バイオハザード~G.T.計画~ (ユリおじ)
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誕生

主人公誕生までのお話です。


 製薬会社アンブレラ。ラクーンシティをホームとするその大企業は優良な企業としてアメリカ全土に進出していた。

 

 しかしそれは表向きの話。実際は非人道的な実験を繰り返し、様々な生物兵器を開発・製造し、様々な場所に売り付ける恐ろしい企業であった。これはそんなアンブレラが産み出したとあるイレギュラーの話。

 ラクーンシティ郊外の地下研究所。そこではとある研究が行われていた。

 

 

 ギガ・タイラント計画 通称G.T.計画

 

 

 ウィリアム・バーキン博士主導によるアンブレラにすら秘匿された極秘実験。

 

 Tウイルスとよばれる、生物に恐ろしいまでの耐久性を与えるが知能を奪い食欲だけの化け物にしてしまうウイルス。Gウイルスと呼ばれるTウイルスをさらに強力にした生物の進化を促すウイルス。このふたつのウイルスを掛け合わせれば素晴らしいB.O.Wが出来るはずだ、といった発想から生まれた計画。たとえG計画が頓挫してもこの計画が成功し、タイラントを超えるB.O.Wを作ればバーキン博士がアンブレラの幹部となるのは確実。そうでなくともいざというときのアンブレラ以外の組織への命綱になりえるのだ。それゆえの極秘計画。

 

 しかしこの計画には問題があった。

 

 まず、この二つのウイルスに耐えられる肉体を持つ人間が存在しない。この二つのウイルスを人間に投与しようものなら肉体が無尽蔵に進化して自滅してしまう。そしてなにより、TウイルスとGウイルスを一つのウイルスとして融合させることができなかった。TとGを掛け合わせることが難しかったのだ。Tウイルスはある程度完成しているとはいえ、未だに開発段階を抜けないGウイルスがTウイルスを完全に喰ってしまうのだ。

 

 バーキン博士はこの問題に対しとある知り合いに協力を仰いだ。

 

 聞いた話によるとなんでも彼はTウイルスを克服し、さらには完全適応を成したらしい。彼に連絡をつけるのには苦労したが何とか協力してもらい、なんとか目的のものを手に入れた。彼に大きな借りを作ったがまあいい、そんなものこの計画が成功すれば微々たるものだ。

 

 そんな彼からもらい受けたもの、それは彼のDNA情報である。バーキン博士が思いついた問題解決策、それはTウイルス克服者のDNAをつかいクローンを作るといったものであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある研究員の手記

 

 4月23日

 

 私が最近の日課となりつつあるGウイルスの特性を実験しているとき、バーキン博士に呼び出された。なんでもTとGを掛け合わせる実験をしたいらしい。そしてそれはごく一部の有能なものだけが携われる極秘実験だとか。もちろん私はこれをすぐさま了承した。今まで私の有用性を証明しようと必死になっていたがバーキン博士はキチンと気づいてくれていたのだ!今までのような、行き詰った研究をちまちまと進めるのではなく新しく進められるこの研究にはワクワクしている。私を信頼してこの研究に招いてくれたバーキン博士に感謝しつつ新たな研究の準備を進める。ああ、本当に楽しみだ。

 

 5月13日

 

 実験の第一段階は成功した。Tの完全適応者のDNAからクローンを作り出したのだ。次はこのクローンにTとGを少しずつ投与していく。しかしバーキン博士もよく考える。TがGに食われてしまうのでTをGより多く投与する、その際Tに耐えられるようTの完全適応者のクローンをつかうとは。しかしバーキン博士の言っていた協力者とはだれなのだろう…アンブレラにはこの実験を報告しないらしいのでアンブレラの人間ではないと思うのだが。

 

 6月26日

 

 アークレイ研究所での漏洩事件の影響でアンブレラの査察が入った。幸い()()はNESTとは違う場所にあるのでばれなかったが危なかった。バーキン博士も少し焦っていたようだ。

 

 7月4日

 

 実験は順調である。そして実験の過程で面白いことがいくつかわかった。まずクローンの成長速度である。5月からわずか2か月ですでに肉体年齢が12歳を迎えているのである。これはおそらくGの進化を促す特性が作用しているのだろう。そしてもう一つ。なんとクローンが性別を変化させた。確かに作られたときは男性体だったのがTとGを投与していくにつれ女性体となっていったのだ。これは面白い特性である。Gの繫殖本能とTの新陳代謝促進が組み合わさるとこうなるのだろうか?要研究である。そしてクローンにはGT-001と名付けることが決定した。

 

 8月7日

 素晴らしい!なんとGT-001が言葉を話したのだ!いままで培養液の中だったのでわからなかったが、いざ外へと出してみればGT-001には高い知能があることが判明した!GT-001は肉体年齢が16歳となったが見た目は金髪に赤目の10歳くらいの少女である。このままうまくいけば人間社会に溶け込むことのできるB.O.W.となるだろう!早速GT-001には教育官としてタカハシ研究員をつけた。ああ、性能実験ができる時が待ち遠しい。

 

 8月30日

 GT-001はどんどんと知識を吸収しているらしい。教育官であるタカハシ研究員がうれしそうにはなしていた。あまり要らぬ知識をつけられても面倒だが、まあいざとなったら体内に埋め込んだ小型爆弾で処理すればよい。必要最低限のデータはとれたので後はここからどこまで使い物になるかという実戦データがいるくらいだ。…それにしても本当にTとGはおもしろい。すでに肉体年齢は18に達して、そこで成長が止まっているというのだから。肉体の最盛期まで急激に成長させそこで不老になることで常に全盛期、ということなのだろう。

 

 9月20日

 バーキン博士がGをついに完成させたらしい。もはやGの完成など今となってはどうでもいいのだが、こちらの研究が疎かにならないか少し心配である。

 

 9月28日

 馬鹿な、ここでバイオハザードが発生しただと。地下数百mに存在するこの研究所で。ありえない。何者かが内から手引きしたとしか考えられない。そういえば数日前にバーキン博士からNESTにGT-001を移送する計画がだされた時から妙だったのだ。

 

 10月1日

 もはや私しか生きていない。ほかは全員感染したか食われた。いやだ。私は優秀なんだ。こんなところで。なぜバーキン博士は通信に応答してくれない。

 

  月 日

 そうか やはり 博士 あなたが

 

  月 日

 ゆ r さ な (ここで手記は途切れている)

 

 

 

 

 

 




有能な研究員=処分しやすい、しても問題ない人。

協力者さんはアルバートさんです。しらべたら割と交友あるので協力してくれそうだったのでお願いしました。

書き溜めはなおきなんで次回投稿は未定です。


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血で濡れたGT-001研究レポート(挿絵あり)

という主人公説明回
ほぼ作者の思い付きのメモ書きなのでスルーしてもらっても大丈夫です。

ごすろじ様から挿絵を頂きました。

【挿絵表示】

アリシアがとても可愛らしく描いて頂けて嬉しい限りです。


 GT-001 性能情報 記述者:教育官サラ・タカハシ

 

 体高:150cm

 重量:49kg

 肉体年齢:18(作成から5ヶ月時点)

 

 握力:測定不可※1

 脚力:測定場所がなく未測定(恐らくタイラントと同レベルと推測)

 視力:1.5

 知能:平均的な人間と同等

 戦闘能力:凄まじい再生能力で小火器程度ではダメージとならない。攻撃の際は瞬時に接近、そして殴りつけるだけでハンターの頭を吹き飛ばす程と威力は十分。難点としては皮膚自体は固くないので威力の高いマシンガン等の銃火器で撃ち続けられるとダメージにならなくとも身動きが取れず、そのまま四肢がちぎれてしまう可能性がある。実際に実験中ハンターに一度左腕を根元から切り落とされ損失した。対策としてタイラント用の防弾対爆コートを流用、改造し着用させることにより防御力の底上げを図った。

 持久力:2日の絶食で生命の危険レベルに突入。その際軽い暴走状態に入り周りの物を無差別に捕食しようとした。

 

 見た目

 見た目はコーカソイドに近似。金髪に赤目の14〜16の少女。その高い知能もあり目を隠しさえすれば充分人間社会に溶け込むことが可能。

 

 備考

 

 総合的には量産型タイラントを上回るという結論を出した。耐久力こそ劣るものの作成した装備でカバー可能な範囲。この人間の少女程の見た目でどのようにしてとてつもない力を出しているかは不明。※2

 TウイルスやGウイルスの捕食本能、繁殖本能も抑えられている。その代わり他人に胚を植え付ける機能が喪われている模様。

 なぜ成長途中で性別が変化したかは不明。

 血液採取の結果Tウイルス、Gウイルスともに安定していることが判明。恐らく完全適合を果たしたと結論付けた。

 戦闘実験ではハンター5体を相手にし、余裕を持ち勝利。

 知能も人間と変わらぬレベルを持ち、様々な事柄を理解することが可能。

 餌はウイルス感染者の死体よりも人間の食事を好む。消費カロリーが多いのか1日でも絶食状態となると一気にパフォーマンスが落ちるので無支援の長期間使用は不可。

 

 ※1 人間用の握力測定機は力を入れるとまるでアルミ缶でも潰すかのように破壊されてしまった。B.O.W.用の握力測定機の導入が急ぎ必要。

 ※2 恐らくTウイルスとGウイルスで一時的に肉体を強化していると予想

 

 そして何より特筆すべきはその身体の再生能力である。

 実験の過程で左腕を一時損失したが僅か数分で全て再生。銃火器による攻撃も当たった端から再生するので小火器では打倒不可。これは噂に聞くアークレイ研究所が作り上げたという不死身のB.O.W.の能力の正体なのではないだろうか。

 

 更になんとGT-001の心臓には(ここから先は血で汚れていて読めない)

 

 



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逃走

地の文おおすぎ問題。
文の書き方がいくら書き直しても納得いかないのであきらめて投稿します。



 目を開けると謎の液体の中でした。

 

 …どういうことなの。おかしい、いやなんか白衣着た人間に周り囲まれてるとか、緑色の液体越しに明らかに見覚えのある赤と白のマークあるとか、見た感じ俺のムスコがいないどころか体が(多分)幼女になってるとか、もう突っ込みどころしかないけど、そこらへんはひとまず置いといてだ。一つだけどうしても言わせてほしい。

 

 

 

 

 

 神様、せめてパソコンのHDDの中身整理させてからにしてぇぇぇぇぇ………。

 

 

 

 

 

 今の状況、おそらく巷に聞く転生だか転移だかいうやつなんだろう。しかしなぜ俺が…。たしか記憶をたどる限りここにいる前はバイオのレオン出てくるシリーズデスマーチをしていて、40数時間かけバイオ6までレオンが出てくるものは全て(・・・・・・・・・・・・・)終わらせたはずなんだが…。くそう、最新作の7にはレオンが出てこなくて残念だった…。

 

 あっ、ヤバイそんなこと考えてたらなんか急に眠気が………無理…お休み……。

 

 

 

 

 

 なんか起きたら明らかに体が成長してるんですが。

 

 えっ、どういうこと?なんなの?前見たときは(恐らく)幼女だったのにいつの間にか(メイビー)少女になってるんですが。まさか俺このブラック企業の実験体なの?それとも5年くらい寝てた?…どっちも嫌だけど後者のほうがいいなぁ…。

 

 とか言ってたらまた眠い…お休み…。

 

 

 

 

 

 おはようございます。なんか謎の液体の外に出してもらえました。そして体はまたも成長していました。なんでやねん。液体の外出れたのはいいがこの部屋少し息苦しい。ケホケホと咳をしながら部屋の中を見ていると黄色い化学防護服?みたいなの着た人がバインダーを持って恐る恐る、部屋の中に入ってきた。おう、明らかに俺のレポートを取ろうとしてるな貴様。顔はわからないが、まあここが本当にあのバイオな世界ならどうせ英語が主流だろう。

 

「ハロー」

 

 そう声をかけてやると何やら動揺した様子。おう、声をかけただけでこれだよ。…声が酷すぎて驚いたとかじゃないよね?

 

 するとその後何やらいろいろと英語?で話しかけられるが、悪いがこちとら英語は去年の必修の講義でC評価だったんだ。何言ってるかわかんね。

 

 そんな思いを込めつつ首をかしげると少し肩を落とす黄色野郎。おのれ、日本語だったら行けるのに。かもんじゃぱにーずぷりーずおぅいえ。

 

 するとそのまま黄色野郎は特に何もせず部屋から退出していった。

 

 …あれ?あいつ何しに来たん?

 

 そのまま特に何もされることもすることもなく、ただ部屋の中を見て回っていると、白衣を着た女性が病院の患者が着るような服を持ってきた。…そういえば全裸だったね、俺。

 

 もらった服を着ると白衣の女性が少し驚いた様子だった。服を着たら驚かれるとか珍獣扱いですか?

 

 すると白衣の女性が

 

「タカハシ」

 

 と自分自身を指さしながら言ってきた。それが彼女の名前かな?と思っていると

 

「GT-001」

 

 とこちらを指さしながら言ってきた。……えっ、まさかそれ俺の名前?

 

 

 

 

 どうも、GT-001です。あの後タカハシ、GT-001ということをくりかえされたので名前で間違いないらしい。…ええー、もっとこう、少しはまともなのはなかったの…。というか、これどう考えても俺アンブレラの実験体ってことですよね。なんでよりによって転生したらアンブレラの実験体なの?あれか、タイトルは「転生したらアンブレラの実験体だった件」とでもすればいいのか。HAHAHA、ナイスジョーク。

 

 まあいいや。本当の名前は一応覚えてるし、いまは甘んじてGT-001という名前を受け入れてやろう。   

 

 べ、別に前世のある実験体とかばれたらやばいなんて思ってないんだからね(震え声)。

 

 そんなこんなで謎の液体に戻されることもなく、ベッドくらいしかない部屋でタカハシに英語を教え続けられる日々を過ごしていると、ある日突然、二足歩行のデカいカエルの化け物のいる部屋に放り込まれた。

 

 え?なんで?なんか俺悪いことしました?ま、まさかこの間タカハシの胸をガン見してたことが怒りをかってしまったか…。少女の見た目だから平気だと思ったんだが駄目だったか…。

 

 そんな現実逃避していると、いきなりカエルの化け物が襲い掛かってきた。それに対し、俺はそっと目を閉じる。

 

 ああ…俺、ここで死ぬのか。いやだなぁ、家でゲームしてたら突然こんなとこにいて、しかも女になってて、名前も変なのつけられ、数日英会話の授業?してたらいきなりこれだもん。あれかなぁ、失敗作だから処分するのかなぁ。父さん母さん、親孝行もろくにできず突然いなくなった息子をお許しください。あとパソコンの中身は見ないで処分してください。切実に。

 

 

 

 

 …おかしい、いまだにカエル野郎の攻撃が来ない、あれ、割と人生振り返ってたんだけど。まさか気づかないうちに死んでるとか?一瞬で首飛ばされたならありえそうだなぁ…。

 

 恐る恐る、目を開けるとそこには…

 

 いまだに空中でゆっくりこちらに向かってきてるカエル野郎がいた。…え?君いくらなんでも遅くない?そんなんいくら俺でもよけられるよ?

