絶対無敵のヒーローアカデミア (DestinyImpulse)
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外伝
夏祭りデート・耳郞編


さぁ、宣言通りにデート回だ!

……経験ないんで不自然だったらごめんなさい…


 

 これは合宿前のお話。

 

 

「……………よし!」

 

 鏡の前で自分の姿を確認している響香、今の彼女は紫の浴衣姿をしていた。

 

「今日は龍悟と二人きりで夏祭り♪ふふん♪とうとうウチと龍悟の初、高校生デートの時がきたようだな!」

 

 今日は近く神社で夏祭りが開かれるのだ。雄英に入学してからはなかなか二人きりで出かける事がなく、さらに麗日や一佳などの油断ならないライバルもできてしまった。

 

 しかし今日、いつものメンバーはそれぞれの用事で来れないときた。龍悟と二人きりになれるこのチャンスを逃しはしない。

 

「あ、もうこんな時間。龍悟はいつも待ち合わせ時間より前に居るからな~」

 

 時計を見れば待ち合わせの時間より30分早い、場所も近くなので5~6分で着くが龍悟はいつも15分前には集合場所にいる。準備はすんだのでサンダルを履き響香は家を出た。

 

 祭を盛り上げる太鼓の音や賑わいの音を耳にいれながら待合せ場所に向かうが多くの人が居て、普通なら見つけるのに苦労するが龍悟の特徴的な髪型のお陰でその心配もない。

 

「龍悟~!待った?」

「いや、さっき来たばかりだ」

「そう………ねぇ、似合う?///」

 

 そう言って響香は頬を染める。龍悟は暫く響香を見ると………

 

「あぁ、似合ってるぜ。浴衣」

「………………そっか、ありがと///」

 

 龍悟にそう言われ凄くムズムズした響香は更に赤くなった頬を隠す様に龍悟の前に出て手を掴み屋台が並ぶ所へと向かう。

 

 

 十五分後………

 

 

「いや~美味かった」

「ほんと、店とはまた違った美味しさがあるよね」

 

 夕飯もかねて焼きそばやフランクフルト、唐揚げなど祭の定番を食べた龍悟達。二人はわたあめを手にぶらぶらと屋台を巡る。

 

 

「あ~!!全く落ちない!」

 

 その時だ、近くのから声が聞こえ何だと視線を向けると小学生くらいの子供達が射的屋に群がっていた。

 

「近所の奴等か」

 

 その子供達とは面識があった。龍悟や響香によく懐いている近所の子供達だ。今時の子供ならヒーローへの憧れは強い、そんな自分達の近所に雄英体育祭の優勝者と準優勝者が居るのだ、会いたいと思うのは当然だろう。

 

 体育祭から一週間、龍悟や響香は彼等にサインや握手を求められたのだがサインは全く考えてなかったので握手や写真で満足してくれた。

 

 

「射的か……昔やってたな~」

 

 懐かしそうに響香が呟くと龍悟達に気づいた子供達がわらわらと集まる。

 

「あ!ヒーローのお兄ちゃんとお姉ちゃん!!」

「こんばんはーどうしたの?」

「聞いてよお姉ちゃん!!欲しい景品があるんだけど全然落ちないんだ!!」

 

 そう言って響香と龍悟に見てもらおうと男の子が指差したのは一番豪華な賞品台に置いてあるプ○ステ4、しかも今話題のモン○ンワー○ド・アイ○ボーンと豪華セットのヤツだ。

 

「当てても落ちないんだ!!」

 

 悔しいそうに叫ぶ少年、普通に考えて弾であるコルクが当たっても落ちる筈がない、まだ汚い大人の世界を知らない無垢な少年達は数百円でゲーム機が貰える夢に踊らされ食べ物を買うために親から貰った軍資金をどんどん注ぎ込んでしまい失うのだ。

 

 見ろあの店主の悪い顔を………汚いがこれが大人の世界だ。

 

 

「ラスト一発なんだ!お姉ちゃんお願い!」

(いや、無理!?)

 

 どんなに当てようともビクともしない事をわかっている響香……できないと言いたいのだが……

 

(うるうる)(T_T)

 

(言えない!そんな残酷なこと!)

 

 汚れを知らない少年の瞳に見つめられとてもそんな事は言えない。

 

「仕方ねぇ、ガキの遊びにつきあってやるとするか」

 

 その時、龍悟が少年から銃を受け取り構える。

 

「龍悟!?」

「あのデカイのか?」

「うん!お願いお兄ちゃん!」

 

 龍悟の言葉に笑顔を浮かべる少年、一方で店主は挑発する。

 

「格好いいね、兄ちゃん!予備の弾を買った方がいいんじゃねぇか?」

 

 落ちる筈がないと確信している店主。

 

「ふっ、引き金は二度と引かねぇ」

 

 それは当然だろう。

 

 

 しかし今回はーー

 

 

「一発が全てだ」

 

 

 ーー相手が悪すぎた。

 

 龍悟が放った弾丸は強い衝撃と共に打ち出され、プレス○4の箱を貫通した、勿論中身に影響がないように上の方を撃ち抜いた。その衝撃で倒れるプ○ステ4。その光景に店主は唖然としている。龍悟がしたのは気で銃と弾を強化して放ったのだ、これに気づいたのは響香だけで苦笑いで龍悟を見ていた。

 

「や……やったー!!倒れた!」

 

 少年の歓喜の叫びを聞きながら龍悟は未だに唖然としている店主を無視して倒れた豪華セットのプレ○テ4の箱を手に取り。

 

「ほらよ」

「ありがと、お兄ちゃん‼️」

 

 渡されたプレ○テ4を嬉しそうに抱き締める少年。

 

「でも、小学生がプレ○テ4って」

「まぁ、没収されるのがオチだがそれは管轄外だ」

 

 そんなことを話していると……

 

「次は僕の取ってよ!」

「俺、あのラジコン欲しい‼️」

「私はぬいぐるみ!」

 

 他の子供達が龍悟に抱きついて欲しい物を指差す。龍悟はニヤリと笑い追加の弾を購入する。

 

「いくぞ店主………賞品の貯蔵は十分か」

 

 そう言って龍悟の放った弾は目標を撃ち抜いた。響香は可哀想に店主を見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

『ありがとーお兄ちゃん‼️』

 

 数分後、子供達の手には賞品があり店主は真っ白に燃え尽きていた。

 

「あ、そろそろ花火の時間だよ!」

「もう、そんな時間か……」

 

 毎年この祭の閉めに打ち上げ花火をやるのだ。

 

「でも……場所ないな~」

 

 辺りを見渡してもゆっくり見られそうな場所が既にとられている、射的に時間をかけすぎた。

 

「立って見るしかないか……」

「そうでもないぞ」

 

 そう言って龍悟は響香をお姫様抱っこで抱える、当然響香の顔は真っ赤だ。

 

「飛ぶぞ」

「え、ちょっと///」

 

 そう言って龍悟は響香を抱え飛び電柱の上に着地した。

 

「龍~悟~!」

「悪い悪い……そら、上がるぞ」

 

 龍悟がそう言うと暗闇の空に光が上り……綺麗な花を咲かせた。

 

「綺麗………」

「あぁ、そうだな」

 

 次々と打ち上げられ空に咲く花火はとても美しく二人の心に思い出として刻まれる。

 

「ねぇ、龍悟」

「?、なんだ?」

 

 

 

 

「来年も二人で行こう」

 

 

 

「……あぁ、そうだな」

 

 

 

 

 これは花火のように儚く美しく一夏の思い出。

 

 

END

 





 今回は耳郞のデート回、夏祭りは時期遅れかもしれませんが許して下さい。

次は本編です。


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メリークリスマス!!聖夜をかけるヒーロー

作者「読者の皆さん!メリークリスマス!!今夜はどんな風に過ごしますか?作者は一人です!!…………ちくしょぉぉぉ!!!!」

ゴジータ「やかましいな……」
ブロリー「所詮、作者はボッチなのだ」
パラガス「可哀想だが、お前は今年も一人でクリスマスを過ごすのだ」

作者「黙れぇぇぇぇえ!!」
ベジット(サンタ服)「そんな作者にこのベジットサンタがプレゼントをやろう!」

 そう言ってベジットが見せたスマホにはFGOの画面かける映っており。

ベジット「20連でヴリドラと水着マルタ当たった」

作・ブロ・パラ「「「なん…!だと…!?」」」

ゴジータ「今年はカルナサンタも出だし、いいクリスマスイベントだったな」

ベジット「ああ…年明けガチャが楽しみだぜ!」

ゴジータ「それじゃ、クリスマススペシャルをどうぞ!!」





 

 

     

      12月24日、クリスマスイブ

 

 日が沈み、星が美しく煌めき、聖夜の名に恥じぬ夜。雄英高校がある町を見下ろす集団があった。

 

 

「さて、どうやら良い子の皆はすっかり寝たらしいな」

 

 舞空術で宙に浮き町を見下ろしながら龍悟が呟く。今の龍悟の格好は赤い帽子と服……サンタクロースの服装なのだ。

 

「ああ、事前の知らせで親御さん達が子供達を早く寝かしつける手はずだったからな」

 

 氷結界の龍(トリシューラ)で皆を乗せて空を飛ぶ轟も同じくサンタ服を身に纏って町を見下ろす。毎年、クリスマスになるとヒーローが子供にプレゼントを配る。そういった事が全国各地で行われている。それに雄英ものっかり近隣の子供達にプレゼントを配るのだ。そのサンタ役に選ばれたのが龍悟達だ。

 

「よし、ではサンタ諸君!今宵は子供達の夢を叶えるために頑張ろうではないか!」

 

「クリスマスでも平常運転やな、飯田君」

 

「まぁ、飯田の言う通りだ。それぞれ持ち場の家にプレゼントを配って来い。俺達の手で最高のクリスマスを築き上げようぜ。そんで、無事に終わったら明日は寮の皆でクリスマスパーティーだ!」

 

『おお〜〜!』

 

 

 

 

◆◆◆ 

 

 

 こうして龍悟達は三つの班に別れてプレゼントを配りに行った。轟と八百万、響香と飯田と21号、そして龍悟と麗日と拳藤だ。

 

「それじゃ俺達も行くか」

 

「ああ、それにしてもクリスマスか~~小さい頃父さんがプレゼントを置いてたのを見て絶望したな……」

 

「一佳ちゃん……それにしても私達がプレゼントをあげる側になるなんてなー」

 

 確かにと、麗日の言葉に笑みを浮かべ龍悟は超サイヤ人になり気の固定化をする。超サイヤ人の黄金の気が形をなしていく。

 

 

「「おおー!」」

 

 麗日と拳藤が歓喜の声をあげる。それは光輝く二匹のトナカイとソリ。超ゴジータの気でできたサンタクロースのお供達だ。

 

「素敵!トナカイとソリだ!」

 

「ああ、まさにサンタクロースだな!」

 

 目を輝やかせる二人に笑みを浮かべ龍悟は無数のプレゼントが入った白い袋をソリの後ろにしまい、ソリに乗り込む、それに二人も続きソリに座るのを確認してトナカイとソリを繋げる紐を握り。

 

「さぁ、クリスマスの始まりだ!!」

 

 龍悟の叫びと同時にトナカイ達がソリを引いて空を駆ける。

 

 

 

 

 

 雄英がある町の中にある一軒家。

 

 そこでは結婚して間もない、新婚夫婦が仲睦まじく暮らしていた。

 

 夫婦はクリスマスも相まって何時もより豪華な夕食を取っている最中であり、実に平和な時間が流れていた。

 

 ふと、何気なく夜空を眺めた妻が何か気付き、声を弾ませる。

 

 

「ねえ、見て貴方。綺麗な流れ星よ」

 

「どれどれ、おおーホントだ!あんなにハッキリ見えるなんて珍しいな」

 

 笑い合いながら夫婦は夜空を見上げる。

 

 

 

 

  町を夜空を駆ける、黄金に輝く流れ星を……

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 

 その後、無事に全てのプレゼントを配り終えた龍悟達は寮に戻ってきていた。他の班も終わったらしく続々と帰ってくる。

 

 全ての班が戻ったところで解散になった、皆明日のクリスマスパーティーが楽しみで仕方ない様子だった。

 

 

「それじゃあ最後のプレゼントを配りに行こうか」

 

「そうだな」

 

 しかし、響香と龍悟のプレゼント配りはまだ終わらない。雄英にある一つの部屋にこっそり入る。

 

 よかった、彼女は眠っている。音をたてずに足を進める。ぬいぐるみや小さな楽器が置かれ、小さなベッドの可愛らしい布団に身を包む、小さな女の子……"エリ"が其所に居た。

 

 

「眠っているな」

 

「うん、可愛い寝顔」

 

 響香は笑みを浮かべて白い袋にある最後のプレゼントを取り出す、クリスマスカラーの包装紙に包まれた、彼女への贈り物。

 

 それをエリの隣にそっと置く。

 

 

「メリークリスマス…エリちゃん♪」

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 それから次の日の夜、1ーAの寮のリビング。クリスマスに相応しい飾りつけがされており、テーブルにはチキンやケーキなどの豪華な料理が多くあった。

 

 1ーAの皆は勿論、B組やビック3、教員達、そして龍悟が瞬間移動で連れてきたメリッサ、皆が集合していた。

 

 

「………なあ、何で俺が乾杯の音頭なんだ?オールマイトで良いだろ」

 

「そんなこと言わない!言わない!」

 

「ははは!!A組は乾杯の音頭もできな「皆が君を待っている、やるんだ龍悟君!!」ハァ?」

 

 

「わかった、分かった。それじゃあ皆!メリークリスマス!!!」

 

 

 

 

「「「「「「メリークリスマス!」」」」」」

 

 

 

 

 龍悟の乾杯の合図で楽しいクリスマスパーティーが始まった。皆は即座に料理の方へと向かい、渡されたお皿に大量の料理を載せて食べ始めた。

 

 

「んん~!おいひいー!ほっぺがおひちゃう~!」

 

「葉隠ちゃん、頬張りすぎよ。後、もうちょっとゆっくり食べなきゃ駄目よ」

 

「んっ!んん!」

 

「いわんこっちゃないわ、はい水」

 

「んっ!んっ!ぷは!ありがとう梅雨ちゃん」

 

「気を付けてね、21号ちゃんは楽しんでる?」

 

「はい、楽しいですねクリスマスパーティー!」

 

 

 

 女子達は楽しそうだ。一方で男子は………

 

 

「女の子とクリスマス………良いよな」

 

 何処か怒っているような、悲しみを抱えているような雰囲気を出しているのはA組の性欲モンスター峰田

 

「二人きりじゃねーけど………そうだな」

 

「…………………聖夜の宴」

 

「ええ……いいものですね」

 

「…………おう」

 

 

 それに同意するA組B組の男子組………目に光がなくなった彼らの視線の先は………

 

 

 

「相変わらず、龍悟君は凄く食べるのね」メリッサ

 

「うんうん!どんくらい食べられるの!?気になる!気になる!」波動

 

「そんなにか?」龍悟

 

「そんなにだぞ」拳藤

 

「うんうん(*-ω-)」麗日

 

「ウチはもう何も感じないな~」響香

 

 

 

 美女五人に囲まれながらチキンやケーキをめちゃくちゃ食べる龍悟(ナンバーワン)

 

 

「轟さん…は、はい、アーンですわ///」

 

「あ、ああ///」

 

 甘甘の甘の空気を醸し出し着々と距離を積めているヤオモモに少しずつドキドキしている(ナンバーツー)

 

 

 

 

 

「……………ちくしょぉぉぉ!!甘過ぎる……甘過ぎて死んでしまう!!」

 

「………もう、駄目だ……おしまいだ」

 

「(アイツ等の魅力に)勝てるわけない…!勝てるわけないよ…!!」

 

「……はは、全くA組は人前でイチ「アイツ等だけずりーぞ…!俺達にも出会いをくれぇぇぇぇえ!」ハァ!」

 

 

 

 

 嫉妬と怒りの炎を燃え上がらせる彼等など気にせずにパーティーを楽しむ龍悟達。その時、リビングのドアが勢いよく開き。

 

 

「お姉ちゃん!」

 

 エリが元気よく入ってきた。

 

 

「見て!朝起きたらプレゼントがあったの!!」

 

 その手には昨日のクリスマスプレゼントが握られていた。その事に龍悟達は笑みを浮かべる。

 

 

 

 

 

 これは星空のように儚く美しく聖夜の思い出。

 

 

 

 

 

 

END

 




【教えて!ゴジータ先生!!復活のF編】はもう少しで投稿できます。もう暫くお時間を!



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ifストーリー.もしもゴジータが別世界に転生したら.五等分の花嫁編

まだ、インターン編を書ける余裕がないので短編です。申し訳ありません。


 これはゴジータが別世界に転生したifの物語。

 

 転生した生活は幸福ではなかった。母は他界し借金を抱えて、贅沢などできない貧しい暮らしだったが自分を慕う可愛い妹と自分達兄弟を大切にしてくれる父との暮らしをゴジータは幸せに感じていた。

 

 勉学に励んだ結果、成績はトップ、サイヤ人のチートボディで運動抜群、前世と同じイケメンの三種の神器が揃い組のいい男になったのだが金欠の為、焼き肉定食の焼き肉を頼むのが日課になっている、これはサイヤ人の大食いじゃない事に安堵したが……これのせいで周りから残念イケメンのレッテルを貼られてしまっている。

 

 そんな高校二年生のある日、転校生の【中野五月】に勉強を教えてほしいと頼まれる。断る理由もないので承諾、好評だったのか満足そうな五月と別れた直後に妹から【大富豪の娘の家庭教師】のアルバイトの話を聞かされ借金返済の為にその仕事を引き受ける。

 

 しかしその娘と言うのが五月だった、更に驚く事に五月には四人の姉がおり聞けば【五つ子】だと言う…これにはゴジータも開いた口がふさがらなかった。仕事内容は落第寸前の五月を含めた五つ子姉妹を卒業まで導くこと……妹の未来の為、父の負担を減らす為、あの世で見ているだろう母を安心させる為、ゴジータ先生の新たな戦いの幕が上がる!

 

 

 

 のだが、ゴジータ……上杉龍悟は今、頭を抱えていた。

 

 出だしは順調かと思われた、五月が教えがいい事を言ってくれた事で一部を除きしっかりと授業を受けてくれた。しかし何もしていないのに何故か次女の【二乃】によく思われてなく手をやいていた。

 

 そんな二乃は今……

 

「「……………………」」

 

 三女の【三玖】と睨みあっている。三玖は右目が隠れる斜め分けのセミロングといつも付けてるヘッドホンが特徴の可愛らしい美少女だ。最初はドライな面が目立つ彼女だがある時、彼女が大の戦国マニアと知る。「見た?」と睨み付ける、その時の三玖にジャネンバ以上の威圧感を感じたモノだ…

 

 その事を姉妹に言わず恥ずかしさを感じていたがそんな三玖に龍悟は……

 

「そんな事言ったら俺はトレーニングが趣味だ、自分が好きなことに負い目を感じてどうする?なんなら戦国の深い話を俺に教えてくれ」と頼む。マニア臭い三玖の話を龍悟は感心したように聞いてくれる、それが嬉しかった。

 

 それ以来、三玖は龍悟と戦国話をするのが楽しみとなっている。今日も勉強終わりにいっぱい語ろうと思ったのだが何かと二乃が茶々いれてくる……正直鬱陶しい。

 

 そんなこんなで二乃と睨みあう三玖……他に要るのは龍悟だけ……他の姉妹……長女の【一花】はバイト、四女の【四葉】はバスケ部の助っ人、頼みの五月はこの異様な空間に居たくなかったのか龍悟を見捨てて図書館に逃げていった。

 

「え、何?三玖ってこう言う何考えてるか分からない男が好みなの?」

 

 ニヤニヤしながら聞いてくる二乃…確かに龍悟は感情表現が苦手だがはっきり言われると流石に傷つく…

 

「( ̄□ ̄;)!!(何考えてるか分からない…)」

 

 しかし三玖は動じずに言い返す。

 

「だったらメンクイの二乃はチャラチャラしたダメ男と付き合えばいい。リューゴはここぞって時に笑う…そこがいいの」

 

 三玖もかなりきつい事を言ってくる。彼女は見たことがある、何時もポーカーフェイスの龍悟が笑った時を……これがギャップ萌えかと正直ドキドキした。

 

「ハァ!……な~るほど、オシャレをわかんないからこんなダサい服で出かけられるんだ!」

「この尖った爪がオシャレなの…!」

「確かに危なくないのか?」

「あんたは黙ってなさいよ!!」

 

 三玖に便乗した龍悟に怒鳴る二乃。はっきり言って二乃は龍悟が気に入らなかった……自分達の中にいきなり入ってきて当たり前の様に居る男に……最初は睡眠薬を飲ませて追い出そうとしたが……まさか飲んだのに何事もなかった様に勉強を始め出したのだ。こんなワケわかんない奴を姉妹に近よらせない!二乃はそう誓ったのだ。

 

「いいわよ!中身で勝負しようじゃない!どちらが家庭的か、私が勝ったら今日の勉強はナシ!!」

 

 なんと身勝手な事が……三玖は大丈夫だよな…と期待を込めて見れば……

 

「待っててリューゴ!すぐに終わらせるから!!」

 

 とキッチンに向かった…三玖は大丈夫だと、その気になっていた龍悟の姿はお笑いだぜ。

 

 それから30分後……料理が出揃った。

 

 二乃が出したのは女子力高めの料理だった…聞き慣れない名前だったが見た目からして美味しそうだ。

 

 一方で三玖の料理は……オムライスと証していたが中身と卵がぐちゃぐちゃになっており……まぁ、察したでしょう。

 

「やっぱりいいよ……自分で食べる///」

 

 三玖は申し訳なさそうに恥ずかしそうに言うが……

 

「作ったんだから食べてもらいなよ~」

 

 二乃は逃がすつもりは毛頭ないらしい…まぁ、せっかくだから頂くとしよう、龍悟は二人の料理を食べた。自らの勝利を確信している二乃、しかし彼女はある誤算をしていた。

 

「どっちも上手いぞ」

 

 そう、龍悟は貧乏舌、いわゆる味音痴だ。上手い不味いの区別しかできない。

 

「ハァ!?アンタ何言って……ッ!」

 

 異議を唱えようとした二乃は言葉に詰まる、隣の三玖は頬を赤く染め小さく笑っていた。恋する乙女の顔だ、こんな三玖は見たことがない…

 

「何よ……つまんない!!」

 

 そう言って自分の部屋に言ってしまった、そんな二乃を不思議に見る龍悟。

 

「自分から言っておいて……なんだったんだ?」

「二乃はほっといていいよ……ねぇ、リューゴ///」

「?、なんだ?」

「私も料理…上手になれるかな?」

 

 モジモジしながら言う三玖に龍悟は言った。

 

「それはこれからの三玖の努力しだいだ…まぁ、俺も手を貸すよ」

 

 そう言うと三玖は嬉しそうに笑った、やっぱり手を貸してくれる不器用で優しい人だと……

 

「【落ちこぼれでも必死に努力すればエリートを超える事があるかもよ】…リューゴが言ってくれた言葉」

 

 五つ子の中で自分は落ちこぼれだと諦めていた自分に龍悟が言ってくれた言葉。

 

「リューゴのせいで自分はできるんじゃないかって…諦めちゃ駄目だって……思っちゃった。だからーー」

 

 

 

 

「責任とってよね♪」

 

 

 

 これは無数にある可能性の物語。

 

 

END

 

 




 投稿期間を開け過ぎるのもどうかと思ったのでとっさに思い付いた外伝です。
ちなみに私は五つ子の中で三玖が一番好きですね。

それではまた次回!
 


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第一期・伝説の始まり・GT編
新たなる物語


お試しで投稿します。
気に入れば幸いです。
それではどうぞ!


 赤い雲に周りにはカラフルな物体があちこちに浮かんでいるおかしな場所、ここは地獄…魂が洗われ記憶も無くなり新しい生命体に変えられる世界。 其処に一人の男が佇んでた……彼の名は“ゴジータ”…最強のサイヤ人“孫悟空”とそのライバル“ベジータ”がフュージョン…“融合”した事により誕生したまさに絶対無敵のサイヤ人だ。

 

 

 悟空達はジャネンバと言う強大な敵に勝つ為に融合したのだ。そのジャネンバですらゴジータの敵ではなかった。ジャネンバを倒したゴジータはフュージョンの時間が解けるまで悟空とベジータの記憶を見ていた。

 

 

「いいものだな……家族、仲間…俺にはないものだ…」

 

 

 それは温かな記憶…悟空のクリリン達仲間との出会い…悟飯が生まれた喜び……ベジータの我が子を初めて抱いた記憶…全てがゴジータにはない物だった。

 

 

 薄れゆく意識…フュージョンが時間切れになる。

 

 

(叶うのならば…悟空やベジータではなく…俺、ゴジータとして…家族や仲間と生きたいものだ……)

 

 

 短い時間しか存在する事ができない自分では叶わないと知りながらゴジータは願った。

 

 

 その願いと共にゴジータの意識は途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 あれからどれだけの時間が経ったのかわからないだがゴジータの意識は蘇った。

 

 

(なんだ…?またフュージョンしたのか…?)

 

 

 だが……何と戦って勝つ為にフュージョンするまでの記憶がない……其処で自分が目を瞑っていることに気付いた。ゆっくりと目を開く。そこにあったのは、蛍光灯の光。そこではじめて、自分がベッドの上に寝ていることを認識する。未だに意識が朦朧とする中、周囲の状況を把握するために首を左右に動かして周囲を見渡す。

 

 

(病院…?)

 

 

 少し広い個室にある白いベッドの上、自分は横たわっていた。部屋の中は消毒液の匂いに満ちており、ほこりっぽさが全くない、清潔感に満ちている…悟空やベジータの記憶にある病院の一室だった…

 

 

(どういう事だ…時間切れで戻るはずだ…)

 

 

 勝ったにせよ負けたにせよフュージョンの時間は30分戦って寝る時間はない。ますます分からない状況の中、今度は自分の身体の異変に気付く。

 

 

「なんだと…!?」

 

 

 自身の手を顔の前に持ってきてそれを見る。そこにあったのは、成人男性の手の平とは程遠い、真っ白な艶のあるふっくらした手。それはまるで、幼い子供の手のひら、それに声も幼い…明らかに自分のものではない身体である。流石のゴジータも驚きを隠せない。目を見開いた状態で、必死に自分が今置かれている状況を頭の中で整理しようとする。

 

 

 すると、部屋の中へ入ってくる人影が現れた。スライド式のドアを開いた先、廊下から部屋へと入ってきたのは、二十代後半くらいの女性。

 

 

 

「目が覚めたのね!」

 

 

 

 女性はゴジータが目覚めていることに気付くと、ベッドに寝かされたゴジータのもとへ駆け寄り、顔を覗きこむ。その表情には、安堵と慈愛に満ちた笑みが浮かんでいた。優しい手つきでゴジータの頬に触れながら口を開く。

 

 

「本当に良かった…“龍悟”」

 

 

 突然の事に驚くゴジータ…

 

 

(龍悟?それに誰だ……!?)

 

 

 不思議に思うゴジータにある記憶が流れ込む…それは自分を育ててくれた温もり…そうこの女性は……

 

 

「お…母…さん…?」

 

 

 

 

 二人の最強のサイヤ人の融合に誕生した一人の戦士はある願い共に消えた…だが目覚めると新たな世界で新たな命として“転生”した。これは『ゴジータ』改めて『孫龍悟』が絶対無敵のヒーローになるまでの物語。

 

 

 

END

 

 




感想等何時でも募集しています。
これからもよろしくお願いします。


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孫龍悟として

 病院で目覚めた後、母や病院に勤める医師達の会話から、ゴジータ改めて龍悟は自身が置かれている状況を整理した。自分は――転生したようだった。

 

 

(なら何故俺は記憶を持っている…?)

 

 

 自分は地獄に居たのだ、消えて新しい命として転生する事になら納得がいく…だが、何故記憶を持っているかが謎だった…

 

 

 すると部屋に二十代後半くらいの男性が入ってきた。

 

 

愛実(めぐみ)!!龍悟が目覚めたって!!」

 

 

「あなた…大丈夫よ…おかしなところは無いって」

 

 

 母の言葉を聞き男性は安堵する……ゴジータではない記憶が教えてくれる…彼の名は孫翔(そんかける)…自分の父だ。

 

 

 翔は龍悟に寄り添う。

 

 

「覚えているか?別荘に旅行に行ってお前が“月を見て大きな猿”になったんだ…幸い直ぐに戻ったが意識がなくて…直ぐに病院に搬送したんだ…何もなくて本当に良かった」

 

 

 翔はヒーローアイテムを販売・製造する会社『カプセルコーポレーション』の社長だ。四歳の誕生日に会社が所有する別荘に旅行に行った事は覚えていたがその後が思い出せなかった……だが、翔の一言に驚愕した。

 

 

「大きな猿!?」

 

 

 その時、ようやく自分にサイヤ人の尻尾が生えている事に気づいた。

 

 

(尻尾!?どういう事だ…悟空もベジータも尻尾は切られて俺も尻尾は無いはずだ…それに大猿……)

 

 

 龍悟は父が医師に説明を受けてる間……理由を考えていた。

 

 

(何故俺は記憶を持っている…?普通はそんな事……いや、俺は普通じゃない…)

 

 

 普通なら魂は浄化され記憶はなくなり転生する…だがゴジータは悟空とベジータ…界王神を超えた存在同士が融合して誕生した者…いわば二人の存在が一人になった存在…

 

 

(そんな俺を完全にリセットする事はできなかった……転生して何も知らず過ごしてきたが奥底にあった記憶が大猿になった事で呼び覚まされた)

 

 

 ひとまず真相はこれにしておこう…そう考えた龍悟はある言葉に反応する。

 

 

「先生…これは龍悟の“個性”なんですよね…」

 

 

「ええ…間違いなく…失礼ですがお父さんとお母さんの個性は……」

 

 

「私の個性は狼男で満月を見ると狼になります……妻は体に流れる生命力を操る事ができ…傷を治す事ができます…」

 

 

(狼男…傷を治す……どういう事だ?)

 

 

 不思議に思い記憶を探る…

 

 

(なるほど…大抵の人間が何らかの得意体質…“個性”を持って生まれる超人社会……俺は違う世界に転生したのか……)

 

 

 驚いてばかりだなと思いながら話を聞く。

 

 

「恐らく…ご両親の個性が混ざり合って誕生した突然変異の個性ですね………体には何処にも異常はないので安心してください」

 

 

「ありがとうございます」

 

 

 そして無事退院して我が家カプセルコーポレーションに戻ってきた……両親は市役所に個性【大猿】として個性届けを出しに行った。

 

 

 自分の部屋で龍悟はこれまでの事を整理していた。

 

 

(技術は俺のいた世界より下の超人社会か……俺の個性は恐らく【サイヤ人】リセットできなかったサイヤ人としての存在が個性として育ったんだろ……ん…)

 

 

 ある人形が目に写った……それは…

 

 

「オールマイト…」

 

 

 記憶が教えてくれる…この世には個性を悪用する(ヴィラン)…そして人々を守るヒーローが居ると。そしてナンバーワンヒーロー“オールマイト”に憧れがあると…龍悟はゴジータとしての願いを思い出す。家族の温もり…仲間との友情…今なら叶える事ができる。

 

 

(……何故転生したのかはわからない……だが俺は存在している…悟空じゃなくベジータじゃなく龍悟(ゴジータ)として…なら生きよう…この世界で自分だけの生き方で)

 

 

 ゴジータの孫龍悟としての人生が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから十一年の歳月が経った。

 

 

 朝の五時頃誰も居ない公園で…

 

「はぁぁぁぁあ!!」

 

 威勢のいい少女の声が響く…組手をしている二人の少年少女。少女は突きや蹴りを鋭く繰り出すが少年の方はそれを最小限の動きで避ける。焦り大振りになった少女の隙を逃さず少女の額にデコピンを喰らわせる。少女は額を抑えながら…後ずさった。

 

 

「まだまだだな…響香…」

 

 

「やっぱり龍悟は強いよ…」

 

 

 公園で組手をしていたのは成長し逆立った黒髪が特徴の龍悟と黒髪で短めのボブカットで耳たぶのコードが特徴的な可愛らしい女の子だ。

 

 

 彼女は耳郎響香…龍悟の幼馴染だ。小学校からの付き合いで仲も良好…何故二人が朝から組手をしているかと言うと中学三年になった二人はある高校に進学する為だ。

 

 

「動きも良くなってる…このまま行けば“雄英高校”の入試までにはかなりいい動きができるだろう」

 

 

 雄英高校とはヒーロー科がある、高校である。

 

 

 しかし雄英高校は、今までオールマイトを始め名だたるヒーローを輩出してきただけあって、他にもヒーロー科のある高校があるにもかかわらず、倍率が300を超えて、偏差値75を超えている。全11組あり、A、B組がヒーロ科、C、D、E組が普通科、F、G、H組がサポート科、I、J、K組が経営科と分かれている。A、Bは計40名の募集で内4名が推薦であるため、36の枠を何千人と争うのである。入学試験は筆記と実技に分かれており、実技ではヒーローとしての素質、個性の能力を見ている。

 

 

 入試まで10か月あるが龍悟の見立てではこのまま特訓すれば悟飯の恋人、ビーデル位の動きができるだろうと確信していた。

 

 

「龍悟にそう言われると嬉しいな…」

 

 

 照れながらが耳のプラグをいじる響香……時間も6時になり二人は家に戻り同じ中学に行く。

 

 

 だが、近い日に大いなる運命と出会う事をまだ龍悟は知らなかった。

 

 

 

 

END

 

 

 




親の個性どうするか悩んでいましたがドラゴンボールの男狼を見て…満月見たら大猿になるし狼男でいいやと決めました。


後、ヒロインの耳郎は幼馴染設定にしました。


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大いなる運命

遂に原作開始です。

それではどうぞ!


 学校が終わり隣町の商店街まで買い物をしに来た龍悟…すると突然裏通りが爆発した。

 

「な!?」

 

 龍悟は足を止め、商店街の人達はパニックになり逃げ出す。

 

 

 爆発の中心にはヘドロの様な男とそれに囚われている龍悟と同じくらいの少年が居た。爆発は人質の個性だろう暴れまわるせいで商店街は火の海に変わっていく。

 

 

「敵か!?っ!あぶねぇ!!」

 

 泣き叫ぶ子供に電柱が倒れてくる、慌てて子供を抱えて避ける。

 

 

「大丈夫か…?」

 

 

「うん……怖いよ…」

 

 

 子供に怪我はなかったが涙は止まらず…周りにも悲鳴が聞こえる。ヒーローはまだ来ない。

 

 

「助けてくれ!!誰か!!」

 

「早く来てくれ!!ヒーロー!!」

 

 

 悲鳴は止まらない…

 

 

「大当たりじゃねーかっ!!ありがとう!キミは俺のヒーローだ!!」

 

 

 敵の笑い声は止まらない…たが、だからこそ輝くものだ…ヒーローの大前提…自己犠牲の精神は!!

 

 

 子供を避難させた龍悟はヘドロ敵に走り出す、この絶望を終わらせる為に。

 

 

「なんだ!このガキ!!」

 

 

 ヘドロ敵が龍悟に気づき攻撃を仕掛けようとするが龍悟は手のひらからエネルギー弾……気弾を放ち顔面に命中し視界を潰す。その隙に気を纏いヘドロに囚われた人質を救出する。

 

 

「てめぇ!俺は一人で「早く逃げるぞ」

 

 爆発頭の少年が何か叫ぶが無視してこの場を離れようとする、だがその時一つの声が聞こえた。

 

 

「その勇気、行動…素晴らしいものだ!少年!」

 

 

 一人の大きな男が現れた。龍悟は…いや、誰もがこの男を知っている。

 

 

「オール……マイト…」

 

 

 そうナンバーワンヒーロー“オールマイト”が龍悟の前に現れたのだ。

 

 

 オールマイトは握った拳を振り下ろした。

 

 

 

「DETROIT SMAAAASH!!」

 

 

 振るわれたその右拳から、竜巻が巻き起こった。その凄まじい拳圧は周りの炎をろうそくの様に吹き消し、上昇気流を作り出して上空に打ち上げた結果、雨を降らせ始めた。たった一発のパンチが、天候をも変えたのである。

 

 

 事態は一気に収束へと向かい、ヘドロ男は警察に引き取られ、オールマイトはマスコミ群に応対し、龍悟は静かにその場を去ろうとすると……

 

 

「お兄ちゃん!!」

 

 

 さっき助けた子供が近づいてきた。

 

 

「助けてくれてありがとう!!」

 

 その笑顔はその言葉はとても輝いていた。

 

「……ふっ、怪我がなくて良かった…」

 

 

 龍悟は温かな笑みを浮かべ子供の頭を撫で…去っていった。

 

 

「………………」

 

 

 その背中をオールマイトは静かに見ていた。

 

 

 

 

 

 夕陽が眩しい帰り道…龍悟が静かに歩いていると…

 

 

「ちょっといいかな…少年」

 

 

 骸骨のような男が龍悟に近づいた。

 

 

「(どっかで感じた気だ…)なんでしょうか…?」

 

 

「私はこういう者でね」

 

 

 骸骨男が龍悟に名刺を差し出す。龍悟はそれを不思議そうに読み上げた。

 

 

「八木俊典………マイツプロ!!?」

 

 

 驚くのも無理はない…マイツプロはあのオールマイトの事務所なのだから。

 

 

「あの敵はオールマイトが追って一度振り切られ、結局事件には間に合わなかった。マスコミはまだ来てなく報道されてないが人質を助けた君の話を是非聞きたいと思ってね」

 

 

 龍悟は男が嘘を言ってない事を確認すると…体を向けた。

 

 

「何故、君はあの場で動いたんだい…?ヒーローに任せず何故……」

 

 

 八木の言葉は最もだろう……敵の前にして龍悟だけが勇気を持って立ち向かったのだから。

 

 

「……俺はヒーローになる……そう心に決めた………あの場で多くの悲鳴が聞こえた、『助けて』と……その悲鳴をなくしてあげたかった…あの子供の涙を止めたかった………それが『あいつならなんとかしてくれる』そう思わせる…オールマイトの様な誰かの希望……俺の目指すヒーローの行動だと思ったから」

 

 

 そう、龍悟(ゴジータ)が目指すヒーローは自分であり自分じゃない孫悟空の様な誰かの希望……オールマイトに憧れがあるのは孫悟空と同質なヒーローだからだ。

 

 

 声が震えることもなく、淡々と答える。すでに決意したことを口に出しているだけだからこそだ。迷いや不安があればこうは言えない。しばし無言が続き、八木が静寂を破った。

 

 

「まさか……こんな形で出会うとは…君になら話しても大丈夫そうだ」

 

 

 そう言うと八木の肉体が膨れ上がり別人になる……それは……

 

 

「なん……だと……!」

 

 

「HAHAHA、驚いているようだね少年、私だ!!」

 

 

 なんと八木の正体はオールマイトだったのだ……流石の龍悟も驚きが隠せない。

 

 

(フュージョンの失敗と成功レベルの別人だぞ……!)

 

 

 オールマイトは直ぐに骸骨姿に戻る。

 

 

「まず説明しなくちゃな」

 

 

 

 これから話すことは他言無用と念押しした上で説明してくれた。

 

 

 

 5年前、ある大物敵との戦いで重傷を負い、その後遺症でヒーローとしての活動限界に大幅な制限がかかってしまった事。

 

 

 そして、人々を笑顔で救い出す“平和の象徴”は決して悪に屈してはならない。との思いから、その事実を世間に公表していない事。 

 

 

 

「そしてここからは私の個性の話だ孫少年」

 

 

 

 

「写真週刊誌には幾度も“怪力”だの“ブースト”だの書かれインタビューでは常に爆笑ジョークで茶を濁してきた。“平和の象徴”オールマイトはナチュラルボーンヒーローでなければならないからね」

 

 

「一体、どんな個性なんですか…?」

 

 

「私の個性は聖火の如く引き継がれてきたものなんだ」

 

 

「引き継がれてきた…個性!?」

 

 

「個性を“譲渡”する個性…それが私の受け継いだ“個性”!冠された名は【ワン・フォー・オール】!!」

 

 

「ワン・フォー・オール……」

 

 

 

「一人が力を培い、その力を一人へ渡し、また次へ…そうして救いを求める声と義勇の心が紡いできた力の結晶!!!」

 

 

 

「私は後継を探しそして今日、君に出会った!」

 

 

 

「君は、ヒーローになれる」

 

 

 その言葉が龍悟の胸を熱くする。

 

 

「さぁ、どうする?」

 

 

 龍悟は静かに目を閉じ…そして開く…答えは出た。

 

 

「お願いします!!」

 

 

「即答…そう言ってくれると思ったぜ!!」

 

 

 

 これが最強のワン・フォー・オール…九代目所有者…孫龍悟の始まりの瞬間だった。

 

 

 

END

 

 





 遂に譲渡される……次回もお楽しみに!


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継承

 

 それから2日後、朝5時。龍悟はゴミだらけの海浜公園に居た。響香にはしばらく一緒に特訓できないと言ってある。響香も龍悟に頼り放しではいけないと承諾してくれた。

 

 

「さて、孫少年。どうやら君の身体は私の個性を身体に入れるだけの器は既に有るようだね。服の上からでもわかる素晴らしい肉体だ。HAHAHA!では、善は急げだ早速君に個性を渡そう!」

 

 

(どんな方法で継承するのか…気になるな…)

 

 

 魔術みたいな事をするのかと考えていると…オールマイトが1本髪の毛を抜き……

 

 

「食え」

 

 

「ダニィ!?」

 

 

「別にDNAを取り込められるなら何でも良いんだけどさ!さあグイッと!」

 

 

「はい…」

 

 

 贅沢言う程子供じゃない……大人しくオールマイトの髪の毛を口に含み、持ってきたミネラルウォーターで流し込んだ。

 

 

「2時間もすれば、髪の毛が消化されて変化が起きる筈さ…………マジかよ……」

 

 

 龍悟が食べて数秒したら龍悟の腕に赤い稲妻の様な物が浮かび上がった………間違いなくワン・フォー・オールだった。

 

 

「そんな、ト○コじゃないんだから……孫少年の体にはグ○メ細胞でもあるのかい……」

 

 

(メタいしあながち間違いじゃない……)

 

 

 グ○メ細胞ではないがサイヤ人が持つS細胞がある龍悟はなんとも言えなかった。

 

 

「ま、まぁ…早速試してみよう!」

 

 

 龍悟は目を閉じ精神を統一する……感じるサイヤ人の力の他に流れる新しい力を……

 

 

(これがワン・フォー・オール……まずは少しづつ)

 

 

 ある程度出力を上げたが……限度がきた。

 

 

「…今は、ここが限界か…」

 

 

「まさかこれほどとは!予想以上だよ!」

 

 

 全身に赤い稲妻を迸らせる龍悟の姿に、オールマイトが感嘆の声を上げる。

 

 

「今の君は30%の出力を維持している。まさかこれ程の逸材だとは…」

 

 

(俺でも30%か……扱いが難しいな……)

 

 

 悟空とベジータの才能を合わせ持つ龍悟でも苦労しそうだ。

 

 

「じゃあ、これから君にやってもらう事を伝えよう! 内容は簡単! 個性を使って、このゴミの山を綺麗にするのさ!!」

 

 

「体を鍛える為ですか…?」

 

 

「それもある! だけど、一番の目的はそれじゃない!」

 

 

 

 そう言うとオールマイトはトゥルーフォームからマッスルフォームへ変わり-

 

 

 

「最近の若いヒーローは派手さばかり追い求めるけどね……ヒーローってのは、本来奉仕活動! 地味だ何だと言われても! そこはブレちゃあいかんのさ…この区画一帯の水平線を蘇らせる!! それが君のヒーローへの第一歩だ!!」

 

 

 近くにあった冷蔵庫を片手でペシャンコにしながら、そう宣言した。

 

 

「なるほど……」

 

  

 こうして龍悟の海浜公園清掃が始まった。

 

 

 

 それから龍悟は毎日海浜公園を綺麗にしていく龍悟。そのスピードは凄まじく……

 

 

「よっしゃあーーー!!」

 

 

 ゴミ一つなくなった砂浜で雄叫びを上げる龍悟。

 

 

「マジかよ……たった5ヶ月で指定した区域以外の場所まで…本当に君は私の予想を遥かに上回る!」

 

 

 オールマイトからの称賛の言葉を背に受けながら、龍悟は登る朝日を見ていた。

 

 

「こいつがお前の後継者か…良い面構えだな」

 

 

 初めて聞く声に疑問を持ち振り向くとオールマイトの他に白髪白髭の小柄な老人が居た。

 

 

「俺ぁこいつの師匠の一人のグラントリノ。一応プロヒーローの免許は持ってるが碌に活動してねぇ隠居爺だ」

 

 

「御冗談を。まだまだ現役でしょうに」

 

 

「オールマイトの師匠……」

 

 

 

 

 

 何故彼が居るのかというと…3日前……

 

 

(どうする……孫少年の事を考えると…)

 

 

 自分の予想を遥かに超える龍悟を育てる育成能力を持ってないオールマイトは嘗ての担任に連絡を入れた。

 

 

『――おう、俊典か?』

 

「……ご無沙汰しております、先生」

 

『まったくだ。お前、俺に連絡を全く寄越さねぇじゃねぇか』

 

「あ、いえ。何分色々と忙しいものでして……連絡を入れなかったのは申し訳なく……」

 

『それで? 何の用事で連絡してきた?後継者でも見つけたのか?』

 

「――相変わらず鋭い。その通りです」

 

『……ほう』

 

 

 それからオールマイトは、師にこれまでの出来事を語った。

 

 

『……なるほど、確かに逸材だな』

 

「はい…私に教育力はなく…先生に助言をと思い…」

 

『いや、今は暇だからな、見に来てやろう。場所はどこだ?』

 

「い、いえ……先生のお手を煩わせるには……」

 

『いいから教えろ』

 

「――はい」

 

 こうしてグラントリノはやって来た。

 

 

 

「早速だが、小僧…かかってこい」

 

 

 相手は老人だが…

 

 

(この爺さん…強い)

 

 

 グラントリノの気を感じ取り…龍悟は構える。

 

 

「ワン・フォー・オールはどうした?」

 

 

「まず…俺の個性を見てもらいたい…」

 

「確か…体に流れるエネルギーを身に纏い戦うんだろう…いいだろう、見せてみろ」

 

 

「いくぜ…はぁああああああっ!!」

 

 

 

 一気に気を高め、龍悟は黄金の気を身に纏う。

 

 

 逆立つ黄金の髪に鋭く細められた翡翠の瞳。

 

 

「これは…」

 

 

 オールマイトも初めて見る姿だった。

 

 

「……さぁ、始めようぜ」

 

 

 まさしく、伝説の戦士“超サイヤ人”だ。

 

 

「こりゃあ、とんでもねぇな…」

 

 グラントリノから冷や汗が流れる。

 

 

「遠慮なくいくぜ!」

 

 

 凄まじくスピードでグラントリノに迫り拳を振るう。だが、グラントリノも歴戦のヒーローだ、拳を避け蹴りを繰り出す。龍悟も蹴りを払い回し蹴りを叩き込む。

 

(足のジェットで咄嗟に後ろに飛んでダメージを逃がしている……それ程ダメージはない)

 

 龍悟の考え通りそんなにダメージはなかった。

 

 

「やるな…小僧…」

 

 

 足のジェットを駆使し迫ってくる。龍悟も気を開放し駆け出し拳を振るう。その拳を避け蹴りを叩き込んだ瞬間、グラントリノは驚愕した。

 

 

 龍悟をすり抜けたのだから……

 

「な!?」

 

 すり抜けた龍悟は幻の様に消え。本物の龍悟がグラントリノを両脇をキャッチした。

 

 

「………残像か……」

 

 

「ええ、残像拳って言うんです」

 

 

 グラントリノをおろし龍悟は自分の考えを言った。

 

「この形態のままワン・フォー・オールを使う事はできない……この超サイヤ人のままワン・フォーオールを使える様にしたいんです」

 

 

「なるほど…確かにその方が君の個性とワン・フォー・オール…両方を鍛える事ができるし大幅なパワーアップができる…」

 

 

「いいだろう……入試までにできる様にみっちりしごいてやる…根を上げるなよ」

 

 

「爺さんこそ底を見せるなよ」

 

 

 そう言いながら準備をする龍悟を……

 

 

「孫少年、君なら乗り越えられると信じてる……!」

 

 

 ゲロ吐かされまくりトラウマになったオールマイトが震えながら見守っていた。

 

 

 

 

END

 

 

 

 




グラントリノ参戦…次回・入試でその成果が明らかに、お楽しみに!


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雄英高校入試

お気に入り150人突破!
ありがとうございます!


 試験当日

 

 

「お待たせ待った?」

 

 

「いいや、今来たところだ」

 

 駅で待ち合わせをし龍悟と響香は雄英に向かった。

 

 

 

 

 筆記試験を無事終えた二人は実技試験の説明を受けていた。

 

 

「今日はオレのライブヘようこそー!!!」

 

 

 

 試験説明その第一声がこれだった。

 

 ボイスヒーロー"プレゼント・マイク"が名に恥じない声を響かせる。だが応える受験生は流石にいなかった。

 

(流石に応えるヤツはいないだろ)そう思いながら隣の響香を見てみると。

 

 

 響香(ウズウズ)

 

 

 今すぐにでも応えたい響香がいた。そんな響香と目が合う。

 

 

「ハッ!?」

 

 

 響香の顔が恥ずかしさから赤くなっていく龍悟はすぐ視線を戻した。

 

 

「こいつはシヴィー!!受験生のリスナー!実技試験の内容をサクッとプレゼンしていくぜ!アーユーレディ!?」

 

 

 実技試験の内容は10分間の【模擬市街地演習】

 

 

 道具の持ち込みは自由。各自指定のA、B、C、D、E、F、Gの試験会場に移動。

 

 

 演習場には三種類の"仮想敵"(かそうヴィラン)が多数配置されている。

 

 

 それぞれの「攻略難易度」に応じてポイントが設けられる。それを自分の"個性"で行動不能にしてポイントを稼ぐのが目標だ。

 

 

 アンチヒーローなどの行為はご法度。

 

 

 配られたプリントを見ながら説明を聞いていると突然一人の受験生が立ち上がった。

 

 

「質問よろしいでしょうか!? プリントに記載されている四種類目の仮想敵についてです!ーーこれに関する説明がなく、もし誤載ならば恥ずべき痴態ーーどうゆう事か説明を求めます!」

 

 

(スゴい奴だな)

 

 

 龍悟は叫ぶ様に説明を求める受験生に対してそう感じていた。

 

 

「オーケーオーケー!そこの受験生ナイスなお便りサンキュー!説明すると、この四体目はー"0Pのお邪魔虫"だ」

 

 

 プレゼント・マイクの言葉が会場に響き渡る。

 

 

 この四種類目の敵は0Pで倒すのはほぼ不可能。各会場に一体ずつ配置され大暴れしているギミックだ。

 

 

 最後にプレゼント・マイクから雄英の"校訓"をプレゼントされる

 

 

 かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った。

 

 

『真の英雄とは人生の不幸を乗り越えていく者』とーー更に向こうへ"PIusUItra"!!

 

 

「それではみんな良い受難を!」

 

 

 

 説明が終わると受験生たちは振り分けられた演習会場に向かった。

 

 

 

「龍悟、頑張ってね!ウチも頑張るから!!」

 

 

「響香もな」

 

 

 龍悟と響香はコツッと拳を合わせてから演習会場に向かった。

 

 

 

 龍悟達受験生はバスで指定された演習会場に着いていた。ビルほどの高さがある扉と壁は、まさに一つの街を囲めるほどだった。

 

 

 動きやすいジャージに着替えた龍悟は準備運動をする。

 

 

『ハイ、スタート!』

 

 

 プレゼント・マイクの号令で扉が開き始めた瞬間、龍悟はその隙間を通り抜けた。ワン・フォー・オール 30%で駆け抜ける。

 

『どうしたあ!?実戦じゃカウントなんざねぇんだよ!!走れ走れぇ!!賽は投げられてんぞ!?もう動いてる奴なんかいるんだぞ!!』

 

 

 

 

 

『ブッコロス!』

 

 

 

 人工音声で叫びながら突っ込んでくる2と記された四足歩行の仮想敵が4体それを確認した龍悟は円盤状の物を4つ気で作り仮想敵に向かって投げた

 

 

 

「気円斬」

 

 

 

 龍悟が投げた気円斬は4体の仮想敵を切り裂いた。そんな龍悟の背後から3Pの敵が襲い掛かってくるが……

 

 

 

『ブッー!』

 

 

 

 振り向きざまに放った拳が3Pの敵を粉砕した。

 

 

「順調だ」

 

 

 龍悟は次々と仮想敵を倒していった。

 

 

 それから数分が経ち実技試験の審査員達がいる所では、受験生達について話していた。

 

 

 

「今年はなかなか豊作じゃない?」

 

 

「特にあの逆立った黒髪の少年は凄いな!あの動きは人離れしている!」

 

 

「……これは今年は荒れるな」

 

 

 

(孫少年!頑張っているね!!)

 

 

 

 オールマイトはこの場で龍悟の活躍を見ていた。なんせ他の受験生達よりも群を抜いていた。

 

 

 

「さて、真価の問われるのはこれからさ!!」

 

 

 一人の教師がボタンを押す。それが行われる少し前、龍悟は格闘で仮想敵と戦っていた。

 

 

「さて次は……ん?」

 

 

 

 軽く呼吸を整え、新たな敵を求めて周囲を見回すと1人の少女が3体の仮想敵ヴィランに囲まれているのが見えた。形状からして3Pの奴が3体、恐らく集団で潜んでいた所に運悪く足を踏み入れてしまったんだろう。

 

 

 少女は拳を大きくして敵集団を攻撃するが、多勢に無勢なのは見るまでもない。

 

 

「見て見ぬ振りはできねぇな」

 

 

 少女の背後から襲い掛かる敵を殴り飛ばし一体に気弾を当て怯ませる。

 

 その隙に少女は大きな拳で二体の敵を粉砕した。

 

 

「助かったよ、ありがとう!」

 

「気にすんな…お互い頑張ろうぜ」

 

 

 そう言って少女に背を向けた龍悟は、新たな敵を求めて移動を開始した。そうしている間に制限時間は残り2分を切り…試験会場に変化が起きた。ビル並の大きさをした仮想敵が現れたのだ。レクチャーで話題になった0Pの巨大仮想敵…

 

 

「逃げるんだ…勝てる訳がない!!」

 

「避難だ!!」

 

 

 その巨体に恐れをなしたのか、受験生の殆どが蜘蛛の子を散らすように逃げていくなか、龍悟は周囲とは反対に巨大仮想敵に向かって滑走していた。

 

 

「あいつレベルの違いに気づいてないのか!」

 

「馬鹿かあいつは!」

 

 

 周りの声を無視して龍悟は0Pの仮想敵が暴れていたせいで建物が崩れ、そして瓦礫が発生し、その下に足を下敷きにされている少女に駆け寄る。

 

 

「私に気にせず!君まで!!」

 

「そう言われて去る奴はヒーローじゃねぇよ」

 

 

 そう言いながら龍悟は女子の足を下敷きにしていた瓦礫を撤去して女子を抱えて離れる。

 

 

「おーい!!大丈夫か!」

 

 其処にさっき助けたサイドテールの少女と眼鏡を掛けた少年が駆け寄る。

 

 

「さっきの…この子を頼む」

 

 姫様抱っこの格好になって顔を赤くする少女を預ける。

 

 

「逃げないのか………まさか、戦う気か!?」

 

 

 眼鏡の少年が声を上げる。

 

「なら、逃げるのか?確かに勝てもしない奴に挑むのは無謀だ……だが、逃げ出す奴らがーー」

 

 

――誰かの“希望”になれるのか?

 

 

 その言葉に目を見開く三人……そして龍悟は駆け出した。

 

 

 巨大敵の前に止まった龍悟は腰だめに拳を握り、金色の気を纏い超サイヤ人になる…だがこれで終わりじゃない…その体に赤い稲妻が浮かび上がる。超サイヤ人の状態でワン・フォー・オールを発動させた形態…

 

 

「これが…超サイヤ人・フルカウルだ!!」

 

 

 その力の余波に窓ガラスは割れ土煙は払われる。

 

 

「………………」

 

「凄い…」

 

「黄金のヒーロー……」

 

 

 間近で見た少年は唖然とし二人の少女から言葉が漏れる。

 

 

 巨大敵がその巨大な拳を振り下ろが……

 

 

「ビックバン・アタック!!」

 

 

 赤い稲妻が混じった蒼穹の玉がその腕を吹き飛ばしたした。

 

 

 「これで終わりだ」

 

 

 

 静かにそう言うと龍悟は右手と左手を巨大敵に向けて開き上下の手首を合わせて体をひねって右腰に置いた。

 

 

 

「か〜め〜は〜め〜」

 

 

 

 赤い稲妻と蒼穹の輝きが龍悟の手から溢れだしてくる。残った腕で巨大敵が攻撃してくるがもう遅い。

 

 

「波ぁああああああっ!!!!」

 

 

 

 龍悟が放った極大の一撃が巨大敵を打ち抜き更に遥か空の雲までも撃ち抜いた。巨大敵の爆発音が周囲に響く。 

 

 

『試験終了〜〜!!』

 

 

 プレゼント・マイクの終了の合図とともに、実技試験は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 試験から一週間、自室に居る龍悟の手には雄英高校からの手紙が握られていた。

 

 

「押すんだよな……」

 

 案内通知の紙以外に、大きい平たく丸い装置が入っていた。スイッチらしい物を押す。

 

 

『私が投影された!!』

 

 

「ダニィ!?」

 

 

『イヤー諸々手続きに時間がかかって連絡がつかなくなってしまってね、申し訳ない』

 

 

 

 画面に映っているのは黄色のピンストライプスーツと青ネクタイのオールマイトだった。

 

 

 

『実は、私がこの町に来たのは雄英に勤める事になったからなのだよ。ん?え、巻きで?いやしかし彼には伝えなければならない事が…後がつかえてる?あ~…OK、分かった。筆記は合格、そして実技120もポイントと優秀な成績で合格。素晴らしい!教員全員驚いてたよ!ちなみにだが、見ていたのはヴィランポイントだけにあらず!』

 

 

『見ていたもう一つの基礎能力、それ即ちレスキュー!何故なら!「人助け」を、「正しい事」をする人間を排斥するヒーロー科などあっていい筈が無い!綺麗事?大いに結構じゃないか!綺麗事を掲げて実践するのがお仕事さ!ちなみにこれは、厳粛な審査制!君のレスキューポイントは、囲まれた少女を助け、危険を承知で下敷きにされた少女を助け、被害を抑える為巨大敵を撃破によって80!合計200ポイント!』

 

 

 そして成績の上位十名の点数と名前が空中に投影されたスクリーンに現れた。その一番上には、龍悟の名がある。

 

 

『堂々一位の入試主席だ!おめでとう』

 

 

「っしゃぁ!!!」

 

 

 

『来いよ孫少年!ここが君のヒーローアカデミアだ!』

 

 

 

 

END

 

 

 



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個性把握テスト

お気に入り登録が200人超えました…ありがとうございます!




「実技総合成績出ました」

 

 雄英の会議室の一つで、教師兼ヒーローが集まっていて、入試の結果を論じていた。

 

 

「今年は圧倒的な奴が居たな」

 

 

「ああ、凄まじい!」

 

 

 ヴィランポイント120、レスキューポイント80。2位のヴィランポイント77と100ポイント以上の大差をつけての合格である。

 

 

「個性の扱いも上手い!エネルギーを自由自在に形を変えている」

 

 映像には龍悟が気円斬を操作し敵を倒す姿が映っていた。

 

 

「極めつけが…これか……」

 

 超サイヤ人・フルカウルになり、かめはめ波で0Pを倒す姿、これ等を見て教師陣の視線は奪われていた。

 

 

「……余りにも戦闘になれている、強すぎます…中学生とは思えない…」

 

 

 一人の教師は言う。

 

 

 

(鋭いな、相澤くん……)

 

 

「………相澤君の言う通りだ………これは内緒にして欲しいんだけどね。この孫龍悟君は、オールマイト先生の弟子とも呼べる存在なのさ」

 

 

 

『――――っ!?』

 

 

 しかし次の発言には全員が驚いた。

 

 

「こっ、校長先生?それは内密にして頂くお話の筈では――――!?」

 

 

「そうだけどね……彼、余りにも凄すぎて誤魔化しきれない………初めから言ったほうが納得できると思うんだよ…」

 

 納得する教師達を見てオールマイトは黙ってしまう。

 

 

(良くも悪くも…君は私の予想を超えるね……孫少年)

 

 

 

 

 

 雄英からの通知が来てから数カ月が経ち、季節は春となった。雄英に受かった龍悟は、雄英の制服に着替え、玄関に向かう。すると玄関には、母がいた。

 

 

「龍悟、ハンカチ持った?ティッシュ持った?スマホやお財布、生徒手帳持った?」

 

 

「全部持った」

 

 

「そう…………龍悟、似合ってるわよ」

 

 

「……行ってきます」

 

 

 家を出た龍悟は駅で待ち合わせしていた。待っていた人物が走ってくる。

 

 

「龍悟ーー!」

 

 

 遠くからでも誰なのか分かるくらいの綺麗な容姿。確実に美人の部類に入るだろう。雄英に受かった幼馴染の響香だ。

 

 

「龍悟って何時も待ち合わせ時間より早く居るよね」

 

「女の子と待ち合わせは男が待ってるもんだって母さんがな…まぁ、響香を待たせる訳にもいかねぇ」

 

「ふ〜ん……」

 

 機嫌が良くなった響香と他愛もない会話をしながら歩いていく。雄英高の入り口に着くと、オレンジ髪のサイドポニーが見えた。

 

 

「あっ…龍悟」

 

 

「よ、拳藤」

 

 

 拳藤一佳。入試で知り合った受験者。龍悟や響香と同じで今日から雄英の生徒だ。仲良く話す龍悟を不機嫌そうに見る響香。

 

「……誰?」

 

「入試の時に知り合った……なんで不機嫌なんだ?」

 

 龍悟の疑問を無視し拳藤に近づく。

 

「……龍悟の“幼馴染”の耳郎響香です。よろしく」

 

 わざと幼馴染を強調した響香の言葉を聞いた拳藤は目を細め。

 

「拳藤一佳だ……よろしく」

 

 それ以上喋らなかったが……二人の空気がギスギスしていた。

 

 

 龍悟達は決められた教室に入る。龍悟と響香は1-Aで、拳藤は1-Bで教室は別々だ。龍悟達が教室に入ると……

 

 

「机に足をかけるな!雄英の先輩方や机の製作者方に申し訳ないと思わないのか!?」

 

 

「思わねえよ!てめえどこ中だ?端役が!」

 

 

「俺は私立聡明中学出身、飯田天哉だ。」

 

 

「聡明ぃ~?糞エリートじゃねえか、ぶっ殺し甲斐がありそうだな!」

 

 

「ぶっ殺し甲斐?!君、ひどいな。本当にヒーロー志望か?」

 

 

「けっ」

 

 

 入試で見かけた眼鏡の少年がヘドロ事件の爆発頭に注意していた。

 

 

「何あのチンピラ…」

 

 響香の言葉と同感だった。龍悟に気づいた飯田と名乗った少年が近づく。

 

「君もこのクラスだったのか!俺は私立聡明中学―――」

 

 

「聞いてた。俺は孫龍悟…龍悟でいい…飯田だろ?よろしく頼む」

 

 

「ウチは耳郎響香…よろしく」

 

 

「よろしく頼む!しかしやっぱり君だったのか主席で合格したのは……君のあの言葉に感動した!特に最後ーー「てめぇが孫龍悟か?」

 

 

 話の途中で話が被せられた。

 

 

「また君か!人が話している時に割り込むなんてマナーがなってないんじゃないか?」

 

 

「うるせぇ、それよりてめぇはトップで合格したのが気に入らねぇし、あの時てめぇに救けを求めてなんかねえぞ…! 助けられてもねえ! 俺は1人でもやれたんだ。モブが見下すんじゃねえぞ! 恩売ろうってか!? 見下すなよ俺を!!」

 

 

 龍悟を指差し怒鳴る爆発頭の爆豪

 

 

「ねぇアンタ、いい加減にしてくれない?みんなの迷惑になっているのがわからないの?」

 

 

「なんだテメェは、モブは引っ込んでろ!」

 

 

「人を見下すんじゃないわよ」

 

 

「耳郎君の言う通りだ!!」

 

 睨みに怯みもせず反論する響香と飯田…今まで自分に反論した奴なんて居なかった爆豪の機嫌が悪くなる。

 

 

「何だとゴラァ!」

 

 響香に掴み掛かろうした腕を龍悟は握る。

 

「…俺に当たるならいい……負け犬の遠吠えだ、気にならん……だかな、響香や飯田に危害を加えるなら話は別だ」

   

「てめぇ……!」

 

 振り払おうとするが力が強く振り払えない……痛みに顔を歪める爆豪……周りがハラハラするなか……

 

 

「あ!その逆立った頭は!!凄い人!!」

 

「ん?」

 

 爆豪の腕を離し声の方向に顔を向けると…茶髪で丸みのある顔の女子生徒が廊下に立っていた。

 

 

「ああ、あの時の」

 

 

「うん!覚えててくれたんだ、ありがとう!入試主席って凄いね!最後なんて凄かったもん!」

 

 

 かめはめ波のが真似をして笑う少女に自然と和むクラス……爆豪と響香を除いて。

 

 

「眼中になしかよ…やろう……!」

 

 敵顔で睨む爆豪。

 

「また、女子と仲良くなって…龍悟のば〜か…」

 

 不機嫌になる響香。

 

 

 その時…「お友達ごっこしたいなら他所に行け」

 

 

 低く、気だるげな男の声がクラスを黙らせた。

 

 

 

「ここはヒーロー科だ。」

 

 

 声の主は廊下に立っている女子の後ろに寝そべっていた。黄色い寝袋に入っている無精髭の男の姿はまるで芋虫だ。

 

 

『何かいるううううううっ!?』

 

 

 クラスのみんなの心が一つになった瞬間だろう。

 

「ハイ、静かになるまで8秒かかりました。時間は有限、君たちは合理性に欠くね」

 

 

 そう言うと男はゼリー飲料を一息で飲み干し―

 

「担任の相澤消太だ。よろしくね」

 

 

 自らの素性を龍悟達に明かした。はっきり言って、とても先生には見えない。そんなクラスの心境をわかっているのか、いないのか、相澤先生は一言。

 

 

「早速だが、体操服着て、グラウンドに出ろ」

 

 

 それだけ言って、教室を出ていった。

 

 

 体操服に着替え、グラウンドに集合した龍悟達に相澤は『個性把握テスト』の実施を宣告した。

 

 いきなりすぎるという声もあがるが、先生は雄英高校は自由な校風が売り。そしてそれは先生側もまた然り。と聞く耳を持たないまま説明を続けていく。

 

 

「主席合格の孫、中学時代のソフトボール投げの最高記録は?」

 

 

「76メートルです」

 

 爆豪が睨むがそんなのゴジータからすればないも同然だ。

 

 

「じゃあ、"個性"を使ってやってみろ。円から出なきゃ何しても良い。早よ、思いっきりな」

 

 そう言われてワン・フォー・オールを30%にして投げる。その瞬間、測定用ボールは弾丸のような速さで空を飛び遥か先に落下した。

 

 ピロン、と相澤の持つ機械から音がして、ボールの飛距離――1212.4mの記録が表示される。

 

 

「まず自分の最大限を知る。それがヒーローの道を形成する合理的手段」

 

 

 いきなりの凄まじい記録を打ち立てた龍悟に、クラスは騒然となった。

 

 

「初っ端から1000オーバーってマジかよ!?」

 

 

「ナニコレ面白そう!」

 

 

「“個性”を全力で使えるなんて、流石ヒーロー科!」

 

 

「面白そう、ねえ……」

 

 誰かの不用意な一言で、相澤の周りの空気が豹変した。

 

 

「ヒーローになる為の三年間、そんな腹積もりで過ごすのかい?よし、決めた。じゃあこのテストのトータル成績最下位は、ヒーローになる見込みなしと判断して、除籍処分にしよう」

 

 

 1-A全員が絶句した。

 

 

「自由な校風が売り文句と言った筈だ。君ら生徒の如何もまた俺達の自由だ。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ!」

 

 

 挑発的な笑みに抗議の声が上がった。

 

 

「最下位除籍って、入学初日ですよ!?そうじゃなくても理不尽過ぎる!」

 

 

「自然災害、大事故、身勝手な敵。いつどこから来るか分からない厄災。日本は理不尽に塗れている。そんなピンチを覆して行くのがヒーロー。放課後マックで談笑したかったのならお生憎。これから三年間、お前達には絶えず試練が与えられていく。プルスウルトラ、全力で乗り越えて来い。デモンストレーションはこれで終わり。これからが本番だ」

 

 

 その言葉を合図に、龍悟達は体力テストを開始した。

 

 

 

―第1種目:50m走―

 

 

 「フルカウル、30%……!」

 

 

 楽勝で置いてけぼりにしてやると思っていた爆豪が、驚愕する。いつの間にか龍悟が自分の目の前に居た。

 

 

「孫・2秒55!爆豪、4秒13!」

 

 

「クソが!!」

 

「超えられてしまったか……!」

 

 爆豪は勿論さっきまで一番だった飯田が悔しがる。

 

 

「相変わらず……皆の予想を超えるな〜」

 

 

 龍悟のタイムを聞いて驚くクラスメイトと、苦笑いする響香。

 

 

―第2種目:握力―

 

 

 

「フン」

 

 

 バギ!!

 

 

「あ」

 

 

「先生!龍悟が測定機壊しちゃいました‼」

 

 

「…………測定不能……」

 

 

「……すみません」

 

 

「凄すぎや〜」

 

 

 

「「……………………」」

 

 

 龍悟が測定機をぶっ壊しそれを見ていて、周りよりデカイ数字を叩き込んでいた、障子と八百万が唖然としていた。

 

 

 

―第3種目:反復横とび―

 

 

「じゃあよーい…………スタート」

 

 

「残像拳!」

 

 残像拳を使い分身しながら左右に飛んだ。

 

 

「ピピ…測定不能…」

 

 

「………マジかよ…」

 

「忍者かあいつは…?」

 

 

 測定不能に唖然とする上鳴と瀬呂…一番自信があったのか、膝をついて悲しんでる峰田。

 

 

 

―第4種目:立ち幅跳び―

 

 

 舞空術で空を飛ぶ龍悟…

 

「孫、いつまで飛んでられる?」

 

「何もしなければ一日中浮かんでられます」

 

「……無限…」

 

 

―第5種目:長座体前屈―

 

 手から気でできた剣を伸ばす。

 

「何もなければ俺の体力が尽きるまで伸ばせます」

 

「……………………………無限………」

 

 

 

「なんでもありかよ、龍悟の奴」

 

 

 砂藤が諦めた声で言った。

 

 

 二回目のボール投げ  

 

 

「えいっ」

 

 ボールは果てしなく飛んでいき……

 

 

「麗日、無限」

 

 

「すげぇ!また無限出たぁ!」

 

「凄いわお茶子ちゃん!」

 

「えへへ」

 

「これなら龍悟に勝てるじゃねぇか!」

 

 

 

 二度目のハンドボール投げで、無限を叩き出したさっきの少女…麗日と入れ替わるように円の中へと入る。

 

 

「孫…そろそろ本気を見せろ」

 

 

 相澤の言葉に幼馴染の響香や入試で身近で見た飯田、麗日を除く全員が驚愕する。

 

 

「ウソ!?今まで抑えてたの!?」

 

「マジかよ……」

 

「……ふざけんな…!」

 

 

 

「孫…お前は凄い…推薦入学者を遥かに凌駕している、だからその力を見せろ」

 

 

 その言葉に推薦入学者の八百万は悔しそうに轟は静かに龍悟を見る。

 

 

 龍悟は静かに相澤を見る……本気の目だった……次に物陰でこっそり見ているオールマイトを見る。

 

 

オールマイト「グッ!」

 

 

 ゴーサインが出たので龍悟は気を開放し超サイヤ人になる。その余波で土煙が巻き起こり…一同は手で顔をガードする。

 

「何あれ変身した!」

 

「かっこいい!」

 

 

 超サイヤ人でテンションが上がるなか……ワナワナと震える爆豪。

 

 

「ちくしょう…!」

 

 

 其処からフルカウルを発動させる。 

 

 

「飯田君、あれって…」

 

 

「ああ、巨大敵を倒した時の姿だ……耳郎君は知っているのかい?」

 

「うん、あの金髪の姿は前から知ってるけど赤い奴は最近知ったんだ………ボール、もつかな……」

 

 響香がボールの心配をする。

 

 

 超サイヤ人・フルカウルを発動させた龍悟はボールを上に軽く投げ落ちてきた瞬間に殴り飛ばす。凄まじい衝撃と共にボールは遥か空の向こうに飛んでいき見えなくなった。

 

 

「よくボールもったな〜」

 

 

 響香を除く誰もが開いた口が塞がらない中……

 

 

「……やっぱりか………無限…」

 

 

 

 

 記録を言う相澤の言葉が静かに響いた。

 

 

 

 

END

 

 

 




次回は個性の説明ですお楽しみに!


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放課後の一時

すみません。戦闘訓練ではなく放課後の話です。





 龍悟はそのまま超サイヤ人・フルカウルのままで残りもやった言うまでもなく全部トップだった。

 

 

「さてと、結果発表だ。順位は単純に各種目のスコアの合計でつけてる………一名おかしな奴が居たが……口頭で一つ一つ発表なんて時間の無駄だから一括開示で行く」

 

 

 空中に投影された二十人の順位で当然の如く龍悟が一位、響香が8位だった。4位の爆豪はわなわなと震えていた。龍悟にボロ負けもそうだが、それ以外にも更に二人も上がいることに我慢ができない様子だった。

 

 

 しかし最下位成績の少年、峰田実は自分の名がある場所を見ながら口を半開きにして呆然と立ち尽くしていた。やっとの思いで入れてすぐまた放り出されるなんて、あんまりすぎる。

 

 

「ああ、ちなみにだが、除籍処分の話は嘘な」

 

 

「はい?」

 

 

 

「最大限を引き出して限界値を知る為の、合理的虚偽」

 

 

「はああああああああああああああ!?!?!?」

 

 

「あんなの嘘に決まってるじゃない。ちょっと考えれば分かりますわ」

 

 

(いや……最初は最下位どころか悪ければ全員除籍処分する気だった)

 

 

 八百万の言葉を龍悟は否定する……最初に宣告した時の目は本気だった。

 

 

 こうして波乱の個性把握テストが幕を閉じた。

 

 

 

 それぞれが戻る中、龍悟はこっそり来ていたオールマイトの所に向かう。

 

 

「見に来てたんですか…オールマイト」

 

「君なら問題ないと確信はしていたけど…やっぱり気になってね!相澤君も度肝を抜かれたようだし……流石だよ孫少年!!」

 

 

 その後、教員が龍悟がオールマイトの弟子と知っている事を伝えるとオールマイトは去っていった。

 

 

 龍悟も更衣室で制服に着替え教室に向かっていた。龍悟が更衣室に行った時はもう誰もいなかった。龍悟が教室に入ると。

 

 

「……………どうしたお前等……」

 

 

 クラスの大半に囲まれた。

 

 

「龍悟君!君の個性は何なんだ!?ビーム放つは変身するは気になってしょうがない!」

 

「教えて龍悟君!」

 

 

 飯田や麗日は勿論……

 

 

「あのパワーは何なんだ!」

 

「どういった個性ですの!」

 

 

 皆に質問攻めされた。

 

 

「ゲロっちゃった方が良いよ龍悟…隠す理由なんてないし」

 

 

「響香の言う通りだな………話すから落ち着け」

 

 

 

 少しづつ落ち着いてくる。

 

 

「まず…俺の個性は【大猿】だ」

 

 

『大猿?』

 

 ハテナを浮かべる皆の前で腰に巻いていた尻尾を動かす。

 

 

「そ、お父さんの狼男の個性とお母さんの生命力の個性が混ざり合った個性なの……満月を見たら大きな猿になるらしいの……幼い時に一度しかなった事がないみたいで見た事ないけど」

 

 響香の説明でも大半がハテナを浮かべていたが……

 

 

「つまり…龍悟君が放ってたビームは……生命力と言う事か……?」

 

 

「飯田の言う通り…厳密には俺の個性因子から作り出された特殊なS細胞から発せられるエネルギーだ……それを高め体に纏ったのがーー」

 

 龍悟は超サイヤ人になる。

 

「この超サイヤ人だ……名前は気にするな」

 

 気にするなと言われ名前には触れなかったが、まじまじと見る。

 

「金髪になっているし目の色も変わってるわ…」

 

「では…最初に体に浮かんだ赤き稲妻は?」

 

 蛙吹が観察する中、常闇がフルカウルについて聞いてくる。

 

 

 超サイヤ人を解除してフルカウルを発動する。

 

「これは…フルカウル、超サイヤ人とはまた違った強化形態だ……そしてこの2つを合わせたのがーーこの超サイヤ人・フルカウルだ」

 

 

「組み合わせる事もできるのか……」

 

 

「相当苦労したけどな……」

 

 

 障子の言葉に疲れ気味に龍悟は返した……本当に苦労したようだ。

 

 

「把握テストでもうわかってたけどA組最強は龍悟君で決定だね!」

 

 

「そうやね!入試なんて凄かったんよ!」

 

「ああ、あれは凄まじかった」

 

 入試の時を楽しく話す麗日と飯田にクラスの空気は温かくなる。

 

 

「クソが!!」

 

 

「………」

 

 

 爆豪は忌々しく思いながら帰り。

 

 轟は静かにクラスを正確には龍悟を見ていた。

 

 

(轟はともかく……爆豪は昔の(ベジータ)よりひどくないか……?)

 

 

 その事に気づいてる龍悟はそんな事を考えていた。

 

 

 こうして高校生生活1日目はこうやって終わりを告げるのだった。

 

 

 

END

 

 



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戦闘訓練・前編

個性把握テストの翌日。意外にも、翌日から普通の授業が行われていた。プレゼント・マイクの英語の授業など、あまりに普通過ぎて逆についていけなかった。

 

 

 そして昼休み…龍悟は響香と麗日・飯田と食堂に来ていたが……麗日と飯田は開いた口が塞がらなかった。

 

 

「龍悟君ってこんなに食べるのか……」

 

「胃袋まで凄いんや………」

 

 

 龍悟は全部得盛りで、天ぷらざる蕎麦とカツ丼に焼き肉定食。それからカルボナーラとミックスピザのLサイズ。デザートにチョコレートパフェ……

 

 

「やっぱり驚くよね……前に二人でスタミナ○郎に行ったら出禁になったもん」

 

 

 耳郎が遠い目をしながら言った。

 

 

 そうしている内に昼休みは終わり、午後の授業。本日のメインイベントが始まった。

 

「わ〜た〜し〜が!普通にドアから来た!!」

 

 

 午後から遂に始まる"ヒーロー基礎学"ーー先生は勿論、オールマイトだ。その登場にクラスの皆は大盛り上がり。

 

 

「すげぇ!本当にオールマイトだ!!」

 

「銀時代のコスチューム着てるけど、本当に先生やってるんだ!?」

 

 

 クラスメート達からの憧れの眼差しを受けながら、教壇に立ったオールマイトは高らかに宣言する。

 

 

「ヒーロー基礎学! ヒーローの素地をつくる為、様々な訓練を行う科目だ!!早速だが今日はコレ!! 戦闘訓練!!」

 

 戦闘訓練。その響きに、全員のボルテージは更に一段階アップする。

 

 

「そしてそれに伴ってこちら!」

 

 壁の一角が突き出て出席番号を振ったケースを入れた棚を露にする。

 

 

「入学前に送ってもらった個性届と要望に沿ってあつらえたコスチューム!着替えたら順次グラウンドβに集まる様に!格好から入る事も大事だぜ、少年少女!自覚するんだ、今日から君達はヒーローだと!」

 

 

(懐かしいな……)

 

 

 龍悟はカプセルコーポレーションで制作してくれた嘗ての自分の服……正確には融合戦士の服を着ていた。

 

 

「龍悟は、動きやすそうだね」

 

 

 響香が声を掛けてきた。響香は一見軽装だが、靴が装備重視の物だった。

 

 

「おーい龍悟君!響香ちゃん!」

 

 

「「麗日………」」

 

 

 頭頂部から顔を覆うバイザーを見るに宇宙飛行士をモチーフとしたのか、麗日のコスチュームはピンク色のSFチックなデザインとなっていた。

 

 

「響香ちゃんクールな見た目でかっこいいやん…私ちゃんと要望書けばよかったよ……パツパツスーツんなった。恥ずかしい……」

 

「そうだな……」

 

「半裸な龍悟君には言われたくない///」

 

 龍悟の鍛えられた肉体を赤面しながら見る麗日を胸に手を当て響香は………

 

 

「これからだから……」

 

 そう呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

「うんうん、良いじゃないか!全員カッコいいぜ!さあ始めようか、有精卵ども!戦闘訓練の時間だ」

 

 

 

「先生!」

 

 

 

 ロボットの様なコスチュームの飯田が挙手した。

 

 

 

「ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか?」

 

 

「いいや、今回はその二歩先に踏み込む。ヴィラン退治は主に屋外で見られるが、合計で言えば、出現率は屋内の方が多い。監禁、軟禁、裏商売。真の賢しいヴィランは闇に潜む。君らにはこれからヴィラン組、ヒーロー組に分かれて二対二の戦闘訓練を行ってもらう」

 

 

「基礎訓練も無しに…?」

 

 

 蛙吹が若干心配そうに呟く。

 

 

「その基礎を知る為の訓練なのだよ。ただし、今回はぶっ壊せばオーケーなロボが相手じゃないのがミソだ」

 

 

「勝敗のシステムはどうなっているのでしょうか?」

 

 

「ぶっ飛ばしても良いんすか?」

 

 

「また相澤先生みたいな除籍とかは‥‥?」

 

 

「別れ方とはどのように決めるのでしょうか?」

 

 

「このマントやばくない?」

 

 

 

「んん~~~聖徳太子ぃ!」

 

 

 さりげなく懐からカンペを取り出そうとしたが、すぐその手を引っ込めた。グラントリノに叩き込まれた事を思い出したからだ。

 

 

「うぉっほん!状況設定はヴィランがアジトのどこかに核兵器を隠していてヒーローはそれを処理しようとしている。ヒーローは制限時間内にヴィランを捕まえるか、核兵器を回収するか、ヴィランはヒーローを捕まえるか時間一杯まで核兵器を守り切れば勝利となる。チームは、厳正なるくじで決める!」

 

 

「そんな適当な!」

 

 

 

「落ち着け飯田…他の事務所と即興で連携を求められる事もある、そう言う先を見据えた事だろう…」

 

 

「なるほど確かに。失礼いたしました!」

 

 

「いいよ。それでは早速!」

 

 

A 孫龍悟・麗日お茶子

 

B 障子目蔵・轟焦凍

 

C 峰田実・八百万百

 

D 爆豪勝己・飯田天哉

 

E 芦戸三奈・青山優雅

 

F 口田甲司・砂藤力道

 

G 上鳴電気・耳郎響香

 

H 蛙吹梅雨・常闇踏影

 

I 尾白猿夫・葉隠透

 

J瀬呂範太・切島鋭児郎

 

 

 

「やっぱり!縁があるね、よろしくね!」

 

 

「ああ、よろしく」

 

 

 確かに何かと縁があるなと龍悟は思った。

 

 

「続いて、最初の対戦カードはこれだ! ヒーローがAチーム! 敵がDチームだ!」

 

 

 龍悟は爆豪の方を見る。爆豪の残忍な笑みは昔のベジータよりも凶悪だ。麗日なんか龍悟の背中に隠れてしまった。

 

 

 戦闘訓練をまだ行わない生徒たちはオールマイトと共にモニタールームに向かった。

 

 

「敵チームは先に入ってセッティングを、ヒーローチームは五分後に潜入してスタートだ。飯田少年、爆豪少年、敵の思考を良く学ぶように。これはほぼ実戦、怪我を恐れず思いっきりな。度が過ぎたら中断する。」

 

 

「はい!」

 

 

 敵チームは核兵器の張りぼてがあるビルの最上階に向かった。飯田は爆豪に作戦を考案しようとするが……爆豪は聞く耳持たずだった。

 

 

 爆豪は既に怒りのダム決壊の半歩手前まで来ていた。最初に通知が届いて結果を見た時に、目を疑った。敵ポイントだけでも自分より遥かに上だったのだ…そして個性把握テストでもボロ負け…

 

(もう少しだ…全力で死なない程度に叩き潰して俺より下だとわからせてやる……!)

 

 

 

『それではAチームvs Dチーム、屋内対人戦闘訓練スタート!』

 

 

「…行くか」

 

「うん!」

 

 

 目標のビルへと向かった龍悟達は、正面玄関を避け、裏手の窓から侵入。龍悟は直ぐに飯田と爆豪の気を感じ取る。

 

 

「見つけた…最上階の真ん中に大型の物体。その前に陣取っている1人…飯田だな。そして…こっちに近づいてくるのが、爆豪だな」

 

「わかるの!?」

 

「俺は相手の生命力を感じる事ができる……このくらい訳ない…」

 

「なるほど…」

 

「あと10秒で接触する…気をつけろ」

 

「オッケー!」

 

 

 予想通り、爆豪が曲がり角で奇襲を仕掛けてきた。

 

「死ねぇ!!」

 

 

 右の大振りから放たれた爆破をサイドステップで避ける。

 

「クソが!」

 

 

 避けられるとは夢にも思っていなかったのだろう。距離を取る爆豪。

 

 

「こいつは任せろ……麗日は確保を頼む」

 

 

「う、うん!」

 

 意外な事に何の妨害もなく、麗日は上の階へ向かう事が出来た。

 

 

「意外だな……行かせるなんて…」

 

 

「ハン!てめぇを潰しちまえば、あんな“没個性”の丸顔なんて訳ねぇんだよ!」

 

 

「……………くだらん……」

 

 

「んだと……!」

 

 

「そういう…自分の物差しでしか相手を測れず見下すお前をくだらないと言ったんだ……馬鹿らしい」

 

 

 龍悟はベジータの記憶にある戦闘力と言う数値でしか相手を測れないフリーザ軍の雑兵を思い出した。

 

 

 爆豪の顔がどんどん凶悪になる。だが龍悟は顔色一つ変えない。

 

「 ポーカーフェイス気取りやがって!てめぇは俺より下なんだよ!!」

 

(トランクスや悟天より遥かに酷い………教育に口を酸っぱく言っていたチチの言う事が良くわかる……)

 

 

 柄でもなく子育てはチチの様に熱心にやろうと誓った。

 

 

「死ぃねぇぇぇっ!」

 

 先程と同じく右の大振り。籠手もある為、まともに食らえば鈍器で殴られるぐらいの衝撃は伝わるだろう。しかし、龍悟はその場を殆ど動かず避ける。

 

「避けんじゃねぇ!!」

 

 爆破しようとする腕を掴み引き寄せ顔面を殴り飛ばした…バウンドしながら爆豪は吹き飛ばされる。

 

 

「…………ふざけんな!!」

 

 

 フラフラしながら起き上がり爆破で加速しながらこちらに向かってくるが龍悟はその場から動いていない……今度は左の爆破だが、無駄だった。既に動きは見切っており。爆破を掻い潜り、懐に踏み込み左腕を掴み膝蹴りを脇腹に叩き込む。

 

「ぁ……ぐ……!?てめぇ…」

 

 腹を抑えながら後退る……

 

「そのタフネスだけは認めてやるよ……」

 

 龍悟は表情を変えず言った。

 

 

 その時、爆豪の右腕の籠手が一瞬赤く光った。右手の籠手をこちらに向け―

 

 

「もう解ってんだろうが、俺の爆破は掌の汗腺からニトロみてぇなもん出して爆発させてる。『要望』通りの設計なら、この籠手はそいつを内部に溜めて…てめぇをぶっ殺す!!」

 

 

 血走った目で、籠手のトリガーに手をかける。オールマイトが止めるが聞く耳持たず。

 

 

 そして次の瞬間、ビル全体を揺らし、その一角を吹き飛ばすほどの大爆発が発生した。

 

 

「は、ははははは!!」

 

 

 爆豪の笑い声が響く、だが……

 

 

「……これで満足か?」

 

 

「ハァッ…!?」

 

 

 煙の中から超サイヤ人になった龍悟が歩いてくる……爆豪は信じられない物を見る目で唖然としてる……

 

 

「どうした?笑えよ爆豪…」

 

 

 龍悟の言葉も聞こえてないだろう……龍悟は右手をかざす。

 

 

「攻撃はこうやるんだよ……ビックバン・アタック!!」

 

 

 放たれた蒼穹の玉は爆豪に直撃し爆豪の意識を完全に刈り取った。確保テープを気絶した爆豪に巻き付け、耳の通信機で麗日に連絡を入れる。

 

「麗日…こっちは片付けだ…そっちは?」

 

 

『ごめん、気付かれた。おまけに浮かせられるもんが無いからなんも出来ん!核兵器持ってあんなに走れるなんてずるい!』

 

 

(向こうは回収させずに時間一杯粘る腹積もりか)

 

「直ぐに向かう」

 

 

 そう言って核兵器がある部屋に向かう。

 

 

「飯田く…じゃない。敵に告ぐ! そんな事をしても意味はあらへん! 大人しく投降しなさい!」

 

「馬鹿め! こっちには核兵器があるんだぞ! こいつを爆破されたくなかったら、お前達こそ降伏しろぉ!」

 

 

 そこでは追いつけないと考えた麗日が飯田に対して投降を呼びかける形で足止めを図っていた。

 

「待たせたな。麗日」

 

「あ、龍悟君!」

 

「後は任せろ!!」

 

 そう言って飯田に駆け出す。

 

「クッ!だが、諦めはしない…行くぞ龍悟君!!」

 

 飯田も覚悟を決めて蹴りを入れる…が、それは確かに龍悟に当たったかと思われたが……龍悟が幻の様に消え蹴りは空を切る。

 

「な、何だと!?」

 

 余りの不思議な光景に驚愕する。

 

「まだまだだな…」

 

 龍悟の声が横から聞こえ振り向くが既に遅し…  

 

 

「確保だ」

 

 体には確保証明のテープが巻きつけてある。

 

 

「回収!」

 

 

 麗日も隙をついて核兵器にタッチした。

 

 

『屋内対人戦闘訓練、ヒーローチーム…WIN!!』

 

 

 

 

「やったね!龍悟君!!」

 

 

「………ああ!」

 

 

 二人は手を上げハイタッチをした。

 

 

 

 

END

 

 

 

 

 



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戦闘訓練・後編

「さぁ、AチームvsDチームの講評の時間だ! まずは、今回のMVPを当ててみよう!分かる人!」

 

 

 

 モニタールームに移動した龍悟と麗日、飯田を迎えたオールマイトが、龍悟達の戦いを見ていたクラスメート達に意見を求める。なお、爆豪は搬送ロボに保健室まで運ばれていて不在だ。

 

 

「はい!」

 

「うむ! 八百万君!」

 

 

「飯田さんと、龍悟さんです。」

 

 

「うむ、正解だ。では何故?」

 

 

「飯田さんはこの状況設定に最も順応していたからです。相手の『個性』を理解し、核の争奪を想定していました。龍悟さんはやはり一番活躍したから、と言えば適切でしょう。相手の位置を瞬時に把握し、最終的に敵チームを確保したのは彼一人ですし…その他は、麗日さんも飯田さんと対峙した後、無理に敵を刺激せず、説得を続け龍悟さんが駆けつける時間を稼いだ点が良かったと思います。そして、爆豪さんですが…独断専行、私怨丸出しの戦闘、核兵器があるにも関わらず、室内での大規模攻撃を発動する。正直申し上げて、褒めるべき点が見当たりません!以上の点から龍悟さんと飯田さんが今回のMVPだと考えます」

 

 

 思ったより言われたオールマイトは、たじろいだ。

 

 

「……う、うむ! 非の打ち所が無い完璧な講評だ!」

 

「常に下学上達! 一意専心に励まねば、トップヒーローになど、なれませんので!」

 

 

「そ、それでは! 第2試合の組み合わせを発表しよう!」

 

 

 その後は爆豪みたいな問題行動は起きず戦闘訓練は終了した。   

 

 

 

 

 

 放課後、龍悟達は教室に残り、戦闘訓練の反省会を行った。参加したのは全員で18人。轟はとっとと帰ってしまい……爆豪だが…クラスメート達の引き留めも無視して、さっさと帰ってしまった。

 

 

 今、龍悟は机の上で砂籐と腕相撲をしていた。砂籐は歯を食いしばり力を入れるが龍悟は涼しい顔でピクリとも動かない。 

 

 

 やがて、龍悟は軽々と砂籐の手を机に付け勝利した。

 

 

「クソ〜手も足も出ねぇ!!」

 

 

 砂籐は悔しそうに顔を歪める。

 

「凄えよな〜パワーも砂籐より上だしスピードも飯田より早いし、爆豪よりセンスがある……最強マンじゃん」

 

 上鳴が感心したような様子で言う。

 

 

「その通りだ………悔しいものだ……」

 

「最後に使ったのは残像拳と言ってな……瞬間的にスピードを上げ残像を作り上げる技だ……修行しだいで飯田もできるようになるだろう」

 

 

「本当か龍悟君!?……瞬間的か…今後の課題だな」

 

「悔しい…なんも出来んかった……私も龍悟君みたいに格闘技始めようかな?」

 

「いいと思うぞ……触れるだけでいい麗日の個性と噛み合っている……損は無いはずだ」

 

 

 飯田と麗日にアドバイスをしていると……

 

 

「なぁ龍悟!俺はなんかないか!?」

 

「私にも教えてくれない!?」

 

「博識ですのね」

 

「うおおお~意外と知的だね!」

 

 

 其処からクラスの皆にアドバイスを求められた。

 

 

「ならさぁ!皆でマックに行かない!」

 

「いいね!其処で反省会もしようよ!」

 

 

 楽しそうに騒ぐA組を見て龍悟は……

 

 

「フッ」

 

 

 温かい微笑みを浮かべていた。

 

 

「龍悟ちゃんって決して無愛想じゃ無いのね………素敵な笑顔だわ」

 

「蛙吹……」

 

「梅雨ちゃんって呼んでほしいわ」

 

「………梅雨ちゃん」

 

「ケロ♬」

 

「早く行こう龍悟!」

 

「響香ちゃんも呼んでるし早く行きましょ」

 

 

 笑いながら蛙吹は教室を出る。

 

 

 教室に差し込む夕陽が静かに龍悟を照らす。

 

 

「………これが友情と言うものなのかもな…悟空…」

 

 

 温かい笑みを浮かべながら龍悟は皆の後を追った。

 

 

 

 

 

END

 

 

 

 




復活のフュージョンのゴジータなので基本的にポーカーフェイスだけど決して無愛想ではない優しいヒーロー設定でいきます。


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無敵との出会い

お気に入りが五百人を超えました!
ありがとうございます!


「昨日の戦闘訓練、お疲れ」

 

 時間通りに始まったHR。シンと静まり返った教室に相澤の声が響く。

 

 

 

「Vと成績見させてもらった訳だが…爆豪、くだらない事をするな……ガキじゃないんだから」 

 

「クソが……」

 

 爆豪が龍悟を睨むが龍悟は平然としている。

 

 

「さてと、本題のホームルームだ。急で悪いが今日はお前らに——」

 

 

 A組の生徒は全員直ぐに身構えた。もしや、臨時のテストかと……

 

 

「学級委員長を決めてもらう」

 

 

 学校っぽいのきたー! そんな声が周囲から一斉に飛び出し、次々と手が上がっていく。

 

 

「はい!やりたいです!それ俺が!」

 

「リーダーやるやる!」

 

「おいらのマニフェストはスカートの丈は膝上30センチ!」

 

 

 クラスを率いる学級委員長。普通ならば雑務が増えて誰もやりたがらないが、ここはヒーロー科だ。即ちリーダーとして集団を導くトップヒーローの素地を鍛えられる役目だ。我こそがと手を上げる。

 

 

「静粛にしたまえ!」

 

 

 クラスの喧騒は飯田の一喝で沈下した。

 

 

「他を牽引する責任重大な仕事だぞ、やりたい者がやれる事ではないだろう!周囲からの信頼があってこそ務まる政務だ、民主主義に則り真のリーダーを皆で決めると言うのなら、これは投票で決めるべき議案!」

 

 

「いや、一番腕が聳え立ってる奴に言われてもなあ…‥」

 

 

「それに一週間も経ってないのに信頼も糞も無いわ、飯田ちゃん」

 

 

「だからこそ!だからこそ、複数票を取った者こそが真に相応しい人間という事にならないか?どうでしょう先生!?」

 

 

「時間内に決めれば何でもいいよ」

 

 

 いつの間に寝袋に入ったのか、相澤は投げやりな返事を返してそのまま教壇のすぐ横に寝そべった。

 

 

 そして投票の結果、ほぼ全員が自分に票を入れる結果となった。唯一票が割れたのはそれぞれ三票と二票入った龍悟と八百万だった。

 

 

「はぁ!?何で変身野郎に!?」

 

「少なくともお前に入れる馬鹿は居ねぇな」

 

「んだと、てめえもっぺん言ってみろや!」

 

「………一票……一体誰が………」

 

「他人に入れたのね」

 

「お前もやりたがってたのに、何がしたいんだ」

 

 

「じゃあ、委員長は孫、副委員長は八百万だ。決まり」

 

 

 投票で出た結果で仕方ないとは言え八百万は悔しがらずにはいられなかった。

 

 

 

 午前中の授業も無事に終わり、龍悟達は昼食の為に大食堂に移動していた。

 

 

 龍悟はカツ丼、親子丼、天丼、牛丼の大盛りを完食した……麗日も飯田もなれたようだ。

 

 

「そういえば龍悟、学級委員長に選ばれた気分はどう?」

 

 響香が話をふってきた。

 

 

「そうだな…俺は飯田に入れたんだがな…」

 

「あれは君だったのか…」

 

「ああ…あの時、飯田だけがクラスをコントロールして投票の流れに持って行ってた…クラスをまとめるのに適していると感じたからな」

 

「ありがとう龍悟君……でも“僕”は君が相応しいと思ったんだ」

 

「僕?」

 

「あ、いや、それは……」

 

「もしや飯田君、坊ちゃんなの?」

 

 

 ストレートに言われた飯田も動揺を隠せなかった。

 

 

「ぼっ……!?そう言われるのが嫌で一人称を変えていたんだが…俺の家は代々ヒーロー一家でその次男なんだ。ターボヒーローインゲニウムは知ってるかい?」

 

 

「勿論だ。東京の事務所に65人ものサイドキックを雇っているトップヒーロー…そうか……」

 

 

「そう!それが俺の兄さ!」

 

 

 飯田は立ち上がりながら胸を張った。

 

 

「規律を重んじ、人を導くヒーロー。俺はそんな兄に憧れてここに来た!」

 

 

「なんか…初めて笑ったかもね。飯田君」

 

「え、そ、そうか!? 笑うぞ、俺は!」

 

 

 その時、龍悟の頭に肘をぶつけようとする奴が居たので手を後ろにして受け止める。

 

 

「ずいぶんなご挨拶だな」

 

「なっ!?…ふっ…君の頭が大きいから当たりそうだっただけだよ」

 

「……謝罪もなしか…」

 

 振り返ると金髪な優男が立っていた。

 

「お〜怖、君、本当に入試トップなの?目つき悪」

 

 

 明らかに敵意むき出しで笑いながら煽ってくる。

 

「いきなり何だ君は!?失礼にも程があるぞ!」

 

 飯田の注意も笑って無視する。

 

 

「そういえば君達A組だけが入学式にいなかったよね。あれ〜、これってA組だけハブられているんじゃないかな~。入学式ってさ、何回も経験できるものじゃないよね。それを逃すなんてさ君らは疫病神なんじゃないかな。あ〜やだ、その不運さで敵を引き寄せたりしないでおくれよ。迷惑だ「オメェ、いい加減にしろよ」ヒィ!?」

 

 

「黙って聞いてりゃ言いたい放題言いやがって……俺は……“オラ”達は楽しく談笑しながら昼飯を食べていたのに、それをオメェは笑いながら土足で踏み荒らしやがって」

 

 睨みつける龍悟に優男は顔を青くしながら膝が震えていた。

 

 

「いい加減にしろ!」

 

「おふっ!?」

 

 

 後ろからオレンジ髪の少女に首筋辺りに手刀を受けて気絶する優男。

 

 

 彼女は拳藤一佳…入試以来よく話す事がある少女だ。

 

 

「ごめん。龍悟、こいつ心がちょっとアレなんだ」

 

「拳藤…こいつなんなんだ?」

 

「私と同じB組の生徒だよ」

 

「君は入試の時の…」

 

「拳藤一佳、よろしく」

 

 

 優男をそこら辺に座らせて龍悟の隣に座り……

 

「よろしくな……耳郎さん」

 

「ウチこそよろしく……拳藤さん」

 

 響香と意味深な挨拶をした。

 

 拳籐が優男の事で謝るがそれは拳籐のせいではないと龍悟達は気にしなかった。

 

 

 そのまま雑談をしてると……突然、大音量のサイレンが大食堂、いや校舎全体に鳴り響いた。

 

『セキリュティ3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください』

 

 

 

「セキリュティ3って何ですか?」

 

「校舎内に誰か侵入してきたって事だよ! 3年間でこんなこと初めてだ! 君達も早く非難しろ!」

 

 

 飯田が近くのテーブルにいた3年生に状況を教えてもらうが既に避難しようとする学生で入り口は完全に塞がっている。

 

「どうしよ…!」

 

「とにかく避難だ!」

 

「龍悟…どうしたの?」

 

 飯田達が避難の準備をする中、龍悟は意味深な顔をしていた。龍悟はスマホを取り出すと相澤に電話する。

 

『龍悟か……侵入者はマスコミだ。俺達が対処するから心配するな…』

 

 その言葉に周りに居た響香達が安堵する、だが……

 

「いや、既にこの校舎に侵入してる二人組が居る…」

 

「『!?』」

 

 龍悟の言葉に響香達や相澤ですら驚愕した。

 

『………確かか…』

 

「ああ……邪な気を放つ奴が居る…まず間違いなく首謀者だ…」

 

『クソ!俺達はマスゴミで対処できん……孫、まさか』

 

「俺なら直ぐにその場所に行ける……だが、俺は仮免すらない……」

 

『それで俺に連絡をか………正直に言えばお前はそこいらプロヒーローより強い“あいつ等”に匹敵する。まず負ける事はない、だが……』

 

 

 悔しそうに言う相澤に表情を暗くする響香達……

 

 

「なら、俺が同行するなら…どうですか、イレイザーヘッド」

 

 

 その声に振り返ると金髪で大柄の鍛え抜かれた肉体を持つ少年が居た。

 

(強い…)

 

 

 少年から放たれる爆豪や轟を遥かに凌駕した気と悟空とベジータの戦士の直感が本物の強者だと教える。

 

 

『その声…通形か!』

 

「ここを通り掛かったら校舎に首謀者が居るって聞こえて……無視できる筈がないですよ」

 

『その男は通形ミリオ…雄英のトップ“ビッグ3”の一人だ……当然、仮免を持っている』

 

「雄英のトップ!?」

 

「この人が…!」

 

『孫!通形を連れて首謀者の所に迎え……恐らく破壊特化の個性とワープの個性を持つ二人だ……無理に捕縛しようとするな、被害者を出さずに撃退しろ!責任は全て俺が持つ!!』

 

「わかりました」

 

 電話は終わった。

 

「通形先輩、俺の肩に捕まってください」

 

 通形は龍悟の肩に手を置いた。

 

「龍悟!」

 

 響香や皆が不安な目で見てくる……

 

「大丈夫だよ……一目でわかった、彼は強いって…それは君達が一番わかってるんじゃないかな」

 

 通形が言うが…不安そうにしてる皆に……

 

「侵入したのがマスコミだとわかれば皆落ち着きを取り戻すはずだ……皆、ここは任せた!」

 

 

 龍悟は響香達にできる事を伝えた。

 

 

「………無茶しないでよね」

 

「怪我したら許さないからな!」

 

「無事に帰ってくるんよ!」

 

「こっちは任せてくれ!」

 

 

 響香・拳籐・麗日・飯田の言葉に龍悟は微笑み……

 

 

「行ってくる!」

 

 

 通形を連れて悟空の得意技“瞬間移動”をした。

 

 

 

 

END

 

 

 

 

 




ちなみに龍悟に入れたのは…響香・麗日・飯田です。


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忍び寄る悪意

お気に入り550人突破!
本当にありがとうございます。


 

 瞬間移動で消えた龍悟と通形を見て少し唖然としたが直ぐに響香達は行動に移した。

 

「何か目立つことをして注意を惹きつける。そしてマスコミだと伝えれば!」

「目立つ事…そうだ! 麗日君! "個性”で俺を浮かせてくれ!そして耳郎君、拳籐君、俺を安定させてくれ!」

 

 飯田が麗日に自分を浮かすよう求めた。其処から、浮き上がった飯田は耳郎のプラグと拳籐の大拳で体制を整え。

 

「ぬぉぉぉぉぉっ!!」

 

 自らの”個性"『エンジン』を使って、一気に加速。大食堂入り口の非常灯付近の壁にぶち当たる。上のパイプを掴んだ飯田は非常口のドアを目指す棒人間のポーズをとると。

 

「大丈ー夫!!ただのマスコミです! 何もパニックになる事はありません! 大丈ー夫!!ここは雄英! 最高峰の人間に相応しい行動を取りましょう!!」

 

 声を振り絞り、見事にパニックを鎮めてみせた。

 

「こっちは大丈夫だよ龍悟…」

 

 響香は龍悟の無事を静かに祈った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄いね…ワープができるなんて」

「生物が近くに居ないと発動できないが…まぁ、便利な技だ」

 

 瞬間移動をした龍悟と通形の目の前には二人の不審者がいた。一人は黒い霧を身に纏うバーテン服の男性もう一人は黒一色の上下に、顔に謎の手をつけている男性。

 

 

「……いきなり現れたぞ…お前と同じ類か“黒霧”」

「そのようですね……今後の為にも消すべきかと…“死柄木弔”」

 

 黒い霧を纏う黒霧が手を付けた男性、死柄木に状況報告をする。

 

 

「ここの人じゃないですよね……ご同行願いますか」

「所詮ガキ二人……さっさと殺すぞ」

 

 通形の忠告を無視し死柄木は遅いかかってくる。

 

「龍悟君は霧の方を頼む!こいつは任せろ!」

 

 死柄木は通形を標的にして右手で触れようとする。

 

(恐らくこいつがバリケードを破壊した…触れられるのは危険だ……逃げられる可能を考えて個性を暴く)

 

 通形はこれまでの経験から今後の為に個性を暴く事を優先し近くにあった消化器を掴み振り下ろされる右手に合わせる様に振るう。

 

 すると、握られた消化器が崩れ落ち、崩壊した。

 

「無駄な事しやがって…大人しく死ねよ」

 

 死柄木がそのまま通形に触れようとする…

 

「これで終わり…」

 

 だが、触れる瞬間、死柄木は通形をすり抜けた……

 

「は?」

 

 何が起きたかわからない死柄木……

 

「これが君の個性か……知れて良かったよ」

 

 通形は振り返る事を予測して振り返った死柄木の顔面に右ストレートを叩き込んだ。

 

「死柄木弔!」

 

 黒霧が殴り飛ばされた死柄木に叫ぶが……

 

「何処見てんだよ…」

 

「!?」

 

 超サイヤ人になり黒霧の後ろに高速移動した龍悟に左の裏拳からの左回し蹴りで吹き飛ばされる。

 

「いい動きだね!龍悟君!」

「先輩こそ凄えパンチだな…」

 

 お互いがお互いを賞賛して壁に叩きつけられた二人を囲む。

 

 

「糞ガキが……」

「もう逃げられないぜ、観念しな」

「……………やむ得ません…!」

 

 黒霧が身に纏ってる霧を大きくすると……

 

「何だ…こいつは……!」

 

 其処から脳が剥き出しで爪が刃の様に鋭く肌色は薄緑色で大柄の異形が現れた。これには流石の通形や龍悟も驚きを隠せなかった。

 

「行きなさい!“脳無”!」

「オオオオオオ!!」

 

 黒霧の言葉を聞くと異形……脳無は雄叫びを上げながら爪を伸ばしてきた。

 

 龍悟と通形は避けるが…

 

「生きていれば、また会いましょう」

 

 その隙に黒霧が死柄木を連れて逃げようとする。

 

「逃がすか!」

 

 龍悟が捕らえようとするが……脳無が口から炎を吐いたのだ。

 

「何だと!?」

 

 慌てて回避するが…死柄木達は消えていた。

 

「逃げられたか…」

「元より撃退が命令だった………それよりも奴だ、龍悟君……一体何なんだ…異常発達の爪…炎を吐く…」

 

 通形の経験ですらこんな異形は居なかった……だが、龍悟(ゴジータ)はこれと似た奴を知っていた。

 

「…俺は自分の生命力…気を操ることができる、そして相手の気を感じる事もできる……あいつからは複数の人間の気を感じるんだ……強引に組み込まれたみたいに…まるで絵の具の様にぐちゃぐちゃに混ぜたみたいに…」

 

 その人物はセル……悟空が戦った、サイヤ人やナメック星人、フリーザの細胞等、様々な生物の細胞をかき混ぜた人造人間だ。気は違うが…気の在り方がセルと似ていたのだ。

 

「あいつは…複数の細胞を持っている……恐らく個性因子を…」

「つまり……人工的に複数の個性を持った敵って事か…そんな事があるなんて…!」

 

 その時、脳無の筋肉が膨れ上がった。

 

「ブースト個性もあるのか……此処で戦ったら被害が酷くなる一方だ!」 

「先輩、俺がアイツごと瞬間移動で外に運ぶ…そして一気に倒す!」

「先輩を頼ってくれよ……俺も一緒に行く」

「なら……さっさと終わらせる!」

 

 脳無が先程より早いスピードで襲い掛かるが……龍悟と通形には掠りもしない。通形が龍悟の肩に捕まり、龍悟が脳無に触れると…

 

「行くぞ!」

 

 脳無と通形を連れて瞬間移動をした…行き先は食堂の窓の外…食堂に居た響香の気を感知して移動したのだ。

 

「龍悟!?」

 

 窓の外に現れた龍悟達に驚愕する食堂に居た響香達。

 

「先輩!」

「任せろ!」

 

 通形はすぐさま脳無を殴り飛ばして食堂から離れさせる。

 

「今だ!龍悟君!」

 

「か……め……は……め……波ぁぁああ!!」

 

 其処に超サイヤ人・フルカウルに変身した龍悟のかめはめ波が脳無を飲む込みグラウンドに激突した。

 

 落ちている通形を掴み脳無の直ぐに近くに瞬間移動をする。

 

「孫、通形!!」

 

 其処にマスコミを追い返した相澤が走ってきた。

 

「すみません、イレイザーヘッド…首謀者二人には逃げられました…」

「いや…お前達はよくやってくれた……それで後ろに居る奴は……」

「黒霧と名乗るワープ個性が呼び出した敵です……信じられませんが複数の個性を持つ脳無と呼ばれた改造人間です……」

 

 龍悟の説明に驚愕したが直ぐに沈黙している脳無を捕縛すると………

 

「孫、通形……済まないがこれから首謀者やこの脳無についてわかった事を教えてくれ……緊急会議に参加してほしい」

 

 当然、承諾した龍悟と通形は緊急会議に参加した。

 

「ーーー以上がこれまでの経緯です」

「ご苦労だったね…通形君。さて、脳無と言うものについてわかった事はあるかい孫君」

「まず、気は一人一人違うんです…同じ事はまずありえない……ですがあの脳無は複数の人間の気を持っていたんです…そして複数の個性……恐らく細胞の混成や薬物などによる改造を施して無理矢理、複数の個性に耐えられる体にしたと思います……その代償でしょう…意識はもうないと…」

 

 胸糞悪く言う龍悟の言葉に教員達はなんとも言えない表情をした……

 

「………とにかく大金星だ……ありがとう」

 

 校長の感謝の言葉を受け…龍悟と通形は退出した。

 

「ありがとうございます…助かりました」

「俺の方こそ、一人だったら被害が大きくなっていたかもしれない…俺達、良いコンビかもな!」

 

 その言葉にお互い笑みを浮かべそれぞれの教室に向かった。

 

 

 教室に戻った龍悟、すると……

 

「龍悟!」

 

 響香やクラスの皆が心配そうに駆け寄る。

 

「窓にいきなり龍悟と通形先輩……化物が現れて…ほんとに心配したんだから…」

「…………俺は見ての通り無事だ…心配するな」

 

 その言葉を受けて少しづつ表情が明るくなる……

 

「食堂の方は…大丈夫だったか…?」

「うん、飯田君がなんとかしてくれた」

「いやあれは麗日君達が協力してくれたからこそ…!」

 

 自分の力だけではないと言う飯田に……

 

「やっぱり委員長は飯田こそが相応しいな…」

「龍悟君……!」

 

 龍悟は一つのカードを見せる。

 

「これは…仮免を持っていない奴でも"個性"の使用をしたヒーロー活動の許可をする、仮免の仮免みたいな物だ…もし一学年が敵に襲われた時、教師が対応できない場合に俺が戦う為にさっき渡された」

 

 その言葉に一同は驚愕する。

 

「だから、俺が居ない時に皆を纏める奴が必要だ…飯田…お前なら安心できる…相澤先生には話は通してある、引き受けてくれるか…?」

 

「…………そう言われたら、断る訳にはいかない……けど!僕等はヒーロー志望だ!何時までも君に頼り放しではいけない!必ず共に戦える様に強くなってみせる!」

 

 飯田だけじゃない皆、同じ強い目をしていた……

 

「フッ……そうこなくちゃな」

 

 

 こうして飯田が1-Aのクラス委員長に就任したのだった。 

 

 

 

 

END

 

 

 




龍悟が渡されたカードはそれを持っている者のヒーロー活動の責任は渡した者……この場合は雄英が背負う設定です。


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一章・USJ襲撃!
USJ 襲撃


USJ編に突入です。
それではどうぞ!


