちらがお部屋になります」

 

 

「「「「おぉー……!!」」」」

 

 

佐渡達が案内されたのは八人用の大部屋でありかなり広い部屋であった

初めての外泊に全員テンションが上がってるのか部屋に着くなり物色を始める

 

 

「凄い!七人でも全然広いデース!!」

 

 

「景色…綺麗ですね!」

 

 

「えっと……これは食べていいのか?」

 

 

「へぇ…これマッサージ機?使ってみても良いのかしら?」

 

 

「デカイテレビね?本土って何やってるのかしら?」

 

 

「畳ー!向こうにもあるけどこっちは何か違う!!」

 

 

「布団はここにあるのか!しかもフワフワではないか!?」

 

 

「あんまりはしゃぐなよお前らー」

 

 

金剛達のはしゃぎっぷりに軽くため息を吐くと中居さんもふふふと笑う

 

 

「では何かありましたら電話でお呼びください

提督様のお部屋はこちらになります」

 

 

「え!?て、提督は別部屋なのデースか!?」

 

 

「当たり前だろ?俺は男なんだから」

 

 

「ちょっとそれずるくない!?」

 

 

「いやいやいやいや、男女別だろうが普通は!!」

 

 

「「「えー?」」」

 

 

「何でそこに疑問を持つんだよ!!

全く、休暇だからって他のお客に迷惑をかけるなよ?」

 

 

佐渡はそう言うと中居さんに連れられ別の一人部屋に案内される

 

 

「こちらが提督様のお部屋になります」

 

 

「おお、要望通りですね、ありがとうございます」

 

 

叢雲達の部屋が広いのに対し佐渡の部屋はかなり狭く、テレビ、暖房、冷蔵庫、風呂場と電話だけと最低限の家具しか置いていない部屋を選んでいた

 

 

「あの……本当にこの様な部屋でよろしかったのですか?」

 

 

「えぇ、最高です

私は広い部屋は苦手ですからね」

 

 

「分かりました、ですが……食事すらもキャンセルなさらなくても……」

 

 

「大丈夫です、その代わりきちんとあいつら(艦娘達)の夕飯を豪勢にしてあげてくださいね?」

 

 

「……分かりました、では何かご用の際はお電話でお呼びください」

 

 

中居さんが居なくなりしばらくすると持っていた荷物を仕舞うわけでもなく畳に置くと直ぐ様窓をゆっくりと開け外の間取りを確認する

 

 

(高さ…飛び降りるのは不可能だが、ロープを使えば下には降りれるな

下には…特に危険物や林等は無し

辺りには木が生えてるから狙撃は難しい

だが、警戒の為に障子は閉めておこう

近くの窓には飛び移れる…いざとなったら……)

 

 

そこまで考えるとハッと思い出して深呼吸をし、障子を閉める

 

 

「……やっぱりこれだけは抜けないな全く

悩ましい限りだ」

 

 

そう言うと荷物から持参した給湯器を取り出すと水を入れ沸騰させ珈琲を淹れる

 

 

「……ふぅ……」

 

 

一息付くと辺りの音を気にしながらパソコンを取り出すと普段は開かないあるサイトを開く

それは

 

 

「…今は必要無いかもしれんがまぁ見るだけ価値はあるからな

…使い勝手が良さそうだなこの武器」

 

 

ある一定の人間しか入ることを許されていない武器や兵器の売買を目的にしている闇サイト

佐渡は良く利用しており普段は叢雲達が居るから開けない物であった

 

 

「…捨てきれんからな、死神(・・)の名は」

 

 

そう呟くと佐渡は何かを購入し部屋を後にする

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

パソコンの画面には

 

 

『対深海棲艦、艦娘用散弾銃及び弾薬のご購入ありがとうございます

          クリス・マーカロイド様』

 

 

と書かれていた

 





次回

偶然の再会?

次回ものんびりと佐渡達の休日が書かれていきます!
何かこうのんびりしたのを書くのも良いですねぇ……












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賑やかな休日 三

佐渡が部屋を出るとのんびりとした様子で自販機に向かっていると後ろから声を掛けられる

 

 

「佐渡提督さーん!」

 

 

「んー?あれ、青葉ちゃん!?