 

 すっと横に移動すると、その瞬間すごい勢いでカエル野郎が俺のいた場所に鋭い爪を振り下ろした。え?どうやって空中でゆっくり浮いてきた後そんな加速したの?するとすぐさま俺のほうに振り向き、振り下ろした爪でそのまま切り付けてくる。

 

 が、しかしその瞬間また動きがゆっくりになる。

 

 …いやいや、なに?遊んでるの?いたぶってから殺すつもりなのか?そう考えると急にイライラしてきた。

 

 このやろう、いきなりこんな化け物のいる部屋に放り込まれ挙句の果てにはいたぶってから殺されるだと?ふざけるな、俺はお前らの玩具じゃない。

 

 よし、いいだろう、お前がその気ならこっちだって考えがある。この少女の体じゃあダメージを与えるどころか逆にこっちが傷を負いそうだがそんなの関係ない。このカエル野郎に一矢報いてやろうじゃないか。

 

 そうと決まれば後はやるだけ。カエル野郎の攻撃をギリギリで後ろに大きく回避する。そしてまた相手が加速する前に一気に近づいて、全力でぶん殴る!これカエル野郎が怒り、本気になって殺されるとしても何もせず死ぬよりはましだろう。

 

 しかし、一つ予想外のことが起きた。俺が、カエル野郎を殴りつけた瞬間

 

 ドパァン

 

 と音をたてて奴の頭?が消し飛んだ。

 

 

 

 

 ………え?嘘やん?

 

 

 

 

 その後無事に元の部屋に戻してもらえました。タカハシは部屋に入ってくると嬉しそうにこちらを褒めてくる。これはあれか?いきなりカエル野郎の部屋にぶち込まれたのは処分ではなく実験だったのか?とういうか今冷静になって考えてみるとあのカエル野郎多分ハンターだよね。説明もなしにいきなりアンブレラのB.O.W.の中でも上位といえるハンターと戦わせるとかこいつらやっぱ頭おかしい。やるならせめてゾンビにしてくれ。

 

 そして何より気になるのは先ほどハンターと戦った時のこと。なぜいきなりハンターの攻撃がスローだったのか。そしてあの自分のパンチの破壊力は一体…。

 

 そんな疑問を持ちながらいろんなことを教えられたり、ハンターと戦わせられる(一回勝つごとに一体増えてきてやがる)日々を過ごしているとこの体について分かったことがある。

 

 まず、おそらくこの体はとあるウイルスに感染してる。そしてその影響なのかめちゃくちゃ強い。ハンターの攻撃がゆっくりにみえたのは動体視力が強化されてるからなのだろう。たしか三回目あたりで試しにこちらからハンターに攻撃を仕掛けたらハンターは反応することができず吹き飛んでいった。その時はハンターがあと二匹いたのでこちらに襲い掛かってきたがその攻撃もスローにしか見えず、余裕をもって躱し、カウンターでパンチをぶち込んでやった。

 

 しかし少し妙なことがある。実は前回ハンター部屋に放り込まれたとき、後ろから襲ってくるハンターに気づかず左腕を切り飛ばされてしまったのだ。すぐさま襲い掛かってきたやつを殴り残ってた一匹を蹴り殺したものの、左腕がなくなったのですごい動揺した。なぜか痛みはほとんどないのにとても熱を持つ切断口。やべぇ片腕になるとか今度こそ処分される、と考えているとなんと左腕が再生してきたのだ。まるで肉が盛り上がるみたいに膨れるとそのまま形成されていく左腕。正直きもかった。なんとか隻腕にならずに済んだが、もし本当に俺に感染しているものが予想しているウイルスならこのような特性あっただろうか。似ているもので考え付くものは不死身となったリサ・トレヴァーなのだが…そうすると俺が予想しているウイルスと違うしなぁ。まさか俺の知らないウイルスが投与されたとか?それが一番あり得そうだなぁ…。

 

 あと絶食させられた件は絶対許さん

 

 そんなことを考えているとき、運命の日は訪れる。

 

 突然部屋の電気が落ちた。と思ったら赤いランプが点灯し、無機質な放送が流れる。

 

『研究所内でバイオハザードが発生しました。職員は直ちに避難してください』

 

 脱走の時である。

 

 部屋の外に出てみる。扉は開かなかったのでぶん殴って破壊した。まわりは赤いランプが点滅してるだけで誰もいない。

 

 あちこちから職員たちの悲鳴が聞こえるが、好都合である。この混乱に乗じて逃げさせてもらおう。

 

 少し進むと地図があった。どうやらここは実験生物の管理区域らしい。ありがとうタカハシ、君の教えてくれたこと(英語)はいま役立ってるよ。

 

 地図を見る限り出口は一つ、エレベーターしかないらしい。しかしそんなところに行けば脱走がばれるのは確実。どうしたものか…

 

「見つけたぞ、GT-001」

 

 急いで声のほうに振り向くとそこにはいつも実験の時偉そうにしていた研究員の男がいた。

 

「まさか脱走するとはな。小賢しい知恵をつけたものだ」

 

「…そういうあなたはいつもこちらを鏡越しにみてた人ではないですか。まるで変態ですね」

 

「思いあがるなよ怪物。誰に口をきいている。貴様を作ってやったのは誰か忘れたか?」

 

「少なくともあなたではないことは確実です」

 

「ち、だからさっさとこいつに命令プログラムを植え付けろと…まあいい。おふざけはここまでだ。命令だGT-001、俺を出口まで守れ」

 

「いやだと言ったら?」

 

「そうしたらこれを押すまでだ」

 

 そういって奴がこちらに見せてきたのはなにかのスイッチのようなもの。

 

「お前の中には爆弾が仕込んである。もしお前が逆らうならこのスイッチを押す。これでわかったか?わかったならさっさ俺を出口に…」

 

「ああ、それですか。でしたら、ほら」

 

 そういって俺はこいつにあるものを見せつける。それは

 

「ばかな…なぜだ…いつ、いつどうやって!それをとりだしたぁ!」

 

 体内に埋め込まれたという小型の爆弾である。

 

 

 

 

 

 実は体内に爆弾があることなんて割と最初のほうに気づいていた。だってアンブレラが実験中のB.O.W.になんの安全策も施してないって考えられないし、それに明らかに体の中に何か異物がある感覚はしてたのだ。まあその時はどうしようもなかったので放置していたが。

 

 そしてここでキーとなるのが俺が感染していると考えるウイルス、Gウイルスである。なぜそう思うのか。理由は簡単左腕が再生した少し後、一度左腕に大きな目玉が浮き出たのである。もちろんびっくりしたとも、いきなりG生物にしかみえないものが左腕にいきなり浮かび上がったから。

 

 そしてこのときいいことを思いついた。体内にある爆弾G細胞と一緒に排出すればいいじゃんと。

 

 たしかG幼生体はG生体が吐き出していたはず。ならGウイルスに感染している俺もできるはず!いま考えるととんでも理論である。

 

 

 

 いけました。

 

 完全に見た目少女がしていい絵面じゃなかったけど成功したからよし!幼生体として分離させたところも再生したみたいだし、あとはこいつをばれないよう背中に張り付けて完了!

 

 その後慌てた様子のタカハシが入ってきてさっき起きたことを聞かれたりしたが、さっきの奴は体内に戻っていった、自分でもよくわからないというと渋々戻っていった。その後はうまくごまかしてなんとかなった次第である。

 

 

 

 

 とまあこんな経緯もあり、体内の爆弾なんてとっくのとうに摘出済みである。

 

「残念ながら爆弾なんてとっくに気づいていたので取り出させてもらいましたよ」

 

 そういいつつ研究員の男に対し爆弾を投げつける。

 

「うおぉぉ!?」

 

 あわてて相手がキャッチしているのに対し、気にせず背中を向けさっさと出口に向かう

 

「ま、まて!」

 

「待ちませんよ。さっさとここから出たいので」

 

 そういって歩き続けるが突然背中に衝撃。そして鳴り響く大きな音。銃声である。一回立ち止まり振り向く。

 

「…申し訳ないですが効きませんよ。そんなことあなたも知っていますよね?」

 

 実験と称して銃で撃たれるなんてすでに経験済みである。そしてそれが大して効かず、痛いというわけではないこともわかっている。

 

「おまえが!おまえがいなければこんなところには!」

 

 しかし聞こえているのかいないのか、かまわず撃ってくる。

 

「八つ当たりかよ…」

 

 しかし12発ほど撃たれたところで銃声がやんだ。

 

「やっと弾切れですか」

 

 カチン、カチンともう装填されていないのにまだ撃とうとする男に背を向けまた歩き出す。

 

「ま、まだだ!まだおわって「ああそうそう」!?」

 

 その哀れな男(・・・・)に対し、一つだけ教えてやる。

 

「後ろに一杯お客さんがいますよ?」

 

 そして男がゆっくりと振り向くと

 

『あ”ぁ”ー…あ”-』

 

 といいすぐそこまで迫るゾンビの大群

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 今はバイオハザード中である。そんな中大きな銃声を十回以上も立てればゾンビも集まってくるだろう。

 

「た、たすけて!たすけてくれ!たのむ!」

 

 そんなことを言われるが

 

「いやです」

 

 そういうと俺はその廊下を歩き去る。後ろから聞こえる男の悲鳴がいやに耳に残った。

 

 

 出口を目指すと途中である部屋に寄る。

 

「お、あったあった」

 

 立ち寄った部屋はハンターとよく擬似バトルロワイヤルさせられた部屋。何故ここによったのかというと―――

 

「こいつあると便利だからな。遠慮なく貰っていこう」

 

 俺専用に支給された黒いコートである。こいつはどうやら量産型タイラントが身にまとってる拘束具兼防弾対爆服と同じものらしく、形こそ少女の俺用に合わせてあるものの、元の服とほぼ変わらぬ性能を誇るのだ。

 

「…なんか痴女みたいだけど、いっか」

 

 ただし見た目はチラリと見える患者服の上にコートを着た裸足の女の子である。

 

 

 

 

 

用事は全て済ませたので出口へ向かう。しかし、途中で声をかけられた。

 

「アリ…シア?」

 

そこには時折赤いランプに照らされ、血に濡れた白衣を着たタカハシがいた。

 

「アリシア…そう…外に出られたのね…」

 

「…ええ、あの扉もっと強固にしておいたほうがいいですよ」

 

 

 

 

 

アリシア。それはタカハシがいつもの英語を教えてくれているときにつけてくれた名前。

 

『あなたはもしかしたら将来は人のように生活できるかもしれないでしょ?そのときGT-001っていうのが名前だと変なのよ。だから名前今のうちにつけちゃいましょ!』

 

『んー、そうね。……アリシア。そう、アリシアなんてどう?』

 

『気に入ってくれた?よかった!じゃあ、今日から二人だけの時はアリシアね!』

 

 

 

 

 

「どうしたんですか、タカハシ。なぜ、そんなことに」

 

「はは、逃げようとしたら、ドジしちゃった」

 

そう答えるタカハシは防火シャッターに左足を挟まれていた。

 

「やっぱり日ごろの行いかなー、まさかこんなことになるとはねー」

 

タカハシは笑って答える。痛くて、いつゾンビどもが来るかわからなくて、恐ろしいはずなのに。

 

「冗談なんか言ってる場合ですか、少し痛いかもしれませんが我慢してください」

 

タカハシの足を挟んでいたシャッターを無理やりどけるが、左足は完全につぶされてしまっていた。

 

「…私を、助けてくれるの?…ありがと、アリシア」

 

「お礼をいうには早いですよ、早く出口を探しましょう」

 

そういってタカハシを背負い出口へ進む。

 

幸い左足の出血はそこまでひどくなさそうなので出血多量ですぐに死んでしまうことはなさそうだ。

 

近くの実験室に入り部屋をあさる。

 

ない

 

「…本当に、ありがとアリシア」

 

うるさい。まだ早いって言ったばかりだろう。

 

医務室があったので部屋をひっくり返す勢いであさる。

 

ない 

 

「あんなにいっぱい酷いことしちゃったのに、助けてくれるなんて、あなたは本当に優しい娘」

 

タカハシはただ、いろんなことを教えてくれただけだろう。

 

手あたり次第に部屋をあさる。

 

ない

 

「だから、もういいわ」

 

ない

 

ない

 

ない

 

「わかってたの。ここに集められたのは有能なんかじゃない。消されてもアンブレラには気づかれない人間が、集められたって」

 

うそだ

 

「だからね」

 

いやだ

 

「ここには」

 

やめてくれ

 

「ないのよ、ウイルス治療薬は」

 

 

 

 

タカハシをおんぶしたまま地上へのエレベーターに乗る。

 

「あのね、あなたをみてると娘みたいなの」

 

「…こんな、怪物が?」

 

「ううん、あなたは怪物なんかじゃない。だって、あんなにいっぱい笑って、戦うのを嫌がって、ひどいことした私を助けて、悲しんでくれるあなたが、アリシアが怪物なわけないじゃない。もし、私に娘がいたら、あなたみたいにいっぱい笑って泣いて怒って悲しんで、でも最後はやっぱり笑ってくれる、そんな娘がほしかったの」

 

「…私には似合いませんよ」

 

「あら、あなた好きなこと聞くときとっても楽しそうに聞いてるのよ」

 

「それは…気づきませんでした」

 

「だからね、アリシア」

 

エレベーターの扉が開いた。地上についたらしい。

 

「あなたは笑ってたほうが素敵よ?そんなぐちゃぐちゃだと綺麗な顔が台無しなんだから」

 

怪物は、泣けるらしい。

 

エレベーターから降りてコンビニに偽装された入口から外に出る。こっちの世界で初めて見る外は、地平線に夕焼けがひろがっていた。

 

「アリシア、あなたはこれからしばらくひとりで生きていかないとなの」

 

「いやです!タカハシも一緒に…」

 

「駄目よ、あなたもわかるでしょ。わたしはここまで。だからね、あなたに、最後のプレゼント」

 

そういうとタカハシは俺に小さな鞄を渡してきた。

 

「その中には私のパスポートとか、お金とか、人として生きていくのに必要なものが入っているわ。使い方は前にお話したから分かるわよね?」

 

「…はい」

 

「うん、いい子!」

 