 マスコミの起こした騒動から数日後。

 

 龍悟達A組はヒーロー基礎学の時間であり、教室で相澤から内容が話される。

 

「今日のヒーロー基礎学は俺ともう一人も含めての三人体制で教えることになった。――内容は“人命救助”訓練だ。――今回は色々と場所が制限されるだろう。ゆえにコスチュームは各々の判断で着るか考える様に」

 

「レスキュー…今回も大変そうだな」

「ねー!」

「バカおめー、これこそヒーローの本分だぜ!? 鳴るぜ!! 腕が!!」

「水難なら私の独壇場。ケロケロ」

 

 人命救助レスキュー訓練に対し、それぞれの思いを口にするクラスメート達。龍悟も静かに気合を入れる。

 

「訓練場は少し離れた場所にあるから、バスに乗って移動する。出発は20分後だ。以上、準備開始」

 

 

 

「こういうタイプだった! くそう!!」

「どんまい!」

 

 訓練場行きのバス。その車中で頭を抱える飯田。

 

 バスに乗り込む際、委員長らしく誘導したのは良いが、バスの座席が所謂2人がけの前向きシートばかりではなく、横向きのロングシートも混在した仕様だったのだ。これでは出席番号順に並んでいても意味がない。龍悟達はそれぞれ適当に座席に座り、バスは出発した。

 

 龍悟はロングシートのすぐ後ろ席に座りその隣に響香が座る。バスの移動中でもA組の者達は会話を始めてゆく。それは蛙吹の言葉から始まった。

 

 

「私思った事を何でも言っちゃうの。龍悟ちゃん」

「どうした、梅雨ちゃん」

「あなたのフルカウルって技…オールマイトに似てる気がするのよね」

「そうか………まぁ、フルカウルはオールマイトをイメージして作り上げた技だ」

 

 蛙吹の発言に少しは驚いたが顔に出さずに嘘と本当を混ぜた話で誤魔化した。

 

 

「でもさ、増強型のシンプルな“個性”はいいな! 派手で出来る事が多い!俺の『硬化』は対人じゃ強ぇけど、いかんせん地味なんだよなー」

「そうか?プロでも十分やっていけるとは思うが…」

「プロなー! しかしやっぱヒーローも人気商売みてぇなとこあるぜ!?」

「そういう意味で考えたら轟、爆豪も派手で強いってことになるか?」

「爆豪ちゃんはキレてばっかだから、人気出なさそうね」

「――ハァッ!! 出すわゴラァ!! こんな変身野郎よりもメッチャ出すわぁッ!!」

「ほらキレる」 

 

 蛙吹の鋭い指摘に逆ギレし、龍悟を指さしながら叫ぶ爆豪だったが、蛙吹はどこか納得する様に呟く。

 

 

 それから話している内にバス移動が終わり、到着したのは遊園地のような訓練所だった。様々な災害を再現したアトラクションのような場所。

 

「すっげーーー!!USJかよ!!?」

 

 切島はテンションが上がっている。

 

「水難事故、土砂災害、火事……etc.エトセトラ。あらゆる事故や災害を想定し、作られた…ウソの災害や事故ルーム(USJ)!!」

 

 

 訓練場の規模に驚きの声を上げた切島の声に答えるように現れたのは、今回の講師の1人である…宇宙服のようなコスチュームを着て、頭まで隠しているスペースヒーロー「13号」災害救助でめざましい活躍をしている紳士的なヒーローだ。

 

「わー! 私好きなの13号!」

「13号、オールマイトは? ここで待ち合わせる筈だが」

「先輩それが…通勤時にギリギリまで活躍してしまったみたいで、仮眠室で休んでます」

「不合理の極みだな、オイ」

 

「えー、始める前にお小言を1つ2つ…3つ…4つ…」

 

 丁寧に指を折りながら、話す内容を確認した13号先生は、俺達全員の顔を見渡し、話し始めた。

 

「皆さんご存知だとは思いますが、僕の“個性”は『ブラックホール』。どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます」

「その“個性”で、どんな災害からも人を救い上げるんですよね」

「ええ…しかし、簡単に人を殺せる力です。皆の中にもそういう“個性”がいるでしょう」

 

 その言葉に龍悟は反応した……戦闘民族サイヤ人は簡単に人を殺せる力を持っている。

 

「超人社会は『個性』の使用を制限し、厳しく取り締まる事で一見成り立っているように見えます。しかし一歩間違えば容易に人を殺せる容易に死人を出せる能力を個々が持っている事を忘れないでください。体力テストで自身が秘めている可能性を知り、対人戦闘訓練でそれを人に向ける事の危うさを思い知った筈です。ですので今回はこの場でそれを人命救助にどう活かせるかを知ってもらいます。君達の力は人を傷つける為ではなく、助ける為にあるのだと心得て帰ってくださいな。以上、ご清聴ありがとうございました」

 

 終わりと共に惜しみない拍手と歓声が挙がった。

 

「ッ!!」

 

 その時、龍悟の全身に謎の悪寒が駆け巡る。フルカウルを発動し反射的に顔をその場所――噴水のある中央広場へと向ける。相澤も何かに気づいたようにUSJの中央広場にある噴水付近に目を向ける。見ると黒い霧状のモヤ突然出現し、少しづつ大きくなり広がっている。

 

「あれは…この前の敵!!」

 

 龍悟の言葉にこの場に居る全員が反応する。霧からこの前の掌で顔を覆っている男……死柄木の登場を皮切りに、続々と『個性』持ちの人間が出てきた。ざっと見て数十人はいる。そして最後に、今まで出てきた中で一番の巨体を持つ脳味噌が露出した黒い化け物……脳無がのそりと姿を晒した。

 

「この前、龍悟と通形先輩が倒した化物!!」

 

 響香が叫ぶ。クラスの皆も脳無の不気味さに震える。

 

 

 黒い霧の男…黒霧が目を細めた。

 

「13号にイレイザーヘッドですか。先日頂いた教師側のカリキュラムではオールマイトがここにいる筈なのですが‥‥」

「どこだよ、せっかくこんなに大衆引き連れて来たのにさ…平和の象徴、オールマイトがいないなんて。子供を殺せば来るのかな?」

 

 途方もない悪意が動き出す。

 

「先生! 侵入者用のセンサーは!?」

「ありますが……反応しない以上、妨害されているのでしょう」

「そう言う個性持ちがいんのか。――場所・タイミング……馬鹿だがアホじゃねぇぞあいつら」

「……用意周到。無差別じゃなく、目的ありの奇襲だ」

 

 八百万・13号・轟・龍悟が事態の把握をする中、相澤はイレイザー・ヘッドとして動き出だす。

 

「13号! お前は生徒を避難させろ。上鳴は学校へ連絡を試みろ!………孫、万が一は頼んだぞ…」

 

 戦闘態勢を取る相澤へ13号と上鳴は頷く…龍悟は見て感じた事を話した。

 

「手だらけの奴は触れた物をなんでも崩壊させる………そしてあの黒い脳無……この前のより遥かに強い……先生の戦闘スタイルじゃ…俺も行ったほうが」

 

「……覚えておけ。一芸だけじゃヒーローは務まらん。任せたぞ」

 

 直後、相澤は敵集団へと飛び込んでいった。

 

 

 

 その間に出入り口に向かって13号が生徒達を誘導していくが、いつの間にか黒霧が立ち塞がっていた。

 

「させませんよ」

 

 龍悟は直ぐ様皆の前に出て構える。

 

「まさか、あの強さで一年とは思いませんでしたよ…」

「尻尾巻いて逃げ帰った奴が何が目的だ」

 

「此処は龍悟君に任せて俺達は救助を呼ぼう」

 

 話している内に飯田静かに指示を出す。

 

「では、名乗りましょう。我々は敵連合。僭越ながらこの度ヒーローの巣窟、雄英高校に入らせて頂いたのは、『平和の象徴』オールマイトに息絶えて頂きたいと思っての事でして。本来ならばここにオールマイトがいらっしゃるはず。何か変更があったのでしょうか、まあそれとは関係なく、私の役目は――」

 

 ペラペラ話して居る隙に攻撃しようと飛び出そうとしたが…飛び出した爆豪でタイミングを逃してしまった。

 

「何をやってるんだ!爆豪君!!」

「うるせぇ!変身野郎に手柄取られてたまるかよ!」

「危ない危ない……そう…生徒といえど優秀な金の卵」

 

 吹き飛ばしたのはあくまでの黒い靄もやの一部。その奥に見える本体は無傷な上に-

 

「馬鹿野郎!!」

「駄目だ! どきなさい爆豪君!」

 

 龍悟や13号の射線に被ったせいで攻撃が出来ない。

 

「散らして…嬲り殺す!」

 

 次の瞬間、黒い靄もやが大きく広がり、龍悟達全員を包んでいく。飯田が何人かを靄の外に引っ張り出したのを感じた龍悟は叫んだ…

 

「頼んだぞ!飯田!!」

「!」

 

 その叫びは飯田に届いた。

 

 

 

 次の瞬間、十数メートルの高さに出た龍悟は驚いたものの直ぐに此処が水難ゾーンと把握し中心にある船の上に着地した。甲板には既に蛙吹と峰田の二人がいる。後者は何故か腰を痛そうにしているが………

 

 

「無事だったか…何よりだ」

「しかし、大変な事になったわね」

「ああ、奴らは周到に準備を重ねてきてる。オールマイトを殺すっていうのもあながちハッタリじゃない」 

「ちょ、ちょっと待てよ! オールマイトを殺すなんてそんな事出来っこねぇよ! オールマイトが来たら、あんな奴らケッチョンケッチョンだぜ!」

「峰田ちゃん…出来る出来ないは別にして、殺す算段が…少なくとも可能性くらいはあるから、連中こんな無茶してるんじゃないの?そこまで出来る連中に、私達嬲り殺すって言われたのよ? オールマイトが来るまで持ちこたえられるのかしら? オールマイトが来たとして…無事に済むのかしら」

「りゅりゅ龍悟!!」

「梅雨ちゃんの言う事は最もだ…戦って勝つしか無い。それに、向こうは具体的な作戦を練る時間をくれるつもりはない…とりあえず二人の個性を教えてくれ」

 

 龍悟はそれぞれの“個性”を確認する。

 

「…脱出の算段がついた」

「本当か! 龍悟!」

「龍悟ちゃん、水を差すつもりはないけど…向こうはこちらの“個性”を把握しているから、妨害されたりしないかしら?」

「その点に関しては問題ない。この水難ゾーンに梅雨ちゃんが居る」

「どういう意味?」

「つまり、俺等の“個性”はわかってないって事だ」

「たしかに…蛙の私を知っていたら、水難ゾーンじゃなく、あっちの火災ゾーンに放り込むわね」

「俺達の“個性”がわからないからこそ、バラバラにして、数を頼りに攻め落とすって作戦にした言う事だ。梅雨ちゃんは峰田を連れて合図したらとにかく思い切り陸に向かって飛んでくれ」

「分かったわ」

「峰田は飛んでいる間、水に向かってモギモギを投げまくれ。多ければ多いほどいい。」

「ちくしょう!わーったよ!やりゃ良いんだろやりゃあよお!こうなったら自棄だクソッタレ―!!」

「峰田ちゃん、本当にヒーロー志望で雄英に来たの?」

「うっせーよ!ここに来て怖くない方がおかしいだろ!!この間まで中学生だったんだぞ!入学早々殺されそうになるなんて誰が思うかよ!あああああああ!!!こうなるんなら八百万のやおよろっぱいに触っときゃ良かったーーー!!」

「八百万は勿論…響香や麗日…女子に本当にそんな事したら俺がお前を潰すからな…」

 

 とりあえず釘は指しておく…

 

「準備はいいか!行くぞ!!」

 

 次の瞬間、龍悟はフルカウルを発動して飛び。船を囲むように浮かんでいる敵達に向けて-

 

「デトロイトスマッシュ!」

 

 40%の出力で空中を思いっきり殴る。強烈な衝撃波が水面に炸裂し、湖底が露出するほどに周囲の水を一時的に吹き飛ばす。

 

「梅雨ちゃん! 峰田!」

 

 そこへ峰田を抱えた蛙吹が飛び!

 

「おいらだって! おいらだってぇ!!」

 

 更に峰田が頭からの出血も厭わずに“もぎもぎ”を投げ続ける。

 

 水面に強い衝撃を与えたら、水は一時的に広がりまた中心に収束する為に渦となる

 

「ぐっ、渦に、ひ、引きずりこまれる!」

「それにこの丸いのなんだよ! くっついて、取れねぇ!」

 

 “もぎもぎ”を取ろうともがく敵達。だけどそうするうちに新しい“もぎもぎ”がくっついて、敵同士もくっついて、最終的には-

 

「一網打尽だな」

「とりあえず、第一関門突破って感じね。凄いわ2人とも」

 

 水難ゾーンでの危機を脱した龍悟達は瞬間移動で麗日達の居る入り口に移動する。

 

 

「龍悟君!」

「無事か……飯田は?」

「飯田君は救助を呼びに行った……で、でも、13号先生が…」

 

 13号を見ると…背中に傷を負い倒れていた。

 

「靄の奴は……」

「皆でなんとか放り出して…その隙に飯田君が…」

 

 麗日の目には涙が溢れそうだった……芦戸も泣き、障子や砂籐、瀬呂もやるせない表情をしていた。

 

「お茶子ちゃん…」

 

 蛙吹も何も言えなかった。

 

「…………よく、頑張ったな……お前等の行動は無駄じゃねぇ」

「龍悟君……」

 

 麗日の頭を静かに撫でる。

 

「梅雨ちゃん…皆を頼む」

 

 龍悟は静かに相澤が戦ってる広場に歩き出し…超サイヤ人・フルカウルになる。そして、麗日達に振り返り微笑みながら……

 

「もう、大丈夫!俺が居る!!」

 

 その姿は【あいつならなんとかしてくれる】そう思わせてくれる悟空の姿と重なった。

 

 

END

 

 

 

 




次回!脳無との激突です!


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激戦!対平和の象徴VS最強のサイヤ人!!

お気に入り600人突破!!
ありがとうございます!!


 広場に飛び出した龍悟は相澤を囲む雑魚達に奇襲をかけ殴り飛ばし相澤の隣に立つ。

 

「孫…助かった!」

 

 黒霧が再び戻って来た。

 

「黒霧、13号は殺ったのか?」

「行動不能には出来たものの、散らし損ねた生徒がいまして……一人逃げられました」

「は?はぁ~!!」

 黒霧の報告に手を全身に付けた男…死柄木弔の首を掻きむしるスピードはエスカレートして行く。

 

「黒霧……お前……お前がワープゲートじゃなかったら粉々にしたよ…!流石に何十人ものプロ相手じゃ敵わない。ゲームオーバーだ。あーあ、今回はゲームオーバーだ。帰ろっ…ぐほぉ!!」

「ふざけるなよ……こんな事しておいて……!」

 

 龍悟が隙を逃す筈もなく殴り飛ばした。

 

「ふざけやがって!チート野郎が……!行け脳無!!」

 

 死柄木は痛みで顔を歪ませながらも地面から立ち上がり、近くに居る黒い脳無へそう言い放った。

 

「相澤先生は首謀者の二人を!!」

 

 龍悟は気を開放して脳無の顔面を思いっきり……

 

「デトロイトスマッシュ!!」

 

 殴るが……

 

「なっ!?」

「効いてない…のか…」

 

 脳無は全くダメージを負った気配がなく、反撃の拳を振り下ろしてきた。ギリギリのところでそれを避け、距離を取ると死柄木が楽しそうに手を叩いているのが視界の隅に見えた。

 

「なかなかの強さだけど…残念。脳無には『ショック吸収』の“個性”があるから、打撃は一切通用しない」

 

「なら!ビックバン・アタック!!」

 

 手の平から放たれたビックバン・アタックが命中し脳無に決して浅くない傷が刻まれる。

 

「はああああああっ!!」

 

 其処から無数の気弾を撃ち込んでいく。脳無が煙に包み込まれ姿が見えた頃には……

 

「………化け物め…」

 

 胸には無数の傷、脚にも痣があったその体は、十秒と経たずに復元した。相澤の呟き通り化け物だ。

 

「…だめか…」

「当たり前だろ?言ったじゃないか、こいつは対オールマイト用の敵だ。叩こうが潰そうが切り刻もうが、ショック吸収と超再生があるからどれだけダメージを与えた所でぜーんぶパーだ。肉片をゆっくり抉り取るぐらいの事はしないと。面白い『個性』を使うみたいだけど、ガキ如きが倒せるような相手じゃない。」

 

 死柄木は殴られた痛みに顔を引きつらせながらも笑う。死柄木の笑い声が響く…入り口で見ていた麗日達の顔にも相澤の顔にも苦痛の表情があった。それを見て更に愉快になったのか笑い声が大きくなる…だが、その笑い声は……

 

「だからどうした」

 

 龍悟の言葉で終わりを告げた。

 

「は?」

「ショック吸収?超再生?あぁ凄いな、だからどうした?何勝手に勝った気になっている」

 

 龍悟(ゴジータ)はこれ以上にヤバイ奴を知っている…確かに再生能力はセル位だろう。だが、自分(ベジータ)が自爆技“ファイナルエクスプロージョン”で粉々にしたのに肉片同士が集合、または肉片が燃えて出た煙から復活した魔人ブウに比べれば可愛い方だ。

 

「な、何意気がってやがる!お前に倒せるものか!!」

「確かに、この超サイヤ人・フルカウルじゃ勝つのは難しいだろう…だがーー」

 

「ーー何時、これが限界だと言った?」

 

 その言葉に全員が反応した。

 

「まさか…孫、上があるのか……」

「そんな、ありえません!!その姿でさえ、並のプロを超えているのに更に上があるなど!ましてや一年に!」

 

 相澤と黒霧の言葉を聞きながら…龍悟は気を高めた。

 

「フルカウルと合わせる調整が終わったばかりでやったら明日は筋肉痛で寝込んじまうが……皆を苦しめた貴様等を叩き潰すためだ…はああああ…!!」 

 

 龍悟を中心に全方向に衝撃波が放たれる。その場に居る者は腕を交差させ耐える…やがて衝撃波が止み龍悟に顔を向けると……

 

「これがーーー」

 

 龍悟が発動したのは超サイヤ人2だ…悟空とベジータの融合である龍悟(ゴジータ)には2になる感覚が残っている…感覚があるなら変身などゴジータにはたやすい事だった……問題はワン・フォー・オールと合わせる事だった……調整は完了したが…万が一を考え発動しなかったのだ……本来の超サイヤ人2はそこまで超サイヤ人と変わらないが蒼白い稲妻が体の周り発生しているがワン・フォー・オールと同調させた事で皮膚は所々が赤くなり蒼白い稲妻は赤い稲妻に変わっていた。

 

 

「超サイヤ人(セカンド)だ!!」

 

 明らかに変化した龍悟を見てハッタリではない事を悟った死柄木は叫ぶ。

 

「何なんだよ…何なんだよ!!お前は!!?」

「…俺か?俺は悟空でもベジータでもない……貴様等を倒す者だ」

 

 龍悟は流れるようにすり足のまま脳無に迫る。脳無も凄まじい速さで迫り殴りかかるが紙一重で避け無数の連撃を叩き込む。脳無も負けじと攻撃するが全てがワンパターン…強さと速さがあっても技術のない攻撃など龍悟(ゴジータ)には掠りもしない。

 

 徐々に脳無が押し負けていく。

 

「なんでたよ!打撃は効かねぇ筈だ!!」

「脳無の個性は無効じゃなく吸収……まさか…吸収しきれない程の連打を…」

 

 相澤の推測通り…龍悟の無数の連撃に耐えきれなかったのだ。

 

 そのままアッパーで空中に吹き飛ばし瞬間移動で懐に移動する。苦し紛れに殴りかかるがそれを受け流しその勢いを利用して回転し廻し蹴りを押し込む様に叩き付け脳無は地面に激突する。

 

 

 両手を上げ赤い稲妻が走る蒼穹の光弾を作り出し放つ…

 

「スターダストフォール!!」

 

 放たれたそれはいくつにも別れ、星屑の様に降り注ぐ。脳無は気弾に打ちのめされ其処は光しか見えなくなり、龍悟は瞬間移動で相澤の近くに移動する。

 

 やがて、脳無の姿が見えてくる…無数の連撃とスターダストフォールで再生が間に合わない程のダメージを負っていた。

 

「…何やってんだよ!!立て!あのガキを殺せ!!」

 

 子供の様に喚く死柄木を無視し龍悟はトドメの一撃に入る。

 

「これで終わりだ!!はああああ!!」

 

 龍悟も両手を肩幅に開いたまま前に突き出し、巨大な赤い稲妻が走る青白い光の球を前方に作り上げる。

 

「やらせるものですが!!」

 

 黒霧が妨害しようとするが…

 

「っ!?発動できない!!?」

「孫!!決めろ!!」

 

 相澤が個性を抹消し防ぐ。

 

 

「ビックバン・かめはめ波!!!!」

 

 かめはめ波を凌ぐ威力で放たれた一撃は脳無を飲み込み壁を吹き飛ばし遥か彼方に飛んでいった。

 

 

「凄え……」

「なんて強さだ……」

 

 それを唖然と見る入り口に居る障子達…

 

「勝ったんや……龍悟君が勝ったんや!!」

 

 麗日の叫びが皆に“龍悟の勝ち”を確信させる。

 

「やったあー!!」

「ケロケロ!!」

 

 皆が喜びを露わにする。

 

 

「う、嘘だろ!?あの脳無が…先生の最高傑作が!あんな餓鬼なんぞになんで負けんだよ!?」

「予想外すぎる………!?」

 

 逆に死柄木達は“脳無の負け”を確信してしまい唖然とする。

 

「……」

 

 龍悟は超サイヤ人Ⅱを解除し膝を付く。まだ、体に馴れさせていなかったので流石に反動がデカかった。

 

「よくやった……後は任せろ!」

 

 相澤が龍悟の前に立ち構える。

 

「流石に直ぐには動けない筈!あの子供は危険です!今ここで排除しなければ!」

「そうだな…そうだよ…そうだ…。やるっきゃないぜ…危険な芽は摘まないとな。何より…脳無の敵だ。中ボスくらいはクリアして帰らないと……」

 

 死柄木達が迫ろうとしたその時…

 

 ズドッ!!

 

 突如、銃声が鳴り響いた。そして死柄木の手が銃弾で撃たれていた。

 

「ごめんよ生徒達よ。……遅くなってしまった。怖い思いをさせてしまったね。全く己に腹が立つ…!後輩らがどれだけ頑張ったか!!でも、だからこそ言わせて欲しい!もう大丈夫!私達が来た!!」

 

「すぐに動ける者をかき集めて来た」

 

「1-Aクラス委員長、飯田天哉!!ただいま戻りました!!!」

 

 

 平和の象徴オールマイト。

 

 その後ろには雄英のプロヒーローの教師陣が勢揃いていた。

 

「糞!撤退だ!!」

 

「逃がさん!カロライナスマッシュ!!」

 

 オールマイトは目にも止まらぬ速さで死柄木達に接近し、クロスチョップをするが黒霧のワープゲートで死柄木を飲み込み、避けられる。

 

「クッ!逃がす訳には!!」

「今回は失敗だったけど…今度は必ず殺すぞ、平和の象徴オールマイト」

 

 すると死柄木は龍悟の方を向く。

 

「……お前さえ、お前さえ邪魔しなければ上手くいったんだ!必ず殺ろーー」

 

 其処から先は言えなかった…なぜなら…

 

「ケジメつけてもらうぞ…!」

 

 右手を銃の形にした龍悟の指から放たれた気弾が死柄木の顔面に…正確には右目に命中した。

 

「ぎゃああああ!!目が目があああ!!」

 

 死柄木は右目に鮮血を散らしながら狂気に顔を歪ませた。

 

「殺してやる!!お前だけは!!殺してやるぞ!!」

 

 その叫びを最後に死柄木達は消えた。

 

 

 

「孫少年…本当に君は自慢の弟子だ…飛ばされた皆は私達に任せてくれ」

 

 そう言いオールマイトは飛び立ち相澤も他のエリアに走り出した。

 

 入り口に戻ってきた…龍悟に……

 

「龍悟君!!無事か!!」

 

 飯田がフルスロットルでこちらに向かって来た。

 

「……よく来てくれたな……おかげで助かったぜ……ありがとよ…」

「龍悟君……ありがとう……!」

 

 言葉を噛み締めながら言う飯田に苦笑するが……飯田らしいと思っていた。

 

「龍悟君!!」

 

 更に麗日が抱きついて来た。

 

「悔しいよ…ヒーロー志望なのに龍悟君に頼ってばかりで…そんな自分が情けなくて……!」

 

 その言葉に入り口に居た者達は表情をくらくするが…

 

「戦うばかりがヒーローじゃねぇ……命を救ってこそのヒーローだ……お前達が飯田を行かせた事で雄英のヒーロー達がここに来て…飛ばされた皆が助かる……ここに居る皆の気は一つも減ってない……飛ばされた皆は生きている……」

「龍悟君の言う通りだ!皆が僕を行かせてくれたからヒーローを呼べたんだ!!」

 

 涙を流す麗日の顔をコスチュームに付属している止血用のタオルで拭く。

 

「泣いたら全然麗かじゃないぜ…笑ってこその麗かだ」

「ありがと……龍悟君」

 

 龍悟の胸に顔を埋める麗日の頭を優しく撫でる……

 

「ーーーねぇ龍悟、今どんな状況?」

 

 その声と共に肩を叩かれた瞬間、撫でる手が止まった。

 

 ギギギと錆び付いた様な音を立てながら振り返ればそこにはとてもいい笑顔になっている響香がいたーーーだが、龍悟は気付いていた。目が笑っていないことに。

 

「…響香…えっと…その……」

「チンピラを倒して戻ってきたら…なんで麗日が龍悟に抱きついてるの?」

 

 龍悟にはさっきの脳無より強い迫力を感じていた。何時の間にか皆離れているし…響香の後ろには上鳴と八百万が居た。

 

「いや〜耳郎がメッチャ強くてさ……地面に隠れてた奴も地面抉って倒していたし…助かったぜ」

「殆ど響香さんが倒しましたわ……情けないですわ」

 

 

「麗日…そろそろ離れたら?」

 

 響香が麗日を引き剥がそうとするが……

 

「………嫌や…」

 

 麗日は拒否し更に強く抱きつく……

 

「……なら!ウチだって!!」

 

 響香も抱きついて来た。

 

「なっ!響香ちゃん離れたら!!」

「嫌だし!!麗日こそ離れたら!!」

 

 言い合いを龍悟を挟んでしており龍悟もポーカーフェイスが崩れ困惑の表情が取れなかった。その様子を蛙吹達は微笑ましく見ていた……峰田と上鳴は血涙を流していたが……

 

「彼の一番の敵は恋心だね!!」

「そうですね…」

 

 校長と教師のスナイプ…そして…

 

「青いわ……」

 

 ミッドナイトの呟きが響いた。

 

 こうして襲撃事件は終わりを告げた。

 

 

END

 

 

 




Ⅱの赤い皮膚はワンピースのギアセカンドをイメージしました。


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新たな可能性

 その後は雄英教師達の活躍でA組の皆は無事に保護され雄英に戻ってこれた…龍悟は首謀者と対立した事もあり警察に事情聴取を受け別行動だが…

 

「……あの黒い脳無って奴がオールマイトを倒す切り札だと聞き出したが…龍悟が倒したのか?」

「あ!?嘘吐いてんじゃねぇカス!オールマイトを倒せる切り札が変身野郎なんかに負ける訳ねぇだろが!」

 

 男子更衣室。制服に着替えていた轟は障子にそう聞き返していた。しかし、障子がそれを肯定する前に、近くでその会話を耳にしていた爆豪が声を荒げて噛み付く。

 

「……ボロ負けしたくせになんか扱いとはな……嘘じゃない…凄いパワーとスピードで俺達は見てるだけしかできなかったが、戦った龍悟いわく『強さがあっても技術がない』と言っていた…動きを完璧に見切ったんだろう掠りもしなかった」

「それに龍悟、更に変身したんだぜ!!」

 

 峰田の言葉に飛ばされた者達は驚愕する。

 

「まじか!!」

「まじまじ…超サイヤ人Ⅱって言って…体に赤い稲妻を纏ってるんだぜ!!」

「トドメにビックバン・かめはめ波って凄え技で勝ったんだ!!」

「……その姿、是非とも拝見したかった」

「だが、龍悟の凄さを知ると同時に頼ってばかりではヒーローにはなれない事を知った…」

「そうだな……」

 

「負けられねぇ……」

「…ふざけやがって」

 

 その言葉を聞きながら轟と爆豪は呟いた。龍悟が緊急時の個性使用許可を得た事を知った轟は決意を爆豪は敵意を燃やした。だからこそ、今回の襲撃で貢献し認めてもらおうと考えた。だが、戻ってきたころには既に脳無は龍悟に倒されていた。自分達が敵達を倒すより先に集団の敵と脳無を倒した龍悟に差を感じずにはいられなかった。今だに認めようとしない爆豪と違い轟は悔しくても龍悟が一番だと認めていた。

 

(あいつを超えなきゃ俺はクソ親父を超えられねぇ)

 

 

 

 

 

 夢を見た…隣には綺麗な女性が居てその隣にも何人か居て…その中にオールマイトも居た…

 

(何だこれは…喋れねぇ…鼻から下がないのか…足もないし……動かせるのは右手だけ…オールマイトの奥にも二人…俺を含めて八人…)

 

「なぜ抗うんだ?僕と共に征こう愚かで可愛い弟よ」

「間違っているからだ…許してはならないからだ…兄さんの全てを」

 

 目の前には黒いスーツを着た男とみすぼらしい男が言い合いをしていた。どちらも顔は見えない。

 

「酷い言い草だ。僕は歩み寄っているのに…」

「あんたは自分を満たす事しか考えていない!」

 

(俺に気づいていない…俺は眠りについたはず…これは…過去の再現か……まさか、ワン・フォー・オールが関与しているのか…)

 

 その後、信じられない光景を見た…個性を持つ男と持たない男が現れスーツの男が二人に触れるとーー

 

 ーー持っていた者の個性が持っていない者に宿ったのだから。

 

(何だと!?ワン・フォー・オールと同じ…嫌、何かが違う)

 

 

 突如景色が変わる…ビルが並び立ち個性を持つ者が持っていない者を虐げる。突如として“人間”という規格が崩れ去った…そんな混沌の時代を逸早く人々を纏め上げた人物が居た。

 

「力なき者には“選択”を罪には容赦を望むものを与えよう…僕に協力してくれるなら」

 

 

 景色がまた変わる…何処かの一室のようだ。

 

「ああ、また食べなかったのか…かわいそうにこんなに痩せ細ってしまって」

「僕はあんたの思い通りにはならない…」

「そろそろ諦めたらどうだい?僕の手を拒み秩序を乱す集団が居た…とても危険な存在だった…だから殺された…僕は何も命じていないんだぜ?僕を慕う友人達が僕を思い行動した。嬉しかったよ…思うだけで皆が動いてくれる……あの日お前と読んだコミックの世界だ」

「あんたは3巻までしか読んでいない…続きがある。魔王に支配された世界をヒーローがもがき苦しみ最後に救い出すんだ。兄さん知ってるか悪者はな最後に必ず負けるんだ」

「夢は現実になった、現実は定石通りにはいかないぞ」

 

 兄が弟の頭を掴む。龍悟は咄嗟に手を伸ばすが…

 

「お前が僕に屈さない現実もこれから塗り替える…お前が大切だ…お前にも使いやすい“異能”を見つけたんだ…共に征こう」

「やめろ!」

 

 其処で途切れ…

 

「君が九人目だね…」

 

 痩せ細った弟が龍悟に語りかけた。

 

(語りかけてきただと!?)

 

「もう少し見せたかったけど…ここまでか…八代目は凄い後継者を見つけたようだ…気をつけて、特異点はとうに過ぎてる…だけど、君なら大丈夫だし…君は一人じゃない」

 

 手と手が重なった瞬間、六人の男女がこちらに手を伸ばす光景を見た。意識が途切れそうな気がする夢から覚めるのだろう…最後に見たものは真っ暗な空間ではなく真っ白な空間…其処には自分(悟空とベジータ)の後ろ姿があった。だが、その姿は見た事もない姿だった。

 

 悟空は黒髪で赤い体毛に包まれ尻尾が生えており凄まじい気を放っている。それに対照的にベジータは変わっている所は髪が蒼く輝いているだけだが、何故か気を感じることができない…それを最後に龍悟は夢から覚めた。

 

 

 

「ん、んん……」

 

 目を開けると、白い天井が見えた自分の部屋だ。時計を見ると朝の十時…体も筋肉痛…超サイヤ人Ⅱの反動だ…遅刻かと一瞬焦ったが…

 

「そういえば休みだったな…」

 

 

 前日の敵ヴィラン襲撃で今日、学校は臨時休校になった。USJ内の修復にセキュリティの大幅強化、警察の捜査で学校を隅々まで見回る必要があるみたいだ。

 

「何だったんだ…あの夢は…」

(あの男は俺を九人目と言った…じゃあ今見た人物は歴代継承者…)

 

 オールマイトも居たから間違いじゃないだろう。

 

(ならば、あのスーツの男は?継承者ではない……オールマイトに聞く必要があるな…そして…)

 

 最後に見えた…悟空とベジータ…

 

(どちらも超サイヤ人3より上の次元の形態だろう…赤い姿は体毛が生えていたし…大猿が関与しているのか…蒼い姿は気を感じなかった…気は生命力、感じない事なんて…いずれにしろ、ワン・フォー・オールにもサイヤ人にもまだ可能性がある…という事か……ワクワクしてきたぜ)

 

 

 

 新たな可能性を感じた龍悟は笑みを浮かべていた。

 

 

 

END

 

 

 

 




ゴジータ「さて、次回から体育祭編か……」
ベジット「大変だ!!ゴジータ!!」
ゴジータ「ベジット!?何故ここに!?まさか自力で出演を!?」
ベジット「余りの緊急事態に作者が俺を出したんだ!まぁ、あっちの世界とのクロスオーバー編を出して俺も登場するかもしれないけど……それよりドラゴンボールヒーローズだ!!」
ゴジータ「ヒーローズ?作者はやってないが確か新しい弾で俺とお前の4とブルーが出て格好いいと騒がれているんじゃないか?」
ベジット「最初はな……お前、下手すりゃ俺より酷い扱いになってるぞ!」
ゴジータ「何があったんだ!消滅したザマスは復活するわベビーのパチモンが出てくるわ作者はヒーローズのストーリーは宛にしていないがワンチャン、カンバーとかハーツと言うのを映画の波に乗って俺ブルーが倒すんじゃないかと期待しているだか…」
ベジット「それは、期待しない方がいい…………お前…吸収されたぞ……」
ゴジータ「…………え………?」
ベジット「ガセなのかどうかは知らんが…画像があったんだ…4のお前が吸収された………」
ゴジータ「ふざけんよ!…前だってそうだったじゃん!なんで4の俺の攻撃がダーブラなんぞに止められるんだよ!!俺、指一本で超一神龍倒せんだぞ!ブウにあっけなく食われた奴がパワーアップしようが超一神龍より強い訳ねぇだろうが!!」
ベジット「この作品は4とブルーを出す為に強さもヒロアカの強さの設定でいっていているが気に入らなかったら素直に謝ると作者は言っていたし…なんとなくゴジータも扱いが悪くなるじゃないかとヒヤヒヤしているとは言っていたが……まさか吸収されるとは………ファンに喧嘩ふっかけたな」
ゴジータ「…ガセだよな…?ガセだと言ってくれ!!」
ベジット「……俺達って……ドラゴンボール最強の戦士だよな…何時から…こんな扱いになったんだっけ……」


 ガセで有る事を祈ります!!次回もお楽しみに!!




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二章・雄英体育祭
新たなる戦いと真実


注意・キャラ崩壊があるかもしれません。不快に感じたら謝罪します。

ゴジータ「もう駄目だ…おしまいだ」
ベジット「ゴジータ……」
ゴジータ「がちだった…公式の設定だった……もう、今回からお前が主人公になるんだ…タイトルも【合体戦士のヒーローアカデミア】で…響香達を頼んだぞ…」
ベジット「…………馬鹿野郎!!」
ゴジータ「ぐはぁ!!」
ベジット「何を寝ぼけた事を言っている!!何時ものお前はどうした!!」
フリーザ「ベジットさんの言う通りです!」
ゴジータ「フリーザ!?お前も自力で出演を!?」
フリーザ「小説版で力の大会を経験したにもかかわらず勝てる者などいないと感じたブロリーさんを圧倒した貴方は何処に行ったんですか!」
超一神龍「そうだ…俺を指一本で倒せると言って赤子扱いしドラゴンボールシリーズ最強の称号を手に入れた貴様が何をしている!」
ジャネンバ「俺を数秒で倒し圧倒的人気でデビューしたお前はどうした!」
ゴジータ「超一神龍…ジャネンバ…」
ベジット「てか、お前喋れたんだな…」
ジャネンバ「ドラゴンボールの力で」
ベジット「まぁいい。確かに…ここ最近のヒーローズは酷い!長年ファンに愛された俺達、本編キャラをどうせ数年後には忘れられるその場凌ぎのキャラの引き立てに使う始末!正直、本当に外国の超サイヤ人10が出てもおかしくない!だけど!それでもヒーローズは本編とは違うと!俺達のファンで居てくれる人達がいるだ!!応えなくてどうする!!」
ゴジータ「ベジット…」
ベジット「それにあいつ等がいるじゃねぇか…」
ゴジータ「響香……」
響香「ウチは知ってるよ!なんとかしてくれるって皆に希望を見せてくれる龍悟を!!」
ゴジータ「そうだ…俺は…」
『そう!龍悟(お前・貴方)は!!』
『ヒーローなんだ!!』
ゴジータ「………ありがとよ…皆…」
響香「さぁ、行こう!皆が待ってる!!」
ゴジータ「ああ、ベジット…皆…行ってくる!」

ベジット「行ったか…しかしお前が来てくれるとはな」
超一神龍「ふん!俺もドミグラとか言う正直俺より弱いんじゃないかって言う奴に操られたしな」
ジャネンバ「俺はベビーに寄生されたし」
フリーザ「私はゴールデンを兄さんにパクられましたし他人ごとではありません……流石に同情します」
ベジット「そうか、皆苦労してんだな……読者の皆!長く待たせて済まなかったな…これからも絶対無敵のヒーローアカデミアをよろしくな!!」





 翌日

 

 「敵との戦いを生き延びて一安心と言ったところだろうが、まだ終わってねぇ」

 

 相澤の言葉にクラスメイトは静かになる。

 

 ――またヴィランが!?

 ――まさか今度は本校に!?

 

 生徒が緊張と恐怖が込み上げる中、相澤は一呼吸置き……

 

「――“雄英体育祭”が迫っている」

 

『クソ学校ぽいのきたぁぁぁぁぁぁ!!!』

 

 入学式当日から除籍を掛けたテストをした故に、A組の学校らしい行事への意力は大きい。

 

「ヴィランが来た後だってのに……よくやれるなぁ」

 

 不安そうな表情を浮かべるのは峰田だ。一般人や報道も万単位で入る。最悪、再びヴィランが襲撃する可能性も高いと誰もが思う事だ。しかし、相澤はそれを否定する。

 

「逆だ。――開催する事で盤石な事を示すつもりだ。警備も去年の5倍……何より、最大の“チャンス”を無くさせる訳にはいかん」

 

 雄英体育祭は日本のビッグイベントの一つ。かつてはオリンピックがスポーツの祭典と呼ばれ全国が熱狂した。個性が発現したせいで、今は規模も人口も縮小し形骸化した。それもそうだ。個性を使わないスポーツなんて普通でつまらないと言われるだろう。そして、日本に於いて今「かつてのオリンピック」に代わるのが、『雄英体育祭』だ。全国のトップヒーローもスカウト目的で観に来る。全国で生中継され、観客も一学校の体育祭と比べるのもおこがましいレベル。何より、龍悟達にとっても人生を左右する“チャンス”だ。

 

「プロヒーローもスカウト目的で来る、結果次第で将来が決まる」

 

 龍悟の言葉。それに全員が無意識の内、身体に力が入る。 

 

「そういう事だ。――年に一度……最大で3回きりのチャンス。時間は有限――焦れよ、お前等?」

 

 相澤の言葉に応える者はいない。だが、表情で皆は意思を示していた。

 

 

 

 

 昼休み…何時もの四人で食堂に行く途中で麗日のヒーローになる理由を聞いてみたら…

 

「お金稼ぐ為か……」

「本当に恥ずかしいよ…皆みたいに立派なものじゃなくて……それでも、ヒーローになってお金稼いで父ちゃん、母ちゃん…楽させるんだ!」

 

 麗日は話す…建設業を営む両親に楽をさせる為にと…その目には決意があった。

 

「いいじゃねぇか」

「え?」

「最初から皆を救えるヒーローになれる訳じゃない……ならまずは身近な人を救えるヒーローになればいい…それだけだ」

「龍悟君……」

 

 立ち止まったが食堂に行こうとしたら…

 

「孫少年が居たぁ!!」

「オールマイト……」

「ご飯……一緒に食べよ…」

「「乙女だぁ!!」」

「………丁度いい…俺もあんたに用事があったんだ……悪いな皆、今日はパスだ」

 

 そうして仮眠室で向き合うように座る。オールマイトの要件は体育祭と言うビックイベントで大活躍してほしいとの事…

 

「孫少年も私に用事があったんだよね…」

「ああ、夢を見たんだ……隣に黒髪の美人やスキンヘッドの男が居て………主にある兄弟の記憶だった…」

「………見たのか、初代の記憶を…」

「…初代……」

「話さなくてはならないな……君や私が生まれる遥か昔、超常黎明期、社会がまだ変化に対応し切れていない頃、人間と言う規格が“個性”によって呆気無く崩れ去った。法は意味を失い、文明が歩みを止めた。正しく荒廃した混沌の時代に揉まれる人々を纏め上げたのがー」

 

「ーーオール・フォー・ワンと呼ばれる人物だ」

「オール・フォー・ワン…皆は一人の為……まさか!」

「察しがいいね…オール・フォー・ワンは“個性”を奪い、己が物とする事も誰かに与える事も出来るのだ」

「っ!?」

 

 龍悟は驚愕した……個性を幾つも持つ事も与え得る事もできる…もうそれは、万能と言ってもいい。

 

「奴は“個性”を奪い、圧倒的な力でその勢力を広げていった。計画的に人を動かし、思うままに悪行を積んでいった彼は瞬く間に悪の支配者として日本に君臨した。彼は“個性”を与える事で他者を信頼させるか、屈服させた。ただ与えられた人の中にはその負荷に耐えられず廃人になる者も少なくなかった…」

 

 

「だが稀に与えられた“個性”が本来備わっている“個性”と混ざり合う事によって新しい“個性”を誕生させるケースもあった。彼には、“無個性”の弟がいてね。体も小さく病弱だったが正義感だけは人一倍あった。兄の所業に心を痛め、抗い続ける男だった。そんな弟に力をストックする“個性”を無理矢理与えた。優しさ故か屈服させる為か、今では分からないが」

「つまり、その弟が……初代?」

「ああ。彼にも一応“個性”はあった。自他共に気付きはしなかったがね。“個性”を与えるだけの“個性”。それ単体では何の意味も成さない筈だったが、それが力をストックする“個性”と融合し、かくしてワン・フォー・オールが誕生した。皮肉なものだよ、正義はいつも悪より生まれ出ずる」

「超常黎明期と言えば大昔だ……」

「だが奴は、成長を止める類の“個性”を奪い取り生き続ける半永久的な『悪の象徴』。覆しようのない戦力差と当時の社会情勢と言う不利な状況により敗北を喫した弟は、後世に託す事にした。今は敵わずとも、少しずつ力を培い、自分が死んだ後の遠い未来で兄を倒してくれる力になるだろうと信じて……ワン・フォー・オールは保持者の意思でしか受け渡す事は出来ない。つまり奪われる事が無い、オール・フォー・ワンに対抗出来る唯一の“個性”なのだよ」

「…………そいつは…死んだのか…」

「………私の代で…撃ち取った…はずだった…」

 

 その声は震えていた…

 

「君が倒した…黒い脳無…死柄木は言っていたんだろ…“先生の最高傑作”と……」

「ああ…」

「全く違う“個性”を持つ敵を作り出せる事ができるのは奴だけだ…奴は敵連合のブレーンとして再び動き出した…君はいつか…奴と戦わなくてはいけない…」

 

 苦しそうに言うオールマイト……

 

「……だから、初代は語りかけたのか…」

「語りかけた!どう言う事だい!?」

「夢で語りかけてきたんだ、特異点を過ぎたと…」

「……私は経験しなかったし……お師匠にも……」

「お師匠?」

「君が見た黒髪の女性…それが七代目継承者…グラントリノの盟友であり私の師匠だ……既に亡くなっている」

 

 オール・フォー・ワンに殺された事を察しった龍悟は何も言わなかった。

 

「………現状わかるのは、私にもわからない事態が起きたという事だけだ……この事態、歴代最強である君だからこそなのか…オール・フォー・ワンが関係しているのか……他には?」

「二人だけ見えなくて…オールマイトも曖昧だった……何故かはわからねぇ…」

「私も詳しくはわからない…ごめんな…でも、その力は絶対に君の味方だよ。共に探っていこう」

「ああ……そうだ、オールマイトの師匠…かなりの美人さんだったぜ」

「………だろ。そうだ、この言葉も君に贈ろう…お師匠の言葉だ……『どんなに辛くても自分は大丈夫だって笑うんだ…世の中、笑ってる奴が一番強いんだからな』…だから…君も笑え、君は一人じゃない…」

 

「………笑ってる奴が一番強いか………確かに、その通りかもな」

 

 どんな強敵でも、常にワクワクしながら戦った自分(悟空)が頭に過った。

 

 

 この時、龍悟は気づいてなかった……自分の中にあるワン・フォー・オールの炎の中にある小さな核ーー

 

 ーーそれが黒く輝いた。

 

 

 

END

 

 



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思いを胸に

 放課後……。

 

 

「何事だぁ!!!?」

 

 

 ザワザワと1-Aの教室前で生徒が大量に集まり、大渋滞となっている。敵襲撃事件は雄英の全校生徒に知らされている。メディアにも取り上げられているし、知らない人は殆どいないだろう。自分達と年が変わらない学生が敵の襲撃に耐え抜いたのだ。興味を持つのは当然だろう。

 

「なぁ、孫龍悟ってどれだ?」

「ほら、あの逆立った髪のイケメンだよ」

「あれが…」

 

 その中でも龍悟は特に注目された…入試主席・侵入してきた敵を雄英トップと共闘し撃破・そして今回の襲撃を耐え抜いた…体育祭での一番の障害と判断するのも当然だ。

 

「龍悟凄い見られてるね…」

「……興味無い……早くトレーニングに行きたいんだがな……」

 

「糞が!」

 

 龍悟ばかり注目してるのが気に入らないのだろう…吐き捨てながら峰田の疑問に答え、ドアの前まで歩く。

 

「敵情視察だろザコ。敵の襲撃を耐え抜いた連中だもんな。体育祭の前に見ときてぇんだろ。……意味ねぇからどけモブ共」

「知らない人の事とりあえずモブって言うのやめなよ!!」

「噂のA組、どんなもんかと見に来たが随分と偉そうだな。ヒーロー科に在籍する奴は皆こんななのか?」

 

 人ごみを押し退け、気だるげな顔つきの生徒が前に出た。

 

「こう言うの見ちゃうと幻滅するな。普通科にはヒーロー科落ちたから入ったって奴が結構多いんだ。知ってた?そんな俺らにも学校側がチャンスを残してくれてる。体育祭のリザルトによっちゃ、俺達のヒーロー科への移籍、あんたらにはその逆があり得る。敵情視察?少なくとも俺は、いくらヒーロー科とは言え調子に乗ってると足元ごっそり掬っちゃうぞって宣戦布告に来たんだけど」

「心外だな…」

「ん?」

 

 龍悟がドア付近に近づき言う。

 

「この馬鹿の態度をクラス全体の総意と取られるのは勘違いも甚だしいって言ってるんだ」

「んだと、てめえ!」

「お前のわがままの為にクラス全体が不必要なヘイトを被るのは筋違いだって言ってるんだよ。喧嘩を売るならお前一人で勝手にやれ」

「!?」

 

 龍悟に睨まれ爆豪はがその場から反射的に半歩足を引いた。次に龍悟は廊下に居る奴等に体を向ける。龍悟の存在感に震え何歩か後ろに下がりだす。

 

「しかし……安心したぜ。お前みたいな奴がいるってことに………宣戦布告か…いいぜ…俺は逃げも隠れもしれない、普通科だろうが誰だろうが容赦なく返り討ちにしてやる…それは覚えておけ」

 

 そんな中、集団の後ろの方から誰かが出てきた。

 

「隣のB組のモンだけどよ!!敵と戦ったっつうから話聞こうと思っていたんだがよ!!俺達がいることも忘れんなよ!ヒーロー科はB組もいるんだからな!!」

 

((また不敵な人キタ!!))

 

「ちょっと鉄哲!前見えないだろ」

 

 鉄鉄の前に拳藤が割り込んでくる。拳藤は龍悟の両肩を掴みながら揺らしてくる。

 

「龍悟…とりあえず、姿見れて安心したよ」

「……心配かけたな…見ての通り怪我はない」

「なになに?この人が一佳が何時も言ってた孫龍悟?確かにイケメンじゃん」

 

 そうしていると恐らく拳籐の友達だろう、B組の女子達が現れた。

 

「ちょ//何時も言ってないだろ!!///」

「え〜そうだっけ〜」

「とても楽しそうに話してましたよ」

 

 顔を赤くしする拳籐を見た峰田と上鳴がガクッと膝から崩れ落ちる。

 

「何なんだよあいつ!可愛い幼馴染が居てクラスので女子とも仲が良くて!そしたら隣のクラスの女子ともフラグ立ってるって!!」

「イケメン死すべし!慈悲はなし!!」

 

 悔しさで床に拳を叩きつける二人。

 

「大丈夫だよ、拳籐さん…龍悟は滅多な事じゃ怪我しないし…もし怪我しても“幼馴染”のウチが看病するんで」

 

 その時、響香が龍悟の腕を掴み拳籐に言い放つ。

 

「………いやいや、その時は私だって看病するよ、龍悟が怪我するって相当だから」

 

 拳籐も負けじと反対側の腕を掴み言い放った…どんどん周りの奴らが離れていく…意味深な笑みを浮かべた響香と拳籐に恐たんだろう……龍悟も困惑していた。

 

 

「で、でも、個性とか知られて対策されたら俺ら体育祭で不利じゃねえか?」

「それがどうした」

 

 切島の発言に言う。この場にいる全員の視線が一気に集まる。個性を知られればアドバンテージが無くなり、体育祭で不利になるのは確かだ。

 

「トップヒーローほど有名になって個性が世間に知られて敵に対策を取られる…当然だーーーそれでも勝つのがヒーローだ」

 

 全員が唖然とし驚いて目を丸くしている。

 

「格好いいじゃねぇか!漢だぜ!」

「トップヒーローなら対策されて当然…真理だ」

「確かに……相手の予測を超える…いいね」

 

 龍悟の言葉がクラスの心に火をつけた。龍悟は集団を強引に退かして歩き出す。

 

(入試の時もそうだけど……あの大きな背中が忘れられないんだよな……)

(何時の間にか皆を巻き込んで前に進んでる…本当にロックな男だよ…龍悟は)

 

 響香と拳籐も黙って龍悟の背中を見ていた。

 

「(我が道を行くで格好いいな…)二人共何時まで見惚れてるん?」

「「み、見惚れてない!」」

 

 

 

 

 

 

 龍悟がトレーニングに向かう同時刻…オールマイトはある人物に連絡を入れた。

 

『オールマイト?』

 

 ワンコールが終わるよりも早く、元相棒“サー・ナイトアイ”が出た。

 

「や、やあ。ナイトアイ」

『一体何だ?』

 

 気不味い…だが、言わねばならない……

 

「……孫少年の事だ…」

『話は聞いている……たが、平和の象徴は生半可な奴が務まるものじゃない』

「確かにね…でも孫少年は違う…あの襲撃事件、解決したのは孫少年なんだ」

『なっ!?』

「彼は凄いやつだよ…今の状況でももう50%は出力を出せる。もう少し、もう少しなんだ……」

『オールマイト…』

「もう少しで、彼は私を完全に超える。歴代最強の継承者に…それまで、私の身体が、ワン・フォー、オールの残り火が持ってくれればいい。それが――お師匠が私にそうしてくれたように、ワン・フォー・オールを持つものの責務……」

「だから、彼を…孫少年を見てやってくれ。新しい希望は、新しい希望達は確実に育っている」

『だから…電話を…』

「ああ、君に見てもらうために…」

『…………分かった…そこまで言うのなら、今度の体育祭で余すことなく見させてもらう』

「ありがとう」

 

 其処で電話は終わった。

 

 戦いに備える者、見守る者、見定める者、それぞれの思いを胸に宿す中、刻一刻と体育祭の時は迫っていた。

 

 

 

END

 

 

 

 

 



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体育祭開幕

お気に入りが700人突破!!
ありがとうございます。


 ―体育祭当日。

 

 雄英高校に大勢の人が集まっていた。店や露店は勿論。見物客は一般人からプロヒーローまで。また警備用に雇われたプロヒーローも含めると、会場にいるプロヒーローの数は数えるのが馬鹿らしい。それだけのヒーローが集まり、全国の国民が注目するのが雄英体育祭。そんな会場の中で、準備ゆえに早めに控室に入る選手達の中に、体操着を身につけた龍悟達はいた。

 

「コスチューム着たかったなー」

「公平を期すために着用不可なんだよ。鍛えた自分の“個性”だけで挑めってさ。サポート科も自作したアイテムだけらしいし」

「まじか…油断できねぇな…」

 

 緊張を紛らわせるため雑談に興じる者がいる。無言で精神を研ぎ澄ます者がいる。落ち着けず掌に人と書いて飲んでいる者もいる。そんな中、入場直前に轟が龍悟に話しかけた。

 

「孫…お前は凄い奴だよ、オールマイトに目ぇかけられてるのもよく分かる」

「……………」

「だからこそ、お前には勝つ」

「おお!?ナンバー2がナンバー1に宣戦布告!?」 

「無愛想な感じだったけど轟も案外熱いじゃん! 楽しくなってきた!!」

 

 突然の宣戦布告に盛り上がるクラスメイト達。しかし当の本人たちはそんな空気ではない。轟の目はここにはいない誰かへの憎悪で曇り、龍悟を無視してその後ろにいるオールマイトへと喧嘩を売っていた。其処に気づかない龍悟じゃない。

 

「………俺に宣戦布告すんのは自由だ…だかな…どこ見て言ってんだ」

「あ?」

 

 龍悟(ゴジータ)は悟空とベジータの融合…悟空の優しさを持っていれば、ベジータの誇り(サイヤ人の誇り)を持っている……自分に宣戦布告してる癖にその相手を見ず別の誰かを見ている…そんな挑戦状を誇り高きサイヤ人の王子が受け取るか……答えは否だ。

 

「戦う相手すら見ず、よそ見してる奴の挑戦状など受ける程愚かじゃねぇ」

「んだと……!」

「ちょ、落ち着けって!龍悟もあんま煽り過ぎんな!」

 

 切島が轟を抑えるも、龍悟は気にもかけず取り合わない。特に煽ってる気もないからだ。

 

 

「皆!入場の時間だぞ!」

 

 そんなこんなをしているうちに、飯田が声を上げた。いよいよ雄英体育祭が幕を上げる。

 

 

 

 

『雄英体育祭!ヒーローの卵たちが、我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル!どうせテメーらアレだろ、こいつらだろ!?ヴィランの襲撃を受けたにも拘わらず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星!』

 

 

 通路を歩くにつれて、徐々に実況と歓声が大きくなっていく。そして出入り口手前で一旦止まり、体育祭進行係の指示通りにその場で待機する。後はプレゼント・マイクの実況と共に入場する手筈となっている。

 

『ヒーロー科!1年A組だろぉぉ!!?』

 

 その実況と同時に龍悟達は歩き出す。ついに入場の瞬間である。入場と共に大きな歓声が上がった。360度から放たれる歓声が音の塊となって肌を叩く。絶え間なく光るカメラのフラッシュがキラキラと輝いて美しい。

 

『次ヒーロー科B組! 続いて普通科C・D・E組! サポート科F・G・H組も来たぞー! そして経営科I・J・K組だ!』

 

 A組に比べ明らかに雑な紹介で他のクラスの生徒が入場していく。当然不満はあるようだ。一年が集結すれば、宣誓台に上がる一人の女性。ヒール・ガーターベルト・ボンテ―ジ・そしてムチ。何でもありの18禁ヒーロー『ミッドナイト』の登場だ。

 

「おおー!今年の1年の主審は18禁ヒーローミッドナイトかー!」

「ミッドナイト先生なんちゅう格好だ!」

「さすが18禁ヒーロー!」

「18禁なのに、高校にいていいものか?」

「良い!!!」

「静かにしなさい!」

 

「早速いくわよ!――選手宣誓!!――選手代表!!――1-A"孫龍悟"!!」

「……はい」

 

 選手代表は龍悟だ。この事は相澤とミッドナイトに事前に聞いていた。知らなかったA組のメンバーも、最初は驚くがすぐに納得した様子。

 

 そして宣誓台に上がった龍悟はマイクの前で立ち止まると、腕を上げて宣誓した。

 

「……宣誓!――我々、選手一同はヒーローシップにのっとり、積み重ねた努力を発揮し、アンチ行動をせず正々堂々と戦い抜く事を誓います!ーー」

 

 それと同時に拍手が起き、A組の者達も安心した様子だ。 

 

「流石だ!素晴らしいぞ龍悟くん!」

「龍悟にしては普通過ぎな気もすっけど、喧嘩売ったりするよりはマシだよな…爆豪?」

「うるせぇ…つまんねぇ言葉ならべやがって…!」

 

 感動する飯田に苦笑する中、切島が爆豪に意味ありげに言うが、当の爆豪は龍悟の宣誓内容をつまらなそうに一蹴する。

 

 これで宣誓は終わり……誰もがそう思った時だった。

 

「ーーそして、この雄英体育祭1年の部は…俺が征します!!選手代表1-A……孫龍悟!!」

 

 

「はぁ!?ふざけんなよ!!」

「生意気言うんじゃねー!」

「調子乗んなよA組オラァッ!」

 

 

 当然出てくるブーイング。だが、それにもひるむこと無く振り返ると超サイヤ人Ⅱに変身する。その変わりようと存在感にブーイングは止み。観客席のプロヒーロー達も目を奪われる。

 

「なら、かかってこい!俺は逃げも隠れもしない、全力で相手してやる!!!!」

 

「格好いいじゃねぇか!!」

「うおおおおおっ!」 

「上等だぁ!」 

「漢らしいぜ!龍悟!」

「うるせぇ!1位は俺が獲る!」 

「っ……!」

 

 龍悟の言葉が周りの心を滾らせる。A組は勿論、B組も燃え上がり、普通科の中にも確かな熱気が溢れ出す。最初からやる気の無い者は龍悟の威圧に呑まれ、既に終わっている。龍悟(頂点)に挑むのは、自らの力で掴み取ろうとする者のみ。そんな光景に実況のプレゼント・マイク。そしてミッドナイトのボルテージも上がった。

 

『宣戦布告だぁ!! メッチャ燃えるじゃねぇか!!』

「ああああああっ、最高よ!本当に好みだわ孫くん!!――じゃあ熱が冷めないうちに早速やるわよ!!――第一競技――」

 

――障害物競走よ!!

 

 

 モニターに映る競技名。それを龍悟は静かに降りながら見ていた。

 

 ――雄英体育祭が今始まった。

 

 

 

 

 

END

 

 



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誰よりも速く!!障害物競走!!

「第一種目。それは――障害物競走よ!!――計11クラスによる総当たりレース! コースはこのスタジアムの外周、距離は約4㎞よ!――そしてルールはコースを守れば何でもあり!!」

 

 説明しながらミッドナイトがムチを向ける場所。そこには一つのゲートがあり、それは会場へ出る為の狭き門。その前には少しでも有利に運ぼうと生徒達が位置に付き始める中、龍悟は少し離れた場所でスタンバイ。

 

「龍悟」

「どうした?響香?」

「ウチも挑むよ…龍悟に」

「……フッ……望むところだ」

 

 ゲートの上のスタートのランプ。それが点灯し始めると同時、龍悟は気を開放。身体に力を込める。

 

――そして全てのランプが点灯した瞬間。

 

『スタァァァァァァトッ!!』

 

 

『『『ウオォォォォォォォッ!!!!』』』

 

 選手全員が一斉に飛び出した。しかし、この大勢の人数が通るにはゲートは余りにも狭く、スタートダッシュを決めようとした者達はすぐさますし詰め状態。

 

 ――龍悟を除いて。

 

(……上はガラ空き)

 

 スタートと共に駆け出したは龍悟は超サイヤ人に変身し一気に舞空術で空を飛んでそのまま邪魔されずにスタートダッシュを決めて加速を始めた。

 

「マジかよ!!」

「待てやぁ!! この変身野郎!!!」

 

 一気に出口を出た龍悟へ、上鳴と爆豪を筆頭に驚愕や怒りの声をあげる中、行動を起こす者がいた。

 

「足下にはご注意を♫」

 

 響香は地面にプラグを刺し心音の衝撃波を叩き込む、すると……

 

「心音増幅MAX!ハートビートファズ!!!!」

 

 地面が抉れ殆がバランスを崩す…しかも密集していたゲートなので被害はデカイ。

 

『マジかよ!!ロックガール耳郎!!地面を抉りやがった!!』

「お先に♫」

 

 その隙に響香は龍悟に続けて出口を出た。

 

「便乗させてもらうぞ耳郎」

 

 氷を張り踏ん張った轟は他がバランスを崩した隙に生徒の足を凍らせ動けなくさせる。

 

「やられましたわ!」

「半分野郎、耳女!!ふざけんな!!」

 

 轟の行動を予想していた者達もバランスを崩し凍らされてしまい動けないでいた。

 

『さぁ、先頭は空を飛んでんでいるナンバーワン、それを追いかけるロックガールとナンバー2それ以外は動けない!教え子の活躍にどう思うイレイザーヘッドさん?』

『…休ませろ』

 

 実況席ではプレゼント・マイクに無理矢理に連れて来られたのか、相澤が不機嫌そうに隣に座っていた。

 

『…後、孫を追いかけるのは二人じゃない…“五人”だ』

 

 龍悟を追いかける轟と響香…だが、その二人を凄まじい速さで追い越した者が居た。

 

「!?」

「……回避してたんだね…“飯田”!!」

 

 二人に顔を向けながら飯田は言った。

 

「足腰には自信があってね…悪いが先に行かせてもらう!」

 

 そのまま二人を置いていく。

 

「行かせるか!!』

 

 轟は氷を形成するスピードに乗り飯田を追いかける。

 

「置いていかれたか……!?」

 

 響香は何かを感じ横にステップする。

 

「やるね!耳郎さん!!」

「あんたもね…拳藤さん!!」

 

 拳を大きくした拳藤がその拳を振り下ろしていた。

 

「まさか、回避したなんてね…」

「他の奴らは轟だけに警戒していてあんたに足下掬われた…だけど一番龍悟の背中を見ているのは他でもない、耳郎響香だって事、“あの二人”と私は知っている」

「あの二人……と言う事は…」

「私も居るで!響香ちゃん!!」

「やるじゃん!麗日!」

 

『面白くなってきた!トップを追う飯田と轟!三つ巴の女子!!他は未だ動けない!!』

 

 トップの龍悟は最初の障害物を目にする。

 

 

「……懐かしいな」

 

 何故ならば、その障害物とは。

 

『ブッコロス!!』

『ターゲット大勢!――ミナゴロシ!!』

 

 入試に出て来た1~3Pの仮想敵が数体。そして、10機以上はいるであろう巨大ロボ――0Pの大群がそこにはいた。

 

「0P!!? 入試の仮想敵!!」

「あれが0Pか…」

 

 飯田と轟も足を止める。三つ巴の響香達も立ち止まった。それと同時に一部の者達が氷を砕きスタートする。

 

『そういう事だぜぇ!! ただの長距離走だと思ったか! 手始めの第一関門――【ロボインフェルノ】の始まりだぜぇ!! リスナー達よぉ!!』

『……お手並み拝見だな』

 

 プレゼント・マイクの絶叫実況を横に、相澤は見定める様に視線をA組の生徒達へと向ける。入試で0Pを倒したのは龍悟だけであり、"逃げる障害物"から"倒すべき障害物"となった0Pへどう対応するか、相澤は見定めなければならない。

 

「最短距離でいっきに行く」

 

 龍悟はそのスピードのままフルカウルを発動し40%の出力で殴り飛ばした。

 

「デトロイト・スマッシュ!!」

 

『マジかよ!0Pを瞬殺しやがった!!』

『タイムロス無しで倒すとは…』

 

 未だ、ロボインフェルノへと辿り着くか否かの者が殆どの中、龍悟が既に突破した事実に選手たちの動揺が広がる。

 

「もう、倒したのかよ!?」

「ふざけんなよ!変身野郎!!」

 

 だが、見るべき者は龍君だけではない。

 

「糞親父が見てるんだ…もっと凄いの出せよ」

『ブッコ――』

 

――轟が右手を上げた瞬間、0Pは氷漬けへと変わった。

 

「もう、臆したりはしない!!」

 

 飯田は振り降ろした腕に乗りそのまま頭部ヘ向けて駆け出し…

 

「おおおおおおおおおっ!!」

 

 思いっ切り頭部を蹴り飛ばした…頭部は爆発し0Pは沈黙した。

 

 一方で響香達は三つ巴の戦いを繰り広げていた。響香がプラグを伸ばせば、拳藤が避け拳を振るう、響香がそれを避け二人が激突すると思えば麗日が二人を浮かそうと接近戦を仕掛ける。その余波で周りには仮想敵の残骸で溢れていた。

 

『ブッコロス!!』

 

 0Pが三人に襲いかかるが……

 

「「「邪魔!!」」」

 

「心音増幅MAX!!」

(インパクトの瞬間に拳を巨大化させる!)

「必殺!!」

 

「ハートビートファズ!!」

「双大拳!!」

「彗星ホームラン!!」

 

 響香の衝撃波がキャタピラを破壊し拳藤の一撃が下部を破壊…麗日が放った仮想敵の残骸が上部を破壊………呆気なく撃破された。

 

『マジかよ!!0Pが四機も瞬殺された!!来年の予算会議荒れるぜ!!1機2400億円だぜ〜〜!!』

『…………だから、辞めとけって言ったんだ…』

 

 

 

 

 第一関門のロボ・インフェルノを龍悟達が難無く突破した後、後方にいる選手たちは………。

 

『爆豪!下が駄目なら頭上かよ!クレバー!!』

「クソが!直ぐに追いついてやる!!モブ共が俺の前を行くんじゃねぇ!!」

「凄え顔だな……」

「悪鬼の如く…」

 

 爆豪と同じ様に巨大ロボを上から回避する瀬呂と常闇。

 

「私だって負ける訳には!!」

 

 大砲を作り仮想敵を一掃する八百万。

 

『先頭も白熱しているが後方も結構盛り上がっているぜ!一足先行く連中はヒーロー科が多いな、やっぱ!』

 

 

 

 

 

 今だトップの龍悟は第二関門【ザ・フォール】まで来ていた。ロープ一本しかない綱渡りなのだが…ただの綱渡りで終わらないのが雄英体育祭。下は落ちてしまえば即終了の奈落の底……高い崖。もし、高所恐怖症の人がいれば動けないでいるだろう。

 

 空を飛んでどんどん進んでいく龍悟。

 

「あいつの方が早いか…」

 

 ロープを凍らせその上を滑り加速する轟。

 

「これはちょと不味いか…」

 

 ロープを普通に渡っていくしかない響香達。

 

「恐らく、兄も見ているのだ…かっこ悪い様は見せられん!!!」

 

『カッコ悪ィィーーー!!!』

 

 DRRRRRR!とエンジン音を鳴らしながらロープを一直線に進んでいく飯田。バランスを取りつつ、速度を緩むことなく直進していくが…Tの字ポーズが、かっこ悪いせいで色々と台無しだった。

 

 その後ろには爆豪が追いかけていた。爆破で空を飛び響香達や飯田を抜かした爆豪は轟と並ぶ…

 

「テメェ!何、俺を蚊帳の外にしてんだ!!」

「っ!お前に用はない!!」

 

 無視する態度に怒り攻撃する爆豪に反撃する轟…そうしてる内に龍悟は第二関門を抜けて、最終関門に到着する。

 

 最後の障害物、その実態は一面地雷原の『怒りのアフガン』目を酷使すれば地雷の位置はよく見れば分かる仕様になっている。

 

「俺には関係……っ!?」

 

 突入して数秒後、音が聞こえたかと思うと、その音が徐々に近づいてくる。何事かと思って見てみると、なんと小型のミサイルが龍悟目がけて迫ってきていた。

 

「マジか…」

 

『飛んで楽にクリアできると思ったか!!こうなる事を想定して用意したんだぜ!!』

『実況しろ。ミサイルも地雷も殺傷力は皆無に等しいが、人をブッ飛ばす程度の威力はあるから気を付けろ』

 

 少し驚いた龍悟を見て、プレゼント・マイクが笑う。続く相澤の言葉では、ミサイルは直撃を受けたとしても怪我をするほどのものでは無いらしい。とはいえ、当たりたいと思う物好きは誰もいないだろう。龍悟も迫るミサイルを避けた。ミサイルはジェット推進であるが、速いという訳では無い。威力だけでなくスピードも競技用に抑えられているのだろう。

 

 一方、プレゼント・マイクと相澤は、地雷やミサイルについてのギミック説明を行っている。

 

『地雷の位置はよく見りゃ分かる仕様になっているぞ!目と足を酷使しろ!地雷もミサイルも派手な音と見た目だから、失禁必至だぜ!』

『それは人によるだろ。それと、あの追尾ミサイルは空中に数秒いた人間をターゲットにして発射される。飛行系の個性だけでなく、跳躍系や浮遊系の個性持ちも注意しろ』

「追尾……まさか!」

 

 相澤の『追尾ミサイル』という不穏な単語に、龍悟は先程回避したミサイルの行方を目で追った。言葉通りと言うべきか、ミサイルは大きな弧を描いて再び龍悟に向かってきていた。

 

『安心しろ!空を飛んだせいでミサイルに狙われても、地上に降りたら追尾機能は解除されるぜ!ただし、また飛んだら再度追尾されるから気を付けろよ!飛べる奴は上空か地上か、状況に応じてルートを選べ!』

 

 先程避けたミサイルだけでは無い。既にいくつものミサイルが発射されており、龍悟をターゲットに様々な方角から飛んできている。1人で最終関門の上空にいた為、全てのミサイルのターゲットが龍悟に向けられていたのだった。

 

『独走がアダとなったか孫!?地上に降りなければミサイルの集中砲火が待っているぞ!さぁどう攻略するんだ!?…全く降りる気配無し!そのまま空を飛んで行くつもりだー!』

 

 

 相澤やプレゼント・マイク、観客に至るまで、皆の注目が龍悟に集まる。そんな龍悟は高度を上げ、両手を上げ蒼穹の光弾を作り出し放つ…放たれたそれはいくつにも別れ、星屑の様に降り注ぐ。その幻想的な光景に誰もが目を奪われる。放たれた“スターダストフォール”はミサイルだけでなく発射装置すら破壊した。

 

『ちょ!マジか!!ミサイルの発射装置まで潰しやがった!最終関門の障害物、地雷だけになっちまったじゃねーか!それに損害が!!って、ンなこと言ってる間に孫が最終関門を悠々と突破ァ!やはりあいつは強かった!序盤からトップを独走!汗一つかかずに余裕の表情でスタジアムに還って来た奴の名前はーッ!孫龍悟!』

 

 喋ってる内に、龍悟は最終関門を突破。後続の轟と爆豪は最終関門にすら到着していない。完全な独走だった。飛行しながらゴールゲートをくぐり抜ける。龍悟は大歓声の中、ゴールした。

 

 龍悟は貴賓席に居るオールマイトに目を合わせると、少し微笑みながらガッツポーズ。そしてそれにサムズアップで返すオールマイト。

 

 

 

 第一種目 障害物競走 1位 孫龍悟

 

 

 

 

END

 

 




はい!障害物にミサイルを追加しました。飛んで終わりじゃ呆気ないと思いまして。


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騎馬戦・前編

お気に入りが900人突破!
ありがとうございます!
それではどうぞ!


 

 その後の結果は二位が轟、その後ろに爆豪、暫くすると飯田と響香達がゴールし次々と後続達がゴールし始めた。やはり、その顔ぶれはヒーロー科に属する生徒ばかりだ。

 

 爆豪は肩で息をしながら悔しがる。轟も表情にこそ出てはいないが、その内心は穏やかでは無い。龍悟に大きな差を付けられてゴールされた事が原因だ。

 

「どう思う?」

 

 経営科の席で1人の生徒が他に向けて声を発した。基本的に体育祭に参加するメリットが無い経営科は、売り子や経営戦略等のシミュレーションなどで勘を培っている。

 

 声をかけられた生徒は、ノートパソコンを片手に応える。

 

「エンデヴァーの息子の轟と、ヘドロ事件の爆豪。有名どころの2人を抑えてゴールした孫龍悟の株価急上昇だね。孫は実力もルックスもどちらもイケる」

「まだ、体育祭は始まったばかり、これから彼は更に見せてくれるはずだ」

 

 という経営科の意見であったが、それはプロヒーローの目からしても、その意見に大きな差はない。実際、龍悟はただ飛んだだけ、攻撃したのは最初と最後の一時、材料が本格的に揃い始めるのは次の本選からだろう。第一種目の障害物競走は予選であり、雄英体育祭の本番は正にこれからだ。

 

「予選通過は上位42名!残念ながら落ちちゃった人も安心しなさい!まだ見せ場は用意されているわ!」

 

 全生徒が走り終え、もしくはリタイヤして第一種目は終わりを告げた。予選突破の42名中、40名がヒーロー科の生徒であり、残りの2名は普通科の男子とサポート科の女子であった。

 

 予選で落ちてしまった生徒は、当然本戦に参加する事は出来ない。代わりに大玉転がしや借り物競走といったレクリエーションには自由に参加出来るため、そこでアピールするしかない。無論、観客はオマケ程度にしか見ていないのだが。

 

「そして次からいよいよ本番よ!ここからは取材陣も白熱してくるわよ!キバリなさい!さーて、第二種目よ!私はもう知っているけど~~何かしら!?言ってるそばから…コレよ」

 

 ミッドナイトの背後に現れるスクリーンに映し出される『騎馬戦』の文字。軽いざわめきが起こる。参加者42名が様々な反応を見せる。ミッドナイトは彼等を見渡しつつ、ルール説明を始めた。

 

「参加者は2~4人のチームを自由に組んで騎馬を作ってもらうわ。基本は普通の騎馬戦と同じルールだけど、異なる点も有るわ。まずはポイント。第一種目の結果にしたがい各自にポイントが振り当てられるわ!」

 

 つまり組み合わせによって騎馬のポイントがそれぞれ異なり、それを奪い合うポイント稼ぎ方式である。ミッドナイトは説明を続ける。

 

「1位に与えられるポイントは、1000万!上位の奴ほど狙われちゃう、下克上サバイバルよ!」

 

 3位のポイントは200P、2位は205Pだというのに、1位は突然に跳ね上がった。まるで、昔のバラエティ番組のようだ。皆の視線が突き刺さりるが、それでも龍悟は眉一つ動かさない…脅威とは思ってないからだ…

 

「上をいく者には更なる受難を。雄英に在籍する以上何度でも聞かされるよ。これぞプルスウルトラ!予選通過1位の孫君!持ちポイント1000万!」

 

 1位の龍悟はポイントを奪われるまでずっと狙われ続けてしまうだろう。しかし、逆に考えるとこの1000万ポイントを奪われなければ、相手のポイントを奪わなくとも確実に勝利出来るという事である。リスクはあるが、同時に有利な立場でもあった。

 

「重要なのはハチマキを取られても、また騎馬が崩れても、アウトにはならないってところ!個性発動アリの残虐ファイト!競技時間は15分間!タイムアップの時点でポイント上位4チームが最終種目に進出よ。それじゃ、これよりチーム決めアンド作戦会議時間を設けるわ。時間は同じく15分!交渉タイムスタートよ!」

 

   

 

 それぞれがチームを組む中、龍悟もチーム決めをしていた。

 

「飯田に断られるとは……」

「あと一人…どないする?」

 

 響香と麗日は既に龍悟とチームを組むのに承諾しており龍悟は麗日の個性で軽くして機動力を上げ飯田で駆け抜ける。響香は中距離で対応とハチマキ取り…この考えでいくつもりだった。

 

 だが、飯田に断られてしまった。

 

『君は素晴らしい友人だ、だからこそ君に挑みたい』

 

(俺に挑むか……)

 

 なんとなく天下一武道会でクリリンと戦った事を思い出した。

 

(それはともかく…あと一人どうするか…)

「龍悟、私と組まない?」

 

 龍悟が悩んでいると声を掛けて来たのは拳藤だった。

 

「いいのか?B組だろ?」

 

 同じヒーロー科だが龍悟はA組、拳藤はB組。二週間前に敵襲撃事件でB組はA組に対して対抗意識を持っているようだ。加えて競技が始まる前の選手宣誓でA組、普通科、サポート科はともかく、B組生徒によく思われていないのは明らかだ。B組の中にはA組を蹴落としてやろうとしている生徒もいるだろう。

 

「確かにクラスは違うけど、いいんだよ。よく思っていないのは物間とかだしさ、それに…私だって勝ちたい…このチャンスを逃したくない…騎馬戦で一番勝ち上がれるのは龍悟のチームだと思った…それに龍悟…1000万を守り切るなんて考えてないでしょ……“全部奪うつもりでしょ”?」

「…………………」

「ピンチをチャンスに変えて更に向こうヘ行く…そんな龍悟を近くで見て…その経験を糧に私は強くなりたい」

 

 真っ直ぐにこちらを見つめる拳藤……

 

「………頼もしいな、よろしく頼む」

「!?、ああ!!」

 

 龍悟が差し出した手を拳藤は握った。

 

「……同じチームなんだ…ウチのこと…響香でいいよ」

「……なら私も一佳で…」

 

 どうやら響香も拳藤の事を認めたようだ…

 

「チームも決まった事だし、確認だが…麗日、拳藤……幽霊って大丈夫か?」

「「え?」」

 

 その言葉に麗日と拳藤は固まり……響香は震えた。

 

 

 

 

 

 

 1年B組物間 寧人は今の状況が気に入らなかった。理由は雄英体育祭という三年間で三回しかないビッグイベントにも関わらず、敵の襲撃に耐え抜いただけでA組ばかりが注目を集めている。ここにいる観客の殆どがA組にばかり目を向けている。それは何故か?彼らと自分達の違いは何だ?会敵した…ただ、それだけのはずだ……ヒーロー科はA組だけじゃない。B組もいるんだって思い知らしてやる。B組が予選で何故中下位に甘んじたか…調子づいたA組に知らしめる。B組全員で作戦を立てて、個人ではなくクラスで対抗しようと企むが…

 

 

「悪い皆。私、龍悟達と組んでくるよ」

 

 拳藤や鉄哲を筆頭に何人か断られていた。

 

「へぇ…まぁ個人の自由だからね。鉄哲とかにも断れているし…B君の仲間だからって容赦しないよ?」

「私だって手加減しないよ」

 

 拳藤と龍悟達の方へと歩いて行く。

 

 物間は不敵な笑みを浮かべながら…

 

「気に入らないね…孫龍悟。入試首席合格、敵襲撃も耐えて、さらに選手宣誓での一位宣言……そこまでして注目されたいか。うちの委員長まで味方に付けて…君や調子に乗っているA組の連中にB組の力を見せてやる」

 

 

 

 

『15分のチーム決めと作戦タイムを経て、フィールドに11組の騎馬が並び立った!さぁ上げてけ鬨の声!血で血を洗う雄英の合戦が今!狼煙を上げる!準備はいいかなんて聞かねえぞ!いくぜ!残虐のバトルロイヤル、カウントダウン!ーー』

 

『3!』

 

「狙いは!」

 

 爆豪チーム 爆豪、切島、芦田、瀬呂

 

『2!』

 

「一つ!」

 

 轟チーム  轟、飯田、八百万、上鳴

 

『1!』

 

「麗日」

「はい!」

 

 右翼の麗日。

 

「拳藤」

「おう!」

 

 左翼の拳藤。

 

「響香」

「任せて!」

 

 先頭の響香。

 

 龍悟チーム  龍悟、響香、麗日、拳藤

 

「行くぞ!!」

 

『START!!』

 

 

 

 第二種目、騎馬戦。その試合開始のゴングが鳴った。

 

 

 

END

 

 

 



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騎馬戦・後編

もう察してると思いますがあの技が登場します。
それではどうぞ!


「実質、1000万の争奪戦だ!」

「龍悟君!いっただくよーーー!」

 

 鉄哲チームと葉隠チームの2組が龍悟チームの1000万を奪おうとしてくる。

 

「全員目瞑れ!」

 

 そう言うと龍悟以外の騎馬をしている響香達は目を瞑る。

 

「―――太陽拳!!」

 

「なんだ!?眩しい!」

「目が!?目がああああ!!」

 

 強烈な閃光が周りの目を眩ませる。その隙に超サイヤ人に変身した龍悟は口から白い何かを出した。

 

「なんだ?」

 

 轟達は警戒し麗日達も不思議に見つめる。

 

 白い何かは形を変え龍悟に似た髪が逆立った幽霊になった。その光景に一同は驚愕する。

 

『なんだこれは!?孫の口からオバケが出できたぞ!』

『それ以前にまだ出で来るぞ!?……』

 

 龍悟はどんどん口から幽霊を出す。

 

「ど、どんだけ出すんだよ……!」

 

 誰かの呟きが聞こえ少ししたら龍悟は出すのを辞めた。だが、幽霊の数に驚愕した。龍悟チームの周りには無数の幽霊が漂って居るのだから。

 

「おいおい…何体居るんだよ…!」

「龍悟君……こんな技も持っていたのか……!」

「不味いぞ…!こんな数で一気に来られたら…!」

 

 轟チームも冷や汗を流し…

 

「……冗談キツいぜ……!」

「…あの野郎…まだ、隠してやがったのか…!」

 

 爆豪チームも震える。

 

「り、龍悟君…この幽霊って?」

「俺が作成した幽霊の形をした気だ…本物じゃない……俺の意思で遠隔操作ができる…今は居るのは百体だな」

「ひゃ、百!?」

 

 さりげなく言った言葉に一同は驚愕する、百体の幽霊など対戦相手には溜まったものではない。

 

 龍悟やったのは自分の息子とも言えるゴテンクスの技である“スーパーゴーストカミカゼアタック”だ。子供の考えた技だが、この状況ならかなり効果的だ。

 

「うう…夜じゃないだけましか…」

 

 幽霊が苦手な響香にはキツイようだ。

 

「さて、拳藤の言う通り俺は全部のハチマキを取る積りだ…だが、いちいち取るのは面倒だ…だから、こいつ等で取る……行け!」

 

 その言葉を聞いた幽霊達が一気に襲いかかる。

 

「クソ!数が多すぎる!!」

「しまった!ハチマキ取られた!」

「反則だろ!あんなの!!」

 

 幽霊達は次々とハチマキを奪い取る。

 

「くたばれ!!」

 

 爆豪が幽霊を爆破させようとしたが……次の瞬間、幽霊が爆発した。

 

「なっ!?」

 

 爆発で体制を崩してしまいその隙に別の幽霊にハチマキを取られてしまった。

 

「言い忘れたが…その幽霊は衝撃を受けると爆発する」

『マジかよ!考え無しに攻撃できない!!』

『…騎馬を組んでいる以上、機動力は低い…其処にあの集団攻撃…上手いな…』

 

 そうしてる内にハチマキを持って居るのは轟チームだけだが、数十体の幽霊に囲まれ多勢に無勢…ハチマキを取られてしまった。幽霊達は龍悟の元に戻り消えていく…龍悟の手には全てのハチマキが…

 

『マジかよ!開始してまだ二分しか経ってないのに龍悟チーム以外ハチマキを持っていない!!』

「これで後は返り討ちにするだけだ…準備はいいか」

「幽霊がいないなら、もう大丈夫!」

「オッケーやで!」

「任せな!!」

『ハチマキを手に入れなければ敗退…当然、全チームに狙われる……どうやって凌ぐか見ものだな』

 

 その言葉を合図に全てのチームが龍悟チームに襲いかかる。

 

「響香!」

「オッケー!」

 

 龍悟は気弾を放ち、響香は衝撃波で地面を抉る。前方から襲い掛かってきたチームは撃沈される。しかし、異変は足下から起こった。

 

「し、沈む!?足が地面に呑まれていく!」

「B組の骨抜って奴の個性だよ!」

 

 別方向から鉄哲チームが向かってくる前騎馬の骨抜が個性『柔化』を発動させて、地面を柔らかくする。沼のようになってしまった地面に龍悟チームの騎馬は足を取られる。

 

「今です!」

 

 その隙に鉄哲チームの『ツル』の個性を持つ塩崎が何本のツルを伸ばしてくる。

 

「気円斬」

 

 龍悟が放った気円斬がツルを切り裂き鉄哲チームに襲いかかる…気円斬に目を奪われてる隙に瞬間移動で移動する。

 

「結構いい感じじゃない?このチーム!!」

「このまま15分間、防ぎ切る!」

 

「あははは!奪い合い?違うぜ、これは…一方的な略奪よぉ!!」

 

 障子が一人で孫チームに突っ込んで来た。騎馬戦なのに騎馬が一人というのはアリなのかもしれないが…障子の複製腕で隠れている隙間から何かが出てきた。

 

「足元、気を付けろ!それ踏むと取れなくなるぞ!」

 

 すぐに止まり、足元を確認する。そこには峰田のモギモギが辺りに散らばっていた。

 

「龍悟の奴!女と組みやがって…!しかも全員が美女じゃねーか!このハーレム野郎!呪ってやる!!」

 

 障子の複製腕の隙間から覗き見しているように出てきた峰田は目が血走って充血している。龍悟のことを呪い殺せるかもしれない眼力は引くレベルだ。

 

「これは酷いな」

「サイテー」

「クズが…」

(亀仙人のじっちゃんもこんなにも酷くはなかったと思うが…)

 

 拳藤と麗日もドン引きしている。響香は養豚場の豚を見る目で見ていた。峰田が純粋に気持ち悪い。騎馬となっている障子もマスクの上から分かるほど顔を顰めている。今度は隙間からベロが出てきてハチマキを狙う。龍悟は屈んで回避する。舌が戻り、蛙吹が隙間から覗いてくる。

 

「流石ね…龍悟ちゃん。……とりあえず峰田ちゃんは無視しておきましょう。奇襲が失敗した以上、龍悟ちゃん達と正面から戦うのは厳しいわ。障子ちゃん、ここは1度退きましょう」

 

 蛙吹がそう言うと、峰田チームは龍悟達から離れていった。騎手の峰田だけは反対していたが、無視されていた。当然だ…

 

 他のチームから攻撃がくるが龍悟が騎馬ごと舞空術でホバリング移動し避ける。麗日のお陰で軽量化しており苦ではない。その時、辺りを電撃が襲う。龍悟はいち早く察知し気でバリヤーを作り防ぐが周りのチームは動きが一時的に止まっている。

 

「これって!」

「轟のチームか」

 

 

 轟チームは龍悟チームの1000万を狙う。飯田の個性『エンジン』で前進して来る。八百万の個性『創造』で作ったローラーシューズを履いている。そのおかげで上鳴と八百万は飯田が速いスピードを出しても足を引きずられない。

 

「残り時間半分…後には引かねえ。他のチームには悪いが…暫くの間、我慢しろ」

 

 轟は氷結で手に持てる程度の氷を作り出し、地面へと突き刺す。突き刺すと同時に氷結の範囲が広がり、騎馬の足元を凍らせて動きを止める。上鳴の放電で確実に動きを止めてから氷結で凍らせた。この隙に轟は氷壁を張り龍悟達の逃げ場をなくし他のチームが来れないようにした。

 

『面白くなってきた!!果たして孫チームからハチマキを取る事はできるのか!!』

 

「さっきの分も取り返す…!」

「さっきの分か…あれは子供の時に考えた、お遊びなんだがな」

 

 実際に考えたのはゴテンクスなのだが…些細な事だろう。それに轟は反応する。

 

「遊びだと…!」

「ああ…昔、響香のイタズラの仕返しにやった技だ」

「ウチはただ尻尾掴んだだけじゃん…」

「あの時は尻尾が弱点だったんだよ…それにそれを知ったら悪い顔しやがって…」

「そんな、技に俺等は……!」

 

 子供の技にいいようにされたのが悔しいのだろう……顔を歪めていた。

 

「なら、改良型を見せてやるよ」

「改良型だと……?」

「俺は“龍悟”なんでね…幽霊より、こっちが性に合う」

 

 龍悟は超サイヤ人2になり気を高める。高まった気が形を成していく…それは……

 

「キァアアアアン!!!!」

 

 黄金の龍に形を変えた。

 

『『『『『ドラゴン!?』』』』』』

 

 アリーナ全体が出現した龍に驚愕する。

 

『なんじゃありゃぁぁぁぁぁ!!今年のお前のクラスどうなってンだイレイザー!?』

『あいつが規格外過ぎんだよ…胃が痛くなってきた…』

 

 これが龍悟(ゴジータ)がスーパーゴーストカミカゼアタックを改良した技…

 

「その名も“神龍の炎(ゴットドラゴン・ブレイズ)”」

「おお!強そう!!」

「いいじゃん!幽霊なんかよりずっといい!!」

「響香は幽霊以外なら何でもいいでしょ…」

 

 ゴットドラゴン・ブレイズは轟チームに襲いかかる。

 

「ヤオモモも作れないの!?機械の龍とか!?」

「無茶言わないでください!」

 

 轟チームの行く手を邪魔するように飛び回り、炎を撒き散らす。

 

「やべぇ!もっと近づかないと放電しても意味ない!」

「だが、これではまともに進めない!」

 

 飯田達の足は鈍った。直撃すれば火傷は間違いなしの熱量を持つ龍が襲いかかるのだから、慎重になるのは仕方無い事だった。

 

「轟君、頼む!」

「ああ」

 

 轟はゴットドラゴン・ブレイズに向けて氷結攻撃を仕掛け、氷の中に閉じ込める。しかし、大きな熱量を持つゴットドラゴン・ブレイズには効かなかった。今度はゴットドラゴン・ブレイズが炎を吐く。轟は慌てて氷壁で防御するが防戦一方となってしまった。

 

「本人狙いは…チッ、これも駄目か」

 

 ゴットドラゴン・ブレイズの隙を縫い、轟は龍悟に向けて大氷結を放つ。しかし、龍悟からのビックバン・アタックが放たれて相殺されてしまうだけで終わった。

 

『すげぇバトルだ!氷が美しく輝き、黄金の龍が舞い踊る!なんか幻想的!』

 

 龍悟と轟、黄金の龍と氷で繰り広げられる大規模攻撃の応酬に、観客は歓声も忘れて息を飲む。その光景は美しくすらもあり、プレゼント・マイクの言う通り幻想的だった。

 

「き、キツイ…」

「このままでは…」

 

 上鳴と八百万の息は大きく上がっている。騎馬を組んで動き回っている訳だから、辛いなんてものではない。轟チームも時たま隙を見つけては、上鳴の放電で攻撃していたが、その度にゴットドラゴン・ブレイズに電撃を防がれていた。体力だけで無く、上鳴は放電容量も最早ギリギリだ。後一度でも電撃を放てば、キャパオーバーしてしまうだろう。

 

(残りあと僅か…上鳴君も八百万君も限界が近い。アレを使う場面はここしかない!)

 

 最早ジリ貧。そう考えた飯田は最後の一手にかけることにした。

 

「皆、聞いてくれ!最後の攻撃を仕掛ける。頼んだぞ。轟君!八百万君!上鳴君!行くぞ!トルクオーバー『レシプロバースト』!」

 

 『レシプロバースト』。エンジンのトルクと回転数を無理矢理上げて、爆発的な推進力を生み出す飯田の裏技である。

 

 この場にいる人の目では追えないほどの速さ。その速度でゴットドラゴン・ブレイズを振り切り龍悟チームを通り過ぎようとする飯田。轟は突然の速さで動くので驚くが、龍悟の頭に巻いてある1000万ポイントのハチマキを取ろうとする。誰もが飯田の移動速度に反応していないが…龍悟だけは違った。

 

「轟君!1000万は…!?」

「飯田…悪い、獲り損ねた」

「そんな!?これでも反応できるのか龍悟君は!!」

「確かに速かったが…直線的でわかりやすい」

 

『さぁ、残り時間も後わずかだ!このまま全ポイントは孫チームが持っているままか!?……って、轟が氷で作ったフィールドにワラワラ集まって来たぞ!!』

 

 氷壁に穴が空き、他のチームの騎馬が集まってくる。氷を破壊して騎馬が通れるくらいの穴を空けたのだろう。

 

「変身野郎!!」

 

 爆豪が爆発で空を飛びながらこちらにくる。

 

「拳藤!!」

「任せて!!」

 

 拳藤の個性『大拳』で片方の手で龍悟を支えて、もう片方の手で反撃を行う。大拳で扇子のように扱い風を起こす。

 

「糞が!」

 

 風でバランスを崩した爆豪は龍悟の気弾で吹き飛ばされた。更に別のチームが襲いかかるが適確に防ぐ。

 

「流石の君でも、この大人数で獲りに来られたら隙の一つや二つは出来るよね…ここで脱落させて一位宣言をしたことを後悔させてあげるよ!そうすれば完全に黒歴史になるんじゃないかな~!一生恥を晒して生きていくことになるよね~!!」

「も、物間!?」

「あの時の!」

「爆豪と違う種類でやかましい奴か…」

 

 だが、B組のチームのゴーレムのような顔をした男子生徒が近づいて来る。足音が響くくらいの巨体。

 

「いけ! 凡戸!!」

「ここで人任せ!?」

「小者がする事じゃん…完璧に…」

 

 煽っておきながら直接手を出さない物間に麗日と響香は呆れていた。

 

「物間はともかく、あいつは凡戸……個性『セメダイン』チューブの先っぽのような形の頭部の先端から、ボンドのような凝固性の粘液を出すことが出来る、気をつけて!」

「サンキュー!拳藤!」

 

 それを聞いた龍悟は気で鞭を作り物間を縛る…物間チームも踏ん張るが超サイヤ人2の龍悟と大拳の拳藤のパワーには勝てず引き寄せられる。引き寄せた物間チームをコチラに放たれた粘液の盾にする。

 

「呆気なかったな」 

「人に頼らず、少しは鍛えろよ」

 

 

『時間はもうほとんど無いぞ!全員、覚悟はいいか!?カウントダウンスタート! 10! 9! ―――』

 

「まだだ!!」

「ふざけんな!!」

 

 轟と爆豪を筆頭に龍悟チームに向けて個性が一斉に放たれる。

 

 だが……

 

「俺達の勝利だ」

 

 その攻撃は龍悟チームを旋回してるゴットドラゴン・ブレイズに防がれてしまう。万が一を想定し消さずに上空に待機させておいたのだ。

 

 

『TIME UP!!』

 

 プレゼント・マイクの試合終了の合図。それが聞こえると誰もが止まった。殆が悔しさで堪らない中、龍悟達は騎馬を解除する。

 

 ゴットドラゴン・ブレイズを解除した龍悟は響香達の方を見る。

 

「ほらほら龍悟君も!」

「完全勝利にはこれがお約束だぜ」

「こういうのも悪くないでしょ」

 

 手を重ねる響香達を見て龍悟は……

 

「……ああ…」

 

 微笑みながら手を置いた。

 

 そしてーー

 

『結果発表だ!!!――1位は勿論…前代未聞!ハチマキ全てを手に入れた、孫チーム!!』

 

「やったぁぁぁぁ!!!」

「やったよみんな!!」

「ウチ等の勝利だ!」

「……フッ」

 

 

 発表と同時に重ねていた手を空へと上げた。

 

 

 こうして、第二種目、騎馬戦が幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

END

 




ゴットドラゴン・ブレイズは仮面ライダークローズのクローズドラゴン・ブレイズを黄金にしたイメージです。


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一時の安らぎとトーナメントの開幕

投稿が遅れて申し訳ありません…花粉症が酷くてなかなか進みませんでした…

それとお気に入り登録が1000人突破ありがとうございます!
それではどうぞ!!


 

『2位!と言いたいが孫チーム以外ポイント持っていねー!!どうする!?元々上位4チームの勝ち抜けが約束されていたのだが、龍悟チームが片っ端からハチマキを奪ったので2・3・4位は実質存在しなくなってしまった!』

「ふざけんな!俺が予選敗退だと!?クソがあああ!!」

 

 爆豪は騎馬戦の結果に激怒していた。ハチマキは取られ近づくことすらできなかった…そんな屈辱の結果に、爆豪は拳を地面に叩き付けて怒りを露わにするのだった。

 

(また、勝てなかった……左を使わないと、勝てないのか……!?)

 

 父親の反発から、炎を使わないと心に決めた轟。だが、その心には、迷いが生じていたのだった。

 

「その事については昼休憩の時、我々教員での会議で決めたいと思います。」

 

 ミッドナイトの報告を最後に午前の部が終わった。

 

 

 

「悔しいわ。響香ちゃん、おめでとう」

「ありがとう梅雨ちゃん」

「しかし、トーナメント戦、どうなるんだろうね」

「敗者復活戦をするかどうかだね…」

 

 午前の部が終わり、騎馬戦に参加していた生徒たちも昼休憩に入る。皆、スタジアムの通路を歩きながら雑談を楽しくしていた。

 

「あれ、龍悟君は?」

 

 麗日は辺りを見渡すが、周囲に龍悟の姿は見つけられなかった。

 

 

「なんだ?話って」

 

 スタジアムの学校関係者専用の入り口通路。騎馬戦終了後、轟から話があると切り出された龍悟は、轟の後を追って利用者の少ないこの通路に来ていた。轟は冷たい威圧感をもって睨み付けながら応えた。

 

 

「なぁ…お前、オールマイトの弟子か何かか?」

「……何を言うかと思えば…そんな訳ねぇだろ」

 

 龍悟は顔色一つ変えずに否定した。バレてはいけないから。

 

「だが、何かしらの関係はあるんだろ。俺の親父はエンデヴァー、知っているだろ。お前がNo.1ヒーローの何かを持っているなら、俺は尚更勝たなきゃいけねぇ」

 

 轟は語り始めた。

 

 エンデヴァーはデビュー時からヒーロー界に名を馳せたが、それはエンデヴァーの極めて高い上昇志向によるものだった事。だがそれゆえに、ずっとトップに君臨するオールマイトが目障りで仕方なかった事。しかし、エンデヴァー自身は己ではオールマイトを超えることが出来ない事を悟った事。結果、エンデヴァーはある“手段”を取った事。

 

「その手段ってのが…」

「――“個性婚”……第二~第三世代間で起きた前時代的発想。己の個性を強化し、後世に残そうとする為だけに配偶者を選ぶ、胸糞悪い社会問題だ。――それをエンデヴァーはやりやがったんだ」

 

 冷たい圧を強めながら轟は続けた。

 

 金と権力で相手の親族を丸め込み、エンデヴァーは轟の母親となる女性を――“個性”を手に入れた事。そして己の上位互換と呼べる轟をオールマイト以上に育て上げようとしているが、轟自身はそれを否定している事。

 

――そして轟の記憶の中の母が、いつも泣いていたという事。

 

『お前の“左”が醜い……!』

 

 そう言って母から煮え湯を浴びせられたという事。

 

「俺がお前につっかかんのは見返す為だ。あいつの“個性”を使わず……母の力だけでな!――それで“奴”を完全否定する!」

 

 そう言い放つ轟。彼の表情は憎しみで満ちていた。

 

「悪かったな……昼休みなのに…」

 

 轟の伝えたい事はもうないらしい……だが、龍悟は…

 

「一つ言ってやる……自分を見失ったお前や自分しか見ていない爆豪じゃ今の俺の相手にはなれないぜ」

「な…!ふざけんな!待て!!」

 

 轟は怒り、龍悟を呼び止めようとするが、龍悟はそれを無視してその場を後にした。

 

「あの野郎…気づいてて俺に言いやがった…!!」

 

 その言葉は隠れて聞いていた爆豪にも届いていた。

 

 

 

 

 

 

 

「……………やっぱり…混んでるか…」

 

 案の定、食堂は混んでおり…何処でもいいから空いている席は無いかと辺りを歩き回ってみるもののどこも満席状態。……少し轟を恨んだ…

 

「お〜い!龍悟!」

 

 呼びかける声に振り向くと…A組の女子六人が座ってるテーブルがあり席が一つ空いていた。その席に座る。

 

「悪いな…わざわざ空けてくれて」

「気にしないで」

 

 それから昼食を食べてると……

 

「そういえば……騎馬戦の時、尻尾がどうとか言ってたよね…どう言う事なん?」

「……あれは……」

「昔、龍悟は尻尾が弱点だったんだよ」

 

 響香の言葉に麗日達はビックリする。

 

「ホンマに!?」

「弱点!?」

「マジマジ、尻尾を握るとふにゃふにゃになって立てなかったんだよ」

「龍悟ちゃんがふにゃふにゃ……」

「想像できませんわ…」

「だから仕返しに幽霊出したん?」

「そう言う事だ……それに尻尾はもう克服したから意味ないぞ…麗日…」

 

 龍悟はさっきから尻尾を握ってる麗日に言った。

 

「………………ちえっ……」

「悔しがるなよ…」

 

 

 こうして昼休憩は終わり、始まった午後の部だが…

 

『……何やってんだあいつら?』

「響香…麗日…なんでチアの格好してるんだ?」

「言わないで…///」 

「恥ずかしい///」

 

 相澤の冷めた言葉を掛けられる中――“チアガール”の姿をしたA組女子は肩を落としていた…そして、その中でリーダーっぽい八百万は一人、龍悟の下へと来る。――やや表情を引き攣らせながら。

 

「あ、あの龍悟さん、飯田さん…相澤先生からの言伝で…この姿で女子全員参加の応援合戦と言う話では?」

「…初耳だ。少なくとも俺は知らない……飯田は?」

「僕も知らないぞ!」

 

 瞬間、八百万は固まると同時、すぐに動き出し、峰田と上鳴へ手に持ったボンボンを投げつけた。

 

「峰田さん!! 上鳴さん!! 騙しましたわね!!」

「「イェーイ!」」

 

 怒る八百万に対し、当の二人は親指を上げて作戦成功を喜んでいるが……

 

「お前ら、いい加減にしろ……今回はやり過ぎだ」

「ごはぁ!?」

「ぐへぇ!?」

 

 龍悟の的確な腹パンで二人は地に這いつくばった。

 

「アホだろあいつら!」

 

 恥ずかしそうにし、苛つきながら響香はボンボンを地面へと叩きつける。そんな響香に龍悟は自分の上着を被せた。

 

「龍悟///!?」

「恥ずかしいんだろ?着てろ」

 

 龍悟はそのまま言ってしまった。顔を赤くしながら上着を着た響香は……

 

「………あったかい///」

 

 そう呟いた。

 

 

 それからミッドナイトより個人戦最終種目の内容が発表された。最終種目はトーナメント方式で行われる一対一の個性ありきのガチバトル。そして、先生方で協議した結果、12名をトーナメントに組み込む事が決定したという。参加者はこの後のレクリエーションの成績上位12名から選出されるらしい。勿論、トーナメント出場の資格を持っているのは騎馬戦出場者のみだ。だから勝ち残った龍悟達にはレクリエーションには出ないでほしいとの事だ。

 

 事実上、敗者復活戦となった午後の部レクリエーション。騎馬戦敗退組はやる気と熱意にたぎっていた。

 

 その結果…トーナメントは…

 

 

Aブロック

 

第一試合:孫VS心操

 

第二試合:轟VS骨抜

 

第三試合:上鳴VS塩崎

 

第四試合:飯田VS芦戸

 

Bブロック

 

第五試合:耳郎VS鉄哲

 

第六試合:常闇VS八百万

 

第七試合:切島VS拳藤

 

第八試合:麗日VS爆豪

 

 

  殆がヒーロー科だが……

 

(普通科か……)

 

 龍悟の対戦相手は普通科の心操人使だ……龍悟は心操を見る…

 

(どう見ても鍛えてない…それでもここまで勝ち上がった…警戒するべきか……)

 

 その後、セメントスがステージを作るまで控室で待っていたが…

 

「孫少年」

「オールマイト」

 

 控室にトゥルーフォームのオールマイトが居た。駆けつけてきてくれたようだ。

 

「一種目と二種目、見事だった。開会式での一位宣言から、どちらも圧倒的一位をもぎ取り、世間に『君が来たって!!』ってアピールしてくれたね」

「ああ…決勝トーナメントでも勝ち抜いてみせるさ」

 

「頑張ってくれ………これも君に伝えようと思う…」

「?」

「ここに…私の元相棒が君を見に来ている…」

「サーナイトアイか…」

「ああ…だが、6年前…オール・フォー・ワンとの戦いでの怪我でコンビは解消した…」

 

 それは価値観の違いだった…

 

「この話は君の為にならないと思っていた……」

 

 オールマイトは辛い表情をし龍悟は静かに聞いていた…

 

「…オールマイト…何故こんな事になってしまったのか…他に何かなかったのか…そう思うのはわかる…だけど、それは誰のせいでもない。“間が悪かったんだ”」

 

 言葉にすれば冷酷な結論だが、龍悟のそれは温かな肯定に満ちていた…

 

 龍悟(ゴジータ)には覚えがあった…セルゲームの時に超サイヤ人2に覚醒した悟飯はセルを圧倒した。だがすぐに倒そうとはしなかった。自分(悟空)はその状況を恐れた、それは超サイヤ人に覚醒した自分(悟空)に追い詰められたフリーザがナメック星を破壊した状況に瓜二つだった。案の定、セルは地球を破壊しようと自爆した……その結果…地球を救う為に自分(悟空)は命を落とした。

 

 そして、一日だけ現世に居られる悟空と自分(ベジータ)は戦って勝ちたかった……だが、バビディ達の魔人ブウ復活計画を阻止してほしいと界王神の願いによりあやふやになってしまった…だが、そんな状況を自分(ベジータ)は認めなかった……結果…わざとバビディに洗脳され悟空と戦った事で魔人ブウは復活した。

 

「あんたは引退してよかった…だけど、人々の悲鳴が聞こえる世界…あんたは象徴であろうとした……だけど、ナイトアイはあんたを思った…それらすべてが、たまたまその時だけ、かみ合わなかっただけなんだ…」

 

 だけど、自分(悟空)は二人を恨んではいなかった…悟飯の大切な皆が傷つけられた事や誰よりも命を愛した人造人間16号を殺された怒りは……皆を思いやる悟飯の優しさから生まれたものだから…セルに報いを受けさせようとしたのは納得ができた……自分(悟空)もベジータと戦いたかった…だけど、その日に限って…バビディ達が動き出した……彼等の思いに状況が噛み合わなかった…それだけなんだ…

 

「悲しいが、悲しいだけだ。それとはまた別のところに喜びもまたあった。人生とは無意味と有意味のせめぎ合いだ…だから、自分は大丈夫だって笑うんじゃねぇか」

「孫少年…」

 

『さぁ!いよいよ決勝トーナメントが始まるぜ!!第一試合の選手は入場してくれ!!』

 

「じゃあ…行ってくる」

 

 放送を聞き龍悟は控室を出ようとする…

 

「孫少年!」

 

 オールマイトに呼び止められ振り返る。

 

「まさかそんな答えが帰ってくるとは思わなかったよ…けれど、確かに悲しい人生だか、喜びもあった…心が軽くなったよ…私も君に言おう!『君が信じた道を行くといい。必ず誰かが、誰でもない君を待っている』!!」

 

「……フッ、行ってくる」

 

 微笑みながら龍悟は控室から出た。

 

 

END

 

 

 




オールマイトはナイトアイの事は話しましたが…予知の事は話してません…試合前に話せる内容じゃありませんし…


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黒の目覚め

お気に入りが1100人突破!ありがとうございます!!
それではどうぞ!!


 セメントスが個性『セメント』で会場のステージを造り直して、最終種目にふさわしい闘技場が完成した。プレゼント・マイクの声がスタジアム内に響き渡る。

 

『色々やってきたが結局これだぜ!ガチンコ勝負!頼れるのは己のみ!心技体に知恵知識!総動員して駆け上がれ!』

 

 ついに始まった最終種目に観客たちは歓声をあげる。早速、第1戦の選手である龍悟と心操がステージに上がると、スタジアムの熱気が更に膨れあがった。

 

『一回戦!!その強さまさに絶対無敵!!ヒーロー科孫龍悟!!VSごめんまだ目立つ活躍なし!普通科、心操人使!!』

 

『ルールは簡単!相手を場外に落とすか行動不能にする!あとは「まいった」とか言わせても勝ちのガチンコだ!!怪我上等!!こちとら我らがリカバリーガールが待機してっから!!道徳倫理は一旦捨て置け!!だがまぁもちろん命に関わるよーなのはクソだぜ!!アウト!ヒーローは、“ヴィランを捕まえるため”に拳を振るうのだ!』

 

(尾白の言葉通りならこいつの個性は恐らく“洗脳”だ)

 

 試合前に龍悟は尾白から話は聞いていた。騎馬戦のメンバー決めの時、尾白は心操に声をかけられた。――覚えているのはそこまでで、気づいた時には心操チームで騎馬戦に参加していた。

 

(それらを踏まえると、あの心操の言葉に答えただけで操られる……尾白…お前の助言ありがたく思うぜ)

 

 仕掛けがわかれば容易い……会話をしなければいい。

 

 そう思ったときだ……

 

『すまねぇが受けてくれねぇか…洗脳…』

 

 声が聞こえた…

 

「!?」

 

 突然聞こえた声に驚き辺りを見るが…目の前の心操以外ステージには居ない……

 

(聞き間違いじゃねぇ確実に聞こえた…あの夢と同じ感覚…まさか、同じ現象か…!)

 

 だとすると…今のはワン・フォー・オールから聞こえたと言う事だ……すると…心操が喋りだした…

 

「“参った”ね。わかるかい、孫龍悟…これは心の強さを問われる戦い。強い将来を思うなら、形振り構ってなんかいられないーー」

『そんじゃ早速始めようか!!レディィ!START!!』

「ーーそう思わないか?」

 

 罠だと知っている…だけど…

 

(尾白すまねぇな…教えてくれたのに……けどよ、鬼が出るか、蛇が出るか……ワクワクするぜ…!)

 

「…………かもな…」

 

 その罠に足を踏み入れた……真実を知るために…

 

 答えた刹那、拳は緩み、だらりと下がった。目も虚ろになり、動かない…

 

「俺の、勝ちだ」

『あれ?!おいおいどうした~~~~!!大事な初戦だ、盛り上げてくれよ!』

 

 しかし龍悟はそれでも動かない。

 

「あ〜〜〜!警告したのに!!」

 

「警告…?そういえば、尾白ちゃんは騎馬戦であの人と同じチームだけども、あの人の個性を知ってるの?」

 

 A組に割り振られた観客席では、尾白が悔しげな声をあげていた。それを聞いた蛙吹が尾白に問うと彼は頷いた。

 

「ああ。心操の個性は“洗脳”。奴の問いかけに答える事で発動し、洗脳されている間はほとんど意識も無く、奴の言いなりになってしまうんだ……!」

 

「洗脳!?」

「いくら、龍悟でも!!」

 

 対人戦ならば最強に近い彼の強個性にA組の生徒から驚きの声が上がる。だが、響香には負に落ちない点があった。

 

(龍悟はそれを知っているのに……何かがきっとあるはず……)

 

「お前はいいよなぁ、孫龍悟。振り向いてそのまま場外まで歩け…」

 

 その言葉が聞こえた時…A組に緊張が走る…

 

 だが…龍悟は動かなかった…

 

「?、どうした…場外に走れ!!」

 

 初めての出来事で心操にも戸惑いが生まれ…今度は走れと命令するが動かない……

 

「クソ!」

 

 業を煮やした心操は龍悟に近づく…だが、その時…龍悟の指から…“黒い何か”が放たれた…

 

「なっ!?がはぁ!!」

 

 突然の脅威に反応できず心操は吹き飛ばされた…

 

「何だあれ…!?」

 

 場外にはならずフラフラになりながら起き上がった心操は龍悟を見る…龍悟の指から黒い鞭のような物が存在していた。

 

『何だあれは!!孫の指から出た何かが心操を吹き飛ばした!!』

『どうゆうことだ?孫は洗脳されたままだぞ』

 

 相澤の言う通り龍悟の目は虚ろのままだ…それでも黒い何かは動いている…誰もが驚愕する中、龍悟は………厳密には龍悟の意識は…

 

 

(やっぱり、ここか…)

 

 初代の夢で見た、真っ黒な場所に居た。

 

「ありがとよ…来てくれて」

 

 声が聞こえ振り返ると…夢で見たスキンヘッドの男が居た。聞きたい事があるが口がない。

 

「おォい お口がないのかドンマイさ!」

 

 男はファンキーな人物だった。

 

(こんなにハッキリと…これはもう面影とかそういう類のものじゃない…!この継承者は…歴代継承者たちは!ワンフォーオールの中に生きているのか!?)

 

 驚くがよく見るとファンキーな男は消えかかっていた。

 

「ああ?時間は限られてるみてぇだな…よし!坊主よ!洗脳にかかってほしいって頼んだのはお前にここに来てほしいからだ、伝えたい事があってな!まずこれが今の状況だ」

 

 ある光景が見えてくる…それは今の試合だった…

 

(何だ、俺の指から出てる黒いのは!?)

 

「お前が今出した力は…俺の”個性”さ」

(!?、こいつの“個性”!?)

 

 流石の龍悟も驚きしか出ない…

 

「俺たちの因子は”力”の核に混ざってワンフォーオールの中にずうっと在った」

「小さな核さ…揺らめく炎或いは波打つ水面の中にある小さな点 培われてきた力に覆われる力の原子…そいつが今になって大きく…膨れ胎動を始めたのさ」

 

(ワン・フォー・オールそのものが成長していると言う事か……!)

 

「今、発動した“個性”が俺の『黒鞭』おまえ最初が俺で良かったさ…これはいい個性さ」

「だけどな!この”個性”もまたワンフォーオールに蓄積された力が上乗せされ俺のころより大幅に強化されている」

 

 すると、男は次第に消えていく。

 

「…消えるか…すごく…フワッとしてきたもんよ…俺はよ…心だけの存在だからよ。いいか坊主…お前にはこれから6つの“個性”が発現するさ、心を制して俺たちを使いこなせ」

 

 

「ワン・フォー・オールを完遂させるのはお前だ」

 

 その言葉を最後に龍悟の意識は途切れた。

 

 

 

 

 龍悟はゆっくりと目を開ける…目の前には心操が居る。どうやら意識が戻ったようだ…自分の右手から出てる『黒鞭』を見る。

 

(6つの“個性”か……どうやらワン・フォー・オールは俺を飽きさせる気はないみたいだ)

 

 微笑みながら黒鞭を制御し…解除する。

 

『あれ!戻ってる!?洗脳解けてる!!』

『打ち破ったのか…!』

 

「よし!」

「やった!龍悟君戻った!!」

「打ち破ったのか!!流石だよ!!龍悟君!!」

 

 その放送を聞いた響香達も活気が戻ってくる。

 

「何をした…?!何をしやがった!」

 

 命令は聞かない…洗脳が破られた、心操は明らかに動揺していた。

 

「なんとか言えよ…!お前はいいよな!そんな凄え“個性”で!!俺はこんな“個性”のおかげでスタートから遅れちまった!恵まれた人間にはわからないだろ。誂え向きの“個性”に生まれて、望む場所へ行ける奴らにはよ!」

 

「……………………」

 

 別にさっさと倒してもいい…だけど…その心からの叫びを聞いて……その気は失せた。

 

 龍悟は静かに心操に歩み寄る…

 

「この!」

 

 心操は拳を振るうが……龍悟は片手で容易く受け止めた。

 

「だから、努力を辞めたのか…」

「!?、うるせぇ!」

 

 心操の振り回す拳を紙一重で避ける龍悟。

 

「一つ言ってやる…自分を信じない奴に努力する資格はねぇ」

「…おおおおお!!」

 

 心操は息も上がり、汗を大量にかきながら、それでも一心不乱に龍悟に打ち込んでいく。

 

 響香が何かに気づく…

 

「動きが良くなってる?」

 

 最初に見た動きより、心操は速く鋭く打ち込んでいる。

 

「…うぉおおっ!!」

 

 龍悟は、心操の渾身の右ストレートをまともに顔で受け止めた。後ろに仰け反り、龍悟は静かに笑う。

 

「やればできるじゃねぇか…」

「お前…まさか…」

 

 龍悟は初めて拳を握る。

 

「修行…頑張れよ」

 

 龍悟の拳が心操を撃ち抜いた。心操は場外に吹き飛ばされた。

 

「心操君場外!孫君二回戦進出!」

 

『二回戦進出!!孫龍悟!!初戦にしちゃあ少し物足りなかったがナイスファイトだったぜ!!』

 

 倒れてる心操に手を伸ばして起こす龍悟。

 

「落ちこぼれでも必死に努力すればエリートも超える事があるかもよ」

 

「…………!」

「どうするかはお前次第だ」

 

 そう言って龍悟はステージから去った。

 

 心操も通路へと戻っていく。そして、そんな彼を迎えてくれたのは心からの称賛の声だった。

 

「かっこよかったぞ心操!」

「俺ら普通科の星だな!」

「ナンバーワンによく立ち向かえたな!スゲーよ!!」

 

 プロヒーローからも称賛の声もある。思わず涙ぐむ目を押さえ、言葉の代わりに頭を下げるとまた歩き出す。

 

 

「…フッ」

 

 その様子を少し見て龍悟は通路に歩き出した。

 

 

 

 

END

 

 



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麗日の秘策!唸れ超龍撃拳!!

