転生者が見る人理修復 (完詰岩志)
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没になったネタ集 特異点Fの没ネタ1

没になった(物理)ネタ、パート1! 本編とは一切関係ないんで、そこら辺よろしくお願いします。

特異点Fの「待ち伏せする相手を襲撃する方法、その一例」の修正前です。


 その洞窟は、今、大聖杯の光だけで照らされている。すると当然、そこは怪しげな光で包まれることになる。

 その中央。

 ちょうど大聖杯の前に、二人は鎮座していた。

 

 セイバー、そしてアーチャー。

 残った2騎のサーヴァントは、ただ静かに来訪者を待ち構えている。

 

「……来たか」

「……」

 

 アーチャーがつぶやいた。来訪者の訪れを。それはもちろんセイバーも承知している。

 2騎は立ち上がった。一方は剣を、もう一方は弓を持って。

 完璧な布陣であった。少なくとも、この状況においては。

 

「どう切り抜けてくるか……」

「……」

 

 2騎は負けるつもりなど毛頭ない。それはここで待ち構えていることからも分かる。

 通常のサーヴァントでは、切り抜けることなど不可能。セイバー、アーチャーの両者共に、通常のサーヴァントにはない強みを持っている故に。

 だから2騎は期待していた。

 敵がキャスターと組んだことは知っている。そしてキャスターはこの2騎の強さを知っている。当然、敵にも情報は言ってるはずだ。

 

 

「……来い、カルデア」

 

 

 黒化したセイバーは、ここでやっと喋った。何を言っても見られているから、とかたくなに口を閉ざしていたセイバーが。

 耳をすます。

 音が聞こえる。

 カルデアが、洞窟内を進む音が。

 

 アーチャーも確かに、それを聞いていた。

 

 

 

 

 

 大型車両がデコボコ道を無視して突っ込んでくる音を。

 

 

 

 

 

「……は?」

「……何だ?」

 

 思わず言ってしまった。

 よく聞くため、高い場所を降りる。そしてよく耳を傾ける。

 セイバーはこの音に聞き覚えはない。しかしアーチャーは、近代英霊故その音に聞き覚えがあった。

 

「この音は……? ……まさかッ」

 

 気づいた時には、もう遅い。

 大型車両が、突っ込んでくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「タンクローリーだッ!!!」

 

 

 意外! それはタンクローリーッ!! 

 

 

 

 

 

 はァ!!? などと叫んだ瞬間にはもはや遅く。

 察したアーチャーがセイバーを掴んで退避しようにももう遅く。

 セイバーがエクスカリバーラッシュを叩きつけようにももう遅く。

 

 燃料いっぱいのガソリンと、起爆型爆弾と、ついでにスピリタスを付けたタンクローリーが

 

 音の正体を知るべく高所から降りた2騎に、突き刺さった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 おっと危ない危ない。危うく瓦礫に挟まれるところだった。

 

 悠々と、俺たちは洞窟内に入る。え? さっきの声は何かって? そりゃ録音したカセットに決まってるじゃないか。爆発するタンクローリーと一緒に行けるわけないだろ。

 

「こいつはひでぇ……」

「フォウ、フォウフォーウ!!」

「ふぉ、フォウさんがあまりの臭いに飛び込んできました。かくいうわたしも鼻を抑えずにはいられません。大丈夫ですか先輩!?」

「だ、大丈夫。一応マスクは付けてるから」

「何よこの作戦! 洞窟が崩れたらどうするのよ!」

 

 おっと悪い悪い。さすがに臭いだけはマスクで防ぐしかないわ。

 そしてオルガマリー。洞窟の倒壊だけは大丈夫だ。日本の魔術師は日本の建築レベルと同義の能力を持つからな。この洞窟はそう壊れはしない。さすが地震大国ニッポン。

 

「ねぇマスター」

「なんだよ」

「この着物……洗えるのよね」

「分かったファブ〇ーズしておく」

「貴方のポケットはどうなってるの」

 

 両儀式の着物にファブ〇ーズ。戻ったらちゃんと洗っとこう。

 だが今は目先の問題だ。果たしてセイバーとアチャーはどうなった?

 

鼻眼鏡マスクつけてるキャスター。どう?」

「駄目だな。これくらいじゃ英霊は倒せねぇよ。……ていうかこのマスク意味あんだろうな」

「いやないと思う」

「おい」

 

 何が文句あるのだろう。俺なんてレスラーマスクつけてるんだから勘弁してほしい。

 と……爆炎が晴れた。……というか斬り払われたな。

 

「カルデアの者か。そうだな? まさかこんな手を使ってくるとは思わなかった。私の知り合いを思い出す」

「アチャーは?」

「奴ならあそこだ」

 

 あぁやっぱり高台取るよね。そりゃアチャーなんだから。むしろ今までの剣劇がおかしいのか。だが正規のアーチャーを貶めたことは許さん。具体的には当タランテ。

 場違いなことを考えていたら、セイバーがマシュの盾を見てほくそ笑んでいた。

 

「来るか、気をつけろよ嬢ちゃん。あいつは筋肉じゃなくて魔力ですっ飛ぶロケットだからな」

「はい。……あっ、あの人女性なんですね」

「ん? そうだな。女性だな。……ん? ってことはモルガンがモードレッドを産む時一回生やし」

「黙れ」

 

 あぁ……Fate掲示板でも言われてたけど、それ触れられたくないのか。魔境だなぁブリテン。

 憐れみの目を向けていたら、俺の視線の意味に気づいたのか気づいてないのか。セイバーがモルガンの準備を始めた。

 

「行くぞ、名も知らぬ娘。その護りが真実であるか、確かめさせてもらおう!!」

「やっぱり両方イケる口なんじゃ」

「黙れ!」

 

 直後、エクスカリバーモルガンが飛んできた。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 偽装登録された宝具であれ、その護りをアーサー王は突破できない。倒れる理由があるとすれば、それは魔力と―――マシュの心の問題。

 

「あ、あああぁぁぁああああ!」

 

 約束された勝利の剣(エクスカリバーモルガン)。性質が反転したエクスカリバーから放たれる、あらゆる存在を呑み込む宝具。

 しかしそれはマシュの護りを突破できない。アーサー王とマシュである限り、その護りが敗れることはない。

 

 結果、マシュは防ぎ切った。

 

「はっ、はぁッ……!!」

「よくやった嬢ちゃん! 後は任せとけ!」

「おね、がいします……!」

 

 キャスター、両儀式が駆ける。キャスターはアーチャーの方へ。両儀式はセイバーの方へ。

 

「ふん」

 

 嘲りだった。

 羽虫でも見るかの如く、セイバーはもう一度剣を振り上げた。

 

「宝具!?」

「聖杯のバックアップか!」

 

「その通りだ。そして遅い」

 

 再び立ち上る魔力。それを見て、両儀式は回避準備をし――

 

「ッ!? 違う!?」

「そこだ」

 

 狙いは、両儀式ではない―――!

 未熟な身で宝具を撃った、マシュと立香――――――!!

 

「くそっ」

「行かせん」

 

 振り返り、戻ろうとするキャスター。

 しかしその行動はアーチャーにより防がれた。投影された剣が、キャスターの足を止めたのだ。

 それでもキャスターは声を張り上げる。エクスカリバーの発射までは、まだ猶予がある。

 

「坊主! 令呪だ! 無理させるがそいつをきれ!!」

「そう、です……! マスター、令呪の魔力を……!」

「けど……!」

 

 通常のサーヴァントとマシュの違いは、英霊であるかそうでないかということだろう。

 例えるならば、スーパーサイヤ人3の悟空といったところか。あれは死んでいる時なら体力は食わないが、生きているときは膨大なエネルギーを食う。

 それと同じく。霊体と違い今を生きているマシュは、一度の宝具でさえ体力を食うのだ。

 魔術の心得のない立香でも、マシュの限界は認識している。事実、エクスカリバーを受けたマシュは汗まみれなのだから。

 

 もう一発、令呪による宝具開放ならどうにかなる。それでも、立香はマシュに無理をさせたくはない。

 

「甘いな。サーヴァントの使い方が、ではなく、それを理解していて対処しなかった偽善がだ」

「くっ」

 

 マシュに宝具を使わせるわけにはいかない。

 

 ここでどうにかするためには、セイバーの狙いを切り替えるしかない。

 

 だけど、どうやって?

 

「んじゃ任せろ。マシュは休んでおけ!」

 

「半場さん!?」

 

 盾の背後から、半場は飛び出した。はっきり言って自殺行為……いや無意味な行動である。

 

「だからどうした、貴様には陽動はできない」

「そりゃどうかな? キャスターはさっさとアーチャーを片付けろ! 両儀式は一旦戻って俺を守ってくれ!」

「分かったわ」

 

 一息で半場の下に戻る両儀式。その腕はマスターを抱えている。おそらく攻撃が来たら飛ぶつもりなのだろう。

 だからどうしたとセイバーは思った。さっきの指示通り両儀式を突撃させるならまだしも、自分のところに戻らせて守らせるなど意味はない。

 羽虫らしく飛び回るというのなら、無視して宝具を放つまで。セイバーはそう考えた。

 

 

 

「―――王の話をするとしよう」

 

 

 

 瞬間、セイバーの手が止まる。

 

「これは、王と一人の少年の物語。苦難に暮れ、時に迷い、時にぶつかり合う二人のお話」

 

「明るく、切なく、悲しく、愛おしい、そんな話の一つをしよう」

 

「結ばれる二人の話を」

 

 大袈裟に、ながったるしく、半場は言う。

 セイバーは、停まっていた。否、止まらざるを得なかった。

 彼女のスキル、『直感』が告げているのだ。言わせてはならない、聞いてはならないと。

 だが、それが発動した時にはもう遅い。

 

「著者・花の魔術師『運命の夜』」

 

 もう既に、半場は陽動を仕掛けているのだから。

 

「彼が見た光景の、ほんの一部より抜粋」

 

 そして半場は懐から紙を取り出し、それを広げた。

 それは、彼が前世の知識を用いて書いたことであった。

 

 そう、

 

 

 

 

 

 18禁版、Fate/stay nightのセリフ集である。

 

 

「『舐めないでください、シロウ。私とて、殿方の悦ばせ方くらい知っています』」

 

 

「エクスカリバアアアアァァァモルガアアアァァァン!!!!!!」

 

 

 

 

 

 直後、『もう一生エクスカリバーを使えなくってもいい』くらいの気概で、渾身のモルガンが放たれた。




何度も言いますが、本編とは一切関係ありません。


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特異点Fの没ネタ2

没になったネタ、パート2! 例のごとく本編とは一切関係ありません。
主人公のスキルの厨二描写があるけど気にしないで。いやむしろ触れないで。


「『な、何をするのですリン。シロウ、貴方も見ていないで彼女を止めてください』」

 

「エクスカリバーモルガン!」

 

「『シロウ……あまり、見ないでほしい……。私の身体は、魅力的ではありませんから』」

 

「エクスカリバーモルガンー!!」

 

「『シロウ……貴方を、愛しています』」

 

 

「エクスカリバァァァモルガァァァン!!!!」

 

 

 青白い、死体のようなと評された顔を真っ赤にして、セイバーはエクスカリバーを振るう。

 しかし当たらない。羞恥心にまみれた剣が、冷静に回避する両儀式に当たるわけがない。

 

 

「おのれおのれおのれおのれおのれおのれおのれ……!!!!」

 

 

「はーっはっはっはー!!」

「何がおかしいキャスター!!」

 

 戦いながらも大爆笑しているキャスター。それがかんに触ったのか、セイバーは矛先をキャスターに向ける。

 

「これがおかしくなくて何だ!? まさかお前があの坊主と、んなことヤってたとはなァ!」

「忘れろキャスター!!」

「やーだーねー! このまま座に持って帰らせてもらう!!」

「貴様ァ!!」

 

 思わずモルガンを放とうとするセイバー。

 それを、半場と両儀式が止める。

 

「おっと、まだだぞセイバー! 確かプールでビキニと泳ぎの練習の話もあったな!!」

「黙れ貴様! おのれマーリン! なぜそんなものをこいつに渡したァ!!」

 

 『酷いな⁉︎ 私はそんなことやってないよ! え? 誰かに話はしたか? ……そんなことより王の話を聞かないかい?』

 そんな幻聴が響いた気がした。無論気のせいである。

 一方の半場たちは、あくまで冷静に行動する。

 

「両儀式、ここじゃマシュたちに近い。崖を登って回り込め」

「分かったわ」

 

 そう言ってひとっ飛び。セイバーがモルガンの魔力を装填する僅かな間に、両儀式はマシュたちから離れる。

 しかしそこは崖の上。そこには

 

「I am the born of my sword…!!」

「うわ危ねっ」

 

 キャスターのルーンを避けている、アーチャー。その片手間……というには過剰に、アーチャーは投影剣を射出する。

 しかし当たらない。何故か。

 

「……大丈夫か? なんかZeroランサーみたいな感じになってるけど」

「喧しい! いいからその口を閉じろ‼︎」

 

 目から血涙を、口から吐血を。まるで自害でも命じられたような体のアーチャー。

 その姿、半場が思わず心配してしまう程であった。

 

「大体、なぜそれを本人の前で暴露する!?」

「いや、お前には関係ないじゃん……あっ、そうかそうか。お前当事者か!」

「しまった!!」

 

 アーチャーは自爆した。黙っていればよかったものを。

 だって、半場が畳みかけたのだから。

 

「ふーん、あっそ。じゃあさあれやらないの?」

「あれ?」

 

 アーチャーには直感はないが、ものすごく嫌な予感がしていた。

 具体的には、戦闘途中で取ったポーズを後で笑われるような。

 

 半場はあくまでも、紙を見ながら言う。

 

 

 

 

 

「『体は剣でできている』って言いながら『かっこいいポーズ』取らないの?」

 

 

「我が骨子は捻れ狂う!!」

 

 

 

 

 

 瞬間、三十を超える剣が半場たちに向けられた。そしてそれが到来する間にも、アーチャー自身が二刀を持って近づく。

 しかし。

 

「おおっと! お前の相手はこの俺だ!」

「邪魔だキャスター!」

 

 それを、追いついたキャスターが妨害する。

 剣と杖で打ち合う2騎。

 再び戦いが始まる。

 

「ちょっと待っとけ! すぐ片付ける!」

「頼むぞキャスター!」

「任せとけ。こいつの『かっこいいポーズ』を観たらすぐ向かう!」

「忘れろキャスター! いや頼むから忘れてくれ!」

 

 どんだけ嫌なのか、とうとう仇敵にさえ頼み始めたアーチャー。全て半場に本を渡した魔術師が悪い。

 

「両儀式、セイバーは?」

「あそこよ。何か力を溜めているみたい」

「来るか!」

 

 崖の下、ほんの三メートル程の距離。それはサーヴァントにとって大した高さではない。

 ましてや、魔力放出で筋力上乗せができるセイバーにとっては。

 

「――――――はァッ!!」

「やっべ。受けずに避けろ!」

「もちろん」

 

 接近はまばたき程の間に。魔力放出で実質『飛んできた』セイバーに、両儀式は受けずに回避した。

 そしてセイバーが剣を振ったところに、扇状のクレーターができる。

 

「うーんありゃ筋力勝負は無理だな!」

「そうねぇ、私はか弱い女だもの」

「…………」

「そこで黙るのはよくないわ、マスター」

 

 両儀式の目は少しも笑っていなかった。半場は思わず目を逸らした。

 しかしセイバーが2撃目を放とうとしているのを見て、やっとふざけるのをやめる。

 その決意を確認して、両儀式は微笑んだ。

 

「ふふ……。()()()()? マスター」

()()()()()()()()

「えぇ、早速始めましょう――――――」

 

 一瞬、両儀式は目をつぶる。

 発動するスキルは、『根源接続』。

 このスキルを両儀式は「そんなに便利なものではない」と言うが、それはあくまで自称に過ぎない。それが通常サーヴァントの力を上回るものには違いない。

 

 それを以て使うのは―――ただの魔術。

 

 

 

 

 

「―――視覚同調(アイドゥリンク)―――」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 同調、完了。

 

 両儀式は、眼を開く。

 その眼は、鮮やかな虹色であった。

 

「……驚いたわ。マスターはこんな風に俯瞰していたのね」

「はいはい感想は後な。来るぞ」

 

 直後、魔力を纏ったセイバーが突っ込んできた。それを両儀式は受けずに回避。

 しかしそれでセイバーが諦めるわけなく、続いて斬り払い、斬り上げ、振り下ろし。さらなる打ち込み。

 合計6撃。その内2撃を、両儀式は受け流した。

 その結果を受けて、半場は問う。

 

「どうだ、両儀式。()()()()()()()?」

「2つ。私では、それが限界ね。ひょっとして合わないのかしら」

「合わない、か。(無理ないか。両儀式では『制限』に引っかかる。)……それじゃ、俺が補おう」

「念話を使うの?」

「ああ。()()()()()動いてくれ」

 

 マスターとサーヴァント間のパスを繋ぐ。基本中の基本ではある。

 しかし、実戦において、念話で細かい指示を出す暇はない。先の先を予測するなら、まだしも。

 

「はあああぁぁぁッ」

「来るわ」

「それじゃあ……」

 

 数度まばたきし、半場は眼を開く。

 その眼は鮮やかな虹色であった。

 

()()視界で視てから、半場は言った。

 

 文字通り、5()()()()()()を。

 

 

『右へ打ち込み、突き、薙ぎ払い、……蹴り、……魔力放出』

 

 

 セイバーは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 それらを回避して、両儀式は言う。

 

「……便利な眼ね。マスターはどこまで視えるの?」

「大体5つ前後。剣のみで来るなら8ぐらいだな」

「十分なくらい。やっと聖杯戦争らしくなってきたのかしら」

「俺が抱えられたままってのがなんとも締まらんけどな」

 

 苦笑しながらも、半場は視ることを止めない。

 その眼は、変わらず5死を視ている。

 

「はあ!」

『突いてから斬りはらい、……殴打、柄突きに……足踏み』

 

 5手先を視て、伝える。

 だから間に合う。ギリギリではあるが、半場の指示はセイバーの剣より早い。

 

「ふっ!」

『……目眩し、連続突き、振り下ろし。加速して突き、……回し蹴り、そのまま振り回し、振り下ろし』

 

 マスターである半場の死、それに直結する攻撃を全て。その悉くを、見切る。

 セイバーからすれば、不気味極まりない。なにせ相手がろくに反撃もせずに避けて避けて避け続けるのだから。

 

「ッ!」

『刀身伸ばして振り回し、その風を放ち、ついでに石を蹴り上げ。突進、屈んで斬り上げ、飛んで頭に突き、蹴り。斬り上げて突き薙ぎ払い回転斬り魔力放出……』

 

 

 即死クラスの攻撃、合わせて106。

 その全てを、避けて、流した。

 

 

 セイバーは言った。息を切らした状態で。

 

「……未来予測、か?」

「んにゃ、違う。それじゃ不十分だ」

 

 何が足りないというのか。それが分かるのは半場のみである。

 何にせよ言えるのは、このままではケリがつかないということ。そして千日手であれば、勝機はセイバーにある。

 

「あの小娘が心配か。わざわざ宝具の的になりにくる程だからな。しかし聖杯は私が守っているのだ。その行動に意味はない」

「今までならそうだろうな。けどたった今意味ができた」

 

 何? と言ったその時には、既に決着は付いている。

 そもそも半場たちの狙いは、セイバーの気を逸らすことなのだから。

 

 

 

我が魔術は炎の檻、茨の如き緑の巨人。因果応報、人事の厄を清める社

 

 

 

 それはキャスターの宝具の詠唱。

 

「ッ。倒されたか……!」

「おうよ。あとはお前さんだけだ!」

 

 直後、巨人の腕が地面から現れた。

 腕は這い出てきた勢いで、セイバーを掴む。

 

「くっ……⁉︎」

 

 エクスカリバーを振り上げようにも、体を掴まれていては抵抗できない。魔力放出は掴まれていては無意味。

 巨人の体が現れる。その腹には供物を入れる場所が。

 

「倒壊するは……ウィッカーマン‼︎」

 

 当然、そこに入るのはセイバーである。そして一旦捕らえられれば、もう逃げることは叶わない。

 

「善悪問わず土に還りな!」

 

 直後、セイバーを入れた巨人が爆発した。

 

 それを見た半場は思わず言った。

 

 

「……これって爆発させりゃあなんでもオーケーなケルト宝具なのか?」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 サーヴァントは倒されても若干の猶予期間がある。だから、セイバーもまだ少しの間残っていた。

 その猶予期間に、俺はセイバーに話かけた。

 

「ちーす」

「……貴様か」

 

 うわ凄い殺気。無理ないかあんなこと言っちまったしな。でも謝罪はしない。だってマシュたちを殺そうとしたから。『だから俺は悪くない』。

 

「この間に貴様を殺したいが、もう力が出ない」

「そりゃそうだろ。今動けるとかお前どこの光の戦士って話じゃん。『まだだ』とか言うの?」

「何の話だ」

 

 通じないかぁ。まぁいいけど。

 それじゃ、これを聞いておこう。

 

「お前をストーキン……監視してたのは誰だ」

「知らん」

 

 やっぱり知らないのね。まぁ知ってても教えてくれないと思うけど。

 ……あ。姿が消え始めている。

 

「今度召喚された時に、真っ先に殺してやろう」

「あっそう。……あ、最後だし言っとくわ」

「?」

 

 ついさっきこれ言い忘れたんだよなー。いやー危うく言い忘れるところだった。

 

 

 

 

 

「『シロウの味がします』」

 

「おい貴様いい加減に」

 

 

 

 

 

 いい加減にしろ、と言うことは残念ながらできず。

 

 目の前で、セイバーは粒子となって消え去った。




スキルに関しては触れないでほしい。修正前だから。


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特異点Fの没ネタ3

なぜこの没ネタ集を投稿したかったかと言うと、これがやりたかったから。

「転生者であるから」の別パターンです。同じところはさっくり飛ばしてます。


「それでは最後に、オルガマリー。君の宝物に触れさせてあげよう」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 瞬間、カルデアスに向けて謎の力場が発生する。その規模は凄まじく、一瞬半場たちの体が浮かんだ程であった。

 しかしここにはサーヴァントがいる。立香にはマシュ、半場には両儀式が。サーヴァントがマスターを抱えて盾に隠れたことにより、マスターは力場から逃れた。

 

 そう、マスターは。

 

「いやあああぁぁぁ!!」

「所長!」

「駄目ですマスター! ここから出ると力場に入ります!」

 

 一瞬、立香が腕を伸ばすも間に合わず。

 オルガマリーは力場に乗り、緩やかにカルデアスに導かれていく。

 

「な、何をするの! カルデアスよ? 高密度の情報体よ!? そんなものに触れたら……」

「あぁ、ブラックホールや太陽みたいなものだな。どちらにせよ人間にとっては地獄でしかない。生きたまま、無限の死を味わうといい」

 

 レフの顔に浮かんでいたのは、醜い狂笑であった。それはまさしく悪魔のごとき笑み。その行動もまた、悪魔と形容するに相応しいものだ。

 しかしオルガマリーには、もうその顔を見ている余裕さえない。

 

 

「やだ、やめて、いやいやいやいやいやぁ!! まだ誰にも認められてない! まだ誰にも褒められてないのに!」

 

「みんなわたしを嫌ってた! みんなわたしを避けてた! 誰もわたしを認めてないのに!」

 

「なのに、なのにぃ!」

 

「まだ死にたくない! まだ生きてたい! 誰かに認めてもらわなくっちゃ、いけないのに!」

 

「なんで、こんなことになっちゃうのよぉ!!!」

 

 

 

「んじゃとっとと掴まれ!!」

 

 

 

 直後。オルガマリーに向かって、半場が飛んできた。

 体にはロープが巻きつかれており、その先にはマシュたちが。

 

「!」

「右手! 掴め!」

 

 ガッチリと。伸ばされた右手を、オルガマリーは掴んだ。

 

「マシュ! 引っ張れぇ!」

「了解! はあああぁぁぁ!!」

 

 力場に抗う力。マシュたちが引っ張ることで、オルガマリーは僅かにカルデアスから遠ざかった。

 それを。その行動を。

 

 レフ・ライノールは、嘲笑う。

 

「無駄なことをッ。既にオルガマリーは死んでいる。そんな者のために命を尽くすか!」

「……!」

 

 そう、オルガマリーはもう死んでいる。たとえ助けられたとしても、それは一時の希望でしかない。それどころか、反動に大きな絶望が襲うだろう。

 無意味。

 無価値。

 はっきり言って、『命の無駄遣い』。

 死人のために、生者が身を粉にする必要はない。

 

 それでも

 

「だからどうした。助けを求めてるやつ助けて何が悪い!」

「悪いだろう! おまえが死ねばカルデアはさらに絶望するだろう! 今も絶望に晒されているが、さらに大きな悲しみを背負うだろう! そんな状況を、分かっているのかおまえは!」

「あーそうかい。んじゃ俺が死ななきゃいい話だな!」

 

 返答に一秒の間もなかった。

 あまりにはっきり答えたもので、レフは絶句を通り越して唖然となった。

 そして……見放した。

 

「そうか……。知恵のあるおまえなら、オルガマリーの無価値さを理解していると思っていたが……。やはり私が間違っていたようだ」

「やっと気づいたか」

 

 半場の笑い飛ばしも、レフには空虚な強がりにしか聞こえなかった。

 

「ならば諸共に死ね。カルデアスの中で、無限の地獄を味わうといい」

 

 レフが手を挙げた。その直後、力場が爆発的に加速する。

 

「っ!?」

 

 歯をくいしばり、半場は両手でオルガマリーを掴む。そしてマシュたちもまた、大きく引き摺られた。

 

 そこまでは、よかった。

 

 

「死ね」

 

 

 瞬間、半場とマシュたちを結ぶ命綱が切れた。

 

「あ?」

「……え?」

 

 原因は明らか。レフが魔術を行使して、ロープを切ったのである。

 ならばこの後、どうなるか。考えるまでもないことである。

 

「マスター!」

「半場さん!」

 

 走馬灯を見てるように、立香たちの視界がスローになる。

 無論それは脳の錯覚でしかない。そもそも、今更動きがスローになったところでできることなどない。

 もう二人は、カルデアスのすぐそばに。

 

「マスター!」

 

 両儀式は叫ぶ。スキルを使うのではなく、()()()()()マスターの指示を聞くために。

 そのマスターは絶体絶命のピンチの中、念話を通じてただ一言。両儀式に伝えた。

 

『まだ来るな』

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 俺の今の状況はまさに絶体絶命。

 だが、『まだだ』。

 

 前を見る。そこにはカルデアスとレフが見える。力場があるにもかかわらずレフが立っていられるのは、おさらく魔術を用いているからだろう。

 あいつを倒せばこの力場は消える。

 ならば

 

 終わっていない。俺はまだ死んでいない。

 ならば

 

 

 まだチャンスはある。レフは今、とても油断している!