な、何でここに!?」

 

 

「えへへー、久しぶりです!実はここには取材に来ておりまして……」

 

 

「へぇ?この旅館何かあるの?」

 

 

「ここは艦娘が泊まれる数少ない旅館ですからね

何かスクープがあるかと思って休暇を使って来てみたんですよ!」

 

 

「ほほう?相変わらず取材熱心だね?」

 

 

「いやいや、そんなことありませんよ!」

 

 

古鷹との事件後、青葉はすっかり明るくなっており自身の趣味である新聞作りに励んでおり佐渡も嬉しく思っていた

 

 

「そう言う佐渡提督は何故この旅館に?」

 

 

「あー……実は叢雲達が来たいってうるさくてな

渋々だ」

 

 

「あー…成る程です……ってちょっと待ってください?

小笠原鎮守府は大丈夫何ですか!?」

 

 

「んー、何とか

信頼してる奴が守ってくれるらしいからな」

 

 

「……ほほう?エアさんでは無さそうですね?その感じは?」

 

 

「いつか紹介するよ」

 

 

「楽しみに待ってますよ!」

 

 

そんな雑談をしていると佐渡は不意に自販機から飲み物を買うと青葉にも渡し近くのソファに腰掛ける

 

 

「そう言えばさ」

 

 

「はいはい?」

 

 

「今日はこの後予定でもあるのかい?」

 

 

「んー……この後…は取材内容をまとめる位ですかね?」

 

 

「ほほう…?なら一応暇なのだね?」

 

 

「え?えぇ…まぁ、まぁ?」

 

 

「ならさ、この旅館に泊まりたいとかは思わないのかい?」

 

 

「んー、確かにここは良いところですから泊まりたいですけど……」

 

 

そこまで言った瞬間青葉はハッとし佐渡を見るとニヤリと笑っており手を取られる

 

 

「ちょ!ちょっと待ってください!佐渡提督!!」

 

 

「良いや!待たないねぇ!!こっちに来るんだ!!!」

 

 

佐渡は青葉の手を掴みある部屋に連れ込むとそのまま背中を押す  

 

 

「お前ら!!一人追加だぞ!!!」

 

 

「ちょっと!佐渡提督!!」

 

 

「ん?何よ司令官って……あら?青葉じゃないの?」

 

 

「おー!青葉デース!

青葉も来てたんデースか?」

 

 

「青葉!この旅館に来てたの!?」

 

 

「いや、ちょ、待ってください!?」

 

 

「何だ?泊まる為の服がない?

よーし!なら明石さんに取ってきて貰おう!!」

 

 

「ちょ!心読まないでくださ!じゃなくて!!!」

 

 

「そう言うことだから、青葉の事頼むぞ皆!」

 

 

「「「「はーい」」」」

 

 

「ちょっと!待ってくださいぃぃぃぃぃ!!!!!

佐渡提督ぅぅぅぅぅ!!!????」

 

 

佐渡は直ぐ様扉を閉めると残された青葉を金剛が捕まえ持ち上げると直ぐ様イムヤが靴を脱がせ

 

 

「一名追加デース!!!」

 

 

「待って!金剛さん!待ってぇぇぇぇ!!」

 

 

そのまま長門に投げ付けると上手くお姫様だっこをし椅子に座らせると大井と夕張が飲み物とお菓子を渡す

 

 

「はい、オレンジジュースで良いかしら?」

 

 

「お饅頭だよ!」

 

 

「あ、どうも……じゃなくて!」

 

 

すると古鷹が青葉の肩を軽く叩くと首を横に振るう

 

 

「諦めなよ青葉、提督はあぁ言う人だから」

 

 

「そうよ、大人しく甘えときなさい

どうせ後でフロントに伝えるでしょうし」

 

 

「………はぁ…と言うか皆さん馴れすぎじゃないですか?」

 

 

「「「「だって提督(司令官)だし?」」」」

 

 

「…………あの人、本当になんなんですか…」

 

 

「ま、諦めなさい

ああ見えて意外と周りを見ているのよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えぇ、お願いしてもよろしいですか?」

 

 

『良いですよ!ですが見返りが欲しいですねぇ?』

 

 

「んー、この旅館の宿泊六泊七日はどうです?」

 

 

『……待ってください?流石に長くありません?』

 

 

「休暇は長い方がよくありませんか?」

 

 

『いやまぁ、嬉しいですが…あえて三泊四日でお願いします』

 

 

「良いですよ、それくらい大したことありませんし」

 

 

『相変わらず貴方の財力はどこから来てるのか……

でしたら今晩には届くように送りますね!』

 

 

「ありがとうございます!では旅館の話はまた今度」

 

 

『はーい、では失礼致しますね』

 

 

電話を切ると佐渡は軽くため息を付き空き缶を片手に廊下を歩きゴミ箱に投げ入れ旅館を歩く

 

 

(……まぁ、普通の旅館だよな

抜けないなこの癖は)

 

 

佐渡は旅館の非常口や窓の配置、自販機の配置を見ており旅館内をくまなく歩いていく

 

 

(んー……部隊(・・)からの癖だけど治さないとなぁ……)

 

 

しばらく歩き全てを見終えると再びソファに座ると聞きなれた声が聞こえ

 

 

「…あれ?ちょっと待って

俺幻覚でも見てるのか?あれ?」

 

 

「…提督私にも見えます

疲れてるのでしょうか?」

 

 

「いや二人とも失礼だよ?