「お疲れ、龍悟」

「おめでと!龍悟君!」

「最初はヒヤヒヤしたぞ」

 

 A組の席に戻ると響香達の称賛の声を受けた…

 

「ありがとよ…次の試合は」

「今から始まる所だよ」

 もう次の試合が始まるところだった…

 

『第一試合は少し派手さがなかったが、今度はどうだ!!第二試合!!どちらも推薦入学者!!轟焦凍VS骨抜柔造!!レディィ!START!!』

 

 最初に仕掛けたのは轟だった、氷がステージを覆いスタジアムの屋根を軽々と超える高さの大氷塊が骨抜の体を完全に封じた。あまりの出来事に会場の誰もの開いた口が塞がらなかった。

 

「すっご……轟の圧勝じゃん」

 

「いや、まだだ」

 

 響香の言葉…これを見た誰もが轟の勝利と感じた状況で龍悟は轟の勝ちを否定した。

 

「氷結ぶっぱは安い手じゃん」

「なっ!?」

 

 氷が一瞬でゼリーの様に柔らかくなり骨抜は脱出した。

 

『轟もスゲーが骨抜もスゲー!!これは見ごたえがあるぜ!!』

 

 放送によって再び熱気が戻り歓声が響きだした。

 

「あいつは騎馬戦の時、地面を軟化させた奴だ…そして推薦入学者……練度もある」

「勝負はまだわからないか…」

 

 龍悟の言葉に飯田も納得しステージを見る。

 

「お前さ…確か…左の炎があるって聞いたけど…」

「……うるせぇ!!」

 

 轟は氷で攻撃しようとするが…

 

「言い忘れたけど…適当に足場を柔らかくしたから足場に期待しないほうがいいよ」

「!?」

 

 柔らかくなった足場にやられ体勢を崩してしまう。

 

 骨抜の“個性”は『柔化』…生物以外の触れたものを柔らかくできる解除も自由だ。

 

(よし…このまま地面に埋める!)

 

 骨抜は地面に埋める事で戦闘不能を狙う積りだ。

 

 轟は倒れる瞬間…観客席に居る自分の父…“エンデヴァー”が目に入る。

 

『とうとう限界がきたな……いい加減子供染みた反抗は辞めろ』 

 

 父の言葉が蘇る…

 

「うおおおおお!!」

 

 轟は足から氷を形成し続け骨抜に突撃する。

 

「なっ!?」

 

 突然の事で反応できずそのまま場外に押し出されてしまった。

 

「骨抜君場外!轟君二回戦進出!!」

 

 轟は自分の手を見ながらステージを去った…龍悟には酷く寂しそうに見えた。

 

 

 

 続いて第三試合︰塩崎VS上鳴。

 

 プレゼント・マイクが塩崎を「B組からの刺客」扱いして反論されたり、開始直前に上鳴が油断したままナンパしたりといろいろあったが試合は始まった。

 

 上鳴は先手必勝で放電するが塩崎の“個性”『ツル』による壁で放電が防がれた。すると何かに気づいた龍悟が思わず叫んだ…

 

「よけろ!ナッパぁ!!」

『ナッパって誰!?』

 

 クラスの皆が思わず突っ込んだ……さっきの継承者を見て恐らくベジータの方面が出たのだろう……

 

 そしてステージから出たツルが上鳴を拘束し場外に出された。

 

「あれあれ!一瞬で「あのバカ…相手がどうゆう奴かも見切れんのか」オーイ!!」

 

 誰かが何か言った気がするが気のせいだろう…

 

 

 

 第四試合︰飯田VS芦戸

 

 芦戸が酸を飛ばすが飯田には当たらず、そのまま場外に押し出されてしまった。

 

 

 

『さぁ!次はBブロックだぁ!第五試合!聞けば孫龍悟の幼馴染!見せてくれるか!ヒーロー科耳郎響香!!VS男気一筋ド根性!鋼鉄!!ヒーロー科鉄哲徹鐵!!レディィ!START!!』

 

「女だからって手加減しねぇぜ!!俺拳!!」

 

 鉄哲が体を鋼鉄化し響香に殴りかかる。

 

「そうしてくれると嬉しいよ……女だからって甘く見られたくないし…!」

 

 響香は鉄哲の拳を受け流す…鉄哲はそのまま前に進んでしまい…響香は鉄哲の右側面に移動し飛び上がり回転回し蹴りを鉄哲の後頭部に叩き込んだ。

 

「ぐふ!!」

 

 鉄哲は前かがみに倒れ込んでしまう。

 

「切島と同じくらいか……やっぱり痛むな…」

 

『意外!耳郎、格闘型だった!!』

『確かに意外だったな…個性なしの戦闘ならA組じゃ龍悟の次、二番目に強かったからな…』

『まじで!!』

 

「く〜そ…拳藤と同じタイプか!!」

 

 鉄哲は起き上がる、ダメージは大して無さそうだ…

 

「だが、効いてねぇぞ!!」

「なら、これは?」

 

 響香はプラグを伸ばし鉄哲に刺し…心音を響かせる。

 

「ぐおおあ!!」

 

 鉄哲が苦しむ隙にプラグで拘束し場外に投げ飛ばす。

 

「鉄哲君場外!!耳郎さん二回戦進出!!」

 

 

 続いて第六試合:常闇VS八百万

 

「龍悟君はどう見る?」

「最初でどうするかで決まるな」

 

 龍悟の言葉を聞き周りは見逃さない様に集中する。

 

 試合開始早々にダークシャドウを展開した常闇が先制攻撃を仕掛けた。八百万も辛うじて盾を創造して防ぐが大きく下がってしまう。八百万が武器を創造しようとした所でダークシャドウは更に攻撃を重ね、八百万に思考の時間を与えない。三度目の攻撃で盾が手から離れてしまうが、再び新たな盾を創造して装備する。

 

 だが、常闇はそれ以上の追撃はせず、ダークシャドウを引っ込めた。チャンスとばかりに八百万の右手に鉄棒が創造されるが、ミッドナイトの判定が出る。

 

「八百万さん場外!常闇君二回戦進出!」

 

 足元を見て、八百万は愕然とした。確かに片足が場外に出てる、常闇の圧勝だった。

 

 

 第七試合:切島VS拳藤

 

「うおおおおお!!」

 

 漢、切島…体を硬化させ拳藤に真っ向から挑むが…

 

「悪いね…パワーはこっちが上だよ!!」

「クソーー!」

 

 手を大きくした拳藤に容易く握りしめられ鉄哲と同じく場外に投げ飛ばされてしまった。

 

 

 そして龍悟と響香・飯田は麗日が居る控室だ…入った瞬間…眉間に皺がよって麗かじゃない麗日が居て驚いたが相手はあの爆豪…龍悟や轟なら問題はないが他にとっては恐怖の対象だ。

 

「ねぇ、龍悟君…私、爆豪君に勝てるかな…」

「…………爆豪は人として最低な奴だ…自分だけしか見ない、自分は凄い奴だと信じて疑わない、自分至高主義と言う奴だ……だが、実力は確かにある……響香でも勝つのは難しいだろう……」

 

 龍悟の言葉に表情を暗くする…

 

「だが、可能性がない訳じゃない」

「………ありがとう…龍悟君」

 

 麗日は椅子から立ち控室を出ようとする…

 

「…龍悟君…決勝で会おうぜ!」

 

 震える手で、麗日はサムズアップをしステージに向かった。

 

 

「龍悟…」

「可能性があるのは事実だ…」

「僕達は見守るだけか…」

 

 龍悟達もA組の席に戻った。

 

 

『さぁ~て!一回戦第八試合!一回戦はこれでラストバトル!中学時代はちょっとした有名人!堅気の顔じゃねえ!ヒーロー科爆豪勝己!VS!!俺こっち応援したい。ヒーロー科麗日お茶子!』

 

「お前、浮かす奴だな。丸顔。」

「まる!?」

「棄権すんなら今の内だぞ。いてぇじゃ済まさねえからな」

 

『第八試合、STAAART!!!』

 

「そんな気持ちでここにはおらん!」

 

 体勢を低くしたまま、麗日は迷わず突っ込んだ。触れてしまえば麗日のペースで試合を進める事ができる。だが、それが何より難しい…爆豪の下から上への掬い上げによる爆破で容易く吹き飛ばされる。

 

「まだまだ!!」

 

 麗日は諦めない…何度爆破されボロボロになろうとも挑むのを辞めない…両親の為…龍悟に近づく為に…

 

「麗日君……」

 

 友達思いな飯田は勿論クラスの皆も、もう見てられないと、顔に出てる……一部のプロヒーロー達からも爆豪へブーイングが巻き起こったが… 

 

『今言ったのプロか?何年目だ?くだらない事言ってんなら、帰って転職サイトでも見てろ!』

 

 相澤の一喝で静まる。

 

「相澤先生の言ってる事は正しいけど……でも…」

 

 それでも響香には不安があった。

 

「…そうだな…だが、麗日は諦めていない……俺にできるのは麗日を信じる事だけだ…」

 

 龍悟は静かに試合を見る。

 

 麗日がまた爆豪に突撃する。爆豪が迎撃しようとした時……爆豪の眉間に何かが激突した。

 

「ガッ!?」

 

 爆豪の眉間に当たった物……それは、ステージの破片だ。麗日はヤケになって突撃した訳ではない…自分には接近戦しかないと爆豪に思い込ませて重さを無くした破片を指で弾き爆豪の眉間に命中させたのだ…そのお陰で爆豪に確かな隙ができた…

 

(今や!!龍悟君が言った可能性!!)

 

 思い出すのは…体育祭一週間前…

 

『格闘技を教えてほしい?』

『体育祭が近いのにこんなん…言うのは『いいぞ』いいの!?』

『そもそも、勧めたのは俺だ…だが、体育祭までに習得できるかは保証できないぜ』

『それでも!お願い!!』

 

 

(今こそ、この技を!)

 

 麗日は爆豪の懐に踏み込み右ストレートを顔面に叩き込みその勢いで回転して左裏拳そのまま左アッパーで空中に飛ばし右回し蹴りを叩き込む…

 

「があっ!!」

 

 重い連撃に肺の空気も出され、反撃が爆豪にはできない。

 

 麗日は左手を突き出し爆豪に狙いを定め右拳を握り力を籠めて駆け出す。これが龍悟に伝授された五連撃。

 

「超龍撃拳!!」

 

 力を籠めて放たれた拳は爆豪を打ち抜き爆豪はステージに背中から倒れ込んだ。

 

『ま、マジかよ!!何だ今の!?怒涛の五連撃が爆豪に炸裂した!!』

『今のは龍悟の動きだ……密かに教わっていたのか』

 

「龍悟いつの間に…」

「俺が教えたのは最初だけだ…後は麗日自身だ」

「これで麗日君の!……そんな……」

 

 飯田が驚愕する…爆豪が立ち上がったからだ。だが、無傷ではない…相当ダメージを負ったようだ。

 

「クソが、やりやがったな…丸顔…覚悟できてんだろうな…ぶっ潰す!」

「…………はぁ、はぁ」

 

 麗日の体はもう限界だった……もう一度超龍撃拳を放つ体力もないし、爆豪に喰らわせる策がない……目が虚ろになった麗日には爆豪ではなく龍悟が見えた。

 

(龍悟…君?)

『さぁ、麗日!俺達の決勝戦を始めよう!!』

(決勝戦…そうだ…爆豪君との試合、触れていたから咄嗟に浮かせたんだ…)

『だが、爆豪は爆発の反動で麗日に襲いかかった…それでもお前は最後の力を振り絞りカウンターを決めそこから超龍撃拳に持ち込み…爆豪に勝ったんだ』

(そうだ…私は!)

 

 龍悟が超サイヤ人Ⅱに変身する。

 

『来い!麗日!!』

 

 

 

 

 

「うおおおおお!!」

 

 麗日が個性を発動し爆豪が浮かぶ。

 

「俺には関係ねぇ!!」

 

 爆発の反動で移動し麗日に右の大振りを仕掛ける…麗日も右拳を握り構える。

 

 

「もし、麗日のカウンターが決まり超龍撃拳に持ち込めば!」

「麗日君の勝利だ!!」

「お茶子ちゃん!!」

 

 響香や飯田、蛙吹が麗日の勝利を祈る。

 

(勝つってのか!?麗日が爆豪に!?)

 

 麗日の勝利は夢物語ではないと感じた轟は戦慄する。

 

「さぁ、麗日!勝つんだ!!」

 

 龍悟が叫ぶ。

 

 爆豪の右手から火花が飛び迫る。麗日も拳を振るう。爆豪との接触までの数秒は麗日にはスローに見えた。

 

(父ちゃん、母ちゃん…私……勝っーー)

 

 

 その時、誰もが戦慄した……ぶつかり合う一瞬……麗日は倒れてしまった。

 

 

 ミッドナイトがステージに上がって麗日の方へ駆け寄った。

 

「………麗日さん…戦闘不能…爆豪君、二回戦進出!」

 

 その言葉に誰も何も言えず…そのまま、麗日は運ばれてステージから消えた。

 

「…………」

 

 龍悟は寂しい目をしながら立ち上がり…控室に向かった。その途中で爆豪と鉢合わせしたが…爆豪の戯言に付き合う余裕もなく無視して控室に行った。後ろがうるさかったと言っておこう。

 

 

 

 控室に入ると麗日は居た、顔に湿布が貼ってあったりと痛々しい姿だった。

 

「あ、龍悟君…怪我は大丈夫だよ…リカバリーガールに治してもらったし……ごめんな、超龍撃拳…教えてくれたのに無駄にしてしまって…やっぱり私じゃ使いこなせなかった……」 

 

 そんな訳はなかった…龍悟から見ても麗日は超龍撃拳を完成させていた……だが、今の龍悟には慰めの言葉を言う資格はない…龍悟はテーブルに置いてある麗日のケータイを見る……今、麗日に言葉を言えるのは、麗日の家族だけだ。

 

 龍悟は何も言わず麗日の頭を優しく撫でる。

 

「え……?」

 

 麗日は龍悟の顔を見る……龍悟はいつものポーカーフェイスではなく優しい表情だった。不思議と心が温かくなり涙が出そうだった。

 

「さっきそこで買ってきた……響香達にも顔見せに行けよ…皆、心配していた…」

 

 龍悟は売店で買った疲労回復のエナジードリンクを置き控室を出ようと背を向ける。だけど、その背中に麗日は抱きついた。

 

「麗日?」

「ごめん…少し、ここままでいい?」

「……ああ…」

 

 すすり泣く声を耳に入れないようにして龍悟は麗日の悔しさをその背中で受け止めた。

 

 

 

 

END

 

 



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心の氷を溶かせ!輝け!ソウルパニッシャー!!

超サイヤ人・フルカウルⅡは超サイヤ人Ⅱ(スーパーサイヤ人セカンド)にしようと思います。
 それではどうぞ!


「もう、大丈夫か?」

「う//、うん//、ありがと///」

 

 顔を真っ赤にした麗日を見て…少しは気を落ち着かせたと感じた龍悟は控室を出る。

 

「見とるよ…頑張って」

「…ああ」

 

 麗日に微笑みながら…龍悟は向かった。

 

 

 

 ステージに向かっていると前の通路から全身が炎に包まれた大男が出てきた。その男は……

 

「!、エンデヴァー…」

 

 轟の父親でもあるナンバー2のトップヒーローだ。

  

「おお、いたいた。君の活躍を見せて貰ったよ。素晴らしい“個性”だ。まさか、うちの焦凍以外にこれ程の一年が居るとは思わなかったよ」

「ありがとうございます。ですが失礼します、もう試合なので…」

 

 試合が始まるのとこの男にはオールマイトと自分の関係は悟られてはいけない……龍悟はエンデヴァーを通り越した。

 

「ウチの焦凍には、オールマイトを超える役目が義務がある。しかし、君には勝てるかどうかは怪しい。だからこそ、“左”を使わざるをえない程に追い込まれるはずだくれぐれもみっともない試合をしないでくれたまえ。言いたい事はそれだけだ、試合前に失礼したな」

「一つ…言っておきます、オールマイトを超えるのはアンタでもアンタの息子でもない……この俺だ」

「!」

 

 

 背を向けたままそう言い残し、ステージに向かった。

 

 

『さぁ!二回戦第一試合!!圧倒的な強個性!!ヒーロー科!轟焦凍!VSその佇まいは正しく強者!!ヒーロー科!孫龍悟!!』

 

 二人は構える。

 

『二回戦第一試合!STAAART!!』

 

 開始早々、轟は全力で氷を出してくるが龍悟はフルカウルを発動し殴り飛ばす。氷が砕け、吹き飛び…轟に衝撃波が襲いかかるが後ろに氷を出し耐える。そこから轟の氷結と龍悟の拳のぶつかり合い。

 

『激しいぶつかり合いだが!今のところ進展が見当たらない!!』

『いや……そうでもないぞ』

 

 轟の動きが少しづつ鈍ってきた。

 

「そうか!体温だ!!」

「どう言う事?飯田君?」

 

 その事に気づいた飯田が納得の答えを見つけた。麗日やクラスの皆が視線を飯田に向ける。

 

「低体温の時、人の身体機能は大きく下がると聞いた事がある。氷結攻撃を行うと身体が冷えるのだろう。そして、轟君自身、冷気に耐えられる限度があったんだ…」

「でもそれって左の炎を使えば…」

「耳郎君の言う事は最もだ…だが…」

 

 轟は使う様子を見せない。

 

「どうした?震えてるぞ?」

「なっ!?」

 

 瞬間移動で轟に近づいた龍悟は重い拳を叩きつける。

 

『モロだぁ――!!生々しいの入ったぁ!!』

 

「なんて奴だ…!」

「轟もそこ等のプロより上だってのに……それ以上だってのかよ…」

 

 観客席に居るヒーロー達から驚愕の声が聞こえる。轟も氷結攻撃をするが軽く相殺されてしまう。いいようにやられる事実に轟は怒りを爆発させる。

 

「うおおおおお!!」

 

 痛みを無視して最大級の力を引き出す。スタジアムを超える程の氷山が現れた。

 

 その攻撃は龍悟すらも呑み込んだ。

 

「くっ…」

 

 その影響で体に霜が至る所にでき轟は膝をついた。だが、これで龍悟は終わりだと轟は確信した。

 

『おいおい!やりすぎだろ!孫が呑み込まれた!?』

「おい、やばくないか!?」

「霜焼けどころじゃすまえねぞ!?」

「早く救出しないと!」

 

 プレゼント・マイクの声を皮切りに、観客のヒーロー達から不安の声が出る。すぐに助けるべきだと言う声も出る。

 

 だが……

 

「大丈夫だよ…龍悟は…」

 

 響香には轟とは別の確信があった。

 

――その時だった。氷山が吹き飛ばされ黄金の柱が天高くそびえ立った。

 

「なっ!?」

 

 黄金の柱が消え……其処には…

 

「これっぽっちか?」

 

 超サイヤ人Ⅱに変身した龍悟が立っていた。

 

『まさかの無傷!!正に最強だーー!!』

 

「ちくしょう」

「お前…なんの為に雄英に来たんだ?」

「……お前に関係ないだろ…」

「そうだな…まっ、大方父親ヘの復讐だろうが……本当にそれだけなのか?お前が此処に来た理由は?」

「……てめえ、糞親父に金でもー「ふざけるな!この俺が、そんなくだらん理由でこんな事するか!何時まで忘れたままなんだ!…お前の原点(オリジン)は何だ!」

「だまれ…黙れ!」

 

 轟から氷がどんどん形成される…まるで近づくなと言っているようだ……

 

「忘れちまったのか……なら、思い出させてやる!」

 

 龍悟は左手を天に掲げる。左手から出た一筋の光が、色を変える度に太くなる。そして9回目…虹色の輝きを放ち一筋の光は宝玉となり左手に収まる。

 

 

「綺麗…」

「なんて美しい…」 

 

 その輝きに誰もが魅入られる……オールマイトはそれを本当に嬉しく見ていた。

 

(それが、君のワン・フォー・オールの輝きなんだね…心から思うよ……君に託してよかった……)

 

 

 轟の氷が迫る…それを右手のワン・フォー・オールを最大に上げ殴る、その衝撃波で氷は粉砕された。龍悟は右手が反動で赤く腫れた痛みを無視して宝玉を構えながら走り出す。

 

「うおあああ!!」

 

 轟の胸の中には怒りと哀しみが渦巻いていた……父への怒り、そして…母の言葉を思い出せない哀しみ…轟は怒りか悲しみか…わからない雄叫びを挙げながら強力な氷結攻撃をするが龍悟はわずかに半身を引いただけでやり過ごし轟の懐に踏み込みーー

 

 

「ソウルパニッシャー!!」

 

 

 その宝玉を轟に叩きつけた。次の瞬間、轟を中心に虹色の気柱がそびえ立つ。

 

「ぐわぁああああ…!」

 

 轟の絶叫が響くだが、轟はある事に気がついた。

 

(!?、痛みがない…)

 

 轟は痛みを感じなかった…たが…

 

『焦凍……』

 

 脳裏に母の言葉が聞こえた。

 

(お母……さん?)

 

 ある光景が浮かぶ…それは幼い自分が母に泣きつくかつての時間……父の様になりたくないと泣く自分に母は言ってくれた。

 

『いいのよ、おまえは。血に囚われることなんかない。なりたい自分に、なっていいんだよ』

 

 涙が出てくる。この光が優しく自分を包み込む……まるで母の腕の中の様に……

 

 虹色の光が消え…解放された轟は倒れ込む。

 

「思い出せたか?」

 

 かつて悟空はナメック星に来た時、クリリンから記憶を読み取った時があった…今回はそれの応用…攻撃も浄化もできるソウルパニッシャーで記憶を呼び覚ましたのだ。

 

「お前はエンデヴァーでもなければ母親でもない轟焦凍なんだ……炎も氷もお前なんだ……何処まで逃げようが目を逸らそうが…自分が自分である事実からは逃げられない…」

 

「炎も氷も……俺自身…」

 

「お前が一人を好むのは勝手だ…世の中孤独を好む者も居る…だかな、孤独に耐えられる人間は一人も居ない」

 

 かつての自分(ベジータ)がそうだった様に。

 

 轟に手を差し伸べる…

 

「勘違いするな、別にお前を救おうとして行動したんじゃない、何時までもボッチで居るお前にやきを入れたかっただけだ…だから、これは救いじゃねぇ…明日への道しるべ…進むか、止まるか…決めるのは自分自身だ」

 

 轟は涙が止まらなかった。

 

「…………まいった……俺の…負けだ…」

 

 轟は龍悟の手をとった。

 

 

「轟君戦闘不能!!孫君!準決勝進出!!」

 

 瞬間、爆発する大歓声。

 

「スゲー試合だった!!」

「最後なんてマジヤバかった!!」

 

 万雷の拍手が、称賛が…二人に降り注ぐ。勿論、響香達も惜しみない拍手をする…飯田なんて涙すら流しながら、しかし、誰も何も言わない…

 

 

「これが、オールマイトが見出した輝き……虹の如き象徴」

 

 とある観客席に座っていた…オールマイトの元相棒“サーナイトアイ”は静かに轟に肩を貸しステージから去る龍悟を見ていた。

 

 

END

 

 

 



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友からの挑戦

お気に入りが1200人突破!!ありがとうございます!

それではどうぞ!!


 轟を医務室に届け右手を治癒してもらった龍悟は観客席に戻った。

 

「おめでと!龍悟君!」

 

 戻って来た龍悟に麗日が笑顔で迎えてくれた。

 

「ありがとよ……次は飯田で響香は準備か?」

「うん、飯田君はもう始まるし響香ちゃんはその次だからね」

 

 そうしていると…飯田の試合が始まった…飯田の対戦相手は塩崎、上鳴を瞬殺したが…開始早々飯田は『レシプロバースト』を使用、塩崎に何もさせずに場外に出し勝利した。

 

 

『第一試合は派手!第二試合は瞬殺!第三試合はどうなる!?勝利のビートを響かせるか!耳郎響香!VS闇を従えし実力者!常闇踏影!レディ、スタートォ!』

 

「行くぞ!ダークシャドウ!」

「アイヨ!」

 

 常闇の体からダークシャドウが出てくる。伸縮自在の黒影は響香の所まで伸びていく。押し出し、場外負けを狙う常闇。

 

「オォラアッ!」

「あまい!」

「ウォッ!?」

 

 響香の目の前まで近づいたダークシャドウは腕を思い切り振り抜くが、その前に響香はダークシャドウを蹴り上げる。

 

「ウチに近接で勝とうなんて、龍悟以外じゃ二万年早いし!」

「ジョウトウジャネーカ!」

 

 ダークシャドウは怯むことなく響香に拳を振るう、響香は拳を捌きながらプラグを放ち牽制する。

 

『今度は互角の戦いだ!推薦入学者を圧倒した常闇と互角だぜ耳郎!』

 

「イイカゲン喰ラエ!!」

 

 全く当たらない事に苛立ったのか、ダークシャドウが大振りのパンチを放つ。響香はそれを見逃さなかった。その隙を突いてダークシャドウをプラグで拘束した。

 

「これでアンタは無防備だよ!」

「くっ!」

 

 ダークシャドウは伸縮自在、拘束を抜け出す事はできる、だが…ダークシャドウが抜け出すよりも響香が攻撃する方が早い…常闇も黙ってやられはしない…近接戦闘を仕掛けるが響香には掠らず逆に響香の拳による連撃を喰らってしまう。

 

「かはぁっ!」

「これで!」

 

 トドメの回し蹴りを喰らわせ常闇も場外に吹き飛ばした。

 

「常闇君場外!耳郎さん準決勝進出!」

 

 

 続いて第四試合・爆豪VS拳藤

 

 切島と同じように大拳で拳を大きくさせ、爆豪を捕まえようする拳藤。しかし、爆発で飛ぶ爆豪の動きが早く捕まえることが出来ない。爆豪も爆破しようと腕を振るうが拳藤の運動神経は高く避けられてしまう。

 

「避けてんじゃねぇよ!年増面!」

「アンタが言うな!爆発魔!」

 

 爆豪に言い返して大拳を振るう。

 

「没個性が俺に勝てる訳ねぇだろ!!」

「麗日に結構やられたくせによく言えるね」

「…………本当にムカつくなぁ!…あの変身野郎やソイツとつるんでるテメェ等が!!」

「私等は好きで龍悟について行ってるんだ!アンタの負け惜しみなんて知った事か!」

 

 爆発で空を飛ぶ爆豪に拳藤は大拳を団扇に扇ぎ強風をおこす。その影響でバランスを崩した隙に爆豪を殴り飛ばした。拳藤の素のパワーは切島や爆豪より上だ、それに大拳で倍増した攻撃は爆豪にふらつかせる程のダメージを与えるには十分だった。

 

「麗日の仇取らせてもらうよ!」

 

 拳藤が大拳を振るう…爆豪に当たるその時…

 

閃光弾(スタングレネード)!!」

「うっ!?」

 

 爆豪から強烈な閃光がはなたれ拳藤は視覚が麻痺してしまった。

 

「死ねぇ!!」

 

 すかさず右の大振りからの爆破で吹き飛ばされてしまった。

 

「くっ!」

 

 そこから爆破の連続攻撃、大拳で防ぐが生身の体で爆破を受け続け血は流れボロボロ…拳藤は痛みで顔を引きつらせる。

 

「くたばれ!」

 

 そのまま場外に吹き飛ばされてしまった。

 

「拳藤さん場外!爆豪君、準決勝進出!!」

 

 こうして準決勝で戦う四人が揃った。

 

 

 

「……悔しいな」

 

 試合が終わり拳藤は医務室でリカバリーガールの治療を受けた後、観客席に戻る為に会場の廊下を歩いていた。

 

「あっ……龍悟」

「ん、拳藤」

 

 その道中で準決勝に向かう龍悟に鉢合わせた。

 

「…どうした?」

「いや……あんな人を見下してる奴に負けるなんて……悔しいなって…」

 

 確かに人を没個性だの蔑称で呼ぶ奴に負けるのは悔しいだろう………人を見下す傲慢に確かな実力、だからこそ爆豪は自分より上に居る龍悟が目障りなんだろう…

 

「………確かに勝負に勝ちたい気持ちは何より大事だ。だがな、時に負けた悔しさは勝利よりも人を強くする」

「え?」

「悔しさを……弱さを知れば、人は強くも優しくもなれる。大切なのは前に進む事だ」

「……………前に進むか……龍悟らしい答えだね。ありがとう!少し元気出たよ!」

 

 笑う拳藤に頬を緩める。

 

「そうか」

 

 龍悟はステージに向かう。

 

「私の分まで頑張ってね!」

 

 拳藤の言葉に腕を上げ応えた。

 

 

 

『準決勝第一試合!ヒーロー一家の名門、飯田家次男!飯田天哉VSここまで大活躍の期待の男!孫龍悟!!』

 

「遂に君と戦う時が来た……僕は君に挑戦する!!」

「来い!飯田!!」

 

「試合開始!!」

 

 

 スタートと同時に、エンジンを吹かせレシプロバーストを発動、龍悟に迫る。龍悟も超サイヤ人・フルカウルに変身、飯田に駆け出す。ぶつかるか否かの瀬戸際で二人は足を振るう…ステージ中央で二人の蹴りがぶつかった。

 

 弾け飛ぶ二人、龍悟は足で踏ん張り高速移動をしながら飯田に迫り殴りかかるが……飯田が幻の様に消え拳は空を切る。

 

「!?」

 

 驚愕した龍悟だか…何かを感じ横に飛ぶ、さっきまで龍悟が居た場所に蹴りが振るわれた。飯田は龍悟の横に移動していた。

 

 距離をとった龍悟は笑った。

 

「まさか、残像拳を習得するなんてな…」

 

 そう、飯田は戦闘訓練の時に龍悟が使用した残像拳を習得したのだ。

 

「僕が君に勝つにはスピードを磨くしかない……だから僕は兄に助言を聞きに行った……兄はうちに代々受け継がれるノウハウを教えてくれた」

 

 思い出す兄の言葉…

 

『激痛と忍耐を伴うがお前がもっと走りたいと思うなら…その子に勝ちたいと思うなら…』

 

「とても痛かった……けど、僕はーー」

 

 瞬間、飯田が消えた。

 

「!?」

 

 咄嗟に腕をクロスして蹴りを防ぐ。

 

「ーー三分間…誰にも止められない!!」

「グラントリノの爺さんや脳無より速え……ワクワクしてきたぜ」

 

 龍悟は気合を入れ超サイヤ人Ⅱに変身する。

 

「いっちょいくぜ!!」

 

 そして二人は高速移動をしながら間合いを詰める。

 

『なんて速さだ!何が何だかわからねぇぜ!!』

『あまりの速さに空気を切る音が常時聞こえる……二人は速さの世界で戦っている』

 

 遂に二人はぶつかり合い壮絶な打ち合いが始まった。飯田の蹴りを躱した龍悟は拳を振るう、飯田は何とか顔に当たらないように避けたがその隙を突き龍悟の蹴りが飯田の頬を蹴り飛ばす。だが、飯田も負けずに蹴り飛ばす。そのまま連撃を入れようとしたが既に龍悟は消え横から飛び蹴りを喰らわせる。

 

「波ぁぁああ!!」

 

 龍悟は追い打ちのかめはめ波を放つ…飯田は残像拳で何とか回避する。だが、その先に龍悟は待ち構えており気弾を放つ。腕をクロスして防ぎ爆煙を腕で払った飯田は龍悟の姿を探した。その顔に、身をきりりとひねって繰り出した龍悟の回し蹴りが叩き込まれる。

 

「ぐうわぁぁあ!!」

 

 大きく身を仰け反らせて飯田が体勢を大きく崩す。その好きに龍悟はゴッドドラゴン・ブレイズを生み出し共に飛び上がり、空中で体を捻らせてキックのフォームをとりゴッドドラゴン・ブレイズの吐く爆炎に押し出されて爆炎を纏いながら飯田に迫る。

 

「押し通す!」

 

 飯田はギアを最大に上げ足から青い炎を出しながら回転、龍悟の蹴りとぶつかった。

 

 

「超龍爆炎脚!!」

「レシプロエクステンデッド!!」

 

 

 龍悟の赤い炎と飯田の青い炎がぶつかり合う……やがて大きな爆発を起こした。

 

 そして、爆煙の中から飯田が吹き飛ばされ場外に弾き出された。

 

「飯田君場外!孫君、決勝戦進出!!」

 

『ハイスピードな戦いを征したのは孫龍悟!!宣言通りこの体育祭を征する事はできるのか!!』

 

 

「いい勝負だったぜ」

「こちらこそ、ありがとう」

 

 龍悟と飯田はお互いを称賛し握手してそれぞれステージを去った。観客席に向かう飯田に電話がかかって来た。母からだった。

 

「はい、お母さん…申し訳ありません、負けてしまいました………………え!?兄さんが!?」

 

 

 

 これは…ある事件の序章に過ぎなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

END

 

 

 




超龍爆炎脚はドラゴンライダーキックを元ネタにしています。

飯田はレジプロターボみたいに十分間走れる訳ではありませんが、その代わり三分間…超サイヤ人Ⅱに匹敵するスピードで格闘する事ができます。残像拳を使用でき、今回負けたのは格闘では龍悟には勝てなかったからです




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助けてくれって言ってくれ

 

 

 飯田との試合を終えた龍悟は医務室にオールマイトを呼んだ。一回戦終えた時から話をしたかったが時間がなかった……だが、龍悟の試合と響香の試合の間にこれまでの体育祭のおさらいがあり時間ができた。龍悟は一回戦で起こった事をオールマイトに話した。

 

「歴代の継承者の個性!?」

「ああ……スキンヘッドの継承者が教えてくれたよ…何代目か知らねえか?」

「いや…お師匠の前は黒髪の青年と聞いている…それより前の継承者だろう……個性の事もお師匠はご存知なかっただろう」

 

 龍悟は黒鞭を出しながら言った。

 

「俺には黒鞭を含め6つの個性が発現すると言っていた……今は黒鞭だけだがな」

「そうか……何かあったら遠慮なく言ってくれ、一緒に探っていこう」

 

 そうしてそれぞれの持ち場に戻ろうとした時…

 

「龍悟!話を聞いて!!」

 

 医務室に飯田を無理矢理連れてきた響香が慌ただしく入って来た。

 

 

 

 時は龍悟がオールマイトに話をした時刻……響香は医務室に行った龍悟にアドバイスを貰おうと通路を歩いていると……ただ事ではない様子の飯田と出会った。

 

「飯田……どうしたの?」

「耳郎君……僕はどんな顔をしているんだい?」

「…………………今にも…泣きそうだよ……」

「兄が……“ヒーロー殺し”にやられた…」

「ヒーロー殺し!?」

 

 その名は今の世間では有名だった…今のヒーローは偽物だと語り過去17名を殺害し、23名ものヒーローを再起不能に陥れた敵。

 

「幸い命を取り止めた……取り止めはしたが…脊髄損傷下半身麻痺で走る事は疎か起き上がる事すら自力で出来なくなった。一番深い傷が脊髄にまで及んでいたそうだ……もうヒーロー活動は……」

「そんな……」

「母さんが直ぐに来てくれって………だけど、可能性を考えてしまった………“龍悟君なら何とかしてくれるんじゃないか”って……!」

「飯田…」

 

 確かに龍悟は生命力を操る事ができ、怪我等も治す事ができる。

 

「だけどそれは、龍悟君に棄権してくれって事だ!僕は天秤にかけている!兄と友を!僕は最低だ!!」

 

 涙を流し叫ぶ姿を見て響香は……飯田の腕を無理矢理掴んだ。

 

「耳郎君!?」

「いいから来て!」

 

 そして無理矢理飯田を連れて医務室に入り龍悟に伝えた。龍悟やオールマイト、リカバリーガールは黙って聞いていた。

 

「飯田…お前はどうしたい?」

「え?」

「綺麗事でも夢でもいい…お前の本心を聞かせてくれ」

「僕は……僕は!兄さんに終わってほしくない!!でも、龍悟君に決勝戦で戦ってほしい!!僕は!僕は!」

 

 それは心からの叫びだった…

 

「なら、言ってくれ」

「え?」

「偉大なヒーローである兄をーー」

「龍悟に棄権してほしくないからーー」

 

 

「「助けてくれって言ってくれ」」

 

 

 龍悟と響香の言葉に飯田は涙を流す。

 

「忘れてないか……俺には瞬間移動がある事を…気を探るのに時間はかかるが…数分で見つけられる」

「そんでウチが試合を引き伸ばせば…オッケーだし」

「………ありがとう…龍悟君、耳郎君」

「気にするな」

「ウチら友達じゃん」

 

 龍悟はオールマイト達に助力を求めた。

 

「わりいが手を貸してくれねぇか……」

「勿論だとも!こんな話を聞いて黙っていられる程、できてないのでね!」

「全く……校長には私から言っておくよ」

 

 

 そう言ってリカバリーガールは校長に連絡、龍悟は気を探る。

 

「じゃ、ウチは試合があるから行くよ……祈ってる」

「響香……気をつけろよ」

「時間は稼いで見せるけど……別に倒してしまってもいいんでしょ?」

 

 笑いながら響香はステージに向かった。

 

「見つけた…東京の大きな病院…飯田によく似た気を放つ二人が居る。片方の気が極端に減ってる…病室の外には何人ものサイドキックが居る……間違いない、俺に掴まってくれ」

 

 それを聞き飯田達は龍悟に掴まり龍悟達は病室前に瞬間移動した。いきなりインゲニウムの弟とオールマイトが現れた事でサイドキック達は驚くがそんな事は無視して病室に突撃した。

 

「母さん!」

「天哉!?それにオールマイト!?」

 

 電話して数分で来た事に驚きを隠せなかった。

 

「話は後で!リカバリーガール、兄さんは!?」

「こりゃあ酷いね……」

 

 リカバリーガールの言う通り…あちこちに包帯が巻かれ呼吸用のチューブに繋がれていた。飯田自身、兄の無残な姿に何も言えなかった。

 

「今なら、あたしの個性で直す事はできると思うが……こんな弱った状態で使えば……間違いなく命を落とす」

「そんな……!」

「諦めるには早いぜ、俺の出番だ」

 

 龍悟が前に出る。超サイヤ人Ⅱに変身し右手を掲げる……其処には虹色に輝く宝玉が生まれた。

 

「これは……轟少年の時の……」

 

 龍悟は静かにソウルパニッシャーを添えた。ソウルパニッシャーはインゲニウムの中に沈んでいく……病室は静まり返る……僅かな可能性を信じて祈る。

 

 次の瞬間、インゲニウムが虹色に輝く……やがて光は収まり…

 

「うっ……!」

 

「兄さん!?」

「天晴!?」

 

 インゲニウム……飯田天晴が目を覚ました。

 

「どうやら…成功したようだな」

 

 インゲニウムの体にあった無数の傷は綺麗に消えていた。

 

「天哉…?それに……君は?」

「治してくれたんだ……友達が……最高の友達が…!ありがとう!龍悟君!!」

 

 その言葉で彼が弟が言っていた勝ちたい友人…孫龍悟だと理解した。

 

「そうか…君が孫龍悟か…良い友達を持ったな天哉」

「……うん!」

「治ったからと言ってもリハビリは必要だ……傷は深いものだった、ソウルパニッシャーで生命力を注ぎ込み無理矢理自然回復させたからな…しばらくは動けねぇ…入院は必要だ……ヒーロー活動ができるのはかなり先の話になる」

「十分過ぎる……ありがとう」

 

 それを聞き頬を緩めた龍悟は指を額に置き気を探る。行き先は当然スタジアムだ。オールマイトやリカバリーガールも龍悟に掴まる。それを見て彼等がこの場を去る事を察したインゲニウムは………

 

「天哉、お前も戻れ……他にも友達が居るんだろ……ちゃんと応援してやれ…」

「兄さん……ああ…」

 

 飯田も龍悟の肩に掴まり…龍悟達はスタジアムに瞬間移動した。

 

 

 

 

 その頃、スタジアムでは…

 

『さぁ、いよいよ準決勝第二試合!!果たして孫龍悟の待つ決勝に進むのはどっちだ!!耳郎響香VS爆豪勝己!レディ、スタートォ!』

 

 

「死ねぇ!!」

 

 響香と爆豪の試合が始まった。爆発の反動で飛び出した爆豪は右の大振りから爆破を放った。だが、響香はその腕を掴み投げ飛ばす。うまく着地した爆豪は再度、響香に向かって攻撃する。

 

「アンタの動きは……大雑把なんだよ!!」

 

 響香は攻撃してきた腕を掴み一本背負いでステージに叩きつけた。

 

「ガハッ…!」

 

『耳郎のカウンターが決まった!今の所、五分五分の戦いだーー!!』

 

 放送の言葉に爆豪は激怒した。

 

「五分だと!?俺が耳女と五分!?ざけんな!!」

「いや、勝手にウチのこと格下扱いしないでほしいんだけど?」

「はっ!変身野郎の後ろに居る事しかしねぇオマケがーー「誰がオマケだ!」ゴハッ!?」

 

 爆豪が言葉を発した瞬間……響香は顔面を殴り飛ばした。

 

「確かに龍悟は強いよ!それに憧れて後ろを走ってる!それは、否定しない!!」

 

 そのまま耳のプラグを爆豪に突き刺し増幅器させた心音をぶつける。爆豪は悶える。

 

「だけど、ウチが立ちたいのは後ろじゃない!龍悟の隣だ!!それを諦めたりしない!!」

 

 その隙に響香は後ろ回し蹴りを喰らわせオーバヘッドキックを2連激爆豪に叩き込んだ後、爆豪の顎を蹴り上げた。

 

 これが響香が龍悟に教わった、麗日の超龍撃拳とは違う技……

 

「龍爪演舞!!」

 

 モロに蹴り上げられた爆豪はステージに背中から叩きつけられた。

 

「諦めない内はオマケじゃない」

 

『決まったーー勝負あったかーー!!』

『いや………まだだ』

 

 プレゼント・マイクの言葉を相澤は否定した。

 

「てめぇ…ふざけやがって!」

 

 爆豪が立ったのだ……

 

「今のでもだめなのか……」

 

 B組の席に居る拳藤は戦慄した。麗日の超龍撃拳すら耐えたそのタフネスに……

 

「本当に……変身野郎とつるんでる野郎は…ムカつくんだよ!!」

 

 怒号と共に爆豪は爆発で空中に飛び、響香目掛けて落下と一緒に回転を始める。両手から交互に放つ爆発で回転スピードを上げて行く。

 

「くっ!?」

 

 避けられないと悟った響香はハートビートファズでステージを抉り浮き出てきたステージを盾にした。

 

榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)!!」

 

 だが、爆豪が放った超爆破は盾もろとも響香を吹き飛ばした。

 

「うっ…」

 

 ギリギリ場外に出なかったものの……響香の体はボロボロだった。

 

「終わりだな……耳女」

 

 爆豪が迫る。絶体絶命なその時……

 

 

「響香!!」

 

 

 龍悟の声が聞こえた。

 

 

END

 



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未来の音

「響香!!」

 

 その声が聞こえた時、響香はその方向を見る。其処には龍悟と飯田が響香を応援していた。それは一つの答えを表していた。

 

(そうか……助けられたんだね…龍悟)

 

 なら、自分も負ける訳にはいかない……彼に置いていかれない為にも、ヒーローになる為にも!!その思いが響香を新たなステージに押し上げた!

 

 

【ドォクン!!】

 

 

(え?)

 

 突然、何なのかわからない音が響香の耳に届いた。その音は爆豪の右腕から聞こえた。

 

(何?爆豪の右腕から聞こえた……?)

 

「死ねぇ!耳女!!」

 

 すると爆豪が右腕を振りかぶって爆破してこようとする。転がり込む様に爆豪の後ろに避ける。

 

 

【ドォクン!!】

 

(まただ……今度左足…)

 

「避けんじゃねぇ!!」

 

 爆豪は振り向きながら左回し蹴りを繰り出す。それを受け止める、そしたらまた、爆豪の右腕から音が聞こえてくる。

 

(もしかして…)

 

 ある可能性を考えた響香は右腕を見る。爆豪は右腕で爆破しようとしてくる。それを避ける。今度は左腕から聞こえ爆豪は左腕で攻撃する。それを避ける。

 

(次は右!)

 

 爆豪は右で爆破しようとしたが…それより早く腕にプラグを巻き付け引き寄せ爆豪の顔面を殴り飛ばす。

 

(今度は左足!)

 

「いい加減死ねぇ!」

 

 爆豪は怒りの形相で響香に蹴りをいれようとするが、そうなる前に響香はその足を蹴り飛ばした。

 

((!?))

 

 まるで蹴るのがわかっていたかの様な響香の行動に爆豪と龍悟は驚愕する。

 

「糞が!!」

 

 左から爆破を起こそうとするが爆破を起こす前にプラグが左手を弾いた。

 

(どうなってやがる!?さっきから耳女に攻撃が当たらねぇ!やる前に防がれる!)

 

 響香はさっきのハウザーインパクトで既にボロボロ…それなのに当たらない。その事実が爆豪を苛立たせる。

 

「この!くたばりぞこないが!!」

 

 

 爆豪が右の大振りで爆破を放とうとするが…放つ前に体勢を低くした響香の拳が腹に刺さる。痛みに顔を引きつらせながら蹴り上げようとするが足を踏まれてできず顔面を殴り飛ばされる。

 

「クソが!!」

 

 両手の爆破で吹き飛ばそうとするが蹴りで弾かれてしまう。ならばと爆破で飛び上がり急降下して爆破しようとするが足にプラグが巻き付けられステージに叩きつけられる。

 

「ガハッ…!」

 

『爆豪が優勢かと思われたが、耳郎に攻撃が全然当たらねぇ!!』

『それとは逆に耳郎の攻撃がことごとく当たる……さっきとは動きが違う…』

 

 その状況に観客は困惑する。

 

「一体何が?爆豪君の行動の先に耳郎君が居る……“まるで爆豪君の未来がわかるかの様に”」

 

 龍悟と一緒にA組の席に戻ってきた飯田も困惑していた。その飯田の疑問に龍悟が答えた。

 

「その通りだ……響香は聞いたんだ、“爆豪の未来を”」

 

『!?』

 

 その言葉にクラスは騒然とする。「未来を聞いた」と峰田が言えば…「何言ってるんだこのエロぶどう」と冷たい目で見られるが龍悟が言えば話は別だ。一年で間違いなく最強という判断は全員が認め何より龍悟はこんな時にくだらない冗談は言わない。

 

「未来を聞いた!?どう言う事、龍悟!!」

 

 その声が聞こえたのだろう、A組とB組の間にある塀から顔を覗かせる拳藤が声を挙げた。

 

「はっ!未来を聞いた?何を言うだAーー「ぜひ、ご教授を頂けませんか?」オーイ!」

 

 よくみれば塩崎や骨抜、鉄哲が顔を覗かせていた。あと一人居たような気がするが気のせいだろう。

 

「まず、響香は防御不可能な心音攻撃や高い戦闘能力に目を奪われがちだが、個性は聞く事に特化している」

 

 その言葉に「あっ、そう言えば」と声が挙がる。

 

「高層ビルの中の小さな足音ですら聞き分ける事すら容易くできる」

「ケロ、それは凄いけど未来を聞いた事と、どう結びつくの?」

「人間が行動を起こす時、必ず音を出す…筋肉の軋む音等な……もし、それを聞く事ができたら?」

「じゃあ、響香ちゃんは!!」

「そう、爆豪の行動を起こす音を聞き分けている……それはもう、爆豪の未来を聞いていると言っても過言じゃあない」

 

 龍悟の説明に驚愕するが試合を見れば爆豪の攻撃は行動を起こす前に響香に防がれカウンターを喰らっている。

 

「これなら!響香ちゃんは勝てる!!」

「爆豪の未来がわかるのなら、接近戦が有利な響香が負ける訳ない!行けーー!響香!!」

 

 麗日の言葉に拳藤は頷き応援を再開する。

 

 

 現在、爆豪は体に幾つも傷をおい倒れていた。……入学してから目障りな奴等が居た。自分に反論してきた響香や飯田、脇役の癖して自分に傷を付けた麗日や拳藤…左の炎を使わずとも自分よりも強い轟……何より、圧倒的な強さでナンバーワンの座に居る龍悟が許せなかった。其処は自分が居るべき場所だと戦闘訓練で叩き潰そうとしたが、返り討ちにあった。だから、この体育祭で今度こそ叩き潰そうとした……だが、現実はどうだ自分は龍悟どころか響香にすら勝てず地面に這いつくばってる。響香と目が合う。

 

(何だその目は!俺を見下すな!!)

 

 爆破で無理矢理立ち上がった爆豪は空を飛ぶ。再びハウザーインパクトをするつもりだ。

 

「認めねぇ!認めねぇぞ!!俺が…俺がトップだ!!変身野郎じゃあねぇ!!」

 

 叫びながら急降下する。

 

「何時までも……寝言ほざいてんじゃあないよ!!」

 

 神経を研ぎ澄まし響香は爆破する為にこちらに向ける両手にプラグを巻き付け地面に叩きつける。

 

「なっ!?」

 

 ハウザーインパクトが破られた事に爆豪は驚愕した。そのままプラグで爆豪を引き寄せ……

 

「終わるのは……アンタだ!!」

 

 

 爆豪の顔面に右ストレートを叩き込んだ……殴り飛ばされた爆豪は場外に吹き飛ばされ……気絶した。

 

 

「爆豪君場外!!耳郎さん、決勝戦進出!!」

 

『まさか、まさかの大逆転!!決勝に駒を進めたのはロックガール耳郎響香だ!!』

 

 その放送に観客は大喝采……称賛の声を聞きながら響香はA組の席に居る龍悟を見る。

 

「………フッ」

 

 龍悟は頬を緩め微笑んでいた。

 

 

(やっと……ここまで来た!!)

 

 

 龍悟の待つ決勝に進めた事を喜びながら…ステージを去った。

 

 

 体育祭の終わりもいよいよ間近だ。

 

 

 

 

 

 

END

 

 




と言う訳で…耳郎が新しいステージに足を踏み入れました。元ネタは仮面ライダージオウⅡとプライド・トルーパーズのディスポです。

 相手の予備動作の音を聞き分けて攻撃を予想するもので龍悟の様な格上にも格闘戦で喰らいつく事ができます。あくまでも人の動きだけ予想できます。




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体育祭の終幕

お気に入りが1300人、突破!!
ありがとうございます!
それではどうぞ。


『さぁ、雄英体育祭もいよいよラスト!雄英1年の頂点がここで決まる!決勝戦!!孫龍悟VS耳郎響香!幼馴染同士の戦いだ!!』

 

 放送に合わせて龍悟と響香が入場する。それに伴って観客達のボルテージはドンドン高まっていく。向かい合う二人…龍悟は気合をいれ気を高める。

 

「いくぞ……響香」

 

 髪が金色、瞳は翡翠に染まり赤い稲妻を纏い…皮膚の所々は赤く染まる。

 

「いきなり超サイヤ人Ⅱに……」

 

 飯田が目を細めると麗日が言う。

 

「響香ちゃんはこの決勝戦まで勝ち上がった……だからこそだよ」

 

「様子見をするつもりはないと言う事か……」

「孫少年……」

 

 ナイトアイ、オールマイトが真剣な目でステージの二人を見据える。この場に居る誰もが龍悟と響香に注目している。

 

 二人は構え始まりの時をじっと待っている。

 

『準備はいいか!!レディー!!』

 

「この体育祭、自分を鍛えるのに丁度いいと思っていたが…忘れてたぜ…響香、すぐ側にお前がいるっちゅう事をよぉ!!」

 

『スタァァァァァト!!!』

 

「「はぁぁぁぁあ!!」」

 

 試合開始と同士に二人はステージを蹴り互いにぶつかり合う…

 

「くっ…!」

 

 龍悟の肘打ちが響香の頬を撃ち抜き…響香は後退る。龍悟が左拳を振るうが……

 

【ドォクン!】

 

(聞こえた!龍悟の未来が!!)

 

 音による攻撃予測で拳を紙一重で避け。カウンターを仕掛ける。龍悟は回避し二人は凄まじい攻防を繰り広げる。龍悟の速さと正確な攻撃を響香は攻撃予測とプラグでカバーする。

 

「「はぁぁぁぁあ!!」」

 

 龍悟の拳と響香の拳とプラグがぶつかるがパワーは龍悟が上、響香は吹き飛ばされた。

 

「はぁぁぁぁぁあ!!!!」

 

 龍悟が次々と気弾を放つ。響香はそれを腕で弾いた。

 

(痛むけどまともに受けるよりダメージは少ない)

 

 腕やプラグで弾く響香、目の前に来た気弾を弾いて龍悟を見るがそこに龍悟の姿は無い。

 

「!?」

 

 驚く耳郎の後ろに龍悟が瞬間移動で現れる。

 

「だりゃ!」

 

 龍悟の蹴りを喰らい吹き飛ばされる響香、すかさず龍悟はかめはめ波の構えをする。

 

「波ぁぁぁあ!!」

 

 吹き飛ばされた響香は立ち上がるが既に龍悟はかめはめ波を放った。

 

「くっ!ハートビートファズ!」

 

 響香は地面に衝撃波を叩き込む。かめはめ波と抉られた地面がぶつかり爆発する。すかさず瞬間移動で響香の後ろに現れる龍悟。

 

「だぁりゃあ!!」

 

 龍悟の凄まじい連撃、響香は攻撃予測をするが防ぎきれず次々と攻撃を喰らってしまう。

 

「凄い…」

「ああ…爆豪君ですら完封した耳郎君の予測ですら防ぎ切れないなんて……!」

 

 麗日や飯田は攻撃予測ですら超える龍悟に改めて龍悟の力を思い知った。

 

「響香!!もっと(リキ)出せ!!」

「くっ!!あああっ!!」

 

 気合を出しプラグを突き刺し心音攻撃をぶつける。いくら龍悟でもこればかりは防ぎようがない。止まった龍悟を蹴り飛ばす。

 

「まだだ!!」

 

 直ぐ様、龍悟は飛び出し響香とぶつかり合う…

 

「龍悟!!本気で!!うっ!」

 

 龍悟の拳を喰らっても響香は叫ぶ。龍悟の腕にプラグを巻き付け投げ飛ばした。足に力をいれふんばる。

 

「ウチと全力で………戦ってほしいんだ!!」

「!?、ぜぁぁぁぁぁあ!!」

 

 その叫びを聞き、気を最大限に高める。身に纏うオーラがさらに激しくなる。黄金の柱が聳え立ち。その余波でステージにひびが入る。

 

「来い!響香!!」

 

 あまりの輝きで龍悟が見えない……だが、声は聞こえる。響香は感謝した……自分のわがままを聞いてくれた事に。

 

「ありがとう…龍悟!!」

 

 力いっぱいステージを蹴り駆け出す。

 

「はああああああッ!」

 

 龍悟は全ての気を拳一点へ集約させ、気を巨大な龍へと変質させて迎え撃った。黄金に輝く神龍が発生し、響香を巨大な口で飲み込みそのまま荒れ狂い、天高く昇っていく。その凄まじい光景に誰もが目を見開く。

 

「□□!!」

 

 凄まじい気の嵐で声すら聞こえなくなってしまったが、取り込まれた響香には見えた。

 

 

 髪が腰のあたりまで伸び、眉毛が消えた強面になり威圧感が2より遥かに増した姿を……

 

 

(ああ……やっぱり、龍悟は凄いな……)

 

 響香はその姿を瞼に焼き付け…意識を手放した。

 

 

 やがて龍は消え、光が納まりステージが見えてくる。

 

『どうなったんだ?』

 

 相澤の疑問の中、ステージには黒髪に戻った龍悟が佇み、少し後に打ち上げられ落ちて来た響香を受け止めた。響香は動かずミッドナイトがステージに上がって駆け寄った。

 

「耳郎さん戦闘不能!!よって優勝は孫君!!」

 

 ――爆発した様に歓声が上がる。

 

『決勝戦、ここに決着ー!以上を持って全ての競技が終了!今年の雄英体育祭1年の部、優勝は――強靭!無敵!最強!!孫龍悟だぁー!!!』

 

 

(この気持ち……悟空の記憶にある……天下一武道会で優勝した時の気持ちだ)

 

 称賛の声を聞きながら龍悟は貴賓席を見る。そこで、オールマイトがサムズアップをして、こちらを見ていた。それに微笑みながら響香を連れてステージを去った。

 

 

 

 

 

 

「それではこれより表彰式に移ります!」

 

 

 花火が打ちあがり、観客の歓声の中でミッドナイトは表彰式へと進め、参加生徒達も全員が表彰台に集合。1、2、3の数字が刻まれている表彰台。そこに2位には響香が、1位には龍悟が佇んでいた。しかし生徒達、そして教師や観客達はドン引きしている。3位――飯田と共に立っている爆豪へ目を奪われていた。

 

 コンクリートの柱に身体を、両腕・口を拘束具で抑えられながら暴れ続ける爆豪。拘束されながら龍悟を睨むが、龍悟は何時ものポーカーフェイスで相手にしてない。

 

 

「メダル授与よ!!今年メダルを贈呈するのはもちろんこの人!!」

「私が!メダルを持って「我らがヒーロー!オールマイトォ!!」

 

『・・・・・・・・・・・・・』

 

 メダル授与のため、格好良く登場するオールマイトだったが、不幸な事に台詞が被ってしまい、彼の登場シーンはグダグダになってしまった。悲しさに身を震わせるオールマイトに、ミッドナイトは手を合わせて謝る。

 

 気まずくなったがメダル授与は始まった。

 

「おめでとう!飯田少年!!君と孫少年のスピードバトルはとても素晴らしかった!これからも長所を伸ばし頑張ってほしい!」

「ありがとうございます!!」

 

 オーイマイトの称賛とメダルを受け取った飯田の顔は晴れ晴れとしていた。

 

 次にいこうとしたが……流石のオーイマイトも爆豪の有様に苦笑いしてしまった。

 

「爆豪少年!……っと流石にこれはあんまりだな!」

 

 メダルを授与しようとオールマイトは爆豪の口に付けられた拘束を解くが、それと同時に爆豪から放たれるのは獣の様な叫びであった。

 

「オールマイト!!! 3位なんて価値ねぇ!!! 1位以外には何の価値ねぇんだよ!! 周りが認めても俺はぁぁぁぁ!!!」 

 

 オールマイトもドン引きするが何時ものスマイルで押し通る。

 

「うむ! 今の世の中で不変の絶対評価を持てる者は少ない!受け取っとけ“傷”として!」 

「いらねぇ!!」

 

(よく、こんな無様を晒せるな)

 

 少なくとも自分(ベジータ)はいくら負けたからって「認めたくない」なんて喚き散らす無様は晒さないと爆豪を冷えた目で見ていた。

 

 無理矢理、爆豪にメダルを授与したオールマイトは響香の前に立った。

 

「耳郎少女!!素晴らしいガッツだった!!格上である孫少年に一歩も引く事なく立ち向かった!ヒーローには悪に立ち向かう勇気が必要だ、それを大事に持っていてほしい!!」

「はい!!」

 

 清々しく言う響香に微笑みながらメダルを授与した。オールマイトはいよいよ龍悟の前に来た。

 

「孫少年…おめでとう。一位を取る宣言、見事に達成したね、世間は知っただろう……君が来た!!って事を」

「ああ……ありがとよ、オールマイト」

 

 嬉しい気持ちで胸がいっぱいになりながら龍悟にメダルを掛け抱き締めた。本当に自慢の弟子だと……

 

「さァ!今回は彼等だった!しかし、皆さん!この場の誰にもここに立つ可能性はあった!ご覧頂いた通り、競い!高め合い!更に先へと昇っていくその姿!次代のヒーローは確実にその芽を伸ばしている!てな感じで最後に一言!皆さん、ご唱和下さい!せーの!」

 

「「「「プルス『お疲れ様でした!』ウル…えっ!?」」」」

「「「「え〜そこはプルスウルトラでしょ!?オールマイト!」」」」

 

 まさかの言葉。ここは校訓だろうとオールマイトに会場中から大ブーイング。

 

「ああいや…疲れただろうなと思って……」

「ふっ……」

 

 ぐだぐだな終わり方だが、これも悪くないと龍悟は微笑んだ。

 

 

 

 その後、教室では相澤から、明日と明後日が休校になる事、そして休み明けに職場体験の指名事務所の発表を行うと伝えられて下校となったのだった。

 

 夕日が輝く帰り道、龍悟と響香は歩いて居た。響香は嬉しそうに首に掛けている銀メダルを眺めていた。

 

「いや〜今日はいろいろあったね」

「そうだな…」

 

 確かに今日は2400億の障害物をぶっ壊したり、騎馬戦でお化けを百体出したり、歴代の個性が発現したり、飯田の兄や轟を救ったり、響香が攻撃予測を習得したりと濃い一日だった。

 

 思い出に浸っていると響香が龍悟の前に出て……

 

「ウチ、いつかきっと…龍悟に背中を預けられる様に…強くなって見せるから!」

 

 夕日に照らされ笑う響香は……とても綺麗だった。

 

「……………ふっ、それは…楽しみだな」

 

 

 こうして長かった体育祭は終わりを告げた。

 

 

 

 

END

 



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三章・職場体験
ヒーロー名を決めろ!!


 

 雄英体育祭が終わり、休日2日も直ぐに過ぎ何時も通り学校が始まる。本日の天気は雨。傘をさし登校するが、龍悟は朝から既に疲れたような表情をしていた。

 

「朝から凄い声掛けられたね」

「……全くだぜ…」

 

 響香の言う通り、龍悟は雄英体育祭で活躍し優勝し、有名になり色んな人から声を掛けられた。最初は良い気分だったが、学校に到着するまで何十人もの人達に話し掛けられものすごく疲れての登校になってしまった。

 

 教室に入ると、そこには体育祭のことを語るA組の姿があった。

 

「超声を掛けられたよ来る途中!!」

「私もジロジロ見られて何か恥ずかしかった!」

「俺も!」

 

「おはよう」

「……………どうしたんだ轟君!?その怪我は!!」

 

 すると轟が教室に入って来たが……体の至る所に痣があり痛々しい姿だった。

 

「何があったし……」

「ちょと、親父に自分の気持ちぶつけてぶん殴って……殴り合いになった……」

 

 龍悟が気を流し込み怪我を治す。

 

「それで、少しは自分を受け入れたか?」

「そうだな……氷も炎も俺だ……俺の力でお前に挑む」

「そうか……」

 

 

 すると、呼び鈴が鳴り教室に入ってきた相澤の声が聞こえクラスメイト達は素早く着席した。

 

「今日の"ヒーロー情報学"ちょっと特別だ」

 

 相澤のその言葉を聞き、クラスメイト達を緊張が包み込む。

 

 

「コードネーム――つまり“ヒーロー名”の考案だ」

 

『夢膨らむやつきたぁぁぁぁ!!!』

 

 と、叫び声が上がり教室内に響く。クラスメイトの殆どがテンションが高まり、立ち上がる。騒がしくなるが相澤によりクラスは一気に静まり返る。

 

 体育祭前に相澤が話したが、今回のヒーロー名を決めるのは「プロのドラフト指名」に関係してくる。体育祭の様子を見て既にプロ達から指名があり、それを元にプロの所へ職場体験に行かせるのが学校側の考え。

 

「――と言っても指名が本格化するのは2・3年……つまりは即戦力になってからだ。一年は大体将来への“興味”によるもので、情けない姿を見せれば一方的にキャンセルも珍しくない」

 

「大人は勝手だ!」

 

「ちなみに、肝心の指名結果はこれだ」

 

 相澤が黒板を操作すると、映像として結果が表示された。そこには名前・指名数が表示されており、全員がそれに意識を向けた。

 

 

――A組・指名件数。

 

   孫:5284

  耳郎:4492

   轟:3186

  飯田:2672

  爆豪:2564

  常闇:309

  麗日︰218

 八百万︰108

  切島︰68

  上鳴︰20 

  芦戸︰14

 

  

「例年はもっとバラけるが……今回は突出した連中が多くてな」

 

「見て龍悟!ウチにあんなに指名が!!」

「俺は5000以上か……すげえな……」

「俺は親父の話題性か……」

「指名が200も……よっしゃー!」

 

「これを踏まえ…指名の有無関係なく、いわゆる職場体験ってのに行ってもらう」

「それでヒーロー名か!」

「俄然楽しみになってきた!」

「だが、適当に付けると…」

「地獄を見ちゃうよ!」

 

 カツカツとヒールの音を立てて教室に入ってきたのは、露出の多い戦闘服を着込んだミッドナイト。

 

「仮のまま世に認知され、プロ名になっている人多いからね!!」

「そういう事だ……俺には無理だからその辺はミッドナイトさんに頼んだ」

 

 そう言うと怠そうな相澤は寝袋に入ってしまい、そこからは説明通りミッドナイトが仕切り始める。名は体を表すという言葉がある。自分の持つ個性、将来自分がどうなるのか。名を付けることでイメージが固まりやすくなり、思い描くヒーロー名に近づく。

 

「それが「名が体を表す」ってこと、『オールマイト』とかね」

 

 

―――15分後

 

「そろそろ良いわね!――できた人から発表してね!」

 

『まさかの発表形式!?』

 

 ミッドナイトの言葉に全員が驚いく中、堂々と龍悟が前に出た。

 

「すげぇ……堂々としてる……」

「流石、ナンバーワン…」

 

「俺のヒーロー名はーー」

 

 それは、嘗ての自分の名………悟空でもベジータでもない……

 

 

「龍拳ヒーロー『ゴジータ』だ!!」

 

 

 

 

 

 

 そして放課後、指名をもらった者はそのリストを、指名のなかった者は雄英からオファーした全国の受け入れ可のヒーロー事務所40件。龍悟達はどの事務所に行くか決めていた。

 

「それにしても龍悟のリストはスゲー厚さだな」

「だよなぁ……決められるのか?」

「もう決めたぞ」

「「早っ!?」」

 

 切島と瀬呂の疑問にあっさりと応えた龍悟。

 

「前から決めていた事務所から指名があってな……」

「何処にしたの、龍悟ちゃん?」

 

「サー・ナイトアイ事務所だ」

 

 

 

 

 

 その頃、何処かもわからない場所…其処には幾つものカプセルが置いてあり中には“人なのか……そもそも生きているのか”不気味な生物が中に入っていた。

 

 そしてその中にあるいかにも特別なカプセルの前に二人の人物が立っていた。

 

「いよいよだね……ドクター」

「ああ、ようやく完成だ…先生」

 

 先生と呼ばれた男はかつて裏社会から恐れられた伝説の巨悪、オール・フォー・ワン。死柄木達『敵連合』の黒幕である。彼は側近であるドクターと共に“偶然”発見した未知の細胞の研究をしていた。

 

「先生が発見したこの細胞は非常に興味深い……傷をつけようが焼いて消滅させようが、ハイエンド脳無を上回るスピードで再生する」

「長生きはするものだね。見た事のないピンク色の細胞…いい拾いものをしたよ。だけど、この細胞を脳無に移植したら…脳無が耐えられなかった」

「だが、“21回目”の実験でようやく適合した!」

「ふふふ…“彼女”は世界に何を見せるだろうね……楽しみだな…」

 

 巨悪は野望を描きながらカプセルの中に浮かんでる女性を見つめていた。

 

 

 

 

「ん?」

 

 帰宅しようと教室を出ようとしたその時、龍悟は突然振り向き遥か彼方を見た。

 

「どうしたの龍悟君?」

「帰るついでに体験先を提出しに行こう」

「龍悟?」

「………………いや、なんでもない。気のせいだ」

 

 何か予感をした龍悟だが…気のせいだと響香達の後を追った。

 

 

 だが、遠くない未来で龍悟は思いがけない強敵達に出会う事にまだ気づいてなかった。

 

END

 

 



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未来を超えろ!新たな力、神龍拳!!

 職場体験、当日。

 

 本日、雄英生徒一年は朝早くから駅に集合していた。担任の相澤は簡単に短く、説明を言い始める。

 

「コスチューム持ったな。本来なら公共の場じゃ着用厳禁の身だ。相応の技術が注ぎ込まれた服だ。落としたりするなよ」

 

 資格を持っていない生徒達は通常なら戦闘服の着用は許可されていないが、今回は職場体験ということで雄英側が予め連絡を入れ、許可が出されている。サポート会社の技術が注ぎ込まれた戦闘服なので相澤は念を入れ、失くさないように生徒に話す。

 

「はーい!!」

「伸ばすな。『はい』だ、芦戸。くれぐれも失礼のないように! じゃあ行け」

 

 注意された芦戸は落ち込みながらも「はい…」と答える。

 

 説明を聞いた後、戦闘服の入ったケースを持つ。生徒達はそれぞれの職場体験先に移動を開始する。

 

「オーイ!龍悟君、耳郎ちゃん!!」

 

 電車に行こうとする龍悟と響香をビッグ3の一人、通形ミリオが待っていた。

 

「迎えに来てくれたんですか?」

「おう!可愛い後輩だぜ!当然だろ!」

 

 今回、龍悟と一緒に響香も通形がインターン活動をしているサー・ナイトアイ事務所を選んだ。

 

「俺の常に予測する戦闘スタイルはサーから学んだ。耳郎ちゃんの音による予測も更に上を目指せる筈だ」

 

 理由は決勝戦を動画で見た通形が響香の予測行動を見て自分の様になれるのではと思い誘ったのだ。これに響香はのりナイトアイ事務所を選んだのだ。

 

 そうこうしてる内にナイトアイ事務所に着きナイトアイの部屋を目指す。

 

「サーはああ見えてというか…だからこそというか…ユーモアを最も尊重してるんだ」

「緊張してきた……」

 

 そして、龍悟達はナイトアイが居る部屋に入る。其処はいかにも事務所と呼べる感じの部屋で机に座っている男性…その隣に立っている女性が居た。

 

「初めまして、雄英高校から来た孫龍悟です」

「同じく耳郎響香です」

「「一週間、よろしくお願いします!」」

 

「元気溢れる挨拶だ…私はサー・ナイトアイ…こちらの女性はサイドキックのバブルガール、もう一人居るのだが彼は別件で居ない…こちらこそ一週間よろしく頼む」

「よろしくね!二人共」

 

 挨拶を交わし説明を受けた後、龍悟達はヒーロー名を伝えた。

 

「さて、ミリオ、バブルガール…耳郎響香(イヤホン=ジャック)を連れてパトロールに行ってきてくれ、私個人として孫龍悟(ゴジータ)と話がしたくてね」

「?、はい、わかりました。行こうミリオ、イヤホン=ジャック」

 

 響香達が退出しナイトアイと龍悟だけになる。

 

 

「…君が、ワン・フォー・オールを受け継いだんだな」

「ああ」

「雄英体育祭…スタジアムで余すこと無く見させてもらった……確かに、オールマイトの見る目は正しかった」

 

 ナイトアイは複雑な表情で語っていた。

 

「私は私で後継者に相応しい人物を育て上げたが……君も後継者に相応しい人物だった……」

「…………通形先輩か……」

「ああ……その通りだ」

 

 そして少し間を開けてナイトアイは言った。

 

「間近で体験したい……君の力を見せてくれないか?」

 

 断る理由もなく龍悟は事務所にあるトレーニングルームでナイトアイと向き合っていた。

 

「来たまえ……どんな攻撃をしても構わない」

「なら、行かせてもらう!」

 

 超サイヤ人Ⅱに変身し拳を振るう。

 

「まずは、正面…」

 

 その時、龍悟が消える。

 

「と、思わせてからの背後」

 

 背後に高速移動した攻撃をナイトアイは回避した。だが服に掠り少し破ける。

 

「速いな……次は右回し蹴り」

 

 龍悟が放った右回し蹴りを落ちる様にしゃがみ重心を支える龍悟の左足を足払いで払いバランスを崩す。その隙にナイトアイが何かを投げるが龍悟は体をひねって回避し瞬間移動で距離を取る。だが、まるで何処に移動するかわかるかの様にその場所に投げた。龍悟は驚く事なくそれを掴み取る。

 

「……印鑑か…シャレた武器だな」

「ユーモアが効いているだろ」

 

 言葉を交わしながら龍悟はナイトアイを分析していた。

 

(ナイトアイの“個性”は『予知』。俺の行動を先に見る事ができる…響香の予測の完全版と言うべきか……)

 

「……………君は、私とオールマイトの事をどう思っている?」

「象徴であり続け希望で在ろうとしたオールマイトとオールマイトを思うナイトアイ……噛み合わず、間が悪かったと思う……」

「そうか……君はオールマイトの未来を私が見た事を知っているかい?」

「未来?」

「その様子だと知らない様だな………今年か来年にオールマイトは………死ぬ」

「なん……だと…!」

「予知で見た光景を変えられた事はない……」

 

 突然の真実に流石の龍悟も驚愕した。

 

「だが、その光景に君は居なかった……イレギュラーなんだ君は……」

「…………」

「君がワン・フォー・オールを…オールマイトを受け継いだなら、その力を見せてみろ!!」

 

 それは心からの叫び…

 

(アンタは諦めたくないんだな……変えられた事はない…それでも、抗い続けた……)

 

 なら、それに応えよう…受け継いだ者として。

 

「なら、見してやる!」

 

 龍悟の体から【黒鞭】が現れ手足に巻き付き溶け込んでいく…やがて手足は赤みがかった黒色に変色した。

 

「これが…響香やアンタみたいな予測する奴に対抗する為に作った技……」

 

神龍拳(シェンロンケン)五星龍(ウーシンロン)!!」

 

「神龍拳?今までとは……」

「確かに、アンタの予知はすげぇ…だからさっきより…速い!!」

 

 なんと龍悟の左拳が伸びナイトアイに迫る。だが、ナイトアイは予知し回避する。

 

(伸びる事には驚きだが……単純なーー!?)

 

 しかし、次の瞬間…避けた筈の拳がナイトアイの左頬に直撃し吹き飛ばされた。

 

「い、一体何が……!?」

 

 口から血を流しながら立ち上がるナイトアイは困惑していた。今度は龍悟の右拳が伸びる。再び回避したナイトアイ…だが右側から拳が飛んでくる。回避できず両手でガードするがパワーが高く吹き飛ばされた。

 

(なんだ…今のは!?一体、何処から!?)

 

 更に困惑するナイトアイに続けて拳を伸ばす。予知で回避する。

 

(確かに避けたぞ)

 

 ナイトアイは一秒先の未来を予知する……見えたのは……“避けた腕が急角度で軌道変更を繰り返しながら伸びて追い続けていた”。

 

(!?、まさかこんな攻撃を!)

 

 だが、見えたのなら回避できる。追尾してきた拳を避け印鑑を投げようとしたが…

 

「無駄だ!伸びても加速する!!」

 

 それでも加速し伸びながら軌道修正をして、ナイトアイに迫った。

 

「なっ!?」

 

 先程より速くなった攻撃…予知して避けられない…拳はナイトアイの腹にクリティカルヒットした。

 

「がはっ!」

 

 痛みに意識が薄れる…肌に感じて継承者に相応しいと改めて実感した。後は…

 

(未来は!どうなる!!)

 

 龍悟を通じて変えられるかもしれない!願いを籠めて龍悟の未来を見た。

 

(!?、どう言う…事だ!!)

 

 見えた光景は真っ白…何も無い…まるで、“何かを描く前のキャンパス”みたいに…

 

 あまりの光景に意識が覚醒し気絶は免れた。だが、ダメージもあってナイトアイは座り込んだ。それを見て勝負は終わりと感じた龍悟は神龍拳を解きナイトアイに近づいた。

 

「………見えなかったんだ、未来が…こんな事は初めてだ……」

「………あえて言わせて貰うぜナイトアイ……俺は何処の誰が決めたのか知らねぇ未来を生きるつもりはない…オールマイト風に言うならーー」

 

「運命など、この手で好きな形にねじ曲げてやるさ!!」

 

 未来に抗い続けた男は……

 

「……ふっ、なら変えてくれ…未来を、運命を…」

「ああ!」

 

 虹の輝きに賭けてみた。

 

 

END

 

 

 

 




 神龍拳…龍悟が歴代継承者の個性を自分に合わせて改良した戦闘スタイル。

 五星龍…『黒鞭』を複数に分けるのではなく一筋に束ねて擬似的な腕として使う使用方法。スピードが高く、変幻自在の攻撃を得意とする形態。伸ばして加速させた腕を、そこから更に伸ばして加速させる事が可能で、その方向も自由自在に操ることができ、腕が回り込んで背後から殴り飛ばすことも可能。 360度あらゆる方向からの攻撃が可能な上、避けられた攻撃をいちいち引き戻さず、そのまま迂回させて別の方向から再攻撃という芸当まで実現できる。
 元ネタはワンピースのスネイクマン。


 黒鞭の人が五代目とわかったので修正しました。







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燃える保須市

 ナイトアイとの戦いから後日…龍悟と響香はナイトアイの元でプロの現場を目の当たりにした。火災等の事故や敵との戦闘…二人は確かな実力はある。だが、経験が無い響香は勿論、龍悟も戦いの経験はあるがそう言ったヒーローの経験は無い。プロが現場でどう行動するか…サポートに徹しながら見ていた。

 

 そして現在、龍悟達は夜の渋谷の街に行く為に新幹線に乗っていた。響香はバブルガールと女子バナをしており、龍悟とミリオはナイトアイのオールマイトの深い話を聞いていた。

 

「いいな〜イヤホン=ジャックはイケメンな彼氏が居て、私も彼氏ほしい〜!」

「い、いや!龍……ゴジータとはまだそう言う関係じゃあ///!!」

「顔真っ赤にしても説得力ないよ…可愛いな」

 

「そして、“ビネガースーサイド事件”で彼はこう言った『こちらこそ君のお陰でお肌10歳若返ったよ』と!」

 

 そうして、新幹線が保須市を横切った。

 

(そう言えば…飯田は保須市だったな…)

 

 飯田は最初、インゲニウム事務所にしようとしたが…まだ、立て直しの最中…職場体験を受け入れられる状況ではなかった……だから、保須市のノーマルヒーロー・マニュアルの所に職場体験に行ったのだ。

 

 連絡をいれようとした時……突如、轟音とともに一人のヒーローが新幹線の外壁を突き破り、反対側の壁へと叩きつけられる。ナイトアイは素早く状況を理解した。

 

「戦闘態勢!来るぞ!!」

 

 その指示に素早く対応する。そして、ヒーローを吹き飛ばした存在が姿を現した時、龍悟と響香、ミリオは驚愕する。

 

「アレって!?」

 

 四つの目と露出した脳味噌。薄緑色の体表、異様に長い手足、そして痩身であるなど違いがあるが、見間違えようが無い。脳無だ。

 

「ミリオ!ゴジータ!遠ざけろ!!」

 

 被害を防ぐ為、ナイトアイはミリオと龍悟に指示を出す。ミリオは透過で人や席をすり抜けながら脳無の懐に踏み込み。龍悟も瞬間移動で踏み込む。そして同時に拳を叩き込み脳無を車両から吹き飛ばした。

 

「今のは脳無…敵連合か」

「龍悟!保須市が!!」

 

 響香に言われたまま保須市を見ると…まるで映画の様に燃えていた。車内はパニックになる。

 

「私とバブルガールは車内のパニックを抑える!ゴジータ、イヤホン=ジャック!……君達に“個性”の使用を許可する!行けるか?」

「勿論だ」

「大丈夫です!」

「よし、ミリオ…現場の判断は任せる」

「はい!」

 

 それぞれが行動に移す。龍悟はミリオと響香を連れて瞬間移動をした。保須市に瞬間移動したが其処はもう酷く荒れていた。

 

「酷い……」

「話は後だ、来るぞ!」

 

 龍悟は吹き飛ばした脳無の気を感知して瞬間移動した、その脳無が高い奇声を上げながら襲いかかる。

 

「まずはウチが!!」

 

 響香がプラグを突き刺し心音攻撃を繰り出す。悶えるその隙に…

 

「ビッグバン・アタック!!」

 

 龍悟のビッグバン・アタックが炸裂し脳無は沈黙した。

 

「流石だな…孫龍悟君」

「!、エンデヴァー、まさか、来ていたとはな…」

「こんな大事が起きるとは思わなかったがな」

「お前等も来ていたのか」

 

 その後ろには轟が居た。轟は脳無を見ると驚愕した。

 

「脳無!?」

「これが複数の個性を持つ改造敵か……」

 

 その時、少し離れたところから爆発と叫び声が聞こえる。

 

「ヒーローが集中していた筈だ……それ程までに脳無とやらは厄介らしいな」

「ゴジータ!イヤホン=ジャック!コイツは俺が拘束しておく、君達は加勢に!いいですかエンデヴァー?」

「構わん」

 

 話が纏った、龍悟はミリオを除いた全員を連れて瞬間移動した。辿り着いた所は2体の脳無と多数のヒーローが相対していた。だが、ヒーローは苦戦していて状態が悪い。

 

「行くぞ!!」

「ああ!」

「オッケー!」

 

 響香が腕の装置をプラグに装着し翼の脳無を囲む。

 

「ハートビートサラウンド!!」

 

 距離と方向を変えた立体音響が翼の脳無を襲う。悶え苦しみ上手く飛べない脳無に轟は右手で狙いを定める。轟はエンデヴァーの元で個性の緻密な制御を目標にトレーニングをしてきた。

 

「アイスメイクーー」

 

 すると轟の右側から無数の氷でできた槍が造られる。

 

槍騎兵(ランス)!!」

 

 造り出された槍は一斉に脳無に飛んで行き翼の脳無を貫いた。

 

 龍悟は黒い脳無の懐に瞬間移動で踏み込み…

 

「かめはめーー波ぁぁあ!!」

 

 放たれたかめはめ波が脳無を飲み込み吹き飛ばされた、吹き飛ばされた脳無は頭が炭化し沈黙した。自分達が苦戦した脳無を倒した龍悟達に唖然としたヒーロー達だが…ある事に気づいた。

 

「!?、インゲニウムの弟が居ない!!」

 

 ノーマルヒーロー・マニュアルの叫びに辺りは驚愕する。

 

「まさか飯田は!?」

 

 ここはヒーロー殺しの現れる保須市。そして、飯田の兄インゲニウムを再起不能にしたのはヒーロー殺し……ある考えが頭に過り、響香は恐れる。

 

「龍悟!!」

「…見つけた、路地裏に飯田の気だ…その他に二人、一人と飯田は負傷している…もう一人は健在……ヒーロー殺しだ!」

 

 龍悟が瞬間移動の準備をし響香は肩に掴まる。

 

「焦凍…お前の“個性”の使用を許可する…俺はこの2体を拘束せねばならん」

「!?、親父…」

「行ってやれ」

「ああ!」

 

 轟も龍悟の肩に掴まった。

 

「行くぞ!!」

 

 龍悟達はその場から消えた。

 

 

 

 

 保須市のとある路地裏。爆音が聞こえなくなってきたことにより、そこに居る飯田、プロヒーロー・ネイティブ…そして“ヒーロー殺し”の3人は状況を知る。

 

「…ハァ…大口を叩く割にもう終わったのか……敵連合とやらは情けないな……」

 

 飯田の頭を強く踏みつけるヒーロー殺し。

 

「グァ…!」

「じゃな……弱者」

 

「グゥ!……僕がお前に勝てないなんて事は、僕が一番よく、わかってるんだ!!それでも、やるしかないんだ!勝てる勝てないじゃなく!僕はここでお前に立ち向かわないと行けないんだ!!」

 

 飯田は復讐の為に戦いを挑んだのではない……増やしたくなかったんだ…兄の様に傷つく人を、自分の様に泣く人を……だから、ヒーロー殺しを見つけた時、無我夢中で追いかけたのだ。

 

「…いい言葉だ……だが、それは本物のヒーローが言う言葉…弱者が語る言葉ではない…」

 

 ヒーロー殺しが刀を振るう。思わず目を瞑る。だが、痛みがこない…

 

「よく言った!飯田!!」

 

 その声が聞こえた時、思わず目を開く。其処には振り下ろされた刀を握り受け止めた(龍悟)が居た。

 

「貴様は!」

 

 ヒーロー殺しは目を見開く。敵連合の死柄木に見せてもらった写真に写ってた龍悟がいきなり目の前に現れたのだ。

 

 龍悟は刀を握り砕きヒーロー殺しを殴り飛ばす。

 

「後は俺に任せてくれ!」

 

 龍悟が黄金の気を纏い超サイヤ人2に変身する。

 

 燃え盛る保須市に黄金のヒーロー(ゴジータ)が降臨した。

 

 

END

 

 




轟はフェアリーテイルのグレイの様な戦闘スタイルで行きます。


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暗黒の魔女と仮面のサイヤ人(リメイク)

少し変えました、ご了承ください。


 飯田は現れた龍悟達に驚く。

 

 

「龍悟君…どうして此処に…」

「渋谷に行く途中、脳無に襲われてな…」

「俺は親父がヒーロー殺しを捕まえるために保須に来ていたんだよ」

 

「ハァ…体育祭一位と二位…そして偽物の息子か……貴様等はいい目をしてるな……」

「人殺しに褒められても嬉しくないし」

 

「ハァ…俺はコイツ等を殺す義務が有る。ぶつかり合えば当然……弱いほうが淘汰されるわけだが、さぁ、どうする」

 

 途端に、轟と響香の鳥肌が立つ。USJに現れたチンピラや何時も殺すと叫ぶ爆豪の非じゃない。

 

「気をつけてくれ!アイツに血を舐められると動けなくなるんだ!!」

「なるほどな」

 

 飯田の目立った外傷は無いのに動けない理由がわかった。

「俺は飯田をなんとかする…頼めるか?」

「任せろ…」

「とんだ職場体験だね……」

 

 轟と響香が前に出る。

 

「ハァ……」

 

 そう言うと即座にナイフを投げつける。

 

「アイスメイクーー(シールド)!!」

 

 轟が八方に広がる花のような形状の盾を造形しナイフを防ぐ。だが、ヒーロー殺しは頭上に飛び上がり刀を振るう。

 

「やらせないし!」

 

 響香のプラグがヒーロー殺しを囲み距離と方向を変えた立体音響が襲いかかる。

 

「グゥ…!」

 

 いくら高い身体能力を持とうと響香の音は防げない…バランスを崩し不時着する。

 

「音か……厄介だ!」

 

 響香へと狙いを定めたヒーロー殺しは刀を振るう。音の予測で対処するが…

 

(コイツ、爆豪よりも!)

 

 ヒーロー殺しの身体能力は爆豪を上回る、加えて技術も高い…龍悟程ではないが段々対処が難しくなってくる。

 

「この!」

 

 腕の装置から音の衝撃波を出そうとするが…その腕を蹴られバランスが崩れる。

 

「しまっ!!」

「横に飛べ!」

 

 轟の叫びで咄嗟に横に飛ぶ。そして先程、響香が居た場所に轟が踏み込む。

 

(コイツは後方支援ではないのか!?)

 

 支援型だと思っていた轟が踏み込んで来た事に驚愕する。轟は左拳を握り…そこから炎が燃え上がる。轟はまだ左の制御が不十分……だからエンデヴァーは言った。

 

『いっその事、左は愚直にいけばいい……臨機応変に対応する氷…愚直で力強い炎……使いこなすのはお前だ』

 

 左が熱く燃える…竜の火の様に……

 

「火竜の鉄拳!!」

 

 炎を纏った轟の拳は刀を砕き、ヒーロー殺しを殴り飛ばした。

 

「ゲホァ!まだだ!!」

 

 それでもヒーロー殺しは立ち上がる。

 

「いいや、終わりだ!!ヒーロー殺し!!」

 

 叫びが聞こえ上を見る……其処には龍悟に気を送り込んで貰い、動ける様になった飯田と龍悟が飛び上がり、その後ろにはゴッドドラゴン・ブレイズが佇む。

 

「超龍爆炎脚!!」

 

「レシプロエクステンデッド!!」

 

 龍悟と飯田の蹴りがヒーロー殺しに突き刺さり沈黙した。そして、よろよろとネイティブが起き上がった。どうやら動ける様になったらしい。

 

「悪ぃ……俺は、プロヒーローなのに君達に救けられちまった……本当に済まない」

「気にしないでください…」

「アイツが強すぎただけです」

 

 申し訳無さそうなネイティブに、轟と響香がフォローを入れる。実際、恐ろしい相手だった……

 

「龍悟君……皆、ありがとう」

 

 飯田が頭を下げる。その目には涙が流れていた。

 

「気にするな…俺達は友達だろ」

「龍悟君……ああ!」

 

 ヒーロー殺しを拘束し大通りに出た。

 

「とりあえずヒーロー殺しを警察に……」

 

「それじゃあつまらないわ」

 

 その声が聞こえた時、龍悟達が立っていた所に魔法陣の様な物が浮かび上がる。

 

「!?」

 

 龍悟が咄嗟に反応して魔法陣にソウルパニッシャーをぶつけ虹色の光が魔法陣を砕き龍悟達を守る。

 

「グハァ!!」

「ネイティブさん!!」

 

 だが、その隙に何者かがネイティブを殴り飛ばし彼が担いでいたヒーロー殺しが奪われる。

 

「流石ね…私のキリゾーンをいとも容易く破壊するなんて」

 

 其処には赤いスーツを着た青い肌の女性と同じく赤いスーツと青い肌の男性が居た。

 

「何だコイツ等!?」

「一体何処から!?」

 

 轟達が驚愕する中、龍悟が前に出る。

 

「何者だ……」

「まさか、敵連合!?」

「違うわよ、可愛いお嬢さん……私達はちょっと面白くしたいだけよ……」

 

 女性は持って居た杖を掲げる、すると空間が割れそこから何かの装置が現れた。

 

「ワープ個性!?」

「何をするか知らねぇが!!」

 

 何者か知らないが好きにはさせない。

 

「アイスメイク!!「邪魔をするな」なっ!?」

 

 轟が行動を起こした瞬間、男が一瞬で轟の懐に踏み込み拳を振るう。だが、それを龍悟が受け止めた。

 

「流石だな……“最強の融合戦士”」

「!?」

 

 男は龍悟にしか聞こえない様に呟く…その言葉に龍悟は驚愕する。その隙に女性はヒーロー殺しと装置の下に魔法陣を展開する。

 

「さぁ、貴方のヒーロー社会に対する怨念…“ハッチヒャック”に捧げなさい!!」

 

 その時、黒く眩い輝きがヒーロー殺しと怨念増加装置ハッチヒャックを包み込む。

 

「一体何が…」

 

 その光景に響香達は唖然とする。やがて光が納まりその姿が明らかになる。

 

 其処には赤い鎧の様な肌を持ち至る所に緑色の水晶の様な物が埋め込まれている異形の生命体が居た。

 

「アレが、さっきの機械とヒーロー殺しか!?」

「合体…したのか!?」

「嘘でしょ…!」

 

 あまりに現実離れの出来事に轟達は驚愕する。

 

「ふふふ、実験は成功ね…じゃね」

 

 女は男に触れると一種でその場から消えた。

 

 赤い異形…“ハッチヒャック”が動き出す。龍悟が構えたその時……

 

「龍悟!行って!!」

「響香!?だが…」

「アイツ等を追えるのは君だけだ!!」

「飯田…」

「いいから行け!!」

「轟…」

 

 響香達が前に出て構える。

 

 

『此処は任せて早く行け!!』

 

 

「…………最高だぜ、オメェ等」

 

 龍悟は瞬間移動で追う。

 

 其処は遥か空、雲の上だった。目の前には先程の男女が佇んでいた。

 

「仲間を見捨てて来たのかしら?」

「アイツ等はそんな弱くねぇよ……お前等…“アッチの住人”だな?」

「ええ、そうよ。私は“トワ”こっちは“ミラ”…しかし驚いたわ、この世界に貴方が居るなんてね…孫悟空とベジータの融合…最強の戦士、ゴジータ」

「俺を知っているのか……」

「ええ、勿論…どの歴史でも貴方は最強の一角」

「なるほど、道理で閻魔のおっちゃんや界王様達だけが知ってる…地獄の事件…俺の事を知ってる訳だ…お前等は時空を移動していろんな歴史に行くことができる」

「ええ、そうよ…時空を移動してる時、不思議な亀裂を通ると全く別の世界…此処に来たと言う訳よ」

 

(それを通って俺の魂は転生したのか)

 

「後一つ言っておくわ、あのお嬢さんが敵連合って言ってたけど、本当に違うわよ…ただ、彼等に面白い物を拾わせたの」

「何!?」

「それじゃあ…また、会いましょう…最強の戦士」

 

 トワがミラを連れて消えようとするが……

 

「逃がす訳ねぇだろ」

「なっ!?」

 

 超サイヤ人Ⅱに変身した龍悟が一瞬でトワの懐に踏み込み拳を握っていた。トワは咄嗟に杖を掲げる。拳がトワに当たる瞬間、龍悟とトワの間に何者かが現れる。

 

 それは特徴的な髪型に仮面を付けた男だった。

 

 龍悟の拳は仮面の男に当たりトワには当たらなかった。しかし、男の仮面の一部が砕かれ素顔が明らかになった。

 

「え?」

 

 それは自分(悟空)と瓜二つだった。その時、激しい頭痛がする……記憶が呼び起こされる様な……

 

「ハッ!!」

 

 気づいた時にはトワ達は消えていた……この世界から…

 

「今のは…悟空としての部分構えて反応したのか?……あのサイヤ人に……」

 

 不思議と懐かしい気持ちになる。

 

 

「誰なんだ?」

 

 

 龍悟の呟きが虚しく響いた。

 

 

END

 

 



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怨念を打ち砕け!!放て、トリニティかめはめ波!!

 龍悟がトワ達と対面して居た時、響香達はハッチヒャックと攻防を繰り広げていた。

 

「偽物は皆殺しだ!!」

「クッ!!」

 

 ハッチヒャックの攻撃に響香は回避に専念していた。ただでさえヒーロー殺しの時点で龍悟を除く自分達を超えていたのにこんな異形に変身してしまい、自分達との差が大きく広がってしまった。

 

「さっきはいい目してるって言ってた癖に…!」

 

 響香は唯一勝っている小回りと予測でギリギリ回避していた。

 

「おおお!!」

 

 其処にレシプロバーストで加速を付けた飯田の蹴りがハッチヒャックの頬を撃ち抜く。

 

「ぬう!」

 

 仰け反ったが直ぐ様、飯田の足を掴み地面に叩きつけた。

 

「ぐああっ!!」

 

 叩きつけられ悲鳴をあげる飯田に追撃しようともう一度地面に叩きつけようとする…

 

「アイスメイクーー槍騎兵!!」

 

 其処に氷の槍がハッチヒャックに全弾命中し思わず飯田を放してしまう。この隙に響香が飯田を連れて離れる。

 

「大丈夫!?」

「大丈夫だ……それにしてもなんて強さだ…これが奴の怨念の力なのか…」

 

 ハッチヒャックは轟に狙いを定めて拳を振るう。攻撃は爆豪と同じ大振り…だが、速度が違い過ぎる。響香や飯田はギリギリ避けられるが轟には無理だ。盾を造形し防ぐ…ハッチヒャックの並外れたパワーに盾は砕け散るが轟には届かず轟は次の行動に移していた。

 

「火竜の咆哮!!」

 

 左から放たれた竜のブレスの如き炎がハッチヒャックを焼き尽くす。普通の敵やさっきの脳無にも通用するが、ハッチヒャックには少しのダメージしかない。

 

「糞!」

 

 轟は氷の槍をぶつけながら距離を取る。だが、腕の一振で轟を吹き飛ばす。咄嗟に氷を出し威力を半減したが近くのビルに叩きつけられた。

 

「ぐはっ!」

 

 轟に体を向け腕をクロスさせる、一秒経つごとに体の水晶が緑に輝きだす。轟は本能的に危険を感じ取った。

 

(ヤベェ!?)

 

 だが、痛みで直ぐには動けない、そして輝きが最高潮に高まったとき……

 

 

「リベンジャーカノン!!!」

 

 

 緑色の強大なエネルギーが放たれた。轟に成す術はない。だが、

 

「轟君!!」

 

 飯田が轟を担ぎ急いでその場を離れる。リベンジャーカノンは轟達には当たらなかったが先程まで轟が居たビルを木っ端微塵に破壊した。

 

「なんて威力だ…」

 

 ようやく動ける様になった轟が思わず呟く…響香も轟達に合流する。

 

「このままじゃ!」

「だが、僕達の攻撃じゃ決定打にならない…」

 

 攻撃は効いている…だが、状況は全く好転していない…どうすればいいかと、表情を暗くすると轟が口を開く…

 

「俺に考えがある」

「え?」

「アイツには黒い脳無みたいな再生能力はない…だが、防御力が高すぎる……」

「それを突破できる技があるのか!?」

「確証はねぇが……可能性は確かにある」

「なら!」

「ああ!奴に隙をつくる!!」

 

「滅びよ!!」

 

 ハッチヒャックが迫る。響香にオールマイトの様な豪腕の連撃を繰り出す。だがどれも力任せの攻撃だ。響香ならば冷静に対処すれば避けれぬ攻撃ではない。だが、避けれるだけであり、響香の攻撃はハッチヒャックに通らない。だが……

 

「ハートビートファズ!!!!」

 

 響香は地面にプラグを突き刺し心音の衝撃波を流し込み地面を抉った。

 

「ぬうっ……小癪な真似を!」

 

 ハッチヒャックはバランスを崩してもお構いなしに響香にリベンジャーカノンの構えをする。輝きが強くなり、喰らえばタダでは済まない。だが、響香には恐れはなかった。

 

(12、13、14、15!!)

 

 放たれる一瞬…其処に飯田が飛び掛かる。

 

「レシプロ・エクステンデッド!!」

 

 青い炎を纏った飯田の蹴りが炸裂し、ハッチヒャックの巨体を吹き飛ばす。予測を得意とする響香はさっきの一撃でリベンジャーカノンの発射時間を見切ったのだ。発射の15秒に飯田の一撃を喰らい高めたエネルギーが消え決定打な隙が生まれた。

 

 それを轟は逃さない、右手を振りかぶり氷を一点に集中……巨大で何処か神々しい槍を造形した。

 

 

「アイスメイクーー戦神槍(グングニル)!!」

 

 

 放たれた神槍はハッチヒャックを貫いた。顔が痛みに歪み、そして近くのビルに突っ込み崩れるビルの下敷きになった。それを見届けた響香達は一斉に座りこんだ。

 

「ハァハァ……凄いじゃん轟、あんな技あったなんて」

「それは………こっちのセリフだ、アイツの動きや技の発射時間を見切ったくせに…」

「…エンストした……まともに動けないな……」

 

 精神的にも肉体的にも満身創痍……だが、勝つ事ができた……なら良かったのに……

 

「滅びろ、偽物の英雄!!」

 

 瓦礫を吹き飛ばし、絶望が姿を現す。そのあまりの光景に響香達は声も発せない。誰もが目を見開き、身体を震わせて見ているだけだ。

 

「終わりだ」

 

 ハッチヒャックは冷たく言うと、最大技であるリベンジャーカノンの構えをする。飯田はエンストして動けない…轟も響香も避けられない。

 

「もう……」

 

 響香の弱音が聞こえた時……

 

 

「この程度で音あげてどうすんだ!!」

 

 

「え!?」

 

 思わず後ろを振り返る…其処には龍悟が居た。

 

「龍悟……」

「済まねえ…アイツ等逃しちまった、その失態は行動で償う……だかな、お前等…俺が居ねぇと守れねぇんか!!」

 

 龍悟が来てくれた…だけど、全部龍悟に頼るのは嫌だ…その思いが響香達を奮い立たせた。

 

「任せてって言ったんだ……!」

「やってやる…!」

「ふっ…」

 

 響香と轟が龍悟の隣に立つ。それを龍悟は嬉しそうに見ていた。一方、ハッチヒャックは龍悟を見ると顔を歪ませた。

 

「サイヤ人……サイヤ人は皆殺しだ!!」

 

 ヒーロー殺しの怨念ではなくハッチヒャックを作った者達…その昔にサイヤ人に殺されたツフル人の怨念が龍悟を見る事で燃えだした。

 

 リベンジャーカノンをエネルギーを貯めだした。

 

「龍悟、アイツの技は放つのに15秒必要なんだ!」

「そうか…ならこっちもフルパワーだ!!」

 

 超サイヤ人Ⅱに変身してかめはめ波の構えをする。

 

「1、2、3、4」

 

 響香は腕の増幅装置にプラグを突き刺し両手を組み構える。

 

「5、6、7、8」

 

 轟は左の炎を極限まで高める。

 

「9、10、11、12」

 

 ハッチヒャックもエネルギーを高める。

 

「頑張れ…皆」

 

 自分には遠距離攻撃の手段がない飯田は龍悟達の勝利を祈る。

 

「「「13……14!!」」」

 

 そして、時は来た!!

 

 

「リベンジャーカノン!!」

 

 緑色の極限エネルギーが放たれた。当たれば龍悟でもタダでは済まない程の一撃……それと、同時に龍悟達も放った。

 

 

「「「トリニティーーかめはめ波ぁぁぁぁあっ!!」」」

 

 

 龍悟のかめはめ波、響香の心音衝撃波、轟の超火炎…それ等が三位一体となって放たれ混ざり合った…【トリニティかめはめ波】はリベンジャーカノンとぶつかり合うが直ぐに打ち破った。

 

 

「ば、馬鹿なぁぁぁ!!」

 

 目を見開き、ハッチヒャックはトリニティかめはめ波に飲み込まれていく……怨念は極限の光の中に消えていった。

 

 其処には…ハッチヒャックは存在せず元に戻ったヒーロー殺しが倒れていた。飯田は心残りが消えた様な…そんな気持ちになり呟いた。

 

 

「これで、犠牲者はでない…終わったよ…兄さん…」

 

 

 長かった夜が明ける…眩い朝日が龍悟達を優しく照らしていた。

  

 

 

 

 

END

 

 

 

 

 

 

 




飯田「祝え!どうやら三人の力が結集し、多分!これからも登場する合体技、その名も【トリニティかめはめ波】…きっと、新たなかめはめ波が創生された瞬間である」
響香「ねぇ、それって本当に祝ってる?」


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職場体験の終わり

 2日後の朝刊、一面はヒーロー殺しの逮捕の記事だった。テレビでも連日トップニュースであり、ワイドショーでも繰り返しその様子を伝えている。事件の最中、テレビのカメラは死柄木と黒霧の二人が保済市に居るのを偶然捉えておりヒーロー殺しは敵連合と繋がっているのかと言う噂で流れている。

 

 

「凄い事になってるね…」

「そうだな…」

 

 龍悟と響香はナイトアイ事務所に戻り…保済市での疲れを癒していた。響香はテレビを見ながら世間の状況を確認し、龍悟は週刊誌を見ていた…内容は…【期待の新星ゴジータが仲間達と共にヒーロー殺しを撃破!!】というものであった。

 

 龍悟達が居た大通りにあった監視カメラが捉えてたらしく、ハッチヒャックになったヒーロー殺しとの戦いが載っていた。当然マスコミが喰い付き龍悟達に押し寄せてきた。その為、昨日今日は外には出ず書類等の仕事をしていた。

 

(やはり、居ないか…)

 

 週刊誌にもアップされた動画にもトワとミラは写ってなかった。恐らく魔術で何かしたのだろう。勿論、龍悟達はトワ達の事は伝えてある。別世界の存在とは伝えてないが。警察もヒーロー殺しが変異した事も含めて調査中だが……見つからないだろう。

 

(そろそろ…次のステージを見せる時か……)

 

 窓から見える青空を見ながら…龍悟は思考を巡らせていた。

 

 

 それから職場体験が終わるまでの数日間は外で本格的なヒーロー活動を体験した。東京の様な都会はトラブルが多発し事件も起こりやすいが……保済市の出来事を経験した龍悟達ならそこまで問題ではなかった。

 

 あるとすれば……

 

「あの、すいません!ゴジータさんですよね!!」

「そうだが…」

「私、ファンなんです!!一緒に写真いいですか!?」

 

 体育祭での活躍とヒーロー殺しとの戦闘で龍悟はそこ等のプロよりも有名になり、職場体験の身でありながらサインや写真を求められたりする時が多くなった。

 

「ああ、構わない」

「ありがとうございます!!」

 

「あ、私も私も!!」

「私もいいですか!?」

 

 求めてくるのは女子高生が大半だが、子供にも人気があった。

 

「あの!僕も写真いいですか?」

「ふっ、勿論だ」

 

 無表情から暖かな笑みを浮かべ了承する。子供は更に明るくなり龍悟に抱き着いた。

 

「やっぱ、いいよね〜!」

「強いし、イケメンだし〜!」

「俺様系だけど、優しい時は優しいし〜!」

「「「きゃあーー///!!」」」

 

 ファンクラブができるのも時間の問題だろう……言っておくがこれが問題ではない……問題なのは……

 

上鳴『お前!!何、職場体験で女子に囲まれてんだ!!チクショォォォォオ!!』

峰田『爆発しろ爆発しろ爆発しろ爆発しろ…!!そしてモゲロモゲロモゲロモゲロ!リア充!!」

麗日『楽しそうやね…………龍悟君』

拳籐『………会えるの、楽しみにしてる』

 

 ツイッター等に写真が流出し……それを見た皆からのメールに頭を抱えていた。最強のゴジータでもどうしようもなかった……龍悟はクリリンみたいな親友ポジションになってくれると密かに期待してる飯田といい友人関係を築いている轟に助けを求める。

 

飯田『職場体験でもう人気があるなんて…友人として誇らしいよ!』

轟『すげぇよ…龍悟は』

 

 更に頭を抱えた…其処に背後から響香が抱き着いてくる……不機嫌な顔をしながら頬を膨らませプラグを絡ませてくる。

 

 助けを求めようとナイトアイ達を見るが……バブルガールは目をキラキラさせながらこちらを見ており…ミリオは【君なら大丈夫!!】と言わんばかりの目で見てくる…ナイトアイはブラックコーヒーを飲みながら最新のオールマイトグッズのカタログを見ていた……

 

「クソッタレェェェエ…!」

 

 こうして時は過ぎていき…いよいよ職場体験も終わり時がやってきた。

 

「寂しく…なっちゃうね」

「そうですね…」

 

 荷物を纏めた龍悟達はナイトアイ達に別れの挨拶をしていた。仲良くなっていたバブルガールと響香は寂しそうに言葉を交わす。

 

「何、君達の実力なら8月、9月頃に行われる仮免試験に無事合格できるだろう…そしたらインターンで活躍できる……また来る時を楽しみにしてるよ!!」

「ああ、必ず」

 

 龍悟はミリオと握手を交わす。

 

「ゴジータ、イヤホン=ジャック……職場体験と言いつつ、書類仕事からヒーロー活動…ほぼ正規の仕事をさせてしまった……これを受け取ってくれ」

 

 ナイトアイが龍悟と響香にそれぞれ厚みのある封筒を渡す。

 

「あ、あの、これってまさか…」

「今回の給金だ。学校側にも話を通してある。これは、君達が稼いだ正当な報酬だ。遠慮はしないように…ご両親への親孝行に使うもよしだ」

 

 響香は震えながらありがたく受け取った。

 

「さて、これで君達の職場体験は終了だ……ご苦労だった」

 

「「ありがとうございました!」」

 

 こうして…龍悟達の職場体験が幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 龍悟達が帰った後、ナイトアイはオールマイトに電話をしていた。

 

 

「オールマイト……貴方は正しかった…その……」

「いいんだ…謝るべきなのは私だよ……ナイトアイ」

 

 どちらの道も正しかった…どちらも譲れなかった…

 

「凄いな…彼は…強さだけじゃない…互いを高めあえる仲間が居る。周りの人間が不思議と引き付けられる…それが孫龍悟と言う希望なんだな…」

「そうだな……君も私もその引き寄せられた者……孫少年ならきっと私を超える存在になれる」

 

 誇らしげにオールマイトは語る。そんなオールマイトにナイトアイは申し訳なさそうに言った。

 

「すまない…私は彼に予知の事を伝えたんだ」

「なん……だと!」

 

 それは知ってほしくない事実……龍悟の成長の妨げになってしまうと…オールマイトの血相が変わる。伝えるにしてもまだ早すぎる。

 

「だけど…見えなかったんだ…彼の未来が……」

「え?」

「まるで、絵を描く前の様に白紙だったんだ!確かに未来を見る事はできる、だけど未来は決まってないんだ!だから、生きてくれ!!貴方が死ぬ未来は決まったものじゃない!!」

「……決まっていないか…ああ、その通りだ……運命すら君を止める事はできないんだね、孫少年…」

 

 

 生きる未来がある…それは己を犠牲にして戦い続けてきた男の胸に深く溶け込んだ。

 

 

END

 

 

 

 




予告

 世界総人口の約八割が何らかの特異体質…“個性”を持って生まれる超人社会…これは最強の融合戦士が絶対無敵のヒーローになるまでの物語だ!!


響香「龍悟、ここが?」
龍悟「ああ、一万人以上の科学者達が住む“I・アイランド”だ」

 海外の人工島…【I・アイランド】体育祭で優勝した龍悟は其処でおこなわれるエキスポに招待され響香を付き添いに訪れていた。

龍悟「驚いたな…」
麗日「他の女子も来てるんよ」
拳籐「そう言う事♪」
響香「せっかく、龍悟と二人きりの海外デートだったのに〜!!」

 これは夏休みに起きた出来事。

オールマイト「紹介しよう!私の親友、デヴィッド・シールド!」
デヴィット「君のコスチュームを開発したあの時が懐かしいよ」

 そして出会った無個性の少女、メリッサ。

龍悟「ヒーローを助ける存在?」
メリッサ「そう、それが私の目指すヒーローのあり方」
龍悟「ふっ、格好いいじゃねぇか」
メリッサ「ふふ、ありがとう♬」
響香・麗日・拳籐(タダでさえ期末テスト編で新しく登場するのに、立て続けにライバル登場だと!?)


 敵襲来!!

?「人質はこの島に居る、全ての人間だ!」

 命を掛けて、守れ。

オール・フォー・ワン「無力な、オールマイトよ…君は親友が苦しむ様をタダ見届ける事しかできない」
メリッサ「パパを返して!!」


 きっと誰もが、誰かのヒーロー!

轟「此処は!!」
飯田「僕達に任せろ!!」


?「さっさと潰れろ!!」
龍悟「貴様だけはゼッテェに許さねぇ!」

 強さしかなかったゴジータには今…

上鳴・峰田・八百万「龍悟(さん)!!」
轟・飯田「龍悟(君)!!」
麗日・拳籐「行けぇぇええ!!」
響香・メリッサ「ヒーロー!!」

 頼ってくれる仲間が居る!!

龍悟「俺がやらなきゃあ…誰がやる!!」


劇場版・絶対無敵のヒーローアカデミア
【激闘のI・アイランド!ゴジータがやらねば誰がやる!!】

 次章の期末テスト編が終わり次第作成予定!




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四章・期末テスト
新たな出会い


職場体験を終えたその翌日

 

 クラスの皆は一週間の職場体験の話で持ちきりだった。

 

「マジか!マジか!爆豪!!」

「笑うな!!」

 

 爆豪がナイトアイの様なリーマンヘアになって切島に笑われたり…

 

「女ってのは……元々悪魔のような本性を隠し持ってんのさ!!」

「何があった!?」

 

 峰田がMt.レディの所でトラウマを持ってしまったり…

 

「…………………」

「…………………」

「…………………」

「………なんでさ…」

 

 龍悟が写真の事で響香と麗日、拳藤に問い詰められていた。そんな中、尾白は言った。ヒーロー殺しへの恐怖を…

 

「俺ニュースとかで見たけどさ。ヒーロー殺し敵連合ともつながってたんだろ?もしあんな恐ろしい奴がUSJ来てたらと思うとゾッとするよ。」

 

 アップされた動画にはヒーロー殺しがハッチヒャックに変身し暴れまわる姿が映っている…バラバラに転移させられた場所に龍悟が居ない状況の中、あんな化物が現れたらと思うと震えが止まらなかった。

 

「確かに化物になった奴は強かったが…元のままでも僕等よりも強かった…歪んだ信念があった…それでも、これ以上俺のようなものを出さぬ為にも!!改めてヒーローへの道を俺は歩む!!!」

 

「ふっ」

「飯田」

「委員長…」

 

 その場に居た龍悟、響香、轟は安堵する。

 

 

 

 

 

 

 

 一週間ぶりのヒーロー基礎学の時間、コスチュームに着替えた龍悟達は運動場γへと集められていた。今日の訓練は救助訓練レースだ。広大な訓練場のどこかにいるオールマイトが出した救難信号を辿って助けに行く順位を競う遊びの要素を含んだ訓練である。

 

 

 1組目は龍悟、飯田、芦戸、瀬呂、尾白の組み合わせであった。ちなみに瞬間移動や舞空術は使わないでと言われた。

 

「START!」

 

 合図と同時に各自行動に移す。その様子をモニターで響香達は見ていた。

 

「今の所、飯田が一番だな」

 

 走りに特化した飯田が小回りもしっかりしながらもの凄いスピードでオールマイトの居る場所に向かっていた。

 

「龍悟はどうするんだ?」

 

 瞬間移動や舞空術が使えない龍悟がどうするか轟は期待しながらモニターを見た。

 

 其処には神龍拳・五星龍を使い黒い腕を伸ばしながら凄まじいスピードでオールマイトの所に向かう龍悟が映っていた。

 

「何アレ!?腕長!?」

「バリエーション多くねぇか!」

「あの黒いの…体育祭で見たやつだな」

「そ、“黒鞭”て言う、気で作った鞭を束ねて擬似的な腕を作って素早い攻撃とコントロールが高い五星龍って形態だって」

 

 響香が説明してる内に龍悟がゴールして一組目が終わった。授業が終わった後に覗きをしようとした奴が居たが……

 

「汚え花火だ」

 

 儚く散った。それから時は流れ期末テストまで残すところ一週間を切っていた。テストで赤点を取った者は夏にある林間合宿に行けず補習地獄だそうだ。

 

「全く勉強してねー!!」

「あはははー」

 

 上鳴が叫び芦戸の渇いた笑い声も聞こえる。

 

「体育祭やら職場体験やらで全く勉強してねー!!」

 

 二人が騒いでるとふぅーとわざとらしい溜息が吐かれた。そこを見れば峰田が椅子に偉そうな態度でふんぞり返っていた。

 

「演習試験もあるのが、辛ぇとこだよな」

 

 上鳴と芦戸が騒ぐ。

 

「あんたは同族だと思ったのにぃ!!」

「お前みたいな奴はバカではじめて愛嬌出るんだろうが!そこそこ出来やがって、どこに需要あんだよ!」

「世界かな…」

 

 そんな二人に救世主が…

 

「お二人共、微力ながらお手伝いしますわ」

「「ヤオモモ!!」」

 

 二人がそれに乗っかると瀬呂、尾白も便乗していく。

 

「僕達も勉強会やらないか?」

「おお、いいね」

「一佳も誘っていい?」

「勿論だとも」

「俺も異論ないぜ…轟も来いよ」

「いいのか?」

「もう、轟もウチ等の一人なんだから」

「…………ああ」

 

 

 

 昼休み、食堂にて…龍悟、響香、麗日、飯田、拳藤のいつものメンバープラス轟で昼食を食べてようと席を探していた。

 

「演習試験か〜内容不透明で怖いね」

「突飛な事はしないと思うがな…」

「筆記試験は授業範囲でやるから何とかなるしな」

「何とか…」

 

 期末テストについて話し合っていると……

 

「お、龍悟君!」

「先輩」

 

 通形が声をかけてきた。席を見つけて座ろうとする…

 

「通形先輩」

「飯田君達も久しぶり…さっきから何に悩んでたんだ?大抵の事なら答えられるぞ」

「実は期末テストの事で……」

「あ〜期末テストね……それなら「私、知ってるよテスト内容!ねぇねぇ、言っていい!!」

 

 その時、水色のロングヘアの誰もが振り向くであろう美女が元気良く話に入ってきた。

 

「うわ!ビックリした!」

「誰、この美女さん…」

「私?私は波動ねじれ!!通形と同じ“ビッグ3”の一人だよ!!」

 

 さり気なく言った言葉に響香達が反応する。龍悟は特に驚かず席に座った。

 

「ビッグ3!?」

「うん、そうだよ!!それにしても通形さ〜いつの間にこんなに可愛い後輩作ったの?」

「いいだろ〜自慢の後輩だ!!」

「いや、俺は…」

「そう硬い事言うなよ〜!君も今日から俺の可愛い後輩だ!!」

 

 否定しようとする轟の肩を組み笑う。

 

「む〜いいな〜〜なら!」

 

 波動は龍悟の隣に座る。

 

「「「あ……」」」

 

 そう言えばまだ席に座ってなかった…とりあえず席に座る…もう一つ空いていた場所は…拳藤が勝ち取った。

 

「ねぇねぇ!君だよね!孫龍悟君って!!」

「ああ、そうだ」

「へぇ〜尻尾があるんだ!それに逆だっているのに少し垂れてる!面白い髪型だね…毎日セットしてるの?」

 

 波動は龍悟の尻尾や垂れてる髪をいじっていた。

 

(((や、ヤバイ!天然お姉さんキャラだ!!しかも、さり気なくスキンシップしてるし!!)))