 

 

 ……今しかない。

 

 危険は多いが、覚悟を決めるしかないようだ!

 

 

「所長、あなたも腹くくれ!」

「はぁ!?」

 

 

 瞬間、俺は空気に足をつける。

 よかった。両儀式はちゃんと指示通りやってくれたみたいだ。これならいける。

 

 レフは怪訝そうな顔をしている。しかしそこから動きはしない。助かった。動かないなら計算が楽に済む。

 

 足をつけたら、腰を落とし、腕を伸ばす。先にはオルガマリー。

 ここで距離を間違えると失敗するから、確実に計算通り掴む。

 

 さぁ、これで準備は整った。

 

 あとは、目の前の素材にぶちかましてやるだけだッ!!

 

「くらえッ」

 

 そして俺は

 

 

 

 

 

 

 オルガマリーをレフに叩きつけた!!

 

 

「フルスィングハンマー・オルガマリー!!」

 

 

「ぐへえええぇぇぇ!?!?!?」

 

 

「ぐはあああぁぁぁ!?!?!?」

 

 

 

 

 

 直後、オルガマリーの頭とレフの腹が激突。

 そしてレフはふっ飛ばされ、そのままカルデアスに突っ込んだ。

 

 それを、空気に足をつけつつ見届けた俺はこう言った。

 

「勝った! 特異点F、完ッ!!」

「(白目)」

 

 

 

 

 ───そして半場は聖杯を回収し、立香たちのもとに戻った。

 

 

 

 ───そして戻って、無事立香とマシュのパンチをくらった。




ノルマ達成!

これがやりたかっただけなんだ。本編がこれでも良かったけど、レフが有能だし、無理矢理すぎたかなって。


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第1特異点の没ネタ

以前『まだ集まらず』と『合流』で触れていた『オ・ルボワール』という没ネタです。簡単に言ってしまうと、もし半場があの時深夜テンションだったら、的な感じですね。
なので皆さまも、あまり深く考えないでいただければ。




第1特異点を読んで「ギャグ成分薄いぞなにやってんの!」と感じた皆さま。
それは、本来この話を本編にするつもりだったからです。(言い訳)


 半場のシュールストレミング。その効果である『クラススキルの制限』。

 もっとも目に付けられる点は、そこだろう。しかし忘れてはならないことがある。そう、シュールストレミングの臭気である。

 

 発酵と腐敗は紙一重。日本の納豆ですら臭いと言う人間がいるのだから、極限まで発酵させたシュールストレミングが臭くないわけがない。

 しかも最悪なことに、半場は通常でも十分に臭いシュールストレミングを、さらに『腐敗』させていた。具体的に言うと放置していたのである。

 

 日本では『爆発物』とさえ表現されるシュールストレミング。それをさらに腐敗させた兵器。

 その臭いを直接嗅いだサーヴァントはどうなるか。

 

 

 アーチャーとランサーは、その嗅覚を完全に潰されていた。

 

 

「「……」」

 

 ジャンヌオルタたちはマスクをしているが、2騎に限って言えばそれで耐えられるわけがない。

 アーチャーは獣の特性を持ち、ランサーは吸血鬼の特性を持ち合わせている。どちらも臭いに弱い特性だ。

 

「……ぐすっ」

 

 アーチャーは目をこする。

 シュールストレミングの臭いは彼らの視覚にさえ影響を及ぼしていた。玉ねぎを切って涙が出てくるようなものだろうか。とにかく彼らは涙していた。彼女の名誉のために言っておくが、これはけして悲しみの涙ではない。

 

「うぅ……ランサーよ。そちらの様子はどうだ」

「変わらぬ。考えれば、この好機をあの男が逃すとは思えん、ぐ」

 

 ランサーも目をこす───ることはなく、必死に堪えた。ここでこすったら負けみたいなことを思ったのだ。彼の名誉のため言っておくが、目が光ってるのは涙ではない。吸血鬼的な何かである。

 

 アーチャーとランサーは、一つの確信があった。この間に、連中は仕掛けてくると。

 普通に考えて、ここまでの好機はない。ジャンヌオルタのルーラースキルは封じられ、アーチャーとランサーの視覚はなかば封じられた。仕掛けるならば今しかない。

 

「ならば、問題はいつくるかだが……厄介だ。頼れるのが聴覚だけとは。ぐっ」

「私は問題ない。見えない相手を撃つのは慣れている。ぐすっ」

 

 アーチャーは目をこする。ランサーは堪えた。彼らの名誉のため何度でも言うが、これはけして悲しみの涙ではない。

 さぁ、どうくる。

 そう、アーチャーとランサーが思った、その時。

 

「……?」

 

 ころころ、と音がした。2騎の目の前に、ボトルのような何かが転がってきた。

 

 スタングレネードが、転がってきた

 

 直後、爆音が彼らの意識を奪い取った。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「な、何!? 何が起こったの!?」

「この衝撃……まさか、『ファヴニール』の方から!?」

「何ですって!?」

 

 叫んで、ジャンヌオルタたちは駆け出した。サーヴァントの脚力により、人なら時間のかかる距離でも一瞬で。

 そうして城を出たオルタたちは、城の裏手───半場たちが逃げた方とは反対───に出る。

 

 そこで、見た。

 

『あっ! き、来たわよ不知火! サーヴァントもいっぱい!』

「ハッ、音聞いてからじゃ遅い! よし乗ったぞ! ノッブ飛ばせ!!」

「あたぼうよー!!」

 

 

 

 

 

 ファヴニールを奪い取る半場たちの姿を。

 

 

 

 

「───はっ!? ハアアアァァァ!?!? 何!? 一体どういうこと!? どこからツッコめばいいのォ!?」

「なーにがおかしいってんだ! 全部合理的な思考だぜ!」

 

 ここで、半場たちの考えを説明しよう。

 まず半場は、シュールストレミングによりクラススキルを制限されたことをこう考えた。

 

 

 ───これ、相手の基地内見るのにいい機会じゃね?

 

 

 ルーラースキル使えないならサーヴァントも連れて行けるし、なんなら暗殺だってできるし、爆弾だって置けるだろうし、めちゃくちゃいい機会じゃね?

 そう考えた半場は突撃した。両儀式に隠蔽してもらいながら。

 

 そして辿り着いた半場は見張りのアタランテとヴラドを速攻で気絶させ、場内を周る。

 そして辿り着いたのだ。ジャンヌオルタたちの切り札と思わしき竜───ファヴニールのもとに。

 

 普通の人間なら、ここで畏怖したであろう。

 なにせファヴニールは伝説の悪竜。かの竜殺したるジークフリートが討伐した最上種の竜の代名詞である。

 そう、人間に扱えるものではない竜を前にしたのだ。それに半場は、

 

 何をトチ狂ったか、こう言った。

 

 

 

 

 

 

「じゃあこいつ盗んじまえば良くね?」

 

『いやその理屈はおかしい』

 

 

 

 

 

 オルガマリーの必死の説得も虚しく、半場はシュールストレミングでファヴニールを脅迫し催眠で操り、あろうことか従えてしまった。

 

 そこから、今に至る。

 

「あばよオルタっつぁん!!」

「逃すかァ!!」

 

 既にファヴニールはかなり上昇している。しかもアーチャーとランサーは捕らえられ気絶している。

 どう考えても、もう遅い。

 それでもジャンヌオルタは炎を飛ばした。

 

「はっはっは。そんなもんが届くかよ!」

「サーヴァントたち! ワイバーンで接近しなさい!」

 

 ジャンヌオルタは指示を飛ばすが……それは無意味である。

 そもそもワイバーンはファヴニールを媒介として出現しているの だ。つまり親のようなものである。そのファヴニールの操縦権を乗っ取られた以上、ワイバーンでの接近は不可能。

 

 新たに聖杯でワイバーンを召喚しようにも、間に合わない。とうに半場たちは離れてしまっている。というか竜としては最上種クラスにもなるファヴニールにワイバーンが逆らえるわけがない。

 

「あの男め……!!」

「おのれェ……!!」

 

 歯ぎしりの音をあげるジャンヌオルタとジル。

 一方半場たちはファヴニールに乗りながら悠々自適にこう言った。

 

 それは、怪盗にとってはお馴染みのセリフであった。

 

 

 

 

 

 

「それでは皆さん───オ・ルボワール!!

 

 

 

 

 

 控えめに言って死ね。

 

 颯爽と飛び立つ半場たちを見ながら、ジャンヌオルタとジルはそう思った。




何でこっちを本編にしなかったかって?
書いた後で「やべぇこれは邪ンヌを虐める話にしかならない」と気づいてしまったからです。
ハーメルンの紳士な皆さま方なら大丈夫かとも思いましたが、一応やめました。


-追記-

続きません。


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序章 どのように、転生者は駆け抜けたか

注意!!

・この小説には痛い文章がところどころで含まれています。
・ギャグ補正と偽ったご都合主義がところどころであります。大小様々ですのでお気をつけて。
・真面目なのかアホなのかそれともただのキ◯ガイなのか。そんなオリ主です。
・不定期更新です。


最後に、この話はかーるい気持ちでどうぞ。


『ならば、せめてイメージしろ。現実では敵わない相手なら、想像の中で勝て。自身が勝てないなら、勝てるモノを幻想しろ。所詮、お前にできることなど、それぐらいしかないのだから』

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 抑止力───人や地球の存続を願う意識の集合体。

 人や地球が危機に陥った際にのみ現れるガーディアン。

 

 

 通常、現代においてこれが働くことはない。

 正確には、『人も星も滅ぼし救うことが簡単になった』故、明確にそれが働く機会を目にすることが少ない、と言うべきか。

 

 とにかく、抑止力は余程のことがなければ、少なくとも世界を粉々に破壊するぐらいでなければ、使者を遣わす以外の手を使わなくなった。

 

 だから、それは異常事態であったのだ。

 

 抑止力が、明確に滅びを与えようとするなど。

 

 

 

 

 

 19XX年、冬。それは起こった。

 

 起こった事象は、外部からの介入。それも、地球以外の惑星からではなく()()()()()()()()()()()()()()

 

 ラノベ風に言うならば───『特典授与』。

 

 輪廻転生であればそこまで騒がなかっただろう。

 しかし、神代どころか原初の世界にさえ存在しなかった、権能を遥かに上回る事象、それが起こったのだ。そうである以上、抑止力が動かない理由はない。

 

 なにせ人類の完成形である根源到達を優に上回る事態だ。場合によっては人類史がそこでストップしかねない。

 幸いなことに、干渉により発揮されたのはほんの一箇所のみ。地球という惑星から見ればほんの砂つぶ程度だ。

 そして抑止力は、その砂つぶを取り除くことを決定した。

 遣わすはガーディアン、それも霊長の殺人者。間違いなく殺せるだろう、と抑止力が考えても何一つおかしくはない。

 

 しかし、次の瞬間

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 正確には……抑止力を上回るナニカが、その反応をかき消した、と言うべきか。

 

 とにかくこれにより、抑止力は動かなくなった。なにせ排除するべき反応が消えたのだ。そんな状態で霊長の殺人者を放ったところで、無意味な被害が出るだけである。

 いくら必要な犠牲を認める抑止力といえど、対象を消滅させられなければ意味がない。

 

 結局、地球は何一つ変わらず、ただ平穏な時だけが過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 日曜のデパートは、平日より賑わいを見せていた。当然、子供連れの親の姿もよく見える。

 靴や服を取り扱う店が並ぶ通り。そこも多くの人がいる。誰もが足を止めずに歩いている。強いて言うなら店の雰囲気を見ている人くらいだろうか。

 

 その中で、その少年は一際目に付いた。

 

 5歳くらいの少年であった。少年は通りの真ん中で立ち止まり、上の大きな天窓を見ていた。それは天からの光と空の光景に圧倒されていた、というより、まるで隕石でも見たような緊張感を放っていた。

 

 その少年に、母親と思わしき女性が話しかける。

 

「どうしたの? オモチャを見に行くんでしょ」

「……うん」

 

 ハッとした表情で、少年は母親を通り越した。

 気のせいか、まるで顔を見られたくないような走り方であった。

 

「そんなに走らないの。他の人にぶつかったらどうするの」

「だいじょうぶだよカーチャン。はやくいこ」

 

 一瞬振り向いて笑顔を見せた。そこに先程までの緊張感はなかった。

 仕方ないわね、と母親は微笑む。

 

 母親は気づかなかった。

 その少年の雰囲気が、明らかに今朝と変わっていることに。

 

 走りながら、少年は思っていた。

 短い人生の中で見せなかった、焦りの顔色を浮かべながら。

 

 

 

 

 

「(あっぶねえ。 まさか特典を受け取ってから僅か数分で抑止力が動き出すとは! 特典使わなきゃマジで死んでたぞ!!)」

 

 

 少年の名前は不知火(しらぬい)半場(なかば)

 

 転生者である。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 なかばが転生した理由はまだ生きたかったから。いや別に某超ウザいニートみたいな渇望ではない。ただ純粋に何も為さなかった前世を悔やんだからだ。

 それだけなら輪廻の輪に入って転生して終了なのだが、彼の魂は、神座的に言うなら渇望強度は並みの人間のそれではなかった。

 そのおかげか彼は特殊な座に到達し、こうして神様転生を果たしたのだ……FGO世界へと。

 

「マジか転生か……え、嘘、型月世界? しかもFGO? やだなんて過酷」

 

 思わずそう言っちゃったなかばだが、神様から転生特典を受け取れると言われた瞬間はしゃいだ。単純な男である。

 そうしてFGOに転生した彼。着いた先はなんか霊媒師の家とかなんとか。要するに魔術使いである。

 ひゃっほう魔術だやるぜとか調子こいて魔術使用。でもなかばは使えない。なんでかって? いや特典受け取ったやつに魔術を使わせてくれる程神様は優しくないっすよ。

 えー特典が来るまでお預けー? 明らかにがっくりとなった転生者は、渋々普通に生きていく。

 そしてようやく5歳の特典授与。その際神様が豪快に介入したせいで抑止力が動き出したりしたが、それも考慮していたなかばに隙はない。わりと落ち着いて対処した。

 いやすげーな神様。まさかホントにめだかボックスのスキルなんてくれるとは。思わず感謝感激の雨あられ。なので名前は賛美歌から取って付ける。

 

「……ん? なんだあの人」

 

 見つけたのは霊退治してるおねーさん。豪快に魔術をブッパしておられる。秘匿とか大丈夫なんだろうかと思うなかばだが、自分から結界内に侵入してることには気づいていない。そしたら当然相手に警戒されるわけで。

 貴様見ているなー的なことを言いながらおねーさんが魔術発動。なんか小さいビームみたいなのが彼に直撃する。

 うわ大丈夫!? とおねーさんが近づいているが大丈夫。今やチートで守られているなかばに単一魔術など通用しない。

 でーじょーぶっすよ、とだけ言って早々に退散。こう言う手合いには関わらないのが一番である。

 

「うーんしかしスキル使ってるのに痛かったな。……ひょっとしてあの人原作キャラ? なんか髪の毛真っ赤っかだしなー」

 

 まぁいいやさっさと帰ろう。

 とりあえず帰って寝たなかばであった。

 

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 さらりと魔術界におけるすごい人と会ったことも知らず、なかばは特典で遊びながら毎日を過ごした。

 具体的にはまず空の境界の聖地巡礼(物理)に行ったりしていた。その際やけに顔の彫りが深いおじさんに誘拐されかかったので交番の前に放り出したりしていた。

 

「せっかくらっきょの舞台に来たんだから、両儀式とか蒼崎橙子に会いたいなー」

 

 よーし会いに行っちゃおうとか思っても仕方ないけど、あまりにも警戒心なさすぎである。

 ランランスキップしながらとりあえず近場の蒼崎橙子の事務所を探す転生者。そうして10分経ったが見つからない。むむこれだけ探してるのに見つからないとはとか思っていた。なぜ10分で見つけられると思ったのだろう。

 しゃーねー今日は帰るかーとか思った帰り道、まさかの遭遇である。

 

「……あら、貴方は」

 

 両儀式来たー!! と内心テンションが上がるなかば。そのせいで出てはいけないお方が出てることに気づかなかった。

 その場のノリとテンションで話してたらもう子供は帰る時間。それじゃーさよーならーと言って帰った。一方の両儀式もさようなら縁があればまた会いましょうと。フラグであった。

 

「いやーいい一日だった。来週また来よう」

 

 全然諦めていない転生者であった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 そしてまたなかばは来た。今度は蒼崎橙子に会いにである。

 今度は結界の魔力から辿ったので、ちゃんと事務所を見つけた。だからなぜそうも会いに行けるのだろうか。

 けれど事務所には蒼崎橙子は居らず、ショボーンと彼は歩いて帰る、聖地を巡礼しながら。

 そして夜になって帰っていたら、遠くでビルがズドーンズガーン。何だ何だと野次馬根性で現場に急行。そこで見たのはマンションが崩れたところであった。

 

「あれ、ここって矛盾螺旋で出てきたマンション?」

 

 あれ、じゃあこの前会った両儀式は誰? うーんと考えて結局まーいいかーで済ませてしまった彼。だからなぜそんなに呑気なのだろう。

 さっさと帰るかーと考えていたらゴロゴロ転がってきた……両儀式が。ひとまずこんにちはと挨拶する。

 

「何だお前その体。ふざけてるのか? ……ってそれはどうでもいい。早く離れろ」

 

 えっ、と見たらあの時会った顔の彫りが深いおっさんがいた。あれあの人ひょっとして荒耶宗蓮? とやっと気づいた転生者。なんであんな顔の濃いやつを忘れられるのだろうか。

 破ァーと放たれる結界。それに捕まったなかば。ちなみになんで荒耶が無傷かってーとなかばが交番に置いといたせいで原作相違が起きてしまったのである。完全に彼の自業自得であった。

 助けに入ろうとする式を尻目に彼は抵抗しない。こういう場合下手にやると失敗するからと知っていた。

 かといって足手まといには変わらないので、自力で結界から脱出。えっ、と驚いた隙目掛けてアンパーンチ。アッパラパッパーカットをまともにくらった荒耶はぶっ飛んだ。

 驚く式に目もくれず、幹也を抱えてこちらに来た蒼崎橙子に気づかず帰るなかば。時間がないのである、時間が。親を誤魔化していられる時間が。

 

「しゃーない、蒼崎橙子は今度大人になってから探そう」

 

 全く懲りていない転生者であった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 そうしてしばらくは大人しくしているなかば。具体的な年数としては大体十数年くらい大人しくしていた。

 その間にFGO版の第5次聖杯戦争のマリスビリーたちを見に行こうとしたなかばだが、神様から条件をかけられているため、今後の展開のネタバレを見ることは叶わなかった。

 

 そして、とうとうこの日が来る。

 

「チミチミ、我々と一緒に人類救わない?」

 

 なんだこの詐欺師は、と一般人なら思っただろう。だが原作を知っているなかばは普通について行った。その素直さに勧誘者は思わず引いた。

 人が入るくらいデッカいケースを持ったなかば、そして飛行機と車を用いて一気に南極へ。出てきた瞬間へぶしっとくしゃみ。今のなかばは防寒具を持っていないのだ。南極舐めてんのか。

 そして辿り着いたカルデア。こんにちはオルガ、こんにちは素材、こんにちは変態、こんにちはラスボスさんと挨拶。人違いである。

 ひとまずケースを置いて早速訓練開始。さー今の俺はどれくらいの強さかなーと思った彼は、お試しサーヴァントの存在を無視して敵に突撃。そしてあえなくクマーの如くぶっ飛ばされた。今のなかばは体重(スキル)封印をかけているので仕方がないが、それでも呑気すぎである。

 怪我の治療をしてオルガからの説教を受けたなかば。無論その程度で懲りるわけがない。生存への決意を終えたなかばは図太いのである。

 自室に戻るついでにこれからの仲間(なお爆破される模様)にご挨拶。癒しの後輩マシュマロちゃんに、貴族なキリシュタリア。寝不足カドックくんにちょい乙女っぽいオフェリア。なんか怖いベリルにデイビット。あとは近づいてこないヒナコにムードメーカーなぺぺ。

でもこの人たち殺されちゃうんだよねーなんて思うなかば。

 より一層の人理修復への決意を固めるのであった。彼は第2部を知らないのだ。

 

 原作開始は、すぐそこに迫っていた。




実質本編は次回から。


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スタート地点

 管制室に、独特の緊張感が漂う。

 その発生源は、今、まさに、怒っていますな体の女。

 オルガマリー・アニムスフィア。ここカルデアの所長である。

 

「……」

 

 彼女は見ていた。自分のちょうど前の席を。そこには、二人の男が座っていた。

 一人は、なんの変哲もない、平凡な男の子。

 その頭は上下していた。男の子は寝ているのだ。そしてそれこそがオルガマリーが怒る理由である。

 この後始まる任務は、人類の未来を決定する程のもの。そのブリーフィングで居眠りなど言語道断。本来であれば今すぐにでも追い出すべきだ。

 

 それをしなかった理由は、隣の男にあった。

 

「所長、質問です」

 

 簡単に言うと、説教しようとした瞬間、この男が割り込んできたのだ。これでは怒るに怒れない。

 だからまず、オルガマリーは質問を片付けようとする。

 

「発言を許可します。何ですか」

 

 オルガマリーは頭の中で、質問した男のプロフィールを思い出していた。

 こいつは日本の使者が最後の最後で見つけてきた人間だ。魔術師ではない、確か霊媒師とやらの家系に属する人間。取るに足らない凡人である。

 だからなんだと思った。オルガマリーにとって重要なのは、血筋ではなくその適性。ただ職務をまじめにこなしてくれればそれでいいのだ。

 

 だから質問には、真摯に答えなくては。

 できる上司は真摯なのだから。

 

 そしてとうとう、男は口を開いた。

 誰もがみんな、その男を見た。

 

 

 

 

 

「おやつはいくらまでですか?」

 

「二人ともいますぐ出ていきなさい!!」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 第一の難問、回避いいいィィィ!!!