佐渡君…だよね?」

 

 

「えぇ、そうですよ

人の事を幻覚と呼ぶとはかなり失礼ですねぇ?

猿橋さん、大和さん?

そして、人の顔をまじまじ見ないでくださいよ石澤さん」

 

 

そう、その声の主は猿橋、大和、石澤でありその姿を見て呆れながらもため息を付いていると

 

 

「あっれー?佐渡提督じゃーん?久しぶり~」

 

 

「お!そこに見えるのは佐渡君だね!」

 

 

その反対側からは葛城と北上が来ており佐渡は挟まれてしまう

 

 

「……俺としたことが」

 

 

「うん?何か言ったか?佐渡」

 

 

「いや、何でもないですよ

にしても珍しいですね?こんなところで会うだなんて?」

 

 

「いやー、榛名が行きたいって煩くてな……」

 

 

「うちは霧島がね……」

 

 

「こっちは比叡だねー…」

 

 

 

「「「………ん?」」」

 

 

(金剛だな…原因は…)

 

 

今回の集結の原因が金剛にあると分かった佐渡は頭を悩ませながらため息を付く

 

 

 

 

 





次回

大混乱?温泉に入ろう!

次回温泉回であり少しシリアスも含まれるかもしれません!(多分ね!)

と言う訳で久しぶりです
失踪?しませんとも!ですがねぇ……少しだけスランプ気味ですはい()











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賑やかな休日 四

佐渡の様子を見た猿橋は顎に手を当てると「なーるほど?」と言い

 

 

「ははーん、今回集まったのは佐渡の所の金剛ちゃんが原因かー?」

 

 

「…えぇ、恐らく

あいつめぇ…姉妹とも話してやがったか……

すいません皆さん…」

 

 

「まぁ、良いんじゃないか?私もしばらく休暇は貰ってるし

艦娘達の良い休息になる」

 

 

「そうそう、仲が良い艦娘との休暇は楽しいものだからねぇ!」

 

 

そんな話をしていると猿橋が佐渡の前に来ると肩を叩く

 

 

「俺は正直金剛ちゃんには感謝してるぜぇ?

だってよ、念願のお前と『裸の付き合い』が出来るんだからな!!!」

 

 

「……は?」

 

 

「よーし!石ちゃん!温泉行こうぜ!!!」

 

 

「お、良いですね!私も汗を流したかったし」

 

 

「じゃあ北上ちゃん、私達も行こうか?」

 

 

「そーだねー、私もここの温泉楽しみにしてたしー?」

 

 

「ちょ、ちょっと俺は!」

 

 

「いーじゃねぇか!ほらほら行くぞ!!」

 

 

猿橋に背中を押され無理矢理に温泉へ向かわされてると少しだけ佐渡は微笑み小さく呟く

 

 

「………仕方ない奴だな」

 

 

「ん?何か言ったか?」

 

 

「え?……あ、いや何でも…じゃなくて!服くらい取りに行かせてくれ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらくして佐渡達は温泉の脱衣所に来ていたのだが

 

 

「……なぁ、佐渡…」

 

 

「なんですか?」

 

 

「…何で脱がないんだお前?」

 

 

石澤と猿橋が脱ぐ中、佐渡だけ近くの自販機を背に飲み物を飲んでいた

 

 

「二人が先に入ったら俺も後を追いますよ」

 

 

「なんだぁ?見られたくないものでもあるのかぁ?」

 

 

「んー…そう言う訳でもありませんが人に背中を取られるのが苦手でしてね」

 

 

「…そう言えば、佐渡君って背後に立たれるの嫌いだよね?」

 

 

「まぁ、仕事柄何をされるか分かりませんからね」

 

 

「ふーん、良いか

じゃあ佐渡も脱いでこいよ!」

 

 

二人は着替え終えるとそそくさと温泉に入っていくと「おぉー!!」と声が聞こえる

 

 

(……ここで逃げるも得策だが

まぁ、付き合いも大切か

……めんどくさいな)