 

「ねぇねぇ、通形だけじゃなくてさ…私の後輩にもなってよ!!」

「別にいいぞ」

「本当に!ヤッター!私にも可愛い後輩できた!!」

「何!?龍悟君!俺と言う先輩が居ながら!!」

「何言ってんだ通形先輩?」

「通形先輩!?先輩じゃなくて!?」

「わかりづらいだろ」

 

 膝を付く通形を不思議そうに見ながら波動に期末テストの内容を聞いた。

   

「それで波動先輩、内容って…」

「うん、それはねーー」

 

 

 

 

「「ヤッター!!」」

 

 教室に上鳴と芦戸の歓喜が響く。

 

「んだよ、ロボなら楽勝だぜ」

「ホントホント」

 

 波動が教えてくれた…演習試験はロボとの戦闘だと。龍悟はその事をクラスの皆に伝えた。

 

「お前等は対人だと個性の調整大変だもんな」

「ああ!ロボならブッパで楽勝だー!」

「私も溶かして楽勝だー!」

 

「人でもロボでもぶっ飛ばすのは同じだろ!何が楽チンだアホが!!」

「アホとはなんだ!」

「うっせえな!!調整なんて勝手にできるもんだろ!!アホが!!」

 

 爆豪の怒鳴り声が響く。

 

「なぁ、変身野郎…」

 

 龍悟は横目で爆豪を見る。爆豪の目は憎悪に燃えていた。

 

「テメェはつくづく俺の神経逆なでするな…!」

「お前と関わった事はないんだかな」

「目障りなんだよ…テメェが!何が神龍拳だ!!何がヒーロー殺し撃破だ!!」

「つまり八つ当たりか?迷惑なもんだ…」

「糞が……今度こそだ、今度こそ!テメェをぶち殺してやる!!耳女!眼鏡!轟!テメェ等もだ!!」

 

 言うだけ言って爆豪は教室を出た。

 

「荒れてばかりやな…」

「俺、ついでみたいに言われた…」

「何を言う轟君、実力なら君や耳郎君の方が上だ!」

「まぁ、アイツのワガママに付き合う義理なんてないし…無視でいいよ、無視で」

「そうだな…さて、勉強会でもするか」

 

 爆豪の事など気にも止めず龍悟達は勉強会に拳藤を誘う為に教室を出る。

 

 

「…………さて、爆豪をどうするか…」

 

 その様子を相澤は何かにメモしながら見ていた。

 

 

END

 

 



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弟子と師匠

 テスト当日

 

 筆記試験は手応えはあった、テスト後に響香達と答え合わせしたら概ね大丈夫だった。八百万に教えられてる下位コンビは、テスト終了時に歓喜狂乱してたけど八百万と答え合わせを始めたら顔を青くして静かになった。

 

 次は演習試験、コスチュームを着て校内にあるバス停前に集まる龍悟達、まだ時間があるのでそれぞれ演習試験に向けての話をしている。話してる居ると“先生達”が来た。

 

「諸君なら事前に情報を仕入れて何するか薄々と分かっているだろうが...」

「入試みてぇなロボ無双だろ!!」

「花火!カレー!祭りーー!!」

 

 上鳴と芦戸が騒ぎ出す。そんな中…

 

「残念!!諸事情あって今回から内容を変更しちゃうのさ!」

 

 相澤先生の捕縛武器の中から校長が現れて宣言した。

 

 上鳴と芦戸が固まった。龍悟達も固まった。

 

「何故かと言うとね...敵活性化の恐れのある社会情勢故に、これからは対人戦闘・活動を見据えた、より実戦に近い教えを重視するのさ!という訳で諸君らにはこれから、二人一組でここにいる教師一人と戦闘を行ってもらう!」

「な...なんだと...⁉︎」

「尚、ペアの組と対戦する教師は既に決定済み。動きの傾向や成績、親密度…その他諸々を踏まえて独断で組ませて貰ったから発表していくぞ」

 

 相澤は次々とペアを発表していく。

 

「そして…孫と爆豪がペアだ」

『!?』

 

 その言葉に全員が反応した。龍悟も目を細め相澤を見る。

 

「嘘でしょ…!」

「なぜ…!」

 

 響香と飯田が戦慄する中、説明は続く。

 

「相手はーー「私がする!」

 

 現れたオールマイトに更に動揺する。

 

「ヤバ過ぎるだろう…!」

「爆豪ちゃんがペアでオールマイトが相手だなんて…」

「いくら龍悟でも……」

 

 これには周囲も心配の視線を向ける。

 

 

「さて、それぞれ試験会場に行ってもらう。……孫達は最後だ。全員、この3人の試験は見てみたいだろうしな。では、それぞれバスに乗って移動しろ」

 

『はいっ!』

 

 それぞれがバスに乗り、各試験場へと向かっていく。

 

「糞が!なんでテメェと!!」

「…………」

 

 叫ぶ爆豪を無視してモニタールームへ向かって皆の試験を見学する。各々の先生が、それぞれの弱点を的確についていき生徒を追い詰める様は、流石、現役のプロヒーローと言わざるを得ない。

 

「流石と言うべきか…」

 

 佐藤と切島ペアや上鳴と芦戸が完封されたりしているが響香達は無事クリアしていた。そして、ほぼ全ペアが終わった辺りで、龍悟と爆豪も試験会場へと移動する。

 

 場所は市街地で制限時間は三十分、勝利条件は2つ…一つはハンドカフスを教師につける事、もう一つはチームの一人がステージから脱出する事。

 

 

『孫、爆豪ペア…演習試験開始!』

 

「一応聞いておくが共闘するか?」

 

 龍悟が爆豪に近づきながら共闘を提案する。だが…腕のサポートアイテムで龍悟を殴る。

 

『アイツやっぱり!!』

 

 その様子をモニタールームで見ていた響香が怒る。

 

「これ以上喋んな!ちょっと調子良いからって喋んな!ムカツクんだよ!!」

「…………そうかい、好きにしろ」

 

 龍悟もこれ以上爆豪に付き合ってやる義理はないと割り切る。そして突如、轟音と暴風と共に、街の一角が吹き飛ばされる。爆豪は吹き飛ばされるが龍悟は佇み。暴風が来た方向を見つめている。

 

「来たか…」

「街への被害などクソくらえだ。試験だなんだと考えてると痛い目見るぞ。私は敵だ、ヒーローよ。真心込めてかかってこい」

 

『嘘……』

『これがナンバーワン…!』

 

 麗日や轟…これを見た誰もが戦慄する。

 

「ビッグバン・アタック!!」

 

 直ぐ様、超サイヤ人Ⅱに変身しビッグバン・アタックを放つ。

 

「ふん!」

 

 だが、オールマイトはそれを腕の一振りで相殺した。

 

「だだだだだだだだだだっ!!」

 

 すかさず気弾連続乱射!

 

 凄まじい速度で両手を動かし、気弾を次々と発射する。並の敵なら、これだけでもう終わりだ…だが…

 

「凄まじいな…だがね!」

 

 オールマイトは、クロスさせた腕を左右に開く。ただその動作だけで数百にも及ぶ気弾が吹き飛ばされた。

 

「だぁりゃあ!!」

 

 瞬間移動で背後をとった龍悟が拳を振るう。だが、その拳を掴み取りこちらに向かってくる爆豪に投げ飛ばす。

 

「邪魔だぁ!!」

 

 爆豪は龍悟を爆破しようとするが瞬間移動で回避し着地する。

 

「仲間を攻撃するのは…良くないぞ!!」

「ガハッ!!」

 

 爆破が空振りした隙を突かれて近くのビルに叩きつけられる。龍悟は流れるようにすり足のままオールマイトに迫る。オールマイトもそれに合わせて駆け出し龍悟とオールマイトの拳がぶつかり合う、その衝撃に周りの物が吹き飛び地面にヒビがはいる。モニターで見ている響香達には龍悟とオールマイトのぶつかり合いが目で追いつけない。

 

『凄え…!オールマイトとガチでやりあってる』

 

 だが、龍悟も余裕ではない…USJの脳無と違い長年ヒーローとして培ってきた技術は悟空やベジータにも劣らない。僅かな隙で逆転されてしまう。そして、それは起きてしまう。爆豪が龍悟ごとオールマイトを爆破しようと右腕を振りかぶってきたのだから。

 

「死ねぇぇええ!!」

「なっ!?」

 

 この状況でそれは不味い、流石の龍悟も動揺した…してしまった。

 

「運が無いな!ヒーロー!!」

「グハァッ!!」

 

 拳が腹に突き刺さり龍悟はビルを何個も貫通しながら吹き飛ばされた。

 

『龍悟!!』

『龍悟君!!』

『爆豪の野郎…何処まで自分勝手なんだ…!!』

 

 響香と麗日が叫び、轟が爆豪に怒る。オールマイトは爆破をモロに受けても気にも止めず爆豪を地面に叩きつける。

 

「君は仲間をなんだと思ってるんだ?」

「俺を群れなきゃなんもできねぇモブと一緒にすんな!俺はアンタを超えるヒーローだぁ!!」

「………………そうか、残念だ」

 

 そのまま、爆豪を地面にもう一度叩きつけ気絶させる…その顔は悲しみに溢れていた。

 

(可哀想だが……その高いプライドや自尊心を一度砕かなければ君は前に進めない……なんとかしてやりたいが私にはやるべき事が!)

 

 オールマイトはこちらに歩いてくる龍悟に視線を向ける。時は遡り…教師陣はペアを振り分けていた。

 

「そして孫と爆豪がペアでオールマイトさんと戦ってもらいます」

 

 相澤の判断に最初は教師陣も動揺していた。

 

「孫君がオールマイトと戦うのはわかるわ…彼はビッグ3と同等かそれ以上よ…」

「ですが、爆豪君とペアは……彼は孫君を嫌悪しています……試験にすらならないのでは…」

 

 爆豪は実力があるが精神面がまるで駄目と言う厄介な生徒……これが教師陣の評価だった。そんな爆豪が一番毛嫌いしている龍悟とペアを組んで戦えば龍悟ごと敵を倒そうとするのが目に見える……

 

「アレかイレイザー?孫の影響力に期待するのか?轟みたいに?」

 

 龍悟の影響力、教師陣はこれに深く関心を持っていた、飯田や麗日が龍悟と関わってヒーローの卵として急成長をし、問題児に片足突っ込みそうで危なかった轟もすっかり丸くなって龍悟達の仲間入りだ。

 

「いや、アイツの自尊心やプライドを砕くのが目的だが……本命は孫の全力だ。皆さんも見たでしょう耳郎との決勝戦、アイツはまだ上を隠してる」

 

 響香との決勝戦…それで明らかになった。龍悟には超サイヤ人Ⅱより上の形態を持っていると。

 

「恐らく、体力の消耗が激しいか周囲の影響が強いのでしょう……今回でそれを引き出します。オールマイトが相手でペアも宛にならない……そんな状況なら孫も使うでしょう………お願いしますね、オールマイトさん」

 

(私が師匠として彼にしてあげた事はワン・フォー・オールの事だけだ……それどころか私の体も回復させてくれた)

 

 龍悟は定期的にオールマイトにソウルパニッシャーを注ぎ込み彼の体を自然回復させていた…そのおかげで彼は全盛期に近いポテンシャルを取り戻した。USJの脳無など本気で10回殴れば倒せる程の力を……これならもう一度オール・フォー・ワンと戦う事ができる。

 

「(ならば私がすべき事は超えるべき壁として彼を阻もう……孫少年の成長の為に!)…わかった、私がやる」

 

 

 

 

 

 

 オールマイトと向き合う龍悟、腹の痛みは強いが問題はない……だが、龍悟は不意に笑ってしまう。

 

「ふっ…」

「どうした、孫少年?」

「いや、アンタとこうして戦うのは初めてだなって」

 

 龍悟は近くにあるカメラを見て相澤に訴える…弟子として話がしたいと…相澤は音声を切る、響香達には戦闘の衝撃で逝かれたと伝える。

 

「孫少年…全力を出さねばこの試験は突破できないぞ」

「やっぱり、アレか……」

「私は君に師匠として先生として…教えてあげる事ができなかった……だけど、君の成長の壁としてなら!」

「…………オールマイト…俺は力を教わりたくてアンタの弟子になった訳じゃねぇ」

「え?」

「俺はヒーローとしての生き方を教わりたかったんだ……俺は何を目標に生きていけばいいのか……それを探していた」

 

 

 龍悟(ゴジータ)は探していた自分だけの生き方を…その過程で一つの動画を見つけた……それはオールマイトが一人で千人以上の人を救い出すものだった……そして最後に笑って言った。

 

 

『私が来た!!』

 

 

「そう言ったアンタの姿があまりにも輝いていて憧れた……そして約一年前、俺はアンタに出会い……知った」

 

 オールマイトの理想…誰もが笑って暮らせる世界…それを照らす平和の象徴……その代償を…

 

「誰もが笑って暮らせる世界など空想のおとぎ話だと…大抵は言うだろう、それでもアンタはやってみせた…その果てにある物がわかっていても……自分の人生に一本筋を通して生きてる……そんな生き方を俺もやり遂げてみたかった……力でも技術でもない、俺は平和の象徴(オールマイト)を教わりたかったんだ」

 

「ありがとよ、俺を選んでくれて、アンタのおかげで誰かを救うって事が少しはわかった気がした……俺はアンタの弟子で良かった」

「孫少年……」

 

 オールマイトの頬を涙が走る。龍悟は再びカメラを視線を向け…もう大丈夫だと伝える。

 

「行くぜ、オールマイト…これが俺の全力だ!うおおおああああああああッ!!」

 

 龍悟の咆哮が辺り一帯に轟く。あまりの気の嵐に近くのビルは崩壊する。髪は膝余りまで伸び、眉毛が消えて顔つきが厳つくなる。全身を包む黄金の気が一層眩くなり、真紅のスパークが力強く迸る。その変化にモニターで見ていた誰もが驚愕に満ちた顔で龍悟を見る。

 

 これこそが最強の力と願いの力を束ねた…現時点の最強形態…

 

 

 

「これが最強の…超サイヤ人(サード)だ!!」

 

 

 

END

 



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師弟対決

「あの時の……」

 

 モニタールームで龍悟の最強形態…超サイヤ人Ⅲを見た誰もが唖然としてる中、響香には見覚えがあった…体育祭での決勝戦で見せたあの姿だ。

 

「頑張れ……龍悟」

 

 響香は龍悟の勝利を静かに祈る。

 

 

 

 

「オールマイトォォォォオ!!」

「孫少年ぇぇぇえん!!」

 

 飛び出した二人の拳がほぼ同時に交差した。もろに打撃を喰らい、双方吹き飛んだ。空中で踏みとどまった龍悟は素早くオールマイトに接近して反撃の拳を突き出した。それに対しオールマイトは拳で受け止めた。

 

「はぁぁぁっ!!」

「うぉぉぉお!!」

 

 そのまま至近距離に踏みとどまって、目にも止まらぬ攻防が繰り広げられる。激しい打ち合いの末、僅かな距離が開く。其処に素早く龍悟が蹴りを打ち込んだ。吹き飛んだ隙に気弾を撃ち込む。だが、オールマイトは驚く程の俊敏さでそれを回避し避けきれないものは腕で弾く。

 

「はっ!」

 

 龍悟は手の中に気弾を作り出しオールマイトに叩きつけようとするが攻撃が届く前にオールマイトの手が気弾ごと龍悟の手を掴み握りつぶす。龍悟は距離を取ろうと後ろに飛んだ。

 

「逃さん!」

 

 オールマイトは素早く龍悟の足を掴みパワーにものを言わせて振り回しはじめた。右に左に地面に叩きつけられ、龍悟も苦痛の表情が取れない。更にオールマイトは龍悟の頭を掴んで近くにあるビルに突進した。龍悟の顔をビルに押し付け雄叫びをあげながら駆け出していく。龍悟の苦痛の叫びとともにビルの壁が一直線に削り取られていった。そして途切れたところで龍悟を力任せに放り投げた。

 

 だが、落ちていく一瞬に瞬間移動をしてオールマイトの懐に踏み込み…右ストレートを顔面に叩き込みその勢いで回転して左裏拳そのまま左アッパーで空中に飛ばし右回し蹴り最後に力を籠めた右拳を叩き込んだ……麗日に伝授した超龍撃拳だ。

 

 

 正に激闘…龍悟の翡翠の瞳はオールマイトだけを見ていた。再び彼等はぶつかり合う…激しい攻防の中、龍悟の拳がオールマイトをまともにとらえた、姿勢を崩すオールマイトに連続で攻撃を仕掛けた、それでも攻撃を試みようとするオールマイトに裏拳を打ち込み怯んだところをゼロ距離で気を炸裂させる。

 

「ガハッ!」

 

 吹き飛ばされたオールマイトは近くのビルに叩きつけられる。それでも拳を振るい衝撃波を繰り出す。なんとか回避し龍悟は静かにオールマイトを見ていた。オールマイトはハァハァと肩で息をしており……

 

「へへへ……」

 

 龍悟も痛みと疲れで顔を引きつらせながら笑みを浮かべ身を低くして構え、相手の出方を伺う。

 

「まだだぞ!!孫少年!!」

 

 ぐっと身を低くしてから衝撃波を残して前に飛び出した。龍悟も同時に駆け出す。その手に虹の宝玉を構えながら。

 

 

「ソウルパニッシャー!!」

 

「デトロイト・スマッシュ!!」

 

 

 二人の力がぶつかり合う、衝撃で大地が割れビルが崩壊し虹の輝きが激しく光る。二人は互いに吹き飛びビルの残骸に衝突する。

 

 直ぐに龍悟は起き上がり腰を落とし、両手を上下に重ねて腰のあたりに引き寄せた。

 

 

「かーーーー」

 

 重ねた手の間に輝く蒼穹の塊が生まれ、次第に大きさを増していく。

 

「めーーーー」

 

 舞い上がる粉塵が風で払われ、その向こうによろよろと立ち上がるオールマイトが現れた。

 

「はーーーーめーーーー」

 

 

 オールマイトは動かない……ダメージで動き辛いのもあるがまだ回避できるし迎え撃つ事もできる、だけどこれは試験だ、引き際は肝心だ。それに龍悟はもう自分を超え始めてる……それが何より嬉しかった。

 

(お師匠…貴方が私にしてくれたように私も彼を育てます…どうか彼を見守って居てください)

 

 

「波ぁぁぁあっ!!」

 

 

 放たれたかめはめ波がオールマイトを飲み込む、それでもオールマイトの表情は穏やかだった。

 

 

 暫くして放送が流れる…

 

『孫・爆豪ペア…条件達成!』

 

 その時、モニタールームで大歓声が巻き起こっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 爆豪をロボに任せオールマイトと共に戻ってきた龍悟……オールマイトは会議室に向かい、龍悟は教室に戻った。

 

「龍悟!」

 

 戻ってきて直ぐに響香やクラスメートに囲まれた。

 

「凄かったよ、龍悟君!!」

「全くだ!オールマイト相手に、やはり君は凄まじい!」

「凄えな…龍悟は」

「凄えよ、ホントに!オールマイトにガチでぶつかり合うなんて!!」

「それに超サイヤ人Ⅲ……凄い変身だったわ」

「正に、最強の具現」

 

 

 自分の事を称賛してくれる仲間達を見て……

 

「ああ、ありがとよ…皆」

 

 これが自分が夢見たものだと改めて実感した。

 

 

 

 次の日、期末試験の実技をクリアできなかった切島、砂藤、上鳴、芦戸の4人はまるでガチャで爆死したように目が死んでいた。芦戸などは涙を流している始末である。声の掛けようもない。蛙吹ですら何も言えずに心配そうに見るばかり。

 

「皆...土産話っひぐ、楽しみに...うう、してるっ...がら!」

 

 瀬呂が上鳴達を慰めるように言う。

 

「わかんねぇのは俺もさ。峰田のお陰でクリアはしたけど寝てただけだ。とにかく採点基準が明かされてない以上は...」

「同情するならなんかもう色々くれ!!」

 

 そこへ勢いよく相澤が入ってきた。

 

「予鈴がなったら席に着け」

 

 その言葉に直ぐ様行動に移す。

 

「おはよう。今回の期末テストだが……」

 

 第一声に、悲壮な表情になる敗北組。

 

「残念ながら赤点が出た…したがって……林間合宿は全員行きます!!」

 

「「「「どんでんがえしきたぁ!!!!」」」」

 

 4人が嬉しさの叫びをあげる。

 

「静かにしろ。えー筆記の方は赤点ゼロ。実技で切島・上鳴・芦戸・砂藤あと瀬呂……爆豪が赤点だ」

「ですよね。クリアしたら合格とは言ってなかったもんな……」

「糞が……」

 

 瀬呂は諦めた様に…呟き。爆豪は何時もの喧しさがなくなっていた。

 

「本気で叩き潰すと仰っていたのは...」

「追い込む為さ。そもそも林間合宿は強化合宿だ。赤点とった奴ほどここで力をつけてもらわなきゃならん。合理的虚偽ってやつさ」

 

「「「「「ゴーリテキキョギー!!!!」」」」」

 

 立ち上がり喜ぶ瀬呂を加えた赤点ジャー、だが相澤がそんな優しさだけの行為を行うわけもない。

 

「またしてもやられた...流石雄英だ!しかし、二度も虚偽を重ねられると信頼に揺らぎが生じるかと!!」

「わぁ、水差す飯田くん」

「確かにな、省みるよ。ただ全部嘘って訳じゃない。赤点は赤点だ。お前らには別途補習時間を設けてる。ぶっちゃけ学校に残っての補習よりキツイからな」

 

 喜んでいた赤点ジャーの顔色が死んだ。

 

「じゃあ合宿のしおり配るから後ろに回しておけ」

 

 

 

 

 放課後、龍悟は屋上で夕日を見ながらオールマイトとの戦いを思い出していた。オールマイトはわざと負けた…それを見抜けない龍悟じゃない。

 

(いつかは全力で戦ってみてぇもんだ……)

 

 

 そう黄昏れていると……急に視界が真っ暗になった。

 

「龍〜悟くーん。だーれだ?」

「……何してんだ。波動先輩」

 

 塞がれている手をどけて、後ろを振り向く。ねじれた水色のロングヘアが目に入る。

 

「やっぱりバレた?」

「大抵は気でわかる……どうしたんだ?」

「………その、ごめんね」

 

 いつもの天真爛漫な様子が無くなる。いきなりの暗い雰囲気になり、驚くが表情には出さない。

 

「試験内容……変わっててさ…戸惑ったよね」

「別に?なんとも思ってない」

「…………本当に?」

「あぁ、本当だ」

「本当の本当に?」

「本当の本当だ」

「本当の本当の本当に?」

「本当の本当の本当だ……だから、落ち込んでんじゃねぇよ、先輩らしくねぇ」

 

 やがて、少し暗かった顔は次第に明るくなり…元の波動ねじれに戻る。

 

「……龍悟君は優しいね」

「そうか?先輩だって俺等の勉強会で色々教えてくれたし……響香達の事鍛えくれた……今度、礼をする」

 

「本当に!ならさ、私とデートしようよ!!」

「先輩さよなら」

「ちょっと!今、お礼するって!」

「それはそれ、これはこれだ!」

 

 なんとかしようとする龍悟だが、涙目になりながら頬を膨らます波動を見て……数秒の硬直。

 

「…………わかった」

 

 やがて承諾した。

 

「ヤッター!明日、“木椰区ショッピングモール”で待ち合わせね!!」

 

 嬉しそうに波動は屋上を出た。頭を抱える龍悟のスマホに響香からメールが届く…内容は明日、クラスで買い物に行くらしい……場所は木椰区ショッピングモール…明日のデート先だ。

 

「クソッタレがぁぁぁあ!!!!」

 

 ベジータの方面が爆発し超サイヤ人Ⅲに変身した龍悟の叫びが夕日に響いた。

 

 

END

 

 

 




次回、どうなる龍悟!?


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デート大作戦!!

 次の日の午前9時、龍悟は待ち合わせの時間より早く木椰区ショッピングモールへ来ていた。モールの地図を見て時間を潰していると……待っていた人物が走ってくる。

 

「龍悟くーん」

 

 遠くからでも誰なのか分かるくらいの綺麗な容姿。確実に美人の部類に入るだろう。すれ違う度に男が思わず振り向く程だ。

 

「ねえねえ、随分早いね!」

「待たせるのは好きじゃねぇ」

「なる程ね〜それじゃあ行こうよ!」

「ああ」

 

 移動しながら龍悟はスマホを取り出し……

 

ゴジータ『今、合流した』

インゲニウムⅡ『わかった!僕達は午後にそっちに行く予定だ』

ショート『頑張れ』

ツクヨミ『健闘を祈る』

テンタコル『こちらもサポートする』

 

 昨日、龍悟は直ぐに家に帰り協力を求めた。もし、波動とデートしてるとこを見られればとても面倒くさい事になる。だから、親友の飯田と轟、最近色々と助言をしていい友人関係の常闇と障子と円卓会議を決行した。

 

ゴジータ『助けてくれ』

インゲニウムⅡ『龍悟君……』

ゴジータ『涙目で頼んできて断り辛かった』

ツクヨミ『………己の災厄は己で乗り切れ』

テンタコル『意外と冷たいな』

ショート『助けてくれって言われても俺達どうすればいい?』

ゴジータ『鉢合わせしないように上手く皆を誘導してくれ』

インゲニウムⅡ『まぁ、波動先輩が先だったんだし……わかった、協力するよ』

 

 

 

 

 こうして龍悟のデート大作戦が決行した。

 

「何するんだ?」

「ん〜〜服を買いに!龍悟君見てくれない?」

「俺が?」

「自信ある?女の子の服選び?」

 

 一瞬、響香の買い物に付き合った事を言おうとしたが……母に女の子とのデート中に他の子の事を言うなと言われた事を思い出した。

 

「自信ねぇな」

「やっぱり!楽しみだな……龍悟君のセンス」

 

 楽しそうに歩く波動……だが、龍悟の頬には汗が流れる。長い一日になりそうだ。

 

 

 

「龍悟君!見て見てー!これなんかどうかなー!?」

「お客様にぴったりですよ!ね?彼氏さん!」

「彼氏じゃないんだが……」

 

 試着室から現れた波動は爽やかさと清楚さを併せ持つ白いワンピースを着て爪先まで晒しているサンダルと麦わら帽子……砂浜に居れば誰もが振り向くだろう。

 

「ねぇねぇ、龍悟君はなんかない?」

「ならこういうのどうだ?」

 

 龍悟が手に取ったのは濃い緑の上着と薄い水色の生地に緑のユリの花が描かれている長いスカートだった。

 

「……………意外とセンスあるんだね」

「意外は余計だ」

「じゃぁこれも買っちゃおう!店員さん、これくださいなー!」

 

 しかし、自分が選んだ服の値段を見て驚愕した。思ったより高かった……龍悟は財布を出そうとする波動を止めて自分の財布を出す。

 

「これで足りますか」

「はい。彼氏さんのお支払ですね」

 

 店員が何か言っているが、そんな事頭に入っていなかった。頭の中に浮かんでいたのは、不用意に支払わせようとした高額な代金への罪悪感だけだった。

 

「龍悟君、ありがとう」

「いや、こっちこそすまん」

「?」

 

 首を傾げる波動に苦笑しながら時間を確認する。そろそろ昼食を食べる時間帯だったので近くにあったバイキングレストランに入った……出禁になりかけたのは言わずもがな。

 

 

 食事を済ませてから、店を出る。

 

「午後はどうする?」

「そうだね……」

 

 行き先を考えていると…連絡がはいる。

 

インゲニウムⅡ『僕達も着いた』

ゴジータ『そうか…』

テンタコル『各自でバラける様だ、俺達もそれぞれで行動する』

インゲニウムⅡ『僕は上鳴君と葉隠君、芦戸君と一緒に靴を買いに』

ツクヨミ『他は適当に回るらしい…俺が付く』

テンタコル『峰田は確保した』

ゴジータ『ナイスだ』

ショート『八百万と耳郎、梅雨ちゃん、麗日はバッグを見に行くそうだ』

ゴジータ『わかった』

 

 直ぐ様龍悟は皆の気を感知して離れたルートを選ぶ。するとゲームセンターがあった。

 

「ゲームセンターはどうだ?」

「いいね!行こう行こう!!」

 

 そして辿り着いたゲームセンター……波動は今、UFOキャッチャーとにらめっこしていた。

 

「む〜〜〜!」

 

 可愛らしいぬいぐるみを狙っているが……ゲットできない……これで五回連続失敗だ。

 

「そのくらいにしとけ…」

「え〜〜!いや!」

「…………貸してみろ」

「え?」

 

 狙いを定めながらボタンを押し…アームが降りてくる、降りてきたアームはぬいぐるみに付いていたタグに上手く引っ掛かり……

 

「ゲットだ」

「嘘!?」

 

 容易くゲットできた。

 

「ほらよ、これでいいんだろ?」

「………いいの?」

「俺が持ってたってしょうがねぇだろ」

「ありがとう!」

 

 ぬいぐるみを抱き締めながら笑う波動に近くに居た男達が赤面する。それからレースゲームやメダルゲーム等一通り遊んだ龍悟達はゲームセンターを出る。

 

 

「あっ、見て!クレープ屋だ!」

 

 すると、波動が下の階にあるクレープ屋を見つける。だが、其処は長蛇の列ができていた。

 

「待ってろ…俺が買ってくる」

「いや、悪いよ」

「気にするな、俺は気にしない。こう言うのは男がやるもんだ」

「む〜〜じゃあお願いね」

「おう」

 

 こうして龍悟は下の階に向かう……だが、龍悟はエスカレーターを使わず階段を使った……誰も居ない階段で途中で止まり。

 

 

「此処ならいいだろ……出てこい」

 

 その言葉を聞いてか…龍悟の後ろから眼鏡を付け赤と藍色の6面分けで構成されたタイトなミニワンピースに白衣を着た美女が現れた。

 

「やっぱり、バレてましたか……流石ですね」

「お前は……“脳無”か?」

 

 龍悟は彼女が脳無と同じ様に多数の気を放っている事に気づいていた……そしてその中に……

 

(魔人ブウの細胞がある)

 

 それはベジータが命を代償にしても倒せず悟空が超サイヤ人3になる事でようやく倒す事ができた魔人ブウの気もあった。龍悟の警戒心は強くなる。

 

「そうですね……私は敵連合によって生み出された存在、優秀な頭脳を持つ研究者の細胞をベースにあらゆるヒーローの細胞を組み込むことで製造された人造人間………人造人間21号です」

 

 丁寧な言葉遣いで話す21号、敵意がない事を確認した龍悟は話を聞く事にした。

 

「それで、何で俺に近づいた?連合のお前が」

「貴方にお願いがあるんです」

 

 

「私をーー殺してください」

 

 

「………どう言う事だ」

「気づいてるでしょうが………私には特殊な細胞が埋め込まれています」

「ああ…」

「これはオール・フォー・ワンが偶然見つけた物なんです……ピンク色の焼こうが斬ろうが数秒で再生するこの世の物とは思えない細胞なんです」

「偶然……」

 

 龍悟はトワの言葉を思い出す。

 

『彼等に面白い物を拾わせたの』

 

(奴等の仕業か…)

 

「連合はこの細胞を脳無に組み込もうとしましたが……結果は失敗……何度も研究と実験を重ね……21回目で私が誕生しました………恐らく、この細胞が原因でしょうか…私は偶に“自分以外が餌に見えてしまうんです”」

 

(魔人ブウと同じか)

 

「私にはもう一人の私が居る…捕食衝動に忠実で全てを食らう私が……今は何とか抑え込んでいますが……そろそろ限界でしょう……連合は私の最初の標的を貴方にしたんです……その時はもう、私は私ではないでしょう…ただ、ひたすらに全てを食らう怪物になっています」

 

 語る21号は悲しそうだった。

 

「でも、貴方なら私を完全に消し去る事ができる……次に会うときは敵とヒーローの関係でしょう……」

「お前は、それでいいのか?」

「優しいんですね……でも、いいんです」

「そうか……」

「そろそろ、戻らないと…抜け出した事がバレてしまいます……最後に貴方と話ができてよかった」

 

 そう言って21号は去っていった。暫く龍悟は佇んでいたが……クレープ屋に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オススメのクレープを波動に自分はチョコにした龍悟は波動の所に向かった。21号と話をしていて思ったより時間が掛かってしまった。

 

 

「悪い、思ったより時間が…………」

 

 龍悟はその先が言えなかった。

 

「あ、龍悟君!全然!“皆とお話してた”から!!」

 

 何故なら波動は響香達と一緒に居たから……

 

「でも、皆も来てたんだ!偶然だね!」

「そうですね………龍悟も“偶然”来てたんだ」

「用事があるから来れへんって聞いてたのにな〜」

 

 響香と麗日の戦闘力が急上昇している……龍悟から汗が滝の様に流れる。

 

 

 ここからが本当の地獄だ。

 

 

 

 

END

 

 

 

 




次回から劇場版に突入です。


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【劇場版】激闘のI・アイランド!ゴジータがやらねば誰がやる!!
夢の未来の都市。I・アイランド!


劇場版編、いよいよスタートです!
それではどうぞ!!


 

 世界総人口の約八割が何らかの特異体質…“個性”を持って生まれる超人社会…これは最強の融合戦士が絶対無敵のヒーローになるまでの物語だ!!

 

 

 

 耳郎響香は眼下に広がる何処までも続く海の上に現れたそれを発見して、隣で寝ている幼馴染の孫龍悟に声をかけた。

 

「龍悟……龍悟」

「ん?」

 

 龍悟は夢から覚めた様に目を擦り尋ねる。

 

「見えてきたのか?」

「うん、ここがそうなんでしょ!」

 

 雄英の夏服で響香は窓ガラスから外を覗く、龍悟もつられたように窓を覗いた。カプセルコーポレーションの小型プライベートジェットの窓から見えたのは、海に浮かぶ巨大な人工島だ。

 

「ああ、一万人以上の科学者達が住む“I・アイランド”だ」

 

 丸く作られた島は、隅々まで考え抜かれて作られた機能的な島だ。何処の国にも属さず移動機能も備えているため、巨大な船でもある。体育祭で優勝した龍悟は其処でおこなわれるエキスポに招待され響香を付き添いに訪れていた。

 

「いや〜夏休みに海外に行けるなんて〜〜」

「同伴者も連れてきていいみたいだからな、母さん達が自分達はいいって言うからな…喜んでもらえて何よりだ」

(龍悟と二人きりの海外デートだし……悪いね、麗日、一佳)

 

『当機はまもなくI・アイランドへの着陸態勢に入ります』

 

「そろそろコスチュームに着替えるか」

「そうだね、学校から許可はもらったし」

 

 いよいよI・アイランドに着く。龍悟達は期待に胸を膨らませた。

 

 

 

 

 

 

 

『入国審査が完了しました。現在、I・アイランドでは様々な研究、開発の成果を展覧した博覧会、I・エキスポのプレオープン中です。招待状をお持ちであればぜひお立ち寄りください』

 

 I・アイランドに足を踏み入れた響香は歓喜の声を漏らす。其処はまさしく最先端科学による夢の未来が広がっていて、エキスポに入場している誰もが心から楽しんで居た。

 

「一般公開前のプレオープンでこれ程の来場者が居るとは」

「本当に凄い!」

「此処は日本と違って“個性”の使用が自由だからな…“個性”を使ったアトラクションも多いらしい…後で行ってみるか」

「でもまずはホテルを探さないと……ねぇ、アレって」

 

 響香が指差した方向にはどのアトラクションよりも混雑している人だかりがあった。そしてその中心には…

 

「熱烈な歓迎ありがとう!サインは順番でね!!」

 

 オールマイトが居た。

 

 

 

 

 

「まさか君達まで来ているとは、驚きだよ!」

「オールマイトこそ来ていたのか」

「ああ、久しぶりに古い友人に会いに行くんだ…よかったら一緒に来るかい?」

「いいんですか」

「勿論だとも!」

 

 オールマイトが龍悟にだけ聞こえるように語る。

 

「彼にはワン・フォー・オールや君に“譲渡”した事は話していないからそのつもりで」

「………巻き込まない為か?」

「……ああ」

 

 龍悟がその友人について確認してると…ピョーン、ピョーンと軽妙な音が近づいてきた。音の方向を見ると、ホッピングで大きくジャンプしながら「おじさまー!」と笑顔でやってくる金髪で眼鏡をかけた少女が居た。

 

「マイトおじさま!」

「メリッサ!」

 

 少女は嬉しそうにオールマイトの胸に飛び込みオールマイトも笑顔で抱きしめる。

 

「来てくださって嬉しい」

「こちらこそ招待ありがとう。見違えたな、すっかり大人の女性だ」

「十七歳になりました。昔と違って重いでしょ?」

「なんのなんの」

 

「龍悟…あの人って?」

「恐らく、友人の娘かなんかだろう」

 

「それで、デイブは何処に?」

「ふふふ……研究室にいるわ。長年やってきた研究が一段落したらしくて、それでお祝いとサプライズを兼ねてマイトおじさまを招待したの」

「そう言う事か……因みにどんな研究を?」

「それが、守秘義務があるからって」

「科学者も大変だな…」

 

 ようやく、龍悟達に気づいたオールマイトが……

 

「ああ、孫少年、耳郎少女。彼女は私の親友の娘で…」

「メリッサ・シールドです。始めまして」

「こちらこそ、雄英高校ヒーロー科一年、孫龍悟だ」

「同じく耳郎響香です」

「雄英高校……じゃあマイトおじさまの……」

「ああ、生徒だ」

「とても優秀な未来のヒーロー候補さ!」

「すごーい!どんな“個性”を持ってるの?」

「俺は強化形の“個性”」

「ウチは見ての通り耳のプラグだよ」

「さて!自己紹介もすんだ事だし、向かうとしよう」

「そうですね」

 

 メリッサは近くに自立していたホッピングを持ちボタンを押す。するとホッピングが光り紐状になった。

 

「早くパパを喜ばせてあげなくちゃ。こっちです、マイトおじさま!」

 

 メリッサは駆け出していく…その後を追うオールマイトと龍悟。龍悟はホイポイカプセルを知っている為驚きはしないが…

 

「何今の…」

 

 響香は唖然としていた。

 

 

 

 その頃、エキスポの入場ゲートにある一団が現れた。リーダーと思わしき男の顔には大きな傷があり、その醒めた視線にはこれから楽しもうという気配は微塵もない。男は携帯を手に取り、どこかに連絡した。

 

「会場内に問題なく入れた……で、ブツはいつ届く?」

『15時に六六ゲートで受け取ってくれ』

 

 相手は変音機で声を変えている。

 

「了解した」

 

 男は電話を切る。そして視線を向けたのは、エキスポ会場の先にある、I・アイランドの中央から島を見守るようにそびえ立つセントラルタワーだった。

 

 

 

 そのタワーの中にある広くがらんとした研究施設のなかで、一人の男が携帯に保存されていた懐かしい写真を眺めていた。それは青空を駆けている、まだルーキー時代のオールマイト。

 

「博士、デヴィット博士」

 

 助手のサムから声をかけられた事に気づきデヴィット・シールドは顔を上げる。

 

「こちらの片付けも終わりました」

「そうか、ご苦労さま、サム」

「たまにはお嬢さんとランチにでも行ってきてはいかがですか?」

「今日もアカデミーに行ってるよ」

「I・エキスポ中は休校では?」

「自主的に研究しているんだよ」

 

 その時、入り口から声がかけられた。

 

「だってパパの娘ですもの。似ちゃったのね」

「メリッサ、どうしてここに?」

 

 自分と同じ様に研究に夢中になっている娘がわざわざ足を運んだ理由を聞く。

 

「私ね、パパの研究が一段落したお祝いにある人に招待状を贈ったの」

「ある人?」

「パパが大好きな人よ」

 

 そう言って振り返ったメリッサにつられるように入り口をみたデヴィットが目を見張った。

 

「私がぁぁぁあ、再会の感動に震えながら来た!!」

 

 研究室狭しと、ポーズを決めるオールマイト。あまりに突然の事にデヴィットは驚き固まるばかりだ。サムもビックリしている。

 

「トシ………オールマイト……!?」

「ほ、本物!?」

「HAHAHA!わざわざ会いに来てやったぜ、デイブ!」

 

 オールマイトの後ろからメリッサがワクワクと顔を出す。

 

「どう、驚いた?」

 

 デヴィットはメリッサの企みだと理解して、自分を落ち着かせる様に僅かな笑みを浮かべ息を吐いた。

 

「あ、あぁ……驚いたとも……」

「お互いメリッサに感謝だな。しかし何年ぶりだ?」

「やめてくれ、お互い考えたくないだろ。歳の事は」

「HAHAHA!同感だ!」

 

 お互い笑い合うと、オールマイトとデヴィットは静かな笑みを湛え、見つめあった。

 

「会えて嬉しいよ、デイブ」

「私もだ、オールマイト」

 

 会わなかった時間を埋めるように、コツンと拳を合わせる。

 

 

 その様子を龍悟達は微笑ましく見ていた。

 

 

 

END

 

 



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I・エキスポヘようこそ

投稿が遅れて申し訳ございません。


「孫少年、耳郎少女、紹介しよう。私の親友、デヴィット・シールド」

 

「マジか……」

 

 デヴィット・シールド……それは、ノーベル個性賞を受賞し“個性”研究のトップランナー……そして何よりオールマイトのアメリカ時代の相棒だ。そんな大物が目の前に居る事に響香は唖然とした。

 

 デヴィットは気軽な様子で言った。

 

「オールマイトとは久しぶりの再会だ。すまないが、積もる話をさせてくれないか」

「わかりました」

「メリッサ、孫君達にI・エキスポを案内してあげなさい」

「わかったわ、パパ」

「いいのか?」

「未来のヒーローとご一緒できるなんて光栄よ。行きましょう」

 

 楽しそうに出ていくメリッサ達を見送ってるサムにも声をかけた。

 

「サム、君ももう休んでくれ」

 

 

 

 

 

 

「凄い……本当に人工の島とは思えない」

 

 エキスポ会場にやってきた龍悟達は、様々なパビリオンを見上げて歩きながら改めてI・アイランドの広さを実感していた。

 

「大都市にある施設は一通り揃ってるわ。出来無いのは旅行くらいね」

「情報漏洩を防ぐ為か?」

「そういう事」

 

 龍悟達が話していると…響香が声をあげた。

 

「見て、龍悟!海外のヒーローがこんなに!!」

 

 響香の言葉に気づけば周囲には各国のヒーロー達がファンにサインをしたりしていた。

 

「最新アイテムの実演とか、サイン会とか、色々と催し物があるみたい」

「流石I・エキスポ」

「夜には関係者を集めたパーティーも……って龍悟君も出席するんだよね。体育祭優勝者で招待されたんだし」

「まあな」

「ウチも付き添いで参加できますし」

 

 そして、龍悟達はガラス張りのサッカースタジアムの様なパビリオンに入った。多目的ビークルや潜水スーツ、ゴーグル等様々なヒーローアイテムが展示されている。

 

「スッゴ……」

「ここまでのテクノロジーとは……」

「実はほとんどのモノはパパが発明した特許を元に作られてるの!」

 

 少し誇らしげにメリッサが言う。龍悟達が素直に関心している前でメリッサは愛おしそうな眼差しを展示されているアイテムに向けた。

 

「ここにあるアイテム一つ一つが世界のヒーロー達の活躍を手助けするの」

 

 その眼差しから父親への憧れが伝わってきた。

 

「尊敬してるんだな」

「パパの様な科学者になるのが夢だから」

「そういえば、メリッサさんってここのアカデミーの」

「うん、今三年」

「I・アイランドのアカデミー……当然、難関中の難関だ……下手すれば雄英より難易度は高い…」

「それに入れたって凄いですよ!」

「私なんてまだまだ」

 

 照れくさそうに首を小さく振るメリッサ…微笑ましく見ている龍悟の後ろから聞き慣れた声が聞こえた。

 

 

「楽しそうやね、龍悟君」

 

 

 龍悟と響香の動きが止まった。

 

「……………なぁ、今、麗日の声が……」

「……………幻聴だよ……此処はI・アイランドだよ」

 

「じゃあ、私の声も幻聴かな?」

 

「「……………………」」

 

 

 恐る恐る振り返ると……其処には同じA組の麗日お茶子とB組の拳藤一佳が居た。

 

「楽しそうやね」

(何故二度言った!?)

 

 困惑する龍悟達の耳に「コホン」と聞こえる。

 

「ヤオモモまで……」

「とっても楽しそうでしたわ」

 

A組の副委員長、八百万百が興味を隠せない目で見つめる。龍悟も驚いたが響香も驚きが隠せない……

 

「ど、どうして……」

 

「龍悟と二人っきりで海外デートなどと……その気になっていた響香の姿はお笑いだったぜ」

 

「………せっかく、せっかく龍悟と二人きりの海外デートだったのに〜!!」

 

 拳藤の言葉に響香は完全にノックアウトされた。

 

「お友達?」

「学校の仲間達だ」

 

 メリッサに聞かれ龍悟は答える。

 

「よかったらカフェでお茶しません?」

 

 

 そうしてエキスポ内のオープンスペースのカフェに移動した。どうなる事かとヒヤヒヤしたが女子達はあっという間に打ち解けて喋りはじめたし響香も復活した。

 

「(どうなるかと思ったが……良かったぜ)……それにしてもお前等まで居るとはな」

 

 龍悟の目の前にはウエイター姿の上鳴電気と峰田実…そしてその二人に説教をする龍悟の親友、飯田天哉が居た。

 

 臨時のバイトでここに来た上鳴と峰田……メリッサにナンパしていたらヒーロー一家である飯田家に届いた招待状でエキスポに来た飯田に見つかり今に至る。

 

 八百万も父がエキスポのスポンサー企業の株を持っているので招待状を貰ったらしい……そして余った招待状を麗日と拳藤がじゃんけんで勝ち取った。

 

 その時、大きな音が響いた。

 

「な、何だ!?」

 

 音のした方向を見てみると近くの会場から巨大な氷の塊が見えていた。龍悟達はそれに見覚えがあった。

 

「龍悟、アレって…」

「ふっ、どうやらアイツも居るみたいだな」

 

 

 そうして龍悟達は“個性”を使って敵を倒していくアトラクション【ヴィラン・アタック】にやってきた。会場を見ると氷が岩山を覆っていた。氷の始発点に居たのはA組のナンバー2、轟焦凍だった。轟は観客席に居る龍悟達に気づく。

 

「龍悟達も来てたのか」

「ああ、体育祭優勝したから招待された」

「俺は招待受けた親父の代理」

 

 MCのお姉さんの声が響く。

 

「現在、轟君の14秒がトップ!果たしてこれを超える記録は現れるのか!?」

 

「ねぇ、龍悟もやってみたら?」

「……そうだな、いっちょ行くか」

 

 そう言って龍悟は柵を飛び越え会場に登場する。それを見てMCが叫ぶ。

 

「おっと!飛び入り参加だ!!どんな記録をだしてくれるのか!」

 

 スタート地点に立った龍悟は両手を腰に構えて息を気合と共に吐き出した。

 

「はぁああ!!」

 

 衝撃波が起こり龍悟の髪は金色に輝いていた。

 

「変身した!?」

 

 メリッサが驚く中、MCのスタート合図が響いた。

 

「ヴィラン・アタック!レディゴー!!」

 

 龍悟は舞空術で空を飛び両手を上げ蒼穹の光弾を作り出し放つ…

 

 

「スターダストフォール!!」

 

 放たれたそれはいくつにも別れ、星屑の様に降り注ぐ。そして一瞬で的の敵を粉砕した。MCが興奮した声で喋る。

 

「す、凄い!僅か10秒!!トップに躍り出ました!!」

 

 

「凄い……」

 

 メリッサは金色に輝く龍悟に目を奪われていた。

 

「驚きました?アレがウチ等のナンバーワンでありリーダーである孫龍悟、ヒーロー名は【ゴジータ】です」

 

「ゴジータ……」

 

 響香の言葉に耳を傾けながらメリッサは龍悟の後ろ姿をオールマイトと被せた。

 

 

 

END

 

 

 



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レセプションパーティー

ゴジータ「そろそろ中盤になるか……」
ベジット「ゴジータ!!」
ゴジータ「ベジット!?何故ここに!?また自力で出演を!?」
ベジット「朗報だ!!お前……遂に吸収から抜け出したぞ!!」
ゴジータ「きたぁぁぁあ!!」
ベジット「“俺を取り込めるとでも思っているのか”と言うセリフもあるし、良かったな!」
ゴジータ「やられたらやり返す………百倍ビックバン・かめはめ波だ!!」

ベジット「しかし、久しぶりだな…このコーナも」
ゴジータ「前回は体育祭編だったからな」
ベジット「ゴジータ復活はいいんだが……ヒーローズアニメは今回は酷かったな」
ゴジータ「反撃と言っておきながら、悟空は新キャラにやられるし、パチモンベビーは合体するし……」
ベジット「次回でハーツが動くみたいだが……コレでキュアベジータやジレンがやられたら……」
ゴジータ「言うな……充分ありえる」

ベジット「まぁ、それはそれとして……この作品はどうするだ?出すのか…キュアゴジータ?」
ゴジータ「検討中だ……身勝手は出るかもしれないが」
ベジット「そうか……じゃあ今回はここまでだな」
ゴジータ「ああ、これからも絶対無敵のヒーローアカデミアをよろしくな!!」




 

 セントラルタワー内の診察室、そこでデヴィットはオールマイトの診察を行っていた。これは“個性”の診察もできる。カプセルの中のトゥルーフォームのオールマイトは弱々しかった。

 

 検査が終わり、モニターに映し出された数値を見る。

 

「……個性数値が下がっている」

 

 モニターに映し出された数値は今まで緩やかに下降していた物が、更に下がっている。

 

「何故だ!?体は完治している!それなのに何故!?」

 

 確かにソウルパニッシャーで体は完全に完治している。それでも、オールマイトの中にあるワン・フォー・オールは残り火……いくら万能のソウルパニッシャーでもコレばかりは元に戻せなかった。

 

「このままでは、平和の象徴が失われてしまう……君のお陰で日本の敵犯罪発生率は世界平均より遥かに低い……。何度、君がアメリカに残ってくれればと思ったことか……」

 

 親友が見せた不安に改めてオールマイトは己の存在の大きさを確認させられる。オールマイトの胸が痛む。

 

(すまない、デイヴ。君やメリッサを巻き込むわけには行かない……)

 

 しかしそれが友人を苦しめている。苦悩するオールマイトはそっと龍悟が言った言葉を思い出す。

 

『時に想いは言葉に出さなければ相手に伝わらない。それに、アンタを支えてきた相棒何だろ、大丈夫さ』

 

「…………………デイヴ、真実を話そう」

「トシ?」

「これから言うことはとても信じられないかも知れないし、君を巻き込んでしまう…「今更何を言っているんだ」…ありがとう、デイヴ」

 

 迷わず信頼してくれる親友。そんな親友にも今までひた隠しにしてきた事に胸が痛みつつ、一つ深呼吸する。

 

「もう、私には“個性”が無いんだ」

「――は?」

 

 オールマイトの言葉は想像を大きく超えた、流石に一瞬思考が停止する。

 

「ど、どう言う意味だ!?まさか、オール・フォー・ワンに!!」

 

 困惑するデヴィッドにオールマイトはゆっくりと告げる。

 

「違うんだ…私が持っていた個性は、オール・フォー・ワンと対となる個性。ワン・フォー・オール。これは、オール・フォー・ワンと同時代から聖火の如く引き継がれてきた個性なんだ」

「なん…だと!?」

 

 耳を疑う情報ばかりだが、デヴィットの頭脳は衝撃を抑え、事実を知っていく。

 

「じゃあ、君の個性数値が急激に下がっていたのは……」

「そう。個性が消えたんじゃない。個性を次の世代に受け継がせたんだよ。それが――孫龍悟……私の自慢の弟子だ」

「……」

 

 震えるデヴィット、もう親友はナンバーワンヒーローではいられないのだ。如何に天才のデヴィッドでもコレばかりはどうしようも出来ない。自分が彼のためにしてやれることは無い。だが、そんなデヴィットにオールマイトは安心させるように声を掛ける。

 

「そう悲観しないでくれデイヴ。彼は、私を超え始めている」

「何を……?」

 

 学生時代から、オールマイトの活躍は散々見てきたデヴィッドにはとても信じきれなかった。

 

「ワン・フォー・オールは聖火の如く引き継がれてきたと言っただろう。この個性はそれぞれの想いと力を次へと託す。……私も、昔はメリッサと同じく“無個性”だったんだ」

「まさかそんな、トシが……!?」

 

 あの圧倒的なオールマイトが元は自分の娘と同じく無個性だとはとても信じられなかった。

 

「孫少年はこの前の試験なんて私とマジで殴り合ってたしね」

「なっ!?」

 

 全盛期とはいかなくてもオールマイトとまともに戦える…それはデヴィッドを驚愕させるには充分だった。

 

「だから、見守ってほしい……孫少年をメリッサを、新しい希望達は確実に育っている」

 

 オールマイトの目に有ったのは、あの頃と何も変わらない深い信頼だった。

 

「……分かった。見させてもらうよ、彼を……彼等を」

「……ありがとう」

 

 初めて出会ったあの時のように、二人は笑顔を浮かべ握手をした。

 

 

 

 

 

 

 

 日も暮れはじめ閉園になりパーティーに参加するため6時30分にセントラルタワーに集合と約束しそれぞれの場所に戻った龍悟達……龍悟はメリッサに案内され研究室にやってきた。

 

「凄いな……こんな場所で研究してるとは……」

 

 設備の整った部屋であり資料棚の上にはたくさんのトロフィーや盾が飾られている。

 

「実はね、私、そんなに成績良くなかったの。だから一生懸命勉強したわ。どうしてもヒーローになりたかったから」

「プロヒーローにか?」

「……それは直ぐに諦めた。だって私、無個性だし」

「……………………」

「勿論ショックだったわ。でも私には、すぐ近くに目標があったから」

「目標?」

「私のパパ」

 

 写真にあるデヴィッドがメリッサに惜しみのない愛情を向けている。

 

「パパはヒーローになれる“個性”は持ってなかったけど、科学の力でマイトおじさまやヒーロー達のサポートをしている。間接的にだけど平和の為に戦っている」

「ヒーローを助ける存在?」

「そう、それが私の目指すヒーローのあり方」

 

 メリッサの横顔は誇らしげに輝いていた。

 

「ふっ、格好いいじゃねぇか」

「ふふ、ありがとう♬」

 

 メリッサは持ってきた箱をテーブルの上に置き蓋を開ける。其処には上部にボタンのついた細いベルトの様な物があった。

 

「このサポートアイテムね、前にマイトおじさまを参考に作ったの」

「オールマイトを?」

 

 メリッサは龍悟の右手首にベルトを巻くと、「ここのパネル、押してみて」と言う。龍悟は言われるままにボタンを押した。ハチの巣の様な六角形の様な紋様が不規則に浮かび上がったと思うや、変形し勢いよく伸びたベルトが腕と手を覆う様に巻き付いていった。まるで体の一部の様に装着される。

 

「これは?」

「名付けるなら“フルガントレット”かしら」

「耳郎ちゃんに聞いたの、龍悟君の個性には負荷が強くかかるって」

「まぁな…」

 

 受け継いだワン・フォー・オールは強大な個性……強い出力で発動すれば並の体なら数秒で壊れてしまう。オールマイトですら高出力で常時発動はしていない。常時低出力で攻撃の時だけ出力を上げている。

 

 龍悟はそれを超サイヤ人と言う力で覆ったのだ。体力は多く消費してしまうが体へのダメージを軽減している。ワン・フォー・オール単体のパワーは下がるが総合戦闘力が2つの力を別々に使うよりも高い形態。それが超サイヤ人・フルカウルなのだ。だが、それでも抑えられる力に限度はある。超サイヤ人・フルカウルなら20%。超サイヤ人Ⅱなら40%。超サイヤ人Ⅲなら60%。これが戦闘を続ける事が出来るラインだ。これ以上の出力を常時発動して戦闘を行うには“究極の肉体”を手に入れるか“究極のコントロール”を習得するしかない。

 

「このフルガントレット、マイトおじさま並のパワーで拳を放っても、三回は耐えられるくらいの強度があるわ。きっと龍悟君の本来の力を発揮できると思う」

 

 それ程のアイテムを作れるメリッサはやはり天才だろう。フルガントレットを見つめる龍悟にメリッサは言う。

 

「それ、龍悟君が使って」

「…大切な物何だろ?」

「だから使ってほしいの」

「…………」

「困っている人達を助けられる、素敵なヒーローになってね」

 

 それは未来のヒーローへの応援だった。

 

「…………ああ!」

 

 力強く答えた時、スマホがなった。

 

「もしもし」

『何をしている龍悟君!もうすぐ時間だぞ!!』

「あ………」

 

 ヒーローも遅刻は厳禁なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 パーティーが始まる前、デヴィットはある一室でサムと話していた。

 

「計画を中止する!?どう言う事ですか!?」

「言葉通りの意味だよ……やはり、犯罪に手を染める事は出来ない………雇った者達にはすまないと思っている。報酬の倍……三倍の金額を払う。サム、勿論君にもだ、わかってくれ」

 

 わかってくれると…そう信じていたデヴィット……だが、サムからの返答は………拒否だった。いきなりサムは近くにあった分厚い資料本でデヴィットの頭部を強打した。

 

 

「サ、サム…?」

 

 倒れ伏したデヴィット、意識がどんどん遠くなる。

 

「あ、貴方が悪いんですよ。長年、貴方に支えてきたのにあっさり研究は凍結、手に入れるはずだった栄誉、名声……全てなくしてしまった……貴方のせいだ!」

 

 サムは責める声で言い放ちその目には涙が浮かんでいた。目のしわは深く弱々しい。

 

(すまない……トシ、メリッサ……)

 

 その思いを最後にデヴィットは意識を手放した。

 

 

 

 

END

 

 

 

 



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敵襲撃!人して当たり前を!!

「ごめんなさい!遅れてしまって!!」

 

 眼鏡を外し華やかなドレス姿のメリッサがセントラルタワーの七番ロビーに急いでやってきた。上鳴と峰田がメリッサの姿に感涙して響香が呆れていた。龍悟以外の皆が正装を着て待っていた。

 

「龍悟と何してたんです?」

 

 華麗なドレスを着込んだ拳藤が聞いてくる。

 

「ちょっとね、サポートアイテムを渡したの……まだ、龍悟君は来てないの?」

「龍悟君が遅れるとは……珍しいな」

「龍悟が正装なんて……ウチだって今まで見たことないもん」

 

 響香が呆れながら言うと……

 

「わりぃな、遅れちまった」

 

 龍悟が急いでやってきた。コスチュームとは違い、黒い礼服に身を包んだ龍悟の姿はとても凛々しかった。何時もの落ち着いた雰囲気と共にどこか王族を思わせる鋭さがあった。

 

「お〜似合っとる///」

「ああ、ありがとよ……しかし性に合わないな」

「ちょっと、脱ぐなって」

 

 褒めてくれたことは嬉しいのだが、やはり礼服の堅苦しさは苦手らしくネクタイに手を掛けようとする。慌てて拳藤が止めたものの、ちょっと目を離せば服装を崩してしまいそうだ。

 

「あぁ、ネクタイが乱れただろ……こっち向きな」

「いいだろ別に」

「駄目だ。目を離すとすぐに楽な格好になっちゃうんだから///」

 

 今のでネクタイが少し乱れてしまい、見るに見かねた拳藤が整えるべく手を伸ばしてくる。最も顔は真っ赤だが。上鳴と峰田が怨めしそうに凝視し、八百万は顔を赤くしながら時々轟の方を見る。響香と麗日は少し嫉妬するが自分がやる姿を想像し頬を染める。

 

 整え終わったその時……サイレンが響き渡った。何事かと周りを見る龍悟達の耳に島内放送が流れた。

 

『I・アイランド管理システムよりお知らせいたします。警備システムにより、I・エキスポエリアに爆発物が仕掛けられたという情報を入手しました』

 

 恐らくI・アイランド全体にアナウンスされる放送を聞き目を細める龍悟。次の瞬間、窓の防火シャッターが次々と閉じられて入り口が塞がれていった。閉じ込められた龍悟達。

 

「携帯が圏外だ。情報関係は全て遮断されちまったらしい」

「エレベーターも反応ないよ」

 

 メリッサが何か引っかかっている様に考え込んだ。

 

「爆発物が設置されただけで警備システムが厳戒モードになるなんて……」

「…………飯田、パーティー会場に行くぞ」

「何故だ?」

「会場にはオールマイトがいる。何が起こっているのか確かめるべきだ」

 

「オールマイトが!?」

「何だ、それなら心配いらねーな」

 

 その言葉に誰もが安堵する。

 

「メリッサ、行けるか?」

「非常階段を使えば近くに行けるはず」

 

 メリッサが隅にある重そうなドアを指差した。

 

「案内頼む」

 

 

 

 

 

 

 

 一方で会場では、人質となった客や拘束されたプロヒーロー達が座り込んでいた。全方向から銃を向けられ死角はない。仮面をつけた傷の男、敵達のボス、“ウォルフラム”が部下に命令する姿を拘束されながら後ろで見ていたオールマイト。拘束を引きちぎろうとしたその時、上階から龍悟と響香が覗いている事に気づく。

 

(孫少年!耳郎少女!)

 

「気づいた。イケるか?」

「いいよ!」

 

 龍悟は合図を送る。それを見たオールマイトは気づかれない様に小声で話す。

 

『聞こえるか。敵がタワーを占拠、警備システムを掌握。この島の人々が全員人質に取られた。すぐにここから逃げなさい』

 

「大変だよ、龍悟!」

 

 響香の狼狽えた様子に龍悟の顔が曇った。非常階段に戻った龍悟達は待機していた皆に事の話をした。飯田と八百万がオールマイトの言葉に従うべきだと言うがヒーロー目指してる自分達が何もしなくていいのか?と轟と響香は語る。どちらも間違いではない……そんな中、龍悟が口を開いた。

 

「メリッサ、ここの警備システムはどうなっている?」

「このタワーの最上階にあるわ。……パスワードとかは解除されてる筈だから私達でもシステムの再変更ができる………皆を助けられるかもしれない」

「最上階………」

 

 龍悟は額に指を当て集中する。龍悟の十八番……瞬間移動。それならイケると期待を寄せるが………

 

「…………駄目だ。最上階だけ感知できねぇ」

「恐らく、“転移個性”を持った敵に侵入されないように特殊な措置を施しているんだわ………最上階ならこの非常階段でも行ける。敵達は警備システムの扱いに慣れていないと思う。現時点で私達に実害はないわ」

「システムが元に戻れば人質やオールマイト達が開放される。そうなれば状況は一気に逆転する」

 

 龍悟の強い意志を持った顔を飯田達は見ていた。麗日が自分を奮い立たせる様に立ち上がった。

 

「行こう、龍悟君!!」

「麗日…」

「できる事があるのに何もしないでいるのはイヤだ。そんなのヒーローになるならない以前の問題だと思う」

 

 麗日が覚悟を決めたその時、響香達が一歩近づいてきた。

 

「ロックだね、お茶子!ウチも行くよ」

「俺もだ」

「これ以上無理だと判断したら引き返す。その条件が飲めるなら、俺も行こう」

「ここで行かなきゃあヒーローじゃあないでしょ」

「そういう事であれば私も」

「よっしゃ、俺も!」

「…………あーもー!わかったよ、行けばいいんだろ行けば!!」

 

「私も行くわ……最上階に行くまでは足手まといにしかならないけど……私にも皆を守らせて」

 

 誰もが真剣な顔で覚悟を決めた。それを見た龍悟は笑う。

 

「最高だぜ、オメェ等」

 

 

 

 

 

 

 会場ではマッスルフォームの維持で体力がどんどんなくなり焦るオールマイトが咳き込んでいた。その時、上階の人影に気づく。

 

(孫少年!)

「………」

 

 龍悟は力強い眼差しで深く頷いた。

 

(行くと言うのか……教師として咎めなければならないのはわかってる……しかしーー)

 

 オールマイトは思わず笑った。

 

(ここで行かなきゃあヒーローじゃあないし、君なら何とかしてくれる!そう感じさせてくれる!!)

 

 オールマイトは龍悟に向かって頷いた。

 

(頼むぞ、有精卵ども!)

「ふっ」

 

 それに龍悟はサムズアップして応え静かに走り去った。龍悟は非常階段で待機していた皆と合流する。自分達が行動する事をオールマイトに伝えたと龍悟は皆に向かって頷いた。そして皆を見渡しながら口を開く。

 

 

「行くぞ!!」

 

『おう!!』

 

 

 反撃の狼煙は上がった。

 

 

 

END

 

 

 




 
 瞬間移動使えばすぐに最上階に行って警備システム元に戻してオールマイトがウォルフラムをボコボコにしちゃうので最上階には座標を特定出来ない特殊な措置が施されている事にしました。


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頼んだぜ!ヒーロー予備軍!!

平成最後の投稿です、それではどうぞ!!


 龍悟達は非常階段を駆け上がっていた。各フロアを封鎖されている以上、ここが唯一の最上階への道なのだ。最上階は200階……気の遠くなる話だが敵と出くわすよりマシだった。60階、70階と駆け抜け80階に差し掛かったその時。

 

「シャッターが!」

 

 階段の途中でシャッターが降りていた。

 

「どうする?壊すか?」

 

 そう言う轟にメリッサが言った。

 

「そんな事したら、警備システムが反応して敵に気づかれるわ」

 

 どうするかとシャッターを見上げていると。ヘロヘロになっていた峰田が反対側のドアに気づく。

 

「なら、こっちから行けばいいんじゃねーの?」

 

 それはフロアへと続く非常用のドアだった。

 

「馬鹿!!」

「ダメ!」

 

 慌てて龍悟とメリッサが止めようとするも間に合わず峰田はハンドルを引いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 管制室に警告音が響き、刃物の男は何事かとコントロールパネルの前で操作を続けている仲間の元に近づいた。

 

「何だ?」

「80階の扉が開いた?」

 

 眼鏡の男が訝しげに答える。

 

「お前各フロアのスキャニング、ミスったのかよ!?」

 

 眼鏡の男は苛立った様に舌打ちしながらパネル操作した。するとモニターに80階付近の監視カメラの映像がいくつも映し出される。その中の一つに廊下を駆けていく龍悟達の姿があった。会場で早速連絡を受けたウォルフラムは冷静に指示を出す。

 

「80階の隔壁を全て降ろせ。ガキ共を逃がすな」

「了解」

 

 龍悟達を捕らえにのっぽとチビの手下二人が会場を出ていくのを咳き込んで見つめながらオールマイトは祈った。

 

(気をつけろ、皆……敵は狡猾だぞ)

 

 

 

 

「他に上に行く方法は?」

 

 非常ドアを開けたせいで敵に気づかれた可能性が高い。走りながら轟の問にメリッサが答える。

 

「反対側に同じ構造の非常階段があるわ」

「急ぐぞ!」

 

 飯田が速度を上げたその時、行く手の通路の隔壁が奥から次々と閉じられていく。

 

「シャッターが!」

「後ろもですわ!」

 

 隔壁は後ろからも閉じられていく。敵が閉じ込めにきたのだ。閉じる隔壁の隙間越しに扉が見えた。

 

「ビックバン・アタック!!」

 

 龍悟の放った気弾が隔壁を容易く破壊、そのまま扉も破壊する。

 

「この中を突っ切るぞ」

 

 急いで扉の中へと足を踏み入れた一同は予想外の景色に驚いた。中を埋め尽くすのは様々な植物、驚きながらも足を止めずに龍悟はメリッサに声をかけた。

 

「此処は?」

「植物プラントよ。“個性”の影響を受けた植物を研究ーー」

「待って!」

 

 響香が皆を制す様に前に飛び出した。険しい視線が奥にあるエレベーターに向けられている。

 

「エレベーターが上がってきてる」

「敵が追ってきたんじゃ……」

 

 恐れおののく峰田の隣で龍悟が皆に声をかけた。

 

「響香、轟…迎え撃つぞ。他の皆は隠れててくれ」

 

 戦闘は避けられないと龍悟は指示を出す。その事を飯田も察したのだろう、皆を連れて茂みに隠れた。龍悟の左右に響香と轟は構え、八百万に創造してもらった増幅装置を響香は腕にはめた。

 

 ポーンと音が鳴り響いた。エレベーターがこの階に止まったのだ。扉が開きのっぽとチビの敵が降りてきた…その時、轟の氷壁が敵達に襲いかかる。

 

「やった……訳ないよね」

「ああ……来るぞ!!」

 

 直後、氷壁に拳大の穴が次々と空き、のっぽとチビが現れた。龍悟達は身構える。

 

「お前等タダのガキじゃねーな?何者だ!?」

 

 チビの体が大きくなり毛に覆われた。理性はある様で龍悟達に問いただす。

 

「通りすがりのヒーロー予備軍だ!!覚えておけ!!」

「だったらそのまま…通りすぎてろ!!」

 

 のっぽの敵が巨大な手を振り回す、龍悟達はその場から移動する。直後、奥にあった木の幹に抉られた痕ができた。

 

「俺がのっぽを相手する。チビだった方は頼んだぞ」

 

 龍悟は瞬間移動でのっぽの近くに移動し蹴り飛ばした。獣の敵は見た目が弱そうな響香に殴り掛かるが響香には当たらない。的確な判断で攻撃を避け続ける。

 

「クソ!当たれ!!」

 

 苛立ち大振りの攻撃をして隙が生じた。それを響香は逃さない。響香は後ろ回し蹴りを喰らわせオーバヘッドキックを2連激を敵に叩き込んだ後、顎を蹴り上げた。

 

 

「龍爪演舞!!」

 

 

 だが、異形型のタフさもあるのだろう…まだ、動けるようだ。それを想定していた響香は右後ろに移動する。響香と入れ替わる様に轟が飛び出した。左の腕から炎が溢れ翼の様な形になる。

 

「火竜の翼撃!!」

 

 炎を纏った左腕を薙ぎ払うように振るい攻撃する。顎を蹴り上げられ動きが遅くなった敵はモロに喰らってしまった。敵の悲鳴が聞こえ。爆発があがる。次第に敵が見えてきた。

 

「この……ガキがぁぁあ!!」

 

 どうやらまだ戦える様だ、雄叫びをあげながら迫る。だが、そんな獣の敵に何かがぶつかった。それは仲間の敵だった。のっぽの敵を殴り飛ばした龍悟はそのまま響香達の所に移動し三人はそれぞれ構える。

 

 

「「「トリニティーーかめはめ波ぁぁぁぁぁああ!!」」」

 

 

 放たれた極大の光は敵を容易く飲み込み先にあったエレベーターをも破壊した。

 

 

 

 

『ボス、あいつ等はタダの子供じゃありません!雄英高校ヒーロー科……ヒーロー予備軍です!!』

 

 管制室では龍悟達のパーソナルデータがモニターに映し出されていた。眼鏡の男からの報告に会場のウォルフラムは取り立てて焦る様子もない。

 

「ガキ共の目的は、恐らく警備システムの復旧だ。100階から200階までの隔壁を全て上げろ」

『え?』

「言うとおりにしろ」

 

 龍悟達の狙いが読まれている。冷静に指示を出したウォルフラムにオールマイトは焦燥に駆られていた。

 

 

 

 

 その頃、龍悟達は120階の通路を駆けていた。

 

「なんかラッキーじゃね?さっきからシャッターが開きっぱなしなんて」

「うち等のこと見失ったとか?」

「恐らく違う」

「私達、誘い込まれていますわね」

「ああ」

 

 上鳴と麗日の疑問に響香達が答える。拳藤も真剣な顔でひたすら走る。

 

「それでも行くしかない!」

 

 

 130階まで上がってきた龍悟達は最上階への通り道であるフロアの扉の前で罠を発見した。実験場である其処には、警備マシンがうじゃうじゃ居た。

 

「なんて数なん……!」 

 

 ドアの窓からこっそり覗いた麗日がその数に驚く。70体は居るだろう。

 

「やっぱり捕まえる事に方針を変えたか」

「私等が雄英生って事を知ったんだろう」

 

 轟と拳藤は状況を把握し八百万が強気に微笑んだ。

 

「でも、そうなる事はこちらも予測ずみですわ」

「予定通りでいこう。龍悟君!」

「ああ、いっちょ行くぜ!!」

 

 超サイヤ人・フルカウルに変身した龍悟は空を飛び両手を構える。

 

「スターダストフォール!!」

 

 放たれた光はいくつにも別れ、星屑の様に降り注ぐ。そして一瞬で全ての警備マシンを粉砕した。

 

「よし、先に行くぞ!」

 

 

 

 

『ボス、警備マシンのセンサーに障害が!ガキ共を見失いました!』

「狼狽えるな。恐らくガキんなかに聴覚の鋭い“個性”持ちがいるな……」

 

 

 

 

 135階の非常階段の踊り場で響香がイヤホンジャックを突き刺しながら周囲の音を探る。

 

「下の階から警備マシンの駆動音多数」

「上から音は?」

 

 龍悟の問いに響香は確信をもって簡素に答えた。

 

「ない。大丈夫」

 

 響香の情報を得て走り出す。そしてやって来たのは大型コンピュータが何台も置かれた巨大なサーバールームだった。最上階へと駆けていた龍悟達が何かに気づいて立ち止まる。奥の扉が突然勝手に開き始めたのだ。その中にはぎっしりと並んだ警備マシンがいた。その数は実験場の比ではない。一斉にランプが点灯し起動すると龍悟達に向かって前進してくる。聴覚に鋭い“個性”持ちが居るとふんだウォルフラムが龍悟達が近づいてくるまで警備マシンを起動させなかったのだ。

 

「くっ……罠か!」

「この程度!!ビックバン「待って!ここのサーバーに被害が出たら警備システムに影響が出るかも……」…くそったれ!」

 

 その時、上から音が聞こえ見上げると天井近くのタラップから警備システムが次々と落下してくる。

 

「どんだけいんだよぉぉお〜!!」

 

 峰田が絶望して叫ぶ。一斉にマシンが襲いかかってきた。響香が叫ぶ。

 

「龍悟、メリッサさんを連れて別のルートを行って!」

 

 叫ぶ響香にマシンが襲いかかるが……

 

「火竜の鉄拳!!」

「レシプロ・エクステンデッド!!」

 

 赤い炎を纏った轟の拳と青い炎を纏った飯田の蹴りに粉砕された。

 

「此処は!!」

「僕達に任せろ!!」

 

「…………メリッサ、頼む」

 

 駆け出す龍悟の後を追ってメリッサが駆ける。

 

「一佳ちゃん!龍悟君とメリッサさんの事お願い!」

「お茶子……わかった!!」

 

 その後を拳藤も追った。襲いかかるマシンを前に構えながら響香は笑った。

 

 

「悪いけどあんた等は…ウチ等と踊ってもらうよ!!」

 

 

 

END

 

 

 



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俺が居る

これからも出すべきか迷ってるゴシベジ劇場

ゴジータ「祝、UAが200000突破!」
ベジット「いや〜めでたい!これも見てくれる皆のおかげだな!本当にありがとう!!」
ゴジータ「しかし、平成も終わったな………」
ベジット「ああ、令和になって……ドラゴンボールはどうなるんだろうな……俺等出るかな……とう言うか俺は今まで敵を倒した試しがないんだが……」
ゴジータ「………………それはともかくこの劇場版もいよいよ2、3話で終わりそうだな」
ベジット「そしたらアニメ3期に突入だ、それじゃあ令和最初の投稿をどうぞ!!」





 

 実験場を出たあと、全力で非常階段を180階まで駆け上がってきた龍悟達はメリッサの案内である扉の前に来た。その扉を破壊すると、とたんに風が吹きこんでくる。

 

「此処は?」

「風力発電システムよ」

 

 其処はタワーの空洞部分に作られた風力発電エリアだった。

 

「どうして此処に?」

「タワーの中を昇れば、警備マシンが待ち構えている筈。だから此処から一気に上層部へ向かうの。あの非常口まで行ければ………」

 

 およそ20階ぶんの高さはあるような発電エリアの天井に、小さな非常口の扉があった。だがその時、少し離れた所で音がした。振り返った一同が見たのは、奥の扉からぞろぞろと入ってきた警備マシンだった。

 

「迷ってる暇はないな…俺に掴まれ!」

 

 その言葉に頷き、メリッサと拳藤は龍悟にしっかりと掴まる。それを確認した龍悟は舞空術で一気に飛び上がった。すぐに発電エリアの天井が見えてきた。

 

「使わせて貰うぞ、メリッサ!」

 

 龍悟がボタンを押すとフルガントレットが右腕に装着される。龍悟は渾身の力を込めて叫んだ。

 

「ワン・フォー・オール、フルカウル!デトロイト・スマーッシュ!!」

 

 指先までワン・フォー・オールが行き渡った拳が天井にある非常口の扉を破壊した。

 

 

 

 

 管制室の眼鏡の男から追っ手を潜り抜けた龍悟達の報告を聞いたウォルフラムは僅かに顔を曇らせた。

 

「ソキル達を向かわせろ」

『はい!』

「俺が行くまで制御ルームは死守しろ」

 

 そう指示を出し会場を出ていくウォルフラムの後ろ姿を見ながらオールマイトは必死に耐えていた。

 

(彼等ならきっとやってくれる!)

 

 

 

 内部へと侵入した龍悟達、メリッサが聞いてくる。

 

「持ってきたのね」

「時間が無かったのと外し方がわからねえ…」

「あ……」

 

 そういえば伝えてなかったとメリッサは照れ笑いを浮かべる。だが次の瞬間、僅かな音と気配を察知した龍悟がメリッサを庇うように抱き込み離れる。間髪入れずにその場所に刃物が突き刺さった。襲いかかってきたのは、刃物の敵・ソキル。刃物に変化した腕を素早く抜き龍悟達に飛び掛かった。だが、龍悟はメリッサを抱えている、そんな龍悟の前に拳藤が出て刃物化していない部分を掴み抑える。

 

「胸糞悪い、ヒーロー気取りのガキ共が!!」

 

 今までの苛立ちをぶつけるように感情丸出しで吠えるソキルに拳藤が言う。

 

「そりゃ…私等はヒーロー目指してやってるんだ!!」

 

 拳藤はソキルの腹に膝蹴りを叩き込み引き離す。そしてすぐさま……

 

「双大拳!!」

 

 強烈な一撃を叩き込んだ。ふっ飛ばされたソキルは階段に激突し気を失った。

 

「わりぃ…助かった」

「気にしない、気にしない……先に行こう」

 

 その後、階段に待ちかまえて居た手下達を倒し階段を上った龍悟達は200階の通路に出た。様子を伺いながら誰もいない事を確認して駆けだす。

 

「制御ルームの場所は?」

「中央エレベーターの前よ」

 

 一気に角まで走り、周囲を警戒する。すると何処かへの入り口が開け放されていた。

 

「誰か居るよ」

 

 その中の人影に気づき敵かと身を潜める。その人物を見たメリッサがハッとした。

 

「サムさん?」

「確かにそうだ……だが、近くに何か…」

 

 それは保管室で懸命にコンソールを操作しているサムだった。そして近くには……

 

「パパ!?」

 

 金属の様な物で拘束されて転がっているデヴィットが居た。

 

「龍悟……もしかして」

「ああ…」

「助けないと!」

 

 何かを察した龍悟と拳藤…心配に顔を歪めるメリッサと共に慎重に近づいていく。

 

 

 

 

 

 

 ブロックの様なボックスが壁に敷き詰められ天井まで続いている保管室で、敵達に連れてこられプロテクト解除を続けていたサムの顔が突然歓喜に溢れる。

 

「や、やった!解除できた!!」

 

 急いで階段を上がり、一一四七と書かれたブロックに近づく、中にはアタッシュケースが入っていた。

 

「全て揃ってる」

 

 中に入っていたのはデータの入ったケースと、小さめの丸い形の物に大きなフックがついている装置だった。拘束され動けないデヴィットが顔を上げる。

 

「サム……」

「………貴方が悪いんですよ……博士」

 

「パパ!!」

 

 その時だった。メリッサが保管室に現れサムとデヴィットは驚く。

 

「メ、メリッサ…!」

「お嬢さん、どうして此処に?」

「どうしてって……こっちこそ聞きたいわよ!パパが悪いってどう言う事なの!?」

「簡単だ、メリッサ」

 

 メリッサに続いて龍悟と拳藤が入ってくる。

 

「今回の首謀者はそいつなんだ」

「!?」

 

 龍悟の言葉にメリッサは言葉が出なかった。父の助手として長年仕えてきたサムが首謀者だと言う事実が……

 

「その装置を手に入れる為か」

「……ええ、機械的に“個性”を増幅させる、この画期的な発明を……」

 

 サムの言葉にメリッサと拳藤は疑問を抱き、龍悟は嫌な思い出を思い出すように口を開いた。

 

「…個性の増幅…4、5年前…鳴羽田で頻繁に起きた…敵事件の原因…【薬物・トリガー】……それと同じか?」

 

「そんな物じゃあありません。薬物などとは違い、人体に影響を与えず“個性”を増幅させる事ができます。しかしこの発明と研究データはスポンサーによって没収。研究そのものが凍結された………手に入れる筈だった栄誉も名声も……全て消えてしまった!」

 

 

 そう叫ぶサムの顔は酷く弱々しいものだった。だが、龍悟達は引かなかった。

 

「その為に敵を呼び寄せたのか」

「この島の人達を危険にさらして……皆がどんな目にあったか!」

 

 龍悟と拳藤の言葉にデヴィットは困惑する。

 

「どう言う事だ……敵は偽物、全ては芝居の筈…」

 

 その時、入り口から高圧的な声がした。

 

「勿論芝居をしてたぜ。偽物敵という芝居をな」

 

 眼鏡の男を連れ笑うウォルフラムの姿に龍悟はハッとする。

 

「ーー奴は!」

 

 会場にいた敵だと認識し、龍悟は行動に移そうとするが、その前にウォルフラムの鉄製の扉に触れていた手が光った。直後、手すりがメキメキと外れたかと思うや否や、まるで生き物のように龍悟と拳藤に襲いかかる。絡め取られ壁にぶつけられ、全身を鉄で貼り付けにされた。

 

「龍悟君!拳藤さん!」

 

 メリッサが慌てて駆け寄る。

 

(金属を操る“個性”か……!)

「大人しくしていろ。サム、装置は?」

 

 ウォルフラムはサムを見る。サムは小走りでウォルフラムの元に駆け寄っていく」

 

「こ、ここに」

「サム……?」

 

 唖然としていたデヴィットの顔が徐々に驚愕に歪んでいく。

 

「……まさか、最初から敵に渡すつもりで……」

 

 デヴィットは己を恨んだ。自分がもっと早く計画を中止させていればこんな事にはならなかった……自分の弱さがこの結末を呼んでしまった。

 

「約束の謝礼だ」

 

 そう言ってウォルフラムが向けたのは銃口だった。挨拶する様に発砲された弾がサムの肩口に命中する。

 

「ぐ、はあっ!」

 

 倒れ込むサムにデヴィットが驚愕する。メリッサも思わず口元を抑える。

 

「な、なぜ……約束が違う!」

「約束?忘れたな〜」

 

 計画を立てたサムも敵に利用されていたのだ。ウォルフラムはサムを無視し拘束されているデヴィットの背中を強く踏みつけた。

 

「がはっ!」

「しかし、つまんねぇな〜オールマイトの親友が悪事に手を染める…なのに踏みとどまりやがって、“あの方”もがっかりするだろうよ!」

 

 苦しそうなデヴィットを見下ろし更に踏みつける足に力を込めた。

 

「パパッ!」

「来るな!!」

 

 駆け寄ってきたメリッサに向かってデヴィットが叫ぶ。だがウォルフラムがメリッサを容赦なく殴り飛ばした。

 

「ああっ!!」

「メリッサ!」

 

 床を転がるメリッサにデヴィットが悲痛な声をあげる。ウォルフラムは下衆な笑みを浮かべ銃口を向ける。

 

「とりあえず……アンタには絶望してもらおうか」

 

 メリッサは思わず目を瞑る……だが、何時までたっても痛みがこない、不思議に思って目を開けると。

 

「いい加減にしろよ……このクズ野郎!!」

「ぐはっ!!」

 

 超サイヤ人Ⅱになり拘束を破った龍悟がウォルフラムを殴り飛ばしていた。

 

 

 

もう大丈夫!ーー何故って(もう大丈夫!ーー何故って)

 

 

 その後ろ姿が重なる……自分の大好きなヒーローの姿と。

 

俺が居る!!(私が来た!!)

 

 

END

 

 



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更に向こうへ、昇れ龍よ!!

 超サイヤ人Ⅱに変身した龍悟…拘束されていた拳藤を開放する。

 

「メリッサ、敵は俺に任せろ。皆を頼む…」

「………!」

 

 メリッサは涙を振りきり、もたつく足で懸命に入口へと駆け出す。

 

「拳藤、博士とその元助手を連れてメリッサについてやってくれ」

「わかった……勝ってよ!!」

 

 そう言ってデヴィットとサムを大拳で担いでメリッサの後を追う。

 

「追え!逃がすな!」

「はい!」

 

 それに気づいたウォルフラムに言われ眼鏡の敵が慌ててメリッサ達の後を追う。だが、凄まじい速さで飛んできた“何か”が眼鏡の敵を吹き飛ばす。

 

「行かせねぇよ」

 

 それは神龍拳・五星龍を発動させた龍悟がその拳で眼鏡の敵を殴り飛ばしたのだ。

 

 

「調子に乗るなぁ!!」

 

 ウォルフラムの怒号と共に天井から伸びた鉄柱が次々と襲いかかる。龍悟も拳を構えて迎え撃った。

 

 

黒い蛇群(ブラックマンバ)!!」

 

 ワン・フォー・オールで強化された“黒鞭”を凝縮・圧縮した疑似腕を数が増えたと錯覚する程の速度で拳を打ち出した。蛇の大群の如く放たれた連撃は次々と鉄柱を粉砕していく。ウォルフラムも負けじと鉄柱を増やして龍悟とぶつかり合う。

 

 その頃、制御ルームにたどり着いたメリッサ達…メリッサが素早く正確に警備システムを再変更するべくキーボードを操作する。今がメリッサの戦いだ。そして勝負はすぐに決着する。非常事態を表していたモニターが次々とシステムが正常に戻った事を表示していく。それを示す様にタワー内の照明が復旧した。閉じていた各フロアの障壁も次々と開いていく。

 

 

 

「…止まった…?」

 

 サーバールームで戦闘していた響香達…突然停止した警備マシンに唖然としたが飯田はパッと顔を輝かせた。

 

「龍悟君達…やってくれたか!」

 

 

 

「チッ、警備システムを戻したのか!」

 

 保管室でもついた明かりにウォルフラムが憎々しげに叫ぶ。だが、その事に意識がいってしまい隙を見せてしまった。変幻自在の五星龍の拳が鉄柱を掻い潜りウォルフラムに向かってくる。

 

「クソ!」

 

 すぐさま何重にも壁を作り出すが……

 

「無駄だ!ぶち破れ、(パイソン)!!」

 

 龍悟は黒鞭と気の出力を上げる。更に力が籠められた拳は次々と壁をぶち破る。そしてウォルフラムを守る壁はもう無い。

 

 

大蛇砲(カルヴァリン)!!」

 

 龍悟の強烈な一撃はウォルフラムに炸裂する。

 

「ゴハァ!」

「終わりだぁぁぁぁあ!!」

 

 そのまま腕はどんどん伸びていき壁をぶち破り屋上にあったヘリポートまで吹き飛ばした。そして脱出する為に用意したであろうヘリにぶつかり爆発…炎上した。

 

「終わったか……」

 

 ヘリポートまでやって来た龍悟は倒したのかと…燃え上がるヘリを見ていた…

 

「龍悟!」

「龍悟君!」

 

 其処に警備システムを再変更したメリッサと拳藤がやって来た。

 

「拳藤、メリッサ…警備システムは…」

「元に戻ったわ…今、マイトおじさまが残党達を制圧しているしパパも他に異常はないか島中を調べてる。もう大丈夫よ」

「首謀者に勝ったんだよね」

「ああ…まぁ、流石にあのままじゃあ焼け死んじまうし、そろそろ……!?あぶねえ!!」

 

 そろそろ、ウォルフラムを回収しようとしたその時、何かを感じた龍悟は拳藤とメリッサを抱えてこの場から離れる。突然ヘリの残骸から飛び出した鉄柱が先程まで龍悟達が居た場所に襲いかかったのだ。

 

「え?」

「何…今の?」

 

 突然の事に唖然とする拳藤とメリッサ。次に足元が揺れ轟音と共に割れる。金属が凄まじい勢いで形をなしていく。床下に埋まっていたパイプもヘリの残骸も何もかも“それ”にも飲み込まれていった。うねるパイプはまるで筋肉組織の様に蠢き、鉄は熱を持って蠕動する。あまりに禍々しい形成物と一体化しその頂点にいるのはウォルフラムだった。

 

 

「流石、デヴィット・シールドの作品。“個性”が活性化していくのがわかる……ははは、いいぞこれは!いい装置だ!!」

 

 仮面がないその顔にはフックの様な物が固定する様についている。それはデヴィットが発明した“個性”を増幅させる機械だった。

 

「あの時か…!」

 

 龍悟の一撃を壁で防いでる間にその機械をつけていたのだ。崩れた金属がウォルフラムを更に巨大にしていく。崩れる足場に巻き込まれない様に空を飛んでいる龍悟達も絶句する。

 

「これが博士の…」

「パパが作った装置の力……」

 

 拳藤とメリッサが呆然と呟く。崩壊していくタワーを喰らい尽くす異形。力を増す自分に酔いしれながらウォルフラムは笑い叫ぶ。

 

「さて、この装置の価値を示す為にまずは将来有望なヒーロー候補をぶっ潰すとするかぁ!」

 

 そう叫ぶと次々と鉄柱が龍悟に襲いかかる、反撃したいが拳藤とメリッサを抱えており出来ない。下ろしても巻き込まれてしまう。ゆえに回避に徹しなければならなかった。

 

「しっかり掴まってろ!!」

 

 襲いかかる鉄柱を回避し続ける。だが数はどんどん増えていき追い詰められていく。そして遂に鉄柱に囲まれてしまった。

 

「しまった!!」

「ようやくそのポーカーフェイスが取れたな!!潰れちまえ!!」

 

 両手が塞がってしまっているし、絶対絶命と思われたその時…

 

「龍悟!!」

 

 ヘリポートの方から声が聞こえる。其処には響香達が居た。すぐさま瞬間移動で響香達の方に移動し難をのがれる。

 

「悪い…助かった」

「そんな事より…何アレ……」

 

 響香達もウォルフラムの禍々しさに唖然とする。

 

「アレが敵達のボスだ……博士の装置を使って“個性”を強化したんだ。このままだとこの島丸ごとアイツに飲み込まれちまう……」

 

 説明している間にも鉄柱が襲いかかるが轟が一気に凍らせる。

 

「なら、此処で倒すしかねぇ」

「ああ…行くぞ!!」

「八百万君達は此処を頼む!」

 

 龍悟・轟・飯田が一気に駆け出す。

 

「鉄柱は俺達に任せろ!」

「君は本体を!!」

「任せた!!」

 

 

 飯田が蹴りで鉄柱を砕き、轟は氷結で鉄柱を凍らせていく。龍悟がウォルフラムへと飛び出した。自分に向かってくる鬼気迫る龍悟にウォルフラムは何本もの鉄柱を突撃させる。

 

 

「スターダストフォール!!」

 

 放たれた流星が次々と鉄柱を砕き龍悟は突っ込む。

 

「終わりだぁ!!」

 

 その勢いでウォルフラムに向かって拳を振りかぶる。しかしその時、後方の鉄柱から無数のワイヤーが伸び龍悟の両手足を拘束する。

 

「こんな物」

 

 ワイヤーを引きちぎろうとするがその前にウォルフラムの腕が龍悟の首にかかった。片手で絞めるように掴んだ腕が異様に膨らんでいく。

 

「終わりだぁ!?そりゃお前だ」

 

 不気味な笑みを浮かびウォルフラムは力を強める。

 

(なんだ……いきなり気が増大した…!)

 

「龍悟!」

 

 何とかしようと響香が駆け出そうするが次第に崩れていく足場に立ち往生してしまう。

 

「クソ!」

 

 轟も次々と襲ってくる鉄柱に対処するので限界だ。

 

(これは筋力増強……“個性”の複数持ち……)

 

 その時ある言葉が脳裏に過る。

 

『“あの方”もがっかりするだろうよ!』

 

 疑問は確信に変わった。

 

「そう言う……事か…」

 

 龍悟を楽しげに見下ろしながらウォルフラムが口を開く。

 

「ああ……この強奪計画を練っている俺に是非とも協力したいと連絡をくれた方が居た。その方こそ!」

 

「……オール・フォー・ワン……」

 

 裏で糸を引いていたその名前を呟いた。ウォルフラムは愉快そうに見下ろした。

 

「答え合わせも済んだ事だ……さっさと潰れろ!!」

 

 ウォルフラムは四角く大きい鉄の塊を左右から龍悟にぶつけた。

 

「………!」

 

 愕然と目を見開く拳藤の前でウォルフラムの周りに浮かんでいた鉄の塊が勢いをつけて次々と龍悟を襲う。

 

「龍悟君!」

 

 総毛立つメリッサの視線でウォルフラムが声高に腕を振り上げる。

 

「さらばだ、ガキ!!」

 

 すると地面から鋭い鉄柱が何本も伸び龍悟を閉じ込めている鉄の塊を貫いた。

 

「いやぁぁぁぁあ!!」

 

 悲痛なメリッサの叫び……だがその時、その鉄の塊が眩い光と共に崩壊した。

 

「な、なんだこれは!」

 

 ウォルフラムも目の前にそびえ立つ金色の柱に驚愕する……やがて光が消え見えてきたのもは……

 

 

「貴様だけはゼッテェに許さねぇ!」

 

 

 それは、髪が膝余りまで伸び、眉毛が消えて顔つきが厳つくなる。全身を包む黄金の気が一層眩くなり、真紅のスパークが力強く迸る。超サイヤ人Ⅲへと変身した龍悟が佇んでいた。

 

「くたばりぞこないのガキが……ゴミの分際で往生際が悪ぃんだよ!」

 

 ウォルフラムが湧き上がる怒りに叫びながら腕を振り上げる。小さな鉄片が無数の塊になり龍悟に散弾の様に襲いかかる。

 

 

「それがーーヒーローだぁ!!アイスメイクーー戦神槍(グングニル)!!」

 

 轟が造形した神槍が放たれた散弾を一掃する。龍悟はウォルフラムに向かって突っ込む。すかさず地面から鉄柱が矢の様に襲いかかる。

 

「やらせないし!!ハートビートファズ!!」

 

 響香が衝撃波で鉄柱を崩壊させる。先端にプロペラのついた鉄柱が龍悟に迫る。高速で回転するブレードは触れるものを鮮やかに切断するだろう。しかしそれ以上の速度で回転し青い炎を纏う飯田が突撃する。

 

「道は僕達が切り開く!!レシプロ・エクステンデッド!!」

 

 臆することなく飯田はプロペラごと鉄柱を破壊する。メリッサは道を切り開く飯田達と輝く龍悟の姿を揺れる視界でじっと見ていた。命懸けで誰かを救おうとする姿から目が離せないのは、きっとそれが希望だからだ。

 

「ぐぐぐおおお!!」

 

 ウォルフラムが力を振り絞る様に両手を高く上げる。同時にたくさんの鉄片が猛スピードで一つに集まっていく。人が蟻に見える程に更に大きくなっていく。

 

 

 だが、それでも誰も臆したりはしない……だって龍悟が居るから。何時だってどんな時だって彼は皆の信頼にこたえてくれた。ウォルフラムに向かっていくその背中には…勝ってくれる・何とかしてくれる…そう思わせてくれる頼もしさがある。

 

 

「「「龍悟(さん)!!」」」

 

 上鳴・峰田・八百万が叫ぶ。

 

 

「俺がやらなきゃ……」

 

 

 ゴジータには強さしかなかった……強敵と戦う僅かな時間しか存在出来ない。そんな自分はあの時に消える筈だった。

 

「「龍悟(君)!!」」

 

 飯田と轟が託す。

 

 

「俺がやらなきゃ!」

 

 

 だけど自分は今、確かにこの世界に存在し続けている。夢に向かって走っている。

 

 

「「いけぇぇええ!!」」

 

 麗日と拳藤、そして…

 

 

「「ゴジータ(ヒーロー)!!」

 

 響香とメリッサが祈る。今の自分には信じてくれる仲間達が居る、悟空としてではなくベジータとしてでもない……龍悟(ゴジータ)の仲間達が…彼等が信じくれるのなら自分がやらなければ……

 

 

「誰がやる!!」

 

 

 龍悟は右手を強く握り拳を構える。ウォルフラムも怒号と共に腕を振り下ろした。

 

「タワーごと潰れちまえ!!」

 

 巨大な鉄の塊が龍悟に向かって落ちていく。だが龍悟には恐れは微塵もない、超サイヤ人Ⅲの気を拳一点へ集約させる。すると龍悟は巨大な龍に姿を変えた。これこそが超サイヤ人Ⅲの最大の切り札。

 

 

「龍拳!!!!」

 

 

 神々しく輝く龍はその勢いで巨大な鉄の塊とぶつかり合う。鉄の塊を介して猛烈な力にウォルフラムが押され始める。

 

「おおおおぁ!!」

 

 右腕に装着されているフルガントレットにヒビが入る。それでも龍悟は止まらない。

 

「ぐ……ぐぐ……ガバッ!」

 

 必死に抵抗するウォルフラムの後頭部に装着している個性増幅装着がオーバーワークで異常動作を起こす。装置を上回る龍悟の力にウォルフラムがとうとう耐えきれずに大きく腕を弾かれた。それと同時に鉄の塊が黄金の龍に砕かれる。砕いてもなおを龍は止まらない。

 

 

『いけえぇぇ!!』

 

 皆が声を張りあげた。その思いを受け取りながら龍悟は再び拳を構える。龍悟はそのままワン・フォー・オールの主力を100%まで引き上げる。フルガントレットが悲鳴をあげるがそれでも龍悟の負担はない。

 

 龍拳の周りに光が現れる。白・水色・赤・黄緑・黄土色・紫・黄金の光は龍拳の周りを螺旋の様に漂うがやがて龍拳の中に居る龍悟の右拳が虹色に輝くと同時に龍拳と一つになる。すると黄金に輝いていた龍は虹色に輝き更に強さをました。余りの美しさに響香達が見惚れる。

 

 

「更に向こうへ!!ーーPLUS ULTRA(プルスウルトラ)!!!!」

 

 

 その言葉と共に龍拳が咆哮を轟かせる。ウォルフラムは恐れ金属の中に身を隠す。虹色の龍が金属の塔を一瞬で崩壊させ天に上っていく。そして眩い輝きが全てを照らした。余りの輝きに誰もが目を瞑る。そして見えてきた時には金属の塔はなくなっていた。

 

「やったのか……」

 

 飯田が唖然と呟く、その後ろで峰田が拳を振り上げた。

 

「やったんだ……龍悟が勝ったんだ!!」

 

 じんわりと伝わった勝利に皆に笑顔が戻る。その時残党を拘束していたオールマイトがデヴィットを連れてやって来た。

 

「無事だったか、皆!!」

「メリッサ!大丈夫だったか!?」

 

 そんな二人にメリッサは笑って答えた。

 

「大丈夫よ、おじさま、パパ……“ヒーロー”が助けてくれた」

 

 その言葉にオールマイトは彼が解決してくれた事を悟り安堵する。不思議に思ったデヴィットはメリッサが指差す方向を見る。

 

「ああ…!」

 

 

 其処には吹き飛んだ雲から差し込む朝日に照らされる龍悟が居た。拳を天に突き上げたままの龍悟は勝利の笑みを浮かべ、拳を強く握った。

 

 デヴィットは一瞬若き日のオールマイトの幻と重なって見えた。自分を顧みず誰かを助ける親友が未来を託した少年。

 

 

 ーーあぁ、ヒーローだ。

 

 

 

END

 

 

 




長くなりました……元ネタは言わずもがな【龍拳爆発!悟空がやらねば誰がやる】です。超サイヤ人3ファンには特にオススメの作品でこれなくして3は語れないです。次回で劇場版編はおしまいです。


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未来に向かって

5月9日は悟空の日……投稿しない訳にはいきませんそれではどうぞ!!


 I・アイランドの中にある湖の側にあるテラスで美味しそうな肉や野菜が鉄板グリルの上で焼かれている。食べ頃とばかりに肉汁が溢れ出しそうだ。

 

「さぁ、食べなさい!」

「遠慮はいらないよ!」

 

『いっただきまーす!!』

 

 肉を焼いていたマッスルフォームのオールマイトとデヴィットの声に周りで今か今かと見守っていたA組の食いしん坊達が声をあげた。昨日の事件で予定されていたエキスポ一般公開は延期された。イベントの延期の代わりにオールマイトがバーベキューを皆にご馳走する事にしたのだ。食材はデヴィットが用意してくれた。

 

 肉だ肉だと大はしゃぎする上鳴や切島、串に刺さってる肉にかぶりつく芦戸、麗日と蛙吹がお互いに食べさせ合ってる。

 

「うう〜ん!美味しいね、梅雨ちゃん!」

「ええ、青空を見ながらだと余計に美味しく感じるわ」

「バーベキューなんて初めてですけれどとても美味しいですわ。今度庭でもやってみようかしら」

 

 そう言う八百万の前には既に食べ終えた皿と串が積み重なってる。轟が口を開く。

 

「そんなに腹減ってたのか」

「ええ、昨日ずいぶんと脂質を使いましたので…たくさん食べて補充して出せるようにしないといけません」

「ウ○コみてぇ…」

 

 瀬呂の一言が八百万のライフを吹き飛ばした。

 

「謝れ!!」

「スミマセン!!」

 

 響香の怒りの龍爪演舞が瀬呂をKOした。他にも砂藤と葉隠が多食い対決をしたり爆豪が切島達と肉にかぶりつく、なんとなく良い雰囲気だ。

 

「ここらへんもういいぞ」

「ヒャッホー!」

 

 別の鉄板では障子が焼いた肉を峰田がかっぱらった。それを見逃す飯田ではない。

 

「峰田君!他の人の分をちゃんと配慮しよう!!」

「何時でもブレないな」

 

 その様子を障子は複製腕で食べながら見ていた。

 

「両手に肉を持たせろよ〜オイラのハーレムの夢がなくなっちまったんだから!」

「相変わらずクズだねアンタ、今回の旅費も全額負担してくれるのに」

 

 響香の絶対零度の視線が峰田に刺さる。本来なら真相は明かさない様にするべきなのだが……流石にウォルフラムとの戦闘までは隠し通す事ができなかった。そこでオールマイトの指示の元あのヒーロー殺しを捕まえた実績もある龍悟・響香・飯田・轟が解決したと発表したのだ。しかもI・アイランドでの活躍なので世界中に名が知れ渡るだろう。I・アイランドを救ってくれたお礼として麗日達も含めて龍悟達の旅費も全額負担してくれる事になった。

 

 そして龍悟は……八百万以上に食べていた。既に食い終わった皿が何重にも重なっており近くに居た常闇が唖然としている。そんな龍悟にメリッサが近づく。

 

「体は大丈夫?」

「あぁ…心配いらねぇ。それにしてもすまねぇな、フルガントレット…壊しちまって」

 

 あの虹色の龍の力にフルガントレットが耐えきれず崩壊してしまった。もう修理は不可能だろう。

 

「ふふっ、そんなこと…また作れば良いのだから」

 

 メリッサが龍悟の手を握る。

 

「本当にありがとう……助けてくれて」

 

 何か言おうとする龍悟を止めてメリッサは語る。

 

「私を守ってくれた事…パパを助けてくれた事……そして誰もいなくなった皆の為に命懸けで戦ってくれた事…感謝してもしきれないわ……貴方という希望が私の絶望を吹き飛ばしてくれた」

 

 心なしか彼女の頬が赤く染まっているようにも見えた。

 

「ねぇ…卒業したらどうするの?」

「まだ入学したばかりだぜ……考えてないな」

「なら……私と一緒にコンビを組まない!パパとおじさまの様に!!」

「何?」

 

 

 メリッサの言葉に龍悟は首を長くして傾げ周りの響香達も驚きが隠せない。龍悟は空を見上げる……やがて頬を緩め笑った。

 

「そうだな…世界に出るのも悪くねぇ…」

「ふふっ、いい返事を待ってるわ!!」

 

 

 メリッサはそう言うと響香達の方へ歩み寄る。拳藤が焦ったように聞いてきた。

 

「メ、メリッサさん!あ、あの、今のって!?」

「あら、私だってまだ高校生よ…」

 

 メリッサは意地悪そうに笑った。

 

 

「素敵な出会いに胸が踊るわ!」

 

 

 メリッサの言葉に唖然とする響香達…わなわなと震え龍悟の方を見るがーー其処には誰もいない。

 

「龍悟ならオールマイトを追いかけに行ったぞ?」

 

 轟の言葉が静かに聞こえた。

 

 

 

 

 テラス近くの公園にやって来た龍悟は其処から見えるタワーを眺めた、昨日の戦いで上部が崩れている。その時、ふいに横に人影が差す。

 

「オールマイト」

 

 隣に立ったトゥルーフォームのオールマイトもタワーを見つめる。暫くして龍悟が口を開いた。

 

「この事件の裏にはオール・フォー・ワンが居た」

「聞いたよ…ウォルフラムと言う敵には複数の個性があった……いよいよ、動き出した」

 

 深刻そうに言うオールマイトに龍悟は笑って答えた。

 

「終わらせてやるよ、俺が全て……だから安心して見てろ……“俺が来た”って所を…」

「孫少年……」

 

 

 それだけ伝えると龍悟は戻っていった。その様子を見ていたデヴィットがオールマイトの隣に立つ。

 

「メリッサが私のあとを継ごうとしている様に、ソン・リュウゴ……彼が君のあとを継ぐ者なんだな」

「あぁ…私を超える…最高の弟子だ」

 

 確信しているオールマイトの横顔にデヴィットは穏やかな笑みを浮かべ龍悟の背中を見つめる。

 

「私にも見えるよ、トシ……君と同じ光が……ヒーローの輝きが……」

 

 

 

 

 

 

 

 皆の所に戻ってきた龍悟……だが、空気が重い。不思議に思う龍悟だが…響香達の顔を見るとポーカーフェイスが崩れ冷や汗が流れる。

 

「ねぇ龍悟…O☆HA☆NA☆SI…しよう」

 

 目が一切笑ってない響香達に震えながら龍悟は答えた。

 

 

「………わりぃけど急ぎの用事ができちまったんで…ちょっくら行ってくる!!」

 

 

 すぐさま逃げ出す龍悟……だが足にモギモギが腕にテープが巻かれてしまう。

 

「峰田!瀬呂!オメェ等何やってんだぁぁぁあ!!」

 

「うるせぇ!このクズ野郎!!」

「またフラグ立てやがって!!」

 

 そうしてる間にも響香達が近づいて来る。

 

「飯田!轟!常闇!障子!助けてくれ!!」

 

 叫ぶ龍悟だが……飯田達は響香達の威圧に動けなかった。修羅場を楽しげに見る芦戸達…血の涙を流す上鳴…そんな皆に囲まれる龍悟を見ながらメリッサは笑った。

 

「返事…待ってるからね」

 

 

 

 

 

 

 二羽の鳥が空を飛んでいる。競うように、導く様に、慈しむ様に……そして、輝く太陽の光を目指す様に。

 

 

 ーー未来に向かって。

 

 

 

 

 




ようやく【劇場版】激闘のI・アイランド!ゴジータがやらねば誰がやる!!が終わりました。これからアニメ三期に突入します。

それとですが最近評価が下がる一方でモチベーションが……何か要望等があれば遠慮なく感想に書いてください。できる限り叶えようと思います。


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五章・林間合宿
合宿の始まり


ゴジータ「ランキングに載ったぞぉおお!!」
ベジット「よっしゃぁぁあ!!」
ゴジータ「この度は皆のおかげでなんと!日間ランキングにこの絶対無敵のヒーローアカデミアがランクインしたんだ!!」
ベジット「それに昨日から今日までで評価を凄まじく上げてくれた!本当にありがとよ!!」
ゴジータ「これからも絶対無敵のヒーローアカデミアをよろしくな!」
ベジット「そして皆に質問なんだか…皆は身勝手か4…どっちが好きだ?ぜひ、感想で教えてくれ」
ゴジータ「それじゃあ…いよいよアニメ三期に突入だ!」


 今は載っているかわかりませんがこの話を投稿する時にはランクインしていたのでご報告させていただきます。この度は皆様のおかげでランクインしました。今後ともよろしくお願いします。







 

 林間合宿当日

 

 集合場所には既にA組の面々が揃っていて大型バスが2台停まっていた。

 

「あはは!!聞いたよ!!A組、補習いるんだって!?つまり赤点取った人がいるっ「デカイ荷物は早めにしまっておこう!テキパキいこう!!」オーイ!!」

 

 やって来た龍悟達に誰かが何か言った気がするが…気のせいだろう。あるとすれば、峰田がB組の女子を欲望まみれの目で見ていた。

 

「よりどりみどりかよ...」

「おまえダメだぞそろそろ」

 

 切島の注意も耳に入っていない。その後、理由は不明だが峰田は相澤先生の隣の席に座っており響香の隣で音楽を聞いている龍悟を睨んでいた。

 

「…この恨み…忘れんぞ…龍悟…」

「…お前本当にいい加減にしろよ…」

「は、はい!」

 

 

 

 

 

 

 そしてA組を乗せたバスは見晴らしのいい空き地に止まった。ちょっとした展望台のようなそこには何もない。てっきりトイレ休憩か何かかと思っていただけに、その止まった意図に疑問を持った。

 

「…つか何ここ。パーキングじゃなくね?」

 

 切島の疑問の言葉。龍悟が目を細める。

 

(凄く悪い予感がする…)

 

 その時…

 

「よーうイレイザー!!」

「ご無沙汰しています」

 

 相澤が頭を下げた。相手はコスチュームを身に纏った2人の女性。

 

「煌めく眼でロックオン!」

「キュートにキャットにスティンガー!」

 

「「ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ!!」

 

 決めポーズを決めた2人のヒーローがそこにいた。

 

(ギニュー特戦隊か?)

 

「今回お世話になるプロヒーロー『プッシーキャッツ』の皆さんだ」

 

 

 

 相澤の説明から赤色コスチュームの女性…マンダレイから説明が始まる。

 

「それで、あんたらの宿泊施設はあの山のふもとね」

 

 指差された方向を見れば、はるか彼方に山が見えた。

 

『遠っ!!』

 

 ザワつき始める皆。予感があたったと判断した龍悟は気で感知した。金髪の女性の気がこの辺り一帯の地面に干渉してる。

 

「今は午前9:30。早ければ12時前後かしら」

 

 その言葉に皆がぞっとした顔をしバスに戻ろうと声をあげる。けど、もう遅い。

 

「12時半までに辿り着けなかったキティは、お昼抜きね」

 

 瞬間、地面が波打つのが見える。その光景を前にした龍悟達の耳に、相澤先生の声が聞こえてきた。

 

「悪いね、諸君。合宿はもう始まってる」

 

 急激に盛り上がった土砂が逃げ惑う皆を飲み込んでいく。土砂はうねりをあげながら、悲鳴と共に皆を崖の下へと運んでいった。龍悟は瞬間移動で回避してバスに乗り込もうとする。

 

 

「……孫…」

「何ですか?相澤先生…早く行きましょう」

「お前も行け……」

 

 どうやら龍悟だけ無しにするつもりはないらしい…やれやれと仕草をしながら龍悟は皆の所に瞬間移動した。

 

 

「無事か?」

「一人だけずるいよ……」

 

 響香にジト目で睨まれながら龍悟は全員無事かどうか確認する。

 

「峰田くんがいない!!」

 

 飯田の声を聞いたその時…

 

「うわぁぁぁ!!出たぁ!!」

 

 峰田の悲鳴が聞こえた。視線をそこへと向ければ峰田が土色の四足の獣みたいな奴に襲われそうになっていた。

 

「「マジュウだー!」」

 

 上鳴と瀬呂が叫ぶ。

 

「静まりなさい獣よ。下がるのです!」

 

 口田がすぐさま“個性”を発動するが……効果がない。

 

「ビックバン・アタック!!」

 

 魔獣が爪を峰田に振り下ろそうとする一瞬に伝家の宝刀…ビックバン・アタックが炸裂した。

 

「まだまだ来るぞ!!」

 

 周囲を警戒していた障子の警告と共に何体もの魔獣が押し寄せてきた。

 

「スターダストフォール!!」

 

「アイスメイクー槍騎兵(ランス)!!」

 

 光の流星と氷の槍が魔獣の群れを一掃した。

 

「上等だ。12時30分に辿り着いてやる……行くぞA組!」

 

『応!!!』

 

 

 

 

「いや〜マジか…」

 

 山の麓の合宿施設……金髪の女性…ピクシーボブは唖然としながらボロボロになりながらも12時30分に辿り着いたA組を見ていた。

 

「アレは私達ならって話だったのに…」

「いいよ、凄くいいよ…特に其処の二人、私の土魔獣を一掃するなんてね…流石、I・アイランドを救ったヒーロー候補ね……ツバつけとこー!!」

 

 ピクシーボブは龍悟と轟にツバをつけようとするが…

 

「「「駄目です(ですわ)!!」」」

 

 龍悟の腕を響香と麗日が掴み、轟の腕を八百万が掴んだ。

 

 

「グハァ!!」

 

 何故かピクシーボブが膝をついた。

 

「まさかのどっちも彼女持ちかよ!!ちくしょおーー!!」

「マンダレイ、あの人あんなでしたっけ」

「彼女焦ってるの、適齢期的なアレで」

「適齢期と言えばー」

「と言えばって!!」

 

 何かを言おうとした飯田がピクシーボブに口を塞がれる。

 

「ずっと気になっていたんですが、その子はどなたかのお子さんですか?」

 

 飯田は少し離れた所にいる帽子の少年を指して言った。

 

 

「ああ、違う。この子は私の従甥だよ。洸太!ホラ挨拶しな。一週間一緒に過ごすんだから...」

 

 飯田は洸太君の元へと歩き、手を差し伸べて自己紹介をした。

 

「僕は雄英高校ヒーロー科の飯田だ。よろしく頼む」

 

 返答は股間へのパンチだった。心なしか飯田の眼鏡に亀裂が走ったように見え飯田は倒れ伏した。

 

「な、何故?」

 

 去りながら洸太は言った。

 

「ヒーローになりたいなんて連中とつるむ気はねぇよ」

「いや、つるむって」

「爆豪みてぇな奴だな」

 

 

 その後、昼飯を食べてから部屋に荷物を置いた後、ひたすら戦闘訓練……こうして合宿初日は終わりの時を迎えていた。そして今、龍悟達は露天風呂に入り疲れを癒やしていた。

 

 

「夜空を眺めながらの風呂はいいな…」

「うむ、都会と違って星がよく見える」

「確かに……いいな」

 

 龍悟は飯田と轟と一緒に夜空を見上げながらくつろいでいた。

 

そんな時…

 

「まぁまぁ…飯とかはねぶっちゃけどうでもいいんスよ。求められてんのってそこじゃないんスよ。その辺わかってるんスよオイラ…求められてるのはこの壁の向こうなんスよ…」

 

 そう言い壁に張り付く峰田…壁の向こうは女湯だ。周りの男子は顔を赤くする。

 

「峰田君!君の行為は決して許される事では無い!!」

 

 飯田が叫ぶが…

 

「やかましい」

 

 清々しい笑顔で峰田は言った。

 

「壁とは越えるためにある!!Plus Ultra !この時のために……この時のためにオイラは!!!」

 

 そう言いながらモギモギで壁をよじ登る峰田だが……

 

 ば〜ん!!