 

 二次創作でなら絶対に回避しなければならないイベント。それが管制室爆破事件である。

 何が厄介かって、レフがえらい爆弾を仕掛けてくれたことだ。名門の魔術師を殺しきるほどの爆弾を、一体どうやってレフは用意したんだろうか。確認のためにこっそり見てみたらガチすぎて引いた。

 

 いやはや。しかしここまで大変だった。

 管制室での爆破自体は、隣にいる藤丸立香みたいな環境ならどうとでもなるんだけど。俺の場合中途半端な時期に来ちゃったから、ガチの準備で取り掛からなきゃあならない。

 

 具体的に言うと。

 俺はカルデアに来て一週間、ずっと道化を演じてきた。

 

 この管制室イベを回避するためのセリフはいくらでもある。だが問題なのはキャラだ。みんなの間でまじめくんやって今日いきなりふざけたら怪しまれる。

 だから俺はずっとふざけてきた。

 

 訓練の時は、サーヴァントもなしに敵のところへ突っ込んだ。

 

 いつもの時は、わざとズレたように笑って話をした。

 

 ある時は、DQNすれすれの行動をした。

 

 見破られてはいない。だってこのおふざけも若干、俺の素が入ってたから。それに何より見破られていないか実際に確認した。だから心配ない。

 ただ……やってる間はすごく恥ずかしい。一度開き直ってもそれはそれで後からくる。そしてみんなの視線が痛い。あのオフェリアの極寒のごとき視線は絶対に忘れない。

 

 だが後悔はない。そして反省もしていない。

 このおふざけモードでいる間は、なんとギャグ補正が発生するのだ。素晴らしい。最高じゃないか。

 だから俺はこれをやめない。史上最高のご都合主義を味方に付けられるのなら、生き残れるのなら、俺の恥なんぞ捨てる。

 ただきっと、一部のサーヴァントには通じないだろう。例えば俺と同じくチャラ男を演じているやつとか。

 

 けどそれを考えるのは後だ後。万が一の時の手は既に打っているからワンチャンある。

 

「着きました。ここが先輩の個室です」

「ありがとうマシュ」

 

 おっと着いたのか。といっても藤丸立香の個室にだが。

 あ、それと藤丸立香は男だった。そして俺も男。つまり比較要素が多いわけだ。手違いで比較の獣覚醒するかもというスリリングを味わえということか神様。やっぱりあなたはドsだよ。

 

「マシュはどうするんだ?」

「わたしは管制室に戻ります。わたしもAチームのメンバーですから」

 

 ……止めない方がいいだろう。マシュはこの任務のキーパーソンであることはレフも承知している。だから確実に殺すだろう。

 あぁ、全く。やっぱり道化を演じるだけじゃ無理だよ。こんな痛みに耐えるなんざ。

 俺は分かってて彼らを見捨てるのだから。救う力なら、借り受けているくせに。

 

「……? どうしたんですか?」

「ん? ぁいや何でもないぜ。これからどうしよっかなぁって」

 

 しまった。つい気を抜いて表情筋を緩めてしまった。これからはぐだおにも気をつけなきゃぁならないってのに。

 よし。ならまずは、

 

「ところで俺も入らせてもらっていい? 暇だからねぇ」

「構いませんよ、どうぞ」

 

 うーん予想通りのお人好し。こいつ将来大丈夫かな。あ、でも旅の中で改善されるか。

 後に続いて部屋に入ると、そこには想定通りの人物がいた。

 

「うわ!? 君何を勝手に入ってきてるんだ!? ここはボクのさぼり場だぞ……って、半場くん?」

「あ、ロマン。ここにいたのか」

 

 良かった。管制室にいないし大丈夫だろうと落ち着かせたが、心配は杞憂だった。ロマンはいてくれなければ困る。……こういうところも偽善って言うんだろうな。

 しばらく黙っているだけで、ぐだおとロマンは仲良くなっていく。さて、では俺も混ざろう。

 

「時にロマンさんや。その菓子は一体どうして?」

「ふっふっふ。お目が高いねぇ。実はちょっと頼んで買ってきてもらってさぁ」

「じゃあいただきます」

「君には遠慮ってもんがないのかい!?」

 

 お菓子戦争にルールなんてないぜ、とだけ言ってバクついていく。そしてのどに詰まらせるまでが一連のパターン。鍋でさっさと肉食ったやつが腹壊すのと同じだ。

 諦めたのか、ロマンは俺を止めない。そしてぐだおにカルデアについて説明し始めた。そういえばこの段階ではぐだおはここの概要知らないんだっけ。

 

「つまりカルデアスって言うのは……っと。どうしたんだいレフ?」

『Aチーム以外の体調が優れないんだ。すまないが今すぐ来てくれ。医務室からなら二分で着くだろう」

「……ここ医務室じゃないですよ」

「しまった……! ここからだと五分はかかるぞ……!」

 

 この連絡が来たってことは……そろそろか。

 俺は饅頭を水で奥まで押し流し、ウェットティッシュで軽く手を拭く。

 

「……俺そろそろ自室に戻るよ。ロマンも遅刻しないようにね」

「大丈夫大丈夫。ちょっと遅れるくらいが大御所っぽくていいだろ?」

「だから怒られるだろー」

 

 最後にぐだおに手を振って、俺は部屋を移動する。

 その間に、顔つきも変える。

 

「……持ち物は」

 

 今の手持ちはナイフ一本、拳銃一丁に黒鍵三本か……。

 追加するものをピックアップし、自室に入った瞬間から懐に忍ばせていく。

 俺の部屋は既に改造済みだ。扉の横に小太刀仕込んでるなんざ当然。所長には悪いが、一番カルデアで危険な部屋は俺の個室だな。

 

「……刀はいいか、さすがにそこまでいらんだろう。むしろ投げナイフを増やした方が……」

 

 直後、緊急アナウンスが鳴り響く。

 

 今ついていかなければ間に合わない。このまま逃げるか? 否、そんな無駄な行動は取らない。

 本来なら四次元バッグを持っていきたい気持ちをぐっと抑えて、俺は持てる分の武装を所持していく。

 そうして個室を出て走り抜けたら、ロマンの姿が見えた。

 

「半場くん、君まで来ちゃったのか⁉︎」

「その顔だと藤丸も来たみたいだな。なら行くかぁ」

「ええい、隔壁が降りる前に出るんだぞ!」

 

 その約束はできない。

 俺は特異点修復に参加しなければならない。それが神様から言われた条件だ。

 たとえ謎だらけの特異点Fであっても、それを反故にはできない。

 

「……と言っても、きついなこれは……」

 

 入った瞬間、猛烈な熱風が襲い掛かってきた。おのれレフ、なんであんなに爆弾を用意したんだ。

 顔を腕で隠しながら前に進む。探すのはぐだおとマシュ。生存者は見つけない。

 

「せん……ぱい、逃げてください……」

「そんなことできない……!」

 

 あぁ、よかった、マシュは生きていたか。

 そう安堵して壁に寄り掛かろう―――として、俺はそれが何なのか気づいた。

 

「……コフィンか」

 

 中には以前ちょっとだけ話をしたやつが入っていた。

 悪いなと平謝りして周りのコフィンも見る。多分あの中央の一番損傷が多いのがAチームのコフィンだろう。

 

「……」

 

 思えば、一番交流が多かったのはAチームだ。というか他の魔術師たちが魔術師らしすぎて無理だった。

 そしてAチームは一番優秀なチーム。とすればレフが念入りに殺しているだろう。俺のスキルで蘇生させても無意味。

 

「……悪い」

 

 散々友人友人言っておいてこの様だ。彼らがいるとスムーズに進まないから、なんて理由で俺は彼らの活躍の場を奪おうとしている。

 だからせめて、絶対に人理修復して生き返らせてやらなくちゃ。

 

『レイシフト適性者、基準値を満たしていません。該当者検索……』

 

 最後に思い出す。彼らとの思い出を。

 

『該当者発見。ナンバー36、不知火(しらぬい)半場(なかば)。ナンバー49、藤丸立香。以上二人を対象とし、レイシフトを開始します

 アンサモンプログラム、スタート』

 

 

 

 俺がお菓子と間違えて大量の睡眠薬を渡しちゃって、危うく死にかけたカドック……。

 

 

 俺が反省に廊下掃除してたらすっころんでパンツ晒して、どぎついストレートをかまそうとしたオフェリア……。

 

 

 初対面で『お前人間?』って言ったらそれ以降口をきいてくれなくなったヒナコ……。

 

 

 『共食いじゃねーか』なんて茶化しながら一緒にパスタ食ったペペロンチーノ……。

 

 

 夜中に目の前にいきなり現れて、驚いて思わず殴っちゃったベリル……。

 

 

 集会で膝カックンやったら『俺の後ろに立つな』と言ってきたデイビット……。

 

 

 キリシュタリアは……、…………。…………。そういえばあいつとは話してなかった。

 

 

 

 待ってろ。

 必ず、人理修復してくる。

 

 




何ということだ……。ギャグがない……‼︎
ほんの、一瞬も、ギャグがないっ。

しかし書いてて偽善者と呼んだらいいのか人でなしと呼んだらいいのか分からなくなってきた。










不知火半場(しらぬいなかば)
・キャラクター詳細
転生特典を受け取った転生者。

・プロフィール
「まだ生きたい」という願いをもって、転生の間に辿り着いた男。そんなことができるので、当然その魂は型月に順応する。

・プロフィール2
渇望「多くを残して自分も生きたい」
善にも悪にも寄りきれない、良くて人間らしい、悪くて人間らしい、そんな渇望。当然神座には遠く及ばない。
普通ならただの人間として輪廻の輪に入る予定だった。が、普通の人間より魂が強化だったため、たまたま特殊な輪に流れ込んだ。ある意味、それが彼の再スタートである。

今の話は全て真実。
しかしどうにも、今の彼は嘘くさい。


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炎上汚染都市冬木 半場、冬木を駆ける

 二部フラグはばっちし立てたんで、一部はとっとこ行きます。……行けたらいいなぁ。


「くっ……」

 

 目を開ける。

 そこに広がっているのは炎だった。

 

「レイシフトできたのか……」

 

 酔いはしてないが、なんか変な気分だ。でもこれあと7回はしなきゃいけないんだよなぁ。

 とりあえず体を起こす。……あれ。

 

「なんだ、何かが乗っかってやがる……」

 

 振り向いた。

 

 オルガマリーがいた。

 

 ……えぇ……、どんな偶然でこんなこと起きるの……。

 ひとまず退いてもらおうと起こす。

 

「ッ⁉︎」

 

 直後、何かいやーな予感。

 懐かしい感覚だ。このピリッとくる殺気、昔ナイフを投げられた時以来だ。

 オルガマリーを抱きかかえて、くるっとそこから一回転。

 

 半秒後、俺たちがいた場所に槍が突き刺さった。

 

「骸骨兵……あと竜牙兵か」

 

 しまった……何気に厄介なこいつらが、今の状況で現れるとは。オルガマリーを掴んじまった以上、放っておくことはできないぞ。

 ……仕方ない。まずはオルガマリーを起こそう。

 

「所長、おい所長起きろ!」

「ん……むにゅう。あとちょっと……」

「無乳? あともうちょっとほしい? いやそんなんどうでもいいので早く起きて‼︎」

「誰が無乳よ⁉︎」

 

 ちっ、こんなセリフで飛び起きるとは。だがこれで助かった。

 俺の記憶が確かなら、ファーストオーダーでオルガマリーはこいつらを倒せるガンドを放っていたはずだ。というわけで火力はこいつに頼る。

 

「っていうか、え? 何よこの状況。なんでわたし貴方に姫抱きされてるの。なんで骨に囲まれてるの⁉︎」

「どうやらリア充撲滅隊のようです。偶々一緒にいた俺たちをリア充と勘違いしたようですね」

「そんなわけないでしょ‼︎ え、ここ冬木⁉︎ なんでこんなやつらがいるの⁉︎」

 

 うーんうるさい。いっそのことこいつをミサイルにしてやろうか。

 そんな気持ちをぐっと抑えて、俺はオルガマリーに言った。

 

「所長、攻撃魔術は使えますか?」

「だから何よ」

「すみませんが砲台役をやってもらいます。俺の家系的にこいつらは余裕ですが、あなた抱えた状況で迎撃は難しいんで」

「それは分かったけど、背後の相手はどうするの⁉︎」

 

 そうだ、姫抱きだと背後のやつを倒せない。……とすると、どうすっかな。あ、思いついた。

 まずオルガマリーを降ろし、俺は屈む。

 

「何土下座なんてしてんのよ!」

「ちょいと失礼」

 

 そして俺は、

 

 

 オルガマリーを肩車した。

 

 

「こいやあああァァァリア充撲滅隊ィィィ‼︎ 俺たちはここにいるぞォォォ‼︎」

「ちょっと待ちなさいまさかこれで行くの、ねぇちょっと待ってなんで雄叫び上げて走ってるのねぇちょっと⁉︎」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 こうやって走り続けて10分。ひとしきり走りに走って、俺は橋に着いた。そう……型月世界において最強とされる冬木大橋にである。

 いやぁ鍛えておいてよかった。こうして何の問題なく走れたし。

 

「所長、魔力は大丈夫ですか? ……所長?」

「うぅ……最悪よ……もうお嫁にいけない……」

 

 炎上都市で婿探しか。随分余裕だなこれなら問題ない。

 しかしまだ安心はできない。とりあえず休める家屋を見つけるまで肩車して歩く。

 

「ねぇ、もういいんじゃないかしら。わたしもう降りてもいいんじゃないかしら」

「いや、万が一のこともありますから」

 

 思い出したが、確かここでシャドウサーヴァントと遭遇するイベントがあったはずだ。ひょっとしたらぐだおとマシュがぶっ飛ばしてるかもしれないが警戒する。

 それにしても、あの二人は一体どこだ。あとキャスニキはどこだ。

 

「それにしても、人ひとりいないわね……ひょっとしてみんな……」

「そう見るべきでしょうね。ますますファミチキが食べたくなってきた」

「なんで貴方そうも余裕なのよ」

 

 俺の場合覚悟してきたこともあるが、何よりこの程度なら慣れっこだからな。死体を見慣れてる新一理論だ。というか冬木が燃えるのはもはやお約束だし。

 あ、そういえば通信はどうだろう。さっき追いかけられてすっかり忘れてたが、俺たちも通信機は持ってるんだった。

 

「所長、通信はどうなって」

「あ、待ちなさい不知火。あそこに何か見える」

 

 何が?

 オルガマリーが指した方向を見る。目を凝らす。目の関係上オルガマリーより俺の方が視力はいいだろう。

 そこには……石化した人間。あぁなるほど、メドゥーサの魔眼か。確かファーストオーダーでもあったな。

 

「……ん?」

 

 瞬間、俺の足が止まる。意図的にではなく反射的に。

 

「何よ、どうしたの」

「ちょっと待ってくだせぇ」

 

 再び目を凝らす。

 俺の視界には、何もいない。あくまでも俺の視界内には。だがいるな、間違いなく。

 目の前にいないなら、来るのは……

 

「ッ! 所長揺れますよ!!」

「はっ!?」

 

 反らした直後、前から鎖が飛んできた。

 これは……ランサーメドゥーサ(大人)のものか! まだぐだおたちが倒してないのか! そしてここはファーストオーダー基準か!

 毎度アホなことを考えながら、視線を上方に向ける。

 

「突撃か!?」

「正解です。もっとも、それに気づいた時には遅い」

 

 見上げた瞬間、槍を向けてランサーが襲い掛かってきた。受ければ当然即死なので、俺は跳んで避ける。

 しかし衝撃だけは避けきれず、俺とオルガマリーは倒れた。肩車の体勢で。

 ……なんて威力だ。あと少し、見えかけた胸に気を取られていたら死んでた。

 

「運の良い方……いえ、こういった非常事態に慣れているのでしょうか。いずれにせよ終わりです」

「ちぃ」

 

 肩車のまま起き上がる。最悪だ。

 

「どっ、どうするのよこれ……!」

「……」

 

 何とかできる手段はある。……いや、間に合うか? 今からでもナイフを抜けば……。

 その迷いが仇になったか。

 ランサーは構わず突っ込んで来た。

 

「はあああぁぁぁッ!!!」

「「ッ!!」」

 

 無理だ、ナイフを抜く時間はない。そして混乱してるオルガマリーがガンドを当てられるわけない!

 絶体絶命。ランサーは間違いなくそう思っているだろう。

 

 

 ……やむを得ない。

 

 この手段だけは取りたくなかったが、どうやら覚悟を決めるしかないようだ!

 

「行くぞ所長! あなたも腹くくれ!」

「なっ、何をするの!?」

 

 決まってるだろ! ここまでずっと隠してきた最後の手段だ!

 

 

 ぐっ、と瞬時に腰を落とす。肩車していたオルガマリーが離れていく感覚が分かる。

 

 目の前に迫ったランサーが怪訝そうな顔をした。しかし速度は緩まない。槍の切れ味も鈍らないだろう。

 

 しかしそれが好都合。この技はカウンターなのだから、相手に速度があればあるほどいいんだ。

 

 腕を、オルガマリーから一旦離す。何より重要なのは手だ。ここで支点を間違えれば命に関わる。

 

 そして改めてオルガマリーを掴む。

 

 これで準備は整った。後は目の前の女にぶちかますだけだッ!!

 

「くらえッ!」

 

 そして俺は

 

 

 

 

 オルガマリーをランサーに叩きつけたッ

 

 

「必殺! カウンターハンマー・オルガマリー!!」

 

 

「ぐえええぇぇぇッ!!!???」

 

「ぐはあああぁぁぁッ!!!???」

 

 

 

 

 ドスッ! ゴロゴロドシャン!!

 

 勢いよく、オルガマリーの頭がランサーの頭とごっつんこ。

 

 そして自前の速度と相まって、ランサーはよく転がり砂ぼこりを上げた。

 

「勝った! 特異点Fッ、完!!」

「…………(白目)」

 

 実際はまだランサーは死んでないのだが、とりあえずそう言っておく。

 

 

 

 

 

 ――――――そしてその後、乱入してきた立香とマシュとキャスニキにランサーは倒され、無事半場とオルガマリーは生き残った。

 

 

 

 

 

 ――――――さらにその後、目を覚ましたオルガマリーに半場は殴られた。

 

 

 




 前座オブ前座。

 それにしてもファーストオーダーのランサーメドゥーサの胸よ。でもフード被ってんのは可愛かった。そういうところが女神時代につながってると感じました、まる


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召喚に応じ顕れよ

あの、みなさんなんで所長が武器として使われていることにツッコまないんですか?
もしかしてあれですか? もうハーメルン内では所長が武器として扱われるのが普通なんですか? ひょっとして私が遅れてるんですか? だとしたら悲しいです。みなさんリヨぐだ子の所長への態度を見習ってください!

というわけでどうぞ。


 半場がオルガマリーに殴り飛ばされた後。

 

 半場は、ファミリーマートに買い物に行ってきた。

 

「おーうあったぞファミマ。全員分の飲み物買ってきた」

「本当にあったんだ……」

「もう何も突っ込まないわ……」

 

 要するにパシリである。しかし半場もファミチキを食いたかったためあっさり了承した。

 

「フォウは魚肉ソーセージでいいよな」

「フォウフォウ」

「うんよしよしアホ可愛いな」

「フォウ!?」

 

 あれ、半場さんってフォウさんと仲良かったっけ。そう思ったマシュだが今仲良くなったのかと納得した。

 

「キャスニキは……ドッグフードで良かったよね?」

「喧嘩売ってんのかお前」

「冗談……ほい、キャットフード」

「犬じゃなけりゃあいいってことじゃねぇんだよッ!」

 

 払い落されたキャットフード。あぁもったいないと言いながらしぶしぶスピリタスをキャスターに渡し、半場はコーラを飲む。もちろんキャスターは吹き出した。

 

 そしてやっと、会議が始まる。

 

『まず立香くんたちがやったことをまとめよう。

 1.マシュがデミ・サーヴァント化。

 2.キャスターが仲間に。

 3.アサシンとライダーを撃破。

 4.マシュが宝具を疑似展開。

 5.ランサーに襲われてる二人を見つけ救出及びランサー撃破。こんな感じかな』

「うわマジかすげぇな。んじゃ俺たちの報告な。

 1.所長と合流、逃げる。

 2.逃げる。

 3.逃げる。

 4.ランサーと遭遇。

 5.逃げてたらお前ら来た。こんなところだ。どうよすごくね?」

「どこに自慢できる要素があるのよ」

 

 歴然の差であった。特に大きいのはマシュの宝具疑似展開だろう。

 敵がアーサー王であることを踏まえると、それは大きな強みとなる。

 とすれば、あとやるべきことは。

 

「不知火のサーヴァント召喚ね」

「えっマジで⁉︎ 俺英霊召喚できんの⁉︎」

「当たり前よ。貴方にはマスター適性あるじゃない」

「ひゃっほう! これでガチャが、ガチャが回せるゥ‼︎ あの脳髄が溶けるようなあの感覚をまた味わえるのかッ‼︎」

「何このギャンブラー」

 

 最低な反応はまぁ置いておく。だいたい間違っていないし。

 とにかく、不知火がサーヴァント召喚することが決定し、全員霊脈に移動した。

 

「ここに盾を置いて召喚するんですよね」

「そうよ。詠唱は間違えないように」

「魔力は?」

「聖晶石を使いなさい」

 

 渡された石は3個。思わず「しけてやがんな」とつぶやいた半場は悪くない。だがこれで間違いなくサーヴァントが来る分、現実よりはマシだろう。

 

 

 

「汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 さて……一体誰が召喚される?

 これだけはいくら俺でもランダムだ。触媒になりそうなものは集めてはみたが、ここで出して怪しまれたらマズイしな。

 叶うことなら俺の奇行を容認してくれるサーヴァントが良い。とすると……謎のヒロインXとか。

 まぁ出てきてから考えよう。でもせめて話が通じるやつをよこしてね。スパとか出てきたらどうしようもないし。

 

「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ‼︎」

 

 うわ眩しっ!

 光が俺たちを包み込む。この光景をアチャーが見てなくて良かった。危うく狙撃されるところだった。

 

 やがて光が晴れる。俺は真っ先に目を開ける。

 明暗の変化に慣れぬ目が捉えたのは、刀の鞘のような物。……日本の剣士? とすると武蔵とかコジローとか沖田か? 確か全員話が通じたような。

 良かった。世界は俺を見放さなかったらしい。

 そして、ここからが逆転劇だ!

 

 

 

「セイバーのサーヴァント、両儀式。召喚に応じ参上致しました。……ふふ、これでいいのかしら? 異色にも程があるでしょうけれど、よろしくねマスター?」

 

 

 

 見捨てられた! 最悪だ!

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「ふふ、どうしたのマスター。嫌に緊張しているわ」

「んにゃ、なんでも」

 

 俺ただいま絶賛絶不調。駄目でござる、力が出ないでござる、今日は帰るでござる、働きたくないでござる……いや最後のは違うな。

 

 最悪だ、よりにもよってこいつが出てくるとは。

 完全に、世界に見捨てられた。

 

 こいつが出てきた、それはいい。それはいいのだ。通常のマスターならな。

 だが、俺は違う。

 俺はギャグ補正を使っている。それがマズイのだ。

 

 FGOコラボイベ『空の境界』編。そこで両儀式は現れた。誰の前に? 謎のヒロインXの前にだ。

 Xが宇宙人だから、なんて理由で勝手に飛び出してきた両儀式は、Xに「そのくせっ毛切り落とすわ」と言った。それに対しXは言った。「やだこの人コスモ時空(ギャグ補正)が効かない‼︎」と。

 

 そう、効かないのだ。

 全宇宙最強のご都合主義であるはずの、ギャグ補正が。

 

 正確には「実は生きてましたー!」系の補正か。

 効かない理由を俺なりに考えた結果、こいつには「私が斬った。だから死ね」系のギャグ補正が働いているのだろうと思う。どこの波旬?