そういってタカハシは朗らかにわらう。

 

「なんで…なんでそんな平気そうなんですか。もう…死んじゃうかもしれないのに」

 

「…あのね、アリシア。もし、もしよかったらなんだけど、あなたもタカハシって、名乗らない?」

 

「それって…」

 

「アリシアだけだと名字がなくて変でしょ?だからもしよかったら…」

 

「わかり…ました。タカハシ。いえ…サラ(・・)

 

「よかった!うれしいわアリシア!」

 

話しているうちに日は沈んでいく。

 

「ああ、安心したら眠くなってきちゃった」

 

「だ、ダメですタカハ…サラ!まだぜんぜん…!」

 

「アリシア、もういいの。もう終わりよ。ありがとう、アリシア。あなたのおかげであそこで一人寂しく死んでいかなくてすんだわ。だからね、アリシア。さよならよ」

 

そういってサラは微笑む。

 

「大丈夫、あなたなら一人でも大丈夫よ…」

 

「…わかりました、サラ。ですがさよならではありません。おやすみなさいです。また、会いましょう」

 

「あら…ええ…そうね…アリシア…おやすみ…な…さ…」

 

・・・・・・・・・・

 

 

 

ぐしゃり

 

 

 

怪物が初めて殺した人は、親のような人だった

 

 

 

 

 

その夜は、まるで誰かの心を表すような土砂降りの雨だったという

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




補足メモ:主人公はレオン大好き。
バイオre:2の存在を知らない


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出会い

感想、評価、誤字報告ありがとうございます。いつの間にか日刊1位に載っていました。皆様のおかげです。期待に応えられるよう頑張っていきます。




 雨の降る道を一人歩く。

 

 ライトも何も持っていない暗い夜道だが、強化された視力のおかげか問題なく前方は見える。先ほどラクーンシティの看板が見えたので道はあっているはずだ。

 

 雨の降る道を一人歩く。

 

 先は見えないがただ進む。示すものはないがきっと道は合っていると信じて。

 

 あのコンビニからどれほど歩いただろうか。それなりに進んだはずだが。

 

 あの事からどれほど進めただろうか。ずっと止まっていた気がする。

 

 怪物は一人歩く。その先に何かあるはずという思いを胸に、もらったものを大事に抱えて。

 

 

 

 

 

 すると、突然後ろから光がせまってきた。エンジン音がするので車だろうか。少し脇にそれる。しかし、通り過ぎると思っていた車は自分の横に止まる。

 

 どうやら警察らしい。

 

「おい、どうしたんだ。子供がこんな夜中に傘もささず歩いてるなんて。しかも裸足じゃないか!」

 

 中から警官に声をかけられる。

 

「…いえ、実はラクーンシティを目指していたんですが少々事故にあってしまって。それで歩いていました」

 

 あらかじめ用意していた嘘がすらすらと出てくる。

 

「事故?それはかわいそうに…ほら、乗りな!ラクーンシティはここから数十キロは先だぞ。乗せてってやる」

 

「…そうですか、ではお言葉に甘えて」

 

 そういって車に乗せてもらう。後部座席に乗り込むと車が発進する。

 

「災難だったな、事故にあうなんて。親御さんは?」

 

「親は…その、最近亡くなりまして。ラクーンシティの親戚を尋ねに行こうと」

 

「ああ…そいつは悪いことを聞いたな。すまん。俺はデイビット。お嬢ちゃんは?」

 

「私は………わたしは、アリシア。アリシア・タカハシです」

 

「アリシアか。よろしくな。しかしタカハシか。親は日本人か?」

 

「ええ…そうです。…詳しいんですね?」

 

「いやぁ、あの大企業アンブレラのお膝下だからな。日本人もいっぱいくるから少しならわかるぜ!といっても俺はラクーンシティに住んでるわけじゃないんだがな」

 

 アンブレラ。その名前に反応しそうになる。

 

「しかしお嬢ちゃん、綺麗な金髪に()()だな。日本人はたしか黒髪黒目だろ?もう片っぽの親の血が強く出たんだな」

 

 青眼。そう、いまの俺は赤目ではない。サラからもらったバッグに入っていたカラーコンタクトをつかった。…まったく、人として生きるのに充分なものが入っているといってたが、用意が良すぎだろ…サラ。

 

「お、ガソリンスタンドがある。幸い店も開いてるらしい。お嬢ちゃん、ずっと歩いてたんじゃ腹減ったろ?今なんか買ってきてやろう。少し待っててくれ」

 

「いえ、そんな…悪いですよ」

 

「気にすんな気にすんな!困っている人を助けるのはお巡りさんの役目だからな!」

 

 そういうとデイビットは車をおり、鍵を閉めると店の中に入っていった。

 

「…いい人、ですね」

 

 そう、いい人である。…サラのように。

 

「!いけないいけない…それより、いまどこらへんなんだろう…ここはまだラクーンシティに入ってないみたいだし…というかよくよく考えるとこの車にR.P.Dって書いてなかったから別の町の管轄くらい遠かったんだよね…それにラクーンシティに行くって言ってもなにも言われなかったし、まだ町の封鎖が起きてないのかな…となるとまだ時系列的には3くらい?日付聞いとけばよかった…」

 

 だがそんなことを言っていると、急に慌てた様子の警官が戻ってきた。

 

「本部!本部!応答願う!こちら…くそっ!繋がらない!こんな時に!」

 

 どうやら何か起きたらしい。

 

「お嬢ちゃん、事件発生だ。いまから俺は店のなかで犯罪者を相手する。だが万が一もあり得る。扉を開けておくから、もし俺以外のやつが来たらすぐ逃げるんだ。いいな?」

 

 そういうと警官はまた店の中へ戻っていった。

 

「事件…ガソリンスタンド…いや、違う。あれはラクーンシティの中で起きてたはず。こことは別物、か…」

 

 そうして車の中で横になる。正直犯罪者といっても()()()()。重火器でも持ってれば別だがそんなもの持ってる犯罪者はこんな辺鄙な場所のガソリンスタンドにはいないだろう。

 

「ああ…どうせバイオの世界ならレオンにあってみたいなぁ…」

 

 そんなことを口にしながら眠りにつく。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 なにやら外が騒々しい。なんか人がいっぱい集まってきたような…。

 

 そして車に振動。急に動き出す車。当然驚く俺。

 

「!?!?!?」

 

 まさか犯罪者がのっとってきた!?パトカージャックとか凄いな!?

 

 とか考えつつ、恐る恐る運転席をのぞき込むと

 

「うそん…」

 

 夢にまで願ったレオン、そして赤い服が特徴のクレアがいた。

 

 

 

 

 出る機会を逃し、寝転がったまま前の二人を観察する。

 

(なんで!?なんでここにレオンとクレアが!?え、だってあそこラクーンシティじゃないよね!?この二人のイベントラクーンシティのガソスタだよね!?)

 

 なかなかに脳内がパニックになっているが

 

(え、てかリアルのレオン超イケメン!なんで彼女に振られたの!)

 

 とても残念な奴である。

 

(ま、まて。もしかしたらここはオペレーションラクーンシティかもしれない。あれならワンチャンある。あれ、でも待てよ。後部座席に俺がいるってことはゾンビが後部座席からドーンイベはなくなってる…つまりダークサイドクロニクルズ?あれなら二人一緒に行動してたし…)

 

 そんなことを考えていると

 

「で、後ろのお嬢ちゃんはどちら様だ?」

 

「えっ!?いつの間にいたの?」

 

(ぴっ!)

 

 どうやらレオンにはバレていたらしい。寝転がっていた体勢からゆっくりと起き上がる。

 

「は、はじめまして…」

 

「ずっとこの車に乗っていたのか?さては家出か?」

 

 どうも捕まった非行少女と思われているらしい。

 

「い、いえ。実はとある事情でラクーンシティの親戚の家に行こうとしてたんですが事故にあってしまいまして、道を歩いてたら警官のデイビットさん…先ほどのスタンドのお店の中に入っていった警官さんに乗せてもらえました」

 

「そうか…そいつは災難だったな。俺はレオン。レオン・ケネディ、警官だ。といっても、ずっと待機命令が出ていて今日赴任してきたばかりの新米だがな」

 

(知ってます!超知ってます!昨日彼女に振られてヤケ酒したせいでこの時間にいることも知ってます!だがそれを待機命令ってごまかすレオンもイイ!)

 

「私はクレア。クレア・レッドフィールド。兄を探しにラクーンシティを目指していたの」

 

(おお!生クレア美人!超美人!いい体してまs「ところで君の名前は?」…はっ!)

 

 危険な思考に陥りかけていたら名前を聞かれた。

 

「おr…いえ、私はアリシア。アリシア・タカハシです。よろしくお願いします」

 

「アリシアか。よろしくな」

 

(レオンに名前呼ばれた!)

 

 重症である。手の施しようがない。

 

「と、所でデイビットさん…中にいた警官さんは?」

 

「彼は…亡くなった。殉職だ。」

 

「そうですか…」

 

 いい人は死んでしまう…サラのように。

 

「…ねぇ、アリシア。あなたスタンドにいたときの外にいた連中は知ってる?」

 

「…外にいた連中?」

 

 あの時は寝ていたせいでわからないが、一つ思い当たるものはあった。クレアの言い方から察するに、ゾンビどものことだろう。

 

「いえ…すいません。実はスタンドについてからさっきまで寝ていたもので」

 

「そう…、知らないならいいの。ごめんね、変なこと聞いちゃって」

 

「なあ、アリシア。君はラクーンシティで何か変なことが起こっているとか聞いてたりしないか?なにか、事件が多いとか」

 

 レオンにそう聞かれる。ここでしらないと答えるのは簡単だ。しかし、俺には原作知識と言うものがある!

 

「そうですね…そういえば何やら妙な噂が…」

 

「妙な噂?」

 

「はい。なんでも死んだ人が蘇り、生きている人を食べてしまうんだとか。でも、都市伝説みたいなものらしいですけど」

 

「死人が蘇る…」

 

「人を襲う…」

 

 なにやら二人が考えているが、やはり先ほどゾンビどもに襲われたのだろう。ゾンビどもはさっき言った事とあてはまるからな。

 

 するといつの間にかラクーン市街に入っていたらしく、なにやら放送が聞こえる。

 

『市民の皆さん、大規模な暴動が……』

 

 やはり、すでにラクーンシティはバイオハザードが発生しているらしい。

 

 車が止まる。どうやら道が封鎖されているようだ。

 

「ここから先は歩きだな。アリシア、大丈夫か?」

 

「走るの間違いじゃなくて?」

 

 窓の外を覗いていたクレアがそれに答える。

 

 だが、俺にはその会話はまったく耳に入っていなかった。

 

 なぜなら、後方から嫌な音が聞こえてきていたから。

 

(たしか、どのシリーズを通してもパトカーでラクーンシティについた後は…)

 

 ギギギ、と壊れかけのおもちゃのように後ろを向く。

 

「くそ!開かない!アリシア!こっちにくるん……おいおい、嘘だろ」

 

 ゾンビの群れからアリシアを抱えて逃げようとしたレオンが呟く。

 

 暴走したタンクローリーがこちらに向かってきていた。

 

「何とかして外に出ろ!」

 

「開かない!」

 

 ドアに体当たりする二人だが周りをゾンビに囲まれてしまいドアは開かない。

 

(どうする、どうする!?このままだとみんなペちゃんこに…いや二人は助かりそうだけど。…でもやっぱさすがに俺もアレの突進は無理!)

 

 そしてもう間に合わないと感じたのか

 

「何かにつかまれ!」

 

 レオンはそういうと、アリシアを無理やり自分のほうに抱き寄せる。

 

 だが肝心のアリシア(ぽんこつ)

 

(キュー…)

 

 憧れの人に抱きしめられたことによるキャパオーバーでフリーズしていた。

 

 そうして少し横にそれたタンクローリーが車にぶつかる。大きな衝撃が来るがレオンはアリシアのためにハンドルと座席を使いつっかえ棒のようになる。

 

 そのまま衝撃で押し出されたことにより、車が前に大きく進む。そうして周りにゾンビがいなくなったことで何とか外に出ることができた。レオンはアリシアを抱っこし、ふらふらと歩く。クレアの姿は見えない。反対側だろうか。

 

 しかし、ここで最悪なものが目に入る。

 

「おいおい、冗談きついぜ」

 

 車からガソリンが漏れていた。咄嗟に反転し逃げようとするがここでガソリンに火花が引火し大爆発が起きた。衝撃で吹き飛ばされ車に背中から叩きつけられるが、何とかアリシアには傷を負わせることなく守り切った。

 

「レ、レオン!なんで私なんかを…」

 

 そしてやっとフリーズから復帰するアリシア。

 

「なに、気にするな。問題ない」

 

 そういうと、少し痛めたのか脇腹を押さえつつ立ち上がるレオン。

 

「あんな勢いで叩き付けられたのに問題ない訳ないでしょう。ごめんなさいレオン、私がもっとしっかりしていれば…」

 

 後悔先に立たず

 

 アリシアは憧れの人に怪我をさせてしまい、へこんでいた。

 

「なに、問題ないって言っただろ。俺は大丈夫だ。安心しろ」

 

 そういってアリシアの頭をなでるレオン。流石イケメン

 

 そして

 

「おーい!クレア!無事か!おーい!」

 

「レオン!私は無事よ!アリシアは平気ー!?」

 

「ああ!二人そろって無事だ!」

 

 クレアが無事だということも確認できた。

 

 だが少しまずいことにゾンビどもが集まりだしてきた。

 

「レオン、周りに…」

 

「ああ、わかってる…。クレア!ここは危険だ!警察署で落ち合おう!」

 

「わかったわ!二人とも警察署で落ち合いましょ!」

 

 そういうと、クレアは去っていったようだ。

 

「よし、俺たちも警察署に向かおう。アリシア、絶対はぐれるんじゃないぞ」

 

 そういって俺の手を強く握るレオン。

 

「ええ、しっかりついていくわ」

 

 そうして二人は警察署へと走り出す。

 

(サラ、見ていてくれ。必ず研究を残らず処分して、君の望んでくれた普通の生活を手に入れる)

 

 

 

 

 

 

 物語は動き出した。本来いない異物が混ざりつつも、ラクーンシティ(地獄)は生存者たちを迎え入れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




補足メモ:後半で作者のギャグ衝動が抑えられなかった。
     レオンは変わった子供だなと思っている


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没版 出会い(アリシアシリアスモード)

一応見たい人がいるので置いておきます。後この世界線ではダニエルはお休みです。この話は後で1番先頭か4話の後に場所を変えます。


 雨の降る道を一人歩く。

 