 

 

そんなことを思いながら脱いでいくと背中の古傷が少しだけ痛む

 

 

(……まだ完治はしないか)

 

 

佐渡は風呂場に入るとその光景に思わず声を漏らす

 

 

「……ほぅ、凄いな」

 

 

幾つもある多彩な浴槽に大自然が広がっており、昼間だと言うのに湯気が立ち込み幻想的に見える

 

 

 

「やって来たなぁ!佐渡!!」

 

 

すぐそばに居た猿橋に肩を掴まれるがそんなことを気にする様子も無く佐渡は目の前の光景に圧倒されていた

だが、その後ろに居た石澤は佐渡の背中を見てしまった

 

 

「……ね、ねぇ佐渡君…その背中の傷…」

 

 

「……ん?何ですか?」

 

 

「い、いや……」

 

 

石澤が目を反らすと猿橋が気になったのかそれを見ると

 

 

「っ!……ほら!佐渡風呂浸かろうぜ!!」

 

 

猿橋は話題を無理矢理変えると佐渡を押しながら湯船を向かっていく

 

 

「…そうだな、たまには休日を楽しまないとな」

 

 

そう思いながら佐渡は猿橋に押されるがままに湯船に向かっていきゆっくりと浸かっていく

 

 

 

「はぁ〜‥‥‥癒やされるぅ〜‥‥」

 

 

 

「いい気持ちだねぇ〜‥‥」

 

 

 

「‥‥‥」

 

 

三人は湯船に浸かると深く息を吐きしばし無言で堪能していると猿橋が話題を出す

 

 

 

「で、佐渡ちょっと疑問なんだけどさ」

 

 

 

「何ですかー?」

 

 

 

「‥‥お前って『人間』だよな?」

 

 

 

その質問に石澤がビクンと跳ねゆっくりと二人を見ると猿橋は真面目な顔をしており佐渡は空を見上げながらのんびりしている

 

 

 

「‥‥良くそれ聞かれますねぇ〜‥そんなに人じゃないですか?」

 

 

「いやまぁ、別にそう言う訳じゃねぇけどよ‥

お前、失う事を恐れてないと言うか‥死を恐れてないって感じがしてよ?

明らかに他の海軍の奴等と違うだろ?

それにお前の事を何故か調べられない‥‥だから」

 

 

 

「人間ですよ、列記とした人間です

ちょっと出生と生きてきた環境が特殊な‥‥ね」

 

 

 

猿橋の質問を返すとのんびりとした様子で空を見ていると瞳を閉じる

 

 

 

「そ、そうか‥‥なら良かった

もしかしたら深海棲艦なのかと思ったぜ‥‥」

 

 

 

 

「ははは、それならもっと手際良く海軍を潰しますよ

こんな『クソ組織』」

 

 

 

「「‥‥え?」」

 

 

 

佐渡の発言を聞いた二人は同時に振り向きその瞬間ハッとし訂正しようとするが

 

 

 

『おぉ!!広いデース!!』

 

 

 

『わぁー!本当に広いですね!お姉様!!』

 

 

 

 

『温泉なんて初めて来ましたからテンション上がります!』

 

 

 

 

隣の女子風呂からそんな声が聞こえ佐渡の言葉そっちのけで振り返る

 

 

 

「‥‥今のって金剛ちゃんと榛名‥‥だな」

 

  

 

「‥‥比叡さんの声もしたよね?」

 

 

 

「「‥‥と言うと?」」

 

 

 

 

二人が顔を見合わせると再び女子風呂から声が聞こえる

 

 

 

「大和さん!ほら入りましょうよ!」

 

 

 

「ちょ、ちょっと待って!今髪をまとめてますから‥‥」

 

 

 

「わぁ‥‥北上さん凄いですよ‥!」

 

 

 

「ちょっと阿武隈!北上さんは私と入るのよ!!

北上さん!足元が滑りやすいからお気をつけてくださいね!」

 

 

 

「はいはい、ありがとね大井っちー

後、掃除しなくても良いからねー」

 

 

 

そんな声を聞いていると二人は見合わせ頷きそろそろと女子風呂の方へと向かっていく

 

 

 

「待った二人とも何するつもり?」

 

 

 

「しー!決まってるだろ?覗くんだよ!!」

 

 

 

「いやまて、何高校生見たいなノリになってるんだ?」

 

 

 

「止めないでくれるか!佐渡君!!!これは私達の戦いだ!!」

 

 

 

二人に呆れながらもため息を付くと女子風呂に背を向けながら湯船に沈む

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 






次回

覗き大作戦?