 

 まぁこういうタイプの対処はあるので、あまり気にしすぎない方がいい。しかし問題は他にもある。

 

「ねぇ、マスター」

「何だ?」

 

 わざと屈みあざとらしく、両儀式は言った。

 

 

「そのくせっ毛斬ってもいいかしら?」

 

「いいわきゃねーだろ!!」

 

 

 そう、なんとこいつ、ことあるごとに俺のアイデンティティをぶった斬ろうとしてくるのだ!

 この時俺はやっと理解した。「アホ毛こそFateヒロインの証である」と。Xが死ぬ理由も理解したよ。まじ怖いよ両儀式。

 

「そう、残念」

「笑ってる。ものすごい笑ってる。お前絶対付け狙うつもりだろ」

「嫌だわマスター。私がそんなことをする女に見えるの?

やるなら白昼堂々やるわ

「最悪だッ」

 

 くそう、やっぱこいつクーリングオフできないかな。無理? ですよねー。

 

 召喚して早々後悔する俺。

 それに気を取られて進んでるのも忘れていた。

 

「よし、あともうちょいだ」

 

 そう、ここからアチャー戦。はっきり言って前座である。

 だからといって油断はできない。シャドウサーヴァント化しているとはいえ、エミヤの投影は厄介極まる。マスターである俺たちが死なないよう気をつけなくては。

 

 そして、とうとうあと一歩。上がれば、洞窟の入り口だ。

 この特異点がファーストオーダー基準なら、ここでエミヤは待ち構えているはず。

 キャスニキと別れるか、一緒に倒すか。俺としては確実性を求めて倒したい。

 

 何にせよ、まずは出会ってから。

 

 木々の枝を退けて、俺たちは開けた場所に出た。

 

 

 

 誰もいない。

 サーヴァントの姿など、影も形もない。

 

 

 

「……何だ?」

「誰もいない……?」

 

 そんなはず、ない。倒されている、それもない。

 ならば

 

「……しまった」

 

 やられた。完全に、警戒されてしまっている。

 

「ロマニ、ここから洞窟内部の様子を探れるか?」

『ちょっと待ってね』

 

 考えるべきだった。

 ここには、マスターが二人いるのだから。

 

『検索出たよ。……これは、洞窟内部に、サーヴァントの反応が二つ!』

「ヤロウ……そうきやがったか!!」

 

 合理的であるエミヤが、俺たちを相手にするならどうするか。予測は付いていたのに。

 

 潰す気だ。

 確実に。

 

「……そうかい」

「フォウ?」

 

 予定変更。いいぜ、アチャー。お前が騎士王と一緒にくたばりたいなら、その願い叶えてやる。

 補正を使える俺が、とびっきりの作戦で行ってやるよ。

 

「なぁみんな」

「何だ?」

「突入作戦は、俺に考えさせてくれないか?」

「何かあるのか」

 

 注目が集まる。

 よし、折角だし言っておくか。戦闘前の肩慣らしだ。

 

 

 

 

「私にいい考えがある!!」

 

 

 

 




私にいい考えがある!!(CV.玄○哲章)


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待ち伏せする相手を襲撃する方法、その一例

書き直した話。ネタは大体同じなんで間違い探し程度に楽しんでもらえれば。


 相手にマスターが二人いるということ。その有用性は、古来より証明されてきた。

 何せ言ってしまえば、軍隊を率いる将が二人いるということだ。しかも、後のない文字通り決死の将が二人。

 

 数的優位から発生する隙を突こうにも、そもそもセイバーとアーチャーは防衛戦しか取れない。

 サーヴァント性能と聖杯の援護を考慮すれば、有利なのはセイバーたちだが、防衛戦に限られている以上実はセイバーたちもかなりのハンデを負っている。

 

 とはいえ、それでもセイバーたちが優位であるのは事実。

 では、この場合、どうすればいいか。

 爆弾を搭載した車を突っ込ませたところで足りない。そんなものはサーヴァントには通用しない。

 そして迂闊に正面から突っ込めば、アーチャーの総攻撃をくらうだろう。

 

 

 

 そんな状況でどうするのか。

 

 かつて軍を率いたセイバーは、合理的に動けるアーチャーは、それを少し期待しながら待っていた。

 

「来たな。……予定通り、私は後ろにつく」

「勝手にしろ。……だがもし、私の興味を引くやつがいたならば……」

「分かっている。手出しは控えよう」

 

 そう言って、アーチャーはセイバーから半歩下がった。そのセイバーもまた、地に刺していた剣を引き抜く。

 2騎は気配を捉えていた。洞窟内を進む気配が。

 

「サーヴァントの数は……二つ。様子見か。確か盾を持つサーヴァントがいた。それだろう」

「ふん。基本中の基本だ」

 

 だが、王道だけで倒せる程サーヴァントは甘くはない。捻りを加えなければいけない程、この2騎は強力だ。

 それはあのキャスターなら承知のはず。そしてキャスターが味方に情報を与えていないわけがない。

 

 さぁ、どう来る?

 

 そう、セイバーが思った直後。

 

「……?」

「……なんだ、この音は?」

 

 奇妙な音がした。悟られたくないがために、魔術で偽装された音が。

 

「……タイミングをずらすつもりか?」

 

 それにしては、奇妙。今もなお音は近づいてきている。

 耳を傾けて数秒後。しかし音はまだある。しかも、数が増えている。

 

「まさか、」

 

 思い当たる節があったアーチャーが、弓を引いた。

 その直後だった。

 

 

 

『オルテガ、マッシュ、サーヴァントにジェットストリームアタックを仕掛けるぞ!!』

 

 

 

「「は?」」

 

 

 直後、三つのタンクローリーが洞窟内を突っ切ってきた。

 

 

「!? ちぃっ!!」

 

 しかしそれを、セイバーとアーチャーは瞬く間に対処する。

 セイバーの一振りに、アーチャーの一撃。そしてセイバーの振り下ろし。

 

『お、俺を踏み台』

「喧しい!!」

 

 おぉ、なんと非情! お約束のセリフは、単純にネタを知らないセイバーに一刀両断された。

 しかし、まだだまだ終わらんよ。続けてまた同じ音が聞こえてきた。

 

「まだくるか! しかし聖杯に直撃は避けたいな!」

「分かっている! 退けアーチャー。私が全て一閃する!」

 

 聖杯からのバックアップを受けたセイバーは、今や魔力消費を無視して宝具を連発できる。だから次は容赦なく聖剣を振るう。

ところで。

 セイバーの聖剣から発生する被害とはどのようなものか。

 

 正確に言うと、『真上にビームを放出すればどうなるか』。

 特に、この洞窟の中において。

 

ビシリ

 

 勢いよく放出された魔力は、天井にヒビを入れる。

 もしその上に超重量がかかっていれば、完全に崩壊し落ちてくるだろう。しかも魔力は真上に向かっているため、目標からズレることもないだろう。

 

 つまり、そういうことである。

 

 

 

 

 

『これが本命! ロードローラーだッ』

 

 

 つまりそういうことである。

 

 

 

 聖剣を放とうとしたセイバーは、無論これを避けられるわけがなく。

 

 数秒後、セイバーはロードローラーの落下とジェットストリームアタックの両方をくらうこととなった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 セイバーが押しつぶされてから、悠々と半場たちは洞窟に入った。

 

「……いいのかな。こんな作戦で」

「いいんじゃねぇの? アーチャーのヤロウの狙撃も防げるしな。それも考慮の内か?」

「もちろんです。プロですから」

 

 事前に渡されたガスマスクを装備している『5人』。ただしフォウは防げないので我慢である。

 

「おっ、やっぱあいつは避けてたか」

「アーチャー……!」

「いくら現代兵器は通じないとはいえ、さすがに呼吸を塞がれるとキツイな。だが、それで策は終わりか?」

 

 咄嗟に服を破いてマスク代わりにした辺り、アーチャーの対応の早さが伺える。しかしそんなことカルデア一行も想定内。むしろこの程度で倒せるならキャスターが倒している。

 

「だからとっとと出てこいセイバー。押しつぶされて爆破された程度でくたばるタマかよテメェ」

 

「もちろんだ。そして言わせてもらおう、『小賢しい』。その程度の策で来るのなら、程度は知れている」

 

 瞬間、あれほどの重量が一振りでふき飛ばされた。

 そこからはセイバーの姿が。その鎧は煤けているものの、全くの無傷である。

 

「しかし……面白い。その盾は面白い。構えよ小娘。さもなくばマスター共々我が聖剣に……」

「あ、ちょいストップ」

 

 カッコいいヴィランのようなセリフを言おうとしたセイバーを、半場が止めた。おかげでセイバーが殺気を放っているが、殺気程度で死ぬ程半場は図細くない。

 

「その聖剣を放つのはやめてもらおうか」

「そんなハンデをすると思っているのか」

「いいや違うな、全然違う。これは懇願じゃねえ『脅迫』だ」

 

 何? と怪訝な表情となるセイバー。そして半場はポケットから本を取り出した。

 

「もし聖剣の真名解放をすればどうするか分かってんだろうな」

「そんな脅しを私が受けると思っているのか」

「今俺が持ってるこれは、あんたもご存知の花の魔術師執筆だ。その内容は18禁だ」

 

 その内容を知らされていないのか、立香たちが吹き出した。

 そしてセイバーは、何故か冷や汗を大量に流していた。『著者 花の魔術師』と聞いた辺りから。

 

「もし聖剣を放てばこれを朗読する」

「何をだ」

 

 それは、半場が前世の知識を用いて書いたこと。それを某マーケット本のごとく丁重に包んだもの。

 

 そう、

 

 

 

 

 

 18禁版Fate/stay nightのセリフ集である。

 

「18禁版『王の話をするとしよう』」

 

「待て落ち着け」

 

 

 

 思考より早くそう言ったセイバーは、一瞬経って硬直した。

 長くはないが短くもないその刹那は、半場たちにとって十分隙になっている。

 

「令呪をもって命ずる、宝具を発動しろ両儀式」

「全ては夢───。───これが名残の華よ」

 

 無垢識・空の境界。

 直死の魔眼の理論を応用した、全体攻撃な対人宝具。死の線を斬るゆえに、それをくらえば大概は死ぬ。

 

「がぁっ!?」

「ほいアーチャー取ったりー」

 

 回避できるかは直感の有無であった。

 気配遮断を使用して()()()()()()()()()()()()()()()()両儀式。つまりこの宝具使用は不意打ちである。

 当然油断していたアーチャーは即死し、回避したセイバーだけが残った。

 

「くっ……」

 

 ここで上記の言葉を修正する。半場は()()()避けさせた。

 この後の攻撃で、確実に殺すために。

 

 セイバーは跳んで回避した。つまり、滞空の間は無防備である。

 そこを

 

「令呪をもって命ずる。宝具を発動してくれ、キャスター!」

「焼き尽くせ。『灼き尽くす木々の巨人(ウィッカーマン)』!!」

 

 令呪による宝具の高速発動。それにより、前置きをすっ飛ばしてキャスターの宝具がその姿を現した。

 それは枝で編み込まれた巨人。それが炎を纏いセイバーを襲う。

 

「オラ、善悪問わず土に還りな!!」

 

 その破壊力は、たとえ対魔力を持つセイバーでも防げるものではなく。

 着地すらできずに、セイバーは屠られた。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 ふいー面倒なチュートリアルがやっと終わった。

 そして俺は何か言いたげなセイバーに近づく。

 

「なにか言いたそうだな」

「その本。著者が花の魔術師と言っていたが」

「ああ」

 

 俺は断言した、しかも即答で。

 まぁマーリンのことだし俺に注意は向かないだろ。ザマァとしかいいようがないな!

 

「なるほど。確かにやつならば知っていても無理はないか……。だがそれはそれとして、貴様どこで手に入れた?」

「うん?」

 

 あー、やっぱそれ聞くわな。……どう答えようかな……下手に言うと裏どりされかねんし……。あ、そうだ。

 半秒の脳内会議で見つけた答えを、俺はアルトリア・ペンドラゴンに言った。

 

 サーヴァントは聖杯により知識を与えられる、その特性を活かして。

 

 

 

 

 

「Garden of avalonっていうサークルで売ってた」

 

「よしマーリン殺す」

 

 

 聖杯による知識には、どうやらコミケの情報もあったようだ。

 お礼に触媒をやろう、と言われて髪の毛を受け取る。あと可能ならそのサークル潰しておいてくれと。いや無理だなサークル無いし。

 

 『ちょっと待ってそんなことやってない』みたいなセリフが聞こえてきたが幻聴だろう。

 

 そして、セイバーはマーリンに対する殺意を抱えたまま座に還った。




セイバーとアーチャー弄りは止めると言った。だけど18禁脅しをやめるとは言ってない。

さて、これで後でアルトリア種を召喚してもなかばが殺されることはないな!(汗)


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転生者であるから

杉田&所長回です。最初はギャグ路線で行こうかなと考えたんですが、せっかくの所長回なので決めていきたいと思います。


 セイバーから触媒を受け取った後、キャスターもすぐに消え去った。その際ぐだおたちが悲しそうだったけど、俺としては微妙な感じでしかない。だって早けりゃこの後会えるし、なんなら第5特異点で敵になるからね。

 

 この世界にクリア報酬の概念はあるのか、と疑問に思っていたら、オルガマリーが声をかけてきた。

 

「何考え込んでいるの。聖杯を回収したらすぐに戻るわよ」

「っと。そうか」

 

 そうか、もうそんなところか。長いようで短かったな。俺はマシュが聖杯を取る瞬間、そう思った。

 正確には、取ろうとした聖杯が浮いた瞬間に。

 

 

「いや、まさか君たちがここまでやるとはね。計画の想定外にして、私の寛容の許容外だ」

 

 

 やっと来たか。相変わらずなんか腹立つやつだな。中身が中身ってこともあるかもしれないけど。

 レフ・ライノール。カルデアの技術顧問にして……人類の裏切り者。

 冷めた視線を向ける俺に対し、オルガマリーは嬉しそうな顔をしている。しかし立香やマシュ、通信越しのロマンは驚いていた。

 

「間抜けなアホだからと、見込みのない子供だからと、善意で見逃した私の失態だな」

「レフ教授……!?」

『レフ教授だって……いや、まさか!?』

「おやロマニ。君も生き残ってしまったのか。全く、すぐに来てくれと言ったのだが……本当に、どいつもこいつも反吐がでる」

 

 お、前世で見た顔芸。いやー中の人の声も相まって腹立つなー。

 驚く演技をしながら見ていたら、オルガマリーが駆け出した。

 

「レフ……! レフなのね! あぁ、良かった! あなたがいてくれなきゃ私」

「あ、ちょいストップ」

 

 オルガマリーの襟首を掴む。カエルの声みたいなのと怒鳴り声を発しているが無視する。まだだ、まだ話は終わってない。

 そして俺が言おうとしたところで、レフが先に言ってきた。

 

「ほう。サーヴァントでもないのに私の気配に気づいたか」

「いいや? だけど最初から疑問だったんだ。管制室にあんたの死体はなかったのに、今ここにあんたがいるわけだから」

「ふん。ただの阿呆かと思っていたが、そうでもないらしい。君、知識はないが知恵だけはあるようだね」

 

 褒めてんのか貶してんのか分かんねーなオイ。いや、こいつのことだから貶してんだろうな。全人類見下してるっぽいし。

 

「んじゃ、問おう。お前が爆破の犯人か」

「その通りだ。しかし、気づくのが遅かったなカルデア! もう君たちは終わっている!」

 

 レフの本心が明らかになった。……そして今、オルガマリーはここにいる。ということは

 

「嘘、嘘よ。レフ、あなたがそんなことするわけ……」

「はっ。一番の想定外は君だよ、オルガマリー。爆弾は君の足元に仕掛けたのに、まさか生きているとは」

「……え?」

 

 その通りだ。爆弾はオルガマリーの足元に仕掛けられていた。……それも、建物を優に破壊できる程の火薬で。それはさすがにすり替えるのは難しい。

 だから、とりあえず蘇生を試みたが

 

「いや、それは違うな? 君は既に死んでいる。そこにいる君は残留思念でしかない。肉体はとうに四散している」

 

 無理だった。というより、制限に引っかかってできなかった。……まさかとは思うが、第2部でオルガマリーが登場するなんてことはねーよな?

 

「……しかしそれはあまりにも残酷だ。だから最後に、君に今のカルデアを見せてあげよう」

 

 はっとなって前を見たら、既にレフのやつは時空を繋げてカルデアスを出していた。やはり便利だな聖杯。そしてありがとうレフ。

 カルデアスは真っ赤に染まっていた。そこに青い部分など欠片もない。

 

「な、によ。あれ……!?」

『……まさか、今の地球は』

「聡明だなロマニ、気づいたか。そう、既にこの地球に人間などいない!!」

 

 レフは手を振り上げ、『王』の偉大さを説く。けどそれは転生者である俺以外には分からない。そして俺も『王』とは決定的に違う。

 最後にレフは、予定通りと言わんばかりに言った。

 

 

 

 

「それでは最後に、オルガマリー。君の宝物に触れさせてあげよう」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 瞬間、カルデアスに向けて謎の力場が発生する。その規模は凄まじく、一瞬半場たちの体が浮かんだ程であった。

 しかしここにはサーヴァントがいる。立香にはマシュ、半場には両儀式が。サーヴァントがマスターを抱えて盾に隠れたことにより、マスターは力場から逃れた。

 

 そう、マスターは。

 

「いやあああぁぁぁ!!」

「所長!」

「駄目ですマスター! ここから出ると力場に入ります!」

 

 一瞬、立香が腕を伸ばすも間に合わず。

 オルガマリーは力場に乗り、緩やかにカルデアスに導かれていく。

 

「な、何をするの! カルデアスよ? 高密度の情報体よ!? そんなものに触れたら……」

「あぁ、ブラックホールや太陽のようなものだな。どちらにせよ人間にとっては地獄でしかない。生きたまま、無限の死を味わうといい」

 

 レフの顔に浮かんでいたのは、醜い狂笑であった。それはまさしく悪魔のごとき笑み。その行動もまた、悪魔と形容するに相応しいものだ。

 しかしオルガマリーには、もうその顔を見ている余裕さえない。

 

 

「やだ、やめて、いやいやいやいやいやぁ!! まだ誰にも認められてない! まだ誰にも褒められてないのに!」

 

「みんなわたしを嫌ってた! みんなわたしを避けてた! 誰もわたしを認めてないのに!」

 

「なのに、なのにぃ!」

 

「まだ死にたくない! まだ生きてたい! 誰かに認めてもらわなくっちゃ、いけないのに!」

 

「なんで、こんなことになっちゃうのよぉ!!!」

 

 

「んじゃとっとと掴まれ!!」

 

 

 直後、オルガマリーに向かって、半場が飛んできた。

 体にはロープが巻きつかれており、その先にはマシュたちが。

 

「!」

「右手! 掴め!」

 

 ガッチリと。伸ばされた右手を、オルガマリーは掴んだ。

 

「マシュ! 引っ張れぇ!」

「了解! はあああぁぁぁ!!」

 

 力場に抗う力。マシュたちが引っ張ることで、オルガマリーは僅かにカルデアスから遠ざかった。

 それを、その行動を。

 

 レフは、嘲笑う。

 

「無駄なことをッ。既にオルガマリーは死んでいる。そんな者のために命を尽くすか!」

「……!」

 

 そう、オルガマリーはもう死んでいる。たとえ助けられたとしても、それは一時の希望でしかない。それどころか、反動に大きな絶望が襲うだろう。

 無意味。

 無価値。

 はっきり言って、『命の無駄遣い』。

 死人のために、生者が身を粉にする必要はない。

 

 それでも

 

「だからどうした。助けを求めてるやつ助けて何が悪い!」

「悪いだろう! おまえが死ねばカルデアはさらに絶望するだろう! 今も絶望に晒されているが、さらに大きな悲しみを背負うだろう! そんな状況を、分かっているのかおまえは!」

「あーそうかい。んじゃ俺が死ななきゃいい話だな!」

 

 返答に一秒の間もなかった。

 あまりにはっきり答えたもので、レフは絶句を通り越して唖然となった。

 そして……見放した。

 

「そうか……。知恵のあるおまえなら、オルガマリーの無価値さを理解していると思っていたが……。やはり私が間違っていたようだ」

「やっと気づいたか」

 

 半場の笑い飛ばしも、レフには空虚な強がりにしか聞こえなかった。

 

「ならば諸共に死ね。カルデアスの中で、無限の地獄を味わうがいい」

 

 レフが手を挙げる。その瞬間、明らかに力場が加速した。

 

「うおっ!?」

 

 思わず手を離しそうになって、半場は左手でもオルガマリーを掴む。

 これで離すことはない。しかし

 

「半場、さん……ッ。もうもちません……!」

「悪いマシュ、もうちょい持たせてくれ! ()()()()()()()!」

 

 ザリザリと、ロープを盾に繋ぎ支えているマシュたちに、限界が近づいてきた。

 つまり、やがてオルガマリーと半場はカルデアスに突っ込むこととなる。

 

「ふん。人間らしい、実にお粗末な結末だ」

「不知火、もういい……!」

「いや、もうちょいだ所長!」

 

 情けない話であった。

 

 もう半場とオルガマリーは、カルデアスまで10メートルも離れていない。レフに至ってはもう目と鼻の先である。

 なのにレフが何もしないということは、このままカルデアスへのダイブを見届けるつもりだろう。

 

 結局、『彼』は何も為さないわけである。

 

「最後に、何か聞こう。覚えるつもりはないがね」

「そうかいッ。んじゃ、一言だけ……ッ!」

 

 半場は言った。

 

 

 

 

 ───ありがとう、レフ教授───

 

 

 

 

「……は?」

 

 意味が理解できなかった。「ありがとう」? 一体何を言っている? とうとう狂いでもしたか?

 そうレフは思った。

 

 しかし、半場は気が狂ってなどいない。

 彼は純粋に思っていたのだ。

 

 純粋に、馬鹿にしていたのだ。

 

 

『ありがとう、レフ教授』

 

 情けない話であった。

 

 

 

 

 

 そこまで敵の接近を許すなど(『わざわざ自分から近づいてくれて』)

 

 

 

 

 

 直後、半場はサブマシンガンを取り出した。

 

「えっ?」

「さよなライオン☆」

 

 てへっと舌を出して、半場はサブマシンガンを連射した。

 距離は1メートルもない。つまり弾が広がることはない。つまり一発も外れることがない。

 そしてレフはカルデアスを背にして立っている。

 

 

「ぐはあああぁぁぁァァァ!?!?!?」

 

 

 つまりそういうことである。

 

 全弾綺麗に顔面に受けたレフは大きく仰け反り、そして足を滑らせた。そしてカルデアスに突撃した。おぉ、なんと情けない!

 当然カルデアスに突っ込んだレフが生きているわけなく。聖杯だけが弾かれ、力場も消える。

 

「よっ、と!」

 

 恐怖でとうとう気絶したオルガマリーを抱えながらも、半場は器用に聖杯をキャッチする。その半場をさらに両儀式がキャッチする。

 そして降りた半場は、ロマニに言った。

 

「よーしもうこんな特異点に用はない! ロマン、打ち合わせ通りレイシフトだ!」

『任せて! もうシステムは起動してある!』

 

 直後、半場たちの意識は急速に薄れていく。レイシフトの合図である。

 

 こうして、彼らは炎上汚染都市を離脱した。




うん、ギャグがないな! でも安心してください。一応ギャグパートも考えてありますんで、今度出します。

次は所長がどうなったかです。
ところで話は変わりますが。つい先日Jから移籍したギャグ漫画、『銀魂』。そのツッコミ役である志村新八の本体はなんでしょーかっ。


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幕間の物語1 オルガマリーはどうなった?