 ライトも何も持っていない暗い夜道だが、強化された視力のおかげか問題なく前方は見える。先ほどラクーンシティーの看板が見えたので道は合っているはずだ。

 

 雨の降る道を一人歩く。

 

 先は見えないがただ進む。示すものはないがきっと道は合っていると信じて。

 

 あのコンビニからどれほど歩いただろうか。それなりに進んだはずだが。

 

 あの事からどれほど進めただろうか。ずっと止まっていた気がする。

 

 怪物は一人歩く。その先に何かあるはずという思いを胸に、もらったものを大事に抱えて。

 

 

 

 

 

 すると、突然後ろから光がせまってきた。エンジン音がするので車だろうか。少し脇にそれる。しかし、通り過ぎると思っていた車は自分の横に止まる。

 

 どうやら警察らしい。

 

「おい、どうしたんだ。子供がこんな夜中に傘もささず歩いてるなんて。しかも裸足じゃないか!」

 

 中から警官に声をかけられる。

 

「…いえ、実はラクーンシティーを目指していたんですが少々事故にあってしまって。それで歩いていました」

 

 あらかじめ用意していた嘘がすらすらと出てくる。

 

「事故?それはかわいそうに…ほら、乗りな!ラクーンシティーはここから数十キロは先だぞ。乗せてってやる」

 

「…そうですか、ではお言葉に甘えて」

 

 そう言って車に乗せてもらう。後部座席に乗り込むと車が発進する。

 

「災難だったな、事故にあうなんて。親御さんは?」

 

「親は…その、最近亡くなりまして。ラクーンシティーの親戚を訪ねに行こうと」

 

「ああ…そいつは悪いことを聞いたな。すまん。俺はデイビット。お嬢ちゃんは?」

 

「私は………わたしは、アリシア。アリシア・タカハシです」

 

「アリシアか。よろしくな。しかしタカハシか。親は日本人か?」

 

「ええ…そうです。…詳しいんですね?」

 

「いやぁ、あの大企業アンブレラのお膝下だからな。日本人もいっぱいくるから少しならわかるぜ!といっても俺はラクーンシティーに住んでるわけじゃないんだがな」

 

 アンブレラ。その名前に反応しそうになる。

 

「しかしお嬢ちゃん、綺麗な金髪に青眼(・・)だな。日本人はたしか黒髪黒目だろ?もう片っぽの親の血が強く出たんだな」

 

 青眼。そう、いまの俺は赤目ではない。サラからもらったバッグに入っていたカラーコンタクトをつかった。…まったく、人として生きるのに充分なものが入っていると言ってたが、用意が良すぎだろ…サラ。

 

「お、ガソリンスタンドがある。幸い店も開いてるらしい。お嬢ちゃん、ずっと歩いてたんじゃ腹減ったろ?今なんか買ってきてやろう。少し待っててくれ」

 

「いえ、そんな…悪いですよ」

 

「気にすんな気にすんな!困っている人を助けるのはお巡りさんの役目だからな!」

 

 そう言うとデイビットは車をおり、鍵を閉めると店の中に入っていった。

 

「…いい人、ですね」

 

 そう、いい人である。…サラのように。

 

「いけない…それより、いまどこらへんなんだろう…ここはまだラクーンシティーに入ってないみたいだし…というかよくよく考えるとこの車にR.P.Dって書いてなかったから別の町の管轄くらい遠かったんだよね…それにラクーンシティーに行くって言ってもなにも言われなかったし、まだ町の封鎖が起きてないのかな…となるとまだ時系列的には3くらい?日付聞いとけばよかった…」

 

 だがそんなことを言っていると、急に慌てた様子の警官が戻ってきた。

 

「本部!本部!応答願う!こちら…くそっ!繋がらない!こんな時に!」

 

 どうやら何か起きたらしい。

 

「お嬢ちゃん、事件発生だ。いまから俺は店の中で犯罪者を相手する。だが万が一もあり得る。扉を開けておくから、もし俺以外のやつが来たらすぐ逃げるんだ。いいな?」

 

 そう言うと警官はまた店の中へ戻っていった。

 

「事件…ガソリンスタンド…いや、違う。あれはラクーンシティーの中で起きてたはず。こことは別物、か…」

 

 そうして車の中で横になる。正直犯罪者といっても()()()()。重火器でも持ってれば別だがそんなもの持ってる犯罪者はこんな辺鄙な場所のガソリンスタンドにはいないだろう。

 

 -シリアスフィルターON-

 

「サラ…どうしていなくなってしまったの…」

 

 そんなことを口にしながら眠りにつく。

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 なにやら外が騒々しい。なんか人がいっぱい集まってきたような…。

 

 そして車に振動。急に動き出す車。当然驚く俺。

 

「!?」

 

 まさか犯罪者がのっとってきた?だけどそれにしては様子がおかしいぞ?

 

 と考えつつ、恐る恐る運転席をのぞき込むと

 

「なんでいるの…」

 

 レオン、そして赤い服が特徴のクレアがいた。

 

 後ろの席に隠れたまま考える。

 

(不味い。どうする、なぜここにレオンとクレアが…この二人が出会うのはラクーンシティーのはず、遭遇するはずがない)

 

 アリシアは考える、なぜここにレオン達がいるのか。そしてもう一つ、()()()()()()()()()()()()

 

(この車はデイビットが乗ってきたのにデイビットは帰ってこなかった…恐らくもう…。俺が関わると皆死んでしまう。レオンたちが死ぬなんて許せない。それは駄目だ。それにレオン達といたら最悪エンディングの後合衆国に捕まる。そうなったらサラとの約束を守れない。なんとかして逃げ出さないと)

 

 しかし、神というものは逃がしてくれるつもりはないらしい。

 

「それで、後ろのお嬢ちゃんは一体誰なんだ?」

 

「えっ、いつの間に?」

 

 レオンには見つかっていたようだ。

 

(くそっ…何とかしてごまかさないと)

 

「はじめまして…」

 

「ずっとこの車に乗っていたのか?さては家出か?」

 

 どうやら捕まった非行少女と思われているようだ。だが好都合である。

 

「いえ。実はとある事情でラクーンシティーの親戚の家に行こうとしてたんですが事故にあってしまいまして、道を歩いてたら警官のデイビットさん…先ほどのスタンドのお店の中に入っていった警官さんに乗せてもらえました」

 

「そうか…そいつは災難だったな。俺はレオン。レオン・ケネディ、警官だ。といっても、ずっと待機命令が出ていて今日赴任してきたばかりの新米だがな」

 

(ああ…知ってるとも…。将来女性に振り回されるつづけることも。だが今は勘弁してくれ)

 

「私はクレア。クレア・レッドフィールド。兄を探しにラクーンシティーを目指していたの」

 

(クレア…彼女は問題ないがクリスが不味い。最悪俺を殺そうと追われ続ける羽目になる)

 

 アリシアは冷静に二人を分析する。

 

「ところで君の名前は?」

 

「私はアリシア。アリシア・タカハシです。よろしくお願いします」

 

「アリシアか。よろしくな」

 

(ああ…できれば短い間でよろしく)

 

「…ねぇ、アリシア。あなたスタンドにいたときの外にいた連中は知ってる?」

 

「…外にいた連中?」

 

 あの時は寝ていたせいでわからないが、一つ思い当たるものはあった。クレアの言い方から察するに、ゾンビどものことだろう。

 

「いえ…すいません。実はスタンドについてからさっきまで寝ていたもので」

 

「そう…、知らないならいいの。ごめんね、変なこと聞いちゃって」

 

「なあ、アリシア。君はラクーンシティーで何か変なことが起こっているとか聞いてたりしないか?なにか、事件が多いとか」

 

 恐らく先ほど出会ったゾンビどもについて聞きたいのだろう。まあ少しの情報提供くらいはいいだろう。

 

「そうですね…そういえば何やら妙な噂が…」

 

「妙な噂?」

 

「はい。なんでも死んだ人が蘇り、生きている人を食べてしまうんだとか。でも、都市伝説みたいなものらしいですけど」

 

「死人が蘇る…」

 

「人を襲う…」

 

 これで先ほどのガソスタのことと繋げられるだろう。

 

 するといつの間にかラクーン市街に入っていたらしく、なにやら放送が聞こえる。

 

『市民の皆さん、大規模な暴動が……』

 

 やはり、すでにラクーンシティーはバイオハザードが発生しているらしい。

 

 車が止まる。どうやら道が封鎖されているようだ。

 

「ここから先は歩きだな。アリシア、大丈夫か?」

 

「走るの間違いじゃなくて?」

 

 窓の外を覗いていたクレアがそれに答える。

 

 チャンスだ。ここで逃げ出そう。二人はゾンビがいて扉が開かないらしい。よし、扉をぶち破って逃げよう。いまならばれたところで問題はない。

 

 しかし運命はとことんアリシアを逃がす気がないらしい。

 

 アリシアが逃げようとしたとき、後ろからタンクローリーが迫ってきたのだ。

 

(くそ!このタイミングかよ!)

 

 流石にここで変に逃げると最悪爆発に巻き込まれる、どうしたものか。

 

「何とかして外に出ろ!」

 

「開かない!」

 

 ドアに体当たりする二人だが周りをゾンビに囲まれてしまいドアは開かない。

 

 そしてもう間に合わないと感じたのか

 

「何かにつかまれ!」

 

 レオンはそう言うと、アリシアを無理やり自分のほうに抱き寄せる。

 

 アリシアは内心動揺する。このまま捕まっていたら不味い。本当に逃げられなくなると。

 

 だがそのまま少し横にそれたタンクローリーが車にぶつかる。大きな衝撃が来るがレオンはアリシアのためにハンドルと座席を使いつっかえ棒のようになる。

 

 そのまま衝撃で押し出されたことにより、車が前に大きく進む。そうして周りにゾンビがいなくなったことで何とか外に出ることができた。レオンはアリシアを抱き上げ、ふらふらと歩く。クレアの姿は見えない。反対側だろうか。

 

 しかし、ここで最悪なものが目に入る。

 

「おいおい、冗談きついぜ」

 

 車からガソリンが漏れていた。咄嗟に反転し逃げようとするがここでガソリンに火花が引火し大爆発が起きた。衝撃で吹き飛ばされ車に背中から叩きつけられるが、何とかアリシアには傷を負わせることなく守り切った。

 

「レオン!大丈夫!?」

 

 流石にアリシアもこれには不安になりレオンに声をかける。

 

「なに、気にするな。問題ない」

 

 そう言うと、少し痛めたのか脇腹を抑えつつ立ち上がるレオン。

 

「あんな勢いで叩き付けられたのに問題ない訳ないでしょう!」

 

 アリシアは思い出してしまった。サラの最期を。死んでいってしまった大切な人を。もしかしたらレオンも死んでしまうかもしれないという不安がアリシアを襲う。

 

 「なに、問題ないって言っただろ。俺は大丈夫だ。安心しろ」

 

 そう言ってアリシアの頭をなでるレオン。不思議と不快感はなかった。

 

 そして

 

「おーい!クレア!無事か!おーい!」

 

「レオン!私は無事よ!アリシアは平気ー!?」

 

「ああ!二人そろって無事だ!」

 

 クレアが無事だということも確認できた。

 

 だが少しまずいことにゾンビどもが集まりだしてきた。

 

「レオン、周りに…」

 

「ああ、わかってる…。クレア!ここは危険だ!警察署で落ち合おう!」

 

「わかったわ!二人とも警察署で落ち合いましょ!」

 

 そう言うと、クレアは去っていったようだ。

 

「よし、俺たちも警察署に向かおう。アリシア、絶対はぐれるんじゃないぞ」

 

 そう言って俺の手を強く握るレオン。

 

 だがここで大人しくついていくわけにはいかない。

 

「いえ、私は親戚の家を目指します。心配だから会いに行かないと」

 

 そうやって嘘を言うが

 

「アリシア、たしかに君の親戚が心配なのはわかる。だが周りは襲ってくる死者だらけだ。そんなところに君を一人では行かせられない。わかってくれ。警官としても、一人の大人としても、君を守りたいんだ」

 

 そう言ってアリシアの瞳を覗き込むレオン。

 

「分かってくれ」

 

「…ええ、わかりました」

 

 そう返すと苦い顔をして手を弱々しく握り返すアリシア。

 

 そうして二人は警察署へと走り出す。

 

(サラ、見ていてくれ。必ず研究を残らず処分して、一人でここを脱出して、君の望んでくれた普通の生活を手に入れる)

 

 物語は動き出した。本来いない異物が混ざりつつも、ラクーンシティーは生存者たちを迎え入れる。




補足メモ:アリシアはここでは1人での脱出を重きに置いている。

あくまで没案なので5話には続いていません。作者はこんな風な没案よく量産するので反応次第で投稿するかもしれません。4話が流石に不評だったって事情もありますが。


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到着 そして 遭遇

前回のギャグで割と反省したので少し抑え目です

あと挿絵を頂いたので2話に挿入しておきました。皆様是非ご覧ください。


 キィィ…と、甲高い音を鳴らす少し錆びている門を閉める。

 

「はぁ…なんとか警察署に着いたな。アリシア、平気か?」

 

「う、うん。なんとか」

 

 なるべく息が切れているように見せかけ答える。クレアと別れてから30分ほどだろうか。ここまで割と時間がかかった。

 

「よし、それじゃあ警察署に入る方法を探そう。そしたら1回休憩を取ろう。クレアを探すのはそのあとだな」

 

「うん。わかった」

 

「ああ、あと、アリシアの着替えに、靴も探さないとな」

 

 少し笑いながらそう言い、墓地を歩き出すレオン。

 

 恥ずかしい。流石にここに来る間に変な格好と思われてたようだ。

 

 歩き出した後ろについて行きながら考える

 

(ここは一体…レオンは警察署と言っていたが、俺の知る限り警察署に墓地なんてなかった…警察署の正門に着かなかったからここは裏編…?いや、それでもこんな場所は…)

 

 いくら考えようともわからない。だがそれでも考え、歩き続ける。今は道標があるから。必ず道は続いているから。

 

 先に進み階段を下ると、右手にドアがあった。

 

「小屋があるな…クソ、ダメだ。チェーンがしてある」

 

 どうやらドアは開けられないらしい。しかし、アリシアならばこの程度のチェーンならちぎれるだろう。だがちぎるということはしなかった。

 

(今だって少し変だって思われてると思うし、ここでそんなことをしたら、流石に何かあるとバレてしまう。それだけは、避けないと)

 

 すると、バラバラバラ、と大きな音がする。

 

(ヘリかな?)