女子風呂から聞こえてくる艦娘達の声に猿橋と石澤は興奮し高校生見たいなノリで覗きをしようとするが‥‥?



凄いお久しぶりです‥‥すいません!思い切り忘れてました!!
ゲーマー故にゲームをやりすぎてしまう‥‥




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賑やかな休日 五

一方その頃女湯では葛城提督筆頭に何人かの艦娘が温泉に入りのんびりと寛いでいた

 

 

「いやー‥‥生き返るなぁ‥‥

比叡ちゃーん!お酒持ってきてー!」

 

 

 

「駄目ですよ!この間飲み過ぎて大変な事になったじゃないですか!?」

 

 

 

「えー!飲ませてよケチー!」

 

 

 

「駄目です駄目です!司令は大人しくしててください!!」

 

 

 

二人が言い争いをしている姿を横目に金剛が榛名に疑問をぶつける

 

 

「ネー?榛名、葛城提督って酒癖悪いんデースか?」

 

 

「らしいですよ?何でもすぐ酔ってしまうのに、味が好きらしいのですよ

しかもキス魔になるらしいですし?」

 

 

 

「へー?」

 

 

「それだけじゃないよー、提督の酒癖の悪さはー」

 

 

 

同じ湯船に入っていた北上が阿武隈の髪を弄りながら顔だけ向ける

 

 

「キス魔は当然の事、駆逐艦から戦艦まで幅広い艦娘に手を出すし脱がそうとするし、触ろうとするからね

因みに男には全く発情しない正真正銘のレズらしいからね

提督に男の影は見たことないね」

 

 

 

「へ、へぇー‥‥そうなんですか‥?」

 

 

 

「そうよぉ、だから私大井ちゃんの事も狙ってたのになぁ‥?」

 

 

 

北上と一緒に入っていた大井の後ろから胸を触りながら葛城が抱きしめる

 

 

 

「ちょ!」

 

 

 

「女同士何だから良いじゃなーい?それに貴女もレズなんでしょう?

佐渡君から聞いてるわ」

 

 

(あの人余計な事を‥!‥‥‥ん?ちょっと待って?)

 

 

 

大井が拳を握り締めながら考えているとゆっくりと北上を見る

 

 

 

「大井っちの読み通りだよ?」

 

 

 

「‥‥‥やっぱりですか‥じゃああの人が居なくなったのも‥‥」

 

 

 

 

「そそ、あたしを見付けて葛城提督に掛け合ってくれたんだー

あの時の佐渡提督、凄い必死だったよ〜

「大井は無実なんだ!!」って言っててさ」

 

 

 

「そうね、佐渡君大井ちゃんの無実の証拠を集める為に凄い根回ししたらしいわよね

艦娘の為にあそこまでやる提督、普通は居ないわ

だから私も信じたんだけどね」

 

 

 

その言葉を聞いた大井は顔を半分湯に付ける

 

 

 

(‥‥‥そっかあの人はあの時から信じてくれたんだ‥)

 

 

そんな少し真面目な話をしていると金剛が何故か湯船から出ており男風呂側に歩き竹で出来た垣根の前で仁王立ちをする

 

 

 

「‥‥‥‥金剛ちゃん?」

 

 

 

「あ、あれ?お姉様?一体何を‥‥」

 

 

 

「嫌な予感がするわね‥」

 

 

 

大井が直感でそんなことを思っていると金剛が少し息を吸うと声を張り上げる

 

 

 

「てーいーとーくー!!!

そっちにー!いーるーんーでーすーか!?」

 

 

「ちょ!お姉様!?」

 

 

 

「あらら‥‥相変わらずねぇ」

 

 

 

「あんのお馬鹿!!」

 

 

 

大声で声を掛けられた佐渡は深くため息を付くとそこそこの声量で

 

 

 

「いるぞー!だからといって!こっち来るなよー!?」

 

 

 

「「「「‥‥‥は?」」」」

 

 

 

佐渡はのんびりし過ぎた為か、いつも乱入してくる金剛の事を話してしまい一緒に入っていた石澤と猿橋に睨まれる

 

 

 

「‥‥‥‥あ、やべ」

 

 

 

その視線で気付いた佐渡は立ち上がろうとするが二人に肩を掴まれる

 

 

 

「おーおー?まちーや佐渡ー?さっきのどう言う事かなぁ?」

 

 

 

「そうだよ佐渡君?今のはどういうことかなぁ?説明してくれるかなぁ?」

 

 

 

「あー‥‥‥えっと‥‥これは‥‥アハハ‥‥」

 

 

 

「分かりましたー!でしたら後で混浴の温泉にー!一緒に行きましょー!?」

 

 

 

「行かねぇよ!!!」

 

 

 

そうツッコミを返すと更に二人の力が強くなりニコニコと笑い出す

 

 

 

「おーおー、佐渡さんや‥‥どうやら艦娘と裸の付き合いをする程に仲が良いということかなぁ?」

 

 

 

「これは軍法会議ものだねぇ?佐渡君????」

 

 

 

「いや、あの、ご、誤解ですよ?