前回の答え合わせ。
正解、メガネ。
けど所長がメガネになるわけではない。

今回は短いオルガマリー回です。


 半場たちが目を覚ました時には、既にカルデアは大方の復旧作業を終えていた。といっても回復したのは一部の区画だけで、全体の復旧は未だに目処が立っていない。

 レフの話では、カルデアの外に人間は一人もいない。当然、そんな状況でまともに復旧作業などできるわけがない。ここまでもたせただけでもめっけ物なのだ。

 

「つまり、今のカルデアはギリギリだ。人も物資も何もない。しかも頼れるのは君たちだけという現実だ。そんな状況だけど、ボクは君たちに問う。……特異点に向かい、人類を救ってくれるか?」

「はい。オレなんかで良ければ」

 

 返答には、決意と戸惑いが感じられた。それでも、ロマニはそれを良しと言いのけた。

 そして半場もまた、決意と戸惑いを観せて言った。

 

「……まぁ、かーるくやってくよ」

「ありがとう。これでボクたちの方針は決定した。特異点を修復し、未来を取り戻す。『グランドオーダー』。それがこの任務の名称だ」

 

 ここで、一つの区切りがつけられた。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 そうしてすぐに会議が始まる。内容は主に特異点Fの振り返りである。

 取り仕切るのは現在代理所長のロマニと、カルデアが独自に召喚したサーヴァントであるレオナルド・ダ・ヴィンチ、通称ダヴィンチちゃん。

 

「まず聖杯の話だけど、それは半場くんが回収したんだよね?」

「おーう。ここにあるぞー」

 

 半場はポケットから黄金の杯を取り出した。瞬間、物理的かつ魔術的な輝きが漏れる。

 それに感嘆するのが2割、どうやって取り出したと思うのが8割。

 

「……よし、それはボクたちが預かろう。本家とは違って願いを叶える機構がないとはいえ、ボクらにとっては無限の魔力供給器だからね。君たちに害が出るとまずい」

「そんなもんか。ほい」

「うわっ!? いや投げないでほしいな」

 

 随分扱いが雑であった。もっとも半場にとっては大した代物ではない。彼にとってはせいぜいが爆弾の材料である。

 受け取ったロマニ。しかしまだ手を出している。

 

「何だよ、飴ちゃんなら持ってるけど」

「そうじゃないよ。あのサブマシンガンの話さ」

「あれがどうかしたか」

「どうかしたか、じゃないからね! あんな危険物はもちろん没収です!」

 

 えー? と言って、半場は渋々サブマシンガンを取り出した。もちろんポケットから。

 恐る恐る受け取るロマニを見つつ、ダヴィンチちゃんが問う。

 

「大体キミ、なんでこんなものを持ってるんだい?」

「人類の未来を守ろうぜって言われたから」

「……キミがどんな方法で人類を救おうとしているのか大体分かったよ」

 

 はぁ、とため息を吐いてやれやれと言った。しかし手段を選んでいられないのも事実である。仕方ないか、と2人は思った。……半場の部屋の武装には、気づいていない。

 そのまま話は切り替わる。

 

「ところで、所長はどうなったんだい?」

 

 とうとう議題に挙がったオルガマリー。それはみなも興味津々である。

 視線を向けられた半場は、しかしハァと言いたげな表情であった。

 

「あん? 所長ならいるじゃないか」

「は?」

 

 ここ、ここ。と言いたげに半場は頭を指す。しかし立香たちには分からない。

 何か察したかロマニが言う。

 

「半場くん……それはつまり『所長は心の中にいる』と言いたいのかい?」

「んなわけあるか。ちょっと待ってろ」

 

 何やら文字が書かれたありがたそうなお札を取り出し、半場は呪文を口ずさむ。

 次の瞬間

 

『羊が5063匹ー羊が5064匹ー羊が5065匹ー……あぁ、暇だわ……』

「うわ!? 所長の声!?」

『え……? 嘘、通じたの!? 通じたのね!? よかった誰も反応してくれなくてどうしようもなかったの!』

 

 それは、紛れもなくオルガマリー・アニムスフィアの声であった。ただし電話を通じてのような感じだが。

 ロマニは驚きと喜びをもって、半場に言った。

 

「所長の救出ができたんだね!」

「半分くらいな。ちょい説明させろ」

 

 お札を置いて、半場はしっかりと説明する。

 

「俺は『オルガマリー・アニムスフィア』という個体から『オルガマリー』という部分だけを抜いた。まずそこはいいな」

「うん」

「それには本人と縁のある品が必要だ。何の縁もないものに人格を宿すことはできないからな」

「それで? 一体君は何に所長を宿らせたんだい?」

 

 全員、ぐいっと寄る。

 半場は、迷うことなく、それがさも当然であるように言った。

 

 

 

 

「所長のアホ毛」

 

「は?」

 

 

 

 一瞬、場が凍った。

 今、なんて言った?

 

「だーかーらー所長のアホ毛だって言ってんでしょうが」

「いやちょっと待って。それはどこに!?」

「ここ」

 

 半場は自身の頭部を指した。そこには一際目立つ長いアホ毛の他に、もう一つ短いアホ毛があった。

 そこから、オルガマリーの念話が聞こえてくる。つまりこれが今のオルガマリーの本体である。

 

「もっと他にこう……何かなかったのかい!?」

「仕方ないだろ。所長と縁のある品がこれくらいしかなかったんだから」

『しょうがなくはないでしょ!!』

 

 オルガマリーの金切り声が響いた。半場は直に聞いてるのか仰け反る。

 

『なんでアホ毛!? もう一度言うわなんでアホ毛なの!? 喋れないし見えないし、動けないし!』

「うるさいです所長、文句言わないでください。あなたがメガネキャラだったらメガネだった、アホ毛があったからアホ毛になった。それだけです」

『納得いかないわ!』

「んで所長の肉体についてだけど」

『聞きなさいよ!』

「部分的に抜き出した以上は丁寧に扱わなきゃならない。具体的に、移動するのは1、2回くらいで抑えたいな」

 

 本来肉体に収まっている魂を移動させる場合、どうしても異物混入または劣化が起きる。そうである以上、下手に器を変えるのは危険極まる。

 遠回しに諦めろ、と言われてようやく、オルガマリーは黙った。まぁ半場の知り合いには腕の良い人形師がいるので、いつかは必ず肉体は手に入る。

 

「おけ?」

「お、おーけー……」

「よし。所長の肉体に関してはこれから召喚するサーヴァントたちに期待しようか」

 

 ダヴィンチちゃんはあくまで科学寄り。魔術分野に関しては神代の英霊たちには劣るのだ。それはロマニたちも同意見なので承知した。もし無理だったとしても半場とA崎T子さんが何とかする。

 

 話すことはなくなったと判断して、最後にロマニがこの会議を締めくくる。

 

「とにかく今日は君たちは十分に休んでほしい。まだ魔力も回復しきってないだろうしね。明日、君たちとボクにレオナルドと話合うからそのつもりで」

「分かりました」「了解ー」




こうなった経緯。
・所長どうしようか。よし、FGOの代表的ギャグ漫画まんがでわかるを参考にしよう→ん? リヨぐだ子って所長のアホ毛忘れてねーじゃん→じゃあこれにしよう!

メガネでもよかったかもしれないけど、所長メガネキャラじゃないので。





小ネタ

「所長、どうします? その姿なら特異点行けますけど」
『行くわけないでしょ、こんな姿で』
「んじゃ、管制室のど真ん中でショーウィンドウに入れときます
『やめなさい!』



「あら……これはどうしましょう」
「何が」
「マスターを媒介として彼女を繋ぎとめてる。つまり下手にマスターと離すとパスが切れるのでしょう?」
「それが?」
「ならちゃんとマスターのくせっ毛だけ斬らないとね」
「ヤメロォ!!」


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新しい仲間を召介するぞ!

サーヴァント召喚の巻ー。


 昼前。オルガマリーは俺たちを集めてこう言った。

 

『特異点の調査にはサーヴァントが必要不可欠です。それはいいですね? 今日集まってもらったのは、新たにサーヴァント召喚する目処が立ったからです』

「つまりガチャの時間ですね!」

『そのガチャ呼びをやめなさい』

 

 いいや。俺が転生者である限り、サーヴァント召喚とはガチャのことだ。ただし前世とは違いレア度の概念は俺にしかないが。

 今からドキドキしていると、ダヴィンチちゃんが見慣れたものを持ってきた。聖晶石である。

 

「まだカルデアの施設は完全回復したとは言えない。でも特異点には見つけ次第突入するからね。とりあえず今用意できる分だけ用意したよ」

「ひーふーみー……合わせて3回分か?」

 

 奇数か。分けることができないし、ここはぐだおに譲るか?

 

「奇数だけども、今ここで無理に召喚する必要はないよ。キミたちの魔力とかカルデアの電力の問題もあるしね」

『何言ってるの。次がどんな特異点か分からない以上、可能な限り手は打ってもらうわよ』

「うん、所長の言う通りだ。魔力とか電力に関しては、ここで英霊を待機させててもなんとかなる」

 

 それじゃ、まずお互い一回召喚するか。

 

 そういうことになり、俺たちは英霊召喚を開始する。マシュの盾を置いて詠唱。まずはぐだおからだ。

 

「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ───!!」

 

 光が晴れる。そこに現れたのは

 

 

「サーヴァント・アーチャー。召喚に応じ参上した」

 

 

 ……エミヤ、と来たか。

 自分でも少し表情が硬くなっているのが分かる。もっとも、緊張しているのは俺だけのようだが。

 

「これからよろしくね、アーチャー」

「よろしくお願いします」

「ふむ、新米マスターか。こちらこそよろしく」

 

「……まぁいいか」

『? 何よ、どうしたの』

「こっちの話」

 

 これはぐだおの縁か、それとも抑止力の使いか……。確証はないがおそらく前者だろう。後者ならもっと別の方法を使うだろうし。

 とりあえず俺も、今後の仲間に挨拶しておく。上手く使えよぐだお。そいつ強いし器用だし。

 

「それじゃ、今度は半場くんの番だよ」

「ふっ、胸が熱くなるな。ここまで燃えるギャンブルはカイジ以来か」

『アンタは一々ギャンブルと絡めないと動かないの?』

 

 ダヴィンチちゃんから聖晶石を受け取り、盾に向かう。今回も触媒はなし。

 となれば、誰が出てくるかは予想はつかない。ギャグ補正的に考えれば……(サーヴァントの方の)ノッブか、沖田、ヒロインXとかか。いやでも両儀式出たしな、案外関係はないのかも。

 

 2回目の詠唱ってことでさくっと言って、聖昌石を投げ込む。膨大な魔力が嵐のように吹き荒れる。これで霊装とか来た暁には目も当てられないが、どうやら霊装システムはないらしい。

 

『来た……!?』

「さてさてどんな英霊だ?」

 

 

 

「イェ───イ! ノってるかのう! わしこそが、そう! 渚の第六天魔王こと、ノブナガ・THE・ロックンローラーじゃ! クラスはバーサーカーでよろしくゥ!」

 

 

 

 おっ、ノッブか。いやぁ神性持ち相手に随分世話になったなぁ。

 欲を言えば遠距離戦をこなせるアーチャーの方が良かったけど、この際贅沢は言ってられない。というかこいつならサラッとクラス変更くらいできると思う。

 

「……?」

 

 そう思っていたら、ノッブが妙に神妙そうな表情をしている。視線の先は俺……じゃなくて、後ろ?

 けど後ろには何もないはずだが。そう思って振り向いた。そして、俺はその理由に気づいた。

 

 俺の背後では、ロマンたちが口を開けて突っ立っていた。こういうのを『開いた口が塞がらない』と言うのだろう。

 そうだ、すっかり忘れてた。俺は前世でFGOをやっていたから驚きは少ないが、こいつらはぐだぐた本能寺を飛ばしたせいでノッブとは初対面なんだ。

 そう、今のロマンたちの頭の中は。

 

 

 日本英霊として知名度トップクラスの織田信長が実は女性であり

 

 そして英霊として召喚されたら水着姿で

 

 しかもロックンローラーである。

 

 

 そういう事実を突きつけられているんだ。

 たっぷり30秒、脳内で事実を思考したロマンたち。

 長すぎてノッブが『おーい、なんじゃ。なんじゃこの空気。あれか? 新学年早々痛い挨拶したやつを見るみたいな感じか?』みたいなことを言っている。自覚あんのかよオイ。

 そしてやっと、ロマンたちが口を開いた。

 

 

 

 

 

「パチモン英霊『ソシャゲ版織田信長』が召喚された!?」

 

「叩っ斬るぞ貴様ら!!」

 

 

 10分後、ロマンたちとノッブの暴走は終了した。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「お? 今回はキャスターでの現界ときたか───……なんだ、やけに騒がしいな」

「冬木のキャスター!」

「あんたらか、前に会ったな」

 

 3回目の召喚をした立香は、後ろに視線を向ける。

 そこでは、落ち着いたロマニたちが信長から話を聞いていた。

 

「……つまり。織田家の事情で祭り上げられて、女性であることを隠していたと」

「うむ。まぁ信勝があれじゃから是非もないがの」

「そして本来はアーチャーとして現界するはずだけど、人理焼却で暑いから水着に着替えて……」

「ついでにこのよく分からんウェポンを持ってきたということじゃ! いやそれにしても便利じゃのうこれ! 弾けるし叩けるし投げれるし。名前はさっぱり分からんがな! はっはっはっ」

 

 信長が高笑いしているのに対し、ロマニたちカルデアのメンバー(特に歴史研究専門)は頭を抱えた。これ、実は女性でしたなパターンが乱発されるんじゃないかと。半場が聞けば同情したであろう。

 

 そして当の半場は

 

「ふっ。これはあれだな。ロックバンド『カルデア』をやれっていうあれだな。いいぜ、付き合ってやるよ」

『何でそんなに早く順応できてるのよ……!?』

「これはまっこと幸先が良いな! 早速打ち合わせじゃ!」

『やる気満々じゃない、どうすればいいのこいつら!』

 

「……賑やかだなここ」

「いやぁ、そんなことは(半目)」

「ありませんよ(曖昧な表情)」

 

 立香は諦めた。マシュも諦めた。仕方のないことである。だって女性の信長だし。すごいカリスマ持ってるし。ちなみにエミヤは早々に逃げた。

 

 カオスになっていくカルデア。なお原因の大半は半場と信長である。賑やかなのはいいことなのかもしれないが、そろそろスタッフの胃が保ちそうにない。

 そんな時、ロマニがまとめる。

 

 

「と、とりあえず今日はここまでね」

 

 

強引な打ち切り宣言であった。どう見ても臭い物に蓋している。しかしスタッフは助かった。

 

「半場くん、立香くん。特異点はいつ見つかるか分からない。そして見つけ次第すぐにでも向かってもらうことになる。だから気は抜きすぎないようにね」

「はい」

「あと、サーヴァントとの交流はしっかりしておくように」

 

 正論だが、立香たちには「しっかり手綱握ってねいやホント」としか聞こえなかった。無論その通りである。

 ブリーフィングを終えて、各々が解散していく。

 

 

 

 

 そんな中、半場と信長は変わらないテンションで話していた。

 

 

 

 

 

「わしがボーカル兼ギター、そなたが太鼓かベースとして……。そこなセイバーはどうする?」

 

リコーダー

 

えっ




ノッブに全て持ってかれたエミヤにキャスニキ。エミヤに関しては抑止力関連で半場と絡めるのになぜこうなった。

ノッブの件ですが、アーチャーでも良かったけど水着の方がギャグ補正働くかなーって。というかコハエース出身キャラって余裕でクラス変更できるんじゃね?


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邪竜百年戦争オルレアン 第1特異点、突入

オルレアン開始。


 サーヴァント召喚から三日後。

 立香とマシュがエミヤやクーフーリンたちと親睦を深め、半場と両儀式が信長とバンドの調整をしている時に、ロマニから連絡が入る。

 

 

 

『新たな特異点が見つかったよ。今から3時間後、ブリーフィングを始めるから、準備はその間に済ませておいてほしい』

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 とうとう来たか。邪竜百年戦争オルレアンが。

 待ちすぎて両儀式のリコーダーが吹奏楽レベルになっちまったぜ。ホントに便利だなぁ根源接続スキル。

 

「今回見つかったのは、百年戦争の最中のフランスだ。はっきり言って特異点としての規模はさほど大きくはないけども、後々の歴史を考えればここも重要な転換点だからね」

 

 確かに。ゲーム内ではフレ頼りで余裕で突破できる特異点だけど、現実的に考えたらあそこも重要なんだよな。

 マシュがぐだおに百年戦争を説明するという微笑ましい姿を見ながら、俺は言った。

 

「情報は現地で収集するのか? 今分かってる範囲での特異点の動きとかは?」

「済まない、それは分からないんだ。用意できたのも、せいぜいレイシフト先の地図くらいで」

「いや、それも重要なことだ。藤丸、受け取っとけ」

「半場さんは?」

「後でデータを転送してもらう。今からでも読んで予習しといた方が良い」

 

 分かりましたと返事して、早速ぐだおは地図と睨めっこを始めた。

 オルガマリーが本当にいいのかと聞いてくるが、構わない。俺は俺でちょっとした情報収集手段があるからな。あと俺が正規ルートを辿るわけないし。

 

「それじゃ、俺は先にコフィンの中に入っとくわ。だから前置きは今頼む」

「よし、それじゃ」

 

 代理所長、ロマン。

 彼はただこう言った。

 

 

「藤丸立香、不知火半場に、特異点フランスの修復を命令する!!」

 

 

「おう、任せとけ」

 

 それだけ言って、俺は持ってきたバッグを担ぐ。

 そして、両儀式とノッブのもとに向かった。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 1組の少年と少女。二人が降り立ったのは、遮蔽物など何一つない原っぱであった。

 

「……レイシフト完了。無事転移できましたね」

「うん」

 

 見渡す限りの草木。立香にとっては見慣れたソレは、マシュにとっては感動を覚えるモノだ。

 

「綺麗です……先輩」

「きっと、これからも見えるよ」

 

 返答にマシュは笑みを浮かべ───

 

「フォウフォウ!」

「わっ! フォウさん、また付いてきてしまったのですか?」

 

「そろそろいいかね」

 

 声をかけたのはアーチャー・エミヤである。

 二刀使いである以前に弓兵である彼なら、辺りの様子もよく見えるだろうと。ちなみにクーフーリンは暇そうに座っていた。

 

「ひとまず見渡したが、誰もいなかったよ。ただ人の気配は感じられた。おそらく休戦中の兵士たちだろうな」

「で、ではその人たちから話を聞きましょう」

 

 目的は定まった、さぁ出発───というところで、彼らは気づく。いるべき人間がいないことに。

 その直後だった。カルデアから通信が入ったのは。

 

『───よし、ひとまず繋がった! 早速だけどキミたちに悪いニュースだ!』

「はい、わたしたちも薄々気づいていますが、なんでしょうドクター!」

 

 

 

『原因不明のシステムトラブルにより、半場くんたちが別の場所に転移している! しかも回線が開かない! 今すぐにキミたちも動いてくれ!』

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 煤けた髪の毛、輝かしくも獰猛な金色の瞳。黒い鎧に煤けた旗。

 少女という言葉だけでは表せない。これは憎しみと怨念がなければ形作られない。それが彼女───ジャンヌ・オルタであった。

 

「───今日は、どこの街を焼きましたか?」

「ここから西の街よ。でも、少女が少ないのが残念だったわね」

「逃げたのだろう。狩りを楽しむ時間ができたと思え」

 

 ジャンヌオルタの周りには、なんと6体ものサーヴァント。当然である。彼女『たち』は聖杯を所持しているのだから。

 

「それでは、明日は東に向かいましょう。確かあちらにはまだ街がありましたね───それでいいかしら、ジル」

「もちろんですともジャンヌよ」

 

 キャスターのサーヴァント、ジル・ド・レェ。今はジャンヌオルタにより狂化を施されている───が、その目に宿る狂信は本物である。

 

「連れて行くサーヴァントは……そうね。バーサーカー、アサシン、セイバー、ライダーにしましょう」

「よろしい。それならば問題など何一つない」

「そうね、むしろ過剰かしら。───いいえ、まだ、まだ足りない。この国には、もっと深い恐怖が必要だわ」

 

 ジャンヌオルタの笑みは、まさしく邪悪のそれであった。それを見てますます、ジルは深く喜ばしげな表情になる。

 取り巻きのサーヴァントの反応は多様であった───と言っても、大概が楽しげか無表情である。共通なのは、そこに英雄の面影などないということだけ。

 

「ふふ、ふふふ。今から笑いが止まらない。見てなさい、わたしを見捨てたフランスよ。もはや、この国に救いなぞ───」

 

 直後、ドン、と。

 

 

 扉の近くの物入れが、大きな音を立てて揺れた。

 

 

「「「「「「「…………」」」」」」」

 

 なにかかっこよく決めようとしたところを邪魔されたジャンヌオルタに、サーヴァントたちから憐れみの視線が向けられる。それに対し顔を若干赤くしながら、ジャンヌオルタは物入れに近づいた。

 

 直後、そこから人の声が。

 

『ごはっ、イタタタ。どこだここ? なんか暗いな』

『……ひょっとして、物入れの中じゃないかしら』

『え、マジかよ。……ってことは今俺たち三人ギュウギュウ詰め?』

『そのようね』

『いたっ。ちょっ、誰じゃわしの足を踏んだの!』

『叫ぶなよ気づかれるだろ』

『マスター、なら早く出た方がいいんじゃないかしら』

『んじゃ……おっ、これか扉』

 

 何か軽薄そうな男性の声が聞こえた後、女性2人の声が。

 そして、物入れの扉が開かれた。

 

「いやー狭かった狭かっ……」

『……』

 

 瞬間、空気が凍る。

ジャンヌオルタたちは対面した……何故か物入れの中にレイシフトしてきた半場たちと。

 最悪の初対面である。何せ男女3人が揃って物入れから一緒に出てきたところで遭遇したのだから。

 半場たちにとっても最悪である。現場が現場な上に、敵の目の前に現れたのだから。

 冷や汗を浮かべて、半場の言い訳が始まる。

 

「い、いやー! 今日は良い天気ですねー!」

『……』

 

「しかも気温もちょうどよくて、絶賛のピクニック日和!」

『……』

 

「あっ。みなさん団体ですけど、あれですか? これからパーティの準備とかそんな感じ?」

『……』

 

「いや、それは申し訳ないことをした。勝手にお邪魔しちゃって……」

『……』

 

「それじゃ、俺たちはこの辺で失礼しまーす」

 

 そう締めて、半場たちはそそくさと立ち去ろうとする。

 その前方。ちょうど半場の鼻の先。そこに、黒い炎が立ち上った。

 

「逃すと思ってるのかしら」

「デスヨネー。───行くぞお前ら!!」

 

 瞬間、半場の指示により、信長が扉を蹴破る。そして3人は回転移動しつつ廊下に出る。

 その跡に、焔が突き刺さる。

 

「逃がさないわ。追いかけなさい!」

「中々狩りがいがありそうだ」

「ではわたしは、あの少女の方を」

 

 サーヴァントの脚力を持って、2騎のサーヴァントが半場たちを追いかける。

 不利なのは、マスターが人間である半場たちである。

 

「追いかけてきたぞ、どうするマスター!」

「やつらの本拠地で追いかけっことか意味ねぇ! 適当に扉でバリケードを作りつつ上に上がるぞ!」

「ガッテン承知のすけー!」

 

 がしゃんがしゃんと派手に破壊しつつ、半場たちは上に駆け上がっていく。途中フェイントとかT字路とかあったが、そんなものは一時的な足止めでしかない。

 

 やがて、半場たちは追い詰められていく。

 たどり着いた場所は城の最上階。映画でなら追い詰められた場面だ。

 

「ここが最上階ね」

「なんでもいいからその扉守っといてお願い!」

「分かったわ」

「ノッブ! お前は窓を開けろ!」

 

 その命令に、信長は大いに違和感を抱いた。

 

「『開けろ』? 壊せじゃのうて?」

「ああ。壊したらこいつが使えなくなるからな」

 

 半場は鞄から、何か缶のような物を取り出し見せた。

 それを見た信長は、ウゲェと信じられないような顔をする。

 

「それ本気でやるつもりか!?」

「当然! だからノッブは先に出てくれ!」

 

 マジかーと敵を憐れみながら、信長は格子を破り窓を開ける。

 それを見て頷いた半場は、両儀式に言う。

 

「脱出だ両儀式! 着地任せた!」

 

 両儀式が時間稼ぎの強化をしたのを見届けつつ、半場は持っていた缶を開けて放り投げた。そして窓から飛び降りて器用に閉めた。

 その直後、ジャンヌオルタたちが突入してきた。

 

「開いたッ」

「行きなさい!!」

 

 思い切り扉を押していたのか、なかば雪崩れ込むような形で入ってきた。勢いよく、全員部屋に入る。

 

 彼らのミスは、相手を追い詰めていると思って追いかけていたことだろう。実際はその真逆。彼らは追い詰めているのではなく誘導されていたのだ。

 そう、半場の作戦は成功した。

 その内容は簡単。相手を目一杯引きつけて、屋上から飛び降りて逃亡するというもの。

 

 そして、その要たる『引きつける物』とは。

 

 

 

 

 

 シュールストレミングである。

 

 

 

 

「ぶはっ、くっっっさァァァ!?!?」

「おふっ、な、何よこの臭いくさっ!?!?