 

 などと思っていると、どんどんと音は近づいてくる。そして

 

「なんだ!?まさか落ちたのか!?」

 

 どうやらヘリは墜落したらしい。そういえばそんなイベントもあったなと思い出すアリシア。

 

「急いで確認しに行こう」

 

「そうだね」

 

 急いで階段を上る。だが

 

「うっ…」

 

 階段を上った先でレオンが唸る。前を見ると死体がいくらか転がっていた。

 

「アリシア、あまり見るな」

 

 そう言って再びレオンは歩き出す。

 

 そう言われたアリシアだが死体をしげしげと眺めていた。

 

(…どう考えても、動き出すよね。こいつら)

 

 バイオプレイ者によくある思考回路。死体を見たらまず動き出すと言う考えであった。

 

「アリシア!早く来るんだ!」

 

 流石にレオンに怒られてしまった。

 

「ご、ごめんなさい!」

 

 急いでレオンについていく。

 

「いいかアリシア。あまりああいったものを見るな。本当は君のような小さい子が見ていいものでは無いんだ…」

 

 少し悲しそうな表情。レオンはきっとこの場にいる人たちを救えなかったのを残念に思い、子供が死体に囲まれてしまっている状況に、囲まれざるを得ない状況を悲しんでいるのだろう。

 

「うん…わかった…」

 

「わかったならいいんだ。ほら、そこに扉がある。中に入れるかもしれない」

 

 そう言って扉に手をかけるが扉は無情にも開かない。

 

「今度はカギがかかってるのか…」

 

 だがちょうど、アリシアがとあるものを見つける。

 

「ねぇ、レオンこれ見て。これでさっきの扉を開けられるかも」

 

 それはチェーンカッターであった。

 

「ああ、これであそこの扉のチェーンが切れるな。アリシア、よく見つけてくれた。ありがとう」

 

「たまたまだよ」

 

 レオンに褒められた。嬉しい。

 

 そしてちょうどタイミングよく扉の向こう、階段の上からクレアが現れる。

 

「おい!クレア!こっちだ!」

 

「クレア!こっちだよー!」

 

「レオン!アリシア!よかった、無事だったのね!今そっちに行くわ!」

 

 そうしてレオンとクレアが会話を始める。

 

(だけど、本当にここは一体…レオンとクレアがこうやって会話するなんて、絶対に知らない。ヘリが墜落した時も本来は少し上で待機していたら結果的に警官に落とされてしまったはず。あんな勢いよく突っ込んでくることは無かった。やっぱりここは俺の知らないバイオの世界…?)

 

 だがクレアとレオンの会話、アリシアの思考も直ぐに中断されることになる。ヘリが突然爆発を起こしたのだ。そして鳴り響く警報。その音に引かれ集まってくるゾンビ達。

 

「不味いな…クレア、続きはまた警察署の中で会ったらにしよう」

 

「…わかった。レオン、アリシア、無事でね」

 

「…ああ。そっちもな。アリシア、走るぞ!」

 

「うん。クレア、ケガしないでね!」

 

 そう言うと直ぐに走り出す。警察署の周りの柵にゾンビが集まってきており今にも壊れそうである。

 

 そして

 

(やっぱり、起きるよねー)

 

 起き上がる先程までの死体たち。

 

「なんてこった…アリシア!俺がヤツらの動きを止めるから走ってさっきの階段下に行くんだ!」

 

「わかった!」

 

 そしてレオンが狙いをつけ、進路上にいるゾンビの頭に2,3発程当てていく。

 

「アリシア!行け!」

 

「うん!」

 

 そしてゾンビどもをすり抜けつつ走る。なるべく子供くらいの速度で走ったので途中でこちらに手を伸ばしてくるヤツもいたが問題なく避ける。

 

 階段下の扉前につき、後ろを振り返る。どうやらレオンもヤツらを振り切り階段に着いたようだ。

 

「なんとかなったね」

 

「そうだな。アリシアもよく逃げ切った」

 

 そう言って互いに一旦落ち着きつつドアノブに巻かれていたチェーンを切断する。

 

「よし。…こいつはまた使うかもしれないし、取っておくか」

 

(あ、現実だとアイテム使うかの判断はやっぱり勘なんだ)

 

 小屋の中に入る。小屋の中は狭く、机とロッカー、そして

 

(おお、アイテムボックス。スゴい本物だ。やっぱり全部の場所と繋がってるのか?)

 

 バイオでは必須と言っても過言ではないアイテムボックスがあった。

 

「ここで少し休むか…ん?こいつは…」

 

 そしてレオンが見つけたものはハンドガン、ハンドガンの弾。そして制服であった。

 

「これは…M19に弾薬、破片手榴弾まで…。それに制服も…あー、悪いんだがアリシア。そのだな…」

 

「え?………ああ、そういうこと。いいよ、この中少し調べてるから」

 

「わるいな…しかし、こんな形で袖を通すことになるとはな…」

 

 そしてレオンは着替え始める。俺は気になったのですこしアイテムボックスの中をあさる。まあゲームだと最初は何も入ってはいないが、ここはゲームではない。もしかしたら何か入っているかもしれない。…単純に構造が気になったというのもあるが。

 

(あれ?これって…)

 

 そう言ってアリシアがアイテムボックスから見つけたもの。それは一丁のハンドガンだった。

 

(これは…もしかしてサムライエッジ?でもなんでこんなところに…)

 

 アリシアは知らないがそれは本来、予約特典またはダウンロードコンテンツなどでしか手に入らない銃、その名もサムライエッジ・アルバートモデルであった。

 

(でもなんでだろう…片手だと持ちきれないし、構えながらだとセーフティにだってギリギリ届くくらい…なのに、なんか妙にしっくりくる?)

 

 それはアリシアが彼のクローンだからか、それとも本当に偶然か。彼女の手にとても馴染むものであった。

 

「こら、それはおもちゃじゃないぞ」

 

「あっ」

 

 しかし、着替え終わったのか後ろからレオンに取り上げられてしまう。青を基調とした制服に黒っぽい防弾ベスト、その上にかかれたR.P.Dの文字。確かによく見る制服のレオンだがなんだか知っているものとは違う気がする。よく見たことはないので詳しくはわからないが。

 

「レオンお願い、それを頂戴?」

 

「駄目だ。君が持つには危険だ」

 

「お願い、私も自分を守れるものが欲しいの」

 

「しかしだな…」

 

「自分の身は自分で守れるようになりたいから、それに本当に危ないときに使うだけでそれ以外はちゃんと逃げるから」

 

「はぁ…わかった。だが約束だ。これは本当に危ないときだけ使うんだ。だからそれ以外の時はちゃんと逃げるんだぞ?」

 

「うん。約束」

 

「よし。ほら、気を付けて持つんだぞ。使い方はわかるか?」

 

「一応わかるよ」

 

 そう言って構えて見せる。

 

「まったく…最近の子供はどこで習うんだ…」

 

 前世でよくサバイバルゲームに行っていたので知ってます。なんて言えるはずもないが。

 

「ん、もっと脇を締めて。それで腕は少しゆったりと…そうそんな感じだ。狙いをつけるときはゆっくりと落ち着いて狙うんだ」

 

 レオンに指導してもらいつつしっかりとした構えを教わる。

 

「よし、とりあえずはそれでいい。いいか、もう一度だけ確認だ。基本的には俺の後ろにいる。そして奴らが来たら逃げる。本当にどうしても逃げられないときだけそいつを使う。いいな?」

 

「大丈夫、約束はきちんと守るよ」

 

 そう言ってこれをコートのベルトに挟み込む。実際銃は必要はない。それより殴ったほうが強いからだ。ただ、なぜかこいつは手放したくない。何となくそう思った。

 

「セーフティはかけたか?…かかってるみたいだな。よし、着替えてるときにさっきの扉の鍵も見つけた。それじゃあ、行くか」

 

「うん」

 

 そう言って小屋の外に出る。

 

 左右を見渡すと早速階段に一人ゾンビが。

 

「まずはここを何とかしないとな…準備はいいか?」

 

「いつでもオッケーだよ」

 

「いくぞ!」

 

 そうしてレオンが撃つ。ゾンビがひるむとすぐさま横を通り抜ける。そして階段を上り先ほどのゾンビのたくさんいた場所に行くと何体かがこちらに向かってくる。レオンが撃つがさすがに倒しきれない。

 

「くそ、弾切れか。さっき拾ったのを使うしかないか…」

 

 そうして先ほど拾ったM19を片手で構えゾンビを撃つ。すると簡単に頭が砕け倒れていくゾンビ。

 

「流石45口径だな。威力は折り紙つきだ」

 

 軽口を言いつつ残りのゾンビを避け扉の鍵を開ける。すぐさま中に入るとまた鍵をかける。これで奴らはここに入ってこれない。

 

「なんとか切り抜けたな。よし、警察署の中を調べるか」

 

「そうだね。クレアに追いつかないと」

 

 近くに落ちてた弾薬と、何かに使えるかもしれないと木の板を拾い、手前の扉から中に入る。扉の中は警察官や市民の死体がたくさんあった。

 

「予想はしてたが、警察署の中も危険か…アリシア、油断するなよ」

 

「ええ、もちろん」

 

 すると突然左の窓が割れゾンビが飛び込んでくる。だがすぐさまゾンビの頭を撃ち抜くレオン。流石である。

 

 右にも扉があったがとりあえず目の前にオフィスがあったのでそこに入ってみることにする。そこにもなぜかチェーンが巻かれていたがチェーンカッターで問題なく切れる。

 

 中に入るとたくさんの机が並んでいた。そして左のほうからバンバンと窓を叩く音。ゾンビが窓を叩いているらしい。

 

「さっきの通路の窓ガラスは割れてしまった…もしかしたら入ってくるかもしれない…さっき拾った板でバリケードしておこう」

 

 そう言うとレオンはさっと窓にバリケードを張る。

 

(すご…一瞬で張ったように見えた)

 

 板張り職人のレオンであった。

 

 いまだに窓を叩いているゾンビを無視して探索を進める。窓の下の警官が45口径の弾薬を持っていたのでありがたくもらう。机の上にフラッシュバン、ガンパウダーがあり、更に、小さなオフィスの中にいたゾンビを倒し中を見ると

 

「これ…バルブハンドル?なんでこんなところに…」

 

 バルブハンドルが落ちていた。まあこれは警察署の中のどこかで使うのだろう。レオンは持てないのでアリシアが持っておく。その奥の机には白いガンパウダーが置いてあったのでレオンが拾う。

 

 そして入ってきたほうと反対の扉には椅子で軽いバリケードがしてあった。椅子をどかし扉を開ける。

 

「暗いな…ライトを使うか」

 

 ライトで廊下を照らすが敵の気配はない。しかし廊下を歩こうとすると床が濡れている。どうやら浸水しているようだ。

 

 左を見るとシャッターが閉まっていた。通れるかと近づき調べるがどうも電源が落ちてしまっているらしい。レオンが持ち上げてみようとするがさすがに少し隙間が空く程度だ。隙間からアリシアが中をのぞくとどうやらシャッターの向こうはエントランスのようだ。

 

「別の道を探すしかないな…」

 

「そうみたいだね」

 

 今度は先ほどのオフィスを通らずに廊下を調べる。

 

 少し進むと小さな部屋の扉が開いている。中を見ると弾薬と木の板が落ちていた。

 

「今はありがたいが、なぜこんなにもいろんな場所に弾薬が落ちているんだ?」

 

「どこでも補給できるようにかな?でもそれにしては非効率だとおもうけど」

 

 実際はアイアンズ署長による妨害なのだろうがそれは言わないでおく。

 

 次に見つけた部屋は大きな講堂だった。中には死体が転がっており、弾薬を持っていたので起き上がらないか警戒しつつもらう。

 

 そして次に見つけた部屋。そこでアリシアは衝撃を受ける。

 

(ト、ト、トイレだぁぁぁぁぁぁ)

 

 そう、常識的に考えればあるのだが、オリジナルでは存在しなく、7不思議とすら言われたトイレ。なんとそのトイレが存在した。しかし男子トイレにはバリケードが張ってあり女子トイレしか入れないらしい。

 

(いや…今の俺にはぴったりってか…まったく嬉しくないけど)

 

 とりあえず中を調べることにする2人。中はほぼ浸水していた。個室を調べていくことにする。

 

 1つ目の個室を開けると

 

「廊下が水浸しだった理由はこいつか」

 

 どうやらこの便器が壊れていたせいで廊下まで浸水していたらしい。つまり廊下の水は…深くは考えないでおくことにする。

 

 その後トイレを調べると救急スプレーが置いてあった。レオンにこいつは君が持っててくれと言われたのでサラにもらった鞄に入れておく。

 

 そして警察署に入って来た時の扉の前に戻り、先ほど破られた窓を補強する。そして今度は出口のすぐ側の扉を開ける。すると

 

「あ"ぁー…」

 

 中にいた警官の死体が動き出す。レオンは死体を撃つが頭を狙えなかったため中々怯まない。そしてそのままレオンが組み付かれてしまう。

 

「うおっ、くっ!」

 

「レオン!」

 

 慌ててゾンビにタックルする。慌てたせいで少し力が入りすぎたのかゾンビが壁にぶつかる。壁にぶつかり止まったゾンビを、レオンが頭を撃ち抜きゾンビは永遠に眠ることになる。

 

「危なかった…アリシア、ありがとう」

 

「フォローは任せて。守られてばっかじゃないから」

 

「頼もしい限りだ」

 

 そんなこと言いつつ先に進もうとするが

 

(あれ、これは…)

 

 アリシアがあるものを見つける。それはどうも何かのページの切れ端であるらしい。

 

「レオン、これなんだろう」

 

「見せてくれ…これは、何かのメモか。しかしこれに書かれた像のようなものは一体…。まぁ、何かに使えるかもしれない。持っておこう」

 

 そう言ってメモの切れ端をしまい込む。…レオンが持っていくということは後々使えるものだろうが、ゲームの時は何も思わなかったがリアルに見るとなんでそれが使えると分かるのだろうか? やはり第六感なのか。

 

 その先は窓が多く並ぶ少し長い廊下であった。しかし、ここの廊下は見覚えがある。確か地下に通じている道のはずだ。まぁ、原作知識が合っていればだが。そしてなぜか右の壁にナイフが刺さっていた。どうやらまだ十分使えるらしいのでレオンが回収した。

 

 階段前に進むと予想していた通り宿直室が見えた。レオンに教え宿直室に入る。中に入るとすぐ左にスイッチがあった。スイッチを押すと部屋の電気がつく。ゾンビの気配はない、どうやら安全なようだ。

 

「ふぅ…ひとまず安全だな」

 

「そうだね。一回休もっか」

 

 少しばかりの休憩をとる。

 

「さて、とりあえずは何とかなったな。奥のベッドでヒューズと、50AE弾が落ちていた。弾はいいとして、ヒューズがあったおかげでシャッターが開けられるな」

 