 

 峰田が爆発し湯に落ちる。皆が龍悟を見る。龍悟は腕を突き出しながら言った。

 

「汚え花火だ…わりぃな……見苦しい所見せて」

「!」

 

 壁の上から洸太が出てきた。そして女湯から聞こえてきた声に振り返った洸太は女湯を見たショックで壁の上から落ちてしまった。それに龍悟が反応し受け止める。洸太は鼻血が少し出ていて意識を失っていた。マンダレイの所まで運んだが、心配はいらないとの事…そして、聞かされたのはヒーローであった両親が殉職して、それを素晴らしいことだと言われ続けてきたとの事…

 

「……同じヒーローである私等の事も良く思ってないみたいだしさ……迷惑をかけちゃうかもしれないけど…」

「それを気にする程子供じゃないです…大丈夫ですよ」

 

 価値観の違いを感じながら、そう言って龍悟は皆の所に戻った。こうして合宿初日は幕を閉じた。

 

 

END

 

 

 



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究極への道と暗躍する敵

 活動報告で皆さんのご意見をお聞かせください。


 

 翌日、午前5時30分。朝早くだからか昨日の疲れからか皆どこか眠たそうだ。それでも相澤はお構いなしで言い始めた。

 

 

「本日から本格的に強化合宿を始める。今回の合宿の目的は全員の強化及びそれによる“仮免”の取得。具体的になりつつある敵意に立ち向かうための準備だ。心して臨むように、内容は個性の強化だ。だから――死ぬほどキツイがくれぐれも死なないように……やばかったら孫に治してもらえ」

 

 そして、相澤は龍悟の方を見た。

 

「孫、此処なら問題ないだろう。大猿になる事はできるか?」

 

 その言葉に誰もが反応した。

 

「そういや、大猿って“個性”だったな」

「完全に忘れとった」

「耳郎君ですら見た事がないんだろ」

「うん…見た事ない……でも月を見ないとなれないって聞いた」

 

 皆が興味深く見る中…龍悟はある事を考えていた。

 

(夢で見たあの悟空についてわかるかもしれねぇ)

 

 正直に言えば大猿になっても小回りが効かないので余りいい変身とは言わないが…夢で見た赤い体毛を纏った悟空と繋がっているのではないかと龍悟は睨んでいた。

 

「わかりました。離れて居てください」

 

 龍悟は皆が十分な位置まで下がるのを確認すると片手を構えて気を貯め込む…それは強く輝いていた。

 

 ソウルパニッシャーに何処となく似ているそれはパワーボールと呼ばれるもので自らの気で人工的に創り出す仮初の月。一部のサイヤ人はこれを用いる事で満月の夜でなくともサイヤ人の本能である大猿化を為す事が出来る。ベジータが初めて悟空と戦った時に使用していた事もあり龍悟も使う事ができる。

 

 そうして龍悟はパワーボールを空に投げた。

 

「弾けて、混ざれっ!」

 

 龍悟が叫ぶとパワーボールは弾け膨大なブルーツ波を放つ…眼からブルーツ波を吸収し、尾が反応する事で変身が始まる。龍悟の身体は全長にして数十mを越す巨体となり正しく巨大な猿へと姿を変えた。

 

 

「こ、これが大猿…」

 

 相澤すら唖然とする中、響香が呟いた。話は龍悟の両親から聞いた事はあるが実際に見るのは初めてだ。しかも聞いた話では理性がなく暴れ回ったとも聞いた。響香が不安になる中…龍悟は……

 

(よし…意識はあるな)

 

 自分の意識がある事を確認していた。いくらベジータが理性を保っていたといっても不安はあったのでひとまず安心した。

 

「コレデイイカ?」

「!、意識はちゃんとあるな!」

 

 龍悟の声に反応した相澤が確認を取る…もしもの時は抹消で止めようとしていたが意識がきちんとある事に安堵した。

 

「アア…モンダイナイ」

「よし、なら孫は大猿を使いこなすのが課題だ。いいな」

「ワカッタ」

 

「お前等も今ので目は覚めただろ…始めるぞ!!」

『はいっ!』

 

 こうして、合宿での特訓が始まった。

 

 

 

 

 

 

 各自が個性強化プランを実行してる中、龍悟は森の奥深くに居た。大猿で特訓となると流石に場所を選んでしまうので森の奥深くで特訓をしていた。

 

 そして現在はパワーボールの効力がきれ元に戻った龍悟は自分の考えが間違っていない事を実感した。

 

(やはり…あの赤い変身は大猿と深い関わりがある……超サイヤ人のまま大猿になる必要があるのか?)

 

 わからない事が多いが確実に近づいている事を実感した龍悟は……

 

「ここなら見られてねぇ…そろそろ出てきたらどうだ」

 

 

 龍悟達がお世話になるプッシーキャッツは四人組のヒーロー…その内の一人の“個性”はサーチ…様々な情報を見る事ができる。だからA・B組の特訓を見る事ができる。だが、今は見られていない様だ。それを確認したのだろう隠れていた人物が現れた。

 

「流石ですね…ゴジータさん」

 

 現れたのは銀髪の髪に黒いコートを着た青年……

 

「久しぶりだなと言うべきか……“トランクス”」

 

 彼の名はトランクス……あっちの世界の住人で自分(ベジータ)の息子だ。

 

「それにしてもゴジータさんか……父さんとは呼んでくれないのか?」

「え!いや…その!」

 

 龍悟の一言にトランクスは激しく動揺した……確かに彼は自分の父でもあるが……フュージョンするとここまで違うのかと…彼は戦慄した。

 

「フッ……それしても、お前までこの世界に居るとはな…未来世界のトランクスだろお前」

「ええ…俺も驚きましたよ…とう…ゴジータさんがこの世界に転生しているなんて…俺は今、時の界王神様の所でタイムパトロール隊員をやっています」

「時の界王神?」

 

 トランクスが説明してくれた。女性の界王神で東西南北のどこにも属さない時間を司る神の事であり、トランクスが未来に戻り無事に人造人間やセルを倒した所に現れて歴史を守るタイムパトロールにスカウトしたとの事。

 

「なるほどな、それで…俺に用が在るんだろう」

「はい…ゴジータさんもご存知だと思いますが……この世界に現れたトワとミラを倒す為です」

 

 どうやらトランクスによると、トワは暗黒魔界の王ダーブラの妹でミラはトワが作り出した生命体であり奴等の目的はあっちの世界にある現世と魔界を繋げる事により暗黒魔界を復活させる事…その為に時間を移動し歴史を改変…そのエネルギーを吸収している。トランクスも何度か奴等と戦ったそうだが……

 

「ダーブラ……あぁ、魔人ブウに食われた奴か」

「ええ、奴等は強い……特にミラの戦闘力はあの魔人ブウと互角かそれ以上……それにアイツ等はこの世界で敵連合と協力関係を結んだんです!」

「何だと…」

「恐らくはゴジータさんを倒す為とさらなる研究の為でしょう……だから、ゴジータさんに協力してもらおうと此処に来ました」

「なるほどな…これ以上、アイツ等に好き勝手させる訳にはいかねぇ…策はあるのか?」

「はい、この世界は俺達の世界とは違います。ゴジータさんは勿論、俺もトワ達もこの世界に来た時に強制的にこちらの世界のレベルに合わせられました。だから決戦の舞台を俺達の世界に移すんです。俺や奴等も本来の戦闘力になりますがゴジータさんが本来の力に戻るメリットの方が遥かに高い」

「俺はこの世界の住人になっちまったんだが、大丈夫なのか?」

「魂は俺達の世界のままなので大丈夫だと時の界王神様も言っていたので大丈夫です」

「なる程な、わかった」

「じゃあ、俺はそろそろ戻ります」

「そうか……近い内に奴等は仕掛けてくる。気を抜くなよトランクス」

「はい、父さん!……あっ」

「ふっ…」

 

 トランクスは時の界王神に報告する為に一旦、あっちの世界に戻っていったがこちらの世界で奴等の動向を探るようだ。こうして密かに計画は実行された。

 

 

 

 

 

 

 

 訓練終了時間になりA組・B組全員が宿舎前に集合する。そして目につくテーブルに乗せられた山盛りの食材、食器、調理器具。

 

 

「さぁ昨日言ったね『世話焼くのは今日だけ』って!!」

「己で食う飯くらい己で作れ!!カレー!!」

 

 皆はもう言葉をだす気力すらないようだ。

 

「アハハ、全員全身ボロボロ!!だからって雑なネコマンマは作っちゃダメね!」

 

 楽しそうに笑いながら緑髪のヒーロー、ラグドールは言う。その時近くにいた飯田がハッと何かに気付く。

 

「確かに…災害時など避難先で消耗した人々の腹と心を満たすのも救助の一環…流石雄英無駄がない!!世界一旨いカレーを作ろう皆!!」

 

(飯田…便利!)

 

 

 そして時間を掛けてカレーは完成した。

 

『いただきまーす!』

 

「うおおっ!店とかにだしたら微妙かもしんねぇけど状況も相まって更にうめええっ!」

 

 賑やかに作ったカレーをがっつく一同。そんな中、龍悟はもう一つトランクスに聞いた事を考えていた。

 

 それはあの仮面のサイヤ人の事だ。

 

『あのサイヤ人の名は…“バーダック”さん…貴方の…悟空さんの実の父親です』

 

 自分はもうあの人の息子じゃないし…あの人がどんな人かもわからない……だけど…

 

(ほっとく事はできねぇ…)

 

 必ず洗脳から開放させてみせると龍悟は誓った。

 

 

 

 

 

 

 その頃、何処かもわからない場所……其処で敵連合のボス、オール・フォー・ワンとトワが話し合っていた。

 

「21号はどうかしらオール・フォー・ワン?」

「問題ないよ……彼女はもう立派な敵だよ。望むままに全てを喰らう化物…善の心など何処にもないさ」

 

 そして二人の巨悪はかつて21号が作られたカプセルに入っている“紫色の生命体”に視線を移す。

 

「この子の様子はどうかしら?」

「あぁ、順調だよ。やはり君の力を借りれて良かったよ…トワ」

「それはこちらもよ…貴方のおかげでこの子は完成したのだから」

「君とはこれからもいい関係を築いていきたいよ」

「ふふふ、私もよ。これからもよろしくね」

 

 

 

 そのカプセルには書かれてある。

 

【対ゴジータ用敵“fln”】と…

 

 

END

 

 




スルークス「ついにこのイケメン天才ーー」
ベジット「ファイナル!!」
ゴジータ「ビックバン!!」
「「かめはめ波ぁぁぁあ!!」」
スルークス「はぁぁぁあ!!」

ゴジータ「お前は呼んでねぇ」
ベジット「それしても……作者も思い切ったな」
ゴジータ「あぁ……だが、皆が望む展開にできるようにやるだけだ……」
ベジット「頑張れよ……後、活動報告の方では4の方が人気らしい…身勝手は悟空ならでは変身で俺やゴジータではできないんじゃないかって意見があるみたいだ。是非、皆の意見も聞かせてくれ」
ゴジータ「次回もよろしくな!」



 今回登場した大猿は普通の大猿です。黄金大猿はもう暫くお待ちください。






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僕のヒーロー

 3日目。訓練内容は変わらず“個性”を伸ばす事に重点を置いている。そして夜は肝試しの時間だ。騒ぐ芦戸達赤点ジャーそこに響く無慈悲な声。

 

「その前に大変心苦しいが、爆豪以外の補習連中は……これから俺と補習授業だ」

 

 逃げるんだ!と走り出す赤点ジャーの体に瞬時に巻かれる包帯。

 

「すまんな。日中の訓練が思ったより疎かになってしまったので、こっちで削る」

「なんで爆豪はオッケーなんですか!?」

「補習…お前等が戻った後も一人残ってやってたからな……爆豪、今日は息抜きだ。しっかり休め」

「……わかった」

「それじゃあ行くぞ」

「うわぁ勘弁してくれぇぇ!!試させてくれぇぇ!!」

 

 あえなく連行された。さらば赤点ジャー、また会う日まで…

 

「相手に直接攻撃しなければ何でもOK!個性を使って、個人の創意工夫を凝らして驚かせちゃおう!」

「多くの人を失禁させた組が勝利となる!!」

「辞めてください…汚い」

 

 説明に龍悟の服を掴みながら突っ込む耳郎。ペアを決めるくじ引きだが――A組は5人が補習に行っているので残り15人。一人余るのだが……

 

「俺か…」

「クジ引きだから……必ず誰かこうなる運命だから……」

 

 尾白の慰めが更に虚しさを増してくる。残念そうに見る響香と麗日。

 

((一緒に行きたかったな……))

 

 

 この時は誰も思って無かっただろう……あんな事になるとは……

 

 

 

 最後尾で順番を待つ龍悟が感じたのは――焦げ臭い匂いだった。

 

「何か燃えているのか!?」

 

 その時飯田が森から煙が出ている事に気づく。そしてピクシーボブがピンクに輝き宙に浮かんだ。

 

「な、何!?」

「!、ビックバン・アタック!!」

 

 いち早く気づいた龍悟が邪な気を感じる方向に気弾を放つ。着弾し手応えはある。だが……

 

「あら、よくわかったわね…」

 

 舞い上がった煙から二人組が現れた。一人はトカゲの異形“個性”と見られ巨大な武器を背負い、何処となくステインに似た格好をしており、もう一人は巨大な棒を持っている大柄な男…さっきの言葉使いから見てオネエだろう。だが、問題は……

 

「脳無…!」

 

 黒い脳無が現れ…一同は顔を険しくする。

 

(森にも仲間がいやがる……こいつ等の気だけさっきまで感じなかった……トワの魔術か!)

 

「ご機嫌よろしゅう雄英高校!我ら敵連合開闢行動隊!!」

「貴様等、偽物のヒーローを断罪する者だ!!」

 

 

 

「プッシーキャッツ!脳無の相手は俺がする、他の二人を頼む!!」

「!、わかった!!」

 

 脳無の事は雄英から聞いている…自分達じゃあパワー不足だと判断した三人はそれぞれ行動する。

 

「あら、見た目通りいい男じゃあない!流石、最優先抹殺対象……脳無!!」

 

 

 脳無が龍悟に向って拳を振るう。超サイヤ人Ⅱに変身した龍悟はそれを避け。ゼロ距離で気弾を放つ…ダメージはあるが回復スピードが相変わらず早い…

 

「時間掛けてらんねぇんだ!!」

 

 右手を掲げソウルパニッシャーを生み出し脳無にぶつける。凄まじい爆発と共に脳無は沈黙した。

 

「う、嘘でしょ!!脳無が一瞬で!!」

「こ、これがステインを倒した実力…!」

 

「余所見を!!」

「するな!!」

 

 呆然とする敵二人にピクシーボブと虎が攻撃を仕掛ける。あっちは任せても大丈夫だろう。マンダレイが辺り一帯にテレパスを送る。

 

《敵二名襲来!!他にもいる可能性あり!動ける者は直ちに施設へ!!会敵しても決して交戦せず、撤退を!!》

 

「飯田…皆を連れて合宿所まで戻れ…俺は皆を助けに行く」

「龍悟君……わかった!僕も直ぐに向かう」

 

 皆を飯田に任せて龍悟は瞬間移動した…行き先はーー

 

 

 

 一方その頃、森の近くにある崖上にある秘密基地に居た洸汰は、一人の敵と対峙していた。どんな運命の悪戯か――それは、ウォーターホースを……自分の両親を殺した敵“血狂いマスキュラー”であった。

 

「あ、おい。景気づけに一杯やらせろよ」

 

 まるで遊びのような感覚で洸汰の命を奪いに来る敵。その恐怖に洸汰は動けない。

 

「パパ……! ママ……!」

 

 だがその時…洸汰を庇うようにーー

 

「心配すんな……助けに来たぜ!」

 

 瞬間移動で龍悟が現れた。いきなり現れた事にマスキュラーは驚くが…直ぐにいい玩具が見つかった子供の様な顔をして笑った。

 

「ははははは!お前孫龍悟って奴だろ…ちょうどいいよ。お前は優先して殺しとけってお達しだ」

 

 そう言うと、マントを脱ぎ捨て腕が膨れ上がり皮膚が裂ける。そしてそこから赤い繊維が溢れ出していく。蠢きながら腕に絡みつき、脈打つように躍動する。マスキュラーの個性は“筋肉増強”自らの筋繊維を増幅したり体の内外に纏う事で筋力を増強するブースト系の“個性”。

 

 龍悟も超サイヤ人Ⅱで応戦する。殴りかかってきた拳を受け流し脇腹に肘打ちをするが…

 

「ぐっ!…はは、スピードもあるしパワーもある……もっと遊ぼうぜ!!」

 

 筋肉繊維の鎧がショック吸収程ではないが柔軟に受け止めていた……カウンターで放たれた拳、避ければ後ろに居る洸汰に危険が及ぶ。

 

「くっ……!」

「大変だな、ヒーローって奴は!そんなガキをかばわなきゃいけねぇんだからよ!」

 

 故に回避はできず受け止めるしかできない。

 

(さっきの脳無よりずっと強いじゃねぇか…!)

 

 龍悟も反撃するがイマイチ有効打にならない。

 

「どうして……」

 

 自分を庇ってくれる龍悟に涙が止まらない洸汰。自分は拒絶したのに。つるむ気はないって言ったのに!なのに――!

 

「どうして!!」

「ふっ…決まってんだろーー」

 

 龍悟の手足が赤みがかかった黒に染まる。

 

「ヒーローってのはな…命を賭して綺麗事実践するお仕事だ!!」

 

 神龍拳・五星龍を発動させた龍悟はさっきの数倍の速度で拳を振るう

 

(さっきよりも!)

 

 そのスピードにマスキュラーも反応が遅れる。

 

黒い蛇群(ブラックマンバ)!!」

 

 蛇の大群の如く放たれた連撃は次々とマスキュラーに命中し筋肉繊維の鎧の上からでもマスキュラーにダメージを与えていく。高速の連撃にマスキュラーは反撃ができない。そしてマスキュラーを岩肌に叩きつけた。

 

「や、やった!」

「いや…まだだ!」

 

 龍悟が洸汰の言葉を否定したその時…瓦礫を吹き飛ばしてマスキュラーが現れた。禍々しい黒い気を身に纏いながら……

 

(トワの奴、魔術で強化しやがったな…)

 

 その気はトワの気と同じ物だったのでトワによるモノだと直ぐに気づいた。他の連合も強化されている可能性がある……響香達なら遅れは取らない筈だが…不安が大きくなる。

 

(とにかく…コイツを片付けてトワ達を倒す!)

 

 多彩な魔術を使うトワをこれ以上この世界に居させる訳にはいかない……龍悟はこの戦闘を終わらせる事にした。

 

「今のはかなり効いたぜ…遊びは終わりだ…お前強いもん、本気の眼だ…」

 

 マスキュラーは今付けてる義眼を外し赤い義眼を付けた。

 

「下がってろ…」

 

 洸太を後ろに下がらせて龍悟は構える。マスキュラーは全身に筋繊維を張り巡らせて筋繊維の塊となって突撃する。

 

「これで終いだ!孫龍悟ぉおお!!」

 

「それは……お前だぁぁぁあ!!」

 

 龍悟は拳を放つがそれは当てる為ではなく飛んでいった拳は加速と方向転換をしながら自身の後方から迂回させた……黄金の気が巨大な蛇の形になりマスキュラーに飛び込む。

 

 

王蛇(キングコブラ)!!」

 

 

 神速へとその速度を上げた極限の一撃が筋繊維の塊とぶつかる…だが筋繊維がどんどん引きちぎられマスキュラーがむき出しになった。

 

「…嘘だろ…」

 

 そのままマスキュラーは凄まじい勢いで岩壁に叩きつけられ意識を失った。それを洸太は涙を流しながら見ていた。マンダレイの言葉を思い出す。

 

『あんたもいつかきっと出会う…命を賭してあんたを救う…あんたにとっての…』

 

 目の前に見えるのはとても大きく何より輝いている背中…殴られて額から血を流していても自分を守る為に拳を握ってくれた……

 

 

「僕の……僕のヒーロー…」

 

 

 

 

 

 

END

 

 

 



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三叉の聖槍

 龍悟がマスキュラーと戦闘を開始したその頃、拳藤と鉄哲は動けないB組の皆を運んでいた。ガスをばら撒く敵が居たのだが拳藤が大拳を扇代わりにしてガスを吹き飛ばしさっさと倒したが…そのガスを吸ってしまった者達は意識を失ってしまった。

 

(まさか襲撃してくるなんて…龍悟、皆…無事で居て)

 

 響香達や龍悟が戦闘している事を考えた拳藤は不安を覚えながら合宿所に走った。

 

 

 

 

 

 肝試しの森で常闇と障子もまた敵連合と戦っていた。

 

「くっ!ダークシャドウ!!」

 

 放たれた鋭い刃物の様な物をダークシャドウで防ぐ常闇。

 

「強い…!」

 

 常闇の視線の先には全身を黒の拘束着に包んだ痩身の男…敵連合の一人“ムーンフィッシュ”がいた。

 

「仕事しなきゃ…仕事…ああ…我慢できない……肉見せて……」

「狂人が……!」

 

 ムーンフィッシュの歯が伸び鋭い刃物の様になり常闇を襲う。ムーンフィッシュの個性は“歯刃”自らの歯を自在に伸縮・分岐させ、鋭い刃物の様に相手を切り裂く個性。

 

「地形と個性の使い方が上手い……相当場数踏んでるぞ……」

 

 ムーンフィッシュは伸びる歯をまるで手足のように使い闊歩する。

 

「危ない!」

 

 襲いかかる刃を障子が常闇を担いで避ける。

 

「どうする…このままでは!」

「……障子、俺を奴に向って投げてくれ」

「………策があるのか?」

「あぁ…信じてくれ」

「………わかった」

 

 常闇を信じて障子はムーンフィッシュに向って投げる。

 

「肉…見せて!!」

 

 ムーンフィッシュは常闇に向って刃をけしかける。

 

「やるぞ!ダークシャドウ!!」

「オウヨ!!」

 

 

 ダークシャドウが常闇の全身を覆い尽くす。常闇自身は身体能力は高くない。その短所を補う為にダークシャドウを自身に纏わせ、弱点をカバーした。龍悟の超サイヤ人の様な事を自分もできないかと龍悟に助言を貰いながら完成した新スタイル。これにより苦手な接近戦でも戦える様にした。

 

深淵闇躯(ブラックアンク)!!」

 

 影の鎧を纏った常闇は向かってくる歯刃を砕きながらムーンフィッシュに迫る。

 

「宵闇よりし穿つ爪!!」

 

 黒き一撃がムーンフィッシュを地面に叩きつけ、 ムーンフィッシュは意識を手放した。

 

「よし…とりあえず合宿所に戻ろう」

「あぁ…行こう」

 

 

 

 

 

 同じく龍悟がマスキュラーと戦闘している同時刻、麗日と舌を少し切られた蛙吹が鋭く尖った犬歯、縦長の瞳孔が特徴で、髪型はサイドを団子のようにして、その団子の付け根から髪がハネている少女と戦っていた。

 

「梅雨ちゃん…梅雨ちゃん!可愛い呼び方!私もそう呼ぶね!!」

「辞めて!そう呼んでほしいのはお友達になりたい人だけなの!!」

 

 投げられた注射器の様な物を避けきれず髪と木に刺さり動けなくなる蛙吹。

 

「じゃ私もお友達だね!!」

「離れろ!!」

 

 麗日が少女…“トガヒミコ”に駆け寄りトガは麗日にナイフを突きさそうとする。

 

 だが…麗日は片足軸回転で相手の直線上から消え、懐に踏み込み右ストレートを顔面に叩き込みその勢いで回転して左裏拳そのまま左アッパーで空中に飛ばし右回し蹴りを叩き込み最後に力を籠めた右拳を叩き込んだ。

 

「超龍撃拳!!」

 

 吹き飛ばされたトガは木に叩きつけられた。

 

「大丈夫!?梅雨ちゃん!」

 

 蛙吹を助け出そうとしたその時……

 

「今のは効きましたよ…お茶子ちゃん」

 

 トガが立ち上がったのだ…目を赤く光らせ黒い気を纏いながら。

 

(何…龍悟君のとは違い過ぎる!?)

 

 龍悟の黄金の気とは違う禍々しい何かを感じた麗日は身構える。

 

「素敵ね…お茶子ちゃん!!」

(さっきよりも!?)

 

 先程よりも速く振るわれたナイフを避けきれず腕を切られてしまう。

 

「お茶子ちゃん!」

 

 血を流す右腕を押さえる麗日に蛙吹が悲鳴をあげる。痛みに顔を険しくする麗日にトガは言った。

 

「そうだ!お茶子ちゃんに聞きたい事があるんです!龍悟君って何処に居ます?」

 

「私……あの人に一目惚れしたんです!!」

 

 トガの言葉に麗日は固まった。

 

「え?」

「動画とかで見たんです!とても輝いていました…綺麗な龍悟君……でも、もっと血が出てた方がいいです!!」

 

 狂気の笑顔を浮かべるトガ……麗日は静かに言った。

 

「……ハッキリとわかった!私はヒーローを目指す者として……そして女として……お前に負ける訳にはいかないって事が!!」

 

 強い思いで痛みを無視した麗日はトガに挑む。女の戦いが幕を上げる。

 

 

 

 

 

 

 そして同時刻…森の中で響香は仮面に、丈の長いコートとシルクハットが特徴的な敵連合の一人“Mr.コンプレス”と対面していた。

 

「いや〜よく気づいたね、お嬢さん……俺は欺く事が得意なのに気づかれるとは…」

「あいにく…ウチは索敵が得意でね」

 

 コンプレスの“個性”空間ごと対象をビー玉サイズまで小さくさせる“圧縮”…これで響香を後ろから捕獲しようとしたが気づかれてしまい今に至る。

 

「青山!葉隠を連れてさっさと合宿所に戻って!!」

「う、うん!」

 

 響香は葉隠と行動していたが葉隠はガスで意識を失ってしまった。襲撃だと気づいた響香は八百万と青山と合流。八百万は他の救助に向かい響香はコンプレスに気づいた。さっきからビビってばかりの青山にヤキを入れて離れさせる。

 

「目的はウチ?」

「あぁ、できれば孫龍悟を抹殺する事なんだけどね…保険を兼ねて君にはお姫様になってもらうよ」

「お姫様も悪くはないけど……ウチはヒーローなんだ!返り討ちにしてあげるよ…変態仮面!!」

 

 響香は八百万に創造してもらった増幅器を構える。

 

 

 

 

 

 そして、最も激しく炎が燃え上がる場所では…

 

「死ねぇ!!」

 

 爆豪が肌色は青緑色でバイザーと一体化したヘッドギアとビットギャグを装着して背中からチェーンソーやネイルハンマー、ドリルといった工具がくっついた6本の腕を生やした脳無と戦っていた。

 

 

 そして近くにはラバースーツを纏い、顔全体を覆うマスクを着用した男が倒れており既に倒された様だ。

 

 だが…

 

「哀しいな……轟焦凍」

「ぐあっ!」

 

 轟が倒れ伏し焼け焦げた皮膚を体中に繋ぎ合わせたような男に頭を踏まれていた。

 

(コイツ…急に強くなりやがった…!)

 

 初めは轟が優勢だった…氷の造形で継ぎ接ぎの男…“茶毘”を追い詰めていたが…突然、黒く禍々しい気を纏ってから逆転された。

 

「所詮、2番手の息子は2番手のまま…無様なもんだ」

 

 茶毘の手から蒼炎が燃え上がる。轟にぶつけようとしたその時…

 

「轟さん!!」

 

 救助に動いていた八百万が茶毘を吹き飛ばした。

 

「八百万!?」

「はっ、誰かと思えば…推薦の癖して孫龍悟とは天と地程の差がある…名前だけのエリートか…」

「………確かに…私は龍悟さんとは天と地程の差があります……それを知り自信を無くした時もありました。ですが、轟さんが教えてくれました」

 

 あの体育祭で自分は常闇に惨敗し創造ですら…龍悟の神龍の炎(ゴッドドラゴン・ブレイズ)を見て自信を無くしてしまった。だけど…轟を見て変わった。

 

 彼は龍悟に負けた……だけど其処で終わりにしなかった。龍悟を超える…夢物語かもしれないけど彼は諦めず一歩一歩確実に強くなっている。

 

「それは決して前に進む事を諦めていい理由にはなりませんわ!!諦めないからこそ…更に向こうへ行ける!それを轟さんが教えてくれました!!」

「八百万…」

 

 自分の道を行き、皆の期待を背負い…必ず応えてくれる龍悟に響香達が恋い焦がれた様に決して諦めず前に進み続ける轟に八百万は恋い焦がれたのだ。

 

「くだらねえ!」

 

 茶毘は蒼炎を八百万に放つ。八百万は盾を創造し防ぐが余りの熱量に盾が溶け出す。火傷を負う前に盾を手放した八百万だが…その隙を突かれて茶毘に蹴り飛ばされる。木に叩きつけられる八百万に追い打ちをかける。

 

「…その道を灰にして終わりにしてやるよ!!」

 

 蒼炎を纏った茶毘の拳が迫る。八百万は思わず目を瞑るが……

 

「くだらなくねぇよ!!」

 

 轟の声が聞こえ目を開ける。其処には火竜の鉄拳で茶毘の拳を防いでいる轟がいた。

 

「皆、命かけて生きてんだこの野郎!変わる勇気がねぇのなら……其処で止まってやがれ!!」

 

 轟はそのまま茶毘を押し出し防ぎ切るが…状況は好転していない…爆豪は脳無の相手で動けない。どうするかと悩む轟に八百万が……

 

「轟さん、これを!!」

 

 八百万が創造したのは何かの設計図。それを見た轟は八百万の考えを瞬時に理解する。

 

「私と轟さんならきっと!!」

「………乗ったぜ…八百万!」

 

 八百万と轟はお互いに手を繋ぎ意識を集中させる。まず八百万が自分達を覆う様に巨大な何かを創造する。それはまるで何か骨格の様だ。次に轟が氷の造形をする。八百万が創造した骨格に轟が造形した氷の肉体が合わさる。

 

「なんだ…!」

 

 その様子を脳無と戦っていた爆豪も気づき驚愕する。八百万の目標は龍悟の神龍の炎(ゴッドドラゴン・ブレイズ)を超える物を生み出す事……思い出すのは体育祭での上鳴の言葉……

 

『ヤオモモも作れないの!?機械の龍とか!?』

 

(今の私にはアレを超える物を生み出す事はできません…ですが、轟さんと一緒なら!!)

 

 そして二人は言葉を発しながら仕上げに入る。

 

 

「「破壊神より放たれし聖なる槍よ、今こそ魔の都を貫け! !」」

 

 

 呪文の様な言葉と共に二人が生み出そうとする物がより繊細により強靭になる。そして遂に完成する!!

 

 

「「アイスメイクーー氷結界の龍(トリシューラ)!!」」

 

 

「「「ギャオオオォォォォォォォ!!!!」」」

 

 

 生み出されたのは三つの首を持つ強靭な氷龍…その圧倒的な存在感は爆豪や茶毘を震え上がらせるには十分だった。

 

「ふ、ふざけるな!コケ脅しだ!!脳無!!」

 

 茶毘の言葉に爆豪と戦闘をおこなっていた脳無が襲いかかる。それを氷結界の龍(トリシューラ)の胸にあるコア部分にいる八百万と轟が確認する。

 

「行くぞ!八百万!!」

「はい!轟さん!!」

(とても安心しますわ…!)

 

 二人の意識により氷結界の龍(トリシューラ)が咆哮をあげ動き出す。その強靭な腕で襲いかかる脳無を意図も容易く地面に叩きつける。そして氷結界の龍(トリシューラ)に叩きつけられた脳無が一瞬で凍りつき停止した。

 

「ば、馬鹿な…!」

 

 圧倒的な力に茶毘は見掛け倒しではない事を認めてしまう。

 

「これが…俺達の強さの形だ」

「降伏しなさい…貴方に勝ち目はありませんわ」

 

「ふざけるな……ふざけるな!!」

 

 茶毘が体から蒼炎を燃え上がらせる。それを見た轟達も迎え撃つ。氷結界の龍(トリシューラ)のそれぞれの頭にある口に冷気が集中する。

 

「燃え尽きろ!!」

 

 茶毘が蒼炎を放つその時…轟達も必殺の一撃を放つ。

 

 

「「氷結のブリザードバースト!!」」

 

 三つの口から放たれた冷気は混ざり合い絶対零度の一撃となり茶毘の蒼炎を容易く吹き飛ばし茶毘さえも飲み込んでいく。

 

「轟焦凍ぉおおおお!!」

 

 呪詛の様に叫びながら茶毘は意識を手放した。氷結界の龍(トリシューラ)の一撃は森の火災すら鎮火し月明かりが氷結界の龍(トリシューラ)を照らしていた。

 

「……強さって、何なんだ…」

 

 その様子を見ていた爆豪が寂しく呟いた。

 

 

END

 

 




アイスメイクーー氷結界の龍(トリシューラ)

 轟と八百万が生み出した氷の龍…その強さは神龍の炎(ゴットドラゴン・ブレイズ)を遥かに凌駕する。元ネタは遊戯王プレイヤーなら誰もが知っている環境でも設定でも大暴れした最強カード氷結界の龍トリシューラ。

元々、八百万が機械の龍を創造する案があり何にしようか悩んでいるとトリシューラを見つけて…そうだ、轟との合体技で生み出そう!と考えて登場させました。





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サイヤ人の誇り

 マスキュラーを倒した龍悟…燃え上がる森を鎮火しようとしたその時…

 

 

「「「ギャオオオォォォォォォォ!!!!」」」

 

 突如、森から強大な氷の龍が現れた。何事かと身構えた龍悟だが…氷の龍が轟と八百万の気を発している事に気づく。

 

(アレは轟と八百万が生み出したのか……流石だな」

 

 トワの魔術により敵は強化された……だが、仲間達はトワや自分の想像以上に強くなっている。心配はいらないだろう。

 

 龍悟は洸汰を連れて合宿所に向かう。その時、龍悟の頭にある声が響く。

 

『あ〜聞こえるかしら?ゴジータ君?』

 

 少女の声だが…龍悟は彼女が誰なのか理解した。

 

『アンタが時の界王神様か?』

『そうよ…トランクスは上手くやってくれたわ……今、あっちの世界でトワ達と戦っているわ』

 

 どうやらトランクスは決戦の舞台をあっちに移す事ができたようだ。

 

『でも、数の差もあって防戦一方なの…』

『わかった…この子を預けて直ぐに向かう』

 

 森の中を走る龍悟だが…その時、相澤と鉢合わせする。

 

「相澤先生!」

「孫…!」

 

 龍悟の殴られた跡や額から流れる血を見て相澤は事態の深刻さを知る。

 

「この子を頼む…俺は裏に居る者を追う」

「裏に居るものだと…」

「あぁ…ヒーロー殺しを怪物に変えた魔女がこの襲撃の裏に居る…連合はアイツ等が居れば大丈夫」

 

 龍悟は火災を鎮火している氷の龍に視線を向ける。それを見た相澤は…

 

「わかった……無茶はするなよ」

 

 龍悟を信じて送り出した。

 

「あぁ!」

 

 龍悟は額に指を当て…時の界王神と連絡を取る。

 

『時の界王神様!』

『オッケーよ!貴方がトランクスの気を感知できるように時空の裂け目を開いたわ!!瞬間移動で行ける筈よ』

 

 時の界王神の言う通り…トランクスの気を感知できた。今ならあっちの世界に行ける。龍悟は決着を付ける為に世界を超えた。

 

 

 

 

 

 あちらの世界……何処の歴史かもわからない時代の地球…建物は崩壊し空は暗く人一人居ない場所でトランクスは戦っていた。

 

「はぁぁぁ!!」

 

 超サイヤ人2に変身したトランクスは気弾を放ちながら後退する。それを避けながらミラがトランクスに迫る。気弾を放ち続けるトランクスの後ろから仮面のサイヤ人が襲いかかる。それを避け一旦距離を取る。トランクスが圧倒的不利な状況…高みの見物をしていたトワが笑う。

 

「ふふふ、そろそろ貴方も終わりね、トランクス。今まで散々邪魔してきた分たっぷりお仕置きしてあげるわ」

 

 勝利に酔うトワをトランクスが逆に嘲笑う。

 

「愚かなりトワ…やはり貴様の驕り高ぶりが命取りだ」

「なんですって?」

「気づかないのか……俺が時間稼ぎをしていた事に」

 

 トランクスが言うと同時に黄金の柱が聳え立つ。先程まで余裕に溢れていたトワが戸惑いはじめる。

 

「ま、まさか!」

 

 光が止み其処には超サイヤ人Ⅱになった龍悟が居た。

 

「よう…!決着をつけようぜ」  

「ゴジータ!?まさか…接触していたなんて…!」

「お前達が敵連合と同盟を結んだ様に俺達もゴジータさんに協力してもらったんだ……此処ならゴジータさんはこの世界のレベルで戦える。お前達はもう終わりだ!!」

「さぁ…お前の罪を全て数えろ!!」

 

 龍悟は流れるようにすり足のままトワに迫る。虹の光を纏った連撃はトワが殴られた事を認識するよりも速く放たれた。

 

「終わりだ…」

 

 龍悟が呟いたその時…ようやくトワの肉体が殴られた事を認識しトワは近くの廃墟に叩きつけられた。

 

「トワ!」

「お前の相手は俺だ!!」

 

 トワの元に行こうとしたミラの行く手を遮る様にトランクスが現れる。トランクスの気が数倍に膨れ上がり頭髪は膝まで届くほどに伸び、全身を激しい稲妻が走るその姿こそ……

 

「超サイヤ人3だと…!」

 

 ミラが驚愕する。どうやら今まで2で戦ってきたのだろう。トランクスもミラとの決着をつける為に最強の形態を身に着けたのだ。

 

「決着をつけるぞ、ミラ!!」

 

 トランクスは鞘から剣を取り出しミラに斬りかかる。それを自身の気で強化した腕で受け止める。そこから始まる拳と剣のぶつかり合い。ミラの拳を剣の腹で受け止めカウンターの気弾を顔面にぶつける。確かな隙を見せたミラにトランクスは高速で斬りつけ最後に左手から放つ気功波で吹き飛ばした。彼の必殺技【バーニングスラッシュ】だ。

 

「おのれ!」

 

 吹き飛ばされたミラだが強引に姿勢を立て直しトランクスに強烈な蹴りを喰らわせる。

 

 二人は金と赤の流星となり幾度も衝突を繰り返す。威力は互角。二人は交差してすれ違う形となり、トランクスが先に振り返って構えを取った。

 

「バーニングアタック!!」

 

 両手を高速で動かすことで気を練り上げ、突き出した両手から強力な一撃が放たれミラを撃ち抜く。戦況はトランクスの有利だ、ミラは至る所から血を流し気も減っている。

 

「強いなトランクス……だが、お前を倒しゴジータを倒す事で俺が最強だと証明する!!」

「証明?トワにか?だからお前は負けるんだ」

「何だと?」

「お前は確かに強い……だが、お前には負ける気がしない!!」

「ふざけるな!俺は最強だ……最強でなくてはならない……!負けるなど!!」

 

 ミラが右手と左手をトランクスに向けて開き上下の手首を合わせて体をひねって右腰に置いた。それはかめはめ波の構えだった。ミラには悟空やベジータを始めとする様々な時代の戦士たちのDNAが取り込まれている。故に使う事ができるのだ。

 

 本家とは違い赤黒い気を貯めるミラを見ながらトランクスも構える。

 

「俺は負けない!!」

 

 脳裏に過るのは時を超え共に戦った仲間達…師匠の孫悟飯……そして自分の帰りを待ってくれる最愛の女性。

 

 トランクスは両手を突き出し超サイヤ人3の気を集中させる。それは父の技。

 

「ダークかめはめ波!!」

「ファイナルフラッシュ!!」

 

 

 ミラのダークかめはめ波とトランクスのファイナルフラッシュが中央で衝突。爆風で辺り一面全てを吹き飛ばしながら押し合う。だが、ファイナルフラッシュが徐々にダークかめはめ波を押し返す。

 

「ば、馬鹿な!」

「完全に消え去ってしまえぇぇ!!」

 

 トランクスの叫びと共にファイナルフラッシュがダークかめはめ波を打ち破り。ミラを呑み込み、その身体を撃ち砕いていく。

 

(俺は…負けるのか……ふっ…だが、こんな感情は初めてだな…)

 

 ミラは何処か清々しさを感じていた。

 

(トランクスにあって…俺にないもの……少しわかった気がする……)

 

 微笑みを浮かべながらミラは消滅した。

 

 

 

 

 

 

 トランクスがミラと戦闘していた頃…龍悟は仮面のサイヤ人……バーダックと戦っていたが力の差は歴然だった。仮面のサイヤ人の拳を片手で受け止める。

 

「何時まで、操られたままなんだ…!」

 

 龍悟は語りかけるが聞こえていないのか仮面のサイヤ人は空いている腕で殴りかかる。拳は頬に突き刺さるがそれでも微動だにしない。

 

「俺は……オラは…もう父ちゃんの息子じゃあなくなっちまったし…父ちゃんがどんな人だったかもわからねぇ…それでもわかる。父ちゃんはこんな奴等に操られる程弱くねぇ!」

「!、カカ……ロット…?」

 

 微かだか反応があった…龍悟は拳を握り叫ぶ。

 

「戻って来い!父ちゃん!!」

 

 龍悟の拳が仮面を粉々に砕き、バーダックは地面に背中から倒れ込んだ。龍悟にミラを倒したトランクスが駆け寄る。

 

「ゴジータさん!」

「トランクス…倒したのか?」

「はい!ゴジータさんこそ…バーダックさんを開放できたんですね」

「あぁ、後はトワを…!?」

 

 突如、龍悟達の足元が黒く禍々しい渦になり龍悟達を引きずり込む。

 

「よくも…よくも私の計画を!!時空の間に閉じ込めてあげる!!」

 

 龍悟の連撃に体中ボロボロで口から血を流しているトワが中に浮かびながら杖を構えていた。

 

「その穴は一方通行よ、落ちたら最後、二度と出てこられないわ」

「こんなもの!!」

 

 龍悟構えてソウルパニッシャーで破壊しようとしたその時……青い気弾が龍悟達に当たりその爆発で龍悟達は渦から脱出できた。

 

 気弾を放ったのは……

 

「バーダック!?」

 

 バーダックだった。

 

「よくも俺をコケにしてくれたな……今までの借りを返してやる!!」

 

 怒りに燃えるバーダックの頭髪が逆立ち黄金の気が全身を包み込む。

 

 

「サイヤ人の力を……なめるなぁぁぁあ!!」

 

 バーダックが吠え、逆立った髪が黄金に変色した。彼を中心に突風が吹き荒れる。黄金の髪、緑色の瞳…正しく……

 

 

「超サイヤ人……」

 

 龍悟が呟く。龍悟達は手を出さない。トワの始末は彼こそが相応しい。

 

「覚悟しやがれ!」

「う、嘘よ…!こんなの!何もかもが違う!私の理想と!」

「何時までも寝言ほざいてんじゃねぇ!!」

 

 右手に全身の気を練ることで出来た青白い光の球が生まれた。そしてオーバースローで青白い光の球を投げつけた。

 

「これで、最後だぁあああ!!!」

 

 バーダックが放った【ファイナルスピリッツキャノン】はトワを飲み込んでいく。自分の死を悟ったトワは誰にも聞こえない声で呟いた。

 

「…私の敵はあの子が討ってくれる……あの子がきっと貴方に“終わり”を与えるわ…ゴジータ!!」

 

 その言葉を最後にトワは消滅した。

 

 

 

 

「良くやってくれたわ!トランクス、ゴジータ」

 

 トワ達との決着がついて数分後…桃色の肌をした幼い少女……時の界王神が現れ龍悟達に称賛の言葉を送った。

 

「貴方にもお礼を言うわ」

「いらねぇよ…」

 

 腕を組み背を向けるバーダック……暫くすると彼は龍悟に近づく。

 

「お前…何者だ?お前を見るとどうしてもカカロット…俺のガキと被る」

 

 父として…何かを感じるのだろう…龍悟は自分の事を包み隠さず教えた。

 

 

「ベジータ王子と融合しただぁ!奇妙な人生送りやがって!流石、俺とギネの子だ!!」

 

 ベジータと融合した事がツボに入ったのだろう…バーダックは腹を抱えて笑った。

 

「俺はアンタの息子じぁ…」

「それでもテメェの半分はカカロットだ……俺が言ってやるのは一つ……例え、融合しようが合体しようが…転生しようが…サイヤ人の誇りを忘れるな」

 

 真剣な眼差しで語るバーダックに龍悟は答えた。

 

「あぁ…俺はサイヤの誇りを持った地球人だ」

「へっ…!」

 

 バーダックは満足そうに笑った。

 

「時の界王神様…」

「行くのね」

「あぁ…皆が待ってるからな」

「ゴジータさん、ありがとうございました!」

「達者でな…トランクス」

 

 最後にバーダックが声を掛けた。

 

「そういや、名前まだ聞いてなかったな…なんて言うんだ?」

 

 龍悟は少し振り返って、額に指を当てながら言った。

 

 

「孫龍悟……それと、ゴジータだ」

 

 そう言って龍悟は仲間の元に向かった。

 

 

END

 



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暴食の魔人

 龍悟がトワ達と戦っていたその頃……肝試しのスタート地点では皆を合宿所に避難させた飯田がプッシーキャッツと共に敵連合…マグネとスピナーと戦闘していた。

 

「粛清させろ!俺はステインの意志を!!」

 

 スピナーの刃を躱しながら飯田は蹴りを放つ。

 

「君がステインの意志を持って剣を振るうなら…僕はインゲニウムを受け継ぎ、君を打ち砕く!!」

 

 飯田の蹴りが刃を砕きスピナーを木に叩きつけた。その衝撃で気を失った事を確認した飯田はプッシーキャッツの応援に行こうしたその時……ピクシーボブが近くの木に叩きつけられた。

 

「な!?」

 

 反射的に飛んできた方を見ると新たに現れた脳無がマンダレイと虎を地面に叩きつけていた…二人は頭から血を流し気を失っている。

 

「もう一体!?」

「スピナーはやられちゃったけど、残るは貴方だけ…勝てるかしら?」

 

 表情を険しくする飯田を見てマグネは勝利を確信する。

 

「「「ギャアアァァァァァァ!!」」」

 

 三つ首の氷竜が脳無を踏み潰すまでは……

 

「は?」

 

 何が起きたかわからず唖然とするマグネ……三つの氷竜…氷結界の龍(トリシューラ)はブレスを吐き。マグネの肩から下を凍らせる。

 

「無事か、飯田」

「轟君…八百万君も!」

 

 氷結界の龍(トリシューラ)のコア部分から轟の声が聞こえ轟と八百万が生み出したのだと驚愕する。

 

「もう終わりだよ…アンタ等」

 

 氷結界の龍(トリシューラ)の背中から響香や麗日…戦闘していた全員が降りてくる。よく見ると氷結界の龍(トリシューラ)の手には茶毘達倒された者やトガやコンプレス…戦闘をしていた者達まで氷で拘束され気を失っている。

 

「嘘よ!全員やられたって言うの!?」

 

 困惑するマグネを無視し状況を報告し合う。

 

「無事だったんだね、皆」

「ええ…轟ちゃんと八百万ちゃんが助けてくれたわ」

「いや〜助かったよ」

「そんで皆で乗って来たって訳」

 

 如何にトワの魔術で強化されようと氷結界の龍(トリシューラ)の敵ではなかった。敵を拘束し皆を回収して戻って来たようだ。

 

「しかし…改めて見ても凄いな…」

「あぁ…芸術品の如く美しい…」

「褒め過ぎですよ、常闇さん」

 

「爆豪君も無事だったんだね」

「あぁ…」

「でもまだ、龍悟が…」

「龍悟君なら大丈夫だと思うが…プッシーキャッツの手当てもある…一旦合宿所に戻ろう」

「無視すんじゃないわよ!!」

 

 これからを言い合う飯田達にマグネが叫ぶ。

 

「何、勝った気になってんよ!こっちにはまだマスキュラーがーー「そいつなら孫に倒されたぞ」………」

 

 切り札の名を叫ぼうしたマグネだが…現れた相澤に既に倒された事を知り…唖然とする。

 

「相澤先生!」

「無事だったか…お前等以外は既に合宿所に避難している」

「龍悟は?」

「孫は裏に潜む者…耳郎達は知ってるだろうトワと名乗る魔女を追っている」

「トワ達を!?」

 

 龍悟がまだ戦っている事に驚愕する。

 

「とりあえずプッシーキャッツの手当てが先だ…孫については俺に任せろ」

 

 相澤が皆に指示を出しているその時…

 

 

「何が敵連合開闢行動隊よ〜弱過ぎて話にならないじゃあない…」

 

 

 聞き覚えのない声が聞こえ一同は警戒心を強め声の方を見る。其処にはかつてショッピングモールで龍悟に会いに来ていた少女……21号がいた。

 

「何者だ!?」

 

 相澤が捕縛包帯を構えて前に出る。響香達も距離を取り構える。

 

「ちょと21号!遅いじゃあない!!」

 

 21号にマグネは怒鳴りつけるが21号は面倒くさそうに答えた。

 

「何よ…アンタ等が無様に負けたのに……八つ当たりしないでくれない?」

 

 その口調は龍悟の時の礼儀正しさはなかった。

 

「でも、そうね〜此処まで来るのに時間かかったし何だかお腹が空いてきちゃったわ」

「何をふざけた事を…!」

「そう言う訳だから……美味しくな〜れ!」

 

 21号の指からピンクの光線が放たれ…マグネに命中した。

 

「貴方!いったいーー!!」

 

 

 光線を受けたマグネは………“カップケーキ”になってしまった。

 

 

「え?」

 

 響香は何が起きたかわからなかった。響香だけではない…この場に居た全員の思考が停止し唖然とした。21号はマグネだったカップケーキを…食べた。食べ終えた21号は舌なめずりをしながら…言った。

 

「ん〜イマイチね…100点満点中24点の味ね」

 

 呑気に感想を言う21号…気絶している茶毘達に指を向けると……

 

「お待ちください!!」

 

 黒い靄の敵……黒霧が彼女を止めた。邪魔されて不機嫌そうに黒霧を見る。仲間である黒霧ですら彼女に怯えていた。

 

「何よ…折角楽しいおやつタイムの時間だったのに」

「彼等は死柄木弔の仲間……どうかコレで手打ちに」

 

 黒霧は靄から轟達に回収されなかった敵……ムーンフィッシュ…そしてマスキュラーをだした。

 

「ん〜いいわ。こっちの方が食べごたえありそうだし」

 

 21号がそう言うと黒霧は茶毘を回収して消えた。早速彼女はマスキュラー達をお菓子に変えた。ムーンフィッシュはショートケーキに変えられ、マスキュラーはドーナツに変えられてしまった。

 

「嘘でしょ……さっきまで、人間だったんだよ…!」

 

 此処でようやく響香達が現実を理解した。とても信じられない、生き物をお菓子を変える奴など…信じられる訳がない…

 

「ん〜ムーンフィッシュは中々ね…40点って所かしら…さ〜てメインディッシュよ」

 

 21号はマスキュラーだったドーナツを食べた。

 

「う〜ん!美味し〜!流石一流敵!80点は固いわ」

 

 歓喜の声を上げる彼女は遂に響香達に矛先を向ける。

 

「さて、そろそろ自己紹介をしましょうか…私は21号……敵連合が作り上げた人造人間…」

「人造人間だと…!」

「私が来た目的は孫龍悟の抹殺……でも、彼は居ないみたいだし……それまでおやつタイムにしましょうーー」

 

 その時、21号を中心に衝撃波が走り赤黒い気の柱が聳え立つ。衝撃に響香達は手で顔を守りながら足に力をいれ耐える。

 

「ーーふふふっ、貴方達はどんな味がするのかしら?」

 

 

 

 そして21号は変わった。髪は白、肌はピンク色となり尖った耳や長い尻尾など、完全に別人へと姿……そして強さを変えた。

 

 

「ハァー、ハァー……ば、化物……!」

 

 爆豪は体の震えが止まらず。響香達やプロヒーローの相澤すら冷や汗が止まらなかった。

 

 本能が告げる…コイツはヤバすぎる…今までの敵とは格そのものが違うと…

 

「お前等…逃げ「られる訳ないじゃないですか…」……そうだな、勝つしか俺達に道はない……」

 

 相澤は撤退を言おうとしたが響香の言う通りできる訳もない……

 

「ふふふ、遊んであげるわ」

「…………行くぞ、八百万!!」

「ハイ!!」

 

 覚悟を決めた轟と八百万……石像の如く静止していた氷結界の龍(トリシューラ)が咆哮を上げ21号に攻撃を仕掛ける。それを容易く躱しながら21号は森の奥へと戦場を移した。追いかける氷結界の龍(トリシューラ)を援護する為に響香達も追う。ただ一人爆豪を除いて。膝を突き、全身をガクガクと震わせている。

 

 

「ば、化物……!こ、殺される…奴は本物の化物なんだぁ……!」

 

 爆豪は疑いの余地なく戦闘の天才である。だからこそ戦わなくてもわかってしまったのだ。響香達ではわからない力の差が……お菓子に変える光線などなくても21号は強過ぎると言う事に…頭の中が真っ白になりもう何も考える事が出来ない。それほどに21号の存在は大きすぎた。

 

 

 森の奥から聞こえる爆発音などを聞きながら爆豪はただ震え続けていた。

 

 

 

 

 

END

 



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絶望の戦い

 

「やめろ!勝てるわけがない!あいつは本物の化物なんだぞ!」

 

 叫ぶ爆豪の視界には今、絶望的な戦いに挑む響香達の姿が映っていた。レシプロを発動させた飯田、深淵闇躯(ブラックアンク)を発動した常闇が必死に戦ってはいるものの、21号との差は余りに歴然だ。

 

 唯一戦えるのは轟と八百万の氷結界の龍(トリシューラ)だけだ。21号の攻撃を氷のウロコで防ぎながら強靭な腕で吹き飛ばす。それでもケロッとしている21号に八百万は戦慄した。

 

「攻撃が効かない…!」

「そ~れ!」

「くっ!?」

 

 そして何より…21号は龍悟と同じ気弾を放つのだ。スレスレで回避する氷結界の龍(トリシューラ)に21号の拳が迫る。

 

「させるか!」

「やらせん!」

 

 其処に飯田と常闇が同時に仕掛ける。21号は吹き飛ばされたが…直に起き上がる。

 

「……僕達の攻撃が効いていないのか…!」

「絶望の権化め…!」

「それでも!」

 

 飯田、常闇、響香は敵の強大さに戦慄しながらも挑むその後に障子、麗日、蛙吹も続いた。

 

「あんな奴を野放しにしたら私達どころか皆まで…!」

「……あぁ!」

 

 蛙吹が最悪の未来を想像し無口な障子すら震える。

 

「絶対に勝たなきゃならん!!」

 

 最後に麗日が叫び、3人が挑む。障子が正面から拳を振るい、麗日と蛙吹が両側面から殴りかかる。だが21号はどれも気にせず突進し、体当たりで3人の身体を跳ね飛ばした。

 

 入れ替わるように飯田と常闇が飛びかかるが、これもまるで意に介さない。二人の頭を鷲づかみにし、地面へと叩き付けた。それだけで大地が陥没し、二人の身体が地面へと埋もれてしまう。

 

「はぁぁぁ!!」

 

 相澤が裂帛の叫びをあげながら上空から強襲し、拘束包帯を放つ、だが通じない。21号の気弾に呆気なく弾かれ、回し蹴りで地面を無様に転がる。それを追って21号が突進し、慌てて止めに入った障子は何の障害にもならずラリアットで吹き飛んだ。そして21号は倒れている相澤の腹を蹴り上げ、宙へ浮かばせた。

 

「ぐほああっ!!」

 

 唾液を撒き散らしながら悲鳴をあげる相澤へ、更に追い討ち。気弾を放ち、またも相澤の腹へ当てて彼を遙か彼方へと吹き飛ばした。

 

「ぐはっ!」

 

 相澤は丁度爆豪がいる付近へと墜落し、爆発が響く。それを気にも止めず21号は響香に迫る。響香の予測も今回ばかりは相手が悪く先ほどから上手く21号の攻撃をいなしつつカウンターを決めているがまるで効果がない。

 

(どうなってんの!?痛がる素振りすらないなんて!?)

 

 21号の攻撃を音の予測で的確に避けカウンターを決めている響香は殴っているのに痛がる素振りを見せない21号に戦慄していた。龍悟みたいに強靭な筋肉の硬さはない……確実にダメージは与えている筈なのに。

 

「上手に避けるじゃあない……これならどう!」

 

 なんと21号の腕がいきなり伸びたのだ。突然の出来事に響香は避けきれず。拳が響香を吹き飛ばし近くの木に叩きつけた。

 

「ガバッ…!」

「響香ちゃん!」

 

 響香の危機に麗日が駆け付けるが、21号が連続で発射する気弾を前にガードしながら近付くだけで精一杯だ。

 

「こらあ!少しは手加減しろぉ!」

「手加減って何かしら……?」

 

 余りの力の差に麗日から弱音が零れるが、残念ながら21号は手加減という言葉など知らない。気弾を撃ち続け、それでも近づいて来る麗日へ強力な一撃を放った。

 

「とっておきよ…!」

「へへっ……ちょっとしつこすぎるよ……」

 

 ここまで力の差があると笑うしかないのだろう。麗日は薄ら笑いを浮かべながら21号の気弾を浴び、空高く吹き飛んで行った。

 

「お前ぇぇえ!」

 

 其処に轟の怒号と共に氷結界の龍(トリシューラ)がその爪で21号の腕を切り裂いた……だが。

 

「再生した…!」

 

 無くなった腕から新しい腕が生え何事もなかったかの様に笑う。轟はある結論に辿り着く。

 

「アイツは常に再生し続けている…!それこそ…不死身に近い程に…!」

「不死身なんて……一体どうすれば…!」

 

 ダメージがない相手にどうやって勝てばいいのか……八百万の絶望は尤もだろう。

 

 

 

 響香達の必死の戦い、そして敗北を見届けた爆豪は地面に手を突いて絶望の声を漏らし続けていた。

 

「もう駄目だ、おしまいだぁ……殺される、みんな殺される……逃げるんだあ……勝てるわけがない…!」

 

 だがそんな彼の髪を相澤が鷲掴みにし、強引に起き上がらせた。

 

「何を寝言を言っている!不貞腐れてる暇があったら戦え!」

「だ……駄目だぁ……アンタには分からないのか。やはりあいつは化物……俺達が勝てる相手じゃあねぇ…」

「チッ、何が自分はオールマイトを超えるヒーローだ!」

 

 相澤は爆豪へ軽くない失望を感じていた。自分勝手で気に食わない奴ではあったが、それでも戦闘におけるその天才性は認めていたのだ。

 

 だというのに今のこいつは何だ?絶望が強ければそれで諦めるのか。戦いすらしないのか。ナンバーワンだと叫んで居た爆豪は一体どこに消えたのだ。

 

 結局コイツは強過ぎる相手には立ち向かわない……自分より弱い相手にしか強くなれないヘタレだったのか…相澤は失望した。

 

 

 

 

 

「ふふふ、貴方達は他とは別格ね…アイツ等じゃあ勝てない訳よ……そうこなくちゃ面白くないわ!」

 

 21号が表情を好戦的に歪め、お返しとばかりに殴りかかった。それを腕で防ぎながら氷結界の龍(トリシューラ)は尻尾を振るう。21号は残像で避け後方から迫るが……

 

「グルルオオオォォォォォ!」

「死角がない…!」

 

 氷結界の龍(トリシューラ)の右の頭が後ろを向き氷のブレスを放つ。21号は飲み込まれ体中が凍りつき爆発が起こる。だが、ブレスが終わると煙の中から21号が飛び出し右の頭を掴んだ。

 

「なっ!?」

「何かしら今のは…?」

 

 21号がアッパーで氷の肉体を砕く、右の頭は半壊してしまった。だが、次の瞬間…その頭が再生した。

 

「同じ芸当なら…俺達もできる!」

「ふふふ、良いわよ…とてもね!」

 

 次の瞬間…氷結界の龍(トリシューラ)のブレスと21号の気弾がぶつかり合う。その見事な戦いぶりに相澤は呆然とし、爆豪の髪を掴んだまま戦いに魅入っていた。

 

 だが21号を恐れる爆豪は恐れているからこそ、一つの事実に気付く。

 

「だ、駄目だ……やはり勝てない……逃げるんだ……」

「どこへ逃げても同じだ。奴を倒さん限り俺達に未来はない!」

「分からないのか?や、奴はダメージすら負っていない………勝てっこない!」

「そこまで性根が腐っていたとはな!消え失せろ!二度とその面見せるな!」

 

 爆豪はもう駄目だ。相澤はそう悟り、爆豪から手を離して捨てた。そして響香達を救うべく走り出す。勝てる勝てないではない。例え勝てないと分かっていても挑まねばならない時があるのだ。その相澤の背を見ながら爆豪は考える。

 

(何故なんだ……何故あいつらは奴に立ち向かうんだ……勝てるわけないのになぜ戦うんだ……何故……)

 

 爆豪の消えかけていたプライドの炎。それが今、小さく点火されようとしていた。

 

 

 

 

 氷結界の龍と暴食の魔人の戦い……それは21号が優勢だった。氷結界の龍(トリシューラ)の破損部分は轟と八百万によって修復されるが二人の体力は無限ではないのに対して21号は正に不死身の再生能力とスタミナを持っていた。動きが遅くなり敗北は必然だ。

 

「そろそろ…おしまいね」

「まだだ……こんな所で終わってたまるか!!」

 

 轟の叫びに八百万も己を奮い立たせる。そんな二人を嘲笑う様に21号は気弾をぶつけようとする。その決戦を遠くで見ながら、爆豪は拳を握り締めていた。

 

「アイツ等が戦っているのに…クソ……!」

 

 

 相手は勝ち目のない不死身の怪物だ。だがそんな相手に自分以下の奴等や轟が挑んでいる。なのに自分が何もせず縮こまってばかり…それは彼の自尊心が許さぬ事だった。

 

 遂に爆豪のプライドが蘇った。

 

 

「ナンバーワン、わぁぁあ!この、俺だぁぁ!!っちゃああああああ!!」

 

 爆破で飛び上がった爆豪は21号目掛けて落下と一緒に回転を始める。両手から交互に放つ爆発で回転スピードを上げて行く。

 

「!?」

 

榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)!!」

 

 21号が気づいた時にはもう遅い。爆豪が放った超爆破は21号に決して浅くないダメージを与えた。

 

「この!」

「この俺が相手だ!くらええええええ!」

 

 爆豪は次々と爆破を放っていく。21号の反撃もその天才的センスで躱しカウンターを放っていく。

 

閃光弾(スタングレネード)!!」

「くっ!?」

 

 爆豪が放った閃光は21号から一時的に視覚を奪う。21号が視力を回復したその時に見えたものは……

 

 

「半分野郎!露出女!!」

 

 こちらに向かって冷気を最大まで凝縮させている氷結界の龍(トリシューラ)が居た。

 

 

「「氷結のブリザードバースト!!」」

 

 

「!?、アブソリュートリリースボール!!」

 

 

 放たれた絶対零度の一撃……いくら21号でもタダでは済まない。21号は赤黒い気を凝縮させた一撃を放った。

 

 強大な一撃は中央でぶつかり合い、爆風で辺り一面全てを吹き飛ばしながら押し合う。だが21号が上だ、ブリザードバーストは除々に押されていく。

 

「くっ!」

「このままでは!」

 

 負ける!そう思われたその時…

 

「「必殺!!メテオファロッキーズ!!」」

 

 戦いの余波で溢れていた木の残骸や岩石が21号に流星群の様に激突する。それは…麗日が軽くした物を蛙吹がベロで弾いた物だった。蛙吹だけではない飯田や常闇、障子も次々と投げ、相澤も包帯を巧みに使い21号にぶつけていく。

 

「心音増幅MAX!ハートビートファズ!!!!」

 

 復活した響香も衝撃波を放つ。響香達はここを唯一の勝機と見なし、二人へ全力で加勢する。それは…爆豪もだ。

 

 

徹甲弾 機関銃!(A・Pショット・オートカノン)!」

 

 掌全体ではなく一点に集中して起爆させることで破壊力を増大・及び極小規模で貫通力を上げ連続で放つ。爆破の弾丸が21号に命中する。

 

「鬱陶しい!!」

 

 ダメージは無いが単純に気が散る。だがその気の乱れこそが今は致命的だ。一瞬の隙も逃さずに轟が叫ぶ。

 

「今だああ!」

 

 ここが勝機!轟と八百万が最後の力を振り絞りブリザードバーストがアブソリュートリリースボールを打ち破る。

 

「………!」

 

 絶対零度の一撃が21号へと着弾し巨大な氷山が彼女を閉じ込めた。やがて、静寂が場を支配し…響香達は一斉に座りこんだ。

 

「や、やった……」

 

 化物だった…本当にそれしか言葉が出ない。ハッチヒャックを遥かに超えた存在…こちらは全員満身創痍。だが、それでも勝つ事が出来た。

 

「ウチ等の勝ちだ…!」

「やったよ!梅雨ちゃん!!」

「えぇ…勝ったのよ!」

 

 勝利に喜ぶ響香達……轟は爆豪に礼を言う。

 

「ありがとよ……爆豪…」

「………すまねぇな……」

 

 さっきまでヘタレていた事に爆豪は負い目を感じていたが、それでも勝てたのは爆豪のお陰だ……腐っているは訂正するか……相澤がそう思ったその時……

 

 

 ーー氷山が赤黒い光と共に吹き飛ばされた。

 

 

「良くもやってくれたわね!!お菓子の癖して!!」

 

 希望を絶望が吹き飛ばす。そのあまりの光景に響香達は声も発せない。誰もが目を見開き、身体を震わせて見ているだけだ。

 

 

「フォトンウェイブ!!」

 

 宙に浮かんだ21号は指先から赤黒い細いビームを放つ……それが地面を薙ぎ払い大爆発を起こす。響香と飯田は辛うじて回避できたが常闇達が薙ぎ払われてしまった。

 

 21号は次に爆豪に迫る。

 

「ヘタレてれば痛い目を見ずに済んだのに……アンタは簡単には殺さないわ!!」

 

「ふおぉあ!?」

 

 

 彼女は怒りの形相で爆豪へと一直線に飛翔し、逃げる暇も与えずに腕を爆豪の顔へと衝突させた。そのままラリアットで前へと飛び、準備していたかの様に其処にあった岩盤へと衝突、めり込ませた。

 

 

「もう終わりかしら?」

 

 爆豪を岩盤へと押し付ける。彼女の圧倒的力に晒された爆豪に成す術などない。力が抜けた身体は岩盤を滑り落ちていくだけだ。そんな爆豪を見届け21号は笑う。

 

「終わりね。所詮クズはクズなのよ……」

 

 倒れた爆豪から完全に興味を失い、21号は氷結界の龍(トリシューラ)へと視線を移す。庇うように飯田が前に出て蹴りを放つが全く意味がない。邪魔な石でも除けるかのように腕を振り上げる。

 

「グハッ!」

 

 アッパーカットで跳ね上げられ、この一撃だけで飯田は倒れ込む。

 

「飯田ッ!」

 

 響香が慌てたように飯田を助けに行く。だが遅い。21号が振り向きざまにラリアットを叩き込み、響香も何も出来ずに吹き飛ばされてしまった。

 

「よくもぉぉお!」

 

 八百万の叫びと共鳴して氷結界の龍(トリシューラ)が突撃するも轟と八百万の体力も既に限界だ。放つ攻撃には速さがない…それを見て21号は薄ら笑いを浮かべ赤黒い気を纏う。

 

「!?、八百万!」

「轟さん、何を!?」

 

 それを見た轟は八百万を氷結界の龍(トリシューラ)から分離させ避難させる。

 

「エクセレントフルコース!!」

 

 それと同時に赤黒い槍へと姿を変えた21号が氷結界の龍(トリシューラ)を貫いた。

 

 遂に氷結界の龍(トリシューラ)をも破壊され轟は地面へと投げ出された。

 

「よく頑張ったと褒めて上げるわ」

 

 そんな轟に21号は再びアブソリュートリリースボールを放つ……響香達は倒れ轟も力は残ってない……

 

(此処までか………)

 

 轟は静かに目を閉じる。

 

 

「遅れてすまねぇ……後は任してくれ!」

 

 

「!」

 

 声が聞こえた。思わず目を開ける。其処にはーー

 

 

 ーー龍悟(ヒーロー)が居た。

 

 

 

END

 




新しい活動報告を出しました。
ご意見よろしくお願いします。


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願い

お気に入りが1600人、超えました!
ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします!!


 圧倒的な力で響香達を倒した21号……此処までかと誰もが諦めたその時……あの男は来てくれた。

 

「龍悟…!」

 

 轟は放たれたアブソリュートリリースボールを跳ね返す龍悟の背中を見ていた。その姿に響香も希望を見出す。

 

「来るのが遅いよ……龍悟」

「すまなかった……後は任せろ!」

 

 響香に微笑みながら龍悟は超サイヤ人Ⅱに変身して21号に向かう。龍悟が現れた事に21号は歓喜の声をあげる。

 

「あー!やっと来たわね孫龍悟!!真のメインディッシュ!!貴方は何にしようかしら…貴方なら100点満点…いえ、120点の美味しいお菓子になるわ!!」

 

 欲望のまま叫び21号……

 

「久しぶりだな……と、言うべきか?」

「そうね〜でも、もういい子ちゃんの“あの子”は居ないわ…居るのはちょっと食いしん坊な私よ」

「そうか……なら、俺はアイツの願いを叶えるだけだ」

 

 静かに龍悟は構える。それに対して21号は己の欲望をさらけ出す。

 

「あ〜!もう我慢できない!!どれもこれもみ〜んな私の物!!」

 

 変わり果てた彼女…龍悟がとても寂しい表情をしたのを響香達は見逃さなかった。龍悟は決意を固め。

 

「………俺は……お前を救う者だ!!」

 

 龍悟が黄金の光を纏って21号へと挑んだ。それに対し21号もすぐに応戦するが、龍悟の拳によって空へと飛ばされてしまう。

 

「ぐっ!?…この!」

 

 21号の顔が憤怒に染まり、龍悟へと殴りかかった。だが龍悟はそれを軽々と流して蹴りを二発、三発と入れる。そのまま流れるように回転。渾身の蹴りで21号を弾き飛ばした。

 

 飛んでいく21号へ一瞬で追いついて尚も拳と蹴りを放ち、21号の反撃を的確に防いで流す。

 

「調子に!」

 

 21号がダメージを負いながら反撃をするが龍悟には当たらない。それが21号にはわからなかった。

 

「な、なんで…!」

 

 確かに21号は強者だ。それは…疑いようもない真実だ。同格以下の攻撃は効かずダメージを受けても超再生で万全になる……不死身に限りなく近い存在だ。格下なら無類の強さだが、格上には勝てない……並の格上なら問題はないが、龍悟(ゴジータ)は、肉体、技術、心…全てにおいて最強の存在……相手が悪すぎた。

 

 苦し紛れに殴りかかるがそれを受け流しその勢いを利用して回転し廻し蹴りを押し込む様に叩き付け21号は地面に激突する。

 

 龍悟は両手を上げ赤い稲妻が走る蒼穹の光弾を作り出し放つ…

 

「スターダストフォール!!」

 

 放たれたそれはいくつにも別れ、星屑の様に降り注ぐ。21号は気弾に打ちのめされ其処は光しか見えなくなり、龍悟は地面に降り立つ。

 

 やがて、21号の姿が見えてくる…スターダストフォールで再生が間に合わない程のダメージを負っていた。

 

「よ、よくも…!」

「…………やっぱりな」

 

 睨みつける21号を気にも止めず。龍悟は何かを確信する。

 

「まだ……“彼女”は居るんだろ?」

「!?」

 

 龍悟の言葉に21号は動揺し、響香達は疑問を持つ。

 

「さっきから龍悟は何を……」

「アイツと面識があるのか?」

 

 見守る中、龍悟は語る。

 

「お前は“彼女”を自分の奥底に封じ込めた……完全に取り込んだら“お前”と“彼女”が混ざり合い“お前”は“お前”じゃあなくなるからだ……違うか?」

「くっ…!」

「図星だな……聞こえるか、21号!お前は自分を殺してくれと、俺に頼んだ!!」

 

 龍悟の言葉に響香達は驚愕する。

 

「どう言う事!?」

「自分を殺してくれ!?」

 

「自分が完全な化物になって誰かの命を奪う前に…罪を犯す前に、殺してくれと………だけど、本当は違うんじゃあないのか?お前は助けて欲しかったんじゃあないのか!」

 

 龍悟の言葉はーー

 

「何を、“あの子”はもうーー「私は…」そんな…!」

 

 ーー“彼女”に届いた。

 

「まだ、お前の口から聞いてねぇ!ーー」

 

 

「ーー生きたいと言えぇぇえ!!」

 

 

 “彼女”の脳裏に過るのは龍悟に会いにショッピングモールに行った時、仲の良い家族が美味しく食卓を囲む姿だった。皆で食卓を囲んで食べる……一人で食べるよりとても美味しいのだろう……“彼女”は涙を流した。自分はあの暖かな光の世界には行けない……自分は悪から生まれたもの……それでも……

 

 

「生きたい!!ーー助けて…龍悟さん!!」

 

 

 “彼女”の願いが響く。響香達が目を見開く中、それを聞いた龍悟は小さく笑い超サイヤ人Ⅲへと姿を変える。

 

「当たり前だ!!」

 

 “彼女”が奥底に追いやられ“アイツ”が出てくる。

 

「はぁ…はぁ……助けて?どうやって?できっこないわよ、そんなの…!」

 

 龍悟を嘲笑う21号……だけど響香は否定した。

 

「アンタ、龍悟を狙ってたみたいだけど…何も知らないんだね………それでも何とかしてくれるのが孫龍悟なんだ!!」

 

 何となくだが響香達もわかった……21号には2つの人格がある……その一つが心優しい者だと言う事を…

 

 

「何となくしかわかんないけど……“彼女”を助けてあげて…龍悟!」

「あぁ…!」

 

 龍悟がすり足の様に21号に迫る。反撃しようとしたが次の瞬間には背後に立っていた。――直後。21号の腹がまるで殴られたかのようにへこみ、更に拳打の跡が何度も刻み込まれる。あまりに速すぎて攻撃された事にすら気付かなかったのだ。跳躍した龍悟は21号の側頭部に膝蹴りを叩き込み、よろめいた所でもう一度膝を叩き込む。そのまま反動で後方宙返りを決め、普通ならばそのまま離れていくはずのところを舞空術との合わせ技で距離を詰める。そして空中でもう一度後方へと回転してサマーソルトキックを決め顎を蹴り上げた。

 

 龍悟は背を向けて着地し片腕を上へ掲げた。掌の中には虹色に輝く宝玉…ソウルパニッシャーが生み出される。龍悟を見ながら爆豪は悔しそうに、しかし認めるしかないという笑みを浮かべた。

 

「変身野郎……すごい奴だよお前は。あの21号は俺にはとてもかなう相手じゃなかった……あいつと戦えるのはお前だけだ」

 

 爆豪は今、この時をもって理解した。何故天才であるはずの自分が勝てなかったのか……爆豪はオールマイトの勝つ姿に憧れた…勝つ為に戦い…勝って、己のプライドを守ろうとしていた。

 

 だが龍悟は違う。絶対負けない為に限界を極め続け戦うのだ。

 

 

「頭にくるぜ…強くて優しいヒーローなんて……頑張れ龍悟……お前がナンバーワンだ……!」

 

 

 爆豪が清々しく言ったその時、龍悟はソウルパニッシャーを放った。

 

 

「あぁぁぁぁぁあっ!!」

 

 21号が虹の光に包まれる。やがて光が消え見えたものは……“21号が二人に別れた”光景だった。龍悟は別れた“彼女”を支える。

 

「お前の願い…確かに聞いたぜ」

「龍悟さん…!」

 

 涙を流す“彼女”…21号(善)。ジャネンバをも浄化したソウルパニッシャーで善と悪とで分離させたのだ。ただ、連戦からのソウルパニッシャーで超サイヤ人Ⅲが解除される。

 

 

「よくも…よくもよくも!!」

 

 一方、別れた“アイツ”…21号(悪)は怒りの表情で龍悟を見ていた。

 

「全部…全部全部!アンタもそいつも…全部一人で食べてやる!!」

 

 別れた事でパワーダウンした21号(悪)が気を無理矢理高め、その姿が変わる…肌が浅黒く変色し、加えて黒い斑点が現れ、より不気味で禍々しい姿へと変貌していく。龍悟と21号(善)は構える。

 

 

「どうします?龍悟さんもかなり消耗してしまった今、アイツを完全に消し去るには…!」

「そうだな………そろそろ“切り札”を使う時か」

 

 龍悟は黒髪になり宙に浮かび両手を掲げた。

 

 

「皆わりぃ!俺に皆の元気をわけてくれ!!」

 

 

 龍悟の言葉に疑問を持った飯田だが…

 

「ウチの気を使って龍悟!!」

 

 響香が手を掲げた。すると彼女の手から青白い光が現れ龍悟の方へ飛んでいく。響香は龍悟から最終切り札“元気玉”の事は聞いていた。

 

 元気玉。

 

 この技は、かつて悟空が北の界王から教わった技で星に生きる植物や動物などから少しずつ気を借りる事で完成する。別に気を使えない者でも手を掲げれば気を送る事ができ、皆の力を一つに集結させる最大技だ。

 

 それを見た飯田達も手を掲げる。

 

「僕のもだ!!」

「私のも!!」

「龍悟ちゃん!!」

「俺達のも!!」 

「オウヨ!!」

「お前に託す!!」

 

 飯田に続き麗日、蛙吹、それに常闇、障子も続く。青白い気が集まり丸い気の塊になる。

 

「八百万…!」

「えぇ!受け取ってください、龍悟さん!!」

 

 八百万に肩を貸してもらい立ち上がる轟も八百万と共に手を掲げる。それに相澤…爆豪も続く。

 

「やらせるか!!」

 

 それを黙って見る21号(悪)ではない、龍悟ヘ攻撃を仕掛けようとしたその時…

 

「させません!!」

 

 21号(善)が立ち塞がる。

 

「おのれぇ…!私の邪魔をするなぁぁぁぁ!!」

 

 21号(善)が時間を稼いでくれる。元気玉はそれなりの大きさになったが…まだ足りない。

 

《皆聞こえる!今、龍悟君が敵と交戦中!手を掲げて力を貸して!!》

 

 突如、頭に声が聞こえた。辺りを見ると目を覚ましたマンダレイが皆にテレパスを送っていた。

 

「マンダレイ…」

「これくらいしかできないけど…後はお願い!」

 

 

 その声は合宿所に届き。

 

「俺達は其処には行けねぇけど……できる事があるなら喜んで力を貸すぜ!!」

 

 切島を筆頭に避難していたA・B組の皆が次々と手を掲げて気を送る。

 

「物間…アンタもお願い!」

「ハァ!しょうがないな〜!」

 

「頑張れ!!龍悟!!」

 

 拳籐も手を掲げて龍悟に気を送る。次々と送られる気により遂に元気玉が完成した。

 

 

「ありがとよ、皆!!21号!!」

 

「ハイ!はぁぁぁ!!」

「ナニ!?」

 

 龍悟の言葉に21号(善)は21号(悪)に気弾をぶつけて離れる。取り残された21号(悪)に……

 

 

「コレで最後だぁぁあ!!」

 

 

 特大の元気玉が降り注ぐ。21号(悪)は何とか受け止めるが…

 

「龍悟さん!!」

「あぁ!終わりするぞ!!」

 

 21号(善)が龍悟の肩に手を置き気を注ぐ。それによって超サイヤ人に変身した龍悟は元気玉を更に強く押し付ける。21号(悪)が受け止めきれなくなる。

 

「なんで…!こんな…奴等に……!」

 

 龍悟は小さく呟いた。

 

「オメェはすげよ…よく頑張った。この世界に来てまでお前と戦う事になるとは思わなかったぜ……魔人ブウ。今度は良い奴に生まれ変われよ……それで俺の事を覚えているのなら……何時でも相手してやる」

 

 龍悟は片手で元気玉を押しながらもう片方の手の指を額に添える。

 

 

「またな…!!」

 

 

 元気玉が一回り大きくなる。

 

「龍悟!!」

 

 響香がーー

 

『龍悟君!!』

 

 飯田と麗日がーー 

 

『龍悟(さん)!!』

 

 轟と八百万がーー

 

『龍悟(ちゃん)!!』

 

 蛙吹、常闇、障子がーー

 

『龍悟!!』

 

 相澤と爆豪がーー

 

『龍悟!!』

 

 拳籐達がーー

 

「龍悟さん!!」

 

 21号(善)がーー

 

 

『イケぇぇええっ!!』

 

 

 龍悟に全てを託す。

 

 

「はぁぁぁぁぁあっ!!!!」

 

 フルパワーで元気玉を押し込み遂に21号(悪)が飲み込まれる。凄まじいエネルギーで再生すらできずに消滅していく。

 

「ち、ちくしょう……!この…ゴミクズ共が……!」

 

 それが21号(悪)の最後の言葉だった。龍悟は元気玉を操作し上空に移動させ爆発させた。周りに被害はなく。21号(悪)も完全に消滅した。

 

 

「か、勝った…!勝ったんだ!!」

 

 先程とは違う確実な勝利を感じた響香達は歓喜の声をあげる、それを見ながら龍悟は拳を握った。

 

「俺達のパワーが勝った…!」

 

 

END

 

 

 



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終わらない絶望

今回は短めです。


 21号(悪)を倒し夜が明けた……B組の担任であるブラドキングが呼んだ消防や警察が到着。敵のガスによりB組の大半が意識不明……響香達の怪我は龍悟が回復させ大事には至らなかったがプロヒーローは一名が大量の血痕を残し行方不明となっていた。素直に勝利を喜べる状況ではなかった。

 

 

 龍悟と相澤は到着した塚内と共に警察署に来ており事情聴取を受けていた。内容は敵の襲撃の様子や逃げ出した敵の容姿ーー

 

ーーそして21号についてだ。

 

 21号(悪)を倒した後、彼女は相澤ヘ自首した。相澤は龍悟に説明を求め、龍悟は彼女の事を説明した。彼女が敵連合によって作られた存在だと。彼女も被害者である事は間違いない……それでも21号は敵連合である為に警察署へと運ばれた。

    

「塚内さん……21号はどうなるんですか?」

「今は…何とも言えないね……彼女も被害者ではあるが敵連合でもある事を意識しているんだろう…大人しくしているよ」

「加えて不死身に近い体にお前と同じエネルギー“個性”だ…未知数な状態な今、隔離が合理的だ」

「だけど、彼女が罪を犯した訳じゃあない……監視はつくだろうが敵として扱われる事は無い筈だ」

 

 塚内の説明に龍悟は安堵する。

 

「そうか……」

「それに、彼女は敵連合のアジトの事を詳しく話してくれた……極秘事項だが既に奴等を捕える準備がおこなわれている。裏が取れ次第カチ込む」

「孫、お前達はよくやってくれた……後は俺達、大人に任せろ」

 

 相澤の言う通り…“個性”使用許可はあるが資格を持っていない龍悟は此処までだ…後はオールマイト達プロヒーローに任せるべきだ。

 

「さて、協力ありがとう龍悟君……家まで送るよ」

 

 塚内がそう言ったその時、ドアが勢いよく開かれ塚内の部下の猫のお巡りさん、玉川三茶が入って来た。

 

「大変です!警部!!」

「どうした、三茶!?」

 

「生徒達を運んでいたバスが敵連合の襲撃にあいました!!」

 

『!?』

 

 三茶の言葉に龍悟達は驚愕する。たて続けの襲撃…しかもバスには警察の護衛もあったのだ。相澤は急いで雄英に連絡…龍悟は響香のスマホに電話をかける。

 

「響香!響香!…くそったれ!!」

 

 しかし繋がらない……焦る龍悟に飯田からの連絡がくる。

 

「もしもし!飯田!無事か!!」

『り、龍悟君…!』

「何があった!!」

『移動中に突然…黒いマスクを被ったスーツ姿の男が現れたんだ……奴は君とオールマイトとは真逆の存在だ……警察の護衛も一瞬で吹き飛ばすそいつは…僕達に自分の死を錯覚させた…!』

「皆は無事なのか!?」

『………幸い怪我人は居ない……でも!!』

 

 

『耳郎君が……攫われた…!!』

 

 

「え?」

 

 龍悟は現実を受け入れられなかった……今の言葉を聞き鬼気迫る相澤や塚内の怒号も耳に入らない。しかし…理解してしまった。脳裏に過る彼女の姿…

 

《相変わらず龍悟はよく食べるね…太らなくて羨ましいよ》

 

「ちくしょう…!」

 

《ウチ、いつかきっと…龍悟が背中を預けられる様に…強くなって見せるから!》

 

「ちくしょう…!!」

 

《ありがとう……ヒーロー!!》

 

 

「ちくしょおぉぉぉおおっ!!」

 

 

 龍悟(ゴジータ)は生まれて初めて……己の無力を知った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次章!!絶対無敵のヒーローアカデミアは!!

 

 

 攫われた響香!退学する覚悟で龍悟は救出に行こうとするが…その時…!!

 

ナイトアイ「君なら絶対に救出に向かうだろう……私が進言した、ヒーロー協会は今回の人質救出にゴジータが参加するのを認めた」

 

 独断で救出に行こうとする轟達を止めたのは!

 

轟「通形先輩……」

通形「気持ちは痛い程わかる、だけど……後は俺達に任せてくれ…!」

波動「辛いよね…苦しいよね……良いんだよ、泣きたい時に泣いたって」

麗日「波動先輩…!」

 

 龍悟と共にビッグ3が救出に参加!そんな彼等に思わぬ助っ人が!!

 

龍悟「21号!どうして…!」

21号「私にも責任があります……そして決別の為に!」

 

 

 今…敵連合との決戦が始まる!!

 

グラントリノ「奴は…オール・フォー・ワンは必ず動く…お前が死ぬ未来をアイツが変えるかもしれん」

塚内「流れを覆せ!ヒーロー!!」

 

 だが、トワと同盟を結んだ敵連合の戦力は余りにも強大……それでも彼等は道を切り開く。

 

バーダック「かりを返しにきたぜ!!」

トランクス「行ってください!!」

オールマイト「行きたまえ!彼女のヒーローは君だ!」

 

 だが、圧倒的なオール・フォー・ワンはプロヒーローを一掃する。

 

オール・フォー・ワン「これが君が目指す者の末路だよ、耳郎君…それでも君は目指すのかい?」

耳郎「……ウチは信じてる……絶望に輝く光を…ウチの絶対無敵のヒーローを!!」

 

?「貴方に進む覚悟があるのなら……貴方に力を…」

 

 耳郎が手にする新たな力とは!

 

 そして!!

 

龍悟「いい加減にしろよ…罪のねぇもんを次から次へと傷つけやがって……俺は怒ったぞ!オール・フォー・ワン!!」

オール・フォー・ワン「ふふふ!…遂に来たか、ゴジータ!」

 

 遂にゴジータとオール・フォー・ワンが激突する!勝つのは…終わりか奇跡か!!

 

 

次章!終わりと奇跡編!!

 

 ご期待ください!!

 

 

 

 

 

龍悟「今度の俺は……ちょっと強いぜ…!!」

 

 

 

END

 



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六章・終わりと奇跡
君を救いに…


 

 連絡を受けた龍悟は相澤と共に急いで皆が運ばれた病院へと向かった。飯田の言う通り大怪我を負った者は居ない。だけど……響香は居なかった…

 

「クソ!俺が……俺が居れば…!」

「龍悟君……」

 

 龍悟は滅多に感情を表には出さない……だけど、誰よりも優しい人間だと言う事は誰もが知っていた。その龍悟の怒りの表情を飯田達は見た事がなかった。

 

「なぁ、相澤先生………仲間を助ける事は罪なのか?」

「孫、お前…!」

 

 相澤は理解してしまった…龍悟は響香を助けに行くのだと……だが、相澤には……守る事ができなかった雄英には止める権利はない。

 

「別にヒーローになれなくなってもいい……俺は後悔を重ねる生き方はしたくねぇ」

 

 そんな時だ……

 

「失礼します」

 

 サー・ナイトアイが現れた。

 

「ナイトアイ…どうして此処に…!」

「先程の話は聞かせてもらった…」

「止まるつもりはないぞ」

 

 龍悟の覚悟を決めた目を見てナイトアイは静かに答えた。

 

「ふっ、オールマイトそっくりだな……君なら絶対に救出に向かうだろう……私が進言した、ヒーロー協会は今回の人質救出に“ゴジータ”が参加するのを認めた」

 

『!?』

 

 ナイトアイの言葉に誰もが驚愕する。心当たりがある相澤が尋ねる。

 

「…………孫の瞬間移動ですか?」

「えぇ…君達A組は孫君が頻繁に使うからわからないかもしれないが転移“個性”は本来は非常に希少価値が高い“個性”だ…」

 

 だからこそ敵連合にワープ“個性”の黒霧がいる事を重く見たのだ。

 

「奴等はヒーローと警察の信頼を地に落とした。今回の事件はヒーロー社会崩壊のきっかけになるかもしれない…なんとしても耳郎君を救出しなくてはならない今、瞬間移動が使える君が救出できる可能性が最も高い…体育祭優勝、ヒーロー殺しの逮捕、I・アイランドのテロ鎮圧……実力は十分過ぎる」

 

 ナイトアイの説明に轟が異を唱えた。

 

「俺は!俺達は駄目なんですか…!」

「……………残念だが」

 

 ナイトアイの言葉に轟達は悔しがる、そんな彼等に声をかけたのは……

 

「轟君……どうか抑えてくれ」

「通形先輩…!」

「怪我をしなくて良かった…心配したよ…」

「波動先輩…」

 

 龍悟達の先輩である通形と波動だった。

 

「俺達も耳郎君の救出に参加する」

「先輩が…!」

「君が行くのに私達が行かない訳ないでしょ…」

 

 通形は轟の肩に手を置き…波動は麗日と拳籐を抱きしめる。

 

「気持ちは痛い程わかる、だけど……後は俺達に任せてくれ…!」

「辛いよね…苦しいよね……良いんだよ、泣きたい時に泣いたって」

 

 先輩からの言葉に轟は静かに涙を流し。麗日と拳籐は泣き叫びながら波動に抱きついた。

 

「相澤先生……」

「………耳郎を連れて…必ず帰ってこい!」

「あぁ!!」

 

 決意を固める龍悟にナイトアイが重く言った。

 

「この事は君のご両親にも伝えてある……しっかりと話し合うべきだ」

「…………そうだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 龍悟はナイトアイに連れられ自宅…カプセルコーポレーションに戻って来た。ナイトアイは外で待機しており龍悟は家に入る。リビングには父の翔、母の愛実。

 

 そして……

 

「おじさん…おばさん…」

 

 響香の両親の耳郎響徳…耳郎美香が居た。龍悟が参加する事を聞いた両親が呼んだのだろう。

 

「龍悟…」

 

 愛実が龍悟を見る……龍悟はコスチュームを着ていた。わかっていた…息子は助けに行く事に…

 

「おばさん…響香は生きてる」

 

 龍悟は確信した様に言った。美香は先程から顔に手を当て涙を流し続けていたが龍悟の言葉に顔をあげる。

 

「俺には確信がある…響香は無事だ……俺は行くよ……響香を助けに…!」

 

 

 暫く龍悟を見つめていた響徳が懐かしむ様に頭を撫でる。

 

「いい漢になったね、龍悟君……娘を響香を頼む…!」

「あぁ…!約束する……必ずアイツを連れて帰る…!」

 

 そう答え龍悟は背を向けて両親に言った。

 

「すまねぇな…心配かけてばかりの親不孝な馬鹿息子で…」

 

 それを聞いた翔が言った…息子の無事を祈って。

 

「待ってるからな…響香ちゃんを連れて…必ず…必ず帰ってこい!!」

 

 龍悟は少し振り返って笑って答えた。

 

「あぁ、俺の家は此処だからな…」

 

 家を出た龍悟…決意の目を見て全てを悟ってもナイトアイは尋ねる。

 

「本当に、いいんだな…後戻りはできないぞ」

「あぁ…!」

 

 龍悟はナイトアイの車に乗り急ぎ神野区の集合地点へと向かった。

 

 

 

 

 

 その頃、神野区にある敵連合が潜伏するアジトの一つ……警察の護衛を吹き飛ばしバスを襲い響香を連れ去った張本人…オール・フォー・ワンは自室でドクターと話をしていた。

 

「“お姫様”はどんな調子かな?」

「じっとしておるよ……首飾りを握りしめながらな……全く、お陰で何もできやしない」

 

 誘拐した響香に彼等は何もできなかった………彼女がつけていた首飾りが発光して守っているからだ。その為今は薄暗い部屋に閉じ込めている。

 

「彼も保険をかけていたと言う事か……それでも“餌”として最低限利用させてもらうよ…トワを失ったのは痛かったけど…駒は大量に増えたし、彼女は近い内に僕達を裏切る積もりだったし…手間が省けたと喜ぶべきか」

 

 オール・フォー・ワンは愉快そうに画面に映る紫色の生物が入ったカプセルを見ていた。

 

 

 そして薄暗い部屋に響香は閉じ込められていた。体は恐怖で震え時には涙を流しながらも…その目には光があった。

 

 彼女の手には虹色に輝く四つ葉のクローバーの首飾りがあった。思い出すのは入学祝いに二人で遊びに行った帰り道。

 

 

『響香、入学祝いだ』

『え、何これ…奇麗』

『ソウルパニッシャーの結晶』

『へ〜………ソウルパニッシャーの結晶!?』

『ヒーローって副業必要だろ…ソウルパニッシャーを結晶にしたら儲かると思って…』

『………本当に何でもありだね……ありがと、大事にするよ』

『……そいつがお前を守ってくれるさ。必ず…』

 

 

 

 

 

 

 龍悟は決意を胸に…響香は奇跡を祈る。

 

 

響香(龍悟)……必ずお前を…(必ず来るって…)助けだす(信じてる)!!」

 

 

 

END

 

 

 




虹色の四つ葉のクローバー

龍悟が響香に入学祝いに渡した物……将来の副業の為に練習した物だと言って渡したが…本当は彼女の身に危険が迫った時に自動で彼女を守る最終防衛具【アヴァロン】

肉体的、または…トワの魔術の様な精神的攻撃が命に関わるものだった場合に彼女の気を媒体にソウルパニッシャーの膜を彼女に纏わせる。攫われた時は危害は加えられなかったので発動しなかったが、響香の精神が攫われた事により危険域に到達した為に発動した。精神の浄化や肉体の回復等もできる。

 元ネタはFateで衛宮士郎に埋め込まれたアヴァロン

 龍悟は雄英に行く為に響香と特訓を始めた頃から並行して制作しており…完成に数年かかってる。故に量産は不可能。







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此処は任せて先に行け!全面衝突、ヒーローVS敵連合!!

投票者が100人超えました。
評価は下がってますが……頑張ります!

それではどうぞ!!


 ナイトアイと共に神野区の集合地点へ到着した。其処にはNo.2のエンデヴァー・No.4のベストジーニストを始めとした名だたるヒーローが集結しており…勿論。

 

「やはり…来たか、孫少年」

「あぁ…」

 

 オールマイトも居た。内心では来てほしくなかったんだろう……複雑な表情だ。

 

「龍悟君!」

「先輩…」

 

 既に通形や波動も来ていた様だ…そして、青みがかった黒髪と尖った耳に三白眼が特徴的な少年が通形の後ろから気弱そうに顔を出した。

 

「ミリオ……この子がそうなのか?」

「あぁ、そうだ。紹介するよ…コイツがビッグ3最後の一人…天喰環だ」

「孫龍悟だ…よろしく頼む」

 

 龍悟は握手をしようとしたが…天喰はビクビクして動かない。不思議に思う龍悟。

 

「そろそろ、そのヘボメンタルをどうにかせんとな…環」

 

 其処に声をかける縦にも横にも大きい巨漢…彼こそ天喰のヒーローインターン先のヒーロー。

 

「ファットガム…」

「おう!君がゴジータやな…環はヘボメンタルだが実力はプロ以上や…心配無用や」

「相変わらず、パワハラだ」

 

 ファットガムの言葉に更に傷つく天喰。

 

「ねぇねぇ…あぁ言うのって、ノミの心臓って言うんだよ…知ってた?」

「なるほど……それよりも先輩達のインターン先も来てるのか…」

「当然よ……期待のルーキー」

 

 今度は若い女性の声だった。彼女は波動のヒーローインターン先でありNo.9の絶大な人気を誇るヒーロー。

 

「リューキュウまで来ているとは……驚きだ」

「ねじれが、泣いて頼んできたの…『響香ちゃんを助けたい』って……“困ってる子がいる”ヒーローが動くのにこれ以上理由はいらないわ」

「……そうだな」

 

「では、これよりブリーフィングを始めます!」

 

 そしてナイトアイの元ブリーフィングが始まる。目標はアジトの複数同時制圧。大規模になるが既に警察により避難は進んでいる。護衛の中での拉致…ヒーローだけでなく警察の面子を崩された今、出し惜しみはしない。マスコミもヒーロー協会と警察が抑えており…龍悟が世間に晒される心配はない。後でオールマイトが救出した事にすれば万事解決だ。

 

「最優先は人質の救出……それは瞬間移動ができるゴジータとビッグ3に任せます。彼等の実力は皆さんも知っている筈です」

 

 龍悟は勿論、プロの元で活躍しているビッグ3の実力は並のプロ以上だと誰もが理解していた。

 

「そして彼等の案内役として“彼女”が志願した」

「“彼女”?」

「お前さんも知っとるじゃろ…」

 

 グラントリノと共に現れたのは……

 

「21号!どうして…!」

 

 21号だった。彼女の目には確かな決意があった。

 

「私にも責任があります……そして決別の為に!」

「アジトについてなら彼女が一番知っている……戦力が必要な今、四の五の言ってられない…勿論ゴジータ達の監視の元で行動してもらうが…」

「勿論です」

 

 響香奪還……それに参加するはゴジータ・ビッグ3・21号…正にベストメンバーだ。それでも、心配そうにオールマイトは見ていた。

 

「心配か…」

「えぇ…此処まで大きく展開する事態…」

「奴は…オール・フォー・ワンは必ず動く…お前が死ぬ未来をアイツが変えるかもしれん……自慢の弟子なんだろ…」

「…………そうですね、彼は強い」

 

 

 そしていよいよ…

 

 

「今回はスピード勝負だ!敵に何もさせるな!先程の会見、敵を欺くよう校長にのみ協力要請しておいた!さも難航中かのように装ってもらっている!あの発言を受け――その日の内に突入されるとは思うまい!意趣返ししてやれ!さァ反撃のときだ!」

 

 

「流れを覆せ!!!ヒーロー!!!」

 

 

 決戦の火蓋が切って落とされた。

 

 

 

 

 

 

 

「クソ!あのチート野郎…!」

 

 黒霧が運営するバー…敵連合のアジトの一つで死柄木は大火傷を負った自分の右手を見て苦痛の表情をしていた。オール・フォー・ワンが響香を拉致した時、右目の恨みを籠めて彼女の腕を崩壊させようとしたその時、四つ葉のクローバー…【アヴァロン】が発動、触れていた彼の手をソウルパニッシャーが焼き、先程まで痛みでのたうち回ってた……43話ぶりの登場だと言うのに…

 

 その時…気の抜ける声が響いた。

 

「どーも。ピザーラ神野店です~~」

 

 

 途端に、轟音。オールマイトが壁を破り、シンリンカムイがウルシ鎖牢で全員を縛り、グラントリノが茶毘を蹴りで気絶させ、瞬く間に拘束された。

 

「もう逃げられんぞ敵連合……何故って!?」

 

 

「我々が来た!」

 

 

「オールマイト……!!あの会見後にまさか、タイミング示し合わせて―ー―!」

「木の人!引っ張んなってば!!押せよ!!」

「や〜!」

 

「攻勢時ほど、守りが疎かになるものだ……ピザーラ神野店は俺たちだけじゃない」

 

 エッジショットを先頭に機動隊も突入してくる。

 

「外はあのエンデヴァーをはじめ、手練のヒーローと警察が包囲している」

 

 この圧倒的不利な状況に、震える死柄木。

 

「仕方がない……俺たちだけじゃない……そりゃあこっちもだ。黒霧。持ってこれるだけ持ってこい!!!」

 

 だが、何も起きない。

 

「すみません死柄木弔……所定の位置にあるハズの脳無が……ない……!!」

「!?」

 

 重なる想定外に、更に混乱する死柄木。

 

「やはり君はまだまだ青二才だ死柄木!!」

「あ?」

 

 せめてもと睨みつけるも無様なものだ…

 

 

「敵連合よ、君らは舐めすぎた。警察のたゆまぬ捜査を。そしてーー」

 

「俺達の怒りを!!」

 

 現れた龍悟に死柄木の憎悪が高まる。

 

「孫龍悟!!」

「よう…久しぶりだな、どうしたその眼帯は……中二病が更に酷くなったのか?」

「お前のせいだろうが…!」

 

 死柄木は最初の襲撃の最後に龍悟に右目を撃たれて眼帯をつけていた。

 

「これで終わりだ!死柄木弔!!」

 

 

 黒霧で逃げ出そうとするが黒霧を待機していたエッジショットが気絶させる。既に包囲されて逃げ場は無い。

 

「ふざけんな…こんな、あっけなく…!」

 

 唖然とする死柄木にオールマイトと龍悟は問い詰める。

 

「響香はーー」

「奴はーー」

 

 

「「何処に居る!!死柄木!!!」」

 

 

 死柄木が呪詛の様に叫ぶ。

 

「お前等が!!嫌いだぁ!!」

 

 その時、黒い液体が現れそこから脳無が現れた。

 

「これは!」

「エッジショット!」

「コイツの仕業ではない!」

 

 その液体は死柄木達を飲み込み消えていった。

 

「すみません皆様!!」

「お前の落ち度じゃない!」

 

 外にも脳無が溢れ…いや……脳無だけではない。

 

「サイバイマンだと…!」

 

 そう、それは…あちらの世界でフリーザ軍が使用した人造兵器…サイバイマンが脳無と共に機動隊を蹴散らしていた。

 

(トワか!死んでも影響与えやがって!!)

 

 その数は圧倒的に多く…脳無が数十体居る。しかもハイエンドタイプも存在する。

 

「えぇい!!数が多すぎる!!」

 

 エンデヴァーが豪炎を放つが数が全く減っていない。塚内が別のアジトの制圧に行ったジーニストに連絡を入れるが繋がらない。

 

「龍悟さん!このままでは助けに行く事が…!」

 

 21号達も応戦するが数が多すぎる。此処で食い止めなければ民間人に被害がでる。響香の救出に手が回せない。

 

 

 その時ーー空から降り注ぐ2つの光がサイバイマンを一掃した。其処に居たのは!

 

「バーダック!?トランクス!?どうして!!」

 

 バーダックとトランクスだった。バーダックは好戦的な笑みを浮かべながら脳無の群れに突っ込んだ。

 

「決まってんだろ!かりを返しに来たんだよ!!」

 

 そう言いながら次々と脳無を吹き飛ばす。驚く龍悟にトランクスが近づく。

 

「トワの事は元は俺達の不甲斐なさが招いた事……此処は俺達に任せて、行ってください!!」

 

 トランクスも剣を構えて突撃する。龍悟達に脳無が襲いかかるが…オールマイトが殴り飛ばした。

 

「孫少年……此処は私達に任せて君達は耳郎君の救出に向かいなさい」

 

 そう言ってオールマイトは黒いハイエンド脳無と激突する。

 

「行きたまえ!彼女のヒーローは君だ!」

 

 オールマイトの叫び…通形が龍悟の肩を掴む。

 

「龍悟君……行こう!!」

「あぁ……掴まってくれ!」

 

 波動・天喰・21号が掴まったのを確認すると龍悟は瞬間移動した。

 

(ジーニスト達はやられた……この悪意しかない気…ワン・フォー・オールが教えてくれる……コイツがオール・フォー・ワン……スゲー気だ)

 

 感じるオール・フォー・ワンの強大な気に反応する様にワン・フォー・オールがさっきから発動している。だが…それ以外にも感じる気があった。

 

(だが、すぐ近くに居るこの強大な気は誰だ?21号に匹敵し…何処か“響香”に似ている……何にせよ、無事で居てくれ!)

 

 龍悟の頬を一筋の汗が流れる。

 

 

 

 

 

 その数分前……ジーニスト達、プロヒーローを意図も容易く吹き飛ばした。オール・フォー・ワン……だが、彼は困惑していた……目の前の存在に。

 

 

 その存在……彼女の身長は波動と同じくらいでスタイルも波動に勝るとも劣らない…紫色の美しいロングヘアで背中には時計の針を模したような光輪が展開されている。何より彼女から放たれる気は分離する前の21号に匹敵する。

 

 

「見せてあげるよ……“ウチ”の新しい力を…!」

 

 

 

END

 

 

 

 

 




トワ達についてですが……本来なら居なかった事にするのですが彼女が与えた影響が大き過ぎる為不可能…その為、時の界王神がドラゴンボールの力でトワ達はあっちの世界の地獄に落とされたが…こっちの世界では【タルタロス】に収容されている概念を与えられています。その為、実際には居ないのですがタルタロスに居る事になっています。この事を知っているのは龍悟とトランクス達だけです。

 そして今回現れたトランクスとバーダックはドラゴンボールの力で駆けつけた現地のヒーロー扱いになっています。

 この2つの願いによるマイナスエネルギーは時の界王神が既に浄化しました。



次回で彼女の正体が明らかに!


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耳郎響香・オリジン

 

 時は龍悟達が突撃する前……響香はオール・フォー・ワンに部屋から連れられ、ある場所へと連れてこられた。薄暗いその場所にあるのは機材の数々。それとチューブに繋がれた何十個もの長方形の鋼鉄のケース。

 

 その中にあるのは……脳無だった。震える体で歩く響香の呟きが響く。

 

「悪趣味……」

「ははは、手厳しいね…耳郎響香君……見せたいのはこの先だよ」

 

 

 そう言ってどんどん奥へと進む。一番奥だと思わしき場所へとたどり着く。それを見た時、響香が息を飲む。

 

「…何、コレ…!」

「いい反応だよ」

 

 明らかに他の脳無とは違う…厳重なカプセルに入れられたソレは明らかに異質だった。紫の小柄な体……見た感じ脅威には見えないが…響香は感じ取る。圧倒的な力を……

 

「この子は“フィン”…僕とトワが孫龍悟を…ゴジータを抹殺する為に共同開発した存在」

「龍悟を……殺す…!」

 

 それを聞いた響香はオール・フォー・ワンを強い瞳で睨む。オール・フォー・ワンはそれを楽しそうに見ていた。

 

「ふふふ、やっぱり強い子だね君は……その首飾りが君に勇気をくれるのかい?」

 

 響香に手を伸ばすオール・フォー・ワン。響香の頬を一筋の汗が流れた……その時ーー

 

 

【THOOM!!】

 

 

 突然、轟音と共に地面が揺れ始めた。

 

「!」

 

 助けが来る事を信じていた……今しか無いと響香は脱出を開始しようとイヤホン・ジャックで足場を破壊しオール・フォー・ワンのバランスを崩すが……

 

「ははは、お転婆なお姫様だ」

 

 空中に浮かぶオール・フォー・ワン……響香を拘束しようとするが……

 

「龍悟……ごめん!」

 

 響香は首飾りを投げる。イヤホンジャックを首飾りに突き刺し破裂させる。ソウルパニッシャーの光がオール・フォー・ワンに迫る。流石のオール・フォー・ワンもソウルパニッシャーを喰らえば無事では済まない。

 

「くっ!」

 

 咄嗟に個性を組み合わせてソウルパニッシャーを防ぐがそれでもダメージが響く。やっとソウルパニッシャーが消えたその時には………響香は脱出していた。

 

「ヒーローか………全く何時もいい時に現れる。忌々しい……」

 

 オール・フォー・ワンは自身の後ろにある“終わり”の封印を解く。

 

「さぁ、いよいよ君の出番だよ……フィン!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アジトを全速力で走る響香、オール・フォー・ワンが追ってくる気配は無いが少しも安心できない。後、首飾りを壊した事を後悔していた。

 

「ごめん…龍悟」

 

 走っていると辿り着いたのは先程の脳無保管庫だった。しかし壁は破壊され脳無は無様に倒れ伏し…其処には何人ものヒーローが居た。スーツを着たシャチの“異形型個性”のヒーロー…【ギャングオルカ】が響香に気づく。

 

 

「居たぞ、誘拐された生徒だ!!君が耳郎響香で間違いないか?」

「は、はい!」

「そうか……怖かったろう、もう大丈夫だ」

 

 ギャングオルカは優しく響香の肩を叩く。それでも響香はこのアジトでオール・フォー・ワンが行っている事を話す。

 

「此処に敵連合のボスが居るんです!そいつはこの奥で脳無より遥かに恐ろしい者を作ってるんです!!」

 

 すると首元までジーパンを着ている【ベストジーニスト】が尋ねる。

 

「十分だ、ありがとう…虎!チームメイトと共に彼女を連れて先に行け!」

「あ、あぁ!さぁこっちへ…警察も居る…早くご両親に連絡をーー」

 

 その時だーー奥の方から放たれた紫色のエネルギー弾が…後ろに控えて居た機動隊を吹き飛ばした。

 

「な!?」

 

 突然の事態に若手ヒーロー【マウントレディ】が唖然とする中…ギャングオルカは此方に向かってくる存在に気づく。

 

「来るぞ!!」

 

 それと同時に現れた者は……紫色の体をした小柄な異形……だけど放たれるプレッシャーはプロヒーローですら冷や汗が止まらない……それはさっきのカプセルに入っていた“フィン”だった。

 

「どうかな耳郎響香君……これがフィンだよ」

 

 同時にオール・フォー・ワンが現れた。ジーニストはすぐ様衣服を操りオール・フォー・ワンを拘束する。

 

「耳郎君、早く逃げるんだ!!虎・マウントレディ!!彼女を!!」

 

 それと同時にギャングオルカがオール・フォー・ワンに突撃する。虎は響香を掴み急ぎ離脱を試みるがーー

 

「それは困るな……フィン」

 

 オール・フォー・ワンは拘束など関係ない様に動きフィンに命令する。

 

「ギャギャギャ!」

 

 フィンがこの世の者とは思えない声で叫びながら。響香達に迫る。

 

「やらせるかっての!!」

 

 マウントレディが強大な拳を振り下ろすがフィンは凄まじい速度でそれを避けマウントレディを顔面にエネルギー弾……気弾をぶつける。痛みでバランスを崩したマウントレディにフィンは関節など知らないと言わんばかりに自身の体を丸めてボールの形になる。そしてマウントレディに突き刺さった。

 

「ガハァ…!」

 

 マウントレディの巨体があっけなく崩れ去り。フィンは次は虎に気弾を放つ…攫われたチームメイトであるラグドールを背負っていた虎は我が身を盾にするしかなく気弾の爆発に吹き飛ばされた。

 

「そんな…!」

 

 プロヒーローを容易く倒すフィン……まるで分離する前の21号の様な絶望感。

 

「どうかな…フィンの力は?凄いだろう」

 

 オール・フォー・ワンの声が聞こえる、視線を向ければ倒れ伏すジーニストやギャングオルカ…そして無傷のオール・フォー・ワンだった。

 

「これが君が目指す者の末路だよ、耳郎響香君…それでも君は目指すのかい?」

 

 もう立って居るのは響香だけ……絶望しかないこの状況でも…響香の目には光があった。

 

「……それでも、ウチは信じてる……絶望に輝く光を…ウチの絶対無敵のヒーローを!!」

 

 

 

 

 

 

 それは6年前……まだ響香や龍悟が小学生だった頃…その日は遠足だった…目的地は何処だったか覚えてないがあの日を忘れる事はないだろう。自分達を乗せたバスが…“鳴羽田”を通っていた時だーー

 

 ーー突然、敵が現れたのだ。

 

 まだ、広まってはいなかったが…最近、鳴羽田では突然一般人が敵に変貌する事件が起き始めていた。その敵は道路で突然暴れだし、車を次々となぎ倒していた。そして響香達が乗っていたバスにも襲いかかりバスは転倒。同級生や教師は気を失い、響香は運良く意識を保っていたが…

 

『ひぃッ!』

 

 敵は大きなバスを目標にしたのかバスに迫ってくる。まだ小学生の響香には動ける勇気はなかった。

 

 

『助けて……助けて!ヒーロー!!』

 

 

 その時だ、光の柱がまるで響香を守る様に突然現れたのだ。光が消え其処に居たのは……超サイヤ人に変身した龍悟だった。周りより少し大人びている響香は無口な龍悟と話が合い、その頃から彼等の仲は始まった。

 

 

『確か、こう言うんだっけな………もう大丈夫!何故ってーー』

 

『ーー俺が居る!!』

 

 

 そうして龍悟はあっという間に敵を倒してみせた。響香にはそんな龍悟が輝いて見えた…自分もあんなふうになりたいと……それから響香は龍悟と今まで以上に関わる様になり……龍悟も楽しそうに響香と青春を過ごしていた。

 

 

 そして中学の時……彼女は迷っていた。両親が大切にしている音楽の道、自分が憧れているヒーローの道。どちらも大切だった。そんな自分の悩みを龍悟は自分の事の様に真剣に考えくれた。だからこそ、響香は龍悟がどんな人間なのかわかった。

 

 不器用で誰よりも優しい、星の様に輝く人だと…

 

 だから…

 

 

 

 

 

 

「どんなに遠くても…目指すんだ…ヒーローを!…その為に前に進み続ける。それがウチのーー」

 

 

「オリジン!!」

 

 

 歩み続ける…(龍悟)に届くまで……それが耳郎響香のオリジン。

 

 

 それをオール・フォー・ワンは愉快そうに笑った。

 

「いいね、その輝き…実に美しいよ。でも、ヒーローじゃなく、そろそろお姫様に戻ってもらうよ…フィン」

 

 オール・フォー・ワンの言葉に反応してフィンが手を響香に向け気弾を放つ……当たるかと思われたその時…

 

 

 

 世界の時が…止まった。

 

 

「え?」

 

 唖然とする響香…オール・フォー・ワンもフィンも止まったまま…此方に向かってくる気弾も止まっており唯一動ける響香は訳がわからなかった。

 

「耳郎響香さん…」

 

 背後から声が聞こえ振り返ると……

 

「女神…様…!」

 

 其処にはピンクの肌にオレンジ色のロングヘア…高貴な服を着て背後には時計の針を模したような光輪があった…その神々しい姿は正に女神だった。

 

「あ、貴方は…!」

「ごめんさい、それは言えません……耳郎響香さん、単刀直入に言いましょう……力を与えます」

「単刀直入過ぎません!?」

 

 確かにいきなり力を与えると言っても疑問しかわかないだろう…女神は笑いながら答えた。

 

「ふふふ、貴方達に迷惑をかけたお詫びですし……ゴジータ君の隣に立ちたい恋する女の子を応援したいだけですよ」

「龍悟の知り合い?」

 

 女神は頷きながら手を開く…その手の平には美しい宝玉が存在していた。

 

「貴方に進む覚悟があるのなら……貴方に力を…」

 

 響香は暫く考える様に見つめたが……覚悟を固めた目をして宝玉を手に取る……前に彼女の時が止まった。

 

「よし!此処まではバッチリね……後はお願い、おじいちゃん!!」

 

 響香が止まった事を確認した女神はさっきの威厳は何処へやら幼い喋り方を始めた。

 

「全く…何でワシまでこんな事を…」

 

 そう言われ出てきたのは女神と似た格好をした老人だった。面倒臭そうに言う老人に女神……時の界王神は言う。

 

「今回の事件は私達の不甲斐なさが招いたのが原因よ…これ位の事はして当然よ……そう言う事をちゃんとしないからベジータ君に界王神は無脳だって言われるのよ」

「わかった、わかった」

 

 時の界王神に言われ老人……老界王神は響香の前に立つ。

 

「しかし…べっぴんさ「変な事したらゴジータ君に言うからね」……す、する訳ないじゃろ!じゃあ始めるぞ。……フンフンフーン!フフフのフーン!」

 

 何をするのかと思えば…突然、奇声をあげてのダンスである。しかし顔を見れば老界王神は至って真面目そのものだ。

 

 何故、響香まで止めたかと言うと彼女に与える力の一つは老界王神が別世界の悟飯に施した潜在能力解放…またの名を究極化である。しかしその為には儀式が5時間、能力の解放には20時間を要する。 龍悟ならともかく響香には無理だ…だから彼女の時間を止めたのだ。

 

 しかし、25時間も待ってられないので時の界王神は老界王神の時間を早める。早送りの如く動く老界王神……僅か5分で終了した。

 

「ありがとう…おじいちゃん」

「ヒーヒー……じゃあ先に戻っとるぞ」

 

 そう言って老界王神はあっちの世界に戻った。そして彼女の時間を動かし…さっきの威厳で語りかける。

 

「どうか…貴方に幸せがあらん事を…」

 

 そう言って…時の界王神は消え…宝玉は響香の中に沈んでいった。

 

 

 

 そして時は動きだす……

 

 フィンが放った気弾が迫ってくるが響香には恐れはなかった。感じる…自分の中に新しい力がある事を…

 

「はぁぁぁぁあっ!!」

 

 気合を入れ己の力を開放する…その時、膨大な気が響香を包み込みフィンが放った気弾を吹き飛ばした。

 

「なんだと!?」

 

 余りの事態、オール・フォー・ワンも驚きを隠せない。そして彼女は“変身”した。彼女の身長は波動と同じくらいでスタイルも波動に勝るとも劣らない…紫色の美しいロングヘアで背中には時計の針を模したような光輪が展開されている。何より彼女から放たれる気は分離する前の21号に匹敵する。

 

 唖然とするオール・フォー・ワンに響香は言った。

 

「見せてあげるよ……“ウチ”の新しい力を…!」

 

 

 究極化を果たした響香は静かにフィンに歩み寄る。落ち着きを取り戻したオール・フォー・ワン。

 

「……ふ、ふふふ…流石に驚いたよ……フィンのテストには丁度いい…フィン、遊んで来なさい」

「ギャギャ!!」

 

 オール・フォー・ワンの言葉に喜ぶフィン。だが、その隙に響香は蹴り飛ばした。

 

「なっ!?」

「勘違いしないでくれない…ウチは、遊ぶつもりなんてない……倒すつもりだ!」

 

 響香は自身に流れる力を放つ。究極化をした事で響香も気を使える様になったのだ。そのまま気を固定化し紫と黒の長身の日本刀を生み出した。

 

 龍悟と違い響香はイヤホンジャックや衝撃波で器用に戦い、接近戦もできるスタイルだったので武器を使うのはいい考えだろう。右手で日本刀を持ち牙突の構えを取る。

 

 

「ウガァァア!」

 

 瓦礫に突っ込んだフィンが怒りの表情で響香を見る。次の瞬間、腕を伸ばして来た。

 

「生憎…それは21号で経験済み!」

 

 そのまま日本刀でフィンの腕を切り裂き…そのままフィンに突っ込む。フィンが口から気弾を放つ…品が無いと呟きながら日本刀で切り払い…フィンを空高く蹴り飛ばした。

 

「アアアアアアアア!!」

 

 フィンも一筋縄ではいかない…腕を再生し響香に次々と放つ。響香も気の斬撃を飛ばしながら応戦する。まだ力の扱いになれていない響香だが…それは動き出したばかりのフィンにも言える事…

 

 しかし…響香は所々被弾してしまうが、フィンは当たっても直ぐに再生してしまう。

 

(21号と同じ…一気にケリをつけるしかない…!)