「ちょ、貴方たち押さないで、臭い!?!?」

「おぉジャンヌ───グバァッ!?!?」

「ジル──────!?!?!?」

「オボロロロロロロ」

「おい吐くなァァァ!!」

「今すぐ換気しろおおおォォォ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「マスターよ。水着に臭いついたらどうしてくれるんじゃ」

「まぁつかない可能性もあるしな。分かった、ファブリーズしておく」

「マスター、それ意味ないと思うわ」

 

 近くの森で休息を取る彼らは、城内の惨状も知らず(というか無視して)にそんな会話をしていた。

 




はい今回の被害者はオルレアンで敵対していたやつらでしたー。可哀想に。


ちなみにレイシフト先を間違えた理由は

レイシフト前
半場「面倒だし城に爆弾しかけて逃げよ。んじゃレイシフト先を弄ろう」
システム「なんだこの入力雑すぎる。マスター保護のために修正、っと」

レイシフト後
半場「人生そう上手くはいかないよね(´・ω・`)」


こんな感じ。
物入れの中じゃなくてもよかったけど、初手から作戦成功じゃ面白くないしね(白目)


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まだ集まらず

謎理論と感じるかもしれません。


 城を脱出してから、少しして。

 俺たちは霊脈に辿り着き、カルデアとの通信回線を開く。

 

『あっ。やっと繋がった! 大丈夫かい半場くん!?』

「あぁ、俺の体に異常はない。そしてサーヴァントたちも全員揃っている」

『そうか! 立香くんたちも心配ないよ!』

 

 言ってロマニは、並列に映像を出した。そちらにはぐだおたちの姿が。まぁ今回は単純に俺のミスだし、何の心配はいらない。

 

「何があったか、結論から言うぞ。敵サーヴァントと思わしき連中の本拠地に突入した」

『何だって!? 本当に大丈夫なのか!?』

「所長も元気だぞ」

『わたし見てないのだけれど』

 

 霊回線でオルガマリーを起こす。レイシフト直後はスキルを使えないので仕方のない。いやむしろオルガマリーは見なくて良かったな。

 

「場所はオルレアンで一際目立つところだ。なにせワイバーンが大量にいるからな」

『半場さん。サーヴァントの様子はどうでしたか』

「数は7騎、クラスは不明。ひたすら逃げたから城内の様子もほとんど確認できていない。悪いな」

『いや。それだけ分かれば十分だよ』

 

 それでぐだおたちの方は、と問おうとしたら、次の瞬間にどこまで進行したのか分かった。

 

『そちらの方がもう1人のお仲間? わたしはマリー・アントワネットよ!』

『マリー。画面ギュウギュウですよ』

 

 ライダー・マリー、ルーラー・ジャンヌ。なら画面外にはアマデウスもいるだろう。

 そのメンバーがいるとすると……邪ンヌとの遭遇イベントはスキップされたんだな。俺のせいで。

 それより、今はジャンヌだ。ここで何か言っておかないと怪しまれる。

 

「……貴女が、ジャンヌ・ダルクか」

『……あなたは、もう1人の私に会ったそうですね』

「ああ。でも貴女とはまるで別人だ。あっちが偽物と言われた方が納得できそうだ」

『そこまで違うのか……』

 

 事実あいつ贋作だし。ジルの偶像(アイドル)みたいなもんだしな。

 俺の言葉でジャンヌが若干ショックを受けている。うーんこれは実際に会わない限り分からんだろうな。

 

「まっ。俺は藤丸やマシュたちが言うんなら信じるよ。それにあのマリー・アントワネットとアマデウスが貴女を信じてるんだしな」

『ありがとうございます……』

 

 さて、あとはいつ合流するかだ。

 俺としては、今すぐ合流するのは避けたい。しかし案の定、オルガマリーやロマニが提案してくる。

 

「いや、まだ合流しない」

『何でよ。この状態で敵が総がかりしてきたらどうするの!』

「それはない。むしろ相手は俺たちが合流の動きをするまで動かないだろう」

『うん? どうしてそう思うんだい?』

 

 それを説明するために、まず俺は両儀式に呼びかける。

 両儀式にはさっきから見張りをさせている……よし、敵はいないか。

 

「敵陣から逃げ出す際、俺は黒ジャンヌを挑発した。それもかなり派手に。やつは激怒した。にもかかわらず、未だに追跡してこないんだ。正確には、見つけてないんだろうな」

 

 おそらく、ジルの指示だろう。一旦追跡網から逃げた以上、サーヴァントを1騎2騎で捜させるのは無意味。みすみすやられに行くようなものだと思っているに違いない。事実その通りだ。俺なら令呪をきってでも確実に潰している。

 

「だからあいつらとしては、俺たちの位置が確定し、自分たちが万全の準備を終えた時点で襲いかかるつもりなんだろうさ。そんな状況で下手に動けば、俺たちはすぐさま全戦力投入で潰されかねない」

『待った。仮にキミの推測が全て正しいとして、相手が襲いかかってこないのはおかしい。黒ジャンヌはルーラーだ。そしてルーラーはクラススキルでサーヴァントの位置を割り出せる。キミたちの居場所には気づいてるはずだ』

「あ、それなら潰した

『……は?』

 

 俺のサーヴァント以外の全員が唖然となった。もちろんちゃんと説明する。

 逃亡する際、俺はシュールストレミングを使った。そして、あれはただのシュールストレミングではない。

 実はこの特異点に突入する前、俺たちは少し細工を施していた。

 

「その細工とは……サーヴァントのクラススキルを一時的に使用不可能にするものだ。とびっきりの素材を使ったから、量産の目処は立たない代わりに効果は抜群。黒ジャンヌはまだ今日くらいはルーラー特権を使えない」

 

 原作で邪ンヌがルーラースキルを明確に使った描写はなかったと思うが、それでも念のためだ。それに取り巻きの能力も下げられるし。

 

『ならますます合流した方がいいじゃない!』

「いいえ。俺はまだやることがある。もっと言えば捜索」

『……それは、2人のようなサーヴァントのことを言ってるのかい?』

 

 そう。この特異点には、明確に邪ンヌには属さないサーヴァントが存在する。マリーやアマデウスの他にもだ。

 そいつらを捜す以上、どう動いても必ず別れる。なら今の内に捜した方が効率がいい。

 

「そっちはどうだ? マリーやアマデウスの他にサーヴァントは?」

『マリー、どうでしょう。他にサーヴァントの話を聞いたことは……』

『いえ。私たちは立香さんたちが来るまでずっとサーヴァントを捜していましたけれど、話は聞いていませんわ』

「ならもうそっちにはいないんだろう。あとはこっちだけだ」

 

 合流はサーヴァントを確保した後。俺たちは邪ンヌの捜索を回避した上で、ぐだおたちは回り込みつつサーヴァントを捜す。そういう方向でこの会議は成立した。

 

『半場くん。言うまでもないけれど、今のキミはかなり危険な状況だ。決して無理はしないように』

「大丈夫だ。今日はあいつらも捜索しきれないし、今日中に終えてお前ら待っといてやるよ」

『すぐに向かいます!』

「おう藤丸。下手こいて見つかるなよ」

 

 最後にぐだおとマシュに激励をかけてから、俺は通信を切った。

さて、早速だが移動の時間だ。

 

「サーヴァントは近くにいないよな?」

「ええ。ワイバーンは相変わらずだけれど」

「まっ、やつらが黒ジャンに報告できんのが良いところじゃな。数は多いがわしらの敵ではないわ!」

『それじゃあ、早速移動するのね?』

 

 もちろん、まずは街に向かう。

 そして買い物だ。

 

『はぁ? サーヴァントを捜すんでしょう? なんで買い物するのよ』

「捜索がある以上下手に街に長居できない……ってのもあるが。ちょっとロープを買っときたいんだ。あとでかい肉」

「なんじゃ、それ。全く繋がりが見えんぞ」

 

 いいや、繋がりならちゃんとあるさ。……このやり方じゃ確率は限りなく低いってのが難点だけどな。

 だけどこれは必要だ。俺たちの戦力を考えれば乗り物は必須。だから買う。

 

「マスター。何をするつもりなの?」

「テーマくらいは言っとくよ」

 

 両儀式とノッブ、あとオルガマリーに呼びかけるように俺は言った。

 

 

 

 

「果たして(ワイバーン)と人は心を通わせられるのか、だ」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 時間は夜。

 

 ジャンヌオルタたちが根城としている城。

 そこでは主であるジャンヌオルタと、数名のサーヴァントが同じ部屋で話をしていた。

 

「あの男はまだ見つからないのですか!」

「よほど念入りなのでしょう。ワイバーンと戦闘した様子さえなかった」

「チッ。ルーラー特権さえ使えれば……!」

 

 忌々しそうに、ジャンヌオルタは髪を掻きむしった。

 ジャンヌオルタたちは現在クラススキルを封じられている。あのシュールストレミングのせいで。

 その上で、ジルはジャンヌオルタを落ち着かせる。

 

「ジャンヌよ、焦ってはなりません。焦ればなお、あの男はそれを利用するでしょう。今は落ち着いて、制限の解除を待つことが重要です」

「分かっていますジル。……でも、何の情報も得られないなんて!」

 

 ふむ、とジルは顎に手を当てるポーズを取る。それは自分が余裕だから心配はいらないと始めたことであった。

 

「わたくしたちを嵌めた相手です、その程度のミスは起こすまい。しかしジャンヌ、焦ることはない。奴らには時間はありませんが、こちらには時間と聖杯があります。落ち着いてかかれば勝てぬ相手ではありません」

 

 狙い通り、ジルの余裕な態度にジャンヌオルタは安堵の息を吐いた。

 しかし彼女は知らない。その態度の裏に、燃え盛る業火のような怒りがあることを。

 

「(おのれ匹夫めが……! よくもあのような仕打ちを! 吐き気のすることです! 捕らえた暁には必ず我が手で殺す!!)」

 

 ジルは見た。愛しいジャンヌオルタと、ついでに仕えてるサーヴァントたちの姿を。

 

 

 みな一様に───鼻にティッシュを詰めていた

 

 

 そう、結局シュールストレミングの臭いは取れなかったのである。洗えども擦れども臭いは取れず、結局諦めたのであった。最終手段として臭い取りに聖杯が使われたが、それでも無理だった。恐るべしシュールストレミング。さすがは『最臭兵器』と言ったところか。

 ちなみにティッシュが出てきたのは偶然である。

 

「(このような醜態、本来ならすぐにでもやめるべき……。しかし! あの匹夫めの恨みは決して揺らがぬようせねばならない! ならばこのジル耐えましょう! そして必ずや倍にして返す!!)」

 

 そう意気込むジルだが、英霊たちにまでティッシュは強いる必要はない。それはあくまで『俺がやってんだからお前らもやれ』理論である。哀れ英霊。よもや死んでから社畜精神を味わうとは思いもよらなっただろう。

 

 

 何やってるんだろう自分は。

 サーヴァントたちがそう思っても何一つおかしくなかった。



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合流

連休中に投稿しなかったのは、こっちを本編とするか没ネタを本編とするか悩んでいたからです(言い訳)。


 ジャンヌオルタのルーラースキル、並びに狂化サーヴァントたちのクラススキルは、半場の活躍により封じられた。一定時間の制限ではあるものの、それはサーヴァントの戦力ダウンには十分である。

 つまり、あのシュールストレミングは本来、敵陣地に投げ込むためにある攻撃支援物なのだ。

 

 その用途を、そのチャンスを、不知火半場が逃すなどありえない。

 

「……これは

「ひどい……!」

 

 夜が明けて、彼らのクラススキルが完全に戻った後。彼らは半場たちを捜すため、城外に出た。

 そこで、見たものは。

 

「……咳き込みそう」

「ええ。なんとおぞましい……」

 

 それは、思わずジャンヌオルタとジルが顔を顰める程であった。

 彼らの目の前には、四方八方にブチまけられた赤い痕、突き刺さっている矢に槍、そしてその中心地には。

 

 文字通り、体中真っ赤に染まったアタランテとヴラド三世の姿が。

 

「……この固まり具合からして、おそらく昨日の内に行われたんだろう」

「……クラススキルの制限時間の間、ですか……やってくれましたね」

 

 ジャンヌオルタは舌打ちした。それは鼻を突く臭気だけでなく、あまりの惨さ故に。

 再度現場を見る。そこはただひたすらに真っ赤であった。

 この状況から、察するに。アタランテとヴラド三世は、一瞬の内に敗北し、血の色に染まったのであろう。

 おそらく

 

 

 デスソースを頭からかぶって。

 

 

「とても、人にすることではないわ……」

「ええ。とても人のすることではありません。……下衆どもが」

 

 吐き捨てるように言ったジャンヌオルタに、サーヴァントたちは同意する。

 ジャンヌオルタは少し屈む。そしてすぐに立ち上がった。

 

「……何故でしょう、ジル。何故わたしは泣きそうになっているの?」

「ジャンヌ……。それは、きっとあれです。幼子が手伝いをして、『おかーさーん。玉ネギ切ったら涙が止まらないよーう』というのと同じなのです」

「なるほど……ありがとうジル。言ってることはよく分かりませんが、泣いてる場合ではありませんでしたね」

 

 ジャンヌオルタとジルが、若干漫才のようなことをしている間。

 バーサーク・ライダーは一人で思案していた。

 彼女はデスソースの痕を見て、少し気になったことがあった。

 

「(……この指の先、メッセージでも書こうとしたのかしら。だとすれば何を……。まぁ深く考えることはありません。何にせよ説教です説教)」

 

 狂化しているとはいえ、彼女は聖女である。そして不知火半場のやり方には納得できなかった。だから荒っぽい方法を取ってでも、説教すべきだと感じたのだ。

 

「(あのマスターなら、そうすぐに来るとは思えませんし……こちらも当分近づかないでしょうね。おはなしの内容でも考えておきましょう)」

 

 見た感じ、ジャンヌオルタとジルはシュールストレミングが相当トラウマになっている。それを仕向けたあのマスターが、道中にそのトラップを用意していないわけがないだろう。

 

 そう考えて、バーサーク・ライダーは城に戻った。

 読み通り、城に戻るジャンヌオルタたちの姿を見ながら。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 ところで、カルデアのもう一人のマスター。藤丸立香は、現在フランスを駆けていた。……ガラスの馬車に乗って。

 

 半場と1回目の連絡と今後の打ち合わせをした立香たちは、打ち合わせ通りはぐれサーヴァントたちを捜していたのだ。マリー・アントワネットの宝具を用いて。

 

『いや本当に助かった。これなら昼までにはつけそうだ!』

「マスター、大丈夫? この馬車は貴方の魔力も借りてるのですから、無理は厳禁よ?」

「大丈夫です。まだまだ元気ですよ」

 

 言って、立香は視線を窓側に向けた。

 そこには、立香たちが見つけて連れてきたサーヴァントたちがいる。……見る限り少女だが。

 

「やっぱりいいわねこれ。ちょっとデザインを変えさえすれば、ステージにぴったりだわ。ねぇ子イヌ。そっちにそういうサーヴァントいないの?」

「やめなさいはしたない。コケても知りませんよ」

 

 窓から顔を出しているのは、エリザベート・バートリー。そして立香に寄り添っているのが清姫。

 捜している時、騒ぎを起こしていた2騎を諌めたら、流れで仲間になっちゃったのである。

 個性的だなーと若干遠い目をする立香に、マシュは話しかけた。

 

「半場さんは、どんな方を見つけたのでしょうか」

「フォウフォウ」

「気になるね。……変なことやってなければいいんだけど」

 

 合流を図る際に行った通信で、半場が2騎のサーヴァントを見つけたのは聞いている。が、何か嫌な予感がするのは当然である。なにせ信長がいるんだし。

 

 期待と心配を胸に、彼らは言われたポイントに辿り着いた。

 

『半場くんが言うには、さっきの森を抜けてすぐ近くの街らしいけど……』

「見えました。……中々広いです。見つけられるでしょうか」

「すぐに気づくって言ってたけどなぁ……」

 

 半場は合流地点について細かく明言していない。ただすぐ分かるとしか言ってない。

 しかし、街に入ってすぐ、彼らはその意味を理解した。

 

 

 

「なぎさの〜だ〜いろく〜て〜んま〜ォう〜」

 

 

 街の広場の真ん中で、半場たちが小ンサートを開いていたからである。

 それも、子供たちに囲まれながら。

 

「……」

「……」

『……』

「あら、(アタシ)を差し置いてリサイタル? 子供しかいないのが残念だけど、いいわ。(アタシ)も歌ってあげ」

「マスター」

「分かってるよアマデウス。ごめんエリザベート、ちょっと話を聞いてくるから待ってて」

 

 エリザベートのデスボイス防止と状況確認の意を込めて、立香とマシュは半場に近づく。ちなみに半場は合いの手みたいなのをやっていた。

 

「半場さん」

「おっ、やっときたか」

「あの、これ何やってるんですか」

「いやぁガキンチョ共がやけに暗いから、コンサートでもやってやろうかなあって。お前らもすぐに見つけられただろ?」

「まぁ……そうですけど」

 

 立香は何も言えなくなった。別に彼からすれば、手っ取り早くて助かるからである。しかしマシュはそうもいかなかった。純粋な彼女は、至極当然の疑問を抱いていた。

 視線の先には両儀式の姿。その手には小学校とかで持つようなリコーダーが。

 マシュは、『ハーメルンの笛吹き』みたいな状態の両儀式を見ながら言った。

 

 

 

「なぜ一人オーケストラをやれているのですか?」

 

「両儀式だから」

 

 

 

 即答、かつ真顔での返答であった。

 

「どうしましょう先輩。わたし全く意味が分かりません」

「大丈夫だマシュ、オレもだよ」

「でもアマデウスは全く疑問視してないみたいだけど」

「なんで!?」

 

 見たら、アマデウスだけでなくマリーまでつられている。

 あれおかしいの自分たち? と頭を抱えたい思いに駆られながらも、立香たちは挫けなかった。

 

「所長はどうしたんですか。こういう時真っ先にツッコミしてくれますよね」

「あー所長なら……」

 

 ポケットから札を取り出して、半場は呪文を唱える。

 そしてオルガマリーと繋がる。

 オルガマリーはすすり泣いていた。

 

『〜♩ 〜〜〜♫』

 

 

(くれ○い)を歌いながら。

 

 

「所長うううゥゥゥ!?」

「さっきからずっとこんな感じでさー。いい加減うるさかったから念話切ったんだけど……まだ歌ってたのか」

『鬱憤溜まりすぎじゃないかなぁ!?』

 

 予想外の出来事に、とうとうロマニからもツッコミが入ったのであった。



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開戦の狼煙

チェックはしましたが、おかしい部分があるかもしれないのでご注意を。


 合流を果たした俺と立香たちは、混乱を避けるため街を離れて森に着いた。そこはジャンヌオルタたちの居城の近くの森だ。そして俺が監視として使っていた場所でもある。

 

「それじゃ、仮拠点に着いたところで、俺たちが見つけたサーヴァントを紹介しよう」

 

 そう言って俺は、2騎の男性サーヴァントに注目を集めた。

 

「こちらは竜殺し・ジークフリートさん。そしてこっちは騎士・ゲオルギウスさん」

『うわ! ちょっと出来過ぎじゃないかい!? 二人共「竜殺し」の代名詞的存在じゃないか!』

「聖杯のカウンター召喚でしょうが……しかしそうなると……」

「ああ、少しマズイかもしれないな」

 

 期待のサーヴァント登場とは裏腹に、心配そうな顔をするジャンヌ。そしてエミヤも悲観してそうな顔になっている。

 

「あの、どうして皆さん心配そうなのですか?」

「嬢ちゃん。もし聖杯がカウンター召喚なんてモンを行ったんだとしたら、それに値するだけの怪物がいるってことだ」

「残念なことに正解だ」

 

 そう竜殺し、それもジークフリートが出てきたということは───敵は『ファヴニール』だ。

 俺は先日撮った写真をこいつらに見せる。そこには漆黒の巨大竜がいた。しかも───サーヴァントを引き連れて。

 

「さて藤丸。この陣形の有効な点はなんでしょう」

「えっ……? ……ファヴニールを守れることですか」

「そうだ。元よりファヴニールは拠点防衛としては壁くらいにしか使えない。だけどこれなら、せめて炎ブレス一発くらいなら撃てるだろうさ」

 

 それがマズイのだ。炎ブレスはマシュとジャンヌの宝具で防げる。しかし、その防御の間を縫ってサーヴァントをけしかけられたら、それはそれでマズイ。

 

『じゃあどうするの。そこまで分かってるなら対処も思いついてるのよね?』

「……最初は、シュールストレミングとかスタングレネードで分断させようとしたんだけどな。あいにくさっきの街を守るのに全部使っちまった」

「そういえば、なんであの街は一斉に襲撃されなかったんですか?」

お前は吐き気を催す臭気に近づくのか?