「そうだね。そういえば外に階段があったけどあそこはどうする?」

 

「とりあえずはシャッターを開けてエントランスを目指そう。あそこに何かあるかもしれない」

 

「わかった、とりあえずはエントランスを探索だね」

 

「そうだな。…しかし、ここにもないか。仕方ないとはいえ…」

 

 どうやらレオンは先ほどからアリシアの着替えを探しているようだった。

 

「服装はいいとして、せめて靴だけでもと思ったんだがな…」

 

「大丈夫だよ。私頑丈だから」

 

 そう言うがレオンは苦い顔だ。

 

「いや、さっきから窓ガラスが散乱していた場所があったりしただろう。裸足は流石に不味い…。そうだ、たしかここに救急箱があったな」

 

 そう言って救急箱を探すレオン。そして見つけた救急箱の中から包帯を取り出す。

 

「アリシア、足を少し出してくれ」

 

「いいけど、別に怪我はしてないよ?」

 

 そう言って足を差し出す。事実足は汚れてこそいるが傷は見当たらない。怪我をしてもすぐに再生してしまうので当たり前だが。

 

「今は平気でも、あれだけガラスがあればいつ足の裏を切ってしまってもおかしくないだろ?包帯でも巻けば少しは足を保護してくれるだろう」

 

 そう言ってアリシアの足に包帯を巻いていくレオン。

 

「…よし、こんなもんだろう。どうだ、問題ないか?」

 

 少し歩いてみる。少し滑りやすい気もするが歩く分には支障はないだろう。

 

「うん、大丈夫。ありがとう、レオン」

 

「そうか、よかった。よし、それじゃ行くとするか」

 

 そうして先ほどのシャッターを目指し歩く。途中で廊下の窓にゾンビがいたがバリケードを破ってくる様子はない。シャッター前に着きヒューズを電源ボックスに入れる。するとシャッターが上がり始めた。

 

「よし、これで先に進めるな」

 

「それじゃ、調べよっか」

 

 シャッターを越えエントランスに入ると早速ゾンビが一体お出迎えしてくれた。しかしこいつもレオンが問題なく頭を撃ち抜きゾンビが倒れる。だがゾンビはそれでも生きていたらしいのでその頭にナイフを刺してとどめを刺す。

 

(それにしても…すごいなぁ、ここ。女神像は分かるけどそれ以外かなり違う。二階に行くのも梯子じゃなくて階段だし…)

 

 アリシアはオリジナルの2をプレイした時の記憶を思い出すが、ここまで違うともはや2ではなく、別のシリーズに思えていた。

 

(でも大まかなところは一緒なんだよなぁ…一体何故なんだ…?)

 

 そんなことを考えているとどうやらもう一体ゾンビが来たようだ。レオンも気づいたようですぐに銃を構える。

 

 が、アリシアはそのゾンビを見たとき自分の目を疑った。なぜなら、そのゾンビはここにいるはずがないから。確かに現実であるここなら部屋をこえられるかもしれない。だが、あの部屋は鍵がかかっていたのだ。いや、()()()()()()()()()()()()

 

 レオンが発砲する。レオンの撃ち放った弾丸はこれまで通りゾンビの頭を正確に貫く。そしてそのゾンビが倒れるときアリシアは無意識に彼の名前を呟いた。

 

「マー…ビン…」

 

 エントランスにいたゾンビ。彼の名前はマービン・ブラナー、その人であった。

 

 

 

 

 

「ふぅ、一階はこれで平気らしいな…アリシア?どうしたんだ?」

 

 アリシアは少しの間茫然としてしまった。マービン・ブラナー。彼は原作では少しだけ活躍する人物だった。オリジナルのレオン表編では警察署に着いたレオンになぜこんなことになってしまったのかを説明し、自分よりほかの生存者の救出を命令、そしてゾンビとなってしまった。だが彼はファンに人気が出たためその後の作品でも2関連に限り登場している。アリシアは詳しくは知らないが確かアウトブレイクに登場した際には仲間を逃がすため一人この警察署に残ったという話を聞いたことがあった。

 

 アリシア自身特別彼に思い入れがあるわけではない。確かにカッコいいキャラだと思っていたがゾンビ化していたからと言ってショックを受けるほどではない。ではアリシアは何にショックを受けたのか。

 

 アリシアは彼を見たときにあることを思った。アリシアは気づいてしまった。レオンもクレアも、死んでしまうかもしれないと。ゾンビとなってしまう可能性があると。たしかに二人とも抗体を持っているが、あまりにも多量のウイルスを浴びると感染してしまう例があったはずである。ここはゲームではないのだ。それに自分が知る話とは何もかも大きく違い、二人とも無事に帰れる保証はない。それをマービンを見たことで気づいてしまった。気づかされたのだ。

 

 嫌だ、そんなこと。二人が、レオンが、死んでしまうなんてそんなことは

 

「…シア…アリシア。どうしたんださっきから」

 

 レオンに声をかけられたことで思考の海から帰ってくる。

 

「なにかあったのか?…まさか、彼は知り合いか?」

 

 レオンが心配そうに聞いてくる。アリシアは気持ちを切り替える。

 

 そうだ、知らないからなんだ。わからないからなんだ。そんなのバイオハザードではいつものことじゃないか。だったら、自分が二人を守ればいい。そうだ、自分というイレギュラーがいる時点で変わってて当たり前なんだ、だったらその分自分の知識(ちから)を存分に使わせてもらおう。

 

「ううん、一瞬知り合いの人に似ててビックリしちゃっただけ」

 

「そうか、ならいいんだが…。そこのソファーで手帳を拾った。どうもさっき拾った切れ端と繋がっているみたいだ。あとで調べよう。それにさっき通ったカウンターにパソコンがあったはずだ。あれでもしかしたら署内の様子が分かるかもしれない、見てみよう」

 

「そうだね」

 

 アリシアは思う。なんとしても二人を守って見せると。最悪は正体がばれても…。

 

 そんな思いを秘めつつアリシアはパソコンをのぞき込む。だがアリシアは忘れていた。ここは()()である。そして、オリジナルの裏編でもあったことを。

 

 パソコンはどうやら監視カメラの映像らしい。画面には先ほどの宿直室前の通路。そして()()()()()()映っていた。その大男は全身黒ずくめであった。帽子を被っており表情は分からない。

 

 男がカメラに近づいてくる。どうやらカメラに気づいたらしい。顔を上げしげしげとこちらを眺める。そして腕を振りかぶり、カメラに向かって殴る。映像が途切れた。

 

「おいおい、アリシア、そのコート流行ってるのか?」

 

 レオンが軽口を言う。だが内心恐ろしいらしく少し冷や汗が出ている。

 

「う…そ…だろ…」

 

 アリシアはあいつの正体を知っていた。あの大柄な体躯、自身が着ているものと同じデザインのコート。そして最後に見えたあの白い顔。

 

「タイ…ラント……」

 

 暴君が降臨した。

 

 

 

 

 

 

 




補足メモ:タイラントはトラウマ。さすがに恐ろしい。

今更ですが地の文にアリシアの思考と第三者視点両方混ぜてしまっているせいでかなり分かりにくいですね。なるべく改善していきますので読みにくいとは思いますがご了承ください。
ゴーストサバイバーズ楽しいですね。今はネコミミにチャレンジしてます。
ダニエルは許さない
追記:活動報告にアンケもどきあるので良ければお読みください。


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GかTか

書き直し確定のお話です(お待たせしました)


「一応聞いておくが、さっきのヤツが探してた親戚…ってわけじゃないよな?」

 

「流石に違うよ…」

 

 タイラントを発見するという思わぬアクシデントがあった後、タイラントとの関りを少し疑われてしまったらしく質問攻めされていた。

 

「そのコートはどこで手に入れたんだ?さっきの奴と同じものだろう。流石にまったく一緒、となるとな」

 

「これは…その…。…おかあさん…に…もらったの。働いてるところの試作品だって」

 

「母親に?いったいどこで働いていたんだ?」

 

「アンブレラ」

 

「アンブレラだと?あの製薬会社の?なぜ製薬会社が…まさかファッション業界に進出したなんて話は聞いたことがないが…。いや、まてよ。ということはあいつが着ているものもアンブレラ製…?しかも試作品…なにか関係しているのか?」

 

 どうやらアンブレラがタイラントと関りがあると気づいたらしい。

 

「…まあ、今考えても答えは出ないか。よし、探索を続けよう」

 

 ひとまず先送りにして、今は探索を続けるらしい。これ以上はボロが出そうなのですぐさま同意するアリシア。

 

 二階の探索は後に回し、一先ず西側のオフィスの先へ進む。しかし、西側オフィスを通り抜けようとした時()()()が見えた。

 

「なんだ今のは!?」

 

「今のって…」

 

 一瞬。だがしかし確実にナニカが窓を通り過ぎた。一瞬見えたソイツは体が赤く、四足歩行のヒトガタであった。

 

(…リッカー。やっぱり出てくるか)

 

 一瞬見えたソイツの名前はリッカー。Tウイルス感染者であるゾンビの変異種。その凶悪性はゾンビなど比にならず、野生のハンターとも言うべき存在。

 

 だが同時に弱点も存在する。彼らは発達した脳に押し潰されたせいで目が退化しているため、獲物を発見するには鋭い聴覚を使っている。そのため静かにしていれば問題なく通り過ぎる、または先制攻撃が可能だ。

 

(けど、不味い。記憶があってるなら確かこの先にはアイツが……今はレオンがショットガンを持っていない。ショットガンさえあればアイツは2発で倒せるけどハンドガンとナイフだけだと…)

 

「アリシア、どうやらここは想像してた以上に化け物の巣窟と化しているらしい。ここから先一体何が出てくるか分からないが、しっかり俺の後ろにいるんだぞ」

 

「わかってる」

 

(レオンにとっては)正体不明の化け物が登場したことにより、より一層警戒を強めつつ、この先の廊下に進む。

 

 廊下は電気が消えていて暗かった。ライトをつけ進むと曲がり角に警官の死体がある。死体からは無線のノイズが虚しく響いている。

 

 そして廊下を曲がった先。その天井にヤツはいた。

 

 ピチョリ ピチョリ

 

 雫が落ちるような音がする。一体なんの液体が零れ落ちているのか。疑問に思ったレオンが上を見上げると。

 

『ハァァ…』

 

 舌を伸ばし、廊下の天井に張り付くリッカーがいた。

 

「な、なんなんだこいつは…」

 

 レオンが思わず言葉を漏らしてしまう。

 

 だがリッカーはその小さな呟きすら聞き逃さない。すぐさま此方に顔を向けると

 

 キシャァァァァァ!

 

 と鳴き声を上げ床に降りる。

 

「クソ!アリシア隠れてろ!」

 

 レオンがすぐさまリッカーに向け発砲するがその素早い動きから上手く当たらない。

 

 リッカーは床、壁、天井を移動しこちらに近づきそしてその鋭い爪を振り下ろしてくる。

 

「くっ!速い!」

 

 間一髪で躱し、すぐさま近くなったリッカーの頭に45口径の弾を喰らわせてやる。

 

 流石に露出している脳は弱点であり、怯むリッカー。だが直ぐに後ろに跳ぶと、今度はその名前の由来ともなった長い舌をこちらに伸ばしてくる。

 

 伸ばした舌は先端が返しのついた槍のようになっており、直撃すればタダでは済まない。

 

 しかしレオンは伸ばされた舌も体を捻ることで間一髪で回避する。だが、ヤツの目的は攻撃だけではなかったようだ。

 

「しまった!」

 

 なんと伸ばした舌をレオンの左腕に絡ませ掴まえたのだ。リッカーの舌はしっかりと腕に絡みつき、外すことができない。

 

 そんなチャンスを逃がす筈もなく、リッカーはそのままレオンに飛びつき、組み伏してしまう。そしてリッカーがその右腕を振りかぶり、獲物にトドメを刺そうとした時

 

 突如リッカーの耳元でとても大きな音がした。

 

 その音は耳元を通り過ぎるとリッカーの背後に回る。その音に気を取られ一瞬だが背後を向くリッカー。

 

 だがその一瞬が命取りとなった。レオンはすぐさま舌が絡みついてない右腕でナイフを抜くと、リッカーの脳にナイフを突き刺す。リッカーは悲鳴を上げるとすぐさま逃げようとするがレオンはより深くまでナイフを刺そうと力を篭める。そして数秒程してリッカーは弱々しく声を上げると、そのままドサリとレオンの上に倒れ込んだのであった。

 

「はぁ…はぁ……。危なかった、助かったアリシア」

 

 リッカーが気を取られた音の正体。それはアリシアが咄嗟に投げた死体が持っていた無線機であった。ボリュームを最大にしたのでリッカーには相当うるさかっただろう。

 

「無事でよかった…」

 

 アリシアは相当焦っていた。レオンがこのままでは死んでしまうという状況で咄嗟に無線機を投げる判断ができたのは奇跡に近い。

 

「重いなこいつ…。よっと……ふぅ、しかしこいつもあの死体どもの仲間なのか?まるで生皮はいだ人間が四足歩行してるみたいだったが…」

 

「舌が長くて動きも早かったね…まだたくさんいるのかな…?」

 

「さすがにそれは勘弁してもらいたいが……可能性はあるな。しかも天井に張り付いてて見つけ辛いときた。上にも注意が必要か…」

 

 ここからは上にも気を付けつつ先に進むことにする。リッカーのいた横に扉があったが、鍵がかかっていて開けられなかった。

 

 廊下も終わり、作戦会議室に入ろうとすると背後で窓が割れた音がする。

 

「いちいち構う必要もない。行こう」

 

「うん」

 

 そのまま作戦会議室へと入る。

 

「どうやらここで指揮を執っていたらしいな。しかし酷い荒れようだ…」

 

 そのまま部屋を調べる。

 

「ん?これは警察署の地図に…事件の対応記録か。……なに?事件が起きたのは四日前だと?たった四日でこんなことになるなんて」

 

 どうやら事件に関するファイルを見つけたらしい。

 

「これによれば最初は市民の暴動が起きたらしい。だがいまの状況はとても暴動とは思えない、一体何が…」

 

「レオン、ここのチェーン切れそうだよ」

 

 アリシアが扉に巻かれたチェーンを見つけたと知らせてくる。

 

「…考えていても仕方ない、か」

 

 そう言うとレオンは扉に近づきチェーンを切断する。

 

「よし。さっき見たファイルにチェーンは三か所に巻いたとあった。ならこいつはもういらないだろう」

 

 そう言うとレオンはチェーンカッターを近くの机の上に置く。

 

(道具のいるいらないってこうやって判断もしてるんだ)

 

 また妙なところに感心しているアリシアだった。

 