俺は別に入ってなんか‥‥‥」

 

 

 

「「本当に???」」

 

 

 

二人からの圧が凄く目を逸らしていると何故か女湯の方が騒がしくなり二人はそちらを向く

 

 

 

「‥‥ん?何か騒がしいね?」

 

 

 

「何かあったのか?」

 

 

 

猿橋と石澤が佐渡から離れると佐渡は音を出さないように湯船から出ると静かに脱衣場へと向かう

 

 

 

「やっぱり我慢出来ませーん!!

提督ー!!今行くデース!!」

 

 

 

「待ちなさい金剛!貴女向こうに誰が居るかも分からないのに!!」

 

 

 

「そ、そうですお姉様!!駄目ですよ!!」

 

 

 

「退くデース!!私は!提督と!混浴するんデース!!!」

 

 

 

その話を聞いた石澤と猿橋は顔を合わせると冷や汗を掻く

 

 

 

「な、なぁ、石澤さん

確か金剛さんって戦艦だよね?」

 

 

 

「そ、そうだね‥‥霧島のお姉さんだね‥‥

で、でもまさか‥この柵を壊すなんて‥ねぇ?」

 

 

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥でもさ『金剛』だぜ?」

 

 

 

 

その言葉に嫌な予感を巡らせた二人は慌ててタオルを腰に巻き

 

 

 

「佐渡!!!」

 

 

 

「彼女を!!!!」

 

 

 

と叫びながら振り返るとそこには佐渡が居らず二人は唖然とする

 

 

 

「あのやろう!!逃げやがったな!!!」

 

 

 

「見捨てるなんて!!見損なっ」

 

 

 

と言おうとした瞬間柵が音を立てて倒れ始め音に釣られて二人が見ると向こう側が見えてしまう

 

 

 

「ヘーイ!!提督ー!!!思い切って!倒してみたよー!!

一緒に入りましょー!!!」

 

 

 

仁王立ちする金剛の前を慌てて比叡がタオルで隠しているがその比叡達と猿橋と石澤の目が合うと

 

 

 

「「「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」」

 

 

 

 

「「あぁぁぁぁぁぁ!?!?!?」」

 

 

 

 

と絶叫が鳴り響き二人は阿武隈と榛名に桶をぶつけられる

 

 

 

「アハハ!豪快だねぇ!金剛ちゃん!!」

 

 

 

「ちょっと提督ー?笑い事じゃないと思うよ?これ」

 

 

 

桶をぶつけられた二人はその場に倒れてしまい女性陣は慌てているのに対し金剛は辺りを見渡し首を傾げる

 

 

 

「あれー?提督がいませーん?

提督ー?」

 

 

 

「‥‥‥ほっ‥」

 

 

 

「提督、上手く逃げたみたいですね」

 

 

 

「多分金剛の口ぶりで読んでたんだよ思うわよアレ」

 

 

 

そんな話を叢雲と古鷹は共に肩まで湯船に浸かりながら話していた

 

 

 

 

 

 





次回


偽物と本物


お風呂での騒ぎを回避した佐渡は自室に戻ろうとするがその途中で意外な人物と出会う


お久しぶりです(何ヶ月前に投稿したか忘れましたが‥‥)

いやー申し訳ありません!ちょっとテイワット大陸を楽しんでたら忘れてました!!
今後は少しずつ更新させてもらいます‥‥‥出来たらいいな‥‥







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偽物

「‥‥‥何か凄いことになってるな‥‥

早めに退避しといて正解だったな‥‥」

 

 

 

佐渡は一人先に風呂から出ると身体を軽く動かし骨を鳴らす

 

 

 

「あの二人には悪いけど今だけはのんびりさせてもらおうかなぁ

どうせ夜になったら俺の部屋に来そうだし‥‥‥‥」

 

 

 

そう呟き一人廊下を歩こうとした瞬間

 

 

 

「‥‥‥‥佐渡?」

 

 

 