「なるほど」

 

 カルデアに戻れば補給できるが、そうは言ってられない。ないものはしょうがないし、今の手札で考えよう。

 幸いなことに、俺たちの勝率はかなり高いんだから。

 

「理由は何よ」

「竜殺しジークフリートに聖人ゲオルギウス、どちらも竜相手に超有利。さらに両儀式は、死線さえ見えればサーヴァントでも殺せる全体即死攻撃持ち。ほら全員殺せる手札ならもうある」

 

 しかも俺たちは敵サーヴァントを全員殺す必要はない。時間を稼いでもらってる間に、邪ンヌとジルを詰めればそれで勝ち。最初からこっちが有利なんだ。

 

『じゃあ何も問題はないじゃない。何をそんなに心配してるのよ』

「宝具ブッパのタイミングで狙われたらどうしようかなーって」

「それは心配はいりません。私の宝具とマシュさんの宝具で、必ずやいかなる攻撃も防ぎます」

「頼もしくて何よりだ。それじゃこれを見てほしい」

 

 何か勘違いしてるみたいなので、それを解消させる。これはついさっき偶然撮った写真だ。

 そこに写っているのは、バーサーク・バーサーカー。ランスロット通称バサスロットだ。

 

『? これがどうかしたのかい?』

「こいつな、能力で手に持ったモンを、何でも自分の武器にできちまうみたい」

『……それで?』

 

 ロマニの声が震えてる気がする。いい勘だ。それじゃこっちを見てもらおうか。

 俺は2枚目の写真を見せた。直後全員声を失った。

 

 

 バサスロットは、Zero時代のガトリングを所持していた。

 

 

 ……多分あれだろうな。聖杯で召喚したんだろうな。

 

「つまり、正面からの妨害を防いだら、上から強化された弾丸の雨嵐ということでだな」

『最悪じゃない!』

 

 本当にな。だけど大丈夫。これに関しては俺は対処法を思いついている。上手くいけば、一瞬でバサスロットを無力化できるだろう。

 

「ですが……それだと、ジークフリートの宝具は……」

「初手から使えないだろうな」

「どうする? 私が後方から援護しようか」

「んー……」

 

 相手が固まってるなら、やっぱエミヤに任せるけど……それをあいつらが分かってないかって言うのは別問題だしなぁ。下手に距離取って街に向かわれたら……。

 

「そしたらどうする?」

「それはダメです」

「お前らならそう言うと思った」

 

 置いてきたシュールストレミングも、そろそろ臭いなくなるだろうし……そもそも相手に海魔いるじゃん。

 

「じゃあ初手は譲るフリでもするか。多分ファヴニールの炎ブレスだろう」

「防ぎますか」

「いや、防がなくても大丈夫」

「……え?」

 

 驚いた顔をしてるな。無理もないけど。見ると、俺の発言に全員が正気じゃないやつ見るような顔をしている。

 

 いやいや、違うからな。俺が言ってるのは、攻撃の意味がないから防ぐ必要はないってことだからな。

 

「で、ではみすみす攻撃を許すんですか!?」

「まさか。言っただろ『譲るフリ』って」

 

 実際に、相手に攻撃させるわけじゃない。むしろ先手を取るのは俺たちだ。……いや、()()もう既に先手を取ってるけど。

 ポケットから秘密兵器を取り出して、俺は笑う。

 

 

 

「───速攻だ。すぐに片をつけよう」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

「───ようやく来ましたか」

 

 城の前方。

 そこにジャンヌオルタたちは陣取っていた。

 

 その前に、半場たちは堂々と現れる。

 

「フフ。策もなしに突っ込んでくるなんて、よほどの馬鹿なのかしら」

「よく言うな。俺らが遠距離から撃ったりしたら、待機してる海魔どもを街にけしかけるつもりだっただろ」

「何のことでしょう」

 

 さらっと言った半場。しかし立香たちは驚いている。つまり、半場はそれを黙っていた。

 ジャンヌの驚愕の表情を、嗜虐的な笑みを浮かべながら見るジャンヌオルタ。しかししばらくしたら、呆れたような表情となった。

 

「やはり、所詮貴方は残り滓ですか」

「……もう一人の私」

「何がもう一人の私、だ。貴方はジャンヌ・ダルクではない。見るも堪えない。今、ここで、消し炭にしてあげましょう」

「……そうですか。では私も、話は後にしましょう」

「話? ハッ。これを見てもそう言えるのかしら」

 

 迫るファヴニールとサーヴァント。その陣形は、どう見ても投擲物を警戒したものである。要するに半場のせい。

 そして半場たちの背後には、大量のワイバーンに海魔たちの姿。

 

「焼き尽くせ、ファヴニール」

 

 轟、と。ファヴニールが呼吸した瞬間、空気が震える。魔力値が急激に上昇する。

 その心臓は一息で膨大な魔力を生み出し、吐かれる息は優に金属すらも溶かす。

 防ぐ方法は、それこそマシュとジャンヌの宝具しかない。

 

「あら、そんなもので防ぐつもりかしら」

「いや。わざわざ真正面から相手にする必要はない。俺たちは俺たちなりに防ぐな」

「やれるものならやってみなさい。バーサーク・バーサーカー」

 

 ワイバーンに乗って、バーサーカーが銃を構える。これで攻撃の手は、正面・側面・上面となった。

 ふーんと鼻を鳴らして、半場は真顔でジャンヌオルタを見つめる。

 

「学んではいるみたいだなー。ジルは城か?」

「何、会いたいのかしら。安心しなさい。おまえは簡単には殺さない。四肢を割いた上で、あの城で、泣き喚きながら死ぬのだから。私たちが、念入りに殺してあげましょう」

「そうか。やれたらいいなー、できたらいいなー。応援してるぞーマシュたちの次×10くらいー」

「こんのッ……!」

 

 ジャンヌオルタの顔に青筋が走る。思わず先走って焔を放とうとするが、その直前に冷静となる。

 

「……そうよ。どうせここでしか撃てないんだろうし、出し惜しみする必要はないわ」

 

 瞬間、ファヴニールの魔力がさらに増大した。その勢いは、距離のある半場たちにさえ届く程である。

 数値化すれば、その魔力はファヴニールの限界出力に近い数字となるだろう。その威力は計り知れない。

 マシュとジャンヌの焦る顔を嘲笑いながら、ジャンヌオルタは宣言した。

 

「さぁ、これより始めましょう。竜が跋扈し、互いに喰らい合う───真の百年戦争を!!」

 

 ───まずは手始めに、彼らを。

 

 ファヴニールの口が開き、取り巻きのサーヴァントたちが武器を構える。その陣形に一分の隙もなく、そして突破口もない。

 やるならまずは、ファヴニールの炎を何とかせねばならない。

 

「やれ、ファヴニール!!」

 

 直後、ファヴニールの体から膨大な魔力が───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『結局、ファヴニールの炎はどうするつもりなんでしょうか』

 

『両儀式さん、信長さん。半場さんは何をするつもり何ですか?』

 

『ごめんなさい。マスターが言うな、って』

 

『ネタバレは禁止するのがマスターじゃからのう。案ずるな。わしらが見ておったし、信じておればよい』

 

『いやあの人の作戦は、奇想天外(ビックリドッキリ)すぎるんですけど……』

 

『しょうがないの〜、ひんとくらいならくれてやろう。

 魔力は爆発させられると知っておるか』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───おしおきだべぇ〜」

 

「は?」

 

 ファヴニールの口から強力なブレスが放たれる、その瞬間。

 半場はポケットから何かのスイッチを取り出し、迷うことなくボタンを押した。

 

 直後、ファヴニールの口から、鼻から、目から、炎の輝きが漏れ出す。

 それはさながら、自爆するロボットのようであった。

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい。なんでこんなに魔力が漏れ出して───!?」

 

 ジャンヌオルタが停止命令を出すがもう遅い。100%充填したこともあり、魔力の逃げ場が存在しないのだ。

 

 直後、過剰出力によりファヴニールが爆発した。

 さらにその余波により、近くにいたサーヴァントたちも吹っ飛ばされる。

 

 

 唯一、マシュの盾に隠れていたカルデア勢だけが、爆発の影響を受けずに無事であった。

 

 

「……」

「……」

「……」

『……』

 

 あまりの破壊力に皆がドン引きする中。

 一人、男はニヒルな笑みを浮かべて

 

 

 

 

 

「お望み通り始めようか。邪竜百年戦争を」

 

 

 

 

 

 ───ただし、すぐに終わるがな。

 

 そう、言ったのだった。




自問自答のコーナー。

Q.すまないさんの呪いはどうした。
A.両儀式が一晩でやってくれました。

Q.街はどうなってるの。
A.ジル(人間)が必死に守ってます。

Q.いつファヴニールに細工した。
A.クラススキルを封じているタイミングで。そのついでにアタランテとヴラド三世も気絶させました。

Q.デスソースをかけた理由は。
A.地面に血でメッセージを書かれたから。あとは死亡理由の偽装。

Q.ファヴニールに細工とかできんの。
A.某大統王がやろうとしたみたいに霊基暴走です。

Q.すまないさんの出番は?
A.……。ファヴニールの壁の処理的な?


さてあとはアフロヘアー(嘘)の邪ンヌたちをボコボコにするだけです(理不尽)。


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視線誘導

前回の半場の工作について説明が期待されたので、急遽既存の設定に合わせました。
なので、出来とか今後の使い道については期待しないでください。


『ちょ、ちょっと何よこの威力! 危うくわたしたちまで吹き飛ぶところだったじゃない!』

「すみません。ファヴニールの出力をちょいと甘く見積もりすぎました」

 

 半場が神様よりかけられた制限。『特典がある場合、例外を除き魔術を使用不可とする』。

 かつてこの制限を知った半場は、実験して、使用したらどうなるかを確認した。そして死にかけた。

 

 しかし半場はめげずにこの制限を利用することを思いついた。それがさっきの魔力暴走である。

 魔術回路を切り離し、スイッチ式で魔術を発動させる仕組みにした。そして対象の魔力が最大限にまで高まったところでスイッチオン。相手は爆発する。

 しかしこれは普通なら、小規模の爆発を起こす程度なのだが……

 

「(ファヴニールの魔力が大きすぎたなぁ。装甲を考えれば怯む程度だと思ってたんだが……、まぁいいか。これはこれで好都合だし。爆発オチにはちょうどいい)」

「半場さん。この後は打ち合わせ通りに?」

「ん、おう。ロマン、サーヴァント反応は?」

『まだ全員消滅してないよ。ただ相当ダメージを負ってるだろうね』

 

 ファヴニールの大爆発をもってしても。というよりギャグ補正が威力を減衰させたようである。

 

「それじゃ打ち合わせ通り、ジャンヌさんとゲオルギウスさんは回り込んで。マシュとジークフリートさんはここで待機」

(アタシ)たちは勝手にやるわ」

「頑張って」

 

 こうしてエリザベート、清姫、そしてマリーとアマデウスが離れる。向かう先は、自分と縁のあるサーヴァント。マリーとアマデウスには特筆する程の戦闘力はないが、それはクーフーリンがカバーするので何の問題もない。なお清姫だけはフリー。

 

「よし、俺たちは全員で残ったやつらを───」

 

 ぶっ飛ばそう───と、言おうとした直後。

 

 半場たちの前方に、魔力で強化された弾丸がぶっ飛んできた。

 

「「マスター!」」

「うわっ!?」「来たか!」

 

 

「Gaaaaaaaaa!!」

 

 

 バーサーク・バーサーカー。半場がもっとも脅威とした、サーヴァント。

 その能力は、持った物を低ランクの宝具と化すという代物である。当然、それは放たれる弾丸にさえ適応される。

 

 優に人を抹殺することができるそれ。故に防ぐのがこの2騎であるのは当然だ。

 

「お任せくださいマスター! マシュ・キリエライト、防ぎます!」

「うん、任せる!」

 

「大丈夫か」

「助かった、ありがと」

「何、先程役に立てなかったからな。これくらいはさせてくれ」

 

 マシュと───ジークフリート。この2騎であるのは。

 盾を持つマシュは当然。そしてジークフリートは、逸話から背中以外は強靭な肉体を持つ。その上、鎧まで付けているのだから、感覚器官に撃ち込まれでもしない限り倒れることはない。

 

 ───しかし、この場合。

 

「Arrrthurrrrrr!!」

 

「……ジリ貧、だな」

「ええ。ワイバーンに乗っていないのが救いかしら」

『さっきファヴニールを無力化したからね。しかしあれ、弾丸尽きないのかなぁ』

「そもそも弾丸が尽きるのを待てるかよ。あっち聖杯持ちだぞ」

 

 現在、ジャンヌオルタは痙攣する体を必死に動かしながら、高みの見物をしている。

 ちぃ、と噛みしめる半場。あまり期待してはいなかったが、ファヴニールの爆発から誘爆してほしいと望んでいたのだ。しかしそれは、バーサーカーがワイバーンに乗っていたことと、バーサーカーが察知して避けられたことにより叶わなかった。

 

「あっはっはっは!! いいわやりなさいバーサーカー! 魔力はまだまだあるのだから、そのまま押し切るのよ!」

 

「くっそー、美少女の顔芸も、度が過ぎると腹立つな。……しょうがねぇ。ここは誰か囮にして数的有利で倒───」

「うぉーい! 貴様らー!」

 

 えっ? と思わず全員声の方に振り向いた。

 

 そこでは、信長とバーサーク・ライダーが戦っていた。

 

「ふん! やぁ!」

「なんじゃこのライダー! やたら杖で殴ってくるんじゃが!? それに回し蹴りしてくるし! ホントに聖女か!?」

「聖女です。ですので、貴方たちに説教します! 先に逝ったアーチャーとランサーの分まで! 破ァ!」

「絶対に聖女じゃない! 『世』紀末『女』性、略して『世女』じゃろ!」

 

「……」

「あの、半場さんどうするんですか?」

「放置する。まず目先の脅威を叩く」

 

 『え、ちょっと待ってマジで!? 今のわし騎乗特攻ないんじゃけど!?』、そんな必死の叫びが聞こえたが、半場は無視した。ぶっちゃけライダーよりバーサーカーの方が脅威なので是非もない。

 

 しかし信長が危ういことには変わりないので、すぐに策を講じる。弾丸の嵐の中、声を張り上げて。

 

「そっちで壊れた幻想を撃ってくれ!」

「ジークフリートさんの宝具を使った方がいいんじゃないですか!?」

「本来ならそうするけど、微妙に距離が近すぎる! これじゃあっちが踏み込んでくるのが速い!」

「分かりました、エミヤ!」

「了解した!」

 

 ───トレース、オン。

 

 直後、10を越える剣がバーサーカーに殺到する。

 投影という魔術を得意とするエミヤ故に、それらは全て使い捨てである。

 防がなければ、奪わなければ、ガトリングは破壊されるだろう。

 

『させませぬゥ!』

 

 ならば、こちらも使い捨てればいい。

 

 そう考えたのだろうか。城から援護しているジルは、海魔たちを射線上に配置した。

 その数は投影剣を上回っており、当然全て防がれる。

 

『さぁジャンヌよ! 気にすることなく攻撃するのです!』

「えぇ、ジル。こちらには聖杯があるのだから!」

 

『ちょっ、防がれたわよどうするの!?』

「一周回って冷静になったかあいつら。んじゃゴリ押ししかねーな。両儀式。どうだ?」

「一息。それだけあれば、両断するわ」

「オーケー」

 

 それさえ分かればいい、と言って、半場は立香たちに指示を出す。内容は『ノッブの援護に行け』。

 そうして場にジークフリートと半場と両儀式が残ったところで、彼は最後の確認をした。

 

「時間稼ぎのつもりかしら」

「それもいいがな。なんとかしないとな」

 

 言って半場は、バーサーカーの観察を始める。

 ガトリングの間隔を覚え、味方の位置を確認し、これまでの言動を振り返り、半場は───

 

 ここで、賭けに出た。

 

「Gaaaaaa……」

 

「ここだッ」

 

「えっ」

「はっ?」

 

 半場はなんと、射線上に躍り出た。それも丸腰で。

 ジークフリートが駆け寄ろうとする。それは他ならぬ半場により止められた。

 聖杯が弾丸の分を補給する刹那、だから弾丸は当たらない。だがそれだけだ。再び嵐が襲えば、半場は蜂の巣と化す。

 

 それでも、出なくてはならないのだ。

 

 この作戦は、バーサーカーが半場を見ていなければならないのだから。

 

 

「バーサーカーァァァ!」

 

 

 半場は叫んだ。狂化した耳にも届くように。

 そのおかげか、バーサーカーは面を被った顔を半場に向けた。

 

 頭の上のオルガマリーが泣き叫んでいるのを、無視する。ジークフリートが駆け寄ってくるのを、無視する。ジャンヌオルタが撃てと叫んでいるのを、無視する。

 ただ、両儀式が自分を信じて構えていることだけを、頭に浮かべる。

 

 

 そうして半場は、()()()()()()()()()()()()()()()言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ!! あそこにアーサー王が!!!」

 

その直後、銃口の先はジャンヌに向けられた。

 

 

 

 

 

「Arrrthurrrrrr!!!!」

 

「なんでよおおおォォォ!!!!」

 

 

 ジャンヌオルタの理不尽を糾弾する叫びも、虚しく。

 

 体の向きを急に変えたバーサーカーは、スタンバッてた両儀式に両断された。




両儀式「ステンバ-イ…ステンバ-イ…」


前半の制限に関しては、今後有効活用する予定はないので、頭の外にでも置いといてください。


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邪竜百年戦争、終戦

最後の最後で力尽きました。


 ファヴニールの爆発は補正が働き減衰した。それにより狂化サーヴァントたちは戦える。

 

 ……一時的には。

 

『報われぬ、全くもって報われぬ。私の歌はここで途絶えるというのに、務めを果たしたわけでも、抵抗ですらないとは』

 

『これで、我が身の呪いは解かれたか……、感謝する。……王妃よ。願わくば、この罪が許されるように───』

 

『未来が過去を否定するのではなく、過去が未来を否定するだなんて。……なんて出鱈目な。だからこそ、眩しいのね』

 

『敗れた、か。これはもう、君たちが正義であると認めるしかないか……。けど一言、あのマスターに伝えて欲しい。死人をあんな扱いするな、と』

 

 最初から、体力も魔力も差が開いていた。だから1騎につき1騎でかかっても問題ない。たとえジャンヌオルタたちが聖杯を持っていても。

 狂化サーヴァントの4騎。それを相手に、カルデア側のサーヴァントたちは無傷で勝利した。

 

 そして、ここでも。

 

『あっ! あそこにアーサー王が!!』

『Arrrthurrrrrr!!』

 

「───なんでよォォォ!?」

 

 ジャンヌオルタは叫んだ。直面した理不尽に対して糾弾の叫びを上げた。

 ───どうしてバーサーク・バーサーカーの真名を看破できた? まさか唸り声だけで当てたというのか? そうだとしても、なぜ前に出ることに迷いがない?

 ジャンヌオルタは頭を抱えたくなり、寸前で持ち直した。

 

 そして、彼女は───

 

「ジル……!」

 

 一番身近な者を、頼ろうとする。

 さっきもジルは的確な判断をしてくれた。だからきっと、今度も助けてくれるはずだ。

 そう考えて、彼女は走り出す。

 

 その先に

 

「待ちなさい」

「ッ! 退きなさい!」

 

 ジャンヌが立ち塞がった。

 

 その周りのワイバーンはゲオルギウスが片付けており、到底ジャンヌオルタの援護をしてくれそうにない。だから障害は自分で片付けなければいけない。

 バッと両者、持っている旗を振るう。

 若干煙にまみれた旗と、真っ黒に煤けた旗が激突する。

 

「邪魔よ!」

「まだです。貴方から話を聞いていない」

「何が話よ……! こんな戦場で何を言っているの!」

 

「───貴方は、貴方の家族を覚えていますか?」

 

「……は?」

 

 その質問のアホらしさに、ジャンヌオルタは思わずそう言った。

 しかし当の本人は、至って真面目に問いかける。

 

「ですから、家族を覚えているのかと聞いているのです。ジャンヌ・ダルクにとってあの時代はなくてはならない───いえ、あるからこそ決起し、そしてフランスを貴方は恨んだのでしょうから」

「わ、たしは……!?」

「……その様子では、記憶が無いようですね」

 

 フッと力を抜いて、ジャンヌオルタから離れる。

 そしてジャンヌは、先程までとは違い、はっきりと敵意を見せて言った。

 

「ならばもう、私は貴方を倒すことを迷いません」

「退けえええぇぇぇ!!」

 

 轟、と炎が立ち昇る。予想外の出力にジャンヌは後退し、その隙にジャンヌオルタは駆けた。

 その前に、2匹のワイバーンが駆けつける。

 乗っているのはジル。その手には、彼の宝具である螺湮城教本(プレラーティーズスペルブック)が。

 

「ジャンヌ、お乗りなさい!」

「ええ!」

 

 ジャンヌオルタが空いているワイバーンに飛び乗る。それを確認して、ジルは螺湮城教本を限界まで解放した。

 

 直後、ファヴニールにも引けを取らない巨大海魔が現れた。

 

 突如目の前に現れた海魔に、ジャンヌは立ち止まる。

 その間に、2騎は動く。

 

「さぁ、戻りましょうジャンヌ。城に入れば、新たなサーヴァントを召喚することもできましょう」

「そうしましょう」

 

 ジャンヌオルタとジルは、城内に戻った。

 取り残されたジャンヌは、海魔の攻撃を避けつつ叫ぶ。

 

「っ、待ちなさい!」

「大丈夫か!?」

「半場さん!」

 

 そこに駆けつけたのは、先程バーサーカーを念入りに分割した半場と両儀式、そしてジークフリート。

 それぞれ、巨大海魔の出現に驚いている。

 

「すみません、せっかく話す機会をくださったのに、逃してしまいました」

「いや、こんなデカブツ現れたらしょうがない」

 

 言って、半場は若干うんざりした目で海魔を見た。

 彼は前世の知識でこの海魔を知っているが、それでも気持ち悪いことこの上ない。半場には海魔愛好の趣味はない。

 

 しかしブツクサ言っている暇はない。

 

「他のサーヴァントたちにはワイバーンを倒してもらってる。あいつらも確認してるだろうけど、合流してたら新たなサーヴァントを召喚される……」

『迷うことないわ。宝具で一掃しなさい』

「そのつもりなんですが……ジャンヌさん」

「はい?」

 

 確認のため、半場はジャンヌに聞いた。

 

「海魔諸共あの城ぶっ潰していい?」

「はい!? 何のつもりですか!?」

「いやだって、この海魔を宝具で片付けても、あの城を駆け上がらなきゃいけないんだろ? その間にサーヴァント召喚されたらどうしようもないですぜ」

「跳べばなんとか……」

「駄目だ。確実性に欠ける」

「……いえ、ダメです。あの城を破壊することはできません」

 

 あーやっぱりそう言うよねー、と半場はため息を吐いた。

 ここで戦略的に正しいのは半場だ。だからと言ってジャンヌを責めることはできない。日本で例えると『手間暇面倒だから敵ごとお城ぶっ潰してもいい?』と言っているようなものである。

 

「だが、急がなければサーヴァントを召喚されるのではないか」

「つっても、一度俺たちが侵入した以上罠くらい仕掛けてるだろうしな。何にせよ正攻法じゃ間に合わないぞ」

『じゃあどうするの。正攻法じゃダメなら跳んで───あ』

 

 跳んで。そこまで言って、オルガマリーは半場が何を考えているのか分かったからである。

 にやり、と笑いながら、半場はジャンヌに最後の確認をした。

 

「ところでジャンヌさん。もうあとは会話はなくていいか」

「いえ、消滅の際、ジルに一言だけ言わせてもらえれば」

「その程度なら問題ない。───よし、ジークフリートさんは宝具発動」

「了解した」

「両儀式は構えといて。突撃したら即、かたをつける」

「分かったわ」

 

 

「よし、んじゃ行くか」

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 城内にて、ジャンヌオルタはサーヴァント召喚を試みていた。

 

「ジル、置いてきた海魔はどうでしょうか」

「たった今、消滅しました。ですが心配には及びません。やつらはこの城を破壊できない。そしてこの城には多数のワイバーンと海魔を置いています。まず一体は召喚できるでしょう」

「やっぱり、貴方は頼りになるわねジル」

 

 笑うジャンヌオルタ。しかしその笑みは、今や虚勢である。

 彼女の脳裏に引っかかるのは、先程ジャンヌが言った言葉。

『記憶がないのですね』。それがジャンヌオルタを迷わせる理由である。

 さっきは言い返さなかった、いや言い返せなかった。まるで図星でも突かれたような気分であった。

 

「(……いいえ、記憶があろうとなかろうと、私はジャンヌ・ダルクです。そこに変わりはない)」

 

 彼女は気づかない。自分が抱える矛盾に。

 もっとも、そこに気づいても気づかなくても、もはやそれは意味のないことである。

 

 なぜなら、既に

 

 彼女らは詰んでいるのだから。

 

「……咄嗟の召喚ですが、誰が応えるでしょうか」

「そこを気にする必要はありませんぞ、ジャンヌよ。なぜなら私たちには『待ち構えている』という有利がある。やつらが扉から入ってくるなら手も打てます」

 

 優しく微笑みかけるジル。しかしジャンヌオルタは、どうしても不安を拭いきれなかった。

 彼女はいかに半場が常識外れか体験している。だから思うのだ。本当に、あの男が普通に扉から入ってくるかと。

 

 それを聞けば、半場はこう言ったであろう。

 

 

 

 時間がないなら窓を破ればいいじゃない。

 

 

 

 

 

 

 直後、ワイバーンに乗って半場たちが突っ込んできた。

 

「突撃いいいィィィ!!!」

 

「「は ァ ?」」

 

 

 

 

 ガシャン、という音に振り向いた時にはもう遅く。

 ジャンヌオルタとジルは、抵抗の暇もなくぶった斬られた。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 同時刻の、城外にて。