 扉を開けた先は小部屋であったが机の上に時計のようなものが置いてあった。

 

「なんだろこれ?」

 

「これは…信管だな。電源が入ってない…恐らく電池が抜けているんだろう」

 

「へぇ…」

 

(信管…?爆弾はクレア編で手に入ったはずだけど…)

 

 またも自身の知っていることとの差異に少し首をかしげる。だがそれでも大筋は変わっていないはずと知っていることから意見を出す。

 

「もしかしたらどこかで電池が見つかって使えるようになるかもしれないから持っていかない?」

 

「そうだな…アリシア、持っていてもらえるか?そう簡単には起爆しないはずだ」

 

 アリシアが信管を持っていくことにする。

 

 部屋の中にはグリーンハーブ、閃光手榴弾、木の板が落ちていたので拾っておく。二つ扉があったが片方は鍵がかかっていたのでもう片方の内鍵を外し廊下に出る。

 

 廊下に出ると右で自販機を叩いているゾンビがいたので頭を撃ち抜く。正面には死体がうつぶせになっていた。傍目には完全に死んでいるようにしか見えないがアリシアは見逃さない。

 

「レオン、そこの死体ほんの少し動いたよ」

 

「なに?わかった」

 

 レオンが背後からゆっくりと近づき、死体にナイフを突き立てる。すると死体は苦しんだように軽くもがいた後またバタリと倒れこんだ。どうやら完全に死んだようだ。

 

「本当に生きてるとはな…助かったアリシア」

 

「たまたま動いたのが見えただけだよ」

 

 そのたまたま見えた動きは普通の人間にわからないようなものだったが。

 

 レオンに気づかれることのない力を発揮しつつ探索を進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ひとまず、西側の一階は何とかなったな」

 

 あの後、信管のあった小部屋から出て右手側と左手側にあった部屋を探索した。主に見つけたのは弾薬であるが右手側の部屋…西オフィスでは組み合わせることで弾薬を作れるガンパウダーを発見した。45口径は作れないが9mm弾なら作成可能なのでアリシアのサムライエッジの予備弾薬を作ることも可能である。

 

「そうだね。入れなかった部屋は後で鍵が見つかるかもしれないしひとまず一階は大丈夫だね」

 

「とりあえずこの後は二階を調べようと思う。二階にはどうもこの警察署の特殊部隊のオフィスがあるらしい。ここならこの事件の詳細がわかるかもしれない」

 

「特殊部隊の人たちならこの事件の鎮圧に出動してるかもしれないからね」

 

「そういうことだ。さ、そろそろ行こうか」

 

「了解」

 

 そうして二人は休憩していた部屋、暗室を出る。暗室をでてすぐに階段があるが、その階段真横の窓には板が張り付けられている。実は暗室に入る前にこの窓からゾンビが侵入してきたために窓を封鎖したのだ。

 

 階段を上ろうとすると高い叫び声が聞こえた。どうやら上にゾンビがいるようだ。二階に上りきると階段と廊下の奥からゾンビが現れた。まずは階段のゾンビを倒そうとレオンが階段のゾンビに2発ほど撃つとゾンビはそのまま前のめりに倒れ、階段から転げ落ちると動かなくなった。次に廊下のほうから来たゾンビだが横にフラフラと動くためなかなか頭が狙えない。そのため動きを止めようと足に数発撃ちこむ。すると撃ち込んだ足がちぎれる。ゾンビは倒れこむがうめき声をあげながら這いずってこちらに来ようとしている。

 

「気づいてはいたが本当に痛覚がないのか…」

 

 そう呟きながらレオンは這いずっていたゾンビの頭に弾丸を撃ちこむ。

 

 廊下のゾンビが来たほうに目的の部屋があるのでそちらに進む。ロッカールームと書かれている部屋に入ると部屋の左側から音とともに白い蒸気が噴出していた。どうやら横の配管が破損しているようだ。

 

「まずいな、これでは進めな…?」

 

「どうかしたの?」

 

 どうやらレオンが何か見つけたらしい。

 

「これを見てくれ。この形、もしかしたらオフィスで拾ったバルブハンドルが使えるんじゃないか?」

 

 言われたところを見てみる。確かに先ほどのバルブハンドルと同じ形状の出っ張りがあった。

 

 バルブハンドルを取り出したアリシアが差し込みそのまま捻ってみる。すると噴出していた蒸気は収まり先に進めるようになった。

 

「やったね」

 

「そうだな」

 

 ロッカールームを一通り調べるとショットガンの弾が少し集まった。使い道のわからない宝石箱のようなものも見つけたがこれもアリシアが持っておくことにした。ロッカーから死体が出てきてそれに驚いたアリシアが叫ぶというハプニングはあったがそれ以外に問題はなかったので先に進む。

 

 蒸気が噴出していたところを過ぎると目の前にベンチに座っている明らかな死体が見えた。念のために死体に弾丸を撃ち込むとズルリと死体が地面に倒れこむ。しばらく待つが動くことはない。どうやら完全に死んでいたようだ。

 

「死んでいるようだな…」

 

「だね…」

 

(なんていやらしい配置…)

 

 若干ゲーム感覚が抜けきってないアリシアだった。

 

 そして死体がいた部屋を抜けるとついに目的の部屋手前の廊下だった。

 

(やっぱり特殊部隊ってS.T.A.R.S.のことか)

 

 廊下の形が少し見覚えあるため目的の部屋がS.T.A.R.S.オフィスであると気づいたアリシア。廊下は窓が割れているが敵がいる様子はない。

 

「よし、そこの左のドアが目的の部屋だ」

 

 そう言ってレオンが扉に手をかける。

 

 

 その時だった。

 

 

 アリシアとレオンは廊下の曲がり角の奥からズシンズシンと音が聞こえることに気づいた。

 

 レオンがなんだ?と疑問に思った時、音の正体は姿を見せた。

 

「おいおい、デカすぎだろ!」

 

 タイラントとついに遭遇した。

 

 レオンはすぐさま銃を構えると

 

「止まれ!動いたら発砲する!」

 

 と警告をする。だがタイラントは聞こえていないかのようにこちらに歩いてくる。

 

「警告はしたぞ!」

 

 そう言うとタイラントの胸に3発ほど撃ち込む。しかし、すべてはじかれてしまった。

 

「まさか防弾か!」

 

 タイラントはまるで何事もないかのように近づいてくると、腕を振りかぶる。

 

「くそ!」

 

 レオンは後ろに下がり殴りを躱すと、頭部に向けて射撃をする。今度はどうやらはじかれることなくしっかりと通ったようだ。だが頭部に被弾してなおタイラントはこちらに向かってくる。

 

「本物の化け物かこいつ!」

 

 悪態づくがどうしようもない。そのまま頭に撃ち込むがタイラントは怯むことなく近づき、レオンにタックルを食らわせる。

 

「ぐっ!」

 

 そのまま壁に叩き付けられレオンは苦し気に呻く。

 

「レオン!」

 

 アリシアは咄嗟に物陰から出てレオンに近づく。

 

「レオン!平気!?」

 

「うぐっ…アリシア、逃げるんだ…」

 

「そんなことできないよ!」

 

「いいから逃げ………アリシア避けろ!」

 

「え?」

 

 アリシアが振り向こうとした瞬間、いきなり頭を強い力で掴まれる。そしてそのまま一気に横に放り投げられる。

 

 アリシアが投げられた先、そこは窓であった。勢いのまま窓を突き破るとそのまま下に落下していく。

 

 そしてアリシアを投げた人物…タイラントはアリシアが落下していった方を見ると倒れたレオンを無視し、壁を破壊するとそのまま落下していったアリシアを追っていった。

 

 廊下に一人残されたレオン。しかしすぐに立ち上がるとタイラントの作った穴から外を見る。しかし外は暗闇ばかりが広がり、雨音で何も聞こえない状況であった。

 

「アリシアァァァァ!」

 

 レオンの叫びは吸い込まれるように闇へと消えていった。

 

 

 

 

 

 アリシアは仰向けに倒れたまま空を見上げていた。落ちた時に腕や足を骨折したが既に治っていた。

 

 空から雨が降りアリシアを濡らしていく。

 

 するとドシンという重い音が少し先からした。どうやらタイラントが追ってきたようである。

 

 アリシアは動かない。

 

 タイラントは動かない生存者(アリシア)に向かい歩いていく。

 

 そしてついにアリシアの前に辿り着いたタイラントはその拳を握り締め、腕を振りかぶると、一気に振り下ろす。

 

 これで終わり。タイラントは次の生存者を始末するために歩き出す

 

 

 

 

 

 

 筈であった。

 

 おかしい。振り下ろした拳が一向に動かない。何故だ。そんなことを考えているのだろうか、タイラントがぐっ、ぐっと腕を動かそうとしている。

 

 すると始末したはずの生存者が立ち上がる。立ち上がった生存者はその腕でタイラントの拳を受け止めていた。

 

「…ずっと、考えてた。なんでこんな事になるのか」

 

「どうしてこんな目にあうのか」

 

「でも、もういい」

 

「私は、行かなきゃいけない場所がある。やらなきゃいけないことがある」

 

「とっても怖いし、勝てるかもわからない」

 

「でも」

 

「抵抗させてもらうよ、暴君(タイラント)

 

 ギガ・タイラントとタイラントの戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 アリシアは掴んでいるタイラントの拳を自分のほうに引き寄せる。するとタイラントの巨体がアリシアのほうに引き寄せられた。アリシアは引き寄せたタイラントの顔面を殴りつける。

 

 見た目はただの子供のパンチ。普通ならば何の意味もあるはずはない。()()()()()

 

 タイラントは地面を削り後ろに飛ばされていった。

 

 生憎とアリシアは普通ではなかった。GウイルスとTウイルスをその身に宿した暴君を超えし怪物。それがアリシアの正体。ならばこうなるのも道理であった。

 

 タイラントがゆっくりと体を起こす。だがその内心は混乱していた。

 

 見た目は非武装の市民。しかしアンブレラ社の生物兵器用コートを着ている。該当する社員データもなく生存者と行動を共にしていたので抹殺対象と認定。所定の対人型生物兵器プログラム通り行動するも反撃にあい被害は甚大。

 

 タイラントは目の前の謎の生物の正体がわからずにいた。

 

「よかった。ハンターは倒せたとはいえ、タイラントなんて大物は初めてだったから不安だったけど何とかなりそう」

 

 タイラントは立ち上がりながら情報を更新する。

 

 対象の危険度をレベル4に引き上げ。ラクーン警察特殊部隊S.T.A.R.S.と同レベルの脅威。優先抹殺対象に設定。行動開始。

 

 そしてまたタイラントは動き出す。今度は先ほどよりも早い。拘束衣のせいで早歩き程度しか出せないがそれでも十分な速度である。

 

 こんどは隙の大きい殴りではなく、速度をいかしたタックル。一気に左肩を突き出し、空気を押すように一気に詰める。

 

 しかし当たった感触はない。躱された。すぐさま追撃のために敵を探す。しかし敵の姿は見えない。

 

 左右を探すがいない。木の陰に隠れたか。敵を探そうと歩き出したとき、いきなり頭に衝撃。そしてそのまま地面に頭が埋まる。あまりの衝撃になかなか動くことができない。

 

「今のでも倒しきれないって…頑丈過ぎない…?」

 

 タイラントの顔面を地面に埋めた本人はというとタイラントの頑丈さを再認識していた。アリシアが何をしたかは簡単であった。タックルされる瞬間、相手がこちらを見れなくなった瞬間に背後に回る。そして背後から一気にジャンプし、両手を組んでハンマーのようにタイラントの頭に振り下ろしたのだ。

 

「でも、結構効いたみたいだね」

 

 タイラントが立ち上がろうとしているが、その体はふらふらとしている。

 

 アリシアはタイラントの目の前に行く。それから全力を込めて後ろに振りかぶる。

 

「私は負けるわけにはいかない。やらなきゃいけないことがあるから」

 

「だから私はずっと抗い続ける。これからあなたより恐ろしいものが待ってるとわかっていても」

 

「じゃあね。今回は私の勝ちだよ」

 

 そう言ってタイラントを殴る。タイラントは後ろに吹き飛ばされ木に激突する。そしてそのまま倒れこみ動かなくなった。

 

 ギガ・タイラントとタイラント。その初戦はギガ・タイラントの勝利で幕を閉じた。

 

「…はぁー。よかった、勝てて」

 

 アリシアは安堵の息を吐く。そしてそのまま警察署のほうへ歩き出す。だがすぐに立ち止まる。足元に帽子が落ちていた。恐らくタイラントのものだろう。見た限りただの帽子のようだ。

 

「…これ、もらっていくね」

 

 そして帽子を被りまた歩き出す。死が渦巻き死者が闊歩するあの場所へ。今も自分を探してくれているだろう人の下へ行くためにも。

 

 

 

 

 

 

「あー…会ったらなんて言い訳しようかな…」

 

 

 

 

 

 




補足メモ:この後帰るまでに集まってきたゾンビの虐殺パーティーが起きた。
     

次回は来月までに投稿目指します…


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G.T計画 IF ~エイプリルフールに投稿しようとしたけど間に合わなかったもの今日投稿してもばれないやろ~

ギリギリ平成。
どうせなら本編で実現しないであろう事を短めに。
短いけど許して亭許して。



  レオン・S・ケネディ

 

 その彼がラクーンシティに赴任するその日にあったかもしれない歴史。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソったれめ!」

 

 彼は現在”ある者”に追われていた。

 

「なんなんだあいつは!……うおっ!」

 

 彼の横に自動車が落ちてくる。その自動車は彼に向かって投げられたものであった。

 

「おいおいマジかよ…」

 

 その瓦礫を投げてきた人物。それは黒いコートを着た少女であった。

 

「・・・・・・・・・」

 

 その少女に名はない。あるのは製品名。

 

 “GT-001 type-p”

 

 それが彼女が持つ製品名。別の世界で“アリシア”と呼ばれる生物兵器であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「簡単には諦める性格じゃなくてな…!」

 

 レオンは既に彼女に対し何発も発砲していた。相手が子供、という事で最初は撃たなかったがそうと言ってられなくなったからだ。

 

 しかし、銃弾は意味を為さなかった。どれだけ撃っても効果がないのだ。コートに着弾すれば銃弾は弾かれ、露出している足を撃っても血は出るものの何事もないかのようにこちらを追ってくる。最後の手段として頭を撃つもまるで効いた様子はない。それどころか雨で額の血が流れて肌が見えた時、なんと相手には傷口がなかった。明らかに命中させたのにも関わらずだ。

 

 そのため今は為す術もなく、子供から逃走する警官という傍から見れば物騒な鬼ごっことしか見えない光景が広がっていた。

 