 

 

 舞空術で空を飛びながら多少の被弾は無視してフィンの所まで来た響香は日本刀を振り下ろす。それをフィンは自身の体を変化させ盾に変えて受け止める。しかも日本刀にくっつき…離れない。

 

「クッ!」

「ギャギャア!!」

 

 そのまま響香を振り回し地面に叩きつける。起き上がった響香が見た光景は…巨大な禍々しい気の玉を振り下ろそうとするフィンの姿だった。

 

「ウギァギャ!!」

 

 これで終りと思ったのだろうか…嬉しそうな声をあげるフィンだったが……

 

「ふっ、正直…まだ制御、上手くないんだよね……力押しの方がありがたいよ!」

 

 響香の目は死んでなかった。日本刀に気を集中させ…一気に斬撃として放った。

 

 

「ヴィクトリースラッシュ!!」

 

 放たれた2つの斬撃はVの形をしてフィンが放ったダークパニシングボールとぶつかり合い爆発……フィンは爆発が消えたら追撃しようとするが……

 

「はぁぁぁぁあ!!」

 

 響香が爆発の中を突っ切って来たのだ。

 

「ギャギャ!?」

「これで!!」

 

 続けて下から斜め切り上げと上から斜めの切り下げの2つの斬撃を放ちフィンを閉じ込める。

 

 

「デルタスラッシュ!!」

 

 

 最後に横一文字に放たれた斬撃が決まり3つの斬撃はΔの形になり爆発…フィンを飲み込んだ。

 

「はぁ、はぁ……っ!?」

 

 爆発の中を突っ切って無茶をして消耗した響香に衝撃波が襲いかかる。ギリギリ防ぐが消耗が激しく地面に降り立つ。そんな響香をオール・フォー・ワンが手拍子して称賛していた。

 

 

「いやはや…素晴らしいね、だけど僕が居る事を忘れちゃあ困るよ」

 

 そのまま、響香に手を向けるが響香は笑っていた。

 

「アンタこそ…忘れてない?ウチのヒーローを……」

「何?」

 

 響香は感じていた。彼が近くに居る事を…だから叫んだ……ヒーローの名を。

 

 

「来て!龍悟!!」

 

 それに答える様に光の柱が聳え立つ。まるで響香を守る様に。そして聞こえた大好きな人の声が。

 

 

「聞こえたぜ響香……お前の声が」

 

 

 其処には響香の絶対無敵のヒーローが居た。

 

 

 

END

 

 

 

 




究極・耳郎

 耳郎が老界王神に潜在能力解放をしてもらい…時の界王神の力の一部を与えられた事により覚醒した。
これにより気を操る事ができ、気を固定化し生み出した日本刀を武器に戦う。初めての戦闘なので出でいないがまだ秘密がある様だ。身長も高くなり胸も大きくなった。やったね!
背中には時の界王神と同じ様に光輪がついている。

元ネタは超次元ゲイムネプテューヌのパープルハート。


究極・耳郎「おお…これは…!」

 進化した胸部装甲

究極・耳郎「か、勝てる!負ける筈がない!ウチは今、究極のパワーを手に入れたのだ!!」





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終わりの魔王

 廃墟と化したアジト…遂にオール・フォー・ワンの前にゴジータが立ちはだかった。

 

「聞こえたぜ響香……お前の声が」

 

 瞬間移動で辿り着いた龍悟達……通形達は究極化した響香に唖然とするが、龍悟は直ぐにわかった。そして改めて言った。

 

「助けに来たぜ……響香…!」

 

「龍悟……龍悟!」

 

 響香は涙を流しながら龍悟に抱きついた。

 

「怖かった……怖かったよ…でも、来てくれるって!ウチのヒーローは……龍悟は絶対に助けに来てくれるって…信じてた!!」

「あぁ…もう大丈夫だ…!俺達が居る」

「うん!」

 

 

 涙を流す響香を優しく抱きしめる。心配していたのは龍悟だけじゃない。

 

「良かったよ〜!響香ちゃん!」

「波動先輩…来てくれたんですか…!」

「当たり前だよ…!」

 

 波動も響香に抱きつく。通形はナイトアイに連絡をする。

 

「サー!耳郎君の保護を完了しました!」

『此方もドローンで確認した!だが……!』

「えぇ…まだ、終わってません…!」

 

 そして龍悟達はオール・フォー・ワンと対面する。オール・フォー・ワンは愉快そうに言った。

 

「ふふふ!…遂に来たか、ゴジータ!…他にも居るみたいだけど……君がそっちに居るとはね、21号」

「これが私が選んだ道です……貴方が用意した道を歩くつもりはありません!!」

「何にせよ…不愉快だ。ゴミはゴミ箱ヘ…」

 

 オール・フォー・ワンが21号に攻撃をしようとするが……その前に龍悟に殴り飛ばされた。

 

「グホァ…!」

「いい加減にしろよ、このクズ野郎…!…罪のねぇもんを次から次へと傷つけやがって…!…俺は怒ったぞ!オール・フォー・ワン!!」

 

 超サイヤ人Ⅲに変身した龍悟。その時…

 

「先生!!」

 

 叫び声が聞こえ何かと見てみれば死柄木達がいた。

 

「あいつ等も此処に…環!!」

「あぁ!!」

 

 天喰の指がタコになり死柄木達を拘束する。天喰の“個性”は【再現】。食べた生物の特徴を自分の身体に生やし纏わせるように再現する。

 

「木の次はタコかよ!」

「いや〜!」

 

 メンバーがもがく中、子供が癇癪を起こしたように、死柄木が叫ぶ。

 

「何だよ、俺らが勝ってたのに…なんだこのクソゲー展開…ふざけんな!!」

「そのルートを選んだ自分を恨め…!」

 

 通形が手錠をかけようとしたその時…

 

「そうはさせない……脳無!」

 

 すると黒い液体がいきなり現れ脳無が次々と出てくる。確保より響香の安全を優先した通形は指示を出す。

 

「耳郎君を軸に固まって応戦する!波動さんと21号は援護!環は俺と蹴散らすぞ!!」

 

 通形の指示にすぐ様対応…環は拘束していたタコの足で脳無達を薙ぎ払う。

 

「ウチも……くつ!」

 

 応戦しようとするが究極化が解けて元の姿に戻ってしまう……消耗し過ぎたようだ。

 

「響香、皆!」

「よそ見はいけないよ」

 

 龍悟の意識が皆に向いた隙をついてオール・フォー・ワンは衝撃波で吹き飛ばしーー

 

「君は逃げろ、弔」

 

 手から謎の黒い触手を黒霧に伸ばし黒霧の個性を強制発動する。

 

 

「さあ行け」

 

 弱めの衝撃波を放ち死柄木達を黒い霧の中へと放り込む。

 

「待て……駄目だ先生!その身体じゃあんた……駄目だ……俺、まだ―――!」

 

 必死に手を伸ばす死柄木。だが、その手は届かず、空を掴む。そして、黒い霧が消えると同時に、龍悟がまた戦場へと舞い戻る。

 

「龍悟君!耳郎君は俺達に任せて…終わらせるんだ!」

「………あぁ!!」

 

 響香は通形達に任せて龍悟は空中に浮かぶオール・フォー・ワンに殴りかかる。

 

「オールマイトの分も全てを終わりにしてやる、オール・フォー・ワン!!」

「彼の様に僕を殺すか?ゴジータ!!」

 

 それを受け止めるオール・フォー・ワン…二人を中心に衝撃波は発生する。腕が膨らみ衝撃波をぶつけようとするがそれよりも龍悟の攻撃が速い。

 

 オール・フォー・ワンの顎を蹴り上げ、そのまま回転し遠心力を乗せて顔面を蹴り飛ばした。

 

「ぐぬっ!」

 

 余裕を崩したオール・フォー・ワンへ向けて気弾を放つ。咄嗟にオール・フォー・ワンが受け止めた瞬間を狙って屈み、視界から外れて下から攻める。無防備な首を掴みそのまま思い切り投げ飛ばし、地面へ痛烈に叩き付けた。

 

 

「小癪な……」

 

 オール・フォー・ワンが衝撃波を発射するが龍悟はそれを紙一重で避けながらオール・フォー・ワンへと接近した。奴は強い事は強いのだが、接近戦はあまり優れているとは言い難い。攻撃動作はいちいち隙が大きいし明らかに“個性”に頼ってる。まあ、どう見ても努力する奴ではないだろう…

 

 そう思って殴ったら…傷ついたのは自分の腕だった。

 

「何…?」

「驚いたかい?【衝撃反転】という“個性”でね。どうかな、君の本気の一撃を、その身に受けた感想は?」

 

 放つ衝撃波を避けながら距離を取る。

 

「これで得意な近接攻撃はできないね…どうする?」

 

 嘲笑うオール・フォー・ワンを無視して龍悟は響香を見る。究極化が解けて消えてしまったが彼女はさっきまで気で作られた日本刀を握っていた。顔には出さなかったが龍悟も内心動揺していた。しかしすぐに時の界王神がテレパシーで教えてくれた。

 

 どうやらこの世界に影響を与えてしまったお詫びをかねて彼女に力を与えたらしい…なんとサービス精神のある神様なんだ……魔人ブウにビビってばかりの界王神と変わってほしいなんて考えていない。

 

「……こうか?」

 

 それはさておき…龍悟はソウルパニッシャーを生み出し…その形を変えた…ソウルパニッシャーは左手に纏わり虹色に輝く美しい剣へとその姿を変えた。

 

 そのままオール・フォー・ワンに斬りかかる。慌てて“強化個性”を発動し受け止めるがソウルパニッシャーを応用した剣が生半可な筈もなく、受け止めきれず切り裂かれる。

 

 

「名付けて【ソウルカリバー】ってところか……で、近接攻撃がなんだって?」

「……やはり決定打に欠けるか……筋骨発条化、瞬発力×4、膂力増強×3、増殖、肥大化、鋲、エアウォーク、搶骨」

 

 発現した右腕は本人の半身を超えるほどに肥大化し、何本もの腕であろう筋肉が見て取れる。発条化と槍骨によって、螺旋を描いた槍の様な骨がいくつも露わになっており、対象に当たるであろう拳表面部分には、重点的に金属の鋲が生成された。

 

 

「僕が掛け合わせられる最高・最適の“個性”達で君を殴る!」

「いいぜ……相手になってやる!」

 

 オール・フォー・ワンが異形の拳を振るう…龍悟も右拳に気を集中させて迎え撃つ。

 

 

「龍拳・爆発!!」

 

 

 黄金の龍が異形の拳とぶつかり合う。凄まじい衝撃が全てを吹き飛ばす。脳無も吹き飛び…天喰がタコの吸盤を駆使して踏ん張りタコの足で皆を支える。響香はぶつかり合うオール・フォー・ワンと龍悟を見ていた。

 

 

「いっけぇぇええーー!!」

 

 響香の叫びに答える様に龍が咆哮を轟かせる。

 

 

「ぶち抜けぇええーー!!」

 

 そして黄金の龍が異形の拳を砕き、オール・フォー・ワンを近くのビルに殴り飛ばした。ビルが崩れ去り爆発する。

 

 

『よし!!』

 

 ドローンで状況を確認していたナイトアイは確かな手応えを掴む。通形達も喜びを露わにするが……

 

「…………」

「!、まだです!!」

 

 龍悟と21号は何かを感じ取った。その時だ…禍々しい気の嵐が爆炎とビルの瓦礫を吹き飛ばした。

 

 そして、全てが吹き飛んだ時、其処に居たのは。

 

「ギャギャガ!!」

「そんな…!倒した筈なのに…!」

 

 響香に倒されたと思われたフィンが居た。龍悟に時の界王神の言葉が聞こえる。

 

『聞こえる、ゴジータ君!』

『あぁ…時の界王神様…アイツは一体?』

『アイツはフィン…オール・フォー・ワンとトワが貴方を倒す為に生み出した生物よ……アイツには大猿としてのゴジータ君の細胞が入っているの…』

『なんだと…!』

 

 これには流石の龍悟も驚きを隠せない。一体…何時の間に…

 

 

『トワ達がこの世界で時間を超えた形跡があったの……その時代は…12年前、アナタが初めて大猿になった日…まだゴジータとして目覚めてない時代だったの…』

『そう言う事か…!』

『そして、魔人ブウの細胞をベースにゴジータ君の細胞…そして、悟空君やベジータ君…様々な戦士の細胞を掛け合わせて作られた化物よ…』

 

 

 時の界王神の説明に苦い表情をしていると…オール・フォー・ワンも現れた。最もダメージが酷く、戦えるとは思えないが……

 

「残念だったね…回復に専念させる為に身を隠していたのだよ……」

「だが、貴様はもう戦えまい!」

「ふふふ…そうかな」

 

 笑いながらオール・フォー・ワンはフィンに命令した。

 

「フィン……僕と一つになれ」

 

 

『な!?』

 

 オール・フォー・ワンの言葉は龍悟達を驚愕させるには十分だった。

 

 

「ウギァギァ!!」

 

 雄叫びをあげながらフィンがオール・フォー・ワンに纏わりつく……全身を覆ったその時、禍々しい気が何倍にも膨れ上がり神野区の空を覆い尽くす。

 

 

「おい、トランクス!」

「えぇ…!なんだ、この強大で禍々しい気は…!」

 

 それは戦闘していたトランクス達も感じ取り冷や汗を流す。オールマイトはナイトアイに連絡する。

 

「ナイトアイ!一体何が!?」

『……オール・フォー・ワンが……化物と融合した』

「な、なんだと!」

 

 明らかに予想を大きく超えた事態、すぐ様駆けつけたいが、今、オールマイトはハイエンドタイプの脳無、数体と戦っており…行く事ができない。

 

(孫少年…どうか!)

 

 

 

 

 吹き荒れる邪悪な気の嵐……その威圧感は響香達を戦慄させるには十分な物だったし…超サイヤ人Ⅲの龍悟の頬を流れる冷や汗が全てを物語っていた。

 

 そして、嵐が静まったその時…世界は“変わった”。

 

 禍々しい雲が夜空を覆い。その影響か黒い雷が轟き、黒い雪が降り注ぐ。正しく世界の終わりの様な光景に恐怖する。

 

 そして…奴は暗黒の空から降り立った。人形で紫色の肌に赤紫の髪…龍悟と同じ尻尾が生えており、誰がどう見ても化物だった。

 

 奴は自分の体を確認するかの様に手足を動かし…やがて嬉しさに震える。

 

「フハハハハハ!成功だ!素晴らしいパワーだ!!」

 

 奴は…オール・フォー・ワンは自身の力に歓喜した。

 

「数多の“個性”に最強の肉体…僕は……オレは全てを終わらす魔王となったのだ!!」

 

 オール・フォー・ワンは龍悟の方に向く。強大な威圧感に龍悟も余裕では居られない。

 

 

「さぁ…オレを楽しませろ!」

 

 

 崩壊する神野区に終わりの魔王が降臨した。

 

 

END

 

 




ソウルカリバー

 龍悟がオール・フォー・ワンの【衝撃反転】に対処する為に考えた新技。ソウルパニッシャーを左手に纏わせて気の剣で切り裂く。ゴジータ版スピリッツソード。




 


 はい!遂に暗黒ゴジータ登場です。トワ達が過去に行き覚醒する前の龍悟の細胞を手に入れフィンを作成。それを纏い一つになる事で最強の肉体を手に入れるのが計画の最終目的でした。トワは完成次第裏切り、ミラと融合させる気でした。

オール・フォー・ワンと一体化した事で無数の“個性”と最強の肉体と言う…インチキ効果も大概にしろ!な化物が誕生しました。自我はオール・フォー・ワンです。……今の所は…

果たして龍悟は勝てるのか!?


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奇跡のヒーロー

 世界の終わりを思わせる風景に降臨した魔王。フィンと一体化を果たしたオール・フォー・ワンが放つ威圧感は龍悟すら余裕をなくす程だった。

 

「さぁ…オレを楽しませろ!」

 

 オール・フォー・ワンが先程とは比べものにならない速度で迫る。放たれる右ストレートをガードするが…

 

「くつ!」

 

 ガード越しからでも衝撃が伝わり、受け止めた腕が痺れた。

 

「ナメるな!」

 

 龍悟の右ストレートを左腕でガードし、即座に拳と蹴りを返すオール・フォー・ワン。先程と違う速度と手数、身のこなしに龍悟が目を見開いた。

 

(コイツ!?)

 

 拳を片手で掴み止める龍悟にオール・フォー・ワンが吠える。

 

「イイぞ!もっとだ!!」

 

 先程とは力も性格も違っている。フィンは魔人ブウをベースに作られた邪悪そのもの…それと一つになったオール・フォー・ワンの精神は邪気に汚染されている…もう…己の目的すら…忘れてしまうだろう…

 

(完全に飲まれてやがる…!奴をこのままにする訳にはいかねぇ!)

 

 龍悟は殴りかかるがオール・フォー・ワンは簡単に右ストレートを掴み止めると、黄色の瞳で睨みつける。

 

「どうした…こんなものか!」

 

 龍悟は軽く手を捻られて投げられ、体が横に一回転すると脇腹に痛烈な膝蹴りが入る。

 

「ぐぉ!?」

「そらそら!!」

 

 赤黒い気を右拳に纏わせてまともに龍悟の顔面を射抜く。

 

「ぐわぁああっ!!」

 

 赤黒い光に吹き飛ばされながら悲鳴を上げる龍悟。それを見下ろしてオール・フォー・ワンは笑った。

 

「ハハハハハ!どうした!」

 

 吹き飛ばされながらも、回転しながら姿勢を舞空術で整えて構える龍悟。

 

「最悪のゲームだぜ…!」

 

 龍悟は気を激しくし高速移動でオール・フォー・ワン前に現れると右拳を繰り出す。殴り飛ばされたオール・フォー・ワン。それでも動じず殴りかかる。

 

「チッ!再生能力は健在か!!」

「こう言うのはどうだ!」

 

 オール・フォー・ワンから無数の触手が生え…

 

「炎・氷・風・雷・光…一斉発射だ!!」

 

 次々と放たれる“個性”はどれもドス黒く禍々しい物だった。瞬間移動で回避する。オール・フォー・ワンは呆気にとられるが龍悟が背後から蹴りを入れたその時…

 

 オール・フォー・ワンも瞬間移動した。蹴りが空を切る。

 

「な!?」

 

 驚愕する龍悟の背後からオール・フォー・ワンが現れゼロ距離で気弾を炸裂させる。

 

「ぐあぁあっ!!」

 

 地面に激突する龍悟…響香は信じられなかった……超サイヤ人Ⅲの龍悟が押されている事に…

 

「龍悟!」

「俺達も行くぞ!!」

 

 通形達が援護に向かおうとするが…

 

「ジャマだ!!」

 

 オール・フォー・ワンが気を高める…高まった気が赤黒い龍へと姿を変えた。

 

「そんな…どうして神龍の炎(ゴットドラゴン・ブレイズ)を!」

「当然だ…オレは孫龍悟の力を完全にコピーした!言わばコイツは…神龍の黒炎(ブラックドラゴン・ブレイズ)!!」

 

 オール・フォー・ワンの後ろに神龍の黒炎(ブラックドラゴン・ブレイズ)が佇み…黒龍が吐いた獄炎に押されながら通形達に迫る。

 

「裏・超龍爆炎脚!!」

 

 直撃はしなかったがその爆発で吹き飛ばされる。追撃しようとしたが龍悟が瞬間移動で目の前に現れ。

 

「ビックバン・アタック!!」

 

 ビックバン・アタックで吹き飛ばした。すぐ様…皆の無事を確認する。

 

「無事か!?」

「なんとかね…」

 

 どうやら全員無事の様だ。だが、状況は全く好転しない。ビックバン・アタックの傷も既に回復している。

 

「楽しくなってキタナァァ!!」

 

 面影すらない……もうアレはオール・フォー・ワンではない……唯の怪物だ。どうすればいいかと通形が思い悩む中…龍悟が吹っ切れた様に言った。

 

「………やっぱ、どう考えてもアイツを倒すにはコレしかねぇみたいだ…」

「龍悟…?」

「響香…皆、離れててくれ……成功するかもわかんねぇんだ…」

「龍悟君!一体何を!?」

 

 

 瞬間移動でオール・フォー・ワンの所に行った龍悟は手の平には……パワーボールがあった。

 

「龍悟…まさか!?」

 

 響香は龍悟が何をするか…わかってしまった。龍悟はパワーボールを空に放ち…腕を掲げた。

 

 

「弾けて、混ざれ!」

 

 

 

 暗黒の空に偽りの月が輝き、それを見た龍悟に変化が生じる。数十mを越す巨体の大猿へと姿を変えた……通形達は唖然とするが…響香が見た大猿とは違った。

 

「黄金の…大猿?」

 

 そう、超サイヤ人Ⅲで変身した事により、黄金に輝いている。即ち、超サイヤ人の力をもった大猿の誕生だ。

 

 だが……

 

 

「グォアアアアアアアアアアッ!!」

 

 あの時とは違い…獣の咆哮をあげる。よく見れば何かに抗っている様に見える。

 

「まさか…暴走しかけているのか!?」

「異形型にある野生が彼の理性を奪おうとしている……このままじゃ」

 

 通形と天喰が分析している中、オール・フォー・ワンは楽しげに見ていた。

 

「ハハハ!おもしれー!」

 

 次々と気弾を放つが龍悟が口から放つ光線がかき消しオール・フォー・ワンを飲み込んだ。

 

「グォアァァ!!」

  

 悲鳴を上げながら廃墟のビルにぶつかり爆発する。今現在も龍悟は必死に野生からくる破壊衝動と戦っていた。それを見た響香が龍悟の元へ行こうとする。

 

「危険です!耳郎さん!!」

「ウチは信じてる……絶対に野生になんか飲まれないって、だから応援したいんだ……龍悟の力になるって誓ったから!!」

 

 21号に決意をぶつける響香は龍悟の所に走る。

 

「雑魚は引っ込んでろ!!」

 

 オール・フォー・ワンが響香を薙ぎ払おうとしたその時…

 

「デトロイト……スマッシュ!!!!」

 

 空から飛んで来た…オールマイトが殴り飛ばした。ナイトアイから事情を聞いたオールマイトは檄を飛ばす。

 

「正念場だ!!踏ん張りどころだぞ、孫少年!!!」

 

 その声に龍悟は反応した、それに通形達も続く。

 

「強く自分を意識するんだ!!」

「これからなりたい自分をだよ、龍悟君!!」

「そして今までの自分をだ!!」

「負けないで下さい、龍悟さん!!」

 

 オール・フォー・ワンが起き上がろうとした所に二つの光がぶつかる。駆けつけたトランクスとバーダックが龍悟の頭に近づく。

 

「臆しちゃあ駄目です!貴方が起こす奇跡…僕達に見せて下さい!!」

「お前を信じ…お前に全部かけてんだ!!お前が自分を信じなくてどうする!!!!」

 

「グゥ…オオオ!」

 

 抵抗を強くし抗う龍悟に更に聞こえてくる……仲間の声が…

 

『龍悟君は私達の道を照らしてくれた!!』

『励ましてくれた!!』

『今はそれを僕達が!!』

『だから、なりてぇもんを…ちゃんと見ろ!!』

 

 響香のスマホから聞こえてくる…麗日・拳籐・飯田・轟の声が…聞こえる。

 

(皆…!)

 

 破壊衝動に抗いながらもその声は龍悟にしっかりと届いていた。

 

「ペラペラとうるせぇんだよ!!」

 

 オール・フォー・ワンが薙ぎ払おうとしたがオールマイトが組み付く。

 

「テメェ!!」

「見ない間に随分な化物になったじゃあないか…オール・フォー・ワン!!」

「ふざけやがって!!」

 

 振り解こうとするが…トランクスとバーダックも続き羽交い締めにする。

 

 

「グ……!グォオオオオ!」

 

 そして最後に聞こえてたのは……

 

 

「龍悟!!」

 

 

 響香の声だった…意識が強くなる。

 

(……俺には、皆が…居る。俺を信じてくれる皆が……そうだ!この衝動に……塗り潰されてたまるか!!)

 

 

 その時、オール・フォー・ワンがオールマイト達を吹き飛ばす。

 

「目障りなんだよ!!死ねぇぇええ!!ダークかめはめ波はぁぁぁぁあ!!」

 

 そして赤黒いかめはめ波を響香達に放つ。だが…それを龍悟が我が身を盾にして防いだ。

 

「龍悟……!」

 

 龍悟は太い指で優しく響香の頭を撫でる。そしてオール・フォー・ワンに向き直ると…

 

「グォオオオオ!!」

 

 巨大な黄金の柱が龍悟を包み込み、暗黒の雲を吹き飛ばす。そして龍悟の意識は…初代の夢で見た、真っ黒な場所に居た。

 

「よう…坊主」

「黒鞭のおっさん…」

 

 其処には、黒鞭のおっさんを始めとした歴代の継者達が居た。初代が語りかける。

 

「いい仲間を持ったね…」

「あぁ…最高の仲間達だ…」

「すまないと思っている……君達の代まで兄を存在させてしまって……頼む、この因縁を終わらせてくれ」

「……ふっ、任せとけ…先輩達の分まで殴ってやるよ」

 

 龍悟がそう言うと初代は満足そうに笑いながら消えた。他の継承者達も消えていく。

 

「頼んだぜ、坊主!」

 

 黒鞭のおっさんも消えて最後に残った…7代目…オールマイトの師匠も消えていく…ある言葉を残して。

 

「何人もの人達がその力を次へと託してきたんだよ。皆の為になりますようにと……一つの希望となりますようにと……次はお前の番だ。頑張ろうな…ゴジータ」

 

 7代目が消えた時…景色は真っ白な空間へと変わる。そして自分(悟空)が居た。夢で見た通り…黒髪で赤い体毛に包まれた姿だった。自分(悟空)は小さく笑うと光となって龍悟に吸い込まれる。

 

 

 遂に究極への扉が開かれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

「何をするか知らねぇが!!」

 

 オール・フォー・ワンが黄金の柱に突っ込むが次の瞬間、弾き出された。

 

「グォアアッ!!」

 

 

 そして黄金の柱が消えた時、遂にその姿が見える。髪は赤く全身は赤い体毛に覆われる。そして放たれる圧倒的な力は誰もに希望を見せる。

 

「とんでもない奴だね…ミリオ」

「全くだ…!」

「凄い人ですよ…龍悟さん」

 

 通形達は希望を見出し…

 

 

「……はは、すげぇな…」

「えぇ……」

 

 起き上がったバーダックとトランクスは龍悟の姿に呆気にとられる。波動はその姿に見惚れる。

 

「か、カッコいい…!」

 

 響香が龍悟に近づく…今までの…超サイヤ人とは明らかに違う変化…響香も驚きを隠せない。

 

「ほ、ホントに…龍悟なの…?」

 

 龍悟は静かに響香に向くと…何時もの優しく笑顔を向けた。

 

「ふっ…」

「龍悟!」

 

 響香は笑顔の花を咲かせ…龍悟はそんな響香の頭を優しく撫でる。

 

「…必ず勝って皆の所に帰るぞ」

「うん!」

 

 龍悟はオールマイトへと視線を向ける。

 

「……終わらせてくる」

「あぁ…行きたまえ」

 

 龍悟はオール・フォー・ワンへと歩み出す。そんな龍悟の背中をオールマイトは誇らしげに見ていた。

 

「だ、誰だ、お前は!?」

「とっくにご存知なんだろ?」

 

 

 身に纏う気を高めながら龍悟は言った。

 

 

 

「俺は…貴様を倒す(ヒーロー)だ!!」

 

 

END

 

 




パラガス「遂にきた……ゴジータ4の登場でございます!」
ブロリー「フハハハハ!等々…ゴジータ4が暗黒ゴジータを血祭りにあげる時がきたようだな!」
ならず者達『ゴジータ4バンザイ!!』
パラガス「イイぞ!もはや公式を待つ必要は無い!ドラゴンボールシリーズ最強のパワーで暗黒ゴジータをこの世から消し去ってしまえ!!」
ブロリー「イェイ!」


ベジット「あいつ等…俺のコーナで…まぁいいか。さて今回は特別に次回予告だ!!

オッス!俺はベジット!!
いよいよゴジータ4の登場だ。終わりの魔王と奇跡のヒーローがぶつかり合う!勝て、ゴジータ!!皆がお前の勝利を信じてる!!

次回・絶対無敵のヒーローアカデミア!!
【奇跡をこの手に!放て!百倍ビックバン・かめはめ波!!】
絶対見てくれよな!!」









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奇跡をこの手に!放て!百倍ビックバン・かめはめ波!!

ベジット「お待たせたな皆!いよいよ決着だ!!この戦いの行方を是非見届けてくれ!!それではどうぞ!!」


 

 超サイヤ人4となり圧倒的な力を放つ龍悟…それに対するはフィンと融合し化物と化したオール・フォー・ワン……静かに見守る響香達は信じている…彼はいつだって、信じる者の信頼を裏切らない。

 

 オール・フォー・ワンへと歩いて行く龍悟のその背中には、何とかしてくれる…そう思わせてくれる頼もしさだけがあった。

 

 仲間達の期待。歴代達から託されたワン・フォー・オール。その全てを背負い、龍悟がオール・フォー・ワンの前に立つ。

 

 戦いは最終局面を迎え、ここに二人の超越者が向かい合った。仲間達の信頼を背負い、龍悟が立つ。

 

「パワーアップしたからって調子にのるな!!」

 

 オール・フォー・ワンが気弾を放つが……当たる前に霧散した。龍悟は何もしていない…溢れ出る気の圧力によって形成される気の壁に阻まれ届かないのだ。

 

 ならばと殴りかかるが…突然吹き飛ばされた。オール・フォー・ワンは鼻血を出しながら困惑する。

 

「ふっ、俺のパンチを三発受けて鼻血だけとは大したもんだ…」

 

 龍悟の言葉に通形達は疑問を抱く。

 

「パンチ三発?龍悟君は動いてすら…?」

「それなのにどうしてオール・フォー・ワンは吹き飛んだんでしょう?」

 

 何が起きたかわからない通形達に響香が言う。

 

「ウチも見えなかったんですけど……音が聞こえたんです…イヤホンジャックでも聞き逃しそうな速く鋭い音が三回…」

「耳郎少女の言う通りだ……孫少年は君達では認識できない程の速さでオール・フォー・ワンを三回殴ったんだ」

 

 

 かろうじて見えたオールマイトの頬を一筋の汗が流れる。龍悟の強さに驚愕すると同時に感激した……今の龍悟は全盛期の自分を超えた…寂しくも嬉しかった。

 

「クソ…!」

 

 オール・フォー・ワンに焦りが現れる。明らかな強者の存在に……

 

「ふざけるな!俺が…俺が最強だ!!」

 

 オール・フォー・ワンの後ろに神龍の黒炎(ブラックドラゴン・ブレイズ)が現れオール・フォー・ワンは構える。くだらないと思いながら龍悟は言った。

 

「真似る事しかできねぇのかよ…」

 

 

 龍悟は神龍の炎(ゴットドラゴン・ブレイズ)を生み出し構える。全く同じ構えから放たれた蹴りが激突する。

 

 

「超龍爆炎脚!!」

「裏・超龍爆炎脚!!」

 

 大爆発を起こしぶつかり合う両者……勝ったのは龍悟だ。吹き飛ばされたオール・フォー・ワンに追い打ちをかける為に空中に飛び上がった龍悟は……再生の暇を与えず一気に攻める。

 

「スターダストフォール!!」

 

 星屑の様に降り注ぐ無数の光…その一つ一つが超サイヤ人・フルカウルのかめはめ波に匹敵する。

 

「ぐわぁああああっ!!」

 

 圧倒的な火力と数に打ちのめされ悲鳴をあげるオール・フォー・ワン……意識を繋ぎ止め。龍悟の所に瞬間移動して殴りかかるが…

 

「うぐぉ!?」

 

 それよりも先に龍悟の肘打ちが顔面に突き刺さり回し蹴りで地面に叩きつけられる。静かに降り立つ龍悟……圧倒的な強さに響香達は歓喜する。

 

「凄い……あのオール・フォー・ワンを圧倒している!」

「あぁ…孫少年の力がオール・フォー・ワンを明らかに上回ってる!」

 

 

 それが聞こえたのかオール・フォー・ワンは激しく気を高めた。

 

「俺が下だと……そんな事…ある筈がない!!」

 

 龍悟に殴りかかるが…容易く受け止められた。

 

「…それで終わりか?」

「! 舐めるなぁ!!」 

 

 拳を握り締め、オール・フォー・ワンは龍悟の顔を打ち貫き左の蹴りを横顔に向けて打つ。そのまま無数の連打を龍悟にぶつける。最後に右ストレートで頬を撃ち抜く。

 

「どうした?口ほどにもないな!」

 

 攻撃をまともに浴びるだけの龍悟にオール・フォー・ワンは高笑いするが……龍悟は、ゆっくりと顔を元の位置に戻す。

 

「……ッ!?」

 

 全く動じていない瞳が、そこにあった。

 

(馬鹿な!俺の全力の攻撃をまともに喰らって、コイツ!?)

 

 オール・フォー・ワンの目が見開かれるも龍悟は静かにノーガードのまま、オール・フォー・ワンに向かって歩きながら語る。

 

「お前…俺には勝てねぇぞ」

「な、なに!?」

 

 龍悟の言葉に動揺するオール・フォー・ワン…

 

「確かに数多の“個性”を持ったお前は強い……だがよ、お前は極める事をしなかった。強くなる道を選ばなかった…半端者だ」

 

 己の手を握りしめ日々を思い出す様に龍悟は語る。

 

「この強き体は母がくれた…父が俺の背中を押してくれた。オールマイトがヒーローの道を与えてくれた。響香が俺の側に居てくれた…麗日達が俺と共に歩んでくれた…先輩達が一緒に戦ってくれた……俺の歩みが、皆との出会いが……この超サイヤ人4を生み出した」

 

 強い瞳でオール・フォー・ワンを睨みながら龍悟は。

 

「お前の紛い物の力に負ける訳ねぇよ」

 

「だ、黙れ!黙れ!!」

 

 認めたくないと言わんばかりに気弾を放つが龍悟は動じない。

 

「だがなぁ…お前ばかりは勘弁してやるわけにはいかねぇんだ……!」

 

 鋭い瞳に睨まれたオール・フォー・ワンが動揺する。

 

「やり過ぎだぜ…悪さが過ぎたぜ…オール・フォー・ワン!!」

 

 黄金の気を激しく輝かせながら龍悟は迫る。オール・フォー・ワンにぶつかるその時、龍悟は消えた。

 

「トロトロやってんじゃねぇよ!」

「!?」

 

 オール・フォー・ワンの後ろに高速移動した龍悟は左回し蹴りで吹き飛ばしその勢いで右拳から黄金の光線が放たれ。

 

「クソォォォオ!!」

 

 オール・フォー・ワンを飲み込んでそのまま爆発した。巨大な溝とクレーターを作り上げながら、龍悟は油断なく睨みつけていた。

 

 

「終わりだな……オール・フォー・ワンに勝ち目はねぇ」

 

 見守る中、バーダックが静かに言い放った。

 

「アイツもトワも…敵にしちゃいけねぇ奴を敵にまわした……その時点でアイツ等の滅びは必然だった」

 

 トランクスはその言葉を耳に入れながらクレーターを見る。オール・フォー・ワンはボロボロになった肉体を起こして、立ち上がる。ダメージが大きすぎて再生が追いつかない。

 

「どうした?魔王の力はこれっぽっちか?」

「思い上がるな!!」

 

 右腕が異形へと変わる…先程の戦いで見せた、殴る事に特化した組み合わせだ。龍悟も合わせる様にワン・フォー・オールを発動し構える……それはオールマイトと瓜二つだった。

 

 

「デトロイトーースマッシュ!!」

 

 

 蜘蛛の巣状の亀裂が二人の足場に走り、一瞬にして陥没して砕け散る。あまりの強さに地面の方が耐え切れない。

 

「ぬううぇああっ!!」

「ぜえぇぇああっ!!」

 

 

 強大な一撃同時のぶつかり合い……競り勝ったのは龍悟だった。【デトロイトスマッシュ】がオール・フォー・ワンの右腕を破壊、バランスを崩した隙に左手に【ソウルカリバー】を展開してフェンシングの様に突きを連続で叩き込み上空へ蹴り飛ばす。体勢を整えるオール・フォー・ワンが見たものは…更に出力が増した【ソウルカリバー】だ。

 

「おのれ!」

 

 オール・フォー・ワンは転移でそこら辺にあった脳無数体を盾にするが…

 

「無駄だ!!」

 

 脳無ごと【ソウルカリバー】がオール・フォー・ワンを切り裂いた。

 

「……言葉がでないです」

「あぁ…俺もだ…」

「孫君は絶対に怒らせない様にしよう…」

 

 21号・通形が余りの強さに唖然とし天喰が認識を改める。

 

「頼もしいよ!!ーー龍悟君!!」

 

 波動が嬉しそうに笑う……どれだけ強大な悪でも、孫龍悟は………ゴジータは絶対に負けない。

 

 そう思わせてくれるほどに彼は強い。

 

 

「………自慢の再生も限界みたいだな」

 

 空中に停止しているオール・フォー・ワンに龍悟は言い放った。万全が100だとしたら今は10……これが最後の再生だ。

 

 

 オール・フォー・ワンの眼差しは憎悪によって燃えていた。

 

「ゆるさんっ!許さんぞ!孫龍悟!!!」

 

 自分の眼下に広がる神野区ごと、龍悟を滅ぼそうと両手を前に付き出す。赤黒い球が現れ巨大な力を放つ。

 

「アレって…ビックバン・かめはめ波!?あの技まで使えるなんて…」

 

 響香は驚愕し心配そうに龍悟を見るが……

 

「ふっ…」

 

 笑顔を向ける龍悟を見て、不安は完全に消えた。

 

「これで…全てが終わる」

 

 龍悟は大きく両手を広げると銀河のような螺旋を青白い光の粒子が描いて、一つの強大な光を放つ球を練り上げる。

 

 

「百倍…!」

 

 黄金の気は焔の様に燃え上がり、光球は全てを滅ぼさんと輝きを強くする。

 

 

「ビックバンーー!!」

 

 

 龍悟が気を高める中、先に放ったのはオール・フォー・ワンだった。

 

 

「ダークビックバン・かめはめ波!!」

 

 

 放たれた禍々しい光は、地面に直撃すれば神野区を荒野に変えてしまうだろう……だが、彼の仲間たちは誰一人、逃げようとさえしない。

 

 だって、ゴジータ(ヒーロー)が居るから。彼は何時だって勝ってくれた。

 

 

「かぁーー!」

 

 USJの襲撃の時だって麗日の涙を拭って…脳無を倒してくれた。

 

「めぇーー!」

 

 力及ばずとも…ヒーロー殺しに立ち向かう飯田に力を貸してくれて…終わらせてくれた。

 

「はぁーー!」

 

 I・アイランドで圧倒的なウォルフラムの力を前にしても一歩を引かず…I・アイランドを救ってくれた。

 

「めぇーー!」

 

 21号(悪)の力に絶望した轟を希望の光で照らし…勝利してくれた。

 

 そして今回も絶対に勝ってくれる……それを誰よりも知っている響香は叫ぶ。

 

「やっちゃえ!ーー龍悟!!」

 

 その言葉に応える様に目を見開き、龍悟は究極の一撃を放った。

 

 

「波ぁあああああああっ!!!」

 

 

 【百倍ビックバン・かめはめ波】と【ダークビックバン・かめはめ波】が真っ向からぶつかり合い一瞬だけ押し合う。

 

 が…徐々に【ダークビックバン・かめはめ波】が押され始める。

 

 

「ふざけるなぁぁあ!!俺は孫龍悟の力を完全にモノにした筈だ!!」

 

 オール・フォー・ワンの背中から生えた触手が次々とエネルギー“個性”を放つ。それにより押し止めたが押し返す事はできなかった。

 

「何故だ…何故だぁぁあ!!」

「お前には一生わからないさ…!」

 

 叫ぶオール・フォー・ワンに小さく吐き捨てるオールマイトは龍悟の背中を押す。

 

「孫少年!!」

 

『イケぇぇええっ!!』

 

 通形・波動・天喰・21号・バーダック・トランクスもオールマイトに続く。龍悟が目を見開き叫んだ。

 

 

「ワン・フォー・オール……最大出力…100%だぁぁあっ!!」

 

 龍悟の体に真紅の稲妻が現れたその時、【百倍ビックバン・かめはめ波】が虹色に輝く。

 

 そして【ダークビックバン・かめはめ波】が一方的に蹴散らされた。そしてオール・フォー・ワンは確かに見た…龍悟の後ろには殺した筈の歴代ワン・フォー・オール所有者達が居た光景を……

 

 

「終わりだぁああああっ!!!」

 

 

 龍悟の叫びと共に【百倍ビックバン・かめはめ波】が輝きを強くし、勢いを高めた。

 

 

「孫…龍悟!ーーゴジータぁああああっ!!!」

 

 

 絶叫が響く中、虹色の光線がオール・フォー・ワンを飲み込んでいく。そして究極の力が地球から大気圏を打ち抜いて、宇宙の闇を照らしながら消えて行った。

 

 

 

「…………終わった」

 

 超サイヤ人4を解除し元の黒髪に戻った龍悟……そんな龍悟に誰よりも早く抱きついたのは、響香だった。

 

 しっかり受け止めた龍悟は笑って言った。

 

「勝ったぜ…」

「うん…信じてた。…だって、龍悟はウチの……絶対無敵のヒーローだから!」

 

 優しく響香を抱きしめる龍悟……そんな龍悟に皆が駆け寄った。

 

『龍悟君(さん)!』

 

 波動が抱きつき、通形が乱暴に頭を撫でる。21号は目を輝かせながら近づき…その様子を天喰が微笑ましそうに見つめていた。

 

「凄かったよ、超サイヤ人4!!ねぇねぇ、どうして今までの超サイヤ人とは違うの!?」

「圧倒的でしたよ超サイヤ人4!!」

「流石、俺の自慢の後輩だ!!」

 

 もみくちゃにされながら龍悟はトランクス達を見る。周りに気づかれないように虹色の光を纏った。どうやら時の巣に帰るようだ……バーダックは笑い、トランクスは手を振りながら帰って行った。

 

(ありがとよ…)

 

 龍悟が彼等への感謝を感じているとナイトアイからの連絡がくる。

 

「ナイトアイ…終わったぜ」

『あぁ!私も喜びで打ち震えているが緊急事態だ。マスコミを抑えられなくなった。マスコミのヘリがそっちに向かっている!急いで瞬間移動で離れるんだ!』

 

 どうやら抑えるのも限界がきたらしい…

 

「行きたまえ……後始末は大人の仕事だ」

「わかった…皆、掴まれ」

 

 通形達が龍悟の肩に掴まり龍悟は指を額に当て集中する、やがて場所を捉えた龍悟は空いた手を響香に差し出す。

 

「さぁ、帰るぞ」

「……うん!」

 

 響香が手を握った…龍悟は皆を連れて瞬間移動した。一人残されたオールマイトは……落ちてきたオール・フォー・ワンを見る。

 

 フィンと一つになる前の姿でフィンは完全に消えた様だ……オール・フォー・ワンはかろうじて生きているが…生きているだけだ。もう満足に歩く事も腕を動かす事もできない…傷も致命的で治癒は、ほぼ不可能……完全にオール・フォー・ワンは終わりだ。

 

 

「全てが終わりました…お師匠…」

 

 静かに涙を流すオールマイトを朝日が照らしていた。

 

 

 

 

 

 一方、瞬間移動した龍悟達、行き先は‥

 

「此処は?」

「俺の自宅」

 

 龍悟の自宅、カプセルコーポレーションだ。呆気にとられた通形と21号は近くに居た翔と愛実に頭を下げる。

 

「「あっ!どうも、お邪魔してます!」」

 

 波動は興味深く周りを見ていた。

 

「へぇ〜此処が龍悟の自宅なんだ〜」

「いや、驚こうよ波動さん」

 

 久しぶりに来たなと感じた響香を響徳と美香が抱きしめた。

 

「響香…響香!あぁ…無事で良かった!!」

「何処も怪我してないわよね!」

 

「父さん…母さん…!」

 

 暫く唖然としたが響香は涙を流しながら両親に抱きついた。暫くして落ち着いた頃に龍悟が響香に声をかける。

 

 

「おかえり……響香」

 

 

「……うん!ーーただいま、龍悟!!」

 

 

 笑顔で答える響香は花の様に綺麗だった。

 

 

END

 

 




遂に決着がつきました!
皆さんがイメージしている最強のゴジータ4を表現したつもりです。楽しんでもらえたら幸いです。
次回はその後を描こうと思います。


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ずっと一緒

第一期最終話です!
ここまでありがとうございました!!
それではどうぞ!!


 

 戦いからーー世論は騒然とした。神野区での戦いで、裏社会の支配者、オール・フォー・ワンの存在……オール・フォー・ワンは監獄タルタロスへと移送された。

 

 

 そして、オールマイトの正体。

 

 

 マスコミが来て報道している時、マッスルフォームの維持に限界をむかえ…トゥルーフォームが世間に晒された。体は問題ない……だが、残り火はもう限界だ。

 

 その事を改めて確認する様に拳を握るオールマイトは病室に居た。グラントリノ、塚内、サー・ナイトアイも見守る様に見つめていた。

 

「残り火はまだあります…ですが、“平和の象徴”は死にました」

 

 病室で包帯だらけでベッドに座り、呟く。

「……今までよくやってくれた、俊典」

「もう、休んでいいんだ…オールマイト……」

 

 グラントリノとナイトアイが言う…この身を犠牲に平和を守ってきた男が無事生きて戻ってきた。ただそれが、何よりも嬉しかった。だが、オールマイトの表情は良いものではなかった。

 

「ですが……奴は……お師匠の…!」

「死柄木弔……志村の孫………か」

 

 USJ襲撃の時に入手した死柄木の血液…DNA鑑定の結果……今は死柄木弔と名乗っている男の本名は、志村転弧。7代目の…孫だ。

 

「死柄木の捜索は俺と塚内で行っていく…お前は雄英に残ってすべき事をしろ…平和の象徴ではいられなくなったが…オールマイトは生きているんだ」

「その通りだ…」

 

 グラントリノ達の言葉に自分はもう関われないと…オールマイトは悟った。

 

 

 

 

 

 

 そして時刻は昼過ぎ…オールマイトは一つの病室を訪れていた。……それは、響香の病室だ。オール・フォー・ワンに何かされたか……詳しく検査する為に入院しているのだ。

 

 オールマイトが病室に入ると…龍悟・麗日・飯田・拳籐・轟・八百万が病室に居た。オールマイトに気づいた、麗日達……トゥルーフォームは既に知っているが、やっぱりまだ違和感があるらしい。

 

「やぁ、耳郎少女……何処にも異常はないかい?」

「全然大丈夫ですよ……その姿が…」

「あぁ、私の本当の姿だ……君達なら話しても大丈夫だろう…」

 

 オールマイトはワン・フォー・オールを除いた全てを話した…オール・フォーワンとの因縁、活動限界…そして…龍悟を後継に選んだ事を……

 

「そして私は、孫少年を後継に選んだ…」

 

「「「「「「あ、やっぱり」」」」」」

 

「や、やっぱり!?」

 

 そんなに驚かない響香達にオールナイトは逆に驚く。

 

「別に龍悟君なら、オールマイトの弟子って言われても納得ですし…」

「寧ろそっちの方が…辻褄が合いますし…」

「……龍悟はポーカーフェイスで隠してますけど、オールマイトは明らかに龍悟を特別視してますし」

 

 麗日・拳籐・響香の言葉にオールマイトは何も言えなかった。

 

「そ、そうか……それで、私はもう戦える体じゃあないんだ……上手く調整すれば一日、三分は戦えるんだけどね……本当は引退を発表したかったんだけど…いろんな所から待ったがかかってね……無期限の活動停止を発表するんだ………私はもう、出し切ってしまった」

 

 オールマイトは強い瞳で龍悟を見る。

 

 

「次はーー君だ」

 

 

 オールマイトはもう、戦えない。そして、託されたのは受け継がれた力と、平和への想い。だから、応えなくてはいけないのだと拳を握る。

 

 

「ーーあぁ!」

 

 

 万感の思いを込めて。もう大丈夫だと。休んでも良いのだと。龍悟は微笑んだ。次にオールマイトは響香達を見る。

 

「……私は一人で背負い、血なまぐさい道を歩んだ。だけど、孫少年には君達が居る…どうか、支えてほしい」

 

 自分と同じ道を歩かせたくない……オールマイトの瞳はそう語っていた。龍悟と同じ道は間違いなく苦難に満ちているだろう……それでも…

 

「勿論ですよ」

 

 響香達は迷わず言った。

 

「龍悟を一人だけ行かせません…!」

「友として仲間として…!」

「それに、私達はヒーローを目指しているんですから」

「苦難を乗り越えてこそ……」

「真のヒーローですわ」

 

 

「お前等……」

 

 龍悟は驚きと嬉しさを感じ、オールマイトは安心した様に頷いた。

 

「なら……俺も、俺の真実を話そう……」

「龍悟?」

 

 何かを決意した龍悟の言葉に響香達は疑問を覚える。そしてそれは……

 

 

「俺はこの世界の存在じゃないんだ」

 

 

 想像を遥かに超えるものだった……響香達は勿論、オールマイトも唖然とする。

 

 

 

「え?……な、何言ってんの龍悟!!龍悟はおじさんとおばさんの!!」

「あぁ…紛れもない息子だ……真実を知る勇気があるのなら…コレに触れてくれ」

 

 

 龍悟が取り出した物は…“終わりと始まりの書”…歴史が刻まれている書物…時の巣で厳重に保管されている物だ。時の界王神から許可はとってある。龍悟の目は本気だ。困惑しながらも響香達は覚悟を決めて、書物に触れた。

 

 全員が触れた時…終わりと始まりの書は眩く輝きだした。

 

「な、何!?」

 

 思わず目を瞑る…そして目を開いたその時…響香達は病室ではなく…全く違う場所に居た。

 

「ど、何処なの!?」

「さっきまで病室に居た筈だ!」

 

 先程まで病室に居た筈なのに…赤い雲に周りにはカラフルな物体があちこちに浮かんでいるおかしな場所に居た。麗日と飯田は困惑する。

 

「おい、アレ!?」

 

 轟が指差した方には赤い鬼の様な化物…“ジャネンバ”が暴れまわっており、緑の肌をした男が近くに居る、特徴的な髪型した男性に叫ぶ。

 

『悟空!ココは俺に任せろ!早くフュージョンするんだ!!』

『パイクーハン、頼むぞ!!ベジータ、行くぞ!!』

 

 悟空は逆立った髪が特徴のベジータと共に離れる。パイクーハンがジャネンバと戦っている隙に悟空とベジータは……

 

 

『『フューーージョン!!ーーハッ!!』』

 

 

 おかしなポーズをして指と指を合わせた。何やってんだと響香達が思ったその時……悟空とベジータを中心に眩い光が輝きだした。

 

 そして、其処に居たのは。

 

『『パイクーハン、仇はとってやる!!』』

 

 

 龍悟……ゴジータだった。

 

「え?ど、どうして龍悟が!?」

 

 響香達は困惑した……二人の人間が一つになって龍悟が現れたのだから……

 

 

『『俺は悟空でもベジータでもない。俺は貴様を倒す者だ!』』

 

 そう言ってゴジータは瞬く間にジャネンバを倒して見せた…助け出した鬼が逃げ出したが……

 

『『ふっ…』』

 

 助け出した事を喜ぶその微笑みは響香達が知っている龍悟だった。

 

 

 景色は変わり…元に病室に戻ってきた。今だに困惑している響香達……龍悟は全てを話した。あちらの世界の事、サイヤ人の事…自分が融合によって誕生し消えるはずの存在だったと言う事……

 

「そして、どう言う事か…俺はこの世界で孫龍悟として転生した」

 

 まだ困惑しているが…オールマイトが口を開いた。

 

「つまり、オール・フォー・ワンと協力していたトワとミラも別世界の住人と言う訳か?」

「あぁ…アイツ等がこの世界に与えた影響はとても大きい…だから、時の界王神様は響香に力を与えた。それが究極化だ…」

「あの人って本当に神様だったんだ…」

 

 今だに動揺しているが……何処か納得している様子だった。

 

「なんとなくしかわからないけど……龍悟は何処にも行かないよね……あっちの世界とかに……」

 

 響香は不安そうに龍悟を見つめる。いつか龍悟はあっちの世界に行ってしまうのではないか……こちらの世界には帰ってこず。そんな不安が皆にはあった。

 

「ふっ、心配すんな。俺は孫龍悟…この世界の人間だ。それにお前等を置いて行く訳ねぇだろーー」

 

「ーーだって俺達、仲間だろ?」

 

 龍悟自身、あっちの世界に戻るつもりはない…自分は孫龍悟、この世界の人間で…雄英高校一年A組の一人だ。

 

 龍悟の嘘偽りのない本心からの言葉。

 

 

「…………うん!」

 

 

 一瞬呆けた響香達だったが、すぐに満面の笑みを浮かべる。そして、響香は笑って言った。

 

「ずっと一緒だよ!龍悟!」

 

 

 今、一つの時代が終わりを迎えた。次の時代はどうなるかはわからない…新たな敵が出現するだろう。だけど、未来はきっと明るいはずだ。

 

 

 

第一期【伝説の始まり GT編】END

 

 




ブロリー「おい、作者!なんだ、あのいかにも最終回ですな終わりは!」
作者「ブロリー、一体どうしたと言うんだ…!」
パラガス「作者、お前が5月31日にHGCE 1/144 デスティニーガンダムの発売を祝って、デスティニーがタイトルバックのシン・アスカ完全主人公のガンダムSEED DESTINYのssを投稿する予定なのは調べはついている」
作者「マジか、バレていたか…」
ブロリー「まさか、今回で最終回じゃあないだろうな!この俺がまだ出ていないんだぞ!ふざけるな!!」
ベジット「そこまでだ!準主人公であるこのベジットを差し置いてお前が出れる訳ねぇだろ!」
ブロリー「なんだと…?黒髪カンバーに負けた分際で」
ベジットブルー「……言いやがったな!!」
ブロリー4「フハハハハ、その程度のパワーではこの俺を超える事はできぬ!!」

パラガス「アイツ等はほっといて…どうなんだ作者?」
ゴジータ「心配する事はない。終わったのはあくまでも第一期だ、このss自体が最終回ではない」
パラガス「ほぅ、つまり?」
ゴジータ「あるぞ、第二期…その名も超編がな」
作者「ちなみにベジットも登場予定だから…ブロリーは無理だと思う」

ベジット「キタァァ!!」
ブロリー「馬鹿なーー!!」

作者「まぁ、暫くは DESTINYをメインでこっちはちょびちょび投稿する感じて行くよ。皆様、第一期をここまで見てくれてありがとうございます!」

ゴジータ「第二期もーー」

ゴジータブルー「ーーいっちょ、いくぜ!!」


次章・第二期【神への挑戦 超編】始動。

これからもよろしくお願いします。






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第二期・神への挑戦・超編
新たなる予感


パラガス「皆様、お久しぶりです。パラガスでございます」
ブロリー「ブロリーです」
パラガス「別作品「運命の英雄」も物語終盤との事で、この「絶対無敵のヒーローアカデミア」もいよいよ再スタートです!」
ベジット「第二期にはこの準主人公の俺も登場予定だ!」

ゴジータ「それじゃあ皆、第二期もよろしくな!!」


 




 世間を震撼させた神野区での戦いから5日がたった……平和の象徴であるオールマイトは無期限の活動停止を発表した。

 

 それに伴って雄英はより強固に生徒を守る為…全寮制にする事を決定した。寮が完成次第移る予定だ。

 

 それまでの間、響香の拉致と…暗い思い出しかない夏休み…せめて一つだけでも楽しい思い出をつくる為に八百万の家が所有するプライベートビーチに龍悟達は来ていた。

 

 輝く太陽に照らされながら龍悟、轟、飯田の男三人組は響香、麗日、拳籐、八百万の女子達を待っていた。

 

「女子の着替えってのは長いもんだな…」

 

 既に水着に着替えた轟が綺麗な海を眺めながら呟いた。

 

「それにしても……プライベートビーチまで持っているとは八百万君の家はやはり凄いな…」

(俺も持ってるなんて言えねぇ…)

 

 飯田の言葉を肩幅が縮まる思いで龍悟は聞いていたその時…

 

「ゴメンーー!待った?」

 

 麗日の元気な声と共に女子達が水着姿でやって来た。彼女達も年頃の女の子…響香達は龍悟、八百万は轟。想い人の水着姿と自分の水着姿を見てもらいたいドキドキ感で顔を赤くしていた。

 

「ど、どうですか?轟さん//変ではありませんか?//」

 

 八百万の水着は赤に白い線が入ったビキニタイプの水着だ。

 

「?、何処も変じゃねぇぞ、八百万」

「そ、そうですか…///」

 

 欲を言えば綺麗とか言ってほしかったが…轟ならまずはこんなものだろうと八百万は納得した。

 

「水着なんて…滅多に着てなかったから……に、似合うかな龍悟///?」

 

 拳籐の水着は彼女の髪と同じオレンジ色のビキニで腰に緑色のパレオを巻いている。戦闘の時は荒々しい拳籐だが、今は穏やかさがあり新鮮だった。

 

「………いいんじゃねぇのか?コスチュームとは違って穏やかそうで」

「ふぇっ///!?………あ、ありがとう///」

 

 似合ってるで済まされないかと心配したが思ったよりコメントされて拳籐は顔を真っ赤にして動揺した。

 

(おばさんに口うるさく言われたのかな…)

 

 女心を龍悟に教えてる光景を思い浮かべながら響香は見ていた。次に顔を真っ赤に染めた麗日が前に出る。

 

「いや〜//恥ずかしいな…///」

 

 麗日は上はビキニだが下は短いスカートととても可愛らしい色はピンクと黒だ。

 

「あぁ、可愛らしくて良いぞ。とても似合ってる」

「可愛らしいか…えへへ///」

 

 龍悟の言葉に麗日は笑顔になる。最後に出てきたのは響香だが……

 

「………なんで、究極化してるんだ?」

「い、いいじゃん別に///で、どう?」

 

 進化した胸部装甲と髪も伸びガラリと印象が変わった響香の水着は黒と赤のビキニで黒いパーカーを上に被せ下には更に黒いショートパンツを着ていた。

 

「どうって言われてもな……響香らしい?」

「……どう言う意味?」

「凛々しいと言うか…格好いいって感じだな」

「凛々しい///……あ、ありがと///」

 

 頬を赤く染めイヤホンジャックをイジる響香。見せ合いも終わった事だし龍悟達は海へと向かった。

 

 

 だがこの後、想像を遥かに超える出来事が起こるとはこの時は誰も……龍悟ですら気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここはあっちの世界…全部で12個ある宇宙。悟空達が居る第七宇宙である。そんな各宇宙には界王神のような創造を司る神の他に対極に位置する、破壊の神が存在する。

 

 悟空達が居る第七宇宙の【破壊神ビルス】は不思議な水晶に映る映像を楽しそうに見ていた。

 

 

『ワン・フォー・オール……最大出力…100%だぁぁあっ!!』

 

 

 それはオール・フォー・ワンと龍悟の戦いだった。

 

「いや〜実にいい…素晴らしい強さだ」

 

 超サイヤ人4の龍悟を楽しそうに見るビルスの後ろに青白い肌をした男が現れる。彼はビルスの付き人“ウィス”。

 

「ただ今戻りました。ビルス様」

「お、お帰り。コイツの事について何かわかった?」

「えぇ、かなり苦労しましたが……それにしてもお寝坊なビルス様を起こす程の力を放つなんて…凄い方が居るものですね〜」

 

 元々、破壊神ビルスは何十年も眠りについて居るのだが彼はある強大な力を感じて目覚めたのだ。ウィスが調べた所、時空の裂け目が別の世界と繋がっており其処から感じ更に調べるとその力を放っているのが超サイヤ人4の龍悟だとわかった。究極のサイヤ人の力が破壊神を目覚めさせてしまったようだ…

 

「まず、彼の名は孫龍悟……こちら側のパラレルワールドに存在した融合戦士ゴジータの魂があの裂け目を通りあちらの世界で転生した存在です」

「融合戦士?」

「ハイ、元々はメタモル星人の技ですが…それをサイヤ人の孫悟空が習得し、もう一人のサイヤ人、ベジータと融合する事によって誕生した超戦士です」

 

 ウィスが杖を振るうとジャネンバと戦うゴジータの姿が映し出される。

 

「サイヤ人……やっぱりコレが“超サイヤ人ゴッド”なのか…」

 

 再びビルスの視線は超サイヤ人4に向けられる。

 

「超サイヤ人ゴッド……ビルス様が予知夢で見た強敵ですか……ゴッドかどうかはわかりませんが…強敵で有る事は確かですよ」

 

 ビルスは予知夢なるものを見たと言う…それは赤い姿の超サイヤ人ゴッドと戦う…と言った夢だった。

 

「そうだね…コイツの強さは並の破壊神を超えている。もしかしたらゴッドを超えた姿かも……」

「やはり行きますか?」

「勿論だよ……こんな極上の獲物を逃す訳ないだろう。ウィス、何分で着く?」

「約一時間です」

「そんなにかかるの!?復活のフュージョンが丸々見れちゃうじゃないか…!」

「メタイですよビルス様」

「しょうがない、コイツに会う為だ…我慢するか…」

 

 ビルスはウィスの肩に掴まると虹色の光となって飛び立った。

 

 

 

 

 ゴジータの次のステージ……それは、神に挑む場所

 

 

 

 第二期・【神への挑戦 超編】始動!!

 

 

 

END

 

 

 

 




待っていた方はお待たせしました、再始動です。
新しい活動報告も出したのでそちらもよろしくお願いします。


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七章・破壊神襲来
破壊神襲来(リメイク)


申し訳ありません。誠にかってですがリメイクしました。ご了承ください


「それでは皆さん、今日は楽しんで思いっきり楽しんでください!せ〜のっ!!」

 

 

「「「「「かんぱ〜い!!」」」」」

 

 

 海で一通り遊んだ龍悟達は昼食にパーティーをしていた。それには他のA組の皆も参加しており…本来なら昼にパーティーを開催し皆で楽しむ予定なのを龍悟達は一足先に集合して海で楽しんだと言う事だ。飲み食いしながら段々と盛り上がっていくパーティー。楽しそうに食べているのだか……

 

「龍悟君遅いね…」

 

 今この場に龍悟は居ないのだ…残念そうにする麗日に響香はしょうがないと言った感じに宥める。

 

「しょうがないよ……突然、時の界王神様に呼ばれちゃんたんだから…」

 

 そう、龍悟は時の界王神に呼ばれたのだ…しかも結構深刻そうに言う時の界王神にタダ事ではないと龍悟も感じ、彼女が居る【時の巣】に向かったのだ。

 

「へ〜クロノアを知ってるって事は君達は僕達の世界や彼の正体を知ってるって事だね。ちょっと聞いてもいいかな?」

 

 その時、後ろから初めて聞く声が聞こえてきた。

 

 

 

 

 

・・・・

 

 一方で龍悟は時の界王神に呼ばれ時の巣へとやってきていた。彼女の用は二つ……一つはドラゴンボールを使って【龍悟自身が言わない限り、あっち(アカデミア)の世界がこっち(ドラゴンボール)の世界を認識できない様にしてほしい】と言う願いを叶える為。

 

 こうする事で龍悟の正体がバレる心配も別世界があるなんて面倒事が起きる事もないと言う訳だ。

 

 

 そしてもう一つが……

 

「魔人ドミグラ?」

 

 差し出された紅茶を飲みながら時の界王神の話を聞いていた龍悟だが、聞き慣れない言葉に首を傾げる。そんな龍悟に対して深刻そうに時の界王神は言った。

 

 7500万年前に時の界王神と戦った悪の魔術師で自らを魔神と名乗り…トキトキと呼ばれる、時を生み出す神秘の鳥と時の巣を我が物とし自分の望み通りの世界を創り上げる……時間を思いのままに操るつもりだった。

 

 そうなる前に時の界王神の手により時の狭間へと追放されたのだが……龍悟達に倒されたトワの歴史の改変により時空に歪みが生じ、外界に己の幻影を出現させる程度の行動が出来るようになってしまい。己の幻影を外界に出現させトワと入れ替わるように様々な時代で暗躍し歴史を改変。その影響で時の狭間から脱出しようとしているのだ。

 

「今、トランクスとバーダックがその歴史を修正しているのだけど……もしかしたらトワと同じ様に貴方達の世界に現れるかもしれない……」

「なるほどな……」

 

 魔神ドミグラ……面倒な事になりそうだと思いながら龍悟は紅茶を飲んでいると…

 

 

「あーーーーーーーっ!!!!」

 

 突然、時の界王神が騒ぎ出したのだ…いきなりの事で紅茶を落としかけた龍悟は何事だと彼女に視線を向ける。

 

「なんだイキナリ…」

「ヤバ過ぎるわよ、ゴジータ君!!響香ちゃんが居るパーティーに破壊神ビルス様が来ているのよ!!」

 

 またも聞き慣れない言葉に首を傾げる。

 

「破壊神...ビルス?」

 

「ビ、ル、ス、“様”ッッ!!」

 

「あぁ、済まねえ…で、そのビルス様って一体何者なんだ?」

「さっきも言ったでしょう…“破壊神”だって。この世界には星や生命を生み出す神、“界王神”がいる事はゴジータ君も知ってるよね?」

「ああ、勿論だ」

「でもね、この世界には それと対を成す神様も存在してるの」

「対を成すって事は... 星や生命を“破壊”するって事か?」

「そう…そしてその破壊神様は 万物を破壊する力を身につけているの……しかも、ビルス様は気まぐれで一度機嫌を損ねると 周囲の星々を破壊し尽くすまで止まらないのよ!!」

 

 予想以上にヤバイ事態に龍悟も目を見開く。

 

「響香達が危ねえ!!」

 

 

 

 

・・・・

 

「いや〜この星の料理はとても美味ですね〜!」

「あぁ、全くだ。ゴジータが来るまで食べ尽くすぞ!」

 

 破壊神ビルスの機嫌は最高だった。パーティー……地球にある食べ物はとても美味だった。そこで八百万のはからいでビルスと付き人のウィスをゲストと誤魔化してパーティーに参加させたのだ。

 

 彼等の後ろにある柵の裏側には響香達がスタンバっており、何時でも対応出来る様にしている。

 

「大丈夫か、耳郎君?」

「う、うん…ありがとう」

 

 飯田に渡された水を飲みながら落ち着きを取り戻す響香。彼女の頬には冷や汗が溢れていた。イキナリ現れた彼等を何者か問いただそうとしたが……それを止めたのは響香だった。

 

 時の界王神の力を得た響香は神の気を感じ取る事ができた……ハッキリ言って次元が違う。恐らく超サイヤ人4になった龍悟と同等だと。

 

 大きく取り乱す響香を見て…機嫌を損ねるのは得策ではないと思った彼等は龍悟が来るまで機嫌が良いままで居てもらおうとパーティーに参加させたのだ。

 

 

「ところでビルス様、あのプリンという食べ物はもうお食べになられましたか?」

「プリンとな!?」

 

 ウイスの問いに対し、ビルスは飛びあがってウィスの指差す方を直視する。其処には峰田がプリンを独り占めしていた。

 

「キミ、そこにあるプリンを一つわけてくれないか?」

「え〜全部オイラが取ってきたんだ。美女ならまだしも男に渡すモンはねぇ…!」

 

 峰田、まさかの拒否である……無知とは幸せな事だ…

 

「よこせ!」

「ヤダ!」

「よこせ!!」

「ヤダ!!」

「よこすんだ、馬鹿者!!!」

 

「プリンを渡すんだ峰田君!!」

 

 しかし、そこでフルスロットルの飯田が峰田からプリンを奪う。文句を言おうとした峰田は響香の無言の腹パンでダウンだ。

 

「ビルス様、どうぞ!!」

「あぁ、ありがとう」

 

 プリンを差し出す飯田に再び機嫌をよくするビルス。間一髪だったと…安堵した。

 

「では早速……」

 

 ビルスが笑顔でプリンの蓋を開封し、スプーンで掬う。そしてまさに口へ運ぼうとしたその瞬間に悲劇は起こった。

 

 近くを歩いていた上鳴の足元に突然、バナナの皮が現れそれを踏んだ上鳴は転んでしまう。何かに掴まろうした彼の腕はビルスのプリンを叩き落としてしまった。

 

 その光景に響香達は唖然とする、飯田の眼鏡にヒビが入ったのは気のせいではないだろう。

 

「いや〜すまねぇ。まさかバナナの皮で転ぶなんてな」

 

 そう言って笑い出す上鳴……わかっているのだろうか…自分が最悪の地雷を踏んづけた事に……

 

「か、上鳴君!!なんて事を!!ビ、ビルス様、これはその…」

 

 飯田がフォローしようとするも、言葉が浮かばない。

 

 ビルスはプルプルと肩を震わせ地面のプリンを見る。あれだけ食べるのを楽しみにしていたプリンは無惨にも中身が地面に零れてしまっている。他にはもうない…峰田が全て食べてしまった。

 

「完全にキレたぞーーーッ!!」

 

 ビルスの身体から紫色に輝く禍々しいオーラが解き放たれる。そしてプリンの恨みを込めて上鳴と峰田を吹き飛ばしてしまった…木に叩きつけられた二人は気絶してしまった。

 

「な、なんだ一体!?あのゲスト何者だ!?」

「んな事はどうでもいい!ぶっ飛ばしてでもあの野郎を止めるぞ!“個性”の使用、不使用なんて言ってる場合じゃねぇ!!」

 

 未だかつてない事態に場の全員が戸惑い、しかし爆豪の言う通り非常に不味い事態だという事だけは瞬時に理解した。

 

「止めるぞ!」

 

 冷静な障子がすぐに戦闘態勢へと入り砂藤、尾白と共に突撃を仕掛ける、瀬呂や梅雨ちゃんもフォローに入るが掠りもしない…指一本の突きだけで一瞬にして失神させてしまった。

 

「芦戸、皆を連れて離れてろ!常闇!!」

「あぁ!!」

「あぁもう!どうにでもなれーーーーッ!!!」

 

 クラスでも実力者の切島、常闇…そしてもう無理だと感じた麗日が突撃する。しかしこれも通じない。ビルスはデコピンで切島を弾き、近くにあった割り箸で常闇と麗日の攻撃を捌き、箸の突きで気絶させてしまった。

 

 見るに見かねた拳藤が大拳で殴りかかるが指一本で受け止められデコピンで撃破された。

 

「プリンくらいで暴れんじゃねぇ!猫野郎!!」

 

 流石は爆豪、破壊神を野郎呼びとは…

 

「君達地球人には食べ慣れた物かもしれないけどね。僕には味の想像もつかない未知の食べ物だったんだ。プリン!!!何とも美味そうなネーミングじゃないか!」

「知るか!死ねー!!」

 

 爆豪は爆破しようと腕を振るうが……

 

「ふおぉあ!?」

 

 そんなモノは効かずビルスはラリアットを叩き込み偶然いい位置にあった岩盤へと衝突、めり込ませた。

 

「クソ…!こうなりゃ自棄だ!」

 

 轟が【火竜の咆哮】を放つがまるで虫でも払うかのような動作だけで無力化され轟は弾かれてしまった。フラフラと立ち上がる轟の目の前にはビルスが既に立っていた。

 

 ここまでかと諦めた轟だがそこに八百万が歩み出て、なんとビルスに怒りのビンタを叩き込んだ。

 

 これには轟も度肝を抜かれ、目を剥いている。

 

 

「いい加減にしてください!!プリンだけでココまで暴れる人が居ますか!!」

 

「…………」

 

 ビルスは張られた頬に触れ、それから無言で八百万を張り倒した。幸い気絶ですんでいるが轟の心境は穏やかではない。その心は諦めから憤怒へと変化していった。

 

 

「貴様、よくも……よくも、(もも)をーー!!」

 

 

 轟が怒りに咆哮し、右半身からは薄紫の氷が…左半身からは紅蓮の炎が溢れる。そして髪は超サイヤ人の様に逆だっていた。威圧感は圧倒的に高まりその変化にビルスも僅かな反応を見せる。

 

「許さねぇ!氷刃・七連舞!!」

 

 砂塵を巻き上げながら轟がビルスへ氷の刃で敵を切り裂く連続攻撃を叩き込む。

 

「何が破壊神だ!ふざけるのも大概にしやがれ!」

 

 力を解き放ち、轟が怒涛の攻めを見せる。そのうちの何発かはビルスに命中し、彼を空中へと吹き飛ばした。

 

 

「滅竜奥義!!紅蓮爆炎刃!!!」

 

 

 そして炎を纏った腕を螺旋状に振るい爆炎を伴った強烈な一撃を叩き込んだ。

 

 確かに轟は強くなった。だが……それでも尚、力の差は絶望的だ。爆炎をビルスが容易く吹き飛ばしたのだ。

 

「面白い変化だね。少し火傷しちゃったよ」

「……っ!くそおお!」

 

 尚も食って掛かろうとする轟だが、ビルスにはまるで届かない。彼が拳を握る事すら許さずにビルスの拳が腹に突き刺さり、轟は膝から崩れ落ちた。

 

 信じられないと飯田は冷や汗が止まらない。皆は全滅したこの光景は悪夢にしか見えなかった。

 

「どうする、次は君が来るのかい?クロノアから力を授かったんだろう」

「………やるしかないか…!!」

 

 結果はわかっている。しかし、やらねばならないと響香が究極化をしようとしたその時…

 

 

「まて!!」

 

 

 声が聞こえた…声のする方に視線を向ければ。

 

「待たせたな、響香」

「龍悟!!」

 

 其処には龍悟がいた、龍悟は響香の前に出てビルスと対面する。

 

「やっと来たね、僕は君に会いに来たんだよ、ゴジータ君…いや、孫龍悟と言ったほうがいいかな?君に聞きたいんだけど…“超サイヤ人ゴッド”って知ってる?」

「ゴッド?知らねぇな…」

「そうか……まぁ、これはオマケだ。僕はね、長い間眠って居たんだ。だけどある時、途轍もないパワーをこの世界から感じ目覚めたんだ。そしてそれは、君の力だとわかったんだ」

 

 ビルスが感じたパワー…響香には心当たりがあった。神野区で龍悟が覚醒した究極のサイヤ人

 

「超サイヤ人4……」

「へぇ、アレは4って言うんだ……ゴッドじゃないけど途轍もない強さだった………何万年も生きているけど、本気で戦った事なんて片手で数える程しかない。そんな時、君の力を感じた」

 

 ニヤリと笑いながらビルスは本気を出した威圧感が遥かに倍増し龍悟ですら冷や汗が止まらない程に…

 

「見せてもらおうか超サイヤ人4の力を」

「……………いいぜ。俺もビルス様を一発ぶん殴りてぇと思ったからな」

 

 倒れ伏す轟達を見て龍悟は屈する事なく言い放った。

 

「へえ、言うじゃないか」

 

 龍悟は一気に超サイヤ人3まで力を引き上げるがこれではまだ足りない。だからこそ気が更に高まり黄金の気柱が龍悟を包み込む。力の上昇は留まる事を知らずどんどん上がっていく。

 

 そして遂に龍悟の姿が見えてくる。赤い体毛が生えており髪も赤く染まっており、放たれる力はビルスですら冷や汗を流す程だ。ウィスが感心した様に声をあげる。

 

「素晴らしい〜!ここまで大きなエネルギーを持ちながらその質はクリアどころかむしろ荒々しい……神の域に達していないのにここまでとは!」

 

 超サイヤ人4に変身した龍悟は冷徹で低い声で、破壊神ビルスに告げた。

 

「これが、超サイヤ人4だ。…今度の俺は、ちょっと強いぜ」

「これだよこれ!僕が感じたエネルギーは!いやあ、すごいね〜!そうだ、ウィス」

「ハイ」

 

 ウィスが杖を地面に突き刺すと青い波紋が地面を走り地球全体に広がった。

 

「コレで戦いの余波で地球が壊れる事はありません。存分に戦ってください」

「随分、気前がいいんだな……響香、飯田、皆を連れて離れててくれ」

 

 皆の安全を確認するとと龍悟はビルスに向き合う。そして聞こえる風切り音と衝撃音、それは龍悟が超高速でビルスの前は移動したものと、突き出した拳を受け止めた時に発生したものだ。 

 

 

「覚悟してもらうぜ!破壊神!!」

 

 

 

END

 

 




バーダックはタイムパトローラとして時の巣に居ます。
いろんな時代の強者と戦える職場なんて願ったり叶ったりでしょうから…


そして轟の怒りの覚醒。この変化の再登場は少し先になります。


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現れし魔神

 

 八百万家が所有するプライベートビーチ。そこで、二つのパワーが空中、地上を問わずぶつかり合っている。

 

 炎の様な金色のオーラを纏い、口元に不敵な笑みを浮かべる赤い体毛の生えた赤髪の超サイヤ人4。

 

 それに対するは紫色の肌で見た目は猫のような頭をして、牙をむき出しにする痩せ型の破壊神。

 

 

「うぉおおおおっ!!」

 

「ぬぉりゃあぁっ!!」

 

 両者、同時に目を見開き地を蹴って踏み込むと互いに向かって左の拳を突き出した。二人の真ん中で強烈な炸裂音と共に二つの拳がぶつかった。

 

「どうだい、ビルス様?超サイヤ人4になった俺の強さ、楽しんでもらえてるかい?」

「勿論、素直に驚いたよ。この世界に来た甲斐はあったと言うものだ…!」

 

 ビルスが跳躍し龍悟の前で回転、遠心力を乗せた尾の一撃で龍悟を強打する。龍悟はそれを腕で防御し拳を放つが空をきる。それに合わせる様にビルスの尾が蛇のようにうねり、尾が鞭のようにしなって龍悟を殴り振り向きつつビルスの右拳が龍悟の顔面を殴った。

 

 しかし、龍悟も負けずに拳をビルスの顔面に叩き込む。そこから始まる肉弾戦、ぶつかり合うごとに空が幾度も震え、衝突の余波が吹き荒れる。

 

 紫の神光と真紅の焔がぶつかり合う。拳と拳、蹴りと蹴りをぶつけ合う両者。

 

 互いに拳をぶつけ合う。互いに傷を負うがそれでも互いに退きはしない。

 

「…全くの互角か」

「ああ、龍悟君もビルス様も一歩も退かないな」

 

 立ち上がった轟の言葉に飯田も頷く。

 

 

 龍悟のボディブローが、ビルスの腹を射抜く。衝撃に前のめりになるビルスだが、尻尾を龍悟の頬を叩きつける。それを気にも止めず龍悟の左フックがビルスの顔にヒットし吹き飛ばす。

 

 しかし吹き飛ばされても気弾を放つビルス、龍悟が気弾を受け止めた一瞬に体制を立て直し龍悟の目の前に踏み込み右拳を放ってくる。それを受け流しながら龍悟は左拳を叩き込む。それを受け止めるビルスだが超サイヤ人4の豪腕から放たれる一撃はガードしようとお構いなしにビルスを吹き飛ばした。

 

「ビルス様をガード越しで吹き飛ばしますか…凄まじいですね」

 

 感心するウィスの視線は拳をぶつけ合う二人に向けられていたが少し響香の方に向ける。

 

「所で耳郎響香さん、お気づきですか?邪な者が近くに居る事を」

「トワの様な奴がですか?」

「えぇ、どうやらビルス様と龍悟君を標的に定めたようですね……どうしますか?」

 

 そう言われ響香は龍悟を見る。彼は珍しく笑っていた楽しそうに……それを台無しにしようとしている奴が居る、止めなくていいのか?とウィスは言っているのだ。

 

「人が悪いですね……行きます!」

「ホホホ、ではお願いします」

 

 ウィスが杖を振るうと空間に穴が空き何処かへと繋がっているようだ。どうやらココを通れと言う事らしい、響香は飛び込んだ。

 

(負けないでよね、龍悟!)

 

 

 龍悟とビルスは互いに拳をぶつけ合ったまま、一歩も退かない。

 

「「!」」

 

 同時に目を見開いて拳を引き、龍悟は手のひらを向け、ビルスは指を構えて気を集中させる。

 

「ビックバン・アタック!!」

「ぬん!」

 

 龍悟の【ビックバン・アタック】とビルスの紫色のエネルギーが正面からぶつかり合い至近距離でぶつかり合い爆発した。

 

 強烈な衝撃波が風となり辺りのモノを吹き飛ばす。

 

 

「ククク、素晴らしい」

 

 それを近くの高台で見ていた赤い髪で杖を携えた男が居た。彼こそが時の界王神が言った悪の魔術師…【魔神ドミグラ】。やはり彼はこの世界にもやってきた。

 

「破壊神ビルス……そして最強の戦士ゴジータ。流石の彼等もアレだけの戦闘を繰り広げていて隙がある。我が魔術で操り人形となるがいい」

「へぇーそれがアンタの目的って訳」

「なに?」

 

 後ろから聞こえた声に振り向くと其処にはウィスのゲートを通ってやってきた響香が立っていた。

 

「アンタ何者?」

「私は魔神ドミグラ。いずれはこの宇宙…いや、全ての次元を支配する神となる存在だ」

 

 ドミグラが随分大層な事を口にする。

 

「ご大層な事言ってて悪いけど今、取り込み中なの…さっさと自分の世界に帰ってくれない?嫌なら力ずくだけど」

「笑わせるな小娘が…やれるモノならやってみろ。神である私を!」

 

 ドミグラが赤黒い気弾を放ってくる……が、響香は一切恐れずに自身にある神の気を練り、自身の力の次元を引き上げる。

 

 響香から溢れる美しい紫の神気がドミグラの気弾を防ぎ全身を包み込んだその時、響香は変わった。

 

 紫色の美しい髪はロングヘアになり背中には時計の針を模したような光輪が展開され、そのまま気を固定化し紫と黒の長身の日本刀を生み出し右手で日本刀を持ち牙突の構えを取る。

 

「女神の力、見せてあげる!!」

 

 

 響香の変化に驚きを隠せないドミグラ、そんな彼はある事に気づく。

 

「その力…忘れる筈がない!貴様、時の界王神から!」

「アンタ、時の界王神様の知り合いなんだ…そう、時の界王神様がウチに授けてくれた」

「そうか…!ならばヤツへの恨み…ほんの一欠片でも貴様で晴らすとしよう!!」

「どうせアンタの自業自得でしょ!!」

 

 ドミグラの杖と響香の刀が火花を散らしてぶつかり合う。そこから始まる刀と杖のぶつかり合い…しかし、刀だけに気を取られ過ぎていて、響香のイヤホン=ジャックをモロに喰らってしまう。

 

「喰らえ!」

 

 そこからの増幅心音攻撃、防御無視のこの攻撃は超サイヤ人4の龍悟ですら受けたくはない。案の定ドミグラはもがき苦しんでいる。その隙を逃さず響香は後ろ回し蹴りを喰らわせオーバヘッドキックを2連激を敵に叩き込んだ後、顎を蹴り上げた。

 

「龍爪演舞!!」

 

 

 吹き飛ばされたドミグラ…何処かにぶつかると思ったら次の瞬間その姿が消えてしまった。

 

(!、龍悟と同じ瞬間移動)

 

 刀を構えて響香は気を探る。そして見つけた、ドミグラは…!

 

「後ろ!」

 

 ドミグラは響香の後ろに転移し獄炎の魔術を放ってくる、それに対して響香は紫の斬撃を放つ。獄炎と斬撃がぶつかり合い激しく爆発した。

 

 ドミグラは次の一手の準備を始める、自ら持つ杖を魔術で増やし杖の先端を向け響香を貫こうとする。

 

 コレに対して響香は刀を作った時と同じ様に気の固定化をする。だが、コレに付け足すのは龍悟から教わった遠隔操作である。

 

 ゴテンクスの技である【スーパーゴーストカミカゼアタック】龍悟はこれを改良して神龍の炎(ゴットドラゴン・ブレイズ)を編み出した。響香もそれを参考に自分なりに改良したのだ。

 

「来て、ワルキューレ!」

 

 響香が手を翳すと自らが発した気が人の形へと変わっていく…白い服装に見を包んだ戦乙女へと。

 

 これが龍悟の協力により編み出された技、名はモデルである北欧神話において戦死した勇者の魂をヴァルハラへ連れて行く戦乙女の【ワルキューレ】。

 

 完成した時に龍じゃなくていいのかと龍悟に言われたが良いのだ、こんな綺麗な変身を身に着けたのだ、龍より戦乙女の方が性に合っている。

 

 

「闇に葬ってやろう!!」

 

 ドミグラが無数の杖で敵を貫く【シーズニンクアロー】を放ってくる。響香をワルキューレ達に指示を出す。ワルキューレ達は手に持つ光り輝く槍を一斉に投げだ。

 

終末幻想・少女降臨(ラグナロク・リーヴスラシル)!!」

 

 

 無数の杖と槍がぶつかり合う衝撃で風が巻き起こり空中に無数の爆発が広がっていく。その時、ドミグラは目を見開いた。

 

「はぁぁぁあっ!!」

 

 響香が気にも止めずにその爆発の中へと飛び込んだのだ、爆発を突き破り響香が真っ直ぐ飛び出してきた。すぐさま迎撃するがワルキューレ達の槍によって相殺されてしまう。

 

「これでぇぇぇえ!!」

 

 そして響香は刀をドミグラに叩きつけた。

 

「っ!?」

 

 しかし今度は響香が目を見開いた。手応えがなかったのだ…どう言う事だとドミグラを見ればドミグラが幻の様に消えていく。

 

「仮染の体は耐久性に難があるな……時の界王神に伝えておけ。私は必ず蘇るとな」

 

 

 不敵な笑みを浮かべてドミグラは消えていった。

 

 

 

END

 

 




【ワルキューレ】

耳郎版スーパーゴーストカミカゼアタック。

気弾を戦乙女を模した形に生成し耳郎によって遠隔操作される、早い話がファンネル。手には槍を持っておりゴクウブラックの分身の様に肉弾戦もできる。

必殺技は他のワルキューレ達と一斉に槍を放つ【終末幻想・少女降臨(ラグナロク・リーヴスラシル)


元ネタはFateのワルキューレ。作者はワルキューレの中でオルトリンデが好きです。




ちなみにバナナの皮はドミグラの陰謀です。




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神をも超えろ!!(リメイク)

 繰り広げられる究極のサイヤ人と最強の破壊神との激闘、それは龍悟の方が有利だった。

 

 超サイヤ人4の戦闘力が破壊神を上回っているのだ。ビルスの攻撃は確かに強烈なのだが龍悟を倒すまでには至らない。龍悟の顔へビルスの蹴りが直撃するが、龍悟は僅かにのけぞっただけで大きなダメージを受けてはいなかった。逆に強力な右ストレートがビルスの顔にクリーンヒットし拭き飛ばされ砂浜を何度もバウンドする。

 

 フラフラと立ち上がったビルスに龍悟は追い打ちをしかける。

 

「ビックバン・アタック!!」

 

 蒼い光球がビルスに直撃するその時……消滅した。

 

「な!?」

 

 【ビックバン・アタック】がまるで砂が風で飛ばされるように紫の光となって消滅したのだ。龍悟はさらなる寒気を感じて身構える。そんな龍悟にビルスは笑って言った。

 

「素晴らしいパワー、神をも超えた肉体、……悔しいが戦闘力では君の方が上だ」

 

 目の前に現れたビルスに龍悟は拳を振るうが…

 

「だからね……破壊神の力を使って戦おう」

 

 ビルスが手をかざした瞬間…易々と受け止められてしまう。目を見開く龍悟にビルスは次々と連撃を叩き込む、先程まで効かなかった4の肉体に重く突き刺さる。

 

「…ぐぁ!?」

 

 龍悟は近くの岩に叩きつけられる。それを見ていた轟達が唖然とする。意識を取り戻した麗日、拳藤、八百万も観戦していたが明らかに戦いの流れが変わった。

 

「龍悟!?」

「どうして龍悟君の攻撃が…?」

「それに攻撃だってそんなに効いてなかった筈なのに…何故だ…!」

 

「破壊神の力です」

 

 後ろに居たウィスの言葉が聞こえ一同は振り返る。

 

「ビルス様の破壊の力はあらゆる存在、概念を破壊する力……ビルス様はその力で龍悟さんの気をゼロにしたのです。如何に4の肉体と言えど気をゼロにされてしまえば破壊神にダメージを与える事も攻撃を受け止める事もできません」

 

「そんな…!」

 

 破壊神の力に麗日が絶望する……簡単に言えば攻撃力と防御力をゼロにする事も【ビックバン・アタック】などの攻撃そのモノを消滅させてしまうのだ。

 

 肩で息をしながら、立ち上がる龍悟。

 

「これが破壊神の本来の力か……超サイヤ人4の肉体でも、こんだけダメージを食らうのか…!」

 

 龍悟は拳を握って気合いを入れ、一気に超サイヤ人4の力をゼロの状態から引きあげビルスに殴りかかる。目の前に現れた龍悟にビルスは笑みを浮かべて、拳を握る。

 

 ぶつかり合う二つの拳。

 

「…ぐぁ!」

 

 ビルスが呻きながら、右手を払って僅かに下がる…完全に力負けした。

 

「今だぁ!!」

 

 その隙を龍悟が見逃すはずはない、一気に怒涛の連撃を放つ。攻撃を受けながらも負けじとビルスも拳と蹴りを放ち、猛烈な打ち合いになる。

 

 ビルスの右ストレートを龍悟は片手で軽々と受け止めて、右の回し蹴りを顔に放つ。左腕で受け止めるビルスだが、歯を食いしばり汗を流している。

 

「破壊神の腕を痺れさせるとは…やってくれるじゃないか、ゴジータ!!」

 

 言うと龍悟の蹴りを弾いてビルスの破壊の拳が龍悟のボディに炸裂した。

 

「ぐぁ!?」

 

 瞬間、超サイヤ人4の黄金のオーラがゼロになる。

 

「しまっ!?」

 

 距離を取ろうとする龍悟の懐にビルスが踏み込み、左の拳を龍悟に叩きつけた。

 

「がはっ!?」

 

 意識が半分飛ぶ。更にビルスの右ストレートが龍悟のボディを貫いた後、蹴りが頬を蹴り飛ばした。

 

「ぐわぁああっ!!」

 

 悲鳴を上げながら、龍悟は地面に背中から叩きつけられていた。

 

「純粋な戦闘力では破壊神を超えている…神の気を纏わずに。貴方は間違いなく最強の人間ですが…それを貴方は納得されていないようですね、ゴジータさん」

 

 ウイスが告げると、黄金の気を全身に漲らせて龍悟が立ち上がる。龍悟は心配そうにこちらを見る轟達に視線を向ける、響香が居ない事に疑問は抱くが…笑みを浮かべて轟達に言う。

 

「心配するなよ……必ず勝ってやる…!!」

「その言い方…やっぱり、まだあるんだろ?」

「あぁ、もう気づいてると思うけど…ビルス様が破壊の力を使うなら……俺は受け継いだ力を使う」

「この世界特有の“個性”ってやつだろ。君には面白い力があるようだ」

 

 笑うビルスに龍悟も笑って答える。

 

「出し惜しみしてたわけじゃねんだけどよ。本当は完璧になってから使うつもりだったんだ。けど、このまま全部出せずにやられたんじゃせっかく来てくれたビルス様に申し訳が立たねえ」

 

 龍悟が覚悟を決めたような表情となり、気を…そして、ワン・フォー・オールを解放する。常時発動するのは60をぶち抜き90%!

 

「いくぜ、ビルス様!!ワン・フォー・オール、フルカウル、90%……超サイヤ人(フォース)だぁ!!」

 

 龍悟の体を真紅のスパークが力強く迸り、身に纏う黄金の気に真紅の気が外側から被さり、赤かった髪は金に近い色に染まる。

 

 

「いいぞ、龍悟!この破壊神ビルスがお前を最強と呼んでやろう!楽しいぞ、はじめてだよ、神に以外で本気で誰かと殴り合うのは。それも、まともに殴り合うと僕が負けるなんて!破壊神の力を使わなきゃ、僕が劣勢になるなんてね!楽しいじゃないか!!」

 

 さっきよりも遥かに楽しそうに、恐ろしい迫力の笑みを浮かべてビルスは笑った。これに龍悟も野性味ある冷徹な笑みで応える。

 

「お互い本気を出して決戦も決戦……超最終決戦といこうじゃねぇか!!」

 

 

 龍悟が右拳を握り殴りかかる。ビルスは破壊を使って気をゼロにして受け止めようとするが……

 

「同じ手は喰わねぇ!!」

 

 龍悟の右手に真紅と黄金の焔が纏うと破壊を打ち消したのだ。今度はビルスが目を見開き龍悟の右ストレートに殴り飛ばされた。

 

 

「龍悟の攻撃が当たった!!」

「ビルス様の破壊を打ち消すとは!?」

 

 拳籐が嬉しそうに叫びウィスは驚愕した。再び攻守が逆転し、完全に龍悟が優勢だ。龍悟の拳が、蹴りが、次々とビルスを打ちのめし傷を刻んでいく。

 

 しかし、ビルスとて負けてはいない。ビルスも拳に破壊を纏わせて龍悟の気をゼロにしようとするが龍悟の身に纏う気の壁に受け止められてしまう。

 

 

 純粋な殴り合いでは龍悟が有利だ。真紅と黄金の炎を纏った龍悟の拳がビルスの顔や腹を強打する、余りの衝撃にビルスの身体が空に吹き飛ぶ。落ちてくるビルスに追撃を仕掛ける為に空を飛ぶ。

 

 だが、その時…龍悟の纏っていた気が消えてしまったのだ。襲撃の時、調整が上手くいってないのに超サイヤ人Ⅱを使用してしまった為に強制解除してしまった。そして今回も調整は完了していない……無理がありすぎた。

 

 それを逃すビルスではない、強烈な拳が龍悟の腹に突き刺さる。

 

「かはっ……!」

 

 龍悟の身体から力が抜けていく……このまま目を瞑れば終わってしまう。しかしその時、龍悟の耳に届いたのは自分を呼ぶ仲間達の声だ。

 

 

「龍悟!!」

 

 

 まず最初に聞こえたのはさっき居なかった響香の声だ。

 

 

『龍悟!!』

 

 

 そして…飯田、麗日、拳籐、轟、八百万……自分を励ましてくれる皆の声が聞こえる。

 

 なら、倒れる訳にはいかない!!龍悟は踏み止まり再びワン・フォー・オールを90%まで引き上げ大地を蹴って突撃。渾身の力を込めた一撃をビルスの顔面に叩き込み間髪入れずに追撃!拳を振るうたびに加速し一瞬でビルスの身体を上空へと運ぶ。

 

 ビルスですら反撃を許さない程の猛烈なラッシュを叩き込みそれでも尚、龍悟は止まらない。そして、最後に地面に降り立ち…

 

 

「百倍・ビックバン・かめはめ波ぁあああああああっ!!!!」

 

 

 虹色のかめはめ波を解き放つ。ビルスが肩で息をしながら両手を頭上に掲げて叫ぶ。

 

「いいぞ…!決着の時だぁぁ!!」

 

恒星のような巨大で赤い炎の球を破壊神ビルスはニヤリと笑い、龍悟に振り下ろした。

 

 ぶつかり合う両者の一撃。虹色のかめはめ波と破壊の力を纏う炎の球。

 

 

「龍悟!!」

 

 響香の声が…

 

「龍悟君!!」

 

 飯田の声が…

 

「龍悟君!!」

 

 麗日の声が…

 

「龍悟!!」

 

 拳籐の声が…

 

「龍悟!!」

 

 轟の声が…

 

「龍悟さん!!」

 

 八百万の声が…

 

 

「聞こえたぜ、皆…!!」

 

 龍悟の目が見開かれ、激しく咆哮した。

 

 

「はあああああああっ!!」

 

 

 一気に気が爆発し、ビルスの恒星を打ち破って虹色のかめはめ波が迫る。目を見開きながらもビルスは静かに笑う。

 

 

「…フ、見事だ。素晴らしい強さだ」

 

 

 ビルスを飲み込み地球から虹色の柱が聳え立つ、目も開けていられないほどの極光。その余りの輝きに皆は目を開けていられない。

 

 

 やがてそれが収まった時、ワン・フォー・オールや超サイヤ人4が解除され倒れそうになった龍悟を支えたのは…

 

「お疲れ…龍悟」

 

 響香だった。ドミグラとの戦いを終えさっき戻ってきたようだ。

 

「サンキュー…」

 

 笑い合う二人の前に気絶したビルスを抱えたウィスが立って居た。

 

 

「貴方の勝ちですよ……ゴジータさん」 

 

 そう言ってウィスが杖を振るうと龍悟とビルスが緑色の光に包まれて…

 

「!、傷が治っていく…!」

 

 傷が完治したのだ。そしてビルスも目を覚まし起き上がる。

 

「時間を巻き戻したのですよ。それにしても素晴らしい一撃でした、まともに行けば、私でも防げたかどうか…完敗ですねビルス様」

「あぁ…全くだ」

 

 そう言うビルスの顔は晴れ晴れとしていた。彼は立ち上がり八百万達の方へと足を進める。思わず身構えた彼等に……

 

「すまなかったね……パーティーをめちゃくちゃにしてしまって」

 

 頭を下げた…余りの光景に唖然とする八百万達。そんな中、響香が口を開く。

 

「プリンで暴れるのはどうかと思いますけど……それってドミグラのせいだと思うんですよ。アイツ、ビルス様と龍悟を操り人形にするとか言ってましたし…」

「あ〜忘れてた。なんか僕達を監視してる奴が居るな〜って感じてたんだよ。プリン食いたかったな…」

 

 そう言うビルスに八百万が差し出したのは……

 

「プ、プリンじゃないか!?なぜ?」

「食べたかったのですよね……もう、ここの世界で暴れないと約束して頂けるのなら…差し上げます」

「……………ありがとう、神は約束は破らん」

 

 そう言ってプリンを受け取るビルス。

 

「では龍悟さん、皆さん…私達はそろそろ帰ろうと思います。今回は私達にこんなに美味しい物を食べさせていただきありがとうございます」

 

「いいさ、俺もビルス様と戦えて楽しかったからな」

「僕も楽しかったよ………では諸君、また会おう」

 

 そうしてビルスとウィスは虹色の光となって空の彼方に消えていった。

 

 

「しかし神様か…僕達、とんでもない人と一日過ごしたんだね…」

「神は神でも破壊神だけどね…」

「グルメな神様…」

 

 どうやら、麗日にはグルメな神様のイメージが定着したようだ。響香は青空を眺める龍悟の隣に立つ。

 

「ねぇ、龍悟」

「?、なんだ?」

 

 

「……龍悟さ、この世界が楽しい?」

 

 

 この世界に転生した事を後悔していないのか…ビルスが居る世界の方がいいのではないのか…何となくそう聞くと、龍悟は一瞬きょとんとした後、柔らかい笑みを浮かべて笑った。

 

「ああ、お前等と過ごす日々が俺をワクワクさせる」

 

「そっか」

 

 

 お互いに笑い合うと…パーティー会場の方から声が聞こえる。どうやら時間が戻ったのは龍悟やビルスだけじゃ無い様だ。

 

 ウィスは自分達が来る前にこの世界の時を巻き戻したのだ、皆の傷もないし…パーティーも元通りだ。

 

「マジか…」

 

 響香達が目を見開くなか龍悟の心から呟きが響いた。こうして龍悟達の夏休みは幕を閉じた。

 

 

 

END

 

 

 



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八章・英雄祭
新たな生活


「体には気をつけるのよ」

「ああ…行ってきます」

 

 

 8月中旬、母の言葉を受けながら龍悟は今日…家を出る。

 

 

 雄英敷地内  校舎から徒歩五分の築三日……

 

 

 “ハイツアライアンス”此処が新たな龍悟達の家だ。

 

 

「でけー」

「恵まれし子供等の〜!!」

 

 

 龍悟を含めたクラスの皆は集合している。

 

「とりあえず一年A組、無事に皆集まって何よりだ」

 

「皆、許可降りたんだな」

 

 瀬呂の言う許可とは、寮生活の許可だ。これまで何度も敵の襲撃を許した雄英に任せて大丈夫なのかと思うのは親として当たり前の事だ。

 

 

「私は苦戦したよ…」

「葉隠はガスで被害遭ったもんね…」

 

「響香ちゃんは大丈夫だったの?」

「まぁ……いろいろあった…」

 

 響香は誘拐された……断られるのが普通なのだか…

 

「………それでも、ヒーローになりたいってウチの背中を押してくれたんだ」

「………いいご両親なのね……」

「うん……でも……」

 

 思い出すのは母の言葉……

 

〔それに雄英には龍悟君(響香の未来のお婿さん)が居るから安心よ〕

 

(アレがなければなー!!////)

 

 お母さん早く孫の顔が見たいわ〜なんて言いそうな母親に苦労している響香である。

 

(龍悟ちゃん関係で何かあったのね……)

 

 そして察する蛙吹…空気のわかる女である。

 

 

 

 そこから相澤による説明が始まった。

 

 1棟1クラス右が女子棟左が男子棟と別れていて1階が共同スペースで食堂や風呂・洗濯は個々でやる。部屋はニ階から1フロアに男女各4部屋の5階建てで一人一部屋、龍悟の部屋は三階にあり飯田と口田の間だ。

 

 

「とりあえず今日は部屋を作ってみろ明日今後の動きを説明する以上解散!」

 

『ハイ先生!!』

 

 

 

 

 

 そして時刻は夜…龍悟と爆豪を除いた男子が共同スペースでくつろいでいると……

 

「男子部屋できたー?」

「うん…今くつろぎ中」

     

 こちらも終わったのだろう…女子達もやってきた。芦戸がルンルン気分で提案する。

 

「あのね!今話しててね!提案なんだけど……お部屋披露大会しませんか!?」

 

 芦戸の言葉に常闇が動揺した。

 

 

 

 

「チャラ!?」

「ないわー」

「えーよくね!」

 

 突如として始まった部屋披露…トップバッターは上鳴だが……チャラかった…

 

「何か始まったぞ…」

「でもちょっと楽しいぞコレ」

 

 一部の男子も乗っかってきたみたいだ。

 

 

「フン、くだらん」

 

 そう言う常闇は自分の部屋を覗かれまいと死守する…が抵抗虚しく突破された。常闇の部屋は暗くて怖い部屋だった。

 

「「黒!!怖!!」」

「貴様ら…!」

 

 切島が懐かしそうに手に取ったのは何かのキーホルダーだった。

 

「このキーホルダー…俺、中学の時買ったわ」

「男子ってこう言うの好きだよね〜」

「出ていけ!!」

 

 荒ぶる常闇だったが……

 

「コレじゃあ女の子にはモテないわ常闇ちゃん」

「ぐはぁ!!」

 

 蛙吹の言葉にダウンする…少し哀れだ。

 

 次の青山だが……キラキラした部屋で予想道理過ぎてリアクションもない。続いて三階の部屋……あと一人忘れてる?気にするな、作者も気にしない。

 

 

 三階…まずは尾白ルーム

 

「ワァー普通だ!!」

「普通だね!」

「これが普通!」

「言う事ないなら良いんだよ…」

 

 尾白は静かに泣いた…

 

 

 次は飯田ルーム…流石は委員長、難しそうな本がずらりと並んでいるが……

 

「「メガネ…クソある!!」」

「何が可笑しい!!麗日君!耳郎君!」

 

 

 続いて龍悟ルームだが……

 

「龍悟まだ準備終わってないのか……」

 

 そう…龍悟はこの場には居ない、また今度と言う事で次は口田ルーム…可愛らしい動物の縫いぐるみがあったり…

 

「ウサギ居る!可愛い!!」

「ペットはズリー…口田あざといわ〜」

 

 女子の容赦ない舌剣が男子の競争心に火をつけた。

 

「釈然としないな…」

「ああ、奇遇だね…俺もしないんだ、釈然…」

「同感だ…」

「僕も」

 

 その後、峰田の意見で女子を含めた部屋王を決める戦いが始まった。

 

 

 

 男子棟四階…爆豪は除かれ切島ルーム。

 

「どうだ!この男らしさは!!」

 

 はっきり言って暑苦しい部屋だった…

 

「彼氏にやってほしくない部屋ランキング二位くらいにありそう…」

「アツいね!」

「ありがとう麗日!」

 

 涙を流す切島の肩に常闇が静かに手をおいた。

 

 次は障子ルーム、何もなかった…

 

「ミニマリストだったのか」

「まぁ、幼い頃からあまり物欲がなかったからな」

「こう言うのに限ってドスケベなんだぜ」

 

 布団の下を除く峰田だが、何もなかった…

 

 

「次は五階!瀬呂からだ!!」

「まじで全員やんのか…」

 

 五階の瀬呂ルーム…どんなものかと見てみれば…

 

「おお!エイジアン!!」

「素敵!」

「意外に拘るんだ…」

「ギャップの男、瀬呂君だよ!」

 

 好評だった瀬呂…そして次は…

 

「次は轟さんですわね」

 

(轟さんの部屋///)

(龍悟と並ぶイケメンボーイ)

(クールな轟君の部屋…)

 

「さっさと済ましてくれ…寝みぃ…」

 

 一同は轟の部屋に驚愕する。

 

「和室じゃん!!」

「造りが違う!!」

 

「実家が日本家屋だからな…」

「どうやったの…?」

「…………頑張った」

「…………そう」

 

 

 最後の男子は砂藤…轟の次だとインパクトにかけるが砂藤の作ったケーキは女子の心を鷲掴みにした。

 

 

 

 

「これで女子は終わりだな」

 

 

 女子も男子に負けずインパクトが凄かった特に八百万のお嬢様ぷりに驚愕したりと凄かった。このまま決めるかと思ったその時…

 

「お前等こんな夜中に何やってんだ?」

「龍悟!」

「一通り終わったと思えば…皆の気を女子棟から感じてな、何かと見に来た」

「実はーー」

 

 響香の説明を聞きながら龍悟は皆を連れて自分の部屋に来た。

 

 

「部屋王ね〜」

「じゃあ最後の締めは龍悟君で」

「まぁ、構わねぇ」

 

 そう言って龍悟はドアノブを握る。

 

(龍悟君の部屋…なんかドキドキする///)

(クラス最強の実力者…!)

 

 龍悟の部屋は…一言で言えばある物が目立っていた。

 

「写真が多いな…」

 

 そう、本棚にはアルバムが多くあり飾ってある写真も普通より多かった。この間の海の写真や体育祭、合宿など様々な写真があった。

 

「ああ、俺にとって皆との思い出が詰まった写真は…掛け替えの無い宝物なんだ」

 

 本来ならほんの少ししか存在できない龍悟(ゴジータ)にとって仲間との思い出を残す写真は宝物と読んでも差し支えない物だった。

 

 

「龍悟、お前…」

「いや、泣くなよ切島…反応に困る」

 

 

 

 

 1階の談話スペースに爆豪を除いた皆が集まってる。

 

 

「それでは爆豪を除いた…第一回、部屋王、暫定一位の発表です!!」

 

 芦戸が発表する。

 

 

「部屋王はーー孫龍悟!!」

「俺?なんで?」

 

「理由は…言わなくてもわかるよね」

 

 芦戸の言葉に頷く皆…首を傾げる龍悟…

 

 

 こうして寮生活の初日が終わった。

 

 

 

END

 

 




次回からいよいよ、オリジナル編に突入です。
それでは、また次回!!


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新たな仲間と新たな戦い

今回、あのキャラがメイン入りです。


 

 翌日、龍悟達は教室に集められた。

 

「昨日話した通り、まずは仮免の取得が当面の目標だ。ヒーロー免許ってのは人命に直接関わる責任重大な資格だ。当然その取得の為の試験はとても厳しい。仮免といえどその取得率は例年5割を切る」

 

「仮免でもそんなキツイのかよ」

 

 峰田の呟きが響く。

 

「そこで今日から君らには一人最低でも二つ...」

 

『必殺技を、作ってもらう!!』

 

 その言葉を放ちながらミッドナイト、エクトプラズム、セメントスがドアから現れた。

 

「「必殺技!!!学校っぽくてそれでいて、ヒーローっぽいのキタァア!!!」」

 

 切島と瀬呂の叫びが聞こえる。

 

「必殺!コレスナワチ、必勝ノ技・型ノコトナリ!」

 

「その身に染みつかせた技・型は他の追随を許さない。戦闘とはいかに自分の得意を押し付けるか!」

 

「技は己を象徴する!今日日必殺技を持たないプロヒーローなど絶滅危惧種よ!」

 

「詳しい話は実演を交え合理的に行いたい。コスチュームに着替え、体育館γに集合……の前に君達に新しい仲間を紹介したい」

 

「新しい仲間?」

「そうだ…入っていいぞ」

 

 ドアが開き入ってきた人物に龍悟達は目を見開いた。

 

「き、今日からこの一年A組に配属になりました……“21号”です……よ、よろしくお願いします」

 

 雄英の制服を着込んだ変身前の姿で21号が入ってきたのだから…爆豪ですら目を見開き響香が困惑する。

 

「21号!?どうして?」

「彼女の強さは格別だ…オールマイトの無期限の活動休止の今、孫の様な金の卵を余らせるのは合理的じゃあないとヒーロー協会は判断したらしい」

「私も罪滅ぼしの為にもヒーローになる道があるなら願ってもない事です」

「そう言う事で雄英の監視の元、彼女をA組に置く事にした」

「なるほどな……とにかく歓迎するぜ。これからよろしくな、21号」

「は、はい、龍悟さん!!」

 

 

 少しビクビクしている様子もあるがA組の皆とならすぐに馴染めるだろう。上鳴が21号をナンパしたり、峰田が八百万にも劣らない21号の胸を凝視したりといろいろあったが龍悟達はコスチュームに着替え体育館γへと集合した。(ちなみに21号のコスチュームはゲームでお馴染みの研究服である)

 

 

「体育館γ、通称トレーニングの台所ランド略してTDL!!!」

 

((((TDLは不味そうだ…))))

 

 一同が何かを感じていると…説明が始まった。

 

「ここは俺考案の施設、生徒一人一人に合わせた地形や物を用意できる。台所ってのはそういう意味だよ」

 

 そう言いながらセメントスは個性で地面のコンクリートを操り、それぞれの修行に用いるステージを構築していった。

 

「なーる」

 

「質問をお許しください!」

 

 飯田が手を挙げて質問をした。

 

「何故仮免許の取得に必殺技が必要なのか、意図をお聞かせ願います!」

 

「順を追って話すよ。ヒーローとは事件・事故・天災・人災...あらゆるトラブルから人を救い出すのが仕事だ。仮免試験では当然その適正を見られることになる。情報力・判断力・機動力・戦闘力・他にもコミュニケーション能力・魅力・統率力など、多くの適正を毎年違う試験内容で試される」

 

「その中でも戦闘力は、これからのヒーローにとって極めて重視される項目となります。備えあれば憂いなし!技の有無は合否に大きく影響する」

 

「状況に左右されることなく安定行動を取れれば、それは高い戦闘力を有している事になるんだよ」

 

「技ハ必ズシモ攻撃デアル必要ハ無イ。例エバ飯田クンノ【レシプロバースト】。一時的ナ超速移動、ソレ自体ガ脅威デアル為必殺技ト呼ブニ値スル」

 

「アレ必殺技でいいのか...」と飯田が感激していた。

 

「なる程、これさえやれば有利・勝てるって型をつくろうって話か」

「そうよ…孫君の【かめはめ波】が一番わかりやすいわね」

 

「中断されてしまった合宿での“個性”伸ばしは、この必殺技を作り上げるためのプロセスだった。つまりこれから後期始業まで...残り十日あまりの夏休みは、個性を伸ばしつつ必殺技を編み出す、圧縮訓練となる!」

 

「尚、“個性”の伸びや技の性質に合わせて、コスチュームの改良も並行して考えていくように。プルスウルトラの精神で乗り越えろ。準備はいいか?」

 

 エクトプラズムの分身が現れる。こうして必殺技作りの圧縮訓練が始まった。

 

 

 

 そして夕日が輝く放課後…

 

「いや〜疲れた…」

「響香ちゃん、新しい姿……究極化だっけ、アレにはなれた?」

「う〜ん、ぼちぼちって感じかな…ヤオモモは?」

「私はイメージはできました、後は実戦を重ねて完成させるのみですわ」

「そっか、21号!一緒に行こう!!」

「はい!」

 

 楽しそうに寮へと戻る響香達を見ながら龍悟達は安心した様に笑った。

 

「大丈夫そうだな21号は…」

「そうだな……さて、僕達も戻ろう」

 

 龍悟達も寮に戻ろうとしたその時、相澤に声をかけられる。

 

「孫、すまないが会議室に来てくれないか…話したい事がある」

「?」

 

 飯田達を先に行かせて龍悟は相澤を共に会議室に着た、会議室には既にB組の担任のブラドキングが待っていた。

 

「来たか…」

「ブラドキングも……一体何の話なんだ?」

「実はな、仮免試験の前…3日後に“他校”を交えたあるイベント…“英雄祭”行われる」

「“英雄祭”?去年までなかっただろ?」

「そうだ。しかし、オールマイトの無期限の活動休止の今、未来のヒーローは育っている事をアピールする為に行われる事になった」

 

「………内容は?」

「各学校から選ばれた十人よるサバイバルバトルのチーム戦。相手を戦闘不能にし、最後に残ったチームが勝利となる。雄英は今注目されている一年で出場する事にしたが…孫、お前は出場するなと言われた」

 

「オールマイトの様なカリスマ性を持ったお前が新たな平和の象徴になる事をヒーロー協会も望んではいるが、それでは繰り返しだ。だからヒーロー協会は結束を強くした“群のヒーロー”を重視する事にした」

「それでだ、それ以外の一年で誰を選手に加えるか孫の意見も聞きたい」

 

「なるほどな、わかった」

 

 

 こうして話し合いが始まった。会場は国立多古場競技場で市街地や工場地帯、山や滝がある自然地帯など様々な地形が入り乱れるバトルフィールド、更に体育祭と同じ様に観客ありで全国にも生中継される。

 

 

「選手だが…まぁ、いつものメンバーになるが響香、轟、麗日、飯田、拳藤、八百万は固定でいいと思うが」

「異論はない…後、21号も加えていいだろう」

 

 21号の戦力はでかい…分離して、戦闘力はダウンしてしまったが…それでも爆豪を超えているし、トレーニング次第で元に戻るだろう。

 

「司令塔として飯田、八百万、拳藤…メインアタッカーは響香、轟、21号……残りは麗日の様な万能サポーターだな」

「爆豪は戦力としては魅力的だが…チーム戦がメインの英雄祭で採用するのは合理的じゃないな」

「となると物間も無理か…」

(物間って誰だ?)