 マスター消滅により、ようやく長い一戦が終わった。

 

『よし! 半場くんが無事聖杯を確保したよ!』

「こ、こっちもようやく終わりました〜……」

「な、長かった……」

 

 

「ここで、終わりですか。ごめんなさい、私のエゴに付き合わせちゃって」

 

 

 バーサーク・ライダー。真名をマルタ。

 かつてタラスクという竜を沈めた聖女は、その逸話通り信長たち相手に互角に渡り合っていた。

 

「ほんッッッとうに、なんなんじゃ貴様。アーチャーの参戦があったのに倒れんとはどういうことじゃ」

「遠距離からこないのなら、やりようはありますから」

「遠距離からこないのならっていうか、自分から近づいてきてたような……」

 

 マルタとの戦いは苛烈を極めた。

 説教という名の警策(杖)叩きで信長を圧倒し、途中参加してきたアーチャーに謎の光弾を発射し、タラスクと自身の体を存分に活かして2騎分の戦いをしたマルタ。その勢いに立香たちは呑まれた。ていうかドン引きした。

 

「顎に入れたら『まだだ』ってボクシングみたいに起き上がってくるし、」

「わしに亀を叩きつけた挙句無駄無駄ラッシュかましてくるし、」

「盾で防いだらそのまま押されましたし、」

 

『聖女っていうより、ヤンキーみた』

 

「なんのことでしょうか。私はマルタですよ? そのくらいの気合があって当然なのです」

 

 えぇ、と向けられるジト目。

 それを咳払いで誤魔化して、マルタは微笑んだ。

 

「まぁ、それも負けたのですから終わりです。次は……そうですね、そちらに召喚された時でしょうか」

「いや貴様は召喚せん」

 

 信長は即答した。マジ顔で即答した。真剣すぎて立香たちが驚くくらい。

 それは運でしょうに、と呟くマルタ。その体は既に半分以上粒子と化している。聖杯が確保されたため、もう居られる理由がないのだ。

 

 しかし、最後に何か思い出したように、マルタは信長に伝言を託す。

 

「あなたのマスターに、しっかりと言っておきなさい。『人はもちろん英霊にも、あんなことはするな』と」

 

 それだけ言って、マルタは完全に消滅した。

 

「……さっきから言うとるが、何の話?」

「何かあったんですか?」

「サッパリ分からん」

 

 疑問を投げる立香とマシュ。しかし信長は答えられない。そもそも戦闘中も、全然話が噛み合ってなかったのだ。信長とマルタは。

 肝心の信長でさえ疑問符を頭に浮かべる中、ロマニが言った。

 

 

『よし、レイシフト開始するよ』

 

 

 その合図を皮切りに、立香たちの姿が消えていく。

 そしてやがて、何の痕跡もなく消失した。




邪竜百年戦争、終了。

とりあえず分かったのは、半場に独断行動させると展開が面倒になること。まぁ次の特異点はチームで動かざるを得ないんで、この特異点くらいでしか好きにやらないんですが。


あとは没ネタを投稿して、真のオルレアン終了です。
あらかじめ言っときます。理不尽&フリーダムです。


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幕間の物語2 報告と掃除はしっかりと

ちょびちょび書いてたので遅れました(言い訳)。


 目を覚まして、まずは肩を回す。ゴキゴキという音が聞こえた。

 よく考えたらまともにベッドで寝たの一日だけだったなー。それも街の使い古された宿だったし。

 今から少し億劫になるが、まぁ嫌でも慣れると思う。寝れるだけでもありがたいと妥協するか。

 

「マスター、起きたのね」

「ん……」

 

 目の前に両儀式が現れた。その向こうにはロマニとダヴィンチちゃんたちの姿。

 見るに、じきにぐだおたちも来るだろう。ならさっさと起きるか。頭部のオルガマリーも起こして、俺はロマニたちのもとに向かう。

 

「特異点の振り返りでもするのか?」

「うん。その前に、回収した聖杯を預かるよ」

「へーい」

 

 ポケットから聖杯を取り出し、ロマニに渡した。

 これで聖杯は2つ。ただしカルデアの聖杯は魔力源くらいにしか使えないので、多分燃料にでもするんだろうな。

 2つ分の足音が聞こえてきた。ぐだおとマシュだ。

 

「よし、2人も着いたことだし、始めようか」

「こっちも新たな観測記録を用意できたぜ」

「うん。……おぉ! まだ1つだけど、確かにフランスの特異点は修復に向かっている!」

 

 ロマニが喜びの声をあげて、俺とぐだおに報告してきた。

 ぐだおとマシュがホッとしている傍ら、俺はふと思った。これ、この後の特異点で現地調達可能なんじゃね? 具体的にはシュールストレミングとか。なんなら今からでもレイシフトできるし。

 まぁそれは後で。俺はロマニに言った。

 

「よし、んじゃこっちの報告な」

「ジャンヌオルタのことだね?」

「ああ」

 

 ジャンヌオルタについては、原作と違いぐだおたちは知らない。ひょっとしたらぐだおが召喚するかもしれないし、聞いたことだけ言っておこう。聞いたことだけ。

 

「結論から言うと、ジャンヌオルタはジルにより作り出された英霊だった」

「何だって!?」

「正確には聖杯の力で、だな。ジルはジャンヌを蘇らせようとして失敗したのか、代わりに偽物を生み出したようだ」

 

 確か原作では、ジルのフランスへの憎しみとか怨念とかが色々混ざって、本来ありえない別側面が生まれたんだっか。

 そんな邪ンヌをもし召喚したら……いや、俺は召喚することはないだろうな。というか向こうが応じないな。

 

「分かりやすく言うと、ジャンヌオルタとは、ジルが作り出したネットアイドルみたいなもんだ」

「なるほど……」

『報告書にもそう書いておきましょう』

 

 ジャンヌオルタの話はもう終わりだ。あとは本人を召喚して聞くしかない。興味があるなら、ぐだお、よろしく。

 あー、疲れた。

 そうして離れようとした俺に、ダヴィンチちゃんが言ってきた。

 

「あ、半場くん。ちょっと明日工房に来てくれ」

「え? なんで」

「シュールストレミングの加工に、工房が一つ潰れかけてるんだよ。だから消臭を手伝ってほしいな」

「……ファ○リーズは?」

「壁と床の清掃をファ○リーズでやれるわけないだろ。だから、ね?」

 

 待て、マジでやるのか清掃。加工頼んだのは俺だし責任あるかもしれないが、やるの? 清掃?

 自分でも嫌な顔をしているのが分かる。生きるためにシュールストレミングを使うのと、別にやらなくてもいいことにシュールストレミングを処理するのは話が別だ。

 だから勘弁してください、お願いします。

 

 そんな考えが読めていたのだろうか。ダヴィンチちゃんはやれやれと首をすくめながら言った。

 

「聖晶石を生み出せるか否かの瀬戸際なんだけども」

「やります」

 

 ふざけんなそういうことは早く言え!

 

「さぁー寝るぞー!」

『そうよ早く言いなさいよ。サーヴァントを召喚できないなんてとんでもな』

「ガチャができないなんてとんでもない!」

『おいこら』

 

 よし今日はとっとと寝るぞ、そして明日早く起きて清掃するぞ!

 そう誓って、俺は自室に戻った。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 翌朝、たっぷり寝て元気いっぱいの半場は、さっさと消臭に取り掛かっていた。といっても、シュールストレミングの臭いが簡単に取れるはずもなく。結局一日かけてきっちり臭いを取っていく。

 ダヴィンチの工房一つの消臭。それを一人でやるにしてはえらく早いが、それは当然。頼もしい助っ人がいたのである。

 

「こっち終わった」

「そうか。私も終えたよ」

 

 アーチャー・エミヤ。カルデアが誇るオカン的存在である。

 彼は立香の頼みで、半場の手伝いをしていたのだ。

 

「悪いな。手伝ってもらって」

「何、下手に素人にやらせれば取り返しのつかないことになりかねないからな。これは対応を知る者がやるべきだ」

「そういえばやけに対応が早いな。前に開けたことあるの?」

「まさか、私が開けたことはない。ただ以前、知り合いの調理師と処理しただけさ」

「何を料理するつもりだったんだよ……」

 

 冷めた目で見る半場。しかしエミヤにとってはどうでもいいのか、話すつもりはなさそうだった。

 むしろ、エミヤには他に聞きたいことがあった。

 

「ところで一ついいかね」

「ん?」

「まさかとは思うが、シュールストレミングは品切れていないということは?」

「特異点で全部使っちまったよ。やれやれ、たった3ダース程度じゃ保たないか」

「そうか。それなら良……ん? 3ダース?」

 

 凄まじい違和感を感じたエミヤだが、半場はそうではないらしい。「はぁー、ダヴィンチちゃんに臭い玉作ってもらわなくちゃ」とボヤきながら、雑巾を絞っている。

 首を傾げながらも、エミヤはまぁそんな人間もいるかと思った。

 

「そんな量を一人で食すつもりだったのかね」

「本当は振る舞うつもりだったけど、みんな拒否したんだよ。ヒナコに至っちゃ気絶して以降逃げやがるしよー」

 

 半場はシュールストレミングは食べられる派である。というか極限状況なら人間は何だって食べる。例はグルメ界。

 ただ大半の人間は、言うまでなく苦手とする。ならば仕方ないということで、半場はシュールストレミングの製作を諦めた。カルデアで作るつもりであった。

 

「あまりそういうことをするものではない。シュールストレミングで人を殺すことは十分に可能なのだからな」

「分かってるよ。……ところで、この雑巾どうすんの?」

「私が洗濯しておこう」

「大丈夫か? 牛乳拭いて放置した後の雑巾みたいにならない?」

「そんなことはさせるか」

 

 茶化しに割と本気の返答をして、エミヤは雑巾を受け取る。そして工房を見渡した。

 壁も床、天井の隅々までピカピカに磨かれていた。主にエミヤの家事テクによって。果たして凄いのはエミヤか、それともここまでやらないと消臭にならないシュールストレミングか。

 

「ダヴィンチちゃんは?」

「ダヴィンチちゃんならあっちの工房。俺とノッブの頼みでちょっと設計図を引いてもらってる」

「織田信長、か」

 

 少し神妙そうな表情なエミヤ。しかし別に浅からぬ因縁とか深いワケがあるのではない。ただいつもつまみ食いされるのに辟易しているだけである。それを知っていて止めないどころか信長に加担している半場も全くもって大人気ないが、それは彼にはどうでもよいことだ。

 

 とにかく、自然な調子で半場は会話を続ける。

 

「そういえばエミヤの投影っていうのは、自分一人で設計図引いて作り出すようなもんだよな」

「いや、そこまで優れたものではない。私ができるのはあくまで偽物(コピー)。ダヴィンチちゃんのように優れた設計者ではないさ」

「それでも、見たものを作り出せるわけだろ? なぁ、それって剣以外も作れるのか?」

 

 聞く意味のない質問だ。半場はエミヤの投影可能範囲についてある程度知っている。

 しかし聞く必要はある。半場は知識として知っていても、実際にそれを見たわけではないのだから。

 

「もちろん限界はあるがね。だが中身さえ分かれば大抵の物は投影できる。魔力と時間をもらえればだが」

「そっか。んじゃちょいと作ってもらいたいものがあるんだけどさ。……その前に」

 

 工房の隅に置かれたバッグ。それは半場が自室から持ってきた物であり、半場がカルデアに来る前に用意しておいた物である。

 バックから二つ、何かを取り出し、半場はエミヤに聞いた。

 

 

「この爆竹作れる?」

「何をするつもりかね?」

 

 

 半場が取り出したのは、平均より少し大きいサイズの爆竹であった。どこの国製かは、黒塗りで潰されている。

 引きつった顔でそう言うエミヤ。しかし半場はあくまでも「作れる?」という態度を崩さない。

 

「……」

「……」

 

 少しの間、見つめ合う両者。ただしその間にロマンとかはない。あるのは早く言えという応酬だけである。

 最初に折れたのは、エミヤであった。

 

「……作れる。その程度なら造作もない」

「そっか作れるのかそうかー」

「……というか、それなら私の壊れた幻想の方がいいのではないか? サーヴァント相手にその爆竹は通じないだろう」

「えー、一体何の話ー?」

 

 白々しい笑顔だった。いっそ清々しい笑顔だった。

 はぁ、とため息を吐くエミヤ。その顔はどう見てもオカンである。まるでダメ息子を見るような。

 そしてエミヤが問い詰めと説教を始めようとしたタイミングで、ちょうど彼女らが出てくる。

 

「半場くーん、設計図書いたぜー」

「おっ、サンキューダヴィンチちゃん。ノッブ、どうよ」

「バッチリじゃ。あとはわしが作るだけじゃな!」

 

 つい先程まで、何かの設計図を引いていたダヴィンチと信長であった。その手には設計図らしき大きな紙が。

 なんだなんだ、とエミヤが見ようとしている間、半場はダヴィンチ顧問と話をする。

 

「聖杯ドライブの案は、効率を無視すればいい案だと思うよ。要するにゴーレムを作るようなものだからね。ただやはり可動部や重量といったものには問題が残るね。今ある凶骨じゃ強度が足りない」

「やっぱそうだよなー。特異点攻略を進めるっきゃないかー」

「というより、これなら普通のゴーレムを作った方がいいと思うよ? 索敵でもこっちのプランの方がいいかなー」

 

 さくさく進められる何か。わけが分からないエミヤ。

 思わず信長を見ても、彼女はふふんと自信ありに胸を張るだけである。

 

 なので、聞く。

 

 

 

「一体何の話をしているのかね?」

 

「「「機動戦士N(ノブナ)ガン○ム」」」

 

「えっ」

 

 

 信長が見せた設計図。そこには、某RX-75のようなキャタピラの上に、ディフォルメ化された信長が乗っていた。

 

 そう、すなわちノブタンクである。




燃え上がれ、ノッブ!

ガンタンク的なサムシングを見たので書かずにはいられなかった。と私は供述します。


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ぐだぐだ召喚編

 改めて、カルデアの召喚システムは、俺が知っているGO形式ではなくsn方式だ。つまり、本人の縁や触媒によって、ある程度喚べる英霊を厳選することができる。

 カルデアに来る前の俺には、触媒を用意する時間があった。なら準備しておくのは当然だ。まぁ、出したら怪しまれるし、カメラとかで監視されてるし、金が無駄になりそうだけども。泣いていい?

 くそう俺にTASの力さえあればと思う。それをおくびに出さずに、マシュに聞いた。

 

「盾はおk?」

「はい。ラウンドシールド設置完了。召喚を始めてください」

 

 マシュが盾を設置したのを確認して、俺は前に出る。

 今回の召喚は、まず1人1回。最初は俺から。

 

「抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ───」

 

 誰がくるかなー誰がくるかなー。前世でのガチャよりはるかに大きな期待感を持ちながら、俺は目を開いた。

 煙の先に、いたのは。

 

 

 

 

 

「新選組一番隊隊長、沖田総司がここに。あなたが、私のマスターですか?」

 

 

 

 

 沖田総司───経験値が生み出した桜セイバー。桃色の袴にブーツ、そして一振りの刀を持った女性だ。

 俺の背後でまーた女性かよーと言いたげな空気が流れているのが分かる。だがなお前ら、今度の特異点もまた女だぞ。歴史家仕事して案件だぞ。

 改めて、魔術協会とか歴史家への報告をオルガマリーに投げようと誓って、俺は沖田さんに話しかけた。

 

「あぁ、俺がマスターだ。名前は不知火半場だ。よろしく頼む」

「よろしくお願いします。これより私は、あなたの刀として、眼前の敵全てを斬り捨てましょう」

 

 ……あれ、沖田さんってこんなに真面目だっけか。戦闘の時はガチモードだったとは思うけど、召喚した直後ってこんなに真面目だっけ? ひょっとしてぐだぐだ本能寺とか、もっと言えば帝都聖杯奇譚を経験してないのか?

 まぁどちらにせよ沖田さんの性能は変わらんだろうし、どうでもいいか。

 

『怖いこと言うわねこのサーヴァント』

「むっ!? アホ毛が喋っている!?」

「あー、このアホ毛の名前はオルガマリー。一応このカルデアの所長だ」

『一応って何よ』

「今は魂だけの状態だけど」

「そうでしたか。てっきり物の怪の類かと」

 

 うーむ……やっぱり何か言葉の節々に違和感を感じる……。ひょっとして緊張でもしているのか? でもそれはありえんだろうしなー。

 

「……とりあえず、部屋に案内するよ。なんか欲しいもんとかある?」

「ありがとうございます。ですがお気遣いは不要です。満足に寝られればそれでいいですよ」

 

 沖田さんを連れて、俺は召喚の間を出る。その際、ぐだおたちにアイコンタクトを取り、あとは任せたと伝えておく。俺も案内を終えたら、誰を召喚したか見にいくか。

 そして歩く俺たちだが、その間沖田さんと話を済ませておく。なんか変な違和感感じるし。

 訝しむ俺に気づいていないのか、沖田さんは普通に不敵な笑みを浮かべて話している。その姿はどことなく自信満々だ。

 

「まぁ、物の怪なぞ私であれば問題はありませんが。一刀のもと斬り伏せ、マスターの安全を保障しましょう」

 

 あ、誰か来た。

 

「なんじゃ弱小人斬りサークルの姫ではないか。その口調はどうした気持ち悪いぞ?」

「ノッブゥ!?」

 

 ボリボリアイスを齧りながら現れたノッブは、早々に沖田さんを煽る。

 その姿が想定外だったようで、沖田さんは目を見開いている。あれ、ノッブ知ってるってことは、ぐだぐだ経験済みなのか?

 

「な、なんであなたがここにいるんですか!?」

「はぁ? なんじゃわしがいたらいけないと言うのか。……む? そうかそうなのかそういうことじゃな!」

 

 なんだその三段。

 ノッブは( ^ω^ )ヘーイ、みたいな顔で沖田さんを煽る。

 

「さては沖田貴様あれじゃな? カッチョいい感じ出して華々しい英霊デビューを果たしたかったんじゃな!? ふははは! そんなに上手くいくわけないじゃろうになぁ!! ざーんねんじゃったのぅはーっはっはっはっ!!」

「喧しいですよ!! ちょっと先に召喚された程度でなーに偉そうに言ってるんですかー!」

「当たり前ですぅー。わし先輩ですぅー。じゃから貴様は敬わなければいけないんですぅー」

「むきー!!」

 

 なんだ、いつものぐだぐだコンビじゃないか。

 ということは……あれか? ノッブの言う通り、沖田さんはカッコいいイメージでも持って欲しかったのか? ……そういえば、沖田さんって実際の聖杯戦争じゃ、性能低いからな。なおさらイメージってのは大事かもしれない。

 まぁ、慣れてなかったのか、ノッブの登場でボロが出たわけだけど。

 そう思っていたら、とうとう恐れていたことが起きた。

 

 

 

「大体何ですかその格好! なんであなた水着なんですか!」

 

「暑いから着替えたに決まっておるじゃろう。気にすることではないわ。……いや、気にすることじゃったな! そっち水着ないもんな! 厳密に言えば水着あるのに差分ないからな!」

 

「はーァ!? ちょっと、なんてこと言うんですか!」

 

「すまんのぅ、空気読まずにわしが先に艶姿を晒してもうて。まぁわしったら日本一ふぇいますな英霊じゃから是非もないよネ! 是非もないわー弱小人斬りサークルの姫より人気で是非もないわー」

 

 

 

 言いやがったよこいつ! 沖田さんにとっての禁句をあっさり言いやがったよ!

 確かに俺個人的にも、沖田さんの水着実装がどうなったのかは非常に気になるけども。でもなんでそれを俺じゃなくてこいつらが言うのかねぇ。やっぱこいつらぐだぐだオーダーの記憶あるのか?

 

 と、気づいた。

 いつの間にか、沖田さんが刀を抜いていることに。

 

「……おい待て。なんで刀持っとるんじゃ」

「何言ってるんですか。私は刀標準装備ですよ」

「いやいやそういうことじゃなくて。っておい待て何ステップしとるんじゃ。なんで刀を突きつけておるのじゃ」

「一歩音越え、二歩無間、三歩絶刀───」

「おい待てやめろ落ち着け沖田ぁぁぁ!?!?」

 

 瞬間、沖田が踏み出し、ノッブがギターを構えた。

 やべぇ第三次ぐだぐだ大戦が始まってしまう! そして怒られるのは間違いなく俺だ!!

 今すぐ止めなくては。俺は即座にプランを編み出し、見計らって飛び出す。

 

星の○金(スタープラ○ナ)ァ!!」

「この距離なら防御(バリア)は張れませんねぇ!!」

 

「お前ら落ち着け!!」

 

 俺は2人の向こう脛と太ももを蹴り飛ばした。

 順番としては、まずノッブの太ももを流すように蹴り、その勢いで沖田さんの向こう脛も蹴り飛ばした、というところだ。沖田さんに関しては縮地も使ってるからダメージ増大だな。

 

 ぐはあああぁぁぁ!! と部位を押さえて転がる2人の首裏を掴んで、強引に引っ張っていく。

 

「よし、着いたぞ。ノッブは向こう、沖田さんはあっちな」

「ちょ、ちょっと待てその子猫運ぶような掴みやめんかおい」

「足引きずってる足、こふっ!?」

 

 強制的に2人を部屋にシュートし、俺は来た道を戻る。

 

 なんというか、疲れた。コハエースのライダーさんはこんな気分だったんだな。そう思った。

 

 

 

 

 

◇◇◇

 

 

 

 

 

 召喚部屋に戻ってきた時には、まぁ案の定ぐだおたちは召喚を終えていた。悪いな遅れて。

 

「あ、半場さん。お2人の案内、終わったんですね」

「おう。んで、藤丸は誰を召喚したんだ?」

 

 清姫か? それともエリザベートか? 清姫はともかくエリザベートは勘弁な。ロックバンドやろうものならとんでもないことになる。

 だが俺の予想は違うみたいだ。マシュはなんか困惑しているように、しどろもどろになりながら言った。

 

「何と言うか……水着の方が……」

「ん?」

 

 水着って、誰だよいっぱいいて分からんぞ。

 俺はマシュを置いて、ぐだおの召喚したサーヴァントを見る。

 

 

 

「あ、あなたははじめましてですね。私はマルタです。水着で杖はないですがマルタです。───ところで、少しお話しがあるのですがよろしいですか」

「うわいきなり腹痛が……!!」

「喧嘩売ってるのですねそうですねそうですか」

 

 




今更ながらキャラ紹介。あとで個別に分けときます。

・不知火半場
 めだかボックスで不知火半纏って打ってみてください。大体あんな感じです。意図的なボケ担当。たまにツッコミに回る。ほとんどこいつのせい。

・両儀式
 説明不要な超強いおねーさん。正々堂々と半場のアホ毛を狙ってる。あとこの人が妙なことを言ったら、全て半場のせいです。

・織田信長(バーサーカー)
 水着ノッブ、ロックバンドカルデアに所属。最近メンバー募集中。現在うどん粉でちびノブを作れないか画策中。

・沖田総司
 桜セイバー。コフッがアイデンティティ。なんとか病弱を消せないか頑張ってる。

・藤丸立香(男)
 原作主人公だけど、原作と同じことやってるので影が薄い。ごめんね。選択肢的には真面目。ギャグ選択肢は全て半場が持っていってる。

・マシュ・キリエライト
 デミサーヴァントの後輩。ぐだお側のツッコミだけど、影が薄い。ごめんね。作中唯一、半場のギャグに染まらない子。多分。

・クー・フーリン(キャスター)
 頼れる兄貴。

・エミヤ(アーチャー)
 カルデアのオカン。半場に爆竹製作とか任されている。

・マルタ(ルーラー)
 表向きは半場のストッパー。ただ悲しきかな。アホは行動を制限された程度では止まらないのだ。

・清姫(バーサーカー)
 ぐだおのストーカー。

・オルガ所長(アホ毛)
 アホ毛が本体。新八的なツッコミ担当。苦労人。

・ロマニ・アーキマン
 ゆるふわ系ダメ男。第2のツッコミ役。過労人。

・ダヴィンチちゃん
 天才。大体この人のせい。


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