「はい?」

 

 

声がする方へと顔を向けるとそこには

 

 

 

「やはりお前か、佐渡」

 

 

 

「こんな所で会うなんて珍しいですね

唐澤さん」

 

 

 

そう、陸奥を連れていた浴衣姿の唐澤であった

陸奥は軽く手を振ると笑みを見せ佐渡もそれを返すと唐澤がゴホンッと声を出す

 

 

 

「陸奥、別に今は仕事中じゃないんだ

普通に話したらどうなんだ?」

 

 

 

「あら良いの?てっきり二人だけで話でもしたいのかと思ったのだけれど」

 

 

 

「二人だけの話???」

 

 

 

佐渡は首を傾げると唐澤は陸奥の頭を撫でる

 

 

 

「相変わらずだなその観察力

すまんが」

 

 

「えぇ、分かってるわ

少し外すわね」

 

 

 

陸奥は会釈をすると唐澤とは反対側に歩いていくと唐澤に肩を掴まれる

 

 

 

「話したいことがある

すまんが誰にも聞かれたくないんだ付いてきてくれ」

 

 

 

「え、えぇ?」

 

 

 

出会い頭そんなことを言われ、佐渡は困惑しながらその後に付いていきしばらく歩いていると屋上へと連れて行かれる

 

 

 

「で?何のお話でしょうか?唐澤さん」

 

 

 

「‥‥‥‥‥‥いくつかある

1つ目は長門の事だ‥‥本当にありがとう」

 

 

 

そう言うと唐澤は頭を下げる

 

 

 

「‥何の話ですか?」

 

 

 

「長門からな良く君の鎮守府の話を聞くんだ

それは楽しそうに‥‥な

長門はずっと戦場に身を置き戦うことのみで何とか自制を保っていた

長門の願いを聞き届け‥私は‥‥それが一番いいと思ってた

でも違ったんだな」

 

 

「‥‥‥‥‥」

 

 

 

「私は‥‥艦娘達の願いを聞き届け、それで居てほしいと願ってる

でも‥‥君は違う

艦娘の願いを聞き、そして艦娘の心のケアすらやってみせる

素晴らしい提督だと」

 

 

 

そこまで言うと佐渡はどこからか取り出した空き缶を唐澤の頭に乗せる

 

 

「‥‥‥‥なんの真似だ?佐渡?」

 

 

 

「いや‥‥‥何かクソ真面目過ぎません?

長門と言い、貴方といい‥‥もっと気楽に生きませんか?」

 

 

 

そう言うと空き缶を取り唐澤の肩に当てる

 

 

 

「ほらほら、一々頭なんて下げてないで上げてくださいよ

青空が綺麗ですよ」

 

 

 

佐渡は歩き出すと屋上の柵を掴むと腰掛け唐澤は頭を上げる

 

 

 

「佐渡‥‥相変わらずお前と言うやつは‥‥」

 

 

 

「ハハ、俺はそう言うの苦手なんでね

長門には何もしてないですよ俺は

ただ、あの鎮守府は『休憩所』他の鎮守府とは運営方法が違います

それだけです

疲れた者達が休める場所です

 

 

‥‥‥俺がどんな事をしても守ると誓った場所です

それぐらいしか『今の』俺には出来ませんから」

 

 

 

「‥君は艦娘が大好きなのか‥?」

 

 

 

「えぇ、大好きですよ

あいつらの居場所は俺が守るために俺はあの場所にいる

だからまぁ、何かあったらうちに連れてきてください

必ず何とかしてみせます」

 

 

唐澤が見た佐渡の真っ直ぐな眼を見ると安心しため息を付きボソッと呟く

 

 

 

「‥ふぅ‥‥どうやら君には勝てない様だね

提督としても人間としても」

 

 

 

「何か言いました?」

 

 

 

「いいや、何でもないよ」

 

 

 

「で、話はこれだけですか?」

 

 

 

佐渡が首を傾げると唐澤が一瞬で険しい顔をし恐る恐る話し出す

 

 

 

「‥‥‥‥いや、もう一つ‥正直こっちが本題だ」

 

 

 

 

「はい?何です?」

 

 

 

唐澤は深く深呼吸をすると佐渡を真っ直ぐ見る

 

 

 

「‥‥‥君は何者だ?

‥いや、お前は‥‥‥誰だ(・・)

 

 

 

「‥‥‥‥え?」

 

 

 

唐澤から言われた言葉に首を傾げると頭を掻く

 

 

「えっと‥‥‥自己紹介した方が良いんですかね?