 

 ブラドキングの言葉に首を傾げながら龍悟は候補を思い浮かべる。

 

 一番いいのは常闇だ。ダークシャドウを纏う深淵闇躯を身に着けた常闇ならアタッカーとしても良し、伸縮自在のダークシャドウでサポートもできる。

 

 障子も捨てがたい…索敵もできるし複製腕で手数も多い、パワーなら拳籐と良い勝負だ。更に冷静な障子ならチーム戦も問題ない。

 

 サポートなら蛙吹も候補だ。常に周りを見て状況判断に優れた彼女ならいい活躍をしてくれる。

 

「しかし、殆どがA組なのは……」

 

 メンバーの殆どがA組になってしまう事にブラドキングが指摘する。確かにB組が拳藤だけは……少なともあと二人はB組から選ばなければ……

 

「サポートしてなら…塩崎や骨抜だな」

「塩崎が茨を使った女子で骨抜が地面を軟化させた奴か…」

「塩崎は索敵や捕縛、盾の形成など万能、骨抜も柔軟な発想で味方のサポートも優秀だ、サポーターして申し分ない」

 

「なら、塩崎と骨抜はほぼ決まりだな…作戦としては三チームに分けて各個撃破がいいだろう」

 

「良くも悪くも有名な響香は狙われるだろうから主力チームとして響香、拳藤、麗日、塩崎でいいだろう。塩崎の個性も響香の力も理解している拳藤なら大丈夫だ」

 

「なら八百万の方は連携のとれる轟をアタッカー、骨抜をサポーターにした推薦枠チームでいいだろう」

 

「残りは飯田と21号となると、必要なのは壁役だな」

 

 入ったばかりの21号とも気兼ねなく行動でき、なおかつ壁役としての役割を果たせる精神力を持った人物。

 

 

「…なら、“アイツ”がいいかもしれない」

 

 

 

 英雄祭…新たな戦いが龍悟達を待っていた。

 

 

END

 

 




【確定メンバー】

・耳郎
・轟
・飯田
・麗日
・拳藤
・八百万
・21号
・塩崎
・骨抜

【候補】

・常闇

 普通に強い。アタッカーとしてもよし、サポーターとしてもよし。勿論、体育祭で弱点もバレている事を理解している。

・障子

 索敵要員としてとても優秀。近接戦闘も龍悟や麗日ほどヤバくはないが十分強い。

・梅雨ちゃん

 サポーターとして非常に優秀。21号とも気兼ねなく話しているので連携もとれる。

・??

 活動報告で名前が上がっている。

【候補落ち】

・爆豪

 強いのだが…チーム戦で採用する程、まだ丸くなっていない。梅雨ちゃんや常闇達を押しのけて採用とは…

・上鳴

 サポートアイテムで狙い撃ちはできるがチームワークが足りない。

・尾白や砂籐等の肉体派

 麗日や拳藤で足りてる。

・青山

 残念ですが……

・峰田

 論外である。セクハラするのが目に見える。

・物間

 誰?





作者「龍悟を出すと言ったな……アレは嘘だ」
ゴジータ「まぁ、俺が全部終わらしちまうからな…妥当な判断だろ」
作者「そして今、一番困ってるのは……まじで麗日と拳藤の強化どうしよう!!」
パラガス「そんじょそこらのクロスオーバーなら今のままでもいいのだが……ドラゴンボールとのクロスオーバーでメインキャラと考えると…決め手にかけるな」
作者「飯田は見つけたんだ…ヒントはジャンプ作品の生徒会長」
ベジット「どうしたもんか……もう、個性の能力をそのまま強化すれば良いんじゃねぇか?今の敵連合の個性が進化してるみたいに…」

作者「何もなかったら、そうするよ」

ゴジータ「それじゃあ次回もよろしくな!!」



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開催!英雄祭!!

・・・・・←コレは区切りと言う意味です。

新しく取り入れました。
これからもよろしくお願いします!


 

 翌日、A・B組合同の練習が行われた。いまいちクラス同士の親交が薄かったがお互いに“個性”の事で話し合ったりと有意義な時間となった。そして放課後、さぁ、帰ろうと言った所で相澤とブラドキングが集合を呼びかけた。

 

「実は仮免試験の前…後2日後に“他校”を交えたあるイベント…“英雄祭”行われる」

「“英雄祭”?……てか2日後って!」

「内容は各学校から選ばれた十人よるサバイバルバトルのチーム戦。相手を戦闘不能にし、最後に残ったチームが勝利となる。雄英は今注目されている一年で出場する事にしたが…孫は出場するなと言われた」

 

 その言葉に一同は…特にA組は動揺する。自分達の中で一番強い龍悟が参加できないからだ。

 

「え、何?君でちゃ「どうしてですか?」オーイ!!」

 

 水を得た魚みたいに誰かが叫んだ気がするが気のせいだろう。麗日の最もな質問に相澤が答える。

 

「強すぎるからだ」

 

「「「「「「「「あ〜なる程!」」」」」」」」

 

 完全に納得した皆の反応に複雑な表情をする龍悟。いや、納得するの早いだろ。

 

「それが理由なら納得だ」

「あぁ、いつか来ると思っていたが、とうとう出場拒否されたか…」

 

「続けるぞ、それでメンバーだが、A組から七人、B組から三人…四、三、三の三チームに分ける事にした」

 

「まず主力の四人のチームだが、拳藤が司令塔。メインアタッカーに耳郎、サポートに麗日と塩崎だ」

「わ、私がですか?」

 

 まさか、自分が呼ばれるとは思ってなかった塩崎が動揺するが其処は皆の姉御、拳藤が励ます。

 

「自信持ちなって。茨の強さは私、知ってるから安心だよ。よろしくな」

「一佳さん……はい!」

 

「次のチームは八百万が司令塔の轟、骨抜の推薦枠チームだ」

「八百万なら安心だ。よろしく頼む」

「轟さん…えぇ!お任せください!」

 

 そして轟は骨抜に手を差し出す。

 

「体育祭ではすまなかった。接点のない俺達だがよろしく頼む」

「…………へへ、こちらこそ!」

 

 お互いに笑いながら握手をし合う二人を見て連携に問題はないと八百万は安堵する。

 

「そして、最後のチームは飯田を司令塔とし、21号にも加わってほしい」

「いいんですか!?、入ったばかりの私で」

「あぁ、お前なら実力的にも問題ない…自信がないのか?」

「……いえ、大丈夫です!!」

「よし、そして最後の一人だが……切島、お前だ」

 

「え、俺すっか!!」

 

 常闇辺りが呼ばれると思っていた切島は自分を指差しながら相澤に問う。

 

「あぁ、最後のチームに必要なのは壁役…攻撃を受けても耐えられる精神力が求められる。お前を選ぶのが合理的だと考えた」

「………」

 

 いまいちパッとしない自分は轟や耳郎と張り合う事ができるのか…そんな不安が切島にはあった。

 

「何、自信ねぇツラしてんだよ」

「爆豪……」

「倒れねぇーってのはクソ強えだろ」

 

 まさかの爆豪からの言葉に唖然とするが……

 

「サンキュー……俺、やります!!」

「よし、2日後の英雄祭はこのメンバーで行く。恐らく他校は一年ではなくお前等より訓練期間の長いニ・三年で来る筈だ。その事を頭に入れておけ…以上解散!」

 

『はい!!』

 

 

 

 

 

ーー夜。

 

 A組寮の一階、わざわざ来てくれた拳藤達を加えて英雄祭に向けて意見を出し合いながら戦略を練っていた。

 

「順調か?」

「龍悟さん」

「差し入れだ」

 

 其処に龍悟が砂藤特性のスイーツやスポドリを持ってやってきた。

 

「何これウマ!!」

「とても美味ですわ!」

 

 拳藤と塩崎の心もガッチリ鷲掴みの砂藤のスイーツを食べて一息ついた時、響香が口を開く。

 

「多分さ…他校の連中は龍悟が…ゴジータが居る一年って認識を持っていると思う」

 

 実際その通りだろう…一年でありながら数々の成績を収める龍悟を注目するのは当たり前だ。

 

「だから見せてやりたい。龍悟だけじゃなく…ウチ等が居るって事を!」

「響香ちゃん……うん、やってやろう!!」

「当然だ…!」

「B組も居るって事もしっかり見せてやらねぇとな…!」

「えぇ!!」

「漢らしいぜ!耳郎!!」

「いや、女だから!」

 

 そんな響香達を見て龍悟は思った、彼女達はどんどん自分に追いつこうとしている事を……そして、それが嬉しかった。

 

「ふっ、ならしっかり見せてもらうぜ」

「度肝を抜かしてやるんだから」

 

 こうして有意義な時間はーー

 

「あ、あのさ///、英雄祭まで龍悟の部屋に泊まっても「「三人仲良く一緒に寝ようね、一佳ちゃん」」……はい」

 

 

ーー過ぎていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・

 

 

 時が経つのは早く英雄祭当日…雄英高校一年A・B組は会場となる国立多古場競技場へとたどり着いた。これから人が多く来る事を想定してか雄英体育祭の様に屋台の準備をしている人もあちこちに居る。

 

「緊張してきた……」

「大丈夫よ、お茶子ちゃん。応援してるわ」

「しかし、俺達は雄英の代表として出場する。その事は心に刻んでいこう」

「飯田は相変わらずだが、その通りだ」

 

 相澤が響香達、メンバーに激励をかねた厳しい言葉を掛ける。

 

「良くも悪くも雄英は今、注目されている。その中心になったお前等に様々な感情がぶつけられるだろう。それを乗り越えろ、お前等の力を見せてやれ…!」

 

 

『はいっ!!』

「おし皆、それじゃあいっちょ景気付けに何時もの奴やろうぜ!」

「いいなっ!」

「何を熱く苦しい、これだから「私等も一緒にやろう!」オーイ!」

「ほら、21号も!」

「ハイ!」

 

 

 切島の言葉に頷きA・B組皆で叫ぶ。

 

『Plus Ultra!!』「Ultra!!」

 

 

 全員が雄英の校訓でもある言葉で景気を付けようとした時、どこから聞いた事のないような声が混ざってくる。思わず全員が振り向いてみると其処には学生帽を被っている大柄な男が混ざっていた。そんな彼を諌めるかのように同じ帽子を被った優男が声を掛ける。

 

「勝手に他所様の円陣に加わるのは余り良くないよ、イナサ」

「ああ しまった!!どうも大変!!失礼!!致しました!!!」

 

 大柄な男は力強く姿勢を正すと凄まじい勢いのまま、体を大きく曲げながら地面へと頭をぶつけながら謝罪する。かなりヤバイ音が鳴っていたり血が出てたり、色々ヤバイのに顔は全く変わらずに笑っている。

 

「なんだこのテンションだけで乗り切る感じの人!」

「飯田と切島を足して二乗したような…!」

 

 

「待ってあの制服!」「あ!マジでか」「アレじゃん!!西の!!有名な!!」「それに雄英もいるぞ!」

「本当だ!孫龍悟もいる!!」

 

 周りも騒ぎだし、爆豪が口を開く。

 

 

「東の雄英、西の士傑……数あるヒーロー科の中でも雄英に匹敵する程の難関校ーー士傑高校!」

 

 

「一度言ってみたかったンッス!プルスウルトラ!自分雄英高校大好きっス!雄英の皆さんと競えるなんて光栄の極みっス、よろしくお願いします!!」

「俺は今回出場しないが、こちらこそ宜しく頼む」

 

 周りが唖然とする中、龍悟はマイペースに挨拶をし握手を交わす。

 

「おお!これはご丁寧にどうもっす!体育祭優勝者とお会い出来て本当に光栄の極みっす!自分は夜嵐 イナサっていうっす!って、出ないんですか!?凄い残念です!これからも宜しくお願いします!!」

 

 挨拶を終えると「これで失礼するッス!」といって、再び地面に頭をぶつけて士傑高校の生徒と一緒に離れていくのであった。その姿を見て相澤は語る。

 

「夜嵐イナサ」

 

 相澤は言った。夜嵐イナサとは雄英高校の推薦入試においてトップの成績を取りながら入学を辞退した男だと。

 

「そうなのか、骨抜?」

「あぁ、風を操る“個性”でな…轟とデットヒートを繰り広げていた」

「風……そうか、アイツか…」

 

 骨抜の説明に何かを思い出した轟は後悔した表情で夜嵐の後ろ姿を見ていた。

 

 その時、新たな来客が現れた。

 

「イレイザー!?イレイザーじゃないか!テレビや体育祭で姿は見てたけど、こうして直に会うのは久し振りだな!!」

 

 頭にバンダナを巻いた女性ヒーローだ。ここにいるという事はどこかの学校の教員なのだろう。

 

「結婚しようぜ」

「しない」

「わぁ!!」

 

 突然の色恋沙汰に喜ぶ芦戸。

 

「しないのかよ!!ウケる!」

「相変わらず絡み辛いな、ジョーク。」

 

 スマイルヒーローMsジョーク!“個性”は爆笑!近くの人を強制的に笑わせて思考・行動共に鈍らせる彼女の敵退治は狂気に満ちている。

 

「私と結婚したら笑いの絶えない幸せな家庭が築けるんだぞ」

「その家庭幸せじゃないだろ。」

「ブハ!!」

 

 仲良さげに話し合う二人に結構お似合いじゃね?って思う一同。

 

 

「さ、おいで皆、雄英だよ!」

 

 そうしてやってくる。ジョークの受け持ち傑物高校2年2組だ。

 

「俺は真堂!今年の雄英はトラブル続きで大変だったね!しかし君達はこうしてヒーローを志し続けているんだね!素晴らしいよ!不屈の心こそこれからのヒーローが持つべき素養だと思う!」

 

 皆と握手するために動き回る真堂。

 

「そして、一年生最強の孫くん。僕は君の心が最も強いと思っている。今日は君達の胸を借りるつもりで頑張らせてもらうよ」

「……申し訳ないが、俺は今回出場しない。……だからってナメて掛かると自慢の笑顔が砕け散るぜ…先輩」

「……………ご忠告ありがとう」

 

 龍悟と意味深な言葉をぶつけ合いながら握手をする。

 

「よし、選手以外は観客席に移動するぞ」

 

 ブラドキングの案内に観客席へと移動する皆…龍悟は響香に向き合い。

 

「頑張れよ、皆」

「勿論!」

 

 響香と拳を合わせ観客席へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・

 

 龍悟達と別れた後、響香達はコスチュームに着替え控室で待機していた。

 

「そろそろ、私達の出場だ。準備は問題ない?」

 

 控室にあるテレビ、英雄祭の様子が生中継で放送されており、各学校の登場シーンが今、映っていた。

 

「と言うか、今回もマイク先生が実況なんだね」

 

 どうやら今回もマイクが実況を担当する様だ。雄英は最後に登場となっており、拳藤が皆の準備完了を確認すると手を差し出す。意図を感じた皆の手が次々と重なる。

 

 

「龍悟は此処には居ない…だけど、私達が居るって事を見せてやろう!いくぞ、雄英!!

 

『オウ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

『新たに始まるビッグイベント!その名も【英雄祭】!様々な強豪校が凌ぎを削るサバイバルバトル!さぁ、最後のチームは…ってもうわかるよな!』

 

 プレゼント・マイクの叫びに観客は大盛り上がり。そして遂に…

 

 

『雄英高校だぁ!!』

 

 

 その叫びと共に響香達がバトルフィールドに姿を現し観客のボルテージはもはやMAXだ。

 

 

『さぁ、役者は揃った!英雄祭のーー』

 

 

『開幕だぁー!!』

 

 

 

END

 

 




【雄英メンバー】


拳藤チーム

・耳郎

 龍悟直伝の近接戦闘や行動予測など通常でも普通に強いが…究極化も手に入れた大エース。

・拳藤

 チームの司令塔。戦闘スペックなら爆豪すら超え、八百万並の判断力、飯田並のリーダーシップ、切島を超えたパワーを持った皆の姉御。

・麗日
 
 格闘キラーと化した麗日だが、新たな力を手に入れた。あえて言おう、重量を操る奴は強キャラしか居ないと!

・塩崎

 ssではヒロインとしてよく見かける聖女。ツルを匠に操り味方のサポートや捕縛、防御など幅広く戦える万能キャラ。


八百万チーム

・轟

 氷の造形と炎の滅龍魔法を扱う…いつの間にか妖精魔道士と化していたナンバー2。夜嵐とのタイマンをご期待ください。

・八百万

 チームの司令塔。創造をより高めたヤオモモ。接近戦に弱い彼女はもう居ない。

・骨抜

 まさかこのキャラを出すとは思わなかったでしょう…作者も思いませんでした……柔軟な発送で有利に持ち込むテクニシャン。


飯田チーム

・飯田

 速さを極めた非常口。あえて言おう!速さが足りないと!!

・21号

 A組の一人となった魔人。魔人化も入れた純粋な戦闘力ならトップクラスの期待のルーキー。

・切島

 漢、切島…選んでくれた相澤や背中を押してくれた爆豪…そして皆の期待を背負ってけして倒れず鬼をも踏み砕く明王の化身となる。(ヒントはるろうに剣心)



ヒロアカ版、力の大会…開幕です。


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俺達をナメるな!雄英の猛攻!!

活動報告の方もよろしくお願いします。
それではどうぞ!!


 

 開幕と同時に雄英チームは予定通り三チームに別れてそれぞれのエリアに散った。英雄祭前に戦略を練るため戦闘経験豊富な通形や波動に聞いた所、仮免試験などでは体育祭で“個性”がバレている雄英を狙う【雄英潰し】があると言う。

 

 当然、この英雄祭で集中攻撃を受けるのは目に見えている。ならばいっその事、分散して各自撃破した方が合理的だ。

 

 轟達、推薦枠チームは工場が多く建造されている、工業エリアへと来ていた。雄英の様に凝っているフィールドに八百万が感心、骨抜が警戒しながら周囲に目を配り…前を歩いていた轟が足を止めた。

 

「早速来たか…」

 

 轟の視線の先にはカラフルな色の忍者の格好をした十人組が居た。

 

「運がイイね〜雄英生に出くわすなんて……君、確か轟君だっけ?…しかし、三人で行動するなんて凄いね。余裕ありまくり」

「でもさ、いくら雄英だからって三人は不味いしょ!」

「三対十だよ、どうするの?」

 

 リーダーと思わしき赤い忍者の言葉に続き緑の忍者と黒い忍者が挑発してくるが…轟は相手にせず、氷結で足を封じる。

 

「ペラペラと…無駄話が好きなんだな」

「へへ、格好いいね!」

 

 赤い忍者が釘などの工具を投げる。投げられた工具は次の瞬間何十倍にも巨大化した。

 

「アイスメイクーー(シールド)!!」

(物を大きくする“個性”か……)

 

 八方に広がる花のような形状の盾を造形し容易く防ぎきる。その隙に赤い忍者は工具で氷を砕きメンバーを解放する。

 

「ヤレ!」

 

 赤い忍者の指示に青い忍者が土流、黒い忍者が水を放つ…先程のダメージもありシールドが砕かれた。

 

「畳み掛けろ!!」

 

 忍者達が一斉攻撃を仕掛けようとしたその時…足場が沈みだした。

 

「いや〜轟に気を取られ過ぎてくれたお陰で仕事が楽にできたぜ」

 

 骨抜の“個性”は【柔化】…触れた物を柔らかくしてしまう。

 

「助かった」

「よく言う…柔化させる時間稼ぎしてた癖に」

 

 そう言う骨抜に微笑む轟。ハメられた事に気づいた忍者達は苛立ち、赤い忍者の怒号が響く。

 

「クソ!かまうな、ヤレ!!」

 

 足場を崩されようと攻撃を仕掛けるが……バランスを崩した時点で轟の準備は完了している。

 

 

「アイスメイクーー限界突破(アンリミテッド)!!」

 

 轟がそう言った瞬間、凄まじい速さで無数の剣が造形される、その美しく幻想的な光景に観客の誰もが魅力される。

 

「一勢乱舞!!」

 

  

 無限の剣は一斉に忍者達に攻撃を仕掛ける。何個かは忍者達の攻撃で相殺されるが数が違い過ぎる。無数の剣によって切り裂かれた忍者達は戦闘不能。残ったのはリーダーである赤い忍者と黄色の忍者だけになってしまった。

 

「なら!近接戦闘に弱いお前をまず!!」

 

 黄色の忍者が八百万に襲いかかる。体育祭で常闇になす術なくやられた彼女を先に潰そうとしたのだろう。そうして振るわれた拳は………容易に八百万に防がれた。

 

「え?」

「近接戦闘に弱いですか……一体、いつの私の事ですか?」

 

 

 よく見れば、防いでいる八百万の右手と両足にはダークブルーの装甲が展開されていた。黄色の忍者を弾き飛ばすと、八百万は創造に生じる赤い光に包まれた。

 

「今度は何だ!」

 

 大勢の仲間がやられたのにまだ想定外の事が起こるのか…赤い忍者の叫びなど知るかと言わんばかりに創造が終わり八百万の姿が現れる。

 

 それはダークブルーの装甲に金の線が描かれた鎧を身に纏い右手には紫色の大剣を握っている八百万の姿だ。

 

 

 これこそが合宿の修行により個性の幅を広げ、龍悟の超サイヤ人や響香の究極化を参考にした自身の強化だが、どちらかと言えばダークシャドウを身に纏う常闇の深淵闇躯(ブラックアンク)に似ているだろう。

 

 

「コレが修行の成果……【コード・トーカー】ですわ!!

 

 

 そして、今纏っているのは近接戦闘特化の【デコード・トーカー】である。八百万は大剣を両手で強く握り締め黄色の忍者に駆け出す。そして繰り出すわ、終わりを意味する必殺剣。

 

 

「デコード・エンド!!!」

 

 

 縦一文字に振るわれた必殺の一撃は黄色の忍者を吹き飛ばし戦闘不能にするには十分過ぎる一撃だった。気づけば自分一人…唖然とする赤い忍者に轟は言い放った。

 

「さっきあんた言ってたよな…三人なんて余裕あり過ぎだって……余裕気取ってたのはアンタ等だったな」

 

 そう言って轟の【火竜の鉄拳】は赤い忍者の頬に突き刺さり意識をもぎ取った。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・

 

 

「なんだよ…コイツら無茶苦茶だ!!」

 

 

 一方、他の他校達も【雄英潰し】をする為に飯田チームに襲いかかったのだが…

 

「遅すぎる!」

 

 圧倒的な飯田のスピードに照準が追いつかず何時の間にか倒されてしまい。

 

「フォトンウェイブ!!」

 

 そして体育祭では居なかった21号……最初は数合わせの為の素人かと思いきや、その圧倒的な力に多くの者達が薙ぎ払われている。

 

「数ならこっちが上なんだ!一斉攻撃だ!!」

 

 

 その言葉に共感して多数の攻撃が21号に襲いかかる…しかし、21号の前に切島が飛び出し盾となる。当然、攻撃は切島に直撃し土煙が舞う。一人潰したと喜ぶのも束の間……

 

【ゴキ!バギ!ギギギ!!】

 

 何かが軋んでいる音が響く。しかもそれは切島が居た場所から響いておりまさかと視線を向けると……

 

 土煙が払われ切島の姿が見えてくる。その姿は正に全身凶器、圧縮訓練により全身の硬度にさらに磨きを掛けた現時点の最高硬度。絶対に倒れぬ盾になるべく切島が編み出した……

 

 

列怒頼雄斗 ・安無嶺過武瑠(レッドライオット・アンブレイカブル)!」

 

 

 そのまま、切島は相手に向かって駆け出す、相手も黙っている筈もなく攻撃を仕掛けるが…効果がない。

 

「オラァ!!」

 

 切島の拳が他校の連中を薙ぎ倒す。

 

「助かりました、切島さん」

「気にすんな!」

 

 飯田は速くて当たらない…21号は強過ぎて敵わない、切島は硬くて倒せない。正に無茶苦茶な連中だ。

 

 だが、その時…突如として地面が割れ足場が崩壊した。他校は奈落に落ちていき。突然、飯田チームにも落ちてしまう。

 

「飯田さん、切島さん!!」

 

 だが、龍悟と同じく空を飛べる21号が二人を救出し難を逃れる。

 

「ッ!何かくるぞ!!」

 

 何かに気づいた飯田が言い放つ。確かにボール型の何かがコチラに向かってきている。斜線上から離れても起動を変えコチラに向かってくる。

 

 切島が体を動かし自ら盾となる。鈍い音が響くが切島は大丈夫だ。

 

「いや〜凄い凄い!成長の幅が大きいんだね!」

 

 声のする方を見ればさっき会った傑物高校2年2組だ。

 

「体育祭では居なかったきみ、とても強いね…まさか空も飛べるとは……でも、狙いやすい!!」

 

 さっきの当たる攻撃や蜘蛛の糸、指を鞭にした攻撃…次々と襲いかかるが……当たる瞬間、21号達が消えた。

 

 高い学習能力を持つ21号は龍悟と同じ瞬間移動を習得していたのだ。瞬時に真堂達の前に現れる。

 

「オラァ!!」

 

 切島がリーダーの真堂に拳を振るうが……その間に現れた硬そうな見た目をした、真壁漆喰に防がれる。

 

「!?」

 

 安無嶺過武瑠(アンブレイカブル)になった自分の拳を防がれる事に切島は動揺する。真壁は明らかに何か外的要因が加わり変化した瓦礫を持っており。切島の拳はめり込んでいるが完全に破壊できていない。

 

「硬いなお前…最大硬質化でギリギリ防げる程か」

 

 真壁の“個性”は【硬質化】。両手でこすったりコネたりした物をガチガチに硬くする。生物には適用されないぞ。

 

 その時、安無嶺過武瑠(アンブレイカブル)が解除されてしまう。使用時間の短さがこの技の欠点だ。それを好機と見て真壁は硬質化させた瓦礫を切島にぶつける。通常の硬化で防ぐが鈍い痛みに顔を歪める。

 

 飯田や21号は他の奴を相手にしており援護にいけない…その様子を観客席から見ていた鉄哲が声を上げ応援し、芦戸が不安そうに龍悟に聞く。

 

「負けんな切島!!」

「龍悟、何とかなんないの!?」

 

 芦戸の声を聞きながら龍悟は切島を見る。攻撃を防御しながら意識を集中させる切島を見て静かに笑う。

 

「心配ない……切島にはとっておきを教えてある」

 

 とっておき……その言葉にいち早く反応したのは常闇だった。

 

「習得したのか!あの【破壊の極意】を!!」

「ギリギリだったがな…」

 

 何かを知っている常闇に芦戸は問いかける。

 

「破壊の極意?何なの?」

「合宿の時、俺と切島は龍悟にアドバイスを受けながら技を完成させたんだ」

 

 

 常闇、そして今戦っている切島の脳裏に過るのは合宿の出来事だった。龍悟の超サイヤ人をモデルに自身の強化をしようと考えた…常闇は深淵闇躯(ブラックアンク)を切島は……

 

『できたぜ…コレが俺の安無嶺過武瑠(アンブレイカブル)だ!!』

『その雄々しい姿…まるで獅子の如く』

 

 互いに必殺技を完成させたら事に喜び合う二人。その様子を眺めながら何かを考えていた龍悟は口を開く。

 

『切島…お前、もう一つ習得してみないか?』

『何かあんのか!?』

『あぁ、俺が教えるのは“防御無視”の拳だ』

『防御無視?』

『実際に受けた方がいいだろ。今から殴るからしっかり防御しろよ』

 

 

 龍悟にそう言われ切島は安無嶺過武瑠(アンブレイカブル)のまま両腕をクロスして防御を固める。龍悟は超サイヤ人2になり構える。

 

 そうして龍悟の拳がぶつかった時…切島は容易く吹き飛ばされ後ろにあった岩盤に叩きつけられた。その光景に常闇は唖然としたが…一番訳がわからなかったのは切島だ。安無嶺過武瑠(アンブレイカブル)の状態でしっかり防御したのに……龍悟の言葉通り“防御が無視された”様な感覚だ。

 

 フラフラと立ち上がる切島、たった一発で足に来てしまったのか、小鹿のように震えていた。

 

『何だ…今の…?』

『全ての物質には「抵抗」が存在し、一発のパンチで衝撃を加えた場合その「抵抗」が邪魔となり完全には伝わらない…そこで「二重」の衝撃を加えることで一撃目の衝撃で「抵抗」を中和し、二撃目の衝撃が完全に伝わせる……名付けて【二重の極み】」

 

『【二重の極み】…』

 

『習得してみろ……お前ならできるさ』

 

 そう言って笑う龍悟はまるで自分が習得するのを確信している様だった。

 

 

 

 

 その事を思い出しながら切島は拳を握る。「他人のピンチに飛び出せもしない」中学の時の「情けねー自分との決別」をした筈だった。だけど、敵連合の標的にされたA組。それに立ち向かうのは龍悟や轟達……自分はその背中を見つめるしかできなかった。

 

(何時も悔して怖かった……何もできない自分が…守られる自分が……だから、もう後悔したくねぇ!!

 

 

 再び安無嶺過武瑠(アンブレイカブル)を発動した切島は真壁に殴りかかる。雄叫びを上げる切島に真壁は最大硬質化で防御を固める。

 

「オォォォォオア!!」

(再び発動したか……だが、防げる事はわかった。次に解除された時がお前の終わりだ!)

 

「イッケー!切島!!」

 

 芦戸が叫びを上げたその時、切島は目を見開き、破滅の極意を放つ。

 

 

「二重の極み!!」 

 

 

 切島の拳は硬質化させた壁を容易く粉微塵に粉砕するだけに留まらず、その衝撃は真壁に100%伝わり真壁は白目を向いて倒れた。

 

「真壁!!」

 

 真堂が叫ぶが真壁はピクリとも動かない…完全に戦闘不能だ。

 

「オラァア!!」

 

 勝利の雄叫びをあげる切島……観客席では大歓声が巻き起こる。

 

 

「格好いいじゃん……切島」

 

 歓声に紛れて呟いた芦戸には切島の背中がとても大きく見えた。

 

 

 

END





 コード・トーカー

・八百万が身体能力の差をカバーする為に完成させた必殺スタイル。他にも様々な形態があり状況に応じて使い分ける。元ネタ、遊戯王のコード・トーカーデッキ。
【デコード・トーカー】

 近接戦闘特化形態、必殺技は大剣で敵を縦一文字に切り裂く【デコード・エンド】

擬人化のイメージで八百万が鎧を装着した感じです。





 二重の極み

・切島が龍悟に伝授された破滅の極意。パンチの前に第2関節を当てその衝撃の瞬間、拳を折って第二撃を入れるとその衝撃は抵抗を受けることなく完全に伝える事ができる。 成功した場合、対象物は粉微塵になるが、その衝撃を浸透させるには刹那の瞬間に第二撃を入れなければならないとても難易度の高い技。元ネタ、るろうに剣心。

良い子は真似しないでね♪




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過去を乗り越えて

前回は切島メインでしたが、今回は轟メインです。
それではどうぞ!!


「あらかた片付いたな…」

 

 工業エリアの敵を片付けた推薦枠チーム。骨抜が辺りを見渡しながら、他のエリアに行く事を提案し、八百万も賛同しようとしたその時…

 

「!、伏せろ!!」

 

 何かに気づいた轟が叫ぶ。

 

「ふぅきィィィィィ飛べぇええっっ!!!」

 

 その言葉と共に吹き荒れる豪風が轟達を襲う。瞬時に展開した氷でガードし何とか吹き飛ばされずにすんだ。

 

「ありがとうございます、轟さ……ッ!」

 

 八百万が礼を言おうとしたが、言葉が出なかった。上を見て佇む轟の目は悲しみに満ちていた。そしてその轟の視線の先には……あの夜嵐が居た。

 

「やっと見つけたッスよ。アンタは俺の手で倒したかった。“エンデヴァー”の息子…俺はアンタ等が嫌いだ…!」

 

 夜嵐からは明確な敵意を感じる。そんな夜嵐の目を轟はよく知っている。

 

「アンタ等がヒーローなんて…俺は認めねぇ!!」

 

 だってそれは…かつて自分が父親に向け続けていた目なのだから……夜嵐の事は骨抜のお陰で思い出せた。

 

 

 推薦枠の実技試験で轟と夜嵐は例年を遥かに凌駕する成績をおさめた。

 

『やぁった、勝ったぞ!!でも次はわかんないな!あんた凄いな!アンタってエンデヴァーの子供か何か!?凄いな!』

『黙れ…試験なんたがら合格すればそれでいい。別にお前と勝負してる積りもねぇ…』

 

 笑いかけてくれた夜嵐を……

 

『邪魔だ』

 

 自分は……切り捨ててしまった。

 

 

「俺はァ、あんたら親子をヒーローとは…認める訳にはいかないんスよぉ!!」

 

 そう叫び、轟に敵意をぶつける夜嵐……八百万が援護しようとするが轟が止めた。

 

「悪い……ココだけは俺がやらなくちゃいけない事だ…下がっていてくれ」

「ですが…!」

 

 引き下がるか迷っている八百万の肩に骨抜が手を置いた。骨抜が首を横に振っている、八百万は心配そうに下がった。

 

「っ!、なんであんたが!エンデヴァーの息子だろ!!今更、誰かを見てんじゃねぇ!!」

 

 夜嵐が突風を轟にぶつける、轟も【火竜の咆哮】で迎え撃つ。灼熱のブレスと風の爆発がぶつかり、衝撃が生まれる。

 

「火竜の煌炎!」

 

 間髪入れずに轟は左手に巨大な火球を作り、投げつける。夜嵐も風の弾丸を放ち相殺される。

 

 

 夜嵐は気に入らなかった…今日会った轟は、笑っていた。自分をあの時、否定した癖に……まるで初めから誰かを見ていたかの様に……ふざけるな!!

 

 

「見せてやる。アンタ等親子を超える為に編み出した…この技を!!」

 

 夜嵐が風を纏う。その密度はどんどん濃くなっていき、夜嵐の姿さえ見えなくなってきた。

 

「一気に決めてやる!」

 

 風の鎧を纏った夜嵐が突撃してくる、そのスピードは格段に速く轟に迫ってくる。轟も迎え撃つ為に肘からブースターのように炎を噴射して打撃力を高め、その勢いのままパンチを放った。

 

「火竜の炎肘!」

 

 しかし、夜嵐の纏う風に弾かれてしまう。巧く着地し今度は右手を掲げる。

 

「アイスメイクーー槍騎兵(ランス)!!」

 

 造り出された槍は一斉に夜嵐に飛んで行きくが……

 

「無駄だ!!コレは常に外に向かって吹いている!」

 

 夜嵐の纏う風に弾かれて届かない。轟とは相性が悪い…八百万が飛び出そうとするが骨抜が止める。

 

「骨抜さん、このままでは轟さんが!!」

「気持ちはわかる!だからこそ信じてやれ!アイツの強さは八百万が一番知ってるだろ!!」

 

 骨抜の言葉に踏み止まった八百万は轟を見る。轟の目は諦めていない…

 

「コレで終わりだぁぁあ!!」

 

 

 夜嵐が両手を突き出し今までより大きな暴風を放つ、轟もシールドを展開して防御するがあまりの勢いにシールドは崩壊し轟は吹き飛ばさてしまう。

 

「轟さん!!!」

 

 八百万の悲鳴が響く。夜嵐の放った暴風は工業エリアを崩壊させ、その中に倒れ伏す轟があった。コレで終わりだと思った夜嵐は次の瞬間、目を見開く。

 

 轟が立ち上がったのだ……体中に傷を負い、フラフラになりながらも。そんな轟の目はあの時は違う……その目の奥には熱い炎があった。

 

 

「なんで……どうしてだよ!なんで変われたんだ!?」

 

 

 夜嵐はエンデヴァーが嫌だった。あの遥か先を憎む様な目だけは……そして、あの時の轟はエンデヴァーと全く同じ目をしていた。

 

 自分の中に沸き上がった感情がわからなかった。一番嫌いな何かが溜まっていくのが嫌だった。

 

 だから雄英を諦めた。あの目をした轟と一緒に居ては自分まで嫌だったモノになってしまいそうだった……いや、もうなっていたのかもしれない……だから逃げて、誤魔化して、見ない様にして。でもやっぱり夢は諦めたくなくて…だから士傑高校に入学した。

 

 それなのに……

 

「なんでだよ!!」

 

 

 その様子を観客席で見ていたA組の皆にはある光景と重なった……雄英体育祭で龍悟と轟の試合に……今の夜嵐はまるであの時の轟だ。

 

 その事は轟が一番わかっているだろう……ボロボロになりながらも轟は一歩も引かずに言い放った。

 

「確かにあの時の俺は……何も見る事のできねぇ、孤独を演じた馬鹿野郎だった」

 

 轟は左手を胸に当てる。今までの出来事を思い出す為に…自分の胸の炎を感じる為に。

 

「そんな俺に手を差し伸べてくれた…」

 

『進むか、止まるか…決めるのは自分自身だ』

 

「こんな俺を仲間だと言ってくれた…」

 

『もう、轟もウチ等の一人なんだから』

 

「こんな俺を見てくれた…!」

 

『それは決して前に進む事を諦めていい理由にはなりませんわ!諦めないからこそ…更に向こうへ行ける!それを轟さんが教えてくれました!!』

 

 轟の左側から炎が溢れ燃え上がる。

 

 

「だから、俺は…俺の意識を見つけた!仲間と生きる道の上を歩いてるんだ!!」

 

 

 やがて炎は轟を包み込み、エンデヴァーの炎とも、茶毘の青い炎とも違う美しい真紅の炎へと変わった。

 

「綺麗…」

 

 八百万はその炎に見惚れる、夜嵐もエンデヴァーのとは全く違う事をわかっていても……認める事ができなかった。

 

「ふざけんな!お前が…お前等親子が俺の熱さを奪った癖に…!ふざけるなぁぁ!!」

 

 夜嵐が風を纏いながら轟に突撃する辺り全てを吹き飛ばしながら突っ込む夜嵐に対して轟は強く左拳を握り締める。

 

 力だけではけして破れない壁がある事を轟は知った…そしてそれを打ち破る力があるとすれば……

 

 

「轟さん…勝ってください!!」

 

 

 それは、思いの力。

 

 

「滅龍奥義!!」

 

 

 それは、龍の鱗を砕き、龍の肝を潰し、その魂を狩りとる…轟が完成させた究極技…

 

 

「紅蓮鳳凰劍!!」

 

 

 それは轟版【龍拳】。轟の纏う真紅の焔は不死鳥に姿を変え夜嵐の暴風とぶつかり合う。

 

 

「轟ぃぃぃいっ!!」

 

「夜嵐ぃぃぃいっ!!」

 

 

 ぶつかり合う2つの力……しかし、不死鳥の焔が暴風をも焼き付くし、焔を纏った轟の拳が夜嵐の顔面に突き刺さった。

 

 

 吹き飛ばされ倒れ伏す夜嵐…体には焼跡があり、もう起き上がる事は難しいだろう。フラフラになりながらも夜嵐に近づく轟。

 

「今更、こんな事を言う資格なんて俺には無い事はわかっている。だが、許されなくても構わない……すまなかった」

 

「……謝んなら俺の方だろ…!俺の心の狭さが…!!」

 

「…………それでも、俺が撒いた種だ。俺は償いたい、だからーー友達になってくれないか」

 

 轟は手を差し出す。あの時の自分にしてくれた龍悟の様に……夜嵐は涙が止まらなかった。

 

 

「…………まいった……俺の…負けだ…」

 

 夜嵐は轟の手をとった。

 

 

(コレでイイんだよな……龍悟)

 

 

 微笑む轟には、かつての憎悪はもうなかった。

 

 

 

END

 




次回は耳郎達の番です。
活動報告の方もよろしくお願いします。


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超銀河ウラビティ!!

投稿が遅れて本当に申し訳ない!
話の構成に手間取ってしまいました。

最近、耳郎が多かったので…今回は麗日です。

それではどうぞ。


 

 轟が激闘を繰り広げているその頃…拳藤チームはビルが立ち並ぶエリアに移動したのだが、かなりの数の他校が襲いかかってきておりバラバラになってしまった。

 

「アンタ…鬱陶しい!!」

 

 そして今現在、響香は拳藤とペアを組んで戦っていたが一人の相手に集中しなくてはならない状況だった。

 

「そんな事言わないでよ〜私は士傑高校、現見ケミィ。龍悟君に興味があるだけの、乙女だよ♪」

「うるさい!!」

 

 そう叫んで放たれた拳が空を切る。響香が戦っているのはライダースーツのような衣装に身を包んだ士傑の帽子を被った女…現見ケミィだった。

 

 拳藤と一緒に他校の連中と戦っていた響香だが、突然襲いかかってきたケミィにロックオンされたらしく…戦闘を繰り広げている。

 

(何なの、コイツ!?)

 

 ハッキリ言えばケミィは強い…響香の格闘戦に問題なくついてきており、不意に放ったイヤホン=ジャックすら避けられる、爆豪の反射速度を明らかに超えている。

 

「ねぇねぇ、教えて?龍悟君って普段どんな感じなのちょー気になる!」

「アンタに教える義理はない!!」

 

 さっきから龍悟の質問ばかりしてくる、コレだけでもムカムカするのに、ケミィは胸もデカイ…響香の怒りは超天元突破だ。

 

「龍悟の馬鹿ー!!」

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

 そして、麗日と塩崎は近くの高速道路で戦っていた…のだが…

 

「我々、士傑生は活動時、制帽の着用を義務づけられている。それは何故か?我々の一挙手一投足が伝統ある士傑高校の名を冠しているからだ」

 

 麗日の目の前には髪は紫色で細目で左目が髪で隠れている優男が立っており、士傑生だとわかる。

 

「これは示威である。就学時より責務と矜持を涵養する我々と粗野で徒者のまま英雄を志す諸君との水準差」

「ちょと、何言ってるかわからない」

 

 麗日には理解できない事を言っているが…重要なのはそこではない。士傑生の男…肉倉精児の周りには多くの肉塊があり、目や口等の体の一部や服の一部がある。

 

 彼の“個性”【精肉】

 揉んで”肉体”を変化させてしまう。 他人の体はこねて丸くするに留まるが………自身の肉体は自身の肉体だけあり自由度が高い! 切り離して操作したり肉を寄せ集めて大きく出来たりするぞ!!

 

「茨ちゃん…」

 

 そして、麗日の腕には肉塊にされてしまった塩崎があった。戦闘中に肉倉が突然襲いかかって、次々と肉塊にしてしまった。塩崎もツルで迎撃したのだか…ツルごと肉倉の肉に包まれてしまい肉塊にされてしまった。

 

「雄英高校…私は尊敬している。御校と伍する事に誇りすら感じていたのだ。それを諸君らは品位を貶めてばかり!!」

 

 肉倉は自身の肉を切り離し宙に浮かべ麗日へと攻撃を開始する。塩崎を安全な場所に置いた麗日は回避しながら肉倉の“個性”について予測をたてた。

 

(あの肉に触れられたら終わり……防御は捨てて回避重視で!)

 

「オールマイトの無期限休止により世は荒れることが予想される。その中でこの様な大会が行われたのはヒーローという職をより高次のモノにする選別……すなわち、今のヒーロー生に未来のヒーローたる資格があるかを見極めると推察する。私はそれに賛助したくこうして諸君等の様な有象無象を排している」

「まるで、自分だけが正しいみたいな言い方ですね」

 

 麗日の一言は肉倉を反応させるには十分だった。

 

「なに?」

「自分の価値観だけで周り人の価値を決める。ヴィランならまだわかりますけど、それ以外の相手が自分と違う場合、自分の意見を押し付ける。そんなのヒーローじゃないですよ」

「っ!言わせておけば!!」

 

 次々と肉が襲いかかるが麗日には当たらず逆に詰め寄られる。

 

「断片的な情報だけで人の価値を決めるな!!」

「立場を自覚しろと言う話だ、馬鹿者が!!」

 

 そして遂に麗日が肉倉の懐に足を踏み入れる、右拳を強く握り締め…

 

「賢いってのがそう言う事なら……私は一生、馬鹿でいい!」

 

 右ストレートを顔面に叩き込みその勢いで回転して左裏拳そのまま左アッパーで空中に飛ばし右回し蹴りを叩き込む…

 

 「があっ!!」

 

 重い連撃に肺の空気も出され、反撃が肉倉にはできない。麗日は左手を突き出し肉倉に狙いを定め右拳を握り力を籠めて駆け出す、麗日の必殺の五連撃。

 

 

「超龍撃拳!!」

 

 

 力を籠めて放たれた拳は肉倉を打ち抜き大きく吹き飛ばされる。その時、ある変化が現れる…丸くこねられた奴等が戻ったのだ。

 

「ダメージしだいで解除される……道理で遠距離ばかりだったんだ」

 

 どうやら肉塊にされても意識はあった様で…手足を動かして確認した後に先程の事もあり肉倉を攻撃するが何人かは麗日に一斉攻撃を仕掛けてきた。

 

「悪いがヤラせてもらうぜ雄英生!」

 

 接近戦主体の者達が次々と麗日に迫るが…次の瞬間、大量のツルに薙ぎ払われる。

 

「助かりました、お茶子さん」

 

 彼等が戻ったんだ…当然、塩崎も戻る。接近してくる連中は次々と塩崎のツルによって薙ぎ払われる。

 

 肉倉に攻撃を仕掛けた何人かはまた肉塊にされるが、多勢に無勢で追い詰められる。この状況に追い込まれた恨みもあってか苦肉の策として、麗日に突っ込む。

 

「よくもこの様な…!麗日お茶子!!」

 

 再び己の肉を飛ばしてくる。先程の事もあり塩崎は手が出せない。

 

 しかし、肉の弾丸は麗日に当たる事なく地面に落ちた。いや…押さえつけられたと言う方が正しいか…

 

「な、何をした!?お前の“個性”は触れた物を浮かすだけの筈だ!!」

 

 必死に動かそうとするがビクともしない事に戸惑う肉倉に麗日は「してやったり」と笑みを浮かべた。

 

「それは前の私……今の私とは違う!」

 

 

 

 麗日に何が起きたか……それはビルス達が来た日まで遡る。

 

『そうだ、麗日さん、拳藤さん。ちょといいですか?』

 

 帰る間際、ウィスに呼ばれ何だと首を傾げながら前にでる麗日と拳藤…ウィスは杖を掲げる。すると、麗日と拳藤が一瞬、翠の光に包まれた。

 

『あの、今のは?』

『貴方達二人の“個性”と呼ばれるモノを強化しました』

 

 あっさりと答えたウィスの言葉に麗日と拳藤は勿論。響香達も驚きの声をあげる。龍悟ですら目を見開いている。

 

『こ、“個性”を強化!?』

『そんな事!?』

 

『お前達も見た筈だ、ウィスは時間を巻き戻す事すら朝飯前だ、死者すら蘇らせる事ができる。そんなウィスなら“個性”の強化なんて容易い』

 

 ビルスの言葉になんとなくわかった様な気がするが、現実味がなさ過ぎて実感がわかない。

 

『ウィスさんは神龍の親戚か何かか?』

『オホホホ、私は天使ですよ』

 

 天使だったんだ……そんな龍悟達の心の声を無視しながらウィスは言った。

 

『まぁ、お詫びだと思ってください』

『僕は破壊神だけど“神様”だ。捧げ物を受け取る存在だけど与える存在でもある。この世界は僕達の世界と繋がりを持った、君達は大きな運命に直面するかもしれない。神からの贈り物……無駄にするなよ』

 

 

 

 

 

「コレが私の新たな力…重力領域(グラビティテリトリー)!!」

 

 

 重力領域(グラビティテリトリー)…ウィスの強化により麗日は指で触れた空間の重力を操る事ができた、これによって肉の弾丸はその領域に到達したから押さえつけられたのだ。

 

「一気に終わらせる!」

 

 戦闘の余波で周りにある瓦礫と共に麗日は空を飛ぶ、重力領域(グラビティテリトリー)によって麗日は舞空術と変わらない飛行能力を手に入れたのだ。

 

 

「超銀河エクスプロージョン!」

 

 

 共に飛ばした瓦礫の重力を倍以上に変える。瓦礫は流星群の如く降り注ぎ周りに居た他校の連中を吹き飛ばす。麗日は流星群と共に降下し肉倉に強烈な飛び蹴りを叩きつける。

 

 肉倉は大きく吹き飛ばされ気絶、降り注いだ流星群によって周りの連中も気絶……絶滅だ。

 

 

(父ちゃん、母ちゃん……私、強くなったよ!心配せんでも大丈夫!!)

 

 麗日は右手を突き上げる。きっと見ているだろう、両親に自分は大丈夫だと伝える為に…

 

 

 

END

 




作者「祝え!宇宙最強、ギンガウラビティ!……これ以上思いつかないので、短縮版である」


重力領域(グラビティテリトリー)

 ウィスによって強化された事により“個性”の幅が広がった事により触れた空間の重力を重くも軽くもできる。

 舞空術と同等の飛行能力を獲得し仲間の空間に触れる事によりその人物にも飛行能力を付与できる。


・超銀河エクスプロージョン

 麗日の新たな必殺技。

 近くにある瓦礫と共に浮かび上がり、重さを付与し瓦礫を流星群の如く降り注がせ、流星群共にライダーキックを叩き込む。

元ネタは仮面ライダーウォズギンガファイナリー









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英雄祭終盤!雄英よ、勝利を勝ち取れ!!前編

完全なオリジナルを作るのは案外難しいですね……

それではどうぞ!


 

 開始から40分が経過した…殆どの参加校が全滅し残るは一握りの強者達だけだ。

 

「いよいよ大詰めか…」

 

 その様子を観客席で見届けている龍悟がもう少しで英雄祭が終わる事を予測する。

 

「ケロ、後残っているのは雄英を含めて四校だわ…轟ちゃん達と全滅衝突している士傑高校」

 

 梅雨ちゃんの視線には半壊した工場エリアで士傑高校と全面衝突を繰り広げている轟達の姿が…

 

「そして今だに動かず恐らく戦況を見極めているであろう聖愛学院」

 

 障子の言う通り、ここまで全く姿を見せずにいる聖愛学院。恐らく情報収集に徹しているのだろう。

 

「そして今まさに飯田達を追い詰めている……と思っている傑物高校か…」

 

 

 常闇の意味深な言葉を耳に入れながら視線を向ければ飯田達と傑物高校の姿が見える。

 

 飯田と切島は限界だった。飯田のヘルメットは砕け散り素顔が露出、更にエンストした。切島も攻撃を受け止め過ぎてボロボロだ。

 

 一方で傑物高校も半数が戦闘不能になってしまったが真堂達にはまだ余裕が見れた。此処まで真堂は己の計画通りに事を進めたと内心微笑んでいた。

 

 彼は雄英が一番、頂きなど雄英を持ち上げる言葉を爽やかな作り笑顔で言い放った。それによって雄英にヘイトが集中に飯田達は一斉攻撃を受けた。真堂達は特に攻撃せずに影に隠れて他校を戦闘不能にしていた。

 

 思った以上に雄英が力をつけていた事で半数がやられてしまったが…飯田達は既に限界、21号だけ平然としている様だか平然を偽っていて限界だと真堂は思っていた。

 

 

「流石雄英生!まさか三人でココまでやるとは、でも俺達の勝ちだ!」

 

 作り笑顔で称賛する真堂、そんな中21号が前にでる。

 

「飯田さん、切島さん…ありがとうございます。後は任せてください」

「あぁ、頼むぞ21号君!」

「言い難くないのかそれ?」

 

 飯田に突っ込む切島…そんなやり取りが楽しくてつい頬が緩んでしまう。

 

「悪い事は言わない、君達は良くやった!リタイアする事をおすすめするよ!」

「気遣い、ありがとうございます。ですが、私が此処に立っていると言う事は…私も皆の為に戦う覚悟があると言う事です」

 

 真堂の提案を断り、21号は強い意志の宿った目で真堂達を睨み、ピンクの光に包まれる。衝撃波が走り真堂達は手で顔を守りながら足に力をいれ耐える。

 

「行きます…お覚悟を」

 

 21号の姿は髪は白、肌はピンク色となり尖った耳や長い尻尾…魔人へと変身した。

 

 

「は?な、何だそれは!?」

 

 真堂の笑顔の仮面が崩れる。まさか…偽っていたのではなく、本当に余裕があったのか!?

 

 21号は瞬間移動でまず、先程から体を折り畳んで攻撃を回避していた女性…中瓶畳に攻撃を仕掛ける。いきなりの事で反応できずに気弾をモロにくらい気絶。次にブーメランの様に避けても狙ってくる遠距離攻撃をしてきた軌道弦月の腹に強烈な一撃を叩き込み撃破する。

 

「ひ、怯むな!たかが一人、一斉攻撃「フォトンウェイブ!!」………馬鹿な」

 

 指示を出す前に仲間達は薙ぎ払われてしまった。最も警戒するべは21号だったのだと真堂は初めて気づいた。

 

「コレで終わりです!!」

 

 その言葉が聞こえたその時、21号の拳が真堂の腹にクリティカルヒットした。激しい痛みに意識が薄れていく。

 

『……申し訳ないが、俺は今回出場しない。……だからってナメて掛かると自慢の笑顔が砕け散るぜ…先輩』

 

(あぁ、全く…その通りだった)

 

 龍悟の言葉を思い出しながら真堂は意識を手放した。

 

 

 

 傑物高校……全選手戦闘不能。

 

 残り三校。

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・

 

 

 

 夜嵐との戦闘により半壊した工場エリアでは轟達と士傑高校の全面衝突が行われていた。

 

「八百万、骨抜!」

「はい!」

「あぁ!」

 

 襲いかかる攻撃を轟の氷で防ぎながら八百万は攻撃、骨抜は柔化で足場を崩し互角に渡り合っているのだか…倒し切るにはいたらない。

 

「流石、雄英の推薦枠を勝ち取った猛者……どうやら孫龍悟に意識を向け過ぎた様だ」

 

 毛むくじゃらの男性、士傑高校チームのリーダー毛原長昌。彼の“個性”は【伸毛】、伸びる毛を自在に操る事ができ攻撃や防御、撃破されそうな味方の補助などやり遂げている。更に普通の毛ではないのか轟の炎は無理でも氷には案外強い。

 

「このままじゃ数の差でヤラれる。氷結界の龍(トリシューラ)だ、八百万!!」

「ですが、時間が!」

 

 氷結界の龍(トリシューラ)なら戦力の差を覆す事ができるが、造形に多少の時間が必要……この猛攻では隙がない。

 

「なら作ればいい!轟、押せ!!」

 

 骨抜は近くにあった鉄塔を柔化、轟はそれを士傑高校に倒れる様に氷で押し出す。

 

「あまい!」

 

 しかし、毛原は多量の毛でなんと鉄塔を受け止めたのだ、流石の轟も目を見開くが八百万がある事に気づく。

 

「骨抜さんは!?」

 

 何処に?そう思ったその時、毛原達が地面に沈みだしたのだ。毛原以外の者達はなす術なく沈んでいくが毛原が自身の毛で仲間と共に脱出しようとする。

 

「させるかよ!」

「ぬぅ!」

 

 しかし、柔化してきた地面を泳いで毛原の足元に忍び寄った骨抜が毛原の足にしがみつき地面に引きずり込む。

 

「轟、八百万、今だ!」

「骨抜、お前……!ありがとよ…!八百万!」

「はい!」

 

 八百万と轟はお互いに手を繋ぎ意識を集中させる。まず八百万が自分達を覆う様に巨大な骨格を創造する。マズイと感じた毛原は妨害しようとするが骨抜が必死にしがみつき動きを封じる。

 

「二人のサポートが俺の役割だ!絶対に二人の邪魔はさせねぇ!!」

「いい気迫だ!だがコチラとて!!」

 

 毛原は伸毛で骨抜を締め上げる。締め付けられる苦しさで意識が朧げになるが骨抜は意識を繋ぎ止め必死に時間を稼ぐ。

 

(ヤベ…意識が…轟、八百万は?)

 

 それでも意識が消えかかる、そんな骨抜が最後に見たのは雄々しく美しい三つの首を持つ氷の龍だった。

 

 

 

 

「…………君の勝ちだ」

 

 骨抜が意識を失った事で柔化は解除され毛原達は解放されたが…彼等の表情は暗く、逆に骨抜は満足した表情で気を失っていた。

 

「骨抜さん……ありがとうございます」

「………決着をつけようぜ、先輩!」

 

 骨抜はやり遂げたのだ……轟と八百万が氷結界の龍(トリシューラ)を完成させるまでの時間を稼いだのだ。

 

 

「「「ギャオオオォォォォォォォ!!!!」」」

 

 

 三つの首から轟く咆哮は工場エリアを深く揺らす。圧倒的な存在感に士傑高校の何人かは尻もちをついだり後退ってしまう。

 

「わかっているが一応言っておく。降伏するなら今のうちだ、どうする」

「優しいのだな……君が思っている通りだ、此処で引くのは士傑の名折れ!引く事はしない!!」

「では、お覚悟を!!」

 

 氷結界の龍(トリシューラ)が咆哮をあげながら突撃する。士傑も“個性”を使って迎撃するが氷結界の龍(トリシューラ)は止まらず、強靭な腕や尻尾で次々と薙ぎ払われしまう。

 

「ぬうおおおぉぉぉおっ!!」

 

 毛原が自身の伸毛を最大限には放ち氷結界の龍(トリシューラ)を拘束する。数億はあるであろう毛による締め付けの圧力は氷結界の龍(トリシューラ)の鱗ですらヒビがはいる。

 

「うおおおおぉぉおっ!!」

「はぁぁぁぁああっ!!」

 

 しかし、氷結界の龍(トリシューラ)が身に纏う冷気により毛原の伸毛が凍りつき砕け散った。目を見開く毛原が目にしたモノは……氷結界の龍(トリシューラ)の三つの口に冷気が貯まり必殺の一撃が放たれる瞬間だった。

 

 

「「氷結のブリザードバースト!!」」

 

 

 三つの口から放たれた冷気は混ざり合い零度の一撃となり毛原に迫る。避けられない事を悟った毛原の表情は満足感に溢れていた。

 

「………見事」

 

 そう呟きながら零度の一撃に飲み込まれた。零度の一撃により工場エリアは完全に吹き飛ばされ、そこには勝者だけが立っていた。

 

 

「………………勝ったのですか?」

「……………あぁ、骨抜のお陰だ」

 

 氷結界の龍(トリシューラ)の腕の中には骨抜が満足そうに眠っていた。

 

 

 

 士傑高校…全選手戦闘不能。

 

 残り二校

 

 

END





最後は耳郎達のターンです。


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英雄祭終盤!雄英よ、勝利を勝ち取れ!!後編

いよいよオリジナル展開の英雄祭は完結です。
それではどうぞ!!


 

 とある高層ビルのオシャレな部屋で優雅に紅茶を飲む長い水色の髪をした絶世の美女。そんな彼女と同じ制服を着た女子が一礼をしながら報告する。

 

「才様。傑物高校、並びに士傑高校が雄英生によって倒され残りは我が聖愛学院と雄英高校だけとなりました」

 

 報告を聞く才様と呼ばれた彼女こそ、最後に残った聖愛学院のリーダー…“印照才子”。

 

「予想通りですわね。それで雄英の被害は?」

「はい、傑物高校と戦闘していた男二人はダメージと疲労が大きく、戦闘は不可能。21号と呼ばれる女子は戦闘可能かと……続いて士傑高校と戦闘を繰り広げていた推薦枠のチームは一名は戦闘不能、残る二名も戦闘には勝利したものの戦闘続行は困難と判断します」

 

 その報告を聞きながら印照が見つめるのは恐らく情報伝達の“個性”がメンバーにおり、その子から送られてきたであろう映像だ。

 

 映像には報告道理の光景が映っており、飯田と切島の手当をする21号、傷つきながらも骨抜の手当をする轟と八百万。最後に見たのは拳藤達だ…

 

「では、最後に残っているのは…手の巨大化にツル使いと音波使い、そして重力使い」

 

 どうやら麗日の戦いもバッチリ見られたみたいだ。印照は思考を巡らせる。

 

 印照の“個性”は【IQ】

 

 紅茶を飲み目を閉じてる間だけ自身のIQを倍増する。紅茶のブランドで能力に差が出るらしい。

 ちなみに印照自身のIQは150…天才である。

 

「……ふっ、さぁ行きましょう。勝つのは私達ですわ」

 

 考えが纏ったのだろう…笑みを浮かべて印照は指示を出す。

 

 

 

 一方で拳藤達は無事合流できたようだ。プレゼント・マイクの実況により、残りは自分達と聖愛学院だけだと知りどう行動するか考え合っていた。

 

「どうやら他の皆さんはやり遂げた様ですね」

「うん、残りは私達と聖愛学院だけ……相手が仕掛けるのを待つかこっちが攻めるか……難しいな」

 

 塩崎の言葉に頷きながら拳藤は思考を巡らせていた。あっちは今まで情報収集に徹していた…そんな相手を待つのが得策か……かと言って攻めて罠が仕掛けられていた、なんて事も考えられる。

 

 そんな中、麗日はさっきから難しい顔をした響香に何かを感じて声をかける。

 

「どうしたの響香ちゃん、難しい顔して、腑に落ちない点でもあるん?」

「え?あ、いや、大丈夫」

 

 麗日の言葉に戸惑いながらも大丈夫と返す響香…その時だ、多方向からスピーカーの大音量が聞こえてきたのだ。

 

 

【♬〜!!】

 

 

「!、仕掛けてきたか!響香!」

「駄目…スピーカーの音で居場所がわからない……ウチの索敵を封じる為か…」

 

 苦い表情でイヤホン=ジャックを使う響香の言葉に拳藤は相手がコチラの“個性”の対策をしている事を改めて認識する。その時…何処からか飛んできた弾丸が塩崎を撃ち抜いた。

 

「茨!!」

 

 拳藤が抱きかかえるが…弾丸は既に塩崎の意識を刈り取った様だ…

 

「っ!重力領域(グラビティテリトリー)!!」

 

 次々と襲いかかる弾丸は麗日の重力領域(グラビティテリトリー)によって地面に叩きつけられる……しかし叩きつけられた弾丸が破裂、煙が辺りを包み込む。

 

「今度は煙幕、聴覚の次は視界を封じるつもりか……響香、お願い!!」

「オッケー!」

 

 

 

 一方で印照は響香達から少し離れた所で優雅に紅茶を飲みながら戦況を把握していた。

 

「才様、第一、第二段階…完了しました」

 

 メンバーの報告に微笑みながら紅茶を飲む。印照が考えた作戦、第一段階に多方向からスピーカーを鳴らし、響香の索敵能力を封じビルの屋上で待機していたメンバーが塩崎を狙撃、一発目はスピーカーの音に気を取られて必ず命中する。

 第二段階、狙撃は麗日の重力領域(グラビティテリトリー)によって最初は無効化されるが後の数発は煙幕弾で視界を封じる。

 

「ふふふ……では、第三段階に移行ですわ」

『了解しました』

 

 狙撃手に連絡を入れた印照の顔は恐ろしくも美しかった。その時、響香達が居た場所が爆発した煙が吹き飛ばされ爆炎が立ち込める。

 

 第三段階…それは、聴覚、視界を封じた状況で爆薬の入った弾丸を放ち爆破させたのだ。コレで倒せればそれで良し、倒せないとしても重症を負ったのは確実、一斉攻撃すればそれで方がつく。

 

「あっけないですが、コレで私達の勝ちで「それはどうかな」なっ!?」

 

 後ろから聞こえた声に振り向けば、其処には無傷の響香達が居た…しかも…

 

「なんですか、その姿は!?貴方は耳郎響香なのですか!?」

 

 響香は究極化をしていた、そう言えば表舞台でコレを使ったのは初めてだった…と内心思っていたが余裕の表情で言い放った。

 

 

「違う…ウチは……究極(アルティメット)耳郎響香(イヤホン=ジャック)だ!!」

 

「いや、長いしフラグにしか聞こえないからね!」

 

 親指で自分を指差しながらドヤ顔する響香にツッコミする拳藤……それを屋上から見ていた狙撃手が狙いを定める。

 

「やらせません」

 

 しかし、瞬間移動で来ていた21号が彼女の飛び道具を破壊、そして…21号のボディーブローが炸裂し撃破された。

 

 

 

 時は少し遡る、煙に包まれ視覚までも封じられた…拳藤の指示で究極化した響香は意識を集中させる。背中にある時計を模した光輪…その針が回りだす。

 

 その時、響香の脳裏に過ったのは自分達が居るこの場所が爆発する光景だった。

 

 時の界王神が響香に与えた時の力…それは「起こりうる事象」を観測し、未来予知と言えるほど高精度の未来予測だ。

 

 留まっては危険という事を知った拳藤は相手の裏を突く為に予め八百万が創造した通信機を使って動ける21号を呼び瞬間移動で印照達の後ろに移動したのだ。

 

「流石に見てない、知らないモノは予測できないみたいだね!決着をつけるよ!!」

 

 響香と麗日が一気に印照へと駆け出す…しかし、印照を守るべく聖愛学院のメンバー達が“個性”を開放する。

 

 ある者は全身から針を放ち、ある者は手や髪を鞭のように震わせ…鉄棒やハンマーを持った者達が響香達を迎え撃つが……

 

 

「ヴィクトリースラッシュ!!」

 

 

「超銀河エクスプロージョン!!」

 

 

 響香の勝利の斬撃と麗日の流星群によって薙ぎ払われてしまう。たった一人残されてしまった印照に拳藤が殴りかかる。しかし、それを回避し見事なサマーソルトキックを放つ。

 

「肉弾戦ができないとお思いで!コレでもヒーローを志しているのよ!!」

「いいね…嫌いじゃないよ!そう言うの!!」

 

 拳藤と印照の拳や蹴りがぶつかり合うが……やはり拳藤の方が上手だ…大拳で吹き飛ばされてしまい。

 

 

「双大拳!!」

 

 

 必殺の一撃を喰らってしまい…惜しくも破れてしまった。これにより全選手戦闘不能…と言う事は…

 

 

 

『今、そう今まさに…最期の一校が明らかになった!全てのライバルを倒し勝ち残ったー!第一回英雄祭優勝校はー!雄英高校だぁー!!!!』

 

 

 鳴り響くプレゼント・マイクの声に観客の誰もが激しく熱狂、称賛の嵐が巻き起こる。

 

 その放送を聞き、倒れ込んだ飯田と切島は拳を軽くぶつけ…轟と八百万は互いの健闘を称えるように笑い合い、響香達は抱き合い喜びを分かちあった。

 

 優勝した事は勿論だが…龍悟の力を借りずにやり遂げたのが一番の喜びだった。何時までも龍悟に頼ってばかりではいけない……龍悟が居なくても自分達が居る、それを証明してみせた。

 

 

 観客席でその様子を見ていた龍悟は静かに微笑んだ。今回の戦いは絶対に楽な戦いではなかった。それを彼等は勝ち残ってみせた。まぁ、とにかく今は彼等を祝福しよう……龍悟は雄英の皆と共に拍手を送った。

 

 

 

 

 

 

 表彰式が終わり夕日が輝く時間帯…今日の日程を終わらせたA、B組はバスに乗り帰る準備をしていた。そんな中、響香が浮かない顔をしていたのを龍悟は見逃さなかった。

 

「どうした、何かあったか?」

「うん…ちょっとね」

 

 …響香は現見ケミィに不信感を抱いていた。麗日達と合流する前、響香とケミィは戦闘を繰り広げていたのだが…ケミィは突然戦闘を辞めてどっかへ行ってしまった……まるで暇つぶしが終わったかの様に……そして士傑高校の脱落、轟が倒したのなら納得できるのだが…

 

「だけど、轟は知らないと…」

「ヤオモモにも聞いたんだけど…見てないって……何か違和感が強くてさ…」

「まぁ、今考えても仕方ねぇ……帰ろうぜ、明日は優勝パーティーやるみたいだしな」

「……うん、そうだね!」

 

 笑い合いながら二人はバスに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その一方で近くの裏路地……其処を歩くケミィ。彼女は今日の事を思い出しながら楽しそうに歩いていた。

 

 

「今日は楽しかったです!龍悟君には会えなかったけど響香ちゃんと素敵な時間を過ごせました!今度は“本当の私”と会いましょう……響香ちゃん」

 

 

 笑みを浮かべながらケミィは……“トガヒミコ”は闇の中へと消えていった。

 

 

 

 

END

 

 




 耳郎が完全に仮面ライダージオウですね……次回はちょっと閑話みたいな話を入れるかもしれません。


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閑話・教えて!ゴジータ先生!!サイヤ人編

今回は閑話扱いの話です。


 

 英雄祭が終わった次の日は優勝を記念したパーティーが開催された。A組寮の一階で砂藤が作ったスイーツや八百万が用意した紅茶が並べられA・B組の皆で楽しく食べていた。

 

 龍悟は響香、麗日、飯田、拳藤、轟、八百万の何時ものメンバーに21号を加えて食べあっていたのだが…それは拳藤の一言から始まった。

 

「龍悟……私、変身したい」

「いきなりどうした…」

「英雄祭では出番なかったけど……私だってウィスさんのお陰で強化されたじゃん」

 

 そう言って拳藤は自身を腕を出す。するとその腕が黒く染まった。拳藤がウィスの強化によって得た力は気の制御だった。

 

 麗日は軽くする【ゼログラビティ】が重力を操れる様になりたいな〜と幼い頃から思っていたらしく、それが影響して重力領域(グラビティテリトリー)へと進化した。

 

 それに対して拳藤は龍悟の超サイヤ人や響香の究極化などの変身を意識しており、その結果気のコントロールができる肉体へと強化された。まぁ、気のコントロールと言っても龍悟みたいに気弾が放てる訳ではなく、纏わせるだけだが……

 

 超サイヤ人の様な格好いい変身ができると目を輝かせる拳藤に容赦なく龍悟は言い放った。

 

「拳藤……気のコントロールができるからって変身できる訳じゃねぇぞ……」

 

 その瞬間、拳藤の目の輝きが消えてしまった。

 

「え?……や、ヤダな〜冗談「俺がくだらんジョークを言う奴に見えるか?」……龍悟は超サイヤ人、響香は究極化、21号は魔人化……私だって、格好いい変身がしたかったのに〜!あんまりだぁぁぁぁあっ〜!!」

 

 どうやら相当変身に憧れがあったらしく泣き出してしまった……そんな拳藤を慰めながら21号が聞いてくる。

 ちなみに彼女もあちらの世界の事は話してある、自分の生まれを知る権利は彼女にはあるしペラペラと多言する性格ではない。

 

「龍悟さん……何かありませんか?」

「無理なモノは無理だ」

 

 龍悟は面倒くさそうに吐き捨てる。変身は変身タイプの種族のみが所有する能力だ。究極化はともかく超サイヤ人と魔人化は絶対に無理だ。

 

 どんな種族も使えるパワーアップ手段なんて…そんな便利な技がある訳………あった。

 

「拳藤…本当にパワーアップすればそれでいいのか?」

「うん……それで、龍悟の様にそれがわかる見た目なら文句なし……」

「そんな都合の良いヤツがある訳「あったぞ」あったの!?」

 

 拳藤を慰めようとした響香だが龍悟の一言を聞き逃さずツッコミを入れる。流石はツッコミマスター…

 

「厳密には変身じゃないんだが……見た目も変わるしパワーアップもするからな……どう「教えて!!」……わかった…」

 

 すぐさま喰らいついた拳藤に若干戸惑いつつも承諾した龍悟だが…飯田が思いがけない一言を言った。

 

「龍悟君、向こうの世界にはサイヤ人以外にも変身する種族が居たのだろう?」

「あぁ、居るぞ」

「この際だ、向こうの世界について教えてくれないか?」

「確かに、気になるな」

「とても興味がありますわ!」

 

 飯田の言葉に轟や八百万も頷く。龍悟も向こうの世界についてはそんなに話してなかった。

 

「まぁ、良いだろう…後で部屋に来い。向こうの世界について説明してやる」

 

 

 

 

 

 

 その後、パーティーは終了し皆それぞれの場所へと戻って行ったが響香達は龍悟の部屋に集合しており龍悟による説明会が開かれた。

 

「さて、始めるか。まず、何が聞きたい?」

「ハイ、ゴジータ先生!やっぱりサイヤ人について知りたいです!」

 

 元気よく手を上げる麗日。ゴジータ先生……悪くない響きだ。

 

「そうだな、まずはサイヤ人からだな…サイヤ人とは惑星ベジータに住んでいた種族のことだ」

 

「惑星ベジータ…あれ、龍悟の元になった人もベジータって名前だった様な…」

 

「【ベジータ】という名前はサイヤ人の王が代々襲名する名前であり、(ベジータ)の父親の名もベジータでこっちは【ベジータ王】と呼ばれている。(ベジータ)の正式な名前は【ベジータ四世】だ。だが、初めから惑星ベジータと呼ばれていた訳ではない」

 

「え、違うの?」

「あぁ…最初は惑星サダラと言う星に住んでいたんだが仲間割れで星が消滅したんだ……信じられないかもしれないが本来のサイヤ人は生まれた時から凶暴で残忍かつ冷酷な性格だ好戦的で本能的に戦闘そのものを好む種族なんだ」

 

 残忍で冷酷…響香達にはとても信じられなかった。自分達が知るサイヤ人は……孫龍悟は穏やかで優しい人間だから。

 

「続けるぞ。宇宙船で宇宙を漂流していたサイヤ人が、知的で高度な文明を持つツフル人が住むプラント星に漂着、サイヤ人は一般的に獰猛で野蛮な性格をしており、獣の皮を身にまとい発達した文明を持たない粗野で原始的な生活を送っていた。あくまでも欲しい物は敵から奪い取る純然たる狩猟民族で、サイヤ人の種族を代々の王が治めてきた」

 

「だが、数百年後のプラント星において、ベジータの父親であるベジータ王の指揮のもとでサイヤ人たちが団結し反乱を起こしたことにより、ツフル人と全面戦争になる。惑星プラントの大半を占めていたツフル人は自ら作り出した高度な武器で迎え撃つも、非常に少数の民族でありつつ好戦的で強いサイヤ人が徐々にツフル人を制圧していく。そこで決め手となったのが大猿化だ」

 

「大猿……」

 

 間近で見た事のある響香が反応する。

 

「尻尾を有した状態で、満月またはそれを模したパワーボールを目を通して見る事で大猿に変身、戦闘力がはね上がる。だが、パワーボールの場合は少し戦闘力が落ちる…本物の満月の方がいいって訳だ。王族やエリート戦士は大猿化しても理性や知性を維持できるが、下級戦士の場合は理性も知性も失われ、暴れ回るだけの怪物と化す…あんまり好まれた変身ではなかった」

 

 自分(ベジータ)はあの姿を醜いと言っていたし…龍悟としても積極的にしたい変身ではない。

 

 

「惑星プラントにおいて8年に一度迎える満月により一斉に大猿化したサイヤ人たちの侵攻が大きな脅威となり、ツフル人は滅亡。ツフル人を絶滅させた後は惑星プラントを乗っ取り、惑星ベジータと名を変えて支配。その際、ただ一人の王を頂点とする専制君主国家が打ち立てられた」

 

「まるで昔の地球ですわね」

 

 八百万の言う通り…地球上の歴史においてもこの様な出来事は繰り返されてきた。

 

「そうだな…サイヤ人の社会は、ベジータ王を頂点にした専制国家で王位は世襲制であり…王族以外の全国民が兵士で、国全体として国民たちは戦うことを主な仕事としている軍隊組織のような社会構成。生まれた直後の戦闘力で、身分が、王族、エリート、下級戦士とランク分けされる身分制度社会だ」

 

「他惑星に攻め込みその星を制圧して異星人に売りつけることを生業とする、いわば宇宙規模の【地上げ屋】。これはサイヤ人の戦士が子供の頃から行わされるが、次第に過激化してゆき、果ては戦闘力の数値が低い赤ん坊までもが、戦闘力の水準が低い惑星へ先鋒として送り込まれるようになった」

 

 自分達の想像とは大きくかけ離れたサイヤ人の歴史に冷や汗を流している響香達に龍悟は言い放った。

 

「そんな!赤子だぞ!!それを宇宙に飛ばす!?たった一人でか!!」

 

 赤子をたった一人で別の星に飛ばす。自分の父親すら霞んで見える程の非人道的行為に轟が反応する。

 

「あぁ……それが戦闘民族、サイヤ人だ。強さこそがすべてであり誇りだったんだ」

 

 轟じゃなくても気持ちいい話ではないだろう……本来のサイヤ人は愛情なんてないのだから。

 

「そんなサイヤ人だが…ある軍門に加わった」

「?、話を聞く限り協力する様な種族には聞こえなかったんだが?」

  

 飯田の言う通りだ…サイヤ人はプライドが高い。誰かの下につく事などないだろう。圧倒的な力で押さえつけない限り…

 

「宇宙にフリーザ一族って強種族がいたんだが…ある日、一族の中に異常とも言える力を持つ突然変異が生まれた。それが【コルド】……後に【コルド大王】と呼ばれる宇宙の支配者だ」

「コルド大王…」

 

 次に龍悟が説明したのはコルド大王の事だった。これもサイヤ人を語る上で外す事のできないモノだから。

 

「奴はその強大な戦闘力を利用して宇宙を支配しようと【コルド軍】を立ち上げた、他の惑星の強力な戦士や優秀な科学者を軍にスカウトすることでコルド軍は日に日に勢力を伸ばし続けていた。 そんなある日、自分たちと同じく古来より力によって多くの惑星を支配していた惑星ベジータのサイヤ人たちの存在を知ると、コルド大王は彼らを更に上の力で支配下に置いたんだ」

「サイヤ人もコルド軍に取り込まれたんですね」

「その通りだ21号。サイヤ人たちはコルド軍の戦闘員として宇宙の地上げ屋業を開始したんだ」

 

 21号の言葉に頷きながら説明する龍悟。いよいよ“奴”を話す時がきた。

 

「それから年月が経ちコルド大王に息子・【フリーザ】が生まれフリーザが成長すると、コルド大王は引退を表明し、軍のトップはフリーザへと継承され、軍の名前も【フリーザ軍】に変わる」

「フリーザ…」

「そうだ。宇宙の帝王、フリーザだ」

 

 宇宙の帝王……凄い肩書だ。響香達ば知らず流れていた冷や汗を指で拭った。

 

「それから5年の間、軍は同じやり方で更に勢力を拡大していくが、そんなある日だ…フリーザはサイヤ人を滅ぼした…惑星ベジータごと消滅させてな」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

 言葉を失った。フリーザは自分の部下であるサイヤ人は滅ぼしたのだから…

 

「ど、どうして!?サイヤ人はフリーザ軍にとっても重要な戦力の筈でしょ!」

「確かにそうだ。だが、奴はある伝説の戦士を恐れサイヤ人を絶滅させた」

 

 拳藤の疑問は殺されたサイヤ人の誰もが思った事だろう……そしてフリーザが恐れた伝説の戦士…響香はもしやと思い声をだす。

 

「伝説の戦士………それってまさか!」

「そうだ。一千年に一人現れるーー」

 

 その時、龍悟の髪が金色に染まり黄金の気を纏う。それこそフリーザが何より恐れた伝説の戦士。

 

 

「ーー超サイヤ人」

 

 

 

END

 

 




次回は超サイヤ人についてです。

 拳藤の強化はワンピースの武装色の覇気をイメージしてくれれば大丈夫です。


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閑話・教えて!ゴジータ先生!!超サイヤ人編

ゴジータ「投稿が遅れて申し訳ない!」
パラガス「予定に予定が重なり遅れてしまいました」
ブロリー「誤リーます」
作者「皆さん、投稿が遅れて本当にすみませんでした……それでこれからも忙しくなるので投稿が遅れるかもしれません。ご了承ください」

ゴジータ「そう言えばベジットはどうした?」
ブロリー「フハハ!とうとう消えたか!!遂にこの俺が準主人公としてメイン入りする時が来たようだな!」

ベジット「そんな訳あるか!!」
作者「何やってたの?」
ベジット「FGOのガチャやってた…当たったぜ、【水着武蔵】が!!」

ゴジータ「なん…だと…!!」
ブロリー「何ィ!!」
パラガス「君のファンになりそうだ」
作者「流石だなぁーベジット、信じてたぞ!!」

ベジット「それで……もう一体金鯖が当たったんだが…」
ブロリー「おっきーを当てたのか!?流石ベジットと今回は褒めてやりたい所だ!!」
パラガス「などとその気になったお前の姿はお笑いだぜブロリー……そこは大人のお姉さんであるカーミラさんに決まっている!!」

ベジット「…………ナポレオンだ」
ブロリー「ばぁぁかぁぁなああぁぁ!!」
パラガス「カーミラさんなどと……その気になっていた俺の姿はお笑いだったぜ………」

ゴジータ「まぁ、なんだ…本編をどうぞ!!」







「超サイヤ人…」

 

 伝説の戦士…それは響香達には見慣れた龍悟の十八番である【超サイヤ人】だった。

 

「サイヤ人の間で語り継がれた伝説…しかし惑星ベジータが誕生してからフリーザに滅ぼされるまでに超サイヤ人に変身できた奴は俺の知る限り一人とて居ない」

「一人も居なかったのか?」

「そうだ、超サイヤ人という変身はサイヤ人達の体内に流れる【S細胞】という特殊な細胞が深く関わっている。この細胞はほぼ全てのサイヤ人達の体内に流れており、それがある量に達した時、怒りなどをきっかけに爆発的に量を伸ばし、肉体に変化をもたらす、その現象こそが超サイヤ人なんだ」

 

 ベジータの記憶にある…前に天才のブルマに頼んで超サイヤ人のメカニズムを研究してもらった時に【S細胞】の存在を知る事ができ…同時になぜ誰も変身できなかったのか納得ができた。

 

「しかし、通常サイヤ人達の体内にそれは微量にしか流れておらず、それを増やすには穏やかな精神を保ち続けなければならないとされている……皮肉なもんだ、血を好む戦闘民族が穏やかにならないと至る事のできない伝説の戦士……それが超サイヤ人なんだ」

 

 

 確かに皮肉な話だ、しかし響香達にはある疑問が生まれた。

 

「ならどうして龍悟は超サイヤ人になれたの?」

「前にも話したが俺は二人のサイヤ人…【孫悟空】と【ベジータ】の融合で誕生したサイヤ人だ。その二人が超サイヤ人に変身できるなら俺ができても不思議ではないだろう」

「では、どうして悟空さんとベジータさんは超サイヤ人に変身できたのですが?」

 

 響香と八百万の最もな疑問に龍悟は悟空をメインに超サイヤ人を説明する事にした。

 

「まず最初に超サイヤ人に変身したのは悟空だ…悟空は生まれた時に下級戦士とランク付けされ…惑星ベジータから【地球】と言う惑星に飛ばされた」

「別世界にも地球はあるのか…」

 

「地球を制服する為に送り込まれた悟空はその時は戦闘民族のカカロット(サイヤ人)だったが幼いある日に頭を強く打ってな…サイヤ人の使命も何もかも忘れ孫悟空(地球人)として穏やかに暮らしたんだ。仲間と旅をして、妻と子供を持ち…幸せな毎日を過ごしていた……長くなるから詳細は省くがそうして穏やかに過ごした悟空はサイヤ人を滅ぼしたフリーザと戦うんだ……その途中で親友を殺された怒りで超サイヤ人になったんだ」

 

「その時になったのが【超サイヤ人第1段階】だ」

「第一段階?」

「そうだ…フリーザを倒した後も敵が現れたんだ…そんな奴等に対抗する為に超サイヤ人の先を目指したんだ」

 

 龍悟はそのまま超サイヤ人の段階について説明した。

 

「次に【第二段階】…パワーとスピードが第一段階より大幅に増した形態なんだが、体への負担は第一段階以上にかかる次の【第三段階】は第2段階よりもさらに筋肉が膨れ上がり、大幅にパワーアップした姿なんだが、これじゃ駄目なんだ…なんでかわかるか?」

「スピードがないからか?」

「正解だ、飯田。膨れ上がった筋肉のせいで攻撃力の向上というメリットを帳消しにして余りあるほどにスピードが犠牲になってしまう上、体力も第2段階以上に消耗してしまうという弱点を抱えている」

「それじゃ総合的なバランスは第一段階の方がいい…振り出しに戻ってるよ」

 

「心配するな麗日…第二、第三を踏まえて「パワーの引き上げ」に傾倒した強化では、前述の通りデメリットが大きすぎると判断した悟空が、変身時の興奮状態を抑えることや身体の鍛え直しといった徹底した基礎固めに徹した修行を行うことで、超サイヤ人のポテンシャルを余すことなく引き出せるようになった【第四形態】を生み出したんだ」

 

「やっぱり基礎は大事なんだね」

「その通りだ拳藤……この第四形態から激しく怒りを爆発させる事で【超サイヤ人2】になれるんだ」

 

「ここでようやく2になれるんだ……2にも段階はあるの?」

「いや、2には段階はない。ここから更に気を開放したのが【超サイヤ人3】なんだ。見た目は知っての通り派手になりパワー、スピードともに優れた形態だが、エネルギーの消耗が激しく長時間変身し続けることが出来ない、持続性を含めた総合的に言えば2の方がいいがな」

 

 あちらの世界で手に入れた変身は言い終えた…

 

「じゃ…最後は…」

「銀河無敵の筋肉野郎〜!!」

 

 麗日の元気な言葉に微笑みながらこの世界で手に入れた3のその先の変身…

 

「超サイヤ人4……超サイヤ人の状態で大猿になりそのパワーを完全にコントロールして初めて変身できる、究極の超サイヤ人だ…」

「ホントに凄かった…」

 

 オール・フォー・ワンとの戦いを間近で見ていた響香が呟く…破壊神にも勝利した4はまさに究極のサイヤ人の呼び名が相応しい。

 

「と言う事はこれ以上超サイヤ人のバリエーションはないのか?」

「十分過ぎますけど…」

 

 轟の素朴な疑問に八百万が突っ込む……十分なバリエーションだ。

 

「そうだよ…これ以上は…「心当たりがある」あるの!?」

 

 流石ツッコミマスター…今日もキレッキレだ。龍悟は思い出す…あの時の夢を…超サイヤ人4の悟空と共に写っていた蒼髪のベジータを……そしてビルスの言葉を…

 

「あぁ、ビルス様が言ってたんだ…【超サイヤ人ゴッド】を知ってるかって……サイヤ人にはまだまだ可能性がある」

 

 

「サイヤ人に限界はない!」

 

 そう語る龍悟はとても清々しい顔だった…

 

 

 

END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ENDじゃなぁぁあーーーーい!!前回から期間空きすぎて忘れてない!?私の変身は!!」

「メタイよ一佳……」

 

「あぁ…すまねぇ。拳藤に教えるのは悟空()が超サイヤ人になる前に使っていた【界王拳】だ」

「界王拳?」

 

 界王拳…それは悟空がベジータに対抗する為に北の界王から元気玉と一緒に教わった技である。

 

 試しに龍悟がやってみる、体から赤いオーラが溢れ戦闘力が倍増する。

 

「別に変身って訳じゃないが…見た目も赤く変わるし上手くいけば力・スピード・破壊力・防御力が全部何倍にもなる…どうだ気に入ったか?」

「勿論!ご指導お願いねゴジータ先生!!」

「随分…元気な生徒だな」

 

 そう言う龍悟の表情は満更でもなかった。

 




登場するのは先になりますが…拳藤のパワーアップは界王拳です。

 ちなみに龍悟はワン・フォー・オールがあるので界王拳は使用しません。

次回からヒーローインターン編です。


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閑話・教えて!ゴジータ先生!!フリーザ編

さぁ、今回の番外編は宇宙の帝王!理想の上司!!と名高いフリーザ様です。


 

 サイヤ人について教えてもらったもらった次の日、響香達はまた龍悟の部屋に集まっていた。

 

「今回も教えて、ゴジータ先生!!」

「この時間はその呼び方に違和感がなくなったぞ」

 

 麗日の先生呼びに苦笑しながらも龍悟は今回のテーマを話す。

 

「じゃ今回は前回のサイヤ人の時に少し触れたフリーザについてだ」

 

 フリーザ……サイヤ人を滅ぼした宇宙の帝王……その名を聞いた響香達の緊張も高まる。

 

 

「……その力は敵はおろか味方さえ恐れをなす程だった。そんなフリーザが指揮するフリーザ軍は宇宙の地上げ屋としてある日に突然攻め込んで来て、惑星の住民全てを殺し尽くして星を奪い、他の宇宙人に売りさばく。オール・フォー・ワンが可愛く見える程の悪のカリスマ……それこそがフリーザ。宇宙の帝王だ」

 

「酷い…!」

 

 あまりの行いに響香達は震え思わず拳藤が言葉をもらしてしまう。龍悟の言う通りオール・フォー・ワンが可愛く思えてしまう。

 

「だ、誰も止められなかったのか!」

「確かに宇宙の治安を守る組織としては銀河パトロールがいるが、奴等はフリーザどころか俺達サイヤ人にすら太刀打ち出来ない、だからアイツ等はフリーザ軍の悪行を見て見ぬ振りをしていた」

 

 ヒーロー科として納得のできない事だろう。しかし当時のフリーザ軍はヤバすぎた。

 

 

「…………俺達の宇宙には戦闘力、読んで字のごとく戦闘能力を数値化したモノがあった。普通、戦闘力が1000もあれば十分に強いレベルだ。悟空(オレ)が自分がサイヤ人だと知る前……師匠だった武術の神と呼ばれた世界最強の男――武天老師ですら戦闘力にして僅か139程度だった。だからこそ下級戦士ですら戦闘力が平気で1000を超えるサイヤ人が宇宙一の強種族とまで呼ばれていたわけであり、俺達が異常だった」

 

他にもナメック星人と言う強種族もいるが一般的に1000以下なのだ。

 

「話を戻すが、フリーザ軍の戦士達は各惑星における最強の戦士ばかりを集めた精鋭中の精鋭だ。質も数も銀河パトロールを遥かに凌駕している。そして、それを束ねるフリーザの戦闘力は…………53万だ」

 

 53万………先程まで千単位だったのにいきなり万だ。響香達が驚くのは当然だろう。

 

「53万……それがフリーザの……」

「あぁ、力だと当時のベジータ(オレ)も思っていた」

 

 だが、そんなモノではなかったのだ。

 

「え?」

 

「戦闘力53万。それは軍の中では有名な話だった。当時にとってこれは破格の数値だ。フリーザ軍のナンバー2でさえその戦闘力は12万。まさに帝王だった」

 

 そして龍悟は唖然としている響香達に当時のベジータ(自分)が耳を疑った絶望を言った。

 

 

「フリーザは変身タイプの宇宙人なんだよ。53万はその第一形態の力でしかない」

 

 

 あまりの事実に響香達が固まってしまった。それにお構い無しに龍悟は言い放った。

 

 

「最初に言っておくフリーザの本当の戦闘力は一億二千万だ」

 

 先程まで普通1000あれば強者と説明され其処から万単位まで飛んだのに更に一億……もう狂ってるとしか言い様がない。

 

 

「一億!?そんな…つまりフリーザは……!」

「そうだ。一%以下の力で宇宙の帝王とまで言われた、宇宙一の大悪党。それがフリーザだ」

 

 瞬時に計算した八百万は流石と言うべきだろう。改めて響香達がフリーザの恐ろしさを理解した所で龍悟はフリーザの解説を始めた。

 

「じゃ、フリーザの形態について説明するぜ」

 

 そう言って龍悟が取り出したのは歴史が記されている終わりと始まりの書。それを開くとある映像が浮かび上がる。

 

「まずは第1形態だ」

 

 そうして浮かび上がったのは小柄な体躯、短い円錐型の黒い2本の角、紫色と白色を基調とした宇宙人。今では懐かしく思うフリーザの第一形態だ。ちなみに移動ポッドに乗っている馴染みの姿で映っている。

 

「これがフリーザ」

 

 轟が冷や汗を拭いながらその姿を見る、見た目は然程強そうに見えないが龍悟の話からそんな考えは消え去った。

 

「奴の基本形態でパワーを抑えて普通に生活できる姿にもかかわらず惑星ベジータを滅ぼしたときもこの形態だった。フリーザ自身も飛行可能だが、普段は「楽だから」という理由で映像に移っている専用の移動ポッドに乗って浮遊移動している」

 

 ちなみにあのポッドはフリーザの脳波を受信し彼のコントロールで動いているので、他人が乗っても操縦は不可能と言う超ハイテクな代物である。

 

 

「そして次が第2形態だ」

 

 次に映ったのは第1形態の2倍程度の身長となる。角が牛のように伸び曲がり威圧感か倍増した姿、フリーザ第二形態だ。

 

「いきなり印象が変わったね」

 

 拳藤の言う通りいきなり身長が倍になっている。峰田が見れば羨ましがるだろう。

 

「第一変身形態とも呼ばれるモノで変身する際には、まず外殻を自ら破壊してから変身しているんだ。パワーがありすぎるため自分でもうまくコントロールできないほどで戦闘力は倍の100万以上は確実だ。ちなみに奴の父親のコルド大王はこれに似た姿をしている」

 

 

 更に言うとフリーザの部下たちはフリーザへの信奉から、フリーザの体の硬組織を参考にして戦闘ジャケットを開発し装備するようになりフリーザ軍の兵士らが装備する戦闘ジャケットがフリーザ第1形態の上半身の鎧のような部位と似ているのはそれが理由だ。

 

 

「それから第3形態」

 

 次に映ったのは第二変身形態とも呼ばれる。肩が尖り、頭部は後ろに長く伸び、異形と言う言葉が当てはまる姿。フリーザ第三形態だ。

 

「この前、三奈に見せてもらった映画の宇宙人みたい」

 

 響香の言う通り、ザ・エイリアンと言った禍々しい見た目だ。

 

「この形態に変身した際には、第二形態の時に切断された尻尾はそのままではあるが、それまで受けたダメージがなくなり、パワー・スピードがさらに向上。指先から視認できないスピードの衝撃波を連射するのが主な攻撃方法で、その際には奇声を上げていたな……後、この形態でいた時間は短くてなすぐに奴は最終形態になったんだ」

 

 遂に最終形態、響香達は息を飲みながら映像を見る。映像が変わり外見は角や殻など余計な器官が全て取り除かれたシンプルなもので、体躯も第1形態と同じほどの小柄になったフリーザ最終形態が映った。

 

「これがフリーザの最終形態…!全然強そうに見えないけど……!」

 

 麗日の言う通り見た目はかなりシンプルでお世辞にも強そうには見えないが………

 

「あぁ、第三変身形態とも呼ばれる。これがフリーザ本来の姿でもあり、4つの形態の中では最も人型に近い。見た目はこんなだがその力を感じ取れば「今までの方がずっと可愛かった」……と感じるだろう。変身後にはそれ以前に切れた尻尾なども再生されて無傷の姿となる」

 

 

「奴の力は圧倒的でな、ベジータは殺され。悟空の20倍界王拳でさえ全く歯が立たなかった。だがなフリーザはやり過ぎた、アイツは悟空の親友を殺し悟空を本気でキレさせて超サイヤ人にしてしまったのさ」

 

 

 そうして映ったのは崩壊するナメック星で死闘を繰り広げる超サイヤ人の悟空と最終形態のフリーザの姿。その圧倒的な光景に言葉も出ない。

 

「超サイヤ人になった悟空の強さは圧倒的でそれまで50〜70%程度の力で戦っていたフリーザでは手も足も出せず、遂にフルパワーで悟空と戦った」

 

「戦いは正に死闘と呼ぶに相応しいモノだったが……最終的に悟空が勝ったんだ。フリーザの体はフルパワーに耐えられなかったんだ。その結果パワーダウンしてしまい悟空に破れ去った」

 

 

 これで終わりだ。龍悟の言葉を聞いて流していた冷や汗を拭いながら響香達は改めてフリーザの力を思い知る。

 

「宇宙の帝王フリーザ……とんでもない奴が居たんだな」

「それにしてもサイヤ人程でもないけどフリーザーも随分形態があるもんだな。全部で四形態もあるなんて」

 

「そうでもないぜ。アイツは生まれながらの強者、トレーニングをしたことがない。もしアイツが修行して力をつければ第五形態があったかもな」

 

 

 龍悟はそんな有り得たかもしれないifの話をする。

 

 

 しかし、まさかそんな第五形態を見る日がくるとは響香達は愚か、龍悟でさえ気づかなかった。

 

 

 

END

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 おまけ

 

「ちなみに悟空破れたフリーザは辛うじて生きていて戦いで大部分を失った肉体を、最終形態を基に機械で補完したメガフリーザって姿もあるんだが……復讐の為に地球にやって来て早々に殺された」

「え!誰に?」

「響香は会ったことがあるだろ。トランクスだ」

 

 そう言われ響香の脳裏に過るのはあの時にバーダックと共に力を貸してくれたサイヤ人。

 

「あの人か……今度お礼が言いたいな」

「そうだな……そんなトランクスはベジータの息子でな、タイムマシンで未来からやって来たんだ。これがフリーザを倒した悟空達の新たな戦いの始まりだった」

 

 宇宙の次は未来、スケールの広がる話に誰もが唖然とする。

 

「トランクスは未来を変えるためにやって来たんだ。アイツの未来は人造人間によって破滅しまったから」

「人造人間にですか!?」

 

 同じ人造人間の21号にとっては驚きだろう。

 

「地球の天才科学者である[ドクターゲロ]の作った人造人間達によってな」

「でも、超サイヤ人があるじゃん!」

 

 拳藤の言う通りフリーザを倒した超サイヤ人があれば恐れる事はないだろう。

 

「……………負けたんだよフリーザを倒した伝説の戦士は地球の科学者が作った人造人間にな」

 

 

「……ハアアア!?嘘でしょ!?宇宙の帝王を倒した伝説の戦士より強い人造人間ってナニ!?」

 

 

 皆の気持ちを代弁した響香のツッコミを受けながら龍悟は今にして思う。

 

 

 何で辺境の星と呼ばれた地球の科学者がフリーザや超サイヤ人より強い人造人間を作れたのだと

 

 

 

 

 

 




活動報告の方にも出すんですが。最近、新しい話を出す度にお気に入りとかが減って思ったんですが全体的に書き直した方がいいですかね?


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始まる二学期

ベジット「全次元の皆!!俺にチョビっとでいい!!皆の運をわけてクレーーーーーーー!!」
ブロリー「うおおおおおおーーーーーーー!!運が高まる……溢れる!!」
パラガス「いいぞ!!今の俺達の運で、大人のお姉さんであるアルトリア・ルーラをお迎えするのです!!」

ベジット「いくぜ……ファイナル100連かめはめ波ぁぁぁぁあーーーーーーー!!」


ゴジータ「………なんだアレは?」
作者「呼札と石10連で沖田とメルトリリスが来て勢いに乗ってアルトリアを引こうとしている……まぁ、後書きには結果はわかると思う」
ゴジータ「そうか……じゃこっちは始めるか、それではインターン編……スタートだ!!」





 

 英雄祭後、無事に仮免試験を全員合格した龍悟達は寮に戻ってパーティーをしていた。

 

「最近パーティーが多い気がするが……」

「それだけ濃い夏休みだった事だよ」

 

 前半は暗い思い出しかないのだ、最後くらいは激しいのが丁度いいか…そう納得した龍悟は砂藤特性ケーキを口に入れた。

 

「そうだな…それに客人も来たんだ、丁度いい」

 

 龍悟がそう言うと同時に玄関ドアが開き…

 

「やっほー龍悟君!」

 

 波動達、ビッグスリーのメンバーがやって来た。

 

「おめでとう、聞いたよ!仮免合格したんだろ!!」

「サンキュー、通形先輩」

 

 波動は響香達と楽しく女子会を始め、龍悟は通形と飲む事にした。

 

「それでお祝いのついでに君達に説明しておこうと思ってね。一年で仮免を手に入れた君達に無関係じゃないしね」

「それって職場体験の時に言ってた……」

「あぁーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「龍悟君………龍悟君…!」

「ん?なんだ麗日?」

「今は校長先生のお話中だよ…!気持ちはわかるけど…ちゃんと聞いた方がいいよ」

 

 二学期始めの始業式、グランドに並んだ龍悟達を含めた雄英生は校長の長話を聞いていた……隣で響香が寝てる中、龍悟は暇潰しに昨日のパーティーを思い出していたのだ。

 

「悪い悪い……ほら、起きろ響香」

「ん〜〜終わった?」

 

 眠たそうに聞いてくる響香だがある言葉で目を覚ます。

 

 

「特にヒーロー科の諸君にとっては顕著に現れる2・3年生の多くが取り込んでる“ヒーローインターン”もこれまで以上に危機意識を持って考える必要がある」

「ヒーローインターン…!」

 

 それを最後に始業式は終了した。その後いつもの教室に戻ってきた龍悟達。

 

「じゃあまぁ…今日からまた通常通り授業を続けていく」

 

 

 今日は座学だが明日から厳しい訓練だそうだ。

 

 

「いいかしら先生…さっき始業式でお話に出てた“ヒーローインターン”ってなにか聞かせてもらえないかしら」

 

 それを聞き皆が質問する。

 

 

「昨日通形達が言っていたが俺からも言っておくか……平たく言うと“校外でのヒーロー活動”だ。以前行った職場体験…その本格版だ」

 

 そう、昨日通形達がパーティーの時に教えてくれたのはヒーローインターンの事だ。

 

「ヒーローインターンは体育祭での指名をコネクションとして使う、これは授業の一環ではなく生徒の任意で行う活動だ。体育祭で指名頂けなかった者は活動自体難しいんだ」

 

「仮免を取得した事でより本格的・長期的に活動へ加担できる。ただ一年の仮免取得はあまり例がないこと敵の活性化もあいまってお前等の参加は慎重に考えるのが現状だ…まぁ後日ちゃんとした今後の方針を話す」

 

 それから数日、龍悟達は普段通り学園生活をおくっていたが……次の日の朝のホームルームで相澤から通達がきた。

 

「まず、インターンの件についてですが、昨日協議した結果、校長を始め、多くの先生は『やめとけ』という結果でした」

 

 

 切島を筆頭にガッカリしている

 

「えぇ~!昨日あんな説明会までして!?」

「だが、全寮制になった経緯を考えるとそうなるか…」

 

 襲撃、響香の拉致……心当たりがあり過ぎる。

 

「が、今の保護下方針では強いヒーローが育たないという意見もあり、方針としては、『インターン受け入れ実績の多い事務所に限り、1年生の実施を許可する』という結論に至りました」

 

 ホームルームが終わり皆が職場体験先に連絡を入れ、それぞれの報告会をした。

 

「皆はどうだったんだ?」

「俺は無理だった、親父はインターンの受け入れなんてやってなかったからな」

 

 21号は当然として轟を筆頭に皆も無理だったようだ。

 

「俺達は大丈夫だった」

「通形先輩が絶賛インターン活動してるからね」

 

 通形によればナイトアイは既に受け入れ準備は完了しているとの事だ。

 

「と言う事は龍悟さん達はヒーローインターンを?」

 

 その言葉に微笑みながら…思い出すのはパーティーでの通形の言葉。

 

 

 

『インターンにおいて我々は『お客』ではなく一人のサイドキック!同列…プロとして扱われるんだよね!』

 

 自らの経験を語る通形の顔はーー

 

『それはとても恐ろしいよ、時には人の死にも立ち会う...!けれど恐い思いも辛い思いも全てが学校では手に入らない“一線級の経験”!俺はインターンで得た経験を力に変えてトップを掴んだ!ので!恐くてもやるべきだと思うよ1年生!!』

 

 ーーとても輝いていた。

 

 

「あぁ、勿論だ」

 

 

 

 

 

 

 同時刻、ナイトアイ事務所の一室にスーツ姿のナイトアイがパソコンを操作してると……

 

「サー!!“ホシ”に動きがって今日もまた地味ですねオイ!!」

 

 

 

 短髪の女性、バブルガールが勢いよく入ってくる。

 

「報告は元気に一息に」

「っはい!捜査中の指定敵団体の若頭敵名【オーバーホール】あの敵連合と接触があったようです!!」

 

 

 

 オールマイトの無期限の休止……それにより大きく事態は動きだした。

 

 

 

 

END

 

 




ベジット「アルトリア・ルーラーがキタァァァァアーーーーーー!!」
ブロリー「まさか40連で引き当てるとは……流石俺達と褒めてやりたいところだ!」
パラガス「ブロリーの言う通りでございます!さぁ、この勢いでマーリンも手に入れるのです!」
「「おおお!!」」

ゴジータ「当てたのか?」
作者「そうみたいだね。じゃ次回も「ちょっと待った!!」ッ!?お前は……ジオウ!!」

耳郎「誰が平成最後の仮面ライダーだ!!耳郎響香、メインヒロイン!」
ベジット「未来予知とか究極化したお前まんまジオウⅡじゃん、次はなんだ?麗日と拳藤と合体して"ジロウ"トリニティにでもなるのか?」
耳朗「なるか!と言うかできるか!」
パラガス「ドラゴンボールとクロスオーバーの作品ならできてもおかしくないのだか……」
作者「……じゃあいっそのこと最終形態って事でグランド・"ジロウ"にさせる?」
ブロリー「………天才か!?」
ベジット「いいな!八百万と一緒に歴史の偉人や伝説の英雄の本を読んで、それを元にドミグラの時のワルキューレを改良させたって事でfateキャラを召喚する!」


-イメージ-

グランド・ジロウ「いくよ、まずはこれ!」
【レオナルド・ダ・ビンチ!!】

 黄金の光を纏った耳郎が手をかざすと黄金の扉が現れ扉が開くと豪華な装飾がされた杖と左手に籠手をつけた美女が現れ籠手をロケットパンチとして放ち敵を吹き飛ばす。

【アーサ王!!】

 吹き飛ばした敵の後方からまた黄金の扉が現れ其処から青と銀の鎧を纏った男性が黄金の聖剣を握り切り飛ばす。

グランド・ジロウ「ハァ!」

 耳郎が手をかざすと先程の男性が持っていた聖剣が手に収まりそれを握って敵を切り裂く。

グランド・ジロウ「次はコレ!!」
【ネロ・クラウディアス!!】

 次は赤と金のドレスを着た美女が焔を纏いし剣を敵に叩きつける。

【宮本武蔵!!】

 最後に美しい和服を着た美女が両手に持つ二本の刀で敵を切り裂く。

ゴジータ「これが耳郎の新たな力…!」

-イメージ終了-

 ワイワイ騒ぐ作者達。

耳郎「………はぁ」
ゴジータ「気にするな、俺は気にしない。それで、何を言いに来たんだ?」
耳郎「この前、五等分の花嫁でフラグ立てたじゃん」
ゴジータ「言っておくがアレは俺じゃない俺だからな」
耳郎「それで気ずいたんだ……今回で78話にもなるのにデート回が一回しかない!!」

 その時、衝撃が走る。

作者「なん……だと!?」
ベジット「ダニい!?」
ブロリー「ヘェア!?」
パラガス「しまった!?」

ゴジータ「……は?」


次回に続く!!



・グランドジオウ

 平成最後の仮面ライダー…【仮面ライダージオウ】の最強?フォームである。待機音や変身音は歴代最長で歴代の仮面ライダーや武器を召喚できるのだが戦歴が悪い。最終回は初登場の様にど派手に変身したのに案の定ラスボスにやられた。強いのだが恵まれない……ドラゴンボールで言う超サイヤ人3の様なフォーム。


・オーマジオウ

 Fateキャラすら真っ青なチート能力を持つ平成仮面ライダーの中で最強の存在。最終回では歴代のラスボスをワンパンで撃破しており圧倒的な力を見せつけた。
 全てのライダーの力を持つ他、自己修復や半永久…挙げ句の果には因果律すら操れる。彼ならチートの象徴である【英雄王】に勝てるかもしれない。







グランド・ジロウは完全にネタです、登場予定も最終回で歴代ラスボスをワンパンするオーマ・ジロウにもなりません。


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九章・ヒーローインターン編
始まるヒーローインターン



遅れてしまい申し訳ありませんでした。
インターン編も本格的に動き出します、どうぞ!


 

 ナイトアイ事務所をインターン先と決めた龍悟と響香は必要な契約のやり取りをするために再びナイトアイ事務所へとやって来た。

 

「久しぶりー!響香ちゃん!!」

 

 入って来て早々、バブルガールが響香に抱きついた。職場体験で仲良くなった響香は彼女の可愛い妹分、そんな響香がインターンにやって来たのだ、テンションはバク上がりだ。満更でもなさそうな響香に微笑みながら龍悟はナイトアイに雄英の契約書を提出する。

 

「また、よろしく頼む」

「あぁ、こちらこそ」

 

 そう言ってナイトアイは契約書に印鑑を押す。

 

「これで契約完了だ。ヒーローインターンは職場体験とは違い本格的なヒーロー活動を予定している。必要ない言葉だが気を抜く事のない様に…!」

 

「あぁ、勿論だ」

「よろしくお願いします!」

 

 こうして龍悟達のヒーローインターンが始まった。

 

 

翌日・インターン初日

 

 

「本日はパトロール兼監視。私とバブルガールとゴジータ、ミリオとイヤホン=ジャックの二手に別れて行う」

「監視?」

「ナイトアイ事務所は今秘密の捜査中なんだ」

「【死穢八斎會】と呼ばれる小さな指定敵団体だ」

 

 そう言って男の写真を見せる。

 

「ここの若頭“治崎”と呼ばれる男が妙な動きを見せ始めた」

 

 その写真を受け取る。ペストマスクがトレードマークだった。

 

指定敵団体(ヤクザ者)…今は時代遅れのイメージがありますが…」

「過去に大解体されてるからね…でもこの治崎は最近あの敵連合と接触をはかったわ」

 

 その言葉に響香は目を見開き、龍悟は目を細める。

 

「敵連合…!?」

 

「我がナイトアイ事務所が狙うのは奴等の犯行証拠…くれぐれも向こうに気取られないように」

 

『イエッサー!!』

 

 

・・・・・・

 

 

 ナイトアイに付いて行った龍悟が目にしたのは和風建築の屋敷だった。

 

「此処が奴等の…」

 

 細通りに隠れながら様子を覗う。

 

「その通りだ…先日、強盗団が逃走中に人を巻き込むトラック事故を起こした…巻き込まれたのは治崎等…八斎會…だが、死傷者は“ゼロ”だった…」

 

「?」

 

「強盗団の連中は『激痛を感じ気を失った』が何故か傷一つないどころか虫歯などが綺麗に治っていたそうだ…治崎の個性だと思われるが結果的に怪我人ゼロ…敵逮捕となった為特に罪には問われなかった…」

 

「でも奪われたお金だけ綺麗に燃えて無くなっちゃたんだよね…警察は事件性なしって結論をだしたんだけど…どう考えても怪しいって事でナイトアイ事務所は本格マークを始めたの」

 

「なるほど…」

 

「ゴジータ、屋敷の中を探ってくれ」

 

「了解」

 

 目を瞑り集中力を高め気を探る。屋敷も気を感じたが…地下にも気を感じた。

 

「これは……地下にも施設がある」

 

「何…やはり唯のヤクザじゃないということか……瞬間移動は可能か?」

 

 龍悟は指を額に当て目を閉じ意識を集中させる。様々な情報が脳裏を過る。

 

(?、なんだ?)

 

 どれも地下室と言った部屋だが一つだけ"子供部屋"があった。幸い部屋には誰も居ない上の部屋にいる気を使えば行ける、ナイトアイ達を連れてその部屋へと瞬間移動した。

 

「何、此処?子供部屋……どうして地下に」

 

 バブルガールが奇っ怪に辺りを見渡す、確かにそれも疑問だがナイトアイはあることに注目した。

 

「どの玩具も未開封…」

 

 散らばっているのは幼い少女を対象とした玩具。普通なら興味を持つはず…ナイトアイが思考を巡らせているなか龍悟の視界にあるものが入った。

 

「パソコン?」

 

 それはパソコンだった。マウスを動かすと画面がひかり、映ったのは動画サイトだった。

 

 しかも…

 

『ヴィクトリースラッシュ!!」

 

 

「英雄祭の時の響香だ」

 

 動画に映っていたのは英雄祭で活躍する究極化した響香。今、彼女は小さな女の子達に変身ヒロインとしてとても人気となっていた。

 

 しかし龍悟が目をつけたのはそこではなくコメント、そこに書かれていたのは……

 

 

 

 助けて

 

 

 

 投稿はされていない…ばれて間違いなく"何か"をされる。そしてなにより…玩具の対象年齢から見て幼い少女がその事を理解している…それはすなわち

 

「虐待か…反吐がでる」

 

 

 龍悟がそう吐き捨てたその時…

 

「サー、ゴジータ!こっちへ!」

 

 バブルガールが周りにバレないように声を落として呼び掛ける。彼女が指差したのは隣の部屋、龍悟とナイトアイがその部屋を覗くと…

 

「!?、これは…」

「……………どうやら俺達の想像以上にヤバい組織のようだな」

 

 

 その部屋は何かの実験場と言った方が分かりやすい部屋だった。対象を逃がさないよう拘束する椅子を始めに非人道的な道具が数多くあり、その対象は……

 

 

「エリ……」

 

 近くにあった写真には腰近くまである無造作な白い髪、赤い瞳と額の右側に生えた茶色味掛かった角が特徴の五~六歳の少女が写っていた。

 

(彼女について何を研究していた?)

 

 写真と共にあった研究資料を手に取り中身を見ようとした龍悟だが…

 

「これは!?」

 

 ナイトアイの驚愕の声が聞こえ視線を向ける、何か重要な証拠が見つかったのだろうか。

 

「どうしたんですか?サー?」

「違法薬物販売グループとの取引書類だ。違法薬物販売の犯行証拠としては十分だ」

 

 そう言ってナイトアイが見せた書類の意味は経験のない龍悟にはわからないが、そのグループとの取引を確定付ける証拠であることには間違いないだろう。

 

「証拠は十分なんだろ、引っ捕らえるか?」

「いや、証拠はあるがまだ奴等が何を企んでいるか明らかになっていない。下手に大きく出て捕ら損ねた場合、火種が大きくなることもある。この件に関しては他の事務所とのチームアップを要請している、今はもっと情報を集める時だ」

(なるほど……オールマイトとは正反対だな)

 

 ナイトアイの意見に賛成し龍悟は二人を連れて先程いた細道理に瞬間移動した。別の場所でパトロールをしている二人を呼び寄せようとナイトアイが通形に連絡をいれようとしたその時……ナイトアイは硬直した。

 

「?、どうしたんだ、ナイトアイ?」

 

 不思議に思った龍悟がナイトアイのスマホを覗くと目を見開いた。

 

 虐待されたと思わしき少女を保護したと書かれており、送られてきたのは画像に写っていたのは……龍悟が手に持っている研究資料と共にある写真の少女。

 

 

 

 

 エリだった。

 

 

 END

 




前回、後書きコーナーに現れた耳郞によって70話以上もあるのにデート回が一つしかないことを知った作者達は会議を始めたのであった。


作者「マジだ…38話の波動先輩メインのデート大作戦しかデート回がない」

パラガス「それ移行はGT編のクライマックスに突入したからな…」

ベジット「超編に入ってからはバトル回が多かったからな~」

耳郞「そう言うこと、ウチは設定上いろいろ龍悟とデートはしているけど描写されてない!」

作者「よし、番外編でデート回をだす!」

『異議なし!!』

ゴジータ(今回、話に入れなかった…)



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少女の願い

ようやく投稿に専念できる余裕ができてきました。
少しのシリアスと多めのギャグ回です。
それではどうぞ!


 

「ハァ、ハァ…ハァ!」

 

 薄暗い細道理を白い少女が走っていた。苦しさに顔を歪ませ必死に走る、まるで何かから逃げるように…

 

(だれか…)

 

 少女の脳裏に過る自由もなくただ身を切られる日々、彼女は限界だった。だから思わず逃げ出したのだ。しかし、行く宛もなくすぐに連れ戻されてしまう。

 

(だれか…!!お願いだれか…!いやだ…!)

 

 薄暗い細道理に差し込む光、思わず手を伸ばしながら走る。

 

 

だれか…!!