(だがどうする…このままだと逃げ続けるしかない。なにか、なにかないか…)

 

 レオンが打開策を考えるも周りには廃墟しかない。こうして考えている間もGT-001は着実に距離を詰めてきている。

 

 このままでは追いつかれるのも時間の問題であった。

 

 

 

 

 だがどうやら神とやらはレオンに味方したらしい。

 

 正面の曲がり角から車が曲がってきた。様子を見ればそれは警察車両であった。そしてそのまま警察車両はレオンを通り過ぎるとそのままGT-001を勢いよく轢いた。

 

「レオン!乗れ!」

 

 車から声をかけてきたのはガソリンスタンドでレオンが助けた人物。警官のダニエルであった。

 

 

 

 

 

 

「…妨害発生。生存者は仲間を増やし車両で逃走。追跡継続。……………………………逃…て

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「間に合ってよかった。いきなりお前から通信が来た時は驚いたよ。『少女の姿をした化け物に追われている!』なんてな。普段だったら酔っ払いすぎだと笑い飛ばしてるところだ」

 

 レオンは逃げている最中に彼に救援を送っていた。自分ですら信じられない事だっただけに来てくれるか不安だったがどうやら信じてくれていたようだ。

 

「…本当に助かった。ありがとう」

 

「気にすんな。お前も助けてくれただろ。お相子だよ。…そんなことよりだ、一体あいつは何なんだ?さっきの話が本当ならビルの5階からスーパーヒーロー着地キメて、短い距離ならとんでもない速さ移動して、自動車はぶん投げてくる、銃弾は服の上なら弾かれる上に当たったところは既に治っている?そいつホントにスーパーガールなんじゃないのか?」

 

 ダニエルも流石にレオンに話されたことに驚いていた。ガソリンスタンドでのあの化け物の群れを相手にしていなければ信じてはいなかっただろう。

 

「あれがスーパーガールだったらまだ助かるんだが…。所でこれから何処に?」

 

「ひとまず警察署に向かおう。あそこなら武器もあるし何かしら情報もあるはずってうおっ!?」

 

 彼が慌てて車のハンドルを横に切る。なぜなら目の前に自動車がふってきたからだ。

 

「おいおい出来の悪いB級映画じゃねぇんだからよ!」

 

 ダニエルは軽口を叩いてはいるがその表情は硬い。

 

「なんとか振り切れ!」

 

「ンなこと言われてもな!」

 

 道路にはゾンビや瓦礫、放置された車が置いてあり、とても逃走しやすいとは言えない状況だった。

 

「あそこを曲がれば警察署は目の前だ!」

 

「よし!このまま突っ切れ!」

 

 警察署まであと少し。このままなら何とか逃げ切れる。

 

 だがそこから来た油断か、またはフラグだったのか。

 

 

 

 

 

 神は微笑まない(フラグは回収)

 

 

 

 

 

 突然二人の目の前の道路が爆発した。

 

 流石に躱せないと判断したのか慌ててダニエルがブレーキを踏む。

 

「今度は何だ、ミサイルでも投げてきやがったか!?」

 

 なんとか被害はなかったが車で進めなくなってしまった。

 

「くそ、なんてこった。だが警察署は目の前だ。このまま走り抜けちまおう」

 

「ああ、そうだな」

 

 車を降りる二人。しかし、次の瞬間今まで乗っていた車がいきなり後方に吹き飛ぶ。

 

「なんだ!」

 

 慌てて銃を構えるダニエル。そして彼が銃を向けた先には

 

「…捕捉完了」

 

 彼女がいた。

 

 

 

 

 

 

「速すぎるだろおい!」

 

「ミンチになりたくないなら走れ!」

 

 彼女がしたことはいたって簡単であった。ただ高くジャンプして二人の目の前に先回りして着弾。普通だったら重傷になるが彼女の再生能力をもってすればたやすいことであった。

 

「そこだ!その門を越えれば警察署だ!」

 

 ダニエルが言った通り大きな門の先に見えるR.P.Dと書かれた大きな建物。二人のゴール地点。今も後ろから追ってきている彼女も警察署の重火器なら何とかなるだろう。

 

 しかしここにきて最後の難関が二人を阻む。

 

「鍵が閉まってる!」

 

「なんだって!?」

 

 警察署の門は開かなかった。内側から閂がかけられており門を開くことができない。

 

「ほかの入り口は!?」

 

「裏口が一つと地下駐車場があったはずだが…どうやらタイムアップみたいだ」

 

 そういって振り返ったダニエルの正面には彼女が待ち構えていた。

 

「・・・・・・・・・」

 

 無言でたたずむ彼女。見た目は少女だが二人には自分たちを迎えに来た死神にしか見えなかった。

 

「やるしかないか…」

 

「そのようだ」

 

 そうして銃を構える二人。しかし一向にこちらに攻撃してこない。

 

 二人が疑問に思うと唐突に周囲からうなり声が。見れば大量のゾンビが集まってきていた。

 

「くそ!これが目的か!」

 

「逃げ場をなくしてこいつらに襲わせようってか?」

 

 流石にこれだけ大量のゾンビとなると二人だけでは処理しきれない。ここまでかと思われたその時、突如目の前の彼女が動いた。

 

 そして目にも止まらぬ速さで二人に近づいたかと思うと、突然二人の背後にある門を殴りつけた。

 

 そしてまるで重機に突っ込まれたかのように吹き飛んでいく門の残骸。二人が驚きのあまり動けないでいると、

 

「通信GT-001からHQ。これよりプログラムPを実行。そのためターゲット2体を誘導。10分後開始・・・・・コピー。GT-001アウト」

 

 突如喋ったかと思うとなにやら通信をしていたようだ。そして通信が終わったかと思うと周りのゾンビを殺し始める。

 

「なんなんだいったい…?」

 

「わからない…だがどうやらこのままここにいても仕方がない。警察署にいこう」

 

 そうして警察署に向かう二人。レオンがチラリと彼女を見るが、ゾンビを殺し続けている。

 

いきて・・・

 

 彼女が何かを呟いた気がするのは気のせいだろうか。それとも…

 

「おい、どうしたんだ?」

 

「あ、ああ。今行く」

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして生存者たちは地獄を進んでいく。この先にクモの糸があると信じて。

 




補足メモ:脳みそからっぽで30分で書き上げたので変なとこあっても気にしないでください
  
次回→令和が終わったら   


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再会 又は 遭遇

バイオ二次にそろそろ飢えたので初投稿です。

追記
アンケみたいなもの作ったんで気になった方は活動報告ご覧下さい


 アリシアは今非常に焦っていた。何故ならば、レオンのことをすっかりと見失ってしまったのである。

 

 タイラントとの戦闘により受けた傷は今既に癒えている。

 

 急いでレオンを見つけて合流する為に急いで警察署に戻っているところであった。

 

「流石に疲れたなぁ……なんだあのゾンビの群れ……」

 

 つい先程までタイラントとの戦闘音に釣られたゾンビを始末しつつ、ここまで来た為精神的に疲労が溜まっていた。

 

「けど警察署付近のゾンビついでに一掃できたし、ヨシ! とするか……」

 

 何故か不安が残る確認だがヨシ! とする

 

 しばらくすると窓が在ったので窓を破り警察署の中に入る。

 

 どうやら先程の2階に登る階段の目の前の窓だったようだ。すぐ目の前に見覚えのある階段があった。

 

 このまま警察署を暫く巡ればレオンと再会することが出来るだろう。

 

「とりあえず、地道に探すしかないか……」

 

 そういうと歩き出すアリシア

 

 ソコに音もなく忍び寄る、天井の影

 

 愚かにも()を鳴らす獲物を狩る存在

 

「さて、はやくレオンを探しn……」

 

 そして

 

 ズブ

 

と そんな 音が 頭 の 中か ら 聞こ え

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 死は、いつでも、どこからでも、誰にでも、平等に訪れる

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「クソ、何処に連れていかれた……!」

 

 あれからレオンは2階から1階に降り、アリシアを探していた。

 

 外に出ようとしたが暗闇が広がり、周りはゾンビだらけだった。

 

 別の場所から外に出ようとするもカギのかかっているドアだらけで中々外に繋がるドアに辿り着けない。

 

 途中にある窓から外を照らすもアリシアの居る気配はない。

 

 時間ばかりが過ぎていく。このままでは本当にアリシアは……と、レオンの中に焦りが積のっていく、そんな時だった。

 

 どこからとも無く2発の発砲音が聞こえた。

 

「まさか……アリシア!」

 

 発砲音が聞こえた場所は西の方、最初に2階に登った階段の方からであった。

 

「待っててくれ、今行くからな!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 場面はアリシアに戻る。

 

 

 

 

 最後に聞こえた音。その正体はリッカーが伸ばした舌が頭を貫く音であった。

 

 リッカーは音もなく近寄り、その長い舌で獲物を貫き、仕留める。

 

 仮に生きていてもその返しの付いた槍のような舌からは逃げることは叶わない。

 

 今回も、その舌は頭を完璧に貫いていた。既に息はなく、後はもう食べるだけ

 

 普通ならだが(・・・・・・)

 

 体はまだ動く。

 

 ならば問題はない。

 

 リッカーの舌を両手で掴むと、力を入れ捩じ切る。

 

 舌がちぎれると、リッカーは血を撒き散らしながら怯んでいた。

 

「危ないなぁ……流石に頭壊されたら死んじゃうって。どんなタイラントもね、心臓と頭とロケランは弱点なんだよ? ……あれ、意外と弱点多かった……」

 

 そんなことを言いつつアリシアの頭にできた風穴は既に塞がれていた。

 

 確かに防御力こそ脆く、ただの人間とほぼ変わらない。しかし、その代わりに備わっている、脅威の生命力と回復力、これこそがG.T.ウイルスの力。

 

「悪いけど、今急いでるから」

 

 次の瞬間にはリッカーの目の前に移動し、その首を掴んでいた。

 

 リッカー側からすれば、獲物がいきなり目の前に来て、自分を掴んできたようにしか見えなかっただろう。

 

 しかし大人しく掴まれている訳もなく、当然リッカーも抵抗する。

 

 体を暴れさせ離れようともがき、その長く伸びた爪で反撃をする。

 

 しかしその反撃も意味は無い。

 

 振るわれた爪を掴み、そのまま背負い投げのように頭から地面に叩き付ける。

 

 OH Japanese JUDO! ワザマエ! 

 

 頭から地面に叩き付けられたリッカーは脳が幾らか砕け、ピクピクと痙攣するのみであった。

 

「君のおかげで新しい発見が出来たよ。いくら俺でも死角からの攻撃には気付けないし反応できない。常に警戒してないと背後から一瞬でやられちゃう、って可能性もある訳か」

 

 そして徐にハンドガンを取り出し、リッカーの頭に向ける。

 

「おやすみなさい。来世はTウイルスなんてないといいね」

 

 そして2発、銃弾を発射した。

 

 

 暫くその場に留まっていると、遠くから足音が聞こえる。

 

「最初から銃使えばよかったかな……」

 

 アリシアはリッカーに対し、無意味に銃でトドメを刺したのではなく、警察署内にいるレオンに音で居場所を知らせる意味もあった。

 

 

 

 

 そしてそれから直ぐ、予想通りレオンが駆けつけてくれた

 

「アリシア! 無事だったか!」

 

「うん、何とか無事だったよ」

 

 レオンは駆けつけると直ぐにこちらの身を案じてくれた。

 

 

「骨を折ったり、ガラスでどこか切れたりはしていないか? キミが窓から外に投げられて心配で……キミを追いかけていった、あのデカブツはどうしたんだ? それにその帽子も……」

 

「これ? 落ちてたから拾った! 窓から外に投げ出されたんだけど、丁度近くの茂みに落ちて、探しに来てたけど茂みに隠れてやり過ごしたの」

 

「拾ったって……まぁ、キミが無事でよかった。本当に……」

 

 どうやらアリシアが無事だった事でレオンも安心したようである。

 

「心配してくれてありがとう」

 

「当然のことさ……が、それとは別にだ」

 

「?」

 

 するとレオンが片手でグーをつくり、アリシアの頭にハンマーを落とす。

 

「痛い!」

 

 実際はまったく痛くなど無い、ただの条件反射みたいなものである

 

「いいか、なにか危ないことがあったら俺の指示に従うか、直ぐに逃げること。俺は警官だが、キミは子どもなんだ。アイツらに襲われたら一溜りもないんだぞ」

 

「はい……」

 

 レオンは純粋にアリシアが心配であった。自分が襲われるだけならまだいい、アリシアを逃がすことができるから。

 

 だが、アリシアが襲われてしまい死んでしまう、それだけは許すことができない。

 

「今度からは絶対に俺の言うことを聞いて、危なくなったらすぐ逃げること。わかったか?」

 

「はい……」

 

「わかったならいいんだ。さて、じゃあ最後に1つ」

 

「なんでしょう……」

 

「この舌の長い化け物の死体、さっきの銃声。これはキミがやったのか?」

 

「あっ……」

 

 

 

 

 

 

 どうしてもコイツから逃げきれなかったので反撃したら倒すことが出来たと必死に説明することで追加のお説教は回避する事ができた。

 

 

 

 

 

 

 

 

(しかし……)

 

 アリシアの話を聞き、この化け物が死んだ理由はわかった。

 

 だが

 

(何故、コイツの舌はちぎれている……? それに、この放射上に広がった血の跡……まるで地面に叩き付けられたかのような……)

 

 アリシアの説明が事実ならばあくまで銃弾2発で死んだだけ。たまたま頭に2発ともあたり、脳がこれだけ砕けてるのはわかる。しかしそれではこの舌と血の跡が説明できない。

 

(コイツは舌を伸ばして攻撃してくる……伸ばした舌を掴まれ、ちぎられた。その後地面に叩き付けられた……? いや、まさかな。アリシアはただの女の子だ。そんなことは出来ない)

 

 ただの子供にそんなことは出来る筈がない。そう思い、今の考えを否定する。その考えこそが正解とも知らず。

 

「レオン、どうしたの? 先に進みましょう?」

 

「ん? ああ、そうだな」

 

 そうして2人はまた階段を登り、先程の廊下に向かって進んでいく。

 

(そういえば……)

 

 警察署の闇の中へと

 

何故、あの大男は、武器を持った俺ではなくアリシアを狙った?

 

 未知()は多く、進むべき先は未だ多くの謎に包まれている。

 

 

 




補足メモ:アリシアの頭を壊したいなら首から上全て吹き飛ばさないとすぐ再生します。

PS5手に入らなくてバイオ8出来なくてキレそう。PCあってもバイオはどうしてもプレステでやりたいって気持ちわかる人いると思う。

次回予告→多分来月


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