じゃあ改めて聞きますか?」

 

 

 

佐渡は半笑いになりながら話しているが唐澤は真剣そのものであった

 

 

「‥‥‥何でそんなこと聞くんです?

俺は佐渡満ですよ?普通に、大元帥たるあのジジイにヘッドハンティングされた」

 

 

 

「‥‥あぁ、それは知ってる

お前が海外の軍人で優秀な指揮能力を持っていたから特別に連れてきたと言うことは

私が聞いているのはお前の名前(・・)だ」

 

 

 

「名前?そんなの、佐渡満って」

 

 

 

「‥‥‥‥あぁ、確かに来る名前はそうだったな

だが、お前は佐渡満ではないだろ?」

 

 

 

唐澤は持っていたスマホを佐渡に手渡すとある写真が写っており驚愕する

 

 

 

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」

 

 

 

「ならこいつは誰なんだ

お前と全く同じ名前、同じ職業、同じ経歴を持つこの男は?」

 

 

 

その写真とは佐渡の履歴書であるが何故か写真だけが全く違っており目付きが変わる

 

 

 

「‥どこでこれを?」

 

 

 

「‥言えないな、いった」

 

 

 

と言いかけた瞬間佐渡は隠して持っていたナイフを唐澤の首に突き付ける

 

 

 

「‥‥‥‥言え、生きてることを後悔したくはないだろ?」

 

 

 

「ッ!!!‥‥‥言えばその子を殺すだろ‥‥お前は‥‥」

 

 

 

 

「‥‥なるほど、艦娘か」

 

 

 

「!?」

 

 

 

首にナイフを突き付けられながら唐澤は息を飲むと佐渡はスマホを片手で操作すると写真を消去する

 

 

 

「俺を嗅ぎ回るな唐澤

死に急ぎたくはないだろ」

 

 

 

佐渡の威圧する様な低い声に唐澤は身動き取れずに居ると何とか声を振り絞る

 

 

 

「知り‥‥たいんだお前を‥‥何者なのかを」

 

 

 

「‥‥‥知る必要はない

俺は与えられた任務を遂行する」

 

 

 

「それでも私は‥!お前を仲間だと‥!思ってるからだ!!!」

 

 

 

唐澤の言葉に眉一つ動かさない佐渡の目を見るが一瞬辺りを警戒していることが分かるが動けないでいると静かに話し出す

 

 

 

「悪いが俺は仲間ごっこ(・・・・・)に参加するつもりはない

それに都合が良いな、あれだけ俺を嫌ってた癖に」

 

 

 

「それは‥‥‥」

 

 

 

「だがお前がここで退場するのは不都合だ

だから処理(・・)する」

 

 

 

佐渡は一瞬でナイフを仕舞うとペン程の何かを取り出すと唐澤の首に打ち込む

 

 

「な、何を‥‥‥ウッ!!!」

 

 

 

その瞬間唐澤は崩れる様に倒れると佐渡を見上げる

 

 

 

「安心しろ死なせない

だが、忘れてもらう」

 

 

 

佐渡の目はまるで濁った瞳をしておりその姿はいつもの陽気な佐渡とは違っていた

 

 

 

「‥おま‥‥え‥‥は‥誰‥‥‥なん‥‥‥‥‥」

 

  

 

と言いかけたが唐澤は目を閉じ眠ってしまうとその身体を片手で掴むと椅子に座らせる

 

 

 

(ここで、コイツを置いていくと陸奥にバレる

ある程度時間が経過したら起こして戻るとしよう)

 

 

 

コーヒーを自販機から買ってくるとその場で開けコーヒー半分捨て唐澤の隣に置くと佐渡も飲みだす

 

 

 

(全く不殺ってのも面倒くさいものだ

こんな奴、殺しても問題ないだろうに)

 

 

 

ため息を付くと空を見上げながら呟く

 

 

 

「‥‥‥俺が誰‥‥かそんなの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

偽物(・・)に決まってるだろ

俺はあの馬鹿の代理(・・)で来てるんだからな」

 

 

 

そう言いながらコーヒーを軽く口にする

 

 

 

そして青空を見上げながらふと一人を思い出す

 

 

 

「‥‥‥そう言えば、エア

会議があるとか言っていたな‥‥‥

どこでやるんだ?」

 

 

 






次回

厄介な出会い


佐渡達が休暇を楽しむ中エアは深海棲艦達に呼ばれある島を目指していた


久しぶりの投稿!!!
ぶっちゃけちょっと忘れてたりしましたねぇ‥‥‥
申し訳ないです!





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