 

 

 細道理から大通りへと出た少女が目にしたのは……

 

 

「女神の力、見せてあげる!!」

 

 

 何時も画面越しで見ていた紫水の輝きを身に纏う綺麗な女神の姿だった。

 

 

 

________

 

 

 龍悟達が屋敷に侵入した同時刻、響香と通形は近辺のパトロールをしていた。

 

 

 

 その時である…

 

 

「「「キャアアッ!」」」

 

 

 突如として街中に女性の悲鳴が響く。それも複数人の悲鳴だ、明らかにただ事ではない。

 

「事件!?」

「向かうよ、イヤホン=ジャック!」

 

 通形と響形は悲鳴の方へ急行すると、犯人らしき人物たちの姿を見つけた………見つけたのだが…

 

「…………先輩」

「うん…………(ヴィラン)(ヴィラン)だけど、なんて言えばいいのかな……」

 

 顔を顰める二人の視線の先には

 

「フハハハハ!オールマイトが消えたこの時代!」

「再び我等が走り出す!」

「そう!我等!!」

 

「「「疾風怒濤(しっぷうどとう)三兄弟!!」」」

 

 真っ昼間だというのにサングラスを身につけた黒づくめの3人組の不審者が道路を滑るように走っていた。しかも、最後尾にいる太った男、三兄弟の三男と思わしき彼は女性用の下着を頭に被ったりしてどこをどう見ても変態だ。

 

「変態だ、間違いなく変態だ!」

 

 できれば見間違いであってほしいと思っていた響香は目の前の変態達を認識し追いかける。詳しくはわからないが飯田と同じ移動系の"個性"だろう。

 

 

「疾風怒濤三兄弟?何処かで聞いたような………おもいだした!確か五年くらい前に鳴羽田に現れたって言う下着泥棒を繰り返していた変質者たちだ」

 

 

 鳴羽田……六年前の無差別(ヴィラン)に巻き込まれた事のある響香は暗い表情を一瞬浮かべたが女性の下着を奪い身に纏う変態を見て……

 

 

 遂に何かが切れた…サイヤ人なら間違いなく伝説の戦士に覚醒する程に…

 

 

「…………先輩、アイツ等の"個性"って何ですか?」

「え?確か3人とも『滑走』って"個性"だったと思う」

 

 確かに奴等は地面をまるでスケートリンクのように滑っている。響香は人混みから飛び出して一番前を滑る恐らく長男を蹴り飛ばした。

 

「グハァッ!?」

「「あ、兄者ーー!?」」

 

 長男が蹴り飛ばされ次男と三男は足を止めた。そんな彼等を峰田と同じく養豚場の豚を見るような絶対零度の瞳で睨む。そんな響香の放つプレッシャーは通形すら一歩下がらせる程であった。

 

「先輩………ウチにやらせてください」

「えっと……やり過ぎないでね」

 

 「ええ…大丈夫です」そう笑う響香だが、目はこれっぽっちも笑ってない。龍悟君でも止められないなと感じた通形は見守ることにした。

 

 

「くそ!不意討ちとは卑怯だぞ!何もノォッ!?」

 

 蹴り飛ばされた長男が立ち上がり叫ぶが会話をするつもりは欠片もない響香のイヤホンジャックが飛んできて慌てて避ける。

 

「おい、あれの子って……耳郞響香じゃないか!?」

「あの英雄祭で優勝した!」

 

 様子を伺っていた野次馬達が響香に気づく。響香は龍悟と並び今、最も注目を浴びているヒーロー候補生。そんな響香を生で見れたことに歓声を上げる。

 

 

 だが、それは変態達も同じだった。

 

「フハハハ!まさかあの雄英生、しかも上玉!いくぞ兄弟達よ!!」

「おう!兄者!!」

「喰らえ我等の奥義!!」

 

 

「「「ジェットストリーム脱衣!!」」」

 

 

 それは長男が捲り、次男が抜き取り、三男が纏う。峰田が見れば弟子入り間違いなしであろう神技だ。

 

 縦一列になって響香に迫る三兄弟、しかし響香のヒーローコスチュームはスカートではなくズボンだ、これでは無理ではないかと思ったそこの君、侮ることなかれ、なんとこの次男ジーパンの中にある下着を抜き取ることができるのだ。

 

 

「フハハハ!もらった!!」

 

 長男が捲ろうとしたその時、響香は長男の頭を踏みつけ飛び上がった。しかし彼は何処を捲るつもりだったのだろう……

 

「お、俺を踏み台にした!?」

 

 そのまま腕の増幅装置にイヤホンジャックを差し音波攻撃を次男に叩きつける。

 

「耳がー耳がーー!?」

 

 防御不可の音波攻撃を喰らいバランスを崩した次男は踏み台にされた長男に激突、最後に三男の後頭部に回し蹴りを叩き込み着地した。確かに彼等は某おっぱいドラゴンのような一流の変態だが、その戦闘力は素人とほぼ同等なのである。

 

「素顔もさらせない奴にウチのパンツはやれないわ」

 

 彼女の言葉に感激を受けたのか野次馬の女性達から拍手喝采が巻き起こる。

 

 しかし

 

「まだだ!」

 

 三兄弟が立ち上がったのだ!

 

「全国の変態、電波男、チェリーボーイ、妄想スキー達が俺達の帰りを待っているんだ!」

「そうだ、彼等の声が俺達に力を与えてくれる。お前達に聞こえるか?」

「疾風怒濤三兄弟よ頼む!希望を分け与えてくれ!どれでもイイ!ただ一枚のパンツさえあれば明日も生きていける、前を向いて胸を張って歩いていけるだ!!」

 

「「「そんな彼等の声が聞こえるか!!」」」

 

 なんと彼等、奪った下着をモテない男達に配っていたのだ。「このパンツはまさか!」と野次馬から聞こえてきたが気のせいだろう。

 

「こんなところで負けるわけいかん……のだ……」

「あ、話終わった?」

 

 しかし、響香はそんな彼の叫びを無視し完封なきまでに叩き潰すために究極化をして次々と光の戦乙女を作り出して彼等を囲んでいる。神話の物語のような光景に誰もが目を奪われる。

 

「女神の力、見せてあげる!!」

 

 響香の言葉に反応して戦乙女達は手に持つ光の槍を構える。

 

終末幻想・少女降臨(ラグナロク・リーヴスラシル)!!」

 

 放たれた無数の光が三兄弟を包み込んだ。

 

 

___________

 

 

「いや~峰田みたいなのが他にもいるとは」

 

 響香にボコボコにされた三兄弟が警察のお縄になるのを見届けている響香はそんな事を呟いた。

 

「これがプロの世界」

「違うからね、俺もあんな変態は初めてだからね。まぁ一応サーに報告しよう」

 

 通形の言葉に頷き移動しようとした時、グイグイと服が引っ張られる。

 

「?」

 

 不思議に思い視線を向けると…白い髪の少女がいた。

 それなら然程珍しくはないしもしかしたら響香のファンかもしれない。

 

 しかし、その格好が異質だった。入院患者が着るような、飾り気のない無地のワンピース。袖や裾から覗く手足には肌が見えなくなるほど包帯が巻かれて、足には靴すら無かった。

 

 そして何よりもその子の目を響香は知っている。オール・フォー・ワンに拐われて何をされるかわからない恐怖に震えて……それでも龍悟が助けに来ると信じていた。

 

 絶望の中に希望を求める、その瞳を……

 

 

 

_________

 

 

 きっかけは単純だ、少女を利用する奴が少女が逃げないように玩具を与えて警戒心を解こうとするが失敗、ならばと動画サイトを渡したのだ。

 

 そこ時に見せたのが響香の動画だった。

 

 キレイだった。紫水の輝きを身に纏い刀を振るう響香が綺麗だった。画面に映る響香は"ヒーロー"候補生だとコメントで知った。

 

 候補生が何かはまだ少女はわからないが"ヒーロー"はわかる。助けを求める人に手を差しのべ助けてくれる人だと。

 

 でも、その響香は画面の先……やっぱり自分は救われないと思った…諦めた。

 

 しかし、その響香は目の前にいる。それに気づいた少女は無意識に彼女の服を引っ張った。

 

 そして震える口を動かし言った、言いたかった言葉を…聞いてほしいかった言葉を………

 

 

「助けて…!」

 

 

 数秒の沈黙を破り膝を織り少女と視線を合わせた響香は少女の肩に手を置く、そして微笑みながら…

 

 

「うん、助けるよ」

 

 

 帰ってきた言葉は何よりも暖かく、とても優しいモノだった。気づいたら少女は抱きつていた涙をながしながら辛かったモノをさらけ出して。そんな少女を抱きしめながら響香は言った、龍悟が自分に言ってくれた言葉。

 

「もう大丈夫。ウチがいる」

 

 

 その言葉ともに流れてくる優しさを感じながら少女は意識を手放した。

 

 

 

 

_____________

 

 

「と言う訳なんです」

 

 そして現在、事務所で合流した龍悟達は通形の説明を聞きながら響香の膝で眠る少女………エリを見ていた。

 

「恐らく治崎の目的の中核をなすのが彼女なのだろう。そして奴はあの実験場で彼女を……」

 

 ナイトアイがこれまでの情報を整理する中、龍悟はエリの頬をなでる、その表情は暗いモノだった。

 

「辛かっただろうな」

「うん、安心したのか今はぐっすり眠ってる。ねぇ、龍悟……ウチは!」

 

 エリを起こさないくらいには抑えているが十分に怒りが伝わってくる。

 

「ああ、わかってる。絶対に許せねぇ…!」

 

 龍悟は窓を見つめながらその先にあるであろう死穢八斎會の屋敷を睨む。

 

 

 

 こうして龍悟達の長いインターン活動が始まった。

 

 

 

 

END

 

 

 




・疾風怒濤三兄弟

ヒロアカの外伝である『ヴィジランテ』に出て来る変態ヴィラン。黒い三連星のようなコンビネーションを繰り出す。

 


・ヴィジランテ
 ヒロアカ原作の5~6年前、個性強化の薬物「トリガー」によって当然一般人がヴィランになってしまう鳴羽田を舞台に非合法ヒーロー『ヴィジランテ』が活躍する物語。

このssの耳郞は小学生の時にその無差別(ヴィラン)に襲われたオリジナル設定があります。





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指切り

 

 

 その後、インターン終了の時間となったが響香が帰った後にエリが目覚めてパニックになる可能性と話だけでも聞きたい響香の意見を取り入れ龍悟達は残る事にした。

 

「雄英に連絡しておいた。帰りは送ろう」

「ありがとうございます、サー…エリちゃんについてはどうします?」

「…………暫くは此処で保護しようと思うが、もしかしたら耳郞君に保護された事がバレるかもしれない」

 

 そう言ってナイトアイが取り出したスマホには今日、響香が敵を倒した事がネットニュースにのっていた。幸いエリの姿は映ってないが他の画像には映るかもしれない、死穢八斎會も馬鹿ではない今頃必死に捜索しているだろう。

 

「これからはゴジータの瞬間移動で来てくれ」

「はい、わかりました」

 

 通形と共に今後について話しているその時、バブルガールが部屋に入ってくる。

 

「サー、エリちゃんが目覚めました」

 

 その言葉に大きく反応した二人はすぐさまエリが居る客室に移動する。客室に入るとお客様ようの豪華な椅子に響香と一緒に座っているエリがいたが知らないナイトアイと通形が入ってきたことに動揺して響香の服を掴み怯えてしまった。

 

「驚かせてすまない。私はサー・ナイトアイ。此処の事務所を運営しているヒーローだ」

「ヒー……ロー……?」

「そう、あの金髪のお兄さんや青いお姉さん……そして目付きの怖いお兄ちゃんも皆ヒーローなんだよ」

「目付きの怖いは余計だ」

 

 そう言って部屋の壁に寄りかかっていた龍悟が反応する。響香の説明でいくぶんか安心したのか警戒心は薄れたようだ。

 

「…………辛い事を思い出させる形で悪いが死穢八斎會に……治崎に何をされたか、できれば教えてほしい」

「!……あの……その……」

「すまない、辛い事はわかっている。言えないのなら言わなくて大丈夫だ」

 

 重々しく話を始めたナイトアイに対して予想道理、エリは辛い表情で震えだした。伝えようとしてはくれるが余程辛い過去なのだろう、うまく喋れていない。

 

「俺に任せてくれ」

「龍悟君、でも…」

「心配すんな先輩、彼女には何もしない」

 

 そう言って龍悟は静かにエリの頭に手をのせる。エリは一瞬怯えるが何もしないことに気づき龍悟を見つめる。龍悟は目をつぶりじっとしていた。

 

 それから数分龍悟はじっとしていたが目を開き

 

「…………辛かったな」

 

 そう言って龍悟はエリの頭を撫でる。そんな龍悟を不思議そうに見つめるが…

 

「俺達はアイツ等をぶっ潰そうと思ってる」

「え!?」

 

 龍悟の言葉にエリは目を見開く、治崎の恐ろしさを誰よりも知るエリにとっては信じられない言葉だった。

 

「だから心配すんな、お前をアイツ等に指一本触れさせねえ」

 

「………どうして?」

「ん?」

「どうしてそこまでしてくれるの?わ、わたし……呪われているって……わたしのせいで…みんな、不幸にな「だからなんだ」……え」

 

 龍悟を見つめるエリの瞳は今にも涙で溢れそうだった、そんなエリに龍悟は強く優しく言った。

 

 

 

「お前が助けてほしくて伸ばしたその手を掴むのがヒーローだ」

 

 

 そう言って龍悟は響香達の方を見る。

 

「だろ」

 

「勿論だし!」

「あぁ!」

「やれやれ、格好いい後輩だね」

「フッ」

 

 同意件だと笑う響香達、彼女達を暫く見つめていたエリは……

 

「あの、名前…」

「あぁ、まだ言ってなかったな。俺は孫龍悟、ヒーロー名はゴジータだ」

 

 

「ゴジータ…」

「あぁ、これからよろしくな。エリ」

「うん」

 

 

 その後、エリを響香に任せ龍悟は先程の行為で見ていたエリの記憶をナイトアイ達に話した。その内容はナイトアイ達を戦慄させるには十分だった。

 

「そんな…!酷い…!」

「あんな幼い子供を………アイツ等の血は何色だ!」

 

 口元を抑え戦慄するバブルガール、怒る通形……ナイトアイは龍悟の話した内容を冷静に整理していた。

 

「狂っているな……彼女を保護できたのは幸運だった。一刻も早く奴等を壊滅させる!十分な確信は得た、他事務所への説明資料の製作を始めよう。ミリオ、ゴジータもう遅い。耳郞君と一緒に雄英へ送ろう」

 

 

 そうして荷物をまとめ終わった龍悟達、響香は最後に不安そうなエリの頭を撫でる。

 

「響香お姉ちゃん……」

「そんな顔しないの……また会いにいくから」

「ほんとだって、ほら指出して」

 

 そう言って響香はエリの小指と自分の小指を絡ませる、そして…

 

 

「指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲まーす!指切った!!」

 

 

「?」

「これね、約束する時に使うヤツなの」

「約束?」

「そ、約束。必ず会いに来るから」

 

 

 

 そうして響香は龍悟達と共に雄英へと帰った、暫く指切りした小指を見つめていたエリは残ったバブルガールに持ち上げられる、とつぜんの事にビックリしたエリだが…

 

「じゃ、一緒にお風呂、入ろっか」

「……うん」

 

 温かい人の温もりを確かに感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同時刻・死穢八斎會

 

 

 

「ま、まってくれ!若頭!」

 

 仮面を被った男が必死に弁解をする、震える声の彼の仮面の下はきっと恐怖に歪んでいるだろう。

 

「………………」

 

 そして無言で歩みよる鳥の嘴のようなマスクをしたこの男こそ死穢八斎會の若頭「治崎廻」、別名「オーバーホール」だ。

 

「あのガキは俺が必━━━━━━」

 

 

 バシャッ、という音と共に男が赤い液体へ変わり、廊下の壁と床を鮮やかに染め上げる。オーバーホールの後ろに立つ側近が動揺しない所を見るに此処ではよく見る光景なのだろう。暫く静寂が世界を支配していたが……オーバーホールの手が小刻みに震え。

 

 

「何処へいった!?」

 

 オーバーホールが力任せに振るった腕が実験場にあった計器等を吹き飛ばす。エリは死穢八斎會の…オーバーホールによって管理されていた。しかしそのエリは先程の男が粗末な管理をしたせいで脱走、今だに見つかっていない。

 

「オール・フォー・ワンが消え、オールマイトも消えた!!敵連合だって傘下に加えられる!!ようやく動き出す時がきたんだ!!それなのに………アイツが居なければ始まらない!!何処に………何処に行った、エリ!!」

 

 声を上げ荒ぶるオーバーホール、側近と思わしき男が宥めようとするが………

 

「落ち着「落ち着けるか!!アイツが居なければ"アレ"が量産できない!何処へ行ったんだ"……お前はこの"病人"だらけの世界を変える俺の"道具"!持ち主の側から勝手に離れるな!!」

 

 周りにあるものをとにかく破壊するオーバーホール、その時重々しい機械音が鳴りドアが開けば、オーバーホールの部下である印の仮面を付けた赤ん坊のように小柄な男、死穢八斎會の本部長ミミックがそこにいた。

 

 その手には携帯電話が握られている。

 

 

「オーバーホール、電話」

 

 そう言うとミミックは携帯電話を差し出してきた。

 

「敵連合、死柄木からだ。この前の返事を聞かせてやる…と」

 

 その言葉を聞くとオーバーホールは暫く動きを止め携帯を受けとると、側近の男……クロノに命令する。

 

「……………まずは敵連合と話をつける。クロノどれだけ人員を使ってもいい…エリを探し出せ!!」

 

 それだけ言い残すと、オーバーホールはミミックを伴って廊下へと歩き出した。残されたクロノはすぐに部下に連絡する。

 

「何処へ消えやがった…!」

 

 そんなクロノの言葉が薄暗い実験場に響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして翌日、響香と共に教室へ入り席に付くと障子が…

 

「耳郞…お前の事がネットニュースに載っているぞ」

 

 そう言ってスマホを見せてくれる。其処には昨日の響香の活躍がのっていた。

 

「嬉しいんだけど……変態が相手だからな~」

「それでも活躍じゃないか耳郞君!」

 

 飯田の称賛に照れる響香、そんな響香に微笑みながらもクラスを見回すと……

 

「麗日はいないのか」

「あぁ、切島君や梅雨ちゃんもインターンで居ないようだな」

「後、常闇もインターンで九州に行っているぞ」

「そうか、皆頑張ってるんだな」

 

 そう言って龍悟は窓から見える青空を見つめていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その夜町中で巨大化個性の敵が二名争いその影響で町は破壊されていた。

 

 

 逃げ惑う民間人。

 

 

「敵グループ同士の抗争です!巨大化個性二名!!エスパ通りを巻き込み戦闘中!至急ヒーローをーー」

 

 

 警官が要請をしている中…

 

 

「エネルギー満タン出力30ねじれる波動(グリングウェイブ)!!」

 

 突然、横から放たれた衝撃波が二体の巨大敵を吹き飛ばした。

 

「なぁんだ!?」

 

 

「ねぇねぇなんで喧嘩するの?個性同じだから?変なの」

 

 

 空に浮かぶビック3の波動ねじれが"個性"の波動で敵を吹き飛ばした。

 

 

「今だよ!二人共!!」

 

 

 その言葉を聞き空に浮かぶ麗日(URAVITY)蛙吹(FLOPPY)

 

 

「「必殺!!」」

 

 

 瓦礫を麗日の個性で浮かせ蛙吹のベロで弾く…

 

 

「「メテオファロッキーズ!!」」

 

 

 瓦礫が隕石の様に降り注ぎ敵は沈黙した。地面に降りた二人を波動と一人の女性が迎えた。

 

「よかったーよ、ねぇ緊張した!?」

 

「指示どおり動けました」

 

「意外と落ち着いてやれたわ」

 

 

「ねじれが連れてくるだけあって二人共、筋が良いね」

 

 

 そう言うのは麗日達のインターン先、ドラグーンヒーロー“リューキュウ”…波動のインターン先、そして響香の救出作戦に参加したナンバー9と絶大な支持を受けるトップヒーローだ。

 

 

「「採用して頂きありがとうございます」」

 

 

「学生といえどインターンで来たからには立派に戦力、これなら“あの案件”も活躍できそうね」

 

「あの案件?」

 

 

 

 

 

 

「オールマイトの元サイドキック・ナイトアイからのチームアップ要請……指定敵団体【死穢八斎會】の調査及び包囲……敵連合に繋がるかもしれない大仕事よ」

 

 

 

 END

 




 
龍悟がしたのはフリーザー編で悟空がクリリンの記憶を見たのと同じことです。内容については先の話で明らかにします。

 後、忘れているかもしれませんがこのssのリューキュウやファットガムは波動や天喰と一緒に六章の耳郞救出作戦に参加しています。






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第七宇宙へ里帰り?

ゴジータ「…………このゴジータが恐怖で動けないとはな…!」
ベジット「ゴジータ……その……」
作者「まさか、ゴジータブルーにまで手を出してくるとは……どうなるんだ」
パラガス「もしハーツなんてオリキャラに負けたら、映画での人気が何もかもおしまいだ」
ブロリー「し、心配するな!お前はこの俺に勝ったんだぞ!俺があんなポッド出のオリキャラより下だと思っているのか!?」

ゴジータ「そ、そうだよな!?きっと圧倒するよな!?後一歩で時間切れになって終わりでその後に身勝手が倒すなんて事にならないよな!?」

((((…………駄目だ、全く否定しきれない))))


ゴジータのssを投稿する身としては是非ともハーツを圧倒してほしいです。





 

 

 エリを保護して数日、龍悟達は毎日事務所に顔出し様子を見に来ていた。始めは警戒されていたが次第に心を開いていったエリは少しずつ笑顔を見せるようになっていた。ナイトアイは現在証拠資料をまとめチームアップを要請している。

 

 そんなある休日の日、響香や轟達、何時もメンバーは龍悟に呼び出された。修行かと思ったが………

 

「あっちの世界に行ってくる。よかったら一緒に来るか?」

 

 それは予想を大きく超えた言葉だった。

 

「あっちの世界!?行けるの!?」

「あぁ、ビルス様に用事があってな。時の界王神様にアポをとってもらっだんだ、どうする」

「行く行く!!」

 

 目を輝かせる麗日は勿論、響香達も別世界に行けるとの事でワクワク感を膨らませているのがわかる。

 

「ホホホ、賑かになりそうですね」

 

 その時、音も気配もなくいつの間にか立っていた破壊神ビルスの付き人であるウィスが笑って龍悟達を見ていた。いきなりの事で響香達は驚いたが龍悟は特に気にせず話しかけた。

 

「迎えありがとよ、ウィスさん。これお土産のチョコケーキ、ビルス様と分けて食ってくれよ」

「お~!これはまた、美味しそですね~ありがとうございます。」

 

 龍悟はビルスへの捧げ物として買っておいたチョコケーキを渡す。ウィスは目を輝かせ受け取った、グルメな天使である。そんなウィスは龍悟にある事を伝える。

 

「そうだ。実は今、ビルス様の星である人間がいるんですよ~貴方達をあわせて10人、初めてですよ~こんなに大勢の人間を神の住まう星に招待するのは」

「それって誰なんですか?」

 

 拳藤が興味を持ち、ウィスに質問する。ウィスは微笑みながら答えた。

 

「悟空さんとベジータさん。知っての通り龍悟さん……ゴジータさんの元となった二人です」

 

 そのことに龍悟すら驚きを隠せなかった。

 

「驚いたな、アイツ等までいるなんて…会ったのか?」

「ええ、貴方と戦ったビルス様はサイヤ人に大変興味を持ちまして地球にいる悟空さんとベジータさんに会いに行ったんですよ。結果として、ビルス様は超サイヤ人ゴッドの悟空さんと戦えて満足して、今はあの二人に私が修行をつけているんです」

 

「ゴッドか……なぁ、その話聞かせてくれないか」

「ええ、移動しながら話しましょう。さぁ、皆さん掴まってください」

 

 ウィスの肩に龍悟が手を置き、その龍悟に響香達が捕まったのを確認したウィスは光のよりも速く、この世界とは別の世界の宇宙、『第7宇宙』へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 龍悟達の世界とは別の世界にある第7宇宙。その宇宙にはこの宇宙の破壊神ビルスが住む星がある。ここはその星の広い平野であり、その上空では黒髪のサイヤ人の二人が空を飛びながら組手を行なっていた。

 

「へへっ、また腕ぇ上げたなベジータ!」

 

 一人は、不敵に笑うサイヤ人、『孫 悟空』。バーダックの息子で地球育ちのサイヤ人であり、これまで数々の地球のピンチを救ってきた英雄。そして、破壊神ビルスとも一戦交えてから、この星で修行をさせてもらっている何処までも強さを求める男である。

 

「フン、いつまでも二番目に甘んじる俺ではない!!」

 

 もう一人の髪が逆立ったサイヤ人は『ベジータ』。惑星ベジータの王子であり、元々は地球を侵略しにきたのだが、悟空達や愛する者と触れ合っていく中、サイヤ人王家の誇りを持ちながら徐々に穏やかな心を作っていった。今は地球で暮らしており、悟空と共にこの星でビルスの付き人であるウイスに修行をつけてもらっている。

 

 そんな二人の組手をビルスは観戦していたが……

 

「おい、お前等!そろそろ止めろ!!ウィスがアイツを連れて来る!!」

 

 その叫びで悟空とベジータは動きを止めるとビルスの元へと降り立った。

 

「お!そろそろ来んのか!!いや~ビルス様に勝った"オラ達"か~。オラ、ワクワクスッゾ!!」

 

 悟空は龍悟が来る事にワクワクしていたが、それに対照的にベジータは何処か不機嫌そうだ。

 

「どうしたベジータ~?別世界のオラ達だぞ。興味ねぇんか?」

「黙れ!俺と貴様がフュージョンした奴だと~!ふざけるな!!この俺があんな恥ずかしいポーズをして貴様と合体した奴などこのベジータ様が叩き潰してくれる!」

 

「ベジータ、フュージョンの何が嫌なんだ?ポタラだって嫌がってよ~」

「黙れー!フュージョンもポタラも、もう二度やらんぞーー!!」

 

 そうベジータが一方的に怒鳴っていたが…

 

「来たか」

 

 ビルスの呟きに反応し、目線の先の上空を見ると眩い光がこの星に降り立ち、ビルス達の元へと歩み寄ってきた。

 

「久しぶりだな、ビルス様」

 

 ウィスと共に現れた龍悟がビルスに挨拶してすぐに響香達も挨拶をした。

 

「お久しぶりです、ビルス様」

「おや、君達も来たのか」

「はい、どうせなら多い方がいいと思いまして。後、チョコケーキなるもの貰いました」

「おお!随分美味しそうだ!!それで僕に用事ってなんだい、ゴジータ?」

「あぁ、実はー「オメエがゴジータかー!ホントにオラとベジータにそっくりだな~」………そうだな、挨拶がまだだったな」

 

 そう言って龍悟は二人のサイヤ人、悟空とベジータに視線を向ける。

 

「そうだ。俺がゴジータ、孫龍悟だ。よろしくな悟空、ベジータ」

「へへ、しかしオラとベジータがフュージョンするとそうなるんか~。ポタラで合体はしたんだけどな~」

「ポタラ?」

「あぁ、神様の道具でなオラとベジータが「言うな!貴様と合体など思い出すだけでもヘドが出るんだ…!」そりゃねぇだろベジータ」

 

 やはりベジータにとって悟空との合体は黒歴史のようで触れてほしくないのだろう。

 

「そうカッカすんなよベジータ」

「そうだぞベジータ」

「黙れ!貴様、どちらかと言えばカカロット寄りだな!!」

 

 端から見れば兄弟にしか見えない三人に響香達は面白そうに見ていた。

 

「おい、もういいか?」

「あぁ、悪いなビルス様」

 

 ビルスとウィスがチョコケーキを食べながら龍悟の要件を聞いている。響香達がそれを見ていると

 

 

「オッス、オラ悟空!オメエはゴジータの……」

「あ、はい。ウチは耳郞響香、龍悟の幼馴染みです。貴方が龍悟の元の……」

「おう孫悟空だ。そんでオメエ達もゴジータの仲間なんか?」

 

 興味を隠せない様子で聞いてくる。

 

「初めまして、僕は飯田天哉。龍悟君と同じアカデミアの生徒です」

「同じく麗日お茶子です」

「私は拳藤一佳です」

「轟焦凍」

「八百万百ですわ」

 

 飯田達が悟空に自己紹介しているとベジータが21号に近づく。

 

「貴様、人造人間か?」

「あ、はい。私は21号と呼ばれています」

「ほう、別世界の人造人間か、それに流石にゴジータに鍛えられた様だな。中々の気だ………しかし何故貴様から魔人ブウの力を感じる?」

「それは話すと長くなるのですが……」

 

 ベジータが響香達の力を確かめながら色々話を聞こうとすると…

 

「ーーーって訳なんだ」

「なる程ね……不可能じゃないよ」

「!、ホントか!」

「僕は破壊神だよ、できるに決まっているだろ。まぁそのエリって娘の気持ち次第だけど」

「あぁ、その時は頼むぜ」

 

 

「どうやら話は終わった様ですね」

「その様だな……ん、カカロット……まさか!」

 

 ビルスと龍悟の話が終わった様子を見ていたベジータは悟空が近づく姿を見てある事を察し急いで向かう。

 

「話は終わったんか?」

「あぁ、終わったぜ。………俺はお前だ、言わなくてもわかる」

 

 龍悟は悟空が何を言いたいか理解していた、それを聞いた悟空も好戦的な笑みを浮かべる。

 

「へへへ、じゃ…オラと戦おうぜ!」

 

 悟空が構えると同時に龍悟も同じ構えをとる。まさかの展開に響香達は唖然とするがベジータが先を越されたと思って焦りながら悟空に詰め寄った。

 

 

「おいカカロット!ソイツはこのベジータ様がぶっ倒すんだ!抜け駆けは許さんぞ!!」

「えぇ〜!?オラが先に言ったんだぞ〜ベジータ!!」

「黙れ!俺がやると言ったら俺がやる!!」

 

「子供みたい…」

「ホホホ、それがサイヤ人ですよ」

 

 ジト目で呆れる響香と楽しそうに見つめるウィス。そんな中、龍悟は不敵に笑いながら言った。

 

「別に協力して来てもいいんだぜ?何ならポタラってヤツを使っても……まぁ、お前達にそんなつもりはないだろうがな」

 

「当然だ…!他の奴の…ましてやカカロットの力を借りるなどこのベジータ様の誇りが許さん!!」

「オラも同じだ。やっぱ闘いは…自分の力だけでやりてぇもんな!」

 

 一歩も譲らない悟空とベジータの言葉に龍悟は嬉しそうに笑う。

 

「……ふっ…そいつを聞いて安心したぜ。別の世界でも「俺達」は「俺達」のままの様だな」

 

 

 龍悟は超サイヤ人2に変身し挑発する。

 

「こっちは融合してるんだ。"2対2"になったって文句はないぜ」

 

 

「…………わかっているなカカロット?貴様と組むつもりはない、俺様の邪魔をするなよ!」

「へっ、わかってるって!そんじゃいっちょやるか!」

 

 

 その言葉を聞いて悟空は超サイヤ人3にベジータは超サイヤ人2なる。

 

「ゴッドにならなくていいのか?」

「悪いな、それを習得する為に此処に来てるんだ!」

 

 

 そう言ってまずは悟空が仕掛ける。先制の右ストレートを放つも首を動かすだけで避けられ、続く連撃も龍悟に掠りすらしない。そこに横からベジータが飛び掛かり蹴りを叩き込もうとするが避けならばと地面に着地すると同時に踏み砕き、速度を乗せた拳を叩き込もうとするが受け止められ逆に蹴り飛ばされる。

 

 その隙に悟空が拳を叩き込もうとするが受け流され腕を掴まれ振り回される、ベジータの蹴りを躱し悟空を叩きつける。そして上空に飛び上がり「スターダストフォール」を放つ、放たれた気弾が拡散して星屑の様に降り注ぐ。

 

 立ち上がった二人は数発貰ってしまうがその場をなんとか逃れ目を合わせる。

 

「やるぞ、ベジータ!」

 

 二人は地面すれすれを飛んで、追撃してきた気弾をやり過ごす。だが、更に大量の気弾が二人の頭上から襲いかかってきた。ちなみに響香達はウィスが作ったバリアの中でそれを観戦していた。

 

「くそったれがあっ!」

 

 加速と減速を繰り返し、必死で「スターダストフォール」を躱し続けた悟空とベジータは背中合わせで技の構えを取りながら急ブレーキをかけ、振り返った。

 

「ギャリック砲!!」

「かめはめー!」

 

 二人が構えた両手のひらの間に強烈な気が高まっていく……そして。

 

「「波っ!!」」

 

 気合の声と同時に悟空とベジータの放つ「かめはめ波」と「ギャリック砲」が合体した気功波が龍悟に向かって伸びていった。

 

 

 それに臆する事なく逆に笑みを浮かべながらフルカウルを発動。超サイヤ人Ⅱになって右拳にありったけの力を込めて真正面に突っ込み右拳を掲げ、黄金の龍が立ち昇る。

 

 

「龍拳……爆発!」

 

 

 黄金の龍が真正面から悟空とベジータの渾身の気功波を受け止め消し飛ばした。

 

「「な!?」」

 

 渾身の気功波が消し飛ばされた事に驚きが隠せない二人はそのまま黄金の龍に飲み込まれ。近くの湖に叩きつけられ水飛沫が上がり静寂に包まれる。

 

「龍悟の勝ちか?」

 

 様子を見ていた轟が勝敗を決したのかと湖を見つめるが……

 

「違う……まだ、終わってない」

「耳郎さんの言う通り……どうやら面白い事が起こりそうです」

 

 響香が否定しウィスも頷くと龍悟を見る。龍悟も感じていた。湖の中で何かが変わった事を。ザアザアと音を立てて湖が波立ちはじめる。水が白く濁っているのは波だけのせいではなかった。波が立つ中心に悟空が浮かび上がって超サイヤ人3の激しいオーラが悟空の中に吸い込まれる様に消える。そして悟空が真紅の光に包まれる。それから数秒後、悟空の姿が見えてくる。龍悟が油断なく見つめる先は瞳は赤く、髪も燃えるような真紅に変わっていた悟空が居た。

 

「な、何!あんな超サイヤ人見た事ない!?」

「それに髪が赤いですわ!」

 

 今までの超サイヤ人とも4とも違う姿に驚愕する拳藤と八百万、それに対して響香には確信があった。今の悟空は究極化した自分と同じ神の気を纏っている。

 

「アレが……!超サイヤ人ゴッド!!」

 

 

 

 悟空はぐったりしているベジータを近くに下ろす。

 

「悪いなベジータ…後はオラにやらせてもらうぞ」

「チッ、好きにしろ」

 

 そして龍悟の高さまで飛ぶ、一方で対面している龍悟は笑みを浮かべる。

 

「それが超サイヤ人ゴッドか……」

「へへへ、一か八かだったんだけど上手くいって助かったぜ」

 

 そう言って再び構える。そこには笑みがあった。

 

 

「嬉しそうだな」

「あぁ、オメェは【ベジット】と同じくらい強い!」

「【ベジット】……そうかそれがポタラで誕生した。俺じゃない俺か……」

「おう、今の自分がオメェやベジットにどの位通用するか試してぇんだ!!」

 

 真紅の気を爆発させて攻撃を仕掛け、フェイントを織り交ぜて仕掛ける。先程より拳の重さと速さが格段に上がっており遂に悟空の拳が龍悟の顔面を撃ち抜いた。龍悟がよろめき、その隙を逃すまいと悟空が拳の連打を叩き込む。だが、龍悟は殴られた衝撃に身を任せて回転し、回し蹴りを仕掛ける。

 

 当たる瞬間に悟空は瞬間移動する事で避ける。しかし背後に龍悟が瞬間移動し殴ろうとするが、コレを予測していた悟空の裏拳が受け止める。

 

「やるな……!」

 

 龍悟が後方宙返りをしながら距離を取り、それと同時に舞空術と合わせ技で空中を滑るように悟空へと距離を詰める。射程圏内に入れば龍悟の高速の連撃が悟空へと襲いかかる。

 

「はぁっ!」

 

 しかし拳が届く寸前、悟空は鋭く気合いを発しながら手を突き出した。同時に龍悟の拳は見えない壁に阻まれた様にぴたりと止まっていた。

 

「なっ!?」

 

 初めて龍悟の顔が驚愕に染まる。拳だけではなく龍悟の体全体がビクともせず。よく見れば全身に悟空の待っている真紅のオーラが絡みついている。

「くっ!」

 

 なんとか逃れようとするが中々剥がれない。その隙に悟空は手を掲げ真紅の気弾を作り出し龍悟に叩きつけようと飛び上がった。

 

「!、ハアアアーー!!」

 

 

 それを見た龍悟は気を高め超サイヤ人のレベルを上げ超サイヤ人Ⅲになる。Ⅲになった余波で拘束は解け自由に動ける。

 

「ビックバン・アタック!!」

 

 そのまま龍悟は蒼穹の気弾…「ビックバン・アタック」を作り出し、悟空の気弾とぶつける。真紅の気弾と蒼穹の気弾がぶつかり合い激しく爆発した。

 

 

「…ゴッドの力…ここまでとは……だかな、最後に勝つのは俺だ!!次で決めてやる!!」

「へっ、気が合うな…!こっちもそろそろ決着をつけてえと思ってたトコだ……!!」

 

 

 お互い次で決着をつける為に気を高める。悟空は腰ために両手を置いて気を高め……

 

 

「ゴッド!か〜め〜は〜め〜波ぁあああっ!!」

 

 

 特大のかめはめ波を放つ。先程のとは違い真紅に輝いており威力は比べ物にならない。

 

「ゴッドを見せてくれた礼だ。俺も面白いモノを見せてやるよ」

 

 そして龍悟は笑みを浮かべ右手にかめはめ波、左手にかめはめ波を生み出し更にこれを中心で合わせる。すると2つのかめはめ波は混ざり合い真紅の宝石のような美しい光の球が現れる。

 

 二つのかめはめ波を凝縮して一つにし倍増するエネルギー…それをニヤリと笑い、龍悟は両手首を上下に組んで前方に突き出した。

 

 

「10倍……かめはめ波ぁああああああ!!!」

 

 

 二つの真紅のかめはめ波は周囲に尋常でない破壊をもたらしながらぶつかり合うが……

 

 

「俺の………勝ちだぁぁぁあ!!」

 

 

 龍悟の十倍かめはめ波が悟空のゴッドかめはめ波を打ち破った。そのまま悟空に当たるかと思われたが……突如として現れたバリアに阻まれて爆発する。

 

 呆然とした悟空の目の前には……

 

「そろそろ、終わりにしましょうか」

 

 杖を構えたウィスが笑っていた。

 

「コレもアンタには通じないか…ウィスさん」

「いえいえ、素晴らしい技でしたよ」

 

 龍悟が黒髪に戻り地面に降り立つ、ウィスも悟空と共に降り立った。

 

「それにして悟空さん。ようやくゴッドを習得できましたね〜」

「へへ、ウィスさんとゴジータのお陰さ」

 

 そう言って悟空も黒髪に戻る。そして観戦していた響香達がビルスと共に近付いてくる。

 

「なかなか面白い戦いだったよ」

「サンキューなビルス様」

 

 ビルスの称賛を受け取った龍悟。そんな時、時計を見ていた飯田が……

 

「龍悟君。そろそろ戻った方がいいんじゃないかな?」

「そうだな………居ない事がバレると不味いもんな」

「ゴジータ、帰っちまうんか?」

「そう言うことだ。たまに来るからその時に……」

「あぁ!次は負けねぇ!!」

 

 次に腕を組んで佇むベジータを見る。

 

「ベジータもな」

「ふん!見てろゴジータ!俺がゴッドを超えた力を手に入れ貴様を叩き潰してやる!!」

 

 その時、龍悟には4の悟空と共に見た青髪のベジータの姿が頭を過った。

 

「…………そうか、それは楽しみだ」

 

 龍悟はサイヤ人として、またもう一度戦う事を約束すると、響香達と共に元の世界へと帰っていった。

 

 

 

「今まで永い時を生きてきたけど……一番楽しい時を過ごせそうだ」

 

 

 そう呟くビルスの顔はとても楽しそうだった。

 

 

 

END

 

 

 

 




 と言う訳で今回は悟空達との出会いです。

今の時期は「神と神」と「復活のF」との間です。超のストーリーにどんどん龍悟達を絡ませる積もりです。

それでは次回で!


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作戦会議

 第七宇宙にから戻ってきて数日後、龍悟と響香の元にナイトアイからの召集命令がきた。

 

「龍悟…これって」

「あぁ、どうやら準備はできたようだな」

 

 互いに気を引き締めながら学校を出ると……

 

「お!龍悟、耳郎!お前らも今日行くのか!」

「そう言う切島も今日なんだな……聞いたぜ、ファットガムの所で活躍したそうだな」

 

 切島は現在、天喰の薦めでファットガムの元でインターン活動をしている。

 

「おはよー!三人も今日なのー」

「奇遇ね」

 

 そこに同じくインターン活動をしている麗日と蛙吹がやって来た。

 

「奇遇だな!みんな一緒なんて!」

「そうだな……じゃ、駅まで行くか」

 

 そうして駅まで全員で向かう、ここからはそれぞれの場所に向かうため違う電車に乗るのだが…

 

 

「え?皆同じなの?切島って関西じゃ……」

「あぁ、なんか集合場所がいつもと違うみたいでさ」

「私たちもよ」

「奇遇や~」

 

 

 同じ電車に皆で乗って。

 

 

「皆同じ駅!?」

「先輩と現地集合なのよ」

「ホントに奇遇や~」

 

 

 同じ駅に皆で下りて。

 

 

「………………行く方向も同じ」

「………………奇遇や…」

 

 

 同じ方向に皆で歩いて。

 

 

「そして同じ角を曲がる」

 

 

 龍悟がそう言って角を曲がると……

 

 

「久しぶり~龍悟君ー!!

 

 目的地に着くと其所にはビック3のメンバーが待っていた。波動が嬉しそうに龍悟に近づき楽しそうにスキンシップをとる。

 

「ねぇ龍悟…これって……」

「そう言うことだ」

「そう言うことだ!」

「波動先輩はそろそろ離れましょうね~!」

 

 

 そうして全員纏まってビルに入り、連絡と共に言われた階へと向かった。簡単な受付を済ませ部屋に入れば、大きめな室内に麗日と蛙吹が世話になってるリューキュウ、切島が世話になっているファットガム等の有名ヒーローから地方のマイナーヒーローまで大勢のヒーローが集まっていた。

 

「ねぇねぇリューキュウ、これ何するの?会議って言ってたけど~!知ってるけど~!何の?」

「すぐにわかるわよ。ナイトアイさん、そろそろ始めましょう」

 

「ええ、あなた方に提供して頂いた情報のおかげで調査が大幅に進みました。

 これより以前よりお話していた死穢八斎會と言う小さな指定ヴィラン団体が何を企んでいるのか。知り得た情報の共有と共に協議を行わせて頂きます」

 

 その声が部屋に響くと共に用意されていた席に腰をかける。

 それに便乗して……

 

 

「来てたのかじいさん」

「相澤先生も…!」

 

 此処に来ていたグラントリノや担任の相澤に龍悟達は集まった。

 

「協力を頼まれたから来たんだ。ザックリとだが事情も聞いている。言わなきゃならんこともあるしな…」

「今回には連合も関わってる。だから俺や塚内に声がかかったんだ」

「その塚内さんは?」

「他で目撃情報があってな。そっちに行ってる」

 

 

 聞きたいことも聞けた事で龍悟達も席に座る。バブルガールを司会にムカデの異形型の"個性"と思わしき人物がその補佐についた。

 

「先輩、あの人って?」

「センチピーダーさん、うちの事務所のサイドキックだよ」

 

 そして協議は始まった。

 

 ナイトアイ事務所はある事件を切っ掛けにの死穢八斎會の不可解な動きを察し調査を開始。調べて直ぐに不審な金の動きや、他組織への接触が見られたらしい。更に詳しく調べていくとヴィラン連合であるトゥワイスと接触したのを確認した。

 

 

「今、期待の雄英生とは言えガキがこの場にいるのはどうなんだ?」

 

 と、そこで在席していた錠前ヒーロー【ロックロック】が不服そうに愚痴る。

 

 

 

「何を言う!今回の件、スーパー重要参考人このこの二人やぞ!!」

 

 それにファットガムはばっと切島と天喰に手を差し向ける。話の流れを見ればこの間の大阪での活躍が関係しているのだろうが、切島は心当たりがないと言った表情をしている。しかしその隣の天喰は心当たりがあるのか自分の掌を見ながら何とも言えない顔をしてる。

 

 

「取り敢えず、初対面の方も多い思いますんで!ファットガムです!宜しくね!」

 

「「「丸くてカワイイ………」」」

「お!アメやろーな!」

 

 響香や麗日、蛙吹の呟きに機嫌をよくしたファットガムだがすぐに真面目な顔をして事の経緯を説明する。

 

 

「俺は昔、"個性"に影響を与える違法薬物を売りさばく連中をゴリゴリにブッ潰しとりました。せやから、それ関係の薬物はそれなりに色々と知っとるつもりです。せやけど先日の切島(烈怒頼雄斗)のデビュー戦!!今まで見たことない種類のモンがうちの環に撃ち込まれた!」

 

 ファットガムは手に持った飴を握り潰しながら語る。

 

 

 

 

「それが"個性"を壊す"クスリ"」

 

 

 

 

 

 ヒーロー達が一気にざわついた。個性ありきのヒーローにとって死活問題だ、当然の反応だろう。

 龍悟の隣ににいた通形も直ぐ天喰の安否を確認する。

 

「だ、大丈夫なのか!?」

「大丈夫だ問題ない。見てくれこの立派な蹄を」

 

 個性で変化させた牛の蹄を見せられ通形は安堵の溜息を吐く。

 

「回復するなら安心だ」

 

 ロックロックは安堵するがナイトアイはそうは考えてなく相澤に視線を向ける。視線を受けた相澤は首を横に振る。

 

 

「俺の抹消とはちょっと違いますね。俺は"個性"を攻撃している訳じゃないので。俺のはあくまで個性因子を一時的に停止させているだけだ。抑制してるだけで、ダメージを与える事は出来ない」

 

「病院で見てもらったんやが、その個性因子が傷ついとったんや。幸い今は自然治癒で元通りやけど」

 

「解析は?」

 

 

「当然、色々調べました。せやけど、撃たれた環の体は個性因子が傷ついとる以外異常なし。撃った連中はダンマリ!銃はバラバラ!弾も撃ったキリしか所持してなかった。━━━ただ、切島くんのお陰で中身が入った一発が手にはいった!!」

 

「……………………俺が!?」

 

 いきなり自分の話になる切島、麗日達が称賛するが…

 

 

「そんで調べた結果、ムッチャ気色悪いモンが出てきた…………人の血ぃや細胞や」

 

 

 ファットガムの吐き出された言葉に固まる。麗日達だけじゃない……周りのヒーロー達も言葉がでない。

 

「そして、その血から採取したDNAは………我が事務所が保護したエリと呼ぶ少女のDNAと一致しました」

 

 重々しく言うナイトアイに通形が拳を強く握り怒りに震え、響香は隣の龍悟の服を掴む。その顔は悲しげだった。

 

 

 若頭である治崎の"個性"は【オーバーホール】

 対象の分解・修復が可能。

 

 保護したエリには手足に夥しい包帯が巻かれていた。

 

「まさか………そんなおぞましい事を……」

 

 ランキングヒーローであるリューキュウすらも顔を青ざめていた。未だにわからない感じの切島に龍悟は……

 

 

「切島……つまり奴はそのエリって女の子を切り刻んで分解し血液を採取して修復……そしてまた分解を繰り返してーーー」

 

「っ!?」

 

 

「あの子を銃弾にして売りさばいているクズ野郎って事だ……!!」

 

 

 切島は戦慄した。話の内容だけでなく……龍悟が本気でキレていることに………こんな龍悟の顔を見たのは響香がオール・フォー・ワンに拐われた時、以来だった。

 

 

「幸いにもその少女を保護する事に成功。更に我々が集めた証拠と彼女の証言により逮捕状の準備を完了しました。皆様には逮捕協力をお願いしたい」

 

 そう言ってナイトアイが頭を下げるとファットガムが勢いよく立ち上がる。

 

「勿論や!!想像しただけで腸が煮えくり返る!!」

「ええ!やりましょう!!」

 

 それにリューキュウを続く。周りを見ればどのヒーローも反対のカオをしていない、誰もがヒーローの顔をしていた。

 

 

「警察との最終調整を済ませて日程が決まり次第連絡をします。各自準備の方をお願いします。今回の目標はオーバーホール『治崎廻』、及び違法薬物製造・売買関係者の逮捕…………ご協力、お願いします!!」

 

 

 

 

 決戦の日は近い!!

 

 

 

 

 

 

 

 

END

 

 

 

 




ゴジータ「祝!お気に入り登録2000人突破!!」
ベジット「よっしゃー!!」

ゴジータ「イヤー長かったな~ここまで……」
ベジット「そうだな……アニメも四期になってインターン編だ」
作者「そうだね……この作品を投稿してもうすぐ一年になるもんね」

ゴジータ「作者、今出て大丈夫なのか?最近行事が重なって忙しいだろ?」
作者「そうだね。なかなか投稿出来ないし、活動報告に上げた次回作予定の【僕のヒーローアカデミアDESTINY】もなかなか決まらないんだ」

ベジット「どんな所が決まらないんだ?」

作者「色々だよ。主人公のシンを緑谷に憑依転生させるのか否か……ステラとかの他キャラを転生させて登場させるか……それだと原作キャラを不在にさせなきゃいけない。緑谷、憑依がないならシンとレイだけで二人も不在にしないといけないのに他にも増やしたら……それはなんか違うって感じがするんだよ」

ゴジータ「確かにな~A組キャラを取り替えるにしても精々二人が限度だな」
ベジット「かと言ってB組にしたら空気キャラになってしまう。難しいな」

作者「爆豪をどうするかもあるからね。それに転生モノすらも初めてだから……手をなかなかつけられない。だからね2000人記念って事でシンアスカ転生作品を出そうと思う」

ゴジータ「マジが、何の作品にだよ」
作者「今話題のジャンプ作品、アニメ化もされて技の演出が神のヤツ!」
ベジット「大丈夫なのか?」
作者「アニメ一期までしか投稿しないから。それに12月になれば余裕も出てくるよ」

ゴジータ「そうか……じゃそろそろ終わりにするか。【絶対無敵のヒーローアカデミア】お気に入り登録2000人!!」



「「「ありがとうございます!!!!」」」



 新しく出す作品については早めに出せればいいと思っております。しかしこれからも登録が遅れると思いますが何卒これからもよろしくお願いします。

 





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約束はこの胸に

今年最後の投稿です!
よいお年を!!


 

 作戦結構は三日後、それまで龍悟達はそれぞれの事をしていた。気持ちを落ち着かせるもの、己を鍛えるもの、各々が各々のするべき事をし突入一日前となった。授業を終らせ寮へと帰ってきた響香達。各々の部屋に行こうとしたが相澤に呼び止められる。

 

「実は今日を合わせて三日間。ウチで面倒を見る事になった子がいる」

 

 相澤がそう言うと相澤の隣に龍悟が瞬間移動で現れその横には………

 

「エリです……」

 

 ナイトアイ事務所で保護していたエリが居た。何故エリが寮に呼ばれたのか。それは、明日の突入で事務所のメンバーは誰も居なくなる。その間エリは何処で保護するか議題となったが……更に警備が厳重となり多くのプロヒーローがいる雄英に決まり……龍悟が瞬間移動で連れてきたのだ。

 

「だから帰る時居なかったんだね」

「便利だよな~瞬間移動」

 

 事情を知っている響香達は納得したが他の皆はわからない。すこし困惑しているが委員長である飯田が少し怯え気味のエリにコンタクトをとる。

 

「僕はA組の委員長、飯田だ。短い期間だが仲良くしよう!」

「え、あの……よろしくお願いします」

 

 今まで接された事がないのだろう、飯田の雰囲気に戸惑いながらも差し出された手を掴む。それから解散となり皆が各々エリに自己紹介を始める。事務所でも響香達は積極的に関わり最初と比べて人とのコミュニケーションは良くなっていた。

 

「……じゅるり……十年後が楽し「おい、峰田」ヒッ」

 

 邪な事を考えていた峰田は後ろから聞こえる低いトーンの声に震えながら振り返ると。

 

 龍悟・超サイヤ人3

 究極・響香

 超銀河・お茶子

 切島・安無嶺過武瑠

 補食五秒前な梅雨ちゃん

 

 

「変な気は起こすなよ?」

 

 

「………はい」

 

 ヤバイ五人に釘を刺された。

 

 その後、終った自己紹介。十数人とのお喋りはまだエリには難しいだろう。少し疲れ気味だ、そんなエリを響香は持ち上げる。

 

「お疲れ、まずはお風呂だから一緒に入ろう」

「……うん!」

 

 やっぱりエリは一番響香と一緒がいいのだろう。少し頬が緩んでいた。

 

 

 

 

「つまり、その子は響香がインターンで保護したって事なんだ」

 

 入浴が終わり、夕飯を食べながら響香はA組女性陣の質問に答えていた。龍悟達インターン組がエリと面識があり、一番懐かれている響香に質問するのは突然だろう。

 

「うん、偶然見つけてね。身元も不明って言われてとりあえず此処で面倒を見ようって話になってね」

 

 そう言って響香は隣でデザートのリンゴを食べるエリを優しく撫でる。少し嬉しそうだ。

 

「だから響香さんに懐いているのですね」ソワソワ

 

 羨ましかったのか八百万がエリを撫でようとする。しかし、初対面な事もあってビクッ…と警戒されてしまう。

 

 

「…………」

「ほ、ほら。まだ出会ったばかりなんですから!これから進行を深めましょう!」

 

 沈んでしまった八百万をフォローする21号。もう彼女も立派なA組の一人だ。それを龍悟と切島は近くのテーブルで見守っていた。

 

「このまま響香以外とも仲良くなってくれれば」

「芦戸も居るんだ。大丈夫だろ」

 

 夕方を食べ終ったら各自自由時間になる。龍悟と切島は明日の突入の話をするために龍悟の部屋に向かう。

 

 

 一方で響香の部屋には麗日や蛙吹のインターン組と八百万、21号……そしてエリがいた。

 

「…………」

「ご、ごめんね。楽器だらけで……」

 

 響香の部屋は楽器だらけで申し訳なさそうに苦笑いを浮かべる響香。そんな時、楽器を見つめていたエリが響香に聞いてくる。

 

「響香お姉ちゃん……これ全部弾けるの?」

「え、うん。一通りはできるよ」

 

 それを聞くとエリは興味深く楽器を見つめる。それを見た響香は………

 

「…………一緒にやってみる?」

「!、いいの?」

「勿論!やってみよう」

「うん!」

 

 そして近くのギターを掴み一緒に弾こうとする二人を微笑ましそうに麗日達は見ていた。

 

「微笑ましい~」

「ええ、姉妹のようですわ!」

「少し羨ましいですね」

 

 21号は勿論だが、一人っ子の麗日と八百万には響香とエリのような関係が少し羨ましいようだ。

 蛙吹は家に弟や妹とエリ重ねてはいたが少し悲しくなる………あんな自分の弟達よりも幼い少女が想像もできない苦痛を味わっていたことに憤りを……それを与えてきた【死穢八斎會】への怒りを………

 

「八百万ちゃん、21号ちゃん。頼みがあるの」

「?、何ですか?蛙吹さん」

「頼みですか」

 

 蛙吹からの頼み事は珍しいので不思議に思った二人だが………

 

「明日……私達、早くからインターンにいかないといけないの」

 

 その一言で全てを察した。

 

「………はい、わかりました」

「エリちゃんが寂しくないようについてますから梅雨ちゃんもお茶子さんも安心してインターン……頑張ってください」

 

「………うん、ありがと!」

 

 こうして、小さな誓いをたてた四人はまた微笑ましそうに響香とエリを見つめていた。

 

 

 

 

_______

 

 

「どう、着心地は?」

「あぁ、バッチリだ。サンキュー"メリッサ"」

 

 一方で切島と話をすませた龍悟は瞬間移動でI・アイランドに来ていた。

 今、龍悟はヒーローコスチュームを着ていたがそれは従来とは所々変化していた。

 

 

 今まで着ていた物は黒く塗装され新しくなり中には黒いインナーと黒いズボンと主に黒で統一されており。左目には通信や状況を詳しく知るために用意してもらった主にフリーザ軍で使用されたスカウターを装着していた。

 

「そう言ってもらってよかった。自信作なのよ、その【コスチューム・ゼノ】は!」

 

 目を輝かせ語るメリッサ。あのI・アイランドの一件の後、メリッサは龍悟のコスチュームの改良を提案した。龍悟のコスチュームには何の仕掛けも機能もない少し頑丈なだけの服だ。

 

 それに龍悟のコスチュームは言ってしまえば半裸だ、これをきっかけに改善しろと、周りからも言われお願いしたのが今日完成し、取りに来たのだ。

 

「そのコスチュームは最新の素材で作って前のよりも丈夫になって、中のインナー部分でも一トンの衝撃に耐えられる。斬撃、刺突、銃弾に対して強く耐熱性もある優れ物よ!」

 

 自信満々に叫びながらメリッサは次にスカウターを指差す。

 

「そして龍悟君の要望に合わせて製作した【スカウター】だっけ呼び方?スイッチ押してみて」

 

 メリッサの言われた通りに押すとスカウターの極薄の液晶ディスプレイが光る。

 

「それはね、極薄の液晶ディスプレイ、超高性能超軽量コンピュータが一体となって警察等の様々な無線を傍受して情報を読み取り、ディスプレイに表示。また、SNSに投稿される事件や写真を分析し必要な情報だけを抜き取り龍悟君に伝える事ができるわ。勿論、最初の要望通りに仲間との通信やレーダー機能も搭載しているわ」

 

 

 メリッサの説明に目を見開く、龍悟の要望は仲間との通信や敵や民間人を探るレーダーだけだったのだがまさかこれ程の機能を搭載するとは。

 

「凄いな…!」

「でしょ!あっ、時間はいいの?結構話したけど」

 

 そう言われて時計を見ると夜の10時。明日の突入もあるそろそろ帰って寝るべきだ。

 

「そうだな……そろそろ戻る。ありがとなメリッサ」

 

 そう言ってA組寮へ戻るために気を探る。

 

「龍悟君……明日、頑張ってね!」

 

 メリッサからの応援。明日の事は勿論メリッサには伝えてない。もしかして表情に出ていたのか?

 もしそうなら……随分、人間くさくなったものだと苦笑した。

 

「おう、いってくる」

 

 こうして各々の夜は終わりを迎えた。

 

 

_________

 

 

 そして翌日、朝の6時。A組寮の前に龍悟達や通形達ビック3が集まっていた。

 

「ねぇねえ。それが新しいコスチュームなの!」

 

 皆コスチュームを着ており波動は新しくなった龍悟のコスチュームに興味心身のようだ。

 

「あぁ、コスチューム・ゼノだ」

「へぇ~!このインナー変な感じ。強く突くと固いのにゆっくり触るとふにふにする」

 

 指で腹や胸のあたりをつついている。

 

「波動先輩ずるい!ウチも触ります!!」

「私も!!」

 

 そう言いつつ突いてくる響香と麗日。女子三人に指でつつかれる龍悟……困惑が取れてなかった。

 

「わりい、遅れた……って、何やってんだ」

「………気にするな、これで揃ったし行くか」

 

 少し遅れて切島が来て出発しようとしたその時…

 

「ま、待って!」

 

 幼い声が聞こえてきた。まさかと思い振り返ると……エリが悲しげな表情で駆け寄って響香にギュッとしがみついてくる

 

「エ、エリちゃん!?どうして!?」

 

 驚愕する響香。 勿論、龍悟や通形達も目を見開いていた。

 

「どうやら、わかってたみたいですね。龍悟さん達が行ってしまう事が……」

 

 遅れて21号と八百万がやってくる。どうやら止められなかったようだ。

 

「いか…ないで!お姉ちゃん!」

 

 オーバーホールの恐怖を誰よりも知るエリからすれば、戦いに行く響香達が居なくなってしまう。そう考えるのは当然のことだった。

 涙を流すエリを抱きしまる響香は優しく語りかける。

 

「でもね。アイツを倒さないとエリちゃんはずっと怯えなくちゃならない……ウチはそんなの認めない。だからアイツを倒しに行く。エリちゃんが笑って生きていける様にするために」

 

 響香の胸に顔を埋め泣いていたエリはしばらくすると離れ小指を出し手きた。

 

「なら……ゆび、きり…して。帰ってくる……って」

「うん。勿論!」

 

 微笑みながら響香はエリの小指と自分の小指を絡ませる。

 

「そして帰って来たらさ。美味しいモノ食べに行こ。龍悟の瞬間移動なら何処でも行けるから!」

「俺はタクシーか……ふっ、それなら俺も帰って来なくちゃな」

 

 そう言って龍悟は小指をそえる。

 

「通形先輩達も行くだろ」

 

「勿論!いいお店を紹介するよ!!」

「私も行きたーい!!」

 

 通形や波動に続き、これから向かう全員が小指を合わせる。

 

 

 そして………

 

『指切りげんまん、嘘ついたら針千本飲まーす!指切った!!』

 

 

 

 

 

 

 

 絶対に帰るとこの胸に約束した。

 

 

END

 

 




予告!

 世界総人口の約八割が何らかの特異体質…“個性”を持って生まれる超人社会…これは最強の融合戦士が絶対無敵のヒーローになるまでの物語だ!!
 

死柄木「やっぱり生きてた…!」

 決してに触れてはならない最恐の敵!

?「君は八つの"個性"を奪え九つの"個性"を使う事ができる存在だ!」

《ナイン》!!


 映画編・第二章!!

 龍悟達、雄英高校ヒーロー科1年A組の生徒たちは、ナンバーワンヒーロー・オールマイトの跡を継ぐ「次世代のヒーロー育成プロジェクト」の一環として、日本のはるか南に位置する那歩島へやって来る。

 其所で出会った二人の姉弟。

活真「ヒーローが一杯!ゴジータも居るよ!!」

真幌「でも、こんな小さな島で事件なんて起こる訳ないのに」


 そんな時…


ナイン「邪魔をするなら殺す……遊びは終わりだ!!」

スライス「実現する…私達の新世界が!!」

響香「まるで…オール・フォー・ワン!!」
ナイン「この"個性"……奪う価値がある!」

切島「何だコレ!?」
マミー「包帯に巻き付かれた者は拙者の意のままに動く!!」

キメラ「歯ごたえねぇな!!消えろ!!」
轟「クソ!」
八百万「轟さん!?」


 従来する最恐の敵達……しかしそれは……

トランク「時の界王神様!?」
時の界王神「不味いわね…!何でアイツがこの世界に居るのよ!?」


 更なる最悪の余興に過ぎなかった。

?「見つけたぞ。サイヤ人!」
龍悟「お前は…!?」

ベビー「俺は……ツフル王、【ベビー】だ」


 最恐を取り込み…最悪の王(ベビー・ナイン)が降臨する!!

ベビー・ナイン「この島の全ての民達よ!ゴジータを探し出せ!!」


龍悟「奴の狙いは俺だ。お前達は活真と真幌を連れて島を「龍悟、ウチ等は仲間でしょ。そんな選択しないから」……全く、馬鹿な奴等だ」


 立ち向かうのは!!

龍悟「いくぞ皆!!」


 雄英高校1年A組!全員集結!!


A組『PLUS ULTRA(プルスウルトラ)!!!!』


轟「お前を止めるのは!」
八百万「私達ですわ!」


麗日「戦おう!!」
飯田「あぁ!!」

切島「俺もいくぜ!!」


 そして目覚めろ!!

真幌「響香ー!!」
活真「ゴジータ!!」


 神の御技!!

時の界王神「まさかアレは!?」




ゴジータ・?「「さぁベビー。お前の罪を……全て数えろ!!」」


 ヒーローよ一つになれ。


ベビー・ナイン「俺様にたてつく存在は一人残らず殺す!!」

ゴジータ・?「「この世界を一人で生きてる奴なんで居る訳ねぇだろ!!」」


 最悪を越えろ!!



劇場版・絶対無敵のヒーローアカデミア

【ヒーローズ・ヴィクトリー!!】




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八斎會突入作戦開始!!

今年もよろしくお願いします!!


 

 

 エリ達と別れてから 龍悟達は警察やヒーロー達と合流し改めて自分達の役割を確認し、警察の人から渡された八斎會の構成員リストをチェック。最後の打ち合わせを済ませた。

 

 そうして遂に午前8時30分に八斎會突入作戦が開始された。

 しかし、相手もバカではない、これだけのヒーローと警官隊に囲まれているのだ。奇襲の一つでもしてくるだろう。

 

 そして実際に八斎會はするつもりだったのだが……

 

 

「スターダストフォール!!」

 

 龍悟が放つ星屑の気弾が……

 

「ハートビートファズ!!」

 

 響香の心音衝撃波が………

 

「超銀河エクスプロージョン!!」

 

 麗日の流星群が………

 

「グリングウェイブ!!」

 

 波動の衝撃波が………

 

 

 

 中庭にいたヤクザ達を一掃した。

 

 結構乱暴かもしれんが相手は小学生にも満たないエリに非人道的な実験を繰り返して来た連中だ。情けをかけるつもりはさらさらない。制圧した玄関の警護を麗日や波動達、【リューキュウ事務所】が担当し……

 

「行け!行け!!まっすぐ最短で目的地(治崎の元)まで!!」

 

 龍悟達は屋敷へと突撃する。時々出で来るヤクザ達を殴り飛ばしながら突き進む。

 

「怪しい素振りどころやなかったな!!」

「俺ァだいぶ不安になってきたぜオイ!始まったら進むしかねえがよ!!」

 

 ファットガム達の言う通り治崎はぶん殴るつもりだったが組一丸になって抵抗するとは思わなかった。

 

「盃を交わせば親や兄貴分に忠義を尽くす。この騒ぎ…そして治崎や幹部が姿を見せない。今頃地下で隠蔽や逃走の準備中だろうな」

 

「忠義じゃねぇ!そんなもん!!子分に責任押し付けて逃げ出すなんて!!」

 

「よう言ったレッド!!」

 

 そうして屋敷の中を突き進むとナイトアイの制止を求める声を受けて、ある掛け軸の前で全員の足が止まる。手早くそこに置いてあった花瓶を横へずらし、ナイトアイは板敷きに手を押し当てる。

 

 

 

「この下に隠し通路を開く仕掛けがある。板敷きを決まった順番に押さえれば━━━━」

 

 

 ガチリという音が聞こえると同時。掛け軸の掛けてある壁が音を立てて横へとずれていく。

 聞いた話によれば龍悟達が待機している間に偶然ナイトアイが組員を捕まえ、予知の力で地下室の入り方やら構造やらをある程度知ることが出来たそうだ。

 

「…………バブルガール!!」

 

 隠し扉が開ききろうとした時。センチピーターが強い口調でバブルガールの名前を呼ぶ。すかさず構えたバブルガールの前にヤクザが怒鳴り声をあげながら突っ込んできた。

 

「一人頼む!」

 

 スーツから覗くセンチピーターのムカデ手足が伸びる。二人のヤクザは抵抗する間もなく、ムカデな腕に巻き付きつかれ拘束された。残った一人はバブルガールに泡で目潰しされた後、関節を綺麗に極められて仕留められた。

 

「追ってこないよう大人しくさせます!先行って下さいすぐ合流します!」

 

 バブルガールの声に止まっていた足が再び駆け出す。ナイトアイを追い掛ける形で地下室へと続く階段を降りていって直ぐ、予定ルートが壁で防がれていた。

 

 龍悟はすかさずスカウターを起動させる。スカウターには渡された屋敷地下の地図データがある。確認してもも通路は存在してる。スキャンしてみると壁の先に空洞がある。

 

「ビッグバン・アタック!!」

 

 龍悟が放つ【ビッグバン・アタック】が壁を粉砕すると情報通り通路が見える。

 

「先に進むぞ」

 

 いきなりの事に唖然とする突撃チームだが龍悟の言葉で再び駆け出そうとした時………通路が粘土みたいに歪んだ。

 

「道がうねって変わってく!!これは、治崎じゃねぇ…逸脱してる!考えられるとしたら、本部長『入中』!」

 

 警察の人が口にした人物に覚えはある。スカウターが表示したデータには自らが入り込んだ物を自在に操る【擬態】の個性。

 

「これもう擬態ってレベルじゃあないですよ!!」

「かなりキツめにブーストすれば……できない事はない。地下を形成するコンクリに入り込んで【生き迷宮】となってるんや!」

 

 響香の最もな疑問にファットガムが答える…が……

 

「っ!?避けろ響香!!」

「え……!?」

 

 何かに気づいた龍悟が声を張り上げるが既に遅かった。右側の壁が突然一気に盛り上がり響香に迫る。左側には穴が空いており一人ずつ分散するつもりだ。

 

 避けられないと悟った響香を切島が突き飛ばした。

 

「っ!?レッド!!」

「切島!?」

 

 響香は無事だが変わりに切島が穴に押し出される。

 

「俺なら心配すんな!!龍……いや、ゴジータ!!イヤホン=ジャック!!俺の分まで、殴っーーー」

 

 最後まで切島の声は聞こえなかったが…………

 

「あぁ、勿論だ!」

「切島の分もぶちのめすから!!」

 

 その思いは伝わった。しかし、刻一刻と歪んでいく通路。このままでは通路を自由に変えられ治崎に逃げられてしまう。

 

「ゴジータ!治崎は!?」

 

「見つけた!何時でも行ける!!」

 

 ナイトアイの言葉に指を額に当てて答える龍悟、既に治崎の気をとらえ瞬間移動できる。

 

「こうなってはスピード勝負だ!イヤホン=ジャック、ルミリオン!!ゴジータの瞬間移動で治崎を捕縛しろ!!我々も後で追う!!」

 

 突撃チームのブレーンであるナイトアイの指示はこの状況では最善の策だった。すぐにイヤホン=ジャック(響香)ルミリオン(通形)ゴジータ(龍悟)の肩を掴む。

 

「いくぞ…!」

「うん!」

「あぁ!」

 

 そして、龍悟達は治崎の元へ瞬間移動した。

 

 

 

ーーーーー

 

「ハァ…!ハァ!……イテェな…!」

 

 一方で分散されてしまった切島は放り込まれた部屋の壁にめり込んでいた。腕から血は流れ息が荒く負傷しているのが見てわかる。

 

「ははっ!すげぇなお前!!よく立ってられるぜ!まだ行けるよな!?」

 

 そんな切島に上機嫌に近づく男。顔全体を覆う系の鳥の嘴マスクに筋肉が浮かび上がるぴっちぴちのシャツを始め、ガタイの良さや拳に装着されたグローブをみれば明らかに近接戦闘よりの奴だと理解でき彼が切島を吹き飛ばしたのだろう。

 

(………安無嶺過武瑠(アンブレイカブル)でも防ぎきれねぇ……割れてやがる)

 

 

 筋肉質の男……『乱波』の弾丸のようなラッシュに安無嶺過武瑠(アンブレイカブル)は破れた。それでも何時も龍悟にボコボコにやられているので耐えられない訳じゃなく殴り返そうとしたのだが……

 

 切島は乱波の隣に立つ和服を着た、目を瞑る嘴マスクを見る。あの男の個性はバリアを張ることができ、それで防がれてしまった。

 

(あのバリアを破るには……【二重の極み】しかねぇ)

 

 龍悟に教えてもらった破壊の極意なら確実にあのバリアを突破できる。

 

 しかし、問題は放つために拳の間合いに入らないといけないこと、そしたら乱波のラッシュを受け続けなければならない。更に【二重の極み】でバリアを破壊できても中にいる二人は無傷。再びバリアが張られる前に盾役の『天蓋』を倒し乱波とのタイマンに勝利しなくては勝ちにはならない。

 

(やるしかねぇ……下手すりゃ死ぬがーーーーーやらなきゃ確実に死ぬだけだ!!)

 

 腹を括った切島は気合いの雄叫びを上げて乱波に突っ込む。

 

「オラァーーーー!!」

 

「いいぞ!!お前!!」

 

 そして始まる嵐のような打撃。すぐに喰らった拳の数も分からなくなり聞こえるのは拳圧が巻き起こす風の音。体に感じるのは拳を叩き込まれた痛みだけ。

 

 それでも切島は一歩ずつ確実に迫って来ていた。

 

「馬鹿な!?防ぎきってるというのか!?」

(んな訳ねぇだろ…!めちゃくちゃイテェわ!!)

 

 天蓋の言葉を心の中で否定する。安無嶺過武瑠(アンブレイカブル)を発動しているが二、三秒で破られ割れているのをすぐに硬め、痩せ我慢で耐えているだけだ。

 

(だがよ………あの子(エリちゃん)は最もイテェ目にあってんだ!!)

 

 非人道な実験を何年もさせられ続けていたエリの痛みは計り知れない。

 ならば自分が今受けている数秒の痛み等痛いの内には入らない!!

 

 そして遂に切島の射程圏内に入った。拳を振りかぶる切島を見て盾役がすぐさまバリアを張る。

 

「バリアは!?」

「出すに決まってるだろう」

 

 乱波が天蓋に抗議の声を出すが涼しい顔で受け流す天蓋。自分のバリアは破られないと慢心した天蓋を笑いながら切島は破壊の極意を放つ。

 

 

「二重の極み!!」

 

 

 バリッ!!そんな鈍い音と共に切島の拳が天蓋のバリアを破壊した。

 

 目を見開く天蓋、破られるとは夢にも思ってなく決定的な隙をさらした。

 

「!?まさかっ、我がバリアをー「烈怒頑斗裂屠(レッドガントレット)!」ーぐッッッッ!?」

 

 すかさず切島の拳が天蓋を撃ち抜き天蓋の意識は途切れた。動かなくなった天蓋を部屋の隅に放り投げ、残った乱波に拳を向ける。

 

「ハァ…ハァ…!後はお前だ!!」

 

「……っつははっ!すげぇな!!最高だぜ!!本当に、たまんねぇ!!お前!!!!」

 

 仲間が倒されてもお構い無し……いや、一人になってからのほうがやる気に満ちている。

 

「やっと大好きなタイマンになったんだ!!すげえ血だらけでもイケるなよな!?」

 

 乱波の言う通り、切島は殴られ割られで全身から血が流れている。それでも切島は笑っていた。

 

「ヘッ!逆に感謝してるぜ、条件揃えてくれてよ!」

 

 次の瞬間、切島の体は"赤い何か"がを纏った。

 

 きっかけはA組の皆で特訓をしていた時だ。切島は血を流してお構いなしに特訓をしていたが不意に気づいたのだ………流れている血が硬化している事を。

 

 切島の個性【硬化】は自身の体を硬化させる皮膚や筋肉だけでなく骨や内臓も……ならば血も硬められる。これなら止血になると思ったが、同時にある事も考えた。

 

 もし強敵と戦い全身あちこちで出血しまったらすぐに血を硬めて止血しよう。そして同時に全身についた血を硬化するば……それは【鎧】になるのではないかと。

 

 

列怒頼雄斗 ・漢血の鎧(レッドライオット・ブラットアーマー)!!」

 

 

 それは身体についた自身の血を硬めて作られた真っ赤な鎧。鎧の中に笑い切島は拳を構える

 

「さぁ……第二ラウンドだ!!」

 

「ははっ!良いぜ、ぶっ殺してやる!!しっかり受け止めろヒーローさんよぉ!!」

 

 再び乱波のラッシュが始まるが切島はビクともしない。漢血の鎧(ブラットアーマー)は血で作られた為か安無嶺過武瑠(アンブレイカブル)の数倍の強度を持ちその上で中の切島も安無嶺過武瑠(アンブレイカブル)を発動しており、もはやパワー特化型の"個性"の攻撃すらダメージを与える事は困難。

 

 ラッシュを受けながらも切島はお構いなしに乱波を殴り飛ばす。鎧を纏った拳を喰らえば無事ではない、しかし乱波もお構いなしに殴りかかる。

 

 切島は次で終わりにするために拳を振りかぶる。思い出すのは憧れの漢気ヒーロー“紅頼雄斗(クリムゾンライオット)”の言葉。

 

 

『俺はヒーローだから人々を守る!』

 

 龍悟が希望のヒーローならば自分は守れるヒーローになると決めた!

 

「俺のこの手が真っ赤に染まる!!」

 

 

 

 

『一度心に決めたなら、それに殉じる!!』

 

 そうだ、心に誓ったらな決して退くな!!

 

「一歩も退くなと轟き叫ぶ!!」

 

 

 

 

 

『ただ後悔のねぇ生き方!それが俺にとっての漢気よ!!』

 

 もう、後悔をしたくないのなら!!!

 

「轟破!!」

 

 

 

 

 それは誰でもない切島自身が悩み、考え、編み出した技。守護と破壊をあわせ持つ矛盾の一撃。

 

 

「レッドブレイク!!」

 

 

 

 

 轟音が空間中に響き渡った。

 

 切島の拳を叩き込まれた乱波の姿は一瞬で部屋の端の壁にまで吹き飛び、拳圧で巻き起こった砂埃がそれを隠してしまう。

 

 やがて姿が見えたがそこにはピクリとも動かず気絶した乱波の姿があった。

 

 それを見て戦闘が終わったことを理解して今頃敵の頭と戦っているであろう龍悟達に聞こえなくても言った。

 

 

「…………勝てよ!」

 

 

 

 

 

END

 

 




最後までお読みいただき、ありがとうございました。

宜しければ、感想や評価などよろしくお願いします。


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イレギュラー介入

 遅れてしまい申し訳ありません。




「ナイトアイ!アイツ等は大丈夫なのか!?」

 

 龍悟達を先に行かせ薄暗がりの通路を全速力で走り抜けるナイトアイ達。先頭を走るナイトアイに続く刑事が声をあげる。アイツ等とは瞬間移動で治崎を追った龍悟達の事だろう。

 

「強い事は理解しているがさっきのヴィラン連合みたいな隠し戦力があるかも知れねぇ!!」

 

 そう、ナイトアイ達は先程ヴィラン連合の二人の奇襲にあい浅くない損害を受けた。他のメンバーがいる可能性も、それ以外の戦力が控えてる可能性もある。

 

「アイツ等なら心配ないですよ」

 

 しかしそれでも問題ないと語る相澤の表情は、この数ヶ月龍悟達を生徒として見てきた教師の顔だった。

 

「その通りです。先を急ぎましょう」

 

 

 

__________

 

 

 一方でその龍悟達はナイトアイや相澤の言葉通り目立った外傷もなく治崎達を追い詰めていた。

 

 瞬間移動で治崎の元へたどり着いた龍悟達はすぐに治崎達の確保に動いた。勿論治崎達も反撃してきたが龍悟達や通形に勝てる筈もなく護衛の三人は撃破され治崎も外傷が目立つ。

 

 普通に見れば治崎には勝ち目はないが治崎の顔に浮かんだのは反省でも諦めでもなく、純粋なまでの怒りだけだった。その怒りは龍悟達と言うより……響香一人に向けていた。

 

「腸が煮えくり返る思いだ…!予定通り進まない事も、こんな手に出ないといけない所まで追い込まれている事も!何度も汚い手で触れられた事も……!何より……お前のような小娘に全てが崩されたのが!!!!」

 

 

 確かに龍悟達は治崎達を追い詰めたが損害はあった。護衛の一人の"個性"は【強制的に喋らせる】モノだった、これでエリが響香によって保護された事がばれてしまった。

 

「…………ウチはタダ…助けてって手を伸ばしたエリちゃんの手を握っただけ」

 

 睨まれつつも平然と言い放つ響香。オール・フォー・ワンに囚われていた彼女にとっては微風程にも感じないだろう。

 

「ふざけるなよ!そんな力を持っているから、そんな台詞を吐けるのか?病気だよ…お前も、隣のガキも、どいつもこいつも…………!!」

 

 

 怒号と共に治崎の指が地面に触れる。

 

「だから治してやるんだよ!この全てを!戻してやるんだ、この世界を!!俺の、手で!!邪魔をするなァ!!」   

 

 部屋中の地面と壁の表面が粉々に砕け散る。直後、部屋中から無数のトゲが、石柱が、ところ狭しと現れる。

 

 治崎の"個性"は【オーバーホール】

 対象を分解して修復が可能なこの力を使ってこの空間の物質を好きなように作り替えたのだ。

 

 迫りくるトゲや岩柱、しかし……

 

「ハートビートファズ!!」

 

 響香のイヤホン=ジャックから放たれた心音衝撃波が全ての攻撃を破壊した。

 

「………アンタが何をしようと、どう言おうがウチは知らない……アンタを倒してエリちゃんを安心させる事には変わりないから!!」

 

「くっ………!」

 

 響香の威圧感に圧され後退る治崎。周りの環境を作り替え攻撃する治崎の攻撃方法では、周囲に心音衝撃波を叩き込み破壊する響香の【ハートビートファズ】との相性は最悪……

 

「勝負あったな」

「もう諦めろ!!治崎!!」

 

 加えて龍悟と通形も居る。どう足掻いても治崎に勝ち目はない。

 

 しかし、龍悟達は油断はしていなかった。龍悟はスカウターからの通信でヴィラン連合が居ることを知り誰かが介入する事を警戒して気で周囲を気を探り。

 通形も追い詰められたヴィランが何をするのか、考えられるケースを予測して警戒していた。

 

 

 しかし、気づけなかった。

 

 

 

「フフフ、素晴らしい憎悪だ」

 

 

 

 別世界からのイレギュラーに……

 

 

「っ!?ドミグラ!!」

 

 突如として現れたドミグラに龍悟達は驚愕する。通形は未知なるイレギュラーの介入に唖然とし、龍悟と響香はトワと同じく歴史の改編者の登場に驚愕する。

 

 如何に龍悟(ゴジータ)とて別世界から介入には気づけない、いつかくることは予測していたがまさかこの状況で介入するとは……

 

「このまま終わらせるには勿体ないのでね、私が面白くしてあげよう」

 

 そう言って杖を振るうドミグラ、変化は治崎に現れた。

 

 

「……あああアアアァァァ!!!!!」

 

 

 治崎が禍々しい気を発し黒いオーラを纏っている。ヴィラン連合襲撃の時にトワがやった強制強化の魔術だ。

 

「っ!?何を!!」

「トワと同じ強化魔術!!」

 

 始めての現象に通形も動揺している。一方で経験のある響香は警戒を強めていた。

 

「同じか………それは芸がなくていかんな」

 

 するとドミグラは側で倒れていた護衛達を治崎の側に移動させ。

 

 

 彼等四人を破壊した。

 

 

 

「え?」

「なっ!?」

 

 鮮血が飛び散り治崎の上半身が消え他の三人は跡形もなく消えてしまった。あまりに常軌を逸脱した光景に響香と通形は唖然とし龍悟も目を見開いていた。

 

「フフフ、"個性"と言うものは面白い。工夫次第でこうも変わるか」

 

 ドミグラは治崎を魔術で操作して治崎(自身)と護衛の三人を破壊して……

 

 

「融合させた……!?」

 

 

 現れた治崎は身体中に黒い模様が浮かび両腕は歪になり背中から四つの異形な腕が生えており、まさに化物と化していた。

 

「フフフ、面白い光景であるが……余所見はいけないなゴジータ」

 

 

 

 ドミグラがそう言ったその時、龍悟の足元に魔方陣のようなものが浮かび上がる。相手はトワすらも超えた、神にもっとも近い魔神。流石の龍悟も治崎の変貌に気をとられていては気づけなかった。

 

「っ!?しまっーー」

「龍悟!?」

 

 

 魔方陣が輝き龍悟を飲み込む、光が消えると……そこに龍悟の姿はなかった。

 

「なっ!?龍悟君が消えた!」

「ドミグラァァ!!」

 

 消えた龍悟。間違いなくドミグラが何かしらしたことは明らか、あっちの世界の事を知る響香や始めてあった通形でもそれは理解した。

 

 響香は究極化となってドミグラへ気で形成した剣を振り下ろす。

 

「龍悟を何処へやった!!」

「彼が居てはすぐに終わってしまうからな。アッチの世界へと行ってもらったよ」

 

 それを杖で受け止めるドミグラ。そのまま鍔迫り合いが続くが……

 

「避けろイヤホン=ジャック!!」

「!?」

 

 通形の声に反射的に反応して下がるとさっきまで居た場所に異形と化した治崎がその強靭な腕を振り下ろしていた。

 

「では私は失礼しよう。さようなら」

「待て!龍悟を!!」

 

 響香がそう言うが聞く筈もなくドミグラはこの世界から消えた。

 

「………………きっと龍悟君なら大丈夫だ。耳郎ちゃん、これが終わったら詳しく聞かせてくれ」

 

 通形の言う通り龍悟は飛ばしたと言ったらならば生きている。

 そして龍悟と響香がドミグラと面識があることは先程のやり取りでバレてしまった。言い訳はできない。救いは通形が信用できる人間と言う事だろう。

 

「………わかりました、まずは!!」

「あぁ!コイツを片付ける!!」

 

 

壊理(エリ)を返せェェェエ!!!!」

 

 

 ドミグラの洗脳は解けたのだろうが強制強化により汚染された精神から発せられる言葉はおよそ人の言葉ではなかった。

 

「さっきよりも速い!!」

「それだけじゃない!怪我や疲労も回復……いや、修復されている!!」

 

 治崎の攻撃を回避しながら冷静にこの混沌と化した状況を理解する。

 化物と化した治崎の攻撃は先程よりも圧倒的に速くさらに六つに増えた腕で手数も増えている。更に触れられたら先程見た光景のように分解されてしまう。

 

「だけど、先程よりも単純だ!!」

 

 透過を駆使して攻撃を無力化して懐に踏み込んだ、そして人体の急所である脇腹に鋭い一撃を叩き込む。

 

「ーーーぐっ!!」

 

 しかし、治崎は少しも怯みもせず逆に通形が表情を歪ませる。再び振るわれた拳、それを響香が剣で切り裂き距離をとる。

 

「………厄介ですね」

「あぁ、動きは単調、技術も稚拙。だけど、単純に強くて固い」

 

 攻撃は一発一発が肝を冷やすレベルの威力、究極化した響化でもマトモに喰らいたくない。そして攻撃を打ちこんでも怯みすらしない堅牢さもある。

 

 すると治崎に変化が現れる。背中の腕が翼へと姿を変えたのだ。その翼で飛ぶ治崎は響香達に翼を向ける、すると翼からトゲが現れ降り注ぐ。"個性"で翼の一部を分解してトゲに修復して攻撃している。

 

 響香は剣で弾き、通形は透過で無力化する。しかし、空中に居られては通形は手出しはできない。

 

「ウチがいきます!!」

 

 舞空術で空を飛べる響香が治崎へと接近して剣を振るう。治崎も黙って見ている筈なく無数のトゲや石柱を放ち打ち落とそうとする。

 

「カオスフレア!!」

 

 それに対して剣を持っていない左手に気を圧縮させ放ったビームが迫りくるトゲや岩柱を飲み込み治崎に迫る咄嗟に両腕をクロスして防御するが光が皮膚を焼き爆発がおこる。

 

 大きく吹き飛ばされる治崎、それを見逃さず剣を振るう響香。それに対して治崎は異形と化した腕で迎え撃つ。次々と閃く剣閃が異形の腕と激突し火花を散らす。

 

 この戦いにおいて武器の使用は響香にとって必須であった。少なくともこうして距離を詰めての攻防をするならば素手では不利だ。

 

 普通のヴィランならば究極化せずとも素手で倒せるだろう。

 

 しかし、あの合宿移行、普通ではない敵との対立で素手では力不足だと悟った。

 

 如何に格闘センスを磨いても少女の腕では力不足。いつか一方的にこちらの拳や足が砕かれるのが目に見えていた。

 

 だからこそ、究極化を得て気のコントロールを習得してからは龍悟から習った事を基礎に武器や気功波の修行をした。

 

 そうしてできたのが今のスタイルだ。故に直接はぶつからない。治崎の拳には武器を合わせる。

 

 強度や威力、リーチで優位に立つ響香。打ち合いで砕けていく治崎の腕だが次の瞬間には修復されていた。21号やフィン程ではないにしても再生能力はやっかいだ。

 

 故に一撃できめる機会をうかがっていた。

 

 

 一方で強制強化で精神を汚染されても自我を保っている治崎は苛立っていた。一刻も速くエリを見つけ出し、取り戻し、計画を復活させなければいけないのに目の前の小娘一人倒せない現実に……

 

「ふざけるなァァァ!!!!」

 

 翼からトゲの雨を放ち引き剥がす。

 

「っ!ハートビートクラッシャー!!」

 

 それに対して足の増幅器にイヤホンジャックをさし音波衝撃を放ち撃ち落とす。しかし、響香は目を見開いた。治崎が先程よりも速いスピードで迫ってきたのだ。

 

 

「どいつもこいつも大局を見ようもしない!!!!」

 

 降り圧される腕を剣で防ぐが先程よりも重い一撃に表情を歪める。翼を最初の四つ腕に戻し計六つの腕が響香に叩き込まれる。

 

「俺が崩すのはこの"世界"!!その構造そのものだ!!」

「くぅ!」

 

 剣だけでは防ぎきれず表情に余裕がない。

 

「しまっ……!?」

 

 そして遂に治崎の豪腕が響香に叩き込まれ吹き飛ばされる。究極化して力を高めている状態なのでダメージは深くはないが決定的な隙がうまれてしまった。

 

「耳郎ちゃん!!」

 

 通形が叫び響香は体制を立て直そうとするが……既に遅い。

 

 

「目の前の小さな正義だけの……感情論だけのヒーローきどりが………俺の邪魔をするなァァ!!!!」

 

 

 治崎は自身の四肢を分解して一つの巨大な異形腕へと復元して響香へと叩き込んだ。その巨躯に見合わない速度で、異形の腕は轟音を立てながらそこにある全てを巻き込み壊していく。

 

 そして響香は巨大な腕に飲まれて消えた。

 

 

 耳をつんざくような轟音を鳴らしながら、地面を揺るがす衝撃と共に壁へ深くめり込む。ゆっくりと腕が引き抜かれたそこには…瓦礫の山だけが残っていた。

 

 

「耳郎ちゃん!?」

 

 

 余りの絶望的な光景に通形の怒号が響くと、それに応えるよう治崎が姿を戻し姿勢を向けた。

 

「馬鹿なガキだ。あんな呪われた奴の為に死んだ」

 

「なんだと!?」

 

「知っているのだろう…壊理(エリ)の呪われた………人間を巻き戻す"個性"を」

 

「……………………」

 

 龍悟が見たエリの記憶や治崎の研究資料からエリの"個性"についてはわかっていた…………その危険性も含めて。

 

「使いようによっては人を猿にまで戻す事が可能だろう。触れる者全てが「無」へと巻き戻される。俺に渡せ!俺にしかアレは使いこなせーー!?」

 

 

 その時だ、治崎の背後から"ナニか"が飛んできて串刺しにしたのだ、突き刺された痛みを感じながらその正体を知る。

 

 それは響香が持っていた紫の美しい剣だった。目を見開く治崎、串刺しにした剣が一人で動き……主の……響香の手の中に戻る。

 

「耳郎ちゃん!無事だったのか!」

「な、なんとか…」

 

 安堵する通形に苦笑いを向ける響香、ボロボロで外傷も多いがまだ戦えるようだ。

 

 

「お前も知っている筈だ…壊理(エリ)の呪われた"個性"を!?」

 

「だから何?アンタは知らないけどね、エリちゃんはアンタが言う呪われた"個性"でウチの怪我を治してくれた」

 

 脳裏に過るのはある日の出来事、インターンで怪我をして帰っきた響香を見たショックで始めて龍悟達の前で個性を使った、そして気づいた時には響香の怪我は消えていた。響香の体を怪我をする前に巻き戻したのだ。

 

 今でも覚えている、治してくれてありがとうと言った時、大泣きしたエリの事を………始めて言われて嬉しかったのだろう、"個性"を使って感謝されたのが。

 

 

「あの子の価値をお前の一人で決めつけるな!!」

 

 響香の背後にある光輪が、スパークを撒き散らしながら輝きを強くした。同時に彼女の手に持つ剣の輝きが強まり、その威力を桁違いに跳ね上げていく。

 

「さぁ、第二ラウンド始めようか」

 

 そう言い放つと響香は地面を砕く程に踏み込み風の如く治崎に迫る。

 

 

「…壊理(エリ)の価値もわからんガキがァァア!消えろォォォオ!!」

 

 

 治崎は再び巨大な異形腕へと復元して今度こそ叩き潰そうと響香へ放つ。

 

 それに対して響香は自身の持つ剣に気を集中させる。気が高まり剣の中では抑えきれない、溢れる気が紫水に強く、美しく、激しく輝き……聖剣の名に相応しい姿となる。

 

 そして迫りくる虚悪に響香はその聖剣を突き刺した。

 

 

 

勇気よ勝利へと突き進め(ヴィクトリーブレイブ)!!」

 

 

 

 ぶつかり合う両者、しかし紫水の流星と化した響香の突きが治崎の一撃を確実に砕いていく。己が敗北する未来を予感した治崎が声をあげる。

 

 

「なんなんだ!!お前は一体!?なんなんだ!?」

 

「そんなに聞きたいなら教えてあげるよ。ウチはヒアヒーロー、イヤホン=ジャック!!」

 

 そして遂に響香の一撃が治崎の一撃を打ち破り、懐に踏み込んだ。

 

「あの子の……エリちゃんのヒーローだ!!」

 

 狙いをつけて拳を振りかぶる、いつの間にか聖剣は消えており、剣に集まっていた気、剣を形成していた気が響香の右腕に集まり強く輝いていた。

 

 あのまま突き刺しても良かったが、やはりこの男を一発ぶん殴らないと気がすまない。譲ってくれた通形や庇ってくれた切島、飛ばされた龍悟の分。何よりエリの分を拳を乗せ……

 

 

 

「メテオインパクト!!」

 

 

 

 

 まさに流星と言っても差し支えない輝きを放つ拳を治崎の顔面に叩き込んだ。そんな響香のフォームは龍悟のそれと瓜二つだった。

 

 

 

 ぶん殴られ、陥没した地面の中心に治崎が突き刺さりピクリとも動かない。

 

 響香は勝ったのだ。

 

 生きて、帰る。

 

 あの子の元へ。かわした約束を、果たす為に。

 

 

 

「約束だもんね………エリちゃん」

 

 

 

 

END

 




【カオスフレア】

 片手で放つ威力重視の気功波。イメージは片手かめはめ波。
 

【ハートビートクラッシャー】

 増幅器で強化された心音を放つ衝撃波。足から攻撃を放つとかスーパーロボット感が強い技。


勇気よ勝利へと突き進め(ヴィクトリーブレイブ)

 剣に膨大な気を集中させて敵を貫く大技。今回みたいに別の技へのコンボに繋げる事もできる。

【メテオインパクト】

 右拳に気を集中させて相手の顔面に叩き込むえげつない大技。これからも使うと思う。




 遅れた分見ごたえよくしようと思ったら長くなりました!最後まで読んでくれてありがとうございました!!



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ただいま

投稿が遅れて申し訳ありません。

インターン編はこれでラストです。


「はぁ……はぁ……!」

 

「耳郎ちゃん!」

 

 

 治崎を地面に沈めた響香、しかし外傷がかなり多い、究極化は解除されていないが大きく息を吐きながら膝をつく。

 

 それと同時に壁が吹き飛ばされナイトアイ達がなだれ込む。

 

「ミリオ!状況は!?」

 

「サー!………正体不明のイレギュラー介入に龍悟君(ゴジータ)が転移と思わしき能力で飛ばされました」

 

 通形の報告はナイトアイ達を驚愕させるには十分過ぎるモノだった……それでも大丈夫だと感じるは龍悟の存在が大きいからだろう。

 

「………ゴジータなら大丈夫だろう、とにかく治崎の確保だ!」

 

 警察が倒れている治崎を確保しようと動きたその時…

 

「ッ!マズイ!?」

 

 相澤が声をあげる。天井が崩れかかっている、先程の戦闘が強すぎたのだ。

 

「総員退避ィィィイ!!」

 

「駄目だ間に合わない!」

 

 パニックになりつつも避難しようとするが間に合わない。ボロボロの響香がなんとかしようと気を高めるが…遂に究極化までもが解除されてしまった。

 

 

(約束したんだ…………帰るって!)

 

 それでも自分達の帰りを待つエリの事を思い気力を振り絞る。それでも体に力が入らない……よろけてしまう……その時だ………不意に誰かに支えられた。暖かくて、安心感に溢れている腕に……

 

 

 

「……………よく、頑張ったな。後は任せろ」

 

「……………うん」

 

 

 其所には誰よりも頼りになる……大好きな人(龍悟)がいた。ドミグラによって飛ばされたが、やっぱり何も心配はいらなかった。龍悟は戻って来てくれた。

 

 景色が変わっていく、龍悟の瞬間移動で退避するのだろう。もう大丈夫………その言葉が浮かぶと、響香は意識を手放した。

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 一方で屋敷前では麗日達、リーキュウ事務所は取り巻き達を全員捕縛し周囲の警戒にあったっていた。道中で分断され負傷した切島達も救助されて治療してもらっている。

 

 

「ッ!」

 

「どうしたの、ウラビティ?」

 

 その時だ、何かを感じた麗日(ウラビティ)が別の方へ顔を向ける。波動の疑問の声に、笑みを浮かべて告げた。

 

「帰ってきました!龍悟君達が!!」

 

 それと同時に突入した者達が龍悟の瞬間移動で帰ってきた。突然現れた事に驚きはしたが、気を失っている響香や捕縛されている治崎を見て、すぐに立て直す。

 

「龍悟君、響香ちゃんは!」

 

「大丈夫だ、気を失っているだけだ」

 

 麗日と蛙吹が気を失っている響香を見て慌てて駆け寄るが龍悟の言う通り、呼吸も安定しており大事には至らない。それを理解して安堵する。

 

 それから程なくして皆が救急隊員がやって来て響香に駆け寄り用意されたタンカに寝かせ切島達も居る治療所に運ばれた。

 

 それからやって来た警察の機動隊に治崎達は移動式牢(メイデン)に入れられた。

 

 

 時刻AM9時15分丁度。

 

 完全に安全確保が出来た所で……

 

 

 容疑者、捕縛。任務完了………その言葉が全員の耳に届いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 それから二日後、戦いで傷ついた者達は最寄りの大学病院に搬送された。

 

「調子はどうだ、響香?」

 

「もう、バッチリ!退院許可もおりたし………やっと帰れるね」

 

 病院に搬送された響香だったが………身に起きた事を医者に聞かれ即拘束、即行で精密検査を受けさせられたた。血を抜かれて、レントゲン取られ………一刻も早くエリを安心させたい響香だったが…相澤達に言われ渋々入院した。

 

 

「……すまなかった、その場に居られなくて」

 

「あれはしょうがないよ……」

 

 

 ドミグラによってアッチの世界、第七宇宙に飛ばされた龍悟、あちらの世界でも一悶着あったが、ウィスによって無事に帰ってきた。

 

「それで、切島は?」

 

 突入の際に自分を庇ってくれた切島は敵幹部二人と好戦、勝利したものの響香に負けず劣らずの負傷をした。やはり気になるのだろう。

 

「それは……「俺が見てきたよ」……相澤先生」

 

 その時、相澤が麗日達を連れて入ってくる。

 

「大事なところで居てやれなくてすまなかった」

 

「いえ……それより皆は……」

 

 

 響香の疑問に答える相澤、切島は全身打撲だが命に別条はない。他にも天喰は顔面にヒビが入ったものの後に遺るようなモノはない。ヴィラン連合にやられたロックロックも大事には至らないようだ。

 

「よかった……」

 

「切島も今日で退院できる……お前はよくやってくれた。後始末は俺達に任せて、帰ってやれ………待ってるんだろ」

 

 そう言って響香の頭を撫でる相澤の表情は温かいモノだった。

 

 

「相澤先生……はい!」

 

 

 

 

 

 その後、無事に退院した響香と切島を迎え、龍悟達は数日ぶりの学校に帰ってきた。しかし、戻ってからも色々と調査やら手続きが立て続けで、結局龍悟達が寮に戻ってきたのは夜だった。

 

 

 

「帰ってきたァァァァ!!奴らが帰ってきたァ!!」

 

 

 第一声が峰田のデカイ叫び声、それから雪崩れように寮の仲間達が駆け寄る。

 

「大丈夫だったかよォ!?」

 

「ニュース見たぞおい!?」

 

「皆、心配してましたのよ」

 

「大変だったな!?」

 

「まあ、とりあえずガトーショコラ食えよ!」

 

「お騒がせさんたち☆」

 

 

「落ち着けお前ら」

 

 あまりの勢い流石の龍悟も砂藤のガトーショコラを食べながら苦笑いだ。

 

「何で言ってくれなかったんだよ!?俺達モー仰天だったのよ!?」

 

 

「カンコーレーしかれ「切島!?」………芦戸」

 

 切島も瀬呂達にあれやこれやと質問されていたが、芦戸に気づく。ムードメーカーな彼女とは違い、焦っているのがわかる。

 

「………だ、大丈夫?」

 

「…………まだまだだわ」

 

 それに驚きつつも切島は本心を隠さず話す。プロの現場はまだまだ遠いと………

 

「………そっか」

 

 もう次に向けて気持ちを切り替えている。なら大丈夫だと芦戸は響香達の方に向かう。

 

「ありがとよ、心配してくれて」

 

「……………うん!」

 

 

 

 

 そんなてんやわんやな状況で登場、委員長の飯田。

 

「皆、心配なのはわかるが落ち着こう!!まずは、"あの娘"の筈だ!」

 

 飯田の言葉にアッ、と言いたげな顔をして騒ぎが嘘の様に静まった。

 

「そうですわ、ラベンダーのハーブティーをお淹れました。心が安らぎますの…………リビングに行きましょう」

 

 やって来た八百万に頷き、クラスメート達はリビングに向かう中、響香はなかなか進めずにいた。

 

「………緊張してるのか?」

 

「………二日も待たせちゃったから……」

 

 モジモジしている響香………気持ちはわからなくはないが……

 

「ジーとしててもドーにもならない………行こうぜ」

 

「……うん」

 

 龍悟の言葉に頷き、リビングに入る。リビングにはA組の皆と……

 

「ほら、帰ってきましたよ」

 

 21号と一緒にソファーに座っていたエリがいた。ソワソワしていた彼女は入ってきた響香に気づく。

 

「お、お姉ちゃん…」

 

 一瞬、ビクッとする響香だが、一瞬目を閉じて、再び目を開けるとエリの元まで歩を進め、膝を折ってエリと顔を合わせる。

 

 

 

 そして、笑みを浮かべて…………

 

 

 

 

 

「ちょっと、遅くなっちゃったけど………ただいま、エリちゃん」

 

 

 

 言いたかった言葉を口にした。数秒か、あるいは数分か……静寂に包まれていたリビング、見守る龍悟達。そして遂に動き出す。響香達が帰って来たと言うことは治崎達は倒されたと言うこと……その事をゆっくりと理解できたエリは涙を流し響香に抱きついた。

 

「…もう大丈夫だから」

 

 自分の胸の中で涙を流すエリを優しく抱きしめる。

 

 やがてエリは響香に顔を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

「おかえりなさい、お姉ちゃん!!」

 

 

 

 花の様に可愛らしい笑みを浮かべるその笑顔にかつての面影は欠片もなかった。

 

 

 END

 

 




インターンは殆ど響香が主人公してましたね……

龍悟がどうしていたのかは次の投稿する「教えてゴジータ先生!復活のF編」で明らかにします。


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閑話・教えて!ゴジータ先生!!復活のF編・前編

 ギリギリ間に合いました!

 今年最後の投稿です、どうぞ!!


 

 ヒーローインターンが一区切りついたある日、龍悟達の部屋に何時のもメンバーが集まっていた。

 

 話の議題は魔神ドミグラについてだ。

 

 

 トワと同じく時間操る極悪人。しかも、戦闘力はミラ以上、トワを上回る魔術の使い手……時の界王神に封印されているのにも関わらず、あれだけ活動できるのだ。

 

 八斎會突入作戦にも介入してきた以上、奴に対して対策を練らねばならない。

 

 

 そしてその話し合いにはビック3の通形と波動も参加していた。ドミグラ介入を直に見ていた通形には言い逃れできない。波動は話を聞こうと龍悟の元に行く通形を見つけ、くっついてきた。

 

 波動が来たのは驚いたが二人とも信用できる人物だ。龍悟は自分の正体も含めて全てを話した。

 

 自分が元々別世界の人間だったこと。

 

 別世界からやって来た、トワとミラという二人の魔族。彼等が行ってきた悪事。

 

 そして魔神ドミグラに時の界王神。

 

「……………これが、俺の全てだ」

 

「…………君が嘘をついていないのはわかる、信じるが………ここまで壮大な話だったとは……」

 

「驚いた……!」

 

 不思議ちゃんの波動も驚きが勝っている様だ……それでも信じてくれる先輩達に笑みを浮かべて龍悟は話を進める。

 

「さて、あの時俺はドミグラによってアッチの第七宇宙に飛ばされたんだ…………そこで俺は"フリーザ"と戦った」

 

 

 フリーザ………宇宙の帝王と恐れられたその名に響香達は身を引き締める。

 

「フリーザは倒されたんじゃないのか?」

 

「どうやら、フリーザ軍の残党が地球のドラゴンボールで復活させた様だ。そして奴は復讐の為に地球に来ていたんだ」

 

 ドラゴンボール……死人すら生き返らせる神秘の願い玉。通形達もいるので少しフリーザについておさらいした後に龍悟は語る。

 

「フリーザは元々、何の努力もせずに宇宙の帝王になった男だ。蘇った奴はトレーニングを積んだようでな、あの時とは比べ物にならない力を手に入れていた」

 

 龍悟が取り出したのは歴史が記されている終わりと始まりの書。それを開くとフリーザ映像が浮かび上がる。

 

「これが宇宙の帝王か………!」

 

「へぇーいろんな姿があるんだね~」

 

 それぞれの感想を言う通形達の後、龍悟は口を開く。

 

「響香達には前に話したよな、もしアイツが修行をして力を高めたらってifの話を……」

 

「……その話をするってことは…」

 

 目を細める轟に頷く。

 

 

「ああ、アイツは更なる姿……第五形態を見せてきた……その名も"ゴールデンフリーザ"をな」

 

 

 

 

 

 

◆◆◆

 

 

 ドミグラによって転移させられた龍悟、気づけば見知らぬ土地に立っていた。

 

「ッ!此所は!!」

 

 すぐに辺りを見回す、周りに人の姿はなく、人工物もない開けた荒野にポツンと立っていた。とにかく響香達の所に戻らなければ、瞬間移動の為に響香の気を探る。しかし、感じた気は響香のモノではない。

 

(!………これは……"悟飯"!それに"ピッコロ"や"クリリン"の気も感じる………此所は第七宇宙……ドミグラの野郎、面倒な事をしやがって…!)

 

 自らを神と名乗るだけある。別世界に飛ばされてしまってはいくらゴジータでも自力で帰るのは難しい。

 

(ウィスさんの力を借りてぇ所だが……)

 

 このまま、ビルスの星まで瞬間移動してウィスに帰してもらうのが良いのだが……

 

(…………フリーザが蘇っているなんてな)

 

 地球にフリーザの気を感じる、おそらくドラゴンボールの力で蘇ったのだろう。ゴジータが元居た世界ではジャネンバの異変の時にほボージャックと共に蘇り、悟飯に瞬殺された奴だ。この世界の悟飯やピッコロで対処できる…………と、思っていたのだが。

 

 今のフリーザから感じられるかつてない強大な気の波動だ。

 

(フリーザは産まれてから何の努力もせずにあれだけの強さだった男だ。潜在能力を全て解放すれば、これだけの強さになってもおかしくはない……か、今の悟飯達じゃ勝てねぇ)

 

 悟空達はビルスの星に居る、すぐには来れない。このままでは皆が殺されてしまう。

 

「……………行くしかないか!」

 

 

 悟飯の気を頼りに瞬間移動した。例え転生しようとも彼等は大切な仲間なのだから……

 

 

 

◆◆◆

 

 

「ホーホホホ!!随分無様ですね、孫悟空の息子、孫悟飯さん?」

 

「クッ…!フリーザ!!」

 

 

 フリーザ軍と悟飯達、地球の戦士の戦い………それは、地球の戦士達にとって絶望的な状況だった。圧倒的な力を手に入れたフリーザに悟飯達は手も足も出ない。

 

 倒れ伏す悟飯にフリーザは指先を向ける。悟飯は悔いていた、何時も自分はそうだった……強くなった自分に酔って慢心して事態を悪化させてしまう……平和に酔いしれ究極化どころか超サイヤ人2すら忘れてしまった。そのせいで強くなったフリーザに手も足も出せない。

 

「泣きなさい、叫びなさい!」

 

 

(すみません、父さん……)

 

 

「ざまあみろ!孫悟空!!」

 

 フリーザが指先から高出力のエネルギー波、【デスビーム】を放つ。放たれた凶弾は悟飯の心臓を容赦なく撃ち抜くだろう。

 

「悟飯!!」

 

 地球の戦士であり悟飯の師であるピッコロが我が身を盾に悟飯を守ろうとするが間に合わない。

 

 

 (ビーデル)(パン)……そして父の代わりに地球を守れなかった事を悔やみながら悟飯は目を閉じる。

 

「クッ、……………?」

 

 

 しかし、いくら待っても痛みが来ない。不思議に思い目を開けると……………この場の誰も知らない男が立っていた。

 

 服装は悟天とトランクスの融合ゴテンクスやメタモル星人という異星人が着る独特の衣装を纏う見た事のない戦士だ。

 

 

「……父さん?」

 

 しかし、悟飯は目の前の男の背中に父の背中を被せていた。見に纏う気も父と……いや、ベジータの気も混じっている。これはどういう事だ、混乱する悟飯に謎の男………龍悟は振り向く。

 

「貴方は……?」

 

 

 逆立った髪と生え際はベジータを思わせるが、顔立ちは悟空に近い。ますます、正体がわからない。そんな悟飯に龍悟は笑みを浮かべる。

 

「……いつもなら悟空でもベジータでもないって言うんだけどな……後は(オラ)に任せろ悟飯」

 

 その笑顔は正に優しい父と瓜二つだった。

 

「と、父さん!?」

 

 次に龍悟はクリリン達に姿勢を向ける。

 

「随分久しぶりだなクリリン……髪切ったのか、やっぱりスキンヘッドが一番似合ってるぜ」

 

 ブウの時は髪を生やしていたクリリンだが、今は昔の様にスキンヘッドだ。

 

「お前………悟空なのか」

 

「説明してる時間はねぇ………悟飯に仙豆を」

 

「あ、ああ」

 

 悟飯に仙豆を与えるクリリンを確認している龍悟にピッコロが声をかける。

 

「その服装……まさかお前は!?」

 

 流石ピッコロだ、龍悟の正体に気づいた様だ。

 

「………ピッコロ、皆を連れて離れててくれ」

 

 

 それだけを告げて龍悟はフリーザに歩を進める。歩き様に指を横に一線……するとなぞった線が光になり鏡の破片の様に砕け、フリーザ軍に流星の様に飛んでいく。

 

 自分達の主の強さを見て笑みを浮かべていた彼等は流星の様に飛んでくる光の刃に切り裂かれその命を手放した。

 

 それはフリーザ軍の中心人物のソルベや圧倒的な戦闘力で地球の戦士達を圧倒したタゴマも例外ではない。

 

「す、すげぇ」

 

「あ、ああ」

 

 

 クリリンの呟きに同じく地球の戦士である天津飯が冷や汗を流しながら頷く。他の戦士達も同じようなものだ。光の刃は雑兵だけでなく宇宙船も切り裂いた。

 

 燃え上がる己の宇宙船を唖然と見つめるフリーザはこんな真似を仕出かした龍悟を睨み付ける。

 

「貴様、何者だ!孫悟空か!?それともベジータか!?」

 

「どっちでもないさ……地獄に落ちてもちっとも反省してねぇ様だな、フリーザ」

 

 ゴジータが居た世界では地獄に落ちてもセルと一緒に悪事を働きパイクーハンに瞬殺された。反省してないのはこっちでも変わらない様だ。

 

「……………どうやら孫悟空と何らかの関係があるようですね………いいでしょう、復讐の準備運動にしてあげますよ!!」

 

 

 フリーザが眩く発光し、第一形態だった姿は、第二と第三形態を飛ばしていきなり最終形態へと進化した。あまりに凄まじい気に地球が鳴動し、龍悟の表情が険しくなる。神の気ではないため誰でも感知出来るが、この気の大きさ………とても、あのフリーザとは思えない。

 

「その尻尾を見る限り貴方もサイヤ人でしょう、超サイヤ人にならなくていいんですか?」

 

「……………なら、お言葉に甘えるか」

 

 そう言って超サイヤ人と、ワン・フォー・オール・フルカウルを組み合わせ、超サイヤ人フルカウルになる。

 

 最終形態となったフリーザが勝利を確信したように笑うのに対して龍悟は無表情……それが癪に触ったのか青筋をたててフリーザが殴りかかる。

 

 それを難なく受け流し戦いが始まる。

 

「死ねぇエェ!」

 

「……………」

 

 フリーザと龍悟が衝突し、衝撃波が発生する。超高速の打撃戦を展開し、目まぐるしく火花を散らす。フリーザの拳を受け流し、逸らし、隙を見て龍悟は殴る。フリーザは多少のダメージなど気にせず強引に攻勢へと出る。フリーザの拳が龍悟をガード越しに吹き飛ばし、龍悟の拳がフリーザの顔を打ち抜く。

 

 両者の姿が同時に消え、離れた場所に出現して攻防を繰り広げたと思ったらまた姿を消して別の場所で戦いを続ける。大気が破裂したかのように振動し、空が連続して爆ぜた。大砲でも発射したかのような音が幾度も木霊し、余波だけで地面が崩れる。

 

 一見互角の戦い……だが、フリーザは着実にダメージが積み重なっているのに対し、龍悟は無傷に近い。

 

 

 如何に強くなったとはいえ戦いは所詮力任せだ。

 

 そもそもフリーザには【戦い】の経験がない。ナメック星での悟空との戦いを除いて全てが一方的な【蹂躙】であり戦いと呼べる事をしたことがないのだ。

 

 そんなフリーザの戦い方が龍悟に通じる筈もなく均衡が崩れる。

 

「……………憎い」

 

「………なに?」

 

 その時、不意にフリーザが呟く。その瞳には憎悪の炎が燃えていた。

 

「こうして戦って実感する!お前の声が!顔が!あの孫悟空と同じ様に……憎いんだよ!!」

 

 そう叫び指先からデスビームを連続で放つ。だが、それは龍悟ではなく悟飯達にだ。

 

 突然の事に対応できない悟飯達、してやったりと笑みを浮かべるフリーザ、しかし龍悟は慌てる事なく瞬間移動で悟飯達の前に立ち。

 

 

神龍拳(シェンロンケン)五星龍(ウーシンロン)!!」

 

 

 五代目から託された【黒鞭】を発動させる。手足が赤みがかった黒色に変色し………

 

 

黒い蛇群(ブラックマンバ)!!」

 

 ワン・フォー・オールで強化された“黒鞭”を凝縮・圧縮した疑似腕を数が増えたと錯覚する程の速度で拳を打ち出した。蛇の大群の如く放たれた連撃は次々とデスビームを打ち破る。

 

 そしてそのままフリーザ目掛けて飛んでいく。

 

「なにぃぃい!?」

 

 孫悟空ならきっと隙を見せると思っていたが、まさかこうも簡単に対処されるとは……光の如く鋭い連撃にフリーザは反撃ができない。そしてフリーザの尻尾を掴み勢いよく地面に叩きつけた。

 

「何も考えてないとでも思ったのか……お前はピンチになるとこういう事ばっかするからな……」

 

「はぁ…はぁ……どうやら、孫悟空よりは……甘く、ないようですね」

 

 

 フリーザは地面を血で汚し、明らかに疲労の色を濃く顔に出していた。しかしそれでも尚、その顔は余裕に満ちている。

 

「フリーザの野郎……まだ余裕そうにしてるぞ!」

 

 それは地球の戦士達を不安がらせるには十分なモノだった。龍悟は油断なくフリーザを睨み付ける。

 

「いいでしょう!孫悟空の為に温存するつもりでしたが見せてあげますよ!このフリーザの真の力を!!」

 

 

 フリーザが両手をダラン、と下げてそこから少しだけ広げ左足を前に出し、凄まじい気を放つ。黄金の炎の様に輝く気がフリーザを包み込む。

 

 

「…………………まさか、ホントに第五形態があるなんてな」

 

 

  そう呟く龍悟の目の前には新たな姿となったフリーザの姿があった。第四形態を金メッキで塗装したような姿だ。

 

 

「どうですかこの姿!安っぽいネーミングですが【ゴールデンフリーザ】とでも言っておきましょうか」

 

 炎様に揺らめく黄金の気を身に纏うフリーザ、その力はあの時、戦った超サイヤ人ゴッドを上回っている。

 

「…………まさか、そこまでパワーアップするとはな、正直驚いたぜ」

 

「ホーホホホ!さぁ、続きを始めましょうか!!」

 

 

 

 

 黄金の気を爆発させ、フリーザは凶悪な笑みを浮かべる……………本当の戦いが戦いはここから始まる。

 

 

 

END

 

 




 最後まで読んでくれてありがとうございました!!

 後編は新年へ……それでは皆様、よいお年を!


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